Wikibooks
jawikibooks
https://ja.wikibooks.org/wiki/%E3%83%A1%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%82%B8
MediaWiki 1.47.0-wmf.9
first-letter
メディア
特別
トーク
利用者
利用者・トーク
Wikibooks
Wikibooks・トーク
ファイル
ファイル・トーク
MediaWiki
MediaWiki・トーク
テンプレート
テンプレート・トーク
ヘルプ
ヘルプ・トーク
カテゴリ
カテゴリ・トーク
Transwiki
Transwiki‐ノート
TimedText
TimedText talk
モジュール
モジュール・トーク
Event
Event talk
MediaWiki:Recentchangestext
8
1238
301227
206726
2026-07-05T15:51:57Z
Tomzo
248
301227
wikitext
text/x-wiki
<div class="plainlinks" style="font-size:smaller;">
[[Wikibooks:ウィキブックスへようこそ|ウィキブックスへようこそ!]] 最近の投稿がここで確認できます。現在 [[特別:Statistics|{{NUMBEROFARTICLES}}]] 項目([[特別:Statistics|統計]]: [https://stats.wikimedia.org/#/ja.wikibooks.org 詳細]/[[m:Wikibooks|Meta]]) ([{{fullurl:MediaWiki:Recentchangestext|action=edit}} 編集]|[[MediaWiki‐ノート:Recentchangestext|ノート]]|[{{fullurl:Template:RCInterwiki|action=edit}} Interwiki])
*'''[[m:Complete_list_of_Wikimedia_projects|姉妹プロジェクト]]''': <span style="font-variant:small-caps">[[w:特別:Recentchanges|Wikipedia]] - [[wikt:特別:Recentchanges|Wiktionary]] - [[q:特別:Recentchanges|Quote]] - [[n:特別:Recentchanges|News]] - [[s:特別:Recentchanges|Source]] - [[v:特別:Recentchanges|Wikiversity]] - [[species:Special:RecentChanges|Species]] - [[commons:Special:Recentchanges|Commons]] - [[m:Special:Recentchanges|Meta]]</span>
*'''[[:Category:ウィキブックス|文書]]''': [[Wikibooks:基本方針とガイドライン|基本方針]]/[[Wikibooks:編集方針|編集方針]] - [[Wikibooks:ウィキブックスは何でないか|何でないか]] - [[Wikibooks:中立的な観点|中立的な観点]] - [[Help:目次|ヘルプ]] - [[Wikibooks:Template メッセージの一覧|テンプレート]] - [[Wikibooks:ページ名の付け方|ページ名]] - [[Wikibooks:スタイルマニュアル|書式]] - [[Wikijunior:メインページ|ウィキジュニア]]
*'''道具''': [[:Category:主要カテゴリ|主要カテゴリ]] - [[Wikibooks:蔵書一覧|蔵書一覧]] - [[特別:Specialpages|特別ページ]] ([[特別:Wantedpages|未]] - [[特別:Newpages|新]] - [[特別:Shortpages|短]] - [[特別:BrokenRedirects|迷]] - [[特別:Lonelypages|孤]]) - [[特別:ログ/newusers|アカウント作成記録]] - [[特別:Statistics|統計]]
*'''依頼''': [[Wikibooks:管理者伝言板|管理者伝言板]] - [[Wikibooks:削除依頼|削除]] ([[Wikibooks:削除の方針|方針]]/[[Wikibooks:即時削除|即時]] <small>[[:カテゴリ:即時削除|依頼中]]</small>/[[Wikibooks:復帰の方針|復帰]]) - [[Wikibooks:投稿ブロック依頼|ブロック]] - [[Wikibooks:インポート依頼|インポート]] - [[Wikibooks:執筆依頼|執筆依頼]] - [[Wikibooks:プロジェクト文書の整備|プロジェクト文書の整備]]
*'''話題''' ([{{fullurl:Template:RC話題|action=edit}} 編集]): {{RC話題}}
</div>
{{RCInterwiki}}
fwuhg2eg6tmfa1odkukuhrs2mq2rf94
高等学校物理/原子物理
0
1946
301224
301203
2026-07-05T13:23:08Z
Tomzo
248
[[Special:Contributions/Nermer314|Nermer314]] ([[User talk:Nermer314|会話]]) による編集を取り消し、~2026-27385-76 による直前の版へ差し戻す
299234
wikitext
text/x-wiki
== 電子と光 ==
=== 電子の発見と測定 ===
==== 陰極線 ====
[図]
図のように両極に電極を封入したガラス管に高電圧を加えるとき、内部の気体を抜いていくと管全体が内部気体特有の発光を示す。このような稀薄気体による放電を'''真空放電'''という。最近は減りつつあるが、蛍光灯は真空のガラス管に少量の水銀蒸気を入れて真空放電を起こすことにより、水銀から紫外線を発生させて蛍光塗料を光らせている。
1858年、ドイツのプリュッカーは真空放電の実験の中で、ガラス管内の真空度を増すとあるとき管内の光が消えて正極側の管壁が蛍光を発することを発見した。これを受けて、1874年にイギリスのクルックスが「負極から出た何かが正極に向かって進んで管壁にぶつかることによって蛍光する」というアイディアを提唱した。ここで、正極・負極をそれぞれ'''陽極'''・'''陰極'''、陰極から出る何かを'''陰極線'''と名づけた。
その後、さまざまな実験により陰極線の性質が解明された。
*写真フィルムを感光する
*蛍光物質に当てると発光を示す
*物体に遮られ、その後ろに影を作る
*電場や磁場に、負電荷と同様の影響を受ける
*これらの性質は陰極の金属の種類や管内の気体の種類に依存しない
これらを総合すると、「陰極線は負電荷を持つある特定の粒子の流れで、その粒子はすべての金属に含まれる」という仮説が立つ。
この粒子の正体を調べるために、次のような実験が行われた。
==== トムソンの実験 ====
1897年、イギリスのトムソンは陰極線が電場や磁場でどのように曲げられるかを詳しく調べた。
真空中に間隔d、長さlの平行平板電極a, bを上から順に置き、電極面に平行に、電極間に向けて左から速さvで質量m、電荷-eの荷電粒子を入射する。電極の右端から距離Lだけ離れたところに蛍光物質を塗ったスクリーンを置いて粒子の到達地点を記録する。電子の入射方向にx軸をとり、電極の左端を通りスクリーンに平行な直線をy軸とする。また、表から裏の向きにz軸をとる。粒子の質量mは非常に小さい値と考えられるので、重力の影響は無視する。
まず、極板間にy軸の負の向きに大きさVの電圧をかける。このとき、極板間の電場は一様になるので、電場の強さは<math>E = \frac{V}{d}</math>と求まる。粒子は負電荷なので電場の向きと逆、すなわちy軸の正の向きに電場からの力を受け、その大きさは<math>F = |-e| E = \frac{eV}{d}</math>である。よって粒子の加速度は運動方程式より<math>a = \frac{eV}{md}</math>と求まる。
このとき、x軸方向は等速直線運動、y軸方向は等加速度運動をするので、xy平面上では放物運動をすると見做せる。x軸方向で考えると、速さvでlだけ移動する時間は、きはじの法則より<math>t_1 = \frac{l}{v}</math>である。y軸方向で考えると、粒子が電極を抜ける瞬間のy座標は<math>y_1 = \frac{1}{2} at^2_1 = \frac{el^2V}{2mdv^2}</math>と求まる。
電極を抜けた粒子は等速直線運動を行うので、粒子が電極を抜けてからスクリーンに到達する時間はx軸方向で考えると<math>t_2 = \frac{L}{v}</math>である。y軸方向は位置<math>y_1</math>に達したときの速度で等速運動をするので、<math>v_y = at_1 = \frac{elV}{mdv}</math> である。よって、電極を通過した後のy方向の移動距離は<math>y_2 = v_y t_2 = \frac{elLV}{mdv^2}</math>と求まる。スクリーンに到達したときの粒子のy座標は<math>y_0 = y_1 + y_1 = \frac{el^2V}{2mdv^2} + \frac{elLV}{mdv^2} = \frac{el(l+2L)V}{2mdv^2}</math>である。
次に、電極間にだけz軸の正方向に一様な磁場を加える。入射した粒子が直進するように磁場を調整すると、粒子が電場から受けるクーロン力と磁場から受けるローレンツ力が釣り合うので、磁束密度の大きさについて力の釣り合いの式より<math>B = \frac{V}{vd}</math>が成り立つ。よって<math>y_0 = \frac{el(l+2L)B}{2mv}</math>である。
これらを総合すると、<math>y_0 = \frac{e}{m} \times \frac{l(l+2L)B}{2v} </math>より<math>\frac{e}{m} = \frac{2y_0v}{l(l+2L)B} = \frac{2y_0E}{l(l+2L)B^2} = \frac{y_0V}{l(\frac{l}{2}+L)dB^2}</math>と求まる。
この<math>\frac{e}{m}</math>を荷電粒子の'''比電荷'''という。当時、最終的に求まった式に含まれる定数はすべて測定可能だったので、比電荷の値を求めることができた。具体的には、<math>\frac{e}{m} \fallingdotseq 1.75882001076 \times 10^{11}</math> C/kgである。
この比電荷は陰極に用いる金属や管内の気体の種類に依存しないので、物質の中には負電荷を持った粒子が共通に含まれることが証明された。この粒子は'''電子'''と名付けられた。現在では、この電子が電気の正体であると判っている。
なお、電子の具体的な質量や電気量の測定は1909年のミリカンの実験を待つことになる。
==== ミリカンの実験 ====
ミリカンの実験とは、霧吹きなどで作成した油滴の微小な飛沫に、X線やラジウムなどで帯電させる。そして、外部から電場を印加する。すると、油滴の重力(下向き)のほかに、電場による静電気力(上向きになるように電極板を設置する)が働くので、釣り合って静止する状態になった時の電場から、電荷の値を確かめる実験である。
油滴の質量をm、電気量を-q、電場の強さをE、重力加速度をgとすると、油滴に働く重力とクーロン力が釣り合っているので、<math>mg = |-q|E</math>である。
電場の強さを0にすると、油滴は自由落下運動を始めるが、空気抵抗によって終端速度vで落下するようになる。このとき、油滴に働く重力と空気抵抗力が釣り合っているので、空気抵抗の比例定数をkとして<math>mg = kv</math>が成り立つ。
総合して、<math>q = \frac{kv}{E}</math>を得る。
この実験を繰り返したときに算出・測定される電荷の値が全て 1.6×10<sup>-6</sup> Cの整数倍になったので、電子1個の電荷が 1.6×10<sup>-19</sup> Cだと分かった。
なお、この 1.6×10<sup>-19</sup> Cのことを'''電気素量'''という。
現在では、電気素量は <math>e = 1.602 \, 176 \, 634 \times 10^{-19} \, \mathrm C</math> と定義されている。
この値と先ほどの比電荷の値から、電子の質量は<math>m \fallingdotseq 9.1093837015 \times 10^{-30} </math> kgと求まる。
{{コラム|ミリカン以前の電気素量の測定|
ラボアジエなどの電気分解の実験により、金属の電気分解の実験の時に発生する気体が帯電していることは古くから知られていた。実験物理学者タウンゼントは、発生した気体のモル数と静電誘導などによって発生した電荷の合計を測定することにより、電子1個あたりの電荷(電気素量)を概算した。
現代の電子の電荷と桁が同じくらいの精度で、タウンゼントは電気素量の測定値を得た。
}}
=== 光の粒子性 ===
==== 光電効果 ====
[[File:Photoelectric effect diagram no label.svg|thumb|300px|電子の運動エネルギーの最大値と、光の振動数との関係]]
負の電荷に帯電させてある金属板に、紫外線を当てると、電子が飛び出してくることがある。また、放電実験用の負極に電子を当てると、電子が飛び出してくることがある。この現象を、'''光電効果'''という。1887年、ヘルツによって、光電効果が発見された。レーナルトによって、光電効果の特徴が明らかになった。
当てる光の振動数が、一定の高さ以上だと、光電効果が起きる。この振動数を'''限界振動数'''といい、これより低周波数の光では、光電効果が起こらない。また、限界振動数のときの波長を、'''限界波長'''という。
限界振動数は物質によって異なる。亜鉛板では紫外線でないと光電効果が起きないが、セシウムでは可視光でも光電効果が起きる。
光電効果とは、物質中(主に金属)の電子が光からエネルギーを受け取って外部に飛び出す現象のことである。
この飛び出した電子を'''光電子'''という。
光電効果には次のような特徴的な性質がある。
:* 光の振動数がある振動数(限界振動数)以上でないと起こらない。
:* 光電子の運動エネルギーの最大値は当てた光の振動数のみに依存し、光の強さには依存しない。
:* 単位時間あたりに飛び出す光電子数は、光の強さに比例する。
これらの性質のうち、1番目と2番目の性質は(それまでの)古典物理学では説明できない。
つまり、光を電磁波という波動の性質だけで捉えていては辻褄が合わないのである。
仮に電磁波の電場によって金属から電子が放出すると考えた場合、光の強さが大きくなるにつれ光波の振幅が大きくなるので、電場も大きくなるはずである。
しかし、実験結果によれば光電子の運動エネルギーは光の強さには依存しない。
よって光電効果は古典物理学では説明できない。
===== アインシュタインの 光量子仮説 =====
上述の矛盾(古典的な電磁波理論では、光電効果を説明できないこと)を解決するために、次のような'''光量子仮説'''がアインシュタインによって提唱された。
* 光は、光子の流れである。光子を、光量子ともいう。
* 光子1個の光エネルギー <math>E</math>は、光の振動数 <math>\nu </math> に比例する。
*:<math>E=h\nu</math>
比例定数 <math>h = 6.62607015 \times 10 ^{-34} \, \mathrm{J \cdot s}</math>を'''プランク定数'''という。
光電効果を起こすのに必要な最小エネルギーを'''仕事関数'''という。仕事関数の値は金属の種類によって異なる。
仕事関数を <math>W</math>とすると、光子の得る運動エネルギーの最大値 <math>K_0</math>について、次式が得られる。
:<math> K _0 = h \nu - W </math> (1.1)
この式より、光電効果が起こる条件は <math>h \nu \geqq W</math> となる。これは <math>k_0 \geqq 0</math>に相当する。
これより、限界振動数 <math>\nu_0</math>について、<math>h\nu_0=W</math>が成り立つ。
この光量子仮説により、光電効果の1番目と2番目の性質を容易に矛盾なく説明できるようになった。波動は粒子のように振舞うのである。
なお、光電効果の3番目の性質から、ある場所の光の強さはその場所の単位面積と単位時間及び飛来する光子の数に比例することが分かる。
*エネルギーの単位
電子や光子一個のエネルギーは非常に小さいので、ジュール(J)をそのまま用いると使い勝手が悪い。そのため、新たにエネルギーの単位を設定する。
真空中において電子一個を1Vで加速するときに電子が得る運動エネルギーを'''電子ボルト'''('''エレクトロンボルト''')という(記号:eV)。<math>1 \mathrm{eV} = 1.60 \times 10^{-19} \mathrm{J}</math>である。
例)
*銅の仕事関数は4.65eV
{{コラム|光波長の測定|
そもそも、光波長はどうやって測定されたのだろうか。
現在では、例えば原子の発光スペクトルの波長測定なら、回折格子をプリズムとして使うことによって、波長ごとに分け、波長が測定されている。
可視光の波長の測定は回折格子によって測定するわけだが、ではその回折格子の細かい数百nm〜数千nm程度の間隔の格子溝をどうやって作るのか、という問題に行き着く。
歴史的には、下記のように、可視光の波長が測定されていった。
まず、1805年ごろの「ヤングの実験」で有名なヤングらの研究により、可視光の波長は、おおむね 100 nm(10<sup>-7</sup>m) 〜 1000 nm 程度であることは、この頃から既に予想されていた。
その後、ドイツのレンズの研磨工だったフラウンホーファーが優れた回折格子を開発し、可視光の波長を精密に測定する事に成功した。フラウンホーファーは回折格子を作るために細い針金を用いた加工装置を製作し、その加工機で製作された回折格子を用いて光波長の測定を始めたのが研究の起こりである。1821年、フラウンホーファーは格子を130 本/cmも並べた回折格子を製作した。<ref>『現代総合科学教育大系 SOPHIA21 第7巻 運動とエネルギー』、講談社、発行:昭和59年4月21日第一刷発行発行</ref>
また、1870年にはアメリカのラザフォードがスペキュラムという光の反射性の高い合金を用いた反射型の回折格子を製作し、これによって700 本/mmもの格子のある回折格子を製作した。
更にこの頃、送り螺子の潤滑のために水銀を使う水銀浮遊法が、研究開発で行われた。
後の時代、より高精度な波長測定が物理学者マイケルソンによって行われた。
干渉計を用いて反射鏡を精密螺子で細かく動かすことにより高精度な波長測定器を作り、この測定器によってカドミウムの赤色スペクトル線を測定した。測定波長は643.84696 nmだった。マイケルソンの測定方法では、赤色スペクトル光の波長を当時のメートル原器と比較することで測定した。<ref>川上親考ほか『新図詳エリア教科辞典 物理』、学研、発行:1994年3月10日新改訂版第一刷、P.244 および P.233</ref>
このマイケルソンの制作した干渉計にも、水銀浮遊法の技術が取り入れられている<ref>クリス・エヴァンス 著、橋本洋・上野滋 共訳『精密の歴史』、大河出版、2001年11月28日 再版、185ページ</ref>。
更に螺子の技術革新で、弾力性のある材質で螺子を作ることによって誤差を均し高精度とする技術マートン・ナットが、イギリスの物理学者トーマス・ラルフ・マートンなどによって開発された。
なお、現代でも、研究用として干渉計を用いた波長測定器が用いられている。メートル原器は、マイケルソン当時は長さの基準だったが、1983年以降は標準には用いられていない。現在のメートルの定義は以下の通り。
;メートルの定義
:真空中の光速 <math>c</math> を単位 m/s で表したときに、その数値を {{val|299792458}} と定めることによって定義される。
:ここで、秒はセシウム周波数 <math>\Delta \nu_{\mathrm{Cs}}</math> によって定義される。
}}
==== 光電効果の測定 ====
[[File:Cellule photoelectriqie.JPG|thumb|300px|光電効果の実験]]
[[File:Caracteristique courant tension (frequence fixe).JPG|thumb|300px|電位と光電流の関係]]
右の実験図のように、光電管の陰極に限界振動数ν<sub>0</sub>よりも振動数が大きい光を当てると、光電子が飛び出し陽極に流れ込む。このときの電流を'''光電流'''という。
光電流の測定結果は右のグラフのようになる。
陽極の電位が正であれば飛び出した光電子は全て陽極に流れこむため、電圧を高くしても光電流の大きさは一定である。
陽極の電位が0であっても、光電子は運動エネルギー<math>K_0</math>を持って飛び出すので、陽極に到達することができる。
陽極の電位を負にしてさらに下げると、光電子は電場から受けるクーロン力によって運動を妨げられ、ある電位 <math>-V_0</math>で陽極に到達する前に運動エネルギーが0になってしまう。このときの電圧 <math>V_0</math>を'''阻止電圧'''といい、<math>K_0 = eV_0</math>が成り立つ。
つまり、阻止電圧を測定すれば光電子の持つ運動エネルギー <math>K_0</math>を求めることができる。
このとき、光の振動数 <math>\nu</math>または光の波長 <math>\lambda</math>が判っていれば、<math>K_0 = h \nu - W = \frac{hc}{\lambda} - W</math>より金属の仕事関数 <math>W</math>も求めることができる。
ただし、陽極と陰極で金属の種類が異なるとき、これらの仕事関数の違いに伴い'''接触電位差'''が表れるため、それも考慮しなければならない。
なお、光電効果によってプランク定数を測定することもできる。
=== X線 ===
==== X線の発見 ====
[[File:Rotating anode x-ray tube (labeled).jpg|thumb|250px|X線管<br>陰極から出た陰極線を陽極に照射すると、X線が出る。]]
[[File:Tube RX a fenetre laterale.png|thumb|X線管の原理]]
レントゲンは、1895年、放電管を用いて陰極線の実験をしていたとき、放電管の近くに置いてあった写真乾板が感光している事に気付いた。
レントゲンは、陰極線が硝子に当たったとき、何か未知のものが放射されてると考え、これをX線と名づけた。
軈て、種々の実験によってX線は性質が明らかになった。
*磁場や電場で曲がらない。(この事から、X線は荷電粒子ではない事が分かる)
*X線を照射された物質はイオンに電離する。('''電離作用''')
*可視光線を通さない物質でも、X線なら透過できる場合がある。(医療診断に応用されている。)
*蛍光物質を光らせる。
などの性質がある。
==== X線の発生とスペクトル ====
上のX線菅の図において、電流による発熱で陰極から放出された'''熱電子'''は高い電圧によって加速され、'''ターゲット'''(陽極)に衝突する。このとき、一個の電子の持つエネルギーの一部または全部がX線光子のエネルギーとなり、残りは陽極熱に変換される。
発生するX線のスペクトルは、ある最短の波長から始まってそれより長い波長を連続的に含む。これを'''連続X線'''という。
電子のエネルギーが全てX線光子のエネルギーに変わるとき、<math>E = h\nu = \frac{hc}{\lambda}</math>よりX線の波長は最短となる。このときのX線の振動数をν<sub>0</sub>、波長をλ<sub>0</sub>、加速電圧をVとすると、電子の初速度が0のとき、<math>eV_0 = h\nu_0 = \frac{hc}{\lambda_0}</math>が成り立つ。すなわち、最短波長は<math>\lambda_0 = \frac{hc}{eV}</math>と求まる。
[[File:TubeSpectrum.jpg|thumb|240px|特性X線(K線)]]
右の図のように、連続X線の他に特定のエネルギーを持つX線が強く放射される場合があり、これを'''固有X線'''('''特性X線''')という。固有X線の波長はターゲットの材質で決まる。
{{-}}
==== X線の波動性 ====
1912年、物理学者ラウエは、X線を単結晶に当てると、写真フィルムに図のような斑点の模様にあることを発見した。これを'''ラウエ斑点'''といい、結晶中の原子が回折格子の役割をしたことで発生した干渉現象である。
[[File:Bragg diffraction 2.svg|thumb|400px|ブラッグの条件]]
1912年、ブラッグは、反射が強めあう条件式を発見した。
この条件式
:<math>2d\sin\theta = n\lambda</math>(nは非負整数)
を'''ブラッグの条件'''という。
上式のdは格子面の間隔の幅である。
これは結晶面での回折や屈折を無視した場合の式であり、実際にはもう少し複雑な式となる。
<!-- 2023年奈良女子大学後期日程などに電子波の屈折を考慮したブラッグ反射の問題が出題。今後、新傾向として注意すべし @2025/08/13 -->
{{-}}
==== X線の粒子性 ====
* コンプトン効果
X線を物質に当てて散乱された後のX線を調べると、その中に元のX線の波長よりも長いものが含まれることがわかった。このように散乱X線の波長が伸びる現象は物理学者コンプトンによって解明されたので、'''コンプトン効果'''('''コンプトン散乱''')という。
[[File:Compton ex1.jpg||400px|thumb|right|コンプトンによる実験略図。なお、図中の「単結晶」は波長の測定用であり <ref>原島鮮『初等量子力学』(裳華房、2014年第40版、初版は1972年)</ref> 、「単結晶」の材質は方解石の結晶であり、散乱波長はブラッグ反射などを活用して測定する。(コンプトン本人の論文“The Spectrum of Scattered X-Rays”(May 9, 1923).に、方解石(calcite)を使っていることと、ブラッグ反射(Bragg ?)させている事が書かれている。)]]
この現象は、X線を波と考えたのでは説明がつかない。(仮に波と考えた場合、散乱では波長が変化しないので散乱光の波長は入射X線と同じになるはず。)
さて、波動の理論でコンプトン効果を説明できないなら、粒子の理論で説明をすれば良いだろう。
この当時、アインシュタインは光量子仮説に基づき、光子はエネルギー<math>E=h\nu</math>だけでなく、次の式で表される運動量 <math>p</math>も持つことを発見している。
<math>p=\frac{h\nu}{c}(=\frac{h\nu}{\nu \lambda}=\frac{h}{\lambda})</math>
物理学者コンプトンは、この発見を利用し、波長λのX線を、運動量<math>\frac{h}{\lambda}</math>
とエネルギー<math>\frac{hc}{\lambda}</math>を持つ粒子(光子)の流れと考え、
X線の散乱を、この光子が物質中のある電子と完全弾性衝突をした結果と考えた。
:コンプトンはこの考えに基づき、光子と電子の間に運動量保存則及びエネルギー保存則が成り立つと仮定して計算して、実験結果と良く合う結果が得られることを発見した。
[[File:Compton effect illust.svg|thumb|400px|コンプトン効果<br>この図を見ると、あたかも真空中を漂う電子に電磁波を照射したように見えるが、そうではない。実際にコンプトンが行った実験は、石墨の炭素などの物質にX線を照射する実験である。図中の電子は、炭素などの分子が提供する電子である。<!-- コンプトン本人の論文に、このような感じの図が書かれており、それでこのような図が普及したものと思われる。-->]]
解法は、下記のとおり。
:エネルギー保存の式を立てる。
:運動量の保存の式を立てる。
----
エネルギー保存の式
:<math>\frac{hc}{\lambda} = \frac{hc}{\lambda '} + \frac{1}{2}mv^2 \qquad \qquad</math> (1.2a)
運動量保存の式
:x軸: <math> \frac{h}{\lambda} =\frac{h}{\lambda '} \cos \theta + mv \cos \phi \quad</math> (1.2b)
:y軸: <math> 0 =\frac{h}{\lambda '} \sin \theta - mv \sin \phi \qquad</math>(1.2c)
----
この3つの式を連立し、<math>v</math>と<math>\phi</math>を消去して<math>\lambda,\lambda ',\theta</math>の関係式を求めればよい。
ⅰ)まず、式(1.2b),(1.2c)から<math>\phi</math>を消去する。<br>
式(1.2b)から
:<math>(mv \cos \phi)^2 = (\frac{h}{\lambda}-\frac{h}{\lambda '} \cos \theta)^2
</math>
式(1.2c)から
:<math>(mv \sin \phi)^2 = (-\frac{h}{\lambda '} \sin \theta)^2</math>
この両式を加えると
:<math>m^2 v^2 = (\frac{h}{\lambda}-\frac{h}{\lambda '} \cos \theta)^2+(-\frac{h}{\lambda '} \sin \theta)^2+\frac{h^2}{\lambda '^2}</math>
この右辺を整頓すると、
:<math>m^2 v^2 =\frac{h^2}{\lambda^2}-2\frac{h^2}{\lambda \lambda '}\cos \theta
+\frac{h^2}{\lambda '^2}\quad</math> (1.2d)
を得る。
ⅱ)式(1.2d)を式(1.2e)に代入してvを消去する<br>
式(1.2a)の右辺の第2項を変形して式(1.2d)を代入する。
:<math>\frac{1}{2}mv^2 =\frac{1}{2m}m^2v^2 = \frac{1}{2m}\bigl(\frac{h^2}{\lambda^2}-2\frac{h^2}{\lambda \lambda '}\cos \theta\bigr)+\frac{h^2}{\lambda '^2}</math>
これを式(1.2a)の右辺に代入すると
:<math>\frac{hc}{\lambda} = \frac{hc}{\lambda '} + \frac{1}{2m}\Bigl(\frac{h^2}{\lambda^2}-2\frac{h^2}{\lambda \lambda '}\cos \theta +\frac{h^2}{\lambda '^2}\Bigr)</math>
両辺を<math>hc</math>で割ると
:<math>\frac{1}{\lambda} = \frac{1}{\lambda '} + \frac{h}{2mc}\Bigl(\frac{1}{\lambda^2}-2\frac{1}{\lambda \lambda '}\cos \theta +\frac{1}{\lambda '^2}\Bigr)</math> (1.2e)
を得る。
この式の右辺の第2項の括弧内を次のように変形する。
:<math>\frac{1}{\lambda^2}-2\frac{1}{\lambda \lambda '}\cos \theta +\frac{1}{\lambda '^2}=\bigl(\frac{1}{\lambda}-\frac{1}{\lambda'}\bigr)^2+\frac{2}{\lambda \lambda'}(1-\cos \theta)</math>
この式を式(1.2e)の右辺第2項に代入すると
:<math>\frac{1}{\lambda} = \frac{1}{\lambda'} +
\frac{h}{2mc} \left\{
\bigl(\frac{1}{\lambda}-\frac{1}{\lambda'}\bigr)^2+\frac{2}{\lambda \lambda'}(1-\cos \theta)
\right\}</math>
この式の右辺の第1項を移行し、式を変形すると
:<math>\frac{\lambda'-\lambda}{\lambda\lambda '}=
\frac{h}{2mc}\left\{
\bigl(\frac{\lambda'-\lambda}{\lambda \lambda'}\bigr)^2+\frac{2}{\lambda \lambda'}(1-\cos \theta)
\right\}</math>
両辺に<math>\lambda \lambda'</math>を掛けると
:<math>\lambda'-\lambda=
\frac{h}{2mc}\left\{
\frac{(\lambda'-\lambda)^2}{\lambda \lambda'}+2(1-\cos \theta)
\right\}</math> (1.2f)
X線の散乱では、<math>\lambda'\fallingdotseq \lambda</math>なので
:<math>\frac{(\lambda'-\lambda)^2}{\lambda \lambda'}</math>は、波長に比べて非常に小さい値になり無視できる。
故に式(1.2f)から
:<math>\lambda'-\lambda \fallingdotseq
\frac{h}{mc}
(1-\cos \theta)
\qquad</math> (1.2g)
これで、所望の式が導出された。
----
=== 粒子の波動性 ===
==== 物質波 ====
フランスのド・ブロイは、波と考えられてた光が粒子の性質を持つならば、電子も粒子としての性質だけでなく波動としての性質を持つだろうと考えた。
そして、電子だけでなく、一般の粒子に対しても、その考えを適用し、次の公式を提唱した。
:運動量 <math>p</math>の粒子は波動性をもち、その波長は次式で与えられる。
:<math>\lambda = \frac{h}{p} </math>
これはド・ブロイによる仮説であったが、現在では正しいと認められている。
この波は、'''物質波'''と呼ばれる。'''ド・ブロイ波'''ともいう。
すなわち、光子や電子に限らず、あらゆる物質は粒子性と波動性を併せ持つといえる。
この物質波という説によると、電子線を物質に当てれば回折などの現象が起きるはずである。
1927年〜1928年にかけて、デビッソンとガーマーは、ニッケルなどの物質に電子線を当てる実験を行い、X線回折と同様に電子線でも回折が起きることを実証した。日本でも1928年に菊池正士が雲母片に電子線を当てる実験により回折が起きることを確認した。
電子線の波長は、高電圧をかけて電子を加速して速度を高めれば、物質波の波長はかなり小さくできるので、可視光の波長よりも小さくなる。
そのため、可視光では観測できなかった結晶構造が、電子波やX線などで観測できるようになった。生物学でウイルスが電子顕微鏡で観測できるようになったのも、電子の物質波が可視光よりも大幅に小さいからである。
=== 粒子と波動の二重性 ===
*電子ビームによる波動性の干渉実験
[[Image:Egun.jpg|thumb|250px|right|ブラウン管の電子銃]]
[[ファイル:double-slit.svg|thumb|right|350px|電子の二重スリットの干渉実験]]
[[ファイル:Doubleslitexperiment_results_Tanamura_1.gif|thumb|left|250px|二重スリット実験の結果]]
電子銃は電子を放出する装置である。
電子銃をもちいて、1個ずつ電子を当てる実験を、二重スリットを使って実験すると、図のように、波動のように、電子の多く当たった場所と電子の少なく当たる場所との縞模様ができる。
{{-}}
このように、電子にも粒子性と波動性があり、電子は粒子でありつつ、二重スリットに向かって電子を撃ち込むと干渉を起こすという波動性も持っている。
上述のような、さまざまな実験の結果から、すべての物質には、原子程度の大きさでは、波動性と粒子性の両方の性質をもつと考えられている。
このことを'''粒子と波動の二重性'''という。
{{コラム|電子顕微鏡|
光学顕微鏡(レンズを用いる顕微鏡)では、回折が起こることによって光の波長よりも小さな物体を見ることが非常に困難となる。'''分解能'''(2点を識別できる限界の距離)は10<sup>-7</sup>m(100nm)程度である。
より高い分解能を得るため、光よりも波長が短い電子線を用いる'''電子顕微鏡'''が発明された。電子顕微鏡では、加速電圧を高くすることで高い分解能を得られる。ただし、電磁波によるレンズ作用を用いることによる'''収差'''(像の歪み)などの障碍から、現在の最高分解能は10<sup>-10</sup>m(0.1nm)ほどに留まっている。
この分解能では、ウイルスどころか金属・酸素などの原子すらも観察することが可能であるが、中性子・陽子・電子などは小さすぎて観察できない。
}}
副読本:朝永振一郎『光子の裁判』1949年(朝永振一郎は1965年にノーベル物理学賞を受賞した物理学者だが、[[高等学校文学国語/化物の進化|寺田寅彦]]と同様に一般向けの書籍を多数執筆する文豪でもあった。この作品では、光子になぞらえた「波乃光子」という被告の裁判を舞台に、粒子と波動の二重性の不思議さを繙いている。)
*不確定性原理
[[File:Bundesarchiv Bild183-R57262, Werner Heisenberg.jpg|thumb|物理学者ハイゼンベルグ <br>不確定性原理の主要な提唱者である。]]
そして、原子スケールでは、ある一つの物質(主に電子のような粒子)について、その位置と運動量の両方を同時に決定する事はできない。このことを'''不確定性原理'''という。
{{-}}
== 原子・原子核・素粒子 ==
===原子===
陰極線に関連する実験から、全ての原子に負の電荷を持つ電子が含まれると考えられたが、原子は電気的に中性なので正の電荷を帯びた部分が存在するはずである。
そこで、原子の構造について様々な説が登場した。
比電荷の測定を行ったトムソンは、一様に正に帯電した球の中を電子が運動しているというプラムプディングモデル(ブドウパンモデル)を提唱した。長岡半太郎は、フランスのジャン・ペランが提唱した、正電荷を持つ粒子の周りを電子が公転している土星型モデルを定量化して大幅に補強した。しかし、実際に採択されたのは以下のようなモデルだった。
[[File:Geiger-Marsden experiment expectation and result (Japanese).svg|right|400px|thumb|]]
ドイツのガイガーとニュージーランドのマースデンは、α粒子を薄い金箔に当てる実験を行い、α粒子の散乱の様子を調べた。(なお、α粒子の正体はヘリウムの原子核。)その結果、ほとんどのα粒子は金箔を素通りするが、金箔中の一部の場所の近くを通ったα粒子だけが大幅に散乱する現象を発見した。
α粒子は電子の7000倍以上の質量を持つことから、電子の影響で大きく曲げられたとは考えにくい。そこで、原子内の狭い部分に集中した正電荷がα粒子に強い斥力を及ぼし、その部分が原子の質量の大部分を占めていると考えて計算を行い、実験結果をうまく説明することに成功した。
原子(10<sup>-10</sup>)内の正電荷が集中した10<sup>-15</sup>~10<sup>-14</sup>程度の重い部分は'''原子核'''と名付けられた。
原子は、中心に原子核があり、そのまわりを電子が運動するというラザフォードモデルとよばれるモデルによって説明される。ラザフォードモデルは、土星型モデルを発展させたものとも言える。
*ラザフォードモデル
原子は、全体としては電気的に中性であり、負の電荷を有する'''電子'''を'''電子殻'''に持つ。
ここで、ミリカンの実験 による結果などから、電子の質量は水素イオンの質量の約1/1840程度しかないことが分かっている。
すなわち、原子は電子と陽イオンとが含まれるが、質量の大部分は陽イオンがもつことが分かる。
原子核の大きさは原子全体の1/10000程度であるため、'''原子の大部分は真空'''である。
原子核は、正の電荷をもつZ個の'''陽子'''と、電気的に中性な(A−Z)個の'''中性子'''からなる。
陽子と中性子の個数の合計を'''質量数'''という。
陽子と中性子の質量はほぼ等しいため、原子核の質量は、質量数Aにほぼ比例する。
==== 統一原子質量単位 ====
原子の質量は極めて小さいため、キログラム(kg)をそのまま用いるのは不便である。そこで、(同位体を除いて)118種類ある原子のうちどれかを基準として考えたい。ここで、他の様々な原子と化合できるため質量比較がしやすいこと、同位体<sup>13</sup>Cなどの存在比が極めて小さいことなどから、炭素原子を基準にするのが適当である。
<sup>12</sup>C原子一個の質量を12と定義する単位系を'''統一原子質量単位'''という。単位はDa('''ダルトン''')であるが、廃止されたamu('''アトミックマスユニット''')を用いる人もいる。
[[高等学校化学基礎/物質量#原子量|化学基礎で原子量を習った]]が、原子質量単位は質量を表す単位なのに対し、原子量は質量そのものでなく質量比を表しているので単位はなく無次元である。混同しないように注意しよう。
==== 水素原子のスペクトル ====
高温の物体から発光される光には、どの(可視光の)色の波長(周波数)もあり、このような連続的な波長の光を連続スペクトルという。
いっぽう、ナトリウムや水素などの、特定の物質に電圧がかけられ放電したときに発光する波長は、特定の数本の波長しか含まれておらず、このようなスペクトルを輝線という。
パルマーは、水素原子の数本ある輝線の波長が、次の公式で表現できることに気づいた。
:<math>\lambda = 3.65 \times 10^{-7} \mathrm{m} \times \left( {n^2 \over n^2 - 4} \right).\quad(n=3,\ 4,\ 5,\ 6,\cdots\cdots)</math> (2.1)
上式中のmはメートル単位という意味。
その後、水素以外の原子や、可視光以外の領域についても、物理学者たちによって調べられ、次の公式へと、物理学者リュードベリによって、まとめられた。
:<math>\frac{1}{\lambda} =R \left( \frac{1}{m^2} -\frac{1}{n^2} \right).\ \left(\begin{array}{lcl}m =1,\ 2,\ 3,\cdots\cdots, \\ n = m+1,\ m+2,\ m+3,\cdots\cdots \end{array}\right)</math> (2.2)
上式のRは'''リュードベリ定数'''といい、<math>R=1.097373156815712 \times 10^7 \, \mathrm{/m}</math>である。
この公式の<math>m=1, 2, 3</math>をそれぞれ'''ライマン/パルマー/パッシェン 系列'''という。
==== 量子論と原子の構造 ====
[[File:Stationary wave Quantum rule in atom.svg|thumb|300px|原子内の定常波]]
ラザフォードの原子模型に従えば、電子は、まるで惑星の公転のように原子核を中心とする円軌道の上を一定の速度で運動する。
円運動する質点は加速度をもつので、このモデルの電子は加速度運動を続けることになる。
ところが古典電磁気学で、加速度運動を行う電荷は電磁波を放出してエネルギーを失うという法則が既に発見されていた。
この法則によれば、原子核の周りを回る電子は電磁波を放出し続け、エネルギーを絶えず減らしていく。それにつれ電子は原子核に向けて落下していくため、原子核との距離を小さくしながら原子核の周りを回転し、やがて原子核に衝突してしまう。円軌道の上を安定的に運動することは不可能なのである。
デンマークのボーアはラザフォードの原子模型の深刻な矛盾を克服し、さらに水素原子の放出する線スペクトルについても説明できる原子模型を作るため、
プランクの提唱したエネルギー量子化の考えとアインシュタインの光量子論を取り入れた大胆な仮説を立てた(1913年)。
*仮説1:量子条件
原子核を中心とする半径 <math>r</math>の円軌道を速さ <math>v</math>で回転する電子の軌道角運動量<math>rp=mrv</math>は<math>\frac{h}{2\pi}</math>の正整数倍しかとりえない,すなわち
:<math>mrv=n\frac{h}{2\pi} \quad (n=1,\ 2,\ 3,\cdots\cdots)</math> (2.3)
を満たさねばならない(角運動量の量子化)。この状態を'''定常状態'''、この条件を'''量子条件'''という。
:このボーアの式の正整数nを'''量子数'''という。
後年(1924年)、ド・ブロイは、物質粒子は波動性を持ち、その波(物質波)は、波長
:<math>\lambda=\frac{h}{p}=\frac{h}{mv}</math>
をもつと提唱した。また,(2.3)を変形すると
:<math>2\pi r=n\frac{h}{mv}=n\lambda</math>.
これらは電子の軌道一周の長さが電子の物質波の波長の正整数倍のとき,電子波は定常波になることを示している。
:これは、円軌道上に定常波ができるための条件と同じである。
*仮説2:振動数条件
電子はある決まった飛び飛びのエネルギーしか持たない。このとびとびのエネルギー値を'''エネルギー準位'''という。
:電子がエネルギー順位を<math>E'</math>から<math>E(<E')</math>に遷移する(エネルギーを失う)ときには、<math>E'-E=h\nu</math>できまる振動数<math>\nu</math>の一個の光子を放出し、
:逆にエネルギー準位 Eの電子が外部からエネルギー<math>h\nu = E'-E</math>を得ると、エネルギー準位E'に遷移する。
==== エネルギー準位 ====
[[File:Circular-motion-electron-in-atom jp.svg|thumb|400px|水素原子内での電子の円運動]]
水素原子において、電子軌道上にある電子のエネルギーを求めたいが、そのためには水素原子の半径を求める必要がある。
量子数<math>n</math>のとき水素の電子が原子核<math>H^+</math>を中心とする半径<math>r_n</math>の円軌道上を一定の速度<math>v_n</math>で運動しているとすれば、円運動方程式は
:<math> m \frac{v^2_n}{r_n} = k_0 \frac {e^2}{r^2} </math>
で表される。
一方、電子が定常波の条件を満たす必要があるので、前項の式(1)から、
:<math> v_n = \frac {nh}{2 \pi m r } \qquad \qquad (2)</math>
である。
この<math>v</math>を先ほどの円運動の式に代入して整頓すれば
:<math> r_n = \frac {h^2}{4 \pi ^2 k_0 me^2} n^2\qquad \qquad (3)</math>(<math>n=1, 2, 3\cdots</math>)
になる。こうして、水素原子の電子の軌道半径が求まる。
<math>n=1</math>のときの半径 <math>r_1</math>を'''ボーア半径'''という。
原子の世界でも、運動エネルギーKと位置エネルギーUの和が、エネルギーである。
位置エネルギーUは、この水素の電子の場合なら、静電気エネルギーを求めれば充分であり、電位の式によって求められて、
:<math> U = - k_0 \frac {e^2}{r}</math>
となる。
運動エネルギーKは、<math> K = \frac{1}{2}mv^2</math>なので
:<math> E = K+U = \frac{1}{2}mv{}^2 - k_0 \frac {e^2}{r}</math>
上式の右辺第一項に、
:円運動方程式<math> m \frac{v^2}{r} = k_0 \frac {e^2}{r^2} </math>の両辺にrを掛けた
<math> m v^2 = k_0 \frac {e^2}{r} </math>を代入すれば、
:<math>E(= E_n )= K+U = \frac{1}{2} k_0 \frac {e^2}{r}- k_0 \frac {e^2}{r} = - \frac{k_0e^2}{2r} </math>
となる。
さらに、これに電子の軌道半径<math>r=r_n</math>として式(3)を代入すれば、
:<math>E_n = -\frac{2\pi ^2 k_0{}^2 me^4} {h^2} \frac{1}{n^2} \quad (n=1,2,3,,,) \qquad \qquad (4)</math>
となる。これが水素原子のエネルギー準位である。
エネルギー準位の公式をよく見ると、エネルギーが連続的ではなく離散的な負の値をとることが判る。
<math>n=1</math>のとき、エネルギーが最低なので安定である。よって、電子は通常、<math>n=1</math>の状態であり、なろうとする。これを'''基底状態'''、<math>n=2, 3, \cdots</math>のときを'''{{ruby|励起|れいき}}状態'''という。
{{コラム|[[高校化学 無機化学まとめ#炎色反応|炎色反応]]の原理|
高温の炎中にある種の金属粉末や金属化合物を置くと、試料が熱エネルギーによって解離し原子化される。それぞれの原子は熱エネルギーによって電子が励起され、外側に存在する高エネルギーの電子軌道へと移動する。励起された電子が安定な基底状態に戻ろうとする際に、余分なエネルギーを電磁波として放出する。電磁波の周波数が、ちょうど可視光線の範囲に入る場合が有る。このとき、炎色反応として肉眼で観察できる。
なお、原子の電子軌道のエネルギーは連続した値ではなく飛び飛びの値であるため、励起された電子が基底状態に戻る際に放出されるエネルギーも連続した値ではない。このため、炎色反応として放出された光は連続スペクトルではなく輝線スペクトルを示す。また、元素によっても電子軌道のエネルギーはある程度決まるため、元素によって特徴的な輝線スペクトルを示す。これが、炎色反応を示す元素の種類により、炎色反応によって放出される光の色が決まる理由である。
}}
なお、
:<math> -\frac{2\pi ^2 k_0{}^2 me^4} {h^2}</math>に諸定数の値を入れて計算すると
:ほぼ<math> - \frac{13.6}{n^2} \ \ \mathrm{eV}</math>となるので、
:水素原子のエネルギー準位は
:<math>E_n \fallingdotseq -\frac{13.6}{n^2} \, \mathrm{eV}</math>と書ける。
:<math>E_1 \fallingdotseq 13.6 \, \mathrm{eV}</math>は水素のイオン化エネルギーの値に等しく、実験値によく一致することが判った。
;補:水素原子のスペクトルの経験式の理論的導出
水素原子の発する光のスペクトルの実測値を表すリュードベリの経験式については既に説明した。
ボーアの水素原子モデルに基づいて得られたエネルギー準位と振動数条件を用いれば、この式が以下のように理論的に導出できる。
任意の正整数<math>m, n \; (n>m)</math>を考える。
振動数条件により電子がエネルギー準位<math>E_n</math>から、低いエネルギー準位<math>E_m</math>に遷移するときに1個放出する光子の振動数は<math>\nu=\frac{E_n-E_m}{h}</math>である。
この光子の波長λは
<math>\frac{1}{\lambda} = \frac{E_n-E_m}{ch}</math>
で与えられるので、右辺のエネルギー準位に式(4)を代入すると
:<math>\frac{1}{\lambda} = \frac{2\pi ^2 k_0{}^2 me^4} {ch^3}(\frac{1}{m^2}-\frac{1}{n^2}) \qquad \qquad (5)</math>
が得られる。
<math>\mathbf{R} := \frac{2\pi ^2 k_0{}^2 me^4} {ch^3}</math>
でリュードベリ定数を定義すると、式(5)は
:<math>\frac{1}{\lambda} = {\bf R}(\frac{1}{m^2}-\frac{1}{n^2}) \qquad \qquad (5')</math>
Rの定義式中の諸定数に値をいれて計算すると
:<math>{\bf R} = 1.097373156815712\times 10^7 \rm{ /m} \qquad \qquad \qquad (6)</math>
驚くべきことに、リュードベリの経験式が、見事に導出できたのである。
これは、ボーアの仮説の妥当性を示すものと言えよう。
なお、実際の特性スペクトルの波長は、原子内部の電子の影響により若干摺れる。そういった内部電子の補正を考慮した、より精度の高い式として「[[w:モーズリーの公式]]」というのが知られている。歴史的には先にモーズリーの式が発見され、後からモーズリーとは別に独立に研究されていた上述のようなボーアやラザフォードの理論を用いると、モーズリーの公式もうまく説明できるという事が物理学者コッセルによって発見された<ref>山本義隆『原子・原子核・原子力』、岩波書店、2015年3月24日 第1刷、140ページ</ref>。モーズリーの公式については、大学の量子化学などの教科書に記載があるだろう。
;フランク・ヘルツの実験
[図]
ドイツのフランクとヘルツは、気体放電での電子の働きを調べるため、水銀蒸気を封入した図のような装置で実験を行った。
フィラメントFから飛び出す電子を、Fと網目状のグリッドGとの間に加える電圧Vで加速する。Gの後ろに電極Pを置き、Pに到達した電子の数を電流計で調べる。GP間にはFG間と逆向きに僅かな電圧(0.5V程度)を加え、電子がGに到達しても運動エネルギーが0に近ければPに到達できなくした。FG間の電圧を上げながらPに到達する電子の数を調べ、[グラフ]のような実験結果を得た。
[グラフ]
電子の数は電圧の増加とともに増すが、4.5~5V付近をピークに減少し、再び増加する。その後、約4.9Vの間隔で同様の増減を繰り返す。また、4.9eVに相当する波長のスペクトルも発生していた。
ボーアは、この実験結果を「4.9eVは水銀原子の基底状態と励起状態のエネルギーの差であり、電子の運動エネルギーが加速電圧で4.9eVに達した時に水銀原子が励起して電子が運動エネルギーを失う」と説明した。
その後、FG間から波長2.537×10<sup>-7</sup>(4.9eVのエネルギーに相当)の紫外線が発生していることが確認された。これは、励起された水銀原子が基底状態に戻る時にそのエネルギー準位の差に相当する波長の光子を放出して生じたものと考えられ、原子には離散的な値のエネルギー準位が存在するというボーアの仮説が実験で裏付けられた。
なお、固有X線の発生原理もエネルギー準位で説明することができる。
=== 原子核 ===
==== 原子核の構造 ====
原子核は、陽子と中性子からできている。二つを総称して'''核子'''という。
陽子は正電荷をもち、中性子は電荷をもたない。
原子核の陽子同士はクーロン力によって反撥し合うが、陽子と中性子を結ぶ'''核力'''がクーロン力よりも強いため、それが核子同士を繫ぎ止めている。
なお、原子番号の低い元素において、陽子と中性子の個数はほぼ同数である場合が多い。例えば、酸素や窒素では陽子・中性子ともに同数である。一方、元素番号の高い元素ほど、陽子よりも中性子が多い。例えばウラン235は中性子数が陽子数の1.5倍である。これには核力の性質が関係していると考えられている<ref>山本義隆『原子・原子核・原子力』、岩波書店、2015年3月24日 第1刷、190ページ</ref>。
陽子と中性子の数の和は'''質量数'''と呼ばれる。
元素の原子核の陽子の数は、その元素の周期表の'''原子番号'''である。
質量数が<math>A</math>の原子核は非常に強い核力のために、小さな球体状の空間の中に固まっており、その半径rは、
<math>1.2 \sim 1.4\times 10^{-15} \sqrt[3]{A}</math>
であることが知られている。
==== 同位体 ====
同じ元素でも、中性子の数が異なる原子がある。これらを互いに'''同位体'''('''アイソトープ''')という。例えば、水素に対する重水素・三重水素、酸素に対するオゾンなどがそうである。水素の原子核は陽子1つであり、重水素(D)の原子核を'''重陽子'''、三重水素(T)の原子核を'''三重陽子'''という。また、重水素からなる水分子<chem>D2O</chem>を'''重水'''という。
一般に、同じ元素であれば同位体でも化学的性質は同一であるが、物理的性質は大きく異なる場合がある。
原子の質量は、イオン化した原子を加速して電場・磁場が軌道にもたらす影響を調べることで求められる。
トムソンは、電場と磁場を加えた空間にイオンを入射させ、比電荷の同じイオンがスクリーン上の同じ放物線上に集まるような装置を制作した。これにより、ネオンの同位体が発見された。
トムソンの研究室にいたイギリスのアストンは、トムソンの装置を基にイオンの速さにかかわらず比電荷が同じであればスクリーン上の一点に集まるような装置('''質量分析器''')を製作した。この装置により多くの同位体が発見され、それらの質量と存在比も精密に測定された。
==== 放射能と放射線 ====
元素の中には、'''放射線'''を出す性質をもつものがあり、この性質を'''放射能'''という。
また、放射能をもつ物質は'''放射性物質'''といわれる。放射能を持つ同位体を'''放射性同位体'''という。
放射線には3種類存在し、それぞれ'''α線'''、'''β線'''、'''γ線'''という。
α崩壊は、親原子核からα粒子が放射される現象である。α粒子の正体はヘリウム原子核である。α崩壊後、親原子核の質量数は4小さくなり、原子番号は2小さくなる。
β崩壊は、親原子核の中性子が陽子と電子に変化することで、電子が放射される現象である。なお、放出された電子はβ粒子ともよばれる。β崩壊後、親原子核の質量数は変化しないが、原子番号は1増加する。
γ線は、α崩壊またはβ崩壊直後の励起状態にある原子核が、よりエネルギーの低い状態に遷移するときに放射される(かつてはγ崩壊と呼んだが、原子核が崩壊していないので用語廃止された)。γ線の正体は光子で、X線より波長の短い電磁波である。
α崩壊やβ崩壊によってもとの原子核の数は徐々に減っていくが、これらの崩壊は原子核の種類ごとに決まった一定の確率で起きるので、崩壊によってもとの原子核の数が減る速度は原子核の個数に比例して変化する。しかし、崩壊によってもとの原子核の数が半減するのにかかる時間は、原子核の種類だけによってきまる。そこで、この時間のことをその原子核の '''半減期''' と呼ぶ。崩壊によって原子核の個数がどれだけになるかは、この半減期を用いて記述することができる。原子核の最初の個数を<math>N_0</math>、原子核の半減期を<math>T</math>、時刻<math>t</math>での原子核の個数を<math>N(t)</math>とすると、
:<math>N(t)=N_0 \left(\frac{1}{2}\right)^{\frac{t}{T}}</math>
が成り立つ。
放射線に関しては様々な単位が用いられる。
かつてはキュリー、エルグ、ラド、レントゲン、レムなどの単位が用いられていたが、現在ではSI単位系に沿って以下の単位が用いられる。(ただし、現在でも前述の単位を用いる場合がある)
{| class="wikitable"
|+ 放射線のSI系列単位
|-
! 物理量 !! 単位 !! 記号 !! 説明
|-
|放射能の強さ||ベクレル||Bq||原子核が毎秒一個の割合で崩壊するときの放射能の強さを1Bqとする。
|-
|照射線量||クーロン毎キログラム||C/Kg||放射線の照射によって0℃、1013hPaの空気1cm<sup>3</sup>あたりに3.335641×10<sup>−10</sup> C(1 {{ruby|esu|静電単位}})のイオン電荷が発生したときの放射線の総量を2.58<u>0</u>×10<sup>−4</sup> C/kg(1 {{ruby|R|レントゲン}})と定義する。
|-
|吸収線量||グレイ||Gy||1Kgの物質が放射線の吸収と共に1Jのエネルギーを得たときの吸収線量を1Gyとする。
|-
|線量当量||シーベルト||Sv||吸収線量に、放射線の種類ごとに定められた人体の障害の受けやすさを表す線質係数(修正係数)を掛けたもの。例えば等価線量を求めたいなら放射線荷重係数を掛け、実効線量を求めたいならさらに組織荷重係数を掛ける。
|-
|線量率||シーベルト毎時||Sv/h||単位時間あたりに受ける放射線の量
|}
ちなみに、1キュリーは37GBq(37ギガベクレル、370億ベクレル)に等しい。
生体が放射能を受けることを'''被曝'''という。※'''「被爆」表記は意味が違うので絶対用いないように'''。
放射線は電離作用を持つので生物細胞に影響を及ぼし、遺伝子を破壊することで癌を発症させたり奇形を発生させたりする。被曝量が大きい場合には急性の障碍を引き起こすこともある。この影響を最小限にするには、放射線源から離れる、浴びる時間を短くする、鉛で放射線を遮るなどの対策が必須である。一方で、自然界には放射線がありふれている。普段の生活では食事による内部被曝や宇宙線による被曝などで年間2.4mSvほどの放射線を自然界から受けている。これらは被曝量が少ないため人体に害はない。また、放射線は非破壊検査、癌治療、レントゲン撮影、農作物の品種改良などの分野で応用されている。
手塚治虫は、自著『火の鳥』の「未来編」にて栽培促進に利用される放射線と、そこにおける事故を描いている。1967年の時点で既に放射線の産業利用の可能性と事故が起こったときの重大性を読み取っていたのである。
なお、福島原発事故の処理水放出が取り沙汰されているが、あれは国際基準よりも厳しい基準で安全性を確認してから放出しているため、一部が騒いでいるような汚染ではない。
===== 発展:半減期公式の導出 =====
原子核の崩壊速度は、原子核の個数に比例すると述べた。実は、上に述べた公式はこの情報だけから純粋に数学的に導き出すことができるものである。発展的な数学を用いるが、興味のある読者のためにその概要を記しておく。
原子核の個数と崩壊速度の間の比例定数は原子核の種類によって決まる。この定数をその原子核の'''崩壊定数'''という。崩壊定数が<math>\lambda</math>の原子核の時刻<math>t</math>での個数を<math>N(t)</math>とすると、その変化速度、すなわち<math>N(t)</math>の時間微分は、
:<math>\frac{d}{dt} N(t) = -\lambda N(t)</math>
で表される。このような、ある関数とその微分との関係を表した式を微分方程式といい、微分方程式を満たすような関数を求めることを、微分方程式を解くという。変数分離法によりこの微分方程式を解くと、
:<math>\frac{dN(t)}{N(t)}=-\lambda dt</math>
:<math>\int \frac{dN(t)}{N(t)}=-\lambda \int dt</math>
:<math>\log |N(t)|= -\lambda t + C</math>(<math>C</math>は積分定数)
よって
:<math>N(t) = e^{-\lambda t + C} = e^{C} e^{-\lambda t} \qquad</math><small>※<math>N(t)\geqq0</math>より絶対値記号は無視してよい。</small>
ここで<math>e^{C}</math>は積分定数の値によって定まる初期値なので、原子核の初期個数<math>N_0</math>とみてよい。
:<math>\therefore N(t)= N_0 e^{-\lambda t}</math>・・・(*)
半減期<math>T</math>は<math>N(t)=\frac{1}{2}N_0</math>なる<math>t</math>のことなので、式(*)より
:<math>\frac{1}{2}N_0 = N_0 e^{-\lambda T}</math>
:<math>\frac{1}{2}=e^{-\lambda T}</math>
:<math>-\log 2 = -\lambda T</math>
:<math>T=\frac{\log 2}{\lambda}</math>
よって
:<math>N(t)=N_0 e^{-\lambda t}=N_0 (e^{-\log 2})^{\frac{t}{T}}=N_0 \left(\frac{1}{2}\right)^{\frac{t}{T}}</math>
が得られる。
==== 原子核反応 ====
[[File:Cloud chamber ani bionerd.gif|thumb|right|300px|霧箱の実験。陽子は電荷(正電荷)をもっているため、霧箱でも観測することができる。 (※ この画像は、陽子の観測実験ではない。)<br>霧箱(蒸気の充満した装置)を使うことで、何らかの粒子が通過したとき蒸気が凝集するので、粒子の軌跡が可視化されるのである(飛行機雲と同じ原理)。磁場を加えた場合の、軌跡の曲率等などから、比電荷までも予想できる。]]
* 陽子の発見
ラザフォードは、窒素ガスを密閉した箱にα線源があると、正電荷をもった粒子が発生することを発見した。
この正電荷の粒子が、陽子である。つまり、ラザフォードは陽子を発見した。
同時に、酸素も発生することを発見し、その理由は窒素が酸素に変換されたからであり、つまり、原子核が変わる反応も発見した。
これらのことを式にまとめると、
:<math>_{\ 7}^{14} \mathrm{N} + {}_{2}^{4} \mathrm{He} \rightarrow {}_{\ 8}^{17} \mathrm{O} + {}_{1}^{1} \mathrm{H} </math>
である。
このように、ある元素の原子が、別の元素の原子に変わる反応のことを '''原子核反応'''('''核反応''')という。また、上のような反応式を'''核反応式'''という。
化学反応では原子の種類が変わらずその組合せが変わるだけであったが、核反応では別の種類の原子が生まれる。
正電荷を持つ二つの原子核の間には電磁気力により斥力が働く。核反応は、2つの原子核がこの斥力に打ち克って核力が働く近距離に近づいた時に初めて起こる。そのため、核反応を起こすには大きな運動エネルギーが必要であり、そのためにサイクロトロン・ベータトロン等の加速器が用いられる。
一般に、核反応では'''反応の前後で質量数の和と電気量の和は保存される'''ことがわかっている。
{{コラム|霧箱|
霧箱は、種類にもよるが、普通、エタノールまたはアルゴンの気体が封入される<ref>山本義隆『原子・原子核・原子力』、岩波書店、2015年3月24日 第1刷発行、P80</ref>。
霧箱のような実験装置の用途として、陽子の実験の用途のほか、原子核反応の回数を観測する目的でも使うことが出来る。放射線の測定器のガイガーカウンターの原理も、霧箱と類似している。放射線測定器であるガイガー・ミュラー管には気体(アルゴンやエチレンガスなどの不活性な気体)が封入されている。霧箱のように気気体を封入した測定管に、高電圧をかけた電気極板を追加することで、放射線を捉えるようにしたものがガイガー管である[https://www.agc.a.u-tokyo.ac.jp/radioecology/pdf/190930_radioecology_supplement2.pdf]。物理学者ガイガーは、このような測定器を開発し、さらに原子核反応によって生成されるヘリウム分子を集めて気体として封入し、当時としては最高水準の精度でアボガドロ定数を測定する事に成功した<ref>山本義隆『原子・原子核・原子力』、岩波書店、2015年3月24日 第1刷発行、P81</ref>。これは、プランクの熱輻射の理論から算出されたものや、物理学者ベランがブラウン運動から求めたものに匹敵する精度であった<ref>山本義隆『原子・原子核・原子力』、岩波書店、2015年3月24日 第1刷発行、P82</ref>。<br />
}}
* 中性子の発見
ラザフォードは1920年頃に既に陽子と同じ質量で電気的に中性な粒子の存在を予言していた。1930年、ドイツのボーテがポロニウムから放出されるα線をベリリウムに当てると透過力の強い放射線が出ることを発見し、翌年にキュリー夫妻がこれをパラフィン([[高校化学 脂肪族炭化水素#アルカン|アルカン]]のうち炭素数が20以上のもの。水素を多く含む。)に当てると陽子が飛び出すことを発見した。夫妻は放射線をγ線と考えてコンプトン効果で説明しようと試みたが、非現実的な仮定を余儀なくされて頓挫した。イギリスのチャドウィックはこの放射線をヘリウムや窒素に当て、これを電荷を持たず陽子とほぼ等しい質量の粒子の粒子線と考えると辻褄があうことを示し、1932年に論文を提出した。この粒子は中性子、放射線は中性子線と名付けられた。
*質量とエネルギーの等価性
原子核は、それを構成する核子である陽子と中性子が自由であるときの質量の和より、小さい質量をもつ。この減った質量を、'''質量欠損'''と呼ぶ。
質量数A、原子番号Zの原子核の質量欠損<math>\Delta m</math>を、式で書けば,
原子核の質量をm、陽子と中性子の質量をそれぞれ<math>m_p,\ m_n</math>としたとき、
:<math>\Delta m = m_{p}Z+m_{n}(A-Z)- m</math>である。<br />
なお、原子にもよるが、一般に質量欠損の大きさは、1%程度<ref>[https://kotobank.jp/word/%E8%B3%AA%E9%87%8F%E6%AC%A0%E6%90%8D-74242 コトバンク『日本大百科全書(ニッポニカ)の解説』(坂東弘治、元場俊雄)など ]</ref>である。
陽子と中性子が核力によって結合すると、その結合エネルギーに等しいエネルギーのガンマ線が放出される。アインシュタインの[[特殊相対性理論]]によれば、質量mとエネルギーEには、
: <math>E=m c^2</math>
という関係がある。
エネルギーと質量の等価性によれば、陽子と中性子が結合したときに放出されるγ線のエネルギーに等価な質量が減ることになるが、これが原子核の質量欠損である。{{コラム|原子レベルの質量の測定法|
[[File:Mass spectrometer schematics.png|thumb|right|質量分析器の模式図。試料導入部およびイオン源(左下)、分析部(左上、磁場偏向型)、イオン検出部(右上)、データ処理部(右中)からなる。]]
そもそも、どうやって原子や分子の質量を精度よく測定するか?
一般に原子レベルの質量測定法として精密科学でよく知られるものとして、右図のような、磁場によって荷電粒子を曲げる方式のものがある。このような磁場とローレンツ力を用いた方式による質量測定は一般に、「磁場偏向型」といわれる。
このような装置により、磁場や電化の大きさは実験的に決定できるので、曲率が質量の関数になるので、つまり半径から質量が逆算できる。
測定対象の元素材料が中性の原子であっても、その原子が固体なら、それに電子ビームを当てて、電子によって弾き飛ばされた材料が帯電してイオン化しているので、それから、上記のような磁場による質量測定が可能になる。
なお、同位体の存在やその質量も、このころ、このような装置で発見された。
原子質量がいくつもの元素で測定できるので、派生的に、化学の理論で分かる原子番号Zと原子量A及び原子の質量の測定値MをもとにZ,AからMを求めるワイツゼッカーの公式が作成された。
また、レインウォーターらにより原子半径の予想値なども算出されていった。
}}
このことから、陽子と中性子がバラバラに存在する時よりも、纏まって原子核を構成しているときの方がエネルギーが質量欠損分<math>\Delta mc^2</math>だけ小さいことがわかる。逆に、原子核をバラバラの核子にするには<math>\Delta mc^2</math>のエネルギーを与える必要がある。この意味で、<math>\Delta mc^2</math>を'''結合エネルギー'''という。化学で扱った[[高校化学 化学反応とエンタルピー#ヘスの法則|結合エンタルピー]]は原子と分子の話であったが、こちらは核子と原子核の話である。
質量数Aは核子の数なので、核子一つあたりの結合エネルギーは<math>\frac{\Delta mc^2}{A}</math>と表される。これの値は軽い原子核の領域で急激に増大し、鉄が最も最大となる。故に、'''核反応においては鉄が最も安定'''な元素である。
*核エネルギーと核分裂
核反応では、原子核の質量の和が反応の前後で変化する。質量和が減少する場合、その差が'''核エネルギー'''となる。このとき、結合エネルギーの和は増大し、核エネルギーは結合エネルギー和の変化量に等しい。一回の化学反応で解放されるエネルギーは数eV程度であるのに対し、一回の核反応で解放されるエネルギーは数MeVを超える。例えば、リチウム7と水素が衝突してヘリウム2つになる核反応では、1.68×10<sup>12</sup>Jという厖大なエネルギーが発生する。これは石油40トンを燃やして得られるエネルギーに相当する。
ドイツのハーンとシュトラスマンは、ウランに中性子を照射したときの反応性生物の中に、ウランとほぼ半分の質量を持つバリウム141などの原子核が含まれることを発見した。このように、一つの原子核がいくつかの原子核に分かれる反応を'''核分裂'''という。ウランのように質量数が多い原子核は、一つの原子核でいるよりも二つの原子核に分裂した方がエネルギー的に安定である。これが核分裂の起こる原因である。
核分裂は歴史的には原子爆弾に利用された。日本は原子爆弾を実戦使用された唯一の国である。
現代では、核分裂は'''原子力発電所'''で使用されている。
ウラン235やプルトニウム239を'''核燃料'''とし、熱運動する気体分子と同程度の速さの中性子を衝突させると様々な壊れ方の核分裂が起こる。このとき、いずれの場合も200MeV程度のエネルギーが解放され、2、3個の速い中性子が出る。この速い中性子を'''減速材'''(水や重水など)に衝突させて減速することで、別の核燃料に衝突させやすくする。このようにして次々に核分裂が起こることを'''連鎖反応'''という。原子力発電は、核分裂で発生した熱エネルギーでタービンを回して発電している。中性子を吸収する'''制御棒'''を用いることで核分裂が爆発的に起こらない且つ停止しないように制御している。連鎖反応が持続的に保たれる条件がちょうど満たされるとき、「原子炉は'''臨界'''にある」という。臨界状態では中性子数は一定に保たれる。原子炉の稼働は臨界点の近くで行われている。少ない燃料では中性子が核反応することなく散逸するので、臨界にあるための核燃料の量に下限があり、これを'''臨界量'''という。
原子力発電は、発電量は他の方式に比べて圧倒的であるが、安全対策や放射性廃棄物の処理などの問題がある。
2011年の東日本大震災では地震そのものには余裕で耐えたものの、津波により電源がロストしたことで炉心の冷却機能が失われて'''炉心融解'''('''メルトダウン''')が起こり、爆発とともに莫大な量の放射性物質が散布される、という事故が発生した。原子力発電の稼働にあたっては、このような重大事故に対する厳重かつ多重の安全対策が必須である。([[w:福島第一原子力発電所事故]]も参照。)
また、核分裂により生じる放射性元素の中には半減期が数百万年にも及ぶものが含まれ、これらの処理をどのように行うかも重要な課題である。
なお、原子力発電には'''沸騰水型'''と'''加圧水型'''の2種類がある。
*核融合
必要があれば[[高等学校地学]]も参照。
恒星では原子核同士が衝突することで質量数の大きな原子核が生まれている。このように、より大きな質量数の大きな原子核ができる反応を'''核融合反応'''という。
軽い原子核が核融合を起こすとき、結合エネルギーが増加し、その差のエネルギーが解放される。
太陽の中では、4個の水素原子核(陽子)から幾つかの段階を経て1個のヘリウム原子核が生成されている。このとき、約27MeVのエネルギーが解放される。
太陽は水素と核融合により生じるヘリウムから構成されており、水素が尽きると寿命を迎える。しかし、太陽よりも質量の大きな星ではヘリウムも核融合反応を起こして炭素が生成される。中心温度が15億Kを越えていれば炭素も核融合反応を起こしてネオンが生成し、その後は十分な質量があればネオン→酸素→珪素→鉄と核融合反応が進行する。鉄はこれ以上核融合反応を起こさないのである時点で恒星は寿命を迎え、超新星爆発を起こす。このとき、さらなる反応によりニッケル・金などのさらに重い元素が生成される。
初期の宇宙には水素・ヘリウム・リチウムあたりの軽い元素しか存在しなかったと推定され、長い年月で様々な恒星で核融合反応が進行することによって他の元素が十分量生成されてきたと考えられている。
核融合は核分裂とほぼ同時代に発見されたが、連続的に発生させるには数億℃の環境が必要であることから、当初はあまり注目されなかった。
核融合反応自体は短時間ながらも地上で起こすことに成功している。例えば、原子爆弾の進化系である水素爆弾は、原子爆弾の爆発により生まれる膨大な熱エネルギーを利用して核融合反応を起こすことによって原爆の威力を更に高めている。史上最強の水素爆弾ツァーリ・ボンバの爆発では、2.1×10<sup>17</sup>Jものエネルギーが放出されたとされている。
現在では、核融合発電の実用化が盛んに研究されている。核融合発電は核分裂を利用した従来の原子力発電に比べて圧倒的に安全でコストパフォーマンスも良いが、核融合反応の安定的な持続に未だ成功していないので、お目にかかれるのはまだ先である。
===素粒子===
素粒子は物質を構成する最小単位である。現在素粒子として17種類が発見されている。素粒子には、クォーク、レプトン、ゲージ粒子、ヒッグス粒子がある。陽子や中性子はクォークから構成されている。電子は素粒子である。
素粒子には、同じ質量や寿命を持つが、電荷の符号が異なる粒子が存在する。例えば、電子には、電荷が <math>e</math> の陽電子が存在する。[[ファイル:Standard_Model_of_Elementary_Particles-ja.svg|中央|フレームなし|300x300ピクセル]]
==== クォーク ====
陽子や中性子はアップクォークとダウンクォークと呼ばれるクォークから構成される。クォークは6種類あり、それぞれ3世代に分類される。アップクォークとダウンクォークは第一世代に分類され、アップクォークとダウンクォークに性質が似ているが質量がそれよりも重いクォークが存在する。第二世代には、チャームクォークとストレンジクォーク、第三世代にはトップクォークとボトムクォークが存在する。
アップ、チャーム、トップクォークは電荷 <math>\frac{2}{3}e</math> を持ち、ダウン、ストレンジ、ボトムクォークは電荷 <math>-\frac{1}{3}e</math> をもつ。
小林益川理論によれば、CP対称性の破れを説明するためにはクォークが3世代以上存在する必要がある。
{| class="wikitable"
|+ クォークとレプトン
|-
! 電荷 !! 第1世代 !! 第2世代 !! 第3世代
|-
! <math>\frac{2}{3}e</math>
| アップ (u)
| チャーム (c)
| トップ (t)
|-
! <math>-\frac{1}{3}e</math>
| ダウン (d)
| ストレンジ (s)
| ボトム (b)
|-
|}
=== ハドロン ===
クォークは、必ず複合粒子を形成し、単独で取り出すことができないと考えられている。これをクォークの閉じ込めという。クォーク間に働く力は量子色力学により説明される。量子色力学によれば、それぞれのクォークには三種類の異なる色荷を持つ異なる状態が存在する。三種類の色荷は光の三原色になぞらえて赤、青、緑と名前がついている。クォークの反粒子の色荷は反赤、反青、反緑である。クォークによる複合粒子は、色荷の合計が白である必要がある。
クォークの複合粒子を'''ハドロン(強粒子)'''という。ハドロンには、3つのクォークからなる'''バリオン(重粒子)'''と、2つのクォークからなる中間子(メソン)がある。歴史的にはハドロンを素粒子に含めた時代もあり、その時は素粒子が数百種類を数えていた。現在ではハドロンを素粒子に含めない。
バリオンの重要な例には陽子と中性子がある。陽子は uud で構成され、中性子は、udd で構成される。
電荷は
:中性子 <math>\frac{2}{3}e - \frac{1}{3}e - \frac{1}{3}e=0</math>
:陽子 <math>\frac{2}{3}e + \frac{2}{3}e - \frac{1}{3}e=e</math>
となる。
[[ファイル:量子色力学-01.svg|リンク=https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:%E9%87%8F%E5%AD%90%E8%89%B2%E5%8A%9B%E5%AD%A6-01.svg|中央|サムネイル|陽子や中性子の色荷は、赤+青+緑=白である。]]
メソンは、2つのクォークからなる複合粒子である。色荷を考えると、クォークと反クォークで構成される必要がある。なぜなら、クォークの色荷、赤、青、緑から2つを選んでも白色になることはなく、複合粒子を構成できない。クォークと反クォークからは、赤+反赤=白のようになるから、複合粒子を形成することができる。
メソンの重要な例には <math>\pi</math> 中間子がある。電荷により <math>\pi^+, \pi^-,\pi^0</math> の三種類があり、原子核の中の核子を結合させる核力を担っている。それぞれ
<math>\pi^+=u\bar d, \pi^-=\bar u d,\pi^0 = \frac{u \bar u - d \bar d}{\sqrt 2}</math>
で構成される。
==== レプトン ====
電子は素粒子である。電子に似た性質を持つが質量が電子よりも重い粒子として、ミュー粒子、タウ粒子が確認されている。ミュー粒子は電子の200倍、タウ粒子は電子の3500倍の質量を持つ。
また、ニュートリノと呼ばれる粒子が存在する。ニュートリノは物質とはほとんど反応しないため、検出が難しい。電子ニュートリノ、ミューニュートリノ、タウニュートリノが存在する。スーパーカミオカンデでの実験からニュートリノには質量があることが知られているが、その値は非常に小さい。
{| class="wikitable"
|+レプトン
!電荷
|第一世代
|第二世代
|第三世代
|-
! <math>-e</math>
| 電子 (e<sup>ー</sup> )
| μ粒子 (''μ''<sup>ー</sup> )
| τ粒子 (''τ''<sup>ー</sup> )
|-
!0
| 電子ニュートリノ(''ν''<sub>e</sub> )
| μニュートリノ(''ν''<sub>''μ''</sub> )
| τニュートリノ(''ν''<sub>''τ''</sub> )
|}
==== 4つの力 ====
自然界に働くすべての力は4つの力に分類することができる。電磁気力、強い力、弱い力、重力である。
例えば、机の上の物体に働く抗力や摩擦力などは原子の周りの電子による反発力で説明できるから、電磁気力を起源とする。電磁気力は光子によって媒介される力である。
強い力はグルーオンによって媒介される。強い力はクォークを閉じ込め複合粒子を形成したり、核力の起源となる。
弱い力は、W粒子とZ粒子により媒介され、主にベータ崩壊を引き起こす。
重力を媒介する素粒子を重力子というが、まだ発見されていない。
グルーオンのように、力を媒介する粒子のことを'''ゲージ粒子'''という。
{| class="wikitable" style="float: right; text-align: center; margin: 2pt;"
|+ 4つの力とゲージ粒子
|-
! 力の種類
! ゲージ粒子
! 相対的強さ
! 到達距離
! 力の源
|-
! 電磁気力
| 光子(フォトン)<br>(電磁場を量子化したもの)
|10<sup>-2</sup>
|∞
|電荷
|-
! 強い力<br>(クォークを引き付けあう力のこと。)
| グルーオン
|1(基準)
|10<sup>-15</sup>m
|色荷
|-
! 弱い力<br>(β崩壊を司る力のこと)
| ウィークボソン(W粒子、Z粒子)
|10<sup>-5</sup>
|10<sup>-17</sup>m
|弱荷
|-
! 万有引力(重力)<br>
| 重力子(グラビトン)<br>(未発見)
|'''10<sup>-38</sup>'''
|∞
|質量
|-
|}
β崩壊をつかさどる力のことを'''弱い力'''といい、この力を媒介する粒子を'''ウィークボソン'''という。
グルーオンの媒介する力のことを'''強い力'''という。
[[File:Cloud chamber ani bionerd.gif|thumb|right|300px|霧箱実験。サッと現れる白い軌跡が、荷電粒子や放射線が通過した跡。]]
[[File:Physicist Studying Alpha Rays GPN-2000-000381.jpg|thumb|right|300px|霧箱を覗き込む物理学者(1957年)。中心にポロニウムが置かれており、そこから放射される放射線(アルファ粒子)が、花びらのような形で可視化されている。]]
まず、宇宙線の観測により、μ粒子というのが、発見されている。
素粒子の観測には写真乾板(素粒子観測用の乾板を原子核乾板という)や霧箱などが使われた。
霧箱は、過飽和状態の水蒸気を利用して、荷電粒子が通過した際に水滴が凝結し、その軌跡を可視化する装置である。
磁場を加えた場合の、軌跡の曲率などから、比電荷までも予想できる。
このように、霧箱を使った実験により、20世紀前半〜中盤ごろには、いろいろな粒子が発見された。
==== 反物質 ====
素粒子には反粒子が存在するから、複合粒子には、構成する素粒子が反粒子となった粒子が存在する。例えば、陽子 <math>p = uud</math> には反陽子 <math>\bar p = \bar u \bar u \bar d</math> が存在する。中性子にも、反中性子 <math>\bar n = \bar u \bar d \bar d</math> が存在する。
反粒子で構成された物質を'''反物質'''という。
粒子と反粒子が衝突すると、衝突前のエネルギーと同じエネルギーを持つ光子が2つ以上放出されて消滅する。この現象を'''対消滅'''という。
逆に、光子から粒子と反粒子が生成されることを'''対生成'''という。基本的には光子が原子核と作用する必要がある。
現在の宇宙においては反物質は少量しか存在しないが、宇宙の黎明期には物質と同程度存在し、対消滅によってその殆どが消えたと考えられている。あるいは、宇宙の未知の領域に反物質のみで構成された領域も存在するという仮説が立っている。
(発展)病院などで使われる陽電子断層撮像法(PET)は、β<sup>+</sup>崩壊によって陽電子を放出する <sup>18</sup>F などを含む化合物を体内に取り込み、 発生した陽電子が電子と対消滅して発生するγ線を観測することによって、体内を調べる技術である。
==== μ粒子 ====
[[File:Cosmic-radiation-Shower detection--fr.png|thumb|400px|宇宙線は、図のように、地球の大気圏などに含まれる原子核に衝突することにより、いくつもの二次的な宇宙線を発生する。地球の高山で観測できる宇宙線は、二次的な宇宙線のほうである。いっぽう、宇宙空間を飛んでいる宇宙線は、一次宇宙線という。(※ 高校の範囲内) 宇宙線として観測されるμ粒子や陽電子やπ中間子は、このような現象によって発生したと考えられている。]]
1937年に宇宙線の観測から、電子と同じ電荷を持つが、質量は電子の約200倍を持つ粒子が発見された。この新しい粒子はμ粒子である。
μ粒子などの素粒子を検出するために、写真乾板を使う。通常の写真乾板とは違い、粒子線のような細かいものを捕らえられるように調整されており、原子核乾板という。
乾板中の成分にμ粒子が当たることで、電気化学的な反応が起こり、乾板が反応する。
早い話、X線乾板の原理と同じような原理で、μ粒子を使った(火山などの)内部研究が行われてた。近年は、原子核乾板の代わりに、半導体センサーを使って、検出している。
* μ粒子の発生方法
このような観測に使われるμ粒子をどうやって発生させるのか?
宇宙線から飛んでくるμ粒子をそのまま使うという方法もあるが、人工的にμ粒子などを発生させる方法もある。
加速器を使った方法は、下記の通り。
まず、シクロトロンやサイクロトロンを使って、電子を加速し、炭素などの物質に当てる。
すると、当然、いろんな粒子が発生する。
そのうち、π中間子が、磁気に反応するので、大きな電磁石コイルで、π中間子を捕獲する。このπ中間子が崩壊して、μ粒子が発生する。
==== スピン ====
電子や陽子や中性子などは、スピンという磁石のような性質をもっている。磁石にN極とS極があるように、スピンにも、2種類の向きがある。スピンのこの2種類の向きは、上向きスピンと下向きスピンがある。
全ての分子は電子や陽子や中性子を含むのに、多くの物質があまり磁性を持たないのは、反対符号のスピンをもつ電子が結合しあうことでスピンが打ち消しあうからである。
物質に静磁場を加えつつ高周波電磁波を加えると、原子核のスピンによって、電磁波が発生する。この電磁波を観測するのが、核磁気共鳴法(NMR、nuclear magnetic resonance)の原理である。 医療で用いられるMRI(magnetic resonance imaging)は、核磁気共鳴法を利用して人体内部を観測する機器である。
素粒子も、通常はスピンをもつ。
μ粒子のスピンという性質による磁気と、μ粒子の透過性の高さを利用して、物質内部の磁場の観測方法として既に研究されており、このような観測技術をμオンスピン回転という。超伝導体の内部の観測などにも、μオンスピン回転による観測が研究されている。
==== 発展:力の統一 ====
現代物理学において、自然界に存在する力はすべて電磁気力・弱い力・強い力・重力の4つに統一されている。
これらの力は宇宙誕生時は一つの力だったと考えられており、現在この4つの力をさらに統一しようとする試みが行われている。
電磁気力と弱い力を統一する'''電弱統一理論'''は既に完成しており、ワインバーグ=サラム理論の名で1979年にノーベル物理学賞を受賞している。電弱統一理論は、ヒッグス粒子の発見によって理論が裏付けられた。強い力と電弱統一理論を統一する'''大統一理論'''は未完成ではあるものの、裏付けとなる現象の観測待ちとなっている。
3つの力と重力を統一する'''超大統一理論'''は'''万物の理論'''と呼ばれ、さまざまなアプローチで構築が進められているが、ある一つの大きな問題が存在する。
それは、'''重力は他の力に比べて圧倒的に弱い'''という事実である。日常生活で考えてみると、磁石で鉄をくっつけられることから「巨大な地球の重力がかなり小さい磁石の電磁気力に負けている」と気がつくことができる。
重力が弱い理由はいくつか考えられているが、その中でも有名なものは「'''重力子が他の素粒子が到達することのできない次元方向に拡散しているため'''」という仮説である。これは素粒子を質点でなく大きさをもつ一次元の弦(あるいは二次元以上の膜)とみなし、素粒子の種類の違いを振動の仕方の違いに対応させる'''超弦理論'''という理論の研究の中で生まれた仮説である。素粒子の種類の違いを表現するには我々の住む三次元空間では振動方向が足りないことから、「この世界は本当はもっと高次元な空間である」との仮説が生まれ、その中で唱えられ始めた。超弦理論の一つであるM理論では、「この世界は十次元空間と一次元時間の十一次元時空間であり、余剰次元は小さく丸まっている(コンパクト仮説)」という方向で理論が構築されている。なぜ重力子のみが余剰次元方向に拡散できるかについては、「他の素粒子は開いた弦でありこの三次元空間に張り付いているが、重力子は閉じた弦であって空間に縛られない」という仮説が立っている。
この仮説では重力のみが弱い理由を合理的に説明できているが、重力子が未だ未発見であること、光子すらも届かない余剰次元空間の存在を確認する手段がないことが難点である。
とりあえず、万物の理論として2024年現在最も有力視されている理論がM理論である。これ以上の深入りは避ける。
==== 発展:コバルト60のベータ崩壊と弱い力 ====
コバルト60を極低温に冷却し、磁場をかけて多数のコバルト原子の電子殻の孤立電子スピンの方向をそろえた状態で、コバルト60がベータ崩壊して発生するベータ粒子の出る方向を調べる実験が、1956年にアメリカで行われた。
実験の結果、コバルト60がベータ崩壊してベータ粒子の出てくる方向は、コバルト60のスピンの磁気の方向と逆の方向に多く放出されているのが観測された。これは、崩壊の確率が異なっており、ベータ崩壊の対称性が破れていることになる。このような実験事実により、弱い力は空間反転に対して非対称である。
== 脚注・参考文献など ==
[[Category:高等学校教育|物ふつり2けんしとけんしかく]]
[[Category:物理学|高ふつり2けんしとけんしかく]]
[[Category:物理学教育|高ふつり2けんしとけんしかく]]
[[Category:高等学校理科 物理II|けんしとけんしかく]]
nkywe96q7qa2h6lwshn3kskn6o3to01
301225
301224
2026-07-05T13:28:02Z
Tomzo
248
[[Special:Contributions/Tomzo|Tomzo]] ([[User talk:Tomzo|会話]]) による編集を取り消し、Nermer314 による直前の版へ差し戻す
301203
wikitext
text/x-wiki
{{pathnav|高等学校の学習|高等学校理科|高等学校物理|[[高等学校 物理|物理]]|pagename=原子物理|frame=1|small=1}}
== 電子と光 ==
=== 電子の発見と測定 ===
==== 陰極線 ====
[[File:12. Тлеечко празнење.ogv|thumb|400x400px|真空放電の実験動画|中央]]
図のように両極に電極を封入したガラス管に高電圧を加えるとき、内部の気体を抜いていくと管全体が内部気体特有の発光を示す。このような稀薄気体による放電を'''真空放電'''という。最近は減りつつあるが、蛍光灯は真空のガラス管に少量の水銀蒸気を入れて真空放電を起こすことにより、水銀から紫外線を発生させて蛍光塗料を光らせている。
1858年、ドイツのプリュッカーは真空放電の実験の中で、ガラス管内の真空度を増すとあるとき管内の光が消えて正極側の管壁が蛍光を発することを発見した。これを受けて、1874年にイギリスのクルックスが「負極から出た何かが正極に向かって進んで管壁にぶつかることによって蛍光する」というアイディアを提唱した。ここで、正極・負極をそれぞれ'''陽極'''・'''陰極'''、陰極から出る何かを'''陰極線'''と名づけた。
<gallery widths="150">
File:Katódsugarak mágneses mezőben(1).jpg|クルックス管。陰極は右側にある。陽極は下部にある。
File:Katódsugarak mágneses mezőben(2).jpg|陰極線は、陰極から飛び出て進み、管壁にぶつかって蛍光を発させる。十字状の物体と同じ形の影が出来ることから陰極線が物体に遮られることも確認できる。
File:Katódsugarak mágneses mezőben(3).jpg|U字磁石を配置して平行な磁場を与えると、陰極線は上に曲げられる。
File:Katódsugarak mágneses mezőben(4).jpg|今度はU字磁石を逆に配置して平行な磁場を与えると、陰極線は下に曲げられる。
</gallery>
その後、さまざまな実験により陰極線の性質が解明された。
*写真フィルムを感光する
*蛍光物質に当てると発光を示す
*物体に遮られ、その後ろに影を作る
*電場や磁場に、負電荷と同様の影響を受ける
*これらの性質は陰極の金属の種類や管内の気体の種類に依存しない
これらを総合すると、「陰極線は負電荷を持つある特定の粒子の流れで、その粒子はすべての金属に含まれる」という仮説が立つ。
この粒子の正体を調べるために、次のような実験が行われた。
==== トムソンの実験 ====
1897年、イギリスのトムソンは陰極線が電場や磁場でどのように曲げられるかを詳しく調べた。
真空中に間隔d、長さlの平行平板電極a, bを上から順に置き、電極面に平行に、電極間に向けて左から速さvで質量m、電荷-eの荷電粒子を入射する。電極の右端から距離Lだけ離れたところに蛍光物質を塗ったスクリーンを置いて粒子の到達地点を記録する。電子の入射方向にx軸をとり、電極の左端を通りスクリーンに平行な直線をy軸とする。また、表から裏の向きにz軸をとる。粒子の質量mは非常に小さい値と考えられるので、重力の影響は無視する。
まず、極板間にy軸の負の向きに大きさVの電圧をかける。このとき、極板間の電場は一様になるので、電場の強さは<math>E = \frac{V}{d}</math>と求まる。粒子は負電荷なので電場の向きと逆、すなわちy軸の正の向きに電場からの力を受け、その大きさは<math>F = |-e| E = \frac{eV}{d}</math>である。よって粒子の加速度は運動方程式より<math>a = \frac{eV}{md}</math>と求まる。
このとき、x軸方向は等速直線運動、y軸方向は等加速度運動をするので、xy平面上では放物運動をすると見做せる。x軸方向で考えると、速さvでlだけ移動する時間は、きはじの法則より<math>t_1 = \frac{l}{v}</math>である。y軸方向で考えると、粒子が電極を抜ける瞬間のy座標は<math>y_1 = \frac{1}{2} at^2_1 = \frac{el^2V}{2mdv^2}</math>と求まる。
電極を抜けた粒子は等速直線運動を行うので、粒子が電極を抜けてからスクリーンに到達する時間はx軸方向で考えると<math>t_2 = \frac{L}{v}</math>である。y軸方向は位置<math>y_1</math>に達したときの速度で等速運動をするので、<math>v_y = at_1 = \frac{elV}{mdv}</math> である。よって、電極を通過した後のy方向の移動距離は<math>y_2 = v_y t_2 = \frac{elLV}{mdv^2}</math>と求まる。スクリーンに到達したときの粒子のy座標は<math>y_0 = y_1 + y_1 = \frac{el^2V}{2mdv^2} + \frac{elLV}{mdv^2} = \frac{el(l+2L)V}{2mdv^2}</math>である。
次に、電極間にだけz軸の正方向に一様な磁場を加える。入射した粒子が直進するように磁場を調整すると、粒子が電場から受けるクーロン力と磁場から受けるローレンツ力が釣り合うので、磁束密度の大きさについて力の釣り合いの式より<math>B = \frac{V}{vd}</math>が成り立つ。よって<math>y_0 = \frac{el(l+2L)B}{2mv}</math>である。
これらを総合すると、<math>y_0 = \frac{e}{m} \times \frac{l(l+2L)B}{2v} </math>より<math>\frac{e}{m} = \frac{2y_0v}{l(l+2L)B} = \frac{2y_0E}{l(l+2L)B^2} = \frac{y_0V}{l(\frac{l}{2}+L)dB^2}</math>と求まる。
この<math>\frac{e}{m}</math>を荷電粒子の'''比電荷'''という。当時、最終的に求まった式に含まれる定数はすべて測定可能だったので、比電荷の値を求めることができた。具体的には、<math>\frac{e}{m} \fallingdotseq 1.75882001076 \times 10^{11}</math> C/kgである。
この比電荷は陰極に用いる金属や管内の気体の種類に依存しないので、物質の中には負電荷を持った粒子が共通に含まれることが証明された。この粒子は'''電子'''と名付けられた。現在では、この電子が電気の正体であると判っている。
なお、電子の具体的な質量や電気量の測定は1909年のミリカンの実験を待つことになる。
==== ミリカンの実験 ====
ミリカンの実験とは、霧吹きなどで作成した油滴の微小な飛沫に、X線やラジウムなどで帯電させる。そして、外部から電場を印加する。すると、油滴の重力(下向き)のほかに、電場による静電気力(上向きになるように電極板を設置する)が働くので、釣り合って静止する状態になった時の電場から、電荷の値を確かめる実験である。
油滴の質量をm、電気量を-q、電場の強さをE、重力加速度をgとすると、油滴に働く重力とクーロン力が釣り合っているので、<math>mg = |-q|E</math>である。
電場の強さを0にすると、油滴は自由落下運動を始めるが、空気抵抗によって終端速度vで落下するようになる。このとき、油滴に働く重力と空気抵抗力が釣り合っているので、空気抵抗の比例定数をkとして<math>mg = kv</math>が成り立つ。
総合して、<math>q = \frac{kv}{E}</math>を得る。
この実験を繰り返したときに算出・測定される電荷の値が全て 1.6×10<sup>-6</sup> Cの整数倍になったので、電子1個の電荷が 1.6×10<sup>-19</sup> Cだと分かった。
なお、この 1.6×10<sup>-19</sup> Cのことを'''電気素量'''という。
現在では、電気素量は <math>e = 1.602 \, 176 \, 634 \times 10^{-19} \, \mathrm C</math> と定義されている。
この値と先ほどの比電荷の値から、電子の質量は<math>m \fallingdotseq 9.1093837015 \times 10^{-30} </math> kgと求まる。
{{コラム|ミリカン以前の電気素量の測定|
ラボアジエなどの電気分解の実験により、金属の電気分解の実験の時に発生する気体が帯電していることは古くから知られていた。実験物理学者タウンゼントは、発生した気体のモル数と静電誘導などによって発生した電荷の合計を測定することにより、電子1個あたりの電荷(電気素量)を概算した。
現代の電子の電荷と桁が同じくらいの精度で、タウンゼントは電気素量の測定値を得た。
}}
=== 光の粒子性 ===
==== 光電効果 ====
[[File:Photoelectric effect diagram no label.svg|thumb|300px|電子の運動エネルギーの最大値と、光の振動数との関係]]
負の電荷に帯電させてある金属板に、紫外線を当てると、電子が飛び出してくることがある。また、放電実験用の負極に電子を当てると、電子が飛び出してくることがある。この現象を、'''光電効果'''という。1887年、ヘルツによって、光電効果が発見された。レーナルトによって、光電効果の特徴が明らかになった。
当てる光の振動数が、一定の高さ以上だと、光電効果が起きる。この振動数を'''限界振動数'''といい、これより低周波数の光では、光電効果が起こらない。また、限界振動数のときの波長を、'''限界波長'''という。
限界振動数は物質によって異なる。亜鉛板では紫外線でないと光電効果が起きないが、セシウムでは可視光でも光電効果が起きる。
光電効果とは、物質中(主に金属)の電子が光からエネルギーを受け取って外部に飛び出す現象のことである。
この飛び出した電子を'''光電子'''という。
光電効果には次のような特徴的な性質がある。
:* 光の振動数がある振動数(限界振動数)以上でないと起こらない。
:* 光電子の運動エネルギーの最大値は当てた光の振動数のみに依存し、光の強さには依存しない。
:* 単位時間あたりに飛び出す光電子数は、光の強さに比例する。
これらの性質のうち、1番目と2番目の性質は(それまでの)古典物理学では説明できない。
つまり、光を電磁波という波動の性質だけで捉えていては辻褄が合わないのである。
仮に電磁波の電場によって金属から電子が放出すると考えた場合、光の強さが大きくなるにつれ光波の振幅が大きくなるので、電場も大きくなるはずである。
しかし、実験結果によれば光電子の運動エネルギーは光の強さには依存しない。
よって光電効果は古典物理学では説明できない。
===== アインシュタインの 光量子仮説 =====
上述の矛盾(古典的な電磁波理論では、光電効果を説明できないこと)を解決するために、次のような'''光量子仮説'''がアインシュタインによって提唱された。
* 光は、光子の流れである。光子を、光量子ともいう。
* 光子1個の光エネルギー <math>E</math>は、光の振動数 <math>\nu </math> に比例する。
*:<math>E=h\nu</math>
比例定数 <math>h = 6.62607015 \times 10 ^{-34} \, \mathrm{J \cdot s}</math>を'''プランク定数'''という。
光電効果を起こすのに必要な最小エネルギーを'''仕事関数'''という。仕事関数の値は金属の種類によって異なる。
仕事関数を <math>W</math>とすると、光子の得る運動エネルギーの最大値 <math>K_0</math>について、次式が得られる。
:<math> K _0 = h \nu - W </math> (1.1)
この式より、光電効果が起こる条件は <math>h \nu \geqq W</math> となる。これは <math>k_0 \geqq 0</math>に相当する。
これより、限界振動数 <math>\nu_0</math>について、<math>h\nu_0=W</math>が成り立つ。
この光量子仮説により、光電効果の1番目と2番目の性質を容易に矛盾なく説明できるようになった。波動は粒子のように振舞うのである。
なお、光電効果の3番目の性質から、ある場所の光の強さはその場所の単位面積と単位時間及び飛来する光子の数に比例することが分かる。
*エネルギーの単位
電子や光子一個のエネルギーは非常に小さいので、ジュール(J)をそのまま用いると使い勝手が悪い。そのため、新たにエネルギーの単位を設定する。
真空中において電子一個を1Vで加速するときに電子が得る運動エネルギーを'''電子ボルト'''('''エレクトロンボルト''')という(記号:eV)。<math>1 \mathrm{eV} = 1.60 \times 10^{-19} \mathrm{J}</math>である。
例)
*銅の仕事関数は4.65eV
{{コラム|光波長の測定|
そもそも、光波長はどうやって測定されたのだろうか。
現在では、例えば原子の発光スペクトルの波長測定なら、回折格子をプリズムとして使うことによって、波長ごとに分け、波長が測定されている。
可視光の波長の測定は回折格子によって測定するわけだが、ではその回折格子の細かい数百nm〜数千nm程度の間隔の格子溝をどうやって作るのか、という問題に行き着く。
歴史的には、下記のように、可視光の波長が測定されていった。
まず、1805年ごろの「ヤングの実験」で有名なヤングらの研究により、可視光の波長は、おおむね 100 nm(10<sup>-7</sup>m) 〜 1000 nm 程度であることは、この頃から既に予想されていた。
その後、ドイツのレンズの研磨工だったフラウンホーファーが優れた回折格子を開発し、可視光の波長を精密に測定する事に成功した。フラウンホーファーは回折格子を作るために細い針金を用いた加工装置を製作し、その加工機で製作された回折格子を用いて光波長の測定を始めたのが研究の起こりである。1821年、フラウンホーファーは格子を130 本/cmも並べた回折格子を製作した。<ref>『現代総合科学教育大系 SOPHIA21 第7巻 運動とエネルギー』、講談社、発行:昭和59年4月21日第一刷発行発行</ref>
また、1870年にはアメリカのラザフォードがスペキュラムという光の反射性の高い合金を用いた反射型の回折格子を製作し、これによって700 本/mmもの格子のある回折格子を製作した。
更にこの頃、送り螺子の潤滑のために水銀を使う水銀浮遊法が、研究開発で行われた。
後の時代、より高精度な波長測定が物理学者マイケルソンによって行われた。
干渉計を用いて反射鏡を精密螺子で細かく動かすことにより高精度な波長測定器を作り、この測定器によってカドミウムの赤色スペクトル線を測定した。測定波長は643.84696 nmだった。マイケルソンの測定方法では、赤色スペクトル光の波長を当時のメートル原器と比較することで測定した。<ref>川上親考ほか『新図詳エリア教科辞典 物理』、学研、発行:1994年3月10日新改訂版第一刷、P.244 および P.233</ref>
このマイケルソンの制作した干渉計にも、水銀浮遊法の技術が取り入れられている<ref>クリス・エヴァンス 著、橋本洋・上野滋 共訳『精密の歴史』、大河出版、2001年11月28日 再版、185ページ</ref>。
更に螺子の技術革新で、弾力性のある材質で螺子を作ることによって誤差を均し高精度とする技術マートン・ナットが、イギリスの物理学者トーマス・ラルフ・マートンなどによって開発された。
なお、現代でも、研究用として干渉計を用いた波長測定器が用いられている。メートル原器は、マイケルソン当時は長さの基準だったが、1983年以降は標準には用いられていない。現在のメートルの定義は以下の通り。
;メートルの定義
:真空中の光速 <math>c</math> を単位 m/s で表したときに、その数値を {{val|299792458}} と定めることによって定義される。
:ここで、秒はセシウム周波数 <math>\Delta \nu_{\mathrm{Cs}}</math> によって定義される。
}}
==== 光電効果の測定 ====
[[File:Cellule photoelectriqie.JPG|thumb|300px|光電効果の実験]]
[[File:Caracteristique courant tension (frequence fixe).JPG|thumb|300px|電位と光電流の関係]]
右の実験図のように、光電管の陰極に限界振動数ν<sub>0</sub>よりも振動数が大きい光を当てると、光電子が飛び出し陽極に流れ込む。このときの電流を'''光電流'''という。
光電流の測定結果は右のグラフのようになる。
陽極の電位が正であれば飛び出した光電子は全て陽極に流れこむため、電圧を高くしても光電流の大きさは一定である。
陽極の電位が0であっても、光電子は運動エネルギー<math>K_0</math>を持って飛び出すので、陽極に到達することができる。
陽極の電位を負にしてさらに下げると、光電子は電場から受けるクーロン力によって運動を妨げられ、ある電位 <math>-V_0</math>で陽極に到達する前に運動エネルギーが0になってしまう。このときの電圧 <math>V_0</math>を'''阻止電圧'''といい、<math>K_0 = eV_0</math>が成り立つ。
つまり、阻止電圧を測定すれば光電子の持つ運動エネルギー <math>K_0</math>を求めることができる。
このとき、光の振動数 <math>\nu</math>または光の波長 <math>\lambda</math>が判っていれば、<math>K_0 = h \nu - W = \frac{hc}{\lambda} - W</math>より金属の仕事関数 <math>W</math>も求めることができる。
ただし、陽極と陰極で金属の種類が異なるとき、これらの仕事関数の違いに伴い'''接触電位差'''が表れるため、それも考慮しなければならない。
なお、光電効果によってプランク定数を測定することもできる。
=== X線 ===
==== X線の発見 ====
[[File:Rotating anode x-ray tube (labeled).jpg|thumb|250px|X線管<br>陰極から出た陰極線を陽極に照射すると、X線が出る。]]
[[File:Tube RX a fenetre laterale.png|thumb|X線管の原理]]
レントゲンは、1895年、放電管を用いて陰極線の実験をしていたとき、放電管の近くに置いてあった写真乾板が感光している事に気付いた。
レントゲンは、陰極線が硝子に当たったとき、何か未知のものが放射されてると考え、これをX線と名づけた。
軈て、種々の実験によってX線は性質が明らかになった。
*磁場や電場で曲がらない。(この事から、X線は荷電粒子ではない事が分かる)
*X線を照射された物質はイオンに電離する。('''電離作用''')
*可視光線を通さない物質でも、X線なら透過できる場合がある。(医療診断に応用されている。)
*蛍光物質を光らせる。
などの性質がある。
==== X線の発生とスペクトル ====
上のX線菅の図において、電流による発熱で陰極から放出された'''熱電子'''は高い電圧によって加速され、'''ターゲット'''(陽極)に衝突する。このとき、一個の電子の持つエネルギーの一部または全部がX線光子のエネルギーとなり、残りは陽極熱に変換される。
発生するX線のスペクトルは、ある最短の波長から始まってそれより長い波長を連続的に含む。これを'''連続X線'''という。
電子のエネルギーが全てX線光子のエネルギーに変わるとき、<math>E = h\nu = \frac{hc}{\lambda}</math>よりX線の波長は最短となる。このときのX線の振動数をν<sub>0</sub>、波長をλ<sub>0</sub>、加速電圧をVとすると、電子の初速度が0のとき、<math>eV_0 = h\nu_0 = \frac{hc}{\lambda_0}</math>が成り立つ。すなわち、最短波長は<math>\lambda_0 = \frac{hc}{eV}</math>と求まる。
[[File:TubeSpectrum.jpg|thumb|240px|特性X線(K線)]]
右の図のように、連続X線の他に特定のエネルギーを持つX線が強く放射される場合があり、これを'''固有X線'''('''特性X線''')という。固有X線の波長はターゲットの材質で決まる。
{{-}}
==== X線の波動性 ====
1912年、物理学者ラウエは、X線を単結晶に当てると、写真フィルムに図のような斑点の模様にあることを発見した。これを'''ラウエ斑点'''といい、結晶中の原子が回折格子の役割をしたことで発生した干渉現象である。
[[File:Bragg diffraction 2.svg|thumb|400px|ブラッグの条件]]
1912年、ブラッグは、反射が強めあう条件式を発見した。
この条件式
:<math>2d\sin\theta = n\lambda</math>(nは非負整数)
を'''ブラッグの条件'''という。
上式のdは格子面の間隔の幅である。
これは結晶面での回折や屈折を無視した場合の式であり、実際にはもう少し複雑な式となる。
<!-- 2023年奈良女子大学後期日程などに電子波の屈折を考慮したブラッグ反射の問題が出題。今後、新傾向として注意すべし @2025/08/13 -->
{{-}}
==== X線の粒子性 ====
* コンプトン効果
X線を物質に当てて散乱された後のX線を調べると、その中に元のX線の波長よりも長いものが含まれることがわかった。このように散乱X線の波長が伸びる現象は物理学者コンプトンによって解明されたので、'''コンプトン効果'''('''コンプトン散乱''')という。
[[File:Compton ex1.jpg||400px|thumb|right|コンプトンによる実験略図。なお、図中の「単結晶」は波長の測定用であり <ref>原島鮮『初等量子力学』(裳華房、2014年第40版、初版は1972年)</ref> 、「単結晶」の材質は方解石の結晶であり、散乱波長はブラッグ反射などを活用して測定する。(コンプトン本人の論文“The Spectrum of Scattered X-Rays”(May 9, 1923).に、方解石(calcite)を使っていることと、ブラッグ反射(Bragg ?)させている事が書かれている。)]]
この現象は、X線を波と考えたのでは説明がつかない。(仮に波と考えた場合、散乱では波長が変化しないので散乱光の波長は入射X線と同じになるはず。)
さて、波動の理論でコンプトン効果を説明できないなら、粒子の理論で説明をすれば良いだろう。
この当時、アインシュタインは光量子仮説に基づき、光子はエネルギー<math>E=h\nu</math>だけでなく、次の式で表される運動量 <math>p</math>も持つことを発見している。
<math>p=\frac{h\nu}{c}(=\frac{h\nu}{\nu \lambda}=\frac{h}{\lambda})</math>
物理学者コンプトンは、この発見を利用し、波長λのX線を、運動量<math>\frac{h}{\lambda}</math>
とエネルギー<math>\frac{hc}{\lambda}</math>を持つ粒子(光子)の流れと考え、
X線の散乱を、この光子が物質中のある電子と完全弾性衝突をした結果と考えた。
:コンプトンはこの考えに基づき、光子と電子の間に運動量保存則及びエネルギー保存則が成り立つと仮定して計算して、実験結果と良く合う結果が得られることを発見した。
[[File:Compton effect illust.svg|thumb|400px|コンプトン効果<br>この図を見ると、あたかも真空中を漂う電子に電磁波を照射したように見えるが、そうではない。実際にコンプトンが行った実験は、石墨の炭素などの物質にX線を照射する実験である。図中の電子は、炭素などの分子が提供する電子である。<!-- コンプトン本人の論文に、このような感じの図が書かれており、それでこのような図が普及したものと思われる。-->]]
解法は、下記のとおり。
:エネルギー保存の式を立てる。
:運動量の保存の式を立てる。
----
エネルギー保存の式
:<math>\frac{hc}{\lambda} = \frac{hc}{\lambda '} + \frac{1}{2}mv^2 \qquad \qquad</math> (1.2a)
運動量保存の式
:x軸: <math> \frac{h}{\lambda} =\frac{h}{\lambda '} \cos \theta + mv \cos \phi \quad</math> (1.2b)
:y軸: <math> 0 =\frac{h}{\lambda '} \sin \theta - mv \sin \phi \qquad</math>(1.2c)
----
この3つの式を連立し、<math>v</math>と<math>\phi</math>を消去して<math>\lambda,\lambda ',\theta</math>の関係式を求めればよい。
ⅰ)まず、式(1.2b),(1.2c)から<math>\phi</math>を消去する。<br>
式(1.2b)から
:<math>(mv \cos \phi)^2 = (\frac{h}{\lambda}-\frac{h}{\lambda '} \cos \theta)^2
</math>
式(1.2c)から
:<math>(mv \sin \phi)^2 = (-\frac{h}{\lambda '} \sin \theta)^2</math>
この両式を加えると
:<math>m^2 v^2 = (\frac{h}{\lambda}-\frac{h}{\lambda '} \cos \theta)^2+(-\frac{h}{\lambda '} \sin \theta)^2+\frac{h^2}{\lambda '^2}</math>
この右辺を整頓すると、
:<math>m^2 v^2 =\frac{h^2}{\lambda^2}-2\frac{h^2}{\lambda \lambda '}\cos \theta
+\frac{h^2}{\lambda '^2}\quad</math> (1.2d)
を得る。
ⅱ)式(1.2d)を式(1.2e)に代入してvを消去する<br>
式(1.2a)の右辺の第2項を変形して式(1.2d)を代入する。
:<math>\frac{1}{2}mv^2 =\frac{1}{2m}m^2v^2 = \frac{1}{2m}\bigl(\frac{h^2}{\lambda^2}-2\frac{h^2}{\lambda \lambda '}\cos \theta\bigr)+\frac{h^2}{\lambda '^2}</math>
これを式(1.2a)の右辺に代入すると
:<math>\frac{hc}{\lambda} = \frac{hc}{\lambda '} + \frac{1}{2m}\Bigl(\frac{h^2}{\lambda^2}-2\frac{h^2}{\lambda \lambda '}\cos \theta +\frac{h^2}{\lambda '^2}\Bigr)</math>
両辺を<math>hc</math>で割ると
:<math>\frac{1}{\lambda} = \frac{1}{\lambda '} + \frac{h}{2mc}\Bigl(\frac{1}{\lambda^2}-2\frac{1}{\lambda \lambda '}\cos \theta +\frac{1}{\lambda '^2}\Bigr)</math> (1.2e)
を得る。
この式の右辺の第2項の括弧内を次のように変形する。
:<math>\frac{1}{\lambda^2}-2\frac{1}{\lambda \lambda '}\cos \theta +\frac{1}{\lambda '^2}=\bigl(\frac{1}{\lambda}-\frac{1}{\lambda'}\bigr)^2+\frac{2}{\lambda \lambda'}(1-\cos \theta)</math>
この式を式(1.2e)の右辺第2項に代入すると
:<math>\frac{1}{\lambda} = \frac{1}{\lambda'} +
\frac{h}{2mc} \left\{
\bigl(\frac{1}{\lambda}-\frac{1}{\lambda'}\bigr)^2+\frac{2}{\lambda \lambda'}(1-\cos \theta)
\right\}</math>
この式の右辺の第1項を移行し、式を変形すると
:<math>\frac{\lambda'-\lambda}{\lambda\lambda '}=
\frac{h}{2mc}\left\{
\bigl(\frac{\lambda'-\lambda}{\lambda \lambda'}\bigr)^2+\frac{2}{\lambda \lambda'}(1-\cos \theta)
\right\}</math>
両辺に<math>\lambda \lambda'</math>を掛けると
:<math>\lambda'-\lambda=
\frac{h}{2mc}\left\{
\frac{(\lambda'-\lambda)^2}{\lambda \lambda'}+2(1-\cos \theta)
\right\}</math> (1.2f)
X線の散乱では、<math>\lambda'\fallingdotseq \lambda</math>なので
:<math>\frac{(\lambda'-\lambda)^2}{\lambda \lambda'}</math>は、波長に比べて非常に小さい値になり無視できる。
故に式(1.2f)から
:<math>\lambda'-\lambda \fallingdotseq
\frac{h}{mc}
(1-\cos \theta)
\qquad</math> (1.2g)
これで、所望の式が導出された。
----
=== 粒子の波動性 ===
==== 物質波 ====
フランスのド・ブロイは、波と考えられてた光が粒子の性質を持つならば、電子も粒子としての性質だけでなく波動としての性質を持つだろうと考えた。
そして、電子だけでなく、一般の粒子に対しても、その考えを適用し、次の公式を提唱した。
:運動量 <math>p</math>の粒子は波動性をもち、その波長は次式で与えられる。
:<math>\lambda = \frac{h}{p} </math>
これはド・ブロイによる仮説であったが、現在では正しいと認められている。
この波は、'''物質波'''と呼ばれる。'''ド・ブロイ波'''ともいう。
すなわち、光子や電子に限らず、あらゆる物質は粒子性と波動性を併せ持つといえる。
この物質波という説によると、電子線を物質に当てれば回折などの現象が起きるはずである。
1927年〜1928年にかけて、デビッソンとガーマーは、ニッケルなどの物質に電子線を当てる実験を行い、X線回折と同様に電子線でも回折が起きることを実証した。日本でも1928年に菊池正士が雲母片に電子線を当てる実験により回折が起きることを確認した。
電子線の波長は、高電圧をかけて電子を加速して速度を高めれば、物質波の波長はかなり小さくできるので、可視光の波長よりも小さくなる。
そのため、可視光では観測できなかった結晶構造が、電子波やX線などで観測できるようになった。生物学でウイルスが電子顕微鏡で観測できるようになったのも、電子の物質波が可視光よりも大幅に小さいからである。
=== 粒子と波動の二重性 ===
*電子ビームによる波動性の干渉実験
[[Image:Egun.jpg|thumb|250px|right|ブラウン管の電子銃]]
[[ファイル:double-slit.svg|thumb|right|350px|電子の二重スリットの干渉実験]]
[[ファイル:Doubleslitexperiment_results_Tanamura_1.gif|thumb|left|250px|二重スリット実験の結果]]
電子銃は電子を放出する装置である。
電子銃をもちいて、1個ずつ電子を当てる実験を、二重スリットを使って実験すると、図のように、波動のように、電子の多く当たった場所と電子の少なく当たる場所との縞模様ができる。
{{-}}
このように、電子にも粒子性と波動性があり、電子は粒子でありつつ、二重スリットに向かって電子を撃ち込むと干渉を起こすという波動性も持っている。
上述のような、さまざまな実験の結果から、すべての物質には、原子程度の大きさでは、波動性と粒子性の両方の性質をもつと考えられている。
このことを'''粒子と波動の二重性'''という。
{{コラム|電子顕微鏡|
光学顕微鏡(レンズを用いる顕微鏡)では、回折が起こることによって光の波長よりも小さな物体を見ることが非常に困難となる。'''分解能'''(2点を識別できる限界の距離)は10<sup>-7</sup>m(100nm)程度である。
より高い分解能を得るため、光よりも波長が短い電子線を用いる'''電子顕微鏡'''が発明された。電子顕微鏡では、加速電圧を高くすることで高い分解能を得られる。ただし、電磁波によるレンズ作用を用いることによる'''収差'''(像の歪み)などの障碍から、現在の最高分解能は10<sup>-10</sup>m(0.1nm)ほどに留まっている。
この分解能では、ウイルスどころか金属・酸素などの原子すらも観察することが可能であるが、中性子・陽子・電子などは小さすぎて観察できない。
}}
副読本:朝永振一郎『光子の裁判』1949年(朝永振一郎は1965年にノーベル物理学賞を受賞した物理学者だが、[[高等学校文学国語/化物の進化|寺田寅彦]]と同様に一般向けの書籍を多数執筆する文豪でもあった。この作品では、光子になぞらえた「波乃光子」という被告の裁判を舞台に、粒子と波動の二重性の不思議さを繙いている。)
*不確定性関係
[[File:Bundesarchiv Bild183-R57262, Werner Heisenberg.jpg|thumb|物理学者ハイゼンベルグ <br>不確定性原理の主要な提唱者である。]]
電子などの量子の位置や運動量は確定してる訳ではなく、物理量を測定するとその状態に対応する確率分布に従った値が得られれる。位置と運動量について標準偏差を計算する事ができるが、位置の標準偏差と運動量について標準偏差の積は必ず <math> \frac{h}{4\pi} </math> 以上となる。このことを'''不確定性関係'''という。
{{-}}
== 原子・原子核・素粒子 ==
===原子===
陰極線に関連する実験から、全ての原子に負の電荷を持つ電子が含まれると考えられたが、原子は電気的に中性なので正の電荷を帯びた部分が存在するはずである。
そこで、原子の構造について様々な説が登場した。
比電荷の測定を行ったトムソンは、一様に正に帯電した球の中を電子が運動しているというプラムプディングモデル(ブドウパンモデル)を提唱した。長岡半太郎は、フランスのジャン・ペランが提唱した、正電荷を持つ粒子の周りを電子が公転している土星型モデルを定量化して大幅に補強した。しかし、実際に採択されたのは以下のようなモデルだった。
[[File:Geiger-Marsden experiment expectation and result (Japanese).svg|right|400px|thumb|]]
ドイツのガイガーとニュージーランドのマースデンは、α粒子を薄い金箔に当てる実験を行い、α粒子の散乱の様子を調べた。(なお、α粒子の正体はヘリウムの原子核。)その結果、ほとんどのα粒子は金箔を素通りするが、金箔中の一部の場所の近くを通ったα粒子だけが大幅に散乱する現象を発見した。
α粒子は電子の7000倍以上の質量を持つことから、電子の影響で大きく曲げられたとは考えにくい。そこで、原子内の狭い部分に集中した正電荷がα粒子に強い斥力を及ぼし、その部分が原子の質量の大部分を占めていると考えて計算を行い、実験結果をうまく説明することに成功した。
原子(10<sup>-10</sup>)内の正電荷が集中した10<sup>-15</sup>~10<sup>-14</sup>程度の重い部分は'''原子核'''と名付けられた。
原子は、中心に原子核があり、そのまわりを電子が運動するというラザフォードモデルとよばれるモデルによって説明される。ラザフォードモデルは、土星型モデルを発展させたものとも言える。
*ラザフォードモデル
原子は、全体としては電気的に中性であり、負の電荷を有する'''電子'''を'''電子殻'''に持つ。
ここで、ミリカンの実験 による結果などから、電子の質量は水素イオンの質量の約1/1840程度しかないことが分かっている。
すなわち、原子は電子と陽イオンとが含まれるが、質量の大部分は陽イオンがもつことが分かる。
原子核の大きさは原子全体の1/10000程度であるため、'''原子の大部分は真空'''である。
原子核は、正の電荷をもつZ個の'''陽子'''と、電気的に中性な(A−Z)個の'''中性子'''からなる。
陽子と中性子の個数の合計を'''質量数'''という。
陽子と中性子の質量はほぼ等しいため、原子核の質量は、質量数Aにほぼ比例する。
==== 統一原子質量単位 ====
原子の質量は極めて小さいため、キログラム(kg)をそのまま用いるのは不便である。そこで、(同位体を除いて)118種類ある原子のうちどれかを基準として考えたい。ここで、他の様々な原子と化合できるため質量比較がしやすいこと、同位体<sup>13</sup>Cなどの存在比が極めて小さいことなどから、炭素原子を基準にするのが適当である。
<sup>12</sup>C原子一個の質量を12と定義する単位系を'''統一原子質量単位'''という。単位はDa('''ダルトン''')であるが、廃止されたamu('''アトミックマスユニット''')を用いる人もいる。
[[高等学校化学基礎/物質量#原子量|化学基礎で原子量を習った]]が、原子質量単位は質量を表す単位なのに対し、原子量は質量そのものでなく質量比を表しているので単位はなく無次元である。混同しないように注意しよう。
==== 水素原子のスペクトル ====
高温の物体から発光される光には、どの(可視光の)色の波長(周波数)もあり、このような連続的な波長の光を連続スペクトルという。
いっぽう、ナトリウムや水素などの、特定の物質に電圧がかけられ放電したときに発光する波長は、特定の数本の波長しか含まれておらず、このようなスペクトルを輝線という。
パルマーは、水素原子の数本ある輝線の波長が、次の公式で表現できることに気づいた。
:<math>\lambda = 3.65 \times 10^{-7} \mathrm{m} \times \left( {n^2 \over n^2 - 4} \right).\quad(n=3,\ 4,\ 5,\ 6,\cdots\cdots)</math> (2.1)
上式中のmはメートル単位という意味。
その後、水素以外の原子や、可視光以外の領域についても、物理学者たちによって調べられ、次の公式へと、物理学者リュードベリによって、まとめられた。
:<math>\frac{1}{\lambda} =R \left( \frac{1}{m^2} -\frac{1}{n^2} \right).\ \left(\begin{array}{lcl}m =1,\ 2,\ 3,\cdots\cdots, \\ n = m+1,\ m+2,\ m+3,\cdots\cdots \end{array}\right)</math> (2.2)
上式のRは'''リュードベリ定数'''といい、<math>R=1.097373156815712 \times 10^7 \, \mathrm{/m}</math>である。
この公式の<math>m=1, 2, 3</math>をそれぞれ'''ライマン/パルマー/パッシェン 系列'''という。
==== 量子論と原子の構造 ====
[[File:Stationary wave Quantum rule in atom.svg|thumb|300px|原子内の定常波]]
ラザフォードの原子模型に従えば、電子は、まるで惑星の公転のように原子核を中心とする円軌道の上を一定の速度で運動する。
円運動する質点は加速度をもつので、このモデルの電子は加速度運動を続けることになる。
ところが古典電磁気学で、加速度運動を行う電荷は電磁波を放出してエネルギーを失うという法則が既に発見されていた。
この法則によれば、原子核の周りを回る電子は電磁波を放出し続け、エネルギーを絶えず減らしていく。それにつれ電子は原子核に向けて落下していくため、原子核との距離を小さくしながら原子核の周りを回転し、やがて原子核に衝突してしまう。円軌道の上を安定的に運動することは不可能なのである。
デンマークのボーアはラザフォードの原子模型の深刻な矛盾を克服し、さらに水素原子の放出する線スペクトルについても説明できる原子模型を作るため、
プランクの提唱したエネルギー量子化の考えとアインシュタインの光量子論を取り入れた大胆な仮説を立てた(1913年)。
*仮説1:量子条件
原子核を中心とする半径 <math>r</math>の円軌道を速さ <math>v</math>で回転する電子の軌道角運動量<math>rp=mrv</math>は<math>\frac{h}{2\pi}</math>の正整数倍しかとりえない,すなわち
:<math>mrv=n\frac{h}{2\pi} \quad (n=1,\ 2,\ 3,\cdots\cdots)</math> (2.3)
を満たさねばならない(角運動量の量子化)。この状態を'''定常状態'''、この条件を'''量子条件'''という。
:このボーアの式の正整数nを'''量子数'''という。
後年(1924年)、ド・ブロイは、物質粒子は波動性を持ち、その波(物質波)は、波長
:<math>\lambda=\frac{h}{p}=\frac{h}{mv}</math>
をもつと提唱した。また,(2.3)を変形すると
:<math>2\pi r=n\frac{h}{mv}=n\lambda</math>.
これらは電子の軌道一周の長さが電子の物質波の波長の正整数倍のとき,電子波は定常波になることを示している。
:これは、円軌道上に定常波ができるための条件と同じである。
*仮説2:振動数条件
電子はある決まった飛び飛びのエネルギーしか持たない。このとびとびのエネルギー値を'''エネルギー準位'''という。
:電子がエネルギー順位を<math>E'</math>から<math>E(<E')</math>に遷移する(エネルギーを失う)ときには、<math>E'-E=h\nu</math>できまる振動数<math>\nu</math>の一個の光子を放出し、
:逆にエネルギー準位 Eの電子が外部からエネルギー<math>h\nu = E'-E</math>を得ると、エネルギー準位E'に遷移する。
==== エネルギー準位 ====
[[File:Circular-motion-electron-in-atom jp.svg|thumb|400px|水素原子内での電子の円運動]]
水素原子において、電子軌道上にある電子のエネルギーを求めたいが、そのためには水素原子の半径を求める必要がある。
量子数<math>n</math>のとき水素の電子が原子核<math>H^+</math>を中心とする半径<math>r_n</math>の円軌道上を一定の速度<math>v_n</math>で運動しているとすれば、円運動方程式は
:<math> m \frac{v^2_n}{r_n} = k_0 \frac {e^2}{r^2} </math>
で表される。
一方、電子が定常波の条件を満たす必要があるので、前項の式(1)から、
:<math> v_n = \frac {nh}{2 \pi m r } \qquad \qquad (2)</math>
である。
この<math>v</math>を先ほどの円運動の式に代入して整頓すれば
:<math> r_n = \frac {h^2}{4 \pi ^2 k_0 me^2} n^2\qquad \qquad (3)</math>(<math>n=1, 2, 3\cdots</math>)
になる。こうして、水素原子の電子の軌道半径が求まる。
<math>n=1</math>のときの半径 <math>r_1</math>を'''ボーア半径'''という。
原子の世界でも、運動エネルギーKと位置エネルギーUの和が、エネルギーである。
位置エネルギーUは、この水素の電子の場合なら、静電気エネルギーを求めれば充分であり、電位の式によって求められて、
:<math> U = - k_0 \frac {e^2}{r}</math>
となる。
運動エネルギーKは、<math> K = \frac{1}{2}mv^2</math>なので
:<math> E = K+U = \frac{1}{2}mv{}^2 - k_0 \frac {e^2}{r}</math>
上式の右辺第一項に、
:円運動方程式<math> m \frac{v^2}{r} = k_0 \frac {e^2}{r^2} </math>の両辺にrを掛けた
<math> m v^2 = k_0 \frac {e^2}{r} </math>を代入すれば、
:<math>E(= E_n )= K+U = \frac{1}{2} k_0 \frac {e^2}{r}- k_0 \frac {e^2}{r} = - \frac{k_0e^2}{2r} </math>
となる。
さらに、これに電子の軌道半径<math>r=r_n</math>として式(3)を代入すれば、
:<math>E_n = -\frac{2\pi ^2 k_0{}^2 me^4} {h^2} \frac{1}{n^2} \quad (n=1,2,3,,,) \qquad \qquad (4)</math>
となる。これが水素原子のエネルギー準位である。
エネルギー準位の公式をよく見ると、エネルギーが連続的ではなく離散的な負の値をとることが判る。
<math>n=1</math>のとき、エネルギーが最低なので安定である。よって、電子は通常、<math>n=1</math>の状態であり、なろうとする。これを'''基底状態'''、<math>n=2, 3, \cdots</math>のときを'''{{ruby|励起|れいき}}状態'''という。
{{コラム|[[高校化学 無機化学まとめ#炎色反応|炎色反応]]の原理|
高温の炎中にある種の金属粉末や金属化合物を置くと、試料が熱エネルギーによって解離し原子化される。それぞれの原子は熱エネルギーによって電子が励起され、外側に存在する高エネルギーの電子軌道へと移動する。励起された電子が安定な基底状態に戻ろうとする際に、余分なエネルギーを電磁波として放出する。電磁波の周波数が、ちょうど可視光線の範囲に入る場合が有る。このとき、炎色反応として肉眼で観察できる。
なお、原子の電子軌道のエネルギーは連続した値ではなく飛び飛びの値であるため、励起された電子が基底状態に戻る際に放出されるエネルギーも連続した値ではない。このため、炎色反応として放出された光は連続スペクトルではなく輝線スペクトルを示す。また、元素によっても電子軌道のエネルギーはある程度決まるため、元素によって特徴的な輝線スペクトルを示す。これが、炎色反応を示す元素の種類により、炎色反応によって放出される光の色が決まる理由である。
}}
なお、
:<math> -\frac{2\pi ^2 k_0{}^2 me^4} {h^2}</math>に諸定数の値を入れて計算すると
:ほぼ<math> - \frac{13.6}{n^2} \ \ \mathrm{eV}</math>となるので、
:水素原子のエネルギー準位は
:<math>E_n \fallingdotseq -\frac{13.6}{n^2} \, \mathrm{eV}</math>と書ける。
:<math>E_1 \fallingdotseq 13.6 \, \mathrm{eV}</math>は水素のイオン化エネルギーの値に等しく、実験値によく一致することが判った。
;補:水素原子のスペクトルの経験式の理論的導出
水素原子の発する光のスペクトルの実測値を表すリュードベリの経験式については既に説明した。
ボーアの水素原子モデルに基づいて得られたエネルギー準位と振動数条件を用いれば、この式が以下のように理論的に導出できる。
任意の正整数<math>m, n \; (n>m)</math>を考える。
振動数条件により電子がエネルギー準位<math>E_n</math>から、低いエネルギー準位<math>E_m</math>に遷移するときに1個放出する光子の振動数は<math>\nu=\frac{E_n-E_m}{h}</math>である。
この光子の波長λは
<math>\frac{1}{\lambda} = \frac{E_n-E_m}{ch}</math>
で与えられるので、右辺のエネルギー準位に式(4)を代入すると
:<math>\frac{1}{\lambda} = \frac{2\pi ^2 k_0{}^2 me^4} {ch^3}(\frac{1}{m^2}-\frac{1}{n^2}) \qquad \qquad (5)</math>
が得られる。
<math>\mathbf{R} := \frac{2\pi ^2 k_0{}^2 me^4} {ch^3}</math>
でリュードベリ定数を定義すると、式(5)は
:<math>\frac{1}{\lambda} = {\bf R}(\frac{1}{m^2}-\frac{1}{n^2}) \qquad \qquad (5')</math>
Rの定義式中の諸定数に値をいれて計算すると
:<math>{\bf R} = 1.097373156815712\times 10^7 \rm{ /m} \qquad \qquad \qquad (6)</math>
驚くべきことに、リュードベリの経験式が、見事に導出できたのである。
これは、ボーアの仮説の妥当性を示すものと言えよう。
なお、実際の特性スペクトルの波長は、原子内部の電子の影響により若干摺れる。そういった内部電子の補正を考慮した、より精度の高い式として「[[w:モーズリーの公式]]」というのが知られている。歴史的には先にモーズリーの式が発見され、後からモーズリーとは別に独立に研究されていた上述のようなボーアやラザフォードの理論を用いると、モーズリーの公式もうまく説明できるという事が物理学者コッセルによって発見された<ref>山本義隆『原子・原子核・原子力』、岩波書店、2015年3月24日 第1刷、140ページ</ref>。モーズリーの公式については、大学の量子化学などの教科書に記載があるだろう。
;フランク・ヘルツの実験
[[File:FranckHertzHgTube.jpg|thumb|right|upright=0.5|実験装置。Cは陰極でヒータで加熱し熱電子を放出させる。Gはグリッド。Aは陽極。]]
ドイツのフランクとヘルツは、気体放電での電子の働きを調べるため、水銀蒸気を封入した図のような装置で実験を行った。
フィラメントCから飛び出す電子を、Cと網目状のグリッドGとの間に加える電圧Vで加速する。Gの後ろに電極Aを置き、Aに到達した電子の数を電流計で調べる。GA間にはCG間と逆向きに僅かな電圧(0.5V程度)を加え、電子がGに到達しても運動エネルギーが0に近ければAに到達できなくした。CG間の電圧を上げながらAに到達する電子の数を調べ、[グラフ]のような実験結果を得た。
[[File:Franck-Hertz en.svg|thumb|center|縦軸が電流で横軸が電圧。]]
電子の数は電圧の増加とともに増すが、4.5~5V付近をピークに減少し、再び増加する。その後、約4.9Vの間隔で同様の増減を繰り返す。また、4.9eVに相当する波長のスペクトルも発生していた。
ボーアは、この実験結果を「4.9eVは水銀原子の基底状態と励起状態のエネルギーの差であり、電子の運動エネルギーが加速電圧で4.9eVに達した時に水銀原子が励起して電子が運動エネルギーを失う」と説明した。
その後、FG間から波長2.537×10<sup>-7</sup>(4.9eVのエネルギーに相当)の紫外線が発生していることが確認された。これは、励起された水銀原子が基底状態に戻る時にそのエネルギー準位の差に相当する波長の光子を放出して生じたものと考えられ、原子には離散的な値のエネルギー準位が存在するというボーアの仮説が実験で裏付けられた。
なお、固有X線の発生原理もエネルギー準位で説明することができる。
=== 原子核 ===
==== 原子核の構造 ====
原子核は、陽子と中性子からできている。二つを総称して'''核子'''という。
陽子は正電荷をもち、中性子は電荷をもたない。
原子核の陽子同士はクーロン力によって反撥し合うが、陽子と中性子を結ぶ'''核力'''がクーロン力よりも強いため、それが核子同士を繫ぎ止めている。
なお、原子番号の低い元素において、陽子と中性子の個数はほぼ同数である場合が多い。例えば、酸素や窒素では陽子・中性子ともに同数である。一方、元素番号の高い元素ほど、陽子よりも中性子が多い。例えばウラン235は中性子数が陽子数の1.5倍である。これには核力の性質が関係していると考えられている<ref>山本義隆『原子・原子核・原子力』、岩波書店、2015年3月24日 第1刷、190ページ</ref>。
陽子と中性子の数の和は'''質量数'''と呼ばれる。
元素の原子核の陽子の数は、その元素の周期表の'''原子番号'''である。
質量数が<math>A</math>の原子核は非常に強い核力のために、小さな球体状の空間の中に固まっており、その半径rは、
<math>1.2 \sim 1.4\times 10^{-15} \sqrt[3]{A}</math>
であることが知られている。
==== 同位体 ====
同じ元素でも、中性子の数が異なる原子がある。これらを互いに'''同位体'''('''アイソトープ''')という。例えば、水素に対する重水素・三重水素、酸素に対するオゾンなどがそうである。水素の原子核は陽子1つであり、重水素(D)の原子核を'''重陽子'''、三重水素(T)の原子核を'''三重陽子'''という。また、重水素からなる水分子<chem>D2O</chem>を'''重水'''という。
一般に、同じ元素であれば同位体でも化学的性質は同一であるが、物理的性質は大きく異なる場合がある。
原子の質量は、イオン化した原子を加速して電場・磁場が軌道にもたらす影響を調べることで求められる。
トムソンは、電場と磁場を加えた空間にイオンを入射させ、比電荷の同じイオンがスクリーン上の同じ放物線上に集まるような装置を制作した。これにより、ネオンの同位体が発見された。
トムソンの研究室にいたイギリスのアストンは、トムソンの装置を基にイオンの速さにかかわらず比電荷が同じであればスクリーン上の一点に集まるような装置('''質量分析器''')を製作した。この装置により多くの同位体が発見され、それらの質量と存在比も精密に測定された。
==== 放射能と放射線 ====
元素の中には、'''放射線'''を出す性質をもつものがあり、この性質を'''放射能'''という。
また、放射能をもつ物質は'''放射性物質'''といわれる。放射能を持つ同位体を'''放射性同位体'''という。
放射線には3種類存在し、それぞれ'''α線'''、'''β線'''、'''γ線'''という。
α崩壊は、親原子核からα粒子が放射される現象である。α粒子の正体はヘリウム原子核である。α崩壊後、親原子核の質量数は4小さくなり、原子番号は2小さくなる。
β崩壊は、親原子核の中性子が陽子と電子に変化することで、電子が放射される現象である。なお、放出された電子はβ粒子ともよばれる。β崩壊後、親原子核の質量数は変化しないが、原子番号は1増加する。
γ線は、α崩壊またはβ崩壊直後の励起状態にある原子核が、よりエネルギーの低い状態に遷移するときに放射される(かつてはγ崩壊と呼んだが、原子核が崩壊していないので用語廃止された)。γ線の正体は光子で、X線より波長の短い電磁波である。
α崩壊やβ崩壊によってもとの原子核の数は徐々に減っていくが、これらの崩壊は原子核の種類ごとに決まった一定の確率で起きるので、崩壊によってもとの原子核の数が減る速度は原子核の個数に比例して変化する。しかし、崩壊によってもとの原子核の数が半減するのにかかる時間は、原子核の種類だけによってきまる。そこで、この時間のことをその原子核の '''半減期''' と呼ぶ。崩壊によって原子核の個数がどれだけになるかは、この半減期を用いて記述することができる。原子核の最初の個数を<math>N_0</math>、原子核の半減期を<math>T</math>、時刻<math>t</math>での原子核の個数を<math>N(t)</math>とすると、
:<math>N(t)=N_0 \left(\frac{1}{2}\right)^{\frac{t}{T}}</math>
が成り立つ。
放射線に関しては様々な単位が用いられる。
かつてはキュリー、エルグ、ラド、レントゲン、レムなどの単位が用いられていたが、現在ではSI単位系に沿って以下の単位が用いられる。(ただし、現在でも前述の単位を用いる場合がある)
{| class="wikitable"
|+ 放射線のSI系列単位
|-
! 物理量 !! 単位 !! 記号 !! 説明
|-
|放射能の強さ||ベクレル||Bq||原子核が毎秒一個の割合で崩壊するときの放射能の強さを1Bqとする。
|-
|照射線量||クーロン毎キログラム||C/Kg||放射線の照射によって0℃、1013hPaの空気1cm<sup>3</sup>あたりに3.335641×10<sup>−10</sup> C(1 {{ruby|esu|静電単位}})のイオン電荷が発生したときの放射線の総量を2.58<u>0</u>×10<sup>−4</sup> C/kg(1 {{ruby|R|レントゲン}})と定義する。
|-
|吸収線量||グレイ||Gy||1Kgの物質が放射線の吸収と共に1Jのエネルギーを得たときの吸収線量を1Gyとする。
|-
|線量当量||シーベルト||Sv||吸収線量に、放射線の種類ごとに定められた人体の障害の受けやすさを表す線質係数(修正係数)を掛けたもの。例えば等価線量を求めたいなら放射線荷重係数を掛け、実効線量を求めたいならさらに組織荷重係数を掛ける。
|-
|線量率||シーベルト毎時||Sv/h||単位時間あたりに受ける放射線の量
|}
ちなみに、1キュリーは37GBq(37ギガベクレル、370億ベクレル)に等しい。
生体が放射能を受けることを'''被曝'''という。※'''「被爆」表記は意味が違うので絶対用いないように'''。
放射線は電離作用を持つので生物細胞に影響を及ぼし、遺伝子を破壊することで癌を発症させたり奇形を発生させたりする。被曝量が大きい場合には急性の障碍を引き起こすこともある。この影響を最小限にするには、放射線源から離れる、浴びる時間を短くする、鉛で放射線を遮るなどの対策が必須である。一方で、自然界には放射線がありふれている。普段の生活では食事による内部被曝や宇宙線による被曝などで年間2.4mSvほどの放射線を自然界から受けている。これらは被曝量が少ないため人体に害はない。また、放射線は非破壊検査、癌治療、レントゲン撮影、農作物の品種改良などの分野で応用されている。
手塚治虫は、自著『火の鳥』の「未来編」にて栽培促進に利用される放射線と、そこにおける事故を描いている。1967年の時点で既に放射線の産業利用の可能性と事故が起こったときの重大性を読み取っていたのである。
なお、福島原発事故の処理水放出が取り沙汰されているが、あれは国際基準よりも厳しい基準で安全性を確認してから放出しているため、一部が騒いでいるような汚染ではない。
===== 発展:半減期公式の導出 =====
原子核の崩壊速度は、原子核の個数に比例すると述べた。実は、上に述べた公式はこの情報だけから純粋に数学的に導き出すことができるものである。発展的な数学を用いるが、興味のある読者のためにその概要を記しておく。
原子核の個数と崩壊速度の間の比例定数は原子核の種類によって決まる。この定数をその原子核の'''崩壊定数'''という。崩壊定数が<math>\lambda</math>の原子核の時刻<math>t</math>での個数を<math>N(t)</math>とすると、その変化速度、すなわち<math>N(t)</math>の時間微分は、
:<math>\frac{d}{dt} N(t) = -\lambda N(t)</math>
で表される。このような、ある関数とその微分との関係を表した式を微分方程式といい、微分方程式を満たすような関数を求めることを、微分方程式を解くという。変数分離法によりこの微分方程式を解くと、
:<math>\frac{dN(t)}{N(t)}=-\lambda dt</math>
:<math>\int \frac{dN(t)}{N(t)}=-\lambda \int dt</math>
:<math>\log |N(t)|= -\lambda t + C</math>(<math>C</math>は積分定数)
よって
:<math>N(t) = e^{-\lambda t + C} = e^{C} e^{-\lambda t} \qquad</math><small>※<math>N(t)\geqq0</math>より絶対値記号は無視してよい。</small>
ここで<math>e^{C}</math>は積分定数の値によって定まる初期値なので、原子核の初期個数<math>N_0</math>とみてよい。
:<math>\therefore N(t)= N_0 e^{-\lambda t}</math>・・・(*)
半減期<math>T</math>は<math>N(t)=\frac{1}{2}N_0</math>なる<math>t</math>のことなので、式(*)より
:<math>\frac{1}{2}N_0 = N_0 e^{-\lambda T}</math>
:<math>\frac{1}{2}=e^{-\lambda T}</math>
:<math>-\log 2 = -\lambda T</math>
:<math>T=\frac{\log 2}{\lambda}</math>
よって
:<math>N(t)=N_0 e^{-\lambda t}=N_0 (e^{-\log 2})^{\frac{t}{T}}=N_0 \left(\frac{1}{2}\right)^{\frac{t}{T}}</math>
が得られる。
==== 原子核反応 ====
[[File:Cloud chamber ani bionerd.gif|thumb|right|300px|霧箱の実験。陽子は電荷(正電荷)をもっているため、霧箱でも観測することができる。 (※ この画像は、陽子の観測実験ではない。)<br>霧箱(蒸気の充満した装置)を使うことで、何らかの粒子が通過したとき蒸気が凝集するので、粒子の軌跡が可視化されるのである(飛行機雲と同じ原理)。磁場を加えた場合の、軌跡の曲率等などから、比電荷までも予想できる。]]
* 陽子の発見
ラザフォードは、窒素ガスを密閉した箱にα線源があると、正電荷をもった粒子が発生することを発見した。
この正電荷の粒子が、陽子である。つまり、ラザフォードは陽子を発見した。
同時に、酸素も発生することを発見し、その理由は窒素が酸素に変換されたからであり、つまり、原子核が変わる反応も発見した。
これらのことを式にまとめると、
:<math>_{\ 7}^{14} \mathrm{N} + {}_{2}^{4} \mathrm{He} \rightarrow {}_{\ 8}^{17} \mathrm{O} + {}_{1}^{1} \mathrm{H} </math>
である。
このように、ある元素の原子が、別の元素の原子に変わる反応のことを '''原子核反応'''('''核反応''')という。また、上のような反応式を'''核反応式'''という。
化学反応では原子の種類が変わらずその組合せが変わるだけであったが、核反応では別の種類の原子が生まれる。
正電荷を持つ二つの原子核の間には電磁気力により斥力が働く。核反応は、2つの原子核がこの斥力に打ち克って核力が働く近距離に近づいた時に初めて起こる。そのため、核反応を起こすには大きな運動エネルギーが必要であり、そのためにサイクロトロン・ベータトロン等の加速器が用いられる。
一般に、核反応では'''反応の前後で質量数の和と電気量の和は保存される'''ことがわかっている。
{{コラム|霧箱|
霧箱は、種類にもよるが、普通、エタノールまたはアルゴンの気体が封入される<ref>山本義隆『原子・原子核・原子力』、岩波書店、2015年3月24日 第1刷発行、P80</ref>。
霧箱のような実験装置の用途として、陽子の実験の用途のほか、原子核反応の回数を観測する目的でも使うことが出来る。放射線の測定器のガイガーカウンターの原理も、霧箱と類似している。放射線測定器であるガイガー・ミュラー管には気体(アルゴンやエチレンガスなどの不活性な気体)が封入されている。霧箱のように気気体を封入した測定管に、高電圧をかけた電気極板を追加することで、放射線を捉えるようにしたものがガイガー管である[https://www.agc.a.u-tokyo.ac.jp/radioecology/pdf/190930_radioecology_supplement2.pdf]。物理学者ガイガーは、このような測定器を開発し、さらに原子核反応によって生成されるヘリウム分子を集めて気体として封入し、当時としては最高水準の精度でアボガドロ定数を測定する事に成功した<ref>山本義隆『原子・原子核・原子力』、岩波書店、2015年3月24日 第1刷発行、P81</ref>。これは、プランクの熱輻射の理論から算出されたものや、物理学者ベランがブラウン運動から求めたものに匹敵する精度であった<ref>山本義隆『原子・原子核・原子力』、岩波書店、2015年3月24日 第1刷発行、P82</ref>。<br />
}}
* 中性子の発見
ラザフォードは1920年頃に既に陽子と同じ質量で電気的に中性な粒子の存在を予言していた。1930年、ドイツのボーテがポロニウムから放出されるα線をベリリウムに当てると透過力の強い放射線が出ることを発見し、翌年にキュリー夫妻がこれをパラフィン([[高校化学 脂肪族炭化水素#アルカン|アルカン]]のうち炭素数が20以上のもの。水素を多く含む。)に当てると陽子が飛び出すことを発見した。夫妻は放射線をγ線と考えてコンプトン効果で説明しようと試みたが、非現実的な仮定を余儀なくされて頓挫した。イギリスのチャドウィックはこの放射線をヘリウムや窒素に当て、これを電荷を持たず陽子とほぼ等しい質量の粒子の粒子線と考えると辻褄があうことを示し、1932年に論文を提出した。この粒子は中性子、放射線は中性子線と名付けられた。
*質量とエネルギーの等価性
原子核は、それを構成する核子である陽子と中性子が自由であるときの質量の和より、小さい質量をもつ。この減った質量を、'''質量欠損'''と呼ぶ。
質量数A、原子番号Zの原子核の質量欠損<math>\Delta m</math>を、式で書けば,
原子核の質量をm、陽子と中性子の質量をそれぞれ<math>m_p,\ m_n</math>としたとき、
:<math>\Delta m = m_{p}Z+m_{n}(A-Z)- m</math>である。<br />
なお、原子にもよるが、一般に質量欠損の大きさは、1%程度<ref>[https://kotobank.jp/word/%E8%B3%AA%E9%87%8F%E6%AC%A0%E6%90%8D-74242 コトバンク『日本大百科全書(ニッポニカ)の解説』(坂東弘治、元場俊雄)など ]</ref>である。
陽子と中性子が核力によって結合すると、その結合エネルギーに等しいエネルギーのガンマ線が放出される。アインシュタインの[[特殊相対性理論]]によれば、質量mとエネルギーEには、
: <math>E=m c^2</math>
という関係がある。
エネルギーと質量の等価性によれば、陽子と中性子が結合したときに放出されるγ線のエネルギーに等価な質量が減ることになるが、これが原子核の質量欠損である。{{コラム|原子レベルの質量の測定法|
[[File:Mass spectrometer schematics.png|thumb|right|質量分析器の模式図。試料導入部およびイオン源(左下)、分析部(左上、磁場偏向型)、イオン検出部(右上)、データ処理部(右中)からなる。]]
そもそも、どうやって原子や分子の質量を精度よく測定するか?
一般に原子レベルの質量測定法として精密科学でよく知られるものとして、右図のような、磁場によって荷電粒子を曲げる方式のものがある。このような磁場とローレンツ力を用いた方式による質量測定は一般に、「磁場偏向型」といわれる。
このような装置により、磁場や電化の大きさは実験的に決定できるので、曲率が質量の関数になるので、つまり半径から質量が逆算できる。
測定対象の元素材料が中性の原子であっても、その原子が固体なら、それに電子ビームを当てて、電子によって弾き飛ばされた材料が帯電してイオン化しているので、それから、上記のような磁場による質量測定が可能になる。
なお、同位体の存在やその質量も、このころ、このような装置で発見された。
原子質量がいくつもの元素で測定できるので、派生的に、化学の理論で分かる原子番号Zと原子量A及び原子の質量の測定値MをもとにZ,AからMを求めるワイツゼッカーの公式が作成された。
また、レインウォーターらにより原子半径の予想値なども算出されていった。
}}
このことから、陽子と中性子がバラバラに存在する時よりも、纏まって原子核を構成しているときの方がエネルギーが質量欠損分<math>\Delta mc^2</math>だけ小さいことがわかる。逆に、原子核をバラバラの核子にするには<math>\Delta mc^2</math>のエネルギーを与える必要がある。この意味で、<math>\Delta mc^2</math>を'''結合エネルギー'''という。化学で扱った[[高校化学 化学反応とエンタルピー#ヘスの法則|結合エンタルピー]]は原子と分子の話であったが、こちらは核子と原子核の話である。
質量数Aは核子の数なので、核子一つあたりの結合エネルギーは<math>\frac{\Delta mc^2}{A}</math>と表される。これの値は軽い原子核の領域で急激に増大し、鉄が最も最大となる。故に、'''核反応においては鉄が最も安定'''な元素である。
*核エネルギーと核分裂
核反応では、原子核の質量の和が反応の前後で変化する。質量和が減少する場合、その差が'''核エネルギー'''となる。このとき、結合エネルギーの和は増大し、核エネルギーは結合エネルギー和の変化量に等しい。一回の化学反応で解放されるエネルギーは数eV程度であるのに対し、一回の核反応で解放されるエネルギーは数MeVを超える。例えば、リチウム7と水素が衝突してヘリウム2つになる核反応では、1.68×10<sup>12</sup>Jという厖大なエネルギーが発生する。これは石油40トンを燃やして得られるエネルギーに相当する。
ドイツのハーンとシュトラスマンは、ウランに中性子を照射したときの反応性生物の中に、ウランとほぼ半分の質量を持つバリウム141などの原子核が含まれることを発見した。このように、一つの原子核がいくつかの原子核に分かれる反応を'''核分裂'''という。ウランのように質量数が多い原子核は、一つの原子核でいるよりも二つの原子核に分裂した方がエネルギー的に安定である。これが核分裂の起こる原因である。
核分裂は歴史的には原子爆弾に利用された。日本は原子爆弾を実戦使用された唯一の国である。
現代では、核分裂は'''原子力発電所'''で使用されている。
ウラン235やプルトニウム239を'''核燃料'''とし、熱運動する気体分子と同程度の速さの中性子を衝突させると様々な壊れ方の核分裂が起こる。このとき、いずれの場合も200MeV程度のエネルギーが解放され、2、3個の速い中性子が出る。この速い中性子を'''減速材'''(水や重水など)に衝突させて減速することで、別の核燃料に衝突させやすくする。このようにして次々に核分裂が起こることを'''連鎖反応'''という。原子力発電は、核分裂で発生した熱エネルギーでタービンを回して発電している。中性子を吸収する'''制御棒'''を用いることで核分裂が爆発的に起こらない且つ停止しないように制御している。連鎖反応が持続的に保たれる条件がちょうど満たされるとき、「原子炉は'''臨界'''にある」という。臨界状態では中性子数は一定に保たれる。原子炉の稼働は臨界点の近くで行われている。少ない燃料では中性子が核反応することなく散逸するので、臨界にあるための核燃料の量に下限があり、これを'''臨界量'''という。
原子力発電は、発電量は他の方式に比べて圧倒的であるが、安全対策や放射性廃棄物の処理などの問題がある。
2011年の東日本大震災では地震そのものには余裕で耐えたものの、津波により電源がロストしたことで炉心の冷却機能が失われて'''炉心融解'''('''メルトダウン''')が起こり、爆発とともに莫大な量の放射性物質が散布される、という事故が発生した。原子力発電の稼働にあたっては、このような重大事故に対する厳重かつ多重の安全対策が必須である。([[w:福島第一原子力発電所事故]]も参照。)
また、核分裂により生じる放射性元素の中には半減期が数百万年にも及ぶものが含まれ、これらの処理をどのように行うかも重要な課題である。
なお、原子力発電には'''沸騰水型'''と'''加圧水型'''の2種類がある。
*核融合
必要があれば[[高等学校地学]]も参照。
恒星では原子核同士が衝突することで質量数の大きな原子核が生まれている。このように、より大きな質量数の大きな原子核ができる反応を'''核融合反応'''という。
軽い原子核が核融合を起こすとき、結合エネルギーが増加し、その差のエネルギーが解放される。
太陽の中では、4個の水素原子核(陽子)から幾つかの段階を経て1個のヘリウム原子核が生成されている。このとき、約27MeVのエネルギーが解放される。
太陽は水素と核融合により生じるヘリウムから構成されており、水素が尽きると寿命を迎える。しかし、太陽よりも質量の大きな星ではヘリウムも核融合反応を起こして炭素が生成される。中心温度が15億Kを越えていれば炭素も核融合反応を起こしてネオンが生成し、その後は十分な質量があればネオン→酸素→珪素→鉄と核融合反応が進行する。鉄はこれ以上核融合反応を起こさないのである時点で恒星は寿命を迎え、超新星爆発を起こす。このとき、さらなる反応によりニッケル・金などのさらに重い元素が生成される。
初期の宇宙には水素・ヘリウム・リチウムあたりの軽い元素しか存在しなかったと推定され、長い年月で様々な恒星で核融合反応が進行することによって他の元素が十分量生成されてきたと考えられている。
核融合は核分裂とほぼ同時代に発見されたが、連続的に発生させるには数億℃の環境が必要であることから、当初はあまり注目されなかった。
核融合反応自体は短時間ながらも地上で起こすことに成功している。例えば、原子爆弾の進化系である水素爆弾は、原子爆弾の爆発により生まれる膨大な熱エネルギーを利用して核融合反応を起こすことによって原爆の威力を更に高めている。史上最強の水素爆弾ツァーリ・ボンバの爆発では、2.1×10<sup>17</sup>Jものエネルギーが放出されたとされている。
現在では、核融合発電の実用化が盛んに研究されている。核融合発電は核分裂を利用した従来の原子力発電に比べて圧倒的に安全でコストパフォーマンスも良いが、核融合反応の安定的な持続に未だ成功していないので、お目にかかれるのはまだ先である。
===素粒子===
素粒子は物質を構成する最小単位である。現在素粒子として17種類が発見されている。素粒子には、クォーク、レプトン、ゲージ粒子、ヒッグス粒子がある。陽子や中性子はクォークから構成されている。電子は素粒子である。
素粒子には、同じ質量や寿命を持つが、電荷の符号が異なる粒子が存在する。例えば、電子には、電荷が <math>e</math> の陽電子が存在する。[[ファイル:Standard_Model_of_Elementary_Particles-ja.svg|中央|フレームなし|300x300ピクセル]]
==== クォーク ====
陽子や中性子はアップクォークとダウンクォークと呼ばれるクォークから構成される。クォークは6種類あり、それぞれ3世代に分類される。アップクォークとダウンクォークは第一世代に分類され、アップクォークとダウンクォークに性質が似ているが質量がそれよりも重いクォークが存在する。第二世代には、チャームクォークとストレンジクォーク、第三世代にはトップクォークとボトムクォークが存在する。
アップ、チャーム、トップクォークは電荷 <math>\frac{2}{3}e</math> を持ち、ダウン、ストレンジ、ボトムクォークは電荷 <math>-\frac{1}{3}e</math> をもつ。
{| class="wikitable"
|+ クォーク
|-
! 電荷 !! 第1世代 !! 第2世代 !! 第3世代
|-
! <math>\frac{2}{3}e</math>
| アップ (u)
| チャーム (c)
| トップ (t)
|-
! <math>-\frac{1}{3}e</math>
| ダウン (d)
| ストレンジ (s)
| ボトム (b)
|-
|}
=== ハドロン ===
クォークは、必ず複合粒子を形成し、単独で取り出すことができないと考えられている。これをクォークの閉じ込めという。クォーク間に働く力は量子色力学により説明される。量子色力学によれば、それぞれのクォークには三種類の異なる色荷を持つ異なる状態が存在する。三種類の色荷は光の三原色になぞらえて赤、青、緑と名前がついている。クォークの反粒子の色荷は反赤、反青、反緑である。クォークによる複合粒子は、色荷の合計が白である必要がある。
クォークの複合粒子を'''ハドロン(強粒子)'''という。ハドロンには、3つのクォークからなる'''バリオン(重粒子)'''と、2つのクォークからなる中間子(メソン)がある。歴史的にはハドロンを素粒子に含めた時代もあり、その時は素粒子が数百種類を数えていた。現在ではハドロンを素粒子に含めない。
バリオンの重要な例には陽子と中性子がある。陽子は uud で構成され、中性子は udd で構成される。
電荷は
:中性子 <math>\frac{2}{3}e - \frac{1}{3}e - \frac{1}{3}e=0</math>
:陽子 <math>\frac{2}{3}e + \frac{2}{3}e - \frac{1}{3}e=e</math>
となる。
[[ファイル:量子色力学-01.svg|リンク=https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:%E9%87%8F%E5%AD%90%E8%89%B2%E5%8A%9B%E5%AD%A6-01.svg|中央|サムネイル|陽子や中性子の色荷は、赤+青+緑=白である。]]
メソンは、2つのクォークからなる複合粒子である。色荷を考えると、クォークと反クォークで構成される必要がある。なぜなら、クォークの色荷、赤、青、緑から2つを選んでも白色になることはなく、複合粒子を構成できない。クォークと反クォークからは、赤+反赤=白のようになるから、複合粒子を形成することができる。
メソンの重要な例には <math>\pi</math> 中間子がある。電荷により <math>\pi^+, \pi^-,\pi^0</math> の三種類があり、原子核の中の核子を結合させる核力を担っている。それぞれ
<math>\pi^+=u\bar d, \pi^-=\bar u d,\pi^0 = \frac{u \bar u - d \bar d}{\sqrt 2}</math>
で構成される。
==== レプトン ====
電子は素粒子である。電子に似た性質を持つが質量が電子よりも重い粒子として、ミュー粒子、タウ粒子が確認されている。ミュー粒子は電子の200倍、タウ粒子は電子の3500倍の質量を持つ。
また、ニュートリノと呼ばれる粒子が存在する。ニュートリノは物質とはほとんど反応しないため、検出が難しい。電子ニュートリノ、ミューニュートリノ、タウニュートリノが存在する。スーパーカミオカンデでの実験からニュートリノには質量があることが知られているが、その値は非常に小さい。
{| class="wikitable"
|+レプトン
!電荷
|第一世代
|第二世代
|第三世代
|-
! <math>-e</math>
| 電子 (e<sup>ー</sup> )
| μ粒子 (''μ''<sup>ー</sup> )
| τ粒子 (''τ''<sup>ー</sup> )
|-
!0
| 電子ニュートリノ(''ν''<sub>e</sub> )
| μニュートリノ(''ν''<sub>''μ''</sub> )
| τニュートリノ(''ν''<sub>''τ''</sub> )
|}
==== 4つの力 ====
自然界に働くすべての力は4つの力に分類することができる。電磁気力、強い力、弱い力、重力である。
例えば、机の上の物体に働く抗力や摩擦力などは原子の周りの電子による反発力で説明できるから、電磁気力を起源とする。電磁気力は光子によって媒介される力である。
強い力はグルーオンによって媒介される。強い力はクォークを閉じ込め複合粒子を形成したり、核力の起源となる。強い力は量子色力学によって説明される。
弱い力は、W粒子とZ粒子により媒介され、主にベータ崩壊を引き起こす。W粒子とZ粒子をまとめてウィークボソンという。弱い力はワインバーグ・サラム理論によって、電磁気力と統一的に説明される。電磁気力と弱い力を統一した力を電弱力という。
重力を媒介する素粒子を重力子というが、まだ発見されていない。
グルーオンのように、力を媒介する粒子のことを'''ゲージ粒子'''という。
{| class="wikitable" style="float: right; text-align: center; margin: 2pt;"
|+ 4つの力とゲージ粒子
|-
! 力の種類
! ゲージ粒子
! 相対的強さ
! 到達距離
! 力の源
|-
! 電磁気力
| 光子(フォトン)<br>(電磁場を量子化したもの)
|10<sup>-2</sup>
|∞
|電荷
|-
! 強い力<br>(クォークを引き付けあう力のこと。)
| グルーオン
|1(基準)
|10<sup>-15</sup>m
|色荷
|-
! 弱い力<br>(β崩壊を司る力のこと)
| ウィークボソン(W粒子、Z粒子)
|10<sup>-5</sup>
|10<sup>-17</sup>m
|弱荷
|-
! 万有引力(重力)<br>
| 重力子(グラビトン)<br>(未発見)
|'''10<sup>-38</sup>'''
|∞
|質量
|-
|}
==== ヒッグス粒子 ====
ヒッグス場という場は真空において対称性を破ることになる。これを'''自発的対称性の破れ'''という。このときに現れる粒子がヒッグス粒子である。また、ヒッグス場が対称性を破ることによりウィークボソンが質量を獲得する。このことをヒッグス機構という。また、クォークや電子、μ粒子、τ粒子の質量はヒッグス場によって与えられる。
ちなみに、強い力を説明する量子色力学と電弱力を説明するワインバーグ・サラム理論は、ヤン・ミルズ理論の特殊な場合である。ヤン・ミルズ理論においては、力を媒介する粒子はそのままでは質量を持つことができない。そのため、ウィークボソンの質量を説明するためにヒッグス機構が必要となる。また、ヒッグス機構においても、残った対称性のために光子は質量を持たない。
==== 反物質 ====
素粒子には反粒子が存在するから、複合粒子には、構成する素粒子が反粒子となった粒子が存在する。例えば、陽子 <math>p = uud</math> には反陽子 <math>\bar p = \bar u \bar u \bar d</math> が存在する。中性子にも、反中性子 <math>\bar n = \bar u \bar d \bar d</math> が存在する。反粒子で構成された物質を'''反物質'''という。
粒子と反粒子が衝突すると、衝突前のエネルギーと同じエネルギーを持つ光子が2つ以上放出されて消滅する。この現象を'''対消滅'''という。
逆に、光子から粒子と反粒子が生成されることを'''対生成'''という。対生成は光子が近くの原子核と作用する必要がある。
現在の宇宙においては反物質は少量しか存在しないが、宇宙の黎明期には物質と同程度存在し、対消滅によってその殆どが消えたと考えられている。あるいは、宇宙の未知の領域に反物質のみで構成された領域も存在するという仮説が立っている。
(発展)病院などで使われる陽電子断層撮像法(PET)は、β<sup>+</sup>崩壊によって陽電子を放出する <sup>18</sup>F などを含む化合物を体内に取り込み、 発生した陽電子が電子と対消滅して発生するγ線を観測することによって、体内を調べる技術である。
==== スピン ====
電子や陽子や中性子などは、スピンという磁石のような性質をもっている。磁石にN極とS極があるように、スピンにも、2種類の向きがある。スピンのこの2種類の向きは、上向きスピンと下向きスピンがある。
全ての分子は電子や陽子や中性子を含むのに、多くの物質があまり磁性を持たないのは、反対符号のスピンをもつ電子が結合しあうことでスピンが打ち消しあうからである。
物質に静磁場を加えつつ高周波電磁波を加えると、原子核のスピンによって、電磁波が発生する。この電磁波を観測するのが、核磁気共鳴法(NMR、nuclear magnetic resonance)の原理である。 医療で用いられるMRI(magnetic resonance imaging)は、核磁気共鳴法を利用して人体内部を観測する機器である。
素粒子も、通常はスピンをもつ。
μ粒子のスピンという性質による磁気と、μ粒子の透過性の高さを利用して、物質内部の磁場の観測方法として既に研究されており、このような観測技術をμオンスピン回転という。超伝導体の内部の観測などにも、μオンスピン回転による観測が研究されている。
==== 発展:力の統一 ====
現代物理学において、自然界に存在する力はすべて電磁気力・弱い力・強い力・重力の4つに統一されている。
これらの力は宇宙誕生時は一つの力だったと考えられており、現在この4つの力をさらに統一しようとする試みが行われている。
電磁気力と弱い力を統一する'''電弱統一理論'''は既に完成しており、ワインバーグ=サラム理論の名で1979年にノーベル物理学賞を受賞している。電弱統一理論は、ヒッグス粒子の発見によって理論が裏付けられた。強い力と電弱統一理論を統一する'''大統一理論'''は未完成ではあるものの、裏付けとなる現象の観測待ちとなっている。
3つの力と重力を統一する'''超大統一理論'''は'''万物の理論'''と呼ばれ、さまざまなアプローチで構築が進められているが、ある一つの大きな問題が存在する。
それは、'''重力は他の力に比べて圧倒的に弱い'''という事実である。日常生活で考えてみると、磁石で鉄をくっつけられることから「巨大な地球の重力がかなり小さい磁石の電磁気力に負けている」と気がつくことができる。
重力が弱い理由はいくつか考えられているが、その中でも有名なものは「'''重力子が他の素粒子が到達することのできない次元方向に拡散しているため'''」という仮説である。これは素粒子を質点でなく大きさをもつ一次元の弦(あるいは二次元以上の膜)とみなし、素粒子の種類の違いを振動の仕方の違いに対応させる'''超弦理論'''という理論の研究の中で生まれた仮説である。素粒子の種類の違いを表現するには我々の住む三次元空間では振動方向が足りないことから、「この世界は本当はもっと高次元な空間である」との仮説が生まれ、その中で唱えられ始めた。超弦理論の一つであるM理論では、「この世界は十次元空間と一次元時間の十一次元時空間であり、余剰次元は小さく丸まっている(コンパクト仮説)」という方向で理論が構築されている。なぜ重力子のみが余剰次元方向に拡散できるかについては、「他の素粒子は開いた弦でありこの三次元空間に張り付いているが、重力子は閉じた弦であって空間に縛られない」という仮説が立っている。
この仮説では重力のみが弱い理由を合理的に説明できているが、重力子が未だ未発見であること、光子すらも届かない余剰次元空間の存在を確認する手段がないことが難点である。
とりあえず、万物の理論として2024年現在最も有力視されている理論がM理論である。これ以上の深入りは避ける。
==== 発展:CP対称性の破れ ====
コバルト60を極低温に冷却し、磁場をかけて多数のコバルト原子の電子殻の孤立電子スピンの方向をそろえた状態で、コバルト60がベータ崩壊して発生するベータ粒子の出る方向を調べる実験が行われた。
実験の結果、コバルト60がベータ崩壊してベータ粒子の出てくる方向は、コバルト60のスピンの磁気の方向と逆の方向に多く放出されているのが観測された。これは、崩壊の確率が異なっており、ベータ崩壊の対称性が破れていることになる。このような実験事実により、弱い力は空間反転に対して非対称である。このことをパリティ対称性の破れという。
そこで、空間反転と同時に、粒子を反粒子に変える変換に対する対称性、CP対称性は保たれると考えられたが、これもK中間子に関する実験によりCP対称性は破られることが分かった。
1973年、小林誠と益川敏英は、CP対称性の破れを説明するためにはクォークが3世代以上存在する必要があるとする理論('''小林益川理論''')を発表した。当時はクォークはアップ、ダウン、ストレンジの三種類しか発見されていなかったが、後に残りのクォークが実験で発見された。
その後、高エネルギー加速器研究機構(KEK)にある加速器KEKBで行われたB中間子に関する実験から、小林・益川理論が実験的に検証された。
さらに、C変換とP変換と同時に、時間を反転させる操作に対する対称性、CPT対称性が考えられた。現在では、CPT対称性は成り立つと考えられている。
== 脚注・参考文献など ==
[[Category:高等学校教育|物ふつり2けんしとけんしかく]]
[[Category:物理学|高ふつり2けんしとけんしかく]]
[[Category:物理学教育|高ふつり2けんしとけんしかく]]
[[Category:高等学校理科 物理II|けんしとけんしかく]]
o7tapb0dvzheockqh6uk20fcqe2js25
中学校保健体育/食生活と健康
0
38228
301228
258517
2026-07-06T01:20:05Z
~2026-38258-70
91949
/* どのような食生活が望ましいですか */
301228
wikitext
text/x-wiki
{{Pathnav|小学校・中学校・高等学校の学習|中学校の学習|中学校保健体育}}
== キーワード ==
エネルギー・栄養素・基礎代謝量
== 規則正しい食生活 ==
=== どのような食生活が望ましいか? ===
伝統的に、1日3食の規則正しい食事が推奨されています:
* 朝食:体温を上げ、内臓の働きを活性化。午前中の活動に必要なエネルギーと栄養素を補給。
* 昼食:午前中に消費したエネルギーと栄養素を補給。
* 夕食:日中の活動で消耗した体力を回復。
この3食の摂取は、長年にわたり健康的な食生活の基本とされてきました。一方で、最新の研究では、1日3食の必要性について異なる見解も示されています<ref>[https://8760.news-postseven.com/84500 「1日3食」は不要?医師が健康のためには「空腹でなければ食べなくていい」と語る理由]</ref>。しかし、これらの新しい知見はまだ十分に検証されておらず、専門家の間でも意見が分かれています。
現時点では、従来の1日3食を基本としつつ、個人の生活リズムや身体の状態に合わせて適切に調整することが望ましいと考えられています。
== 栄養のバランスと健康 ==
=== 食事は何に気を付けたら大丈夫ですか ===
* 多様な栄養素を摂取するため、様々な食品をバランスよく食べることが重要です。
* 特に中学生は、発育や生理に伴う貧血予防のため、タンパク質や鉄分の摂取に注意が必要です。
* 2013年に「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録されたことも参考に、バランスの取れた食事を心がけましょう。
== 食事とエネルギー ==
=== 1日にどれくらいのエネルギーが必要ですか ===
* 基礎代謝量:生命維持に必要な最低限のエネルギー消費量。
* 総エネルギー消費量 = 基礎代謝量 + 身体活動量(生活活動や運動)
* 年齢、性別、活動量に応じて必要なエネルギー量は変化します。
* エネルギー不足は疲労や体重減少、過剰摂取は肥満の原因となる可能性があります。
* 若い女性の過度なダイエットによる健康リスクにも注意が必要です<ref>[https://withnews.jp/article/f0211122002qq000000000000000W02c10701qq000023922A 減り続けた体重は34キロに、いよいよ「入院治療」でハッと気づいた]</ref>。
適切なエネルギー摂取量は個人差が大きいため、自身の身体の状態や活動量を考慮し、必要に応じて専門家に相談することをお勧めします。
== 資料出所 ==
* 東京書籍『新しい保健体育』戸田芳雄ほか編著 2021年
* 学研教育みらい『中学保健体育』森昭三ほか編著 2021年
== 脚註 ==
<references />
[[カテゴリ:中学校保健体育]]
[[カテゴリ:食生活]]
jnbpfo5oudis29vcmytx91oxuqy3olf
小学校国語/俳句
0
38307
301229
279268
2026-07-06T03:07:26Z
~2026-38543-02
91951
301229
wikitext
text/x-wiki
【俳句とは】
俳句とは、五・七・五の17音から成る短詩である。
〇〇〇〇〇 〇〇〇〇〇〇〇 〇〇〇〇〇
'''【字数の数え方】'''
猫・・・・・・・・・・漢字では1字だが、音だと「ネ」「コ」で2字。
今日・・・・・・・・・ひらがなだと3文字だが、音で2文字。
ラッパ・・・・・・・・小さいヤユヨは1音としてカウントしないが、っは1音として数える。
ラッパは3文字。
ソーダ水・・・・・・・ソオ(ー)ダスイというように5音。
【字数がずれる】
多くなる・・・・・字余り
少なくなる・・・・字足らず
{{stub|小}}
[[カテゴリ:小学校国語|はいく]]
みなさん勉強は大変だと思いますが、頑張りましょう。
8o7hc9vty98ucq6hhds0l5l1mij7wla
301230
301229
2026-07-06T04:51:06Z
Tomzo
248
[[Special:Contributions/~2026-38543-02|~2026-38543-02]] ([[User talk:~2026-38543-02|会話]]) による編集を取り消し、Tomzo による直前の版へ差し戻す
279268
wikitext
text/x-wiki
【俳句とは】
俳句とは、五・七・五の17音から成る短詩である。
〇〇〇〇〇 〇〇〇〇〇〇〇 〇〇〇〇〇
'''【字数の数え方】'''
猫・・・・・・・・・・漢字では1字だが、音だと「ネ」「コ」で2字。
今日・・・・・・・・・ひらがなだと3文字だが、音で2文字。
ラッパ・・・・・・・・小さいヤユヨは1音としてカウントしないが、っは1音として数える。
ラッパは3文字。
ソーダ水・・・・・・・ソオ(ー)ダスイというように5音。
【字数がずれる】
多くなる・・・・・字余り
少なくなる・・・・字足らず
{{stub|小}}
[[カテゴリ:小学校国語|はいく]]
6jm4udqcpmsf1kth9q5imycwhp98gbs
トーク:高等学校物理/原子物理
1
48465
301226
2026-07-05T13:34:34Z
Tomzo
248
/* ミス・クリックです、失礼しました。 */ 新しい節
301226
wikitext
text/x-wiki
== ミス・クリックです、失礼しました。 ==
[https://ja.wikibooks.org/w/index.php?title=%E9%AB%98%E7%AD%89%E5%AD%A6%E6%A0%A1%E7%89%A9%E7%90%86%2F%E5%8E%9F%E5%AD%90%E7%89%A9%E7%90%86&diff=301224&oldid=301203]は、閲覧中のミスクリックです。失礼しました。--[[利用者:Tomzo|Tomzo]] ([[利用者・トーク:Tomzo|トーク]]) 2026年7月5日 (日) 13:34 (UTC)
cjmid6y71njznz5dcvhtex9b9ea6592