Wikibooks jawikibooks https://ja.wikibooks.org/wiki/%E3%83%A1%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%82%B8 MediaWiki 1.39.0-wmf.21 first-letter メディア 特別 トーク 利用者 利用者・トーク Wikibooks Wikibooks・トーク ファイル ファイル・トーク MediaWiki MediaWiki・トーク テンプレート テンプレート・トーク ヘルプ ヘルプ・トーク カテゴリ カテゴリ・トーク Transwiki Transwiki‐ノート TimedText TimedText talk モジュール モジュール・トーク Gadget Gadget talk Gadget definition Gadget definition talk 高等学校数学III/極限 0 779 205582 204090 2022-07-20T10:25:08Z Nermer314 62933 /* 演習問題 */ wikitext text/x-wiki {{pathnav|高等学校の学習|高等学校数学|高等学校数学III|pagename=極限|frame=1|small=1}} {{Wikiversity|Topic:極限|極限}} ここでは、極限について学ぶ。[[高等学校数学II/微分・積分の考え|微分・積分の考え]]では簡単な関数の極限について学んだが、ここでは数列の極限、さらには無理関数や三角関数などの関数の極限について学ぶ。極限は微分積分の基礎となっており重要である。 数列<math>\{a_n\}</math> が有限個の項しかもたないとき、'''有限数列'''といい、項が限りなく続くとき'''無限数列'''という。ここでは無限数列を考えるから断りがない場合、無限数列を単に数列と書くことにする。 == 数列の極限 == 数列 <math>\{a_n\}</math> において、項の番号 <math>n</math> が限りなく大きくなっていくとき、<math>a_n</math> がある一定の値 <math>\alpha</math> に限りなく近づいていくならば、数列 <math>\{a_n\}</math> は <math>\alpha</math> に'''収束'''するといい、 :<math>\lim_{n\to\infty}a_n=\alpha</math> または簡単に :<math>a_n\to\alpha \ (n\to\infty)</math> とかく。また、<math>\alpha</math> をこの数列の'''極限値'''という。 収束する数列には次のような性質がある。 数列<math>\{a_n\}</math>, <math>\{b_n\}</math> において, <math>\lim_{n\to\infty}a_n=\alpha</math>, <math>\lim_{n\to\infty}b_n=\beta</math> とすると、 :#<math>\lim_{n\to\infty}ka_n=k\alpha</math> (<math>k</math>は定数)。 :#<math>\lim_{n\to\infty}\{a_n\pm b_n\}=\alpha\pm\beta</math> (複号同順)。 :#<math>\lim_{n\to\infty}a_nb_n=\alpha\beta.</math> :#<math>\lim_{n\to\infty}\frac{a_n}{b_n}=\frac{\alpha}{\beta}</math> (ただし、<math>\beta\not=0</math>)。 ;例題 :次の数列の極限値を求めよ。 :#<math>1,\frac{1}{2},\frac{1}{3},\ldots,\frac{1}{n},\ldots</math> :#<math>2,\frac{3}{2},\frac{4}{3},\ldots,\frac{n+1}{n},\ldots</math> ;解 :#分母が限りなく大きくなっていくため、項の値は次第に小さくなっていくが、nは常に正なので、項の値が負になることはなく、0に限りなく近づく。したがって :#:<math>\lim_{n\to\infty}\frac{1}{n}=0</math> :#式変形と1.の結果を用いると、 :#:<math>\lim_{n\to\infty}\frac{n+1}{n}=\lim_{n\to\infty}\left(1+\frac{1}{n}\right) =1+0=1</math> 数列には収束しないものがある。たとえば :<math>1,2,3,\ldots,n,\ldots,</math> :<math>3,-1,\ldots,7-4n,\ldots</math> は収束しない。収束しない数列は'''発散'''(はっさん) するという。発散する数列 <math>\{a_n\}</math> で <math>n\to\infty</math> のとき項 <math>a_n</math> の値が限りなく大きくなるときこの数列は'''正の無限大'''(せい の むげんだい) に発散するといい、「その極限は正の無限大である」のようにいう。このことを次のように表す。 :<math>\lim_{n\to\infty}a_n=\infty</math> 逆に <math>n\to\infty</math> のとき、項 <math>a_n</math> が負の値でその絶対値が限りなく大きくなるときこの数列は'''負の無限大''' に発散するといい、その極限は負の無限大であるという。このことを次のように表す。 :<math>\lim_{n\to\infty}a_n=-\infty</math> ;例題 :次の数列の極限を求めよ。 :#<math>1,4,\ldots,n^2,\ldots</math> :#<math>2,2,\ldots,3n-n^2,\ldots</math> ;解 :#<math>\lim_{n\to\infty}n^2=\infty.</math> :#<math>\lim_{n\to\infty}(3n-n^2)=-\infty.</math> 発散する数列には次のようなものもある。 :<math>-1,2,-3,\ldots,(-1)^n n,\ldots</math> :<math>1,-1,1,\ldots,-(-1)^n,\ldots</math> いずれの数列も正の無限大にも負の無限大にも発散しない。このような数列を'''振動'''(しんどう) するという。このときもこの数列には極限値が存在しない。 ;定理 数列 <math>\{a_n\}</math>, <math>\{b_n\}</math> について、<math>n</math> が十分に大きいとき常に <math>a_n \leq b_n</math> を満たしていて、<math>\lim_{n\to\infty}a_n=\alpha</math> かつ <math>\{b_n\}</math> の極限値も存在するならば、 :<math>\alpha\leq \lim_{n\to\infty}b_n</math> となる。 ;証明 これを証明するためには、「限り無く近づく」という言葉の、数学的な意味を明確にする必要がある。初学者には難解な証明であるため、高校数学では直感的に成り立ちそうなことを理解してほしい。参考として、以下に証明の一例を挙げておく。 <math>\alpha>\lim_{n\to\infty}b_n</math>と仮定すると、<math>\alpha-\lim_{n\to\infty}b_n=\epsilon'>0</math>である。 <math>b_n</math>は限りなく<math>\alpha-\epsilon'/2</math>より小さい数に近づくから、<math>n</math>が十分大きいときは常に<math>b_n<\alpha-\epsilon'/2</math>となる。 <math>a_n</math>は限りなく<math>\alpha</math>に近づくため、任意の正の数<math>\epsilon</math>に対して、十分大きな数<math>N</math>であって、<math>n\geq N</math>ならば常に<math>\alpha-a_n < \epsilon</math>が成り立つようなものが存在するはずである。いま、<math>a_n \leq b_n</math>であったから、十分大きな<math>n</math>では常に<math>b_n\geq\alpha-\epsilon</math>となる。 <math>\epsilon</math>は任意の正の数であったから、<math>\epsilon=\epsilon'/2</math>とすると、十分大きな<math>n</math>について矛盾する式が成立することになる。したがって、背理法により<math>\alpha\leq\lim_{n\to\infty}b_n</math>である。■ <small>興味を持った人は大学1年生程度を対象とする微分積分学の教科書を参照してほしい。例えば、[[解析学基礎]]など。</small> 次に、'''はさみうちの原理''' を紹介する。 ;はさみうちの原理 数列 <math>\{a_n\}</math>, <math>\{b_n\}</math>, <math>\{c_n\}</math> について、<math>n</math> が十分に大きいとき常に <math>a_n\leq b_n\leq c_n</math> を満たしていて、<math>\lim_{n\to\infty}a_n=\lim_{n\to\infty}c_n=\alpha</math> ならば、<math>\{b_n\}</math> の極限値も存在して、 :<math>\lim_{n\to\infty}b_n=\alpha</math> となる。 ;証明 <math>\lim_{n\to\infty}b_n</math> が存在することはあきらか。先の定理より、 :<math>\alpha\leq \lim_{n\to\infty}b_n</math> かつ <math>\lim_{n\to\infty}b_n\leq \alpha</math> であるので、 :<math>\lim_{n\to\infty}b_n=\alpha</math> が成立。■ ;例題 つぎの極限値を求めよ。 :#<math>\lim_{n\to\infty}\frac{n^2+4n+2}{3n^2+4}.</math> :#<math>\lim_{n\to\infty}(\sqrt{9n^2+2n}-3n).</math> :#<math>\lim_{n\to\infty}\frac{(-1)^n}{n}.</math> ;解 :#<math>\lim_{n\to\infty}\frac{n^2+4n+2}{3n^2+4} = \lim_{n\to\infty}\frac{1+\frac{4}{n}+\frac{2}{n^2}}{3+\frac{4}{n^2}} = \frac{1}{3}. </math> :#<math>\lim_{n\to\infty}(\sqrt{9n^2+2n}-3n) = \lim_{n\to\infty}\frac{2n}{\sqrt{9n^2+2n}+3n} = \lim_{n\to\infty}\frac{2}{\sqrt{9+\frac{2}{n}}+3} = \frac{1}{3}. </math> :#すべての <math>n</math> で、 ::::<math>-\frac{1}{n}\leq \frac{(-1)^n}{n}\leq \frac{1}{n}</math> :::となり、 ::::<math>\lim_{n\to\infty}\left(-\frac{1}{n}\right) = \lim_{n\to\infty}\frac{1}{n}=0 </math> :::であるので、 ::::<math>\lim_{n\to\infty}\frac{(-1)^n}{n}=0</math>。 ==== 等比数列の極限 ==== 等比数列 <math>\{r^n\}</math> の極限について考えてみよう。 ;(i) <math>r>1</math> の場合: <math>r=1+h</math> とおくと、 :<math>r^n=(1+h)^n = 1+{}_n{\rm C}_1 h + {}_n{\rm C}_2 h^2 +\cdots+ {}_n{\rm C}_n h^n </math> であるので、 :<math>r^n\geq 1+nh</math>。 したがって、<math>n\to\infty</math> のとき、<math>1+nh\to\infty</math> だから、 :<math>\lim_{n\to\infty}r^n=\infty</math>。 ;(ii) <math>r=1</math> の場合: <math>1</math> は何乗しても <math>1</math> だから、 :<math>\lim_{n\to\infty}r^n=1</math>。 ;(iii) <math>|r|<1</math> の場合: <math>r=0</math> ならばあきらかに、 :<math>\lim_{n\to\infty}r^n=0</math>。 <math>r \ne 0</math>のとき、<math>|r|^{-1}>1</math>だから、(i) より :<math>\lim_{n\to\infty}\frac{1}{|r|^n}=\infty</math>。 したがって、 :<math>\lim_{n\to\infty}r^n=0</math>。 ;(iv) <math>r=-1</math> の場合: <math>r^n</math> は<math>n</math> が奇数の場合 <math>-1</math>、 <math>n</math> が偶数の場合 <math>1</math> となるので振動する。 ;(v) <math>r<-1</math> の場合: <math>|r|>1</math> より、 :<math>\lim_{n\to\infty}|r|^n=\infty</math> となるが、<math>r^n</math> は <math>n</math> が奇数の場合 <math>r^n<0</math>、 <math>n</math> が偶数の場合 <math>r^n>0</math> となるので振動する。 まとめると、次のようになる。 '''収束''' :*<math>|r|<1</math> のとき、<math>\lim_{n\to\infty}r^n=0</math>。 :*<math>r=1</math> のとき、<math>\lim_{n\to\infty}r^n=1</math>。 '''発散''' :*<math>r>1</math> のとき、<math>\lim_{n\to\infty}r^n=\infty</math>。 :*<math>r\leq -1</math> のとき、<math>\lim_{n\to\infty}r^n</math> は存在しない。 ;例題 一般項が次のように表される数列の収束・発散について調べ、極限値があるならばこれを求めよ。 :#<math>\frac{2^n+4^n}{3^n}.</math> :#<math>\frac{5^n+7^n}{5^n+(-7)^n}.</math> :#<math>\frac{1+4^n}{1-4^n}.</math> :#<math>\frac{3^n}{2\cdot 3^{n-1}+2^n}.</math> ;解 :#<math>\lim_{n\to\infty}\frac{2^n+4^n}{3^n}=\lim_{n\to\infty}\left\{\left(\frac{2}{3}\right)^n+\left(\frac{4}{3}\right)^n\right\}=\infty.</math> :#<math>n</math> が偶数ならば常に、<math>\frac{5^n+7^n}{5^n+(-7)^n}=1</math> となり、奇数ならば <math>\frac{5^n+7^n}{5^n-7^n}</math> となる。この二つの数列の極限が等しければよいが、<math> \lim_{n\to\infty}\frac{5^n+7^n}{5^n-7^n} = \lim_{n\to\infty} \frac{\left(\frac{5}{7}\right)^n+1}{\left(\frac{5}{7}\right)^n-1} = -1 </math> であるので等しくない。したがって、数列 <math> \left\{\frac{5^n+7^n}{5^n+(-7)^n}\right\} </math> は振動する。 :#<math>\lim_{n\to\infty}\frac{1+4^n}{1-4^n} = \lim_{n\to\infty} \frac{\left(\frac{1}{4}\right)^n+1}{\left(\frac{1}{4}\right)^n-1} =-1. </math> :#<math>\lim_{n\to\infty}\frac{3^n}{2\cdot 3^{n-1}+2^n} = \lim_{n\to\infty}\frac{1}{\frac{2}{3}+\left(\frac{2}{3}\right)^n} = \frac{3}{2}. </math> ==== 無限級数の和 ==== 数列 <math>\{a_n\}</math> の第 <math>n</math> 項までの和を <math>S_n</math> と表すことにする。すなわち、 :<math>S_n=a_1+a_2+\cdots+a_n=\sum_{k=1}^{n}a_k</math>。 このとき、<math>\{S_n\}</math> は数列の一種とみなすことができ、このようにある数列の初項から第 <math>n</math> 項までを順番に足してできる数列を'''級数'''(きゅうすう) という。もとの数列 <math>\{a_n\}</math> が無限数列である場合、級数 <math>\left\{\sum_{k=1}^n a_k\right\}</math> も無限に項を持つことになる。このような級数を'''無限級数'''(むげんきゅうすう) という。以下、単に級数というときは無限級数であるとする。 数列 <math>\{a_n\}</math> において、初項から第 <math>n</math> 項までの和を第 <math>n</math> '''部分和'''(ぶぶんわ)という。<math>\{a_n\}</math> から作られる級数の第 <math>n</math> 部分和 (つまり、<math>\{a_n\}</math>の初項から第n項までの和)を <math>S_n</math> と表すことにし、この級数<math>\{S_n\}</math> の極限値が <math>S</math> であるとき、<math>S_n</math> は <math>S</math> に収束するといい、<math>S</math> を級数の'''和'''という。このことを次のように表す。 :<math>S=\lim_{n\to\infty}S_n = \lim_{n\to\infty}\sum_{k=1}^{n}a_n </math> または :<math>a_1+a_2+\cdots+a_n+\cdots = S</math> または :<math>\sum_{n=1}^{\infty}a_n = S</math> <small>2番目の表記はシグマ記号を使わない分直感には訴えやすい面もあるが、注意深く表記しないと「…」の指すものがはっきりしないため、あまり好ましくない。</small> 数列 <math>\{S_n\}</math> が発散するときこの級数は発散するという。 ;例題 つぎの級数の収束・発散について調べ、和が存在するならば求めよ。 :#<math>\frac{1}{1\cdot 2} + \frac{1}{2\cdot 3} + \cdots + \frac{1}{n\cdot (n+1)} + \cdots. </math> :#<math>\frac{1}{2} + \frac{3}{4} + \cdots + \frac{2n-1}{2n}+\cdots. </math> :#<math>\frac{1}{1+\sqrt{2}} + \frac{1}{\sqrt{2}+\sqrt{3}} + \cdots + \frac{1}{\sqrt{n}+\sqrt{n+1}} + \cdots. </math> ;解 :#<math>\sum_{n}^\infty \frac{1}{n(n+1)} = \sum_{n}^\infty \left(\frac{1}{n}-\frac{1}{n+1}\right) = \lim_{n\to\infty} \left(1-\frac{1}{n+1}\right)=1. </math> :#<math>\frac{2n-1}{2n}\geq \frac{1}{2}</math> であるから、<math> \sum_{n}^\infty \frac{2n-1}{2n} \geq \lim_{n\to\infty}\frac{n}{2} = \infty </math>。 :#:したがって級数 <math>\frac{1}{2}+\frac{3}{4}+\cdots+\frac{2n-1}{2n}+\cdots</math> は発散する。 :#<math>\sum_{n}^\infty \frac{1}{\sqrt{n}+\sqrt{n+1}} = \sum_{n}^\infty \left(\sqrt{n+1}-\sqrt{n}\right) = \lim_{n\to\infty}(\sqrt{n+1}-1) = \infty. </math> ;定理 数列 <math>\{a_n\}</math> から作られる級数 <math>S_n</math> が収束する必要条件は、 :<math>\lim_{n\to\infty}a_n=0</math> である。 ;証明 <math>\alpha \ne 0</math> とし、<math>\lim_{n\to\infty}a_n=\alpha</math>とする。<math>n>1</math> のとき、 :<math>a_n=S_{n}-S_{n-1}</math> となるので、 :<math>\lim_{n\to\infty}a_n=\lim_{n\to\infty}(S_{n}-S_{n-1})=\alpha</math>。 しかし、<math>\lim_{n\to\infty}S_n=\lim_{n\to\infty}S_{n-1}=S</math> であるから、これは矛盾。したがって、<math>\alpha=0</math> でなくてはならない。■ 逆に、<math>\lim_{n\to\infty}a_n=0</math> であっても、<math>\sum_n^\infty a_n</math> が収束するとは限らない。 ==== 無限等比級数の和 ==== 初項が <math>a</math> で公比が <math>r</math> の数列から作られる級数を'''無限等比級数''' または単に'''等比級数'''(とうひ きゅうすう) という。 等比級数の収束・発散について考えてみよう。この等比級数の第 <math>n</math> 部分和は、 :<math>S_n = a + ar + ar^2 + \cdots + ar^{n-1}</math> となる。 ;(i) <math>a=0</math> の場合: すべての<math>n</math> で<math>a_n=0</math>となるから、 :<math>\lim_{n\to\infty}S_n=0</math>。 ;(ii) <math>a \ne 0</math> の場合: <math>|r| < 1</math> とすると、 :<math>S_n=\frac{a(1-r^n)}{1-r}</math> であるから、 :<math>\lim_{n\to\infty}S_n=\frac{a}{1-r}</math>。 <math>r>1</math> または <math>r\leq -1</math> のときは、<math>\{ar^{n-1}\}</math> は発散するから、<math>\{S_n\}</math> は発散する。また、<math>r=1</math>のときは、 :<math>\lim_{n\to\infty}ar^{n-1}=a \ne 0</math> であるから、先の定理より <math>\{S_n\}</math> は発散する。 このことは次のようにまとめられる。 <math>a \ne 0</math> のとき、初項 <math>a</math>, 公比 <math>r</math> の等比級数は *<math>|r|<1</math> のとき収束し、 *:<math>a+ar+ar^2+\cdots+ar^{n-1}+\cdots = \frac{a}{1-r}</math>。 *<math>|r|\geq 1</math> のとき発散する。 ;例題 次の等比級数の収束・発散について調べ、収束するものについてはその和を求めよ。 :#<math>1-\frac{\sqrt{3}}{2}+\frac{3}{4}-\frac{3\sqrt{3}}{8}+\cdots</math> :#<math>(\sqrt{3}-2)-1+(-\sqrt{3}-2)+\cdots</math> :#<math>100-50+25-\cdots</math> ;解 :#与えられた数列は公比が<math>\left|-\frac{\sqrt{3}}{2}\right|<1</math> であるので収束する。その和は、<math>\sum_{n}^\infty \left(-\frac{\sqrt{3}}{2}\right)^{n-1}=\frac{1}{1+\frac{\sqrt{3}}{2}}=4-2\sqrt{3}</math>。 :#与えられた数列は公比が<math>\sqrt{3}+2>1</math> であるので発散する。 :#与えられた数列は公比が<math>-\frac{1}{2}</math> であるので収束する。その和は、<math>\sum_{n}^\infty 100\cdot\left(-\frac{1}{2}\right)^{n-1}=\frac{200}{3}</math>。 == 関数とその極限 == === 分数関数と無理関数 === ==== 分数関数 ==== <math>y= \frac{1}{x}\ ,\ y= \frac{2x-1}{x-1}</math>のように、xの分数式で表される関数をxの'''分数関数'''という。 <math>y= \frac{k}{x}</math>のグラフは'''双曲線'''(そうきょくせん)で、原点に関して対称である。双曲線<math>y= \frac{k}{x}</math>の漸近線は、x軸とy軸である。 関数<math>y= \frac{k}{x-p} +q</math>のグラフは、関数<math>y= \frac{k}{x}</math>のグラフをx軸方向にp、y軸方向にqだけ平行移動したもので、漸近線は2直線<math>x=p\ ,\ y=q</math>である。 ;例題 分数関数<math>y= \frac{2x+3}{x+1}</math>のグラフの漸近線の方程式を求めよ。 ;解 :<math>y= \frac{2x+3}{x+1} = \frac{1}{x+1} +2</math> ゆえに、この関数のグラフは、双曲線<math>y= \frac{1}{x}</math>をx軸方向に-1、y軸方向に2だけ平行移動したものである。 漸近線の方程式は<math>x=-1\ ,\ y=2</math>である。 ==== 無理関数 ==== <math>\sqrt{x}\ ,\ \sqrt[3]{3x-8}</math>のように、根号の中に文字を含む式を'''無理式'''(むりしき)といい、変数xの無理式で表される関数をxの'''無理関数'''(むりかんすう)という。 <math>y= \sqrt{x}</math>のグラフについて考える。 <math>y= \sqrt{x}</math>の定義域は<math>x \ge 0</math>、値域は<math>y \ge 0</math>である。 <math>y= \sqrt{x}</math>の両辺を2乗すると、<math>y^2 = x</math>、すなわち :<math>x = y^2</math> <math>x = y^2</math>のグラフは原点を頂点とし、x軸を対称軸とする放物線である。 <math>y= \sqrt{x}</math>では<math>y \ge 0</math>であるから、<math>y= \sqrt{x}</math>のグラフは<math>x = y^2</math>のグラフの上半分である。 無理関数<math>y= \sqrt{ax+b}</math>について、 :<math>\sqrt{ax+b} = \sqrt{a \left(x + \frac{b}{a} \right)}</math> であるから、無理関数<math>y= \sqrt{ax+b}</math>のグラフは、<math>y= \sqrt{ax}</math>のグラフをx軸方向に<math>- \frac{b}{a}</math>だけ平行移動したものである。 ;例題 無理関数<math>y= \sqrt{-2x-6}</math>のグラフは<math>y= \sqrt{-2x}</math>のグラフをどのように平行移動したものか。 ;解 :<math>y= \sqrt{-2x-6} = \sqrt{-2(x+3)}</math> ゆえに、この関数のグラフは、<math>y= \sqrt{-2x}</math>をx軸方向に-3だけ平行移動したものである。 === 合成関数と逆関数 === ==== 合成関数 ==== 二つの関数 <math>f(x)</math> と <math>g(x)</math> が与えられたとき、 <math>f(g(x))</math> という新しい関数を考えることができる。たとえば <math>f(x)=x^2+x+2</math>, <math>g(x)=x+1</math> とすると、 :<math>f(g(x))=\{g(x)\}^2+g(x)+2=x^2+3x+4</math> 一般に二つの関数 <math>f(x)</math>, <math>g(x)</math> が与えられたとき、関数 <math>f(g(x))</math> や <math>g(f(x))</math> を <math>f(x)</math> と <math>g(x)</math> の'''合成関数'''(ごうせい かんすう)という。合成関数 <math>f(g(x))</math> を <math>(f\circ g)(x)</math> とかくことがある。 ;例題 <math>f(x)=x^2-1</math>, <math>g(x)=\frac{x}{x+1}</math> のとき、合成関数 <math>(f\circ g)(x)</math> と <math>(g\circ f)(x)</math> を求めよ。 ;解 :<math>(f\circ g)(x)=\left(\frac{x}{x+1}\right)^2-1=-\frac{2x+1}{x^2+2x+1}</math> :<math>(g\circ f)(x)=\frac{x^2-1}{x^2-1+1}=\frac{x^2-1}{x^2}</math> この例題のように、一般に <math>(f\circ g)(x)</math> と <math>(g\circ f)(x)</math> は等しくない。 ==== 逆関数 ==== 関数 <math>f(x)</math> と関数 <math>g(x)</math> が与えられて、 :<math>(f\circ g)(x)=x</math> :<math>(g\circ f)(x)=x</math> をすべての定義域内の <math>x</math> で満たすとき、<math>g(x)</math> を <math>f(x)</math> の逆関数(ぎゃくかんすう)といい、 :<math>g(x)=f^{-1}(x)</math> と表す。 ;例題 <math>f(x)=x^n (x\geq 0)</math> の逆関数 <math>f^{-1}(x)</math> を求めよ。 ;解 <math>y=f(x)</math> とおいて <math>x</math> について解くと、 :<math>x=\sqrt[n]{y}</math> となる。したがって、<math>f^{-1}(x)=\sqrt[n]{x}</math>。 この例題のように、ある関数 <math>f(x)</math> の逆関数 <math>f^{-1}(x)</math> を求めるには <math>x</math> について解いて <math>x</math> と <math>y</math> を入れ替えればよい。 {{コラム|「関数」の語源| 関数の記号として数学では、よく <math>f</math>を使うが、これは関数が英語で function (ファンクション)ということに由来している。 中国語で function を音訳すると「函数」になるので、日本でも第二次世界大戦が終わるまでは「函数」の字を使っていた。 しかし、戦後の漢字改革により、「函」の字が当用漢字でなくなった事により、「関」は発音が同じことと、「関係している」の意味も兼ねて、functionの日本語訳として 「関数」 と書かれるようになった。(※ ここまで、実教出版の検定教科書に記述あり) なお、「函」の意味は「箱」である。日本語でも、よく「郵便ポストにハガキを投函(とうかん)する」などと言うが、その「投函」の「函」の字と同じである。 }} (※ 範囲外) 次に逆関数が存在する条件について考えてみよう。逆関数も関数であるから(逆関数の)定義域に含まれるすべての <math>x</math> で <math>f^{-1}(x)</math> が一意に定まらなくてはならない。すなわち、 <math>y=f(x)</math> において、定義域の <math>x</math> と値域の <math>y</math> のどちらかを定めるともう片方が一意に定まるような関数でなくてはならない。このことを関数 <math>f(x)</math> が'''全単射'''(ぜんたんしゃ)である、または'''一対一 対応'''(いったいいち たいおう)であるという。関数 <math>f(x)</math> が全単射であることは <math>f(x)</math> に逆関数が存在することの必要十分条件である。 (ここまで、範囲外) === 関数値の極限 === ある関数 <math>f(x)</math> において、<math>x</math> が定数 <math>a_1</math> より小さい値をとりながら <math>a_1</math> に限りなく近づくときの関数 <math>f(x)</math> の値が一定の値 <math>b_1</math> に限りなく近づくとき、 <math>f(x)</math>の'''左極限値'''は <math>b_1</math> であるといい、 :<math>\lim_{x\to a_1-0}f(x)=b_1</math> と表す。同様に <math>x</math> が定数 <math>a_2</math> より大きい値をとりながら <math>a_2</math> に限りなく近づくときの関数 <math>f(x)</math> の値が一定の値 <math>b_2</math> に限りなく近づくとき、 <math>f(x)</math> の'''右極限値'''は <math>b_2</math> であるといい、 :<math>\lim_{x\to a_2+0}f(x)=b_2</math> と表す。 ここで、 :<math>a=a_1=a_2</math> かつ :<math>b=b_1=b_2</math> であるとき、すなわち<math>a</math> における左極限値と右極限値が等しいとき <math>f(x)</math> は <math>b</math> に'''収束する'''といい、<math>b</math> をそのときの<math>f(x)</math> の'''極限値'''という。このことを、 :<math>\lim_{x\to a}f(x)=b</math> と表す。 <math>x \to a</math>のとき、 <math>f(x)</math> が限りなく大きくなるならば、 <math>f(x)</math> は'''正の無限大に発散する'''といい、<math>\lim_{x\to a}f(x)= \infty</math> と書く。 <math>x \to a</math>のとき、 <math>f(x)</math> が負の値をとって、その絶対値が限りなく大きくなるならば、 <math>f(x)</math> は'''負の無限大に発散する'''といい、<math>\lim_{x\to a}f(x)= - \infty</math> と書く。 xを限りなく大きくするとf(x)がある値aに限りなく近づくとき :<math>\lim_{x\to \infty}f(x)= a</math> と、xを負の値をとりながら限りなく絶対値を大きくするとf(x)がある値aに限りなく近づくとき、 :<math>\lim_{x\to -\infty}f(x)= a</math> と書き、それぞれ正の無限大における極限値、負の無限大における極限値という。 ==== 関数の連続性 ==== ある関数 <math>f(x)</math> が定義域内の点 <math>a</math> で連続(れんぞく)であるとは、 その関数<math>f(x)</math>のグラフが<math>x=a</math>の近傍で途切れることなく続いていることを意味する。数式で表すと次のようになる。 :<math>\lim_{x\to a}f(x)=f(a)</math> であることをいう。また、ある区間で <math>f(x)</math> が連続であるとは、区間内のすべての点で連続であることをいう。 くどいかもしれないが、上式は左辺の極限値が存在して、かつ右辺と一致するということを意味する。左辺の極限値が存在しない場合はf(x)は連続ではない。 ==== 三角関数と極限 ==== 三角関数については、次が成り立つことが基本的である。 :<math>\lim_{\theta\to 0}\frac{\sin \theta}{\theta}=1</math> ;証明 まず :<math>\lim_{\theta\to +0}\frac{\sin \theta}{\theta}=1</math> を示す。 半径1、中心角θの扇形を考える。後にθ→+0とするので0<θ<π/2としてよい。 扇形OABの面積は、θ/2となる。 また、三角形OABを考えると、その面積は :<math>\frac{\sin \theta}{2}</math> となる。 さらに、点Aを通る辺OAの垂線と、半直線OBとの交点をB'とすると、三角形OAB'の面積は、 :<math>\frac{\tan \theta}{2}</math> となる。 ここで、図から明らかに、面積について以下の不等式が成り立つ。 [三角形OAB]<[扇形OAB]<[三角形OAB'] 即ち :<math>0< \frac{\sin \theta}{2} < \frac{\theta}{2} < \frac{\tan \theta}{2}</math> :0<sinθ<θ<tanθ 逆数をとって各辺にsinθを掛けると、 :<math>\cos \theta < \frac{\sin \theta}{\theta} < 1</math> いま、 :<math>\lim_{\theta\to +0}\cos \theta=1</math> より、はさみうちの原理から、 :<math>\lim_{\theta\to +0}\frac{\sin \theta}{\theta}=1</math> が示された。 また、θ<0のときは、 :<math>\frac{\sin \theta}{\theta}=\frac{-\sin \theta}{-\theta}=\frac{\sin (-\theta)}{-\theta}</math> を考えると、いま-θ>0であり、かつθ→-0のとき-θ→+0であるから、上の結果を使うことができて、これにより、 :<math>\lim_{\theta\to -0}\frac{\sin \theta}{\theta}=\lim_{-\theta\to +0}\frac{\sin (-\theta)}{-\theta}=1</math> となる。以上より、 :<math>\lim_{\theta\to 0}\frac{\sin \theta}{\theta}=1</math> が成り立つ。■ ==== 指数・対数関数と極限 ==== 指数・対数関数に関して、次が成り立つ :a>1のとき、<math>\lim_{x\to\infty}a^x=\infty,\lim_{x\to-\infty}a^x=0</math> :0<a<1のとき、<math>\lim_{x\to\infty}a^x=0,\lim_{x\to-\infty}a^x=\infty</math> :a>1のとき、<math>\lim_{x\to\infty}\log_ax=\infty,\lim_{x\to+0}\log_ax=-\infty</math> :0<a<1のとき、<math>\lim_{x\to\infty}\log_ax=-\infty,\lim_{x\to+0}\log_ax=\infty</math> また、自然対数は[[高等学校数学III/微分法]]で導入されるが、自然対数については、次が成り立つ。 :<math>\lim_{x\to0}\frac{\log(1+x)}{x}=1</math> ;証明 [[w:ネピア数]]<math>e</math>の定義より、<math>\lim_{n\to\infty}(1+\frac{1}{n})^n=e</math>。これの両辺の自然対数をとって<math>\lim_{n\to\infty}n\log(1+\frac{1}{n})=\log e=1</math>。ここで、<math>x=\frac{1}{n}</math>とすると、<math>n\to\infty</math>で<math>x\to0</math>なので、<math>\lim_{x\to0}\frac{\log(1+x)}{x}=1</math>となる。■ また、これを用いてネピア数<math>e</math>については、次が導かれる。 :<math>\lim_{x\to 0}\frac{e^x-1}{x}=1</math> ;証明 <math>\lim_{x\to0}\frac{\log(1+x)}{x}=1</math>の関係式で、<math>e^t=1+x</math>とおくと、<math>x\to0</math>のときに<math>t\to0</math>となり、<math>\frac{\log(e^t)}{e^t-1}=\frac{t}{e^t-1}\to1(t\to0)</math>。 両辺の逆数をとり、tをxに書き換えると、 <math>\lim_{x\to 0}\frac{e^x-1}{x}=1</math>となる。■ == 演習問題 == 次の極限を求めよ # <math> \lim_{x\to 0} \frac{\tan x}{x}</math> # <math> \lim_{x\to 0} \frac{1 - \cos x}{x^2}</math> # <math> \lim_{x\to 0} \frac{e^{3x}-1}{x}</math> * [[高等学校数学III 極限 演習A|演習問題A]] * [[高等学校数学III 極限 演習B|演習問題B]] == [コラム]よく有る疑問とその回答 == === 極限値の実在 === ここでは、上述のような極限の説明に「なんかウサンクサイ」と思う生徒を対象に、そのような疑問に少しでも応えることを目標とする。よって、そのような疑問を持たない生徒が読んでも、あまり意味はない。 疑問を抱いた諸君、諸君の疑問はいたって正当である。あまりこのようなことを大っぴらに書くべきではないかもしれないが、高等学校における極限の取り扱いは「子供だまし」であり、近代以降の数学では極限という概念はもっと厳密な形で取り扱われている。しかしその内容は高校生には少し難しいし、詳しい書籍はほかにも存在する(wikibooksでも[[解析学基礎]]にある程度の記述がある)。そこでここでは、高校の教科書のように「子供だまし」をするのではなく、かといって厳密な形で議論するのでもなく、諸君を納得させられるかもしれない答えを提示したい。 さて改めて、極限値という概念に次のような疑問を持つ生徒はいないだろうか。 :「限りなくその値に近づけるというだけで、決してイコールには成らないハズだ。そのようなものを考えるのはナンセンスだ。」 ここでは、この問いに対するひとつの解答例を示したいと思う。分り易さを重視しているので厳密では無いが、ひとつの考え方の例として読んでもらいたい。 分数関数 <math>f(x) = 1/x</math> を考える。この関数の正の無限大における極限値は<math>0</math>である。 数式で書くならば以下の通りである。 :<math>\lim_{x\to \infty} f(x)=0</math> ここで敢えて、この数式には極々小さな正の誤差が紛れ込んでいる、と考える。 <math>x</math>が限りなく無限大に近づいたとしても、<math>f(x)</math>は絶対にx軸とは交わらず、漸近的に近づいていくだけであるため、無限大であっても等号が成り立つはずは無いからである。 そこで、極限という概念で考えるのではなく、直接<math>f(x)</math>に無限大を代入した値を誤差として考える。 (この時、この代入の不可能性については考えないものとする。) 当然ながら、この誤差の大きさは、<math>1/\infty</math>という大きさになるのだが、この大きさは一体どのようなものだろうか? そもそもこの誤差の値は、実数であるかどうかすらも怪しい。何故なら、そもそも無限大という数自体が実数とは思えない性質を持っているからだ。 無限大というのは、どの実数よりも大きい数という定義である。この時点ですでに実数の定義からハズレている事がよくわかるだろう。 実数にこの無限大という数が含まれるのであれば、無限大は無限大より大きい、という矛盾が生まれる。 ゆえに、無限大は実数と言う枠組みから外し、実数でない未知の数であると考えるべきだろう。 さて、この未知の数の逆数である<math>1/\infty</math>はどういう値なのだろうか。当然ながら、これも未知の数であると言わざるを得ない。 無限大の定義より、<math>1/\infty</math>はどの正の実数よりも小さい正の数、という定義になり、無限大の時と同様に、実数でないことが証明できる。 なお、この数は一般に無限小と呼ばれ、実数に無限小と無限大という概念を加えた数を「超実数」と呼ぶ。 さて、この無限小という誤差を実数としてみるとどう見えるだろうか? 無限小はどのような正の実数よりも小さい、というのだから、実数から見たら見かけ上<math>0</math>に見えるだろう。 そのような視点で考えているのが極限値というものである。 もう少し踏み込んで、値域を実数とする<math>f(x)</math>の値として、無限小という非実数値が出現した、という事実をどう考えるべきだろうか? その問いに対しての極限値という概念の答えは、「強引に実数に変換する」という手法なのである。 値域を実数とする関数に、非実数をいきなり登場させるわけにはいかない、というのは誰にでもわかることだろう。 其の様な問題に対して考えられる答えは「関数の値域そのものを超実数に拡張する」又は「超実数を実数に変換して、値域を実数として保つ」というものだ。 極限(lim)と言う操作・概念はこの二つの答えの内、後者の答えを選んだものとなる。 limという記号には、<math>f(x)</math>に<math>x=a\pm1/\infty</math>をそれぞれ代入した数を計算し、その値から無限小を無視して、超実数を実数に変換するという意味合いが有る。 実数という数から見れば、無限小など全く意味の無い数であることから、等式が成り立つ、と解釈できるのである。 前者の答えを選んだ学問は超準解析と呼ばれるが、これは易しい学問ではなく、高校で教えるのには向かない。 ==== 無限大と無限小の実在について ==== 少し話をかえて、「無限大」「無限小」というモノ自体の実在について考えてみる。 上の説明では「無限大」というモノが、実数でないので何だかわからないのだが、とにかくある、という前提で話を進めてきた。ここに疑問を感じた生徒もいるかもしれない。そのような生徒に向けて、さらに補足説明する。 上でも述べたが、「超準解析」という学問においては、無限大・無限小は実体のあるものであり、数学的に厳密に取り扱われる。しかし、無限大・無限小を数学的に厳密に取り扱う事は非常に難しく、歴史的にも20世紀後半にようやく確立されたほどであった。つまり普通、数学においては無限大・無限小といったものを表に出して扱わないのである。この教科書の本文をもう一度見直してほしい。このコラムにおいて用いている「無限大に近づける(近づく)」といった表現はなく「限りなく大きくする」という表現を用いているはずである。荒っぽく言えば、「∞」は単体では意味を持たない記号であり、「<math>\lim_{x \to \infty}</math>」のような特定の文脈を与えられて初めて意味を持つ「状態を表す記号」なのである。なんらかの数を表すものではない、という事に注意してほしい。この「<math>\lim_{x \to \infty}</math>」はひと固まりで初めて意味を持つ記号であり、「xを」「∞に」「近づける」と分解するようなことはナンセンスだ、とも言える。 では、このコラムにおける説明はなんだったのか。実はこれは説明の方便である。はじめに述べたように、厳密な記述は難しいのであえて厳密でない書き方をしている。近代的な(非超準解析的な)立場の極限の取り扱い方は、実質的にはこのコラムの内容と同じことを、∞を表に出さず巧妙に表現したものである。 === 三角関数の極限の証明について === 本文の[[#三角関数と極限]]で示されている :<math>\lim_{\theta\to 0}\frac{\sin \theta}{\theta}=1</math> という式について、上で示した証明は、「[[w:循環論法]]になっていて証明になっていない」と言われることがある。それはどういうことか、興味がある人のために解説を加えておく。 さてここで、どのように「循環論法」が形成されているのかはっきりさせておこう。 :<math>\lim_{\theta\to 0}\frac{\sin \theta}{\theta}=1</math> を示す過程で扇形の面積を利用している←扇形の面積を求めるには三角関数の積分が必要である←三角関数を積分するには三角関数の微分が必要である←三角関数を微分するには <math>\lim_{\theta\to 0}\frac{\sin \theta}{\theta}=1</math> という結果が必要である←…… 論理が循環している構造が分かっただろうか。「極限を求めるために、その極限を利用している」と言ってもいいだろう。 現代の数学では、もちろんこの循環論法は回避できる。もっと言えば、高校数学(新課程)の範囲内でよりよい証明を示すこともできる。しかしそれは今学んでいるより後に学習する内容を利用することにもなり、少々複雑である。 高校数学の目的は完全な論理を組み立てることではなく、むしろ数学の、高校内容の中での体系的な理解を目的としている。このような理由から、現在多くの教科書に上と同様の証明が掲載されていると考えられるし、WIKIBOOKSもこれに倣った。 しかしここでは興味のある諸君のために、「高校内容の範囲(新課程)でのよりよい証明」を示しておこう。面積を利用することは避けて、円弧の長さから問題の極限の値を導いてみよう。ただし、数学IIIの微分、積分(新課程のみの内容も含む)の内容を利用する。 まずは、「ラジアンとは何か」を考え直してみよう。というのも、ラジアンの定義には円弧の長さを利用したが、現代の数学では「[[w:弧長|w:曲線の長さ]]」も定義なしには扱えないからである。つまりわれわれは、円弧の長さを数学的に定義すればよいということだ。このあとの積分の単元(新課程)で学習することになるが、区間''a''≦''x''≦''b''で自身と導関数がともに連続である関数''f'' について、''y'' =''f'' (''x'' )(''a''≦''x''≦''b'')で表される曲線''C'' の長さは、次の式で求められる。(証明は該当ページ参照 ※2014/02/08時点でWIKIBOOKS内では未作成) :<math>\int_{a}^{b} \sqrt{1+\left\{f'(x)\right\}^2}\, dx</math> ここで、''f'' (''x'' )を半円弧<math>\sqrt{1-x^2}(-1\le x\le 1)</math>とすると、円弧の長さを計算できる。ただし、積分区間に''x'' =-1もしくは''x'' =1を含めると具合が悪いので(被積分関数が値を持たない(極限は正の無限大))、積分区間を<math>-\frac{1}{\sqrt2}\le x\le\frac{1}{\sqrt2}</math>としたものを四分円弧の長さとし、円の対称性から円弧一周の長さを決定するとよいとだけ補足しておく。 さて、これでようやく円弧の長さを定義できたので、ラジアンも定義することができる。いよいよ問題の極限の値を求めてみよう。そのために一般的に、再び区間''a''≦''x''≦''b''で自身とその導関数がともに連続である関数''f'' について、''y'' =''f'' (''x'' )(''a''≦''x''≦''b'')で表される曲線''C'' を考えよう。ここで、''a''≦''x''≦''b'', ''a''≦''x''+Δ''x''≦''b'', Δ''x''≠0を満たすように''x'' およびΔ''x''をとる。また、曲線''C''上に2点P(''x'',''f'' (''x'' )),Q(''x'' +Δ''x'',''f'' (''x'' +Δ''x'' ))をとる。いま曲線PQの長さを<math>\widehat{\mathrm{P}\mathrm{Q}}</math>、直線PQの長さをPQで表すこととすると、 :<math>\lim_{\Delta x \to0}\frac{\mathrm{P}\mathrm{Q}}{\widehat{\mathrm{P}\mathrm{Q}}}=1</math> が成り立つことを示そう。 ;証明 [[w:平均値の定理]]により、 :<math>\mathrm{P}\mathrm{Q}=\sqrt{(\Delta x)^2+\left\{f(x+\Delta x)-f(x)\right\}^2}=\sqrt{1+\left\{f'(x+\theta \Delta x)\right\}^2}|\Delta x|\ (0<\theta<1)</math> を満たす実数θが存在する。また、<math>\widehat{\mathrm{P}\mathrm{Q}}</math>を先述の式により定積分で表すと、 :<math>\widehat{\mathrm{P}\mathrm{Q}}=\left|\int_{x}^{x+\Delta x} \sqrt{1+\left\{f'(t)\right\}^2}\, dt\right|</math> であり、ここで、<math>\sqrt{1+\left\{f'(x)\right\}^2}</math>が、<math>x=x+\theta_M\Delta x,x+\theta_m\Delta x</math> (0≦θ<sub>''M''</sub>≦1, 0≦θ<sub>''m''</sub>≦1)でそれぞれ''x''から''x'' +Δ''x''の間での最大値、最小値をとるとすると、''x''から''x'' +Δ''x''の間の任意の実数''t'' に対して、 :<math>0<\sqrt{1+\left\{f'(x+\theta_m\Delta x)\right\}^2}\le\sqrt{1+\left\{f'(t)\right\}^2}\le\sqrt{1+\left\{f'(x+\theta_M\Delta x)\right\}^2}</math> が成り立つ。各辺''x'' から''x'' +Δ''x''まで積分することにより、 :<math>0<\sqrt{1+\left\{f'(x+\theta_m \Delta x)\right\}^2}|\Delta x|\le \widehat{\mathrm{P}\mathrm{Q}}=\left|\int_{x}^{x+\Delta x} \sqrt{1+\left\{f'(t)\right\}^2}\, dt\right|\le\sqrt{1+\left\{f'(x+\theta_M \Delta x)\right\}^2}|\Delta x|</math> を得る。よって :<math>\frac{\sqrt{1+\left\{f'(x+\theta \Delta x)\right\}^2}}{\sqrt{1+\left\{f'(x+\theta_M \Delta x)\right\}^2}}\le\frac{\mathrm{P}\mathrm{Q}}{\widehat{\mathrm{P}\mathrm{Q}}}\le\frac{\sqrt{1+\left\{f'(x+\theta \Delta x)\right\}^2}}{\sqrt{1+\left\{f'(x+\theta_m \Delta x)\right\}^2}}</math> ここで、 :<math>\lim_{\Delta x \to0}\frac{\sqrt{1+\left\{f'(x+\theta \Delta x)\right\}^2}}{\sqrt{1+\left\{f'(x+\theta_M \Delta x)\right\}^2}}=\lim_{\Delta x \to0}\frac{\sqrt{1+\left\{f'(x+\theta \Delta x)\right\}^2}}{\sqrt{1+\left\{f'(x+\theta_m \Delta x)\right\}^2}}=1</math> より、はさみうちの原理から、 :<math>\lim_{\Delta x \to0}\frac{\mathrm{P}\mathrm{Q}}{\widehat{\mathrm{P}\mathrm{Q}}}=1</math> ■ さて、今度こそ問題の極限を求めてみよう。 ;証明 本文と同様にθ>0をまず考える。 :<math>f(x)=\sqrt{1-x^2}\ (-1\le x\le1)</math> として、''y'' =''f'' (''x'' )上の''x''座標が''x''である点をP,''x''+Δ''x''である点をQとし、 :<math>\angle \mathrm{P}\mathrm{O}\mathrm{Q}=2\theta\ \mathrm{r}\mathrm{a}\mathrm{d}</math> (ただしOは原点) とする。すると、ラジアンの定義より、<math>\widehat{\mathrm{P}\mathrm{Q}}=2\theta</math> となり、また図形的考察によりPQ=2sinθであることが分かる(Oから弦PQに垂線を下ろすと分かりやすい)。ここで :<math>\lim_{\Delta x \to0}\frac{\mathrm{P}\mathrm{Q}}{\widehat{\mathrm{P}\mathrm{Q}}}</math> を考えると、Δ''x''→0のとき、θ→+0であるから、上で証明したことを用いると、 :<math>\lim_{\Delta x \to0}\frac{\mathrm{P}\mathrm{Q}}{\widehat{\mathrm{P}\mathrm{Q}}}=\lim_{\theta \to+0}\frac{2\sin \theta}{2\theta}=\lim_{\theta \to+0}\frac{\sin \theta}{\theta}=1</math> θ<0のときは本文と同様である。以上より、循環論法に陥ることなく、 :<math>\lim_{\theta \to0}\frac{\sin \theta}{\theta}=1</math> が示された。■ このように、この循環論法を避けるのは少々難しい。循環論法を避けるために三角関数の微積分を後回しにして、この証明のための道具が揃うまで話を進めるのはこと「学習/教育」においてはどう考えても非効率的で、そのような回り道をするのは本末転倒である。ということで、「循環論法」と聞いて教科書に不信感を抱いた君も、ここまで読めば致し方ないことに納得してもらえたと思う。 ところでこの循環論法を避ける方法はこれだけではない。sin''x''及びcos''x''を''x''の非負整数乗の無限級数で定義する方法や、[[w:微分方程式]]を用いて定義する方法などが考えられるが、前者は少なくとも教科書に載せるには向かないし、後者はどう考えても高校範囲外である。ここで解説することはしないが、興味があれば次に示す参考文献を読んでみるといいかもしれない。 * 「三角関数の研究」山口格、http://eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace/bitstream/2115/13556/1/7_p1-23.pdf (PDF)(ここまでに示した循環論法を避ける3つの方法の解説と、その周辺の三角関数の話題) * 「循環論法で証明になっていない」川中宣明、http://sci-tech.ksc.kwansei.ac.jp/~kawanaka/sinx.pdf (PDF)(この問題の全体的な解説と、sin''x''及びcos''x''を''x''の非負整数乗の無限級数で定義する方法の簡単な紹介) それにしてもこのコラムをここまで読み進めた君の好奇心は大したものである。君の成長を期待している。 {{stub}} {{DEFAULTSORT:こうとうかつこうすうかくIII きよくけん}} [[Category:高等学校数学III|きよくけん]] n1kx8zqo8wn8kqbvt733mgq9ef6v10w JavaScript/ビット演算 0 4067 205528 205503 2022-07-19T12:28:59Z Ef3 694 語尾の統一 wikitext text/x-wiki {{Nav}} :<small>[[JavaScript]] > '''ビット演算''' </small> == ビット演算 == {{Wikipedia|ビット演算}} JavaScriptには、2進数(ビットパターン)を操作するためのビット演算子が用意されています。これらの演算子は、他の演算子ほど頻繁に使用されるものではないので、必要ない場合はこのセクションを読み飛ばしてもかまわないです。 === ビット演算 === JavaScriptはビット(二値)演算をサポートしています。 * & ビットごとのAND(論理積) * | ビットごとのOR(論理和) * ^ ビットごとの排他的 OR(排他的論理和) * << 左シフト * >> 右シフト * >>> 符号なし右シフト演算子 * ~ 1の補数を得る また、次の様な複合代入演算子も用意されている * &= ビットごとのAND演算をして代入 * |= ビットごとのOR演算をして代入 * ^= ビットごとの排他的ORをして代入 * >>= 右シフトして代入 * <<= 左シフトして代入 * >>>= 符号なし右シフト演算子 JavaScriptでビット演算を行ううえで注意すべきことは、ビット演算を行う前にNumber型の値が32ビット整数に強制変換されるということです。 これは、JavaScriptの数値型は倍精度浮動小数点型(64ビットFloat)で、仮数部が53ビットであり、それ以下で最大の2の冪乗が32ビットという理由からです。 === 2進法の表記法 === コンピューターは、その回路構成を単純にするため通常内部的に2進法を用いているため、2進数で計算できるものはこちらで計算した方が高速に動作するため、通常こちらを利用します。 二進法とは、10進法とは違い2の倍数で桁上げを行う数の表記法です。理解のために、10進法と、2進、での数の表記の対応表、さらに8進法」、16進法の表記を載せます。 {| class="wikitable" |+ 異なる基数での整数リテラル表記 |- align="right" ! 10進法 | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20 |- align="right" ! 2進法 | 0b0 | 0b1 | 0b10 | 0b11 | 0b100 | 0b101 | 0b110 | 0b111 | 0b1000 | 0b1001 | 0b1010 | 0b1011 | 0b1100 | 0b1101 | 0b1110 | 0b1111 | 0b10000 | 0b10001 | 0b10010 | 0b10011 | 0b10100 |- align="right" ! 8進法 | 0o0 | 0o1 | 0o2 | 0o3 | 0o4 | 0o5 | 0o6 | 0o7 | 0o10 | 0o11 | 0o12 | 0o13 | 0o14 | 0o15 | 0o16 | 0o17 | 0o20 | 0o21 | 0o22 | 0o23 | 0o24 |- align="right" ! 16進法 | 0x0 | 0x1 | 0x2 | 0x3 | 0x4 | 0x5 | 0x6 | 0x7 | 0x8 | 0x9 | 0xa | 0xb | 0xc | 0xd | 0xe | 0xf | 0x10 | 0x11 | 0x12 | 0x13 | 0x14 |} {{See also|w:二進記数法}} 2進法は、小さな数でも桁数が多いため、記述を短く簡単に抑えるため通常は16進法を使って記述を行う。 16進法では、9を超える数には順にa,b,c,d,e,fと記号を振ってあり1~15までを一桁で表せます。 16進法を使用する場合には、数字の前に0xを付けて表記します。 過去のJavaScriptの標準仕様で、C言語と同じ 0 を前置する8進法表記が可能であるがECMA-262第3版で削除された。 その後、ECMA-262第6版で 0b (または 0B)を前置する2進法表記とともに 0o (または 0O)を前置する8進法表記で復活した。 {{See also|JavaScript/数値#整数|w:十六進法}} === 補数 === 補数とは2進法で、負の値を表現するための非常に巧みな方法であるが、アセンブラでのプログラム等非常に低レベルでのプログラミング以外で実際に使用される事は稀です。 簡単のため、この項の解説はあえて省略をします。 {{See also|w:補数}} === ビットシフト === ビットシフトとは、2進数のビットをそのまま、右側、または左側にずらすことを言う。空いたビットには0が埋められます。 これは実質、2の倍数の乗算、余算に等しい。ただし、こちらの方が高速に動作します。 <nowiki> 1 << 2; // 1が2ビット左シフトするため、2進数で「100」つまり4が返る 0xd >> 2; // 10進法では13。2進法で「1101」これを右シフトして2進数で「11」、つまり10進法の3が返る </nowiki> JavaScriptではビットシフトを行っても正負の記号は保存されます。 しかし、符号なし右シフト演算子(>>>)を使った場合にはこの結果は異なります。 <nowiki> -10 >> 1; // -5が返る -10 >>> 1; // 2147483643が返る </nowiki> これは、先頭にある正負の記号を表すビットもシフトさせるためです。 === 論理演算 === 実際には、ビット積とビット和を使用することが多いのでこちらに解説の重点を置く。 論理積を例に挙げます。 論理積の結果を表に表すと次の様になっています。 {| class="wikitable" |- align="center" ! 命題P ! 命題Q ! P & Q |- align="center" | 1 | 1 | 1 |- align="center" | 1 | 0 | 0 |- align="center" | 0 | 1 | 0 |- align="center" | 0 | 0 | 0 |} 論理積の演算子は"&"であるから、実際の演算を行うと次の様になります。 <nowiki> 1 & 1; // 1が返る 1 & 0; // 0が返る 0 & 1; // 0が返る 0 & 0; // 0が返る </nowiki> 同じように、論理和、排他的論理和の計算結果を挙げると次の様になっています。 <nowiki> // 論理和の演算 1 | 1; // 1が返る 1 | 0; // 1が返る 0 | 1; // 1が返る 0 | 0; // 0が返る // 排他的論理和の演算 1 ^ 1; // 0が返る 1 ^ 0; // 1が返る 0 ^ 1; // 1が返る 0 ^ 0; // 0が返る </nowiki> {{See also|w:ブール代数|w:ビット演算}} これらの演算はビットごとに行われるため、通常の四則演算とは違った考え方で結果を捉える必要があります。 例として10進数で7を挙げます、これを2進数に直すと、「111」となります。 同じように2も2進数では「10」と表記されるため、このビット積「7&2」は、ビットごとの計算が行われるため次の様になります。 {| class="wikitable" |- align="center" ! 数字 ! 3ビット目 ! 2ビット目 ! 1ビット目 |- align="center" ! 7 | 1 | 1 | 1 |- align="center" ! 2 | 0 | 1 | 0 |- align="center" ! 5 | 0 | 1 | 0 |} <nowiki> 7 & 2; // 2進数では111 & 010 、この結果は2進数で「010」なので「2」である </nowiki> この性質を利用すればビット積で末尾1ビットを残すことで、奇数、偶数の判別が可能です。 この様にして必要なビットのみを取り出す操作を[[w:ビットマスク|ビットマスク]]と呼ぶ。 <nowiki> num & 1; // 1なら奇数、0なら偶数 </nowiki> 0となった値を1にするにはビット和を利用します。 <nowiki> 10 | 13; // 2進数では、1010 | 1101であるから、結果は「1111」、つまり15が返る</nowiki> 2進法よりも簡潔な記述を行うため、実際のコードでは次の様に16進法で記述を行う。 <nowiki> 0xa | 0xd; // 0xfが返る</nowiki> この仕掛けを利用すれば、一つの数字データに複数のデータを格納できる事に気づく。 例えば、コンピュータ内部で色を扱う場合の例で、数値型データの中から、32ビットの数値を8ビットごとに区切ってそれぞれ、赤、緑、青、透明度を格納しています。 (これをARGB系と呼んでいます) 取り出す場合には、次の様にコードを記述します。色を一つの数字型にまとめて格納することが出来ます。 <source lang="javascript"> /** * ビットデータを、色を含んだ構造体に変更する */ function getColor( color ){ return { r:(color & 0xff000000) >> 24, // Red g:(color & 0xff0000) >> 16, // Green b:(color & 0xff00) >> 8, // Blue a:color & 0xff // Alpha }; } getColor( color ).r; // 赤を取り出し </source> 実際にはビット演算には他にも数多くのテクニックが存在するが、今回のその解説は省略した。 JavaScriptでのプログラミングでは、スクリプトの評価の方が処理時間をとっているためC言語等の様に高速化手法としては使われないです。 そのため、InternetExplolerでActiveXオブジェクトとのデータのやりとりなど、他の言語環境とのデータのやり取りに使われることもあるが、実際にこれらの演算手法を使う機会は他の言語より少ないです。 基本的には、配列などの他の方法を使うよりこちらの方が鮮やかに記述できる場合に利用すべきです。 {{コラム|世界最初のコンピューターは二進法でない!?| 世界最初のコンピューターとして現在知られているENIAC(エニアック)は、10進数([[w:3増し符号|3増し符号]])での計算方法を行っています。 しかし、現在の計算機では2進数で計算を行っています。 この変化は実際にかなり早い時期におこっており、1946年のENIACの登場の後に、2進数での設計の方が回路構成が単純になるという論文が登場しており、後継の1951年のEDVAC(エドバック)では既に2進数での計算に移っています。 {{Main|w:ENIAC}} }} {{NavNav}} [[Category:JavaScript|ひつとえんさん]] 5a6pso1zja45mwt0si0msanfhjzvx8y 民法第21条 0 5247 205542 192777 2022-07-19T20:35:56Z Rhkmk 66092 /* 参考文献 */ wikitext text/x-wiki [[法学]]>[[民事法]]>[[民法]]>[[コンメンタール民法]]>[[第1編 総則 (コンメンタール民法)]] ==条文== ([[w:制限行為能力者|制限能力者]]の詐術) ;第21条 : 制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いたときは、その行為を取り消すことができない。 ==解説== まず、行為能力者であることを信じさせる目的が制限行為能力者にあったことが必要である。 次に、詐術を用いることが必要である。詐術を用いたとされる場合としては、偽証をした場合が典型的であるが、単に自分が制限能力者ではないと告げた場合も詐術を用いたと認定される場合もある。 この規定があるのは、制限行為能力者自身の帰責も大きいことと、相手方の保護も必要であるからである。つまり、相手方が詐術により、制限行為能力者が行為能力者であることを信じることなども、本条の効果発生のための要件とされる。 取り消すことができないのは、制限行為能力者の法定代理人についても同様と解されている。 従来、この規定は[[民法第20条]]に存在したが、[[w:2004年|2004年]](平成16年)の民法改正により、前後の条文の整理がなされたため、改正後は、民法第21条に移転したものである。 ==関連条文== *[[民法第96条]](詐欺又は強迫) *[[民法第120条]](取消権者) ==関連判例== *大判昭2年5月24日民集6巻283頁 *[http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=55084&hanreiKbn=02 土地所有権移転登記抹消登記手続請求] (最高裁判例 昭和44年02月13日) *[](最高裁判例 ) ==参考文献== *[[w:我妻栄|我妻栄]]『新訂民法総則』(岩波書店、1965年)92頁 *[[w:四宮和夫|四宮和夫]]『民法総則(第4版補正版)』(法律学講座双書)(弘文堂、1996年)58頁 -------- {{前後 |[[民法]] |[[第1編 総則 (コンメンタール民法)|第1編 総則]]<br> [[第1編 総則 (コンメンタール民法)#第2章 人 (第3条~第32条の2)|第2章 人]]<br> [[第1編 総則 (コンメンタール民法)#2-3|第3節 行為能力]] |[[民法第20条]]<br>(制限行為能力者の相手方の催告権) |[[第1編 総則 (コンメンタール民法)#第4節 住所(第22条~第24条)|第4節 住所]]<br>[[民法第22条]]<br>(住所) }} {{stub}} [[category:民法|021]] bqyvyrravlv8422gq82c14eys9bimyb Ruby 0 6662 205551 205481 2022-07-20T02:47:20Z Ef3 694 /* 包含と継承 */ [[JavaScript/クラス#包含と継承]]を、Rubyに移植しました。 wikitext text/x-wiki {{Pathnav|メインページ|工学|情報技術|プログラミング|frame=1}} {{Wikipedia}} 本書は、[[w:Ruby|Ruby]]のチュートリアルです。 Rubyは、比較的習得が容易なオブジェクト指向スクリプティング言語です。 [[w:まつもとゆきひろ|まつもとゆきひろ]]によって開発されました。 [[Ruby on Rails]]の記述言語として選ばれたことで有名になりましたが、ウェブアプリケーション以外にもシステム管理やネットワークアプリケーションなどさまざまな用途に用いられます。 __TOC__ == 準備 == === rubyインタープリターの準備 === まずはrubyインタープリターを用意しましょう<ref>インタープリターを <code>ruby</code>、スクリプティング言語を <code>Ruby</code> とかき分けます。</ref>。 インタープリターとは、あなたが書いたスクリプトを読んでそれを実行してくれるソフトウェアです。 [https://www.ruby-lang.org/ja/ Ruby公式サイト]の「[https://www.ruby-lang.org/ja/downloads/ ダウンロード]」ページから、 それぞれの環境に合ったインタープリターをダウンロードして下さい。 具体的なインストール手順は環境によって違うので、「[https://www.ruby-lang.org/ja/documentation/installation/ Rubyのインストール]」を参照して下さい。 準備ができたら、試しにコマンドラインからインタープリターを呼び出してみましょう。 ;バージョンを確かめる:<syntaxhighlight lang="console"> % ruby --version ruby 3.1.2p20 (2022-04-12 revision 4491bb740a) [x86_64-linux-gnu] </syntaxhighlight> 環境によってバージョンが異なると思います。 2022年6月現在、ruby-1.x は全てEoL(End-of-Life;サポート終了)、 ruby-2.x は 2.7 がセキュリティメンテナンス、それ以外はEOL、 ruby-3.x は 3.0 - 3.1 がノーマルメンテナンス、3.2 がプレビューです<ref>[https://www.ruby-lang.org/en/downloads/branches/ Ruby Maintenance Branches]</ref>。 もしご自身の環境の ruby のバージョンが既にサポート終了しているのであれば、サポートされているバージョンへのアップデートを検討してください。 本書では ruby-2.7 以降を想定しています。 ;ミススペルすると:<syntaxhighlight lang="console"> % ruby --vertion ruby: invalid option --vertion (-h will show valid options) (RuntimeError) </syntaxhighlight> versionの綴りが違うとこの様なメッセーが出ます。案内に従って <code>ruby -h</code> を実行してみましょう。 ;コマンドラインオプションの説明:<syntaxhighlight lang="console"> % ruby -h Usage: ruby [switches] [--] [programfile] [arguments] -0[octal] specify record separator (\0, if no argument) -a autosplit mode with -n or -p (splits $_ into $F) -c check syntax only -Cdirectory cd to directory before executing your script -d set debugging flags (set $DEBUG to true) -e 'command' one line of script. Several -e's allowed. Omit [programfile] -Eex[:in] specify the default external and internal character encodings -Fpattern split() pattern for autosplit (-a) -i[extension] edit ARGV files in place (make backup if extension supplied) -Idirectory specify $LOAD_PATH directory (may be used more than once) -l enable line ending processing -n assume 'while gets(); ... end' loop around your script -p assume loop like -n but print line also like sed -rlibrary require the library before executing your script -s enable some switch parsing for switches after script name -S look for the script using PATH environment variable -v print the version number, then turn on verbose mode -w turn warnings on for your script -W[level=2|:category] set warning level; 0=silence, 1=medium, 2=verbose -x[directory] strip off text before #!ruby line and perhaps cd to directory --jit enable JIT for the platform, same as --yjit (experimental) --mjit enable C compiler-based JIT compiler (experimental) --yjit enable in-process JIT compiler (experimental) -h show this message, --help for more info </syntaxhighlight> これもバージョンによって表示が違います。 <!--- 其々のコマンドラインオプションの説明は割愛しましたが、ワンライナーを書くときに役に立つ -nle など代表的な組合わせをコラム(?)で紹介すべきでしょう ---> === Hello, World! === 他の多くのチュートリアルがそうであるように、 私たちもまずはRubyの世界にあいさつすることから始めましょう。 ''hello.rb''というファイルを作り(Rubyではスクリプトファイルに''.rb''という拡張子を付けることが通例となっています)、次のように書いて保存して下さい。 ;[https://paiza.io/projects/hz-ldiAi0zhpaSqjteWLXw?language=cpp hello.rb]:<syntaxhighlight lang=ruby> puts 'Hello, World!' </syntaxhighlight> それではこのスクリプトを実行してみましょう。コマンドラインから次のようにタイプして下さい。 :<syntaxhighlight lang="console"> % ruby hello.rb Hello, World! % </syntaxhighlight> この1行のスクリプトは、メソッド<code>puts</code> に文字リテラル<code>'Hello, World!'</code>を渡し呼出しています。 <!--- https://techracho.bpsinc.jp/hachi8833/2020_11_27/26969 === 文字コード === ruby では日本語表示できますが、ソースコードの文字コードを UTF-8 に設定する必要があります。 標準的なテキストエディタなら、メニューバーにある「ファイル」のコマンド一覧に「文字コードを指定して保存」のようなコマンドがあるので、それで UTF-8 を指定して保存してください。 コード例 <syntaxhighlight lang=ruby> # hello.rb s = 'こんにちは、世界' puts s </syntaxhighlight> 実行例 こんにちは、世界 ---> == irb == irb(Interactive Ruby) は、Rubyを対話的に実行するためのコマンドシェル<ref>REPL (Read Eval Print Loop)</ref>です<ref>irb は ruby インタープリターと違いスクリプトの実行には必須なプログラムではありませんが、対話的にコードを評価出来るのが便利です。</ref>。 ;irbで 'Hello, World!':<syntaxhighlight lang="irb" line> % irb irb(main):001:0> puts "Hello, world!" Hello, world! => nil irb(main):002:0> exit % </syntaxhighlight> # シェルから irb を起動 # <code>puts "Hello, world!"</code>と入力し、エンターを押して評価しています。 # <code>Hello, world!</code> は <code>puts</code> メソッドの出力です。 # <code>=> nil</code> は、<code>puts</code> メソッドの戻値です。 # <code>exit</code> で irb を終了しています。 # シェルのプロンプトに復帰 === irbのインストール === 環境によっては、rubyインタプリターとは別にirbを追加でインストールしないと、irbは使えない場合もあります。 もし、<code>irb</code> がインストールされていないのであれば、実行環境のパッケージマネージャーで irb を検索しインストールしてください。 また、[[W:Rubygems|rubygems]] にも [https://rubygems.org/gems/irb irb のパッケージ]があるので :<syntaxhighlight lang=csh> % sudo gem install irb </syntaxhighlight> でインストールできます。 <!-- rubygems の解説も項目を改めて(?)必要 --> == 変数 == オブジェクトを変数に代入するには :<syntaxhighlight lang="ruby"> 変数名 = オブジェクト </syntaxhighlight> の様に代入演算子 <code>=</code> を使います。 ;[https://paiza.io/projects/x1_UlCeb1PtW8pG8Xi-i-g?language=ruby 変数へのオブジェクトの代入と参照]:<syntaxhighlight lang="ruby" line> a = 1 p a a = "abc" p a a = [1, 2, 3] p a b = a p b b[1] = 999 p a </syntaxhighlight> ;表示結果:<syntaxhighlight lang="text"> 1 "abc" [1, 2, 3] [1, 2, 3] [1, 999, 3] </syntaxhighlight> # 変数 <var>a</var> に整数 1 を代入 # メソッド p に <var>a</var> を引数とした呼出し #* 変数 <var>a</var> を使った参照 #* <code>1</code> が表示される # 変数 <var>a</var> に文字列 "abc" を代入 # <code>"abc"</code> が表示される # 変数 <var>a</var> に配列 [1, 2, 3] を代入 # <code>[1, 2, 3]</code> が表示される # 変数 <var>b</var> に変数 <var>a</var> が参照しているオブジェクトを代入 #* ここでは、配列 [1, 2, 3] # やはり、<code>[1, 2, 3]</code> が表示される # 変数 <var>b</var> の参照している配列の1番目の要素に 999 を代入 #* これは変数ではなく配列の要素への代入 #* 配列の先頭は0番目 # 変数 <var>a</var> を使って参照すると #* 1番目の要素が 999 に書換わって <code>[1, 999, 3]</code> となっている 代入は、オブジェクトに後から参照するための名前(変数名)をつけることに他なりません。 このため、変数の参照するオブジェクトを別の変数に代入すると「別名」を作ることになります。 {{コラム|puts メソッドと p メソッド|2= putsメソッドはオブジェクトにto_sメソッドで適用した結果を表示します。 これに対し、pメソッドはオブジェクトにinspectメソッドで適用した結果を表示します。 ;[https://paiza.io/projects/uZV53RJGbr3FKbscJc8tiw?language=ruby putsとp]:<syntaxhighlight lang="ruby"> puts "Hello, world!" p "Hello, world!" </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang=text> Hello, world! "Hello, world!" </syntaxhighlight> }} == オブジェクト == Ruby では、多くのものがオブジェクトで、オブジェクトは1つのクラスに属しています。 他のオブジェクト指向プログラミング言語では、整数や文字列などはメソッドをプリミティブとして別扱いし、 ラッパーをオブジェクトを用意することでメソッドがないことを補っていますが、 Ruby では整数や文字列など基本的なデータ型もオブジェクトでメソッドを持ちます。 === オブジェクトのクラスを調べる === オブジェクトのクラスを調べるには、 .class メソッドを使います。 <syntaxhighlight lang="irb" line> $ irb irb(main):001:0> 0.class => Integer irb(main):002:0> "abc".class => String irb(main):003:0> [1,2,3].class => Array irb(main):004:0> ({a:2, b:3, c:5, d:7}).class => Hash irb(main):005:0> (1...99).class irb(main):005:0> (1...99).class => Range </syntaxhighlight> === 全てのクラスのスーパークラス Object === Object は全てのクラスのスーパークラスです。 == 式と演算子 == 式 (expression) や演算子 (operator) について説明します。 Rubyにはい可能な演算子があります。 * 代入演算子 * 比較演算子 * 算術演算子 * ビット演算子 * 論理演算子 * 文字列演算子 * 条件(三項)演算子 * カンマ演算子 === オブジェクトとメソッド演算子 === 演算子はオブジェクトのメソッドの特殊な形で、二項演算子の場合は左辺のオブジェクトがレシーバーになります。 <pre> Object(==, ===, =~) Array(+, -, *, &, <<, <=>, ==, [], []=) Hash(==, ===, [], []=) String(%, *, +, <<, <=>, ==, =~, [], []=) Numeric(+, -, <=>) Float(+, -, *, /, %, **, ==, <, >, <=, >=, <=>) Integer(+, -, *, /, %, **, ==, <=, >=, <=>, <<, >>, [], &, |, ^, ~, **) Range(==, ===) Regexp(==, ===, =~) </pre> === 演算子の優先順位と結合方向 === 演算子には優先順位 (結合力の強さ) と結合方向があります。 a + b - c は ( a + b ) - c と同じ(加減算は左結合)。 a + b * c は a + ( b * c ) と同じ(乗除算は加減算より優先順位が高い)。 a = b = 0 は a = ( b = 0 ) と同じ(代入は右結合)。 <!-- ここに演算子の優先順位と結合方向の表を挿入します --> == 様々なクラス・オブジェクトとリテラル == Ruby では、変数に束縛することが出来るものは全てオブジェクトです。 オブジェクトは必ず1つのクラスに属しています。 全てのクラスにリテラル表現があるわけではありませんが、組込みライブラリーの主要なクラスにはリレラル表現が用意されています。 === 数値クラス === 数値クラスは整数クラスあるいは浮動小数点数クラスです。 ;[https://paiza.io/projects/Jo78O4vlCkQOar1YYB3Erg?language=ruby 数値クラス]:<syntaxhighlight lang="ruby"> p 2 + 6 p 2.0 + 6 p 2 + 6.0 p 2.0 + 6.0 p 2.class p 2.methods p 2.0.class p 2.0.methods </syntaxhighlight> ;表示結果:<syntaxhighlight lang="text"> 8 8.0 8.0 8.0 Integer [:anybits?, :nobits?, :downto, :times, :pred, :pow, :**, :<=>, :<<, :>>, :<=, :>=, :==, :===, :next, :lcm, :digits, :[], :~, :gcd, :gcdlcm, :-@, :upto, :%, :chr, :&, :*, :+, :bit_length, :inspect, :-, :/, :integer?, :even?, :odd?, :size, :succ, :<, :>, :ord, :to_int, :to_s, :to_i, :to_f, :to_r, :div, :divmod, :fdiv, :^, :coerce, :modulo, :remainder, :abs, :magnitude, :zero?, :floor, :ceil, :round, :truncate, :numerator, :|, :denominator, :rationalize, :allbits?, :dup, :arg, :real?, :+@, :rect, :polar, :real, :imaginary, :imag, :abs2, :angle, :phase, :conjugate, :rectangular, :to_c, :conj, :infinite?, :finite?, :eql?, :singleton_method_added, :quo, :clone, :i, :nonzero?, :step, :positive?, :negative?, :between?, :clamp, :singleton_class, :itself, :taint, :tainted?, :untaint, :untrust, :untrusted?, :trust, :methods, :singleton_methods, :protected_methods, :private_methods, :public_methods, :instance_variables, :instance_variable_get, :instance_variable_set, :instance_variable_defined?, :remove_instance_variable, :instance_of?, :kind_of?, :is_a?, :display, :hash, :public_send, :class, :frozen?, :tap, :then, :yield_self, :extend, :method, :public_method, :singleton_method, :define_singleton_method, :=~, :!~, :nil?, :respond_to?, :freeze, :object_id, :send, :to_enum, :enum_for, :__send__, :!, :__id__, :instance_eval, :instance_exec, :!=, :equal?] Float [:arg, :-@, :**, :<=>, :<=, :>=, :==, :===, :angle, :phase, :positive?, :nan?, :infinite?, :finite?, :next_float, :prev_float, :eql?, :%, :*, :+, :inspect, :-, :/, :<, :>, :to_int, :to_s, :to_i, :to_f, :to_r, :divmod, :fdiv, :quo, :coerce, :modulo, :abs, :magnitude, :zero?, :floor, :ceil, :round, :truncate, :numerator, :denominator, :rationalize, :negative?, :hash, :dup, :real?, :+@, :rect, :polar, :real, :imaginary, :imag, :abs2, :conjugate, :rectangular, :to_c, :conj, :integer?, :singleton_method_added, :div, :clone, :i, :remainder, :nonzero?, :step, :between?, :clamp, :singleton_class, :itself, :taint, :tainted?, :untaint, :untrust, :untrusted?, :trust, :methods, :singleton_methods, :protected_methods, :private_methods, :public_methods, :instance_variables, :instance_variable_get, :instance_variable_set, :instance_variable_defined?, :remove_instance_variable, :instance_of?, :kind_of?, :is_a?, :display, :public_send, :class, :frozen?, :tap, :then, :yield_self, :extend, :method, :public_method, :singleton_method, :define_singleton_method, :=~, :!~, :nil?, :respond_to?, :freeze, :object_id, :send, :to_enum, :enum_for, :__send__, :!, :__id__, :instance_eval, :instance_exec, :!=, :equal?] </syntaxhighlight> 浮動小数点数リテラルは、小数点以下が 0 でも 6. の様に 0 を'''省略できません'''。 === 文字列クラス === 文字列リテラルは <code>'</code> あるいは <code>"</code> で囲います。 上の例の、<code>'Hello World!'</code> が文字リテラルの一例です。 ;[https://paiza.io/projects/d-FL4g4crwTR65Uy51jWXg?language=ruby 文字列クラス]:<syntaxhighlight lang="ruby"> p "2" + "6" p "abc" * 6 p "→%d" % 6 p "2".concat "6" p "abc".class p "abc".methods </syntaxhighlight> ;表示結果:<syntaxhighlight lang="text"> "26" "abcabcabcabcabcabc" "→6" "26" String [:unicode_normalized?, :encode!, :unicode_normalize, :ascii_only?, :unicode_normalize!, :to_r, :encode, :to_c, :include?, :%, :*, :+, :unpack, :unpack1, :count, :partition, :+@, :-@, :<=>, :<<, :sum, :==, :===, :next, :=~, :[], :[]=, :empty?, :casecmp, :eql?, :insert, :casecmp?, :match?, :bytesize, :match, :next!, :succ!, :index, :upto, :replace, :rindex, :chr, :clear, :byteslice, :getbyte, :setbyte, :freeze, :scrub, :scrub!, :dump, :inspect, :intern, :upcase, :downcase, :capitalize, :swapcase, :upcase!, :undump, :length, :size, :downcase!, :succ, :swapcase!, :hex, :capitalize!, :split, :chars, :oct, :grapheme_clusters, :concat, :codepoints, :lines, :bytes, :to_str, :end_with?, :start_with?, :reverse, :reverse!, :sub, :to_s, :to_i, :to_f, :rjust, :center, :prepend, :crypt, :ord, :chomp, :strip, :to_sym, :ljust, :delete_prefix, :delete_suffix, :lstrip, :gsub, :scan, :chomp!, :sub!, :gsub!, :rstrip, :delete_prefix!, :chop, :lstrip!, :rstrip!, :chop!, :delete_suffix!, :strip!, :tr_s, :delete, :squeeze, :tr!, :tr, :delete!, :squeeze!, :each_line, :each_byte, :tr_s!, :each_codepoint, :each_grapheme_cluster, :slice, :slice!, :each_char, :encoding, :force_encoding, :b, :valid_encoding?, :rpartition, :hash, :between?, :clamp, :<=, :>=, :<, :>, :singleton_class, :dup, :itself, :taint, :tainted?, :untaint, :untrust, :untrusted?, :trust, :methods, :singleton_methods, :protected_methods, :private_methods, :public_methods, :instance_variables, :instance_variable_get, :instance_variable_set, :instance_variable_defined?, :remove_instance_variable, :instance_of?, :kind_of?, :is_a?, :display, :public_send, :class, :frozen?, :tap, :then, :yield_self, :extend, :clone, :method, :public_method, :singleton_method, :define_singleton_method, :!~, :nil?, :respond_to?, :object_id, :send, :to_enum, :enum_for, :__send__, :!, :__id__, :instance_eval, :instance_exec, :!=, :equal?] </syntaxhighlight> 文字オブジェクトの <code>+</code> 演算子は、concatメソッドの別名です。 この様に、同じ演算子でも左辺に来るオブジェクトによって行われる処理が変わります。 ==== 式展開 ==== <code>"</code> で囲んだ文字列リテラル中には <code>#{ 式 }</code>の形で式を埋込む事ができます。 <code>'</code> で囲んだ文字列リテラル中では <code>#{ 式 }</code>の形で式は展開されません。 ;[https://paiza.io/projects/Jo78O4vlCkQOar1YYB3Erg?language=ruby 文字列リテラルに式を埋込んだ例]:<syntaxhighlight lang="ruby"> </syntaxhighlight> ;表示結果:<syntaxhighlight lang="text"> </syntaxhighlight> ;[https://paiza.io/projects/7Xvz_1StHFRL0ozCvKnwMw?language=ruby 文字列リテラルに式を埋込んだ例]:<syntaxhighlight lang="ruby"> p "12 + 8 = #{12 + 8}" p %|"abc".upcase = #{"abc".upcase}| </syntaxhighlight> ;表示結果:<syntaxhighlight lang="text"> "12 + 8 = 20" "\"abc\".upcase = ABC" </syntaxhighlight> === 文字リテラル === [https://paiza.io/projects/-9rsAGNcN-m-PN_ZhffwDg?language=ruby 例] p ?a p ?字 p ?😈 p ?😈.class 実行結果 "a" "字" "😈" String === 正規表現クラスと正規表現リテラル === === 配列クラスと配列式 === === ハッシュクラスとハッシュ式 === === 範囲クラスと範囲演算子式 === 範囲演算子式は、範囲クラス(Range)のリテラルで{{code|開始 .. 終了}}の形式です。 <!--- Rangeのeachメソッドは perl 等の[[W:Foreach文|foreach文]]にあたるブロック付きメソッド呼び出しのイテレーターです。--> ;[https://paiza.io/projects/xBwKk7uZ1WKba2Ti2Qy_rQ?language=ruby Rangeオブジェクト]:<syntaxhighlight lang="ruby"> r = (0..9) p r p r.class r.each {|x| p x } </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang=text> 0..9 Range 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 </syntaxhighlight> :putsメソッドはオブジェクトにto_sメソッドで適用した結果を表示するのに対し、pメソッドはオブジェクトにinspectメソッドで適用した結果を表示します。 ;[https://paiza.io/projects/uZV53RJGbr3FKbscJc8tiw?language=ruby putsとp]:<syntaxhighlight lang="ruby"> puts "Hello, world!" p "Hello, world!" </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang=text> Hello, world! "Hello, world!" </syntaxhighlight> === シンボル === === %記法 === == メソッド == '''メソッド'''(''method'')は、処理の塊に名前を付けて再利用する仕組みです。 一般的なプログラミング言語でのサブルーチン・プロシージャあるいは命令と呼ばれるものと共通する特徴を持ちますが、'''主語'''に相当するオブジェクトがあるところが異なります。 メソッドはキーワード <code>def</code> を使って定義します。 ;[https://paiza.io/projects/gpNItFmxOxwCATYVVGX00w?language=ruby コード]:<syntaxhighlight lang="ruby" line> def hello() puts "Hell World!" end hello() self.hello() </syntaxhighlight> ;表示結果:<syntaxhighlight lang="text"> Hell World! Hell World! </syntaxhighlight> # メソッド <code>hello</code> の定義の開始 # メソッド <code>hello</code> の本体 # メソッド <code>hello</code> の定義の終了 #  # メソッド <code>hello</code> の呼出し # メソッド <code>hello</code> を <code>self</code>を明示して呼出し === 仮引数を伴ったメソッド === メソッドには、仮引数としてオブジェクトを渡すことができます。 ;[https://paiza.io/projects/G3yTvRLuEW3VEsQ1H43YMg?language=ruby 仮引数を伴ったメソッド]:<syntaxhighlight lang="ruby"> def show_sum(a, b) puts a + b end show_sum(1, 3) show_sum(5, 2) </syntaxhighlight> ;表示結果:<syntaxhighlight lang="text"> 4 7 </syntaxhighlight> === 戻り値を返すメソッド === メソッドは、戻り値としてオブジェクトを返すことができます。 ;[https://paiza.io/projects/-qE9Wq6ngZC1XPeDX8C0LA?language=ruby 戻り値を返すメソッドの例]:<syntaxhighlight lang="ruby"> def get_sum(a, b) return a + b end puts get_sum(1, 3) puts get_sum(5, 2) </syntaxhighlight> ;表示結果:<syntaxhighlight lang="text"> 4 7 </syntaxhighlight> === 変数のスコープ === メソッドの中で作られた変数のスコープはメソッドローカルです。 ;[https://paiza.io/projects/lIpUl1uIDKCop6QzwVEDSg?language=ruby 変数のスコープ]:<syntaxhighlight lang="ruby" line> a = 100 x = 99 def get_sum(a, b) x = 0 return a + b end puts [a,x] puts get_sum(1, 3) puts get_sum(5, 2) </syntaxhighlight> ;表示結果:<syntaxhighlight lang="text"> 100 99 4 7 </syntaxhighlight> : 1行目で 100 が代入された変数 a は、メソッド get_sum の仮引数 a とは関係なく 100 のまま : 2行目で 99 が代入された変数 x は、メソッド get_sum の中で 0 が代入された x とは関係なく 99 のまま この様に、メソッドの中からはメソッドの外の変数を(仮引数を介すなどの手段を取らない限り)参照出来ません。 また、メソッドをスコープとする変数をメソッドの呼出し元から参照できません。 {{コラム|Rubyと変数宣言|2= 「メソッドの中で作られた」と、やや歯切れの悪い表現ですが、Ruby では変数を「宣言」しません。 強いて言うならば、最初の代入が変数の宣言です。}} <!--- 以下は項を変えて解説が必要 グローバル変数 クラス変数 インスタンス変数 特殊変数 ---> {{コラム|メソッドの引数リストを囲む括弧の省略|2= メソッドの引数リストを囲む括弧 <code>p(</code> と <code>)</code> は、曖昧さのない場合は省略可能です。 上の例は、<code>puts(s)</code>と書く代わりに、<code>put s</code> と書く事ができます。 ;コード:<syntaxhighlight lang="ruby"> s = 'Hello World!' puts s </syntaxhighlight> ;表示結果:<syntaxhighlight lang="text"> Hello World! </syntaxhighlight> }} == クラス == === ユーザー定義クラス === ==== 都市間の大圏距離 ==== [[Go/メソッドとインターフェース]]の都市間の大圏距離を求めるメソッドを追加した例を、Rubyに移植しました。 ;[https://paiza.io/projects/Pr8BO96TMXQCuTybsTm3mg?language=ruby 都市間の大圏距離]:<syntaxhighlight lang=ruby line> class GeoCoord attr_accessor :longitude, :latitude def initialize(longitude, latitude) @longitude, @latitude = longitude, latitude end def to_s() ew, ns = "東経", "北緯" long, lat = @longitude, @latitude ew, long = "西経", -long if long < 0.0 ns, lat = "南緯", -lat if lat < 0.0 "(#{ew}: #{long}, #{ns}: #{lat})" end def distance(other) i, r = Math::PI / 180, 6371.008 Math.acos(Math.sin(@latitude * i) * Math.sin(other.latitude * i) + Math.cos(@latitude * i) * Math.cos(other.latitude * i) * Math.cos(@longitude * i - other.longitude * i)) * r end end def GeoCoord(longitude, latitude) GeoCoord.new(longitude, latitude) end Sites = { "東京駅": GeoCoord(139.7673068, 35.6809591), "シドニー・オペラハウス": GeoCoord(151.215278, -33.856778), "グリニッジ天文台": GeoCoord(-0.0014, 51.4778), } Sites.each{|name, gc| puts "#{name}: #{gc}" } keys, len = Sites.keys, Sites.size keys.each_with_index{|x, i| y = keys[(i + 1) % len] puts "#{x} - #{y}: #{Sites[x].distance(Sites[y])} [km]" } </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang=text> 東京駅: (東経: 139.7673068, 北緯: 35.6809591) シドニー・オペラハウス: (東経: 151.215278, 南緯: 33.856778) グリニッジ天文台: (西経: 0.0014, 北緯: 51.4778) 東京駅 - シドニー・オペラハウス: 7823.269299386704 [km] シドニー・オペラハウス - グリニッジ天文台: 16987.2708377249 [km] グリニッジ天文台 - 東京駅: 9560.546566490015 [km] </syntaxhighlight> ==== 包含と継承 ==== [[JavaScript/クラス#包含と継承]]を、Rubyに移植しました。 ;[https://paiza.io/projects/Zv6cp4tlI3JoV36uEQFetQ?language=ruby 包含と継承]:<syntaxhighlight lang=ruby line> class Point def initialize(x = 0, y = 0) p("Point::constructor") @x = x @y = y end def move(dx = 0, dy = 0) @x += dx @y += dy p('Point::move') self end end class Shape def initialize(x = 0, y = 0) @location = Point.new(x, y) p("Shape::constructor") end def move(x, y) @location.move(x, y) p('Shape::move') self end end class Rectangle < Shape def initialize(x = 0, y = 0, width = 0, height = 0) super(x, y) @width = width @height = height p("Rectangle::constructor") end end p("Create a Rectangle!") rct = Rectangle.new(12, 32, 100, 50) p("rct = ", rct) p('rct.instance_of?( Rectangle ) => ', rct.instance_of?(Rectangle)) p('rct.instance_of?( Shape ) => ', rct.instance_of?(Shape)) p('rct.instance_of?( Point ) => ', rct.instance_of?(Point)) rct.move(11, 21) p("rct = ", rct) rct2 = Rectangle.new(1, 2, 10, 150) p("rct = ", rct) p("rct2 = ", rct2) </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang=text> "Create a Rectangle!" "Point::constructor" "Shape::constructor" "Rectangle::constructor" "rct = " #<Rectangle:0x0000151d07d67a70 @location=#<Point:0x0000151d07d679a8 @x=12, @y=32>, @width=100, @height=50> "rct.instance_of?( Rectangle ) => " true "rct.instance_of?( Shape ) => " false "rct.instance_of?( Point ) => " false "Point::move" "Shape::move" "rct = " #<Rectangle:0x0000151d07d67a70 @location=#<Point:0x0000151d07d679a8 @x=23, @y=53>, @width=100, @height=50> "Point::constructor" "Shape::constructor" "Rectangle::constructor" "rct = " #<Rectangle:0x0000151d07d67a70 @location=#<Point:0x0000151d07d679a8 @x=23, @y=53>, @width=100, @height=50> "rct2 = " #<Rectangle:0x0000151d07d65630 @location=#<Point:0x0000151d07d65608 @x=1, @y=2>, @width=10, @height=150> </syntaxhighlight> == 制御構造 == '''[[w:制御構造|制御構造]]'''(せいぎょこうぞう、''control flow'')とは、「順次」「分岐」「反復」という基本的な処理のことを言います。 {{コラム|Rubyの真理値|2= 制御構造は「条件式」が真であるか偽であるかによって分岐や反復の振る舞いが変わります。 では「条件式」が真・偽はどの様に決まるのでしょう? Rubyでは <code>false</code> あるいは <code>nil</code> であると偽、それ以外が真です。 なので <code>0</code> も <code>[]</code>(空のArray) も <code>{}</code>(空のHash)も真です。 }} === 条件分岐 === Rubyの条件分岐には、[[#if|if]], [[#until|until]] と [[#case|case]]の3つの構文があります。 ==== if ==== '''[[w:if|if]]'''は条件式によって実行・否を切り替える構造構文で、評価した式の値を返すので条件演算子でもあります。 ;[https://paiza.io/projects/biMpjErLV3TRo004lNGTJg?language=ruby ifの例]:<syntaxhighlight lang="ruby" line> a = 0.0 / 0.0 if a < 0 puts "minus" elsif a > 0 puts "plus" elsif a == 0 puts "zero" else puts a end puts( if a < 0 "minus" elsif a > 0 "plus" elsif a == 0 "zero" else a end ) </syntaxhighlight> ;表示結果:<syntaxhighlight lang="text"> NaN NaN </syntaxhighlight> :; elsif節:ifは、オプショナルな elsif 節を設け、条件式が偽であった時に別の条件に合致した処理を実行させることが出来ます。 :; else節:ifは、オプショナルな else 節を設け、条件式が偽であった時に処理を実行させることが出来ます。 : ifは値を返すので、メソッドの実引数に使うことが出来ますし、代入演算の右辺にも使えます。 ==== 後置のif ==== Rubyには、Perlのような後置のifがあります。 ;[https://paiza.io/projects/M72sxlLRG_k29MK1FmgGgQ?language=ruby 後置のifの例]:<syntaxhighlight lang="ruby"> n = 0 puts "nは0" if n == 0 puts "nは1" if n == 1 </syntaxhighlight> ;表示結果:<syntaxhighlight lang="text"> nは0 </syntaxhighlight> ==== unless文 ==== '''unless文'''(アンレスぶん、''unless statement'')は条件式によって実行・否を切り替える構造構文ですが、ifとは条件式に対する挙動が逆です。 ;[https://paiza.io/projects/6EGyb6ObN49cNkz9GEMwGw?language=ruby unless文の例]:<syntaxhighlight lang="ruby" line> a = 0.0 / 0.0 unless a == 0 puts "Non-zero" else puts a end </syntaxhighlight> ;表示結果:<syntaxhighlight lang="text"> Non-zero </syntaxhighlight> :; else節 : unless文は、オプショナルな else 節を設け、条件式が真であった時に処理を実行させることが出来ます。 ::また、unless文は elsif 節は持てません。 ==== 後置のunless ==== Rubyには、Perlのような後置のunlessがあります。 ;[https://paiza.io/projects/tmKKQgJE8prt7y4MbX0wvQ?language=ruby 後置のunlessの例]:<syntaxhighlight lang="ruby"> n = 0 puts "nは0" unless n == 0 puts "nは1" unless n == 1 </syntaxhighlight> ;表示結果:<syntaxhighlight lang="text"> nは1ではない </syntaxhighlight> ==== case ==== caseは、複数の条件式によって処理を降る分ける用途の為に用意されています。 ;[https://paiza.io/projects/zZwUHb2AzrrL346ReD_p1A?language=ruby caseの例]:<syntaxhighlight lang="ruby" line> n = 2 case n when 1 puts "one" when 2 puts "two" when 3 puts "three" else puts "other" end </syntaxhighlight> ;表示結果:<syntaxhighlight lang="text"> two </syntaxhighlight> :C言語系のswitch文に慣れた人はbreakがないことに気がつくと思います。Rubyのcaseはfall throughしませんし、fall throughさせる方法もありません。 ===== when節が定数でなく式を受付ける事を使ったトリック ===== [[#if|if]]を使ったコードをcaseに書き換えてみましょう。 ;[https://paiza.io/projects/2RNFYYNmA4zCuuPJ8mejEw?language=ruby case true トリック]:<syntaxhighlight lang="ruby" line> a = 0.0 / 0.0 case true when a < 0 puts "minus" when a > 0 puts "plus" when a == 0 puts "zero" else puts a end </syntaxhighlight> ;表示結果:<syntaxhighlight lang="text"> NaN </syntaxhighlight> このコードは when 節の式の値とcaseの式を <code>===</code> で比較し、最初に一致した when に対応する文が実行される事を利用しています。 JavaScriptのswitch文のcase節にも式が使えるので、同じトリックが使えます。 {{See also|JavaScript/制御構造#switch_文の構文}} === 繰返し === Rubyには、他のプログラミング言語のような[[#繰返し文|繰返し文]]と、[[#イテレーターメソッド|イテレーターメソッド]]があります。 ==== 繰返し構文 ==== Rubyの繰返し文には、while文 until for文 と loop文 の4つがあります<ref>do-while文はありません。loopの最後にbreak if 式を設け実現します</ref>。 ===== while文 ===== while文(ホワイルぶん、while statement)は条件が'''真'''である間、文を実行しつづけます。 ;構文:<syntaxhighlight lang="ruby"> while 条件式 [ do ] 文1 文2 : 文n end </syntaxhighlight> : <code>do</code> は省略できます。 ;[https://paiza.io/projects/FMtf9ld-HN4HPgWLNNAvrA?language=ruby while文のコード例]:<syntaxhighlight lang="ruby" line> i = 0 while i < 5 do puts i i += 1 end </syntaxhighlight> : 2行目の <code>i < 5</code>が真の間、次の2行を繰返します。 : 4行目の <code>i += 1</code> は <code>i = i + 1</code> の構文糖 ;実行結果:<syntaxhighlight lang="text"> 0 1 2 3 4 </syntaxhighlight> ===== until ===== until(アンティルぶん、until statement)は条件が'''偽'''である間、文を実行しつづけます。while文とは条件に対する挙動が逆です。 ;構文:<syntaxhighlight lang="ruby"> until 条件式 [ do ] 文1 文2 : 文n end </syntaxhighlight> : <code>do</code> は省略できます。 ;[https://paiza.io/projects/eAvLT3L3hXe2WJsgqYPWsw?language=ruby untilのコード例]:<syntaxhighlight lang="ruby" line> i = 0 until i == 3 do puts i i += 1 end </syntaxhighlight> : 2行目の <code>i == 3</code>が偽の間、次の2行を繰返します。 ;実行結果:<syntaxhighlight lang="text"> 0 1 2 </syntaxhighlight> ===== for文 ===== Rubyにもfor文がありますが、多くの言語で[[W:Froeach文|froeach文]]と呼ばれるもので、C言語系の<code>for (;;)</code>とは異なります。 ;for文の構文:<syntaxhighlight lang="ruby"> for 変数 in コレクション 文 end </syntaxhighlight> :コレクションは Range, Array, Hash など内部構造を持つオブジェクトです。 ==== Rangeオブジェクトとfor文 ==== Rangeオブジェクトは、整数の区間を表し範囲演算子 <code>開始 ... 終了</code> で生成します。 ;コード:<syntaxhighlight lang="ruby"> rng = 1..3 puts rng.class for n in rng do puts "テキスト"; end </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang="text"> Range テキスト テキスト テキスト </syntaxhighlight> ==== Arrayオブジェクトとfor文 ==== Arrayオブジェクトは、任意の Ruby オブジェクトを要素として持つことができます。 配列式<code>[要素1, 要素2, … 要素n]</code> で生成します。 ;[https://paiza.io/projects/zwRG10FKO8uQf3tv72C9NQ?language=ruby コード]:<syntaxhighlight lang="ruby"> animals = ["ネコ", "金魚", "ハムスター"] puts animals.class for animal in animals do puts "動物 #{animal}" end </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang="text"> 動物 ネコ 動物 金魚 動物 ハムスター </syntaxhighlight> ==== Hashオブジェクトとfor文 ==== Hashオブジェクトは、任意の Ruby オブジェクトをキーに、任意の Ruby オブジェクトを値に持つことができる連想配列です。 Hash式<code>{キー1 => 値1, キー2 => 値2, キーn => 値n}</code> で生成します。 また、キーが Symbol の場合 Hash式<code>{キー1: 値1, キー2: 値2, キーn: 値n}</code> で生成することが出来ます。 ;[https://paiza.io/projects/CeZa9Pg-HLS2I1ijggGkYw?language=ruby コード]:<syntaxhighlight lang="ruby"> animals = {cat: "ネコ", gold_fish: "金魚", hamster: "ハムスター"} puts animals.class for en, animal in animals do puts "動物 #{en}: #{animal}" end </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang="text"> Hash 動物 cat: ネコ 動物 gold_fish: 金魚 動物 hamster: ハムスター </syntaxhighlight> このように、Rubyのfor文は多様なコレクションを受け付けます。 ===== loop文 ===== loop文(ループぶん、loop statement)は永久ループを提供します。 ;構文:<syntaxhighlight lang="ruby"> until [ do ] 文1 文2 : 文n end </syntaxhighlight> ;[https://paiza.io/projects/ZB-Ikm3W8SOoKLTlGU161Q?language=ruby loop文のコード例]:<syntaxhighlight lang="ruby" line> i = 1 loop puts "%b" % i i <<= 1 break if i > 2**80 end </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang="text"> 0b1 0b10 0b100 0b1000 0b10000 0b100000 0b1000000 0b10000000 0b100000000 </syntaxhighlight> :5行目の、<code>break if i > 2**80</code>でループを脱出するようにしています。この様に break や return あるいは例外が上がらないとループは永久に終わりません。 :このコードは、Rubyにはない do-while文を模倣する例にもなっています。 ==== イテレーターメソッド ==== ===== eachメソッド ===== 上述 for を使った配列の処理と、同じ処理を、次のようにコレクションの<code>each</code>メソッドを使っても書けます。 ;[https://paiza.io/projects/GEmXBCX8GIC27X5U1F1jjw?language=ruby コード]:<syntaxhighlight lang="ruby"> rng = 1..3 puts rng.class rng.each do puts "テキスト"; end animals = ["ネコ", "金魚", "ハムスター"] animals.each do |animal| puts "ペット:#{animal}" end animals = {cat: "ネコ", gold_fish: "金魚", hamster: "ハムスター"} puts animals.class animals.each do |en, animal| puts "動物 #{en}: #{animal}" end </syntaxhighlight> :実行結果:<syntaxhighlight lang="text"> Range テキスト テキスト テキスト ペット:ネコ ペット:金魚 ペット:ハムスター Hash 動物 cat: ネコ 動物 gold_fish: 金魚 動物 hamster: ハムスター </syntaxhighlight> ===== Integer#times ===== Integer#timesは与えられたブロックをオブジェクトの示す整数値回くりかえします。 :コード<syntaxhighlight lang="ruby"> 3.times{ puts 'Hello, world!' } </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang="text"> Hello, world! Hello, world! Hello, world! </syntaxhighlight> ;繰返したい処理が2行以上ある場合:<syntaxhighlight lang="ruby"> 3.times { puts 'Hello' puts 'World' puts '' } </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang="text"> Hello World Hello World Hello World </syntaxhighlight> ;[https://paiza.io/projects/tycqR9lC1dCY_rWwjGhYvA?language=ruby ループ変数を使た例]:<syntaxhighlight lang="ruby"> 3.times do |i| puts "#{i}の倍は#{2 * i}" end </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang="text"> 0の倍は0 1の倍は2 2の倍は4 </syntaxhighlight> ;ブロックを伴わないtimesメソッド:<syntaxhighlight lang="ruby"> iter = 3.times puts iter.class puts iter.next # 0 puts iter.next # 1 puts iter.next # 2 # puts iter.next # `next': StopIteration: iteration reached an end </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang="text"> Enumerator 0 1 2 </syntaxhighlight> : Integer#times にブロックを渡さないと、Enumeratorオブジェクトが返ります。 : Enumeratorオブジェクトは外部イテレーターと呼ばれnextメソッドで反復を行えます。 == 高階関数 == === lambda === 無名関数を定義するにはKernel.#lambdaを使用します。Proc.newも近い機能を提供しますが、lambda のほうがより厳密で、引数の数が異なるって場合エラーとなります。 <syntaxhighlight lang="ruby"> lambda {|x, y| x + y }[2, 3] # => 5 </syntaxhighlight> lambdaが返すProcオブジェクトにアクセスするにはブラケットを使用します。callメソッドを呼んでも同じことです。 == HTTPクライアント == open-uriを使用すると簡単ですが、より高度なインタフェースが必要な場合はNet::HTTPを使用します。 <syntaxhighlight lang="ruby"> require 'open-uri' puts open('http://www.example.com/').read </syntaxhighlight> open-uriは組み込みのopenメソッド(Kernel.#open)をオーバーライドします。ワンライナーで書くこともできます。 <syntaxhighlight lang="console"> % ruby -ropen-uri -e 'puts open(ARGV.shift).read' http://www.example.com/ </syntaxhighlight> ARGVはコマンドライン引数の配列、Array#shiftメソッドは最初の要素を取り出します。 == 応用 == {{進捗状況}} * [[Ruby on Rails]] {{進捗|00%|2022-06-07}} 0% == 脚註 == <references /> {{スタブ}} [[Category:Ruby|*]] [[Category:プログラミング言語]] {{NDC|007.64}} irq31hccssip2h9na1387s696zvjxwn 205564 205551 2022-07-20T04:32:59Z Ef3 694 /* 包含と継承 */ 冗長なpメソッドを削除。inspectメソッド実装。 wikitext text/x-wiki {{Pathnav|メインページ|工学|情報技術|プログラミング|frame=1}} {{Wikipedia}} 本書は、[[w:Ruby|Ruby]]のチュートリアルです。 Rubyは、比較的習得が容易なオブジェクト指向スクリプティング言語です。 [[w:まつもとゆきひろ|まつもとゆきひろ]]によって開発されました。 [[Ruby on Rails]]の記述言語として選ばれたことで有名になりましたが、ウェブアプリケーション以外にもシステム管理やネットワークアプリケーションなどさまざまな用途に用いられます。 __TOC__ == 準備 == === rubyインタープリターの準備 === まずはrubyインタープリターを用意しましょう<ref>インタープリターを <code>ruby</code>、スクリプティング言語を <code>Ruby</code> とかき分けます。</ref>。 インタープリターとは、あなたが書いたスクリプトを読んでそれを実行してくれるソフトウェアです。 [https://www.ruby-lang.org/ja/ Ruby公式サイト]の「[https://www.ruby-lang.org/ja/downloads/ ダウンロード]」ページから、 それぞれの環境に合ったインタープリターをダウンロードして下さい。 具体的なインストール手順は環境によって違うので、「[https://www.ruby-lang.org/ja/documentation/installation/ Rubyのインストール]」を参照して下さい。 準備ができたら、試しにコマンドラインからインタープリターを呼び出してみましょう。 ;バージョンを確かめる:<syntaxhighlight lang="console"> % ruby --version ruby 3.1.2p20 (2022-04-12 revision 4491bb740a) [x86_64-linux-gnu] </syntaxhighlight> 環境によってバージョンが異なると思います。 2022年6月現在、ruby-1.x は全てEoL(End-of-Life;サポート終了)、 ruby-2.x は 2.7 がセキュリティメンテナンス、それ以外はEOL、 ruby-3.x は 3.0 - 3.1 がノーマルメンテナンス、3.2 がプレビューです<ref>[https://www.ruby-lang.org/en/downloads/branches/ Ruby Maintenance Branches]</ref>。 もしご自身の環境の ruby のバージョンが既にサポート終了しているのであれば、サポートされているバージョンへのアップデートを検討してください。 本書では ruby-2.7 以降を想定しています。 ;ミススペルすると:<syntaxhighlight lang="console"> % ruby --vertion ruby: invalid option --vertion (-h will show valid options) (RuntimeError) </syntaxhighlight> versionの綴りが違うとこの様なメッセーが出ます。案内に従って <code>ruby -h</code> を実行してみましょう。 ;コマンドラインオプションの説明:<syntaxhighlight lang="console"> % ruby -h Usage: ruby [switches] [--] [programfile] [arguments] -0[octal] specify record separator (\0, if no argument) -a autosplit mode with -n or -p (splits $_ into $F) -c check syntax only -Cdirectory cd to directory before executing your script -d set debugging flags (set $DEBUG to true) -e 'command' one line of script. Several -e's allowed. Omit [programfile] -Eex[:in] specify the default external and internal character encodings -Fpattern split() pattern for autosplit (-a) -i[extension] edit ARGV files in place (make backup if extension supplied) -Idirectory specify $LOAD_PATH directory (may be used more than once) -l enable line ending processing -n assume 'while gets(); ... end' loop around your script -p assume loop like -n but print line also like sed -rlibrary require the library before executing your script -s enable some switch parsing for switches after script name -S look for the script using PATH environment variable -v print the version number, then turn on verbose mode -w turn warnings on for your script -W[level=2|:category] set warning level; 0=silence, 1=medium, 2=verbose -x[directory] strip off text before #!ruby line and perhaps cd to directory --jit enable JIT for the platform, same as --yjit (experimental) --mjit enable C compiler-based JIT compiler (experimental) --yjit enable in-process JIT compiler (experimental) -h show this message, --help for more info </syntaxhighlight> これもバージョンによって表示が違います。 <!--- 其々のコマンドラインオプションの説明は割愛しましたが、ワンライナーを書くときに役に立つ -nle など代表的な組合わせをコラム(?)で紹介すべきでしょう ---> === Hello, World! === 他の多くのチュートリアルがそうであるように、 私たちもまずはRubyの世界にあいさつすることから始めましょう。 ''hello.rb''というファイルを作り(Rubyではスクリプトファイルに''.rb''という拡張子を付けることが通例となっています)、次のように書いて保存して下さい。 ;[https://paiza.io/projects/hz-ldiAi0zhpaSqjteWLXw?language=cpp hello.rb]:<syntaxhighlight lang=ruby> puts 'Hello, World!' </syntaxhighlight> それではこのスクリプトを実行してみましょう。コマンドラインから次のようにタイプして下さい。 :<syntaxhighlight lang="console"> % ruby hello.rb Hello, World! % </syntaxhighlight> この1行のスクリプトは、メソッド<code>puts</code> に文字リテラル<code>'Hello, World!'</code>を渡し呼出しています。 <!--- https://techracho.bpsinc.jp/hachi8833/2020_11_27/26969 === 文字コード === ruby では日本語表示できますが、ソースコードの文字コードを UTF-8 に設定する必要があります。 標準的なテキストエディタなら、メニューバーにある「ファイル」のコマンド一覧に「文字コードを指定して保存」のようなコマンドがあるので、それで UTF-8 を指定して保存してください。 コード例 <syntaxhighlight lang=ruby> # hello.rb s = 'こんにちは、世界' puts s </syntaxhighlight> 実行例 こんにちは、世界 ---> == irb == irb(Interactive Ruby) は、Rubyを対話的に実行するためのコマンドシェル<ref>REPL (Read Eval Print Loop)</ref>です<ref>irb は ruby インタープリターと違いスクリプトの実行には必須なプログラムではありませんが、対話的にコードを評価出来るのが便利です。</ref>。 ;irbで 'Hello, World!':<syntaxhighlight lang="irb" line> % irb irb(main):001:0> puts "Hello, world!" Hello, world! => nil irb(main):002:0> exit % </syntaxhighlight> # シェルから irb を起動 # <code>puts "Hello, world!"</code>と入力し、エンターを押して評価しています。 # <code>Hello, world!</code> は <code>puts</code> メソッドの出力です。 # <code>=> nil</code> は、<code>puts</code> メソッドの戻値です。 # <code>exit</code> で irb を終了しています。 # シェルのプロンプトに復帰 === irbのインストール === 環境によっては、rubyインタプリターとは別にirbを追加でインストールしないと、irbは使えない場合もあります。 もし、<code>irb</code> がインストールされていないのであれば、実行環境のパッケージマネージャーで irb を検索しインストールしてください。 また、[[W:Rubygems|rubygems]] にも [https://rubygems.org/gems/irb irb のパッケージ]があるので :<syntaxhighlight lang=csh> % sudo gem install irb </syntaxhighlight> でインストールできます。 <!-- rubygems の解説も項目を改めて(?)必要 --> == 変数 == オブジェクトを変数に代入するには :<syntaxhighlight lang="ruby"> 変数名 = オブジェクト </syntaxhighlight> の様に代入演算子 <code>=</code> を使います。 ;[https://paiza.io/projects/x1_UlCeb1PtW8pG8Xi-i-g?language=ruby 変数へのオブジェクトの代入と参照]:<syntaxhighlight lang="ruby" line> a = 1 p a a = "abc" p a a = [1, 2, 3] p a b = a p b b[1] = 999 p a </syntaxhighlight> ;表示結果:<syntaxhighlight lang="text"> 1 "abc" [1, 2, 3] [1, 2, 3] [1, 999, 3] </syntaxhighlight> # 変数 <var>a</var> に整数 1 を代入 # メソッド p に <var>a</var> を引数とした呼出し #* 変数 <var>a</var> を使った参照 #* <code>1</code> が表示される # 変数 <var>a</var> に文字列 "abc" を代入 # <code>"abc"</code> が表示される # 変数 <var>a</var> に配列 [1, 2, 3] を代入 # <code>[1, 2, 3]</code> が表示される # 変数 <var>b</var> に変数 <var>a</var> が参照しているオブジェクトを代入 #* ここでは、配列 [1, 2, 3] # やはり、<code>[1, 2, 3]</code> が表示される # 変数 <var>b</var> の参照している配列の1番目の要素に 999 を代入 #* これは変数ではなく配列の要素への代入 #* 配列の先頭は0番目 # 変数 <var>a</var> を使って参照すると #* 1番目の要素が 999 に書換わって <code>[1, 999, 3]</code> となっている 代入は、オブジェクトに後から参照するための名前(変数名)をつけることに他なりません。 このため、変数の参照するオブジェクトを別の変数に代入すると「別名」を作ることになります。 {{コラム|puts メソッドと p メソッド|2= putsメソッドはオブジェクトにto_sメソッドで適用した結果を表示します。 これに対し、pメソッドはオブジェクトにinspectメソッドで適用した結果を表示します。 ;[https://paiza.io/projects/uZV53RJGbr3FKbscJc8tiw?language=ruby putsとp]:<syntaxhighlight lang="ruby"> puts "Hello, world!" p "Hello, world!" </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang=text> Hello, world! "Hello, world!" </syntaxhighlight> }} == オブジェクト == Ruby では、多くのものがオブジェクトで、オブジェクトは1つのクラスに属しています。 他のオブジェクト指向プログラミング言語では、整数や文字列などはメソッドをプリミティブとして別扱いし、 ラッパーをオブジェクトを用意することでメソッドがないことを補っていますが、 Ruby では整数や文字列など基本的なデータ型もオブジェクトでメソッドを持ちます。 === オブジェクトのクラスを調べる === オブジェクトのクラスを調べるには、 .class メソッドを使います。 <syntaxhighlight lang="irb" line> $ irb irb(main):001:0> 0.class => Integer irb(main):002:0> "abc".class => String irb(main):003:0> [1,2,3].class => Array irb(main):004:0> ({a:2, b:3, c:5, d:7}).class => Hash irb(main):005:0> (1...99).class irb(main):005:0> (1...99).class => Range </syntaxhighlight> === 全てのクラスのスーパークラス Object === Object は全てのクラスのスーパークラスです。 == 式と演算子 == 式 (expression) や演算子 (operator) について説明します。 Rubyにはい可能な演算子があります。 * 代入演算子 * 比較演算子 * 算術演算子 * ビット演算子 * 論理演算子 * 文字列演算子 * 条件(三項)演算子 * カンマ演算子 === オブジェクトとメソッド演算子 === 演算子はオブジェクトのメソッドの特殊な形で、二項演算子の場合は左辺のオブジェクトがレシーバーになります。 <pre> Object(==, ===, =~) Array(+, -, *, &, <<, <=>, ==, [], []=) Hash(==, ===, [], []=) String(%, *, +, <<, <=>, ==, =~, [], []=) Numeric(+, -, <=>) Float(+, -, *, /, %, **, ==, <, >, <=, >=, <=>) Integer(+, -, *, /, %, **, ==, <=, >=, <=>, <<, >>, [], &, |, ^, ~, **) Range(==, ===) Regexp(==, ===, =~) </pre> === 演算子の優先順位と結合方向 === 演算子には優先順位 (結合力の強さ) と結合方向があります。 a + b - c は ( a + b ) - c と同じ(加減算は左結合)。 a + b * c は a + ( b * c ) と同じ(乗除算は加減算より優先順位が高い)。 a = b = 0 は a = ( b = 0 ) と同じ(代入は右結合)。 <!-- ここに演算子の優先順位と結合方向の表を挿入します --> == 様々なクラス・オブジェクトとリテラル == Ruby では、変数に束縛することが出来るものは全てオブジェクトです。 オブジェクトは必ず1つのクラスに属しています。 全てのクラスにリテラル表現があるわけではありませんが、組込みライブラリーの主要なクラスにはリレラル表現が用意されています。 === 数値クラス === 数値クラスは整数クラスあるいは浮動小数点数クラスです。 ;[https://paiza.io/projects/Jo78O4vlCkQOar1YYB3Erg?language=ruby 数値クラス]:<syntaxhighlight lang="ruby"> p 2 + 6 p 2.0 + 6 p 2 + 6.0 p 2.0 + 6.0 p 2.class p 2.methods p 2.0.class p 2.0.methods </syntaxhighlight> ;表示結果:<syntaxhighlight lang="text"> 8 8.0 8.0 8.0 Integer [:anybits?, :nobits?, :downto, :times, :pred, :pow, :**, :<=>, :<<, :>>, :<=, :>=, :==, :===, :next, :lcm, :digits, :[], :~, :gcd, :gcdlcm, :-@, :upto, :%, :chr, :&, :*, :+, :bit_length, :inspect, :-, :/, :integer?, :even?, :odd?, :size, :succ, :<, :>, :ord, :to_int, :to_s, :to_i, :to_f, :to_r, :div, :divmod, :fdiv, :^, :coerce, :modulo, :remainder, :abs, :magnitude, :zero?, :floor, :ceil, :round, :truncate, :numerator, :|, :denominator, :rationalize, :allbits?, :dup, :arg, :real?, :+@, :rect, :polar, :real, :imaginary, :imag, :abs2, :angle, :phase, :conjugate, :rectangular, :to_c, :conj, :infinite?, :finite?, :eql?, :singleton_method_added, :quo, :clone, :i, :nonzero?, :step, :positive?, :negative?, :between?, :clamp, :singleton_class, :itself, :taint, :tainted?, :untaint, :untrust, :untrusted?, :trust, :methods, :singleton_methods, :protected_methods, :private_methods, :public_methods, :instance_variables, :instance_variable_get, :instance_variable_set, :instance_variable_defined?, :remove_instance_variable, :instance_of?, :kind_of?, :is_a?, :display, :hash, :public_send, :class, :frozen?, :tap, :then, :yield_self, :extend, :method, :public_method, :singleton_method, :define_singleton_method, :=~, :!~, :nil?, :respond_to?, :freeze, :object_id, :send, :to_enum, :enum_for, :__send__, :!, :__id__, :instance_eval, :instance_exec, :!=, :equal?] Float [:arg, :-@, :**, :<=>, :<=, :>=, :==, :===, :angle, :phase, :positive?, :nan?, :infinite?, :finite?, :next_float, :prev_float, :eql?, :%, :*, :+, :inspect, :-, :/, :<, :>, :to_int, :to_s, :to_i, :to_f, :to_r, :divmod, :fdiv, :quo, :coerce, :modulo, :abs, :magnitude, :zero?, :floor, :ceil, :round, :truncate, :numerator, :denominator, :rationalize, :negative?, :hash, :dup, :real?, :+@, :rect, :polar, :real, :imaginary, :imag, :abs2, :conjugate, :rectangular, :to_c, :conj, :integer?, :singleton_method_added, :div, :clone, :i, :remainder, :nonzero?, :step, :between?, :clamp, :singleton_class, :itself, :taint, :tainted?, :untaint, :untrust, :untrusted?, :trust, :methods, :singleton_methods, :protected_methods, :private_methods, :public_methods, :instance_variables, :instance_variable_get, :instance_variable_set, :instance_variable_defined?, :remove_instance_variable, :instance_of?, :kind_of?, :is_a?, :display, :public_send, :class, :frozen?, :tap, :then, :yield_self, :extend, :method, :public_method, :singleton_method, :define_singleton_method, :=~, :!~, :nil?, :respond_to?, :freeze, :object_id, :send, :to_enum, :enum_for, :__send__, :!, :__id__, :instance_eval, :instance_exec, :!=, :equal?] </syntaxhighlight> 浮動小数点数リテラルは、小数点以下が 0 でも 6. の様に 0 を'''省略できません'''。 === 文字列クラス === 文字列リテラルは <code>'</code> あるいは <code>"</code> で囲います。 上の例の、<code>'Hello World!'</code> が文字リテラルの一例です。 ;[https://paiza.io/projects/d-FL4g4crwTR65Uy51jWXg?language=ruby 文字列クラス]:<syntaxhighlight lang="ruby"> p "2" + "6" p "abc" * 6 p "→%d" % 6 p "2".concat "6" p "abc".class p "abc".methods </syntaxhighlight> ;表示結果:<syntaxhighlight lang="text"> "26" "abcabcabcabcabcabc" "→6" "26" String [:unicode_normalized?, :encode!, :unicode_normalize, :ascii_only?, :unicode_normalize!, :to_r, :encode, :to_c, :include?, :%, :*, :+, :unpack, :unpack1, :count, :partition, :+@, :-@, :<=>, :<<, :sum, :==, :===, :next, :=~, :[], :[]=, :empty?, :casecmp, :eql?, :insert, :casecmp?, :match?, :bytesize, :match, :next!, :succ!, :index, :upto, :replace, :rindex, :chr, :clear, :byteslice, :getbyte, :setbyte, :freeze, :scrub, :scrub!, :dump, :inspect, :intern, :upcase, :downcase, :capitalize, :swapcase, :upcase!, :undump, :length, :size, :downcase!, :succ, :swapcase!, :hex, :capitalize!, :split, :chars, :oct, :grapheme_clusters, :concat, :codepoints, :lines, :bytes, :to_str, :end_with?, :start_with?, :reverse, :reverse!, :sub, :to_s, :to_i, :to_f, :rjust, :center, :prepend, :crypt, :ord, :chomp, :strip, :to_sym, :ljust, :delete_prefix, :delete_suffix, :lstrip, :gsub, :scan, :chomp!, :sub!, :gsub!, :rstrip, :delete_prefix!, :chop, :lstrip!, :rstrip!, :chop!, :delete_suffix!, :strip!, :tr_s, :delete, :squeeze, :tr!, :tr, :delete!, :squeeze!, :each_line, :each_byte, :tr_s!, :each_codepoint, :each_grapheme_cluster, :slice, :slice!, :each_char, :encoding, :force_encoding, :b, :valid_encoding?, :rpartition, :hash, :between?, :clamp, :<=, :>=, :<, :>, :singleton_class, :dup, :itself, :taint, :tainted?, :untaint, :untrust, :untrusted?, :trust, :methods, :singleton_methods, :protected_methods, :private_methods, :public_methods, :instance_variables, :instance_variable_get, :instance_variable_set, :instance_variable_defined?, :remove_instance_variable, :instance_of?, :kind_of?, :is_a?, :display, :public_send, :class, :frozen?, :tap, :then, :yield_self, :extend, :clone, :method, :public_method, :singleton_method, :define_singleton_method, :!~, :nil?, :respond_to?, :object_id, :send, :to_enum, :enum_for, :__send__, :!, :__id__, :instance_eval, :instance_exec, :!=, :equal?] </syntaxhighlight> 文字オブジェクトの <code>+</code> 演算子は、concatメソッドの別名です。 この様に、同じ演算子でも左辺に来るオブジェクトによって行われる処理が変わります。 ==== 式展開 ==== <code>"</code> で囲んだ文字列リテラル中には <code>#{ 式 }</code>の形で式を埋込む事ができます。 <code>'</code> で囲んだ文字列リテラル中では <code>#{ 式 }</code>の形で式は展開されません。 ;[https://paiza.io/projects/Jo78O4vlCkQOar1YYB3Erg?language=ruby 文字列リテラルに式を埋込んだ例]:<syntaxhighlight lang="ruby"> </syntaxhighlight> ;表示結果:<syntaxhighlight lang="text"> </syntaxhighlight> ;[https://paiza.io/projects/7Xvz_1StHFRL0ozCvKnwMw?language=ruby 文字列リテラルに式を埋込んだ例]:<syntaxhighlight lang="ruby"> p "12 + 8 = #{12 + 8}" p %|"abc".upcase = #{"abc".upcase}| </syntaxhighlight> ;表示結果:<syntaxhighlight lang="text"> "12 + 8 = 20" "\"abc\".upcase = ABC" </syntaxhighlight> === 文字リテラル === [https://paiza.io/projects/-9rsAGNcN-m-PN_ZhffwDg?language=ruby 例] p ?a p ?字 p ?😈 p ?😈.class 実行結果 "a" "字" "😈" String === 正規表現クラスと正規表現リテラル === === 配列クラスと配列式 === === ハッシュクラスとハッシュ式 === === 範囲クラスと範囲演算子式 === 範囲演算子式は、範囲クラス(Range)のリテラルで{{code|開始 .. 終了}}の形式です。 <!--- Rangeのeachメソッドは perl 等の[[W:Foreach文|foreach文]]にあたるブロック付きメソッド呼び出しのイテレーターです。--> ;[https://paiza.io/projects/xBwKk7uZ1WKba2Ti2Qy_rQ?language=ruby Rangeオブジェクト]:<syntaxhighlight lang="ruby"> r = (0..9) p r p r.class r.each {|x| p x } </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang=text> 0..9 Range 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 </syntaxhighlight> :putsメソッドはオブジェクトにto_sメソッドで適用した結果を表示するのに対し、pメソッドはオブジェクトにinspectメソッドで適用した結果を表示します。 ;[https://paiza.io/projects/uZV53RJGbr3FKbscJc8tiw?language=ruby putsとp]:<syntaxhighlight lang="ruby"> puts "Hello, world!" p "Hello, world!" </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang=text> Hello, world! "Hello, world!" </syntaxhighlight> === シンボル === === %記法 === == メソッド == '''メソッド'''(''method'')は、処理の塊に名前を付けて再利用する仕組みです。 一般的なプログラミング言語でのサブルーチン・プロシージャあるいは命令と呼ばれるものと共通する特徴を持ちますが、'''主語'''に相当するオブジェクトがあるところが異なります。 メソッドはキーワード <code>def</code> を使って定義します。 ;[https://paiza.io/projects/gpNItFmxOxwCATYVVGX00w?language=ruby コード]:<syntaxhighlight lang="ruby" line> def hello() puts "Hell World!" end hello() self.hello() </syntaxhighlight> ;表示結果:<syntaxhighlight lang="text"> Hell World! Hell World! </syntaxhighlight> # メソッド <code>hello</code> の定義の開始 # メソッド <code>hello</code> の本体 # メソッド <code>hello</code> の定義の終了 #  # メソッド <code>hello</code> の呼出し # メソッド <code>hello</code> を <code>self</code>を明示して呼出し === 仮引数を伴ったメソッド === メソッドには、仮引数としてオブジェクトを渡すことができます。 ;[https://paiza.io/projects/G3yTvRLuEW3VEsQ1H43YMg?language=ruby 仮引数を伴ったメソッド]:<syntaxhighlight lang="ruby"> def show_sum(a, b) puts a + b end show_sum(1, 3) show_sum(5, 2) </syntaxhighlight> ;表示結果:<syntaxhighlight lang="text"> 4 7 </syntaxhighlight> === 戻り値を返すメソッド === メソッドは、戻り値としてオブジェクトを返すことができます。 ;[https://paiza.io/projects/-qE9Wq6ngZC1XPeDX8C0LA?language=ruby 戻り値を返すメソッドの例]:<syntaxhighlight lang="ruby"> def get_sum(a, b) return a + b end puts get_sum(1, 3) puts get_sum(5, 2) </syntaxhighlight> ;表示結果:<syntaxhighlight lang="text"> 4 7 </syntaxhighlight> === 変数のスコープ === メソッドの中で作られた変数のスコープはメソッドローカルです。 ;[https://paiza.io/projects/lIpUl1uIDKCop6QzwVEDSg?language=ruby 変数のスコープ]:<syntaxhighlight lang="ruby" line> a = 100 x = 99 def get_sum(a, b) x = 0 return a + b end puts [a,x] puts get_sum(1, 3) puts get_sum(5, 2) </syntaxhighlight> ;表示結果:<syntaxhighlight lang="text"> 100 99 4 7 </syntaxhighlight> : 1行目で 100 が代入された変数 a は、メソッド get_sum の仮引数 a とは関係なく 100 のまま : 2行目で 99 が代入された変数 x は、メソッド get_sum の中で 0 が代入された x とは関係なく 99 のまま この様に、メソッドの中からはメソッドの外の変数を(仮引数を介すなどの手段を取らない限り)参照出来ません。 また、メソッドをスコープとする変数をメソッドの呼出し元から参照できません。 {{コラム|Rubyと変数宣言|2= 「メソッドの中で作られた」と、やや歯切れの悪い表現ですが、Ruby では変数を「宣言」しません。 強いて言うならば、最初の代入が変数の宣言です。}} <!--- 以下は項を変えて解説が必要 グローバル変数 クラス変数 インスタンス変数 特殊変数 ---> {{コラム|メソッドの引数リストを囲む括弧の省略|2= メソッドの引数リストを囲む括弧 <code>p(</code> と <code>)</code> は、曖昧さのない場合は省略可能です。 上の例は、<code>puts(s)</code>と書く代わりに、<code>put s</code> と書く事ができます。 ;コード:<syntaxhighlight lang="ruby"> s = 'Hello World!' puts s </syntaxhighlight> ;表示結果:<syntaxhighlight lang="text"> Hello World! </syntaxhighlight> }} == クラス == === ユーザー定義クラス === ==== 都市間の大圏距離 ==== [[Go/メソッドとインターフェース]]の都市間の大圏距離を求めるメソッドを追加した例を、Rubyに移植しました。 ;[https://paiza.io/projects/Pr8BO96TMXQCuTybsTm3mg?language=ruby 都市間の大圏距離]:<syntaxhighlight lang=ruby line> class GeoCoord attr_accessor :longitude, :latitude def initialize(longitude, latitude) @longitude, @latitude = longitude, latitude end def to_s() ew, ns = "東経", "北緯" long, lat = @longitude, @latitude ew, long = "西経", -long if long < 0.0 ns, lat = "南緯", -lat if lat < 0.0 "(#{ew}: #{long}, #{ns}: #{lat})" end def distance(other) i, r = Math::PI / 180, 6371.008 Math.acos(Math.sin(@latitude * i) * Math.sin(other.latitude * i) + Math.cos(@latitude * i) * Math.cos(other.latitude * i) * Math.cos(@longitude * i - other.longitude * i)) * r end end def GeoCoord(longitude, latitude) GeoCoord.new(longitude, latitude) end Sites = { "東京駅": GeoCoord(139.7673068, 35.6809591), "シドニー・オペラハウス": GeoCoord(151.215278, -33.856778), "グリニッジ天文台": GeoCoord(-0.0014, 51.4778), } Sites.each{|name, gc| puts "#{name}: #{gc}" } keys, len = Sites.keys, Sites.size keys.each_with_index{|x, i| y = keys[(i + 1) % len] puts "#{x} - #{y}: #{Sites[x].distance(Sites[y])} [km]" } </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang=text> 東京駅: (東経: 139.7673068, 北緯: 35.6809591) シドニー・オペラハウス: (東経: 151.215278, 南緯: 33.856778) グリニッジ天文台: (西経: 0.0014, 北緯: 51.4778) 東京駅 - シドニー・オペラハウス: 7823.269299386704 [km] シドニー・オペラハウス - グリニッジ天文台: 16987.2708377249 [km] グリニッジ天文台 - 東京駅: 9560.546566490015 [km] </syntaxhighlight> ==== 包含と継承 ==== [[JavaScript/クラス#包含と継承]]を、Rubyに移植しました。 ;[https://paiza.io/projects/Zv6cp4tlI3JoV36uEQFetQ?language=ruby 包含と継承]:<syntaxhighlight lang=ruby line> class Point def initialize(x = 0, y = 0) @x, @y = x, y end def inspect() "x:#{@x}, y:#{@y}" end def move(dx = 0, dy = 0) @x, @y = @x + dx, @y + dy self end end class Shape def initialize(x = 0, y = 0) @location = Point.new(x, y) end def inspect() @location.inspect() end def move(x, y) @location.move(x, y) self end end class Rectangle < Shape def initialize(x = 0, y = 0, width = 0, height = 0) super(x, y) @width, @height = width, height end def inspect() "#{super()}, width:#{@width}, height:#{@height}" end end rct = Rectangle.new(12, 32, 100, 50) p ["rct=", rct] p ['rct.instance_of?( Rectangle ) => ', rct.instance_of?(Rectangle)] p ['rct.instance_of?( Shape ) => ', rct.instance_of?(Shape)] p ['rct.instance_of?( Point ) => ', rct.instance_of?(Point)] rct.move(11, 21) p ["rct=", rct] </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang=text> ["rct=", x:12, y:32, width:100, height:50] ["rct.instance_of?( Rectangle ) => ", true] ["rct.instance_of?( Shape ) => ", false] ["rct.instance_of?( Point ) => ", false] ["rct=", x:23, y:53, width:100, height:50] </syntaxhighlight> == 制御構造 == '''[[w:制御構造|制御構造]]'''(せいぎょこうぞう、''control flow'')とは、「順次」「分岐」「反復」という基本的な処理のことを言います。 {{コラム|Rubyの真理値|2= 制御構造は「条件式」が真であるか偽であるかによって分岐や反復の振る舞いが変わります。 では「条件式」が真・偽はどの様に決まるのでしょう? Rubyでは <code>false</code> あるいは <code>nil</code> であると偽、それ以外が真です。 なので <code>0</code> も <code>[]</code>(空のArray) も <code>{}</code>(空のHash)も真です。 }} === 条件分岐 === Rubyの条件分岐には、[[#if|if]], [[#until|until]] と [[#case|case]]の3つの構文があります。 ==== if ==== '''[[w:if|if]]'''は条件式によって実行・否を切り替える構造構文で、評価した式の値を返すので条件演算子でもあります。 ;[https://paiza.io/projects/biMpjErLV3TRo004lNGTJg?language=ruby ifの例]:<syntaxhighlight lang="ruby" line> a = 0.0 / 0.0 if a < 0 puts "minus" elsif a > 0 puts "plus" elsif a == 0 puts "zero" else puts a end puts( if a < 0 "minus" elsif a > 0 "plus" elsif a == 0 "zero" else a end ) </syntaxhighlight> ;表示結果:<syntaxhighlight lang="text"> NaN NaN </syntaxhighlight> :; elsif節:ifは、オプショナルな elsif 節を設け、条件式が偽であった時に別の条件に合致した処理を実行させることが出来ます。 :; else節:ifは、オプショナルな else 節を設け、条件式が偽であった時に処理を実行させることが出来ます。 : ifは値を返すので、メソッドの実引数に使うことが出来ますし、代入演算の右辺にも使えます。 ==== 後置のif ==== Rubyには、Perlのような後置のifがあります。 ;[https://paiza.io/projects/M72sxlLRG_k29MK1FmgGgQ?language=ruby 後置のifの例]:<syntaxhighlight lang="ruby"> n = 0 puts "nは0" if n == 0 puts "nは1" if n == 1 </syntaxhighlight> ;表示結果:<syntaxhighlight lang="text"> nは0 </syntaxhighlight> ==== unless文 ==== '''unless文'''(アンレスぶん、''unless statement'')は条件式によって実行・否を切り替える構造構文ですが、ifとは条件式に対する挙動が逆です。 ;[https://paiza.io/projects/6EGyb6ObN49cNkz9GEMwGw?language=ruby unless文の例]:<syntaxhighlight lang="ruby" line> a = 0.0 / 0.0 unless a == 0 puts "Non-zero" else puts a end </syntaxhighlight> ;表示結果:<syntaxhighlight lang="text"> Non-zero </syntaxhighlight> :; else節 : unless文は、オプショナルな else 節を設け、条件式が真であった時に処理を実行させることが出来ます。 ::また、unless文は elsif 節は持てません。 ==== 後置のunless ==== Rubyには、Perlのような後置のunlessがあります。 ;[https://paiza.io/projects/tmKKQgJE8prt7y4MbX0wvQ?language=ruby 後置のunlessの例]:<syntaxhighlight lang="ruby"> n = 0 puts "nは0" unless n == 0 puts "nは1" unless n == 1 </syntaxhighlight> ;表示結果:<syntaxhighlight lang="text"> nは1ではない </syntaxhighlight> ==== case ==== caseは、複数の条件式によって処理を降る分ける用途の為に用意されています。 ;[https://paiza.io/projects/zZwUHb2AzrrL346ReD_p1A?language=ruby caseの例]:<syntaxhighlight lang="ruby" line> n = 2 case n when 1 puts "one" when 2 puts "two" when 3 puts "three" else puts "other" end </syntaxhighlight> ;表示結果:<syntaxhighlight lang="text"> two </syntaxhighlight> :C言語系のswitch文に慣れた人はbreakがないことに気がつくと思います。Rubyのcaseはfall throughしませんし、fall throughさせる方法もありません。 ===== when節が定数でなく式を受付ける事を使ったトリック ===== [[#if|if]]を使ったコードをcaseに書き換えてみましょう。 ;[https://paiza.io/projects/2RNFYYNmA4zCuuPJ8mejEw?language=ruby case true トリック]:<syntaxhighlight lang="ruby" line> a = 0.0 / 0.0 case true when a < 0 puts "minus" when a > 0 puts "plus" when a == 0 puts "zero" else puts a end </syntaxhighlight> ;表示結果:<syntaxhighlight lang="text"> NaN </syntaxhighlight> このコードは when 節の式の値とcaseの式を <code>===</code> で比較し、最初に一致した when に対応する文が実行される事を利用しています。 JavaScriptのswitch文のcase節にも式が使えるので、同じトリックが使えます。 {{See also|JavaScript/制御構造#switch_文の構文}} === 繰返し === Rubyには、他のプログラミング言語のような[[#繰返し文|繰返し文]]と、[[#イテレーターメソッド|イテレーターメソッド]]があります。 ==== 繰返し構文 ==== Rubyの繰返し文には、while文 until for文 と loop文 の4つがあります<ref>do-while文はありません。loopの最後にbreak if 式を設け実現します</ref>。 ===== while文 ===== while文(ホワイルぶん、while statement)は条件が'''真'''である間、文を実行しつづけます。 ;構文:<syntaxhighlight lang="ruby"> while 条件式 [ do ] 文1 文2 : 文n end </syntaxhighlight> : <code>do</code> は省略できます。 ;[https://paiza.io/projects/FMtf9ld-HN4HPgWLNNAvrA?language=ruby while文のコード例]:<syntaxhighlight lang="ruby" line> i = 0 while i < 5 do puts i i += 1 end </syntaxhighlight> : 2行目の <code>i < 5</code>が真の間、次の2行を繰返します。 : 4行目の <code>i += 1</code> は <code>i = i + 1</code> の構文糖 ;実行結果:<syntaxhighlight lang="text"> 0 1 2 3 4 </syntaxhighlight> ===== until ===== until(アンティルぶん、until statement)は条件が'''偽'''である間、文を実行しつづけます。while文とは条件に対する挙動が逆です。 ;構文:<syntaxhighlight lang="ruby"> until 条件式 [ do ] 文1 文2 : 文n end </syntaxhighlight> : <code>do</code> は省略できます。 ;[https://paiza.io/projects/eAvLT3L3hXe2WJsgqYPWsw?language=ruby untilのコード例]:<syntaxhighlight lang="ruby" line> i = 0 until i == 3 do puts i i += 1 end </syntaxhighlight> : 2行目の <code>i == 3</code>が偽の間、次の2行を繰返します。 ;実行結果:<syntaxhighlight lang="text"> 0 1 2 </syntaxhighlight> ===== for文 ===== Rubyにもfor文がありますが、多くの言語で[[W:Froeach文|froeach文]]と呼ばれるもので、C言語系の<code>for (;;)</code>とは異なります。 ;for文の構文:<syntaxhighlight lang="ruby"> for 変数 in コレクション 文 end </syntaxhighlight> :コレクションは Range, Array, Hash など内部構造を持つオブジェクトです。 ==== Rangeオブジェクトとfor文 ==== Rangeオブジェクトは、整数の区間を表し範囲演算子 <code>開始 ... 終了</code> で生成します。 ;コード:<syntaxhighlight lang="ruby"> rng = 1..3 puts rng.class for n in rng do puts "テキスト"; end </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang="text"> Range テキスト テキスト テキスト </syntaxhighlight> ==== Arrayオブジェクトとfor文 ==== Arrayオブジェクトは、任意の Ruby オブジェクトを要素として持つことができます。 配列式<code>[要素1, 要素2, … 要素n]</code> で生成します。 ;[https://paiza.io/projects/zwRG10FKO8uQf3tv72C9NQ?language=ruby コード]:<syntaxhighlight lang="ruby"> animals = ["ネコ", "金魚", "ハムスター"] puts animals.class for animal in animals do puts "動物 #{animal}" end </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang="text"> 動物 ネコ 動物 金魚 動物 ハムスター </syntaxhighlight> ==== Hashオブジェクトとfor文 ==== Hashオブジェクトは、任意の Ruby オブジェクトをキーに、任意の Ruby オブジェクトを値に持つことができる連想配列です。 Hash式<code>{キー1 => 値1, キー2 => 値2, キーn => 値n}</code> で生成します。 また、キーが Symbol の場合 Hash式<code>{キー1: 値1, キー2: 値2, キーn: 値n}</code> で生成することが出来ます。 ;[https://paiza.io/projects/CeZa9Pg-HLS2I1ijggGkYw?language=ruby コード]:<syntaxhighlight lang="ruby"> animals = {cat: "ネコ", gold_fish: "金魚", hamster: "ハムスター"} puts animals.class for en, animal in animals do puts "動物 #{en}: #{animal}" end </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang="text"> Hash 動物 cat: ネコ 動物 gold_fish: 金魚 動物 hamster: ハムスター </syntaxhighlight> このように、Rubyのfor文は多様なコレクションを受け付けます。 ===== loop文 ===== loop文(ループぶん、loop statement)は永久ループを提供します。 ;構文:<syntaxhighlight lang="ruby"> until [ do ] 文1 文2 : 文n end </syntaxhighlight> ;[https://paiza.io/projects/ZB-Ikm3W8SOoKLTlGU161Q?language=ruby loop文のコード例]:<syntaxhighlight lang="ruby" line> i = 1 loop puts "%b" % i i <<= 1 break if i > 2**80 end </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang="text"> 0b1 0b10 0b100 0b1000 0b10000 0b100000 0b1000000 0b10000000 0b100000000 </syntaxhighlight> :5行目の、<code>break if i > 2**80</code>でループを脱出するようにしています。この様に break や return あるいは例外が上がらないとループは永久に終わりません。 :このコードは、Rubyにはない do-while文を模倣する例にもなっています。 ==== イテレーターメソッド ==== ===== eachメソッド ===== 上述 for を使った配列の処理と、同じ処理を、次のようにコレクションの<code>each</code>メソッドを使っても書けます。 ;[https://paiza.io/projects/GEmXBCX8GIC27X5U1F1jjw?language=ruby コード]:<syntaxhighlight lang="ruby"> rng = 1..3 puts rng.class rng.each do puts "テキスト"; end animals = ["ネコ", "金魚", "ハムスター"] animals.each do |animal| puts "ペット:#{animal}" end animals = {cat: "ネコ", gold_fish: "金魚", hamster: "ハムスター"} puts animals.class animals.each do |en, animal| puts "動物 #{en}: #{animal}" end </syntaxhighlight> :実行結果:<syntaxhighlight lang="text"> Range テキスト テキスト テキスト ペット:ネコ ペット:金魚 ペット:ハムスター Hash 動物 cat: ネコ 動物 gold_fish: 金魚 動物 hamster: ハムスター </syntaxhighlight> ===== Integer#times ===== Integer#timesは与えられたブロックをオブジェクトの示す整数値回くりかえします。 :コード<syntaxhighlight lang="ruby"> 3.times{ puts 'Hello, world!' } </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang="text"> Hello, world! Hello, world! Hello, world! </syntaxhighlight> ;繰返したい処理が2行以上ある場合:<syntaxhighlight lang="ruby"> 3.times { puts 'Hello' puts 'World' puts '' } </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang="text"> Hello World Hello World Hello World </syntaxhighlight> ;[https://paiza.io/projects/tycqR9lC1dCY_rWwjGhYvA?language=ruby ループ変数を使た例]:<syntaxhighlight lang="ruby"> 3.times do |i| puts "#{i}の倍は#{2 * i}" end </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang="text"> 0の倍は0 1の倍は2 2の倍は4 </syntaxhighlight> ;ブロックを伴わないtimesメソッド:<syntaxhighlight lang="ruby"> iter = 3.times puts iter.class puts iter.next # 0 puts iter.next # 1 puts iter.next # 2 # puts iter.next # `next': StopIteration: iteration reached an end </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang="text"> Enumerator 0 1 2 </syntaxhighlight> : Integer#times にブロックを渡さないと、Enumeratorオブジェクトが返ります。 : Enumeratorオブジェクトは外部イテレーターと呼ばれnextメソッドで反復を行えます。 == 高階関数 == === lambda === 無名関数を定義するにはKernel.#lambdaを使用します。Proc.newも近い機能を提供しますが、lambda のほうがより厳密で、引数の数が異なるって場合エラーとなります。 <syntaxhighlight lang="ruby"> lambda {|x, y| x + y }[2, 3] # => 5 </syntaxhighlight> lambdaが返すProcオブジェクトにアクセスするにはブラケットを使用します。callメソッドを呼んでも同じことです。 == HTTPクライアント == open-uriを使用すると簡単ですが、より高度なインタフェースが必要な場合はNet::HTTPを使用します。 <syntaxhighlight lang="ruby"> require 'open-uri' puts open('http://www.example.com/').read </syntaxhighlight> open-uriは組み込みのopenメソッド(Kernel.#open)をオーバーライドします。ワンライナーで書くこともできます。 <syntaxhighlight lang="console"> % ruby -ropen-uri -e 'puts open(ARGV.shift).read' http://www.example.com/ </syntaxhighlight> ARGVはコマンドライン引数の配列、Array#shiftメソッドは最初の要素を取り出します。 == 応用 == {{進捗状況}} * [[Ruby on Rails]] {{進捗|00%|2022-06-07}} 0% == 脚註 == <references /> {{スタブ}} [[Category:Ruby|*]] [[Category:プログラミング言語]] {{NDC|007.64}} ry07u7h72cqu8nf4f2vc6ojbl5sdxck 戦術学入門 0 7536 205541 201922 2022-07-19T20:34:36Z 某編集者 69349 /* ランチェスターの法則 */ wikitext text/x-wiki *[[社会科学]]>[[軍事学]]>[[戦術学]]>'''戦術学入門''' [[画像:Battle of Austerlitz - Situation at 0900, 2 December 1805.png|300px|thumb|right|地形図と部隊符号から構成されるアウステルリッツ会戦の状況図である。戦闘で生じている全ての事象が戦術的に重要であるわけではない。戦術学では状況図のように現実の複雑な戦況を概念化し直し、戦場の空間的、時間的そして戦力的要素の三つを視覚的に把握することで、何が重要な情報であるかを取捨選択する。]] == 序論 == 戦術(Tactics)とは戦闘において部隊などを効果的に運用する技術・科学である。軍事学において戦術学は戦闘を認識し、解釈し、そして判断するために必要な理論的枠組みを備え、また戦闘において勝利を獲得するために戦力を配置し、戦闘力を最大化し、戦闘行動を指揮する上で不可欠な実践的役割を担っている。ただし戦術は戦略の下位において実践される領域として区別されている。つまり戦略とは作戦部隊を有利な条件で戦闘が実施できるように全体的な視点から部隊を指導する技術・科学であり、戦術はその戦略に沿って戦闘で勝利する技術・科学である。したがって、戦術学の固有の問題とは戦争の指導とは別個に、戦闘において戦力を活用することにある。 戦闘において部隊を戦術的に運用することの意義は過去の戦史で示されている。ナポレオン戦争においてアウステルリッツ会戦を概観すると、戦力で劣勢なナポレオンが敵の攻撃に対して防御戦闘と遅滞行動を組み合わせたことが勝利をもたらしたことが分かる。戦術学において戦力の優劣は必ずしも戦闘の勝敗に直結するわけではない。戦力だけではなく、任務、地形、敵情などから戦闘状況に適した戦術を選択することが不可欠である。例えば戦術学では学習者を部隊指揮官と想定して次のような事柄を問題とする。「与えられた任務をどのように理解するのか」、「どの地域が戦闘において緊要であるのか」、「敵は次にどのような戦闘行動に出るのか」、「現状で我の戦力をどのように配置するべきか」、「敵をどのような要領で攻撃するべきか」、「圧倒的劣勢において退却と防御のどちらを選択するべきか」、「歩兵部隊と戦車部隊の連携はどのように指導するのか」、「自分の作戦計画をどの部下に何をどのように伝えるべきか」これらの問題は全て戦術学の重大な問題であり、理論的に導き出すことが求められる。 戦術学はいくつかの部門に細分化することができる。まず理論的に単純化された基礎的問題を扱う初等戦術とより現実的かつ複雑な戦況に対処する応用的問題を扱う高等戦術の二つがある。また単一兵科の小部隊を指揮する小戦術から複合兵科の大部隊を指揮する大戦術に分けることもありうる。さらには戦闘空間の特性の相違から陸上戦力を運用する戦術、海上戦力を運用する戦術、航空戦力を運用する戦術などに分類することも可能である。事前の準備の程度から計画戦術と応急戦術の研究に分けることもなされる。これらの細分化に踏み込むことは『戦術学入門』である本項目では重要視しない。以下では戦術学の基礎的な理論について概説することに力点を置いた上で、次のような章立てで進んでいく。まず戦術の原理、攻勢作戦、防勢作戦の三つに内容を大別して説明していく。これらの概説を通じて本項目では学習者の戦術学の基礎的な理解に貢献することを狙っている。 == 戦術の原理 == 戦術とは戦闘に戦力を適用することである。その具体的な適用の方法は実践的な訓練や経験によってのみ獲得される技術的側面を含んでいるものの、体系的な教育や思考によって習得される科学的側面も備えている。したがって、戦術問題は原則としていくつかの原則と戦術学の概念に基づけば論理的思考によって解答を導き出すことが可能である。ここでは戦術学の原理、基本概念、そして戦術的思考のモデルについて概説する。 === 戦いの原理 === あらゆる戦闘に勝利するために一般的に適用することが可能な戦術の原理とはどのようなものであるのか。例えばそれは「我の戦力の主力を以って、敵の個々の戦力と戦闘するように機動すること」のように要約された、いくつかの戦いの原理(Principles of war)から明らかにすることができる。これは戦闘を計画または指導する際に常に準拠するべき原則であり、次のような諸原則が知られている。 *目標の原則 *統一の原則 *主導の原則 *集中の原則 *奇襲の原則 *機動の原則 *節約の原則 *簡明の原則 *警戒の原則 行動の目的を明確にする目標の原則、指揮系統を統一する統一の原則、先制して状況の支配権を獲得する主導の原則、敵の弱点に対して味方の戦力を集中する集中の原則、敵の意外性を突いて戦う奇襲の原則、移動によって我の優位な位置関係を維持する機動の原則、無駄な戦力を有効活用する経済の原則、目的や行動方針が大胆かつ単純である簡明の原則、敵の奇襲を防ぐために注意する警戒の原則、以上が各原則の要旨である。<ref>米陸軍では物量的な戦力の優位性を保持する物量の原則、旧ソ連陸軍では敵を完全に撃滅する殲滅の原則などが原則として加えられる場合もある。</ref> [[File:Battle of salamis.png|300px|thumb|right|サラミス沖海戦の状況図]] 戦術研究においてこれら諸原則の重要性が実証されている。ここでは一例としてサラミスの海戦を取り上げながら、諸原則の意義を確認する。紀元前486年9月20日にテミストクレスが指揮するギリシア軍とクルセルクスが指揮するペルシア軍による、ギリシア半島のサラミス島沖でサラミスの海戦が発生した。劣勢な戦力しか持たないテミストクレスはサラミス島を防衛するために防勢サラミス島沖の狭隘な海峡という地理的環境を活用することを考案した。つまり、ペルシア軍の大規模な戦力を狭隘な海峡に誘致することでペルシア軍を脆弱な状態に追い込み、風浪の状況が時間の経過でギリシア軍に有利に変化するのに乗じて、攻撃に転換する戦術を実践したのである。結果としてペルシア軍は地形や海象に起因する隊列の混乱、そしてギリシア軍の反転攻勢の中央突破に対処することができず、敗北することとなった。サラミス島を防衛するという目標の明確化、部隊の意思疎通の統一化、主導権の計画的な回復、戦力の一点集中、奇襲的な反撃、敵を分断する機動的な攻撃、戦機が到来するまでの戦力の温存、作戦方針の簡潔さ、そして敵の行動に対する警戒、このような適切な原則の適用によってテミストクレスは勝利を確実なものとすることができたと戦術的には考えられる。 === 戦術の基礎概念 === 戦術の基礎概念の最も初歩的な範疇は戦力が発揮する戦闘の機能、戦力が備えている戦闘力、戦力の展開に関連する戦闘陣の三つに大別に分けることができる。 ==== 戦闘 ==== 戦闘とは戦争における本来的な軍事行動であり、我に対抗して行動する敵を撃滅することを目的とした闘争の状態である。そのため戦闘において彼我の戦力はそれぞれの戦闘力を最大限に敵に対して発揮できるよう行動する。しかし、敵を撃滅するという一般的な戦闘の目的は個々の状況に応じて敵の部分的な撃退や一地点の占領として解釈される場合もある。そのため戦闘の勝敗は理論的には彼我の損害比で表現されるが、彼我の戦闘部隊の任務が達成されたかどうかによっても表現される。この戦闘を遂行するための戦力の機能は五つの項目に整理することができる。 *発見の機能 *拘束の機能 *制圧もしくは攪乱の機能 *機動の機能 *占領の機能 偵察や警戒によって敵情を明らかにする発見の機能、接敵機動と接触を維持することによって敵の行動の自由を制限する拘束の機能、砲兵火力などによって敵の組織的行動を妨げる制圧もしくは攪乱の機能、戦場において敵の弱点を圧迫するように戦力を選択的に再配置する機動の機能、そして敵に対して決定的な攻撃を加える打撃もしくは占領の機能、以上の五つである。これら機能を発揮するための戦力の能力を戦闘力と言う。 ==== 戦闘力 ==== ===== ランチェスターの法則 ===== 戦闘力(Capacity of battle)とは各部隊が戦闘を遂行する能力を指す概念である。戦闘力の優劣によって戦闘を実施する部隊の戦果の原因が説明され、また戦果の予測も左右される。戦闘力を具体的にどのような要素から判断するのかについては古典的な分析として、まず物的な局面に注目するものがある。 兵員と装備の物量が大きければ大きいほど戦闘力は向上するものであり、例えば100名の兵員から組織される部隊は50名から組織される部隊に対して2倍の戦闘力を有しているとする分析である。 このような基本的モデルとしてランチェスターの数式モデルなどが提案されており、兵棋演習の戦果や損害の計算法のひとつとして採用されている。 「ランチェスターの法則」の数式モデルは、幾つかの種類があるが、そのうち有名なモデルの内容は、下記の2つの式の連立微分方位定式として表される。 ;ランチェスターの法則 :<math>{\mathrm{d} x \over \mathrm{d} t}= -\alpha y </math>     (1) :  :<math>{\mathrm{d} y \over \mathrm{d} t}= -\beta x </math>      (2) という連立方程式である。 なお、自軍の兵数がx、敵軍の兵数がy、αとβは武器の性能を表す定数である。また、αとβは計算上の都合により定数係数であるとしてモデルを立てる(そう仮定しないと、解析的に手計算で式を解けない。または、もし変数係数だと人間による式計算では解析が著しく困難になるので、非入門的であり、非実用的になる)。 このように微分方程式で表現されるので、大学の微分方程式などの教科書でも紹介されることもある。高校参考書『モノグラフ』の『微分方程式』に書いてある計算問題も、この式の場合である。 式を見れば、たしかに兵員が多いほど、相手軍の損傷が大きくなるような立式になっている事が分かるであろう。 上式を式変形で解いて解析解を得るのは数学的には可能である事が知られているが、しかし解析解から実用的な結果を得るための計算に手間が掛かるので、本wikiではまず、解析をしないで、類似の簡易モデルを考えよう(解析例は後の章で後述する)。 その類似の簡易モデルは、現代ではゲームのRPG(ドラゴンクエストやファイナルファンタジーのようなジャンル)における戦闘のダメージ計算に例えればよい。 たとえばドラクエ3のようなパーティ戦闘システムのあるゲームの場合、パーティの人数が増えると、単に敵の攻撃に人数分だけ耐えられるようになるだけでなく、さらに1ターンあたりに敵に与えるダメージ量も増える。よって、より短時間でスライムの集団などを倒せるので、1戦あたりの戦闘が早く終わり、戦闘終了までに自パーティの受けるダメージ被害も少なくなる。 たとえば、ドラクエ3に例えよう。 勇者の1人旅と、勇者・武闘家・武闘家・武闘家の4人パーティを比較しよう。 プレイヤーキャラが草原フィールド上を歩いていたら、ガイコツが1体出現したとする。(計算の単純化のため、戦闘で出現するモンスターは毎回、必ずガイコツ1体だけだとする。なお、実際のドラクエ3には「ガイコツ」は出現しない。) 計算の単純化のため、ガイコツはHPが10だとしよう。計算の単純化のため、勇者も武闘家も、攻撃力は同じで1人あたり2だとする。よって、1回の攻撃でダメージ2を敵に与えるとしよう。 また、勇者と武闘家のHPは両方とも10だとしよう。計算の単純化のため、つねに勇者たちの攻撃が先手で、敵の攻撃は後攻だとしよう。 ガイコツの攻撃を受けたら、必ず勇者または武闘家の1人がダメージ1を受けるとしよう。 勇者1人旅の場合、ガイコツ1体を倒すのに合計5ターン要する。なので、勇者は戦闘終了までに4ダメージを受ける。(最後の5ターン目はガイコツからの攻撃を受けないので、合計4ダメージになる。) 一方、勇・武・武・武の4人パーティなら、1ターンあたり8ダメージ(=2×4)なので、2ターンでガイコツ1体を倒せる。なので、一戦あたりの被害ダメージは合計1ダメージである(2ターン目はダメージを受けない)。 さて、勇・武・武・武の4人パーティは、HPの合計値が40である(40=4×10)。一方、勇者1人旅は、HPの合計値が10である。 なので、単純計算で勇・武・武・武の4人パーティなら、ガイコツ1体を倒すことを 40÷2=20で、20回可能である。(実際には、最後のほうで勇者か武闘家の誰かがHPゼロになって戦闘不能になるので、こなせる戦闘回数は20よりかは減る。) 一方、勇者1人旅では、計算 10÷4=2あまり2 により、たったの2~3回しか、ガイコツを倒せない。 仮に2~3をパーティ人数分で4倍しても、8~12回にしかならず、到底20回には及ばない。 なお、2~3を7倍すると、14~21になり、ようやく20に到達する。 つまり、パーティを4倍する事により、4倍の効果どころか少なくとも7倍の効果が現れている。 4と7を対数関数で計算すれば、 :<math>\log_4 7 = 1.40367 </math> なので、約1.4乗で人数の効果が指数的に効いてきたことになる。 このようにランチェスターの法則により、人数の効果は、けっして1次関数的な1乗の比例ではなく、1次関数を超えた乗数の効果が出てくる。 まさに、上述のドラクエ的なシミュレーション例が、ランチェスターの法則そのものである。 毎回対数計算をするのは面倒なので、やや不正確だが簡易的に「1.5乗で効いてくる」と近似すれば計算しやすいだろう。なお、平方根が0.5乗である。 つまり、ある代数値 aについて、 :<math>a^{1.5} = a \sqrt{a} </math> である。 もちろん上記のドラクエ3例はあくまでゲームの話であり、実際の戦争には、けっして、そのまま単純に適用してはならない。 だが、軍事は置いておくとして「ランチェスターの法則」の数理的な性質だけを調べるための例としては、上記のドラクエ例でも正しい。 もちろん、実際の戦闘や戦争は、そもそも数理モデルだけでは決して済まない。現実の戦争は、そんなに単純ではない。上記のランチェスターの法則は、あくまで参考程度のものである。 しかし、そもそも社会科学におけるモデルとは、そのように参考程度のものに過ぎない。これは軍事学に限らず、経済学などにおける数式でも同様である。 さて、ランチェスターの法則から導ける結果として、もし兵員数が2倍になると、その効果は、けっして単に敵の2連戦に耐えられるような長期戦の対応だけでなく、さらに攻撃力アップによる、次に述べる副次的な別の効果がある。 具体的には、兵員が増えれば仮定により戦闘力(ゲームで言う「攻撃力」)もアップするので、いままで倒せなかった強い敵国の軍が倒せるようになる可能性が増える。また、攻撃力がアップすることにより、敵軍の殲滅(ゲームに例えるなら戦闘中の敵全員のHPを0にする事)に要する時間が減少するので、殲滅までに受けた自軍の損耗も減らせる。つまり自軍の被害は、戦闘終了までに受けた時間に応じて、比例的に増加する事がランチェスターの法則から導かれる(なお、ドラクエなどのRPGゲームでも同様の現象がある事が知られている)。 ともかく、兵員数の増加には、上述のように副次的な効果がある。 このため、よく言われる事として、兵員数の2倍への倍増は、その効果はけっして2倍ではなく、上述の副次効果により乗数的に効果が出るので、たとえば4倍~8倍くらいの効果になる場合もある(実際にどの程度の効果が出るかは、モデルの係数などによって変わる)。 こういった数学的な事が、近代ヨーロッパでは既に言われていたので、なので現実の世界史の戦争での用兵もそれに従い、その結果、なるべく兵力は分散させずに、兵力を拠点や作戦目標などに集中させる戦術が実際に好まれ、多くの戦場で採用された。 近代世界史におけるシベリア鉄道など鉄道による兵員輸送や軍需物資輸送などによって軍事力が向上するという理屈も、なぜ向上するのかという理由を根本的に考えれば、ランチェスターの法則のような考え方が前提になっているだろう。 ===== 解析例(微分積分) ===== では、実際にランチェスターの法則を微分積分的に解析してみよう。 ;ランチェスターの法則 :<math>{\mathrm{d} x \over \mathrm{d} t}= -\alpha y </math>     (1) :  :<math>{\mathrm{d} y \over \mathrm{d} t}= -\beta x </math>      (2) なお、自軍の兵数がx、敵軍の兵数がy、αとβは武器の性能を表す定数である。また、αとβは定数係数である。 数学的な注意として、まず、x、yはともに「関数」であり、「変数」は t (ティー)の1つだけである。xとyは、変数にtをもつ(「変数」ではなく)「関数」である。 :※ tの代わりにxまたはyのいずれか1つを「変数」とする事もできるが、その場合、変数にならなかった残り2つの文字は関数になる。たとえばもしxを変数として扱う場合、tとyは xの関数である 事になる。 :つまり、もしtを変数として扱うなら、けっしてxはyの変数ではない。なぜなら、時間tが与えられれば、yの値は t から一意的に決定するからである。だから、関数 yはこの場合、変数にはtだけをもつ。 :変数をtとした場合でも、答えの曲線をグラフ化してx-y平面上に描けば、x軸とy軸の平面グラフ上の曲線が描かれるので、あたかも「xがyの変数である」(誤解)かのように誤解しがちであるが(実際、変数変換によりxを変数とする事も可能であるが)、しかし、計算中の仮定により、この場合は t だけが変数である。 では、実際に式を解こう。まず、式(1)をもう一回、微分すると、 :<math>{\mathrm{d^2} x \over \mathrm{d} t^2}= -\alpha {\mathrm{d} y \over \mathrm{d} t} </math> になる。2項目の dy/dt に式(2)を代入すれば、 :<math>{\mathrm{d^2} x \over \mathrm{d} t^2}= -\alpha {\mathrm{d} y \over \mathrm{d} t} = -\alpha( -\beta x) = \alpha \beta x </math>    (2-1) となり、式中からyが消えて上式はxとtだけの式になる。 この事から、xは関数であり、xの変数はtだけである事が分かる。(実は数学的には証明をややインチキしており、そもそも、こういう仮定が無いと、常微分を出来ない。変数が2個以上の場合は「偏微分」という別の演算が必要になる。) 同様に式(2)についても、同様の演算操作により、式(2)を変形して関数yと変数tだけの式に置き換える事が出来る。 さて、 :<math>{\mathrm{d^2} x \over \mathrm{d} t^2} = \alpha \beta x </math>    (2-1) の右辺を移項して、 :<math>{\mathrm{d^2} x \over \mathrm{d} t^2} - \alpha \beta x = 0 </math>    (2-2) となる。 これは左辺の微分作用素を因数分解すると、 :<math>({\mathrm{d^2} \over \mathrm{d} t^2} - \alpha \beta) x = 0 </math>    (3-1) と書ける。 微分作用素を :<math>{\mathrm{d} \over \mathrm{d} t} - \alpha \beta = D </math>    (3-2) として作用素Dを定義すれば、式(3-1)を変形して、 :<math>(D^2 - \alpha \beta) x = 0 </math>    (3-3) と書ける。 ここで、中学校で習った因数分解の公式により :<math>(A^2 - B^2) = (A-B)(A+B) </math>    (3-4) であるので、この公式を式(3-4)に適用すれば、 :<math>(D - \sqrt{\alpha \beta}) (D + \sqrt{\alpha \beta}) x = 0 </math>    (3-5) のように式変形できる。 この事から、この方程式の解(一般解)は、 :<math>(D - \sqrt{\alpha \beta}) x = 0 </math>   (3-6) の解(特殊解の一つ)と、 :<math>(D + \sqrt{\alpha \beta}) x = 0 </math>   (3-7) の解(特殊解)を組み合わせたものになる事が分かる(本来なら証明が必要だろうが、省略する。興味があれば、大学2年の応用解析学の本を読め)。 (3-7)の解は、指数関数 :<math>x = C_0 e^{- \sqrt{\alpha \beta} t} </math> となる。(ただしC<sub>0</sub>は積分定数とする。) なお、eは自然対数の底(てい)である。高校3年の数学3で習うので、もし知らなければ教科書を買って調べよ。 指数関数 e<sup>t</sup> は見やすくするために、大学入学以降では exp(t) と書く場合もあり、その場合、上式は :<math>x = C_0 \exp (- \sqrt{\alpha \beta} t) </math> と書かれる。 同様に式(3-6)も解けて :<math>x = c_1 \exp (+ \sqrt{\alpha \beta} t) </math> となる。 この2つを足したモノが一般解なので、 :<math>x = C_0 \exp (- \sqrt{\alpha \beta} t) + c_1 \exp (+ \sqrt{\alpha \beta} t) </math>    (4-1) が一般解である。 しかし、読者には、これだけだと、なぜこれによって、兵数が倍増すると攻撃力が倍増するか等の諸性質や、そもそも解が増加するのか減少するのかさえも、分からない。 だが、微分方程式の初期値として、ある時点での兵数と、数時間後の(減少した)兵数を代入する事をして積分定数C0およびC1を決定してから、数値計算を行うと、ここから、「兵数が倍増した場合の勝率の指数的な増加」など前の節で述べたような性質が数値計算的にかつ経験的に導かれる場合が多い(初期値による)。 答えの式(4-1)だけを見ると、あたかも値が増加しそうに錯覚するが(指数関数の部分はマイナスにならないので)、しかし係数C0やC1の符号はプラスとは限らず、マイナスの数である場合もあるので、解全体としては値が減少してくのである。 このように、連立微分方程式は、解を解いただけでは、その性質が分かりづらい場合が多く、そのため、パソコンなどで数値計算によってグラフなどを書いて、その性質を予想する事が、研究では必要である。(そして、その予想を参考に、その予想を証明するのが数学者の仕事である。なお、さすがにランチェスターの式の性質はすでに数学者によって研究済みである。) なお、もしプログラミングが出来なくても、代替の方法として手間は掛かるが、表計算ソフトのエクセルで、実際に数値計算をしてグラフを何パターンか書いてみてシミュレーションする方法もある。 ともかく、このような連立微分方程式を、数値計算などでシミュレーションして性質を研究していく分野は、数学的には「力学系」といわれる分野である。物理の「力学」の分野でこういう計算例が多かったので、そういう名前がついているが、物理学の知識が無くても計算できる分野である。 軍事学に限らず、生物学の分野にも「力学系」の式はある。生物学で、動物などの個体数などをシミュレーションするのに連立微分方程式で「ロトカ=ヴォルテラの方程式」というのものが使われる場合があり、このロトカ=ヴォルトラ方程式とその派生も、「力学系」の分野のひとつとして有名である。(高校の生物でも、式計算はしないが、高校3年の生物2における生態分野で、類似の理論を習う。) なお、上記の一般解は、双曲線関数 sinh および cosh というものを使っても置き換える事が出来る。これは日本では大学の理科系の学部の1年で習う。 三角関数のsinやcosとは、双曲線関数は異なるので、混同しないように注意のこと。 余談だが、2020年のコロナ問題で話題・有名になったSIR方程式という感染症モデルの常微分方程式も、力学系に分類されるような式であろう。当然、上述のように力学系の微分方程式の数値計算シミュレーションにはコンピュータが必要である。(なお、評論家の中には困ったことに、「SIR方程式はパソコンが無くても研究できる時代遅れの式」(そして彼らは「だから予想値と実測値の誤差が大きい」と主張している)と言っている、頭の悪い有名評論家がいる(力学系の研究ではパソコンによる数値計算が必須なので、前提が事実に反する)。しかも更に困った事に、本来ならツッコミを入れるべき医学者やら生物学者が数学オンチなので、そういう批判者たちの前提の間違いにツッコミを入れない。残念ながら日本のマスメディアや論壇では、こういう馬鹿評論家でも、学歴で東大とか京大とか卒業していると、困った事に世間では彼らが「知識人」として通用してしまうのである。きっと「痴識人」の間違いであろう。医学者や生物学者も、知識不足で頼りない。)大学などの数学者や物理学者も、まったく評論家の数学的な間違いにツッコミを入れないので、残念ながら日本の数理科学の研究水準は低いといわざるを得ない。東大などの提唱する分離融合や異分野融合などが口先だけである証拠でもある。 またなお、微分積分に限らず、軍事学や経営学などの分野に数学や統計学などを応用する分野の事を「オペレーションズ・リサーチ」(略称は「OR」(オー・アール))という。第二次世界大戦中にアメリカ軍がこういった数理的な研究手法を始めた。統計学や確率論、線形計画法などがよく、オペレーションズ・リサーチの手法として用いられる。 一方、「力学系」と言った場合、「力学系」は微分方程式(または差分方程式)で立てられたモデルの分析のことを言うので、「オペレーションズ・リサーチ」とはニュアンスがやや異なる。 ;吟味の必要性 軍事学の数理モデルに限らず、経済学などを含む何らかの社会科学の数理モデルを現実の問題に適用する場合には、注意しなければならない事として、そのモデルが、これから適応しようとしている事例の性質を果たして本当によく反映できているか、自己批判的かつ内省的に注意深く観察しながら、限定的に適用しなければならない。このように、観察しながら注意深く限定的にデモル適用をすることを、俗に社会科学などの分野では「吟味」(ぎんみ)という。数理モデルの実用の際には、吟味が必要である。 しかし残念ながら、社会科学やその応用では、しばしば吟味は省略されることが、実業界やマスメディアなどで まかり通っている場合が往々にある。 たとえば2001年~2005年ころのアメリカ金融界は金融工学のブラック・ジョ-ルズ方程式に基づく仕組みなどを喧伝していたが、しかし米国金融がモデルの吟味を怠ったせいで杜撰な貸付をしたせいで、貸し金の回収不足になりサブプライム問題を起こすなど、杜撰な吟味不足によって世界経済に迷惑を及ぼす例もあった。 ===== 実際の戦闘力 ===== 上述のランチェスター法則は、あくまで参考程度の簡略的なモデルであり、実際の戦闘では適用の不可能・困難な場合も多いだろう。 なので、もし戦闘力をさらに詳細に分析するならば、兵員の規律や士気などの無形的要素を組み合わせなければならない。つまり、火力部隊の戦闘力は火砲とそれを操作する射撃要員の物量という有形的要素と、砲兵火力を発揮するための射撃の速度、精度、士気から判断される無形的要素から導き出すことができる。したがって100名の統制がとれていない武装した群衆と50名の規律ある戦闘部隊の間には戦闘員としての錬度、団結、そして士気という無形的要素に由来する戦闘力の格差が存在していると指摘できる。 また、戦闘は戦力の戦闘力の合計によってのみ左右されるのではなく、戦闘力を戦場に配置する戦闘陣によって規定される。 ==== 戦闘陣形 ==== 戦闘陣(Battle formation)は戦力が戦闘において連携を保つために形成する複数の部隊の一定の態勢である。戦力は彼我との位置関係から与えられる損害や得られる戦果が変化しうる。そもそも部隊は敵の方向に対して最大の戦闘力を発揮できるように部隊の正面を方向付ける。その基本となる戦闘陣形として第一に横陣がある。横陣は敵に対して正面を広く縦深を浅くなるように選択した隊形であり、特に火力を発揮するのに適した陣形である。この陣形の戦術的な特徴は部隊の脆弱な左右両側面と背面に敵が回りにくくすることを防ぐことにある。古代ギリシアのマケドニア軍で採用されていた戦闘陣は歩兵部隊の横陣の両翼に騎兵部隊を配置することで、中央の歩兵部隊の両翼の弱点を補っていた。また基本となる戦闘陣形には縦陣もある。これは正面に対して狭く縦深が深くなるようにした陣形であり、機動力を発揮するのに適した陣形である。この陣形には部隊の迅速な行軍や機動を容易にする特徴がある。速やかな戦場機動や中央突破を狙った突撃で有効であり、トラファルガーの海戦でイギリス軍がフランス軍の戦列に対する攻撃の際に選択されている。さらに斜行陣、鈎形陣、円陣、弾丸陣などの陣形があり、斜行陣は右翼または左翼の片方に兵力を集中的に配置した戦闘陣であり、また鈎形陣は片方の翼を横方向に配置した戦闘陣であり、両方ともに劣勢である場合に用いる戦闘陣である。円陣は全方向に対して部隊を配置する円形の戦闘陣であり、部隊の宿営や集結などに用いられる。弾丸陣は矢印のような形状の戦闘陣であり、先端に機甲部隊を配置して突撃などに用いられる。このような多様な戦闘陣は地形や敵情、彼我の戦闘力の格差などを考慮した上で選択されなければならない。 === 戦術の基本作業 === 戦術的知能の中核とは問題解決能力であり、これは自らが置かれている状況がどのようなものであるかという状況を判断する問題、我が選択することが可能な選択肢の中でどれが最善であるか意志を決定する問題、そして下された決定を実行するために作戦方針を作成する問題の三つに問題を区分することができる。 ==== 状況判断 ==== 状況判断の問題とは任務分析、地形判断、敵情判断を起点とし、敵の可能行動の列挙、味方の行動方針の列挙、各行動の戦術的分析、そして各々の分析の総合という思考過程に基づいて解決される。任務分析とは自分に与えられた任務の背景や本質を分析して達成すべき目標事項を明確化し、複数ある場合にはそれぞれの目標の優先順位を定める問題である。地形判断とは自分が置かれている地理的環境がどのようなものかを分析することである。この際に軍事地理学の知識を援用して戦闘地域を構成する地理的特性を解釈し、重要な地形やそこに至るための接近経路を明らかにする。敵情判断とは敵部隊の配置、装備や補給の状況、後方連絡線の方向などを分析し、敵がどのような戦闘行動を将来実施するかを検討することである。敵情判断では敵が行いうる全ての戦闘行動の全てを列挙し、蓋然性の観点からそれら行動の我にとっての効果や危険を明らかにする。 ==== 意思決定 ==== 意思決定とは状況判断に基づいて我の行動方針を決定することであり、可能的な状況について個々に分析し、それら分析を総合し、決心を下すという過程から成り立つ。実際に発生する可能性がある状況は彼我にとって実施可能な戦闘行動の組合せの数だけ存在する。これらの状況について個々に分析を加えることで個々の戦闘行動によって生じうる結果がどのようなものであるかを検討する。そして総合の過程でそれら分析によって得られた個々の戦闘行動を相互に比較しながら我にとって最も危険性の高い事態がどのような事態であるかを明らかにすることが可能となる。そして任務を達成するためにどのような戦闘行動を選択しなければならないかを限定することができる。最後の決心とは少数に限定したいくつかの作戦方針の中から一つを、その選択肢の危険性と不確実性を鑑みた上で決定することである。このようにして決心が確立されれば、作戦計画の策定作業に移ることができる。 ==== 作戦計画 ==== 作戦計画(Operations Plan, OPLAN)とは決心によって定められた作戦方針に基づいて策定される戦力運用の計画である。作戦計画とは作戦の目標、目標を達成するために採用される行動の方針、そしてその方針に従って作戦に参加する各部隊の任務と個々の行動計画から成立しており、指揮官には戦術的思考に基づいて作戦計画の骨子を作成する技能が求められる。作戦は計画、実行、評価の三つの段階を繰り返しながら進め、常に目的と手段が結合するように配慮しなければならない。作戦計画の立案の際に把握するべき個別の戦況を構成する要素は任務、敵、地形と気象、使用可能な部隊と支援、そして民事的考慮の頭文字を取ったMETT-TC(Mission, Enemy, Terrain and weather, Troop and support available, and Civil considerations)で端的に要約される。これら諸要素を踏まえた上で作戦の立案には次のような事柄が含まれなければならない。第一に作戦目標を具体的な軍事的状況として定義することである。攻勢作戦で敵の拠点を攻略する方針が示された場合、その具体的な達成条件は何を意味するかが定義されなければならず、例えば攻略目標の拠点やそれを守備する敵がどのような状態になれば攻略と見なすかを明確化する。その作戦目標によって作戦は攻勢作戦と防勢作戦、また偵察作戦、行軍作戦、治安作戦などの作戦の形態に分類することができる。 == 攻勢作戦 == 攻勢作戦とは敵を積極的に求めながらこれを撃滅しようとする作戦の形式であり、遭遇や複数に渡る攻撃から成り立っている作戦である。攻勢作戦では敵に対して決定的打撃を加えることを可能とする作戦であり、これは戦術の原則のひとつである主導の原則に基づけば常に実施を模索するべき作戦である。しかし攻勢作戦はしばしば戦力の経済的な使用を指示する節約の原則に反するほどに戦闘力を減耗させる危険性がある。攻勢作戦を実施するべき状況の例としては、戦力投射作戦を実施する状況、敵に対する我の戦闘力の圧倒的な優勢を確保している状況、戦略的な守勢において局地的な反撃を実施する必要がある状況などがある。ここでは攻勢作戦の基本的な形態とその指導の要領、そして作戦計画を立案する上での考慮事項について述べる。 === 攻勢作戦の形態 === 攻勢作戦で中心となる戦術的な行動は接敵機動、攻撃、戦果拡張、追撃の四つの段階がある。接敵機動とは戦闘を行うために敵との接触を試みる機動であり、彼我の接敵機動で生じる戦闘は遭遇戦と言う。攻撃とは攻勢作戦において敵を撃破または撃滅、地形の攻略または確保、もしくはそれら両方を行う攻勢作戦の戦闘行動である。攻撃はさらに戦闘行動の方式としては奇襲的な攻撃である伏撃、防御の態勢から攻撃に転換する逆襲、準備された防御に対する強襲、敵を有利な地点におびき出す誘致、敵に誤った状況を認識させる欺瞞がある。そして機動の方式から一翼もしくは両翼を駆使して敵の二正面以上を同時に攻撃する包囲、敵の正面を突破して分断する突撃、そして敵と接触せずに敵の後方や側面に回りこむことで敵に退却を強制する迂回に分けることができる。戦果拡張とは組織的な戦闘力を失った敵に対して攻撃の段階から継続的に行われる攻撃であり、攻撃によって得られた戦果を最大化する戦闘行動である。追撃とは退却する敵をさらに追尾して打撃を加える行動であり、戦場に敵を捕捉して追撃を加える方式と、戦場外に退却した敵に対する追撃の方式がある。 ====攻撃==== ====追撃==== === 攻勢作戦の指導 === 攻勢作戦を指導する際に攻撃発起点、前進軸、攻撃目標、前進限界、集結地点を調整することで行われる。攻撃発起点とは各部隊が攻撃のための前進を開始する際に出発する地点である。理想として敵に対して位置や行動が隠匿し、また戦力を防護することができることが望ましい。自然地形で攻撃発起のための適切な地形を望むことができないならば、攻撃陣地を準備することも手段に含まれる。前進軸は各攻撃部隊が前進の際に依拠する一般的な方向あり、戦場における計画的な機動を調整するものであり、状況図では矢印によって表示される。攻撃目標とは我の戦闘力を集中させる目標であり、敵の部隊または特定の地形がその対象となる。ただし地形が攻撃目標であるのに対して敵部隊を攻撃目標とする場合には攻撃目標を捕捉することが難しくなる。そして攻撃前進の終点は前進限界によって定められる。前進限界は攻撃部隊が攻撃前進を停止する段階を計画的に決定するものである。前進限界に到達した部隊は識別が容易な集結地点もしくは予備的に設定された代替集結地点に再集結させる。 === 攻勢作戦の計画 === 攻勢作戦を計画する上での着眼としては奇襲と集中、そして節度(Tempo)と大胆(Audacity)が重要となる。つまり、敵が予測した事態を回避し、戦力を集中させ、迅速な節度を以って大胆に前進させることが効果的な攻勢作戦を立案する上での基礎となる。そして攻勢作戦を状況に適合させるためにはまず情報作戦に基づいて戦場の状況を把握することが求められる。敵情については配置、装備、戦闘力、弱点、攻撃すべき目標、集結点、敵の後方連絡線、離隔した支援戦力、対空部隊、電子戦部隊、敵の情報網などであり、地形については地形の形状、気象の影響、攻撃に使用可能な経路の配置と数、攻撃の障害となる森林や河川などの地形について把握する必要がある。これらの状況を踏まえた上で与えられた任務とそれに対応する作戦目標、指揮官の意図、敵の配置や戦闘力などの敵情、攻撃目標、作戦開始時刻、各部隊の機動の方向性、攻撃のための戦闘陣、作戦の危険性、そして代替的な作戦計画を準備する。作戦が開始されれば、指揮官は我の戦闘力の消耗を確認しながら攻勢極限点を見極め、彼我の戦闘力の優劣が逆転しないよう注意する。一度攻勢極限点に到達したと判断されれば、指揮官は防御へ転換することを決断し、攻撃によって得られた戦果を保存するよう努めなければならない。 == 防勢作戦 == 防勢作戦とは時間的猶予の確保、戦力の経済的使用、または別の攻勢作戦を支援するために、敵の攻勢作戦を待ち受けてこれを破砕する作戦である。防勢作戦は戦力の劣勢を補うことを可能とする作戦であり、節約の原則に立脚した作戦方針である。しかし防勢作戦のみによって目標を達成することが困難であり、また戦闘の主導権を失う危険を伴う。防勢作戦を実施する状況の例としては、決定的に重要な地形の確保を維持しなければならない状況、敵による奇襲への対処、敵に対して我の戦闘力が総体的に劣勢である状況などがある。ここでは防勢作戦の形態、指導、そして作戦計画の立案について概説する。 === 防勢作戦の形態 === 防勢作戦で中心となる戦術的な行動には防御と後退行動がある。さらに防御は陣地防御と機動防御に分けられる。陣地防御とは逆襲を加えることを主眼に置いたものではなく、構築した陣地や要塞によって敵の攻撃を阻止する形式の防御である。防御では敵の攻撃を阻止し、また緊要地形を保全することを狙った横陣や円陣の防御陣地が準備され、して防御陣地の機能を強化することに主たる努力が集中されるために、後方に拘置される予備の戦力は逆襲ではなく防御戦闘で減耗した損害を補填するために使用される。また機動防御とは陣地に頼るのではなく、敵の攻撃に対して決定的な逆襲を加える防御の形式である。機動防御では敵の後方連絡線を捕捉することを可能とするように陣地の構築や打撃部隊の配備を準備することに労力を費やす。そして後退行動とは敵との距離を持つように機動する防御戦闘の方法である。後退行動では敵との接触を断つ離脱、敵の前進速度を低下させる遅滞、そして敵との距離を拡大させる離隔の三段階を組織的な連携の下で背面を敵に暴露する危険を最小限に抑える。 ==== 防御 ==== ==== 退却 ==== === 防勢作戦の指導 === 防勢作戦の指導では戦闘移行線、主戦場の設定、防御陣地、火力支援の調整、直接射撃の統制、退路を調整することで行われる。戦闘移行線とは戦力を戦闘態勢に移行させる判断を下す地理的な基準となる線である。戦闘移行線は主たる防御拠点の前方において設定される。戦闘移行線と防御拠点の間は主戦場であり、敵の攻撃を排除するために戦闘力を発揮する領域である。防御陣地とは敵の侵入と前進を阻む機能を持った構築物である。防勢作戦における火力支援の調整と直接射撃の統制とは火力の最適な配分を意味する。これはそれぞれの主戦場に対する射撃のために各種装備を配置する地点を決めることであり、またそれぞれの射撃がどの地域に責任を負うのかを明確に示すことである。そして退路を調整する際には戦闘を離脱した後に収容を実施する機能も備えた二次的な防御陣地との間の連絡線を指定しておく。 === 防勢作戦の計画 === 防勢作戦は通常において防御戦闘の計画的準備によって遂行される。しかし作戦行動は主導の原則に従って静態的な行動ばかりでなく動態的な行動が必要であり、防勢作戦の作戦方針を採用していたとしても敵の攻撃を排除した後に逆襲に転換することが検討されなければならない。その原則を踏まえた上で防勢作戦の計画にはいくつかの情報が必要である。敵の戦闘力や集結地点などの配置だけでなく、どの攻撃目標を選択するのか、そしてそれに対応する接近経路、攻撃方法がどのような状態であるのかを研究しなければならない。そのためには敵が慣習的にどのような作戦行動を選択しているかを分析する必要もある。例えば空挺部隊を使用した攻勢作戦に対する防勢作戦の場合では、陣地防御ではなく機動防御を準備しなければならない。なぜならば陣地防御とは固定された攻撃目標に対して接近する際に必ず地上において進路を妨げることができなければ有効ではない。空挺部隊による攻撃に対しては防空戦闘と敵部隊が戦闘展開してから迅速で組織的な逆襲を加えることが求められるのである。また幅広い正面に渡る正面攻撃に対する防御では複数の防御陣地によって組織化された陣地防御による攻撃の阻止と予備戦力による逆襲を準備することが必要である。 == 戦術用語 == *'''圧迫''' - 武力や権威で押さえつけること。 *'''隠蔽''' - 物事、特に機密事項となる軍事基地や新兵器などを隠すこと。 *'''迂回''' - ある場所を避けて、遠回りすること。 *'''運動''' - *'''{{Ruby|掩蔽|えんぺい}}''' - *'''会戦''' - 大規模な戦力を互いに準備し、行う戦闘のこと。 *'''内戦作戦''' - 敵軍に包囲される位置で作戦を展開すること。 *'''外線作戦''' - 敵軍を包囲する位置で作戦を展開すること。 *'''監視''' - 敵軍の行動を監視すること。 *'''機動''' - *'''逆襲''' - *'''持久戦''' - 自軍を持ち堪えさせることを目的とした戦闘のこと。 *'''警戒''' - *'''撃破''' - *'''決心''' - *'''決戦''' - *'''牽制''' - 敵軍を武力や兵数などで圧倒し、敵軍の行動の自由を奪うこと。 *'''後衛''' - *'''行軍''' - *'''攻撃極限点''' - 攻撃によって得られる優位の限界のこと。[[w:攻撃の限界点|攻撃の限界点]]とも。 *'''攻勢''' - 敵軍に対して攻撃すること。 *'''後方支援''' - 砲兵、航空機などで後方から前線を支援すること。 *'''作戦''' - *'''作戦目標''' - *'''指揮''' - *'''支隊''' - *'''遮蔽''' - *'''集結''' - *'''集中''' - *'''重心''' - 部隊を1つの地点に集結させ、圧倒的物量差で敵に攻撃すること。 *'''状況判断''' - *'''助攻''' - *陣地 *前衛 *戦果 *戦術 *戦場 *前哨 *戦線 *戦闘 *戦闘力 *遭遇戦 *側衛 *退却 *地形 *諜報 *追撃 *'''偵察''' - 敵軍、特に野営地などの状況を把握し、敵軍の兵数などを事前に知る為の行動のこと。 *展開 *突破 *背後連絡線 *兵站 *編制 *包囲 *防御 *防勢 *本攻 *摩擦 *命令 *陽動 *抑止 *連絡 == 脚注 == <references/> == 参考文献 == 戦術学の文献はそれほど流通していないために入手することは非常に難しい。一般に海外の戦術学の文献が入手しやすく、特に米陸軍省が一般公開している野戦教範(Field Manual)が研究を行う上では参考となる。また国内においては戦前に流通していた軍学校の教育や試験で使用する戦術学の教範、参考書、または問題集があり、それらを入手して参照することもできる。しかしながら、これらの教範類も一般的に入手することが難しい場合が多い。戦後に自衛隊で使用されている教範類は一般公開されていないものの、自衛隊関係者により発表された閲覧可能な論文を収録した論文集がある。例えば陸上自衛隊の幹部で構成された陸戦学会から出されている『陸戦研究』は国立国会図書館等で閲覧することが可能な戦術研究である。以下では主に書籍に限定した上で戦術研究の上で参考となる研究について解題を加えたものである。 *防衛大学校・防衛学研究会編『軍事学入門』(かや書房、2000年) :軍事学を概説した入門書であり、第3章の現代軍事力の態様は戦術研究の上で参考となる。 *松村劭『バトル・シミュレーション 戦術と指揮 命令の与え方・集団の動かし方』(文藝春秋、2005年) :戦術理論の基礎的事項を要約し、また答案を付与した練習問題が含まれている。 *高山信武『陸軍大学校の戦略・戦術教育』(芙蓉書房出版) :陸軍大学校での講義と戦術学の口頭試問の記録が含まれている。 *Field Manual No. 3-90, Tactics, Headquarters Department of the Army, 2001. :米陸軍で使用されている戦術学の教範類であり、理論的解説だけでなく戦史に基づいた解説も含まれている。本項目の執筆で最も参照した参考文献。 *Field Manual No. 100-5, Operations, Department of the Army, 1993. :作戦の基礎、攻勢作戦、防勢作戦について網羅的に概説した米陸軍の教範であり、理論的説明が豊富である。 {{stub}} [[Category:軍事学|せんしゆつかくにゆうもん]] i8mjj0jtgb409fdsq4goqubhhmhk08m 205543 205541 2022-07-19T20:38:52Z 某編集者 69349 /* 序論 */ wikitext text/x-wiki *[[社会科学]]>[[軍事学]]>[[戦術学]]>'''戦術学入門''' [[画像:Battle of Austerlitz - Situation at 0900, 2 December 1805.png|300px|thumb|right|地形図と部隊符号から構成されるアウステルリッツ会戦の状況図である。戦闘で生じている全ての事象が戦術的に重要であるわけではない。戦術学では状況図のように現実の複雑な戦況を概念化し直し、戦場の空間的、時間的そして戦力的要素の三つを視覚的に把握することで、何が重要な情報であるかを取捨選択する。]] == 序論 == 戦術(Tactics)とは戦闘において部隊などを効果的に運用する技術・科学である。[[軍事学]]において戦術学は[[戦闘]]を認識し、解釈し、そして判断するために必要な理論的枠組みを備え、また戦闘において勝利を獲得するために[[戦力]]を配置し、戦闘力を最大化し、戦闘行動を指揮する上で不可欠な実践的役割を担っている。ただし戦術は戦略の下位において実践される領域として区別されている。つまり戦略とは作戦部隊を有利な条件で戦闘が実施できるように全体的な視点から部隊を指導する技術・科学であり、戦術はその戦略に沿って戦闘で勝利する技術・科学である。したがって、戦術学の固有の問題とは戦争の指導とは別個に、戦闘において戦力を活用することにある。 戦闘において部隊を戦術的に運用することの意義は過去の戦史で示されている。ナポレオン戦争においてアウステルリッツ会戦を概観すると、戦力で劣勢なナポレオンが敵の攻撃に対して[[防御戦闘]]と遅滞行動を組み合わせたことが勝利をもたらしたことが分かる。戦術学において戦力の優劣は必ずしも戦闘の勝敗に直結するわけではない。戦力だけではなく、任務、地形、敵情などから戦闘状況に適した戦術を選択することが不可欠である。例えば戦術学では学習者を部隊指揮官と想定して次のような事柄を問題とする。「与えられた任務をどのように理解するのか」、「どの地域が戦闘において緊要であるのか」、「敵は次にどのような戦闘行動に出るのか」、「現状で我が方の戦力をどのように配置するべきか」、「敵をどのような要領で攻撃するべきか」、「圧倒的劣勢において退却と防御のどちらを選択するべきか」、「歩兵部隊と戦車部隊の連携はどのように指導するのか」、「自分の作戦計画をどの部下に何をどのように伝えるべきか」これらの問題は全て戦術学の重大な問題であり、理論的に導き出すことが求められる。 戦術学はいくつかの部門に細分化することができる。まず理論的に単純化された基礎的問題を扱う初等戦術とより現実的かつ複雑な戦況に対処する応用的問題を扱う高等戦術の二つがある。また単一兵科の小部隊を指揮する小戦術から複合兵科の大部隊を指揮する大戦術に分けることもありうる。さらには戦闘空間の特性の相違から陸上戦力を運用する戦術、海上戦力を運用する戦術、航空戦力を運用する戦術などに分類することも可能である。事前の準備の程度から計画戦術と応急戦術の研究に分けることもなされる。これらの細分化に踏み込むことは『戦術学入門』である本項目では重要視しない。以下では戦術学の基礎的な理論について概説することに力点を置いた上で、次のような章立てで進んでいく。まず戦術の原理、攻勢作戦、防勢作戦の三つに内容を大別して説明していく。これらの概説を通じて本項目では学習者の戦術学の基礎的な理解に貢献することを狙っている。 == 戦術の原理 == 戦術とは戦闘に戦力を適用することである。その具体的な適用の方法は実践的な訓練や経験によってのみ獲得される技術的側面を含んでいるものの、体系的な教育や思考によって習得される科学的側面も備えている。したがって、戦術問題は原則としていくつかの原則と戦術学の概念に基づけば論理的思考によって解答を導き出すことが可能である。ここでは戦術学の原理、基本概念、そして戦術的思考のモデルについて概説する。 === 戦いの原理 === あらゆる戦闘に勝利するために一般的に適用することが可能な戦術の原理とはどのようなものであるのか。例えばそれは「我の戦力の主力を以って、敵の個々の戦力と戦闘するように機動すること」のように要約された、いくつかの戦いの原理(Principles of war)から明らかにすることができる。これは戦闘を計画または指導する際に常に準拠するべき原則であり、次のような諸原則が知られている。 *目標の原則 *統一の原則 *主導の原則 *集中の原則 *奇襲の原則 *機動の原則 *節約の原則 *簡明の原則 *警戒の原則 行動の目的を明確にする目標の原則、指揮系統を統一する統一の原則、先制して状況の支配権を獲得する主導の原則、敵の弱点に対して味方の戦力を集中する集中の原則、敵の意外性を突いて戦う奇襲の原則、移動によって我の優位な位置関係を維持する機動の原則、無駄な戦力を有効活用する経済の原則、目的や行動方針が大胆かつ単純である簡明の原則、敵の奇襲を防ぐために注意する警戒の原則、以上が各原則の要旨である。<ref>米陸軍では物量的な戦力の優位性を保持する物量の原則、旧ソ連陸軍では敵を完全に撃滅する殲滅の原則などが原則として加えられる場合もある。</ref> [[File:Battle of salamis.png|300px|thumb|right|サラミス沖海戦の状況図]] 戦術研究においてこれら諸原則の重要性が実証されている。ここでは一例としてサラミスの海戦を取り上げながら、諸原則の意義を確認する。紀元前486年9月20日にテミストクレスが指揮するギリシア軍とクルセルクスが指揮するペルシア軍による、ギリシア半島のサラミス島沖でサラミスの海戦が発生した。劣勢な戦力しか持たないテミストクレスはサラミス島を防衛するために防勢サラミス島沖の狭隘な海峡という地理的環境を活用することを考案した。つまり、ペルシア軍の大規模な戦力を狭隘な海峡に誘致することでペルシア軍を脆弱な状態に追い込み、風浪の状況が時間の経過でギリシア軍に有利に変化するのに乗じて、攻撃に転換する戦術を実践したのである。結果としてペルシア軍は地形や海象に起因する隊列の混乱、そしてギリシア軍の反転攻勢の中央突破に対処することができず、敗北することとなった。サラミス島を防衛するという目標の明確化、部隊の意思疎通の統一化、主導権の計画的な回復、戦力の一点集中、奇襲的な反撃、敵を分断する機動的な攻撃、戦機が到来するまでの戦力の温存、作戦方針の簡潔さ、そして敵の行動に対する警戒、このような適切な原則の適用によってテミストクレスは勝利を確実なものとすることができたと戦術的には考えられる。 === 戦術の基礎概念 === 戦術の基礎概念の最も初歩的な範疇は戦力が発揮する戦闘の機能、戦力が備えている戦闘力、戦力の展開に関連する戦闘陣の三つに大別に分けることができる。 ==== 戦闘 ==== 戦闘とは戦争における本来的な軍事行動であり、我に対抗して行動する敵を撃滅することを目的とした闘争の状態である。そのため戦闘において彼我の戦力はそれぞれの戦闘力を最大限に敵に対して発揮できるよう行動する。しかし、敵を撃滅するという一般的な戦闘の目的は個々の状況に応じて敵の部分的な撃退や一地点の占領として解釈される場合もある。そのため戦闘の勝敗は理論的には彼我の損害比で表現されるが、彼我の戦闘部隊の任務が達成されたかどうかによっても表現される。この戦闘を遂行するための戦力の機能は五つの項目に整理することができる。 *発見の機能 *拘束の機能 *制圧もしくは攪乱の機能 *機動の機能 *占領の機能 偵察や警戒によって敵情を明らかにする発見の機能、接敵機動と接触を維持することによって敵の行動の自由を制限する拘束の機能、砲兵火力などによって敵の組織的行動を妨げる制圧もしくは攪乱の機能、戦場において敵の弱点を圧迫するように戦力を選択的に再配置する機動の機能、そして敵に対して決定的な攻撃を加える打撃もしくは占領の機能、以上の五つである。これら機能を発揮するための戦力の能力を戦闘力と言う。 ==== 戦闘力 ==== ===== ランチェスターの法則 ===== 戦闘力(Capacity of battle)とは各部隊が戦闘を遂行する能力を指す概念である。戦闘力の優劣によって戦闘を実施する部隊の戦果の原因が説明され、また戦果の予測も左右される。戦闘力を具体的にどのような要素から判断するのかについては古典的な分析として、まず物的な局面に注目するものがある。 兵員と装備の物量が大きければ大きいほど戦闘力は向上するものであり、例えば100名の兵員から組織される部隊は50名から組織される部隊に対して2倍の戦闘力を有しているとする分析である。 このような基本的モデルとしてランチェスターの数式モデルなどが提案されており、兵棋演習の戦果や損害の計算法のひとつとして採用されている。 「ランチェスターの法則」の数式モデルは、幾つかの種類があるが、そのうち有名なモデルの内容は、下記の2つの式の連立微分方位定式として表される。 ;ランチェスターの法則 :<math>{\mathrm{d} x \over \mathrm{d} t}= -\alpha y </math>     (1) :  :<math>{\mathrm{d} y \over \mathrm{d} t}= -\beta x </math>      (2) という連立方程式である。 なお、自軍の兵数がx、敵軍の兵数がy、αとβは武器の性能を表す定数である。また、αとβは計算上の都合により定数係数であるとしてモデルを立てる(そう仮定しないと、解析的に手計算で式を解けない。または、もし変数係数だと人間による式計算では解析が著しく困難になるので、非入門的であり、非実用的になる)。 このように微分方程式で表現されるので、大学の微分方程式などの教科書でも紹介されることもある。高校参考書『モノグラフ』の『微分方程式』に書いてある計算問題も、この式の場合である。 式を見れば、たしかに兵員が多いほど、相手軍の損傷が大きくなるような立式になっている事が分かるであろう。 上式を式変形で解いて解析解を得るのは数学的には可能である事が知られているが、しかし解析解から実用的な結果を得るための計算に手間が掛かるので、本wikiではまず、解析をしないで、類似の簡易モデルを考えよう(解析例は後の章で後述する)。 その類似の簡易モデルは、現代ではゲームのRPG(ドラゴンクエストやファイナルファンタジーのようなジャンル)における戦闘のダメージ計算に例えればよい。 たとえばドラクエ3のようなパーティ戦闘システムのあるゲームの場合、パーティの人数が増えると、単に敵の攻撃に人数分だけ耐えられるようになるだけでなく、さらに1ターンあたりに敵に与えるダメージ量も増える。よって、より短時間でスライムの集団などを倒せるので、1戦あたりの戦闘が早く終わり、戦闘終了までに自パーティの受けるダメージ被害も少なくなる。 たとえば、ドラクエ3に例えよう。 勇者の1人旅と、勇者・武闘家・武闘家・武闘家の4人パーティを比較しよう。 プレイヤーキャラが草原フィールド上を歩いていたら、ガイコツが1体出現したとする。(計算の単純化のため、戦闘で出現するモンスターは毎回、必ずガイコツ1体だけだとする。なお、実際のドラクエ3には「ガイコツ」は出現しない。) 計算の単純化のため、ガイコツはHPが10だとしよう。計算の単純化のため、勇者も武闘家も、攻撃力は同じで1人あたり2だとする。よって、1回の攻撃でダメージ2を敵に与えるとしよう。 また、勇者と武闘家のHPは両方とも10だとしよう。計算の単純化のため、つねに勇者たちの攻撃が先手で、敵の攻撃は後攻だとしよう。 ガイコツの攻撃を受けたら、必ず勇者または武闘家の1人がダメージ1を受けるとしよう。 勇者1人旅の場合、ガイコツ1体を倒すのに合計5ターン要する。なので、勇者は戦闘終了までに4ダメージを受ける。(最後の5ターン目はガイコツからの攻撃を受けないので、合計4ダメージになる。) 一方、勇・武・武・武の4人パーティなら、1ターンあたり8ダメージ(=2×4)なので、2ターンでガイコツ1体を倒せる。なので、一戦あたりの被害ダメージは合計1ダメージである(2ターン目はダメージを受けない)。 さて、勇・武・武・武の4人パーティは、HPの合計値が40である(40=4×10)。一方、勇者1人旅は、HPの合計値が10である。 なので、単純計算で勇・武・武・武の4人パーティなら、ガイコツ1体を倒すことを 40÷2=20で、20回可能である。(実際には、最後のほうで勇者か武闘家の誰かがHPゼロになって戦闘不能になるので、こなせる戦闘回数は20よりかは減る。) 一方、勇者1人旅では、計算 10÷4=2あまり2 により、たったの2~3回しか、ガイコツを倒せない。 仮に2~3をパーティ人数分で4倍しても、8~12回にしかならず、到底20回には及ばない。 なお、2~3を7倍すると、14~21になり、ようやく20に到達する。 つまり、パーティを4倍する事により、4倍の効果どころか少なくとも7倍の効果が現れている。 4と7を対数関数で計算すれば、 :<math>\log_4 7 = 1.40367 </math> なので、約1.4乗で人数の効果が指数的に効いてきたことになる。 このようにランチェスターの法則により、人数の効果は、けっして1次関数的な1乗の比例ではなく、1次関数を超えた乗数の効果が出てくる。 まさに、上述のドラクエ的なシミュレーション例が、ランチェスターの法則そのものである。 毎回対数計算をするのは面倒なので、やや不正確だが簡易的に「1.5乗で効いてくる」と近似すれば計算しやすいだろう。なお、平方根が0.5乗である。 つまり、ある代数値 aについて、 :<math>a^{1.5} = a \sqrt{a} </math> である。 もちろん上記のドラクエ3例はあくまでゲームの話であり、実際の戦争には、けっして、そのまま単純に適用してはならない。 だが、軍事は置いておくとして「ランチェスターの法則」の数理的な性質だけを調べるための例としては、上記のドラクエ例でも正しい。 もちろん、実際の戦闘や戦争は、そもそも数理モデルだけでは決して済まない。現実の戦争は、そんなに単純ではない。上記のランチェスターの法則は、あくまで参考程度のものである。 しかし、そもそも社会科学におけるモデルとは、そのように参考程度のものに過ぎない。これは軍事学に限らず、経済学などにおける数式でも同様である。 さて、ランチェスターの法則から導ける結果として、もし兵員数が2倍になると、その効果は、けっして単に敵の2連戦に耐えられるような長期戦の対応だけでなく、さらに攻撃力アップによる、次に述べる副次的な別の効果がある。 具体的には、兵員が増えれば仮定により戦闘力(ゲームで言う「攻撃力」)もアップするので、いままで倒せなかった強い敵国の軍が倒せるようになる可能性が増える。また、攻撃力がアップすることにより、敵軍の殲滅(ゲームに例えるなら戦闘中の敵全員のHPを0にする事)に要する時間が減少するので、殲滅までに受けた自軍の損耗も減らせる。つまり自軍の被害は、戦闘終了までに受けた時間に応じて、比例的に増加する事がランチェスターの法則から導かれる(なお、ドラクエなどのRPGゲームでも同様の現象がある事が知られている)。 ともかく、兵員数の増加には、上述のように副次的な効果がある。 このため、よく言われる事として、兵員数の2倍への倍増は、その効果はけっして2倍ではなく、上述の副次効果により乗数的に効果が出るので、たとえば4倍~8倍くらいの効果になる場合もある(実際にどの程度の効果が出るかは、モデルの係数などによって変わる)。 こういった数学的な事が、近代ヨーロッパでは既に言われていたので、なので現実の世界史の戦争での用兵もそれに従い、その結果、なるべく兵力は分散させずに、兵力を拠点や作戦目標などに集中させる戦術が実際に好まれ、多くの戦場で採用された。 近代世界史におけるシベリア鉄道など鉄道による兵員輸送や軍需物資輸送などによって軍事力が向上するという理屈も、なぜ向上するのかという理由を根本的に考えれば、ランチェスターの法則のような考え方が前提になっているだろう。 ===== 解析例(微分積分) ===== では、実際にランチェスターの法則を微分積分的に解析してみよう。 ;ランチェスターの法則 :<math>{\mathrm{d} x \over \mathrm{d} t}= -\alpha y </math>     (1) :  :<math>{\mathrm{d} y \over \mathrm{d} t}= -\beta x </math>      (2) なお、自軍の兵数がx、敵軍の兵数がy、αとβは武器の性能を表す定数である。また、αとβは定数係数である。 数学的な注意として、まず、x、yはともに「関数」であり、「変数」は t (ティー)の1つだけである。xとyは、変数にtをもつ(「変数」ではなく)「関数」である。 :※ tの代わりにxまたはyのいずれか1つを「変数」とする事もできるが、その場合、変数にならなかった残り2つの文字は関数になる。たとえばもしxを変数として扱う場合、tとyは xの関数である 事になる。 :つまり、もしtを変数として扱うなら、けっしてxはyの変数ではない。なぜなら、時間tが与えられれば、yの値は t から一意的に決定するからである。だから、関数 yはこの場合、変数にはtだけをもつ。 :変数をtとした場合でも、答えの曲線をグラフ化してx-y平面上に描けば、x軸とy軸の平面グラフ上の曲線が描かれるので、あたかも「xがyの変数である」(誤解)かのように誤解しがちであるが(実際、変数変換によりxを変数とする事も可能であるが)、しかし、計算中の仮定により、この場合は t だけが変数である。 では、実際に式を解こう。まず、式(1)をもう一回、微分すると、 :<math>{\mathrm{d^2} x \over \mathrm{d} t^2}= -\alpha {\mathrm{d} y \over \mathrm{d} t} </math> になる。2項目の dy/dt に式(2)を代入すれば、 :<math>{\mathrm{d^2} x \over \mathrm{d} t^2}= -\alpha {\mathrm{d} y \over \mathrm{d} t} = -\alpha( -\beta x) = \alpha \beta x </math>    (2-1) となり、式中からyが消えて上式はxとtだけの式になる。 この事から、xは関数であり、xの変数はtだけである事が分かる。(実は数学的には証明をややインチキしており、そもそも、こういう仮定が無いと、常微分を出来ない。変数が2個以上の場合は「偏微分」という別の演算が必要になる。) 同様に式(2)についても、同様の演算操作により、式(2)を変形して関数yと変数tだけの式に置き換える事が出来る。 さて、 :<math>{\mathrm{d^2} x \over \mathrm{d} t^2} = \alpha \beta x </math>    (2-1) の右辺を移項して、 :<math>{\mathrm{d^2} x \over \mathrm{d} t^2} - \alpha \beta x = 0 </math>    (2-2) となる。 これは左辺の微分作用素を因数分解すると、 :<math>({\mathrm{d^2} \over \mathrm{d} t^2} - \alpha \beta) x = 0 </math>    (3-1) と書ける。 微分作用素を :<math>{\mathrm{d} \over \mathrm{d} t} - \alpha \beta = D </math>    (3-2) として作用素Dを定義すれば、式(3-1)を変形して、 :<math>(D^2 - \alpha \beta) x = 0 </math>    (3-3) と書ける。 ここで、中学校で習った因数分解の公式により :<math>(A^2 - B^2) = (A-B)(A+B) </math>    (3-4) であるので、この公式を式(3-4)に適用すれば、 :<math>(D - \sqrt{\alpha \beta}) (D + \sqrt{\alpha \beta}) x = 0 </math>    (3-5) のように式変形できる。 この事から、この方程式の解(一般解)は、 :<math>(D - \sqrt{\alpha \beta}) x = 0 </math>   (3-6) の解(特殊解の一つ)と、 :<math>(D + \sqrt{\alpha \beta}) x = 0 </math>   (3-7) の解(特殊解)を組み合わせたものになる事が分かる(本来なら証明が必要だろうが、省略する。興味があれば、大学2年の応用解析学の本を読め)。 (3-7)の解は、指数関数 :<math>x = C_0 e^{- \sqrt{\alpha \beta} t} </math> となる。(ただしC<sub>0</sub>は積分定数とする。) なお、eは自然対数の底(てい)である。高校3年の数学3で習うので、もし知らなければ教科書を買って調べよ。 指数関数 e<sup>t</sup> は見やすくするために、大学入学以降では exp(t) と書く場合もあり、その場合、上式は :<math>x = C_0 \exp (- \sqrt{\alpha \beta} t) </math> と書かれる。 同様に式(3-6)も解けて :<math>x = c_1 \exp (+ \sqrt{\alpha \beta} t) </math> となる。 この2つを足したモノが一般解なので、 :<math>x = C_0 \exp (- \sqrt{\alpha \beta} t) + c_1 \exp (+ \sqrt{\alpha \beta} t) </math>    (4-1) が一般解である。 しかし、読者には、これだけだと、なぜこれによって、兵数が倍増すると攻撃力が倍増するか等の諸性質や、そもそも解が増加するのか減少するのかさえも、分からない。 だが、微分方程式の初期値として、ある時点での兵数と、数時間後の(減少した)兵数を代入する事をして積分定数C0およびC1を決定してから、数値計算を行うと、ここから、「兵数が倍増した場合の勝率の指数的な増加」など前の節で述べたような性質が数値計算的にかつ経験的に導かれる場合が多い(初期値による)。 答えの式(4-1)だけを見ると、あたかも値が増加しそうに錯覚するが(指数関数の部分はマイナスにならないので)、しかし係数C0やC1の符号はプラスとは限らず、マイナスの数である場合もあるので、解全体としては値が減少してくのである。 このように、連立微分方程式は、解を解いただけでは、その性質が分かりづらい場合が多く、そのため、パソコンなどで数値計算によってグラフなどを書いて、その性質を予想する事が、研究では必要である。(そして、その予想を参考に、その予想を証明するのが数学者の仕事である。なお、さすがにランチェスターの式の性質はすでに数学者によって研究済みである。) なお、もしプログラミングが出来なくても、代替の方法として手間は掛かるが、表計算ソフトのエクセルで、実際に数値計算をしてグラフを何パターンか書いてみてシミュレーションする方法もある。 ともかく、このような連立微分方程式を、数値計算などでシミュレーションして性質を研究していく分野は、数学的には「力学系」といわれる分野である。物理の「力学」の分野でこういう計算例が多かったので、そういう名前がついているが、物理学の知識が無くても計算できる分野である。 軍事学に限らず、生物学の分野にも「力学系」の式はある。生物学で、動物などの個体数などをシミュレーションするのに連立微分方程式で「ロトカ=ヴォルテラの方程式」というのものが使われる場合があり、このロトカ=ヴォルトラ方程式とその派生も、「力学系」の分野のひとつとして有名である。(高校の生物でも、式計算はしないが、高校3年の生物2における生態分野で、類似の理論を習う。) なお、上記の一般解は、双曲線関数 sinh および cosh というものを使っても置き換える事が出来る。これは日本では大学の理科系の学部の1年で習う。 三角関数のsinやcosとは、双曲線関数は異なるので、混同しないように注意のこと。 余談だが、2020年のコロナ問題で話題・有名になったSIR方程式という感染症モデルの常微分方程式も、力学系に分類されるような式であろう。当然、上述のように力学系の微分方程式の数値計算シミュレーションにはコンピュータが必要である。(なお、評論家の中には困ったことに、「SIR方程式はパソコンが無くても研究できる時代遅れの式」(そして彼らは「だから予想値と実測値の誤差が大きい」と主張している)と言っている、頭の悪い有名評論家がいる(力学系の研究ではパソコンによる数値計算が必須なので、前提が事実に反する)。しかも更に困った事に、本来ならツッコミを入れるべき医学者やら生物学者が数学オンチなので、そういう批判者たちの前提の間違いにツッコミを入れない。残念ながら日本のマスメディアや論壇では、こういう馬鹿評論家でも、学歴で東大とか京大とか卒業していると、困った事に世間では彼らが「知識人」として通用してしまうのである。きっと「痴識人」の間違いであろう。医学者や生物学者も、知識不足で頼りない。)大学などの数学者や物理学者も、まったく評論家の数学的な間違いにツッコミを入れないので、残念ながら日本の数理科学の研究水準は低いといわざるを得ない。東大などの提唱する分離融合や異分野融合などが口先だけである証拠でもある。 またなお、微分積分に限らず、軍事学や経営学などの分野に数学や統計学などを応用する分野の事を「オペレーションズ・リサーチ」(略称は「OR」(オー・アール))という。第二次世界大戦中にアメリカ軍がこういった数理的な研究手法を始めた。統計学や確率論、線形計画法などがよく、オペレーションズ・リサーチの手法として用いられる。 一方、「力学系」と言った場合、「力学系」は微分方程式(または差分方程式)で立てられたモデルの分析のことを言うので、「オペレーションズ・リサーチ」とはニュアンスがやや異なる。 ;吟味の必要性 軍事学の数理モデルに限らず、経済学などを含む何らかの社会科学の数理モデルを現実の問題に適用する場合には、注意しなければならない事として、そのモデルが、これから適応しようとしている事例の性質を果たして本当によく反映できているか、自己批判的かつ内省的に注意深く観察しながら、限定的に適用しなければならない。このように、観察しながら注意深く限定的にデモル適用をすることを、俗に社会科学などの分野では「吟味」(ぎんみ)という。数理モデルの実用の際には、吟味が必要である。 しかし残念ながら、社会科学やその応用では、しばしば吟味は省略されることが、実業界やマスメディアなどで まかり通っている場合が往々にある。 たとえば2001年~2005年ころのアメリカ金融界は金融工学のブラック・ジョ-ルズ方程式に基づく仕組みなどを喧伝していたが、しかし米国金融がモデルの吟味を怠ったせいで杜撰な貸付をしたせいで、貸し金の回収不足になりサブプライム問題を起こすなど、杜撰な吟味不足によって世界経済に迷惑を及ぼす例もあった。 ===== 実際の戦闘力 ===== 上述のランチェスター法則は、あくまで参考程度の簡略的なモデルであり、実際の戦闘では適用の不可能・困難な場合も多いだろう。 なので、もし戦闘力をさらに詳細に分析するならば、兵員の規律や士気などの無形的要素を組み合わせなければならない。つまり、火力部隊の戦闘力は火砲とそれを操作する射撃要員の物量という有形的要素と、砲兵火力を発揮するための射撃の速度、精度、士気から判断される無形的要素から導き出すことができる。したがって100名の統制がとれていない武装した群衆と50名の規律ある戦闘部隊の間には戦闘員としての錬度、団結、そして士気という無形的要素に由来する戦闘力の格差が存在していると指摘できる。 また、戦闘は戦力の戦闘力の合計によってのみ左右されるのではなく、戦闘力を戦場に配置する戦闘陣によって規定される。 ==== 戦闘陣形 ==== 戦闘陣(Battle formation)は戦力が戦闘において連携を保つために形成する複数の部隊の一定の態勢である。戦力は彼我との位置関係から与えられる損害や得られる戦果が変化しうる。そもそも部隊は敵の方向に対して最大の戦闘力を発揮できるように部隊の正面を方向付ける。その基本となる戦闘陣形として第一に横陣がある。横陣は敵に対して正面を広く縦深を浅くなるように選択した隊形であり、特に火力を発揮するのに適した陣形である。この陣形の戦術的な特徴は部隊の脆弱な左右両側面と背面に敵が回りにくくすることを防ぐことにある。古代ギリシアのマケドニア軍で採用されていた戦闘陣は歩兵部隊の横陣の両翼に騎兵部隊を配置することで、中央の歩兵部隊の両翼の弱点を補っていた。また基本となる戦闘陣形には縦陣もある。これは正面に対して狭く縦深が深くなるようにした陣形であり、機動力を発揮するのに適した陣形である。この陣形には部隊の迅速な行軍や機動を容易にする特徴がある。速やかな戦場機動や中央突破を狙った突撃で有効であり、トラファルガーの海戦でイギリス軍がフランス軍の戦列に対する攻撃の際に選択されている。さらに斜行陣、鈎形陣、円陣、弾丸陣などの陣形があり、斜行陣は右翼または左翼の片方に兵力を集中的に配置した戦闘陣であり、また鈎形陣は片方の翼を横方向に配置した戦闘陣であり、両方ともに劣勢である場合に用いる戦闘陣である。円陣は全方向に対して部隊を配置する円形の戦闘陣であり、部隊の宿営や集結などに用いられる。弾丸陣は矢印のような形状の戦闘陣であり、先端に機甲部隊を配置して突撃などに用いられる。このような多様な戦闘陣は地形や敵情、彼我の戦闘力の格差などを考慮した上で選択されなければならない。 === 戦術の基本作業 === 戦術的知能の中核とは問題解決能力であり、これは自らが置かれている状況がどのようなものであるかという状況を判断する問題、我が選択することが可能な選択肢の中でどれが最善であるか意志を決定する問題、そして下された決定を実行するために作戦方針を作成する問題の三つに問題を区分することができる。 ==== 状況判断 ==== 状況判断の問題とは任務分析、地形判断、敵情判断を起点とし、敵の可能行動の列挙、味方の行動方針の列挙、各行動の戦術的分析、そして各々の分析の総合という思考過程に基づいて解決される。任務分析とは自分に与えられた任務の背景や本質を分析して達成すべき目標事項を明確化し、複数ある場合にはそれぞれの目標の優先順位を定める問題である。地形判断とは自分が置かれている地理的環境がどのようなものかを分析することである。この際に軍事地理学の知識を援用して戦闘地域を構成する地理的特性を解釈し、重要な地形やそこに至るための接近経路を明らかにする。敵情判断とは敵部隊の配置、装備や補給の状況、後方連絡線の方向などを分析し、敵がどのような戦闘行動を将来実施するかを検討することである。敵情判断では敵が行いうる全ての戦闘行動の全てを列挙し、蓋然性の観点からそれら行動の我にとっての効果や危険を明らかにする。 ==== 意思決定 ==== 意思決定とは状況判断に基づいて我の行動方針を決定することであり、可能的な状況について個々に分析し、それら分析を総合し、決心を下すという過程から成り立つ。実際に発生する可能性がある状況は彼我にとって実施可能な戦闘行動の組合せの数だけ存在する。これらの状況について個々に分析を加えることで個々の戦闘行動によって生じうる結果がどのようなものであるかを検討する。そして総合の過程でそれら分析によって得られた個々の戦闘行動を相互に比較しながら我にとって最も危険性の高い事態がどのような事態であるかを明らかにすることが可能となる。そして任務を達成するためにどのような戦闘行動を選択しなければならないかを限定することができる。最後の決心とは少数に限定したいくつかの作戦方針の中から一つを、その選択肢の危険性と不確実性を鑑みた上で決定することである。このようにして決心が確立されれば、作戦計画の策定作業に移ることができる。 ==== 作戦計画 ==== 作戦計画(Operations Plan, OPLAN)とは決心によって定められた作戦方針に基づいて策定される戦力運用の計画である。作戦計画とは作戦の目標、目標を達成するために採用される行動の方針、そしてその方針に従って作戦に参加する各部隊の任務と個々の行動計画から成立しており、指揮官には戦術的思考に基づいて作戦計画の骨子を作成する技能が求められる。作戦は計画、実行、評価の三つの段階を繰り返しながら進め、常に目的と手段が結合するように配慮しなければならない。作戦計画の立案の際に把握するべき個別の戦況を構成する要素は任務、敵、地形と気象、使用可能な部隊と支援、そして民事的考慮の頭文字を取ったMETT-TC(Mission, Enemy, Terrain and weather, Troop and support available, and Civil considerations)で端的に要約される。これら諸要素を踏まえた上で作戦の立案には次のような事柄が含まれなければならない。第一に作戦目標を具体的な軍事的状況として定義することである。攻勢作戦で敵の拠点を攻略する方針が示された場合、その具体的な達成条件は何を意味するかが定義されなければならず、例えば攻略目標の拠点やそれを守備する敵がどのような状態になれば攻略と見なすかを明確化する。その作戦目標によって作戦は攻勢作戦と防勢作戦、また偵察作戦、行軍作戦、治安作戦などの作戦の形態に分類することができる。 == 攻勢作戦 == 攻勢作戦とは敵を積極的に求めながらこれを撃滅しようとする作戦の形式であり、遭遇や複数に渡る攻撃から成り立っている作戦である。攻勢作戦では敵に対して決定的打撃を加えることを可能とする作戦であり、これは戦術の原則のひとつである主導の原則に基づけば常に実施を模索するべき作戦である。しかし攻勢作戦はしばしば戦力の経済的な使用を指示する節約の原則に反するほどに戦闘力を減耗させる危険性がある。攻勢作戦を実施するべき状況の例としては、戦力投射作戦を実施する状況、敵に対する我の戦闘力の圧倒的な優勢を確保している状況、戦略的な守勢において局地的な反撃を実施する必要がある状況などがある。ここでは攻勢作戦の基本的な形態とその指導の要領、そして作戦計画を立案する上での考慮事項について述べる。 === 攻勢作戦の形態 === 攻勢作戦で中心となる戦術的な行動は接敵機動、攻撃、戦果拡張、追撃の四つの段階がある。接敵機動とは戦闘を行うために敵との接触を試みる機動であり、彼我の接敵機動で生じる戦闘は遭遇戦と言う。攻撃とは攻勢作戦において敵を撃破または撃滅、地形の攻略または確保、もしくはそれら両方を行う攻勢作戦の戦闘行動である。攻撃はさらに戦闘行動の方式としては奇襲的な攻撃である伏撃、防御の態勢から攻撃に転換する逆襲、準備された防御に対する強襲、敵を有利な地点におびき出す誘致、敵に誤った状況を認識させる欺瞞がある。そして機動の方式から一翼もしくは両翼を駆使して敵の二正面以上を同時に攻撃する包囲、敵の正面を突破して分断する突撃、そして敵と接触せずに敵の後方や側面に回りこむことで敵に退却を強制する迂回に分けることができる。戦果拡張とは組織的な戦闘力を失った敵に対して攻撃の段階から継続的に行われる攻撃であり、攻撃によって得られた戦果を最大化する戦闘行動である。追撃とは退却する敵をさらに追尾して打撃を加える行動であり、戦場に敵を捕捉して追撃を加える方式と、戦場外に退却した敵に対する追撃の方式がある。 ====攻撃==== ====追撃==== === 攻勢作戦の指導 === 攻勢作戦を指導する際に攻撃発起点、前進軸、攻撃目標、前進限界、集結地点を調整することで行われる。攻撃発起点とは各部隊が攻撃のための前進を開始する際に出発する地点である。理想として敵に対して位置や行動が隠匿し、また戦力を防護することができることが望ましい。自然地形で攻撃発起のための適切な地形を望むことができないならば、攻撃陣地を準備することも手段に含まれる。前進軸は各攻撃部隊が前進の際に依拠する一般的な方向あり、戦場における計画的な機動を調整するものであり、状況図では矢印によって表示される。攻撃目標とは我の戦闘力を集中させる目標であり、敵の部隊または特定の地形がその対象となる。ただし地形が攻撃目標であるのに対して敵部隊を攻撃目標とする場合には攻撃目標を捕捉することが難しくなる。そして攻撃前進の終点は前進限界によって定められる。前進限界は攻撃部隊が攻撃前進を停止する段階を計画的に決定するものである。前進限界に到達した部隊は識別が容易な集結地点もしくは予備的に設定された代替集結地点に再集結させる。 === 攻勢作戦の計画 === 攻勢作戦を計画する上での着眼としては奇襲と集中、そして節度(Tempo)と大胆(Audacity)が重要となる。つまり、敵が予測した事態を回避し、戦力を集中させ、迅速な節度を以って大胆に前進させることが効果的な攻勢作戦を立案する上での基礎となる。そして攻勢作戦を状況に適合させるためにはまず情報作戦に基づいて戦場の状況を把握することが求められる。敵情については配置、装備、戦闘力、弱点、攻撃すべき目標、集結点、敵の後方連絡線、離隔した支援戦力、対空部隊、電子戦部隊、敵の情報網などであり、地形については地形の形状、気象の影響、攻撃に使用可能な経路の配置と数、攻撃の障害となる森林や河川などの地形について把握する必要がある。これらの状況を踏まえた上で与えられた任務とそれに対応する作戦目標、指揮官の意図、敵の配置や戦闘力などの敵情、攻撃目標、作戦開始時刻、各部隊の機動の方向性、攻撃のための戦闘陣、作戦の危険性、そして代替的な作戦計画を準備する。作戦が開始されれば、指揮官は我の戦闘力の消耗を確認しながら攻勢極限点を見極め、彼我の戦闘力の優劣が逆転しないよう注意する。一度攻勢極限点に到達したと判断されれば、指揮官は防御へ転換することを決断し、攻撃によって得られた戦果を保存するよう努めなければならない。 == 防勢作戦 == 防勢作戦とは時間的猶予の確保、戦力の経済的使用、または別の攻勢作戦を支援するために、敵の攻勢作戦を待ち受けてこれを破砕する作戦である。防勢作戦は戦力の劣勢を補うことを可能とする作戦であり、節約の原則に立脚した作戦方針である。しかし防勢作戦のみによって目標を達成することが困難であり、また戦闘の主導権を失う危険を伴う。防勢作戦を実施する状況の例としては、決定的に重要な地形の確保を維持しなければならない状況、敵による奇襲への対処、敵に対して我の戦闘力が総体的に劣勢である状況などがある。ここでは防勢作戦の形態、指導、そして作戦計画の立案について概説する。 === 防勢作戦の形態 === 防勢作戦で中心となる戦術的な行動には防御と後退行動がある。さらに防御は陣地防御と機動防御に分けられる。陣地防御とは逆襲を加えることを主眼に置いたものではなく、構築した陣地や要塞によって敵の攻撃を阻止する形式の防御である。防御では敵の攻撃を阻止し、また緊要地形を保全することを狙った横陣や円陣の防御陣地が準備され、して防御陣地の機能を強化することに主たる努力が集中されるために、後方に拘置される予備の戦力は逆襲ではなく防御戦闘で減耗した損害を補填するために使用される。また機動防御とは陣地に頼るのではなく、敵の攻撃に対して決定的な逆襲を加える防御の形式である。機動防御では敵の後方連絡線を捕捉することを可能とするように陣地の構築や打撃部隊の配備を準備することに労力を費やす。そして後退行動とは敵との距離を持つように機動する防御戦闘の方法である。後退行動では敵との接触を断つ離脱、敵の前進速度を低下させる遅滞、そして敵との距離を拡大させる離隔の三段階を組織的な連携の下で背面を敵に暴露する危険を最小限に抑える。 ==== 防御 ==== ==== 退却 ==== === 防勢作戦の指導 === 防勢作戦の指導では戦闘移行線、主戦場の設定、防御陣地、火力支援の調整、直接射撃の統制、退路を調整することで行われる。戦闘移行線とは戦力を戦闘態勢に移行させる判断を下す地理的な基準となる線である。戦闘移行線は主たる防御拠点の前方において設定される。戦闘移行線と防御拠点の間は主戦場であり、敵の攻撃を排除するために戦闘力を発揮する領域である。防御陣地とは敵の侵入と前進を阻む機能を持った構築物である。防勢作戦における火力支援の調整と直接射撃の統制とは火力の最適な配分を意味する。これはそれぞれの主戦場に対する射撃のために各種装備を配置する地点を決めることであり、またそれぞれの射撃がどの地域に責任を負うのかを明確に示すことである。そして退路を調整する際には戦闘を離脱した後に収容を実施する機能も備えた二次的な防御陣地との間の連絡線を指定しておく。 === 防勢作戦の計画 === 防勢作戦は通常において防御戦闘の計画的準備によって遂行される。しかし作戦行動は主導の原則に従って静態的な行動ばかりでなく動態的な行動が必要であり、防勢作戦の作戦方針を採用していたとしても敵の攻撃を排除した後に逆襲に転換することが検討されなければならない。その原則を踏まえた上で防勢作戦の計画にはいくつかの情報が必要である。敵の戦闘力や集結地点などの配置だけでなく、どの攻撃目標を選択するのか、そしてそれに対応する接近経路、攻撃方法がどのような状態であるのかを研究しなければならない。そのためには敵が慣習的にどのような作戦行動を選択しているかを分析する必要もある。例えば空挺部隊を使用した攻勢作戦に対する防勢作戦の場合では、陣地防御ではなく機動防御を準備しなければならない。なぜならば陣地防御とは固定された攻撃目標に対して接近する際に必ず地上において進路を妨げることができなければ有効ではない。空挺部隊による攻撃に対しては防空戦闘と敵部隊が戦闘展開してから迅速で組織的な逆襲を加えることが求められるのである。また幅広い正面に渡る正面攻撃に対する防御では複数の防御陣地によって組織化された陣地防御による攻撃の阻止と予備戦力による逆襲を準備することが必要である。 == 戦術用語 == *'''圧迫''' - 武力や権威で押さえつけること。 *'''隠蔽''' - 物事、特に機密事項となる軍事基地や新兵器などを隠すこと。 *'''迂回''' - ある場所を避けて、遠回りすること。 *'''運動''' - *'''{{Ruby|掩蔽|えんぺい}}''' - *'''会戦''' - 大規模な戦力を互いに準備し、行う戦闘のこと。 *'''内戦作戦''' - 敵軍に包囲される位置で作戦を展開すること。 *'''外線作戦''' - 敵軍を包囲する位置で作戦を展開すること。 *'''監視''' - 敵軍の行動を監視すること。 *'''機動''' - *'''逆襲''' - *'''持久戦''' - 自軍を持ち堪えさせることを目的とした戦闘のこと。 *'''警戒''' - *'''撃破''' - *'''決心''' - *'''決戦''' - *'''牽制''' - 敵軍を武力や兵数などで圧倒し、敵軍の行動の自由を奪うこと。 *'''後衛''' - *'''行軍''' - *'''攻撃極限点''' - 攻撃によって得られる優位の限界のこと。[[w:攻撃の限界点|攻撃の限界点]]とも。 *'''攻勢''' - 敵軍に対して攻撃すること。 *'''後方支援''' - 砲兵、航空機などで後方から前線を支援すること。 *'''作戦''' - *'''作戦目標''' - *'''指揮''' - *'''支隊''' - *'''遮蔽''' - *'''集結''' - *'''集中''' - *'''重心''' - 部隊を1つの地点に集結させ、圧倒的物量差で敵に攻撃すること。 *'''状況判断''' - *'''助攻''' - *陣地 *前衛 *戦果 *戦術 *戦場 *前哨 *戦線 *戦闘 *戦闘力 *遭遇戦 *側衛 *退却 *地形 *諜報 *追撃 *'''偵察''' - 敵軍、特に野営地などの状況を把握し、敵軍の兵数などを事前に知る為の行動のこと。 *展開 *突破 *背後連絡線 *兵站 *編制 *包囲 *防御 *防勢 *本攻 *摩擦 *命令 *陽動 *抑止 *連絡 == 脚注 == <references/> == 参考文献 == 戦術学の文献はそれほど流通していないために入手することは非常に難しい。一般に海外の戦術学の文献が入手しやすく、特に米陸軍省が一般公開している野戦教範(Field Manual)が研究を行う上では参考となる。また国内においては戦前に流通していた軍学校の教育や試験で使用する戦術学の教範、参考書、または問題集があり、それらを入手して参照することもできる。しかしながら、これらの教範類も一般的に入手することが難しい場合が多い。戦後に自衛隊で使用されている教範類は一般公開されていないものの、自衛隊関係者により発表された閲覧可能な論文を収録した論文集がある。例えば陸上自衛隊の幹部で構成された陸戦学会から出されている『陸戦研究』は国立国会図書館等で閲覧することが可能な戦術研究である。以下では主に書籍に限定した上で戦術研究の上で参考となる研究について解題を加えたものである。 *防衛大学校・防衛学研究会編『軍事学入門』(かや書房、2000年) :軍事学を概説した入門書であり、第3章の現代軍事力の態様は戦術研究の上で参考となる。 *松村劭『バトル・シミュレーション 戦術と指揮 命令の与え方・集団の動かし方』(文藝春秋、2005年) :戦術理論の基礎的事項を要約し、また答案を付与した練習問題が含まれている。 *高山信武『陸軍大学校の戦略・戦術教育』(芙蓉書房出版) :陸軍大学校での講義と戦術学の口頭試問の記録が含まれている。 *Field Manual No. 3-90, Tactics, Headquarters Department of the Army, 2001. :米陸軍で使用されている戦術学の教範類であり、理論的解説だけでなく戦史に基づいた解説も含まれている。本項目の執筆で最も参照した参考文献。 *Field Manual No. 100-5, Operations, Department of the Army, 1993. :作戦の基礎、攻勢作戦、防勢作戦について網羅的に概説した米陸軍の教範であり、理論的説明が豊富である。 {{stub}} [[Category:軍事学|せんしゆつかくにゆうもん]] dbe09og36kg3otavxrlq9oa7d28jnys 205544 205543 2022-07-19T20:39:23Z 某編集者 69349 /* 序論 */ wikitext text/x-wiki *[[社会科学]]>[[軍事学]]>[[戦術学]]>'''戦術学入門''' [[画像:Battle of Austerlitz - Situation at 0900, 2 December 1805.png|300px|thumb|right|地形図と部隊符号から構成されるアウステルリッツ会戦の状況図である。戦闘で生じている全ての事象が戦術的に重要であるわけではない。戦術学では状況図のように現実の複雑な戦況を概念化し直し、戦場の空間的、時間的そして戦力的要素の三つを視覚的に把握することで、何が重要な情報であるかを取捨選択する。]] == 序論 == 戦術(Tactics)とは戦闘において部隊などを効果的に運用する技術・科学である。[[軍事学]]において戦術学は戦闘を認識し、解釈し、そして判断するために必要な理論的枠組みを備え、また戦闘において勝利を獲得するために戦力を配置し、戦闘力を最大化し、戦闘行動を指揮する上で不可欠な実践的役割を担っている。ただし戦術は戦略の下位において実践される領域として区別されている。つまり戦略とは作戦部隊を有利な条件で戦闘が実施できるように全体的な視点から部隊を指導する技術・科学であり、戦術はその戦略に沿って戦闘で勝利する技術・科学である。したがって、戦術学の固有の問題とは戦争の指導とは別個に、戦闘において戦力を活用することにある。 戦闘において部隊を戦術的に運用することの意義は過去の戦史で示されている。ナポレオン戦争においてアウステルリッツ会戦を概観すると、戦力で劣勢なナポレオンが敵の攻撃に対して[[防御]]戦闘と遅滞行動を組み合わせたことが勝利をもたらしたことが分かる。戦術学において戦力の優劣は必ずしも戦闘の勝敗に直結するわけではない。戦力だけではなく、任務、地形、敵情などから戦闘状況に適した戦術を選択することが不可欠である。例えば戦術学では学習者を部隊指揮官と想定して次のような事柄を問題とする。「与えられた任務をどのように理解するのか」、「どの地域が戦闘において緊要であるのか」、「敵は次にどのような戦闘行動に出るのか」、「現状で我が方の戦力をどのように配置するべきか」、「敵をどのような要領で攻撃するべきか」、「圧倒的劣勢において退却と防御のどちらを選択するべきか」、「歩兵部隊と戦車部隊の連携はどのように指導するのか」、「自分の作戦計画をどの部下に何をどのように伝えるべきか」これらの問題は全て戦術学の重大な問題であり、理論的に導き出すことが求められる。 戦術学はいくつかの部門に細分化することができる。まず理論的に単純化された基礎的問題を扱う初等戦術とより現実的かつ複雑な戦況に対処する応用的問題を扱う高等戦術の二つがある。また単一兵科の小部隊を指揮する小戦術から複合兵科の大部隊を指揮する大戦術に分けることもありうる。さらには戦闘空間の特性の相違から陸上戦力を運用する戦術、海上戦力を運用する戦術、航空戦力を運用する戦術などに分類することも可能である。事前の準備の程度から計画戦術と応急戦術の研究に分けることもなされる。これらの細分化に踏み込むことは『戦術学入門』である本項目では重要視しない。以下では戦術学の基礎的な理論について概説することに力点を置いた上で、次のような章立てで進んでいく。まず戦術の原理、攻勢作戦、防勢作戦の三つに内容を大別して説明していく。これらの概説を通じて本項目では学習者の戦術学の基礎的な理解に貢献することを狙っている。 == 戦術の原理 == 戦術とは戦闘に戦力を適用することである。その具体的な適用の方法は実践的な訓練や経験によってのみ獲得される技術的側面を含んでいるものの、体系的な教育や思考によって習得される科学的側面も備えている。したがって、戦術問題は原則としていくつかの原則と戦術学の概念に基づけば論理的思考によって解答を導き出すことが可能である。ここでは戦術学の原理、基本概念、そして戦術的思考のモデルについて概説する。 === 戦いの原理 === あらゆる戦闘に勝利するために一般的に適用することが可能な戦術の原理とはどのようなものであるのか。例えばそれは「我の戦力の主力を以って、敵の個々の戦力と戦闘するように機動すること」のように要約された、いくつかの戦いの原理(Principles of war)から明らかにすることができる。これは戦闘を計画または指導する際に常に準拠するべき原則であり、次のような諸原則が知られている。 *目標の原則 *統一の原則 *主導の原則 *集中の原則 *奇襲の原則 *機動の原則 *節約の原則 *簡明の原則 *警戒の原則 行動の目的を明確にする目標の原則、指揮系統を統一する統一の原則、先制して状況の支配権を獲得する主導の原則、敵の弱点に対して味方の戦力を集中する集中の原則、敵の意外性を突いて戦う奇襲の原則、移動によって我の優位な位置関係を維持する機動の原則、無駄な戦力を有効活用する経済の原則、目的や行動方針が大胆かつ単純である簡明の原則、敵の奇襲を防ぐために注意する警戒の原則、以上が各原則の要旨である。<ref>米陸軍では物量的な戦力の優位性を保持する物量の原則、旧ソ連陸軍では敵を完全に撃滅する殲滅の原則などが原則として加えられる場合もある。</ref> [[File:Battle of salamis.png|300px|thumb|right|サラミス沖海戦の状況図]] 戦術研究においてこれら諸原則の重要性が実証されている。ここでは一例としてサラミスの海戦を取り上げながら、諸原則の意義を確認する。紀元前486年9月20日にテミストクレスが指揮するギリシア軍とクルセルクスが指揮するペルシア軍による、ギリシア半島のサラミス島沖でサラミスの海戦が発生した。劣勢な戦力しか持たないテミストクレスはサラミス島を防衛するために防勢サラミス島沖の狭隘な海峡という地理的環境を活用することを考案した。つまり、ペルシア軍の大規模な戦力を狭隘な海峡に誘致することでペルシア軍を脆弱な状態に追い込み、風浪の状況が時間の経過でギリシア軍に有利に変化するのに乗じて、攻撃に転換する戦術を実践したのである。結果としてペルシア軍は地形や海象に起因する隊列の混乱、そしてギリシア軍の反転攻勢の中央突破に対処することができず、敗北することとなった。サラミス島を防衛するという目標の明確化、部隊の意思疎通の統一化、主導権の計画的な回復、戦力の一点集中、奇襲的な反撃、敵を分断する機動的な攻撃、戦機が到来するまでの戦力の温存、作戦方針の簡潔さ、そして敵の行動に対する警戒、このような適切な原則の適用によってテミストクレスは勝利を確実なものとすることができたと戦術的には考えられる。 === 戦術の基礎概念 === 戦術の基礎概念の最も初歩的な範疇は戦力が発揮する戦闘の機能、戦力が備えている戦闘力、戦力の展開に関連する戦闘陣の三つに大別に分けることができる。 ==== 戦闘 ==== 戦闘とは戦争における本来的な軍事行動であり、我に対抗して行動する敵を撃滅することを目的とした闘争の状態である。そのため戦闘において彼我の戦力はそれぞれの戦闘力を最大限に敵に対して発揮できるよう行動する。しかし、敵を撃滅するという一般的な戦闘の目的は個々の状況に応じて敵の部分的な撃退や一地点の占領として解釈される場合もある。そのため戦闘の勝敗は理論的には彼我の損害比で表現されるが、彼我の戦闘部隊の任務が達成されたかどうかによっても表現される。この戦闘を遂行するための戦力の機能は五つの項目に整理することができる。 *発見の機能 *拘束の機能 *制圧もしくは攪乱の機能 *機動の機能 *占領の機能 偵察や警戒によって敵情を明らかにする発見の機能、接敵機動と接触を維持することによって敵の行動の自由を制限する拘束の機能、砲兵火力などによって敵の組織的行動を妨げる制圧もしくは攪乱の機能、戦場において敵の弱点を圧迫するように戦力を選択的に再配置する機動の機能、そして敵に対して決定的な攻撃を加える打撃もしくは占領の機能、以上の五つである。これら機能を発揮するための戦力の能力を戦闘力と言う。 ==== 戦闘力 ==== ===== ランチェスターの法則 ===== 戦闘力(Capacity of battle)とは各部隊が戦闘を遂行する能力を指す概念である。戦闘力の優劣によって戦闘を実施する部隊の戦果の原因が説明され、また戦果の予測も左右される。戦闘力を具体的にどのような要素から判断するのかについては古典的な分析として、まず物的な局面に注目するものがある。 兵員と装備の物量が大きければ大きいほど戦闘力は向上するものであり、例えば100名の兵員から組織される部隊は50名から組織される部隊に対して2倍の戦闘力を有しているとする分析である。 このような基本的モデルとしてランチェスターの数式モデルなどが提案されており、兵棋演習の戦果や損害の計算法のひとつとして採用されている。 「ランチェスターの法則」の数式モデルは、幾つかの種類があるが、そのうち有名なモデルの内容は、下記の2つの式の連立微分方位定式として表される。 ;ランチェスターの法則 :<math>{\mathrm{d} x \over \mathrm{d} t}= -\alpha y </math>     (1) :  :<math>{\mathrm{d} y \over \mathrm{d} t}= -\beta x </math>      (2) という連立方程式である。 なお、自軍の兵数がx、敵軍の兵数がy、αとβは武器の性能を表す定数である。また、αとβは計算上の都合により定数係数であるとしてモデルを立てる(そう仮定しないと、解析的に手計算で式を解けない。または、もし変数係数だと人間による式計算では解析が著しく困難になるので、非入門的であり、非実用的になる)。 このように微分方程式で表現されるので、大学の微分方程式などの教科書でも紹介されることもある。高校参考書『モノグラフ』の『微分方程式』に書いてある計算問題も、この式の場合である。 式を見れば、たしかに兵員が多いほど、相手軍の損傷が大きくなるような立式になっている事が分かるであろう。 上式を式変形で解いて解析解を得るのは数学的には可能である事が知られているが、しかし解析解から実用的な結果を得るための計算に手間が掛かるので、本wikiではまず、解析をしないで、類似の簡易モデルを考えよう(解析例は後の章で後述する)。 その類似の簡易モデルは、現代ではゲームのRPG(ドラゴンクエストやファイナルファンタジーのようなジャンル)における戦闘のダメージ計算に例えればよい。 たとえばドラクエ3のようなパーティ戦闘システムのあるゲームの場合、パーティの人数が増えると、単に敵の攻撃に人数分だけ耐えられるようになるだけでなく、さらに1ターンあたりに敵に与えるダメージ量も増える。よって、より短時間でスライムの集団などを倒せるので、1戦あたりの戦闘が早く終わり、戦闘終了までに自パーティの受けるダメージ被害も少なくなる。 たとえば、ドラクエ3に例えよう。 勇者の1人旅と、勇者・武闘家・武闘家・武闘家の4人パーティを比較しよう。 プレイヤーキャラが草原フィールド上を歩いていたら、ガイコツが1体出現したとする。(計算の単純化のため、戦闘で出現するモンスターは毎回、必ずガイコツ1体だけだとする。なお、実際のドラクエ3には「ガイコツ」は出現しない。) 計算の単純化のため、ガイコツはHPが10だとしよう。計算の単純化のため、勇者も武闘家も、攻撃力は同じで1人あたり2だとする。よって、1回の攻撃でダメージ2を敵に与えるとしよう。 また、勇者と武闘家のHPは両方とも10だとしよう。計算の単純化のため、つねに勇者たちの攻撃が先手で、敵の攻撃は後攻だとしよう。 ガイコツの攻撃を受けたら、必ず勇者または武闘家の1人がダメージ1を受けるとしよう。 勇者1人旅の場合、ガイコツ1体を倒すのに合計5ターン要する。なので、勇者は戦闘終了までに4ダメージを受ける。(最後の5ターン目はガイコツからの攻撃を受けないので、合計4ダメージになる。) 一方、勇・武・武・武の4人パーティなら、1ターンあたり8ダメージ(=2×4)なので、2ターンでガイコツ1体を倒せる。なので、一戦あたりの被害ダメージは合計1ダメージである(2ターン目はダメージを受けない)。 さて、勇・武・武・武の4人パーティは、HPの合計値が40である(40=4×10)。一方、勇者1人旅は、HPの合計値が10である。 なので、単純計算で勇・武・武・武の4人パーティなら、ガイコツ1体を倒すことを 40÷2=20で、20回可能である。(実際には、最後のほうで勇者か武闘家の誰かがHPゼロになって戦闘不能になるので、こなせる戦闘回数は20よりかは減る。) 一方、勇者1人旅では、計算 10÷4=2あまり2 により、たったの2~3回しか、ガイコツを倒せない。 仮に2~3をパーティ人数分で4倍しても、8~12回にしかならず、到底20回には及ばない。 なお、2~3を7倍すると、14~21になり、ようやく20に到達する。 つまり、パーティを4倍する事により、4倍の効果どころか少なくとも7倍の効果が現れている。 4と7を対数関数で計算すれば、 :<math>\log_4 7 = 1.40367 </math> なので、約1.4乗で人数の効果が指数的に効いてきたことになる。 このようにランチェスターの法則により、人数の効果は、けっして1次関数的な1乗の比例ではなく、1次関数を超えた乗数の効果が出てくる。 まさに、上述のドラクエ的なシミュレーション例が、ランチェスターの法則そのものである。 毎回対数計算をするのは面倒なので、やや不正確だが簡易的に「1.5乗で効いてくる」と近似すれば計算しやすいだろう。なお、平方根が0.5乗である。 つまり、ある代数値 aについて、 :<math>a^{1.5} = a \sqrt{a} </math> である。 もちろん上記のドラクエ3例はあくまでゲームの話であり、実際の戦争には、けっして、そのまま単純に適用してはならない。 だが、軍事は置いておくとして「ランチェスターの法則」の数理的な性質だけを調べるための例としては、上記のドラクエ例でも正しい。 もちろん、実際の戦闘や戦争は、そもそも数理モデルだけでは決して済まない。現実の戦争は、そんなに単純ではない。上記のランチェスターの法則は、あくまで参考程度のものである。 しかし、そもそも社会科学におけるモデルとは、そのように参考程度のものに過ぎない。これは軍事学に限らず、経済学などにおける数式でも同様である。 さて、ランチェスターの法則から導ける結果として、もし兵員数が2倍になると、その効果は、けっして単に敵の2連戦に耐えられるような長期戦の対応だけでなく、さらに攻撃力アップによる、次に述べる副次的な別の効果がある。 具体的には、兵員が増えれば仮定により戦闘力(ゲームで言う「攻撃力」)もアップするので、いままで倒せなかった強い敵国の軍が倒せるようになる可能性が増える。また、攻撃力がアップすることにより、敵軍の殲滅(ゲームに例えるなら戦闘中の敵全員のHPを0にする事)に要する時間が減少するので、殲滅までに受けた自軍の損耗も減らせる。つまり自軍の被害は、戦闘終了までに受けた時間に応じて、比例的に増加する事がランチェスターの法則から導かれる(なお、ドラクエなどのRPGゲームでも同様の現象がある事が知られている)。 ともかく、兵員数の増加には、上述のように副次的な効果がある。 このため、よく言われる事として、兵員数の2倍への倍増は、その効果はけっして2倍ではなく、上述の副次効果により乗数的に効果が出るので、たとえば4倍~8倍くらいの効果になる場合もある(実際にどの程度の効果が出るかは、モデルの係数などによって変わる)。 こういった数学的な事が、近代ヨーロッパでは既に言われていたので、なので現実の世界史の戦争での用兵もそれに従い、その結果、なるべく兵力は分散させずに、兵力を拠点や作戦目標などに集中させる戦術が実際に好まれ、多くの戦場で採用された。 近代世界史におけるシベリア鉄道など鉄道による兵員輸送や軍需物資輸送などによって軍事力が向上するという理屈も、なぜ向上するのかという理由を根本的に考えれば、ランチェスターの法則のような考え方が前提になっているだろう。 ===== 解析例(微分積分) ===== では、実際にランチェスターの法則を微分積分的に解析してみよう。 ;ランチェスターの法則 :<math>{\mathrm{d} x \over \mathrm{d} t}= -\alpha y </math>     (1) :  :<math>{\mathrm{d} y \over \mathrm{d} t}= -\beta x </math>      (2) なお、自軍の兵数がx、敵軍の兵数がy、αとβは武器の性能を表す定数である。また、αとβは定数係数である。 数学的な注意として、まず、x、yはともに「関数」であり、「変数」は t (ティー)の1つだけである。xとyは、変数にtをもつ(「変数」ではなく)「関数」である。 :※ tの代わりにxまたはyのいずれか1つを「変数」とする事もできるが、その場合、変数にならなかった残り2つの文字は関数になる。たとえばもしxを変数として扱う場合、tとyは xの関数である 事になる。 :つまり、もしtを変数として扱うなら、けっしてxはyの変数ではない。なぜなら、時間tが与えられれば、yの値は t から一意的に決定するからである。だから、関数 yはこの場合、変数にはtだけをもつ。 :変数をtとした場合でも、答えの曲線をグラフ化してx-y平面上に描けば、x軸とy軸の平面グラフ上の曲線が描かれるので、あたかも「xがyの変数である」(誤解)かのように誤解しがちであるが(実際、変数変換によりxを変数とする事も可能であるが)、しかし、計算中の仮定により、この場合は t だけが変数である。 では、実際に式を解こう。まず、式(1)をもう一回、微分すると、 :<math>{\mathrm{d^2} x \over \mathrm{d} t^2}= -\alpha {\mathrm{d} y \over \mathrm{d} t} </math> になる。2項目の dy/dt に式(2)を代入すれば、 :<math>{\mathrm{d^2} x \over \mathrm{d} t^2}= -\alpha {\mathrm{d} y \over \mathrm{d} t} = -\alpha( -\beta x) = \alpha \beta x </math>    (2-1) となり、式中からyが消えて上式はxとtだけの式になる。 この事から、xは関数であり、xの変数はtだけである事が分かる。(実は数学的には証明をややインチキしており、そもそも、こういう仮定が無いと、常微分を出来ない。変数が2個以上の場合は「偏微分」という別の演算が必要になる。) 同様に式(2)についても、同様の演算操作により、式(2)を変形して関数yと変数tだけの式に置き換える事が出来る。 さて、 :<math>{\mathrm{d^2} x \over \mathrm{d} t^2} = \alpha \beta x </math>    (2-1) の右辺を移項して、 :<math>{\mathrm{d^2} x \over \mathrm{d} t^2} - \alpha \beta x = 0 </math>    (2-2) となる。 これは左辺の微分作用素を因数分解すると、 :<math>({\mathrm{d^2} \over \mathrm{d} t^2} - \alpha \beta) x = 0 </math>    (3-1) と書ける。 微分作用素を :<math>{\mathrm{d} \over \mathrm{d} t} - \alpha \beta = D </math>    (3-2) として作用素Dを定義すれば、式(3-1)を変形して、 :<math>(D^2 - \alpha \beta) x = 0 </math>    (3-3) と書ける。 ここで、中学校で習った因数分解の公式により :<math>(A^2 - B^2) = (A-B)(A+B) </math>    (3-4) であるので、この公式を式(3-4)に適用すれば、 :<math>(D - \sqrt{\alpha \beta}) (D + \sqrt{\alpha \beta}) x = 0 </math>    (3-5) のように式変形できる。 この事から、この方程式の解(一般解)は、 :<math>(D - \sqrt{\alpha \beta}) x = 0 </math>   (3-6) の解(特殊解の一つ)と、 :<math>(D + \sqrt{\alpha \beta}) x = 0 </math>   (3-7) の解(特殊解)を組み合わせたものになる事が分かる(本来なら証明が必要だろうが、省略する。興味があれば、大学2年の応用解析学の本を読め)。 (3-7)の解は、指数関数 :<math>x = C_0 e^{- \sqrt{\alpha \beta} t} </math> となる。(ただしC<sub>0</sub>は積分定数とする。) なお、eは自然対数の底(てい)である。高校3年の数学3で習うので、もし知らなければ教科書を買って調べよ。 指数関数 e<sup>t</sup> は見やすくするために、大学入学以降では exp(t) と書く場合もあり、その場合、上式は :<math>x = C_0 \exp (- \sqrt{\alpha \beta} t) </math> と書かれる。 同様に式(3-6)も解けて :<math>x = c_1 \exp (+ \sqrt{\alpha \beta} t) </math> となる。 この2つを足したモノが一般解なので、 :<math>x = C_0 \exp (- \sqrt{\alpha \beta} t) + c_1 \exp (+ \sqrt{\alpha \beta} t) </math>    (4-1) が一般解である。 しかし、読者には、これだけだと、なぜこれによって、兵数が倍増すると攻撃力が倍増するか等の諸性質や、そもそも解が増加するのか減少するのかさえも、分からない。 だが、微分方程式の初期値として、ある時点での兵数と、数時間後の(減少した)兵数を代入する事をして積分定数C0およびC1を決定してから、数値計算を行うと、ここから、「兵数が倍増した場合の勝率の指数的な増加」など前の節で述べたような性質が数値計算的にかつ経験的に導かれる場合が多い(初期値による)。 答えの式(4-1)だけを見ると、あたかも値が増加しそうに錯覚するが(指数関数の部分はマイナスにならないので)、しかし係数C0やC1の符号はプラスとは限らず、マイナスの数である場合もあるので、解全体としては値が減少してくのである。 このように、連立微分方程式は、解を解いただけでは、その性質が分かりづらい場合が多く、そのため、パソコンなどで数値計算によってグラフなどを書いて、その性質を予想する事が、研究では必要である。(そして、その予想を参考に、その予想を証明するのが数学者の仕事である。なお、さすがにランチェスターの式の性質はすでに数学者によって研究済みである。) なお、もしプログラミングが出来なくても、代替の方法として手間は掛かるが、表計算ソフトのエクセルで、実際に数値計算をしてグラフを何パターンか書いてみてシミュレーションする方法もある。 ともかく、このような連立微分方程式を、数値計算などでシミュレーションして性質を研究していく分野は、数学的には「力学系」といわれる分野である。物理の「力学」の分野でこういう計算例が多かったので、そういう名前がついているが、物理学の知識が無くても計算できる分野である。 軍事学に限らず、生物学の分野にも「力学系」の式はある。生物学で、動物などの個体数などをシミュレーションするのに連立微分方程式で「ロトカ=ヴォルテラの方程式」というのものが使われる場合があり、このロトカ=ヴォルトラ方程式とその派生も、「力学系」の分野のひとつとして有名である。(高校の生物でも、式計算はしないが、高校3年の生物2における生態分野で、類似の理論を習う。) なお、上記の一般解は、双曲線関数 sinh および cosh というものを使っても置き換える事が出来る。これは日本では大学の理科系の学部の1年で習う。 三角関数のsinやcosとは、双曲線関数は異なるので、混同しないように注意のこと。 余談だが、2020年のコロナ問題で話題・有名になったSIR方程式という感染症モデルの常微分方程式も、力学系に分類されるような式であろう。当然、上述のように力学系の微分方程式の数値計算シミュレーションにはコンピュータが必要である。(なお、評論家の中には困ったことに、「SIR方程式はパソコンが無くても研究できる時代遅れの式」(そして彼らは「だから予想値と実測値の誤差が大きい」と主張している)と言っている、頭の悪い有名評論家がいる(力学系の研究ではパソコンによる数値計算が必須なので、前提が事実に反する)。しかも更に困った事に、本来ならツッコミを入れるべき医学者やら生物学者が数学オンチなので、そういう批判者たちの前提の間違いにツッコミを入れない。残念ながら日本のマスメディアや論壇では、こういう馬鹿評論家でも、学歴で東大とか京大とか卒業していると、困った事に世間では彼らが「知識人」として通用してしまうのである。きっと「痴識人」の間違いであろう。医学者や生物学者も、知識不足で頼りない。)大学などの数学者や物理学者も、まったく評論家の数学的な間違いにツッコミを入れないので、残念ながら日本の数理科学の研究水準は低いといわざるを得ない。東大などの提唱する分離融合や異分野融合などが口先だけである証拠でもある。 またなお、微分積分に限らず、軍事学や経営学などの分野に数学や統計学などを応用する分野の事を「オペレーションズ・リサーチ」(略称は「OR」(オー・アール))という。第二次世界大戦中にアメリカ軍がこういった数理的な研究手法を始めた。統計学や確率論、線形計画法などがよく、オペレーションズ・リサーチの手法として用いられる。 一方、「力学系」と言った場合、「力学系」は微分方程式(または差分方程式)で立てられたモデルの分析のことを言うので、「オペレーションズ・リサーチ」とはニュアンスがやや異なる。 ;吟味の必要性 軍事学の数理モデルに限らず、経済学などを含む何らかの社会科学の数理モデルを現実の問題に適用する場合には、注意しなければならない事として、そのモデルが、これから適応しようとしている事例の性質を果たして本当によく反映できているか、自己批判的かつ内省的に注意深く観察しながら、限定的に適用しなければならない。このように、観察しながら注意深く限定的にデモル適用をすることを、俗に社会科学などの分野では「吟味」(ぎんみ)という。数理モデルの実用の際には、吟味が必要である。 しかし残念ながら、社会科学やその応用では、しばしば吟味は省略されることが、実業界やマスメディアなどで まかり通っている場合が往々にある。 たとえば2001年~2005年ころのアメリカ金融界は金融工学のブラック・ジョ-ルズ方程式に基づく仕組みなどを喧伝していたが、しかし米国金融がモデルの吟味を怠ったせいで杜撰な貸付をしたせいで、貸し金の回収不足になりサブプライム問題を起こすなど、杜撰な吟味不足によって世界経済に迷惑を及ぼす例もあった。 ===== 実際の戦闘力 ===== 上述のランチェスター法則は、あくまで参考程度の簡略的なモデルであり、実際の戦闘では適用の不可能・困難な場合も多いだろう。 なので、もし戦闘力をさらに詳細に分析するならば、兵員の規律や士気などの無形的要素を組み合わせなければならない。つまり、火力部隊の戦闘力は火砲とそれを操作する射撃要員の物量という有形的要素と、砲兵火力を発揮するための射撃の速度、精度、士気から判断される無形的要素から導き出すことができる。したがって100名の統制がとれていない武装した群衆と50名の規律ある戦闘部隊の間には戦闘員としての錬度、団結、そして士気という無形的要素に由来する戦闘力の格差が存在していると指摘できる。 また、戦闘は戦力の戦闘力の合計によってのみ左右されるのではなく、戦闘力を戦場に配置する戦闘陣によって規定される。 ==== 戦闘陣形 ==== 戦闘陣(Battle formation)は戦力が戦闘において連携を保つために形成する複数の部隊の一定の態勢である。戦力は彼我との位置関係から与えられる損害や得られる戦果が変化しうる。そもそも部隊は敵の方向に対して最大の戦闘力を発揮できるように部隊の正面を方向付ける。その基本となる戦闘陣形として第一に横陣がある。横陣は敵に対して正面を広く縦深を浅くなるように選択した隊形であり、特に火力を発揮するのに適した陣形である。この陣形の戦術的な特徴は部隊の脆弱な左右両側面と背面に敵が回りにくくすることを防ぐことにある。古代ギリシアのマケドニア軍で採用されていた戦闘陣は歩兵部隊の横陣の両翼に騎兵部隊を配置することで、中央の歩兵部隊の両翼の弱点を補っていた。また基本となる戦闘陣形には縦陣もある。これは正面に対して狭く縦深が深くなるようにした陣形であり、機動力を発揮するのに適した陣形である。この陣形には部隊の迅速な行軍や機動を容易にする特徴がある。速やかな戦場機動や中央突破を狙った突撃で有効であり、トラファルガーの海戦でイギリス軍がフランス軍の戦列に対する攻撃の際に選択されている。さらに斜行陣、鈎形陣、円陣、弾丸陣などの陣形があり、斜行陣は右翼または左翼の片方に兵力を集中的に配置した戦闘陣であり、また鈎形陣は片方の翼を横方向に配置した戦闘陣であり、両方ともに劣勢である場合に用いる戦闘陣である。円陣は全方向に対して部隊を配置する円形の戦闘陣であり、部隊の宿営や集結などに用いられる。弾丸陣は矢印のような形状の戦闘陣であり、先端に機甲部隊を配置して突撃などに用いられる。このような多様な戦闘陣は地形や敵情、彼我の戦闘力の格差などを考慮した上で選択されなければならない。 === 戦術の基本作業 === 戦術的知能の中核とは問題解決能力であり、これは自らが置かれている状況がどのようなものであるかという状況を判断する問題、我が選択することが可能な選択肢の中でどれが最善であるか意志を決定する問題、そして下された決定を実行するために作戦方針を作成する問題の三つに問題を区分することができる。 ==== 状況判断 ==== 状況判断の問題とは任務分析、地形判断、敵情判断を起点とし、敵の可能行動の列挙、味方の行動方針の列挙、各行動の戦術的分析、そして各々の分析の総合という思考過程に基づいて解決される。任務分析とは自分に与えられた任務の背景や本質を分析して達成すべき目標事項を明確化し、複数ある場合にはそれぞれの目標の優先順位を定める問題である。地形判断とは自分が置かれている地理的環境がどのようなものかを分析することである。この際に軍事地理学の知識を援用して戦闘地域を構成する地理的特性を解釈し、重要な地形やそこに至るための接近経路を明らかにする。敵情判断とは敵部隊の配置、装備や補給の状況、後方連絡線の方向などを分析し、敵がどのような戦闘行動を将来実施するかを検討することである。敵情判断では敵が行いうる全ての戦闘行動の全てを列挙し、蓋然性の観点からそれら行動の我にとっての効果や危険を明らかにする。 ==== 意思決定 ==== 意思決定とは状況判断に基づいて我の行動方針を決定することであり、可能的な状況について個々に分析し、それら分析を総合し、決心を下すという過程から成り立つ。実際に発生する可能性がある状況は彼我にとって実施可能な戦闘行動の組合せの数だけ存在する。これらの状況について個々に分析を加えることで個々の戦闘行動によって生じうる結果がどのようなものであるかを検討する。そして総合の過程でそれら分析によって得られた個々の戦闘行動を相互に比較しながら我にとって最も危険性の高い事態がどのような事態であるかを明らかにすることが可能となる。そして任務を達成するためにどのような戦闘行動を選択しなければならないかを限定することができる。最後の決心とは少数に限定したいくつかの作戦方針の中から一つを、その選択肢の危険性と不確実性を鑑みた上で決定することである。このようにして決心が確立されれば、作戦計画の策定作業に移ることができる。 ==== 作戦計画 ==== 作戦計画(Operations Plan, OPLAN)とは決心によって定められた作戦方針に基づいて策定される戦力運用の計画である。作戦計画とは作戦の目標、目標を達成するために採用される行動の方針、そしてその方針に従って作戦に参加する各部隊の任務と個々の行動計画から成立しており、指揮官には戦術的思考に基づいて作戦計画の骨子を作成する技能が求められる。作戦は計画、実行、評価の三つの段階を繰り返しながら進め、常に目的と手段が結合するように配慮しなければならない。作戦計画の立案の際に把握するべき個別の戦況を構成する要素は任務、敵、地形と気象、使用可能な部隊と支援、そして民事的考慮の頭文字を取ったMETT-TC(Mission, Enemy, Terrain and weather, Troop and support available, and Civil considerations)で端的に要約される。これら諸要素を踏まえた上で作戦の立案には次のような事柄が含まれなければならない。第一に作戦目標を具体的な軍事的状況として定義することである。攻勢作戦で敵の拠点を攻略する方針が示された場合、その具体的な達成条件は何を意味するかが定義されなければならず、例えば攻略目標の拠点やそれを守備する敵がどのような状態になれば攻略と見なすかを明確化する。その作戦目標によって作戦は攻勢作戦と防勢作戦、また偵察作戦、行軍作戦、治安作戦などの作戦の形態に分類することができる。 == 攻勢作戦 == 攻勢作戦とは敵を積極的に求めながらこれを撃滅しようとする作戦の形式であり、遭遇や複数に渡る攻撃から成り立っている作戦である。攻勢作戦では敵に対して決定的打撃を加えることを可能とする作戦であり、これは戦術の原則のひとつである主導の原則に基づけば常に実施を模索するべき作戦である。しかし攻勢作戦はしばしば戦力の経済的な使用を指示する節約の原則に反するほどに戦闘力を減耗させる危険性がある。攻勢作戦を実施するべき状況の例としては、戦力投射作戦を実施する状況、敵に対する我の戦闘力の圧倒的な優勢を確保している状況、戦略的な守勢において局地的な反撃を実施する必要がある状況などがある。ここでは攻勢作戦の基本的な形態とその指導の要領、そして作戦計画を立案する上での考慮事項について述べる。 === 攻勢作戦の形態 === 攻勢作戦で中心となる戦術的な行動は接敵機動、攻撃、戦果拡張、追撃の四つの段階がある。接敵機動とは戦闘を行うために敵との接触を試みる機動であり、彼我の接敵機動で生じる戦闘は遭遇戦と言う。攻撃とは攻勢作戦において敵を撃破または撃滅、地形の攻略または確保、もしくはそれら両方を行う攻勢作戦の戦闘行動である。攻撃はさらに戦闘行動の方式としては奇襲的な攻撃である伏撃、防御の態勢から攻撃に転換する逆襲、準備された防御に対する強襲、敵を有利な地点におびき出す誘致、敵に誤った状況を認識させる欺瞞がある。そして機動の方式から一翼もしくは両翼を駆使して敵の二正面以上を同時に攻撃する包囲、敵の正面を突破して分断する突撃、そして敵と接触せずに敵の後方や側面に回りこむことで敵に退却を強制する迂回に分けることができる。戦果拡張とは組織的な戦闘力を失った敵に対して攻撃の段階から継続的に行われる攻撃であり、攻撃によって得られた戦果を最大化する戦闘行動である。追撃とは退却する敵をさらに追尾して打撃を加える行動であり、戦場に敵を捕捉して追撃を加える方式と、戦場外に退却した敵に対する追撃の方式がある。 ====攻撃==== ====追撃==== === 攻勢作戦の指導 === 攻勢作戦を指導する際に攻撃発起点、前進軸、攻撃目標、前進限界、集結地点を調整することで行われる。攻撃発起点とは各部隊が攻撃のための前進を開始する際に出発する地点である。理想として敵に対して位置や行動が隠匿し、また戦力を防護することができることが望ましい。自然地形で攻撃発起のための適切な地形を望むことができないならば、攻撃陣地を準備することも手段に含まれる。前進軸は各攻撃部隊が前進の際に依拠する一般的な方向あり、戦場における計画的な機動を調整するものであり、状況図では矢印によって表示される。攻撃目標とは我の戦闘力を集中させる目標であり、敵の部隊または特定の地形がその対象となる。ただし地形が攻撃目標であるのに対して敵部隊を攻撃目標とする場合には攻撃目標を捕捉することが難しくなる。そして攻撃前進の終点は前進限界によって定められる。前進限界は攻撃部隊が攻撃前進を停止する段階を計画的に決定するものである。前進限界に到達した部隊は識別が容易な集結地点もしくは予備的に設定された代替集結地点に再集結させる。 === 攻勢作戦の計画 === 攻勢作戦を計画する上での着眼としては奇襲と集中、そして節度(Tempo)と大胆(Audacity)が重要となる。つまり、敵が予測した事態を回避し、戦力を集中させ、迅速な節度を以って大胆に前進させることが効果的な攻勢作戦を立案する上での基礎となる。そして攻勢作戦を状況に適合させるためにはまず情報作戦に基づいて戦場の状況を把握することが求められる。敵情については配置、装備、戦闘力、弱点、攻撃すべき目標、集結点、敵の後方連絡線、離隔した支援戦力、対空部隊、電子戦部隊、敵の情報網などであり、地形については地形の形状、気象の影響、攻撃に使用可能な経路の配置と数、攻撃の障害となる森林や河川などの地形について把握する必要がある。これらの状況を踏まえた上で与えられた任務とそれに対応する作戦目標、指揮官の意図、敵の配置や戦闘力などの敵情、攻撃目標、作戦開始時刻、各部隊の機動の方向性、攻撃のための戦闘陣、作戦の危険性、そして代替的な作戦計画を準備する。作戦が開始されれば、指揮官は我の戦闘力の消耗を確認しながら攻勢極限点を見極め、彼我の戦闘力の優劣が逆転しないよう注意する。一度攻勢極限点に到達したと判断されれば、指揮官は防御へ転換することを決断し、攻撃によって得られた戦果を保存するよう努めなければならない。 == 防勢作戦 == 防勢作戦とは時間的猶予の確保、戦力の経済的使用、または別の攻勢作戦を支援するために、敵の攻勢作戦を待ち受けてこれを破砕する作戦である。防勢作戦は戦力の劣勢を補うことを可能とする作戦であり、節約の原則に立脚した作戦方針である。しかし防勢作戦のみによって目標を達成することが困難であり、また戦闘の主導権を失う危険を伴う。防勢作戦を実施する状況の例としては、決定的に重要な地形の確保を維持しなければならない状況、敵による奇襲への対処、敵に対して我の戦闘力が総体的に劣勢である状況などがある。ここでは防勢作戦の形態、指導、そして作戦計画の立案について概説する。 === 防勢作戦の形態 === 防勢作戦で中心となる戦術的な行動には防御と後退行動がある。さらに防御は陣地防御と機動防御に分けられる。陣地防御とは逆襲を加えることを主眼に置いたものではなく、構築した陣地や要塞によって敵の攻撃を阻止する形式の防御である。防御では敵の攻撃を阻止し、また緊要地形を保全することを狙った横陣や円陣の防御陣地が準備され、して防御陣地の機能を強化することに主たる努力が集中されるために、後方に拘置される予備の戦力は逆襲ではなく防御戦闘で減耗した損害を補填するために使用される。また機動防御とは陣地に頼るのではなく、敵の攻撃に対して決定的な逆襲を加える防御の形式である。機動防御では敵の後方連絡線を捕捉することを可能とするように陣地の構築や打撃部隊の配備を準備することに労力を費やす。そして後退行動とは敵との距離を持つように機動する防御戦闘の方法である。後退行動では敵との接触を断つ離脱、敵の前進速度を低下させる遅滞、そして敵との距離を拡大させる離隔の三段階を組織的な連携の下で背面を敵に暴露する危険を最小限に抑える。 ==== 防御 ==== ==== 退却 ==== === 防勢作戦の指導 === 防勢作戦の指導では戦闘移行線、主戦場の設定、防御陣地、火力支援の調整、直接射撃の統制、退路を調整することで行われる。戦闘移行線とは戦力を戦闘態勢に移行させる判断を下す地理的な基準となる線である。戦闘移行線は主たる防御拠点の前方において設定される。戦闘移行線と防御拠点の間は主戦場であり、敵の攻撃を排除するために戦闘力を発揮する領域である。防御陣地とは敵の侵入と前進を阻む機能を持った構築物である。防勢作戦における火力支援の調整と直接射撃の統制とは火力の最適な配分を意味する。これはそれぞれの主戦場に対する射撃のために各種装備を配置する地点を決めることであり、またそれぞれの射撃がどの地域に責任を負うのかを明確に示すことである。そして退路を調整する際には戦闘を離脱した後に収容を実施する機能も備えた二次的な防御陣地との間の連絡線を指定しておく。 === 防勢作戦の計画 === 防勢作戦は通常において防御戦闘の計画的準備によって遂行される。しかし作戦行動は主導の原則に従って静態的な行動ばかりでなく動態的な行動が必要であり、防勢作戦の作戦方針を採用していたとしても敵の攻撃を排除した後に逆襲に転換することが検討されなければならない。その原則を踏まえた上で防勢作戦の計画にはいくつかの情報が必要である。敵の戦闘力や集結地点などの配置だけでなく、どの攻撃目標を選択するのか、そしてそれに対応する接近経路、攻撃方法がどのような状態であるのかを研究しなければならない。そのためには敵が慣習的にどのような作戦行動を選択しているかを分析する必要もある。例えば空挺部隊を使用した攻勢作戦に対する防勢作戦の場合では、陣地防御ではなく機動防御を準備しなければならない。なぜならば陣地防御とは固定された攻撃目標に対して接近する際に必ず地上において進路を妨げることができなければ有効ではない。空挺部隊による攻撃に対しては防空戦闘と敵部隊が戦闘展開してから迅速で組織的な逆襲を加えることが求められるのである。また幅広い正面に渡る正面攻撃に対する防御では複数の防御陣地によって組織化された陣地防御による攻撃の阻止と予備戦力による逆襲を準備することが必要である。 == 戦術用語 == *'''圧迫''' - 武力や権威で押さえつけること。 *'''隠蔽''' - 物事、特に機密事項となる軍事基地や新兵器などを隠すこと。 *'''迂回''' - ある場所を避けて、遠回りすること。 *'''運動''' - *'''{{Ruby|掩蔽|えんぺい}}''' - *'''会戦''' - 大規模な戦力を互いに準備し、行う戦闘のこと。 *'''内戦作戦''' - 敵軍に包囲される位置で作戦を展開すること。 *'''外線作戦''' - 敵軍を包囲する位置で作戦を展開すること。 *'''監視''' - 敵軍の行動を監視すること。 *'''機動''' - *'''逆襲''' - *'''持久戦''' - 自軍を持ち堪えさせることを目的とした戦闘のこと。 *'''警戒''' - *'''撃破''' - *'''決心''' - *'''決戦''' - *'''牽制''' - 敵軍を武力や兵数などで圧倒し、敵軍の行動の自由を奪うこと。 *'''後衛''' - *'''行軍''' - *'''攻撃極限点''' - 攻撃によって得られる優位の限界のこと。[[w:攻撃の限界点|攻撃の限界点]]とも。 *'''攻勢''' - 敵軍に対して攻撃すること。 *'''後方支援''' - 砲兵、航空機などで後方から前線を支援すること。 *'''作戦''' - *'''作戦目標''' - *'''指揮''' - *'''支隊''' - *'''遮蔽''' - *'''集結''' - *'''集中''' - *'''重心''' - 部隊を1つの地点に集結させ、圧倒的物量差で敵に攻撃すること。 *'''状況判断''' - *'''助攻''' - *陣地 *前衛 *戦果 *戦術 *戦場 *前哨 *戦線 *戦闘 *戦闘力 *遭遇戦 *側衛 *退却 *地形 *諜報 *追撃 *'''偵察''' - 敵軍、特に野営地などの状況を把握し、敵軍の兵数などを事前に知る為の行動のこと。 *展開 *突破 *背後連絡線 *兵站 *編制 *包囲 *防御 *防勢 *本攻 *摩擦 *命令 *陽動 *抑止 *連絡 == 脚注 == <references/> == 参考文献 == 戦術学の文献はそれほど流通していないために入手することは非常に難しい。一般に海外の戦術学の文献が入手しやすく、特に米陸軍省が一般公開している野戦教範(Field Manual)が研究を行う上では参考となる。また国内においては戦前に流通していた軍学校の教育や試験で使用する戦術学の教範、参考書、または問題集があり、それらを入手して参照することもできる。しかしながら、これらの教範類も一般的に入手することが難しい場合が多い。戦後に自衛隊で使用されている教範類は一般公開されていないものの、自衛隊関係者により発表された閲覧可能な論文を収録した論文集がある。例えば陸上自衛隊の幹部で構成された陸戦学会から出されている『陸戦研究』は国立国会図書館等で閲覧することが可能な戦術研究である。以下では主に書籍に限定した上で戦術研究の上で参考となる研究について解題を加えたものである。 *防衛大学校・防衛学研究会編『軍事学入門』(かや書房、2000年) :軍事学を概説した入門書であり、第3章の現代軍事力の態様は戦術研究の上で参考となる。 *松村劭『バトル・シミュレーション 戦術と指揮 命令の与え方・集団の動かし方』(文藝春秋、2005年) :戦術理論の基礎的事項を要約し、また答案を付与した練習問題が含まれている。 *高山信武『陸軍大学校の戦略・戦術教育』(芙蓉書房出版) :陸軍大学校での講義と戦術学の口頭試問の記録が含まれている。 *Field Manual No. 3-90, Tactics, Headquarters Department of the Army, 2001. :米陸軍で使用されている戦術学の教範類であり、理論的解説だけでなく戦史に基づいた解説も含まれている。本項目の執筆で最も参照した参考文献。 *Field Manual No. 100-5, Operations, Department of the Army, 1993. :作戦の基礎、攻勢作戦、防勢作戦について網羅的に概説した米陸軍の教範であり、理論的説明が豊富である。 {{stub}} [[Category:軍事学|せんしゆつかくにゆうもん]] g5gd632a8d50x2r9wiquu7kqk5z71hg 205545 205544 2022-07-19T20:41:10Z 某編集者 69349 /* 序論 */ wikitext text/x-wiki *[[社会科学]]>[[軍事学]]>[[戦術学]]>'''戦術学入門''' [[画像:Battle of Austerlitz - Situation at 0900, 2 December 1805.png|300px|thumb|right|地形図と部隊符号から構成されるアウステルリッツ会戦の状況図である。戦闘で生じている全ての事象が戦術的に重要であるわけではない。戦術学では状況図のように現実の複雑な戦況を概念化し直し、戦場の空間的、時間的そして戦力的要素の三つを視覚的に把握することで、何が重要な情報であるかを取捨選択する。]] == 序論 == 戦術(Tactics)とは戦闘において部隊などを効果的に運用する技術・科学である。[[軍事学]]において戦術学は戦闘を認識し、解釈し、そして判断するために必要な理論的枠組みを備え、また戦闘において勝利を獲得するために戦力を配置し、戦闘力を最大化し、戦闘行動を指揮する上で不可欠な実践的役割を担っている。ただし戦術は戦略の下位において実践される領域として区別されている。つまり戦略とは作戦部隊を有利な条件で戦闘が実施できるように全体的な視点から部隊を指導する技術・科学であり、戦術はその戦略に沿って戦闘で勝利する技術・科学である。したがって、戦術学の固有の問題とは戦争の指導とは別個に、戦闘において戦力を活用することにある。 戦闘において部隊を戦術的に運用することの意義は過去の戦史で示されている。ナポレオン戦争においてアウステルリッツ会戦を概観すると、戦力で劣勢なナポレオンが敵の攻撃に対して[[防御|防御 (軍事)]]戦闘と遅滞行動を組み合わせたことが勝利をもたらしたことが分かる。戦術学において戦力の優劣は必ずしも戦闘の勝敗に直結するわけではない。戦力だけではなく、任務、地形、敵情などから戦闘状況に適した戦術を選択することが不可欠である。例えば戦術学では学習者を部隊指揮官と想定して次のような事柄を問題とする。「与えられた任務をどのように理解するのか」、「どの地域が戦闘において緊要であるのか」、「敵は次にどのような戦闘行動に出るのか」、「現状で我が方の戦力をどのように配置するべきか」、「敵をどのような要領で攻撃するべきか」、「圧倒的劣勢において退却と防御のどちらを選択するべきか」、「歩兵部隊と戦車部隊の連携はどのように指導するのか」、「自分の作戦計画をどの部下に何をどのように伝えるべきか」これらの問題は全て戦術学の重大な問題であり、理論的に導き出すことが求められる。 戦術学はいくつかの部門に細分化することができる。まず理論的に単純化された基礎的問題を扱う初等戦術とより現実的かつ複雑な戦況に対処する応用的問題を扱う高等戦術の二つがある。また単一兵科の小部隊を指揮する小戦術から複合兵科の大部隊を指揮する大戦術に分けることもありうる。さらには戦闘空間の特性の相違から陸上戦力を運用する戦術、海上戦力を運用する戦術、航空戦力を運用する戦術などに分類することも可能である。事前の準備の程度から計画戦術と応急戦術の研究に分けることもなされる。これらの細分化に踏み込むことは『戦術学入門』である本項目では重要視しない。以下では戦術学の基礎的な理論について概説することに力点を置いた上で、次のような章立てで進んでいく。まず戦術の原理、攻勢作戦、防勢作戦の三つに内容を大別して説明していく。これらの概説を通じて本項目では学習者の戦術学の基礎的な理解に貢献することを狙っている。 == 戦術の原理 == 戦術とは戦闘に戦力を適用することである。その具体的な適用の方法は実践的な訓練や経験によってのみ獲得される技術的側面を含んでいるものの、体系的な教育や思考によって習得される科学的側面も備えている。したがって、戦術問題は原則としていくつかの原則と戦術学の概念に基づけば論理的思考によって解答を導き出すことが可能である。ここでは戦術学の原理、基本概念、そして戦術的思考のモデルについて概説する。 === 戦いの原理 === あらゆる戦闘に勝利するために一般的に適用することが可能な戦術の原理とはどのようなものであるのか。例えばそれは「我の戦力の主力を以って、敵の個々の戦力と戦闘するように機動すること」のように要約された、いくつかの戦いの原理(Principles of war)から明らかにすることができる。これは戦闘を計画または指導する際に常に準拠するべき原則であり、次のような諸原則が知られている。 *目標の原則 *統一の原則 *主導の原則 *集中の原則 *奇襲の原則 *機動の原則 *節約の原則 *簡明の原則 *警戒の原則 行動の目的を明確にする目標の原則、指揮系統を統一する統一の原則、先制して状況の支配権を獲得する主導の原則、敵の弱点に対して味方の戦力を集中する集中の原則、敵の意外性を突いて戦う奇襲の原則、移動によって我の優位な位置関係を維持する機動の原則、無駄な戦力を有効活用する経済の原則、目的や行動方針が大胆かつ単純である簡明の原則、敵の奇襲を防ぐために注意する警戒の原則、以上が各原則の要旨である。<ref>米陸軍では物量的な戦力の優位性を保持する物量の原則、旧ソ連陸軍では敵を完全に撃滅する殲滅の原則などが原則として加えられる場合もある。</ref> [[File:Battle of salamis.png|300px|thumb|right|サラミス沖海戦の状況図]] 戦術研究においてこれら諸原則の重要性が実証されている。ここでは一例としてサラミスの海戦を取り上げながら、諸原則の意義を確認する。紀元前486年9月20日にテミストクレスが指揮するギリシア軍とクルセルクスが指揮するペルシア軍による、ギリシア半島のサラミス島沖でサラミスの海戦が発生した。劣勢な戦力しか持たないテミストクレスはサラミス島を防衛するために防勢サラミス島沖の狭隘な海峡という地理的環境を活用することを考案した。つまり、ペルシア軍の大規模な戦力を狭隘な海峡に誘致することでペルシア軍を脆弱な状態に追い込み、風浪の状況が時間の経過でギリシア軍に有利に変化するのに乗じて、攻撃に転換する戦術を実践したのである。結果としてペルシア軍は地形や海象に起因する隊列の混乱、そしてギリシア軍の反転攻勢の中央突破に対処することができず、敗北することとなった。サラミス島を防衛するという目標の明確化、部隊の意思疎通の統一化、主導権の計画的な回復、戦力の一点集中、奇襲的な反撃、敵を分断する機動的な攻撃、戦機が到来するまでの戦力の温存、作戦方針の簡潔さ、そして敵の行動に対する警戒、このような適切な原則の適用によってテミストクレスは勝利を確実なものとすることができたと戦術的には考えられる。 === 戦術の基礎概念 === 戦術の基礎概念の最も初歩的な範疇は戦力が発揮する戦闘の機能、戦力が備えている戦闘力、戦力の展開に関連する戦闘陣の三つに大別に分けることができる。 ==== 戦闘 ==== 戦闘とは戦争における本来的な軍事行動であり、我に対抗して行動する敵を撃滅することを目的とした闘争の状態である。そのため戦闘において彼我の戦力はそれぞれの戦闘力を最大限に敵に対して発揮できるよう行動する。しかし、敵を撃滅するという一般的な戦闘の目的は個々の状況に応じて敵の部分的な撃退や一地点の占領として解釈される場合もある。そのため戦闘の勝敗は理論的には彼我の損害比で表現されるが、彼我の戦闘部隊の任務が達成されたかどうかによっても表現される。この戦闘を遂行するための戦力の機能は五つの項目に整理することができる。 *発見の機能 *拘束の機能 *制圧もしくは攪乱の機能 *機動の機能 *占領の機能 偵察や警戒によって敵情を明らかにする発見の機能、接敵機動と接触を維持することによって敵の行動の自由を制限する拘束の機能、砲兵火力などによって敵の組織的行動を妨げる制圧もしくは攪乱の機能、戦場において敵の弱点を圧迫するように戦力を選択的に再配置する機動の機能、そして敵に対して決定的な攻撃を加える打撃もしくは占領の機能、以上の五つである。これら機能を発揮するための戦力の能力を戦闘力と言う。 ==== 戦闘力 ==== ===== ランチェスターの法則 ===== 戦闘力(Capacity of battle)とは各部隊が戦闘を遂行する能力を指す概念である。戦闘力の優劣によって戦闘を実施する部隊の戦果の原因が説明され、また戦果の予測も左右される。戦闘力を具体的にどのような要素から判断するのかについては古典的な分析として、まず物的な局面に注目するものがある。 兵員と装備の物量が大きければ大きいほど戦闘力は向上するものであり、例えば100名の兵員から組織される部隊は50名から組織される部隊に対して2倍の戦闘力を有しているとする分析である。 このような基本的モデルとしてランチェスターの数式モデルなどが提案されており、兵棋演習の戦果や損害の計算法のひとつとして採用されている。 「ランチェスターの法則」の数式モデルは、幾つかの種類があるが、そのうち有名なモデルの内容は、下記の2つの式の連立微分方位定式として表される。 ;ランチェスターの法則 :<math>{\mathrm{d} x \over \mathrm{d} t}= -\alpha y </math>     (1) :  :<math>{\mathrm{d} y \over \mathrm{d} t}= -\beta x </math>      (2) という連立方程式である。 なお、自軍の兵数がx、敵軍の兵数がy、αとβは武器の性能を表す定数である。また、αとβは計算上の都合により定数係数であるとしてモデルを立てる(そう仮定しないと、解析的に手計算で式を解けない。または、もし変数係数だと人間による式計算では解析が著しく困難になるので、非入門的であり、非実用的になる)。 このように微分方程式で表現されるので、大学の微分方程式などの教科書でも紹介されることもある。高校参考書『モノグラフ』の『微分方程式』に書いてある計算問題も、この式の場合である。 式を見れば、たしかに兵員が多いほど、相手軍の損傷が大きくなるような立式になっている事が分かるであろう。 上式を式変形で解いて解析解を得るのは数学的には可能である事が知られているが、しかし解析解から実用的な結果を得るための計算に手間が掛かるので、本wikiではまず、解析をしないで、類似の簡易モデルを考えよう(解析例は後の章で後述する)。 その類似の簡易モデルは、現代ではゲームのRPG(ドラゴンクエストやファイナルファンタジーのようなジャンル)における戦闘のダメージ計算に例えればよい。 たとえばドラクエ3のようなパーティ戦闘システムのあるゲームの場合、パーティの人数が増えると、単に敵の攻撃に人数分だけ耐えられるようになるだけでなく、さらに1ターンあたりに敵に与えるダメージ量も増える。よって、より短時間でスライムの集団などを倒せるので、1戦あたりの戦闘が早く終わり、戦闘終了までに自パーティの受けるダメージ被害も少なくなる。 たとえば、ドラクエ3に例えよう。 勇者の1人旅と、勇者・武闘家・武闘家・武闘家の4人パーティを比較しよう。 プレイヤーキャラが草原フィールド上を歩いていたら、ガイコツが1体出現したとする。(計算の単純化のため、戦闘で出現するモンスターは毎回、必ずガイコツ1体だけだとする。なお、実際のドラクエ3には「ガイコツ」は出現しない。) 計算の単純化のため、ガイコツはHPが10だとしよう。計算の単純化のため、勇者も武闘家も、攻撃力は同じで1人あたり2だとする。よって、1回の攻撃でダメージ2を敵に与えるとしよう。 また、勇者と武闘家のHPは両方とも10だとしよう。計算の単純化のため、つねに勇者たちの攻撃が先手で、敵の攻撃は後攻だとしよう。 ガイコツの攻撃を受けたら、必ず勇者または武闘家の1人がダメージ1を受けるとしよう。 勇者1人旅の場合、ガイコツ1体を倒すのに合計5ターン要する。なので、勇者は戦闘終了までに4ダメージを受ける。(最後の5ターン目はガイコツからの攻撃を受けないので、合計4ダメージになる。) 一方、勇・武・武・武の4人パーティなら、1ターンあたり8ダメージ(=2×4)なので、2ターンでガイコツ1体を倒せる。なので、一戦あたりの被害ダメージは合計1ダメージである(2ターン目はダメージを受けない)。 さて、勇・武・武・武の4人パーティは、HPの合計値が40である(40=4×10)。一方、勇者1人旅は、HPの合計値が10である。 なので、単純計算で勇・武・武・武の4人パーティなら、ガイコツ1体を倒すことを 40÷2=20で、20回可能である。(実際には、最後のほうで勇者か武闘家の誰かがHPゼロになって戦闘不能になるので、こなせる戦闘回数は20よりかは減る。) 一方、勇者1人旅では、計算 10÷4=2あまり2 により、たったの2~3回しか、ガイコツを倒せない。 仮に2~3をパーティ人数分で4倍しても、8~12回にしかならず、到底20回には及ばない。 なお、2~3を7倍すると、14~21になり、ようやく20に到達する。 つまり、パーティを4倍する事により、4倍の効果どころか少なくとも7倍の効果が現れている。 4と7を対数関数で計算すれば、 :<math>\log_4 7 = 1.40367 </math> なので、約1.4乗で人数の効果が指数的に効いてきたことになる。 このようにランチェスターの法則により、人数の効果は、けっして1次関数的な1乗の比例ではなく、1次関数を超えた乗数の効果が出てくる。 まさに、上述のドラクエ的なシミュレーション例が、ランチェスターの法則そのものである。 毎回対数計算をするのは面倒なので、やや不正確だが簡易的に「1.5乗で効いてくる」と近似すれば計算しやすいだろう。なお、平方根が0.5乗である。 つまり、ある代数値 aについて、 :<math>a^{1.5} = a \sqrt{a} </math> である。 もちろん上記のドラクエ3例はあくまでゲームの話であり、実際の戦争には、けっして、そのまま単純に適用してはならない。 だが、軍事は置いておくとして「ランチェスターの法則」の数理的な性質だけを調べるための例としては、上記のドラクエ例でも正しい。 もちろん、実際の戦闘や戦争は、そもそも数理モデルだけでは決して済まない。現実の戦争は、そんなに単純ではない。上記のランチェスターの法則は、あくまで参考程度のものである。 しかし、そもそも社会科学におけるモデルとは、そのように参考程度のものに過ぎない。これは軍事学に限らず、経済学などにおける数式でも同様である。 さて、ランチェスターの法則から導ける結果として、もし兵員数が2倍になると、その効果は、けっして単に敵の2連戦に耐えられるような長期戦の対応だけでなく、さらに攻撃力アップによる、次に述べる副次的な別の効果がある。 具体的には、兵員が増えれば仮定により戦闘力(ゲームで言う「攻撃力」)もアップするので、いままで倒せなかった強い敵国の軍が倒せるようになる可能性が増える。また、攻撃力がアップすることにより、敵軍の殲滅(ゲームに例えるなら戦闘中の敵全員のHPを0にする事)に要する時間が減少するので、殲滅までに受けた自軍の損耗も減らせる。つまり自軍の被害は、戦闘終了までに受けた時間に応じて、比例的に増加する事がランチェスターの法則から導かれる(なお、ドラクエなどのRPGゲームでも同様の現象がある事が知られている)。 ともかく、兵員数の増加には、上述のように副次的な効果がある。 このため、よく言われる事として、兵員数の2倍への倍増は、その効果はけっして2倍ではなく、上述の副次効果により乗数的に効果が出るので、たとえば4倍~8倍くらいの効果になる場合もある(実際にどの程度の効果が出るかは、モデルの係数などによって変わる)。 こういった数学的な事が、近代ヨーロッパでは既に言われていたので、なので現実の世界史の戦争での用兵もそれに従い、その結果、なるべく兵力は分散させずに、兵力を拠点や作戦目標などに集中させる戦術が実際に好まれ、多くの戦場で採用された。 近代世界史におけるシベリア鉄道など鉄道による兵員輸送や軍需物資輸送などによって軍事力が向上するという理屈も、なぜ向上するのかという理由を根本的に考えれば、ランチェスターの法則のような考え方が前提になっているだろう。 ===== 解析例(微分積分) ===== では、実際にランチェスターの法則を微分積分的に解析してみよう。 ;ランチェスターの法則 :<math>{\mathrm{d} x \over \mathrm{d} t}= -\alpha y </math>     (1) :  :<math>{\mathrm{d} y \over \mathrm{d} t}= -\beta x </math>      (2) なお、自軍の兵数がx、敵軍の兵数がy、αとβは武器の性能を表す定数である。また、αとβは定数係数である。 数学的な注意として、まず、x、yはともに「関数」であり、「変数」は t (ティー)の1つだけである。xとyは、変数にtをもつ(「変数」ではなく)「関数」である。 :※ tの代わりにxまたはyのいずれか1つを「変数」とする事もできるが、その場合、変数にならなかった残り2つの文字は関数になる。たとえばもしxを変数として扱う場合、tとyは xの関数である 事になる。 :つまり、もしtを変数として扱うなら、けっしてxはyの変数ではない。なぜなら、時間tが与えられれば、yの値は t から一意的に決定するからである。だから、関数 yはこの場合、変数にはtだけをもつ。 :変数をtとした場合でも、答えの曲線をグラフ化してx-y平面上に描けば、x軸とy軸の平面グラフ上の曲線が描かれるので、あたかも「xがyの変数である」(誤解)かのように誤解しがちであるが(実際、変数変換によりxを変数とする事も可能であるが)、しかし、計算中の仮定により、この場合は t だけが変数である。 では、実際に式を解こう。まず、式(1)をもう一回、微分すると、 :<math>{\mathrm{d^2} x \over \mathrm{d} t^2}= -\alpha {\mathrm{d} y \over \mathrm{d} t} </math> になる。2項目の dy/dt に式(2)を代入すれば、 :<math>{\mathrm{d^2} x \over \mathrm{d} t^2}= -\alpha {\mathrm{d} y \over \mathrm{d} t} = -\alpha( -\beta x) = \alpha \beta x </math>    (2-1) となり、式中からyが消えて上式はxとtだけの式になる。 この事から、xは関数であり、xの変数はtだけである事が分かる。(実は数学的には証明をややインチキしており、そもそも、こういう仮定が無いと、常微分を出来ない。変数が2個以上の場合は「偏微分」という別の演算が必要になる。) 同様に式(2)についても、同様の演算操作により、式(2)を変形して関数yと変数tだけの式に置き換える事が出来る。 さて、 :<math>{\mathrm{d^2} x \over \mathrm{d} t^2} = \alpha \beta x </math>    (2-1) の右辺を移項して、 :<math>{\mathrm{d^2} x \over \mathrm{d} t^2} - \alpha \beta x = 0 </math>    (2-2) となる。 これは左辺の微分作用素を因数分解すると、 :<math>({\mathrm{d^2} \over \mathrm{d} t^2} - \alpha \beta) x = 0 </math>    (3-1) と書ける。 微分作用素を :<math>{\mathrm{d} \over \mathrm{d} t} - \alpha \beta = D </math>    (3-2) として作用素Dを定義すれば、式(3-1)を変形して、 :<math>(D^2 - \alpha \beta) x = 0 </math>    (3-3) と書ける。 ここで、中学校で習った因数分解の公式により :<math>(A^2 - B^2) = (A-B)(A+B) </math>    (3-4) であるので、この公式を式(3-4)に適用すれば、 :<math>(D - \sqrt{\alpha \beta}) (D + \sqrt{\alpha \beta}) x = 0 </math>    (3-5) のように式変形できる。 この事から、この方程式の解(一般解)は、 :<math>(D - \sqrt{\alpha \beta}) x = 0 </math>   (3-6) の解(特殊解の一つ)と、 :<math>(D + \sqrt{\alpha \beta}) x = 0 </math>   (3-7) の解(特殊解)を組み合わせたものになる事が分かる(本来なら証明が必要だろうが、省略する。興味があれば、大学2年の応用解析学の本を読め)。 (3-7)の解は、指数関数 :<math>x = C_0 e^{- \sqrt{\alpha \beta} t} </math> となる。(ただしC<sub>0</sub>は積分定数とする。) なお、eは自然対数の底(てい)である。高校3年の数学3で習うので、もし知らなければ教科書を買って調べよ。 指数関数 e<sup>t</sup> は見やすくするために、大学入学以降では exp(t) と書く場合もあり、その場合、上式は :<math>x = C_0 \exp (- \sqrt{\alpha \beta} t) </math> と書かれる。 同様に式(3-6)も解けて :<math>x = c_1 \exp (+ \sqrt{\alpha \beta} t) </math> となる。 この2つを足したモノが一般解なので、 :<math>x = C_0 \exp (- \sqrt{\alpha \beta} t) + c_1 \exp (+ \sqrt{\alpha \beta} t) </math>    (4-1) が一般解である。 しかし、読者には、これだけだと、なぜこれによって、兵数が倍増すると攻撃力が倍増するか等の諸性質や、そもそも解が増加するのか減少するのかさえも、分からない。 だが、微分方程式の初期値として、ある時点での兵数と、数時間後の(減少した)兵数を代入する事をして積分定数C0およびC1を決定してから、数値計算を行うと、ここから、「兵数が倍増した場合の勝率の指数的な増加」など前の節で述べたような性質が数値計算的にかつ経験的に導かれる場合が多い(初期値による)。 答えの式(4-1)だけを見ると、あたかも値が増加しそうに錯覚するが(指数関数の部分はマイナスにならないので)、しかし係数C0やC1の符号はプラスとは限らず、マイナスの数である場合もあるので、解全体としては値が減少してくのである。 このように、連立微分方程式は、解を解いただけでは、その性質が分かりづらい場合が多く、そのため、パソコンなどで数値計算によってグラフなどを書いて、その性質を予想する事が、研究では必要である。(そして、その予想を参考に、その予想を証明するのが数学者の仕事である。なお、さすがにランチェスターの式の性質はすでに数学者によって研究済みである。) なお、もしプログラミングが出来なくても、代替の方法として手間は掛かるが、表計算ソフトのエクセルで、実際に数値計算をしてグラフを何パターンか書いてみてシミュレーションする方法もある。 ともかく、このような連立微分方程式を、数値計算などでシミュレーションして性質を研究していく分野は、数学的には「力学系」といわれる分野である。物理の「力学」の分野でこういう計算例が多かったので、そういう名前がついているが、物理学の知識が無くても計算できる分野である。 軍事学に限らず、生物学の分野にも「力学系」の式はある。生物学で、動物などの個体数などをシミュレーションするのに連立微分方程式で「ロトカ=ヴォルテラの方程式」というのものが使われる場合があり、このロトカ=ヴォルトラ方程式とその派生も、「力学系」の分野のひとつとして有名である。(高校の生物でも、式計算はしないが、高校3年の生物2における生態分野で、類似の理論を習う。) なお、上記の一般解は、双曲線関数 sinh および cosh というものを使っても置き換える事が出来る。これは日本では大学の理科系の学部の1年で習う。 三角関数のsinやcosとは、双曲線関数は異なるので、混同しないように注意のこと。 余談だが、2020年のコロナ問題で話題・有名になったSIR方程式という感染症モデルの常微分方程式も、力学系に分類されるような式であろう。当然、上述のように力学系の微分方程式の数値計算シミュレーションにはコンピュータが必要である。(なお、評論家の中には困ったことに、「SIR方程式はパソコンが無くても研究できる時代遅れの式」(そして彼らは「だから予想値と実測値の誤差が大きい」と主張している)と言っている、頭の悪い有名評論家がいる(力学系の研究ではパソコンによる数値計算が必須なので、前提が事実に反する)。しかも更に困った事に、本来ならツッコミを入れるべき医学者やら生物学者が数学オンチなので、そういう批判者たちの前提の間違いにツッコミを入れない。残念ながら日本のマスメディアや論壇では、こういう馬鹿評論家でも、学歴で東大とか京大とか卒業していると、困った事に世間では彼らが「知識人」として通用してしまうのである。きっと「痴識人」の間違いであろう。医学者や生物学者も、知識不足で頼りない。)大学などの数学者や物理学者も、まったく評論家の数学的な間違いにツッコミを入れないので、残念ながら日本の数理科学の研究水準は低いといわざるを得ない。東大などの提唱する分離融合や異分野融合などが口先だけである証拠でもある。 またなお、微分積分に限らず、軍事学や経営学などの分野に数学や統計学などを応用する分野の事を「オペレーションズ・リサーチ」(略称は「OR」(オー・アール))という。第二次世界大戦中にアメリカ軍がこういった数理的な研究手法を始めた。統計学や確率論、線形計画法などがよく、オペレーションズ・リサーチの手法として用いられる。 一方、「力学系」と言った場合、「力学系」は微分方程式(または差分方程式)で立てられたモデルの分析のことを言うので、「オペレーションズ・リサーチ」とはニュアンスがやや異なる。 ;吟味の必要性 軍事学の数理モデルに限らず、経済学などを含む何らかの社会科学の数理モデルを現実の問題に適用する場合には、注意しなければならない事として、そのモデルが、これから適応しようとしている事例の性質を果たして本当によく反映できているか、自己批判的かつ内省的に注意深く観察しながら、限定的に適用しなければならない。このように、観察しながら注意深く限定的にデモル適用をすることを、俗に社会科学などの分野では「吟味」(ぎんみ)という。数理モデルの実用の際には、吟味が必要である。 しかし残念ながら、社会科学やその応用では、しばしば吟味は省略されることが、実業界やマスメディアなどで まかり通っている場合が往々にある。 たとえば2001年~2005年ころのアメリカ金融界は金融工学のブラック・ジョ-ルズ方程式に基づく仕組みなどを喧伝していたが、しかし米国金融がモデルの吟味を怠ったせいで杜撰な貸付をしたせいで、貸し金の回収不足になりサブプライム問題を起こすなど、杜撰な吟味不足によって世界経済に迷惑を及ぼす例もあった。 ===== 実際の戦闘力 ===== 上述のランチェスター法則は、あくまで参考程度の簡略的なモデルであり、実際の戦闘では適用の不可能・困難な場合も多いだろう。 なので、もし戦闘力をさらに詳細に分析するならば、兵員の規律や士気などの無形的要素を組み合わせなければならない。つまり、火力部隊の戦闘力は火砲とそれを操作する射撃要員の物量という有形的要素と、砲兵火力を発揮するための射撃の速度、精度、士気から判断される無形的要素から導き出すことができる。したがって100名の統制がとれていない武装した群衆と50名の規律ある戦闘部隊の間には戦闘員としての錬度、団結、そして士気という無形的要素に由来する戦闘力の格差が存在していると指摘できる。 また、戦闘は戦力の戦闘力の合計によってのみ左右されるのではなく、戦闘力を戦場に配置する戦闘陣によって規定される。 ==== 戦闘陣形 ==== 戦闘陣(Battle formation)は戦力が戦闘において連携を保つために形成する複数の部隊の一定の態勢である。戦力は彼我との位置関係から与えられる損害や得られる戦果が変化しうる。そもそも部隊は敵の方向に対して最大の戦闘力を発揮できるように部隊の正面を方向付ける。その基本となる戦闘陣形として第一に横陣がある。横陣は敵に対して正面を広く縦深を浅くなるように選択した隊形であり、特に火力を発揮するのに適した陣形である。この陣形の戦術的な特徴は部隊の脆弱な左右両側面と背面に敵が回りにくくすることを防ぐことにある。古代ギリシアのマケドニア軍で採用されていた戦闘陣は歩兵部隊の横陣の両翼に騎兵部隊を配置することで、中央の歩兵部隊の両翼の弱点を補っていた。また基本となる戦闘陣形には縦陣もある。これは正面に対して狭く縦深が深くなるようにした陣形であり、機動力を発揮するのに適した陣形である。この陣形には部隊の迅速な行軍や機動を容易にする特徴がある。速やかな戦場機動や中央突破を狙った突撃で有効であり、トラファルガーの海戦でイギリス軍がフランス軍の戦列に対する攻撃の際に選択されている。さらに斜行陣、鈎形陣、円陣、弾丸陣などの陣形があり、斜行陣は右翼または左翼の片方に兵力を集中的に配置した戦闘陣であり、また鈎形陣は片方の翼を横方向に配置した戦闘陣であり、両方ともに劣勢である場合に用いる戦闘陣である。円陣は全方向に対して部隊を配置する円形の戦闘陣であり、部隊の宿営や集結などに用いられる。弾丸陣は矢印のような形状の戦闘陣であり、先端に機甲部隊を配置して突撃などに用いられる。このような多様な戦闘陣は地形や敵情、彼我の戦闘力の格差などを考慮した上で選択されなければならない。 === 戦術の基本作業 === 戦術的知能の中核とは問題解決能力であり、これは自らが置かれている状況がどのようなものであるかという状況を判断する問題、我が選択することが可能な選択肢の中でどれが最善であるか意志を決定する問題、そして下された決定を実行するために作戦方針を作成する問題の三つに問題を区分することができる。 ==== 状況判断 ==== 状況判断の問題とは任務分析、地形判断、敵情判断を起点とし、敵の可能行動の列挙、味方の行動方針の列挙、各行動の戦術的分析、そして各々の分析の総合という思考過程に基づいて解決される。任務分析とは自分に与えられた任務の背景や本質を分析して達成すべき目標事項を明確化し、複数ある場合にはそれぞれの目標の優先順位を定める問題である。地形判断とは自分が置かれている地理的環境がどのようなものかを分析することである。この際に軍事地理学の知識を援用して戦闘地域を構成する地理的特性を解釈し、重要な地形やそこに至るための接近経路を明らかにする。敵情判断とは敵部隊の配置、装備や補給の状況、後方連絡線の方向などを分析し、敵がどのような戦闘行動を将来実施するかを検討することである。敵情判断では敵が行いうる全ての戦闘行動の全てを列挙し、蓋然性の観点からそれら行動の我にとっての効果や危険を明らかにする。 ==== 意思決定 ==== 意思決定とは状況判断に基づいて我の行動方針を決定することであり、可能的な状況について個々に分析し、それら分析を総合し、決心を下すという過程から成り立つ。実際に発生する可能性がある状況は彼我にとって実施可能な戦闘行動の組合せの数だけ存在する。これらの状況について個々に分析を加えることで個々の戦闘行動によって生じうる結果がどのようなものであるかを検討する。そして総合の過程でそれら分析によって得られた個々の戦闘行動を相互に比較しながら我にとって最も危険性の高い事態がどのような事態であるかを明らかにすることが可能となる。そして任務を達成するためにどのような戦闘行動を選択しなければならないかを限定することができる。最後の決心とは少数に限定したいくつかの作戦方針の中から一つを、その選択肢の危険性と不確実性を鑑みた上で決定することである。このようにして決心が確立されれば、作戦計画の策定作業に移ることができる。 ==== 作戦計画 ==== 作戦計画(Operations Plan, OPLAN)とは決心によって定められた作戦方針に基づいて策定される戦力運用の計画である。作戦計画とは作戦の目標、目標を達成するために採用される行動の方針、そしてその方針に従って作戦に参加する各部隊の任務と個々の行動計画から成立しており、指揮官には戦術的思考に基づいて作戦計画の骨子を作成する技能が求められる。作戦は計画、実行、評価の三つの段階を繰り返しながら進め、常に目的と手段が結合するように配慮しなければならない。作戦計画の立案の際に把握するべき個別の戦況を構成する要素は任務、敵、地形と気象、使用可能な部隊と支援、そして民事的考慮の頭文字を取ったMETT-TC(Mission, Enemy, Terrain and weather, Troop and support available, and Civil considerations)で端的に要約される。これら諸要素を踏まえた上で作戦の立案には次のような事柄が含まれなければならない。第一に作戦目標を具体的な軍事的状況として定義することである。攻勢作戦で敵の拠点を攻略する方針が示された場合、その具体的な達成条件は何を意味するかが定義されなければならず、例えば攻略目標の拠点やそれを守備する敵がどのような状態になれば攻略と見なすかを明確化する。その作戦目標によって作戦は攻勢作戦と防勢作戦、また偵察作戦、行軍作戦、治安作戦などの作戦の形態に分類することができる。 == 攻勢作戦 == 攻勢作戦とは敵を積極的に求めながらこれを撃滅しようとする作戦の形式であり、遭遇や複数に渡る攻撃から成り立っている作戦である。攻勢作戦では敵に対して決定的打撃を加えることを可能とする作戦であり、これは戦術の原則のひとつである主導の原則に基づけば常に実施を模索するべき作戦である。しかし攻勢作戦はしばしば戦力の経済的な使用を指示する節約の原則に反するほどに戦闘力を減耗させる危険性がある。攻勢作戦を実施するべき状況の例としては、戦力投射作戦を実施する状況、敵に対する我の戦闘力の圧倒的な優勢を確保している状況、戦略的な守勢において局地的な反撃を実施する必要がある状況などがある。ここでは攻勢作戦の基本的な形態とその指導の要領、そして作戦計画を立案する上での考慮事項について述べる。 === 攻勢作戦の形態 === 攻勢作戦で中心となる戦術的な行動は接敵機動、攻撃、戦果拡張、追撃の四つの段階がある。接敵機動とは戦闘を行うために敵との接触を試みる機動であり、彼我の接敵機動で生じる戦闘は遭遇戦と言う。攻撃とは攻勢作戦において敵を撃破または撃滅、地形の攻略または確保、もしくはそれら両方を行う攻勢作戦の戦闘行動である。攻撃はさらに戦闘行動の方式としては奇襲的な攻撃である伏撃、防御の態勢から攻撃に転換する逆襲、準備された防御に対する強襲、敵を有利な地点におびき出す誘致、敵に誤った状況を認識させる欺瞞がある。そして機動の方式から一翼もしくは両翼を駆使して敵の二正面以上を同時に攻撃する包囲、敵の正面を突破して分断する突撃、そして敵と接触せずに敵の後方や側面に回りこむことで敵に退却を強制する迂回に分けることができる。戦果拡張とは組織的な戦闘力を失った敵に対して攻撃の段階から継続的に行われる攻撃であり、攻撃によって得られた戦果を最大化する戦闘行動である。追撃とは退却する敵をさらに追尾して打撃を加える行動であり、戦場に敵を捕捉して追撃を加える方式と、戦場外に退却した敵に対する追撃の方式がある。 ====攻撃==== ====追撃==== === 攻勢作戦の指導 === 攻勢作戦を指導する際に攻撃発起点、前進軸、攻撃目標、前進限界、集結地点を調整することで行われる。攻撃発起点とは各部隊が攻撃のための前進を開始する際に出発する地点である。理想として敵に対して位置や行動が隠匿し、また戦力を防護することができることが望ましい。自然地形で攻撃発起のための適切な地形を望むことができないならば、攻撃陣地を準備することも手段に含まれる。前進軸は各攻撃部隊が前進の際に依拠する一般的な方向あり、戦場における計画的な機動を調整するものであり、状況図では矢印によって表示される。攻撃目標とは我の戦闘力を集中させる目標であり、敵の部隊または特定の地形がその対象となる。ただし地形が攻撃目標であるのに対して敵部隊を攻撃目標とする場合には攻撃目標を捕捉することが難しくなる。そして攻撃前進の終点は前進限界によって定められる。前進限界は攻撃部隊が攻撃前進を停止する段階を計画的に決定するものである。前進限界に到達した部隊は識別が容易な集結地点もしくは予備的に設定された代替集結地点に再集結させる。 === 攻勢作戦の計画 === 攻勢作戦を計画する上での着眼としては奇襲と集中、そして節度(Tempo)と大胆(Audacity)が重要となる。つまり、敵が予測した事態を回避し、戦力を集中させ、迅速な節度を以って大胆に前進させることが効果的な攻勢作戦を立案する上での基礎となる。そして攻勢作戦を状況に適合させるためにはまず情報作戦に基づいて戦場の状況を把握することが求められる。敵情については配置、装備、戦闘力、弱点、攻撃すべき目標、集結点、敵の後方連絡線、離隔した支援戦力、対空部隊、電子戦部隊、敵の情報網などであり、地形については地形の形状、気象の影響、攻撃に使用可能な経路の配置と数、攻撃の障害となる森林や河川などの地形について把握する必要がある。これらの状況を踏まえた上で与えられた任務とそれに対応する作戦目標、指揮官の意図、敵の配置や戦闘力などの敵情、攻撃目標、作戦開始時刻、各部隊の機動の方向性、攻撃のための戦闘陣、作戦の危険性、そして代替的な作戦計画を準備する。作戦が開始されれば、指揮官は我の戦闘力の消耗を確認しながら攻勢極限点を見極め、彼我の戦闘力の優劣が逆転しないよう注意する。一度攻勢極限点に到達したと判断されれば、指揮官は防御へ転換することを決断し、攻撃によって得られた戦果を保存するよう努めなければならない。 == 防勢作戦 == 防勢作戦とは時間的猶予の確保、戦力の経済的使用、または別の攻勢作戦を支援するために、敵の攻勢作戦を待ち受けてこれを破砕する作戦である。防勢作戦は戦力の劣勢を補うことを可能とする作戦であり、節約の原則に立脚した作戦方針である。しかし防勢作戦のみによって目標を達成することが困難であり、また戦闘の主導権を失う危険を伴う。防勢作戦を実施する状況の例としては、決定的に重要な地形の確保を維持しなければならない状況、敵による奇襲への対処、敵に対して我の戦闘力が総体的に劣勢である状況などがある。ここでは防勢作戦の形態、指導、そして作戦計画の立案について概説する。 === 防勢作戦の形態 === 防勢作戦で中心となる戦術的な行動には防御と後退行動がある。さらに防御は陣地防御と機動防御に分けられる。陣地防御とは逆襲を加えることを主眼に置いたものではなく、構築した陣地や要塞によって敵の攻撃を阻止する形式の防御である。防御では敵の攻撃を阻止し、また緊要地形を保全することを狙った横陣や円陣の防御陣地が準備され、して防御陣地の機能を強化することに主たる努力が集中されるために、後方に拘置される予備の戦力は逆襲ではなく防御戦闘で減耗した損害を補填するために使用される。また機動防御とは陣地に頼るのではなく、敵の攻撃に対して決定的な逆襲を加える防御の形式である。機動防御では敵の後方連絡線を捕捉することを可能とするように陣地の構築や打撃部隊の配備を準備することに労力を費やす。そして後退行動とは敵との距離を持つように機動する防御戦闘の方法である。後退行動では敵との接触を断つ離脱、敵の前進速度を低下させる遅滞、そして敵との距離を拡大させる離隔の三段階を組織的な連携の下で背面を敵に暴露する危険を最小限に抑える。 ==== 防御 ==== ==== 退却 ==== === 防勢作戦の指導 === 防勢作戦の指導では戦闘移行線、主戦場の設定、防御陣地、火力支援の調整、直接射撃の統制、退路を調整することで行われる。戦闘移行線とは戦力を戦闘態勢に移行させる判断を下す地理的な基準となる線である。戦闘移行線は主たる防御拠点の前方において設定される。戦闘移行線と防御拠点の間は主戦場であり、敵の攻撃を排除するために戦闘力を発揮する領域である。防御陣地とは敵の侵入と前進を阻む機能を持った構築物である。防勢作戦における火力支援の調整と直接射撃の統制とは火力の最適な配分を意味する。これはそれぞれの主戦場に対する射撃のために各種装備を配置する地点を決めることであり、またそれぞれの射撃がどの地域に責任を負うのかを明確に示すことである。そして退路を調整する際には戦闘を離脱した後に収容を実施する機能も備えた二次的な防御陣地との間の連絡線を指定しておく。 === 防勢作戦の計画 === 防勢作戦は通常において防御戦闘の計画的準備によって遂行される。しかし作戦行動は主導の原則に従って静態的な行動ばかりでなく動態的な行動が必要であり、防勢作戦の作戦方針を採用していたとしても敵の攻撃を排除した後に逆襲に転換することが検討されなければならない。その原則を踏まえた上で防勢作戦の計画にはいくつかの情報が必要である。敵の戦闘力や集結地点などの配置だけでなく、どの攻撃目標を選択するのか、そしてそれに対応する接近経路、攻撃方法がどのような状態であるのかを研究しなければならない。そのためには敵が慣習的にどのような作戦行動を選択しているかを分析する必要もある。例えば空挺部隊を使用した攻勢作戦に対する防勢作戦の場合では、陣地防御ではなく機動防御を準備しなければならない。なぜならば陣地防御とは固定された攻撃目標に対して接近する際に必ず地上において進路を妨げることができなければ有効ではない。空挺部隊による攻撃に対しては防空戦闘と敵部隊が戦闘展開してから迅速で組織的な逆襲を加えることが求められるのである。また幅広い正面に渡る正面攻撃に対する防御では複数の防御陣地によって組織化された陣地防御による攻撃の阻止と予備戦力による逆襲を準備することが必要である。 == 戦術用語 == *'''圧迫''' - 武力や権威で押さえつけること。 *'''隠蔽''' - 物事、特に機密事項となる軍事基地や新兵器などを隠すこと。 *'''迂回''' - ある場所を避けて、遠回りすること。 *'''運動''' - *'''{{Ruby|掩蔽|えんぺい}}''' - *'''会戦''' - 大規模な戦力を互いに準備し、行う戦闘のこと。 *'''内戦作戦''' - 敵軍に包囲される位置で作戦を展開すること。 *'''外線作戦''' - 敵軍を包囲する位置で作戦を展開すること。 *'''監視''' - 敵軍の行動を監視すること。 *'''機動''' - *'''逆襲''' - *'''持久戦''' - 自軍を持ち堪えさせることを目的とした戦闘のこと。 *'''警戒''' - *'''撃破''' - *'''決心''' - *'''決戦''' - *'''牽制''' - 敵軍を武力や兵数などで圧倒し、敵軍の行動の自由を奪うこと。 *'''後衛''' - *'''行軍''' - *'''攻撃極限点''' - 攻撃によって得られる優位の限界のこと。[[w:攻撃の限界点|攻撃の限界点]]とも。 *'''攻勢''' - 敵軍に対して攻撃すること。 *'''後方支援''' - 砲兵、航空機などで後方から前線を支援すること。 *'''作戦''' - *'''作戦目標''' - *'''指揮''' - *'''支隊''' - *'''遮蔽''' - *'''集結''' - *'''集中''' - *'''重心''' - 部隊を1つの地点に集結させ、圧倒的物量差で敵に攻撃すること。 *'''状況判断''' - *'''助攻''' - *陣地 *前衛 *戦果 *戦術 *戦場 *前哨 *戦線 *戦闘 *戦闘力 *遭遇戦 *側衛 *退却 *地形 *諜報 *追撃 *'''偵察''' - 敵軍、特に野営地などの状況を把握し、敵軍の兵数などを事前に知る為の行動のこと。 *展開 *突破 *背後連絡線 *兵站 *編制 *包囲 *防御 *防勢 *本攻 *摩擦 *命令 *陽動 *抑止 *連絡 == 脚注 == <references/> == 参考文献 == 戦術学の文献はそれほど流通していないために入手することは非常に難しい。一般に海外の戦術学の文献が入手しやすく、特に米陸軍省が一般公開している野戦教範(Field Manual)が研究を行う上では参考となる。また国内においては戦前に流通していた軍学校の教育や試験で使用する戦術学の教範、参考書、または問題集があり、それらを入手して参照することもできる。しかしながら、これらの教範類も一般的に入手することが難しい場合が多い。戦後に自衛隊で使用されている教範類は一般公開されていないものの、自衛隊関係者により発表された閲覧可能な論文を収録した論文集がある。例えば陸上自衛隊の幹部で構成された陸戦学会から出されている『陸戦研究』は国立国会図書館等で閲覧することが可能な戦術研究である。以下では主に書籍に限定した上で戦術研究の上で参考となる研究について解題を加えたものである。 *防衛大学校・防衛学研究会編『軍事学入門』(かや書房、2000年) :軍事学を概説した入門書であり、第3章の現代軍事力の態様は戦術研究の上で参考となる。 *松村劭『バトル・シミュレーション 戦術と指揮 命令の与え方・集団の動かし方』(文藝春秋、2005年) :戦術理論の基礎的事項を要約し、また答案を付与した練習問題が含まれている。 *高山信武『陸軍大学校の戦略・戦術教育』(芙蓉書房出版) :陸軍大学校での講義と戦術学の口頭試問の記録が含まれている。 *Field Manual No. 3-90, Tactics, Headquarters Department of the Army, 2001. :米陸軍で使用されている戦術学の教範類であり、理論的解説だけでなく戦史に基づいた解説も含まれている。本項目の執筆で最も参照した参考文献。 *Field Manual No. 100-5, Operations, Department of the Army, 1993. :作戦の基礎、攻勢作戦、防勢作戦について網羅的に概説した米陸軍の教範であり、理論的説明が豊富である。 {{stub}} [[Category:軍事学|せんしゆつかくにゆうもん]] m6abjphx0j396xcz4m6isud96s8fqjo 205546 205545 2022-07-19T20:41:41Z 某編集者 69349 /* 序論 */ wikitext text/x-wiki *[[社会科学]]>[[軍事学]]>[[戦術学]]>'''戦術学入門''' [[画像:Battle of Austerlitz - Situation at 0900, 2 December 1805.png|300px|thumb|right|地形図と部隊符号から構成されるアウステルリッツ会戦の状況図である。戦闘で生じている全ての事象が戦術的に重要であるわけではない。戦術学では状況図のように現実の複雑な戦況を概念化し直し、戦場の空間的、時間的そして戦力的要素の三つを視覚的に把握することで、何が重要な情報であるかを取捨選択する。]] == 序論 == 戦術(Tactics)とは戦闘において部隊などを効果的に運用する技術・科学である。[[軍事学]]において戦術学は戦闘を認識し、解釈し、そして判断するために必要な理論的枠組みを備え、また戦闘において勝利を獲得するために戦力を配置し、戦闘力を最大化し、戦闘行動を指揮する上で不可欠な実践的役割を担っている。ただし戦術は戦略の下位において実践される領域として区別されている。つまり戦略とは作戦部隊を有利な条件で戦闘が実施できるように全体的な視点から部隊を指導する技術・科学であり、戦術はその戦略に沿って戦闘で勝利する技術・科学である。したがって、戦術学の固有の問題とは戦争の指導とは別個に、戦闘において戦力を活用することにある。 戦闘において部隊を戦術的に運用することの意義は過去の戦史で示されている。ナポレオン戦争においてアウステルリッツ会戦を概観すると、戦力で劣勢なナポレオンが敵の攻撃に対して[[防御 (軍事)|防御]]戦闘と遅滞行動を組み合わせたことが勝利をもたらしたことが分かる。戦術学において戦力の優劣は必ずしも戦闘の勝敗に直結するわけではない。戦力だけではなく、任務、地形、敵情などから戦闘状況に適した戦術を選択することが不可欠である。例えば戦術学では学習者を部隊指揮官と想定して次のような事柄を問題とする。「与えられた任務をどのように理解するのか」、「どの地域が戦闘において緊要であるのか」、「敵は次にどのような戦闘行動に出るのか」、「現状で我が方の戦力をどのように配置するべきか」、「敵をどのような要領で攻撃するべきか」、「圧倒的劣勢において退却と防御のどちらを選択するべきか」、「歩兵部隊と戦車部隊の連携はどのように指導するのか」、「自分の作戦計画をどの部下に何をどのように伝えるべきか」これらの問題は全て戦術学の重大な問題であり、理論的に導き出すことが求められる。 戦術学はいくつかの部門に細分化することができる。まず理論的に単純化された基礎的問題を扱う初等戦術とより現実的かつ複雑な戦況に対処する応用的問題を扱う高等戦術の二つがある。また単一兵科の小部隊を指揮する小戦術から複合兵科の大部隊を指揮する大戦術に分けることもありうる。さらには戦闘空間の特性の相違から陸上戦力を運用する戦術、海上戦力を運用する戦術、航空戦力を運用する戦術などに分類することも可能である。事前の準備の程度から計画戦術と応急戦術の研究に分けることもなされる。これらの細分化に踏み込むことは『戦術学入門』である本項目では重要視しない。以下では戦術学の基礎的な理論について概説することに力点を置いた上で、次のような章立てで進んでいく。まず戦術の原理、攻勢作戦、防勢作戦の三つに内容を大別して説明していく。これらの概説を通じて本項目では学習者の戦術学の基礎的な理解に貢献することを狙っている。 == 戦術の原理 == 戦術とは戦闘に戦力を適用することである。その具体的な適用の方法は実践的な訓練や経験によってのみ獲得される技術的側面を含んでいるものの、体系的な教育や思考によって習得される科学的側面も備えている。したがって、戦術問題は原則としていくつかの原則と戦術学の概念に基づけば論理的思考によって解答を導き出すことが可能である。ここでは戦術学の原理、基本概念、そして戦術的思考のモデルについて概説する。 === 戦いの原理 === あらゆる戦闘に勝利するために一般的に適用することが可能な戦術の原理とはどのようなものであるのか。例えばそれは「我の戦力の主力を以って、敵の個々の戦力と戦闘するように機動すること」のように要約された、いくつかの戦いの原理(Principles of war)から明らかにすることができる。これは戦闘を計画または指導する際に常に準拠するべき原則であり、次のような諸原則が知られている。 *目標の原則 *統一の原則 *主導の原則 *集中の原則 *奇襲の原則 *機動の原則 *節約の原則 *簡明の原則 *警戒の原則 行動の目的を明確にする目標の原則、指揮系統を統一する統一の原則、先制して状況の支配権を獲得する主導の原則、敵の弱点に対して味方の戦力を集中する集中の原則、敵の意外性を突いて戦う奇襲の原則、移動によって我の優位な位置関係を維持する機動の原則、無駄な戦力を有効活用する経済の原則、目的や行動方針が大胆かつ単純である簡明の原則、敵の奇襲を防ぐために注意する警戒の原則、以上が各原則の要旨である。<ref>米陸軍では物量的な戦力の優位性を保持する物量の原則、旧ソ連陸軍では敵を完全に撃滅する殲滅の原則などが原則として加えられる場合もある。</ref> [[File:Battle of salamis.png|300px|thumb|right|サラミス沖海戦の状況図]] 戦術研究においてこれら諸原則の重要性が実証されている。ここでは一例としてサラミスの海戦を取り上げながら、諸原則の意義を確認する。紀元前486年9月20日にテミストクレスが指揮するギリシア軍とクルセルクスが指揮するペルシア軍による、ギリシア半島のサラミス島沖でサラミスの海戦が発生した。劣勢な戦力しか持たないテミストクレスはサラミス島を防衛するために防勢サラミス島沖の狭隘な海峡という地理的環境を活用することを考案した。つまり、ペルシア軍の大規模な戦力を狭隘な海峡に誘致することでペルシア軍を脆弱な状態に追い込み、風浪の状況が時間の経過でギリシア軍に有利に変化するのに乗じて、攻撃に転換する戦術を実践したのである。結果としてペルシア軍は地形や海象に起因する隊列の混乱、そしてギリシア軍の反転攻勢の中央突破に対処することができず、敗北することとなった。サラミス島を防衛するという目標の明確化、部隊の意思疎通の統一化、主導権の計画的な回復、戦力の一点集中、奇襲的な反撃、敵を分断する機動的な攻撃、戦機が到来するまでの戦力の温存、作戦方針の簡潔さ、そして敵の行動に対する警戒、このような適切な原則の適用によってテミストクレスは勝利を確実なものとすることができたと戦術的には考えられる。 === 戦術の基礎概念 === 戦術の基礎概念の最も初歩的な範疇は戦力が発揮する戦闘の機能、戦力が備えている戦闘力、戦力の展開に関連する戦闘陣の三つに大別に分けることができる。 ==== 戦闘 ==== 戦闘とは戦争における本来的な軍事行動であり、我に対抗して行動する敵を撃滅することを目的とした闘争の状態である。そのため戦闘において彼我の戦力はそれぞれの戦闘力を最大限に敵に対して発揮できるよう行動する。しかし、敵を撃滅するという一般的な戦闘の目的は個々の状況に応じて敵の部分的な撃退や一地点の占領として解釈される場合もある。そのため戦闘の勝敗は理論的には彼我の損害比で表現されるが、彼我の戦闘部隊の任務が達成されたかどうかによっても表現される。この戦闘を遂行するための戦力の機能は五つの項目に整理することができる。 *発見の機能 *拘束の機能 *制圧もしくは攪乱の機能 *機動の機能 *占領の機能 偵察や警戒によって敵情を明らかにする発見の機能、接敵機動と接触を維持することによって敵の行動の自由を制限する拘束の機能、砲兵火力などによって敵の組織的行動を妨げる制圧もしくは攪乱の機能、戦場において敵の弱点を圧迫するように戦力を選択的に再配置する機動の機能、そして敵に対して決定的な攻撃を加える打撃もしくは占領の機能、以上の五つである。これら機能を発揮するための戦力の能力を戦闘力と言う。 ==== 戦闘力 ==== ===== ランチェスターの法則 ===== 戦闘力(Capacity of battle)とは各部隊が戦闘を遂行する能力を指す概念である。戦闘力の優劣によって戦闘を実施する部隊の戦果の原因が説明され、また戦果の予測も左右される。戦闘力を具体的にどのような要素から判断するのかについては古典的な分析として、まず物的な局面に注目するものがある。 兵員と装備の物量が大きければ大きいほど戦闘力は向上するものであり、例えば100名の兵員から組織される部隊は50名から組織される部隊に対して2倍の戦闘力を有しているとする分析である。 このような基本的モデルとしてランチェスターの数式モデルなどが提案されており、兵棋演習の戦果や損害の計算法のひとつとして採用されている。 「ランチェスターの法則」の数式モデルは、幾つかの種類があるが、そのうち有名なモデルの内容は、下記の2つの式の連立微分方位定式として表される。 ;ランチェスターの法則 :<math>{\mathrm{d} x \over \mathrm{d} t}= -\alpha y </math>     (1) :  :<math>{\mathrm{d} y \over \mathrm{d} t}= -\beta x </math>      (2) という連立方程式である。 なお、自軍の兵数がx、敵軍の兵数がy、αとβは武器の性能を表す定数である。また、αとβは計算上の都合により定数係数であるとしてモデルを立てる(そう仮定しないと、解析的に手計算で式を解けない。または、もし変数係数だと人間による式計算では解析が著しく困難になるので、非入門的であり、非実用的になる)。 このように微分方程式で表現されるので、大学の微分方程式などの教科書でも紹介されることもある。高校参考書『モノグラフ』の『微分方程式』に書いてある計算問題も、この式の場合である。 式を見れば、たしかに兵員が多いほど、相手軍の損傷が大きくなるような立式になっている事が分かるであろう。 上式を式変形で解いて解析解を得るのは数学的には可能である事が知られているが、しかし解析解から実用的な結果を得るための計算に手間が掛かるので、本wikiではまず、解析をしないで、類似の簡易モデルを考えよう(解析例は後の章で後述する)。 その類似の簡易モデルは、現代ではゲームのRPG(ドラゴンクエストやファイナルファンタジーのようなジャンル)における戦闘のダメージ計算に例えればよい。 たとえばドラクエ3のようなパーティ戦闘システムのあるゲームの場合、パーティの人数が増えると、単に敵の攻撃に人数分だけ耐えられるようになるだけでなく、さらに1ターンあたりに敵に与えるダメージ量も増える。よって、より短時間でスライムの集団などを倒せるので、1戦あたりの戦闘が早く終わり、戦闘終了までに自パーティの受けるダメージ被害も少なくなる。 たとえば、ドラクエ3に例えよう。 勇者の1人旅と、勇者・武闘家・武闘家・武闘家の4人パーティを比較しよう。 プレイヤーキャラが草原フィールド上を歩いていたら、ガイコツが1体出現したとする。(計算の単純化のため、戦闘で出現するモンスターは毎回、必ずガイコツ1体だけだとする。なお、実際のドラクエ3には「ガイコツ」は出現しない。) 計算の単純化のため、ガイコツはHPが10だとしよう。計算の単純化のため、勇者も武闘家も、攻撃力は同じで1人あたり2だとする。よって、1回の攻撃でダメージ2を敵に与えるとしよう。 また、勇者と武闘家のHPは両方とも10だとしよう。計算の単純化のため、つねに勇者たちの攻撃が先手で、敵の攻撃は後攻だとしよう。 ガイコツの攻撃を受けたら、必ず勇者または武闘家の1人がダメージ1を受けるとしよう。 勇者1人旅の場合、ガイコツ1体を倒すのに合計5ターン要する。なので、勇者は戦闘終了までに4ダメージを受ける。(最後の5ターン目はガイコツからの攻撃を受けないので、合計4ダメージになる。) 一方、勇・武・武・武の4人パーティなら、1ターンあたり8ダメージ(=2×4)なので、2ターンでガイコツ1体を倒せる。なので、一戦あたりの被害ダメージは合計1ダメージである(2ターン目はダメージを受けない)。 さて、勇・武・武・武の4人パーティは、HPの合計値が40である(40=4×10)。一方、勇者1人旅は、HPの合計値が10である。 なので、単純計算で勇・武・武・武の4人パーティなら、ガイコツ1体を倒すことを 40÷2=20で、20回可能である。(実際には、最後のほうで勇者か武闘家の誰かがHPゼロになって戦闘不能になるので、こなせる戦闘回数は20よりかは減る。) 一方、勇者1人旅では、計算 10÷4=2あまり2 により、たったの2~3回しか、ガイコツを倒せない。 仮に2~3をパーティ人数分で4倍しても、8~12回にしかならず、到底20回には及ばない。 なお、2~3を7倍すると、14~21になり、ようやく20に到達する。 つまり、パーティを4倍する事により、4倍の効果どころか少なくとも7倍の効果が現れている。 4と7を対数関数で計算すれば、 :<math>\log_4 7 = 1.40367 </math> なので、約1.4乗で人数の効果が指数的に効いてきたことになる。 このようにランチェスターの法則により、人数の効果は、けっして1次関数的な1乗の比例ではなく、1次関数を超えた乗数の効果が出てくる。 まさに、上述のドラクエ的なシミュレーション例が、ランチェスターの法則そのものである。 毎回対数計算をするのは面倒なので、やや不正確だが簡易的に「1.5乗で効いてくる」と近似すれば計算しやすいだろう。なお、平方根が0.5乗である。 つまり、ある代数値 aについて、 :<math>a^{1.5} = a \sqrt{a} </math> である。 もちろん上記のドラクエ3例はあくまでゲームの話であり、実際の戦争には、けっして、そのまま単純に適用してはならない。 だが、軍事は置いておくとして「ランチェスターの法則」の数理的な性質だけを調べるための例としては、上記のドラクエ例でも正しい。 もちろん、実際の戦闘や戦争は、そもそも数理モデルだけでは決して済まない。現実の戦争は、そんなに単純ではない。上記のランチェスターの法則は、あくまで参考程度のものである。 しかし、そもそも社会科学におけるモデルとは、そのように参考程度のものに過ぎない。これは軍事学に限らず、経済学などにおける数式でも同様である。 さて、ランチェスターの法則から導ける結果として、もし兵員数が2倍になると、その効果は、けっして単に敵の2連戦に耐えられるような長期戦の対応だけでなく、さらに攻撃力アップによる、次に述べる副次的な別の効果がある。 具体的には、兵員が増えれば仮定により戦闘力(ゲームで言う「攻撃力」)もアップするので、いままで倒せなかった強い敵国の軍が倒せるようになる可能性が増える。また、攻撃力がアップすることにより、敵軍の殲滅(ゲームに例えるなら戦闘中の敵全員のHPを0にする事)に要する時間が減少するので、殲滅までに受けた自軍の損耗も減らせる。つまり自軍の被害は、戦闘終了までに受けた時間に応じて、比例的に増加する事がランチェスターの法則から導かれる(なお、ドラクエなどのRPGゲームでも同様の現象がある事が知られている)。 ともかく、兵員数の増加には、上述のように副次的な効果がある。 このため、よく言われる事として、兵員数の2倍への倍増は、その効果はけっして2倍ではなく、上述の副次効果により乗数的に効果が出るので、たとえば4倍~8倍くらいの効果になる場合もある(実際にどの程度の効果が出るかは、モデルの係数などによって変わる)。 こういった数学的な事が、近代ヨーロッパでは既に言われていたので、なので現実の世界史の戦争での用兵もそれに従い、その結果、なるべく兵力は分散させずに、兵力を拠点や作戦目標などに集中させる戦術が実際に好まれ、多くの戦場で採用された。 近代世界史におけるシベリア鉄道など鉄道による兵員輸送や軍需物資輸送などによって軍事力が向上するという理屈も、なぜ向上するのかという理由を根本的に考えれば、ランチェスターの法則のような考え方が前提になっているだろう。 ===== 解析例(微分積分) ===== では、実際にランチェスターの法則を微分積分的に解析してみよう。 ;ランチェスターの法則 :<math>{\mathrm{d} x \over \mathrm{d} t}= -\alpha y </math>     (1) :  :<math>{\mathrm{d} y \over \mathrm{d} t}= -\beta x </math>      (2) なお、自軍の兵数がx、敵軍の兵数がy、αとβは武器の性能を表す定数である。また、αとβは定数係数である。 数学的な注意として、まず、x、yはともに「関数」であり、「変数」は t (ティー)の1つだけである。xとyは、変数にtをもつ(「変数」ではなく)「関数」である。 :※ tの代わりにxまたはyのいずれか1つを「変数」とする事もできるが、その場合、変数にならなかった残り2つの文字は関数になる。たとえばもしxを変数として扱う場合、tとyは xの関数である 事になる。 :つまり、もしtを変数として扱うなら、けっしてxはyの変数ではない。なぜなら、時間tが与えられれば、yの値は t から一意的に決定するからである。だから、関数 yはこの場合、変数にはtだけをもつ。 :変数をtとした場合でも、答えの曲線をグラフ化してx-y平面上に描けば、x軸とy軸の平面グラフ上の曲線が描かれるので、あたかも「xがyの変数である」(誤解)かのように誤解しがちであるが(実際、変数変換によりxを変数とする事も可能であるが)、しかし、計算中の仮定により、この場合は t だけが変数である。 では、実際に式を解こう。まず、式(1)をもう一回、微分すると、 :<math>{\mathrm{d^2} x \over \mathrm{d} t^2}= -\alpha {\mathrm{d} y \over \mathrm{d} t} </math> になる。2項目の dy/dt に式(2)を代入すれば、 :<math>{\mathrm{d^2} x \over \mathrm{d} t^2}= -\alpha {\mathrm{d} y \over \mathrm{d} t} = -\alpha( -\beta x) = \alpha \beta x </math>    (2-1) となり、式中からyが消えて上式はxとtだけの式になる。 この事から、xは関数であり、xの変数はtだけである事が分かる。(実は数学的には証明をややインチキしており、そもそも、こういう仮定が無いと、常微分を出来ない。変数が2個以上の場合は「偏微分」という別の演算が必要になる。) 同様に式(2)についても、同様の演算操作により、式(2)を変形して関数yと変数tだけの式に置き換える事が出来る。 さて、 :<math>{\mathrm{d^2} x \over \mathrm{d} t^2} = \alpha \beta x </math>    (2-1) の右辺を移項して、 :<math>{\mathrm{d^2} x \over \mathrm{d} t^2} - \alpha \beta x = 0 </math>    (2-2) となる。 これは左辺の微分作用素を因数分解すると、 :<math>({\mathrm{d^2} \over \mathrm{d} t^2} - \alpha \beta) x = 0 </math>    (3-1) と書ける。 微分作用素を :<math>{\mathrm{d} \over \mathrm{d} t} - \alpha \beta = D </math>    (3-2) として作用素Dを定義すれば、式(3-1)を変形して、 :<math>(D^2 - \alpha \beta) x = 0 </math>    (3-3) と書ける。 ここで、中学校で習った因数分解の公式により :<math>(A^2 - B^2) = (A-B)(A+B) </math>    (3-4) であるので、この公式を式(3-4)に適用すれば、 :<math>(D - \sqrt{\alpha \beta}) (D + \sqrt{\alpha \beta}) x = 0 </math>    (3-5) のように式変形できる。 この事から、この方程式の解(一般解)は、 :<math>(D - \sqrt{\alpha \beta}) x = 0 </math>   (3-6) の解(特殊解の一つ)と、 :<math>(D + \sqrt{\alpha \beta}) x = 0 </math>   (3-7) の解(特殊解)を組み合わせたものになる事が分かる(本来なら証明が必要だろうが、省略する。興味があれば、大学2年の応用解析学の本を読め)。 (3-7)の解は、指数関数 :<math>x = C_0 e^{- \sqrt{\alpha \beta} t} </math> となる。(ただしC<sub>0</sub>は積分定数とする。) なお、eは自然対数の底(てい)である。高校3年の数学3で習うので、もし知らなければ教科書を買って調べよ。 指数関数 e<sup>t</sup> は見やすくするために、大学入学以降では exp(t) と書く場合もあり、その場合、上式は :<math>x = C_0 \exp (- \sqrt{\alpha \beta} t) </math> と書かれる。 同様に式(3-6)も解けて :<math>x = c_1 \exp (+ \sqrt{\alpha \beta} t) </math> となる。 この2つを足したモノが一般解なので、 :<math>x = C_0 \exp (- \sqrt{\alpha \beta} t) + c_1 \exp (+ \sqrt{\alpha \beta} t) </math>    (4-1) が一般解である。 しかし、読者には、これだけだと、なぜこれによって、兵数が倍増すると攻撃力が倍増するか等の諸性質や、そもそも解が増加するのか減少するのかさえも、分からない。 だが、微分方程式の初期値として、ある時点での兵数と、数時間後の(減少した)兵数を代入する事をして積分定数C0およびC1を決定してから、数値計算を行うと、ここから、「兵数が倍増した場合の勝率の指数的な増加」など前の節で述べたような性質が数値計算的にかつ経験的に導かれる場合が多い(初期値による)。 答えの式(4-1)だけを見ると、あたかも値が増加しそうに錯覚するが(指数関数の部分はマイナスにならないので)、しかし係数C0やC1の符号はプラスとは限らず、マイナスの数である場合もあるので、解全体としては値が減少してくのである。 このように、連立微分方程式は、解を解いただけでは、その性質が分かりづらい場合が多く、そのため、パソコンなどで数値計算によってグラフなどを書いて、その性質を予想する事が、研究では必要である。(そして、その予想を参考に、その予想を証明するのが数学者の仕事である。なお、さすがにランチェスターの式の性質はすでに数学者によって研究済みである。) なお、もしプログラミングが出来なくても、代替の方法として手間は掛かるが、表計算ソフトのエクセルで、実際に数値計算をしてグラフを何パターンか書いてみてシミュレーションする方法もある。 ともかく、このような連立微分方程式を、数値計算などでシミュレーションして性質を研究していく分野は、数学的には「力学系」といわれる分野である。物理の「力学」の分野でこういう計算例が多かったので、そういう名前がついているが、物理学の知識が無くても計算できる分野である。 軍事学に限らず、生物学の分野にも「力学系」の式はある。生物学で、動物などの個体数などをシミュレーションするのに連立微分方程式で「ロトカ=ヴォルテラの方程式」というのものが使われる場合があり、このロトカ=ヴォルトラ方程式とその派生も、「力学系」の分野のひとつとして有名である。(高校の生物でも、式計算はしないが、高校3年の生物2における生態分野で、類似の理論を習う。) なお、上記の一般解は、双曲線関数 sinh および cosh というものを使っても置き換える事が出来る。これは日本では大学の理科系の学部の1年で習う。 三角関数のsinやcosとは、双曲線関数は異なるので、混同しないように注意のこと。 余談だが、2020年のコロナ問題で話題・有名になったSIR方程式という感染症モデルの常微分方程式も、力学系に分類されるような式であろう。当然、上述のように力学系の微分方程式の数値計算シミュレーションにはコンピュータが必要である。(なお、評論家の中には困ったことに、「SIR方程式はパソコンが無くても研究できる時代遅れの式」(そして彼らは「だから予想値と実測値の誤差が大きい」と主張している)と言っている、頭の悪い有名評論家がいる(力学系の研究ではパソコンによる数値計算が必須なので、前提が事実に反する)。しかも更に困った事に、本来ならツッコミを入れるべき医学者やら生物学者が数学オンチなので、そういう批判者たちの前提の間違いにツッコミを入れない。残念ながら日本のマスメディアや論壇では、こういう馬鹿評論家でも、学歴で東大とか京大とか卒業していると、困った事に世間では彼らが「知識人」として通用してしまうのである。きっと「痴識人」の間違いであろう。医学者や生物学者も、知識不足で頼りない。)大学などの数学者や物理学者も、まったく評論家の数学的な間違いにツッコミを入れないので、残念ながら日本の数理科学の研究水準は低いといわざるを得ない。東大などの提唱する分離融合や異分野融合などが口先だけである証拠でもある。 またなお、微分積分に限らず、軍事学や経営学などの分野に数学や統計学などを応用する分野の事を「オペレーションズ・リサーチ」(略称は「OR」(オー・アール))という。第二次世界大戦中にアメリカ軍がこういった数理的な研究手法を始めた。統計学や確率論、線形計画法などがよく、オペレーションズ・リサーチの手法として用いられる。 一方、「力学系」と言った場合、「力学系」は微分方程式(または差分方程式)で立てられたモデルの分析のことを言うので、「オペレーションズ・リサーチ」とはニュアンスがやや異なる。 ;吟味の必要性 軍事学の数理モデルに限らず、経済学などを含む何らかの社会科学の数理モデルを現実の問題に適用する場合には、注意しなければならない事として、そのモデルが、これから適応しようとしている事例の性質を果たして本当によく反映できているか、自己批判的かつ内省的に注意深く観察しながら、限定的に適用しなければならない。このように、観察しながら注意深く限定的にデモル適用をすることを、俗に社会科学などの分野では「吟味」(ぎんみ)という。数理モデルの実用の際には、吟味が必要である。 しかし残念ながら、社会科学やその応用では、しばしば吟味は省略されることが、実業界やマスメディアなどで まかり通っている場合が往々にある。 たとえば2001年~2005年ころのアメリカ金融界は金融工学のブラック・ジョ-ルズ方程式に基づく仕組みなどを喧伝していたが、しかし米国金融がモデルの吟味を怠ったせいで杜撰な貸付をしたせいで、貸し金の回収不足になりサブプライム問題を起こすなど、杜撰な吟味不足によって世界経済に迷惑を及ぼす例もあった。 ===== 実際の戦闘力 ===== 上述のランチェスター法則は、あくまで参考程度の簡略的なモデルであり、実際の戦闘では適用の不可能・困難な場合も多いだろう。 なので、もし戦闘力をさらに詳細に分析するならば、兵員の規律や士気などの無形的要素を組み合わせなければならない。つまり、火力部隊の戦闘力は火砲とそれを操作する射撃要員の物量という有形的要素と、砲兵火力を発揮するための射撃の速度、精度、士気から判断される無形的要素から導き出すことができる。したがって100名の統制がとれていない武装した群衆と50名の規律ある戦闘部隊の間には戦闘員としての錬度、団結、そして士気という無形的要素に由来する戦闘力の格差が存在していると指摘できる。 また、戦闘は戦力の戦闘力の合計によってのみ左右されるのではなく、戦闘力を戦場に配置する戦闘陣によって規定される。 ==== 戦闘陣形 ==== 戦闘陣(Battle formation)は戦力が戦闘において連携を保つために形成する複数の部隊の一定の態勢である。戦力は彼我との位置関係から与えられる損害や得られる戦果が変化しうる。そもそも部隊は敵の方向に対して最大の戦闘力を発揮できるように部隊の正面を方向付ける。その基本となる戦闘陣形として第一に横陣がある。横陣は敵に対して正面を広く縦深を浅くなるように選択した隊形であり、特に火力を発揮するのに適した陣形である。この陣形の戦術的な特徴は部隊の脆弱な左右両側面と背面に敵が回りにくくすることを防ぐことにある。古代ギリシアのマケドニア軍で採用されていた戦闘陣は歩兵部隊の横陣の両翼に騎兵部隊を配置することで、中央の歩兵部隊の両翼の弱点を補っていた。また基本となる戦闘陣形には縦陣もある。これは正面に対して狭く縦深が深くなるようにした陣形であり、機動力を発揮するのに適した陣形である。この陣形には部隊の迅速な行軍や機動を容易にする特徴がある。速やかな戦場機動や中央突破を狙った突撃で有効であり、トラファルガーの海戦でイギリス軍がフランス軍の戦列に対する攻撃の際に選択されている。さらに斜行陣、鈎形陣、円陣、弾丸陣などの陣形があり、斜行陣は右翼または左翼の片方に兵力を集中的に配置した戦闘陣であり、また鈎形陣は片方の翼を横方向に配置した戦闘陣であり、両方ともに劣勢である場合に用いる戦闘陣である。円陣は全方向に対して部隊を配置する円形の戦闘陣であり、部隊の宿営や集結などに用いられる。弾丸陣は矢印のような形状の戦闘陣であり、先端に機甲部隊を配置して突撃などに用いられる。このような多様な戦闘陣は地形や敵情、彼我の戦闘力の格差などを考慮した上で選択されなければならない。 === 戦術の基本作業 === 戦術的知能の中核とは問題解決能力であり、これは自らが置かれている状況がどのようなものであるかという状況を判断する問題、我が選択することが可能な選択肢の中でどれが最善であるか意志を決定する問題、そして下された決定を実行するために作戦方針を作成する問題の三つに問題を区分することができる。 ==== 状況判断 ==== 状況判断の問題とは任務分析、地形判断、敵情判断を起点とし、敵の可能行動の列挙、味方の行動方針の列挙、各行動の戦術的分析、そして各々の分析の総合という思考過程に基づいて解決される。任務分析とは自分に与えられた任務の背景や本質を分析して達成すべき目標事項を明確化し、複数ある場合にはそれぞれの目標の優先順位を定める問題である。地形判断とは自分が置かれている地理的環境がどのようなものかを分析することである。この際に軍事地理学の知識を援用して戦闘地域を構成する地理的特性を解釈し、重要な地形やそこに至るための接近経路を明らかにする。敵情判断とは敵部隊の配置、装備や補給の状況、後方連絡線の方向などを分析し、敵がどのような戦闘行動を将来実施するかを検討することである。敵情判断では敵が行いうる全ての戦闘行動の全てを列挙し、蓋然性の観点からそれら行動の我にとっての効果や危険を明らかにする。 ==== 意思決定 ==== 意思決定とは状況判断に基づいて我の行動方針を決定することであり、可能的な状況について個々に分析し、それら分析を総合し、決心を下すという過程から成り立つ。実際に発生する可能性がある状況は彼我にとって実施可能な戦闘行動の組合せの数だけ存在する。これらの状況について個々に分析を加えることで個々の戦闘行動によって生じうる結果がどのようなものであるかを検討する。そして総合の過程でそれら分析によって得られた個々の戦闘行動を相互に比較しながら我にとって最も危険性の高い事態がどのような事態であるかを明らかにすることが可能となる。そして任務を達成するためにどのような戦闘行動を選択しなければならないかを限定することができる。最後の決心とは少数に限定したいくつかの作戦方針の中から一つを、その選択肢の危険性と不確実性を鑑みた上で決定することである。このようにして決心が確立されれば、作戦計画の策定作業に移ることができる。 ==== 作戦計画 ==== 作戦計画(Operations Plan, OPLAN)とは決心によって定められた作戦方針に基づいて策定される戦力運用の計画である。作戦計画とは作戦の目標、目標を達成するために採用される行動の方針、そしてその方針に従って作戦に参加する各部隊の任務と個々の行動計画から成立しており、指揮官には戦術的思考に基づいて作戦計画の骨子を作成する技能が求められる。作戦は計画、実行、評価の三つの段階を繰り返しながら進め、常に目的と手段が結合するように配慮しなければならない。作戦計画の立案の際に把握するべき個別の戦況を構成する要素は任務、敵、地形と気象、使用可能な部隊と支援、そして民事的考慮の頭文字を取ったMETT-TC(Mission, Enemy, Terrain and weather, Troop and support available, and Civil considerations)で端的に要約される。これら諸要素を踏まえた上で作戦の立案には次のような事柄が含まれなければならない。第一に作戦目標を具体的な軍事的状況として定義することである。攻勢作戦で敵の拠点を攻略する方針が示された場合、その具体的な達成条件は何を意味するかが定義されなければならず、例えば攻略目標の拠点やそれを守備する敵がどのような状態になれば攻略と見なすかを明確化する。その作戦目標によって作戦は攻勢作戦と防勢作戦、また偵察作戦、行軍作戦、治安作戦などの作戦の形態に分類することができる。 == 攻勢作戦 == 攻勢作戦とは敵を積極的に求めながらこれを撃滅しようとする作戦の形式であり、遭遇や複数に渡る攻撃から成り立っている作戦である。攻勢作戦では敵に対して決定的打撃を加えることを可能とする作戦であり、これは戦術の原則のひとつである主導の原則に基づけば常に実施を模索するべき作戦である。しかし攻勢作戦はしばしば戦力の経済的な使用を指示する節約の原則に反するほどに戦闘力を減耗させる危険性がある。攻勢作戦を実施するべき状況の例としては、戦力投射作戦を実施する状況、敵に対する我の戦闘力の圧倒的な優勢を確保している状況、戦略的な守勢において局地的な反撃を実施する必要がある状況などがある。ここでは攻勢作戦の基本的な形態とその指導の要領、そして作戦計画を立案する上での考慮事項について述べる。 === 攻勢作戦の形態 === 攻勢作戦で中心となる戦術的な行動は接敵機動、攻撃、戦果拡張、追撃の四つの段階がある。接敵機動とは戦闘を行うために敵との接触を試みる機動であり、彼我の接敵機動で生じる戦闘は遭遇戦と言う。攻撃とは攻勢作戦において敵を撃破または撃滅、地形の攻略または確保、もしくはそれら両方を行う攻勢作戦の戦闘行動である。攻撃はさらに戦闘行動の方式としては奇襲的な攻撃である伏撃、防御の態勢から攻撃に転換する逆襲、準備された防御に対する強襲、敵を有利な地点におびき出す誘致、敵に誤った状況を認識させる欺瞞がある。そして機動の方式から一翼もしくは両翼を駆使して敵の二正面以上を同時に攻撃する包囲、敵の正面を突破して分断する突撃、そして敵と接触せずに敵の後方や側面に回りこむことで敵に退却を強制する迂回に分けることができる。戦果拡張とは組織的な戦闘力を失った敵に対して攻撃の段階から継続的に行われる攻撃であり、攻撃によって得られた戦果を最大化する戦闘行動である。追撃とは退却する敵をさらに追尾して打撃を加える行動であり、戦場に敵を捕捉して追撃を加える方式と、戦場外に退却した敵に対する追撃の方式がある。 ====攻撃==== ====追撃==== === 攻勢作戦の指導 === 攻勢作戦を指導する際に攻撃発起点、前進軸、攻撃目標、前進限界、集結地点を調整することで行われる。攻撃発起点とは各部隊が攻撃のための前進を開始する際に出発する地点である。理想として敵に対して位置や行動が隠匿し、また戦力を防護することができることが望ましい。自然地形で攻撃発起のための適切な地形を望むことができないならば、攻撃陣地を準備することも手段に含まれる。前進軸は各攻撃部隊が前進の際に依拠する一般的な方向あり、戦場における計画的な機動を調整するものであり、状況図では矢印によって表示される。攻撃目標とは我の戦闘力を集中させる目標であり、敵の部隊または特定の地形がその対象となる。ただし地形が攻撃目標であるのに対して敵部隊を攻撃目標とする場合には攻撃目標を捕捉することが難しくなる。そして攻撃前進の終点は前進限界によって定められる。前進限界は攻撃部隊が攻撃前進を停止する段階を計画的に決定するものである。前進限界に到達した部隊は識別が容易な集結地点もしくは予備的に設定された代替集結地点に再集結させる。 === 攻勢作戦の計画 === 攻勢作戦を計画する上での着眼としては奇襲と集中、そして節度(Tempo)と大胆(Audacity)が重要となる。つまり、敵が予測した事態を回避し、戦力を集中させ、迅速な節度を以って大胆に前進させることが効果的な攻勢作戦を立案する上での基礎となる。そして攻勢作戦を状況に適合させるためにはまず情報作戦に基づいて戦場の状況を把握することが求められる。敵情については配置、装備、戦闘力、弱点、攻撃すべき目標、集結点、敵の後方連絡線、離隔した支援戦力、対空部隊、電子戦部隊、敵の情報網などであり、地形については地形の形状、気象の影響、攻撃に使用可能な経路の配置と数、攻撃の障害となる森林や河川などの地形について把握する必要がある。これらの状況を踏まえた上で与えられた任務とそれに対応する作戦目標、指揮官の意図、敵の配置や戦闘力などの敵情、攻撃目標、作戦開始時刻、各部隊の機動の方向性、攻撃のための戦闘陣、作戦の危険性、そして代替的な作戦計画を準備する。作戦が開始されれば、指揮官は我の戦闘力の消耗を確認しながら攻勢極限点を見極め、彼我の戦闘力の優劣が逆転しないよう注意する。一度攻勢極限点に到達したと判断されれば、指揮官は防御へ転換することを決断し、攻撃によって得られた戦果を保存するよう努めなければならない。 == 防勢作戦 == 防勢作戦とは時間的猶予の確保、戦力の経済的使用、または別の攻勢作戦を支援するために、敵の攻勢作戦を待ち受けてこれを破砕する作戦である。防勢作戦は戦力の劣勢を補うことを可能とする作戦であり、節約の原則に立脚した作戦方針である。しかし防勢作戦のみによって目標を達成することが困難であり、また戦闘の主導権を失う危険を伴う。防勢作戦を実施する状況の例としては、決定的に重要な地形の確保を維持しなければならない状況、敵による奇襲への対処、敵に対して我の戦闘力が総体的に劣勢である状況などがある。ここでは防勢作戦の形態、指導、そして作戦計画の立案について概説する。 === 防勢作戦の形態 === 防勢作戦で中心となる戦術的な行動には防御と後退行動がある。さらに防御は陣地防御と機動防御に分けられる。陣地防御とは逆襲を加えることを主眼に置いたものではなく、構築した陣地や要塞によって敵の攻撃を阻止する形式の防御である。防御では敵の攻撃を阻止し、また緊要地形を保全することを狙った横陣や円陣の防御陣地が準備され、して防御陣地の機能を強化することに主たる努力が集中されるために、後方に拘置される予備の戦力は逆襲ではなく防御戦闘で減耗した損害を補填するために使用される。また機動防御とは陣地に頼るのではなく、敵の攻撃に対して決定的な逆襲を加える防御の形式である。機動防御では敵の後方連絡線を捕捉することを可能とするように陣地の構築や打撃部隊の配備を準備することに労力を費やす。そして後退行動とは敵との距離を持つように機動する防御戦闘の方法である。後退行動では敵との接触を断つ離脱、敵の前進速度を低下させる遅滞、そして敵との距離を拡大させる離隔の三段階を組織的な連携の下で背面を敵に暴露する危険を最小限に抑える。 ==== 防御 ==== ==== 退却 ==== === 防勢作戦の指導 === 防勢作戦の指導では戦闘移行線、主戦場の設定、防御陣地、火力支援の調整、直接射撃の統制、退路を調整することで行われる。戦闘移行線とは戦力を戦闘態勢に移行させる判断を下す地理的な基準となる線である。戦闘移行線は主たる防御拠点の前方において設定される。戦闘移行線と防御拠点の間は主戦場であり、敵の攻撃を排除するために戦闘力を発揮する領域である。防御陣地とは敵の侵入と前進を阻む機能を持った構築物である。防勢作戦における火力支援の調整と直接射撃の統制とは火力の最適な配分を意味する。これはそれぞれの主戦場に対する射撃のために各種装備を配置する地点を決めることであり、またそれぞれの射撃がどの地域に責任を負うのかを明確に示すことである。そして退路を調整する際には戦闘を離脱した後に収容を実施する機能も備えた二次的な防御陣地との間の連絡線を指定しておく。 === 防勢作戦の計画 === 防勢作戦は通常において防御戦闘の計画的準備によって遂行される。しかし作戦行動は主導の原則に従って静態的な行動ばかりでなく動態的な行動が必要であり、防勢作戦の作戦方針を採用していたとしても敵の攻撃を排除した後に逆襲に転換することが検討されなければならない。その原則を踏まえた上で防勢作戦の計画にはいくつかの情報が必要である。敵の戦闘力や集結地点などの配置だけでなく、どの攻撃目標を選択するのか、そしてそれに対応する接近経路、攻撃方法がどのような状態であるのかを研究しなければならない。そのためには敵が慣習的にどのような作戦行動を選択しているかを分析する必要もある。例えば空挺部隊を使用した攻勢作戦に対する防勢作戦の場合では、陣地防御ではなく機動防御を準備しなければならない。なぜならば陣地防御とは固定された攻撃目標に対して接近する際に必ず地上において進路を妨げることができなければ有効ではない。空挺部隊による攻撃に対しては防空戦闘と敵部隊が戦闘展開してから迅速で組織的な逆襲を加えることが求められるのである。また幅広い正面に渡る正面攻撃に対する防御では複数の防御陣地によって組織化された陣地防御による攻撃の阻止と予備戦力による逆襲を準備することが必要である。 == 戦術用語 == *'''圧迫''' - 武力や権威で押さえつけること。 *'''隠蔽''' - 物事、特に機密事項となる軍事基地や新兵器などを隠すこと。 *'''迂回''' - ある場所を避けて、遠回りすること。 *'''運動''' - *'''{{Ruby|掩蔽|えんぺい}}''' - *'''会戦''' - 大規模な戦力を互いに準備し、行う戦闘のこと。 *'''内戦作戦''' - 敵軍に包囲される位置で作戦を展開すること。 *'''外線作戦''' - 敵軍を包囲する位置で作戦を展開すること。 *'''監視''' - 敵軍の行動を監視すること。 *'''機動''' - *'''逆襲''' - *'''持久戦''' - 自軍を持ち堪えさせることを目的とした戦闘のこと。 *'''警戒''' - *'''撃破''' - *'''決心''' - *'''決戦''' - *'''牽制''' - 敵軍を武力や兵数などで圧倒し、敵軍の行動の自由を奪うこと。 *'''後衛''' - *'''行軍''' - *'''攻撃極限点''' - 攻撃によって得られる優位の限界のこと。[[w:攻撃の限界点|攻撃の限界点]]とも。 *'''攻勢''' - 敵軍に対して攻撃すること。 *'''後方支援''' - 砲兵、航空機などで後方から前線を支援すること。 *'''作戦''' - *'''作戦目標''' - *'''指揮''' - *'''支隊''' - *'''遮蔽''' - *'''集結''' - *'''集中''' - *'''重心''' - 部隊を1つの地点に集結させ、圧倒的物量差で敵に攻撃すること。 *'''状況判断''' - *'''助攻''' - *陣地 *前衛 *戦果 *戦術 *戦場 *前哨 *戦線 *戦闘 *戦闘力 *遭遇戦 *側衛 *退却 *地形 *諜報 *追撃 *'''偵察''' - 敵軍、特に野営地などの状況を把握し、敵軍の兵数などを事前に知る為の行動のこと。 *展開 *突破 *背後連絡線 *兵站 *編制 *包囲 *防御 *防勢 *本攻 *摩擦 *命令 *陽動 *抑止 *連絡 == 脚注 == <references/> == 参考文献 == 戦術学の文献はそれほど流通していないために入手することは非常に難しい。一般に海外の戦術学の文献が入手しやすく、特に米陸軍省が一般公開している野戦教範(Field Manual)が研究を行う上では参考となる。また国内においては戦前に流通していた軍学校の教育や試験で使用する戦術学の教範、参考書、または問題集があり、それらを入手して参照することもできる。しかしながら、これらの教範類も一般的に入手することが難しい場合が多い。戦後に自衛隊で使用されている教範類は一般公開されていないものの、自衛隊関係者により発表された閲覧可能な論文を収録した論文集がある。例えば陸上自衛隊の幹部で構成された陸戦学会から出されている『陸戦研究』は国立国会図書館等で閲覧することが可能な戦術研究である。以下では主に書籍に限定した上で戦術研究の上で参考となる研究について解題を加えたものである。 *防衛大学校・防衛学研究会編『軍事学入門』(かや書房、2000年) :軍事学を概説した入門書であり、第3章の現代軍事力の態様は戦術研究の上で参考となる。 *松村劭『バトル・シミュレーション 戦術と指揮 命令の与え方・集団の動かし方』(文藝春秋、2005年) :戦術理論の基礎的事項を要約し、また答案を付与した練習問題が含まれている。 *高山信武『陸軍大学校の戦略・戦術教育』(芙蓉書房出版) :陸軍大学校での講義と戦術学の口頭試問の記録が含まれている。 *Field Manual No. 3-90, Tactics, Headquarters Department of the Army, 2001. :米陸軍で使用されている戦術学の教範類であり、理論的解説だけでなく戦史に基づいた解説も含まれている。本項目の執筆で最も参照した参考文献。 *Field Manual No. 100-5, Operations, Department of the Army, 1993. :作戦の基礎、攻勢作戦、防勢作戦について網羅的に概説した米陸軍の教範であり、理論的説明が豊富である。 {{stub}} [[Category:軍事学|せんしゆつかくにゆうもん]] i9eav2ediys8sjxf9c5f98bl53ptdq2 205547 205546 2022-07-19T20:42:26Z 某編集者 69349 /* 序論 */ wikitext text/x-wiki *[[社会科学]]>[[軍事学]]>[[戦術学]]>'''戦術学入門''' [[画像:Battle of Austerlitz - Situation at 0900, 2 December 1805.png|300px|thumb|right|地形図と部隊符号から構成されるアウステルリッツ会戦の状況図である。戦闘で生じている全ての事象が戦術的に重要であるわけではない。戦術学では状況図のように現実の複雑な戦況を概念化し直し、戦場の空間的、時間的そして戦力的要素の三つを視覚的に把握することで、何が重要な情報であるかを取捨選択する。]] == 序論 == 戦術(Tactics)とは戦闘において部隊などを効果的に運用する技術・科学である。[[軍事学]]において戦術学は戦闘を認識し、解釈し、そして判断するために必要な理論的枠組みを備え、また戦闘において勝利を獲得するために戦力を配置し、戦闘力を最大化し、戦闘行動を指揮する上で不可欠な実践的役割を担っている。ただし戦術は戦略の下位において実践される領域として区別されている。つまり戦略とは作戦部隊を有利な条件で戦闘が実施できるように全体的な視点から部隊を指導する技術・科学であり、戦術はその戦略に沿って戦闘で勝利する技術・科学である。したがって、戦術学の固有の問題とは戦争の指導とは別個に、戦闘において戦力を活用することにある。 戦闘において部隊を戦術的に運用することの意義は過去の戦史で示されている。ナポレオン戦争においてアウステルリッツ会戦を概観すると、戦力で劣勢なナポレオンが敵の攻撃に対して[[防御 (軍事) |防御]]戦闘と遅滞行動を組み合わせたことが勝利をもたらしたことが分かる。戦術学において戦力の優劣は必ずしも戦闘の勝敗に直結するわけではない。戦力だけではなく、任務、地形、敵情などから戦闘状況に適した戦術を選択することが不可欠である。例えば戦術学では学習者を部隊指揮官と想定して次のような事柄を問題とする。「与えられた任務をどのように理解するのか」、「どの地域が戦闘において緊要であるのか」、「敵は次にどのような戦闘行動に出るのか」、「現状で我が方の戦力をどのように配置するべきか」、「敵をどのような要領で攻撃するべきか」、「圧倒的劣勢において退却と防御のどちらを選択するべきか」、「歩兵部隊と戦車部隊の連携はどのように指導するのか」、「自分の作戦計画をどの部下に何をどのように伝えるべきか」これらの問題は全て戦術学の重大な問題であり、理論的に導き出すことが求められる。 戦術学はいくつかの部門に細分化することができる。まず理論的に単純化された基礎的問題を扱う初等戦術とより現実的かつ複雑な戦況に対処する応用的問題を扱う高等戦術の二つがある。また単一兵科の小部隊を指揮する小戦術から複合兵科の大部隊を指揮する大戦術に分けることもありうる。さらには戦闘空間の特性の相違から陸上戦力を運用する戦術、海上戦力を運用する戦術、航空戦力を運用する戦術などに分類することも可能である。事前の準備の程度から計画戦術と応急戦術の研究に分けることもなされる。これらの細分化に踏み込むことは『戦術学入門』である本項目では重要視しない。以下では戦術学の基礎的な理論について概説することに力点を置いた上で、次のような章立てで進んでいく。まず戦術の原理、攻勢作戦、防勢作戦の三つに内容を大別して説明していく。これらの概説を通じて本項目では学習者の戦術学の基礎的な理解に貢献することを狙っている。 == 戦術の原理 == 戦術とは戦闘に戦力を適用することである。その具体的な適用の方法は実践的な訓練や経験によってのみ獲得される技術的側面を含んでいるものの、体系的な教育や思考によって習得される科学的側面も備えている。したがって、戦術問題は原則としていくつかの原則と戦術学の概念に基づけば論理的思考によって解答を導き出すことが可能である。ここでは戦術学の原理、基本概念、そして戦術的思考のモデルについて概説する。 === 戦いの原理 === あらゆる戦闘に勝利するために一般的に適用することが可能な戦術の原理とはどのようなものであるのか。例えばそれは「我の戦力の主力を以って、敵の個々の戦力と戦闘するように機動すること」のように要約された、いくつかの戦いの原理(Principles of war)から明らかにすることができる。これは戦闘を計画または指導する際に常に準拠するべき原則であり、次のような諸原則が知られている。 *目標の原則 *統一の原則 *主導の原則 *集中の原則 *奇襲の原則 *機動の原則 *節約の原則 *簡明の原則 *警戒の原則 行動の目的を明確にする目標の原則、指揮系統を統一する統一の原則、先制して状況の支配権を獲得する主導の原則、敵の弱点に対して味方の戦力を集中する集中の原則、敵の意外性を突いて戦う奇襲の原則、移動によって我の優位な位置関係を維持する機動の原則、無駄な戦力を有効活用する経済の原則、目的や行動方針が大胆かつ単純である簡明の原則、敵の奇襲を防ぐために注意する警戒の原則、以上が各原則の要旨である。<ref>米陸軍では物量的な戦力の優位性を保持する物量の原則、旧ソ連陸軍では敵を完全に撃滅する殲滅の原則などが原則として加えられる場合もある。</ref> [[File:Battle of salamis.png|300px|thumb|right|サラミス沖海戦の状況図]] 戦術研究においてこれら諸原則の重要性が実証されている。ここでは一例としてサラミスの海戦を取り上げながら、諸原則の意義を確認する。紀元前486年9月20日にテミストクレスが指揮するギリシア軍とクルセルクスが指揮するペルシア軍による、ギリシア半島のサラミス島沖でサラミスの海戦が発生した。劣勢な戦力しか持たないテミストクレスはサラミス島を防衛するために防勢サラミス島沖の狭隘な海峡という地理的環境を活用することを考案した。つまり、ペルシア軍の大規模な戦力を狭隘な海峡に誘致することでペルシア軍を脆弱な状態に追い込み、風浪の状況が時間の経過でギリシア軍に有利に変化するのに乗じて、攻撃に転換する戦術を実践したのである。結果としてペルシア軍は地形や海象に起因する隊列の混乱、そしてギリシア軍の反転攻勢の中央突破に対処することができず、敗北することとなった。サラミス島を防衛するという目標の明確化、部隊の意思疎通の統一化、主導権の計画的な回復、戦力の一点集中、奇襲的な反撃、敵を分断する機動的な攻撃、戦機が到来するまでの戦力の温存、作戦方針の簡潔さ、そして敵の行動に対する警戒、このような適切な原則の適用によってテミストクレスは勝利を確実なものとすることができたと戦術的には考えられる。 === 戦術の基礎概念 === 戦術の基礎概念の最も初歩的な範疇は戦力が発揮する戦闘の機能、戦力が備えている戦闘力、戦力の展開に関連する戦闘陣の三つに大別に分けることができる。 ==== 戦闘 ==== 戦闘とは戦争における本来的な軍事行動であり、我に対抗して行動する敵を撃滅することを目的とした闘争の状態である。そのため戦闘において彼我の戦力はそれぞれの戦闘力を最大限に敵に対して発揮できるよう行動する。しかし、敵を撃滅するという一般的な戦闘の目的は個々の状況に応じて敵の部分的な撃退や一地点の占領として解釈される場合もある。そのため戦闘の勝敗は理論的には彼我の損害比で表現されるが、彼我の戦闘部隊の任務が達成されたかどうかによっても表現される。この戦闘を遂行するための戦力の機能は五つの項目に整理することができる。 *発見の機能 *拘束の機能 *制圧もしくは攪乱の機能 *機動の機能 *占領の機能 偵察や警戒によって敵情を明らかにする発見の機能、接敵機動と接触を維持することによって敵の行動の自由を制限する拘束の機能、砲兵火力などによって敵の組織的行動を妨げる制圧もしくは攪乱の機能、戦場において敵の弱点を圧迫するように戦力を選択的に再配置する機動の機能、そして敵に対して決定的な攻撃を加える打撃もしくは占領の機能、以上の五つである。これら機能を発揮するための戦力の能力を戦闘力と言う。 ==== 戦闘力 ==== ===== ランチェスターの法則 ===== 戦闘力(Capacity of battle)とは各部隊が戦闘を遂行する能力を指す概念である。戦闘力の優劣によって戦闘を実施する部隊の戦果の原因が説明され、また戦果の予測も左右される。戦闘力を具体的にどのような要素から判断するのかについては古典的な分析として、まず物的な局面に注目するものがある。 兵員と装備の物量が大きければ大きいほど戦闘力は向上するものであり、例えば100名の兵員から組織される部隊は50名から組織される部隊に対して2倍の戦闘力を有しているとする分析である。 このような基本的モデルとしてランチェスターの数式モデルなどが提案されており、兵棋演習の戦果や損害の計算法のひとつとして採用されている。 「ランチェスターの法則」の数式モデルは、幾つかの種類があるが、そのうち有名なモデルの内容は、下記の2つの式の連立微分方位定式として表される。 ;ランチェスターの法則 :<math>{\mathrm{d} x \over \mathrm{d} t}= -\alpha y </math>     (1) :  :<math>{\mathrm{d} y \over \mathrm{d} t}= -\beta x </math>      (2) という連立方程式である。 なお、自軍の兵数がx、敵軍の兵数がy、αとβは武器の性能を表す定数である。また、αとβは計算上の都合により定数係数であるとしてモデルを立てる(そう仮定しないと、解析的に手計算で式を解けない。または、もし変数係数だと人間による式計算では解析が著しく困難になるので、非入門的であり、非実用的になる)。 このように微分方程式で表現されるので、大学の微分方程式などの教科書でも紹介されることもある。高校参考書『モノグラフ』の『微分方程式』に書いてある計算問題も、この式の場合である。 式を見れば、たしかに兵員が多いほど、相手軍の損傷が大きくなるような立式になっている事が分かるであろう。 上式を式変形で解いて解析解を得るのは数学的には可能である事が知られているが、しかし解析解から実用的な結果を得るための計算に手間が掛かるので、本wikiではまず、解析をしないで、類似の簡易モデルを考えよう(解析例は後の章で後述する)。 その類似の簡易モデルは、現代ではゲームのRPG(ドラゴンクエストやファイナルファンタジーのようなジャンル)における戦闘のダメージ計算に例えればよい。 たとえばドラクエ3のようなパーティ戦闘システムのあるゲームの場合、パーティの人数が増えると、単に敵の攻撃に人数分だけ耐えられるようになるだけでなく、さらに1ターンあたりに敵に与えるダメージ量も増える。よって、より短時間でスライムの集団などを倒せるので、1戦あたりの戦闘が早く終わり、戦闘終了までに自パーティの受けるダメージ被害も少なくなる。 たとえば、ドラクエ3に例えよう。 勇者の1人旅と、勇者・武闘家・武闘家・武闘家の4人パーティを比較しよう。 プレイヤーキャラが草原フィールド上を歩いていたら、ガイコツが1体出現したとする。(計算の単純化のため、戦闘で出現するモンスターは毎回、必ずガイコツ1体だけだとする。なお、実際のドラクエ3には「ガイコツ」は出現しない。) 計算の単純化のため、ガイコツはHPが10だとしよう。計算の単純化のため、勇者も武闘家も、攻撃力は同じで1人あたり2だとする。よって、1回の攻撃でダメージ2を敵に与えるとしよう。 また、勇者と武闘家のHPは両方とも10だとしよう。計算の単純化のため、つねに勇者たちの攻撃が先手で、敵の攻撃は後攻だとしよう。 ガイコツの攻撃を受けたら、必ず勇者または武闘家の1人がダメージ1を受けるとしよう。 勇者1人旅の場合、ガイコツ1体を倒すのに合計5ターン要する。なので、勇者は戦闘終了までに4ダメージを受ける。(最後の5ターン目はガイコツからの攻撃を受けないので、合計4ダメージになる。) 一方、勇・武・武・武の4人パーティなら、1ターンあたり8ダメージ(=2×4)なので、2ターンでガイコツ1体を倒せる。なので、一戦あたりの被害ダメージは合計1ダメージである(2ターン目はダメージを受けない)。 さて、勇・武・武・武の4人パーティは、HPの合計値が40である(40=4×10)。一方、勇者1人旅は、HPの合計値が10である。 なので、単純計算で勇・武・武・武の4人パーティなら、ガイコツ1体を倒すことを 40÷2=20で、20回可能である。(実際には、最後のほうで勇者か武闘家の誰かがHPゼロになって戦闘不能になるので、こなせる戦闘回数は20よりかは減る。) 一方、勇者1人旅では、計算 10÷4=2あまり2 により、たったの2~3回しか、ガイコツを倒せない。 仮に2~3をパーティ人数分で4倍しても、8~12回にしかならず、到底20回には及ばない。 なお、2~3を7倍すると、14~21になり、ようやく20に到達する。 つまり、パーティを4倍する事により、4倍の効果どころか少なくとも7倍の効果が現れている。 4と7を対数関数で計算すれば、 :<math>\log_4 7 = 1.40367 </math> なので、約1.4乗で人数の効果が指数的に効いてきたことになる。 このようにランチェスターの法則により、人数の効果は、けっして1次関数的な1乗の比例ではなく、1次関数を超えた乗数の効果が出てくる。 まさに、上述のドラクエ的なシミュレーション例が、ランチェスターの法則そのものである。 毎回対数計算をするのは面倒なので、やや不正確だが簡易的に「1.5乗で効いてくる」と近似すれば計算しやすいだろう。なお、平方根が0.5乗である。 つまり、ある代数値 aについて、 :<math>a^{1.5} = a \sqrt{a} </math> である。 もちろん上記のドラクエ3例はあくまでゲームの話であり、実際の戦争には、けっして、そのまま単純に適用してはならない。 だが、軍事は置いておくとして「ランチェスターの法則」の数理的な性質だけを調べるための例としては、上記のドラクエ例でも正しい。 もちろん、実際の戦闘や戦争は、そもそも数理モデルだけでは決して済まない。現実の戦争は、そんなに単純ではない。上記のランチェスターの法則は、あくまで参考程度のものである。 しかし、そもそも社会科学におけるモデルとは、そのように参考程度のものに過ぎない。これは軍事学に限らず、経済学などにおける数式でも同様である。 さて、ランチェスターの法則から導ける結果として、もし兵員数が2倍になると、その効果は、けっして単に敵の2連戦に耐えられるような長期戦の対応だけでなく、さらに攻撃力アップによる、次に述べる副次的な別の効果がある。 具体的には、兵員が増えれば仮定により戦闘力(ゲームで言う「攻撃力」)もアップするので、いままで倒せなかった強い敵国の軍が倒せるようになる可能性が増える。また、攻撃力がアップすることにより、敵軍の殲滅(ゲームに例えるなら戦闘中の敵全員のHPを0にする事)に要する時間が減少するので、殲滅までに受けた自軍の損耗も減らせる。つまり自軍の被害は、戦闘終了までに受けた時間に応じて、比例的に増加する事がランチェスターの法則から導かれる(なお、ドラクエなどのRPGゲームでも同様の現象がある事が知られている)。 ともかく、兵員数の増加には、上述のように副次的な効果がある。 このため、よく言われる事として、兵員数の2倍への倍増は、その効果はけっして2倍ではなく、上述の副次効果により乗数的に効果が出るので、たとえば4倍~8倍くらいの効果になる場合もある(実際にどの程度の効果が出るかは、モデルの係数などによって変わる)。 こういった数学的な事が、近代ヨーロッパでは既に言われていたので、なので現実の世界史の戦争での用兵もそれに従い、その結果、なるべく兵力は分散させずに、兵力を拠点や作戦目標などに集中させる戦術が実際に好まれ、多くの戦場で採用された。 近代世界史におけるシベリア鉄道など鉄道による兵員輸送や軍需物資輸送などによって軍事力が向上するという理屈も、なぜ向上するのかという理由を根本的に考えれば、ランチェスターの法則のような考え方が前提になっているだろう。 ===== 解析例(微分積分) ===== では、実際にランチェスターの法則を微分積分的に解析してみよう。 ;ランチェスターの法則 :<math>{\mathrm{d} x \over \mathrm{d} t}= -\alpha y </math>     (1) :  :<math>{\mathrm{d} y \over \mathrm{d} t}= -\beta x </math>      (2) なお、自軍の兵数がx、敵軍の兵数がy、αとβは武器の性能を表す定数である。また、αとβは定数係数である。 数学的な注意として、まず、x、yはともに「関数」であり、「変数」は t (ティー)の1つだけである。xとyは、変数にtをもつ(「変数」ではなく)「関数」である。 :※ tの代わりにxまたはyのいずれか1つを「変数」とする事もできるが、その場合、変数にならなかった残り2つの文字は関数になる。たとえばもしxを変数として扱う場合、tとyは xの関数である 事になる。 :つまり、もしtを変数として扱うなら、けっしてxはyの変数ではない。なぜなら、時間tが与えられれば、yの値は t から一意的に決定するからである。だから、関数 yはこの場合、変数にはtだけをもつ。 :変数をtとした場合でも、答えの曲線をグラフ化してx-y平面上に描けば、x軸とy軸の平面グラフ上の曲線が描かれるので、あたかも「xがyの変数である」(誤解)かのように誤解しがちであるが(実際、変数変換によりxを変数とする事も可能であるが)、しかし、計算中の仮定により、この場合は t だけが変数である。 では、実際に式を解こう。まず、式(1)をもう一回、微分すると、 :<math>{\mathrm{d^2} x \over \mathrm{d} t^2}= -\alpha {\mathrm{d} y \over \mathrm{d} t} </math> になる。2項目の dy/dt に式(2)を代入すれば、 :<math>{\mathrm{d^2} x \over \mathrm{d} t^2}= -\alpha {\mathrm{d} y \over \mathrm{d} t} = -\alpha( -\beta x) = \alpha \beta x </math>    (2-1) となり、式中からyが消えて上式はxとtだけの式になる。 この事から、xは関数であり、xの変数はtだけである事が分かる。(実は数学的には証明をややインチキしており、そもそも、こういう仮定が無いと、常微分を出来ない。変数が2個以上の場合は「偏微分」という別の演算が必要になる。) 同様に式(2)についても、同様の演算操作により、式(2)を変形して関数yと変数tだけの式に置き換える事が出来る。 さて、 :<math>{\mathrm{d^2} x \over \mathrm{d} t^2} = \alpha \beta x </math>    (2-1) の右辺を移項して、 :<math>{\mathrm{d^2} x \over \mathrm{d} t^2} - \alpha \beta x = 0 </math>    (2-2) となる。 これは左辺の微分作用素を因数分解すると、 :<math>({\mathrm{d^2} \over \mathrm{d} t^2} - \alpha \beta) x = 0 </math>    (3-1) と書ける。 微分作用素を :<math>{\mathrm{d} \over \mathrm{d} t} - \alpha \beta = D </math>    (3-2) として作用素Dを定義すれば、式(3-1)を変形して、 :<math>(D^2 - \alpha \beta) x = 0 </math>    (3-3) と書ける。 ここで、中学校で習った因数分解の公式により :<math>(A^2 - B^2) = (A-B)(A+B) </math>    (3-4) であるので、この公式を式(3-4)に適用すれば、 :<math>(D - \sqrt{\alpha \beta}) (D + \sqrt{\alpha \beta}) x = 0 </math>    (3-5) のように式変形できる。 この事から、この方程式の解(一般解)は、 :<math>(D - \sqrt{\alpha \beta}) x = 0 </math>   (3-6) の解(特殊解の一つ)と、 :<math>(D + \sqrt{\alpha \beta}) x = 0 </math>   (3-7) の解(特殊解)を組み合わせたものになる事が分かる(本来なら証明が必要だろうが、省略する。興味があれば、大学2年の応用解析学の本を読め)。 (3-7)の解は、指数関数 :<math>x = C_0 e^{- \sqrt{\alpha \beta} t} </math> となる。(ただしC<sub>0</sub>は積分定数とする。) なお、eは自然対数の底(てい)である。高校3年の数学3で習うので、もし知らなければ教科書を買って調べよ。 指数関数 e<sup>t</sup> は見やすくするために、大学入学以降では exp(t) と書く場合もあり、その場合、上式は :<math>x = C_0 \exp (- \sqrt{\alpha \beta} t) </math> と書かれる。 同様に式(3-6)も解けて :<math>x = c_1 \exp (+ \sqrt{\alpha \beta} t) </math> となる。 この2つを足したモノが一般解なので、 :<math>x = C_0 \exp (- \sqrt{\alpha \beta} t) + c_1 \exp (+ \sqrt{\alpha \beta} t) </math>    (4-1) が一般解である。 しかし、読者には、これだけだと、なぜこれによって、兵数が倍増すると攻撃力が倍増するか等の諸性質や、そもそも解が増加するのか減少するのかさえも、分からない。 だが、微分方程式の初期値として、ある時点での兵数と、数時間後の(減少した)兵数を代入する事をして積分定数C0およびC1を決定してから、数値計算を行うと、ここから、「兵数が倍増した場合の勝率の指数的な増加」など前の節で述べたような性質が数値計算的にかつ経験的に導かれる場合が多い(初期値による)。 答えの式(4-1)だけを見ると、あたかも値が増加しそうに錯覚するが(指数関数の部分はマイナスにならないので)、しかし係数C0やC1の符号はプラスとは限らず、マイナスの数である場合もあるので、解全体としては値が減少してくのである。 このように、連立微分方程式は、解を解いただけでは、その性質が分かりづらい場合が多く、そのため、パソコンなどで数値計算によってグラフなどを書いて、その性質を予想する事が、研究では必要である。(そして、その予想を参考に、その予想を証明するのが数学者の仕事である。なお、さすがにランチェスターの式の性質はすでに数学者によって研究済みである。) なお、もしプログラミングが出来なくても、代替の方法として手間は掛かるが、表計算ソフトのエクセルで、実際に数値計算をしてグラフを何パターンか書いてみてシミュレーションする方法もある。 ともかく、このような連立微分方程式を、数値計算などでシミュレーションして性質を研究していく分野は、数学的には「力学系」といわれる分野である。物理の「力学」の分野でこういう計算例が多かったので、そういう名前がついているが、物理学の知識が無くても計算できる分野である。 軍事学に限らず、生物学の分野にも「力学系」の式はある。生物学で、動物などの個体数などをシミュレーションするのに連立微分方程式で「ロトカ=ヴォルテラの方程式」というのものが使われる場合があり、このロトカ=ヴォルトラ方程式とその派生も、「力学系」の分野のひとつとして有名である。(高校の生物でも、式計算はしないが、高校3年の生物2における生態分野で、類似の理論を習う。) なお、上記の一般解は、双曲線関数 sinh および cosh というものを使っても置き換える事が出来る。これは日本では大学の理科系の学部の1年で習う。 三角関数のsinやcosとは、双曲線関数は異なるので、混同しないように注意のこと。 余談だが、2020年のコロナ問題で話題・有名になったSIR方程式という感染症モデルの常微分方程式も、力学系に分類されるような式であろう。当然、上述のように力学系の微分方程式の数値計算シミュレーションにはコンピュータが必要である。(なお、評論家の中には困ったことに、「SIR方程式はパソコンが無くても研究できる時代遅れの式」(そして彼らは「だから予想値と実測値の誤差が大きい」と主張している)と言っている、頭の悪い有名評論家がいる(力学系の研究ではパソコンによる数値計算が必須なので、前提が事実に反する)。しかも更に困った事に、本来ならツッコミを入れるべき医学者やら生物学者が数学オンチなので、そういう批判者たちの前提の間違いにツッコミを入れない。残念ながら日本のマスメディアや論壇では、こういう馬鹿評論家でも、学歴で東大とか京大とか卒業していると、困った事に世間では彼らが「知識人」として通用してしまうのである。きっと「痴識人」の間違いであろう。医学者や生物学者も、知識不足で頼りない。)大学などの数学者や物理学者も、まったく評論家の数学的な間違いにツッコミを入れないので、残念ながら日本の数理科学の研究水準は低いといわざるを得ない。東大などの提唱する分離融合や異分野融合などが口先だけである証拠でもある。 またなお、微分積分に限らず、軍事学や経営学などの分野に数学や統計学などを応用する分野の事を「オペレーションズ・リサーチ」(略称は「OR」(オー・アール))という。第二次世界大戦中にアメリカ軍がこういった数理的な研究手法を始めた。統計学や確率論、線形計画法などがよく、オペレーションズ・リサーチの手法として用いられる。 一方、「力学系」と言った場合、「力学系」は微分方程式(または差分方程式)で立てられたモデルの分析のことを言うので、「オペレーションズ・リサーチ」とはニュアンスがやや異なる。 ;吟味の必要性 軍事学の数理モデルに限らず、経済学などを含む何らかの社会科学の数理モデルを現実の問題に適用する場合には、注意しなければならない事として、そのモデルが、これから適応しようとしている事例の性質を果たして本当によく反映できているか、自己批判的かつ内省的に注意深く観察しながら、限定的に適用しなければならない。このように、観察しながら注意深く限定的にデモル適用をすることを、俗に社会科学などの分野では「吟味」(ぎんみ)という。数理モデルの実用の際には、吟味が必要である。 しかし残念ながら、社会科学やその応用では、しばしば吟味は省略されることが、実業界やマスメディアなどで まかり通っている場合が往々にある。 たとえば2001年~2005年ころのアメリカ金融界は金融工学のブラック・ジョ-ルズ方程式に基づく仕組みなどを喧伝していたが、しかし米国金融がモデルの吟味を怠ったせいで杜撰な貸付をしたせいで、貸し金の回収不足になりサブプライム問題を起こすなど、杜撰な吟味不足によって世界経済に迷惑を及ぼす例もあった。 ===== 実際の戦闘力 ===== 上述のランチェスター法則は、あくまで参考程度の簡略的なモデルであり、実際の戦闘では適用の不可能・困難な場合も多いだろう。 なので、もし戦闘力をさらに詳細に分析するならば、兵員の規律や士気などの無形的要素を組み合わせなければならない。つまり、火力部隊の戦闘力は火砲とそれを操作する射撃要員の物量という有形的要素と、砲兵火力を発揮するための射撃の速度、精度、士気から判断される無形的要素から導き出すことができる。したがって100名の統制がとれていない武装した群衆と50名の規律ある戦闘部隊の間には戦闘員としての錬度、団結、そして士気という無形的要素に由来する戦闘力の格差が存在していると指摘できる。 また、戦闘は戦力の戦闘力の合計によってのみ左右されるのではなく、戦闘力を戦場に配置する戦闘陣によって規定される。 ==== 戦闘陣形 ==== 戦闘陣(Battle formation)は戦力が戦闘において連携を保つために形成する複数の部隊の一定の態勢である。戦力は彼我との位置関係から与えられる損害や得られる戦果が変化しうる。そもそも部隊は敵の方向に対して最大の戦闘力を発揮できるように部隊の正面を方向付ける。その基本となる戦闘陣形として第一に横陣がある。横陣は敵に対して正面を広く縦深を浅くなるように選択した隊形であり、特に火力を発揮するのに適した陣形である。この陣形の戦術的な特徴は部隊の脆弱な左右両側面と背面に敵が回りにくくすることを防ぐことにある。古代ギリシアのマケドニア軍で採用されていた戦闘陣は歩兵部隊の横陣の両翼に騎兵部隊を配置することで、中央の歩兵部隊の両翼の弱点を補っていた。また基本となる戦闘陣形には縦陣もある。これは正面に対して狭く縦深が深くなるようにした陣形であり、機動力を発揮するのに適した陣形である。この陣形には部隊の迅速な行軍や機動を容易にする特徴がある。速やかな戦場機動や中央突破を狙った突撃で有効であり、トラファルガーの海戦でイギリス軍がフランス軍の戦列に対する攻撃の際に選択されている。さらに斜行陣、鈎形陣、円陣、弾丸陣などの陣形があり、斜行陣は右翼または左翼の片方に兵力を集中的に配置した戦闘陣であり、また鈎形陣は片方の翼を横方向に配置した戦闘陣であり、両方ともに劣勢である場合に用いる戦闘陣である。円陣は全方向に対して部隊を配置する円形の戦闘陣であり、部隊の宿営や集結などに用いられる。弾丸陣は矢印のような形状の戦闘陣であり、先端に機甲部隊を配置して突撃などに用いられる。このような多様な戦闘陣は地形や敵情、彼我の戦闘力の格差などを考慮した上で選択されなければならない。 === 戦術の基本作業 === 戦術的知能の中核とは問題解決能力であり、これは自らが置かれている状況がどのようなものであるかという状況を判断する問題、我が選択することが可能な選択肢の中でどれが最善であるか意志を決定する問題、そして下された決定を実行するために作戦方針を作成する問題の三つに問題を区分することができる。 ==== 状況判断 ==== 状況判断の問題とは任務分析、地形判断、敵情判断を起点とし、敵の可能行動の列挙、味方の行動方針の列挙、各行動の戦術的分析、そして各々の分析の総合という思考過程に基づいて解決される。任務分析とは自分に与えられた任務の背景や本質を分析して達成すべき目標事項を明確化し、複数ある場合にはそれぞれの目標の優先順位を定める問題である。地形判断とは自分が置かれている地理的環境がどのようなものかを分析することである。この際に軍事地理学の知識を援用して戦闘地域を構成する地理的特性を解釈し、重要な地形やそこに至るための接近経路を明らかにする。敵情判断とは敵部隊の配置、装備や補給の状況、後方連絡線の方向などを分析し、敵がどのような戦闘行動を将来実施するかを検討することである。敵情判断では敵が行いうる全ての戦闘行動の全てを列挙し、蓋然性の観点からそれら行動の我にとっての効果や危険を明らかにする。 ==== 意思決定 ==== 意思決定とは状況判断に基づいて我の行動方針を決定することであり、可能的な状況について個々に分析し、それら分析を総合し、決心を下すという過程から成り立つ。実際に発生する可能性がある状況は彼我にとって実施可能な戦闘行動の組合せの数だけ存在する。これらの状況について個々に分析を加えることで個々の戦闘行動によって生じうる結果がどのようなものであるかを検討する。そして総合の過程でそれら分析によって得られた個々の戦闘行動を相互に比較しながら我にとって最も危険性の高い事態がどのような事態であるかを明らかにすることが可能となる。そして任務を達成するためにどのような戦闘行動を選択しなければならないかを限定することができる。最後の決心とは少数に限定したいくつかの作戦方針の中から一つを、その選択肢の危険性と不確実性を鑑みた上で決定することである。このようにして決心が確立されれば、作戦計画の策定作業に移ることができる。 ==== 作戦計画 ==== 作戦計画(Operations Plan, OPLAN)とは決心によって定められた作戦方針に基づいて策定される戦力運用の計画である。作戦計画とは作戦の目標、目標を達成するために採用される行動の方針、そしてその方針に従って作戦に参加する各部隊の任務と個々の行動計画から成立しており、指揮官には戦術的思考に基づいて作戦計画の骨子を作成する技能が求められる。作戦は計画、実行、評価の三つの段階を繰り返しながら進め、常に目的と手段が結合するように配慮しなければならない。作戦計画の立案の際に把握するべき個別の戦況を構成する要素は任務、敵、地形と気象、使用可能な部隊と支援、そして民事的考慮の頭文字を取ったMETT-TC(Mission, Enemy, Terrain and weather, Troop and support available, and Civil considerations)で端的に要約される。これら諸要素を踏まえた上で作戦の立案には次のような事柄が含まれなければならない。第一に作戦目標を具体的な軍事的状況として定義することである。攻勢作戦で敵の拠点を攻略する方針が示された場合、その具体的な達成条件は何を意味するかが定義されなければならず、例えば攻略目標の拠点やそれを守備する敵がどのような状態になれば攻略と見なすかを明確化する。その作戦目標によって作戦は攻勢作戦と防勢作戦、また偵察作戦、行軍作戦、治安作戦などの作戦の形態に分類することができる。 == 攻勢作戦 == 攻勢作戦とは敵を積極的に求めながらこれを撃滅しようとする作戦の形式であり、遭遇や複数に渡る攻撃から成り立っている作戦である。攻勢作戦では敵に対して決定的打撃を加えることを可能とする作戦であり、これは戦術の原則のひとつである主導の原則に基づけば常に実施を模索するべき作戦である。しかし攻勢作戦はしばしば戦力の経済的な使用を指示する節約の原則に反するほどに戦闘力を減耗させる危険性がある。攻勢作戦を実施するべき状況の例としては、戦力投射作戦を実施する状況、敵に対する我の戦闘力の圧倒的な優勢を確保している状況、戦略的な守勢において局地的な反撃を実施する必要がある状況などがある。ここでは攻勢作戦の基本的な形態とその指導の要領、そして作戦計画を立案する上での考慮事項について述べる。 === 攻勢作戦の形態 === 攻勢作戦で中心となる戦術的な行動は接敵機動、攻撃、戦果拡張、追撃の四つの段階がある。接敵機動とは戦闘を行うために敵との接触を試みる機動であり、彼我の接敵機動で生じる戦闘は遭遇戦と言う。攻撃とは攻勢作戦において敵を撃破または撃滅、地形の攻略または確保、もしくはそれら両方を行う攻勢作戦の戦闘行動である。攻撃はさらに戦闘行動の方式としては奇襲的な攻撃である伏撃、防御の態勢から攻撃に転換する逆襲、準備された防御に対する強襲、敵を有利な地点におびき出す誘致、敵に誤った状況を認識させる欺瞞がある。そして機動の方式から一翼もしくは両翼を駆使して敵の二正面以上を同時に攻撃する包囲、敵の正面を突破して分断する突撃、そして敵と接触せずに敵の後方や側面に回りこむことで敵に退却を強制する迂回に分けることができる。戦果拡張とは組織的な戦闘力を失った敵に対して攻撃の段階から継続的に行われる攻撃であり、攻撃によって得られた戦果を最大化する戦闘行動である。追撃とは退却する敵をさらに追尾して打撃を加える行動であり、戦場に敵を捕捉して追撃を加える方式と、戦場外に退却した敵に対する追撃の方式がある。 ====攻撃==== ====追撃==== === 攻勢作戦の指導 === 攻勢作戦を指導する際に攻撃発起点、前進軸、攻撃目標、前進限界、集結地点を調整することで行われる。攻撃発起点とは各部隊が攻撃のための前進を開始する際に出発する地点である。理想として敵に対して位置や行動が隠匿し、また戦力を防護することができることが望ましい。自然地形で攻撃発起のための適切な地形を望むことができないならば、攻撃陣地を準備することも手段に含まれる。前進軸は各攻撃部隊が前進の際に依拠する一般的な方向あり、戦場における計画的な機動を調整するものであり、状況図では矢印によって表示される。攻撃目標とは我の戦闘力を集中させる目標であり、敵の部隊または特定の地形がその対象となる。ただし地形が攻撃目標であるのに対して敵部隊を攻撃目標とする場合には攻撃目標を捕捉することが難しくなる。そして攻撃前進の終点は前進限界によって定められる。前進限界は攻撃部隊が攻撃前進を停止する段階を計画的に決定するものである。前進限界に到達した部隊は識別が容易な集結地点もしくは予備的に設定された代替集結地点に再集結させる。 === 攻勢作戦の計画 === 攻勢作戦を計画する上での着眼としては奇襲と集中、そして節度(Tempo)と大胆(Audacity)が重要となる。つまり、敵が予測した事態を回避し、戦力を集中させ、迅速な節度を以って大胆に前進させることが効果的な攻勢作戦を立案する上での基礎となる。そして攻勢作戦を状況に適合させるためにはまず情報作戦に基づいて戦場の状況を把握することが求められる。敵情については配置、装備、戦闘力、弱点、攻撃すべき目標、集結点、敵の後方連絡線、離隔した支援戦力、対空部隊、電子戦部隊、敵の情報網などであり、地形については地形の形状、気象の影響、攻撃に使用可能な経路の配置と数、攻撃の障害となる森林や河川などの地形について把握する必要がある。これらの状況を踏まえた上で与えられた任務とそれに対応する作戦目標、指揮官の意図、敵の配置や戦闘力などの敵情、攻撃目標、作戦開始時刻、各部隊の機動の方向性、攻撃のための戦闘陣、作戦の危険性、そして代替的な作戦計画を準備する。作戦が開始されれば、指揮官は我の戦闘力の消耗を確認しながら攻勢極限点を見極め、彼我の戦闘力の優劣が逆転しないよう注意する。一度攻勢極限点に到達したと判断されれば、指揮官は防御へ転換することを決断し、攻撃によって得られた戦果を保存するよう努めなければならない。 == 防勢作戦 == 防勢作戦とは時間的猶予の確保、戦力の経済的使用、または別の攻勢作戦を支援するために、敵の攻勢作戦を待ち受けてこれを破砕する作戦である。防勢作戦は戦力の劣勢を補うことを可能とする作戦であり、節約の原則に立脚した作戦方針である。しかし防勢作戦のみによって目標を達成することが困難であり、また戦闘の主導権を失う危険を伴う。防勢作戦を実施する状況の例としては、決定的に重要な地形の確保を維持しなければならない状況、敵による奇襲への対処、敵に対して我の戦闘力が総体的に劣勢である状況などがある。ここでは防勢作戦の形態、指導、そして作戦計画の立案について概説する。 === 防勢作戦の形態 === 防勢作戦で中心となる戦術的な行動には防御と後退行動がある。さらに防御は陣地防御と機動防御に分けられる。陣地防御とは逆襲を加えることを主眼に置いたものではなく、構築した陣地や要塞によって敵の攻撃を阻止する形式の防御である。防御では敵の攻撃を阻止し、また緊要地形を保全することを狙った横陣や円陣の防御陣地が準備され、して防御陣地の機能を強化することに主たる努力が集中されるために、後方に拘置される予備の戦力は逆襲ではなく防御戦闘で減耗した損害を補填するために使用される。また機動防御とは陣地に頼るのではなく、敵の攻撃に対して決定的な逆襲を加える防御の形式である。機動防御では敵の後方連絡線を捕捉することを可能とするように陣地の構築や打撃部隊の配備を準備することに労力を費やす。そして後退行動とは敵との距離を持つように機動する防御戦闘の方法である。後退行動では敵との接触を断つ離脱、敵の前進速度を低下させる遅滞、そして敵との距離を拡大させる離隔の三段階を組織的な連携の下で背面を敵に暴露する危険を最小限に抑える。 ==== 防御 ==== ==== 退却 ==== === 防勢作戦の指導 === 防勢作戦の指導では戦闘移行線、主戦場の設定、防御陣地、火力支援の調整、直接射撃の統制、退路を調整することで行われる。戦闘移行線とは戦力を戦闘態勢に移行させる判断を下す地理的な基準となる線である。戦闘移行線は主たる防御拠点の前方において設定される。戦闘移行線と防御拠点の間は主戦場であり、敵の攻撃を排除するために戦闘力を発揮する領域である。防御陣地とは敵の侵入と前進を阻む機能を持った構築物である。防勢作戦における火力支援の調整と直接射撃の統制とは火力の最適な配分を意味する。これはそれぞれの主戦場に対する射撃のために各種装備を配置する地点を決めることであり、またそれぞれの射撃がどの地域に責任を負うのかを明確に示すことである。そして退路を調整する際には戦闘を離脱した後に収容を実施する機能も備えた二次的な防御陣地との間の連絡線を指定しておく。 === 防勢作戦の計画 === 防勢作戦は通常において防御戦闘の計画的準備によって遂行される。しかし作戦行動は主導の原則に従って静態的な行動ばかりでなく動態的な行動が必要であり、防勢作戦の作戦方針を採用していたとしても敵の攻撃を排除した後に逆襲に転換することが検討されなければならない。その原則を踏まえた上で防勢作戦の計画にはいくつかの情報が必要である。敵の戦闘力や集結地点などの配置だけでなく、どの攻撃目標を選択するのか、そしてそれに対応する接近経路、攻撃方法がどのような状態であるのかを研究しなければならない。そのためには敵が慣習的にどのような作戦行動を選択しているかを分析する必要もある。例えば空挺部隊を使用した攻勢作戦に対する防勢作戦の場合では、陣地防御ではなく機動防御を準備しなければならない。なぜならば陣地防御とは固定された攻撃目標に対して接近する際に必ず地上において進路を妨げることができなければ有効ではない。空挺部隊による攻撃に対しては防空戦闘と敵部隊が戦闘展開してから迅速で組織的な逆襲を加えることが求められるのである。また幅広い正面に渡る正面攻撃に対する防御では複数の防御陣地によって組織化された陣地防御による攻撃の阻止と予備戦力による逆襲を準備することが必要である。 == 戦術用語 == *'''圧迫''' - 武力や権威で押さえつけること。 *'''隠蔽''' - 物事、特に機密事項となる軍事基地や新兵器などを隠すこと。 *'''迂回''' - ある場所を避けて、遠回りすること。 *'''運動''' - *'''{{Ruby|掩蔽|えんぺい}}''' - *'''会戦''' - 大規模な戦力を互いに準備し、行う戦闘のこと。 *'''内戦作戦''' - 敵軍に包囲される位置で作戦を展開すること。 *'''外線作戦''' - 敵軍を包囲する位置で作戦を展開すること。 *'''監視''' - 敵軍の行動を監視すること。 *'''機動''' - *'''逆襲''' - *'''持久戦''' - 自軍を持ち堪えさせることを目的とした戦闘のこと。 *'''警戒''' - *'''撃破''' - *'''決心''' - *'''決戦''' - *'''牽制''' - 敵軍を武力や兵数などで圧倒し、敵軍の行動の自由を奪うこと。 *'''後衛''' - *'''行軍''' - *'''攻撃極限点''' - 攻撃によって得られる優位の限界のこと。[[w:攻撃の限界点|攻撃の限界点]]とも。 *'''攻勢''' - 敵軍に対して攻撃すること。 *'''後方支援''' - 砲兵、航空機などで後方から前線を支援すること。 *'''作戦''' - *'''作戦目標''' - *'''指揮''' - *'''支隊''' - *'''遮蔽''' - *'''集結''' - *'''集中''' - *'''重心''' - 部隊を1つの地点に集結させ、圧倒的物量差で敵に攻撃すること。 *'''状況判断''' - *'''助攻''' - *陣地 *前衛 *戦果 *戦術 *戦場 *前哨 *戦線 *戦闘 *戦闘力 *遭遇戦 *側衛 *退却 *地形 *諜報 *追撃 *'''偵察''' - 敵軍、特に野営地などの状況を把握し、敵軍の兵数などを事前に知る為の行動のこと。 *展開 *突破 *背後連絡線 *兵站 *編制 *包囲 *防御 *防勢 *本攻 *摩擦 *命令 *陽動 *抑止 *連絡 == 脚注 == <references/> == 参考文献 == 戦術学の文献はそれほど流通していないために入手することは非常に難しい。一般に海外の戦術学の文献が入手しやすく、特に米陸軍省が一般公開している野戦教範(Field Manual)が研究を行う上では参考となる。また国内においては戦前に流通していた軍学校の教育や試験で使用する戦術学の教範、参考書、または問題集があり、それらを入手して参照することもできる。しかしながら、これらの教範類も一般的に入手することが難しい場合が多い。戦後に自衛隊で使用されている教範類は一般公開されていないものの、自衛隊関係者により発表された閲覧可能な論文を収録した論文集がある。例えば陸上自衛隊の幹部で構成された陸戦学会から出されている『陸戦研究』は国立国会図書館等で閲覧することが可能な戦術研究である。以下では主に書籍に限定した上で戦術研究の上で参考となる研究について解題を加えたものである。 *防衛大学校・防衛学研究会編『軍事学入門』(かや書房、2000年) :軍事学を概説した入門書であり、第3章の現代軍事力の態様は戦術研究の上で参考となる。 *松村劭『バトル・シミュレーション 戦術と指揮 命令の与え方・集団の動かし方』(文藝春秋、2005年) :戦術理論の基礎的事項を要約し、また答案を付与した練習問題が含まれている。 *高山信武『陸軍大学校の戦略・戦術教育』(芙蓉書房出版) :陸軍大学校での講義と戦術学の口頭試問の記録が含まれている。 *Field Manual No. 3-90, Tactics, Headquarters Department of the Army, 2001. :米陸軍で使用されている戦術学の教範類であり、理論的解説だけでなく戦史に基づいた解説も含まれている。本項目の執筆で最も参照した参考文献。 *Field Manual No. 100-5, Operations, Department of the Army, 1993. :作戦の基礎、攻勢作戦、防勢作戦について網羅的に概説した米陸軍の教範であり、理論的説明が豊富である。 {{stub}} [[Category:軍事学|せんしゆつかくにゆうもん]] gz4rdxmozx386s481km84ji5idcict8 C言語/文字と文字列 0 11665 205569 202745 2022-07-20T06:38:11Z 157.82.247.160 /* 文字と文字列の基本 */ wikitext text/x-wiki {{Nav}} == 文字と文字列の基本 == C言語には文字列を扱う機能が組み込まれていないので、文字列は文字の配列として定義されています。Cでは、文字配列を文字のリストではなく、文字列で表現することができ、末尾には自動的にヌル終端文字('\0')が追加されます。例えば、"String" という文字列を格納するには、次のように書きます。 <syntaxhighlight lang="C"> char string[7] = "String"; </syntaxhighlight> あるいは <syntaxhighlight lang="c"> char string[7] = { 'S', 't', 'r', 'i', 'n', 'g', '\0' }; </syntaxhighlight> 最初の例では、文字列の末尾にコンパイラによって自動的にヌル文字が付加されます。規約としてライブラリ関数は文字列の末尾にヌル文字('\0')が付加されることを想定しています。 後者の宣言では、個々の要素を示しているため、ヌル文字の終端を手動で追加する必要があります。 文字列は、必ずしも明示的な変数に代入する必要はありません。文字列は無名の文字列(文字列リテラルといいます)として直接作成し使用することができます(printf関数の第一引数など)。 特別に長い文字列を作成するには、文字列を複数のセクションに分割し、最初のセクションを引用符で閉じて、次の行で文字列を再開する必要があります(これも引用符で始まり、引用符で終わります)。 <syntaxhighlight lang="C"> char string[58] = "This is a very, very long " "string that requires two lines."; </syntaxhighlight> 文字列は、行末にバックスラッシュ文字を置くことで複数行にまたがることもできますが、この方法は非推奨です。 文字列処理ルーチンの便利なライブラリがありますので、別のヘッダーをインクルードすることで使用できます。 <syntaxhighlight lang="C"> #include <string.h> //新しいヘッダー </syntaxhighlight> この標準的な文字列ライブラリ <code>[[C言語/標準ライブラリ/文字列操作|<string.h>]]</code> は、文字列に対して様々な処理を行うことができます。 == 構文 == 文字定数(リテラル)は、<code>'p'</code>のように引用符(<code>'</code>)で囲まれ、指定された<code>char</code>の値の'''整数値'''にコンパイルされます。 文字定数の型は<code>const int</code>です。 文字列定数(リテラル)は、<code>"Hello world!"</code>のように二重引用符(<code>"</code>)で囲まれ、指定された<code>char</code>の値の配列にコンパイルされ、さらに文字列の終わりを示すヌル終端文字('\0')コードが付加されます。 文字列定数の型は<code>char const []</code>です。 === バックスラッシュ・エスケープについて === 文字列リテラルは、ソースコードに直接、改行などの制御文字や、文字列の中で特別な意味を持つ文字を埋め込んではいけません。 このような文字を文字列に含めるためには、次のようにバックスラッシュ・エスケープ<ref>JIS語では逆斜線表記</ref>を使用することができます。 なお、バックスラッシュを入力した場合、多くの日本語環境では 円マーク \ が表示されます。 {|class="sortable wikitable" |+ バックスラッシュ・エスケープと意味 |- ! バックスラッシュ・エスケープ !! 意味 |- | \n || 改行(New line)<br>現在の印字位置を次の行の先頭位置に移動する |- | \t || タブ(horizontal Tab)<br>次の水平タブ位置に移動する |- | \b || バックスペース(Backspace)<br>現在の行で前に移動する。先頭にある場合は不定。 |- | \r || キャリッジリターン(carriage Return)<br>現在の行の先頭位置に移動 |- | \f || ページフィード(Form Feed)<br>次の論理ページの最初に移動 |- | \' || シングルクォーテーション(single quotation mark)<br>一重引用符 |- | \" || ダブルクォーテーション(double quotation mark)<br>二重引用符 |- | \0 || ヌル文字(null)<br>空文字(実際は8進数表記の1ケース) |- | \\ || 円記号(\) |- | \? || クエスチョンマーク |- | \a || ベル音(Alert)<br>ベル音を鳴らす。印字位置は不変 |- | \xhh || 16進拡張(heXadecimal)<br>16進でhhのコードを持つ文字 |- | \ooo || 8進拡張(octal)<br>8進でoooのコードを持つ文字 |} === 文字列 === C言語では、char型の配列が、文字列を表現する際に使われる。 文字列を「""(ダブルクォーテーション)」で囲むと、その文字列を表現する配列となる。 文字列は「'\0'」( ヌル文字、 0x00 )で終わる。 ;配列を用いて文字列を扱う:<syntaxhighlight lang="C"> #include <stdio.h> int main(void) { const char str[] = "Hello, World!"; // char型のconstな配列strに文字列"Hello, World!"を格納する。 printf("%s\n", str); // strを表示する。 } </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang=text> Hello, World! </syntaxhighlight> 上の例では、配列strの値は次の表のようになる。 {|class="wikitable" ![0]!![1]!![2]!![3]!![4]!![5]!![6]!![7]!![8]!![9]!![10]!![11]!![12]!![13] |- |'H'||'e'||'l'||'l'||'o'||','||' '||'W'||'o'||'r'||'l'||'d'||'!'||'\0' |- |} また、同様の処理をポインタを用いて記述することができる。(ポインタについては詳しくはwikibooks『[[C言語/ポインタ]]』で述べる。いまの文字列の単元の段階では、とりあえず「ポインタ」と言うものが存在することだけを知っていればいい。) ;ポインタを用いて文字列を扱う:<syntaxhighlight lang="C"> #include <stdio.h> int main(void) { char *p = "Hello, World!"; //char型へのポインタpに文字列"Hello, World!"のアドレスを格納する。 printf("%s\n", p); //ポインタpが指す文字列を表示する。 } </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang=text> Hello, World! </syntaxhighlight> === 文字列の配列 === 複数の文字列を共通の名前でまとめて扱いたい場合、多次元の配列を用いる。 一番右の次元の要素数で、扱う文字列1個あたりの長さ(ヌル文字を含む)を指定し、残りの次元の要素数で、扱う文字列の数を指定する。 たとえば英数字10文字(終端の '\0' も含め)までの長さで、4単語までを格納できる用意したい場合、 :<syntaxhighlight lang=c> char words[4][10]; </syntaxhighlight> のようになる。 つまり構文は、 :<syntaxhighlight lang=c> char 配列変数名[文字列の個数][文字列1個あたりの長さ]; </syntaxhighlight> である。 文字列の配列のある文字列にアクセスしたい場合、配列の添字に一番右の次元を除く次元を指定する。 :<syntaxhighlight lang="C"> #include <stdio.h> int main(void) { char num[3][6] = {"zero", "one", "two"}; printf("%s \n", num[1]); //文字列の配列の配列の[i]番目の文字列を表示する。 } </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang=text> one </syntaxhighlight> 上記例のように、char 宣言時の配列は2次元配列の書式であっても(たとえばnum[3][6] のような書式)、 printfなど利用時には次元が一段階だけ下がるので書式は1次元配列でアクセスすることになるので(たとえばnum[1] のような書式)、間違えないように注意せよ(初心者はよく間違えてエラーになり悩む)。 ;[https://paiza.io/projects/8ulRTEyutT4inCp5cJGUYw 文字列の配列の配列の使用例]:<syntaxhighlight lang="C"> #include <stdio.h> int main(void) { char num[][6] = {//文字列の配列に0から9までの数字の英語の名前を格納する。 "zero", "one", "two", "three", "four", "five", "six", "seven", "eight", "nine"}; for (int i = 0; i < sizeof num / sizeof *num; i++) printf("%s ", num[i]); //文字列の配列の配列の[i]番目の文字列を表示する。 printf("\n"); } </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang=text> zero one two three four five six seven eight nine </syntaxhighlight> また、同様の処理をポインタの配列を用いて記述することができる。 <syntaxhighlight lang="C"> int main(void) { char *p[3] = { "zero", "one", "two" } ; printf("%s\n", p[1]); //文字列へのポインタから[i]番目の文字列を表示する。 } </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang=text> one </syntaxhighlight> 上記コードのようにポインタ形式で <code>*p[3]</code> で定義した場合の数値「3」の意味は、文字配列の要素数である(文字列長ではない)。 なので、たとえば"one"を"onevvvvvvvvvvvv"のように長くしても、コンパイラの許可する範囲内の長さならエラーにならない。 また、当然だが要素数を足していって "three", "four" などと足していくと、宣言時の3個ぶんの確保をオーバーするのでエラーになる。 ともかく上記コードのようにポインタ形式で宣言することにより、宣言時の書式の次元とprintfなど利用時の書式が次元が一致するので、用途によっては、ポインタ方式で宣言するのもよいだろう。 ;[https://paiza.io/projects/_xV2C1X3MugqDZBCu2-WHw?language=c 文字列へのポインタの配列の使用例]:<syntaxhighlight lang="C"> #include <stdio.h> int main(void) { char *p[10] = {//ポインタの配列に0から9までの数字の英語の名前を格納する。 "zero", "one", "two", "three", "four", "five", "six", "seven", "eight", "nine"}; for (int i = 0; i < sizeof p / sizeof *p; i++) printf("%s ", p[i]); //文字列へのポインタから[i]番目の文字列を表示する。 printf("\n"); } </syntaxhighlight> === 文字列操作の関数 === {{See also|[[C言語/標準ライブラリ/string.h]]}} == ワイド文字列 == C言語はワイド文字列をサポートしています。ワイド文字列は<code>wchar_t</code>型の配列として定義され、(少なくとも)16ビットの値を持ちます。文字列の前にLを付けて次のように書きます。 :<syntaxhighlight lang="C"> wchar_t *p = L "Hello world!"; </syntaxhighlight> この機能により、256種類以上の文字が必要な文字列が可能になります(可変長の<code>char</code>文字列も使用可能です)。これらの文字列はゼロ値の<code>wchar_t</code>で終わります。これらの文字列は<code><string.h></code>の関数ではサポートされていません。その代わり、<code><wchar.h></code>で宣言された独自の関数を持っています。 == char16_t, char32_t型 == ワイド文字は、型のサイズや符号化形式が規定されておらずプラットフォームおよび処理系依存で、Unicodeが普及するにつれて移植性の問題が表面化してきました。 ISO/IEC 9899:2011(通称C11) では、新たに2つの文字型 <code>char16_t</code> と <code>char32_t</code> が導入されました<ref name="c11-fopen-x-mode">{{cite book | url=http://www.open-std.org/jtc1/sc22/wg14/www/docs/n1570.pdf | title= C11: WG14/N1570 Committee Draft — April 12, 2011 ISO/IEC 9899:201x | page = 398,§ 7.28 ''Unicode utilities'' | publisher = ISO/IEC | date = 2011-04-12 }}</ref>。 これらはそれぞれ UTF-16 と UTF-32 を内部表現とします。 <code>u'c'</code> や <code>U'c'</code> あるいは <code>u"str"</code> や <code>U"str"</code> のように小文字の <code>u</code> あるいは大文字の <code>U</code> を前置することで、それぞれ <code>char16_t</code> と <code>char32_t</code> の文字定数・文字列リテラルを表現します。 また、<code>u8</code> を前置することで UTF-8 の文字列リテラルを表現します<ref>[https://ja.cppreference.com/w/cpp/language/string_literal 文字列リテラル - cppreference.com]</ref>が、<code>char8_t</code> 型は存在せず、従来の <code>char</code> 型で代用します。 <code>char16_t</code>および<code>char32_t</code>はそれぞれ<code>uint_least16_t</code>および<code>uint_least32_t</code>のtypedefエイリアスです。 <code>char16_t</code>型のサイズは16ビットよりも大きい可能性があるが、格納される値は16ビット幅です<ref>[https://ja.cppreference.com/w/c/string/multibyte/char16_t char16_t - cppreference.com]</ref>。同様に、<code>char32_t</code>型のサイズは32ビットよりも大きい可能性があるが、格納される値は32ビット幅である<ref>[https://ja.cppreference.com/w/c/string/multibyte/char32_t char32_t - cppreference.com]</ref>。 ; [https://paiza.io/projects/r7WpP0MBwxWq3vcYWaMQow?language=c char16_t の使用例] : <syntaxhighlight lang="C"> #include <stdio.h> #include <uchar.h> int main(void) { char16_t c16s[] = u"👿"; // または u"\U0001F47F" printf("%zu UTF-16 code units: [ ", sizeof c16s / sizeof *c16s); for (size_t n = 0; n < sizeof c16s / sizeof *c16s; n++) printf("%#x ", c16s[n]); printf("]\n"); } </syntaxhighlight> ; 実行結果 : <syntaxhighlight lang=text> 3 UTF-16 code units: [ 0xd83d 0xdc7f 0 ] </syntaxhighlight> == 文字エンコーディング == <code>char</code>と<code>wchar_t</code>がどのような文字エンコーディングを表すかは、C言語の標準では規定されていませんが、0x00と0x0000という値は文字列の終わりを示しており文字ではありません。 文字エンコーディングの影響を直接受けるのは、入力コードと出力コードです。その他のコードはあまり影響を受けないはずです<ref>この仮定でプロクラムを作るとエンコーディングの種類によっては(例えば ShiftJISでは)1つの文字の2バイト目に '\ の様なエスケープ文字が現れた時、正しくエンコーディング出来ず、場合によってはバッファオーバーフロー等を引き起こします。</ref>。また、ソースコードに文字列を書き込めるようにするためには、エディターもエンコーディングに対応していなければならない。 符号化方式には大きく分けて3種類あります。 * 1文字に1バイト。通常はASCIIをベースにしています。文字数は255文字までで、これに0の終端文字を加えたものになります。 * 可変長の<code>char</code>文字列で、255種類以上の文字が使用できます。このような文字列は、通常の<code>char</code>ベースの配列として書かれます。これらのエンコーディングは通常ASCIIベースで、UTF-8やShiftJISなどがその例です。 * ワイド文字列。<code>wchar_t</code>の値の配列です。UTF-16は最も一般的なエンコーディングで、可変長であるため、1つの文字が2つの<code>wchar_t</code>になることもあります。 ** ワイド文字列にUTF-16を選んでしまった場合<ref>WindowsやJavaが該当します。</ref>、[[W:サロゲートペア|サロゲートペア]]の存在が問題になります。サロゲートペアは一部の文字を16bit整数'''2個'''で表す機能で、1文字が<code>wchar_t</code>の配列の要素に対応する前提が崩れていまいます。典型的なサロゲートペアでエンコードされた文字にemoji(👿など)があります。 == 文字列をあつかうユーザ定義関数 == ユーザ定義関数の引数に文字列を使いたい場合、例えば下記のようになる。(「ユーザ定義関数」とは何かについては、詳しくはwikibooks『[[C言語/関数]]』で解説する。とりあえず現段階では、ユーザ定義関数とは、よく使いそうな処理をまとめたものである、とだけ知っておけばいい。) ;[https://paiza.io/projects/bp_AzC25Mx-i3bvJg91aRA?language=c 例]:<syntaxhighlight lang="C"> #include <stdio.h> #include <string.h> // ユーザー定義の文字列を引数とする関数 void test(const char s[]) { puts(s); } int main(void) { char s[20] = "Never used"; strcpy(s, "test"); // 文字列をコピーする標準ライブラリー関数 printf("char 関数の実験\n"); test(s); test(s); } </syntaxhighlight> ; 実行結果 : <syntaxhighlight lang=text> 文字列をあつかうユーザ定義関数の実験 test test </syntaxhighlight> : 文字列は配列であるので、関数の定義側の引数も、配列またはポインタにする必要がある。 :; 註記:関数宣言で、 ::;引数を要素数を明示:<syntaxhighlight lang="C" inline>void test(const char s[20]) {</syntaxhighlight> :::としても、呼出し側で宣言の要素数を超える文字配列を渡しても標準C言語としてはエラーの対象ではなく、警告されることもないので、'''間違った期待'''をさせてしまわないよう ::;引数を要素数を明示しない:<syntaxhighlight lang="C" inline>void test(const char s[]) {</syntaxhighlight> :::とすべきです。 なお、main関数中の文字列変数の定義でポインタを使ったか配列を使ったかを覚える必要はなく、 たとえば下記コードのようにmain関数では配列宣言で、ユーザ定義側でポインタ宣言をしても良い。 ;[https://paiza.io/projects/szW6xBhi-E97vFfaC2hXOg?language=c 例]:<syntaxhighlight lang="C"> #include <stdio.h> #include <string.h> // ユーザー定義の文字列を引数とする関数 void test(const char *s) { puts(s); } int main(void) { char s[20] = "Never used"; strcpy(s, "test2"); // 文字列をコピーする標準ライブラリー関数 printf("文字列をあつかうユーザ定義関数の実験2\n"); test(s); test(s); } </syntaxhighlight> ; 実行結果 : <syntaxhighlight lang=text> 文字列をあつかうユーザ定義関数の実験2 test2 test2 </syntaxhighlight> == 脚註 == <references/> [[Category:C言語|もしともしれつ]] t69mgdk3rexgx69rpn1aibdtdcarkui 205572 205569 2022-07-20T07:12:24Z Ef3 694 語尾の統一 wikitext text/x-wiki {{Nav}} == 文字と文字列の基本 == C言語には文字列を扱う機能が組み込まれていないので、文字列は文字の配列として定義されています。Cでは、文字配列を文字のリストではなく、文字列で表現することができ、末尾には自動的にヌル終端文字('\0')が追加されます。例えば、"String" という文字列を格納するには、次のように書きます。 <syntaxhighlight lang="C"> char string[] = "String"; </syntaxhighlight> あるいは <syntaxhighlight lang="c"> char string[] = { 'S', 't', 'r', 'i', 'n', 'g', '\0' }; </syntaxhighlight> 最初の例では、文字列の末尾にコンパイラによって自動的にヌル文字が付加されます。規約としてライブラリ関数は文字列の末尾にヌル文字('\0')が付加されることを想定しています。 後者の宣言では、個々の要素を示しているため、ヌル文字の終端を手動で追加する必要があります。 文字列は、必ずしも明示的な変数に代入する必要はありません。文字列は無名の文字列(文字列リテラルといいます)として直接作成し使用することができます(printf関数の第一引数など)。 特別に長い文字列を作成するには、文字列を複数のセクションに分割し、最初のセクションを引用符で閉じて、次の行で文字列を再開する必要があります(これも引用符で始まり、引用符で終わります)。 <syntaxhighlight lang="C"> char string[] = "This is a very, very long " "string that requires two lines."; </syntaxhighlight> 文字列は、行末にバックスラッシュ文字を置くことで複数行にまたがることもできますが、この方法は非推奨です。 文字列処理ルーチンの便利なライブラリがありますので、別のヘッダーをインクルードすることで使用できます。 <syntaxhighlight lang="C"> #include <string.h> //新しいヘッダー </syntaxhighlight> この標準的な文字列ライブラリ <code>[[C言語/標準ライブラリ/文字列操作|<string.h>]]</code> は、文字列に対して様々な処理を行うことができます。 == 構文 == 文字定数(リテラル)は、<code>'p'</code>のように引用符(<code>'</code>)で囲まれ、指定された<code>char</code>の値の'''整数値'''にコンパイルされます。 文字定数の型は<code>const int</code>です。 文字列定数(リテラル)は、<code>"Hello world!"</code>のように二重引用符(<code>"</code>)で囲まれ、指定された<code>char</code>の値の配列にコンパイルされ、さらに文字列の終わりを示すヌル終端文字('\0')コードが付加されます。 文字列定数の型は<code>char const []</code>です。 === バックスラッシュ・エスケープについて === 文字列リテラルは、ソースコードに直接、改行などの制御文字や、文字列の中で特別な意味を持つ文字を埋め込んではいけません。 このような文字を文字列に含めるためには、次のようにバックスラッシュ・エスケープ<ref>JIS語では逆斜線表記</ref>を使用することができます。 なお、バックスラッシュを入力した場合、多くの日本語環境では 円マーク \ が表示されます。 {|class="sortable wikitable" |+ バックスラッシュ・エスケープと意味 |- ! バックスラッシュ・エスケープ !! 意味 |- | \n || 改行(New line)<br>現在の印字位置を次の行の先頭位置に移動する |- | \t || タブ(horizontal Tab)<br>次の水平タブ位置に移動する |- | \b || バックスペース(Backspace)<br>現在の行で前に移動します。先頭にある場合は不定。 |- | \r || キャリッジリターン(carriage Return)<br>現在の行の先頭位置に移動 |- | \f || ページフィード(Form Feed)<br>次の論理ページの最初に移動 |- | \' || シングルクォーテーション(single quotation mark)<br>一重引用符 |- | \" || ダブルクォーテーション(double quotation mark)<br>二重引用符 |- | \0 || ヌル文字(null)<br>空文字(実際は8進数表記の1ケース) |- | \\ || 円記号(\) |- | \? || クエスチョンマーク |- | \a || ベル音(Alert)<br>ベル音を鳴らす。印字位置は不変 |- | \xhh || 16進拡張(heXadecimal)<br>16進でhhのコードを持つ文字 |- | \ooo || 8進拡張(octal)<br>8進でoooのコードを持つ文字 |} === 文字列 === C言語では、char型の配列が、文字列を表現する際に使われます。 文字列を「""(ダブルクォーテーション)」で囲むと、その文字列を表現する配列となります。 文字列は「'\0'」( ヌル文字、 0x00 )で終わります。 ;配列を用いて文字列を扱う:<syntaxhighlight lang="C"> #include <stdio.h> int main(void) { const char str[] = "Hello, World!"; // char型のconstな配列strに文字列"Hello, World!"を格納します。 printf("%s\n", str); // strを表示します。 } </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang=text> Hello, World! </syntaxhighlight> 上の例では、配列strの値は次の表のようになります。 {|class="wikitable" ![0]!![1]!![2]!![3]!![4]!![5]!![6]!![7]!![8]!![9]!![10]!![11]!![12]!![13] |- |'H'||'e'||'l'||'l'||'o'||','||' '||'W'||'o'||'r'||'l'||'d'||'!'||'\0' |- |} また、同様の処理をポインタを用いて記述することができます。 {{See also|C言語/ポインタ}} ;ポインタを用いて文字列を扱う:<syntaxhighlight lang="C"> #include <stdio.h> int main(void) { char *p = "Hello, World!"; //char型へのポインタpに文字列"Hello, World!"のアドレスを格納します。 printf("%s\n", p); //ポインタpが指す文字列を表示します。 } </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang=text> Hello, World! </syntaxhighlight> === 文字列の配列 === 複数の文字列を共通の名前でまとめて扱いたい場合、多次元の配列を用います。 一番右の次元の要素数で、扱う文字列1個あたりの長さ(ヌル文字を含む)を指定し、残りの次元の要素数で、扱う文字列の数を指定します。 たとえば英数字10文字(終端の '\0' も含め)までの長さで、4単語までを格納できる用意したい場合、 :<syntaxhighlight lang=c> char words[4][10]; </syntaxhighlight> のようになります。 つまり構文は、 :<syntaxhighlight lang=c> char 配列変数名[文字列の個数][文字列1個あたりの長さ]; </syntaxhighlight> です。 文字列の配列のある文字列にアクセスしたい場合、配列の添字に一番右の次元を除く次元を指定します。 :<syntaxhighlight lang="C"> #include <stdio.h> int main(void) { char num[3][6] = {"zero", "one", "two"}; printf("%s \n", num[1]); //文字列の配列の配列の[i]番目の文字列を表示します。 } </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang=text> one </syntaxhighlight> 上記例のように、char 宣言時の配列は2次元配列の書式であっても(たとえばnum[3][6] のような書式)、 printfなど利用時には次元が一段階だけ下がるので書式は1次元配列でアクセスすることになるので(たとえばnum[1] のような書式)、間違えないように注意せよ(初心者はよく間違えてエラーになり悩む)。 ;[https://paiza.io/projects/8ulRTEyutT4inCp5cJGUYw 文字列の配列の配列の使用例]:<syntaxhighlight lang="C"> #include <stdio.h> int main(void) { char num[][6] = {//文字列の配列に0から9までの数字の英語の名前を格納します。 "zero", "one", "two", "three", "four", "five", "six", "seven", "eight", "nine"}; for (int i = 0; i < sizeof num / sizeof *num; i++) printf("%s ", num[i]); //文字列の配列の配列の[i]番目の文字列を表示します。 printf("\n"); } </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang=text> zero one two three four five six seven eight nine </syntaxhighlight> また、同様の処理をポインタの配列を用いて記述することができます。 <syntaxhighlight lang="C"> int main(void) { char *p[3] = { "zero", "one", "two" } ; printf("%s\n", p[1]); //文字列へのポインタから[i]番目の文字列を表示します。 } </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang=text> one </syntaxhighlight> 上記コードのようにポインタ形式で <code>*p[3]</code> で定義した場合の数値「3」の意味は、文字配列の要素数であります(文字列長ではないです)。 なので、たとえば"one"を"onevvvvvvvvvvvv"のように長くしても、コンパイラの許可する範囲内の長さならエラーになりません。 また、当然だが要素数を足していって "three", "four" などと足していくと、宣言時の3個ぶんの確保をオーバーするのでエラーになります。 ともかく上記コードのようにポインタ形式で宣言することにより、宣言時の書式の次元とprintfなど利用時の書式が次元が一致するので、用途によっては、ポインタ方式で宣言するのもよいでしょう。 ;[https://paiza.io/projects/_xV2C1X3MugqDZBCu2-WHw?language=c 文字列へのポインタの配列の使用例]:<syntaxhighlight lang="C"> #include <stdio.h> int main(void) { char *p[10] = {//ポインタの配列に0から9までの数字の英語の名前を格納します。 "zero", "one", "two", "three", "four", "five", "six", "seven", "eight", "nine"}; for (int i = 0; i < sizeof p / sizeof *p; i++) printf("%s ", p[i]); //文字列へのポインタから[i]番目の文字列を表示します。 printf("\n"); } </syntaxhighlight> === 文字列操作の関数 === {{See also|[[C言語/標準ライブラリ/string.h]]}} == ワイド文字列 == C言語はワイド文字列をサポートしています。ワイド文字列は<code>wchar_t</code>型の配列として定義され、(少なくとも)16ビットの値を持ちます。文字列の前にLを付けて次のように書きます。 :<syntaxhighlight lang="C"> wchar_t *p = L "Hello world!"; </syntaxhighlight> この機能により、256種類以上の文字が必要な文字列が可能になります(可変長の<code>char</code>文字列も使用可能です)。これらの文字列はゼロ値の<code>wchar_t</code>で終わります。これらの文字列は<code><string.h></code>の関数ではサポートされていません。その代わり、<code><wchar.h></code>で宣言された独自の関数を持っています。 == char16_t, char32_t型 == ワイド文字は、型のサイズや符号化形式が規定されておらずプラットフォームおよび処理系依存で、Unicodeが普及するにつれて移植性の問題が表面化してきました。 ISO/IEC 9899:2011(通称C11) では、新たに2つの文字型 <code>char16_t</code> と <code>char32_t</code> が導入されました<ref name="c11-fopen-x-mode">{{cite book | url=http://www.open-std.org/jtc1/sc22/wg14/www/docs/n1570.pdf | title= C11: WG14/N1570 Committee Draft — April 12, 2011 ISO/IEC 9899:201x | page = 398,§ 7.28 ''Unicode utilities'' | publisher = ISO/IEC | date = 2011-04-12 }}</ref>。 これらはそれぞれ UTF-16 と UTF-32 を内部表現とします。 <code>u'c'</code> や <code>U'c'</code> あるいは <code>u"str"</code> や <code>U"str"</code> のように小文字の <code>u</code> あるいは大文字の <code>U</code> を前置することで、それぞれ <code>char16_t</code> と <code>char32_t</code> の文字定数・文字列リテラルを表現します。 また、<code>u8</code> を前置することで UTF-8 の文字列リテラルを表現します<ref>[https://ja.cppreference.com/w/cpp/language/string_literal 文字列リテラル - cppreference.com]</ref>が、<code>char8_t</code> 型は存在せず、従来の <code>char</code> 型で代用します。 <code>char16_t</code>および<code>char32_t</code>はそれぞれ<code>uint_least16_t</code>および<code>uint_least32_t</code>のtypedefエイリアスです。 <code>char16_t</code>型のサイズは16ビットよりも大きい可能性があるが、格納される値は16ビット幅です<ref>[https://ja.cppreference.com/w/c/string/multibyte/char16_t char16_t - cppreference.com]</ref>。同様に、<code>char32_t</code>型のサイズは32ビットよりも大きい可能性があるが、格納される値は32ビット幅である<ref>[https://ja.cppreference.com/w/c/string/multibyte/char32_t char32_t - cppreference.com]</ref>。 ; [https://paiza.io/projects/r7WpP0MBwxWq3vcYWaMQow?language=c char16_t の使用例] : <syntaxhighlight lang="C"> #include <stdio.h> #include <uchar.h> int main(void) { char16_t c16s[] = u"👿"; // または u"\U0001F47F" printf("%zu UTF-16 code units: [ ", sizeof c16s / sizeof *c16s); for (size_t n = 0; n < sizeof c16s / sizeof *c16s; n++) printf("%#x ", c16s[n]); printf("]\n"); } </syntaxhighlight> ; 実行結果 : <syntaxhighlight lang=text> 3 UTF-16 code units: [ 0xd83d 0xdc7f 0 ] </syntaxhighlight> == 文字エンコーディング == <code>char</code>と<code>wchar_t</code>がどのような文字エンコーディングを表すかは、C言語の標準では規定されていませんが、0x00と0x0000という値は文字列の終わりを示しており文字ではありません。 文字エンコーディングの影響を直接受けるのは、入力コードと出力コードです。その他のコードはあまり影響を受けないはずです<ref>この仮定でプロクラムを作るとエンコーディングの種類によっては(例えば ShiftJISでは)1つの文字の2バイト目に '\ の様なエスケープ文字が現れた時、正しくエンコーディング出来ず、場合によってはバッファオーバーフロー等を引き起こします。</ref>。また、ソースコードに文字列を書き込めるようにするためには、エディターもエンコーディングに対応していなければなりません。 符号化方式には大きく分けて3種類あります。 * 1文字に1バイト。通常はASCIIをベースにしています。文字数は255文字までで、これに0の終端文字を加えたものになります。 * 可変長の<code>char</code>文字列で、255種類以上の文字が使用できます。このような文字列は、通常の<code>char</code>ベースの配列として書かれます。これらのエンコーディングは通常ASCIIベースで、UTF-8やShiftJISなどがその例です。 * ワイド文字列。<code>wchar_t</code>の値の配列です。UTF-16は最も一般的なエンコーディングで、可変長であるため、1つの文字が2つの<code>wchar_t</code>になることもあります。 ** ワイド文字列にUTF-16を選んでしまった場合<ref>WindowsやJavaが該当します。</ref>、[[W:サロゲートペア|サロゲートペア]]の存在が問題になります。サロゲートペアは一部の文字を16bit整数'''2個'''で表す機能で、1文字が<code>wchar_t</code>の配列の要素に対応する前提が崩れていまいます。典型的なサロゲートペアでエンコードされた文字にemoji(👿など)があります。 == 文字列をあつかうユーザ定義関数 == ユーザ定義関数の引数に文字列を使いたい場合、例えば下記のようになります。 {{See also|C言語/関数}} ;[https://paiza.io/projects/bp_AzC25Mx-i3bvJg91aRA?language=c 例]:<syntaxhighlight lang="C"> #include <stdio.h> #include <string.h> // ユーザー定義の文字列を引数とする関数 void test(const char s[]) { puts(s); } int main(void) { char s[20] = "Never used"; strcpy(s, "test"); // 文字列をコピーする標準ライブラリー関数 printf("char 関数の実験\n"); test(s); test(s); } </syntaxhighlight> ; 実行結果 : <syntaxhighlight lang=text> 文字列をあつかうユーザ定義関数の実験 test test </syntaxhighlight> : 文字列は配列であるので、関数の定義側の引数も、配列またはポインタにする必要があります。 :; 註記:関数宣言で、 ::;引数を要素数を明示:<syntaxhighlight lang="C" inline>void test(const char s[20]) {</syntaxhighlight> :::としても、呼出し側で宣言の要素数を超える文字配列を渡しても標準C言語としてはエラーの対象ではなく、警告されることもないので、'''間違った期待'''をさせてしまわないよう ::;引数を要素数を明示しない:<syntaxhighlight lang="C" inline>void test(const char s[]) {</syntaxhighlight> :::とすべきです。 なお、main関数中の文字列変数の定義でポインタを使ったか配列を使ったかを覚える必要はなく、 たとえば下記コードのようにmain関数では配列宣言で、ユーザ定義側でポインタ宣言をしても良い。 ;[https://paiza.io/projects/szW6xBhi-E97vFfaC2hXOg?language=c 例]:<syntaxhighlight lang="C"> #include <stdio.h> #include <string.h> // ユーザー定義の文字列を引数とする関数 void test(const char *s) { puts(s); } int main(void) { char s[20] = "Never used"; strcpy(s, "test2"); // 文字列をコピーする標準ライブラリー関数 printf("文字列をあつかうユーザ定義関数の実験2\n"); test(s); test(s); } </syntaxhighlight> ; 実行結果 : <syntaxhighlight lang=text> 文字列をあつかうユーザ定義関数の実験2 test2 test2 </syntaxhighlight> == 脚註 == <references/> [[Category:C言語|もしともしれつ]] m5om8g6j2h72c6qw082vzk5bm79tstq JavaScript/関数 0 13862 205525 201302 2022-07-19T12:17:59Z Ef3 694 語尾の統一 wikitext text/x-wiki {{Nav}} '''[[w:ラムダ計算|関数]]'''(かんすう、''function'')他の言語のサブルーチンやプロシージャと類似したサブプログラムです。JavaScriptでは関数もオブジェクト( Functionオブジェクト )であり[[w:第一級関数|第一級関数]]です<ref>このことから、JavaScriptを関数型言語とされることもありますが、主要な制御構造が式ではないので一般的な認識ではありません。</ref>。 == 概要 == 関数は、0個以上のパラメータを受け取り、1つの戻り値を返す(あるいは返しません)プログラムの実行単位です。 多くのプログラム言語では、構文の一部として提供されている「命令」や「組込み関数」で入出力や数値演算などの機能を提供しますが、JavaScriptでは標準組込みクラスとホスト環境の提供するオブジェクトがその役割を担います。 またユーザーが自分で必要な関数やオブジェクトを定義できます。 JavaScriptの関数は function文を使って定義・作成します。 ;JavaScriptにおける関数定義の構文:<syntaxhighlight lang="JavaScript"> function 関数名(引数1, 引数2) { /* 処理内容; */ [return [ 戻り値 ];] } </syntaxhighlight> ;JavaScriptでのコード例:<syntaxhighlight lang="JavaScript"> function /*足し算*/ add(a, b) { const sum = a + b; return sum; } console.log(typeof add) // function console.log(add.toString()) // コメントを含め関数本体 const three = add(1, 2); // 1 + 2 console.log(three); // 3 </syntaxhighlight> 関数は、定義すると関数名を名前とする変数に保持されます。 関数は使用の際この変数を介し使われます<ref>グローバル関数の正体は、グローバルオブジェクト(windowやglobal)のメソッド、グローバル変数はグレーバルオブジェクトのプロパティです</ref>。 関数を呼び出すには、add(1, 2)のように関数の名前の後に()を付けて、()の中に引数として関数に渡す値を入れます。つまり :<syntaxhighlight lang="JavaScript"> 関数名([引数1[,引数2[..., 引数n]]]) </syntaxhighlight> を呼出し元のコードで記述するだけです。 なお、上記の関数の内容は数値''a'', ''b''を受け取り、''a''と''b''を足した結果''sum''を返すadd関数の例です。''a''や''b''のように関数が受け取るデータを'''[[w:引数|引数]]'''(ひきすう、''parameter'')といいます。 作成した関数が計算結果などを返す場合には、return文を使って返します。return文によって、return文の直後にある値を、呼び出し元の関数に返します。また、その値を'''戻り値'''(もどりち、''return value'')といいます。上記コード例の場合なら ''sum'' が戻り値です。 JavaScriptにかぎらずC言語などでも一般に、あるユーザー定義関数のreturn文が実行されると、制御が呼び出し元のコードに移るため、そのユーザー定義関数のreturn文以降のコードは実行されません。 上記コード例の場合、関数 add が呼び出されると、1は''a''、2は''b''に代入されて、関数の本体が実行され、足し算の結果が返されます。 ''a''や''b''のように関数が受取る引数を'''仮引数'''(かりひきすう、''parameter'')、1や2のように関数呼出しに渡される引数を'''実引数'''(じつひきすう、''argument'')と呼びます。 == 数学関数 == 三角関数など、いくつかの数学の関数は、たとえばコサイン関数を呼び出したい場合には、 <syntaxhighlight lang="JavaScript"> Math.cos(引数) </syntaxhighlight> のようにして使います。 なお、引数の単位はラジアンです。たとえば <syntaxhighlight lang="JavaScript"> console.log(Math.cos(3.141)); </syntaxhighlight> なら、結果は -0.9999998243 くらいになります。 定義・作成の必要は無く、最初から用意されています。 これらの Math.〇〇 といった数学関数は、形式的には、Mathオブジェクトに所属する「メソッド」といわれる処理を呼び出しています(メソッドは関数プロパティとも呼ばれます)。 たとえば Math.cos なら、Mathオブジェクトのcosメソッドを呼び出すという形式になっています。 Mathオブジェクトには円周率などの定数もプロパティとして用意されています。 <syntaxhighlight lang="JavaScript"> console.log(Math.cos(Math.PI)); </syntaxhighlight> は、結果は正しく -1 を返します。 なお、Mathオブジェクトのメソッドは、インスタンスメソッドではなく静的メソッドなのでMathオブジェクトをコンストラクタとして new 演算子を適用してはなりません。 == 関数式 == {{See also|[[JavaScript/Function|Function]]}} JavaScriptにおける関数は'''[[w:オブジェクト (プログラミング)|オブジェクト]]'''(''object'')の一種であり、[[JavaScript/Array|Array]]オブジェクトや[[JavaScript/String|String]]オブジェクトなど、他のオブジェクトと同じように操作できます。 ;構文:<syntaxhighlight lang="javascript"> function(引数1[,引数2[,引数3]..[,引数n]]){ // 処理内容 return 戻り値; } </syntaxhighlight> ;[https://paiza.io/projects/p-ubKX2MrL3rvwWcg-TQhA?language=javascript コード例]:<syntaxhighlight lang="javascript"> var add = function(a, b) { return a + b }; function fsub() { return function(a, b) { return a - b } } var sub = fsub() console.log(`add(1, 1) = ${add(1, 1)} add.name = "${add.name}" sub(1, 1) = ${sub(1, 1)} sub.name = "${sub.name}"`) </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang="javascript"> add(1, 1) = 2 add.name = "add" sub(1, 1) = 0 sub.name = "" </syntaxhighlight> : 関数式では関数本体の関数名は省略可能で、省略された場合に関数式がスカラ変数の初期値あるいはスカラ変数に代入されていた場合 Function.nameはスカラ変数の変数名になります。 : 関数の戻り値で関数式を返した場合、Function.nameは "" となります。 関数式の呼出すときは、一般の関数と同様に呼出し元で {{code|()}}(関数呼出し演算子)を使います。 ;構文:<syntaxhighlight lang="javascript"> 関数式の値([引数1[,引数2[..., 引数n]]]) </syntaxhighlight><!-- call や apply の 構文糖 --> == 関数スコープ == 関数の中でvarキーワードを用いて宣言された変数は、関数の中からしか見えません。 言い換えれば、関数の中でvarキーワードを用いて宣言された変数と、関数の外で宣言された変数は別物です。 <syntaxhighlight lang="javascript" highlight="2" line> var f = function() { var i = 0; return i + 1; }; console.log(f()); // 1 console.log(i); // 0 は表示されず ReferenceError: i is not defined となります。 </syntaxhighlight> 関数ブロック内での var による変数宣言は、C言語など他言語でいう「ローカル変数」に似ていますがC言語には関数スコープはなく似て非なるものです。 なお、最後の2個のconsole.logの順番を入れ替えると、下記のようになります。 <syntaxhighlight lang="javascript" line> var f = function() { var i = 0; return i; }; var i = 1; console.log(i); // 1 console.log(f()); // 0 </syntaxhighlight> 関数ブロック外(トップレベル)での var による変数宣言は、C言語など他言語でいう「グローバル変数」に相当し、その実体はグローバルオブジェクト(典型的には window)のプロパティです。 <syntaxhighlight lang="javascript" line> var x = 0; x === window.x; // true </syntaxhighlight> {{コラム|var と let そして const| ECMA2015(ES6)で<code>{ }</code>で囲まれた範囲をスコープとする letと const が導入されました。 let とconst のスコープをブロックスコープと呼びます。 関数本体もブロックなので、let が関数の外から参照されることも有りませんしvar の様な巻き上げも起こりません。letについて詳しくは『[[JavaScript/変数#let]]』の節で説明しています。 letとconstが導入されても、varの意味が変わることは有りません。 もし変わったのならば深刻な非互換性を引き起こします。 逆に、var の意味論的な位置づけを保つ必要があったので新しく let と const が導入されたといえます。 なお、関数の内外でletを使用えますし推奨されます。 たとえば、いくつか前の節で紹介した足し算を関数にしたコード例の var を let に置き換えても同様の結果です。 '''let に置き換え''' <syntaxhighlight lang="javascript" line> function add(a, b) { let sum = a + b; return sum; } let three = add(1, 2); // 1 + 2 console.log(three); // 3 </syntaxhighlight> '''const に置き換え''' <syntaxhighlight lang="javascript" line> function add(a, b) { const sum = a + b; return sum; } const three = add(1, 2); // 1 + 2 console.log(three); // 3 </syntaxhighlight> 一度しか代入されない変数は、const に置き換えることも出来ます。 このことから、変数の宣言には # constに出来るか? # letに出来るか?(クロージャが必要か)? # 上記にあてはまらない場合に限り var で宣言 # 宣言せずのいきなりの代入は論外! という一般則が成り立ちます。 }} '''var なし''' 関数の中で変数を宣言せず代入するとグローバル変数を置き換えます(下記コードの<code>i = 0;</code>の箇所のことです)。 <syntaxhighlight lang="javascript" highlight=3 line> i = 3; var f = function() { i = 0; return i + 1; }; console.log(f()); // 1 console.log(i); // 0 </syntaxhighlight> グローバル変数が置き換えられているので、「3」ではなく(「3」はもはや置き換えによって値が失われた)、「0」が表示されます。 ですが、JavaScript では、このような用法は非推奨です。var のキーワード無しの変数宣言をJavaScriptは非推奨にしているからです。strictモードでは未宣言のグローバル変数への代入は ReferenceError になります。 strictモード下でグローバル変数にアクセスは、<code>globalThis.i = 0;</code> の様にグローバルオブジェクトのプロパティとしてアクセスします。 <syntaxhighlight lang="javascript" line> globalThis.i = 3; var f = function() { globalThis.i = 0; return globalThis.i + 1; }; console.log(f()); // 1 console.log(globalThis.i); // 0 </syntaxhighlight> == 関数コンストラクタを使った関数の生成 == function文による定義や関数式での生成とは別に、関数コンストラクタ<ref>[[#コンストラクタ|コンストラクタ]]とは違います</ref>を使って関数を生成する方法もあります。 ただし、関数コンストラクタにより生成する方法は稀にしか使われず、function文か関数式を使うのが一般的です。 === 関数コンストラクタの構文 === <syntaxhighlight lang="javascript"> new Function(引数1, 引数2, 関数の本体); </syntaxhighlight> ※ new はなくても構いません。 [[#関数リテラル|関数リテラル]]と似ていますが、最後の引数が関数の本体であるところが違います。 また、関数コンストラクタでは'''引数は全て文字列'''です。 加えて、関数コンストラクタはグローバルスコープで実行される関数のみを生成します。 '''コード例''' <syntaxhighlight lang="javascript"> const add = new Function('a', 'b', 'return a + b'); console.log(add(1, 1)); // 1 + 1 == 2 console.log(add.toString()); /* function anonymous(a,b ) { return a + b } */ </syntaxhighlight> === プロパティ === * [[{{PAGENAME}}/prototype|prototype]] : Functionオブジェクトのプロトタイプです。 == 標準グローバル関数 == ; [[JavaScript/decodeURI|decodeURI]] ; [[JavaScript/decodeURIComponent|decodeURIComponent]] ; [[JavaScript/encodeURI|encodeURI]] ; [[JavaScript/encodeURIComponent|encodeURIComponent]] ; [[JavaScript/eval|eval]] ; [[JavaScript/isFinite|isFinite]] ; [[JavaScript/isNaN|isNaN]] ; [[JavaScript/parseFloat|parseFloat]] ; [[JavaScript/parseInt|parseInt]] ; [[JavaScript/void|void]] == 再帰呼出し == '''[[w:再帰#再帰呼出し|再帰呼出し]]'''とは、関数が自分自身を呼び出すことをいいます。 ;再帰呼出しの例:<syntaxhighlight lang="javascript" highlight="2,4,10,13,18,20" line> // 階乗 n! function factorial(n) { return n ? n * factorial(n - 1) : 1; } console.log(`factorial(5) = ${factorial(5)}`); // n 番目のフィボナッチ数 function fibonacci(n) { return n < 2 ? n : fibonacci(n - 2) + fibonacci(n - 1); } console.log(`fibonacci(10) = ${fibonacci(10)}`); // a, b の最大公約数 function gcd(a, b) { return b ? gcd(b, a % b) : Math.abs(a); } console.log(`gcd(42, 56) = ${gcd(42, 56)}`); </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang=text> factorial(5) = 120 fibonacci(10) = 55 gcd(42, 56) = 14 </syntaxhighlight> 脱出条件を間違えて無限再帰にならないように注意してください。 == 即時関数 == '''即時関数'''(そくじかんすう)とは、定義後その場で評価される関数です。 <syntaxhighlight lang="javascript"> (function(a, b){ console.log(a + b); // "3" と表示 })(1, 2); </syntaxhighlight> === 無名再帰 === 無名関数の再帰を'''[[w:無名再帰|無名再帰]]'''(むめいさいき)または'''匿名再帰'''(とくめいさいき、''anonymous recursion'')といいます。JavaScriptで無名再帰を行うには、関数の中で自分自身を指す[[{{PAGENAME}}/arguments/callee|arguments.callee]]プロパティを使用します。 [[JavaScript/strictモード|strict モード]]での、arguments.callee の使用は TypeError となります。 <syntaxhighlight lang="javascript"> // 階乗 n! (function(n){ return n ? n * arguments.callee(n - 1) : 1; })(5); // n 番目のフィボナッチ数 (function(n){ return n < 2 ? n : arguments.callee(n - 2) + arguments.callee(n - 1); })(10); // a, b の最大公約数 (function(a, b){ return b ? arguments.callee(b, a % b) : Math.abs(a); })(42, 56); </syntaxhighlight> arguments.calleeプロパティを使用せずに無名再帰を行うには、'''[[w:不動点コンビネータ|不動点コンビネータ]]'''(ふどうてんコンビネータ、''fixed point combinator''、'''不動点演算子'''、ふどうてんえんざんし、''fixed-point operator'')を用います。 <syntaxhighlight lang="javascript"> // Z不動点コンビネータ var Z = function(f) { return function(x) { return function(y) { return f(x(x))(y); }; }(function(x) { return function(y) { return f(x(x))(y); }; }); }; // 階乗 n! Z(function(f) { return function(n) { return n ? n * f(n - 1) : 1; }; })(5); // n 番目のフィボナッチ数 Z(function(f) { return function(n) { return n < 2 ? n : f(n - 2) + f(n - 1); }; })(10); // a, b の最大公約数 Z(function(f) { return function(a) { return function(b) { return b ? f(b)(a % b) : Math.abs(a); }; }; })(42)(56); </syntaxhighlight> [[ラムダ計算]]も参照してください。 === アロー関数 === 関数リテラルのもう1つの構文にアロー関数構文があります。 アロー関数では、他の関数リテラル異なる this はアロー関数が宣言された場所によって決まます。 以下は全て同じ意味になります。 <syntaxhighlight lang="javascript"> var f = function(x) { return `x: ${x}`; } var f = Function('x','`x: ${x}`'); var f = (x) => { return `x: ${x}`; } var f = x => { return `x: ${x}`; } var f = x => `x: ${x}`; </syntaxhighlight> 前節の不動点コンビネータをアロー関数を使って書いてみます。 <syntaxhighlight lang="javascript"> // Z不動点コンビネータ var Z = f => ( x => y => f(x(x))(y) )(x => y => f(x(x))(y)) // 階乗 n! Z(f => n => n ? n * f(n - 1) : 1)(5) // n 番目のフィボナッチ数 Z(f => n => n < 2 ? n : f(n - 2) + f(n - 1))(10) // a, b の最大公約数 Z(f => a => b => b ? f(b)(a % b) : Math.abs(a))(42)(56) </syntaxhighlight> 簡素に書くことが出来ることが判ると思う。 {{コラム|比較演算子に擬態したアロー関数に注意| 次のようなコードは常に処理が実行されます。 <syntaxhighlight lang="javascript"> if (a=>0) { // 処理 } </syntaxhighlight> <code>a&#61;>0</code> は <code>a>&#61;0</code> の間違えですがエラーとはならず、 <code>(a) &#61;> { return 0; }</code> と解され、Booleanコンテキストでは真となってしまったことが原因です。 }} == クロージャ == '''[[w:クロージャ|クロージャ]]'''(''closure''、閉包、へいほう)とは、引数以外のすべての変数を'''[[w:静的スコープ|静的スコープ]]'''(せいてきスコープ、''static scoping''、'''構文スコープ'''、''lexical scoping''、'''レキシカルスコープ''')で解決する関数のことです。教科書などによく出てくる典型的なクロージャは、次のようなカウンタ変数を用いた例です。 <syntaxhighlight lang="javascript"> // 関数を返す関数 function f() { var i = 0; return function() { return i++; // ここで参照される i が問題 }; }; const g = f(); console.log(typeof g); // function console.log(g()); // 0 console.log(g()); // 1 console.log(g()); // 2 var i = 0; // グローバルな i を書き換えても console.log(g()); // 3 -- 値は変わらない </syntaxhighlight> 関数''f''は変数''i''をインクリメントして返す関数を返す関数です。''f()''によって生成された関数''g''を呼び出すと、''i''の値が0, 1, 2, ...と1ずつ増やして返されます。ここで''i''の値を書き換えても、変数''g''が示す関数に束縛された''i''の値は変わりません。変数''g''が示す関数と環境はクロージャになっているからです(''g''を呼び出したときではなく、''g''が示す関数を定義したときの''i''を参照しています)。 f() 中の変数''i''に注目してください。''i''は外側の関数式の中でvarキーワードを用いて宣言されているので、関数スコープになり、関数定義を出た時点で消滅します。しかし、関数''g''を呼び出すと''i''をインクリメントした値が返ってきます。繰り返しになりますが、クロージャとはすべての変数を、呼び出した時点ではなく定義した時点で束縛した関数と環境のことでした。f() が呼び出され内側の関数式を返した時点の''i''が束縛されたので、グローバルな''i''が見えなくなっても環境の''i''の値を参照しつづけられるというわけです。 == ジェネレーター関数 == ジェネレーター関数は、Generator オブジェクトを返す特殊な関数です。 ; ジェネレーター関数定義 : 書式: {{code|function* 関数名(引数列) { 処理 } }} ; ジェネレーター関数式 : 書式: {{code|function* (引数列) { 処理 } }} 返されたGenerator オブジェクトは反復動作(例えば for..of)と反復構造(例えばスプレッド構文 ...iter)の両方をサポートします。 JavaScriptにありそうでないRangeオブジェクトを作ってみます。 ;ジェネレーター関数によるRangeの実装:<syntaxhighlight lang="javascript"> function* Range(from = 0, to = Infinity) { for (let index = from; index <= to; index++) { yield index; } } for (const n of Range(2, 4)) { console.log(n) } /* 2 3 4 */ console.log([...Range(1, 10)]); // [1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10] console.log(Array.from(Range(0, 12))); // [0, 1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10, 11, 12] </syntaxhighlight> {{code|yield}}演算子は(ジェネレータではありません)関数の return に相当する制御演算子です。反復動作/反復構造については、改めて詳しく説明したいと思います。 ここでは、ジェネレーター関数/Generatorオブジェクトを定義することで [[JavaScript/Array|Array]] や [[JavaScript/Set|Set]] の様な反復動作/反復構造をユーザーが実現できるということだけ覚えてください。 ;オブジェクトのメソッドとして再実装:<syntaxhighlight lang="javascript"> let range = { start: 0, end: Infinity, *[Symbol.iterator]() { for (let value = this.start; value <= this.end; value++) { yield value; } } }; range.start = 2; range.end = 4; for (const n of range){ console.log(n) } /* 2 3 4 */ range.start = 1; range.end = 10; console.log([...range]); // [1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10] range.start = 0; range.end = 12; console.log(Array.from(range)); // [0, 1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10, 11, 12] </syntaxhighlight> ;classとして再実装:<syntaxhighlight lang="javascript"> class Range { constructor(start = 0, end = Infinity) { this.start = start; this.end = end; } *[Symbol.iterator]() { for (let value = this.start; value <= this.end; value++) { yield value; } } forEach(f) { for (let value = this.start; value <= this.end; value++) { f(value); } } }; r = new Range(2, 4); r.forEach(x => console.log(x)); /* 2 3 4 */ console.log([...new Range(1,10)]); // [1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10] console.log(Array.from(new Range(0,12))); // [0, 1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10, 11, 12] </syntaxhighlight> :この例では、forEach メソッドも定義し中間配列を生成せずRangeオブジェクト自身で反復を可能にしています。 :: 他の配列の操作(map,filter,find,some,every)も同様に実装することで中間配列を撲滅できます。 == varの巻上げ == <code>var</code>で宣言された変数を関数内で使う場合に、値の代入は代入した場所で行われるが、宣言(および宣言に伴う代入)は関数内のどこでしても関数の先頭でしたことになるという落とし穴が存在します。この挙動は<code>var</code>の巻き上げ(<code>var</code> hoisting)と呼ばれます。 <syntaxhighlight lang="JavaScript"> (function() { console.log(dream); // undefined -- なぜかReferenceErrorにならない var dream = true; console.log(dream); // true })(); </syntaxhighlight> 上記コードでは表示結果として、trueが表示されます。 なお、上記コードの様に無名関数を定義すると同時に呼ぶ出すことをは即時実行と呼びます。 関数内でvarで宣言した場合にだけ、巻き上げが発生します。 巻き上げが起きるのは、あくまで関数内での出来事であるので関数を用いてない場所では巻き上げは行われません。 これに巻き込まれないよう、var宣言する前には変数を使わないように注意しましょう。 <code>var</code>の使用にはこのように問題があるので、 var を使わずに const あるいは let を使うことが望ましいです。 const と let はブロックスコープで巻き上げは起こりません。 また '''strict モード'''を使用することで、ミススペルなどで偶発的にvar相当の変数を無宣言で作ってしまうことをエラーを上げることで検知できます。 == 関数の巻上げ == 関数にも巻上げが起こます。 ;関数定義:<syntaxhighlight lang="javascript" line> func("text"); function func(str) { console.log(str); } </syntaxhighlight> 上記のコードは、func() が前方参照になっているにも関わらずエラーなく実行されます("text"がconsole.logされます)。 ;関数式でconstで宣言された変数を初期化:<syntaxhighlight lang="javascript" line> func("text"); const func = function (str) { console.log(str); } </syntaxhighlight> 3行目を関数式から関数リテラルに変えconstに保持すると、 ReferenceError: Cannot access 'func' before initialization となります。 ;関数式でvarで宣言された変数を初期化:<syntaxhighlight lang="javascript" line> func("text"); var func = function (str) { console.log(str); } </syntaxhighlight> constをvarに変えると、TypeError: func is not a function。 ;関数式でletで宣言された変数を初期化:<syntaxhighlight lang="javascript" line> func("text"); let func = function (str) { console.log(str); } </syntaxhighlight> let に変えると、ReferenceError: func is not defined となります。 このように、関数の巻上げは関数式では起こらず関数定義に限られます。 == メソッド == オブジェクトのプロパティが関数の場合を、メソッドあるいは関数プロパティと呼びます。 <syntaxhighlight lang="javascript" highlight="3-5" line> const obj = { val: 42, func: function() /* プロパティvalの値をヘッダーつきで文字列化します */ { return `val = ${this.val}`; }, }; console.log(obj.func()); // "val = 42" const o2 = { val: 99 }; o2.func = obj.func; console.log(o2.func()); // "val = 99" console.log(o2.func.toString()); // 下の3行が表示されます。 // function() /* プロパティvalの値をヘッダーつきで文字列化します */ { // return `val = ${this.val}`; // } </syntaxhighlight> メソッドは以下のように簡略表記ができます。 <syntaxhighlight lang="javascript" highlight="3-5" line> const obj = { val: 42, func() /* プロパティvalの値をヘッダーつきで文字列化します */ { return `val = ${this.val}`; }, }; console.log(obj.func()); // "val = 42" const o2 = { val: 99 }; o2.func = obj.func; console.log(o2.func()); // "val = 99" console.log(o2.func.toString()); // 下の3行が表示されます。 // func() /* プロパティvalの値をヘッダーつきで文字列化します */ { // return `val = ${this.val}`; // } </syntaxhighlight> == デフォルト引数 == 関数の引数が省略した場合の値を定義出来ます。 '''従来''' <syntaxhighlight lang="javascript" line> function Vector3( x, y, z ) { this.x = x || 0; this.y = y || 0; this.z = z || 0; this.toString = function() { return `x:${this.x}, y:${this.y}, z:${this.z}` } } let v = new Vector3(1, 3); console.log("" + v); // x:1, y:3, z:0 </syntaxhighlight> '''ECMACScript 2015/ES6以降''' <syntaxhighlight lang="javascript" line> function Vector3( x = 0, y = 0, z = 0 ) { Object.assign(this, {x, y, z }); this.toString = function() { return `x:${this.x}, y:${this.y}, z:${this.z}` } } let v = new Vector3(1, void 0, 7); console.log("" + v); // x:1, y:0, z:7 </syntaxhighlight> デフォルト引数とともにプロパティ名と同じ関数名による簡略表記をつかっています。 引数が省略された場合の他、引数の値に {{code|undefined}} が渡された場合も既定値が渡されたとみなす。 {{code|void 0}} は {{code|undefined}} をタイプ数少なく書くイデオム。 == 残余引数 == 残余引数(Rest parameters)は、可変引数数関数を作る仕組みです<ref>https://262.ecma-international.org/#sec-functiondeclarationinstantiation ECMAScriptR 2020 Language Specification :: 9.2.10 FunctionDeclarationInstantiation ( func, argumentsList )</ref>。 従来は arguments を使うところですが、[[JavaScript/strictモード|strict モード]]で禁止になり非推奨なのでES6以降は残余引数を使います。 '''使用例''' <syntaxhighlight lang="javascript" highlight="1,5" line> function sum(...args) { return args.reduce((result, current) => result + current, 0); } const ary = [ 2, 3, 5, 7, 11 ]; console.log(sum(...ary)); // 28 </syntaxhighlight> <ol> <li> 残余引数構文、引数リストを配列として保持します。 <li value=5> よく似ているがスプレッド構文で異なる構文です。 </ol> === 引数の数 === 関数の引数の数は、Function.prototype.length プロパティ<ref>https://262.ecma-international.org/#sec-function-instances-length ECMAScriptR 2020 Language Specification :: 19.2.4.1 length</ref>で得ることが出来ます。 '''使用例''' <syntaxhighlight lang="javascript" highlight="1,5,9-11" line> function add(a, b) { return a + b; } function sum(...args) { return args.reduce((result, current) => result + current, 0); } console.log(add.length); // 2 console.log(sum.length); // 0! console.log([].forEach.length); // 1 </syntaxhighlight> <ol> <li value=1> 普通に引数数2 <li value=5> 残余引数構文 <li value=9> 2を返します;普通です <li> 残余引数構文は0を返します;1ではありません <li> 組込み標準オブジェクトのメソッドにも使えます;1を返します;{{code|Array.prototype.forEach()}}は{{code|.forEach(callback(currentValue[, index[, array]]) [, thisArg]);}}なので省略可能な引数の数は含まれません。 </ol> == コンストラクタ == オブジェクトの生成と初期化のためのメソッドをコンストラクタと呼び、new 演算子と組み合わせて使われます。 <syntaxhighlight lang="javascript" line> function Complex(real, imag = 0) { this.real = real; this.imag = imag; } let c = new Complex(10, 14); console.log(c); // Complex {real: 10, imag: 14} Complex.prototype.toString = function() { return `r=${this.real}, i=${this.imag}`; } console.log(c.toString()); // r=10, i=14 </syntaxhighlight> 同等の機能を ES6 で追加された class 宣言を使って書くと... <syntaxhighlight lang="javascript" line> class Complex { constructor(real, imag = 0) { this.real = real; this.imag = imag; } toString() { return `r=${this.real}, i=${this.imag}` } } let c = new Complex(10, 14); console.log(c); // Complex {real: 10, imag: 14} console.log(c.toString()); // r=10, i=14 </syntaxhighlight> のようになります。 一見すると prototype は関係ないように見えますが <syntaxhighlight lang="javascript" line> console.log(Complex.prototype.toString.toString()) // "toString() { return `r=${this.real}, i=${this.imag}` }" </syntaxhighlight> と、実体は function をコンストラクタに使った記法と同じく prototype プロパティにメソッドが追加されています。 {{Nav}} == 脚註 == <references /> == 外部リンク == * [https://tc39.es/ecma262/#sec-function-objects ECMA-262::20.2 Function Objects] [[Category:JavaScript|{{SUBPAGENAME}}]] {{stub}} bl1mvcffbycru440d48iamgcz61a25m JavaScript/例外処理 0 13905 205529 188605 2022-07-19T12:30:49Z Ef3 694 語尾の統一 wikitext text/x-wiki {{Nav}} '''[[w:例外処理|例外処理]]'''(れいがいしょり、''exception handling'')とは、プログラムに異常が発生した場合に現在の処理を中断し、エラーメッセージを表示するなどの処理を行うことをいいます。 == throw == throw文は例外を発生させます。 <syntaxhighlight lang="javascript"> function reduce(array, callback, initialValue) { if (typeof callback != 'function') { throw new Error(callback + " is not a function"); } // ... } reduce([], null); // "null is not a function" とエラー </syntaxhighlight> throw文にはどんな値でも渡すことができますが、一般的には<code>Error</code>などの例外オブジェクトを渡します。例外オブジェクトは生成されるときに例外発生時の状況を記録するため、デバッグが容易になるからです。特に[[JavaScript/ReferenceError|ReferenceError]]オブジェクトや[[JavaScript/SyntaxError|SyntaxError]]オブジェクト、[[JavaScript/TypeError|TypeError]]オブジェクトなどの例外オブジェクトは、エラーの種類(参照エラーや構文エラー、型エラーなど)を明示するのに用いられます。 <syntaxhighlight lang="javascript"> function reduce( array, callback, initialValue ) { if ( typeof callback != 'function' ) { throw new TypeError( callback + " is not a function" ); } // ... } reduce( [], null ); // "TypeError: null is not a function" とエラー </syntaxhighlight> throw文で例外が投げられると、以降のプログラムの実行は中断され、処理系のエラーコンソールにエラーが表示されます。 == try-catch == try文のブロックの中で例外が発生すると、catch節のブロックが実行され、例外が捕捉されます。try文のブロックで例外が発生しなかった場合は、catch節のブロックは実行されません。catch節のブロックが実行された後も、catch節のブロックの中で例外が発生しなければ、プログラムは中断せずに以降の処理を継続します。 <syntaxhighlight lang="javascript"> try { throw new Error( "エラー!" ); } catch (e) { console.log(e.message); // "エラー!" と表示 } console.log("しかし処理は続行…"); </syntaxhighlight> catch節は複数置くことができます。また、catch節は必ずthrow文のパラメータ''e''を受け取らなければなりません。''e''の変数名は任意の識別子。 == finally == finally節は事後処理を行います。catch節の後にfinally節を書くと、例外が発生してもしなくてもfinally節が実行されます。 <syntaxhighlight lang="javascript"> try { console.log("try"); // 0. "try" と表示 } catch (e) { console.log("catch"); } finally { console.log("finally"); // 1. "finally" と表示 } console.log("outside"); // 2. "outside" と表示 </syntaxhighlight> 例外が発生した場合は、catch節が実行された後にfinally節が実行されます。finally節が実行された後は以降の処理を継続します。 <syntaxhighlight lang="javascript"> try { console.log("try"); // 0. "try" と表示 throw new Error(); } catch (e) { console.log("catch"); // 1. "catch" と表示 } finally { console.log("finally"); // 2. "finally" と表示 } console.log("outside"); // 3. "outside" と表示 </syntaxhighlight> try文の後にはcatch節またはfinally節のいずれか、もしくは両方を置かなければなりません。catch節を除いたtry-finally節では、例外が発生してもしなくてもfinally節は実行されますが、catch節によって例外が捕捉されないので、例外が発生した場合は以降の処理を中断します。 === return と finally === ;[https://paiza.io/projects/NmoKJECDSL3JI1WMdO3a5Q?language=javascript return と finally] :<syntaxhighlight lang="javascript"> function div(n, d) { try { return n / d } catch (e) { console.log(e) } finally { console.log(`div(${n}, ${d}) -- finally`) } } console.log(`div(1, 2) = ${div(1, 2)}`) console.log(`div(1, 0) = ${div(1, 0)}`) console.log(`div(0, 0) = ${div(0, 0)}`) </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang="text"> div(1, 2) -- finally div(1, 2) = 0.5 div(1, 0) -- finally div(1, 0) = Infinity div(0, 0) -- finally div(0, 0) = NaN </syntaxhighlight> :try文にfinally節を持つ言語では「tryブロックで例外を出さずのreturn文に達したとき、finally節を実行するか?」が問題になります。 :ES/JSでは、return文に達してもfinally節が実行されます。 ==大域脱出== {{Main|JavaScript/制御構造#ラベル}} 例外は大域脱出に使うこともできます。大域脱出とは、入れ子になった制御構造の内側から外側に制御を戻すことです。ラベルを伴わない<code>break</code>や<code>return</code>は最内側の制御構造(<code>for</code>/<code>while</code>/<code>switch</code>と関数)を抜け出すだけですが、例外を<code>throw</code>すると文や関数を超えて制御が移ります。 この性質を利用すると二重以上のループや関数を脱出することができるのです。 しかし、大域脱出目的の例外の使用には慎重になってください。breakやreturnをラベルと共に使用することで、ほとんどの場合は例外を使うことなく大域脱出を達成できます。 ;イテレーションメソッドからの脱出 :Array.prototype.forEach メソッドの様にcallbackの反復処理を行うイテレーションはbreakやreturnでは脱出ができないので、例外による大域脱出が適用なケースです。 :この場合も、for文に置換えるほうが可読性は向上するでしょう。 ;関数外のラベルにはbreakできません(動かない例):<syntaxhighlight lang="javascript"> ary = new Array(10).fill(0).map((x, i) => i) LABEL: ary.forEach(function(x) { if (x > 5) break LABEL; // SyntaxError: Undefined label 'LABEL' console.log(x) }) </syntaxhighlight> ;[https://paiza.io/projects/0HdEI0i8b0OJNy-HToq1Ig?language=javascript 例外を使ったイテレーションメソッドからの脱出]:<syntaxhighlight lang="javascript"> ary = new Array(10).fill(0).map((x, i) => i); try { ary.forEach(function(x) { if (x > 5) { throw new Error(`x = ${x}`); } console.log(x) }); } catch {} </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang="text"> 0 1 2 3 4 5 </syntaxhighlight> {{Nav}} [[Category:JavaScript|れいかいしより]] {{stub}} mxsu4zflfdyoixsdxl06sfzq6m2ffmj JavaScript/制御構造 0 13927 205524 202300 2022-07-19T12:10:45Z Ef3 694 語尾の統一 wikitext text/x-wiki {{Nav}} '''[[w:制御構造|制御構造]]'''(せいぎょこうぞう、''control flow'')とは、「順次」「分岐」「反復」という基本的な処理のことを言います。 == 概要 == 次のプログラムは、、 * ''n''が0より小さいときには「負の数」 * ''n''が0より大きいときには「正の数」 * いづれにもあてはまらないなら(つまり ''n''が0、あるいは数値に暗黙の変換ができないときには)「0」 と表示します。 :<syntaxhighlight lang="javascript"> const n = 0 / 0; if (n < 0) { console.log("負の数"); } else if (n > 0) { console.log("正の数"); } else if (n > 0) { console.log("零"); } else { console.log(n); } </syntaxhighlight> この様な、分岐を始めとする制御構造はプログラミングを行う上で欠かせません。 さあ、この章で学んで行きましょう。 == if-else == '''[[w:if文|if文]]'''(イフぶん、''if statement'')は「もし〜ならば」を表す制御構文(条件構文)です。 if文では{{code|()}}の中に書かれた条件が [[JavaScript/truthy|truthy]] であるとき続く文が実行されます。 次のプログラムは、''n'' < 0(''n''が0より小さい)という条件が真であるときのみ「負の数」と表示します。 :<syntaxhighlight lang="javascript"> const n = -1; if (n < 0) { console.log("負の数"); } </syntaxhighlight> if文のあとに'''else節'''(エルスせつ、''else clause'')を置くと、else節の文はif文の条件が [[JavaScript/falsy|falsy]] であるときのみ実行されます。 次のプログラムは、''n'' < 0(''n''が0より小さい)という条件が真であれば「負の数」、さもなくば(''n''が0以上あるいはNaN(略 ならば)「自然数」と表示します<ref>計算機科学では一般に0を自然数に含め、曖昧さを避けたいときは非負整数とも言います</ref>。 :<syntaxhighlight lang="javascript"> const n = 0; if (n < 0) { console.log("負の数"); } else { console.log("自然数"); } </syntaxhighlight> if文とelse節をあわせてif/else文と呼びます。else節は必ず直前のif文に対応するので、if文とelse節の間に余計な文を入れることはできません。 if/else文は次のように何個もつらねることができます。 :<syntaxhighlight lang="javascript"> const n = 0; if (n < 0) { console.log("負の数"); } else if (n > 0) { console.log("正の数"); } else if (n == 0) { console.log("零"); } else { console.log(n); } </syntaxhighlight> このプログラムは''n'' < 0ならば「負の数」、そうでなく''n'' > 0ならば「正の数」、そうでなく''n'' == 0ならば「零」、そうでもないならば n の値が表示されます。 <code>else if</code>という部分に注目してください。 何通りもの条件で処理を分岐したい場合は、このelse ifを何個も増やしていくことになります。 if文やelse節の文はブロックである必要はありません。 単文(1つの文)しか入っていない場合は、次のように書いても同じことです。 :<syntaxhighlight lang="javascript"> const n = 0; if (n < 0) console.log("負の数"); else if (n > 0) console.log("正の数"); else if (n == 0) console.log("零"); else console.log(n); </syntaxhighlight> なお、この場合は条件演算子を用いて簡潔に書けます。 :<syntaxhighlight lang="javascript"> const n = 0; console.log(n < 0 ? "負の数" : n > 0 ? "正の数" : n == 0 ? "零" : n); </syntaxhighlight> if文の条件式はすべてtrueかfalseの[[JavaScript/Boolean|真偽値]]として評価されます。たとえば、数値の0は真偽値に変換するとfalseになるので<ref>falsy</ref>、次のif文のブロックは絶対に実行されません([[w:到達不能コード|デッドコード]])。 :<syntaxhighlight lang="javascript"> if (0) { // たどりつけない } </syntaxhighlight> {{コラム|0以外にもfailyが|他の言語(例えばC言語)では、''n''が0に等しいかどうかは <syntaxhighlight lang="c">if (n == 0) { /* ... */ } </syntaxhighlight> のほかに :<syntaxhighlight lang="c">if (!n) { /* ... */ }</syntaxhighlight> と書けます、同様に ''n''が0に等しくないかどうかは :<syntaxhighlight lang="c">if (n != 0) { /* ... */ }</syntaxhighlight> のほかに <syntaxhighlight lang="c">if (n) { /* ... */ }</syntaxhighlight> とも書けます。 しかし、JavaScript では「0以外にも falsy な値がある」(例えば !"<!---->" は真になります)ので上記のC言語流のブールコンテキストのイディオムは使えません。 JavaScriptでは''n''が0に等しいかどうかは ''n'' {{=}}{{=}}{{=}} 0 のように {{=}}{{=}}{{=}}(厳密比較演算子)を使います。 {{=}}{{=}}{{=}} は{{=}}{{=}}(比較演算子)とは異なり暗黙の型変換は行われず厳密に(この場合は 0 と)等しいかを評価します。}} * '''例題''' 整数の偶奇判別プログラムを書け。<!--設問としてこれって...--> * '''解答''' if/else文を用いる場合は、 :<syntaxhighlight lang="javascript"> if (n % 2 == 0) { console.log("偶数"); } else { console.log("奇数"); } </syntaxhighlight> または :<syntaxhighlight lang="javascript"> if (n % 2) { console.log("奇数"); } else { console.log("偶数"); } </syntaxhighlight> 条件演算子を用いる場合は、 :<syntaxhighlight lang="javascript"> console.log(n % 2 == 0 ? "偶数" : "奇数"); </syntaxhighlight> または :<syntaxhighlight lang="javascript"> console.log(n % 2 ? "奇数" : "偶数"); </syntaxhighlight> または :<syntaxhighlight lang="javascript"> console.log((n % 2 ? "奇" : "偶") + "数"); </syntaxhighlight> または :<syntaxhighlight lang="javascript"> console.log("偶奇"[n % 2] + "数"); </syntaxhighlight> など。 === if-else 文の構文=== :<syntaxhighlight lang="javascript"> if (条件式) 文1 [else 文2] </syntaxhighlight> {{code|[}}から{{code|]}}までは省略可能を意味し、この場合は「else節は省略可能」を意味します。 == switch == '''[[w:switch文|switch文]]'''(スイッチぶん、''switch statement'')は、if/else文を何個もつらねて書くことが冗長な場合に用いられます。 :<syntaxhighlight lang="javascript"> if (keyCode == 37) { console.log("←"); } else if (keyCode == 38) { console.log("↑"); } else if (keyCode == 39) { console.log("→"); } else if (keyCode == 40) { console.log("↓"); } else { console.log("?"); } </syntaxhighlight> これはswitch文を使って次のように書くことができます。 :<syntaxhighlight lang="javascript"> switch (keyCode) { case 37: console.log("←"); break; case 38: console.log("↑"); break; case 39: console.log("→"); break; case 40: console.log("↓"); break; default: console.log("?"); }</syntaxhighlight> 必ずcase節の最後にbreak文を書くのを忘れないでください。 なお、たいていのケースではswitch文を使わなくても、連想配列を応用したディスパッチテーブルで事足ります。 switch文はここぞというときに使ってください<ref>JavaScriptのswitch文は、動的なのに静的なC言語の構文を倣ったので'''[[#switch文の限界と限界突破|コラム:switch文の限界と限界突破]]'''の様なハックを使わない限り恩恵を受けられません。</ref>。 :<syntaxhighlight lang="javascript"> console.log({ 37: "←", 38: "↑", 39: "→", 40: "↓" }[keyCode] || "?"); </syntaxhighlight> === switch 文の構文=== :<syntaxhighlight lang="javascript"> switch (式) { case 値1 : 文1 case 値2 : 文2 : : case 値n : 文n [default : 文x] } </syntaxhighlight> switch文に与えられた式に一致するcase句の値を上から順に厳密一致厳密比較演算子で評価され、true を返すcase句に対応する文が実行され、'''break文などの中断制御文が見つからない限り次の文が実行されます'''。 {{コラム|{{Anchor|switch文の限界と限界突破}}| swicth文は、上記の通り与えられた式と厳密に一致するケースに対応する文を実行します。 この為、式に対応する範囲や正規表現を直接的に表現することはできません。 この制限はややトリッキーな方法で回避できます。 :<syntaxhighlight lang="javascript" highlight=3 line> let age = prompt("年齢は?"), text = ""; switch (true) { case age < 3: text = "baby"; break; case age < 7: text = "little child"; break; case age < 13: text = "child"; break; case age < 18: text = "youth"; break; default : text = "adult"; break; } console.log(text); </syntaxhighlight> ポイントは :<syntaxhighlight lang="javascript" start=3 highlight=1 line> switch (true) { </syntaxhighlight> と式として true を与えているところで 真となっている式を持ったケース節を上から探す と言う動作を<del>悪用</del><ins>利用</ins>しています。 }} == while == いよいよループの登場です。'''[[w:while文|while文]]'''(ホワイルぶん、''while statement'')は条件が真である間、文を実行しつづけます。 :<syntaxhighlight lang="javascript"> let i = 0; while (i < 10) { console.log(i); i++; } </syntaxhighlight> ''i''はinteger(整数)の頭文字です。このプログラムはまず、 * 1行目で変数''i''に0を代入しています。 *次に''i'' < 10がtrueでれば以下を実行します(そうでなければ、このwhile文の次に進みます)。 ** ''i''を表示します ** ''i''を1増やします。 10回ループが回ると''i''が10になり、''i'' < 10がfalseになるのでループを抜けます。 このようにwhile文は''i'' < 10がtrueである間、ブロックを実行しつづけます。 このようにして、プログラムは0から9までの数字を表示します(10に達するとループから脱出します)。 === while 文の構文 === :<syntaxhighlight lang="javascript"> while (式) 文 </syntaxhighlight> while文に与えられた式が truthy の間、繰り返し文を実行します。 == do-while == '''[[w:do-while文|do-while文]]'''(ドゥ・ホワイル文、''do-while statement'')は、まずdo文のブロックを実行し、次にwhile文の条件式を確認してループします。次のプログラムは0から9までの数字を表示します。 :<syntaxhighlight lang="javascript"> let i = 0; do { console.log(i); i++; } while (i < 10); </syntaxhighlight> === do-while 文の構文 === :<syntaxhighlight lang="javascript"> do 文 while (式) </syntaxhighlight> まず文を無条件に実行し、while文に与えられた式が truthy の間、繰り返し文を実行します。 == for == '''[[w:文|for文]]'''(フォー文、''for statement'')は、いわゆる[[C言語/制御文#for文|C言語スタイルのfor文]]です。 let ''i'' = 0のような変数の初期化と、''i'' < 10のような条件式と、''i''++のような変数の更新を一行で書く制御構文です。 JavaScriptではwhile文やdo-while文はあまり使われませんが、for文はループを簡潔に書けるので非常に重宝します。 次のプログラムは0から9までの数字を表示します。 :<syntaxhighlight lang="javascript"> for (let i = 0; i < 10; i++) { console.log(i); } </syntaxhighlight> 最初の式、let ''i'' = 0はループに入る前に一度だけ実行されます。 二番目の式、''i'' < 10がtruthyならばブロックを実行します。 三番目の式''i''++を実行して再び条件式に戻ります。 結果、''i'' < 10がtruthyである間、ブロックの実行と変数の更新が行われます。 :<syntaxhighlight lang="javascript"> const array = [ 0, 1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9 ]; for (let i = 0, len = array.length; i < len; i++) { console.log(array[i]); } </syntaxhighlight> ブロック文は文の特殊なケースで単文でももちろん有効です<ref>文 ⊇ ブロック文</ref>。 :<syntaxhighlight lang="javascript"> const array = [ 0, 1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9 ]; for (let i = 0, len = array.length; i < len; i++) console.log(array[i]); </syntaxhighlight> 後置インクリメント演算子は変数の値を1増やし、増やす前の値を返すので、次のように書けます。 :<syntaxhighlight lang="javascript"> const array = [ 0, 1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9 ]; for (let i = 0, len = array.length: i < len; console.log(array[i++])) ; </syntaxhighlight> このような書き方を好み人もいますが、文意を汲むなら... :<syntaxhighlight lang="javascript"> [ 0, 1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9 ].forEach(x => console.log(x)); </syntaxhighlight> のような、iterableオブジェクト<ref>この場合は Array オブジェクト</ref>の[[JavaScript/イテレーションメソッド|イテレーションメソッド]]を使うことも検討に値します。 === for 文の構文 === :<syntaxhighlight lang="javascript"> for ( 式1; 式2; 式3) 文 </syntaxhighlight> * 式1を評価します * 式2が turuthy な間、以下を繰り返します ** 文 を実行します ** 式3 を評価します <!--スコープについて要加筆--> == for-in == for-in 文は、オブジェクトのプロパティのうちキーが文字列で列挙可能なもの全てに反復処理を行います。 :<syntaxhighlight lang="javascript"> const obj = { x: 2, y: 3, z: 5 }; for (const prop in obj) { console.log(`${prop}: ${obj[prop]}`); } // x: 2 // y: 3 // z: 5 </syntaxhighlight> == for-of == for-of 文は、Iterableオブジェクト(たとえば String Array や NodeList)に対して、反復処理を行います<ref>ES2015で追加</ref>。 ;for-of:<syntaxhighlight lang="javascript" line> const ary = [..."XYZ"]; for (const el of ary) { console.log(el); } // X // Y // Z </syntaxhighlight> Iterableでないオブジェクトが右の項に与えらてた場合、TypeError が throw されます。 ;Objectはfor-of不可:<syntaxhighlight lang="javascript" highlight=3 line> const obj = { a: 0, b: 1, c: 2}; for (const el of obj) { console.log(el); } </syntaxhighlight> Object はItableではないので ;実行時エラー:<syntaxhighlight lang="text"> TypeError: obj is not iterable </syntaxhighlight> :となります。 ;[https://paiza.io/projects/8oFPy97Ozwg9nv4VPeWcTw?language=javascript for-ofとObjectの分割代入の併用]:<syntaxhighlight lang="javascript" line> const AddrBook = [ { name: "tom", postnumber: "420-2410", age: 18 }, { name: "joe", postnumber: "420-0824", age: 17 }, ] for (const { name, age } of AddrBook) { console.log(`${name}: ${age}`) } /** 同じコンセプトのArray::forEach */ AddrBook.forEach(({ name, age }) => console.log(`${name}: ${age}`)) </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang="text"> tom: 18 joe: 17 tom: 18 joe: 17 </syntaxhighlight> == for await-of == for await-of 文は、非同期関数用の for-of です。 :<syntaxhighlight lang="javascript"> async function* asyncShift() { for (let i = 1, len = 2 ** 16; i < len; yield i <<= 3) ; } (async function() { for await (const num of asyncShift()) { console.log(num); } })(); // 8 // 64 // 512 // 4096 // 32768 // 262144 </syntaxhighlight> == for each-in == for each-in 文はJavaScript 1.6で[[w:ECMAScript for XML|ECMAScript for XML]](E4X)のサポートの一環で導入されましたが、E4Xの廃止を受け非推奨を経て'''廃止'''されました。 下のプログラム例もモダンブラウザでは SyntaxError となります。[[#for … of|for … of]] 文を使うようにして下さい。<br> JavaScript 1.6で追加されたfor each-in文はオブジェクトの値を順番に取り出して反復処理します。 :<syntaxhighlight lang="JavaScript"> var sales = <sales vendor="John"> <item type="peas" price="4" quantity="6"/> <item type="carrot" price="3" quantity="10"/> <item type="chips" price="5" quantity="3"/> </sales>; for each(var price in sales..@price) { console.log(price); } /* 4 3 5 */ </SyntaxHighlight> == break == '''[[w:break文|break文]]'''(ブレーク文、''break statement'')はループまたはswitch文を途中で抜けます。 次のプログラムは''i''が5になった時点でfor文のループを抜けるので、0から4までの数字を表示します。 :<syntaxhighlight lang="javascript"> for (let i = 0; i < 10; i++) { if (i == 5) break; console.log(i); } </syntaxhighlight> == continue == '''[[w:continue文|continue文]]'''(コンティニュー文、''continue statement'')はループを次に進めます。 次のプログラムは0から9までの数字のうち3の倍数だけ表示します。 :<syntaxhighlight lang="javascript"> for (let i = 0; i < 10; i++) { if (i % 3) continue; console.log(i); } </syntaxhighlight> == ラベル == ラベルを使用すると深いループを一気に抜けることができます。 ;ラベルの使用例:<syntaxhighlight lang="javascript"> let LOOP = "Global variable" LOOP: for (let x = 0; x < 10; x++) { for (let y = 0; y < 10; y++) { if (y === 5) break LOOP console.log([x, y]) } } console.log(LOOP) </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang="text"> [ 0, 0 ] [ 0, 1 ] [ 0, 2 ] [ 0, 3 ] [ 0, 4 ] Global variable </syntaxhighlight> :二重ループからの脱出(大域脱出)ができていることが判ると思います。 :ラベルも識別子のルールに従います(先頭一文字は英字あるいは '_'、英数字あるいは '_') :関数と変数やクラス名は同じ名前空間なので名前の衝突はできませんが、ラベルは別の名前空間なので衝突しても構いません。 {{コラム|URLが有効なJavaScript?| 次は有効な JavaScript のコードです。 ;URLが有効なJavaScript?:<syntaxhighlight lang="javascript" highlight=="1" line> https://ja.wikibooks.org/ for (let i = 0; i < 3; i++) { console.log(i); } </syntaxhighlight> 1行目の URL がエラーになりません。 この行は 識別名 https のラベル と // で始まる単行コメント と解されます。 重大なバグにはなりそうにないですが、モヤモヤしますね。 }} == その他の制御文 == <!-- 関数呼び出しと return文はここに含めるべき? --> <!-- with文が制御構造であるかは疑問、非推奨で有ることを強調するために残した。 --> === with文 === 曖昧さを持ち込むため'''with 文の使用は推奨されない'''。 また、[[JavaScript/strictモード|strictモード]]では SyntaxError となります。 with文の用途は、実際のコードを見ると良い。次の2つの関数は同じ意味です。 ;[https://paiza.io/projects/tEknwwCpEg4jt7y9lcNPTw?language=javascript withの使用例]:<syntaxhighlight lang="javascript"> function math1() { console.log(Math.ceil(10.5)); // 小数点切り上げの値を表示 console.log(Math.PI); // 円周率πを表示 } function math2() { with (Math) { console.log(ceil(10.5)); // 小数点切り上げの値を表示 console.log(PI); // 円周率πを表示 } } math1(); math2(); </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang="text"> 11 3.141592653589793 11 3.141592653589793 </syntaxhighlight> この様に、あらかじめオブジェクトをwith文で指定することで、それに続くブロックの間では、オブジェクトの名前を省略することが出来ます。 これは Pascal などの言語から移入されたものです。 with は、with により修飾名が省略されたことにより識別子に曖昧さを持ち込む事で、意図しないプロパティが使われるなど問題を生じることが知られており、'''with 文の使用は推奨されない'''。 また、[[JavaScript/strictモード|strictモード]]では SyntaxError となります。 == 脚註 == <references /> == 外部リンク == * [https://tc39.es/ecma262/#sec-if-statement ECMA-262::14.6 The if Statement] * [https://tc39.es/ecma262/#sec-iteration-statements ECMA-262::14.7 Iteration Statements] {{Nav}} [[Category:JavaScript|せいきよこうそう]] {{stub}} kok3ypd25oeez7j9p08c1jx52d4wweh JavaScript/正規表現 0 14038 205530 190874 2022-07-19T12:36:44Z Ef3 694 語尾の統一 wikitext text/x-wiki {{Nav}} == リテラルな文字列を検索する方法 == 正規表現で文字列を検索する前に、文字列で文字列を検索する下記のコードを学びましょう。 ;[https://paiza.io/projects/qoPQ_ElYaGfDPoaE9_MLpQ?language=javascript コード例]:<syntaxhighlight lang="javascript"> const str = "books"; [..."abcdefghijklmnopqrstuvwxyz"].forEach(ch => { const index = str.search(ch); console.log(`'${ch}'は、`,~index ? `${index + 1}文字目にあります。` : "ありません。"); }) </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang="text"> 'a'は、 ありません。 'b'は、 1文字目にあります。 'c'は、 ありません。 'd'は、 ありません。 'e'は、 ありません。 'f'は、 ありません。 'g'は、 ありません。 'h'は、 ありません。 'i'は、 ありません。 'j'は、 ありません。 'k'は、 4文字目にあります。 'l'は、 ありません。 'm'は、 ありません。 'n'は、 ありません。 'o'は、 2文字目にあります。 'p'は、 ありません。 'q'は、 ありません。 'r'は、 ありません。 's'は、 5文字目にあります。 't'は、 ありません。 'u'は、 ありません。 'v'は、 ありません。 'w'は、 ありません。 'x'は、 ありません。 'y'は、 ありません。 'z'は、 ありません。 </syntaxhighlight> JavaScriptでは、まず文字列オブジェクトのsearch関数によって、探す文字列が何文字めに出現するかを返します。search関数は先頭の文字を0文字目として数えるため、上記コードでは +1 しています。 文字が見つからなかった場合、searchメソッドは -1 を返します。 ~indexは -1 と比較するイデオムで、-1 だったときだけ false になります。 == 正規表現を使用した検索 == ;[https://paiza.io/projects/_0kWgfM77z0lRmYjhbu5Fw?language=javascript コード例]:<syntaxhighlight lang="javascript"> const str = "books"; const regex = /k/; if (regex.test(str)) { console.log("含まれます。"); } else { console.log("含まれません。"); } </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang="text"> 含まれます。 </syntaxhighlight> 正規表現とは、上記のコードの「/k/」の部分です。JavaScriptでは正規表現リテラルをスラッシュではじめ、スラッシュで終わらせます。フラグを用いる場合は、末尾のスラッシュに続けて記述します。 {| class="wikitable" |+ JavaScriptの正規表現のフラグ ! フラグ ! 意味 |- | g | 繰り返しマッチさせる |- | i | 大文字・小文字を区別しない |- | m | 文字列を複数行として扱う |- | s | {{code|.}}が空白文字にもマッチする |- | y | 粘着的 (stick'''y''') なマッチを行う |- | u | ユニコードをベースにしたマッチを行う |} まず、フラグを何も指定しない場合、大文字と小文字が区別されることを確認しましょう。 '''''' ;コード例:<syntaxhighlight lang="javascript"> const str = "books"; const regex = /K/; if(regex.test(str)) { console.log("含まれます。"); } else { console.log("含まれません。"); } </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang="text"> 含まれません。 </syntaxhighlight> このように、{{code|i}}フラグ無しでは大文字と小文字は区別されます。 '''コード例''' <syntaxhighlight lang="javascript"> const aaa = "books"; const s = /K/i ; if( s.test(aaa) ) { document.write("含まれます。"); } else { document.write("含まれません。"); } </syntaxhighlight> '''結果''' 含まれます。 {{code|i}}フラグを追加することで、大文字と小文字は区別されなくなります。 == Unicode プロパティエスケープ == 正規表現で \p{Unicode プロパティエスケープ} の形式でUnicode プロパティエスケープに基づくパターンマッチングが出来るようになりました。 <syntaxhighlight lang="javascript"> const str = '絵文字はUNICODEに大々的に取り入れられたけれどサロゲートペアなのはきつい👿'; const emoji = /\p{Emoji_Presentation}/gu; console.log(str.match(emoji)); // ["👿"] </syntaxhighlight> == 名前付きキャプチャグループ == 正規表現で (?<name>pattern) の形式で名前付きキャプチャグループが使えるようになりました。 $<name> の形式で置き換え対象で参照出来ます。 <syntaxhighlight lang="javascript"> const str = '今日昨日明日'; const today = /(?<today>今日)/gu; console.log(str.replace(today, "$<today>(きょう)")); // 昨日今日(きょう)明日 </syntaxhighlight> == 実体 == JavaScriptの正規表現オブジェクトの実体は'''RegExp'''オブジェクトのインスタンスです。RegExpオブジェクトのコンストラクタは第一引数に正規表現、第二引数にフラグを受け取ります。 第一引数の正規表現に<code>\d</code>や<code>\s</code>などのメタ文字が含まれる場合は、バックスラッシュが文字列リテラルのエスケープ文字として扱われないように、<code>\\</code>とエスケープする必要があります。 <syntaxhighlight lang="javascript"> const regexp = new RegExp('\\d+', 'gim'); </syntaxhighlight> Perlの<code>quotemeta</code>や[[Ruby]]の<code>RegExp.quote</code>のように、()や[]など正規表現のメタ文字と解釈される可能性のある文字をエスケープして返す関数は、Stringオブジェクトのreplaceメソッドを使用して簡単に作成することができます。 <syntaxhighlight lang="javascript"> const quote = str => str.replace(/\W/g, $0 => `\\${$0}`); alert( quote('()') ); // 「\(\)」と表示 </syntaxhighlight> === プロパティ === * [[{{PAGENAME}}/prototype|prototype]] : RegExpオブジェクトのプロトタイプです。 {{Nav}} [[Category:JavaScript|{{SUBPAGENAME}}]] {{stub}} dzt8rfuoo9nm29rk2o5gbg4vebwsv7n 利用者:Honooo 2 18704 205538 205467 2022-07-19T17:04:26Z Honooo 14373 ニュースレター購読のためのリンク wikitext text/x-wiki <table style="float: right;"> <tr><td>{{User ja}}</td></tr> <tr><td>{{User language-1|en|This user is studying '''[[:Category:User en|English]]'''.}} </td></tr> <tr><td>{{User Csharp-2}}<td></tr> </table> [[File:HONOO(炎).jpg|thumb|炎のように…^^]] プロフィールは↓以下に集約しました^^ [[m:User:Honooo]] ==<s>ウィキブレイクのお知らせ</s>== <s>今までこのサイトにおける滅茶苦茶な状況を、ある意味作って主導してきたのに、申し訳ないのですが、この2、3日で急激に体調や精神状態が悪化しましてね…。しばらくブレイクします。その間はウィキメディアは一切見ないし、ページの変更メールも受けとりません。期間は不明ですね。私の体調がどうなるかによる…。永遠にやめるかもしれないし、あるいは2、3日で割と良くなって復活できるかもしれない。今までここで、E.Suj.と戦ってきたけど、やっぱりかなりのストレスだよね。ただ今回の体調不良は主に別の原因だけど…。なぜかE.Suj.は絶対に正しいこと言わないし、絶対に妥当な考えにたどり着かない。だからこの人がこのサイトを追放されない限り、永遠に戦い続けるしかない。今まではそのつもりでやってきたけど、ちょっとその精神状態、体力が維持できなくなってしまいましてね…。でもひょっとしたら短期間でまた参加できるようになるかもしれませんが、このことに関する言及は不要です。では。</s> ==↑ブレイク解消します== ちょっと解消宣言には早すぎるんだけど、どうしても気になってみてみたら、まあ見ないって書いたんだけど^^;;;、やはりいつものようにすじ肉先輩があり得ない気色悪い文書書き散らしてるのでね、早いけど、ブレイク解消を告げます。体調は割と良くなったよ。基本的には自分自身の生活上のミスが原因だと思っている。コロナではないようだね。ただオンライン上の関係ではそれはあまり関係ないよね。詳述はしません。ただ解消したと言っても、私自身はいつも体調や精神状態は不安定なので……またいつでもブレイク宣言する可能性はあるけど、とりあえず活動再開します。(2022/7/19/6:42JST) ==[[User talk:Honooo/MSW&MSGnl]]== fiyrci8yuzpyohceczvfnshczw45bdu 学習方法/高校生物 0 18792 205521 204911 2022-07-19T12:04:43Z Nermer314 62933 wikitext text/x-wiki {{Stub}} :※注意 編集者の主観的な勉強法も、本ページには書かれているだろうと思われるので、このページは、せいぜい参考程度にして、このページをあまり信用しすぎないようにして頂きたい。 また、各教科・各科目の個別の勉強法については、市販の参考書を何冊か見れば、ふつうは、その参考書の前書きのページあたりに、その参考書をつかった勉強法的なことが書かれてるだろうから、そういうのを参考にしたほうが安全だろう。 * 生物の学習方法は、大学の医歯薬学部を目指すかどうかで、必要な学習法が大きく変わる。 たとえ、アナタ自身が医療職を目指さなくても、高校生の中には医療職を目指す人もいるのだから、高校生物では、これらの進路にも対応した教育が、なされることになる。 == 資料集ではなく教科書で勉強しよう == 生物の場合、資料集では、教科書範囲の内容の説明のついでに、大学レベルや専門教育レベルの話題も書いてあり、高校の範囲を超えている話題が、いくつかあります。 たとえば、解剖学などで、そのような傾向が多く見られます。 いちいち解剖図で、どこからどこまでが高校範囲で、どこからが大学範囲とか、資料集は書いてくれません。 いちおう、あまりに高度な話題ばかりの段落は「発展」とか「コラム」とかに分けられたりします。しかし資料集では、たとえば、人体の内臓の仕組みについて「生物基礎」とか書いてあるのに、センター試験には出題されなさそうな解剖学的な人体の内臓の細かい情報なども載っています。 センター試験に出題されそうな話題は、あくまで参考書の範囲くらいまでです。つまり、たとえば数研チャート式や文英堂シグマベストなどの高校生物の参考書までです。 なので、高校生は、まず教科書や参考書で勉強を始めましょう。 特に生物資料集は、高校で生徒に買い与えられる場合も多いですが、しかし、上記のような特徴がありますので、使用には注意が必要です。 資料集を読んでもいいですが、まず教科書や参考書で基本的な知識を把握しましょう。 == 教科書に書いてない話題は後回し == なので高校生は、まず現在のカリキュラムを中心に勉強しましょう。 そのために、まず検定教科書を中心に勉強しましょう。 参考書より、まず検定教科書です。 == 生物基礎の教科書を保管しておく == 普通高校の生物系の科目には、『生物基礎』と、専門科目の『生物』の2科目がありますが、生物基礎の教科書にしか書いてない話題がいくつかあります。 なので読者は、受験勉強のさいの復習に『生物基礎』の教科書も必要になるので、(高校1年あたりで)生物基礎を習い終わっても、捨てないようにしましょう。 もし、すでに捨ててしまった場合、参考書で、「生物基礎・生物」両科目対応のを買えば、それらの単元の話題も書いてありますので、参考書を購入することになります。 また受験勉強の際には、生物系科目の単元の構成が、上述のような構成になっているので、受験勉強のさいには、けっして専門「生物」の教科書ばかりを勉強しないように気をつけてください。 == 高校生物の目的は「理解」だが、学習手段は「暗記」である。 == 用語の名称は覚えれば済む事であり、名称の由来とかまで、わざわざ理解する必要は無い。 高校生物の目的は生物の仕組みの「理解」だが、しかし学習手段は仕組みや用語などの「暗記」である。 ひょっとしたら大学レベルでは事情が違うかもしれないが、少なくとも高校レベルでは暗記が多く必要である。 丸暗記の負担を減らすために、教科書・参考書などの解説を読んで、知識を関連付ける勉強が必要である。生物学が科学である以上は、英語など語学と比べたら、生物で覚える必要のある単語は英語よりも少ないというのを、暗記勉強で逆手に取れる。 なお、読者が高校生物の勉強として覚えるべき用語は、高校生物の教科書と参考書で扱ってる範囲までで良い。 もちろん、生物学は、けっして、単なる記憶力を自慢するだけの暗記を競う学問ではない。 単なる知識自慢とは生物学は違い、生物学は科学の一分野であり、法則などに基づいて生物の仕組みを理解していく学問である。 しかし目的と手段とは異なる。高校レベルの生物学を学習する手段は、高校1〜2年ごろの段階では、とりあえずは暗記という手段が必要である。 しかし、生物学が科学である以上は、やみくもに暗記するのは非効率な学習法である。高校生物の検定教科書や大学受験参考書など、著者が科学としての生物学が充分に分かっている著者の書いた本を読む事で、仕組みや用語などの知識を覚えていく必要がある。 生物学に限らず、分かっている人や実績のある人の書いた本を聞いたり参考にするのが、高度な学問や技術の学習法である。けっして自然科学は単なる知識自慢の学問では無いので、分かってない人の話などを聞いても、仕方が無い。だから科学書を高校生が読むなら、高校レベルまたは大学レベル以上の本を読もう。 * 仕組みも覚える。用語も覚える。一度は教科書・参考書の説明を読む。 また、生物学が科学である以上、けっして用語だけを覚えてもムダである。仕組みなども覚える必要がある。まずは仕組みと関連付けて、用語を覚える必要がある。用語の暗記勉強を開始するタイミングは、少なくとも仕組みの説明について一度は教科書・参考書を読んだあとからである。なお、深く理解しきる前から用語暗記の勉強を開始したほうが良い。完璧に理解しようとしても、理解しきるのは難しく、とくに低学年のうちは、予備知識が少ないため、完全な理解は困難である。 だから'''一度でも教科書を読めば、次からは、ひとまず暗記を始めたほうが良い。'''何度も読み返す必要は無い。むしろ、もし読む勉強をしたいなら、参考書を読もう。 さて、用語も、けっこう多く覚えないと、入試問題が解けない。少なくとも市販の参考書に太字などで強調されて書かれてある用語は、受験までには、最終的には覚えないといけない。高校の定期テストでも、用語の暗記を問う問題が出るだろう。 問題集を解くのも必要だが、高校1年・2年の当面では用語の暗記も必要である。 どっちみち大学での生物学や医学・農学・薬学などでも、いつかは用語を暗記しないといけない。だったら、覚えきれるかどうかは置いといて、とりあえず用語などを暗記しようと勉強を始めてみて、覚えられそうな事があれば、そのまま覚えてしまおう。 == 共通テスト対策 == 過去問や共通テスト対策の参考書を進めるといいだろう。 == 理学部・工学部への志望の場合 == === 学習の基本パターン === この節では、特に断らないかぎり、理学部・工学部・理工学部への進学を対象に述べる。これらに対応する生物科目の学習法をしていれば、文系学生のセンター試験での生物科目の対策にも対応できるからである。 * 用語の暗記も必要。 まず、用語の暗記も必要である。もちろん、用語の意味の理解なども必要だが、最終的には用語を暗記をする必要もある。この暗記の理由は、医学部などを想定すれば分かるだろう。医療の世界では、とっさの判断が必要な場合もあるだろうし、治療法などを覚える必要がある。生物科目は、それらの進路志望者にも対応する必要があるのだ。だから、生物の学習では用語を暗記する必要がある。(ただし、誤解の無いように言うが、医学部入試でも計算問題や理解の深さを問う問題も出てくるので、暗記だけでは解けない。) * 計算問題も出てくる。 高校生物では、計算も必要である。よって、入試にも計算問題が出てくる。これらは問題演習により、確実に解けるように対策しなければならない。 しかし、計算が出てくるからといって、けっして用語などの暗記の必要性が無くなるわけではないので、誤解をしないように。 大学進学後の生物学でも数学が必要である。また、暗記もする必要がある。したがって進路志望では、「計算は好きだが、暗記はしたくない」「暗記は好きだが、計算はしたくない。」という人は、生物学科以外を目指すほうが無難だろう。 * 問題演習も、多く必要。 同様に、問題演習も、多く必要である。これも医療職などを想像すると必要性が分かるだろう。医療職では治療法などを「覚える」必要があるのだ。だから問題演習により、問題を確実に解く能力が必要である。また、医療職では国家試験がある。高校レベルの問題がスラスラと解けないと、国家試験の合格が難しい。 * 高校生物では、中学校までと学習内容が大きく変わってくるので、問題集などで問題練習を多く解くことにより、学習方針を確認する必要がある。 === 生物学科志望の場合、化学も必ず学んでおくこと === 大学の生物学科や医療系の学科や農学部では、進学後の授業で、かならず化学が必要になる。なので'''高校の化学IIを学びたくない人は、大学の生物系の学科への志望は、やめたほうが良い。''' というか、生物系学科・医師薬学・農学に限らず、ほとんどの理系学科で、高校化学(化学II)および高校物理(物理II)および高校数学III・C の知識は必要であろう。大学の専門課程の生物系科目の教科書で、高校物理IIや高校化学IIで扱っている知識も、必要になる。 なので、'''生物II、化学II、数学IIIC、物理IIの科目を学習したくない人は、大学の生物学科への志望は、やめたほうが良い。''' このため、高校3年の履修では、大学生物学科の志望者の場合は、生物IIと化学IIと数学IIIは履修して、数学IIIと化学IIを受験勉強するのが、定石である。 === 高校生物の重要語句を暗記できない人は、大学の生物系学科を目指さないほうが良い === たとえ医療系志望でなくても、理工学部の生物学科用の大学生物学の教科書ですら、高校生物の何倍もの量の多くの用語が出て来る。 また、大学教科書での、細胞などの仕組みの現象の説明も、高校生物よりも、かなり記述が細かくなる。 それら大学生物と比べたら、高校生物は、大学受験参考書ですら、かなり単純であり、高校生でも覚えられそうな、大まかな原理しか、説明していない。 なので、もし高校生物の参考書レベルの重要語句すらも暗記できないようなら、大学の生物系学科を志望しないほうがいい。 べつに、教科書・参考書の「すべての語句」を暗記しろと言ってるのではなく、少なくとも重要語句は暗記しろと言ってるのである。教科書や参考書を読めば、重要語句は、太字などになってるはずである。高校生物の、そういった重要語句は、暗記する必要がある、と言ってるのだ。 === 高校での物理IIの履修について === 理想的には、できれば物理IIも履修したほうが良いのだが、しかし現実的には、学校の時間割などの時間的な理由などで、生物学科志望者には、物理IIと化学IIと生物IIの理科3科目を履修するのは難しいだろう。ただし、もし大学の理系学科に進学するなら、ほぼどんな学科でも高校の物理IIレベルの物理の知識は使う。そして、生物学科でも、大学2年以上で習う専門課程で、少なくとも物理IIレベルの知識は使う。 なので、たとえ生物系の学科志望でも、せめて物理IIの参考書を買っておいて通読しておいて、参考書とかの簡単な練習問題でいいから練習問題をするぐらいのことはしたほうが良いだろう。 === 生体内の化学反応の、完全な理解はあきらめるべき。 === 教科書や参考書にある、生物の体内で起こっている化学反応や物質名などは、最終的には覚えなければならない。生物でも用語や物質名や化学反応などを覚えないといけない。 もちろん、参考書に書いてある説明には目を通す必要があるが、最終的には物質名や反応などを覚えないと、入試では点が取れない。高校生物の化学反応なども覚える必要がある。大学進学後も用語を覚える必要はある。 == 初めて高校生物の参考書を買う人は、まず一般の理系大受験用の参考書を == 医学部向けの入試生物の参考書が市販されている。だが、初めて高校生物の参考書を買う場合は、まずはチャート式生物とか文英堂『理解しやすい』シリーズ生物とかの、一般の理系大学受験の対策の参考書を買ったほうが良い。医学部対策の参考書は、高校生物の参考書を初めて買う者には、適していない。 たとえ医師薬学部を志望する場合でも、一般の理系大学受験用の参考書の知識も、入試に出る。 == 医学部向けの参考書を読む前に、チャート式 == 医学部向けの入試生物の参考書が市販されている。医学部の入試問題では、生物科目でも医学と関わりのある内容の問題が出される。そういう問題のとき方を解説している、また、大学レベルの生物学の内容も、書いてある。たとえ生物学科志望の場合でも、大学レベルの生物学の内容を、最終的には進学後に勉強することになるから、受験生のうちに医学部向け参考書を読んでおくのも良いかもしれない。 だが、それら医学部向け参考書を読む前に、まずは数研出版のチャート式の生物の参考書を読むのが先であろう。チャート式の生物の参考書には、文英堂など他社の参考書よりも詳しく(そのぶん他社本よりも難しい)、けっこう高度な説明もチャート式生物に書いてある。文英堂の「理解しやすい」シリーズの生物参考書よりも、チャート式のほうが説明が詳しく難しい。 いっぽうの文英堂「理解しやすい」シリーズ生物だって、けっして、そんなに簡単というワケではない。あくまで、チャート式と比べたら、比較的には文英堂「理解しやすい」シリーズのほうが簡単という事である。 なお、数研出版の検定教科書のほうは、同社(数研出版)の参考書よりかは、やさしめに書いてある。 また、医学部受験向けの本を読む前に、まず先に化学II・物理II・数学IIICの教科書・参考書を読んで、そして問題集で受験科目の問題練習をするべきであろう。 == 資料集にある細かな用語などは入試に出ない。 == 市販の資料集を見ると、教科書や参考書では紹介されていないような用語も多く出る。「生物」教科の資料集の場合、たとえば解剖学的な用語、あるいは動物学・植物学的な用語など、資料集に見られる。だが、それらの専門的な用語は、あまり入試に出ない。基本的に大学入試にでる用語は、参考書を数社分で充分にカバーできる。難関大学などでは、参考書の範囲を超えた用語が出る場合も考えられるが、しかし、それら難関志望の場合でも、市販の問題集の入試標準レベルの書籍の解説文などで、難関大用の専門用語の学習はカバーできるだろう。 また、資料集の用語を覚えきる必要は無い。覚えるべき用語は、教科書や参考書で紹介された用語である。そのため、まず参考書を購入しなければならない。また、参考書の知識が定着したかどうかの確認は、問題集で行うべきだ。 * 資料集よりも参考書のほうが必要 高校で資料集を買わされる場合もあるだろう。だが、むしろ、学校では買わされないだろう参考書のほうが入試生物での重要性が高い。学校で資料集を買わされることの多い理由は、むしろ授業時の副教材としての目的であろう、教科書には収まりきらない写真や図版などを授業中に教員が生徒に紹介するためだろう。 * 参考書を読まずに資料集を読んでも活用しづらい また、資料集は予備知識として検定教科書レベルの知識を前提にして、教科書の補足的な説明をしている。それも、生物IIレベルの範囲の補足説明も、資料集には書かれている。教員が授業中に高校1年生に資料集の内容を紹介する場合には、生物IIの知識が無くても生徒は分かるだろが、しかし独学では、そうはいかない。なので、まだ、生物IIの教科書や参考書を読んでない読者には、資料集は向いてない。 * 知識の確認は問題集で 資料集を読み込むよりも、むしろ問題集で問題演習を多く練習するほうが、高校生には望ましい。多くの高校生にとって、問題集すら現役高校生の時期には終わりきらないだろう。よって、資料集の読み込みまでは、もう時間が足らないのが、高校生の現状であろう。 * 大学入学後 また、大学入学後でも、それら資料集に紹介されるような用語の重要性は、当面は、あまり重要度が高くない。大学入学当初の生物学では、むしろ物理学や化学を用いて生物学を勉強する知識が、要求されるだろう。高校生物では、あまり物理や化学と、生物を関連づけて習ってないからである。 また、大学でも単語だけを覚えても、大学入学後の生物学テストでは点は取れず、生物学の理論も覚えないと得点が取れない。その大学生物の理論も、高校の段階では、まだ習わないし、資料集でも、あまり大学生物の細かい理論は紹介されない。 ただし、医学部や薬学部などだと、国家試験のため、それらの職種に関係のある用語を丸暗記して覚えなければならないだろう。しかも暗記量が多い。だが、それらの暗記は、大学入学後に専門科目で行ったほうが効率的だろう。たとえば極端な例をあげれば、医学部の学生には、あまり植物学の細かな知識は要求されないのだ。(でも、検定教科書レベルの植物学の知識は、医学部などでも必要だろう。たとえば薬品の勉強では、植物の知識も必要だろう。あくまで、資料集にしか書いてない話題は、進学後の学科によっては、残念ながら重要度が低い、という意味である。) 農学部なら、植物学の細かな用語は必要かもしれない。だが、その農学部ですら、大学入学後の生物学の細かい理論とか、あるいは物理学や化学を用いて生物学を勉強する知識が要求されるだろう。 高校生には、まだ、資料集の発展的な内容について、大学進学後の生物学と、どう関わってくるか、それとも、あまり関わらないのかが分からない。たとえ多くの教材出版社の(高校生用の)資料集でよく説明される事項であっても、あまり大学進学後に重視されてない知識も多い。高校入試を思い出してみよう。中学の教科書や参考書・史料集に、発展的な項目として書かれていたことであっても、高校入学後の授業では、あまり要求されない知識もあったはずだ。大学入学後も同様である。 * 資料集の内容には、入試に出しづらい知識もある もちろん市販資料集の執筆者は、彼の記述内容を重要だと思って、その本に、その用語を書いて紹介しているのだろう。だがしかし、現実として、大学入学後には重視されてない知識も多い。もちろん、資料集に書かれている内容には、重要性が実際に高い内容もあるだろう。たとえばヒトの出産の仕組みについての説明などが資料集に書かれているが、きっと重要性は高いだろう。だが、それらの出産の知識は日本の入試制度では保健体育の内容と重なっており、大学入試の生物教科では出ない場合が多い、という現状である。 * 資料集の活用法(かならずしも活用しなくても良い) もし資料集を活用したいなら、まず、資料集の優先順位が低いことを知ることである。読む優先順位は、 :(優先度の高い側)  参考書・教科書 > 問題集 > 資料集  (優先度の低い側)  であろう。 問題集は読むだけでなく、キチンと問題を解くのを忘れないように。 教科書で分からない事があったら、まず参考書を読む。問題集で分からないことがあったら、まず参考書を読む。参考書は複数の出版社を読む。 けっして資料集を「熟読しよう」などとは思うべきではない。資料集は一度か二度、目を通して通読すれば充分である。 教員にとっては、資料集は、授業準備用の学習書としては良いかもしれない。たとえば高校教員が授業中に話すかもしれない発展的な内容のいくつかも、きっと資料集に書かれている内容であろう。だが、そんな教員側の事情なんて、現役高校生にも大学受験浪人生にも、直接は関係ないことだ。 == 検定教科書の発展項目について == 高校の検定教科書には、発展的な内容も書いてあり、参考書に書いてない高度な内容を扱っている場合もある。特に生物IIに相当する新課程「生物」になると、かなり発展的な内容も書いてある。 とくに生物学の場合、たとえばバイオテクノロジーや再生医療などの分野で、教科書の発展項目の記述内容の変化が早い。 だが、教科書会社ごとに紹介している内容が違う。なので、あまり入試には出づらい内容の可能性があるので、学習時には注意が必要である。もし発展内容を確認したいなら、代わりに参考書(複数の出版社分)と問題集(入試標準レベル以上)で代用すれば充分だろう。入試に出る発展内容については参考書の複数社と問題集があれば充分にカバーできるだろう。 入試「生物」では参考書を超えた発展内容を学ぶ必要は無い。そんなヒマがあるなら、他教科・他科目の参考書で、それらの他科目の発展内容を学んだほうが良い。 また、大学レベルの生物学を学ぶ場合でも、高校の参考書レベルの知識が、ほぼ必要になる。なので結局、参考書(高校生用)を読み込んだほうが良いだろう。 == 洋書の生物学書は、高校生は読まないほうがいい。危険である == 地域や学校によっては、図書館に、分厚い洋書の生物学書があるかもしれない。 しかし、そのような洋書は、以下の理由により、読者に誤解を与える可能性が高く、高校生の学習には危険であるので、読まないほうがいい。 実際に500〜1000ページもある分厚い本の生物学の洋書を読んでみると分かるのだが、'''内容が、まぎらわしい'''。生物の仕組みには、原則と例外がある。ほとんどの生物にある仕組みを、例外的に持ってない生き物も、世の中には存在する。 日本の高校生物の教科書に書いてあるような基本事項でも、例外がある。'''洋書の中には、例外のほうを強調しているものもあり、もし予備知識のすくない生物学の初学者が読んでしまうと、ある生物現象の「原則」と「例外」を逆に誤解してしまう可能性もあり、大変に危険である。''' なので、たとえ図書館などに、そのような分厚い洋書の生物学書などがあっても、そういう洋書は読まないほうが安全である。 以上、洋書を読まないほうがいい理由の、主な理由である。 以下の行は、補足説明である。 それに本が厚すぎると、問題練習をする時間も不足する。しかも、洋書を実際に読んでみると分かるのだが、練習問題のレベルが低かったり、雑多な知識を問うものも多い。 また、実際に500〜1000ページもある分厚い本を読んでみると分かるのだが、「何が重要事項であり、また、何が補足事項なのか」も、分かりづらいのである。しかし高校生は、重要事項を優先的に学習する必要があるのだ。だから、分厚すぎる専門書は、高校生にとっては逆効果である。 == 大学用の教科書は、高校生物には、まったく役立たない == 大学生用の生物学の教養課程(大学1年生ていど)の教科書は、まったく高校生には適していない。なぜなら高校の範囲の広さのほうが、大学の教養課程の生物学よりも広範な話題を扱っているからである。 高校の生物では、たとえば内臓など解剖学の基礎とか、さまざまな動植物の植物学・動物学の基礎など、純粋な生物学のほかにも関連する様々な分野を習っている。 大学の学科にもよるが、数学科や機械工学科などの生物以外の大学生のならう大学生物学の教科書1冊だと、たとえば解剖学やら動物学やらの関連分野は記述が少ないのである。大学生用の教養課程の生物学の教科書は、遺伝子や細胞の仕組みなど、微細な物の理論を基礎にして書いている書籍が多い。そのぶん内蔵などの解剖学やら、各種の動植物の植物学・動物学など、サイズの大きな物事の記述は弱い。 もし、1冊500ページ〜1000ページもあるような、とても分厚い、大学生物の専門書を買えば(たとえば洋書などで辞書みたいに分厚い本がある)、それら解剖学やら動物学など関連分野も書いてあるかもしれないが、しかし高校生の学習には厚すぎて適さない。 また、日本の医大生用の解剖学の本を読んでみると、もちろん医学生や看護学生などを対象に書かれており、とてもじゃないが高校生が活用できる内容ではない。また、医学書には、植物学とか動物学とかに関わるような内容は、ほとんど書かれていない。農学に関するような内容は、もちろん医学書には書かれていない。 とにかく解剖学・植物学・動物学など、分野によっては、レベルの高さは、高校生用の受験生物の参考書のほうが、大学用の教養課程よりも、レベルが高いのである。特に生物学は、遺伝子の分野などの急激な発展のため、生物学の進歩が早い分野なので、十数年前の大学生用の教養課程(大学1年)の教科書よりも、なんと現在の最新の高校参考書のほうが記述が詳しい場合もある。 もし物理学の場合なら、大学の教養課程の教科書の1冊か2冊ていどで、一通りの高校物理の内容を網羅しているという本もある。しかし、生物学では事情が違うのである。大学の教養課程の生物学は、高校生物を網羅できていません。 もし高校教員・塾講師などの教育者だったら、大学レベルの分子生物学の専門書、生化学の専門書、解剖学の専門書、植物学の専門書、動物学の専門書、・・・なども背景知識として読んで勉強しておく必要があるのかもしれないが、しかし高校生本人・浪人生本人には、そこまでの専門書は不要であろう。 1a3nj3e5rupla7i3nkg2b2jly1uwfvm 学習方法/高校物理 0 18793 205523 203074 2022-07-19T12:09:37Z Nermer314 62933 /* 物理のための数学 */ wikitext text/x-wiki :※注意 編集者の主観的な勉強法も、本ページには書かれているだろうと思われるので、このページは、せいぜい参考程度にして、このページをあまり信用しすぎないようにして頂きたい。 また、各教科・各科目の個別の勉強法については、市販の参考書を何冊か見れば、ふつうは、その参考書の前書きのページあたりに、その参考書をつかった勉強法的なことが書かれてるだろうから、そういうのを参考にしたほうが安全だろう。 == 計算の応用が科目「物理」の目的 == === 入試に出ない分野 === 相対性理論や素粒子などの高校数学では扱いにくい内容は、たとえ教科書・参考書に書いてあっても、理工学部の入試の物理には出にくい。 資料集などには液晶テレビなどの家電製品の原理なども電気物理に関連付けて書いてあるが、そういう工業製品の仕組みなどは大学入試に出ない。歯車などを用いた機械のしくみについては、そもそも資料集にすら扱われておらず、当然、大学入試にも出ない。 == 本文 == 大前提ですが、物理の入試問題は数学みたいに数値も文字で出てくることはほとんどありません。教科書や参考書はよく文字式を使ってR1÷R2=Rx÷R3とかで表していますが、実際の問題には、そういうのよりも可変抵抗①÷可変抵抗②=未知の抵抗値÷可変抵抗③ということが分かれば、問題は解けます。 どの分野も、検定教科書や参考書に書かれた説明は、文字式を日本語に直してキチンと読んで下さい。参考書の理解を深めるために問題集などで問題演習に取り掛かります。 なので、問題集が必要です。問題集を買ってください。高校1年・2年の人は、まずは授業基礎レベルの問題集(ドリル・ワークブックのようなもので良い)を買って、問題練習してください。 参考書を読み込むよりも、問題集の計算を確実に練習することが、物理では重要です。物理の問題集では、計算をする必要のある文章問題が、もっとも重要です。 また理系大学の志望の場合、高校3年になるまでには、入試基礎レベルの問題集を買って練習をはじめください。 このとき、解説の多い問題集を買ってください。物理の入試基礎レベルの対策の場合、まずは問題数を絞っていても良いので、解説が充実している本を買います。 参考書の説明も、通読して最初から最後まで読む必要があります。そのあと、問題集などで手を動かして、計算練習をしてください。また、参考書に計算例や練習問題が書いてあれば、実際に手を動かして計算してみて確かめてみてください。 また、参考書に式の導出などが書いてあれば、実際に手を動かして計算してみて確かめてください。公式を覚えるだけの勉強はしないほうが良いです。なぜなら応用問題が出たときに、公式暗記だけだと対応できません。標準レベルの参考書なら、そんなに難しい計算は無いはずです。 そういう「計算してみて確かめる」という勉強ができない人は、大学の理系の学部は志望しないほうが良いです。標準レベルの高校参考書に紹介された計算例なんて、そんなに高度ではありません。文系高校生ですら、数学の得意な人なら、標準的な参考書の計算例なら計算できるレベルなのが、高校理科の計算レベルです。高校レベルの計算すらも計算したくない人は、そもそも入試で理工学部には合格できないでしょうが、たとえ万が一に合格しても、大学理工学部を卒業できないでしょう。 * 資料集 資料集は入試対策では使いません、物理の場合。高校が生徒に買わせる教材でも、生物や化学の資料集は生徒に買わせて授業時の副教材として用いる場合がありますが、いっぽう、物理の資料集は買わない場合が普通です。 * 教科書ガイド 理系志望の場合、物理の教科書ガイドは不要です。それよりも参考書と問題集で勉強してください。もしアナタにとって参考書は難しすぎて勉強できず、教科書だけでは難しすぎるから教科書ガイドが欲しいというならば、そもそも理系大学志望には向いてないので、進路を文系志望などに変えたほうが良いです。もし参考書に書いてない話題を知りたいなら、教科書ガイドよりも資料集のほうが良いでしょう。 == 物理のための数学 == 高校2~3年の物理(専門物理)を履修する場合、'''数学IIIも履修してください。''' なぜなら物理では、三角関数や微分積分の知識がないと、導出しづらい公式が多く紹介されています。まともな高校なら、物理の履修者には、数学IIIの履修をすすめるはずでしょう。なお、だからといって数式だけに頼って機械的に解こうとするのではなく、物理特有の知識も理解しようとしてください。 == 分野別勉強法 == まず、物理の学習の大前提は、式の変形や計算といった数学的な操作がしっかりできることです。そこが苦手な人は、中学数学の等式の変形などを復習しておきたいところです。 物理の公式はこれから述べるように式変形などによって導き出されることも多いため、丸暗記すべき公式は意外に多くはありません。そのせいか、公式についての「正確で完璧な理解」にこだわりたくなるかもしれません。しかし、高校段階ではまだ「正確で完璧な理解」をすることは不可能です。そのため、ある程度の割り切りも必要とするのだということも心得てください。 そして、物理は実際に手を動かすことが非常に大事です。具体的には、問題演習をこなしていくことが他の教科以上に必要です。このことが、物理におけるものの見方・考え方を身につけることにつながりますので、その労を惜しんではなりません。 === 力学 === まず、運動方程式などの最低限の公式を用いて、教科書や参考書などで様々な公式の導出を少なくとも一回は読み、導出の計算を手で追ってください。これらの公式の導出法の考え方を用いる問題は、意外と入試に出ます。 力学に限らず、物理の公式はそれぞれ関連しあっていることが多いです。そのため、公式同士の関連性を教科書を見ながら確認しましょう。そうすれば、丸暗記しなければならないような公式はぐっと減ります。「時間の公式」「位置の公式」と個別の公式の暗記は避けたいものです。そして、運動方程式やエネルギー保存則の公式、運動量保存の法則などから、位置や速度や時間などを求められるように練習してください。 もちろん、遠心力の公式のようにきちんと運動方程式から導くには時間がかかるものは覚えた方がよいのですが、それでも一度は自分の手で導出しましょう。それだけで、式を忘れにくくなります。 そして、反発係数や位置エネルギーなどの用語の定義もしっかり確認しましょう。 惑星の運動について入試に出る分野は、「第一宇宙速度」とか「第二宇宙速度」とかのようにエネルギー保存法則と関係の深い分野とか、あるいはロケットの原理を運動量保存と関連して出題するとかです。 === 電磁気 === 少なくとも一回は教科書や参考書の説明をキチンと読んでください。運動方程式や位置エネルギーなど力学の公式を、クーロンの法則などと組み合わせて、どうやって電位の公式などを導くのか、ぐらいはキチンと参考書などを読んでください。意外と入試で、力学と組み合わせた計算問題が出ます。 磁極のクーロンの法則と、静電気のクーロンの法則は似ていますが、入試に出る頻度には違いがあります。磁極の問題よりも、静電気の問題のほうが、入試に多いです。学習時間が残り少ない場合には、優先するべき単元は、磁極よりも電気の単元を優先してください。 === 振動・波動 === 波動の問題は演習量が最もモノをいう単元です。計算問題の問題演習に取り掛かりましょう。そして、図示して簡単な作図ができるようにしましょう。知識は干渉の式とその周辺の教科書の説明を読めば終わりです。 === 熱力学 === 熱力学は苦手にする生徒も多いのですが、最低限のポイントを整理しておさえれば満点も視野に入るため、得意・苦手がはっきりと分かれやすいところです。しかし、大学入試に挑戦するには(そして、大学以降の物理学では)決しておろそかにできない単元です。 公式もそう多くはないので、最低限のポイントを整理しておさえ、演習を重ねていきましょう。 まず、熱「力学」ですので、力学でいい加減な理解をしていないかをチェックしておきましょう。特に「力積」「圧力」「仕事と力学的エネルギー」はしっかりと理解しているかを振り返ってみましょう。 そして、力学と同様に、基本の公式の暗記(これはどうしようもないです)とそれを用いた公式の導出によって、「式の意味」を説明できるようにしましょう。 === 原子物理 === 検定教科書の説明を読んだら、公式を覚えるために問題演習に掛かります。高校段階での原子物理は「完璧な理解」が不可能なため、基本事項ばかりです。そのため、一週間ほど集中的に取り組めば割ととれるようになります。 == 大学の物理学科志望者は数学IIIと化学も学習すべき == * '''もし高校の数学が嫌いな人は、物理学科への進学をやめたほうが良い''' 物理学科の志望では、物理のほかにも、さらに数学IIIを、なにがあっても化学・生物よりも優先的に、数学IIIを履修して受験勉強してください。 なぜなら理系大学の物理の授業では、微分積分を頻繁に使うからです。そして、微分積分の計算ができないと、確実に大学物理学科では留年し、確実に物理学科を卒業できず、確実に退学に追い込まれます。 物理学科の場合、大学によっては、たとえ高校で微分積分をマジメに履修して数学IIIを履修してきたマジメな学生ですら、大学では留年してしまうようなほどの難度の高い数学を用いるカリキュラムが組まれている大学も多くあります。 なので、もはや高校段階ですら数学IIIを学んでない人は、ほぼ確実に大学・物理学科では留年し退学します。 仮に微分積分ができない人が間違って物理学科を卒業してしまったとしても、世間一般の製造業からは微分積分ができない卒業者なんかを、けっして物理学の専門家としては認めてくれません。 数学IIIを学習できない人は、けっして物理学を学べるだけの能力も無く、けっして物理学を学ぼうとする意志も無いのです。 * '''できれば化学も勉強''' できれば化学も学んでおいて、問題練習もしてください。大学の物理学科では、あまり化学反応を覚えたりとかは少ないでしょうが、理系の教養として高校程度の化学は知ってて当然の知識です。また、製造業の技術職に大卒として就職した場合の実務にも化学・物理の両方の知識は関わってきます。べつに化学が得意でなくても良いので、高校教科書レベルの化学を勉強して下さい。 高校化学でも、物理的な考え方は出てきますので、物理の参考になります。 大学の物理学科とは、おそろしく難しいのです。対策として、高校のうちに学べる理系科目は、どんどん学んだほうが良いのです。 だから、できれば生物と地学も学んだほうが望ましいのですが、現実的には化学までで高校のうちは精一杯でしょう。 また、国立大を目指す人は、国語や社会科などの文系科目を勉強しないといけないでしょうし、理科ばかりに時間を避けません。 生物の参考書を読む時間すら、物理志望者には時間の確保が難しいかもしれませんが、とりあえず生物の参考書を買っておいて、読める範囲で生物も読みましょう。さらに余裕があれば、地学も読んで、理系の頭脳を磨きましょう。 == 物理の試験問題の解き方 == === 図を作図できるように === [[File:摩擦角の模式図.svg|thumb|400px|摩擦角]] 物理の問題の解き方は、まず、たとえば右図の「摩擦角」の図のように、図を立てるところから、始める。 つまり、試験問題の問題文の内容を、図に置き換えるのである。 そして、図をもとに、たとえば力学の問題なら、その図の内容を運動方程式に置き換え、その方程式を解くのである。 市販の学習ノウハウ本では、高校の物理の学習では「イメージ」が大切・重要だとか<ref>『高校の勉強のトリセツ』、GAKKEN、100ページ</ref><ref>船登惟希 『改訂版 高校一冊目の参考書』、KADOKAWA、2019年3月18日、154ページ</ref>とか言いますが、ではその「イメージ」とは何かというと、つまり、物理の問題を解くための作図ができるようになる事のスキルの言い換えです。 力学以外の振動・波動や熱力学や電気磁気学などでも、問題の解き方は、とにかく、まずは、試験問題の内容を反映する図を書いて、そして図をもとに方程式を記述するのである。 作図さえ出来てしまえば、あとは作図に基づき方程式を立て、その方程式を、数学的・機械的に解けばいいだけである。 原理的には、大学入試で出題されるような問題も、このような手順で解ける。 まとめると、 :問題文を読解 → 図を作図 → 図の内容を方程式(運動方程式など)で表現 → 方程式を解く というよう手順になる。 逆に、やってはならない間違った勉強法としては、作図ができないままに、公式を機械的に当てはめて解いてしまう方法です。よほどの単純な問題でないかぎり、この機械的に当てはめていく方法では、応用が利きません。 大学受験だけでなく、大学進学した場合の大学での理科の勉強などにも、物理イメージの作図による勉強法は活用できますし、製造業などでの設計などにも活用できると思われますので、ぜひとも高校生のうちに、物理イメージ作図による勉強スタイル・問題解法スタイルを習得してしまいましょう。 検定教科書では、あまりこのような手順の計算練習が紹介されていないので、入試基礎レベルの問題集を買う必要がある。学校で配布されるような薄いワークブックでは不十分である。 入試基礎レベルの問題集が必要であり、しかも解説の充実している問題集を買う必要がある。 このような問題練習の目的で参考書・問題集を買うなら、『橋元の物理をはじめからていねいに』などのシリーズが、オススメである。 このシリーズは、参考書と問題集とを兼ね備えたような、構成になっている。なお。他の出版社からも似たような、参考書+問題集のミックス本みたいなのが出ている。 なお、このような目的で参考書・問題集のミックス本を買う場合、力学などの各分野の典型的問題の解き方の手順の、具体的な解説が充実しているかどうかが重要なので、問題数は多くなくても構わない。 典型的な問題例だけをミックス本で問題練習して身につけ、その他の雑多な入試問題対策は、入試対策問題集を購入して勉強するのである。 なお、これらの問題集・参考書のあわさったミックス本は、ページ数の限りなどにより、文英堂シグマベストやチャート式などで解説されている事項のすべてを網羅しきれない。 なのでミックス本とは別に、シグマベストまたはチャート式も購入して理解しておく必要があり(できればシグマベストとチャート式の両方とも購入するのが望ましい)、シグマベスト・チャート式に紹介された(物理の)基本事項も確認して、シグマベスト・チャート式の例題などは練習しておく必要がある。 === 入試対策問題集を読んで解法の知識を増やす === また、上述のような作図練習(作図 → 方程式)の練習をするのは、もちろん必要な上で、それとは別に、入試でよく出てくる典型的パターンの問題も解けるように、別の問題集(入試対策問題集)を読んで、解法の知識を増やす必要がある。こちらのほうは、とりあえず読むだけで良い。もちろん、解法の解説の充実した問題集を買うべきなのである。 入試対策問題集には、入試基礎〜標準レベルと、入試難関レベルなどがある。とりあえず読む始めるべきは、入試基礎〜標準レベルである。 なので、学校で習った範囲については、高校2年生の段階でもいいので、さっさと入試対策問題集(入試基礎〜標準レベル)を読んで、解法を読んで、解法を知識として知ってしまうべきである。 高校2年や高校3年1学期あたりでは、入試対策問題集はとりあえず読むだけでいいので(まだ問題練習はしなくてもいい)、入試基礎〜標準レベルは、さっさと読み終わってしまう。そのあと、高校3年1学期くらいまでは、自分の興味にあわせて、入試難関レベルの問題集を読んでみたり(とりあえず読むだけ)、あるいは、入試基礎〜標準レベルの問題をじっさいに解き始めてみたりするのである。 == 理工系志望のさいの学科の選び方 == あなたがもしも、「ナノテクノロジー」や半導体などの最新デバイス、そのほかカーボンファイバーなどの最新の素材などのような、 最先端の物理学や化学をつかった技術そのものを「自分でも発明できるようになりたい」と思って勉強したくて大学に進学するのなら、けっして電気電子工学科や電子情報工学科のような電子系の学科には、進学してはいけません。 なぜならこれら「電子」系の学科とは、けっして、最先端の半導体や最新素材を発明したい人を育成するための学科ではなく、就職後に、ほかの誰かが開発した半導体やナノテク技術や最新素材や集積回路などを、'''工場で使って、ほかの機械をつくりたい人'''を育成するための学校が、電子工学科なのです。 なので、もし半導体やナノテク技術そのものを発明できるようになりたいならば、なるべく物理学科を目指しましょう。また、カーボンファイバーやら何やらの素材をつくりたいなら、化学科を目指しましょう。 なぜなら、こういった「電子」系の学科とは、けっして半導体などの物理的・化学的なしくみを習う学校'''ではなく'''、かわりに、半導体などの最新デバイスの'''計算方法を練習する学校'''だからです。 なぜ、「そのような公式で計算をするのか?」の物理学的な証明は、これら電子系の学科では、習いません。 電子系の学科は、「物理学には興味がないけれど、でも、電子機器を設計できるようになりたい」という人を、育成するための学校です。 じっさい、大学の電子系の学科では、(大学1年で習う)「力学」と、専門科目以外の「電磁気学」をのぞけば、まったく古典物理学を教えずに、量子力学や統計力学などの現代物理学の公式を教える事例も、多くあります。 そして、その「電磁気学」の教科書すらも、物理学科の人達がつかってる教科書とは、別に、電気電子工学の話題と公式ばかりを説明した教科書を使いますので、なので、物理学科の『電磁気学』と、いっぽう電子系学科の『電磁気学』とは、別内容なのです。 電子系の学科でも、物理学の用語をつかって、計算式の説明をする事はありますが、単に用語を紹介するだけであり、しかし、その計算方法の根拠の証明は、これら電子系の学科では習いません。 そもそも電子系の学科の教授自体が、そういう物理学の証明を省いた勉強ばかりをしてきていて、物理学科の大学高学年レベルのような古典物理学を、あまり電子系の教授が知らない場合すらも、あります。 なお、大企業の半導体メーカーや素材メーカーなどが、これら電子系の学科の卒業生を採用する場合もありますが、単に出身大学の偏差値ランキング順に採用しているだけであり、けっして、大学での電子工学の研究内容には期待していません。 なので、半導体そのものやナノテク技術そのものを開発したい場合なら、あるいは集積回路そのものを設計できるようになりたいなら、大学受験での進路志望では、なるべく物理学科を目指しましょう。 高校物理の得意な受験生だと、ついつい「大学で視野を広げよう」と思って、普通科高校では習わない電子工学などを専攻する学科を志望しがちになるので、気をつける必要があります。電子工学系の学科では、「視野を広げる」どころか、本来なら、大学進学前には古典物理や化学や機械工学などにも向けられていたはずの視野が、狭められてしまう可能性すらもあります。 また、たしか、講談社の『講談社 基礎物理学シリーズ 全12巻』での電磁気学の巻号の教科書を読むと、勉強法の主旨として「物理学科の電気磁気学とは、問題をすばやく解くことではなくて、その問題の解き方がそうなるわけを、自分で計算して導き出せるようになること」、「けっして、特定の装置での、電場の分布や磁場の分布を求めるのが、物理学の電磁気学ではなく、電場や磁場の法則そのものを理解することのほうが必要」、「特定の装置での、電場や磁場の分布を求める技能は、物理学の電磁気学とは別の、職人芸である」的なことを主張しているのですが、なぜ、わざわざ著者の物理学者さんが、こういう当前の事を主張するかというと、つまり、(物理学とは違う)「職人芸」のほうの『電磁気学』を教育している学科(電気電子工学科)が、日本各地の理系大学には存在するからです。 なので、もしアナタが、半導体そのものやナノテク技術そのものや集積回路設計そのものを開発したい場合なら、大学受験での進路志望では、なるべく物理学科を目指しましょう。 == 入試対策 == 物理学の入試問題では、教科書では扱っていない実験例にもとづく計算を扱っている入試問題もある。 力学の入試問題ですら、教科書では扱っていない実験例にもとづく入試問題も多い。実験条件を複雑にするなどして、教科書では扱ってない、さまざまな実験例が、入試では出題される。 そのような、教科書範囲外の実験例の入試問題も多い。教科書範囲外の実験例んもとづく入試問題は、あらかじめ実験結果をしっていないと、解きようがない。 いちおう、物理教育の理念上のタテマエ上は、教科書やチャート式・シグマベストに書いてある基本法則から、解法を導けるような教育システムであってほしいのだが、現実の物理教育は違う。実際の入試では、試験現場で解法をいちいち導くと、その解法の検証・証明に時間が掛かり、脳内でいちいち検証・証明していると、試験時間が足りなくなってしまうのが実情である。 このような入試の実情のため、「橋本の物理」などの基本的な参考書+問題集のミックス本を問題練習してきただけでは、私大平均レベルより少し上(偏差値55くらい)までの入試問題しか解けないのが、残念ながら入試物理の実情である。 受験生の中には、入試対策問題集で養った知識をもとに、「式の導出」ではなく「知識問題」として、その問題を解いている者も多い。 つまり、入試の「物理」科目とは、けっして数理思考力を見る科目ではなく、知識も必要なのである。 入試物理の難問を解ける受験生も、実際は、そのような難問の実験例と解法を、問題集で学んだだけ、に過ぎない。 そこで受験対策としては、どうすべきかというと、とりあえず問題集(入試対策問題集)を購入し、その問題集を通読し、問題集で紹介された解法を先に読んでおくのである。そして、勉強時間に余裕があったら、あとから問題練習を行うのである。 買うべき問題集は、入試基礎〜標準レベルだけでなく、入試難関レベルの問題集も、とりあえず買っておいて、入試難関レベル問題集まで通読してしまうのが良いだろう。(とりあえず、問題は解かずとも、読むだけでいい。読むだけなので、すぐに読み終わる。) なので、学校で習った範囲については、高校2年生の段階でもいいので、さっさと入試対策問題集を読んで、解法を読んでしまうべきである。 そして、あとから、入試基礎レベル問題集の問題練習を始め、そして入試難関レベル問題集を解くのである。 そもそも物理学は実験にもとづく学問でもあるので、実験結果を知らないと解きようがない。 さて、入試の出題者は、単に過去問のパターンを覚えるだけでは解けない問題を出そうとする者もいるだろうが、残念ながら現実の入試では、そのような思考力を要求する問題は出しづらく、仮にそういう問題を1つか2つほど出したところで、他の多くの入試問題は実験結果の知識を要求する問題が多いのが実情である。また、そのような思考力を要求する問題の受験対策のために受験勉強の時間を割いてしまうと、他の教科・科目の勉強時間が不足してしまう。 したがって、残念ながら大学入試の「物理」では、知識量も要求されるのが実情である。 べつに大学受験「物理」だけでなく、受験「生物」、受験「化学」も、同じような状況である。つまり、受験の理科の勉強方法とは、まず入試対策問題集の解法を先に読んで、あとから問題練習を行うのである。 物理学の研究はともかく、大学入試での「物理」科目とは、あまり、高度な学問ではないのである。なお、大学入学後の理工学部での物理学や工学(機械工学・電気工学・情報工学・土木工学など)の定期テストも、似たような状況であり、試験問題のパターンを覚える科目であろう。 理系の学部の大学入試で「数学」が要求される理由は、「物理」科目はしょせん、試験問題のパターンを暗記する科目に過ぎないから、である。受験数学にも似たような解法暗記型の攻略法はあるが、受験理科よりかは受験数学のほうがマシな状況、という事だろう。 == 大学進学後の物理の傾向 == * 物理学科以外は、進学後も公式は暗記が必要。また、物理学科に進学しても、公式を暗記しないと解けない問題は出る。 これらの公式暗記が苦手だと、大学のテストで計算問題の成績が悪くなり、単位を落として留年する可能性が増えます。物理学科以外の学科では、あまり物理公式の導出は要求されません。たとえ公式の導出ができても、試験時間に計算問題が終わらず試験に合格しなければ「不勉強である。」という評価であり、大学や企業から、そう見なされるのが傾向です。その傾向が善い事か悪い事かを議論するつもりはありません。進路の参考までに、現状の理系の大学での物理学教育での傾向を述べただけです。 理系の大学の定期試験では、このように計算力が要求されます。 また、例外として数学科での数学の定理の証明を除けば、実は理系の大学の定期試験では、あまり公式の証明や導出は出ません。理工系大学の場合の定期テスト問題は、公式を覚えさせて計算問題を解かせる計算問題が多いです。 どこの理系の大学も入試に数学を要求するので、てっきり「多くの大学の理系の授業は、数学科のような証明をする授業。」と誤解しがちですが、それはマチガイです。 == 大学以上のレベルの物理を勉強したい場合 == 高校生が、参考書よりも、さらに発展的な理科を勉強したい場合、高校生は、どうすればよいのでしょうか? もはや、大学生向けの教科書を買うしか、ありません。しかし当然、大学受験生には、そんな暇が、ありません。それに、せっかく大学向けの教科書を買っても、力学の教科書なら力学のことしか書いてませんし、電磁気の教科書なら電磁気のことしか書いてありませんので、高校生には、すごく不便です。 もし大学レベルの物理の書籍を買うだけでも、とても冊数が多くなり、大学レベルの力学の本、電磁気の本、振動・波動の本、熱力の本、量子力学、特殊相対性理論、…と全部を買い合わせていくと、値段がたぶん5万円を越えます。なのに、せっかく買っても、読む時間が足りません。 このほか、数学の線形代数・微分積分(偏微分・重積分)の本、微分方程式の本、化学の概論書、生物の概論書、機械工学の概論書、電気工学の概論書、初等的な材料力学・流体力学の本、電気回路および電子回路の教科書、材料工学の本を機械材料と電気材料で計2冊、人体の生理学の入門書、基礎の薬理学、…と、買い合わせていくと、値段がたぶん20万円を越えます。 図書館には物理の専門書があり、利用資格があれば無料で借りることが出来るが、おそらく返却期限までに読み切ることは難しいだろう。そこで、著作権に注意しながら、専門書をスマホのカメラなどで複写するなどすれば、大学以上の物理の専門書をかなり安く入手できる(この場合著作権に注意せよ)。 == 脚注・参考文献 == 5jv1xc3vdcvt9nvobw7i9czyuh5fsup 205532 205523 2022-07-19T12:54:16Z Nermer314 62933 wikitext text/x-wiki :※注意 編集者の主観的な勉強法も、本ページには書かれているだろうと思われるので、このページは、せいぜい参考程度にして、このページをあまり信用しすぎないようにして頂きたい。 また、各教科・各科目の個別の勉強法については、市販の参考書を何冊か見れば、ふつうは、その参考書の前書きのページあたりに、その参考書をつかった勉強法的なことが書かれてるだろうから、そういうのを参考にしたほうが安全だろう。 == 計算の応用が科目「物理」の目的 == === 入試に出ない分野 === 相対性理論や素粒子などの高校数学では扱いにくい内容は、たとえ教科書・参考書に書いてあっても、理工学部の入試の物理には出にくい。 資料集などには液晶テレビなどの家電製品の原理なども電気物理に関連付けて書いてあるが、そういう工業製品の仕組みなどは大学入試に出ない。歯車などを用いた機械のしくみについては、そもそも資料集にすら扱われておらず、当然、大学入試にも出ない。 == 本文 == 大前提ですが、物理の入試問題は数学みたいに数値も文字で出てくることはほとんどありません。教科書や参考書に書かれた説明は、文字式を日本語に直してキチンと読んで下さい。参考書の理解を深めるために問題集などで問題演習に取り掛かります。 なので、問題集が必要です。問題集を買ってください。初心者の人は、まずは授業基礎レベルの問題集(ドリル・ワークブックのようなもので良い)を買って、問題練習してください。 参考書を読み込むよりも、問題集の計算を確実に練習することが、物理では重要です。物理の問題集では、計算をする必要のある文章問題が、もっとも重要です。 また大学受験の場合、高校3年になるまでには、入試基礎レベルの問題集を買って練習をはじめください。 このとき、解説の多い問題集を買ってください。物理の入試基礎レベルの対策の場合、まずは問題数を絞っていても良いので、解説が充実している本を買います。 参考書の説明も、通読して最初から最後まで読む必要があります。そのあと、問題集などで手を動かして、計算練習をしてください。また、参考書に計算例や練習問題が書いてあれば、実際に手を動かして計算してみて確かめてみてください。 また、参考書に式の導出などが書いてあれば、実際に手を動かして計算してみて確かめてください。公式を覚えるだけの勉強はしないほうが良いです。なぜなら応用問題が出たときに、公式暗記だけだと対応できません。標準レベルの参考書なら、そんなに難しい計算は無いはずです。 * 資料集 資料集は入試対策では使いません、物理の場合。高校が生徒に買わせる教材でも、生物や化学の資料集は生徒に買わせて授業時の副教材として用いる場合がありますが、いっぽう、物理の資料集は買わない場合が普通です。 * 教科書ガイド 理系志望の場合、物理の教科書ガイドは不要です。それよりも参考書と問題集で勉強してください。もしアナタにとって参考書は難しすぎて勉強できず、教科書だけでは難しすぎるから教科書ガイドが欲しいというならば、そもそも理系大学志望には向いてないので、進路を文系志望などに変えたほうが良いです。もし参考書に書いてない話題を知りたいなら、教科書ガイドよりも資料集のほうが良いでしょう。 == 物理のための数学 == 高校2~3年の物理(専門物理)を履修する場合、'''数学IIIも履修してください。''' なぜなら物理では、三角関数や微分積分の知識がないと、導出しづらい公式が多く紹介されています。まともな高校なら、物理の履修者には、数学IIIの履修をすすめるはずでしょう。なお、だからといって数式だけに頼って機械的に解こうとするのではなく、物理特有の知識も理解しようとしてください。 == 分野別勉強法 == まず、物理の学習の大前提は、式の変形や計算といった数学的な操作がしっかりできることです。そこが苦手な人は、中学数学の等式の変形などを復習しておきたいところです。 物理の公式はこれから述べるように式変形などによって導き出されることも多いため、丸暗記すべき公式は意外に多くはありません。 そして、物理は実際に手を動かすことが非常に大事です。具体的には、問題演習をこなしていくことが他の教科以上に必要です。このことが、物理におけるものの見方・考え方を身につけることにつながりますので、その労を惜しんではなりません。 === 力学 === まず、運動方程式などの最低限の公式を用いて、教科書や参考書などで様々な公式の導出を少なくとも一回は読み、導出の計算を手で追ってください。これらの公式の導出法の考え方を用いる問題は、意外と入試に出ます。 力学に限らず、物理の公式はそれぞれ関連しあっていることが多いです。そのため、公式同士の関連性を教科書を見ながら確認しましょう。そうすれば、丸暗記しなければならないような公式はぐっと減ります。「時間の公式」「位置の公式」と個別の公式の暗記は避けたいものです。そして、運動方程式やエネルギー保存則の公式、運動量保存の法則などから、位置や速度や時間などを求められるように練習してください。 もちろん、遠心力の公式のようにきちんと運動方程式から導くには時間がかかるものは覚えた方がよいのですが、それでも一度は自分の手で導出しましょう。それだけで、式を忘れにくくなります。 そして、反発係数や位置エネルギーなどの用語の定義もしっかり確認しましょう。 惑星の運動について入試に出る分野は、「第一宇宙速度」とか「第二宇宙速度」とかのようにエネルギー保存法則と関係の深い分野とか、あるいはロケットの原理を運動量保存と関連して出題するとかです。 === 電磁気 === 少なくとも一回は教科書や参考書の説明をキチンと読んでください。運動方程式や位置エネルギーなど力学の公式を、クーロンの法則などと組み合わせて、どうやって電位の公式などを導くのか、ぐらいはキチンと参考書などを読んでください。意外と入試で、力学と組み合わせた計算問題が出ます。 磁極のクーロンの法則と、静電気のクーロンの法則は似ていますが、入試に出る頻度には違いがあります。磁極の問題よりも、静電気の問題のほうが、入試に多いです。学習時間が残り少ない場合には、優先するべき単元は、磁極よりも電気の単元を優先してください。 === 振動・波動 === 波動の問題は演習量が最もモノをいう単元です。計算問題の問題演習に取り掛かりましょう。そして、図示して簡単な作図ができるようにしましょう。知識は干渉の式とその周辺の教科書の説明を読めば終わりです。 === 熱力学 === 熱力学は苦手にする生徒も多いのですが、最低限のポイントを整理しておさえれば満点も視野に入るため、得意・苦手がはっきりと分かれやすいところです。しかし、大学入試に挑戦するには(そして、大学以降の物理学では)決しておろそかにできない単元です。 公式もそう多くはないので、最低限のポイントを整理しておさえ、演習を重ねていきましょう。 まず、熱「力学」ですので、力学でいい加減な理解をしていないかをチェックしておきましょう。特に「力積」「圧力」「仕事と力学的エネルギー」はしっかりと理解しているかを振り返ってみましょう。 そして、力学と同様に、基本の公式の暗記(これはどうしようもないです)とそれを用いた公式の導出によって、「式の意味」を説明できるようにしましょう。 === 原子物理 === 教科書の説明を読んだら、公式を覚えるために問題演習に掛かります。高校での原子物理は基本事項ばかりです。そのため、他の分野よりかは軽い。 == 大学の物理学科志望者は数学IIIと化学も学習すべき == * '''もし高校の数学が嫌いな人は、物理学科への進学をやめたほうが良い''' 物理学科の志望では、物理のほかにも、さらに数学IIIを、なにがあっても化学・生物よりも優先的に、数学IIIを履修して受験勉強してください。 なぜなら理系大学の物理の授業では、微分積分を頻繁に使うからです。そして、微分積分の計算ができないと、確実に大学物理学科では留年し、確実に物理学科を卒業できず、確実に退学に追い込まれます。 物理学科の場合、大学によっては、たとえ高校で微分積分をマジメに履修して数学IIIを履修してきたマジメな学生ですら、大学では留年してしまうようなほどの難度の高い数学を用いるカリキュラムが組まれている大学も多くあります。 なので、もはや高校段階ですら数学IIIを学んでない人は、ほぼ確実に大学・物理学科では留年し退学します。 仮に微分積分ができない人が間違って物理学科を卒業してしまったとしても、世間一般の製造業からは微分積分ができない卒業者なんかを、けっして物理学の専門家としては認めてくれません。 数学IIIを学習できない人は、けっして物理学を学べるだけの能力も無く、けっして物理学を学ぼうとする意志も無いのです。 * '''できれば化学も勉強''' できれば化学も学んでおいて、問題練習もしてください。大学の物理学科では、あまり化学反応を覚えたりとかは少ないでしょうが、理系の教養として高校程度の化学は知ってて当然の知識です。また、製造業の技術職に大卒として就職した場合の実務にも化学・物理の両方の知識は関わってきます。べつに化学が得意でなくても良いので、高校教科書レベルの化学を勉強して下さい。 高校化学でも、物理的な考え方は出てきますので、物理の参考になります。 高校のうちに学べる理系科目は、どんどん学んだほうが良いのです。 だから、できれば生物と地学も学んだほうが望ましいのですが、現実的には化学までで高校のうちは精一杯でしょう。 また、国立大を目指す人は、国語や社会科などの文系科目を勉強しないといけないでしょうし、理科ばかりに時間を避けません。 生物の参考書を読む時間すら、物理志望者には時間の確保が難しいかもしれませんが、とりあえず生物の参考書を買っておいて、読める範囲で生物も読みましょう。さらに余裕があれば、地学も読んで、理系の頭脳を磨きましょう。 == 物理の試験問題の解き方 == === 図を作図できるように === [[File:摩擦角の模式図.svg|thumb|400px|摩擦角]] 物理の問題の解き方は、まず、たとえば右図の「摩擦角」の図のように、図を立てるところから、始める。 つまり、試験問題の問題文の内容を、図に置き換えるのである。 そして、図をもとに、たとえば力学の問題なら、その図の内容を運動方程式に置き換え、その方程式を解くのである。 市販の学習ノウハウ本では、高校の物理の学習では「イメージ」が大切・重要だとか<ref>『高校の勉強のトリセツ』、GAKKEN、100ページ</ref><ref>船登惟希 『改訂版 高校一冊目の参考書』、KADOKAWA、2019年3月18日、154ページ</ref>とか言いますが、ではその「イメージ」とは何かというと、つまり、物理の問題を解くための作図ができるようになる事のスキルの言い換えです。 力学以外の振動・波動や熱力学や電気磁気学などでも、問題の解き方は、とにかく、まずは、試験問題の内容を反映する図を書いて、そして図をもとに方程式を記述するのである。 作図さえ出来てしまえば、あとは作図に基づき方程式を立て、その方程式を、数学的・機械的に解けばいいだけである。 原理的には、大学入試で出題されるような問題も、このような手順で解ける。 まとめると、 :問題文を読解 → 図を作図 → 図の内容を方程式(運動方程式など)で表現 → 方程式を解く というよう手順になる。 逆に、やってはならない間違った勉強法としては、作図ができないままに、公式を機械的に当てはめて解いてしまう方法です。よほどの単純な問題でないかぎり、この機械的に当てはめていく方法では、応用が利きません。 大学受験だけでなく、大学進学した場合の大学での理科の勉強などにも、物理イメージの作図による勉強法は活用できますし、製造業などでの設計などにも活用できると思われますので、ぜひとも高校生のうちに、物理イメージ作図による勉強スタイル・問題解法スタイルを習得してしまいましょう。 教科書では、あまりこのような手順の計算練習が紹介されていないので、入試基礎レベルの問題集を買う必要がある。学校で配布されるような薄いワークブックでは不十分である。 入試基礎レベルの問題集が必要であり、しかも解説の充実している問題集を買う必要がある。 このような問題練習の目的で参考書・問題集を買うなら、『橋元の物理をはじめからていねいに』などのシリーズが、オススメである。 このシリーズは、参考書と問題集とを兼ね備えたような、構成になっている。なお。他の出版社からも似たような、参考書+問題集のミックス本みたいなのが出ている。 なお、このような目的で参考書・問題集のミックス本を買う場合、力学などの各分野の典型的問題の解き方の手順の、具体的な解説が充実しているかどうかが重要なので、問題数は多くなくても構わない。 典型的な問題例だけをミックス本で問題練習して身につけ、その他の雑多な入試問題対策は、入試対策問題集を購入して勉強するのである。 なお、これらの問題集・参考書のあわさったミックス本は、ページ数の限りなどにより、文英堂シグマベストやチャート式などで解説されている事項のすべてを網羅しきれない。 なのでミックス本とは別に、シグマベストまたはチャート式も購入して理解しておく必要があり(できればシグマベストとチャート式の両方とも購入するのが望ましい)、シグマベスト・チャート式に紹介された(物理の)基本事項も確認して、シグマベスト・チャート式の例題などは練習しておく必要がある。 === 入試対策問題集を読んで解法の知識を増やす === また、上述のような作図練習(作図 → 方程式)の練習をするのは、もちろん必要な上で、それとは別に、入試でよく出てくる典型的パターンの問題も解けるように、別の問題集(入試対策問題集)を読んで、解法の知識を増やす必要がある。こちらのほうは、とりあえず読むだけで良い。もちろん、解法の解説の充実した問題集を買うべきなのである。 入試対策問題集には、入試基礎〜標準レベルと、入試難関レベルなどがある。とりあえず読む始めるべきは、入試基礎〜標準レベルである。 なので、学校で習った範囲については、高校2年生の段階でもいいので、さっさと入試対策問題集(入試基礎〜標準レベル)を読んで、解法を読んで、解法を知識として知ってしまうべきである。 高校2年や高校3年1学期あたりでは、入試対策問題集はとりあえず読むだけでいいので(まだ問題練習はしなくてもいい)、入試基礎〜標準レベルは、さっさと読み終わってしまう。そのあと、高校3年1学期くらいまでは、自分の興味にあわせて、入試難関レベルの問題集を読んでみたり(とりあえず読むだけ)、あるいは、入試基礎〜標準レベルの問題をじっさいに解き始めてみたりするのである。 == 理工系志望のさいの学科の選び方 == あなたがもしも、「ナノテクノロジー」や半導体などの最新デバイス、そのほかカーボンファイバーなどの最新の素材などのような、 最先端の物理学や化学をつかった技術そのものを「自分でも発明できるようになりたい」と思って勉強したくて大学に進学するのなら、けっして電気電子工学科や電子情報工学科のような電子系の学科には、進学してはいけません。 なぜならこれら「電子」系の学科とは、けっして、最先端の半導体や最新素材を発明したい人を育成するための学科ではなく、就職後に、ほかの誰かが開発した半導体やナノテク技術や最新素材や集積回路などを、'''工場で使って、ほかの機械をつくりたい人'''を育成するための学校が、電子工学科なのです。 なので、もし半導体やナノテク技術そのものを発明できるようになりたいならば、なるべく物理学科を目指しましょう。また、カーボンファイバーやら何やらの素材をつくりたいなら、化学科を目指しましょう。 なぜなら、こういった「電子」系の学科とは、けっして半導体などの物理的・化学的なしくみを習う学校'''ではなく'''、かわりに、半導体などの最新デバイスの'''計算方法を練習する学校'''だからです。 なぜ、「そのような公式で計算をするのか?」の物理学的な証明は、これら電子系の学科では、習いません。 電子系の学科は、「物理学には興味がないけれど、でも、電子機器を設計できるようになりたい」という人を、育成するための学校です。 なので、半導体そのものやナノテク技術そのものを開発したい場合なら、あるいは集積回路そのものを設計できるようになりたいなら、大学受験での進路志望では、なるべく物理学科を目指しましょう。 高校物理の得意な受験生だと、ついつい「大学で視野を広げよう」と思って、普通科高校では習わない電子工学などを専攻する学科を志望しがちになるので、気をつける必要があります。電子工学系の学科では、「視野を広げる」どころか、本来なら、大学進学前には古典物理や化学や機械工学などにも向けられていたはずの視野が、狭められてしまう可能性すらもあります。 また、たしか、講談社の『講談社 基礎物理学シリーズ 全12巻』での電磁気学の巻号の教科書を読むと、勉強法の主旨として「物理学科の電気磁気学とは、問題をすばやく解くことではなくて、その問題の解き方がそうなるわけを、自分で計算して導き出せるようになること」、「けっして、特定の装置での、電場の分布や磁場の分布を求めるのが、物理学の電磁気学ではなく、電場や磁場の法則そのものを理解することのほうが必要」、「特定の装置での、電場や磁場の分布を求める技能は、物理学の電磁気学とは別の、職人芸である」的なことを主張しているのですが、なぜ、わざわざ著者の物理学者さんが、こういう当前の事を主張するかというと、つまり、(物理学とは違う)「職人芸」のほうの『電磁気学』を教育している学科(電気電子工学科)が、日本各地の理系大学には存在するからです。 == 入試対策 == 「橋本の物理」などの基本的な参考書+問題集のミックス本を問題練習してきただけでは、私大平均レベルより少し上(偏差値55くらい)までの入試問題しか解けないようだ。 買うべき問題集は、入試基礎〜標準レベルだけでなく、入試難関レベルの問題集も、買って、入試難関レベル問題集まで解いてしまうのが良いだろう。 なので、学校で習った範囲については、高校2年生の段階でもいいので、さっさと入試対策問題演習をすべきである。 == 大学以上のレベルの物理を勉強したい場合 == 高校生が、参考書よりも、さらに発展的な理科を勉強したい場合、高校生は、どうすればよいのでしょうか? もはや、大学生向けの教科書を買うしか、ありません。しかし当然、大学受験生には、そんな暇が、ありません。それに、せっかく大学向けの教科書を買っても、力学の教科書なら力学のことしか書いてませんし、電磁気の教科書なら電磁気のことしか書いてありませんので、高校生には、すごく不便です。 もし大学レベルの物理の書籍を買うだけでも、とても冊数が多くなり、大学レベルの力学の本、電磁気の本、振動・波動の本、熱力の本、量子力学、特殊相対性理論、…と全部を買い合わせていくと、値段がたぶん5万円を越えます。なのに、せっかく買っても、読む時間が足りません。 このほか、数学の線形代数・微分積分(偏微分・重積分)の本、微分方程式の本、化学の概論書、生物の概論書、機械工学の概論書、電気工学の概論書、初等的な材料力学・流体力学の本、電気回路および電子回路の教科書、材料工学の本を機械材料と電気材料で計2冊、人体の生理学の入門書、基礎の薬理学、…と、買い合わせていくと、値段がたぶん20万円を越えます。 図書館には物理の専門書があり、利用資格があれば無料で借りることが出来るが、おそらく返却期限までに読み切ることは難しいだろう。そこで、専門書をスマホのカメラなどで複写するなどすれば、大学以上の物理などの専門書をかなり安く入手できる。 == 脚注・参考文献 == 2gzlpkzwk9gh9kik4u1pgb9urzastud 学習方法/高校英語 0 19481 205576 205472 2022-07-20T08:30:47Z すじにくシチュー 12058 === 各社ごとの注意 === ジーニアスうんぬんの、辞書との傾向の注意などの節を、分離。ついでに文英堂の参考書の難度が大きく変わったことを追記。 wikitext text/x-wiki == IPA(国際音声記号)を学ぼう == IPA(International Phonetic Alphabet, 国際音声記号)とは世界中の言語の発音を表記できるように開発された記号である。これが、英語の単語を発音する際、重要であることは明白であろう。日本には、「英語には日本語にはない音が存在する」「英語は発音が大事」などと声高に叫ぶが、どうやってその音を調音するかという肝要なことは教えていない高校も存在するようだ。しかし、調音方法を知らずに第一言語に存在しない音を発音しろというのは不可能と言っていい。IPAを学ぶ際には必然的に音声の調印方法を体系的に学ぶことになる。したがって、フィーリングではなく理論に基づいた音声の発音が可能となる。 * [http://www.coelang.tufs.ac.jp/ipa/index.php IPAモジュール] * [[w:子音|子音]] * [[w:調音部位|調音部位]] * [[w:調音方法|調音方法]] * [[w:母音|母音]] * [[w:国際音声記号|国際音声記号]] * [[wikipedia:IPA_vowel_chart_with_audio|母音のIPAとその発音]] * [[wikipedia:IPA_pulmonic_consonant_chart_with_audio|子音のIPAとその発音]] * [[w:英語学#%E9%9F%B3%E5%A3%B0%E3%83%BB%E9%9F%B3%E9%9F%BB%E5%AD%A6|英語の音素]] == 参考書と単語集が基本 == 高校英語の検定教科書は独学用には作られておらず、授業で教師が解説するのを前提にして英語の教科書は作られています。 なので、予習復習や独学や受験準備などは教科書では無理です。なので、受験準備などのために教科書とは別に高校レベルの参考書や単語集が必要ですので、早めに購入しておきましょう。 たぶん、普通の高校なら、単語集なども購入させられると思います。もし学校で購入を指定されていなくても、まずは高校基礎と高校中級レベルの単語集を購入しましょう。 実際の検定教科書を見てみると、高校1年向けの検定教科書で、もう高校3年向けの4500語レベルの単語集にある単語が紹介されていることもあります。 とはいえ、さすがに高校1年で4,500語レベルまで習得するのは困難です。 そこで普段の家庭などでの勉強では3000語レベルまでを勉強しておいて、検定教科書を読んでて単語集で見当たらない語があれば、そこだけ辞書に頼るのがラクでしょう。 そうすれば、片端から辞書を使う手間を省けます。また、少しは辞書の使い方も練習すべきです。 ともかく、高校では単語集がないと、まともに英語を勉強できないだろうと思います 検定教科書は入試対策本ではないので、大学受験を考えている人は、英語の勉強では検定教科書ばかりに深入りしすぎてはいけません。 ともかく、大学受験対策は、あくまで市販の参考書と単語集などで行います。 == 辞書では不十分なわけ == 高校レベルの単語学習では、辞書よりも一般の単語帳を使ったほうがいいでしょう。 理由は、辞書は例文が長いこともあって、紹介できる例文のパターンが少なくなってしまいます。 このため、もし辞書だけで勉強しようとすると、ひとつの辞書を見ても意味を把握しきれず、複数の辞書を見るハメになってしまいます。 また、一般的な辞書は、多くの単語を紹介しているため、意外とひとつの単語あたりの説明は浅いのです。 むしろ、高校生・大学生むけの単語集のほうが、語によっては説明が細かい場合もあります。 == 大学入試に出づらい分野など == === 教科書の学習目標を真に受けないように === 高校英語の学習指導要領などが掲げている目標の中には、高校生には荷が重い目標もあります。 検定教科書の英語表現IIの実物を見比べると、どうも英語でのプレゼンテーションなどが指導要領などで目標に掲げられているようですが、しかし正直、高校生には英語プレゼンテーションは荷が重いでしょう。英語以外の教科の学習を考えると、高校段階では外国語でのプレゼンテーションの習得は非現実的です。 高校英語のプレゼンテーション単元も、中学英語の留学生との会話の単元などと同じで、実際の多くの高校の教育現場ではそれを実行できる場面はまずないかと思います。 2022年の時点では、文科省の英語教育の目標が、かなり高負担な内容ですので、大学入試の傾向とは検定教科書の傾向は、差が大きいかと思います。 昔から教科書と受験英語との間には差がありましたが、とくに近年、上述のように教育目標の負担増の理由で、入試との差異が大きくなっているだろうと思います。なので大学受験を考える人は、教科書の勉強だけでなく、うまく学習スケジュールを自己管理する必要があるでしょう。 === 自己意見の英作文は入試に出ないところもある === 足きりのある大学(たとえば国立大や医学部など)でないかぎり、採点の手間があるので一般入試では数十語もある英作文は出されない可能性が高い、実態があります。 さて、昨今の教科書では、日本のことを英語で説明する課題がよくあります。検定教科書にあるので、いちおうは新共通試験などの出題範囲ではあるわけですが、やはりこれも大学入試の出題傾向の兼ね合いを考える必要があります。 難関大学の入試で要求される単語は、抽象性の高い単語、または学術的な単語などです。 === スピーキング === 英語スピーキングは、大学入試では採点の手間があるので、一般入試ではスピーチの実施はされない。もし入試でスピーチングをやるとしたら、せいぜい、受験者数が比較的に少人数に限られる推薦入試でしょう。 また、英検3級以上ではスピーングの試験がある。英検などの英語系資格を取っておくと入試でいくらか優遇される場合があるので、そういったものを使いたい人にはスピーキングの勉強をする必要がある。 == 教科書ガイドを購入するほうがいい場合 == 教科書ガイドを買わなくても高校英語は勉強できるのですが、色々な理由により、教科書ガイドがあると効率的です。 英語教師のなかには低能な教員もいて、宿題などで、数学など他教科の予習復習の時間を無視して、毎週のように「辞書で教科書の英文の意味を調べてこい」などと、英語科目の事しか考えずに宿題を出す人がいます。 特に英語は、文系大学の志望でも理系大学の志望でも活用するため、教師がうぬぼれていて傲慢な場合があります。 このような英語教師の場合でも、もし教科書ガイドを生徒が購入してあれば、辞書で調べる時間を、大幅に減らせることができます。教科書ガイドによって、空いた時間を活用することができ、単語の練習などの、より本質的な勉強ができるようになります。 ただし、ガイドには、あまり細かい答えまで書いてありません。中学までの教科書ガイドとは違います。 なので、基本的には単語集や文法参考書などで家庭での勉強をする必要があります。 == 英語勉強法マニアにならないように == ここに描かれた勉強法を覚えるよりも、まずは、とにかく、3000語レベルまでは英単語の習得のほうが重要です。勉強法マニアになっても、語学では価値がありません。勉強法を調べるよりも、実際に勉強してください。 とくに英語教育についての評論では、多くの評論家が英語教育を評論したがるし、また市販の英語教材などでも英語教育のノウハウをうたっている商品も多いですし、中には英語が苦手なのにウサンくさい勉強法(自称)を掲げる人も多くいるので、あまり勉強法そのものに深入りしないようにしてください。 勉強法に迷ったときにだけ、市販の参考書などに書かれた信頼できる勉強法などを参考にしてください。 == 単語 == まず、単語数3000語あたりの中級レベルを謡っている英単語集を1冊買いましょう。 初級レベル 1700~1800あたりのものは、これは一応高校レベルの単語も紹介していますが、ほとんどの単語が中学レベルなので、当面は読む必要がありません。 また、初級レベルの単語集のうち、中学で習わない可能性の高い単語は、中級レベルの単語集にも書いてあるので、わざわざ初級レベルを買う必要がありません。 さて、単語集の使い方は、赤シートを使って英単語の和訳を隠して、英単語のイメージを思い浮かべてから、その英単語の和訳を見て自分が思い浮かべたイメージと合致するか確認してみたりして、もし合致していたら次の単語へ、一方もし合致していなかったらチェックをして次の単語のテストを行う。これを1~2回もすれば英単語を覚えています。 中学単語については、意味のほうで中学では習わなかった意味がある可能性があるかもしれないので、そちらに注目してください。参考書をつくっている会社は、そうなるように工夫して参考書を編集しています。 === 学習の優先順位 === もしかしたら、英語の単語を覚える作業は文法等の勉強をすることよりも大切なことかもしれません。 市販の学習ノウハウ本でも、高校英語および大学受験英語では、英単語力が決め手になると主張されています<ref>船登惟希 『改訂版 高校一冊目の参考書』、KADOKAWA、2019年3月18日120ページ</ref>。 文法など中学レベルの知識しかなくとも、単語の意味さえ分かればある程度の意味は取ることができます。逆に言うと、英文読解で、もし単語の意味が分からないと、せっかく文法の知識があっても、理解できない文も大学入試では多くあります。また大学入試では、暗記を要求される単語数が、ずいぶんと多くなります。 もっと言えば、単語という基礎があってこそ覚えた文の組み立て方が生きてくるのです 大学受験の標準(おおむね4500語レベル)~やや発展レベルまでの単語であれば、単語はいくら覚えても損はありません。学校で教えてもらう英単語だけで満足しないでください。近年では様々な出版社から英単語帳が出ています。 このため、読書感覚で、メインの単語集とは別にサブの単語集を2~3冊くらい買って、空き時間などに単語集を読むと良いでしょう。 === 英単語集の選び方 === ==== 基本の要求事項 ==== ===== セットになる別単語も必要 ===== 高校レベルでは、新しい単語の意味を覚えるときは、単語の日本語の訳の字面だけを覚えても不十分です。 いくつかの予備校の単語集には英単語の勉強法も書かれており、どれを見ても大抵、「新しい単語の学習では、一緒につかう単語とセットで覚えろ」といった内容が書かれています。 動詞も同様、セットになる名詞と一緒に練習するべきです。もっとも、普通の市販の単語集なら、そういうセットになる単語も書かれているので、市販の単語集で勉強すれば問題ありません。 進出単語がセットでなくても覚えられるのは、せいぜい中学の前半までです。高校ではもう、単語を1語ずつ単独でバラバラに勉強するのは、やめましょう。 しかし、ネット上の英語勉強サイトには、サイト作者・企業の手抜きからか、日本語の訳だけを羅列したような低品質なサイトもあります。まったくネットは参考になりません。きちんと市販の単語集を買いましょう。 ===== 類義語や対義語、例文など必須 ===== まず、単語の学習では、けっしてヤミクモに多くの単語を覚えるのではなく、類義語や対義語との違いなども把握しなければなりません。そのため、例文なども交えつつ把握しながら勉強する必要があります。 なので、例文などの少ない単語集は、少なくとも高校基礎レベルとしてはアウトです。 ==== 結局どうすればいいか ==== 高校生向けの参考書は、セット語彙や類義語・対義語の紹介の必要性など、そういう事をきちんと理解しているので、とりあえず高校生むけの単語集を買えばとくに問題はないのです。 しかし、高校生向けではない市販の英検対策やTOEFL対策本などの資格本の中には、単語を多く掲載したいあまりに、例文や類義語などを省略ぎみの単語集も(英検対策本などでは)多くあります。 なので高校生は、英検対策ではなく、まずは高校生向けの単語集を買いましょう。1社の単語集しか使わないと例文がどうしても不足するので、少なくとも4500語レベル付近では1社だけでなく2社以上が必要です。 ==== 英検などは後回し ==== 現代では、高校の教科書レベル自体、上がっています。昭和の後半や平成の初期は、今で言う3000語レベルが、高校卒業レベルでした。 しかし、令和の今では、4500語レベルが、高校卒業レベルです。 なので本来なら、時代が大きく違えば、英検の級の数値は比較の参考になりません。つまり、年月とともに資格試験で保証された知識は、少しずつ錆びていくのです。 英検などを受けたいなら、高校生向けの単語集を買って習得したあとなら、必要に応じて英検対策本などを買うのは構いませんが、しかしいきなり最初から英検対策本などを買うのは失敗の道です。 なお、もし英検を参考にするなら、準1級までを買えば十分でしょう。 なぜなら、難関大の過去問から構成される桐原5500と英検1級の単語集とを比べてみましたが、傾向がだいぶ違っています。 ==== 英単語集のパターン ==== 英単語集には、主に2パターンあって、 :・ パターン1: 単語を分野別にまとめているパターン(たとえば「旅行」の意味の単語なら、trip と tour と travel をひとつのページにまとめていたりする)の英単語集 と、 :・ パターン2: もうひとつのパターンとして、入試出題の頻度順に統計的に並べた英単語集 があります。 初めて高校英語を勉強する場合は、とりあえず、'''分野別に単語をまとめたパターンの参考書のほうが、使いやすい'''と思います。 なぜなら、分野別の単語集のほうが、類義語や対義語なども、まとめて勉強できるからです。 いっぽう、入試出題の頻度順に統計的に並べた単語集は、高校後半~高校3年からの仕上げなどで用いるのが効果的でしょう。 さて、分野別に単語をまとめたパターンの英単語集で勉強する場合は、レベルが「中学3年〜高校初期」「高校必修」「共通テスト」「二次試験」と何段階に分かれていたりしますが、とりあえず、高校1年の時点で、「高校必修」レベル(3000語レベル)と「共通テスト」レベル(4500語レベル付近)の2冊を買ってしまってください。 高校必修レベルの単語集を買えば、その単語集で中学レベルの復習もしますので、わざわざ中学レベルの復習をふくむ単語集を買う必要はないのです。 自分で単語集を予習する際は、次のペースで予習します。 :・ 高校1年: 「高校必修」レベル(3000語レベル)〜「センター試験」レベル(4500語レベル付近)の単語を高校1年の終わりまでに全部勉強する。 :・ 高校2年: 「センター試験」レベル(4500語レベル)の単語を高校2年の終わりまでに全部勉強する。 :・ 高校3年: 「二次試験」レベル(4500語レベル+アルファ)の単語を高校3年の2学期の終わりくらいまでに全部勉強する。 つまり、高校1年のあいだに、予習をして、「高校必修」(3000語レベル)およびレベルの単語集を、ひととおり書き写して、勉強してしまう必要があります。(覚えられるかどうかは別として。) 4500レベルまでいければ理想ですが、それが無理でも必ず高校1年のあいだに3000レベルを終わらせてください。これが終わらせられないと、大学受験の現役合格は難しいでしょう。一見するとハイペースですが、実は後述のように中学で習う単語が3000レベルには多いので、意外とラクです。 高校必修レベルには、中学校できちんと5教科を勉強していれば、読みがある程度は身についているハズの単語が、多いのです。 なので、さっさと高校必修レベルをひととおり練習して終わらせてしまい、次ステップの「センター試験」レベルに時間を掛けたほうが得です。 なお、高校によっては、高校3年になっても、「センター試験」レベルの単語集までしか、高校3年の英語の授業では扱わない場合があります。 なので、'''授業とは別に、自分で単語集を予習する必要があります'''。 では、なぜ、上記のスケジュール(「高校必修」レベルの単語を高校1年の終わりまでに全部勉強するスケジュール)のようにするのが合理的かいうと、最終的に高校卒業までに(つまり高校3年の終わりまでに)、「二次試験」レベルの単語集(4,500語+アルファ)を終わらせる必要があるので、そこから逆算して、高校2年の終わりまでに「センター試験」レベルの単語集を終わらせる必要があります。 そして、高校2年の終わりまでに、4500レベルつまり「センター試験」レベルの単語集を終わらせるためには、逆算すれば、高校1年の終わりまでに3000レベルの「高校必修」レベルの単語集を、勉強してしまう必要があることが分かります。 そうするためには、普段からの予習も必要です。 また、もし「今読んでいる章を完全に覚えてから、次の章に進む」などというふうに勉強していると、特定の分野の単語ばかりを覚えることになってしまい、入試に対応できません。特に、学校で、このような分野別にまとめられた英単語を用いている場合に、気をつけましょう。 また、現代の高校英語の単語の紹介順序は、もはや学年別になっていません。高校1年の検定教科書でも、すでに3000語レベルの単語や4500語レベルの単語も平気で紹介したりしています。 現代の検定教科書がそうだということは、現代の入試もそうだという可能性があるということです。なので、あまり単語集の最初のほうばかりに詳しくなっても、現代ではあまりメリットがありません。 また、予習をしないと、たとえば学習ペースの配分ミスを起かしやすく、たとえば高校3年の終わりごろになって、やっと桐原4500語・東京書籍4,500語レベルにしか到達できずに、そのため高校3年終わりの時点では「二次試験」レベルに対応したプラスアルファの単語集(旺文社や、予備校系の単語集)に到達できずに、志望校に不合格になってしまうような、ペース配分の失敗を起こしやすい原因にも、なります。 なので、とにかく、予習をして、単語集の先のほうへと進んでいくのが、合理的な勉強法なのです。 ==== 予備校系パターン ==== 単語集にはさらに、「論理性重視で解説が多めの単語集」と「単語が多めの単語集」があります。 で、桐原・東京書籍・旺文社は、実は単語が多めの単語集です。 高校単語の範囲は広いので、少なくとも4500語レベルについては、まずこの3冊のうちの2冊が、受験までに、ほぼ必須で必要です。 しかしこれだけだと、論理的な知識が不足します。桐原などの単語数が多めの単語集などでは、スペース不足などの都合で解説できない知識が、いくつもあるのです。 そういうのを、予備校などの補足的な単語集で補う必要があるのです。だからもう高校2年の半ばあたりから、予備校系の単語集も読み始めてしまうのも、良いかもしれません。 ですが、あくまで予備校単語集「も」です。基本はまず、桐原・東京書籍・旺文社のような、高校英語を一通りカバーしている単語集をベースにするべきでしょう。 === 単語の練習法 === かといって、いきなり高校1年で入試対策レベルの単語集を使っても効率が悪いので、まずは基礎レベルの単語から始めるのが良いでしょう。 読解練習や文法練習よりも先に、単語力を増やす練習が大事です。熟語集の暗記よりも先に単語集あるいは単語・熟語集の暗記を優先してください。 標準レベルの3000語レベルの単語が高校2年あたりでひととおり終わったあたりから、桐原・東京書籍の4,500語に加えて予備校など受験対応の単語集も買って練習します。まだ、平均レベルの単語集を覚え切れて無くても構わないので、受験レベル(4500~5500)の単語集を勉強します。 学生・受験生の勉強科目は、数学など、英語科目以外にもあるので、大変でしょう。ですが、うまくスケジュールを工夫して時間を作ってください。 さらに単語を定着させるためには、英文読解やリスニングなどの単語以外の他の練習もします。 === 単語集のレベル別の利用法 === ==== 初級レベル(1700~1800語)はまず不要 ==== 中学できちんと勉強してきた人なら、初級レベル(1800語)レベルの 単語集には、高校生には不要です。これは、どちらかというと中学3年~高校受験用のものです。 普通に受験勉強をしてきて偏差値48以上ぐらいの人なら、1800語レベルは買う必要はありません、。 本屋で表紙を見ると「高校基礎レベル」とか書いてあるかもしれませんが、ウソではないですが誤解を招く表現です。表紙の宣伝文句は信用しないでおくのが安全です。 この1700~1800語レベルは、おおむね英検3級レベルか、それに毛の生えた程度です。英検3級と英検準2級との間には、かなり難度の開きがあるので、このレベルの教材は英検教材コーナーにはないので、これはこれで1700~1800語レベルは出版・販売されてると便利です。 この1700~1800レベルの後半を見ると、中学で習わない単語も書いてありますが、しかしそれを買わなくても3000語レベルにも同様の単語が書いてあります。 たとえばある1700レベルの単語集で injure (けがをする)という単語を見つけましたが、同じ出版社の 3000語レベルでも同じ単語がありました。 わざわざ初級レベルの単語集で練習しなくても、中級(3000語レベル)の練習での例文の書き取りなどのついでに、自然と初級レベルの単語のスペルも身についていきます なお、初級レベル(1700~1800)の単語集の中に書いてある「高校1年 基礎レベル」みたいな難度の情報は、あまり信用してはいけません。(実際に買ってみて読んで確認しました。)ある単語集でそのレベルの単語を確認したら、いくつも中学レベルの単語がありました。 year (年)とか month (月)とかの中学で習ったはずの単語が、「高校1年 基礎レベル」になっていました。 どうしても1700~1800語レベルを活用するなら、どっちかというと単語練習よりも、高校受験のレベル確認用と言うか、「高校受験の終わり~遅くとも高校1年の1学期の終わりまでには、大体この程度の単語は出来るようになって欲しい」といった確認のためのツールでしょうか。 ==== 3000語レベル ==== ===== 基本 ===== 特別な事情がないかぎり、高校生は3000語レベルから単語集を勉強すると良いでしょう。 いきなり3000語を使うのは中学と高校の橋渡しに不安かもしれませんが、しかし出版社側が3000語レベル本の冒頭の第1章で、中学単語の復習およびそれを高校の視点で理解しなおす勉強をしてあります。桐原と東京書籍のどちらとも3000語レベルの本の第1章は、そういう中高の橋渡しのための単語の紹介です。 逆に、4500語レベルの本には、そういう橋渡しが書いてないので、高校1年では4500語レベルは不適切です。 * スペル暗記の対象について スペルの暗記について、実は中級の単語であっても、すべてを暗記する必要はないし、すべてのスペル暗記は面倒です。優先して覚えるべき単語は、知的レベルの高い単語です。 また、東京書籍『コーパス』シリーズの単語集の前書きを見てみると、実は3000語レベルは「受信語彙」としており、つまりリーディング用の語彙にすぎず、受験の英作文などでは高校新出単語の多くは基本的に用いないことを想定しています。 受験では短時間に英文を書かないといけないので、中学レベルに毛の生えた単語力に、若干の高校中級レベルの単語を加えて、それで英作文を完成させれば十分なのです。もちろんビジネスの仕事の英文とは違いますが、そういう実務の英作文はそういう専門家の大人にまかせればいいのであり、高校生には関係ないです。 東京書籍の意見ではないですが、具体的に単語例を挙げて説明するなら、たとえば respond「応答する」 と nod 「うなづく」だったら、respondのほうを優先してスペルを覚えなければなりません。 なぜなら、respond のほうが名詞形の response などもあり、応用が多く、意味も広範であり英作文などで使わざるを得ない可能性が高いからです。一方で nod のほうの用途は、誰かがうなづく場面どまりです。また、ノッドの名詞形や形容詞形はないと思います。 また、nod はビジネス英語などでも agree 「賛成する」で言い換え可能です。入試の英作文ですら、ほとんどの場合は agree で十分でしょう。 この nod のように、利用価値の低い単語は、スペル暗記は後回しです。せいぜいリーディング用に「そういう単語もあるんだなあ・・・」と知っていれば十分です。 実は中堅私大や地方国立の英文の単語は、学科によっては案外センター試験ほど難しくない場合もあります。 さて、残念なことに、高校の単語集あたりから、だんだんと英語教育の質が形骸化しており、単語集がやみくもに単語数を多く紹介したいあまりに説明不足になってきています。 たとえば中級単語で content (満足する)という形容詞があるのですが、じゃあ satisfied (満足する)とどう違うのかは、単語集には書いていません。なぜならcontent は中級レベル、satisfied は初級レベルの単語なので、本を別冊にまたいでしまうからです。こういう縦割り教育なのが現状です。 辞書で content を調べるような思慮深い人は、他の単語を覚える勉強時間が不足してしまうので入試では不利になってしまうわけです。ひどいもんです。 * 2冊買うべきかどうか 3000語レベルの単語集(桐原『データベース3000』や東京書籍『コーパス3000』)については、2冊そろえるべきか1冊に集中すべきか、判断が分かれるでしょう。実際に各自が単語集を読んでみて判断してください。べつに2冊あっても構いませんし便利ですが、他の教科の勉強などもあるので、難しいところです。 旺文社の『英単語ターゲット1200』も、中級レベルでしょう。 あるいは、2冊そろえれば例文の数が単純計算で2倍になるので、辞書でいちいち高校レベルの例文を探す手間が減りますので、2冊目の単語集にはそういう活用法もあるかもしれません。あるいは、問題練習とかの手間を2冊目の単語集で減らせるかもしれません。 このように2冊目の単語集は便利かもしれませんが、しかし目的が上級レベル(4500~5500語)と中級レベル(3000語)では違います。 まあ各自がどうするか判断してください。 なお、東京書籍『コーパス3000』は、数字だけ見れば桐原『データベース3000』と同じですが、しかし東京書籍のほうで3000語レベルのもの(たとえばinjure)が桐原の4500語レベルに書いてあったり、あるいは別の単語ではその逆で桐原3000レベルの単語が東京書籍4500語に書いてあったりと、あまり分類は明確ではありません。 ===== 3000語の語法は初めは深追いするな ===== 偏差値の低め~平均程度の大学のなかには、4500語レベルの単語をあまり出さない代わりに、3000語レベルの範囲の単語で、やたらと細かい語法を要求する問題もあります。 しかし、4500語レベルや5500語レベルも勉強する一方で、いつまでも3000語の語法ばかりを覚え続けるわけにもいきません。 だから勉強法としては、極端なことを言えば、3000語の語法を熱心に練習するよりも先に、まず4500語レベルの単語集で一通り、単語の和訳だけを丸暗記したほうがマシです。 実際、入試問題にも、そういう傾向もあります。 文系私大の偏差値50前後の平均的な大学が3000語レベルの細かい語法を4択問題などで聞いてくる一方で、文系私大の偏差値60くらいの大学のある出題が、4500語レベルで単語の和訳の丸暗記だけで4択問題が解けてしまう、といったような出題事例も少なからずあります。 ==== 上級レベル(4500~5500)の単語集について ==== ===== 原則 ===== もし大学受験を目指しているなら、高校3年くらいになったら、4500語+アルファの単語集にステップアップします。ここでいうアルファは、予備校などの出している、補足的な単語集です。 いっぽう、桐原の5500語レベルの単語集は、あれは志望校などの傾向の確認用などで、辞書的に使うものです。 桐原5500をメインにするべきではありません。桐原4500語または東京書籍4500語を一通りクリアしたのなら、メインの単語集としては旺文社1900または予備校系の単語集に入るべきです。 5500語レベルの単語集の使い方なのですが、かなり難しいです。ここでいう5500語レベルとは、桐原『データベース5500』を想定しています。 旺文社の(1200ではなく)『英単語ターゲット1900』は、実はやや高レベルです。東京書籍4500・桐原4500にはない単語でも、旺文社1900には記述されていることもあります。なお、それらの単語の元ネタは、受験過去問もありますが、じつは英検2級~準1級あたりです。 旺文社のは、数字の小ささにダマされてはいけません。桐原や東京書籍の数字とは、旺文社の数字は意味が違います。 桐原4500はその装丁の厳めしさなどに比べて、実はやや単語のレベルは控えめです。東京書籍も桐原のスタイルを踏襲しているような所があり、やや控えめのレベルです。 だから旺文社は、派生語などで、桐原・東京書籍が紹介してない単語をポンポンとたくさん紹介しています。 このため、現代でも勉強法としては、「まずは高校2年の終わりまでに東京書籍または桐原の出している高校用参考集をベースに勉強。高校3年あたりで旺文社のレベル高めの単語集を買い足して勉強する」といった感じになるでしょうか。 4500語レベル単語集では、桐原と東京書籍のどちらの単語集でも不足です。なぜなら、単語集1冊だけでは、例文不足かつ解説不足により、あまり役立ちません。なので少なくとも上級レベルだけ、出版社を変えて2冊、必要でしょう。東京書籍4500+旺文社1900にするか、それとも桐原4500+旺文社1900にするか、判断は読者に任せます。 具体的に単語をあげて説明すると、たとえば「限定する」という意味のrestrict と confine、ともに似たような意味ですが、単語集には意味の細かい違いは書いていないか、書かれていても強調されていません。 桐原の単語集だとこの2つが類義語だという情報はあるのですが、しかしニュアンスの違いが説明不測です。 一方、東京書籍および旺文社だと、restrict を「制限する」の意味で説明しているのでニュアンスの違いは分かりますが、しかしconfineと類義語である情報が欠落していました。 さてconfine のほうが、「地理的に制限する」=「閉じ込める」のような意味合いが強いのですが、旺文社の単語集だと「閉じ込める」の意味もあるのですが、しかし桐原の単語集にはそこまで書いていないのです。 かといって東京書籍のほうには、confine の「限定する」の意味が書かれていません。 また、restrictは(限度内に)「制限する」という意味もあります。むしろ、こっちの意味で紹介している単語集もあります。 どちらの単語集を使うにも、例文が不足しており、ひとつの単語集だけでは意味がまったく分かりません。困った教育状況です。本来なら入試に出題する単語を減らすなどして理解を深めさせるべきでしょうが、しかしそういった教育が出来ていないのが日本の現実です。 それでも、まだしも大学受験用の単語集は、なんとか教育効果を高めようとした形跡も見られるのでマシです。なので、単語集を2つ組み合わせると、なんとか役立ちます。一方、TOEIC 高得点用の教材とか英検の1級あたりの教材の単語集とか、やたらと単語数を多くしているばかりで、ひどいものです。(資格本の活用法については別セクションで述べる。要点:出題傾向を把握する目的だけに英語資格本を使う。) なお、桐原の場合、紹介する単語数そのものは旺文社などと比べて減りますが、その代わり、桐原の密度の高さが長所であり、桐原では他の単語集には無い語法などを紹介しているなど、単語1つあたりの情報量が桐原では増えています。なので、桐原の単語集も油断はできません。 一見すると、桐原の単語の項目のひとつずつの情報量は多くないように見えますが、しかし、桐原では別ページの紹介単語を用いた熟語をまとめたページなどがあるので、それを含めると桐原の単語ひとつあたりの情報量は多くなります。 かといって高校生としては、英単語集ばかりをそう何社も比較して勉強するのは無理でしょうから(数学など他教科の勉強も必要だし、英語の勉強も単語以外にも読解練習やリスニングなど多々あるので)、受験では結局、すべての単語は覚えきれない状態で挑むことになるでしょうか。 大学受験もその後の資格試験も、けっして満点はとる必要は無く、人生の目的に必要な志望校などの合格最低点を上回って合格さえ出来ればいいのです。 別に大学受験の英語に限った話ではないですが、大学受験において、平均以上の大学の入試では満点をとるのは基本的には困難であり、普通は満点は無理です。小中学校の校内テストと事情が異なります。 ===== 4500語以上のスペルは実は覚えなくていい ===== 実を言うと英語のスペルの暗記については、4500語レベルおよびそれ以上のレベルの単語のスペルは、まず覚える必要が低いです。 なぜなら英作文や和文英訳であまり使わないからです。 また、桐原5500や、東京書籍4500の後半部の単語などは、実はもうその1~2回のスペル練習すら、しないでも済むのです。おおよそのスペルと用法のイメージを頭に入れれば十分でしょう。 また、グローバル人材の育成などを目指す大学ならば、英作文などを要求してくると思いますが、だったら英作文で使うようなレベルの中級英語(4500)で十分なのです。むしろ、4500語レベルですらスペルミスなく習得していたら、かなりの勉強家です。 ましてや5500語レベルの単語については、読解問題で出題されたときに意味を把握できればいいのです。 仮に、桐原5500語レベルの単語のスペルを暗記させる問題を出す大学があっても、どうせ他の現役受験生の多くも解けない問題なので、実質的にスペル暗記は5500語レベルでは無視していいでしょう。 一部の浪人生で文系専願の人なら解けるかもしれませんが、難関大を目指して4浪だの8浪だのしている連中と、現役生は張り合ってはなりません。 TOEICなどの国際的な資格試験では普通、書き取りをしません。なぜなら採点の手間の都合で、TOEICでは選択問題ばかりです。大学側が入試で入学後のTOEIC対策などを考えた出題をしたとしても、スペル対策はもはや不要なのです。 英検でスペル暗記を使うかもしれませんが、しかし英検は日本でしか評価されません。 桐原5500は論外として、 正直、時間的に現役高校生が、桐原『データベース4500』と東京書籍『コーパス4500』または旺文社『英単語ターゲット1900』を使いこなすレベルにクリアするのですら、高校3年間では少しキツいと思います。たぶん多くの高校生は予想では3年生のときに「上級レベルの単語集の用法や用例を覚えている最中に、時間切れで、高校3年の卒業式を迎える」という結果になると思います。なぜなら、このレベルで、急に単語を覚えるのが難しくなるからです。かといって中級レベルまでしか勉強しないと、卒業後の実務のリーディングにも不便なので、上級レベルを高校3年で教えるのにも意義のあることなので、教育者には悩みどころなのでしょう。 なので勉強法としては、4500語レベルをクリアできなくてもいいので、ある程度の勉強をしたら、予備校などの出しているレベル高めの単語集をいくつか買います。 諸般の事情で、東京書籍・桐原・旺文社が紹介していないが、高校生に勉強してほしい定番の単語みたいなのがあって、そういうのが予備校系の単語集で紹介されています。 ==== 予備校の単語集は何をしているか ==== 歴史的な事情で、今の4500語レベルの単語集には書かれていないが実は昔の1990年代ごろまでの高レベル単語集には書かれていた単語があります。 そういう単語が、難関大学で狙われるかもしれません。 旺文社1900や桐原・東京書籍4500語にない単語の正体のひとつは、そういう昔の課程の単語です。 で、それが予備校系の単語集の元ネタのひとつでもあります。 東京書籍・桐原の3000語レベルや4500語レベルで旅行会話のような実用英語が増えたりビジネス英単語などが増えたので、昔なら4500語レベルに書いてあった単語のいくつかが今は5500語レベルにハミ出ているのです。 なので、予備校などの出す、受験レベルの単語集が1~2冊は必要です。そういうハミ出た単語だけ、あとは予備校系の単語集で抑えておけば十分なのです。 予備校の単語集を見てみましたが、実はそれほど特別な英単語はないのです。また、じつは、桐原4500などの学校向け単語集の単語すべてを均等に覚える必要はなく、やや傾向があります。 たとえば旅行英語で使う単語など、検定教科書にあるから桐原・東京書籍は紹介しているものの、あまり大学が重視してない項目もあります。 だから、桐原/東京書籍 に加えて、旺文社ターゲット、さらに別の予備校系などの高校3年レベルの単語集を何か1~2冊つかって知識の穴埋めをすれば、もう十分でしょう。 もしかしたら、高校2年からもう、予備校の出版している難関向けの単語集を使ってもいいかもしれません。 市販の予備校の単語集を見ても、けっして、桐原5500語レベルの単語を片っ端からは教えていません。桐原5500のアレは、高校生には習得が無理だと思われているのでしょう。 ==== 受験英語の特殊事情 ==== 大学受験英語の特殊な事情ですが、明らかに高校範囲外で実用的にもメッタに使われていない英単語が難関大学で出されており、当然に読めないのですが、しかしなぜか他の文章の単語から文脈にとって意味をとれるようになっています。 もちろん、現実ではそんな好都合なことは滅多に無いのですが、受験の英文はたいてい都合よくそうなっています。 また、万が一、他の英文の文脈から読めない単語が出ても、どうせ他の多くの受験生も解けないので、そういう問題は解けるようにしておく必要がありません。 ともかく、入試対策としては最低限、東京書籍4500・桐原4500をベースに、さらに旺文社1900で派生語を固める必要があります。 しかし、それとは別に、予備校などの出す、プラス・アルファ的な受験レベルの単語集が1~2冊は必要です。 歴史的な事情で、今の4500語レベルの単語集には書かれていないが実は昔の高レベル単語集には書かれていた単語があって、4500語と旺文社1900をひととおりクリアしたあとは、そういう歴史的経緯のある単語だけ予備校単語集で攻略すればいいのです。 ==== 英単語集の読書計画 ==== 最初から高校在学中の読書計画に、英単語集の読書を想定して組み込んでおくと良いでしょう。また、桐原・東京書籍・旺文社あたりに基本の単語集とは別に、他社の少しだけ発展的な単語集を読書感覚で読むと良いでしょう。 高校必修の範囲を越えた単語や派生語などは、読書感覚でひととおり解説に目を通すだけの単語集の勉強でも十分に対応できる場合も多くあります。 しかし、いちども読んだこともない単語は、さすがに入試で対応できません。だから、一度でも解説に目を通してしまえば、済む単語も多くあるのです。 なので、広く浅くでいいので、読書しておく必要があります。 === 大学受験に必要な単語量について === 一般に、大学受験で、難関な学校の英語を読み解くには4000語程度を知っていることが望ましいといわれる。しかし、実際には近年センター試験でリスニングが導入されたことに代表される通り、英語の学習は、単に知識の量を問うよりも、より実践的な場面で言語能力を適用する方面の能力を重視するようになっている。 そのため、単純に単語数だけを増やすのではなく、単語の発音や用法を覚えることにも力を注ぐことが望ましい。 具体的には、まずは3000-4500語程度を使いこなせることを目指すのがよいだろう。 === 単語の小テストばかりを受けても、復習しなければ単語力は身に付かない === 学校や塾で、単語の小テストを受けさせられる場合もあるでしょう。「単語集の○○ページから△△ページまでを小テストで出すので、書き取り練習して覚えるように」という小テストです。 たいていの高校生の場合、予習はテスト前にしますが、いっぽうで復習をしているかどうかは、個人任せです。 ですが、小テストをいくら受けても、復習しなければ、単語力は増えません。 もし、単語の小テストを受けたままで、その後は復習せずに、ほったらかしにしてしまったら、何も単語力が伸びません。 単語テストは、テストを受けた後に、自分の未修得の単語を復習するために存在しているので、テスト後に復習をする必要があります。(もちろん、テスト前に予習も必要である。予習をしていれば、未修得の単語が減るので、復習の単語数が減る。) 要するに、小テストの使い方は、全国模試(ぜんこく もし)の使い方と同じです。 全国の高校や塾のうちの一部では、どうも、小テストの目的を忘れていて、「とにかく毎週、単語の小テストをすればいい」と安易に考えているような教育も、ある気がします。 この文を読んでいる読者高校生は、小テスト本来の目的を思い出して、小テスト後には復習と予習(次回の小テストのぶんも予習)をしましょう。 さて、たいていの高校や塾では、1週間に1回のペースで、単語20〜50語ほどの記憶をはかる小テストをしていると思います。 1週間ごとに50語ほどのペースで単語小テストをしていれば、充分にハイペースですので、それ以上は週あたりの単語数を増やす必要はありません。(英語が好きなら、さらに勝手に単語数のペースを増やせばいいが、それよりも数学などに力を入れたほうが良いだろう。) 裏を返せば、復習をしきれない量の単語小テストを毎回受けさせられても、非効率です。例えば、1週間ごとに300語の単語小テストを高校で受けたとしても(ただし高校1年の1学期だと、中学英語の復習で、そういう数百問のテストもありうる。しかしそれは期間限定)、そんなに英単語ばかり復習しきれないでしょう。(数学など他教科の勉強もありますし。) 万が一、そういう高校や塾の場合(1週間に300語の単語小テストの場合)、その高校や塾の小テストは後回しにして、自分で単語を予習・復習しましょう。 ただし、定期試験や期末試験などで、今までの単語小テストの合計の数百語のなかから単語が出題される場合は、多くあるので、その復習はしましょう。つまり、学期内の小テストは、その学期中に復習し始めましょう。(どのみち、テスト後にも補習などがあるだろうが・・・) 夏休み明けや、冬休み明けに、前の学期の小テストの範囲内の単語が出題されたりしますので、休み中にも、復習しましょう。(予習も忘れずに。小テストは最終目的ではなく、入試合格などが、より本質的な目的なので。) 同様に、3学期の年度末の期末テストなら、1年間の小テスト範囲の合計1000語ちかくがテスト範囲に含まれる場合も多いので、その復習はしましょう。つまり、年度内の小テストは、その年度中に復習し始めましょう。(どのみち、テスト後にも補習などがあるが。) == 文法 == === 参考書で勉強する === 高校英語の英文法の勉強は、検定教科書ではなく参考書で勉強するのが定石、基本です。 なので、まずは参考書を買い始めましょう。普通科高校なら、おそらく高校の入学時、検定教科書の購入と一緒に、参考書も買わされると思います。 もし大学受験を考えるなら、英文法の参考書を買わなければなりません。 とりあえず、下記に後述する網羅形式の本を持っていれば、ひとまずは安心でしょう。 === 高校英文法は例外も多い === 高校で習う英文法は、中学ほど論理的ではありません。中学の英文法の教育では、なるべく規則的・論理的な文法事項だけが取り上げられたのですが、しかし高校は違います。 このことからか、高校英語では英文法の参考書のスタンスがいくつか分かれています。 1. 例外的な事例にはあまり深入りせず、基本的な事項を重視したスタンス と 2. 辞書的に、英文法のあらゆるパターンを網羅的に掲載したスタンス があります。(実際にはこの中間の編集方針の参考書もあるが、説明の都合上、二極に単純化することにする。) 予備校系の講義形式をうたった参考書のいくつかや、高校英文法の入門書などの参考書のいくつかは、基礎的な重要事項を特に重視したスタンスです。(そのため、例外的な事項の説明は省かれているか、少なめです。) いっぽう、高校にもよりますが、高校で配布されるような昔からの、いかめしい感じのする参考書は(実際は改訂されたりして新しいですが)、辞書的・網羅的なスタンスの参考書です。 センター試験などを考えるなら、網羅的なスタンスの文法参考書を最終的には読んで覚えざるを得ません。 一応、網羅本だけでも受験対策は可能ですが、塾や予備校などに通ってない人や、高校の授業の質に不安のある人は、さらに基礎的な事項を重視したスタンスの文法参考書もあると良いかもしれません。 実は1990年代あたりの昔は、あまり例外的な文法事項は高校英語では教えていませんでした。このため、もしかしたら入試でも、私大などで大学によっては、例外的な文法事項をあまり重視していない可能性もあります。 例えば理系の中堅私大などで、あまり例外的な文法事項を要求するとは思えません。 ただし、これは私大の場合の話です。国公立の志望の場合は、一次試験である新共通試験(かつてのセンター試験に対応)を対策せざるを得ず、そのため二次試験がどうなっていようが、一次試験の対策のために辞書的・網羅的な参考書を読まざるを得ません。 役所的で官僚的かもしれませんが、そもそも官費で補助される国公立の機関というのはそういうものです。 私大の少ない地方とか不利かもしれませんが、しかし教育投資を怠ってきた地方の自己責任です。地方は地方交付税やら農業補助金がら製造業の工場誘致などで国から補助金をもらっているのですから、地方でどうにかしてください。自己責任です。 TOEICなどの資格試験が近年重視されており、大学でも私大などで推薦入試や自己推薦などでTOEICの成績を考慮する大学も多く、企業もTOEICを表向きには重視していますが、TOEICは文法教育における論理性や高校生の論理性の涵養に配慮する義務はありません。なので、この問題の逃げ場は、大学受験にはありません。TOEICが果たして本当に実用英語かどうかはともかく、世間一般で「実用英語」だろうとは言われています。実用重視ということは、相対的には論理を軽視するという意味です。論理と実用性が対立する例外事項では、論理を軽視せざるを得ません。「論理も実用性も重視する」なんていう文学的な言い訳は現実世界では通用しません。なぜなら人生の時間は有限であり、限られた時間を実用性に配分したら、そのぶん論理性に配分できる時間は減るのです。世間の大衆が「論理性」を軽視して「実用性」を重視した結果のリスクおよび自己責任ですので、現実を受け入れましょう。 === 網羅本でも全部の構文は紹介していない === 例えば比較級の構文「A is B no more than C is D」は、ある参考書(網羅本)には紹介されていますが、他社の網羅本の参考書には紹介されていませんでした。なお、どちらの参考書とも、 「A is no more than B 」は紹介していました。 高校英語で習う構文は多いので、複合的な構文などは、網羅本といえども一冊の参考書では紹介しきれないのです。 もし英語だけしか学習しないので済むのであれば(実際は違いますが)、英文法の網羅本の参考書を2冊や3冊も読み比べることで自分にあった参考書を選べばいいですが、しかし他教科の勉強もあるので、そうはいきません。 悩みどころです。各自、うまく対応してください。 また、大学生・社会人向けの厚めの文法参考書でも、すべての構文が書いてあるわけではないです。例えば『ロイヤル英文法』という大人向けのやや専門的かつ高度な英文法参考書がありますが、「all the +比較級」の構文は書いてありませんでしたし、巻末の索引を調べてもありません。 だから、大人向けの文法参考書を読んだところで、この問題「網羅本でも全部の構文は紹介していない」は解決しないのです。 === 時間配分 === 文法の学習は当然に必要ですし、入試にも良く出ます。しかし、文法の学習にばかり時間を掛けてはなりません。もっとも時間を掛けるべき学習対象は英単語です。 高校に入学すると、高校の範囲の文法事項を、おそらく学校や塾などで急に教わり始めるでしょう。それらの文法の新知識の学習も大事ですし、当然に学習するべき知識ですが、読者のみなさんは英単語の学習も欠かさないようにしてください。文法なんて覚えることも少ないし、大学受験をするなら最終的には大学受験のころにまで文法を覚えられれば良いのです。なので文法の難問を練習する時間があるなら、それよりも、まず先に単語を優先的に勉強して語彙(ごい)力を増やしたほうが効率的でしょう。 また、入試の文法問題も、文法の知識だけで解ける問題は少なく、単語の知識や語法の知識などと組み合わせないと解けない問題なども、入試では、よく出題されやすいです。なので、単語の知識が、大学受験対策では優先的に必要なのです。 2010年以降なら、中学校で、すでに大まかな文法の枠組みは習っています。2022年では、仮定法すら中学校で習っているはずです。もはや高校で習うのは、無生物主語など若干の単元と、あとは仮定法過去完了だとか、現在完了進行形とかくらいです。 そういった合わせ技は、それほど熱心に勉強しなくても、入門的な問題集などで問題練習すれば、普通に習得できます。 === 高校英文法は実は少しウソ知識 === 高校生用の文法参考書は、高校標準レベルの参考書は、基本的には、中学英語の復習も兼ねています。 このため、普通なら、高校1年生は復習のためにわざわざ中学参考書を買いなおす必要はないです。 それよりも重要なこととして、実は高校英語の文法参考書には、不正確な知識があるという事です。中学英語が理解重視のため少し不正確でかなりひどいカタコト英語が中学生用の参考書・教科書にあるので、同様に高校の英文法も少しだけ不正確なウソの知識があるのです。 さて、単語集では基礎レベルの単語集の前半が、中学英語の復習を兼ねているように、実は高校英文法の参考書も、少なくない割と多くの部分が中学の復習や、中学で習った分類など理解の再構成を兼ねています。 単語集ほどではありませんが、高校の文法参考書でも、あまり序盤にある中学文法の復習の部分には、高校でも深入りする必要がないことが、上述の考察・市場調査などから分かります。 また、このことに気づけば、つまり単語以外の知識で、一部の参考書にしか紹介されていない細かい文法の理論的な知識は、入試対策としては覚える必要が低いことが導かれます。単語集だと、細かい発展的な単語も入試に出ますが、しかし文法書については事情が違います。高校英文法には、深入りせずに、広く浅く学ぶのが安全でしょう。 文法参考書に書いてある知識がそもそも初学者の理解しやすさを重視したためのウソ知識なのですから、むしろ、けっして鵜吞みにして深入りしてはイケナイのです。 ほか、使用頻度の少ない表現など、参考書によって説明が微妙に食い違っています。たとえば接続詞 lest は、ある参考書では、「文語的であり、あまり使われない」と主張する一方、他社の参考書では「(for fear よりも)頻度は lest のほうが高い」(ジーニアス)と主張していたりします。 こういうふうに、細かい表現の英米での利用状況には諸説あるので、あまり参考書を鵜呑みにしすぎないようにしましょう。 === 大学生向けの参考書は例文不足 === 上述の、高校英文法が少しウソ知識の件と関連しますが、大学生向けの文法参考書は、実は例文が不足しています。 文法書の厚さを見れば、高校英文法の参考書も、大学英文法の参考書も、(書籍にも寄るが、一般に)厚さがあまり変わりません。 大学生向けの英文法参考書のほうでは、高校英語では省略された例外的な規則などを色々と紹介しています。なのでそのぶん、例文は減ります。合計ページが同じくらいなので、日本語による文法の解説が増えれば、そのぶん、英語の例文は減るのです。 また、高校生がよく誤解しやすい注意事項なども、大学生向けの文法書には全然ないのです。 つまり、大学生むけの参考書は、高校英語の上位互換の書籍ではありません。 これがもし、大学ではなく、中学英語の参考書と高校英語の参考書となら、高校英語の参考書のほうが中学のよりも上位互換かもしれません。 しかし、大学生むけの参考書は、用途がやや異なります。 大学生むけの文法書にはこういう弱点もあるので、なので高校生は、高校生向けをターゲット層にした一般の高校生向けの英文法参考書を中心に勉強しましょう。 === 細かなニュアンスの違いは覚えなくて良い === たとえば助動詞 must と have to はともに「~しなければならない」ですが、微妙にニュアンスが違います。しかし、あまり微妙なニュアンスの違いは、じつは入試対策としては覚える必要はありません。mustのほうが意味が強いのですが、しかし入試では「ニュアンスが微妙に違う」という事と、その解説が「一般的な大学受験レベルの参考書に書いてある」という事さえ覚えておけば、あとは入試の英訳問題などでもし「しなければならない」を英訳せよという問題が出たら、対策としては「まずmust で書くことを考えてみて、もし設問文などで語数が2語と指定されていたら have to に置き換える」といったぐらいの認識でも大丈夫です。その程度の記憶力でも、普通に大学受験で平均的な偏差値55~60ぐらいの私大にも合格します。 受験勉強では、細かなニュアンスの暗記よりも、英単語をたくさん覚えなければなりません。また英語以外の国語や数学などの勉強も必要です。 参考書で勉強をする際、あまり細かなニュアンスの違いの暗記に入り込まないように注意してください。 実際、ある検定教科書でも、文法事項の類似表現などは、たとえば Would you ~? と Could you ~? などの依頼表現としてのニュアンスの違いは説明していません。せいぜい、 「Please と比べたらWould You および Could you は丁寧な言い回しである」という程度のニュアンスさえ把握できていれば大学受験レベルでは十分です。 参考書にはもしかしたらもっと細かいニュアンスの違いなどが書いてあるかもしれませんが、そういう詳細な情報はせいぜい参考程度にしましょう。 実は参考書でも、もう細かいニュアンスの違いは教えていない書籍も多くあります。 つまり、大学受験用の英語参考書には2種類あり、 :ひとつは受験用に入試に出る最低限のことだけを教える参考書と、 :もうひとつは細かいニュアンスの違いなども教える参考書と、 そういう2種類があります。 なお、上記とは別に英語研究者用の文法参考書がありますが、大学受験には全く対応していないので間違えて購入しないでください。 最低限のことを教える文法参考書の例として、ジーニアス英和辞典を出している大修館書店は高校生向けの文法参考書(『ジーニアス総合英語』)も出していますが、しかし文法参考書のほうでは辞書ほど細かいニュアンスの違いを説明していないのが現状です。 特に新共通試験(旧制度のセンター試験に相当)などの公共機関の試験や、英検・TOEICなどの資格試験では、細かいニュアンスを問う問題はまず出題が難しいでしょう。西暦2000年以降、国公立人気などでセンター試験や新共通試験の影響がどんどん強まっている影響も考えれば、文法学習であまり深入りニュアンスに深入りするメリットは残念ながら少ないのが現状だろうと思います。 それが英語教育として良いかどうか不明ですが、現在の大学入試の対策として要求される文法教育とはそういうものです。 基本構文などの細かなニュアンスの違いは、英会話などではそれなりに重要ですが、しかし入試や画一的な資格試験では英会話をそこまで細かく採点できないので、したがってニュアンスの違いに基づく使い分けもそれらの試験では出題されづらいことになります。新共通試験にリスニング試験はありますが、しかし実際に会話をさせる試験はありません。 裏を返せば、細かいニュアンスに深入りした文法参考書は、高校卒業後の英会話などの英語学習などのステップアップで使うのが効果的かもしれません。 高校の文法参考書の題名は、「文法」と書いてあるものを選んでもいいですが、2022年の書店で確認したところ『総合英語』と書かれている参考書も文法事項が中心的です。 === 各社ごとの注意 === 参考書えらびの際に、高校1年生がたぶん勘違いしそうなことを、述べておく。 * 大修館「ジーニアス」と数研出版「チャート式」の細かさ 大修館「ジーニアス」ブランドは、辞書では昔から細かい説明で有名であり進学校などではジーニアスの辞書が進められるとの噂も昔からよくあります。ですが、しかし「ジーニアス」ブランドの文法参考書はあまり細かくありません。注意してください。 別に細かい文法参考書がいいだの悪いだのという話ではなく、ともかく、辞書のような細かさを「ジーニアス」文法参考書に期待してはいけません。用途が違います。 いっぽう、数研出版のチャート式の文法参考書のほうが、多くの構文が細かく網羅的・羅列的には書いてある傾向にあります。このため、1990年代の昔からよくチャート式の一番難しいバージョン(白・黄・青など色々バージョンがある)が進学校などでの参考書として配布されることもありました(かつては赤チャートが難しかったが、現代は赤が廃止され次点だった青チャートが一番難しいバージョンになっている)。 ただし、果たして2020年代の現代の入試にもチャート式が効果的かどうかは分かりません(会話重視・リスニング重視や単語重視など、入試の流行の変化もあるので)。 * 文英堂「インスパイア」と学研の参考書の入門者対応 なお、かつて文英堂『シグマベスト』というシリーズが、1990年代~2001年くらいは高校入門レベルの参考書として定番だったが、現代はそもそも英語のシグマベストが無いのと(英語は『インスパイア』に変更)、しかし同社・文英堂の『インスパイア』は、難しめです。 暗記科目なので、難しくても、とりあえず読めますが、しかし『インスパイア』のレベルはやや受験レベルを少し超えている記述もチラホラあります。 なお、例えば理科など他教科でも『シグマベスト』は実は2010年以降の現代はなかなか発展的であり難しくなってきていて、情報も細かく羅列的である。90年代の当時とは『シグマベスト』の中身の難しさが違うので、参考書選びのさいには、けっして90年代のままの世間の大人たちの評価を鵜吞みにしないように注意。 背景として、90年代の昔は、英数理の参考書選びのパターンとして、「シグマベストで入門レベルをカバーして、チャート式で高度な事項を勉強」という有名パターンがありました(なお、国語と社会科のチャート式は参考書としては無い)。あるいは、「その教科が苦手ならシグマベストを選ぶ。その教科が得意ならチャート式を選ぶ。」のようなパターンが90年代にありました。 しかし、現代では シグマ + チャート のパターンが、もはや上述の出版事情の変化で通用しなくなってるので注意。 2010年台の今だと例えば学研が高校入門レベルの初等的な参考書の立場だが、90年代の昔、学研がまだ高校参考書にあまり参入しておらず(昔の学研は小中学校むけの教材ばかりがメインだった)、当時は文英堂のシグマベストが今の学研の高校参考書に近い立場だったという背景事情がある。 === 文法参考書の選びかた === インターネットで参考書の形式やレベルなどを調べたり、または、教師や塾講師、チューター、同じ学生などからの評判なども参考にしながら、実際に書店で参考書の内容を閲覧するなどして選ぶといいだろう。 また、古本屋などで参考書を購入すると出費を抑えられる可能性がある。 中学英語は昔とカリキュラムが大幅に変わったので古本屋は論外だが、高校英語は昔から到達地点が同じままなので、文法学習はちょっとぐらい古い本でも特に問題ないかもしれないかもしれない。とりあえず、古本屋で英文法書を購入するなら、なるべく最近のものを購入したほうがいいだろう。 「大学英文法」とかそういうのは一般的には無い。文法は高校英語で、とりあえずゴールである。あとは単語や熟語を増やすのが、その後の道である。 英語教師などを目指す人のための細かい英文法理論書はあるが、高校生には必要ない。なお、書店によってはそういう教師向けの英文法理論書が高校英語コーナーに売っていたりするので、間違えて買わないように。わかった上で買うなら自己責任で。 === 高校の文法参考書はどういうものか === 「時事的な文法」とか無いので、もし改訂などあっても、あまり頻繁に買い換える必要は無い。 他のセクションでも言ってるかもしれないが、「大学英文法」と言うのはない。なので、文法において「大学教養レベルの先取り」とかは不要であるし、そもそも存在しないし、そういう教材もまず無い。 このことは、大学受験においては、つまり文法問題は、高校生向けのやや高レベルな参考書を習得できたら、それ以上は英語教師でも目指さないかぎりは、英文科向けのさらに高度な文法書には進む必要は無い、という事である。 英文科の学生などに向けた文法書は、あれは教師向けまたは研究者向けの参考書である。内容も、基本的には高校生向けの文法参考書に書いてある内容を、大学生または教師志望者などの視点やレベルに合わせて書き直した程度のものである。なのでともかく、受験生には不要である。 このことから、ゴールが明確に定まり、受験生向けのやや高度なレベルの参考書がゴールである。 そこから逆算すると、あまり多くの参考書を読み漁る必要はない。せいぜい、2冊読めば十分だろう。 高校1年レベルから分かりそうな易しめのレベルのものと、あとは少し難しめの感じのもう一冊で十分である。もしかしたらどちらか片方だけでも十分かもしれない。 また、説明を省略したが、前提として、高校の参考書は、学年別とかには売ってない(書店で実物を見れば分かると思うが)。 なので参考書での学習の際にも、いちいち学年ごとにペースを3等分とかして「私は1年生なので、参考書の前半の3分の1だけ読む」みたいなことはする必要は無いし、むしろ現代では3等分すべきでもない。 つまり、参考書は高校1年で購入したら、とりあえず、さっさと通読すべきである。現代の中学・高校のカリキュラムなら、文法参考書の通読は中学英文法の復習にもなるので、まずは通読しよう。 そして何回か通読したら、問題集などにチャレンジしたり、あるいは単語なども増やそう。 これがもし英語でなく数学の勉強法だったら、先の学年の内容を通読するよりも学校で習った単元の復習などを重視するのも手かもしれないが、しかし英語はあまりそういう単元ではない。 高校の授業や定期テストなどは、あれはあれで教育ノウハウが詰まっているので活用すればいいが、別にそれを活用したからといって文法参考書を通読できなくなるわけでもない。 それに塾などだと、参考書の後ろのほうにある無生物主語などを高校クラスでは1年で先に教える流儀もある。 参考書の最初のほうにある文型がどうのこうのと言った話は、どうせ塾の中学生クラスや中学参考書などでも既に教えている可能性があるので、塾の高校生クラスではそういうのはもう後回しにして、先に無生物主語や仮定法など参考書の後半の単元を教えるというパターンもある。家庭での自習などの際にはご参考に。 また、そもそも2年の終わりくらいから高校や塾などで全国模試などを次第に受け始めることを考えるなら、けっして高校3年間で学校の授業で文法を習うのを待つのではなく、自習によって高校2年の後半の段階までに一通り、高校生むけの単元である無生物主語やら仮定法過去完了やら分詞構文などを含めて、とりあえず文法参考書は全ページを通読は済ましておいて、加えて問題練習を軽くでいいのでしておくべきだろう。 そして、高校3年では模試なども活用して、問題練習で定着させていく、・・・という段取りである。 == 熟語 == 単語集の前半のほうにも、実務ではあまり使わないだろう熟語、つまり、より平易な表現に言い換えることの多い表現がよくあります(少なくともこのセクションのある編集者が、ネット上の海外英語では見たことない表現がいくつもありました)。 中学1~2年で習うレベルの単語の組み合わせで作れるマニアックな熟語がいくつかあるので、学習時に注意が必要です。単語集では編集の都合上、そういうマニアック熟語が前半のほうに書いてありますが、正直、後回しにすべき熟語です。 一方、 come true (実現する)のような、たとえば構成する単語と意味が近い場合なら、学習効果は高いです。たとえばtrue 「=真実」と「実現する」は比較的に意味が近いです。参考書でも、よくSVC文型の例としてcome true が出てくるので、こっちは重要事項です。 しかし残念ながら、単語集にある出題頻度の情報を見ると、come true は出題頻度が低いようです。 そのほか優先して覚えるべき熟語は、たとえば no longer ~「もはや~ない」のように構文的な熟語や、あるいはget over ~「克服する。回復する」(= overcome)のように中学レベルの単語には言い換えできなくてその熟語表現を使わざるを得ない可能性の高そうな熟語とか、そういうのです。 このような熟語の教育状況になってるのは、つまり残念なことですが、「英語教育での英作文などでは、実務的を想定した教育がされておらず、つまり形骸化している可能性がある」という事です。 「出題頻度順」の掲載をうたった単語集で前半のほうに、不便なマニアック熟語があるので、つまり入試では、実際には仕事などで英語を使うつもりのない人たちを想定した入試が行われているという証拠です。 英作文をする際、getで一語で説明できることを「come by ~」で表現する可能性は実用では低いでしょう。英会話でも、果たして米英人が、日本人相手に come by で説明するでしょうか。はなはだ疑問です。 なぜなら外国人は、もし英語が得意な日本人相手なら躊躇なくobtain のような非熟語を会話で使うだろうし、あるいは「英語が苦手な日本人かな」と思って気を使ってくれるなら get で表現してくれるでしょう。 come の基本的な意味は「来る」ですから、熟語come byの「入手」とは、かけ離れています。おそらく「手元に来る」的なニュアンスなのでしょうが、しかし「by」からそれを想像するのは、かなり前置詞「by」の基本の意味から離れています。そういう、基本単語の意味からの距離の大きい表現は、実務では学習コストが高いので、いろいろと不便なのです。 不便とはいえ、海外での利用の可能性がないとは言えないので日本の受験英語でも教えられていますが、なるべくなら後回しにしたいマニアック熟語表現です。 come true 「実現する」のようなSVC文型の例にもなるような教育的な熟語だと出題頻度が低いようですが、これはつまり、入試出題者が、高校生の学習効果を見る良問よりも「落とすための問題」「ヒッカケ問題」を21世紀の少子化の時代になっても未だに出題し続けているという証拠でしょうか。 == リスニング == まずは、前提となる単語力をつける必要がある。その上で、参考書で、音声CDつきの参考書などで聞き取り練習をするなどすればいいだろう。また、例えばYouTubeやTEDなどで自分の興味のある分野の英語を聞くなどしてもいいだろう。 テレビのNHK教育の英語番組ですら、一般の大学受験を目指す高校生には非効率です。なぜならNHK教育は、学校の授業用に作られており、けっして大学受験対策には作られていません。 == 読解 == 読解練習をしたい場合は、まずは学校でのリーディングの教科書などをきちんと読むのは当然ですが、そのほかにも参考書があると便利かもしれません。 書店の参考書コーナーに、高校生用の英文読解の参考書などが置いてあるはずですから、それら高校生用の参考書で勉強してください。 大学入試の英文では、平均以上の難度の大学になると、単語の知識がないと、まったく内容が把握できないでしょう。なので、読解練習だけでなく単語の勉強もしてください。とりあえず単語集などで4500語レベルまでの範囲の単語は最低限、ひととおり学習してください。 分からない単語がある場合、辞書を引く必要が生じますが、しかし辞書ばかり読んでも時間が掛かってしまい、他教科の学習時間をうばってしまいます。なので、読解練習よりも、できれば単語練習に時間を掛けてください。なので、英文読解よりも単語集などで単語の記憶量を増やす勉強が必要です。 学校や塾・予備校とかだと、過去問の英語長文などで、大量の英文読解の練習をさせられるかもしれません(1990年代、そういう教育が受験業界で流行していました)。学生が初級レベル~中堅レベルの、まだ英語長文を読みなれてない学生には有効な教育法でしょう。しかし、英語学科志望の学生ならともかく、他学部・他学科の志望者が、時間を英語学習ばかりに掛けられません。 なので、一通り、英文法と単語と読解スキルが脳内で結びついたら、勉強方法を切り替えて、単語中心の練習に変更する必要があります。、読解練習よりも単語力などを受験レベルにまで増やすほうが、受験には有効でしょう。英文の読解力の向上は英語教育の目的の一つですが、あまり英語学習の手段には、なりにくいです。英語の学習手段としては、長文読解よりも、まずは、とにかく単語力を、受験対策の参考書レベルまで増やしたほうが有効です。 * 試験での読解問題の時間配分について 出題英文を読むのに時間が掛かりますから、試験中の時間の配分にも気をつけてください。まずは単語力を増やすと読解スピードも上がるので、普段の勉強では単語力を増やしてください。 試験中の配分の対策として、実際の入試では、たとえば、長文読解問題よりも先に、短時間で解けそうな単語問題・文法問題などを先に解くとかして、時間配分の対策をしてください。あるいは、設問の問題文を先に読んでおいて、検討をつけてから長文を読むなどという方法もあります。ここらへんの対策は、じっさいに過去問や想定問題などを解いて練習してください。基本的に、入試国語での現代文などでの読解問題対策などの際の時間配分と似ていると思います。 ただし、時間配分のテクニックばかりを磨いてもダメであり、単語力などを増やさないと、読解スピードも上がりません。 * 学部と出題内容の関係 入試では、ときどき、志望先の学部の内容に関する記述が出る場合もあります。また、高校で習う教科に関する記述が出る場合もあります。もっとも、べつに必ずしも志望先学部と近い内容の英文が出題されるとは限らず、あまり関係のない内容の英文も出題される場合もあります。 どちらにせよ、合格後の人生も考えて、学生は、志望先学部に近い内容の高校教科の勉強もしておいたほうが安全でしょう。たとえば経済学部に進学志望なら高校政治経済などの参考書を読んでおくとか、あるいは理工学部に志望なら理科・数学の参考書を読んでおいたほうが安全でしょう。 == 発音・英会話など == 基本的には、標準的な参考書でカバーでき、あとは単語の記憶量を増やす練習とか、リスニングの練習とかの対策でよいです。あとは参考書などの英会話文例や発音問題を覚えておけば、入試での、だいたいの発音や英会話の試験もカバーできます。 * 入試の発音問題について 発音問題は、入試に英単語と発音記号を照らしあわせる問題は出ます。ですが、自分で発音することは、推薦入試などでの口答試験でもない限りは、入試には発音は出ません。 * 入試での英会話について 大学入試では文章題などで、英会話の空欄を埋める問題などが出されるかもしれません。いっぽう、大学側が、一人ひとりと会話をする試験は、一般入試では出ないでしょう。なぜなら、大学側の時間的にも、受験生の一人ひとりとの英会話試験は無理です。ただし推薦入試などでは、語学系の学部なら、口答試験として英会話が出る可能性もあるかもしれません。 英会話は、教科書・参考書などに書いてある、基本的なあいさつ文など、基本的な決まり文句を覚えたら、それ以上は、あまり英会話に深入りしないほうが安全です。 本格的な英会話の能力とは、俗語やら、ある程度の専門的な会話とか、ジョークとか、そういうのも含めてしまいます。しかし、学生の時間的に、そこまでの学習は無理です。それに大学入試でもジョークとかは出ません。 ただし、いくら一般入試に会話が出にくいといっても、基本的な会話くらいは、せっかく高校で習うのですから、きちんと練習してください。そもそも建前上は、高校で習うことは、高校生は学習するべきということになっています。そして大学側だってバカじゃないんだから、なるべくきちんと勉強している受験生を優先的に合格させたいのです。 == 英作文 == 英作文の練習よりも、まず先に単語の記憶量を増やす勉強を優先したほうが安全でしょう。単語の記憶量が増えて、文法や熟語なども覚えれば、英作文なども、自然と上達します。逆に言うと、英作文だけを勉強しようとしても、難しいです。なお、英作文の勉強では、あれこれ考えるよりも、文例を覚えたほうが良いでしょう。 == 問題集を信じすぎるな == 問題練習をする際には、必ずしも偏差値順にステップアップする必要は無い、という事です。 偏差値の低めの大学の過去問で、解説を見ても納得のいかない問題がある一方、偏差値のもっと高い大学の過去問でも、解説に納得のいく問題がある、という事例も少なからずあります。 また、日本人の高校生のレベルを越える難しすぎる問題は、そもそも解けるようになる必要もないでしょう。 選択問題では、高校レベルで習得できるレベルでの、初心者のよくやるミスをしない事のような、明らかに間違った言い回しを排除する事さえできれば、それでいいでしょう。 納得の行かない問題の対策はやりすぎないようにスキップして、他の勉強をすべきです。英語の勉強なら、もっと確実に偏差値アップの出来る勉強、たとえば単語力を増やすなどの勉強をしましょう。 == あきらめるべき事 == === 第二外国語は、あきらめるべき === ==== 入試に第二外国語は出ないのが普通 ==== 高校によっては、一部の私立高校などでは、フランス語やドイツ語など第二外国語の授業を用意している高校もあります。 共通テストや二次試験では英語以外の外国語を使えるところもあるが、特別な理由がないなら英語を選択したほうがいいだろう。 また、中国語を勉強しても、あまり国語の漢文の入試問題を解くのには役立ちません。 帰国子女とか、あるいは進路志望が語学関連の分野で無い限り、あまり第二外国語には手を伸ばさないほうが良いでしょう。 就職試験でも、あまり第二外国語は問われません。英語を就職試験に課す大企業は、いくつかありますが、ドイツ語やフランス語を課す企業は少ないでしょう。たとえ、企業で第二外国語の堪能な人材が必要になったとしても、その際には語学系の学部学科を卒業したような専門家を雇うでしょうから、だから他学部の人が第二外国語を熱心に勉強しても、あまり就職活動では報われません。 == 一般入試対策ではTOEIC対策などには手を出さないほうが安全 == 英語能力を測る国際的な試験のTOEFLやTOEICなどは、高校生の学習用には作られていません。そもそも日本人に内容を合わせていません。 それにTOEICとTOEFLのどちらとも、試験の目的が、日本の高校英語の教育目的とは違います。 TOEICとTOEFLのどちらも目的は、英米への留学や海外生活のためなどの語学が目的です。日本の大学入試や、日本の大学での英語論文読解などの目的には、TOEIC・TOEFLなどは合わせていません。TOEFLとかTOEICとかで、ハイスコアを目指すのは、大学受験対策とは目的がズレています。 なお、そもそもTOEICをつくったのは日本の通産省(当時)であり、通産省がアメリカの非営利テスト開発機関、ETS(Educational Testing Service)に依頼をして、日本がつくったテストです。 よって、TOEICの出題内容は、アメリカ国内での実用とは若干、ズレていますので、てっきり実用英語だとは勘違いしないようにしましょう。また、てっきりTOEICは(OECDあたりの)「国際機関のつくった試験である」などと勘違いしないようにしましょう。 さらに、TOEICの参考書などにある「高校生レベルは◯◯点」などの数値も、じゃっかん、疑わしいので、あまり鵜呑みにしないようにしましょう。 ;* 平均点 :なお、高校生のTOEICの平均点は、年度にもよりますが、2018年の時点では、高校生の平均点はおおよそ350~400点くらいです。なおTOEICの満点は990点です。 ;* TOEICは事実上は文系向けの試験である :世の中には、文系の大人が多く、その影響で、学生でも理系科目をサボってまで英語の勉強をして、英語の成績を上げる人がいます。TOEICの平均点も、そういう文系の人間を基準に算出されてしまいます。 :一般入試や国公立受験、理系の学部などを目指す人は、けっして、そういう文系の大人や、文系しかできない学生を多く含むTOEIC平均点を、参考にしてはいけません。 :* 4択問題と難易度 :TOEICの各問題は基本的に4択問題ですので、デタラメに選択しても、990点満点(約1000点)中のうちの4分の1である約250点を取れます。 : さらに、欧米で英米への留学希望者むけのテストなどとして知られている英語検定試験はTOEFLです。 TOEICは、日本と韓国で流行っている英語検定です。 また、英検は日本人用の試験ですが、しかし高校生用には試験が作られていません。中学生・高校生なども意識して英検は作られているでしょうが、しかし、中高生だけを意識してはいません。 英検を入試対策で使うなら、志望校合格などが保証されないかぎりは、なるべく英検'''準'''1級までに止めるのが無難です。 * 推薦入試などの評価事項になることも ただし、推薦入試ではTOEICやTOEFL、英検などの成績が考慮される場合もあります。 * 難関大学への対策用としての場合 大学によっては、入試で高校レベルを超えた、かなり難しい英語を出す場合もあります。そういう大学に対応する場合、市販の受験参考書では太刀打ちできないかもしれません。このような場合、しかたなくTOEFL対策や英検1級対策などの参考書が必要な場合もあるかもしれません。 * 就職活動でのTOEIC評価について ただし、大学生の就職活動では、企業にTOEICなどの点数を聞かれることもあります。就職活動時のエントリーシートに、最初からTOEICなど成績の記入欄がある場合もあります。また、外国大学への留学の際に、TOEICなどで一定以上の成績を修めることが必須の要件とされる場合も多いです。たとえ英語圏以外の国の大学への留学でも、TOEICやTOEFLなどの成績が必須要件として必要な場合があります。 なので高校生でも、TOEIC受験の機会があれば、受験をするのも良いでしょう。 ただし、TOEICの成績が良いからと言って、けっして、それだけで企業が「即・採用」をするなんて事はありません。 高校生の段階では、TOEICなどの語学検定については、もし受験できるなら、視野を広げるような目的で検定を受けるのが良いでしょう。 == 英語の検定教科書にある時事や古典文学の勉強は不要だし、危険 == 中学高校の英語の検定教科書には、他の教科では説明しづらい時事や古典文学、最近の日本のアニメやマンガの、海外での人気について、英文で紹介されたりするかもしれません。 そもそも、本来の目的は英語を学ぶということなので、これらの題材で得た知識がそのまま大学受験に役に立つということはありません。 kau9f74ru97dt4u3k97v5ebixrnq0yx 中学校国語/現代文/報告書の書き方 0 21187 205535 197390 2022-07-19T13:07:07Z Nermer314 62933 wikitext text/x-wiki 実社会での報告書や説明文などでは、なるべく読み手に掛かる{{ruby|読解|どっかい}}作業の手間を、減らす工夫をしなければなりません。 そのため、次の節で述べるような、以下の工夫が必要です。 :(※ なお、読書感想文の書き方については、別の記事で説明します。) ※ '''注意''' : 本ページの内容は、理科で習う実験レポートの書き方とは、ちがいます。実験レポートについては、中学理科の教科書や参考書を参考にしてください。 == そもそも報告書とは == 報告書、レポートとは、何かを調査して、調べて分かった結果を、書類にまとめたものである。 書類にまとめる理由は、あとから見返せるようにするためです。 また、報告書を読む人は、アナタ以外の他人です。(あなた自身が読むために書き残す場合は、「メモ」「ノート」などと言います。) 学生レベルの報告書なら、もし、あなたと同じ学年の平均レベルの学力の他人が読んでも、理解できるように、書かなければなりません。 さらにまた注意事項として、書類を渡した相手(担任など)以外の第三者(学校なら先輩や後輩の生徒や担任以外の教師など、はたまた場合によっては学外の関係者など)が読む場合もありうるので、なるべく一般人が読んで分かるように書きましょう。特定の相手でないと通じないような書き方は、あまり好ましくないです。 そのため、報告書は書き方は、誰が書いても似たような書き方になってきます。作家性や独自性などは不要です。 ;日本語としての「レポート」の慣用的な意味 「レポート」の意味について、英語としては不正確な用法だが、「レポート」と「報告書」とでは、慣習的に意味が違っている。「レポート」とは、報告に加えて、さらに分析などの入った書類のことであるという用法が、日本では慣例である<ref>永山嘉昭『報告書・レポートが面白いほど書ける本』、2013年1月29日 第1刷発行、12ページ、、</ref><ref>株式会社ザ・アール『これだけは知っておきたい「レポート・報告書」の基本と常識』、2018年9月2日初版発行、22ページ</ref>。 === 題名を忘れずに === まず、報告書の題名には、たとえば『○○について 報告』または『○○の調査結果』などのように、その書類の種類が報告書であることが分かるように題名をつける必要があります。 単に『○○について』という題名だと、後日、その書類が感想文なのか報告書なのか何だったかのか、第三者がひとめ見たときに、分からなくなってしまいます。報告書を管理する人のことを思いやりましょう。 また、企業などでは、報告書を要求する上司は、報告書以外にも他の多くの書類を管理していることが多く、それら他書類との混同をふせぐため、題名で報告書であることを明記する必要があります。 また、報告対象について(『○○について 報告』の「○○」の部分)の明記も、忘れないようにしましょう。 会社では通常、多くの事例についての報告書が管理されています。なので、報告対象について題名で説明がないと、分からなくなってしまいます。 なお、書き手に余裕があれば、報告書の題名は、下記のように、より具体的にしましょう。たとえば、もし報告書の目的が、もし提案ならタイトルは「○○について 提案書」のようにするのが合理的です。 あるいは提案ではなく、調査報告が目的の報告書なら「○○について 調査結果報告」などのように、具体的に目的が分かるようにするのが良いでしょう。<ref>高橋慈子『ロジカル・ライティングがよ~くわかる本』、秀和システム、2009年7月25日第1版 第1刷、130ページ</ref>。 == ノウハウ集 == === 著者名を忘れずに === 報告書じたいの著者名として、自分の名前を、題名のあとの冒頭、または書類の末尾など、見つけやすい場所に入れる必要があります。 なぜなら、企業など実社会での報告書は、けっして1回書いて提出すれば終わりではなく、通常、書き直しを何度かする必要があるからです。 通常、報告書を渡された相手である上司が報告書の内容をチェックして、内容に不足や誤字や明確な間違いなどがないことを確かめ、もし不足などがあれば著者が追記や書き直しなどを求められることがあります。 上司は、あなた以外の人の書く書類も管理するので、なので書類には著者名が必要です。 なお、企業の報告書や大学でのレポート・論文では、表紙だけで1ページを使用します<ref>為田英一郎・吉田健正『文章作法入門』、ナカニシヤ出版、2004年3月10日 初版第2刷、76ページ</ref>。企業などでの本格的なレポート・論文・報告書などの表紙には、そのレポート的な書類の管理のために必要な題名・著者名のほかに印刷による記載のほかに、印字などで管理部署などのハンコが押されたりして保管されたりするので、なので、表紙だけで1枚、必要です。 なので、本格レポートでは、本文の書き出しは(表紙から、ではなく)2枚目以降になります。(実際には、さらに目次などが加わるので、本文書き出しは3枚目以降になる可能性もある) しかし中学・高校では、ここまでしなくても(表紙だけで1枚にしなくても)良いでしょう。 === べからず集 === 報告書には、正確さが必要です」<ref>永山嘉昭『報告書・レポートが面白いほど書ける本』、2013年1月29日 第1刷発行、中経出版、15ページ</ref>。 このため、下記のように、報告書を書く際に、けっして、やってはいけない事があります。 レポートを書く際に、「やってはいけない」「やる必要はない」書き方の一覧は以下の通り。 * あなたしか知らない情報を前提にしてはならない。 * {{ruby|嘘|うそ}}をついてはいけない。 * {{ruby|起承転結|きしょうてんけつ}}は不要。 * {{ruby|修辞法|しゅうじほう}}は使わない。 上記の行為は、報告書ではしてはいけません。 その他、「してはいけない」というほどの禁止事項ではないが、不要なこととしては、 * 今後の{{ruby|抱負|ほうふ}}や予定はいらない。 があります。 なお、報告書・レポートの文体には、次の点に気をつけてください。 * 常体(~だ・~であるの文)を使いましょう。敬体(~です・~ますの文)は使いません。 * 書き言葉を使い、話し言葉は使わないようにします。 報告書やレポートは{{ruby|簡潔|かんけつ}}であることがもとめられます。そのため、字数が無駄に増えやすい敬体は使わず、常体で文章を書いていくのが基本です。 また、報告書などに限りませんが、書き言葉を使うのが鉄則です。文章は普段使うような言葉で書きがちですが、書くものは書き言葉でなければなりません。以下に、まちがえがちな話し言葉と書き言葉の一例をあげていきます。 {| class="wikitable" |- ! 話し言葉 !! 書き言葉 !! 文例(話し言葉→書き言葉の順) |- | この頃 || 最近 || この頃、雨が多い→最近、雨が多い |- | そんなこと・人 || そうしたこと・人 || そんなことがどうして起こるのか→そうしたことがどうして起こるのか |- | けど || けれども/が || 今日は雨だけどマラソンはある→今日は雨だがマラソンはある |- | 接続詞としての「なので」 || よって/だから/したがって/そのため || 台風だ。なので、休校になった→台風だ。そのため、休校になった<br>※「台風なので、休校になった」が本来の「なので」の使い方。 |} もちろん、会話を引用した場合には話し言葉でもかまいません。ただし、「」をつけて会話であることを示してください。 また、敬体を使わないこととも関連しますが、尊敬語や謙譲語も、基本的には、組織内部(社内や学内)での報告書では不要です。 たとえば誰かが何かを言ったことを報告する場合、単に「〇〇が言うには、」のように書けば、一般の企業の報告書では充分でしょう。 もし、いちいち「おっしゃった」とか「申した」とか報告書で書くと、読み手にとっても面倒です。 たとえ敬体を社内のメール連絡などで使う場合でも、せいぜい「〇〇さんが言うには、〜〜 と言ってます。」のように丁寧語で書けば普通の企業では充分でしょう。 ただし、外部とのやりとりをする文書などでは、必要に応じて、敬語などを用いたアイサツ文などの書類を添える必要があるでしょう。 === その理由 === * あなたしか知らない情報を前提にしてはならない。 報告書を読む人物は、あなた以外の他人です。世間一般の大人が知っている情報を前提にして、報告書を書いてください。世間の大人が知らないだろう専門知識や専門用語の使用が報告書で必要な場合は、報告書の内部で、その専門知識などの内容を1行〜2行程度で簡潔に紹介してください。 * {{ruby|嘘|うそ}}をついてはいけない。 当然です。物語文を書くのならともかく、報告書では嘘をついてはいけません。 * {{ruby|起承転結|きしょうてんけつ}}は不要。 起承転結とは、{{ruby|漢文|かんぶん}}での{{ruby|漢詩|かんし}}の絶句の書き方から生まれた文章の流れです<ref>河野哲也『レポート・論文の書き方入門 第4版』慶応大学出版会、2018年 7月20日 第4版第1刷、41ページ</ref>。起承転結は、報告書の書き方ではありません。 報告書を書く時は、とくに こだわり のないかぎり、結論から書くべきです。 参考までに、報告書の例ではないですが、商業高校の教科書『ビジネス基礎』には、章『話し方と聞き方』とで「結論から先に話す。」「わかりやすい言葉を使う。」「聞き取りやすい声の大きさと速さで、相手の反応を確かめながら話す。」とあります<ref>『ビジネス基礎』、実教出版、令和2年12月25日検定、令和4年1月25日発行、P37</ref>。このように、ビジネスでは結論から話されるのを好みますので、とくに書式が指定されていないかぎりは、なるべく早めに結論や全体像などを相手に伝えるように心がけたほうが良い場合が多いと思われます。 商業高校の教科書『ビジネス・コミュニケーション』によると、ビジネス文書の場合では、「起承転結」の構成ではなく「結起承」(けっきしょう)の構成で書くことが望まれている場合も多い<ref>『ビジネス・コミュニケーション』、実教出版、令和2年12月25日 検定済、令和4年1月25日発行、P107</ref>と言われている。 さて、報告書の話題に戻ります。 一般に、ビジネス系の文書では、書式が特に規定されてないかぎりは、最初に結論・要約を書くのが、ビジネス系の報告書では普通<ref>永山嘉昭『報告書・レポートが面白いほど書ける本』、2013年1月29日 第1刷発行、中経出版、48ページ</ref>。 つまり、書式の指示が無い限り :結論(または要点) → 導入 → 詳細  のような順序で、書くのが良いでしょう。 起承転結で書いてしまうとよくない最大の理由は、「転」の部分です<ref>倉島保美(ネット記事)、[https://blogos.com/article/60529/ 『 『論理が伝わる 世界標準の「書く技術」』文学的な文章と論理的な文章―倉島保美 (1/2)』]、講談社ブルーバックス、2013年04月18日</ref><ref>泉忠司『論文&レポートの書き方』、青春出版社、2009年7月5日 第1刷、108ページ</ref>。冒頭の「起」で読者が予想したことが、「転」でどんでん返しで外れてしまうと、読者が読み返す必要が生じてしまいますし、読解にも時間が掛かります。 原稿用紙が何枚もある報告書を読みなおしたり読解したりする作業は、読者にとって、かなり労力が必要です。 なお、歌舞伎の用語で「序・破・急」(じょはきゅう)という用語がありますが、この「序・破・急」も起承転結と同様、報告書・レポート・論文などの書き方としては不適切です<ref>河野哲也『レポート・論文の書き方入門 第4版』慶応大学出版会、2018年 7月20日 第4版第1刷、41ページ</ref>。 そもそも書類の目的として、報告書の目的は、何かを調査するためだし、レポートや論文の目的は、なにかの課題・疑問の問いを見つけることです。 いっぽう、起承転結や序破急は、起承転結の目的は漢詩の比喩の効果を高めるためのものだし、序破急の目的は日本舞踊を美しくみせるためのものなので、レポートなどとは目的がズレています<ref>河野哲也『レポート・論文の書き方入門 第4版』慶応大学出版会、2018年 7月20日 第4版第1刷、41ページ</ref>。 どうしても論文・レポート・報告書などを文学などのジャンルに例えたいなら、小説や漢詩ではなく、さしずめ推理小説のようなものだろう<ref>河野哲也『レポート・論文の書き方入門 第4版』慶応大学出版会、2018年 7月20日 第4版第1刷、51ページ</ref>と言われており、まるで探偵が証拠にもとづき犯人を絞り込んでいくように、レポートなどでも調査結果の事実にもとづいて分析などを確固たるものにしていく必要があります。 さて、結論が書類の冒頭と最後の両方に書かれるようなスタイル(結論→理由→結論)の文章構成を「双括式」(そうかつしき)と言います。 「序論→本論→結論 」または「経緯→結論」のように、最後にだけ結論が来るスタイルは「尾括式」(びかつしき)と言います。 「結論→理由」の順序のように、最初に結論が来るスタイルは「頭括式」(とうかつしき)と言います。 文章による報告書の場合、双括式で書けば、読み手にとって読みやすくなる場合が多いので、読者は、とくにこだわりのないかぎり双括式で書きましょう。 なぜ双括式だと読み手がラクになりやすいかというと、もし読み手が2回目の結論のある場所を読んだ時、その2回目の結論の直前の文が、理由の説明の終わりだと分かるので、読み手にとって理由の文の位置を特定するのがラクになり、そのため読み手が理由を分析するのもラクになります<ref> 吉田たかよし『「分かりやすい話し方」の技術―言いたいことを相手に確実に伝える15の方法』(講談社ブルーバックス) が同様の見解。</ref>。 いっぽう頭括式だと、細かい分析が必要な報告書の場合には、理由を読み終えたあとに、いくつか前の文にもどって結論を確認する手間が生じるので、不便です。 あるいは尾括式だと、理由を読むときが暗中模索の状態になりやすく、報告書では、かなり面倒になりやすいのです。 なので、報告書では、双括式がいちばん便利なのです。 学生にとっては双括式という用語の暗記よりも、このスタイルを使いこなせるようになることのほうが重要です。 特に、1本の報告書のなかに、いくつかの小報告がある場合に、双括式が便利でしょう。なぜなら、1本の報告書の中のそれぞれの小報告をそれぞれ双括式で書くことにより、それぞれの小報告の範囲や境界が、読み手にとって明確になりますので、おすすめです。 ただし、調査対象が複雑だったり、相手の予備知識が不足している場合などは、結論より先に、必要に応じて予備知識などを手短かに冒頭の段落などで説明することもあります。<ref>永山嘉昭『報告書・レポートが面白いほど書ける本』、2013年1月29日 第1刷発行、中経出版、50ページ</ref> ですが、たとえ背景を先に書く場合でも、けっして、わざわざ起承転結のストーリーを長々と書いて誤解を招く必要は無いでしょう。 また、明確な結論が無い場合でも、概要を先に書くのが望ましい<ref>永山嘉昭『報告書・レポートが面白いほど書ける本』、2013年1月29日 第1刷発行、中経出版、52ページ</ref>。 * {{ruby|修辞法|しゅうじほう}}は使わない。 報告書やレポートでは原則的に、レトリックなどの文学的表現は不要です<ref>大竹秀一『だれも教えなかったレポート・論文の書き分け術』、株式会社SCC、2017年10月1日 初版第1刷発行、122ページ</ref>。 修辞法(レトリックともいいます)については[[中学校国語 文法|文法]]で解説しているので、そちらを見てください。ここでは、どうして修辞法を使わないのかを説明します。 修辞法は文章の中で、表現に{{ruby|余韻|よいん}}を持たせたり、読者に考えさせたりするために使われます。しかし、報告文はなるべく正確に物事を読者に伝えることが目的の文章です<ref>大竹秀一『だれも教えなかったレポート・論文の書き分け術』、株式会社SCC、2017年10月1日 初版第1刷発行、122ページ</ref>。文章の余韻や自分の感動、豊かな情景描写は報告する上で必要ではありません。あくまで、{{ruby|客観的|きゃっかんてき}}な事実を簡潔かつ正確に伝えることが報告文の目的なのですから、読者に「この表現のセンスはいいね」「言葉の使い方が上手い」から言われることを目的としてはいけません。また、文法のページにもあるように、修辞法を使う文はイヤミでキザなイメージを与える可能性もあります。 また、読者に考えさせることで、{{ruby|解釈|かいしゃく}}が分かれるような文章にするのも報告文の{{ruby|趣旨|しゅし}}から外れます。事実を正確に伝えるという役割を果たさなくなるからです。 ただし、様子を伝えるのに「~のようだ(ような)」は使ってもいいでしょう。たとえば、「ネコのような大きさの動物」といった表現は、その動物の様子を正確に伝えるという役割を果たしています。この場合でも、あまり知られていないようなたとえを使ったり、独特のたとえは要りません。あくまで、誰でもイメージできる・分かるものでなければなりません。つまり、比喩を使う場合は、直喩(ちょくゆ)でたとえる必要があります。 隠喩(いんゆ)は、読み手に読解の負担を与えるので、避けてください。隠喩とは、たとえば、ネコのような大きさのネコ以外の動物(たとえばウサギなど)に対して、「ウサギはネコだ。」とかいうように、「ような」「ようだ」を省略する表現です。 * 今後の{{ruby|抱負|ほうふ}}や予定はいらない。 「これから私は○○しようと思いました」などと今後の抱負やら予定が、文末などに書かれる場合がありますが、出題者から抱負の記述を要求されてないかぎり抱負は不要です。 中学校・高校によっては、教育的な理由から(「生徒に自分の意見を書く練習をさせたい」など)、報告書で今後の抱負を書かせる場合もありますが、本来は報告書では、抱負の記述は不要です。なぜなら抱負は、事実でもなければ、分析でもないからです。 それでも、どうしても抱負のような今後の目標を報告書に書く場合、段落を分けたほうが良いでしょう。つまり、抱負のための段落を、新たに用意します。報告書を受け取った人物が、第三者に報告書の内容を紹介する際、抱負が不要な場合には、抱負の段落を省いて紹介する事ができます。逆に第三者に抱負の内容を紹介したい場合でも、抱負の内容だけを抜粋する事もできます。 大学生の実験レポートなどでも、「今後の目標」は、行った実験データ部分の段落とは、段落が別々に分けられるのが通常でしょう。 === 抱負がいらない理由 === まだ調べてないことについて、1日で調べられるような事なのに「もっと調べたいと思いました」程度の抱負・予定なら、書く必要はありません。むしろ、その程度の予定なら、書かないほうがマシかもしれません。 それとも、もし未調査のことがあって、それを調べるには数カ月や数年も掛かりそうなら、「○○を調べたいと思いました」と言うよりも、はっきりと「○○は未調査であり、今後の研究には、さらなる年月が調査に必要だろう」などと書くべきです。 たいていの場合、文献などでの調査中に、あなたの知らなかった新事実が判明するので、調査項目について全てを調べきるのは不可能ですし、調べきる必要もありません。 したがって、報告書では、例外として学校側から「○○について、文献△△で、すべてを調べろ」などと指定してないかぎり、項目すべてを調べきる必要がありません。提出期限までに調べられることを調べて、調べ終わらないことについては、未調査として扱えばいいだけです。 あまりにも未調査の項目が多すぎると、書き直しを命じられますが、中学生として、きちんと文献を調べているなら問題はありません。 だいたい、「○○を調べたい」と言われても、読者からすれば、「そんなに○○を調べたいなら、どうぞご自由に、実行すればいいんじゃないですかね?」って思うだけです。 中学生・高校生が1日か2日で調べられることに、世間一般の大人は、興味がありません。 大学の卒業研究みたいに数カ月も掛かったり、あるいは調査費用が高かったりするならばともかく、1日程度の調査で終わるだろう予定を紹介されても、大人の読者は「あ、そう。じゃあ、調べれば?」と思うだけです。 報告書で聞かれているのは、調査対象についての調査したデータとか、そのデータの分析です。あなたの今後の予定は聞いてないのです。 世間一般の大人は、あなたに興味は無いのです。 よほど面白いアイデアが思いついて、そのアイデアをアピールしたいならともかく、そうでないなら、今後の抱負は不要です。 === 報告書では感想は不要 === 報告書では、出題者から感想を指定されてない限り、感想を書く必要はありません。 それでも、もし、報告書で感想を書く必要のある場合は、手短かに要点を書きましょう。 感想も原則的に不要です。 なぜなら報告書の本質は、報告されたデータとか、そのデータに対する分析や調査結果です。あなたの感想には興味ないのです。 報告書の本質でない「感想」を、長々と説明されても、読者は困ります。 もし報告書で感想を書くにしても、なるべく、分析にも役立ちそうな感想を優先的に書くべきです。たとえば分析中に気になった事や、調査中に気になった事などがあれば、その気になった点とやらを書くのが良いでしょう。 気になった点を書くことは「感想」というよりも、今後の調査についての「意見」などに近いかもしれませんが、あまり細かいことは気にする必要はありません。 大人が書くレポートでも、最後に「感想」を書く場合は、実質的には、今後の調査についての「意見」を書いている場合が多いでしょう。 企業で必要な「感想」(自称)の具体例を挙げます '''感想''' 実験中、エネルギー率35%時点にて、温度を40→60度と温度を変えつつ対象物体の体積の測定をしているとき、私の耳で聞いた主観判断だが、ときどき10~20秒程度の感覚でボコボコっと音が何回も周期的に鳴ったように聞こえた。 さらに、どうも温度が50度を超えると周期が短くなっていき、10秒ていどの周期で音が鳴るように思われる。 しかし、それにもかかわらず、温度そのものは他の実験と同様に安定して上昇しているように見える。 こういうのが、企業の報告書とかでの「感想」です。 つまり、予想外の現象に遭遇したり、設備不足・人員不足などの理由で、きちんと検証しきれていない現象があるので、あくまで推測にすぎず「思われる」とか「見える」とかで語尾を濁さざるを得ないが、しかし、報告の必要がありそうな重要そうな現象を発見したかもしれないときに、「感想」とかの項目を追加して、マトメて報告するテクニックを使う場合もあります。 はたして、企業のこういう想定外マトメの報告を「感想」と言うのが国語的に正当なのかという疑問はありますが、しかし、企業では、これが報告書の「感想」の実情です。文句を言うなら、経団連とかに文句を言ってください。 残念ながら、大学とかでレポートの書き方を教えている大学教授とかは、こういう実情を知らないので、あいかわらず読書感想文の感想みたいな感想をレポートなどで要求しますが、しかし企業の「感想」は意味が違います。 なお、たとえ想定外の特記事項の無い場合であっても、もし「感想」欄があるなら、下記のように、特記事項の無いことと、その根拠となる観察結果の印象などを書くと、読み手が検証しやすいので、便利です。 '''感想''' 特に無し。実験はいつもどおり、安定して温度が40→60度と定格時間の5分で上昇していった。 こう書くと、特記事項の無いと判断した根拠も読み手が分かるので、読み手はいちいち書き手の意図を確認する手間が減ります。 「感想」というより、「特記事項」や「追記事項」とでも言うべき項目のような気もしますが、しかし日本企業には、こういう言葉の使い方をしている企業もあるので、まあ必要に応じて、使い分けてください。 なお、「所感」または「所見」という場合もあります」<ref>永山嘉昭『報告書・レポートが面白いほど書ける本』、2013年1月29日 第1刷発行、13ページ</ref>。「考察」と言う場合もあります<ref>永山嘉昭『報告書・レポートが面白いほど書ける本』、2013年1月29日 第1刷発行、中経出版、68ページ</ref>。 また、企業によって、特記事項的なことを「感想」という場合もあり、いっぽうで、読書感想文みたいな感想のほうは「所感」という企業もあれば、その逆の企業もあります、 つまり、特記事項的なことを「所感」といい、読書感想文的な感想のほうを「感想」という企業もあります。 企業によって用語の使い方がバラバラなので、読者は将来、就職先の用語に合わせてください。 === 読書感想文みたいな感想を書くなら === それでも、どうしても報告書に、読書感想文みたいな感想を書くのだとしたら、 抱負と感想に要求される内容が似ているため、もし感想を書くなら、抱負とまとめても良いかもしれません。 しかし、単に「報告書を書いて、勉強になった」「ためになった」「もっと勉強しようと思いました」などの感想なら、わざわざ書くほどの必要がありません。 小学校・中学校での、人生で初めてかもしれない報告書の体験なら、感想を書くことにも教育的な意義があるかもしれません。しかし、大人の社会の報告書では、単純な「勉強になった」などの感想は不要です。 ;「意見」とは なお、さきほど(今後の調査についての)「意見」と言いましたが、日常語でいう「意見」とは意味が違い、報告書や論説文でいう「意見」とは根拠のある提案などのことです。もしくは、根拠をもとに、なにかを証明することです。どちらにせよ、根拠をともないます。 :※ 高校の選択科目『国語表現』でも、そう説明している。 :※ 以下の文では説明の単純化のため、提案の意見について、本章では説明する。 けっして、なんの根拠もない「〇〇すべきである。」(あるいは「〇〇するのが合理的だろう。」など)というだけの単独の文は、報告書でいう「意見」ではないのです。 「意見」とは、それにさらに論拠を加えたものです。 つまり 〇〇すべきである。 なぜならば、□□であるからだ。よって、〇〇するのが合理的である。 のような文章構成のことが、報告書でいう「意見」のことです。 このように、意見を提案する場合には、先に意見を書き、直後に理由を書くのがマナーです。<ref>高橋慈子『ロジカル・ライティングがよ~くわかる本』、秀和システム、2009年7月25日第1版 第1刷、184ページ</ref>。なぜならビジネス文書では、先に結論を書くのがマナーだからです。 あるいは他の文例構成としては、報告書によっては提案の直前の文で論拠を説明している場合もよくあるので、 提案になるが、上述のように□□であるので、よって提案として、我々は〇〇すべきであろう(あるいは「するのが合理的である」など)。 のように書かれる場合もあるかもしれません。 ともかく、「提案」と「根拠」がセットでないと、報告書では「意見」として役立ちません。 意見を書く際には、提案のすぐ近くに、根拠を書く必要があります。 ただし、意見や提案は、報告書のメインではないです。 報告書は、あくまで、実際に起きたことを報告するのが本来の役割です。 どうしても意見や提案の書類が必要な場合は、なるべく別の書類にまとめましょう。ただし企業の場合、意見や提案などは、書類ではなく口頭で済ます場合も多く、意見や提案の書類が造られない場合もあります。(提案や意見は却下される場合も多く、却下される事項の書類をいちいち作成するのは、企業では手間なので。) それでも、もし意見や提案などの書類を作る場合なら、報告書のほうに「別紙にて意見/提案あります」のようなコメントで紹介するぶんには、構わないでしょう。 === 結論から書くには === 冒頭などで紹介するための結論(または要点)をまとめる場合は、まず下書きが必要です。 あらかじめ別の用紙に下書きして、思うことがあれば、どんどん書き出していくのが良いです。その際、パソコンのワープロソフトなどを用いて、下書きしてもよいでしょう。パソコンを用いると、今後の構成の編集でも楽をできます。 いったん紙やパソコンで書いてみると、意外と、書きたいことがどんどん思いつくものです。 文章を十行くらい書き出したら、そこでいったん、書いた内容の順序を入れ替えて、結論から文章が始まるという構成にします。パソコンがあると、この文章の順序を入れ替える作業が、コピーペーストのボタンだけで終わるので、とても便利です。 この結論から書き直した文章を核にして、文章を書いていくと、良いでしょう。 === 要点がまだ不明な場合 === 報告書では理想的には、調査や分析などが充分であるのが理想的ですが、しかし、時間や費用などの問題で、不十分な調査で終わってしまう場合もあります。 その場合、要点を冒頭に書こうにも、何が要点なのかすら不明なので、「結末・要点から書く」という手法では書きようが無いという状況になります。 このように、調査が不十分で要点を書けない場合の対応策として、仮説を報告書内の適切な場所に書くのが良いでしょう。 調べている最中で集めたデータなどをもとに、自分はどんなことを予想したか、そういったことを書くと良いでしょう。 もちろん、あくまで仮説なので、「仮説であるが、〇〇かもしれない、と思っている。」などと、仮説であることが読み手に伝わるように記述しておく必要があります。このように、仮説と事実とは、報告書では区別を明確にできるようにすべきです。 また、もちろんその仮説の前提となるデータも、可能なかぎり、報告書に記述しましょう。 === 出来事の報告は時間順でなくてもいい === 報告書で、過去に実際に起きた出来事(できごと)を報告するとき、報告の順序では、かならずしも過去から順に報告する必要は無いです。 なぜなら、もし過去の出来事が多い場合、読者がいちばん知る必要のある現在のできごとに到達するまでに、時間がかなり掛かってしまいます。 なので、報告する出来事が多くなりそうな場合、まず最初に、現在起きていることを報告してしまいましょう。 そのあと、過去から順に現在まで報告するのです。 つまり、たとえば例文は 現状は〇〇である。   こうなった経緯は、そもそも△△であった。 △△のあと、(中略。ここの説明が長かったとする)、そして、ついに□□が起きた。 その後、□□により、〇〇が起きた。 のような説明順になります。 つまり 現在 最も古い過去 (仮に過去1とする) その次に古い過去 (過去2とする) 過去3 (過去1、2の次に古い過去) ・・・ 現在の直前の過去 現在 のような文章構成になります。 また、このような説明の副次的なメリット(利点 のこと)として、重要度の高い現在の情報を2回説明することになるので、いちばん重要である現在の情報の読み落しする可能性が減るので、安全です。 === 章にタイトルをつける === 学校の作文では、あまり、それぞれの段落にタイトルをつける事はないですが、しかし、企業などでのレポートは違います。 あなたが今このページで読んでいる文章にも各章にタイトルがあるように、レポートにも章ごとにタイトルがあると、管理しやすくなります。 :※ 旺文社の'''小学生'''むけの社会科の参考書『わかる社会』でも、レポートの書き方の例として、それぞれの章にタイトルをつけている方式を、良いレポートの書き方として紹介している。 また、そのタイトルのつけかたは、その章の調査対象などを簡潔に示すタイトルにしてください。 たとえば、日本の歴史についてのレポートで、ある章では日本の江戸時代の食文化について調査した結果を主に紹介しているなら、その章のタイトルは単に「江戸時代の食文化について」のような簡潔なタイトルで充分です。 けっして、世間の各種の広告のキャッチコピーなどのように、一見すると矛盾するようなタイトルをつけないでください。 たとえば、江戸時代の食文化のレポートなのに、人目を引こうと思って「江戸の寿司は未来だ!」(× ダメな例)とかの矛盾したタイトルをつけると、レポートの管理者(上司など)に読解作業の負担が掛かります。 なお、感想などの段落も、タイトルをつけるべきです。感想の欄のタイトルは「感想」で充分でしょう。 :※ ただし、上記のノウハウはあくまでレポートの場合の書き方です。映写機などを使ったプレゼンテーションなどの場合は、ノウハウが異なります。 == 中学生用のノウハウ == === 文献調査の必要なレポートの場合 === たとえば社会科の地理などのレポートで、特定の国の文化についてレポートを書く場合には、文献調査が必要でしょう。 * 参考書を準備しておく。 たとえ、理科実験など実技関係のレポートでも、参考書も用意しておいて、必要に応じて、関連箇所を目次で探して読むと、良いでしょう。 (ただし、その科目の参考書が市販されてれば、の場合ですが) 参考書を読む必要が無いなら、参考書を読む必要はありません。調査時間も限られているだろうし、参考書のすべてを読む必要はありません。参考書については、目次で関連の深そうなテーマを1つか2つか探して、数ページでも読めば充分です。 それでも分からないことがあれば、そこで初めて、図書館を利用したり、インターネットを利用したりすればよいのです。 参考書を読めば分かるようなことを調べるのに、わざわざ図書館に行くのは、時間が大変に掛かります。それに夜中などは図書館が閉まっています。 中学の参考書だけでなく、高校の参考書・資料集も、文献調査の際に買っておくと、図書館で文献を探す時間を節約できて便利です。 * 教科書・参考書の内容の{{ruby|羅列|られつ}}はいらない。 内容の羅列をするなら、その文献を紹介すれば良いのです。そもそも内容の羅列は、学校側の出す課題のテーマにならないでしょう。そして、その文献の内容のうち、報告書で必要な箇所を紹介すれば、済むだけです。 教科書・参考書以外の本の内容を紹介する場合でも同様です。 説明のため、どうしても教科書または参考書の一文や語句などを紹介する必要がある場合などでも、紹介した文や語句についての自分(=あなた自身)の考えを、自分の理解できる言葉で説明してください。読者が知りたいのは、あなたの分析であり、べつにどこの教科書や参考書に、何が書いてあるかを知りたいのではありません。あなたの考えを説明するべきなのです。 なお、引用などが必要な場合なら、カギ括弧(「」とか『』)で くくって、また、引用であることを明記してください。この引用のルールは、引用のもとになった作品の作者の著作権などの権利を尊重するためです。 * 文献調査の課題では出典を紹介する。 実技分野以外の、国語や社会科などのレポートなどで、文献を読んでレポートを書く課題の場合です。 文献調査によって書く報告書の場合、あなたの主張の根拠にした出典を紹介してください。あなたが調査のために読んだ本のタイトルなどです。読んだ本が複数冊ある場合は、最低でも1冊はタイトルを書いてください。 報告書にかぎらず、引用の場合には最低でも、その出典について、'''著者名・タイトル・出版社名''' の3点は必ず記載するのがマナーです<ref>新田誠吾『はじめてでも、ふたたびでも、これならできる!レポート・論文のまとめ方』、すばる舎、2019年10月25日 第1刷発行、65ページ</ref>。 一般的には、大人の文献調査では、基本的には、出版社名・タイトル・著者名・出版年および版・参考にしたページなどを書きます。 このように、主張の根拠にした文献などを「{{ruby|参考文献|さんこうぶんけん}}」と言います。 == 引用および参考文献について == {{ruby|引用|いんよう}}とは、他の本に書いてあることを、そのまま書き写すことです。 たとえば『平家物語』から冒頭部を引用すると「祇園精舎の鐘の音、諸行無常の響きあり」となります。読みがな(「ぎおんしょうじゃ」とか「しょぎょうむじょう」とか)は、引用する必要は、ありません。 上記の平家物語からの引用の例のように、引用が必要な場合は、その引用した部分を、カギ括弧(「」など)で、くくってください。 上記の例では「祇園精舎の鐘の音、諸行無常の響きあり」の部分が、引用された箇所になります。 また、どこの本からの引用なのか、はっきりと分かるように紹介するべきです。上記の例の場合、『平家物語』という本からの引用だと分かります。 引用の文量は、最低限にしてください。また、引用の際には、原則的に文字を変えたりせず、そのまま書き写します。ただし、漢字が常用漢字以外などの場合、常用漢字に変えてもかまいません(この場合、常用漢字に変更したことは、いちいち説明しなくていい)。 しかし、そのような特別な理由が無いかぎり、そのまま記載するのが、引用のルールです。 もし、なんらかの特別な理由があって、そのまま記載できない場合には、その理由を手短かに説明するようにしましょう。そうでなければ、{{ruby|剽窃|ひょうせつ}}といって、他の人の文章をぬすんだのと同じ扱いになってしまいます。剽窃とみなされると、よくてレポートの書き直し、悪ければ0点扱いされてしまいます。 ;まちがった引用 よくある、間違った引用の例として、作者名とその人の発言だけを紹介する例があります。 たとえば ※ ダメ名引用の記載の例 「夏は少年にとって大きな脱皮の季節」(椎名誠) ::※ 作者名しか紹介していないのが、引用としてはダメ。 ::※ 誤解の無いように言うが、けっして椎名誠がダメといってるのではなく、上記のように引用のつもりで紹介した wiki の書式がダメだと言っている。 ::※ 椎名誠じたいは、ウィキペディア日本語版にも記事 [[w:椎名誠]] の作られるような立派な作家です。 みたいな引用の仕方です。なお、この文章(夏は~季節)は検定図書からの引用で、学校図書(教科書出版社のひとつ)の中1国語の中にある文章。 この文章だけ紹介されても、紹介文を読まされた読者にとっては、裏づけ調査が不可能または困難です。どの文献を調べれば乗っているかすら明記していないので、この作家のすべての著作を把握しないと、裏づけ調査できなくなってしまいます。そして、そもそも、この作家のすべての著悪を把握しているような人にとっては、そもそも、「椎名誠」と出典の作者名を紹介する必要は無いので、よって読者にとっては作者名だけを紹介するのは無駄です。 正しい引用の仕方は、書籍名、作者名、ページ、出版年月日や第何版や第何刷などを正確に記述する必要があります。でないと、他の人が裏づけ調査をできないからです。 なので、正しい引用の仕方だと、たとえば 「夏は少年にとって大きな脱皮の季節」(原著: 椎名誠『風呂場の散発 ‐ 続岳物語』。 学校図書(検定教科書からの引用)、平成23年2月28日検定済み、平成26年2月1日印刷、平成26年2月10日発行、教科書2ページ目からの引用) みたいに、どこから引用したのかを、きちんと第三者が「本当にもとの文献には、そう書いてあるか?」裏づけ調査をできるように引用を紹介する必要があります。 どうやら パスカル「人間は考える葦(あし)である。」 みたいな、偉人の名文などの文章の紹介とかと混同しているような、まちがった引用の方法が、インターネットでは、ときどき見受けられます。(なお、パスカルとは西洋の哲学者・科学者のひとり。) なお、このパスカルのような外国の偉人の文献での発言ですら、本来の引用なら、たとえば 「人間は考える葦で(あし)ある。」(原著者ブレーズ=パスカル、原書 "Pensées"(『パンセ』)、和訳 ○○文庫版、和訳出版社 ××書店、△△(訳者名)和訳、和訳版 □□ページ、) みたいに、なにを調べれば裏づけ調査できるかのように描かないと、第三者が裏づけ調査しづらいために引用としては役立たず、あまり引用として正しいとは認められないでしょう。 まだしも、小学校や中学校など義務教育や公教育で習うような常識的な有名作から、 「何でも薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いていた事だけは記憶している。」(夏目漱石『吾輩は猫である』、冒頭の章より) のように有名作を紹介するならともかく、 読者に知らない人も多いかもしれない作品ですら、書籍名すら挙げないのは、明確に引用としては間違っています。 == 報告書の書き方のノウハウ == === 書き方の一覧 === * なるべく主語、あるいは目的語は省略せず、主語・目的語を書いたほうが分かりやすいです。 * 一文は短めに書く。 * なるべく肯定形で書く。あまり、否定形は用いない。報告書などでは、二重否定よりも、肯定形に置き換える。 * 疑問点を述べる場合、その文では早めに疑問点を文中で説明する。 * 接続詞を用いて、文の概要を示す。 * 複数の項目を並べるさいは、箇条書きを利用する<ref>高橋慈子『ロジカル・ライティングがよ~くわかる本』、秀和システム、2009年7月25日第1版 第1刷、119ページ</ref><ref>永山嘉昭『報告書・レポートが面白いほど書ける本』、2013年1月29日 第1刷発行、中経出版、78ページ</ref>。 * なるべく結論から書く。あるいは冒頭に要約や概要などを書く。 === その書き方の理由 === * なるべく主語、あるいは目的語は省略せず。主語・目的語を書いたほうが分かりやすい。 物語文などでは文章の主語は省略される場合もあります。しかし、説明文や報告書などでは、なるべく主語を書いたほうが分かりやすいです。この箇条書き項目の「なるべく主語、あるいは目的語は省略せず、主語・目的語を書いたほうが分かりやすいです」という文章も、主語や目的語を省略せず、書いています。 また、できれば主語と述語とが、近くにあるほうが、読みやすくなります(日本語は述語で意味が確定するため)。 このため、もし一文の修飾語が長い場合には、文節を分ける工夫が必要です<ref>永山嘉昭『報告書・レポートが面白いほど書ける本』、2013年1月29日 第1刷発行、中経出版、90ページ</ref>。 たとえば、 その会場には、若くて坊主頭の中学生くらいの男子学生が多く集まっていた。 ではなくて、 その会場に集まっていた学生の多くは、若くて坊主頭の中学生くらいの男子学生だった。 のほうが、読みやすいでしょう。 このように正確さを損なわない範囲で、なるべく主語と述語を近づけましょう。 また、一般に物事を分かりやすく説明したい場合には、全体像や概要を先に述べてから、各論を述べたほうが伝わりやすいです。 なお、このように、レポートや報告書などの冒頭で述べる、全体像を手短かにまとめた段落のことを「アウトライン」(英:outline <ref>鷲田小弥太『1億人の「知的生産」講座 どんな論文でも書けてしまう技術』、言視舎、2014年11月30日 初版第1刷、61ページ</ref>)といいます<ref>新田誠吾『はじめてでも、ふたたびでも、これならできる!レポート・論文のまとめ方』、すばる舎、2019年10月25日 第1刷発行 、81ページ</ref>。(※ なお論文の場合は冒頭の要点の段落のことを「アブストラクト」というが、「アウトライン」と「アブストラクト」ではニュアンスが微妙に違う。論文の書き方については中学生・高校生には高度なため、説明を省略。) また、この冒頭の概要(読者向けのアウトライン)を書く順序としては、よくあるパターンとして、じつは、その書類執筆時の最後のほうの時点で書くことになる場合がよくあります<ref>鷲田小弥太『1億人の「知的生産」講座 どんな論文でも書けてしまう技術』、言視舎、2014年11月30日 初版第1刷、74ページ</ref><ref>泉忠司『論文&レポートの書き方』、青春出版社、2009年7月5日 第1刷、110ページ</ref>。なぜなら、最後のほうの時点で冒頭を書いたほうが、書き手が書類で概要のあとに説明する内容をすでに分かっているので、より的確な概要を書くことができるからです。 パソコン時代の著作・編集は、じつはこういう順序になるのが普通です。手書きの時代とは、順序が違います。 ただし、もうひとつの別パターンとして、多くの要因からなる複雑なテーマを扱うレポートの場合には、下書きで冒頭に概要・序論などを先に書いて話題を限定して、自分のためのガイドラインとして概要・序論を活用しつつ、そのあとから、序論の方針にしたがって本論を書き加え、そして最後にまた冒頭の概要・序論を書きなおす<ref>泉忠司『論文&レポートの書き方』、青春出版社、2009年7月5日 第1刷、114ページ</ref>、などというパターンもあります。 どちらのパターンにせよ結局、冒頭部は、本論を書いた後に、冒頭部の概要・序論を書き直す必要があります。 もし書類に目次をつける場合にも、おそらく目次を書く時点がいつかというと、スケジュールでは最後のほうの時点に目次を書くことになるでしょう。 さて、文章を書く際、主語と述語を近づけた文章構成にすれば、自然と、最初の主語・出後の文節で概要が述べられ、次の主語・述語の文節で各論が述べられるので、つたわりやすくなるので、一石二鳥です。 ただし、このように、主語と述語を近づけると、やや堅苦しい言い方だと受け取られる場合や、内容によっては不正確になってしまう場合もあるので、読者の中学生は、うまく使い分けてください。 * 一文は短めに書く。 日本語は、文章の最後まで読まないと意味が確定しません。そのため、一文が長いと、読む際の負担が増えます。この「一文は、短めに書く」という文章自体、なるべく短く書こうとしています。 一般に、ビジネス文書でも、一文はなるべく短く書くのがマナーとされています<ref>永山嘉昭『報告書・レポートが面白いほど書ける本』、2013年1月29日 第1刷発行、中経出版、78ページ</ref>。 * なるべく肯定形で書く。あまり否定形は用いない。報告書などでは、二重否定よりも肯定形に置き換える。 日本語は、文章の最後まで読まないと意味が確定しません。日本語では、否定形(〜ない、〜しない、〜ず)などの動詞などは文の最後に来ます。否定形の前後では、文全体の意味が正反対に変わります。 たとえば、「食べない」は、「食べ」の段階では読み手・聞き手にとっては「食べたい」「食べるとき」「食べよう」「食べない」など、色々な可能性があります。 そのため、否定形があると、読み直しの手間が生じます。否定形が多いと、読み直しの手間が増えて、読みにくい文章になります。この箇条書き項目「なるべく肯定形で書く。あまり、否定形は用いない」という文章自体、「○○で書く」という肯定形の表現を優先し、「△△は用いない」というような否定形の表現を後回しにしています。 どうしても否定形だけでかく場合、まず、否定される語句を短くします。 たとえば、 :「右ではなくて左です。」 という文章の場合、否定される語句は「右」という、たった1文字です。このように、たった数文字だけに短くします。 悪い例として、否定される語句が長い例文をみてみましょう。 :「ジュゲムジュゲムゴゴーノスリキレではなくて山田です。」 なんて否定される語句の長い文を読まされたら、きっと読んでる人はムカつくつでしょう。なぜなら、読んでる人は、せっかく「ジュゲムジュゲムゴゴーノスリキレ」という長い語句を読んだのに、その後に「ではなくて」と否定されるので、いままで読んだ努力が無駄になってしまうからです。 あるいは、否定を使う場合のもうひとつの手法として、直前に疑問文をつけて「では、○○なのか?」と問うた直後に答えで「違う。○○ではない。」とかのように、「違う。」とかを前につけると、誤読のおそれが少ないでしょう。 「では、山田さんなのか? ちがう。『山田さん』ではなく『田山さん』である。」のように。 口頭で「ちがう」だと強すぎる表現で失礼だと感じる場合、「ちがうと思います」とか「ちがうのではないでしょうか?」みたいに、婉曲的な語尾をつける方向性で丁寧にしていくのが安全でしょう。 {{コラム|※ 範囲外: 口頭での報告の注意点| ついでですが、口頭での報告の場合、「○○ではないです」のような否定表現は、避けたほうが安全です。なぜなら聞き間違えのおそれが高く、「○○で」と聞いた時点では「○○です。」と予想される可能性があるからです。特に仕事での口頭報告では、周囲の騒音などで、「○○で」「ガシャーン(騒音)」「です」のように、さえぎられる可能性があるので、気をつけてください。 :結局、口頭での報告方法と、文章での報告方法とは、一致しません。 口頭での報告では、「○○ではないです」のような、否定形の補足説明は、むしろ逆効果です。 口頭での報告は、なるべく肯定形だけで「△△です」のように肯定形だけで報告するほうが安全です。 どのみち、説明される側の人も、口頭報告だけで細かい事を説明されても、覚えきれません。細かい説明は、後日、部下が書類(報告書)にまとめることになります。 }} この単元では、おもに文章での報告方法を中心に説明します。 さて、肯定形を先に無く場合、注意すべきは、肯定形の文と否定形の文を、必要に応じて2つの文に分けることです。たとえば仮に :「フドシラはペネモモでありロブキフではない。」 という文章があったとしましょう。 「フドシラ」「ペネモモ」「ロブキフ」とは、いまここで考えた固有名詞です。当然、辞書には載ってません。 さて、この文章(「フドシラはペネモモでありロブキフではない。」)では、肯定形(「〜であり」の部分)と否定形(「〜ではない」の部分)を、くっつけて、ひとつの文にしています。さて、結局、「フドシラ」とは「ペネモモ」なのでしょうか、それともペネモモではないのでしょうか?  解釈が、次のように何通りにも分かれます。 :解釈1: 「フドシラ」は「ペネモモでありロブキフ」ではない。つまり、フドシラはペネモモでないし、また、フドシラはロブキフでもない。 :解釈2: 「フドシラはペネモモ」である。(フドシラは)「ロブキフ」ではない。 このように、肯定形と否定形をひとつの文にくっつけると、解釈の仕方が2通り以上、考えられる場合が生じるので、読む手にとっては{{ruby|面倒|めんどう}}な事態が生じます。 なお、もし元の文(「フドシラはペネモモでありロブキフではない」)のかわりに「フドシラはロブキフではなく、ペネモモである」と書けば、解釈2の場合だと分かります。 そのため、どうしても肯定形と否定形を1つの文につなげる必要のある場合、否定形を先に持ってきましょう。 さて、もし「フドシラ」「ペネモモ」などの意味不明な単語ではなく、 :「山田くんの出身地は神奈川県であり岡山県ではない」 という文章だったら、一般の読み手は「神奈川県」と「岡山県」は別の県だと知ってますから、山田くんの出身地を「神奈川県であり岡山県」という土地だと誤解する事はありません。 しかし、報告書で使うことになる単語は、必ずしも一般の読み手が知ってる単語だとは限りません。例えば、 :「ゴンザレスくんの出身は{{ruby|新井|あらい}}で、3丁目ではない。」 とかになったら、もう読み手は、お手上げです。結局、ゴンザレスの出身地は「新井」なのでしょうか。それとも出身地は「新井」の「3丁目」ではなく、まったく別の場所なのでしょうか。 肯定形を先にかく手法には、こういうリスクがありますので、書類では、肯定形を先に書くのをやめて否定形を先に書く方が良い状況もあります。 :「ゴンザレスくんの出身は、3丁目ではなく、新井である(でもない)。」などのように書く方法もあります。 しかし、口頭での報告では、 :「ゴンザレスくんの出身は、3丁目」と聞いた時点では、聞き手は脳内で「ゴンザレスは三丁目の出身なんだな。」と誤解してしまうので、口頭の報告では、肯定形を先に話すほうが安全です。 * 疑問点を述べる場合、早めに疑問点を文中で説明する。 疑問点は、文中で早めに説明していただけると、読者にとっては読み返す手間が{{ruby|省|はぶ}}けるので、疑問点は文中で早めに説明したほうが良いです。また、疑問「点」と表記しているように、できれば疑問の箇所は文中で明確にしておき、説明のための文とは、別の文とすべきでしょう。さきほどの「あまり、否定形は用いない」にする理由と似ていて、読み返しの手間が少ない文章構成にするほうが、読者にとって便利です。 ・ '''ノウハウ(参考): 疑問文が長くなりそうなら、文頭で「疑問だが」などと述べてしまうのも、一つの手法。'''<br /> 日本語では、「ある文が疑問文であるかどうか」は、文末を読まないと分からないため(文末に「〜なのだろうか?」「〜ではないか?」などのように文末の表現を読まなければ分からない)、もし疑問文が長い場合、読者に長い文を読み返す必要が生じてしまいます。読者は、文末を読む手前の瞬間までは、てっきりその文を平叙文だと思って読んでいるのが普通です。読者は文末を読んでから、やっと、その文が疑問文だということに気付くのです。 読者が、文末を読んで疑問文だと気付いてから、文頭の内容を思い返したり、あるいは読みかえしたりして、疑問文の内容を把握しようとするのです。 もし、疑問文の文章が短くて、しかも単純な内容なら、通常の疑問文で構わないでしょう。短い文章を読み返すのに、たいした手間は掛からないからです。 でも、もし疑問文が長くて、しかも内容が難解なら? そして、たいていの場合、学生の書く疑問文は長くなりがちです。何故かというと、報告書の書き手が分からない内容を、書き手自身が手短かに説明するのは困難だからです。そもそも短く説明するためには、要点を理解してなければなりません。しかし、そもそも分からない内容の要点を理解するというひとは、通常ありえません。しかも報告書に書くような難しいテーマなので、なかなか短く説明するのが難しいのです。 そのため、たいていの場合、疑問文は長くなりがちです。 そこで、もし報告書で疑問点を述べる場合、疑問文の冒頭で「疑問点であるが、〜」「疑問だが、〜」のように、文頭で最初っから、その文が疑問文である事を述べてしまえば、読者は読み返しの必要が減るので、読者にとって助かります。 英文法を考えてみれば、英語では、疑問文は冒頭に「Do you 」とか「Are you 」と表現していて、疑問文である事が明確です。日本語の報告書でも同様に、疑問がある場合は、文頭の表現を工夫して、疑問文であることを明確にしましょう。 {{コラム|推測などを述べる場合| ;事実と推測と提案の区別 東京書籍の中1国語の教科書『新しい国語1』で、文章を書くときに、事実と推測と提案の区別をして書くように との指摘がある。 学校教科書にかぎらず、ビジネス文書の書き方入門書などでも同様に、事実と意見は区別せよ、と指導するのが普通である<ref>株式会社ザ・アール『これだけは知っておきたい「レポート・報告書」の基本と常識』、2018年9月2日初版発行、100ページ</ref> 。 事実(ファクト<ref>新田誠吾『はじめてでも、ふたたびでも、これならできる!レポート・論文のまとめ方』、すばる舎、2019年10月25日 第1刷発行 、94ページ</ref> fact)と意見(オピニオン<ref>新田誠吾『はじめてでも、ふたたびでも、これならできる!レポート・論文のまとめ方』、すばる舎、2019年10月25日 第1刷発行、94ページ</ref> opinion)は分離すべきです。(なお「オピニオン雑誌」というのは、政治などの議論にて、評論家の意見などの書かれた雑誌のこと。) さらに、報告書などでは、推測や提案があるときは「推測だが、」とか「提案だが、」とか書いてくれると、読み手が読みやすくなるので、ぜひ諸君はそう書いてほしい<ref>口頭での報告の例だが、<br> 山口真一『デキる人になる報・連・相 入門』、かんき出版、2010年4月20日 第3刷発行、86ページ<br> で、事実と憶測とを区別するための手段として、類似の文章構成を奨励している</ref>。 事実の場合は、いちいち、事実を紹介している全ての文で「事実だが」と述べると、大量の「事実だが」という文が続出してしまいかねないので、省略するか、あるいは一つの段落に事実の説明をまとめるなど、工夫してほしい。 もし大量に推測や提案がある場合にも、段落をまとめる必要があるかもしれない。 }} {{コラム|(※ 参考 ) 電子メールの件名で文意をあらわすタグ表記| 電子メールなどで、メールの件名に「【質問】 ○○は△△ですか?」とか「【○○の連絡】 △△が□□に変更しました」とかのように、そのメールの文章の種類をあらかじめ明示する場合もあります<ref>三上ナナエ『仕事の種類って報・連・相で決まるんです』、大和出版、2020年2月29日 初版発行、145ページ</ref> 。 ただし、報告書では、このようなタグ表記の記号は、使いづらいかもしれません。 なお、メール件名のタグ表記の記号(【】など)はとくに決まりはなく、[ ] や < > などでも良い。 ただし日本では視認性の良さなどの理由で、すみつきカッコ【】がよく、電子メール件名のタグに使われている<ref>三上ナナエ『仕事の種類って報・連・相で決まるんです』、大和出版、2020年2月29日 初版発行、145ページ</ref> 。 なお、インターネット技術では、 < > の記号が別の意味ですでに使われてしまってるので(HTMLタグという技術ですでに使われている)、電子メールによる報告などでは<>記号は避けたほうが良いでしょう。 また、学校教材では 〔 〕の記号がよく、空欄補充の問題をあらわすのに使われるので、避けたほうが安全かもしれません。 なお、電子メールで長い報告書を書くのは、一般にマナー違反です。電子メールソフトは、あまり長い書類を読むようには、つくられていません。 もし電子メールで報告をする必要のある場合、なるべく短く、まとめましょう。 }} * 接続詞を用いて、文の概要を示す。 たとえ読み手が文章を最後まで読まなくても、読み手が文意を予測できるようにして、冒頭に接続詞などを用いて、文意を示します。さっき読んだ冒頭文の「たとえ読み手が文章を最後まで読まなくても、」という文節自体が、「たとえ」「たとい」という接続詞によって、文意を予測させています。 * 箇条書きを利用する。 理由のひとつは、{{ruby|箇条書|かじょうが}}きによって、説明対象の全体像がハッキリするからです。 たとえば * なるべく主語は省略せず、あるいは目的語は省略せず、主語・目的語を書いたほうが分かりやすいです。 * 一文は、短めに書く。 * なるべく肯定形で書く。あまり、否定形は用いない。報告書などでは、二重否定よりも、肯定形に置き換える。 * 接続詞を用いて、文の概要を示す。 * 箇条書きを利用する。 * なるべく結論から書く。あるいは冒頭に要約や概要などを書く。 と冒頭で箇条書きする事によって、これから説明する項目(「* なるべく主語〜」「* 一文は〜」「* なるべく肯定系〜」・・・「* なるべく結論から」)の全体の構造が、ハッキリします。ここでいう「構造」とは、「* なるべく主語〜」について説明と、「* 一文は〜」の説明が分離している事が分かるなどのように、何と何が分離しているかが分かります。 もし、「一文は短めに書き、さらになるべく肯定系で書き、そして接続詞を用いて文の概要を示し、」・・・などのように書いてしまうと、文章が長くなり、読者は読解をするのが大変になってしまいますし、構造がどうなってるかも分かりづらいです。 しかも構造が、次の例のように読者には何パターンも考えられてしまいます。たとえば、 :* 「一文は短めに書き、」+「さらになるべく肯定系で書き、」+「そして接続詞を用いて文の概要を示し、」なのか、 :* 「一文は」+「短めに書き、さらになるべく肯定系で書き、」+「そして接続詞を用いて文の概要を示し、」なのか、 :* (「一文は」+「短めに書き、さらになるべく肯定系で書き、」+「そして接続詞を用いて」) +「文の概要を示し、」 なのか、 のように、読者は色々なパターンを想定して、どの構造なのかを読解せねばならず、読者に余計な手間が増えます。 また、書く人の側も、接続詞の「さらに」「そして」など、文脈に応じて追加せねばならず、手間が増えて、大変になります。 箇条書きにしない場合、読者も、書き手も、ともに手間が増えてしまい、なにも良いことはありません。企業などでの報告書の実務では、積極的に箇条書きを用いたほうが良いでしょう。 この記事自体も、箇条書きを積極的に利用しています。学校の作文などでは、原稿用紙の都合などで箇条書きが難しい場合もありますが、念頭に入れてください。 なお、箇条書きをする際は、箇条書きされた各文の冒頭に「・」などの記号をつけて、箇条書きである事を分かりやすく表示しましょう。 * なるべく結論から書く。あるいは冒頭に要約や概要などを書く。段落の始め近くや章の始め近くにも、なるべく結論や要約などを書く。 なぜなら、読者にとっては、読み直しの手間が減ります。この記事自体、なるべく結論から書こうとしています。 ---- 報告書での文の読まれる順序は、かならずしも文章のはじめから文が読まれるとはかぎらず、{{ruby|抜粋|ばっすい}}などをされて、第三者の読者に途中だけ読まれる場合もあります。 もし書く際に代名詞(それ、あれ、あの人、彼、彼女、・・・などなど)を多用すると、読み手が代名詞の答えを探すために前の文を読み返す負担が増えるので、報告書や論文・レポートなどでは、なるべく代名詞を抑え、具体的な名称などで書いたほうが良いのです<ref>佐渡島沙織・坂本麻裕子・大野真澄『レポート・論文をさらによくする「書き直しガイド」』、大修館書店、2015年12月21日 初版第1刷、36ページ</ref>。 具体的な名称とは、たとえば「その本は」ではなくて、「その『我輩は猫である』という本は」のように具体名で言い換えるという事です。 他にも、段落の始めや、章の始めなどでは、読み手がわざわざ前の段落や前の章を読み返さなくてもすむように、代名詞や指示語の使用はひかえめにしたほうがいいでしょう。つまり、段落の始めなどでは、具体的に名称を書くほうが、きっと読みやすいのです。 中学生・高校生では、別に報告書の書き方をここまで練習する必要は無いでしょう。そもそも、学習時間も足りません。(学生は、他の教科・他の単元の学習もしなければならない。) 頭の片隅にでも、読者である中高生は、報告書の書き方を入れておいてください。 ただし、詩歌や俳句や物語文などの場合は、文を書く際のノウハウが、報告書とは変わります。俳句の場合は字数の制限がありますし、詩歌や物語文などの場合には音のリズムの関係もあるでしょうから、あまりに具体的に名称を書いてばかりいると、かえって読みづらくなってしまうかもしれません。このような詩歌などの場合には、指示語や代名詞も用いたほうが良いかもしれません。 書き手は用途に応じて、書き方を分けてください。 * グラフなどを必要に応じて追加 実務の報告書では、かならずしも、すべてを文章で表記する必要はなく、数値的なデータなら、グラフ(棒グラフや円グラフなど)で表示するほうが、ひと目で読み手が把握しやすく、読みやすい場合もあります。 パソコンの表計算ソフト(エクセルなど)には、グラフを作る機能もあります。 そしてワープロソフト(ワードなど)に、表計算ソフトで作ったグラフ画像を貼りつける機能があります。 :※ 当教科は「国語」の教科なので、ワードやエクセルなどの練習については、説明を省略します。 == ※ 演説などの口頭発表への応用 == (※ 口頭発表は、中学3年の国語の範囲。) 口頭発表では、聞き手が、聞き返すことが、むずかしいのです。 もし、報告書の文章を読み返す場合なら、読み手が「読みかえそう」と思えば、時間さえあれば、いくらでも読み返せます。 しかし、口頭発表では、聞き手が、「聞きかえしたい」と思っても、話し手に頼める立場になければ、聞き返すことができません。 なので、もし、口頭発表をする場合は、このことの注意して、文章を、あらかじめ考えておく必要があります。 まず、報告書の書き方でも教えたように、要点を先に伝えるという方法を、口頭発表でも行います。 また、日本語の演説ならば、否定型ではなく肯定形で言い替えるという手法も、演説などの口頭発表では必要です。 さて、キング牧師の黒人差別反対の演説を、おそらく中学3年くらいに学校で習うと思います。 「私には、夢がある。」という、あの演説です。 キング牧師が、こういうふうに言ってるのは、かならずしも文芸的な表現とはかぎらず、演説のさいに、要点をさいしょに伝えるという手法を使った結果でもあるでしょう。 仮に、あなたが、キング牧師のあの時代のあの場所にいた観客の1人だとしましょう。演説者のキング牧師から「私には、夢がある。」という言葉を聞けば、聞き手は、「この発言のすぐあとに、これから、その夢の内容を語るんだな・・・」と予想できます。 で、その夢の内容が、黒人差別をやめさせたい、という、あの有名な演説なわけです。 いっぽう、もし、いきなり、キング牧師が夢の内容を語ったとしましょう。「私には、夢がある。」という前置きをいわずに、いきなり「黒人への差別を、やめさせたい。」とか言ったとしましょう。(なお、キング牧師のじっさいに言った演説は、もっと長く、何分間も話し続ける演説である。しかし、本wikibooksでは、説明を簡単にするため、仮に(かりに)、キング牧師の演説の内容が数秒だったと、置き換えることにする。) 観客の立場になってみましょう。すると、下記に述べますが、いくつかの欠点があるのです。 実際には英語で牧師は言ったのでしょうが、ここwikibooks日本語版では、日本の読者にわかりやすく問題点を伝えるため、かりに牧師が日本語で発音したとして、なにが欠点なのかを説明します。 仮に日本語で、キング牧師が「黒人への差別を、やめさせたい。」と演説したとしましょう。 キング牧師いわく:「こくじん」。 ::観客には、まず「こくじん」という言葉が先に聞こえるのです。演説を、時間を追って最初から聞いてみると、聞き手には、このように聞こえることになります。 ::観客がキング牧師の口から「こくじん」まで聞いた時点では、観客は、まだ、キング牧師の言おうとしていることが、はたして差別解法運動のことかどうかは、わかりません。なにせ、まだ「こくじん」としか言ってないのですから。この時点では、観客はもしかしたら「キング牧師は『黒人の多くは、先祖がアフリカ大陸の出身だ。』という地理的な説明をしようとしてるのかな?」とか予想するかもしれません。 数秒たって、 キング牧師いわく:「こくじんへの、さべつを」。 ::ここまで聞いた時点で、観客は、差別解法運動のことだと、わかります。しかし、「黒人への差別」について何を言いたいのかが、なんなのかは、まだ分かりません。もしかしたら観客は、「牧師は『黒人への差別をすることは、いけないことなのです』という道徳を語ろうとしているのかな?」とか予想するかもしれません。 ::また、てっきり「キング牧師は『黒人の多くは、先祖がアフリカ大陸の出身だ。』という地理的な説明をしようとしてるのかな?」と予想してしまった観客は、ここで、牧師の話(はなし)を思い返す必要が生じるのに、しかし牧師の話は、そのあいだも続いてしまいます。 ::そのせいで、まちがった予想をしてしまった人は、牧師の話を、聞きそびれてしまいます。 ::なので、演説では、冒頭で、結論をさいしょに述べておくことにより、観客が、まちがった予想をしないように対策する必要があるのです。 ::なお、観客が、演説者の話を聞いている時に、なにも予想しなければ、観客はその話を理解できません。なぜなら、演説内容の予想をするという事は、つまり聞き手は、演説者のいう情報をもとにして、聞き手が自分で仮説を立てて、その後の演説内容と照らし合わせるという、論理的な思考だからです。もし、聞き手が、先入観のない赤ん坊なら、赤ん坊はまったく予想せずに、まちがった予想もしないでしょうが、しかし、そもそも赤ん坊は演説を理解できないでしょう。なので演説では、観客に、予想をさせないわけにもいきません。 さて、さらに数秒たって、 キング牧師いわく:「こくじんへの、さべつを、やめさせるのが」。 ::ここまで聞いた時点で、観客は、黒人への差別解法運動のことだと、わかります。さらに、黒人への差別をやめさせる事について、牧師が言及しようとしてることも、わかります。しかし、「黒人への差別をやめさせる事」について、牧師は何を思ってるのか、観客は、まだ分からないのです。 このように、もし、あらかじめ「私には、夢がある。」とキング牧師が言ってないとしたら、 観客が、いきなり「こくじんへのさべつをやめさせるのが」と聞いても、例えば、もしかしたら、次のように予想するかもしれないのです。 :たとえば「黒人への差別をやめさせる事は、今まで失敗してきた」というふうに過去の出来事を振り返ろうとキング牧師が言いたいのかなと予想したり、 :あるいは、「黒人への差別をやめさせる事は、理想であるが、難しい」というふうに、キング牧師が目標の難しさを伝えようとしているのかと予想したり、 このように、前置きの「私には、夢がある。」がないと、聞き手にとっては、まったく予想がつかないのです。 そして、もしも、話の内容について、まちがった予想をしてしまった聞き手は、そのあとの話を、聞きそびれてしまいます。かといって、観客が、話を聞いた時に、なにも予想しなければ、観客はその話(はなし)を理解できません。 だからこそ、演説では、結論を前置きとして、手短かにいうことが大切なのです。 その証拠に、ためしに、日本語に置き換えたバージョンのキング牧師のこの演説に、前置きがあったとしましょう。「私には、夢がある。」の前置きがあったとしましょう。 :キング牧師いわく「私には、夢がある! こくじんへの、さべつを、」。 観客は、もう、ここまで聞いた時点で、予想できます、「キング牧師は、黒人差別をやめさせる事が、目標なんだ!!」って予想がつきます。 「私には、夢がある!」という前置きさえあれば、もはや、牧師の口から「やめさせのが、夢なんだ!」との発言を聞かなくても、観客はもう、予想できてしまうのです。黒人であるキング牧師の口から、「夢がある」と聞いた直後に、「黒人差別をやめさせることが」との発言を聞いた時点で、観客は、もう予想できるのです、「『私には夢がある。黒人差別をやめさせる事が、私の夢なんだ!』とか牧師が言おうとしてるんだな」という予想を。 == (※ 関連事項) 提案とは == 報告書では、意見や提案は、上司や相手から特に要求されてないかぎり、事実を優先して報告するようにしましょう。 それでも、もしメールなどで、短い報告文や提案文を同じメールでひとまとめにする場合(相手が一度のメールを読むだけで済むので、企業社会では、よくある)、せめて段落・章などを分けましょう。 === 短い報告文にともなう場合の提案 === たとえば、もしアナタがIT業界に勤務するプログラマーだとして、ある会社での開発中のソフトウェアの不具合(ふぐあい)の連絡のための報告メールを書くなら、たとえば <pre> 【不具合の報告】 データ設定画面で上から2番目の項目にデータを設定したあと、「セット」ボタンを押さずに「戻る」ボタンを押すと、本来ならメイン画面に戻らなければいけないハズなのに、そのままセット画面の次の「処理中」画面に移動してしまいます。 【案】 このデータ設定画面を使っていて思った案ですが、現在の数値だけを表示するのではなく、過去の数値の記録も表示するようにしては、どうでしょうか? こう思った理由は、このデータ設定を試したさい、私は過去1時間の数値が◯◯な理由で必要になりました。なので、きっとユーザーにとっても、過去の数値の表示もあると便利かもしれないと感じました。 いかがでしょうか? </pre> みたいに、報告と案とは、別個の章にすべきでしょう。 こうすることで、たとえ提案が却下されたとしても、相手に不具合の報告がきちんと伝わります。 なお、提案をする場合も、最初に結論を書き、つまり、「最終的に、こうなったほうが良いと思う状態」な結論を先に書き、あとから、その提案を思いついた根拠を書きます。 こうすることで、相手が、読み返しする手間が減ります。 文章構成の順序として、提案では、結論が先、理由はその(結論の)直後に、といった構成です。 さて、提案は不採用になる場合もあるので、あまり長々と提案を書きすぎず、手短かに提案を書きましょう。 報告メールの提案の場合なら、提案として思いついた事と、その根拠を、せいぜい5行ていどで紹介するようにしましょう。 === 提案には根拠が必要 === さて、もし何かの評論などで「意見」を書く場合では、「提案」に「根拠」がセットでないと、評論などは「意見」として役立ちません。 こう報告書で書くべき理由は、なぜなら報告書の読み手である上司や客などは、根拠の部分を読んで、提案を採用するかどうかを決めるからです。 提案の採用の権限をもっている人物は、大抵、あなたではなく、上司や、金を払う客です。 なので、もしも根拠の情報がなくて提案だけを書いても、まったく役立ちません。 もし根拠が無い場合、読み手は書き手の能力を疑い、「こいつ(書き手のこと)は自分の立場を理解できてないのではないか?」と疑うでしょう。 もし提案だけで根拠が書かれてない場合、読み手はおそらく書き手の能力を疑い、その時点で読み手は、書かれた提案を自動的に不採用にするでしょう。 なので、「提案」には「根拠」がセットでないと、役立ちません。 意見 = 提案 + 根拠 の公式だと思っておきましょう。 日常語でいう「意見」とは、何かの論文や評論などでいう「意見」とは、やや意味がちがうので、混同しないようにしましょう。 === 評論などでの提案 === ;提案には具体例をつける もし、評論や論説文などで提案をする場合、けっして、抽象的に「もっと改善を増やすべきだ」みたいな漠然(ばくぜん)とした事を言うべきではない、という事を意識すべきです。 つまり、意識すべきことして「具体的に何をどう変えれば改善になり、そのために我々はいま、こうすべきである」という事を念頭に、具体的に案を提案する必要があります。 たとえば、環境保護のための活動の提案ならば、 けっして漠然と「環境保護をすべきだ」ではなく、 たとえば、企業での提案にたとえれば、例文として 「環境保護をするために、私たちの会社の昼食の仕出し弁当では、割りバシをつかうのをヤメるように仕出し業者に要請すべきでしょう。」 みたいに具体的に行動案を提案するべきです。 つまり、社会で必要な意見とは、 意見 = (提案の方向性 + 具体案)+根拠 です。 提案は、 提案 = 提案の方向性 + 具体案 に分解されます。 社長の提案なら具体案が無くても部下が気をつかって代わりに具体案を考えてくれますが、しかし、もし新人や若手社員が具体例の無い提案をしても、企業の会社内部では、案の検討が後回しにされたり軽視されたりといった扱いになります。 なぜなら、たかが新人の気持ちの読解や心情の読解なんぞに、会社の上層部にとっては、時間を割きたくないからです。 なお、意見を書く場合だけでなく、(例外として数学の証明を除き、)一般の社会では、何かの理論を提唱(ていしょう)する場合も同様に、具体例と根拠をつける必要があります。 つまり 理論 = その理論の提唱内容 + 具体例 + 根拠 です。 === 意見の論拠は短く === 「意見」について、長々と説明しましたが、しかし基本的に報告書では、意見は無くてもいいか、あっても手短かにすべきです。 また、メールなどで、なにかの提案メールを書く場合などでも、気をつけるべき事として、意見にともなう提案の論拠を、あまり長々と書きすぎないように、気をつけてください。 なぜなら、もし提案などを書いても、その提案が不採用になる場合もあります。不採用になるかもしれないのに、提案の論拠を長々と書かれては、上司にとって困ります。 しかし、たとえそれでも論拠を意見には書くべきです。論拠を書く理由は、上述のような上司を説得する理由のほかにも、理由がいくつかあります。 まず、調査した本人にとっては当然のよくある思考法であっても、それ以外の役職の人にとっては、以外とわかりづらい思考法の場合があります。なので、短くてもいいので、自分以外の役職の人にも思考が分かるように、どういう思考回路でどう提案しているのかを示す必要があります。 また、もう一つの理由とは、たとえ提案が不採用になっても、その論拠を導くための思考方法などは、別の報告や仕事などで活用できる場合があるからです。 論拠を読んだ上司が、回答として「君のこの提案は却下するが、しかし、きみの説明する根拠にも一定の事実がありそうなので、よって、別件であるが、わが社は□□をしようと思う」などのように、別の分野に流用される場合があります。 ともかく、もし意見をなにかの書類や仕事メールなどに書く場合には、主張する提案などに、論拠を手短かに加えましょう。 == その他 == === 通常文の文末には句読点をつける === 日本語では通常、通常の文章の文末には「。」をつけます<ref>大竹秀一『だれも教えなかったレポート・論文の書き分け術』、株式会社SCC、2017年10月1日 初版第1刷発行、162ページ</ref>。 市販の報告書の書き方入門本を見ても、文末は原則的に「。」をつけています。(たとえば 倉島保美『改訂新版 書く技術・伝える技術』あさ出版 ) 例外的に文末に「。」をつけない場合とは、 * 題字・題名など(本節の題名「通常文の文末には句読点をつける」の末尾にも「。」をつけていないです) * 箇条書きの場合(この文の末尾にも「。」は無い) * 会話文の最後<ref>大竹秀一『だれも教えなかったレポート・論文の書き分け術』、株式会社SCC、2017年10月1日 初版第1刷発行、162ページ</ref> * ポスターなどのキャッチコピーでは「。」をつけない事がよくある * 「……」などで文が終わる場合に、「。」を省く場合がある 小中高では会話文の最後に「。」をつける文体で紹介されます。たとえば :山田は「ぼくは田中じゃないよ。」と言った。 のように。 しかし市販の書籍の多くでは、会話文の最後には「。」をつけていないです。たとえば :山田は「ぼくは田中じゃないよ」と言った。 のように、会話の最後の「。」は省略されることも、よくあります。 [[Category:中学校国語|けんたいふん ほうこくしよのかきかた]] 体言止めをレポートの文末で使うというミスが市販の入門書から報告されていますが<ref>大竹秀一『だれも教えなかったレポート・論文の書き分け術』、株式会社SCC、2017年10月1日 初版第1刷発行、165ページ</ref>、やはり体言止めの効果である余韻を残すことは、レポート・報告書の目的である正確な報告とはズレていますので、体言止めの濫用はひかえるべきでしょう。 === 参考文献があれば巻末に付ける === もし、文献調査などをした報告書の場合、参考文献があるので、参考文献を末尾につけると、読者が検証しやすくなり、便利です。 引用箇所だけでなく、さらに巻末にも、こういった参考文献リストが必要です。 本wikiにも、(執筆時点の版では)参考文献リストが記載されていると思いますので、参考にしてください。 == 参考文献 == eend6hp0aj1y3uhhyzsds2bc8fj8qdo 高校英語の文法 0 21996 205562 205289 2022-07-20T03:27:25Z すじにくシチュー 12058 /* 慣用的な疑問文 */ == 参考文献についての注意 == サブページ中の参考文献で、現代2022年では廃止になったシリーズの桐原『フォレスト』などを掲げているが、現代でも他社の いいずな出版『エバーグリーン』シリーズにフォレストの権利が引き継がれているようなので、わざわざ古本のフォレストを探す必要は無い。 wikitext text/x-wiki <!-- このページには導入部がありません。適切な導入部を作成し、このコメントを除去してください。 --> == 目次 == * [[高校英語の文法/文の種類]] * [[高校英語の文法/動詞と文型]] * [[高校英語の文法/時制]] ※ 参考書によって微妙に単元名が異なるので暫定 * [[高校英語の文法/完了形]] * * [[高校英語の文法/比較]] * [[高校英語の文法/関係詞]] * [[高校英語の文法/仮定法]] * [[高校英語の文法/名詞]] * [[高校英語の文法/冠詞]] * * [[高校英語の文法/否定]] * [[高校英語の文法/接続詞]] * [[高校英語の文法/前置詞]] == 文の構造 == === 文の要素 === 文の構造を知るためには、文がどのような要素で成り立っているのかを知らなければならない。 ==== 主語と述語動詞 ==== # '''The old man''' ''is'' a famous singer. # '''My sister''' ''studied'' math. ## 訳例:その老人'''は'''有名な歌手'''だ'''。 ## 訳例:私の姉'''は'''数学を研究'''していた'''。 1の文は「AはBだ」という文であり、2の文は「AはCする」という文である。どちらも # 「…は」「…が」という主題の部分 # 「~である」「~する」という主題が何であるかについて述べる部分 の二つが共通している。 この場合、1を'''主部'''といい、2を'''述部'''という。 そして、主部の中心となる語を'''主語'''(Subject)といい、述部の中心となる部分を'''述語動詞'''(Predicate Verb略して'''動詞'''('''Verb'''))という。以下では、述語動詞は原則として単に動詞と呼ぶ。 {| class="wikitable" style="text-align:center" |- ! || - || 主語 || 述語動詞 || - |- | - | colspan="2" | 主部 | colspan="2" | 述部 |- | 1. | The old | man | is | a famous singer. |- | 2. | My | sister | studied | math. |} 主語は単に'''S'''で表し、動詞は'''V'''で表す。 ==== 目的語 ==== # He ''has'' '''a personal computer'''. # We ''played'' '''soccer'''. # Everone ''likes'' '''Sushi'''. ## 訳例:彼はパソコン'''を'''持っている。 ## 訳例:私たちはサッカー'''を'''した。 ## 訳例:みんなが寿司'''を'''好む。 いずれの文の動詞も「~を」という、動作の対象が必要である。このような動作の対象を表す語を'''目的語'''(Object)といい、'''O'''で表す。 {| class="wikitable" style="text-align:center" |- ! || 主語 || 動詞 || 目的語 |- | - | colspan="1" | 主部 | colspan="2" | 述部 |- | 1. | He | has | a personal computer. |- | 2. | We | played | soccer. |- | 3. | Everone | likes | Sushi. |} このような、'''S+V+O'''という形の文は英文の基本形の一つである。 ==== 補語 ==== # Mary ''is'' '''happy'''. # John ''became'' '''a doctor'''. ## 訳例:メアリーは幸せだ。 ## 訳例:ジョンは医者になった。 これらはいずれも主語の状態を説明した文であるが、isやbecomeで文を切ると意味をとれない。happyやa doctorという、主語の様子をおぎなう語があって初めて意味のある文となる。このように、主語の様子について説明する語を'''補語'''(Complement)という。補語は'''C'''で表される。 {| class="wikitable" style="text-align:center" |- ! || 主語 || 動詞 || 補語 |- | - | colspan="1" | 主部 | colspan="2" | 述部 |- | 1. | Mary | is | happy. |- | 2. | John | became | a doctor. |} このような'''S+V+C'''の文も基本的な文の一つである。なお、後で学ぶように、補語は主語の様子だけでなく目的語の様子を説明する場合もある(例文:I call him Sensei.(私は彼を先生と呼ぶ))。 == 動詞の用法 == === 助動詞 === === 態 === ==== 助動詞と組み合わさった受動態 ==== He could be seen by her. 受動態の文を作るときには、その文の述語は必ずbe動詞の節になるが、be動詞に対して助動詞を用いたり、時制の変化をさせることも普通に行なわれる。 この時には、例えば He is seen by her. という文が He could be seen by her. の様にbe動詞は、助動詞+beの形で書き換えられる。これは、be動詞の原形が beで与えられることによる。同じ様に例えば、 might be may be must be will be なども用いることが出来る。また、過去形や現在完了と組み合わせるときにも通常の規則に従えばよい。例えば、上の文では He was seen by her. He has been seen by her. などとなる。been は be の過去分詞である。ここで、be が過去分詞 been になったのは、現在完了を作るためであり、see が過去分詞 seen になったのは、受動態を作るためであることに注意。 === 不定詞 === ==== 名詞的用法 ==== ==== 形容詞的用法 ==== ==== 副詞的用法 ==== ==== 慣用的表現 ==== ==== 原型不定詞 ==== 使役動詞(make,let,have)や知覚動詞(feel,see,taste,look,hear)に係る形で不定詞の構文が作られる時、'''toは必ず抜きます。''' My mother make me <del>to</del> eat vegetables for breakfast.(私の母は、朝食の際私に野菜を食べさせる。) My father won’t let me <del>to</del> go out of parking lot at night.(私の父は、夜に駐車場へ行くことを許してくれないだろう。) 使役動詞の意味 * make - 〜させる(強制) * have - 〜してもらう(依頼) * let - 〜させる(許可) 基本的に、動詞+目的語+原型不定詞 と使う。 at はよく「6時30分に」(at 6:30 )とか「正午」(at noon)などの時刻・時点を使うのに用いる前置詞だが、例外的に night には at を使う。 ===== 原型不定詞も取る動詞 ===== 動詞“help”は、通常の不定詞、原型不定詞のどちらも取る。 I help my brother (to) do his homework.(私は、私の兄が宿題をする事を助けた。) === 分詞 === === 動名詞 === == さまざまな構文 == === 分詞構文 === 分詞構文は現在分詞や過去分詞を用いて、従属の接続詞節のような意味を持つ文の成分を作る用法である。例文として、 Crying out something, he quickly runs away. がある。この文は「何かを叫びながら、彼は素早く逃げていった。」という 意味だが、この様な文は例えば接続詞whileを用いて、 While he cries out something, he quickly runs away 接続詞を取る。 He cries out something, he quickly runs away. 主語を取る。 Cries out some thing, he guickly runs away. 動詞を現在分詞形にする。 Crying out some thing, he quickly runs away.→'''これで完成!''' などとすることが出来る。分詞構文は文の前後関係から、省略される接続詞が予測できると考えられるとき、接続詞と主語を省略することによって 得られる。ただし、接続詞無しで節を作ることは出来ないことから、接続詞節の述語は対応する現在分詞になるのである。上の例文は while を用いた文から接続詞 while を省き、述語 cries を現在分詞 crying にすることに よって得たものと解釈出来る。ただし、元の従属接続詞節に対応する主文の主語と接続詞節の主語が等しいときには、現在分詞の主語は 省略出来る。上の文で while 節の主語に対応する語が無いのはこのことからである。 主節の主語と従属節の主語が異なっているときには、分詞構文の主語として対応する従属節の主語を所有格として与える。例えば、上の例で主語を省略せず書くと、 His crying out something, ... のようになる。 一般に現在分詞の主語を指定するときは通常所有格を用いる。 分詞構文で省略される接続詞には主なものとして、 because, since, as: 〜だから(理由) when, as, while: 〜のとき(ある時点) などがあげられる。 分詞構文になる従属節では述語がbe動詞であることがある。 このときにも上の規則に従って、Being -,によって分詞構文が作られることも多い。 ==== 分詞構文の受動態 ==== 特にbe動詞に対応する補語が受動態であったり、形容詞であるときには、beingを省いて過去分詞、もしくは形容詞から分詞構文が 始まることも多い。 (Being) seen from airport, everything looked small.(飛行機から見ると、全てのものが小さく見えた) The assignment (being) finished, we went on a hike to the nearby mountain.(その課題が終わってから、私たちは近くの山へハイキングへ行った。) このときには、be動詞と接続詞、必要なら対応する主語も補って考える必要がある。ただし、この様な省略がなされるのは、あくまで省略されたものが文脈からすぐに分かる時のみである。 === 話法 === === 会話表現 === == 品詞 == === 代名詞 === === 形容詞・副詞 === == 名詞構文・無生物主語 == === 名詞構文 === === 無生物主語 === The road takes you to the station. 「その道を歩いていくと駅につきます。」 The bus takes you to the station. 「そのバスに乗れば駅に行きます。」 take は「連れて行く」の意味だが、交通機関などを主語にして使うことも出来る。その場合は、たとえば道なら「その道を行けば、~につきます」のような意味になる。 takes の代わりに will take としても良い(ロイヤル英文法)。 「remind 人 of」 で「人に~を思い出させる」の意味である。 This picture reminds me of vacation in Greece. 「その写真を見ると、ギリシャでの休日を思い出す。」 This picture reminds me of holidays in London. 「その写真を見ると、ロンドンでの休日を思い出す。」 なお、大修館ジーニアスだとロンドン、桐原フォレストだとギリシャの例文。 「deprived 人 of ~」 「(機会などが)うばわれる」 The knee injury deprived him of the chance to play in the final game. 「ひざのけがのため、彼は決勝戦に出場する機会を失った。」 または The knee injury deprived the player of the chance to play in the game. 「ひざにけがをしたため、その選手は試合に出場する機会を失った。」 のように例文が参考書によくある。 enable ~ は、「~をできるようにする」「~を可能にする」の意味。「~のおかげで、・・・できるようになった」と訳すことができる。 The scholarship enabled him to go on to university. 「その奨学金のおかげで彼は大学へ進学できた。」 ジーニアス、ロイヤルに scholarship の似た例文。 == 疑問詞 == === 前置詞と疑問詞 === Where are you from? 出身はどちらですか? 文法上、ここでの Where は副詞であり、「疑問副詞」というのに分類される(ロイヤル)。 さて、前置詞 from に注目しよう。 もしかしたら中学高校などで「前置詞は名詞や代名詞の前に移動するのが原則」とか習うかもしれないが、しかし前置詞をけっしてfromの前に移動しない。 なので、Where は副詞であると考えたほうが理解しやすいだろう。(これとは別の解釈で、そもそも「副詞には前置詞がいらない」という考えから副詞ではなく代名詞としての機能だと考える立場もあり、ジーニアスやロイヤルやフォレストがそういう立場。だが、机上の空論だろう。) なお、法学など幾つかの学問では、『原則』というのは例外のありうる規則、という意味である。おそらくジーニアスが「原則」という言葉を使っているのは、Where ~?などの疑問詞を文頭にもちいた疑問文の場合は例外的な事例という含みがあるのだろう。 Where に限らず、たとえば When などで疑問文を作るときも原則、それらの疑問詞の前には前置詞(When の場合は since や till や until など)を置かない。そのため、それら When の文でも前置詞は文末にくる場合が多くなる。 つまり、「いつから~?」なら When do you ~ since ? のような文章になる事が多い。 ただし、Whoの場合はやや例外的である。 たとえば前置詞 With を使う場合、Who が目的格 Whom に変化する場合もあり、 With whom do you ~? 「誰と一緒に~しますか?」 のようにWith が文頭にくる場合もある(桐原)。with以外の前置詞の場合でも文頭に持ってくる場合には同様にwhoではなく whom に変化する(ジーニアス)。なお、前置詞を文頭に持ってくる場合、whomを使わずにwho のままで文頭の前置詞の次に置くのは禁止である。 なお、Whomを使わずとも who のままで下記のように言うこともできる Who do you ~ with? Where are you from? の場合、もし前置詞 from がないと、「あなたはどこ?」となり、それが出身をたずねているのか、それとも現在地をたずねているのか、意味が分からなくなることもあってか、ともかく 「Where are you from?」の文章は from を省略できない。 ジーニアスは、話し言葉ではWhereでは from を省略しないという言い方をしているが、しかし書き言葉であっても from を省略しないのが一般的であろう(省略したら上述のように意味が通らなり読み手に誤解を与えるので。)。 しかし、用いる動詞などによっては前置詞を省略できる場合があり、たとえば Where do you go to? 「どこに行きますか?」 なら、もし前置詞 to を省略しても、動詞 go から意味を推測できるので、この場合は to を省略されるのが許され、つまり Where do you go? でも許される(ジーニアス)。 このように文法の理論というのは、あまり論理的ではない。最終的には、英文法の学習では典型的な構文を覚えて、それを真似して使っていく必要がある。 === 慣用的な疑問文 === How about a cup of tea? 「お茶を一杯いかがですか?」 How about ~? は勧誘を表す。 What do you say to ~ing 名詞/動名詞 ? 「~はいかがですか?」「~しませんか」 What do you say to ~ing でも勧誘を表せる。 ここでのsayの直後にある to は前置詞であると考えられている(桐原フォレスト)。どういうわけか、ジーニアスもロイヤルも、to が前置詞かどうかは言及していない。 ほか、Why don't you 動詞 ~ ? は、「~してはどうしょうか」のような相手に行為を促す(うながす)言い方であり、やや押し付けがましい言い方である(ジーニアス)。 Why don't we の形で、一緒になにかをする時に「~しましょうよ」の意味で使う場合もある(フォレスト)。 また、これを省略的に Why not ~? の形で「~はどうですか」「~してはいかがでしょうか」「~しましょうよ」の意味にもある。 How come S + V ~? How come ~? は「どうして~」の意味でありwhy に近いが、How come のほうが感情的な表現であるので、目上の人に使うのは避けるのが良い(ジーニアス)。なお、How come は語順がSVと肯定形の語順になる。 How come you didn't call me ? 「どうして電話をくれなかったの?」 ※ 「電話してほしかったのに」のような含みがあり、相手を責めているようにも受け取られかねない。だから返事も、Sorry, 「ごめん」とかになる(ジーニアス)。 許可を求める表現である Do you mind if~? で、「~してもいいですか」という許可を求める表現ができる。なお Would you mind if ~? については仮定法になり、つまり「~」中の動詞が過去形になる。Would you mind if ~? については 『[[高校英語の文法/仮定法]]』で説明済み。 Do you mind if のほうは、if ~ の動詞は現在形で構わない。 == 参考文献についての注意 == サブページ中の参考文献で、現代2022年では廃止になったシリーズの桐原『フォレスト』などを掲げているが、現代でも他社の いいずな出版『エバーグリーン』シリーズにフォレストの権利が引き継がれているようなので、わざわざ古本のフォレストを探す必要は無い。 [[カテゴリ:高等学校教育|ふむほふ]] 2499d7tvhyhu711cr5h02r5fkiqe3qr 中学校社会 公民/検定教科書で紹介されている時事、大衆娯楽、企業名など 0 22300 205573 199513 2022-07-20T07:27:09Z すじにくシチュー 12058 /* 福祉 */ ほか、高校の理科の教科書にある話題だが、教科書会社の東京書籍(教科書会社のひとつ)が「物理」科目の教科書で、大学の理系の学科で男女の比率が違うことをあげている。 wikitext text/x-wiki つぎのものは、検定教科書でも紹介されている。 {| class="wikitable" style="float:right" |+ ! !! 日本 !! 世界 |- |1945年 || ポツダム宣言を受諾 || |- |1946年 || 日本国憲法公布 (47 施行) || |- |1949年 || || NATO成立<br />中華人民共和国成立 |- | |- |1950年 || || 朝鮮戦争 |- |1951年 || サンフランシスコ平和条約調印<br />日米安全保障条約調印 || |- |1954年 || 第五福竜丸が被爆<br />防衛庁設置 || |- |1955年 || || アジア・アフリカ会議 |- |1956年 || 日ソ共同宣言<br />日本が国際連合加盟 || |- |1958年 || インタントラーメン発売 || |- | |- |1960年 || 日米'''新'''安保条約調印 || |- |1962年 || || キューバ危機 |- |1965年 || 東海道新幹線開通<br />東京オリンピック || |- |1967年 || || ヨーロッパ共同体(EC)発足 |- |1968年 || GNP資本主義国2位に || 核不拡散防止条約 |- |1969年 || 日韓基本条約調印 || アメリカの宇宙船アポロ11号が月面着陸 |- | |- |1970年 || 大阪万国博覧会 || |- |1972年 || 沖縄が日本復帰<br />日中国交正常化 || |- |1973年 || || 第一次石油危機 |- |1973年 || コンビニエンスストアが開店 || |- |1978年 || 日中平和友好条約調印 || |- |1979年 || 東京サミット開催 || 米中国交樹立 |- | |- |1980年 || 自動車の生産台数が世界1位に || イラン・イラク戦争 |- |1982年 || 参院選で比例代表制導入 || |- |1983年 || 東京ディズニーランドが開店<br />ファミコン発売 || |- |1984年 || 日本の平均寿命が世界1位に || |- |1985年 || 男女雇用機会均等法公布<br />電電公社が民営化してNTTに || |- |1986年 || 牛肉・オレンジ輸入自由化 || チェルノブイリ原発事故 |- |1987年 || 国鉄分割民営化でJR発足 || 米ソ、中距離核戦力全廃条約調印 |- |1988年 || 青函トンネル、瀬戸大橋の開通 || |- |1989年 || 消費税の導入(当時の税率3%) || ベルリンの壁崩壊 |- | |- |1991年 || バブル経済崩壊 || ソビエト連邦解体<br />湾岸戦争 |- |1992年 || PKO協力法成立 || 国連環境開発会議 |- |1993年 || Jリーグ開幕<br />連立政権(細川内閣) || ヨーロッパ連合(EU)発足 |- |1995年 || 阪神淡路(あわじ)大震災、地下鉄サリン事件 || |- |1996年 || DVD発売開始 || |- |1997年 || クローン羊ドリーの誕生が発表される || 香港、中国に返還 |- |1998年 || 長野冬季オリンピック<br />日本で「環境ホルモン」の害が話題になる || |- | |- |2001年 || || アメリカ同時多発テロ |- |2002年 || 日韓共催サッカー・ワールドカップ<br />日朝首脳会談、<br />一部の拉致被害者が帰国 || |- |2003年 || || イラク戦争 |- |2004年 || イラクで自衛隊が復興支援 || スマトラ沖地震・津波 |- |2005年 || 愛知県で万博(愛・地球博)<br />道路公団民営化 || |- |2008年 || 国民投票法の成立、郵政民営化 || |- |2008年 || 洞爺湖(とうやこ)サミット || 世界金融危機 |- |2009年 || 新型インフルエンザの流行<br />民主党連立政権 || |- |2011年 || 東日本大震災、福島第一原子力発電所で事故 || |- |} == 未分類 == * リーマンショックとサブプライムローン問題の関係 2007年までアメリカ合衆国の大手証券会社のリーマン・ブラザーズが、アメリカでの低所得者向け住宅ローンのサブプライムローン関連の金融商品などを大量を扱っていたところ、2007年のサブプライムローンの破綻により、リーマン・ブラザーズが巨額の損失を抱え、そして2008年にリーマン・ブラザースが経営破綻したという経緯である。このリーマン・ブラザーズの破綻をきっかけに、世界的な不況になった(※ なお、リーマン・ブラザーズの会社の種類が「証券会社」なのか「投資銀行」なのかは、文献によって記載が異なる)。 == 高度経済成長の消費文化 == : 1958年のチキンラーメン : 日清のカップヌードル 1971年 :安藤百福(あんどう ももふく)『魔法のラーメン発明物語』日本経済新聞社 安藤百福は、インスタントラーメンの発明者で、日清食品の創業者。 :レトルト食品の誕生、ボンカレーが1968年に登場 :少年マガジンの1959年の創刊(教科書では写真あり)、少年サンデーの創刊 :1970年の大阪万博 :ファミコンの1983年ブーム :「鉄腕アトム」が1952年に連載開始。 == マンガ、アニメなど == :「ドラえもん」 :犬夜叉、ワンピース、ナルト、(日本のマンガ・アニメが外国でも人気の件、写真などで検定教科書では説明) キャリア教育などの単元で、職業の例として、アニメ声優(東京書籍が紹介)とゲームクリエイター(日本文教出版)を紹介している教科書もある。 ゲームクリエイターが分業制であることを紹介している。「プログラムを書く人、キャラクターデザインをする人など、さまざまな専門分野に分業して作られえ地増す」とある。 == 製造業など == :ヘラ絞りの北嶋絞(きたじましぼり)製作所 国産ロケット「H2」の補助ロケットの先端部分が、ここの製作所の職人による、金属板に棒を押し当てて丸い形状の板をつくる「ヘラ絞り」加工で生産されている。 :「ゆるまないナット」、※ H社とのこと、(おそらくハードロックナット) :「まいど1号」、大坂の町工場、しかし不況により活動停滞の件も記述あり。 :液晶テレビ、プラズマテレビ == ビジネス用語 == :「牛丼チェーン店」という用語。「チェーン店」という言葉を知ってるリテラシー。「牛丼」(ぎゅうどん)という国語力。 :「外食チェーン」 :コンビニの'''POS'''システム :コンビニなどの「フランチャイズ」店、(チェーン店との違いも) == 2006年の会社法 == 1円起業が認められた。 取締役は1人でもよくなった(それまでは取締役3人と、監査役1人)。 == 消費者リテラシー == :国民生活センターと、地方公共団体の消費生活センター :「クレジットカード」、「プリペイドカード」、「電子マネー」 クレジットカードは後払いであり、つまり借金である。 :(※ 範囲外: )世間には時々「クレジットカードは借金ではない」と言う人がいて、その論拠として「クレジットカードによる買い物は、銀行口座から預金を引き落としているだけである。銀行残高の範囲内の買い物であれば、借金ではない」という人がいる。 :※ 全国銀行協会連合会も、クレジットによる買い物は「借金」だと明言している<ref>[https://www.zenginkyo.or.jp/article/tag-d/8079/ 『ローンやクレジットを使い過ぎないための7つのポイント - 全国銀行協会』] 2019年2月24日に閲覧して確認</ref>。 :正確にいうなら、クレジットカードによる買い物は、法律上はおそらく「金銭債務」(きんせん さいむ)に分類されるだろうが、しかし中学の範囲を超えた概念なので、中学段階では「クレジットは借金」と認識してよい。 プリペイドカードは前払い。図書カードなどもプリペイドカード。プリペイドカードには、たいてい、割引(わりびき)などが付いている(もし、割引がついてないと、カードは使用可能なお店が限られたりするので、お金のままで持つよりも損をしてしまう)。 電子マネーについて、Suica(スイカ)などの画像が検定教科書にあり。また、鉄道会社が定期券を、IC(集積回路)の組み込まれたカード化をして、それに電子マネーの機能も持たせていて、駅構内の買い物などに使えるようになっている。 :「自己破産」 :'''ATM'''、「現金自動預払機」(げんきんじどう あずけばらいき) なお、ATMで使うカードは、「キャッシュカード」。 == 未分類 == 自動車の購入について、日本政府は、環境保護のため、電気自動車やハイブリッドカーなどのエコカーの購入に補助金を出している('''エコカー補助金''')。 :アムステルダムや名古屋市の「ロードブライシング」 : :「北九州市」の「エコタウン」 :環境問題で、2009年の鳩山の国際公約の25%削減の件、(温室効果ガス削減の件) :東京モーターショー(2009年、千葉) :発光「ダイオード」の裁判の金額の件、 :トランスミッション、パワーステアリング(自動車産業の国際分業化の件、検定教科書では画像で紹介してるので、自動車工学を知らなくても分かるようになってる) :ASIMOの写真、二足歩行ロボット == 金融 == === 株価 === :始値(はじめね) :終値(おわりね) :安値(やすね) :高値(たかね) :日経平均株価、(画像で紹介されている) === 平成バブル === 「バブル」 bubble とは「泡(あわ)」という意味。1990年から2000年まで「失われた十年」と言われた。バブル経済(bubble economy <ref>小森清久 ほか編著『新版完全征服 データベース5500 合格英単語・熟語』、桐原書店、2019年2月10日 第41刷発行、P.328</ref> )が崩壊してから、企業への銀行からの融資の条件がきびしくなり、そのような銀行の態度が「貸し渋り」(かししぶり)と言われた。このため、資金ぐりに行き詰まって倒産した企業も多い。 かといって、銀行側も経営が苦しく、資金の回収のめどが無い会社に貸すわけにはいかない。実際に銀行ですら、1997年には、いくつかの銀行が破綻している。北海道拓殖銀行(ほっかいどう たくしょくぎんこう)や、日本長期信用銀行(にほん ちょうきしんようぎんこう)などが、1997年に破綻した。もっとも、バブル崩壊後に、銀行は国から救済のための公的資金を受け入れており、公的支援を受けていながら貸し渋りをするのは問題行為だろうという意見もある(検定教科書にも、そういう意見が紹介されている。教育出版など)。 === その他、金融コラムなど === クラウドファンディング(Crowd Funding)について、ある検定教科書で紹介されているらしい<ref>[https://www.jsda.or.jp/gakusyu/edu/web_curriculum/images/mailmagazine/Vol.146_20200827.pdf 『5分で話せる金融経済「新しい教科書で中学校の経済の授業はどう変わる?②」 - Vol.146_20200827.pdf』]</ref>。クラウドファンディングの手法で集めた資金で製作されたアニメ映画についても言及しているらしい。 また、出典とは別情報源だが、帝国書院の中学公民の教科書でアニメ映画『この世界の片隅に』がクラウドファンディングで製作されたことが照会されているとのこと。 Crowd とは群集、Funding とは資金の意味。 インターネット技術のCloud (雲)とは別の単語なので混同しないように。 == 通信 == :「ショルダーホン」、「ポケベル」などの昔の無線通信ツール :1930年代の電話交換手の写真画像も、検定教科書にあり。 :そして、GPS機能付の現代の携帯電話へという紹介の流れ。(以上、東京書籍の公民教科書にて) :「NTT」および「NCC」「(KDDI、日本テレコムなど)」 == バイオテクノロジー == :植物工場 :バイオマス発電 :青いバラ(遺伝子組み換え) == 未分類 == :「経理」、「総務」、「営業」 (株主会社について) :デフレスパイラル :行政機関情報公開制度、2001年 :新日鉄・住金、三洋子会社化(パナソニック傘下に)、などの大型合併 :マオリ族のあいさつ、鼻と鼻をこすりつける :沖縄のゴーヤーチャンプル、エイサー(踊り)、紅型(びんがた)、 :アイヌのチェプオハウ(スープ料理)、アットゥシ(衣装)、 :兌換(だかん)紙幣 :フランスの公立学校での(イスラム教徒の)スカーフ着用禁止の件 :モスクなどの幾何学模様、「アラベスク」 * 日本の地域の文化 :ヨサコイ祭り :「YOSAKOIソーラン祭り」、高知市のヨサコイ祭りと北海道のソーラン祭りが合体 :「津軽三味線」(つがる しゃみせん) :ユニクロでは、不要になった衣料品を回収してリサイクルしているとのこと。 :シルバー人材センター :バレーボールのルールの歴史、(きまりとは何か、)ちなみにアメリカのモルガンが1895年にバレーボールを考案とのこと :2011年のエジプトの政変 :アメリカの「sushi」寿司 :イタリアのサッカーチームで活躍する日本人 :フェアトレード フェアトレード(fair trade<ref>高等学校英語 検定教科書『FACTBOOK English Logic and Expression I』、令和3年5月 文部科学省検定済、令和4年2月25日発行、P121 </ref>)とは、発展途上国では、たとえば児童などが違法に低賃金で酷使されていたりするので、そういう商品を買わないようにしよう、という運動である。 だが、「具体的に、どういう商品が違法に生産されているか? どうやって、それを見分けるか?」は消費者からは分かりづらいので、「発展途上国の商品を買うときは、適正な価格の商品を買いましょう」という運動になっており、高校の検定教科書でも、そういう風に「適正価格がどうこう」な感じで紹介されてしまっている。どうやって適正な価格であることを調べるかについては、中学高校の教科書・参考書では言及されてない。 :マイバッグ :グリーンカーテン - 植物によって日差しをさえぎり、エアコンの電力消費を抑えるなどして、環境にやさしい。 :ストリートチルドレン :メーデー : :中村哲(なかむら てつ) - 医師。アフガニスタンで難民の医療を行っている。 [[File:Wangari Maathai in Nairobi.jpg|thumb|ワンガリ=マータイさん]] :'''ワンガリ=マータイ'''さん、「MOTTAINAI(もったいない)」の人。 [[File:Sadako Ogata - World Economic Forum on Africa 2008.jpg|thumb|緒方貞子 - 国連の難民保護の責任者として、1991年から10年間、活動していた。2003年から11年までは国際協力機構(JICA、ジャイカ)理事長。 ]] : :国連高等難民弁務官事務所(こくれん こうとう なんみん べんむかん じむしょ) (英略称: UNHCR)- 本部はジュネーブにある。緒方貞子が国連難民高等弁務官を1991年から2000年まで務めた。 :EU大統領のファン=ロンバイ :長崎市の'''平和記念式典''' :原爆ドーム、広島県 広島市 [[File:Cornerstone of Peace.jpg|thumb|平和の礎(いしじ) (沖縄県 糸満市(いとまんし))<br />沖縄戦で亡くなった戦没者の氏名が刻まれている石碑(せきひ)。]] :「あたらしい憲法のはなし」、文章の抜粋 :「立憲主義」 :'''ワイマール憲法'''と社会権 :ボルテールとバスティーユ監獄 :薬局の距離制限の撤廃の件、1975年の最高裁判決により撤廃 :「水俣メモリアル」(水俣病の慰霊施設) == 福祉 == :補助犬(ほじょけん)、介護犬、盲導犬(もうどうけん)、 :2002年の身体障害者補助犬(ほじょけん)法 :「デイサービス」、「ケア マネジャ」 :介護福祉士、訪問介護員(ホームヘルパー)、社会福祉士 :'''ハンセン病'''、「らい病」、「らい病予防法」の欠陥、 * 医療関連 :着床前診断 :臓器移植法、2009年の改正内容 :薬のインターネット販売の議論 [[File:臓器提供意思表示カード(表面)2.jpg|thumb|臓器提供意思表示カード(表面)]] [[File:臓器提供意思表示カード(裏面)2.gif|thumb|臓器提供意思表示カード(裏面)]] :臓器提供意思表示カード、いわゆる「'''ドナーカード'''」 {{-}} ドナーカードの文面: ---- :<span style="font-size: larger;">(1,2,3) いずれかの番号を○で囲んでください。)</span> :<span style="font-size: larger;">1. 私は、<span style="color:red"><span style="text-decoration:underline">脳死後及び心臓が停止した死後のいずれでも</span></span>、移植の為に<br />  臓器を提供します。</span> :<span style="font-size: larger;">2. 私は、<span style="color:red"><span style="text-decoration:underline">心臓が停止した死後に限り</span></span>、移植の為に臓器を提供します。</span> :<span style="font-size: larger;">3. 私は臓器を提供しません。</span> :(1 又は 2 を選んだ方で、提供したくない臓器があれば、×をつけてください。) :::【 心臓 ・ 肺 ・ 肝臓 ・ 腎臓 ・ 膵臓 ・ 小腸 ・ 眼球 】 :〔特記欄 :                               〕 :署 名 年 月 日 :<span style="text-decoration:underline">  年  月  日</span> :本人署名(自筆) :<span style="text-decoration:underline">         </span> :家族署名(自筆) :<span style="text-decoration:underline">         </span> ---- 日本では2009年の臓器移植法(ぞうき いしょくほう)の改正により、本人の意志が不明でも、家族の承諾があれば、脳死での臓器提供ができるようになった。また、15歳未満の子どもからも、家族の承諾で脳死での臓器移植が可能になった。また、健康保険証や運転免許証にも、近年では、臓器提供の意思表示を記載できるようになっている。なお、目の角膜なども移植の対象になっている。マスメディアなどでの議論では、「脳死は、その人の死か?」という論点がある。 :臓器移植の論点 ::賛成の意見 ::反対の意見 [[File:Grameen Yunus Dec 04.jpg|thumb|マハマド=ユヌス]] :グラミン銀行、「'''マイクロクレジット'''」という用語、2006年ノーベル平和賞、ムハマド=ユヌス ダッカ事業はムハマド=ユヌスのグラミン銀行の融資によるMITメディアラボ、ペンシルベニア大学、キーランティンバーレイク建築設計事務所、社会学者の松本良多の協働で推進された開発事業計画がある。 ムハマド=ユヌスはバングラデシュの経済学者。 :「気候にかんする政府間パネル(IPCC)」 :アル・ゴア 元アメリカ副大統領 が温暖化問題の啓発活動の業績にてノーベル平和賞を2007年に受賞。 :佐渡トキ保護センター :ハリケーン、干ばつ、サンゴの白化、 : :2002年のSARS(サーズ、重症急性呼吸器症候群)、 :2009年の新型インフルエンザ。この年、成田空港では新型インフルの検疫も大規模に行われた。 :朝日新聞、毎日新聞、読売新聞、および、新聞によって論調が違うというメディア・リテラシー :湾岸戦争のときの水鳥の写真の件 :スイスの直接民主制 - スイスの一部の州では直接民主制が行われてる。挙手で、多数決の数を数える。 :ローマクラブ『成長の限界』、1972年 :気象衛星「ひまわり」、JAXA :国際宇宙ステーション、野口聡一(そういち)さんの長期滞在 :リニアーモーターカー、山梨県 都留市(つるし) :野田・元総理 :'''アウンサン=スー=チー'''、「軟禁」という用語 [[File:Martin Luther King Jr NYWTS.jpg|thumb|キング牧師]] :'''キング牧師'''、ワシントン大行進。黒人解放運動のえらい人。英語の教科書に「I Have a Dream」(私には夢がある)などの記述あり。 [[File:MotherTeresa 094.jpg|thumb|マザー=テレサ]] :'''マザー=テレサ''' :「アファーマティブ アクション」 :「ポジティブ アクション」 なお、アファーマティブはアメリカ系の表現、ポジティブはイギリス・欧州系の表現である(※どこかの高校教科書にそう書いてある)。 ポジティブアクションの例として学生に身近なのは、大学の「女子大」であろうか。(ただし、日本で女子大が出来たときには、まだ「ポジティブアクション」の言葉はなかったが)。 日本の文部科学省の管轄の大学に、「女子大」はあっても「男子大」はない。(なお防衛大は文科省ではなく防衛省の管轄なので、問題を簡単にするため、この話題では考えないとする。) ともかく、いわゆる「女子大」は、日本では歴史的には、先に男子の大学教育が出来てから、あとから女子にも大学教育を与えるべきだという理念にもとづいて行われた措置なので、「法の下(もと)の平等」の侵害には当たらないとされている。(教育出版の高校「公共」教科書の見解。) なお現代でも、共学の学校でも、いくつかの大学で(いくつもの大学で)、いわゆる「女子枠」というものが公言されたが、しかし受験の男女の機会均等の問題もあるので、たとえばある有名大学(T大学)では得点の加算は行わずに家賃補助など学費の優遇だけに留めるなど、抑制的な例もある。 ほか、K大学が、女子だけの入学定員を用意しようとしたが、しかし「法の下(もと)の平等」の件からの反対意見が多く、中止になった。 逆に、「女子差別」とマスコミなどで話題になった例だが、ある医大で、女子の入学者を減らそうとして、面接などで意図的に低い採点をして女子を減らしていたことが発覚した。その医大がそうしたことの背景には、せっかく女子の医者を育成しても、皮膚科・眼科や小児科に片寄ったりする統計的な事実があるなどの医学特有の事情もある。救急医療などの過酷な現場は、男性の医者が多いのが今のところは現実である(※ たとえば、月経などのタイミングで急患が来た場合の問題など、リアルな問題が色々とあるだろう。人手を増やそうとしても、それには予算の増額が必要であり、つまり国からの医療費の援助が必要だが、私たちが払える医療費にも限界がある)。 :※ なお、高校の教育出版「公共」の教科書に医大の地域枠や女子定員の問題が取り上げられている。 ※ 日本のばあい、中学・高校は基本的に男女の定員が同数だが、しかし大学はそうではない。大学には基本、男女別の定員は無い。 ※ 日本の場合、学部によっては、男女比が片寄っているのが現実である。理系や難関大学は男が多い傾向がある。(※ 教育出版の見解) 医大学側の経営の裁量もあるので、私たちが口出しをできることではないかもしれない。だが他人事とは考えず、医療費を増やす決断をするのか、それとも女性の医者はある程度は制限を受けることは仕方無いと考えるのか、色々と考えざるを得ないだろう。 性別の例ではないが、関連しそうな実例として、たとえば医大には「地域枠」という制度があり、医師不足が問題になっている地域の医大において、地元・近隣の受験生を優遇して得点加算などをする措置が、女子定員の問題になった医大だけでなく、多くの地方の医大で行われている。 この「地域枠」だって、地域外の受験生は、受験の成績が良くても、やや成績の劣る地元の受験生に入学枠をうばわれてしまう結果になっているわけである。しかしそれでも、地域の医師不足という問題を是正するために、他地域の受験生には我慢してもらっているわけである。 このように、なにかの差別や片寄りを是正しようとすることは、ほかの何かに負担を要求することでもある。そういったことを自覚した上で、その是正措置を導入すべきか、それとも導入しないのかを、私たちは、いろいろと考えていかなければならないだろう。 ※ 文献などは確認してないので正確な記述ではないが、「アファーマティブ・アクション」や「ポジティブ・アクション」とは、少数派や現状での不利益層のこうむっている格差是正のために、多数派や現状での利益層の不利がやや大きくなってでも介入すること。「積極的格差是正」などと翻訳されることも多い。実際にネット検索で「積極的格差是正」で検索しても、たとえば公的機関である内閣府のwebサイトが出てくる(たとえば[https://www.gender.go.jp/research/kenkyu/ishiki/kekka53.html 『ポジティブ・アクション(積極的差別是正措置)に対する意識』Copyright 2016 Gender Equality Bureau Cabinet Office.] 2022年2月21日に閲覧して確認)。 検定教科書では紹介していないが、かつて「ネガティブ・アクション」という用語があったはずなのだが、しかし意味が多義的であり、論者によって異なる意味で使われるので混乱があり、現代では用いないほうが安全だろう。(なので当然、検定教科書でも「ネガティブ・アクション」を紹介していない。) 英語圏では現代、差別的措置という意味で negative action ネガティブアクションという用語を用いているサイトもある。だが、かつては、自由競争を重視した限定的・弱めの格差是正という意味でネガティブ・アクションと言う用語が使われたこともあり、そういう弱めの是正介入がよく「消極的格差是正」などと和訳されていた。(1990年代の昔は普通に『イミダス』だったか『現代用語の基礎知識』あたりに、ポジティブアクションの対比としてネガティブアクションも紹介されていたような気がするのだが…。) 現代でも、上述の内閣府のweb資料にあるアメリカ人の意識調査の結果での、ポジティブアクション反対者のかかげる主な反対理由 ※ 以下、引用 <pre> ○アメリカでは、「自由な競争を妨げ、社会や企業の活力を損なう恐れがあるから」、「女性が優遇される結果、同じ能力を持つ男性が差別されるから」を挙げた者の割合が高い。 </pre> ※ 以上、引用 に、かつての1990年代にあっただろう「消極的格差是正」の議論の名残りが、うかがえる。 こういう混乱があるので現代では「ネガティブ・アクション」の用語は使わないほうが良いだろう。しかし、「消極的格差是正」の概念は消えたのに、一方でポジティブアクションの和訳である「積極的格差是正」の和訳の言葉だけが残りつづけており、なんとも意味不明な状況になっている。 さて、日本では、厚生労働省などが「男女共同参画社会」などの政策においてポジティブ・アクションの方策を打ち出している。だから教科書にも書かれるのだろう。 だが、何も男女格差の問題だけでなく、たとえば移民問題などでもこれらの格差是正のありかたは議論になる。実際、例えば文献『社会学のエッセンス』(有斐閣)<ref>友枝敏雄 ほか著『社会学のエッセンス 新版補訂版』、2018年8月5日 新版補訂版、P236</ref>を見れば、移民問題についてのイギリスにおけるアファーマテイブアクションの採用およびフランスにおける不採用の成果が両国とも芳しく(かんばしく)ないことを論じている。 フランスは移民問題で、たとえば公立学校でイスラム教徒の女子がスカーフをするのを禁じており、イスラム教徒を追放した。これは文献『社会学のエッセンス 新版補訂版』によれば移民問題においては、アファーマティブ・アクションを採用していないことになる<ref>友枝敏雄 ほか著『社会学のエッセンス 新版補訂版』、2018年8月5日 新版補訂版、P236</ref>。このフランスの例のように、別に欧米だからといって、アファーマティブ・アクション一色というわけではない。 ほか、高校の理科の教科書にある話題だが、教科書会社の東京書籍(教科書会社のひとつ)が「物理」科目の教科書で、大学の理系の学科で男女の比率が違うことをあげている。[https://www.asahi.com/articles/ASQ3Y5TC9Q3YUTIL01M.html ジェンダーギャップのリアル、物理でも歴史でも 変わる高校教科書 2022年3月29日 19時00分] 女子理系教育については日本では知識人が少ないのでネット上にはマトモな評論が少ない。 戦中生まれの女性の日本人物理学者の故・米沢富美子さん(2019年に没)が、彼女の高校生時代、両親に「自分は物理学科に進学したい」といったら、母親に(物理なんかに進学しないでくれと)泣かれたという自伝が、彼女の著書や彼女を取材した書籍などにある。 ほかにも、たしか2001~2010年にテレビ番組「ビートたけしのテレビタックル」で放映された事例だが、戦前に航空パイロットにあこがれる少女がいて、当時の少女雑誌などに私はそういうのに憧れているとの手紙を出したが、雑誌の回答者の大人の女性に批判ばかりされて誰も何の具体的なアドバイスもする大人がいなかったと、番組では当時の実態を暴露しており、番組のその回は女性解放運動家でもある文学者・田嶋陽子がゲストに招かれた放映回であり、田嶋は戦前のその状況に憤慨していた。 ネットの知識人の中には、そういう過去の女子への理系教育の乏しさの実情のことなんか何も知らないで、やれ自己責任だと言ってる稚拙な議論も多い。評論家が書籍を出そうが売れようが、歴史の取材を無視した書籍など、どんなに流行の話題(アニメ映画とか)と絡めて書いていようが、現実逃避のエンタメに過ぎない。アニメやらマンガの話題を取り入れようが、馬鹿は馬鹿であり、消費者ごと馬鹿である。 :通信傍受法、1999年に成立、2000年に施行 : :'''足利の冤罪'''(えんざい)事件、および「冤罪」という用語、菅谷さん(すがやさん)、「自由奪って申し訳ない」、2009年に釈放、2010年に無罪判決、1990年から殺人の罪で服役していた。 :検察審査会 :「住基カード」「共通番号制」 :「グラフィックデザイン」などの新しい職業名 :乳児死亡率 :薬害エイズ事件、「エイズウイルス」、「血友病」、「血液製剤」 : :エゴイズム :インフォームド・コンセント、 :'''アムネスティ・インターナショナル''' :良心の囚人 :説明責任(アカウンタビリティ) : :日本の紙幣(「お札」)の「ホログラム」、「特殊発光インキ」などの偽造対策 :ハンバーガーのM社、(マクドナルド、シカゴに本社)、多国籍企業の例として :イラクの「'''サマーワ'''」などへの自衛隊派遣。 :ロシアのメドベージェフ大統領(2009年)が核兵器削減の件で、アメリカのオバマ大統領とともに紹介されてる。 :爾来除去機と、それを開発したY社。 :都市鉱山 - 携帯電話やパソコンの中には、チタン、コバルトなどの貴重な金属が使われてる。これをうまく回収できれば儲けることもでき、限りある資源を有効利用することにもなる。 == 政治関連 == :閣議(かくぎ) :問責決議(もんせき けつぎ) :「ねじれ国会」2007年、 :首相官邸の屋上のヘリポートと、地下1階の危機管理センター :選挙の比例代表の「'''ドント式'''」 :'''政見放送'''(せいけん ほうそう) :政治家の「後援会」(こうえんかい) [[File:Badge of representatives of Japan 2012-05-17.jpg|thumb|議員バッジ(衆議院)]] :'''議員バッジ''' :'''議員立法''' :イギリスの政治のしくみ、(図解) 内閣不信任案の可決例 :馴れ合い解散(第2字吉田内閣)1948年、227:130 :バカヤロー解散(第2次 吉田内閣)1953年、229:218 :ハプニング解散(第4次 大平内閣)1980年、243:287 :嘘つき解散(宮澤内閣)1993年、255:220 刑罰の種類 :死刑 :懲役(ちょうえき) :禁固 :罰金 :科料(かりょう) 取り調べの可視化 == 未分類 == :子ども兵士 : :安藤忠雄(あんどうただお)、建築家 : :人権週間 :'''国境なき医師団'''(MSF) == 安全保障 == :コスタリカ憲法第12条 :ソマリアの海賊対策 :イージス艦 : :なお、イージス艦の値段は、1隻あたり訳1200億円(※ とうほう社「ビジュアル公民2020」調べ。参照ページはプライバシー保護(地域版なので)のため秘匿。) 「つくる会」や育鵬社などの教科書に併記の値段があるが、けっして「つくる会」がミリタリーオタクとか国威高揚とかで軍艦の値段を出してるわけではなく、他社の資料集にも軍艦など兵器の値段が書いてある。(なので検定にも通るのは当然。) なお、とうほう社の資料集によると、 :陸上自衛隊の「10式戦車」は1輌あたり約10億円。 :海上自衛隊のイージス艦の値段は、1隻あたり約1200億円 :航空自衛隊のF-35戦闘機は1機あたり約116億円とのこと。(※ 上記の陸海空の兵器の値段の出典は、すべてのとうほう社「ビジュアル公民2020」調べ) 最近の中学校では、こういうのも(受験範囲外だが)教養ということ。昭和とは、隔世の感がある。 == 地域振興、地方文化 == :せんとくん(奈良県)、ひこにゃん(滋賀県 彦根市(ひこねし) )、チーバくん、などの ゆるキャラ :たま駅長(和歌山県) :水木しげるロード(鳥取県、境港市(さかいみなとし))、 どっかの資料集で、マンガ「らきすた」 の かがみん (埼玉県の久喜市(くきし)のゆるキャラになった)を紹介してるらしい。 :※ 埼玉県自体のゆるキャラはコバトンという鳩のキャラが別にいる。 : == 規制緩和 == :かぜ薬のコンビニ販売 :バス事業の規制緩和 :「ゆうちょ銀行」(郵政民営化) : :大型店舗立地法が2000年制定。これは、規制緩和のほう(※ 名前の似た、緩和前の法律と混同しないように) 民営化 :1985年に電電公社がNTTに。 :1987年に国鉄がJRに。 :2007年に郵政民営化。 == 金融 == :銀行窓口で保険などが購入できることになった規制緩和の件。 :日銀の「公開市場操作」 :「管理通過制度」 :「外貨準備」 :「外国為替市場」 :1899年の古い紙幣の写真(日本の) :金利の「単利」と「複利」 == 労働問題 == :'''ハローワーク''' - 公共の職業紹介・案内所が、「ハローワーク」と言われる。また、失業保険などの手続きの方法も教えてくれる。 近年、まじめに働いても、収入が少ない人が増えてきて、そのような低収入の人たちは「'''ワーキングプア'''」と言われる。具体的には、年収200万円以下が、ワーキングプアだろう(正社員の新人の年収の相場が、だいたい300万円くらい)。また、低収入などの理由で、アパートなどの住居を借りれず、ネットカフェなどで寝泊まりする若者や低所得者が増えてきて、「ネットカフェ難民」と言われた。 2008年の世界的不況などで、派遣労働者が解雇され、「年越し派遣村」(としこし はけんむら)などに集まり、ボランティアの炊き出しなどを受けた。 :フレックスタイム制、'''パート'''、'''アルバイト''' :「'''セーフティネット'''」 :「就職氷河期」- 1993年〜2003年ごろは、就職がきびしく、「就職氷河期」(しゅうしょく ひょうがき)と言われた。 :プロ野球のストライキ(2004年)、ちなみにヤフースタジアムなどの写真が教科書にあり プロ野球選手だって、労働者です。プロ野球選手にだって、ストライキの権利はある。 :「名ばかり店長」 コンビニや牛丼屋など、夜中も商売してる小売業で、従業員に長時間労働をさせるため、名目的に管理職にする「名ばかり店長」が横行し、労働問題になっている。 :「労働審判(しんぱん)制度」、2006年 == 格差問題 == :「ジニ係数」 :「格差社会」 == 財政、税など == :「'''財政投融資'''」、「第二の予算」、「一般会計」と「特別会計」 : :「揮発油税」、「酒税」、「事業税」、 :「ふるさと納税」 == 貿易 == :GATT :牛肉とオレンジの輸入自由化 == 貿易の理論 == [[File:David ricardo.jpg|thumb|'''リカード'''(1772〜1823年) イギリスの経済学者。]] 貿易では、その国が相手の外国よりも安い値段で高品質に作れる製品を作ったほうが、両国にとって得である。また、もしもある国が2種類以上の商品を相手国よりも安く作れるとしたら、相対的により安いほうの商品の生産に集中して輸出するほうが、さらに利益をあげられる。この、相対的に安い商品の生産・輸出に特化したほうが利益をあげられるという説を、'''比較生産費説'''(ひかくせいさんひ せつ)という。 比較生産費説は、19世紀初めのイギリスの経済学者'''リカード'''(D.Rocardo)が初めて理論的に示した。このような理論が、自由貿易を主張する立場の者たちの、理論的根拠となっている。いっぽう、現実の貿易は、けっして完全な自由貿易ではなく、実際には、何らかの規制を加えている。自由貿易論に反対して、19世紀の当時、工業が発展途上であったドイツの経済学者'''リスト'''(F.List)は、自国の幼稚な産業を保護するための保護貿易が必要であると主張した。 == 未分類 == :「ビザ」(「入国許可証」) : : :国際法に強制力が「原則なし」という件 : == 紛争 == :ルワンダ虐殺の例の「教会」 : :サラエボが平和だったころ(1990年代の紛争前)の「サラエボ冬季オリンピック」(1984年) : == パレスチナ問題 == :ファタハ、パレスチナ解放機構(PLO)、 :インティファーダ :シャロン首相 :ラビン首相が暗殺された件 : : : : :「人間の安全保障」 : このほか、資料集には、第二次大戦中のイギリスの二枚舌(にまいじた)外交についての解説があるらしい。 == 環境、エコ == : : : : == 未分類 == :「メタンハイドレート」、(※ 日本文教出版がweb公開している教師用の指導書によると、まだ開発中であり実用化してないとのこと。また、教育出版の検定教科書でも、「開発が進められています」としかない。) :「iPS細胞」、※ 教育出版の公民教科書(2022年に公式webサイトで確認)の用語解説にある。あくまで研究段階であり、「研究が進められています」との記述があるが、一切実用化していますとかは書いてない。ES細胞などにも倫理問題(胚細胞を使うので)とともに言及。なお、iPS細胞は皮膚細胞から作るので、その種の問題が回避できると考えられている。公民教科書でも皮膚細胞からiPS細胞をつくることに言及。 :イギリスの防犯カメラ事情 :日本の防犯カメラ事情 :「仮想水」(virtual water<ref>高等学校英語 検定教科書『FACTBOOK English Logic and Expression I』、令和3年5月 文部科学省検定済、令和4年2月25日発行、P184 </ref>) :「フード・マイレージ」 :「農業生産法人」 :マラリア、ハマダラカ、アフリカのサハラ以南 : :トクホのマーク、「特定保健用食品」、(※ これは家庭科や保健体育などでも習う) :電気のPSEマーク(※ これは技術科でも習う)、 :おもちゃのSTマーク(※ これは家庭科でも習う)、 : :QRコード :「金融資本主義」 : :スマトラ島沖地震 : : :地下鉄サリン事件(1995年、年表中にて) :1994年の松本サリン事件。別人が犯人とうたがわれて、誤報になった件。 : :院内学級 義務教育などの教育を受ける権利は、たとえ病気で入院していても保障される。そのため、一部の病院には、教育施設のついた病院がある。「院内学級」のこと。 ;教育費の公的負担 帝国書院によると、公立学校の学費の年間の財政負担は、生徒1人あたり、 :小学生: 889,404円 :中学生: 1,033,857円 :高校生: 1,168,993円 ::(小中高とも平成18年度の金額) である。 なお、検定教科書では紹介されてないが、大学の学費は、国公立大では、年間の授業料は年間で50数万円だが、入学金が20数万円ほど掛かる。私立はもっと高い。 また(検定教科書では紹介されてないが)新人サラリーマンの年収が、おおよそ300万円前後だと言われている。 ;パソコン普及率 日本文教出版の教科書にあるグラフで(P.10)、世帯ごとのパソコンやスマホなどの機器別の普及率のグラフがあるのだが、それを見るとパソコン普及率はあいかわらず高く(2017年までのグラフだが)、2008年あたりからずっとパソコン普及率は80%前後を推移している。 2010年からスマホ普及率が急速に上昇して2010年の10%から2013年の60%に到達するのだが、別にそのあとの時代もパソコン普及率は低下していない。 ネットのデタラメ・不正確な情報(「最近の若者はパソコンを使えない」とかの類)にダマされないようにしよう。 == 資料集 == === スポーツのドラフト制度 === ある資料集では、プロ野球のドラフト制度と、「職業選択の自由」との関連を、考察させようとしているらしい。 (たしか正進社の)公民資料集で、オウム真理教問題の松本サリン事件を紹介。憲法の「身体の自由」や、メディアリテラシーの関連として紹介されているようだ。 戦前の「表現の自由」への弾圧の例として、蟹工船の作品内の文章が 伏せ字(ふせじ)にされた事の紹介。「ストライキ」などの文字が伏せ字にされた。 1988年の長崎市長銃撃事件が紹介されてるが、この解説文に犯人の特徴として「右翼」の文字がある。 「右翼」とか「左翼」とかの語彙は、じつは中学あたりで資料集で習っている可能性がある。 (教学社、正進社とも、)アメリカの近年の経済政策を紹介している。また、ヨーロッパの近年の移民問題などの動向も紹介している。 :アメリカのTPP離脱、 :メキシコとの国境に壁(まだ未達成)、 :鉄鋼・アルミに関税、 :移民制限、 などなど。 「アメリカ第一主義」や「アメリカファースト」などの用語(?)で、トランプのこれらの政策を紹介。 2018年のアメリカによる中国への関税措置。知的財産権の侵害などを理由に、アメリカは2018年、中国に関税などの処置をした。 ネット情報だが、2022年現在、中学あたりの教科書または資料集に、(TPPではなく)RCEP協定(アールセップきょうてい)についても言及しているようである(※教科書の現物はwiki編集時点では未確認)。 === ヨーロッパ情勢 === :イギリスがEUからの離脱の方針の事を紹介。2016年の国民投票でRU離脱派が勝利したことにより、イギリスでEU離脱の議論が活発化している事の紹介。 移民の受け入れ制限の方針転換<br> (いちぶの資料集では)ヨーロッパでは、移民が多くなりすぎた事により、既存の人種からの反発が高まり、移民受け入れを制限する方針になってる事を紹介している。 移民流入の制限のため、ハンガリーがルーマニアやセルビアとの国境を封鎖した事を紹介。 === 日本をとりまく国際関係 === ===== 北朝鮮および中国 ===== とうほう社の資料集「ビジュアル公民2020」によると、北朝鮮が2017年にロケット打ち上げしたりして国際問題になっていると言われてたり、中国(中間人民共和国)が南シナ海の南沙諸島を、2016年のオランダ・ハーグの常設仲裁裁判所の出した判決(中国の主張を退けた)に逆らって(中国が)軍事基地化を進めている事が問題視されている事などを紹介。 北朝鮮問題については、2018年の米朝韓の合意で、朝鮮半島の非核化の合意がされた事を紹介しつつも、しかし具体的なプロセスは進んでおらず、そして2019年には北朝鮮は再び強硬姿勢をつよめている、・・・と資料集は紹介。 南沙諸島については、中国の狙いは、南沙諸島の支配の既成事実化だろうという分析を、その資料集が紹介。また、日本の尖閣諸島も、同様の狙いで、中国に狙われているだろうと、資料集が分析を紹介。このため、日本も予断を許すべきではないと結んでいる。 :※ テレビや新聞などを読むと、取材などの都合でテレビ局は中国などには及び腰であったりするが、しかし実際の国際情勢認識は、とうほう社の資料集のように、きびしいものである。やはり勉強の手段としては、テレビではなく、教育的な書籍で勉強するに限る。 ===== 中国内 ===== 資料集では別のページだが、香港民主化デモの問題も述べている。民主活動家のアグネス・チョウさん(周・庭さん)を資料集では紹介。 資料集には、スウェーデンの環境活動家のグレタさんとか、イスラムの女性の人権問題の活動家のアフメディさんとか、黒人問題のケリスさんなどの若い女性の政治運動を紹介するページが資料集にあり、そのページで、アグネス・チョウさんも紹介している。 2019年に、香港の犯罪者の中国引渡しの条例があり、香港では激しい抗議運動が起きた。アグネス・チョウさんもその活動に関わっている。なお、べつに2019年にアグネスさんは活動を始めたわけではなく、遅くとも2014年の「雨傘運動」(あまがさ うんどう)という民主化運動にはアグネスさんは参加している。 ※ と、とうほう社の資料集はアグネスさんを紹介。 ===== 日韓 ===== 日韓問題では、徴用工問題が、とうほう社の資料集で紹介されている。(慰安婦問題は、未紹介。) 韓国の最高裁にあたる大法院のくだした新日鉄住金(企業名)への賠償命令など、資料集に記載。そして、この判決にもとづいて、韓国内で日本企業に対する差し押さえが進んでいると、資料集は言っている。 なお日本政府は、原告(徴用されたとする朝鮮人)は「徴用」ではなく「募集」に応じたものだという(日本政府の)見解である(※ 資料集が伝えている)。日本政府はこの件では、韓国側の行動には否定的である。 半導体の製造に必要なフッ化水素の輸出規制の件も、資料集は上記の徴用工問題に続けて紹介している。輸出規制といっても、許可不要で輸出できる対象から韓国を外しただけである(そう資料集に書いてある)。(※ なので、フッ化水素の輸入自体は、韓国はいまでも可能である。) しかし、韓国は日本のこの輸出規制の強化に反発し、そして日米韓の3か国で結んでいる軍事包括協定(GSOMIA、ジーショミア)の破棄を 韓国は通告した(※ と、資料集が言っている)。 ===== 日露 ===== さて、日露方面では、北方領土の返還交渉は、2020年以降も、いまだに済んでいない。 たびたび日露両国の政府どうしの返還交渉が話題になるが、しかし2019年の時点ではプーチン大統領が「北方領土を日本に引き渡す計画は無い」と発言している。(と、資料集が紹介している。) ===== 日米 ===== 日米関係については、アメリカのトランプ政権誕生のことが資料集に紹介されているが、しかし2020年の後半(資料集の編集期間はその前だろう)、米国でトランプが大統領選に敗退したので、さてwikibooksでは紹介するべきか否か?(なるべく今後の教科書本文にも応用できそうな話題を書きたいので。) 条約や協定として、経済協定として、「日米物品貿易協定」が2019年に合意された(※ 資料集でも紹介されている)。これは、アメリカがトランプ政権時にTPPから離脱しており、アメリカにとっては代わりの貿易協定のようなものと考えられる。 他のページだが資料集では、沖縄の米軍基地の、オスプレイ問題なども紹介。 === その他、資料集にある時事 === :・ヘイトスピーチ問題の件 :・2019年の「アイヌ民族支援法」。なおこれにより、アイヌ文化振興法は役割を終えた。 ※ なお2019年成立のこの法律のことを「アイヌ施策推進法」ともいう。一部のマスコミなどが「アイヌ民族支援法」とも呼んでいるので、間違いではない。※ 高校の話題だが、高校教科書の第一学習社「公共」教科書で、漫画『ゴールデンカムイ』を明治時代のアイヌ文化を描いた作品だと紹介していた(いちいち高校側で専用ページを設けるほどでもないので、中学側でまとめて紹介)。 :・某私立医大の女子受験生への差別の件 :・LGBT (※2022年現在、(資料集だけでなく)教育出版の公民の検定教科書でも、コラムでLGBTが取り上げられているらしい。(※現物は未確認) )高校の範囲だが、なお、すでに2003年の時点で'''性同一性障害特例法'''という法律が制定されており、裁判所から性同一性障害を公的に認められれば性別を変更でき、結婚などもできる(※ 高校の第一学習社の「公共」教科書で確認)。 :・足利事件(やや古いが、検索の都合上、このリストに載せておく) :・共謀罪。なお2017年に成立した組織犯罪処罰法における、「テロ等準備罪」のこと。 :・皇族の減少問題。もちろん、日本の天皇家やその親戚のこと。女性皇族の是非の議論のあることの紹介や、それにともなう皇室典範の改正の是非の議論などが紹介されている。 :・医薬品販売の規制緩和により、一般用医薬品のネット販売が2014年から原則的に解禁されてる事。なお、それ以前から、コンビニで2009年から風邪薬や鎮痛剤が販売可能になっている。 :・2018年、中国が廃プラスチックの輸入禁止。2019年、廃プラスチックの輸出を禁止するバーゼル条約改正案が採択された。 :・2019年、アメリカがパリ協定から離脱。 :・2018年、イスラエルが、イランが核開発を行っている証拠をつかんだと発表。これをうけアメリカのトランプ政権は、イラン核合意から離脱。イラン核合意は、イランが核兵器開発につながるウラン濃縮をしない代わりに、イランへの制裁を解除するという合意。つまり、イランへの制裁が強まる可能性が高い。もちろんイランは、アメリカのイラン核合意からの離脱に反発し、アメリカへの抗議が行われてた。 逆に、無い話題をあげれば、コロナ問題は、まだ、とうほう社の資料集には、なにも言及されていない。 : : : : == 脚注 == q8kap4n8l9akibb8qaez9fp5ums9ywc 元禄文化 0 30319 205552 202359 2022-07-20T02:58:30Z 153.231.2.152 /* 文芸 */ wikitext text/x-wiki {{Pathnav|メインページ|小学校・中学校・高等学校の学習|中学校の学習|中学校社会|中学校社会 歴史|[[中学校社会 歴史/江戸時代の文化と学問|江戸時代の文化と学問]]|frame=1}} {{Wikipedia}} [[:w:江戸時代|江戸時代]]の文化は、まず、17世紀末ごろから18世紀はじめごろにかけて、[[:w:大阪|大阪]]や[[:w:京都|京都]]を中心に、新しい文化<big>「'''[[:w:元禄文化|元禄文化]]'''」</big>(げんろくぶんか)が生まれ、発展した。江戸の半ば頃から文化の中心が[[:w:江戸|江戸]]に移っていった。 江戸時代はじめ頃の大阪や京都を中心とした文化を'''元禄文化'''(げんろくぶんか)と言う。[[:w:元禄|元禄]]とは、この時代の元号が元禄(げんろく)だからだ。元禄文化の特ちょうは、町人を中心とした文化であり、生き生きとした活気のある文化である事が、元禄文化の特ちょうである。 元禄は南蛮文化 ==== 絵画 ==== [[ファイル:Beauty looking back.jpg|thumb|210px|『見返り(みかえり)美人図』 [[:w:菱川師宣|菱川師宣]](ひしかわ もろのぶ)の筆。]] [[File:Irises screen 2.jpg|thumb|450px|『[[:w:燕子花図|燕子花図(かきつばたず)屏風]]』 [[:w:尾形光琳|尾形光琳]](おがた こうりん)の筆。]] [[File:Ogata Korin - RED AND WHITE PLUM BLOSSOMS (National Treasure) - Google Art Project.jpg|thumb|450px|『紅白梅図(こうはくばいず)屏風』 [[:w:尾形光琳|尾形光琳]](おがた こうりん)の筆。]] 絵画では、描かれる対象が町人や女性などのようすになり、それらの絵を版画(はんが)を利用して印刷する<big>'''[[:w:浮世絵|浮世絵]]'''</big>(うきよえ)が、絵描きの<big>'''[[:w:菱川師宣|菱川師宣]]'''</big>(ひしかわ もろのぶ)によって広まりました。 しだいに、浮世絵は木版画(もくはんが)によって、たくさん刷られる(すられる)ようになり、庶民に広まっていった。 (※ 参考 :)貿易などを通じてヨーロッパにも浮世絵が伝わっていき、ヨーロッパでも浮世絵は評判になり、のちにゴッホなどに影響を与え。ヨーロッパでは浮世絵に影響を受けた絵画手法は「ジャポニズム」と言われました。 :(※ 歴史の令和3年版予定の検定教科書でもコラムで「ゴッホ」と「ジャポニズム」の関係を扱っている。「ジャポニズム」の用語記載もあり。小学校でも既に「ゴッホ」をコラムなどで扱っている会社もある。) <gallery widths=350px heights=350px> 画像:Hiroshige Van Gogh 2.JPG|歌川広重の錦絵とゴッホの模写<br>左が歌川広重『[[:w:大はしあたけの夕立|大橋あたけの夕立]]』。右がゴッホの模写作『雨の大橋』。 </gallery> 絵画では浮世絵の他にも、装飾画の分野で'''[[:w:尾形光琳|尾形光琳]]'''(おがた こうりん)が活躍しました。 ==== 演劇など ==== * 人形浄瑠璃 物語を、三味線などを伴奏にしてリズミカルに節をつけて、あやつり人形をうごかしながら語るという<big>'''[[:w:人形浄瑠璃|人形浄瑠璃]]'''</big>(にんぎょうじょうるり)が元禄期の大阪や京都で、はやりました。 人形浄瑠璃の脚本家(きゃくほんか)では、<big>'''[[:w:近松門左衛門|近松門左衛門]]'''</big>(ちかまつ もんざえもん)が有名である。近松の作品には『曽根崎心中』(そねざきしんじゅう)や『国性爺合戦』(こくせんや かっせん)などがあります。 * 歌舞伎(かぶき) 歌舞伎(かぶき)は、江戸時代、踊り(おどり)ではなく演劇(えんげき)を中心とするものへと、変わった。 [[Category:中学校歴史]] {{DEFAULTSORT:けんろくふんか}} cvyohtdxdqpxjq6hsd24wdel2mnqu7k 205553 205552 2022-07-20T03:00:42Z 153.231.2.152 /* 絵画 */ wikitext text/x-wiki {{Pathnav|メインページ|小学校・中学校・高等学校の学習|中学校の学習|中学校社会|中学校社会 歴史|[[中学校社会 歴史/江戸時代の文化と学問|江戸時代の文化と学問]]|frame=1}} {{Wikipedia}} [[:w:江戸時代|江戸時代]]の文化は、まず、17世紀末ごろから18世紀はじめごろにかけて、[[:w:大阪|大阪]]や[[:w:京都|京都]]を中心に、新しい文化<big>「'''[[:w:元禄文化|元禄文化]]'''」</big>(げんろくぶんか)が生まれ、発展した。江戸の半ば頃から文化の中心が[[:w:江戸|江戸]]に移っていった。 江戸時代はじめ頃の大阪や京都を中心とした文化を'''元禄文化'''(げんろくぶんか)と言う。[[:w:元禄|元禄]]とは、この時代の元号が元禄(げんろく)だからだ。元禄文化の特ちょうは、町人を中心とした文化であり、生き生きとした活気のある文化である事が、元禄文化の特ちょうである。 元禄は南蛮文化 fuck you e ==== 演劇など ==== * 人形浄瑠璃 物語を、三味線などを伴奏にしてリズミカルに節をつけて、あやつり人形をうごかしながら語るという<big>'''[[:w:人形浄瑠璃|人形浄瑠璃]]'''</big>(にんぎょうじょうるり)が元禄期の大阪や京都で、はやりました。 人形浄瑠璃の脚本家(きゃくほんか)では、<big>'''[[:w:近松門左衛門|近松門左衛門]]'''</big>(ちかまつ もんざえもん)が有名である。近松の作品には『曽根崎心中』(そねざきしんじゅう)や『国性爺合戦』(こくせんや かっせん)などがあります。 * 歌舞伎(かぶき) 歌舞伎(かぶき)は、江戸時代、踊り(おどり)ではなく演劇(えんげき)を中心とするものへと、変わった。 [[Category:中学校歴史]] {{DEFAULTSORT:けんろくふんか}} hrbk3naux651b0rechqw3vjg4eazauh 205555 205553 2022-07-20T03:01:12Z Victor Trevor 69353 Undid edits by [[Special:Contribs/153.231.2.152|153.231.2.152]] ([[User talk:153.231.2.152|talk]]) to last version by 163.43.148.52: reverting vandalism wikitext text/x-wiki {{Pathnav|メインページ|小学校・中学校・高等学校の学習|中学校の学習|中学校社会|中学校社会 歴史|[[中学校社会 歴史/江戸時代の文化と学問|江戸時代の文化と学問]]|frame=1}} {{Wikipedia}} [[:w:江戸時代|江戸時代]]の文化は、まず、17世紀末ごろから18世紀はじめごろにかけて、[[:w:大阪|大阪]]や[[:w:京都|京都]]を中心に、新しい文化<big>「'''[[:w:元禄文化|元禄文化]]'''」</big>(げんろくぶんか)が生まれ、発展した。江戸の半ば頃から文化の中心が[[:w:江戸|江戸]]に移っていった。 江戸時代はじめ頃の大阪や京都を中心とした文化を'''元禄文化'''(げんろくぶんか)と言う。[[:w:元禄|元禄]]とは、この時代の元号が元禄(げんろく)だからだ。元禄文化の特ちょうは、町人を中心とした文化であり、生き生きとした活気のある文化である事が、元禄文化の特ちょうである。 ==== 文芸 ==== 町人の生活をえがいた小説が好まれるようになった。江戸時代、町人など庶民の様子をえがいた小説のことを '''[[:w:浮世草子|浮世草子]]'''(うきよぞうし) という。大阪の小説家の<big>'''[[:w:井原西鶴|井原西鶴]]'''</big>(いはらさいかく)が『日本永代蔵』(にほんえいたいぐら)や『世間胸算用』(せけん むねさんよう)などを表した。井原の小説などが「浮世草子」と呼ばれている。 (※ 範囲外: )井原西鶴は、『好色一代男』(こうしょく いちだいおとこ)という作品も書いた。色恋(いろこい)に あけくれる主人公の男性をテーマにした作品である。 元禄文化のさかえた大阪は、商業のさかんな都市であり、町人の気風がつよく影響している。 * 俳諧(はいかい) 5・7・5の口調で季節の様子を句にする<big>俳諧</big>(はいかい)は、<big>'''[[:w:松尾芭蕉|松尾芭蕉]]'''</big>(まつお ばしょう)によって生み出された。俳句は連歌が、もとになっている。 芭蕉は、 :「古池(ふるいけ)や 蛙(かわず)飛びこむ 水(みず)の音(おと)」 など多くの句を作りました。 また芭蕉は諸国を旅して、その観察した諸国の様子を<big>『[[:w:奥の細道|奥の細道]]』</big>(おくの ほそみち)にまとめた。 ==== 絵画 ==== [[ファイル:Beauty looking back.jpg|thumb|210px|『見返り(みかえり)美人図』 [[:w:菱川師宣|菱川師宣]](ひしかわ もろのぶ)の筆。]] [[File:Irises screen 2.jpg|thumb|450px|『[[:w:燕子花図|燕子花図(かきつばたず)屏風]]』 [[:w:尾形光琳|尾形光琳]](おがた こうりん)の筆。]] [[File:Ogata Korin - RED AND WHITE PLUM BLOSSOMS (National Treasure) - Google Art Project.jpg|thumb|450px|『紅白梅図(こうはくばいず)屏風』 [[:w:尾形光琳|尾形光琳]](おがた こうりん)の筆。]] 絵画では、描かれる対象が町人や女性などのようすになり、それらの絵を版画(はんが)を利用して印刷する<big>'''[[:w:浮世絵|浮世絵]]'''</big>(うきよえ)が、絵描きの<big>'''[[:w:菱川師宣|菱川師宣]]'''</big>(ひしかわ もろのぶ)によって広まりました。 しだいに、浮世絵は木版画(もくはんが)によって、たくさん刷られる(すられる)ようになり、庶民に広まっていった。 (※ 参考 :)貿易などを通じてヨーロッパにも浮世絵が伝わっていき、ヨーロッパでも浮世絵は評判になり、のちにゴッホなどに影響を与え。ヨーロッパでは浮世絵に影響を受けた絵画手法は「ジャポニズム」と言われました。 :(※ 歴史の令和3年版予定の検定教科書でもコラムで「ゴッホ」と「ジャポニズム」の関係を扱っている。「ジャポニズム」の用語記載もあり。小学校でも既に「ゴッホ」をコラムなどで扱っている会社もある。) <gallery widths=350px heights=350px> 画像:Hiroshige Van Gogh 2.JPG|歌川広重の錦絵とゴッホの模写<br>左が歌川広重『[[:w:大はしあたけの夕立|大橋あたけの夕立]]』。右がゴッホの模写作『雨の大橋』。 </gallery> 絵画では浮世絵の他にも、装飾画の分野で'''[[:w:尾形光琳|尾形光琳]]'''(おがた こうりん)が活躍しました。 ==== 演劇など ==== * 人形浄瑠璃 物語を、三味線などを伴奏にしてリズミカルに節をつけて、あやつり人形をうごかしながら語るという<big>'''[[:w:人形浄瑠璃|人形浄瑠璃]]'''</big>(にんぎょうじょうるり)が元禄期の大阪や京都で、はやりました。 人形浄瑠璃の脚本家(きゃくほんか)では、<big>'''[[:w:近松門左衛門|近松門左衛門]]'''</big>(ちかまつ もんざえもん)が有名である。近松の作品には『曽根崎心中』(そねざきしんじゅう)や『国性爺合戦』(こくせんや かっせん)などがあります。 * 歌舞伎(かぶき) 歌舞伎(かぶき)は、江戸時代、踊り(おどり)ではなく演劇(えんげき)を中心とするものへと、変わった。 [[Category:中学校歴史]] {{DEFAULTSORT:けんろくふんか}} ehjgmrtjtmwx1rin6kp03mc388uf8ll 205556 205555 2022-07-20T03:01:23Z 153.231.2.152 /* 演劇など */ wikitext text/x-wiki {{Pathnav|メインページ|小学校・中学校・高等学校の学習|中学校の学習|中学校社会|中学校社会 歴史|[[中学校社会 歴史/江戸時代の文化と学問|江戸時代の文化と学問]]|frame=1}} {{Wikipedia}} [[:w:江戸時代|江戸時代]]の文化は、まず、17世紀末ごろから18世紀はじめごろにかけて、[[:w:大阪|大阪]]や[[:w:京都|京都]]を中心に、新しい文化<big>「'''[[:w:元禄文化|元禄文化]]'''」</big>(げんろくぶんか)が生まれ、発展した。江戸の半ば頃から文化の中心が[[:w:江戸|江戸]]に移っていった。 江戸時代はじめ頃の大阪や京都を中心とした文化を'''元禄文化'''(げんろくぶんか)と言う。[[:w:元禄|元禄]]とは、この時代の元号が元禄(げんろく)だからだ。元禄文化の特ちょうは、町人を中心とした文化であり、生き生きとした活気のある文化である事が、元禄文化の特ちょうである。 ==== 文芸 ==== 町人の生活をえがいた小説が好まれるようになった。江戸時代、町人など庶民の様子をえがいた小説のことを '''[[:w:浮世草子|浮世草子]]'''(うきよぞうし) という。大阪の小説家の<big>'''[[:w:井原西鶴|井原西鶴]]'''</big>(いはらさいかく)が『日本永代蔵』(にほんえいたいぐら)や『世間胸算用』(せけん むねさんよう)などを表した。井原の小説などが「浮世草子」と呼ばれている。 (※ 範囲外: )井原西鶴は、『好色一代男』(こうしょく いちだいおとこ)という作品も書いた。色恋(いろこい)に あけくれる主人公の男性をテーマにした作品である。 元禄文化のさかえた大阪は、商業のさかんな都市であり、町人の気風がつよく影響している。 * 俳諧(はいかい) 5・7・5の口調で季節の様子を句にする<big>俳諧</big>(はいかい)は、<big>'''[[:w:松尾芭蕉|松尾芭蕉]]'''</big>(まつお ばしょう)によって生み出された。俳句は連歌が、もとになっている。 芭蕉は、 :「古池(ふるいけ)や 蛙(かわず)飛びこむ 水(みず)の音(おと)」 など多くの句を作りました。 また芭蕉は諸国を旅して、その観察した諸国の様子を<big>『[[:w:奥の細道|奥の細道]]』</big>(おくの ほそみち)にまとめた。 ==== 絵画 ==== [[ファイル:Beauty looking back.jpg|thumb|210px|『見返り(みかえり)美人図』 [[:w:菱川師宣|菱川師宣]](ひしかわ もろのぶ)の筆。]] [[File:Irises screen 2.jpg|thumb|450px|『[[:w:燕子花図|燕子花図(かきつばたず)屏風]]』 [[:w:尾形光琳|尾形光琳]](おがた こうりん)の筆。]] [[File:Ogata Korin - RED AND WHITE PLUM BLOSSOMS (National Treasure) - Google Art Project.jpg|thumb|450px|『紅白梅図(こうはくばいず)屏風』 [[:w:尾形光琳|尾形光琳]](おがた こうりん)の筆。]] 絵画では、描かれる対象が町人や女性などのようすになり、それらの絵を版画(はんが)を利用して印刷する<big>'''[[:w:浮世絵|浮世絵]]'''</big>(うきよえ)が、絵描きの<big>'''[[:w:菱川師宣|菱川師宣]]'''</big>(ひしかわ もろのぶ)によって広まりました。 しだいに、浮世絵は木版画(もくはんが)によって、たくさん刷られる(すられる)ようになり、庶民に広まっていった。 (※ 参考 :)貿易などを通じてヨーロッパにも浮世絵が伝わっていき、ヨーロッパでも浮世絵は評判になり、のちにゴッホなどに影響を与え。ヨーロッパでは浮世絵に影響を受けた絵画手法は「ジャポニズム」と言われました。 :(※ 歴史の令和3年版予定の検定教科書でもコラムで「ゴッホ」と「ジャポニズム」の関係を扱っている。「ジャポニズム」の用語記載もあり。小学校でも既に「ゴッホ」をコラムなどで扱っている会社もある。) <gallery widths=350px heights=350px> 画像:Hiroshige Van Gogh 2.JPG|歌川広重の錦絵とゴッホの模写<br>左が歌川広重『[[:w:大はしあたけの夕立|大橋あたけの夕立]]』。右がゴッホの模写作『雨の大橋』。 </gallery> 絵画では浮世絵の他にも、装飾画の分野で'''[[:w:尾形光琳|尾形光琳]]'''(おがた こうりん)が活躍しました。 fucker 8f0so0y31vmz7sjp17ux4qy4666r49g 205557 205556 2022-07-20T03:01:31Z Victor Trevor 69353 Undid edits by [[Special:Contribs/153.231.2.152|153.231.2.152]] ([[User talk:153.231.2.152|talk]]) to last version by Victor Trevor: reverting vandalism wikitext text/x-wiki {{Pathnav|メインページ|小学校・中学校・高等学校の学習|中学校の学習|中学校社会|中学校社会 歴史|[[中学校社会 歴史/江戸時代の文化と学問|江戸時代の文化と学問]]|frame=1}} {{Wikipedia}} [[:w:江戸時代|江戸時代]]の文化は、まず、17世紀末ごろから18世紀はじめごろにかけて、[[:w:大阪|大阪]]や[[:w:京都|京都]]を中心に、新しい文化<big>「'''[[:w:元禄文化|元禄文化]]'''」</big>(げんろくぶんか)が生まれ、発展した。江戸の半ば頃から文化の中心が[[:w:江戸|江戸]]に移っていった。 江戸時代はじめ頃の大阪や京都を中心とした文化を'''元禄文化'''(げんろくぶんか)と言う。[[:w:元禄|元禄]]とは、この時代の元号が元禄(げんろく)だからだ。元禄文化の特ちょうは、町人を中心とした文化であり、生き生きとした活気のある文化である事が、元禄文化の特ちょうである。 ==== 文芸 ==== 町人の生活をえがいた小説が好まれるようになった。江戸時代、町人など庶民の様子をえがいた小説のことを '''[[:w:浮世草子|浮世草子]]'''(うきよぞうし) という。大阪の小説家の<big>'''[[:w:井原西鶴|井原西鶴]]'''</big>(いはらさいかく)が『日本永代蔵』(にほんえいたいぐら)や『世間胸算用』(せけん むねさんよう)などを表した。井原の小説などが「浮世草子」と呼ばれている。 (※ 範囲外: )井原西鶴は、『好色一代男』(こうしょく いちだいおとこ)という作品も書いた。色恋(いろこい)に あけくれる主人公の男性をテーマにした作品である。 元禄文化のさかえた大阪は、商業のさかんな都市であり、町人の気風がつよく影響している。 * 俳諧(はいかい) 5・7・5の口調で季節の様子を句にする<big>俳諧</big>(はいかい)は、<big>'''[[:w:松尾芭蕉|松尾芭蕉]]'''</big>(まつお ばしょう)によって生み出された。俳句は連歌が、もとになっている。 芭蕉は、 :「古池(ふるいけ)や 蛙(かわず)飛びこむ 水(みず)の音(おと)」 など多くの句を作りました。 また芭蕉は諸国を旅して、その観察した諸国の様子を<big>『[[:w:奥の細道|奥の細道]]』</big>(おくの ほそみち)にまとめた。 ==== 絵画 ==== [[ファイル:Beauty looking back.jpg|thumb|210px|『見返り(みかえり)美人図』 [[:w:菱川師宣|菱川師宣]](ひしかわ もろのぶ)の筆。]] [[File:Irises screen 2.jpg|thumb|450px|『[[:w:燕子花図|燕子花図(かきつばたず)屏風]]』 [[:w:尾形光琳|尾形光琳]](おがた こうりん)の筆。]] [[File:Ogata Korin - RED AND WHITE PLUM BLOSSOMS (National Treasure) - Google Art Project.jpg|thumb|450px|『紅白梅図(こうはくばいず)屏風』 [[:w:尾形光琳|尾形光琳]](おがた こうりん)の筆。]] 絵画では、描かれる対象が町人や女性などのようすになり、それらの絵を版画(はんが)を利用して印刷する<big>'''[[:w:浮世絵|浮世絵]]'''</big>(うきよえ)が、絵描きの<big>'''[[:w:菱川師宣|菱川師宣]]'''</big>(ひしかわ もろのぶ)によって広まりました。 しだいに、浮世絵は木版画(もくはんが)によって、たくさん刷られる(すられる)ようになり、庶民に広まっていった。 (※ 参考 :)貿易などを通じてヨーロッパにも浮世絵が伝わっていき、ヨーロッパでも浮世絵は評判になり、のちにゴッホなどに影響を与え。ヨーロッパでは浮世絵に影響を受けた絵画手法は「ジャポニズム」と言われました。 :(※ 歴史の令和3年版予定の検定教科書でもコラムで「ゴッホ」と「ジャポニズム」の関係を扱っている。「ジャポニズム」の用語記載もあり。小学校でも既に「ゴッホ」をコラムなどで扱っている会社もある。) <gallery widths=350px heights=350px> 画像:Hiroshige Van Gogh 2.JPG|歌川広重の錦絵とゴッホの模写<br>左が歌川広重『[[:w:大はしあたけの夕立|大橋あたけの夕立]]』。右がゴッホの模写作『雨の大橋』。 </gallery> 絵画では浮世絵の他にも、装飾画の分野で'''[[:w:尾形光琳|尾形光琳]]'''(おがた こうりん)が活躍しました。 ==== 演劇など ==== * 人形浄瑠璃 物語を、三味線などを伴奏にしてリズミカルに節をつけて、あやつり人形をうごかしながら語るという<big>'''[[:w:人形浄瑠璃|人形浄瑠璃]]'''</big>(にんぎょうじょうるり)が元禄期の大阪や京都で、はやりました。 人形浄瑠璃の脚本家(きゃくほんか)では、<big>'''[[:w:近松門左衛門|近松門左衛門]]'''</big>(ちかまつ もんざえもん)が有名である。近松の作品には『曽根崎心中』(そねざきしんじゅう)や『国性爺合戦』(こくせんや かっせん)などがあります。 * 歌舞伎(かぶき) 歌舞伎(かぶき)は、江戸時代、踊り(おどり)ではなく演劇(えんげき)を中心とするものへと、変わった。 [[Category:中学校歴史]] {{DEFAULTSORT:けんろくふんか}} ehjgmrtjtmwx1rin6kp03mc388uf8ll JavaScript/strictモード 0 31785 205527 188517 2022-07-19T12:23:22Z Ef3 694 語尾の統一 wikitext text/x-wiki {{Nav}} '''Strict モード'''は、通常はエラーとはせず見逃していたプログラミング上の省略をエラーにするなど、より厳格に振る舞うモードです。 Strict モードは、ECMAScript 2009 = ES5 で導入されました<ref>初見: https://www.ecma-international.org/wp-content/uploads/ECMA-262_5th_edition_december_2009.pdf#page=61 10.1.1 Strict Mode Code、現行: https://262.ecma-international.org/#sec-strict-mode-of-ecmascript C The Strict Mode of ECMAScript</ref>。 == 概要 == Strict モードはスクリプト全体あるいは、個別の関数に適用できます(var 宣言された変数のスコープと似ていますね)。 '''スクリプト全体をStrict モードにする場合''' <syntaxhighlight lang="javascript" highlight="1" line> 'use strict'; var msg = "Hello strict world!"; console.log(msg); </syntaxhighlight> この例では怪しい兆候がないので、Hello strict world! が表示されました。 <syntaxhighlight lang="javascript" highlight="2" line> 'use strict'; msg = "Hello strict world!"; console.log(msg); </syntaxhighlight> 1箇所変更しました。 実行すると、'''ReferenceError: msg is not defined''' となります。 {{code|var}}を省略したので、(初期化を伴う)変数宣言から代入になり「define している場所がない」状況がエラーになっています。 {{code|'use strict';}} をとってみます。 <syntaxhighlight lang="javascript" highlight="1" line> msg = "Hello strict world!"; console.log(msg); </syntaxhighlight> Hello strict world! が表示されました。 '''関数単位でStrict モードにする場合''' <syntaxhighlight lang="javascript" highlight="8,10" line> console.log(0) function nostrict() { msg = "Hello nostrict function!"; console.log(msg + 0177); } console.log(1) function strict() { 'use strict'; msg = "Hello strict function!"; console.log(msg + 0177); } console.log(2) // SyntaxError: Octal literals are not allowed in strict mode. </syntaxhighlight> console.log() による表示は全く行われないでエラーで止まります。 0に[0-7]が続く書式の八進数表現はstrictモードではエラーです。 == class 定義は自動的に strict モード == ES6で導入された[[JavaScript/クラス|クラス]](class)の定義の中では、自動的にstrict モードになります。 == strict モードのエラー対象 == {{節スタブ}} * [[JavaScript/変数#未宣言のグローバル変数|未宣言のグローバル変数への代入]] * [[JavaScript/数値#数値リテラル|0に[0-7]が続く書式の八進数表現]] * [[JavaScript/制御構造#with文|with文]] * [[JavaScript/Global#NaN|NaNへの代入]] * implements, interface, let, package, private, protected, public, static, yield を予約語扱いにします(ES5当時、その後正規の予約語になったものも) {{Nav}} == 脚註 == <references/> [[Category:JavaScript|strictもと]] {{stub}} aih1f38kg5yh3bl8yowzmmm2po9slz3 JavaScript/クラス 0 32848 205526 203426 2022-07-19T12:21:49Z Ef3 694 語尾の統一 wikitext text/x-wiki {{Nav}} == クラス == {{Main|JavaScript/プロトタイプベース|JavaScript/オブジェクト}} :オブジェクト指向の用語については「[[オブジェクト指向プログラミング]]」を参照のこと。 === 概要 === ECMAScript2015(ES6)で導入された、キーワード '''class''' (クラス)は、オブジェクトを作成するためのテンプレートです<ref>{{Cite web |url=https://developer.mozilla.org/en-US/docs/Web/JavaScript/Reference/Classes |title=Classes - JavaScript // MDN |date=2021/11/10 |accessdate=2021/11/20 }}</ref>。 クラスは、データと、それ自身を処理するコードとともにカプセル化します。 クラスを導入した後もECMAScript/JavaScriptはプロトタイプベースのオブジェクト指向スクリプティング言語ですが、ES5までのクラス似のセマンティクスとは異なる構文やセマンティクスを持っています。 ;[https://paiza.io/projects/YVKrXPeS26opDanprCAxQw?language=javascript コード例]:<syntaxhighlight lang="javascript" highlight="2-4,6-8,10-12,15,16" line> class Hello { constructor(name = "world") { this.name = name; } toString() { return `Hello ${this.name}` } print() { console.log(String(this)) } } const hello = new Hello() hello.print() const hello2 = new Hello("my friend") hello2.print() console.log( `typeof Hello === ${typeof Hello} Object.getOwnPropertyNames(hello) === ${Object.getOwnPropertyNames(hello)} Object.getOwnPropertyNames(hello.__proto__) === ${Object.getOwnPropertyNames(hello.__proto__)}`) </syntaxhighlight> ;表示結果:<syntaxhighlight lang="text"> Hello world Hello my friend typeof Hello === function Object.getOwnPropertyNames(hello) === name Object.getOwnPropertyNames(hello.__proto__) === constructor,toString,print </syntaxhighlight> :;クラス定義:<syntaxhighlight lang="javascript" line> class Hello { </syntaxhighlight> ::クラス定義の開始部分です。 ::クラス名Helloで、今回は特にスーパークラスを継承せずに定義しています。 ::とはいえ、暗黙に Object を継承しているので Object がスーパークラスだと言えます。 ::また、クラス定義中は strict モードになるので、宣言なしに変数を使うなどのラフなコードは書けません。 :;コンストラクター:<syntaxhighlight lang="javascript" start=2 line> constructor(name = "world") { this.name = name; } </syntaxhighlight> ::new 演算子でクラスのインスタンスを作るとき呼出されます。 ::'''this'''は、new演算子で作りかけのインスタンスです。 ::'''constructor'''というメソッド名は固定なので名称変更は不能、またクラス内に2つ以上は定義できません。 :;文字列化メソッド:<syntaxhighlight lang="javascript" start=6 line> toString() { return `Hello ${this.name}` } </syntaxhighlight> ::Object.prototype.toStringは、文字列化するメソッドです。 :;固有メソッド:<syntaxhighlight lang="javascript" start=10 line> print() { console.log(String(this)) } </syntaxhighlight> ::printメソッドは継承元のObjectのprototypeににはないのでクラスHelloに固有なメソッドです。 :: String(this)は明示的な文字列化メソッドの呼び出しで、(上で定義した)this.toString()が暗黙に呼びだされます。 :;インスタンス化(パラメータ省略)とメソッド呼び出し:<syntaxhighlight lang="javascript" start=15 line> const hello = new Hello() hello.print() </syntaxhighlight> ::クラスのインスタンス化は、new演算子にクラス名と引数リストを伴って行います。 ::この例では、引数を省略していますが{{code|()}}は必要です。 :;表示結果:<syntaxhighlight lang="text"> Hello world </syntaxhighlight> ::パラメータが省略されたので、ディフォルトの "world" を使用。 :;インスタンス化(パラメータあり)とメソッド呼び出し:<syntaxhighlight lang="javascript" start=15 line> const hello2 = new Hello("my friend") hello2.print() </syntaxhighlight> ::引数に "my friend" を与えてインスンス化 :;表示結果:<syntaxhighlight lang="text"> Hello my friend </syntaxhighlight> ::今度は、"my friend" を伴って表示。 :;特徴的な値:<syntaxhighlight lang="javascript" start=15 line> console.log( `typeof Hello === ${typeof Hello} Object.getOwnPropertyNames(hello) === ${Object.getOwnPropertyNames(hello)} Object.getOwnPropertyNames(hello.__proto__) === ${Object.getOwnPropertyNames(hello.__proto__)}`) </syntaxhighlight> :;表示結果:<syntaxhighlight lang="text"> typeof Hello === function Object.getOwnPropertyNames(hello) === name Object.getOwnPropertyNames(hello.__proto__) === constructor,toString,print </syntaxhighlight> ::クラス定義された識別子の typeof は function になります<ref>このあたりが、プロトタイプベース継承の糖衣構文たる所以です</ref>。 ::Object.getOwnPropertyNamesは、オブジェクトの(継承ではなく)直接のプロパティの一覧をArrayで返します<ref>{{Cite web |url=https://developer.mozilla.org/en-US/docs/Web/JavaScript/Reference/Global_Objects/Object/getOwnPropertyNames |title=Object.getOwnPropertyNames() - JavaScript // MDN |date=2021/11/21 |accessdate=2021/11/22 }}</ref>。 ::__proto__ は Object.prototype のアクセサープロパティ (ゲッター関数およびセッター関数) です。 === 包含と継承 === クラス間の関係で混乱しやすいのが、包含と継承です。 ;包含:クラスAがクラスBを1つまたは複数プロパティに持っています。⇒ クラスAはクラスBを包含しています。 ;継承:クラスAのプロパティPを参照したとき、A.Pが定義されていなければクラスBのプロパティPが参照されます。⇒ クラスAはクラスBを継承しています。 ;[https://paiza.io/projects/T3soCyAl2q2QmbsVXHykpA?language=javascript 包含と継承のサンプルコード]:<syntaxhighlight lang="javascript" highlight='20,30,34' line> class Point { x y constructor(x = 0, y = 0) { console.info("Point::constructor") this.x = x this.y = y } move(dx = 0, dy = 0) { this.x += dx this.y += dy console.info('Point::move') return this } } class Shape { location constructor(x = 0, y = 0) { this.location = new Point(x, y) console.info("Shape::constructor") } move(x, y) { this.location.move(x, y) console.info('Shape::move') return this } } class Rectangle extends Shape { width height constructor(x = 0, y = 0, width = 0, height = 0) { super(x, y) this.width = width this.height = height console.info("Rectangle::constructor") } } console.info("Create a Rectangle!") let rct = new Rectangle(12, 32, 100, 50) console.info("rct = ", rct) console.info('rct instanceof Rectangle => ', rct instanceof Rectangle) console.info('rct instanceof Shape => ', rct instanceof Shape) console.info('rct instanceof Point => ', rct instanceof Point) rct.move(11, 21) console.info("rct = ", rct) let rct2 = new Rectangle(1, 2, 10, 150) console.info("rct = ", rct) console.info("rct2 = ", rct2) </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang="javascript" line> Create a Rectangle! Point::constructor Shape::constructor Rectangle::constructor rct = Rectangle { location: Point { x: 12, y: 32 }, width: 100, height: 50 } rct instanceof Rectangle => true rct instanceof Shape => true rct instanceof Point => false Point::move Shape::move rct = Rectangle { location: Point { x: 23, y: 53 }, width: 100, height: 50 } Point::constructor Shape::constructor Rectangle::constructor rct = Rectangle { location: Point { x: 23, y: 53 }, width: 100, height: 50 } rct2 = Rectangle { location: Point { x: 1, y: 2 }, width: 10, height: 150 } </syntaxhighlight> ;包含関係:<syntaxhighlight lang="javascript" start=14 highlight='4' line> class Shape { location constructor(x = 0, y = 0) { this.location = new Point(x, y) </syntaxhighlight> :ShapeはPointを包含しています。 ;継承関係:<syntaxhighlight lang="javascript" start=27 highlight='1,5' line> class Rectangle extends Shape { width height constructor(x = 0, y = 0, width = 0, height = 0) { super(x, y) </syntaxhighlight> :RectangleはShapeを継承しています。 :{{code|super(x, y)}}はスーパークラス(この場合はShape)のコンストラクターの呼び出し。 ES/JSは、単一継承しかサポートしませんが包含やMix-inを使うことで、多重継承を使う動機となる「機能の合成」は実現できます。 === ES6 の class を使ったコードと相当するES5のコード === ECMAScript/JavaScriptには複素数型がありません。 実装の触りだけですね実際に動くコードを観てみます。 ;[https://paiza.io/projects/Rlo71iVwVjMgXZUzSWGxlw?language=javascript ES6版]:<syntaxhighlight lang="javascript" line> class Complex { constructor(real = 0, imag = 0) { return Object.assign(this,{ real, imag }) } toString() { return `${this.real}+${this.imag}i` } cadd(n) { return new Complex(this.real + n.real, this.imag + n.imag) } } Complex.prototype.csub = function(n) { return new Complex(this.real - n.real, this.imag - n.imag) } let a = new Complex(1, 1) let b = new Complex(2, 3) console.info("a = " + a) console.info("b = " + b) console.info("a + b = " + a.cadd(b)) console.info("a - b = " + a.csub(b)) console.info("a instanceof Complex =>", a instanceof Complex) </syntaxhighlight> ;[https://paiza.io/projects/K2o2gPvM_tBbIFd3XM-lAA?language=javascript ES5版]:<syntaxhighlight lang="javascript" line> function Complex(real = 0, imag = 0) { return Object.assign(this, { real, imag }) } Object.assign(Complex.prototype, { toString(){ return `${this.real}+${this.imag}i` }, cadd(n){ return new Complex(this.real + n.real, this.imag + n.imag) }, }) Complex.prototype.csub = function(n) { return new Complex(this.real - n.real, this.imag - n.imag) } let a = new Complex(1, 1) let b = new Complex(2, 3) console.info("a = " + a) console.info("b = " + b) console.info("a + b = " + a.cadd(b)) console.info("a - b = " + a.csub(b)) console.info("a instanceof Complex =>", a instanceof Complex) </syntaxhighlight> ;実行結果(ES6/ES5双方同じ):<syntaxhighlight lang="javascript" line> a = 1+1i b = 2+3i a + b = 3+4i a - b = -1+-2i a instanceof Complex => true </syntaxhighlight> :ES5では、constructorに相当する関数がclassに対応するクロージャを提供します。 :オブジェクトにtoString()メソッドを定義する文字列化をオーバーライドできます(ES5以前からの機能) :オブジェクトにcadd()メソッドを定義しています(ES/JSでは演算子オーバーロードできないので、名前付き関数にしました)。 ;オブジェクトへのメソッドの追加:<syntaxhighlight lang="javascript"> Complex.prototype.csub = function(n) { return new Complex(this.real - n.real, this.imag - n.imag) } </syntaxhighlight> :ES5でもES6でも、オブジェクトの prototype にプロパティを追加することで、オブジェクトに新しいメソッドを追加することができます。 :このコードでは、{{code|.real}}, {{code|.imag}} は制限なくアクセスできますが、アクセサプロパティを定義することでアクセスを制限できます(ここではコードを簡素にすることを優先しました) :{{See also|#アクセサプロパティ}} :class構文を使った継承とfunctionを使った継承の間の小さな差ですが、classは関数と違って巻上げ (Hoisting) が起こりません。 :{{See also|JavaScript/関数#関数の巻上げ}} === クラス式 === 関数宣言に対する[[JavaScript/関数#関数式|関数式]]と同じ様に、クラス宣言に対してはクラス式があります。 ;構文:<syntaxhighlight lang="javascript"> class [クラス名] [extends スーパークラス名] { // クラス定義 } </syntaxhighlight> ;[https://paiza.io/projects/I5JxhvfPC3si8UGuRvDk7g?language=javascript コード例]:<syntaxhighlight lang="javascript"> var cls1 = class {/*クラス定義*/} function f() { return class {/*クラス定義*/} } var cls2 = f() console.log(`cls1.name = "${cls1.name}" cls2.name = "${cls2.name}"`) </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang="javascript"> cls1.name = "cls1" cls2.name = "" </syntaxhighlight> : クラス式ではクラス本体のクラス名は省略可能で、省略された場合にクラス式がスカラ変数の初期値あるいはスカラ変数に代入されていた場合 Class.nameはスカラ変数の変数名になります。 : 関数の戻り値でクラス式を返した場合、Class.nameは "" となります。 クラス式の呼出すときは、一般のクラスと同様に呼出し元で {{code|new}}演算子を使います。 ;構文:<syntaxhighlight lang="javascript"> new クラス式の値([引数1[,引数2[..., 引数n]]]) </syntaxhighlight><!-- call や apply の 構文糖 --> === アクセサプロパティ === カプセル化をしたい場合にそのクラスのインスタンスのプロパティにダイレクトにアクセスしたのでは本末転倒です(クラスの内部構造が変わったら、プロパティを参照するコードを全て変更するはめになります)。 そこでプロパティアクセス(obj.propやobj[propString]によるアクセス)をオーバーライドする'''アクセサプロパティ'''が役に立ちます。 アクセサプロパティは、実際には存在しないプロパティが存在しているかのように見せる仕掛けです<ref>[https://tc39.es/ecma262/#sec-method-definitions ECMA-262::15.4 Method Definitions]</ref>。 {{See also|JavaScript/オブジェクト#アクセサプロパティ}} [[#ES6 の class を使ったコードと相当するES5のコード]]のES6の例を題材にアクセサプロパティを定義してみます。 ;[https://paiza.io/projects/BUjHE0rSBTH_IUDobE_s9g?language=javascript アクセサプロパティの使用例]:<syntaxhighlight lang="javascript" highlight="3,5-8" line> class Complex { constructor(real = 0, imag = 0) { this.ary = new Float64Array([real, imag]) } get real() { return this.ary[0] } set real(n) { return this.ary[0] = n } get imag() { return this.ary[1] } set imag(n) { return this.ary[1] = n } toString() { return `${this.real}+${this.imag}i` } cadd(n) { return new Complex(this.real + n.real, this.imag + n.imag) } csub(n) { return new Complex(this.real - n.real, this.imag - n.imag) } } let a = new Complex(1, 1) let b = new Complex(2, 3) console.info(`a = ${a} b = ${b} a.cadd(b) = ${a.cadd(b)} a.csub(b) = ${a.csub(b)}`) </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang="text"> a = 1+1i b = 2+3i a.cadd(b) = 3+4i a.csub(b) = -1+-2i </syntaxhighlight> :;内部構造の変更:<syntaxhighlight lang="javascript" highlight="3,5-8" line> class Complex { constructor(real = 0, imag = 0) { this.ary = new Float64Array([real, imag]) </syntaxhighlight> ::real, imagのむき出しのプロパティから2要素のFloat64Arrayに変更 :;アクセサプロパティ:<syntaxhighlight lang="javascript" start=5 line> get real() { return this.ary[0] } set real(n) { return this.ary[0] = n } get imag() { return this.ary[1] } set imag(n) { return this.ary[1] = n } </syntaxhighlight> ::real, imagを擬似プロパティとして、それぞれのセッターとゲッターを定義。 ::これで、n.real や n.imag で値を参照でき、n.real = 110 のように左辺値化もできます(n.real(), n.imag()や n.real(110) ではないことに注意してください)。 === staticプロパティ === クラスにはstaticプロパティを定義できます。 クラスの正体はFunctionオブジェクトなので、関数のプロパティを定義していることになります。 ;[https://paiza.io/projects/5vnFxTJ7Bsclhbdm7ADlJQ?language=javascript staticプロパティの使用例]:<syntaxhighlight lang="javascript" line> class Test { static min(){ return 100; } static get MAX(){ return 10000; } static n = 123 } console.log(`Test.min() = ${Test.min()} Test.MAX = ${Test.MAX} Test.n = ${Test.n}`) </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang="text"> Test.min() = 100 Test.MAX = 10000 Test.n = 123 </syntaxhighlight> === フィールド宣言 === クラスでは、フィールドを明示的に宣言することで、クラス定義がより自己文書化され、フィールドが常に存在するようになります<ref name="class-field-decl">{{Cite web |url=https://developer.mozilla.org/en-US/docs/Web/JavaScript/Reference/Classes#field_declarations |title=Classes - JavaScript // MDN § Field declarations |date=2021/11/10 |accessdate=2021/11/24 }}</ref>。 フィールドはデフォルト値を持つことも持たないことも宣言できます。 ;[ フィールドの使用例]:<syntaxhighlight lang="javascript" highlight="2,4,6,7" line> class ClassWithPublicField { x constructor(x = 42) { this.x = x } value(c){ return this.x } static getValue(c){ return c.x } } var x = new ClassWithPublicField() var y = new ClassWithPublicField(195) console.log(x.value()) console.log(y.value()) console.log(ClassWithPublicField.getValue(x)) f = ClassWithPublicField.getValue console.log(f(y)) </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang="text"> 42 195 42 195 </syntaxhighlight> :{{code|x}}は(パブリック)フィールドの宣言で、x にはメソッドのthisを介して、{{code|this.x}}の様に参照します。 :トリッキーですが、staticメソッドからもフィールドを参照でき、staticメソッドの値を使った呼出しでもまたフィールドを参照できます。 === プライヴェートフィールド === クラスのインスタンスには、クラスの外からはプロパティアクセスのできないプライヴェートフィールドを設けることができます<ref name="class-field-decl"/>。 これはカプセル化に役立つ機能です。 ;[https://paiza.io/projects/9Qxuwy_MW8fArHGY3eYa3g?language=javascript プライヴェートフィールドの使用例]:<syntaxhighlight lang="javascript" highlight="2,4,6,7" line> class ClassWithPrivateField { #x constructor(x = 42) { this.#x = x } value(c){ return this.#x } static getValue(c){ return c.#x } } var x = new ClassWithPrivateField() var y = new ClassWithPrivateField(195) console.log(x.value()) console.log(y.value()) console.log(ClassWithPrivateField.getValue(x)) f = ClassWithPrivateField.getValue console.log(f(y)) </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang="text"> 42 195 42 195 </syntaxhighlight> :{{code|#x}}はプライヴェートフィールドの宣言で、#x にはメソッドのthisを介して、{{code|this.#x}}の様に参照します。 :トリッキーですが、staticメソッドからもプライヴェートフィールドを参照でき、staticメソッドの値を使った呼出しでもまたプライヴェートフィールドを参照できます。 === ユーザー定義クラスのインスタンス配列 === ユーザー定義クラスのインスタンスを配列化する為には、コンストラクターのパラメータをコレクションにしたものを、イテレーションし Array::map() でコンストラクターに渡すと簡素に表現できます。 :<syntaxhighlight lang="javascript"> class Drink { #name #price constructor(name, price) { this.#name = name this.#price = price } toString() { return `${this.#name}: ${this.#price}` } } const drinks = Object.entries({ milk: 180, juice: 150 }).map(pair => new Drink(...pair)) drinks.forEach(drink => console.log(String(drink))) </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang="text"> milk: 180 juice: 150 </syntaxhighlight> JavaScriptでは、ユーザー定義クラスのインスタンスもオブジェクトなので、Classのフィールドも(このコードのようにプライベートフィールドにしない限り)プロパティとしてアクセスできてしまいますが、これではカプセル化を破壊してしまいますし、より厄介なのはプロパティの綴りを間違えても警告もエラーも出ず、発見困難なバグの原因となってしまいます。 このため、Object.prototype.toString の様な共通化されたメソッド(インターフェースとも考えられます)を使い、内部構造を隠すことが肝要です。 {{Nav}} == 脚註 == <references /> == 参考文献 == * {{Cite web| |url=https://tc39.es/ecma262/#sec-class-definitions |title=Draft ECMA-262 / November 20, 2021 // ECMAScript® 2022 Language Specification§15.7 Class Definitions |date=2021/11/20 |accessdate=2021/11/24 }} * {{Cite web| |url=https://developer.mozilla.org/en-US/docs/Web/JavaScript/Reference/Classes |title=Classes - JavaScript // MDN |date=2021/11/10 |accessdate=2021/11/24 }} 2rok7laphp9tdg8g21yw9b5hu0eaf9t 高等学校英語 英単語 0 33868 205522 203147 2022-07-19T12:07:56Z Nermer314 62933 wikitext text/x-wiki {{stub}} すべての単語は書ききれないし、例文も作れないので(ネィティブなど協力者がいれば有難い)、とりあえず類義語の区別方法を書くことにする。 例文などは市販の単語集で練習してもらいたい。 本ページでは、基本的に高校英語4500~5500語レベルの単語でみかける類義語について説明している。 == 類義語 == === 3000語レベルあたり === 好きでない、嫌い not like 好きでない dislike 嫌い hate 憎む。強く嫌っている dislike は、構造としてdis-(でない)like(好き)ですが、しかしdislikeの意味は動詞としては「嫌う」ですし、名詞としては dislike は「反感」(桐原3000)や「嫌悪」(旺文社1400)です。 単に「好きでない」という場合は、don't like や doesn't like のように言います。 かといって、たとえばagree「賛成する」 にdisをつけた disagree が必ずしも反対しているわけでもなく、単に「賛成ではない」という意味合いで disagree が使われることもあります。 この手の dis なんとかや un なんとかといった打ち消し・否定の接頭辞がついている動詞は、実務的では使う前に辞書で意味を確認するのが安全でしょう。 嫌いの強さは、 (嫌いの気持ちの弱い側) not like < dislike < hate (つよく嫌っている側) です。 hate 自体で動詞「憎む」のほかにhateに名詞として「憎悪」「憎しみ」の意味があります。hatred という単語にも「憎悪」や「憎しみ」の意味があります(東京書籍3000、旺文社1400)。 ---- 選択する choose, select , 選挙で選ぶ elect あまり深く考えずに選ぶ pick choose が、もっとも基本的な「選択する」である。 select は、やや慎重に「選択する」のニュアンスがある。 選挙で選ぶときは elect を使う。 なお、「投票する」は vote である。 pick は、花などを摘む(つむ)場合も pick である。 ただし、select, choose, pick の上記のニュアンスは、あくまで傾向であり、例外もあるので、あまりガチガチに考える必要は無い。 日本語で「ピックアップ」という「選びだす」意味の表現があるが、それは英語では pick out である。 英語の pick up は、地面におちているものを「拾い上げる」とか、自動車などで「迎えにいく」の意味である(桐原4500)。 たとえば、 「彼女を迎えにいく」 pick her up である(桐原4500に同じ例文。旺文社1200に似た例文)。 よく分からなければ、単に選択をする場合を言うなら、前置詞を使わず pick ~(選ぶ対象) でも通じる。東京書籍3000の例文がそうである。 ---- 「着る」など wear 「着ている」という状態 put on 「着る」という動作 なおwear は不規則変化で wear(ウェア) - 過去形 wore(ウォア) - 過去分詞 worn (ウォーン) である。 単に、普通に服を「着る」動作を言いたい場合は、put on を使うのが無難である。 また、なんらかの服を着ている状態を言いたい場合は、とりあえず wear で表すのが無難である。 暗記のさいは、動詞 wear についえ「wear 状態」「put on 動作」とセットに覚えて、名詞wear について「wear 衣服」と覚えておけば、あとはそこから芋づる的に、「put onは衣服関連の動作だから『着る』だな」とか連想できるだろう。 ほか、動詞 dress は「服を着せる」という意味もあるが(東京書籍3000)、ややニュアンスが違う。よって、特別な場合以外は、dress ではなく上述の wear や put on を使うほうが安全であとう。 なお、dress は、受身形では be dressed in 「~な服を着ている」(状態) の意味である。たとえば、 She is dressed in pink. 「彼女はピンクの服装をしている。」 とか(東京書籍3000の例文そのまま)、 She is dressed in black. 「彼女は黒い服装をしている。」 のように使う(センチュリーの例文を少し改変)。 なお、旺文社は She is dressed in white. 「彼女は白い服装をしている。」 のような文である(旺文社1200を少し改造)。 色だけでなく、生地でもよく、 She is dressed in silk. 「彼女はシルクの服装をしている。」 でもいい(ジーニアス)。 get dressed 「服を着る」(動作) の意味である(旺文社1200)。ただし辞書を探したが、get dressed の例が見つからなかった。 ただし、辞書で動詞 dress の例文を見ると、女性物のドレスとか、あるいはパーティ衣装の例が多い(ジーニアスなど)。 よって、普通の服では wear や put on を使うのが無難だろう。 旺文社1200だと、wear を見ても put on との関係しか書いてないが、本来なら be dressed との関係も書くべきである。 東京書籍3000は、wear と be dressed を同じページで紹介している。 また旺文社1200は、wear と get dressed を同じページで紹介している。 wear の対象は服だけではなく、靴(くつ)も帽子も眼鏡もネクタイもアクセサリー、すべて装着している状態は wear であるし、それを装着する行為は put on である(桐原3000、東京書籍3000)。 日本語とは違って、英語では装着の対象によって動詞が変わったりはしない(桐原3000)。 動詞 wear は「すりへる」という別の意味もあるが、いまは衣服の話題なので、すりへりについては言及しない。 名詞形 wear は、「衣服」とかの意味である。 ソフトウェア softwareなどの末尾は-wareなので、混同しないように。なお発音は同じ。 入試に出ることはないだろうが、サラダの調味料ソースのドレッシング dressing と、衣服を着ること dressing は、同じ単語であり、つまり同じスペルで同じ発音である(ジーニアス、センチュリー)。せっかくなので、ついでに覚えて脳内の知識を整理しよう。 辞書を見ると、さらに dressing には、傷の「手当て」や包帯などの意味もあるが、これは医療関係者にまかせて、私たち高校生は深入りしないことにしよう。高校生にはニュアンスなど分かりづらい。 ---- operate と control 猛烈 tremendous, fierce control は「管理する」の初等的な表現のニュアンス(東京書籍1800)。だが、「制御する」でcontrolを覚えるのが良いだろう(後述)。 under control で「制御下で」の意味。つまりcontrol には「制御する」のようなニュアンスあり(旺文社1200)。 「銃規制」は gun control である(駿台の単語集)。東京書籍4500の control 項目にも gun control 「銃規制」はある。 あまり他の単語集には「銃規制」が書いてない。 なので機械を操作する場合は operate のほうが望ましい。 ※ 高校生の勉強としては、まず operate を覚えよう。 機械のオペレーター operator などの表現も単語集にある。 パソコンのオペレーティング・システム operating system の前半部 operating も、動詞 operate の名詞形です。 OS上で動かす、メモ帳ソフトだとか電卓ソフトなど、個別のソフトウェアのことを アプリーケーション application といいます。桐原4500だと、「コンピュータのアプリケーション」の用法も書いてあります。 一般の英語では application とは「応用」という意味です(東京書籍4500)。1990年後半ごろは、アプリのことを「応用ソフトウェア」などとも訳すこともありました。今ではそのままアプリで通じますし、むしろ応用ソフトでは通じないので、訳すなら「アプリ」または「アプリケーション」と訳すべきです。 なお、東京書籍の例文は、「情報技術の応用」とか、紛らわしい例文です。 OSを90年代の昔は「基本ソフトウェア」などと訳していた時代もありました。しかし、オフィスソフト(OS会社の提供するワープロソフトや表計算ソフトなど)と紛らわしからか、今では operating system はそのまま「オペレーティングシステム」と訳します。 動詞 apply は多義語で、「適用する」「応用する」「応募する(=申し込む)」などの意味があります。 名詞 application も、「摘要」「応用」「応募」などの意味です。 なお、掃除機や冷蔵庫など「家庭用の電気器具」は appliance (アプリアンス)である(ジーニアス、桐原、旺文社)。 特に家庭用であることを強調したい場合、 home appliance あるいは household appliance などとも言う(センチュリー)。 戦後の日本では、平和教育などの理由で gun 「銃」など武器の英語をあまり教えませんが(桐原3000にgunある。しかし東京書籍コーパス3冊にない)、しかしgunなどの単語も学ばなければなりません。 アメリカの場合、銃社会です。 こういう単語、戦前の英語教科書だと教えていたりするのです。少なくとも gun は戦前でも教えています。研究社『英語教科書は<戦争>をどう教えてきたか』などの文献に、戦前の教科書の英文が紹介されており、そこに gun などの単語があります。 べつに自走砲(じそうほう)だの榴弾砲(りゅうだんほう)とかの専門用語まで学ぶ必要はないでしょうが、本来なら、「銃」 gun とか、「戦車」tank とか、「軍艦」warship くらいは学ばないとマズイでしょう。なお、航空兵器は、やや特殊なので、英語を省略します。 なお、桐原3000に、tankは「水槽」「タンク」・「戦車」だと書いてある。 戦前の教科書を見ると、casualties (カジュアルティーズ)「死傷者」とか、戦争以外でも災害などの死傷者を言い表すこともできる単語もあります(研究社『英語教科書は<戦争>をどう教えてきたか』)。wounded 「けがをしている」とかdead「死んでいる」などを習うついでに、高校範囲外ですが casualties も覚えましょう。 なお、「軍艦」warship は「崇拝する」worship とスペルも発音も別ですので、混同しないように。 「旗艦(きかん)」flagship は、英語では現代でも使う表現です。 よく最新のデジタル家電などで、そのメーカーの現時点での一番上級の製品を「フラッグシップ・モデル」などと呼びます。 もともと旗艦とは、海軍において、各方面でのその艦隊(かんたい)の指揮官が登場している中心的な軍艦のことです。 「艦隊」fleet (フリート)も戦前で教えらています(研究社『英語教科書は<戦争>をどう教えてきたか』)。 やや専門的ですが、スペルが簡単なので fleet も覚えてしまいましょう。 英語では旗艦は「旗艦ミカサ(三笠)」flagship Mikasa みたいな言い方をします。三笠とは、日露戦争における日本海軍の旗艦です。 なお、船の沈没は、「沈む」sink の過去分詞 sunk で通用します。 be sunk で「沈没した」の意味です。 敵の軍艦などの兵器を captured したという表現も、覚えたい。 catch だと、つかんでいるようなイメージになってしまいます。 get でも通じるでしょうが、captured のほうが「敵から奪った」というニュアンスも含まれており、なかなか良い言い回しです。 なお、「戦艦」(せんかん)と「軍艦」(ぐんかん)は別物です。「戦艦」とは、軍艦の種類のうちのひとつです。「空母」とか「巡洋艦」とか「戦艦」とか「潜水艦」とか、そういうののうちの一つが「戦艦」にすぎません。空母などの英語は専門的すぎるので省略します。現代では「戦艦」は時代遅れになってしまいました。なので、戦艦についての英語の説明を省略します。 なお、「潜水艦」は submarine です(桐原4500)。「地下鉄」 subway のように、地面や水面の下にあるから冒頭に sub がつきます(桐原4500)。 subway は実はアメリカ英語である(東京3000、桐原3000)。 だが、桐原3000も旺文社1200も、「地下鉄」については subway である、として主に紹介している。 イギリス英語では地下鉄は underground (アンダーグラウンド)や tube (チューブ)と言うが、しかし桐原・旺文社の単語集では独立の項目としては紹介せず、subwayの項目の備考として underground や tube などを派生的に紹介しているだけである。東京書籍では、tube は主に「管」(くだ)の意味で紹介しているのであり、地下鉄 tube は派生的な紹介である。 そもそも underground は「地下」という意味だし、tube は「管」(くだ、かん)という意味である。 地下や管を「地下鉄」とするのは、その位置や形状から考えれば分からなくもないが、まあ同義語が多すぎて不便だろうし、やや飛躍的である。単語集からもそう見なされて、アメリカ英語の subway に紹介が置き換わっているのだろう。 たとえば、地下鉄の近くにあるデバートの地下フロアとか、地下街とか、いったいイギリス人はどう表現するつもりなのか。 地下鉄の工事のために、大きな鉄の管を通しますとか、イギリス人はどう表現するつもりなのか。 もっとも、アメリカ英語のsubwayも、地下subの道wayという構造なので、鉄道の走っていない地下道とまぎらわしい欠点があるが。イギリス英語では、subway とは「道路横断用の地下通路」のこと(ジーニアス)。アメリカ英語では「地下通路」は underpass である(ジーニアス英和 subway)。 なお、「高速道路」をハイウェーというのは和製英語。米英では「高速道路」は別の言い方をする。highwayは「幹線道路」とか「主要道路」の意味である(ジーニアス)。 単語集では、紹介の意味を感じてないのか、まず見当たらない。どこかの単語集にあるのかもしれないが。 さて、general は「将軍」「武将」などの意味もあります。(これも戦前の教科書にある。) 「一般的な」を意味する general と、「将軍」を意味する general は同じスペルです。 第二次世界大戦のあとの戦後の笑い話ですが、アメリカ式の財政制度を日本に輸入するさい、「一般会計」 general account という単語の書かれた英文を読んだ日本の官僚が、「アカウント将軍」というGHQ軍人が来日でもするのかと勘違いして慌てたというジョークもあります。(経済学者の野口悠紀雄の本に書いてある事例。) 「一般な」の意味での general の対義語は specific (東京3000)、または special です(桐原3000、旺文社1200、東京3000)。 general ⇔ specific, special account は多義語で、色々な意味があります(桐原)。 桐原は、まずは、計算のイメージで account を覚えることを進めています。 ac-count と分解してみると、後半はカウント count 、つまり数えることです(桐原)。 私たちは、さらに、お金の計算の経理(けいり)・会計(かいけい)のような意味で account の意味をつかみましょう。 桐原いわく、たとえば、account には、なにかの予算の費用などの「明細書」(めいさいしょ)の意味もあります。 桐原いわく、「銀行口座」も account です。SNSなど会員制サイトの「アカウント」など、さらに派生的な意味でも使われています。SNSは2020年以降、中学高校の英語教科書などでもよく題材になるので、こういう account のような英語も覚えるべきでしょう。 上述の意味は、これらすべて、経理や会計の意味から、簡単に連想できます。 いっぽう、東京書籍は「理由」「根拠」などで account を説明しています。 単に「説明する」ことを言いたいだけなら describe などの他の単語でも言い換え可能です。 しかし、自治体のオンブズマン制度的な情報公開などにおける「説明責任」も英語で accountability (アカウンタビリティー)と言います。 こういう背景があるので、account の「説明」の意味も知っておきましょう。 旺文社は、形容詞 accountable を「(説明)責任がある」とだけ紹介しています。オンブズマン制度などの背景があることを知らないと理解しづらいと思います。 なお、「責任」を意味する一般的な語は responsibility (レスポンシビリティー)である。 これは形式的には動詞 response(レスペンス) 「反応する」「対応をする」「返答する」などの名詞形である。 動詞 respond と 名詞 responsibility 「責任」のあいだには、あまり共通性は無く、そのためか、桐原も東京書籍も、別々のページでrespond と responsibility を紹介している。旺文社のみ、動詞と名詞をまとめて紹介している。 形容詞 responsible は、 be responsible for ~ 「~の責任がある」 のように使う(桐原、旺文社)。 a responsible person 「信頼できる人」 a person responsible 「責任者」 というふうに、前置修飾か後置修飾かで意味が異なる。 さて account の「説明する」の意味は、会計によって説明することから、account に「説明する」の意味が出てきたことに由来すると考えれば良いでしょう。 熟語 take account of ~ 「~を考慮する」「~を勘定に入れる」 という熟語があります。 江戸時代、「勘定」(かんじょう)とは今で言う「会計」「経理」の意味です。東京書籍が熟語 take account 訳に「勘定に入れる」という訳も出しています。 江戸時代の勘定奉行(かんじょう ぶぎょう)は、現代でいうなら国の財政を管理する役人のお偉いさんです。 もともと会計のような意味の「勘定」が派生的に、いつしか「考慮に入れる」のような意味になったのです。 account for ~(割合など)  「~の割合を占める」 は、たとえば  account for 15 % of ~  「(主語が)~の15%を占める」 のように使う(東京、桐原)。 これも、経理の帳簿(ちょうぼ)をつかうことで、費用がどういう割合でどういう部品や原価などに使われているかが分かることを考えれば、 イメージしやすいでしょう。 さて、ことわざ で、 There is no accounting to taste. 「好みの理由を説明することはできない」(日本のことわざ「たで食う虫も好き好き」に相当) と言うのがあります。 よく、日本のことわざ「たで食う虫も好き好き」に相当すると、昔から受験英語で習います。 しかし、たぶん今時、国語で「たで食う虫も好き好き」なんてことわざ、めったに習わないと思います。英語の授業でこの ことわざ を始めて知った読者も多いのではないでしょうか。 現在では基本三冊(桐原・東書・旺文社)の単語集では東京書籍しか紹介してない ことわざ ですが、しかし1990年代の過去、今だと撤退した出版社なども、この ことわざ を紹介していました。このため、入試の世界では知名度は比較的に高いことわざです。 さて、tremendous(トリメンダス) 「計りしれない」「途方もない」という単語が、桐原5500にあります。桐原の例文は、なんか抽象的な例文です。 しかし戦前の教科書だと、猛烈な砲火などの「猛烈な」が tremendous です(研究社『英語教科書は<戦争>をどう教えてきたか』)。こういう風に tremendous は使います。 「猛烈な砲火で取り乱す」とでも語呂合わせで覚えてしまいましょう。 tremendous は語そのものにveryのような強調の意味を含むので、tremendousをveryで修飾できない。 同様に、delicious(とてもおいしい)、enormous(とても大きい)、huge(巨大な)、marvelous(すばらしい)、terrible(ひどい)、tremendous(ものすごい)、などの形容詞はveryでは修飾できない。これらの語を修飾するには、reallyやcompletelyなどを使う 形容詞 fierce (フィアース)という単語でも、「気象の荒い」「激しい」「猛烈な」という意味があります。 fierce dog で「猛犬」(もうけん)です(桐原、ジーニアス)。 fierce animal は「どう猛な動物」です(旺文社、センチュリー)。 猛犬の「猛」は、獰猛(どうもう)の「猛」です。 なお、「猛烈な嵐(あらし)」 fierce storm です。 猛烈な戦闘にも fierce を使うことができ(東京書籍、ジーニアス、センチュリー)、 fierce battle 「猛烈な戦闘」(東京)だとか fierce fight 「激闘」(センチュリー)だとか、 fierce attack 「猛烈な攻撃」(ジーニアス)とか言います。 どうも、日本語・漢字の「猛」と、fierce は合いそうです。たぶん明治時代あたりに、英語に合わせて「猛犬」とか日本の誰かが造語したのでしょう。 ほか、範囲外ですが、敵を「全滅させる」 annihilate (エナイエレイト)も、実は戦前の高校で紹介するレベルです。紹介のみですが。 terminate (ターミネイト)と「終わりにさせる」とか eliminate (エリミネイト)「殲滅(せんめつ)する」「抹殺する」(※ジーニアスで確認)とかの語彙の知識に、annihilate (エナイエレート)「全滅させる」「絶滅させる」(※センチュリー)も加えましょう。 素粒子を「消滅させる」も英語で annihilate です(ジーニアス)。 ---- 点数・得点 point, score score も point も、スポーツや試験などの「得点」の意味がある。 違いとして、score は win a game by a score of five to three 「5対3で試合に勝つ」 のように両チームの得点結果の意味にも使える。 win a game by a score of 5 - 3 「5対3で試合に勝つ」 のように数字で英文を書いてもいい(ジーニアス、センチュリー)。 pointは win by 3 points 「3点差で勝つ」 のように使える。 ---- 機会 chance, opportunity, occasion 日本語の訳語では、一言ではoppotunity と occasion を区別できない。 opportunity は、自分で作れる「機会」。発音注意であり、「オポチューニティー」である。チューと伸ばす。 だから create an opportunity 「機会をつくる」と言う(ジーニアス)。 このため、「均等な機会」「機会均等」という場合は equal opportunity である(東京4500、センチュリー)。 また、これらの例のように、chance よりも、opportunity のほうが、やや確実というか(桐原3000)、本人次第というニュアンスがある。 だからか、opportunity to do 「~する機会」および opportunity for ~ 「~の機会」である(東京書籍4500)。 経済学でいう「機会費用」も opportunity cost である(ジーニアス)。 いっぽう、occasion は、たまたま遭遇する「機会」。 occur という動詞があるが、旺文社いわく、occasion は「たまたま何かが起きるとき」というイメージで考えるとよい、と述べている(旺文社)。なお、語源とは違う(ジーニアス、センチュリー)。 ただし、occasion であっても、機会を逃さないように、という意味のことは言える(ジーニアス)。 ジーニアスに「機会を見つけては、必ずその博物館をたずねた」というoccationを使った言い回しがある。 たまたま遭遇した珍しい機会を、逃さないように、というような意味だろう。 よくある例文は on special occasion 「特別な機会に」、または for special occasion「特別な機会に」 である(東京4500、桐原3000)。on か for かは、直前の動詞による。 そのほか、occasion には、「場合」という意味もあり、caseとほぼ同じ意味(ジーニアス)。 翻訳の都合でoccasionを「時」と訳す場合もあるが(桐原、ジーニアス)、しかし意味合い的にはwhenではなくcaseである。 副詞 occasionally は「時折」「ときたま」と訳すのがよいだろう(ジーニアス)、桐原3000は「ときおり」と平仮名で書いている。 形容詞 occasional は「時折の」と訳すとよいだろう(ジーニアス)、桐原3000は「ときおりの」と平仮名である。 このように、occasion派生の副詞や形容詞では「時」を使ったほうが良さそうである。 occasionおよび派生は、sometimesよりも低い頻度を表す(ジーニアス)。桐原もジーニアス同様の見解のようである。 センチュリーおよび東京書籍3000はその節を採用しておらず、occasionalを「時々の」としている。 だが、桐原はセンチュリー説を採用していない。 ---- 最近 lately, recently 桐原およびセンチュリーいわく、 lately は、「最近、母の調子が悪い」みたいに期間中に継続していることを表すのによく使い(ジーニアス、センチュリー)、したがって完了形でよく使う。 My mother hasn't been looking well lately. または My mother hasn't been feeling well lately. のようになる(ジーニアス、センチュリー、旺文社をもとに例文を作成)。 一方、recently は、「最近、東京に行きました」みたいに、近い過去の行動を表すのに使い、過去形でよく使う。 ---- 前進する advance, progress advance も progress も、軍隊や人などの物理的な「前進する」という用法と、それとは別に「技術の向上」の意味がある。 progress のほうが、技術の向上のニュアンスが強い。 東京4500は技術や知識の向上の意味でしかprpgressを紹介していない。だが、辞書で確認したところ、progress にも物理的な前進の意味もあるし、単語集でも桐原3000が紹介している。 また、progressは、物理的な前進の意味で使っていても、ときとしてゆっくりな場合もあるが(ジーニアス)しかし「着実な前進」というニュアンスがある(センチュリー、ジーニアス)。 「急速な進歩」または似たことを言う場合、advance で表すのが普通。 また、普通、advanceによる技術進歩は、社会全体・業界全体の技術水準の進歩のことを言う。 progress は、業界全体の進歩も、個人の技術習得の進歩も、どちらも言っていい。 She made remarkable progress in English. 「彼女は英語が顕著に上達した。」 のような文章を、辞書などでよく見かける。 === 4500語レベル~ === ---- 命令する order と dictate と command オーダーとディクテイトとコマンド 説明する describe, explain , illustrate , , , 「独裁者」dictator という単語がある(旺文社1900のdictate 項目)。東京書籍や桐原にはdictator は無い。 このように dictate には、どちらかというと「押し付ける」ようなニュアンスがある。 なので、とりあえず普通の場面では、orderを用いるのが安全だろう。 このためか、単語集によっては dictate に「命令する」の意味がない。東京書籍4500にはない。桐原5500にだけ、和訳だけ「命令・指図」と書いてある(例文なし)。 なおdictateには「書き取らせる」「後述する」の意味もある。むしろ、こっちが高校単語集でよく紹介されており、桐原5500および東京書籍4500の両方で紹介されている。 なお、スペルと意味の似た動詞 describe は「説明する」の意味。辞書(ジーニアス英和)だとdescribeに「記述する」の意味もあるが、あくまで説明が第一の意味だと考えるべきであり、「記述」の場合でも説明になるように記述しているわけである。だからか、単語集ではdescribeの意味を「記述」で照会せず、「描写」で紹介している。なお語幹 scribe が「書く」の意味である。 東京書籍4500が「(言葉で)描写する」としているのは、scribeにそういう文字的な意味があるから。 ジーニアスおよび旺文社1200によると、describe の第一義は(「説明する」ではなく)「特徴を述べる」である。 たとえば旺文社によれば Can you describe the contest to me? 「そのコンテストの特徴を私に説明してくれませんか。」 となる。 describeの目的語には、説明相手ではなく話題になっているもののほうが入る。 ただし、和訳として「特徴を述べる」だと日本語として不自然になる場合もあり、その場合は「詳しく説明する」(桐原4500)や「描写する」(東京書籍4500)などの訳にするのが良いだろう。例えば桐腹4500では「私の気持ちを詳しく説明するのは難しい」 It is difficult to describe my feeling. という例文がある。 また、熟語 describe A as B で、「AをBだと説明する」である。 中学英語の explain だと、単なる「説明する」こと。東京書籍4500は「(理解させるために)説明する」と紹介しているが、describeの文章的な説明だって理解を目的にしているだろうし、無理があるだろう。 やはり、語幹のscribeを解説せざるを得ない。 動詞 illustrate には、図解などで「説明する」の意味のほかにも、実例などで「説明する」という意味もある(桐原4500)。 ただ、古い時代の文章を読むならともかく、現代では図やイラストなどでの説明との誤解を避けるためにも、実例での説明で illustrate を使うのは避けるのが安全だろうとは思う。実際、東京書籍3000では illustrate の意味を「(図・イラストなどで)・・・を説明する」と紹介している。東京書籍では「実例」については紹介していない。 ただし、辞書を見るとジーニアス英和にもセンチュリー英和にも、まず実例による説明の意味でilustrateの意味を紹介している。名詞形 illustration にも、「絵画」の意味のほかにも「実例」や「例証」の意味がある。旺文社1400にもillustrationの「挿絵、イラスト:具体例」と紹介しているように「具体例」の意味があるし、桐原4500はillustrationを「図解、実例による説明」と紹介している。 なのに、辞書で illustrator には「画家」の意味しかないので、辞書と実際の用法とに若干の食い違いがあると思われる。 命令の話に戻ると、 子供相手などの言いつけには tell ~ to ~ という表現がある。この場合、tellは「告げる」「指示する」の意味<ref>高等学校英語 検定教科書『FACTBOOK English Logic and Expression I』、令和3年5月 文部科学省検定済、令和4年2月25日発行、P88 </ref>。 ※ order には熟語がいろいろとあるが、それはまた別の単元で。 order ○○ to ~で、「○○に~を命令する。 order にかぎらず、force「強制する」やask「頼む」などでは、これから相手が何かの動作をするわけだから、to不定詞が続く。 つまり、order(命令する) や tell(指示する) や force(強制する) や ask(頼む) で、相手に何かの動作をさせる用法では、  動詞+目的語+to不定詞  の語順になる<ref>高等学校英語 検定教科書『FACTBOOK English Logic and Expression I』、令和3年5月 文部科学省検定済、令和4年2月25日発行、P88 </ref>。 ところで、よくレストランなどの注文を「オーダー」というが、実際に英語でも名詞「注文」および動詞「注文する」も order である<ref>高等学校外国語科用『Standard Vision Quest English Logic and Expression I』、啓林館、令和3年3月5日検定済、令和3年12月10日発行、P71</ref>。 なお、「割り勘」は英語で split the bill である<ref>高等学校外国語科用『Standard Vision Quest English Logic and Expression I』、啓林館、令和3年3月5日検定済、令和3年12月10日発行、P71</ref>。英語と日本語の表現が近い。費用などの分担・分割は split (割る・切り裂く)である。 command は、指揮して「命令する」ような意味なので、軍隊や警察の命令であり、命令される側が通常は従うのが前提。 センチュリー英和によると、医者が患者に安静を「命じる」のは、command ではなく order だ、というニュアンス。 なお、disorder の意味は「無秩序」であり、まったく意味が違う。 そしてさらに、「摂食障害」を an eating disorder といい、「精神障害」を a mental disorder という(ジーニアスで確認)。このように disorder には、健康上の~「障害」の意味もある。なお、桐原4500と旺文社1900の例文が、この~障害である。 日本語では「障害」と言うが、しかし摂食障害や精神障害についての英語的な発想では、おそらく英米人は、胃やら脳などの機能が「混乱」しているというイメージなのだろう。なお、disorder には「混乱」という意味もある。 disorder には、そのほか、ジーニアスいわく「暴動」の意味もある(ここまで単語集にある)。単語集にはないが、実際、派生の形容詞 disorderly の意味は、ジーニアスによれば「乱暴な」「無法な」の意味である。 さて、単語 command には「能力」の意味もあり、桐原 4500 によるとcommand of the English language で「英語を自由にあやつる能力」のような意味もある。だが東京書籍は「能力」の用法を紹介してない。 まずはcommandは軍隊的な「命令」の意味で理解するのがいいだろう。あとは派生的な用法と解釈すると良いだろう。 ほか、 have a good command of ~ 「~を自由にあやつる」「~を自由に使いこなせる」 の意味(桐原の熟語ページ、旺文社)。 典型的な例文は、 She has a good command of English 「彼女は英語を自由にあやつれる。」 である。 なお、高校範囲外だが、特殊部隊・コマンドーは commando という語尾にoがつく別単語であるので、混同しないように。 なお、命令に従うのは obey である。 obey orders や obey command という。 東京書籍4500 が obey orders を紹介。センチュリー英和辞典が obey commands を紹介。 「 obey <nowiki>teacher's</nowiki> commands . 」で「先生の命令に従う」とセンチュリーが紹介。 commandするのは、かならずしも軍隊や警官でなくてもいい。 なお、発音は「コマンド」。ドーとは伸ばさない。ハリウッド映画の『コマンドー』は 軍隊などの特殊部隊員 commando のことであり、別単語。 指揮官が commander である。(東京書籍4500が紹介。) ビジネスなどの業務上の指示は direct が、(コマンドよりかは)望ましいだろう。旺文社1400が、directを「業務上の指示を与える場合で用いる」と紹介している。また東京書籍4500にも Mark directed the project. 「マークはそのプロジェクトを指揮した。」という例文がある。 ---- 文字以外で描写する represent, depict, portray 動詞 represent は、絵や彫刻や音楽などで、なにかを描写する際、それが何を描写・表現しているかという意味を説明している。 芸術に限らず、たとえば「地図にあるこの記号は何を表しているのか?」とか、そういうのも represent である(センチュリー、ジーニアス)。 もっとも、mean 「意味する」で代用できそうではあるが。ジーニアス mean で確認したところ、絵の意味を mean を含む一文で質問する例文がある。 represent には集団などを「代表する」という意味もある(東京書籍4500)。 動詞 depict は、絵や彫刻などが、「詳細に描写している」または「生き生きと描写している」ことを示す(ジーニアス)。 言葉で物語を説明する場合でも、対象が生き生きと描写されているなら、depict で表してもよい(東京書籍4500巻末、ジーニアス)。 名詞形は depiction 「描写」「叙述」である(旺文社1900、ジーニアス、センチュリー)。旺文社だと「描写」としか書いてないが、ジーニアス・センチュリーでは「叙述」の意味も紹介している。 「肖像画」(しょうぞうが)や肖像の彫刻などを名詞で portrait (ポートレイト)と言う。 ポートレイトとは、人物の顔または上半身の絵や彫刻や写真などのことだが、全身のものでも構わない。 動詞 portray でも、「生き生きと描く」いう意味である。 絵画や彫刻などの形あるものだけなく、文章や言葉や物語や映画などでも良い(ジーニアス。東京書籍4500巻末で映画の例。センチュリーだと自叙伝)。 ポートフォリオとは異なるので混同しないように。 なお、portfolio は、作家の「作品集」や、金融における「有価証券の一覧表」のこと(旺文社1900巻末、ジーニアスで確認)。センチュリー portfolio だと、「有価証券の一覧表」しか書いていない。 桐原4500・5500と東京書籍4500には、ポートフォリオは無し。 ---- 「支配」 -クラシー democracy(民主主義), bureaucracy(官僚政治), aristocracy(貴族政治), meritocracy(能力主義) 単語集にはないが、独裁者には dictator という言い方のほかにも、 autocrat (オート・クラート)ともいう。これは単語集に書いてないので暗記しなくていい。 「独裁政治」のことを autocracy (オートクラシー)というが、これ自体は覚えなくていいが、次のことを覚えてほしい。 語尾の -cracy (クラシー)というのは、「支配する」のような意味である。 そして、「民主主義」 democracy は、語幹を分析すると、民衆が支配する、のような意味の構成である。 よく政治学の用語で、何とかクラシー、あるいは何とかクラート、というのがある。 なお、企業などによる市場の「独占」を言いたい場合、monopoly (モノポリー)という別の単語である。動詞形(市場を)「独占する」は monopolize である(旺文社1900)。mono- 「モノ」というのは「単一の」という意味(桐原4500巻末)。白黒写真のことを日本ではモノクロとも言ったが、英語で monochrome (モノクローム)は「単色画」や「白黒写真」などの意味である(センチュリー)。 だから「君主制」「君主国」は monarchy (モナーキー)である(桐原4500 republic 「共和国」の対義語として紹介)。ジー二アスには「君主制」の意味も書いてある。なお、東京書籍4500と旺文社1900にはモナーキーはない。そういうマニアック単語なので、やや高校範囲外。 ほか、音響機器などの音声の「モノラル」monaural などの単語がある(ジー二アス)。意味はたぶん、ステレオ音声ではないという意味かと(詳しくないので、よく知らない)。 さて、クラシーの話題に戻る。 たとえば「官僚」のことを bureaucrat (ビュアロウクラート)という。なお、「官僚」とは、日本で言えば財務省とか経済産業省とか、ああいう国の上級の役所に勤める、上級の国家公務員のことである。 桐原5500にあるが、bureaucracy で「官僚政治」の意味。 アメリカの「連邦捜査局」 FBI は、Federal Bureau of Investigation である。このように bureau という単語には「局」の意味もある。 「民主主義」democracy は桐原4500。東京書籍4500にもdemocracyはある。東京書籍4500に bureaucracy は無い。 単語集を見ても、democracyとbreaucracyを関連づけて教えるような工夫は、されていない。 これが分かると、「民主主義者」のことを democrat というのも、理解しやすいだろう。もっとも、旺文社1900でしかdemocrat(民主主義者)は紹介されてない。 しかし大文字 Democrat で「米国民主党の支持者」という意味もある。 「貴族制」を aristocracy という(桐原5500)。 また、単語集にはないが、この意味での「貴族」を aristocrat という。 成績主義などで選ばれた知的エリートなどが支配することを、「能力主義」 meritocracy という。日本語でも、政治評論や社会評論などで「メリトクラシー」という。 旺文社1900の merit の項目に派生語として「実力主義」 meritocracy がある。 「貴族の」の、より平易な言い方として、 形容詞 noble 「高貴な」「貴族の」がある。桐原・旺文社が紹介している。東京書籍は巻末でだけ紹介で、あまり乗り気ではない。 名詞として、「貴族」 nobleman がある(旺文社)。辞書で確認したところ、男性の貴族が nobleman である。女性の貴族は noblewoman である。 貴族の家柄のことは noble family である(旺文社、センチュリー)。 名詞 nobility が「高潔さ」「気高さ」である。 単語集にはないが、金・銀などの腐食しづらい「貴金属」が noble metal である(センチュリー、ジーニアス)。 また、希ガスのことを「貴ガス」ともいい、「貴ガス」 noble gas である(ジーニアス)。 形容詞 arbitrary 「独断的な」(発音: アービトレリー)という単語がある(東京書籍4500巻末、旺文社1900)。副詞ではなく形容詞である。 この arbitrary でも「独裁政治」は言えて、たとえば arbitrary govenment で「専制政治」である(センチュリーの訳)。 だが、そんなことよりも、 arbitrary の意味は「任意の」で覚えるほうが良い。 「任意の」とは、論理的な議論をする場合なら「条件を満たすものなら、全て(すべて)が」のような意味である。 少なくとも、そういうニュアンスで「任意の」は使われる。 なぜ、この「任意の」(=すべての)意味で arbitrary を覚えるべきかと言うと、 大学レベルの基礎的な数学で arbitrary という用語を「任意の」の意味で使うからである。 『条件「〇〇」を満たす変数は、すべて~(以下略)』のような議論をするとき、arbitraryを使う。 そして、大学の数学科では、大学1~2年レベルの数学で、ほぼ必ず、「 ∀ 」という記号を習う(「全称記号」(ぜんしょう きごう)という)。 ∀ の意味は「任意の」という意味である。 この全称記号を「アービタラリー」(arbitrary)と読んだり、あるいは「オール」(all)と読む。 よって、arbitrary の「任意の」という用法は、海外での数学エリートの教養なので、この単語と意味を知っておくと海外では頭良さそうに思われるだろう。 ほかの意味もまとめて紹介すると、arbitrary の意味は「独断の」「任意の」「気まぐれな」などである。 バラバラに覚えるではなく、たとえば「任意の」(≒すべての)を基準に関連づけて覚えるなどして、「独裁者のいうことには、なんでも(≒任意に)従わざるをえない」とか、「これは任意だというので、つまり最低条件さえ満たしていれば、あとは気まぐれに選べる」とか、頭の中で関連づけて覚えよう。 an arbitrary choice 「任意の選択」(センチュリー) make an arbitrary selection 「任意に選択する」(ジーニアス。旺文社に似た文。) 旺文社は「恣意(しい)的に選択する」という。本来「恣意的」とは、「任意」とほぼ同じ意味なのだが、しかし現代では誤用だが、本来なら規則などを管理者が自分の好都合に解釈することで規則の意味を歪めて不公平に運用したりするのを「恣意的な運用」とか言ったり、意味がゆらいでいる。 念のため国語辞典で確認したところ(三省堂『新明解』、岩波『広辞苑』)、「恣意」(しい)は「思いつき」(三省堂)、「気ままな心」「自分勝手な考え」(広辞苑)などの意味である。 ---- 邪魔する interrupt, interfere, disturb, bother interrupt は「邪魔する」の意味。 「邪魔する」を意味する単語はいくつかあるが、高校生はまず、interrupt で「邪魔する」を覚えるのが良いだろう。 よく単語集にある典型的な例文が、 <nowiki>Don't</nowiki> interrupt me when I ~ 「私が~しているときは邪魔しないで。」 である。 interfere は「邪魔する」の意味もあるが、「干渉する」の意味で覚えると良いだろう。 interfere in ~ で「~に干渉する」の意味。 interrupt with ~ で「~の邪魔をする」の意味。 disturb は「邪魔する」の意味もあるが、「かき乱す」の意味で覚えると良いだろう。 とくに、進行形 disturbing で、「動揺させるような」(東京4500)、「迷惑な。心を悩ませる。」(旺文社1400)のような、相手の心を乱すような意味がある。 名詞形は disturbance で、「邪魔。乱すこと」(旺文社)、「混乱」(東京)、「妨害。不安」(桐原)、のような意味。 こういった意味だけ聞くと、disturbはあたかも強く邪魔するような印象を読者に与えかねないが、しかし実際には下記の例文 <nowiki>I'm</nowiki> sorry to disturb you, but ~ で、「邪魔してすみませんが、~」の意味。(東京4500。桐原4500) このように、ちょっとした「すみませんが、」程度のニュアンスのことに disturb を使うし、むしろそういう用法では interrupt よりも好まれるだろう。 bother は、慣用的に 「ジュリアの邪魔しちゃ駄目よ」Don't bother Julia. みたいな使われ方をする。単語集では、邪魔しちゃダメな相手は、東京書籍がジュリア Julia 、桐原はエレン Ellen である。 bother んは「思い悩む」という意味もあり、 単語集にはないが、辞書ではよく、 「そんなこと気にするな」Don't bother about that. のような例文がある(センチュリーにそのままの例文。ジーニアスに少し違った例文あり)。 ほか、 <nowiki>I'm</nowiki> sorry to bother you, but ~ で、「邪魔してすみませんが、~」の意味。(旺文社1400、センチュリーで確認) ---- 提案する propose と suggest プロポーズ、サジェスト ともに「提案する」だが、suggest には「示唆する」の意味がある。 propose には「結婚する」の意味あり。 なお名詞形はともにあり、それぞれ proposal と suggestion である. なおoffer(発音「オーファー」)は「申し出を提案する」なので意味が異なる。 offerの名詞では「提供」の意味もあるので、動詞の場合はどちらかというとサービスや高待遇などを提案するニュアンスもありそうである。 ---- 促進 promote と prompt と stimulate , urge , facilitate 販売促進が promote である。 ジーニアス英和によるとpromoteには「増進させる」の意味もある。 消費者の販売意欲を「増進させる」的なニュアンス。 だから、人の昇進などにもpromoteを使う。 prompt は、「促す」(うながす)。※ジーニアス英和で確認。 なおpromptには形容詞の用法もあり、(行動が)「すばやい」、「即座の」の意味。 行動ではなく、速度が速い場合は rapid である。 コンピュータ用語で Windows のDOS画面 C:\> のような画面を「コマンド・プロンプト」というのだが、たぶん「さっさとコマンド入れろ」的な意味の名前の画面。 広告を考える広告マンが消費者の購入意欲を促進するのはpromoteだが、彼によって作られた広告が購入意欲を促進するのはpromptである(東京書籍4500で広告のpromptの例文あり)。 ただし桐原4500で、外交の訪問が国家間の友好を「促進する」という例文があるので、あまり境界は明瞭ではない。 ジーニアス英和に「平和を促進する」 promote peace とあるが(※辞書)、どちらかというと、「平和を増進させる」的なニュアンスだろう。 景気刺激など、活気づかせる意味で「刺激する」のが stimulate である。 stimulate は「刺激」が第一の意味であり(桐原4500)、「促進」は派生。 単語集にはないが、stimulateには「興奮させる」の意味もある。刺激して興奮させるのが stimulate のニュアンス。 派生的に、(活動などを)「活気づかせる」もstimulateである。(東京書籍4500) 桐原4500が指摘しているように、あくまで「刺激」が stimulate の第一の意味。 urge (アージ)は「強く勧める」(東京書籍4500)とあるが、ジーニアスによれば(~するように)「催促する」「強く迫る」である。 桐原4500によると、urge 人 to ~ で「<人>に~するように強く促す」である。東京書籍4500でも同様、urge (A) to ・・・ で「・・・するよう強く勧める」である。 facilitate は、「促進」の意味もあるが、「容易にする」の意味もあって(桐原5500)、たとえばセンチュリー英和には、「コンピュータによって仕事が容易になった」的な例文でfacilitateを用いている。ただし桐原5500の例文を見ても、容易にするニュアンスは無い。桐原の例文は慶応大の過去問「軍縮を促進したことで国民に良い影響を与えてきた。」の紹介。この軍縮の文のどこにも容易のニュアンスはない。 また、旺文社1900では名詞形 facility (ふつう複数形でfacilities)は「設備」の意味だと紹介しており、例文で day care facilities 「デイケア施設」のある文章を紹介している。 入試には出ないだろうが、公共機関などの「機関」の意味もあり、たとえば monetary facilities で「金融機関」だとジーニアス英和にある。 なお、「複数形」は英語で plural (プルーラル)という(旺文社1900巻末)。 ---- 示唆(しさ) suggest と imply implyは、明言を避けて、「暗に示す」、「ほのめかす」の意味。 東京書籍が、implyでは「明言を避けて」の意味があるといっている。 ジーニアスも「暗に示す」と言っている。 桐原4500だと「示唆する」「ほのめかす」しか書いてない。 ---- 反対 contrary, opposite contrary と opposite の違いは、この単語や派生の品詞だけをいくら見ても分からないだろう。 数学で「対頂角」のことを opposite angle または vertically angle という。 数学英語は高校の範囲でないので暗記しなくていい。 opposite にはこういうふうに、単に向かい合う位置にあるという事だけをあらわすようなニュアンスがある。 もっとも動詞oppose を見ると、他人の意見に「反対する」のような用法もあるので、ニュアンスの違いは不明確であるが。 contrary のほうが、意見などの「対立」のニュアンスが強い。実際、ジーニアスに a contrary opinion 「反対意見」という単語があるし、東京書4500も同じ単語を紹介している。ほか、センチュリー英和だと、訳語こそ「反対」だが、最初の例文の用例が、趣味・趣向が「反対」という例文である。 熟語 on the contrary で「それどころか」の意味。桐原4500では例文を紹介しているが、東京書籍4500では紹介していない。旺文社1900は熟語が存在することを紹介しているが、例文はなし。 この「それどころか」の訳語が曲者で、単語集では「それどころか」としか説明してないが、実際にはセンチュリー英和では、否定文につづいての「それどころか」である。桐原4500でも「介入は役に立たなかった。それどころか事態を悪化させてしまった。」である、。 自分の否定の意見をはっきりさせるために on the contrary を用いるので、たとえば疑問文のあとの文頭なら「とんでもない。~~ですよ」のように訳す。実際、ジーニアスもセンチュリーも「とんでもない」と疑問文の解答では訳している。 (センチュリーの例文は単語が難しいので非紹介とする。) 例文のない別の熟語(桐原と旺文社が熟語のみ紹介)で to the contrary は、「それとは逆の」である。センチュリー英和の例文だと「見かけによらず、彼は親切な人だ」 Appearance to the contrary, he is a kind man. とある。to the contrary のほうは、とくに否定形がどうこうとかはない。 肯定形の疑問のあとなら「逆に」として相手の意見を否定する用法で on the contrary だったりする。否定疑問文に対しては、相手の意見を否定する意味での「それどころか」だったりする。 つまり、「contrary」(対立の)という知識がある上での「それどころかで」ある。 疑問文でも平常文でも(桐原4500の例文が平常ぶん)、前の意見や説明に 旺文社1900や東京書籍に似た例文があるが、 「期待に反して」Contrary to the expectations, という用例もある(旺文社の例文)。 敵対 「敵意」は hostility である。単語集には形容詞 hostile が書いてあるが、たぶん名詞形のhostilityのほうが覚えやすいだろう。 be hostile to ~で「~に敵対する」の意味。 なお、「憎悪」「嫌悪」はhate。 hateで名詞も動詞もある。とくに名詞には hatred という専用の名詞もあリ、意味は同じく「憎悪・嫌悪」だが(ジーニアスで確認)、単語集ではhatredは「憎しみ」と訳している(桐原・東京書籍の両方とも)。 桐原4500によると、「写真を取られるのをひどく嫌う」のような、ちょっとキライなぐらいでも hate を使う。 抗議 protest protest は動詞としては「抗議する」、名詞としては「抗議」の意味である。動詞も名詞もスペルは同じ protest である。 protest against ~ で「~に抗議する」。againstまたはatを使う(旺文社1400)。ただし、桐原4500および東京書籍4500を見ても、protest against のほうしか書いてない。 よくある例文が「戦争に反対する」とかで、たとえば「戦争に抗議する」なら protest against the war である(桐原4500)。 なにも平和運動ばかりに使うわけではなく、たとえば「増税に抗議する」なら protest against the tax increase である(東京書籍4500)。 ---- 提供、供給 supply と provide と furnish サプライ、プロバイド、ファーニッシュ ともに「供給する」の意味だが、 supply はdemand「需要」の対義語として使われる。 supply と demand をセットで覚えよう。なお、日本語では「需要(demand)と供給(supply)」の語順だが、英語では「supply and demand 」の語順になる。 一般にprovideを「提供する」と訳す場合もあるが、しかし東京書籍4500語によると、supplyを「供給する」と紹介している。 '''備え付ける''' equip と furnish furnish という単語にも「提供」・「供給」の意味があるのだが、どちらかという「家具を備え付ける」という別の意味で使われる。東京書籍4500では家具のほうしかfirnishは書いてない。 なお「家具」は英語で furniture である。まずはfurnitureを覚えよう。 たとえば「家具屋」は furniture store である<ref>高等学校外国語科用『Standard Vision Quest English Logic and Expression I』、啓林館、令和3年3月5日検定済、令和3年12月10日発行、P61</ref>。 なお furniture は集合名詞である。なので、どうしても数えたい場合は、 a piece of furniture のように数える。 equip は、とくに家具に限定しないが、家具に用いてもいい。東京書籍4500で、電子レンジの取り付けを equip で説明している。 企業や店舗などにカメラを取り付けるのは equip だと、桐原4500は説明。 桐原4500およびセンチュリー英和辞典では furnish は equip に意味が近いというスタンスだが、いっぽう東京書籍およびジーニアス英和辞典は類義語としての紹介を避けている。 据え付ける(すえつける) 壁に絵を貼る程度の「据え付ける」(すえつける)(※旺文社)あるいは「備え付ける」(※桐原)は、 mount である(旺文社)。「載せる」というイメージだろう。 センチュリーいわく、写真などを台紙に貼るのも mount である。 また、「台紙」そのものも名詞 mount である(旺文社、センチュリー)。 なお、「壁」(かべ)は英語で wall である。 mount は、自転車やウマなどに「乗る」の意味の動詞だが、他動詞で「載せる」の意味もあり(桐原5500)、「~をすえつける」という意味もある(桐原・旺文社)。 桐原5500が、ウマに乗るの意味を紹介。なお、自転車やウマに乗るは ride も言えると、ジーニアスは言っている。 辞書いわく 「自転車に乗る。」 mount a bicycle である(ジーニアス、センチュリー)。 「ウマに乗る。」 mount a horse である(ジーニアス)。 mount には「増える」という意味もある(東京書籍)。(おそらく、なにかを積み重ねるイメージからか、あるいは山( mountain )を登る行為の連想からだろう。紙などを積み重ねる行為も、紙のうえに紙を載せているわけである。) 辞書によくある例文が、物価関係で 「物価が上がっている」 Price are mounting. である(ジーニアスを参考。なお東京書籍では「出費」expenses が上昇)。 辞書にはないが、IT用語で、USBメモリなど外部ハードをパソコンに接続したときに、その外部ハードをパソコンで使えるように自動設定される処理のことを(USBメモリなどを)「マウントする」などといい、英語でも mount という。 単語集にはないが、mount の対義語は、意味によって unmounted か dismount かが変わる。 すえつけられていた物を取りはずしする場合は、形容詞 unmounted である。 一方、乗り物や馬などから降りたり、下ろしたりするのは、動詞 dismount である。 辞書にはないが、先ほどのパソコンのUSBメモリなどの件でも、取りはずしなどには unmounted が使われる。 ---- 「欲望」と「欲しい」 desire と hope 動詞 desire デザイア は「強く望む」。 名詞 desire に「欲望」「願望」のようなニュアンスがあるので、それだけ強い望み。 名詞 hope はどちらかというと「希望」なので。 wish にも「願う」や「願望」の意味がある。仮定法以外でも使う。 ※ 高校生は、まず desire を覚えよう。hope は中学レベルなので、いちいち勉強しなくていい。 want は「ほしい」という意味であり、やや幼稚・初等的な表現。wantを「願う」と訳せなくもないし、単語集にそういう意味もあるが、まあ中学で習っているので放置でいい。 ---- 逃亡する flee と escape 「虐殺」genocide、 「自殺」suicide flee は「全力で逃げる」(※東京書籍)。 ※ 東京書籍でも言ってるが、国外逃亡とかの表現でよく使う。(※ 英字新聞などでよく見かける)高校生としては flee を覚えたいところである。 なお、「難民」は refugee (レフュジー)なので、「難民が国境を越えて逃げた」(桐原4500)は The refugees fled across the border. である。fled はflee の過去形。 「難民」ついでに言うと、「難民キャンプ」は refugee camp です(検定教科書2社<ref>高等学校英語 検定教科書『FACTBOOK English Logic and Expression I』、令和3年5月 文部科学省検定済、令和4年2月25日発行、P186 </ref><ref>高等学校学外国語科用『CROWN English Expression III New Edition』、三省堂、2018(平成30)年2月28日 文部科学省検定済、2022(令和4)年3月30日 発行、P75 </ref>、Z会TOEIC対策本1900<ref>松本茂 監修『速読速聴・英単語 Core 1900 ver.4』、Z会、2014年3月10日 ver.4第7刷発行、P.351</ref>)。 なお、名詞だけ単語集にない単語だが、「難民」ではなく、災害などの「避難民」は evacuees である。動詞「避難する」が旺文社1900にあり、スペルは evacuate である。名詞「避難」が桐原4500の単語集で evacuation である。 「亡命者」は exile (エグザイル、エクサイル)である。 「亡命」(ぼうめい)とは、政治上の理由で、迫害などをおそれて、自国を離れて国外などに逃れること(三省堂『真明解国語辞典』など)。 日本語の場合、普通、自発的に国外へ脱出した人間のことを「亡命者」と言うが、ただし英語の exile はもっと意味が広く、自発的かどうかに関わらず結果的に「国外追放された者」のようなニュアンスの違いもある。 たとえば、 be sent into exile 「追放される」 の意味である(旺文社、センチュリー)。 「亡命する」は go into exile 「亡命する」 である(ジーニアス、旺文社)。 ほか、単語集には無いが、名詞 asylum (アサイラム)は「亡命者へ与える保護」、「難民保護」(難民へ与える保護待遇のこと)である(センチュリー「亡命者保護」、ジーニアス「難民保護」)。亡命者自身のことではないので、混同しないように。 さて、難民の話題に戻る。 説明の都合、refugee を「難民」の意味だけで説明したが、実は refugee には、災害などの「避難民」の意味もある(ジーニアスで確認)。ただし、センチュリーのrefugeeでは「避難民」の意味を説明していない。 また、refugee は、災害などの避難民だけでなく、政治亡命者なども含む、広い意味で使える単語である。英語でも political refugee 「政治的亡命者」という表現がある(ジーニアスで表現を確認)。 なお、日本語では「亡命」だけでも、国外に逃れた原因が政治的な迫害であることを説明できるが、特に政治による原因であることを強調したい場合などに日本語では「政治亡命」などという。 なので、英作文では、難民か亡命者かよく分からなければ、とりあえず refugee を使えばいい。 桐原4500ではrefugeeは「難民」としか説明していないのに、なぜか桐原3000ではrefugeeの意味で「難民」「避難民」としている。 refugeeの避難民の意味は、こういうクセのある意味なので、深入りしない。 「難民」には、さらに displaced person という言い方があり、戦争や迫害などによって「追い出された人々」のようなニュアンスで「難民」を表すのに使い(センチュリー)、DP と略すこともある(ジーニアス)。ただしジーニアスによれば、災害などの批判民でも displace person を使う例もあるとのこと(ジーニアス)。 ともかく、 displaced person 「難民」である。 動詞 displace は多義語であり、「取って代わる」(=replace に近い)とか「(国や家などから)追い出す」とか、「通常の位置から動かす」などの意味がある。 物理学の力学における、基準位置からの「変位」が英語で displacement である(ジーニアスで確認)。そのほか、displacement には「置き換え」や「解雇」の意味もある(旺文社、ジーニアス)。 なお、refuge (レフュージ)というスペルの少し違った単語があり、末尾のeが1つだけな refuge だが、この refuge は「避難」「保護」「避難所」の意味である(旺文社のみ紹介)。いちおう辞書にはあるが、桐原も東京書籍も紹介していない単語。 他にも「避難所」については shelter という単語もあり、これも単語集(4500語レベル)にある。いわゆる「シェルター」のことである。東京書籍4500いわく、洪水からの避難の避難所でも shelter と呼んでよい。 桐原および旺文社いわく、雨宿りのための一時的な住居も shelter である。さらに桐原たちの紹介する熟語で take shelter で、「雨宿りのために避難する」である。 shelterの語源はジーニアスによると、「盾を重なり合わせ身を固めた一団」とのこと。 盾(シールド)的な意味がニュアンスがあるので、屋根つきの建物を盾に見立てて雨風を防ぐという発想なのだろう。 なお、「屋根」は英語で roof である。「屋根」 roof の複数形は roofs である。rooves(×)ではないので注意。 日本語で「シェルター」というと、なんだか虐待や家庭内暴力から逃れるための避難所か、あるいは戦争から逃れる避難所みたいなニュアンスだが、一応そういうのもsheleter と言いそうだが、しかしshelter はもっと幅広い意味である。 ジーニアスによると、防空壕を an air-raid shelter というとのこと(単語集には当然ない)。センチュリーによると、「子供を保護する」をgive the child shelter というとのこと(なおセンチュリーの例文中では過去形)。 旺文社1900が紹介しているが、「衣食住」のことを "food, clothing and shelter" といい、通例ではこの語順である(つまり語順は変えてはいけない)。(ジーニアスおよびセンチュリーで確認) haven にも「避難所」の意味があり、センチュリーとジーニアスと旺文社に書いてある。だがセンチュリーに例文が少なく1個だけだし、ジーニアスに至っては例文なし。また東京書籍と桐原の単語集には記載が無い。 「タックスヘイブン」「租税回避地」 a tax haven が有名である。旺文社がタックスヘイブンを紹介している。ジーニアスおよびセンチュリーでは tax の項目で探すと tax haven が見つかる。 なおタックスヘイブンとは、税金がとても安い国または税のとても低い地域などのことで、外国企業の誘致のために税金を非常に安くしている国などのこと。 念のため指摘するが、「天国」「楽園」の heaven (ヘブン)とはとは別の単語(桐原3000レベル)。 旺文社1900のevacuateと同じページP.488に「帰国子女」returnee があった。 このreturneeのように、語尾にeeがついて「~な人」のような意味になることもある。 「従業員」の employee が典型例。 「雇い主」は employer である(旺文社1900で確認)。 employ ついでに言うと、「雇用」は employment であり(桐原、旺文社)、「失業」は unemployment である(東京書籍、旺文社)。 なお、「解雇する」は dismiss です(東京書籍 employ、旺文社 dismiss )。 ただし、lay off 「解雇する」という表現もあります(桐原4500熟語)。もしかしたら lay off のほうが口語的によく使われるかもしれないので、使用頻度は高いかもしれません。 日本では、よく「リストラ」とマスコミで言いますが、やや和製英語です。英語での企業におけるリストラクチャリング restructure は「再構築する」「再編成する」という意味であり(ジーニアス、センチュリー)、もっと意味が広いです。 もしかしたら婉曲表現として、大々的な解雇のことを restructure「再編成する」という米英企業もあるのかもしれませんが、しかし日本の大学入試でそういう各企業の個別具体的なことは出ないでしょう。 英語を見れば、リストラクチャリングは「企業再編」という意味ですので、なので、その企業が再編するわけでもなく今までどおりの体制が続くのに、単に一個人の従業員の解雇やら派遣などの雇い止めのことを 「リストラ」というのは、英語の出来ない人の、間違った用法です。 dismiss には、意見などを「しりぞける」など別の意味もありますが、いまは触れないことにします。 また、名詞形 dismissal は「解雇」「却下」の意味です(旺文社、桐原)。 どういうわけか、昔から英語教育では employ を早めに教えるのに dismiss はなかなか教えません。 単語集でも、 dismiss は後回しです。 しかし 「雇う」employ ⇔ dismiss 「解雇する」 と、なるべくセットで覚えるべきでしょう。 workforce という単語があり、「総労働力」の意味だが、一企業の「全従業員数」(東京書籍が紹介)や一国や産業の「労働人口」(旺文社が紹介、センチュリーで確認)という意味もある。 桐原は workforce を紹介せず(桐原4500にも桐原5500にもない)。 ジーニアスだと、workforceの例文がない。センチュリーいわく、total workforce のようにtotal で強調してもいい。 なお、hire は「一時的に雇う」の意味である。桐原によると、「大工を1週間雇う」のがhireの例。 東京書籍によると、「レンタカーを借りる」が hire a car である。 ほか、recruit (リクルート)は、新入社員や新会員などといった新人を「募集する」の意味(旺文社1900、ジーニアス)、または「新入社員」「新会員」などの新人のこと(東京書籍4500 巻末)。桐原には recruitはない。 また、「背広」(せびろ)は単に suit だけである(ジーニアス和英)。 なお、freshman (フレッシュマン)は、イギリスでは大学の1年生のことだが、アメリカでは高校1年生と大学1年生のこと(ジーニアス、センチュリー)。なので、企業の新人にはフレッシュマンを使えない。あと、男女平等の観点から語尾「マン」に文句がついていて、freshperson やbeginer や newcomer などに言い換える必要がある。 日本だと「フレッシュマン」は学校を卒業して企業人とかになったばかりの人を言うが、しかし英語の freshman にそういう意味はない。 なお、東京書籍3000が英語 freshman を紹介している。 ほか、Z会が出版しているTOEIC対策本『速読速聴・英単語 Core 1900』に、AP通信の記事の引用で、「大学新入生」の意味で freshman を用いている<ref>松本茂 監修『速読速聴・英単語 Core 1900 ver.4』、Z会、2014年3月10日 ver.4第7刷発行、P.74</ref>。 日本ではよく、米英では「man」が差別的だと言うが、しかし上述のAP通信の記事のように実際はそう単純ではないらしい。 さて、動詞 engage の話題。 旺文社にしかないが、センチュリーいわく、弁護士など専門職を一時的に雇う場合は engage を使う場合もある。 engage a lawyer で弁護士を雇う。 桐原4500や東京書籍4500などの単語集にあるのは、 be engaged in ~ で「~に従事する」である。 典型的な例文が「ボランティアに従事している」 be engaged in volunteer activities. である。 volunteer はもともと「志願者」とかそういう意味なので(桐原4500でも volunteer に「志願者」の意味が書いてある)、英語でいう時はボランティア活動のように volunteer activities と言おう。 「~と婚約している」は be engaged to ~ である。 さて、難民を発生させた理由が侵略やらその他の国際法違反行為なら当事国には経済制裁がされることがあるが、「経済制裁」は economic sanction である(桐原4500)。 sanction で「制裁」の意味。東京書籍と旺文社1900にはsanctionは無い。 なお、単語集にはないが、スペルの似ているサンクチュアリ sanctuary (もとは「聖域」の意味)は、現代でも「自然保護区」等の意味で使われている。開隆堂(教科書会社の一つ)の高校英語の検定教科書に、中華人民共和国のパンダ保護区 panda sanctuary という単語が載ってた<ref>『Amity I』、開隆堂、令和3年1月29日 文部科学省検定済 高等学校外国語科用、令和4年2月10日 発行</ref>。 ルワンダ虐殺とか、歴史的に名前が残っている事件の「虐殺」は genocide が普通であろう。検定教科書でもルワンダの虐殺について genocide という表記を行っている<ref>高等学校学外国語科用『CROWN English Expression III New Edition』、三省堂、2018(平成30)年2月28日 文部科学省検定済、2022(令和4)年3月30日 発行、P75 </ref>。 genocide の-cide は「殺すこと」のような意味です。たとえば「自殺」は名詞 suicide です(東京書籍)。 commit suicide 「自殺する」 です(東京書籍、旺文社)。 自殺やら犯罪やらをする場合の動詞は、 commit です。 また、自殺未遂は、「試みる」の意味の単語 attempt をもちいて、 attempt suicide 「自殺を試みる」(=自殺未遂をした) のように言います(旺文社、)。 桐原は熟語としては紹介してないが、例文にもあるが impose sanctions on ~(国名など) で「~に制裁を加える」である。 impose で、罰金・税金などを「課す」の意味。だから impose a fine で「罰金を課す」である(東京書籍4500)。桐原に例文があるが、 impose ~(罰金・税金など) on ・・・(人や課税対象)で「・・・に~を課す」である。 sanctionの基本的な意味は名詞形「制裁」だが、実は動詞「制裁する」も同じスペル sanction (制裁する)である。ジーニアス英和辞典で確認できる。桐原5500を見ても動詞までは書いてないが、実はスペルが同じままで動詞にもなる。 なお、スペルの-tionな似た現象として、旺文社1400(緑本)に書いてあるが、condition (名詞「条件」、動詞「条件付ける」)とかposition(名詞「位置」、動詞「位置を定める」・「置く」)など、一見すると名詞な単語にも実は動詞の用法のある場合もある。ただし単語集を見ても例文まではないので、そんなに気にしなくてもいいだろう。 「置く」ついでに言うと、動詞 locate にも「置く」の意味がある。なお、名詞形は location 「場所」である。このように、語尾が -tion だからって何でもかんでも動詞の意味があるわけでもない。熟語 be locate in ~で「~に位置している」(旺文社1400、桐原3000)、「~にある」(東京書籍4500)。 なお、経済危機は the economics crisis である。食糧危機は the food crisis である(東京書籍4500に経済・食料の両方。旺文社1400に経済危機のみ紹介)。 なお、軍隊などを「撤退させる」「撤退する」のは withdraw である。「撤退」は名詞 withdrawal である。(東京書籍4500) 東京書籍4500に、「将軍は兵士に撤退を命じた」 This general command soldiers to withdraw. という文章がある。語法 command A(相手) to B(動作) で「AにBするように命じる」の意味である(東京書籍4500、旺文社1400)。 なお、攻撃の命令なら command ~ to attack the enemy である(旺文社1400)。 (※範囲外 :)なお、企業の「市場撤退する」は単に動詞 exit で通じる。 retreat 「撤退する」「撤回する」「(田舎などに)引きこもる」という動詞もある(東京書籍4500巻末、旺文社1900)。桐原4500・5500は retreat を紹介していない。 commandにはその他、動詞としてなら「言語を自由に操る」、名詞としてなら「言語を自由に操る能力」という意味もあり、桐原4500にその意味での例文もある。(なお桐原3000では、「警官が彼に停止を命じた」という例文で The policeman commanded him to stop. という例文がある。) withdrawの話に戻れば、預金を引き出すのも withdraw である。(桐原4500、旺文社1900) 典型的な例文は 「彼は銀行から2万円を引き出した。」 He withdrew 20,000 yen from the bank. である(桐原、旺文社、ジーニアス英和、センチュリー英和、に類似の例文)。 なお活用は withdraw - withdrew - withdrawn である。 旺文社によると、ATMからの抽出にも withdraw は使えるとのことで、(旺文社)、 「彼はATMから2万円を引き出した。」 He withdrew 20,000 yen from ATM. である(旺文社に類似の例文)。ただし辞書を見たが、ジーニアス英和とセンチュリー英和ではATMの例文は確認できなかった。 「預金する」および「預金」は deposit である。(桐原4500 および東京書籍 4500)。 なお、「定期預金」は fixed deposit です(Z会TOEIC対策本 core 1900)。fixed deposit は高校の範囲外ですが、せっかく「預金」 deposit まで高校で習うのですから、ついでに定期預金も覚えましょう。 (※ 範囲外: )なお、海外のホテルに宿泊しようとすると、フロントでの最初のチャックイン(check in<ref>『ビジネス・コミュニケーション』、実教出版、令和2年12月25日 検定済、令和4年1月25日発行、P153</ref>)のときに一定の金額を保証金としてホテルに預けなければならないホテルも多いのだが、その保証金のことも deposit と言う<ref>『ビジネス・コミュニケーション』、実教出版、令和2年12月25日 検定済、令和4年1月25日発行、P151</ref>。なお、ホテルの宿泊だけでなく飛行機の搭乗手続きのこともチェックイン check inという<ref>『ビジネス・コミュニケーション』、実教出版、令和2年12月25日 検定済、令和4年1月25日発行、P153</ref>。 なお、ホテルのフロントは front desk である(ジーニアス和英「フロント」)。 「攻撃」だの「撤退」だのの話のついでに話すが、アグレッシブ aggressive という形容詞があり、日本ではよく「積極的な」と言われるが、しかし「攻撃的な」という意味もある。つまり米英人は、「攻撃的」と「積極的」とを区別していない。aggressive の「攻撃的な」の意味のほうも、普通に桐原や東京書籍の単語集に書いてある。 ---- 貸し借り 無料で借りる borrow, use (もの・お金を)貸す lend 部屋を賃借りする rent お金を借りる owe 借金 debt 貸付金 loan 東京書籍によると、「レンタカーを借りる」が hire a car である。 しかし、rent も「賃借りする」と言う意味の英語である。東京書籍によれば、rent a car で「車を賃借りする」である。 典型的な例文としては、 (アパート・マンションなどの)「一部屋を賃借りする」 rent an apartment である(旺文社1900およびジーニアス)。apartment は、日本語でいうアパートの一室、またはマンションの一室である(ジーニアスで確認)。 また、とくにアパートなどの部屋の賃借りをすることを rent と言う。また「家賃」も同じスペルで rent である。 典型的な例文は、 「家賃を払う」 pay a(またはthe) rent である(東京書籍4500を若干改変、およびジーニアス)。 ややこしいが、 lend は「貸す」 である。なお、東京書籍によれば、lend は 無料で「貸す」 の意味。 「お金を貸してください」もlendであり、東京書籍4500によれば Will you lend me a money? 「お金を少し貸してください」 である。 桐原3000によれば、 Could you lend me $5 until tomorrow? 「明日までに5ドル貸してください。」 である。 なお、ペンを借りたり、移動できるものを「借りる」のは borrow である。東京書籍によれば、さらに、無料で借りるのが borrow である。 車を借りる場合でも、無料で借りるなら borrow だと、東京書籍1900は言っている。 lend ⇔ borrow のように対義語をセットで覚えよう(旺文社1400がセットで紹介)。 トイレのように設置してあって移動できないものを「借りる」場合は、 use である(桐原3000、東京書籍4500)。つまり、「トイレを使わせてもらう」的な言い回しを英米人はしている。 東京書籍1900だと、「電話」をuseで借りる例文がある。たぶん、トイレを英語でどういうかの説明が面倒だったのだろう。 しかし、実際には、短時間なら、持ち運びできるものでも use で無料で借りることも表現できる。桐原の検定教科書『EMPOWER ENGLISH EXPRESSION II』のP26に、辞書を借りるさいに May I use your dictionary for a while? 「少しの間、辞書を借りてもいいですか。」 という表現がある。常識的に、まさか金を払って借りるわけではないだろう。 長期間借りるなら borrow のほうが適切かもしれないが、少し借りるくらいなら、とりあえず use で十分だろう。 旺文社では1900でなく旺文社1400にrentが書いてある。 owe は「お金を借りる」である。典型的な例文が、「私は兄から(または「友達から」)10ドルを借りている」である(センチュリーと東京書籍に、ほぼ同じ例文)。桐原とセンチュリーは友達から借りている。東京書籍が兄から借りている。 ともかく典型の例文は、 「私は兄からお金を借りている。」 I owe my brother 10 dollars. である。語順を変えて、 「私は兄からお金を借りている。」 I owe 10 dollars to my brother. としてもいい。 owe で借りる行為に、利子がつくかどうかは、特に決まっていない。 owe には、恩義を負っているという意味での(誰かに対し)「借りがある」という意味もある。 「負う」とowe の発音が似ているので、ついついこれをもとに暗記したくなるが、しかしまずは「お金を借りる」から暗記したほうがいい。 典型的な例文が「私が成功したのはあなたのおかげだ」である。(ジーニアスそのまま。旺文社に「彼のおかげだ」という例文あり) 「私が成功したのはあなたのおかげだ」I owe my success to you. である。この意味の場合、I owe you my success (×)としてはならないとジーニアスは述べている。 IOU で「借用証書」の意味であり、そのままアイオーユーと読み、"I owe you"とのダジャレになっている(旺文社でも紹介)。 たとえば50ドルの借用証書の場合、 IOU $50 のように書く(センチュリーに同じ例文。ジーニアスにも金額の単位が違うが似た例文あり)。なお辞書でIOUを探す際は、oweの項目ではなく、「I」の段で「IOU」を探せば掲載されている。 loan は「貸付金」である。 だが、「公債」のように、一般人が借しつける立場になる機械のないものでも、loan という(ジーニアスで確認)。あるいは、センチュリーは「公債」を a public loan というと言っている。 また、ジーニアスいわく「銀行の貸付」は bank loan である。 ジーニアスいわく apply for a loan で「貸付けに申し込む」である。 要するに「借りる」わけだが、英語では「貸付に申し込む」みたいな言い方もする。 apply でなく ask でもいい。センチュリーがaskを使っている。 Hal asked for a loan of $5,000. 「ハルは5000千ドルの貸付けを申し込んだ。」 である(センチュリーの例文そのまま引用)。 借金を「返す」のは pay back である(旺文社およびセンチュリー)。 pay back a loan. 「借金を返済する。」 である。 銀行で金を借りる場合は、loan が適切だろう。 公債については、ジーニアスで確認したところ debt もloan も「公債」である。 debt の借金を返す場合は、旺文社およびセンチュリーいわく 「借金を完済する」pay off one's debt である、とのこと。ただし、これはあくまで完済した場合だけである。 完済ではなく、単に「借金を返す」と言いたい場合、ジーニアスおよびセンチュリーを見ると、「借金を返す」は get out of debt であると言っている。 なお東京書籍いわく、「借金をする」は get into debt であるとのこと。ジーニアスは、get 以下略のほか go into debt でもよいと言っている。 「私は銀行に30万円の借金がある。」 I am 300,000 yen in debt to the bank. である。 be in debt で「借金がある」という意味である。借金の金額も言いたい場合、上述のように、be と in の間に金額が入る。 debt には「恩義がある」という意味もある。だが単語集に例文はない。 indebted という形容詞があり、「借金をしている」「恩義がある」という意味である(借金の意味だけ、旺文社でも紹介)。だがジーニアスいわく、普通は be in debt を使うとのこと。 ---- position(位置) と possession(所有) 名詞 position は「位置」「場所」や体の「姿勢」(東京書籍3000)や「地位」(桐原4500)の意味。動詞としてのposition は「位置を定める」の意味(旺文社1400)。 発音の似た単語で名詞 possession (発音は「ポゼッション」)があるが、意味は「所有」である。動詞形possess は「所有する」の意味。名詞形 position や動詞 possess (発音「ポゼス」)にも、まったく位置や場所などの意味は無い。possessは「所有する」の意味。 ---- 位地 position, location 立場・地位 place, position position には「地位」や「立場」などの意味もあるが、本セクションでは深入りしない。なお、location には、テレビ撮影などでの「野外撮影」の意味もある(ジー二アス)。なお、positionは桐原3000や東京書籍3000にある3000語レベルの単語。locationは東京書籍4500語および桐原3000。 本セクションでは、場所的な「位置」での、position (ポジション)と location (ロケーション)のニュアンスの違いに、正面から分析を挑もう。 まず、location は、地図的な位置のことであろう。動詞locate だが、東京書籍4500も桐原3000も、locate の例文は、地図に関する例文である。 別に世界地図でなくとも町内の地図でもいいが、そういう地図にかかれるような位置は、location で表すのが無難だろう。 単語集にはないが、実際、IT分野などでは、たとえば携帯電話などのGPS位置情報などの「位置」は、英語では location という単語が使われている。 辞書にはないが、 geolocation (ジオ・ロケーション)という「地理的位置」とでも訳せるような単語が既に英語にはある。 逆に、たとえば(座席などで座る)「椅子(いす)の位置」だとか、そういうのは position で表すのが無難であろう。旺文社1200のposition の例文が、テーブルで座る(イスの)位置の例文である。 東京書籍3000は、position は「(相対的な)位置・場所」だと説明している。 だから東京書籍は、「私の位置からでは聞こえない」というような英文を書くときは、position を使うことを進めている(例文は著作権に配慮して省略。買ってあげよう)。 position を「相対的な位置」と考えれば、「立場」も割と相対的なものだから、まあ「位置」以外の他の用法も連想しやすいかと。 placeにも立場の意味があるが、これはよく仮定法で In your place, I would ~ 「あなたの立場だったら(、~するのに)」 とかで使われる。 If I were in your place, I would ~ と省略せずに書かれる場合もある。 詳しくは、辞書や文法参考書などを参照せよ。 ---- 回避 avoid , evade センチュリーevadeにある説明では、escape は「危険から脱する」、avoidは「危険に近寄らない」 のニュアンス。 東京書籍3000にavoid the danger (危険を避ける)という典型的な文、東京書籍4500にavoid the mistake (過ちを避ける)という例文がある。 なおevadeはescapeおよびavoidの両方のニュアンスを持つ。 義務から逃れることをevadeという。税金の支払いなど、evadeの例文で典型的。 一方、avoidは、悪いことやいやなことを「避ける」の意味。avoidは 「議論を避ける」とか(東京4500)、「悪友との付き合いを避ける」(センチュリー英和)ぐらいでも使われる。 ただし、どうやらavoidには、向かってくるものを「回避する」ほどの強い意味合いはないようだ。 語法として avoid ~ing で、「~することを避ける」の意味(旺文社1400、東京書籍4500)。動名詞を使う。旺文社1400でも指摘されてるが、不定詞は使わない。 その他、shun(シャン)という単語があって、「人前に出ることを避ける」shun the publicity (旺文社1900)とか「人付き合いを避ける」shun the society (センチュリー)などの意味だが、単語集では旺文社1900にしか書いてない。ジーニアス英和に単語だけあるが例文すら買いてない(センチュリーには英文あった。桐原4500と5500および東京書籍4500には単語は無し。 shun the <nowiki>media's</nowiki> spotlight で「メディアのスポットライトを避ける」 などの熟語が旺文社1900にはある。 ---- 「達成」と「到着」 * 達成 achieve と attain と reach アチーブ、アテイン、リーチ achieveは(目標などを)「達成する」。 achieve the objective (東京書籍4500)または achieve the goal (桐原3000、旺文社1400)で「目標を達成する」。 名詞 achievement には、「達成」の意味のほかにも、「業績」(東京書籍4500。旺文社1400のmodestの項目)や「成績」(旺文社1400)の意味もある。 attainは(目標などを)「達成する」だが、並の人には到達不可能な目標を達成した場合によくattainが使われる用例もあるが(ジーニアス)、べつに並の人でも達成できる目標にattainを用いても構わない。 たとえば東京書籍4500 に「彼はオリンピックのメダルを獲るという目標を達成した」 He attained his goal of winning an Olympic medal. とあるのは、並の人には到達不可能な目標に用いれる例だろう。 一方、センチュリー英和にある例文「父は80歳の高齢に達した」My father has attained the advance age of eighty. のような、一般人でも達成できるattainもある。 なお、別に年齢のattainでは現在完了形を使う必要はなく、たとえばジーニアス英和では「彼女は77歳に達した。」She attained the age of seventy-seven. である、 reach は「手が届く」の意味と、ほか(場所などに)「到着する」。 reachは多義的なので目標的な意味でもreachが使われるが(英和辞典にそう書いてある. 東京書籍3000にも書いてある)、しかし attain のほうが「目標達成」のニュアンスが強い。 ※ 高校生としては、目標達成には attain を覚えたい * 到着 arrive とreach arriveは場所に「到着する」。 「到着の予定」は be due to arrive である(東京書籍4500. 旺文社1900)。 due は「予定」の意味の名詞。桐原の単語集に至っては、dueの意味紹介で「(人・乗り物などが)到着する予定で」とすら紹介している。 いちおう、東京書籍および旺文社では、 be due to 〜(動詞) が「〜の予定である」と紹介しており、その例文として乗り物の到着の例文を出している。 なので、ともかく due to arrive 「到着の予定」というふうにセットで覚えよう。 典型的な例文が The train due to arrive at 6 pm . のような例文である。train(電車)の代わりにplane(飛行機)だったりする場合もある。 桐原4500によれば、to arrive を省略しても通じるらしい。つまり、 The train due at 6 pm . でも通じる。 なお「省略する」は英語で omit (オミット)という(旺文社1900巻末)。 さて、due の話に戻る。スペルが同じだが、前置詞的に due to で、「〜が理由で」の意味がある。because of とほぼ同じ。 桐原4500にある例文「彼女は病気のため休んだ。」で、「病気のため」の部分が due to illness である。全文は単語集を買って読んで。辞書にあまり例文が無い。 その他、due には、給料などが「支払われるべき」という意味もあるが、平易な例文が少ない。東京書籍4500に例文ある。 reachにも「到着する」の意味があるが、他の意味もあるので、専門的な会話などでは避けたほうが安全。実際、桐原4500を見ても、目標の段階到達の意味は書いてない。それが書いてあるのは東京書籍3000だけ。  つまり、 attain 目標達成する arrive (場所に)到着する reach 手が届く のように使い分けるのが安全だろう。 さて、目的地は destination です(桐原4500、旺文社1400)。 arrive at the destination 「目的地に到着する」です(旺文社1200)。 「arrive at ~(地点)」で「~(地点)に到着する」です。東京書籍3000によると、町・駅など比較的に狭い場所に到着するときはarrive at ~ です。 「arrive in ~(地域)」で「~(地域)に到着する」です。東京書籍3000によると、大都市・国など比較的に広い場所に到着するときはarrive in ~ です。たとえば arrive in New York 「ニューヨークに到着する」という例文があります(英語例文は東京書籍3000より。日本語はwikiに合うように言い換え)。 なお、「出発する」は動詞 depart または動詞 leave <ref>高等学校外国語科用『Standard Vision Quest English Logic and Expression I』、啓林館、令和3年3月5日検定済、令和3年12月10日発行、P124</ref>です。 leave ⇔ arrive とセットで覚えましょう。 * 目標 purpose, aim, target 「目標」は、まずはpurposeで覚えるべきである。 aim (エイム)は銃などで「狙う」という意味の動詞だが、名詞としてはaimは「目標」の意味にもなる。 aim to ~(動詞) で「~しようと目指す」のような意味。 target はアーチェリーなどの「的」(まと)の意味の名詞だが、派生的な意味で「目標」の意味にもなる。また、動詞でtargetは「目標を定める」の意味にもなる(センチュリーで確認)。 旺文社1900およびセンチュリーによれば、「的に当てる」 hit the target である。 よく外来語で「ターゲット」と聞くが、なんと東京書籍と桐原の単語集にはターゲットは書いてない。(旺文社1900には書いてある。) さんざん上述でreachだのachieveだのの話をしたが、ジーニアスに「目標を達成する」は reach a target または achieve a target だと書いてある。 一見すると aim は銃などの狙いなので攻撃的な雰囲気がありそうだが、しかしジーニアスで確認すると target にも攻撃目標の意味があるので、違いが不明瞭である。 ジーニアスによれば、「広告ターゲット」の客層のことは target audience という。 ---- 修理する repair と fix リペア、フィックス repair のほうが硬い表現であり(東京書籍4500)、そのためか、大型または複雑なものの修理に使われる(桐原3000)。 ただし、あまり境界は明確ではなく、たとえば東京書籍では TVの修理が repair なのに car の修理がfixだったり。実際は自動車の「修理」なんて修理工場とかが必要で凄く難しいが。 桐原3000では、腕時計 watch の修理が repairだった。 実用英語としてはズレるが、高校生はまずrepair で覚えるのが安全だろう。 fixは多義語であり、「固定する」の意味もあるので、誤解されるおそれがある。ただし、実際はよく使うが。 なお、船の錨(いかり)を名詞 anchor というが、これには動詞 anchor で(物理的に)「固定する」の意味もあるが、単語集に書いてないので入試には出ない。センチュリー英和には、「本棚を固定する」という例文で anchor が使われていた。fixだと紛らわしい場合にはanchorをどうぞ。 なお、mend は衣服や靴などを「修繕する」。 mendには、行儀などを直す、改心する、などの意味もあり、 諺(ことわざ) ''It is never too late to mend.'' 「行いを改めるのに遅すぎることはない」<ref>高等学校外国語科用『Standard Vision Quest English Logic and Expression I』、啓林館、令和3年3月5日検定済、令和3年12月10日発行、P68 ページ脚</ref> というのもある。 なお、「ことわざ」は英語で名詞 proverb (プラバーブ)である。 決まり文句として、 as the proverb say 「ことわざの言う通り」 という言い回しがある(東京書籍4500、ジーニアス、センチュリー)。 なお、単語集proverbにある ことわざ は、 「行動は言葉よりも雄弁である」 "Action speak louder than words. " (旺文社1900) 「ローマは一日にしてならず」 "Rome was not built in a day." (東京書籍4500) である。 なお桐原は、日本の「出る釘(杭)は打たれる。」を紹介。 ---- 支配 dominate と control dominate が、統治的な意味で「支配する」とか(桐原4500)、力(ちから)などで「支配する」(東京書籍4500)。 一方、control には、そういう統治やチカラ的なニュアンスはないだろう。controlを「支配する」と紹介する単語集もあるが(東京書籍1800)、どちらかというとcontrolは「制御する」だろう。 和英辞典(ジーニアス)で「制御する」を調べても control しか書いてない。 また、ジーニアス和英で「操作する」を調べても、controlはない。「コントロール」を操作の意味で使うのは、どうやら和製英語のようだ。 ---- 管理 management と controlと in charge of 経営管理や(単語集にはないが)遺産管理などがmanagement である。 単語集にはないが、品質管理などはcontrolである。(quality control、QC)である。 単語集には manage を単に「経営する」とだけ書いてあるが、今後の応用などを考えると「経営管理する」と覚えるほうが良いだろう。 動詞 manage to do で、「なんとか~をやりとげる」という意味があり、桐原3000や東京書籍3000にこの熟語が書いてある。 manage で「経営管理する」→「やりとげる」だと意味を連想しやすい。一方、「管理する」→「やりとげる」だと、やや飛躍があるだろう。 ついでに、動詞 cope with が「うまく処理する」という意味があり、似たような使われ方をする。 典型的な例文が、 cope with the problem 「問題を処理する」 である(東京書籍4500、旺文社1900)。 その他、handle にも、問題を「処理する」の意味がある。(handle については、別の機会にほかの用法ごと意味を勉強したほうが効率的だと思うので、当セクションでは解説を省略。) 「品質管理」について、日本語では「管理」と言っているが、しかし under control で「制御下で」という用法があることを考えると、推測だが、どちらかというと、QC には「生産工程を正しく制御することで、すぐれた品質を維持する」的なニュアンスが英語QCにはありそう。 QCは管理自体は目的ではなくて、品質の維持が目的なので。 なにかを維持したりするのは、日本語では「制御」という訳を当てることが多い。もっとも、もう「品質管理」で訳語が広まってしまったので、どうしようもないが。 形容詞のような使いかたで in charge of ~ 「~を管理して」という熟語がある。(旺文社・熟語1000) 「~を預かっている」→「~を管理している」のようなニュアンスだろう。 たとえば The person who is in charge of repairs is Mr.Smith. で、「~を管理しているのはスミス氏だ」のような意味。なお、センチュリー英和と旺文社熟語1000を組み合わせた例文。 manager だと支配人と誤解されかねないし、そういう場合に who is in charge of ~ という表現は便利そうである。 なお、動詞「管理する」「担当する」はtake charge of ~ である(旺文社 熟語1000)。 administration に「管理」という意味もある。 だが、これは現代では、ネットのサーバー管理者やその他のシステム管理者のことを「アドミニストレーター」 administrator と言ったりして用いるので、よく目にかかるだろう(単語集にはない)。ジー二アス英和 administrator には、きちんとコンピュータ用語で「管理者」の意味だと書いてある。 administration には、「政権」という意味もあり、たとえば「ケネディ政権」the Kennedy administration とか(東京書籍)、トランプ政権 the Trump Administration とか(旺文社)、のように使う。 manager でいうと「経営者か?」と誤解されないが、ある人が何らかの管理の権限が与えられている場合など、administration などで言い換えると良いだろう。 東京書籍4500では administration は巻末送りである。あまり高校教育的に良い題材にしづらいのだろうか。だが、「政権」も「サーバー管理者」も、大学進学を目指すなら知っておきたい単語であろう。 ---- 遺産 estate, heritage 受け継ぐ inherit estate (エステート)が、親からの財産などの相続的な「遺産」。 heritage (ヘリティッジ)は後世に残すにふさわしい文化的な「伝統」などの意味での「遺産」(旺文社1900、センチュリー)。ただし、heritage にも親からの「遺産」という意味もある(センチュリー)。 「世界遺産」は World Heritage である(桐原3000)。世界遺産はヘリティッジ冒頭のHが大文字。 東京書籍3000・4500はheritageを紹介せず。 heritage は発音注意。後半はテージではなくティッジ。 inherit (インへリット)は、単語集では「相続する」で書いてあり(桐原)、辞書にもそうあるが(ジー二アス)、しかし「継ぐ」「引き継ぐ」「受け継ぐ」で覚えたほうがよいだろう。(「継承」と訳すと固すぎて、日本語の訳には合わない。) 前任者から地位や方針などを「受け継ぐ」という用法が、 inherit にはある(ジー二アス、センチュリー)。 財産の「相続する」の例文については、典型的なのは、 (桐原、センチュリー)「財産を相続する」inherit a fortune (ジー二アス、東京書籍)「財産を相続する」inherit a property である。 She inherited a fortune from her father. 「彼女は父から財産を受け継いだ。」 のように使う。 単語集には、inherit には、親から性格・体質などを「受け継ぐ」の意味があると書いてある(東京・桐原)。 名詞形は inheritance (インヘリタンス)であり、「相続」「遺産」「遺伝」などの意味である(桐原)。 「相続税」を inheritance tax という。だから、inherit を「相続する」と訳すのも間違いではない。 日本人は「受け継ぐ」と「相続する」を別々の言い回しとして区別しているが、英米人はそうではない、というのが理解の本質である。 生物学などで「遺伝」の分野の英文をよんでいると、しばしば inheritance という英文も見かける。 [[:en:w:Mendelian inheritance]] (英語版 wiki「メンデル遺伝」(直訳) )など。 (※ 範囲外 : )ほか、単語集にも辞書には無い範囲外の話題だが、プログラミング用語で「継承」 inheritance という概念があり、( [[w:継承 (プログラミング)]] ) 親(parent)的なデータ集合のモジュールから、子(child)的なデータのモジュールにデータを継承させる設定などで「継承」 inheritance は使う用語である。(※大学の情報工学レベルの内容なので、高校生は暗記しなくていい。また、工業高校でも、ここまでは習わない。) ---- ※ 対義語 メジャーとマイナー major と minor major は「主要な」。minorは「重要ではない」。 2つ以上のもののうち大きいほうがメジャーmajor、比較的に小さいほうがマイナー miner 。 高校では bigger とかlargerとか論外だし、そっちは紹介すらしていない。 「多数派」が majority マジョリティ。 なお「多数決」は a majority vote である(東京書籍4500 でvoteの項目に書いてある)。vote とは名詞形では「投票」とか「票」の意味であり、同じスペルで動詞の意味の場合もあり動詞なら「投票する」の意味。 派生的に major には「重要な」という important に近い用法もあるが、上述のような違いがある。 「圧倒的多数」は an overwhelming majority である(東京書籍4500。旺文社1900)。 単語集にはないが、ジーニアス英和には「圧倒的多数」は a sweeping majority of votes だと書いてある。 sweep は、掃除のホウキなどでゴミを「掃く」(はく)の意味だが(旺文社1900にはこの例文が書いてある)、ほかには敵などを「一掃する」などの意味もあるが(旺文社のに書いてある)、単語集にはないが派生的な意味として票や人気などを「かっさらう」の意味もある。あと、試合や勝負などで「圧勝する」の意味もある。 検定教科書では、三省堂CROWN III に sweep が書いてあった<ref>『CROWN English Communication III New Edition』、三省堂、2018(平成30)年2月28日 文部科学省検定済、2022(令和4)年3月30日 発行、P.117</ref>。環境問題の単元で。 「圧倒する」overwhelm は、勝負事のほかにも、「美しい景色に圧倒された」のような使い方もして良く、旺文社1900の例文がそうである。センチュリー英和の例文でも、交響曲が「感動的」をoverwhelming としているのがある。 ジーニアスによると、感動だけでなく苦しみや困惑でも overwhelm を使うこともあるようだが、wikiで紹介するには例文が不足しているので、紹介しない事にする。 大学などで特定の学問分野を「専攻する」ことを米語(アメリカ英語)で major といい、普通は major in ~で「~を専攻する。」 典型的な例文が He majored in economics. 「彼は経済学を専攻している。」 問題は場所の前置詞である。 He majored in economics in university. 「彼は大学で経済学を専攻している。」 だと、inがいくつもあって読みづらい。(東京書籍4500は気にせずin ・・・ in college と並べている) He majored in economics at university. のように、atが好まれる場合もある。(センチュリー英和が at university としている。) イギリス英語だと、専攻はread だったりstudy だったりするが、まあ同音意義語が多くて分かりづらい。なるほど、米国英語 major が必要とされたわけである。 旺文社1900には specialized が紹介されているが、しかしspecialized は大学院以上での「研究する」に用いるのが本来だとジーニアスは述べている。 ---- 主要な chief ,principal, main, primary 第1位の primary , prime まず、chief は組織の「長」という意味の名詞である。 だが、それ以外の意味として、形容詞として、「主要な」という意味がある。 たとえば、「主要な都市」だとか「主な理由」とかで chief が使われる。 この「主な」という用法では、chief は main とほぼ同じである。 形容詞 principal という「主要な」を意味する単語がある。 名詞の「原則」principle とい別の単語である。(ただし、語源は同じで、princip-が「第一の」という意味。) また、発音も同じで、つまり principal の発音と、principle の発音は同じで、両方とも「プリンセプル」と発音する。旺文社1900が同音だと紹介している。 principalの語源は「第一の」であるが、しかし「主要な」の意味する対象は唯一のものでなくとも構わない。 ジーニアスの例文で、「ヨーロッパの主要都市」 the principal cities of Europe という単語がある。 このように、複数個ある「主要都市」に principal を用いても良い。 東京書籍にある「主な原因」principal reason とか、またはセンチュリーにある principal cause は、別に理由が一個だけとは限っていないだろう(教材では特に言及はされていない)。 principal は名詞としては「校長」の意味である。 ジーニアスおよびセンチュリーいわく、「会長」を principal という場合もある。 ジーニアスいわく「社長」にも principal が使えるらしいが、しかし「社長」は、 president で十分だろう。 principalには「元金」という意味もある。利子に対する元金のこと。旺文社で、元金が紹介されている。 primary (プライマリー)は「第一の」という意味の形容詞。 イギリス英語では a primary school で「小学校」である。なお、アメリカ英語では「小学校」は elementary school である(ジーニアス和英「小学校」)。 「主な目的」と同じ意味で「第一の目的」 a primary purpose という言い回しもあるので、「主な」とも訳される場合もあるが(東京書籍3000)、しかし primary の意味は「第一の」で先に覚えるのが安全だろう。 小学校を「主な学校」と覚えるのは、飛躍をしすぎている。 よくあえる典型的な例文は a primary concern 「第一の関心ごと」 である(ジーニアス「最も心配しているのは」、桐原「第一の関心事」)。 ほか、米国の「予備選挙」を a primary election という(桐原4500、ジーニアス)。 さて、よく似た関連の別単語 prime (プライム)の話。 今の単語集にはあまり書いてないが、昔はよく「総理大臣」は英語で the prime minister (ザ・プライム・ミニスター)だと高校で習ったものである。いちおう、東京書籍の例文中に「総理大臣」the prime minister がある。桐原には書いてない。 なお、「大臣」は英語で minister である。 いま話しているのは、primary ではなくprimeである。 違いは、ニュアンス的に primary は単に「順番が第一の」 の意味でも使われる。 一方、prime は、総理大臣のように、やや固い言い回しであることくらいか。 prime の語源はもともと、カトリックの日課の「最初の」礼拝のこと(ジーニアスで確認)。 prime はこういう意味なので、単に一番目であるだけでなく、さらに重要性の高いものに使われるというニュアンスがある。 形容詞を単独で覚えるのではなく、primary concern とか prime minister とか、名詞とセットで覚えよう。 ---- 「深刻な」 serious と severe 日本語になっているシリアスとシビアと同じような使い分け。 ともに「深刻な」の意味があるが(東京書籍3000にそういう用例あり)、 シビアのほうは、マジメに考えるべきという意味で「深刻な」。 severe のほうは、苦痛などがひどいという意味で「深刻な」。 だが、あまり境界は明瞭ではなく、桐原3000では severe economic problem のように「深刻な経済問題」という用法もある一方、東京書籍で serious damage 「深刻なダメージ」という用法もある。 ※ 東京書籍には悪いが、高校生の段階では、とりあえず severe のほうだけを「被害で深刻な」と覚えておいて、serious の被害的な用法は例外的だと思うほうが安全だろうか。 なので、serious は(「深刻な」ではなく)とりあえず「(問題などが)重大な」と覚えるほうが良いだろう。 もっとも、そう覚えると今度は important「重要な」との区別が難しくなる。 なので、serious は「(まじめに考えるべき、問題などが)重大な」で覚えるのが良いだろう。東京書籍3000 でも、serious を「(問題などが)重大な」と説明してある。 上述のように「重大な」「重要な」「主要な」など漢字が一文字変わるだけで意味が変わるので、ここらヘンは注意が必要である。 ---- 「能力」 ability と capability まず、形容詞 able は「~できる」の形容詞。 形容詞 capable は「~の能力がある(※ 東京書籍4500)」「(人や組織が)有用な」の形容詞。組織の有能は桐原4500、人の有能は東京書籍4500。 なお、構文では「be able to 原形動詞」 と 「be capable ~ing」の違いがある。 問題は、ability と capability の違いがある。 桐原3000がabiity を「能力」と訳し、桐原4500および東京書籍 4500 が capability を「能力」と訳し、ともに「能力」である。 ※ これはもう、capability のほうが格調が高くて高尚な表現だと思うしかない。 なお、国家の「戦闘能力」のことも capability といい、ジーニアス英和辞典にそう書いてあるし、よく海外の軍事ニュースとかで聞く。 辞書(三省堂センチュリー)を見ていたらcapabilityに「力量」がある、という表現があった。 ジーニアス辞典だとcapability に「手腕がある」。 高校の単語集では capable を「有能な」と訳しているが、上述のような力量・手腕なニュアンスがあると見るのが良いだろう。 構文「be able to 原形動詞」 と 「be capable ~ing」の違いについても、capableが手腕や力量を評価していると考えれば、普通は過去の実績にもとづいて手腕を評価するだろうから、capable ~ing のように後続が動名詞である事も納得理解しやすいだろう。 桐原 3000 およびセンチュリー辞典によると「able」は人のみを主語とする、桐原3000ではcapable は人も無生物も主語とするとあるが、しかしジーニアス英和辞典ではそのような説明は確認できなかった。 ableが人のみを主語としているなどは、あくまで傾向・経験則に過ぎない。 なお、本来なら can より be able to のほうが文語体に近い。なのでbe able to は高尚なはずである。 しかし、上には上がいて、さらに be capable ~ing という、上級な表現がある。 ---- 「力量」 上述のcapabilityに「力量」のついでに言うと、なんと「美徳」を意味する virtue にも、辞書にないが、中世あたりの古いラテン語などで、virtue に相当する言葉に「力量」という意味があった。 現代でも、辞書ではvirtue に「長所」「(薬などの)効能」の意味がある なお対義語の「悪徳」は vice である。美徳 virtue と悪徳 vice はセットで覚えよう。 さて、桐原4500 にだけ virtue の意味に「美徳」のほか「長所」という意味があると説明しているが、こういう力量的なニュアンスが背景にある。 高校の範囲外だが、たとえば政治学の古典のマキャベリ『君主論』の和訳本を読むと(NHK出版のを読んだ)、君主には virtue (に相当する昔のイタリア語)が必要だと言ってるのだが、これは「君主には(敵を押さえつける)力が必要だ」的な意味。辞書には書いてないが。 薬の効き目なども virtue というと辞書にあるが、そういう「力量」的な意味が背景だろう。 ジーニアス英語辞典にあるが、キリスト教の天使にバーチュ virtue というのがいるが、そういう意味で、だから「力天使」(りきてんし)と訳されるわけだ。 ---- 消滅・滅亡 perish と vanish と disappear perish は「(災害などで)死ぬ」のを perish で桐原5500が紹介している。なので、perish には「消滅する」という意味があるが、どちらかというと殺されるような感じで「消滅する」(桐原5500)。 単語集にはないが、大学の研究者についての格言で、publish or perish 「(論文などを)発表しろ、でなければ消えろ」というのがある。パブリッシュとペーリッシュの発音とスペルが似ている駄洒落にもなっている。意味合いとしては、大学教員は研究者としての意義で税金などの援助を受けていたりするので、それができないなら邪魔なので大学からは消えてくれ、というふうに日本では解釈されている。 コレで覚えるほうが、perish を覚えやすいだろう。 vanish は、(単に突然に)「消える」が第一の意味だが、派生的に 「恐竜が地球上から消える」という用法で東京書籍が vanish を使っているように、死んだことにより消えたものにもvanish を使うこともある(東京書籍4500)。辞書によると、絶滅にはvanish を使う(ジーニアス和英)。 だが、vanishを死んだものに使うのは派生的な用法。なので、 perish 「死に去る」で覚えるのが高校生には良いだろう。 disappear は単に姿が見えなくなること。appearの対義語。 vanish とdisappear の境界はあまり明瞭ではない。「少年が人ごみに姿を消す」を桐原は vanish で説明する一方、 東京書籍は飛行機が「視界から消える」ことをdisappear で説明している。 ---- 公表 publish , release publish には「出版」の意味のほかにも「公表」の意味がある。そもそも「公開」を意味する public と、publishの語源は同じである(ジーニアスで確認)。 だが、いくつかの分野では、release が「公表」の意味で使われる場合もある。 release は「解放する」の意味が第一義であるが。 たとえば企業などによる、テレビなど報道機関に向けた情報公開はプレスリリース press release という(ジーニアスおよびセンチュリーで press の項目に書いてある)。 なお、ここでいうプレス press とは、「報道機関」の意味。press は名詞では、新聞やテレビなどといった「報道機関」の意味もある。通例、報道機関のことをいう場合は the をつけて the press となる(the press は単語集に普通に書いてある)。 映画の公開の開始やレコードの販売開始などもrelease と言うが、本項目では触れない。 push と press の違いについては本ページでは深入りしない。「圧力」が pressure のことから、press は「強く押し付ける」とか「しっかりと押す」のような意味合いで使われる場合もあるだろう。 なお、depression と言う単語が「憂うつ」「低気圧」「不況」の意味である。 不況だから「憂うつ」なのか、それとも、「抑うつ」といわれるように何か抑圧を感じていて「憂うつ」なのかは分からないが、関連付けて覚えよう。 なお、動詞形 depress は、「落胆させる」「不景気にする」の意味(桐原4500)。 ---- 出現 appear と emerge emerge を「現れる」と説明している単語集もありますが(桐原4500)、しかし「(見えないところから)出てくる」ぐらいに考えるべきです(※ ジーニアス上岩辞典などを参考)。実際、ジーニアス英和辞典でそう説明しています。 桐原4500が「春になると昆虫が現れる」という文でemearge を使っているのも、冬のあいだは卵だったりして人目につかない場所に隠れていたのが、明らかになった、というような意味合いでしょう。 なお、よく非常事態をemergency といいますが、この動詞 emerge の名詞形 emeregence (「出現」、「脱出」)の派生系の名詞です(ジーニアス英和辞典にそう書いてあります)。 桐原4500にemergence が書いてあるのですが、どうせなら非常事態 emergency も覚えてしまうのがよいでしょう。 appear は(登場する的なニュアンスで(※ 桐原4500))「現れる」。 だが、appearは「出現する」で覚えたほうが良いだろう。ジーニアス和英で「出現する」を調べれば appear が書いてある。 東京書籍4500も桐原4500も「出現する」という言い回しを避けている。いったいこの出版社は、「出現」という言葉にどういうイメージを持っているんだか。emergeとの混同を防ぎたいのだろうか。 なお appear にはSVC文型で「~に見える」という意味もあり、lookのSVC文型と同じような意味の用法もある。 このようなSVC文型で有名な動詞は、 look(見える), sound(聞こえる), smell(匂う), feel(感じられる) , taste(味がする) , seem(思われる) , などがある<ref>高等学校学外国語科用『CROWN English Expression II New Edition』、三省堂、2022年3月30日 発行、P137</ref>。 ---- 許可する permit と allow とadmit 撮影許可や駐車許可など規律で「許可する」が permit である(東京書籍4500)。 単語集にはない情報だが、パソコンで「アクセス許可」などの設定でファイルごとに「読み取り専用」「読み書き自由」とかファイルの所有者などを設定するアレも、Unix系システムでは パーミッション ( permission )という<ref>[https://kotobank.jp/word/%E3%83%91%E3%83%BC%E3%83%9F%E3%83%83%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3-7188 コトバンク『 パーミッション』 ASCII.jpデジタル用語辞典「パーミッション」の解説 ] 2022年5月14日に確認. </ref>。 単語集の話に戻ると、派生的に父親が娘の留学を「許可した」みたいに使う場合もあるが(桐原4500)、派生的な用法であるので、まずはpermission「許可」で覚えるのがよい。 His father permitted him to study abroad. 「彼の父は、彼が留学することを許した。」(桐原4500) しかし、allowで留学を「許可」する文章を書いてもよく、実際に啓林館の検定教科書『Standard Vision Quest』にallowの留学の可否の例文がある。 My parents won't allow me to study abroad. 「(※私の両親は)私が留学するのを許さない」<ref>高等学校外国語科用『Standard Vision Quest English Logic and Expression I』、啓林館、令和3年3月5日検定済、令和3年12月10日発行、P66</ref> :※ カッコ内「(※私の両親は)」は、wiki側での補充。検定教科書には訳なし。 ジーニアス英和辞典によれば、後述の名詞形 permission には、「許可」のほか「認可」の意味もある。 動詞 permit には認可の意味はないが(ジーニアス英和で確認)、名詞形 permissionのニュアンスをくんで使うのが良いだろう。 子供などに許可を与える場合は普通はallowを使う(東京書籍4500で説明、および旺文社1200に文例あり)。 一方、名詞形 allowance だと、給料の通勤手当(つうきんてあて)だとか家族手当などの「手当て」という意味になる(東京書籍、ジーニアス)。基本的に allowance に許可の意味は無い。辞書をみれば、allowance には税の「控除」(こうじょ)などの意味もある。 なぜ、こういう事になっているかというと、実はもともと allow のもとの語は、「割り当て」という意味だった。なので、むしろ「手当て」の意味のほうが語源に近い。 実は辞書を見ると、allow には税の「控除をする」などの意味もある(ジーニアス)。 逆に、動詞 allow の「許す」の意味のほうが、語源から遠いのである。 さて、熟語 allow for ~ は「考慮に入れる」の意味である(東京書籍4500)。 このように allow はあまり「許可」に特化した語ではない。 permit のほうが「許可」に特化している。 なお単語集には、allowance の例文は無い(東京、桐原、旺文社)。 admit は、入学・入場などを「許可する」こと(桐原4500)。だからadmission は「入学(入場)許可」・「入場料」の意味である。 ただし、admit には、(いやいやながら、あるいは仕方なく)しぶしぶ「認める」という用法もある(東京書籍4500および旺文社1900)。ジーニアス英和辞典を見ると、自身の罪や失敗や自身のおろかさなどを認める際に admit を使った例文がある。 「いやいやながら受け入れる」的なニュアンスだろう。 なおジーニアス英和によるとadmitの本義は「受け入れることを認める」とある。 なお、「嫌々ながらの」「しぶしぶの」は reluctant である。桐原に「しぶしぶの」という和訳がある。 「しぶしぶ」・「嫌々ながらに」は reluctantly である。東京書籍に「しぶしぶ」という和訳がある。 be reluctant to ~(動詞)で「~するのに気が進まない」である。 典型的な例文が、 be reluctant to go there. 「そこに行くのに気が進まない。」 である(東京書籍に同じ例文。旺文社が行き先が違うが go の例文)。 forgive forgive は、悪い事をした人を「許す」の意味(単語集に書いてあるのはコレ)。 このほか、辞書の forgive の項目には、借金などの免除の意味もあるが、単語集には書いてないし(旺文社1900にだけ書いてあるが例文なし)、高校生には重要性が低いだろうから覚えなくていい。 * 承認 recognize いちおう、旺文社1900の単語集にはrecognition 「承認」とあるが、ほかの単語集では紹介されていない。旺文社にも、「承認」の意味でのrecoznizeの例文は無い。 recognize には、新政権の「承認」などの意味もある。辞書によくあるのは、新政権やイスラエルなどが周辺諸国から承認 recognize を拒まれるという内容の例文。 ---- 過失を認める admit, acknowledge admit には、(いやいやながら、あるいは仕方なく)しぶしぶ「認める」という用法もある(東京書籍4500および旺文社1900)。ジーニアス英和辞典を見ると、自身の罪や失敗や自身のおろかさなどを認める際に admit を使った例文がある。 「いやいやながら受け入れる」的なニュアンスだろう。 なおジーニアス英和によるとadmitの本義は「受け入れることを認める」とある。 acknowledge はアクナリッジまたはアクナーリッジのように発音する。 アクノウ(×)以下略とは発音しない。 acknowledge は「事実であると認める」という意味であるが、誤りを認める場合にも使われる。 センチュリーいわく、admit とは違い、しぶしぶ過ちを認めるようなニュアンスは acknonwledge には無い。 典型的な例文が、 acknowledge one's mistake 「過ちを認める」 である(東京書籍、センチュリー、旺文社)。 たとえば東京書籍は She acknowledged her mistake. 「彼女は自分のミスを認めた。」 である。 センチュリーは I acknowledge my mistake. 「私は自分のミスを認めます。」 である。 その他、単語集にはないが、好意などに対して「会釈する」という意味や、手紙や贈り物などに対して、「送り主に受け取ったことを知らせる」という意味もある。 ---- 「禁止する」 forbid, prohibit, ban 「抑制する」 inhibit prohibit および ban は法律または規則による「禁止する」。 ban のほうが口語的。辞書などでよく、喫煙禁止の例文があり、 You are prohibited from smoking in this room. 「この部屋での喫煙は禁止です。」 のように使われる(東京書籍4500をもとに、ジーニアスの例文の「この部屋」に改変)。 法律が禁止する場合、 The law prohibits ~「その法律は~を禁止している」 のように使う。(ジーニアスおよび旺文社1900) スペルの似ている inhibit は「抑制する」「妨げる」。 inhibit の派生の名詞 「インヒビター」inhibitor が、よく薬品などの化学反応の抑性物質の名前で使われる。 forbid が一般的な「禁止する」であり、法律・規則による場合と、そうでない場合のどちらでも使われる(東京書籍)。 forbid の活用は、 現在形 forbid - 過去形 forbad または forbade - 過去分詞 fobidden である。 ---- 考慮 consider と allow 動詞 consider が「考慮する」。名詞ではないので注意。 allow for ~ が「考慮に入れる」。 take ~ into consideration が「考慮に入れる」。 ※ 高校生はとりあえず consider および take ~ into consideration を覚えるのが良いだろう。こっちのほうが大人っぽい表現だろう。 allow for ~ は覚えるのが難しい割に、個々の単語を見てもイメージがわきづらい。また、比較的に子供っぽい表現だろう。手間をかけて子供っぽい表現を覚えるのは損である。 実際、桐原3000では、allowを使った「考慮に入れる」の表現は紹介していない。 一応、旺文社の熟語1000にallow for ~ の「考慮に入れる」の熟語があるが。 ---- 「規制」と「規則」 日本語の問題でもあるのだが、「規制」は禁止とは限らない。 英語で「規制する」 regulate は、たとえば「米価を統制する」の「統制する」とか(ジーニアス)、警官の道路交通整理とか(東京書籍、センチュリー)、そういうのにも regulate を使う。 たとえば 「警官は交通を取り締まっている。」 The police are regulating the traffic. である(東京書籍。センチュリーに似た例文)。 なお、「交通規則」は単に traffic rules で言える(桐原4500の rule)。 また、名詞形 regulation は、「規制」「規則」である。つまり、英語では規制と規則とを区別していない。センチュリーいわく、rule よりも細かいのが regulation であるとのこと。 また、法律ではないので、政府や公共機関による規制である必要はないのが「規制」regulation であり、たとえば「自主規制」the voluntary regulation of the press などの単語もある(ジーニアス)。 規制の内容によっては、「取り締まり」の内容の場合もある(センチュリー)。 あと、自動車の交通違反の「取り締まり」だって、別に自動車の運転は禁止していないわけです。 世間には「取り締まり」というと禁止と勘違いする人がいますが、それは規則の内容次第です。 なお、規制 regulate の成り立ちは、出来事などの「規則的な」、生活などの「規則正しい」という意味の単語 regular の派生である(ジーニアスで確認)。 旺文社が紹介しているが、regulation には「調整」という意味もある。 辞書によると、「温度の調節」 the regulation of temperature とか(センチュリー、ジーニアス)、ガスなどの流量を調整するのも(ジーニアス)、 regulation である。 「安全基準」 safety regulation である。 なお、「時間に規則正しい」は punctual (パンクチュアル)である(旺文社、桐原)。 He is always punctual. 「彼はいつも時間を守る。」 のように使う(旺文社、桐原)。東京書籍は punctual を紹介せず。 名詞形は punctuality 「時間厳守」である(桐原5500)。 なお、「規制を撤廃する」は deregulate である(東京書籍)。 「銃規制」は gun control である(東京書籍3000・control、ジーニアス)。 「規則に従う」は obey the rule である(センチュリー、旺文社)。 obey は、規則のほか、教師や親や上司などに従うのにも、obeyを使うこともできる。 (ジーニアスいわく)「親に従う」obey one's parents (センチュリーいわく)「教師に従う」 obey one's teachers 「法に従う」「法を守る」 obey the law などである。 辞書によっては和訳で、規則や法に「従う」と言う代わりに、規則や法を「守る」と和訳している辞書もあり、ジーニアス英和がそうである。 名詞 obedience は「従順」「服従」の意味(旺文社、桐原)。 形容詞 obedient は「従順な」の意味(東京書籍、旺文社)。 ---- 確信 形容詞 confident と 動詞 convince 形容詞 confidentは、自分の能力に対する「確信している」の意味がある。また、他社への「信頼している」の意味がある。 単なる確信のsureとは、そこが違う。 熟語集などによっては、そこが書いてないレベルの低いものもある。(※熟語集を買うときも、やみくもに語数の多いものを買うのではなく、類義語との違いを説明しているものを買おう。) 動詞 convince は(~が事実であることの)「確信させる」・「納得させる」であり、無罪を「確信させる」などが典型的(桐原4500および旺文社・熟語1000)。 そのほか、勝利を「確信させる」とかが convince である。 なので、「確信する」人物は、動詞 convince の目的格の人物である。(主語が確信するのではない。) そもそも、convince は(形容詞ではなく)動詞であり、他動詞である。 ただし、受身形 be convinced with ~ とすることで、主語が「確信している」ことをあらわすこともできる(桐原4500)。 なお、convince A of B で、「AにBを納得させる」の意味にもなる。 そのほか certain や sure などで「確信している」を表現できるが、中学で習うのだろうから省略。ほか、certain については対義語 uncertain (不確かな)を覚え足せば十分だろう。 ---- 適合・適応 adapt とadjust まず、「適合する」は adapt を第一に覚える。 電気のアダプター adapter と同じ語源。(ジーニアス英和辞典で adapter が電気のアレであることを確認。) アダプターは和製英語ではなく、本物の英語。 adaptとスペルの似た単語でadoptというのがあるが、これは「採用する」の意味だが、ほかにも「養子にする」がある(旺文社1400にだけ養子の意味も紹介されている)。adoptの養子の意味はたぶん入試には出ないだろうが、記憶の補強材料として知っておけば「採用」のほうも覚えやすいだろう。 養子も採用の対象と考えるのが英語的な言語のセンス。大体の単語集ではよく例文で「新しい政策を採用する」 adopt a new policy のような感じの例文を見かける。 adjust は「調節する」を第一に覚えて(※桐原4500 の見解)、派生的に 「adjust to ~」で「~に慣れる」のような意味なんだと覚える(実際の言語の歴史がそうかは知らない)。 よく事務室とかにある、高さ調節のできるイスとかの下に付いているアレを「アジャスター」という。東京書籍 4500 が例文でイスの調節を adjust で紹介している。 「暗闇に目が慣れる」表現を桐原・東京書籍とも adjust で表現。 なお、東京書籍が「適応」、桐原が「適合」と表現。 ---- 捕獲 capture と seize と arrest seize は「押収する」(桐原4500)。および seize ~(=人)by arm で「人の腕をつかむ」。「つかまえる」ではなく「つかむ」。 arrest は「逮捕する」。under arrest で「逮捕されている」 capture が(人・動物などを)「捕まえる」などの一般の意味。東京書籍4500が「人・動物などを」といっている。 capture で動詞にも名詞にもなる。 また名詞 captureで「捕虜」の意味がある(桐原4500)。また旺文社は「捕虜になった兵士」a captured soldier としている。 しかし、単語集にはないが、現代では、軍事用語では、「戦争捕虜」のことを POW という。Prisoner of War の略である。また、日本語で「捕虜」と言ったら、普通は戦争における捕虜のことである。 なお、俗語ですが、IOW で in other words の略称。 これ自体は入試に出ませんが、重要なことして、 * 現代英語でも in other words はよく使う表現であること * 字数の削減などの理由で現代のネットでは慣用句・熟語が短縮されること があります。 ツイッターなどのSNSでは字数制限がありますので、かつて一部のネット掲示板などでしか使用されなかった IOW のような非公式な表現が、現代では次第にツイッターなどでも広く使われるようになってきています。 ほか、接続詞 so も、ネットではよく使われます。 いっぽう、therefore などの固い言い回しだと、字数を多く消費してしまいます。 かつて、日本の英語教材などに so は「女性的な表現」または口語的な表現などと書かれていたかもしれませんが、しかしネットの登場で事情は変わりました。字数の制限という事情です。 ノーベル経済学者のクルーグマンが、彼のツイッター投稿中で "so" を接続詞的に使っているの目撃したことがあります。まさかクルーグマンがオカマなわけはないので、つまり so が「女性的な表現」という言説が現代では誤りです。 なお、「国防」は英語で national defense である(旺文社1900の項目 allocate )。べつに日本が憲法の理由で国防と言い換えてるわけではなく、英語でも「国・防」の語順で national defense という。<!-- defence はイギリス英語。defense でオートコレクトが発動するかもしれないが、ジーニアスで確認Bしたところ、末尾が -se の defense であっている。 --> さて、ジーニアス英和によると、captureで「心をとらえる」とか(コンピュータなどでデータを)「集積する」の意味もあるが、しかし単語集には紹介がない。 なお、「データ」 data は本来は名詞 datum の複数形だが、しかし現代では単数形として data を使ってもいい。 なお prisoner は「囚人」(しゅうじん)である(東京書籍4500・桐原4500)。 和英辞典だと「捕虜」でprisonerが書いてあるが(センチュリー和英)、しかし、まずprisonerは「囚人」だと覚えよう。 catch は中学英語なので、説明を省略。 ---- 理解 understand と comprehend comprehend は単に形式ばった表現に過ぎず(※センチュリー英和辞典の見解)、意味は特にunderstandingと違いはない。 ジーニアス英和辞典では「知的に十分に理解する」と書いてあったが、しかし例文を見ても、そうは思えなかったは。 ただし、名詞形のcomprehension で「理解」・「理解力」の意味があることは覚えておこう。桐原・東京書籍の単語集4500を見ても名詞形の例文はないが。 ---- 類似 alike と look like と similar と resemble alike は、主語が複数形であり、それらのものが互いに「似ている」の意味。なので、SV文型になる。 「○○ and □□ are alike .」 で、「○○と□□は似ている」のように使う。 The two ~ are very much alike. 「その2つの~はよく似ている。」というパターンの例文もよくある(桐原4500、旺文社1400など)。※ 「alike」を「似ている」と訳すか「よく似ている」と訳すかで和文のパターンが分かれるが、あまり本質的でないので深入りしない。旺文社1400だと「very much alike 」で「とてもよく似ている」と和訳している。 similar は、 ○○ is similar to B . で「○○は□□に似ている」のように使う。 Tom is similar to John. みたいな例文になる(出典はとくに無し)。 東京書籍3000に in a similar way 「似た方法で」と例文がある。なお、このように名詞を修飾する場合は similar を使う(旺文社1400)。 現代の単語集にはないが、ジーニアス英和にもあるが、数学の図形の「相似」が similar である。たとえば「相似三角形」なら similar triangle である。 さて、旺文社1900の単語集によれば similarity は「類似」「類似点」である(旺文社1900)。同様に数学の「相似」も similarity であると、ジーニアス英和で確認できる。 ジーニアス英和によると、「ネコとトラには共通点がある。」という例文で There is a similarity 〜 という表現をしている。桐原4500には「類似」しか紹介していないが、できれば「類似点」の用法も覚えたい。 なお、東京書籍4500にはsimilarity の紹介は無い。 similarly で「同様に」「同じく」の意味。 なお、形容詞 same(セイム) は「同じ」「同一の」という意味。 「形容詞 similar は、同じというほどではないが、かなり同じに近い何かであり、つまりsimilar で『似ている』という意味になる」・・・というふうに関連づけて覚えれば、暗鬼が定着しやすいだろう。 look like は S look like O . で「SがOに似ている」の意味。よく文法参考書で、SV文型またはSVO文型の解説でよく書いてあるかもしれない。 前置詞 like は、単独では「~のような」の意味である。(類似とは、ややニュアンスが違う。) なお、単語集にないが、形容詞 like というのがあり、これは「ほぼ同じ」の意味であるので、similar より意味が強い。(どの辞書にも書いてある。) ※ 高校の単語集にある like は、前置詞の用法のやつ。 動詞 resemble は、SVO文型で、 S resemble O. 「SはOに似ている」の意味。 resemble は進行形では使わない(旺文社1400、桐原4500)。 resembleに限らず、行為を表さない動詞は通常、進行形は不可である。この種の動詞にはresemble も含めて紹介すれば、belong「所属する」,exist「存在する」、contain「含んでいる」、resemble「似ている」などがある<ref>検定教科書『FACTBOOK English Logic and Expression I』、令和3年5月 文部科学省検定済、令和4年2月25日発行、P28 </ref>。 look like よりも単語が難しいので文法参考書では印象がうすいかもしれないが、しかし一語で「似ている」ことを表せるので resemble も覚えておきたい。 類似の意味の名詞として、similarity もresemblance も「類似」の意味(桐原4500)。 単語集には無いが、similarにだけ「相似」の意味がある(辞書にもそうある)。(だから数学の図形の「相似」にもsimilarを使う) 単語集には無いが、辞書を見れば、similarity もresemblance の両方とも「類似」または「類似点」の意味がある。さらにlikeness という形容詞likeの名詞形もあり、これも「類似」または「類似点」の意味がある。 センチュリー英和辞典では likeness とresembleの違いを説明しているが、ジーニアスは違いの説明を放棄する程度に、これらの名詞のニュアンスの違いは微妙である。 ---- 期待や予想など expect は「期待する」であり、まず期待の意味を覚えるべきだが、「予想する」の意味もある。 predictが「予想する」の意味。 ---- 発生 happen と occur とarise ジーニアス英和のoccurの説明によれば happenもoccurも、偶然に起こったことについて「起こる」の意味で使う。 occur のほうが、あらたまった語。 arise は、問題が発生したときに使う。 ---- 正確 accurate と correct とright と precise と exact 後述のように accurate と precise は、「精密な」のニュアンスがある。 accurate は、東京書籍4500には(情報・数値などが)「正確な」とある。しかし「精密な」で覚えるほうが理解しやすいだろう。 桐原4500だと、「精密な」の例文を紹介してあり、物理実験での測定値の「正確」にaccurateを用いている。 名詞形 accuracy について、単語集にある「正確さ」で覚えるよりも、ジーニアス英和にある「精度」で覚えるほうが理解しやすいだろう。 correct は、単に正解か不正解のような場合のように、合ってると場合に使う「正確な」である。 形容詞 right も同じように正解か不正解かの「正確な」の意味だが、多義語である。右とか権利とかもrightなので。 あらたまった場では、「正解」には correct のほうが安全だろう。 correct には、動詞として「訂正する」の意味もある。 なお、「考えを改める」の意味で「考えを修正する」ともいうが、この「考えを改める」は動詞 revise (リバイズ)である。発音注意。最後は「ズ」 z の音である。 出版物を「改訂する」も revise であり、つまりそういうニュアンス。東京書籍4500や桐原5500に revise があるが、これで覚えるよりも、単語集にないが名詞形 revision で覚えたほうが良いだろう。英和辞典をみれば revision で、「改訂」・「改訂版」の意味。センチュリー英和によれば「憲法を改正する」は revise the Constitution である。 単語集にないが、動詞 amend が法案・憲法などを「改正する」意味と、ほかの意味では文章などを「修正する」意味であり、たとえばジーニアス英和に amend the Constitution 「憲法を改正する」という例文がある。 ただ、名詞形 amendment の意味は、改正案ではなく、(たとえば憲法修正第21条(禁酒法廃止法)のような)「改正条項」といった細かい単位である。 * 精密 accurate と precise precise instrument で「精密機器」。 単語集で先に紹介している初等的な単語は、 accurate のほう(たとえば旺文社1400で、accuracy のみ紹介。東京書籍3000も同様にaccurateのみ紹介) ジーニアスが言ってるが、precise (プリサイス)は、測定・機器などが「正確な」。 一方、辞書にはないが accurate は、良い測定機械などで得られたデータなどについて、誤差が少ないという意味での「精度が高い」。 のようなニュアンス。 あと、スペルの似ている「貴重な」「大切な」 precious (プレシャス)と混同しないように。 さて、「精密な」のprecise について、ジーニアス英和の指摘しているように、計算誤差の少ないことを precise というので、境界はあいまい。 東京書籍4500 でも、precise number 「正確な数値」を紹介。 辞書だけにあるが、「きちょうめんな」のことを precise という。be precise in ~ で、「~に、きちょうめん」の意味。 exact も同様、 be exact in ~ で、「~に、きちょうめん」の意味。 センチュリー英和に、これらの類語の違いが書いてあるが、しかし信用できない。精密機器 precise instrument などの用例に合わないと思う。 副詞 exactly 東京書籍4500 では、副詞 exactly だけを例文で紹介している。形容詞exactは例文なし。 おそらく、exactの例文を、違いの説明の難しさで、あきらめたのだろう。 東京書籍4500およびジーニアスにあるが、 exactly the same で、「まったく同じ」。 つまり、exactly で「まさしく」の意味がある。 「きっちり10人」exactly ten people とか(ジーニアス)、「きっちり6時22分」exactly six twenty-two とか(センチュリー)、「きっちり1年後」exactly one year from now とか(東京書籍)。 ---- 賛成 approve と agree と support と favor approve は、案などに「賛成する」という意味がある。 ところがagreeもジーニアス英和によると、案などに「賛成する」の意味もある。 agree to ~(案)で、「~(案)に賛成する」である。 I agree to this plan. 「(私は)この案に賛成です」 である。 ここでの to は、前置詞 toとして直後に名詞が来る場合もあれば、不定詞 to として直後に動詞の原形が来る場合もある。 なお、人に賛成する場合は、toではなくwithを使う。つまり、agreeにはagree with ~(人)の熟語で「~(人)に意見が一致する」の意味もある。 I agree with you. 「私はあなたに賛成です。」(ジーニアスを参考) である。 だが実際には、 I agree with your argument. 「あなたの意見に賛成する。」のように、所有格が来る場合、with を使うこともある(英文はジーニアスで確認)。旺文社1900でも、派生の動詞 disagree「賛成しない」だが disagree with the speaker's opinion 「演説者の意見に不賛成である」という例文がある。 また、この例のように、 agree と disagree の直後の前置詞の使いかたは、基本的には同じである。 ともかく、agree は辞書にも、熟語としてではなく agree の基本的な意味のひとつとして「意見が一致する」の意味もあると書いてあるほどである。 agree to ~(名詞) と、 agree to ~(動詞)で、ニュアンスが微妙に違う。 to 不定詞のほうが、賛成している主語に、協力的な意味での積極性がある(ジーニアスで閣員)。 派生の意味の名詞 disagree は「賛成しない」「反対する」の意味である(ジーニアスで確認)。賛成の否定なのか反対なのかは、文脈によって判断する必要がある。 さて、approveについては、単語集にないが、ジーニアス英和によると「承認する」「是認する」の意味もある。 桐原4500にあるapproveの例文の「両親が賛成する」は、どちらかというと「承認する」の意味だろう。 approve of ~(案など) の形でよく用いられる。 Her father approved of her marriage. 「彼女の父親は彼女の結婚を認めた。」 (※東京書籍4500をもとにwiki自作の例文.) なお disapprove は、「承認しない」の意味である<ref>高等学校学外国語科用『CROWN English Expression II New Edition』、三省堂、2022年3月30日 発行、P63</ref>。 Her father disapproved of her marriage. 「彼女の父親は彼女の結婚を認めなかった。」 (wiki自作の例文.) 「結婚」marriage はよく「反対」の例文にもあり、たとえば旺文社1900に 「彼女の両親は彼女の結婚を認めなかった。」 Her parents objected to her marriage. という例文がある。「~に反対する」は object to である。 センチュリー agree を調べると、類義語がそのほかにも accede , acquiesce , assent , concur , consent など書いてあるが、もう大学受験以降のレベルだろうから、本wiki本ページでは無視する。、 (桐原4500でなく、超上級レベルの)桐原5500に、assent と consent は書いてあった。 一方、桐原5500にはaccedeとacquiesceは無い。 approveだと「承認」のニュアンスがあるから、あらたまった場で「承認」でない立場の「賛成」を表したい場合などに、assent が便利かもしれないだろう。 「委員長が提案に同意」という表現で、桐原が assent を使っている。 つまり、assent は、賛成というよりも「同意する」ぐらいのニュアンスだろう。 support は、意見などを「支持する」の意味。 support ~(意見)で、「~を支持する」である。 I support her idea. 「私は彼女のアイデアを支持した。」 のように使う(旺文社1200を参考に、例文をwikiで自作)。 なお、「意見」は opinion なので、 I support her opinion. 「私は彼女の意見を支持した。」 である(東京書籍3000にほぼ同じ例文あり)。 単語集にはないが、opinion には、医者や弁護士などの「鑑定」という意味もあり、保健体育などでセカンド・オピニオン a second opinion を習っているはずである。second opinion も英語(ジーニアス opinion)。 support の対義語は object to である<ref>高等学校学外国語科用『CROWN English Expression II New Edition』、三省堂、2022年3月30日 発行、P63</ref>。 support ⇔ object to 東京書籍4500の例文で、 object to the proposal 「提案に反対する」 というのがある。 ちなみに、「賛否両論」は pros and cons である<ref>『Vision Quest English Expression II』啓林館、平成29年2月28日検定済、令和4年度用、令和3年12月10日発行、P84 </ref>。 「お気に入りの」の意味の形容詞 favorite の動詞形 favor に、実は「賛成する」の意味もある。 ジーニアス和英やセンチュリー和英に、favor の最初の意味で「賛成する」が書いてある。 なので、たぶん米英ではそうなのだろう。 だがしかし、東京書籍も桐原もfavorの「賛成する」の意味を紹介していない。あまり、日本の高校生への教育の意義を見出せないのだろう。 そもそも、東京も桐原も動詞としての favor を紹介しておらず、名詞としての favor しか紹介していない、。 桐原はfavorの意味を「好意」とだけ紹介している。 東京書籍は「親切な行為」「支持」としている。 行為と好意は別の用法。 will you do me a favor? 「お願いがあるんだけど。」 という慣用表現があり(東京書籍にも書いてある。)、「親切な行為」とはこれのこと。 May I ask a favor of you?  「お願いがあるんだけど。」 ともいう(ジーニアス、センチュリーで確認)。 旺文社1900には、favor の動詞の意味「賛成する」も書いてあるが。 ---- 収集 gather と collect と accumulate accumulate は、桐原5500によると「蓄積する」であり、東京書籍4500では「(長時間)・・・をためる」の意味での「集める」である。 桐原によると、地層の堆積の形容詞も accumulate である。東京書籍によると、学説の長年の証拠集めが accumulate である。 gather は、人が「集まる」でよく使う。 だが、gatherには「集めて、一つにまとめる」ようなニュアンスがある。センチュリー英和によると、例文で、子供がおもちゃをgather で「集めて」箱に入れた、という例文もある。 実際、センチュリーおよびジーニアスに、gatherの意味で「かき集める」という用法がある。 人や動物が「群がる」ならflock という動詞があるが(旺文社)、使用できる場合が限られる。人を「集める」のでは使えず、「群らがる」でないと使えない。 People flocks to ~(場所) で 「人々が~に群がる」である。 そのほか、flock には名詞として、羊や鳥の「群れ」などの意味もある(桐原)。 a flock of トリs で「トリの群れ」 他の動物の群れでは使えない。ウシやウマの「群れ」は herd である。魚の「群れ」は school である。 なお単語集にはない語だが、「散らかっている」状態は名詞 mess である<ref>高等学校外国語『CROWN English Communication I』三省堂、2021年1月29日 文部科学省検定済、2022年3月30日発行、P191 , Appendix Lesson2</ref>。messは形容詞ではなく名詞なので注意。 messの典型的な例文として、 The room is a mess. 「部屋が散らかっている。」 がある。 さて、ジーニアスによると、枯れ草を集めるのも gather である。 センチュリー英和によれば趣味などで収集しているものについては、gather も collect も使うのだが、しかしジーニアス英和 gather などの項目によれば、どちらかというと collect のほうが趣味の「収集」としては好まれるとしている。(ジーニアスは、趣味の収集では gather を使うべきではないというスタンス) このようなニュアンスの違いがあるので逆に、ゴミなどの収集では gather が好まれるだろう。 検定教科書『All aboard! English Communication I』(東京書籍、令和3年1月29日検定済、令和4年2月10日発行、P117)を読んでると、海洋ゴミの収集に関するシーンで gather という単語があるので、たぶんそういう意味。(教師用指導書は未確認なので、推測だが。) ただし、農作物を「採取する」のに gather を使うので(ジーニアス英和にもセンチュリー英和にも書いてある)、collectとのニュアンスの違いは微妙ではある。 もっとも、「掃除をする」clean up という平易な表現もあるので、こちらでニュアンスの問題を回避する手もある。 副詞でtogether (一緒に)というのがあるが、センチュリー英和によると「togetherと同語源」である。 「情報収集をする」場合にgatherを使う用法がある。旺文社1400の例文中に(犬が嗅覚で)「周囲の情報を集める」gather information about their surroundings. とあるし、 ジーニアスにも「本を書くために情報を集める」 gather information for a book とあるし、 センチュリーにも「私たちはこのことについて必要な情報すべてを集めた」We have gathered all the necessary information on this matter. という例文がある。 旺文社には『gatherは「集める」の一般的な語。collectは目的を持って「集める」。』とあるが、しかし上述の「情報を集める」のように目的のある行為でもgatherを使うので、慣用的な部分もある。犬はともかく、ジーニアスの「本を書くため」という目的がある例文でもgatherを用いている。 collect は、ものを「集める」でよく使う。 ただ、どちらかというと、collectは「集めて入手する」ぐらいのニュアンスだろう。 ジーニアス英和だとcollectの意味で「収集する」と書いてある。 単語集にはないが、辞書によるとcollectには(税金や料金などを)「集金する」とか、精神集中の意味で「集中」するなどの意味もある。 だからか単語集ではcollectを「収集する」とだけ決め付けるわけにもいかないのだろうか。 センチュリー英和のcolectの説明にもあるが、collectには「選り分けて集める」ようなニュアンスがあるが、その意味ではgatherは使用不可。 中学校で collect を習って高校で gather を習うという順序だからか、なんとなくcollectを「集める」一般で使いそうだが、実際はそうではない。 集会、集合 assemble, 辞書を見たが、assemble は「集合させる」「集会させる」および「集合する」などの意味もある。(その他、assemble には、機械などを部品から「組み立てる」の意味もある。組立ての意味については、別の類似表現の項目で説明する。) assemble は、けっして単に「集まる」のではなく、より正しくは assemble とは何かの目的を達成するために(人々が)集まったり(人々を)集めたりするわけである。 名詞形 assembly は、「組立て」「集会」の意味。単語集だと「集会」のほうが先に書いてあるが、組立てのほうで先に覚えよう。 アメリカの州議会を Assembly という。センチュリー英和によると、国連総会も the General Assembly とのこと。 つまり、機械などの「組立て」と、「集会」や「議会」などが、同じ assembly という単語であると覚えればいい。動詞 assemble はその派生として覚えれば、暗記の負担の節約になる。 コンピュータ用語で「アセンブラ」や「ビルド」とかあるが、しかし日常語の用法と合わないので、このページでは説明を省略する。 なお、記者会見は a press conference である(東京書籍4500)。 ---- 構成 compose, consist be composed of ~ 「~で構成される」 consist of ~ 「~で構成される」 compose は、受身形 be composed of ~ で「~で構成される」。 compose には「作曲する」の意味もあるが、東京書籍以外は紹介していない。桐原と旺文社は、作曲の意味を紹介せず。作曲や創作などの意味で使う場合は、センチュリー英和や東京書籍の例文にあるが、compose は能動形で使う。 人間社会の組織などが「(○○な人員)から構成される」という表現は、compose でも consist でも、どちらでもいい。 なお後述するが consist は能動形で、 consist of ~ 「~で構成される」 である。 compose で、桐原および旺文社およびセンチュリーは、組織が構成される例文を紹介。 しかし、センチュリー英和の例文を見ると、consist でも「クラスは12人の男子生徒と13人の女子生徒で構成される」という例文もあるので、あまりconmpose と consist の違いはハッキリしない。 なお、名詞 component は「部品」「構成要素」の意味。たとえば東京書籍4500では、例文で自動車の製造部品を car component としている。桐原4500でも、「すべての部品は組み立てられる前に検査を受けなければならない」という例文で component を使っている。 つまり、component は部品の、しっかりとした言い方。 その他、「成分」の意味もある(桐原4500)。 「構成要素」とは、たとえば旺文社1900では、「炭素はすべての細胞に不可欠な構成要素である。」という例文で component を使っている。 consist は、能動形で、 consist ~ で、「~から成り立つ」 。 センチュリー英和にある例文「クラスは12人の男子生徒と13人の女子生徒で構成される」 This class consists of 12 boys and 13 girls . このように、consist は能動形で使う。 ---- 建設、建築、建造 construct , build 建設業のことを construction という。 build と construct の違いは、construct は比較的に大掛かりなものを建てるときに使う(東京書籍3000および同社4500)。 このように、constructは、比較的に高度なものを建てることを言うが、しかし実際には英和辞典(センチュリー)の例文を見ると、「家を建てる」なども construct でいうこともある。 桐原4500やセンチュリーにある例文だが、比喩ではない建築的な意味での「橋をかける」は construct a bridge である。 under construction で、ビル(センチュリー英和)や橋(ジーニアス英和)などが「建設中」。 なお、スペルの似ている constitute は(組織などを)「設立する」。憲法は constitution。しばしば「憲法」は大文字で Constitution である。 高層ビルを建設するのは construct が望ましいだろう。 東京書籍3000 に、 Some high-rise buildings are being constructed. という例文がある。 いっぽう、「高層ビルをビルドする」は、あまりにも幼稚。 construct の対義語は、語源的には、destruct (デストラクト)「破壊する」であり(ジー二アス construct ,センチュリー construction )、東京書籍の単語集にも construct と destruct は対義語だと書いてある。 だが、建物の破壊の仕方といっても、「解体」とか色々な言い回しがあるので、果たして日本語でいう「解体」のような表現を英語でどう言うのかは知らないし、英米での建築の言い回しを知らない。 そのためか、桐原4500では、construct の対義語を紹介していない。 米英では、通行人に工事中を知らせる掲示の文言は、センチュリーいわく、「この先工事中」 Construction ahead という文言とのこと。 旺文社に「工事中」 under construction という例文があるが、なんとなく日本での印象から掲示かという印象をうけるが、旺文社 construct 項目のどこにも掲示の文面だとは書いていない。 さて一方、家を「建てる」は、build でも construct でも、どちらでもいい。桐原3000には、buildで「家を建てる」の例文を紹介している。 「ローマは一日にして成らず」 ''Roma was not built in a day.'' <ref>高等学校外国語科用『Standard Vision Quest English Logic and Expression I』、啓林館、令和3年3月5日検定済、令和3年12月10日発行、P56</ref> set up set up はテント(a tent)や看板(a sign)などを立てる。 この他、set upには「創業する」「創設する」の意味もある。 ---- 組立て assemble, build , 「組立てる」はまず assemble で覚えよう。とくに、(機械などを)部品から「組み立てる」ようなニュアンスが assemble にはあるだろう。 さて、単語集ではbuldの「組立てる」を教えておらず、つまり桐原4500 にも東京書籍3000 にも、build の「組立てる」の意味は書いてない。 build はまず「建てる」が本質的な意味であり、組立ての意味はあくまで派生的な用法だと思うと良いだろう。 センチュリー英和によると、自動車 car の組立てで build を用いている。 もちろん、assemble で car を組み立てても良い。ジーニアス英和辞典にcar をassenmble する例文が書いてある。 また、工場の「組立てライン」のことを assembly line というので(センチュリー英和に書いてある)、自動車など工業製品もassemble で組み立てていいだろう。 ジーニアスだと assembly line で「流れ作業」と書いてあるが、確かにそうだが、ちょっと例が古すぎるかと。近代アメリカのフォード生産方式とかじゃないんだから。 このように、辞書は一冊だけでなく、複数を読み比べるのが良いだろう。 桐原4500や東京書籍4500を見ると、「集まる」「集める」の意味でしか assemble を紹介してないが、まったく受験英語はピント外れで困る。簡便してほしい。 辞書を見たが、assemble は「集合させる」「集会させる」および「集合する」などの意味である。 、 assemble は、けっして単に「集まる」のではなく、より正しくは assemble とは何かの目的を達成するために(人々が)集まったり(人々を)集めたりするわけである。 名詞形 assembly は、「組立て」「集会」の意味。単語集だと「集会」のほうが先に書いてあるが、組立てのほうで先に覚えよう。 アメリカの州議会を Assembly という。センチュリー英和によると、国連総会も the General Assembly とのこと。 つまり、機械などの「組立て」と、「集会」や「議会」などが、同じ assembly という単語であると覚えればいい。動詞 assemble はその派生として覚えれば、暗記の負担の節約になる。 コンピュータ用語で「アセンブラ」や「ビルド」とかあるが、しかし日常語の用法と合わないので、このページでは説明を省略する。 ---- 設立 constitute と establish と found found という動詞がある。動詞「見つける」find の 過去形foundとは別に、原形で「設立する」のfoundという動詞がある。 「設立する」は活用が、 原形 found - 過去形 founded - 過去分詞 founded と変化をする。 foundの意味は「設立する」。「創設者」を名詞 founder と言うのを記憶の土台にすると、覚えやすいだろう。名詞 foundation で「基礎・基盤」や「建設・設立」などの意味。化粧でファンデーションとあるが、あれは和製英語ではなく、れっきとして foundation cream という英単語がある(ジーニアス英和で確認)。 ちなみに金融などで「ファンド」といわれる単語は fund (原形がfund )というまったく別の単語。組織などの「資金」「基金」が名詞でfundである。動詞 fund は、組織などに「資金を出す」こと(旺文社1400)。 なお、「基金の基金を集める」は raise a fund である(旺文社1400。ジーニアス)。また、raise money で「資金を集める」である(東京書籍4500。桐原4500)。 constitute は、議会や制度などを「設立する」。 なお、センチュリー英和によると、「議会を設立する」 constitute an assembly とのこと。 establish は、組織を「設立する」。たとえば桐原4500に「早稲田大学を設立する」という例文で establish が紹介されている。 ジーニアス英和によると、政府・学校・会社などを「設立する」のが establishe である。 センチュリー英和によると、国家・政府などを「樹立する」のも establish である。 だが、それよりもestablishは、単語集にはないが、評判などを「確立する」の意味で覚えるほうが良い。 たとえば、センチュリー英和やジーニアス英和にあるが、国家体制など既存の「体制側」や「支配層」のことを establishment という。 いっぽう constitute には、こういったニュアンスはないだろうから。 set up set up は「創業する」「創設する」の意味である。 このほか、set upには、テント(a tent)や看板(a sign)などを「立てる」という意味もある。 センチュリー英和にもあるが、コンピュータの初期設定のことを set up という。 ---- 主張 claim と insist と argue と contend 議論する argue, discuss センチュリー英和によると、claimは、当然の権利として「主張する」、あるいは事実であるとして「主張する」の意味。 claimとinsistのどちらにも、「要求する」の意味がある。 だが、claimの要求は、権利としての要求である(東京書籍4500)。 いっぽう insistの要求は、単に強く要求しているだけである。 insistは、特に、強く「主張する」意味である。 ジーニアス英和およびセンチュリー英和では、無罪の主張でinsist on が用いられている。 日本語の、批判のような意味での「クレーム」は、和製英語であり、センチュリー英和のclaimの説明によると、英語にこの意味はない。 なお、「文句を言う」は英語で complain である。 :(※ たぶん範囲外?)海外旅行などで「荷物の受け取り」のことを baggage claim という<ref>『ビジネス・コミュニケーション』、実教出版、令和2年12月25日 検定済、令和4年1月25日発行、P140</ref>。このように、日本語の「クレーム」と英語のclaim は、だいぶニュアンスが違う。 記号「!」 のことを exclamation (イクスクラメイション)というが、これも動詞 exclaim (イクスクレイム)「さけぶ」の名詞形である。 なお、荷物 baggage は集合名詞なので たとえば複数の荷物を言うときは、 ~ pieces of baggage になる<ref>『ビジネス・コミュニケーション』、実教出版、令和2年12月25日 検定済、令和4年1月25日発行、P153</ref>(桐原3000)。 発音注意であり、baggage 「バギッジ」である。 なおbaggageはアメリカ英語。イギリス英語だと luggage 「荷物」になる。 一方、「カバン」bagは具体的なカバンのことをいうので、普通に数えられるので、bagの複数形は bags である<ref>『All aboard! English Communication I』、東京書籍、令和3年1月29日検定済、令和4年2月10日発行、P145</ref>(桐原3000)。 さて、claim する人(主張者)のことは claimant である。 ただし、権利の主張などは、insistとclaimのどちらでも良い。 argue は、理由をあげて「主張する」の意味である(東京書籍4500)。argue that ~ で「~だと主張する」の意味である。argue with ~(人) で「~(人)と言い争う」の意味である(桐原4500および旺文社1400)。 なお、argueには、用法によっては、やや非友好的に「議論する」ニュアンスもある。ジーニアス英和にも、argue は「discussよりも非友好的」と記述がある。 たとえば検定教科書 "Standard Vision Quest I" でも、 argueは「言い争う」といった意味であると紹介する一方、discuss は「議論する」であると紹介している<ref>高等学校外国語科用『Standard Vision Quest English Logic and Expression I』、啓林館、令和3年3月5日検定済、令和3年12月10日発行、P71</ref>。 ただし、実際には argue には「説得する」などの意味の用法もあるので、ニュアンスの違いはあまり明確ではない。 センチュリー英和に、弁護士の「弁論」をargueとした例文があったが、もし法廷闘争での敵対陣営同士の「弁論」ならargueのほうが、ふさわしいだろう。 なお、「口論する」は quarrel である<ref>高等学校外国語科用『Standard Vision Quest English Logic and Expression I』、啓林館、令和3年3月5日検定済、令和3年12月10日発行、P71</ref>。 contend は、(東京書籍4500いわく)「強く主張する」とか、(桐原5500いわく)「論争する」とかの意味。 桐原5500の例文にあるが、contend in court で「法廷で争う」。 旺文社1900によると名詞 contention で「主張」「論点」の意味。 旺文社1900とセンチュリー英和が紹介しているが contend that ~ で「~だと主張する」。 旺文社1900 で熟語 an issue of contention (「議論の対象となる問題」)が紹介されてるが、しかしジーニアス英和でもセンチュリー英和でも確認できなかった。 * 異議を唱える challenge challenge には課題や競技相手などに「挑戦する」の意味もあるが、議論などで相手に「異議を唱える」の意味もある。 たとえばジーニアス英和からの抜粋だが、 I challenged her. 「私は彼女に異議を唱えた。」 旺文社1900からの抜粋だが、 He challenged the common belief. 「彼は常識に異議を唱えた。」 センチュリーからの抜粋で、 He challenged my statement. 「彼は私の言うことに異議を唱えた。」 challenging で「やりがいのある」。東京書籍3000に例文がある。辞書を見ても、あまり例文が無いので、当ページでは紹介しない。 なお単語集にはないが、ジーニアスによると、競技などで challenger 「挑戦者」 ⇔ defender 「選手権保持者」(防衛側) である。defender の項目で調べると書いてある。 競技では、challenge は試合を「申し込む」などの意味である。 たとえば、東京書籍3000の例文だが、 Dan challenged me to a game of tennis. 「ダンは私にテニスの試合を申し込んだ。」 また、センチュリー英和に似たような例文 I challenged Betty to a game of tennis. 「私はベティにテニスの試合を申し込んだ。」 がある。 ---- 防御 defend , guard , protect まず、「ガードマン」は和製。 guard だけで「警備員」の意味がある。特に、警備員であることを強調したい場合、 a security guard という(東京書籍、旺文社)。 a security をつけずに「警備員」と使用してもいい。桐原3000の英文は銀行の「警備員」に、 a security をつけていない。 さて、defend は動詞。guardは名詞および動詞。protectは動詞。 なお、guardian とは、未成年などの「後見人」のこと。旺文社1900ではguardian を「保護者」「後見人」と紹介している。 そのほか、センチュリーでは、たとえば世界平和の「守護者」とか、そういう意味の「守護者」のことを guardian という。そのほか、ジーニアスには guardian の意味のひとつに「保護者」と書いてある。 protect は、病気などから「守る」場合にも使えるが(東京書籍3000)、ジーニアスによると人間などの相手でも使っていいようである。 辞書や単語集では「保護する」と訳される場合もある。 名詞 protection は「保護」の意味。 辞書によると、関税によって国内産業を「保護」することも protect である。また、風雨からの保護の「雨よけ」「風よけ」も 名詞 protection である。 さて、ジーニアスによると、「家族を守る」でprotect one's family である。ジーニアスでは文脈は述べていないが、普通の感覚では、病気とかではなく犯罪などから家族を守ることだろう。 日光(sunlight, sun)から目を守ったり(ジーニアス、センチュリー)、肌を守ったりするのも(桐原4500)、protectである。 たとえば、 protect one's eyes from sunlight 「日光から目を守る」 である。 protect 〜 from B で、「〜(守られる対象)をB(危険側)から守る。」である。 なお、子育てなどでいう「過保護」は英語で overprotect である(桐原5500)。 ---- 汚染 pollute と contaminate 違いは不明確。 桐原5500にcontaminate がある。polluteは桐原・東京書籍の4500にある。 一応、ジーニアス英和および桐原5500には、「毒物や放射能」による汚染を contaminate としているが、彼らがそういう説を言っているだけ。クラウン英和はその説を採用していない、 実際にクラウンの例文を見ると、車の排気ガス汚染で、contaminate という動詞を用いている。 :Car exhaust contaminate the air. 車の排気ガスは大気を汚染する。 という文がクラウン英和にある。 しかし東京書籍4500では、工場の煤煙による大気汚染が pollute である。 クラウン英和にある大気汚染 air pollution のように、そういう用語が既にあるので、実務では業界の用語ごと覚えるしかない。 ※高校生としては、不正確かもしれないが、とりあえず「汚染」はすべてpolluteで覚えておいて、実務などで「この場合はcontaminete を使え」と修正された場合にだけ contaminate を使うのが良いだろう。 ---- 傷(きず) wound ,injured ,harm ,hurt 動詞 wound は、刃物・銃などで「傷つける」、「負傷させる」。桐原3000だと「傷つける」、東京書籍4500だと「負傷させる」。 ジーニアス英和hurtの説明によると、戦いでの負傷には wound を使うとのこと。 hurt は、感情なども含む「傷つける」。 交通事故などの重大事故による負傷でも、ジーニアス英和では hurt を使っている。戦闘行為ではないからだろう。 センチュリー英和だと、hurtには、「傷による苦痛に重点があるとのこと。 名詞 injury が「けが」という意味。これが「けが」の基本的な単語である。 さて、~ be injured で「~が、けがをする」の意味である。 ~ be injured in ・・・ で「~(けが人)が,・・・(原因)でけがをする」である。 単語集によくある典型的な例文が、 「彼はその事故でけがをした。」 He was injured in the accident. である。 単語集では、自動詞 hurt で「痛む」の意味があり、東京書籍4500で例文を紹介。一方、桐原4500は例文なし。 「おなかが痛い」(※東京書籍4500)とか(靴擦れで)「かかとが痛い」(※センチュリー)とかでも、hurtを使っていい。 桐原4500に名詞 hurt で、「傷」の意味が紹介されている(例文なし)。東京書籍4500にはなし。 hurt には「けが」・「傷」・「苦痛」の意味がある。 「傷」の意味では、injuryとほぼ同義だと、ジーニアス英和が言っている。 hurtとpainの違いが気になるが、あいにく辞書には書いてなかった。 ややしいことに「痛み」を意味する名詞 pain には、「苦労」の意味もある。苦痛ではなく苦労なので、いい意味でも使われる。 なお、painは名詞の用法が基本的な意味だし、名詞の意味は「痛み」。 hurt は動詞の用法が基本的な意味だし、動詞の意味は「傷つける」。 辞書を見ると、実は動詞のpainもあるが、これは「痛む」の意味である。(「傷つける」ではない)painはあくまで「痛み」に関する単語 名詞 harm は「害」の意味。なお、harmful で「有害な」の意味の形容詞<ref>高等学校英語 検定教科書『FACTBOOK English Logic and Expression I』、令和3年5月 文部科学省検定済、令和4年2月25日発行、P111 </ref>。 東京書籍およびジーニアスによると、日光や光によって「目をいためる」のは harm である。 飲酒や喫煙などの「害」がharm 。桐原4500に喫煙の害。センチュリー英和に飲酒の害。 このように、比較的に痛みを伴わないものにも使われる。(センチュリーにもそう書いてある。) だが、「目をいためる」ように、実際に痛いこともある場合にも使われるので、まあ傾向の程度。 ネットでときどき「有害コンテンツ」という用語があるが、「有害コンテンツ」も英語で harmful contents である<ref>高等学校外国語科用『Standard Vision Quest English Logic and Expression I』、啓林館、令和3年3月5日検定済、令和3年12月10日発行、P121</ref>。 ほか、旺文社1900のsubstance ’物質)の項目が言うには、飲食物などに含まれていたら困る「有害物質」は harmful substances である。 さて、動詞 suffer が「苦しむ」という意味だが、 be suffering from ~ で、「~(原因)で、苦しい(つらい)」的な意味。 東京書籍 be suffering from a toothache 歯が痛くてつらい 桐原 be suffering from a backache 背中が痛くて苦しい などと訳している。 ジーニアスによると、 「風邪をひいている」 be suffering a cold のように痛み以外でも使っていい。ほか、「英国はインフレで苦しんでいる」 be suffering from inflation のように使ってもいい。 ---- やわらげる relieve, ease 苦痛などを「やわらげる」は動詞 relieve である。 典型的な例文で、(風邪薬などで)「頭痛をやわらげる」 relieve a headache がある(東京書籍4500およびセンチュリー)。 誰が風邪薬を飲んで誰の頭痛をやわらげるのかによって、飲んだのが「私」だったら relieve my headache になったり、教材ごとに主語による多少の違いがある。 どちらにせよ、単に柔らかいわけでもなく、単に軽減するわけでもなく、苦痛などを減らすのが relieve である。 relieve A of B(苦痛など) で、「AからBを除いて楽にする」の意味。 熟語 get rid of ~ 「~を取り除く」と関連づけて覚えよう。実際、桐原4500がそういう構成である。 名詞形は relief であり、「安心」「緩和」「救援」などの意味である(単語集にある)。単語集にはないが、野球のリリーフも同じrelief である(センチュリーで確認)。 sigh with relief で「安堵(あんど)のため息をつく」である。sigh (発音「サイ」)は、動詞としては「ため息をつく」、名詞としては「ため息」である。 例文は、 She sighed with relief. 「彼女は安堵のため息をついた」 である(東京書籍4500 項目 sigh。旺文社1900 項目 sigh)。 ともかく、「安心」的なのが relieve のイメージなので、be relieved to ~(動詞) で「~で安心した」という形容詞的な用法になる。 というか、辞書ではジーニアス英和でもセンチュリー英和でも、 relieved を形容詞として紹介している。 ease (イーズ)という動詞および名詞がある。これも動詞ease は「やわらげる」「取り除く」の意味である。これは形容詞の「簡単な」 easyの、名詞計および動詞形である。 名詞 ease は「容易さ」「気楽さ」「軽減」の意味である。 This medicine eases the pain. 「この薬は痛みをやわらげる。」 のように使う(東京書籍および旺文社に似た例文)。 ジーニアスによると、頭痛 headache をやわらげるのに ease を用いてよく、旺文社によると胃痛 stomach pain をやわらげるのに ease を用いている。 このような薬による「取り除く」「やわらげる」の意味での ease は、ジーニアスによると、relieve とほぼ同義語とのこと。 ---- 取り除く remove, eliminate remove は、「取り外す」の意味に近い。 たとえばパソコンのUSBスティックメモリなどを「リムーバル・メディア」などというが、取り外したあとに、別に捨てるわけでもなく、消去するわけでもない。 このように、remove は単に「取り外す」「取り除く」というニュアンスである。 名詞 removal (リムーバル)「取り外し」という単語も存在しています(東京書籍4500)。 形容詞 removable(リムーバブル)「取り外し可能な」という単語もあります(東京書籍4500)。 「リムーバル」はけっして形容詞 removable(リムーバブル)「取り外し可能な」の誤記ではないです。間違えないように。 一方、eliminate は、取り除いたあとに、処分することを念頭に置いている。または、取り除いたあとに、再度の取り付けの意思がないものに使う。 なので、eliminate で取り除かれるものは、ゴミだったり、あるいは犯罪などの社会悪だったりする。 または、解決すべき問題を片付けることも eliminate である(東京書籍)。 だから eliminate の訳語は「取り除く」である。外すのではなく「除く」に、そういうニュアンスがある。 eliminate (A) from (B) で、「AからBを除去する」である。fromの後ろにあるBが、抹消されるべき対象である。 こういう単語なので、単語集にはないが、ジーニアスを見れば、敵軍などを全滅させる事も eliminate と言うこともある。 なお、生物種の「絶滅」は extinction (エクスティンクション)である。 熟語 get rid of ~ は、そこまであれこれと考えていない。remove的にも使われるし、eliminate 的にも使われる。あるいは、remove と eliminate の中間だと思っておけばいいかもしれない。 さて、 exclude は、「除外する」である。 これよりも、形容詞の exclusive エクスクルーシブの意味「排他的な」のほうが分かりやすいので、そちらを説明する。 exclusive 「排他的」とは、最初から内部に入れない、という意味である。 だからexclude は、最初から中に入れないように「締め出す」という意味もある(桐原で確認)。 excludeの「除外する」の意味については、可能性などを「除外する」という意味もあり、ジーニアスの例文だと、たとえば「明日、雨が降る可能性は除外できる」みたいな割と平和的な「除外する」にも exclude を用いることもできる。 そのほか、exclude は、見当などの際に「考慮に入れない」という意味もあり(ジーニアス、センチュリー、旺文社で確認)、たとえば旺文社の例文では「税金は価格から除外されている」という意味の英文で exclude を受身計で用いている。 なお、対義語は include であり、「含む」という意味である。 たとえば「税込み 5ドル」は <nowiki>$5,</nowiki> tax include である。 典型的な例文は、 「料金は税込みですか?」 Does the price include tax? がある( ジーニアス(ただしpriceでなくrate)、 東京書籍(ただし「料金」でなく「価格」と和訳) )。 また、-clude とは「閉じる」の意味である。 だから、たとえば conclude は、話を閉じるので「結論づける」「締めくくる」の意味。conclusion は「結論」の意味。 ---- 消去する erase , delete (※ 範囲外)火を消す extinguish 鉛筆で書いた文字を消しゴムで消すのが erase である。 また、消しゴムをアメリカ英語で eraser (イレイサー、イレイザー)という(東京書籍1800、旺文社1900)。なおイギリス英語では rubber である。 黒板ふきも eraser である(旺文社、ジーニアス、センチュリー)。 コンピュータのデータを消すのは、erase も delete も使われるが(ジーニアスで確認)、しかし現代では delete でデータ消去を表すのが普通である。 実際、パソコンのキーボードにも delete キーがある。 旺文社の例文も、メールの削除を delete で表現している。 なお、東京書籍と桐原の単語集には delete は見当たらない。 昔なつかしいテープのデータを消去するのには、erase が使われるようである(ジーニアス、センチュリーにerase でテープのデータを消す用法あり)。 erase で消すのは、文字のほかにも、感情を「消す」などの表現でも使われる(ジーニアス、)。 「記憶を消せればいいのに」みたいな表現でも erase を使う(旺文社、ジーニアス)。 辞書にはないが、delete はもともと動詞で「削除する」「消去する」の意味であるが、現代ではパソコンのデリートキーを表す名詞として、delete が名詞としても使われる(旺文社1900)。辞書のほうが遅れている。旺文社1900が正しい。 なお、名詞形 deletion 「消去」「削除」という単語もある(旺文社、ジーニアス、センチュリー)。 高校範囲外ですが、火を「消す」は動詞 extinguish (イクステングィッシュ)です。 extinguish は一見すると見慣れないですが、実は高校範囲の単語「絶滅」 extinction (イクスティンクション)の動詞形です。 extinction のスペルのままでは動詞の意味は無いです(センチュリー、ジー二アス)。 消防士による「消火する」から(ジー二アス)、たばこの火を「消す」まで(センチュリー)、extinguish で表現できます。 なお、extinct は形容詞「絶滅した」「消滅した」です。 ほか、生態系の「絶滅危惧種」は an endangered species である(桐原4500 species、ジー二アス endangered)。東京書籍と旺文社には、species の項目自体はあるが、絶滅危惧種はない。 なお、植物の「種」(たね)は、seed という別の単語である(東京書籍4500、桐原3000)。 典型的な例文は、 「農場に種をまく」 plant seeds in the field である(東京書籍4500、桐原3000)。 plant は「種をまく」という意味の動詞。 field は「農場」である。 動詞として seed 「種をまく」という用法もあるが、旺文社以外1200は紹介していない。少なくとも、桐原3000と東京書籍4500には、動詞の用法が紹介されていない。 ---- 疑い suspect ,doubt doubt ~は、「~が信じがたい」の意味。 → don't think に近い たとえば doubt if ~で「~かどうか疑わしい」。doubt that~で「~でないと思う」である。 suspect ~ は、「どうも~のようだ」のような意味(ジーニアス英和) → think に近い 旺文社1400にあるdoubt 例文で、 doubt ifの例文「私は神が存在するかどうか疑わしく思う」I doubt if god sexists. および doubt that の例文 「私は神は実在しないと思う」I doubt that god exist. が覚えやすいだろう。 suspect~ の 目的語(~)の部分は、原因や容疑などがくる。 例文として「食中毒を疑う」 suspect food poisoning とか(東京書籍4500)、 容疑者は名詞 suspect である。 このほか dubious と言う「疑わしいと思う」(桐原5500)という単語があるが、辞書の例文が不足していてよく分からなかった。単語集では桐原5500に書いてある。 ---- 治療と回復 「治す」 heal, cure , 「~が回復する」は recover 「~を回復する」は restore 「気分の回復」は refresh 「(健康などを)取り戻す」は regain 医療や薬などによって、けが や病気を「治す」一般的な語は cure である。 外傷を治す場合は heal が好んで使われる。 cure ~(人) の語順である。 けが を治す場合、 cure ~(人) of □□(けが・病気) の語順である。 典型的な例文が 「その薬が彼の病気を治すでしょう」 The medicine will cure him of his disease. である(ジーニアスの例文を改造し、「あなたの病気」から「彼の病気」に変更)。 桐原にも似た例文があり、 This medicine will cure him of the disease. 「この薬が彼の病気を治すだろう。」 とある。 his disease か the disease かなどの多少の違いはあるが、まあこんな感じの英文になる。 get rid of ~ などと同様に、ofの後ろには取り除かれるべき物が来る。 heal も同様、 heal ~(人) of □□(けが) の語順である。 だが、東京書籍4500および桐原4500いわく、 heal the wound 「けがを治す」のように、ofを使わずに使われる場合もある。 recover は「回復する」である。 recover from ~ で「~から回復する」である。 動詞 restore は、 「秩序を回復する」 restore order のような例文が辞書で典型的(ジーニアスとセンチュリーの両方にある)。 さて、旺文社 store 項目によると、パソコンなどで、データをバックアップすることは store である。 そして、単語集にはないが、バックアップをもとに設定データなどを自動的に「復元する」ことを restore という事がよくある。 辞書によると、古い建築物や美術品などを復元することも restore である。 東京書籍4500では、教会を修復するのを restore としている。その教会が古いかどうかは東京書籍4500には書いてない。 桐原では、桐原5500にrestoreが書いてある。 けがの回復ではなく、ちょっとした疲れやノドの渇きや気分などを、軽い飲食物や短時間の休養などで回復させるぐらいの場合は、動詞 refresh (リフレッシュ)で表せる。 旺文社1900がrefreshを紹介している。桐原・東京書籍は紹介せず。 ジーニアスいわく、冷たい水を飲むのも refresh である。 refresh は主語や述語の語順のつかいかわけが難しいので、例文を省略する。 センチュリーいわく、入浴で疲れをとるのも refresh である。また、ジーニアスでもセンチュリーでも、アルコールで気分を回復するのが refresh である。 そのほか、ジーニアスによると、コンピュータなどのディスプレイ上の画像が更新されるのも refresh である。これからのIT時代は覚えておきたい。 regain one's health で「健康を取り戻す」という慣用表現である(ジーニアス、旺文社1900)。 旺文社1900にしかなく、番号 1502 / 1900 の単語。少なくとも桐原4500・5500と東京書籍4500にはない。 He regained his health. 「彼は健康を取り戻した」 のように使う(センチュリー)。 「意識を取り戻す」 regain consciousness もよく使われる(ジーニアス、旺文社1900)。 たぶん She regained consciousness のように使う(旺文社に似た例文)。 また、この用例から分かるように、健康的なものを取り戻す場合、普通は主語が自身の健康を取り戻すのに regain を使う。 「自由を取り戻す」(センチュリー)とか「都市を取り戻す」(ジーニアス)とかの政治的なことも regain である。 ---- 蓄え store , stock store は「店」という意味の名詞でもあるが、「蓄える」という意味の動詞でもあり、さらに「蓄え」「蓄積」などの意味の名詞でもある。 なお、storeを「店」の意味で使うノはアメリカ英語。イギリス英語では店はshopである。桐原3000にも東京書籍3000にも書いてある。storeは3000語レベル。 stock は「在庫」や「株式」という意味の名詞でもあるが、「蓄え」「蓄積」などの意味の名詞でもあり、さらに商品を「店に置く」「仕入れる」などの意味の動詞でもある。桐原と旺文社は、「仕入れる」の意味まで単語を紹介している(ただし例文なしで単語のみ)。 stockは4500語レベル。 しかし単語集では、ややこしいので、stockについては、「株式」「在庫」の意味の名詞だとしてしか、紹介していない。しかし実はstockも動詞の用法があるのである。 センチュリーによると、食料の「蓄え」は、stock でも store でもよい。 たとえばセンチュリーのstockの例文は「我々の食料の蓄え」Our stock of food である。センチュリーのstoreの例文は(リスが冬の備えての)「食料を蓄える」lay in a store of food である。 このように、どっちでも食料 food を蓄えられるので、区別がつかない。 storeは別にリスのような動物限定というわけでもなく、たとえばセンチュリーで図書の「蔵書」 a book of store などの表現もある。 storeが店での商売関係というわけでもない(もし商売に限定だすると、図書の蔵書とかリスの食料とか、説明がつかない)。 なので、stock に「株式」「在庫」の意味があるとか、覚えるしかない。 桐原および旺文社いわく、 be out of stock で「在庫が切れている」 の意味。桐原は例文も紹介。旺文社は例文なし。東京書籍は紹介せず。 例文は桐原も東京書籍も旺文社も、在庫の例文である。 単語紹介だけでが、桐原いわく「株式市場」stock market 旺文社いわく「証券取引所」the stock exchange である。 語源を調べてみても、 stock の語源は木の「棒」stick と同じだと書いてあるだけで、stock と storeとの区別には役立たない。 さて、単語集にはないが、パソコンなどのハードディスクなどの貯蔵量のデータ記録デバイスのことをストレージ storage という。 ついで、単語集にある情報だが、 storage は、「貯蔵庫」や「保存庫」の意味で、東京書籍4500の巻末にだけ、解説なしで、単語と例文だけ書いてある。 辞書を確認のため見たが、ジーニアス英和は家具の「保管」を storage といい、センチュリー英和は単に「倉庫」を storage といい、あまり共通性はなさそうなので、深入りしない。 ---- 愚か 形容詞 foolish, stupid, silly, ridiculous などがある。 このうち、 foolish, stupid, silly, は、「愚かだ」「馬鹿げている」の意味。 このうち silly は口語調。 <nowiki>Don't be silly.</nowiki> で「馬鹿げたことを言わないで。」という典型的な例文があり、東京書籍4500でも紹介されている。 名詞foolが形容詞になったのが foolish である。 stupid は、辞書によると、foolish よりも、けなしの意味が強い。口頭では使わないほうが安全だろう。 ridiculous は、「不合理で馬鹿げている」意味。センチュリーによると、ridiculousには、あざけりや物笑いの意味もあるとのこと。 単に「不合理だ」の意味なら、 absurd を使う。桐原5500にabsurdが書いてある。なるべくabsurdを使うほうが高尚だろう。 センチュリーによると、absurdは、不合理さ・非常識さを強調している。 ---- 移行と移転と移動 migrate, transfer , 桐原4500に名詞形migrant (移住者)が書いてありますが、英語では動詞 migrateとは「移住する」や、渡り鳥の「渡る」のことです。 しかし単語集にはないですが、そのほかにもmigrateには、IT用語では古いシステムに入っていたデータやプログラムを新しいシステムの中へと「移す」ことや、開発環境などのシステムを新システムへと「移行する」という意味もあります<ref>[https://www.otsuka-shokai.co.jp/words/migration.html マイグレーション | IT用語辞典 | 大塚商会]</ref>。 なお似た言葉にreplaceがありますが、これはサポート切れなどで古くなったりして(obsolete)使えなくなったソフトウェアなどを現在の稼働中の使えるバージョンのものに「置き換える」(replace)ことを意味します。 英語では、「『移住』にシステム環境『移行』の意味もある」と覚えることが本質的な理解でしょう。 なお、スペルの似ている immigrate に、(外国から)「移住する」の意味があります(桐原4500)。またなお、桐原4500にも書いてあるが、空港などの入国管理が名詞 immigration である。英会話の教材などでよく immigration が出てくる。 immigrate と migrate の意味の違いを把握するため、辞書の説明に逆らって、私たちは migrate は(環境を)「移行する」で覚えましょう。 これが、moveやtransfer と、migrate との違いです。 なお transfer に「転勤する」「転勤させる」の意味があります(桐原4500)。 「転勤させる」ほうは他動詞なのでtransferでもいいのは分かりますが、「転勤する」と「移住する」の区別が難しいです。まあ、おそらく他動詞からの類推か、慣用的にtransfer が定着しただけでしょう。 なお、辞書にありますが「転校」や(プロ選手などの)「移籍」もtransferです。 高校生物の遺伝に関連する細胞物質のひとつで、トランスファーRNA (transfer RNA)というのがあります。こういうのと関連づけて覚えましょう。 また、列車・バスなどの乗り換えも transfer です。 スペルの似た単語で、transport という動詞および名詞がありますが、動詞 transport は「輸送する」です。 transfer 「乗り換え」はおそらくtransport 「輸送する」との関連で定着した表現でしょうか。 単語集にも辞書にもないですが、インターネット用語で HTTP というのがありますが、これは「Hypertext Transfer Protocol 」の略です。データなどを「転送する」のも transfer です。 センチュリー英和によると、銀行口座に「振り込む」もtransfer とのことなので、「送金する」のようなニュアンスでしょう。 なお、ジーニアス英和およびセンチュリー英和によると、法律用語で、財産などを「譲渡する」もtransferです。 transition という名詞が別にあります。transition は、移行期にあるものについての「移行」のことです。桐原4500 では「議会制民主主義への移行」、旺文社1900では「自動運転車への移行」を例文にしています。 ---- 決定 determine ,decide 辞書にはないが、determine は、断固とした決意で「決心する」「決定する」である。 形容詞 determined がセンチュリー英和によると断固とした決意の意味なので、動詞determineのほうもそういうニュアンスである。 あと、ジーニアス英和にあるが、判決を下すのも determine である。 あと、予備知識がないと気づかないだろうが、東京書籍4500にある例文のように、専門家などが原因などを「特定する」ことや、判定するのも determine である。 実際には、あまり断固としてなくても determine が使われるような例文もちらほらとあるが、あくまで派生的な用法だと思うべきだろう。 だから名詞形 determination は、「決心」「決意」と覚えるべきだし、実際に桐原4500や東京書籍4500でそういう和訳である。 be determined to ~(動詞) で「~する決心をする」 である。受身形で「決心する」になる。 たとえば He was determined to ~ 「彼は~する決心をしていた」 のように使う。また、完了形にせず、過去形のままで使う(桐原4500の例文、ジーニアスの例文など)。 能動形でも「決心する」の用法もあるが、普通は上述のように受身形で使う(ジーニアス)。 検定教科書で三省堂 CROWN Iを読んでいると、高校1年でもう be determine to do を扱っている。 対する decision は、和訳は「決定」である(東京書籍4500)。桐原によるとdecisionは「決定・決断」だが、しかし上述のように、どちらかというとdesicionは比較的に「決定」のニュアンスのほうに近いだろう。 resolve でも「決意する」だが、東京書籍4500だと彼女をデートにさそう「決心」という例文であり、まったくもって断固とした必死さが足りない。 そんなのよりも、会議などの「議決」のことを resolution というのを覚えたほうが良いだろう。桐原4500に「決心」「決議」と単語の和訳だけ書いてある(例文はなし)。 ---- 減少 decrease, decline , reduce, diminish まず、高校英語で増減を表す場合につかう典型的な単語は、increase (「増える」「増やす」の意味)および、対義語の decrease(「減る」「減らす」の意味)である。 たとえば、三省堂『CROWN II』「英語表現」教科書では、パラグラフ・リーディング/ライティングの説明で、留学生に関する分析の文章を扱っているのだが、留学生の「増加/減少」<!-- 「/」は原著が全角文字なので、それに合わせた。 -->にそれぞれ increase/decrease という表現を使っている<ref>高等学校学外国語科用『CROWN English Expression II New Edition』、三省堂、2022年3月30日 発行、P81</ref>。 この例のように、 increase (増加)と decrease (減少)は対になって使える便利な表現であるので、まずはこれを覚えよう。 熟語というほどではないが、 ~(主語) increased by □□(数値) percent. で、「~が□□%上昇した。」である。たとえば上記のパターンで、東京書籍4500では「その商品の売り上げ」Sales of the product だし、旺文社199では「日本の実質GDP」Japan's real GDP である。桐原3000には数値上昇の例文なし。桐原は昔から単語集では定番だが、しかし桐原だけでは勉強できないこともある。 increase で増える数値はなにも百分率(パーセント)でなくてもよく、たとえばジーニアス英和では、「体重は2キロ増えて60キロになった」 increased by two kilograms to 60 kikograms. という例文もある。 on the increase で「増大して」の意味。なお、ここでの increase は名詞。 東京書籍4500では「自動車事故が増加している。」 Bike accidents are on the increase. センチュリー英和では「大都会における犯罪は増加しつつある。」 Crime in big city is on the increase. ジーニアスは on the increase の例文なし。このように、ひとつの英和辞典だけでは勉強できない。 別に on the increase を使わずとも、現在増加中のものは現在完了進行形で書いてもよく、桐原3000がそうであり、 「車の台数が増え続けている」 The number of cars have been increasing. である。 ジーニアス英和にある説明だが、よく、The number of ~ increased. で「~が増えた。」と言う例文があるが、「The number of 」を省いて直接「 ~ increased. 」のように言ってもいい。 実際、東京4500の例文「自動車事故が増加している。」 Bike accidents are on the increase. でも、 the number of は無い。 on the increase のbe動詞が単数形(is)なのか複数形(are)なのか食い違いがあるが、英和辞典を見ても、とくに言及はされていない。 increasingly で「ますます」の意味が紹介されているが(東京書籍4500。旺文社1900)、しかし例文は無い。 価値や能力を「高める」場合、enhance (エンハンス)という動詞が使われることもある。だが、辞書でも例文が少なく、あまりいい例文が見当たらないので、説明は省略。旺文社1900だと、603/1900の位置でenhanceを紹介している。だが東京書籍4500では、巻末ちかくで enhance を紹介である。桐原に至っては、4500語レベルではなく桐原5500の後半ちかくでenhanceを紹介である。 さて、decline は自動詞であり、つまりdeclineは「低下する」「減少する」の意味である。 declineの典型的な例文が「出生率は低下している。」であり、東京書籍4500では The birth date is declining. 「出生率は低下している。」 である。 似た例文が、旺文社1400にもあり、 「出生率は低下し続けている。」 The birth rate continues to decline. である(旺文社1400)。 なお検定教科書にも decline の単語は掲載されている<ref> 、『CROWN English Communication III New Edition』、三省堂、2018(平成30)年2月28日 文部科学省検定済、2022(令和4)年3月30日 発行、P45</ref>。和訳が検定教科書に書かれてないので不明だが、その検定教科書では経済の議論の紹介で decline が使われているので、「低下する」の意味にて decline を用いているのだろう。 decline には、申し出・誘いなどを「断る」の意味もあり、桐原4500に紹介されているのはこっちの意味だけ。 しかし、高校の検定教科書に、「少子化」 declining birth rate が照会されているので、「減少」の意味のほうもキチンと覚えよう<ref>高等学校英語 検定教科書『FACTBOOK English Logic and Expression I』、令和3年5月 文部科学省検定済、令和4年2月25日発行、P18 </ref>。 名詞形 declination が、ていねいな断りの意味。 reject (計画などの「拒絶」。※却下のような意味)や refuse (拒絶)だと意味が強すぎるのだろう。 reduce は「減少させる」。3R運動のリサイクル、リユース、リデュースのあれ。  「減少」は名詞 decrease と名詞 reduction がある。 reduction は、「削減」のニュアンスで使われることが比較的に多く、桐原4500および東京書籍4500の例文が経費削減である。 reduce costs で「経費を削減する」である。 このほか、diminish や drop や fall などがあるが、やや高校範囲を超える。一応、diminishは桐原5500および東京書籍4500には書いてある。(桐原4500には書いてない。)な 一応、diminish は、検定教科書『CROWN III』で使われている<ref>高等学校学外国語科用『CROWN English Expression III New Edition』、三省堂、2018(平成30)年2月28日 文部科学省検定済、2022(令和4)年3月30日 発行、P73</ref>。 CROWN III にある例文は But the war 1990's, the threat of war diminished. という文章(抜粋)である。検定教科書に和訳がないので答えは不明だが、「しかし、1990年代には、戦争のおそれも少なくなった」ような意味である。 直前の文章では、「20世紀は戦争が多く」みたいなことを英語で言っているので、おそらくそういう意味だろう。 辞書で diminish を確認したところ、ジーニアスもセンチュリーも悪い意味に使う例文のほうが多いが、しかしCROWN IIIの検定教科書によると、とくにdiminish には悪い意味合いは無いようである。 桐原5500に書いてある例文も、 We can diminish our fear. 「恐怖を減らすことはできる。」(抜粋) なので、別にdiminish に悪い意味合いはない。 なお、桐原5500の例文は東北大の過去問。ネットでは「地方国立の入試英語なんて教科書レベル」などの言説もあるが、まあ確かに教科書にはdimisihも書いてあるものの、大分、学習量は大きい。 drop やfall は、旺文社1400の巻末にある類義語の章にだけある(本編には解説なし)。 dropは数量や人口、価格などの減少で使われる「口語的」な語(旺文社が「口語的」と言っている)。ただ、ノーベル経済学者クルーグマンのツイッターを読んでたら、「インフレの減速」のような意味で普通に drop を使っていた。 価格の低下だけでなく、派生してインフレの減速にもdropが使われることから、もしかしたら経済学などでは文語的に drop という単語が使われている可能性もあるかもしれない。 なお、「急騰する」は soar である(桐原5500、旺文社1900)。 単語集の例文だと完了形で have soared だが、急騰の結果として現在でも株価が高いなら完了形にするのが無難だろう。 インフレ率の上昇でも株価の上昇でも何でもいいが、たとえば旺文社1900が株価の上昇の典型的な例文 The stock prices of the company has soared . 「その会社の株価が急上昇した。」 である。 ジーニアスは野菜の価格の急騰、桐原5500は米価の急騰である。たとえばジーニアスでは The price of vegetables is shoring. 「野菜の価格が急騰している。」 である。この野菜の例文のように、進行形ならもちろん、現在も急騰の真っ最中になる。 時制ついでに桐原5500の例文を紹介すると、 Figure showed the price of rice had soared to record levels. 「数字は米価が記録的な水準にまで急騰したことを示していた。」 である。 なお「痛い」soreと同じ発音である。 ついでに言うと、よく景気の先行きについての見通しで「悲観的」だの「楽観的」だのマスコミ用語でいうが、これは英語でもそう言い、 「悲観主義」は英語でpessimism (ペシミズム)である。 「楽観主義」は英語で optimism (オプティミズム)である。 スペルよりも、まずカタカナで『ペシミズム』『オプティミズム』と覚えてしまおう。社会評論などの書籍などを読んでいると、ときどき外来語として「ペシミズム」などの用語を使っている場合もある。 典型的な例文として 東京書籍4500で「ボブは自分の将来について楽観的だ。」 Bob is optimistic about his future. である。 似たような例文が旺文社1900にもあり、「彼女は自分の将来について楽観的な気持ちだ。」 She feels optimistic about her future. である。 桐原4500が紹介しているが、なにも将来でなく経済に楽観や悲観を感じてもいいのである。 桐原によれば、「彼はその国の将来について楽観主義を表明した。」 He has expressed optimism about the country's economy. である。 wikiオリジナルの例文だが「トムは経済の先行きに悲観的だ。」なら、さしずめ Tom is pessimistic about the country's economy. とでもなろうか。 なお、英和辞典を見ても、例文が「~は将来に楽観的だ」とか「将来に悲観的になってはいけない」ばかりである。optimistic などの単語が経済予想や株価予想に使えることすら、辞書だけでの勉強では全然分からない。とはいえ、あまり良い市販の英語教材がない。 ともかく、また、これらの例文のように、 be optimistic about ~ で「~に楽観的だ」となる(東京書籍4500)。悲観の場合も pessimistic で同様。 念のため、派生語も含めて一覧にすると、 optimism 「楽観主義」、 optimistic 「楽観的な」、 optimist 「楽観主義者」(旺文社1900に紹介あり)、 pessimism「悲観主義」、 pessimistic「悲観的な」、 pessimist 「悲観主義者」、 である。 ---- 想像 vision, imagination, image vision は「想像」の意味があるが、「見通し」の意味もある。もっとも、見通しの意味では名詞 perspective がさらに高尚。 なお、perspective はどちらかというと「視点」の意味である。大局的な視点=見通しのようなニュアンスが perspective である。東京書籍が(大局的な)「視点」、桐原が「観点」。だが、別に大局的でなくても美術の遠近画法のことを perspective というので、東京書籍の説明はいかがなものか。 from a different perspective で、「違った視点から」 たとえばジーニアスいなる例文think about the problem from a different perspective で、「その問題を違う観点から考える」となる。ジーニアスは「観点」、東京書籍4500は「視点」と訳しているが、別にどちらでもいい。 different の部分を別の形容詞にすれば、 from ~ perspective で、「~の視点(観点)から」になる。 なお、スペルの似ているprospect は、何か良いことの起きる「見込み」、成功の可能性のこと。 たとえば形容詞 prospective は「有望な」の意味である。 ジーニアス英和によると、もともとはprospectは高いところからの「展望」のような意味だったようである。桐原4500にprospectが書いてある。 「見込み」outlook という単語もある(桐原5500 のprospect)。桐原5500では prospect の「見込み」の類義語として紹介されている。 もし、「観察力」とかを言いたい場合、observe 「観察する」である。 「洞察力」なら、penetrating 「洞察力のある」である(旺文社1900。桐原5500)。ただし、洞察力の意味での例文は単語集に無い。動詞penetrate には「浸透する」の意味もあって、そちらの例文が市販の単語集には書いてある。 もっと簡単な単語としては insight 「洞察力」という名詞があるので、これを使って洞察力を表現する方法もある。 なお、 語法 give A insight into B で「AにBの見識を与える」 である。 名詞 vision にも、「見通し」「洞察力」などの意味があるので、これでも洞察力を表現できるだろう。ただし、単語集にその用法での例文は無い。 旺文社1900によれば、 a one's(myなど) point of view で「〜の観点から」の意味。だが、これを直接暗記するよりも、まず名詞 view には、「眺め」の意味のほかにも、「見解」の意味があることまず知るべき。 慣用的に in my view, 「私の考えでは、」(ジーニアス、センチュリー)という表現がある。「考え」と訳しているが、「私の見解ですが、」くらいに訳したほうが分かり易いだろう。ただし、英語の view には、個人的な感情も含んで見方を示しているので、そういう意味で辞書では「意見」としたのかもしれない。 だが、 in my view は、ジーニアスによれば、in my opinion よりも控え目な言い回しとして使われる。 まあ、読者の自己責任で和訳してください。 単語集にはないが、viewpoint 「観点」という単語がある。ジーニアスの例だと、 From an economic viewpoint, 「経済的な見地からすると、」(その計画には利点がない) と続く。 センチュリーだと、 〜 from the viewpoint of employees. 「従業員からの立場からみれば」(昇給はよいことだ) となる。 旺文社の大学入試出る順シリーズに a point of view が書いてあるから、たぶん入試に良く出るんだろうが、正直言って瑣末な単語であろう。実際、桐原も東京書籍も a point of view を紹介していない。ジーニアスやセンチュリーにすら、少なくともview の項目には書いてない。辞書でpoint で調べると point of view が書いてあるが。 たとえば、センチュリー英和では「アメリカ人の視点から見ると、」(謝罪は自分の誤りを認めたことになる) From an American point of view, 〜 ジーニアス英和では「財政的見知では、」(これは由々しき問題だ) From a financial point of view, 〜 などの例文がある。 熟語 in terms of ~ で「~の点から」。なお terms はterm の複数形。東京書籍4500と桐原4500に似た例文があって、東京書籍「その計画は費用の点から現実的ではない」The plan is not realistic in terms of cost. なんで terms と複数形なのか不明と思うだろうが、しかし英和辞典にも in terms of と複数形で紹介されているので、受け入れてもらうしかない。 いっぽう、桐原「この計画は時間と費用の関係で現実的ではない。」 This schedule <nowiki>isn't</nowiki> realistic in terms of time and costs. term ついでに言うと、医療の末期医寮などでターミナルなんとか terminal 〜 とかあるが、辞書で確認すると用語term と末期terminal の語源は一応は同じだが、事実上は意味のまったく違う別の単語だと思うほうが良いだろう。東京書籍4500がそういう見解であり、「用語」 term と 「末期の」「終末の」 terminal を別々の項目として紹介している。 「末期の」の典型的な例文としては、「末期ガン」 terminal cancer がある(東京書籍4500. ジーニアス、センチュリー)。 桐原4500 では terminate 「終わりにする」が紹介。terminateの紹介位置が巻末ちかくの付録のため、例文なし。 駅や空港などのターミナル terminal も、同じスペルである。駅近くなどのターミナルも、もともとは何かの終着のことだったのだろう。 なお、駅が公共バスなどの終点である事例は多い。 そういうバスターミナルのことも、ジーニアス英和いわく a bus terminal であり、またはセンチュリー英和いわく単に terminal という。 センチュリー英和は、バスのターミナルを単に「終点」と訳している。 さて、term には、「用語」の意味の他にも、「期限」「期間」の意味がある。 形容詞 long-term で「長期の」という意味である(旺文社1900)。 単語集にはないが、termination 「満期」「満期の」という単語がある。term にはそういう、限度のある期間的な何かのニュアンスもある。関連づけて覚えよう。 小中高の学校の「学期」もtermであるが、普通は3学期制の「学期」のことをいう(ジーニアスsemester で確認。ほか旺文社 semester )。大学の「前期」「後期」といった2学期制の場合は semester という(旺文社、ジーニアス semester )。 なお、日本の大学は、年間で「前期」「後期」という2学期制である。少なくとも日本の大学はそうである。 英米では、「秋学期」the fall semester と、「春学期」 the spring semester という言い方をする。 普通、英米では、9月から翌年1月までが「前期」the first semester であり(センチュリーで確認)、「秋学期」the fall semester という言い方をする(センチュリー、旺文社)。 普通、英米では、2月から8月までが「後期」the second semester であり(センチュリーで確認)、「春学期」the spring semester という言い方をする(センチュリー、旺文社)。 果たして大学でもし3学期制の学校があったら何というのかは知らない。まあ、単語なんて所詮は、社会の現状に合わせて言葉が作られるので、社会に存在しない制度の呼び名を考えてもラチがあかない。 imagination は「想像する行為」または「想像力」のこと。 image は、想像によって脳内に思い浮かんだ「像」や「印象」のこと。 動詞形は imagine である。実はimageも動詞とみる場合もあるが、しかしジーニアス英和ではimageの動詞用法は不採用である(ジーニアスでimageを見ても、動詞の用法は無い)。センチュリー英和だと、imageの動詞の用法が書いてある。 形容詞 imaginary は、「想像上の」「架空の」「実在しない」である(ジーニアス英和。センチュリー英和)。 ジーニアスでもセンチュリーでも、「創造」ではなく「想像上の」である。 スペルの似た imagery という単語があり、旺文社には『(集合的に)「比喩的表現」』と書いてある。辞書を見てもジーニアスでしか見つからず、例文もなく、よく分からないので説明を省略。 単語集にはないが、理科のレンズの実像(a real image)や虚像(a virtual image)などの「像」も image である(ジーニアス英和)。 旺文社1900にあるが、テレビの「画像」も image である。上述のレンズとテレビを合わせて考えれば、つまり、光学の像も image であるし、実際に英和辞典ではそう紹介している。 なお、イメージダウンなどは和製英語。イメージが悪化した場合は a bad image のように言う(ジーニアスで確認)。 なお、仏像とか銅像とか、ああいったのは「塑像」(そぞう)とか「彫像」(ちょうぞう)とかいうが、「塑像」・「彫像」の英語は statue (スタチュー)である。単語集を見ると巻末の索引に statue が書いてないので一見すると高校の範囲外だが、しかし自由 liberty で東京書籍4500を見れば「自由の女神像」 the statue of liberty が書いてある。桐原の検定教科書『EMPOWER II』にも、P28に「自由の女神像」 the statue of liberty が書いてある。 このように、「自由の女神像」 the statue of liberty は事実上の高校必須の単語である。 liberty「自由」は普通、国家権力からの自由の事を言う。 だから liberal は形容詞「自由主義の」または名詞「自由主義者」の意味がある。(桐原4500が名詞「自由主義者」も紹介している。東京書籍は形容詞だけ。) liberalism 「自由主義」である。 statue は、桐原の検定教科書『EMPOWER II』にも、P31に「ブロンズ像」 a bronze statue が書いてある。 光学ついでに言うと、「反射する」は reflect である。典型的な例文が、「日光を反射する」reflect sunlight である(東京書籍4500、センチュリー)。 ジーニアスには「鏡は光を反射する」 A mirror reflects a light. という例文もある。 だが、桐原4500や旺文社1900では、reflectの、意見などを「反映する」の意味のほうが紹介されている。 とりあえず、ジーニアスによれば「世論を反映する」 reflect public opinion である。 センチュリーや桐原や旺文社を見ても、「反映する」は他動詞的に使うのか自動詞的に使うのか、能動形や受動形か、あまり使い方がはっきりしない。 reflect on ~で「熟考する」「回想する」の意味(旺文社1900では熟考、東京書籍では回想を紹介)。東京書籍のには例文あり。著作権のため本ページでは紹介しない。 名詞形には reflection と reflex がある。意味が微妙に違うので、必要な場合には英和辞典で確認せよ。 なお、単なる「視野」や「視界」のことは view である。だが、辞書でviewの項目を見ると、「見解」の意味が先に書いてある。少なくともジーニアス英和とセンチュリー英和はそうである。辞書よりも単語集で勉強しよう。 ---- 可能性 possibility, probability, likelihood 成功の見込み、成功の可能性 prospect 潜在能力 potential probability (プロバビリティー)は「見込み」「確率」の意味(旺文社1900)。数学の「確率」で probability が使われるので、もし確率ではない単なる「可能性」のことをいいたい場合は、別の言い回しが必要な場合もあるだろう。 関連語として、副詞 probably「たぶん」がある(旺文社、桐原)。 形容詞 probable (プロバブル)については It is probable that ~  「たぶん~だ」 の意味(桐原4500、旺文社に似た和訳)。 対義語 impossible (インポッシブル)「不可能である」も覚えておきたい。 ほか、prospect は、何か良いことの起きる「見込み」、成功の可能性のこと。 「可能性」を意味する likelihood (ライクリフッド)という単語もある(旺文社1900巻末)。副詞 likely 「ありそうな」の名詞形である。 possible (ポッシブル)について、 It is possible that 人 to do で「人が do するのは可能だ」の意味(桐原4500、東京書籍3000)。 capability (ケイパビリテイー)は「能力」である(桐原4500)。可能性は関係ない。 ability (アビリティー)は「能力」「才能」である(桐原4500)。可能性は関係ない。 「たぶん」を意味する副詞の maybe(メイビー) と perhaps(パハップス) と probably(プロバブリー) については、省略。書きたくない。 東京書籍3000が、ひとまとめで maybe や perhaps と probably を説明している。 東京書籍3000は紹介していないが、 likely (ライクリー)形容詞「ありそうな」、副詞「たぶん」という単語もある。 名詞および形容詞のpotential (ポテンシャル)は翻訳の都合で(名詞の場合なら)「可能性」と訳す場合もあるが、なるべく「潜在能力」 potential という訳で覚えましょう。 形容詞としての場合、「潜在的な」で potential を覚えましょう(桐原3000巻末)。 物理学の位置エネルギーのことを英語で potential と言いますので、科学的な専門用語でもあります。 桐原3000巻末のセンター試験特集によると、「潜在能力」などの意味ですが potential はセンター試験での出題をされた単語らしいです。 センター出題の背景事情として、ポテンシャルは物理学などで使う用語だという背景があります。 日本語でも、物理学の専門書などを見ると、普通に「ポテンシャルエネルギー」とか単に「ポテンシャル」などと言ったりもします。 ---- 計画 scheme, plan, project 桐原4500 が scheme を「たくらみ」の意味だけ例文で紹介している。勘弁してほしい。 まず、旺文社1900 が例文で、政府の「新しい住宅供給計画」を The new housing scheme といってるように、比較的にきっちりとした計画のことである。 桐原・旺文社の単語集にもあるように schemeに「体系」とかの意味もあって、だからニュアンス的には、体系だった計画のような感じがある。 念のためジーニアス英和を見ると、scheme の意味として「政府の公共計画」、「会社の事業計画」などが挙げられている。 そして、そういう派生として、「陰謀」(旺文社)、「たくらみ」(桐原)を覚えるべきだろう。語源はともかく。暗記の負担を減らす理解としては、たとえば :陰謀は大規模・身の程知らず → 大規模な計画は scheme という → じゃあ陰謀も scheme でいいか 的な連想とかで覚えるのがラクかと。 高校生に語源の知識はいらないし、もし語源が「たくらみ」だというなら、そういう情報を先に教えるべきだし、念のためジーニアスで語源を見てもsdhemeの語源は『「形」が原義』とのことだし、あるいはもし有名大学が入試でscheme の「計画」の意味も出題せずにschemeの「たくらみ」を出題しているならその大学が批判されるべきだろう。 なので、ジーニアスもいってるように、scheme は plan よりも固い語である。 ジーニアス英和やセンチュリー英和にあるように 大綱とか図式とか、学問などの体系とか、教育体系とかも scheme という。 たとえばセンチュリー英和が教育体系なら an educational scheme だと言っている。 plan は「計画」をあらわす一般的な語(ジーニアス)。 project は、長期の「計画」を表す(東京書籍3000)。projectを「事業」「プロジェクト」などと訳す場合もある。東京書籍では「プロジェクト」という訳語を紹介している。 辞書では特にplan と project の違いは述べられていない。だが project の用例を見ると、橋やダムなど公共インフラの建設計画などがよく project で表現される。 「ダム建設の事業」 the project ro build the dam である(東京書籍3000。センチュリーに似た例文)。 「橋の建設の事業」なら a project to build bridges である(ジーニアス)。 別に公共インフラでなくてもよく、ビルの建設計画でも良い。 なお、大規模な工事などを「計画する」という意味で動詞 project もある。アクセントが名詞と動詞とで異なる。 名詞は、プ「ラ」ジェクトの「ラ」にアクセントがある。なお、日本語では「プロジェクト」と書かれるが、英語ではどちらかというと「ロ」ではなく「ラ」であり、プロジェクトである(センチュリー、ジーニアス)。 動詞は、プロ「ジェ」クトの「ジェ」にアクセントがある。 学生などの研究課題も project という、 ---- 陰謀(主に「共謀」) conspiracy たくらむ scheme 高校英語としては、陰謀で覚えるのは conspiracy と、あとはschemeで十分だろう。 ジーニアス和英辞典によると。「たくらむ」には、plot, conspire , scheme , contrive ,hatch がある。 これらの単語には、陰謀以外の意味で使われるものあり、 比較的に簡単な単語なら、 plot は、よく数学的なグラフに「点を打つ」とかの意味で使われる。 なんと高校の単語集には plot がない(桐原3000・4500・5500と東京書籍3000・4500を調べた)。点 point とか教えてるのに「点を打つ」plot がないとは、英語教育の界隈はどういう了見か。反省を願う。中学数学レベルの簡単な英単語も教えられないくせに conspiracy とか教えているのか。 一応、「x軸」 x-axis とか「y軸」y-axis とかは、検定教科書で見かける<ref>高等学校学外国語科用『CROWN English Expression II New Edition』、三省堂、2022年3月30日 発行、P145</ref>。 ジーニアス英和で plot を見ると、「(裏切りの)陰謀」「たくらみ」が最初の意味だが、なんだかなあ。いまどき plot なんて数学の座標で使うのが人生で最初だと思うが。 センチュリー英和の言うように、地図や図面などに位置を書き込むことがプロット。 なお、小説などの筋書きも plot といい、センチュリーはこの筋書きの意味をplotの名詞の項目で最初に紹介している(動詞のほうは、「たくらむ」だけ紹介)。 しかしセンチュリーのほうだと、動詞には、図面や地図に位置を書き込むことの動詞がない。 本当もう勘弁してほしい。英和辞典ともあろうものが中学校レベルの英語くらい書けないのか。 scheme は上述のような体系的な「計画」だし、 hatch は(鳥などが)「ひなからかえる」「卵からかえる」「卵をかえす」とかの意味。船などの昇降口のハッチ hatch とスペルが同じ。 contrive には、(ジーニアス英和によると)「考案する」・「うまくやりとげる」の意味もある。 conspire が、「共謀する」の意味。桐原5500でも、conspiracy の例文の主語が複数形になっているので、和訳には「陰謀」とあるが内容は「共謀」である。 ちなみに「陰謀」の名詞は、桐原5500が紹介しているのは、intrigue (イントリーグ)とconspiracy (コンスピラシー)である。 これだと意味が強すぎるので(政府転覆とか)、ちょっと何かをたくらんでいるぐらいの場合に、scheme とか plot とかを使うとよいのだろう。 ジーニアス英和で intrigue を調べてみたが、例文がなく、よくわからなかった。なお、名詞も動詞も intrigue である。 ---- 多様性 variety ,diversity 東京書籍4500は variety と diversity の違いの細かい説明をあきらめている。 diversity のほうが高尚な言い回し。 東京書籍の言うには、形容詞 variousが「いろいろ」「さまざま」。名詞 diversity が「多様性」である。 熟語 a variety of ~で「様々な」の意味(桐原4500)。 桐原4500および旺文社1900に至っては、そもそもdiversityの項目・ページではvarietyを紹介していない。 桐原4500 が「民族の多様性」 ethnic diversity という表現を使っている。 センチュリー英和がdiversityの項目で biological diversity 「生物学的多様性」という表現を使っている。 「生物多様性」のことを biodiversity または biologicaldiversity という(旺文社1400)。 biodiversity は辞書(ジーニアス、センチュリー)に書いてある。 辞書のbio- の項目では、biological diversity は辞書では見つからなかった。 なお、ややこしいことに、diversity およびvariationには「差異」「相違」という意味もある。 和製英語のバライエティーおよにバリエーションは、やや意味が間違っている。 variation は、「差異」・「相違」・「変化」の意味(東京書籍4500および旺文社1900)。高校数学ではわかりづらいが、大学の数学で「変分法」という微分積分の発展的な分野のようなものがあって、これに variation という英語が相当している。( [https://kotobank.jp/word/%E5%A4%89%E5%88%86%E6%B3%95-131413 コトバンク『変分法』] )この変分計算では、関数中にある変数の代入値を少しだけ変化させたら関数がどう変化するかを考察しているので、英単語 variation の訳語のニュアンスに近い。 なお「微分」はdifferential、導関数はderivative なので、混同しないように(※ 大学受験に出ないので覚えなくて言い)。 桐原4500の例文にもあるが a diversity of ~ で「多種多様な~」の意味。 a diversity of wildlife で「多種多様な野生生物」と桐原4500が紹介。 なお余談だが、近年では国籍や性別(男・女のほかにも、さらにはLGBTなど)などの多様性のこともよく「ダイバーシティ」 diversity といい、よく人権などの関係した議論でこの用語護が出てくる。今後の公民科目などの範囲になるだろうから、本・英単語集のページでは深入りしない事にする。 ---- 十分・充分 sufficient ,adequate, enough sufficient ⇔ deficient 適切である suit, be adequate for, enough は形容詞にも副詞にも使われる。 sufficient と adequate は形容詞。 ジーニアス英和に、adequate の類語が sufficient , enough だと書いてあるが、ニュアンスの違いは見当たらなかった。 形容詞 sufficient 「十分な」は ehough よりも固い語である。 だが、その用法だけではない。 強制ではないが、sufficient は、質・量ともに十分な場合に好まれて使われるニュアンスがある(センチュリー)。 一方、単に量が多い場合や、特に質が問われない場合などに enough を使うという、使い分けがある。 be sufficient to ~(動詞) 「~するのに十分である」 である(桐原、東京書籍)。 sufficient の名詞形は sufficiency 「十分足りること」である(桐原)。 対義語は insufficient 「不十分な」、または deficient 「不足した」(デフシュント)である(東京書籍)。 センチュリーいわく、sufficient では質も問われるニュアンスがあることも合わせれば、対義語との関係は、 (質・量とも)「十分な」sufficient ⇔ deficient(質・量が)「不足した」 である。 センチュリーの訳語を比較した範囲では、insufficient よりも deficient のほうが絶対量の不足という意味合いが強そうであった。そのためか、deficinet は「欠乏」と訳されることもある(センチュリー)。つまり deficient 「欠乏した」「不足した」などの意味である。 名詞形 deficiency 「不足」「欠乏」「欠陥」という単語もある(旺文社 deficit 項目、センチュリー)。 ほか、貿易赤字などの「赤字」は 名詞 deficit (デフィシット)である。 つまり、「赤字」 deficit である。 「貿易赤字」は a trade deficit である(旺文社、センチュリー)。 数学用語だが、「十分条件」は sufficient condition である(旺文社1400)。なお、「必要条件」は necessary condition である(旺文社1400)。 sufficient O(目的語) to V(動詞の原形) で、「Vするのに十分な量のO」 ~ be sufficient to V で、「~はVするのに十分だ」 be adequate for ~ は、「~に十分な」とのことだが(東京書籍)、しかしジーニアスを見ても例文がなく、よく分からなかった。 be adequate for ~には「~するのに適している」の意味もある(桐原)。 「適切である」を言いたいなら、動詞 suit (スート)ひとつで足りるだろう。 たとえば 「このソフトウェアはプログラミングに適切です。」 This software suits programming. のように(wikiオリジナルの例文)。 suit 自体は桐原4500・東京書籍4500・旺文社1900の3冊とも紹介しているのだが、 しかし「適切である」の例文は、東京書籍しか紹介していない。 しかも、待ち合わせの時間が「好都合である」の訳。 違う英文だが、 (待ち合わせの時間を聞かれた返事で)「金曜日が好都合です」 Friday suits me. のような使い方(オリジナル。ジー二アスに似た例文。センチュリーに似た例文)。 桐原が紹介している例文は背広のスーツだし、旺文社のは「訴訟する」の suit である。 ---- 不足 lack , shortage かつて受験英語などで「欠乏」lack ,「不足」shortageのような使い分けがあったが(実際、ネット検索するとそういう説明も出てくる)、しかしこの分け方は正しくない。なぜなら、英和辞典で lack の項目を見れば、単に不足している場合でも lack を使っているからだ。 lack と shortage の違いは、たとえば「同情に欠ける」とか「常識に欠ける」がlackである。 センチュリー英和を読むと形容詞 lacking の説明で、be lacking in common sense という例文で、「その学生は常識が足りない」という例文もある。 どうも、lack は、慣用句として、配慮が欠けている場合に使うのが英米では自然なのかもしれない。また、その言い回しが、配慮を欠けている事実自体を主張するおかにも、どうも不足の現状に対して非難や批判などのニュアンスも込めてlackが使われていそうである。 おそらく、辞書にあるlackの訳語の「欠乏」が間違っている。ジーニアスにもセンチュリーにも「欠乏」が書いてあるが、正しくは「欠如」(けつじょ)である。(ジーニアスに「欠如」が書いてある。)あるいは、辞書にはないが「欠落」あたりだろうか。欠乏の「乏」とは貧乏の「ぼう」である。 ジーニアスには、lackについて「十分にはないことをいう。まったくない場合はabsence」といっている。ジーニアスはせっかくここまで説明しておいて、なぜ「欠乏」という訳語を使い続けるのか。 欠席のことを be absent from (classなど)というが、上述のabsenceはその形容詞absentの名詞形。つまり、英語では「欠乏」と「欠席」とが同じ単語だという事。 absenceは、ゼロの状態だから、「ゼロでないけれど、大幅に足りない」みたいな表現には向かない。そういう深刻な不足を言いたい場合は、たとえば a serious shortage となるだろう。実際、センチュリ-のsortageの項目に例として a serious shortage (深刻な不足)や an acute shortage (深刻な不足)や a severe shortage (深刻な不足)などが 書いてある。<!-- 原著で訳語「深刻な不足」をそれぞれの単語に書いてあるので、けっしてwikiでひとまとめにしないこと。またニュアンスも微妙に違う。--> さて、食料やら金銭やらが物理的に足りない場合は、どちらでもいいが、辞書を見る限り shortage のほうがそういう物資の不足での例文が多い。 たとえば東京書籍4500にあるが water shortage である。 食料不足は、東京書籍4500では The shortage of foodだが、センチュリー英和では food shortage である。 労働者不足が the shortage of labors である(旺文社1400(簡単なほう))。 医師不足が a shortage of doctors である(桐原4500)。 冠詞 a と the の違いは文脈に応じただけのものなので、読者は気にしなくていい。 なお、lack は動詞の場合もある。 単語集を見ても、lackとshrtageの違いとか、書いてない。まったく。 ---- 直観と直感 intuitive(直観), 洞察 insight 英語というより日本語の問題なのだが、「直観」と「直感」では意味が違うので注意が必要である。 「直観」には、洞察力のようなニュアンスがある。 だから 直観の intuitive は、「直観的な」「直観力のある」などと訳す(東京書籍4500)。 名詞形 intuition だが、桐原5500の例文の和訳で(なお東大の過去問例文)「動物、中でも人間は起こりそうなことに関して鋭い直観力を発達させたと考えることができるだろう。」 We <nowiki>coudn't</nowiki> expect animals, especially humans, to have developed sharp intuitions about probably. とある。 英和辞典でintuitive などを見ても、ほとんど例文がないので(センチュリーには例文がなかった)、桐原のこの例文を学ぶのが良いだろう。 あるいは英和中辞典などを見れば例文があるのかもしれないが、さすがに高校英語でそこまでする必要はないだろう。 あと、東大は辞書を見ても満足に例文のない単語を大学入試に出しているわけだが、はてさて、見識が問われますなあ。まさか高校生に中辞典を買わせるつもりでもあるまいし。 もっとも、「洞察」「洞察力」については insight という別の専用の単語があり、普通に4500語レベルの単語集にある。 いっぽう、「直感」は、単なる勘に近い。和英辞典によれば、hunch とか scent が直感である。(高校の単語集にはない) センチュリー英和によれば hunch は「虫の知らせ」で、口語のニュアンスがある。 scent には、名詞 scent には「勘」の意味もあるが、「臭い」とか「嗅覚」とか「香水」の意味なので、動詞scent には「かぎつける」の意味もある。 hunch も scent もこういうふうに口語っぽい内容なので、まあ単語集には出ないだろう。 そのほか、名詞 instinct (本能)にも「勘」の意味があるが、どちらかというとinstinctは「本能」で覚えたほうがいいだろう。 ---- 結果 consequence , result 辞書にはconsequenceでは「結果の重要性を意識している。resultより固い語」とか書かれるが、 だが、東京書籍4500にはconsequenceは「通例望ましくない内容について用いられる」と説明がある。 実際、センチュリー英和で例文を見れば 「戦争の結果」In the consequence of the warだとか ジーニアス英和だが「結果として戦争になった」have grave consequence (「重大な結果をもたらず」※戦争の婉曲表現)とか、 あと形容詞だが「天候不順の結果の食糧危機」food shortage consequent on bad water とか、 そんな例文ばかりである。 どうやら consequenceは、結果の深刻性を感じてほしい的なニュアンスのようだ。 なお桐原4500および旺文社1900みても、そういうニュアンス説明は無い。 ---- 取得・獲得 acquire acquire は、(技術・知識などを)(努力して)「得る」の意味。(東京書籍4500など) 典型的な例文で、 acquire a new skill 「新しいスキルを身につける」 がある(東京書籍4500。旺文社1400にも近い例文)。 「外国語を習得する」acquire foreign languages という例文もよくある。(桐原4500。センチュリー英和aquireの項目) 辞書にはよくaquireの用法で「(知識などを)身につける」とあるが、しかし語学のようなレベルの「知識」である。 acquire には「習得」以外の用法もあって、 努力して大金や土地などを「獲得する」ことも acquire というが、単語集には例文がないので、説明を省略。桐原の単語集に「(努力して)獲得する」とだけ説明してあって、技術の習得の話をしてないのは、土地などの獲得を意識したものだろう。 ---- 「異国風」 exotic 形容詞 exotic (イグザティック)は、通例では、欧米人の目からみて「異国風」という意味であり(旺文社)、けっして単に異国風なだけでなく、加えて、めずらしくて面白かったり興味をひかれる性質のことである(ジーニアス、センチュリー)。 具体的にいうと、日本国内で言うなら、京都などの寺社は exotic だろう(特に出典は無い)。日本に存在していても、東京の高層ビル群などは exotic には写らないだろう。 日本語でもローマ字読みで「エキゾチック」と言う。日本でも、よく文学評論とか芸術評論とかで使われる単語なので、覚えておきたい。もっとも日本で「エキゾチック」と言う場合、東南アジアや中東やアフリカなどの観光的な光景なので、英語とは微妙にニュアンスが違うが。 さて英語では、動物や植物が「外来種」や「外国産」などの場合も exotic という。農産物だけでなく、言葉が外国由来の場合も exotic という。 旺文社の単語集で、動物園の例で exotic と言っているのは、そういうニュアンスもあるだろう。 桐原と東京書籍の単語集では、exotic が見当たらない。 辞書によると、「外国の」・「外国人」という意味もあるとのこと。言葉が外国由来の場合も exotic というので、それと関連づけて「外国人」なども覚えよう。 ---- 広さ broad, vast broad は、幅が「広い」。 典型的な例文が 「(道幅の)広い通り」 a broad street である(東京書籍4500および桐原4500)。 幅広い知識 a broad knowledge とか(ジーニアス)、「幅広い趣味」 a broad range of hobby とか(東京書籍4500)のように、物体以外の知的興味の広範さにもbroadを使う。 インターネットのブロードバンド broadband のブロードと同じ単語(東京書籍4500)。 vastは、面積が「広大な」である(東京書籍4500)。だが実際はセンチュリー英和では、ビル(建築物)や宇宙などもvastだとする例文を提示している。 broad の対義語は narrow 「狭い」。 体積が大きいのは huge 「巨大な」。(桐原4500。ジーニアス英和) なお、「体積」は英語で volume である(旺文社1400、桐原4500)。volumeの意味は、「体積。容積。音のボリューム。本などの一巻。」の意味である。 turn the volume up で「音のボリュームを上げる」である(旺文社、東京)。 「音量を下げる」なら turn the volume down である(東京)。 コンテナの「容積」とかも、volume である(旺文社)。 the volume of the container 「コンテナの容積」である。 科学や工業などの「容積」「体積」でなくとも、たとえば「交通量」the volume of the traffic とか(東京書籍)、「ごみの量」the volume of garbage とかにも volume は使われる。 ---- 娯楽 amuse , entertain センチュリー英和によれば amuse は笑わせる事などのような意味での「楽しませる」。 entertain は、知的な面白さに重点がある。 entertain でよくある例文が、話や音楽で聴衆を楽しませる系の例文(東京書籍4500およびセンチュリー英和)。 たとえば entertain the audience で「聴衆を楽しませる」(東京書籍)。 また、熟語 entertain A with B で「AをBで楽しませる」。 センチュリー英和によれば Now let me entertain you with music. で「それでは音楽でお楽しみください」。 entertain には、自宅で客を「もてなす」の意味もある。 よくある例文が、ホームパーティなどで友人をもてなす系。 entertain their friends at their home 「友人をパーティでもてなす」(東京書籍) entertain our friends at a party 「自宅で友人をもてなす」(旺文社1400) ただし、実際の例文を見ると、あまり違いは明確ではない。 名詞形のamusement もentertainment も、それぞれ「娯楽」の意味で使われる。 ---- 殺害 murder , kill murder (マーダー)は「殺害する」の意味の動詞、および名詞としての用法では「殺人」一般の意味である。「殺人犯」はスペルが murderer (マーダラー)であり、スペルが微妙に違う。混同しないように。 「殺人未遂」は an attempt murder である(東京4500)。 「殺人事件」は a case of murder である。 なお、attempt は、困難なことを「試みる」という意味の動詞および名詞(東京書籍)。ジーニアスは、入念な計画と実施の必要な試みが attempt だと説明している。 名詞としての attempt は「試み」などと訳す。 典型的な例文で、 attempt to escape 「逃げようと試みる」 がある(東京書籍3000、桐原4500)。 脱走計画だとかそんなのだけでなく、ジーニアスいわく、エベレスト登頂の「試み」でも attempt とのこと。 90年代、かつて英語単語集に「massacre」(マサカ)という「大虐殺する」の意味の単語がよく載っていが、現代の単語州には無い。「まさか、人を殺すとは!?」という語呂合わせでよく紹介されてたものである。昔の単語集には、ちょくちょくコラム的にゴロ合わせなどが紹介されていた。 英和辞典(ジーニアス、センチュリー)で確認したところ、massacre に「大虐殺」の意味はあるが、一個人の「殺害する」のような意味は紹介されていない。語呂が不正確である。 しかし、近年に「虐殺」でよく目にするのは genocide である。ルワンダ虐殺とか、歴史的に名前が残っている事件の虐殺は genocide が普通であろう。検定教科書でもルワンダの虐殺について genocide という表記を行っている<ref>高等学校学外国語科用『CROWN English Expression III New Edition』、三省堂、2018(平成30)年2月28日 文部科学省検定済、2022(令和4)年3月30日 発行、P75 </ref>。 kill や killerとの違いは、killは人間以外のものにも使う。人だけでなく、動物や植物、虫、植物なども、それらを殺したり、あるいはそれらに殺されたりする場合に、killである。 たとえば「魚を殺す」 kill fish である(東京書籍1800)。 それどころか、交通事故などで「死ぬ」場合も kill である。 be killed in ~(戦争や事故など)で「~で死ぬ」の意味。典型的な例文が「大勢の人がその戦争で死んだ。」 Many people are killed in the war. である。(桐原3000と旺文社1200に似た例文あり) killer については単語集にはないが、名詞として「殺人犯」や「殺すもの」の意味のほかにも、形容詞として「致命的な」の意味もあり、たとえば「致死的な病気」 a killer disease などの例文が典型的。 ---- 奪う・盗むなど 奪う deprive wikiオリジナルの例文だが、 The war deprived the children of the liberty. 「戦争が子供たちから自由を奪った。」 のように言う。 桐原4500に「戦争が、この子供たちからふつうの家庭生活を奪った。」 The war deprived these children of a normal home life. とある。 旺文社1900では「軍隊が国民から自由を奪った。」 The military deprived the citizen of their liberty. である。、 自由は別にliberty でなく freedom でもよく、たとえば東京書籍4500では、 「多くの子供たちが自由を奪われている」 A lot of children are deprived their freedom. とある。 熟語 be deprived of~ で「~を奪われている」である(東京書籍4500)。 また、deprive A(人) of B で「A(人)からBを奪う」である(旺文社1900。桐原4500)。 盗む rob , steal 動詞 rob は、ふつう、強盗とか 引ったくり とかスリに使う。スリかと思われる例文については、たとえば旺文社1900にある(電車で女性から財布を奪う例文)。 rob A(人) of B で「A(人)からBを奪う」である(桐原4500。東京書籍4500)。 東京書籍に典型的な例文「彼らは銀行強盗をした。」 They robbed the bank. である。 派生語として、「強盗」 robber がある。「強盗事件」は robbery である(桐原4500。東京書籍4500)。 スペルの似ている rid という名詞・動詞があるが、「取り除く」の意味である。 熟語で get rid of ~ で「~を取り除く」である。 rob と rid は意味がまったく違うので、混同しないように注意。 なお、こっそりと者を盗む「泥棒」はthief (シーフ)である(桐原4500)。桐原3000を読めば、こっそり盗む者がthief であるし、ジーニアス英和の thief の項目にもそう書いてある。 なお、複数形は thieves である。ナイフの複数形の活用と同様。さすがにthiefの複数形を筆記で入試に出すのは瑣末すぎるので出題されないだろうが、まあ参考に。 こっそり「盗む」は steal である。桐原3000を読めば、stealの意味は「こっそりと」盗む、と書いてある。 なお、スペルの似ているsteel は「鋼」(はがね)。 さて、「盗む」stealの活用は、 steal - stole (過去形)- stolen (過去分詞) である。 東京書籍4500の例文「泥棒が私のコンピュータを盗んだ。」 A thief stole my computer. が典型的な例文であろう。 主語が被害者の場合、have ~ stolen になり、「~を盗まれる」の意味である。 典型的な例文 「私は自転車を盗まれた。」 I had my bicycle stolen. がある。東京書籍4500と旺文社1400に、ほぼ同じ例文がある。 腕時計が盗まれるのも典型的で、センチュリー英和の桐原3000がそうであり、 「私は腕時計を盗まれた。」 I had my watch stolen. である。 なお、ジーニアスにあるが、バーグラー burglar は「押し込みの夜盗」。センチュリ-によると、burglar は「(押し入り)強盗」。さすがにここまでは入試に出ないだろう。念のため桐原4500・5500と東京書籍4500を読んだが、もちろんバーグラー burglar は無い。 ---- 気づく notice, realize, recognize, perceive 「きびしい」 harsh, strict, severe, rigid realize は、和訳では「気づく」などと訳される場合もあるが、どちらかというと realize の意味は「認識を改める」である。 典型的な例文で、「彼は自身の過ちに気づいた。」 He realized his mistake. みたいなのがある。 いっぽう、notice は単に、物事が目について「気づいた」という意味である。 なお、realize は英国では realise である。<!-- PC設定によっては realise でオートコレクト発動するが、これはイギリス英語をアメリカ英語では読み取れないため。 --> なお、realize には(計画や夢などを)「実現する」という、まったく別の意味の用法もある。 たとえば「私の夢を実現する」なら realize my dream である(東京書籍4500)。あるいは realize my ambition である(旺文社1900)。 リアリティ reality という単語があるが、日本では小説や英語など創作物などの迫真性などのことをいうが、英語でもそのような創作物の評価における reality の用法はあるが(センチュリー英和で確認)、しかしもっと一般に「警官は彼が述べたことが真実かどうか疑った。」のような文章における「真実性」にも reality が使われる(センチュリー永和で確認)。 reality はけっして創作物に限った表現ではない。 旺文社1900では reality の意味を「現実(性)」としている。 実際、ジーニアス英和を確認すれば、そういう用法もあり、「人生のきびしい現実」みたいな例文でrality をジーニアスは使っている。 旺文社1900にも、harsh の項目で、a harsh reality 「厳しい現実」を紹介している。 なお、real と true の違いで、 true は主に話が「本当の」という意味で使う(東京書籍3000)。 いっぽう、real には、材質などが「本物の」という意味がある。 だから、real money 「本物のお金」とか、real diamond (本物のダイアモンド)などで使われる。 harsh「きびしい」(発音は「ハーシュ」)も、単語集に普通に書いてある。 気候が「きびしい」とか、批判や対応が「きびしい」などのことを harsh という。 東京書籍4500に a harsh winter 「寒さのきびしい冬」という例文がある。 旺文社1900に、harsh environment 「きびしい環境」と言う例文がある。 (桐原4500語レベルではなく、)桐原3000いわく、天候の場合は severe(シビア) でも「きびしい」を表現できる。東京書籍4500で確認したところ、批判の過酷な場合の「きびしい」でも severe を使うこともある。 harsh と severe のニュアンスの違いについては、特に書かれていない。 なお、規則などが厳格で「きびしい」と言いたい場合は strict である。 strict には、説明などが「厳密な」の意味もある。高校の分詞構文の単元で、 「厳密に言えば」 strictly speaking, などを習うだろう。 ほか、形容詞 rigid (リジッド)でも「厳格な」を言える。単語集(旺文社1900、東京書籍4500、桐原5500)には、この厳格の用例が書いてある。 だが、それよりも物理学の「剛体」が rigid body として覚えたほうがいい。ジーニアスに、rigid は「剛体の」だと書いてある。 単に、「変形しづらい」みたいな意味での「固い」「堅い」のような意味が rigid である。 ジーニアスには、「変形しやすい」flexible の対義語であると紹介している。 規則の融通がきかないのが rigid だと、ジーニアスに書いてある。そういう意味である。 ほか、rigid には「顔がこわばった」「手足がこわばった」などの意味もある。 なお、rigid は発音注意の単語(旺文社)。 ほか、名詞形 rigidity 「厳格」「硬直」などの意味がある(旺文社、桐原5500、ジーニアス、センチュリー)。桐原だと「硬直」の意味が書いてないが、ジーニアスとセンチュリーの rigidity にしっかりと「硬直」が書いてある。 頑固オヤジみたいに「頑固な」「頑固である」と言いたい場合は stubborn (スタボーン)である(桐原、旺文社)。東京書籍は紹介してない。単語集にはないが、辞書で典型的な、「断固とした拒否(拒絶)」a stubborn refusal がある(ジーニアス、センチュリー)。そのほか、stubborn には軍隊などの(または軍隊などへの)抵抗が「不屈(ふくつ)の」という意味もある(ジーニアス)。 (厳格ではなく)「厳粛な」と言いたい場合は solemn だが(桐原5500)、あまり平易な例文が無い。 法律的な宣誓などが厳粛なことや、音楽などが荘厳なことまで、 solemn で表現できる(ジ-ニアス、センチュリー)。 「誓う」という意味の動詞 pledges(プレッジ)も、単なる約束 promise とは違い、厳粛 solemn に約束することであり、たとえば外交などの約束で使われる(旺文社1900の例文もそう、ジー二アスにもそういう例文あり)。その他、公約などで pledge 「約束する」を使う。または名詞として pledge には「公約」の意味もある。 ※ ほか、批評が低評価で「厳しい」は damning (ダムニング)だが(センチュリー)、範囲外。 さて、virtual の話題。 ジーニアスを見れば、「仮想現実」 a virtual reality などの例文もある。 旺文社1900を見ると virtualの項目で、副詞 virtually 「事実上の」などもあるが、例文はない。東京書籍4500および桐原4500には例文は無い。桐原5500に副詞 virtually の例文あり、早大の過去問。 なお、桐原5500のviatually の項目いわく、「実質的には(≒practically)」「ほとんど(≒almost, as good as)」である。 念のため桐原3000および東京書籍3000を見たが、virtual などの紹介なし。 余談だが、昨今、日本の芸能界では「リアリティ・ショー」などが問題になっているが、しかし英和辞典で見ると該当する単語は reality TV である(ジーニアス英和、センチュリー英和、の両方で確認)。 recognize は「気づく」などと訳される場合もあるが、どちらかというとrecognizeは「見分けがつく」という意味である。 「足音でジムだと気づいた」とか(ジーニアス英和)、「帽子でジェーンだと気づいた」(センチュリー英和)とか、そういうのがrecgnizeである。 センチュリーから例文を抜粋すると、 I recognized Jane by ~ で、「~でジェーンだと気づいた」 のようになる。 一応、recognize には、新政権の「承認」などの意味もある。 辞書によくあるのは、新政権やイスラエルなどが周辺諸国から承認 recognize を拒まれるという内容の例文。 自分の間違いを認めたり認めないのも recognize である。 ジーニアスの例文では間違いを認め、 「彼は自分の間違いを認めた」He recognized that he was wrong. である。 センチュリーの例文では間違いを認めず、 「彼は自分の間違いをどうしても認めようとしなかった。」 He wouldn't recognize his mistake. である。 桐原4500ではrecognize を「認識する」、旺文社1900ではrecognizeを「識別する」とあるが、上述のようなそういう意味である。 perceive 「気づく」について。 名詞形 perception が「知覚」の意味である。この名詞形を覚えるべきである。 「知覚」とは、たとえば桐原のperceive の例文に「ネコは色を知覚することができない」とあるように、そういう意味である。 旺文社と東京書籍は「気づく」の意味の perceive 例文を紹介しているが、桐原は「知覚する」の perceive 例文を紹介するスタンスである。 perception については「認識」の意味もあり、桐原・旺文社にも書いてあるが、しかし「知覚」を覚えれば連想できるだろう。一方、認識から知覚を連想するのは難しいだろう。東京書籍では、perceptionの「認識」は紹介しておらず、「知覚」だけしか紹介していない。このように、知覚のほうが、この語 perception の本質であろう。 * cognitive 「認知の」 cognitive という形容詞があり、旺文社では「認知の」と紹介され、東京書籍では「認識の」「認知の」と紹介されるが、しかし辞書を見ても説明が少なく、よく分からない。桐原に至っては、cognitiveを紹介していない(桐原5500,桐原4500,桐原3000で確認)。 東京書籍でも、巻末で解説なしで、単語と例文だけの紹介である。しかし、旺文社1900での番号は 279/1900 と、かなり前半のほうである。 旺文社1900いわく「脳の認知機能」 the cognitive function of the brain 東京書籍4500いわく「認知能力」cognitive ability らしい。 どうやら、cognitive は心理学または脳科学などの専門用語っぽいニュアンスのようだが、しかし英和辞典では確認できなかった(ジーニアス英和とセンチュリー英和を見た上で)。 旺文社いわく、「軽度認知障害」が、mild cognitive impairment (MCI)とのこと。 ---- 過酷な terrible, severe, harsh ひどい terrible, awful terrible (テリブル)は翻訳の都合でときには「過酷な」と訳される場合もあるが(ジーニアス)、たとえば暑さがterribleなら「過酷な暑さ」と訳される場合もあるが、 しかし、very bad くらいが terrible のニュアンスである(ジーニアス)。 なので、 terrible は(程度が)「ひどい」と覚えるべきである。 実際、東京書籍4500も桐原3000も、 terrible の意味を「ひどい」としている。 東京書籍3000は「ひどい体験」をterrible な体験としている(著作権のため、本ページでは「体験」は和訳せず)。 こういうふうに使う。 ほか、副詞 terribly は、 たとえば 「とても疲れたよ」 I'm terribly tired. のように(ジーニアスに同じ例文)、強調するのに使う。 実はよい方向を強調するのにも terribly は使う(ジーニアス、センチュリー)。 (著作権のため、本ページでは例文は紹介せず) terrible は語そのものにveryのような強調の意味を含むので、terribleをveryで修飾できない。 同様に、delicious(とてもおいしい)、enormous(とても大きい)、huge(巨大な)、marvelous(すばらしい)、terrible(ひどい)、tremendous(ものすごい)、などの形容詞はveryでは修飾できない。これらの語を修飾するには、reallyやcompletelyなどを使う 名詞形 terror (テラー)は「恐怖」「テロ行為」という意味がある。 なので、terrible には「恐怖の」という意味もあるが、この場合は horrible (ホリブル)で表現するほうが誤解のおそれなく無難だろう。 名詞 territory (テリトリー)「領土」「なわばり」も覚えておきたい(桐原4500、東京書籍4500)。三省堂 CROWN I を見ると、もう高校1年で territory を教えている。動物などの「なわばり」も territory で表せる。 なお、「国境」は単に border で通じる。 American border みたいに、国名の形容詞のあとに border を言えば、それでアメリカ国境の意味になる。 severe と harsh は他の節で紹介したので省略。 「過酷な」と言いたい場合、まずは severe (シビア)の使用を検討するのがよいだろう。 痛みが「ひどい」場合は severe を使うほうが無難だろう。 a severe pain 「ひどい痛み」(ジーニアス和英) である。 形容詞 awful (オーフル)「ひどい」は、悪い意味だけでなく、よい意味でも使われる(センチュリーで確認)。桐原3000語レベル、東京書籍4500語レベル。 よって、awful は terrible とほぼ同じ意味。 もともと名詞 awe が「畏敬」(いけい)の意味である。 だが、awful は、なんだか口語的に「ひどい」「すごい」「おそろしい」みたいな意味になってしまっている。 ---- 全体の whole,total ---- 思う think, suppose think は「思う」と中学で習うが、辞書で調べてみると、意外とthinkは確信の度合いが高い。 センチュリー英和なども解説しているが、「推測する」といいたい場合は、think ではなく suppose を使うのが適切である。 つまり、「推測する」は suppose である。 推測よりも、やや確信の度合いが高い程度の場合に think を使うのが適切である。 名詞 supposition で「仮定」の意味。 まったく意味の違う用法だが、熟語 be supposed to ''do'' で、「~(do)することになっている」の意味。 よくある例文は、「彼は7時にここに来ることになっていた。」の類。 He was supposed to come here at 7 o'clock. である。だが、この過去形での「was supposed 」の文は、実際には彼は7時に来なかったことを含意している(ジーニアス英和より)。東京書籍4500に似たような例文があるが、しかし東京書籍4500では含意の件には触れていない。 センチュリー英和によると、be supposed to do は、「(慣習や法律などによって)...するものと考えられている。」とあるので、表面的な言い回しこそ控えめだが、実際の意図はやや強制的・義務的な主張のニュアンスが高そうである。 否定形 be not supposed to do にいたっては「~してはいけない」の意味である(東京書籍4500)。 ---- 証明・証拠 証明・証拠 proof ,demonstration evidence 証拠 役所などの証明書 certificate (裁判所などで)証言する testify (※高校必修範囲外だと思ったら、三省堂 CROWN I にあった) proof には、「証明」「証拠」の2つの意味があるが、なるべく「証明」のほうで覚えるべきである。 なぜなら、数学の「証明」のことを proof というからである(ジーニアスで確認)。 私たちは、高校卒業後もなるべく教育レベルの高い外国人の英文を読むべきであろう。そして教育レベルの高い人ならば、外国の中学高校の数学は習得しているはずなので、よって外国人の彼らには証明を proof という習慣がついているはずである。外国の中学高校レベルの数学の用語も知らない頭の悪い外国人の英文なぞ、読むに値しない。 なお、動詞 prove は「証明する」の意味である。 evidence が、証拠のひとつひとつのことである。ジーニアスによれば、proofは「evidence を積み重ねた最終的な証拠」のことであるとされる。 だが、それよりも、proofは「証明」であると覚える方がよいだろう。 また、少なくとも日本の学問の世界では、個々の実験事実や個別の統計のような、個々の証拠のことは evidence というのが普通である。英語でどういうのか知らないが。 桐原の単語集にあるが、裁判などの「証拠」も「証言」も evidence である。英語では、「証言」と「証拠」を分けずに evidence という。 単語集にはないが、どうしても発言による「証言」であることを強調したい場合は verbal evidence という(ジーニアス英和で確認)。 ジーニアス英和辞典で確認すれば、「証人」すらも evidence である。 prove to be ~ で「~だと分かる。」「~となる。」「~と判明する。」である。 辞書の例文が、事業などが prove to be a success 「成功となる」またはprove to be successful 「成功となる」である(ジーニアスとセンチュリーの両方)。東京書籍4500の例文もこの類。 桐原4500だけ He was proved to be innocent 「彼は無実だと判明した」である。 旺文社1900には、 prove to be ~ の例文は無い。 実はデモンストレーション demonstration 「証明」の意味がある。 一般的には、英語では、行動によって意志を表したり、あるいは、たとえば新製品の実演販売みたいに実演などによって説明すること等を demonstration という。 集団などのデモ行進も、同じ demonstration である。 センチュリーの例文だが、戦争反対のデモなら demonstration against the war である。 一般に、demonstration against ~で「~反対のデモ」である。 だから東京書籍にある「新空港に反対するデモ」なら demonstration against the new airport である。 能力の証明なども demonstrate であり、東京書籍に紹介されている。 旺文社1900でしか説明していないが、感情をあらわにすることも demonstrate である。だが、感情のデモは例文もないので、深入りする必要はないだろう。 動詞形は demonstrate である。 ジーニアス和英を見ると、実はdemonstraite やdemonstration には「論証する」などの意味もあり、旺文社1900が紹介しているが、しかし桐原も東京書籍も「論証する」の意味は紹介していない。 センチュリーは、証明についてのdemonstration の意味は、論証ではなく「実証する」であると説明している。 ジーニアスの例文を見ると、「哲学的論理」の論証の例文である。 demonstrate が「論証する」と言っても、どうやら、数学のような論証ではないようだ。 ---- 仮定や論理的思考など 仮定する assume, suppose 当然と思う assume 仮定 assumption, supposition 推測 supposition 「推論する」 infer 仮説 hypothesis 動詞 assume は、「仮定する」「想定する」「決め付ける」などの意味。 共通するニュアンスは、ジーニアスいわく、明確な証拠がなくても想定すること。 名詞形が assumption である。 assume that ~ で「~だと思い込む」(桐原)または「~を当然のことだと思う」(旺文社)である。 たとえば、旺文社の例文「私たちは日本の列車がいつも定刻どおりに運行することを当然と思う」が assume that の例である。 ジーイアスによると、三段論法の「前提」などで、assumption が使われるとのこと。 このため論理的な議論ではassume や assumption が使われると思われるので、覚えておきたい単語である。 しかし、suppose にも「仮定する」の意味がある。 だが名詞形 supposition が「推測」の意味である。なので、suppose はどちらかというと「推測する」のニュアンスが強い。 桐原の単語集にはsuppose は「推測する」の意味しか書いてないが(東京書籍に至っては「思う」しかない)、しかしセンチュリーを見ればsupposeの意味として「推測する」のほかにも「仮定する」も書いてあるのが実態である。なお、旺文社1900でだけ、例文なしで「仮定する」の意味も紹介してえる。 「仮説」と「仮定」は違う。 「仮定」とは、たとえば「仮に○○だとしたら、□□は××になるはずだ」の前半「仮に○○だとしたら」のこと。仮に定めるので「仮定」というわけである。 一方、「仮説」とは、「~の原因は、□□が××だからだ。なぜならば(以下略)」という原因をとなえる主張のうち、まだ真実かどうかの評価が確定してない主張のこと。 「仮説」は英語で hypothesis である。 なので「仮説」は証明あるいは検証するためのものである。 「仮説を証明する」は prove a hypothesis である(旺文社、ジーニアス)。 ただし、実際には派生的に hypothesis でも「仮定」の意味もある(ジーニアス、センチュリー出確認)。 だが、単語集では hypothesis の「仮定」の用法は紹介されていない。あまり知的な用法だとは思われていないのだろう。「仮定」を言いたいなら assumption で済むし、高度な学問をするなら「仮定」と「仮説」は分離すべきであるし。 infer という動詞があり、事実や根拠などをもとに「推論する」という単語である。 infer that ◯◯(文節) from ~ で「~を根拠に◯◯だと推論する」という意味である。 桐原5500も旺文社も、infer の例文では from で根拠を提示している。 そもそも日本語の「推論する」というのは、事実や根拠をもとに推理・推測することだと、広辞苑(1992年)にも書いてある。 広辞苑の例文にも「事実から推論する。」とある。 ともかく、このように「推論」は根拠とともに使うべき単語である。 infer で推論する内容は、べつに学問的な内容である必要はなく、たとえば「彼女の沈黙から怒っているのだと察した」とか(ジーニアス)、そういうのでも構わない。 infer にはこのほか、「暗示する」(= imply )という単語もあるが、imply という「暗示する」の意味の単語で代用できるので、説明を省略する。 名詞形は inference 「推論」「推理」であり(旺文社)、推論するという行為(旺文社、ジーニアス)または推論の結果によって得られた結論のことを言う(センチュリー)。 by inference で「推論によって」(旺文社)、「推測によって」(センチュリー)である。 ---- 扱う deal with ~, treat treat は普通、厚遇する「扱う」の場合に使う。つまり、treatは「厚遇する」である。 ただし、和訳の都合で、「厚遇する」だと表現が硬くなる場合によく「扱う」と訳される。 だが、「扱う」で覚えてしまうと類似語とのニュアンスの違いが覚えづらくなってしまうので、treat は「厚遇する」で覚えよう。 治療の場合にも treat を使う。 dea with ~は、「~を処理する」「~を契約する」などの意味である。 典型的な例文が「苦情を処理する」 deal with complaints である(東京書籍4500。旺文社1900)。 ジーニアスで確認したところ、 deal with にも厚遇の用法もあるが、本ページでは触れないとする。 deal は「分配する」「配る」の意味である(東京書籍4500でも紹介)。 トランプなどの札を「配る」のが dealである。 だからトランプの札を配る人をディーラー dealer とも言う。 deal には「商取引」の意味もある。だから、ある種の商品の「販売人」「販売業者」のことを dealer とも言う。桐原4500が「販売業者」としている。ジーニアスは「販売人」。 同じスペル deal で 「量」の意味がある。 a good deal of ~ で「かなり多量の~」である(桐原4500)。 a great deal of ~ で「かなり多量の~」である(桐原4500)。東京書籍4500では、 a great deal of ~ で「非常にたくさんの~」としており、数えられない名詞に用いるとしている。 桐原の例文では、 a good deal of snow 「かなり多量の雪」、東京書籍の例文では a great deal of time 「たくさんの時間」、と訳している。 ---- 分配・配分 distribute, deal 食料や出版物などを分配する場合、普通は distribute を使う(東京書籍4500)。東京書籍では「出版物」では「印刷物」としているが(例文でリーフレット leaflet を想定)、しかしトランプの札も印刷物であるので、このページでは「出版物」と表現した。 典型的な例文が distribute food to the ~で「~に食料を配る」である。 辞書によっては「金を配る」場合もあり、その場合は distribute money to the poor 「まずしい人に金を配る」である。(センチュリーを参考) 「子供たちにリーフレットを配る」なら、 distribute leaflets to the children となろうか(wikiオリジナル。東京書籍およびジーニアスの例文を参考に組み合わせ)。 東京書籍4500だけでなくセンチュリー英和でもリーフレット leaflets を配る例文である。 単語集にはないが、電気屋などで買えるテレビ信号などの分配器をよくよく見ると、ディストリビューターと言ったりしている。実際、ジーニアスで分配器 distributor である。 単語集にはないが、数学でいう確率分布などの「分布」も distribution である。しかし高校生に「確率分布」と言って通じづらい。 ジーニアスによれば、生物学などでの植物の「分布」も distribution である。高校生は植物のほうが覚えやすいだろう。 deal については「扱う」の項目で説明したとおり。トランプの札などを配ったりするのが deal である。 ---- 比例 ratio, rate, proportion 3:2とか 4:7 とか、とにかく個別の比や比率のことは ratio (レイショウ)という。 そういった個別の比ではなく、たとえば数学で「AとBとは比例関係にある」のような「比例関係にある」のことを形容詞で proportional と言う。 名詞 proportion は比例関係。 そういうのではなく、たとえば利子率など何かの比率のことは rate (レイト)という。 なお、利子率や金利は interest rate という。ここでいうinterest は、「興味」の interest と同じスペル。 桐原4500によると、「失業率」は the unemplotment rate である。 東京書籍4500によると、「出生率」は the birth rate である。 proportion には、全体の中で占める「割合」という意味もある。 桐原4500および旺文社1400に熟語 at any rate 「とにかく」が紹介されているが、例文は無い。 実際には ratio にも比例関係の意味があったり、proportion で個別の比に言及することもあるが、ニュアンス的には上記の感じのはず。 例文は省略。著作権的な問題をクリアできそうな典型的な例文が見つからなかったので、読者が単語集などで読者が自身で調べてほしい。 * 合理的 rational, 「合理的な」は英語で rational である。これ単独だと覚えづらいが、実は比率 ratio と冒頭のスペルが同じだし、発音も「レイショウ」と「レショナル」でほぼ同じである。 なお、数学の「有理数」も rational number であり、同じスペルの rational である。 だからか和訳も気をきかしてか、有「理」数となっているわけであろう。(ここら辺の話題は、数学英語の専門書に書いてある、有名な話である。)明治時代あたりの数学者に感謝しよう。 そして、「有理数」とは、整数の比例で表される数のことである。(数学的な厳密性は置いておく。) つまり欧米人の数学のできる人は、「合理的な」=「整数の比例の」が同じ単語であると認識しているわけである。 こうやって考えると、「比例」ratioさえ知っておけば、そこから「合理的」 rational も普通に覚えられる。 なお、「非合理な」は irrational である。 さて、rational でよくある例文は、「合理的な決断」a rational decision である。東京書籍4500と桐原4500の両方に、「合理的な決断」 a rational decision が書かれている。 ついでに、「自然数」は a natural number である。単語集には「自然数」は書かれていないが。 「実数」は a real number である。 「自然数」も「実数」も、英語または対応するドイツ語あたりを、日本語に直訳しただけである。 なお、「論理的な」は logical (ロジカル)である。「論理」が logic なので、それから覚えよう。 reasonable (リースナブル)と言う形容詞には、「理にかなった」という意味があるが、しかし「値段が手ごろな」という意味もあるので、使いどころが難しそうである。 ---- 出席 attend, present 形容詞 present は、「出席している」の意味もあるが、名詞形 presence に「存在感」の意味がある。 attend が、会議や授業などに「出席する」である。 典型的な例文が、attend the meeting 「会議に出席する」である(センチュリー、東京書籍4500)。 だが、attend school で、毎日規則的に「学校に通っている」の意味である(センチュリー、東京書籍4500)。 学校や教会に規則的に通うのは attend を使う。「教会に通う」の例文なら attend church である(センチュリー)。 授業の出席のattendの例文が、辞書でも単語集でも見つからない。 授業の出席については、present を使うのが安全だろう。 なので、辞書にはないが、どちらかというとattend は、出席するために「~に出ている」の意味ぐらいで解釈したほうがよいかもしれない。 名詞 attention が「注意」の意味である。attention が「注意」なのも、「注意を向かわせる」みたいな意味ぐらいで解釈したほうが、出席の「~に出ている」くらい 旺文社1900いわく、pay attention to ~で「~に注意を払う」である(なお、ここでのtoは(不定詞ではなく)前置詞の用法)。桐原によれば、attend to ~ともいう(toは前置詞としての用法)。 あまり attend と present の概念の違いがハッキリしていない。実務の際は、勤務先の業界の慣習などに任せて使い分けのが良いだろう。 ---- 寄付 donate, contribute 単語集を見てたら、「勘弁してほしいなあ」とあきれたが、contributeには「寄付」の意味もあるが、現代のIT社会では普通はcontributeは「貢献する」の意味である。 「寄付する」はdonateである。 しかも、単語集には、contributeの項目を見ても、donateについては書いてない。donateの項目を見ても、contributeについては書いてない。 たとえばwebサーバなどのよく使われるOSのLinux(リナックス)の場合、寄付以外にも多くの協力活動があって(テストに参加するとか)、そういう諸々の協力活動の全体のことを contribute と言っているのが普通である。 そして、その協力活動の中のひとつに寄付もあって、その寄付が donate という言い回しである。 実際、debian(デビアン) というLinuxの一種のwebサイトはそうである<ref>[https://www.debian.org/intro/help Debian -- Contribute: How you can help Debian] 2022年5月1日に確認.</ref>。 ページ"Contribute: How you can help Debian"の中に、下記のようにいくつも項目があって、 <pre> Contribute: How you can help Debian Coding and Maintaining Packages Testing and Bug Squashing Writing Documentation and Tagging Packages Translating and Localizing Helping other Users Organizing Events Donate Money, Hardware, or Bandwidth Use Debian How your Organization can support Debian </pre> その項目のひとつとして"Donate Money, Hardware, or Bandwidth"があるという構成である。 もっとも、wikipediaのサーバを動かしているOSはDebianではなく Ubuntu(ウブントゥ)というイギリス製OSであるのだが、このUbunutの本家イギリス語版のwebサイトのページで寄付のページには contribute と書いてあるので<ref>[https://ubuntu.com/download/desktop/thank-you Thank you for your contribution | Ubuntu]</ref>、contributeで寄付を意味しても間違いではない。 よく、医療で「血液ドナー」とか何かの提供者のことをドナーdonorというが(旺文社1900)、これもdonateの派生である。 なお、donor の発音はドウナーである。旺文社1900では発音の注意をしている。 なお、ジーニアスとセンチュリーで確認したところ、blood donor とは単なる「献血者」のこと。クルマの「献血車」にあらず。 ジーニアス英和によれば、ドナーカード donor card も英語でそのまま通じる。 なお、桐原3000の donor 項目いわく、「血液バンク」は a blood bank とのこと(桐原3000)。 なお、名詞形は donation 「寄付」である。 単語集によると、make a donation で「寄付する」である(東京書籍、桐原)。 make a donation to our school で「学校に寄付する」。 make a donation to church で「教会に寄付する」 donate で使う場合、ジーニアス英和に donate a money to Red cross 「赤十字に寄付する」という例文があった。 debianのサイトでも donate a money と言っているように、普通は 「donate a 金または金額」のパターンである。 実際、センチュリー英和では donate $1,000 to a charity 「慈善事業に千ドル寄付する」である。 contribute で金銭を寄付する場合でも同様、 「contribute 金額 to 相手」のパターンである(桐原、東京書籍)。 contributeの単語集が金額の例ばかりであるが、センチュリーによれば a money で寄付してもいい。 センチュリーいわく contribute a lot of money to church 「教会に多額の寄付をする」である。 contribute には、なにか望ましくないことの「一因になる」という意味もあり、たとえば「二酸化炭素は温暖化の一因になる」とか(旺文社)、「砂糖は虫歯の一因になる」とか(センチュリー)、「喫煙がガンの一因になる」とか(ジーニアス)。 良いことの一因になった場合にもcontributeを使うが、ただし和訳の際、普通は「寄与した」と訳すだろう。 ---- 闘争と努力 struggle, strive 努力する endeavor , 不和と摩擦 strife, friction, conflict 紛争 strife, dispute 口論 quarrel, dispute 意見を戦わす dispute, tackle 「努力する」には、struggle と strive と endeavar があるが、高校生はまず struggle を覚えるのが良い。 strive だと、後述のように闘争の意味合いに解釈される可能性がある。 実際、単語集でも、struggle を先に紹介しており、strive はかなり後半で紹介する。 動詞 struggle は「もがく」「あがく」などの意味だが、「努力する」「奮闘する」のような意味もある。 病気や苦痛などから逃れるために「戦う」のような意味もある。 struggle to ~(動詞) で、「~するために努力する」である(東京書籍)。 struggle with ~ で「~と闘う」である。 struggle for ~で「~を求めて闘う」である。ジーニアスによれば、struggle for independence で「独立を求めて闘う」。旺文社によればstruggle for equal right で「平等権を求めて闘う」 名詞も struggle であり、「闘い」「努力」の意味である。 だが、生存競争を a struggle for existence という(旺文社1900にあり。ジーニアス、センチュリーで確認)。 あまり使い分け方ははっきりしないので、慣習に合わせるしかない。 単語集にはないが、権力闘争は a power struggle といったり(ジーニアス)、a struggle for power という(センチュリー)。 endeavor (エンデバー)は動詞で「~しようと努力する」、名詞では「(真剣で継続的な)努力」の意味だが(ジーニアス、センチュリー)、なぜか単語集には、あまり積極的に紹介されてない。endeavor は東京書籍では巻末おくりだし、桐原では5500おくりである。 アメリカの宇宙船の名前でエンデバーというのが昔あったので、特に悪い意味は無いだろう。 しかし、なぜだか、単語集はあまりエンデバーという単語を紹介していない。 動詞として使うときは endeavor to ~(動詞) 「~しようと努力する」 である(東京書籍、桐原、ジーニアス、センチュリー)。 strive という単語があり、これも「努力する」や「闘う」の意味である。桐原だと闘争の意味が書いてないが、東京書籍にきちんとstriveの「奮闘する」が書かれている。 これは比喩的な奮闘ではなく、後述するように名詞形で実際の戦争を扱う。 strive for ~で「~を目指して努力する」または「~を求めて努力する」の意味である。 旺文社1900には動詞 strive の項に、派生の名詞形 strife がスペルと和訳「争い」「不和」だけ紹介されている。 他の単語集には名詞形が書かれていないが、strive には実は派生の名詞形が2つあり、striving と strife である。 辞書にも、strife と strive の関係が書いてないが、明らかにstrife と strive はお互いに派生であろう。少なくとも旺文社1900は 名詞 strife は 動詞 strive の派生だという見解である。辞書のほうが頭悪い。 striving が「努力」の意味。 strife は「紛争」や「不和」など、ぶっそうな意味である。 辞書によると、政治闘争は a political strife である(ジーニアス、センチュリー)。 しかし、ジーニアスによれば、民族紛争などは conflict を使う場合もある。 山川出版の英語版・詳説世界史では自衛隊PKO派遣先の、いわば「紛争地帯」に相当する場所を conflict zone と言っている<ref>橋場弦 ほか監修『WORLD HISTORY for HighScool 英文詳説世界史』、2019年10月15日 第1版 第3刷発行、P.412</ref>。 一方、センチュリーだと、「その二国間には紛争がある。」There is strife between the two countries. とある。 ジーニアスによれば、家族紛争を a family strife という。 dispute には、「紛争」「口論」「議論」「意義を唱える」などの広い意味がある(桐原)。「意義を唱える」は旺文社の解釈。 「議論」を訳す場合でも、「議論を戦わす」のように(東京書籍、センチュリー)、意見の対立に主眼が置かれている。センチュリーにいたっては、感情的な対立があるとのニュアンスがあるとまで述べている。 だからか労働争議を a labor dispute ともいう(ジーニアス、センチュリー)。 いっぽう、単に意見や議論を戦わせるだけなら、動詞 tackle である(センチュリー、桐原)。ジーニアスにいたっては、tackle の意味で「戦う」の言葉は使わず、tackle は意見を「論じ合う」だとしている。 センチュリーは、「賃上げ(on a raise)をボスにかけあう」を動詞 tackle としている。文脈は違うが、旺文社でも「予算」がどうのこうのと、tackle で金を話をしている。 動詞としては tackle には「問題に取り組む」という用法もある(桐原、東京)。 典型的な例文は、 tackle the problem 「その問題に取り組む」 である(桐原、東京書籍)。 なお、tackle は、ラグビーなどの名詞「タックル」、動詞「タックルする」と同じ単語でもある。 肉体的な単なる「闘い」「闘う」は fight とか battle で良いだろう。 「不和」については friction 「摩擦」を使うも言い換えもある。物理学の「摩擦」 friction と同じ単語である。 「静止摩擦」は static friction である(旺文社1900の static 項目)。ジーニアス・センチュリーのstatic 項目では見つからなかったが、たしかに静止摩擦は static friction だたはずである。 なお、「静電気」は static electricity である(旺文社1900、ジーニアス static 項目、センチュリー static 項目)。 さて、friction の話題に戻る。東京書籍4500と桐原4500・5500には、friction が載っていない。旺文社1900にだけ friction がある。 外交の「不和」には、friction を使える(ジーニアス、センチュリー)。というか、英語で「貿易摩擦」を trade friction と言う(旺文社)。ジーニアス英和やセンチュリー英和で貿易摩擦を確認したかったが、見つからなかった。辞書でfriction で調べてもtradeで調べても、ジーニアスとセンチュリーでは見当たらない。 和英のほうでジーニアス和英を調べると、「貿易摩擦」は trade friction または trade conflict というとのこと。 外交の不和で strife を使うと戦争の恐れの高い不和だと誤解されかねないだろうから、貿易摩擦のようなお金の問題では friction で十分だろう。 さて、努力について、 effort という名詞があるが、しかしこれは名詞である。 なのでeffortで「努力する」と言いたい場合、東京書籍やジーニアスによれば make an effort のようになる。意外と難しい。 effort to ~(動詞)で「~するための努力」である。 東京書籍にあるが、make a great effort 「大変な努力をする」のように、great などの形容詞がつくこともある。 ---- 傾向 tendency, trend, inclination 流れ current , flow 「傾向がある」 tend(動詞), inclined (形容詞), ミスなど好ましくないことをする傾向がある be liable to ~ その他、好ましくない傾向がある be prone to ~ センチュリー英和を見ると、trend と tendency の違いが説明されている。 tendencyは、たとえばセンチュリーにある「赤ん坊は空腹になると泣くものだ」とか「弱い母音は消失する傾向がある」のように、本来的に、何かのおきる傾向のあること。 trend は「流行」や現在の「趨勢」(すうせい)や「風潮」などの傾向。ジーニアスを見れば「趨勢」や「風潮」の意味も書いてある。 なお、衣服の流行は fashion である(東京書籍3000、桐原3000)。一応、ジーニアスには、衣服だけでなく文学や芸術の流行も fashion ということもあると書いてあるが、しかしセンチュリーは採用していない。 なお、mode も衣服の「流行」の意味であるが、現代では廃れている表現だとジーニアスはいっているし、桐原と東京書籍の単語集に mode は無い。 しかし、旺文社1900にmode があり、「方式」「形態」などの意味である。後述の「携帯」の誤字ではなく、確かに旺文社1900のmodeの項目に「形態」と書いてある。 旺文社1900の単語集は入試準拠なので、おそらく教科書にはないが入試によくある表現なのだろう。総数1900のうちの844番目にmodeがあった。 旺文社1900のいうmode関連の派生表現のひとつで、携帯電話の「マナーモード」は silent mode である。 ほか、物理学の弦の振動などの「モード」もこの単語だったと思うが、辞書には無いので不明(ジーニアスとセンチュリーの両方とも確認したが見つからなかった)。 さて、tendency の話題に戻る。 さきほど trend は「趨勢」や「風潮」だと言ったが、だがジーニアスによると、現在の株価の傾向などで(トレンド trend ではなく) tendency を用いている例文もあり、実際には使い分けは明確ではない。 tendency の動詞形は tend であり、「傾向がある」の意味。というか、動詞 tend の名詞形が tendency である。 tendの意味も、本来的に "~をする傾向がある" という意味での「傾向がある」である。 tend to ~(動詞)「~する傾向がある」の形でよく使われる。 ほかにも、 tendに「世話をする」という意味もあるが、だがこれは、名詞 tender「やさしさ」の動詞形だとみなすべきだろう。 ややこしいことに、動詞 tender は「提出する」「支払う」の意味である。だが単語集に動詞 tender がないので、無視しよう。 一方、trendについて。 センチュリーによれば、「新しい流行」 a new trend とか使う。 東京書籍に the current trend 「現在の流行」という例文もある。 東京書籍によれば、「最近は小型車が売れている」的な意味の流行も trend である。 また、旺文社によれば、「最近は高齢者には運転をやめさせるのが傾向である」というのも trend である。 旺文社の例文を考えれば、和訳が「傾向」であろうが、内容が最近の風潮なので、trendを使うのが正しいわけだ。 形容詞 trendy 「流行の先端を行く」の意味である。 * 「流れ」 current, flow flow は「流れる」と言う意味の動詞だが、名詞では川などの「流れ」を言う。 current は、「流れている」という意味の形容詞だが、名詞では「海流」や「電流」などの「流れ」も言う。 川も海流も同じ水の流れなのに、なぜか使い分けをするのである。 東京書籍3000でも桐原3000でも、flowの例文で、川の流れを扱っているので、そういう単語だと納得してもらうしかない。 英語というのは、あまり論理的ではなく、慣習などで使い分けが決まっている部分もある。 東京書籍に書いてあるが、気体の流れも液体の流れも flow である。 普通科高校では習わないが、工業高校などで流量計などの機器を扱う際、その流量計を英語で「フローメータ」などという。また、その計器で測定する流れのことは普通は「フロー」flow と読んでいる。 風の流れや川の流れという言い方ではなく、わざわざ「気体」「液体」と東京書籍が言ってるのは、たぶん、そういう流量計などを見越しての表記だろう。 実際、ジーニアスを見てると、「液体・気体の流出量(流入量)」という意味もかかれている。東京書籍はおそらく英和辞典のflowのこういう意味を参考にしたと思われる。 さらっと「流量計」と言ってしまったが、流体力学では流出量も流入量も区別せず、まとめて「流量」(りゅうりょう)と呼び、それ(つまり「流量」)を flow と言うのである。 実際、ジーニアスでは、たとえば人口の「流入」もflow であるし、センチュリーでは(石油らしき)ガロン単位の液体の「流出」もflow である。 そのほか、お金の「流れ」については、経済学ではカレントもフローもどちらとも使う表現なので、深入りしない。 さらに混乱させるが、discharge 「解放する」・「釈放する」、「解雇する」「解任する」の意味の単語(東京書籍の巻末)にも、実は「流れる」の意味がある(ジーニアス)。「アマゾン川が大西洋に注いでいる」という例文で、discharge を使っており、ここでは flow into と同じだと、ジーニアスは言っている。 煙などの排出も discharge であり、いったい流出なのか流入なのか、はっきりしない。 専門用語などで flow と区別したい場合、discharge を使うこともある。 だから、たとえば流体力学で、理論値と実測値との違いの比率のことを discharge coefficient といい、よく「流量係数」とか「流量係数」とか言う。分野によって和訳が違うので、和訳は気にしなくていい。証拠に英語版ウィキペディアの記事 [[:en:w:discharge coefficient]] (流出係数)があります。 あと、discharge には名詞の用法もある(ジーニアス)。東京書籍には動詞の用法「解放する」以下略しか書いてない。 そんなことよりも、「解放」「釈放」の意味を、液体の排出などと関連づけて覚えよう。なんか解き放たれて自由に動ける的なイメージが discharge である。 なお、日本でも、よく、解雇や解任のことを、比喩的に「自由の身」みたいとか「長い夏休み」みたいに言います。なので、そこから派生的に、discharge の複数の意味を把握できます。 洋の東西を問わず、人間の言語センスは似たようなもんです。(あるいは、もしかしたら日本人が英語discharge を真似たのかもしれません。) 「頭脳流出」は a brain drain という(旺文社1900、ジーニアス、センチュリー)。ややダジャレっぽい語感もするので真に受けるわけにはいかないが、drainの基本的な意味は「流出する」である。(なお、このように brain には「脳」の意味のほかにも「頭脳」の意味もある(桐原3000)。) だが drain には、体力などを「消耗させる」という意味もある(旺文社、ジーニアス、センチュリー)。 drain my strength 「体力を消耗させる」 である(センチュリー。ジーニアスに似た例文)。 体力が流出していくイメージか。 台所の「排水口」とかも名詞 drain である。屋内の下水などに向かって流出させる側の台所の排水口が drain である。 その他、排水管が drain である(ジーニアス)。 * 傾向 tend, inclined まず、tend は動詞。 inclined (インクラインド)は形容詞。 なので be inclined to ~(動詞) で「~する傾向がある」 のように使う。inclined to do を使いたい場合、be動詞が必要。 一方、tend は動詞なので、be動詞なしで、 tend to ~(動詞) 「~する傾向がある」 である。名詞形はtendency 「傾向」である。 実は動詞 incline (インクライン)「傾ける」という単語があって、「傾ける」「その気にさせる」の意味である(東京書籍)。 坂(slope)などの物理的な「傾き」やその角度なども 名詞 incline である(ジーニアス)。 桐原は inclined などは紹介していない(桐原4500および桐原5500を確認)。 単語集にはないが、「話を聞こうと耳を傾ける」incline my ear to ~ 、みたいな表現にも incline を使う(センチュリー)。というか、おそらくこの英語表現が先にあって、それに合わせて日本で「傾聴」みたいな表現が生まれた可能性。 また、このように incline には、好意などによって、「関心を向ける」のような意味もある。 このためか、名詞形 inclination (インクリネイション)には「傾向」の意味のほかにも、「好み」の意味もある(旺文社)。 ただし、必ずしも inclination は「好み」とは限らず、たとえば「彼は太りやすい」のような体質や(ジーニアス)、「この車は横滑りしやすい」とか(センチュリー)、そのほか性質や、性向なども inclination である(ジーニアス)。 どちらにせよ、とりあえず inclination の中心的な意味は「傾向」だと覚えておけば問題ないだろう。 単語集にはないが、坂や屋根などの物理的な「傾き」やその傾斜の角度なども inclination という(ジーニアス、センチュリー)。 liable (ライアブル)は、好ましくないことをする傾向や、好ましくない状態になりがちな傾向のある場合に使う(ジーニアス、センチュリーで確認)。なお旺文社では発音注意している。 和訳では liable は単に「~しがちである」と訳す場合があるが(桐原4500、旺文社1900)、「好ましくないことをする傾向」だという条件をしっかりと理解しておこう。、 be liable to ~(動詞の原型)で「~(ミスなどの行動)をしがちである」 のように訳す。 ほか、典型的な例文 be liable to illness 「病気にかかりがちである」(旺文社、ジーニアス) がある。なおこの場合、to が不定詞ではなく名詞に対する前置詞に変わっている。 なお、「ミスをする」make a mistake または make mistakes である。なお、桐原3000およびジーニアスでは、make a mistake 「間違える」と訳している。 なので、ともかく be liable to make mistakes 「ミスをする傾向がある」 である(旺文社)。 形容詞 prone (プロウン)は、望ましくないことについて「~の傾向がある」の意味(ジーニアス、センチュリー)。 病気になりやすいとか、怒りやすいとか、そういうのも prone を使える。例文は辞書を見て(著作権の都合)。 単語集には、なぜか、望ましくないことに使う前提が書かれていない(旺文社、東京書籍の巻末)。 だが、辞書には前提が書かれている。 単語集にある典型的な例文は、 be prone to error 「間違いを起こしやすい」 である(旺文社、東京書籍の巻末)。 to は前置詞でもよく、動名詞 to でもよい。つまり、prone to の後ろにくるのは、名詞 でも 動詞の原型 でも良い。 earthquake-prone 「事故多発地域」の意味である(センチュリー、旺文社)。 ---- mistake と error ジーニアスによると、 mistake は不注意や勘違いによる間違い。 error は、計算の誤りや、裁判の誤審など。 ・・・とのこと。 また、センチュリーいわく 「不注意な間違いをする」make a careless mistake とのこと。 だから mistake は、「勘違い」とか(ジーニアス)、「誤解」「思い違い」とかで(ジーニアス、センチュリー)覚えたほうがいいかもしれない。 mistake を「誤り」「間違い」と訳しても間違いではない(ジーニアス、センチュリー)。そういう訳がジーニアスにもセンチュリーにもある。 ---- 現在の current , present, modern current は、形容詞「現在の」が入試ではよく出るが、しかし名詞では「流れ」の意味である。 海流とか電流とかの流れにcurrentを使う。 東京書籍およびジーニアスが紹介しているが、「暖流」は a warm current である。 ついでにジーニアスが紹介している「寒流」は a cold current である。 current は、まず名詞「流れ」を覚えるべきであり、形容詞「現在の」はその派生として覚えるのが良いだろう。 ジーニアスで調べた語源でも、「走っている」→「流れている」→「現在通用している」というような意味の変遷らしい。 さて、current 関連の名詞として、単語集にはないが、電流の直流 D.C. とは direct current の略である。 交流 A.C. も Alternating current である(ジーニアスで確認)。 通貨はcurency (カレンシー)である。 単語集にはないが、国際的に安全な通貨のことを経済学ではハードカレンシーといい hard currency と書く。) 「現在の」を意味する形容詞には、current のほかにも present がある。 present は、たとえば英文法の「現在形」や「現在進行形」などの「現在」も present である。 「現在」のpresent と 「贈り物」の present とスペルも発音も同じである。また、「出席している」の形容詞 present と同じ単語である。 present と current のニュアンスの違いは、辞書では特に言及されてないが、current には「流通」や「通用」のような意味合いもあるというところだろうか。 * 現代 modern と contemporary なお、modern は、「近代の」「現代の」という意味であり、歴史的なニュアンスで使う。 modern も単語集にあるので、覚えよう。 単語集にないが、たとえば「近代文学」modern literature のように(センチュリーで確認)。なお、「現代」はmodern times という。 桐原4500にあるが、(科目名ではない意味での)「現代社会」は、modern society である。 動詞 modernize は「近代化する」「現代化する」の意味である(東京書籍4500および桐原4500)。 しかし、contemporary という単語も存在し「現代の」という意味であり、しかも、旺文社いわく「現代日本文学」は contemporary Japanese literature である。 東京書籍4500いわく、contemporary と modern の違いは単に、芸術様式の話題では contemporaryが「現代の」の意味で使われるとのこと。 だからか、東京書籍・桐原・旺文社の3つともすべてに単語 contemporary art 「現代美術」がある。 その他、contemporary には「同時代の」と言う意味もあり、東京書籍いわく、「ピカソとダリは同時代の人」という内容で、語法 be contemporary with ~ を使っている。 * temporary temporary は「一時的な」の意味の形容詞。 典型的な例文が 「一時的な仕事」 a temporary job である(東京書籍、旺文社)。 なお、ジーニアスとセンチュリーでは、同じ a temporary job を「臨時の仕事」と訳している。 対義語は permanent である。 つまり、 temporary ⇔ permanent である。 なお、いわゆる「アルバイト」は、英語で part-time job である(ジーニアス和英「アルバイト」で確認)。side job ともいう(ジーニアス和英)。 日本語の「パート主婦」のような、勤務時間の短い意味合いは、英語のpart time jobには無い。 そもそもアルバイトはドイツ語に由来する言い回しだし、しかもドイツ語では「仕事」という意味らしい(本書は英語の教科書なのでドイツ語には深入りしない)。 「永久歯」を permanent teeth という(ジーニアス、東京書籍)。 東京書籍いわく、「終身雇用」を a permanent job というとの事だが、しかしジーニアス英和やセンチュリー英和では確認できなかった。 ---- 強制 force, enforce, compel , oblige 義務 duty 辞書によくあるcompel の典型的な例文が「病気のため仕方なく~せざるを得なかった」的な例文。こういうときにcompelを使うようである。 辞書によると、compel はforce よりも意味が弱く、oblige (オブライジ)よりも意味が強い、 普通、oblige (オブライジ)は「義務づける」と訳す。 単語集にはないが、思想の用語で「高貴たる者の義務と責任」と言う(英語ではなく)フランス語で noblesse oblige ノブレス・オブリジュ という単語があり、社会的エリートが兼ね備えるべき義務感のことを言う。 さて、英語では、名詞形 obligation が「義務」の意味。センチュリー英和で確認したが、法律的な「義務」も、道徳的な「義務」も obligation である。 世界各国のエリートはノブレス・オブリジュとか知ってるはずだし、もし知らない人がその国のエリートだったら相手する価値ない三等国なので、我々としては動詞 oblige のニュアンスはそういう感じで使えば、大体は問題ないだりう。 桐原4500では obligationの意味に「義理」を加えて、「義務」「義理」がobligation だとしている。 旺文社1900では、 obligationの意味に「責任」を加えて、「義務」「責任」がobligation だとしている。まあ、「高貴なる者の義務と責任」が世界各国エリートの基礎教養なので、知的な英文ではそういうニュアンスで obligation が使われることも多いのだろう。 東京書籍4500 には、oblige の紹介は無い。 force は「強制する」の意味。 さて、「軍隊」「武力」も force である。 軍隊によって「~が強制された」という場合、どうすればいいのだろうか? 桐原4500では、force「強制する」の例文での「軍隊」を troop という単語で表現して、forceの同音意義語の問題をうまく回避している。 桐原の例文が「政府軍が反乱軍に降伏することを強制した。」と言う例文である。 なお「政府軍」は the government troops である。 反乱軍は the rebels である。「降伏すること」は to surrender である。 troop とか rebel とか、索引に無い単語ばかりである。 enforce は、強制一般の意味もあるが、法律によって強制する、というニュアンスがあり、例文もそういうのが多い。だがラグビーでエンフォースという用語がある。ラグビーの説明はしたくないので説明は省略。 センチュリーの英語によると、警察が市民に法を強制したりするのが enforce である。 桐原4500によると、法律を施行するのが enforce である。警官が法律を守らせる場合も、the police enforces the law のように、目的語は法律になる。 旺文社1900および東京書籍4500にも、似たような警官と法律の enforce 例文がある。 こういう事情もあってか、旺文社は1900はenforceの意味を「施行する」「実施する」としている。 桐原は、enforceの意味を「施行する」「遵守させる」としている。 なお、死刑執行で誰かを「処刑する」のは英語で execute (イクセキュート)である。 「死刑執行」「処刑」は execution である(桐原5500で「死刑執行」、旺文社1900)。 execute には、計画・命令などを実行したり、仕事を「成し遂げる」などの意味もある(ジーニアス、センチュリー)。ジーニアスによると「最後までやる」が原義のほうの意味とのこと。 処刑の意味は、処刑で「片付ける」的なニュアンスだろうか(特に言及されてはいない)。 summary execution で「即決処刑」である(ジーニアス)。 要約を意味する単語 summary には、形容詞として「略式の」という意味もある。 計画などの実行で使われるといっても、ただし、こういう固い語なので、技術の必要な難しい計画などの実行で使われるのが普通である(ジーニアス)。 また、このことからか、企業の重役のことをエグゼクティブ executive ともいう(旺文社、桐原5500)。executive には名詞「重役」の意味のほか、形容詞「経営上の」「行政杖の」などの意味もある(旺文社、桐原5500、ジーニアス、センチュリー)。 さて、「義務」「強制」概念の話にもどる。 義務教育も法律で強制されているが、しかし旺文社の例文によると、義務教育には oblige を使っている。 センチュリーを読んでたら、未成年の子供が起こした事故の弁償も oblige である。 桐原だと「大臣は半年に一度、報告書を提出することを義務づけられていた。」の義務づけが was obliged to send in a report である。 まあ、大臣はエリートだからだろう。 センチュリーで「世論の批判のため引退を余儀なくされた」の「余儀なく」もoblige である。まあ政治家という、国家権力者の一員たるものの義務と責任的な意味合いだろう。 しかし東京書籍4500は、compel の例文で「世論が大臣を辞職に追い込んだ。」を 使っており、センチュリーに反している。 まあ、とくに統一的な用法は無いのだろう。 なお桐原は、「その法律が雇い主に、(※ 社員の)健康保険を掛けることを強いる」をcompel としている。「(※ )」内はwikiでの追記。 単語集にはないが辞書によくある典型的な例文が、病気で「~を余儀なくされる」をcompelで表現することである。 センチュリー風に He was compelled by illness to ~なら「彼は病気で~を余儀なくされた」である。 ジーニアス風に His illness compelled him to ~ なら、直訳すれば「病気が彼に~することを余儀なくさせた」だが、無生物主語の和訳が高校の授業で嫌われるので、「彼は病気で」と訳す。英文学とかだと無生物の主語とか普通にあると思うし、普通の日本語でも文学・文芸でなくとも「病気が彼に~を余儀なくさせた」とか通じると思うし、なのに、かたくなに無生物主語の和訳を認めない高校英語教師や塾講師などはどういう了見なのだろうか。理解しがたい。 ジーニアスは、本人の納得の上で余儀なくされる場合を oblige といい、そうでない場合つまり「本人の意思に反してさせる場合はforce や make を用いる」としている。 しかし、ジーニアスの例文では、税金を払う義務も oblige としている。 判断基準が不明である。 やはり、高貴たる者の義務と責任を基準に考えるのが良いだろう。 * 義務 duty, obligation 「義務」「義理」は英語で duty である。ジーニアスで確認したところ「義理」の意味もある。 on duty で「勤務時間中で」。 off duty で「勤務時間外で」 duty は、職務上の義務でも使われるが、道徳的な義務でも使われる。 その他、duty に「関税」の意味あり。桐原4500によれば、「ワインの関税」 duty on wine である。「免税店」は duty-off shop である。 obligation との違いとして、ジーニアスは obligation は「外的な事情から生じる義務」としているが、どうだろうか。ノブレス・オブリジとか、そうではないと思うが。 そう覚えるよりも do one's(myなど) duty で「~の義務を果たす」などの慣用表現で覚えるほうがよいと思う。なお、東京書籍4500と旺文社1900に、例文中に do one's duty がある。 obligation にはそういう平易な慣用表現は無いと思うので。 ---- 「分類する」 sort, classify 「分類する」の使い分けは、あまりハッキリしない。 単語集の例文などを見ると、どうやら書店や図書館などで書籍を「分類する」は classify を使っているようだ。 旺文社では「本は作家の名前によって分類されている。」 The books are classified according to the author's name. 東京書籍では「本はテーマによって分類されている。」 The books are classified according to subject. である。 ジーニアスでも、受動形でなく能動形でだが図書館での本の分類に classify を用いている。 なお、(英和ではなく和英辞典の)ジーニアス和英によると、ごみの「分別」は separate である。 sort には名詞で「種類」という意味もあり、ほぼ、「種類」の意味での kind と似た意味である。 a kind of ~ 「~の一種」の代わりに、a sort of ~ で「~の一種」と言う場合もある。 しかし、別の用法で sort of で「多少の」「いくらかの」という意味もあるので、文脈から判断すること。 class には「等級」と言う意味もあるので、「等級づけをする」なら classify のほうが望ましいだろう。 余談だが、classify には「機密の」の意味があって、旺文社1900で document を見ると、 leak classified document 「機密文書を漏洩する」 という例文もある。 動詞 leak は、液体や秘密などが「漏れる」とか「漏らす」の意味。東京書籍と桐原の3000語レベルにも4500語レベルにも書いてない。桐原5500に書いてある。 桐原5500の例文は秘密を「漏らす」ほうの内容。 なお、文書ではなく情報の「機密情報」については旺文社 leak を見ると、 a secret information と言っている。 桐原4500では、「機密情報」を confidential information と言っている(桐原4500のmake関係の熟語のmake use of ~ の項目)。 2010年にWikiリークという、各国政府などの機密情報をネット公開する海外サイトが世界的に話題になったからか、単語集では leak の例文が機密の漏洩ばかり。だが、もちろん液体などが漏れる場合にも普通に leak は使われる。 なお、wikibooksなど当wikiプロジェクトは、wikiリークとは全く別の組織。「wiki」とはソフト名の一種なので、まったく別の組織でも、wikiソフトを使っていると組織名がwikiなんとかと、似たような名称になることもある。 なおleakの名詞形は leakage であり、「漏れ」「漏出」「漏洩」の意味(旺文社1900)。だが、単語 leak 自体でも名詞の意味もあり、同じような「漏れ」という意味(桐原5500)。 「秘密」については、secret や classify の他に、confidence (カーンフィデンス)という単語もある。 だが、このconfidence は意味が「信頼」「自信」「確信」「秘密」と幅広い。 「信頼」と「自信」と「確信」については和訳でも同じ「信」の文字があるから、まあ連想できるとして(信頼の対象が自己になれば「自信」。「確信」とは、信じている自分への自信。など)、問題は「秘密」である。 信頼しあっている間柄での秘密、的なイメージで覚えるのが良いだろう。 形容詞 confidential の意味なら「内密の」というのがセンチュリー和英にもある。 だが、名詞の「秘密」のことを「内密」とは言わないので、confidence は「秘密」と訳すしかない。辞書もそうなっている。 ジーニアスによれば、「秘密文書」は confidential documents とのこと。 ---- 確認 check, confirm , confident check が「チェックする」である。 英語のチェック check はいろんな意味で使われ、意外と難しいので、日本語でそのまま「チェックする」と意味を覚えてしまうのが良い。東京書籍1800の単語集を見ても、checkの意味の説明で「チェックする」とそのまま書いてある。 check は「確認する」ことにも使われるし、確認したことを証拠に残すためのチェックマーク( ✓ )の記述にも使われるし、「点検する」ことにも使われるし、「照合する」にも使われるし、チェスの王手(いわゆるチェックメイト)にも使われる。このように意外と難しいからか、桐原4500では4500レベルとしてcheckを紹介している。 confirm が「確認する」「身元を証明する」である。(東京書籍4500) チェックについては、チェックリスト check list が英語にもあることを知るべきだろうか。 工場労働など屋内での社会人の点検業務では、可能なかぎり、忘れのないように点検内容を一覧表の list リストにして、それにチェックマーク( ✓ )を入れることで漏らさずにチェックをするという方法がある。 なお、チェックマークを入れるための視覚欄(大きめな □ )のことを、チェックボックス check box といい、これも英語にある(ジーニアスで確認)。 こういうチェックリストやチェックボックスの存在を知っていれば、check の「点検する」や「照合する」の意味も覚えやすいだろう。 語学の勉強というのは、こういうふうに英語以外のビジネス知識なども必要なのである。 checkを「チェックする」と覚えればいいと言ったものの、ただし上述のチェックボックスやチェックリストのように、仕事でも知的な仕事なら check という英語は使うので、覚えておく必要があるだろう。 桐原4500では、「医者が患者の血圧を調べる」という内容の例文でチェック check を使っている。check はそういう専門性の高い用途にも耐えうる単語でもある。 ほか、小切手も check といい、同じスペルだが、説明を省略する。ホテルなどのチェックイン check in , チェックアウト check out も同じ単語だが、説明を省略する。 IT系でも、よく会員制webサイトの登録画面などで説明書きを読んだか確認するためのチェックボックスが、海外サイトではよく使われる。 社会人になって就職するなどして、品質検査の方法などを習っていないので、あまり「チェックとは何か?」とか深入りしても、埒(らち)が あかない。 confirm は、高校生には馴染みがないかもしれないが、IT系では意外とよく、会員制webサイトのパスワード登録の画面などとして、海外サイトではよく使われる。 身元証明の典型的な例文で、誰々の「身元を証明する」という例文があり、 たとえば東京書籍4500では 「彼女の身元を証明する」confirm her identity がある。 旺文社の例文を少し改造して(「郵便局員が私の身元を確認した」という内容)、「彼が私の身元を確認した」なら He confirmed my identity となるだろう。 「裏づける」の典型な例文が、裁判などでの「新たな証拠が彼の話を裏づけた」であり、東京書籍によれば、 「新たな証拠が彼の話を裏づけた」 The new evidence confirmed his story. である。 桐原4500にも、現在完了形であるが、ほぼ同じ英文がある。 confirm の名詞形は confirmation である。旺文社1900にだけ紹介されている(桐原4500と東京書籍4500はconfirmationを紹介していない)。 confident については、別の項目で説明した。confidence は意味が「信頼」「自信」「確信」「秘密」と幅広い。 単語集に共通の例文が見当たらないので、辞書などを購入して読んでほしい。 * 検査 なお、和英辞典で「検査」を見ると、testやinspectなど色々な単語がある。 testはどちらかというと「試験」である。 血液検査が blood test であり、聴力検査が hearing test だし、日本語では「検査」でも英語では test だったりする場合もある。 「テスト」と聞いて、日本の学校の学力試験しか思いつかないのなら、改めよう。英語では普通に、医療や工業などの検査でも test は使われるからである。 inspect は、査察官や検閲官をinsepector と言うので、そういうニュアンスもあるので、検閲・査察のニュアンスが強く、日本の「検査」には1対1には対応しない。 東京書籍と桐原の単語集には inspect がないので、気にしなくていい。米英の行政の事情を知らないと inspector などは理解できないだろう。日本の高校生には不要な知識であろう。inspector という、そういう高校で習わない行政用語があるという事だけを知っておけば十分だろう。 なお、実は旺文社1900に inspect と inspector がある。inspector には「検査官」の意味のほか、「警部」の意味もあるとのこと。 だが、そもそも、英語の文脈においける「警部」とは何かという問題がある。ジーニアスでinspectorを見ると、米では「警視正」、英では「警部」とのこと。まあ、警察組織の現場職での上のほうの人、ぐらいの意味だろうか。 なお、「捜査員」は investigator である。これだけだと難しそうだが、米国のFBIこと「連邦捜査局」が the Federal Bureau Investigation である(旺文社)。 「捜査する」は investigate である。 典型的な例文が 「警察がその殺人事件を捜査している。」 The police are investigating the murder. である(桐原、ジーニアス)。 なお、federal (フェデラル)は形容詞としては「連邦の」という意味であり、名詞としては「連邦」の意味である(ジー二アス)。 もうひとつの典型的な例文が、 「警察がその自動車事故の原因を調査している。」 The police are investigating the cause of the car accident. である(東京書籍、センチュリー)。事故なので、捜査ではなく「調査」。東京書籍でも「調査」になっているし、センチュリーでは「調べている」としている。 なお、「探偵」と「刑事」は detective である。英語では、「探偵」と「刑事」が同じ単語なのである。 動詞 detect の意味は、東京書籍いわく、何か見つけづらいものを「探知」「発見する」などの意味である。センチュリーいわく、隠されているものや悪事などを見つける場合に使うことが多いとのこと。 単語集にはないが、「探知機」が detector である(ジーニアスで確認できる)。ジーニアスいわく、金属探知機は a metal detector である。 この例のように、 detect で発見するのは別に犯罪事件の犯人でなくてもよく、たとえば桐原の例文では病院でのガン(癌) cancer を「発見する」ことを detect としている。 センチュリーいわく「ガス漏れを見つける」は detect a gas leak である。 センチュリーいわく、嘘を見破るのも detect である。東京書籍いわく、「スパイを見破る」は detect a spy とのこと。 locate という「位置する」と言う意味の動詞がある。名詞形 location が「位置」 の意味である。 この locate には、なにかの場所を「突き止める」という意味もある。 東京書籍が detect の単語の次に、locateの例文で「アジトを突き止める」を紹介しているが、著作権の都合があるので本ページでは紹介しない。 なお、アジトは a safe house である(東京書籍)。またアジトとは、犯罪組織や反乱組織などの「隠れ家」のこと。 なお、「隠れる」は hide である。 太陽が雲に「隠れる」みたいな平和的な「隠れる」も、犯人が「隠れる」も、 hide である(センチュリーで確認)。 「太陽が雲に隠れる」 The sun is hidden by clouds である(ジーニアスとセンチュリーに、ほぼ同じ例文)。 なお、「隠れ家」「隠れ場所」には、hide-out という言い方もある(ジーニアスいわく「隠れ場所」)。旺文社では hide-out を「隠れ家」「潜伏場所」と紹介。 hide の活用は hide - hid - hidden/hid である。 さて、conceal という、「隠す」という意味の単語があり、物や秘密を「隠す」場合に使われる。 辞書を見た限り、conceal には、人が隠れるような用法はない。 単語集を見ると、conceal の例文で、感情を「隠す」ような例文もあれば(旺文社)、爆弾が「隠されていた」という例文もある(桐原)。 隠された秘密を「暴く」のは reveal や uncover がある。 ---- 暴露(ばくろ) reveal, uncover, disclose reveal は、意図的に秘密を暴いた場合のほかにも、不注意などで秘密が漏れた場合にも用いる。旺文社の例文も秘密が漏れた場合である。 名詞形 revelation である。 よくある例文は、 「真相を明らかにする」 reveal the truth である(東京書籍に和訳・英文とも同じ文。センチュリーでは「真相を漏らす」と訳)。 そのほか、単語集にはないが、物理的に隠れているなどして見えなかったものが見えるよう現れる事も reveal というが、単語集にないので無視する。 なお、光や危険などに「暴露する」ことは expose である(桐原)。 暴露(ばくろ)は「ばくろ」と読む。「ぼうろ」(×)ではない。 disclose 意図的に秘密を暴いたり、あるいは自分や自組織の秘密を公表したりする場合は、 disclose のほうが適切かもしれない。 固い言い回しなので、暴露や公表や自白などの対象となる秘密は、たとえばセンチュリーでは「彼はスパイであったこと」だとか、「その男の正体」だとか、 あるいはジーニアスでは「真実を新聞に暴露する」とか、なんかそんな感じの秘密ばかりである。 名詞形「公開」「暴露」は disclosure である。 「情報公開」は disclosure of information である(ジーニアス、旺文社)。 東京書籍4500および桐原4500には disclose が無い。 uncover 「真相を明らかにする」 uncover the truth のように使う(東京書籍)。桐原4500には例文なし。東京書籍は巻末おくりなので、解説なし。 uncover の語源は、見れば分かると思うが「カバーを取る」である(ジーニアスで確認)。 なので、単語集にはないが、容器などの「フタを取る」も uncover である(ジーニアス、センチュリーで確認)。 そして単語集(旺文社)にあるが、遺跡などを発掘するのも uncover である(旺文社)。遺跡を埋めている土などをフタに見立てて覚えよう。 ---- 不安 anxiety, alarm 恐怖 fear、 horror 警報 alarm 警戒 alert 警告 warning, caution 旺文社1900によると、alarm の出題番号が549 で、alarm が「不安」「恐れ」を第一義で紹介されており、anxiety (「不安」「心配」)の形容詞 anxious の583番よりも alarm のほうが早い。 勘弁してほしい。 まずalarm は普通、警報器のことである。実際、東京書籍3000では、alarm は「警報器」「目覚まし時計」の意味でしか紹介していない。 桐原4500ですら、「驚き」「恐怖」の意味を紹介しているが、しかしalarmの第一義はあくまで「警報(器)」というのが桐原のスタンスである。 とはいえ、旺文社は大学入試の出題順に紹介しているだけである。つまり、日本の大学入試がロクでもないのだろう。 なお、ジーニアスによると、alarm の第一義は「驚き」「恐怖」である。なお、語源はイタリア語の「武器を取れ」all'armeである。 なるほど、alarm アラームの語尾 -arm が「武器」 arm と同じわけである。 現代では、普通、「驚いた」は be surprised at などを使うだろう。 どうしても「驚き」「恐怖」の意味で使いたいなら、死の恐怖のある文脈で使うと、頭良さそうに見えると思う。 ジーニアスの例文でも、「シカは驚いて逃げていった」の例文で in alarm という用法を使っている。狩人や肉食動物などによる死の恐怖を感じたシカ的な用法。 しかし、ジーニアスによれば、恐怖の意味での alarm は「fear より固い語」である。 fear (フィエア)は「恐怖」「不安」である。まずfear は「恐怖」で覚えよう。4500語レベルではなく、桐原3000と旺文社1400にfearはある。あと東京書籍4500。 典型的な例文が、「高所恐怖症です」であり、ジーニアスと東京書籍にそういう例文がある。 I have a fear of heights. 「私は高所恐怖症だ。」 である。 単語集にはないが、辞書によくある例文が「恐怖で顔が真っ青になる」であり、 turn pale with fear 「恐怖で顔が真っ青になる」 である。センチュリーが pale (ぺイル)である。 ジーニアスだと、white を使い、 turn white with fear 「恐怖で顔が真っ青になる」 である。 なお、形容詞 fearful で「恐ろしい」「恐れている」の意味。 なお、horror で、戦場での死の恐怖も表現できる。日本語の「ホラー」のような幽霊やら悪魔などのオカルト限定のような制限は無い。 fear とスペルの似ている fare(フェア) は「運賃」「なりゆき」であり、意味がまったく違う。 ほか、スポーツの「フェアプレーの精神」などの意味の「フェア」は fair であり、スペルがまったく違う。なお、この形容詞 fairは「公平な」の意味である(桐原4500など)。 商店の安売りなどの「フェア」は、「お祭り」という意味の 名詞 fair であり、フェアプレーの単語とは同音異義語である(桐原4500)。ジーニアスによると、英語以外の言語に feria (フェリア?)という「祭日」を意味する単語があるらしい。商店の安売りの他、ジーニアスによれば「博覧会」や「見本市」も fair である。 米国の外交問題についての専門雑誌で「Foreign Affairs」というのがあるが、affair (アフェアー)とは「出来事」「関心ごと」の意味である。affair は別に恐怖とは関係ない。「Foreign Affairs」は戦争の話題が多い雑誌だが、しかし雑誌名は「恐怖」とは全く関係ないので誤解しないよう。 なお、ジーニアス和英の affair の項目によると、「時事問題」は current affairs である。 「浮気」とか「不倫」とかも affair と言う。恋愛雑誌やらで時々「アフェア」とか言う単語があるのは、この意味だろう。 なお、「外交」を一言でいうと diplomacy (ディプロウマシ)である(桐原4500など)。「外交官」が diplomat である。形容詞 diplomatic は「外交の」である。 さて、「警報器」alarm の典型的な例文が 「火災警報器」 a fire alarm である。これは東京書籍も桐原も紹介している。 なお、スペルの似ているアラート alert は、alert は名詞では「警報」「警戒」の意味だが、形容詞では「警戒している」の意味がある。(桐原5500、旺文社1900) また、形容詞でalert は「油断しない」の意味もある(東京書籍4500)。 単語集の「警戒している」の例文では、よく警察官や兵士などの警戒が出てくる。 警察官の場合なら、 The police officer is alert ・・・ で、「警察官は警戒している」の意味になる。 つまり、 ~(人) be alert の語順になる。 warning は「警告」である。翻訳の都合で「警報」と訳したほうが自然な場合もあるが、warning の意味としてまず第一に覚えるべきは「警告」である。 東京書籍で「洪水」 flood を見ると、「洪水警報」 flood warning がある。辞書 warning では確認できなかったが(ジーニアスとセンチュリーで、warningとfloodの両方を確認)、しかしセンチュリーいわく「空襲警報」が air-raid warning なので、たぶん洪水警報も合っているのだろう。 warn は「警告する」であり、医師が患者に「酒を飲みすぎないように警告する」とか(センチュリー)、嵐の接近を警告するとか(センチュリーとか)、そういうニュアンスである。 warn ◯◯(人) of ~ で「◯◯(人)に~を警告する」である。 記法を変えれば、 warn A of B 「BについてAに警告する」 です(桐原、旺文社、東京書籍)。 東京書籍が紹介していますが、 warn me of the enemy 「敵がいるぞと私に警告する」 です。 なお桐原は、喫煙の危険性(risk)を警告する例文です。ジーニアスは、旅路か何かの危険(danger )を警告する例文です。危険という概念で統一的に説明できそうですが、直接的に言い回しを覚えたほうが早いでしょう。 of はよく「~の」と中学で教わりますが、それだと意味が通りません。 さて、inform 「(情報などを)知らせる」という単語にも、 inform A of B 「BについてAに知らせる」 という語法があります。 桐原が inform him of the result 「彼に結果を知らせる」 のような例文を紹介しています。 なお、典型例の言い回しは、 Please inform me of the change in ~ 「~の変更を私に知らせてくれ」 です(旺文社、センチュリー)。 ともかく、warn A of B は inform A of B と関連づけて覚えましょう。 桐原がそういう覚え方を進めています(warn と inform を同一ページで教えている)。 ただし、東京書籍のようなcrisis (危機)など関連語の紹介は、桐原では同一ページにないですが。どの単語集も、一長一短です。 なお、東京書籍3000には、なんと inform の項目がありません。information はあるのですが。 なお、information は数えられない名詞なので複数形が無いので、「2つの情報」は two pieces of information と表す。「ひとつの情報」は a piece of information です(東京書籍3000)。 桐原は、remind A of B(思い出させる) や convince A of B(納得させる、確信させる) や inform A of B と warn A of B や suspect A of B (疑う)などをまとめて、 「関連の of」という概念を提唱しています。 ただ、そう解釈しなくても、 このうち、「警告する」warn と「思い出させる」remind も情報提供の一種ですので、 「情報提供の of 」とでも言える概念で、 remind A of B と inform A of B と warn A of B をまとめられます。 だとすると、暗記するのは残りの convince A of B (Bを納得/確信させる)と suspect A of B (B(容疑など)の疑いをかける)だけに減らせます。 このうち、 convince は、他人に何かの納得をさせる際に、説得などの情報提供が行われるでしょうから、広い意味での「情報提供の of 」と言えるかもしれません。暗記の負担がこれで減ります。 だとすると、残りは suspect A of B 「AにBの疑いをかける」です。 この場合、なんの情報提供もしていません。 また、of B の部分は形容詞的な意味です。 made of ~ で、「~を材料に作る」とかの意味であり、完成品を一目で見て材料が分かるなら made of です。 材料が、完成品を一目みてもわからない場合は made from ~ です。 この suspect A of B と made of B の共通する「of B」で、「性質の of」とかの概念を考えてもいいかもしれません(英語学でどうかは知りません。自己責任で)。 ほか、英文法で、「It is 形容詞 of 人」と「It is 形容詞 for 人」の使い分けなどがあります。人の性質を言う場合は「of 人」です。これから類推する方法もあるかもしれません。 まあ、最終的には suspect A of B 「AにBの疑いをかける」を直接的に覚えるしかありません。 warn ◯◯(人) against ~ing で「◯◯(人)に~しないように警告する」である。 たとえば、よくある例文が、「彼は道路を横断しないように私に警告した」(ジーニアス)あるいは川を渡らないように私に警告した(東京書籍)、であり、 He warned me of against crossing the river. 「彼は川を渡らないように私に警告した」 である。 動詞および名詞の caution は、動詞としては、たとえば医者などが肝硬変の患者に「酒を飲むな」と注意・警告するときの「注意する」「警告する」が caution である(桐原5500)。東京書籍4500の例文も、薬の取扱いの注意を caution としている例文。 ただし、辞書では、警察などの警告・注意もcautionである。このため、warningとの区別は、なかなか難しい。 ジーニアスが言うには、cautionのほうがwarningよりも軽いとのこと。 形容詞 anxious (アンクシャス)は「心配している」「不安に思っている」である。 be anxious about ~ で「~を心配している」である。 He is anxious about ~ なら「彼は~を心配している」である。 よくある例文が、「彼は試験の結果を心配している」であり、東京書籍とジーニアスにそれに似た例文がある、 He was anxious about the result of exam. 「彼は試験の結果を心配している。」 となろう。(wikiオリジナル) ジーニアスだと、母親視点の「息子のテスト」だが、まあこういう例文がよくる。 be anxious for ~ は「~を切望している」である。 桐原の「新しいコピー機が欲しくてたまらない」なら be anxious for new copy machine である。 ジーニアスだと(私は)「新しいコンピュータが欲しかった」なので、 I was anxious for a new computer. 「新しいコンピュータが欲しかった。」(※ ジーニアスanxious例文から引用) である。 名詞形 anxiety で「不安」「心配」「切望」である。東京書籍4500には「切望」が書いてないが、しかし桐原4500と旺文社1900には切望が書いてある。 なお、 eager (イーガー) は「熱望している」である。切望 anxious とは、ややニュアンスが違う。 ---- 武器・兵器 weapon, arm 大量破壊兵器は weapons of mass destruction であり、略称は WMD である(桐原4500、旺文社1900、ジー二アス)。 また、核兵器は nuclear weapons である(桐原4500、旺文社1900、東京書籍、ジー二アス)。 だいたい、arms だと、「腕」(うで)と まぎらわしい。 兵器には、なるべく weapon を使うのが無難だろう。 なお、動植物の角(つの)や爪(つめ)や刺(とげ)なども、weapon である(ジー二アス)。 weapon は、日本では「兵器」と訳される場合が多いが、しかし英語では weapon は広く攻撃のための道具を表す用語である。 単語集にはないが、山川の英語版・世界史にあった単語で、 rearmament が「再軍備」である(ジーニアス)。ナチスによるドイツの「再軍備」みたいな文脈で rearmament を使える。 ほか、disarmament が「軍縮」である。啓林館 Vision Quest I(P.111) が「軍縮」disarmament を紹介しています。 なお、名詞 army は「陸軍」「軍隊」の意味です(桐原3000、旺文社1400(緑)、東京書籍4500)。 「海軍」は navy (ネイビー)です(東京書籍、桐原)。 「空軍」は air force です(東京書籍、桐原)。 「軍事の」は military です(東京書籍、桐原)。 陸軍と海軍も空軍もまとめて「軍隊」と言いたい場合、army だと陸軍とまぎらわしいので、military force という場合もあります(東京書籍)。 ただし、「軍事力」も military force です(桐原)。 このため、翻訳などの際は、文脈にあわせて、うまく訳してください。 軍「隊」との混同を嫌ってか、単語を power を使って「軍事力」は military power という用法もある(ジーニアス military、センチュリー power)。 ほか、「軍隊」を the armed forces と言ってもいい(桐原、forces ) 「兵士」は soldier (ソルジャー)です(東京書籍、桐原)。 東京書籍いわく、さらに「将校」(しょうこう)は officer (オフィサー)です。 とはいえ、「将校」(しょうこう)と言っても、何のことだか分からないのが普通の高校生でしょう。 軍隊の上層部や、将来的にそうなる見込みの高い軍隊の大学を出た軍人や、あるいは同程度に一定以上の階級の高い指揮官のことを、将校と言います。 最下級の階級である兵士は当然、将校ではないです。 「兵士長」とか「軍曹」とかの現場の下の方の中間管理職も、ふつうは将校とは言わないです。ただし、文脈によっては、「軍曹」なども将校という場合があるかもしれません。 『「将校」という単語くらい知っとけや。日本史の勉強すれば出てくるんだからさ~』というのが、東京書籍の心のさけびでしょうか。 戦後の自衛隊ではあまり「将校」とは聞かなくなりましたが、海外の軍隊の説明だと今でも使います。 戦前でも、よく二・二六事件とかで「青年将校」がどうのこうの、という解説を読みます。こういう英語を知っていると、英語力だけでなく日本史などの知識も披露できて、頭よさそうに見えます。 桐原いわく「兵役」(へいえき)は military service です。 「英語を勉強するなら、こんくらい知っておけや」という桐原の心のさけびです。 まず、諸外国でもヨーロッパなどで今でも徴兵制、つまり兵役があります。2020年代でも、スイス、オーストリアは徴兵制があります。 ここでいう service とは、公共の下僕のような意味もあるかと思います。 たとえば「召使い」は英語で servant (サーバント)ですが、なんと単語集に書いていません。 桐原の単語周いわく、serve は「仕える」とか「提供する」とかの意味です(桐原4500)。 今ではネットのサーバー server とか、派生の名詞が使われています(ジーニアス、センチュリー)。 ただし、ネットの情報提供については、「プロバイダー業者」などというように provide が「(情報などを)提供する」の意味で好んで使われる場合もあります(桐原)。 交通インフラや電力インフラなどの公共インフラなどの提供も service です(ジーニアス)。慈善事業も service です(センチュリー)。 「兵役」(へいえき)は military service を覚えるときも、そういうのと関連づけて覚えましょう。 ---- 安売り・特売 フェア、セール、バザール sale のみ高校英語 商店の安売りなどの「フェア」は、「お祭り」という意味の fair であり、フェアプレーの単語とは同音異義語である。ジーニアスによると、英語以外の言語に feria (フェリア?)という「祭日」を意味する単語があるらしい。商店の安売りの他、ジーニアスによれば「博覧会」や「見本市」も fair である。 なお、セールは英語でも sale で「安売り」(桐原3000、東京書籍3000)や「特売」(旺文社1200)や「バーゲンセール」(東京書籍3000)の意味がある。sell とは別に、sale (セール)「販売」という単語がある(東京書籍3000、桐原3000)。 なお、セールスポイントは英語で selling point である(旺文社1200(黄色)、ジー二アスで確認)。 セールスポイントは和製英語。 なお、単語集にはないが、セールスマン(販売員)は英語でも salesman であるが、男女平等の観点から salesperson という表現が米英では好まれるだろう(ジー二アス)。 salesman は、外交販売員(日本でいう「セールスマン」)にも使われるが、英語では単なる店員も salesman で表せる。 複数形 sales で「売り上げ高」の意味もある(桐原3000)。なお桐原では「売上高」3文字ではなく「売り上げ高」5文字の表記。 単語集にはないだろうが、バザーとの違いについて触れる。 ジーニアスによると、英語の bazaar は、慈善などの目的のために特別に催される市場である。だから教会などがバザーするわけである。しかし、イランなど中東の商店街のことも bazaar である。英語の単なる「雑貨屋」のことも bazaar という。 バザーを「安売り祭り」みたいな意味で使うのは、どうやら和製のようだ。 啓林館 Vision quest( P.62 )で、ディスカウント discount 「値引き」、バーゲン bargain 「お買い得品」などが紹介されていました。 ---- 必要不可欠 不可欠な essential, vital, indispensable 必要な necessary 搾る squeeze, extract 搾取する squeeze, exploit 桐原4500に vital の意味は「生命の」とあるので、まずこれで覚えよう。 また桐原4500いわく、vitality の意味は「生命力」である。 入試では vital の他の意味の「不可欠だ」「活気のある」などが問われるかも知れないが、まずはvitalの単語のイメージが生命力であることをつかもう。 vial → 「生命に必要」→「不可欠」という連想、 および vital → 「生命力にあふれる」→「活気のある」という連想、 で覚えれば、暗鬼の負担が減るだろう。 旺文社1900の例文で、「防衛戦略が国家の安全保障にとって不可欠だ」という例文で「不可欠」を vital としている例文がある。 これだって、「国家の生存に必要」→「国防に不可欠」みたいなイメージで把握できるだろう。 なお、桐原4500は「自転車が生活に不可欠」で不可欠がvital、東京書籍4500は「外国語が教育に不可欠」で不可欠がvital、という内容。 ともかく、vital は「活気のある」という意味もあるが、「生命の」とか「不可欠な」のような意味もある。 別の単語の話をする。 もし、単に「活気のある」「元気はつらつな」と言いたい場合は、形容詞 vigorous (ビゴラス)という単語でも一応は表現できる。東京書籍は「活発な」「力強い」と紹介しており、「活発な運動」 vigorous exercise という例文がある(東京書籍4500巻末)。ただ、辞書で 名詞形 vigor (ビガー)や 形容詞 vigorous の用例を見ると、「激しい(スポーツなどの)運動」とか「猛烈な抗議」とか、やや意味合いが強い用例も多いので、注意が必要であろう。 Z会のTOEIC対策本では、同じ vigorous exercise という単語を、「激しい運動がもとで、疲労で倒れた」という内容の文章で用いている<ref>松本茂 監修『速読速聴・英単語 Core 1900 ver.4』、Z会、2014年3月10日 ver.4第7刷発行、P.382</ref>。 このように、vigorous exercise は、いい意味でも悪い意味でも使う。 肉体的に元気のあるだけでなく、精神的にも「精力的な」という表現でも vigorous が使える。 なお、「猛烈な抗議」などの猛烈でも vigorous あるいは名詞形 vigor を使う(ジーニアス、センチュリー)。 protest a plan with vigor 「計画に猛反対する」(センチュリー) make a vigorous protest 「猛烈な抗議をする」(ジーニアス) である。 essential は「不可欠な」という意味。 だが、「エッセンシャル・オイル」essential oil という芳香性の油を考えれば分かるように、なんだか抽出物みたいなイメージ。 名詞形 essence 「本質」「エキス」で覚えるほうが理解しやすいだろう。 (なお、名詞 extract にも「エキス」「抽出物」「抜粋」の意味がある。extract は動詞として「抽出する」の意味もある。(東京書籍が動詞を紹介。旺文社は名詞も紹介。桐原は紹介せず)。動詞と名詞とで発音が異なる。名詞は エキストラクト。動詞は イクストラクト。「抽出」「摘出」の行為自体は extraction という名詞である(旺文社)。) あるいは、「必須アミノ酸」が essential amino acid である(ジーニアスで確認)。 抽出ついでに言うと、abstract も「抽出」という意味(桐原4500巻末)。abstract には「抽象的な」の意味もあるが、まずは抽出の意味で覚えよう。というか日本語でも、「抽象的」の「抽」の文字は、「抽出」の「抽」の字である。なお、冒頭のab-は、ここでは分離を意味する接頭辞。absent「欠席の」のabとabstractのabは同じ意味(桐原4500)。 エッセンシャルの話に戻ると、たとえば、生物学書の『キャンベル エッセンシャル生物学』 "Campbell Essential Biology" という500ページ以上ありそうな分厚い生物学書がある。(なお、amazon米国版では何故かこの本が18歳以上が購入禁止なのでリンクは紹介しない。) エッセンシャルというのは、そういう感じの意味。 桐原では、「食事は不可欠だ」みたいな例文でも essential を使っている。 なお、「食事」は英語で meal (ミール)である(essential の文に合うかどうかは知らない)。 食事しないと死ぬので、生命維持の観点では vital でもあるが、しかしそういう死を防ぐためのものでも essential で言い表す場合もある。 さて、単語集によくある例文が、「~は健康に欠かせない」 be essential for good health  であり、東京書籍と桐原がそうである。 東京書籍だと「運動は健康に欠かせない」、桐原だと「食事は健康に欠かせない」的な内容である。 運動 exercise なら、 Exercise is essential for good health. 「運動は健康に欠かせない。」(東京書籍4500より引用) である。 「搾る」の extract を squeezeのニュアンスの違いについて。 extract は「抽出する」が第一の意味のようなものである。 -tract が「引っ張る」という意味でもあることから想像できるように(センチュリー)、extractは、目的物を、自分の方向に向かってこさせるイメージである。 だからextractで果汁を「しぼる」のは、その手段にすぎない。 だから、濃縮エキスの抽出のような、搾るだけでは不可能なことも、extract なら出来る。 ほか、薬品などを使って何かの成分を抽出するのも extract である(ジーニアスで確認)。 ほか、歯科医が歯を抜くのも extract である(センチュリー、ジーニアス)。 パソコンのファイルの圧縮・展開でいう「展開」も extract です。 いっぽう、extract には「抜粋する」の意味や、抜粋して「要約する」という意味もあります(センチュリー)。 抜粋すると情報量が減るのに、圧縮ファイルを展開すると情報量は増えます。 妙に感じるかもしれません。 しかし辞書でextract を調べると、秘密などの情報を「聞き出す」「暴き出す」のような意味もあります(センチュリー)。圧縮していて読み取れない情報を「暴き出す」ようなイメージでしょうか。 もっとも、最近のパソコンでは、オペレーティングシステムが高度なので、圧縮されたままでも読み取りのできる場合もありますが。 逆に、圧縮・展開の「圧縮」は compress です。 日本でも、機械などの空気圧縮機でいうコンプレッサーなどの外来語で有名です(ただし、高校生には目にする機会(チャンス)がないかもしれません)。しかし意外なことに単語衆にはcompressはありません。 高校・中学でIT教育が必履修になるなどしてもう年月も経ってますので、どうせあと10年か20年したら「圧縮」・「展開」などIT用語も英単語に加わるでしょうから、先手を打って、このページにまとめておきます(ならないとしても、もしその場合は実務では役立たずなので未来の高校英語の単語衆に価値ないので、価値ない単語集に従う必要ないです。私たちが目指すべきは、大学合格する英単語ではなく、仕事で使える英単語です。仕事を無視した英単語学習をしても最終的に淘汰されるだけの弱肉強食です)。 英語だと、たとえばジーニアスでは、自動車エンジンにおける空気の圧縮のことを compress で表現しています。 なお、空調機のエアコンの「コン」はコンディショナーの略ですので、混同しないように。 センチュリーを見ると、コンピュータ用語のファイル圧縮も compress だと書いてあります(センチュリー、ジーニアス)。 ほか、綿(わた、めん)などを圧縮して小さくするのも compress です(センチュリー)。 ややこしいことに、compress にも、話を「要約する」という意味があります(センチュリー、ジーニアス)。 いまどき、「要約」はsummary でしょうから、compress は綿やファイルなどを「小さくする」(つまり圧縮)の意味で覚えるのが良いと思います。 まとめると、 ファイルの「圧縮」は compress です。 ファイルの「展開」は extract です。 さて、「しぼる」の話題にもどります。 squeeze は、にぎるように力を内側に押し付けるイメージである。だから squeeze で、資金を「圧迫する」なども表現できる。 では、具体的に extract と squeeze のニュアンスの違いを見ていこう。 「エキス」や「抽出する」のextract について。 extract juice from a orange で「オレンジからジュースをしぼり出す」「オレンジの果汁を搾る(しぼる)」 の意味(センチュリーや旺文社)。 文脈によっては、oranges ではなく an orange でも構わない。ジーニアスでは、レモンの複数形 lemons から果汁を搾り取っている。 「搾る」は、squeeze もある。 果物などをしぼって果汁をとるのが典型的で、 squeeze a lemon 「レモンをしぼる」 が典型的(センチュリー、旺文社)。 果汁を明示したい場合 「オレンジから果汁をしぼる」squeeze juice from an orange と言える(東京書籍4500の巻末。ジーニアスだと lemon で似た例文)。 squeeze lemon juice on ~(食品など) で「レモン果汁を~にかける」である(桐原4500、ジーニアスに似た例文)。 「労働者をしぼりとる」「労働者を搾取する」のような表現でも、squeeze を使える(桐原5500、センチュリー)。 なお、いわゆる「ブラック企業」のような会社(労働者を低賃金で長時間働かせる工場など)は、英語では sweatshop (スウェトシャプ)といい、「搾取工場」などと訳される(旺文社1900)。sweat (スウェト)は「汗」という意味の名詞である(桐原4500)。東京書籍4500は sweat および sweatshop を紹介せず。 なお、動詞 exploit 「搾取する」である(旺文社1400(緑)、桐原4500)。 典型的な例文が、 exploit one's workers 「労働者を搾取する」 であろう(ジー二アス、東京書籍、旺文社に似た例文)。 ほか、exploit には、たとえば地熱発電や自然資源などといった資源などを「開発する」の意味や(旺文社1400、桐原4500)、機会などを「利用する」という意味もある(東京書籍4500)。 家計のやりくりなど、なんらかの資金のやりくりなどで、お金をなんとか「絞り出す」というのにもsqueeze は使える(センチュリー)。 ただし、ほかの意味で squeeze には予算などを「圧迫(あっぱく)する」という意味もある(ジーニアス、センチュリー)。 資金のやりくりと、資金の圧迫では、ほぼ逆の意味になるので、読解のさいには文脈からどちらなのかを読み取ろう。 squeeze には「押し入る」「押し込む」や、人ごみや席などへの「割り込む」「割り込ませる」という意味もあり(センチュリーが押し入りと割り込み。ジーニアスは割り込み のみ)、旺文社が「押し入る」を紹介している。「圧迫する」から「押し入る」などを連想しよう。 indispensable 「不可欠な」は桐原5500巻末や旺文社1900本文と東京書籍4500巻末が紹介しているが、これを直接に覚えるよりも前に、まず、銀行などの「現金支払い機」dispenser (ディスペンサー)を覚えよう(ジーニアスで銀行の「現金支払い機が dispenser だと確認)。 動詞 dispense は、「分配する」とか、機械が「出す」という意味である(ジーニアス、センチュリー)。 なので、コーヒーなどの自動販売機も dispenser である(センチュリー)。 で、形容詞 dispensable は「それほど必要ではない」「なくても済む」の意味である。 「自分はなくても済むので(dispensable なので)、他人に分配できる(dispense できる)」→「分配する機械がデイスペンサー」とでも、こじつけて覚えよう。 で、in- はここでは否定の接頭辞なので、 indispensable 「必要なので分配するわけにはいかない」→「つまり、必要不可欠」→単に「必要不可欠」と言えば済む のように indispensable を覚えるのが、関連の語彙も覚えられて一石二鳥だろう。 旺文社1900だけ、indispensable の項目で、派生語の dispense 「分配する」「施す」「~なしで済ませる」を紹介している。 桐原5500は、indispensable の類義語で、essential や integral を紹介している。 be indispensable for ~(ないと困る物) 「~は必要不可欠である」 のように使う(旺文社1900、東京書籍4500)が、文脈によっては for でなく別の前置詞や接続詞の場合もある(桐原4500)。 ---- 要約 summary, brief summary (サマリー)が「要約」の一般的な語でしょう(特に出典は無い)。 要約のまとめ方や業界によって、outline (アウトライン)や brief (ブリーフ)など、別の言い回しのほうが好まれる場合もあります。 「要約する」の意味が、extract 、compress 、summarize などの単語があります。要約のことを summary (サマリー)と言います。サマリーの動詞形が summarize (サマライズ)です。 ほか、brief も、名詞では「簡潔な説明」の意味、動詞では(読みやすいように手短かに簡略化された説明にする、という意味での)「要約する」の意味です。 桐原4500が brief を「要約」の意味で紹介しています(桐原4500)。 in brief 「手短かに」 の意味です(桐原、旺文社)。 また、 keep it brief 「手短かにする」 です(東京書籍、旺文社)。it の部分は、必要に応じて適した目的語に変えます。 名詞形 briefing は、「簡潔な説明」の意味もありますいが、「事前の打ち合わせ」の意味でも使われます(旺文社)。 compress と extract は、現代ではコンピュータ上の処理で使うし、現代の商業の著作物の大半はパソコンで作られているので、やや使用の歳には注意が必要かもしれません。 summarize のほうがいいかもしれません。 一方、 summarize もまた、辞書や単語集では「要約」を名詞 summary と簡単に言いますが(桐原4500、旺文社1900)、実はサマリー summary と日本語の「要約」は微妙に違います。 英語では、1~2行ていどの短文で短くまとめることを summary と言うこともよくあります。brief だと「記者会見」など別の意味に誤解されるからか、本来なら "brief" というべき単なる1~2行ていどの事実報告でも英米では summary でそういう1行程度の事実報告を言い表す場合もあります。 brief だと、たとえば press briefing が「報道向け説明会」で使われたり(ジー二アス)、briefing session が「定例記者会見」だったり(ジー二アス)、ややニュアンスが「要約」とは異なります。全体像を理解しやすくするよりも、brief は短時間に発表することがニュアンスにあります。 summary execution で「即決処刑」である(ジーニアス)。 要約を意味する単語 summary には、形容詞として「略式の」という意味もある。execution は「処刑」の意味です。 この例のように、summary は日本の「要約」とは、ややニュアンスが違う場合もある。 さて、米英の外交官の著作した回顧録(かいころく)の出版物で読んだのですが、 外交官は、定期的に サマリー summary という1~3行ていどの事実関係の報告を本国によく送るするらしいです。 日本語では、新聞やテレビのニュースにおける「短信」(たんしん)が短いので、近いでしょうか。 大使館の職員でもありますから記者会見(ブリーフィング)とは区別する必要もあるでしょうから、brief ではなく summary でそういう短いを言うのも合理的でしょう。 なお、「回顧録」(かいころく)は英語で memoir (メモワール)です(旺文社1900、ジー二アス)。単語集では、旺文社1900にのみあり、受験英語としてではなく英検準1級対策として紹介されている語です。桐原4500・5500および東京書籍4500にはありません。 外交官とか、この手の報告では、分析は極力交えず、事実だけを報告します。分析は、別途、本国のほうで行ってもらうのです。こうすることで、外交官は情報収集にのみ専念できます。 外交官は滞在先が友好国とは限りませんし、(自国以外との)紛争当事国などの場合もあります。もし友好国でない場合、もしかしたら滞在先の警察や軍隊によって通信が盗聴されたりしているかもしれません。そういう環境で、あまり分析を外交官側で行うべきではないでしょう。 なので、ともかく summary のほか、日本語には「要約」の他に適切な表現があまりないので、summary の訳は「要約」で通じますし、辞書や単語衆にも「要約」だと書いていますし、「まとめ」でも構いません(旺文社)。 「要約」のほか、ジーニアスには「概略」や「大要」、センチュリーには「概要」や「大略」なども書いてありますが、しかし上述のように、1~2行ていどに縮めて報告する書類形式というビジネスなど実務での背景がありますので、いちばん短い感じのしそうな「要約」が無難な表現でしょう。 実際、単語集にも、名詞 summary は「要約」で紹介されています。 これから紹介するのは高校範囲外の単語ですが、英語では、1行要約ではなくて、せいぜい5~8行くらいの文章で要点を列挙して書いたのは outline (アウトライン)などと言います(※高校の範囲外)。 アウトラインを書く場合も、できえば箇条書きにするなどして(ジーにアス)、全体構造を見やすくする必要があります。 ジー二アスには行数の条件は書いてないですが、普通、箇条書きされた説明は、長くて5~8行ていどのものでしょう。1行の箇条書きとか意味不明ですし、100行の箇条書きとか論外です。 ジーニアスいわく、そういう箇条書きされたものが本来のアウトラインとのことです。ジーニアスでは「概略」「概説」、センチュリーでは「概要」「あらまし」を outline 訳にしています。 outline の訳語を覚えるよりも、『箇条書きする等して手短かにまとめたものを「アウトライン」という』と覚えたほうが応用が利くでしょう。 仕事の報告での情報のやりとりなどで、もし1行要約だと短すぎて情報不足なときに、アウトラインによる報告が役立ちます。そういう使い分けをするのが大事です。 もしかしたら英米人のなかには、そういう使い分けをしない人もいるかもしれませんが、そういう人はレポートの書き方を知らない人であり、つまり知的レベルの低い人なので、相手する必要はないです。 まとめると、summary が「要約」の一般的な語だとみなせるでしょう。 要約のまとめ方や業界によって、outline や brief など、専用の言い回しのほうが好まれる場合もあります。 ---- 重要 crucial, important 決定的な crucial , decisive 4500語レベルの単語集に crucial (クルーシャル)と言う単語があって「決定的な」「主要な」という意味である。 だが、decisive という「決定的な」の意味の単語がある。(東京書籍4500に単語だけ紹介されている。旺文社1900の巻末の章に、単語だけ「決定的な」「断固とした」と意味が紹介されている。桐原4500にはない。桐原5500にある。) ジーニアスいわく、「決戦」は a decisive battle である。 ジーニアスの例文では、decisiveは「将来を決定する」という意味もあると説明している。 東京書籍4500の crucial 項目の例文で、「そのオーディションに合格することは私の将来にとって決定的な意味をもっている」とある。 ジーニアスでcrucialを見たら、「重要である」という意味であり、例文が「我々が決勝戦に勝つには、彼の支えが重要である。」の「とても重要である」が crucial である。なお、「決勝戦」はその項目を見る限りは the final match である。 crucial の意味で、桐原と東京書籍には「決定的な」と書いてあるが、正直、decisiveのような断固とした気迫が足りない。「決戦」で負けると死ぬが、オーディションで負けたり「決勝戦」で負けても死ぬわけでもあるまい。 あまり論理的ではないが、decisive は、おそらくスペルが同じく"d"から始まる determination 「決心」「決意」の影響を受けてきたのだろうか。 動詞 decide と動詞 determine の違いについては、別セクションで語る予定。 crucial の意味は「非常に重要な」(桐原)で十分だろう。旺文社1900に至っては、「決定的な」の意味は紹介せず、crucial では「重要な」として紹介していない。 まあ、important よりかは重要度が高いつもりのニュアンスでしかないだろう。 旺文社1900では「書類を確認する際は注意することが重要である。」でcrucial を用いている。 桐原4500では「国際貿易はこの国の発展に非常に重要だ。」で crucial を用いている。 まあ、センチュリーcrucial の例文にあるように「彼のホームランは我々の勝利を決定的にした。」でcrucial を用いているように、命をかけるほどでもない野球の試合でも決定的な瞬間はあると思うので、そういう場合は crucial を使うのも良いだろう。 桐原5500にcrucial で「命にかかわる」の意味を紹介しているが、しかしジーニアス英和およびセンチュリー英和では確認できなかった。 そもそも vital という「生命維持に必要な」の意味の形容詞がある(センチュリーで確認)。 そもそも「重要」という概念自体、言葉の割には、vital のような生命への必要不可欠さが足りない。 ---- 外国の alien, foreign 米国の外交問題についての専門雑誌で「Foreign Affairs」というのがあるが、affair (アフェアー)とは「出来事」「関心ごと」の意味である。affair は別に恐怖とは関係ない。「Foreign Affairs」は戦争の話題が多い雑誌だが、しかし雑誌名は「恐怖」とは全く関係ないので誤解しないよう。 「Foreign Affairs」は直訳すれば「外交の関心事」みたいな意味の雑誌名であろう。 なお、日本の「外務省」も英語版ホームページでは Ministry of foreign affairs である<ref>[https://www.mofa.go.jp/index.html "Ministry of Foreign Affairs of Japan" ] 2022年5月4日に確認. </ref>。 海外旅行とか海外出張とかでは必要な単語のひとつなので、頭の片隅に入れておこう。 ministry とはイギリス英語で省庁のこと。ただしアメリカでは、省庁を department と呼んでいる。 つまり日本政府は、「省庁」についてはイギリス英語を採用。 デパートなんて百貨店っぽい。なお百貨店は英語で department store である。 なおイギリスでも、新設の省庁については department を用いることもあると、ジーニアスは説明している。 さて、「省庁」の呼び名には、あまり深入りしてほしくない。 それより重要なのは、「大臣」 minister である。 大臣のことを minister という。単語集では「大臣」minister の項目に書いてあるが、「外務大臣」は foreign minister である。 今の単語集にはあまり書いてないが、昔はよく「総理大臣」は英語で the prime minister だと高校で習ったものである。いちおう、東京書籍の例文中に「総理大臣」the prime minister がある。桐原には書いてない。 説明の都合上、先に「省庁」 ministry を紹介したが、覚えるなら先に「大臣」minister から覚えたほうが良い。 語源としても、ラテン語で「従者」とかのことをミニステルと言うので、先に「大臣」→「省庁」の順番で単語ができたと考えるほうが合理的である。ジーニアスにも、ラテン語とは買いてないが、「召使い」がminister の語源だと書いてある。 prime については、主要という意味での「第一の」という意味である。センチュリーにある訳語だが、「第一位の」というのがニュアンスに近いだろう。 primeの語源はもともと、カトリックの日課の「最初の」礼拝のこと(ジーニアスで確認)。 primeはこういう意味なので、単に一番目であるだけでなく、さらに重要性の高いものに使われるというニュアンスがある。 ただし、実際の用例では、国家一番や世界一番でなくとも、たとえば肉が美味しい場合でも「極上の肉一切れ」 a prime cut of meat という風にも使う(ジーニアスで確認)。センチュリーにも似た例文がある。 「全盛期」、「絶頂期」という意味もあり、 in prime of his life(またはcareer) 「彼の人生(またはキャリア)の全盛期」みたいにも使う。 「全盛期」には、ほかに短い類義語が無さそうである。和英辞典で「全盛」を見ると、prime のほかに pride とか summer があるが、しかし英和でそれらの項目を確認しても、ニュアンスが違う。pride のほうは、pride of place という語句で「最高位」「最上位」という意味だし、summer は人生における「壮年」などの比喩でしかない。 名詞 foreigner は「外国人」 である。ただ、英語ではこの言い方は差別的な意味合いがあるとのこと。桐原3000いわく、なるべく、たとえば「カナダ人」 Canadian など具体的に言うべきとのこと。 なお、日本では『「外国人」を「外人」と呼ぶのは差別だ』という俗論(ぞくろん)が1980年代に流行した。 このためか、単語集には、foreigner には「外国人」という訳が書いてある(桐原3000、東京書籍3000)。 桐原3000がいまだに『「ガイジン」という差別的なニュアンス』で説明している。 「外人」が「人から外れた」で差別的という俗論(ぞくろん)が1980年代にあった。まるで「外道」みたいだと。なので「外国人」と言うべきだという俗論があった。 しかし、もし「外人」が外道という意味なら、「外国人」だって「外道の国の人」という意味になってしまい、俗論は成り立たない。 そしてなにより、1990年代、当の日本滞在している海外出身者の多くが、自分たちを普通に「外人」と呼んでいた。 証拠として、1990年代のテレビ番組で、在日外国人たちがスタジオに集まって議論する番組『[[w:ここがヘンだよ日本人|ここがヘンだよ日本人]]』というTBS系の番組で、当の外国人が自分たちを「外人」と普通に呼んでいた。 「外人」という言葉は単に口語なだけで、差別用語ではない。 だいたい、外国語のことを「外語」としばしば略して言うが、差別ではないだろう。東京外国語大学を「外語大」と略したら差別なのか。 alien alien (発音: エイリアン)は「宇宙人」という意味があるので、なんとなく、あまりよくないイメージを読者は持ちがちかもしれないが、しかしジーニアスで確認すると、法律上の用語で「外国の」「異国の」という用法がある。 センチュリーによると、市民権をもたない外国人のことを alien と言うとのこと。 alien は、名詞も形容詞も同じスペルの alien である。 名詞 alien は「外国人」「宇宙人」の意味。 形容詞 alien は「外国の」「外国人の」の意味と、「異質の」「なじみがない」の意味。 よくある例文が「その習慣には、なじみがない」で、習慣 custom に alien で「なじみがない」という内容の英文を東京書籍とジーニアスで見かけた。 語法は、 ~(習慣など) is alien to □□(人々) で、 「~(習慣)は□□(の人々)には、なじみがない」の意味。 たとえば、 alien to us なら「私たちにとって、なじみのない」という意味(ジーニアスおよび桐原)。 ---- 国内の domestic, internal (※範囲外) 「国内総生産」 GDP の「D」が Domestic の略である。GDO は gross domestic product のことである(東京書籍)。 「家庭内暴力」を DV というが、その D もdomestic である。 domestic violence が「家庭内暴力」である(東京書籍)。 高校レベルでは、「国内の」と言う意味での domestic が、「外国の」 foreign の対義語である。 つまり、 domestic ⇔ foreign である(桐原4500)。 さて、 「国内の」 を意味する形容詞 internal は、「国内問題」というとき internal affairs という(ジーニアス、センチュリーで確認)。 なお、数学の図形の幾何学の、「内角」も internal angle である(ジーニアスで確認)。 internal には医療などで「内服の」や「体内の」などの意味もあるが、共通の例文が確認できなかったので、説明を省略する。 なお外角は external angle または exterior angleである(ジーニアス和英で確認。英和にはない。和英)。 なお、「幾何学」は geometry (ジオメトリー)である(旺文社1900)。なお「地理学」はgeography (ジオグラフィー)である(桐原4500、東京書籍4500)。「地形」や「地勢」などもgeography である(東京書籍)。 geo- (ジオ)というのは「地球の」とか「地理の」という意味だが(ジーニアス)、幾何学にも使う。おそらく、古代のヨーロッパでは幾何学の知識を活用して、地図などを作成していたのだろう。 「ユークリッド幾何学」は英語で Euclidean geometry である(旺文社1900、)。「ユークリッド幾何学」というのは、日本では中学の数学で、図形の証明として習う、あの理論の体系のこと。「タレスの定理」とか「中心円の定理」とか、あそこら辺が「ユークリッド幾何学」。紀元前のギリシアの数学者エウクレイデスの名前にちなんで、英語読みでユークリッドになる。 なお、X-Y座標を使って計算する座標幾何学は、ユークリッドではなく「デカルト幾何学」という別の理論体系。デカルトは中世フランスの数学者。デカルトあたりが、座標幾何学の理論を整備しはじめたので。 さて、形容詞 interior は「内部の」という意味の形容詞だが(ジーニアス)、しかし普通は家や自動車の内壁に対して interior を使う(ジーニアス)。 ジーニアス英和の interior によると、幾何学の「内角」を interior angle で表してもいいとのこと。旺文社1900も東京書籍4500も、建築物の「室内の壁」を the interior walls としている。なお、東京書籍は「内部の壁」と和訳。 ---- 生産量 output, production 「生産」を意味する production に、「生産高」の意味もある(ジーニアス)。なお、単語集では、prodcution の「生産高」の意味までは説明していない(東京4500、桐原4500、旺文社1900を確認)。 increase production で 「生産量を増やす」である(ジーニアス)。センチュリーでも、文章は違って完了形などになるが、「映画製作が減少」という内容の文で production を生産量の意味で使っている。 より平易に output でも「生産高」を言える(旺文社、ジーニアス)。 工場などの生産高から(ジーニアス)、芸術などの産物まで(センチュリー)、output で表現していい。 production や produce には、「大量生産」のようなニュアンスがある(東京書籍)。 なお「大量生産」は mass production である(センチュリー)。 なお、テレビ番組や音楽作品などの生産から、その生産された作品なども production である(ジーニアス)。 output の対義語は input である。 つまり input ⇔ output である。 input で、名詞としtrは、仕事や活動などへの資材や労働力などの「投入量」、コンピュータへの「入力」を意味する。また動詞としては、「投入する」や「入力する」の意味である(ジーニアス、センチュリー)。 旺文社の単語集には、inputに投入量の意味がないが、しかし辞書で「投入量」を確認できる。 同様に、対義語のoutput は、仕事や活動などの「生産高」や、コンピュータからの「出力」である。動詞としても同様に「産出する」(ジーニアス)や「結果を出す」(センチュリー)や「出力する」である。 input には、仕事・活動などへの援助としての情報提供やアイディア提供などの意味もある(ジーニアス、センチュリー)。 東京書籍や桐原の単語集には input や output が見当たらなかった。だがこれからのIT時代、必要になる単語であるので、ぜひとも意味を理解しておきたい単語である。 ---- 「外国」と「海外」 外国へ abroad 海外へ overseas 「外国に」「外国へ」は abroad であり、副詞である。 「海外に」「海外へ」は overseas であり、副詞である。 overseas は字ヅラだけ見れば、海を越えて外国に行くことだが、アメリカでは実際にはヨーロッパへ行くことに使われる事が多い(ジーニアス)。 travel overseas で「海外へ旅行する」である(旺文社)。 travel abroad で「外国へ旅行する」であるが、東京書籍では「海外へ旅行する」と訳している。 from overseas で「海外から」である(旺文社)。 abroad の典型的な例文が、 「私は外国へ(一度も)行ったことがない。」 I have never been abroad. である(東京書籍、桐原)。東京書籍と桐原で、同じ英文。桐原のほうには和訳で「一度も」がある。 ---- 結果 result, outcome, consequence 桐原4500と東京書籍4500の後半にoutcomeの単語の紹介があるが、良書とも解説を諦めている。 単に 結果のことを result だけでなく outcomeとも言うと、知っておくしかない。 consequenseは、単に「結果」を、固い言い回しにしただけであるが、東京書籍4500によると、「通例望ましく結果にconsequenceを用いる」とこのこと。 センチュリーと東京書籍に「深刻な結果」 a serious consequence と言う例文がある。 副詞 consequently は「その結果として」「したがって」の意味。 ---- 考え concept, notion ,ほか(idea, thought ,など色々ある) concept は、たとえば相対性理論の考えだとか、割と抽象的なことに使う。桐原4500いわく、「アインシュタインの相対性理論の概念」は Einsrtein's concept of relativity である。 notion は、そこまで抽象的でなく、たとえば人生観(ジーニアス)とか宗教観(センチュリー)とか。 ジーニアスでは「人生は航海だという考え」の「考え」を notion としている。 旺文社だと「概念」と言ってるが、無視していい。 概念というより「観念」だろう。 あるいは「観念」という用語をしらない高校生に向けて「概念」と書いたのかもしれないが、そんな底学力層のことは読者は気にしなくていい。 その他、ジーニアスで「意見」、センチュリーで「意向」だと言ってるが、両辞書で説明が一致しないので無視する。 ---- 「規範」と「基準」 規範 code 基準 normal (学校などの)規律、しつけ discipline 普通 normal, ordinary codeには「規範」「暗号」「法典」などの意味がある。 まず、codeの規範について。 ドレスコード dress code は「服装規程」のことである。「ドレスコード」「服装規程」とは、たとえばクラシック音楽コンサートホールとかの上流階級っぽい施設に入場しようとするとき、どんなに金を持っていても、もし服装が短パンとかジーパンとかだと入場を断られることがある。 成人男性の場合なら、背広とかのフォーマル formal な服装とかでないと、そういう場所には入場できないのである。そういうのをドレスコードと言う。 商業施設に限らず、たとえば冠婚葬祭(かんこん そうさい)とかの行事でも、その内容に見合った服装が求められる。 旺文社1900の例文が例文としてドレスコードを紹介しており、まさに大学進学を目指す階級にふさわしく、とても良い。 ドレスコードの場合、codeは訳では「規則」や「規程」ではあるが、マナー的なニュアンスもある。 ジーニアスで確認したが「不文律」 code of silence という単語がある。 「行動規範」 は a code of conduct である。 ここら辺の表現が、上流階級に求められるマナー的な code であろうか。 その他、ビジネスライク名表現だが、「業務規程」 code of practice というのもある。 マナー以外にも code は使い、「民法」は the civil code , 「刑法」は the criminal code である。 だが、「lawで十分じゃん?」と思ったのか、東京書籍4500ではcodeの項目を見ても「暗号」しか紹介していない。なお、桐原4500の例文が、アメリカの各州の刑法 criminal code の違いの話題(いわゆる「州法」)。 おそらく東京書籍は、マナーの話をしたいなら manner で済むだろう、という発想だろう。なお、manner も英語であり、東京書籍4500にもmannerが書いてある。 「暗号」については、典型的な例文が 「暗号を解く」 break a code である(東京書籍4500, 桐原4500)。 normal (ノーマル)は、日常的には「普通の」「平均的な」という意味である。 だが、学問としては、労働などの「基準量」の意味を覚えておきたい。 日本では最近はすたれた言い回しだが、「ノルマ」という、たとえば1日あたりの、しなければならない労働の最低量として「ノルマ」という語があった。 単語集にはないが、辞書で normal の意味に、数学の「直角の」という意味もある。おそらく、古代ギリシア人あたりが、角度の基準として直角(90度)を採用したのだろう。 なお、数値的な「平均の」を言いたいなら、 average である。形容詞「平均の」も名詞「平均」も average である。桐原4500では、normal のページといっしょにaverage も書いてある。 normal の対義語 abnormal は「異常の」「異常な」の意味である。 逆に考えれば、normal の意味は、「通常の」「正常の」でもある。桐原のnormal に「正常な」が書いてある。東京書籍の副詞 normally に「通常は」が書いてある。 ordinary 「ふつうの」「平凡な」は、よく「生活」と結びついて、ordinary life 「ふつうの生活」(東京書籍の訳)または「平凡な生活」(桐原の訳) ordinary はこのように、並外れた部分がないというニュアンスがある。 逆に対義語の extraordinary は、「並外れた」の意味である。 「異常気象」は extraordinary weather である(東京書籍、ジーニアス)。 単語集にはないが、「臨時国会」も an extraordinary Diet session (ジーニアス)あるいは an extraordinary session of Diet (センチュリー)のように言えることも、覚えておきたい。なお、Diet とは、日本の「国会」のこと。外国の国会の呼び名は違っている場合も多いので、外国の国会のことを言いたい際には、その国ごとの呼び方を調べること。 そのほか、ルールに従わせるための統制や、そのための訓練のことなどを、 discipline という。 子供の「しつけ」や、学校の規律などが discipline である。 ジーニアスいわく 「学校の規律」 school discipline である。 また、センチュリーいわく「学校での規律」は discipline in school である。 子育てや教育にかぎらず、たとえば行政などの「金融統制」は financial discipline である(ジーニアス)。 そのほか、単語週では旺文社1900しか紹介していないが、大学での「学科」や「学問分野」のことも discipline という。辞書には普通に「学科」も「学問分野」も書いてある(ジーニアスで確認)。なお、実は旺文社では「学問分野」しか書いてないが、説明の都合で段落冒頭では「学科」も加えて紹介した。 ---- 通訳と翻訳 「通訳する」「解釈する」 interpret 「翻訳する」 translate 「通訳」とは、普通、口頭での翻訳のこと。 だから翻訳サイトの「グーグル翻訳」も、べつに口頭でのやりとりではないので、英語では google translate なわけである。 「通訳者」は interpreter である。 「同時通訳」は simultaneous interpretation である(旺文社 simultaneous、ジーニアス、センチュリー)。 simultaneous は「サイマルテイニアス」と読む。シミュ~とは読まない。 名詞形の「通訳」「解釈」は interpretation である(旺文社)。 東京書籍と桐原だと「解釈」の意味しか紹介していないが、しかし上述のように「同時通訳」でも interpretation は使われるので、「通訳」の意味も覚えるべきだろう。 なお、数学の「連立方程式」は simultaneous equation である(ジーニアス)。 simultaneous の部分が「連立」である。 「方程式」は equation である。 翻訳者は translator である。 ---- 変化 alter, transform, change transform は、単に change より堅い語。つまり transform は動詞「変化する」または名詞「変化」の意味。 -formが「形づくる」という意味なので、昆虫の「変態」などの外見的な形状についての用例が多いが、しかし実際の用例では、外見とは関係ない変化でもtransformが使われていることもある。たとえばジーニアスの例文「結婚後、彼は別人のようになった。」でも transformを使う有様である。桐原の例文でも、「その映画が、彼女を無名の生徒から大スターへと一変させた。」をtransformで紹介している。 なお、旺文社にもあるが、 transform A into B で「AをBに変化させる」である。 だから旺文社にある「太陽エネルギーを電気に変える」なら、 transform the sun's energy into electricity である。 先ほど紹介したジーニアス例文の「別人のようになった」も、 be transformed into another man である(文全体は著作権のため紹介せず。辞書を買って読もう)。 ジーニアスによれば、オタマジャクシの蛙への「変態」も、名詞形 transformation である。(スペルが所々難しいので、英文は紹介しない。) 社会を変化させたり、社会が変化することも、transform であり、ジーニアスでは「民主化への移行」を transformation としている。東京書籍の例文でも、「社会を変革する」 transform society である。 なお、単語集にはないが、トランスフォーマー transformer とは、電気の「変圧器」のこと。 alter alter (発音「オールター」)というのは、原義的には「部分的に変わる」という意味である。だが実際の用例では、部分的でないのに変わっている用例もよくあり、あまり定かではない。 とりあえず、よくある例文が、「計画を変更する」alter one's plan である。センチュリーと桐原に、似た例文がある。 だが、alterの単語そのものよりも、派生語の alternative を覚えるべき。 桐原と東京書籍の単語集では、alterの項目とは別に、alternativeの項目がある。 alternative は形容詞としては「代替の」の意味であり、名詞としては「選択肢」の意味である。 ジーニアスによれば、「代案」も名詞 alternative でいうこともあるらしい。また、東京書籍では、 alternative plan を「代案」としている。 ジーニアスによると、本来は alternative などは2つの選択肢のものに使うという説があるらしく、そのため3つ以上のものに使うのを嫌がる人もいるらしい。 しかしセンチュリーによると、実際には3つ以上の選択肢にもalternativeなどが使われているとのこと。 なお、東京書籍4500では「2つの選択肢」two alternative と妥協している。 東京書籍およびセンチュリーいわく「代替エネルギー」は alternative energy である。 なお、桐原いわく、「代替エネルギー源」は alternative source of energy とのこと。 このほか、派生の名詞で、オールター'''ネ'''ーション alternation およびオールター'''レ'''ーション alteration があり、それぞれ別の意味であるので、混同しないように注意。どういう意味かは説明しない。旺文社がオールターレーションを説明しており、桐原がオールタネートを説明している。東京書籍は説明していない。 ---- 魅了 charm, fascinate, attract 魅力的な attractive, magnetic charm は「魅了する」である。 しばしば受身形で使われ、 be charmed by ~で「~に魅了される」である(東京書籍4500および旺文社1900)。 charm は、語源が「魔法をかける」であるので、まるで魔法のように「魅了する」というイメージの単語である。もっとも、charmの単語を使うさいに実際に魔法をかけている場面な必要はない。 なお、charm で「魔法をかける」という意味もあり、魔法をかけられた相手は別に魅了される必要はなく、たとえば眠りの魔法をかけられて眠る場合でも charm というと、センチュリー英和は述べている。 「お守り」も charm である。 なお、単語集にはないが、「アミュレット」 amulet と charm の違いは、amulet は「魔除け」とのこと。 charm は、魔除けでなくとも、たとえば幸運を呼ぶ「お守り」などでもいい。 だから、旺文社1900およびジーニアスで紹介しているが、「幸運のお守り」を good-luck charm ともいう。ジーニアスによると、単に lucky charm でも「幸運のお守り」である。 魔除けでないのに「お守り」という和訳が妙だが(悪魔以外の何から守るのか?)、ほかに適切な日本語が無いので「お守り」という表現で我慢してもらいたい。 桐原3000および桐原4500にcharmはない。東京書籍4500にcharmがある。 attract は、たとえば遊園地やショーなどに名詞形 attraction アトラクションが使われる。 attract はもともと「引き付ける」という意味である。車のトラクターなども、同じ語源。 attractが「引き付ける」なので、魅了以外にも、「大声で目を引きつける」ような場面でも attract が使われる。 東京書籍とセンチュリーにある例文だが、 「注意を引く」attract attention である。 人気(にんき)などで「人目を引く」意味での魅了するのも attract である。コンサートとか博覧会とか。 性的な魅力で「引き付けられる」のも attract という。 昆虫などが花に引き付けられたり(センチュリー)、アリが砂糖に引き付けられるのも(ジーニアス)、 attract である。 東京書籍とセンチュリーにある例文だが、 「花はハチを引き付ける」 The flower attracts a bee. である。 磁石 magnet の形容詞 magnetic は、「磁石の」という意味だが、比喩的・派生的に、形容詞 magnetic には人格が「魅力的な」という意味もある(東京書籍、旺文社)。なお、容貌の美しさで人を惹きつける場合は attractive を使う(ジーニアス)。 「魅力的な人格」 a magnetic personality である(センチュリー、ジーニアス、旺文社)。 性格・人格をあらわす単語には、personality のほかにも character があるが、しかし magnetic を使う場合はどの辞書でも personality を使っている。 なお、「魅力的な人」は a magnetic person である。 「磁力」は magnetic force である(旺文社、センチュリー)。 「磁場」は magnetic field である(東京書籍、ジーニアス)。 単語集にはないが、磁石が鉄を引き付けるのも、attract である。 典型的な例文が、 A magnet attract iron. 「磁石は鉄を引き付ける。」 である(センチュリーの英文をそのまま。ジーニアスにも似た例文がある)。 なお、英語に tract という動詞は無い。名詞で tract という単語はあるが、別の意味である。英語の tract は、土地の「広がり」だとか、「消化管」とか、全く別の意味である。 もし英語で、綱(つな)などを「引く」といいたい場合、pull や draw などを使うことになるだろう。 fascinate は、辞書を見た限り、音楽や文芸などの芸術で、「魅了する」という意味。 しかしセンチュリーの例文では、宝石で「魅了」されるのも fascinate である。 しばしば受身形で使われ、 be fascinate by(または with) ~で「~に魅了される」である(東京書籍4500および旺文社1900および桐原4500)。旺文社1900にwithとbyが両方とも書いてある。東京書籍では by だけ。桐原はwithしか書いてない。 ---- 「誘惑」 魅惑 attract, fascinate 誘惑 temptation, lure 英語では、「誘惑」は「魅惑」とは区別する必要がある。 東京書籍と旺文社の単語集に tempt という単語がある。東京書籍が tempt を「誘惑する」という意味で紹介している。 なお旺文社は「その気にさせる」「引きつける」と紹介。 旺文社の単語集では名詞 temptation テンプテーションを単語だけ紹介している。 辞書で temptation を見ると、悪への「誘惑」でよく使われ、盗みへの誘惑だとか、賄賂で誘惑だとか、そういう意味である。ジーニアスやセンチュリーによると、キリスト教では、悪魔の誘惑も temptation というらしい。なお動詞は tempt である。ジーニアス和英で「誘惑」を調べると、temptation が最初にある。なお、ジーニアス和英ではtemptation, seduction, allurement, snare , がこの順序で掲載されている。 こういう事情があるので、 attract や fascinate を和訳する際は、「誘惑」と訳すのは避けるのが安全だろう 旺文社が「誘惑に負ける」 yield to temptation を紹介している。 おそらくだが、本来なら負けるべきでないのが望ましいというニュアンスがあるのだろう。 なおジーニアスを見ると、動詞 tempt は悪に「誘う」の意味のほかにも、食欲などを「そそる」の意味もある。ジーニアスでは「ケーキをもうひとつ召し上がりませんか?」みたいな気楽な会話でも tempt を使っている。 東京書籍でも、「デザートを食べたいという誘惑にかられた」で be tempted to have dessert としている。 lure は動詞としては「誘惑する」、名詞としては「魅力」「おとり」「疑似餌」の意味。桐原5500でlureを紹介している。 魚釣りのルアーと同じ単語。 動詞 lure は、だまして「誘惑する」という意味が強く(センチュリー)、「誘惑する」の意味のほか、「おびきよせる」「誘い込む」などの意味もある。 ただし、名詞 lure のほうは、ジーニアスの例文を見る限り、「だます」というニュアンスは低そうである。 日本では知られていない政治家ですが、アメリカの20世紀前半の政治家アール・ウオーレン([[:en:w:Earl Warren]])の発言で、 “The temptation to imitate totalitarian security methods is a subtle temptation that must be resisted day by day, for it will be with us as long as totalitarianism itself.” - Earl Warren という有名な一節があります。 全体主義の(totalitarian)国防の方法を真似しよう(imitate)という誘惑(temptation)は、日々(day by day)、抵抗しなければならない、微妙な(subtle)誘惑です。(※ for 以下は省略) temptation や subtle など、高校英語が2つも学べる、お得な例文です。 東京書籍4500に、subtle「微妙な」と書いてあります。 ---- 工業と製造業 産業 industry 製造業 manufacture 「勤勉な」 industrious, diligent, hardworking 「産業の」 industrial まじめな earnest manufacture は、「製造業」の意味である。 語源を見ると、manu- というのは手を表すので、一見すると手作業で何かをする産業全般に使えそうだが、しかしジーニアス和英で確認したところ、普通は製造業に使う表現だとのこと。それどころか、辞書の解説および東京書籍の例文では、機械での大量生産で manufacture を用いるとのこと。 manufacture には動詞の意味もあり、工場などで「製造する」の意味である。 桐原は名詞 manufacture、東京書籍と旺文社は動詞 manufacture を紹介しているので、勉強は両方ともしておきたい。 なお、「製造業者」のことは、別単語で manufacturer という。語尾に r が付いているので注意。 一方、industry は、たとえば、ホテル産業や銀行業などのサービス産業を service industries という。 東京書籍では、「観光産業」を the tourist industry と紹介している。 センチュリーによると、自動車産業を a car industry という。 ジーニアスやセンチュリーに書いてあるが、「重工業」を heavy industry といい、「軽工業」 を light industry という。 訳語の都合で「工業」と訳す場合もあるが、一般的には「産業」といわれるものは industry である傾向が高い industry には、「産業」の意味のほか、「勤勉」という意味もある。むしろ語源的には、「勤勉」のほうが近い可能性もある(ジーニアスで確認)。 形容詞形は、意味によって形が変わる。 「産業の」は industrial である。 「勤勉な」は industrious である。 「勤勉な」は、たとえば「その学生たちは勤勉だった。」 the students were industrious. のように使う。 アクセント注意の単語であり、名詞 industry は、冒頭「イ」i-にアクセントがある。 一方、形容詞には industrial も industrious も、-dust- の「ダ」の部分にアクセントがある。 名詞「勤勉」を平易な単語で言い換えたいなら、 hard work とも言える(桐原industrious でも紹介している。ジーニアスにも書いてある)。 * diligent 「勤勉な」の類義語として diligent というのもある。単語集では旺文社1900にしかindousriousとの類義語だと書いてないが、しかしセンチュリーで diligent を調べれば、hardworking より「固い語」だと書いてあるので、同じく hardworking より固い語である industrious との類義語だと分かる 違いは、diligent は、特定のことに対してだけ勤勉または念入りになることである。 なので、(仕事などに)「精を出す」などと訳されることもある。 だが、実際には、たとえば桐原の例文だが「トムはとても勤勉な学生だ。」のように、 Tom is a very diligent student. のようにも使われる。 なお、名詞「勤勉」は diligence である。 このような、industrious と diligent とのニュアンスの違いのため、果たして対義語「怠惰な」lazy はどちらの対義語かという問題がある。 桐原およびセンチュリーではdiligentの項目で、lazy は diligent の対義語と紹介している。 ジーニアスでは、diligent の項目を見ても lazy については紹介せず。 語法 be lazy to ~ で「彼は怠け者なので、~しない」である。 典型的な例文が「彼女は怠け者なので、掃除しない」であり、東京書籍とジーニアスに似た例文があり、 She is too lazy to clean her room. 「彼女は怠け者で、自分の部屋の掃除をしない。」 である(ジーニアスと同じ文。東京書籍はこれが弟に変わっただけである)。 to 不定詞を使わずとも、 He is lazy. 「彼が怠けている」のようにlazy単独で用いてもいい(桐原3000で確認)。 形容詞 earnest は、よく「真剣な」「まじめ(真面目)な」「熱心な」と訳される(旺文社1900、桐原4500)。 しかし、 She is an earnest student. 「彼女はまじめな学生だ。」(ジーニアス) のように使ってもよく、実質的に勤勉の意味でもあろう。 桐原は、「トムはとても勤勉な学生だ」という例文で delligent を使っている。 ここまで証拠がそろっていて、earnest と delligent を類語ではないと言い張るのは、強情であろう。 なお、 She is earnest. 「彼女はまじめだ。」 のように、名詞をともなわずに使ってもいい。 「真面目な努力」 earnest effort のように使ってもいい(旺文社、センチュリー)。 努力を「勤勉」というのも妙なので、そういう理由でもあってか「まじめな」と訳されるのだろう。 また、earnest には、熱心さのニュアンスがある場合もある(ジーニアス、センチュリー)。 東京書籍1800・3000・4500には earanest が見当たらない。 ---- 怠惰(たいだ) lazy, idle idle (アイドル)は和訳の都合で「怠惰な」と訳されることもあるし、そういう用法もあるが(ジーニアス)、基本的には仕事がなくて暇な状態のことである(センチュリー lazy )。なので、idle は「暇な」という意味で覚えたほうがよい(センチュリーの第一項の意味の2番目がそうである)。 idle には、仕事がないなどの機械や工場などが稼働していない、という意味もある。典型的な例文が、 an idle machine 「遊んでいる機械」 である(ジーニアス、センチュリー)。ここでいう「遊んでいる」とはもちろん、稼働中ではない、という意味である。 「遊休」という表現もあるが、「有休」と紛らわしいのが難点である。 ともかく、このように、稼働していない、のような意味がある。 実際、ジーニアスは、この意味での「稼働していない」 idle の対義語として working をあげている。 ジーニアスいわく、対義語として idle ↔ working, busy とのこと。 また、スポーツ選手などが試合がない状態も idle である(ジーニアス)。 労働者が不況などで仕事がない状態も、よく idle で説明される(旺文社1400 緑、 ジーニアス)。 be idle during the depression 「不況で仕事がない」 などの例文が典型的である。 これが lazy との違いである。lazy は基本、単に怠惰なだけである。ジーニアスは、「怠惰な」の意味でなら、idle よりも lazy のほうが普通だと述べている。 いっぽう、lazy (レイジー)は、仕事が嫌いで怠けている状態である(センチュリー lazy )。 よって、「怠惰」は lazy で覚えるのがよいだろう。 このためか、「勤勉(きんべん)な」diligent(ディリジェント) の対義語は、 lazy である(桐原4500)。 ただし、名詞形 idleness は「怠惰」の意味である(旺文社、センチュリー)。 これは、ことわざで Idleness is the root of evil. 「怠惰は諸悪の根源だ。」(ジーニアス) というのがあるのが原因だろう。 一応、辞書的には、idleness にも「仕事のないこと」などの「怠惰」以外の意味もあるが、しかし上述のことわざを意識すると、なかなか仕事がないだけの状態として idleness は使いづらい場合もあるだろう。 ---- 医者 医者 doctor, physician 内科医 physician 物理学者 physicist 外科医 surgeon 歯科医 dentist physician はアメリカ英語である。アメリカ英語であることは旺文社1900にも書いてあるし、ジーニアスにも書いてある。 アメリカでは、「医者」あるいは「内科医」のことを physician とも言う。 「物理学者」 physicist とはスペルの異なる単語であるので、区別せよ。 「かかりつけ医師」を personal physician と言うと東京書籍は述べているが、しかし英和辞典では確認したところ、ジーニアス英和でもセンチュリー英和でも確認できなかった。 それどころか(英和ではなく和英の)ジーニアス和英で「かかりつけ」を確認したら family doctor 「かかりつけの医者」とまで書かれている。 イギリス英語でも古くは physician で「医者」を表した。 なお、イギリスで「内科医」をどういうかと言うと、ジーニアス和英「ないか」(内科)で確認したところ、 a doctor of internal medicine である。 桐原4500には、medicine の項目で「薬」の意味のほかに「内科」の意味もあると紹介している。ジーニアス英和でもmedicla の項目で「内科の」という意味が確認できる。 東京書籍が言及しているが、 physical には「身体の」という意味もある。 よくスポーツ評論などで「フィジカル」などと言うのは、こういう意味もある。 「外科医」は surgeon である。「外科手術」は surgery である。形容詞「外科の」「外科医の」は surgical である。 medicine は、医薬などの「薬」。 drug は、普通の「薬」の意味もあるが、しかし麻薬などの「薬」でもよく使われる。 いわゆる、薬品販売店の「ドラッグストア」は英語でも drugstore である(東京書籍3000で確認)。 drugstore はアメリカ英語です(ジー二アス、センチュリー)。しかし米英共通の言い回しが無いので、drugstore で覚えれば十分です。 pharmacy (ファーマシー)という言い回しは病院付属の薬局とかで好まれる場合があります(ジー二アス)。 啓林館 Vision quest,(P.62 )で pharmacy が drugstore とともに紹介されていました。 イギリス英語での「薬局」の言い回しが、「chemist's」 という妙な言い回しなので、どの単語集も紹介していません。 東京書籍4500にはdrugはない。東京書籍3000にdrugがある。桐原では桐原4500にdrugがある。 動詞「引っぱる」 drag とは別の単語。 ---- 客 client (弁護士など専門職への)依頼人。会計士や建築士などへの依頼人。 audience (映画・コンサートなどの)観客 spectator スポーツの試合などの観客。見物人 passenger (乗り物の)乗客。旅客 customer 商店などの客。取引先 guest ホテルの宿泊客。式などの招待客。パーティなどの招待客。番組の特別出演者、ゲスト。 主人 host, master 「客」の類義語については、桐原4500が分かりやすい。上記の一覧も、ほぼ桐原4500の内容を写したものである。 なお、エージェント agent は「代理人」。「代理店」は agency である。とはいえ「代理店」と言っても高校生にはイメージしづらいから具体例を言うと、旅行代理店や広告代理店などがある。 東京書籍とジーニアスで確認できるが、「旅行代理店」は a travel agency である。 同様に、東京書籍・ジーニアスなどで確認したところ「広告代理店」は an advertising agency である。なお、桐原にはない。 ほか、法律用語の「代理人」で attorney (アトーニー)というのがあるが(桐原5500、旺文社1900)、法律知識もないのに深入りしてもしかたないので(しかもアメリカ法)、説明を省略。attorney は「弁護士」という意味もある(桐原5500、旺文社1900)。 そんな単語よりも、スペクタクル spectacle を覚えたい。 spectacle とは「壮観」(旺文社1900およびジーニアスとセンチュリーで確認)とか「美景」(ジーニアス)の意味である。なお、桐原と東京書籍にはない。 よく日本では映画とかの宣伝で「スペクタクル!」とか言うが、正しくは派生名詞 spectacular (スペクタキュラー)であり「超大作」の意味である(ジーニアスで確認)。 -spect- (スペクト)というのは、「見る」という意味である。 だから観客 spectator も、見物客のようなニュアンスである。 ほかの名詞の例なら、たとえば、prospect が「見通し」である。 単語集にはないが、査察官や検閲官をinsepector と言うが、inspect は「検査」「検閲」などと訳されるが、つまり inspect は「詳しく見る」というニュアンスである。 「常連客」は a regular customer である(東京書籍3000および桐原4500)。 典型的な例文が、「彼は私の店の常連客だ。」であり、 He is a regular customer of my store. 「彼は私の店の常連客だ。」 である。 host (ホスト)は、パーティなどの客(guest)をもてなす「主人」「主催者」の意味。 つまり、host と guest はそういうセット。 いっぽう、雇い主に対する「主人」は master (マスター)という別の単語であるが(桐原3000、旺文社1900巻末)、やや古風な表現である。 今日では、chief とか head とか boss とか(ジーニアス和英「主人」)、言い換えされること多いだろう。 「達人」を意味する master と同じ単語である(桐原)。 東京書籍4500では、master は名詞としては「達人」「名人」の意味でしか紹介していない。 master は名詞では「名人」「達人」だが、動詞としては「習得する」の意味になる。 a master of English で「英語の達人」、 master English で「英語を習得する」 のようになる。 ---- みる人 spectator スポーツの試合などの観客。見物人 witness 目撃者・証人 証拠 evidence (※範囲外) 監視人・看護者 watcher 「目撃者」や「証人」のことを witness という。 wit- とは、機知に富むことを「ウィット」と言うが、英語でも wit という単語があり、同じ意味である。 witness には動詞で「目撃する」「証言する」の意味もある(桐原4500、旺文社1900) 辞書によくある典型的な例文は、 「私は証人として裁判に呼ばれた。」 I was called as a witness at the trail. である(センチュリー、ジーニアスに似た例文)。 ただし、単語集にある例文は、「目撃者」の例文ばかりである。 単語集にはない単語ですが、 eyewitness でも「目撃者」です。 動詞 testify (ティステイファイ)は「証言する」である(旺文社1900巻末、ジーニアス、センチュリー)。名詞 testimony (ティスティモウニー)は「証言」である。 testify には(法廷で)「証言する」「証明する」だけの意味しかないので、法律分野に専門的な英文では、なるべくこれを使うのがよいだろう。 watcher は単語集にはないが、watch は「注意してじっと見続ける」という意味なので(桐原3000)、したがって watcher も何らかの目的で見続けている人のことなので、なにかの監視人や、寝ずに看病している人に使う(ジーニアスで意味を確認)。 spectator については「客」の項目で解説済みなので、説明を省略する。 ---- 裁判 judge (裁判官が)判決する、(競技・コンテストで審判が)判定する、判断する judgement (裁判官による)判決、判断 trial 裁判・公判、試験、試運転 court 裁判所、法廷 :courtroom 法廷 :courthouse 裁判所 ::桐原4500に「courtroom 裁判所」とあるが、誤記だろう。念のため、辞書で courtroom 「法廷」などを確認してある。等経書籍4500および旺文社1900には courtroom などはない。「裁判所」のcourt と球技のコート court は同じ単語(桐原5500)。 accused 被告人、被告 suit, lawsuit 訴訟 立法 legislation 司法の judicial 武力に訴える resort to force 上級裁判所に訴える appeal 懇願 beg . appeal 刑 sentence trial は、動詞 try「試す」の名詞形である。 試運転は、自動車の場合、 put a car to trial という(ジーニアス)。車だけでなく、機械をためしに動かすことも、日本語でも「試運転」といい、英語でも put a machine to trial である(センチュリー)。 trial には「裁判」「公判」の意味もある。なお、「公判」とは、公開の法廷で行われる、裁判官と原告・被告が法廷であらそうアレであり、いわゆる日常語でいう「裁判」である。 実は法律用語の「裁判」と、日常語の「裁判」とが、意味が違っている。日本のいくつかの法律では「裁判」とは、裁判官による判決、のような意味で使っている場合もある。 しかし trial はそういう意味ではなく、原告による訴訟の提起から、法廷での争いを経て、裁判官による判決で終わるまでの、一連の出来事、またはそのうちの法廷での争いのことを trial と言っている。 on trial で「裁判中の」という意味である(桐原)。ただし辞書では確認できなかった。 on trial for ~で「~の罪での裁判の」という意味である(旺文社)。ただし辞書では確認できなかった。 judge は、まず裁判官などの「判決」などの意味を覚えてもらいたい。 そのほか、「見かけで人を判断すべきではない。」 You should never judge people by ~(見かけ) といい(桐原、センチュリー)、また 「成績だけで子供を判断してはいけない。」とかを Don't judge only ~(成績) でいう(東京書籍)。 センチュリーによれば、「外見」は appearance である。judge a person by appearances で「外見で人を判断する」である(センチュリーではアピアランスの最後は複数形)。 桐原によれば、「容姿」はlooks である。You should never judge people by their looks で「人を容姿で判断すべきではない」である(桐原より引用)。 イギリス英語とアメリカ英語で、 イギリス judgement アメリカ judgment という違いがある。 イギリスだと、judg- と -ment の間に eがある 競技などの「審判員」について、judge のほかにも、単語集にはない単語だが umpire(アンパイア) や referee(レフェリー) という単語がある。 しかし、umpire は野球、バドミントン、テニス、クリケット、など、審判が固定位置にいる一部のスポーツに限られた呼び方である。 referee は、サッカー、バスケットボール、ボクシング、レスリング、ラグビーなど、審判が動き回る競技における、審判のことである。 このように、特定のスポーツでしか通用しない単語なためか、単語集には umpire も referee も書かれていない。 競技ごとに確認するのが面倒なら、「審判員」については judgeを使うのが無難である。 動詞 accuse は「告発する」「告訴する」の意味。 なので、派生の名詞 accused は「被告人」の意味である(旺文社が紹介)。 be accused of B で「Bの罪で告発される。」 なお、ここでの accused は過去分詞である。 たとえば、東京書籍いわく、スパイの罪なら He was accused of spying. 「彼はスパイの罪で告発された。」 である。 桐原いわく、殺人罪なら、 He has been accused of murder. 「彼はスパイの罪で告発された。」 である。 名詞 accusation は「告発」・「非難」の意味の名詞。 「弁護する」は defend で言える(東京書籍)。 日本でも実は法律用語では、法廷での原告側と被告側との闘争のことをまとめて「攻撃防御」と言う。 「攻撃」は、相手側の落ち度を攻める主張である。 「防御」は、自分側の主張の正当性の主張である。 防御に関する限り、日本の法律用語と英語が、だいたい同じである。 法廷での「攻撃」をどういうかは知らない。 defendant は「被告」「被告人」の意味である(ジーニアスで確認)。旺文社では「被告」とだけしている。 対義語は plaintiff 「原告」である(ジーニアス、センチュリー)。単語集では桐原5500のみ plaintiff を紹介。 つまり (被告・被告人)defendant ⇔ plaintiff (原告) である。 「訴訟」「告訴」は suit である。衣服などのスーツなどと同じスペルと発音。 bring a suit against ~ で「~に対する訴訟を起こす」である(ジーニアス、東京書籍)。 sue という動詞もあるが、単語集では旺文社しか紹介していない。東京書籍・桐原は sue を照会せず。 ほか、旺文社1900の file の項目に紹介されているが、 file a suit against~ で「~相手に訴訟を起こす」 である(旺文社1900、ジー二アス、センチュリー、Z会TOEIC本)。file (ファイル)という動詞がある。 たとえば file a suit against her 「彼女相手に訴訟を起こす」 となる。 なお、動詞 suit は「適する」「好都合である」の意味である。動詞 suit に訴訟の意味は無い(ジーにアス、センチュリーで確認)。 「武力に訴える」「暴力に訴える」「力に訴える」は、動詞 resort (リゾート)を使い、 resort to force という。センチュリーが「力に訴える」と表記している。 resort は、よくない手段に「訴える」という意味である(東京4500、旺文社1900)。桐原の単語集では見当たらない。 resort to ~(名詞)で「~に訴える」の意味である。 観光などのリゾート地をあらわす名詞 resort と、動詞 resort は同じスペルかつ同じ発音である。 ジーニアスいわく、resort の原義は「再び(re)出かける(sort)」である。どうもリゾート観光地のほうが、原義に近そうである。 「暴力に訴える」なら resort to violence でも言える(センチュリー)。 「武力に訴える」なら resort to arms でも言える(ジーニアス)。 「最後の手段として」 as a last resort である(旺文社、ジーニアス)。 「立法」 legislation は、桐原5500と旺文社1900にしか書いてない。東京書籍4500にはない。 legislative body で「立法府」である(桐原5500、ジーニアス)。 legislation には集合的に「法律」の意味もあり(旺文社、ジーニアス)、旺文社1900にはそれが紹介されているが、しかし普通は law 「法律」と言えば済むだろう。 「司法の」 judicial は桐原5500にある。 judicial body で「立法府」である(桐原5500、ジーニアス)。 名詞形は justice (ジャスティス)だが、意味が「裁判」「公正」「正義」と幅広い(桐原5500、旺文社1900)。旺文社に「正義」の意味あり。 「正義」という意味での justice は、司法にかぎらず「正義」一般を意味する。 appeal (アピール)は、日本語でもよく「観客にアピールする」とか言うが、英語の appeal には上級の裁判所に「訴える」という意味もある(センチュリー、ジーニアス)。 日本語とは、やや意味が違うので、注意必要である 英語の appeal には、「懇願(こんがん)する」のような意味があり、これが幾つかの辞書では第一の意味である(ジーニアス、センチュリー)。 また、基本的には援助(help は aid)などを求めるのに appeal を使う。 たとえば appeal to me for help 「私に援助を求める」 のように使う(ジーニアス。桐原は meの代わりにgovernment)。 だから appeal で訴える相手は、辞書の例文では、裁判官 や 学校の先生 だったりする。 なお単語集では、桐原4500と旺文社1900が、農家 farmer による政府 government に対する訴え appeal である。 つまり、 The farmers have appealed to government for ~(要望) 「政府に~を訴えた」 である。 ただし実際には、「武力に訴える」でも appeal は使われる(桐原、センチュリー)。 appeal to arms 「武力に訴える」 のように(センチュリー)。 上述のように appeal の「懇願する」は、なんか発言権としての「要望」のようなニュアンスがある。 そういうのを言いたい場合ではなく、もっと請う(こう)ように「懇願する」場合には、beg (ベッグ)を使う。 典型的な例文は、辞書にないが単語集によくあるのは、 「彼はチャンスをもう一度だけと私に懇願した。」He begged me for one last chance. のような文章である(旺文社1200。東京書籍3000に似た例文)。 ジーニアスによるとbegには「乞食をする」のような意味もある。センチュリーはbegには「物ごいをする」の意味があると言っている。なので使用には注意が必要かと。 ややあいまいな表現にはなるが、ask などを使って言い換えるのも一つの手(ジーニアス)。 また、だから名詞 beggar で「乞食」の意味である(旺文社1400)。 なお、 beg の活用は beg - begged - begged である(桐原3300)。 あれこれとbegを説明したが、東京書籍3000では巻末送りになっている単語なので、あまり詳しく暗記する必要は無い。 sentence (センテンス)は文法用語では「文章」の意味だが、法律用語では「判決」の意味もある。 そして sentence (センテンス)には、「刑」という意味もある。 He received a three-year sentence 「彼は懲役3年の刑を受けた。」(旺文社3000、桐原4500) He was sentence to death. 「彼は死刑の判決を受けた。」(東京書籍、啓林館(検定教科書) ELEMENT II ) のように使う。 penalty (ペナルティ)「刑罰」「処罰」が、なんと高校の範囲外。桐原に fine 「罰金」の項目に類義語として penalty が書いてある。 ---- 罪と罰 punish 罰する guilty 有罪の crime 犯罪 commit 犯罪をする punish A(人) for B(理由) 「A を Bの理由で罰する」 punishment 「処罰」「刑罰」「罰」 東京書籍は「罰」。桐原は「処罰」。旺文社は「処罰」「刑罰」。 punish の罰は、べつに法廷や警察の処罰にかぎらず、学校などで教師が生徒を処罰するのでも punish を使う。東京書籍や桐原や旺文社の例文が、学校での処罰。 「犯罪」、(法律上の)「罪」 crime 「罪」の意味での crime は、法律上の「罪」のこと。 「宗教上の罪」sin なお、宗教上・道徳上の「罪」については sin (発音は「シン」)という別の単語がある(旺文社1400巻末の類義語)。 最近の一般の単語集には sin はないが、昔の単語集には書かれていたりするので、知識人層の大人は知っいる単語なので、教養として sin も知っておこう。 「犯人」「犯罪の」 criminal criminal には、形容詞「犯罪の」のほかにも、名詞「犯人」の意味もある。 桐原・旺文社いわく commit a crime 「犯罪を犯す」 「犯罪行為」は東京書籍いわく criminal activity であり、センチュリーいわく criminal act である。 東京書籍の言い回しのほうが(つまり criminal activity という言い方)、誤解のおそれが少なく安全だろう。 というのも、 act という単語は、「法律」の意味でも使われるからである。 なお、「委員会」 committee の冒頭部分とスペルは同じである。だが、意味が明らかに違うので、事実上、まったく別の単語であるとみなすほうが良いだろう。 なお「委員会」「委任」は commission ともいう。「犯行」も commission である(桐原)。 語源からすると、ジーニアスいわく、commit の古い意味が「ゆだねる」らしいので、むしろ「委員会」や、後述の「約束」や「献身」のほうが語源に近い。「犯罪する」のほうが、語源から離れた、奇妙な意味である。 commit には、「約束する」や受身形で「献身する」の意味もある。 be committed to ~ で「~に献身する」の意味である(旺文社)。 「約束」「献身」は名詞 commitment である(桐原)。 thief 「どろぼう」「空き巣」 thieves 「どろぼう」thiefの複数形 theft 「盗み」 動詞 steal 「盗む」の名詞形 stealing でもよい。 guilty 「罪の」「有罪の」 guilt 「罪を犯していること」 東京書籍いわく 「~にBの罪で判決を下す」 find ~(人) guilty of B(罪状) たとえば「裁判官は殺人の罪でその男に有罪判決を下す」なら(東京書籍、ジーニアス)、 The judge find the man guilty of murder. である。 ここでの judge は名詞で「裁判官」のこと。 旺文社いわく、 「~を無実だと判決を下す」find ~(人) innocent of B(罪状) 対義語 innocent 「無罪の」 innocence 「無罪」 guilty ⇔ incorrect guilt ⇔ innocence guiltyに「罪悪感」の意味もある。 feel guilty about ~ で「~に罪悪感をいだいている」 たとえば T feel guilty about ~ 「~のことで私は罪悪感をいだいている。」 のように使う。(東京書籍、センチュリー) They were proven guilty. 「彼らが有罪だと立証された。」(桐原) He was proven guilty of murder. 「彼の殺人罪が立証された。」(センチュリー) ---- 献身する devote, dedicate, おそらく、devote (ディボウト)が、「献身する」の一般的な語。 東京書籍4500でも、devote は本編で最初のほうに紹介しているのに、dedicate (デディケイト)は巻末おくりである。 桐原にいたっては、そもそも桐原4500にdedicate が無い。 サッカーの練習に身をささげるみたいな、たぶん趣味的なことから、センチュリーいわく「初等教育に身をささげる」みたいなのまで、devote で表現できる。 なお、ジー二アスでは dedicate で「英語教育に専念した」というのがあるので、教育に献身するのは devote でも dedicate でもどちらでも平気だろう。 devote はあるが、とくに再帰代名詞をともなって devote oneself to ~(名詞) 「~に専念する」 という用法もある(ジーニアス、文法参考書など)。 devote について、東京書籍いわく、ギターを一生懸命に練習したとか(ギターに身をささげる)、ジー二アスいわくサッカーを一生懸命に練習したとか(サッカーに身をささげる)は、devote を使う。 語法として、 devote ~(自分の時間など) to 〇〇 で「~を〇〇に捧げる」 の意味である(東京書籍4500、桐原4500、旺文社1900)。 名詞 devotion で「献身」の意味である(東京、桐原、旺文社1900)。 語法として、 dedicate ~(自分の時間など) to 〇〇 で「~を〇〇に捧げる」 の意味である(東京書籍4500、旺文社1900)。 dedicate one's life to ~(福祉など) で「~に一生をささげる」「~に人生をささげる」 の意味(東京書籍、ジー二アス)。 たとえば She dedicate her life to ~ 「彼女は~(福祉など)に一生をささげた」 のように使う。 ---- 追求と追跡 pursue 追求 chase 追跡 trace, track pursue は「追求する」だが、死後となどのキャリアを「積む」という意味もある。 chase は、警察などが、逃げようとする犯人を捕まえるために「追跡する」のに、よく使われる。 典型的な例文が 「警察は背任を追跡した。」The police chased the criminal. である(旺文社、桐原)。 trace を使った言い回しとして、 vanish without a trace 「跡形もなく消える」 があります(ジーニアス vanish、東京書籍4500の項目 vanish)。 もしかしたら track でも足跡以外の痕跡なども表現できるのかもしれません。ですが、痕跡を言うならもうtraceで十分でしょう。 trackは足跡やタイヤの跡と、あと運動場のトラックぐらいに使うのが合理的でしょう。 ほか、trace は、形跡などを「たどる」という意味で追跡すること。 このため、派生的に、trace にも「足跡」の意味の用法もあります(東京書籍)。なので、区別は track との難しいです。 なので、「vanish without a trace」のように言い回しごと覚えるしかありません。 ほか、track は、形跡を記録するという意味。 trace について、単語集にはないが、食品や農産物の生産履歴の追跡可能性のことをトレーサビリティ traceability という(ジー二アス)。 管理職に必要な知識であり、昨今の高校教育では、おそらく社会科の公民の政経科目などでも習うので、トレーサビリティ traceability を覚えること。 また、文房具などに売っている透明紙のトレーシングペーパーは、英語でも tracing paper である。 下に写したい手本の画像のかかれた紙を置き、その上にトレーシングペーパーを置いて、鉛筆などでなぞって写すのにトレーシングペーパーは使う。 また、この使い方から、絵や図面を書き写すのは trace を使うのが普通だろう(特に出典は無い)。 ほか、化学など理系の物質形の学問で、分子や物体などがどこに移動したかを測定できるようにする目印のことをトレーサー tracer という(ジー二アス)。 おそらく、放射性同位体とかの類かと(特に確認していない)。 ---- 仕事と労働 労働 labor 仕事 job, work labor の意味は「労働」であるが、とくに「肉体労働」や、あるいは「きつい労働」を言う場合が多い。 経営者ではなく従業員階級という意味での「労働者」という意味でも labor は使われる。 アメリカ英語では、labor である。イギリス英語では labour である。 単語集にはアメリカ英語 labor のほうで書いてある。 なお、経営者のことを「資本家」とも言う。 「資本家」は英語で capital である(ジーニアス、センチュリーで確認)。 「資本家と労働者」を capital and labor という(ジーニアスのlabor の項目、センチュリーのcapitalの項目で確認)。 「資本家と労働者」のことを management and labor とも言う(ジーニアスおよび東京書籍で確認)。 日本語では、資本家と経営者をまとめて「労使」(ろうし)とも言う。 理科などの「実験室」 laboratory の語源が「労働」labor である(ジーニアスおよびセンチュリーで確認)。なので、スペルを覚えるときは、実験室の冒頭と同じと覚えればいい。この点ではアメリカ英語 labor のほうが合理的である。 米英の「労働省」のような名前の官庁でも、 labor と言う名称を使っている。イギリスの「労働省」の場合、 the Ministry of Labour である。 日本の「厚生労働省」は英訳が長いので紹介したくない。 labor は名詞「労働」のほかにも、動詞「労働する」もあるが、単語集では動詞の例文はなく、動詞の意味の紹介だけである。 labor自体に肉体労働的なニュアンスがあるが、特に「肉体労働」であることを確実に説明したい場合、「肉体労働」manual labor という表現もある(旺文社、桐原、ジーニアス、センチュリーの manual の項目)。 だが、「手仕事」 manual labor でもある(桐原)。 manual には「手動式の」という意味もある。単語集にはないが、a manual control で「手動制御」の意味である(センチュリー manual の英文と和文。ジーニアスにも同じ英文)。 名詞 manual が「手引書」という意味でもある。 さて、手を使わない肉体労働とか、どう表現すればいいのだろうか。たとえば、やたらと足を使う労働とか。 あるいは、手引書を確認しながら行う肉体労働とか、どうしようか。 ジーニアスで manual を調べたところ、physical labor でも「肉体労働」という意味である。 job job は、「パートタイム仕事」 part-time job などの単語もあるが(東京書籍3000、ジーニアス英和の part-time の項目)、べつに job の使い道はパートだけではない。ジーニアスによれば、秘書の仕事でも job である。 「仕事を得る」「就職する」take a job とかで使う。 「仕事をやめる」は quit a job である。 ここでいう仕事は、給料を得るための「働き口」という意味である。 なのでjob には、「賃仕事」という意味もある(センチュリー、ジーニアスで確認)。 job と business の違いとしては、job のほうが口語的。 あとは上述の take a job など、いくつかの慣用表現の違いか。 ほか、business は普通、営利目的の「仕事」にだけ使う(ジーニアスで確認)。 work 学習としては、workは、動詞「働く」という意味が基本である。そこから、名詞「仕事」としての work の用法もあると派生できる。 そのほか、動詞 work には機械などが「機能する」という意味もある(桐原4500)。 名詞 work には、「作品」の意味もある(桐原4500)。 日本では芸術作品はアートワークというが、しかしジーニアスを見ると art of works である。また、「作品」の意味では複数形 works になる事も多い。 単語集にはないが、worksには「業績」の意味もある。 ---- 運搬 convey, carry 輸送用の乗り物などで「運搬する」ことを convey という(ジーニアスで「運搬」の意味を確認。旺文社も「運搬する」で紹介)。なお桐原はconveyは「輸送する」であると表現している。 この単語だけ聞くと難しそうだが、派生語がベルト・コンベヤーなどの「コンベヤー」 conveyor である。まず、コンベヤーを覚えよう。 センチュリーいわく、carry と convey のニュアンスの違いは、単に carry を固く言った表現が convey だとのことである。また、センチュリーいわく、convey はとくに乗り物で運ぶことを強調しているとのこと。 convey には、感情やメッセージや思想などを「伝える」の意味もあり、単語集にはこちらの意味と例文が書いてある。また、辞書でもこちらの意味を先に紹介している(ジーニアスとセンチュリーで確認)。 convey feelings 「気持ちを伝える」(センチュリーを改変) convey emotions 「感情を伝える」(旺文社1900を改変) convey a message 「メッセージを伝える」(東京書籍4500の例文をそのまま) などのように使う。 なお、単語集にはないが、スペルの似ている convoy (コンボイ)は、動詞としては、軍隊・軍艦などが「護衛する」・「護送する」のこと。名詞としては、convoy は「護衛」・「護送」である。ほか、ある種の大型輸送トラックのことを convoy とも言う(ジーニアスで確認)。 communicate との違いとして、 communicate はどちらかと言うと情報や見解や知識やなどを、口頭や文通などで「伝える」と言う意味である(「見解」はジーニアスにあり)。 ほか、単語集にはないが、「病気をうつす」という意味が、 carry にも convey にも communicate にもある。convey の病気の意味についてはジーニアス英和に書いてある(センチュリーにはない)。 ---- 保証 assurance, guarantee 製品などの保証書 guarantee 役所の証明書 certificate assurance は、約束などに裏付けされた「保証」。 guarantee は、契約違反時などは金などを受け取れる「保証」。なお一般に、不良品などの場合は、金の代わりに同等の新品などを受け取れる場合もある。 で、本当に保証をしているならば、契約違反などの際には金を払えるはずであるので、金を払う気のない assurance の価値が疑われるわけである。 なので、辞書では assurance を「保証」と書いているが、実際はニュアンスが違う。 辞書にはないが、工場などでの不良品の防止のための「品質管理」の業務のことを quality Assurance といい、よく「QA」と省略する。 不良品が出ると、企業側からすれば guarantee のための金を払うので余計な出費になるので、不良品を未然に防止するために assurance をするのである。 英文学はどうだか知らないが、工場労働ではこうである。 なので、借金などの「保証人」は guarantor である(東京書籍)。「保証人」とは、借金の際に、債務者がもし夜逃げしたり破産したりして金を払わない場合に、かわりに金を払う人のことが「保証人」である。 「保証書」も guarantee である(旺文社)。 そういう意味での「保証期間中」も under guarantee である(東京書籍、旺文社)。 だから「~は保証期間中である」は ~(isなど) be under guarantee である(ジーニアス)。 名詞 certificate は、出生証明書や結婚証明書や死亡証明書などの「証明書」のこと。スペルが動詞っぽいが、certificate は基本的に名詞である。 「出生証明書」は a birth certificate である(ジーニアス、旺文社、センチュリー)。「死亡証明書」は a death certificate である。 ほか、教員免許(センチュリー)などの仕事の免許状などを与えることも certificate である。 動詞としての certificate は、上述のような「証明書を与える」という意味。 動詞 certify は、上述のような証明書が、◯◯を「証明する」という意味で、 certify that ~ という決まり文句で「~を証明する」とその証明書類に書かれることが普通である。 旺文社の単語集にしか書いてない単語だが(東京書籍4500と桐原5500にはない)、しかし証明書の申請や発行や提出は、欧米での仕事で確実に使われる表現だろうから、ぜひ certificate は覚えてもらいたい。 インターネットのサーバー証明書や公開鍵暗号の証明書なども certificate を使った言い回しなので、この単語を覚えておこう。 assure は、一節には sure 「確実な」から派生した単語なので、「確信させる」が原義だという説もある(ジーニアス)。また、-sure には古くは「安心」という意味があるという説もある(センチュリー)。 ジーニアスのassureの派生に「安心」がどうこう言ってるのは、おそらくソレを意識しただけの説明。 assure には、「確信する」や「確かめる」なの意味もある。 insurance は「保険」という意味の名詞。 insure は「保険をかける」という意味の動詞。 「生命保険」は life insurance である(桐原、ジーニアス、センチュリー)。「健康保険」は health insurance である(東京書籍、センチュリー)。 桐原5500にwarrant という単語がある。 warrant は、商品の「保証書」の意味もあるが、この意味では guarantee のほうが普通だとセンチュリーは言っている。どちらかというと warrant の意味は「令状」「逮捕令状」「倉荷証券(※商業の専門的な証券のひとつ)」「委任状」「許可証」「新株引受権」のような意味であり、つまり warrant は何かの権限や権利のあること証明する証明書の類である。 さて、派生語の unwarranted 「公認されていない」 が東大の英文に出題とのこと(桐原5500)。 warrant には「妥当だとする」の意味もあり、この意味で同志社大に出題されたと、桐原5500は言っている。 辞書には、ジーニアスにもセンチュリーにも、warrant の項目では、まずは「令状」などの意味を先に紹介している。 日本の国公立大の入試の英文とは、こういうものだと、指摘をしておこう。 ---- 穀物 穀物 grain 小麦 wheat 小麦粉 flour 「穀物」(こくもつ)とは、米や小麦などのこと。一般に、食べて炭水化物をとるための農産物が、穀物である。 なお、桐原いわく、「大麦」は barley である。oat は「カラス麦」。 いちいち大麦とかカラス麦とか覚えるのが面倒なので、受験生としては、不正確だが wheat で大麦も小麦も押し通すのが良いだろう。センチュリーいわく、ライ麦は rye であるとのこと。 wheatの典型的な例文は、単語集にはないが、 「小麦をひいて小麦粉にする」 grind wheat into flour である(センチュリー、ジーニアスで、同じ英文)。 「小麦畑」は a field of wheat である(東京書籍、センチュリー)。 「小麦粉」 flour の発音と、「花」 flower の発音は同じ(桐)。 ---- 魂と霊魂 soul, spirit 幽霊の出る haunted soul は spirit よりも宗教的な色彩が強い(ジーニアス)。 つまり、soulのほうが宗教的。 しかし、soulもspirit もどちらとも、宗教以外にも、「精神」や「情熱」や「気迫」みたいな意味でも使う。 ジーニアスいわく、soulは「精神」の用法では、mind や heart とほぼ同じ意味とのこと。 soulの発音は、「足の裏」sole と同じ発音(桐原、旺文社)。 単語集にもある典型的な例文 「死者の魂のために祈る」 pray for the souls of the dead (センチュリー、東京書籍)。「死者の冥福(めいふく)を祈る」ともいう(ジーニアス、東京書籍)。 単語集では旺文社にしかないが、辞書でよくある例文で、 「霊魂の不滅を信じる。」 believe the immortality of the soul. などが辞書で典型的である(ジーニアスとセンチュリーで同じ例文)。 つまり、「霊魂の不滅」 the immortality of the soul である(旺文社)。 immortality は構造はイン・モ-タリティだが発音は「イモーダリティ」と読み、「不滅」の意味。 単語集にはないが、「精神」と言う意味では典型的な例文として、 He put one's heart and soul into the work. 「彼はその作品に全身全霊で打ち込んだ。」 などが辞書で典型的である(ジーニアスとセンチュリーでほぼ同じ例文)。 ほか、形容詞「幽霊の出る」は形容詞 haunted (ホーンテッド)である(旺文社1900)。 動詞「(幽霊が)出没する」は haunt である(桐原5500)。 東京書籍4500 に haunt などは無い。 出没する「幽霊」は、たとえば ghost など(桐原5500 のhaunt の例文)。 a haunted house で「幽霊屋敷」(旺文社)または「お化け屋敷」(センチュリー)である。ジーニアスには無い。 ---- 勇気のある brave, courage 戦士 brave 勇気 courage 臆病な cowardly, timid brave 「勇敢な」と courage 「勇気のある」は、ほぼ同じ意味(ジーニアスで確認)。 courage のほうが固い言い回し。 brave のほうが、危険のある行為に立ち向かうさまに使われる場合が多い。 このためか、「勇敢な兵士」を言う場合は a brave soldier のように brave でいうのが自然だろう(センチュリー)。 旺文社では「勇敢な兵士」 a brave fighter である。 だが、そうでない用法の場合もあり、その場合は区別がつかない。 たとえば桐原では「あの人たち全員の前で話をするとは、君は勇敢だった。」という文章で brave を用いている。 逆に courage は「彼は勇気を持って病気に立ち向かった。」という文章である。 また、単語集にはないが、名詞 brave には、勇気の意味はない。名詞 brave は、北米先住民の「戦士」の意味である。 名詞 courage が「勇気」の意味である。 動詞 encourage は「勇気づける」「励ます」の意味である。 encourage ○○(人) to ~(動詞) で「○○(人)に~するように強くすすめる」 「勇敢な」brave の対義語は「臆病(おくびょう)な」cowardly という形容詞である。単語集で cowardly を調べてみると、東京書籍でも桐原でも旺文社でも、どの単語集でも「おくびょう」とルビを振っている。 cowardly は副詞ではなく、形容詞である。 念のために結果だけ言うと、cowardly は「臆病な」という意味の形容詞である(ジーニアス、センチュリー、旺文社、東京書籍)。 なお、-ly をはぶいた coward は「臆病もの」という意味の名詞である。なお、桐原では名詞形 coward を「ひきょう者」と平仮名で表記。 名詞形 coward (発音「カウワード」)は「臆病者」「卑怯者」の意味である(桐原、ジーニアス、センチュリー)。 形容詞 coward の発音は「カウワード」である。発音注意の単語として、桐原4500には注意が書いてある。東京書籍の単語集だと対義語としての紹介なので発音が載っていない。旺文社だと巻末なので、発音が載っていない。形容詞 cowardly の発音も同様に「カウワードリー」である(ジーニアスで確認)。 なお、アメリカ童話『オズの魔法使い』(The wizard of Oz)の「臆病なライオン」は coward (=臆病な)なライオン(東京書籍『All Abroad! I』検定教科書)。 cowardly には、「臆病な」の意味のほかにも、「卑怯(ひきょう)な」という意味もある。 timid (ティミッド)には「臆病な」「内気な」の意味がある(旺文社)。よく、小さな子供が人見知りをして知らない大人をこわがる様子に、timid を使う(旺文社1900、センチュリーの例文)。 東京書籍4500および桐原4500・5500は timid を紹介していない。辞書を見ても、特に共通の言い回しはなく、著作権的に紹介しづらいので、省略する。 ---- 本物の genuine , real, authentic 偽者の fake, false 形容詞 genuine という単語があり、形容詞 real の類語ではあるが、若干のニュアンスの違いがある。 美術品などの「本物」は、好んで genuine を使い、たとえば 「本物のピカソの絵」 a genuine Picasso のように使う(東京書籍、センチュリー、旺文社)。なおセンチュリーではピカソではなくラファエロ。旺文社はルノワール。 そのほか、カバンなどが本革(ほんがわ)のことを genuine leather という(桐原、旺文社)。 ジーニアスだが、「本人の署名」 a genuine signature である。 対義語は fake や false など(桐原)。 旺文社1900と桐原5500が、genuine の類義語として authentic を紹介している。 authentic は、作者による作品であることを保証している。一方、材質などは authentic では保証しないのが普通。 使い方もほぼ同じ。 (ジーニアスいわく)「本物のピカソの絵」 an authentic Picasso (センチュリーいわく)「本物のゴヤの作品」an authentic Goya (センチュリ-いわく)「本人の署名」an authentic signature である。 ---- 偽造する(※高校英語の範囲外) 文書や貨幣を偽造する forge 芸術作品を偽造する、仮病 fake 文書を偽造する falsify 文書や貨幣などを「偽造する」は forge をつかう(センチュリー、ジーニアス)。なお、旺文社1900に forge という単語がある(旺文社1900)。 典型的な例文は、 forge a passport 「パスポートを偽造する」 である(旺文社、センチュリー)。 fake でも「偽造する」の意味があるのだが(センチュリー、ジーニアス)、用例を見る限り、芸術作品を「偽造する」の場合が多い。 東京書籍4500では、「偽者」の意味で名詞 fake が出ている。桐原4500では、false の派生語でfake が「本物でない」として出ている。 つまり、動詞 fake は、高校英語としては、ほぼ範囲外である。 さて、動詞 fake について ほか「仮病をつかう」 fake illness という言い回しがある(センチュリー、ジーニアス)。 なお、鍛冶屋などの「鍛造(たんぞう)する」も forge である。 名詞形 forgery は「偽造品」「模造品」の意味のみ(旺文社、ジーニアス、センチュリー)。 falsify はふつう、文書を「偽造する」のことをいう(ジー二アス、センチュリー)。 旺文社1900いわく、英検準1級で出る範囲とのこと。 文書の偽造にしか使えないfalsify よりも、文書と貨幣に使える「偽造する」 forge を使うほうが無難だろう。 その他、falsify には、「事実を曲げて伝える」の意味もある(ジー二アス、センチュリー)。 動詞 distort (ディストート)は、物体などを歪めるという意味だが、派生的に「事実を歪めて伝える」という意味もある(旺文社1900、東京書籍4500巻末)。 物理学などで、光の像をゆがんだりすることを distortion (ディストーション)という。 物理学や機械工学などで「ねじり」や「ねじり力」のことを torsion (トーション)という(センチュリー)。このように distortion が torsion の否定語ではなく類義語であることに注意したい(センチュリー)。 ---- 保つ maintain, preserve, (※ 説明省略)retain 守る protect 思想などの保守 conservative preserve はよく、史跡や森林などを「保存する」という意味に使われる。じっさい、東京書籍の例文は史跡の「保護」だし、桐原の例文は自然環境の「保護」である。 protect は森林「保護」にも使われるが、protectは破壊から守るというニュアンスが強い。 ただし、ジーニアスで確認したところ、preserve でも野生動物を「守る」という意味でも使われる。あまり使い分けは明確ではない。 maintain は、機械などを「保守する」や「整備する」の意味でもよく使われる。東京書籍でオートバイの整備を maintain で説明。 アパートの手入れも maintain であると、ジーニアスとセンチュリーが言っている。 This apartment house is well maintained. 「このアパートは手入れがよく行き届いている。」 である(ジーニアスより引用。センチュリーにも似た文章)。 機械だけでなく、平和や法秩序などを維持するのにも maintain が使われる。東京書籍は法秩序(law and order)の維持。センチュリーが世界平和(world peace)の維持。 また名詞形 maintenance でセンチュリーが法秩序の維持。 家族などを「扶養する」もmaintain である。なおsupport でも「扶養する」になる(ジーニアス)。旺文社にもmaintainの「養う」が書いてある(意味のみ。例文なし)。桐原にも「扶養する」が書いてある(意味のみ)。 単語集にはないが、自動車の速度を「維持する」もmaintainである。 retain という単語があり「保つ」の意味があるが、説明が難しい。桐原はretainを紹介していない。 conservative 「保守の」は、思想などが保守的であることについて、よく使われる。 しかし、名詞 conservation は、自然保護や資源保護などに使われる。 動植物などの「保護区」は、conservation area であると、桐原およびジーニアスが言う。 単語集には conserve を「保存する」としか書いてないが(東京書籍)、辞書で調べれば動詞 conserve は、環境や資源などを「保存する」の意味である。旺文社も、環境・資源を「保護する」のが conserve だと言っている。 ほか、単語集は述べていないが、果物を砂糖漬けにして(いわゆるジャムにして)「保存する」ことも conserve という。 動詞 reserve は、ホテルの部屋や座席などを「予約する」の意味や、そのほか「保留する」「留保する」などの意味であるが、同じスペルの名詞 reserve には動物などの「保護区」の意味がある。 ---- 予備 reserve, spare 予約 reserve, appointment そのほか、名詞 reserve の「予備」や「予備金」や「予備軍」の意味がある。 なお、ホテルの「予約」や「予約席」は reservation である。 なお、病院・美容院などの「予約」は appointment である。ただし、「予約」の意味を覚えるのではなく、appoint は「面会の約束」の意味があることを覚えるべきである。医者または美容師など対人サービスを受けるための約束を取り付けるという意味で、派生的に「予約」になると理解すれば、暗記の負担が減る。 have appointment with ~(人)で「~と会う約束をしている」の意味である。 I have an appointment with him tomorrow. 「あす、彼と会う約束をしている。」 である。 なお「病院」は英語で hospital である。 形容詞 spare でも、部屋や鍵などの「予備の」「スペアの」「余分の」の意味がある。 そのほか、動詞 spare には、時間を「割く」という意味がある。 spare w few minutes 「少しだけ時間を割く」 である。 典型的な例文が、 「(私のために)少しお時間を割いていただけますか?」Can you spare me a few minutes? である(桐原に同じ例文。東京書籍に似た例文。なお和訳は東京書籍より)。 なお、桐原は上記英文の和訳を「少し私に時間をさいてくれませんか。」としている。 このように、和訳は多少は幅があってもいい。 ---- 凝視する gaze, stare, contemplate くらやみとかで見る peer gaze at, stare at, peer at, contemplate 「凝視」(ぎょうし)とは「見つづける」ことだが、一口に「見つづける」と言っても、日本語でも、不良が「ジロジロと見ているんじゃねえ!」という場合の見続けられる行為の印象と、一方で恋愛小説とかで「恋人どうしが見つめ合っている」と言うような場合の見続けられる行為とでは、印象も違えば言い回しも違う。 英語でも、gaze と stare がそういう関係である。 stare は普通、あまりよくない印象の場合に使う。 一方、 gaze は、興味などで見続ける場合に使う。 ただし、見ている側は特に悪意はなくても、見られている側が不快に思う場合もあるので、そういう場合に gaze か stare なのかは、判断は難しい。 とりあえず、私たちは問題を単純化して、見ている側が悪意や不信感で見ているなら、見られている側もそう受け取って不快に感じるという、単純な世界観を想定しよう(現実世界はそうではないが、ここでは英語学習のために我々は単純な世界観・人間観で済ますことにする)。 物思いにボーッと見ている場合でも、あるいは興味をもって見ている場合でも、gazeでは特に区別はしない。 たとえば、東京書籍では gaze で、恋人同士が見つめあう表現を gaze、旺文社では物思いに海を見続けている表現を gaze にしている。 見ている側の気分は明らかに違うが、しかしこういう場合、どちらとも gaze である。 一般に、喜びや感動などで見ている場合は gaze であるとされる。 stare の典型的な例文は 「私をじろじろ見ないで。」 Don't stare me. である(東京書籍、ジーニアス。ジーニアスでは和文が少し違う)。 ただし実際には、ジーニアスいわく、 stare でも、「見送る」とか、「ウィンドーの中の人形を驚きの目で見た」などでも使う。 おそらく英米人の側でも、たぶんあまり stare と gaze の使い分けは厳密ではないのだろう。所詮、言葉は生き物である。 日本人としては、読解なら文脈からstareとgazeの意味を判断するしかないし、英作文なら実務では勤務先などの用例に合わせて使い分けるしかない。 見ている側が感動してみていても、見られている側が好奇の目で見られると受け取って不快に思う場合もあるかもしれない。 だから前後の文脈や、業界の慣習などから、判断せざるを得ないだろう。 辞書を見ても、特にそういう区別がつきづらい場合については、言及されていない。 gaze でものを見るときの英文では、 gaze at it 「それを見る」 のように、前置詞 at をつける。into や on や upon などの場合もある。 覚えるのは一見すると大変そうだが、しかし中学英語のlookの語法の look at ~ 「~を見る」と同様だと覚えればいい。 しょせん、英語を話している英米人にとっては、彼らの国の子供などでも英語を使えるように、あまり記憶しないでも使えるような語法が生き残っている。 なお、stare は、at なしでも言えるが、しかし stare at ~「~をじっと見る」 のように言ってもいい(桐原)。 結局、gaze も stare も、look at ~と同様に、gaze at ~、stare at ~と覚えれば済むように出来ており、このため米英人の子供でも気楽に使えるようになっている。 stare のあとが代名詞(him や her など)の場合は、例文を見ると at が省略されているのが多い(旺文社、ジーニアス)。だが、辞書でそういう規則を説明しているわけでもない。 まあ、 おそらくは stare at him などと言っても通じるだろう。 実際、センチュリーでは、He stared at me. 「彼は私をじろじろ見た」のような文型で例文がある(heではなくthe stranger だが、スペルが似ていて紛らわしいので、wikiではheに変更した)。 逆に gaze のほうも、実は at を使わずに gaze the boy「その少年を見つめる」のように言ってもいい(センチュリー)。 gaze のあとが、at か into か on かなどは、文脈にもよるだろうから、入試には出ないだろう。 出るとしたら、off とか down みたいな、look のあとには通常は来ない前置詞を選ばせない類の問題だろうか。 なお、stare のあとには、通常は into や on はつけない(桐原)。stare に前置詞をつけるとしたら、at である。 動詞 contemplate 「熟考する」には、「じっと見つめる」「凝視する」という意味もある(桐原5500)。桐原5500だと掲載スペースの都合からか、見る意味では「じっと見つめる」が書いておらず「凝視する」だけだが、しかし実際は後述の例文のように、割と軽い意味で使われるので「じっと見つめる」「じっくり見つめる」などと和訳したほうが適切な場合も多いだろう。 なお、contemplate のうしろには、at などの前置詞はつけない。辞書で確認しても、at などをつける用法は見当たらない。 contemplate the water 「水をじっと見ている」(センチュリー)とか contemplate the star 「星をじっと眺める」(ジーニアス)のように、前置詞をつかわずに直接的に書く。 前置詞をつけない理由の覚え方は、言語学的に真面目に考えるよりも、推測になるが、contemplate はもとから発音が長いのに、さらに後ろに at とか into とか付けて発音を長くしたくない、という発音の手間的な都合だろうとでも考えれば、受験対策としては十分だろう。 また、文章で書く場合でも、contemplate がただでさえ固めの言葉なので使用条件で悩むのに、さらに「 at をつかうべきか?それとも on か?」とか悩みたくない、という都合かと。 動詞 peer は、暗闇とかで、見づらいものを、見ようとして、「じっと見る」という意味。単語集では旺文社だけが紹介。 この peer は多義語であり、名詞 peerは「同等の人」「同僚」「仲間」や「貴族」という意味がある。東京書籍が巻末で「仲間」peerを紹介。 前置詞については、stare at や gaze atなどと同様に、peer at ~ や peer into ~ のように言う(ジーニアス、センチュリー)。 動詞 peer の場合、前置詞抜きの用法は、辞書では見つからなかった。 覚えるのが一見すると大変そうだが、しかし peer には名詞の意味もあるので、前置詞 at や into があることで名詞との区別がしやすいという利点がある。 だから、いっそ peer at という一組の単語として覚えてしまおう。こうすれば、名詞 peer 「同僚」「仲間」との混同で悩まなくて済む。 ただし、peer には「見つめる」の意味のほかにも、「現れる」の意味があり、その場合は文脈によっては例えば peer over ~ 「~の上に現れる」のように言う場合もあるので(センチュリー)、文脈次第。ただし、peer の「現れる」の用法は、ジーニアスには書いていないので、かなりマイナーな用法であると思われる。 ---- 予想や予期など forecast, predict, anticipate, expect forecast は、天気予報に使われる。センチュリーいわく、天気予報の場合、翌日~数週間程度の予報で使う。 predict は、天気予報の場合でも、たとえば「数ヶ月後の気候は◯◯だろう」ぐらいの予想では使う(センチュリー)。 予報のほか、根拠などをもとに予想をするのにも forecast や predict を使う。 ただし実際には、predictでも明日の天気を予想したりするのにも使われる(ジーニアス)。 よくforecasttは「予想」「予報」、predictは「予言」などといわれるが、しかし辞書を見ても、predictでもforecastでも予想をしたいしえいて、あまり差は明確ではない。 このように、英米の慣習的なニュアンスの差になるので、本ページでは深入りしない。 anticipate には、楽しいことに「期待して待つ」、トラブルなどに「備えて待つ」のような意味がある。anticipate が「予期する」みたいに訳される事もある。 単語集にはないが、 We all are anticipating ~ で「~を楽しみに待っています。」 のように慣用的に使われる。 楽しいことを待つのと、トラブルなどにそなえるのは、まったく感情が違うので、結果的に意味が幅広い。 このほか、anticipateには「先取りする」「先手を打つ」「給料などを先取りして金を使う」などの意味がある。 桐原では、巻末の接頭辞の章以外では anticipate を紹介していない。 旺文社と東京書籍が anticipate を紹介している。 名詞形 anticipation は、単語集では東京書籍は「予期」の意味であり、旺文社は「予期」「期待」の意味。 expect は、楽しいことや良い結果などを「期待する」の意味で習うかもしれないが、その意味のほかにも、良い結果か悪い結果にかからわず結果を「予期する」という意味もある。 このため、「予期する」の意味では anticipate と expect は類義語でもある(ジーニアスで確認)。 expect ◯◯(人) to ~(動詞)で「◯◯(人)が~するだろうと思う」である。 典型的な例文は、 「彼は私が土曜日も働くだろうと思っている。」 He expects me to work on Saturday. である(桐原とジーニアスに似た例文)。 なお、expectで楽しい事を期待する場合、高い確率で起きるだろうとexpectでは思っている。一方、hope は、そんなに確率が高いとは思っていない(センチュリー)。 対義語 unexpected は「思いがけない」「不意の」の意味(旺文社)。 一般的な「期待」「予期」は expectation である。 数学・統計用語の「期待値」や各種の「予測値」は expectancy という別の単語である(桐原、ジーニアス)。expectancy は「見込み」の意味の単語でもある(東京書籍)。 「不意の客」 an unexpected guest である(旺文社、ジーニアス)。 ---- 運命と運勢 fortune 運勢・幸運 運命 fate, destiny, lot, fate 通常は悲劇的な「運命」 doom おそろしい「運命」、破滅 destiny 使命ある「運命」 fortune は、「運がいい」とかいうときの「運」のことである。東京書籍は fortune は「運勢」だと言っている。 fortune には、「幸運」や「財産」などの意味もある。 fate は、悲劇的な「運命」をいう場合によく使う。形容詞 fatal が「命取りの」「致命的な」という意味である。桐原の fate が「命取りの」という訳あり。 慣用表現で 「運命のいたずらで」 by twist of fate という表現がある(東京書籍、ジーニアス)。 東京書籍は destiny を紹介せず。桐原が紹介している。 「運命」destiny は、「目的地」 destination の派生語。 センチュリーいわく、destiny は使命感を強調した「運命」。 ジーニアス destiny を見ても、あまり説明が多くない。 doom という単語があり、桐原5500および旺文社で紹介されている。 doom は、おそろしい「運命」で使う(センチュリー)。 doom は、特に、キリスト教の「最後の審判」などでも使う(ジーニアスで確認)。このように、doomは、かなり悲劇的または、とても厳しい運命のことを使うニュアンスがある。 doom の例で単語集によくあるのは、死ぬという「運命」や、失敗するという「運命」など、である。 単語集にはないが、doom には、死の婉曲表現としての「運命」の意味もある。「運命を迎える」(=死ぬ)とか、「運命を迎えさせる」(死なす、殺す)などにも doom と使った表現が使われる。 lot (ラート)にも「運命」の意味がある(桐原4500、ジーニアス、センチュリー)。東京書籍3000・4500と旺文社1400・1900は紹介していない。 中学で習った a lot of 「たくさんの」の lot と同じ単語である。 さて、日本でよく「商品のロット」みたいに言うが、しかし辞書で確認したところ、「(商品・競売品などの)一山・一組」という意味はあるが、しかし同じ生産時期で同じ型番などの商品群などの意味は無い。 辞書を見ると、さらにlotには「くじ」の意味があることも書いてあるが(ジーニアス、センチュリー)、単語集には無い。 語源的には、もともと、折った木の小枝を、くじに使ったことが、lotの色々な意味の起源(ジーニアス)。 なお、頻度順をうたう旺文社1200・1400・1900の3冊は、そもそもlotの項目が無い。よって、中学で習う a lot of 「たくさんの」の意味以外では、入試には出ていないのが実状なのだろう。 このような実態を反映してか、東京書籍も1800語・3000語・4500語の3冊とも、lot を紹介していない。 紹介しているのは桐原4500だけである。 ほか、lot には土地などの「区画」の意味もあり、 a parking lot 「駐車場」 の意味(桐原、センチュリー、ジーニアス)。 lot はスペルが簡単なので、なんとなく口語的に思われるかもしれないが、しかし辞書を見ても、特に口語とは書かれていない。 また、lot は、やや運命の偶然性を強調する語としての「運命」である(センチュリー、ジーニアス)。どうやら、lot は一般的な「運命」という概念ではないようだ。 「運命」という概念については、一般的な語が(あるのかもしれないが、)高校の単語集の範囲では見つからない。 ---- 致命的な fatal, mortal mortal (モータル)は、よく、 Man is mortal. 「人間はいつかは死ぬもの。」 のような言い回しで使う(センチュリー。ジーニアスにもmanではなくweだが似た例文)。 あと、この言い回しから、man には「人間」の意味があることが分かる。 Police man を police officer とか言い換えて喜んでいるアメリカ人の知能の参考になる。 mortal wound で「致命傷」である(センチュリー、桐原5500)。 単語集にはないが、 a mortal combat で「死闘」である(ジーニアス、センチュリー)。 ジーニアスいわく、 a mortal battle でもよいとの事だが、せっかく mortal という、やや固めの表現を使うのだから、「闘い」のほうも battle よりも combat と固めの表現で統一したほうが良いだろう。 ジーニアスでも、まず mortal combat を基準に紹介している。 ほか、単語集にはないが、 mortal enemy で、「生かしておけない敵」 である(ジーニアス、センチュリー)。 「死に際」(しにぎわ)とか「臨終」(りんじゅう)とかの意味で、 mortal hour ともいうが(ジーニアス)、それだったらセンチュリーの the mortal moment のほうがより文学的な表現だろう。 ラテン語で「メメント・モリ」(memento mori)という表現があって、「人はいつか死ぬことを忘れるな」のような意味である。 ここでいう「メメント」とは「忘れるな」の意味である。英語でいうメモリー memory 的な語にすぎない。 だがモーメントと発音が似ているので、mortal moment のほうがラテン語とか詳しそうで頭良さそうに見えるだろう。 なお、名詞 moment は「瞬間」「少しの間」などの意味(桐原4500、東京書籍3000)。 for a moment で「少しの間」「一瞬の間」などの意味(桐原4500「少しの間」、旺文社1400「一瞬の間」)。文脈に合わせて判断。 fatal については、fate や doom など「運命」のセクションで解説済みなので、このセクションでは省略。 ---- 悲劇など tragedy, misery 「悲劇」 tragedy は、訳語にも「劇」とあるとおり、演劇の用語でもある。 たとえばギリシャ悲劇は greek tragedy である。 対義語は「喜劇」 comedy である。 劇や芝居だけでなく、とても悲しい出来事にも tragedy は使われる。 日本語でも、「悲劇的な事件」とか言う場合、べつに演劇のことではなく、単に、とても悲しい出来事という意味合いである。 もともと劇の用語だからか、センチュリーの例文だと、戦争の悲劇だとか、社会的な飢餓の悲劇だとか、わかりやすい悲惨さに使っている。 桐原では、tragedy の和訳として、「悲劇」に加えて「惨事」も紹介している。 戦争とか大地震とかは、演劇になりやすい、わかりやすい惨事。なので、まず「悲劇」という意味で tragedy は覚えるのが良いだろう。「惨事」はその派生的な意味にすぎない。 ジーニアスだと、地震で家族が死んだとかがtragedy の例。 なお、災害などの「惨事」は disaster である。disaster には、悲しいとかのニュアンスはない。 形容詞 disastrous を「災害の」「悲惨な」とか訳す。和訳の都合で「悲」の文字が入っているが、悲しさよりも、被害の規模を強調しているのが disaster 系の単語である。 自然災害などの「大災害」などが disaster の中心的な意味である。disasterは、「災害」や「惨事」などの意味をあらわす一般的な用語(センチュリー)。 一般的でない「惨事」は catastrophe や calamity が用いられる。 航空機事故の惨状などにも、よく disaster が用いられ、 an air disaster 「航空機事故」という(センチュリー、ジーニアス)。 misery (ミザリ)はどちらというと「みじめさ」という意味であり、個々人の貧窮(ひんきゅう)や窮乏(きゅうぼう)、孤独や病苦などに使う。 センチュリーが「貧窮」。ジーニアスが「窮乏」。 生活などの「みじめさ」が misery である(ジーニアス)。 センチュリーは気持ちの「みじめさ」もあると言っているが、生活のみじめさから推測できるだろう。 あるいは、生活のみじめさに対する、自己のみじめさを痛切に感じさせられる感情のことが misery であるとも言えるかもしれない。 形容詞「みじめな」はmiserable (ミゼラブル)である。 フランス文学だが、「ああ無情」などと訳される『レ・ミゼラブル』という作品の題名を知っていると、理解しやすいだろう。 ただし、miserable は「気が滅入る」くらいのニュアンスでも使われることもある。 単語集にあるmiserable は、和訳は「みじめな」だが、実際には「気が滅入る」のニュアンスである。東京書籍と桐原がそれ。 桐原が、風邪をひいて「みじめ」なのを miserable と言っているが、せいぜい気が滅入るぐらいだろう。 ---- 惨事・大災害 disaster, catastrophe, calamity 東京書籍は、 巻末でのみ形容詞 catastrophic を紹介。桐原4500および桐原5500では紹介せず。 catastrophic は「壊滅的な」の意味(ジーニアス、東京書籍)。 桐原5500がcalamity を「大災害」「惨事」として紹介し、ハリケーンを例にしている。東京書籍および桐原4500と旺文社は calamity を紹介せず。 ジーニアスによると、calamity は、大地震や洪水などの大災害、失明・失聴などの災難、そのほか苦難。センチュリーいわく、calamity は catastrophe より軽く、また、精神的な被害を強調しているとのこと。 桐原5500のdisaster では、被災者への国際援助が必要なレベルの大災害を disaster としている。 「被災地」は a disaster area である(旺文社、センチュリー、ジーニアス)。 crisis 「危機」は、危険がさしせまっている「重大局面」。 ---- 崩壊 建物などが崩壊する、他 collapse 崩壊・故障・停電 breakdown 自動車などがぶつかって壊れる crash (※範囲外)システムの崩壊 implode 人が倒れる fall, collapse 木や建物が倒れる fall 建物が崩壊する collapse collapse はそもそも動詞。名詞の用法もあるが、他単語の区別のために、まずは collapse は動詞の用法を覚えよう。 また、collapse は、建物などが崩壊すること。 人が卒倒(そっとう)などで物理的に「倒れる」という意味もある(東京書籍)。 このように、collapse は物理的に、倒れ落ちること。 派生的に、collapse でも、事業の失敗とか、株価の暴落とか、人間の衰弱とかも言えるが(ジーニアス)、まずは基本の物理的に「崩壊する」の意味を覚えよう。ジーニアスでも、建築物の崩壊 や 人の卒倒 などの意味を第一に紹介している。 単語集にはないが、家具などで折りたためるものについて「折りたたむ」をcollapse とも言うが(ジーニアス、センチュリー)、まぎらわしい。家屋の崩壊を意味する動詞で、家具の折りたたみを表現するとか、英米人はどういう言語センスをしているのか。 動詞 fall 「落ちる」には、「倒れる」という意味もあり、人や木や建物が倒れるのに使える(東京3000、桐原4500 while P.402)。 さて、breakdown は名詞である。breakdown に動詞の用法はない。 桐原と東京書籍に breakdown は無い。 なので、とりあえず英作文では「崩壊」には collapse を当てておけば、まあカタコトの英語かもしれないが、通じるだろう。 さて、breakdown を辞書で見ると、ジーニアスでもセンチュリーでも、まず先に、「崩壊」ではなく(機会などの)「故障」で紹介している。 センチュリーに書いてないが、breakdown には「停電」の意味もある(ジーニアス)。原発問題などで電力問題のある昨今、覚えておきたい表現である。 辞書でよくある breakdown 関連の例文が 「家庭崩壊」 family breakdown である(ジーニアス、センチュリー)。 機会が停電はなく故障している場合、 熟語で形容詞的に out of order という言い方もある。 be out of order 「故障している」 である(桐原3000)。 そのほか、桐原5500 が「侵食する」 erosion (エロージョン)を「崩壊する」の意味で紹介しているが、覚えなくていいだろう。 なぜなら、普通、エロージョンは、川岸や土壌など土地の「浸食」(しんしょく)とかの意味で使う。東京書籍4500も旺文社1900も、土壌の浸食の意味である。 また、単語集にも辞書にもない知識だが、化学とか材料科学とかで erosion (エロージョン) 力学的な力によって削りとられていく「浸食」・「摩耗」 corrosion (コロージョン) サビなどの「腐食」 のように区別する専門用語がある。 また、センチュリーによると、土壌の浸食だけでなく、それによる土砂の流出も erosion というようである(センチュリー)。 なお、辞書では、erosion は、さびなどの「腐食」も含んだ、「浸食」一般の表現である(センチュリー)。ジーニアス erosion では確認できず。 「崩壊」なんて collapse で言えるだろう。 動詞「浸食する」は erode である(桐原5500、旺文社1900)。桐原も旺文社も、erode は例文なしで、単語の紹介のみである。 動詞 crash (クラッシュ)は自動車が衝突して壊れたり、飛行機が衝突して壊れるときの動詞。 なので、建物が老朽化などで朽ちていた場合には使えない。 辞書によると、crash には「大きな音を立てて壊れる」という意味もある。ほか、雷鳴などが鳴り響くのも crash という(ジー二アス、センチュリー)。 そもそも、crash の語源が、衝突したときの音である。つまり擬音語(ジー二アス、センチュリー)。 旺文社1900および東京書籍3000は、音を立てて壊れるの意味を採用していない。 桐原が、「激しい音を立てて壊れる」の意味を crash の第三の意味として採用している。 単語集では旺文社だけ紹介しているが、英語では、 crush 「押しつぶす」という真ん中の文字が a でなく u になった単語もある。 (※範囲外)経済制裁などで経済システムが崩壊する場合は implode を使う。たとえば経済制裁でロシアの経済が「崩壊しつつある」などと言う場合、 imploding などを使う。 ---- 速い・早い 主に速度が「速い」 speedy, fast, 人の動作が速い quick prompt, immediate swift 焦る haste immediately (対応などが)「即座に」の意味。 副詞 immediately は、対応などが「即座に」「すぐに」「ただちに」という意味である。 だが形容詞 immediate は、少しニュアンスが違う。 たとえば例文 the immediate future 「近い将来」という意味である。このように、形容詞 immediate はそれほど即時ではない。 また、「当面の」という意味もある。 語源をみると、「無い im 」+「間(media メディア的な語)」なので、「間をおかずに」という感じの語源である。だが実際には、「近いうち」とかの意味もあり、あまり語源とおりではない。 対応などが「即座の」「即時の」と言いたい場合、prompt が近い。 rapid は、速度などが「速い」こと。 川の流れの速さによく rapid が使われる。 辞書によくある典型的な例文は、 a rapid river 「急流」(ジーニアス)または「流れの早い川」(センチュリー) である。 また、 「仕事の速い人」a rapid worker も典型的(センチュリー「仕事の速い人」、ジーニアス「敏速に仕事をする人」)。 単語集にはないが、「レム睡眠」の「レム」が rapid eye movement 「急速眼球運動」のことである。高校の保健体育や生物学でレム睡眠を習うかどうか微妙ではあるが、一応、紹介しておく。 列車の「急行の」は 形容詞 express である。 「急行列車」 an express train という。東京書籍4500に例文も書いてあり、高校範囲である。(桐原は意味紹介だけ。) 東京書籍の検定教科書『All abroad! I 』いわく、 rapid train でも「急行列車」とのこと<ref>『All aboard! English Communication I』、東京書籍、令和3年1月29日検定済、令和4年2月10日発行、P.108</ref>。 感情などを「表明する」express と、同じスペル、同じ発音の単語である。「表明する」については説明を省略。 なお、高速道路は expressway である(東京書籍4500)。 対義語は「各駅停車」 local である。東京書籍に local も例文つきで掲載されている。 「各駅停車の列車」は the local train である(東京書籍4500)。 なお、localには「地元の」「現地の」という意味もある。 英語の local に田舎の意味はない(東京書籍4500)。なので、日本語の「ローカル」(田舎を意味している)とは意味が違う。 「地元ニュース」は local news である(ジーニアス)。「地元の新聞紙」は local newspaper である。 resident (レジデント)「住民」という単語がある。 これと合わせて、 local resident 「地元住民」という用語も典型的なので覚えたい(桐原4500、東京書籍4500)。 その他、「速い」・「早い」ことを表す形容詞には、fast, quick ,speedy など、色々とある。 speedy は、スペルを一見すると速度っぽいが、しかし、仕事などが速い場合でも speedy を使える(ジーニアスで確認)。 形容詞 speedy は東京書籍3000 にも書いてある、高校教育の範囲内の単語である。 形容詞 speedy は、乗り物の速さにも使えるし(東京書籍3000で確認)、仕事などの速さにも使える(センチュリーで確認)。ジーニアスだと、病気の回復の速いことを a sppedy recovery としている。 speedy は便利な形容詞であるので、英作文などで「速い」をつかうとき、speedy を使えば、たぶん切り抜けられるだろう。実際、だから3000語レベルで紹介しているのだろう。(rapid は4500語レベル。) 副詞ではない。 副詞は speedily であり、「早く」「速やかに」の意味(センチュリーで確認)。 名詞 speed は、物体の速さのことである(東京書籍3000)。だが、形容詞 speedyは、ジーニアスにもあるように、動作の速さに用いてもいい。 speed には動詞で「速度を上げる」の意味もあり、通常 speed up と前置詞upを付けて使う。 fast には形容詞「速い」がある。 「どのくらい速い?」と聞きたい場合は、How fast ~ と形容詞で聞くのが良いだろう。 物理学の「速度」は velocity という。 velocity は、物理学では方向を持った速度のこと(桐原5500で確認)。 つまり、東に時速50km/hと、西に時速50km/h とは、異なるものとして考えるのが、物理的な速度 velocity の発想。 単語集にはないが典型的な例文は、 「秒速300kmで」 at a velocity of 300 meters per second である(センチュリー、ジーニアス)。 しかしジーニアス speed で確認したところ、「時速24マイル」を at an average speed of 24 miles per hour と言う。 結局、speed でも時速とか言えそうである。 average はなくてもよく(センチュリー)、たとえばセンチュリーでは「時速50マイルで運転する」を drive at a speed of 50 miles an hour としている。 だが、英語では、そういう方向を考えずに、単に speed の固い言い換え表現として velocity を使うこともある。 形容詞 swift は、fast や quick よりも、やや形式ばった言い方(センチュリー)。 しかし裏を返せば、fast などの口語的な表現に近いという意味でもある。 単に素早いだけでなく、滑らかさもあるときに使うことが多い(センチュリー)。 だが、単語集やジーニアスなどの例文を見てみると、滑らかさを感じられない例文もあるので、あまり使い分けは明確ではない。 東京書籍4500はswift を巻末おくりにしており、桐原は桐原5500での紹介だし、あまりニュアンスに深入りの必要はない。 副詞 swiftly の訳は文脈に合わせて、「素早く」「迅速に」「ただちに」など、うまく合わせて翻訳する。形容詞 swift も同様。 具体例は、東京書籍は「煙がたちまち広がった」を swiftly としているし、旺文社は「被害者の救出は素早い行動を必要とする」をswift で表している。 なお、単に「滑らか」であることを形容したい場合は smooth (スムーズ)という形容詞がある。発音注意である。外来語「スムーズ」と同様にと読む。 smooth で、動きの滑らかさも、手触りなどの滑らかさも、両方とも表現できる。 haste 「急ぐこと」という意味もあるが、「焦ること」という意味もある名詞である。 形容詞は hasty であり、「急いだ」「軽率な」の意味である(旺文社1900の巻末)。 ---- 地方 provincial, rural rural は、「いなか」であるが、田園のようなニュアンスがある。 センチュリーによると、いなかの、のどかで楽しい側面を強調するときに使うのが rural とのこと。 対義語は urban である。 つまり (いなかの)rural ⇔ urban (都市の・都会の) である。 「地方の」は形容詞 provincial である。 名詞 province には、「地方」と、カナダの「州」の意味がある(桐原5500、旺文社1900)。桐原の例文はカナダの州についての文のみ。東京書籍は名詞 province を巻末で紹介しているが、カナダの「州」の意味で紹介している。 東京書籍および桐原は形容詞 provincial を紹介せず。 辞書で provincial を見ると、ジーニアスいわく「田舎くさい」とか「偏狭な」という意味もある。 ---- 情熱 passion, enthusiasm 熱意 keen, enthusiastic , 熱望 eager, 収入 income, (会社などの収入)revenue 名詞 passion は、感情などの高ぶりという意味での「情熱」で、よく喜怒哀楽などに使われるが、派生的に「熱意」などの意味もある。だがまずは、感情の高ぶりとしての「情熱」で、passion を覚えるのが良いだろう。理由は、後述。 passion の対象の感情は、怒りや愛情なども含む。 東京書籍は passion を紹介せず。桐原と旺文社が紹介。 「受身の」を意味する passive と語源は同じ。 つまり、昔のヨーロッパ人は、感情を受動的なものだと考えたのだろう、という事が、よく評論などで言われる(ただし辞書には書いていない)。 こういう背景があるので、暗記するには passion は感情の高ぶりとしての「情熱」として覚えるほうが楽だろう。 なお、「受動喫煙」が英語で passive smoking である(旺文社、ジーニアス)。 ちなみに smoke は「煙」の意味の名詞だが、「喫煙する」という意味の動詞でもある。smokeは東京書籍3000語レベルで(つまり高校の中級)、桐原でも3000語レベル。旺文社では1200語の奴(高1向けのいちばん低レベルの奴)。 「禁煙」は smoke-free であるが(東京書籍3000)、掲示などでは「禁煙」は No smoking ともいう(桐原3000)。 なおアメリカでは公共の場では原則として禁煙である(桐原)。 [[File:Keep out.jpg|thumb|left|私有地の立入禁止]] [[File:Danger Keep Out Sign.JPG|thumb|立入禁止の標識]] [[File:Longbridge Lane, Longbridge - Danger of death electricity keep out - sign (6922357386).jpg|thumb|感電の警告標識]] [[File:CautionTape.jpg|thumb|注意のテープ]] 標識や掲示で覚えたほうがいいのは、とりあえず、「危険」Danger とか、「立ち入り禁止」Keep out または Keep off 、「警告」Warning 、「注意」Caution 、などでしょうか。 「故障」Out of Order も、機械の不急した現代では、必要かもしれません。そういう標識もあります。 Keep out は単語集でも、東京書籍4500の単語 property の例文に書いてあります。 "Private Property : Keep Out" 「私有地: 立ち入り禁止」 と例文があります。 画面の左側の画像のように、実際に米英にそういう掲示はよくあります。 終戦直後の文部省著作の英語教科書だと、こういった標識の英語も教えていました。 終戦後の当時、GHQ占領下の日本の東京には英語の標識も多く、こういう標識を読めるようにする教育の需要があったのです。 結果的に、戦時中から時事的に軍事の話題を扱っていたこともあり、戦後になってその時事枠に占領軍関係の実用英語が入ったことになります。 名詞 enthusiasm は、仕事や勉学などの「熱意」や、スポーツなどのファンであることの意味。 形容詞 enthusiastic は、仕事や勉学などの「熱意のある」や、スポーツなどの「大ファン」のような意味。 be enthusiastic about ~ で「~に熱中する」 たとえば 「彼女は~に熱中している」She is enthusiastic about ~ のように使う(東京書籍、ジーニアス)。 fanatic との違いとして、fanatic は特定の宗教や政治などの熱狂的な支持者のこと。よく fanatic は「狂信的な」とも訳される。 「~(人)の仕事への熱意」 enthusiasm for one's work である(桐原、センチュリー)。 「熱中して」 with enthusiasm keen は、下記の熟語で、「熱心である」の意味があるが、主にイギリス英語である。 東京書籍いわく、「熱血教師」なら a keen teacher である。 センチュリーいわく、「熱心な生徒」なら a keen student である。 be keen on ~(名詞または動名詞) で「~に熱心である」 である(ジーニアス、旺文社の単語紹介)。 be keen to ~(動詞) で「~することに熱心だ」 の意味(旺文社の例文、ジーニアス)。 keen には寒さや痛みなどが「激しい」という意味もあり、 「激痛」a keen pain である(東京書籍、センチュリー)。 「肌を刺すような寒さ」 a keen cold である(センチュリー。ジーニアスには似た例文)。 keen には、感覚などが「鋭敏な」という意味もあり、 すぐれた観察眼という意味での「鋭い目」 a keen eye という表現がある。 「持つ」の動詞 have と組み合わせて have a keen eye for ~(発見の得意な分野など) 「~に鋭い目をもつ」 という表現がある(桐原、ジーニアス)。 なんとなく、刺すような痛みと「鋭敏」が語感が刃物のようなイメージがありそうだと思いがちかもだが、しかし原義を辞書で調べてみると、keen の原義は「勇敢な、賢い」であり(センチュリー、ジーニアス)、刃物は関係ない。 イヌの嗅覚の鋭敏さには 形容詞 acute (アキュート)も使える。ジーニアスいわく、感覚の鋭敏な意味では acute は keen と同意語とのこと。だが acute は、病気などが「急性の」で覚えたほうが良い(医学の用語で使うので)。急性心不全とか急性アルコール中毒とかいうときの「急性」が acute である。 旺文社1900がacuteの「急性の」の意味を紹介している。桐原4500は「鋭い」「先のとがった」「激しい」としか紹介していない。 accute には、「深刻な水不足」や「深刻な技術者不足」のように、「深刻な~不足」でもよく使われる。だが、ジーニアスいわく、severe と同義語とのこと。 やはりacute は「急性の」で覚えるのが良いだろう。 なお対義語の「慢性の」は chronic (発音は「クラニック」または「クラーニック」)である(ジーニアス acute、東京書籍4500巻末)。 典型的な例文は 「持病」「慢性疾患」(慢性の病気) a chronic disease である(旺文社1900、東京書籍4500)。旺文社に「慢性疾患」と言う訳あり。 「持病」は chronic illness ともいう(東京書籍4500巻末 chronic,ジーニアス )。 単語集にはないが、「年代記」 chronicle (クラニクル、クラーニクル)というスペルの似た単語がある。なお、辞書をみたが、「慢性の」chronic と「年代記」 chronicle の関係は特になにも言及されていない。 慢性も年代記もどちらとも、長い期間にかかわるようなイメージが共通しているかと。 なお、「5周年 記念」のような「記念日」は anniversary である。形容詞 annual はもともとは「毎年の」「年一回の」というような意味だが(桐原5500)、しかし5周年とか10周年とか毎年でない記念日にも anniversary を用いていい(桐原5500、旺文社、ジーニアス例文は10周年。センチュリー例文は20周年。)。なお、東京書籍で「年収」an annual income とのこと(ジーニアスで確認)。東京書籍4500に anniversary は無い。 なお、国・自治体の「歳入」や、会社などの「総利益」などは、revenue という。 要するに、帳簿などに書かれるような一定期間の利益額のことが revenue であろう。(しかし、辞書には帳簿がどうのこうのという話は無い) しかし、センチュリーは、経費などを差し引かない「粗利益」(あらりえき)のことを言うなら gross income でも言える(センチュリー revenue)、と述べている。 センチュリーは会社でなく「個人」の収入でも revenue を使えるとしているが、しかしジーニアスはその説は採用せず、ジーニアスは「国」「自治体」の歳入と「会社」の収入とだけとしている。 形容詞 eager は「熱望して」「熱心な」の意味。 be eager to ~(不定詞) で、「しきりに~したがっている」の意味。 eager は、切手収集マニアのような趣味にも使っていいし(ジーニアス)、 「しきりにミュージカルを見に行きたい」のような趣味にも使えるし(旺文社)、「外国に行きたい」にも使えるし(センチュリー)、 「勉強したい」「勉強熱心だ」のような表現にも使っていい(桐原、)。 たとえば、「彼は外国に行きたいがっている」なら He is eager to go abroad. である(センチュリーの英文を改変)。 桐原いわく、「勉強したがっている」 be eager to learn である(抜粋)。 ジーニアスいわく、「彼女は非常に勉強熱心だ」 She is very eager in her studies. である(引用)。 ---- 信頼 faith, trust, confidence 信念 belief 確信 (事実にもとづくなら)conviction, (事実にもとづかないなら)confidence 方針・信条 policy faith と trust の基本的な意味は、ほぼ同じ(東京書籍の見解)。 faith には、「信仰心」という意味もある。 trust には、財産などの「信託」(法律用語)や、「委託」「保管」という意味もある。 辞書では、「理屈を越えた信頼」が faith の基本的な意味だと書いてある。 だが用例を見ると、「政治家を信用していない」とかを faith をもってないと説明したり(ジーニアス)、国家間の信用がないことをその国家のあいだにfaithがないと説明していたりして(ジーニアス)、まあ、理屈で説明できそうな用例ばかりである。 have a faith in ~で「~を信頼している」である。 I have a faith in him. 「私は彼を信頼している」 みたいに、割と気軽に使われる(ジーニアスと東京書籍に似た例文)。 どうやら、信仰心という意味があるからといって、けっして faith に信頼の強さのようなニュアンスはないようだ。 なお、faith in God で「神への信仰」である(東京書籍、ジーニアス)。 have faith in God で「神を信仰している」である(東京書籍)。 faith の語源をジーニアスで調べても、原義が「信頼、信用」としか書いてないので、どうしようもない。 なお、trust の原義は「堅固」である(ジーニアス)。 trust のほうに、財産の信託の意味があるから、じゃあ契約の信用というニュアンスでもあるのかといえば、そうではない。ジーニアスを見ると、「直感的な信頼」が trust だと言う。 まったく、faith の「理屈を越えた信頼」と、trust の「直感的な信頼」との違いが、不明確なものである。直感は理屈では説明しづらいから直感なのであって。 trust の「委託」「信託」「保管」については、相手を信頼しているからその相手に財産などの保管を委託できる、とでも理解しておけば十分だろう。 名詞 trust に信仰心はないが、しかし動詞 trust で「神を信じている」と言うのは可能であり、実際にセンチュリーの英文がそうである。 センチュリーの引用で、 I have a trust that God will protect me. 「神が私を守ってくれると信じている」 である。 confidence にも「信頼」や「自信」などの意味がある。 だが、confidence の意味は「機密の」で覚えたほうが良いだろう。 ほかのセクションでも説明しているかもしれないが、ジーニアスによれば、「秘密文書」は confidential documents とのこと。 confidence は、こういう感じの、かなり固い言い回しである(特に出典は無い)。 believe の名詞形belief は「信じること」である(ジーニアス、センチュリー)。 桐原3000の単語集には「信念」「信じること」とあり、たしかに「信念」の用法もあるが、もっと幅広く信じること一般に belief は使われる。 たとえばジーニアスいわく「悪魔の存在を信じる」のような例でも belief は使える。このように、とくに信頼関係はなくてもいい。 もちろん、信頼関係に belief を用いてもいい(ジーニアス、センチュリ-)。辞書でも2番目か3番目の意味で「信頼」の意味で belief を紹介している。 ジーニアスいわく、trust や faith と同じ意味でも belief は使われるとのこと。センチュリーはそう説明していない。 conviction という名詞があり(桐原4500)、「事実にもとづく確信」という意味である。翻訳の都合で「信念」と訳される場合もある。 confidence だと、「事実にもどつかない確信」という意味である。 このため、conviction や confidence では一般的な「信念」という概念には対応しない。そもそも一般的な「確信」という概念にすら対応しておらず、事実にもとづくか否かのこだわりがある。 このため、単なる「信念」には、belief を使わざるを得ないだろう。そう考えれば、桐原3000のように belief を「信念」の意味で紹介するのにも一理ある。 名詞 policy は、単語集では政府・政党などの「政策」や会社などの「方針」あるが、ジーニアスで確認すれば policy には別の用法で個人などの「信条」という意味もあるとしているが、しかしセンチュリーはそれに異を唱えているようで、policy は信条ではなく「得策」だと思ってるような「やり方」だとのこと。 センチュリーいわく、「物を現金で買うのが私の主義です。」とか「上役を敬意を持って遇するのが得策だ。」という例文で policy を用いており、どうやら打算的な行動指針のような何からしい。 policy の個人適用には、こういう見解の相違があるので、よって単語集には「政策」「方針」しか紹介されないのも納得。 policy の典型的な語句は、 「政府の政策」 the government's policy である(東京書籍3000、旺文社1400緑)。 センチュリーいわく、 government policy 「政府の政策」 と書いてもいい。 単語集では特に明示はされていないが、語法として、 the government's policy on food で「食料に関する政府の政策」(旺文社)、 the government's policy on education で「教育に関する政府の政策」(東京)、 のように、the government's policy on ~ で「~に関する政府の政策」 ほか、 「外交政策」a foreign policy もよくある(東京3000)。 なお単語集には無い単語だが、motto は、標語とかスロ-ガン(slogan)とかの似た意味だが(ジーニアス)、単語集にはない。 単語集には motto も slogan も無い。文科省はリスニング重視などで使える英語への改革を自称しているが、モットーもスローガンも知らない英語教育が使える見解なのでしょうか。 ---- 卓越 形容詞「卓越した」 excellent ,prominent 動詞 excel は、能力などが「卓越する」、能力などで相手に「勝る」の意味である。 これとは別に、動詞 exceed の意味は「超過する」である。exceed には、優越など好評価の意味は無い。 excellent は、「すばらしい」や「優秀な」の意味である。 応答などで、 「すばらしい!」 "excellent !" のようにexcellent 単独で用いることもある(センチュリー、ジーニアス)。 得意な行為をあらわすのに「~するのが得意」 be excellent at ~(動名詞) である(センチュリー、旺文社)。 たとえば水泳が得意なら、 be excellent at swimming である(センチュリー)。 熟語 be good at ~ と関連づけて覚えよう。 単語集には書いてないが、 得意分野などを言う場合は、 be excellent in ~(分野) である。 典型的な例文が「英語が得意」で、 「英語が得意」 be excellent in English である。(センチュリー、ジーニアス) なお、強調したい場合でも、比較や最上級にはしない(センチュリー、ジーニアス)。 どうしても強調したい場合、 quite , really, absolutely などの副詞を用いる(ジーニアス)。 prominent も「優越した」「卓越した」の意味であるが、prominent には「目立つ」、周囲よりも「飛び抜けている」という意味がある。 太陽の紅炎をプロミネンス prominence というが、それも天文学者の観測で、太陽の輪郭から炎が飛び出していて目立ったからである。 なお、prominent の名詞形がprominence であり、「卓越」「目立つこと」などの意味である。 excellent と prominent の意味の違いに注目するなら、prominent には「目立つ」という意味およびニュアンスがある。 prominent の単語中の -mine- が「突き出る」という意味である。 pro- は「前へ」の意味である。なので、前に突き出ていて目立っている、が、原義である(旺文社)。 なお、東京書籍は prominent を紹介せず。 また、目立っていると意味からか、prominent には「著名な」という意味もある(桐原5500)。ジーニアスでは、名詞形 prominence のほうに、「著名」の意味がある。 典型的な例文は、たとえば 「著名な作家」 prominent writer である(センチュリー。桐原に似た例文)。 卓越した人材は、組織のなかでは重要な役割を与えられるだろう。だからか、prominent には「重要な」という意味もある。 典型的な例文は、 「重要な役割を演じる。」play a prominent part. である(センチュリー、ジーニアス)。 「演じる」とあるが、べつに演劇をしているわけではなく、仕事などで重要な任務をこなすことを「重要な役割を演じる」という(ジーニアス)。 ジーニアスいわくpart の代わりに role を使ってもよく、つまり 「重要な役割を演じる。」play a prominent role でもいい(ジーニアス)。 role には演劇などの「役」の意味もあるので、ますます「演じる」感が増した言い回しである。 というか、仕事などの「役割」と、演劇の「配役」「役」は、同じ名詞 role という単語である。なお、実は part にも演劇の「役」という意味がある(東京書籍)。 role で覚えてもらいたいのは、実際の演劇のほかにも、たとえば「第二次世界大戦の後、アメリカは国際社会で重要な役割を果たすようになった」というような表現でも role を使うことです。 山川『英文詳説世界史』にある表現ですが、 play a crucial role <ref>橋場弦 ほか監修『WORLD HISTORY for High School 英文詳説世界史』、2019年10月15日 第1版 第3刷発行、P.370</ref>「(社会などで)重要な役割を演じる」 です。 東京書籍などにも、この意味での role の紹介はありますが、山川がいちばん分かりやすい。 crucial は「重要な」という意味です。 crucial と role が一緒に覚えられて重要な慣用句でしょう。 なお旺文社1900oおよび桐原4500だと、play a important role 「重要な役割を果たす」です。 演劇などで「~の役をこなす」のも、似た熟語であり、たとえば『ロミオとジュリエット』でロミオ役を演じるなら play the role of Romeo である(東京書籍、センチュリー)。 また、仕事の役割を「こなす」のも、劇の配役を「演じる」のも、同じ動詞 play である(ジーニアスのroleより)。 ニュアンスは少し変わるが、「重要な」はもっと平易な言い回しで important でも良く(センチュリーの role )、 play an important role でもいい(センチュリー、旺文社)。 熟語 play an inportant role in ~ で「~にいて重要な役割を果たす」 の意味である(桐原、旺文社)。 role model とは、手本のような意味での「理想的人物像」という意味である(センチュリー)。 旺文社にある単語だが、role-playing とは、もともと心理学や語学教育などの用語で「役割演義」というもの(センチュリー)だが、心理学・語学などの業界では「ロールプレイ」でも通じる(東京書籍)。英文ではハイフンを入れるほうが標準的で、辞書ではハイフンありで載っている(ジーニアス、センチュリー)。 単語集にはないが、テレビゲーム用語の role-playing game もジーニアス英和に載っている。つまり、けっして和製英語ではない。) ---- 人格・性格 character, personality 国民性 national character, nationality 愛国心 nationality, patriotism character も personality も、同義語で、「人格」「性格」の意味だが、若干、いくつかの用例が慣用的に違う。 「国民性」という場合は、 national character である。 なお、nationality という単語でも「国民性」「愛国心」を表せる(旺文社、ジーニアス、センチュリー)。 なお「愛国心」patriotism である(桐原5500、ジーニアス、センチュリー)。「愛国者」 Patriot である。アメリカ軍のミサイルで1990年代に「パトリオット」というのがあって、日本のテレビでもパトリオット・ミサイルと呼ばれて、よく報道されていた。ジーニアスにもミサイルのパトリオットが載っている。 小説や劇や映画などの登場人物も character である(東京書籍)。 character には文字の意味もある。たとえば「漢字」は the Chinese character ともいう。一方、アルファベットなどの表音文字はレター letter という(東京書籍)。 また、若干、personality のほうが、個人的なニュアンスがある。 形容詞 personal が「個人的な」「私的な」という意味である(東京書籍、旺文社)。 たとえば a personal opinion 「個人的な意見」(東京書籍4500、桐原3000) なお、opinion (オピニョン)に発音注意。option (オプション)と混同しないように。 日本語ではよく「オピニオン」と言われるが、英語的には実は opinion の発音はオピニョンである(東京書籍3000)。東京書籍3000では発音記号にカタカナが併記されているのだが、「オピニョン」と堂々と書いてある。ただまあ、早口で「オピニオン」と発音すればオピニョンっぽく聞こえなくもない。 単語集にはないが、TV業界の有名人のことを a TV personality という(旺文社)。TVタレントとは言わない(ジーニアス)。つまり「TVタレント」は和製。 人の「個性」を言う場合、personality を使う(桐原)。 character にも物事の「特質」という訳がある(ジーニアス、東京書籍(「特色」))。 単語集にはないが、日本語でも「人格者」という言葉で、人格の高潔な人をあらわすが、実は英語の character にも「人格の高潔な人」の意味がある(ジーニアス、センチュリー)。 たとえば、学校教育などによる「人格形成」は、 character building (センチュリー)、または building character (ジーニアス)、である。 だが、ジーニアスには、さらに別の用法で、「人格の変な人」でも character が使われるとも紹介している(ジーニアス)。さしづめ<!-- 国語的には「さしずめ」の代わりに「さしづめ」でも良い。国語辞典をみると、標準的には「さしずめ」と読みが表記されているが、実は小さな字で「サシヅメ」あるいは「-ヅメ」とも直後に書いてある(岩波『広辞苑』、三省堂『新明解』などで確認)。 -->、もし日本語風に言うなら、括弧つきで『人格』者だと隠語・婉曲風に言うような感じだろうか。『「人格が素晴らしい」とは一言も言ってない』的な。 単語集にはないが、文法参考書いわく、文頭の Personally, ~ で「個人的な意見だが、~」の意味。 characteristic で形容詞としては「特徴的な」「特有の」などの意味だが、なんと名詞としてcharasteristic には「特徴」「特性」などの意味もある(旺文社、桐原)。 語法として、 characteristic of ~(名詞)で「~の特徴」である。 たとえば、センチュリーいわく「6月の特徴」(6月は June)とか、ジーニアスいわく「アメリカ合衆国の特徴」(アメリカ合衆国はthe United states of America)とかを、characteristic of ~ で言える。 単語集や辞書にはない話題だが、ラテン語で演劇につかう仮面のことを「ペルソナ」という。一見すると英語の勉強に役立ちそうな知識だが、しかし残念ながら小説中の登場人物は英語では「キャラクター」であるし、一方でテレビの芸能人は「パーソナリティー」だったりして、不統一的であるし、あまりラテン語の影響がなさそうである。 仕方なく、実際の英語の事例を覚えるしかない。 なお「残念ながら、」は英語では、文頭で"Unfortunately, "という決まり文句(※たぶん範囲外)。 ほかの話題としては、心理学におけるユング心理学で「ペルソナ」の理論というのがあるのだが、しかし学校教育における「人格形勢」という割と児童心理学っぽい話題は キャラクタービルディング であるし、やはり、まったくラテン語が参考にならない。 英単語 personality のスペルを覚える手段としてしか、ラテン語「ペルソナ」の知識は役立たない。 personal とスペルの名詞 personnel は「職員」「隊員」とかの意味の集合名詞(旺文社1900)。 たとえば、どっかの野戦病院とかで医療系の隊員とかをまとめて medical personnel とか言えるので、いちいち医師か看護師かそれ以外かとか気にしなくていいので便利。 軍関係の隊員なら military personnel とか。 桐原と東京書籍は personnel を紹介せず。 そのほか、一般の事務所とかで、自社の課(か)や会社全体の職員とかをまとめて言いたい場合も personnel で言える(辞書に書いてあるのはコレ)。集合名詞だからか、課単位とか社単位とかで使うのが辞書的には普通。 ---- 弱い fragile, frail ,vulnerable 形容詞 fragile (フラジル)には、体質が「虚弱な」という意味もある。だが現代では、fragile は、ガラスなどが割れやすい事を表現するのに用いられる。 そして、宅配などで、「割れ物注意」の意味のシールに "Fragile" などと書いてあるのが普通である。 単語集にもある用例も、コップなどが「割れやすい」という内容である。 比喩的に桐原5500が「人類は文化に依存しているので、もろい」という例文で fragile を用いている。 ガラスや陶器などセラミック系の材料は、硬いが、衝撃などや強い力に弱い。 べつにガラスや陶器などは、材質として弱いわけではない。家庭内にも、食器などで多くの陶器があるだろう。 しかし、割れないように取扱いに気を使う必要はある。 そういうニュアンスを、「人類は文化に依存しているので、もろい」という表現でも汲み取ろう。 fragile (フラジル、フラジャル)は発音注意。後半は、ジャイルではない。 体質や心などが虚弱なことは形容詞 frail という。weak を堅苦しくした表現が frail である。 基本的な意味は weak と同じである。 「虚弱体質」は a frail constitution である(センチュリー、ジーニアス)。 派生名詞として、意志の「弱さ」 frailty がある。 シェイクスピアの『マクベス』の一節の台詞「もろき者よ、汝(なんじ)は女」は Frailty, the name is woman. 「もろき者よ、汝(なんじ)の名は女」 である(センチュリー、ジーニアス)。 形容詞 vulnerable は、陣地などの場所が物理的な攻撃を受けやすい位置にいるなどで「弱い」という意味、または人物が批判などの攻撃に「弱い」という意味(センチュリー、ジーニアス)。 単語集では、コンピュータのセキュリティが弱いという表現で vulnerable を桐原も旺文社も用いているが、しかし辞書では確認できず、ジーニアスでもセンチュリーでも見つからなかった。 なお、東京書籍はこの単語を紹介せず。 be vulnerable to ~(動詞) で「~に弱い」の意味。 典型的な例文は、 (陣地などが)「攻撃に弱い」 be vulnerable to attack である。 単語集・辞書にはないが、コンピュータのセキュリティーの弱さを表現する際、普通に weak を使う。 無料OSの一種の Linux でも、英語でOSインストールをすると、パスワード登録などでもし "AAAAA" とかの手抜きのパスワードを登録しようとすると、"weak"などと表示されるOSをよく見かける。 形容詞 secure (セキュア)は、攻撃などの危害に対して備えがあって「安全な」という意味であり(ジーニアス)、よく砦(とりで)が secure という例文がある。 コンピュータのサーバーにも、ハッキング対策などの万全なサーバーに対して secure を使う(ジ-ニアス)。 名詞形 security は「安全」「軽微」などの意味。 secure には、「確保する」という意味もあり、obtainとの違いは、secure だと、一般的には確保しづらいものを確保する、という意味である。 山川の英語版世界史に、P239に、近代において産業革命によって勃興した大英帝国が世界市場を確保 secure した、という内容の英文がある、。 ---- 企業・会社 company, corporation, (大)事業 enterprise 新規事業 venture 法人 incorporation 同僚 peer, colleague 仲間 fellow, companion, corporation は「(大)企業」という意味。 company に比べて corporation は規模が大きい(東京書籍3000)。 なお、company の語源は「一緒に com」+「パンを食べる人 pany」という意味(ジーニアス)。 これ自体は雑多な知識だが、しかし名詞 companion (コンパニオン)「仲間」を理解するヒントになるので、パンを食べるという語源も覚えよう。 companion 「仲間」は、普通の「仲間」の意味のほかにも、ペットや愛読書など、人生をともに過ごす的なものにも使う(東京書籍)。女性ホステスの意味はない。 日本だと、なんか飲み屋の接待女性みたいなのをコンパニオンというが、しかし英語 companion にそういう意味は無い(東京書籍)。単なる和製。 桐原いわく、「(彼の)飼い犬が彼の仲間だ」みたいな文章でイヌが彼の companion とのこと(桐原4500)。コンパニオンはこういうふうに使う。 ジーニアスの辞書にある女性コンパニオンは、介護ヘルパーのことなので、日本の接待のアレとは意味が違う。 旅や仕事などで単に同行することになった人物にも companion を使う(センチュリー)。ペットや愛読書などにも companion を使う(東京書籍、センチュリー)。 ともかく、companion 「仲間」である。 fellow には、仲間の意味のほかにも、「運のいい奴だ」とか「のんきな奴だ」のような「やつ」の意味がある。 なお「運のいい奴」は a lucky fellow である(東京書籍)。 fellow の語源は「家畜(fe)を置くもの」という意味である。 スペルの似た動詞 follow (ついていく)とは関係ない。 典型的な例文は 「彼はいいやつだ。」 He is a good fellow. である(東京書籍、ジーニアス)。 単語集にはないが、同じ学校の仲間を fellow at school という(ジーニアス、センチュリー)。 欧米で大学の特別研究員をフェローというが、それも上述と同じ単語 fellow である(桐原)。 colleague は職場の「同僚」。なお、coworker でも「同僚」の意味になる。 enterprise (発音「エンタープライズ」)は「大事業」。 会社のことではないので、「大企業に就職したい」みたいなことをいいたい場合には、 want to get a job at enterprise (×)とは言えない(ジーニアス)とのこと。 「大企業に就職したい」は want to get a job at big company という(ジーニアス)。 ただし、「多国籍企業」は multinational enterprise であると、ジーニアス multinational の項目に書いてある。なお、旺文社も「多国籍企業」multinational enterprise を紹介している。ジーニアスの言っていることが矛盾しているので、まあ判断は読者に任せる。辞書を鵜呑みにしてはいけない。あくまで参考程度。 ジーニアスによると「中小企業」をenterprise でいう用例もあるようだし、桐原は農業などでも「事業」なら enterprise だとしている。 ただ、例文が少なくて、よくわからないので、当ページでは保留。 なお、「起業家」・「事業家」は名詞 entrepreneur (「アーントレプレナー」)である(旺文社1900)。桐原5500と東京書籍4500には、この単語がない。 名詞 venture は、現代ではビジネスの「新事業」の意味で使われる(ジーニアスの見解)。 ventureには「冒険」という意味もあるが、類義語の adventure との区別が難しい。 adventure が、ビジネスかどうかにかかわらず、刺激的な「冒険」のこと(ジーニアス、センチュリー)。 venture は、生命の危険、または資金の危険のリスクがあるというニュアンスがある(ジーニアス、センチュリー、旺文社)。 動詞 venture もあり、上記のようなリスクを承知で「思い切って~する」のような意味(単語集では旺文社、桐原5500)。 動詞 incorporate には、団体が「合併する」という意味もある。 なお、名詞形 incorporation では、アメリカでは単に「会社」の意味で使われる(ジーニアス)。 このためか、動詞 incorporate には、「会社を設立する」という意味もある(東京書籍4500 巻末)。 incorporate には、製品や書類に「~を組み入れる」という意味もある。 形容詞 incorporated は米国英語で「有限責任の」という意味であり Inc. などと略すが(ジーニアス、センチュリー)、しかし日本の有限会社とはニュアンスが違う。ジーニアスの例文だと、大企業のUSスチール(US steel) も Inc. である。 なお、イギリスでいうリミテッドカンパニー Ltd. のこと。 ---- 肥満 fat, overweight, obese, plump 形容詞 fat は、「太った」という意味だが、直接的な表現なので失礼であるとすることから、太った人間に対しては「体重超過の」 overweight を使うのが良いとされる。 典型的な例文は 「太った猫」a fat cat である(東京書籍3000、桐原3000)。 また fat は名詞としては「脂肪」の意味である。 また、get fat で「太る」の意味である。 たとえば My dog have got fat. 「私の(家の)イヌは太った」 である(単語集を参考にオリジナル。東京書籍で現在完了形。桐原でイヌ)。 また、「やせる」は lose fat とも言える(東京)。 形容詞 fat の対義語は形容詞 thin 「やせた」である(東京書籍)。 しかし、slim (スリム)でもよいだろう。slim もれっきとした英語の形容詞であり、「ほっそりした」の意味である。 英語 smart (スマート)は機転が利いて「賢明な」「頭がいい」「利口な」のような意味であり、clever とほぼ類義語である(東京書籍4500)。体型については smart は使わない(桐原3000 smart)。 なお、thin には、濃度などが「うすい」などの意味もある。 obese は、医学などにおける「肥満」という意味であり、しばしば不健康な「肥満」というニュアンスがある。 名詞形は「肥満」obesity である(旺文社、桐原)。 「肥満によって糖尿病のリスクが(以下略)」みたいな話を医学的にする場合、obese を使う。単語集の例文でもそうである。 旺文社の単語集には、plumpを「ぽっちゃりした」と紹介している。obese の項目で関連語として plump を旺文社は紹介している。 なお国語時点によると、「ぽっちゃり」とは、広辞苑(1992年 第4版)や三省堂明解国語時点(2020年 第8版)などによると、小太りな人をかわいらしいと受け取って表現した形容で、普通は女性の形容に使い、たとえば「ぽっちゃりとした美人」のように使う<ref>新村出 編集『広辞苑 第4版』、岩波書店、1992年10月9日 第4版 第2刷発行、P.2367</ref><ref>『新明解国語辞典 第八版』、三省堂、2020年10月20日 第1版発行、P.1449、</ref>。 センチュリーでplumpを確認したところ、こちらも女の子の例文であり、 a plump girl 「丸ぽちゃの女の子」 である。 ジーニアスによると、女性のほか、赤ん坊の健康的な太り方を言うにも plump が用いられるとのこと。 そのほか、果実が肉付きがよくて丸々とした様子なども plump ということがある、とジーニアスは述べている。 なお、桐原と東京書籍の単語集には plump が見当たらなかった。 ---- 神聖 holy, sacred センチュリーは、holy(ホウリー) と sacred(セイクリッド) との使い分けのさいの基本的イメージの区別をあきらめている。 ジーニアスは、一応は、sacred は人為的権威により聖別されたものに使うと言っている。 だが実際に用例を見ると、たとえば聖書に holy bible と言ったり(ジーニアスで、Holyの派生名詞にある)、 聖典を a sacred book と言ったり(センチュリー)、聖書を sacred writing といったり(ジーニアス)、区別はあいまいである。 sacred には、約束などが厳粛で破ることができない、という意味もある。 「不可侵の権利」 a sacred right という用語がある(旺文社、センチュリー)。 大日本帝国憲法の『神聖にして侵すべからず』は、おそらくは sacred の訳語を参考にしたのだろう。 日本での政治評論や歴史評論などで、明治天皇制はキリスト教を参考にしたという言説が昔からよくある(少なくとも1990年代には評論家・小室直樹の著書で見かけた言説である)。 インドの聖牛は sacred cow である(センチュリー、ジーニアス)。このように、ヒンドゥー教の聖牛にも sacred を使う(東京書籍)。 sacred の発音は「セイクリッド」である。サクリッドではない。 「いけにえ」「犠牲(ぎせい)」のことを名詞 sacrifice (サクリファイス)という。 sacred と sacrifice の発音とを混同しないよう。 sacred も sacrifice も語源はだいたい同じで、sacr- が「聖なる」のような意味である。 なお、宗教的な「儀式」は ritual である。べつにいけにえを捧げる必要はなく、たとえば旺文社の例文だと、古代エジプトではスポーツが死者を敬うための儀式(ritual)だったとのこと。 宗教的でない儀式は ceremony (セレモニー)であり、ceremony は「式典」などとも訳される。 ただし実際には「習慣的行為」「慣例」なども ritual という(桐原5500に「慣例」あり、旺文社1900)。 特に ritual を宗教的な意味で使っていることを強調したい場合、 「宗教的儀式」 a religious ritual ということもある(東京書籍4500、ジーニアス)。 sacrifice の「犠牲」はべつに宗教的である必要はなく、たとえば「母親がみずからの命を犠牲にして子供を救った」みたいな文章でも sacrifice を使える(東京書籍)。 他人のために犠牲になる必要もなく、たとえば「私は、自分の自主性を犠牲にしたくない」のような自己本位でも sacrifice を使える(桐原)。 sacrifice は名詞「犠牲」の意味のほかにも、動詞として「犠牲にする」の意味もある。 形容詞 divine は「神による」「神にささげる」なので、ニュアンスが違う。 名詞 divinity は「神性」。神聖ではなく「神性」。 ---- 牛(ウシ) ox 動物学的な「ウシ」 cow 一般的な「ウシ」。乳牛。 bull 雄牛(オスうし、おうし)。とくに去勢していない雄牛 cattle ウシの集団 cow は一般的なウシの意味もある。だが、乳牛のことを cow という用法もある。雌ウシのことを cow ということもある(桐原、ジーニアス、センチュリー)。 一方、ox には、労役などの目的でのウシのイメージがある。 だからか、ox でオスウシのことを言う場合もある。 なお、ox の複数形は oxen である。child「子供」の複数形が children なのと同種の変化。 なお、アメリカ開拓時代や西部劇のカウボーイ cowboy が乗っている動物は馬(ウマ)。 牧牛などを牧草地から別の牧草に移動させるために、馬に乗って、牧牛(カウ)を追い回すから、カウボーイ。 cattle (カトル)はウシの集団。集合的に複数あつかいする。 なので、a cattle は不可(旺文社)。 cattles も不可(旺文社)。 典型的な例文は、 He raises cattle. 「彼は(牧場などで)ウシを飼育している。」 である(旺文社1900、東京書籍4500)。 なお、「牧場」は名詞 farm である(ジーニアス和英)。farm で「農場」も「牧場」も表せる。東京書籍3000および旺文社1200ではfarmは「農場」と紹介している。 farm 以外にも牧場を表す単語はあるが、高校の範囲を越えるので本書では紹介しない。 ---- 握る grip, grasp grip と grasp は意味はだいたい同じ。 センチュリーは、grasp の項目で、gripとの意味の違いの説明をあきらめて放置している。 ジーニアスは、gripの項目で、「graspよりも強意的」 としている。しかし実際には、 grip も grasp も、ともに「ロープを握る」などの例文で使われるので、区別は難しい。 なお、 grip 版「ロープを握る」 grip the rope grasp 版「ロープを握る」 grasp the rope である。 旺文社が grip を紹介している。東京書籍と桐原では、grip が見当たらない。 grip も grasp も、「理解する」という意味での「把握する」という用法もあるし、支配するという意味もある(「掌握」のような)。 grasp the meaning 「意味を理解する」 である(東京書籍、旺文社)。 違いは、grip には「握力」という意味もある。 また、テニスのラケットなどスポーツ用具などの「握りかた」や、刀の「握りかた」もgrip である。 いくつかの機器の「取っ手」も grip ともいう。だが分野によっては、ハンドル handle ともいう。 ドアの取っ手は handle である(ジーニアス、桐原4500)。 grasp the handle of the door 「ドアの取っ手を握る」 である(桐原)。 自動車のハンドルは steering wheel という(桐原4500、ジーニアス)。 単語集にはないが、自転車(足こぎの二輪車のほう)の取っ手は handlebar (ハンドル・バー)という。 さて、grip について。 タイヤの接地力は grip である。 そのほか、恐怖(terror または fear )を主語にして「~(人)が恐怖にとらわれた」を Terror gripped ~ あるいは Fear gripped ~ のように言う(ジーニアスが fear, センチュリーが terror)。 ---- 嫉妬 envy, jealousy envy は動詞としては「嫉妬する」「うらやむ」「ねたむ」の意味が基本。 東京書籍3000に名詞 envy だが「嫉妬」の意味が書いてある。 キリスト教の七つの大罪のひとつが嫉妬 envy で名詞形だが、高校生としては名詞で覚えてしまうとジェラシーとの区別が難しくなるので、まずenvyは動詞で覚えよう。 envyは何も宗教的に断罪されるような強くて敵対的な嫉妬だけでなく、「羨望(せんぼう)の的(まと)」だとか「アメリカ旅行なんて、うらやましいね!」ぐらいの褒めるような感じでも使われるのをセンチュリーの例文で確認。 なお、旺文社1400(中級)に envy の「羨望の的」の意味も書いてある。 envy A for B で「AのBをうらやむ」の意味。だが、旺文社以外は紹介していない。よって、特に暗記の必要はないかと。 形容詞 jealous は「ねたんだ」、ジーニアスいわく「嫉妬深い」、センチュリー恋人や夫婦どうしなどで「やきもち焼きの」という意味。 マイナスの意味で使う場合、jealous のほうが envious よりも嫉妬のなかの憎悪の気持ちが強い。 ジェラシー jealousy とは、名詞で、「嫉妬」「ねたみ」の意味。 envy は高校英語では3000語レベル。桐原3000とか東京書籍4500にある。割と中級の単語。 一方、jealous は東京書籍4500レベルかつ、旺文社1900レベル。ジェラシーのほうが上級。スペルが長くて難しいからか。 桐原はジェラシーを紹介せず。 なお、七つの大罪は下記のとおり。 :傲慢 pride プライド (高校単語) :強欲 greed グリード (高校単語) :嫉妬 envy エンヴィー (高校単語) :憤怒 wrath ラース :色欲 lust ラスト :暴食 gluttony グラトニー :怠惰 sloth スロース greed は桐原5500に「貪欲」として載っており、「投資家たちの利益に対する貪欲さ」として載っている。 また、旺文社1900では「強欲」としてgreedを紹介であり、こちらもお金に対する強欲。 greed for money で「金銭欲」と、旺文社は例文中で訳している。 桐原でも greed for profit なので、つまり greed for ~ で「~に対する貪欲さ」みたいな意味。 pride は東京書籍4500および桐原4500で、形容詞 proud の関連語として、名詞 pride「誇り」が載っている。 take pride in ~ で「~を誇りに思う」である(桐原)。 しかし be proud of ~ で「~を誇りに思っている」なので、あまり違いがない。 のこりの憤怒、色欲、暴食、怠惰は、単語集では見つからなかった。 ---- 尊敬 respect, esteem 感心する admire 褒める praise 「他動詞 + A for B」 praise, blame, admire, criticize それぞれ respectively ,each 決定的で欠かすことのできない crucial , critical 決定的に重大な crucial ,decisive (※ 別セクションで説明) 動詞 esteem (イスティーム)は旺文社1900にしか書いてない。 桐原4500と桐原5500、および東京書籍3000と東京書籍4500には、esteem が見当たらなかった。 なお、旺文社1900および桐原5500が「自尊心」self-esteem と紹介しているが、ジーニアス英和とセンチュリー英和では見当たらない。 ジーニアスいわく、esteem のほうが respect よりも固い語。 センチュリーいわく、esteem のほうが respect よりも敬愛の気持ちが強いとのこと。ただ「敬愛が強い」とは一体どういう意味なのか。 辞書をみても、respect と esteem のあまり違いはハッキリしない。 respect の用例では、ジーニアスによると、人間を尊敬するほかにも、交通法規などの制度を「尊重する」・「重視する」ような意味で respect するといった用法もある。 なお、対義語はたとえば名詞 contempt「軽蔑」(けいべつ)などがある(旺文社1900、ジ-二アス contempt )。旺文社にしかない。東京書籍と桐原にはない。 あまり一般的に使えそうな例文がない。桐原などが紹介しないのも妥当。 動詞 admire (アドマイア)は、人物そのものではなく、「彼の勇気に感心したよ」とか「彼の業績に感心したよ」のように、ふつう、人の業績や能力などを賞賛する場合に用いる。 桐原4500の例文も、「彼が成し遂げたこと」という業績への感心である。 単に「感心」「感嘆」だの admire の和訳を覚えるだけでは不十分である。そうではなく、業績・能力などを褒める、と覚えよう。 admire A for B で「BのことでAに感心する」である(東京書籍)。 典型的な例文は admire him for ~ 「~のことで彼に感心する」 である(桐原、ジ-ニアス、旺文社)。 たとえば、彼の勇気に感心するなら、 admire his courage 「彼の勇気に感心する」(センチュリー、ジーニアス) または admire him for his courage 「彼の勇気に感心する」(ジーニアス) のように使う。 派生語は、形容詞 admirable(アドミラブル)「賞賛すべき」「見事な」 や名詞 admiration (アドミレーション)「賞賛」などがある。 admirable の使い方も、辞書で確認したかぎり、人物本人を形容するのではなく、人物の行為や業績を形容している(ジーニアス、センチュリー)。 praise (プレイズ)は、感嘆の意味合いはうすく、単に「賞賛する」という意味で使う。 よくある例文が、親を子をほめることを praise するという例文(ジーニアス、センチュリー、旺文社)。 ただし、それとは別の用法で、神を褒め称えるという文脈でも praise という単語を使う。 admire と同様、praise でも勇気や功績などを賞賛してもいい(ジーニアス、東京書籍)。 このため、admire と praise の意味の違いは不明瞭である。 praise も語法で、 praise A for B 「BのことでAを褒める」 という語法がある(ジーニアス、東京、桐原)。 主語が感動してるかどうよりも、とりあえず主語の人が目的語の人を賞賛している、という事実を説明しているのが praise である。 主語が感動してるかどうかは、文章の読み手には知るよしも無い。 ほか、文法知識として重要なこととして、前置詞 for には理由を表す用法もある、という事です。標準的な文法参考書に for の理由の用法も書いてあります。桐原が、「他動詞 + A for B」というパターンで、praise や下記 blaze などをまとめて紹介しています。 中学ではforの訳を「のために」と表すので、なんとなく誰かの利益のための意味かと思いがちですが、しかし違います。 praise や admire といった賞賛・感嘆などの友好的なイメージの動詞だけでなく、 blame「~のせいにする」や criticize「批判する」などの敵対的なイメージの動詞でも for で理由を表します。 つまり、ひとつひとつ語法を書くと(東京書籍4500では一つ一つ語法を書いています)、 blame A for B 「BをAのせいにする」 be criticize for A 「Aのことで非難される」(東京書籍) criticize A(人) for B 「A(人)をBのことで批判する」(桐原) などです。 ただしblame は blame B for A 「BをAのせいにする」 という語法もあります(東京書籍)。 典型的な例文は blame him for the accident 「その事故を彼のせいにする」(旺文社、桐原、東京書籍) なお、criticize はイギリス英語では criticise である(桐原)。単語集では非イギリス英語のほうの criticize を紹介しており、つまり英語発祥地だろうが、発音が分かりづらいイギリス英語は国際的には嫌がられるという事。 さて、criticize の名詞形は criticism (クリティシズム)「批判」であり(桐原)、「批評」「非難」である(東京書籍)。 裏を返すと、blame と praise の名詞形は、そのままである。 つまり、名詞 blame は「非難」の意味。 名詞 praise は「賞賛」の意味。 動詞 punish(パニッシュ)「罰する」 も punish A(人) for B で「BのことでA(人)を罰する」(桐原) である。 名詞形は punishment (パニッシュメント)「処罰」である。 「感謝する」thank A(人) for B は「BのことでA(人)に感謝する」である。 中学生あたりに for の理由の用法を説明するなら、thank が適切だろう。 形容詞 critical (クリティカル)は、criticism などの形容詞だろうと東京書籍は紹介しているが、しかし旺文社は crisis の形容詞だと紹介している。ジーニアスは両方の派生を紹介している。じつは東京書籍も、 criticize とは別のページで critical を「重要な」の意味でも紹介しています。 つまり、critical には「批評の」「批判的な」といった意味もあるし(東京書籍)、「危機的な」「決定的に重要な」という意味もある(旺文社)。 ほか、物理学・化学などでいう「臨界」(りんかい)は、英語では critical で表される(ジーニアス)。 また、スケジュール管理の技法で、 クリティカル・パス分析 critical pass というのがある(ジーニアス)。 桐原は4500は critical を紹介せず。桐原5500で criticism の派生語として critical を紹介しているが、例文は無し。 割と重要な単語だと思うが、掲載単語数には限りがある。 よく criticize の末尾 -cize を -size(×) にするミスがあるが、しかし暗記のさいに形容詞 critical から派生させて覚えれば、このミスは減るだろう。 よく「決定的な」と訳されるが(ジーニアス)、その意味は「決定的に重要な」という意味です(センチュリー)。東京書籍は誤解をさけるためか、critical を「重要な」という意味で紹介しています。 さらにいうと、critical でいう「決定的な」とは、ニュアンス的には「もしそれが無いと、成り立たなくなってしまう(目的が果たせずにクラッシュまたはクライシスしてしまう的な結果になってしまう)」という位に重要だという意味で使われます(特に出典は無い)。少なくとも理系では。 実際、クリティカル・パス分析のアイデアも、スケジュール管理に影響を与えている工程を探り出して重点的に労働資源を当てるために、具体的にスケジュール各部の必要日数などを調べたり計算したりして日数などを見積もっていく手法です。 また高校範囲外ですが、IT用語で「ミッション・クリティカル」mission critical とは「それが欠けると業務の遂行に致命的な悪影響が出るほど重要である」という意味であり、<ref>[https://e-words.jp/w/%E3%83%9F%E3%83%83%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%86%E3%82%A3%E3%82%AB%E3%83%AB.html IT用語辞典『ミッションクリティカル 【mission critical】 』] 2022年5月26日に確認. </ref>、またそのため派生的に、極めて高い耐障害性が要求されるシステムのことも「ミッション・クリティカル」と言います<ref>[https://kotobank.jp/word/%E3%83%9F%E3%83%83%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%86%E3%82%A3%E3%82%AB%E3%83%AB-9132 SCII.jpデジタル用語辞典「ミッションクリティカル」の解説 ] 2022年5月26日に確認. </ref>。 よく、社会インフラなどのITシステムや、銀行など金融機関の基幹システムで、「ミッション・クリティカル」なシステムであるとか形容されたり、あるいは「ミッション・クリティカルな仕事が要求される」などと言います。 これらの社会インフラなどのITシステムは、ほぼ365日稼働していることが多いので、そのような長い日数の連続稼働をできるシステムだとも言われる事もありますが、あくまでそれは語源的には派生的な意味です。 crucial (クルーシャル)「決定的な」「決定的に重要な」という単語もある。 crucial のほうは、機械の事故時などの危機対応はあまり強調していない。少なくとも、IT業界では「クルーシャル」とは、まず聞かない。 機械の危機管理よりも、成果の意義や、重要性を強調したい表現が crucial であろう。 ほかのセクションで説明したが、「彼のホームランが勝利に決定的だった」のような意義を強調する例文で、crucial が用いられている。 なんというか、crucial には、admire 「賞賛する」 や admirable「感嘆すべき」のようなニュアンスがありそうである。つまり、crucial は、影響力が大きいので「重視すべき」であり、「実際に重要である」というような感じの意味がありそうだ。ただし、文脈によっては、そうでない場合もある。旺文社の「書類を確認すること」が crucial である、の例文を、そこまで考えるのは、さすがに考えすぎだろう。 なので、折衷(せっちゅう)的に、次のような東京書籍の解釈が落とし所だろう。 東京書籍は、crucial は「影響力が非常に大きい」という意味での「決定的な」という意味だとしている。 crucial のほうにも、「欠かすことのできない」 という意味もある(ジーニアス)。 critical が、実際にそれが欠けたり故障したりすると、現実的に重大トラブルが起きる可能性が高いのに対して、 crucial は、そういうのは強調していない。 crucial と decisive との違いについては、別のセクションで説明してあるはずなので、本セクションでは省略する。 副詞 respectively 「それぞれの」という単語も覚えたい(桐原、旺文社)。respectively の品詞は、辞書で確認したかぎり、副詞だけである(ジーニアス)。 なお、初等的に each 「(形容詞)それぞれの」「(代名詞)それぞれ」「(副詞)それぞれ」でも言える(ジーニアス、センチュリー)。 each other 「お互いに」という代名詞的につかう熟語があるが、each単独では「それぞれの」「それぞれ」という意味である。 ---- 墓 grave, tomb 葬式 funeral tomb (トゥーム)は grave よりも改まった語。 そのためか、普通の「墓」は grave を使う。 tomb は旺文社1900にしか書いてない。 桐原4500・5500と東京書籍4500にはtomb は見当たらない。grave はある。 tomb だけで墓石の意味もあるが、特に石の部分を強調したい場合、 tombstone という言い方もある。しかし普通の墓石のある墓でも grave を使って良いだろう。旺文社1900に tombstone 「墓石」がある。)。 なお、「共同墓地」は graveyard である(旺文社1900。ジーニアスで確認)。 単語集にも辞書にも、 visit a grave で「墓参り」の意味である。日米英の普通の人の墓には墓石(tombstone)があるだろうが、それでも墓参りには grave を使う。 tomb と grave のニュアンスの違いは、宗教にからんでくるので、入試には、あまり出ないだろう。 「葬式に参列する」は attend the funeral である(東京書籍、桐原)。 「埋葬する」は 動詞 bury である。「埋葬」は burial である。 以下、入試には出ないだろうが、参考までに辞書などで調査した結果を述べる。 実は、共同墓地には cemetery という言い方もある。単語集にはなく、入試には出ないだろう。(実は東京書籍4500および桐原4500の bury「埋葬する」の項目の例文に cemetery がある。) bury ~(死者) in ◯◯(墓地)で「~を◯◯に埋葬する」 である(東京書籍、桐原)。 bury ~(死者) in the cemetery で「~を墓地に埋葬する」 である(東京書籍、桐原)。 ジーニアス cemetery いわく、教会に隣接する共同墓地は churchyard である。 近年のアメリカでは共同墓地を memorial park ともいうとのこと。メモリアルパークは和製英語ではなかった。 一方で、「納骨堂」や「霊廟」(れいびょう)は tomb で表せる(ジーニアス、センチュリー)。 だが、和英辞典で「霊廟」を調べると mausoleum (モウソリーアム)という単語が出てくる。英和のほうでジーニアスでmousoleum を調べると、「壮大な墓」「霊廟」「陵」とのこと。 形式的には名称などが「霊廟」の建物でも、壮大でなければ、英語ではまあ単なる納骨堂あつかいだろうか。 逆に、屋外でもあっても、仁徳天皇陵みたいなのは英語では霊廟あつかいだろうか。 tomb のような同音異義語は混乱のもとなので、国王の専用の墓などあれば mausoleum を使いたいものである。 国王の墓とその霊廟などは、tomb でよい(センチュリー)。 ジーニアス和英「納骨」によると、「地下納骨堂」は repository とのことだが、しかし英和で repository を見ても「収納場所」としか書いていない。誤訳だろうか。 そもそも、何を収納するかは repository には決まりはない。実際、インターネット上ではソフトウェアの集積場所を repository と呼んでいる。まさかソフトウェアの墓場なわけあるまい。 なお、「地上納骨堂」は charnel (チャーンル)とのこと。 ジーニアス英和によると catacomb (カタコーム)が「地下埋葬所」である。 tomb (トゥーム)は発音注意。 一般に、末尾の -mb の b は発音しない。 climb (クライム)「登る」。 comb (コーム) 「くし」(髪の毛をとかすヤツのほう)。 bomb (ボム)「爆弾」 などと同様。 "from the cradle to the grave" で、イギリスの社会福祉のスローガン「ゆりかごから墓場まで」である(旺文社1400)。 (※ 範囲外 ) なお、「絨毯(じゅうたん)爆撃」は carpet bombing である。「bomb」は「爆撃する」という動詞でもあるので、名詞的に使うときは動名詞 bombing にする。 ---- 原因や誘因 cause, induce 説得 induce, persuade, argue, 催促 urge 記憶や感情などを「呼び起こす」 evoke, stir 怒らせる provoke, 少し怒らせる annoy いらいらさせる irritate ~するように誘導する induce ~案内という意味での「誘導する」 navigate 感情・興味などを「喚起する」 arouse induce は「引き起こす」や「説得する」などの意味である(旺文社)。 桐原には書いていない。東京書籍4500では書いてあるが巻末おくり。 induce の「引き起こす」の用法が、cause とはどう違うかと言うと、辞書を見ても特に違いは書いてない。 「説得する」の用法が、persuade とはどう違うかというと、ジーニアスいわく、persuade のほうがより積極的に説き伏せるという意味とのこと。 persuade は、単に説得するだけでなく、実際に行動させることまで含むのが普通(センチュリー、桐原)。 だから persuaded him into going は、けっして単に「彼を行くように説得した」だけでなく、「彼を説得して行かせた」という意味が普通(センチュリー)。 persuaded him to go でも同じ意味になり、つまり「彼を説得して行かせた」の意味である(動詞は違うが、東京書籍および桐原が persuade to do を紹介)。 東京書籍のほうは、induce は「人をその気持ちにさせる」という意味だと言っている。 induce ◯◯(人) to ~(動詞)で「◯◯(人)に~するようにすすめる」の意味(センチュリー、東京書籍)。 ジーニアスいわく、物理学の電気回路の電気誘導の「誘導」が、この induce の派生の名詞 induction 「誘導」である。 なお、単語集にはないが、電気回路のインダクタンスは英語で inductance である(ジーニアス)。高校の物理2でインダクタンスを案らウので、まだ習ってなければ放置でいい。 さて、ジーニアスの例文などを見る限り,犯行の動機などは、induce を使うらしい。 べつに犯罪的なことだけでなく、「眠気を引き起こす」なども induce を使うとのこと。だがジーニアスに例文がない。 navigate は、人を案内したり連れていくなどの意味での「誘導する」である(旺文社、ジーニアス)。 induce とは意味がまったく違うので、混同しないように。 なお、桐原と東京書籍には書いていない。センチュリーの項目 navigate には「誘導する」の意味が書いていない。 navy 「海軍」の語に近いことを意識しよう。navigate は、船や飛行機を「操縦する」という意味がある(センチュリー、ジーニアス、旺文社)。 だから名詞形 navigation は、「航海」「航行」「誘導」などの意味がある(ジーニアス)。旺文社には「誘導」の意味が書いてない。 また、navigator は「航海士」の意味がある。 犯行動機ではない、「英語を勉強しよう」みたいな「動機」は motivation (モチベイション)である。しかし motive だけでも名詞として「動機」になる(旺文社1900)。 なお、「動機づける」は motivate という別のスペルの単語である。 なお、犯行の「動機」にmotive を使っても構わない(東京書籍4500、センチュリー)。 the motive for the crime 「犯行の動機」 である(東京書籍4500、センチュリー)。 urge (アージ)は「強く勧める」(東京書籍4500)とあるが、ジーニアスによれば(~するように)「催促する」「強く迫る」である。 桐原4500によると、urge 人 to ~ で「<人>に~するように強く促す」である。東京書籍4500でも同様、urge (A) to ・・・ で「・・・するよう強く勧める」である。 argue は、どっちかというと「議論で説得する」である。理由をあげて説得するのが argue だと、東京書籍は言っている。 ジーニアスを見ると、いちおう、argue にも「説得する」の用法があるのだが、しかし他の用法で「言い争う」とか、相手のいうことに耳を貸さずに「主張する」みたいな用法もあり非友好的な議論で使う場合もあるので、あまり説得の意味では用いないほうが良いだろう。 ジーニアスいわく、友好的に議論する場合は discuss を使うとのこと。 argue や persuade は、単語集には比較的によく前半のほうに書いてあるが、正直いって、「説得」に使うには意味がキツすぎる。 induce が単語集では後半の紹介になったり紹介されていなかったりするが、induce を使う方が良いのかもしれない。 evoke は、記憶や感情などを「呼び起こす」という意味(桐原5500、旺文社1900)。名詞形は evocation 「喚起」で(旺文社で単語のみ)、記憶や感情などの喚起のこと(センチュリー)。東京書籍に evoke はない。 provoke は「怒らせる」「扇動する」であるが、笑いなどその他の感情を引き起こすという意味もある(桐原5500、東京書籍4500 巻末)。 笑いを引き起こすのと怒らせるのでは、結果が正反対なので、使用には注意が必要な単語である。 evoke で笑いを誘う場合、 ジーニアスいわく evoke a laughter である。なお、桐原5500いわく動詞 elicit が類義語とのこと。 provoke で笑いを誘う場合、東京書籍およびジーニアスいわく provoke laughter である。 provoke で誰かを怒らせる場合、provoke him 「彼を怒らせる」のように使う(ジーニアス、センチュリー)。 特に怒らせる相手を指定しない表現なら、 provoke anger 「怒りを引き起こす」のように表現してもいい(桐原5500、センチュリー)。 provoke には「挑発する」の意味もある(旺文社、センチュリー)。名詞形は provpcation で「挑発」「扇動」の意味で(センチュリー、旺文社)、普通は怒りの感情を引き起こすのにだけ使う(センチュリー、ジーニアス)。 stir (ステーアー)にも、記憶などを「呼び起こす」の意味がある。 なお、自動車ハンドルの steering wheel のsteer とは違う単語である。混同しないように。 stir は、スプーンなどでコーヒーを「かき回す」という意味である。 典型的な例文が、まさにコーヒーをかき回す例文で、 「彼はスプーンでコーヒーをかき回した。」 He stirred his coffee with a spoon. である(桐原4500、旺文社1499(緑)にそれぞれ似た例文)。 東京書籍は紹介せず(東京1800・3000・4500)。 受験英語としては、stir はややマニアックであり、東京書籍は紹介していない。 なお、steer は「操縦する」という意味です(東京書籍4500、旺文社1900)。なお桐原は紹介していない。 典型的な例文として、 「船を操縦する」 steering the boat があります(東京書籍4500、旺文社1900)。 ボートというと、日本では手漕ぎのアレですが、しかし英語では boat は大型の船(ship)から手漕ぎの舟(rowboat)までを一般的に表す名詞です(ジー二アス boat)。 英米ではもしかしたら evoke よりも stir のほうが口語的で使用頻度が高いのかもしれないが、しかし日本の高校生としては、 evoke のほうが provoke と関連づけて語彙(ごい)が増えるので、なるべく evoke と provoke を優先的に勉強しよう。なお、東京書籍は evoke も紹介していない。 不快な行動を繰り返すなどして他人を「いらいらさせる」は irritate である(東京書籍4500 で「繰り返し」条件あり、旺文社1900)。桐原4500と桐原5500では、irritate が見当たらない。 ほか annoy は受け身形で「腹が立つ」の意味もある。センチュリーいわく、annoy は、irritate よりも怒り具合が軽い。 つまり 少し怒っている・少し怒らせる = annoy そこそこ怒っている・そこそこ怒らせる = irritate のような違いがある。 日本語の「いらいらさせる」に irritate の発音が近いことから軽々しく使いがちかもしれないが、しかし、irritate はなかなか怒っているという、怒りの強度がけっして低くないことには注意する必要があろう。 名詞形 irritation は「いらだち」「いら立ち」の意味(東京書籍4500、旺文社1900)。 さて、annoy は I am annoyed with ~ で「~に腹が立つ」のように使う。 旺文社いわく、能動形では「悩ます」の意味があるというが、辞書では確認できなかった(ジーニアス、センチュリー)。 「怒る」は形容詞 angry が基本であるが、「気の狂ったような」mad でも怒っていることを表現できる(東京書籍4500)。 arouse は、喜怒哀楽や好奇心など、どんな感情でも、感情を「喚起(かんき)する」のを表現できるので、覚えたい。 なお、「喚起」(かんき)の漢字に注意。換気扇などの「換気」ではないし、部首が口偏か手偏かの違いもある。 桐原にはない。旺文社1900および東京書籍4500にarouse がある。 たとえば、 ~(主語) arouse my interest in him 「~(主語)が、私の彼への興味を引き立てる」 のように使う(ジーニアス、東京書籍)。 「目覚めさせる」の意味もあるが、そっちは awake で十分だろう。実際、ジーニアスには、「目覚めさせる」の意味では arouse と awake は同義語だと書いてある。 名詞形は arousal だが、「目覚めること」という意味のほか(旺文社、ジーニアスなど)、性的興奮などの意味がある(ジーニアス、センチュリー)。東京書籍は名詞形を紹介していない。桐原はarouse自体を紹介していない。 ---- 輝く shine. glow まず、grow「育つ」 と glow「輝く」はべつの単語。 shine が一般的な「輝く」である。 glow は、夕焼けや、ホタルの輝き、加熱されて赤熱した鉄の輝きなどに使う。 なお「夕焼け」は the (sun's) evening glow である(ジーニアス、センチュリー)。 「ホタルが闇のなかで光を放っている」 The fireflies glows in the dark. である(ジーニアス、センチュリー。まったく同じ例文)。 また glow は、光は放っていないが、風呂上りのほてりの赤らみや(ジーニアス)、スポーツしたあとの赤らみにも使う。 東京と書籍は、暗闇で(たぶんネコの)目が光るのに glow を用いている。 東京書籍は、巻末おくり。桐原では、桐原5500で紹介される。 頬の紅潮なども glow である。 桐原5500では、恥ずかしさで頬が紅潮した場合も glow である。 flush は、興奮・怒り・風邪の熱(ジーニアスで確認)などで顔を「紅潮させる」、あるいは顔が「紅潮する」である(旺文社、ジーニアス)。 旺文社は恥ずかしさで顔が紅潮するのも flush という見解だが、しかしジーニアスは恥ずかしさによる紅潮の場合は blush を使うべきだと言っている。 flush には光などが赤く輝くという意味もあるが、しかしflash 「光がきらめく」と紛らわしい。光では flush は使わないのが安全だろう。 トイレの水を流すのが flush でもあるが(センチュリー、旺文社)、なぜこれが flush なのか意味不明である。 flush the toilet で「トイレの水を流す」 である(センチュリー、旺文社)。 ジーニアスによると、トイレにかぎらず水で不用物を洗い流したりするのも flush である。さらには、水でなくとも、たとえば栄養のいい食事などで毒素を体外に排出するのも flush とのこと。 単語集にはないが、トランプのフラッシュも flush である(センチュリー、ジーニアス)。 単語集にはないが、トリなどを急に飛び立たせることも flush である(センチュリー、ジーニアス)。 dim は「薄暗い」。 ---- 礼儀 丁寧・ 礼儀正しい polite (基本的に形容詞) 丁寧さ・礼儀正しさ courtesy (基本的に名詞) 辞書をみても、特に違いが載っていない。 また、旺文社1900にしか courtesy (発音は「コーテシー」)が載っていない。 よって、特に深入りする必要は無いかと。 なお polite は「ポライト」と発音。 名詞 politeness でも「礼儀正しさ」を言える(東京書籍)。 なお、polite の対義語は、 rude (ルード)「無作法な」または impolite である(東京書籍4500)。 つまり 「礼儀正しい」 polite ⇔ rude, impolite 「無作法な」 である。 ---- 熟した mature, ripe , 東京書籍は ripe を紹介せず。桐原4500と旺文社1900は ripe を紹介。 桐原4500・東京書籍4500・旺文社1900は mature (マチュア)を紹介。 なお、mature は発音注意(桐原、旺文社)。たぶん、高校生に nature 「自然」あたりと混同されやすいのだろう。 基本的に同じ意味。 * 共通点 東京書籍の単語集には mature は「<人・動物・精神が>成熟した」とあるが、だがジーニアスでは果実の熟している様子にも mature が使われるとのこと。 ripe を使う場合、 「熟した果実」 ripe fruit とのこと(旺文社、センチュリー)。 mature を使う場合、 「熟した果実」 mature fruit とのこと(ジーニアス、センチュリー)。 食品(チーズや酒など)の熟成は、mature も ripe も両方とも使う。 動詞「熟す」は ripen とのこと(旺文社、センチュリー)。 人物の中高年には、ripe も mature も両方とも使える。 * 相違点 「年齢の割には大人びている」と言う場合、 be mature for one's age を使う(旺文社、ジーニアス)。 age の代わりに years でも良い(センチュリー)。つまり、 be mature for one's years を使う(旺文社、ジーニアス)。 たとえば「彼は年齢の割に大人びている」なら He is mature for his age . である。 以下、単語集には説明がないので、暗記の必要は低いが、参考に。 英語のことわざで「早熟れの早腐り」 Soon ripe, soon rotten. というのがある。 mature は、考えや計画などが「熟した」、「熟慮した結果の」。 ripe は、機会が「熟した」。 なお、「熟考する」には、consider や、そのほか contemplate という単語がある(東京書籍4500、旺文社)。contemplate の名詞形 contemplation 「熟考」である。 保険や手形など債権の「満期の」は mature である。 「成熟」「満期」は maturity である(旺文社、ジーニアス)。 さて、単にパスポートなどの「期限が切れる」は expire (イクスパイアー)という(旺文社1900)。東京書籍4500と桐原4500・5500にはexpireがない。 証明書の「期限切れ」のことを、けっして「満期」とは言わない。 本ページでは別のセクションで guarantee などの証明書をあつかっているが、guarantee の「期限が切れる」も expire である(センチュリー)。 なお、辞書にはないが、ネットの各種のセキュリティ証明書などの期限切れも expire でいう。 名詞形は expiration (アメリカ英語)および expiry (イギリス英語)である(ジーニアス、センチュリー)。 証明書などの「有効期限」および食品の「賞味期限」は expiration date または expiry date である(旺文社、ジーニアス)。 いっぽう、証明書などが、期限切れなどをしてなくて有効な証明書であるという意味での「有効な」は、形容詞 valid が一般的だろう(東京書籍4500巻末。桐原に似た例文)。 ネットでも、サーバー関係などで各種の妥当性検証の文脈で valid という文字列を見かける。 ---- 熟考する consider, contemplate , meditate 瞑想する meditate, contemplate まず、「~を熟考する」の基本的な単語は consider である。 contemplate は、「~を熟考する」を意味する固い言い回しである(ジーニアス)。 桐原5500と旺文社1900がcontempkate を紹介している。 逆に、もっと柔らかく言いたいなあ、think deeply 「じっくり考える」という言い回しもある(和英ジーニアス)。 辞書で contemplate を見たら、「凝視する」という意味もあるし(桐原5500でも紹介)、単語集にはないが「瞑想する」という意味もある。 meditate 「瞑想する」は、単語集では桐原5500にある。旺文社および東京書籍にはない。 meditate on ~ で「~を熟慮する」でもある(桐原5500)。 熟慮の意味の mediate にしろ contemplate にしろ、ともかく「瞑想する」を意味する単語には、「~を熟慮する」の意味もあることを覚えておけば、英語の読会では困らないだろう。 英作文の場合は、think deeply か consider で切り抜けよう。 ---- 妊娠と母 妊婦 maternity 妊娠 pregnant 母 mother, maternal 父方の paternal ママ mummy 子犬 puppy 休日・休暇 holiday, vacation, leave ラテン語で母親のことを mater (マーテル)と言う。 英語 maternity は「母性」という意味だが、形容詞的に「妊産婦のための」という意味もある(センチュリー)。旺文社は maternity を「産科病棟」としているが、飛躍しすぎだろう。 妊婦用の服を「マタニティ・ドレス」 a maternity dress とか言うし(ジーニアス、センチュリー)、産院は maternity hospital である(ジーニアス)。 なお、「母性」は motherhood とも言える。 なお、「母性愛」は単に mother love である(ジーニアス)。 母性本能は mother instinct とのこと(桐原4500、東京書籍)。辞書で確認しようと思ったが、ジーニアスとセンチュリーでは見つからなかった。 ただし、maternal instinct 「母性本能」と書いてもいい(ジーニアス instinct, 東京4500巻末maternal)。 instinct (インスティンクト)とは、「本能」という意味の名詞。 医学的に「妊娠」そのものを言う場合は pregnancy (プレグナンシー)である(旺文社)。 形容詞 pregnant は「妊娠している」である(ジーニアス、センチュリー、旺文社)。 She is pregnant. 「彼女は妊娠している」 である(ジーニアス。センチュリーに似た例文)。 1990年代にあった受験参考書で、いまは高校参考書から撤退したが、1990年代のむかし予備校のトフル・ゼミナールが英語参考書を出していた時期があって、その参考書の冒頭で pregnancy が紹介されていた。難関大学の英語の勉強では語彙力が必要だという説明の例として、pregnancy という単語のある英語長文を例にしていた。当時、文脈または文法から高校必修でない難単語の意味を判断する読み方が受験英語で流行していたが、しかし難関大の出題傾向はそれでは解けず、語彙をふやさなければならない、という旨をトフル・ゼミナールは主張していた。 こういうわけなので、受験界隈では pregnancy は割な有名な単語でもある。なので、この単語を覚えよう。 なお、pregnant は今や、高校1年の三省堂 CROWN の検定教科書に書いてある<ref>高等学校外国語『CROWN English Communication I』三省堂、2021年1月29日 文部科学省検定済、2022年3月30日発行、P.64</ref>。土偶の話題。 単語集にはないが、pregnant には、派生的に「意味ありげな」とか「重大な意味をはらんでいる」などの用法もあるが、妊娠になぞらえた比喩だとして理解できるだろう。 そもそも日本語の『はらむ』(孕む・妊む)に「妊娠する」という意味があるし、「そのうち問題になりそうなものを含んでいる」という意味もある(三省堂の新明解国語で確認)。このように、日本語の理解が深いと、暗記の負担が経る。 なお、広辞苑(1992年版)を見ても,問題を「はらむ」の用法はなかった。 日本語の「はらむ」はその他、植物の穂(ほ)が出ようとして ふくらむ、という意味もあるし、古語の「はらむ」はこれである(広辞苑で、『蜻蛉日記』にこの「はらむ」があると書いてある)。 英語のページなので、古語には深入りしない。 ともかく、現代日本語の単語の意味は、明らかに英単語を真似ている。このことから、日本の古語だけを勉強しても英語はできるようにはならない。中学高校で英語を勉強する意義のひとつは、日本語を理解するためだ、というのは、少なくとも昭和戦後の昔からよく言われている言説である。 maternal はその他、親戚などで「母方(ははかた)の」という意味もある。 単語集のmaternalには「母方の」の意味の紹介はない。しかし「父の」paternal で、桐原5500に「父方の」という意味が紹介されている。なお、東京書籍4500と旺文社1900には paternal はない。 桐原5500の paternal の意味説明にはない情報だが、パターナリズム paternalism という、心理学や対人医療や心理カウンセリングなどでも使う専門用語を覚えておきたい。 医師などが、患者の医師を無視して、「患者のためになるから」という考えで、本来なら患者に決定させるべきことに対しても強く患者本人の行動に介入することを「パターナリズム」といい、よく評論などでは批判される。 「パターナリズム」さえ覚えれば、あとはパターナルなんていう、めったに使わない単語よりも、ペアレンタル parental 「親の」を覚えましょう。 一部のデジタル家電などに、「ペアレンタル・コントロール」 parental control という、設定によって家電などを保護者しか操作できないようにして、子供のいたずら等による事故をふせぐ機能があります。 いちいち親の操作とか訳さずとも、そのまま「ペアレンタル・コントロール」で通じますし、むしろカタカナでそう訳さないと通じません。なお、センチュリーの2017年版(第4版)の辞書にまだペアレンタル・コントロールは書いていません。(ジーニアスの最近のは持ってないので知りません。) 単語集では東京書籍4500しか、parental を紹介していません。なお、東京書籍の例文は、親の愛情がどうのこいうのという例文です。 なお、parental の発音はじつは「パレンタル」です。 parent の発音は「ペアレント」で合ってます。 「ペアレンタル」はまったく根拠のない発音でもなく、名詞形の発音を引きずっているので「ペアレンタル」は日本語なまりの英語と考えられなくもないですが、しかしまあ辞書的には「パレンタル」という発音になっています。 「産休」は maternity leave である(東京書籍4500 の項目 leave、ジーニアス)。これ自体は雑多な知識だが、だが名詞 maternity をここでも形容詞的に使っていることに注目したい。 形容詞 maternal はかなり使い道が限られる。 leave は、病気とか出産とかによる「休暇」(きゅうか)の意味であるか(東京書籍)、またはその他の理由で日にち単位で休むことである(センチュリー)。翻訳の都合で「休暇」と一言になっているが、けっして単なる休憩ではない。 なお、「病気休暇」は sick leave である(東京書籍4500 の項目 leave、ジーニアス)。 leave と「休日」 holiday との違いは、カレンダーで休日で定められてない日でも休める ただし、辞書的には、カレンダーで定められた休日以外の個人的な都合で休んでいる日でも、イギリスでは holiday と言う。 しかし、イギリスのこの用法は不合理で、あまり褒められたものではないだろう。なぜなら holiday とはホーリー・デイつまり「聖なる日」のことである(ジーニアス)。 法定の休日は伝統的に定められた聖なる日だからホーリーデイなのに、個人的な都合で休んでいるのに使うのは、イギリスの頭が悪そうである。 アメリカは、ここら辺の使い分けが意外ときびしく、法律で定められた休日だけに holiday を使っている。 なお、特に深く考えずに「休日」や、あるいは単なる連休などの「休暇期間中」などをいいたい場合、アメリカ英語では vacation で言える。 イギリスでは、大学の休暇や法定の休廷日だけが vacation という意味不明な用法である。 当然、意味不明なのでイギリスですらこの用法は嫌われているのだろうか、ジーニアスいわく、最近はイギリスですらアメリカ式の用法で vacation を使うとのことである。 古いだけで分かりづらい言語・単語はこのように淘汰されていく。 職種によって、日にち単位の休暇に leave を使うか vacation を使うかが分かれている。このためか、東京書籍は有休などや長期休暇などを何というかは触れていない。 東京書籍の「産休」maternity leave とだけ触れるのは合理的だろう。もし産休をバケーションといったら、なんか学生の夏休みっぽくて不謹慎(ふきんしん)であろう。 なお、vacation の発音は、じつは「バケーション」でも「ベイケーション」でも、どちらでもいい(ジーニアス)。 ラテン語で「父」が pater パテルである。 ラテン語は聞きなれないだろうが、日本の戦国時代・安土桃山時代の宣教師こと「バテレン」がポルトガル語で「神父」 padre (パードレ)である。 なお、キリスト教カトリックでは「神父」は Father と言う。「神父」の場合、出だしは大文字で Father になる。 なお、旺文社1900のカトリックの男性「僧」 monk の項目に、おんなの「修道女」「尼」は nun だと書いてあるが、しかしジーニアスおよびセンチュリーで確認したところ「修道女」「尼」は sister でも通じるとのこと。 ここら辺の呼び方は、カトリックかプロテスタントかで違いもあるので、深入りしなくていい。そもそも「神父」と「僧」のなにがどう違うのかという、高校の範囲を越えた問題もある。教会内での階級によっても呼び名が違う。旺文社1900が priest (プリースト)を「聖職者」として紹介しているが、厳密には意味が違うので、深入りしなくていい。なお、東京書籍と桐原は priest を紹介せず。なお女性形は priestess (プリーステス)である(旺文社では紹介していない)。 なおジーニアスによるとイギリスでは看護師長も Sister とのこと。おそらくナイチンゲーム(イギリス人なので)あたりの影響か。米国では、看護師長は head nurse というとのこと(ジーニアス)。 「姉妹都市」は sister city (単数形の場合)および sister cities (複数形の場合)である(センチュリー、ジーニアス)。 ジーニアスによると、「姉妹都市」という言い方はじつはアメリカ英語とのこと。イギリス英語では twin towns のように言うとのこと。だが3つ以上の提携だと困るので、なるほど「姉妹都市」が日本では普及したわけだ。 「姉妹校」は sister school である。 ミイラのmummy と、ママ mummy は同じスペル(旺文社1900)。アメリカでは、ママのほうを mommy としており、スペルが違う。 puppy は「子犬」である。パパは関係ない。 なお「子猫」は kitten である。 ---- 邪悪な evil, wicked 手品 magic, trick いたずら trick , mischief 呪文と魔法と手品 魔法 magic, spell 呪文 spell 手品 magic, trick evil (発音「イーブル」)は「邪悪な」とか、あるいは道徳的に「悪い」などを表す一般的な語。 evil は一般的な語であるが、「必要悪」 the necessary evil とか、それほど悪くないものを表せる。 邪悪といっても、べつに悪魔信仰とかとは限らず、たとえば 「科学者は邪悪な目的に科学を用いてはならない」 みたいな用法でも evil は用いられる(旺文社1400(中級・緑本)の例文が科学者のやつ)。 なお、bad は「よくない」 「悪い」ぐらいのイメージ 不等号にすると、 (よくない) bad < evil < wicked (かなり悪い) ぐらいのイメージ(センチュリー)。 do evil で「悪事を働く」である(ジーニアス、センチュリー)。 「善悪」の概念は good (善)と evil (悪) を用いる(センチュリー、ジーニアス、東京書籍、旺文社)。 「善悪」 good and evil のように用いる(センチュリー、ジーニアス、東京書籍、旺文社)。文脈によって good or evil とする場合もある(ジーニアス)。 bad ではダメなのか疑問に思うが、また、bad の代わりに evil を使うのに good はそのままなのは疑問だが、ともかく英語はそうらしい。 wicked は、意図的に「悪い」という意味。犯罪者から、いたずら小僧にまで、wicked で表現できる(センチュリー、ジーニアスで確認)。 wicked はやや高校の範囲外の単語だが、一部の参考書(桐原4500のみ)に紹介されている。 wicked の語源は「魔法使い」を意味する wick という言葉である(ジーニアス、センチュリー)。辞書によると、魔法使いから、邪悪な魔法などを連想し、そのうち、意図的に「悪い」というような意味になったとのこと。 だからか、アメリカ童話『オズの魔法使い』(The wizard of Oz)に出てくる「悪い魔女」が the wicked witch である(ジーニアス、東京書籍『All Abroad! I』検定教科書)。 なお、桐原4500の例文が an evil wizard 「悪い魔法使い」である。桐原4500では、evil の項目で、類義語として wicked が存在することを紹介している。桐原5500にwicked の紹介は無い。 なお、『オズの魔法使い』作中のオズは男で、主人公の少女ドロシーとは別人の男性。 東京書籍の教科書に wicked はあるが、しかし東京書籍の単語集には wicked は無い。 なお、単語集にはないが、山川出版の英語版・世界史によると、「魔女狩り」は witch-hunt である。「魔女裁判」は witch trial である。 なお、magician (マジシャン)は「手品師」「魔法使い」の意味。東京書籍3000にはmagic の派生語magician に「手品師」とだけ書いてあるが、ジー二アスに「魔法使い」とも書いてある。 桐原4500で、巻末の接尾辞 -ian の紹介で magician は「奇術師」と紹介されている。なお桐原では、「歴史家」historian, 「歩行者」pedestrian, 「司書」librarian を一緒に紹介。 単語集では性別の限定される wizard や witch は紹介していない。勉強としては、広い意味で使える magician を優先すべきだろう。 なお、magic 「魔法」「手品」の意味である(東京書籍3000)。 「魔法」はふつう magic で言いますが(ジ-二アス)、名詞 wizardry (ウィザードリ)でも「魔法」になります(桐原 EMPOWER 2<ref>高等学校外国語科用『EMPOWER ENGLISH EXPRESSION II』、桐原書店、平成30年文部科学省 検定済、令和4年 2月25日 発行、P39、</ref>)。「手品」との区別を明確にしたい場合、便利な単語かもしれません。 語尾は -ry であることに注意してください。辞書に語尾 -ly の wizardly は存在しません。 なお、桐原の教科書では、ピーターラビットを短文で紹介、設問で『赤毛のアン』とハリー・ポッターを紹介しています。 ほか、桐原は検定教科書 EMPOWER 2 の P22の例文で、演劇の古典作品の『ハムレット』 Hamlet という単語を紹介。なお、東京書籍4500でも、単語 part (配役)の項目で、ハムレットが紹介されている。 どうもハムレットは高校英語で演劇を扱うさいの定番らしい。 明治時代ならともかく今どき大学で中世の英語を学ぶ意義はうすれているが、しかし教養としてシェークスピアの言い回しが近代以降の英語に大きな影響を与えた背景があるので、シェークスピアぐらいは知っておいてもらいたいのだろう。 trick (トリック)でも「手品」の意味がある。日本だと「トリック」は手品の「種」のような意味だが、英語 trick はそれ自体で「手品」の意味がある。 trick には、名詞として「(人をだますための)策略」「手品」「いたずら」などの意味があり、動詞として「だます」の意味がある(桐原、東京書籍)。 トランプの手品は card trick という(東京書籍、センチュリー)。 trick 「いたずら」というのは、日本では馴染み(なじみ)がうすいかもしれませんが、たとえばハロウィーンで trick or treat (トリック・オア・トリート)といって、おばけなどに仮想した子供が、よその家の大人に、お菓子などをねだるイベントが10月末ころにあります。 辞書などでは、 trick or treat の訳の紹介を避けていますが、日本の一般的な評論ではよく「trick」を「いたずら」と訳し、「いたずらをされたくなかったら、お菓子をよこせ」のような意味だとされています。 ただし、それだと treat の意味が分からないですが。 こういう事情もあってか、辞書では trick or treat の紹介を避けています。 「いたずら」は mischief (ミスチフ)とも言います(桐原5500)。 mischief は、割と必要性のある単語かもしれませんが、しかし入試では出づらいようです。桐原5500でも、例文を見ても、特に大学名などは紹介されていません。桐原の創作した例文のようです。 名詞 spell にも、動詞で「(単語などを)つづる」のほか、名詞ではまったく意味の違う「呪文」という意味があります(桐原4500,旺文社1900)。この場合の spell は魔法ではなく「呪文」です。単語集には説明されていませんが、魔法と呪文の違いとは、「チチンプイプイ」とか口で唱える文言に重点を置いた表現が「呪文」です。ジーニアスにも、spell は「まじないの文句」だと書いてあります。 だから仏教でも、「南無阿弥陀仏(なむあみだぶつ)」だの、ああいうのは経典(きょうてん)にある文言という意味で「経文」(きょうもん)とか言うわけです。 なお、東京書籍は3冊とも spell を紹介していない。 なお、英単語などの「つづり」は、英語では spelling と言います(桐原、ジーニアス、センチュリー)。 「つづり」のことをspell とは言いません(ジーニアス)。 spell だけだと、動詞「つづる」の意味になります。 さて、呪文は「唱える」ものなので、だからたとえば、歌手のリサイタル recital などの単語の動詞形 recite を使って、recite a spell 「呪文を唱える」などという単語もあります(ジーニアス)。 なお、よく cast a spell 「呪文をかける」 という単語があります。(和訳の都合で「魔法をかける」と訳される。ジーニアスやセンチュリーでも cast a spell を「魔法をかける」と訳している。) 日本では、ニュースキャスターなどの外来語からの想像からか、キャストを「唱える」という意味だと思いがちかもしれませんが、しかし辞書を確認したところ、cast に「唱える」の意味はありません。cast にあるのは、視線や光などを「向ける」とか、網やサイコロなどを「投げる」とか、像などを「鋳造する」とか、芝居の配役、などの意味です。 cast a spell on ~(人) で「~(人)に呪文をかける」、「魔法で~を魅了する」 の意味です。 名詞 spell は天候などの「一期間」という意味もあります(桐原、ジーニアス、センチュリー)。桐原ではこっちを例文つきで紹介しています。例文は著作権的な都合でwikiではカット。 なお、ニュースについて、「放送する」を英語で broadcast という(桐原3000、東京4500、旺文社1400)。 broadcast は動詞としては、テレビ・ラジオを「放送する」であり、名詞としてはテレビ・ラジオの「放送」の意味である(桐原3000、東京4500、旺文社1400)。broadcaster で「アナウンサー」などの意味である(ジーニアス、センチュリー)。 過去形と過去分詞は、broadcastのままでも、broadcasted でも、どちらでもいい。 つまり broadcast - broadcast -broadcast でもいいし、 broadcast - broadcasted -broadcasted でもいい(桐原3000)。 旺文社1400緑だと、 broadcast は巻末おくりで、英検2級によくでる単語になっている。英検には出るが、入試には出づらいのだろう。日本の大学入試はこういうものである。 さて、「悪霊」は an evil spirit である(東京書籍、)。 evil には「不吉な」という意味もあり、桐原4500でも意味のみ紹介されている。 やや宗教的だが、「凶眼」evil eye という、悪魔などに目で睨まれると自身の身に災難が起きるという迷信がある(ジーニアスとセンチュリーに evil eye が書かれている)。 なお、「迷信」は superstition (スーパースティション)という(旺文社1900、東京書籍4500)。桐原4500・5500では見つからなかった。 ---- 停止 stop, pause, halt まず、「止まる」「停止」の一般的な語は stop である。 さて、halt は旺文社1900と桐原5500にある。東京書籍4500だと halt は巻末おくり。 さて、今はパソコンの電源を切るための操作をシャットダウンと言うが、昔または一部の分野では、パソコンの終了操作のことを halt とも言った。 たとえば 「お使いパソコンの電源を切って再起動してください」 Please halt and reboot your computer. みたいに使う(オリジナルの例文)。 東京書籍およびセンチュリーでは、停電による交通の停止のことを halt と言っている。 The accident halts the traffic. 「その事故は交通を停止させた。」 である。 これは、「交通システムの停止」だと解釈すれば、つまり halt は、動いていた「システムを停止させる」という意味だと解釈できる。 もっとも、ジーニアスいわく、単に、「halt は stopより も固い語」であるとのこと。 なお、「停電」は英語で the power failure である。 センチュリーいわく、「行進を止める」のも halt とのこと。 軍隊などが行進を止める号令も "Halt!" である(センチュリー)。 こういう英米の文化のためか、警官が市民に停止命令などを発するときも "Halt!" を使うことがある(ジーニアス)。 なお、"Freeze !" という、かなり強い停止命令もある(ジーニアス)。freeze は「凍結する」という意味の動詞である。警官の命令の Freeze は「動くと撃つぞ!」という強い命令(ジーニアス)。 さて、ジーニアスは議論を終了させるのも halt だと言っているが、しかしセンチュリーは採用していない。 動詞 pause は「小休止する」「少し中断する」の意味(東京3000、旺文社1900)。桐原3000・4500には書いてない。 名詞 pause は「小休止」「少しの中断」の意味。 単語集にはないが、会話が少しとぎれたり(ジーニアス)、言葉にためらうときも(センチュリー) pause で表現する。 しかし、事故などで交通が止まったりすることは、言わないようである。辞書では、そういう例は pause の項目では見当たらない。 暗記としては、pause は、停止・中断よりも「小休止」で覚えるのが良いだろう。 freeze は、物理的に「こおる」のは当然、freeze である(旺文社1900、東京、桐原)。低温で「こおらせる」も freeze である(旺文社1900、東京、桐原)。 資金などの凍結も freeze である(旺文社1900、ジーニアス、センチュリー)。 活用は freeze - 過去形 froze - 過去分詞 frozen である。 過去分詞 frozen は形容詞的につかうこともあり、たとえば「冷凍食品」 frozen food などがある(桐原4500)。 警官の命令の Freeze は「動くと撃つぞ!」という強い命令(ジーニアス)。 1992年の [[w:日本人留学生射殺事件]] での警官の警告命令が freeze であった。日本でも1992年の事件当時、マスコミでよく freeze の停止命令の意味が紹介された。一説には、発音の似ている「お願いします」 Please と被害者が聞き間違えた可能性もあるとも報道されていた。 ---- 投資と投機 speculate 投機する invest 投資する まず、日本語で「投機」(とうき)というのが、批判的に株取引などの金融市場の取引を言う表現。 日本では、株取引などで、株価など価格の変動による「利ざや」を目的に、株の売り買いをするのが「投機」だとよく言われる(三省堂『新明解国語辞典 第八版』。岩波書店『広辞苑 第4版』)。 なお、「利ざや」は英語で margin (マージン)である(旺文社1900)。 また、物価や株価や金利など相場の「変動」や、水面などの「波動」は fluctuate である(ジーニアス、センチュリー)。 マージンについて、大学で経済学を学ぶと、「限界代替率」(げんかい だいたいりつ)などとして形容詞 marginal を使った用語が最初のほうで出てくるので、margin には経済用語的・経営用語的な意味があるのも知っておこう。なお、経済学でいう限界~とは、投入するコストや労働力などに対する、その出力としての成果の比率のこと(厳密には違うが)で、要するに経済学的な入力と出力との比率のこと。 桐原5500と東京書籍4500には margin がない。 margin の意味は、本など印刷物の「余白」、「利ざや」である(旺文社)。 fluctuation について、桐原4500のみ、本文中で「変動」として例文ありで紹介している。旺文社1900には巻末に単語と意味だけある。東京書籍4500には fluctuation はない。例文は難しいので紹介を省略する。 なお株によって利益を得る方法は、上記の売却による利ざやのほかにも、株主に対して保有株数に比例した金額ぶんだけ会社から金を受け取れるという、配当金(はいとうきん)というのがある。 なお、「投資」(とうし)は、株取引などの金融証券の売買のほかにも、たとえば企業の経営者が「設備投資」をするとかいうように、経営する会社の資本を増やすために所持金を出すという意味もある。 なお、スペルの似ている spectate 「見物する」とは別。「見物客」spectator である。このことは頭の片すみに覚えてもらいたい(理由は後述)。 さて、投機の意味もあるほうの speculate は意味が幅広い。単語集では桐原5500、東京書籍4500、旺文社1900が speculate を紹介している。 結論から言うと、speculate の意味は「推測する」「熟考する」「投機する」である。 特に大した根拠なしに「推測する」(guessに近い)の意味がある一方で、まったく逆の「熟考する」の意味もある。 東京書籍4500は speculate を「あれこれ考える」としている。 なぜこういう逆の意味があるか、ジーニアスの考えによると、ヒントは「見物客」 spectator である。 「投機する」speculate の冒頭の spec- も同じ接頭辞であり、「投機する」speculate のもともとの意味は「観察する」ような意味だったのだろうというのが、ジーニアスの説である。 観察して考えた結果や思考法が適切なら「熟考する」になるし、そうでなくて観察して考えただけなら「推測する」と言われるわけである。 ただ、現代では投機のイメージからか、あまり「熟考する」の意味では使わないようである。実際、センチュリー英和で speculate(「投機する」)を見ても、「熟考する」は無い。 名詞形 speculation は「投機」・(株などの)「思惑買い」・「推測」・「熟考」・「空理空論」の意味(ジーニアスで確認。「熟考」以外はセンチュリーにもある)。 speculator は「相場師」「投機家」の意味。日本でも近年、スぺキュレーターと言う場合もある(ジーニアスでは片仮名でも紹介している)。 ---- 「腐敗する」 rot, decay rot (ラト)と decay (ディケイ)の意味に違いは無い。英語では rot のほうが一般的。 だが単語集では、桐原5500にしか rot が無い。 decay は東京書籍4500巻末と、桐原5500と、旺文社1900にある。おそらくだが、rot が大半の単語集にないのは、decay のほうが下記のように「虫歯」にも使えて日本人に使いやすいだろうという配慮だろうか。 「虫歯」a decayed tooth のように(桐原5500、センチュリー)、一部の表現では慣用的に decay を使う(桐原5500、旺文社1900)。 食品や死体の腐敗にかぎらず、建物の朽ちるようすや、制度などの退廃・劣化するようすまで、rot または decay でそれぞれ表現できる。 単語集にはないが、活用は rot - rotted - rotted と規則変化である(センチュリーで確認)。 だが、形容詞 rotten (「ロトン」)というのが存在しており、「腐った」という意味である。食品の腐敗から、道徳的な腐敗まで、いろいろと rotten で形容できる(ジーニアス、センチュリー)。 a rotten apple で「腐ったリング」である(センチュリー)。 a rotten meat で「腐った肉」である(ジーニアス)。 ---- 汚染する pollute と contaminate 辞書的な本来の用法では、pollute と contaminate には違いはなく、両方とも「汚す」「汚染する」の意味。 辞書にはない情報だが、半導体製造など精密な電子部品の製造では、生産歩留りを低下させる、肉眼では確認できないサイズの微小な異物の混入には contaminate を使うなど、業界によっては contaminate を使っている(出典は特定企業なので挙げないが、ネット検索で「半導体 コンタミ」など調べれば、いくらでも民間企業のホームページが出てくる)。 ジーニアスだけ、contaminate の意味に「不純にする」とあるが、ここでいう「不純」とは不純物の混入のこと。けっして『不純異性交遊』みたいな、「純粋でないので、けしからん」みたいな意味ではないので注意。 そのほか、日本では、産業の知的財産の分野では、自身に使用権のない他社・他人の特許権や著作権などが、自社・自分の生産物に混入することも「コンタミ」と呼んでいる。「汚染」というより、混入によって品質低下をさせるようなニュアンスで、「コンタミ」が用いられる。 日本語の「コンタミ」は企業では上記のような使われ方もするが、だが英語では「自動車の排気ガスが空気を汚す」とかにもcontaminate を使っていいし(センチュリー)、「タンカーから流出した油が海を汚す」にも contaminate を使っていい(ジーニアスで確認。旺文社に似た例文)。 海上でのタンカーの石油流出の場合、 contaminate the sea 「海を汚染する」 のように使う(旺文社)。 細菌の汚染にもcontaminate を使ってよく、桐原5500に紹介されている京大過去問の例文が、バクテリア(bacteria)による井戸(the well)の水の汚染である。 単語集では、桐原5500と欧文社1900が contaminate を紹介している。東京書籍は紹介せず。 ジーニアスによると、「汚染血液」contaminated blood という単語も紹介されている。そういうニュアンス。 ほか、政治などの「汚職」や「買収」は corruption である(桐原4500、旺文社1900、東京書籍 巻末)。 形容詞 corrupt で、政府などが「腐敗した」、生活などの「堕落(だらく)した」の意味でもある(東京4500の巻末、ジーニアス、センチュリー)。 なお日本語の問題だが、生活などの「堕落」(だらく)と、飛行機などの「墜落」(ついらく)とを、間違えないように。 ---- 「寛容」tolerance とは何か 単語集や辞書によれば、名詞 tolerance は「寛容」だし、動詞 tolerate ~ は「~を寛容する」が、では英文和訳における「寛容する」とは何かという問題がある。 つまり、類似概念の「許す」(allow など)とか、「我慢する」(endure など)とか、「受け入れる」(accept など)とかとは、「寛容」は何がどう違うのかという問題がある。 そういうのを無視して「寛容」tolerance とだけ和訳を覚えても、使えるにならない。 高校生物の免疫の分野でいう「免疫寛容」(めんえき かんよう、 immune tolerance )が、半分だけ外来語にすれば免疫トレランス ( immune tolerance )である。 なお、「免疫」は英語で immune である。 免疫寛容については、普通に高校生物の教科書に買いてあるので、それを読め。 ほか、工業高校の機械科で習う、加工精度の「寸法公差」(すんぽう こうさ)が英語でトレランス tolerance である。 図面で寸法をたとえば10ミリとか指示しても、原子1個の違いもなくピッタリ同じ寸法の10ミリに作るのは人間には無理なので、よって、どの程度までなら寸法の誤差を許容できるかという指示が図面などの寸法の指定には必要である。そういう加工の許容差のことを「公差」という。 ジーニアスやセンチュリーの tolerance にも、「公差」が書いてある。 ほかの分野では、辞書によると、医療などにおける薬品などに対する「耐性」や「抵抗性」のことを tolerance という。抵抗では。寛容とは逆の意味のような気もするが、おそらく意味が転じたのだろうか。 こういうのを無視して「寛容」tolerance とだけ和訳を覚えても、近現代の英文学しか読めないし、そういう仕事だったらグローバル企業は英米人の母国語話者に依頼するので、和訳だけ暗記しても欧米での仕事はゲットしづらいだろう 理系の分野では、寛容というより、「許容」と考えたほうが良いかもしれない。 さて、東京書籍4500にtolerate の意味には「・・・を我慢する」とある。桐原5500には、tolerance の意味のひとつに「我慢」とある。 寛容な社会には、その社会の構成員の個々人には、我慢が必要なのである。たとえば、「言論の自由」のある寛容な社会には、自分を批判される言論にも我慢しなければならないというわけである。 寛容は我慢を伴うのは、高校生でも英単語集で tolerance を勉強すれば分かることである。 桐原5500は tolerance の基本的意味を「(宗教・人種などに対する)寛容さ」としている。しかし東京書籍は「彼は誤った日本語の使い方が我慢できない。」という例文でも tolerate を使っている。 なお、1689年にイギリスで信教の自由を認めた法令で Tolerance Act というのがある(ジーニアス)。おそらく桐原5500のは、それを意識した意味説明だろう。またなお1689年はイギリスで『権利の章典』が成立した年。[[高等学校世界史B/イギリス革命]] いわゆる「名誉革命」の一部。 単に、なんとなく我慢するのではない。そこが、endure など他の動詞との違いであろう。 日本の昭和の戦後の高度経済成長時代に、自民党の時の首相の池田勇人(いけだ はやと)が「寛容と忍耐」をとなえたというが(共産党や社会党などとの対立を避けるべし、という文脈)[[高等学校日本史B/高度経済成長の日本]]、これはおそらくトレランスの和訳だろう。 ---- 領土・領域 territory , realm, area, 領土 land, realm 分野 domain, realm, field 国土とか私有地など、実在する場所的な意味での「領土」「領域」は territory で良い。 一般的に、物理的かつ場所的な意味での「領土」「領域」は territory で良いだろう。 realm (レルム)は、「王国」のような意味があるので、ややニュアンスが違う。 realm は発音注意で、「レルム」と読む(桐原5500、旺文社1900)。 学問の「分野」や、そのほか知識や文化などの「分野」のことは、 domain や field という。(桐原で realm の類義語として filed を確認) realm は、「新しい領域を切り開く」みたいなニュアンスで、使われる。 よく、学問や思想(the thought)や芸術(the art)の分野を「切り開く」とか「領域を広げる」などの場合に realm が使われ(ジーニアスで「学問」を確認。センチュリーで「思想」や「芸術」)。 「空想の世界」もthe realms of fantasy とか(旺文社)、「想像の世界」も the realm of imagination とか(ジーニアス)、そういう使われかたをする。 domain は、古語では「領土」の意味もあったが(ジーニアス)、今日では territory など別の単語のほうが使われるだろう。 「科学の領域」the domain of science だとか(ジーニアス)、「医学の領域」the domain of medicine のように(センチュリー)、あるひとつの学問全体、または専門分野などの「領域」のようなニュアンスで domain が使われる。 インターネット用語で、ドメイン・ネーム domain name というのがある(旺文社、ジーニアス、センチュリー)。 land は、単語集では桐原3000および東京書籍3000にある。 ジーニアスでも確認したところ、たとえば「私有地」 the private land みたいに、割と普通にも使われる。 なお、「私有地」 estate (発音「イステート」)と一言で言い換えもできる。なお、estate には、「財産」という意味もある。real estate で「不動産」の意味(旺文社1900)。 estate は、親からの遺産や、子への相続などの文脈で、よく使われる(たとえば東京書籍4500および旺文社1900の例文が相続)。 旺文社は estate を発音注意としているが、東京と書籍はしていない。 日本でも、よく不動産会社などで「〇〇エステート」という表記を見かけるだろう。 estate には「地所」(じしょ)の意味もあるが(東京書籍4500、桐原4500)、そもそも「地所」と言われても何であるのか、高校生には分からない。 まとめると、estate の意味は「財産」「所有地」「地所」である(東京書籍4500 「所有地」。桐原4500)。 さて、land の話にもどる。ジーニアスでも確認したが文芸などでは「国」という意味でも land は使われる。なお、単にある「国」について言いたい場合、現代では a country を用いるほうが普通だとセンチュリーは言っている。 もしかしたら、国名でイングランドとかスコットランドとか接尾辞に「ランド」がつくので目にする以外は、なかなか見る機会はないかもしれない。 国のイメージで私有地などはイメージはわきづらいが、しかし land は私有地などでも可能である。 典型的な例文として 「土地の価格」 the price of the land がある(桐原3000、ジーニアス)。 land は、海に対する「陸」の意味でもあり、海から「上陸する」などの文脈で、land が名詞「陸」および動詞「上陸する」の意味でも使われる(東京書籍3000)。 なお、空に対する「地上」には ground を使う場合と(東京書籍3000)、land を使う場合とがある。このため、動詞 land には「着陸する」の意味もある(桐原3000)。 だからよく、航空事故やハイジャックなどで不時着しそうな飛行機をなんとか着陸させようとする際に、「ソフト・ランディング」とか「ハード・ランディング」とか言う。ジーニアスで派生名詞 landing を見ると、a soft landing および a hard landing は書いてある(ジーニアス)。 株式市場などでの暴落・高騰や恐慌などパニック的な市場変化に対する対応などで、急激かつ短時間に強硬的に対応するのを「ハード・ランディング」などというし、逆に時間をかけたりして市場の反応をみつつショックの少ないように対応しようとするのを「ソフト・ランディング」という(経済学的には細かな定義は違うかもしれないが、英語の教科書なので深入りしない)。 ジーニアスで、英語でも、経済などでも soft landing や hard landing を使う。 なお、飛行機が「離陸する」は take off である(東京書籍3000)。 「風景」 landscape や、「雪景色」snowscape など、ついでに覚えておきたい(旺文社1900に landscape など)。 「地雷」mine は landmine とも言う(旺文社1900)。なお、「鉱山」を意味する mine と、「地雷」を意味する mine は、同じスペルで同じ発音(旺文社1900)。 ---- 財産 estate, property, fortune property (プロパティ)には「財産」の意味もあるが、「所有権」の意味もある(旺文社1900巻末)。 なるべくpropertyは「所有権」で覚えよう。 「財産」なんぞ、estate(エステート) や fortune(フォーチュン) でも言える。 そのほか、パソコン用語で「プロパティ」などの用語があるが、説明を省略。 ---- 合体 integrate, synthesize 企業合併 merge 組み合わせる combine(コンバイン) * synthesize 化学合成するのは synthesize である(旺文社1900)。 なので旺文社1900では「合成する」で synthesize を紹介している。 形容詞は synthetic 「合成の」である。 東京書籍いわく、 synthetic chemicals 「合成化学製品」とのこと(東京書籍4500 巻末)。 単語集にはないが、音楽の電子音楽をつくるのに使ったりするシンセサイザーも英語で synthesizer である(ジーニアス、センチュリー)。たぶん音楽の教科書なら紹介があるのだろうか。 辞書をみても、特にintegrate ほかの類義語とは紹介していない。 * integrate 単語集にはない説明だが、数学の微分積分の「積分」は integral (インテグラル)である。 よくある例文が、複数のアイデアの統合で、 integrate my ideas with ~(別アイデア) みたいにして、「~の考えを私のアイデアと統合する」のように使う(センチュリー、旺文社)。 integrate 〇〇(アイデアA) with □□(別アイデア) のように使う。 ジーニアスでは、ヨーロッパ連合 EU の統合を integrate で説明しているが、しかし Union だから unite ではないかという疑問がある。 「企業合併する」は merge である。なお、名詞形は merger である(桐原5500、旺文社1900)。 「M&A」(発音「エム・アンド・エー」)で「合併買収」を意味する、経済の専門用語である。日本でも新聞などで広く知られているので、merge も英単語として覚えておこう。 M&A は merger and acquisitions の略である(旺文社)。 なお、単語集にも辞書にもない、パソコン用語で merge は基本的な操作のひとつで使われている。いわゆるコピーペースト時の同じ名前のフォルダの「統合」でmergeを使う。 同じ名前のフォルダを上書きコピーする場合に、もとのフォルダ内にあったファイルを残したまま、新規ファイル側で追加されたファイルも「統合」できるが、この動作も、merge である。 たとえば、USBメモリ内にフォルダ名「新しいフォルダ」をつくって、そこにファイルをいくつか入れて、たとえば「aaa.txt」「bb.txt」を入れておく。 USBメモリでなく、パソコン側で、別に「新しいフォルダ」をつくっておき、そこに「cccc.txt」を入れる。 パソコン側の「新しいフォルダ」をマウスの右クリックでコピー選択して、それをUSBメモリに貼りつけると、フォルダ名が同じなので、フォルダが統合されて(merge されて)、 、つまりUSB側のフォルダに「cccc.txt」が追加される。 結果的に、 USBメモリ側のファイルの中身は、「aaa.txt」「bb.txt」「cccc.txt」の3つになる。 こういうのがmerge 。要するにフォルダの統合のこと。 combine (コンバイン)は、合体ではなく「組み合わせる」。 名詞形のcombination (コンビネーション)は「組み合わせ」の意味である コンビネーションは、別に合体してひとつのものになるわけではなく、組んでいるのが人間どうしなら、たまたま一緒に行動していたりするだけである。 あとで用事が済んだら分かれるわけである。なので合体とは違う。 ---- 牢獄・監獄 prison ,jail その牢獄が prison か jail なのか、アメリカ英語かイギリス英語かで違ったり、また拘置所か刑務所かで違うので、深入りしなくていい。 旺文社が jail を紹介している。 辞書で確認したところ、prison と jail の両方とも、それぞれ刑務所と拘置所の意味があるので、日本人には区別は難しい。 高校生としては、単に、prison と jail の2つの言い方があることだけを知っていればいい。 東京書籍には break out prison で「脱獄する」だが、しかしセンチュリーいわく break prison でも通じるとのこと。 「囚人」(しゅうじん)はprisoner である(東京書籍4500、桐原4500)。 prison のほうが、派生名詞 prisoner で「囚人」も言えるからか、桐原と東京書籍の単語集には prison のほうしか紹介していない。 go to prison で「入獄する」である(桐原)。 ほか、 be in prison 「刑務所に入っている」(旺文社、センチュリー) たとえば She is in prison. 「彼女は刑務所にいる。」 である。 なお、ジーニアスは be in prison を「服役中(拘留中)である」と和訳している。 ---- 毒 poison, toxin 「毒」の一般的な単語は poison である(東京書籍1800、桐原4500、旺文社1400(緑本))。辞書では特に名言されてないが、poison を紹介している単語集のレベルや配置からそう考えるべきだろう。 poisonで、「毒」「毒薬」などから(ジーニアス、センチュリー)、さらには社会への「害毒」なども表現できる(センチュリーで確認)。 東京書籍1800に poison がある。初等的な単語として扱われている。 toxin (トキシン)は、たとえばフグ毒のテトラドトキシンのように、毒の成分の名前などで出てくる。 だから toxin は「毒素」という訳がふさわしい(ジーニアス、センチュリー)。 単語集にはテロラドトキシンは書いてないが、このように英語の理解には理科的な知識も必要である。 なお、フグ毒の成分のあれは「テトラド・トキシン」と発音する。けっしてテトラ・ドトキシン(×)ではないので注意。 単語集には形容詞 toxic 「有毒な」が書いてあるが(東京書籍4500、旺文社1900)、形容詞 poisonous 「有毒な」との区別が難しい。 だから名詞 toxin 「毒素」を基準に覚えるべきであろう。 単語集にはない語だが「毒物学」は toxicology である(ジーニアス、センチュリー)。 旺文社1900と東京書籍に toxic の意味で「有毒な」のほかにも「中毒性の」が紹介されているが、しかしジーニアスやセンチュリーでは確認できなかった。 ---- 驚かせる surprise, astonish , startle 驚いた amazed ,surprised , astonished まず、「驚かせる」の一般的な単語は surprise である。 surprise は意味が広く、たんに「びっくりさせる」から、「驚異的な~」「おどろくべき」みたいな形容でも surprising などが使われたりと、意外と意味が幅広い。 いっぽう、単に、「とても びっくりした」だけなのが startled (過去分詞)である。現在形だと startle になる。ただ、意味が強いので、かなり大きな出来事がないかぎり、 軽々しく startle を使うのは問題。 ジーニアスは、「彼女の急死の報に接して私はびっくりした。」という例文で startleを使っている。 センチュリーは、ほかの文で「仰天する」とか訳している。 be startled 「びっくりした」 のように、surprised などと同様に startle でも受け身形でびっくりしたことを表す。 astonish は、surprise よりも意味が強い。だが astonish の用法・用例は surprise とほぼ同じ。 be astonished 「驚いた」 である。 amazed も「驚いた」の意味である。 なお、スペルの似ている amused「楽しそうな」とは違う単語である。混同しないように。 amazing「すばらしい」の意味なのに、amazed「驚いた」と例外的な用法である。 ほかの感情系の単語はそうではなく amusing「楽しい」→ amused「楽しそうな」 boring 「うんざりさせる」→「うんざりした」 disappointing「がっかりさせる」 → disappointed 「がっかりした」 exiting「興奮させる」→excited「興奮した」 interesting 「興味深い」→ interested 「興味を持った」 surprising「驚くべき」→surprised「驚いた」 tiring 「つかれさせる」→ tired 「疲れた」 である。 tired だけ例外的に感情とは限らないですが、上記のamuse からsrprised までの ~ing → ~ed の単語は基本的に感情にかかわる単語です。 文法事項だが、前置詞 to の用法で、 「(私が)失望したことに、」 To my dismay, である。 To my ~ では、名詞形を使う。 だから、To my surprise, 「驚いたことに」とか、To my relief 「安堵したことに」のようになる。 ---- 火 fire, flame , 特殊な強い火 blaze 停止する cease, suspend 「火」の意味での fire と flame の違いは不明。辞書を見ても、特に言及は無い。 fire には、単純な「火」のほかにも、火事の意味や、軍隊などの「射撃」命令の意味もある。 辞書を確認したかぎり(ジーニアス、センチュリー)、別に flame のほうが火力が高いとか低いとか、そういうのは無い。 fire と flame の両方とも、「情熱」や「熱情」などの意味もあるので(センチュリー、ジーニアス)、ふつうの日本人には、そこからは区別はつかない。 名詞 cease-fire で「停戦」の意味(東京書籍4500、ジ-二アス、センチュリー)。 cease (シース)は、しばらく続いていたものが「停止するの意味」である。このため、単なる停止とは違うので、stop とは違う。単に固い言い回しなだけではない。 cease は停戦のほか、工場などでの製品の生産中止などにも使われる(ジ-二アス、東京書籍)。 cease production 「生産を中止する」(ジ-二アス、東京書籍4500) または cease producing ~(製品) 「~の生産を中止する」(桐原4500) ほか、cease to exist で、国や村などが「消滅する」の意味(旺文社、ジ-二アス)。 なお、「しばらく」は英語で for a while などがある。 なお、停学とか運転免許停止だとか、処罰的かつ法的な「停止」には、よく suspend が使われる。 suspend one's driver licence 「~の(one's) 運転免許を停止する」(東京書籍、旺文社) 経済制裁による貿易停止とかも、suspend で良い。 処罰にかぎらず、鉄道や飛行機などが悪天候や他者の事故などで停止している場合も、 suspend が使える(ジ-二アス、センチュリー)。ジ-二アスでは、こちらのほうを第一の意味にしている。 こういった「停止」の意味の名詞形は suspencion (サスペンション)である。 小説などのサスペンス作品も、語源は suspend である。サスペンス suspence の意味の変遷はおそらく、 停止されていた未解決 → 結果が分からない → ハラハラする → 不安になる のような意味の変遷だろう。 旺文社1900に、英検準1級の単語として、blaze (ブレイズ)が書いてある。東京書籍4500および桐原4500・5500は blaze を紹介していない。 このように、英検の出題範囲と、大学入試との出題範囲とは異なる。英語の勉強では、自分の目的に適した教材を選ぼう。 ジー二アス・センチュリーによると、blaze とは flame よりも強い火のこと。ほか、強い光にも blaze を使うとのこと(ジー二アス、センチュリー)。 夕暮れ(ジー二アス)やカエデの紅葉(センチュリー)などで辺り一面が赤く染まって見えるような場合にも blaze を使う(ジー二アス、センチュリー)。 なお、動詞 fire には「解雇する」の意味もある(東京書籍3000、ジーニアス)。 受身形で be fired from ~(会社など) 「~(会社など)を解雇される」 の意味である(東京書籍3000、ジーニアス)。 解雇の意味では東京書籍にしか書いていない。桐原3000は「発射する」までは書いてあるが、解雇はない。旺文社1200に至っては、火しかない。 しかし、啓林館の検定教科書 "Revised ELEMENT English Communication II" にある、スティーブ・ジョブス(米アップル創業者)の伝記に、解雇の fire が書いてある。 ---- 編集・編纂(へんさん) edit ,compile 辞書を「編集する」場合、compile (コンパイル)で表す(ジーニアスで確認)。 compile a dictionary 「辞書を編集する」 である。桐原5500の例文も、辞書の編集である。 旺文社は音楽アルバムの編集をcompile で書いているが、どうなんだろう。 旺文社によると、 歌手のライブ録音 → 音楽アルバム という変換の過程が compile らしい。 とりあえず、「編集」の一般的な語は edit だと思っておけば良いと思われる。 ほか、コンピュータに compile という単語があるが、意味が少し上記とは違うので、説明を省略。 ---- 割り当てる assign, allocate 慣用的に、assign は仕事や課題そのものを割り当てるのに使い(桐原4500)、allocate は仕事またはその他の何らかの目的のために必要な予算などを割り当てるのに使うが(旺文社)、 しかし実はassign でも予算の割り当てをできる(センチュリーに部屋をあてがわれる例文あり)。 よって、入試には、これらの正誤判定問題は出ないだろう。 ただし、名詞形 assignment は、割り当てられる「任務」や「課題」のことである(旺文社、東京書籍)。東京書籍の訳が「任務」。 だから、普通、人間に仕事を割り当てるには、 assign を使う。 その証拠に、範囲外だが、名詞 assignee は、分担されるなどした各仕事のそれぞれの「担当者」のことである。もっともジー二アスにはその意味が書いてないが、しかしジー二アスが古いだけである。なおジー二アスには assignee は「権利・財産などの譲り受け人」と書いてある。 「担当者」の意味がウソだと思うなら、たとえば 海外のオープンソース・ソフトウェアのバグ報告サイト( Bugzilla (バグジラ)など)に確認しに見にいってみればいい。バグ一覧表で、報告されたモジュールの担当者の列の一番上に assignee と書いてある。 また、各バグの題名の列には summary と書いてあり、1~2行で報告者は、バグの内容をまとめている。英語 snmmary はこういうふう1~2行の要約にも使うので、日本語「要約」とはニュアンスが実は少し違う。 同様に、名詞形 allocation は、割り当てられる「配分」のことである(旺文社)。 普通、 assign ~(仕事) to 〇〇(人) で「〇〇(人)に~(仕事など)を割り当てる」 桐原4500・5500に allocate は無い。センチュリーのallocate には例文が無い。東京書籍4500は巻末でallocateを紹介。 市販の教材では、allocate は紹介の少ない単語である。 たとえばLinuxなどのOSのインストール要件に「ドライブに20GBの空き容量が必要」というソフトなら 20GB unallocated drive space とか書いてあったりする。こういうふうに allocate は使う。 「まだWindows 用に割り当てていない空き容量がドライブに必要ですよ。」というニュアンスがある。いくらWinodws内で空き容量があろうが、そこはWindowsに割り当てされてしまっているので、Linuxのインストールには使えないというニュアンス。 ---- 迷路 maze, labyrinth a maze of ~ で「迷路のように複雑な~」という意味(旺文社、ジーニアス)。 同様に a labyrinth of ~ で「迷路のように複雑な~」という意味(ジーニアス)。 よって、スペル以外に区別のしようがない。 センチュリーで labyrinth を見ても、例文が無い。 ジーニアスで maze と labyrinth を見ても、特にニュアンスの違いは書かれていない。 よって、ほぼ maze と labyrinth は同義語だとみなせるだろう(ジーニアスmaze および旺文社 maze でも類義語としている)。 ---- 勝利 victory, triumph 名詞としての triumph (トライアムフ)は、「大勝利」「大成功」である(東京書籍4500、センチュリー)。 けっして、単に victory の固い言い回しなだけではない。 翻訳の都合で、triumph の訳が場合によっては単に「勝利」とだけ訳す場合もあるが(ジーニアスにそういう訳もある。また旺文社の訳が単に「勝利」)、しかしそれだと victory との区別を理解しづらくなる。 なので、まずtriumph は「大勝利」「大成功」と覚えるべきである。ジセンチュリーでも、基本的な意味は「大勝利」「大成功」だと説明している。 また、「(大)勝利の喜び」「(大)勝利感」などの意味もある。 triumph は動詞もあり、「勝利する」の意味である。(動詞 win の類義語。) ジーニアスを見た限り、大勝かどうか分からない勝利でも triumph を使われている。 なので入試では、正誤問題は出ないだろう。 桐原5500で「勝利主義」triumphalism が紹介。victory とのニュアンスの違いについては、桐原のは参考にならない。 ---- 怖がる afraid, frightened, scared 動詞 frighten で「怖がらせる」の意味。 afraid は be afraid of ~ 「~を怖がる」など、普通は SVC文型でのみ使う。 「おびえているネコ」は a frightened cat である(ジーニアス)。 an afraid cat (×)は不可。 名詞の修飾のために、形容詞をその名詞の直前で使う用法のことを「限定用法」という。 限定用法では、frightened を用いなければならない(ジーニアス)。 一方、 be frightened of ~ 「~を怖がる」 は可能である(桐原4500、)。 動詞 frighten のほうは、意味が一時的に「怖がらせる」の意味である。しかし形容詞的な過去分詞 frightened のほうは、習慣的に「イヌが怖い」のような例文もあるので(ジーニアス)、必ずしも一時的とは言えない。 センチュリーでも、「政府が税金を上げるのではないかと恐れている」という例文で frightened が使われており、一時的とは言いづらい。 ほか、名詞 fright で「恐怖」の意味(東京書籍、旺文社)。 東京書籍1800 では、「おびえた」を scared (スケアード)で教えています。 動詞 scare は「怖がらせる」の意味です。frighten や frightened よりも、 scare および scared のほうが口語的です(ジーニアス)。なので、scared を「びっくりした」と訳す場合もあります(桐原3000の例文、ジーニアス)。 実は1990年代には、scared は高校教育では基礎レベルでは教えていません。90年代の昔は afraid で高校英語を通していました。 もっとも、scared も be scared (+ of ~) でしか使えないです。現代の私たちは、さっさと frighten を覚えたほうが効率的です。 名詞を修飾する用法は、辞書で調べたかぎり、ないです(ジーニアス、センチュリーで確認)。 まあ、afraid は be afraid of でしか使えないので、教育が scared に置き換わったのでしょうか。 どうしてもscare を覚えるなら、単語集にはないですが、田畑にある「カカシ」 scarecrow (発音「スケアクロウ」)を覚えると頭良さそうに見えるかもしれません。 カカシで、カラス(crow、発音「クロウ」)などのトリをおどろかす(scare)から、英語でカカシをscarecrow というわけです。 なお、ネコ、ワシ、タカなどの鋭い「爪」はclaw ですし、発音は「クラー」です。混同しないように。 ---- 障害者 handicapped, disabled 障害者はもともと、17世紀にイギリスで生まれたゲーム hand in cap が語源で、 それから handicapped (ハンディキャップド) と呼ぶようにしていましたが(ジーニアスでも時期は書いてないが古いゲームが語源だと確認できる)、 頭の悪い米英人が、物乞いの帽子を使った動作(cap in hand)と勘違いするとのことから、 ほかの言い回しになりました。 challenged や disabled などが提案され、現在は disabled が言い換えとしては主流のようです。少なくとも東京書籍3000では、challenged は、disable の項目の関連語の一部として紹介しているにすぎません。 桐原4500の単語集には challenged は見当たりませんが、名詞形 disability は見当たります。 なお、東京書籍3000 の disabled の項目に、challenged 「体の不自由な」(アメリカ英語)も書いてあります。東京書籍いわく、challenged はアメリカ英語とのことです。相対的に disabled はイギリス英語です(東京書籍3000)。 単語集 disabled には書いてない話題ですが、 もともと、 動詞 enable ~ 「~を可能にする」という単語があります。enable は「エネイブル」と読みます。 それの対義語が disable 「~を不可能にする」です。disable は「ディセイブル」と読みます。このようにenable と disable とは、対(つい)になっている語です。(単語衆には書いていないですが。) なので、本来なら、たとえば機械などで「機械の設定を変えて、~の操作を不可能にする」とかでも disable は使います。実際、インターネット上にある未翻訳の海外フリーソフトなどを使うと、設定の切り替えページなどで、普通に enable や disable などがあります。 たとえば、 「リモートアクセスを無効にする(=そのパソコンをネットからはリモートアクセスできないようにする)」 disables remote access みたいに使うわけです(wikiオリジナルの例文)。 逆に、機能を使用できる状態に設定するのが enable です。 一方、機能の使用を禁止する状態に設定するのが disable です。 センチュリーに、disablement の項目で「機械・システムなどの無作動」と書いてある(センチュリー)。 本来、語源どおりにdisable や派生の単語を考えれば、「できなくする」「できない」のような意味です。しかし辞書では、disability は、障害者の「障害」のことを言います。 そもそも、古くは crippled「手足などの不自由な」「ダメになった」という言い回しが差別的であると考えられ、それで handicapped になったのです。 さて、disabled も crippled も本来の意味は、口語的かどうかのニュアンスの違いはあれど、似たような意味です。 disable なんて、語源を見れば、 dis(無い)+ able(能力の) という構造なので、無能あつかいしているわけであり、あまり和訳の意味は crippled と変わらないように見えますが、しかし英米人の多くはそこまで理解をできないのか、あるいはそういう批判は黙殺されているのでしょう。 アメリカには、言語の教養の乏しい人も多いので、アメリカで仕事をするなら残念ながら、そういう無教養な人にも合わせざるを得ないのです。 たとえば民間による行政監査の「オンブズマン制度」はスウェーデン語の「オンブズマン」が由来ですが、少なくないアメリカ人は勝手にそれを英語だと解釈し、しかも語尾の「マン」が男だと解釈してオンブズ・パーソンなどと言い換えます。 アメリカ人は「人類」 mankind を humankind に言い換えたりもしています(ジーニアス)。しかし、だったらヒューパーソンカインドではないのでしょうか? 不徹底です。 なお、humankind はセンチュリーには載ってないですが、ジーニアスに載っています。 なお、human being は抽象的な「人間」「人」という意味です(ジーニアスなど)。「人類」とはややニュアンスが異なります。 human beings という複数形にして、総称的な「人間」を表現する方法もあります(ジーニアス)。ですが、humankind のほうが、区別しやすく無難でしょう。human beings だと、末尾の「s」を読み落とすと意味が変わってしまいます。 なお「老人」は old man です。「漁師」は fisherman です。 障害者を challenged という言い換えは、アメリカのマスコミなどが1990年代に喧伝したので、日本でもよく知られていますが、しかし日本での知名度の割には、実際には英米ではあまり普及していない言い回しのようです。 英米では、「障害者」を表す単語としては disabled のほうが普及しているようです。 ジーニアスいわく「障害年金」は disability pension です。旺文社1900いわく、「傷害保険」は disability insurance です。 「目が不自由な」をblind (ブラインド)と言っていますが、一部にはこれを visually impaired などと言い換える運動もあり(ジーニアスで確認)政治運動家などが主張していたりしますが、しかし医者や科学者などは「二重盲験テスト」とかで double blind test などの単語を使っており、政治運動家の自己満足のたわごとを科学者などは相手にしていません。 なんにも医療に役立たない政治運動家の人たちの発言よりも、実際に製薬の研究などで障害者などの役に立っている人たちの意見のほうが重要だという事でしょう。 単語集にも blind は載っています(東京書籍4500、旺文社1400(緑))。 また、上述の薬効テストで、用いられる偽薬(ぎやく)のことを placebo (プラシーボウ)と言うのですが、旺文社1900の単語集で placebo は紹介されています。 新薬などの病院での実験では、薬効テストにおいて対照実験のために、効果のないニセの薬も投与してみるのです。 医者はニセの薬だと知っていますが、投与される患者は知りません。 そのような薬効テスト目的でのニセの薬のことを日本では「プラシボ(またはプラセボ)」といい、英語でも placebo 「プラセーボウ」と言います。 また、新薬のテストや、その他の医療における各種の新式の治療法のテストは、最終的には病院の現場で、医師とともに実験をじっさいに行わなければなりません。 そういった、病院の現場でじっさいに行う実験のことを臨床実験(りんしょう じっけん)といい、英語では薬の臨床実験のことを the clinical trial と言います(旺文社、ジーニアス英和 clinical)。 薬以外の臨床実験は英語でどう言うのかは知りません。ジーニアス英和のclinical の項目には「(薬の)臨床実験 ~ trial」とだけ書いてあります。 高校生に有名な単語をあげれば、目の「盲点」(もうてん)は blind spot です(東京書籍4500)。 目隠しのブラインドは、英語でも blind です(旺文社1400、ジーニアス)。 アメリカ英語では window-shade あるいは単に shade とも言います(ジーニアス)。イギリス人はそういう言い換えは相手にしていないようです。「盲点」blind spot も知らないで騒いでいる運動家のことを相手にする必要は乏しいでしょう。 なお、耳が身体障害などで不自由なのは deaf (デフ)です。deaf は発音注意です(旺文社1400)。デイーフではないです。 薬(medicine )の話ついでに、 「丸薬」「妊娠中絶薬」pill 「錠剤」tablet 「カプセル」capsule 「粉薬」powder である。 ---- きちんとした neat, tidy neat(ニート) も tidy(ティディー) も、両方とも身だしなみのいい服装や、整頓された部屋などに用いる。 このため、区別は難しい。 それどころか neat and tidy でセットで用いて「きちんとした」という意味で使われることも多い(桐原4500、センチュリー、ジーニアス)。 The room is neat and tidy. 「その部屋は整頓されている。」 のように用いる(桐原・センチュリーに似た例文)。 このようにセットで用いられることすらも多い単語なので、日本人としては、ことさらに neat と tidy を区別する必要は低いだろう。少なくとも大学受験レベルでは、区別の必要は無い。実際、桐原はセットで neat の項目に tidy も紹介しているし、東京書籍は巻末で neat だけ紹介するという巻末送りの扱いなほどである。 発音の似ているNEET(34歳未満の無職者)とは意味が違うので(旺文社1900)、区別のこと。 neat と tidy の相違点としては、 neat の場合、辞書を調べると、仕事の「手際のいい」という意味もある。 典型的な例文は a neat job 「手際のいい仕事」 である(センチュリー、ジーニアス)。 このためか、neat には「見事な」という意味もある(旺文社)。 ---- unfold 閉じてあったものを「広げる」 (※ 範囲外)展開 develop, extract unfold という動詞があり、閉じてあったものを広げる、という意味である。 たとえば unfold the map 「地図を広げる」 が典型的だろう(旺文社、東京書籍)。とじてあった、地図や手紙などを広げるのに、unfold を使う。 unfold the letter 「手紙を広げる」 である(ジーニアス)。 念のため、「地図」map である。 旺文社には、これが「開く」で書いてある。 ジーニアスやセンチュリーでも、unfold の意味で「広げる」のほか「開く」でも書いてあるので、「開く」でも間違いない。 ただし、open とはニュアンスが違うので、注意しよう。 逆に、手紙や地図などを折りたたむのは fold である(ジーニアス、センチュリー)。 聞きなれない単語かもしれないが、しかし私たちはパソコンのフォルダー(folder)を知っている。このfoder も折りたたみ書類のような意味である。思い出そう。 unfold や fold で開いたり閉じたりするのは、手紙や地図などの読み物でなくともよく、服などを折りたたみでも fold を用いてよいし(センチュリー)、傘の折りたたみでもよいし(センチュリー)、布団を折りたたむのにも fold を使ってもいい(ジーニアス)。 さて、高校の範囲外ですが、辞書にはない用例ですが、算数などで習うサイコロの展開図は、development です(うろ覚え)。 数学で式の「展開」などを develop といいます(これはジーニアスなど辞書にあります)。 「先進国」は developed country です(桐原3000)。「発展途上国」は developing country です(桐原3000)。読者は、現在形 develop を基準に、過去に発展していて既に先進国だから過去分詞で developed country となるという語感をつかんでください。 しかし、「先進国」は advanced country だと、Z会『速読速聴・英単語 Core 1900』は言っています<ref>松本茂 監修『速読速聴・英単語 Core 1900 ver.4』、Z会、2014年3月10日 ver.4第7刷発行、P.138</ref>。 啓林館 Vision Quest I(P.111) が「先進国」は developing country あるいは advanced nation だと紹介しています。 なお、パソコンのファイルの圧縮・展開などでいう「展開」は extract です。食品などの濃縮物の意味の「エキス」の意味の extract と同じ単語です。 桐原4500および旺文社1400(緑本)によると「社会問題」 social problem とのことです。東京書籍では東京書籍3000に social があります。 ほか、「社会主義」socialism です(旺文社1400)。 ---- パソコン用語など パソコン用語など、現代では高校の範囲外でも、年月が経つと高校教育に降りてきますので、なるべく関連づけてパソコン用語なども覚えておきましょう。 実際、 E-mail や Internet などの単語は、すでに中学・高校の単語集にあったり、または検定教科書で見かけることすらあります。 例文として send email 「Eメールを送る」 で通じます(桐原EMPOWER 2 ,P47)。 東京書籍1800によると、チャット chat、インターネット Internet、「オンラインの」online、ウェブサイト website 、というネット用語もありますし、 キーボード keyboard、マウス mouse などの入力機器もありますし、 プロジェクター projector、スキャナー scanner、デジタルカメラ degital camera、などの外部機器もありますし、 スマートフォン smartphone などの電話もあります。 なお、camera は発音「キャメラ」です。 旺文社1900によると、ツイッター twitter という単語すら紹介されています。特定企業のSNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)の商標すら、大学入試の英単語の文中に出ているのが実状のようです。すでに検定教科書の桐原 EMPOWER 2 ,P46 で、SNSという単語を見かけました。 なお、SNS は Social Network Service の略です。 「SNSにメッセージを投稿する」も 英語で post a message to SNS で通じます(桐原EMPOWER 2 ,P20)。というか、そういうインターネット英語を和訳した結果、日本語でもネットに「投稿する」(= post )と言うように言うようになったのでしょう。 桐原3000によると、もうセンター試験でも既に、ウェブ上の「リンク」link とか、インターネットへの「アクセス」 access や、テキストデータなどの text や、セキュリティソフトなどの security や、暗証番号などのコード code などの単語も、出題されているとのことです。 メインメニューでの「オプション」 option などの単語もセンターにあるとのこと(桐原3000)。 コンピュータ知識は直接は入試に出なくても、こういうふうに狙われますので、これからの時代に必要になるだろう最新技術の単語は、きちんと勉強しておきましょう。 桐原3000によると、すでにセンター試験に「ログイン 」 log in が出ているようです。『センター試験スクリプトでチェック』という章に log in という単語があるので、たぶんセンター出題されたのだと思います。 会員制サイトなどに接続することを、「ログインする」と言います。「ログオンする」と言う場合もあります。 また、自分のパソコンにパスワードを設定している場合は、パソコンの電源を入れて立ち上げたときにパスワードを入力することも、「ログインする」・「ログオンする」などと言います。 これは英語でも log in 「ログインする」 または log on 「ログオンする」 です(桐原3000)。 中学校あたりの技術の授業で、「パスワード」という概念を習っているはずですので、授業をまじめに聞いていれば「ログイン」・「ログオン」などの用語も知っているはずです。 ほか、まだセンター試験・共通試験にないだろう単語ですが、 テレワーク teleworking リモートアクセス remote access なども、英語です(ジー二アスで確認)。 なお、テレビなどの操作のためのリモコン装置の「リモートコントール」 remote control も、英語です(ジー二アス、センチュリーで確認)。すでに2008年の段階で teleworking はジー二アス英和に存在しています。 テレビ電話などを用いたテレビ会議などの「遠隔会議」は teleconference (テレ・カンファレンス)などと言います(ジー二アスで確認)。 近年(2022年に記述)、検定教科書では、社会科の公民科目や地理科目のほうで、テレワーク・リモートワークなどの話題がちらほら紹介されています。なので先手を打って、テレワークなども英語であることを知っておきましょう。 流行語っぽくもあるので、もしかしたら細かい言い回しとかが将来的に少し変わる可能性もありうるので、細かなスペルまでは暗記する必要は低いでしょうが。 なお単語集では、 remote は「人里はなれた」の意味で4500語レベルあたりで紹介されています。山奥の村などが、市街地からは remote みたいな例文です。 ---- 洗う wash, launder まず、「洗う」(あらう)の一般的な単語は wash である。 wash で、洗面台などで手や顔を洗うことも言えるし、風呂で体を洗うことも言えるし、衣服を洗濯機で洗うことも言える(ジーニアス、センチュリー)。 launder (ロウンダー)は、名詞形では laundry (ローンドリー)だが、日本では有料の洗濯機のお店としての「コインランドリー」などの外来語で有名である。 名詞 laundry は「洗濯」「洗濯物」「クリーニング店、洗濯屋」と「資金洗浄」の意味である(ジーニアス、旺文社1900)。 旺文社1900が、launder を紹介している。東京書籍3000・4500と桐原3000・4500では launder では見つからない。 外来語では洗濯屋は「ランドリー」だが、英語の発音ではローンドリーである。 犯罪組織などによる「資金洗浄」をマネーロンダリングというが、それも同じlaundry 由来の単語をもちいた money laundring である(旺文社1900)。 なおジーニアスにもlaunder に資金洗浄の意味もあるとは書いているが、残念ながらマネーロンダリングの単語が確認できなかった。 ともかく、コインランドリーの「ランドリー」とマネーロンダリングの「ロンダリング」は、英語では同じ laundry という単語のことである。 こう覚えれば、記憶の負担が減る。日本語の表記に惑わされてはいけない。 launder は、衣服の洗浄、または資金の洗浄にしか使えない。 launder で辞書を見ても、手足の例文はない。 なお、「洗濯機」は washing machine である(ジーニアス)。 旺文社いわく、 do the laundry でも「選択する」を言えるとのこと(旺文社1900巻末)。 ---- 家電 すでにセンター試験などに 洗濯機 washing machine 冷蔵庫 refrigerator 電子レンジ microwave が出でいるらしいです(桐原3000)。桐原3000『センター試験スクリプトでチェック』章 センター出題では「電子レンジ」は microwave ですが、本来は microwave oven です<ref>小森清久 ほか編著『新版完全征服 データベース5500 合格英単語・熟語』、桐原書店、2019年2月10日 第41刷発行、P.240</ref> 。 桐原5500いわく、"microwave" は本来、電磁波(electromagnetic wave)の一種の「マイクロ波」(microwave)のことです<ref>小森清久 ほか編著『新版完全征服 データベース5500 合格英単語・熟語』、桐原書店、2019年2月10日 第41刷発行、P.240</ref> 。 冷蔵庫は、けっして冷凍庫 freezer とは混同しないようにしましょう。 microwave は物理学の「マイクロ波」と同じ単語ですし、それがもとの意味です(ジー二アス)。きちんとジー二アス英和の microwave の項目に「マイクロ波」と書いてあるので、もとの意味から覚えましょう。そのほうが応用が利きます。 「電子レンジ」は電波周波数がマイクロ波あたりの周波数で加熱する調理器だから、英語では microwave と呼んでいるのです。 ---- 復讐する revenge, avenge 単語集では旺文社1900しか revenge, avenge を紹介していない。 スポーツの「雪辱戦」(せつじょくせん)では、名詞または動詞として revenge を使う。日本でも、よくプロ格闘技などの試合で、雪辱戦のさいに「リベンジ」などという表現が使われることもあるだろう。 なお、revenge で動詞「復讐する」にもなるし、名詞「復讐」にもなる。 take revenge on ~(人)  「~(人)に復讐をする」 である(旺文社、ジーニアス、センチュリー)。 avenge は、正義のために「復讐する」とか(旺文社)、他人のために「復讐する」(センチュリー)のような意味合いが強い。 なお、avenge は動詞「復讐する」の意味のみ。辞書を調べたところ、avnenge に名詞はない(ジーニアス、センチュリー)。 ---- 奇妙な strange, weird ,bizarre 関連語 odd 奇数の, peculiar 「奇妙な」を意味する一般的な語は strange のはず(特に確認はしていない)。 weird (ウェアード)は、口語的に使われ(センチュリー)、「変な」「妙な」「わけの分からない」とかの意味で使われたり(センチュリー)、「風変わりな」「奇妙な」「気味の悪い」の意味でも使われる(ジーニアス)。 weird は、用法によっては、「気味の悪い」とか(ジーニアス)、「不気味な」「異様な」の意味もある(センチュリー)。 慣用句で weird and wonderful 「奇妙きてれつな」 の意味(旺文社、ジーニアス)。 bizarre (ビザール)は、「風変わりな」「奇怪な」のような意味(ジーニアス、センチュリー)。 不気味とまではいかなくとも、ジーニアスにもセンチュリーにも bizarreに「奇怪な」という訳語もある。 「不気味」と「奇怪」のニュアンスの違いを高校生に問われることもないだろうし、受験対策としてはニュアンスには深入りの必要はないだろう。そもそも、これらの語を使われる対象自体が風変わりであったりして、ニュアンスはなかなか読み取りづらいだろうから、入試では深入りする必要はないだろう。 そもそも東京書籍4500は weird も bizarre も紹介していない。 なお、桐原5500は「変人」weirdo (ウィアードウ)を紹介している。 「変人」も、それを単語がいくつかあり、桐原5500によると、eccentric, weirdo などの単語があるとのこと。 odd (オッド)「奇妙な」という単語もあるが、日本人には使い分けが難しい。 ジー二アスには strange との違いが書いてあるが、しかしセンチュリーの例文とは見解が一致していないように見える。このため、本ページではジー二アス見解を紹介しない。 odd は数学の「奇数の」という意味もある(桐原4500・東京4500)。なお、「偶数の」は even である。 つまり 奇数 odd ⇔ even 偶数 である。 odd については、strange で済ませられる「奇妙」の意味よりも、数学で頻繁に使う「奇数」の意味のほうを覚えよう。桐原4500にも、「奇数」の意味も紹介されている(例文はないが)。 このページで何度も言うが、数学は米英でも大学入試に出題されていたり、大学で数学を習っていたりするので、中途半端な外国語よりも数学のほうが世界のエリートの共通語なのである。 odd 「奇妙の」の意味は、奇数 odd の語源だとして知っていれば十分であろう。 また、日本語でも「奇数」の「奇」の文字は、奇妙の「奇」の文字でもある。明治時代あたりに数学用語を和訳した人が、そこまで工夫してくれている。 peculiar (ペキュリアー)は、「独特の」という中立的な意味もあるが、それとは別に「一風変わった」「変な」の意味もある。 典型的な例文は 「変なにおい」 a peculiar smell 「一風変わったふるまい」 peculiar behavior である(ジー二アス、センチュリー)。 東京書籍3000は「奇妙なふるまい」 peculiar way としている。 「独特の」の意味では、 「日本独特の習慣」 customs of peculiar to Japan のように使う(ジー二アス。センチュリーに似た例文)。 桐原3000にあるのは、この「独特の」のほうである。 ほか、旺文社は「女性特有の病気」という表現の「特有の」を peculiar としている。 peculiar は医学などでも使えそうな単語である。 ジー二アスで peculiar の語源を調べても、家畜 → 個人財産 → 自分自身 → 固有 、と変遷が多く、暗記には役立ちづらそうである。 ---- 遅れる late, delay, lag 延期する postpone 「遅れる」の初等的な言い回しは late (レイト)であろう。もし下記の説明がよく分からなければ、late で切り抜けよう。また英作文などは late で切り抜けよう。 動詞 delay はスケジュールの遅れに使う(東京書籍4500)。だが、形式的なスケジュールのほかにも、「ぐずぐずしないで、さっさとやりなさい」みたいに言う場合にも Don't delay ~ とか言うので(ジーニアスで確認)、 意外とlag との区別は難しい。 外国旅行などの「時差ぼけ」を jet lag という(旺文社、ジーニアスなど)。旅行にジェット飛行機を使うので。 なお、delay もlag も、名詞でも動詞でも使う。 lag は、「我が社の生産の遅れ」とか(ジーニアス)、「この国の社会副詞の遅れ」とかの文脈でも使われる(センチュリー)。 スケジュールの「延期」は delay を使うのが無難だろう。 ただし、電子回路の「遅延線路」は delay line という(ジーニアス)。辞書にはないので覚えなくてもいいが。 このように、実際には、実務の業界の慣習に合わせて使い分けるしかない。 なお、delay は形容詞ではない。形容詞は delayed である。 "delay" のスペルに形容詞は無いはず。 実際、 「遅れるな。」 Don't delay. である(旺文社1200に同じ英文。ジーニアスに似た例文)。 スケジュールを「延期する」は動詞 postpone (ポウストポウン)である、 典型的な例文は postpone the meeting until next Friday 「会議を次の金曜日に延期する」 である(東京書籍、旺文社、センチュリー)。 桐原は例文を紹介していない。put off の類義語として紹介している。 だが、put off を覚えるよりも postpone のほうが意味が明確なので、postpone を覚えよう。 delay による「延期する」の意味は、早くするべきことを延期するというニュアンスがある。よって、postpone とは違い、類義語にはならない。 「延期する」は postpone で覚えるのが無難だろう。 ---- 回転する 回転・ 自転・公転 revolve 自転 rotate, spin involve, evolve 「回転する」の一般的な単語は revolve である。 revolve で自転か公転かに関係なく(ジーニアス、センチュリー)、「回転する」の意味で使える(辞書で確認)。 旺文社1900だと、revolution で「革命」のほか「公転」の意味だけ書いてあるが、実は「自転」も revolve や revolution などで表せると辞書に書いてある(ジーニアス、センチュリー)。 だが、自転であることを強調したい場合、rotate のほうが良い。センチュリーは、「自転する」ではrotate を使う方が良いと進めている。 spin でも自転を表せるが、しかし慣用的にコマの回転やボールの自転運動など小さいものの自転に spin が使われることが多い(たとえばジーニアスの例文など)。 spin a top 「こまを回す」 である(旺文社1900、センチュリー)。 このためか、地球の自転など惑星の自転では、慣用的に rotate を用いるほうが多い。(ただし旺文社1900のspin例文では地球の自転をspinで表現。) ともかく、spin は、限定的に小さいものの自転運動にだけ使うのが無難だろう。 なお、活用は spin - 過去形 spun - 過去分詞 spun と不規則変化(旺文社、センチュリー)。ただし、古くは過去形をspanとも書いたらしい(ジーニアス)。 revolution は「回転」の意味のほか、「革命」や「大変革」の意味もある(桐原4500)。というか、単語集ではまず「革命」「大変革」の意味で紹介されている。 東京書籍4500のP72に、get involved 「巻き込まれる」があった。 辞書には involve (インボルブ)をみても何故か get involved が無いが、しかし確かにこの熟語は存在している。 東京書籍では、事件や事故などに「巻き込まれる」の意味しか紹介してない。 じつは他にも、よい意味で、巻き込まれる形で文化的な活動などに没頭するような形で積極的に「参加する」という意味もある。 ジーニアスを読むと、involve「参加する」の意味は一応は書いてある。 語源は、in(内側)+volve (回転)である。 involve には「含んでいる」の意味もあるが、それも内側に回転するイメージから「包んでいる」となり、さらに派生して「含んでいる」という変遷である。 evolve は「進化する」とか「発展する」とかの意味。 ---- 病気 「病気の~」「病気である」 sick, 「病気である」ill 流行病 epidemic , plague 世界的流行病 pandemic 感染症 infection, contagion アメリカでは、ill のほうが、sick よりも固い語である(センチュリー、東京書籍)。 そのためか ill は、アメリカでは、sick より重い病気にかかっている事をあらわす(ジーニアスで確認)。 だが日本の大学入試は、アメリカ留学用の英語ではないので、気にしなくていい。入試にはsick との使い分けは出ないだろう。 実際、 fall ill 「病気になる」 という意味である(桐原4500、センチュリー)。 また「病気の人(=病気にかかっている人)」のように名詞を修飾する場合(「限定用法」という)は、sick を用いなければならない(桐原3000、ジーニアス)。 つまり a sick man 「病気の人」「病人」 である。 つまり、ill man (×)は不可である(桐原3000、ジーニアス)。 つまり、sick のほうが便利である。 よく分からなければ、英作文などでは sick を使えばいい。 実際、sick は高校初級レベルであり、東京書籍1800や旺文社1200などの初級レベル単語集にある。 一方、ill は単語集では東京書籍は中級3000語レベル、旺文社は上級レベル(青本)である。 the sick または the ill だけでも「病人」の意味である(ジーニアス sick で the ill を確認。センチュリー ill で the ill を確認)。 名詞形 illness 「病気」の意味である(桐原、東京書籍)。 ill は比較の変化が ill - worse -worst であることにも注意したい(東京書籍3000)。 「吐き気がする」程度のことを sick という場合があったり(桐原3000)、feel sick で「吐き気がする」という意味もある(旺文社1200)。 ジーニアス和英辞典「はきけ」で調べたところ、ほかに平易な言い回しが無いので、sick 「吐き気」で覚えるのがよさそうである。 plague (プレイグ)は「ペスト」の意味もあるが、本来の意味は「疾病」である。 旺文社1900の plague(プレイグ) の英文に「飢饉」famines (複数形)がある。 キリスト教のヨハネの黙示録(Apocalypse)に出てくる、破滅をもたらす四体の騎士の象徴するものが、それぞれ 支配(conquest)、戦争(war)、飢饉(famine)、病(plague)、 である。 なお、旺文社の和文は「疾病と飢饉が原因で数千人の人が亡くなった。」という文章。 plague はこういう文脈で使われるので、普通は、死亡率の高い伝染病を表す場合に、 plague を用いる。たとえばペストのような。 だからか、plague には「ペスト」という意味もある。 ほか近年(2019年ごろ)、海外の社会評論書で、戦争や疫病(えきびょう)などの経済への影響を語る評論書『暴力と不平等の人類史―戦争・革命・崩壊・疫病』(題名は和訳版)という世界的に売れた本があるので、plague や famine などの単語もおさえておきたい。 ただし、東京書籍4500と桐原4500では、「ペスト」の意味で plague を紹介している。 なお「栄養失調」は malnutrition である(旺文社 nutrition 、ジー二アス)。ジー二アスにも単語集にも例文なし。 wikiオリジナル例文をつくるなら Many people are suffering from malnutrition. 「多くの人々が栄養失調に苦しんでいる。」 のように使うだろうか。 なお、東京書籍いわく、「栄養不足」は poor nutrition とのことだが、しかしジーニアスとセンチュリーの nutrition の項目を調べて見つからなかった。 mal- は、「非」とか「悪の」とかという意味である(桐原4500巻末)。 熱帯の病気のひとつのマラリア malaria も、イタリア語のマラ・アリア mala aria 「悪い空気」が語源である(センチュリー。ほか、予備校の単語集などで紹介されている。)。 ほか、英語で「悪意」は malice(マリス) である。これ自体は聞きなれないかもしれないが、コンピュータに損害を与える悪意のあるソフトのことを「マル・ウェア」 malware と言うなど、影響がある(予備校の単語集など)。 形容詞「悪意のある」は malicious (マリシャス)である、 桐原4500では、malice「悪意」、malady「弊害」、malfunction「故障」の3本を紹介している。単語の和訳のみの紹介。例文は無い。 さて、不平等の人類史の原著『The Great Leveler : Violence and the History of Inequality from the Stone Age to the Twenty-first Century』の目次では "Pandemics, Famine, and War" という言い方をしている。 このように、pandemic と plague の区別は、難しい。 さらに、ジーニアスには、「伝染病」の意味での plague は epidemic (エピデミック)と類義語だとまで書いてある。 「パンデミック」pandemic と「エピデミック」epidemic との違いも、難しい。 pandemic 「世界的流行病」(桐原、旺文社) epidemic 「流行病」(旺文社)、「病気の流行」(桐原) である(旺文社など)。 an epidemic of cholera 「コレラの流行」(ジーニアス、センチュリー、桐原) または an cholera epidemic 「コレラの流行」(ジーニアス) のように用いる。 ほか、plague を用いた慣用句として、 plague of rats 「ネズミの大量発生」 という言い回しがある(旺文社、センチュリー)。 plague は名詞「疾病」「ペスト」のほか、動詞として「悩ます」「苦しめる」などの意味もある(旺文社1900、桐原4500)。 ~ plague me で「~は私を悩ませる」のように使う。悩んでいる人(例文の場合はme)が目的語に来る。 なお、流行病の「発生」は outbreak である。戦争の「勃発」(ぼっぱつ)も outbreak である(旺文社)。 outbreak of war 「戦争の勃発」(東京書籍) outbreak of Ebola fever 「エボラ熱の発生」(旺文社) のように用いる。 医学などの分野では、普通は感染性の高くて致死率も比較的に高い「流行病」という意味で pandemic がよく使われる。 日本でも、科学雑誌などを見れば、新型インフルエンザや新型コロナなどの話題で「パンデミック」という表記を見かけることが多いだろう。 なお、天体の「日食」「月食」は eclipse (イクリプス)である(旺文社)。 黙示録(Apocalypse)と混同しないように。 なお、 「皆既月食」a total eclipse of the moon である(桐原5500、センチュリーなど)。 単に「日食」と言う場合は、 「日食」 a solar eclipse のようにも言える(旺文社、ジーニアス)。 単語集にはないが、「月食」は 「月食」a lunar eclipse のように言ってもよい(ジーニアス、センチュリー)。 an eclipse of the sun で「日蝕」 an eclipse of the moon で「月食」 である(センチュリー)。 なお、この場合の "sun" は小文字。 「部分食」は a partial eclipse である(ジーニアス、センチュリー)。これ以上の説明は省略。 「感染症」には infection(インフェクション), contagion (コンテージョン) の2種類がある。旺文社のみ contagion を紹介。 医学的には、これを区別する。 contagion は接触性の感染症。 infection は、主に空気・水ほか鳥獣などによる感染症。 というのが医学での分類である(センチュリー contagious、旺文社)。 だが、これらは日常では混同される(センチュリー contagious)。 単語集では、infection を主に「感染症」「伝染病」および「感染」「伝染」として紹介している。辞書でも、infeciton のほうには、感染経路による細かい区別は書いていない。 たとえば桐原4500では、infection は「感染症」「伝染病」などとして紹介しているが、contagion は紹介していない。 東京書籍4500も同様、infection および動詞infect しか紹介していない。 なお、infect「(病気などが)伝染する」の意味である(東京書籍)。 よく分からなければ、 infection を使うのが無難だろう。 形容詞 infectious (インフェクシャス), contagious(コンテイジャス) は、両方とも「伝染性の」「感染性の」の意味(旺文社など)。 ---- 干ばつ drought と、まぎらわしい別単語 名詞 drought は「干ばつ」「日照り(ひでり)」の意味の名詞。派生的に、drought に「物不足」などの意味もある。 なお、動詞 drink 「飲む」の活用は drink - drank -drunk である。 drought はdrinkの過去形や過去分詞には関係ない drought はおそらく形容詞 dry 「乾燥した」の名詞形だろうというのが、センチュリーの見解である。ジーニアスはそういった見解を採用せず。 drown は「溺れ死ぬ」。 drown の活用は drown - drowned -drowned である。 drawn は、動詞 draw の過去分詞形。 draw - drew - drawn である。 draw は「引く」の意味の多義語で、図の線を「引く」だとか、関心を「引く」とか色々な意味があるだが、be drawn と過去分詞の場合、 たとえば、議論や相同などに「引き込まれる」という意味もある。 センチュリーいわく、dragと同語源だろう、という見解。drinkは関係ない。 動詞 drink は液体を「飲み込む」ときの一般的な動詞。 いっぽう、動詞 swallow は、よく、固体を噛まずに飲み込むときに使われる動詞(センチュリー、ジーニアス)。 swallow の「かまずに」という状況説明が、桐原にも旺文社にも東京書籍にも書いてない。高校英語の単語集には問題・欠点も多い。 典型的な例文が、錠剤の薬を飲む込む場合であり、 swallow a pill 「薬を飲み込む」(旺文社1900、桐原3000) または swallow a medicine 「薬を飲む込む」(東京書籍4500巻末) である。 「飲む」 swallow は、「ツバメ」 swallow と同じスペル・同じ発音で同じ単語(旺文社)。 なお、「噛む(かむ)」は英語で chew である。チューインガム chewing gum のチューと同じ単語(旺文社1900)。東京書籍と桐原は chew を紹介しておらず、やや高校範囲外の単語。 ---- 標本(ひょうほん) 統計値の標本 sample 医学の組織標本など specimen specimen は、sample とほぼ同義語(センチュリー)。 ただし、辞書などの用例を見ると、昆虫標本や、医学などの組織標本などに specimen を用いる用例が多い(センチュリー、ジーニアスで確認)。 たとえば医学検査用の「血液標本」「血液サンプル」は blood specimen である(旺文社、センチュリー)。 「血液標本」 a specimen of blood でもよい(ジーニアス)。 なお、医学検査用の「組織標本」 は a tissue specimen など(センチュリー)。 単語集では旺文社1900だけが紹介している。 東京書籍4500と桐原4500・5500には specimen は無い。 ---- 職業 職業 occupation 天職 vocation vocational school で「職業訓練校」である。 「職業訓練校」の平易な言い換えとして、technical school という言い方もある(ジーニアス)。 なお、「職業訓練校」というのは、国にもよるが、日本の場合、普通は旋盤工などの技能を教育したり、あるいは簡単な経理などを教える学校のことで、都道府県などの自治体が用意している。 日本の場合、工業高校・商業高校などとは別に、自治体の職業訓練校がある。 旺文社によると「職業教育」 vocational education とのこと。 だが、上述の職業訓練校における教育のようなニュアンスがあるかもしれない。 一方、すでに企業に就職している新入社員などが受ける教育のことは、普通、 OJT (On the Job Training )という。OJTも英語である(ジーニアスで確認)。 名詞形 vocation は「天職」「職業」という意味。 単に「職業」といいたい場合、occupation (オキュペイション)で足りる。 海外旅行などで記入させられる職業欄にある項目名も、きっと occupation だろう。 動詞形 occupy には「占領する」という意味もある。なので、よく第二次世界大戦後のGHQ占領軍にかんする英語などで Occupied などの単語が出てくる。 occupy a town 「街を占領する」(ジーニアス) occupy a village「村を占領する」(東京書籍) のように使う。 occupy は「占める」という意味である。 be occupied with ~ で「~に従事する」である(旺文社、桐原)。 おそらく、そこから職業を意味する単語になったか。 なお、 be occupied with ~ は「~で忙しい」の意味もある(東京書籍、センチュリー)。だが、まずは「占める」から連想しやすい「従事している」で覚えるべきだろう。 ---- 鋳型(いがた) mold , cast mold は、鋳物(いもの)の型から、お菓子作りの型まで、なんでも使える。 旺文社ではmold はcastよりもあとのほうに書いてあるが、むしろ mold を先に教えるべきだろう。もっとも、旺文社本は出題順なので仕方ないが。 ジーニアスいわく、 「型を破る」 break the mold とのこと(ジーニアス)。 なんと「型破り」は英語由来の表現だった。 歌舞伎の型だとか、武道の型だとか、そういうのい由来するとかの巷(ちまた)の言説は何だったのか。 さて、castのはなし。 鋳物という意味での cast (キャスト)は、人型の像の鋳物のこと。辞書ではジーニアスでもセンチュリーも、cast の例文は、人型の芸術作品である。 なので、お菓子作りとかには cast は使えない。 演劇などの「役を当てる」を cast という(旺文社)。 cast の対象は「人」に限るからか、mold との違いが分かれば、たとえば演劇などの「役を当てる」を cast というのも、連想しやすいだろう。 なお、東京書籍にも桐原にも、cast も mold も書いていない。 ほか、骨折などで当てる「ギプス」も 英語では cast である(旺文社)。 なお、ネットによると、ギプスはドイツ語またはオランダ語に由来らしい(深入りしない)。 ほか、matrix (マトリクス)という単語も「鋳型」だが、どの単語集にも書いていない。 日本の数学3Cあたりで習う「行列」が英語で matrix である。センチュリーだと、「行列」が matrix の最初に紹介してある。 ほか、レコードの「原盤」が matrix とのこと(ジーニアス、センチュリー)。 matrix は古くは「子宮」という意味である。実際、センチュリーには matrix の原義は(※ラテン語の)「母(Mater)」と書いてある。(カッコ内の「ラテン語の」はwiki側で追記。) ---- 宗教の「教義」 dogma , doctrine 違いは、いちおうは違いがあるが、不明確。 ドクトリンのほうは、宗教だけでなく、政治のモンロー主義(the Monroe Doctrine)だとか(ジーニアス)、トルーマン・ドクトリンとかの用語でも使われる。なお、モンロー主義のドクトリンは大文字(ジーニアス)。 :モンロー主義については 『[[高等学校世界史B/南北アメリカの発展]]』を参照せよ。 :トルーマンドクトリンについては 『[[高等学校日本史B/冷戦の開始と講和]]』を参照せよ。 そういう影響からか、なんとなくdogma のほうが宗教上の信念が強そうな気もするが、しかし辞書を見ても、特に証拠はない。 センチュリーには、いちおう、dogma の項目に doctrine が「類語」だと書いてあり、『dogma,doctrine,creed はいずれも「教会」の定めた教理・教義をいうが、dogmaは証明の有無にかかわらず、信徒が絶対に受け入れなければならない真理」を意味する;』と書いてある。 しかし、ジーニアスに「政治上の信念」political dogma という表現がある。 桐原5500は、doctrine の項目に類義語として dogma を紹介するだけで、ニュアンスの違いの説明は諦めている。 旺文社に至っては、doctrine の項目でも、dogmaについては知らんぷりだし、そもそもdogmaを単語紹介していない。 ほか、生物学の遺伝の分野で、セントラル・ドグマ central dogma という専門用語がある。 wikibooks『[[高等学校理科_生物基礎/遺伝情報とタンパク質の合成#タンパク質の合成の過程]]』 ---- 崇拝、賛美 adore, worship 両方とも桐原5500に、別々の単語として紹介しており、特に類義語としては紹介していない。 worship は旺文社1900にもある。旺文社1400(緑)の巻末に adore があった。 adore も worship も両方とも「崇拝する」「賛美する」の意味がある。ニュアンスの区別は難しい。 しかもadore も worship の両方とも、人を「熱愛する」の意味がある。 旺文社1400(緑)の巻末に adore があったので解説を読んでも、あいにく「尊敬に憧れの気持ちが含まれる。」とだけ説明しており、残念ながら worship との区別には役立たない。 なお旺文社1400の巻末は、respect, esteem, honor ,adore との違いを説明している。 つまり旺文社は、明言してはいないが、おそらくは、「宗教的信仰には worship を使え」、「尊敬と憧れには adore を使え」、というスタンスという事だろう。あくまで旺文社の編集員のひとりがそう思っている可能性があるとwiki側の編集者のひとりが推測しているだけなので、読者は自己責任で、どう使い分けるかを自分で考えよう。 辞書などで調べた違いは、worship には名詞として「崇拝」「礼賛」などの意味もあるくらい。 たとえば「英雄崇拝」 hero worship である(ジーニアス、センチュリー)。 また、ジーニアスいわく、 sun worship 「太陽崇拝」とか the worship of idol 「偶像崇拝」など(ジーニアス、旺文社1900)。 なお、「偶像」idol と、「怠惰(たいだ)な」idle は別の単語なので、混同しないように。またなお、「偶像」idol と 「怠惰な」idle は発音が同音(旺文社1400)。 「太陽崇拝」は Worship of the sun ともいう(旺文社1900)。 そのほか、「金銭崇拝」とか(センチュリー)、「富と権力への崇拝」とか(ジーニアス)、そういう使われかたもする。英文紹介は著作権的に省略。 また、 「礼拝所」a place of worship である(センチュリー、ジーニアス)。 なお、フランス語だと、adore にスペルの近い動詞が「大好き」の意味であり、割と使われる。よく市販のフランス語教材の入門書にもある単語であったりする。こういう事情があるので、フランスが消えないかぎり、英語の動詞 adore も残りつづけるだろう。 ---- 署名(しょめい) signature, autograph 書類などにする、一般的な署名 signature (シグネチャー) signature (シグネチャー)は発音注意。後半はネイチャーではない。 4文字の sign は、動詞では「署名する」の意味がある。しかし名詞としてはsignは 「印」、(道路などの)「標識」などの意味である(東京書籍3000など)。 つまり、名詞としての sign に署名の意味はない。 autograph (オートグラフ)は、いわゆる有名人の「サイン」のことであり(桐原3000のsign項目)、芸能人などがファンに贈ったりする署名のアレ。 なお、an autograph のように不定冠詞をつける場合は an になるのを忘れないように、 なお「自叙伝」「自伝」のautobiography (オートバイオグラフィー)は、語尾のyだけでなく、-bio-(バイオ)がついているのを忘れないように。 ---- 「定義」と「定理」 これは日本語の問題ですが、「定義」と「定理」は意味がまったく違います。 定義とは、要するに「語義」です。 英語でも、桐原3000で 「定義」definition を調べると、「定義」「語義」という意味が書いてあります。 いっぽう「定理」とは、たとえば「ピタゴラスの定理」とか、ああいうのです。 ピタゴラスの定理は、直角三角形について成り立つ定理ですが、べつに直角三角形の語義ではないでしょう。 「定理」に相当する英語は、高校の範囲外なので省略します。 definitely 「断固として」「確かに」などの意味をもつ単語が、桐原の検定教科書 EMPOWER II の P. 130 で紹介されています。 I definitely agree. のような文章です。意味的には上記の例文は、agree を強調している、とでも覚えればよいでしょうか。 単語集では、東京書籍4500(意味のみ)と旺文社1900(意味のみ)と桐原5500で紹介されています。 昨今のカリキュラム改訂で、議論などの単元が増加したので、definitely も覚えましょう。 辞書では、「断固反対する」とか(ジ-ニアス)、「彼は明らかに間違っている」(センチュリー)とか否定の強調で definitely を用いています。 肯定を強める文脈で definitely を使うこともあります(桐原5500)。なので、definitely agree も正しい言い回しなのです。 典型的な例文は be definitely wrong 「明らかに間違っている」 です(桐原5500、センチュリー)。 たとえば 「彼は明らかに間違っている」 He is definitely wrong. となります(センチュリー)。 なお、「肯定的な」は affirmative (アファーマティブ)です(桐原4500巻末)。 検定教科書で桐原のEMPOWER 2 で affirmative が見当たりました。議論についての英語の単元で、affirmative や対義語の negative があります。 なお動詞の「肯定する」は affirm です(東京4500のdeny(デナイ) 対義語)。 affirm ⇔ deny とセットで覚えましょう。 また、形容詞については、 「肯定的な」affirmative ⇔ negative 「否定的な」 です。 ここでいう「否定的」とは、批判の意味ではなく、とりあえず「 意見に対して not (= 賛成でない)の立場である」という意味の否定です。 そのほか、「司会」 chairperson (チェアパーソン)や、「討論者」debater (ディベイター)などの単語があります。まあ、ここら辺の単語なら市販の単語集にも掲載されていると思うので、市販の単語集を参照してください。 ---- 「要望」と「要求」 demand, claim, request 「必要とする」 require demand は命令的または高圧的に「要求する」ときに使う(旺文社1400巻末、桐原3000に「命令的」あり)。 経済学では「需要と供給」とかの用語で使うので聞きなれているが、しかし「要求する」の意味では少し高圧的なので、気をつけよう。 そもそも語源が de「強く」+mand「命じる」という由来である(センチュリー)。 claim については他のセクションで説明済み。 なお、センチュリーはdemand の「要求する」の意味を、claim と同じくらいの意味だと説明。 しかし桐原3000は、demand と claim はニュアンスが違うと主張しており、demand には命令的なニュアンスがあるが、claim には命令的なニュアンスがないと主張している。 このように、教材などによって細部の説明は違うので、あまり細かいことを丸暗記する必要はない。 いちおう、センチュリーのほうにも、claim の類語としての意味「(1)」とは別に、「(2)」の用法として「(命令的に)尋ねる」などの用例もあると紹介している。 センチュリー request をみた感じ、「これをやってくれたら、うれしいなあ」ぐらいの気持ちでする気軽な頼みごとは、request を使うのが良さそうである。 歌手とかの音楽コンサートとかのリクエスト曲も、英語で request である(センチュリー)。 ただし、センチュリーいわく「首相からの『要請』」だとか、ジーニアスいわく「同盟国からの軍事援助の『要請』」とか、そういうのも request とのこと。 つまり「要請」という日本語が、まあそういう意味で、国語辞典的な意味はともかく、形式的にはその「要請」は頼みごとだが、しかしその「要請」を発している人物・組織が権力者だったり上司だったりして、実質的には命令のようなもの、というのが『要請』であろう。 東京書籍4500でのrequest の例文は「警察からの要請」という例文である。 require は、「必要としている」というのが基本的な意味なので、要求とはやや違う。 いちおう、派生的に require で要求をすることもできるが、センチュリーの例文を見た限り、やや意味が強めであり、「命じる」という意味の場合もある(センチュリー)。 ---- 口頭の verbal, oral oral 口の verbal 言葉の oral は旺文社1900にある。 oral は、「口頭の」の意味もあるが、oral health 「口腔衛生」とかで覚えるべきである。 つまり、物理的な口のほうが oral である。 ただし、「口頭試験」のことを an oral examination というなど(ジーにアス、センチュリー)、物理的な口腔という意味でない例外もある。 verbal は、翻訳の都合で「口の」と訳されたり、いくつかの用法では「口頭の」の意味の場合もあるが、基本的には「言葉の」であると思ったほうがよい。 つまり、oral の違いとして、文字や文章などによるコミュニケーションでも、文字も文章も言葉であるので、それはverbal なコミュニケーションになる。 verbal communication 「言葉によるコミュニケーション」(ジーニアス、東京書籍) 辞書にはバーバル・コミュニケーションの意味が書いてないが、口での会話のコミュニケーションのほかにも、メールや手紙などの文章もバーバル・コミュニケーションに含まれる。 一方、オーラル・コミュニケーション oral communication だと、口での会話だけになる。 だから学校の英会話の授業は、基本的に oral communication である。1990年代、高校英語の英会話の授業の科目名が "oral communication" という名称であった。 ほか、verbal を使った慣用表現は、 verbal promise 「口約束」(ジーニアス、東京書籍) など。 oral との違いを説明したばかりなのに、さっそく例外である「口約束」の登場で困る。しかし仕方ない。覚えよう。 ともかく、バーバル verbal の意味は基本的には「言葉の」である。 だから、否定形のノンがついている「ノンバーバル・コミュニケーション」は、つまり、ジェスチャーやらアイコンタクトやら、あるいは表情とか、ともかく言葉以外のその他の行動で意思を伝えることをノンバーバル・コミュニケーションという。 心理学や教育学などで、「ノンバーバル・コミュニケーション」という用語はよく使われるので、ついでに覚えておきたい。またこの用語を覚えれば、類義語 oral とのニュアンスの違いも覚えられて、一石二鳥である。 ---- 投げる throw, pitch まず、「投げる」の教育的に一般的な動詞は throw であろう(特に出典なし)。 pitch は、単語集では、旺文社1900に書いてある。東京書籍4500と桐原4500・5500には見当たらないマニアック単語である。 検定教科書では、三省堂 CROWN I の巻末 Appendix で pitch を見かけた。ただし、三省堂の検定教科書に pitch の意味が書いてあるので、事前に辞書などで調べる必要はない。 旺文社でも、「投げる」の意味でしかピッチを紹介していない。辞書をみても、特に throw と pitch とのニュアンスの区別は紹介されていない。 さて、pitch の典型的な単語は a wild pitch 「暴投」 である(センチュリー、旺文社)。 野球の用語で投手のことをピッチャーと言うように、英語でも野球の投手は pitcher である(ジー二アス)。 そのほか、音楽では音の高さをピッチ pitch という。 典型の例文は a pitch of one's voice 「声の高さ」 である(ジー二アスそのまま。センチュリーに似た例文)。 ほか、ジー二アスにもあるが、機械のネジのピッチ pitch と同じ単語であり、ネジのピッチ pitch とは一回転したときの前身距離のことであるが(ジー二アス)、そんなのが受験英語に出ることはないだろう。(なお、工業高校の機械系学科では習う。) ついでに、工業的なことを言うと、飛行機や船の「縦揺れ」(たてゆれ)のこともピッチ pitch というとのこと(ジー二アス、センチュリー)。なお、横揺れは roll である(ジー二アス、センチュリー)。 pitch and roll とセットでいうこともある(ジー二アス)。 余談だが、野球の「オーバースロー」は和製英語で、英語では 野球のアレは overhand pitch になる。 つまり、野球用語の「投げる」は基本的に pitch である。 また、overthrow は、政府などを「転覆する」の意味である(ジー二アス)。 ※ overthrow は高校の範囲外。桐原5500、東京書籍4500、旺文社1900のどれにもない。 典型的な例文は、 overthrow the government 「政府を倒す」 である(センチュリー、ジー二アス)。 なお、野球の「アンダースロー」は、英語では形容詞は underhand とのことです(ジー二アス)。名詞がどうなるかはジー二アスでは確認できませんでした。高校英語の範囲を越えている話題なので、これ以上は深入りしません。 ジー二アスによると、underhand などはアメリカ英語とのことですが、そもそも野球自体がアメリカ発祥のスポーツですので、やや特殊です。おそらく、アメフト(アメリカン・フットボール)の用語などのアメリカ英語の事情も同様でしょう。 ---- 戦略と戦術 strategy, tactics ストラテジー strategy は普通、その戦争全体における用兵の手法を言う(センチュリー、ジ-二アス)。 一方、タクティクス tactics は普通、戦争内での個々の戦場での用兵の手法を言う(センチュリー、ジ-二アス)。 つまり、ストラテジーのほうが全体的(センチュリー)。 ストラテジーのほうを「戦略」、タクティクスを「戦術」と訳し分けるのが一般的。 あるいは、両方とも単に「作戦」と訳す場合もある。 戦争だけでなくビジネス用語などでも使われる。 「市場戦略」 a marketing strategy とか(東京書籍)。 「販売作戦」 sales tactics とか(旺文社)。 チェスなどボードゲームの戦略に strategy を使っても良い(桐原)。 tactics は桐原・東京書籍では紹介せず。 ---- 邪魔して遅らせる hinder, (※範囲外)impede 英語で「妨害する」は prevent です。 英語で「邪魔する」は、たとえば interrupt です。 ですが「邪魔して遅らせる」を一語でいう単語は、これらとは別です。 動詞 hinder(ヒンダー) または動詞 impede (インピード)が、「邪魔して遅らせる」ような意味です。 旺文社1900に hinder があります。 impede は旺文社にもありません。ですが、後述の理由で、impede とセットで覚えるのが合理的です。 高校の物理2で電気回路を勉強すると、インピーダンス impedance というのを習います。koiru コイルを使うと、電圧の大きさはそのままで、電圧のタイミングだけを遅らせることができます。 おそらく impedance という用語にも、コイルなどによって信号の増減を遅らせるという意味が含まれているのでしょう。 電気抵抗のレジスタンス resistance という英語からついつい、impede も resist 「抵抗する」の類義語のような意味を想像しがちです。 しかし、抵抗と考えるよりも impede は delay 「遅らせる」の類義語と考えたほうが良いでしょう。ジ-二アスにも、impede は delay または prevent の類義語だと紹介してあります。 センチュリーで例文をみるかぎり、hinder よりも impede のほうが固い語です。 impede が和平会議が遅れてどうこうという例文なのに、hinder は友達からの電話で宿題が遅れてどうこうという例文です。 また、ジ-二アスに至っては、impedeでは例文を紹介していません。 ---- 影響する influence, affect effect exert influence は、人の思想や考え方に与える「影響」や、物理現象なら月の潮力への影響のような遠隔作用かつ比較的に低い割合の「影響」の意味の名詞、および、そういった「影響をする」の動詞にもなる。 そもそもinfluence の語源自体、人の中に(in)流れ込むもの、のような意味があり(旺文社、ジーニアス)、本来は人に使う単語であった。 have an influence on ~ で「~に影響を与える」 である(東京書籍、旺文社)。 桐原は、influence を「間接的な影響」だとしている。 名詞 effect や 動詞 affect は、物理現象などでは、もっと直接的な影響を言う。 桐原は、affect は、直接的な影響だとしている。 東京書籍は、affectの例文では、人への影響を紹介していない。 人に対する場合、名詞 effect は薬の作用の意味だったり(東京書籍)、動詞 affect は病気の影響のことだったりする(桐原)。 しかし、名詞 affection は「愛情」「好意」の意味がある(桐原)。 ややこしい。英作文では affection を使った言い回しはなるべく避けるのが無難だろう。 動詞 exert (イグザート)は、力や権力などのあるものが、それらの力を使って影響を「及ぼす」という意味の動詞である(桐原、旺文社)。 exert A on B 「BにA(影響など)を及ぼす」 である(旺文社)。on ではなく in を使う場合もあるので、あまり暗記する必要は無い(東京書籍4500巻末)。東京書籍は exert を巻末おくり。 exert great influence on ~ 「~に大きな影響を及ぼす」 といった表現が典型的(旺文社、桐原)。 ---- 空(から) empty, vacant 容器などが空(から)のことは形容詞 empty で表現します。 座席が開いている場合は vacant です(東京書籍、桐原)。 Is this seat vacant? 「この席は空いていますか?」(桐原、センチュリー) とか This seat is vacant. 「この席は空いています。」(ジーニアス) のように使う。 vacant は、対象物に人がいないことを意味する(センチュリー)。 部屋の空室や、家の空き家にも vacant は使える(ジーニアス、センチュリー)。 empty だと、たとえば部屋が empty の場合、人だけでなく家具なども何もない状態の部屋だというニュアンスになる(センチュリー)。 しかし、実は「空席」を empty seat で表しても、間違いではない(ジーニアス)。同様に、単に人がいないだけの「空室」でも empty で表しても間違いではない(ジーニアス)。単に、empty room だと、読み手が、家具もなにもない部屋なのか、それとも人がいない部屋なのか、読み手には文字だけでは区別がつかない、という事だけである(ジーニアス)。 だから東京書籍4500でも桐原4500でも、 empty を割と前半で紹介している。いっぽう、vacant の紹介は、後ろのほうである。 empty でも代用できる。empty のほうが一般的な語である。 ただ、一般的すぎて、細かいニュアンスが empty では伝わらない場合もあるので、そういう場合は必要に応じて vacant など別の形容詞を使ったほうがよいかもしれない場合もある、というだけの事である。 さて、名詞 vacancy で「空席」「欠員」「空室」「空虚」などの意味(桐原)。 なお、vacant の対義語は occupied である。 vacant ⇔ occupied vac- は「空っぽ」を意味し、真空 vacuum とか、休暇 vacation とかの vac と同じ語源である(センチュリー)。 ---- 想像する conceive, imagine 思いつく conceive 考え方 idea, concept 動詞 conceive 「思いつく」「想像する」という単語がある。 これは一見すると難しそうだが、実は名詞「コンセプト」 concept の動詞形であろう、と考えられている(桐原、旺文社)。 だが、東京書籍はそう紹介していない。 concept には「思いつき」などの意味は無いからだ(ジーニアス、センチュリー)。 それでも conceive は「思いつく」の意味で最初は暗記したほうがいいだろう。桐原などの単語集でも、「思いつく」を最初に紹介している(桐原、旺文社)。 なぜなら、conceive の「想像する」の意味については、使わなくても動詞 imagine で済む。辞書ジーニアス英和も、conceive の「想像する」の意味については、imagine と類義語だろうという見解である(ジーニアス)。 典型的な例文は conceive a new plan 「新しい案を思いつく」 がある(旺文社、東京書籍)。 なお、idea と concept の違いは、idea が一般的な「考え方」という意味の語であるのに対し、concept はより抽象性の高い考えを語であるので(センチュリー)、よく concept は「概念」などと訳される。 ---- 反応する respond , react ジーニアス react の項目いわく、respond と類義語とのこと。センチュリーを見ても、とくにreact と respond の違いは書いてない。 意味の区別は難しそうである。 生物学的な文脈で、刺激に「反応する」と言いたい場合、react が好まれる場合もある(センチュリー)。 名詞形 response は、普通、「応答」の意味。 ジーニアスいわく、response は answer よりも固い語。 名詞 reactor は「原子炉」のことである(東京書籍)。 原子炉のような明らかに違う意味をのぞけば、ニュアンスの違いを問うような出題は入試には無いだろう。もし出題したら、出題者の見識が疑われるだけであるからだ。 ---- 返事をする respond, reply reply (リプライ)は、手紙の「返事」や「返信」などで、よく使われる(ジーニアスの例文)。 しかし、respond でも手紙の「返事をする」ことを表現してもよく、センチュリーや東京書籍の respond の項目にそういう例文がある。 ジーニアスいわく、reply は answer よりも固い語。 SNSなどで「リプライ」などの表現をよく使うので、軽い表現かと思いがちだが、しかし辞書的には、answer よりも固い表現だとのことである。 よって、ニュアンスの区別は難しそうである。このため、入試では、respond と reply の区別を問うような出題は無いだろう。 ---- 全体の entire, whole 日本人に区別は無理。 辞書を見れば、ジーニアスでは eintire のほうが強意的とか言うし、センチュリーはwhole はpartに対する語とか言う。 だが、「じゃあ結局、どうやって enteire と whole を区別するのか?」という疑問には、ジーニアスもセンチュリーも答えられていない。 東京書籍は、entire の項目で「(wholeと同義)」としており、区別を諦めている。 桐原に至っては、entire の項目を見ても、類義語にはなにも触れて折らず、よって whole の存在にも触れていない。 ---- 耐える endure, withstand endure は、人などが我慢して「耐える」の意味である。ただし、endure にも、派生的に、物などが「持ちこたえる」という意味もある(桐原、ジーニアス、センチュリー)。 withstand は、丈夫だったりして「耐える」「持ちこたえる」のような意味だが、その他にも人などが我慢して「耐える」ような意味もある(ジーニアス、東京書籍の巻末)。 このため、入試的には endure と withstand の違いを問う問題は出されづらいだろう。 読解で出題の可能性があるくらいか。 ---- 首都と大都市 首都 capital 、 大都市 metropolitan metropolitan area で「首都圏」の意味。 翻訳の都合で metropolitan (メトロパリタン)が「首都」となる場合もあるが、意味的には、首都のような「大都市」である。 「首都」そのものは capital である。 だから、首都から遠く離れた地域がその国の大都市の場合、metropolitan で言うのが適切だろう。 東京書籍がmetoropolitan を「大都市の」「首都の」として紹介している(東京書籍4500巻末)。 桐原3000・4500・5500と旺文社1900では見つからなかった。 (※範囲外)なお、metro (メトロウ)だけだと、パリなどの「地下鉄」のこと(ジーニアス、センチュリー)。 なお、capital の cap- は、語源的にはcaptain 「船長」「運動チームのキャプテン」「級長」の cap- と同じで、語源的には cap- とは「頭」を意味する(桐原3000、ジーニアス)。 ---- 陰影 shade , shadow shade は、光の減量した(3次元の)空間である。 いっぽう、shadow のほうは、地面や壁面などに投影された、2次元の黒っぽい面のことである。 人の影を言う場合は、shadowを使う。 木陰などの「日かげ」は、普通は shade である。 ジーニアスいわく、ビーチパラソルの下は shade とのこと。 人の影には、shadeは使わない。なので、 なお、語源は shadow も shade も同じで「暗がり」という意味の語源だったので(ジーニアス)、語源からは区別できない。 いっぽう、shadowについて。 まず、人の「影」には shadow を使う。 だが、実は、shadowで「暗がり」を表現してもいい(ジーニアス、センチュリー)。家の北側の陰とか、夕闇を shadow で表現できる(ジーニアス)。 語源的にはshadowで「暗がり」を表現するのも正しいが、しかし現代英語の学習的には、shadowは「人影」を基準の意味と覚えておき、暗がりは二次的で派生的な意味だとするほうが、使い分けかたを記憶しやすいだろう。 なお、shade でも夕闇を表現できるが、ニュアンスが異なり、shadeによる夕闇の表現は雅び(みやび)な言い回しである(センチュリー)。 なお、現代日本語も、英語の影響をうけてか、影(かげ、えい)と陰(かげ、いん)とを区別している。 「人影」(ひとかげ)というように、人物の影には普通、「影」を使う。 「木陰」(こかげ)というように、木の陰には普通、「陰」を使う。 ただし、木についても、その木が地面にうつす影について言及したい場合もあるだろうから、その場合の言い回しの区別は容易ではない。本ページではそういう例外的なことについては深入りしない。 センチュリーいわく、人によって光が遮られている場合であっても、地面や壁などの2次元の投影面ではなく、その面にいたるまでの空間を言及したい場合なら、それは shade であるとのこと(センチュリー)。センチュリーがshadeの項目で絵つきでそう説明している。 桐原は、「形のはっきりしない陰」が shade だと説明している。 shade には、「微妙な相違」という意味もある(旺文社)。 だからか、絵などの色の濃淡の度合いや明暗の度合いも、shade という。 明るい青と、暗めの青のように、ふつう、同系統の色での、微妙な色合いの違いのことを shade という(センチュリー)。 ---- 話題・主題・論題など 会議などの話題 topic, subject 主題 main topic, subject 著作物のテーマ theme, subject 問題 problem, matter topic は、よく「話題」 などと訳されるが、しかし井戸端話だけでなく、会議などの話題でも構わない(桐原)。 topic は、ひとつである必要は無く、ひとつの会議・相談中にいくつも topic があっても良い。 だから、「主な話題」にのみ限定する場合は main topic のように main をつける(センチュリー、桐原)。 ただし、派生的に topic のみで論文・講演などの主題・テーマを意味する用法もある(ジーニアス)。しかしそういう派生的な用法まで考慮すると暗記しきれなくなってしまうので、とりあえず「主題」は main topic であるとして覚えよう。 ジーニアスにある topic sentence 「トピック・センテンス」という単語も覚えたい。長い段落や章などの初めに、その段落の内容を1文でまとめた1行ていどの文章を英語では書くのが、読みやすい文章だとされる。 2022年、近年の英語教科書では、こういうのも教えるので、tipic sentence の単語も覚えておきたい。 theme (シーム)は、和訳では「主題」のほかにドイツ語風に「テーマ」とも訳されるが(東京書籍)、ではテーマとは何かという問題がある。 theme やテーマとは、会議などの話し合いではなく、論文やら小説やらの著作物を通して著者が語ろうとしていたり探求しようとしている物事をひとことでまとめたもの、であろう。 だから、論文のテーマとかも、theme である(センチュリー)。 東京書籍は、theme は「文章・芸術作品などの主題・テーマ」であると言っている。 ジーニアスの言うように、小説などの創作物に限らず、論文などのテーマも theme で良い。 ただし、subject にも、テーマという意味がある(ジーニアス subject)。 なお、テーマパークは英語でも theme park (シームパーク)である。 テーマ曲は theme song や theme music や theme music という。 「話題」のことを、topic ではなく theme で言っても良い(ジーニアス theme)。 このように、区別は難しい。 しかし、それだと覚えづらいので、とりあえずtheme の「話題」の意味は、派生的な用法だとしよう。 そして、派生的な用法で覚えるのではなく、とりあえず theme は「テーマ」として覚えよう。 issue (イシュー)は普通、トラブルなどの問題およびその問題点や、あるいは論争など、ともかく広い意味で何かのトラブルを抱えている場合に使う。 また、issue は、やや緊急である場合が多い(ジーニアス)。 ただし、「論争」から派生してか「論点」という意味もあり、このため会議などの「論点」でも issue が使われることもある(センチュリー)。 しかし、「論点」を言うなら point でも言える(ジーニアス)。 problem との違いは、issue は実際に議論している問題だというのが、センチュリーの見解。 subject は theme 「主題・テーマ」の意味でも topic 「話題」の意味でも使われるので、区別は難しいし、事実、ジーニアスもセンチュリーも、subject を theme や tipic を紹介している。 日本では「トピック」をよく外来語として使うわりには「サブジェクト」という外来語はあまり使わないが、しかし英語では subject のほうが意味が広いようだ。 subject はかなり意味が広く、会議や論文などの意味のほかにも、学校の「科目」とか、文法における文の「主語」だとか、君主に対する「臣民」とか、色々な意味がある。 日本であまり使われないのは、サブジェクトは意味が広すぎて不便だからだろうか。 matter はなにか困った「事件」や「問題」などであるが、しかし論文などの「主題」に matter を使ってもいい(センチュリー)。 講演などの「題目」を the subject matter という場合もある(センチュリー)。 では「題目」とは何かという議論は置いとく。センチュリーでも説明されていない。 問題などの意味のほかにも、「事柄」(ことがら)と言う意味もあり、たとえば private matter 「個人的な事柄」(東京書籍3000、) とか personal matter 「個人的な問題」(センチュリー) とか言う。 そのほか、熟語 as a matter of a fact 「実のところは」 など(東京3000、旺文社1900)、 ある。 慣用表現で、口語的に No matter what happens, 「たとえ何が起きようとも、」 というのもある(東京3000,センチュリー)。 no matter ~ あるいは no matter what ~ だけなら「たとえ~でも」の意味(ジーニアス、東京3000)。 whatever などとの違いとして、no matter のほうが口語的である点がある(ジーニアス)。 what の代わりに how や which や whether などで no matter how ~などの場合もある。 ---- 安定した steady, stable steady には進歩などが「着実な」という意味もある(東京、旺文社)。よくstedy は「しっかりした」「着実な」と訳される。 steady には、継続的な感じのニュアンスがある。 だからか、「定職」も a steady job である(ジーニアス)。 「定収入」や「安定収入」は a steady income である(ジーニアス、センチュリー)。 経済で steady といったら、たとえば経済成長が着実だったり、経済回復が着実なのが steady である。 動きが安定しているのが steady (ステデイ)であるとされる(東京書籍)。 いっぽう、状態が安定しているのが stable である(東京書籍)。 stable には「びくともしない」という意味があるが(ジーニアス)、ただし、steady にも、信念などの「確固とした」という用法もある(ジーニアス)。このため、区別は難しい。 ほか、stable は、たとえば経済学の用語で ビルト・イン・スタビライザーというのがある。 このように、経済における stable という表現もあるが、ややニュアンスが steady とは異なる。 ---- 会議 meeting, session, conference 面談 session, conference conference は、たとえば年一回の会議など(ジーニアス)、比較的に重要な「会議」という意味がある。 だからか、「国際会議」international conference や 「首脳会議」 a summit conference などのように使われる。 conferenceには、医師などとの「面談」の意味もある(ジーニアス)。 しかし、セッションにも同様に医師などとの面談の意味もある(センチュリー)。 そのほか、 in session 「開会中」 の意味もある(桐原、センチュリー)。 The council is now in session. 「審議会は会議中。」(桐原) だとか、 The congress is now in session. 「議会は今開会中である。」(センチュリー) のように使う == 参考文献 == === 英語資料 === ;主な英単語集 * 投野由紀夫(東京外国語大学)監修『フェイバリット英単語・熟語<テーマ別>コーパス4500 4th Edition』、東京書籍、2020年2月1日 新版第1版発行 * 荻野治雄『データベース4500 完成英単語・熟語【5th Edition】』、桐原書店、2018年1月30日 第5版 第2刷発行 * ターゲット編集部・宇佐美光昭・浦田文夫『英単語ターゲット1900 <nowiki>[6訂版]</nowiki>』旺文社、2021年 重版発行、 * ほか、東京書籍・桐原・旺文社の周辺レベルの単語集を参照。 ;主な英和辞典 * 『ジーニアス英和辞典 第4版』、大修館書店、第3刷発行 2008年4月1日 * 『グランドセンチュリー英和辞典 第4版』、三省堂、第3刷発行 2017年1月10日 第1刷発行 ;主な和英辞典 * 小西友七 編集主幹『ジーニアス和英辞典』、大修館書店、1998年1月10日 初版第1刷発行、 ;検定教科書 高等学校学外国語科用 * 『FACTBOOK English Logic and Expression I』、桐原書店、令和3年5月 文部科学省検定済、令和4年2月25日発行 * 『Standard Vision Quest English Logic and Expression I』、啓林館、令和3年3月5日検定済、令和3年12月10日発行 * 『CROWN English Expression II New Edition』、三省堂、2022年3月30日 発行 * 『CROWN English Communication III New Edition』、三省堂、2018(平成30)年2月28日 文部科学省検定済、2022(令和4)年3月30日 発行、 * 『Amity I』、開隆堂、令和3年1月29日 文部科学省検定済 高等学校外国語科用、令和4年2月10日 発行 * 『All aboard! English Communication I』、東京書籍、令和3年1月29日検定済、令和4年2月10日発行 他教科 * 『ビジネス・コミュニケーション』、実教出版、令和2年12月25日 検定済、令和4年1月25日発行 旺文社1400の巻末に、類義語の特集があります。それも参考にしましょう。 === 日本語資料 === ;国語辞典(日本語) * 山田忠雄 ほか編集『新明解国語辞典 第八版』、三省堂、2020年10月20日 第1版発行 * 新村出 編集『広辞苑 第4版』、岩波書店、1992年10月9日 第4版 第2刷発行 == 脚注 == c22tx9rjjjnfxd86wm2z0xmxwprfuqr 小学校社会/6学年/歴史編/国際社会に進み出す日本-明治末期から大正時代 0 33920 205577 205026 2022-07-20T09:17:12Z Tomzo 248 /* 条約改正と国際社会での地位の向上 */ wikitext text/x-wiki {{Nav}} {{Pathnav|メインページ|小学校・中学校・高等学校の学習|小学校の学習|小学校社会|6学年|歴史編|frame=1}} {| class="wikitable" style="width:100%" |+ この章の概要 |<!--1889年前後から「国際的地位が向上」(1920年国際連盟成立 常任理事国入り)まで--><!--(コ) 大日本帝国憲法の発布,日清・日露の戦争,条約改正,科学の発展などを手掛かりに,我が国の国力が充実し国際的地位が向上したことを理解すること。--> ★時代区分:明治時代後期、大正時代</br> ★取り扱う年代:1889年(大日本帝国憲法の発布)から1925年(昭和改元)まで ; 大日本帝国憲法の制定 : 明治維新の改革は、五箇条の御誓文の方針によりなされましたが、改革が進み近代文明国としての形がひととおり整ってきたところ、さらに政治の形を確かなものとし、人々の権利を明らかにするため、'''憲法'''の制定と選挙によって選ばれた議員による議会を開くことが求められました。'''板垣退助'''や'''大隈重信'''は国会の開設を求めて、政党をつくりました。'''伊藤博文'''を中心とした明治政府は欧米諸国の憲法を研究し、1885年に'''内閣制度'''が創設され、1889年に'''大日本帝国憲法'''が発布されました。翌年憲法の精神に基づいて、初めて総選挙が行われ'''帝国議会'''(国会)が召集されました。 ; 日清戦争と日露戦争 : 急激な近代化に成功した日本は、国内で拡大した産業の新たな市場を求め大陸に進出しようとします。朝鮮は中国の帝国'''{{ruby|清|しん}}'''の属国でしたが、その影響で近代化が進んでおらず、朝鮮国内の近代化を求める人々は日本と協力して清の影響から逃れようとしました。朝鮮国内の清に従う保守派と改革派の争いに日本と清はそれぞれ兵を出すなどして緊張が高まり、1894年朝鮮半島西岸における両国海軍の接触をきっかけに'''日清戦争'''が始まりました。日本は清の北洋海軍を壊滅させ、遼東半島を占領するなど戦いを有利に進め、翌年、'''陸奥宗光'''外務大臣と清の提督である李鴻章が交渉し、清の日本への賠償や台湾・遼東半島の割譲などを定めた下関条約が締結され講和が結ばれました(日本の勝利)。 : 遼東半島はロシア、ドイツ、フランスが反対したので割譲は取りやめとなりましたが(三国干渉)、そこにロシアが進出し、それを警戒する日本と対立しました。1904年日本とロシアは開戦し('''日露戦争''')、日本とロシアは、ロシアが植民地としていた遼東半島や中国東北部(満州)で戦いました。日本は多くの犠牲者を出しましたが、'''東郷平八郎'''がロシアのバルチク艦隊をやぶるなどして有利な位置となり、翌年、'''小村寿太郎'''外務大臣とロシアのウィッテが交渉し、ロシアの中国からの撤退、南満州鉄道の譲渡、南樺太の割譲などを定めたポーツマス条約が締結され講和が結ばれました(日本の勝利)。 ; 条約改正と国際社会での地位の向上 : 幕末に欧米各国と結ばれた通商条約(不平等条約)の改正は日本政府の悲願でした。まず、政府は、国内の法整備を進め、公正な裁判が行われることを示し、日清戦争終結後の1899年治外法権を撤廃しました。そして、日露戦争の勝利は、世界に驚きをもってむかえられ、国際的地位も上がったことをうけて、1911年関税自主権も回復しました。 : 1912年大正天皇が即位し、元号が「'''大正'''」となりました。 : 1914年にヨーロッパの国々を二分した'''第一次世界大戦'''が始まりました。日本は、イギリスやフランスの属する連合国に参加し、敵対する同盟国の一つであるドイツが租借する中国の{{ruby|青島|チンタオ}}や南太平洋の島々を占領しました。1919年戦争は連合国の勝利に終わり、翌年、平和を維持するための'''国際連盟'''が設立、日本は英仏などとともに常任理事国の一つとなりました。 : このころになると、日本の科学技術の水準も世界的なものになり、'''野口英世'''のように国際的な研究者がでてくるようになりました。 |} === 世界の変化2 - 市民革命 === :日本が鎖国をしている間、ヨーロッパやそれを受けたアメリカ大陸では、[[小学校社会/6学年/歴史編/明治維新と近代国家日本の成立-幕末・明治時代#世界の変化1 - 産業革命|産業革命]]ともうひとつの大きな社会変革が起こっていました。 ;市民革命以前のヨーロッパ :ヨーロッパの国々も長い間、生まれながら身分によって職業などが決められ、多くの人々は農民や職人として土地(荘園)の領主(「{{ruby|封建|ほうけん}}領主」といいます)や都市の貴族などに服従する社会でした。また、この時代は、ローマ教皇を頂点とする'''カトリック教会'''が、強い影響力や荘園を持っていたというのは、[[小学校社会/6学年/歴史編/戦乱の世の中と日本の統一-戦国時代・安土桃山時代#キリスト教|前にお話ししたとおり]]です。この時代を{{ruby|封建|ほうけん}}制<ref>土地(領地)を間に介して、主従関係を結ぶ制度を言います。日本でも、[[小学校社会/6学年/歴史編/武家社会の始まり-鎌倉時代#封建制|鎌倉時代の「'''ご恩と奉公'''」の関係]]はこれにあたりますし、安土桃山時代から江戸時代にかけての[[小学校社会/6学年/歴史編/戦乱の世の中と日本の統一-戦国時代・安土桃山時代#石高制|石高制]]も封建制の一種です。</ref>の時代と言います。 :14世紀くらいになると、都市を中心に商業が発展してきて、豊かな財産を持って、荘園領主よりも強い影響力を持つようになる者もでてきました。15世紀「[[小学校社会/6学年/歴史編/戦乱の世の中と日本の統一-戦国時代・安土桃山時代#大航海時代|大航海時代]]」になると、さらに、貿易や植民地からの収益で都市の商人などは勢力を強くしました。また、繊維工業などを中心に、人を集めて工場などを経営する人たちもあらわれました。これらの、封建領主や貴族ではない階層の人たちを、「{{ruby|市民|しみん}}階級」といいます。これらの、市民階級の経済力を背景に、ヨーロッパの各地で強い力を持った国王が誕生し、伝統的な荘園領主などを圧倒しました。これを、{{ruby|絶対王政|ぜったいおうせい}}の時代といいます。絶対王政の王国は、政治を行う政府は専門の役人をおき、戦争に備えて軍隊を平時から常設するようになりました<ref>封建制の時代は、国王でも自分の荘園をおさめられる程度の役人がいればよく、戦争などでは、その都度、封建領主に命令して軍隊(騎士)を集めていました。</ref>。 ;市民革命と近代国家 :市民階級が台頭してくると、封建制度以来の身分制度に対して、生まれながらの身分にかかわらず人間は'''平等'''であり、'''自由'''に発言や経済活動をする'''権利'''('''人権''')を持っているという考え方が広がってきました。また、封建制の時代はおさめている荘園の収穫から政治を行っていましたが、絶対王政の政府は、市民階級からの税金で成り立っていたのですが、税金を取られる市民たちは国王の都合だけで徴税されることに不満を持ち始めました。こうして、17世紀以降、市民階級は絶対王政と対立するようになります。市民階級は代表を出して、政治に参加するようになります。'''議会'''('''国会''')の始まりです。さらには、国王の圧政に対しては、市民階級が集まって武力をもって王政を倒したりしました。これを「'''{{ruby|市民革命|しみんかくめい}}'''」と言います。 :市民革命は、17世紀のイギリスに始まりました ('''清教徒革命'''など)。ひきつづいて、北アメリカ大陸のイギリス植民地が、独立を求めて戦争を起こしアメリカ合衆国が成立しました ('''アメリカ独立戦争''')。そして、1789年代表的市民革命である'''フランス革命'''が起こります。市民革命は、フランスの'''ナポレオン'''が、フランスの革命政府を打ち倒そうとする周辺の国々を逆にせめた戦争によってヨーロッパ各地に広がります。 :市民革命自体は、各国の状況によって様々な結果を生みました。革命後に王政が復活した国もあります。しかし、市民革命で国の政治に身分によらない一般の市民が参加できるようになって、広く国全体から資金を集める仕組みができたこと、また、兵隊に国民が動員されるようになったこと('''[[小学校社会/6学年/歴史編/明治維新と近代国家日本の成立-幕末・明治時代#徴兵制|徴兵制]]''')から、数が多く強力な軍隊を持つようになり、それまでの、封建的な国や絶対王政の国を圧倒するようになりました。これらの古い体制の国々も、市民階級を国の政治に参加させるように、国の仕組みを変えるようになりました。まず、国民の権利を保障し、国民の代表が参加する'''議会'''を設置して国の政治に参加できるようにしました。そして、そのことを'''憲法'''という、強い力を持った法律に定めるようになりました。 :国が、国王などの所有物ではなく、そこに住む国民によって成立するという近代国家('''国民国家''')の誕生です。 === 大日本帝国憲法の制定 === [[File:Taisuke ITAGAKI.jpg|thumb|125px|板垣退助]] [[File:OKUMA_Shigenobu.jpg|thumb|125px|大隈重信]] [[file:Itō Hirobumi.jpg|thumb|125px|伊藤博文]] :明治になって、[[小学校社会/6学年/歴史編/明治維新と近代国家日本の成立-幕末・明治時代#四民平等|身分制度がなくなり]]<ref name="華族">実際は、公家や大名、明治政府に大きな貢献のあった人たちについては、{{ruby|公爵|こうしゃく}}・{{ruby|侯|こう}}爵・{{ruby|伯|はく}}爵・{{ruby|子|し}}爵・{{ruby|男|だん}}爵といった貴族の爵位が与えられ、その一族は「{{ruby|華族|かぞく}}」と呼ばれました。華族には、いくつかの特権が認められましたが、華族の数は比較的少ないうえ、江戸時代ほど極端に大きな差ではありませんでしたし、社会的な貢献をすることで、誰でも華族となる機会はありました。また、「士族」と「平民」の間で異なる取り扱いは一切ありませんでした。</ref>、人々は才覚や努力によって、どのような職業に就くこともできるようになりました。人々は、学業をはじめとしたさまざまな努力をして、いろいろな分野で活躍するようになりました。 :明治政府は、さまざまな改革を強引に進めたため民衆と対立することも少なくありませんでした。このような民衆の不満は、[[#士族の反乱|士族の反乱]]の後は、こうした近代思想を取り入れて政治参加を求める{{ruby|自由民権|じゆうみんけん}}運動につながります。自由民権運動は、憲法の制定と、民衆が政治に参加できる選挙を通じた国会の開設をもとめるようになります。自由民権運動は、征韓論で下野した'''[[小学校社会/6学年/歴史編/人物事典#板垣退助|{{ruby|板垣退助|いたがきたいすけ}}]]'''と1881年(明治14年)に'''[[小学校社会/6学年/歴史編/人物事典#伊藤博文|{{ruby|伊藤博文|いとうひろぶみ}}]]'''らと対立して政府を離れた'''[[小学校社会/6学年/歴史編/人物事典#大隈重信|{{ruby|大隈重信|おおくましげのぶ}}]]'''らに主導されました。 :大隈や板垣が主導する自由民権運動の主張は、国民の自由と権利を保障する憲法の制定とそれに基づく国民の選挙による議会(民選議会)の開設及び議会による政府の統制でした。伊藤博文ら明治政府を主導する人たちは、自由民権運動の考えをそのまま受け入れると、政策を政府が思うとおりに進めることができず、富国強兵などの改革政策に差しさわりがあると考え、この運動を弾圧しました。一方で各地の有力者や、新たな産業の成功者が登場してきており、明治政府はこれらの人々の支持を受けたいと思っていました。また、欧米諸国から見ると、民選議会が政治を進めない国は遅れているとの意識があり、不平等条約改正にあたっても説得させることができない理由の一つとなっていました。 :1881年(明治14年)明治政府は、明治天皇名で「国会開設の勅諭」を下し、1889年(明治22年)に国会を開設することを国民に約束しました。これを受けて、自由民権運動の活動家は政党を結成し、同年には自由党が板垣退助を中心として、翌1882年(明治15年)立憲改進党が大隈重信らによって結成されました。 :一方、伊藤は、1882年(明治15年)、憲法制定・国会開設の模範を研究するためためにヨーロッパを視察しました。そこで、伊藤は議会が発達したイギリスや、人権思想が進んでいたフランスではなく、ドイツ帝国の憲法を模範にすることとしました<ref>この頃のドイツは、日本が藩に分かれていたのと同様に、多くの王国・貴族領に分かれていたものを、各地で統一の要望が上がり、その中で有力となったプロイセン国王を皇帝とするドイツ帝国が成立していました。ドイツ帝国は、イギリスやフランスよりも、皇帝(それを受けた行政機関)の権限が強く、議会の力はおさえられていました。ドイツは、英仏に比べ工業化などが遅れていたために、それを推進するために、強い行政の力が必要であったためです。また、各個人の人権についても制限がありました。伊藤が、英仏ではなく、ドイツを国の形の模範としたのは、このように、日本と状況が似ていたためです。</ref>。帰国した伊藤は憲法制定の準備をはじめ、1885年(明治18年)に内閣総理大臣を長とする'''内閣制度'''が創設され、1889年(明治22年)に'''大日本帝国憲法'''(明治憲法<span id="明治憲法"/>)が発布されました。翌1890年(明治23年)7月1日憲法の精神に基づいて<ref>明治憲法が、実際に有効となる(施行される)のは、1890年(明治23年)11月29日なので、まだ、憲法の下の選挙・国会の招集ではありませんでした。</ref>、初めて総選挙が行われ、11月25日'''帝国議会'''(国会)が召集されました。 :明治憲法は以下のことを定めています。 :#天皇は、日本の統治者とされます。 :#国会は、天皇に「協賛」して法律や予算を定める機関とされます。 :#*法律や予算を決めるのは天皇であって、国会は、その補助をしているに過ぎないという考えを表しています。 :#*緊急と認められる時には、天皇<ref>実際は、行政府である政府の仕事です。</ref>は国会の議決によらず、法律に代わる勅令を出すことができました。 :#国会は、貴族院と衆議院により成り立ち、衆議院は選挙によって選ばれた議員により構成され、貴族院は皇族・華族<ref name="華族"/>及び勅命<ref>天皇の命令。実際は、その時の行政府による指名。</ref>で任名された議員により構成されます<ref>ただし、このような議会の成り立ちは、世界的に見ても珍しいものではありませんでした。明治憲法の元になったドイツ帝国の議会が貴族院と衆議院で成り立っていましたし、そもそも、議会政治の模範とされるイギリスも世襲貴族による「貴族院」と選挙で選ばれた議員による「庶民院」で構成されていて、現在もその伝統が残ります。このことで、身分で選ばれた議員による議会を「上院」、選挙で選ばれた議員による議会を「下院」という習慣ができました。アメリカ合衆国には独立当時から貴族制度はありませんでしたが、上院は各州の代表(元々は州議会が選出していましたが、現在は州民の選挙によります)、下院は州にかかわらず選挙で選ばれた議員による議会と、上院と下院で性質を変えていたりします。時代が下るにつれ、選挙で選ばれた議員の決めることが優先されるという政治習慣(下院優先の原則)が有力になります。</ref>。 :#*衆議院の優位などの定めはなく、各議院で議決されなければ法律などは成立しませんでした。 :#*<span id="制限選挙"/>衆議院議員の選挙権は、憲法を定めた当時は、一定以上の税金を納めた者にのみ認められていました。 :#国務大臣は天皇を{{ruby|輔弼|ほひつ}}(助言し助ける)すると定められます。また、内閣総理大臣についての定めはありません。 :#軍隊(陸海軍)は天皇が直接まとめひきいるとされました。また、国民には徴兵に応じる義務がありました。 :#*軍隊は、国会や内閣の命令を聞く必要がないと解釈されるようになります。 :#様々な国民の人権が認められましたが、それは、法律の範囲内で認められるものとされました。 :#*例えば、女性には選挙権は認められることはありませんでした。また、民法で家族や相続は家制度によったため、女性は不利な取り扱いを受けました。 :#*後に制定される治安維持法は、政治思想(特に社会主義思想・共産主義思想)を取り締まる法律でした。 === 日清戦争と日露戦争 === ==== 日清戦争 ==== [[File:《马关条约》签字时的情景.jpg|thumb|right|200px|none|下関条約の調印の様子。 向かって左に着席するのが日本の伊藤全権、右が清国の李全権]] : 急激な近代化に成功した日本は、国内で拡大した産業の新たな市場を求め大陸に進出しようとします<ref>「急激な近代化に成功した日本」と書きましたが、これは、[[小学校社会/6学年/歴史編/明治維新と近代国家日本の成立-幕末・明治時代#世界の変化1 - 産業革命|前の章の『産業革命』の節]]に書いた「欧米各国は、産業革命で経済力が大きくなりましたが、さらにそれを大きくするため、国内で生産する工業製品の{{ruby|市場|しじょう}}と原材料となる農産物や鉱物資源を欧米諸国の外に求めるようになりました。」の部分を日本に当てはめたものです。しかし、この頃の日本の工業力はまだ近代化が始まったばかりで、外国に市場を求めるまで成長していません。</ref>。朝鮮は中国の帝国'''{{ruby|清|しん}}'''の属国でしたが、その影響で近代化が進んでおらず、朝鮮国内の近代化を求める人々は日本と協力して清の影響から逃れようとしました。朝鮮国内の清に従う保守派と改革派の争いに日本と清はそれぞれ兵を出すなどして緊張が高まり、1894年(明治27年)朝鮮半島西岸における両国海軍の接触をきっかけに'''日清戦争'''が始まりました。日本は清の北洋海軍を壊滅させ、黄海沿岸の軍事拠点を攻撃し、遼東半島を占領するなど戦いを有利に進め、翌1895年(明治28年)、'''[[小学校社会/6学年/歴史編/人物事典#陸奥宗光|{{ruby|陸奥宗光|むつむねみつ}}]]<span id="陸奥宗光"/>'''外務大臣と清の提督である{{ruby|李鴻章|りこうしょう}}が交渉し、以下の事項などを定めた'''下関条約'''が締結され講和が結ばれました(日本の勝利)。 :#清は、朝鮮の独立を認める。 :#清は、日本へ台湾と{{ruby|遼東|<small>りょうとう/リャオトン</small>}}半島<ref name="中国地名">中国の地名については、日本語の音読みで読む方法と現代の中国語に近い音で読む方法があります。後者は、「音読みだと日本人にしか通じない」と言う配慮から現代の中国語に近い音を当てると言う意図なのかもしれませんが、実際の発音とは異なっているので中国人にも伝わらないでしょう。ですから、ここでは、原則として音読みで音をふりますが、{{ruby|北京|ペキン}}、{{ruby|上海|シャンハイ}}のように現代中国語音に似せた言い方が一般的になったものもありますので、それらは、よく使う言い方をカタカナで表記します。</ref>を割譲する。 :#清は、日本へ賠償金2億両<ref>1両は銀37.3gで、当時の日本円に換算して約3億円。これは、政府の年間予算の約3倍にあたります。</ref>を支払う。 :#*日本は、この賠償金を資金として大規模な製鉄所を福岡県に作りました('''{{ruby|八幡|やはた}}製鉄所''')。 :清はそれまでも、イギリスやフランスと争って負けてはいましたが、欧米諸国は、それでも清国は世界最大の人口をかかえる巨大な国<ref>当時、3億人を超える程度の人口があったものとされています。</ref>であって、実力を発揮すれば欧米諸国であっても勝てるものではないと思われていた<ref>これを、「清国は『眠れる獅子』だ」という言い方をします。</ref>ので中国本土への進出はおさえられていましたが、近代化後間もない日本に敗れたため、欧米諸国は清国への進出を強め、中国大陸の多くの地域で欧米諸国の半植民地と言ってよい状態になりました。 <div style="margin:0 2em 0 4em"> {| class="wikitable" style="width:100%" |'''【脱線 - 覚えなくてもいい話&考えてみましょう】日本は、どうして清国に勝てたのでしょう<small> :戦争の勝敗の原因は、様々な要素があって、簡単に決めることができるものではありませんが、その時代の当事国の違いを比較することで、国の体制などの特徴を理解することができます。ここでは、なぜ、清国はやぶれ、日本は勝つことができたのかを考えてみましょう。 :戦争の勝敗を決める要素の第一は双方の国の規模です。大きな国の方が当然有利です。このころ、日本の人口はようやく4千万人程度のところ、清国の人口は3億人を超えていました。農業に適した広大な国土を有しており、近代化が遅れていたとは言え、税収などは日本よりもはるかに大きかったと考えられます。日清戦争の前も、世界最大級の軍艦をドイツから購入していたりします。相手の政権を倒すまでの全面戦争と言われる戦争であれば、日本は、勝つことは難しかったでしょう。 :一方で、清国は皇帝の軍隊は{{ruby|八旗|はっき}}・{{ruby|緑営|りょくえい}}と言われる17世紀の軍隊のままで、これは、日本の武士同様将兵が生まれながらの家柄で決まっている軍隊でしたが、[[小学校社会/6学年/歴史編/明治維新と近代国家日本の成立-幕末・明治時代#アヘン戦争|アヘン戦争]]以後の近代的戦争や民衆の反乱<ref>銃器などを欧米の商人から買っていました。</ref>では対応できなくなっていました。そこで、地方に派遣された高官は地元の有力者に呼びかけ、その地方の税を流用するなどして、地元の若者を集め、私的に軍隊を組織していました。一種の義勇兵ですが、実際は金を払って集めた{{ruby|傭兵|ようへい}}も少なくなかった言われています。 :また、清国は皇帝が独裁する事が建前であったため、外交と軍事がばらばらの動きをし、軍事も統一的な動きはできていませんでした。 :日本の場合、中央政府が全国民から国の制度として兵を集め、政府の予算で設備をそろえ、組織だった訓練を実施した軍隊を有していました。また、「天皇の軍隊」「日本国の軍隊」としての『国民』意識も高く、これが、士気につながりました。 :このような違いから、黄海およびその沿岸での戦闘という局地的な戦争では、国の規模の違いにかかわらず勝つことができたということです。 </small> |}</div> ==== 日露戦争 ==== [[画像:Location-of-Liaodong-Peninsula.png|thumb|150px|left|遼東半島]] [[ファイル:Kisaburō Ohara, Europe and Asia Octopus Map, 1904 Cornell CUL PJM 1145 01.jpg|thumb|300px|right|1904年当時、日本人がロシアにもったイメージを伝える風刺地図。]] :下関条約で、日本は、台湾などとともに中国本土の遼東半島の割譲を受けましたが、ロシア、ドイツ、フランスが反対し('''{{ruby|三国干渉|さんごくかんしょう}}'''<ref>「干渉」とは、「他のものの動きに影響を与える」という元々の意味から、このような場合、「他国の政治に口を出す」という意味で使われています。</ref>)、遼東半島の割譲は取りやめとなりました。ところが、その遼東半島にはロシアが進出し、{{ruby|大連|だいれん}}、{{ruby|旅順|りょじゅん}}<ref name="中国地名"/>といった都市を建設し始めました。 :ロシアは、ユーラシア大陸を横断する鉄道('''シベリア鉄道''')を建築し、ヨーロッパとアジアの間の物流をおさえようとしていました<ref>日本からイギリスやフランスまで、船ならば45日〜50日かかったところを、シベリア鉄道を使えば15日程度で移動できました。</ref>。シベリア鉄道は、もともと、ロシア領内をウラジオストックまでのものですが、ロシアは遼東半島支配に伴って、大連まで{{ruby|東清|とうしん}}鉄道を建設し、その途中である{{ruby|満州|まんしゅう}}地域<ref>現在は、中国東北部と呼ばれる地域です。もともと、「満州(満洲)」とは清王朝をおこした民族(女真族)の名前で地名ではありませんが、「満洲族が起こった土地」と言うことで通称として用いられるようになりました。このころから、1945年頃まで、満州は日本にとって歴史上重要な土地となります。</ref>を実質的に植民地とするなど支配を強めます。そして、満州に接する朝鮮(日清戦争後、{{ruby|大韓帝国|だいかんていこく}})の政治にも介入するなどしはじめました<ref>ロシア進出の背景には、大韓帝国の王室のメンバーや{{ruby|両班|ヤンバン}}と呼ばれる高級官僚らが、朝鮮の政治・経済に段々影響を強めてくる日本を警戒して、それに対抗するため、ロシアと通じていたということもあります。</ref>。 :日本は、ロシアの動きに対して警戒しました。ロシアが満州地域でやっていることは、他のヨーロッパ諸国がアジアやアフリカでやっていて、日清戦争後に中国本土で進められている植民地化であって、そのままでは、満州地域だけでなく、朝鮮半島も、さらには日本までもが、植民地となってしまうのではないかと考えました<ref>これは、大げさな話ではなく、アフリカの植民地化はこの時期に進み、19世紀末には独立国は、エジプト周辺、エチオピア、リベリアだけになっていましたし、アジアも1887年にフランスがベトナムを植民地にするなどして、独立を保っていたのはシャム王国(現在のタイ王国)くらいになっていました。</ref>。 :日本政府では、伊藤博文に代表される日露の衝突を外交努力などで避けるべきとするグループがあった一方で、陸軍に対して大きな影響を持った'''[[小学校社会/6学年/歴史編/人物事典#山県有朋|{{ruby|山県|やまがた}}(山縣){{ruby|有朋|ありとも}}]]'''や首相の{{ruby|桂太郎|かつらたろう}}、外交官出身の外務大臣'''[[小学校社会/6学年/歴史編/人物事典#小村寿太郎|{{ruby|小村寿太郎|こむらじゅたろう}}]]<span id="小村寿太郎"/>'''らは、戦争は避けられないので、それに向けての準備をするという態度に出ました。日本国内では、戦争に向け軍艦を整備したり新たな兵器の開発を行う一方で、ロシアの中央アジアからインドへの南下などを警戒するイギリスと同盟を結び、ロシアとの戦争に備えました。 [[file:Nichirojp.png|thumb|300px|日露戦争の経過]] :1904年(明治37年)日本とロシアは開戦し('''日露戦争''')、日本とロシアは、ロシアが植民地としていた遼東半島や満州で戦いました。ロシアは、モスクワなどから遠い極東に兵や兵器・軍馬・食料などを送るには、シベリア鉄道に頼るしかないので、すぐに戦場で攻撃の体制を作ることはできません。一方で、日本も、兵などを送るには日本海を渡らなければならないので、この地域の{{ruby|制海|せいかい}}権<ref>ある地域を自由に航行できるということ。</ref>を握る必要がありました。海軍はロシアの太平洋側の主力艦隊である旅順艦隊をせめ有利な立場になりますが、旅順艦隊は、援軍である世界最大級の艦隊バルチック艦隊<ref>「バルト海」で行動する艦隊なのでバルチック艦隊といいます。</ref>が到着するまで、旅順港に待機することになりました。日本陸軍は遼東半島南端から東進鉄道沿いに北上、朝鮮国境からの軍とあわせ、ロシア軍を満州地域北部までおしもどしました。また、旅順に引き込んだ艦隊がバルチック艦隊と合流すると制海権が危うくなるので、'''{{ruby|乃木希典|のぎまれすけ}}'''<ref>死後、乃木神社にまつられます。乃木坂などの地名にも残っています。</ref>が率いる陸軍の軍団が、要塞となった旅順を攻撃します。この旅順を囲む戦いは、日露戦争の中でも多くの日本兵の犠牲を出しましたが1905年(明治38年)1月に降伏し、バルチック艦隊のみを迎えうつことになりました。そうして、5月に'''[[小学校社会/6学年/歴史編/人物事典#東郷平八郎|{{ruby|東郷平八郎|とうごうへいはちろう}}]]'''がひきいる日本海軍は日本海海戦でバルチック艦隊をやぶり、日本海の制海権を安定したものにしました。 :日本は、戦争を有利に進めたとことで、アメリカ合衆国大統領'''セオドア・ルーズベルト'''に講和の仲介を依頼し、日本からは'''[[#小村寿太郎|小村寿太郎]]'''が、ロシアからは'''ウィッテ'''(前蔵相、のちに初代首相)が、米国のポーツマスに出向き、講和会議が開かれました。1905年9月5日、以下の事項を決めた条約('''ポーツマス条約''')が結ばれ、ロシアは中国から撤退し、日露戦争は日本の勝利で終わりました。 :# ロシアは日本の朝鮮半島における優越権を認める。 :# 日露両国の軍隊は、鉄道警備隊を除いて満州から撤退する。 :# ロシアは樺太の北緯50度以南の領土を永久に日本へ譲渡する。 :# ロシアは東清鉄道の内、旅順-長春間の南満洲支線と、付属地の炭鉱の{{ruby|租借|そしゃく}}<ref>土地などを、借り受けるという意味ですが、実質的な支配が行われ、「租借地」というのは、「植民地」とほぼ同義語になります。</ref>権を日本へ譲渡する。 :#*この路線は、「南満州鉄道」と改称され、日本の満洲進出の基礎となります。 :# ロシアは関東州(旅順・大連を含む遼東半島南端部)の租借権を日本へ譲渡する。 :# ロシアは沿海州沿岸の漁業権を日本人に与える。 :ポーツマス条約では下関条約と異なり賠償金の支払いはありませんでした。一部の日本国民はこれを不満に思って、暴動をおこすものもありました。しかし、国民には知らされていませんでしたが、戦争を有利に進めていたとはいえ、これ以上は財政上ほとんど無理な状態になっていて、すぐにでも戦争をやめなければならない状態になっていました。ロシアはそれを見越して、敗戦国でありながら、比較的有利な条件で講和条約を結んだといえます。 :しかし、この結果、満州や朝鮮半島に対するロシアの脅威は去りましたので、日本は、この地域への進出を高めます。特に、満州は石炭や鉄鉱石の地下資源が豊かな地域であったため鉱山開発を盛んに行いました。 :韓国については、政治的な不安定を理由に日本の属国化が進められ、1905年12月には統監府が設置され、伊藤博文が初代統監に就任しました。 :1909年 (明治42年)、伊藤博文はロシアとの外交交渉のため満州のハルビンに出向きましたが、そこで、朝鮮民族主義者に暗殺されます。それまで、韓国に対しては朝鮮民族に対し強硬的に望む人たちと、穏健に進めるべきという人たち(伊藤博文もその意見でした)が対立していたのですが、伊藤博文が暗殺されたことで、強硬派の勢いを増し、1910年(明治43年)8月に、日本は大韓帝国を併合しました('''{{ruby|韓国併合|かんこくへいごう}}''')。 :日露戦争は、日本とロシアの戦争でしたが、その戦いは清国の領土でなされました。清国は、もはやそれを止める力を失っていました。中国の人々は、外国に国土を侵される不安が高まり、中国の人々が政治参加をする国をつくるため、1911年{{ruby|孫文|そんぶん}}が主導者となって革命を起こしました('''{{ruby|辛亥革命|しんがいかくめい}}''')。翌1912年清王朝は滅ぼされ、アジアにおいて史上初の独立した共和制国家である{{ruby|中華民国|ちゅうかみんこく}}が誕生しました。 <div style="margin:0 2em 0 4em"> {| class="wikitable" style="width:100%" |'''【脱線 - 覚えなくてもいい話】<span id="南下政策"/>ロシアの南下政策<small> :ロシアは、ヨーロッパの国の中では最も東にあって、17世紀にシベリアを征服し太平洋に達する領土を持つ大きな国ではあったのですが、ヨーロッパ中心部から離れていたので産業革命などはおくれてつたわりました。また、国土の多くが北にあったため、冬にほとんどの港が凍結するなどして、通商などにも支障が出るため、南へ勢力を伸ばす政策をとっていました。これを、「『{{ruby|不凍港|ふとうこう}}』を求めての南下」と言ったりします。19世紀、{{ruby|黒海|こっかい}}を勢力におさめようと、1853年トルコ(オスマン帝国)の領土であったバルカン半島などで戦争(クリミヤ戦争<ref>ロシアは、バルカン半島を南下しようとしたのですが、イギリス・フランスの参戦により押し戻され、クリミア半島が主要な戦場となりました。クリミヤ半島は、現在(2022年4月)、ロシアの侵攻で話題になっているウクライナの黒海地域です。</ref>)を起こしましたが、トルコをイギリスやフランスが支援し、この戦争ではロシアは敗北します<ref>クリミア戦争で、戦傷者の救護を組織的に行い、看護師による近代看護を確立したのが、フローレンス・'''ナイチンゲール'''です。</ref>。その後のバルカン半島の各民族の独立運動に合わせ、1877年オスマン帝国と戦争(露土戦争)をし、これに勝利しバルカン半島を経由したロシアの南下路が開けます。しかし、軍事的な勝利を収めたロシアの勢力拡大に対して欧州各国が警戒感が広がったため、ドイツ帝国の首相ビスマルクが主導し、1878年ベルリン会議を開き、ロシアの南下政策を止め、ロシアはバルカン半島方面の南下を一旦断念します。 :そこで、ロシアは、ヨーロッパ方面から世界へ出ることをあきらめ、東側のシベリアを経由して中央アジアや太平洋への進出をもくろみます。その結果のひとつが、三国干渉及びそれに続く遼東半島への進出です。 :しかし、日露戦争に敗れたため、ロシアは、ふたたび西へ目を向けます。そこで、バルカン半島から東に勢力を伸ばそうとしていたドイツとぶつかります。これが、第一次世界大戦の原因の一つとなります。 </small> |}</div> <div style="margin:0 2em 0 4em"> {| class="wikitable" style="width:100%" |'''【脱線 - 覚えなくてもいい話&考えてみましょう】日本は、どうしてロシアに勝てたのでしょう<small> :ここでは、なぜ、ロシアはやぶれ、日本は勝つことができたのかを考えてみましょう。 :双方の国の規模ですが、日本とロシアでは、人口で3倍、国家予算で10倍、常備軍で5倍という、大きな差がありました。また、清国と違い、ロシアの軍隊はロシア皇帝の下に組織された近代的な軍隊でした。実際、戦没者はロシアが81千人程度のところ、日本は88千人と日本の方が被害が大きかったりしています<ref>当時は、戦場の衛生環境などが悪く、病気になって亡くなる兵士も少なくありませんでした。日露とも、戦没者の1/4が病没者で。特に日本の病没の原因としては、ビタミンB欠乏症の「{{ruby|脚気|かっけ}}」が目立っていて、これは、日本陸軍の医療関係者が、当時新興の栄養学を軽視したためとも言われています。この医療関係者には、小説家の森鴎外もいました。</ref>。 :このように、日本に大きな被害が出た戦争であっても、ロシアが強気に出られなかったのは、サンクトペテルブルクやモスクワなどがある本拠地であるヨーロッパから、鉄道で10日以上かかる遠隔の地で兵隊を送ろうとしても、1日に数千人程度が限界だったからでしょう<ref>戦争において装備に大きな差がなければ、数の違いは大きく影響します。</ref>。ロシアにとっては、バルチック艦隊が日本海の制海権をにぎって、日本が大陸に兵隊や物資を送れなくすることで逆転をもくろんだのですが、日本海海戦でその希望もなくなり、ロシアは戦争の継続をあきらめたのだと思われます。 :バルチック艦隊は強力な艦隊でしたが、日英同盟により、インドなどイギリス植民地への寄港<ref>当時の軍艦の動力は蒸気機関であっったため、石炭と真水を大量に積み込む必要がありました。</ref>が拒否されたため、大西洋から、アフリカの南を回ってインド洋経由で7ヶ月もの航海ののちの到着でした。また、ロシアは身分制が残っており、士官は貴族階級など上流階級の出身者が多く、それに対して、水兵などは農民出身の者や都市の労働者などが多く、航海での待遇の差もあり、航海中から対立も生じていました。 :この上流階級と庶民階級の対立は、海軍だけでなく、陸軍でも見られました。なにより、ロシア国内の一般的な生活でも見られたのです。いくら国の規模が大きいとはいえ、戦争は国民生活に商品不足・インフレーションの影響を与えます。もともと、民衆からの不満がみられ、革命運動もあったところ、日露戦争によるインフレーションと数々の戦いで敗戦したとの知らせで民衆の間に暴動が頻発し、1905年には革命と言っていい状態になっていました。このような国内の不安定さから、ロシア政府は講和を急ぐようになり、日本の勝利につながったといえます。 </small> |}</div> === 条約改正と国際社会での地位の向上 === [[File:Chikamatsu Kiken buto no ryakuke.jpg|thumb|300px|鹿鳴館における舞踏会を描いた浮世絵]] ;不平等条約改正の歩み :幕末に欧米各国と結ばれた通商条約(不平等条約)の改正は日本政府の悲願でした。 :明治政府は、文明開化が進んで欧米並みの文明国になったことを示すため、さまざまなアピールをします。たとえば、1883年(明治16年)に外務卿{{ruby|井上馨|いのうえかおる}}は、'''{{ruby|鹿鳴館|ろくめいかん}}'''という、外国からの重要な来訪者や外交官を接待するための社交場を建設し、舞踏会を開いたりしていました。鹿鳴館での舞踏会などには、政府高官の夫人や娘なども参加しましたが、当時はドレスなどの洋装、欧米風の応対のマナーやエチケット、また、ダンスなどは全く一般的ではなく、必死の訓練などがあったと言われています。しかし、このような取り組みは、欧米人には「{{ruby|滑稽|こっけい}}」と感じられたと言う記録も残っており、あまりうまくいきませんでした。 :一方で、政府は、まず[[小学校社会/6学年/歴史編/明治維新と近代国家日本の成立-幕末・明治時代#治外法権|治外法権]](領事裁判権)の撤廃のため、国内の法整備を進め、公正な裁判が行われることを諸外国に示そうとしました。領事裁判権の裁判は犯罪に関するものなので、法律に関するフランス人の[[小学校社会/6学年/歴史編/明治維新と近代国家日本の成立-幕末・明治時代#お雇い外国人|お雇い外国人]]ボアソナードが指導してフランスの法律をもとにして、1880年(明治13年)に犯罪とその刑罰に関する刑法<span id="刑法"/>と刑事手続と裁判を定めた治罪法<ref>後に、刑事訴訟法に改正されます。</ref>が制定され、1882年(明治15年)施行されました。1889年(明治22年)には、[[#明治憲法|明治憲法]]が発布され法制度が欧米並みに整理されたことが、国際的に示されました。外務大臣'''[[#陸奥宗光|陸奥宗光]]'''は、各国と粘り強く交渉し、まず、1897年(明治30年)イギリスとの間で治外法権を撤廃する条約を結び、日清戦争終結後の1899年(明治32年)すべての国との間で治外法権を撤廃しました。 :そして、日露戦争の勝利は、世界に驚きをもってむかえられ、国際的地位も上がったことをうけて、外務大臣'''[[#小村寿太郎|小村寿太郎]]'''が主導し、1911年(明治44年)関税自主権も回復しました。 <div style="margin:0 2em 0 4em"> {| class="wikitable" style="width:100%" |'''【脱線 - 覚えなくてもいい話】大津事件<small> :1891年(明治24年)、日本を訪問中のロシア帝国皇太子ニコライ(後の皇帝ニコライ2世)が、滋賀県大津市で警備中の警察官に突然サーベルで切りつけられケガを負うと言う事件がありました。 :驚いた日本政府は、すぐに明治天皇自身が見舞いに駆けつけるよう手配し、日本を離れる際も自身で見送りました。大国ロシアの皇太子に対して小国日本の国民しかも警察官が暗殺{{ruby|未遂|みすい}}<ref>殺そうとした相手が死ななかったことを言います。</ref>をおかしたということで、ロシアが攻めてくるかもしれない、そして、当時の日本ではロシアに勝てるはずがないということで、日本国内は、大騒ぎになりました。 :明治政府は、犯人を死刑に処してロシア政府に対して謝罪の意も示そうとしました。 :ところが、当時の[[#刑法|刑法]]では、殺人未遂の最高刑は無期{{ruby|徒刑|とけい}}<ref>現在の言い方では「無期{{ruby|懲役|ちょうえき}}」、一生、刑務所に入れられる刑です。</ref>で、死刑とすることはできません。そこで、政府は、天皇や皇室に暴行などを加え死傷させた場合に適用される{{ruby|大逆|たいぎゃく}}罪を適用するよう裁判所に要請しました。しかし、これは「法律に定められていること以外を罪としてはならない」という近代法の原則「{{ruby|罪刑|ざいけい}}{{ruby|法定|ほうてい}}主義」に反します。大審院院長<ref>現在の最高裁判所長官に相当します。</ref>{{ruby|児島惟謙|こじまいけん}}は、事件の裁判所に、法律に従って判決を下すよう指示し、その結果、死刑ではなく無期徒刑の判決となりました。 :このことは、ロシアとの外交関係を難しくさせるおそれがありましたが、欧米諸国に対しては、「日本は、法律を厳格に守る国である」ということが印象付けられ、条約改正に向けても信用を得ることができました。 </small> |}</div> ;国際社会での地位の向上 : 1912年(明治45年・大正元年)大正天皇が即位し、元号が「'''大正'''」となりました。 : 1914年(大正3年)にヨーロッパの国々を二分した'''[[小学校社会/6学年/歴史編/戦争への道と現代の民主国家日本の誕生-昭和から現在まで#|全世界を巻き込む戦争 - 第一次世界大戦|第一次世界大戦]]'''が始まりました<ref>第一次世界大戦については[[小学校社会/6学年/歴史編/戦争への道と現代の民主国家日本の誕生-昭和から現在まで|次の章]]で詳しく説明します。</ref>。日本は、イギリスやフランスの属する協商国に参加し、敵対する同盟国の一つであるドイツが租借する中国の{{ruby|青島|チンタオ}}<ref name="中国地名"/>や南太平洋の島々を占領しました。1919年戦争は協商国の勝利に終わり、翌年、平和を維持するための'''国際連盟'''が設立、日本は英仏などとともに常任理事国の一つとなりました。 : 第一次世界大戦は、今までに見られなかったほどの大規模な戦争で、戦場が全国土に広がり多くの工場設備なども失われ、工業生産が止まってしまったりしました。しかし、主な戦場はヨーロッパで、日本への被害はほとんどなかったため、日本は、ヨーロッパの工業生産に代わって、綿糸や綿布といった繊維製品や化学肥料など、さまざまな工業製品を輸出しました。また、日本へのヨーロッパからの輸入が止まったため、それにかわる重工業などが起こるきっかけにもなり、国際取引においても機械など高度な工業製品を輸出できる国となりました。第一次世界大戦の影響で日本の経済は急速に成長しました。 ;明治後期から大正にかけての人々の生活や文化と学問 :明治維新後、さまざまな[[小学校社会/6学年/歴史編/明治維新と近代国家日本の成立-幕末・明治時代#殖産興業|殖産興業]]の取り組みによって、経済的余裕ができ、国民生活は向上し、さまざまな近代文化の進展が見られました。また、欧米から伝わった工業的な製紙法と活版印刷は安価で大量の印刷を可能として、新聞や雑誌が広く普及します。これら新聞や出版業の発達したことと、[[小学校社会/6学年/歴史編/明治維新と近代国家日本の成立-幕末・明治時代#学校|学校制度]]が定着し教育水準が上がったことで、国民の政治参加の意識も高まりました。 :さらに、日清戦争・日露戦争といった戦争で、納税額が多いかどうか、つまり財産が多いかどうかにかかわらず、国民として平等に生命を犠牲にするということが意識され、納税額による選挙権の制限([[#制限選挙|制限選挙]])をやめて、成人であれば誰にでも選挙権が与えられる「普通選挙」を求めた社会運動('''普選運動''')がおこり、1925年(大正14年)すべての男性が選挙権を有する普通選挙法が成立しました。このような、民主化の動きを「'''大正デモクラシー'''」と言います。しかし、まだ女性には選挙権は認められていませんでした。 :[[小学校社会/6学年/歴史編/明治維新と近代国家日本の成立-幕末・明治時代#文明開化|文明開化]]を受けて、日本には西洋風の文化が広く普及し、明治20年(1887年)代以降になると、それを受けた独自の文化が育ってきました。 :新聞や出版業の発達は上で述べたとおり人々の政治への意識を高めたところですが、そこには、政治的な考えなどだけではなく、人々の娯楽としての小説なども掲載されるようになりました。明治も初めのうちは、歌舞伎の演目などを題材としたものが多かったのですが、1885年(明治18年)、{{ruby|坪内逍遥|つぼうちしょうよう}}は、『{{ruby|小説神髄|しょうせつしんずい}}』をあらわし、人々の普段の生活に近い題材をとりあげる、いわゆる近代文学を提唱しました。またその中で、話し言葉と書き言葉の間の大きな違いから、もっと平易で話し言葉に近い言葉を使うよう進められました。これを{{ruby|言文一致|げんぶんいっち}}運動といいます<ref>ただし、今でも話し言葉と書き言葉は同じものではありません。</ref>。このような動きのなかで、多くの近代文学というものが生まれました。その中には、1895年(明治28年)に『たけくらべ』を書いた{{ruby|樋口一葉|ひぐちいちよう}}のような女性もいました。その後、{{ruby|森鴎外|もりおうがい}}や{{ruby|夏目漱石|なつめそうせき}}があらわれ、近代文学が確立します。特に、夏目漱石が1905年(明治38年)に初めて書いた小説『{{ruby|吾輩|わがはい}}は猫である』はユーモアに富んだ内容と落語にヒントを得たとされる平易な語り口調で広く普及し、日本語の書き言葉の元になったとも言われています。 :美術の分野では、写実的な西洋絵画や彫刻が日本でも制作されるようになりました。政府は1887年(明治20年)、「東京美術学校<ref name="芸大">「東京美術学校」と「東京音楽学校」は、のちに合併し「東京{{ruby|藝術|げいじゅつ}}大学」となります。</ref>」を設立し、西洋絵画の製作者や指導者を育てました。 :また、音楽の分野でも西洋音楽の受け入れが進み、1890年(明治23年)、演奏家・作曲家や指導者を育てる「東京音楽学校<ref name="芸大"/>」が開校しました。 :学問の分野では、[[小学校社会/6学年/歴史編/明治維新と近代国家日本の成立-幕末・明治時代#学校|大学教育]]が定着し、日本の科学技術の水準も世界的なものになってきました。物理学では原子のモデルを提唱した{{ruby|長岡半太郎|ながおかはんたろう}}、数学の分野では{{ruby|高木貞治|たかぎていじ}}といった世界的に評価される研究者も登場するようになりました。 :特に、人々の生活に密着した医学の分野では、世界的に進みつつあった細菌学の分野で多くの成果が見られ、破傷風の治療法の研究やペスト菌の発見をおこなった'''[[小学校社会/6学年/歴史編/人物事典#北里柴三郎|{{ruby|北里柴三郎|きたざとしばさぶろう}}]]'''、{{ruby|赤痢|せきり}}菌を発見した{{ruby|志賀潔|しがきよし}}、黄熱病や梅毒の研究で知られ、ノーベル生理学・医学賞の授賞候補ともなった'''[[小学校社会/6学年/歴史編/人物事典#野口英世|{{ruby|野口英世|のぐちひでよ}}]]'''のように国際的な研究者がでてくるようになりました。 <div style="margin:0 2em 0 4em"> {| class="wikitable" style="width:100%" |[[ファイル:Noguchi Hideyo.jpg|thumb|120px|right]] '''【脱線 - 覚えなくてもいい話】<span id="野口英世"/>野口英世<small> :本文に書いたとおり、野口英世は、国際的に活躍した細菌学者で、現在、その肖像が1000円札に使われている人です。子供の頃から大変苦労して勉強して、多くの業績を残した人で、皆さんの中で、野口英世の伝記を読んだことのある人も少なくないでしょう。ここでは、野口英世の生涯について簡単に紹介して、なぜ彼が偉人とされているかをお話ししたいと思います。 :1876年(明治9年)、英世<ref>元の名は「清作」で「英世」は22歳になって改名したものですが、ここでは、「英世」で統一します。</ref>は福島県耶麻郡三ッ和村(現:耶麻郡猪苗代町)に生まれます。貧しいというほどではありませんが、決して余裕のある家の生まれではありませんでした。英世は1歳の時に{{ruby|囲炉裏|いろり}}に落ち、左手に大{{ruby|火傷|やけど}}を負います。ただれた皮膚で指がくっついて開かなくなるというひどいものでした。英世は、学校に上がるようになると、このことでいじめられました。しかし、英世の学校の成績はとても素晴らしいものでした。英世の家計では、上級の学校に出すのは難しく、普通は小学校を出て働きに出るとことだったのですが、これを惜しんだ教師や地域の人がお金を出し合って、上の学校へ進ませました。また、火傷あとが不便であろうと、やはりお金を出し合って、まだ珍しかった西洋医術による手術を受けさせ、左手を使えるようにしました。英世はこの手術の成功に感激したことがきっかけで医師を目指すこととなりました。 :1896年(明治29年)英世は上京し、医学を学びます。1900年(明治33年)米国に渡り、研究を始めます。そして、アメリカを拠点として基礎医学の分野で数々の業績をあげ世界的な名声を得て、何回かノーベル生理学・医学賞の候補者ともなりました。 :1918年(大正7年)以降は{{ruby|黄熱|おうねつ}}病の研究に打ち込み、黄熱病の流行地域である南アメリカ各国やアフリカに渡って研究を続けます。しかし、黄熱病の研究中に自身もその病にかかり、1928年(昭和3年)アフリカのイギリス植民地ゴールド・コースト(現:ガーナ共和国) アクラで亡くなります。 :野口英世が偉人とされるのは、 :*庶民の出身であるにもかかわらず、高い能力で医者・研究者の地位についた<ref>大学以上の高等教育を受けさせることは当時の庶民にはめったにないことでした。また、英世の出身地会津は、戊辰戦争で官軍に抵抗し、政府などに関係者も少なく、薩長などの出身者より不利なところもありました。</ref>。 :*体に受けたハンディキャップにも負けず、努力して勉強した<ref>当時、家が貧しくても、軍隊に入って勉強するという方法もありましたが、英世の場合、このやり方は難しかったと考えられます。</ref>。 :*能力を世に出そうと、周囲の人が協力した。 :*日本ではなく、国外の研究所を拠点として国際的な活躍をした。 :というところにあると思います。野口英世の業績自体は、その後の医学の発展によって否定されたものも少なくはありませんが、目標に向けて努力する姿には見習うものがあると思います。 </small> |}</div> == 脚注 == 以下は学習の参考ですので覚える必要はありません。<small> <references/></small> ---- {{前後 |type=章 |[[小学校社会/6学年/歴史編]] |[[小学校社会/6学年/歴史編/歴史の流れをつかもう|日本の歴史の流れ]] |[[小学校社会/6学年/歴史編/明治維新と近代国家日本の成立-幕末・明治時代|明治維新と近代国家日本の成立-幕末・明治時代]] |[[小学校社会/6学年/歴史編/戦争への道と現代の民主国家日本の誕生-昭和から現在まで|戦争への道と現代の民主国家日本の誕生-昭和から現在まで]] }} [[Category:社会|しようかつこうしやかい6]] [[Category:小学校社会|6ねん]] [[Category:小学校社会 歴史|#12]] amto1u1geijle94260jfvi11j58wxi3 高校英語の文法/接続詞 0 35136 205531 205502 2022-07-19T12:37:50Z すじにくシチュー 12058 Now that wikitext text/x-wiki == 接続詞 == 語と語、句と句、節と節、など、文法上対等のものを結びつけるのが等位接続詞である。 いっぽう、従属節を主節と結びつけるのが従属接続詞であり(ジーニアス、フォレスト)、従位接続詞ともいう(ロイヤル)。 == 等位接続詞 == === 概要 === '''等位接続詞'''とは、and, or, but のように文法上等しいものを結びつける接続詞である。上記のほかにも、nor , so, for が等位接続詞である。 both A and B や either A or B なども便宜的にか等位接続詞として分類される。また、 not A but B や not only A but (also) B も等位接続詞として分類される。 便宜的に、not only A but also B と同じ意味をもつ as well as も、参考書では同じ単元で紹介される。 either は、「AかBかのどちらか」という意味である。 neither A nor B は、AもBも両方とも否定する表現であり、つまり「AとBのどちらも~ない」の意味である。 なお、neither A nor B が主語の場合、動詞はBの時制に一致させる(ジーニアス)。また、nor の直後の文章は肯定形である。 neither は基本、A,Bの2つしか使わない。3つ以上では使わないのが原則だが、しかし米英には原則に反して3つ以上で使う人もいるが(ロイヤル)、入試にはそこまで出ないだろう。また、neither で nor の代わりに原則に反して or を使う人もいるとのこと(ロイヤル)。入試では原則的な場合だけを考えればよいだろう。 「neither」とは not either の意味だろう、というのがロイヤル英文法の見解。 nor は、 neither のある文でなくても使われる場合がある(桐原、ロイヤル)。 否定語の not や don't などのあと、 「not A, nor B」または「don't A(動詞) nor B(動詞) 」で「AもBも無い」という意味で、neitherなしで nor が not などの否定語とともに使われる場合がある。 カンマが無い場合もある(ロイヤル英文法)。この場合でも、A nor B のあとに動詞が来る場合、その文は肯定形である。 「AもBもどちらも~ない」と否定の内容を並列させたい場合、andではなくnorを使う(桐原)。 さて、and には、命令文のあとに使われたい場合には、「そうすれば」の意味になるが、この意味の場合でも等位接続詞として分類される。 or には、「または」の意味のほかにも「すなわち」「言い換えれば」というある語を別の語で言い換える用法の意味もあるが(ジーニアスおよびエバーグリーンに「言い換えれば」アリ)、どちらの意味の場合でも等位接続詞として分類される。また、or には、命令文のあとに使われたい場合には、「さもなければ」の意味になるが、この意味の場合でも等位接続詞として分類される。 なお、「すなわち」「言い換えれば」の意味で or が接続詞として使われる場合、orの前にふつうはカンマ(,)が来る(ジーニアス、いいづなエバーグリーン)。 === so/ for === 接続詞としての so は、 <出来事→結果> の語順として「理由の文、so 結果の文」のように理由を前に、結果を後ろに書き、「・・・なので~」「・・・だから~」という意味になる。理由というほど明白な因果関係でなくても、比較的に関連性の高い2つの出来事において、「ある出来事, so 出来事の結果」という用法でも良い。 また、この場合の so の直前にはカンマ「 , 」を置くのが普通(ジーニアス、エバーグリーン)。 余談だが、接続詞としての so と for はそれぞれ、節と節だけ結びつける(フォレスト、エバーグリーン)。つまり、語と語、句と句、語と句などは結び付けない。 いっぽう、for は、 <結果←出来事> の語順として、「結果, for 理由の章」の構文で、堅い言い回しとして理由を説明する。口語で用いることはあまり無い(ジーニアス、エバーグリーン)。ほか、 for は、forの前述の出来事に対して、その理由を述べる接続詞である。 なので、普通は for の直前にはカンマ「 , 」が来る。 接続詞としての for は等位接続詞である。for は従属接続詞ではない等の理由で(ロイヤル)、because のように主節の前に出すことはできない。なお、もし For が文頭に置かれている場合、それは、その直前の文の理由を説明している(ロイヤル)。 === and === まず、and の基本的な意味を確認しよう。 ;並列と順序 and の基本的な意味は並列「および」「と」の意味だが、もうひとつ、動作・時間の順序という意味もある。「先に起きたこと and その直後に起きたこと」のような語順で and を使うこともある。 動作や時間の順序のand は、「そして」や「~して、」の意味である(ジーニアス、ロイヤル)。 たとえば come and see は「先に来て、そして見る(見た)」の意味であり、つまり不定詞の結果用法 come to see と同じ意味である(フォレスト)。同様の表現として、 go and see もある。 ;因果関係 さらに、and が因果関係をあらわす場合もある(ジーニアス、ロイヤル)。普通、文章では、先に行ったり紹介した動作が、あとの動作の理由になるので、andで因果関係を表すのも自然であろう。 {{コラム|and なのに逆接?| 上記で and は因果関係を表す場合もあるといったが、しかし人生では、必ずしも前に起きた動作の期待どおりに後の結果が起きるとは限らない場合も多々あるものである。このため、and があたかも but のような逆接的な意味かのように見える英文が生じる場合もある。 たとえば、「彼は努力して、そして失敗した」は、順序を意識すれば try hard and failed のような言い回しになる(ジーニアス)。努力 try hard という準備にもかかわらず失敗 fail したことから、文脈によっては and なのにまるで逆接のような意味も読み取れる場合もある。 さて、このことから、もし後の起きたことが先に起きたことに比べて対照的な場合、場合によっては and は、あたかも逆接 but のような意味に見える場合がある。 とはいえ、これはand の順序関係の用法の、派生的なものである。andの基本的な意味は、あくまで並列・順序だと思うべきだろう。 }} == 従属接続詞 == === 名詞節を導く従属接続詞 === 一方、名詞節を導くために使われる that およびwhether と if は'''従属接続詞'''である。that や whether を接続詞として解釈する考えもある。 従属接続詞の典型的な文で The fact is (that)・・・ 「事実は・・・ということだ。」 The trouble is (that)・・・ 「困ったことに・・・ということだ。」 The truth is (that)・・・ 「真実は・・・ということだ。」 The reason is (that)・・・ 「理由は・・・ということだ。」 などがある。 このように、名詞節を導く that は、「・・・ということだ。」の意味になる。 that は主語・補語・目的語になる(上記の the reason is that などの例文の場合は、that が補語になっている)。 ほか、 It is 形容詞 that ・・・ という形式主語の文章で 使われる that は接続詞でもある(ジーニアス、エバーグリーン )。 ほか、that節が know,say ,think, tell, hope など一般的な動詞の目的語になっている場合は、thatを省略することも多い(ブレイクスルー、インスパイア)。 ただし、形式目的語の that は省略できない(エバーグリーン)。形式目的語とは、 He made it clear that ~ . 「彼は~であることを明らかにした。」 のような it を仮の目的語とする文章のこと。 that 節は普通は前置詞の後ろに置かれることないが(ジーニアス)、例外的に in that(~という点で、~だから) と except that(~を除いて)という用法がある。 なお、 in that には意味の異なる「~という点で」という用法と、もうひとつ「~だから」「~であるか」という別の用法があることに注意(ジーニアス)。 参考書によっては in that は前置詞の項目に書いてある場合もある(青チャート)。 ほか、Now that で、「今や~だから」という表現ができる。口語ではよくthatが省略され、Now だけになる。 典型的な例文は Now (that) he is eighteen, he can vote. 「今や彼は18歳なのだから、彼は投票できる。」 である(ジーニアス、青チャート)。 このほか、紹介している参考書は少ないが(青チャート、インスパイア)、分詞構文の Seeing that ~「~であるから」「~だから」が接続詞的に用いられる用法もある(青チャート)。 === 副詞節を導く従属接続詞 === ==== はじめに ==== ほか、(たとえば平叙文のなかで)副詞節を導かれるために使われる when (~のとき、)や where (~の場所)が従属接続詞である。 before , after および since や until なども従属接続詞。 as soon as や once もこれに含める(ジーニアス、フォレスト)。 「until ~」は、「~」の瞬間まで動作が継続しているときに使い、「~するまで(ずっと)」の意味である。 一方、継続しない場合で、その時までに動作が完了している場合には、untilではなくby the time 「~する(時)までに」を使う。 as well as が等位接続詞なのに as soon as が従属なのはアレだが、まあどの参考書でもそういう分類になっている。 as soon as は言い換えで、the moment や the instant や no sooner ・・・ than ~ などの言い換え表現がある。 ==== once ==== once は「いったん~すると」の意味。once をどう分類するかが参考書ごとに違う。 ifやunlessなどと同様に「条件」として once を分類する参考書もあれば(ブレイクスルー、インスパイア)、 beforeやafterやsinceなどと同様の「起点」として once を分類する参考書もある(ジーニアス、フォレスト)。 なお、as soon as と once がなぜか同じ章節で紹介される参考書が多いが(ジーニアス、フォレスト、しかし意味が違う接続詞なので混同しないように。 if~ は内容が未来であっても現在形を使うが、as soon as ~ も後続の文では内容が未来であっても現在形を使うので、もしかしたらその理由でonceが「条件」として分類されているのかもしれない。 また、as soon as ~ と同様に、once ~ も後続の文の内容が未来であっても現在形を使う(ジーニアス)。そういう共通点からか、一緒に「起点」として紹介されるのかもしれない。 しかし、単に分類が同じだけであり、 once は as soon as とは意味がまったく違うので、混同しないように。 ==== その他 ==== 時間の表現だけでなく、because や since (since には理由の意味もある)も従属接続詞。 because は従属接続詞なので、よって主節なしで 「Because ~ .」 といったBecause だけの節をつくることは原則、誤用だとみなされる(青チャート、ジーニアス)。 ただし例外的に、"Why ~?" といった Why を使った質問文に対して、解答で"Because ~" と because だけの節の文章が許されている(青チャート、ジーニアス)。 since は基本、相手が既知の話題についての理由を説明するときに使うので(ブレイクスルー、フォレスト、ジーニアス)、since節の時制は過去形になる事も多い(青チャート)。また、上記の事情のため、sinceのつくる副詞節は文頭や前方に置かれることも多いが(インスパイア、ジーニアス、ブレイクスルー)、しかしsinceを文頭に置かなくても正しい英語である(青チャート)。 「so ~(形容詞) that ・・・(文)」 は従属接続詞。 so に等位接続詞の用法もあるが、しかし 「so 形容詞 that 文」で結びつけられている形容詞とthat後続の文は対等ではないので、従属接続詞のほうが適切であろう。 例文は著作権のため省略。 ==== 譲歩 ==== 「譲歩」の意味である、though や although が従属接続詞として分類されている(ジーニアス、フォレスト、ロイヤル)。 though よりも although のほうが堅い言い回しである(フォレスト、ロイヤル)。 なお、英文法の接続詞の単元でいう「譲歩」は、日本語の日常語の「譲歩」とは意味がやや違う。日常語の「譲歩」とは、自分と相手・他人の主張が対立したい場合に、相手の意見を聞き入れたり時には従うことに重点が置かれるのが日常語の譲歩である(広辞苑、三省堂新明解)。 しかし、この接続詞の英文法でいう「譲歩」とは、相手の主張の一部を事実ではあると認めた上で、それでも自分の主張に事実性などがあることを主張しているのが、英文法の接続詞の分野での「譲歩」である(桐原フォレスト)。 ==== 条件 ==== 条件を表すif および unless も従属接続詞。 unless は、「もし~でなければ」という意味であるが(ジーニアス、ロイヤル)、「~でない限り、」と訳される場合も多い(フォレスト、ロイヤル)。なお、unless の直後の文は否定形にはならず(フォレスト、ジーニアス)、つまり unless の直後の文は肯定形である。 unless は、「否定の条件」であるという性質に加えて、さらに基本的に「唯一の条件」という性質がある(青チャート)。「起きてほしくない事を避けるためには、unless 以降の内容を実行するしかない」という意味での唯一性の主張が unless にはある。 このことなどから、 unless ~の文を if ・・・ not ~ の文章に書き換えできる一方で(unless → if not は可能な場合が多い)、しかし if not → unless の書き換えが無理な場合が多い。 unless は「条件の文 unless 予想される結果の文」の語順。unless においてカンマなどは不要。 unless の語順は、「予想される結末 unless 結末が成り立たなくなる条件」である。なお、unlessの主節(※ 予想される結末のほう)には、willなどの未来表現を使うのが普通。一方、ifおよびunless では従属節の内容がたとえ未来における内容であっても従属節の時制は現在形にする(ジーニアス)。桐原やロイヤルでは従属節の時制はとくに解説では明記されていないが、例文の時制を見ればジーニアスと同様に桐原などでもunlessの従属節は現在形である。 === in case ~ === 「in case ~(文)」は「~の場合にそなえて」の意味であり、従属接続詞として分類され、この場合は普通は主節のあとに in case ~ が置かれる(フォレレスト、ジーニアス)。 in case ~ の典型的な例文は、 Take an umbrella with you in case it rains. 「雨が降るといけないから、かさを持っていきなさい。」 ※ 数研 青チャート、ジーニアス take の代わりに bring の場合もある。また、この傘をもっていく例文の場合なら with you は省略可能。上記例文の出典の参考書にも with you をつけてないものもある。 Bring an umbrella in case it rains. 「雨が降るといけないから、かさを持っていきなさい。」 ※ ファクトブック 命令形ではなく平叙文の場合もあり、下記のような例文もある。 I'll take an umbrella with me in case it rains. 「雨が降るといけないから、かさを持っていこう。」 ※ フォレスト with me は省略可能。自分で持っていくので with me になる(青チャート)。 「in case ~ 」の副詞節に it should rain. のように should が使われる場合もあるが、これは可能性が低いと話し手・書き手が思っている意味である(青チャート、ブレイクスルー)。 なお、in case は上記の「~するといけないから」「~しないように」の用法の他にも、case 「条件」の文字通り「~の条件で」の意味で in case を使う場合もアメリカ英語では見られ(ジーニアス、フォレスト)、この場合は if でも言い換えできる。 言い換え表現で、「~するといけないから」「~しないように」用法の in case と同じ意味は「for fear that A ~」や「lest A (should) ~」でも言える。 for fear も lest も、ともに固い表現である(ジーニアス)。ジーニアス以外の参考書の多くは、for fear が固い表現であることを取り上げていない。 for fear ~でも lest ~でも、つづく「~」の部分には not をつけない。日本語に引きづられて not をつけないように注意。 英和辞典を見れば fear は「恐れ」「不安」などの意味が書いてあることからも想像がつくように、for fear のあとには、おそれている内容を書くので、つまり、実現してほしくないことを肯定形で書くことになるのも当然であろう。 さて、lest について、ジーニアスいわく、 lest は固い言い方なだけであり、頻度自体は for fear よりも lest のほうが高いと、ジーニアスは主張している。 lest のshould が省略される場合もある。なお、shouldが省略された場合には、続く動詞には原形が来る。lest のshould 省略時の動詞の原形をつかうことを仮定法現在として解釈する流儀もある(青チャート)。 ほか、文法教育的にはあまり注目されないが、 so that ~ 「~のために」と、否定 not を組み合わせて、たとえば 「so that A won't ~」により「~しないように」という言い換えも可能である。won't の変わりに can't の場合もある(ブレイクスルー)。 === その他 === その他、as far as や as long as など範囲を表す表現が、カンマなどを補われて、従属接続詞として分類される。 「as far as I know,」 で「私の知る限りでは、」の意味。as far as の代わりに so far as とすることもある(ロイヤル)。 よくある典型文は As far as I know, he is ~. 「私の知るかぎり、彼は~な人だ」 である(フォレスト、インスパイア)。そのほか、 As far as I'm concerned, ~ 「私に関する限り、」 という表現が、たとえば「私に関する限り、それで結構です。」(青チャート)とか「私に関する限り、不満はありません。」(ジーニアス)のような文章で使われる。 このように as ・・・ as は範囲を表すことがある。 このほか、別の用法で as far as で、自分の意見を言う用法もある(ブレイクスルー、ジーニアス)。たとえばブレイクスルーいわく、「私の意見では、冷凍食品はおいしくない」という単なる持論にも as far as を使っている例文がある。 as long as には用法が2種類あり、ひとつの用法は「~する間」という時間的な範囲を表す用法であり、もうひとつの用法は最低限の条件を表し(フォレスト)、「~しさえすれば」などと訳される(ジーニアス、フォレスト)。as long as の代わりに so long as とすることもある(ジーニアス、フォレスト)。「~する限りは」と訳される場合もある(ロイヤル)。 慣用的なよくある言い回しとして、「as long as I live 」で「私が生きている限り」の意味(ロイヤル、ジーニアス)。 I will never forget your kindness as long as I live. 「私が生きているかぎり、あなたのご親切を忘れません。」 のような文章がよく参考書にある(ジーニアス、青チャート)。 なお、べつにneverを使わずとも、 I won't forget your kindness as long as I live. 「私が生きているかぎり、あなたのご親切を忘れません。」 のような文章もよくある(インスパイア)。 「~さえすれば」の as long as は、言い換えとして、if only または only if で言い換えすることもできる。 目的を表す「 so that ~」も接続詞である。in order that も同様、目的を表す接続詞である。なお、so that ~ について、口語では thatが省略されることも多く、つまり so だけで目的の接続詞になることもある(フォレスト、ジーニアス)。 so that 節の中では、can や will や may をつかうのが普通(フォレスト、ジーニアス)。 なお、「so ~(形容詞など) that ・・・」は程度をあらわす接続詞である。 in order that ~ は堅い表現。in order that 節の中では、can や will や may をつかうのが普通(フォレスト、ジーニアス)。 as も接続詞の用法がある(ロイヤル、フォレスト)。 その他にも、さまざまな接続詞がある suppose や supposed や providing や provided などを接続詞として分類することもある(フォレスト)。 ndkcckerpk5sj6vlhq0u3lhuyvwrk8u 205533 205531 2022-07-19T12:59:26Z すじにくシチュー 12058 /* 譲歩 */ even if wikitext text/x-wiki == 接続詞 == 語と語、句と句、節と節、など、文法上対等のものを結びつけるのが等位接続詞である。 いっぽう、従属節を主節と結びつけるのが従属接続詞であり(ジーニアス、フォレスト)、従位接続詞ともいう(ロイヤル)。 == 等位接続詞 == === 概要 === '''等位接続詞'''とは、and, or, but のように文法上等しいものを結びつける接続詞である。上記のほかにも、nor , so, for が等位接続詞である。 both A and B や either A or B なども便宜的にか等位接続詞として分類される。また、 not A but B や not only A but (also) B も等位接続詞として分類される。 便宜的に、not only A but also B と同じ意味をもつ as well as も、参考書では同じ単元で紹介される。 either は、「AかBかのどちらか」という意味である。 neither A nor B は、AもBも両方とも否定する表現であり、つまり「AとBのどちらも~ない」の意味である。 なお、neither A nor B が主語の場合、動詞はBの時制に一致させる(ジーニアス)。また、nor の直後の文章は肯定形である。 neither は基本、A,Bの2つしか使わない。3つ以上では使わないのが原則だが、しかし米英には原則に反して3つ以上で使う人もいるが(ロイヤル)、入試にはそこまで出ないだろう。また、neither で nor の代わりに原則に反して or を使う人もいるとのこと(ロイヤル)。入試では原則的な場合だけを考えればよいだろう。 「neither」とは not either の意味だろう、というのがロイヤル英文法の見解。 nor は、 neither のある文でなくても使われる場合がある(桐原、ロイヤル)。 否定語の not や don't などのあと、 「not A, nor B」または「don't A(動詞) nor B(動詞) 」で「AもBも無い」という意味で、neitherなしで nor が not などの否定語とともに使われる場合がある。 カンマが無い場合もある(ロイヤル英文法)。この場合でも、A nor B のあとに動詞が来る場合、その文は肯定形である。 「AもBもどちらも~ない」と否定の内容を並列させたい場合、andではなくnorを使う(桐原)。 さて、and には、命令文のあとに使われたい場合には、「そうすれば」の意味になるが、この意味の場合でも等位接続詞として分類される。 or には、「または」の意味のほかにも「すなわち」「言い換えれば」というある語を別の語で言い換える用法の意味もあるが(ジーニアスおよびエバーグリーンに「言い換えれば」アリ)、どちらの意味の場合でも等位接続詞として分類される。また、or には、命令文のあとに使われたい場合には、「さもなければ」の意味になるが、この意味の場合でも等位接続詞として分類される。 なお、「すなわち」「言い換えれば」の意味で or が接続詞として使われる場合、orの前にふつうはカンマ(,)が来る(ジーニアス、いいづなエバーグリーン)。 === so/ for === 接続詞としての so は、 <出来事→結果> の語順として「理由の文、so 結果の文」のように理由を前に、結果を後ろに書き、「・・・なので~」「・・・だから~」という意味になる。理由というほど明白な因果関係でなくても、比較的に関連性の高い2つの出来事において、「ある出来事, so 出来事の結果」という用法でも良い。 また、この場合の so の直前にはカンマ「 , 」を置くのが普通(ジーニアス、エバーグリーン)。 余談だが、接続詞としての so と for はそれぞれ、節と節だけ結びつける(フォレスト、エバーグリーン)。つまり、語と語、句と句、語と句などは結び付けない。 いっぽう、for は、 <結果←出来事> の語順として、「結果, for 理由の章」の構文で、堅い言い回しとして理由を説明する。口語で用いることはあまり無い(ジーニアス、エバーグリーン)。ほか、 for は、forの前述の出来事に対して、その理由を述べる接続詞である。 なので、普通は for の直前にはカンマ「 , 」が来る。 接続詞としての for は等位接続詞である。for は従属接続詞ではない等の理由で(ロイヤル)、because のように主節の前に出すことはできない。なお、もし For が文頭に置かれている場合、それは、その直前の文の理由を説明している(ロイヤル)。 === and === まず、and の基本的な意味を確認しよう。 ;並列と順序 and の基本的な意味は並列「および」「と」の意味だが、もうひとつ、動作・時間の順序という意味もある。「先に起きたこと and その直後に起きたこと」のような語順で and を使うこともある。 動作や時間の順序のand は、「そして」や「~して、」の意味である(ジーニアス、ロイヤル)。 たとえば come and see は「先に来て、そして見る(見た)」の意味であり、つまり不定詞の結果用法 come to see と同じ意味である(フォレスト)。同様の表現として、 go and see もある。 ;因果関係 さらに、and が因果関係をあらわす場合もある(ジーニアス、ロイヤル)。普通、文章では、先に行ったり紹介した動作が、あとの動作の理由になるので、andで因果関係を表すのも自然であろう。 {{コラム|and なのに逆接?| 上記で and は因果関係を表す場合もあるといったが、しかし人生では、必ずしも前に起きた動作の期待どおりに後の結果が起きるとは限らない場合も多々あるものである。このため、and があたかも but のような逆接的な意味かのように見える英文が生じる場合もある。 たとえば、「彼は努力して、そして失敗した」は、順序を意識すれば try hard and failed のような言い回しになる(ジーニアス)。努力 try hard という準備にもかかわらず失敗 fail したことから、文脈によっては and なのにまるで逆接のような意味も読み取れる場合もある。 さて、このことから、もし後の起きたことが先に起きたことに比べて対照的な場合、場合によっては and は、あたかも逆接 but のような意味に見える場合がある。 とはいえ、これはand の順序関係の用法の、派生的なものである。andの基本的な意味は、あくまで並列・順序だと思うべきだろう。 }} == 従属接続詞 == === 名詞節を導く従属接続詞 === 一方、名詞節を導くために使われる that およびwhether と if は'''従属接続詞'''である。that や whether を接続詞として解釈する考えもある。 従属接続詞の典型的な文で The fact is (that)・・・ 「事実は・・・ということだ。」 The trouble is (that)・・・ 「困ったことに・・・ということだ。」 The truth is (that)・・・ 「真実は・・・ということだ。」 The reason is (that)・・・ 「理由は・・・ということだ。」 などがある。 このように、名詞節を導く that は、「・・・ということだ。」の意味になる。 that は主語・補語・目的語になる(上記の the reason is that などの例文の場合は、that が補語になっている)。 ほか、 It is 形容詞 that ・・・ という形式主語の文章で 使われる that は接続詞でもある(ジーニアス、エバーグリーン )。 ほか、that節が know,say ,think, tell, hope など一般的な動詞の目的語になっている場合は、thatを省略することも多い(ブレイクスルー、インスパイア)。 ただし、形式目的語の that は省略できない(エバーグリーン)。形式目的語とは、 He made it clear that ~ . 「彼は~であることを明らかにした。」 のような it を仮の目的語とする文章のこと。 that 節は普通は前置詞の後ろに置かれることないが(ジーニアス)、例外的に in that(~という点で、~だから) と except that(~を除いて)という用法がある。 なお、 in that には意味の異なる「~という点で」という用法と、もうひとつ「~だから」「~であるか」という別の用法があることに注意(ジーニアス)。 参考書によっては in that は前置詞の項目に書いてある場合もある(青チャート)。 ほか、Now that で、「今や~だから」という表現ができる。口語ではよくthatが省略され、Now だけになる。 典型的な例文は Now (that) he is eighteen, he can vote. 「今や彼は18歳なのだから、彼は投票できる。」 である(ジーニアス、青チャート)。 このほか、紹介している参考書は少ないが(青チャート、インスパイア)、分詞構文の Seeing that ~「~であるから」「~だから」が接続詞的に用いられる用法もある(青チャート)。 === 副詞節を導く従属接続詞 === ==== はじめに ==== ほか、(たとえば平叙文のなかで)副詞節を導かれるために使われる when (~のとき、)や where (~の場所)が従属接続詞である。 before , after および since や until なども従属接続詞。 as soon as や once もこれに含める(ジーニアス、フォレスト)。 「until ~」は、「~」の瞬間まで動作が継続しているときに使い、「~するまで(ずっと)」の意味である。 一方、継続しない場合で、その時までに動作が完了している場合には、untilではなくby the time 「~する(時)までに」を使う。 as well as が等位接続詞なのに as soon as が従属なのはアレだが、まあどの参考書でもそういう分類になっている。 as soon as は言い換えで、the moment や the instant や no sooner ・・・ than ~ などの言い換え表現がある。 ==== once ==== once は「いったん~すると」の意味。once をどう分類するかが参考書ごとに違う。 ifやunlessなどと同様に「条件」として once を分類する参考書もあれば(ブレイクスルー、インスパイア)、 beforeやafterやsinceなどと同様の「起点」として once を分類する参考書もある(ジーニアス、フォレスト)。 なお、as soon as と once がなぜか同じ章節で紹介される参考書が多いが(ジーニアス、フォレスト、しかし意味が違う接続詞なので混同しないように。 if~ は内容が未来であっても現在形を使うが、as soon as ~ も後続の文では内容が未来であっても現在形を使うので、もしかしたらその理由でonceが「条件」として分類されているのかもしれない。 また、as soon as ~ と同様に、once ~ も後続の文の内容が未来であっても現在形を使う(ジーニアス)。そういう共通点からか、一緒に「起点」として紹介されるのかもしれない。 しかし、単に分類が同じだけであり、 once は as soon as とは意味がまったく違うので、混同しないように。 ==== その他 ==== 時間の表現だけでなく、because や since (since には理由の意味もある)も従属接続詞。 because は従属接続詞なので、よって主節なしで 「Because ~ .」 といったBecause だけの節をつくることは原則、誤用だとみなされる(青チャート、ジーニアス)。 ただし例外的に、"Why ~?" といった Why を使った質問文に対して、解答で"Because ~" と because だけの節の文章が許されている(青チャート、ジーニアス)。 since は基本、相手が既知の話題についての理由を説明するときに使うので(ブレイクスルー、フォレスト、ジーニアス)、since節の時制は過去形になる事も多い(青チャート)。また、上記の事情のため、sinceのつくる副詞節は文頭や前方に置かれることも多いが(インスパイア、ジーニアス、ブレイクスルー)、しかしsinceを文頭に置かなくても正しい英語である(青チャート)。 「so ~(形容詞) that ・・・(文)」 は従属接続詞。 so に等位接続詞の用法もあるが、しかし 「so 形容詞 that 文」で結びつけられている形容詞とthat後続の文は対等ではないので、従属接続詞のほうが適切であろう。 例文は著作権のため省略。 ==== 譲歩 ==== 「譲歩」の意味である、though や although が従属接続詞として分類されている(ジーニアス、フォレスト、ロイヤル)。 though よりも although のほうが堅い言い回しである(フォレスト、ロイヤル)。 なお、英文法の接続詞の単元でいう「譲歩」は、日本語の日常語の「譲歩」とは意味がやや違う。日常語の「譲歩」とは、自分と相手・他人の主張が対立したい場合に、相手の意見を聞き入れたり時には従うことに重点が置かれるのが日常語の譲歩である(広辞苑、三省堂新明解)。 しかし、この接続詞の英文法でいう「譲歩」とは、相手の主張の一部を事実ではあると認めた上で、それでも自分の主張に事実性などがあることを主張しているのが、英文法の接続詞の分野での「譲歩」である(桐原フォレスト)。 even if ~ も even though ~ も「たとえ ~ だとしても」の意味があるが、下記のような違いがある。 even though ~ は、though の後に事実がきて、話し手は事実を知っている。 even if ~ は、if のあとに仮定がきて、その仮定が事実かどうかを話しては知らない。 これとは別に、 even if ~ で if のあとが仮定法過去になる場合もある(ジーニアス、インスパイア)。 基本的には、even if も even though も、evenは単に直後の語を強調しているだけである(インスパイア)。 if「もし~」 のあとが事実かどうかを話し手が知らないのもifの不普通の用法だし、though 「~にもかかわらず」も通常は話し手は事実を前提にしているからである。 単に even は if や though に譲歩の意味をつけたしたり、譲歩を強調したりしているだけにすぎない。 ==== 条件 ==== 条件を表すif および unless も従属接続詞。 unless は、「もし~でなければ」という意味であるが(ジーニアス、ロイヤル)、「~でない限り、」と訳される場合も多い(フォレスト、ロイヤル)。なお、unless の直後の文は否定形にはならず(フォレスト、ジーニアス)、つまり unless の直後の文は肯定形である。 unless は、「否定の条件」であるという性質に加えて、さらに基本的に「唯一の条件」という性質がある(青チャート)。「起きてほしくない事を避けるためには、unless 以降の内容を実行するしかない」という意味での唯一性の主張が unless にはある。 このことなどから、 unless ~の文を if ・・・ not ~ の文章に書き換えできる一方で(unless → if not は可能な場合が多い)、しかし if not → unless の書き換えが無理な場合が多い。 unless は「条件の文 unless 予想される結果の文」の語順。unless においてカンマなどは不要。 unless の語順は、「予想される結末 unless 結末が成り立たなくなる条件」である。なお、unlessの主節(※ 予想される結末のほう)には、willなどの未来表現を使うのが普通。一方、ifおよびunless では従属節の内容がたとえ未来における内容であっても従属節の時制は現在形にする(ジーニアス)。桐原やロイヤルでは従属節の時制はとくに解説では明記されていないが、例文の時制を見ればジーニアスと同様に桐原などでもunlessの従属節は現在形である。 === in case ~ === 「in case ~(文)」は「~の場合にそなえて」の意味であり、従属接続詞として分類され、この場合は普通は主節のあとに in case ~ が置かれる(フォレレスト、ジーニアス)。 in case ~ の典型的な例文は、 Take an umbrella with you in case it rains. 「雨が降るといけないから、かさを持っていきなさい。」 ※ 数研 青チャート、ジーニアス take の代わりに bring の場合もある。また、この傘をもっていく例文の場合なら with you は省略可能。上記例文の出典の参考書にも with you をつけてないものもある。 Bring an umbrella in case it rains. 「雨が降るといけないから、かさを持っていきなさい。」 ※ ファクトブック 命令形ではなく平叙文の場合もあり、下記のような例文もある。 I'll take an umbrella with me in case it rains. 「雨が降るといけないから、かさを持っていこう。」 ※ フォレスト with me は省略可能。自分で持っていくので with me になる(青チャート)。 「in case ~ 」の副詞節に it should rain. のように should が使われる場合もあるが、これは可能性が低いと話し手・書き手が思っている意味である(青チャート、ブレイクスルー)。 なお、in case は上記の「~するといけないから」「~しないように」の用法の他にも、case 「条件」の文字通り「~の条件で」の意味で in case を使う場合もアメリカ英語では見られ(ジーニアス、フォレスト)、この場合は if でも言い換えできる。 言い換え表現で、「~するといけないから」「~しないように」用法の in case と同じ意味は「for fear that A ~」や「lest A (should) ~」でも言える。 for fear も lest も、ともに固い表現である(ジーニアス)。ジーニアス以外の参考書の多くは、for fear が固い表現であることを取り上げていない。 for fear ~でも lest ~でも、つづく「~」の部分には not をつけない。日本語に引きづられて not をつけないように注意。 英和辞典を見れば fear は「恐れ」「不安」などの意味が書いてあることからも想像がつくように、for fear のあとには、おそれている内容を書くので、つまり、実現してほしくないことを肯定形で書くことになるのも当然であろう。 さて、lest について、ジーニアスいわく、 lest は固い言い方なだけであり、頻度自体は for fear よりも lest のほうが高いと、ジーニアスは主張している。 lest のshould が省略される場合もある。なお、shouldが省略された場合には、続く動詞には原形が来る。lest のshould 省略時の動詞の原形をつかうことを仮定法現在として解釈する流儀もある(青チャート)。 ほか、文法教育的にはあまり注目されないが、 so that ~ 「~のために」と、否定 not を組み合わせて、たとえば 「so that A won't ~」により「~しないように」という言い換えも可能である。won't の変わりに can't の場合もある(ブレイクスルー)。 === その他 === その他、as far as や as long as など範囲を表す表現が、カンマなどを補われて、従属接続詞として分類される。 「as far as I know,」 で「私の知る限りでは、」の意味。as far as の代わりに so far as とすることもある(ロイヤル)。 よくある典型文は As far as I know, he is ~. 「私の知るかぎり、彼は~な人だ」 である(フォレスト、インスパイア)。そのほか、 As far as I'm concerned, ~ 「私に関する限り、」 という表現が、たとえば「私に関する限り、それで結構です。」(青チャート)とか「私に関する限り、不満はありません。」(ジーニアス)のような文章で使われる。 このように as ・・・ as は範囲を表すことがある。 このほか、別の用法で as far as で、自分の意見を言う用法もある(ブレイクスルー、ジーニアス)。たとえばブレイクスルーいわく、「私の意見では、冷凍食品はおいしくない」という単なる持論にも as far as を使っている例文がある。 as long as には用法が2種類あり、ひとつの用法は「~する間」という時間的な範囲を表す用法であり、もうひとつの用法は最低限の条件を表し(フォレスト)、「~しさえすれば」などと訳される(ジーニアス、フォレスト)。as long as の代わりに so long as とすることもある(ジーニアス、フォレスト)。「~する限りは」と訳される場合もある(ロイヤル)。 慣用的なよくある言い回しとして、「as long as I live 」で「私が生きている限り」の意味(ロイヤル、ジーニアス)。 I will never forget your kindness as long as I live. 「私が生きているかぎり、あなたのご親切を忘れません。」 のような文章がよく参考書にある(ジーニアス、青チャート)。 なお、べつにneverを使わずとも、 I won't forget your kindness as long as I live. 「私が生きているかぎり、あなたのご親切を忘れません。」 のような文章もよくある(インスパイア)。 「~さえすれば」の as long as は、言い換えとして、if only または only if で言い換えすることもできる。 目的を表す「 so that ~」も接続詞である。in order that も同様、目的を表す接続詞である。なお、so that ~ について、口語では thatが省略されることも多く、つまり so だけで目的の接続詞になることもある(フォレスト、ジーニアス)。 so that 節の中では、can や will や may をつかうのが普通(フォレスト、ジーニアス)。 なお、「so ~(形容詞など) that ・・・」は程度をあらわす接続詞である。 in order that ~ は堅い表現。in order that 節の中では、can や will や may をつかうのが普通(フォレスト、ジーニアス)。 as も接続詞の用法がある(ロイヤル、フォレスト)。 その他にも、さまざまな接続詞がある suppose や supposed や providing や provided などを接続詞として分類することもある(フォレスト)。 3nu4g6wxlynat65qwr45r36214zuhff 205534 205533 2022-07-19T13:00:57Z すじにくシチュー 12058 /* 譲歩 */ wikitext text/x-wiki == 接続詞 == 語と語、句と句、節と節、など、文法上対等のものを結びつけるのが等位接続詞である。 いっぽう、従属節を主節と結びつけるのが従属接続詞であり(ジーニアス、フォレスト)、従位接続詞ともいう(ロイヤル)。 == 等位接続詞 == === 概要 === '''等位接続詞'''とは、and, or, but のように文法上等しいものを結びつける接続詞である。上記のほかにも、nor , so, for が等位接続詞である。 both A and B や either A or B なども便宜的にか等位接続詞として分類される。また、 not A but B や not only A but (also) B も等位接続詞として分類される。 便宜的に、not only A but also B と同じ意味をもつ as well as も、参考書では同じ単元で紹介される。 either は、「AかBかのどちらか」という意味である。 neither A nor B は、AもBも両方とも否定する表現であり、つまり「AとBのどちらも~ない」の意味である。 なお、neither A nor B が主語の場合、動詞はBの時制に一致させる(ジーニアス)。また、nor の直後の文章は肯定形である。 neither は基本、A,Bの2つしか使わない。3つ以上では使わないのが原則だが、しかし米英には原則に反して3つ以上で使う人もいるが(ロイヤル)、入試にはそこまで出ないだろう。また、neither で nor の代わりに原則に反して or を使う人もいるとのこと(ロイヤル)。入試では原則的な場合だけを考えればよいだろう。 「neither」とは not either の意味だろう、というのがロイヤル英文法の見解。 nor は、 neither のある文でなくても使われる場合がある(桐原、ロイヤル)。 否定語の not や don't などのあと、 「not A, nor B」または「don't A(動詞) nor B(動詞) 」で「AもBも無い」という意味で、neitherなしで nor が not などの否定語とともに使われる場合がある。 カンマが無い場合もある(ロイヤル英文法)。この場合でも、A nor B のあとに動詞が来る場合、その文は肯定形である。 「AもBもどちらも~ない」と否定の内容を並列させたい場合、andではなくnorを使う(桐原)。 さて、and には、命令文のあとに使われたい場合には、「そうすれば」の意味になるが、この意味の場合でも等位接続詞として分類される。 or には、「または」の意味のほかにも「すなわち」「言い換えれば」というある語を別の語で言い換える用法の意味もあるが(ジーニアスおよびエバーグリーンに「言い換えれば」アリ)、どちらの意味の場合でも等位接続詞として分類される。また、or には、命令文のあとに使われたい場合には、「さもなければ」の意味になるが、この意味の場合でも等位接続詞として分類される。 なお、「すなわち」「言い換えれば」の意味で or が接続詞として使われる場合、orの前にふつうはカンマ(,)が来る(ジーニアス、いいづなエバーグリーン)。 === so/ for === 接続詞としての so は、 <出来事→結果> の語順として「理由の文、so 結果の文」のように理由を前に、結果を後ろに書き、「・・・なので~」「・・・だから~」という意味になる。理由というほど明白な因果関係でなくても、比較的に関連性の高い2つの出来事において、「ある出来事, so 出来事の結果」という用法でも良い。 また、この場合の so の直前にはカンマ「 , 」を置くのが普通(ジーニアス、エバーグリーン)。 余談だが、接続詞としての so と for はそれぞれ、節と節だけ結びつける(フォレスト、エバーグリーン)。つまり、語と語、句と句、語と句などは結び付けない。 いっぽう、for は、 <結果←出来事> の語順として、「結果, for 理由の章」の構文で、堅い言い回しとして理由を説明する。口語で用いることはあまり無い(ジーニアス、エバーグリーン)。ほか、 for は、forの前述の出来事に対して、その理由を述べる接続詞である。 なので、普通は for の直前にはカンマ「 , 」が来る。 接続詞としての for は等位接続詞である。for は従属接続詞ではない等の理由で(ロイヤル)、because のように主節の前に出すことはできない。なお、もし For が文頭に置かれている場合、それは、その直前の文の理由を説明している(ロイヤル)。 === and === まず、and の基本的な意味を確認しよう。 ;並列と順序 and の基本的な意味は並列「および」「と」の意味だが、もうひとつ、動作・時間の順序という意味もある。「先に起きたこと and その直後に起きたこと」のような語順で and を使うこともある。 動作や時間の順序のand は、「そして」や「~して、」の意味である(ジーニアス、ロイヤル)。 たとえば come and see は「先に来て、そして見る(見た)」の意味であり、つまり不定詞の結果用法 come to see と同じ意味である(フォレスト)。同様の表現として、 go and see もある。 ;因果関係 さらに、and が因果関係をあらわす場合もある(ジーニアス、ロイヤル)。普通、文章では、先に行ったり紹介した動作が、あとの動作の理由になるので、andで因果関係を表すのも自然であろう。 {{コラム|and なのに逆接?| 上記で and は因果関係を表す場合もあるといったが、しかし人生では、必ずしも前に起きた動作の期待どおりに後の結果が起きるとは限らない場合も多々あるものである。このため、and があたかも but のような逆接的な意味かのように見える英文が生じる場合もある。 たとえば、「彼は努力して、そして失敗した」は、順序を意識すれば try hard and failed のような言い回しになる(ジーニアス)。努力 try hard という準備にもかかわらず失敗 fail したことから、文脈によっては and なのにまるで逆接のような意味も読み取れる場合もある。 さて、このことから、もし後の起きたことが先に起きたことに比べて対照的な場合、場合によっては and は、あたかも逆接 but のような意味に見える場合がある。 とはいえ、これはand の順序関係の用法の、派生的なものである。andの基本的な意味は、あくまで並列・順序だと思うべきだろう。 }} == 従属接続詞 == === 名詞節を導く従属接続詞 === 一方、名詞節を導くために使われる that およびwhether と if は'''従属接続詞'''である。that や whether を接続詞として解釈する考えもある。 従属接続詞の典型的な文で The fact is (that)・・・ 「事実は・・・ということだ。」 The trouble is (that)・・・ 「困ったことに・・・ということだ。」 The truth is (that)・・・ 「真実は・・・ということだ。」 The reason is (that)・・・ 「理由は・・・ということだ。」 などがある。 このように、名詞節を導く that は、「・・・ということだ。」の意味になる。 that は主語・補語・目的語になる(上記の the reason is that などの例文の場合は、that が補語になっている)。 ほか、 It is 形容詞 that ・・・ という形式主語の文章で 使われる that は接続詞でもある(ジーニアス、エバーグリーン )。 ほか、that節が know,say ,think, tell, hope など一般的な動詞の目的語になっている場合は、thatを省略することも多い(ブレイクスルー、インスパイア)。 ただし、形式目的語の that は省略できない(エバーグリーン)。形式目的語とは、 He made it clear that ~ . 「彼は~であることを明らかにした。」 のような it を仮の目的語とする文章のこと。 that 節は普通は前置詞の後ろに置かれることないが(ジーニアス)、例外的に in that(~という点で、~だから) と except that(~を除いて)という用法がある。 なお、 in that には意味の異なる「~という点で」という用法と、もうひとつ「~だから」「~であるか」という別の用法があることに注意(ジーニアス)。 参考書によっては in that は前置詞の項目に書いてある場合もある(青チャート)。 ほか、Now that で、「今や~だから」という表現ができる。口語ではよくthatが省略され、Now だけになる。 典型的な例文は Now (that) he is eighteen, he can vote. 「今や彼は18歳なのだから、彼は投票できる。」 である(ジーニアス、青チャート)。 このほか、紹介している参考書は少ないが(青チャート、インスパイア)、分詞構文の Seeing that ~「~であるから」「~だから」が接続詞的に用いられる用法もある(青チャート)。 === 副詞節を導く従属接続詞 === ==== はじめに ==== ほか、(たとえば平叙文のなかで)副詞節を導かれるために使われる when (~のとき、)や where (~の場所)が従属接続詞である。 before , after および since や until なども従属接続詞。 as soon as や once もこれに含める(ジーニアス、フォレスト)。 「until ~」は、「~」の瞬間まで動作が継続しているときに使い、「~するまで(ずっと)」の意味である。 一方、継続しない場合で、その時までに動作が完了している場合には、untilではなくby the time 「~する(時)までに」を使う。 as well as が等位接続詞なのに as soon as が従属なのはアレだが、まあどの参考書でもそういう分類になっている。 as soon as は言い換えで、the moment や the instant や no sooner ・・・ than ~ などの言い換え表現がある。 ==== once ==== once は「いったん~すると」の意味。once をどう分類するかが参考書ごとに違う。 ifやunlessなどと同様に「条件」として once を分類する参考書もあれば(ブレイクスルー、インスパイア)、 beforeやafterやsinceなどと同様の「起点」として once を分類する参考書もある(ジーニアス、フォレスト)。 なお、as soon as と once がなぜか同じ章節で紹介される参考書が多いが(ジーニアス、フォレスト、しかし意味が違う接続詞なので混同しないように。 if~ は内容が未来であっても現在形を使うが、as soon as ~ も後続の文では内容が未来であっても現在形を使うので、もしかしたらその理由でonceが「条件」として分類されているのかもしれない。 また、as soon as ~ と同様に、once ~ も後続の文の内容が未来であっても現在形を使う(ジーニアス)。そういう共通点からか、一緒に「起点」として紹介されるのかもしれない。 しかし、単に分類が同じだけであり、 once は as soon as とは意味がまったく違うので、混同しないように。 ==== その他 ==== 時間の表現だけでなく、because や since (since には理由の意味もある)も従属接続詞。 because は従属接続詞なので、よって主節なしで 「Because ~ .」 といったBecause だけの節をつくることは原則、誤用だとみなされる(青チャート、ジーニアス)。 ただし例外的に、"Why ~?" といった Why を使った質問文に対して、解答で"Because ~" と because だけの節の文章が許されている(青チャート、ジーニアス)。 since は基本、相手が既知の話題についての理由を説明するときに使うので(ブレイクスルー、フォレスト、ジーニアス)、since節の時制は過去形になる事も多い(青チャート)。また、上記の事情のため、sinceのつくる副詞節は文頭や前方に置かれることも多いが(インスパイア、ジーニアス、ブレイクスルー)、しかしsinceを文頭に置かなくても正しい英語である(青チャート)。 「so ~(形容詞) that ・・・(文)」 は従属接続詞。 so に等位接続詞の用法もあるが、しかし 「so 形容詞 that 文」で結びつけられている形容詞とthat後続の文は対等ではないので、従属接続詞のほうが適切であろう。 例文は著作権のため省略。 ==== 譲歩 ==== 「譲歩」の意味である、though や although が従属接続詞として分類されている(ジーニアス、フォレスト、ロイヤル)。 though よりも although のほうが堅い言い回しである(フォレスト、ロイヤル)。 なお、英文法の接続詞の単元でいう「譲歩」は、日本語の日常語の「譲歩」とは意味がやや違う。日常語の「譲歩」とは、自分と相手・他人の主張が対立したい場合に、相手の意見を聞き入れたり時には従うことに重点が置かれるのが日常語の譲歩である(広辞苑、三省堂新明解)。 しかし、この接続詞の英文法でいう「譲歩」とは、相手の主張の一部を事実ではあると認めた上で、それでも自分の主張に事実性などがあることを主張しているのが、英文法の接続詞の分野での「譲歩」である(桐原フォレスト)。 even if ~ も even though ~ も「たとえ ~ だとしても」という譲歩の意味があるが、下記のような違いがある。 even though ~ は、though の後に事実がきて、話し手は事実を知っている。 even if ~ は、if のあとに仮定がきて、その仮定が事実かどうかを話しては知らない。 これとは別に、 even if ~ で if のあとが仮定法過去になる場合もある(ジーニアス、インスパイア)。 基本的には、even if も even though も、evenは単に直後の語を強調しているだけである(インスパイア)。 if「もし~」 のあとが事実かどうかを話し手が知らないのもifの不普通の用法だし、though 「~にもかかわらず」も通常は話し手は事実を前提にしているからである。 単に even は if や though に譲歩の意味をつけたしたり、譲歩を強調したりしているだけにすぎない。 ==== 条件 ==== 条件を表すif および unless も従属接続詞。 unless は、「もし~でなければ」という意味であるが(ジーニアス、ロイヤル)、「~でない限り、」と訳される場合も多い(フォレスト、ロイヤル)。なお、unless の直後の文は否定形にはならず(フォレスト、ジーニアス)、つまり unless の直後の文は肯定形である。 unless は、「否定の条件」であるという性質に加えて、さらに基本的に「唯一の条件」という性質がある(青チャート)。「起きてほしくない事を避けるためには、unless 以降の内容を実行するしかない」という意味での唯一性の主張が unless にはある。 このことなどから、 unless ~の文を if ・・・ not ~ の文章に書き換えできる一方で(unless → if not は可能な場合が多い)、しかし if not → unless の書き換えが無理な場合が多い。 unless は「条件の文 unless 予想される結果の文」の語順。unless においてカンマなどは不要。 unless の語順は、「予想される結末 unless 結末が成り立たなくなる条件」である。なお、unlessの主節(※ 予想される結末のほう)には、willなどの未来表現を使うのが普通。一方、ifおよびunless では従属節の内容がたとえ未来における内容であっても従属節の時制は現在形にする(ジーニアス)。桐原やロイヤルでは従属節の時制はとくに解説では明記されていないが、例文の時制を見ればジーニアスと同様に桐原などでもunlessの従属節は現在形である。 === in case ~ === 「in case ~(文)」は「~の場合にそなえて」の意味であり、従属接続詞として分類され、この場合は普通は主節のあとに in case ~ が置かれる(フォレレスト、ジーニアス)。 in case ~ の典型的な例文は、 Take an umbrella with you in case it rains. 「雨が降るといけないから、かさを持っていきなさい。」 ※ 数研 青チャート、ジーニアス take の代わりに bring の場合もある。また、この傘をもっていく例文の場合なら with you は省略可能。上記例文の出典の参考書にも with you をつけてないものもある。 Bring an umbrella in case it rains. 「雨が降るといけないから、かさを持っていきなさい。」 ※ ファクトブック 命令形ではなく平叙文の場合もあり、下記のような例文もある。 I'll take an umbrella with me in case it rains. 「雨が降るといけないから、かさを持っていこう。」 ※ フォレスト with me は省略可能。自分で持っていくので with me になる(青チャート)。 「in case ~ 」の副詞節に it should rain. のように should が使われる場合もあるが、これは可能性が低いと話し手・書き手が思っている意味である(青チャート、ブレイクスルー)。 なお、in case は上記の「~するといけないから」「~しないように」の用法の他にも、case 「条件」の文字通り「~の条件で」の意味で in case を使う場合もアメリカ英語では見られ(ジーニアス、フォレスト)、この場合は if でも言い換えできる。 言い換え表現で、「~するといけないから」「~しないように」用法の in case と同じ意味は「for fear that A ~」や「lest A (should) ~」でも言える。 for fear も lest も、ともに固い表現である(ジーニアス)。ジーニアス以外の参考書の多くは、for fear が固い表現であることを取り上げていない。 for fear ~でも lest ~でも、つづく「~」の部分には not をつけない。日本語に引きづられて not をつけないように注意。 英和辞典を見れば fear は「恐れ」「不安」などの意味が書いてあることからも想像がつくように、for fear のあとには、おそれている内容を書くので、つまり、実現してほしくないことを肯定形で書くことになるのも当然であろう。 さて、lest について、ジーニアスいわく、 lest は固い言い方なだけであり、頻度自体は for fear よりも lest のほうが高いと、ジーニアスは主張している。 lest のshould が省略される場合もある。なお、shouldが省略された場合には、続く動詞には原形が来る。lest のshould 省略時の動詞の原形をつかうことを仮定法現在として解釈する流儀もある(青チャート)。 ほか、文法教育的にはあまり注目されないが、 so that ~ 「~のために」と、否定 not を組み合わせて、たとえば 「so that A won't ~」により「~しないように」という言い換えも可能である。won't の変わりに can't の場合もある(ブレイクスルー)。 === その他 === その他、as far as や as long as など範囲を表す表現が、カンマなどを補われて、従属接続詞として分類される。 「as far as I know,」 で「私の知る限りでは、」の意味。as far as の代わりに so far as とすることもある(ロイヤル)。 よくある典型文は As far as I know, he is ~. 「私の知るかぎり、彼は~な人だ」 である(フォレスト、インスパイア)。そのほか、 As far as I'm concerned, ~ 「私に関する限り、」 という表現が、たとえば「私に関する限り、それで結構です。」(青チャート)とか「私に関する限り、不満はありません。」(ジーニアス)のような文章で使われる。 このように as ・・・ as は範囲を表すことがある。 このほか、別の用法で as far as で、自分の意見を言う用法もある(ブレイクスルー、ジーニアス)。たとえばブレイクスルーいわく、「私の意見では、冷凍食品はおいしくない」という単なる持論にも as far as を使っている例文がある。 as long as には用法が2種類あり、ひとつの用法は「~する間」という時間的な範囲を表す用法であり、もうひとつの用法は最低限の条件を表し(フォレスト)、「~しさえすれば」などと訳される(ジーニアス、フォレスト)。as long as の代わりに so long as とすることもある(ジーニアス、フォレスト)。「~する限りは」と訳される場合もある(ロイヤル)。 慣用的なよくある言い回しとして、「as long as I live 」で「私が生きている限り」の意味(ロイヤル、ジーニアス)。 I will never forget your kindness as long as I live. 「私が生きているかぎり、あなたのご親切を忘れません。」 のような文章がよく参考書にある(ジーニアス、青チャート)。 なお、べつにneverを使わずとも、 I won't forget your kindness as long as I live. 「私が生きているかぎり、あなたのご親切を忘れません。」 のような文章もよくある(インスパイア)。 「~さえすれば」の as long as は、言い換えとして、if only または only if で言い換えすることもできる。 目的を表す「 so that ~」も接続詞である。in order that も同様、目的を表す接続詞である。なお、so that ~ について、口語では thatが省略されることも多く、つまり so だけで目的の接続詞になることもある(フォレスト、ジーニアス)。 so that 節の中では、can や will や may をつかうのが普通(フォレスト、ジーニアス)。 なお、「so ~(形容詞など) that ・・・」は程度をあらわす接続詞である。 in order that ~ は堅い表現。in order that 節の中では、can や will や may をつかうのが普通(フォレスト、ジーニアス)。 as も接続詞の用法がある(ロイヤル、フォレスト)。 その他にも、さまざまな接続詞がある suppose や supposed や providing や provided などを接続詞として分類することもある(フォレスト)。 8ziypihlmhyz22vyj5d4m90au8xdgt8 205536 205534 2022-07-19T13:09:46Z すじにくシチュー 12058 /* 従属接続詞 */ wikitext text/x-wiki == 接続詞 == 語と語、句と句、節と節、など、文法上対等のものを結びつけるのが等位接続詞である。 いっぽう、従属節を主節と結びつけるのが従属接続詞であり(ジーニアス、フォレスト)、従位接続詞ともいう(ロイヤル)。 == 等位接続詞 == === 概要 === '''等位接続詞'''とは、and, or, but のように文法上等しいものを結びつける接続詞である。上記のほかにも、nor , so, for が等位接続詞である。 both A and B や either A or B なども便宜的にか等位接続詞として分類される。また、 not A but B や not only A but (also) B も等位接続詞として分類される。 便宜的に、not only A but also B と同じ意味をもつ as well as も、参考書では同じ単元で紹介される。 either は、「AかBかのどちらか」という意味である。 neither A nor B は、AもBも両方とも否定する表現であり、つまり「AとBのどちらも~ない」の意味である。 なお、neither A nor B が主語の場合、動詞はBの時制に一致させる(ジーニアス)。また、nor の直後の文章は肯定形である。 neither は基本、A,Bの2つしか使わない。3つ以上では使わないのが原則だが、しかし米英には原則に反して3つ以上で使う人もいるが(ロイヤル)、入試にはそこまで出ないだろう。また、neither で nor の代わりに原則に反して or を使う人もいるとのこと(ロイヤル)。入試では原則的な場合だけを考えればよいだろう。 「neither」とは not either の意味だろう、というのがロイヤル英文法の見解。 nor は、 neither のある文でなくても使われる場合がある(桐原、ロイヤル)。 否定語の not や don't などのあと、 「not A, nor B」または「don't A(動詞) nor B(動詞) 」で「AもBも無い」という意味で、neitherなしで nor が not などの否定語とともに使われる場合がある。 カンマが無い場合もある(ロイヤル英文法)。この場合でも、A nor B のあとに動詞が来る場合、その文は肯定形である。 「AもBもどちらも~ない」と否定の内容を並列させたい場合、andではなくnorを使う(桐原)。 さて、and には、命令文のあとに使われたい場合には、「そうすれば」の意味になるが、この意味の場合でも等位接続詞として分類される。 or には、「または」の意味のほかにも「すなわち」「言い換えれば」というある語を別の語で言い換える用法の意味もあるが(ジーニアスおよびエバーグリーンに「言い換えれば」アリ)、どちらの意味の場合でも等位接続詞として分類される。また、or には、命令文のあとに使われたい場合には、「さもなければ」の意味になるが、この意味の場合でも等位接続詞として分類される。 なお、「すなわち」「言い換えれば」の意味で or が接続詞として使われる場合、orの前にふつうはカンマ(,)が来る(ジーニアス、いいづなエバーグリーン)。 === so/ for === 接続詞としての so は、 <出来事→結果> の語順として「理由の文、so 結果の文」のように理由を前に、結果を後ろに書き、「・・・なので~」「・・・だから~」という意味になる。理由というほど明白な因果関係でなくても、比較的に関連性の高い2つの出来事において、「ある出来事, so 出来事の結果」という用法でも良い。 また、この場合の so の直前にはカンマ「 , 」を置くのが普通(ジーニアス、エバーグリーン)。 余談だが、接続詞としての so と for はそれぞれ、節と節だけ結びつける(フォレスト、エバーグリーン)。つまり、語と語、句と句、語と句などは結び付けない。 いっぽう、for は、 <結果←出来事> の語順として、「結果, for 理由の章」の構文で、堅い言い回しとして理由を説明する。口語で用いることはあまり無い(ジーニアス、エバーグリーン)。ほか、 for は、forの前述の出来事に対して、その理由を述べる接続詞である。 なので、普通は for の直前にはカンマ「 , 」が来る。 接続詞としての for は等位接続詞である。for は従属接続詞ではない等の理由で(ロイヤル)、because のように主節の前に出すことはできない。なお、もし For が文頭に置かれている場合、それは、その直前の文の理由を説明している(ロイヤル)。 === and === まず、and の基本的な意味を確認しよう。 ;並列と順序 and の基本的な意味は並列「および」「と」の意味だが、もうひとつ、動作・時間の順序という意味もある。「先に起きたこと and その直後に起きたこと」のような語順で and を使うこともある。 動作や時間の順序のand は、「そして」や「~して、」の意味である(ジーニアス、ロイヤル)。 たとえば come and see は「先に来て、そして見る(見た)」の意味であり、つまり不定詞の結果用法 come to see と同じ意味である(フォレスト)。同様の表現として、 go and see もある。 ;因果関係 さらに、and が因果関係をあらわす場合もある(ジーニアス、ロイヤル)。普通、文章では、先に行ったり紹介した動作が、あとの動作の理由になるので、andで因果関係を表すのも自然であろう。 {{コラム|and なのに逆接?| 上記で and は因果関係を表す場合もあるといったが、しかし人生では、必ずしも前に起きた動作の期待どおりに後の結果が起きるとは限らない場合も多々あるものである。このため、and があたかも but のような逆接的な意味かのように見える英文が生じる場合もある。 たとえば、「彼は努力して、そして失敗した」は、順序を意識すれば try hard and failed のような言い回しになる(ジーニアス)。努力 try hard という準備にもかかわらず失敗 fail したことから、文脈によっては and なのにまるで逆接のような意味も読み取れる場合もある。 さて、このことから、もし後の起きたことが先に起きたことに比べて対照的な場合、場合によっては and は、あたかも逆接 but のような意味に見える場合がある。 とはいえ、これはand の順序関係の用法の、派生的なものである。andの基本的な意味は、あくまで並列・順序だと思うべきだろう。 }} == 従属接続詞 == === 名詞節を導く従属接続詞 === 一方、名詞節を導くために使われる that およびwhether(~かどうか) と if(~かどうか) は'''従属接続詞'''である。that や whether を接続詞として解釈する考えもある。 ここでの名詞節を導く if は、「~かどうか」の意味での if である。「もし~ならば、」の if のことではない。また、「もし」の if との混同をさけるため、文頭では名詞節の if は使えない(ファクトブック)。 従属接続詞の典型的な文で The fact is (that)・・・ 「事実は・・・ということだ。」 The trouble is (that)・・・ 「困ったことに・・・ということだ。」 The truth is (that)・・・ 「真実は・・・ということだ。」 The reason is (that)・・・ 「理由は・・・ということだ。」 などがある。 このように、名詞節を導く that は、「・・・ということだ。」の意味になる。 that は主語・補語・目的語になる(上記の the reason is that などの例文の場合は、that が補語になっている)。 ほか、 It is 形容詞 that ・・・ という形式主語の文章で 使われる that は接続詞でもある(ジーニアス、エバーグリーン )。 ほか、that節が know,say ,think, tell, hope など一般的な動詞の目的語になっている場合は、thatを省略することも多い(ブレイクスルー、インスパイア)。 ただし、形式目的語の that は省略できない(エバーグリーン)。形式目的語とは、 He made it clear that ~ . 「彼は~であることを明らかにした。」 のような it を仮の目的語とする文章のこと。 that 節は普通は前置詞の後ろに置かれることないが(ジーニアス)、例外的に in that(~という点で、~だから) と except that(~を除いて)という用法がある。 なお、 in that には意味の異なる「~という点で」という用法と、もうひとつ「~だから」「~であるか」という別の用法があることに注意(ジーニアス)。 参考書によっては in that は前置詞の項目に書いてある場合もある(青チャート)。 ほか、Now that で、「今や~だから」という表現ができる。口語ではよくthatが省略され、Now だけになる。 典型的な例文は Now (that) he is eighteen, he can vote. 「今や彼は18歳なのだから、彼は投票できる。」 である(ジーニアス、青チャート)。 このほか、紹介している参考書は少ないが(青チャート、インスパイア)、分詞構文の Seeing that ~「~であるから」「~だから」が接続詞的に用いられる用法もある(青チャート)。 === 副詞節を導く従属接続詞 === ==== はじめに ==== ほか、(たとえば平叙文のなかで)副詞節を導かれるために使われる when (~のとき、)や where (~の場所)が従属接続詞である。 before , after および since や until なども従属接続詞。 as soon as や once もこれに含める(ジーニアス、フォレスト)。 「until ~」は、「~」の瞬間まで動作が継続しているときに使い、「~するまで(ずっと)」の意味である。 一方、継続しない場合で、その時までに動作が完了している場合には、untilではなくby the time 「~する(時)までに」を使う。 as well as が等位接続詞なのに as soon as が従属なのはアレだが、まあどの参考書でもそういう分類になっている。 as soon as は言い換えで、the moment や the instant や no sooner ・・・ than ~ などの言い換え表現がある。 ==== once ==== once は「いったん~すると」の意味。once をどう分類するかが参考書ごとに違う。 ifやunlessなどと同様に「条件」として once を分類する参考書もあれば(ブレイクスルー、インスパイア)、 beforeやafterやsinceなどと同様の「起点」として once を分類する参考書もある(ジーニアス、フォレスト)。 なお、as soon as と once がなぜか同じ章節で紹介される参考書が多いが(ジーニアス、フォレスト、しかし意味が違う接続詞なので混同しないように。 if~ は内容が未来であっても現在形を使うが、as soon as ~ も後続の文では内容が未来であっても現在形を使うので、もしかしたらその理由でonceが「条件」として分類されているのかもしれない。 また、as soon as ~ と同様に、once ~ も後続の文の内容が未来であっても現在形を使う(ジーニアス)。そういう共通点からか、一緒に「起点」として紹介されるのかもしれない。 しかし、単に分類が同じだけであり、 once は as soon as とは意味がまったく違うので、混同しないように。 ==== その他 ==== 時間の表現だけでなく、because や since (since には理由の意味もある)も従属接続詞。 because は従属接続詞なので、よって主節なしで 「Because ~ .」 といったBecause だけの節をつくることは原則、誤用だとみなされる(青チャート、ジーニアス)。 ただし例外的に、"Why ~?" といった Why を使った質問文に対して、解答で"Because ~" と because だけの節の文章が許されている(青チャート、ジーニアス)。 since は基本、相手が既知の話題についての理由を説明するときに使うので(ブレイクスルー、フォレスト、ジーニアス)、since節の時制は過去形になる事も多い(青チャート)。また、上記の事情のため、sinceのつくる副詞節は文頭や前方に置かれることも多いが(インスパイア、ジーニアス、ブレイクスルー)、しかしsinceを文頭に置かなくても正しい英語である(青チャート)。 「so ~(形容詞) that ・・・(文)」 は従属接続詞。 so に等位接続詞の用法もあるが、しかし 「so 形容詞 that 文」で結びつけられている形容詞とthat後続の文は対等ではないので、従属接続詞のほうが適切であろう。 例文は著作権のため省略。 ==== 譲歩 ==== 「譲歩」の意味である、though や although が従属接続詞として分類されている(ジーニアス、フォレスト、ロイヤル)。 though よりも although のほうが堅い言い回しである(フォレスト、ロイヤル)。 なお、英文法の接続詞の単元でいう「譲歩」は、日本語の日常語の「譲歩」とは意味がやや違う。日常語の「譲歩」とは、自分と相手・他人の主張が対立したい場合に、相手の意見を聞き入れたり時には従うことに重点が置かれるのが日常語の譲歩である(広辞苑、三省堂新明解)。 しかし、この接続詞の英文法でいう「譲歩」とは、相手の主張の一部を事実ではあると認めた上で、それでも自分の主張に事実性などがあることを主張しているのが、英文法の接続詞の分野での「譲歩」である(桐原フォレスト)。 even if ~ も even though ~ も「たとえ ~ だとしても」という譲歩の意味があるが、下記のような違いがある。 even though ~ は、though の後に事実がきて、話し手は事実を知っている。 even if ~ は、if のあとに仮定がきて、その仮定が事実かどうかを話しては知らない。 これとは別に、 even if ~ で if のあとが仮定法過去になる場合もある(ジーニアス、インスパイア)。 基本的には、even if も even though も、evenは単に直後の語を強調しているだけである(インスパイア)。 if「もし~」 のあとが事実かどうかを話し手が知らないのもifの不普通の用法だし、though 「~にもかかわらず」も通常は話し手は事実を前提にしているからである。 単に even は if や though に譲歩の意味をつけたしたり、譲歩を強調したりしているだけにすぎない。 ==== 条件 ==== 条件を表すif および unless も従属接続詞。 unless は、「もし~でなければ」という意味であるが(ジーニアス、ロイヤル)、「~でない限り、」と訳される場合も多い(フォレスト、ロイヤル)。なお、unless の直後の文は否定形にはならず(フォレスト、ジーニアス)、つまり unless の直後の文は肯定形である。 unless は、「否定の条件」であるという性質に加えて、さらに基本的に「唯一の条件」という性質がある(青チャート)。「起きてほしくない事を避けるためには、unless 以降の内容を実行するしかない」という意味での唯一性の主張が unless にはある。 このことなどから、 unless ~の文を if ・・・ not ~ の文章に書き換えできる一方で(unless → if not は可能な場合が多い)、しかし if not → unless の書き換えが無理な場合が多い。 unless は「条件の文 unless 予想される結果の文」の語順。unless においてカンマなどは不要。 unless の語順は、「予想される結末 unless 結末が成り立たなくなる条件」である。なお、unlessの主節(※ 予想される結末のほう)には、willなどの未来表現を使うのが普通。一方、ifおよびunless では従属節の内容がたとえ未来における内容であっても従属節の時制は現在形にする(ジーニアス)。桐原やロイヤルでは従属節の時制はとくに解説では明記されていないが、例文の時制を見ればジーニアスと同様に桐原などでもunlessの従属節は現在形である。 === in case ~ === 「in case ~(文)」は「~の場合にそなえて」の意味であり、従属接続詞として分類され、この場合は普通は主節のあとに in case ~ が置かれる(フォレレスト、ジーニアス)。 in case ~ の典型的な例文は、 Take an umbrella with you in case it rains. 「雨が降るといけないから、かさを持っていきなさい。」 ※ 数研 青チャート、ジーニアス take の代わりに bring の場合もある。また、この傘をもっていく例文の場合なら with you は省略可能。上記例文の出典の参考書にも with you をつけてないものもある。 Bring an umbrella in case it rains. 「雨が降るといけないから、かさを持っていきなさい。」 ※ ファクトブック 命令形ではなく平叙文の場合もあり、下記のような例文もある。 I'll take an umbrella with me in case it rains. 「雨が降るといけないから、かさを持っていこう。」 ※ フォレスト with me は省略可能。自分で持っていくので with me になる(青チャート)。 「in case ~ 」の副詞節に it should rain. のように should が使われる場合もあるが、これは可能性が低いと話し手・書き手が思っている意味である(青チャート、ブレイクスルー)。 なお、in case は上記の「~するといけないから」「~しないように」の用法の他にも、case 「条件」の文字通り「~の条件で」の意味で in case を使う場合もアメリカ英語では見られ(ジーニアス、フォレスト)、この場合は if でも言い換えできる。 言い換え表現で、「~するといけないから」「~しないように」用法の in case と同じ意味は「for fear that A ~」や「lest A (should) ~」でも言える。 for fear も lest も、ともに固い表現である(ジーニアス)。ジーニアス以外の参考書の多くは、for fear が固い表現であることを取り上げていない。 for fear ~でも lest ~でも、つづく「~」の部分には not をつけない。日本語に引きづられて not をつけないように注意。 英和辞典を見れば fear は「恐れ」「不安」などの意味が書いてあることからも想像がつくように、for fear のあとには、おそれている内容を書くので、つまり、実現してほしくないことを肯定形で書くことになるのも当然であろう。 さて、lest について、ジーニアスいわく、 lest は固い言い方なだけであり、頻度自体は for fear よりも lest のほうが高いと、ジーニアスは主張している。 lest のshould が省略される場合もある。なお、shouldが省略された場合には、続く動詞には原形が来る。lest のshould 省略時の動詞の原形をつかうことを仮定法現在として解釈する流儀もある(青チャート)。 ほか、文法教育的にはあまり注目されないが、 so that ~ 「~のために」と、否定 not を組み合わせて、たとえば 「so that A won't ~」により「~しないように」という言い換えも可能である。won't の変わりに can't の場合もある(ブレイクスルー)。 === その他 === その他、as far as や as long as など範囲を表す表現が、カンマなどを補われて、従属接続詞として分類される。 「as far as I know,」 で「私の知る限りでは、」の意味。as far as の代わりに so far as とすることもある(ロイヤル)。 よくある典型文は As far as I know, he is ~. 「私の知るかぎり、彼は~な人だ」 である(フォレスト、インスパイア)。そのほか、 As far as I'm concerned, ~ 「私に関する限り、」 という表現が、たとえば「私に関する限り、それで結構です。」(青チャート)とか「私に関する限り、不満はありません。」(ジーニアス)のような文章で使われる。 このように as ・・・ as は範囲を表すことがある。 このほか、別の用法で as far as で、自分の意見を言う用法もある(ブレイクスルー、ジーニアス)。たとえばブレイクスルーいわく、「私の意見では、冷凍食品はおいしくない」という単なる持論にも as far as を使っている例文がある。 as long as には用法が2種類あり、ひとつの用法は「~する間」という時間的な範囲を表す用法であり、もうひとつの用法は最低限の条件を表し(フォレスト)、「~しさえすれば」などと訳される(ジーニアス、フォレスト)。as long as の代わりに so long as とすることもある(ジーニアス、フォレスト)。「~する限りは」と訳される場合もある(ロイヤル)。 慣用的なよくある言い回しとして、「as long as I live 」で「私が生きている限り」の意味(ロイヤル、ジーニアス)。 I will never forget your kindness as long as I live. 「私が生きているかぎり、あなたのご親切を忘れません。」 のような文章がよく参考書にある(ジーニアス、青チャート)。 なお、べつにneverを使わずとも、 I won't forget your kindness as long as I live. 「私が生きているかぎり、あなたのご親切を忘れません。」 のような文章もよくある(インスパイア)。 「~さえすれば」の as long as は、言い換えとして、if only または only if で言い換えすることもできる。 目的を表す「 so that ~」も接続詞である。in order that も同様、目的を表す接続詞である。なお、so that ~ について、口語では thatが省略されることも多く、つまり so だけで目的の接続詞になることもある(フォレスト、ジーニアス)。 so that 節の中では、can や will や may をつかうのが普通(フォレスト、ジーニアス)。 なお、「so ~(形容詞など) that ・・・」は程度をあらわす接続詞である。 in order that ~ は堅い表現。in order that 節の中では、can や will や may をつかうのが普通(フォレスト、ジーニアス)。 as も接続詞の用法がある(ロイヤル、フォレスト)。 その他にも、さまざまな接続詞がある suppose や supposed や providing や provided などを接続詞として分類することもある(フォレスト)。 9bsmjvff1ba6vxen55ajbta2q01ux7b 205537 205536 2022-07-19T15:46:41Z すじにくシチュー 12058 /* 名詞節を導く従属接続詞 */ wikitext text/x-wiki == 接続詞 == 語と語、句と句、節と節、など、文法上対等のものを結びつけるのが等位接続詞である。 いっぽう、従属節を主節と結びつけるのが従属接続詞であり(ジーニアス、フォレスト)、従位接続詞ともいう(ロイヤル)。 == 等位接続詞 == === 概要 === '''等位接続詞'''とは、and, or, but のように文法上等しいものを結びつける接続詞である。上記のほかにも、nor , so, for が等位接続詞である。 both A and B や either A or B なども便宜的にか等位接続詞として分類される。また、 not A but B や not only A but (also) B も等位接続詞として分類される。 便宜的に、not only A but also B と同じ意味をもつ as well as も、参考書では同じ単元で紹介される。 either は、「AかBかのどちらか」という意味である。 neither A nor B は、AもBも両方とも否定する表現であり、つまり「AとBのどちらも~ない」の意味である。 なお、neither A nor B が主語の場合、動詞はBの時制に一致させる(ジーニアス)。また、nor の直後の文章は肯定形である。 neither は基本、A,Bの2つしか使わない。3つ以上では使わないのが原則だが、しかし米英には原則に反して3つ以上で使う人もいるが(ロイヤル)、入試にはそこまで出ないだろう。また、neither で nor の代わりに原則に反して or を使う人もいるとのこと(ロイヤル)。入試では原則的な場合だけを考えればよいだろう。 「neither」とは not either の意味だろう、というのがロイヤル英文法の見解。 nor は、 neither のある文でなくても使われる場合がある(桐原、ロイヤル)。 否定語の not や don't などのあと、 「not A, nor B」または「don't A(動詞) nor B(動詞) 」で「AもBも無い」という意味で、neitherなしで nor が not などの否定語とともに使われる場合がある。 カンマが無い場合もある(ロイヤル英文法)。この場合でも、A nor B のあとに動詞が来る場合、その文は肯定形である。 「AもBもどちらも~ない」と否定の内容を並列させたい場合、andではなくnorを使う(桐原)。 さて、and には、命令文のあとに使われたい場合には、「そうすれば」の意味になるが、この意味の場合でも等位接続詞として分類される。 or には、「または」の意味のほかにも「すなわち」「言い換えれば」というある語を別の語で言い換える用法の意味もあるが(ジーニアスおよびエバーグリーンに「言い換えれば」アリ)、どちらの意味の場合でも等位接続詞として分類される。また、or には、命令文のあとに使われたい場合には、「さもなければ」の意味になるが、この意味の場合でも等位接続詞として分類される。 なお、「すなわち」「言い換えれば」の意味で or が接続詞として使われる場合、orの前にふつうはカンマ(,)が来る(ジーニアス、いいづなエバーグリーン)。 === so/ for === 接続詞としての so は、 <出来事→結果> の語順として「理由の文、so 結果の文」のように理由を前に、結果を後ろに書き、「・・・なので~」「・・・だから~」という意味になる。理由というほど明白な因果関係でなくても、比較的に関連性の高い2つの出来事において、「ある出来事, so 出来事の結果」という用法でも良い。 また、この場合の so の直前にはカンマ「 , 」を置くのが普通(ジーニアス、エバーグリーン)。 余談だが、接続詞としての so と for はそれぞれ、節と節だけ結びつける(フォレスト、エバーグリーン)。つまり、語と語、句と句、語と句などは結び付けない。 いっぽう、for は、 <結果←出来事> の語順として、「結果, for 理由の章」の構文で、堅い言い回しとして理由を説明する。口語で用いることはあまり無い(ジーニアス、エバーグリーン)。ほか、 for は、forの前述の出来事に対して、その理由を述べる接続詞である。 なので、普通は for の直前にはカンマ「 , 」が来る。 接続詞としての for は等位接続詞である。for は従属接続詞ではない等の理由で(ロイヤル)、because のように主節の前に出すことはできない。なお、もし For が文頭に置かれている場合、それは、その直前の文の理由を説明している(ロイヤル)。 === and === まず、and の基本的な意味を確認しよう。 ;並列と順序 and の基本的な意味は並列「および」「と」の意味だが、もうひとつ、動作・時間の順序という意味もある。「先に起きたこと and その直後に起きたこと」のような語順で and を使うこともある。 動作や時間の順序のand は、「そして」や「~して、」の意味である(ジーニアス、ロイヤル)。 たとえば come and see は「先に来て、そして見る(見た)」の意味であり、つまり不定詞の結果用法 come to see と同じ意味である(フォレスト)。同様の表現として、 go and see もある。 ;因果関係 さらに、and が因果関係をあらわす場合もある(ジーニアス、ロイヤル)。普通、文章では、先に行ったり紹介した動作が、あとの動作の理由になるので、andで因果関係を表すのも自然であろう。 {{コラム|and なのに逆接?| 上記で and は因果関係を表す場合もあるといったが、しかし人生では、必ずしも前に起きた動作の期待どおりに後の結果が起きるとは限らない場合も多々あるものである。このため、and があたかも but のような逆接的な意味かのように見える英文が生じる場合もある。 たとえば、「彼は努力して、そして失敗した」は、順序を意識すれば try hard and failed のような言い回しになる(ジーニアス)。努力 try hard という準備にもかかわらず失敗 fail したことから、文脈によっては and なのにまるで逆接のような意味も読み取れる場合もある。 さて、このことから、もし後の起きたことが先に起きたことに比べて対照的な場合、場合によっては and は、あたかも逆接 but のような意味に見える場合がある。 とはいえ、これはand の順序関係の用法の、派生的なものである。andの基本的な意味は、あくまで並列・順序だと思うべきだろう。 }} == 従属接続詞 == === 名詞節を導く従属接続詞 === 一方、名詞節を導くために使われる that およびwhether(~かどうか) と if(~かどうか) は'''従属接続詞'''である。that や whether を接続詞として解釈する考えもある。 ここでの名詞節を導く if は、「~かどうか」の意味での if である。「もし~ならば、」の if のことではない。また、「もし」の if との混同をさけるため、文頭では名詞節の if は使えない(ファクトブック)。この「~かどうか」の意味の if の性質について言い方を変えるなら、つまり if は動詞の目的語としてしか使えない(ジーニアス、青チャート、ほか多数)。 従属接続詞の典型的な文で The fact is (that)・・・ 「事実は・・・ということだ。」 The trouble is (that)・・・ 「困ったことに・・・ということだ。」 The truth is (that)・・・ 「真実は・・・ということだ。」 The reason is (that)・・・ 「理由は・・・ということだ。」 などがある。 このように、名詞節を導く that は、「・・・ということだ。」の意味になる。 that は主語・補語・目的語になる(上記の the reason is that などの例文の場合は、that が補語になっている)。 ほか、 It is 形容詞 that ・・・ という形式主語の文章で 使われる that は接続詞でもある(ジーニアス、エバーグリーン )。 ほか、that節が know,say ,think, tell, hope など一般的な動詞の目的語になっている場合は、thatを省略することも多い(ブレイクスルー、インスパイア)。 ただし、形式目的語の that は省略できない(エバーグリーン)。形式目的語とは、 He made it clear that ~ . 「彼は~であることを明らかにした。」 のような it を仮の目的語とする文章のこと。 that 節は普通は前置詞の後ろに置かれることないが(ジーニアス)、例外的に in that(~という点で、~だから) と except that(~を除いて)という用法がある。 なお、 in that には意味の異なる「~という点で」という用法と、もうひとつ「~だから」「~であるか」という別の用法があることに注意(ジーニアス)。 参考書によっては in that は前置詞の項目に書いてある場合もある(青チャート)。 ほか、Now that で、「今や~だから」という表現ができる。口語ではよくthatが省略され、Now だけになる。 典型的な例文は Now (that) he is eighteen, he can vote. 「今や彼は18歳なのだから、彼は投票できる。」 である(ジーニアス、青チャート)。 このほか、紹介している参考書は少ないが(青チャート、インスパイア)、分詞構文の Seeing that ~「~であるから」「~だから」が接続詞的に用いられる用法もある(青チャート)。 === 副詞節を導く従属接続詞 === ==== はじめに ==== ほか、(たとえば平叙文のなかで)副詞節を導かれるために使われる when (~のとき、)や where (~の場所)が従属接続詞である。 before , after および since や until なども従属接続詞。 as soon as や once もこれに含める(ジーニアス、フォレスト)。 「until ~」は、「~」の瞬間まで動作が継続しているときに使い、「~するまで(ずっと)」の意味である。 一方、継続しない場合で、その時までに動作が完了している場合には、untilではなくby the time 「~する(時)までに」を使う。 as well as が等位接続詞なのに as soon as が従属なのはアレだが、まあどの参考書でもそういう分類になっている。 as soon as は言い換えで、the moment や the instant や no sooner ・・・ than ~ などの言い換え表現がある。 ==== once ==== once は「いったん~すると」の意味。once をどう分類するかが参考書ごとに違う。 ifやunlessなどと同様に「条件」として once を分類する参考書もあれば(ブレイクスルー、インスパイア)、 beforeやafterやsinceなどと同様の「起点」として once を分類する参考書もある(ジーニアス、フォレスト)。 なお、as soon as と once がなぜか同じ章節で紹介される参考書が多いが(ジーニアス、フォレスト、しかし意味が違う接続詞なので混同しないように。 if~ は内容が未来であっても現在形を使うが、as soon as ~ も後続の文では内容が未来であっても現在形を使うので、もしかしたらその理由でonceが「条件」として分類されているのかもしれない。 また、as soon as ~ と同様に、once ~ も後続の文の内容が未来であっても現在形を使う(ジーニアス)。そういう共通点からか、一緒に「起点」として紹介されるのかもしれない。 しかし、単に分類が同じだけであり、 once は as soon as とは意味がまったく違うので、混同しないように。 ==== その他 ==== 時間の表現だけでなく、because や since (since には理由の意味もある)も従属接続詞。 because は従属接続詞なので、よって主節なしで 「Because ~ .」 といったBecause だけの節をつくることは原則、誤用だとみなされる(青チャート、ジーニアス)。 ただし例外的に、"Why ~?" といった Why を使った質問文に対して、解答で"Because ~" と because だけの節の文章が許されている(青チャート、ジーニアス)。 since は基本、相手が既知の話題についての理由を説明するときに使うので(ブレイクスルー、フォレスト、ジーニアス)、since節の時制は過去形になる事も多い(青チャート)。また、上記の事情のため、sinceのつくる副詞節は文頭や前方に置かれることも多いが(インスパイア、ジーニアス、ブレイクスルー)、しかしsinceを文頭に置かなくても正しい英語である(青チャート)。 「so ~(形容詞) that ・・・(文)」 は従属接続詞。 so に等位接続詞の用法もあるが、しかし 「so 形容詞 that 文」で結びつけられている形容詞とthat後続の文は対等ではないので、従属接続詞のほうが適切であろう。 例文は著作権のため省略。 ==== 譲歩 ==== 「譲歩」の意味である、though や although が従属接続詞として分類されている(ジーニアス、フォレスト、ロイヤル)。 though よりも although のほうが堅い言い回しである(フォレスト、ロイヤル)。 なお、英文法の接続詞の単元でいう「譲歩」は、日本語の日常語の「譲歩」とは意味がやや違う。日常語の「譲歩」とは、自分と相手・他人の主張が対立したい場合に、相手の意見を聞き入れたり時には従うことに重点が置かれるのが日常語の譲歩である(広辞苑、三省堂新明解)。 しかし、この接続詞の英文法でいう「譲歩」とは、相手の主張の一部を事実ではあると認めた上で、それでも自分の主張に事実性などがあることを主張しているのが、英文法の接続詞の分野での「譲歩」である(桐原フォレスト)。 even if ~ も even though ~ も「たとえ ~ だとしても」という譲歩の意味があるが、下記のような違いがある。 even though ~ は、though の後に事実がきて、話し手は事実を知っている。 even if ~ は、if のあとに仮定がきて、その仮定が事実かどうかを話しては知らない。 これとは別に、 even if ~ で if のあとが仮定法過去になる場合もある(ジーニアス、インスパイア)。 基本的には、even if も even though も、evenは単に直後の語を強調しているだけである(インスパイア)。 if「もし~」 のあとが事実かどうかを話し手が知らないのもifの不普通の用法だし、though 「~にもかかわらず」も通常は話し手は事実を前提にしているからである。 単に even は if や though に譲歩の意味をつけたしたり、譲歩を強調したりしているだけにすぎない。 ==== 条件 ==== 条件を表すif および unless も従属接続詞。 unless は、「もし~でなければ」という意味であるが(ジーニアス、ロイヤル)、「~でない限り、」と訳される場合も多い(フォレスト、ロイヤル)。なお、unless の直後の文は否定形にはならず(フォレスト、ジーニアス)、つまり unless の直後の文は肯定形である。 unless は、「否定の条件」であるという性質に加えて、さらに基本的に「唯一の条件」という性質がある(青チャート)。「起きてほしくない事を避けるためには、unless 以降の内容を実行するしかない」という意味での唯一性の主張が unless にはある。 このことなどから、 unless ~の文を if ・・・ not ~ の文章に書き換えできる一方で(unless → if not は可能な場合が多い)、しかし if not → unless の書き換えが無理な場合が多い。 unless は「条件の文 unless 予想される結果の文」の語順。unless においてカンマなどは不要。 unless の語順は、「予想される結末 unless 結末が成り立たなくなる条件」である。なお、unlessの主節(※ 予想される結末のほう)には、willなどの未来表現を使うのが普通。一方、ifおよびunless では従属節の内容がたとえ未来における内容であっても従属節の時制は現在形にする(ジーニアス)。桐原やロイヤルでは従属節の時制はとくに解説では明記されていないが、例文の時制を見ればジーニアスと同様に桐原などでもunlessの従属節は現在形である。 === in case ~ === 「in case ~(文)」は「~の場合にそなえて」の意味であり、従属接続詞として分類され、この場合は普通は主節のあとに in case ~ が置かれる(フォレレスト、ジーニアス)。 in case ~ の典型的な例文は、 Take an umbrella with you in case it rains. 「雨が降るといけないから、かさを持っていきなさい。」 ※ 数研 青チャート、ジーニアス take の代わりに bring の場合もある。また、この傘をもっていく例文の場合なら with you は省略可能。上記例文の出典の参考書にも with you をつけてないものもある。 Bring an umbrella in case it rains. 「雨が降るといけないから、かさを持っていきなさい。」 ※ ファクトブック 命令形ではなく平叙文の場合もあり、下記のような例文もある。 I'll take an umbrella with me in case it rains. 「雨が降るといけないから、かさを持っていこう。」 ※ フォレスト with me は省略可能。自分で持っていくので with me になる(青チャート)。 「in case ~ 」の副詞節に it should rain. のように should が使われる場合もあるが、これは可能性が低いと話し手・書き手が思っている意味である(青チャート、ブレイクスルー)。 なお、in case は上記の「~するといけないから」「~しないように」の用法の他にも、case 「条件」の文字通り「~の条件で」の意味で in case を使う場合もアメリカ英語では見られ(ジーニアス、フォレスト)、この場合は if でも言い換えできる。 言い換え表現で、「~するといけないから」「~しないように」用法の in case と同じ意味は「for fear that A ~」や「lest A (should) ~」でも言える。 for fear も lest も、ともに固い表現である(ジーニアス)。ジーニアス以外の参考書の多くは、for fear が固い表現であることを取り上げていない。 for fear ~でも lest ~でも、つづく「~」の部分には not をつけない。日本語に引きづられて not をつけないように注意。 英和辞典を見れば fear は「恐れ」「不安」などの意味が書いてあることからも想像がつくように、for fear のあとには、おそれている内容を書くので、つまり、実現してほしくないことを肯定形で書くことになるのも当然であろう。 さて、lest について、ジーニアスいわく、 lest は固い言い方なだけであり、頻度自体は for fear よりも lest のほうが高いと、ジーニアスは主張している。 lest のshould が省略される場合もある。なお、shouldが省略された場合には、続く動詞には原形が来る。lest のshould 省略時の動詞の原形をつかうことを仮定法現在として解釈する流儀もある(青チャート)。 ほか、文法教育的にはあまり注目されないが、 so that ~ 「~のために」と、否定 not を組み合わせて、たとえば 「so that A won't ~」により「~しないように」という言い換えも可能である。won't の変わりに can't の場合もある(ブレイクスルー)。 === その他 === その他、as far as や as long as など範囲を表す表現が、カンマなどを補われて、従属接続詞として分類される。 「as far as I know,」 で「私の知る限りでは、」の意味。as far as の代わりに so far as とすることもある(ロイヤル)。 よくある典型文は As far as I know, he is ~. 「私の知るかぎり、彼は~な人だ」 である(フォレスト、インスパイア)。そのほか、 As far as I'm concerned, ~ 「私に関する限り、」 という表現が、たとえば「私に関する限り、それで結構です。」(青チャート)とか「私に関する限り、不満はありません。」(ジーニアス)のような文章で使われる。 このように as ・・・ as は範囲を表すことがある。 このほか、別の用法で as far as で、自分の意見を言う用法もある(ブレイクスルー、ジーニアス)。たとえばブレイクスルーいわく、「私の意見では、冷凍食品はおいしくない」という単なる持論にも as far as を使っている例文がある。 as long as には用法が2種類あり、ひとつの用法は「~する間」という時間的な範囲を表す用法であり、もうひとつの用法は最低限の条件を表し(フォレスト)、「~しさえすれば」などと訳される(ジーニアス、フォレスト)。as long as の代わりに so long as とすることもある(ジーニアス、フォレスト)。「~する限りは」と訳される場合もある(ロイヤル)。 慣用的なよくある言い回しとして、「as long as I live 」で「私が生きている限り」の意味(ロイヤル、ジーニアス)。 I will never forget your kindness as long as I live. 「私が生きているかぎり、あなたのご親切を忘れません。」 のような文章がよく参考書にある(ジーニアス、青チャート)。 なお、べつにneverを使わずとも、 I won't forget your kindness as long as I live. 「私が生きているかぎり、あなたのご親切を忘れません。」 のような文章もよくある(インスパイア)。 「~さえすれば」の as long as は、言い換えとして、if only または only if で言い換えすることもできる。 目的を表す「 so that ~」も接続詞である。in order that も同様、目的を表す接続詞である。なお、so that ~ について、口語では thatが省略されることも多く、つまり so だけで目的の接続詞になることもある(フォレスト、ジーニアス)。 so that 節の中では、can や will や may をつかうのが普通(フォレスト、ジーニアス)。 なお、「so ~(形容詞など) that ・・・」は程度をあらわす接続詞である。 in order that ~ は堅い表現。in order that 節の中では、can や will や may をつかうのが普通(フォレスト、ジーニアス)。 as も接続詞の用法がある(ロイヤル、フォレスト)。 その他にも、さまざまな接続詞がある suppose や supposed や providing や provided などを接続詞として分類することもある(フォレスト)。 2jsfs66jozmipc01in9mzm35m7aq5gz 205550 205537 2022-07-20T02:44:04Z すじにくシチュー 12058 /* 従属接続詞 */ I'm not sure whether(またはif) ~ wikitext text/x-wiki == 接続詞 == 語と語、句と句、節と節、など、文法上対等のものを結びつけるのが等位接続詞である。 いっぽう、従属節を主節と結びつけるのが従属接続詞であり(ジーニアス、フォレスト)、従位接続詞ともいう(ロイヤル)。 == 等位接続詞 == === 概要 === '''等位接続詞'''とは、and, or, but のように文法上等しいものを結びつける接続詞である。上記のほかにも、nor , so, for が等位接続詞である。 both A and B や either A or B なども便宜的にか等位接続詞として分類される。また、 not A but B や not only A but (also) B も等位接続詞として分類される。 便宜的に、not only A but also B と同じ意味をもつ as well as も、参考書では同じ単元で紹介される。 either は、「AかBかのどちらか」という意味である。 neither A nor B は、AもBも両方とも否定する表現であり、つまり「AとBのどちらも~ない」の意味である。 なお、neither A nor B が主語の場合、動詞はBの時制に一致させる(ジーニアス)。また、nor の直後の文章は肯定形である。 neither は基本、A,Bの2つしか使わない。3つ以上では使わないのが原則だが、しかし米英には原則に反して3つ以上で使う人もいるが(ロイヤル)、入試にはそこまで出ないだろう。また、neither で nor の代わりに原則に反して or を使う人もいるとのこと(ロイヤル)。入試では原則的な場合だけを考えればよいだろう。 「neither」とは not either の意味だろう、というのがロイヤル英文法の見解。 nor は、 neither のある文でなくても使われる場合がある(桐原、ロイヤル)。 否定語の not や don't などのあと、 「not A, nor B」または「don't A(動詞) nor B(動詞) 」で「AもBも無い」という意味で、neitherなしで nor が not などの否定語とともに使われる場合がある。 カンマが無い場合もある(ロイヤル英文法)。この場合でも、A nor B のあとに動詞が来る場合、その文は肯定形である。 「AもBもどちらも~ない」と否定の内容を並列させたい場合、andではなくnorを使う(桐原)。 さて、and には、命令文のあとに使われたい場合には、「そうすれば」の意味になるが、この意味の場合でも等位接続詞として分類される。 or には、「または」の意味のほかにも「すなわち」「言い換えれば」というある語を別の語で言い換える用法の意味もあるが(ジーニアスおよびエバーグリーンに「言い換えれば」アリ)、どちらの意味の場合でも等位接続詞として分類される。また、or には、命令文のあとに使われたい場合には、「さもなければ」の意味になるが、この意味の場合でも等位接続詞として分類される。 なお、「すなわち」「言い換えれば」の意味で or が接続詞として使われる場合、orの前にふつうはカンマ(,)が来る(ジーニアス、いいづなエバーグリーン)。 === so/ for === 接続詞としての so は、 <出来事→結果> の語順として「理由の文、so 結果の文」のように理由を前に、結果を後ろに書き、「・・・なので~」「・・・だから~」という意味になる。理由というほど明白な因果関係でなくても、比較的に関連性の高い2つの出来事において、「ある出来事, so 出来事の結果」という用法でも良い。 また、この場合の so の直前にはカンマ「 , 」を置くのが普通(ジーニアス、エバーグリーン)。 余談だが、接続詞としての so と for はそれぞれ、節と節だけ結びつける(フォレスト、エバーグリーン)。つまり、語と語、句と句、語と句などは結び付けない。 いっぽう、for は、 <結果←出来事> の語順として、「結果, for 理由の章」の構文で、堅い言い回しとして理由を説明する。口語で用いることはあまり無い(ジーニアス、エバーグリーン)。ほか、 for は、forの前述の出来事に対して、その理由を述べる接続詞である。 なので、普通は for の直前にはカンマ「 , 」が来る。 接続詞としての for は等位接続詞である。for は従属接続詞ではない等の理由で(ロイヤル)、because のように主節の前に出すことはできない。なお、もし For が文頭に置かれている場合、それは、その直前の文の理由を説明している(ロイヤル)。 === and === まず、and の基本的な意味を確認しよう。 ;並列と順序 and の基本的な意味は並列「および」「と」の意味だが、もうひとつ、動作・時間の順序という意味もある。「先に起きたこと and その直後に起きたこと」のような語順で and を使うこともある。 動作や時間の順序のand は、「そして」や「~して、」の意味である(ジーニアス、ロイヤル)。 たとえば come and see は「先に来て、そして見る(見た)」の意味であり、つまり不定詞の結果用法 come to see と同じ意味である(フォレスト)。同様の表現として、 go and see もある。 ;因果関係 さらに、and が因果関係をあらわす場合もある(ジーニアス、ロイヤル)。普通、文章では、先に行ったり紹介した動作が、あとの動作の理由になるので、andで因果関係を表すのも自然であろう。 {{コラム|and なのに逆接?| 上記で and は因果関係を表す場合もあるといったが、しかし人生では、必ずしも前に起きた動作の期待どおりに後の結果が起きるとは限らない場合も多々あるものである。このため、and があたかも but のような逆接的な意味かのように見える英文が生じる場合もある。 たとえば、「彼は努力して、そして失敗した」は、順序を意識すれば try hard and failed のような言い回しになる(ジーニアス)。努力 try hard という準備にもかかわらず失敗 fail したことから、文脈によっては and なのにまるで逆接のような意味も読み取れる場合もある。 さて、このことから、もし後の起きたことが先に起きたことに比べて対照的な場合、場合によっては and は、あたかも逆接 but のような意味に見える場合がある。 とはいえ、これはand の順序関係の用法の、派生的なものである。andの基本的な意味は、あくまで並列・順序だと思うべきだろう。 }} == 従属接続詞 == === 名詞節を導く従属接続詞 === 一方、名詞節を導くために使われる that およびwhether(~かどうか) と if(~かどうか) は'''従属接続詞'''である。that や whether を接続詞として解釈する考えもある。 ここでの名詞節を導く if は、「~かどうか」の意味での if である。「もし~ならば、」の if のことではない。また、「もし」の if との混同をさけるため、文頭では名詞節の if は使えない(ファクトブック)。この「~かどうか」の意味の if の性質について言い方を変えるなら、つまり if は動詞の目的語としてしか使えない(ジーニアス、青チャート、ほか多数)。 従属接続詞の典型的な文で The fact is (that)・・・ 「事実は・・・ということだ。」 The trouble is (that)・・・ 「困ったことに・・・ということだ。」 The truth is (that)・・・ 「真実は・・・ということだ。」 The reason is (that)・・・ 「理由は・・・ということだ。」 などがある。 このように、名詞節を導く that は、「・・・ということだ。」の意味になる。 that は主語・補語・目的語になる(上記の the reason is that などの例文の場合は、that が補語になっている)。 ほか、 It is 形容詞 that ・・・ という形式主語の文章で 使われる that は接続詞でもある(ジーニアス、エバーグリーン )。 ほか、that節が know,say ,think, tell, hope など一般的な動詞の目的語になっている場合は、thatを省略することも多い(ブレイクスルー、インスパイア)。 ただし、形式目的語の that は省略できない(エバーグリーン)。形式目的語とは、 He made it clear that ~ . 「彼は~であることを明らかにした。」 のような it を仮の目的語とする文章のこと。 that 節は普通は前置詞の後ろに置かれることないが(ジーニアス)、例外的に in that(~という点で、~だから) と except that(~を除いて)という用法がある。 なお、 in that には意味の異なる「~という点で」という用法と、もうひとつ「~だから」「~であるか」という別の用法があることに注意(ジーニアス)。 参考書によっては in that は前置詞の項目に書いてある場合もある(青チャート)。 ほか、Now that で、「今や~だから」という表現ができる。口語ではよくthatが省略され、Now だけになる。 典型的な例文は Now (that) he is eighteen, he can vote. 「今や彼は18歳なのだから、彼は投票できる。」 である(ジーニアス、青チャート)。 このほか、紹介している参考書は少ないが(青チャート、インスパイア)、分詞構文の Seeing that ~「~であるから」「~だから」が接続詞的に用いられる用法もある(青チャート)。 I7m glad that you have come to meet us. 「あなたがお迎えにきてくれて、うれしく思います」(青チャート) のような例文がよくある。 I'm glad that ~ 「~できて、うれしいです」 のように、「感情を現す形容詞 + that 」の that も接続詞である(青チャート)。 afraid, disappointed, sad, sorry, glad, happy, angry, surprised , upset などがこのような形容詞である(青チャート、ジーニアス)。この場合の that は省略されることも多い。なお、この場合の感情に続く that 以下の内容は「理由」を表す(ジーニアス)。 We are sorry that you cannot come. 「あなたがこられないのは残念です。」(インスパイア) この場合の sorry は謝罪ではないので注意。 sure 「確信している」は日本語では感情とは言いづらいが、青チャートはこれを感情に含めている。ただし、ジーニアスはsureを不採用。 なお、sure は感情のように I'm sure that ~ と主語を人称代名詞とするのが普通。辞書ジーニアスを見たが、it を主語にする sure は見つからなかった。 いっぽう、certain は、 It is certain that ~ も I'm certain もともに許される。(フォレストに I'm certain あり。ブレイクスルーに it is certain) なお、確信ではなく「疑わしい」と思っている場合は、 It is doubtful whether (またはif)~ 「~かどうかは疑わしい」 のように、 接続詞は whether または if になる。この場合の whether や if も名詞節である。 I'm doubtful whether(if) のように人称代名詞で言ってもよい(インスパイア)。さらに、形容詞ではなく動詞 doubt で I doubt whether (if) ~ で言うことも可能(インスパイア)。 なお「確信」している場合、I'm sure は「確信している」の「信」じるの文字からも想像がつくように、動詞 believe で I believe that と細かなニュアンスを無視すれば言い換えもできる(インスパイア)。 ほか、確信していない場合は、つまり確信に not がつく場合は、that よりも whether や if のほうが好ましい(インスパイア)。つまり I'm not sure whether(またはif) ~ のようになる(インスパイア)。 === 副詞節を導く従属接続詞 === ==== はじめに ==== ほか、(たとえば平叙文のなかで)副詞節を導かれるために使われる when (~のとき、)や where (~の場所)が従属接続詞である。 before , after および since や until なども従属接続詞。 as soon as や once もこれに含める(ジーニアス、フォレスト)。 「until ~」は、「~」の瞬間まで動作が継続しているときに使い、「~するまで(ずっと)」の意味である。 一方、継続しない場合で、その時までに動作が完了している場合には、untilではなくby the time 「~する(時)までに」を使う。 as well as が等位接続詞なのに as soon as が従属なのはアレだが、まあどの参考書でもそういう分類になっている。 as soon as は言い換えで、the moment や the instant や no sooner ・・・ than ~ などの言い換え表現がある。 ==== once ==== once は「いったん~すると」の意味。once をどう分類するかが参考書ごとに違う。 ifやunlessなどと同様に「条件」として once を分類する参考書もあれば(ブレイクスルー、インスパイア)、 beforeやafterやsinceなどと同様の「起点」として once を分類する参考書もある(ジーニアス、フォレスト)。 なお、as soon as と once がなぜか同じ章節で紹介される参考書が多いが(ジーニアス、フォレスト、しかし意味が違う接続詞なので混同しないように。 if~ は内容が未来であっても現在形を使うが、as soon as ~ も後続の文では内容が未来であっても現在形を使うので、もしかしたらその理由でonceが「条件」として分類されているのかもしれない。 また、as soon as ~ と同様に、once ~ も後続の文の内容が未来であっても現在形を使う(ジーニアス)。そういう共通点からか、一緒に「起点」として紹介されるのかもしれない。 しかし、単に分類が同じだけであり、 once は as soon as とは意味がまったく違うので、混同しないように。 ==== その他 ==== 時間の表現だけでなく、because や since (since には理由の意味もある)も従属接続詞。 because は従属接続詞なので、よって主節なしで 「Because ~ .」 といったBecause だけの節をつくることは原則、誤用だとみなされる(青チャート、ジーニアス)。 ただし例外的に、"Why ~?" といった Why を使った質問文に対して、解答で"Because ~" と because だけの節の文章が許されている(青チャート、ジーニアス)。 since は基本、相手が既知の話題についての理由を説明するときに使うので(ブレイクスルー、フォレスト、ジーニアス)、since節の時制は過去形になる事も多い(青チャート)。また、上記の事情のため、sinceのつくる副詞節は文頭や前方に置かれることも多いが(インスパイア、ジーニアス、ブレイクスルー)、しかしsinceを文頭に置かなくても正しい英語である(青チャート)。 「so ~(形容詞) that ・・・(文)」 は従属接続詞。 so に等位接続詞の用法もあるが、しかし 「so 形容詞 that 文」で結びつけられている形容詞とthat後続の文は対等ではないので、従属接続詞のほうが適切であろう。 例文は著作権のため省略。 ==== 譲歩 ==== 「譲歩」の意味である、though や although が従属接続詞として分類されている(ジーニアス、フォレスト、ロイヤル)。 though よりも although のほうが堅い言い回しである(フォレスト、ロイヤル)。 なお、英文法の接続詞の単元でいう「譲歩」は、日本語の日常語の「譲歩」とは意味がやや違う。日常語の「譲歩」とは、自分と相手・他人の主張が対立したい場合に、相手の意見を聞き入れたり時には従うことに重点が置かれるのが日常語の譲歩である(広辞苑、三省堂新明解)。 しかし、この接続詞の英文法でいう「譲歩」とは、相手の主張の一部を事実ではあると認めた上で、それでも自分の主張に事実性などがあることを主張しているのが、英文法の接続詞の分野での「譲歩」である(桐原フォレスト)。 even if ~ も even though ~ も「たとえ ~ だとしても」という譲歩の意味があるが、下記のような違いがある。 even though ~ は、though の後に事実がきて、話し手は事実を知っている。 even if ~ は、if のあとに仮定がきて、その仮定が事実かどうかを話しては知らない。 これとは別に、 even if ~ で if のあとが仮定法過去になる場合もある(ジーニアス、インスパイア)。 基本的には、even if も even though も、evenは単に直後の語を強調しているだけである(インスパイア)。 if「もし~」 のあとが事実かどうかを話し手が知らないのもifの不普通の用法だし、though 「~にもかかわらず」も通常は話し手は事実を前提にしているからである。 単に even は if や though に譲歩の意味をつけたしたり、譲歩を強調したりしているだけにすぎない。 ==== 条件 ==== 条件を表すif および unless も従属接続詞。 unless は、「もし~でなければ」という意味であるが(ジーニアス、ロイヤル)、「~でない限り、」と訳される場合も多い(フォレスト、ロイヤル)。なお、unless の直後の文は否定形にはならず(フォレスト、ジーニアス)、つまり unless の直後の文は肯定形である。 unless は、「否定の条件」であるという性質に加えて、さらに基本的に「唯一の条件」という性質がある(青チャート)。「起きてほしくない事を避けるためには、unless 以降の内容を実行するしかない」という意味での唯一性の主張が unless にはある。 このことなどから、 unless ~の文を if ・・・ not ~ の文章に書き換えできる一方で(unless → if not は可能な場合が多い)、しかし if not → unless の書き換えが無理な場合が多い。 unless は「条件の文 unless 予想される結果の文」の語順。unless においてカンマなどは不要。 unless の語順は、「予想される結末 unless 結末が成り立たなくなる条件」である。なお、unlessの主節(※ 予想される結末のほう)には、willなどの未来表現を使うのが普通。一方、ifおよびunless では従属節の内容がたとえ未来における内容であっても従属節の時制は現在形にする(ジーニアス)。桐原やロイヤルでは従属節の時制はとくに解説では明記されていないが、例文の時制を見ればジーニアスと同様に桐原などでもunlessの従属節は現在形である。 === in case ~ === 「in case ~(文)」は「~の場合にそなえて」の意味であり、従属接続詞として分類され、この場合は普通は主節のあとに in case ~ が置かれる(フォレレスト、ジーニアス)。 in case ~ の典型的な例文は、 Take an umbrella with you in case it rains. 「雨が降るといけないから、かさを持っていきなさい。」 ※ 数研 青チャート、ジーニアス take の代わりに bring の場合もある。また、この傘をもっていく例文の場合なら with you は省略可能。上記例文の出典の参考書にも with you をつけてないものもある。 Bring an umbrella in case it rains. 「雨が降るといけないから、かさを持っていきなさい。」 ※ ファクトブック 命令形ではなく平叙文の場合もあり、下記のような例文もある。 I'll take an umbrella with me in case it rains. 「雨が降るといけないから、かさを持っていこう。」 ※ フォレスト with me は省略可能。自分で持っていくので with me になる(青チャート)。 「in case ~ 」の副詞節に it should rain. のように should が使われる場合もあるが、これは可能性が低いと話し手・書き手が思っている意味である(青チャート、ブレイクスルー)。 なお、in case は上記の「~するといけないから」「~しないように」の用法の他にも、case 「条件」の文字通り「~の条件で」の意味で in case を使う場合もアメリカ英語では見られ(ジーニアス、フォレスト)、この場合は if でも言い換えできる。 言い換え表現で、「~するといけないから」「~しないように」用法の in case と同じ意味は「for fear that A ~」や「lest A (should) ~」でも言える。 for fear も lest も、ともに固い表現である(ジーニアス)。ジーニアス以外の参考書の多くは、for fear が固い表現であることを取り上げていない。 for fear ~でも lest ~でも、つづく「~」の部分には not をつけない。日本語に引きづられて not をつけないように注意。 英和辞典を見れば fear は「恐れ」「不安」などの意味が書いてあることからも想像がつくように、for fear のあとには、おそれている内容を書くので、つまり、実現してほしくないことを肯定形で書くことになるのも当然であろう。 さて、lest について、ジーニアスいわく、 lest は固い言い方なだけであり、頻度自体は for fear よりも lest のほうが高いと、ジーニアスは主張している。 lest のshould が省略される場合もある。なお、shouldが省略された場合には、続く動詞には原形が来る。lest のshould 省略時の動詞の原形をつかうことを仮定法現在として解釈する流儀もある(青チャート)。 ほか、文法教育的にはあまり注目されないが、 so that ~ 「~のために」と、否定 not を組み合わせて、たとえば 「so that A won't ~」により「~しないように」という言い換えも可能である。won't の変わりに can't の場合もある(ブレイクスルー)。 === その他 === その他、as far as や as long as など範囲を表す表現が、カンマなどを補われて、従属接続詞として分類される。 「as far as I know,」 で「私の知る限りでは、」の意味。as far as の代わりに so far as とすることもある(ロイヤル)。 よくある典型文は As far as I know, he is ~. 「私の知るかぎり、彼は~な人だ」 である(フォレスト、インスパイア)。そのほか、 As far as I'm concerned, ~ 「私に関する限り、」 という表現が、たとえば「私に関する限り、それで結構です。」(青チャート)とか「私に関する限り、不満はありません。」(ジーニアス)のような文章で使われる。 このように as ・・・ as は範囲を表すことがある。 このほか、別の用法で as far as で、自分の意見を言う用法もある(ブレイクスルー、ジーニアス)。たとえばブレイクスルーいわく、「私の意見では、冷凍食品はおいしくない」という単なる持論にも as far as を使っている例文がある。 as long as には用法が2種類あり、ひとつの用法は「~する間」という時間的な範囲を表す用法であり、もうひとつの用法は最低限の条件を表し(フォレスト)、「~しさえすれば」などと訳される(ジーニアス、フォレスト)。as long as の代わりに so long as とすることもある(ジーニアス、フォレスト)。「~する限りは」と訳される場合もある(ロイヤル)。 慣用的なよくある言い回しとして、「as long as I live 」で「私が生きている限り」の意味(ロイヤル、ジーニアス)。 I will never forget your kindness as long as I live. 「私が生きているかぎり、あなたのご親切を忘れません。」 のような文章がよく参考書にある(ジーニアス、青チャート)。 なお、べつにneverを使わずとも、 I won't forget your kindness as long as I live. 「私が生きているかぎり、あなたのご親切を忘れません。」 のような文章もよくある(インスパイア)。 「~さえすれば」の as long as は、言い換えとして、if only または only if で言い換えすることもできる。 目的を表す「 so that ~」も接続詞である。in order that も同様、目的を表す接続詞である。なお、so that ~ について、口語では thatが省略されることも多く、つまり so だけで目的の接続詞になることもある(フォレスト、ジーニアス)。 so that 節の中では、can や will や may をつかうのが普通(フォレスト、ジーニアス)。 なお、「so ~(形容詞など) that ・・・」は程度をあらわす接続詞である。 in order that ~ は堅い表現。in order that 節の中では、can や will や may をつかうのが普通(フォレスト、ジーニアス)。 as も接続詞の用法がある(ロイヤル、フォレスト)。 その他にも、さまざまな接続詞がある suppose や supposed や providing や provided などを接続詞として分類することもある(フォレスト)。 9mflim0sh0q9jti6lyiblhjdvo32n4k 205558 205550 2022-07-20T03:05:47Z すじにくシチュー 12058 whether to go or not wikitext text/x-wiki == 接続詞 == 語と語、句と句、節と節、など、文法上対等のものを結びつけるのが等位接続詞である。 いっぽう、従属節を主節と結びつけるのが従属接続詞であり(ジーニアス、フォレスト)、従位接続詞ともいう(ロイヤル)。 == 等位接続詞 == === 概要 === '''等位接続詞'''とは、and, or, but のように文法上等しいものを結びつける接続詞である。上記のほかにも、nor , so, for が等位接続詞である。 both A and B や either A or B なども便宜的にか等位接続詞として分類される。また、 not A but B や not only A but (also) B も等位接続詞として分類される。 便宜的に、not only A but also B と同じ意味をもつ as well as も、参考書では同じ単元で紹介される。 either は、「AかBかのどちらか」という意味である。 neither A nor B は、AもBも両方とも否定する表現であり、つまり「AとBのどちらも~ない」の意味である。 なお、neither A nor B が主語の場合、動詞はBの時制に一致させる(ジーニアス)。また、nor の直後の文章は肯定形である。 neither は基本、A,Bの2つしか使わない。3つ以上では使わないのが原則だが、しかし米英には原則に反して3つ以上で使う人もいるが(ロイヤル)、入試にはそこまで出ないだろう。また、neither で nor の代わりに原則に反して or を使う人もいるとのこと(ロイヤル)。入試では原則的な場合だけを考えればよいだろう。 「neither」とは not either の意味だろう、というのがロイヤル英文法の見解。 nor は、 neither のある文でなくても使われる場合がある(桐原、ロイヤル)。 否定語の not や don't などのあと、 「not A, nor B」または「don't A(動詞) nor B(動詞) 」で「AもBも無い」という意味で、neitherなしで nor が not などの否定語とともに使われる場合がある。 カンマが無い場合もある(ロイヤル英文法)。この場合でも、A nor B のあとに動詞が来る場合、その文は肯定形である。 「AもBもどちらも~ない」と否定の内容を並列させたい場合、andではなくnorを使う(桐原)。 さて、and には、命令文のあとに使われたい場合には、「そうすれば」の意味になるが、この意味の場合でも等位接続詞として分類される。 or には、「または」の意味のほかにも「すなわち」「言い換えれば」というある語を別の語で言い換える用法の意味もあるが(ジーニアスおよびエバーグリーンに「言い換えれば」アリ)、どちらの意味の場合でも等位接続詞として分類される。また、or には、命令文のあとに使われたい場合には、「さもなければ」の意味になるが、この意味の場合でも等位接続詞として分類される。 なお、「すなわち」「言い換えれば」の意味で or が接続詞として使われる場合、orの前にふつうはカンマ(,)が来る(ジーニアス、いいづなエバーグリーン)。 === so/ for === 接続詞としての so は、 <出来事→結果> の語順として「理由の文、so 結果の文」のように理由を前に、結果を後ろに書き、「・・・なので~」「・・・だから~」という意味になる。理由というほど明白な因果関係でなくても、比較的に関連性の高い2つの出来事において、「ある出来事, so 出来事の結果」という用法でも良い。 また、この場合の so の直前にはカンマ「 , 」を置くのが普通(ジーニアス、エバーグリーン)。 余談だが、接続詞としての so と for はそれぞれ、節と節だけ結びつける(フォレスト、エバーグリーン)。つまり、語と語、句と句、語と句などは結び付けない。 いっぽう、for は、 <結果←出来事> の語順として、「結果, for 理由の章」の構文で、堅い言い回しとして理由を説明する。口語で用いることはあまり無い(ジーニアス、エバーグリーン)。ほか、 for は、forの前述の出来事に対して、その理由を述べる接続詞である。 なので、普通は for の直前にはカンマ「 , 」が来る。 接続詞としての for は等位接続詞である。for は従属接続詞ではない等の理由で(ロイヤル)、because のように主節の前に出すことはできない。なお、もし For が文頭に置かれている場合、それは、その直前の文の理由を説明している(ロイヤル)。 === and === まず、and の基本的な意味を確認しよう。 ;並列と順序 and の基本的な意味は並列「および」「と」の意味だが、もうひとつ、動作・時間の順序という意味もある。「先に起きたこと and その直後に起きたこと」のような語順で and を使うこともある。 動作や時間の順序のand は、「そして」や「~して、」の意味である(ジーニアス、ロイヤル)。 たとえば come and see は「先に来て、そして見る(見た)」の意味であり、つまり不定詞の結果用法 come to see と同じ意味である(フォレスト)。同様の表現として、 go and see もある。 ;因果関係 さらに、and が因果関係をあらわす場合もある(ジーニアス、ロイヤル)。普通、文章では、先に行ったり紹介した動作が、あとの動作の理由になるので、andで因果関係を表すのも自然であろう。 {{コラム|and なのに逆接?| 上記で and は因果関係を表す場合もあるといったが、しかし人生では、必ずしも前に起きた動作の期待どおりに後の結果が起きるとは限らない場合も多々あるものである。このため、and があたかも but のような逆接的な意味かのように見える英文が生じる場合もある。 たとえば、「彼は努力して、そして失敗した」は、順序を意識すれば try hard and failed のような言い回しになる(ジーニアス)。努力 try hard という準備にもかかわらず失敗 fail したことから、文脈によっては and なのにまるで逆接のような意味も読み取れる場合もある。 さて、このことから、もし後の起きたことが先に起きたことに比べて対照的な場合、場合によっては and は、あたかも逆接 but のような意味に見える場合がある。 とはいえ、これはand の順序関係の用法の、派生的なものである。andの基本的な意味は、あくまで並列・順序だと思うべきだろう。 }} == 従属接続詞 == === 名詞節を導く従属接続詞 === 一方、名詞節を導くために使われる that およびwhether(~かどうか) と if(~かどうか) は'''従属接続詞'''である。that や whether を接続詞として解釈する考えもある。 ここでの名詞節を導く if は、「~かどうか」の意味での if である。「もし~ならば、」の if のことではない。また、「もし」の if との混同をさけるため、文頭では名詞節の if は使えない(ファクトブック)。この「~かどうか」の意味の if の性質について言い方を変えるなら、つまり if は動詞の目的語としてしか使えない(ジーニアス、青チャート、ほか多数)。 また、whether or not (~かどうか)という成句はある一方、ifにはない(インスパイア、青チャート)。 ほか、「whether to ~(動詞)」で「~すべきかどうか」というto不定詞の用法はあるが、ifには不定詞が続かない(インスパイア、青チャート)。 なお、 whether to go 「行くべきかどうか」という語が、参考書によくある典型例である。さらに、 whether to go or not (青チャート)「行くべきかどうか」や whether to go or stay (ブレイクスルー)「行くべきかとどまるべきか」のようになる場合もある。 さらに、助動詞 should を使って「べき」を強調する whether we should go or stay 「行くべきか残るべきか」という表現もある(青チャート)。 if の本来の用法は「もしも~」であり、「~かどうか」の意味は派生的な意味にすぎない、と考えるのが良いだろう。 ほか、if は口語的、whether は文語的である(ジーニアス、青チャ-ト)。 従属接続詞の典型的な文で The fact is (that)・・・ 「事実は・・・ということだ。」 The trouble is (that)・・・ 「困ったことに・・・ということだ。」 The truth is (that)・・・ 「真実は・・・ということだ。」 The reason is (that)・・・ 「理由は・・・ということだ。」 などがある。 このように、名詞節を導く that は、「・・・ということだ。」の意味になる。 that は主語・補語・目的語になる(上記の the reason is that などの例文の場合は、that が補語になっている)。 ほか、 It is 形容詞 that ・・・ という形式主語の文章で 使われる that は接続詞でもある(ジーニアス、エバーグリーン )。 ほか、that節が know,say ,think, tell, hope など一般的な動詞の目的語になっている場合は、thatを省略することも多い(ブレイクスルー、インスパイア)。 ただし、形式目的語の that は省略できない(エバーグリーン)。形式目的語とは、 He made it clear that ~ . 「彼は~であることを明らかにした。」 のような it を仮の目的語とする文章のこと。 that 節は普通は前置詞の後ろに置かれることないが(ジーニアス)、例外的に in that(~という点で、~だから) と except that(~を除いて)という用法がある。 なお、 in that には意味の異なる「~という点で」という用法と、もうひとつ「~だから」「~であるか」という別の用法があることに注意(ジーニアス)。 参考書によっては in that は前置詞の項目に書いてある場合もある(青チャート)。 ほか、Now that で、「今や~だから」という表現ができる。口語ではよくthatが省略され、Now だけになる。 典型的な例文は Now (that) he is eighteen, he can vote. 「今や彼は18歳なのだから、彼は投票できる。」 である(ジーニアス、青チャート)。 このほか、紹介している参考書は少ないが(青チャート、インスパイア)、分詞構文の Seeing that ~「~であるから」「~だから」が接続詞的に用いられる用法もある(青チャート)。 I7m glad that you have come to meet us. 「あなたがお迎えにきてくれて、うれしく思います」(青チャート) のような例文がよくある。 I'm glad that ~ 「~できて、うれしいです」 のように、「感情を現す形容詞 + that 」の that も接続詞である(青チャート)。 afraid, disappointed, sad, sorry, glad, happy, angry, surprised , upset などがこのような形容詞である(青チャート、ジーニアス)。この場合の that は省略されることも多い。なお、この場合の感情に続く that 以下の内容は「理由」を表す(ジーニアス)。 We are sorry that you cannot come. 「あなたがこられないのは残念です。」(インスパイア) この場合の sorry は謝罪ではないので注意。 sure 「確信している」は日本語では感情とは言いづらいが、青チャートはこれを感情に含めている。ただし、ジーニアスはsureを不採用。 なお、sure は感情のように I'm sure that ~ と主語を人称代名詞とするのが普通。辞書ジーニアスを見たが、it を主語にする sure は見つからなかった。 いっぽう、certain は、 It is certain that ~ も I'm certain もともに許される。(フォレストに I'm certain あり。ブレイクスルーに it is certain) なお、確信ではなく「疑わしい」と思っている場合は、 It is doubtful whether (またはif)~ 「~かどうかは疑わしい」 のように、 接続詞は whether または if になる。この場合の whether や if も名詞節である。 I'm doubtful whether(if) のように人称代名詞で言ってもよい(インスパイア)。さらに、形容詞ではなく動詞 doubt で I doubt whether (if) ~ で言うことも可能(インスパイア)。 なお「確信」している場合、I'm sure は「確信している」の「信」じるの文字からも想像がつくように、動詞 believe で I believe that と細かなニュアンスを無視すれば言い換えもできる(インスパイア)。 ほか、確信していない場合は、つまり確信に not がつく場合は、that よりも whether や if のほうが好ましい(インスパイア、ブレイクスルー)。つまり I'm not sure whether(またはif) ~ のようになる(インスパイア、ブレイクスルー)。 なお、動詞で「信じていない」という場合、つまり don't believe の場合、 I didn't believe what ~ のように whether ではなく what になるのに注意(インスパイア)。 === 副詞節を導く従属接続詞 === ==== はじめに ==== ほか、(たとえば平叙文のなかで)副詞節を導かれるために使われる when (~のとき、)や where (~の場所)が従属接続詞である。 before , after および since や until なども従属接続詞。 as soon as や once もこれに含める(ジーニアス、フォレスト)。 「until ~」は、「~」の瞬間まで動作が継続しているときに使い、「~するまで(ずっと)」の意味である。 一方、継続しない場合で、その時までに動作が完了している場合には、untilではなくby the time 「~する(時)までに」を使う。 as well as が等位接続詞なのに as soon as が従属なのはアレだが、まあどの参考書でもそういう分類になっている。 as soon as は言い換えで、the moment や the instant や no sooner ・・・ than ~ などの言い換え表現がある。 ==== once ==== once は「いったん~すると」の意味。once をどう分類するかが参考書ごとに違う。 ifやunlessなどと同様に「条件」として once を分類する参考書もあれば(ブレイクスルー、インスパイア)、 beforeやafterやsinceなどと同様の「起点」として once を分類する参考書もある(ジーニアス、フォレスト)。 なお、as soon as と once がなぜか同じ章節で紹介される参考書が多いが(ジーニアス、フォレスト、しかし意味が違う接続詞なので混同しないように。 if~ は内容が未来であっても現在形を使うが、as soon as ~ も後続の文では内容が未来であっても現在形を使うので、もしかしたらその理由でonceが「条件」として分類されているのかもしれない。 また、as soon as ~ と同様に、once ~ も後続の文の内容が未来であっても現在形を使う(ジーニアス)。そういう共通点からか、一緒に「起点」として紹介されるのかもしれない。 しかし、単に分類が同じだけであり、 once は as soon as とは意味がまったく違うので、混同しないように。 ==== その他 ==== 時間の表現だけでなく、because や since (since には理由の意味もある)も従属接続詞。 because は従属接続詞なので、よって主節なしで 「Because ~ .」 といったBecause だけの節をつくることは原則、誤用だとみなされる(青チャート、ジーニアス)。 ただし例外的に、"Why ~?" といった Why を使った質問文に対して、解答で"Because ~" と because だけの節の文章が許されている(青チャート、ジーニアス)。 since は基本、相手が既知の話題についての理由を説明するときに使うので(ブレイクスルー、フォレスト、ジーニアス)、since節の時制は過去形になる事も多い(青チャート)。また、上記の事情のため、sinceのつくる副詞節は文頭や前方に置かれることも多いが(インスパイア、ジーニアス、ブレイクスルー)、しかしsinceを文頭に置かなくても正しい英語である(青チャート)。 「so ~(形容詞) that ・・・(文)」 は従属接続詞。 so に等位接続詞の用法もあるが、しかし 「so 形容詞 that 文」で結びつけられている形容詞とthat後続の文は対等ではないので、従属接続詞のほうが適切であろう。 例文は著作権のため省略。 ==== 譲歩 ==== 「譲歩」の意味である、though や although が従属接続詞として分類されている(ジーニアス、フォレスト、ロイヤル)。 though よりも although のほうが堅い言い回しである(フォレスト、ロイヤル)。 なお、英文法の接続詞の単元でいう「譲歩」は、日本語の日常語の「譲歩」とは意味がやや違う。日常語の「譲歩」とは、自分と相手・他人の主張が対立したい場合に、相手の意見を聞き入れたり時には従うことに重点が置かれるのが日常語の譲歩である(広辞苑、三省堂新明解)。 しかし、この接続詞の英文法でいう「譲歩」とは、相手の主張の一部を事実ではあると認めた上で、それでも自分の主張に事実性などがあることを主張しているのが、英文法の接続詞の分野での「譲歩」である(桐原フォレスト)。 even if ~ も even though ~ も「たとえ ~ だとしても」という譲歩の意味があるが、下記のような違いがある。 even though ~ は、though の後に事実がきて、話し手は事実を知っている。 even if ~ は、if のあとに仮定がきて、その仮定が事実かどうかを話しては知らない。 これとは別に、 even if ~ で if のあとが仮定法過去になる場合もある(ジーニアス、インスパイア)。 基本的には、even if も even though も、evenは単に直後の語を強調しているだけである(インスパイア)。 if「もし~」 のあとが事実かどうかを話し手が知らないのもifの不普通の用法だし、though 「~にもかかわらず」も通常は話し手は事実を前提にしているからである。 単に even は if や though に譲歩の意味をつけたしたり、譲歩を強調したりしているだけにすぎない。 ==== 条件 ==== 条件を表すif および unless も従属接続詞。 unless は、「もし~でなければ」という意味であるが(ジーニアス、ロイヤル)、「~でない限り、」と訳される場合も多い(フォレスト、ロイヤル)。なお、unless の直後の文は否定形にはならず(フォレスト、ジーニアス)、つまり unless の直後の文は肯定形である。 unless は、「否定の条件」であるという性質に加えて、さらに基本的に「唯一の条件」という性質がある(青チャート)。「起きてほしくない事を避けるためには、unless 以降の内容を実行するしかない」という意味での唯一性の主張が unless にはある。 このことなどから、 unless ~の文を if ・・・ not ~ の文章に書き換えできる一方で(unless → if not は可能な場合が多い)、しかし if not → unless の書き換えが無理な場合が多い。 unless は「条件の文 unless 予想される結果の文」の語順。unless においてカンマなどは不要。 unless の語順は、「予想される結末 unless 結末が成り立たなくなる条件」である。なお、unlessの主節(※ 予想される結末のほう)には、willなどの未来表現を使うのが普通。一方、ifおよびunless では従属節の内容がたとえ未来における内容であっても従属節の時制は現在形にする(ジーニアス)。桐原やロイヤルでは従属節の時制はとくに解説では明記されていないが、例文の時制を見ればジーニアスと同様に桐原などでもunlessの従属節は現在形である。 === in case ~ === 「in case ~(文)」は「~の場合にそなえて」の意味であり、従属接続詞として分類され、この場合は普通は主節のあとに in case ~ が置かれる(フォレレスト、ジーニアス)。 in case ~ の典型的な例文は、 Take an umbrella with you in case it rains. 「雨が降るといけないから、かさを持っていきなさい。」 ※ 数研 青チャート、ジーニアス take の代わりに bring の場合もある。また、この傘をもっていく例文の場合なら with you は省略可能。上記例文の出典の参考書にも with you をつけてないものもある。 Bring an umbrella in case it rains. 「雨が降るといけないから、かさを持っていきなさい。」 ※ ファクトブック 命令形ではなく平叙文の場合もあり、下記のような例文もある。 I'll take an umbrella with me in case it rains. 「雨が降るといけないから、かさを持っていこう。」 ※ フォレスト with me は省略可能。自分で持っていくので with me になる(青チャート)。 「in case ~ 」の副詞節に it should rain. のように should が使われる場合もあるが、これは可能性が低いと話し手・書き手が思っている意味である(青チャート、ブレイクスルー)。 なお、in case は上記の「~するといけないから」「~しないように」の用法の他にも、case 「条件」の文字通り「~の条件で」の意味で in case を使う場合もアメリカ英語では見られ(ジーニアス、フォレスト)、この場合は if でも言い換えできる。 言い換え表現で、「~するといけないから」「~しないように」用法の in case と同じ意味は「for fear that A ~」や「lest A (should) ~」でも言える。 for fear も lest も、ともに固い表現である(ジーニアス)。ジーニアス以外の参考書の多くは、for fear が固い表現であることを取り上げていない。 for fear ~でも lest ~でも、つづく「~」の部分には not をつけない。日本語に引きづられて not をつけないように注意。 英和辞典を見れば fear は「恐れ」「不安」などの意味が書いてあることからも想像がつくように、for fear のあとには、おそれている内容を書くので、つまり、実現してほしくないことを肯定形で書くことになるのも当然であろう。 さて、lest について、ジーニアスいわく、 lest は固い言い方なだけであり、頻度自体は for fear よりも lest のほうが高いと、ジーニアスは主張している。 lest のshould が省略される場合もある。なお、shouldが省略された場合には、続く動詞には原形が来る。lest のshould 省略時の動詞の原形をつかうことを仮定法現在として解釈する流儀もある(青チャート)。 ほか、文法教育的にはあまり注目されないが、 so that ~ 「~のために」と、否定 not を組み合わせて、たとえば 「so that A won't ~」により「~しないように」という言い換えも可能である。won't の変わりに can't の場合もある(ブレイクスルー)。 === その他 === その他、as far as や as long as など範囲を表す表現が、カンマなどを補われて、従属接続詞として分類される。 「as far as I know,」 で「私の知る限りでは、」の意味。as far as の代わりに so far as とすることもある(ロイヤル)。 よくある典型文は As far as I know, he is ~. 「私の知るかぎり、彼は~な人だ」 である(フォレスト、インスパイア)。そのほか、 As far as I'm concerned, ~ 「私に関する限り、」 という表現が、たとえば「私に関する限り、それで結構です。」(青チャート)とか「私に関する限り、不満はありません。」(ジーニアス)のような文章で使われる。 このように as ・・・ as は範囲を表すことがある。 このほか、別の用法で as far as で、自分の意見を言う用法もある(ブレイクスルー、ジーニアス)。たとえばブレイクスルーいわく、「私の意見では、冷凍食品はおいしくない」という単なる持論にも as far as を使っている例文がある。 as long as には用法が2種類あり、ひとつの用法は「~する間」という時間的な範囲を表す用法であり、もうひとつの用法は最低限の条件を表し(フォレスト)、「~しさえすれば」などと訳される(ジーニアス、フォレスト)。as long as の代わりに so long as とすることもある(ジーニアス、フォレスト)。「~する限りは」と訳される場合もある(ロイヤル)。 慣用的なよくある言い回しとして、「as long as I live 」で「私が生きている限り」の意味(ロイヤル、ジーニアス)。 I will never forget your kindness as long as I live. 「私が生きているかぎり、あなたのご親切を忘れません。」 のような文章がよく参考書にある(ジーニアス、青チャート)。 なお、べつにneverを使わずとも、 I won't forget your kindness as long as I live. 「私が生きているかぎり、あなたのご親切を忘れません。」 のような文章もよくある(インスパイア)。 「~さえすれば」の as long as は、言い換えとして、if only または only if で言い換えすることもできる。 目的を表す「 so that ~」も接続詞である。in order that も同様、目的を表す接続詞である。なお、so that ~ について、口語では thatが省略されることも多く、つまり so だけで目的の接続詞になることもある(フォレスト、ジーニアス)。 so that 節の中では、can や will や may をつかうのが普通(フォレスト、ジーニアス)。 なお、「so ~(形容詞など) that ・・・」は程度をあらわす接続詞である。 in order that ~ は堅い表現。in order that 節の中では、can や will や may をつかうのが普通(フォレスト、ジーニアス)。 as も接続詞の用法がある(ロイヤル、フォレスト)。 その他にも、さまざまな接続詞がある suppose や supposed や providing や provided などを接続詞として分類することもある(フォレスト)。 stssynryahnx1z473fmm2m8cjr36rnq 205560 205558 2022-07-20T03:15:58Z すじにくシチュー 12058 /* 名詞節を導く従属接続詞 */ wikitext text/x-wiki == 接続詞 == 語と語、句と句、節と節、など、文法上対等のものを結びつけるのが等位接続詞である。 いっぽう、従属節を主節と結びつけるのが従属接続詞であり(ジーニアス、フォレスト)、従位接続詞ともいう(ロイヤル)。 == 等位接続詞 == === 概要 === '''等位接続詞'''とは、and, or, but のように文法上等しいものを結びつける接続詞である。上記のほかにも、nor , so, for が等位接続詞である。 both A and B や either A or B なども便宜的にか等位接続詞として分類される。また、 not A but B や not only A but (also) B も等位接続詞として分類される。 便宜的に、not only A but also B と同じ意味をもつ as well as も、参考書では同じ単元で紹介される。 either は、「AかBかのどちらか」という意味である。 neither A nor B は、AもBも両方とも否定する表現であり、つまり「AとBのどちらも~ない」の意味である。 なお、neither A nor B が主語の場合、動詞はBの時制に一致させる(ジーニアス)。また、nor の直後の文章は肯定形である。 neither は基本、A,Bの2つしか使わない。3つ以上では使わないのが原則だが、しかし米英には原則に反して3つ以上で使う人もいるが(ロイヤル)、入試にはそこまで出ないだろう。また、neither で nor の代わりに原則に反して or を使う人もいるとのこと(ロイヤル)。入試では原則的な場合だけを考えればよいだろう。 「neither」とは not either の意味だろう、というのがロイヤル英文法の見解。 nor は、 neither のある文でなくても使われる場合がある(桐原、ロイヤル)。 否定語の not や don't などのあと、 「not A, nor B」または「don't A(動詞) nor B(動詞) 」で「AもBも無い」という意味で、neitherなしで nor が not などの否定語とともに使われる場合がある。 カンマが無い場合もある(ロイヤル英文法)。この場合でも、A nor B のあとに動詞が来る場合、その文は肯定形である。 「AもBもどちらも~ない」と否定の内容を並列させたい場合、andではなくnorを使う(桐原)。 さて、and には、命令文のあとに使われたい場合には、「そうすれば」の意味になるが、この意味の場合でも等位接続詞として分類される。 or には、「または」の意味のほかにも「すなわち」「言い換えれば」というある語を別の語で言い換える用法の意味もあるが(ジーニアスおよびエバーグリーンに「言い換えれば」アリ)、どちらの意味の場合でも等位接続詞として分類される。また、or には、命令文のあとに使われたい場合には、「さもなければ」の意味になるが、この意味の場合でも等位接続詞として分類される。 なお、「すなわち」「言い換えれば」の意味で or が接続詞として使われる場合、orの前にふつうはカンマ(,)が来る(ジーニアス、いいづなエバーグリーン)。 === so/ for === 接続詞としての so は、 <出来事→結果> の語順として「理由の文、so 結果の文」のように理由を前に、結果を後ろに書き、「・・・なので~」「・・・だから~」という意味になる。理由というほど明白な因果関係でなくても、比較的に関連性の高い2つの出来事において、「ある出来事, so 出来事の結果」という用法でも良い。 また、この場合の so の直前にはカンマ「 , 」を置くのが普通(ジーニアス、エバーグリーン)。 余談だが、接続詞としての so と for はそれぞれ、節と節だけ結びつける(フォレスト、エバーグリーン)。つまり、語と語、句と句、語と句などは結び付けない。 いっぽう、for は、 <結果←出来事> の語順として、「結果, for 理由の章」の構文で、堅い言い回しとして理由を説明する。口語で用いることはあまり無い(ジーニアス、エバーグリーン)。ほか、 for は、forの前述の出来事に対して、その理由を述べる接続詞である。 なので、普通は for の直前にはカンマ「 , 」が来る。 接続詞としての for は等位接続詞である。for は従属接続詞ではない等の理由で(ロイヤル)、because のように主節の前に出すことはできない。なお、もし For が文頭に置かれている場合、それは、その直前の文の理由を説明している(ロイヤル)。 === and === まず、and の基本的な意味を確認しよう。 ;並列と順序 and の基本的な意味は並列「および」「と」の意味だが、もうひとつ、動作・時間の順序という意味もある。「先に起きたこと and その直後に起きたこと」のような語順で and を使うこともある。 動作や時間の順序のand は、「そして」や「~して、」の意味である(ジーニアス、ロイヤル)。 たとえば come and see は「先に来て、そして見る(見た)」の意味であり、つまり不定詞の結果用法 come to see と同じ意味である(フォレスト)。同様の表現として、 go and see もある。 ;因果関係 さらに、and が因果関係をあらわす場合もある(ジーニアス、ロイヤル)。普通、文章では、先に行ったり紹介した動作が、あとの動作の理由になるので、andで因果関係を表すのも自然であろう。 {{コラム|and なのに逆接?| 上記で and は因果関係を表す場合もあるといったが、しかし人生では、必ずしも前に起きた動作の期待どおりに後の結果が起きるとは限らない場合も多々あるものである。このため、and があたかも but のような逆接的な意味かのように見える英文が生じる場合もある。 たとえば、「彼は努力して、そして失敗した」は、順序を意識すれば try hard and failed のような言い回しになる(ジーニアス)。努力 try hard という準備にもかかわらず失敗 fail したことから、文脈によっては and なのにまるで逆接のような意味も読み取れる場合もある。 さて、このことから、もし後の起きたことが先に起きたことに比べて対照的な場合、場合によっては and は、あたかも逆接 but のような意味に見える場合がある。 とはいえ、これはand の順序関係の用法の、派生的なものである。andの基本的な意味は、あくまで並列・順序だと思うべきだろう。 }} == 従属接続詞 == === 名詞節を導く従属接続詞 === 一方、名詞節を導くために使われる that およびwhether(~かどうか) と if(~かどうか) は'''従属接続詞'''である。that や whether を接続詞として解釈する考えもある。 ここでの名詞節を導く if は、「~かどうか」の意味での if である。「もし~ならば、」の if のことではない。また、「もし」の if との混同をさけるため、文頭では名詞節の if は使えない(ファクトブック)。この「~かどうか」の意味の if の性質について言い方を変えるなら、つまり if は動詞の目的語としてしか使えない(ジーニアス、青チャート、ほか多数)。 また、whether or not (~かどうか)という成句はある一方、ifにはない(インスパイア、青チャート)。 ほか、「whether to ~(動詞)」で「~すべきかどうか」というto不定詞の用法はあるが、ifには不定詞が続かない(インスパイア、青チャート)。 なお、 whether to go 「行くべきかどうか」という語が、参考書によくある典型例である。さらに、 whether to go or not (青チャート)「行くべきかどうか」や whether to go or stay (ブレイクスルー)「行くべきかとどまるべきか」のようになる場合もある。 さらに、助動詞 should を使って「べき」を強調する whether we should go or stay 「行くべきか残るべきか」という表現もある(青チャート)。 whether we should go or not のように、whether の直後ではなく分節の最後に or not をつける場合もある(ジーニアス)。 また、whether は前置詞の目的語になることがあるが、ifはならない(インスパイア)。 if の本来の用法は「もしも~」であり、「~かどうか」の意味は派生的な意味にすぎない、と考えるのが良いだろう。 ほか、if は口語的、whether は文語的である(ジーニアス、青チャ-ト)。 depends on whether 、 など、動詞句 depends on とwhether との組み合わせが決まっている。depends on と if との組み合わせは禁止。なお depends on は、前置詞の目的語にwhether が来る例にもなっている。 wonder と ask は、if でも whether でも、どちらでも良い(ブレイクスルー、青チャート)。 ほか、 I wonder if ~ で「~がどうかなと思う」の意味。 さて、従属接続詞の典型的な文で The fact is (that)・・・ 「事実は・・・ということだ。」 The trouble is (that)・・・ 「困ったことに・・・ということだ。」 The truth is (that)・・・ 「真実は・・・ということだ。」 The reason is (that)・・・ 「理由は・・・ということだ。」 などがある。 このように、名詞節を導く that は、「・・・ということだ。」の意味になる。 that は主語・補語・目的語になる(上記の the reason is that などの例文の場合は、that が補語になっている)。 ほか、 It is 形容詞 that ・・・ という形式主語の文章で 使われる that は接続詞でもある(ジーニアス、エバーグリーン )。 ほか、that節が know,say ,think, tell, hope など一般的な動詞の目的語になっている場合は、thatを省略することも多い(ブレイクスルー、インスパイア)。 ただし、形式目的語の that は省略できない(エバーグリーン)。形式目的語とは、 He made it clear that ~ . 「彼は~であることを明らかにした。」 のような it を仮の目的語とする文章のこと。 that 節は普通は前置詞の後ろに置かれることないが(ジーニアス)、例外的に in that(~という点で、~だから) と except that(~を除いて)という用法がある。 なお、 in that には意味の異なる「~という点で」という用法と、もうひとつ「~だから」「~であるか」という別の用法があることに注意(ジーニアス)。 参考書によっては in that は前置詞の項目に書いてある場合もある(青チャート)。 ほか、Now that で、「今や~だから」という表現ができる。口語ではよくthatが省略され、Now だけになる。 典型的な例文は Now (that) he is eighteen, he can vote. 「今や彼は18歳なのだから、彼は投票できる。」 である(ジーニアス、青チャート)。 このほか、紹介している参考書は少ないが(青チャート、インスパイア)、分詞構文の Seeing that ~「~であるから」「~だから」が接続詞的に用いられる用法もある(青チャート)。 I7m glad that you have come to meet us. 「あなたがお迎えにきてくれて、うれしく思います」(青チャート) のような例文がよくある。 I'm glad that ~ 「~できて、うれしいです」 のように、「感情を現す形容詞 + that 」の that も接続詞である(青チャート)。 afraid, disappointed, sad, sorry, glad, happy, angry, surprised , upset などがこのような形容詞である(青チャート、ジーニアス)。この場合の that は省略されることも多い。なお、この場合の感情に続く that 以下の内容は「理由」を表す(ジーニアス)。 We are sorry that you cannot come. 「あなたがこられないのは残念です。」(インスパイア) この場合の sorry は謝罪ではないので注意。 sure 「確信している」は日本語では感情とは言いづらいが、青チャートはこれを感情に含めている。ただし、ジーニアスはsureを不採用。 なお、sure は感情のように I'm sure that ~ と主語を人称代名詞とするのが普通。辞書ジーニアスを見たが、it を主語にする sure は見つからなかった。 いっぽう、certain は、 It is certain that ~ も I'm certain もともに許される。(フォレストに I'm certain あり。ブレイクスルーに it is certain) なお、確信ではなく「疑わしい」と思っている場合は、 It is doubtful whether (またはif)~ 「~かどうかは疑わしい」 のように、 接続詞は whether または if になる。この場合の whether や if も名詞節である。 I'm doubtful whether(if) のように人称代名詞で言ってもよい(インスパイア)。さらに、形容詞ではなく動詞 doubt で I doubt whether (if) ~ で言うことも可能(インスパイア)。 なお「確信」している場合、I'm sure は「確信している」の「信」じるの文字からも想像がつくように、動詞 believe で I believe that と細かなニュアンスを無視すれば言い換えもできる(インスパイア)。 ほか、確信していない場合は、つまり確信に not がつく場合は、that よりも whether や if のほうが好ましい(インスパイア、ブレイクスルー)。つまり I'm not sure whether(またはif) ~ のようになる(インスパイア、ブレイクスルー)。 なお、動詞で「信じていない」という場合、つまり don't believe の場合、 I didn't believe what ~ のように whether ではなく what になるのに注意(インスパイア)。 === 副詞節を導く従属接続詞 === ==== はじめに ==== ほか、(たとえば平叙文のなかで)副詞節を導かれるために使われる when (~のとき、)や where (~の場所)が従属接続詞である。 before , after および since や until なども従属接続詞。 as soon as や once もこれに含める(ジーニアス、フォレスト)。 「until ~」は、「~」の瞬間まで動作が継続しているときに使い、「~するまで(ずっと)」の意味である。 一方、継続しない場合で、その時までに動作が完了している場合には、untilではなくby the time 「~する(時)までに」を使う。 as well as が等位接続詞なのに as soon as が従属なのはアレだが、まあどの参考書でもそういう分類になっている。 as soon as は言い換えで、the moment や the instant や no sooner ・・・ than ~ などの言い換え表現がある。 ==== once ==== once は「いったん~すると」の意味。once をどう分類するかが参考書ごとに違う。 ifやunlessなどと同様に「条件」として once を分類する参考書もあれば(ブレイクスルー、インスパイア)、 beforeやafterやsinceなどと同様の「起点」として once を分類する参考書もある(ジーニアス、フォレスト)。 なお、as soon as と once がなぜか同じ章節で紹介される参考書が多いが(ジーニアス、フォレスト、しかし意味が違う接続詞なので混同しないように。 if~ は内容が未来であっても現在形を使うが、as soon as ~ も後続の文では内容が未来であっても現在形を使うので、もしかしたらその理由でonceが「条件」として分類されているのかもしれない。 また、as soon as ~ と同様に、once ~ も後続の文の内容が未来であっても現在形を使う(ジーニアス)。そういう共通点からか、一緒に「起点」として紹介されるのかもしれない。 しかし、単に分類が同じだけであり、 once は as soon as とは意味がまったく違うので、混同しないように。 ==== その他 ==== 時間の表現だけでなく、because や since (since には理由の意味もある)も従属接続詞。 because は従属接続詞なので、よって主節なしで 「Because ~ .」 といったBecause だけの節をつくることは原則、誤用だとみなされる(青チャート、ジーニアス)。 ただし例外的に、"Why ~?" といった Why を使った質問文に対して、解答で"Because ~" と because だけの節の文章が許されている(青チャート、ジーニアス)。 since は基本、相手が既知の話題についての理由を説明するときに使うので(ブレイクスルー、フォレスト、ジーニアス)、since節の時制は過去形になる事も多い(青チャート)。また、上記の事情のため、sinceのつくる副詞節は文頭や前方に置かれることも多いが(インスパイア、ジーニアス、ブレイクスルー)、しかしsinceを文頭に置かなくても正しい英語である(青チャート)。 「so ~(形容詞) that ・・・(文)」 は従属接続詞。 so に等位接続詞の用法もあるが、しかし 「so 形容詞 that 文」で結びつけられている形容詞とthat後続の文は対等ではないので、従属接続詞のほうが適切であろう。 例文は著作権のため省略。 ==== 譲歩 ==== 「譲歩」の意味である、though や although が従属接続詞として分類されている(ジーニアス、フォレスト、ロイヤル)。 though よりも although のほうが堅い言い回しである(フォレスト、ロイヤル)。 なお、英文法の接続詞の単元でいう「譲歩」は、日本語の日常語の「譲歩」とは意味がやや違う。日常語の「譲歩」とは、自分と相手・他人の主張が対立したい場合に、相手の意見を聞き入れたり時には従うことに重点が置かれるのが日常語の譲歩である(広辞苑、三省堂新明解)。 しかし、この接続詞の英文法でいう「譲歩」とは、相手の主張の一部を事実ではあると認めた上で、それでも自分の主張に事実性などがあることを主張しているのが、英文法の接続詞の分野での「譲歩」である(桐原フォレスト)。 even if ~ も even though ~ も「たとえ ~ だとしても」という譲歩の意味があるが、下記のような違いがある。 even though ~ は、though の後に事実がきて、話し手は事実を知っている。 even if ~ は、if のあとに仮定がきて、その仮定が事実かどうかを話しては知らない。 これとは別に、 even if ~ で if のあとが仮定法過去になる場合もある(ジーニアス、インスパイア)。 基本的には、even if も even though も、evenは単に直後の語を強調しているだけである(インスパイア)。 if「もし~」 のあとが事実かどうかを話し手が知らないのもifの不普通の用法だし、though 「~にもかかわらず」も通常は話し手は事実を前提にしているからである。 単に even は if や though に譲歩の意味をつけたしたり、譲歩を強調したりしているだけにすぎない。 ==== 条件 ==== 条件を表すif および unless も従属接続詞。 unless は、「もし~でなければ」という意味であるが(ジーニアス、ロイヤル)、「~でない限り、」と訳される場合も多い(フォレスト、ロイヤル)。なお、unless の直後の文は否定形にはならず(フォレスト、ジーニアス)、つまり unless の直後の文は肯定形である。 unless は、「否定の条件」であるという性質に加えて、さらに基本的に「唯一の条件」という性質がある(青チャート)。「起きてほしくない事を避けるためには、unless 以降の内容を実行するしかない」という意味での唯一性の主張が unless にはある。 このことなどから、 unless ~の文を if ・・・ not ~ の文章に書き換えできる一方で(unless → if not は可能な場合が多い)、しかし if not → unless の書き換えが無理な場合が多い。 unless は「条件の文 unless 予想される結果の文」の語順。unless においてカンマなどは不要。 unless の語順は、「予想される結末 unless 結末が成り立たなくなる条件」である。なお、unlessの主節(※ 予想される結末のほう)には、willなどの未来表現を使うのが普通。一方、ifおよびunless では従属節の内容がたとえ未来における内容であっても従属節の時制は現在形にする(ジーニアス)。桐原やロイヤルでは従属節の時制はとくに解説では明記されていないが、例文の時制を見ればジーニアスと同様に桐原などでもunlessの従属節は現在形である。 === in case ~ === 「in case ~(文)」は「~の場合にそなえて」の意味であり、従属接続詞として分類され、この場合は普通は主節のあとに in case ~ が置かれる(フォレレスト、ジーニアス)。 in case ~ の典型的な例文は、 Take an umbrella with you in case it rains. 「雨が降るといけないから、かさを持っていきなさい。」 ※ 数研 青チャート、ジーニアス take の代わりに bring の場合もある。また、この傘をもっていく例文の場合なら with you は省略可能。上記例文の出典の参考書にも with you をつけてないものもある。 Bring an umbrella in case it rains. 「雨が降るといけないから、かさを持っていきなさい。」 ※ ファクトブック 命令形ではなく平叙文の場合もあり、下記のような例文もある。 I'll take an umbrella with me in case it rains. 「雨が降るといけないから、かさを持っていこう。」 ※ フォレスト with me は省略可能。自分で持っていくので with me になる(青チャート)。 「in case ~ 」の副詞節に it should rain. のように should が使われる場合もあるが、これは可能性が低いと話し手・書き手が思っている意味である(青チャート、ブレイクスルー)。 なお、in case は上記の「~するといけないから」「~しないように」の用法の他にも、case 「条件」の文字通り「~の条件で」の意味で in case を使う場合もアメリカ英語では見られ(ジーニアス、フォレスト)、この場合は if でも言い換えできる。 言い換え表現で、「~するといけないから」「~しないように」用法の in case と同じ意味は「for fear that A ~」や「lest A (should) ~」でも言える。 for fear も lest も、ともに固い表現である(ジーニアス)。ジーニアス以外の参考書の多くは、for fear が固い表現であることを取り上げていない。 for fear ~でも lest ~でも、つづく「~」の部分には not をつけない。日本語に引きづられて not をつけないように注意。 英和辞典を見れば fear は「恐れ」「不安」などの意味が書いてあることからも想像がつくように、for fear のあとには、おそれている内容を書くので、つまり、実現してほしくないことを肯定形で書くことになるのも当然であろう。 さて、lest について、ジーニアスいわく、 lest は固い言い方なだけであり、頻度自体は for fear よりも lest のほうが高いと、ジーニアスは主張している。 lest のshould が省略される場合もある。なお、shouldが省略された場合には、続く動詞には原形が来る。lest のshould 省略時の動詞の原形をつかうことを仮定法現在として解釈する流儀もある(青チャート)。 ほか、文法教育的にはあまり注目されないが、 so that ~ 「~のために」と、否定 not を組み合わせて、たとえば 「so that A won't ~」により「~しないように」という言い換えも可能である。won't の変わりに can't の場合もある(ブレイクスルー)。 === その他 === その他、as far as や as long as など範囲を表す表現が、カンマなどを補われて、従属接続詞として分類される。 「as far as I know,」 で「私の知る限りでは、」の意味。as far as の代わりに so far as とすることもある(ロイヤル)。 よくある典型文は As far as I know, he is ~. 「私の知るかぎり、彼は~な人だ」 である(フォレスト、インスパイア)。そのほか、 As far as I'm concerned, ~ 「私に関する限り、」 という表現が、たとえば「私に関する限り、それで結構です。」(青チャート)とか「私に関する限り、不満はありません。」(ジーニアス)のような文章で使われる。 このように as ・・・ as は範囲を表すことがある。 このほか、別の用法で as far as で、自分の意見を言う用法もある(ブレイクスルー、ジーニアス)。たとえばブレイクスルーいわく、「私の意見では、冷凍食品はおいしくない」という単なる持論にも as far as を使っている例文がある。 as long as には用法が2種類あり、ひとつの用法は「~する間」という時間的な範囲を表す用法であり、もうひとつの用法は最低限の条件を表し(フォレスト)、「~しさえすれば」などと訳される(ジーニアス、フォレスト)。as long as の代わりに so long as とすることもある(ジーニアス、フォレスト)。「~する限りは」と訳される場合もある(ロイヤル)。 慣用的なよくある言い回しとして、「as long as I live 」で「私が生きている限り」の意味(ロイヤル、ジーニアス)。 I will never forget your kindness as long as I live. 「私が生きているかぎり、あなたのご親切を忘れません。」 のような文章がよく参考書にある(ジーニアス、青チャート)。 なお、べつにneverを使わずとも、 I won't forget your kindness as long as I live. 「私が生きているかぎり、あなたのご親切を忘れません。」 のような文章もよくある(インスパイア)。 「~さえすれば」の as long as は、言い換えとして、if only または only if で言い換えすることもできる。 目的を表す「 so that ~」も接続詞である。in order that も同様、目的を表す接続詞である。なお、so that ~ について、口語では thatが省略されることも多く、つまり so だけで目的の接続詞になることもある(フォレスト、ジーニアス)。 so that 節の中では、can や will や may をつかうのが普通(フォレスト、ジーニアス)。 なお、「so ~(形容詞など) that ・・・」は程度をあらわす接続詞である。 in order that ~ は堅い表現。in order that 節の中では、can や will や may をつかうのが普通(フォレスト、ジーニアス)。 as も接続詞の用法がある(ロイヤル、フォレスト)。 その他にも、さまざまな接続詞がある suppose や supposed や providing や provided などを接続詞として分類することもある(フォレスト)。 rm30linmw29rfqzlhnvr9silzhd6kkn 205561 205560 2022-07-20T03:16:30Z すじにくシチュー 12058 /* 名詞節を導く従属接続詞 */ wikitext text/x-wiki == 接続詞 == 語と語、句と句、節と節、など、文法上対等のものを結びつけるのが等位接続詞である。 いっぽう、従属節を主節と結びつけるのが従属接続詞であり(ジーニアス、フォレスト)、従位接続詞ともいう(ロイヤル)。 == 等位接続詞 == === 概要 === '''等位接続詞'''とは、and, or, but のように文法上等しいものを結びつける接続詞である。上記のほかにも、nor , so, for が等位接続詞である。 both A and B や either A or B なども便宜的にか等位接続詞として分類される。また、 not A but B や not only A but (also) B も等位接続詞として分類される。 便宜的に、not only A but also B と同じ意味をもつ as well as も、参考書では同じ単元で紹介される。 either は、「AかBかのどちらか」という意味である。 neither A nor B は、AもBも両方とも否定する表現であり、つまり「AとBのどちらも~ない」の意味である。 なお、neither A nor B が主語の場合、動詞はBの時制に一致させる(ジーニアス)。また、nor の直後の文章は肯定形である。 neither は基本、A,Bの2つしか使わない。3つ以上では使わないのが原則だが、しかし米英には原則に反して3つ以上で使う人もいるが(ロイヤル)、入試にはそこまで出ないだろう。また、neither で nor の代わりに原則に反して or を使う人もいるとのこと(ロイヤル)。入試では原則的な場合だけを考えればよいだろう。 「neither」とは not either の意味だろう、というのがロイヤル英文法の見解。 nor は、 neither のある文でなくても使われる場合がある(桐原、ロイヤル)。 否定語の not や don't などのあと、 「not A, nor B」または「don't A(動詞) nor B(動詞) 」で「AもBも無い」という意味で、neitherなしで nor が not などの否定語とともに使われる場合がある。 カンマが無い場合もある(ロイヤル英文法)。この場合でも、A nor B のあとに動詞が来る場合、その文は肯定形である。 「AもBもどちらも~ない」と否定の内容を並列させたい場合、andではなくnorを使う(桐原)。 さて、and には、命令文のあとに使われたい場合には、「そうすれば」の意味になるが、この意味の場合でも等位接続詞として分類される。 or には、「または」の意味のほかにも「すなわち」「言い換えれば」というある語を別の語で言い換える用法の意味もあるが(ジーニアスおよびエバーグリーンに「言い換えれば」アリ)、どちらの意味の場合でも等位接続詞として分類される。また、or には、命令文のあとに使われたい場合には、「さもなければ」の意味になるが、この意味の場合でも等位接続詞として分類される。 なお、「すなわち」「言い換えれば」の意味で or が接続詞として使われる場合、orの前にふつうはカンマ(,)が来る(ジーニアス、いいづなエバーグリーン)。 === so/ for === 接続詞としての so は、 <出来事→結果> の語順として「理由の文、so 結果の文」のように理由を前に、結果を後ろに書き、「・・・なので~」「・・・だから~」という意味になる。理由というほど明白な因果関係でなくても、比較的に関連性の高い2つの出来事において、「ある出来事, so 出来事の結果」という用法でも良い。 また、この場合の so の直前にはカンマ「 , 」を置くのが普通(ジーニアス、エバーグリーン)。 余談だが、接続詞としての so と for はそれぞれ、節と節だけ結びつける(フォレスト、エバーグリーン)。つまり、語と語、句と句、語と句などは結び付けない。 いっぽう、for は、 <結果←出来事> の語順として、「結果, for 理由の章」の構文で、堅い言い回しとして理由を説明する。口語で用いることはあまり無い(ジーニアス、エバーグリーン)。ほか、 for は、forの前述の出来事に対して、その理由を述べる接続詞である。 なので、普通は for の直前にはカンマ「 , 」が来る。 接続詞としての for は等位接続詞である。for は従属接続詞ではない等の理由で(ロイヤル)、because のように主節の前に出すことはできない。なお、もし For が文頭に置かれている場合、それは、その直前の文の理由を説明している(ロイヤル)。 === and === まず、and の基本的な意味を確認しよう。 ;並列と順序 and の基本的な意味は並列「および」「と」の意味だが、もうひとつ、動作・時間の順序という意味もある。「先に起きたこと and その直後に起きたこと」のような語順で and を使うこともある。 動作や時間の順序のand は、「そして」や「~して、」の意味である(ジーニアス、ロイヤル)。 たとえば come and see は「先に来て、そして見る(見た)」の意味であり、つまり不定詞の結果用法 come to see と同じ意味である(フォレスト)。同様の表現として、 go and see もある。 ;因果関係 さらに、and が因果関係をあらわす場合もある(ジーニアス、ロイヤル)。普通、文章では、先に行ったり紹介した動作が、あとの動作の理由になるので、andで因果関係を表すのも自然であろう。 {{コラム|and なのに逆接?| 上記で and は因果関係を表す場合もあるといったが、しかし人生では、必ずしも前に起きた動作の期待どおりに後の結果が起きるとは限らない場合も多々あるものである。このため、and があたかも but のような逆接的な意味かのように見える英文が生じる場合もある。 たとえば、「彼は努力して、そして失敗した」は、順序を意識すれば try hard and failed のような言い回しになる(ジーニアス)。努力 try hard という準備にもかかわらず失敗 fail したことから、文脈によっては and なのにまるで逆接のような意味も読み取れる場合もある。 さて、このことから、もし後の起きたことが先に起きたことに比べて対照的な場合、場合によっては and は、あたかも逆接 but のような意味に見える場合がある。 とはいえ、これはand の順序関係の用法の、派生的なものである。andの基本的な意味は、あくまで並列・順序だと思うべきだろう。 }} == 従属接続詞 == === 名詞節を導く従属接続詞 === 一方、名詞節を導くために使われる that およびwhether(~かどうか) と if(~かどうか) は'''従属接続詞'''である。that や whether を接続詞として解釈する考えもある。 ここでの名詞節を導く if は、「~かどうか」の意味での if である。「もし~ならば、」の if のことではない。また、「もし」の if との混同をさけるため、文頭では名詞節の if は使えない(ファクトブック)。この「~かどうか」の意味の if の性質について言い方を変えるなら、つまり if は動詞の目的語としてしか使えない(ジーニアス、青チャート、ほか多数)。 また、whether or not (~かどうか)という成句はある一方、ifにはない(インスパイア、青チャート)。 ほか、「whether to ~(動詞)」で「~すべきかどうか」というto不定詞の用法はあるが、ifには不定詞が続かない(インスパイア、青チャート)。 なお、 whether to go 「行くべきかどうか」という語が、参考書によくある典型例である。さらに、 whether to go or not (青チャート)「行くべきかどうか」や whether to go or stay (ブレイクスルー)「行くべきかとどまるべきか」のようになる場合もある。 さらに、助動詞 should を使って「べき」を強調する whether we should go or stay 「行くべきか残るべきか」という表現もある(青チャート)。 whether we should go or not のように、whether の直後ではなく分節の最後に or not をつける場合もある(ジーニアス)。 また、whether は前置詞の目的語になることがあるが、ifはならない(インスパイア)。 if の本来の用法は「もしも~」であり、「~かどうか」の意味は派生的な意味にすぎない、と考えるのが良いだろう。 ほか、if は口語的、whether は文語的である(ジーニアス、青チャ-ト)。 depends on whether 、 など、動詞句 depends on とwhether との組み合わせが決まっている(青チャート)。depends on と if との組み合わせは禁止。なお depends on は、前置詞の目的語にwhether が来る例にもなっている。 wonder と ask は、if でも whether でも、どちらでも良い(ブレイクスルー、青チャート)。 ほか、 I wonder if ~ で「~がどうかなと思う」の意味。 さて、従属接続詞の典型的な文で The fact is (that)・・・ 「事実は・・・ということだ。」 The trouble is (that)・・・ 「困ったことに・・・ということだ。」 The truth is (that)・・・ 「真実は・・・ということだ。」 The reason is (that)・・・ 「理由は・・・ということだ。」 などがある。 このように、名詞節を導く that は、「・・・ということだ。」の意味になる。 that は主語・補語・目的語になる(上記の the reason is that などの例文の場合は、that が補語になっている)。 ほか、 It is 形容詞 that ・・・ という形式主語の文章で 使われる that は接続詞でもある(ジーニアス、エバーグリーン )。 ほか、that節が know,say ,think, tell, hope など一般的な動詞の目的語になっている場合は、thatを省略することも多い(ブレイクスルー、インスパイア)。 ただし、形式目的語の that は省略できない(エバーグリーン)。形式目的語とは、 He made it clear that ~ . 「彼は~であることを明らかにした。」 のような it を仮の目的語とする文章のこと。 that 節は普通は前置詞の後ろに置かれることないが(ジーニアス)、例外的に in that(~という点で、~だから) と except that(~を除いて)という用法がある。 なお、 in that には意味の異なる「~という点で」という用法と、もうひとつ「~だから」「~であるか」という別の用法があることに注意(ジーニアス)。 参考書によっては in that は前置詞の項目に書いてある場合もある(青チャート)。 ほか、Now that で、「今や~だから」という表現ができる。口語ではよくthatが省略され、Now だけになる。 典型的な例文は Now (that) he is eighteen, he can vote. 「今や彼は18歳なのだから、彼は投票できる。」 である(ジーニアス、青チャート)。 このほか、紹介している参考書は少ないが(青チャート、インスパイア)、分詞構文の Seeing that ~「~であるから」「~だから」が接続詞的に用いられる用法もある(青チャート)。 I7m glad that you have come to meet us. 「あなたがお迎えにきてくれて、うれしく思います」(青チャート) のような例文がよくある。 I'm glad that ~ 「~できて、うれしいです」 のように、「感情を現す形容詞 + that 」の that も接続詞である(青チャート)。 afraid, disappointed, sad, sorry, glad, happy, angry, surprised , upset などがこのような形容詞である(青チャート、ジーニアス)。この場合の that は省略されることも多い。なお、この場合の感情に続く that 以下の内容は「理由」を表す(ジーニアス)。 We are sorry that you cannot come. 「あなたがこられないのは残念です。」(インスパイア) この場合の sorry は謝罪ではないので注意。 sure 「確信している」は日本語では感情とは言いづらいが、青チャートはこれを感情に含めている。ただし、ジーニアスはsureを不採用。 なお、sure は感情のように I'm sure that ~ と主語を人称代名詞とするのが普通。辞書ジーニアスを見たが、it を主語にする sure は見つからなかった。 いっぽう、certain は、 It is certain that ~ も I'm certain もともに許される。(フォレストに I'm certain あり。ブレイクスルーに it is certain) なお、確信ではなく「疑わしい」と思っている場合は、 It is doubtful whether (またはif)~ 「~かどうかは疑わしい」 のように、 接続詞は whether または if になる。この場合の whether や if も名詞節である。 I'm doubtful whether(if) のように人称代名詞で言ってもよい(インスパイア)。さらに、形容詞ではなく動詞 doubt で I doubt whether (if) ~ で言うことも可能(インスパイア)。 なお「確信」している場合、I'm sure は「確信している」の「信」じるの文字からも想像がつくように、動詞 believe で I believe that と細かなニュアンスを無視すれば言い換えもできる(インスパイア)。 ほか、確信していない場合は、つまり確信に not がつく場合は、that よりも whether や if のほうが好ましい(インスパイア、ブレイクスルー)。つまり I'm not sure whether(またはif) ~ のようになる(インスパイア、ブレイクスルー)。 なお、動詞で「信じていない」という場合、つまり don't believe の場合、 I didn't believe what ~ のように whether ではなく what になるのに注意(インスパイア)。 === 副詞節を導く従属接続詞 === ==== はじめに ==== ほか、(たとえば平叙文のなかで)副詞節を導かれるために使われる when (~のとき、)や where (~の場所)が従属接続詞である。 before , after および since や until なども従属接続詞。 as soon as や once もこれに含める(ジーニアス、フォレスト)。 「until ~」は、「~」の瞬間まで動作が継続しているときに使い、「~するまで(ずっと)」の意味である。 一方、継続しない場合で、その時までに動作が完了している場合には、untilではなくby the time 「~する(時)までに」を使う。 as well as が等位接続詞なのに as soon as が従属なのはアレだが、まあどの参考書でもそういう分類になっている。 as soon as は言い換えで、the moment や the instant や no sooner ・・・ than ~ などの言い換え表現がある。 ==== once ==== once は「いったん~すると」の意味。once をどう分類するかが参考書ごとに違う。 ifやunlessなどと同様に「条件」として once を分類する参考書もあれば(ブレイクスルー、インスパイア)、 beforeやafterやsinceなどと同様の「起点」として once を分類する参考書もある(ジーニアス、フォレスト)。 なお、as soon as と once がなぜか同じ章節で紹介される参考書が多いが(ジーニアス、フォレスト、しかし意味が違う接続詞なので混同しないように。 if~ は内容が未来であっても現在形を使うが、as soon as ~ も後続の文では内容が未来であっても現在形を使うので、もしかしたらその理由でonceが「条件」として分類されているのかもしれない。 また、as soon as ~ と同様に、once ~ も後続の文の内容が未来であっても現在形を使う(ジーニアス)。そういう共通点からか、一緒に「起点」として紹介されるのかもしれない。 しかし、単に分類が同じだけであり、 once は as soon as とは意味がまったく違うので、混同しないように。 ==== その他 ==== 時間の表現だけでなく、because や since (since には理由の意味もある)も従属接続詞。 because は従属接続詞なので、よって主節なしで 「Because ~ .」 といったBecause だけの節をつくることは原則、誤用だとみなされる(青チャート、ジーニアス)。 ただし例外的に、"Why ~?" といった Why を使った質問文に対して、解答で"Because ~" と because だけの節の文章が許されている(青チャート、ジーニアス)。 since は基本、相手が既知の話題についての理由を説明するときに使うので(ブレイクスルー、フォレスト、ジーニアス)、since節の時制は過去形になる事も多い(青チャート)。また、上記の事情のため、sinceのつくる副詞節は文頭や前方に置かれることも多いが(インスパイア、ジーニアス、ブレイクスルー)、しかしsinceを文頭に置かなくても正しい英語である(青チャート)。 「so ~(形容詞) that ・・・(文)」 は従属接続詞。 so に等位接続詞の用法もあるが、しかし 「so 形容詞 that 文」で結びつけられている形容詞とthat後続の文は対等ではないので、従属接続詞のほうが適切であろう。 例文は著作権のため省略。 ==== 譲歩 ==== 「譲歩」の意味である、though や although が従属接続詞として分類されている(ジーニアス、フォレスト、ロイヤル)。 though よりも although のほうが堅い言い回しである(フォレスト、ロイヤル)。 なお、英文法の接続詞の単元でいう「譲歩」は、日本語の日常語の「譲歩」とは意味がやや違う。日常語の「譲歩」とは、自分と相手・他人の主張が対立したい場合に、相手の意見を聞き入れたり時には従うことに重点が置かれるのが日常語の譲歩である(広辞苑、三省堂新明解)。 しかし、この接続詞の英文法でいう「譲歩」とは、相手の主張の一部を事実ではあると認めた上で、それでも自分の主張に事実性などがあることを主張しているのが、英文法の接続詞の分野での「譲歩」である(桐原フォレスト)。 even if ~ も even though ~ も「たとえ ~ だとしても」という譲歩の意味があるが、下記のような違いがある。 even though ~ は、though の後に事実がきて、話し手は事実を知っている。 even if ~ は、if のあとに仮定がきて、その仮定が事実かどうかを話しては知らない。 これとは別に、 even if ~ で if のあとが仮定法過去になる場合もある(ジーニアス、インスパイア)。 基本的には、even if も even though も、evenは単に直後の語を強調しているだけである(インスパイア)。 if「もし~」 のあとが事実かどうかを話し手が知らないのもifの不普通の用法だし、though 「~にもかかわらず」も通常は話し手は事実を前提にしているからである。 単に even は if や though に譲歩の意味をつけたしたり、譲歩を強調したりしているだけにすぎない。 ==== 条件 ==== 条件を表すif および unless も従属接続詞。 unless は、「もし~でなければ」という意味であるが(ジーニアス、ロイヤル)、「~でない限り、」と訳される場合も多い(フォレスト、ロイヤル)。なお、unless の直後の文は否定形にはならず(フォレスト、ジーニアス)、つまり unless の直後の文は肯定形である。 unless は、「否定の条件」であるという性質に加えて、さらに基本的に「唯一の条件」という性質がある(青チャート)。「起きてほしくない事を避けるためには、unless 以降の内容を実行するしかない」という意味での唯一性の主張が unless にはある。 このことなどから、 unless ~の文を if ・・・ not ~ の文章に書き換えできる一方で(unless → if not は可能な場合が多い)、しかし if not → unless の書き換えが無理な場合が多い。 unless は「条件の文 unless 予想される結果の文」の語順。unless においてカンマなどは不要。 unless の語順は、「予想される結末 unless 結末が成り立たなくなる条件」である。なお、unlessの主節(※ 予想される結末のほう)には、willなどの未来表現を使うのが普通。一方、ifおよびunless では従属節の内容がたとえ未来における内容であっても従属節の時制は現在形にする(ジーニアス)。桐原やロイヤルでは従属節の時制はとくに解説では明記されていないが、例文の時制を見ればジーニアスと同様に桐原などでもunlessの従属節は現在形である。 === in case ~ === 「in case ~(文)」は「~の場合にそなえて」の意味であり、従属接続詞として分類され、この場合は普通は主節のあとに in case ~ が置かれる(フォレレスト、ジーニアス)。 in case ~ の典型的な例文は、 Take an umbrella with you in case it rains. 「雨が降るといけないから、かさを持っていきなさい。」 ※ 数研 青チャート、ジーニアス take の代わりに bring の場合もある。また、この傘をもっていく例文の場合なら with you は省略可能。上記例文の出典の参考書にも with you をつけてないものもある。 Bring an umbrella in case it rains. 「雨が降るといけないから、かさを持っていきなさい。」 ※ ファクトブック 命令形ではなく平叙文の場合もあり、下記のような例文もある。 I'll take an umbrella with me in case it rains. 「雨が降るといけないから、かさを持っていこう。」 ※ フォレスト with me は省略可能。自分で持っていくので with me になる(青チャート)。 「in case ~ 」の副詞節に it should rain. のように should が使われる場合もあるが、これは可能性が低いと話し手・書き手が思っている意味である(青チャート、ブレイクスルー)。 なお、in case は上記の「~するといけないから」「~しないように」の用法の他にも、case 「条件」の文字通り「~の条件で」の意味で in case を使う場合もアメリカ英語では見られ(ジーニアス、フォレスト)、この場合は if でも言い換えできる。 言い換え表現で、「~するといけないから」「~しないように」用法の in case と同じ意味は「for fear that A ~」や「lest A (should) ~」でも言える。 for fear も lest も、ともに固い表現である(ジーニアス)。ジーニアス以外の参考書の多くは、for fear が固い表現であることを取り上げていない。 for fear ~でも lest ~でも、つづく「~」の部分には not をつけない。日本語に引きづられて not をつけないように注意。 英和辞典を見れば fear は「恐れ」「不安」などの意味が書いてあることからも想像がつくように、for fear のあとには、おそれている内容を書くので、つまり、実現してほしくないことを肯定形で書くことになるのも当然であろう。 さて、lest について、ジーニアスいわく、 lest は固い言い方なだけであり、頻度自体は for fear よりも lest のほうが高いと、ジーニアスは主張している。 lest のshould が省略される場合もある。なお、shouldが省略された場合には、続く動詞には原形が来る。lest のshould 省略時の動詞の原形をつかうことを仮定法現在として解釈する流儀もある(青チャート)。 ほか、文法教育的にはあまり注目されないが、 so that ~ 「~のために」と、否定 not を組み合わせて、たとえば 「so that A won't ~」により「~しないように」という言い換えも可能である。won't の変わりに can't の場合もある(ブレイクスルー)。 === その他 === その他、as far as や as long as など範囲を表す表現が、カンマなどを補われて、従属接続詞として分類される。 「as far as I know,」 で「私の知る限りでは、」の意味。as far as の代わりに so far as とすることもある(ロイヤル)。 よくある典型文は As far as I know, he is ~. 「私の知るかぎり、彼は~な人だ」 である(フォレスト、インスパイア)。そのほか、 As far as I'm concerned, ~ 「私に関する限り、」 という表現が、たとえば「私に関する限り、それで結構です。」(青チャート)とか「私に関する限り、不満はありません。」(ジーニアス)のような文章で使われる。 このように as ・・・ as は範囲を表すことがある。 このほか、別の用法で as far as で、自分の意見を言う用法もある(ブレイクスルー、ジーニアス)。たとえばブレイクスルーいわく、「私の意見では、冷凍食品はおいしくない」という単なる持論にも as far as を使っている例文がある。 as long as には用法が2種類あり、ひとつの用法は「~する間」という時間的な範囲を表す用法であり、もうひとつの用法は最低限の条件を表し(フォレスト)、「~しさえすれば」などと訳される(ジーニアス、フォレスト)。as long as の代わりに so long as とすることもある(ジーニアス、フォレスト)。「~する限りは」と訳される場合もある(ロイヤル)。 慣用的なよくある言い回しとして、「as long as I live 」で「私が生きている限り」の意味(ロイヤル、ジーニアス)。 I will never forget your kindness as long as I live. 「私が生きているかぎり、あなたのご親切を忘れません。」 のような文章がよく参考書にある(ジーニアス、青チャート)。 なお、べつにneverを使わずとも、 I won't forget your kindness as long as I live. 「私が生きているかぎり、あなたのご親切を忘れません。」 のような文章もよくある(インスパイア)。 「~さえすれば」の as long as は、言い換えとして、if only または only if で言い換えすることもできる。 目的を表す「 so that ~」も接続詞である。in order that も同様、目的を表す接続詞である。なお、so that ~ について、口語では thatが省略されることも多く、つまり so だけで目的の接続詞になることもある(フォレスト、ジーニアス)。 so that 節の中では、can や will や may をつかうのが普通(フォレスト、ジーニアス)。 なお、「so ~(形容詞など) that ・・・」は程度をあらわす接続詞である。 in order that ~ は堅い表現。in order that 節の中では、can や will や may をつかうのが普通(フォレスト、ジーニアス)。 as も接続詞の用法がある(ロイヤル、フォレスト)。 その他にも、さまざまな接続詞がある suppose や supposed や providing や provided などを接続詞として分類することもある(フォレスト)。 9dwkq760v2k7eptcbtbl2d5yx7vruj0 205567 205561 2022-07-20T06:00:00Z すじにくシチュー 12058 /* 等位接続詞 */ コラム|数学の集合論との違い| wikitext text/x-wiki == 接続詞 == 語と語、句と句、節と節、など、文法上対等のものを結びつけるのが等位接続詞である。 いっぽう、従属節を主節と結びつけるのが従属接続詞であり(ジーニアス、フォレスト)、従位接続詞ともいう(ロイヤル)。 == 等位接続詞 == === 概要 === '''等位接続詞'''とは、and, or, but のように文法上等しいものを結びつける接続詞である。上記のほかにも、nor , so, for が等位接続詞である。 both A and B や either A or B なども便宜的にか等位接続詞として分類される。また、 not A but B や not only A but (also) B も等位接続詞として分類される。 便宜的に、not only A but also B と同じ意味をもつ as well as も、参考書では同じ単元で紹介される。 either は、「AかBかのどちらか」という意味である。 neither A nor B は、AもBも両方とも否定する表現であり、つまり「AとBのどちらも~ない」の意味である。 なお、neither A nor B が主語の場合、動詞はBの時制に一致させる(ジーニアス)。また、nor の直後の文章は肯定形である。 neither は基本、A,Bの2つしか使わない。3つ以上では使わないのが原則だが、しかし米英には原則に反して3つ以上で使う人もいるが(ロイヤル)、入試にはそこまで出ないだろう。また、neither で nor の代わりに原則に反して or を使う人もいるとのこと(ロイヤル)。入試では原則的な場合だけを考えればよいだろう。 「neither」とは not either の意味だろう、というのがロイヤル英文法の見解。 nor は、 neither のある文でなくても使われる場合がある(桐原、ロイヤル)。 否定語の not や don't などのあと、 「not A, nor B」または「don't A(動詞) nor B(動詞) 」で「AもBも無い」という意味で、neitherなしで nor が not などの否定語とともに使われる場合がある。 カンマが無い場合もある(ロイヤル英文法)。この場合でも、A nor B のあとに動詞が来る場合、その文は肯定形である。 「AもBもどちらも~ない」と否定の内容を並列させたい場合、andではなくnorを使う(桐原)。 さて、and には、命令文のあとに使われたい場合には、「そうすれば」の意味になるが、この意味の場合でも等位接続詞として分類される。 or には、「または」の意味のほかにも「すなわち」「言い換えれば」というある語を別の語で言い換える用法の意味もあるが(ジーニアスおよびエバーグリーンに「言い換えれば」アリ)、どちらの意味の場合でも等位接続詞として分類される。また、or には、命令文のあとに使われたい場合には、「さもなければ」の意味になるが、この意味の場合でも等位接続詞として分類される。 なお、「すなわち」「言い換えれば」の意味で or が接続詞として使われる場合、orの前にふつうはカンマ(,)が来る(ジーニアス、いいづなエバーグリーン)。 {{コラム|数学の集合論との違い| 「夏も冬も両方とも好き」は英語では「 I like summer and winter. 」である(ブレイクスル-)。 「夏も冬も両方とも好きではない」は英語ではneither を使わずとも、 I don't like summer or winter. でもいえて、この場合は接続詞が or になっていることに注意(ブレイクスル-)。 一見すると、数学の集合演算における否定演算での積集合「∩」や和∪「∪」などの演算子の反転のように見えるが、しかし実は、数学の集合の理論(ベン図などの理論のこと)とは違う。 まず、英語において、 A and B が数学でいう和集合(演算子∪)か積集合(演算子は∩)かは文脈による。「情報」科などで習うかもしれないブール代数のand計算は積集合だが、しかし実際の英語の場合はそうとは限らないので注意。 また、よくよく考えると、数学では、積集合 A∩B の否定 not (A∩B )は、 (not A) ∪ (not B) である。 つまり、数学では、単に not がつくだけでは集合演算子は変わらない。要素すべてに not がついて、さらにそのnot を因数分解的にひとまとめにくくる段階になって、ようやく集合演算子が反転するのが、数学的な規則である。 しかし英語では、not がついただけの段階の時点で、接続詞が and から or に反転してしまっている。 このように、集合の数学 と 英語のand/orの文法は、似ているが微妙に違うので、混同しないように。 ともかく、数学では、not でくくったら、集合の演算子は反転する(∪から∩に。または∩から∪に)。しかし英語では、そういう数学的規則は無視されている。 だから、neither の例文をもとに覚えたほうが早いし安全である。 単に「 neither A nor B のように don't A or B のように言う」とでも覚えるしかない。語学はしょせん、暗記科目である。 }} === so/ for === 接続詞としての so は、 <出来事→結果> の語順として「理由の文、so 結果の文」のように理由を前に、結果を後ろに書き、「・・・なので~」「・・・だから~」という意味になる。理由というほど明白な因果関係でなくても、比較的に関連性の高い2つの出来事において、「ある出来事, so 出来事の結果」という用法でも良い。 また、この場合の so の直前にはカンマ「 , 」を置くのが普通(ジーニアス、エバーグリーン)。 余談だが、接続詞としての so と for はそれぞれ、節と節だけ結びつける(フォレスト、エバーグリーン)。つまり、語と語、句と句、語と句などは結び付けない。 いっぽう、for は、 <結果←出来事> の語順として、「結果, for 理由の章」の構文で、堅い言い回しとして理由を説明する。口語で用いることはあまり無い(ジーニアス、エバーグリーン)。ほか、 for は、forの前述の出来事に対して、その理由を述べる接続詞である。 なので、普通は for の直前にはカンマ「 , 」が来る。 接続詞としての for は等位接続詞である。for は従属接続詞ではない等の理由で(ロイヤル)、because のように主節の前に出すことはできない。なお、もし For が文頭に置かれている場合、それは、その直前の文の理由を説明している(ロイヤル)。 === and === まず、and の基本的な意味を確認しよう。 ;並列と順序 and の基本的な意味は並列「および」「と」の意味だが、もうひとつ、動作・時間の順序という意味もある。「先に起きたこと and その直後に起きたこと」のような語順で and を使うこともある。 動作や時間の順序のand は、「そして」や「~して、」の意味である(ジーニアス、ロイヤル)。 たとえば come and see は「先に来て、そして見る(見た)」の意味であり、つまり不定詞の結果用法 come to see と同じ意味である(フォレスト)。同様の表現として、 go and see もある。 ;因果関係 さらに、and が因果関係をあらわす場合もある(ジーニアス、ロイヤル)。普通、文章では、先に行ったり紹介した動作が、あとの動作の理由になるので、andで因果関係を表すのも自然であろう。 {{コラム|and なのに逆接?| 上記で and は因果関係を表す場合もあるといったが、しかし人生では、必ずしも前に起きた動作の期待どおりに後の結果が起きるとは限らない場合も多々あるものである。このため、and があたかも but のような逆接的な意味かのように見える英文が生じる場合もある。 たとえば、「彼は努力して、そして失敗した」は、順序を意識すれば try hard and failed のような言い回しになる(ジーニアス)。努力 try hard という準備にもかかわらず失敗 fail したことから、文脈によっては and なのにまるで逆接のような意味も読み取れる場合もある。 さて、このことから、もし後の起きたことが先に起きたことに比べて対照的な場合、場合によっては and は、あたかも逆接 but のような意味に見える場合がある。 とはいえ、これはand の順序関係の用法の、派生的なものである。andの基本的な意味は、あくまで並列・順序だと思うべきだろう。 }} == 従属接続詞 == === 名詞節を導く従属接続詞 === 一方、名詞節を導くために使われる that およびwhether(~かどうか) と if(~かどうか) は'''従属接続詞'''である。that や whether を接続詞として解釈する考えもある。 ここでの名詞節を導く if は、「~かどうか」の意味での if である。「もし~ならば、」の if のことではない。また、「もし」の if との混同をさけるため、文頭では名詞節の if は使えない(ファクトブック)。この「~かどうか」の意味の if の性質について言い方を変えるなら、つまり if は動詞の目的語としてしか使えない(ジーニアス、青チャート、ほか多数)。 また、whether or not (~かどうか)という成句はある一方、ifにはない(インスパイア、青チャート)。 ほか、「whether to ~(動詞)」で「~すべきかどうか」というto不定詞の用法はあるが、ifには不定詞が続かない(インスパイア、青チャート)。 なお、 whether to go 「行くべきかどうか」という語が、参考書によくある典型例である。さらに、 whether to go or not (青チャート)「行くべきかどうか」や whether to go or stay (ブレイクスルー)「行くべきかとどまるべきか」のようになる場合もある。 さらに、助動詞 should を使って「べき」を強調する whether we should go or stay 「行くべきか残るべきか」という表現もある(青チャート)。 whether we should go or not のように、whether の直後ではなく分節の最後に or not をつける場合もある(ジーニアス)。 また、whether は前置詞の目的語になることがあるが、ifはならない(インスパイア)。 if の本来の用法は「もしも~」であり、「~かどうか」の意味は派生的な意味にすぎない、と考えるのが良いだろう。 ほか、if は口語的、whether は文語的である(ジーニアス、青チャ-ト)。 depends on whether 、 など、動詞句 depends on とwhether との組み合わせが決まっている(青チャート)。depends on と if との組み合わせは禁止。なお depends on は、前置詞の目的語にwhether が来る例にもなっている。 wonder と ask は、if でも whether でも、どちらでも良い(ブレイクスルー、青チャート)。 ほか、 I wonder if ~ で「~がどうかなと思う」の意味。 さて、従属接続詞の典型的な文で The fact is (that)・・・ 「事実は・・・ということだ。」 The trouble is (that)・・・ 「困ったことに・・・ということだ。」 The truth is (that)・・・ 「真実は・・・ということだ。」 The reason is (that)・・・ 「理由は・・・ということだ。」 などがある。 このように、名詞節を導く that は、「・・・ということだ。」の意味になる。 that は主語・補語・目的語になる(上記の the reason is that などの例文の場合は、that が補語になっている)。 ほか、 It is 形容詞 that ・・・ という形式主語の文章で 使われる that は接続詞でもある(ジーニアス、エバーグリーン )。 ほか、that節が know,say ,think, tell, hope など一般的な動詞の目的語になっている場合は、thatを省略することも多い(ブレイクスルー、インスパイア)。 ただし、形式目的語の that は省略できない(エバーグリーン)。形式目的語とは、 He made it clear that ~ . 「彼は~であることを明らかにした。」 のような it を仮の目的語とする文章のこと。 that 節は普通は前置詞の後ろに置かれることないが(ジーニアス)、例外的に in that(~という点で、~だから) と except that(~を除いて)という用法がある。 なお、 in that には意味の異なる「~という点で」という用法と、もうひとつ「~だから」「~であるか」という別の用法があることに注意(ジーニアス)。 参考書によっては in that は前置詞の項目に書いてある場合もある(青チャート)。 ほか、Now that で、「今や~だから」という表現ができる。口語ではよくthatが省略され、Now だけになる。 典型的な例文は Now (that) he is eighteen, he can vote. 「今や彼は18歳なのだから、彼は投票できる。」 である(ジーニアス、青チャート)。 このほか、紹介している参考書は少ないが(青チャート、インスパイア)、分詞構文の Seeing that ~「~であるから」「~だから」が接続詞的に用いられる用法もある(青チャート)。 I7m glad that you have come to meet us. 「あなたがお迎えにきてくれて、うれしく思います」(青チャート) のような例文がよくある。 I'm glad that ~ 「~できて、うれしいです」 のように、「感情を現す形容詞 + that 」の that も接続詞である(青チャート)。 afraid, disappointed, sad, sorry, glad, happy, angry, surprised , upset などがこのような形容詞である(青チャート、ジーニアス)。この場合の that は省略されることも多い。なお、この場合の感情に続く that 以下の内容は「理由」を表す(ジーニアス)。 We are sorry that you cannot come. 「あなたがこられないのは残念です。」(インスパイア) この場合の sorry は謝罪ではないので注意。 sure 「確信している」は日本語では感情とは言いづらいが、青チャートはこれを感情に含めている。ただし、ジーニアスはsureを不採用。 なお、sure は感情のように I'm sure that ~ と主語を人称代名詞とするのが普通。辞書ジーニアスを見たが、it を主語にする sure は見つからなかった。 いっぽう、certain は、 It is certain that ~ も I'm certain もともに許される。(フォレストに I'm certain あり。ブレイクスルーに it is certain) なお、確信ではなく「疑わしい」と思っている場合は、 It is doubtful whether (またはif)~ 「~かどうかは疑わしい」 のように、 接続詞は whether または if になる。この場合の whether や if も名詞節である。 I'm doubtful whether(if) のように人称代名詞で言ってもよい(インスパイア)。さらに、形容詞ではなく動詞 doubt で I doubt whether (if) ~ で言うことも可能(インスパイア)。 なお「確信」している場合、I'm sure は「確信している」の「信」じるの文字からも想像がつくように、動詞 believe で I believe that と細かなニュアンスを無視すれば言い換えもできる(インスパイア)。 ほか、確信していない場合は、つまり確信に not がつく場合は、that よりも whether や if のほうが好ましい(インスパイア、ブレイクスルー)。つまり I'm not sure whether(またはif) ~ のようになる(インスパイア、ブレイクスルー)。 なお、動詞で「信じていない」という場合、つまり don't believe の場合、 I didn't believe what ~ のように whether ではなく what になるのに注意(インスパイア)。 === 副詞節を導く従属接続詞 === ==== はじめに ==== ほか、(たとえば平叙文のなかで)副詞節を導かれるために使われる when (~のとき、)や where (~の場所)が従属接続詞である。 before , after および since や until なども従属接続詞。 as soon as や once もこれに含める(ジーニアス、フォレスト)。 「until ~」は、「~」の瞬間まで動作が継続しているときに使い、「~するまで(ずっと)」の意味である。 一方、継続しない場合で、その時までに動作が完了している場合には、untilではなくby the time 「~する(時)までに」を使う。 as well as が等位接続詞なのに as soon as が従属なのはアレだが、まあどの参考書でもそういう分類になっている。 as soon as は言い換えで、the moment や the instant や no sooner ・・・ than ~ などの言い換え表現がある。 ==== once ==== once は「いったん~すると」の意味。once をどう分類するかが参考書ごとに違う。 ifやunlessなどと同様に「条件」として once を分類する参考書もあれば(ブレイクスルー、インスパイア)、 beforeやafterやsinceなどと同様の「起点」として once を分類する参考書もある(ジーニアス、フォレスト)。 なお、as soon as と once がなぜか同じ章節で紹介される参考書が多いが(ジーニアス、フォレスト、しかし意味が違う接続詞なので混同しないように。 if~ は内容が未来であっても現在形を使うが、as soon as ~ も後続の文では内容が未来であっても現在形を使うので、もしかしたらその理由でonceが「条件」として分類されているのかもしれない。 また、as soon as ~ と同様に、once ~ も後続の文の内容が未来であっても現在形を使う(ジーニアス)。そういう共通点からか、一緒に「起点」として紹介されるのかもしれない。 しかし、単に分類が同じだけであり、 once は as soon as とは意味がまったく違うので、混同しないように。 ==== その他 ==== 時間の表現だけでなく、because や since (since には理由の意味もある)も従属接続詞。 because は従属接続詞なので、よって主節なしで 「Because ~ .」 といったBecause だけの節をつくることは原則、誤用だとみなされる(青チャート、ジーニアス)。 ただし例外的に、"Why ~?" といった Why を使った質問文に対して、解答で"Because ~" と because だけの節の文章が許されている(青チャート、ジーニアス)。 since は基本、相手が既知の話題についての理由を説明するときに使うので(ブレイクスルー、フォレスト、ジーニアス)、since節の時制は過去形になる事も多い(青チャート)。また、上記の事情のため、sinceのつくる副詞節は文頭や前方に置かれることも多いが(インスパイア、ジーニアス、ブレイクスルー)、しかしsinceを文頭に置かなくても正しい英語である(青チャート)。 「so ~(形容詞) that ・・・(文)」 は従属接続詞。 so に等位接続詞の用法もあるが、しかし 「so 形容詞 that 文」で結びつけられている形容詞とthat後続の文は対等ではないので、従属接続詞のほうが適切であろう。 例文は著作権のため省略。 ==== 譲歩 ==== 「譲歩」の意味である、though や although が従属接続詞として分類されている(ジーニアス、フォレスト、ロイヤル)。 though よりも although のほうが堅い言い回しである(フォレスト、ロイヤル)。 なお、英文法の接続詞の単元でいう「譲歩」は、日本語の日常語の「譲歩」とは意味がやや違う。日常語の「譲歩」とは、自分と相手・他人の主張が対立したい場合に、相手の意見を聞き入れたり時には従うことに重点が置かれるのが日常語の譲歩である(広辞苑、三省堂新明解)。 しかし、この接続詞の英文法でいう「譲歩」とは、相手の主張の一部を事実ではあると認めた上で、それでも自分の主張に事実性などがあることを主張しているのが、英文法の接続詞の分野での「譲歩」である(桐原フォレスト)。 even if ~ も even though ~ も「たとえ ~ だとしても」という譲歩の意味があるが、下記のような違いがある。 even though ~ は、though の後に事実がきて、話し手は事実を知っている。 even if ~ は、if のあとに仮定がきて、その仮定が事実かどうかを話しては知らない。 これとは別に、 even if ~ で if のあとが仮定法過去になる場合もある(ジーニアス、インスパイア)。 基本的には、even if も even though も、evenは単に直後の語を強調しているだけである(インスパイア)。 if「もし~」 のあとが事実かどうかを話し手が知らないのもifの不普通の用法だし、though 「~にもかかわらず」も通常は話し手は事実を前提にしているからである。 単に even は if や though に譲歩の意味をつけたしたり、譲歩を強調したりしているだけにすぎない。 ==== 条件 ==== 条件を表すif および unless も従属接続詞。 unless は、「もし~でなければ」という意味であるが(ジーニアス、ロイヤル)、「~でない限り、」と訳される場合も多い(フォレスト、ロイヤル)。なお、unless の直後の文は否定形にはならず(フォレスト、ジーニアス)、つまり unless の直後の文は肯定形である。 unless は、「否定の条件」であるという性質に加えて、さらに基本的に「唯一の条件」という性質がある(青チャート)。「起きてほしくない事を避けるためには、unless 以降の内容を実行するしかない」という意味での唯一性の主張が unless にはある。 このことなどから、 unless ~の文を if ・・・ not ~ の文章に書き換えできる一方で(unless → if not は可能な場合が多い)、しかし if not → unless の書き換えが無理な場合が多い。 unless は「条件の文 unless 予想される結果の文」の語順。unless においてカンマなどは不要。 unless の語順は、「予想される結末 unless 結末が成り立たなくなる条件」である。なお、unlessの主節(※ 予想される結末のほう)には、willなどの未来表現を使うのが普通。一方、ifおよびunless では従属節の内容がたとえ未来における内容であっても従属節の時制は現在形にする(ジーニアス)。桐原やロイヤルでは従属節の時制はとくに解説では明記されていないが、例文の時制を見ればジーニアスと同様に桐原などでもunlessの従属節は現在形である。 === in case ~ === 「in case ~(文)」は「~の場合にそなえて」の意味であり、従属接続詞として分類され、この場合は普通は主節のあとに in case ~ が置かれる(フォレレスト、ジーニアス)。 in case ~ の典型的な例文は、 Take an umbrella with you in case it rains. 「雨が降るといけないから、かさを持っていきなさい。」 ※ 数研 青チャート、ジーニアス take の代わりに bring の場合もある。また、この傘をもっていく例文の場合なら with you は省略可能。上記例文の出典の参考書にも with you をつけてないものもある。 Bring an umbrella in case it rains. 「雨が降るといけないから、かさを持っていきなさい。」 ※ ファクトブック 命令形ではなく平叙文の場合もあり、下記のような例文もある。 I'll take an umbrella with me in case it rains. 「雨が降るといけないから、かさを持っていこう。」 ※ フォレスト with me は省略可能。自分で持っていくので with me になる(青チャート)。 「in case ~ 」の副詞節に it should rain. のように should が使われる場合もあるが、これは可能性が低いと話し手・書き手が思っている意味である(青チャート、ブレイクスルー)。 なお、in case は上記の「~するといけないから」「~しないように」の用法の他にも、case 「条件」の文字通り「~の条件で」の意味で in case を使う場合もアメリカ英語では見られ(ジーニアス、フォレスト)、この場合は if でも言い換えできる。 言い換え表現で、「~するといけないから」「~しないように」用法の in case と同じ意味は「for fear that A ~」や「lest A (should) ~」でも言える。 for fear も lest も、ともに固い表現である(ジーニアス)。ジーニアス以外の参考書の多くは、for fear が固い表現であることを取り上げていない。 for fear ~でも lest ~でも、つづく「~」の部分には not をつけない。日本語に引きづられて not をつけないように注意。 英和辞典を見れば fear は「恐れ」「不安」などの意味が書いてあることからも想像がつくように、for fear のあとには、おそれている内容を書くので、つまり、実現してほしくないことを肯定形で書くことになるのも当然であろう。 さて、lest について、ジーニアスいわく、 lest は固い言い方なだけであり、頻度自体は for fear よりも lest のほうが高いと、ジーニアスは主張している。 lest のshould が省略される場合もある。なお、shouldが省略された場合には、続く動詞には原形が来る。lest のshould 省略時の動詞の原形をつかうことを仮定法現在として解釈する流儀もある(青チャート)。 ほか、文法教育的にはあまり注目されないが、 so that ~ 「~のために」と、否定 not を組み合わせて、たとえば 「so that A won't ~」により「~しないように」という言い換えも可能である。won't の変わりに can't の場合もある(ブレイクスルー)。 === その他 === その他、as far as や as long as など範囲を表す表現が、カンマなどを補われて、従属接続詞として分類される。 「as far as I know,」 で「私の知る限りでは、」の意味。as far as の代わりに so far as とすることもある(ロイヤル)。 よくある典型文は As far as I know, he is ~. 「私の知るかぎり、彼は~な人だ」 である(フォレスト、インスパイア)。そのほか、 As far as I'm concerned, ~ 「私に関する限り、」 という表現が、たとえば「私に関する限り、それで結構です。」(青チャート)とか「私に関する限り、不満はありません。」(ジーニアス)のような文章で使われる。 このように as ・・・ as は範囲を表すことがある。 このほか、別の用法で as far as で、自分の意見を言う用法もある(ブレイクスルー、ジーニアス)。たとえばブレイクスルーいわく、「私の意見では、冷凍食品はおいしくない」という単なる持論にも as far as を使っている例文がある。 as long as には用法が2種類あり、ひとつの用法は「~する間」という時間的な範囲を表す用法であり、もうひとつの用法は最低限の条件を表し(フォレスト)、「~しさえすれば」などと訳される(ジーニアス、フォレスト)。as long as の代わりに so long as とすることもある(ジーニアス、フォレスト)。「~する限りは」と訳される場合もある(ロイヤル)。 慣用的なよくある言い回しとして、「as long as I live 」で「私が生きている限り」の意味(ロイヤル、ジーニアス)。 I will never forget your kindness as long as I live. 「私が生きているかぎり、あなたのご親切を忘れません。」 のような文章がよく参考書にある(ジーニアス、青チャート)。 なお、べつにneverを使わずとも、 I won't forget your kindness as long as I live. 「私が生きているかぎり、あなたのご親切を忘れません。」 のような文章もよくある(インスパイア)。 「~さえすれば」の as long as は、言い換えとして、if only または only if で言い換えすることもできる。 目的を表す「 so that ~」も接続詞である。in order that も同様、目的を表す接続詞である。なお、so that ~ について、口語では thatが省略されることも多く、つまり so だけで目的の接続詞になることもある(フォレスト、ジーニアス)。 so that 節の中では、can や will や may をつかうのが普通(フォレスト、ジーニアス)。 なお、「so ~(形容詞など) that ・・・」は程度をあらわす接続詞である。 in order that ~ は堅い表現。in order that 節の中では、can や will や may をつかうのが普通(フォレスト、ジーニアス)。 as も接続詞の用法がある(ロイヤル、フォレスト)。 その他にも、さまざまな接続詞がある suppose や supposed や providing や provided などを接続詞として分類することもある(フォレスト)。 g1xrzjbajm135fut073qgpimhodwxbk 205568 205567 2022-07-20T06:00:29Z すじにくシチュー 12058 /* 概要 */ typo wikitext text/x-wiki == 接続詞 == 語と語、句と句、節と節、など、文法上対等のものを結びつけるのが等位接続詞である。 いっぽう、従属節を主節と結びつけるのが従属接続詞であり(ジーニアス、フォレスト)、従位接続詞ともいう(ロイヤル)。 == 等位接続詞 == === 概要 === '''等位接続詞'''とは、and, or, but のように文法上等しいものを結びつける接続詞である。上記のほかにも、nor , so, for が等位接続詞である。 both A and B や either A or B なども便宜的にか等位接続詞として分類される。また、 not A but B や not only A but (also) B も等位接続詞として分類される。 便宜的に、not only A but also B と同じ意味をもつ as well as も、参考書では同じ単元で紹介される。 either は、「AかBかのどちらか」という意味である。 neither A nor B は、AもBも両方とも否定する表現であり、つまり「AとBのどちらも~ない」の意味である。 なお、neither A nor B が主語の場合、動詞はBの時制に一致させる(ジーニアス)。また、nor の直後の文章は肯定形である。 neither は基本、A,Bの2つしか使わない。3つ以上では使わないのが原則だが、しかし米英には原則に反して3つ以上で使う人もいるが(ロイヤル)、入試にはそこまで出ないだろう。また、neither で nor の代わりに原則に反して or を使う人もいるとのこと(ロイヤル)。入試では原則的な場合だけを考えればよいだろう。 「neither」とは not either の意味だろう、というのがロイヤル英文法の見解。 nor は、 neither のある文でなくても使われる場合がある(桐原、ロイヤル)。 否定語の not や don't などのあと、 「not A, nor B」または「don't A(動詞) nor B(動詞) 」で「AもBも無い」という意味で、neitherなしで nor が not などの否定語とともに使われる場合がある。 カンマが無い場合もある(ロイヤル英文法)。この場合でも、A nor B のあとに動詞が来る場合、その文は肯定形である。 「AもBもどちらも~ない」と否定の内容を並列させたい場合、andではなくnorを使う(桐原)。 さて、and には、命令文のあとに使われたい場合には、「そうすれば」の意味になるが、この意味の場合でも等位接続詞として分類される。 or には、「または」の意味のほかにも「すなわち」「言い換えれば」というある語を別の語で言い換える用法の意味もあるが(ジーニアスおよびエバーグリーンに「言い換えれば」アリ)、どちらの意味の場合でも等位接続詞として分類される。また、or には、命令文のあとに使われたい場合には、「さもなければ」の意味になるが、この意味の場合でも等位接続詞として分類される。 なお、「すなわち」「言い換えれば」の意味で or が接続詞として使われる場合、orの前にふつうはカンマ(,)が来る(ジーニアス、いいづなエバーグリーン)。 {{コラム|数学の集合論との違い| 「夏も冬も両方とも好き」は英語では「 I like summer and winter. 」である(ブレイクスル-)。 「夏も冬も両方とも好きではない」は英語ではneither を使わずとも、 I don't like summer or winter. でもいえて、この場合は接続詞が or になっていることに注意(ブレイクスル-)。 一見すると、数学の集合演算における否定演算での積集合「∩」や和集合「∪」などの演算子の反転のように見えるが、しかし実は、数学の集合の理論(ベン図などの理論のこと)とは違う。 まず、英語において、 A and B が数学でいう和集合(演算子∪)か積集合(演算子は∩)かは文脈による。「情報」科などで習うかもしれないブール代数のand計算は積集合だが、しかし実際の英語の場合はそうとは限らないので注意。 また、よくよく考えると、数学では、積集合 A∩B の否定 not (A∩B )は、 (not A) ∪ (not B) である。 つまり、数学では、単に not がつくだけでは集合演算子は変わらない。要素すべてに not がついて、さらにそのnot を因数分解的にひとまとめにくくる段階になって、ようやく集合演算子が反転するのが、数学的な規則である。 しかし英語では、not がついただけの段階の時点で、接続詞が and から or に反転してしまっている。 このように、集合の数学 と 英語のand/orの文法は、似ているが微妙に違うので、混同しないように。 ともかく、数学では、not でくくったら、集合の演算子は反転する(∪から∩に。または∩から∪に)。しかし英語では、そういう数学的規則は無視されている。 だから、neither の例文をもとに覚えたほうが早いし安全である。 単に「 neither A nor B のように don't A or B のように言う」とでも覚えるしかない。語学はしょせん、暗記科目である。 }} === so/ for === 接続詞としての so は、 <出来事→結果> の語順として「理由の文、so 結果の文」のように理由を前に、結果を後ろに書き、「・・・なので~」「・・・だから~」という意味になる。理由というほど明白な因果関係でなくても、比較的に関連性の高い2つの出来事において、「ある出来事, so 出来事の結果」という用法でも良い。 また、この場合の so の直前にはカンマ「 , 」を置くのが普通(ジーニアス、エバーグリーン)。 余談だが、接続詞としての so と for はそれぞれ、節と節だけ結びつける(フォレスト、エバーグリーン)。つまり、語と語、句と句、語と句などは結び付けない。 いっぽう、for は、 <結果←出来事> の語順として、「結果, for 理由の章」の構文で、堅い言い回しとして理由を説明する。口語で用いることはあまり無い(ジーニアス、エバーグリーン)。ほか、 for は、forの前述の出来事に対して、その理由を述べる接続詞である。 なので、普通は for の直前にはカンマ「 , 」が来る。 接続詞としての for は等位接続詞である。for は従属接続詞ではない等の理由で(ロイヤル)、because のように主節の前に出すことはできない。なお、もし For が文頭に置かれている場合、それは、その直前の文の理由を説明している(ロイヤル)。 === and === まず、and の基本的な意味を確認しよう。 ;並列と順序 and の基本的な意味は並列「および」「と」の意味だが、もうひとつ、動作・時間の順序という意味もある。「先に起きたこと and その直後に起きたこと」のような語順で and を使うこともある。 動作や時間の順序のand は、「そして」や「~して、」の意味である(ジーニアス、ロイヤル)。 たとえば come and see は「先に来て、そして見る(見た)」の意味であり、つまり不定詞の結果用法 come to see と同じ意味である(フォレスト)。同様の表現として、 go and see もある。 ;因果関係 さらに、and が因果関係をあらわす場合もある(ジーニアス、ロイヤル)。普通、文章では、先に行ったり紹介した動作が、あとの動作の理由になるので、andで因果関係を表すのも自然であろう。 {{コラム|and なのに逆接?| 上記で and は因果関係を表す場合もあるといったが、しかし人生では、必ずしも前に起きた動作の期待どおりに後の結果が起きるとは限らない場合も多々あるものである。このため、and があたかも but のような逆接的な意味かのように見える英文が生じる場合もある。 たとえば、「彼は努力して、そして失敗した」は、順序を意識すれば try hard and failed のような言い回しになる(ジーニアス)。努力 try hard という準備にもかかわらず失敗 fail したことから、文脈によっては and なのにまるで逆接のような意味も読み取れる場合もある。 さて、このことから、もし後の起きたことが先に起きたことに比べて対照的な場合、場合によっては and は、あたかも逆接 but のような意味に見える場合がある。 とはいえ、これはand の順序関係の用法の、派生的なものである。andの基本的な意味は、あくまで並列・順序だと思うべきだろう。 }} == 従属接続詞 == === 名詞節を導く従属接続詞 === 一方、名詞節を導くために使われる that およびwhether(~かどうか) と if(~かどうか) は'''従属接続詞'''である。that や whether を接続詞として解釈する考えもある。 ここでの名詞節を導く if は、「~かどうか」の意味での if である。「もし~ならば、」の if のことではない。また、「もし」の if との混同をさけるため、文頭では名詞節の if は使えない(ファクトブック)。この「~かどうか」の意味の if の性質について言い方を変えるなら、つまり if は動詞の目的語としてしか使えない(ジーニアス、青チャート、ほか多数)。 また、whether or not (~かどうか)という成句はある一方、ifにはない(インスパイア、青チャート)。 ほか、「whether to ~(動詞)」で「~すべきかどうか」というto不定詞の用法はあるが、ifには不定詞が続かない(インスパイア、青チャート)。 なお、 whether to go 「行くべきかどうか」という語が、参考書によくある典型例である。さらに、 whether to go or not (青チャート)「行くべきかどうか」や whether to go or stay (ブレイクスルー)「行くべきかとどまるべきか」のようになる場合もある。 さらに、助動詞 should を使って「べき」を強調する whether we should go or stay 「行くべきか残るべきか」という表現もある(青チャート)。 whether we should go or not のように、whether の直後ではなく分節の最後に or not をつける場合もある(ジーニアス)。 また、whether は前置詞の目的語になることがあるが、ifはならない(インスパイア)。 if の本来の用法は「もしも~」であり、「~かどうか」の意味は派生的な意味にすぎない、と考えるのが良いだろう。 ほか、if は口語的、whether は文語的である(ジーニアス、青チャ-ト)。 depends on whether 、 など、動詞句 depends on とwhether との組み合わせが決まっている(青チャート)。depends on と if との組み合わせは禁止。なお depends on は、前置詞の目的語にwhether が来る例にもなっている。 wonder と ask は、if でも whether でも、どちらでも良い(ブレイクスルー、青チャート)。 ほか、 I wonder if ~ で「~がどうかなと思う」の意味。 さて、従属接続詞の典型的な文で The fact is (that)・・・ 「事実は・・・ということだ。」 The trouble is (that)・・・ 「困ったことに・・・ということだ。」 The truth is (that)・・・ 「真実は・・・ということだ。」 The reason is (that)・・・ 「理由は・・・ということだ。」 などがある。 このように、名詞節を導く that は、「・・・ということだ。」の意味になる。 that は主語・補語・目的語になる(上記の the reason is that などの例文の場合は、that が補語になっている)。 ほか、 It is 形容詞 that ・・・ という形式主語の文章で 使われる that は接続詞でもある(ジーニアス、エバーグリーン )。 ほか、that節が know,say ,think, tell, hope など一般的な動詞の目的語になっている場合は、thatを省略することも多い(ブレイクスルー、インスパイア)。 ただし、形式目的語の that は省略できない(エバーグリーン)。形式目的語とは、 He made it clear that ~ . 「彼は~であることを明らかにした。」 のような it を仮の目的語とする文章のこと。 that 節は普通は前置詞の後ろに置かれることないが(ジーニアス)、例外的に in that(~という点で、~だから) と except that(~を除いて)という用法がある。 なお、 in that には意味の異なる「~という点で」という用法と、もうひとつ「~だから」「~であるか」という別の用法があることに注意(ジーニアス)。 参考書によっては in that は前置詞の項目に書いてある場合もある(青チャート)。 ほか、Now that で、「今や~だから」という表現ができる。口語ではよくthatが省略され、Now だけになる。 典型的な例文は Now (that) he is eighteen, he can vote. 「今や彼は18歳なのだから、彼は投票できる。」 である(ジーニアス、青チャート)。 このほか、紹介している参考書は少ないが(青チャート、インスパイア)、分詞構文の Seeing that ~「~であるから」「~だから」が接続詞的に用いられる用法もある(青チャート)。 I7m glad that you have come to meet us. 「あなたがお迎えにきてくれて、うれしく思います」(青チャート) のような例文がよくある。 I'm glad that ~ 「~できて、うれしいです」 のように、「感情を現す形容詞 + that 」の that も接続詞である(青チャート)。 afraid, disappointed, sad, sorry, glad, happy, angry, surprised , upset などがこのような形容詞である(青チャート、ジーニアス)。この場合の that は省略されることも多い。なお、この場合の感情に続く that 以下の内容は「理由」を表す(ジーニアス)。 We are sorry that you cannot come. 「あなたがこられないのは残念です。」(インスパイア) この場合の sorry は謝罪ではないので注意。 sure 「確信している」は日本語では感情とは言いづらいが、青チャートはこれを感情に含めている。ただし、ジーニアスはsureを不採用。 なお、sure は感情のように I'm sure that ~ と主語を人称代名詞とするのが普通。辞書ジーニアスを見たが、it を主語にする sure は見つからなかった。 いっぽう、certain は、 It is certain that ~ も I'm certain もともに許される。(フォレストに I'm certain あり。ブレイクスルーに it is certain) なお、確信ではなく「疑わしい」と思っている場合は、 It is doubtful whether (またはif)~ 「~かどうかは疑わしい」 のように、 接続詞は whether または if になる。この場合の whether や if も名詞節である。 I'm doubtful whether(if) のように人称代名詞で言ってもよい(インスパイア)。さらに、形容詞ではなく動詞 doubt で I doubt whether (if) ~ で言うことも可能(インスパイア)。 なお「確信」している場合、I'm sure は「確信している」の「信」じるの文字からも想像がつくように、動詞 believe で I believe that と細かなニュアンスを無視すれば言い換えもできる(インスパイア)。 ほか、確信していない場合は、つまり確信に not がつく場合は、that よりも whether や if のほうが好ましい(インスパイア、ブレイクスルー)。つまり I'm not sure whether(またはif) ~ のようになる(インスパイア、ブレイクスルー)。 なお、動詞で「信じていない」という場合、つまり don't believe の場合、 I didn't believe what ~ のように whether ではなく what になるのに注意(インスパイア)。 === 副詞節を導く従属接続詞 === ==== はじめに ==== ほか、(たとえば平叙文のなかで)副詞節を導かれるために使われる when (~のとき、)や where (~の場所)が従属接続詞である。 before , after および since や until なども従属接続詞。 as soon as や once もこれに含める(ジーニアス、フォレスト)。 「until ~」は、「~」の瞬間まで動作が継続しているときに使い、「~するまで(ずっと)」の意味である。 一方、継続しない場合で、その時までに動作が完了している場合には、untilではなくby the time 「~する(時)までに」を使う。 as well as が等位接続詞なのに as soon as が従属なのはアレだが、まあどの参考書でもそういう分類になっている。 as soon as は言い換えで、the moment や the instant や no sooner ・・・ than ~ などの言い換え表現がある。 ==== once ==== once は「いったん~すると」の意味。once をどう分類するかが参考書ごとに違う。 ifやunlessなどと同様に「条件」として once を分類する参考書もあれば(ブレイクスルー、インスパイア)、 beforeやafterやsinceなどと同様の「起点」として once を分類する参考書もある(ジーニアス、フォレスト)。 なお、as soon as と once がなぜか同じ章節で紹介される参考書が多いが(ジーニアス、フォレスト、しかし意味が違う接続詞なので混同しないように。 if~ は内容が未来であっても現在形を使うが、as soon as ~ も後続の文では内容が未来であっても現在形を使うので、もしかしたらその理由でonceが「条件」として分類されているのかもしれない。 また、as soon as ~ と同様に、once ~ も後続の文の内容が未来であっても現在形を使う(ジーニアス)。そういう共通点からか、一緒に「起点」として紹介されるのかもしれない。 しかし、単に分類が同じだけであり、 once は as soon as とは意味がまったく違うので、混同しないように。 ==== その他 ==== 時間の表現だけでなく、because や since (since には理由の意味もある)も従属接続詞。 because は従属接続詞なので、よって主節なしで 「Because ~ .」 といったBecause だけの節をつくることは原則、誤用だとみなされる(青チャート、ジーニアス)。 ただし例外的に、"Why ~?" といった Why を使った質問文に対して、解答で"Because ~" と because だけの節の文章が許されている(青チャート、ジーニアス)。 since は基本、相手が既知の話題についての理由を説明するときに使うので(ブレイクスルー、フォレスト、ジーニアス)、since節の時制は過去形になる事も多い(青チャート)。また、上記の事情のため、sinceのつくる副詞節は文頭や前方に置かれることも多いが(インスパイア、ジーニアス、ブレイクスルー)、しかしsinceを文頭に置かなくても正しい英語である(青チャート)。 「so ~(形容詞) that ・・・(文)」 は従属接続詞。 so に等位接続詞の用法もあるが、しかし 「so 形容詞 that 文」で結びつけられている形容詞とthat後続の文は対等ではないので、従属接続詞のほうが適切であろう。 例文は著作権のため省略。 ==== 譲歩 ==== 「譲歩」の意味である、though や although が従属接続詞として分類されている(ジーニアス、フォレスト、ロイヤル)。 though よりも although のほうが堅い言い回しである(フォレスト、ロイヤル)。 なお、英文法の接続詞の単元でいう「譲歩」は、日本語の日常語の「譲歩」とは意味がやや違う。日常語の「譲歩」とは、自分と相手・他人の主張が対立したい場合に、相手の意見を聞き入れたり時には従うことに重点が置かれるのが日常語の譲歩である(広辞苑、三省堂新明解)。 しかし、この接続詞の英文法でいう「譲歩」とは、相手の主張の一部を事実ではあると認めた上で、それでも自分の主張に事実性などがあることを主張しているのが、英文法の接続詞の分野での「譲歩」である(桐原フォレスト)。 even if ~ も even though ~ も「たとえ ~ だとしても」という譲歩の意味があるが、下記のような違いがある。 even though ~ は、though の後に事実がきて、話し手は事実を知っている。 even if ~ は、if のあとに仮定がきて、その仮定が事実かどうかを話しては知らない。 これとは別に、 even if ~ で if のあとが仮定法過去になる場合もある(ジーニアス、インスパイア)。 基本的には、even if も even though も、evenは単に直後の語を強調しているだけである(インスパイア)。 if「もし~」 のあとが事実かどうかを話し手が知らないのもifの不普通の用法だし、though 「~にもかかわらず」も通常は話し手は事実を前提にしているからである。 単に even は if や though に譲歩の意味をつけたしたり、譲歩を強調したりしているだけにすぎない。 ==== 条件 ==== 条件を表すif および unless も従属接続詞。 unless は、「もし~でなければ」という意味であるが(ジーニアス、ロイヤル)、「~でない限り、」と訳される場合も多い(フォレスト、ロイヤル)。なお、unless の直後の文は否定形にはならず(フォレスト、ジーニアス)、つまり unless の直後の文は肯定形である。 unless は、「否定の条件」であるという性質に加えて、さらに基本的に「唯一の条件」という性質がある(青チャート)。「起きてほしくない事を避けるためには、unless 以降の内容を実行するしかない」という意味での唯一性の主張が unless にはある。 このことなどから、 unless ~の文を if ・・・ not ~ の文章に書き換えできる一方で(unless → if not は可能な場合が多い)、しかし if not → unless の書き換えが無理な場合が多い。 unless は「条件の文 unless 予想される結果の文」の語順。unless においてカンマなどは不要。 unless の語順は、「予想される結末 unless 結末が成り立たなくなる条件」である。なお、unlessの主節(※ 予想される結末のほう)には、willなどの未来表現を使うのが普通。一方、ifおよびunless では従属節の内容がたとえ未来における内容であっても従属節の時制は現在形にする(ジーニアス)。桐原やロイヤルでは従属節の時制はとくに解説では明記されていないが、例文の時制を見ればジーニアスと同様に桐原などでもunlessの従属節は現在形である。 === in case ~ === 「in case ~(文)」は「~の場合にそなえて」の意味であり、従属接続詞として分類され、この場合は普通は主節のあとに in case ~ が置かれる(フォレレスト、ジーニアス)。 in case ~ の典型的な例文は、 Take an umbrella with you in case it rains. 「雨が降るといけないから、かさを持っていきなさい。」 ※ 数研 青チャート、ジーニアス take の代わりに bring の場合もある。また、この傘をもっていく例文の場合なら with you は省略可能。上記例文の出典の参考書にも with you をつけてないものもある。 Bring an umbrella in case it rains. 「雨が降るといけないから、かさを持っていきなさい。」 ※ ファクトブック 命令形ではなく平叙文の場合もあり、下記のような例文もある。 I'll take an umbrella with me in case it rains. 「雨が降るといけないから、かさを持っていこう。」 ※ フォレスト with me は省略可能。自分で持っていくので with me になる(青チャート)。 「in case ~ 」の副詞節に it should rain. のように should が使われる場合もあるが、これは可能性が低いと話し手・書き手が思っている意味である(青チャート、ブレイクスルー)。 なお、in case は上記の「~するといけないから」「~しないように」の用法の他にも、case 「条件」の文字通り「~の条件で」の意味で in case を使う場合もアメリカ英語では見られ(ジーニアス、フォレスト)、この場合は if でも言い換えできる。 言い換え表現で、「~するといけないから」「~しないように」用法の in case と同じ意味は「for fear that A ~」や「lest A (should) ~」でも言える。 for fear も lest も、ともに固い表現である(ジーニアス)。ジーニアス以外の参考書の多くは、for fear が固い表現であることを取り上げていない。 for fear ~でも lest ~でも、つづく「~」の部分には not をつけない。日本語に引きづられて not をつけないように注意。 英和辞典を見れば fear は「恐れ」「不安」などの意味が書いてあることからも想像がつくように、for fear のあとには、おそれている内容を書くので、つまり、実現してほしくないことを肯定形で書くことになるのも当然であろう。 さて、lest について、ジーニアスいわく、 lest は固い言い方なだけであり、頻度自体は for fear よりも lest のほうが高いと、ジーニアスは主張している。 lest のshould が省略される場合もある。なお、shouldが省略された場合には、続く動詞には原形が来る。lest のshould 省略時の動詞の原形をつかうことを仮定法現在として解釈する流儀もある(青チャート)。 ほか、文法教育的にはあまり注目されないが、 so that ~ 「~のために」と、否定 not を組み合わせて、たとえば 「so that A won't ~」により「~しないように」という言い換えも可能である。won't の変わりに can't の場合もある(ブレイクスルー)。 === その他 === その他、as far as や as long as など範囲を表す表現が、カンマなどを補われて、従属接続詞として分類される。 「as far as I know,」 で「私の知る限りでは、」の意味。as far as の代わりに so far as とすることもある(ロイヤル)。 よくある典型文は As far as I know, he is ~. 「私の知るかぎり、彼は~な人だ」 である(フォレスト、インスパイア)。そのほか、 As far as I'm concerned, ~ 「私に関する限り、」 という表現が、たとえば「私に関する限り、それで結構です。」(青チャート)とか「私に関する限り、不満はありません。」(ジーニアス)のような文章で使われる。 このように as ・・・ as は範囲を表すことがある。 このほか、別の用法で as far as で、自分の意見を言う用法もある(ブレイクスルー、ジーニアス)。たとえばブレイクスルーいわく、「私の意見では、冷凍食品はおいしくない」という単なる持論にも as far as を使っている例文がある。 as long as には用法が2種類あり、ひとつの用法は「~する間」という時間的な範囲を表す用法であり、もうひとつの用法は最低限の条件を表し(フォレスト)、「~しさえすれば」などと訳される(ジーニアス、フォレスト)。as long as の代わりに so long as とすることもある(ジーニアス、フォレスト)。「~する限りは」と訳される場合もある(ロイヤル)。 慣用的なよくある言い回しとして、「as long as I live 」で「私が生きている限り」の意味(ロイヤル、ジーニアス)。 I will never forget your kindness as long as I live. 「私が生きているかぎり、あなたのご親切を忘れません。」 のような文章がよく参考書にある(ジーニアス、青チャート)。 なお、べつにneverを使わずとも、 I won't forget your kindness as long as I live. 「私が生きているかぎり、あなたのご親切を忘れません。」 のような文章もよくある(インスパイア)。 「~さえすれば」の as long as は、言い換えとして、if only または only if で言い換えすることもできる。 目的を表す「 so that ~」も接続詞である。in order that も同様、目的を表す接続詞である。なお、so that ~ について、口語では thatが省略されることも多く、つまり so だけで目的の接続詞になることもある(フォレスト、ジーニアス)。 so that 節の中では、can や will や may をつかうのが普通(フォレスト、ジーニアス)。 なお、「so ~(形容詞など) that ・・・」は程度をあらわす接続詞である。 in order that ~ は堅い表現。in order that 節の中では、can や will や may をつかうのが普通(フォレスト、ジーニアス)。 as も接続詞の用法がある(ロイヤル、フォレスト)。 その他にも、さまざまな接続詞がある suppose や supposed や providing や provided などを接続詞として分類することもある(フォレスト)。 3ozaqhsi8p7bjs2okn1dtgzezxbetpo 205574 205568 2022-07-20T07:40:34Z すじにくシチュー 12058 /* 名詞節を導く従属接続詞 */ doubt については否定形の場合、don't doubt that ~ のようになる(インスパイア) wikitext text/x-wiki == 接続詞 == 語と語、句と句、節と節、など、文法上対等のものを結びつけるのが等位接続詞である。 いっぽう、従属節を主節と結びつけるのが従属接続詞であり(ジーニアス、フォレスト)、従位接続詞ともいう(ロイヤル)。 == 等位接続詞 == === 概要 === '''等位接続詞'''とは、and, or, but のように文法上等しいものを結びつける接続詞である。上記のほかにも、nor , so, for が等位接続詞である。 both A and B や either A or B なども便宜的にか等位接続詞として分類される。また、 not A but B や not only A but (also) B も等位接続詞として分類される。 便宜的に、not only A but also B と同じ意味をもつ as well as も、参考書では同じ単元で紹介される。 either は、「AかBかのどちらか」という意味である。 neither A nor B は、AもBも両方とも否定する表現であり、つまり「AとBのどちらも~ない」の意味である。 なお、neither A nor B が主語の場合、動詞はBの時制に一致させる(ジーニアス)。また、nor の直後の文章は肯定形である。 neither は基本、A,Bの2つしか使わない。3つ以上では使わないのが原則だが、しかし米英には原則に反して3つ以上で使う人もいるが(ロイヤル)、入試にはそこまで出ないだろう。また、neither で nor の代わりに原則に反して or を使う人もいるとのこと(ロイヤル)。入試では原則的な場合だけを考えればよいだろう。 「neither」とは not either の意味だろう、というのがロイヤル英文法の見解。 nor は、 neither のある文でなくても使われる場合がある(桐原、ロイヤル)。 否定語の not や don't などのあと、 「not A, nor B」または「don't A(動詞) nor B(動詞) 」で「AもBも無い」という意味で、neitherなしで nor が not などの否定語とともに使われる場合がある。 カンマが無い場合もある(ロイヤル英文法)。この場合でも、A nor B のあとに動詞が来る場合、その文は肯定形である。 「AもBもどちらも~ない」と否定の内容を並列させたい場合、andではなくnorを使う(桐原)。 さて、and には、命令文のあとに使われたい場合には、「そうすれば」の意味になるが、この意味の場合でも等位接続詞として分類される。 or には、「または」の意味のほかにも「すなわち」「言い換えれば」というある語を別の語で言い換える用法の意味もあるが(ジーニアスおよびエバーグリーンに「言い換えれば」アリ)、どちらの意味の場合でも等位接続詞として分類される。また、or には、命令文のあとに使われたい場合には、「さもなければ」の意味になるが、この意味の場合でも等位接続詞として分類される。 なお、「すなわち」「言い換えれば」の意味で or が接続詞として使われる場合、orの前にふつうはカンマ(,)が来る(ジーニアス、いいづなエバーグリーン)。 {{コラム|数学の集合論との違い| 「夏も冬も両方とも好き」は英語では「 I like summer and winter. 」である(ブレイクスル-)。 「夏も冬も両方とも好きではない」は英語ではneither を使わずとも、 I don't like summer or winter. でもいえて、この場合は接続詞が or になっていることに注意(ブレイクスル-)。 一見すると、数学の集合演算における否定演算での積集合「∩」や和集合「∪」などの演算子の反転のように見えるが、しかし実は、数学の集合の理論(ベン図などの理論のこと)とは違う。 まず、英語において、 A and B が数学でいう和集合(演算子∪)か積集合(演算子は∩)かは文脈による。「情報」科などで習うかもしれないブール代数のand計算は積集合だが、しかし実際の英語の場合はそうとは限らないので注意。 また、よくよく考えると、数学では、積集合 A∩B の否定 not (A∩B )は、 (not A) ∪ (not B) である。 つまり、数学では、単に not がつくだけでは集合演算子は変わらない。要素すべてに not がついて、さらにそのnot を因数分解的にひとまとめにくくる段階になって、ようやく集合演算子が反転するのが、数学的な規則である。 しかし英語では、not がついただけの段階の時点で、接続詞が and から or に反転してしまっている。 このように、集合の数学 と 英語のand/orの文法は、似ているが微妙に違うので、混同しないように。 ともかく、数学では、not でくくったら、集合の演算子は反転する(∪から∩に。または∩から∪に)。しかし英語では、そういう数学的規則は無視されている。 だから、neither の例文をもとに覚えたほうが早いし安全である。 単に「 neither A nor B のように don't A or B のように言う」とでも覚えるしかない。語学はしょせん、暗記科目である。 }} === so/ for === 接続詞としての so は、 <出来事→結果> の語順として「理由の文、so 結果の文」のように理由を前に、結果を後ろに書き、「・・・なので~」「・・・だから~」という意味になる。理由というほど明白な因果関係でなくても、比較的に関連性の高い2つの出来事において、「ある出来事, so 出来事の結果」という用法でも良い。 また、この場合の so の直前にはカンマ「 , 」を置くのが普通(ジーニアス、エバーグリーン)。 余談だが、接続詞としての so と for はそれぞれ、節と節だけ結びつける(フォレスト、エバーグリーン)。つまり、語と語、句と句、語と句などは結び付けない。 いっぽう、for は、 <結果←出来事> の語順として、「結果, for 理由の章」の構文で、堅い言い回しとして理由を説明する。口語で用いることはあまり無い(ジーニアス、エバーグリーン)。ほか、 for は、forの前述の出来事に対して、その理由を述べる接続詞である。 なので、普通は for の直前にはカンマ「 , 」が来る。 接続詞としての for は等位接続詞である。for は従属接続詞ではない等の理由で(ロイヤル)、because のように主節の前に出すことはできない。なお、もし For が文頭に置かれている場合、それは、その直前の文の理由を説明している(ロイヤル)。 === and === まず、and の基本的な意味を確認しよう。 ;並列と順序 and の基本的な意味は並列「および」「と」の意味だが、もうひとつ、動作・時間の順序という意味もある。「先に起きたこと and その直後に起きたこと」のような語順で and を使うこともある。 動作や時間の順序のand は、「そして」や「~して、」の意味である(ジーニアス、ロイヤル)。 たとえば come and see は「先に来て、そして見る(見た)」の意味であり、つまり不定詞の結果用法 come to see と同じ意味である(フォレスト)。同様の表現として、 go and see もある。 ;因果関係 さらに、and が因果関係をあらわす場合もある(ジーニアス、ロイヤル)。普通、文章では、先に行ったり紹介した動作が、あとの動作の理由になるので、andで因果関係を表すのも自然であろう。 {{コラム|and なのに逆接?| 上記で and は因果関係を表す場合もあるといったが、しかし人生では、必ずしも前に起きた動作の期待どおりに後の結果が起きるとは限らない場合も多々あるものである。このため、and があたかも but のような逆接的な意味かのように見える英文が生じる場合もある。 たとえば、「彼は努力して、そして失敗した」は、順序を意識すれば try hard and failed のような言い回しになる(ジーニアス)。努力 try hard という準備にもかかわらず失敗 fail したことから、文脈によっては and なのにまるで逆接のような意味も読み取れる場合もある。 さて、このことから、もし後の起きたことが先に起きたことに比べて対照的な場合、場合によっては and は、あたかも逆接 but のような意味に見える場合がある。 とはいえ、これはand の順序関係の用法の、派生的なものである。andの基本的な意味は、あくまで並列・順序だと思うべきだろう。 }} == 従属接続詞 == === 名詞節を導く従属接続詞 === 一方、名詞節を導くために使われる that およびwhether(~かどうか) と if(~かどうか) は'''従属接続詞'''である。that や whether を接続詞として解釈する考えもある。 ここでの名詞節を導く if は、「~かどうか」の意味での if である。「もし~ならば、」の if のことではない。また、「もし」の if との混同をさけるため、文頭では名詞節の if は使えない(ファクトブック)。この「~かどうか」の意味の if の性質について言い方を変えるなら、つまり if は動詞の目的語としてしか使えない(ジーニアス、青チャート、ほか多数)。 また、whether or not (~かどうか)という成句はある一方、ifにはない(インスパイア、青チャート)。 ほか、「whether to ~(動詞)」で「~すべきかどうか」というto不定詞の用法はあるが、ifには不定詞が続かない(インスパイア、青チャート)。 なお、 whether to go 「行くべきかどうか」という語が、参考書によくある典型例である。さらに、 whether to go or not (青チャート)「行くべきかどうか」や whether to go or stay (ブレイクスルー)「行くべきかとどまるべきか」のようになる場合もある。 さらに、助動詞 should を使って「べき」を強調する whether we should go or stay 「行くべきか残るべきか」という表現もある(青チャート)。 whether we should go or not のように、whether の直後ではなく分節の最後に or not をつける場合もある(ジーニアス)。 また、whether は前置詞の目的語になることがあるが、ifはならない(インスパイア)。 if の本来の用法は「もしも~」であり、「~かどうか」の意味は派生的な意味にすぎない、と考えるのが良いだろう。 ほか、if は口語的、whether は文語的である(ジーニアス、青チャ-ト)。 depends on whether 、 など、動詞句 depends on とwhether との組み合わせが決まっている(青チャート)。depends on と if との組み合わせは禁止。なお depends on は、前置詞の目的語にwhether が来る例にもなっている。 wonder と ask は、if でも whether でも、どちらでも良い(ブレイクスルー、青チャート)。 ほか、 I wonder if ~ で「~がどうかなと思う」の意味。 さて、従属接続詞の典型的な文で The fact is (that)・・・ 「事実は・・・ということだ。」 The trouble is (that)・・・ 「困ったことに・・・ということだ。」 The truth is (that)・・・ 「真実は・・・ということだ。」 The reason is (that)・・・ 「理由は・・・ということだ。」 などがある。 このように、名詞節を導く that は、「・・・ということだ。」の意味になる。 that は主語・補語・目的語になる(上記の the reason is that などの例文の場合は、that が補語になっている)。 ほか、 It is 形容詞 that ・・・ という形式主語の文章で 使われる that は接続詞でもある(ジーニアス、エバーグリーン )。 ほか、that節が know,say ,think, tell, hope など一般的な動詞の目的語になっている場合は、thatを省略することも多い(ブレイクスルー、インスパイア)。 ただし、形式目的語の that は省略できない(エバーグリーン)。形式目的語とは、 He made it clear that ~ . 「彼は~であることを明らかにした。」 のような it を仮の目的語とする文章のこと。 that 節は普通は前置詞の後ろに置かれることないが(ジーニアス)、例外的に in that(~という点で、~だから) と except that(~を除いて)という用法がある。 なお、 in that には意味の異なる「~という点で」という用法と、もうひとつ「~だから」「~であるか」という別の用法があることに注意(ジーニアス)。 参考書によっては in that は前置詞の項目に書いてある場合もある(青チャート)。 ほか、Now that で、「今や~だから」という表現ができる。口語ではよくthatが省略され、Now だけになる。 典型的な例文は Now (that) he is eighteen, he can vote. 「今や彼は18歳なのだから、彼は投票できる。」 である(ジーニアス、青チャート)。 このほか、紹介している参考書は少ないが(青チャート、インスパイア)、分詞構文の Seeing that ~「~であるから」「~だから」が接続詞的に用いられる用法もある(青チャート)。 I7m glad that you have come to meet us. 「あなたがお迎えにきてくれて、うれしく思います」(青チャート) のような例文がよくある。 I'm glad that ~ 「~できて、うれしいです」 のように、「感情を現す形容詞 + that 」の that も接続詞である(青チャート)。 afraid, disappointed, sad, sorry, glad, happy, angry, surprised , upset などがこのような形容詞である(青チャート、ジーニアス)。この場合の that は省略されることも多い。なお、この場合の感情に続く that 以下の内容は「理由」を表す(ジーニアス)。 We are sorry that you cannot come. 「あなたがこられないのは残念です。」(インスパイア) この場合の sorry は謝罪ではないので注意。 sure 「確信している」は日本語では感情とは言いづらいが、青チャートはこれを感情に含めている。ただし、ジーニアスはsureを不採用。 なお、sure は感情のように I'm sure that ~ と主語を人称代名詞とするのが普通。辞書ジーニアスを見たが、it を主語にする sure は見つからなかった。 いっぽう、certain は、 It is certain that ~ も I'm certain もともに許される。(フォレストに I'm certain あり。ブレイクスルーに it is certain) なお、確信ではなく「疑わしい」と思っている場合は、 It is doubtful whether (またはif)~ 「~かどうかは疑わしい」 のように、 接続詞は whether または if になる。この場合の whether や if も名詞節である。 I'm doubtful whether(if) のように人称代名詞で言ってもよい(インスパイア)。さらに、形容詞ではなく動詞 doubt で I doubt whether (if) ~ で言うことも可能(インスパイア)。 :(※ 発展 )ほか、doubt については否定形の場合、don't doubt that ~ のようになる(インスパイア)。つまり、否定形 doubtでは whether ではなく that になる。 これは、don't doubt は直訳しただけなら単に「疑ってはいない」というだけになってしまうが、しかし実際には don't doubt は「確信している」という意味を表すのに慣用的に使われている(インスパイア)からである。インスパイアの場合、I don't doubt that ~ を「~することは間違いない」と訳している。かなりマニアックな話題であり、ほかの参考書は取り上げていない。 けっして「否定形のあとなら whether がthat になる」(×)というわけではない(ジーニアス)。「彼女が来るかどうかはどうでもいいことだ」という文章で、「どうでもいい」は It doesn't concern me なので(ジーニアス)、それと「彼女が来るかどうか」を合わせて It doesn't concern me whether she will come or not. 「彼女が来るかどうかはどうでもいいことだ。」(ジーニアス) という例文もあるほどだ(ジーニアス)。 なお「確信」している場合、I'm sure は「確信している」の「信」じるの文字からも想像がつくように、動詞 believe で I believe that と細かなニュアンスを無視すれば言い換えもできる(インスパイア)。 ほか、確信していない場合は、つまり確信に not がつく場合は、that よりも whether や if のほうが好ましい(インスパイア、ブレイクスルー)。つまり I'm not sure whether(またはif) ~ のようになる(インスパイア、ブレイクスルー)。 なお、動詞で「信じていない」という場合、つまり don't believe の場合、 I didn't believe what ~ のように whether ではなく what になるのに注意(インスパイア)。 === 副詞節を導く従属接続詞 === ==== はじめに ==== ほか、(たとえば平叙文のなかで)副詞節を導かれるために使われる when (~のとき、)や where (~の場所)が従属接続詞である。 before , after および since や until なども従属接続詞。 as soon as や once もこれに含める(ジーニアス、フォレスト)。 「until ~」は、「~」の瞬間まで動作が継続しているときに使い、「~するまで(ずっと)」の意味である。 一方、継続しない場合で、その時までに動作が完了している場合には、untilではなくby the time 「~する(時)までに」を使う。 as well as が等位接続詞なのに as soon as が従属なのはアレだが、まあどの参考書でもそういう分類になっている。 as soon as は言い換えで、the moment や the instant や no sooner ・・・ than ~ などの言い換え表現がある。 ==== once ==== once は「いったん~すると」の意味。once をどう分類するかが参考書ごとに違う。 ifやunlessなどと同様に「条件」として once を分類する参考書もあれば(ブレイクスルー、インスパイア)、 beforeやafterやsinceなどと同様の「起点」として once を分類する参考書もある(ジーニアス、フォレスト)。 なお、as soon as と once がなぜか同じ章節で紹介される参考書が多いが(ジーニアス、フォレスト、しかし意味が違う接続詞なので混同しないように。 if~ は内容が未来であっても現在形を使うが、as soon as ~ も後続の文では内容が未来であっても現在形を使うので、もしかしたらその理由でonceが「条件」として分類されているのかもしれない。 また、as soon as ~ と同様に、once ~ も後続の文の内容が未来であっても現在形を使う(ジーニアス)。そういう共通点からか、一緒に「起点」として紹介されるのかもしれない。 しかし、単に分類が同じだけであり、 once は as soon as とは意味がまったく違うので、混同しないように。 ==== その他 ==== 時間の表現だけでなく、because や since (since には理由の意味もある)も従属接続詞。 because は従属接続詞なので、よって主節なしで 「Because ~ .」 といったBecause だけの節をつくることは原則、誤用だとみなされる(青チャート、ジーニアス)。 ただし例外的に、"Why ~?" といった Why を使った質問文に対して、解答で"Because ~" と because だけの節の文章が許されている(青チャート、ジーニアス)。 since は基本、相手が既知の話題についての理由を説明するときに使うので(ブレイクスルー、フォレスト、ジーニアス)、since節の時制は過去形になる事も多い(青チャート)。また、上記の事情のため、sinceのつくる副詞節は文頭や前方に置かれることも多いが(インスパイア、ジーニアス、ブレイクスルー)、しかしsinceを文頭に置かなくても正しい英語である(青チャート)。 「so ~(形容詞) that ・・・(文)」 は従属接続詞。 so に等位接続詞の用法もあるが、しかし 「so 形容詞 that 文」で結びつけられている形容詞とthat後続の文は対等ではないので、従属接続詞のほうが適切であろう。 例文は著作権のため省略。 ==== 譲歩 ==== 「譲歩」の意味である、though や although が従属接続詞として分類されている(ジーニアス、フォレスト、ロイヤル)。 though よりも although のほうが堅い言い回しである(フォレスト、ロイヤル)。 なお、英文法の接続詞の単元でいう「譲歩」は、日本語の日常語の「譲歩」とは意味がやや違う。日常語の「譲歩」とは、自分と相手・他人の主張が対立したい場合に、相手の意見を聞き入れたり時には従うことに重点が置かれるのが日常語の譲歩である(広辞苑、三省堂新明解)。 しかし、この接続詞の英文法でいう「譲歩」とは、相手の主張の一部を事実ではあると認めた上で、それでも自分の主張に事実性などがあることを主張しているのが、英文法の接続詞の分野での「譲歩」である(桐原フォレスト)。 even if ~ も even though ~ も「たとえ ~ だとしても」という譲歩の意味があるが、下記のような違いがある。 even though ~ は、though の後に事実がきて、話し手は事実を知っている。 even if ~ は、if のあとに仮定がきて、その仮定が事実かどうかを話しては知らない。 これとは別に、 even if ~ で if のあとが仮定法過去になる場合もある(ジーニアス、インスパイア)。 基本的には、even if も even though も、evenは単に直後の語を強調しているだけである(インスパイア)。 if「もし~」 のあとが事実かどうかを話し手が知らないのもifの不普通の用法だし、though 「~にもかかわらず」も通常は話し手は事実を前提にしているからである。 単に even は if や though に譲歩の意味をつけたしたり、譲歩を強調したりしているだけにすぎない。 ==== 条件 ==== 条件を表すif および unless も従属接続詞。 unless は、「もし~でなければ」という意味であるが(ジーニアス、ロイヤル)、「~でない限り、」と訳される場合も多い(フォレスト、ロイヤル)。なお、unless の直後の文は否定形にはならず(フォレスト、ジーニアス)、つまり unless の直後の文は肯定形である。 unless は、「否定の条件」であるという性質に加えて、さらに基本的に「唯一の条件」という性質がある(青チャート)。「起きてほしくない事を避けるためには、unless 以降の内容を実行するしかない」という意味での唯一性の主張が unless にはある。 このことなどから、 unless ~の文を if ・・・ not ~ の文章に書き換えできる一方で(unless → if not は可能な場合が多い)、しかし if not → unless の書き換えが無理な場合が多い。 unless は「条件の文 unless 予想される結果の文」の語順。unless においてカンマなどは不要。 unless の語順は、「予想される結末 unless 結末が成り立たなくなる条件」である。なお、unlessの主節(※ 予想される結末のほう)には、willなどの未来表現を使うのが普通。一方、ifおよびunless では従属節の内容がたとえ未来における内容であっても従属節の時制は現在形にする(ジーニアス)。桐原やロイヤルでは従属節の時制はとくに解説では明記されていないが、例文の時制を見ればジーニアスと同様に桐原などでもunlessの従属節は現在形である。 === in case ~ === 「in case ~(文)」は「~の場合にそなえて」の意味であり、従属接続詞として分類され、この場合は普通は主節のあとに in case ~ が置かれる(フォレレスト、ジーニアス)。 in case ~ の典型的な例文は、 Take an umbrella with you in case it rains. 「雨が降るといけないから、かさを持っていきなさい。」 ※ 数研 青チャート、ジーニアス take の代わりに bring の場合もある。また、この傘をもっていく例文の場合なら with you は省略可能。上記例文の出典の参考書にも with you をつけてないものもある。 Bring an umbrella in case it rains. 「雨が降るといけないから、かさを持っていきなさい。」 ※ ファクトブック 命令形ではなく平叙文の場合もあり、下記のような例文もある。 I'll take an umbrella with me in case it rains. 「雨が降るといけないから、かさを持っていこう。」 ※ フォレスト with me は省略可能。自分で持っていくので with me になる(青チャート)。 「in case ~ 」の副詞節に it should rain. のように should が使われる場合もあるが、これは可能性が低いと話し手・書き手が思っている意味である(青チャート、ブレイクスルー)。 なお、in case は上記の「~するといけないから」「~しないように」の用法の他にも、case 「条件」の文字通り「~の条件で」の意味で in case を使う場合もアメリカ英語では見られ(ジーニアス、フォレスト)、この場合は if でも言い換えできる。 言い換え表現で、「~するといけないから」「~しないように」用法の in case と同じ意味は「for fear that A ~」や「lest A (should) ~」でも言える。 for fear も lest も、ともに固い表現である(ジーニアス)。ジーニアス以外の参考書の多くは、for fear が固い表現であることを取り上げていない。 for fear ~でも lest ~でも、つづく「~」の部分には not をつけない。日本語に引きづられて not をつけないように注意。 英和辞典を見れば fear は「恐れ」「不安」などの意味が書いてあることからも想像がつくように、for fear のあとには、おそれている内容を書くので、つまり、実現してほしくないことを肯定形で書くことになるのも当然であろう。 さて、lest について、ジーニアスいわく、 lest は固い言い方なだけであり、頻度自体は for fear よりも lest のほうが高いと、ジーニアスは主張している。 lest のshould が省略される場合もある。なお、shouldが省略された場合には、続く動詞には原形が来る。lest のshould 省略時の動詞の原形をつかうことを仮定法現在として解釈する流儀もある(青チャート)。 ほか、文法教育的にはあまり注目されないが、 so that ~ 「~のために」と、否定 not を組み合わせて、たとえば 「so that A won't ~」により「~しないように」という言い換えも可能である。won't の変わりに can't の場合もある(ブレイクスルー)。 === その他 === その他、as far as や as long as など範囲を表す表現が、カンマなどを補われて、従属接続詞として分類される。 「as far as I know,」 で「私の知る限りでは、」の意味。as far as の代わりに so far as とすることもある(ロイヤル)。 よくある典型文は As far as I know, he is ~. 「私の知るかぎり、彼は~な人だ」 である(フォレスト、インスパイア)。そのほか、 As far as I'm concerned, ~ 「私に関する限り、」 という表現が、たとえば「私に関する限り、それで結構です。」(青チャート)とか「私に関する限り、不満はありません。」(ジーニアス)のような文章で使われる。 このように as ・・・ as は範囲を表すことがある。 このほか、別の用法で as far as で、自分の意見を言う用法もある(ブレイクスルー、ジーニアス)。たとえばブレイクスルーいわく、「私の意見では、冷凍食品はおいしくない」という単なる持論にも as far as を使っている例文がある。 as long as には用法が2種類あり、ひとつの用法は「~する間」という時間的な範囲を表す用法であり、もうひとつの用法は最低限の条件を表し(フォレスト)、「~しさえすれば」などと訳される(ジーニアス、フォレスト)。as long as の代わりに so long as とすることもある(ジーニアス、フォレスト)。「~する限りは」と訳される場合もある(ロイヤル)。 慣用的なよくある言い回しとして、「as long as I live 」で「私が生きている限り」の意味(ロイヤル、ジーニアス)。 I will never forget your kindness as long as I live. 「私が生きているかぎり、あなたのご親切を忘れません。」 のような文章がよく参考書にある(ジーニアス、青チャート)。 なお、べつにneverを使わずとも、 I won't forget your kindness as long as I live. 「私が生きているかぎり、あなたのご親切を忘れません。」 のような文章もよくある(インスパイア)。 「~さえすれば」の as long as は、言い換えとして、if only または only if で言い換えすることもできる。 目的を表す「 so that ~」も接続詞である。in order that も同様、目的を表す接続詞である。なお、so that ~ について、口語では thatが省略されることも多く、つまり so だけで目的の接続詞になることもある(フォレスト、ジーニアス)。 so that 節の中では、can や will や may をつかうのが普通(フォレスト、ジーニアス)。 なお、「so ~(形容詞など) that ・・・」は程度をあらわす接続詞である。 in order that ~ は堅い表現。in order that 節の中では、can や will や may をつかうのが普通(フォレスト、ジーニアス)。 as も接続詞の用法がある(ロイヤル、フォレスト)。 その他にも、さまざまな接続詞がある suppose や supposed や providing や provided などを接続詞として分類することもある(フォレスト)。 opmb2244c4k873d4ca36x6hovql4pf1 205575 205574 2022-07-20T08:00:10Z すじにくシチュー 12058 /* 名詞節を導く従属接続詞 */ doubt の発展的な話題をコラム化。 wikitext text/x-wiki == 接続詞 == 語と語、句と句、節と節、など、文法上対等のものを結びつけるのが等位接続詞である。 いっぽう、従属節を主節と結びつけるのが従属接続詞であり(ジーニアス、フォレスト)、従位接続詞ともいう(ロイヤル)。 == 等位接続詞 == === 概要 === '''等位接続詞'''とは、and, or, but のように文法上等しいものを結びつける接続詞である。上記のほかにも、nor , so, for が等位接続詞である。 both A and B や either A or B なども便宜的にか等位接続詞として分類される。また、 not A but B や not only A but (also) B も等位接続詞として分類される。 便宜的に、not only A but also B と同じ意味をもつ as well as も、参考書では同じ単元で紹介される。 either は、「AかBかのどちらか」という意味である。 neither A nor B は、AもBも両方とも否定する表現であり、つまり「AとBのどちらも~ない」の意味である。 なお、neither A nor B が主語の場合、動詞はBの時制に一致させる(ジーニアス)。また、nor の直後の文章は肯定形である。 neither は基本、A,Bの2つしか使わない。3つ以上では使わないのが原則だが、しかし米英には原則に反して3つ以上で使う人もいるが(ロイヤル)、入試にはそこまで出ないだろう。また、neither で nor の代わりに原則に反して or を使う人もいるとのこと(ロイヤル)。入試では原則的な場合だけを考えればよいだろう。 「neither」とは not either の意味だろう、というのがロイヤル英文法の見解。 nor は、 neither のある文でなくても使われる場合がある(桐原、ロイヤル)。 否定語の not や don't などのあと、 「not A, nor B」または「don't A(動詞) nor B(動詞) 」で「AもBも無い」という意味で、neitherなしで nor が not などの否定語とともに使われる場合がある。 カンマが無い場合もある(ロイヤル英文法)。この場合でも、A nor B のあとに動詞が来る場合、その文は肯定形である。 「AもBもどちらも~ない」と否定の内容を並列させたい場合、andではなくnorを使う(桐原)。 さて、and には、命令文のあとに使われたい場合には、「そうすれば」の意味になるが、この意味の場合でも等位接続詞として分類される。 or には、「または」の意味のほかにも「すなわち」「言い換えれば」というある語を別の語で言い換える用法の意味もあるが(ジーニアスおよびエバーグリーンに「言い換えれば」アリ)、どちらの意味の場合でも等位接続詞として分類される。また、or には、命令文のあとに使われたい場合には、「さもなければ」の意味になるが、この意味の場合でも等位接続詞として分類される。 なお、「すなわち」「言い換えれば」の意味で or が接続詞として使われる場合、orの前にふつうはカンマ(,)が来る(ジーニアス、いいづなエバーグリーン)。 {{コラム|数学の集合論との違い| 「夏も冬も両方とも好き」は英語では「 I like summer and winter. 」である(ブレイクスル-)。 「夏も冬も両方とも好きではない」は英語ではneither を使わずとも、 I don't like summer or winter. でもいえて、この場合は接続詞が or になっていることに注意(ブレイクスル-)。 一見すると、数学の集合演算における否定演算での積集合「∩」や和集合「∪」などの演算子の反転のように見えるが、しかし実は、数学の集合の理論(ベン図などの理論のこと)とは違う。 まず、英語において、 A and B が数学でいう和集合(演算子∪)か積集合(演算子は∩)かは文脈による。「情報」科などで習うかもしれないブール代数のand計算は積集合だが、しかし実際の英語の場合はそうとは限らないので注意。 また、よくよく考えると、数学では、積集合 A∩B の否定 not (A∩B )は、 (not A) ∪ (not B) である。 つまり、数学では、単に not がつくだけでは集合演算子は変わらない。要素すべてに not がついて、さらにそのnot を因数分解的にひとまとめにくくる段階になって、ようやく集合演算子が反転するのが、数学的な規則である。 しかし英語では、not がついただけの段階の時点で、接続詞が and から or に反転してしまっている。 このように、集合の数学 と 英語のand/orの文法は、似ているが微妙に違うので、混同しないように。 ともかく、数学では、not でくくったら、集合の演算子は反転する(∪から∩に。または∩から∪に)。しかし英語では、そういう数学的規則は無視されている。 だから、neither の例文をもとに覚えたほうが早いし安全である。 単に「 neither A nor B のように don't A or B のように言う」とでも覚えるしかない。語学はしょせん、暗記科目である。 }} === so/ for === 接続詞としての so は、 <出来事→結果> の語順として「理由の文、so 結果の文」のように理由を前に、結果を後ろに書き、「・・・なので~」「・・・だから~」という意味になる。理由というほど明白な因果関係でなくても、比較的に関連性の高い2つの出来事において、「ある出来事, so 出来事の結果」という用法でも良い。 また、この場合の so の直前にはカンマ「 , 」を置くのが普通(ジーニアス、エバーグリーン)。 余談だが、接続詞としての so と for はそれぞれ、節と節だけ結びつける(フォレスト、エバーグリーン)。つまり、語と語、句と句、語と句などは結び付けない。 いっぽう、for は、 <結果←出来事> の語順として、「結果, for 理由の章」の構文で、堅い言い回しとして理由を説明する。口語で用いることはあまり無い(ジーニアス、エバーグリーン)。ほか、 for は、forの前述の出来事に対して、その理由を述べる接続詞である。 なので、普通は for の直前にはカンマ「 , 」が来る。 接続詞としての for は等位接続詞である。for は従属接続詞ではない等の理由で(ロイヤル)、because のように主節の前に出すことはできない。なお、もし For が文頭に置かれている場合、それは、その直前の文の理由を説明している(ロイヤル)。 === and === まず、and の基本的な意味を確認しよう。 ;並列と順序 and の基本的な意味は並列「および」「と」の意味だが、もうひとつ、動作・時間の順序という意味もある。「先に起きたこと and その直後に起きたこと」のような語順で and を使うこともある。 動作や時間の順序のand は、「そして」や「~して、」の意味である(ジーニアス、ロイヤル)。 たとえば come and see は「先に来て、そして見る(見た)」の意味であり、つまり不定詞の結果用法 come to see と同じ意味である(フォレスト)。同様の表現として、 go and see もある。 ;因果関係 さらに、and が因果関係をあらわす場合もある(ジーニアス、ロイヤル)。普通、文章では、先に行ったり紹介した動作が、あとの動作の理由になるので、andで因果関係を表すのも自然であろう。 {{コラム|and なのに逆接?| 上記で and は因果関係を表す場合もあるといったが、しかし人生では、必ずしも前に起きた動作の期待どおりに後の結果が起きるとは限らない場合も多々あるものである。このため、and があたかも but のような逆接的な意味かのように見える英文が生じる場合もある。 たとえば、「彼は努力して、そして失敗した」は、順序を意識すれば try hard and failed のような言い回しになる(ジーニアス)。努力 try hard という準備にもかかわらず失敗 fail したことから、文脈によっては and なのにまるで逆接のような意味も読み取れる場合もある。 さて、このことから、もし後の起きたことが先に起きたことに比べて対照的な場合、場合によっては and は、あたかも逆接 but のような意味に見える場合がある。 とはいえ、これはand の順序関係の用法の、派生的なものである。andの基本的な意味は、あくまで並列・順序だと思うべきだろう。 }} == 従属接続詞 == === 名詞節を導く従属接続詞 === 一方、名詞節を導くために使われる that およびwhether(~かどうか) と if(~かどうか) は'''従属接続詞'''である。that や whether を接続詞として解釈する考えもある。 ここでの名詞節を導く if は、「~かどうか」の意味での if である。「もし~ならば、」の if のことではない。また、「もし」の if との混同をさけるため、文頭では名詞節の if は使えない(ファクトブック)。この「~かどうか」の意味の if の性質について言い方を変えるなら、つまり if は動詞の目的語としてしか使えない(ジーニアス、青チャート、ほか多数)。 また、whether or not (~かどうか)という成句はある一方、ifにはない(インスパイア、青チャート)。 ほか、「whether to ~(動詞)」で「~すべきかどうか」というto不定詞の用法はあるが、ifには不定詞が続かない(インスパイア、青チャート)。 なお、 whether to go 「行くべきかどうか」という語が、参考書によくある典型例である。さらに、 whether to go or not (青チャート)「行くべきかどうか」や whether to go or stay (ブレイクスルー)「行くべきかとどまるべきか」のようになる場合もある。 さらに、助動詞 should を使って「べき」を強調する whether we should go or stay 「行くべきか残るべきか」という表現もある(青チャート)。 whether we should go or not のように、whether の直後ではなく分節の最後に or not をつける場合もある(ジーニアス)。 また、whether は前置詞の目的語になることがあるが、ifはならない(インスパイア)。 if の本来の用法は「もしも~」であり、「~かどうか」の意味は派生的な意味にすぎない、と考えるのが良いだろう。 ほか、if は口語的、whether は文語的である(ジーニアス、青チャ-ト)。 depends on whether 、 など、動詞句 depends on とwhether との組み合わせが決まっている(青チャート)。depends on と if との組み合わせは禁止。なお depends on は、前置詞の目的語にwhether が来る例にもなっている。 wonder と ask は、if でも whether でも、どちらでも良い(ブレイクスルー、青チャート)。 ほか、 I wonder if ~ で「~がどうかなと思う」の意味。 さて、従属接続詞の典型的な文で The fact is (that)・・・ 「事実は・・・ということだ。」 The trouble is (that)・・・ 「困ったことに・・・ということだ。」 The truth is (that)・・・ 「真実は・・・ということだ。」 The reason is (that)・・・ 「理由は・・・ということだ。」 などがある。 このように、名詞節を導く that は、「・・・ということだ。」の意味になる。 that は主語・補語・目的語になる(上記の the reason is that などの例文の場合は、that が補語になっている)。 ほか、 It is 形容詞 that ・・・ という形式主語の文章で 使われる that は接続詞でもある(ジーニアス、エバーグリーン )。 ほか、that節が know,say ,think, tell, hope など一般的な動詞の目的語になっている場合は、thatを省略することも多い(ブレイクスルー、インスパイア)。 ただし、形式目的語の that は省略できない(エバーグリーン)。形式目的語とは、 He made it clear that ~ . 「彼は~であることを明らかにした。」 のような it を仮の目的語とする文章のこと。 that 節は普通は前置詞の後ろに置かれることないが(ジーニアス)、例外的に in that(~という点で、~だから) と except that(~を除いて)という用法がある。 なお、 in that には意味の異なる「~という点で」という用法と、もうひとつ「~だから」「~であるか」という別の用法があることに注意(ジーニアス)。 参考書によっては in that は前置詞の項目に書いてある場合もある(青チャート)。 ほか、Now that で、「今や~だから」という表現ができる。口語ではよくthatが省略され、Now だけになる。 典型的な例文は Now (that) he is eighteen, he can vote. 「今や彼は18歳なのだから、彼は投票できる。」 である(ジーニアス、青チャート)。 このほか、紹介している参考書は少ないが(青チャート、インスパイア)、分詞構文の Seeing that ~「~であるから」「~だから」が接続詞的に用いられる用法もある(青チャート)。 I7m glad that you have come to meet us. 「あなたがお迎えにきてくれて、うれしく思います」(青チャート) のような例文がよくある。 I'm glad that ~ 「~できて、うれしいです」 のように、「感情を現す形容詞 + that 」の that も接続詞である(青チャート)。 afraid, disappointed, sad, sorry, glad, happy, angry, surprised , upset などがこのような形容詞である(青チャート、ジーニアス)。この場合の that は省略されることも多い。なお、この場合の感情に続く that 以下の内容は「理由」を表す(ジーニアス)。 We are sorry that you cannot come. 「あなたがこられないのは残念です。」(インスパイア) この場合の sorry は謝罪ではないので注意。 sure 「確信している」は日本語では感情とは言いづらいが、青チャートはこれを感情に含めている。ただし、ジーニアスはsureを不採用。 なお、sure は感情のように I'm sure that ~ と主語を人称代名詞とするのが普通。辞書ジーニアスを見たが、it を主語にする sure は見つからなかった。 いっぽう、certain は、 It is certain that ~ も I'm certain もともに許される。(フォレストに I'm certain あり。ブレイクスルーに it is certain) なお、確信ではなく「疑わしい」と思っている場合は、 It is doubtful whether (またはif)~ 「~かどうかは疑わしい」 のように、 接続詞は whether または if になる。この場合の whether や if も名詞節である。 I'm doubtful whether(if) のように人称代名詞で言ってもよい(インスパイア)。さらに、形容詞ではなく動詞 doubt で I doubt whether (if) ~ で言うことも可能(インスパイア)。 {{コラム|(※ 発展)doubt のあとは that か whether か | doubt のあとが doubt whether のように whether になる場合は、肯定の平叙文の場合だけである(インスパイア)。 doubt については否定形の場合、don't doubt that ~ のようになる(インスパイア)。つまり、否定形 doubtでは whether ではなく that になる。 これは、don't doubt は直訳しただけなら単に「疑ってはいない」というだけになってしまうが、しかし実際には don't doubt は「確信している」という意味を表すのに慣用的に使われている(インスパイア)からである。インスパイアの場合、I don't doubt that ~ を「~することは間違いない」と訳している。かなりマニアックな話題であり、ほかの参考書は取り上げていない。 けっして「否定形のあとなら whether がthat になる」(×)というわけではない(ジーニアス)。「彼女が来るかどうかはどうでもいいことだ」という文章で、「どうでもいい」は It doesn't concern me なので(ジーニアス)、それと「彼女が来るかどうか」を合わせて It doesn't concern me whether she will come or not. 「彼女が来るかどうかはどうでもいいことだ。」(ジーニアス) という例文もあるほどだ(ジーニアス)。 さらに疑問文の場合、 Do you doubt that ~ のように、that になる。 これはもう、論理的に説明するのが困難だが、安心してもいいことに他社の参考書にまず書いてない。入試には出ないだろう。 入試の出題者だって、そこまで瑣末なことは問わない。 実は「高校レベル」の参考書と言うのは、実は読者対象は題名に反して決して高校生だけが対象でなく、大学の教師などが知識を広く浅くアップデートするためにも出版されているので、上述のような入試の範囲をやや超えた細かい話題も載っていたりするのである。インスパイアがどうかは知らないが。 }} なお「確信」している場合、I'm sure は「確信している」の「信」じるの文字からも想像がつくように、動詞 believe で I believe that と細かなニュアンスを無視すれば言い換えもできる(インスパイア)。 ほか、確信していない場合は、つまり確信に not がつく場合は、that よりも whether や if のほうが好ましい(インスパイア、ブレイクスルー)。つまり I'm not sure whether(またはif) ~ のようになる(インスパイア、ブレイクスルー)。 なお、動詞で「信じていない」という場合、つまり don't believe の場合、 I didn't believe what ~ のように whether ではなく what になるのに注意(インスパイア)。 === 副詞節を導く従属接続詞 === ==== はじめに ==== ほか、(たとえば平叙文のなかで)副詞節を導かれるために使われる when (~のとき、)や where (~の場所)が従属接続詞である。 before , after および since や until なども従属接続詞。 as soon as や once もこれに含める(ジーニアス、フォレスト)。 「until ~」は、「~」の瞬間まで動作が継続しているときに使い、「~するまで(ずっと)」の意味である。 一方、継続しない場合で、その時までに動作が完了している場合には、untilではなくby the time 「~する(時)までに」を使う。 as well as が等位接続詞なのに as soon as が従属なのはアレだが、まあどの参考書でもそういう分類になっている。 as soon as は言い換えで、the moment や the instant や no sooner ・・・ than ~ などの言い換え表現がある。 ==== once ==== once は「いったん~すると」の意味。once をどう分類するかが参考書ごとに違う。 ifやunlessなどと同様に「条件」として once を分類する参考書もあれば(ブレイクスルー、インスパイア)、 beforeやafterやsinceなどと同様の「起点」として once を分類する参考書もある(ジーニアス、フォレスト)。 なお、as soon as と once がなぜか同じ章節で紹介される参考書が多いが(ジーニアス、フォレスト、しかし意味が違う接続詞なので混同しないように。 if~ は内容が未来であっても現在形を使うが、as soon as ~ も後続の文では内容が未来であっても現在形を使うので、もしかしたらその理由でonceが「条件」として分類されているのかもしれない。 また、as soon as ~ と同様に、once ~ も後続の文の内容が未来であっても現在形を使う(ジーニアス)。そういう共通点からか、一緒に「起点」として紹介されるのかもしれない。 しかし、単に分類が同じだけであり、 once は as soon as とは意味がまったく違うので、混同しないように。 ==== その他 ==== 時間の表現だけでなく、because や since (since には理由の意味もある)も従属接続詞。 because は従属接続詞なので、よって主節なしで 「Because ~ .」 といったBecause だけの節をつくることは原則、誤用だとみなされる(青チャート、ジーニアス)。 ただし例外的に、"Why ~?" といった Why を使った質問文に対して、解答で"Because ~" と because だけの節の文章が許されている(青チャート、ジーニアス)。 since は基本、相手が既知の話題についての理由を説明するときに使うので(ブレイクスルー、フォレスト、ジーニアス)、since節の時制は過去形になる事も多い(青チャート)。また、上記の事情のため、sinceのつくる副詞節は文頭や前方に置かれることも多いが(インスパイア、ジーニアス、ブレイクスルー)、しかしsinceを文頭に置かなくても正しい英語である(青チャート)。 「so ~(形容詞) that ・・・(文)」 は従属接続詞。 so に等位接続詞の用法もあるが、しかし 「so 形容詞 that 文」で結びつけられている形容詞とthat後続の文は対等ではないので、従属接続詞のほうが適切であろう。 例文は著作権のため省略。 ==== 譲歩 ==== 「譲歩」の意味である、though や although が従属接続詞として分類されている(ジーニアス、フォレスト、ロイヤル)。 though よりも although のほうが堅い言い回しである(フォレスト、ロイヤル)。 なお、英文法の接続詞の単元でいう「譲歩」は、日本語の日常語の「譲歩」とは意味がやや違う。日常語の「譲歩」とは、自分と相手・他人の主張が対立したい場合に、相手の意見を聞き入れたり時には従うことに重点が置かれるのが日常語の譲歩である(広辞苑、三省堂新明解)。 しかし、この接続詞の英文法でいう「譲歩」とは、相手の主張の一部を事実ではあると認めた上で、それでも自分の主張に事実性などがあることを主張しているのが、英文法の接続詞の分野での「譲歩」である(桐原フォレスト)。 even if ~ も even though ~ も「たとえ ~ だとしても」という譲歩の意味があるが、下記のような違いがある。 even though ~ は、though の後に事実がきて、話し手は事実を知っている。 even if ~ は、if のあとに仮定がきて、その仮定が事実かどうかを話しては知らない。 これとは別に、 even if ~ で if のあとが仮定法過去になる場合もある(ジーニアス、インスパイア)。 基本的には、even if も even though も、evenは単に直後の語を強調しているだけである(インスパイア)。 if「もし~」 のあとが事実かどうかを話し手が知らないのもifの不普通の用法だし、though 「~にもかかわらず」も通常は話し手は事実を前提にしているからである。 単に even は if や though に譲歩の意味をつけたしたり、譲歩を強調したりしているだけにすぎない。 ==== 条件 ==== 条件を表すif および unless も従属接続詞。 unless は、「もし~でなければ」という意味であるが(ジーニアス、ロイヤル)、「~でない限り、」と訳される場合も多い(フォレスト、ロイヤル)。なお、unless の直後の文は否定形にはならず(フォレスト、ジーニアス)、つまり unless の直後の文は肯定形である。 unless は、「否定の条件」であるという性質に加えて、さらに基本的に「唯一の条件」という性質がある(青チャート)。「起きてほしくない事を避けるためには、unless 以降の内容を実行するしかない」という意味での唯一性の主張が unless にはある。 このことなどから、 unless ~の文を if ・・・ not ~ の文章に書き換えできる一方で(unless → if not は可能な場合が多い)、しかし if not → unless の書き換えが無理な場合が多い。 unless は「条件の文 unless 予想される結果の文」の語順。unless においてカンマなどは不要。 unless の語順は、「予想される結末 unless 結末が成り立たなくなる条件」である。なお、unlessの主節(※ 予想される結末のほう)には、willなどの未来表現を使うのが普通。一方、ifおよびunless では従属節の内容がたとえ未来における内容であっても従属節の時制は現在形にする(ジーニアス)。桐原やロイヤルでは従属節の時制はとくに解説では明記されていないが、例文の時制を見ればジーニアスと同様に桐原などでもunlessの従属節は現在形である。 === in case ~ === 「in case ~(文)」は「~の場合にそなえて」の意味であり、従属接続詞として分類され、この場合は普通は主節のあとに in case ~ が置かれる(フォレレスト、ジーニアス)。 in case ~ の典型的な例文は、 Take an umbrella with you in case it rains. 「雨が降るといけないから、かさを持っていきなさい。」 ※ 数研 青チャート、ジーニアス take の代わりに bring の場合もある。また、この傘をもっていく例文の場合なら with you は省略可能。上記例文の出典の参考書にも with you をつけてないものもある。 Bring an umbrella in case it rains. 「雨が降るといけないから、かさを持っていきなさい。」 ※ ファクトブック 命令形ではなく平叙文の場合もあり、下記のような例文もある。 I'll take an umbrella with me in case it rains. 「雨が降るといけないから、かさを持っていこう。」 ※ フォレスト with me は省略可能。自分で持っていくので with me になる(青チャート)。 「in case ~ 」の副詞節に it should rain. のように should が使われる場合もあるが、これは可能性が低いと話し手・書き手が思っている意味である(青チャート、ブレイクスルー)。 なお、in case は上記の「~するといけないから」「~しないように」の用法の他にも、case 「条件」の文字通り「~の条件で」の意味で in case を使う場合もアメリカ英語では見られ(ジーニアス、フォレスト)、この場合は if でも言い換えできる。 言い換え表現で、「~するといけないから」「~しないように」用法の in case と同じ意味は「for fear that A ~」や「lest A (should) ~」でも言える。 for fear も lest も、ともに固い表現である(ジーニアス)。ジーニアス以外の参考書の多くは、for fear が固い表現であることを取り上げていない。 for fear ~でも lest ~でも、つづく「~」の部分には not をつけない。日本語に引きづられて not をつけないように注意。 英和辞典を見れば fear は「恐れ」「不安」などの意味が書いてあることからも想像がつくように、for fear のあとには、おそれている内容を書くので、つまり、実現してほしくないことを肯定形で書くことになるのも当然であろう。 さて、lest について、ジーニアスいわく、 lest は固い言い方なだけであり、頻度自体は for fear よりも lest のほうが高いと、ジーニアスは主張している。 lest のshould が省略される場合もある。なお、shouldが省略された場合には、続く動詞には原形が来る。lest のshould 省略時の動詞の原形をつかうことを仮定法現在として解釈する流儀もある(青チャート)。 ほか、文法教育的にはあまり注目されないが、 so that ~ 「~のために」と、否定 not を組み合わせて、たとえば 「so that A won't ~」により「~しないように」という言い換えも可能である。won't の変わりに can't の場合もある(ブレイクスルー)。 === その他 === その他、as far as や as long as など範囲を表す表現が、カンマなどを補われて、従属接続詞として分類される。 「as far as I know,」 で「私の知る限りでは、」の意味。as far as の代わりに so far as とすることもある(ロイヤル)。 よくある典型文は As far as I know, he is ~. 「私の知るかぎり、彼は~な人だ」 である(フォレスト、インスパイア)。そのほか、 As far as I'm concerned, ~ 「私に関する限り、」 という表現が、たとえば「私に関する限り、それで結構です。」(青チャート)とか「私に関する限り、不満はありません。」(ジーニアス)のような文章で使われる。 このように as ・・・ as は範囲を表すことがある。 このほか、別の用法で as far as で、自分の意見を言う用法もある(ブレイクスルー、ジーニアス)。たとえばブレイクスルーいわく、「私の意見では、冷凍食品はおいしくない」という単なる持論にも as far as を使っている例文がある。 as long as には用法が2種類あり、ひとつの用法は「~する間」という時間的な範囲を表す用法であり、もうひとつの用法は最低限の条件を表し(フォレスト)、「~しさえすれば」などと訳される(ジーニアス、フォレスト)。as long as の代わりに so long as とすることもある(ジーニアス、フォレスト)。「~する限りは」と訳される場合もある(ロイヤル)。 慣用的なよくある言い回しとして、「as long as I live 」で「私が生きている限り」の意味(ロイヤル、ジーニアス)。 I will never forget your kindness as long as I live. 「私が生きているかぎり、あなたのご親切を忘れません。」 のような文章がよく参考書にある(ジーニアス、青チャート)。 なお、べつにneverを使わずとも、 I won't forget your kindness as long as I live. 「私が生きているかぎり、あなたのご親切を忘れません。」 のような文章もよくある(インスパイア)。 「~さえすれば」の as long as は、言い換えとして、if only または only if で言い換えすることもできる。 目的を表す「 so that ~」も接続詞である。in order that も同様、目的を表す接続詞である。なお、so that ~ について、口語では thatが省略されることも多く、つまり so だけで目的の接続詞になることもある(フォレスト、ジーニアス)。 so that 節の中では、can や will や may をつかうのが普通(フォレスト、ジーニアス)。 なお、「so ~(形容詞など) that ・・・」は程度をあらわす接続詞である。 in order that ~ は堅い表現。in order that 節の中では、can や will や may をつかうのが普通(フォレスト、ジーニアス)。 as も接続詞の用法がある(ロイヤル、フォレスト)。 その他にも、さまざまな接続詞がある suppose や supposed や providing や provided などを接続詞として分類することもある(フォレスト)。 i4k7y9isqzlettlwd6yam672qcnyj43 205578 205575 2022-07-20T09:19:50Z すじにくシチュー 12058 /* はじめに */ wikitext text/x-wiki == 接続詞 == 語と語、句と句、節と節、など、文法上対等のものを結びつけるのが等位接続詞である。 いっぽう、従属節を主節と結びつけるのが従属接続詞であり(ジーニアス、フォレスト)、従位接続詞ともいう(ロイヤル)。 == 等位接続詞 == === 概要 === '''等位接続詞'''とは、and, or, but のように文法上等しいものを結びつける接続詞である。上記のほかにも、nor , so, for が等位接続詞である。 both A and B や either A or B なども便宜的にか等位接続詞として分類される。また、 not A but B や not only A but (also) B も等位接続詞として分類される。 便宜的に、not only A but also B と同じ意味をもつ as well as も、参考書では同じ単元で紹介される。 either は、「AかBかのどちらか」という意味である。 neither A nor B は、AもBも両方とも否定する表現であり、つまり「AとBのどちらも~ない」の意味である。 なお、neither A nor B が主語の場合、動詞はBの時制に一致させる(ジーニアス)。また、nor の直後の文章は肯定形である。 neither は基本、A,Bの2つしか使わない。3つ以上では使わないのが原則だが、しかし米英には原則に反して3つ以上で使う人もいるが(ロイヤル)、入試にはそこまで出ないだろう。また、neither で nor の代わりに原則に反して or を使う人もいるとのこと(ロイヤル)。入試では原則的な場合だけを考えればよいだろう。 「neither」とは not either の意味だろう、というのがロイヤル英文法の見解。 nor は、 neither のある文でなくても使われる場合がある(桐原、ロイヤル)。 否定語の not や don't などのあと、 「not A, nor B」または「don't A(動詞) nor B(動詞) 」で「AもBも無い」という意味で、neitherなしで nor が not などの否定語とともに使われる場合がある。 カンマが無い場合もある(ロイヤル英文法)。この場合でも、A nor B のあとに動詞が来る場合、その文は肯定形である。 「AもBもどちらも~ない」と否定の内容を並列させたい場合、andではなくnorを使う(桐原)。 さて、and には、命令文のあとに使われたい場合には、「そうすれば」の意味になるが、この意味の場合でも等位接続詞として分類される。 or には、「または」の意味のほかにも「すなわち」「言い換えれば」というある語を別の語で言い換える用法の意味もあるが(ジーニアスおよびエバーグリーンに「言い換えれば」アリ)、どちらの意味の場合でも等位接続詞として分類される。また、or には、命令文のあとに使われたい場合には、「さもなければ」の意味になるが、この意味の場合でも等位接続詞として分類される。 なお、「すなわち」「言い換えれば」の意味で or が接続詞として使われる場合、orの前にふつうはカンマ(,)が来る(ジーニアス、いいづなエバーグリーン)。 {{コラム|数学の集合論との違い| 「夏も冬も両方とも好き」は英語では「 I like summer and winter. 」である(ブレイクスル-)。 「夏も冬も両方とも好きではない」は英語ではneither を使わずとも、 I don't like summer or winter. でもいえて、この場合は接続詞が or になっていることに注意(ブレイクスル-)。 一見すると、数学の集合演算における否定演算での積集合「∩」や和集合「∪」などの演算子の反転のように見えるが、しかし実は、数学の集合の理論(ベン図などの理論のこと)とは違う。 まず、英語において、 A and B が数学でいう和集合(演算子∪)か積集合(演算子は∩)かは文脈による。「情報」科などで習うかもしれないブール代数のand計算は積集合だが、しかし実際の英語の場合はそうとは限らないので注意。 また、よくよく考えると、数学では、積集合 A∩B の否定 not (A∩B )は、 (not A) ∪ (not B) である。 つまり、数学では、単に not がつくだけでは集合演算子は変わらない。要素すべてに not がついて、さらにそのnot を因数分解的にひとまとめにくくる段階になって、ようやく集合演算子が反転するのが、数学的な規則である。 しかし英語では、not がついただけの段階の時点で、接続詞が and から or に反転してしまっている。 このように、集合の数学 と 英語のand/orの文法は、似ているが微妙に違うので、混同しないように。 ともかく、数学では、not でくくったら、集合の演算子は反転する(∪から∩に。または∩から∪に)。しかし英語では、そういう数学的規則は無視されている。 だから、neither の例文をもとに覚えたほうが早いし安全である。 単に「 neither A nor B のように don't A or B のように言う」とでも覚えるしかない。語学はしょせん、暗記科目である。 }} === so/ for === 接続詞としての so は、 <出来事→結果> の語順として「理由の文、so 結果の文」のように理由を前に、結果を後ろに書き、「・・・なので~」「・・・だから~」という意味になる。理由というほど明白な因果関係でなくても、比較的に関連性の高い2つの出来事において、「ある出来事, so 出来事の結果」という用法でも良い。 また、この場合の so の直前にはカンマ「 , 」を置くのが普通(ジーニアス、エバーグリーン)。 余談だが、接続詞としての so と for はそれぞれ、節と節だけ結びつける(フォレスト、エバーグリーン)。つまり、語と語、句と句、語と句などは結び付けない。 いっぽう、for は、 <結果←出来事> の語順として、「結果, for 理由の章」の構文で、堅い言い回しとして理由を説明する。口語で用いることはあまり無い(ジーニアス、エバーグリーン)。ほか、 for は、forの前述の出来事に対して、その理由を述べる接続詞である。 なので、普通は for の直前にはカンマ「 , 」が来る。 接続詞としての for は等位接続詞である。for は従属接続詞ではない等の理由で(ロイヤル)、because のように主節の前に出すことはできない。なお、もし For が文頭に置かれている場合、それは、その直前の文の理由を説明している(ロイヤル)。 === and === まず、and の基本的な意味を確認しよう。 ;並列と順序 and の基本的な意味は並列「および」「と」の意味だが、もうひとつ、動作・時間の順序という意味もある。「先に起きたこと and その直後に起きたこと」のような語順で and を使うこともある。 動作や時間の順序のand は、「そして」や「~して、」の意味である(ジーニアス、ロイヤル)。 たとえば come and see は「先に来て、そして見る(見た)」の意味であり、つまり不定詞の結果用法 come to see と同じ意味である(フォレスト)。同様の表現として、 go and see もある。 ;因果関係 さらに、and が因果関係をあらわす場合もある(ジーニアス、ロイヤル)。普通、文章では、先に行ったり紹介した動作が、あとの動作の理由になるので、andで因果関係を表すのも自然であろう。 {{コラム|and なのに逆接?| 上記で and は因果関係を表す場合もあるといったが、しかし人生では、必ずしも前に起きた動作の期待どおりに後の結果が起きるとは限らない場合も多々あるものである。このため、and があたかも but のような逆接的な意味かのように見える英文が生じる場合もある。 たとえば、「彼は努力して、そして失敗した」は、順序を意識すれば try hard and failed のような言い回しになる(ジーニアス)。努力 try hard という準備にもかかわらず失敗 fail したことから、文脈によっては and なのにまるで逆接のような意味も読み取れる場合もある。 さて、このことから、もし後の起きたことが先に起きたことに比べて対照的な場合、場合によっては and は、あたかも逆接 but のような意味に見える場合がある。 とはいえ、これはand の順序関係の用法の、派生的なものである。andの基本的な意味は、あくまで並列・順序だと思うべきだろう。 }} == 従属接続詞 == === 名詞節を導く従属接続詞 === 一方、名詞節を導くために使われる that およびwhether(~かどうか) と if(~かどうか) は'''従属接続詞'''である。that や whether を接続詞として解釈する考えもある。 ここでの名詞節を導く if は、「~かどうか」の意味での if である。「もし~ならば、」の if のことではない。また、「もし」の if との混同をさけるため、文頭では名詞節の if は使えない(ファクトブック)。この「~かどうか」の意味の if の性質について言い方を変えるなら、つまり if は動詞の目的語としてしか使えない(ジーニアス、青チャート、ほか多数)。 また、whether or not (~かどうか)という成句はある一方、ifにはない(インスパイア、青チャート)。 ほか、「whether to ~(動詞)」で「~すべきかどうか」というto不定詞の用法はあるが、ifには不定詞が続かない(インスパイア、青チャート)。 なお、 whether to go 「行くべきかどうか」という語が、参考書によくある典型例である。さらに、 whether to go or not (青チャート)「行くべきかどうか」や whether to go or stay (ブレイクスルー)「行くべきかとどまるべきか」のようになる場合もある。 さらに、助動詞 should を使って「べき」を強調する whether we should go or stay 「行くべきか残るべきか」という表現もある(青チャート)。 whether we should go or not のように、whether の直後ではなく分節の最後に or not をつける場合もある(ジーニアス)。 また、whether は前置詞の目的語になることがあるが、ifはならない(インスパイア)。 if の本来の用法は「もしも~」であり、「~かどうか」の意味は派生的な意味にすぎない、と考えるのが良いだろう。 ほか、if は口語的、whether は文語的である(ジーニアス、青チャ-ト)。 depends on whether 、 など、動詞句 depends on とwhether との組み合わせが決まっている(青チャート)。depends on と if との組み合わせは禁止。なお depends on は、前置詞の目的語にwhether が来る例にもなっている。 wonder と ask は、if でも whether でも、どちらでも良い(ブレイクスルー、青チャート)。 ほか、 I wonder if ~ で「~がどうかなと思う」の意味。 さて、従属接続詞の典型的な文で The fact is (that)・・・ 「事実は・・・ということだ。」 The trouble is (that)・・・ 「困ったことに・・・ということだ。」 The truth is (that)・・・ 「真実は・・・ということだ。」 The reason is (that)・・・ 「理由は・・・ということだ。」 などがある。 このように、名詞節を導く that は、「・・・ということだ。」の意味になる。 that は主語・補語・目的語になる(上記の the reason is that などの例文の場合は、that が補語になっている)。 ほか、 It is 形容詞 that ・・・ という形式主語の文章で 使われる that は接続詞でもある(ジーニアス、エバーグリーン )。 ほか、that節が know,say ,think, tell, hope など一般的な動詞の目的語になっている場合は、thatを省略することも多い(ブレイクスルー、インスパイア)。 ただし、形式目的語の that は省略できない(エバーグリーン)。形式目的語とは、 He made it clear that ~ . 「彼は~であることを明らかにした。」 のような it を仮の目的語とする文章のこと。 that 節は普通は前置詞の後ろに置かれることないが(ジーニアス)、例外的に in that(~という点で、~だから) と except that(~を除いて)という用法がある。 なお、 in that には意味の異なる「~という点で」という用法と、もうひとつ「~だから」「~であるか」という別の用法があることに注意(ジーニアス)。 参考書によっては in that は前置詞の項目に書いてある場合もある(青チャート)。 ほか、Now that で、「今や~だから」という表現ができる。口語ではよくthatが省略され、Now だけになる。 典型的な例文は Now (that) he is eighteen, he can vote. 「今や彼は18歳なのだから、彼は投票できる。」 である(ジーニアス、青チャート)。 このほか、紹介している参考書は少ないが(青チャート、インスパイア)、分詞構文の Seeing that ~「~であるから」「~だから」が接続詞的に用いられる用法もある(青チャート)。 I7m glad that you have come to meet us. 「あなたがお迎えにきてくれて、うれしく思います」(青チャート) のような例文がよくある。 I'm glad that ~ 「~できて、うれしいです」 のように、「感情を現す形容詞 + that 」の that も接続詞である(青チャート)。 afraid, disappointed, sad, sorry, glad, happy, angry, surprised , upset などがこのような形容詞である(青チャート、ジーニアス)。この場合の that は省略されることも多い。なお、この場合の感情に続く that 以下の内容は「理由」を表す(ジーニアス)。 We are sorry that you cannot come. 「あなたがこられないのは残念です。」(インスパイア) この場合の sorry は謝罪ではないので注意。 sure 「確信している」は日本語では感情とは言いづらいが、青チャートはこれを感情に含めている。ただし、ジーニアスはsureを不採用。 なお、sure は感情のように I'm sure that ~ と主語を人称代名詞とするのが普通。辞書ジーニアスを見たが、it を主語にする sure は見つからなかった。 いっぽう、certain は、 It is certain that ~ も I'm certain もともに許される。(フォレストに I'm certain あり。ブレイクスルーに it is certain) なお、確信ではなく「疑わしい」と思っている場合は、 It is doubtful whether (またはif)~ 「~かどうかは疑わしい」 のように、 接続詞は whether または if になる。この場合の whether や if も名詞節である。 I'm doubtful whether(if) のように人称代名詞で言ってもよい(インスパイア)。さらに、形容詞ではなく動詞 doubt で I doubt whether (if) ~ で言うことも可能(インスパイア)。 {{コラム|(※ 発展)doubt のあとは that か whether か | doubt のあとが doubt whether のように whether になる場合は、肯定の平叙文の場合だけである(インスパイア)。 doubt については否定形の場合、don't doubt that ~ のようになる(インスパイア)。つまり、否定形 doubtでは whether ではなく that になる。 これは、don't doubt は直訳しただけなら単に「疑ってはいない」というだけになってしまうが、しかし実際には don't doubt は「確信している」という意味を表すのに慣用的に使われている(インスパイア)からである。インスパイアの場合、I don't doubt that ~ を「~することは間違いない」と訳している。かなりマニアックな話題であり、ほかの参考書は取り上げていない。 けっして「否定形のあとなら whether がthat になる」(×)というわけではない(ジーニアス)。「彼女が来るかどうかはどうでもいいことだ」という文章で、「どうでもいい」は It doesn't concern me なので(ジーニアス)、それと「彼女が来るかどうか」を合わせて It doesn't concern me whether she will come or not. 「彼女が来るかどうかはどうでもいいことだ。」(ジーニアス) という例文もあるほどだ(ジーニアス)。 さらに疑問文の場合、 Do you doubt that ~ のように、that になる。 これはもう、論理的に説明するのが困難だが、安心してもいいことに他社の参考書にまず書いてない。入試には出ないだろう。 入試の出題者だって、そこまで瑣末なことは問わない。 実は「高校レベル」の参考書と言うのは、実は読者対象は題名に反して決して高校生だけが対象でなく、大学の教師などが知識を広く浅くアップデートするためにも出版されているので、上述のような入試の範囲をやや超えた細かい話題も載っていたりするのである。インスパイアがどうかは知らないが。 }} なお「確信」している場合、I'm sure は「確信している」の「信」じるの文字からも想像がつくように、動詞 believe で I believe that と細かなニュアンスを無視すれば言い換えもできる(インスパイア)。 ほか、確信していない場合は、つまり確信に not がつく場合は、that よりも whether や if のほうが好ましい(インスパイア、ブレイクスルー)。つまり I'm not sure whether(またはif) ~ のようになる(インスパイア、ブレイクスルー)。 なお、動詞で「信じていない」という場合、つまり don't believe の場合、 I didn't believe what ~ のように whether ではなく what になるのに注意(インスパイア)。 === 副詞節を導く従属接続詞 === ==== はじめに ==== ほか、(たとえば平叙文のなかで)副詞節を導かれるために使われる when (~のとき、)や where (~の場所)が従属接続詞である。 before , after および since や until なども従属接続詞。 as soon as や once もこれに含める(ジーニアス、フォレスト)。 なお、 It will not long before ~ は「まもなく~するだろう」の意味である。直訳すれば「~するまでに長くはない」だが(青チャート)、英語では「まもなく~するだろう」の意味である。 また、過去形で It was not ling before ~ なら「すぐに~できた」の意味であり、副詞 soon で言い換えできる(ジーニアス)。 「until ~」は、「~」の瞬間まで動作が継続しているときに使い、「~するまで(ずっと)」の意味である。 一方、継続しない場合で、その時までに動作が完了している場合には、untilではなくby the time 「~する(時)までに」を使う。 It is not until ~ that ・・・ で「~して初めて・・・する」の意味である。直訳すれば「・・・まで~しない」だが(青チャート、インスパイア)、実際にはそこまで否定のニュアンスは無いし(とくに出典なし)、また過去形でも It was not until ~ that ・・・ として使われる(エバーグリーン、ジーニアス)。 as well as が等位接続詞なのに as soon as が従属なのはアレだが、まあどの参考書でもそういう分類になっている。 as soon as は言い換えで、the moment や the instant や no sooner ・・・ than ~ などの言い換え表現がある。 ==== once ==== once は「いったん~すると」の意味。once をどう分類するかが参考書ごとに違う。 ifやunlessなどと同様に「条件」として once を分類する参考書もあれば(ブレイクスルー、インスパイア)、 beforeやafterやsinceなどと同様の「起点」として once を分類する参考書もある(ジーニアス、フォレスト)。 なお、as soon as と once がなぜか同じ章節で紹介される参考書が多いが(ジーニアス、フォレスト、しかし意味が違う接続詞なので混同しないように。 if~ は内容が未来であっても現在形を使うが、as soon as ~ も後続の文では内容が未来であっても現在形を使うので、もしかしたらその理由でonceが「条件」として分類されているのかもしれない。 また、as soon as ~ と同様に、once ~ も後続の文の内容が未来であっても現在形を使う(ジーニアス)。そういう共通点からか、一緒に「起点」として紹介されるのかもしれない。 しかし、単に分類が同じだけであり、 once は as soon as とは意味がまったく違うので、混同しないように。 ==== その他 ==== 時間の表現だけでなく、because や since (since には理由の意味もある)も従属接続詞。 because は従属接続詞なので、よって主節なしで 「Because ~ .」 といったBecause だけの節をつくることは原則、誤用だとみなされる(青チャート、ジーニアス)。 ただし例外的に、"Why ~?" といった Why を使った質問文に対して、解答で"Because ~" と because だけの節の文章が許されている(青チャート、ジーニアス)。 since は基本、相手が既知の話題についての理由を説明するときに使うので(ブレイクスルー、フォレスト、ジーニアス)、since節の時制は過去形になる事も多い(青チャート)。また、上記の事情のため、sinceのつくる副詞節は文頭や前方に置かれることも多いが(インスパイア、ジーニアス、ブレイクスルー)、しかしsinceを文頭に置かなくても正しい英語である(青チャート)。 「so ~(形容詞) that ・・・(文)」 は従属接続詞。 so に等位接続詞の用法もあるが、しかし 「so 形容詞 that 文」で結びつけられている形容詞とthat後続の文は対等ではないので、従属接続詞のほうが適切であろう。 例文は著作権のため省略。 ==== 譲歩 ==== 「譲歩」の意味である、though や although が従属接続詞として分類されている(ジーニアス、フォレスト、ロイヤル)。 though よりも although のほうが堅い言い回しである(フォレスト、ロイヤル)。 なお、英文法の接続詞の単元でいう「譲歩」は、日本語の日常語の「譲歩」とは意味がやや違う。日常語の「譲歩」とは、自分と相手・他人の主張が対立したい場合に、相手の意見を聞き入れたり時には従うことに重点が置かれるのが日常語の譲歩である(広辞苑、三省堂新明解)。 しかし、この接続詞の英文法でいう「譲歩」とは、相手の主張の一部を事実ではあると認めた上で、それでも自分の主張に事実性などがあることを主張しているのが、英文法の接続詞の分野での「譲歩」である(桐原フォレスト)。 even if ~ も even though ~ も「たとえ ~ だとしても」という譲歩の意味があるが、下記のような違いがある。 even though ~ は、though の後に事実がきて、話し手は事実を知っている。 even if ~ は、if のあとに仮定がきて、その仮定が事実かどうかを話しては知らない。 これとは別に、 even if ~ で if のあとが仮定法過去になる場合もある(ジーニアス、インスパイア)。 基本的には、even if も even though も、evenは単に直後の語を強調しているだけである(インスパイア)。 if「もし~」 のあとが事実かどうかを話し手が知らないのもifの不普通の用法だし、though 「~にもかかわらず」も通常は話し手は事実を前提にしているからである。 単に even は if や though に譲歩の意味をつけたしたり、譲歩を強調したりしているだけにすぎない。 ==== 条件 ==== 条件を表すif および unless も従属接続詞。 unless は、「もし~でなければ」という意味であるが(ジーニアス、ロイヤル)、「~でない限り、」と訳される場合も多い(フォレスト、ロイヤル)。なお、unless の直後の文は否定形にはならず(フォレスト、ジーニアス)、つまり unless の直後の文は肯定形である。 unless は、「否定の条件」であるという性質に加えて、さらに基本的に「唯一の条件」という性質がある(青チャート)。「起きてほしくない事を避けるためには、unless 以降の内容を実行するしかない」という意味での唯一性の主張が unless にはある。 このことなどから、 unless ~の文を if ・・・ not ~ の文章に書き換えできる一方で(unless → if not は可能な場合が多い)、しかし if not → unless の書き換えが無理な場合が多い。 unless は「条件の文 unless 予想される結果の文」の語順。unless においてカンマなどは不要。 unless の語順は、「予想される結末 unless 結末が成り立たなくなる条件」である。なお、unlessの主節(※ 予想される結末のほう)には、willなどの未来表現を使うのが普通。一方、ifおよびunless では従属節の内容がたとえ未来における内容であっても従属節の時制は現在形にする(ジーニアス)。桐原やロイヤルでは従属節の時制はとくに解説では明記されていないが、例文の時制を見ればジーニアスと同様に桐原などでもunlessの従属節は現在形である。 === in case ~ === 「in case ~(文)」は「~の場合にそなえて」の意味であり、従属接続詞として分類され、この場合は普通は主節のあとに in case ~ が置かれる(フォレレスト、ジーニアス)。 in case ~ の典型的な例文は、 Take an umbrella with you in case it rains. 「雨が降るといけないから、かさを持っていきなさい。」 ※ 数研 青チャート、ジーニアス take の代わりに bring の場合もある。また、この傘をもっていく例文の場合なら with you は省略可能。上記例文の出典の参考書にも with you をつけてないものもある。 Bring an umbrella in case it rains. 「雨が降るといけないから、かさを持っていきなさい。」 ※ ファクトブック 命令形ではなく平叙文の場合もあり、下記のような例文もある。 I'll take an umbrella with me in case it rains. 「雨が降るといけないから、かさを持っていこう。」 ※ フォレスト with me は省略可能。自分で持っていくので with me になる(青チャート)。 「in case ~ 」の副詞節に it should rain. のように should が使われる場合もあるが、これは可能性が低いと話し手・書き手が思っている意味である(青チャート、ブレイクスルー)。 なお、in case は上記の「~するといけないから」「~しないように」の用法の他にも、case 「条件」の文字通り「~の条件で」の意味で in case を使う場合もアメリカ英語では見られ(ジーニアス、フォレスト)、この場合は if でも言い換えできる。 言い換え表現で、「~するといけないから」「~しないように」用法の in case と同じ意味は「for fear that A ~」や「lest A (should) ~」でも言える。 for fear も lest も、ともに固い表現である(ジーニアス)。ジーニアス以外の参考書の多くは、for fear が固い表現であることを取り上げていない。 for fear ~でも lest ~でも、つづく「~」の部分には not をつけない。日本語に引きづられて not をつけないように注意。 英和辞典を見れば fear は「恐れ」「不安」などの意味が書いてあることからも想像がつくように、for fear のあとには、おそれている内容を書くので、つまり、実現してほしくないことを肯定形で書くことになるのも当然であろう。 さて、lest について、ジーニアスいわく、 lest は固い言い方なだけであり、頻度自体は for fear よりも lest のほうが高いと、ジーニアスは主張している。 lest のshould が省略される場合もある。なお、shouldが省略された場合には、続く動詞には原形が来る。lest のshould 省略時の動詞の原形をつかうことを仮定法現在として解釈する流儀もある(青チャート)。 ほか、文法教育的にはあまり注目されないが、 so that ~ 「~のために」と、否定 not を組み合わせて、たとえば 「so that A won't ~」により「~しないように」という言い換えも可能である。won't の変わりに can't の場合もある(ブレイクスルー)。 === その他 === その他、as far as や as long as など範囲を表す表現が、カンマなどを補われて、従属接続詞として分類される。 「as far as I know,」 で「私の知る限りでは、」の意味。as far as の代わりに so far as とすることもある(ロイヤル)。 よくある典型文は As far as I know, he is ~. 「私の知るかぎり、彼は~な人だ」 である(フォレスト、インスパイア)。そのほか、 As far as I'm concerned, ~ 「私に関する限り、」 という表現が、たとえば「私に関する限り、それで結構です。」(青チャート)とか「私に関する限り、不満はありません。」(ジーニアス)のような文章で使われる。 このように as ・・・ as は範囲を表すことがある。 このほか、別の用法で as far as で、自分の意見を言う用法もある(ブレイクスルー、ジーニアス)。たとえばブレイクスルーいわく、「私の意見では、冷凍食品はおいしくない」という単なる持論にも as far as を使っている例文がある。 as long as には用法が2種類あり、ひとつの用法は「~する間」という時間的な範囲を表す用法であり、もうひとつの用法は最低限の条件を表し(フォレスト)、「~しさえすれば」などと訳される(ジーニアス、フォレスト)。as long as の代わりに so long as とすることもある(ジーニアス、フォレスト)。「~する限りは」と訳される場合もある(ロイヤル)。 慣用的なよくある言い回しとして、「as long as I live 」で「私が生きている限り」の意味(ロイヤル、ジーニアス)。 I will never forget your kindness as long as I live. 「私が生きているかぎり、あなたのご親切を忘れません。」 のような文章がよく参考書にある(ジーニアス、青チャート)。 なお、べつにneverを使わずとも、 I won't forget your kindness as long as I live. 「私が生きているかぎり、あなたのご親切を忘れません。」 のような文章もよくある(インスパイア)。 「~さえすれば」の as long as は、言い換えとして、if only または only if で言い換えすることもできる。 目的を表す「 so that ~」も接続詞である。in order that も同様、目的を表す接続詞である。なお、so that ~ について、口語では thatが省略されることも多く、つまり so だけで目的の接続詞になることもある(フォレスト、ジーニアス)。 so that 節の中では、can や will や may をつかうのが普通(フォレスト、ジーニアス)。 なお、「so ~(形容詞など) that ・・・」は程度をあらわす接続詞である。 in order that ~ は堅い表現。in order that 節の中では、can や will や may をつかうのが普通(フォレスト、ジーニアス)。 as も接続詞の用法がある(ロイヤル、フォレスト)。 その他にも、さまざまな接続詞がある suppose や supposed や providing や provided などを接続詞として分類することもある(フォレスト)。 mrxoxpwtv4d044y3gxh01p0tzzxsc2a 205579 205578 2022-07-20T09:20:26Z すじにくシチュー 12058 /* 従属接続詞 */ typo wikitext text/x-wiki == 接続詞 == 語と語、句と句、節と節、など、文法上対等のものを結びつけるのが等位接続詞である。 いっぽう、従属節を主節と結びつけるのが従属接続詞であり(ジーニアス、フォレスト)、従位接続詞ともいう(ロイヤル)。 == 等位接続詞 == === 概要 === '''等位接続詞'''とは、and, or, but のように文法上等しいものを結びつける接続詞である。上記のほかにも、nor , so, for が等位接続詞である。 both A and B や either A or B なども便宜的にか等位接続詞として分類される。また、 not A but B や not only A but (also) B も等位接続詞として分類される。 便宜的に、not only A but also B と同じ意味をもつ as well as も、参考書では同じ単元で紹介される。 either は、「AかBかのどちらか」という意味である。 neither A nor B は、AもBも両方とも否定する表現であり、つまり「AとBのどちらも~ない」の意味である。 なお、neither A nor B が主語の場合、動詞はBの時制に一致させる(ジーニアス)。また、nor の直後の文章は肯定形である。 neither は基本、A,Bの2つしか使わない。3つ以上では使わないのが原則だが、しかし米英には原則に反して3つ以上で使う人もいるが(ロイヤル)、入試にはそこまで出ないだろう。また、neither で nor の代わりに原則に反して or を使う人もいるとのこと(ロイヤル)。入試では原則的な場合だけを考えればよいだろう。 「neither」とは not either の意味だろう、というのがロイヤル英文法の見解。 nor は、 neither のある文でなくても使われる場合がある(桐原、ロイヤル)。 否定語の not や don't などのあと、 「not A, nor B」または「don't A(動詞) nor B(動詞) 」で「AもBも無い」という意味で、neitherなしで nor が not などの否定語とともに使われる場合がある。 カンマが無い場合もある(ロイヤル英文法)。この場合でも、A nor B のあとに動詞が来る場合、その文は肯定形である。 「AもBもどちらも~ない」と否定の内容を並列させたい場合、andではなくnorを使う(桐原)。 さて、and には、命令文のあとに使われたい場合には、「そうすれば」の意味になるが、この意味の場合でも等位接続詞として分類される。 or には、「または」の意味のほかにも「すなわち」「言い換えれば」というある語を別の語で言い換える用法の意味もあるが(ジーニアスおよびエバーグリーンに「言い換えれば」アリ)、どちらの意味の場合でも等位接続詞として分類される。また、or には、命令文のあとに使われたい場合には、「さもなければ」の意味になるが、この意味の場合でも等位接続詞として分類される。 なお、「すなわち」「言い換えれば」の意味で or が接続詞として使われる場合、orの前にふつうはカンマ(,)が来る(ジーニアス、いいづなエバーグリーン)。 {{コラム|数学の集合論との違い| 「夏も冬も両方とも好き」は英語では「 I like summer and winter. 」である(ブレイクスル-)。 「夏も冬も両方とも好きではない」は英語ではneither を使わずとも、 I don't like summer or winter. でもいえて、この場合は接続詞が or になっていることに注意(ブレイクスル-)。 一見すると、数学の集合演算における否定演算での積集合「∩」や和集合「∪」などの演算子の反転のように見えるが、しかし実は、数学の集合の理論(ベン図などの理論のこと)とは違う。 まず、英語において、 A and B が数学でいう和集合(演算子∪)か積集合(演算子は∩)かは文脈による。「情報」科などで習うかもしれないブール代数のand計算は積集合だが、しかし実際の英語の場合はそうとは限らないので注意。 また、よくよく考えると、数学では、積集合 A∩B の否定 not (A∩B )は、 (not A) ∪ (not B) である。 つまり、数学では、単に not がつくだけでは集合演算子は変わらない。要素すべてに not がついて、さらにそのnot を因数分解的にひとまとめにくくる段階になって、ようやく集合演算子が反転するのが、数学的な規則である。 しかし英語では、not がついただけの段階の時点で、接続詞が and から or に反転してしまっている。 このように、集合の数学 と 英語のand/orの文法は、似ているが微妙に違うので、混同しないように。 ともかく、数学では、not でくくったら、集合の演算子は反転する(∪から∩に。または∩から∪に)。しかし英語では、そういう数学的規則は無視されている。 だから、neither の例文をもとに覚えたほうが早いし安全である。 単に「 neither A nor B のように don't A or B のように言う」とでも覚えるしかない。語学はしょせん、暗記科目である。 }} === so/ for === 接続詞としての so は、 <出来事→結果> の語順として「理由の文、so 結果の文」のように理由を前に、結果を後ろに書き、「・・・なので~」「・・・だから~」という意味になる。理由というほど明白な因果関係でなくても、比較的に関連性の高い2つの出来事において、「ある出来事, so 出来事の結果」という用法でも良い。 また、この場合の so の直前にはカンマ「 , 」を置くのが普通(ジーニアス、エバーグリーン)。 余談だが、接続詞としての so と for はそれぞれ、節と節だけ結びつける(フォレスト、エバーグリーン)。つまり、語と語、句と句、語と句などは結び付けない。 いっぽう、for は、 <結果←出来事> の語順として、「結果, for 理由の章」の構文で、堅い言い回しとして理由を説明する。口語で用いることはあまり無い(ジーニアス、エバーグリーン)。ほか、 for は、forの前述の出来事に対して、その理由を述べる接続詞である。 なので、普通は for の直前にはカンマ「 , 」が来る。 接続詞としての for は等位接続詞である。for は従属接続詞ではない等の理由で(ロイヤル)、because のように主節の前に出すことはできない。なお、もし For が文頭に置かれている場合、それは、その直前の文の理由を説明している(ロイヤル)。 === and === まず、and の基本的な意味を確認しよう。 ;並列と順序 and の基本的な意味は並列「および」「と」の意味だが、もうひとつ、動作・時間の順序という意味もある。「先に起きたこと and その直後に起きたこと」のような語順で and を使うこともある。 動作や時間の順序のand は、「そして」や「~して、」の意味である(ジーニアス、ロイヤル)。 たとえば come and see は「先に来て、そして見る(見た)」の意味であり、つまり不定詞の結果用法 come to see と同じ意味である(フォレスト)。同様の表現として、 go and see もある。 ;因果関係 さらに、and が因果関係をあらわす場合もある(ジーニアス、ロイヤル)。普通、文章では、先に行ったり紹介した動作が、あとの動作の理由になるので、andで因果関係を表すのも自然であろう。 {{コラム|and なのに逆接?| 上記で and は因果関係を表す場合もあるといったが、しかし人生では、必ずしも前に起きた動作の期待どおりに後の結果が起きるとは限らない場合も多々あるものである。このため、and があたかも but のような逆接的な意味かのように見える英文が生じる場合もある。 たとえば、「彼は努力して、そして失敗した」は、順序を意識すれば try hard and failed のような言い回しになる(ジーニアス)。努力 try hard という準備にもかかわらず失敗 fail したことから、文脈によっては and なのにまるで逆接のような意味も読み取れる場合もある。 さて、このことから、もし後の起きたことが先に起きたことに比べて対照的な場合、場合によっては and は、あたかも逆接 but のような意味に見える場合がある。 とはいえ、これはand の順序関係の用法の、派生的なものである。andの基本的な意味は、あくまで並列・順序だと思うべきだろう。 }} == 従属接続詞 == === 名詞節を導く従属接続詞 === 一方、名詞節を導くために使われる that およびwhether(~かどうか) と if(~かどうか) は'''従属接続詞'''である。that や whether を接続詞として解釈する考えもある。 ここでの名詞節を導く if は、「~かどうか」の意味での if である。「もし~ならば、」の if のことではない。また、「もし」の if との混同をさけるため、文頭では名詞節の if は使えない(ファクトブック)。この「~かどうか」の意味の if の性質について言い方を変えるなら、つまり if は動詞の目的語としてしか使えない(ジーニアス、青チャート、ほか多数)。 また、whether or not (~かどうか)という成句はある一方、ifにはない(インスパイア、青チャート)。 ほか、「whether to ~(動詞)」で「~すべきかどうか」というto不定詞の用法はあるが、ifには不定詞が続かない(インスパイア、青チャート)。 なお、 whether to go 「行くべきかどうか」という語が、参考書によくある典型例である。さらに、 whether to go or not (青チャート)「行くべきかどうか」や whether to go or stay (ブレイクスルー)「行くべきかとどまるべきか」のようになる場合もある。 さらに、助動詞 should を使って「べき」を強調する whether we should go or stay 「行くべきか残るべきか」という表現もある(青チャート)。 whether we should go or not のように、whether の直後ではなく分節の最後に or not をつける場合もある(ジーニアス)。 また、whether は前置詞の目的語になることがあるが、ifはならない(インスパイア)。 if の本来の用法は「もしも~」であり、「~かどうか」の意味は派生的な意味にすぎない、と考えるのが良いだろう。 ほか、if は口語的、whether は文語的である(ジーニアス、青チャ-ト)。 depends on whether 、 など、動詞句 depends on とwhether との組み合わせが決まっている(青チャート)。depends on と if との組み合わせは禁止。なお depends on は、前置詞の目的語にwhether が来る例にもなっている。 wonder と ask は、if でも whether でも、どちらでも良い(ブレイクスルー、青チャート)。 ほか、 I wonder if ~ で「~がどうかなと思う」の意味。 さて、従属接続詞の典型的な文で The fact is (that)・・・ 「事実は・・・ということだ。」 The trouble is (that)・・・ 「困ったことに・・・ということだ。」 The truth is (that)・・・ 「真実は・・・ということだ。」 The reason is (that)・・・ 「理由は・・・ということだ。」 などがある。 このように、名詞節を導く that は、「・・・ということだ。」の意味になる。 that は主語・補語・目的語になる(上記の the reason is that などの例文の場合は、that が補語になっている)。 ほか、 It is 形容詞 that ・・・ という形式主語の文章で 使われる that は接続詞でもある(ジーニアス、エバーグリーン )。 ほか、that節が know,say ,think, tell, hope など一般的な動詞の目的語になっている場合は、thatを省略することも多い(ブレイクスルー、インスパイア)。 ただし、形式目的語の that は省略できない(エバーグリーン)。形式目的語とは、 He made it clear that ~ . 「彼は~であることを明らかにした。」 のような it を仮の目的語とする文章のこと。 that 節は普通は前置詞の後ろに置かれることないが(ジーニアス)、例外的に in that(~という点で、~だから) と except that(~を除いて)という用法がある。 なお、 in that には意味の異なる「~という点で」という用法と、もうひとつ「~だから」「~であるか」という別の用法があることに注意(ジーニアス)。 参考書によっては in that は前置詞の項目に書いてある場合もある(青チャート)。 ほか、Now that で、「今や~だから」という表現ができる。口語ではよくthatが省略され、Now だけになる。 典型的な例文は Now (that) he is eighteen, he can vote. 「今や彼は18歳なのだから、彼は投票できる。」 である(ジーニアス、青チャート)。 このほか、紹介している参考書は少ないが(青チャート、インスパイア)、分詞構文の Seeing that ~「~であるから」「~だから」が接続詞的に用いられる用法もある(青チャート)。 I'm glad that you have come to meet us. 「あなたがお迎えにきてくれて、うれしく思います」(青チャート) のような例文がよくある。 I'm glad that ~ 「~できて、うれしいです」 のように、「感情を現す形容詞 + that 」の that も接続詞である(青チャート)。 afraid, disappointed, sad, sorry, glad, happy, angry, surprised , upset などがこのような形容詞である(青チャート、ジーニアス)。この場合の that は省略されることも多い。なお、この場合の感情に続く that 以下の内容は「理由」を表す(ジーニアス)。 We are sorry that you cannot come. 「あなたがこられないのは残念です。」(インスパイア) この場合の sorry は謝罪ではないので注意。 sure 「確信している」は日本語では感情とは言いづらいが、青チャートはこれを感情に含めている。ただし、ジーニアスはsureを不採用。 なお、sure は感情のように I'm sure that ~ と主語を人称代名詞とするのが普通。辞書ジーニアスを見たが、it を主語にする sure は見つからなかった。 いっぽう、certain は、 It is certain that ~ も I'm certain もともに許される。(フォレストに I'm certain あり。ブレイクスルーに it is certain) なお、確信ではなく「疑わしい」と思っている場合は、 It is doubtful whether (またはif)~ 「~かどうかは疑わしい」 のように、 接続詞は whether または if になる。この場合の whether や if も名詞節である。 I'm doubtful whether(if) のように人称代名詞で言ってもよい(インスパイア)。さらに、形容詞ではなく動詞 doubt で I doubt whether (if) ~ で言うことも可能(インスパイア)。 {{コラム|(※ 発展)doubt のあとは that か whether か | doubt のあとが doubt whether のように whether になる場合は、肯定の平叙文の場合だけである(インスパイア)。 doubt については否定形の場合、don't doubt that ~ のようになる(インスパイア)。つまり、否定形 doubtでは whether ではなく that になる。 これは、don't doubt は直訳しただけなら単に「疑ってはいない」というだけになってしまうが、しかし実際には don't doubt は「確信している」という意味を表すのに慣用的に使われている(インスパイア)からである。インスパイアの場合、I don't doubt that ~ を「~することは間違いない」と訳している。かなりマニアックな話題であり、ほかの参考書は取り上げていない。 けっして「否定形のあとなら whether がthat になる」(×)というわけではない(ジーニアス)。「彼女が来るかどうかはどうでもいいことだ」という文章で、「どうでもいい」は It doesn't concern me なので(ジーニアス)、それと「彼女が来るかどうか」を合わせて It doesn't concern me whether she will come or not. 「彼女が来るかどうかはどうでもいいことだ。」(ジーニアス) という例文もあるほどだ(ジーニアス)。 さらに疑問文の場合、 Do you doubt that ~ のように、that になる。 これはもう、論理的に説明するのが困難だが、安心してもいいことに他社の参考書にまず書いてない。入試には出ないだろう。 入試の出題者だって、そこまで瑣末なことは問わない。 実は「高校レベル」の参考書と言うのは、実は読者対象は題名に反して決して高校生だけが対象でなく、大学の教師などが知識を広く浅くアップデートするためにも出版されているので、上述のような入試の範囲をやや超えた細かい話題も載っていたりするのである。インスパイアがどうかは知らないが。 }} なお「確信」している場合、I'm sure は「確信している」の「信」じるの文字からも想像がつくように、動詞 believe で I believe that と細かなニュアンスを無視すれば言い換えもできる(インスパイア)。 ほか、確信していない場合は、つまり確信に not がつく場合は、that よりも whether や if のほうが好ましい(インスパイア、ブレイクスルー)。つまり I'm not sure whether(またはif) ~ のようになる(インスパイア、ブレイクスルー)。 なお、動詞で「信じていない」という場合、つまり don't believe の場合、 I didn't believe what ~ のように whether ではなく what になるのに注意(インスパイア)。 === 副詞節を導く従属接続詞 === ==== はじめに ==== ほか、(たとえば平叙文のなかで)副詞節を導かれるために使われる when (~のとき、)や where (~の場所)が従属接続詞である。 before , after および since や until なども従属接続詞。 as soon as や once もこれに含める(ジーニアス、フォレスト)。 なお、 It will not long before ~ は「まもなく~するだろう」の意味である。直訳すれば「~するまでに長くはない」だが(青チャート)、英語では「まもなく~するだろう」の意味である。 また、過去形で It was not ling before ~ なら「すぐに~できた」の意味であり、副詞 soon で言い換えできる(ジーニアス)。 「until ~」は、「~」の瞬間まで動作が継続しているときに使い、「~するまで(ずっと)」の意味である。 一方、継続しない場合で、その時までに動作が完了している場合には、untilではなくby the time 「~する(時)までに」を使う。 It is not until ~ that ・・・ で「~して初めて・・・する」の意味である。直訳すれば「・・・まで~しない」だが(青チャート、インスパイア)、実際にはそこまで否定のニュアンスは無いし(とくに出典なし)、また過去形でも It was not until ~ that ・・・ として使われる(エバーグリーン、ジーニアス)。 as well as が等位接続詞なのに as soon as が従属なのはアレだが、まあどの参考書でもそういう分類になっている。 as soon as は言い換えで、the moment や the instant や no sooner ・・・ than ~ などの言い換え表現がある。 ==== once ==== once は「いったん~すると」の意味。once をどう分類するかが参考書ごとに違う。 ifやunlessなどと同様に「条件」として once を分類する参考書もあれば(ブレイクスルー、インスパイア)、 beforeやafterやsinceなどと同様の「起点」として once を分類する参考書もある(ジーニアス、フォレスト)。 なお、as soon as と once がなぜか同じ章節で紹介される参考書が多いが(ジーニアス、フォレスト、しかし意味が違う接続詞なので混同しないように。 if~ は内容が未来であっても現在形を使うが、as soon as ~ も後続の文では内容が未来であっても現在形を使うので、もしかしたらその理由でonceが「条件」として分類されているのかもしれない。 また、as soon as ~ と同様に、once ~ も後続の文の内容が未来であっても現在形を使う(ジーニアス)。そういう共通点からか、一緒に「起点」として紹介されるのかもしれない。 しかし、単に分類が同じだけであり、 once は as soon as とは意味がまったく違うので、混同しないように。 ==== その他 ==== 時間の表現だけでなく、because や since (since には理由の意味もある)も従属接続詞。 because は従属接続詞なので、よって主節なしで 「Because ~ .」 といったBecause だけの節をつくることは原則、誤用だとみなされる(青チャート、ジーニアス)。 ただし例外的に、"Why ~?" といった Why を使った質問文に対して、解答で"Because ~" と because だけの節の文章が許されている(青チャート、ジーニアス)。 since は基本、相手が既知の話題についての理由を説明するときに使うので(ブレイクスルー、フォレスト、ジーニアス)、since節の時制は過去形になる事も多い(青チャート)。また、上記の事情のため、sinceのつくる副詞節は文頭や前方に置かれることも多いが(インスパイア、ジーニアス、ブレイクスルー)、しかしsinceを文頭に置かなくても正しい英語である(青チャート)。 「so ~(形容詞) that ・・・(文)」 は従属接続詞。 so に等位接続詞の用法もあるが、しかし 「so 形容詞 that 文」で結びつけられている形容詞とthat後続の文は対等ではないので、従属接続詞のほうが適切であろう。 例文は著作権のため省略。 ==== 譲歩 ==== 「譲歩」の意味である、though や although が従属接続詞として分類されている(ジーニアス、フォレスト、ロイヤル)。 though よりも although のほうが堅い言い回しである(フォレスト、ロイヤル)。 なお、英文法の接続詞の単元でいう「譲歩」は、日本語の日常語の「譲歩」とは意味がやや違う。日常語の「譲歩」とは、自分と相手・他人の主張が対立したい場合に、相手の意見を聞き入れたり時には従うことに重点が置かれるのが日常語の譲歩である(広辞苑、三省堂新明解)。 しかし、この接続詞の英文法でいう「譲歩」とは、相手の主張の一部を事実ではあると認めた上で、それでも自分の主張に事実性などがあることを主張しているのが、英文法の接続詞の分野での「譲歩」である(桐原フォレスト)。 even if ~ も even though ~ も「たとえ ~ だとしても」という譲歩の意味があるが、下記のような違いがある。 even though ~ は、though の後に事実がきて、話し手は事実を知っている。 even if ~ は、if のあとに仮定がきて、その仮定が事実かどうかを話しては知らない。 これとは別に、 even if ~ で if のあとが仮定法過去になる場合もある(ジーニアス、インスパイア)。 基本的には、even if も even though も、evenは単に直後の語を強調しているだけである(インスパイア)。 if「もし~」 のあとが事実かどうかを話し手が知らないのもifの不普通の用法だし、though 「~にもかかわらず」も通常は話し手は事実を前提にしているからである。 単に even は if や though に譲歩の意味をつけたしたり、譲歩を強調したりしているだけにすぎない。 ==== 条件 ==== 条件を表すif および unless も従属接続詞。 unless は、「もし~でなければ」という意味であるが(ジーニアス、ロイヤル)、「~でない限り、」と訳される場合も多い(フォレスト、ロイヤル)。なお、unless の直後の文は否定形にはならず(フォレスト、ジーニアス)、つまり unless の直後の文は肯定形である。 unless は、「否定の条件」であるという性質に加えて、さらに基本的に「唯一の条件」という性質がある(青チャート)。「起きてほしくない事を避けるためには、unless 以降の内容を実行するしかない」という意味での唯一性の主張が unless にはある。 このことなどから、 unless ~の文を if ・・・ not ~ の文章に書き換えできる一方で(unless → if not は可能な場合が多い)、しかし if not → unless の書き換えが無理な場合が多い。 unless は「条件の文 unless 予想される結果の文」の語順。unless においてカンマなどは不要。 unless の語順は、「予想される結末 unless 結末が成り立たなくなる条件」である。なお、unlessの主節(※ 予想される結末のほう)には、willなどの未来表現を使うのが普通。一方、ifおよびunless では従属節の内容がたとえ未来における内容であっても従属節の時制は現在形にする(ジーニアス)。桐原やロイヤルでは従属節の時制はとくに解説では明記されていないが、例文の時制を見ればジーニアスと同様に桐原などでもunlessの従属節は現在形である。 === in case ~ === 「in case ~(文)」は「~の場合にそなえて」の意味であり、従属接続詞として分類され、この場合は普通は主節のあとに in case ~ が置かれる(フォレレスト、ジーニアス)。 in case ~ の典型的な例文は、 Take an umbrella with you in case it rains. 「雨が降るといけないから、かさを持っていきなさい。」 ※ 数研 青チャート、ジーニアス take の代わりに bring の場合もある。また、この傘をもっていく例文の場合なら with you は省略可能。上記例文の出典の参考書にも with you をつけてないものもある。 Bring an umbrella in case it rains. 「雨が降るといけないから、かさを持っていきなさい。」 ※ ファクトブック 命令形ではなく平叙文の場合もあり、下記のような例文もある。 I'll take an umbrella with me in case it rains. 「雨が降るといけないから、かさを持っていこう。」 ※ フォレスト with me は省略可能。自分で持っていくので with me になる(青チャート)。 「in case ~ 」の副詞節に it should rain. のように should が使われる場合もあるが、これは可能性が低いと話し手・書き手が思っている意味である(青チャート、ブレイクスルー)。 なお、in case は上記の「~するといけないから」「~しないように」の用法の他にも、case 「条件」の文字通り「~の条件で」の意味で in case を使う場合もアメリカ英語では見られ(ジーニアス、フォレスト)、この場合は if でも言い換えできる。 言い換え表現で、「~するといけないから」「~しないように」用法の in case と同じ意味は「for fear that A ~」や「lest A (should) ~」でも言える。 for fear も lest も、ともに固い表現である(ジーニアス)。ジーニアス以外の参考書の多くは、for fear が固い表現であることを取り上げていない。 for fear ~でも lest ~でも、つづく「~」の部分には not をつけない。日本語に引きづられて not をつけないように注意。 英和辞典を見れば fear は「恐れ」「不安」などの意味が書いてあることからも想像がつくように、for fear のあとには、おそれている内容を書くので、つまり、実現してほしくないことを肯定形で書くことになるのも当然であろう。 さて、lest について、ジーニアスいわく、 lest は固い言い方なだけであり、頻度自体は for fear よりも lest のほうが高いと、ジーニアスは主張している。 lest のshould が省略される場合もある。なお、shouldが省略された場合には、続く動詞には原形が来る。lest のshould 省略時の動詞の原形をつかうことを仮定法現在として解釈する流儀もある(青チャート)。 ほか、文法教育的にはあまり注目されないが、 so that ~ 「~のために」と、否定 not を組み合わせて、たとえば 「so that A won't ~」により「~しないように」という言い換えも可能である。won't の変わりに can't の場合もある(ブレイクスルー)。 === その他 === その他、as far as や as long as など範囲を表す表現が、カンマなどを補われて、従属接続詞として分類される。 「as far as I know,」 で「私の知る限りでは、」の意味。as far as の代わりに so far as とすることもある(ロイヤル)。 よくある典型文は As far as I know, he is ~. 「私の知るかぎり、彼は~な人だ」 である(フォレスト、インスパイア)。そのほか、 As far as I'm concerned, ~ 「私に関する限り、」 という表現が、たとえば「私に関する限り、それで結構です。」(青チャート)とか「私に関する限り、不満はありません。」(ジーニアス)のような文章で使われる。 このように as ・・・ as は範囲を表すことがある。 このほか、別の用法で as far as で、自分の意見を言う用法もある(ブレイクスルー、ジーニアス)。たとえばブレイクスルーいわく、「私の意見では、冷凍食品はおいしくない」という単なる持論にも as far as を使っている例文がある。 as long as には用法が2種類あり、ひとつの用法は「~する間」という時間的な範囲を表す用法であり、もうひとつの用法は最低限の条件を表し(フォレスト)、「~しさえすれば」などと訳される(ジーニアス、フォレスト)。as long as の代わりに so long as とすることもある(ジーニアス、フォレスト)。「~する限りは」と訳される場合もある(ロイヤル)。 慣用的なよくある言い回しとして、「as long as I live 」で「私が生きている限り」の意味(ロイヤル、ジーニアス)。 I will never forget your kindness as long as I live. 「私が生きているかぎり、あなたのご親切を忘れません。」 のような文章がよく参考書にある(ジーニアス、青チャート)。 なお、べつにneverを使わずとも、 I won't forget your kindness as long as I live. 「私が生きているかぎり、あなたのご親切を忘れません。」 のような文章もよくある(インスパイア)。 「~さえすれば」の as long as は、言い換えとして、if only または only if で言い換えすることもできる。 目的を表す「 so that ~」も接続詞である。in order that も同様、目的を表す接続詞である。なお、so that ~ について、口語では thatが省略されることも多く、つまり so だけで目的の接続詞になることもある(フォレスト、ジーニアス)。 so that 節の中では、can や will や may をつかうのが普通(フォレスト、ジーニアス)。 なお、「so ~(形容詞など) that ・・・」は程度をあらわす接続詞である。 in order that ~ は堅い表現。in order that 節の中では、can や will や may をつかうのが普通(フォレスト、ジーニアス)。 as も接続詞の用法がある(ロイヤル、フォレスト)。 その他にも、さまざまな接続詞がある suppose や supposed や providing や provided などを接続詞として分類することもある(フォレスト)。 0mt43waojzbe7exdpst6ub0sczqptcj 205580 205579 2022-07-20T09:22:56Z すじにくシチュー 12058 否定の慣用表現 wikitext text/x-wiki == 接続詞 == 語と語、句と句、節と節、など、文法上対等のものを結びつけるのが等位接続詞である。 いっぽう、従属節を主節と結びつけるのが従属接続詞であり(ジーニアス、フォレスト)、従位接続詞ともいう(ロイヤル)。 == 等位接続詞 == === 概要 === '''等位接続詞'''とは、and, or, but のように文法上等しいものを結びつける接続詞である。上記のほかにも、nor , so, for が等位接続詞である。 both A and B や either A or B なども便宜的にか等位接続詞として分類される。また、 not A but B や not only A but (also) B も等位接続詞として分類される。 便宜的に、not only A but also B と同じ意味をもつ as well as も、参考書では同じ単元で紹介される。 either は、「AかBかのどちらか」という意味である。 neither A nor B は、AもBも両方とも否定する表現であり、つまり「AとBのどちらも~ない」の意味である。 なお、neither A nor B が主語の場合、動詞はBの時制に一致させる(ジーニアス)。また、nor の直後の文章は肯定形である。 neither は基本、A,Bの2つしか使わない。3つ以上では使わないのが原則だが、しかし米英には原則に反して3つ以上で使う人もいるが(ロイヤル)、入試にはそこまで出ないだろう。また、neither で nor の代わりに原則に反して or を使う人もいるとのこと(ロイヤル)。入試では原則的な場合だけを考えればよいだろう。 「neither」とは not either の意味だろう、というのがロイヤル英文法の見解。 nor は、 neither のある文でなくても使われる場合がある(桐原、ロイヤル)。 否定語の not や don't などのあと、 「not A, nor B」または「don't A(動詞) nor B(動詞) 」で「AもBも無い」という意味で、neitherなしで nor が not などの否定語とともに使われる場合がある。 カンマが無い場合もある(ロイヤル英文法)。この場合でも、A nor B のあとに動詞が来る場合、その文は肯定形である。 「AもBもどちらも~ない」と否定の内容を並列させたい場合、andではなくnorを使う(桐原)。 さて、and には、命令文のあとに使われたい場合には、「そうすれば」の意味になるが、この意味の場合でも等位接続詞として分類される。 or には、「または」の意味のほかにも「すなわち」「言い換えれば」というある語を別の語で言い換える用法の意味もあるが(ジーニアスおよびエバーグリーンに「言い換えれば」アリ)、どちらの意味の場合でも等位接続詞として分類される。また、or には、命令文のあとに使われたい場合には、「さもなければ」の意味になるが、この意味の場合でも等位接続詞として分類される。 なお、「すなわち」「言い換えれば」の意味で or が接続詞として使われる場合、orの前にふつうはカンマ(,)が来る(ジーニアス、いいづなエバーグリーン)。 {{コラム|数学の集合論との違い| 「夏も冬も両方とも好き」は英語では「 I like summer and winter. 」である(ブレイクスル-)。 「夏も冬も両方とも好きではない」は英語ではneither を使わずとも、 I don't like summer or winter. でもいえて、この場合は接続詞が or になっていることに注意(ブレイクスル-)。 一見すると、数学の集合演算における否定演算での積集合「∩」や和集合「∪」などの演算子の反転のように見えるが、しかし実は、数学の集合の理論(ベン図などの理論のこと)とは違う。 まず、英語において、 A and B が数学でいう和集合(演算子∪)か積集合(演算子は∩)かは文脈による。「情報」科などで習うかもしれないブール代数のand計算は積集合だが、しかし実際の英語の場合はそうとは限らないので注意。 また、よくよく考えると、数学では、積集合 A∩B の否定 not (A∩B )は、 (not A) ∪ (not B) である。 つまり、数学では、単に not がつくだけでは集合演算子は変わらない。要素すべてに not がついて、さらにそのnot を因数分解的にひとまとめにくくる段階になって、ようやく集合演算子が反転するのが、数学的な規則である。 しかし英語では、not がついただけの段階の時点で、接続詞が and から or に反転してしまっている。 このように、集合の数学 と 英語のand/orの文法は、似ているが微妙に違うので、混同しないように。 ともかく、数学では、not でくくったら、集合の演算子は反転する(∪から∩に。または∩から∪に)。しかし英語では、そういう数学的規則は無視されている。 だから、neither の例文をもとに覚えたほうが早いし安全である。 単に「 neither A nor B のように don't A or B のように言う」とでも覚えるしかない。語学はしょせん、暗記科目である。 }} === so/ for === 接続詞としての so は、 <出来事→結果> の語順として「理由の文、so 結果の文」のように理由を前に、結果を後ろに書き、「・・・なので~」「・・・だから~」という意味になる。理由というほど明白な因果関係でなくても、比較的に関連性の高い2つの出来事において、「ある出来事, so 出来事の結果」という用法でも良い。 また、この場合の so の直前にはカンマ「 , 」を置くのが普通(ジーニアス、エバーグリーン)。 余談だが、接続詞としての so と for はそれぞれ、節と節だけ結びつける(フォレスト、エバーグリーン)。つまり、語と語、句と句、語と句などは結び付けない。 いっぽう、for は、 <結果←出来事> の語順として、「結果, for 理由の章」の構文で、堅い言い回しとして理由を説明する。口語で用いることはあまり無い(ジーニアス、エバーグリーン)。ほか、 for は、forの前述の出来事に対して、その理由を述べる接続詞である。 なので、普通は for の直前にはカンマ「 , 」が来る。 接続詞としての for は等位接続詞である。for は従属接続詞ではない等の理由で(ロイヤル)、because のように主節の前に出すことはできない。なお、もし For が文頭に置かれている場合、それは、その直前の文の理由を説明している(ロイヤル)。 === and === まず、and の基本的な意味を確認しよう。 ;並列と順序 and の基本的な意味は並列「および」「と」の意味だが、もうひとつ、動作・時間の順序という意味もある。「先に起きたこと and その直後に起きたこと」のような語順で and を使うこともある。 動作や時間の順序のand は、「そして」や「~して、」の意味である(ジーニアス、ロイヤル)。 たとえば come and see は「先に来て、そして見る(見た)」の意味であり、つまり不定詞の結果用法 come to see と同じ意味である(フォレスト)。同様の表現として、 go and see もある。 ;因果関係 さらに、and が因果関係をあらわす場合もある(ジーニアス、ロイヤル)。普通、文章では、先に行ったり紹介した動作が、あとの動作の理由になるので、andで因果関係を表すのも自然であろう。 {{コラム|and なのに逆接?| 上記で and は因果関係を表す場合もあるといったが、しかし人生では、必ずしも前に起きた動作の期待どおりに後の結果が起きるとは限らない場合も多々あるものである。このため、and があたかも but のような逆接的な意味かのように見える英文が生じる場合もある。 たとえば、「彼は努力して、そして失敗した」は、順序を意識すれば try hard and failed のような言い回しになる(ジーニアス)。努力 try hard という準備にもかかわらず失敗 fail したことから、文脈によっては and なのにまるで逆接のような意味も読み取れる場合もある。 さて、このことから、もし後の起きたことが先に起きたことに比べて対照的な場合、場合によっては and は、あたかも逆接 but のような意味に見える場合がある。 とはいえ、これはand の順序関係の用法の、派生的なものである。andの基本的な意味は、あくまで並列・順序だと思うべきだろう。 }} == 従属接続詞 == === 名詞節を導く従属接続詞 === 一方、名詞節を導くために使われる that およびwhether(~かどうか) と if(~かどうか) は'''従属接続詞'''である。that や whether を接続詞として解釈する考えもある。 ここでの名詞節を導く if は、「~かどうか」の意味での if である。「もし~ならば、」の if のことではない。また、「もし」の if との混同をさけるため、文頭では名詞節の if は使えない(ファクトブック)。この「~かどうか」の意味の if の性質について言い方を変えるなら、つまり if は動詞の目的語としてしか使えない(ジーニアス、青チャート、ほか多数)。 また、whether or not (~かどうか)という成句はある一方、ifにはない(インスパイア、青チャート)。 ほか、「whether to ~(動詞)」で「~すべきかどうか」というto不定詞の用法はあるが、ifには不定詞が続かない(インスパイア、青チャート)。 なお、 whether to go 「行くべきかどうか」という語が、参考書によくある典型例である。さらに、 whether to go or not (青チャート)「行くべきかどうか」や whether to go or stay (ブレイクスルー)「行くべきかとどまるべきか」のようになる場合もある。 さらに、助動詞 should を使って「べき」を強調する whether we should go or stay 「行くべきか残るべきか」という表現もある(青チャート)。 whether we should go or not のように、whether の直後ではなく分節の最後に or not をつける場合もある(ジーニアス)。 また、whether は前置詞の目的語になることがあるが、ifはならない(インスパイア)。 if の本来の用法は「もしも~」であり、「~かどうか」の意味は派生的な意味にすぎない、と考えるのが良いだろう。 ほか、if は口語的、whether は文語的である(ジーニアス、青チャ-ト)。 depends on whether 、 など、動詞句 depends on とwhether との組み合わせが決まっている(青チャート)。depends on と if との組み合わせは禁止。なお depends on は、前置詞の目的語にwhether が来る例にもなっている。 wonder と ask は、if でも whether でも、どちらでも良い(ブレイクスルー、青チャート)。 ほか、 I wonder if ~ で「~がどうかなと思う」の意味。 さて、従属接続詞の典型的な文で The fact is (that)・・・ 「事実は・・・ということだ。」 The trouble is (that)・・・ 「困ったことに・・・ということだ。」 The truth is (that)・・・ 「真実は・・・ということだ。」 The reason is (that)・・・ 「理由は・・・ということだ。」 などがある。 このように、名詞節を導く that は、「・・・ということだ。」の意味になる。 that は主語・補語・目的語になる(上記の the reason is that などの例文の場合は、that が補語になっている)。 ほか、 It is 形容詞 that ・・・ という形式主語の文章で 使われる that は接続詞でもある(ジーニアス、エバーグリーン )。 ほか、that節が know,say ,think, tell, hope など一般的な動詞の目的語になっている場合は、thatを省略することも多い(ブレイクスルー、インスパイア)。 ただし、形式目的語の that は省略できない(エバーグリーン)。形式目的語とは、 He made it clear that ~ . 「彼は~であることを明らかにした。」 のような it を仮の目的語とする文章のこと。 that 節は普通は前置詞の後ろに置かれることないが(ジーニアス)、例外的に in that(~という点で、~だから) と except that(~を除いて)という用法がある。 なお、 in that には意味の異なる「~という点で」という用法と、もうひとつ「~だから」「~であるか」という別の用法があることに注意(ジーニアス)。 参考書によっては in that は前置詞の項目に書いてある場合もある(青チャート)。 ほか、Now that で、「今や~だから」という表現ができる。口語ではよくthatが省略され、Now だけになる。 典型的な例文は Now (that) he is eighteen, he can vote. 「今や彼は18歳なのだから、彼は投票できる。」 である(ジーニアス、青チャート)。 このほか、紹介している参考書は少ないが(青チャート、インスパイア)、分詞構文の Seeing that ~「~であるから」「~だから」が接続詞的に用いられる用法もある(青チャート)。 I'm glad that you have come to meet us. 「あなたがお迎えにきてくれて、うれしく思います」(青チャート) のような例文がよくある。 I'm glad that ~ 「~できて、うれしいです」 のように、「感情を現す形容詞 + that 」の that も接続詞である(青チャート)。 afraid, disappointed, sad, sorry, glad, happy, angry, surprised , upset などがこのような形容詞である(青チャート、ジーニアス)。この場合の that は省略されることも多い。なお、この場合の感情に続く that 以下の内容は「理由」を表す(ジーニアス)。 We are sorry that you cannot come. 「あなたがこられないのは残念です。」(インスパイア) この場合の sorry は謝罪ではないので注意。 sure 「確信している」は日本語では感情とは言いづらいが、青チャートはこれを感情に含めている。ただし、ジーニアスはsureを不採用。 なお、sure は感情のように I'm sure that ~ と主語を人称代名詞とするのが普通。辞書ジーニアスを見たが、it を主語にする sure は見つからなかった。 いっぽう、certain は、 It is certain that ~ も I'm certain もともに許される。(フォレストに I'm certain あり。ブレイクスルーに it is certain) なお、確信ではなく「疑わしい」と思っている場合は、 It is doubtful whether (またはif)~ 「~かどうかは疑わしい」 のように、 接続詞は whether または if になる。この場合の whether や if も名詞節である。 I'm doubtful whether(if) のように人称代名詞で言ってもよい(インスパイア)。さらに、形容詞ではなく動詞 doubt で I doubt whether (if) ~ で言うことも可能(インスパイア)。 {{コラム|(※ 発展)doubt のあとは that か whether か | doubt のあとが doubt whether のように whether になる場合は、肯定の平叙文の場合だけである(インスパイア)。 doubt については否定形の場合、don't doubt that ~ のようになる(インスパイア)。つまり、否定形 doubtでは whether ではなく that になる。 これは、don't doubt は直訳しただけなら単に「疑ってはいない」というだけになってしまうが、しかし実際には don't doubt は「確信している」という意味を表すのに慣用的に使われている(インスパイア)からである。インスパイアの場合、I don't doubt that ~ を「~することは間違いない」と訳している。かなりマニアックな話題であり、ほかの参考書は取り上げていない。 けっして「否定形のあとなら whether がthat になる」(×)というわけではない(ジーニアス)。「彼女が来るかどうかはどうでもいいことだ」という文章で、「どうでもいい」は It doesn't concern me なので(ジーニアス)、それと「彼女が来るかどうか」を合わせて It doesn't concern me whether she will come or not. 「彼女が来るかどうかはどうでもいいことだ。」(ジーニアス) という例文もあるほどだ(ジーニアス)。 さらに疑問文の場合、 Do you doubt that ~ のように、that になる。 これはもう、論理的に説明するのが困難だが、安心してもいいことに他社の参考書にまず書いてない。入試には出ないだろう。 入試の出題者だって、そこまで瑣末なことは問わない。 実は「高校レベル」の参考書と言うのは、実は読者対象は題名に反して決して高校生だけが対象でなく、大学の教師などが知識を広く浅くアップデートするためにも出版されているので、上述のような入試の範囲をやや超えた細かい話題も載っていたりするのである。インスパイアがどうかは知らないが。 }} なお「確信」している場合、I'm sure は「確信している」の「信」じるの文字からも想像がつくように、動詞 believe で I believe that と細かなニュアンスを無視すれば言い換えもできる(インスパイア)。 ほか、確信していない場合は、つまり確信に not がつく場合は、that よりも whether や if のほうが好ましい(インスパイア、ブレイクスルー)。つまり I'm not sure whether(またはif) ~ のようになる(インスパイア、ブレイクスルー)。 なお、動詞で「信じていない」という場合、つまり don't believe の場合、 I didn't believe what ~ のように whether ではなく what になるのに注意(インスパイア)。 === 副詞節を導く従属接続詞 === ==== はじめに ==== ほか、(たとえば平叙文のなかで)副詞節を導かれるために使われる when (~のとき、)や where (~の場所)が従属接続詞である。 before , after および since や until なども従属接続詞。 as soon as や once もこれに含める(ジーニアス、フォレスト)。 また、過去形で It was not ling before ~ なら「すぐに~できた」の意味であり、副詞 soon で言い換えできる(ジーニアス)。 「until ~」は、「~」の瞬間まで動作が継続しているときに使い、「~するまで(ずっと)」の意味である。 一方、継続しない場合で、その時までに動作が完了している場合には、untilではなくby the time 「~する(時)までに」を使う。 as well as が等位接続詞なのに as soon as が従属なのはアレだが、まあどの参考書でもそういう分類になっている。 as soon as は言い換えで、the moment や the instant や no sooner ・・・ than ~ などの言い換え表現がある。 ==== once ==== once は「いったん~すると」の意味。once をどう分類するかが参考書ごとに違う。 ifやunlessなどと同様に「条件」として once を分類する参考書もあれば(ブレイクスルー、インスパイア)、 beforeやafterやsinceなどと同様の「起点」として once を分類する参考書もある(ジーニアス、フォレスト)。 なお、as soon as と once がなぜか同じ章節で紹介される参考書が多いが(ジーニアス、フォレスト、しかし意味が違う接続詞なので混同しないように。 if~ は内容が未来であっても現在形を使うが、as soon as ~ も後続の文では内容が未来であっても現在形を使うので、もしかしたらその理由でonceが「条件」として分類されているのかもしれない。 また、as soon as ~ と同様に、once ~ も後続の文の内容が未来であっても現在形を使う(ジーニアス)。そういう共通点からか、一緒に「起点」として紹介されるのかもしれない。 しかし、単に分類が同じだけであり、 once は as soon as とは意味がまったく違うので、混同しないように。 ==== その他 ==== 時間の表現だけでなく、because や since (since には理由の意味もある)も従属接続詞。 because は従属接続詞なので、よって主節なしで 「Because ~ .」 といったBecause だけの節をつくることは原則、誤用だとみなされる(青チャート、ジーニアス)。 ただし例外的に、"Why ~?" といった Why を使った質問文に対して、解答で"Because ~" と because だけの節の文章が許されている(青チャート、ジーニアス)。 since は基本、相手が既知の話題についての理由を説明するときに使うので(ブレイクスルー、フォレスト、ジーニアス)、since節の時制は過去形になる事も多い(青チャート)。また、上記の事情のため、sinceのつくる副詞節は文頭や前方に置かれることも多いが(インスパイア、ジーニアス、ブレイクスルー)、しかしsinceを文頭に置かなくても正しい英語である(青チャート)。 「so ~(形容詞) that ・・・(文)」 は従属接続詞。 so に等位接続詞の用法もあるが、しかし 「so 形容詞 that 文」で結びつけられている形容詞とthat後続の文は対等ではないので、従属接続詞のほうが適切であろう。 例文は著作権のため省略。 ==== 譲歩 ==== 「譲歩」の意味である、though や although が従属接続詞として分類されている(ジーニアス、フォレスト、ロイヤル)。 though よりも although のほうが堅い言い回しである(フォレスト、ロイヤル)。 なお、英文法の接続詞の単元でいう「譲歩」は、日本語の日常語の「譲歩」とは意味がやや違う。日常語の「譲歩」とは、自分と相手・他人の主張が対立したい場合に、相手の意見を聞き入れたり時には従うことに重点が置かれるのが日常語の譲歩である(広辞苑、三省堂新明解)。 しかし、この接続詞の英文法でいう「譲歩」とは、相手の主張の一部を事実ではあると認めた上で、それでも自分の主張に事実性などがあることを主張しているのが、英文法の接続詞の分野での「譲歩」である(桐原フォレスト)。 even if ~ も even though ~ も「たとえ ~ だとしても」という譲歩の意味があるが、下記のような違いがある。 even though ~ は、though の後に事実がきて、話し手は事実を知っている。 even if ~ は、if のあとに仮定がきて、その仮定が事実かどうかを話しては知らない。 これとは別に、 even if ~ で if のあとが仮定法過去になる場合もある(ジーニアス、インスパイア)。 基本的には、even if も even though も、evenは単に直後の語を強調しているだけである(インスパイア)。 if「もし~」 のあとが事実かどうかを話し手が知らないのもifの不普通の用法だし、though 「~にもかかわらず」も通常は話し手は事実を前提にしているからである。 単に even は if や though に譲歩の意味をつけたしたり、譲歩を強調したりしているだけにすぎない。 ==== 条件 ==== 条件を表すif および unless も従属接続詞。 unless は、「もし~でなければ」という意味であるが(ジーニアス、ロイヤル)、「~でない限り、」と訳される場合も多い(フォレスト、ロイヤル)。なお、unless の直後の文は否定形にはならず(フォレスト、ジーニアス)、つまり unless の直後の文は肯定形である。 unless は、「否定の条件」であるという性質に加えて、さらに基本的に「唯一の条件」という性質がある(青チャート)。「起きてほしくない事を避けるためには、unless 以降の内容を実行するしかない」という意味での唯一性の主張が unless にはある。 このことなどから、 unless ~の文を if ・・・ not ~ の文章に書き換えできる一方で(unless → if not は可能な場合が多い)、しかし if not → unless の書き換えが無理な場合が多い。 unless は「条件の文 unless 予想される結果の文」の語順。unless においてカンマなどは不要。 unless の語順は、「予想される結末 unless 結末が成り立たなくなる条件」である。なお、unlessの主節(※ 予想される結末のほう)には、willなどの未来表現を使うのが普通。一方、ifおよびunless では従属節の内容がたとえ未来における内容であっても従属節の時制は現在形にする(ジーニアス)。桐原やロイヤルでは従属節の時制はとくに解説では明記されていないが、例文の時制を見ればジーニアスと同様に桐原などでもunlessの従属節は現在形である。 ==== 否定の慣用表現 ==== ===== not long before ===== It will not long before ~ は「まもなく~するだろう」の意味である。直訳すれば「~するまでに長くはない」だが(青チャート)、英語では「まもなく~するだろう」の意味である。 ===== not until ===== It is not until ~ that ・・・ で「~して初めて・・・する」の意味である。直訳すれば「・・・まで~しない」だが(青チャート、インスパイア)、実際にはそこまで否定のニュアンスは無いし(とくに出典なし)、また過去形でも It was not until ~ that ・・・ として使われる(エバーグリーン、ジーニアス)。 === in case ~ === 「in case ~(文)」は「~の場合にそなえて」の意味であり、従属接続詞として分類され、この場合は普通は主節のあとに in case ~ が置かれる(フォレレスト、ジーニアス)。 in case ~ の典型的な例文は、 Take an umbrella with you in case it rains. 「雨が降るといけないから、かさを持っていきなさい。」 ※ 数研 青チャート、ジーニアス take の代わりに bring の場合もある。また、この傘をもっていく例文の場合なら with you は省略可能。上記例文の出典の参考書にも with you をつけてないものもある。 Bring an umbrella in case it rains. 「雨が降るといけないから、かさを持っていきなさい。」 ※ ファクトブック 命令形ではなく平叙文の場合もあり、下記のような例文もある。 I'll take an umbrella with me in case it rains. 「雨が降るといけないから、かさを持っていこう。」 ※ フォレスト with me は省略可能。自分で持っていくので with me になる(青チャート)。 「in case ~ 」の副詞節に it should rain. のように should が使われる場合もあるが、これは可能性が低いと話し手・書き手が思っている意味である(青チャート、ブレイクスルー)。 なお、in case は上記の「~するといけないから」「~しないように」の用法の他にも、case 「条件」の文字通り「~の条件で」の意味で in case を使う場合もアメリカ英語では見られ(ジーニアス、フォレスト)、この場合は if でも言い換えできる。 言い換え表現で、「~するといけないから」「~しないように」用法の in case と同じ意味は「for fear that A ~」や「lest A (should) ~」でも言える。 for fear も lest も、ともに固い表現である(ジーニアス)。ジーニアス以外の参考書の多くは、for fear が固い表現であることを取り上げていない。 for fear ~でも lest ~でも、つづく「~」の部分には not をつけない。日本語に引きづられて not をつけないように注意。 英和辞典を見れば fear は「恐れ」「不安」などの意味が書いてあることからも想像がつくように、for fear のあとには、おそれている内容を書くので、つまり、実現してほしくないことを肯定形で書くことになるのも当然であろう。 さて、lest について、ジーニアスいわく、 lest は固い言い方なだけであり、頻度自体は for fear よりも lest のほうが高いと、ジーニアスは主張している。 lest のshould が省略される場合もある。なお、shouldが省略された場合には、続く動詞には原形が来る。lest のshould 省略時の動詞の原形をつかうことを仮定法現在として解釈する流儀もある(青チャート)。 ほか、文法教育的にはあまり注目されないが、 so that ~ 「~のために」と、否定 not を組み合わせて、たとえば 「so that A won't ~」により「~しないように」という言い換えも可能である。won't の変わりに can't の場合もある(ブレイクスルー)。 === その他 === その他、as far as や as long as など範囲を表す表現が、カンマなどを補われて、従属接続詞として分類される。 「as far as I know,」 で「私の知る限りでは、」の意味。as far as の代わりに so far as とすることもある(ロイヤル)。 よくある典型文は As far as I know, he is ~. 「私の知るかぎり、彼は~な人だ」 である(フォレスト、インスパイア)。そのほか、 As far as I'm concerned, ~ 「私に関する限り、」 という表現が、たとえば「私に関する限り、それで結構です。」(青チャート)とか「私に関する限り、不満はありません。」(ジーニアス)のような文章で使われる。 このように as ・・・ as は範囲を表すことがある。 このほか、別の用法で as far as で、自分の意見を言う用法もある(ブレイクスルー、ジーニアス)。たとえばブレイクスルーいわく、「私の意見では、冷凍食品はおいしくない」という単なる持論にも as far as を使っている例文がある。 as long as には用法が2種類あり、ひとつの用法は「~する間」という時間的な範囲を表す用法であり、もうひとつの用法は最低限の条件を表し(フォレスト)、「~しさえすれば」などと訳される(ジーニアス、フォレスト)。as long as の代わりに so long as とすることもある(ジーニアス、フォレスト)。「~する限りは」と訳される場合もある(ロイヤル)。 慣用的なよくある言い回しとして、「as long as I live 」で「私が生きている限り」の意味(ロイヤル、ジーニアス)。 I will never forget your kindness as long as I live. 「私が生きているかぎり、あなたのご親切を忘れません。」 のような文章がよく参考書にある(ジーニアス、青チャート)。 なお、べつにneverを使わずとも、 I won't forget your kindness as long as I live. 「私が生きているかぎり、あなたのご親切を忘れません。」 のような文章もよくある(インスパイア)。 「~さえすれば」の as long as は、言い換えとして、if only または only if で言い換えすることもできる。 目的を表す「 so that ~」も接続詞である。in order that も同様、目的を表す接続詞である。なお、so that ~ について、口語では thatが省略されることも多く、つまり so だけで目的の接続詞になることもある(フォレスト、ジーニアス)。 so that 節の中では、can や will や may をつかうのが普通(フォレスト、ジーニアス)。 なお、「so ~(形容詞など) that ・・・」は程度をあらわす接続詞である。 in order that ~ は堅い表現。in order that 節の中では、can や will や may をつかうのが普通(フォレスト、ジーニアス)。 as も接続詞の用法がある(ロイヤル、フォレスト)。 その他にも、さまざまな接続詞がある suppose や supposed や providing や provided などを接続詞として分類することもある(フォレスト)。 8l0516xdesk839p5grevjp8j6v4z0qo 205581 205580 2022-07-20T09:34:19Z すじにくシチュー 12058 /* 否定の慣用表現 */ wikitext text/x-wiki == 接続詞 == 語と語、句と句、節と節、など、文法上対等のものを結びつけるのが等位接続詞である。 いっぽう、従属節を主節と結びつけるのが従属接続詞であり(ジーニアス、フォレスト)、従位接続詞ともいう(ロイヤル)。 == 等位接続詞 == === 概要 === '''等位接続詞'''とは、and, or, but のように文法上等しいものを結びつける接続詞である。上記のほかにも、nor , so, for が等位接続詞である。 both A and B や either A or B なども便宜的にか等位接続詞として分類される。また、 not A but B や not only A but (also) B も等位接続詞として分類される。 便宜的に、not only A but also B と同じ意味をもつ as well as も、参考書では同じ単元で紹介される。 either は、「AかBかのどちらか」という意味である。 neither A nor B は、AもBも両方とも否定する表現であり、つまり「AとBのどちらも~ない」の意味である。 なお、neither A nor B が主語の場合、動詞はBの時制に一致させる(ジーニアス)。また、nor の直後の文章は肯定形である。 neither は基本、A,Bの2つしか使わない。3つ以上では使わないのが原則だが、しかし米英には原則に反して3つ以上で使う人もいるが(ロイヤル)、入試にはそこまで出ないだろう。また、neither で nor の代わりに原則に反して or を使う人もいるとのこと(ロイヤル)。入試では原則的な場合だけを考えればよいだろう。 「neither」とは not either の意味だろう、というのがロイヤル英文法の見解。 nor は、 neither のある文でなくても使われる場合がある(桐原、ロイヤル)。 否定語の not や don't などのあと、 「not A, nor B」または「don't A(動詞) nor B(動詞) 」で「AもBも無い」という意味で、neitherなしで nor が not などの否定語とともに使われる場合がある。 カンマが無い場合もある(ロイヤル英文法)。この場合でも、A nor B のあとに動詞が来る場合、その文は肯定形である。 「AもBもどちらも~ない」と否定の内容を並列させたい場合、andではなくnorを使う(桐原)。 さて、and には、命令文のあとに使われたい場合には、「そうすれば」の意味になるが、この意味の場合でも等位接続詞として分類される。 or には、「または」の意味のほかにも「すなわち」「言い換えれば」というある語を別の語で言い換える用法の意味もあるが(ジーニアスおよびエバーグリーンに「言い換えれば」アリ)、どちらの意味の場合でも等位接続詞として分類される。また、or には、命令文のあとに使われたい場合には、「さもなければ」の意味になるが、この意味の場合でも等位接続詞として分類される。 なお、「すなわち」「言い換えれば」の意味で or が接続詞として使われる場合、orの前にふつうはカンマ(,)が来る(ジーニアス、いいづなエバーグリーン)。 {{コラム|数学の集合論との違い| 「夏も冬も両方とも好き」は英語では「 I like summer and winter. 」である(ブレイクスル-)。 「夏も冬も両方とも好きではない」は英語ではneither を使わずとも、 I don't like summer or winter. でもいえて、この場合は接続詞が or になっていることに注意(ブレイクスル-)。 一見すると、数学の集合演算における否定演算での積集合「∩」や和集合「∪」などの演算子の反転のように見えるが、しかし実は、数学の集合の理論(ベン図などの理論のこと)とは違う。 まず、英語において、 A and B が数学でいう和集合(演算子∪)か積集合(演算子は∩)かは文脈による。「情報」科などで習うかもしれないブール代数のand計算は積集合だが、しかし実際の英語の場合はそうとは限らないので注意。 また、よくよく考えると、数学では、積集合 A∩B の否定 not (A∩B )は、 (not A) ∪ (not B) である。 つまり、数学では、単に not がつくだけでは集合演算子は変わらない。要素すべてに not がついて、さらにそのnot を因数分解的にひとまとめにくくる段階になって、ようやく集合演算子が反転するのが、数学的な規則である。 しかし英語では、not がついただけの段階の時点で、接続詞が and から or に反転してしまっている。 このように、集合の数学 と 英語のand/orの文法は、似ているが微妙に違うので、混同しないように。 ともかく、数学では、not でくくったら、集合の演算子は反転する(∪から∩に。または∩から∪に)。しかし英語では、そういう数学的規則は無視されている。 だから、neither の例文をもとに覚えたほうが早いし安全である。 単に「 neither A nor B のように don't A or B のように言う」とでも覚えるしかない。語学はしょせん、暗記科目である。 }} === so/ for === 接続詞としての so は、 <出来事→結果> の語順として「理由の文、so 結果の文」のように理由を前に、結果を後ろに書き、「・・・なので~」「・・・だから~」という意味になる。理由というほど明白な因果関係でなくても、比較的に関連性の高い2つの出来事において、「ある出来事, so 出来事の結果」という用法でも良い。 また、この場合の so の直前にはカンマ「 , 」を置くのが普通(ジーニアス、エバーグリーン)。 余談だが、接続詞としての so と for はそれぞれ、節と節だけ結びつける(フォレスト、エバーグリーン)。つまり、語と語、句と句、語と句などは結び付けない。 いっぽう、for は、 <結果←出来事> の語順として、「結果, for 理由の章」の構文で、堅い言い回しとして理由を説明する。口語で用いることはあまり無い(ジーニアス、エバーグリーン)。ほか、 for は、forの前述の出来事に対して、その理由を述べる接続詞である。 なので、普通は for の直前にはカンマ「 , 」が来る。 接続詞としての for は等位接続詞である。for は従属接続詞ではない等の理由で(ロイヤル)、because のように主節の前に出すことはできない。なお、もし For が文頭に置かれている場合、それは、その直前の文の理由を説明している(ロイヤル)。 === and === まず、and の基本的な意味を確認しよう。 ;並列と順序 and の基本的な意味は並列「および」「と」の意味だが、もうひとつ、動作・時間の順序という意味もある。「先に起きたこと and その直後に起きたこと」のような語順で and を使うこともある。 動作や時間の順序のand は、「そして」や「~して、」の意味である(ジーニアス、ロイヤル)。 たとえば come and see は「先に来て、そして見る(見た)」の意味であり、つまり不定詞の結果用法 come to see と同じ意味である(フォレスト)。同様の表現として、 go and see もある。 ;因果関係 さらに、and が因果関係をあらわす場合もある(ジーニアス、ロイヤル)。普通、文章では、先に行ったり紹介した動作が、あとの動作の理由になるので、andで因果関係を表すのも自然であろう。 {{コラム|and なのに逆接?| 上記で and は因果関係を表す場合もあるといったが、しかし人生では、必ずしも前に起きた動作の期待どおりに後の結果が起きるとは限らない場合も多々あるものである。このため、and があたかも but のような逆接的な意味かのように見える英文が生じる場合もある。 たとえば、「彼は努力して、そして失敗した」は、順序を意識すれば try hard and failed のような言い回しになる(ジーニアス)。努力 try hard という準備にもかかわらず失敗 fail したことから、文脈によっては and なのにまるで逆接のような意味も読み取れる場合もある。 さて、このことから、もし後の起きたことが先に起きたことに比べて対照的な場合、場合によっては and は、あたかも逆接 but のような意味に見える場合がある。 とはいえ、これはand の順序関係の用法の、派生的なものである。andの基本的な意味は、あくまで並列・順序だと思うべきだろう。 }} == 従属接続詞 == === 名詞節を導く従属接続詞 === 一方、名詞節を導くために使われる that およびwhether(~かどうか) と if(~かどうか) は'''従属接続詞'''である。that や whether を接続詞として解釈する考えもある。 ここでの名詞節を導く if は、「~かどうか」の意味での if である。「もし~ならば、」の if のことではない。また、「もし」の if との混同をさけるため、文頭では名詞節の if は使えない(ファクトブック)。この「~かどうか」の意味の if の性質について言い方を変えるなら、つまり if は動詞の目的語としてしか使えない(ジーニアス、青チャート、ほか多数)。 また、whether or not (~かどうか)という成句はある一方、ifにはない(インスパイア、青チャート)。 ほか、「whether to ~(動詞)」で「~すべきかどうか」というto不定詞の用法はあるが、ifには不定詞が続かない(インスパイア、青チャート)。 なお、 whether to go 「行くべきかどうか」という語が、参考書によくある典型例である。さらに、 whether to go or not (青チャート)「行くべきかどうか」や whether to go or stay (ブレイクスルー)「行くべきかとどまるべきか」のようになる場合もある。 さらに、助動詞 should を使って「べき」を強調する whether we should go or stay 「行くべきか残るべきか」という表現もある(青チャート)。 whether we should go or not のように、whether の直後ではなく分節の最後に or not をつける場合もある(ジーニアス)。 また、whether は前置詞の目的語になることがあるが、ifはならない(インスパイア)。 if の本来の用法は「もしも~」であり、「~かどうか」の意味は派生的な意味にすぎない、と考えるのが良いだろう。 ほか、if は口語的、whether は文語的である(ジーニアス、青チャ-ト)。 depends on whether 、 など、動詞句 depends on とwhether との組み合わせが決まっている(青チャート)。depends on と if との組み合わせは禁止。なお depends on は、前置詞の目的語にwhether が来る例にもなっている。 wonder と ask は、if でも whether でも、どちらでも良い(ブレイクスルー、青チャート)。 ほか、 I wonder if ~ で「~がどうかなと思う」の意味。 さて、従属接続詞の典型的な文で The fact is (that)・・・ 「事実は・・・ということだ。」 The trouble is (that)・・・ 「困ったことに・・・ということだ。」 The truth is (that)・・・ 「真実は・・・ということだ。」 The reason is (that)・・・ 「理由は・・・ということだ。」 などがある。 このように、名詞節を導く that は、「・・・ということだ。」の意味になる。 that は主語・補語・目的語になる(上記の the reason is that などの例文の場合は、that が補語になっている)。 ほか、 It is 形容詞 that ・・・ という形式主語の文章で 使われる that は接続詞でもある(ジーニアス、エバーグリーン )。 ほか、that節が know,say ,think, tell, hope など一般的な動詞の目的語になっている場合は、thatを省略することも多い(ブレイクスルー、インスパイア)。 ただし、形式目的語の that は省略できない(エバーグリーン)。形式目的語とは、 He made it clear that ~ . 「彼は~であることを明らかにした。」 のような it を仮の目的語とする文章のこと。 that 節は普通は前置詞の後ろに置かれることないが(ジーニアス)、例外的に in that(~という点で、~だから) と except that(~を除いて)という用法がある。 なお、 in that には意味の異なる「~という点で」という用法と、もうひとつ「~だから」「~であるか」という別の用法があることに注意(ジーニアス)。 参考書によっては in that は前置詞の項目に書いてある場合もある(青チャート)。 ほか、Now that で、「今や~だから」という表現ができる。口語ではよくthatが省略され、Now だけになる。 典型的な例文は Now (that) he is eighteen, he can vote. 「今や彼は18歳なのだから、彼は投票できる。」 である(ジーニアス、青チャート)。 このほか、紹介している参考書は少ないが(青チャート、インスパイア)、分詞構文の Seeing that ~「~であるから」「~だから」が接続詞的に用いられる用法もある(青チャート)。 I'm glad that you have come to meet us. 「あなたがお迎えにきてくれて、うれしく思います」(青チャート) のような例文がよくある。 I'm glad that ~ 「~できて、うれしいです」 のように、「感情を現す形容詞 + that 」の that も接続詞である(青チャート)。 afraid, disappointed, sad, sorry, glad, happy, angry, surprised , upset などがこのような形容詞である(青チャート、ジーニアス)。この場合の that は省略されることも多い。なお、この場合の感情に続く that 以下の内容は「理由」を表す(ジーニアス)。 We are sorry that you cannot come. 「あなたがこられないのは残念です。」(インスパイア) この場合の sorry は謝罪ではないので注意。 sure 「確信している」は日本語では感情とは言いづらいが、青チャートはこれを感情に含めている。ただし、ジーニアスはsureを不採用。 なお、sure は感情のように I'm sure that ~ と主語を人称代名詞とするのが普通。辞書ジーニアスを見たが、it を主語にする sure は見つからなかった。 いっぽう、certain は、 It is certain that ~ も I'm certain もともに許される。(フォレストに I'm certain あり。ブレイクスルーに it is certain) なお、確信ではなく「疑わしい」と思っている場合は、 It is doubtful whether (またはif)~ 「~かどうかは疑わしい」 のように、 接続詞は whether または if になる。この場合の whether や if も名詞節である。 I'm doubtful whether(if) のように人称代名詞で言ってもよい(インスパイア)。さらに、形容詞ではなく動詞 doubt で I doubt whether (if) ~ で言うことも可能(インスパイア)。 {{コラム|(※ 発展)doubt のあとは that か whether か | doubt のあとが doubt whether のように whether になる場合は、肯定の平叙文の場合だけである(インスパイア)。 doubt については否定形の場合、don't doubt that ~ のようになる(インスパイア)。つまり、否定形 doubtでは whether ではなく that になる。 これは、don't doubt は直訳しただけなら単に「疑ってはいない」というだけになってしまうが、しかし実際には don't doubt は「確信している」という意味を表すのに慣用的に使われている(インスパイア)からである。インスパイアの場合、I don't doubt that ~ を「~することは間違いない」と訳している。かなりマニアックな話題であり、ほかの参考書は取り上げていない。 けっして「否定形のあとなら whether がthat になる」(×)というわけではない(ジーニアス)。「彼女が来るかどうかはどうでもいいことだ」という文章で、「どうでもいい」は It doesn't concern me なので(ジーニアス)、それと「彼女が来るかどうか」を合わせて It doesn't concern me whether she will come or not. 「彼女が来るかどうかはどうでもいいことだ。」(ジーニアス) という例文もあるほどだ(ジーニアス)。 さらに疑問文の場合、 Do you doubt that ~ のように、that になる。 これはもう、論理的に説明するのが困難だが、安心してもいいことに他社の参考書にまず書いてない。入試には出ないだろう。 入試の出題者だって、そこまで瑣末なことは問わない。 実は「高校レベル」の参考書と言うのは、実は読者対象は題名に反して決して高校生だけが対象でなく、大学の教師などが知識を広く浅くアップデートするためにも出版されているので、上述のような入試の範囲をやや超えた細かい話題も載っていたりするのである。インスパイアがどうかは知らないが。 }} なお「確信」している場合、I'm sure は「確信している」の「信」じるの文字からも想像がつくように、動詞 believe で I believe that と細かなニュアンスを無視すれば言い換えもできる(インスパイア)。 ほか、確信していない場合は、つまり確信に not がつく場合は、that よりも whether や if のほうが好ましい(インスパイア、ブレイクスルー)。つまり I'm not sure whether(またはif) ~ のようになる(インスパイア、ブレイクスルー)。 なお、動詞で「信じていない」という場合、つまり don't believe の場合、 I didn't believe what ~ のように whether ではなく what になるのに注意(インスパイア)。 === 副詞節を導く従属接続詞 === ==== はじめに ==== ほか、(たとえば平叙文のなかで)副詞節を導かれるために使われる when (~のとき、)や where (~の場所)が従属接続詞である。 before , after および since や until なども従属接続詞。 as soon as や once もこれに含める(ジーニアス、フォレスト)。 また、過去形で It was not ling before ~ なら「すぐに~できた」の意味であり、副詞 soon で言い換えできる(ジーニアス)。 「until ~」は、「~」の瞬間まで動作が継続しているときに使い、「~するまで(ずっと)」の意味である。 一方、継続しない場合で、その時までに動作が完了している場合には、untilではなくby the time 「~する(時)までに」を使う。 as well as が等位接続詞なのに as soon as が従属なのはアレだが、まあどの参考書でもそういう分類になっている。 as soon as は言い換えで、the moment や the instant や no sooner ・・・ than ~ などの言い換え表現がある。 ==== once ==== once は「いったん~すると」の意味。once をどう分類するかが参考書ごとに違う。 ifやunlessなどと同様に「条件」として once を分類する参考書もあれば(ブレイクスルー、インスパイア)、 beforeやafterやsinceなどと同様の「起点」として once を分類する参考書もある(ジーニアス、フォレスト)。 なお、as soon as と once がなぜか同じ章節で紹介される参考書が多いが(ジーニアス、フォレスト、しかし意味が違う接続詞なので混同しないように。 if~ は内容が未来であっても現在形を使うが、as soon as ~ も後続の文では内容が未来であっても現在形を使うので、もしかしたらその理由でonceが「条件」として分類されているのかもしれない。 また、as soon as ~ と同様に、once ~ も後続の文の内容が未来であっても現在形を使う(ジーニアス)。そういう共通点からか、一緒に「起点」として紹介されるのかもしれない。 しかし、単に分類が同じだけであり、 once は as soon as とは意味がまったく違うので、混同しないように。 ==== その他 ==== 時間の表現だけでなく、because や since (since には理由の意味もある)も従属接続詞。 because は従属接続詞なので、よって主節なしで 「Because ~ .」 といったBecause だけの節をつくることは原則、誤用だとみなされる(青チャート、ジーニアス)。 ただし例外的に、"Why ~?" といった Why を使った質問文に対して、解答で"Because ~" と because だけの節の文章が許されている(青チャート、ジーニアス)。 since は基本、相手が既知の話題についての理由を説明するときに使うので(ブレイクスルー、フォレスト、ジーニアス)、since節の時制は過去形になる事も多い(青チャート)。また、上記の事情のため、sinceのつくる副詞節は文頭や前方に置かれることも多いが(インスパイア、ジーニアス、ブレイクスルー)、しかしsinceを文頭に置かなくても正しい英語である(青チャート)。 「so ~(形容詞) that ・・・(文)」 は従属接続詞。 so に等位接続詞の用法もあるが、しかし 「so 形容詞 that 文」で結びつけられている形容詞とthat後続の文は対等ではないので、従属接続詞のほうが適切であろう。 例文は著作権のため省略。 ==== 譲歩 ==== 「譲歩」の意味である、though や although が従属接続詞として分類されている(ジーニアス、フォレスト、ロイヤル)。 though よりも although のほうが堅い言い回しである(フォレスト、ロイヤル)。 なお、英文法の接続詞の単元でいう「譲歩」は、日本語の日常語の「譲歩」とは意味がやや違う。日常語の「譲歩」とは、自分と相手・他人の主張が対立したい場合に、相手の意見を聞き入れたり時には従うことに重点が置かれるのが日常語の譲歩である(広辞苑、三省堂新明解)。 しかし、この接続詞の英文法でいう「譲歩」とは、相手の主張の一部を事実ではあると認めた上で、それでも自分の主張に事実性などがあることを主張しているのが、英文法の接続詞の分野での「譲歩」である(桐原フォレスト)。 even if ~ も even though ~ も「たとえ ~ だとしても」という譲歩の意味があるが、下記のような違いがある。 even though ~ は、though の後に事実がきて、話し手は事実を知っている。 even if ~ は、if のあとに仮定がきて、その仮定が事実かどうかを話しては知らない。 これとは別に、 even if ~ で if のあとが仮定法過去になる場合もある(ジーニアス、インスパイア)。 基本的には、even if も even though も、evenは単に直後の語を強調しているだけである(インスパイア)。 if「もし~」 のあとが事実かどうかを話し手が知らないのもifの不普通の用法だし、though 「~にもかかわらず」も通常は話し手は事実を前提にしているからである。 単に even は if や though に譲歩の意味をつけたしたり、譲歩を強調したりしているだけにすぎない。 ==== 条件 ==== 条件を表すif および unless も従属接続詞。 unless は、「もし~でなければ」という意味であるが(ジーニアス、ロイヤル)、「~でない限り、」と訳される場合も多い(フォレスト、ロイヤル)。なお、unless の直後の文は否定形にはならず(フォレスト、ジーニアス)、つまり unless の直後の文は肯定形である。 unless は、「否定の条件」であるという性質に加えて、さらに基本的に「唯一の条件」という性質がある(青チャート)。「起きてほしくない事を避けるためには、unless 以降の内容を実行するしかない」という意味での唯一性の主張が unless にはある。 このことなどから、 unless ~の文を if ・・・ not ~ の文章に書き換えできる一方で(unless → if not は可能な場合が多い)、しかし if not → unless の書き換えが無理な場合が多い。 unless は「条件の文 unless 予想される結果の文」の語順。unless においてカンマなどは不要。 unless の語順は、「予想される結末 unless 結末が成り立たなくなる条件」である。なお、unlessの主節(※ 予想される結末のほう)には、willなどの未来表現を使うのが普通。一方、ifおよびunless では従属節の内容がたとえ未来における内容であっても従属節の時制は現在形にする(ジーニアス)。桐原やロイヤルでは従属節の時制はとくに解説では明記されていないが、例文の時制を見ればジーニアスと同様に桐原などでもunlessの従属節は現在形である。 ==== 否定の慣用表現 ==== ※ 参考書によっては、「接続詞」の単元ではなく、「否定」の単元で下記が紹介されている場合もある(ジーニアス、エバーグリーン)。 ===== not long before ===== It will not long before ~ は「まもなく~するだろう」の意味である。直訳すれば「~するまでに長くはない」だが(青チャート)、英語では「まもなく~するだろう」の意味である。 ===== not until ===== It is not until ~ that ・・・ で「~して初めて・・・する」の意味である。直訳すれば「・・・まで~しない」だが(青チャート、インスパイア)、実際にはそこまで否定のニュアンスは無いし(とくに出典なし)、また過去形でも It was not until ~ that ・・・ として使われる(エバーグリーン、ジーニアス)。 典型的な文章は「病気になって初めて健康のありがたさが分かる」だが(ジーニアス、インスパイア)、参考書によって英文が微妙に違う。 ジーニアスでは It was not until I became ill that I realized the value of health.   である。 インスパイアは、 It is not until we fail ill that we appreciate the value of good health. である。 上記のように、同じような和訳の言い回しでも、文献により英文が微妙に違うので、暗記の必要はない。もし暗記させる教育者がいれば教員としての見識不足を疑われるだけである。 === in case ~ === 「in case ~(文)」は「~の場合にそなえて」の意味であり、従属接続詞として分類され、この場合は普通は主節のあとに in case ~ が置かれる(フォレレスト、ジーニアス)。 in case ~ の典型的な例文は、 Take an umbrella with you in case it rains. 「雨が降るといけないから、かさを持っていきなさい。」 ※ 数研 青チャート、ジーニアス take の代わりに bring の場合もある。また、この傘をもっていく例文の場合なら with you は省略可能。上記例文の出典の参考書にも with you をつけてないものもある。 Bring an umbrella in case it rains. 「雨が降るといけないから、かさを持っていきなさい。」 ※ ファクトブック 命令形ではなく平叙文の場合もあり、下記のような例文もある。 I'll take an umbrella with me in case it rains. 「雨が降るといけないから、かさを持っていこう。」 ※ フォレスト with me は省略可能。自分で持っていくので with me になる(青チャート)。 「in case ~ 」の副詞節に it should rain. のように should が使われる場合もあるが、これは可能性が低いと話し手・書き手が思っている意味である(青チャート、ブレイクスルー)。 なお、in case は上記の「~するといけないから」「~しないように」の用法の他にも、case 「条件」の文字通り「~の条件で」の意味で in case を使う場合もアメリカ英語では見られ(ジーニアス、フォレスト)、この場合は if でも言い換えできる。 言い換え表現で、「~するといけないから」「~しないように」用法の in case と同じ意味は「for fear that A ~」や「lest A (should) ~」でも言える。 for fear も lest も、ともに固い表現である(ジーニアス)。ジーニアス以外の参考書の多くは、for fear が固い表現であることを取り上げていない。 for fear ~でも lest ~でも、つづく「~」の部分には not をつけない。日本語に引きづられて not をつけないように注意。 英和辞典を見れば fear は「恐れ」「不安」などの意味が書いてあることからも想像がつくように、for fear のあとには、おそれている内容を書くので、つまり、実現してほしくないことを肯定形で書くことになるのも当然であろう。 さて、lest について、ジーニアスいわく、 lest は固い言い方なだけであり、頻度自体は for fear よりも lest のほうが高いと、ジーニアスは主張している。 lest のshould が省略される場合もある。なお、shouldが省略された場合には、続く動詞には原形が来る。lest のshould 省略時の動詞の原形をつかうことを仮定法現在として解釈する流儀もある(青チャート)。 ほか、文法教育的にはあまり注目されないが、 so that ~ 「~のために」と、否定 not を組み合わせて、たとえば 「so that A won't ~」により「~しないように」という言い換えも可能である。won't の変わりに can't の場合もある(ブレイクスルー)。 === その他 === その他、as far as や as long as など範囲を表す表現が、カンマなどを補われて、従属接続詞として分類される。 「as far as I know,」 で「私の知る限りでは、」の意味。as far as の代わりに so far as とすることもある(ロイヤル)。 よくある典型文は As far as I know, he is ~. 「私の知るかぎり、彼は~な人だ」 である(フォレスト、インスパイア)。そのほか、 As far as I'm concerned, ~ 「私に関する限り、」 という表現が、たとえば「私に関する限り、それで結構です。」(青チャート)とか「私に関する限り、不満はありません。」(ジーニアス)のような文章で使われる。 このように as ・・・ as は範囲を表すことがある。 このほか、別の用法で as far as で、自分の意見を言う用法もある(ブレイクスルー、ジーニアス)。たとえばブレイクスルーいわく、「私の意見では、冷凍食品はおいしくない」という単なる持論にも as far as を使っている例文がある。 as long as には用法が2種類あり、ひとつの用法は「~する間」という時間的な範囲を表す用法であり、もうひとつの用法は最低限の条件を表し(フォレスト)、「~しさえすれば」などと訳される(ジーニアス、フォレスト)。as long as の代わりに so long as とすることもある(ジーニアス、フォレスト)。「~する限りは」と訳される場合もある(ロイヤル)。 慣用的なよくある言い回しとして、「as long as I live 」で「私が生きている限り」の意味(ロイヤル、ジーニアス)。 I will never forget your kindness as long as I live. 「私が生きているかぎり、あなたのご親切を忘れません。」 のような文章がよく参考書にある(ジーニアス、青チャート)。 なお、べつにneverを使わずとも、 I won't forget your kindness as long as I live. 「私が生きているかぎり、あなたのご親切を忘れません。」 のような文章もよくある(インスパイア)。 「~さえすれば」の as long as は、言い換えとして、if only または only if で言い換えすることもできる。 目的を表す「 so that ~」も接続詞である。in order that も同様、目的を表す接続詞である。なお、so that ~ について、口語では thatが省略されることも多く、つまり so だけで目的の接続詞になることもある(フォレスト、ジーニアス)。 so that 節の中では、can や will や may をつかうのが普通(フォレスト、ジーニアス)。 なお、「so ~(形容詞など) that ・・・」は程度をあらわす接続詞である。 in order that ~ は堅い表現。in order that 節の中では、can や will や may をつかうのが普通(フォレスト、ジーニアス)。 as も接続詞の用法がある(ロイヤル、フォレスト)。 その他にも、さまざまな接続詞がある suppose や supposed や providing や provided などを接続詞として分類することもある(フォレスト)。 pcu2i7uuhohdox0u4190kpu4t6u4hwp Crystal 0 35227 205548 205500 2022-07-20T02:06:10Z Ef3 694 /* マ入れ子のp!*/ マクロ p! は入れ子に出来ます。また、一旦ASTに変換してから再度ソースコードに変換するので、等価な別の構文に変換されることがあります。 wikitext text/x-wiki {{Pathnav|メインページ|工学|情報技術|プログラミング|frame=1}} {{Wikipedia|Crystal (プログラミング言語)}} 本書は、[[w:Crystal (プログラミング言語)|Crystal]]のチュートリアルです。 '''Crystal'''は、Ary Borenszweig、Juan Wajnerman、Brian Cardiffと300人以上の貢献者によって設計・開発された[汎用オブジェクト指向プログラミング言語です<ref>{{Cite web |url=https://github.com/crystal-lang/crystal/graphs/contributors |title=Contributors |accessdate=2022-07-18 |website=github.com }}</ref>。[[Crystal]] にヒントを得た構文を持ち、静的型チェックを備えた [[コンパイル型言語]]ですが、変数やメソッドの引数の型は一般には不要です。型は高度なグローバル[[型推論]]アルゴリズムによって解決される。<ref>{{Cite web |url=http://crystal-lang.org/2013/09/23/type-inference-part-1.html |title=Type inference part 1 |last=Brian J. |first=Cardiff |date=2013-09-09 |accessdate=2022-07-18 |website=crystal-lang.org }}</ref>Crystalは[[Apache License]]バージョン2.0のもと、FOSSとしてリリースされています。 __TOC__ == Hello, World! == 他の多くのチュートリアルがそうであるように、 私たちもまずはCrystalの世界にあいさつすることから始めましょう。 ''hello.cr''というファイルを作り(Crystalのソースファイルの拡張子は''.cr'' です)、次のように書いて保存して下さい。 ;hello.cr:<syntaxhighlight lang=Crystal> puts 'Hello, World!' </syntaxhighlight> ;コマンドラインでの操作:<syntaxhighlight lang="console"> % cat hello.cr puts 'Hello, World!' % crystal hello.cr In hello.cr:1:6 1 | puts 'Hello, World!' ^ Error: unterminated char literal, use double quotes for strings % sed -i -e "s@'@Q@g" -e 's@Q@"@g' hello.cr % cat hello.cr puts "Hello, World!" % crystal hello.cr Hello, World! </syntaxhighlight> この1行のスクリプトは、メソッド<code>puts</code> に文字リテラル<code>"Hello, World!"</code>を渡し呼出しています。 このプログラムは、[[Ruby#Hello, World!]]と同じですが、Crystalでは文字列リテラルは <code>"…"</code> で囲うのでそれだけ変更しました。 [TODO: コマンドラインツール crystal の解説。 crystal ファイル名 は crystal run ファイル名 の短縮形で、インタープリタ的な実行…ではなく、内部ビルドツールでコンパイル・実行を行う] == Ruby との違い == Crystalは、Rubyに触発された構文を持つものの、Rubyとの互換性をゴールに定めては'''いません'''。 このため、細部を見ると仕様に差異があり、Rubyのソースコードをcrystalに掛けるても前節の 'Hello World' の様にコンパイルに失敗することがあります。 また、コンパイルできても実行結果に違いが出ることがあります。 ここでは、Ruby との違いについて実際のコードと双方の結果を比較することで、差異についての理解を深めていきます。 === 整数型の特性 === ;大きな整数:<syntaxhighlight lang=Crystal> p 2 ** 999 p (2 ** 999).class </syntaxhighlight> ;rubyの実行結果:<syntaxhighlight lang="console"> 5357543035931336604742125245300009052807024058527668037218751941851755255624680612465991894078479290637973364587765734125935726428461570217992288787349287401967283887412115492710537302531185570938977091076523237491790970633699383779582771973038531457285598238843271083830214915826312193418602834034688 Integer </syntaxhighlight> ;crystalの実行結果:<syntaxhighlight lang="console"> Unhandled exception: Arithmetic overflow (OverflowError) from /usr/local/share/crystal/share/crystal/src/int.cr:295:9 in '**' from pow.cr:1:1 in '__crystal_main' from /usr/local/share/crystal/share/crystal/src/crystal/main.cr:115:5 in 'main_user_code' from /usr/local/share/crystal/share/crystal/src/crystal/main.cr:101:7 in 'main' from /usr/local/share/crystal/share/crystal/src/crystal/main.cr:127:3 in 'main' from /usr/local/lib64/libc.so.6 in '__libc_start_main' from /usr/local/.cache/crystal/crystal-run-pow.tmp in '_start' from ??? </syntaxhighlight> : Ruby の整数は、桁あふれが起こると自動的に多倍長整数に型変換されるので、継ぎ目なしに大きな数を扱うアルゴルズムが使えます。 : Crystal の整数は、固定長です(大きさについては[[#リテラルと型|後述]])。なので大きな答えになる式を評価すると桁あふれが生じます。桁あふれが生じますが、C言語のように寡黙に処理を続けるのではなく、実行時に例外(OverflowError)が上がるので、例外を捕捉し然るべき処置を施すことが可能です。 ==== BigInt ==== <code>big</code> を <code>require</code> すると <code>BigInt</code> が使えるようになります。 ;BigInt:<syntaxhighlight lang=Crystal> require "big" p BigInt.new(2) ** 999 p (BigInt.new(2) ** 999).class </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang="console"> 5357543035931336604742125245300009052807024058527668037218751941851755255624680612465991894078479290637973364587765734125935726428461570217992288787349287401967283887412115492710537302531185570938977091076523237491790970633699383779582771973038531457285598238843271083830214915826312193418602834034688 BigInt </syntaxhighlight> : BigIntはプリミティブではなので、リテラル表現はありません。また、 ::<syntaxhighlight lang=Crystal> n : BigInt = 2 </syntaxhighlight> ::<syntaxhighlight lang=console> Error: type must be BigInt, not Int32 </syntaxhighlight> :: のように型アノテーションすることも出来ません。 === リテラルと型 === ;様々なリテラルと型:<syntaxhighlight lang=Crystal> [nil, false, true, 42, 2.73, 'Q', "string", [1,2,3], {a:1, b:2}].each{|x| p [x, x.class] } </syntaxhighlight> ;rubyの実行結果:<syntaxhighlight lang="console"> [nil, NilClass] [false, FalseClass] [true, TrueClass] [42, Integer] [2.73, Float] ["Q", String] ["string", String] [[1, 2, 3], Array] [{:a=>1, :b=>2}, Hash] </syntaxhighlight> ;crystalの実行結果:<syntaxhighlight lang="console"> [nil, Nil] [false, Bool] [true, Bool] [42, Int32] [2.73, Float64] ['Q', Char] ["string", String] [[1, 2, 3], Array(Int32)] [{a: 1, b: 2}, NamedTuple(a: Int32, b: Int32)] </syntaxhighlight> : Crystal の整数は Int32、浮動小数点数は Float64 です。 ;サイズを指定した数リテラル:<syntaxhighlight lang=Crystal> [1_i64, 2_u32, 3_u64, 4_i32, 5_i16, 6_u8, 7_i128, 8_u128, 3.14_f32, 1.44_f64].each{|x| p [x, x.class] } </syntaxhighlight> ;ruby:Rubyでは、サーフィックスの付いた数値リテラルは無効 ;crystalの実行結果:<syntaxhighlight lang="console"> [1, Int64] [2, UInt32] [3, UInt64] [4, Int32] [5, Int16] [6, UInt8] [7, Int128] [8, UInt128] [3.14, Float32] [1.44, Float64] </syntaxhighlight> : Crystal では、数値リテラルに _ で始まるサーフィックスを付け { i:符号付き整数, u:符号なし整数, f:浮動小数点数 } と { 8,16,32,64,128 } のビット幅の組合せです<ref>[https://crystal-lang.org/reference/1.5/syntax_and_semantics/literals/ Literals]</ref>。 === for式がない === Crystal には、Ruby にはある for式がありません。 ;Rubyのfor式の構文:<syntaxhighlight lang="ruby"> for 変数 in コレクション 文 end </syntaxhighlight> :コレクションは Range, Array, Hash など内部構造を持つオブジェクトです。 :for式は、最後に評価した値を返すので、for'''式'''です。 ;for式のeachメソッドによる置換え:<syntaxhighlight lang="ruby"> for x in [ 2, 3, 5, 7, 11 ] do p x end # ↓ [ 2, 3, 5, 7, 11 ].each do | x | p x end </syntaxhighlight> : の様にコレクションの each メソッドで置換え可能なので、Rubyからの移植でも小規模な書換えで済みます<ref>[https://github.com/crystal-lang/crystal/issues/830 "For" Loop support #830]</ref>(後述のマクロで実装できないかと思いましたが、いまのところ無理のようです)。 また loop 式もありませんが while true; … end で間に合います。Ruby では while 式の条件の次に do が置けますが、Crystal では置けません。 === eval()がない === Crystal には eval() はありません。 Crystalはコンパイル型言語ですので、無理もないことです。 もし、Crystal で eval() を実装しようとすると、Common Lisp の様にインタープリターを丸ごとランタイムに含む必要があります。 これはリーズナブルな選択ではありません。 Crystal では、eval() が必要なケースに(限定的ですが)マクロを使うことが出来る可能性があります。 === マクロ === Crystalには、Rubyにはないマクロがあります<ref>[https://crystal-lang.org/reference/1.5/syntax_and_semantics/macros/ Macros - Crystal]</ref>。Rubyは実行時にすべてのオブジェクトにアクセス出来て、メソッド生やし放題なのでマクロは必要ありませんが、Crystalはコンパイル時に型やメソッドを確定する必要があり、特にメソッドジェネレターとしてのマクロにニーズがあります。また、テンプレート言語的なマクロなので、環境変数による条件分岐や、コンテナを渡し繰返し処理する構文もあります(面白いことにマクロには for 文があり、反対にマクロの中では、eachメソッドは使えません)。マクロには <code><nowiki>{{</nowiki>attr.id}}</code> の様にASTへのアクセス手順が用意されており、半ば言語を拡張するようなアプローチを取ることも出来ます。 [TODO:ASTについての解説;コラム向き?] ;マクロを使ったattr_accessorのイミュレーション:<syntaxhighlight lang=crystal> class Point def initialize(@x : Int32, @y : Int32) end # macro定義 macro attr_accessor(*attrs) {% for attr in attrs %} def {{attr.id}}() @{{attr.id}} end def {{attr.id}}=(var) @{{attr.id}} = var end {% end %} end # macro呼出し attr_accessor :x, :y end pt = Point.new(20, 30) p [pt.x, pt.y] t = pt.x pt.x = pt.y pt.y = t p [pt.x, pt.y] </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang=text> [20, 30] [30, 20] </syntaxhighlight> : Ruby には、attr_accessor と言う「クラスのメンバーのアクセサーを自動生成するメソッド」がありますが、Crystalにはないようなので、マクロで実装しました。 :: attr_accessor :name からは ::<syntaxhighlight lang=ruby> def name() @name end def name=(val) @name = val end </syntaxhighlight>相当のコードが生成されます。 [TODO:マクロの機能と構文の説明 *の付いた引数、 <nowiki>{{</nowiki>引数}}、{% … %} 構文] ==== マクロ p! ==== メソッド p は、与えられた「式」の inspaect() の返す値を puts しますが、マクロ p! は、それに先んじて(評価前の)「式」を表示します<ref>[https://crystal-lang.org/api/1.5.0/Crystal/Macros.html#p%21%28%2Aexpressions%29%3ANop-instance-method def p!(*expressions) : Nop]</ref>。 ;p!の例:<syntaxhighlight lang=crystal> x, y = true, false p! x,y,x && y, x || y, x ^ y, !x, x != y, x == y ary = [ 1, 2, 3 ] p! ary p! ary.map(&. << 1) p! ary.map(&.to_f) </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang=text> x # => true y # => false x && y # => false x || y # => true x ^ y # => true !x # => false x != y # => true x == y # => false ary # => [1, 2, 3] ary.map(&.<<(1)) # => [2, 4, 6] ary.map(&.to_f) # => [1.0, 2.0, 3.0] </syntaxhighlight> ===== 入れ子のp! ===== マクロ p! は入れ子に出来ます。また、一旦ASTに変換してから再度ソースコードに変換するので、等価な別の構文に変換されることがあります。 ;入れ子のp!:<syntaxhighlight lang=crystal> p! ( 100.times{|i| p! i break i if i > 12 } ) </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang=text> (100.times do |i| p!(i) if i > 12 break i end end) # => i # => 0 i # => 1 i # => 2 i # => 3 i # => 4 i # => 5 i # => 6 i # => 7 i # => 8 i # => 9 i # => 10 i # => 11 i # => 12 i # => 13 13 </syntaxhighlight> === クラス === ==== シンプルなクラス ==== ;シンプルなクラス:<syntaxhighlight lang=crystal highlight="2" line> class Hello def initialize(@name : String = "World") end def greeting puts "Hello #{@name}!" end end hello = Hello.new() hello.greeting universe = Hello.new("Universe") universe.greeting </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang=text> Hello World! Hello Universe! </syntaxhighlight> :;初期化メソッド :: <syntaxhighlight lang=crystal line start=4> def initialize(@name : String = "World") end </syntaxhighlight> ::Rubyであれば :: <syntaxhighlight lang=ruby line start=4> def initialize(name = "World") @name = name end </syntaxhighlight> ::とするところですが、Crystalでは、型アノテーション <code> : String</code> を使い、引数の型を限定しました。 ::また、(@ 付きの)アトリビュート名を仮引数にすると、そのままアトリビュート(a.k.a. インスタンス変数)に仮引数が代入されます。 ::これは、C++のコンストラクターのメンバー初期化リストと同じアイディアですが、Crystalではインスタンス変数に @ が前置されるので、仮引数に @ が出現すればインスタンス変数の初期値だと自明で、聡明な選択です。 ==== 都市間の大圏距離 ==== [[Ruby#ユーザー定義クラス]]の都市間の大圏距離を求めるメソッドを追加した例を、Crystalに移植しました。 ;都市間の大圏距離:<syntaxhighlight lang=crystal highlight=”2,7,12” line> class GeoCoord getter :longitude, :latitude def initialize(@longitude : Float64, @latitude : Float64) end def to_s(io) ew, ns = "東経", "北緯" long, lat = @longitude, @latitude ew, long = "西経", -long if long < 0.0 ns, lat = "南緯", -lat if lat < 0.0 io << "(#{ew}: #{long}, #{ns}: #{lat})" end # https://github.com/crystal-lang/crystal/issues/259 def distance(other) i, r = Math::PI / 180, 6371.008 Math.acos(Math.sin(@latitude*i) * Math.sin(other.latitude * i) + Math.cos(@latitude*i) * Math.cos(other.latitude * i) * Math.cos(@longitude * i - other.longitude * i)) * r end end # メソッドの先頭を大文字に出来ないのでクラス名のメソッドは作ることが出来ない # def GeoCoord(lng : Float64, lat : Float64) # GeoCoord.new(lng, lat) # end Sites = { "東京駅": GeoCoord.new(139.7673068, 35.6809591), "シドニー・オペラハウス": GeoCoord.new(151.215278, -33.856778), "グリニッジ天文台": GeoCoord.new(-0.0014, 51.4778), } Sites.each { |name, gc| puts "#{name}: #{gc}" } keys, len = Sites.keys, Sites.size keys.each_with_index { |x, i| y = keys[(i + 1) % len] puts "#{x} - #{y}: #{Sites[x].distance(Sites[y])} [km]" } </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang=text> 東京駅: (東経: 139.7673068, 北緯: 35.6809591) シドニー・オペラハウス: (東経: 151.215278, 南緯: 33.856778) グリニッジ天文台: (西経: 0.0014, 北緯: 51.4778) 東京駅 - シドニー・オペラハウス: 7823.269299386704 [km] シドニー・オペラハウス - グリニッジ天文台: 16987.2708377249 [km] グリニッジ天文台 - 東京駅: 9560.546566490015 [km] </syntaxhighlight> :Crystal には、<syntaxhighlight lang=ruby inline> attr_accessor </syntaxhighlight> はありませんが、標準ライブラリーのマクロに <syntaxhighlight lang=crystal inline> getter </syntaxhighlight>があるので :: <syntaxhighlight lang=crystal line start=2> getter :longitude, :latitude </syntaxhighlight> ::としました。 ::将来、<syntaxhighlight lang=ruby inline> attr_accessor </syntaxhighlight> が実装される可能性はありますが、姉妹品の<syntaxhighlight lang=crystal inline> setter </syntaxhighlight> との併用が下位互換性を考えると確実です。 : to_s は、Ruby ならば :: <syntaxhighlight lang=ruby line start=7> def to_s() </syntaxhighlight> :: <syntaxhighlight lang=ruby line start=12> io << "(#{ew}: #{long}, #{ns}: #{lat})" </syntaxhighlight> :: ですが、Crystalでは追加の引数 <var>io</var> が必要で :: <syntaxhighlight lang=ruby line start=7> def to_s(io) </syntaxhighlight> :: <syntaxhighlight lang=ruby line start=12> io << "(#{ew}: #{long}, #{ns}: #{lat})" </syntaxhighlight> : Ruby にはクラス名と同じ名前のメソッドで .new を呼出す文化があるのですが、Crystalはメソッドの先頭を大文字に出来ないので、これは見送りました。 == 脚註 == <references /> == 外部リンク == * [https://crystal-lang.org/ The Crystal Programming Language] {{---}} 公式サイト ** [https://crystal-lang.org/api/1.5.0/ Crystal 1.5.0 リファレンス] ** [https://play.crystal-lang.org/#/cr Compile & run code in Crystal] {{---}} playground [[Category:Crystal|*]] [[Category:プログラミング言語]] {{NDC|007.64}} 3ar9dl3ho8ktl6kmqwr986euctpmn1j 205554 205548 2022-07-20T03:00:53Z Ef3 694 /* 包含と継承 */ [[JavaScript/クラス#包含と継承]]を、Rubyに移植した[[Ruby#包含と継承]]を、Crystalに移植しました。 wikitext text/x-wiki {{Pathnav|メインページ|工学|情報技術|プログラミング|frame=1}} {{Wikipedia|Crystal (プログラミング言語)}} 本書は、[[w:Crystal (プログラミング言語)|Crystal]]のチュートリアルです。 '''Crystal'''は、Ary Borenszweig、Juan Wajnerman、Brian Cardiffと300人以上の貢献者によって設計・開発された[汎用オブジェクト指向プログラミング言語です<ref>{{Cite web |url=https://github.com/crystal-lang/crystal/graphs/contributors |title=Contributors |accessdate=2022-07-18 |website=github.com }}</ref>。[[Crystal]] にヒントを得た構文を持ち、静的型チェックを備えた [[コンパイル型言語]]ですが、変数やメソッドの引数の型は一般には不要です。型は高度なグローバル[[型推論]]アルゴリズムによって解決される。<ref>{{Cite web |url=http://crystal-lang.org/2013/09/23/type-inference-part-1.html |title=Type inference part 1 |last=Brian J. |first=Cardiff |date=2013-09-09 |accessdate=2022-07-18 |website=crystal-lang.org }}</ref>Crystalは[[Apache License]]バージョン2.0のもと、FOSSとしてリリースされています。 __TOC__ == Hello, World! == 他の多くのチュートリアルがそうであるように、 私たちもまずはCrystalの世界にあいさつすることから始めましょう。 ''hello.cr''というファイルを作り(Crystalのソースファイルの拡張子は''.cr'' です)、次のように書いて保存して下さい。 ;hello.cr:<syntaxhighlight lang=Crystal> puts 'Hello, World!' </syntaxhighlight> ;コマンドラインでの操作:<syntaxhighlight lang="console"> % cat hello.cr puts 'Hello, World!' % crystal hello.cr In hello.cr:1:6 1 | puts 'Hello, World!' ^ Error: unterminated char literal, use double quotes for strings % sed -i -e "s@'@Q@g" -e 's@Q@"@g' hello.cr % cat hello.cr puts "Hello, World!" % crystal hello.cr Hello, World! </syntaxhighlight> この1行のスクリプトは、メソッド<code>puts</code> に文字リテラル<code>"Hello, World!"</code>を渡し呼出しています。 このプログラムは、[[Ruby#Hello, World!]]と同じですが、Crystalでは文字列リテラルは <code>"…"</code> で囲うのでそれだけ変更しました。 [TODO: コマンドラインツール crystal の解説。 crystal ファイル名 は crystal run ファイル名 の短縮形で、インタープリタ的な実行…ではなく、内部ビルドツールでコンパイル・実行を行う] == Ruby との違い == Crystalは、Rubyに触発された構文を持つものの、Rubyとの互換性をゴールに定めては'''いません'''。 このため、細部を見ると仕様に差異があり、Rubyのソースコードをcrystalに掛けるても前節の 'Hello World' の様にコンパイルに失敗することがあります。 また、コンパイルできても実行結果に違いが出ることがあります。 ここでは、Ruby との違いについて実際のコードと双方の結果を比較することで、差異についての理解を深めていきます。 === 整数型の特性 === ;大きな整数:<syntaxhighlight lang=Crystal> p 2 ** 999 p (2 ** 999).class </syntaxhighlight> ;rubyの実行結果:<syntaxhighlight lang="console"> 5357543035931336604742125245300009052807024058527668037218751941851755255624680612465991894078479290637973364587765734125935726428461570217992288787349287401967283887412115492710537302531185570938977091076523237491790970633699383779582771973038531457285598238843271083830214915826312193418602834034688 Integer </syntaxhighlight> ;crystalの実行結果:<syntaxhighlight lang="console"> Unhandled exception: Arithmetic overflow (OverflowError) from /usr/local/share/crystal/share/crystal/src/int.cr:295:9 in '**' from pow.cr:1:1 in '__crystal_main' from /usr/local/share/crystal/share/crystal/src/crystal/main.cr:115:5 in 'main_user_code' from /usr/local/share/crystal/share/crystal/src/crystal/main.cr:101:7 in 'main' from /usr/local/share/crystal/share/crystal/src/crystal/main.cr:127:3 in 'main' from /usr/local/lib64/libc.so.6 in '__libc_start_main' from /usr/local/.cache/crystal/crystal-run-pow.tmp in '_start' from ??? </syntaxhighlight> : Ruby の整数は、桁あふれが起こると自動的に多倍長整数に型変換されるので、継ぎ目なしに大きな数を扱うアルゴルズムが使えます。 : Crystal の整数は、固定長です(大きさについては[[#リテラルと型|後述]])。なので大きな答えになる式を評価すると桁あふれが生じます。桁あふれが生じますが、C言語のように寡黙に処理を続けるのではなく、実行時に例外(OverflowError)が上がるので、例外を捕捉し然るべき処置を施すことが可能です。 ==== BigInt ==== <code>big</code> を <code>require</code> すると <code>BigInt</code> が使えるようになります。 ;BigInt:<syntaxhighlight lang=Crystal> require "big" p BigInt.new(2) ** 999 p (BigInt.new(2) ** 999).class </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang="console"> 5357543035931336604742125245300009052807024058527668037218751941851755255624680612465991894078479290637973364587765734125935726428461570217992288787349287401967283887412115492710537302531185570938977091076523237491790970633699383779582771973038531457285598238843271083830214915826312193418602834034688 BigInt </syntaxhighlight> : BigIntはプリミティブではなので、リテラル表現はありません。また、 ::<syntaxhighlight lang=Crystal> n : BigInt = 2 </syntaxhighlight> ::<syntaxhighlight lang=console> Error: type must be BigInt, not Int32 </syntaxhighlight> :: のように型アノテーションすることも出来ません。 === リテラルと型 === ;様々なリテラルと型:<syntaxhighlight lang=Crystal> [nil, false, true, 42, 2.73, 'Q', "string", [1,2,3], {a:1, b:2}].each{|x| p [x, x.class] } </syntaxhighlight> ;rubyの実行結果:<syntaxhighlight lang="console"> [nil, NilClass] [false, FalseClass] [true, TrueClass] [42, Integer] [2.73, Float] ["Q", String] ["string", String] [[1, 2, 3], Array] [{:a=>1, :b=>2}, Hash] </syntaxhighlight> ;crystalの実行結果:<syntaxhighlight lang="console"> [nil, Nil] [false, Bool] [true, Bool] [42, Int32] [2.73, Float64] ['Q', Char] ["string", String] [[1, 2, 3], Array(Int32)] [{a: 1, b: 2}, NamedTuple(a: Int32, b: Int32)] </syntaxhighlight> : Crystal の整数は Int32、浮動小数点数は Float64 です。 ;サイズを指定した数リテラル:<syntaxhighlight lang=Crystal> [1_i64, 2_u32, 3_u64, 4_i32, 5_i16, 6_u8, 7_i128, 8_u128, 3.14_f32, 1.44_f64].each{|x| p [x, x.class] } </syntaxhighlight> ;ruby:Rubyでは、サーフィックスの付いた数値リテラルは無効 ;crystalの実行結果:<syntaxhighlight lang="console"> [1, Int64] [2, UInt32] [3, UInt64] [4, Int32] [5, Int16] [6, UInt8] [7, Int128] [8, UInt128] [3.14, Float32] [1.44, Float64] </syntaxhighlight> : Crystal では、数値リテラルに _ で始まるサーフィックスを付け { i:符号付き整数, u:符号なし整数, f:浮動小数点数 } と { 8,16,32,64,128 } のビット幅の組合せです<ref>[https://crystal-lang.org/reference/1.5/syntax_and_semantics/literals/ Literals]</ref>。 === for式がない === Crystal には、Ruby にはある for式がありません。 ;Rubyのfor式の構文:<syntaxhighlight lang="ruby"> for 変数 in コレクション 文 end </syntaxhighlight> :コレクションは Range, Array, Hash など内部構造を持つオブジェクトです。 :for式は、最後に評価した値を返すので、for'''式'''です。 ;for式のeachメソッドによる置換え:<syntaxhighlight lang="ruby"> for x in [ 2, 3, 5, 7, 11 ] do p x end # ↓ [ 2, 3, 5, 7, 11 ].each do | x | p x end </syntaxhighlight> : の様にコレクションの each メソッドで置換え可能なので、Rubyからの移植でも小規模な書換えで済みます<ref>[https://github.com/crystal-lang/crystal/issues/830 "For" Loop support #830]</ref>(後述のマクロで実装できないかと思いましたが、いまのところ無理のようです)。 また loop 式もありませんが while true; … end で間に合います。Ruby では while 式の条件の次に do が置けますが、Crystal では置けません。 === eval()がない === Crystal には eval() はありません。 Crystalはコンパイル型言語ですので、無理もないことです。 もし、Crystal で eval() を実装しようとすると、Common Lisp の様にインタープリターを丸ごとランタイムに含む必要があります。 これはリーズナブルな選択ではありません。 Crystal では、eval() が必要なケースに(限定的ですが)マクロを使うことが出来る可能性があります。 === マクロ === Crystalには、Rubyにはないマクロがあります<ref>[https://crystal-lang.org/reference/1.5/syntax_and_semantics/macros/ Macros - Crystal]</ref>。Rubyは実行時にすべてのオブジェクトにアクセス出来て、メソッド生やし放題なのでマクロは必要ありませんが、Crystalはコンパイル時に型やメソッドを確定する必要があり、特にメソッドジェネレターとしてのマクロにニーズがあります。また、テンプレート言語的なマクロなので、環境変数による条件分岐や、コンテナを渡し繰返し処理する構文もあります(面白いことにマクロには for 文があり、反対にマクロの中では、eachメソッドは使えません)。マクロには <code><nowiki>{{</nowiki>attr.id}}</code> の様にASTへのアクセス手順が用意されており、半ば言語を拡張するようなアプローチを取ることも出来ます。 [TODO:ASTについての解説;コラム向き?] ;マクロを使ったattr_accessorのイミュレーション:<syntaxhighlight lang=crystal> class Point def initialize(@x : Int32, @y : Int32) end # macro定義 macro attr_accessor(*attrs) {% for attr in attrs %} def {{attr.id}}() @{{attr.id}} end def {{attr.id}}=(var) @{{attr.id}} = var end {% end %} end # macro呼出し attr_accessor :x, :y end pt = Point.new(20, 30) p [pt.x, pt.y] t = pt.x pt.x = pt.y pt.y = t p [pt.x, pt.y] </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang=text> [20, 30] [30, 20] </syntaxhighlight> : Ruby には、attr_accessor と言う「クラスのメンバーのアクセサーを自動生成するメソッド」がありますが、Crystalにはないようなので、マクロで実装しました。 :: attr_accessor :name からは ::<syntaxhighlight lang=ruby> def name() @name end def name=(val) @name = val end </syntaxhighlight>相当のコードが生成されます。 [TODO:マクロの機能と構文の説明 *の付いた引数、 <nowiki>{{</nowiki>引数}}、{% … %} 構文] ==== マクロ p! ==== メソッド p は、与えられた「式」の inspaect() の返す値を puts しますが、マクロ p! は、それに先んじて(評価前の)「式」を表示します<ref>[https://crystal-lang.org/api/1.5.0/Crystal/Macros.html#p%21%28%2Aexpressions%29%3ANop-instance-method def p!(*expressions) : Nop]</ref>。 ;p!の例:<syntaxhighlight lang=crystal> x, y = true, false p! x,y,x && y, x || y, x ^ y, !x, x != y, x == y ary = [ 1, 2, 3 ] p! ary p! ary.map(&. << 1) p! ary.map(&.to_f) </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang=text> x # => true y # => false x && y # => false x || y # => true x ^ y # => true !x # => false x != y # => true x == y # => false ary # => [1, 2, 3] ary.map(&.<<(1)) # => [2, 4, 6] ary.map(&.to_f) # => [1.0, 2.0, 3.0] </syntaxhighlight> ===== 入れ子のp! ===== マクロ p! は入れ子に出来ます。また、一旦ASTに変換してから再度ソースコードに変換するので、等価な別の構文に変換されることがあります。 ;入れ子のp!:<syntaxhighlight lang=crystal> p! ( 100.times{|i| p! i break i if i > 12 } ) </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang=text> (100.times do |i| p!(i) if i > 12 break i end end) # => i # => 0 i # => 1 i # => 2 i # => 3 i # => 4 i # => 5 i # => 6 i # => 7 i # => 8 i # => 9 i # => 10 i # => 11 i # => 12 i # => 13 13 </syntaxhighlight> === クラス === ==== シンプルなクラス ==== ;シンプルなクラス:<syntaxhighlight lang=crystal highlight="2" line> class Hello def initialize(@name : String = "World") end def greeting puts "Hello #{@name}!" end end hello = Hello.new() hello.greeting universe = Hello.new("Universe") universe.greeting </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang=text> Hello World! Hello Universe! </syntaxhighlight> :;初期化メソッド :: <syntaxhighlight lang=crystal line start=4> def initialize(@name : String = "World") end </syntaxhighlight> ::Rubyであれば :: <syntaxhighlight lang=ruby line start=4> def initialize(name = "World") @name = name end </syntaxhighlight> ::とするところですが、Crystalでは、型アノテーション <code> : String</code> を使い、引数の型を限定しました。 ::また、(@ 付きの)アトリビュート名を仮引数にすると、そのままアトリビュート(a.k.a. インスタンス変数)に仮引数が代入されます。 ::これは、C++のコンストラクターのメンバー初期化リストと同じアイディアですが、Crystalではインスタンス変数に @ が前置されるので、仮引数に @ が出現すればインスタンス変数の初期値だと自明で、聡明な選択です。 ==== 都市間の大圏距離 ==== [[Ruby#ユーザー定義クラス]]の都市間の大圏距離を求めるメソッドを追加した例を、Crystalに移植しました。 ;都市間の大圏距離:<syntaxhighlight lang=crystal highlight=”2,7,12” line> class GeoCoord getter :longitude, :latitude def initialize(@longitude : Float64, @latitude : Float64) end def to_s(io) ew, ns = "東経", "北緯" long, lat = @longitude, @latitude ew, long = "西経", -long if long < 0.0 ns, lat = "南緯", -lat if lat < 0.0 io << "(#{ew}: #{long}, #{ns}: #{lat})" end # https://github.com/crystal-lang/crystal/issues/259 def distance(other) i, r = Math::PI / 180, 6371.008 Math.acos(Math.sin(@latitude*i) * Math.sin(other.latitude * i) + Math.cos(@latitude*i) * Math.cos(other.latitude * i) * Math.cos(@longitude * i - other.longitude * i)) * r end end # メソッドの先頭を大文字に出来ないのでクラス名のメソッドは作ることが出来ない # def GeoCoord(lng : Float64, lat : Float64) # GeoCoord.new(lng, lat) # end Sites = { "東京駅": GeoCoord.new(139.7673068, 35.6809591), "シドニー・オペラハウス": GeoCoord.new(151.215278, -33.856778), "グリニッジ天文台": GeoCoord.new(-0.0014, 51.4778), } Sites.each { |name, gc| puts "#{name}: #{gc}" } keys, len = Sites.keys, Sites.size keys.each_with_index { |x, i| y = keys[(i + 1) % len] puts "#{x} - #{y}: #{Sites[x].distance(Sites[y])} [km]" } </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang=text> 東京駅: (東経: 139.7673068, 北緯: 35.6809591) シドニー・オペラハウス: (東経: 151.215278, 南緯: 33.856778) グリニッジ天文台: (西経: 0.0014, 北緯: 51.4778) 東京駅 - シドニー・オペラハウス: 7823.269299386704 [km] シドニー・オペラハウス - グリニッジ天文台: 16987.2708377249 [km] グリニッジ天文台 - 東京駅: 9560.546566490015 [km] </syntaxhighlight> :Crystal には、<syntaxhighlight lang=ruby inline> attr_accessor </syntaxhighlight> はありませんが、標準ライブラリーのマクロに <syntaxhighlight lang=crystal inline> getter </syntaxhighlight>があるので :: <syntaxhighlight lang=crystal line start=2> getter :longitude, :latitude </syntaxhighlight> ::としました。 ::将来、<syntaxhighlight lang=ruby inline> attr_accessor </syntaxhighlight> が実装される可能性はありますが、姉妹品の<syntaxhighlight lang=crystal inline> setter </syntaxhighlight> との併用が下位互換性を考えると確実です。 : to_s は、Ruby ならば :: <syntaxhighlight lang=ruby line start=7> def to_s() </syntaxhighlight> :: <syntaxhighlight lang=ruby line start=12> io << "(#{ew}: #{long}, #{ns}: #{lat})" </syntaxhighlight> :: ですが、Crystalでは追加の引数 <var>io</var> が必要で :: <syntaxhighlight lang=ruby line start=7> def to_s(io) </syntaxhighlight> :: <syntaxhighlight lang=ruby line start=12> io << "(#{ew}: #{long}, #{ns}: #{lat})" </syntaxhighlight> : Ruby にはクラス名と同じ名前のメソッドで .new を呼出す文化があるのですが、Crystalはメソッドの先頭を大文字に出来ないので、これは見送りました。 ==== 包含と継承 ==== [[JavaScript/クラス#包含と継承]]を、Rubyに移植した[[Ruby#包含と継承]]を、Crystalに移植しました。 ;包含と継承:<syntaxhighlight lang=crystal line> class Point def initialize(x = 0, y = 0) p("Point::constructor") @x = x @y = y end def move(dx = 0, dy = 0) @x += dx @y += dy p("Point::move") self end end class Shape def initialize(x = 0, y = 0) @location = Point.new(x, y) p("Shape::constructor") end def move(x, y) @location.move(x, y) p("Shape::move") self end end class Rectangle < Shape def initialize(x = 0, y = 0, width = 0, height = 0) super(x, y) @width = width @height = height p("Rectangle::constructor") end end p("Create a Rectangle!") rct = Rectangle.new(12, 32, 100, 50) p("rct = ", rct) p("rct.is_a?( Rectangle ) => ", rct.is_a?(Rectangle)) p("rct.is_a?( Shape ) => ", rct.is_a?(Shape)) p("rct.is_a?( Point ) => ", rct.is_a?(Point)) rct.move(11, 21) p("rct = ", rct) rct2 = Rectangle.new(1, 2, 10, 150) p("rct = ", rct) p("rct2 = ", rct2) </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang=text> "Create a Rectangle!" "Point::constructor" "Shape::constructor" "Rectangle::constructor" "rct = " #<Rectangle:0x80096de40 @location=#<Point:0x80096ee60 @x=12, @y=32>, @width=100, @height=50> "rct.is_a?( Rectangle ) => " true "rct.is_a?( Shape ) => " true "rct.is_a?( Point ) => " false "Point::move" "Shape::move" "rct = " #<Rectangle:0x80096de40 @location=#<Point:0x80096ee60 @x=23, @y=53>, @width=100, @height=50> "Point::constructor" "Shape::constructor" "Rectangle::constructor" "rct = " #<Rectangle:0x80096de40 @location=#<Point:0x80096ee60 @x=23, @y=53>, @width=100, @height=50> "rct2 = " #<Rectangle:0x80096de20 @location=#<Point:0x80096ee50 @x=1, @y=2>, @width=10, @height=150> </syntaxhighlight> == 脚註 == <references /> == 外部リンク == * [https://crystal-lang.org/ The Crystal Programming Language] {{---}} 公式サイト ** [https://crystal-lang.org/api/1.5.0/ Crystal 1.5.0 リファレンス] ** [https://play.crystal-lang.org/#/cr Compile & run code in Crystal] {{---}} playground [[Category:Crystal|*]] [[Category:プログラミング言語]] {{NDC|007.64}} oaroo8cjrc756p4svnobrau40t6eva8 205559 205554 2022-07-20T03:12:25Z Ef3 694 /* 包含と継承 */ 「Crystalらしいコード」に変更 wikitext text/x-wiki {{Pathnav|メインページ|工学|情報技術|プログラミング|frame=1}} {{Wikipedia|Crystal (プログラミング言語)}} 本書は、[[w:Crystal (プログラミング言語)|Crystal]]のチュートリアルです。 '''Crystal'''は、Ary Borenszweig、Juan Wajnerman、Brian Cardiffと300人以上の貢献者によって設計・開発された[汎用オブジェクト指向プログラミング言語です<ref>{{Cite web |url=https://github.com/crystal-lang/crystal/graphs/contributors |title=Contributors |accessdate=2022-07-18 |website=github.com }}</ref>。[[Crystal]] にヒントを得た構文を持ち、静的型チェックを備えた [[コンパイル型言語]]ですが、変数やメソッドの引数の型は一般には不要です。型は高度なグローバル[[型推論]]アルゴリズムによって解決される。<ref>{{Cite web |url=http://crystal-lang.org/2013/09/23/type-inference-part-1.html |title=Type inference part 1 |last=Brian J. |first=Cardiff |date=2013-09-09 |accessdate=2022-07-18 |website=crystal-lang.org }}</ref>Crystalは[[Apache License]]バージョン2.0のもと、FOSSとしてリリースされています。 __TOC__ == Hello, World! == 他の多くのチュートリアルがそうであるように、 私たちもまずはCrystalの世界にあいさつすることから始めましょう。 ''hello.cr''というファイルを作り(Crystalのソースファイルの拡張子は''.cr'' です)、次のように書いて保存して下さい。 ;hello.cr:<syntaxhighlight lang=Crystal> puts 'Hello, World!' </syntaxhighlight> ;コマンドラインでの操作:<syntaxhighlight lang="console"> % cat hello.cr puts 'Hello, World!' % crystal hello.cr In hello.cr:1:6 1 | puts 'Hello, World!' ^ Error: unterminated char literal, use double quotes for strings % sed -i -e "s@'@Q@g" -e 's@Q@"@g' hello.cr % cat hello.cr puts "Hello, World!" % crystal hello.cr Hello, World! </syntaxhighlight> この1行のスクリプトは、メソッド<code>puts</code> に文字リテラル<code>"Hello, World!"</code>を渡し呼出しています。 このプログラムは、[[Ruby#Hello, World!]]と同じですが、Crystalでは文字列リテラルは <code>"…"</code> で囲うのでそれだけ変更しました。 [TODO: コマンドラインツール crystal の解説。 crystal ファイル名 は crystal run ファイル名 の短縮形で、インタープリタ的な実行…ではなく、内部ビルドツールでコンパイル・実行を行う] == Ruby との違い == Crystalは、Rubyに触発された構文を持つものの、Rubyとの互換性をゴールに定めては'''いません'''。 このため、細部を見ると仕様に差異があり、Rubyのソースコードをcrystalに掛けるても前節の 'Hello World' の様にコンパイルに失敗することがあります。 また、コンパイルできても実行結果に違いが出ることがあります。 ここでは、Ruby との違いについて実際のコードと双方の結果を比較することで、差異についての理解を深めていきます。 === 整数型の特性 === ;大きな整数:<syntaxhighlight lang=Crystal> p 2 ** 999 p (2 ** 999).class </syntaxhighlight> ;rubyの実行結果:<syntaxhighlight lang="console"> 5357543035931336604742125245300009052807024058527668037218751941851755255624680612465991894078479290637973364587765734125935726428461570217992288787349287401967283887412115492710537302531185570938977091076523237491790970633699383779582771973038531457285598238843271083830214915826312193418602834034688 Integer </syntaxhighlight> ;crystalの実行結果:<syntaxhighlight lang="console"> Unhandled exception: Arithmetic overflow (OverflowError) from /usr/local/share/crystal/share/crystal/src/int.cr:295:9 in '**' from pow.cr:1:1 in '__crystal_main' from /usr/local/share/crystal/share/crystal/src/crystal/main.cr:115:5 in 'main_user_code' from /usr/local/share/crystal/share/crystal/src/crystal/main.cr:101:7 in 'main' from /usr/local/share/crystal/share/crystal/src/crystal/main.cr:127:3 in 'main' from /usr/local/lib64/libc.so.6 in '__libc_start_main' from /usr/local/.cache/crystal/crystal-run-pow.tmp in '_start' from ??? </syntaxhighlight> : Ruby の整数は、桁あふれが起こると自動的に多倍長整数に型変換されるので、継ぎ目なしに大きな数を扱うアルゴルズムが使えます。 : Crystal の整数は、固定長です(大きさについては[[#リテラルと型|後述]])。なので大きな答えになる式を評価すると桁あふれが生じます。桁あふれが生じますが、C言語のように寡黙に処理を続けるのではなく、実行時に例外(OverflowError)が上がるので、例外を捕捉し然るべき処置を施すことが可能です。 ==== BigInt ==== <code>big</code> を <code>require</code> すると <code>BigInt</code> が使えるようになります。 ;BigInt:<syntaxhighlight lang=Crystal> require "big" p BigInt.new(2) ** 999 p (BigInt.new(2) ** 999).class </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang="console"> 5357543035931336604742125245300009052807024058527668037218751941851755255624680612465991894078479290637973364587765734125935726428461570217992288787349287401967283887412115492710537302531185570938977091076523237491790970633699383779582771973038531457285598238843271083830214915826312193418602834034688 BigInt </syntaxhighlight> : BigIntはプリミティブではなので、リテラル表現はありません。また、 ::<syntaxhighlight lang=Crystal> n : BigInt = 2 </syntaxhighlight> ::<syntaxhighlight lang=console> Error: type must be BigInt, not Int32 </syntaxhighlight> :: のように型アノテーションすることも出来ません。 === リテラルと型 === ;様々なリテラルと型:<syntaxhighlight lang=Crystal> [nil, false, true, 42, 2.73, 'Q', "string", [1,2,3], {a:1, b:2}].each{|x| p [x, x.class] } </syntaxhighlight> ;rubyの実行結果:<syntaxhighlight lang="console"> [nil, NilClass] [false, FalseClass] [true, TrueClass] [42, Integer] [2.73, Float] ["Q", String] ["string", String] [[1, 2, 3], Array] [{:a=>1, :b=>2}, Hash] </syntaxhighlight> ;crystalの実行結果:<syntaxhighlight lang="console"> [nil, Nil] [false, Bool] [true, Bool] [42, Int32] [2.73, Float64] ['Q', Char] ["string", String] [[1, 2, 3], Array(Int32)] [{a: 1, b: 2}, NamedTuple(a: Int32, b: Int32)] </syntaxhighlight> : Crystal の整数は Int32、浮動小数点数は Float64 です。 ;サイズを指定した数リテラル:<syntaxhighlight lang=Crystal> [1_i64, 2_u32, 3_u64, 4_i32, 5_i16, 6_u8, 7_i128, 8_u128, 3.14_f32, 1.44_f64].each{|x| p [x, x.class] } </syntaxhighlight> ;ruby:Rubyでは、サーフィックスの付いた数値リテラルは無効 ;crystalの実行結果:<syntaxhighlight lang="console"> [1, Int64] [2, UInt32] [3, UInt64] [4, Int32] [5, Int16] [6, UInt8] [7, Int128] [8, UInt128] [3.14, Float32] [1.44, Float64] </syntaxhighlight> : Crystal では、数値リテラルに _ で始まるサーフィックスを付け { i:符号付き整数, u:符号なし整数, f:浮動小数点数 } と { 8,16,32,64,128 } のビット幅の組合せです<ref>[https://crystal-lang.org/reference/1.5/syntax_and_semantics/literals/ Literals]</ref>。 === for式がない === Crystal には、Ruby にはある for式がありません。 ;Rubyのfor式の構文:<syntaxhighlight lang="ruby"> for 変数 in コレクション 文 end </syntaxhighlight> :コレクションは Range, Array, Hash など内部構造を持つオブジェクトです。 :for式は、最後に評価した値を返すので、for'''式'''です。 ;for式のeachメソッドによる置換え:<syntaxhighlight lang="ruby"> for x in [ 2, 3, 5, 7, 11 ] do p x end # ↓ [ 2, 3, 5, 7, 11 ].each do | x | p x end </syntaxhighlight> : の様にコレクションの each メソッドで置換え可能なので、Rubyからの移植でも小規模な書換えで済みます<ref>[https://github.com/crystal-lang/crystal/issues/830 "For" Loop support #830]</ref>(後述のマクロで実装できないかと思いましたが、いまのところ無理のようです)。 また loop 式もありませんが while true; … end で間に合います。Ruby では while 式の条件の次に do が置けますが、Crystal では置けません。 === eval()がない === Crystal には eval() はありません。 Crystalはコンパイル型言語ですので、無理もないことです。 もし、Crystal で eval() を実装しようとすると、Common Lisp の様にインタープリターを丸ごとランタイムに含む必要があります。 これはリーズナブルな選択ではありません。 Crystal では、eval() が必要なケースに(限定的ですが)マクロを使うことが出来る可能性があります。 === マクロ === Crystalには、Rubyにはないマクロがあります<ref>[https://crystal-lang.org/reference/1.5/syntax_and_semantics/macros/ Macros - Crystal]</ref>。Rubyは実行時にすべてのオブジェクトにアクセス出来て、メソッド生やし放題なのでマクロは必要ありませんが、Crystalはコンパイル時に型やメソッドを確定する必要があり、特にメソッドジェネレターとしてのマクロにニーズがあります。また、テンプレート言語的なマクロなので、環境変数による条件分岐や、コンテナを渡し繰返し処理する構文もあります(面白いことにマクロには for 文があり、反対にマクロの中では、eachメソッドは使えません)。マクロには <code><nowiki>{{</nowiki>attr.id}}</code> の様にASTへのアクセス手順が用意されており、半ば言語を拡張するようなアプローチを取ることも出来ます。 [TODO:ASTについての解説;コラム向き?] ;マクロを使ったattr_accessorのイミュレーション:<syntaxhighlight lang=crystal> class Point def initialize(@x : Int32, @y : Int32) end # macro定義 macro attr_accessor(*attrs) {% for attr in attrs %} def {{attr.id}}() @{{attr.id}} end def {{attr.id}}=(var) @{{attr.id}} = var end {% end %} end # macro呼出し attr_accessor :x, :y end pt = Point.new(20, 30) p [pt.x, pt.y] t = pt.x pt.x = pt.y pt.y = t p [pt.x, pt.y] </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang=text> [20, 30] [30, 20] </syntaxhighlight> : Ruby には、attr_accessor と言う「クラスのメンバーのアクセサーを自動生成するメソッド」がありますが、Crystalにはないようなので、マクロで実装しました。 :: attr_accessor :name からは ::<syntaxhighlight lang=ruby> def name() @name end def name=(val) @name = val end </syntaxhighlight>相当のコードが生成されます。 [TODO:マクロの機能と構文の説明 *の付いた引数、 <nowiki>{{</nowiki>引数}}、{% … %} 構文] ==== マクロ p! ==== メソッド p は、与えられた「式」の inspaect() の返す値を puts しますが、マクロ p! は、それに先んじて(評価前の)「式」を表示します<ref>[https://crystal-lang.org/api/1.5.0/Crystal/Macros.html#p%21%28%2Aexpressions%29%3ANop-instance-method def p!(*expressions) : Nop]</ref>。 ;p!の例:<syntaxhighlight lang=crystal> x, y = true, false p! x,y,x && y, x || y, x ^ y, !x, x != y, x == y ary = [ 1, 2, 3 ] p! ary p! ary.map(&. << 1) p! ary.map(&.to_f) </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang=text> x # => true y # => false x && y # => false x || y # => true x ^ y # => true !x # => false x != y # => true x == y # => false ary # => [1, 2, 3] ary.map(&.<<(1)) # => [2, 4, 6] ary.map(&.to_f) # => [1.0, 2.0, 3.0] </syntaxhighlight> ===== 入れ子のp! ===== マクロ p! は入れ子に出来ます。また、一旦ASTに変換してから再度ソースコードに変換するので、等価な別の構文に変換されることがあります。 ;入れ子のp!:<syntaxhighlight lang=crystal> p! ( 100.times{|i| p! i break i if i > 12 } ) </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang=text> (100.times do |i| p!(i) if i > 12 break i end end) # => i # => 0 i # => 1 i # => 2 i # => 3 i # => 4 i # => 5 i # => 6 i # => 7 i # => 8 i # => 9 i # => 10 i # => 11 i # => 12 i # => 13 13 </syntaxhighlight> === クラス === ==== シンプルなクラス ==== ;シンプルなクラス:<syntaxhighlight lang=crystal highlight="2" line> class Hello def initialize(@name : String = "World") end def greeting puts "Hello #{@name}!" end end hello = Hello.new() hello.greeting universe = Hello.new("Universe") universe.greeting </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang=text> Hello World! Hello Universe! </syntaxhighlight> :;初期化メソッド :: <syntaxhighlight lang=crystal line start=4> def initialize(@name : String = "World") end </syntaxhighlight> ::Rubyであれば :: <syntaxhighlight lang=ruby line start=4> def initialize(name = "World") @name = name end </syntaxhighlight> ::とするところですが、Crystalでは、型アノテーション <code> : String</code> を使い、引数の型を限定しました。 ::また、(@ 付きの)アトリビュート名を仮引数にすると、そのままアトリビュート(a.k.a. インスタンス変数)に仮引数が代入されます。 ::これは、C++のコンストラクターのメンバー初期化リストと同じアイディアですが、Crystalではインスタンス変数に @ が前置されるので、仮引数に @ が出現すればインスタンス変数の初期値だと自明で、聡明な選択です。 ==== 都市間の大圏距離 ==== [[Ruby#ユーザー定義クラス]]の都市間の大圏距離を求めるメソッドを追加した例を、Crystalに移植しました。 ;都市間の大圏距離:<syntaxhighlight lang=crystal highlight=”2,7,12” line> class GeoCoord getter :longitude, :latitude def initialize(@longitude : Float64, @latitude : Float64) end def to_s(io) ew, ns = "東経", "北緯" long, lat = @longitude, @latitude ew, long = "西経", -long if long < 0.0 ns, lat = "南緯", -lat if lat < 0.0 io << "(#{ew}: #{long}, #{ns}: #{lat})" end # https://github.com/crystal-lang/crystal/issues/259 def distance(other) i, r = Math::PI / 180, 6371.008 Math.acos(Math.sin(@latitude*i) * Math.sin(other.latitude * i) + Math.cos(@latitude*i) * Math.cos(other.latitude * i) * Math.cos(@longitude * i - other.longitude * i)) * r end end # メソッドの先頭を大文字に出来ないのでクラス名のメソッドは作ることが出来ない # def GeoCoord(lng : Float64, lat : Float64) # GeoCoord.new(lng, lat) # end Sites = { "東京駅": GeoCoord.new(139.7673068, 35.6809591), "シドニー・オペラハウス": GeoCoord.new(151.215278, -33.856778), "グリニッジ天文台": GeoCoord.new(-0.0014, 51.4778), } Sites.each { |name, gc| puts "#{name}: #{gc}" } keys, len = Sites.keys, Sites.size keys.each_with_index { |x, i| y = keys[(i + 1) % len] puts "#{x} - #{y}: #{Sites[x].distance(Sites[y])} [km]" } </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang=text> 東京駅: (東経: 139.7673068, 北緯: 35.6809591) シドニー・オペラハウス: (東経: 151.215278, 南緯: 33.856778) グリニッジ天文台: (西経: 0.0014, 北緯: 51.4778) 東京駅 - シドニー・オペラハウス: 7823.269299386704 [km] シドニー・オペラハウス - グリニッジ天文台: 16987.2708377249 [km] グリニッジ天文台 - 東京駅: 9560.546566490015 [km] </syntaxhighlight> :Crystal には、<syntaxhighlight lang=ruby inline> attr_accessor </syntaxhighlight> はありませんが、標準ライブラリーのマクロに <syntaxhighlight lang=crystal inline> getter </syntaxhighlight>があるので :: <syntaxhighlight lang=crystal line start=2> getter :longitude, :latitude </syntaxhighlight> ::としました。 ::将来、<syntaxhighlight lang=ruby inline> attr_accessor </syntaxhighlight> が実装される可能性はありますが、姉妹品の<syntaxhighlight lang=crystal inline> setter </syntaxhighlight> との併用が下位互換性を考えると確実です。 : to_s は、Ruby ならば :: <syntaxhighlight lang=ruby line start=7> def to_s() </syntaxhighlight> :: <syntaxhighlight lang=ruby line start=12> io << "(#{ew}: #{long}, #{ns}: #{lat})" </syntaxhighlight> :: ですが、Crystalでは追加の引数 <var>io</var> が必要で :: <syntaxhighlight lang=ruby line start=7> def to_s(io) </syntaxhighlight> :: <syntaxhighlight lang=ruby line start=12> io << "(#{ew}: #{long}, #{ns}: #{lat})" </syntaxhighlight> : Ruby にはクラス名と同じ名前のメソッドで .new を呼出す文化があるのですが、Crystalはメソッドの先頭を大文字に出来ないので、これは見送りました。 ==== 包含と継承 ==== [[JavaScript/クラス#包含と継承]]を、Rubyに移植した[[Ruby#包含と継承]]を、Crystalに移植しました。 ;包含と継承:<syntaxhighlight lang=crystal line> class Point def initialize(@x = 0, @y = 0) p("Point::initialize") end def move(dx = 0, dy = 0) @x, @y = @x + dx, @y + dy p("Point::move") self end end class Shape def initialize(x = 0, y = 0) @location = Point.new(x, y) p("Shape::initialize") end def move(x, y) @location.move(x, y) p("Shape::move") self end end class Rectangle < Shape def initialize(x = 0, y = 0, @width = 0, @height = 0) super(x, y) p("Rectangle::initialize") end end p("Create a Rectangle!") rct = Rectangle.new(12, 32, 100, 50) p! rct p! rct.is_a?( Rectangle ) p! rct.is_a?( Shape ) p! rct.is_a?( Point ) rct.move(11, 21) p! rct rct2 = Rectangle.new(1, 2, 10, 150) p! rct, rct2 </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang=text> "Create a Rectangle!" "Point::initialize" "Shape::initialize" "Rectangle::initialize" rct # => #<Rectangle:0x80096ee40 @location=#<Point:0x80096fe60 @x=12, @y=32>, @width=100, @height=50> rct.is_a?(Rectangle) # => true rct.is_a?(Shape) # => true rct.is_a?(Point) # => false "Point::move" "Shape::move" rct # => #<Rectangle:0x80096ee40 @location=#<Point:0x80096fe60 @x=23, @y=53>, @width=100, @height=50> "Point::initialize" "Shape::initialize" "Rectangle::initialize" rct # => #<Rectangle:0x80096ee40 @location=#<Point:0x80096fe60 @x=23, @y=53>, @width=100, @height=50> rct2 # => #<Rectangle:0x80096ee20 @location=#<Point:0x80096fe50 @x=1, @y=2>, @width=10, @height=150> </syntaxhighlight> == 脚註 == <references /> == 外部リンク == * [https://crystal-lang.org/ The Crystal Programming Language] {{---}} 公式サイト ** [https://crystal-lang.org/api/1.5.0/ Crystal 1.5.0 リファレンス] ** [https://play.crystal-lang.org/#/cr Compile & run code in Crystal] {{---}} playground [[Category:Crystal|*]] [[Category:プログラミング言語]] {{NDC|007.64}} hv38r73xh94m41xn2f3vp5kn2d4xxyv 205563 205559 2022-07-20T03:48:34Z Ef3 694 /* 包含と継承 */ 冗長な p メソッドを整理、inspect メソッドを実装。 wikitext text/x-wiki {{Pathnav|メインページ|工学|情報技術|プログラミング|frame=1}} {{Wikipedia|Crystal (プログラミング言語)}} 本書は、[[w:Crystal (プログラミング言語)|Crystal]]のチュートリアルです。 '''Crystal'''は、Ary Borenszweig、Juan Wajnerman、Brian Cardiffと300人以上の貢献者によって設計・開発された[汎用オブジェクト指向プログラミング言語です<ref>{{Cite web |url=https://github.com/crystal-lang/crystal/graphs/contributors |title=Contributors |accessdate=2022-07-18 |website=github.com }}</ref>。[[Crystal]] にヒントを得た構文を持ち、静的型チェックを備えた [[コンパイル型言語]]ですが、変数やメソッドの引数の型は一般には不要です。型は高度なグローバル[[型推論]]アルゴリズムによって解決される。<ref>{{Cite web |url=http://crystal-lang.org/2013/09/23/type-inference-part-1.html |title=Type inference part 1 |last=Brian J. |first=Cardiff |date=2013-09-09 |accessdate=2022-07-18 |website=crystal-lang.org }}</ref>Crystalは[[Apache License]]バージョン2.0のもと、FOSSとしてリリースされています。 __TOC__ == Hello, World! == 他の多くのチュートリアルがそうであるように、 私たちもまずはCrystalの世界にあいさつすることから始めましょう。 ''hello.cr''というファイルを作り(Crystalのソースファイルの拡張子は''.cr'' です)、次のように書いて保存して下さい。 ;hello.cr:<syntaxhighlight lang=Crystal> puts 'Hello, World!' </syntaxhighlight> ;コマンドラインでの操作:<syntaxhighlight lang="console"> % cat hello.cr puts 'Hello, World!' % crystal hello.cr In hello.cr:1:6 1 | puts 'Hello, World!' ^ Error: unterminated char literal, use double quotes for strings % sed -i -e "s@'@Q@g" -e 's@Q@"@g' hello.cr % cat hello.cr puts "Hello, World!" % crystal hello.cr Hello, World! </syntaxhighlight> この1行のスクリプトは、メソッド<code>puts</code> に文字リテラル<code>"Hello, World!"</code>を渡し呼出しています。 このプログラムは、[[Ruby#Hello, World!]]と同じですが、Crystalでは文字列リテラルは <code>"…"</code> で囲うのでそれだけ変更しました。 [TODO: コマンドラインツール crystal の解説。 crystal ファイル名 は crystal run ファイル名 の短縮形で、インタープリタ的な実行…ではなく、内部ビルドツールでコンパイル・実行を行う] == Ruby との違い == Crystalは、Rubyに触発された構文を持つものの、Rubyとの互換性をゴールに定めては'''いません'''。 このため、細部を見ると仕様に差異があり、Rubyのソースコードをcrystalに掛けるても前節の 'Hello World' の様にコンパイルに失敗することがあります。 また、コンパイルできても実行結果に違いが出ることがあります。 ここでは、Ruby との違いについて実際のコードと双方の結果を比較することで、差異についての理解を深めていきます。 === 整数型の特性 === ;大きな整数:<syntaxhighlight lang=Crystal> p 2 ** 999 p (2 ** 999).class </syntaxhighlight> ;rubyの実行結果:<syntaxhighlight lang="console"> 5357543035931336604742125245300009052807024058527668037218751941851755255624680612465991894078479290637973364587765734125935726428461570217992288787349287401967283887412115492710537302531185570938977091076523237491790970633699383779582771973038531457285598238843271083830214915826312193418602834034688 Integer </syntaxhighlight> ;crystalの実行結果:<syntaxhighlight lang="console"> Unhandled exception: Arithmetic overflow (OverflowError) from /usr/local/share/crystal/share/crystal/src/int.cr:295:9 in '**' from pow.cr:1:1 in '__crystal_main' from /usr/local/share/crystal/share/crystal/src/crystal/main.cr:115:5 in 'main_user_code' from /usr/local/share/crystal/share/crystal/src/crystal/main.cr:101:7 in 'main' from /usr/local/share/crystal/share/crystal/src/crystal/main.cr:127:3 in 'main' from /usr/local/lib64/libc.so.6 in '__libc_start_main' from /usr/local/.cache/crystal/crystal-run-pow.tmp in '_start' from ??? </syntaxhighlight> : Ruby の整数は、桁あふれが起こると自動的に多倍長整数に型変換されるので、継ぎ目なしに大きな数を扱うアルゴルズムが使えます。 : Crystal の整数は、固定長です(大きさについては[[#リテラルと型|後述]])。なので大きな答えになる式を評価すると桁あふれが生じます。桁あふれが生じますが、C言語のように寡黙に処理を続けるのではなく、実行時に例外(OverflowError)が上がるので、例外を捕捉し然るべき処置を施すことが可能です。 ==== BigInt ==== <code>big</code> を <code>require</code> すると <code>BigInt</code> が使えるようになります。 ;BigInt:<syntaxhighlight lang=Crystal> require "big" p BigInt.new(2) ** 999 p (BigInt.new(2) ** 999).class </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang="console"> 5357543035931336604742125245300009052807024058527668037218751941851755255624680612465991894078479290637973364587765734125935726428461570217992288787349287401967283887412115492710537302531185570938977091076523237491790970633699383779582771973038531457285598238843271083830214915826312193418602834034688 BigInt </syntaxhighlight> : BigIntはプリミティブではなので、リテラル表現はありません。また、 ::<syntaxhighlight lang=Crystal> n : BigInt = 2 </syntaxhighlight> ::<syntaxhighlight lang=console> Error: type must be BigInt, not Int32 </syntaxhighlight> :: のように型アノテーションすることも出来ません。 === リテラルと型 === ;様々なリテラルと型:<syntaxhighlight lang=Crystal> [nil, false, true, 42, 2.73, 'Q', "string", [1,2,3], {a:1, b:2}].each{|x| p [x, x.class] } </syntaxhighlight> ;rubyの実行結果:<syntaxhighlight lang="console"> [nil, NilClass] [false, FalseClass] [true, TrueClass] [42, Integer] [2.73, Float] ["Q", String] ["string", String] [[1, 2, 3], Array] [{:a=>1, :b=>2}, Hash] </syntaxhighlight> ;crystalの実行結果:<syntaxhighlight lang="console"> [nil, Nil] [false, Bool] [true, Bool] [42, Int32] [2.73, Float64] ['Q', Char] ["string", String] [[1, 2, 3], Array(Int32)] [{a: 1, b: 2}, NamedTuple(a: Int32, b: Int32)] </syntaxhighlight> : Crystal の整数は Int32、浮動小数点数は Float64 です。 ;サイズを指定した数リテラル:<syntaxhighlight lang=Crystal> [1_i64, 2_u32, 3_u64, 4_i32, 5_i16, 6_u8, 7_i128, 8_u128, 3.14_f32, 1.44_f64].each{|x| p [x, x.class] } </syntaxhighlight> ;ruby:Rubyでは、サーフィックスの付いた数値リテラルは無効 ;crystalの実行結果:<syntaxhighlight lang="console"> [1, Int64] [2, UInt32] [3, UInt64] [4, Int32] [5, Int16] [6, UInt8] [7, Int128] [8, UInt128] [3.14, Float32] [1.44, Float64] </syntaxhighlight> : Crystal では、数値リテラルに _ で始まるサーフィックスを付け { i:符号付き整数, u:符号なし整数, f:浮動小数点数 } と { 8,16,32,64,128 } のビット幅の組合せです<ref>[https://crystal-lang.org/reference/1.5/syntax_and_semantics/literals/ Literals]</ref>。 === for式がない === Crystal には、Ruby にはある for式がありません。 ;Rubyのfor式の構文:<syntaxhighlight lang="ruby"> for 変数 in コレクション 文 end </syntaxhighlight> :コレクションは Range, Array, Hash など内部構造を持つオブジェクトです。 :for式は、最後に評価した値を返すので、for'''式'''です。 ;for式のeachメソッドによる置換え:<syntaxhighlight lang="ruby"> for x in [ 2, 3, 5, 7, 11 ] do p x end # ↓ [ 2, 3, 5, 7, 11 ].each do | x | p x end </syntaxhighlight> : の様にコレクションの each メソッドで置換え可能なので、Rubyからの移植でも小規模な書換えで済みます<ref>[https://github.com/crystal-lang/crystal/issues/830 "For" Loop support #830]</ref>(後述のマクロで実装できないかと思いましたが、いまのところ無理のようです)。 また loop 式もありませんが while true; … end で間に合います。Ruby では while 式の条件の次に do が置けますが、Crystal では置けません。 === eval()がない === Crystal には eval() はありません。 Crystalはコンパイル型言語ですので、無理もないことです。 もし、Crystal で eval() を実装しようとすると、Common Lisp の様にインタープリターを丸ごとランタイムに含む必要があります。 これはリーズナブルな選択ではありません。 Crystal では、eval() が必要なケースに(限定的ですが)マクロを使うことが出来る可能性があります。 === マクロ === Crystalには、Rubyにはないマクロがあります<ref>[https://crystal-lang.org/reference/1.5/syntax_and_semantics/macros/ Macros - Crystal]</ref>。Rubyは実行時にすべてのオブジェクトにアクセス出来て、メソッド生やし放題なのでマクロは必要ありませんが、Crystalはコンパイル時に型やメソッドを確定する必要があり、特にメソッドジェネレターとしてのマクロにニーズがあります。また、テンプレート言語的なマクロなので、環境変数による条件分岐や、コンテナを渡し繰返し処理する構文もあります(面白いことにマクロには for 文があり、反対にマクロの中では、eachメソッドは使えません)。マクロには <code><nowiki>{{</nowiki>attr.id}}</code> の様にASTへのアクセス手順が用意されており、半ば言語を拡張するようなアプローチを取ることも出来ます。 [TODO:ASTについての解説;コラム向き?] ;マクロを使ったattr_accessorのイミュレーション:<syntaxhighlight lang=crystal> class Point def initialize(@x : Int32, @y : Int32) end # macro定義 macro attr_accessor(*attrs) {% for attr in attrs %} def {{attr.id}}() @{{attr.id}} end def {{attr.id}}=(var) @{{attr.id}} = var end {% end %} end # macro呼出し attr_accessor :x, :y end pt = Point.new(20, 30) p [pt.x, pt.y] t = pt.x pt.x = pt.y pt.y = t p [pt.x, pt.y] </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang=text> [20, 30] [30, 20] </syntaxhighlight> : Ruby には、attr_accessor と言う「クラスのメンバーのアクセサーを自動生成するメソッド」がありますが、Crystalにはないようなので、マクロで実装しました。 :: attr_accessor :name からは ::<syntaxhighlight lang=ruby> def name() @name end def name=(val) @name = val end </syntaxhighlight>相当のコードが生成されます。 [TODO:マクロの機能と構文の説明 *の付いた引数、 <nowiki>{{</nowiki>引数}}、{% … %} 構文] ==== マクロ p! ==== メソッド p は、与えられた「式」の inspaect() の返す値を puts しますが、マクロ p! は、それに先んじて(評価前の)「式」を表示します<ref>[https://crystal-lang.org/api/1.5.0/Crystal/Macros.html#p%21%28%2Aexpressions%29%3ANop-instance-method def p!(*expressions) : Nop]</ref>。 ;p!の例:<syntaxhighlight lang=crystal> x, y = true, false p! x,y,x && y, x || y, x ^ y, !x, x != y, x == y ary = [ 1, 2, 3 ] p! ary p! ary.map(&. << 1) p! ary.map(&.to_f) </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang=text> x # => true y # => false x && y # => false x || y # => true x ^ y # => true !x # => false x != y # => true x == y # => false ary # => [1, 2, 3] ary.map(&.<<(1)) # => [2, 4, 6] ary.map(&.to_f) # => [1.0, 2.0, 3.0] </syntaxhighlight> ===== 入れ子のp! ===== マクロ p! は入れ子に出来ます。また、一旦ASTに変換してから再度ソースコードに変換するので、等価な別の構文に変換されることがあります。 ;入れ子のp!:<syntaxhighlight lang=crystal> p! ( 100.times{|i| p! i break i if i > 12 } ) </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang=text> (100.times do |i| p!(i) if i > 12 break i end end) # => i # => 0 i # => 1 i # => 2 i # => 3 i # => 4 i # => 5 i # => 6 i # => 7 i # => 8 i # => 9 i # => 10 i # => 11 i # => 12 i # => 13 13 </syntaxhighlight> === クラス === ==== シンプルなクラス ==== ;シンプルなクラス:<syntaxhighlight lang=crystal highlight="2" line> class Hello def initialize(@name : String = "World") end def greeting puts "Hello #{@name}!" end end hello = Hello.new() hello.greeting universe = Hello.new("Universe") universe.greeting </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang=text> Hello World! Hello Universe! </syntaxhighlight> :;初期化メソッド :: <syntaxhighlight lang=crystal line start=4> def initialize(@name : String = "World") end </syntaxhighlight> ::Rubyであれば :: <syntaxhighlight lang=ruby line start=4> def initialize(name = "World") @name = name end </syntaxhighlight> ::とするところですが、Crystalでは、型アノテーション <code> : String</code> を使い、引数の型を限定しました。 ::また、(@ 付きの)アトリビュート名を仮引数にすると、そのままアトリビュート(a.k.a. インスタンス変数)に仮引数が代入されます。 ::これは、C++のコンストラクターのメンバー初期化リストと同じアイディアですが、Crystalではインスタンス変数に @ が前置されるので、仮引数に @ が出現すればインスタンス変数の初期値だと自明で、聡明な選択です。 ==== 都市間の大圏距離 ==== [[Ruby#ユーザー定義クラス]]の都市間の大圏距離を求めるメソッドを追加した例を、Crystalに移植しました。 ;都市間の大圏距離:<syntaxhighlight lang=crystal highlight=”2,7,12” line> class GeoCoord getter :longitude, :latitude def initialize(@longitude : Float64, @latitude : Float64) end def to_s(io) ew, ns = "東経", "北緯" long, lat = @longitude, @latitude ew, long = "西経", -long if long < 0.0 ns, lat = "南緯", -lat if lat < 0.0 io << "(#{ew}: #{long}, #{ns}: #{lat})" end # https://github.com/crystal-lang/crystal/issues/259 def distance(other) i, r = Math::PI / 180, 6371.008 Math.acos(Math.sin(@latitude*i) * Math.sin(other.latitude * i) + Math.cos(@latitude*i) * Math.cos(other.latitude * i) * Math.cos(@longitude * i - other.longitude * i)) * r end end # メソッドの先頭を大文字に出来ないのでクラス名のメソッドは作ることが出来ない # def GeoCoord(lng : Float64, lat : Float64) # GeoCoord.new(lng, lat) # end Sites = { "東京駅": GeoCoord.new(139.7673068, 35.6809591), "シドニー・オペラハウス": GeoCoord.new(151.215278, -33.856778), "グリニッジ天文台": GeoCoord.new(-0.0014, 51.4778), } Sites.each { |name, gc| puts "#{name}: #{gc}" } keys, len = Sites.keys, Sites.size keys.each_with_index { |x, i| y = keys[(i + 1) % len] puts "#{x} - #{y}: #{Sites[x].distance(Sites[y])} [km]" } </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang=text> 東京駅: (東経: 139.7673068, 北緯: 35.6809591) シドニー・オペラハウス: (東経: 151.215278, 南緯: 33.856778) グリニッジ天文台: (西経: 0.0014, 北緯: 51.4778) 東京駅 - シドニー・オペラハウス: 7823.269299386704 [km] シドニー・オペラハウス - グリニッジ天文台: 16987.2708377249 [km] グリニッジ天文台 - 東京駅: 9560.546566490015 [km] </syntaxhighlight> :Crystal には、<syntaxhighlight lang=ruby inline> attr_accessor </syntaxhighlight> はありませんが、標準ライブラリーのマクロに <syntaxhighlight lang=crystal inline> getter </syntaxhighlight>があるので :: <syntaxhighlight lang=crystal line start=2> getter :longitude, :latitude </syntaxhighlight> ::としました。 ::将来、<syntaxhighlight lang=ruby inline> attr_accessor </syntaxhighlight> が実装される可能性はありますが、姉妹品の<syntaxhighlight lang=crystal inline> setter </syntaxhighlight> との併用が下位互換性を考えると確実です。 : to_s は、Ruby ならば :: <syntaxhighlight lang=ruby line start=7> def to_s() </syntaxhighlight> :: <syntaxhighlight lang=ruby line start=12> io << "(#{ew}: #{long}, #{ns}: #{lat})" </syntaxhighlight> :: ですが、Crystalでは追加の引数 <var>io</var> が必要で :: <syntaxhighlight lang=ruby line start=7> def to_s(io) </syntaxhighlight> :: <syntaxhighlight lang=ruby line start=12> io << "(#{ew}: #{long}, #{ns}: #{lat})" </syntaxhighlight> : Ruby にはクラス名と同じ名前のメソッドで .new を呼出す文化があるのですが、Crystalはメソッドの先頭を大文字に出来ないので、これは見送りました。 ==== 包含と継承 ==== [[JavaScript/クラス#包含と継承]]を、Rubyに移植した[[Ruby#包含と継承]]を、Crystalに移植しました。 ;包含と継承:<syntaxhighlight lang=crystal line> class Point def initialize(@x = 0, @y = 0) end def inspect(io) io << "x:#{@x}, y:#{@y}" end def move(dx = 0, dy = 0) @x, @y = @x + dx, @y + dy self end end class Shape def initialize(x = 0, y = 0) @location = Point.new(x, y) end def inspect(io) @location.inspect(io) end def move(x, y) @location.move(x, y) self end end class Rectangle < Shape def initialize(x = 0, y = 0, @width = 0, @height = 0) super(x, y) end def inspect(io) super(io) io << ", width:#{@width}, height:#{@height}" end end rct = Rectangle.new(12, 32, 100, 50) p! rct, rct.is_a?( Rectangle ), rct.is_a?( Shape ), rct.is_a?( Point ), rct.move(11, 21) </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang=text> rct # => x:12, y:32, width:100, height:50 rct.is_a?(Rectangle) # => true rct.is_a?(Shape) # => true rct.is_a?(Point) # => false rct.move(11, 21) # => x:23, y:53, width:100, height:50 </syntaxhighlight> == 脚註 == <references /> == 外部リンク == * [https://crystal-lang.org/ The Crystal Programming Language] {{---}} 公式サイト ** [https://crystal-lang.org/api/1.5.0/ Crystal 1.5.0 リファレンス] ** [https://play.crystal-lang.org/#/cr Compile & run code in Crystal] {{---}} playground [[Category:Crystal|*]] [[Category:プログラミング言語]] {{NDC|007.64}} cvydb24pcrpqfltz37ncaetg46up9a1 205565 205563 2022-07-20T05:15:52Z Ef3 694 /* https://ja.wikibooks.org/w/index.php?title=Ruby&oldid=205564#%E5%88%B6%E5%BE%A1%E6%A7%8B%E9%80%A0 から移入 */ wikitext text/x-wiki {{Pathnav|メインページ|工学|情報技術|プログラミング|frame=1}} {{Wikipedia|Crystal (プログラミング言語)}} 本書は、[[w:Crystal (プログラミング言語)|Crystal]]のチュートリアルです。 '''Crystal'''は、Ary Borenszweig、Juan Wajnerman、Brian Cardiffと300人以上の貢献者によって設計・開発された[汎用オブジェクト指向プログラミング言語です<ref>{{Cite web |url=https://github.com/crystal-lang/crystal/graphs/contributors |title=Contributors |accessdate=2022-07-18 |website=github.com }}</ref>。[[Crystal]] にヒントを得た構文を持ち、静的型チェックを備えた [[コンパイル型言語]]ですが、変数やメソッドの引数の型は一般には不要です。型は高度なグローバル[[型推論]]アルゴリズムによって解決される。<ref>{{Cite web |url=http://crystal-lang.org/2013/09/23/type-inference-part-1.html |title=Type inference part 1 |last=Brian J. |first=Cardiff |date=2013-09-09 |accessdate=2022-07-18 |website=crystal-lang.org }}</ref>Crystalは[[Apache License]]バージョン2.0のもと、FOSSとしてリリースされています。 __TOC__ == Hello, World! == 他の多くのチュートリアルがそうであるように、 私たちもまずはCrystalの世界にあいさつすることから始めましょう。 ''hello.cr''というファイルを作り(Crystalのソースファイルの拡張子は''.cr'' です)、次のように書いて保存して下さい。 ;hello.cr:<syntaxhighlight lang=Crystal> puts 'Hello, World!' </syntaxhighlight> ;コマンドラインでの操作:<syntaxhighlight lang="console"> % cat hello.cr puts 'Hello, World!' % crystal hello.cr In hello.cr:1:6 1 | puts 'Hello, World!' ^ Error: unterminated char literal, use double quotes for strings % sed -i -e "s@'@Q@g" -e 's@Q@"@g' hello.cr % cat hello.cr puts "Hello, World!" % crystal hello.cr Hello, World! </syntaxhighlight> この1行のスクリプトは、メソッド<code>puts</code> に文字リテラル<code>"Hello, World!"</code>を渡し呼出しています。 このプログラムは、[[Ruby#Hello, World!]]と同じですが、Crystalでは文字列リテラルは <code>"…"</code> で囲うのでそれだけ変更しました。 [TODO: コマンドラインツール crystal の解説。 crystal ファイル名 は crystal run ファイル名 の短縮形で、インタープリタ的な実行…ではなく、内部ビルドツールでコンパイル・実行を行う] == Ruby との違い == Crystalは、Rubyに触発された構文を持つものの、Rubyとの互換性をゴールに定めては'''いません'''。 このため、細部を見ると仕様に差異があり、Rubyのソースコードをcrystalに掛けるても前節の 'Hello World' の様にコンパイルに失敗することがあります。 また、コンパイルできても実行結果に違いが出ることがあります。 ここでは、Ruby との違いについて実際のコードと双方の結果を比較することで、差異についての理解を深めていきます。 === 整数型の特性 === ;大きな整数:<syntaxhighlight lang=Crystal> p 2 ** 999 p (2 ** 999).class </syntaxhighlight> ;rubyの実行結果:<syntaxhighlight lang="console"> 5357543035931336604742125245300009052807024058527668037218751941851755255624680612465991894078479290637973364587765734125935726428461570217992288787349287401967283887412115492710537302531185570938977091076523237491790970633699383779582771973038531457285598238843271083830214915826312193418602834034688 Integer </syntaxhighlight> ;crystalの実行結果:<syntaxhighlight lang="console"> Unhandled exception: Arithmetic overflow (OverflowError) from /usr/local/share/crystal/share/crystal/src/int.cr:295:9 in '**' from pow.cr:1:1 in '__crystal_main' from /usr/local/share/crystal/share/crystal/src/crystal/main.cr:115:5 in 'main_user_code' from /usr/local/share/crystal/share/crystal/src/crystal/main.cr:101:7 in 'main' from /usr/local/share/crystal/share/crystal/src/crystal/main.cr:127:3 in 'main' from /usr/local/lib64/libc.so.6 in '__libc_start_main' from /usr/local/.cache/crystal/crystal-run-pow.tmp in '_start' from ??? </syntaxhighlight> : Ruby の整数は、桁あふれが起こると自動的に多倍長整数に型変換されるので、継ぎ目なしに大きな数を扱うアルゴルズムが使えます。 : Crystal の整数は、固定長です(大きさについては[[#リテラルと型|後述]])。なので大きな答えになる式を評価すると桁あふれが生じます。桁あふれが生じますが、C言語のように寡黙に処理を続けるのではなく、実行時に例外(OverflowError)が上がるので、例外を捕捉し然るべき処置を施すことが可能です。 ==== BigInt ==== <code>big</code> を <code>require</code> すると <code>BigInt</code> が使えるようになります。 ;BigInt:<syntaxhighlight lang=Crystal> require "big" p BigInt.new(2) ** 999 p (BigInt.new(2) ** 999).class </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang="console"> 5357543035931336604742125245300009052807024058527668037218751941851755255624680612465991894078479290637973364587765734125935726428461570217992288787349287401967283887412115492710537302531185570938977091076523237491790970633699383779582771973038531457285598238843271083830214915826312193418602834034688 BigInt </syntaxhighlight> : BigIntはプリミティブではなので、リテラル表現はありません。また、 ::<syntaxhighlight lang=Crystal> n : BigInt = 2 </syntaxhighlight> ::<syntaxhighlight lang=console> Error: type must be BigInt, not Int32 </syntaxhighlight> :: のように型アノテーションすることも出来ません。 === リテラルと型 === ;様々なリテラルと型:<syntaxhighlight lang=Crystal> [nil, false, true, 42, 2.73, 'Q', "string", [1,2,3], {a:1, b:2}].each{|x| p [x, x.class] } </syntaxhighlight> ;rubyの実行結果:<syntaxhighlight lang="console"> [nil, NilClass] [false, FalseClass] [true, TrueClass] [42, Integer] [2.73, Float] ["Q", String] ["string", String] [[1, 2, 3], Array] [{:a=>1, :b=>2}, Hash] </syntaxhighlight> ;crystalの実行結果:<syntaxhighlight lang="console"> [nil, Nil] [false, Bool] [true, Bool] [42, Int32] [2.73, Float64] ['Q', Char] ["string", String] [[1, 2, 3], Array(Int32)] [{a: 1, b: 2}, NamedTuple(a: Int32, b: Int32)] </syntaxhighlight> : Crystal の整数は Int32、浮動小数点数は Float64 です。 ;サイズを指定した数リテラル:<syntaxhighlight lang=Crystal> [1_i64, 2_u32, 3_u64, 4_i32, 5_i16, 6_u8, 7_i128, 8_u128, 3.14_f32, 1.44_f64].each{|x| p [x, x.class] } </syntaxhighlight> ;ruby:Rubyでは、サーフィックスの付いた数値リテラルは無効 ;crystalの実行結果:<syntaxhighlight lang="console"> [1, Int64] [2, UInt32] [3, UInt64] [4, Int32] [5, Int16] [6, UInt8] [7, Int128] [8, UInt128] [3.14, Float32] [1.44, Float64] </syntaxhighlight> : Crystal では、数値リテラルに _ で始まるサーフィックスを付け { i:符号付き整数, u:符号なし整数, f:浮動小数点数 } と { 8,16,32,64,128 } のビット幅の組合せです<ref>[https://crystal-lang.org/reference/1.5/syntax_and_semantics/literals/ Literals]</ref>。 === for式がない === Crystal には、Ruby にはある for式がありません。 ;Rubyのfor式の構文:<syntaxhighlight lang="ruby"> for 変数 in コレクション 文 end </syntaxhighlight> :コレクションは Range, Array, Hash など内部構造を持つオブジェクトです。 :for式は、最後に評価した値を返すので、for'''式'''です。 ;for式のeachメソッドによる置換え:<syntaxhighlight lang="ruby"> for x in [ 2, 3, 5, 7, 11 ] do p x end # ↓ [ 2, 3, 5, 7, 11 ].each do | x | p x end </syntaxhighlight> : の様にコレクションの each メソッドで置換え可能なので、Rubyからの移植でも小規模な書換えで済みます<ref>[https://github.com/crystal-lang/crystal/issues/830 "For" Loop support #830]</ref>(後述のマクロで実装できないかと思いましたが、いまのところ無理のようです)。 また loop 式もありませんが while true; … end で間に合います。Ruby では while 式の条件の次に do が置けますが、Crystal では置けません。 === eval()がない === Crystal には eval() はありません。 Crystalはコンパイル型言語ですので、無理もないことです。 もし、Crystal で eval() を実装しようとすると、Common Lisp の様にインタープリターを丸ごとランタイムに含む必要があります。 これはリーズナブルな選択ではありません。 Crystal では、eval() が必要なケースに(限定的ですが)マクロを使うことが出来る可能性があります。 === マクロ === Crystalには、Rubyにはないマクロがあります<ref>[https://crystal-lang.org/reference/1.5/syntax_and_semantics/macros/ Macros - Crystal]</ref>。Rubyは実行時にすべてのオブジェクトにアクセス出来て、メソッド生やし放題なのでマクロは必要ありませんが、Crystalはコンパイル時に型やメソッドを確定する必要があり、特にメソッドジェネレターとしてのマクロにニーズがあります。また、テンプレート言語的なマクロなので、環境変数による条件分岐や、コンテナを渡し繰返し処理する構文もあります(面白いことにマクロには for 文があり、反対にマクロの中では、eachメソッドは使えません)。マクロには <code><nowiki>{{</nowiki>attr.id}}</code> の様にASTへのアクセス手順が用意されており、半ば言語を拡張するようなアプローチを取ることも出来ます。 [TODO:ASTについての解説;コラム向き?] ;マクロを使ったattr_accessorのイミュレーション:<syntaxhighlight lang=crystal> class Point def initialize(@x : Int32, @y : Int32) end # macro定義 macro attr_accessor(*attrs) {% for attr in attrs %} def {{attr.id}}() @{{attr.id}} end def {{attr.id}}=(var) @{{attr.id}} = var end {% end %} end # macro呼出し attr_accessor :x, :y end pt = Point.new(20, 30) p [pt.x, pt.y] t = pt.x pt.x = pt.y pt.y = t p [pt.x, pt.y] </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang=text> [20, 30] [30, 20] </syntaxhighlight> : Ruby には、attr_accessor と言う「クラスのメンバーのアクセサーを自動生成するメソッド」がありますが、Crystalにはないようなので、マクロで実装しました。 :: attr_accessor :name からは ::<syntaxhighlight lang=ruby> def name() @name end def name=(val) @name = val end </syntaxhighlight>相当のコードが生成されます。 [TODO:マクロの機能と構文の説明 *の付いた引数、 <nowiki>{{</nowiki>引数}}、{% … %} 構文] ==== マクロ p! ==== メソッド p は、与えられた「式」の inspaect() の返す値を puts しますが、マクロ p! は、それに先んじて(評価前の)「式」を表示します<ref>[https://crystal-lang.org/api/1.5.0/Crystal/Macros.html#p%21%28%2Aexpressions%29%3ANop-instance-method def p!(*expressions) : Nop]</ref>。 ;p!の例:<syntaxhighlight lang=crystal> x, y = true, false p! x,y,x && y, x || y, x ^ y, !x, x != y, x == y ary = [ 1, 2, 3 ] p! ary p! ary.map(&. << 1) p! ary.map(&.to_f) </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang=text> x # => true y # => false x && y # => false x || y # => true x ^ y # => true !x # => false x != y # => true x == y # => false ary # => [1, 2, 3] ary.map(&.<<(1)) # => [2, 4, 6] ary.map(&.to_f) # => [1.0, 2.0, 3.0] </syntaxhighlight> ===== 入れ子のp! ===== マクロ p! は入れ子に出来ます。また、一旦ASTに変換してから再度ソースコードに変換するので、等価な別の構文に変換されることがあります。 ;入れ子のp!:<syntaxhighlight lang=crystal> p! ( 100.times{|i| p! i break i if i > 12 } ) </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang=text> (100.times do |i| p!(i) if i > 12 break i end end) # => i # => 0 i # => 1 i # => 2 i # => 3 i # => 4 i # => 5 i # => 6 i # => 7 i # => 8 i # => 9 i # => 10 i # => 11 i # => 12 i # => 13 13 </syntaxhighlight> === クラス === ==== シンプルなクラス ==== ;シンプルなクラス:<syntaxhighlight lang=crystal highlight="2" line> class Hello def initialize(@name : String = "World") end def greeting puts "Hello #{@name}!" end end hello = Hello.new() hello.greeting universe = Hello.new("Universe") universe.greeting </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang=text> Hello World! Hello Universe! </syntaxhighlight> :;初期化メソッド :: <syntaxhighlight lang=crystal line start=4> def initialize(@name : String = "World") end </syntaxhighlight> ::Rubyであれば :: <syntaxhighlight lang=ruby line start=4> def initialize(name = "World") @name = name end </syntaxhighlight> ::とするところですが、Crystalでは、型アノテーション <code> : String</code> を使い、引数の型を限定しました。 ::また、(@ 付きの)アトリビュート名を仮引数にすると、そのままアトリビュート(a.k.a. インスタンス変数)に仮引数が代入されます。 ::これは、C++のコンストラクターのメンバー初期化リストと同じアイディアですが、Crystalではインスタンス変数に @ が前置されるので、仮引数に @ が出現すればインスタンス変数の初期値だと自明で、聡明な選択です。 ==== 都市間の大圏距離 ==== [[Ruby#ユーザー定義クラス]]の都市間の大圏距離を求めるメソッドを追加した例を、Crystalに移植しました。 ;都市間の大圏距離:<syntaxhighlight lang=crystal highlight=”2,7,12” line> class GeoCoord getter :longitude, :latitude def initialize(@longitude : Float64, @latitude : Float64) end def to_s(io) ew, ns = "東経", "北緯" long, lat = @longitude, @latitude ew, long = "西経", -long if long < 0.0 ns, lat = "南緯", -lat if lat < 0.0 io << "(#{ew}: #{long}, #{ns}: #{lat})" end # https://github.com/crystal-lang/crystal/issues/259 def distance(other) i, r = Math::PI / 180, 6371.008 Math.acos(Math.sin(@latitude*i) * Math.sin(other.latitude * i) + Math.cos(@latitude*i) * Math.cos(other.latitude * i) * Math.cos(@longitude * i - other.longitude * i)) * r end end # メソッドの先頭を大文字に出来ないのでクラス名のメソッドは作ることが出来ない # def GeoCoord(lng : Float64, lat : Float64) # GeoCoord.new(lng, lat) # end Sites = { "東京駅": GeoCoord.new(139.7673068, 35.6809591), "シドニー・オペラハウス": GeoCoord.new(151.215278, -33.856778), "グリニッジ天文台": GeoCoord.new(-0.0014, 51.4778), } Sites.each { |name, gc| puts "#{name}: #{gc}" } keys, len = Sites.keys, Sites.size keys.each_with_index { |x, i| y = keys[(i + 1) % len] puts "#{x} - #{y}: #{Sites[x].distance(Sites[y])} [km]" } </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang=text> 東京駅: (東経: 139.7673068, 北緯: 35.6809591) シドニー・オペラハウス: (東経: 151.215278, 南緯: 33.856778) グリニッジ天文台: (西経: 0.0014, 北緯: 51.4778) 東京駅 - シドニー・オペラハウス: 7823.269299386704 [km] シドニー・オペラハウス - グリニッジ天文台: 16987.2708377249 [km] グリニッジ天文台 - 東京駅: 9560.546566490015 [km] </syntaxhighlight> :Crystal には、<syntaxhighlight lang=ruby inline> attr_accessor </syntaxhighlight> はありませんが、標準ライブラリーのマクロに <syntaxhighlight lang=crystal inline> getter </syntaxhighlight>があるので :: <syntaxhighlight lang=crystal line start=2> getter :longitude, :latitude </syntaxhighlight> ::としました。 ::将来、<syntaxhighlight lang=ruby inline> attr_accessor </syntaxhighlight> が実装される可能性はありますが、姉妹品の<syntaxhighlight lang=crystal inline> setter </syntaxhighlight> との併用が下位互換性を考えると確実です。 : to_s は、Ruby ならば :: <syntaxhighlight lang=ruby line start=7> def to_s() </syntaxhighlight> :: <syntaxhighlight lang=ruby line start=12> io << "(#{ew}: #{long}, #{ns}: #{lat})" </syntaxhighlight> :: ですが、Crystalでは追加の引数 <var>io</var> が必要で :: <syntaxhighlight lang=ruby line start=7> def to_s(io) </syntaxhighlight> :: <syntaxhighlight lang=ruby line start=12> io << "(#{ew}: #{long}, #{ns}: #{lat})" </syntaxhighlight> : Ruby にはクラス名と同じ名前のメソッドで .new を呼出す文化があるのですが、Crystalはメソッドの先頭を大文字に出来ないので、これは見送りました。 ==== 包含と継承 ==== [[JavaScript/クラス#包含と継承]]を、Rubyに移植した[[Ruby#包含と継承]]を、Crystalに移植しました。 ;包含と継承:<syntaxhighlight lang=crystal line> class Point def initialize(@x = 0, @y = 0) end def inspect(io) io << "x:#{@x}, y:#{@y}" end def move(dx = 0, dy = 0) @x, @y = @x + dx, @y + dy self end end class Shape def initialize(x = 0, y = 0) @location = Point.new(x, y) end def inspect(io) @location.inspect(io) end def move(x, y) @location.move(x, y) self end end class Rectangle < Shape def initialize(x = 0, y = 0, @width = 0, @height = 0) super(x, y) end def inspect(io) super(io) io << ", width:#{@width}, height:#{@height}" end end rct = Rectangle.new(12, 32, 100, 50) p! rct, rct.is_a?( Rectangle ), rct.is_a?( Shape ), rct.is_a?( Point ), rct.move(11, 21) </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang=text> rct # => x:12, y:32, width:100, height:50 rct.is_a?(Rectangle) # => true rct.is_a?(Shape) # => true rct.is_a?(Point) # => false rct.move(11, 21) # => x:23, y:53, width:100, height:50 </syntaxhighlight> = https://ja.wikibooks.org/w/index.php?title=Ruby&oldid=205564#%E5%88%B6%E5%BE%A1%E6%A7%8B%E9%80%A0 から移入 = == 制御構造 == '''[[w:制御構造|制御構造]]'''(せいぎょこうぞう、''control flow'')とは、「順次」「分岐」「反復」という基本的な処理のことを言います。 {{コラム|Rubyの真理値|2= 制御構造は「条件式」が真であるか偽であるかによって分岐や反復の振る舞いが変わります。 では「条件式」が真・偽はどの様に決まるのでしょう? Rubyでは <code>false</code> あるいは <code>nil</code> であると偽、それ以外が真です。 なので <code>0</code> も <code>[]</code>(空のArray) も <code>{}</code>(空のHash)も真です。 }} === 条件分岐 === Rubyの条件分岐には、[[#if|if]], [[#until|until]] と [[#case|case]]の3つの構文があります。 ==== if ==== '''[[w:if|if]]'''は条件式によって実行・否を切り替える構造構文で、評価した式の値を返すので条件演算子でもあります。 ;[https://paiza.io/projects/biMpjErLV3TRo004lNGTJg?language=ruby ifの例]:<syntaxhighlight lang="ruby" line> a = 0.0 / 0.0 if a < 0 puts "minus" elsif a > 0 puts "plus" elsif a == 0 puts "zero" else puts a end puts( if a < 0 "minus" elsif a > 0 "plus" elsif a == 0 "zero" else a end ) </syntaxhighlight> ;表示結果:<syntaxhighlight lang="text"> NaN NaN </syntaxhighlight> :; elsif節:ifは、オプショナルな elsif 節を設け、条件式が偽であった時に別の条件に合致した処理を実行させることが出来ます。 :; else節:ifは、オプショナルな else 節を設け、条件式が偽であった時に処理を実行させることが出来ます。 : ifは値を返すので、メソッドの実引数に使うことが出来ますし、代入演算の右辺にも使えます。 ==== 後置のif ==== Rubyには、Perlのような後置のifがあります。 ;[https://paiza.io/projects/M72sxlLRG_k29MK1FmgGgQ?language=ruby 後置のifの例]:<syntaxhighlight lang="ruby"> n = 0 puts "nは0" if n == 0 puts "nは1" if n == 1 </syntaxhighlight> ;表示結果:<syntaxhighlight lang="text"> nは0 </syntaxhighlight> ==== unless文 ==== '''unless文'''(アンレスぶん、''unless statement'')は条件式によって実行・否を切り替える構造構文ですが、ifとは条件式に対する挙動が逆です。 ;[https://paiza.io/projects/6EGyb6ObN49cNkz9GEMwGw?language=ruby unless文の例]:<syntaxhighlight lang="ruby" line> a = 0.0 / 0.0 unless a == 0 puts "Non-zero" else puts a end </syntaxhighlight> ;表示結果:<syntaxhighlight lang="text"> Non-zero </syntaxhighlight> :; else節 : unless文は、オプショナルな else 節を設け、条件式が真であった時に処理を実行させることが出来ます。 ::また、unless文は elsif 節は持てません。 ==== 後置のunless ==== Rubyには、Perlのような後置のunlessがあります。 ;[https://paiza.io/projects/tmKKQgJE8prt7y4MbX0wvQ?language=ruby 後置のunlessの例]:<syntaxhighlight lang="ruby"> n = 0 puts "nは0" unless n == 0 puts "nは1" unless n == 1 </syntaxhighlight> ;表示結果:<syntaxhighlight lang="text"> nは1ではない </syntaxhighlight> ==== case ==== caseは、複数の条件式によって処理を降る分ける用途の為に用意されています。 ;[https://paiza.io/projects/zZwUHb2AzrrL346ReD_p1A?language=ruby caseの例]:<syntaxhighlight lang="ruby" line> n = 2 case n when 1 puts "one" when 2 puts "two" when 3 puts "three" else puts "other" end </syntaxhighlight> ;表示結果:<syntaxhighlight lang="text"> two </syntaxhighlight> :C言語系のswitch文に慣れた人はbreakがないことに気がつくと思います。Rubyのcaseはfall throughしませんし、fall throughさせる方法もありません。 ===== when節が定数でなく式を受付ける事を使ったトリック ===== [[#if|if]]を使ったコードをcaseに書き換えてみましょう。 ;[https://paiza.io/projects/2RNFYYNmA4zCuuPJ8mejEw?language=ruby case true トリック]:<syntaxhighlight lang="ruby" line> a = 0.0 / 0.0 case true when a < 0 puts "minus" when a > 0 puts "plus" when a == 0 puts "zero" else puts a end </syntaxhighlight> ;表示結果:<syntaxhighlight lang="text"> NaN </syntaxhighlight> このコードは when 節の式の値とcaseの式を <code>===</code> で比較し、最初に一致した when に対応する文が実行される事を利用しています。 JavaScriptのswitch文のcase節にも式が使えるので、同じトリックが使えます。 {{See also|JavaScript/制御構造#switch_文の構文}} === 繰返し === Rubyには、他のプログラミング言語のような[[#繰返し文|繰返し文]]と、[[#イテレーターメソッド|イテレーターメソッド]]があります。 ==== 繰返し構文 ==== Rubyの繰返し文には、while文 until for文 と loop文 の4つがあります<ref>do-while文はありません。loopの最後にbreak if 式を設け実現します</ref>。 ===== while文 ===== while文(ホワイルぶん、while statement)は条件が'''真'''である間、文を実行しつづけます。 ;構文:<syntaxhighlight lang="ruby"> while 条件式 [ do ] 文1 文2 : 文n end </syntaxhighlight> : <code>do</code> は省略できます。 ;[https://paiza.io/projects/FMtf9ld-HN4HPgWLNNAvrA?language=ruby while文のコード例]:<syntaxhighlight lang="ruby" line> i = 0 while i < 5 do puts i i += 1 end </syntaxhighlight> : 2行目の <code>i < 5</code>が真の間、次の2行を繰返します。 : 4行目の <code>i += 1</code> は <code>i = i + 1</code> の構文糖 ;実行結果:<syntaxhighlight lang="text"> 0 1 2 3 4 </syntaxhighlight> ===== until ===== until(アンティルぶん、until statement)は条件が'''偽'''である間、文を実行しつづけます。while文とは条件に対する挙動が逆です。 ;構文:<syntaxhighlight lang="ruby"> until 条件式 [ do ] 文1 文2 : 文n end </syntaxhighlight> : <code>do</code> は省略できます。 ;[https://paiza.io/projects/eAvLT3L3hXe2WJsgqYPWsw?language=ruby untilのコード例]:<syntaxhighlight lang="ruby" line> i = 0 until i == 3 do puts i i += 1 end </syntaxhighlight> : 2行目の <code>i == 3</code>が偽の間、次の2行を繰返します。 ;実行結果:<syntaxhighlight lang="text"> 0 1 2 </syntaxhighlight> ===== for文 ===== Rubyにもfor文がありますが、多くの言語で[[W:Froeach文|froeach文]]と呼ばれるもので、C言語系の<code>for (;;)</code>とは異なります。 ;for文の構文:<syntaxhighlight lang="ruby"> for 変数 in コレクション 文 end </syntaxhighlight> :コレクションは Range, Array, Hash など内部構造を持つオブジェクトです。 ==== Rangeオブジェクトとfor文 ==== Rangeオブジェクトは、整数の区間を表し範囲演算子 <code>開始 ... 終了</code> で生成します。 ;コード:<syntaxhighlight lang="ruby"> rng = 1..3 puts rng.class for n in rng do puts "テキスト"; end </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang="text"> Range テキスト テキスト テキスト </syntaxhighlight> ==== Arrayオブジェクトとfor文 ==== Arrayオブジェクトは、任意の Ruby オブジェクトを要素として持つことができます。 配列式<code>[要素1, 要素2, … 要素n]</code> で生成します。 ;[https://paiza.io/projects/zwRG10FKO8uQf3tv72C9NQ?language=ruby コード]:<syntaxhighlight lang="ruby"> animals = ["ネコ", "金魚", "ハムスター"] puts animals.class for animal in animals do puts "動物 #{animal}" end </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang="text"> 動物 ネコ 動物 金魚 動物 ハムスター </syntaxhighlight> ==== Hashオブジェクトとfor文 ==== Hashオブジェクトは、任意の Ruby オブジェクトをキーに、任意の Ruby オブジェクトを値に持つことができる連想配列です。 Hash式<code>{キー1 => 値1, キー2 => 値2, キーn => 値n}</code> で生成します。 また、キーが Symbol の場合 Hash式<code>{キー1: 値1, キー2: 値2, キーn: 値n}</code> で生成することが出来ます。 ;[https://paiza.io/projects/CeZa9Pg-HLS2I1ijggGkYw?language=ruby コード]:<syntaxhighlight lang="ruby"> animals = {cat: "ネコ", gold_fish: "金魚", hamster: "ハムスター"} puts animals.class for en, animal in animals do puts "動物 #{en}: #{animal}" end </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang="text"> Hash 動物 cat: ネコ 動物 gold_fish: 金魚 動物 hamster: ハムスター </syntaxhighlight> このように、Rubyのfor文は多様なコレクションを受け付けます。 ===== loop文 ===== loop文(ループぶん、loop statement)は永久ループを提供します。 ;構文:<syntaxhighlight lang="ruby"> until [ do ] 文1 文2 : 文n end </syntaxhighlight> ;[https://paiza.io/projects/ZB-Ikm3W8SOoKLTlGU161Q?language=ruby loop文のコード例]:<syntaxhighlight lang="ruby" line> i = 1 loop puts "%b" % i i <<= 1 break if i > 2**80 end </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang="text"> 0b1 0b10 0b100 0b1000 0b10000 0b100000 0b1000000 0b10000000 0b100000000 </syntaxhighlight> :5行目の、<code>break if i > 2**80</code>でループを脱出するようにしています。この様に break や return あるいは例外が上がらないとループは永久に終わりません。 :このコードは、Rubyにはない do-while文を模倣する例にもなっています。 ==== イテレーターメソッド ==== ===== eachメソッド ===== 上述 for を使った配列の処理と、同じ処理を、次のようにコレクションの<code>each</code>メソッドを使っても書けます。 ;[https://paiza.io/projects/GEmXBCX8GIC27X5U1F1jjw?language=ruby コード]:<syntaxhighlight lang="ruby"> rng = 1..3 puts rng.class rng.each do puts "テキスト"; end animals = ["ネコ", "金魚", "ハムスター"] animals.each do |animal| puts "ペット:#{animal}" end animals = {cat: "ネコ", gold_fish: "金魚", hamster: "ハムスター"} puts animals.class animals.each do |en, animal| puts "動物 #{en}: #{animal}" end </syntaxhighlight> :実行結果:<syntaxhighlight lang="text"> Range テキスト テキスト テキスト ペット:ネコ ペット:金魚 ペット:ハムスター Hash 動物 cat: ネコ 動物 gold_fish: 金魚 動物 hamster: ハムスター </syntaxhighlight> ===== Integer#times ===== Integer#timesは与えられたブロックをオブジェクトの示す整数値回くりかえします。 :コード<syntaxhighlight lang="ruby"> 3.times{ puts 'Hello, world!' } </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang="text"> Hello, world! Hello, world! Hello, world! </syntaxhighlight> ;繰返したい処理が2行以上ある場合:<syntaxhighlight lang="ruby"> 3.times { puts 'Hello' puts 'World' puts '' } </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang="text"> Hello World Hello World Hello World </syntaxhighlight> ;[https://paiza.io/projects/tycqR9lC1dCY_rWwjGhYvA?language=ruby ループ変数を使た例]:<syntaxhighlight lang="ruby"> 3.times do |i| puts "#{i}の倍は#{2 * i}" end </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang="text"> 0の倍は0 1の倍は2 2の倍は4 </syntaxhighlight> ;ブロックを伴わないtimesメソッド:<syntaxhighlight lang="ruby"> iter = 3.times puts iter.class puts iter.next # 0 puts iter.next # 1 puts iter.next # 2 # puts iter.next # `next': StopIteration: iteration reached an end </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang="text"> Enumerator 0 1 2 </syntaxhighlight> : Integer#times にブロックを渡さないと、Enumeratorオブジェクトが返ります。 : Enumeratorオブジェクトは外部イテレーターと呼ばれnextメソッドで反復を行えます。 == 脚註 == <references /> == 外部リンク == * [https://crystal-lang.org/ The Crystal Programming Language] {{---}} 公式サイト ** [https://crystal-lang.org/api/1.5.0/ Crystal 1.5.0 リファレンス] ** [https://play.crystal-lang.org/#/cr Compile & run code in Crystal] {{---}} playground [[Category:Crystal|*]] [[Category:プログラミング言語]] {{NDC|007.64}} 99s7jfsxo1pwdoc7eitigxf5sti134a 205566 205565 2022-07-20T05:54:55Z Ef3 694 /* 制御構造 */ Crystalの実情に合わせて変更 wikitext text/x-wiki {{Pathnav|メインページ|工学|情報技術|プログラミング|frame=1}} {{Wikipedia|Crystal (プログラミング言語)}} 本書は、[[w:Crystal (プログラミング言語)|Crystal]]のチュートリアルです。 '''Crystal'''は、Ary Borenszweig、Juan Wajnerman、Brian Cardiffと300人以上の貢献者によって設計・開発された[汎用オブジェクト指向プログラミング言語です<ref>{{Cite web |url=https://github.com/crystal-lang/crystal/graphs/contributors |title=Contributors |accessdate=2022-07-18 |website=github.com }}</ref>。[[Crystal]] にヒントを得た構文を持ち、静的型チェックを備えた [[コンパイル型言語]]ですが、変数やメソッドの引数の型は一般には不要です。型は高度なグローバル[[型推論]]アルゴリズムによって解決される。<ref>{{Cite web |url=http://crystal-lang.org/2013/09/23/type-inference-part-1.html |title=Type inference part 1 |last=Brian J. |first=Cardiff |date=2013-09-09 |accessdate=2022-07-18 |website=crystal-lang.org }}</ref>Crystalは[[Apache License]]バージョン2.0のもと、FOSSとしてリリースされています。 __TOC__ == Hello, World! == 他の多くのチュートリアルがそうであるように、 私たちもまずはCrystalの世界にあいさつすることから始めましょう。 ''hello.cr''というファイルを作り(Crystalのソースファイルの拡張子は''.cr'' です)、次のように書いて保存して下さい。 ;hello.cr:<syntaxhighlight lang=Crystal> puts 'Hello, World!' </syntaxhighlight> ;コマンドラインでの操作:<syntaxhighlight lang="console"> % cat hello.cr puts 'Hello, World!' % crystal hello.cr In hello.cr:1:6 1 | puts 'Hello, World!' ^ Error: unterminated char literal, use double quotes for strings % sed -i -e "s@'@Q@g" -e 's@Q@"@g' hello.cr % cat hello.cr puts "Hello, World!" % crystal hello.cr Hello, World! </syntaxhighlight> この1行のスクリプトは、メソッド<code>puts</code> に文字リテラル<code>"Hello, World!"</code>を渡し呼出しています。 このプログラムは、[[Ruby#Hello, World!]]と同じですが、Crystalでは文字列リテラルは <code>"…"</code> で囲うのでそれだけ変更しました。 [TODO: コマンドラインツール crystal の解説。 crystal ファイル名 は crystal run ファイル名 の短縮形で、インタープリタ的な実行…ではなく、内部ビルドツールでコンパイル・実行を行う] == Ruby との違い == Crystalは、Rubyに触発された構文を持つものの、Rubyとの互換性をゴールに定めては'''いません'''。 このため、細部を見ると仕様に差異があり、Rubyのソースコードをcrystalに掛けるても前節の 'Hello World' の様にコンパイルに失敗することがあります。 また、コンパイルできても実行結果に違いが出ることがあります。 ここでは、Ruby との違いについて実際のコードと双方の結果を比較することで、差異についての理解を深めていきます。 === 整数型の特性 === ;大きな整数:<syntaxhighlight lang=Crystal> p 2 ** 999 p (2 ** 999).class </syntaxhighlight> ;rubyの実行結果:<syntaxhighlight lang="console"> 5357543035931336604742125245300009052807024058527668037218751941851755255624680612465991894078479290637973364587765734125935726428461570217992288787349287401967283887412115492710537302531185570938977091076523237491790970633699383779582771973038531457285598238843271083830214915826312193418602834034688 Integer </syntaxhighlight> ;crystalの実行結果:<syntaxhighlight lang="console"> Unhandled exception: Arithmetic overflow (OverflowError) from /usr/local/share/crystal/share/crystal/src/int.cr:295:9 in '**' from pow.cr:1:1 in '__crystal_main' from /usr/local/share/crystal/share/crystal/src/crystal/main.cr:115:5 in 'main_user_code' from /usr/local/share/crystal/share/crystal/src/crystal/main.cr:101:7 in 'main' from /usr/local/share/crystal/share/crystal/src/crystal/main.cr:127:3 in 'main' from /usr/local/lib64/libc.so.6 in '__libc_start_main' from /usr/local/.cache/crystal/crystal-run-pow.tmp in '_start' from ??? </syntaxhighlight> : Ruby の整数は、桁あふれが起こると自動的に多倍長整数に型変換されるので、継ぎ目なしに大きな数を扱うアルゴルズムが使えます。 : Crystal の整数は、固定長です(大きさについては[[#リテラルと型|後述]])。なので大きな答えになる式を評価すると桁あふれが生じます。桁あふれが生じますが、C言語のように寡黙に処理を続けるのではなく、実行時に例外(OverflowError)が上がるので、例外を捕捉し然るべき処置を施すことが可能です。 ==== BigInt ==== <code>big</code> を <code>require</code> すると <code>BigInt</code> が使えるようになります。 ;BigInt:<syntaxhighlight lang=Crystal> require "big" p BigInt.new(2) ** 999 p (BigInt.new(2) ** 999).class </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang="console"> 5357543035931336604742125245300009052807024058527668037218751941851755255624680612465991894078479290637973364587765734125935726428461570217992288787349287401967283887412115492710537302531185570938977091076523237491790970633699383779582771973038531457285598238843271083830214915826312193418602834034688 BigInt </syntaxhighlight> : BigIntはプリミティブではなので、リテラル表現はありません。また、 ::<syntaxhighlight lang=Crystal> n : BigInt = 2 </syntaxhighlight> ::<syntaxhighlight lang=console> Error: type must be BigInt, not Int32 </syntaxhighlight> :: のように型アノテーションすることも出来ません。 === リテラルと型 === ;様々なリテラルと型:<syntaxhighlight lang=Crystal> [nil, false, true, 42, 2.73, 'Q', "string", [1,2,3], {a:1, b:2}].each{|x| p [x, x.class] } </syntaxhighlight> ;rubyの実行結果:<syntaxhighlight lang="console"> [nil, NilClass] [false, FalseClass] [true, TrueClass] [42, Integer] [2.73, Float] ["Q", String] ["string", String] [[1, 2, 3], Array] [{:a=>1, :b=>2}, Hash] </syntaxhighlight> ;crystalの実行結果:<syntaxhighlight lang="console"> [nil, Nil] [false, Bool] [true, Bool] [42, Int32] [2.73, Float64] ['Q', Char] ["string", String] [[1, 2, 3], Array(Int32)] [{a: 1, b: 2}, NamedTuple(a: Int32, b: Int32)] </syntaxhighlight> : Crystal の整数は Int32、浮動小数点数は Float64 です。 ;サイズを指定した数リテラル:<syntaxhighlight lang=Crystal> [1_i64, 2_u32, 3_u64, 4_i32, 5_i16, 6_u8, 7_i128, 8_u128, 3.14_f32, 1.44_f64].each{|x| p [x, x.class] } </syntaxhighlight> ;ruby:Rubyでは、サーフィックスの付いた数値リテラルは無効 ;crystalの実行結果:<syntaxhighlight lang="console"> [1, Int64] [2, UInt32] [3, UInt64] [4, Int32] [5, Int16] [6, UInt8] [7, Int128] [8, UInt128] [3.14, Float32] [1.44, Float64] </syntaxhighlight> : Crystal では、数値リテラルに _ で始まるサーフィックスを付け { i:符号付き整数, u:符号なし整数, f:浮動小数点数 } と { 8,16,32,64,128 } のビット幅の組合せです<ref>[https://crystal-lang.org/reference/1.5/syntax_and_semantics/literals/ Literals]</ref>。 === for式がない === Crystal には、Ruby にはある for式がありません。 ;Rubyのfor式の構文:<syntaxhighlight lang="ruby"> for 変数 in コレクション 文 end </syntaxhighlight> :コレクションは Range, Array, Hash など内部構造を持つオブジェクトです。 :for式は、最後に評価した値を返すので、for'''式'''です。 ;for式のeachメソッドによる置換え:<syntaxhighlight lang="ruby"> for x in [ 2, 3, 5, 7, 11 ] do p x end # ↓ [ 2, 3, 5, 7, 11 ].each do | x | p x end </syntaxhighlight> : の様にコレクションの each メソッドで置換え可能なので、Rubyからの移植でも小規模な書換えで済みます<ref>[https://github.com/crystal-lang/crystal/issues/830 "For" Loop support #830]</ref>(後述のマクロで実装できないかと思いましたが、いまのところ無理のようです)。 また loop 式もありませんが while true; … end で間に合います。Ruby では while 式の条件の次に do が置けますが、Crystal では置けません。 === eval()がない === Crystal には eval() はありません。 Crystalはコンパイル型言語ですので、無理もないことです。 もし、Crystal で eval() を実装しようとすると、Common Lisp の様にインタープリターを丸ごとランタイムに含む必要があります。 これはリーズナブルな選択ではありません。 Crystal では、eval() が必要なケースに(限定的ですが)マクロを使うことが出来る可能性があります。 === マクロ === Crystalには、Rubyにはないマクロがあります<ref>[https://crystal-lang.org/reference/1.5/syntax_and_semantics/macros/ Macros - Crystal]</ref>。Rubyは実行時にすべてのオブジェクトにアクセス出来て、メソッド生やし放題なのでマクロは必要ありませんが、Crystalはコンパイル時に型やメソッドを確定する必要があり、特にメソッドジェネレターとしてのマクロにニーズがあります。また、テンプレート言語的なマクロなので、環境変数による条件分岐や、コンテナを渡し繰返し処理する構文もあります(面白いことにマクロには for 文があり、反対にマクロの中では、eachメソッドは使えません)。マクロには <code><nowiki>{{</nowiki>attr.id}}</code> の様にASTへのアクセス手順が用意されており、半ば言語を拡張するようなアプローチを取ることも出来ます。 [TODO:ASTについての解説;コラム向き?] ;マクロを使ったattr_accessorのイミュレーション:<syntaxhighlight lang=crystal> class Point def initialize(@x : Int32, @y : Int32) end # macro定義 macro attr_accessor(*attrs) {% for attr in attrs %} def {{attr.id}}() @{{attr.id}} end def {{attr.id}}=(var) @{{attr.id}} = var end {% end %} end # macro呼出し attr_accessor :x, :y end pt = Point.new(20, 30) p [pt.x, pt.y] t = pt.x pt.x = pt.y pt.y = t p [pt.x, pt.y] </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang=text> [20, 30] [30, 20] </syntaxhighlight> : Ruby には、attr_accessor と言う「クラスのメンバーのアクセサーを自動生成するメソッド」がありますが、Crystalにはないようなので、マクロで実装しました。 :: attr_accessor :name からは ::<syntaxhighlight lang=ruby> def name() @name end def name=(val) @name = val end </syntaxhighlight>相当のコードが生成されます。 [TODO:マクロの機能と構文の説明 *の付いた引数、 <nowiki>{{</nowiki>引数}}、{% … %} 構文] ==== マクロ p! ==== メソッド p は、与えられた「式」の inspaect() の返す値を puts しますが、マクロ p! は、それに先んじて(評価前の)「式」を表示します<ref>[https://crystal-lang.org/api/1.5.0/Crystal/Macros.html#p%21%28%2Aexpressions%29%3ANop-instance-method def p!(*expressions) : Nop]</ref>。 ;p!の例:<syntaxhighlight lang=crystal> x, y = true, false p! x,y,x && y, x || y, x ^ y, !x, x != y, x == y ary = [ 1, 2, 3 ] p! ary p! ary.map(&. << 1) p! ary.map(&.to_f) </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang=text> x # => true y # => false x && y # => false x || y # => true x ^ y # => true !x # => false x != y # => true x == y # => false ary # => [1, 2, 3] ary.map(&.<<(1)) # => [2, 4, 6] ary.map(&.to_f) # => [1.0, 2.0, 3.0] </syntaxhighlight> ===== 入れ子のp! ===== マクロ p! は入れ子に出来ます。また、一旦ASTに変換してから再度ソースコードに変換するので、等価な別の構文に変換されることがあります。 ;入れ子のp!:<syntaxhighlight lang=crystal> p! ( 100.times{|i| p! i break i if i > 12 } ) </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang=text> (100.times do |i| p!(i) if i > 12 break i end end) # => i # => 0 i # => 1 i # => 2 i # => 3 i # => 4 i # => 5 i # => 6 i # => 7 i # => 8 i # => 9 i # => 10 i # => 11 i # => 12 i # => 13 13 </syntaxhighlight> === クラス === ==== シンプルなクラス ==== ;シンプルなクラス:<syntaxhighlight lang=crystal highlight="2" line> class Hello def initialize(@name : String = "World") end def greeting puts "Hello #{@name}!" end end hello = Hello.new() hello.greeting universe = Hello.new("Universe") universe.greeting </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang=text> Hello World! Hello Universe! </syntaxhighlight> :;初期化メソッド :: <syntaxhighlight lang=crystal line start=4> def initialize(@name : String = "World") end </syntaxhighlight> ::Rubyであれば :: <syntaxhighlight lang=ruby line start=4> def initialize(name = "World") @name = name end </syntaxhighlight> ::とするところですが、Crystalでは、型アノテーション <code> : String</code> を使い、引数の型を限定しました。 ::また、(@ 付きの)アトリビュート名を仮引数にすると、そのままアトリビュート(a.k.a. インスタンス変数)に仮引数が代入されます。 ::これは、C++のコンストラクターのメンバー初期化リストと同じアイディアですが、Crystalではインスタンス変数に @ が前置されるので、仮引数に @ が出現すればインスタンス変数の初期値だと自明で、聡明な選択です。 ==== 都市間の大圏距離 ==== [[Ruby#ユーザー定義クラス]]の都市間の大圏距離を求めるメソッドを追加した例を、Crystalに移植しました。 ;都市間の大圏距離:<syntaxhighlight lang=crystal highlight=”2,7,12” line> class GeoCoord getter :longitude, :latitude def initialize(@longitude : Float64, @latitude : Float64) end def to_s(io) ew, ns = "東経", "北緯" long, lat = @longitude, @latitude ew, long = "西経", -long if long < 0.0 ns, lat = "南緯", -lat if lat < 0.0 io << "(#{ew}: #{long}, #{ns}: #{lat})" end # https://github.com/crystal-lang/crystal/issues/259 def distance(other) i, r = Math::PI / 180, 6371.008 Math.acos(Math.sin(@latitude*i) * Math.sin(other.latitude * i) + Math.cos(@latitude*i) * Math.cos(other.latitude * i) * Math.cos(@longitude * i - other.longitude * i)) * r end end # メソッドの先頭を大文字に出来ないのでクラス名のメソッドは作ることが出来ない # def GeoCoord(lng : Float64, lat : Float64) # GeoCoord.new(lng, lat) # end Sites = { "東京駅": GeoCoord.new(139.7673068, 35.6809591), "シドニー・オペラハウス": GeoCoord.new(151.215278, -33.856778), "グリニッジ天文台": GeoCoord.new(-0.0014, 51.4778), } Sites.each { |name, gc| puts "#{name}: #{gc}" } keys, len = Sites.keys, Sites.size keys.each_with_index { |x, i| y = keys[(i + 1) % len] puts "#{x} - #{y}: #{Sites[x].distance(Sites[y])} [km]" } </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang=text> 東京駅: (東経: 139.7673068, 北緯: 35.6809591) シドニー・オペラハウス: (東経: 151.215278, 南緯: 33.856778) グリニッジ天文台: (西経: 0.0014, 北緯: 51.4778) 東京駅 - シドニー・オペラハウス: 7823.269299386704 [km] シドニー・オペラハウス - グリニッジ天文台: 16987.2708377249 [km] グリニッジ天文台 - 東京駅: 9560.546566490015 [km] </syntaxhighlight> :Crystal には、<syntaxhighlight lang=ruby inline> attr_accessor </syntaxhighlight> はありませんが、標準ライブラリーのマクロに <syntaxhighlight lang=crystal inline> getter </syntaxhighlight>があるので :: <syntaxhighlight lang=crystal line start=2> getter :longitude, :latitude </syntaxhighlight> ::としました。 ::将来、<syntaxhighlight lang=ruby inline> attr_accessor </syntaxhighlight> が実装される可能性はありますが、姉妹品の<syntaxhighlight lang=crystal inline> setter </syntaxhighlight> との併用が下位互換性を考えると確実です。 : to_s は、Ruby ならば :: <syntaxhighlight lang=ruby line start=7> def to_s() </syntaxhighlight> :: <syntaxhighlight lang=ruby line start=12> io << "(#{ew}: #{long}, #{ns}: #{lat})" </syntaxhighlight> :: ですが、Crystalでは追加の引数 <var>io</var> が必要で :: <syntaxhighlight lang=ruby line start=7> def to_s(io) </syntaxhighlight> :: <syntaxhighlight lang=ruby line start=12> io << "(#{ew}: #{long}, #{ns}: #{lat})" </syntaxhighlight> : Ruby にはクラス名と同じ名前のメソッドで .new を呼出す文化があるのですが、Crystalはメソッドの先頭を大文字に出来ないので、これは見送りました。 ==== 包含と継承 ==== [[JavaScript/クラス#包含と継承]]を、Rubyに移植した[[Ruby#包含と継承]]を、Crystalに移植しました。 ;包含と継承:<syntaxhighlight lang=crystal line> class Point def initialize(@x = 0, @y = 0) end def inspect(io) io << "x:#{@x}, y:#{@y}" end def move(dx = 0, dy = 0) @x, @y = @x + dx, @y + dy self end end class Shape def initialize(x = 0, y = 0) @location = Point.new(x, y) end def inspect(io) @location.inspect(io) end def move(x, y) @location.move(x, y) self end end class Rectangle < Shape def initialize(x = 0, y = 0, @width = 0, @height = 0) super(x, y) end def inspect(io) super(io) io << ", width:#{@width}, height:#{@height}" end end rct = Rectangle.new(12, 32, 100, 50) p! rct, rct.is_a?( Rectangle ), rct.is_a?( Shape ), rct.is_a?( Point ), rct.move(11, 21) </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang=text> rct # => x:12, y:32, width:100, height:50 rct.is_a?(Rectangle) # => true rct.is_a?(Shape) # => true rct.is_a?(Point) # => false rct.move(11, 21) # => x:23, y:53, width:100, height:50 </syntaxhighlight> = https://ja.wikibooks.org/w/index.php?title=Ruby&oldid=205564#%E5%88%B6%E5%BE%A1%E6%A7%8B%E9%80%A0 から移入 = == 制御構造 == '''[[w:制御構造|制御構造]]'''(せいぎょこうぞう、''control flow'')とは、「順次」「分岐」「反復」という基本的な処理のことを言います。 {{コラム|Crystalの真理値|2= 制御構造は「条件式」が真であるか偽であるかによって分岐や反復の振る舞いが変わります。 では「条件式」が真・偽はどの様に決まるのでしょう? Crystalでは <code>false</code> あるいは <code>nil</code> であると偽、それ以外が真です。 なので <code>0</code> も <code>[]</code>(空のArray) も <code>{}</code>(空のNamedTuple)も真です。 }} === 条件分岐 === Crystalの条件分岐には、[[#if|if]], [[#until|until]] と [[#case|case]]の3つの構文があります。 ==== if ==== '''[[w:if|if]]'''は条件式によって実行・否を切り替える構造構文で、評価した式の値を返すので条件演算子でもあります。 ;ifの例:<syntaxhighlight lang=crystal line> a = 0.0 / 0.0 if a < 0 puts "minus" elsif a > 0 puts "plus" elsif a == 0 puts "zero" else puts a end p! ( if a < 0 "minus" elsif a > 0 "plus" elsif a == 0 "zero" else a end ) </syntaxhighlight> ;表示結果:<syntaxhighlight lang="text"> NaN (if a < 0 "minus" else if a > 0 "plus" else if a == 0 "zero" else a end end end) # => NaN </syntaxhighlight> :; elsif節:ifは、オプショナルな elsif 節を設け、条件式が偽であった時に別の条件に合致した処理を実行させることが出来ます。 :; else節:ifは、オプショナルな else 節を設け、条件式が偽であった時に処理を実行させることが出来ます。 : ifは値を返すので、メソッドの実引数に使うことが出来ますし、代入演算の右辺にも使えます。 ==== 後置のif ==== Crystalには、RubyやPerlのような後置のifがあります。 ;後置のifの例:<syntaxhighlight lang=crystal> n = 0 puts "nは0" if n == 0 puts "nは1" if n == 1 </syntaxhighlight> ;表示結果:<syntaxhighlight lang="text"> nは0 </syntaxhighlight> ==== unless==== '''unless'''(アンレス)は条件式によって実行・否を切り替える構造構文ですが、ifとは条件式に対する挙動が逆です。 ;unless文の例:<syntaxhighlight lang=crystal line> a = 0.0 / 0.0 unless a == 0 puts "Non-zero" else puts a end </syntaxhighlight> ;表示結果:<syntaxhighlight lang="text"> Non-zero </syntaxhighlight> :; else節 : unless文は、オプショナルな else 節を設け、条件式が真であった時に処理を実行させることが出来ます。 ::また、unless文は elsif 節は持てません。 ==== 後置のunless ==== Crystalには、RubyやPerlのような後置のunlessがあります。 ;後置のunlessの例:<syntaxhighlight lang=crystal> n = 0 puts "nは0" unless n == 0 puts "nは1" unless n == 1 </syntaxhighlight> ;表示結果:<syntaxhighlight lang="text"> nは1ではない </syntaxhighlight> ==== case ==== caseは、複数の条件式によって処理を降る分ける用途の為に用意されています。 ;caseの例:<syntaxhighlight lang=crystal line> n = 2 case n when 1 puts "one" when 2 puts "two" when 3 puts "three" else puts "other" end p! ( case n when 1 "one" when 2 "two" when 3 "three" else "other" end ) </syntaxhighlight> ;表示結果:<syntaxhighlight lang="text"> two (case n when 1 "one" when 2 "two" when 3 "three" else "other" end) # => "two"</syntaxhighlight> :C言語系のswitch文に慣れた人はbreakがないことに気がつくと思います。Crystalのcaseはfall throughしませんし、fall throughさせる方法もありません。 ===== when節が定数でなく式を受付ける事を使ったトリック ===== [[#if|if]]を使ったコードをcaseに書き換えてみましょう。 ;case true トリック:<syntaxhighlight lang=crystal line> a = 0.0 / 0.0 case true when a < 0 puts "minus" when a > 0 puts "plus" when a == 0 puts "zero" else puts a end p! ( case true when a < 0 "minus" when a > 0 "plus" when a == 0 "zero" else a end ) </syntaxhighlight> ;表示結果:<syntaxhighlight lang="text"> NaN (case true when a < 0 "minus" when a > 0 "plus" when a == 0 "zero" else a end) # => NaN </syntaxhighlight> このコードは when 節の式の値とcaseの式を <code>===</code> で比較し、最初に一致した when に対応する文が実行される事を利用しています。 JavaScriptのswitch文のcase節にも式が使えるので、同じトリックが使えます。 {{See also|JavaScript/制御構造#switch_文の構文}} === 繰返し === Crystalには、他のプログラミング言語のような[[#繰返し文|繰返し文]]と、[[#イテレーターメソッド|イテレーターメソッド]]があります。 ==== 繰返し構文 ==== Crystalの繰返し構文には、while と untilの2つがあります<ref>for も do-while も loop もありません。</ref>。 ===== while ===== while文(ホワイル)は条件が'''真'''である間、式を実行しつづけます。 ;構文:<syntaxhighlight lang=crystal> while 条件式 式1 式2 : 式n end </syntaxhighlight> : Rubyと違い、条件式の後ろに <code>do</code> をつけることは出来ません。 ;while文のコード例:<syntaxhighlight lang=crystal line> i = 0 p! ( while i < 10 p! i i += 1 break i if i > 5 end ) </syntaxhighlight> : 2行目の <code>i < 5</code>が真の間、次の2行を繰返します。 : 4行目の <code>i += 1</code> は <code>i = i + 1</code> の構文糖 ;実行結果:<syntaxhighlight lang="text"> (while i < 10 p!(i) i = i + 1 if i > 5 break i end end)# => i # => 0 i # => 1 i # => 2 i # => 3 i # => 4 i # => 5 6 </syntaxhighlight> ===== until ===== until(アンティル)は条件が'''偽'''である間、式を実行しつづけます。whileとは条件に対する挙動が逆です。 ;構文:<syntaxhighlight lang=crystal> until 条件式 [ do ] 文1 文2 : 文n end </syntaxhighlight> : <code>do</code> は省略できます。 ;untilのコード例:<syntaxhighlight lang=crystal line> i = 0 until i == 3 puts i i += 1 end </syntaxhighlight> : 2行目の <code>i == 3</code>が偽の間、次の2行を繰返します。 ;実行結果:<syntaxhighlight lang="text"> 0 1 2 </syntaxhighlight> ===== for ===== Crystalにはforがありませんが、コレクションのイテレーションメソッドを使うことで繰返しを簡素に実現出来ます。 ==== Rangeオブジェクト ==== Rangeオブジェクトは、整数の区間を表し範囲演算子 <code>開始 ... 終了</code> で生成します。 ;コード:<syntaxhighlight lang=crystal> rng = 1..3 puts rng.class rng.each do | n | puts "#{n}番"; end </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang="text"> Range(Int32, Int32) 1番 2番 3番 </syntaxhighlight> ==== Arrayオブジェクト ==== Arrayオブジェクトは、任意の Crystal オブジェクトを要素として持つことができます。 配列式<code>[要素1, 要素2, … 要素n]</code> で生成します。 ;コード:<syntaxhighlight lang=crystal> animals = ["ネコ", "金魚", "ハムスター"] puts animals.class animals.each do | animal | puts "動物 #{animal}" end </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang="text"> Array(String) 動物 ネコ 動物 金魚 動物 ハムスター </syntaxhighlight> ==== NamedTupleオブジェクト ==== NamedTupleオブジェクトは、任意の Crystal オブジェクトをキーに、任意の Crystal オブジェクトを値に持つことができる連想配列です。 NamedTuple式<code>{キー1 => 値1, キー2 => 値2, キーn => 値n}</code> で生成します。 また、キーが Symbol の場合 NamedTuple式<code>{キー1: 値1, キー2: 値2, キーn: 値n}</code> で生成することが出来ます。 ;コード:<syntaxhighlight lang=crystal> animals = {cat: "ネコ", gold_fish: "金魚", hamster: "ハムスター"} puts animals.class animals.each do | en, animal | puts "動物 #{en}: #{animal}" end </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang="text"> NamedTuple(cat: String, gold_fish: String, hamster: String) 動物 cat: ネコ 動物 gold_fish: 金魚 動物 hamster: ハムスター </syntaxhighlight> このように、Crystalではforがなくてもコレクションのメソッドで同様の処理を実現できます。 ===== loop ===== loop、ありません。 while true で代用します。 ;loopの代用コード例:<syntaxhighlight lang=crystal line> i = 1 while true puts "0b%b" % i i <<= 1 break if i > 2**8 end </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang="text"> 0b1 0b10 0b100 0b1000 0b10000 0b100000 0b1000000 0b10000000 0b100000000 </syntaxhighlight> :5行目の、<code>break if i > 2**8</code>でループを脱出するようにしています。この様に break や return あるいは例外が上がらないとループは永久に終わりません。 :このコードは、Crystalにはない do-while文を模倣する例にもなっています。 ==== イテレーターメソッド ==== ===== Integer#times ===== Integer#timesは与えられたブロックをオブジェクトの示す整数値回くりかえします。 :コード<syntaxhighlight lang=crystal> 3.times{ puts "Hello, world!" } </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang="text"> Hello, world! Hello, world! Hello, world! </syntaxhighlight> ;繰返したい処理が2行以上ある場合:<syntaxhighlight lang=crystal> 3.times { puts "Hello" puts "World" puts "" } </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang="text"> Hello World Hello World Hello World </syntaxhighlight> ;ループ変数を使た例:<syntaxhighlight lang=crystal> 3.times do |i| puts "#{i}の倍は#{2 * i}" end </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang="text"> 0の倍は0 1の倍は2 2の倍は4 </syntaxhighlight> ;ブロックを伴わないtimesメソッド:<syntaxhighlight lang=crystal> iter = 3.times puts iter.class puts iter.next # 0 puts iter.next # 1 puts iter.next # 2 # puts iter.next # `next': StopIteration: iteration reached an end </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang="text"> Int::TimesIterator(Int32) 0 1 2 </syntaxhighlight> : Integer#times にブロックを渡さないと、Int::TimesIterator([T])オブジェクトが返ります。 : Int::TimesIterator([T])オブジェクトは外部イテレーターと呼ばれnextメソッドで反復を行えます。 == 脚註 == <references /> == 外部リンク == * [https://crystal-lang.org/ The Crystal Programming Language] {{---}} 公式サイト ** [https://crystal-lang.org/api/1.5.0/ Crystal 1.5.0 リファレンス] ** [https://play.crystal-lang.org/#/cr Compile & run code in Crystal] {{---}} playground [[Category:Crystal|*]] [[Category:プログラミング言語]] {{NDC|007.64}} ehh3ynlsyliyncaavrmf6g0d98nbcx9 205571 205566 2022-07-20T06:59:10Z Ef3 694 /* 型による分岐 */ when 節が式ではなく型であった場合、caseの式を <code>is_a?</code> で評価し、最初に一致した when に対応する式が実行されます。 wikitext text/x-wiki {{Pathnav|メインページ|工学|情報技術|プログラミング|frame=1}} {{Wikipedia|Crystal (プログラミング言語)}} 本書は、[[w:Crystal (プログラミング言語)|Crystal]]のチュートリアルです。 '''Crystal'''は、Ary Borenszweig、Juan Wajnerman、Brian Cardiffと300人以上の貢献者によって設計・開発された[汎用オブジェクト指向プログラミング言語です<ref>{{Cite web |url=https://github.com/crystal-lang/crystal/graphs/contributors |title=Contributors |accessdate=2022-07-18 |website=github.com }}</ref>。[[Crystal]] にヒントを得た構文を持ち、静的型チェックを備えた [[コンパイル型言語]]ですが、変数やメソッドの引数の型は一般には不要です。型は高度なグローバル[[型推論]]アルゴリズムによって解決される。<ref>{{Cite web |url=http://crystal-lang.org/2013/09/23/type-inference-part-1.html |title=Type inference part 1 |last=Brian J. |first=Cardiff |date=2013-09-09 |accessdate=2022-07-18 |website=crystal-lang.org }}</ref>Crystalは[[Apache License]]バージョン2.0のもと、FOSSとしてリリースされています。 __TOC__ == Hello, World! == 他の多くのチュートリアルがそうであるように、 私たちもまずはCrystalの世界にあいさつすることから始めましょう。 ''hello.cr''というファイルを作り(Crystalのソースファイルの拡張子は''.cr'' です)、次のように書いて保存して下さい。 ;hello.cr:<syntaxhighlight lang=Crystal> puts 'Hello, World!' </syntaxhighlight> ;コマンドラインでの操作:<syntaxhighlight lang="console"> % cat hello.cr puts 'Hello, World!' % crystal hello.cr In hello.cr:1:6 1 | puts 'Hello, World!' ^ Error: unterminated char literal, use double quotes for strings % sed -i -e "s@'@Q@g" -e 's@Q@"@g' hello.cr % cat hello.cr puts "Hello, World!" % crystal hello.cr Hello, World! </syntaxhighlight> この1行のスクリプトは、メソッド<code>puts</code> に文字リテラル<code>"Hello, World!"</code>を渡し呼出しています。 このプログラムは、[[Ruby#Hello, World!]]と同じですが、Crystalでは文字列リテラルは <code>"…"</code> で囲うのでそれだけ変更しました。 [TODO: コマンドラインツール crystal の解説。 crystal ファイル名 は crystal run ファイル名 の短縮形で、インタープリタ的な実行…ではなく、内部ビルドツールでコンパイル・実行を行う] == Ruby との違い == Crystalは、Rubyに触発された構文を持つものの、Rubyとの互換性をゴールに定めては'''いません'''。 このため、細部を見ると仕様に差異があり、Rubyのソースコードをcrystalに掛けるても前節の 'Hello World' の様にコンパイルに失敗することがあります。 また、コンパイルできても実行結果に違いが出ることがあります。 ここでは、Ruby との違いについて実際のコードと双方の結果を比較することで、差異についての理解を深めていきます。 === 整数型の特性 === ;大きな整数:<syntaxhighlight lang=Crystal> p 2 ** 999 p (2 ** 999).class </syntaxhighlight> ;rubyの実行結果:<syntaxhighlight lang="console"> 5357543035931336604742125245300009052807024058527668037218751941851755255624680612465991894078479290637973364587765734125935726428461570217992288787349287401967283887412115492710537302531185570938977091076523237491790970633699383779582771973038531457285598238843271083830214915826312193418602834034688 Integer </syntaxhighlight> ;crystalの実行結果:<syntaxhighlight lang="console"> Unhandled exception: Arithmetic overflow (OverflowError) from /usr/local/share/crystal/share/crystal/src/int.cr:295:9 in '**' from pow.cr:1:1 in '__crystal_main' from /usr/local/share/crystal/share/crystal/src/crystal/main.cr:115:5 in 'main_user_code' from /usr/local/share/crystal/share/crystal/src/crystal/main.cr:101:7 in 'main' from /usr/local/share/crystal/share/crystal/src/crystal/main.cr:127:3 in 'main' from /usr/local/lib64/libc.so.6 in '__libc_start_main' from /usr/local/.cache/crystal/crystal-run-pow.tmp in '_start' from ??? </syntaxhighlight> : Ruby の整数は、桁あふれが起こると自動的に多倍長整数に型変換されるので、継ぎ目なしに大きな数を扱うアルゴルズムが使えます。 : Crystal の整数は、固定長です(大きさについては[[#リテラルと型|後述]])。なので大きな答えになる式を評価すると桁あふれが生じます。桁あふれが生じますが、C言語のように寡黙に処理を続けるのではなく、実行時に例外(OverflowError)が上がるので、例外を捕捉し然るべき処置を施すことが可能です。 ==== BigInt ==== <code>big</code> を <code>require</code> すると <code>BigInt</code> が使えるようになります。 ;BigInt:<syntaxhighlight lang=Crystal> require "big" p BigInt.new(2) ** 999 p (BigInt.new(2) ** 999).class </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang="console"> 5357543035931336604742125245300009052807024058527668037218751941851755255624680612465991894078479290637973364587765734125935726428461570217992288787349287401967283887412115492710537302531185570938977091076523237491790970633699383779582771973038531457285598238843271083830214915826312193418602834034688 BigInt </syntaxhighlight> : BigIntはプリミティブではなので、リテラル表現はありません。また、 ::<syntaxhighlight lang=Crystal> n : BigInt = 2 </syntaxhighlight> ::<syntaxhighlight lang=console> Error: type must be BigInt, not Int32 </syntaxhighlight> :: のように型アノテーションすることも出来ません。 === リテラルと型 === ;様々なリテラルと型:<syntaxhighlight lang=Crystal> [nil, false, true, 42, 2.73, 'Q', "string", [1,2,3], {a:1, b:2}].each{|x| p [x, x.class] } </syntaxhighlight> ;rubyの実行結果:<syntaxhighlight lang="console"> [nil, NilClass] [false, FalseClass] [true, TrueClass] [42, Integer] [2.73, Float] ["Q", String] ["string", String] [[1, 2, 3], Array] [{:a=>1, :b=>2}, Hash] </syntaxhighlight> ;crystalの実行結果:<syntaxhighlight lang="console"> [nil, Nil] [false, Bool] [true, Bool] [42, Int32] [2.73, Float64] ['Q', Char] ["string", String] [[1, 2, 3], Array(Int32)] [{a: 1, b: 2}, NamedTuple(a: Int32, b: Int32)] </syntaxhighlight> : Crystal の整数は Int32、浮動小数点数は Float64 です。 ;サイズを指定した数リテラル:<syntaxhighlight lang=Crystal> [1_i64, 2_u32, 3_u64, 4_i32, 5_i16, 6_u8, 7_i128, 8_u128, 3.14_f32, 1.44_f64].each{|x| p [x, x.class] } </syntaxhighlight> ;ruby:Rubyでは、サーフィックスの付いた数値リテラルは無効 ;crystalの実行結果:<syntaxhighlight lang="console"> [1, Int64] [2, UInt32] [3, UInt64] [4, Int32] [5, Int16] [6, UInt8] [7, Int128] [8, UInt128] [3.14, Float32] [1.44, Float64] </syntaxhighlight> : Crystal では、数値リテラルに _ で始まるサーフィックスを付け { i:符号付き整数, u:符号なし整数, f:浮動小数点数 } と { 8,16,32,64,128 } のビット幅の組合せです<ref>[https://crystal-lang.org/reference/1.5/syntax_and_semantics/literals/ Literals]</ref>。 === for式がない === Crystal には、Ruby にはある for式がありません。 ;Rubyのfor式の構文:<syntaxhighlight lang="ruby"> for 変数 in コレクション 文 end </syntaxhighlight> :コレクションは Range, Array, Hash など内部構造を持つオブジェクトです。 :for式は、最後に評価した値を返すので、for'''式'''です。 ;for式のeachメソッドによる置換え:<syntaxhighlight lang="ruby"> for x in [ 2, 3, 5, 7, 11 ] do p x end # ↓ [ 2, 3, 5, 7, 11 ].each do | x | p x end </syntaxhighlight> : の様にコレクションの each メソッドで置換え可能なので、Rubyからの移植でも小規模な書換えで済みます<ref>[https://github.com/crystal-lang/crystal/issues/830 "For" Loop support #830]</ref>(後述のマクロで実装できないかと思いましたが、いまのところ無理のようです)。 また loop 式もありませんが while true; … end で間に合います。Ruby では while 式の条件の次に do が置けますが、Crystal では置けません。 === eval()がない === Crystal には eval() はありません。 Crystalはコンパイル型言語ですので、無理もないことです。 もし、Crystal で eval() を実装しようとすると、Common Lisp の様にインタープリターを丸ごとランタイムに含む必要があります。 これはリーズナブルな選択ではありません。 Crystal では、eval() が必要なケースに(限定的ですが)マクロを使うことが出来る可能性があります。 === マクロ === Crystalには、Rubyにはないマクロがあります<ref>[https://crystal-lang.org/reference/1.5/syntax_and_semantics/macros/ Macros - Crystal]</ref>。Rubyは実行時にすべてのオブジェクトにアクセス出来て、メソッド生やし放題なのでマクロは必要ありませんが、Crystalはコンパイル時に型やメソッドを確定する必要があり、特にメソッドジェネレターとしてのマクロにニーズがあります。また、テンプレート言語的なマクロなので、環境変数による条件分岐や、コンテナを渡し繰返し処理する構文もあります(面白いことにマクロには for 文があり、反対にマクロの中では、eachメソッドは使えません)。マクロには <code><nowiki>{{</nowiki>attr.id}}</code> の様にASTへのアクセス手順が用意されており、半ば言語を拡張するようなアプローチを取ることも出来ます。 [TODO:ASTについての解説;コラム向き?] ;マクロを使ったattr_accessorのイミュレーション:<syntaxhighlight lang=crystal> class Point def initialize(@x : Int32, @y : Int32) end # macro定義 macro attr_accessor(*attrs) {% for attr in attrs %} def {{attr.id}}() @{{attr.id}} end def {{attr.id}}=(var) @{{attr.id}} = var end {% end %} end # macro呼出し attr_accessor :x, :y end pt = Point.new(20, 30) p [pt.x, pt.y] t = pt.x pt.x = pt.y pt.y = t p [pt.x, pt.y] </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang=text> [20, 30] [30, 20] </syntaxhighlight> : Ruby には、attr_accessor と言う「クラスのメンバーのアクセサーを自動生成するメソッド」がありますが、Crystalにはないようなので、マクロで実装しました。 :: attr_accessor :name からは ::<syntaxhighlight lang=ruby> def name() @name end def name=(val) @name = val end </syntaxhighlight>相当のコードが生成されます。 [TODO:マクロの機能と構文の説明 *の付いた引数、 <nowiki>{{</nowiki>引数}}、{% … %} 構文] ==== マクロ p! ==== メソッド p は、与えられた「式」の inspaect() の返す値を puts しますが、マクロ p! は、それに先んじて(評価前の)「式」を表示します<ref>[https://crystal-lang.org/api/1.5.0/Crystal/Macros.html#p%21%28%2Aexpressions%29%3ANop-instance-method def p!(*expressions) : Nop]</ref>。 ;p!の例:<syntaxhighlight lang=crystal> x, y = true, false p! x,y,x && y, x || y, x ^ y, !x, x != y, x == y ary = [ 1, 2, 3 ] p! ary p! ary.map(&. << 1) p! ary.map(&.to_f) </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang=text> x # => true y # => false x && y # => false x || y # => true x ^ y # => true !x # => false x != y # => true x == y # => false ary # => [1, 2, 3] ary.map(&.<<(1)) # => [2, 4, 6] ary.map(&.to_f) # => [1.0, 2.0, 3.0] </syntaxhighlight> ===== 入れ子のp! ===== マクロ p! は入れ子に出来ます。また、一旦ASTに変換してから再度ソースコードに変換するので、等価な別の構文に変換されることがあります。 ;入れ子のp!:<syntaxhighlight lang=crystal> p! ( 100.times{|i| p! i break i if i > 12 } ) </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang=text> (100.times do |i| p!(i) if i > 12 break i end end) # => i # => 0 i # => 1 i # => 2 i # => 3 i # => 4 i # => 5 i # => 6 i # => 7 i # => 8 i # => 9 i # => 10 i # => 11 i # => 12 i # => 13 13 </syntaxhighlight> === クラス === ==== シンプルなクラス ==== ;シンプルなクラス:<syntaxhighlight lang=crystal highlight="2" line> class Hello def initialize(@name : String = "World") end def greeting puts "Hello #{@name}!" end end hello = Hello.new() hello.greeting universe = Hello.new("Universe") universe.greeting </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang=text> Hello World! Hello Universe! </syntaxhighlight> :;初期化メソッド :: <syntaxhighlight lang=crystal line start=4> def initialize(@name : String = "World") end </syntaxhighlight> ::Rubyであれば :: <syntaxhighlight lang=ruby line start=4> def initialize(name = "World") @name = name end </syntaxhighlight> ::とするところですが、Crystalでは、型アノテーション <code> : String</code> を使い、引数の型を限定しました。 ::また、(@ 付きの)アトリビュート名を仮引数にすると、そのままアトリビュート(a.k.a. インスタンス変数)に仮引数が代入されます。 ::これは、C++のコンストラクターのメンバー初期化リストと同じアイディアですが、Crystalではインスタンス変数に @ が前置されるので、仮引数に @ が出現すればインスタンス変数の初期値だと自明で、聡明な選択です。 ==== 都市間の大圏距離 ==== [[Ruby#ユーザー定義クラス]]の都市間の大圏距離を求めるメソッドを追加した例を、Crystalに移植しました。 ;都市間の大圏距離:<syntaxhighlight lang=crystal highlight=”2,7,12” line> class GeoCoord getter :longitude, :latitude def initialize(@longitude : Float64, @latitude : Float64) end def to_s(io) ew, ns = "東経", "北緯" long, lat = @longitude, @latitude ew, long = "西経", -long if long < 0.0 ns, lat = "南緯", -lat if lat < 0.0 io << "(#{ew}: #{long}, #{ns}: #{lat})" end # https://github.com/crystal-lang/crystal/issues/259 def distance(other) i, r = Math::PI / 180, 6371.008 Math.acos(Math.sin(@latitude*i) * Math.sin(other.latitude * i) + Math.cos(@latitude*i) * Math.cos(other.latitude * i) * Math.cos(@longitude * i - other.longitude * i)) * r end end # メソッドの先頭を大文字に出来ないのでクラス名のメソッドは作ることが出来ない # def GeoCoord(lng : Float64, lat : Float64) # GeoCoord.new(lng, lat) # end Sites = { "東京駅": GeoCoord.new(139.7673068, 35.6809591), "シドニー・オペラハウス": GeoCoord.new(151.215278, -33.856778), "グリニッジ天文台": GeoCoord.new(-0.0014, 51.4778), } Sites.each { |name, gc| puts "#{name}: #{gc}" } keys, len = Sites.keys, Sites.size keys.each_with_index { |x, i| y = keys[(i + 1) % len] puts "#{x} - #{y}: #{Sites[x].distance(Sites[y])} [km]" } </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang=text> 東京駅: (東経: 139.7673068, 北緯: 35.6809591) シドニー・オペラハウス: (東経: 151.215278, 南緯: 33.856778) グリニッジ天文台: (西経: 0.0014, 北緯: 51.4778) 東京駅 - シドニー・オペラハウス: 7823.269299386704 [km] シドニー・オペラハウス - グリニッジ天文台: 16987.2708377249 [km] グリニッジ天文台 - 東京駅: 9560.546566490015 [km] </syntaxhighlight> :Crystal には、<syntaxhighlight lang=ruby inline> attr_accessor </syntaxhighlight> はありませんが、標準ライブラリーのマクロに <syntaxhighlight lang=crystal inline> getter </syntaxhighlight>があるので :: <syntaxhighlight lang=crystal line start=2> getter :longitude, :latitude </syntaxhighlight> ::としました。 ::将来、<syntaxhighlight lang=ruby inline> attr_accessor </syntaxhighlight> が実装される可能性はありますが、姉妹品の<syntaxhighlight lang=crystal inline> setter </syntaxhighlight> との併用が下位互換性を考えると確実です。 : to_s は、Ruby ならば :: <syntaxhighlight lang=ruby line start=7> def to_s() </syntaxhighlight> :: <syntaxhighlight lang=ruby line start=12> io << "(#{ew}: #{long}, #{ns}: #{lat})" </syntaxhighlight> :: ですが、Crystalでは追加の引数 <var>io</var> が必要で :: <syntaxhighlight lang=ruby line start=7> def to_s(io) </syntaxhighlight> :: <syntaxhighlight lang=ruby line start=12> io << "(#{ew}: #{long}, #{ns}: #{lat})" </syntaxhighlight> : Ruby にはクラス名と同じ名前のメソッドで .new を呼出す文化があるのですが、Crystalはメソッドの先頭を大文字に出来ないので、これは見送りました。 ==== 包含と継承 ==== [[JavaScript/クラス#包含と継承]]を、Rubyに移植した[[Ruby#包含と継承]]を、Crystalに移植しました。 ;包含と継承:<syntaxhighlight lang=crystal line> class Point def initialize(@x = 0, @y = 0) end def inspect(io) io << "x:#{@x}, y:#{@y}" end def move(dx = 0, dy = 0) @x, @y = @x + dx, @y + dy self end end class Shape def initialize(x = 0, y = 0) @location = Point.new(x, y) end def inspect(io) @location.inspect(io) end def move(x, y) @location.move(x, y) self end end class Rectangle < Shape def initialize(x = 0, y = 0, @width = 0, @height = 0) super(x, y) end def inspect(io) super(io) io << ", width:#{@width}, height:#{@height}" end end rct = Rectangle.new(12, 32, 100, 50) p! rct, rct.is_a?( Rectangle ), rct.is_a?( Shape ), rct.is_a?( Point ), rct.move(11, 21) </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang=text> rct # => x:12, y:32, width:100, height:50 rct.is_a?(Rectangle) # => true rct.is_a?(Shape) # => true rct.is_a?(Point) # => false rct.move(11, 21) # => x:23, y:53, width:100, height:50 </syntaxhighlight> == 制御構造 == '''[[w:制御構造|制御構造]]'''(せいぎょこうぞう、''control flow'')とは、「順次」「分岐」「反復」という基本的な処理のことを言います。 {{コラム|Crystalの真理値|2= 制御構造は「条件式」が真であるか偽であるかによって分岐や反復の振る舞いが変わります。 では「条件式」が真・偽はどの様に決まるのでしょう? Crystalでは <code>false</code> あるいは <code>nil</code> であると偽、それ以外が真です。 なので <code>0</code> も <code>[]</code>(空のArray) も <code>{}</code>(空のNamedTuple)も真です。 }} === 条件分岐 === Crystalの条件分岐には、[[#if|if]], [[#until|until]] と [[#case|case]]の3つの構文があります。 ==== if ==== '''[[w:if|if]]'''は条件式によって実行・否を切り替える構造構文で、評価した式の値を返すので条件演算子でもあります。 ;ifの例:<syntaxhighlight lang=crystal line> a = 0.0 / 0.0 if a < 0 puts "minus" elsif a > 0 puts "plus" elsif a == 0 puts "zero" else puts a end p! ( if a < 0 "minus" elsif a > 0 "plus" elsif a == 0 "zero" else a end ) </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang="text"> NaN (if a < 0 "minus" else if a > 0 "plus" else if a == 0 "zero" else a end end end) # => NaN </syntaxhighlight> :; elsif節:ifは、オプショナルな elsif 節を設け、条件式が偽であった時に別の条件に合致した処理を実行させることが出来ます。 :; else節:ifは、オプショナルな else 節を設け、条件式が偽であった時に処理を実行させることが出来ます。 : ifは値を返すので、メソッドの実引数に使うことが出来ますし、代入演算の右辺にも使えます。 ==== 後置のif ==== Crystalには、RubyやPerlのような後置のifがあります。 ;後置のifの例:<syntaxhighlight lang=crystal> n = 0 puts "nは0" if n == 0 puts "nは1" if n == 1 </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang="text"> nは0 </syntaxhighlight> ==== unless==== '''unless'''(アンレス)は条件式によって実行・否を切り替える構造構文ですが、ifとは条件式に対する挙動が逆です。 ;unless文の例:<syntaxhighlight lang=crystal line> a = 0.0 / 0.0 unless a == 0 puts "Non-zero" else puts a end </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang="text"> Non-zero </syntaxhighlight> :; else節 : unless文は、オプショナルな else 節を設け、条件式が真であった時に処理を実行させることが出来ます。 ::また、unless文は elsif 節は持てません。 ==== 後置のunless ==== Crystalには、RubyやPerlのような後置のunlessがあります。 ;後置のunlessの例:<syntaxhighlight lang=crystal> n = 0 puts "nは0" unless n == 0 puts "nは1" unless n == 1 </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang="text"> nは1ではない </syntaxhighlight> ==== case ==== caseは、複数の条件式によって処理を降る分ける用途の為に用意されています。 ;caseの例:<syntaxhighlight lang=crystal line> n = 2 case n when 1 puts "one" when 2 puts "two" when 3 puts "three" else puts "other" end p! ( case n when 1 "one" when 2 "two" when 3 "three" else "other" end ) </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang="text"> two (case n when 1 "one" when 2 "two" when 3 "three" else "other" end) # => "two"</syntaxhighlight> :C言語系のswitch文に慣れた人はbreakがないことに気がつくと思います。Crystalのcaseはfall throughしませんし、fall throughさせる方法もありません。 ===== when節が定数でなく式を受付けます ===== [[#if|if]]を使ったコードをcaseに書き換えてみましょう。 ;case の式の省略:<syntaxhighlight lang=crystal line> a = 0.0 / 0.0 case when a < 0 puts "minus" when a > 0 puts "plus" when a == 0 puts "zero" else puts a end p! ( case true when a < 0 "minus" when a > 0 "plus" when a == 0 "zero" else a end ) </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang="text"> NaN (case true when a < 0 "minus" when a > 0 "plus" when a == 0 "zero" else a end) # => NaN </syntaxhighlight> このコードは when 節の式の値とcaseの式を <code>===</code> で比較し、最初に一致した when に対応する式が実行される事を利用しています。 ===== 型による分岐 ===== when 節が式ではなく型であった場合、caseの式を <code>is_a?</code> で評価し、最初に一致した when に対応する式が実行されます。 ;型による分岐:<syntaxhighlight lang=crystal line> p! 0.class, 0.is_a?(Object), 0.is_a?(Int32), 0.is_a?(Number), 0.is_a?(String) case 0 when String puts "String" when Number puts "Number" when Int32 puts "Int32" when Object puts "Object" else puts "Unknown" end </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang="text"> 0.class # => Int32 0.is_a?(Object) # => true 0.is_a?(Int32) # => true 0.is_a?(Number) # => true 0.is_a?(String) # => false Number </syntaxhighlight> 暗黙のオブジェクト構文を使うと :<syntaxhighlight lang=crystal line> case 0 when .is_a?(String) puts "String" when .is_a?(Number) puts "Number" when .is_a(Int32) puts "Int32" when .is_a(Object) puts "Object" else puts "Unknown" end </syntaxhighlight> :と書くことが出来ます。 :: メソッドは、.is_a? に限定しないので、 .odd? .even? .include? など Bool を返すメソッドなら何でも使えます。 when に対応する式は、1つのことが珍しくないので、その場合は省略可能な then を補うと、1行で書けます。 :<syntaxhighlight lang=crystal line> case 0 when String then puts "String" when Number then puts "Number" when Int32 then puts "Int32" when Object then puts "Object" else puts "Unknown" end </syntaxhighlight> [TODO:タプルとダミー識別子 _ ] ===== 網羅性の検査 ===== when の代わりに in を使用すると、exhaustive case 式が作成されます。exhaustive case では、必要な in 条件を省略するとコンパイル時にエラーとなります。排他的論理和では、when 節と else 節を含むことはできません。 コンパイラは、以下の in 条件をサポートしています。 :<syntaxhighlight lang=crystal line> case 0 when String then puts "String" when Number then puts "Number" when Int32 then puts "Int32" when Object then puts "Object" else puts "Unknown" end </syntaxhighlight> caseの式がユニオンの場合、各要素型を条件として使用することができる。 ;組合型チェック:<syntaxhighlight lang=crystal line> var : ( Bool | Int32 | Float64 )? var = 3.14 p! ( case var in Bool then var ? 1 : 0 in Int32 then var in Float64 then var.to_i end ) </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang="text"> (case var in Bool var ? 1 : 0 in Int32 var in Float64 var.to_i end) # => 3 </syntaxhighlight> [TODO:case in は enum にも使える] [TODO:短絡評価 && || ] === 繰返し === Crystalには、他のプログラミング言語のような[[#繰返し文|繰返し文]]と、[[#イテレーターメソッド|イテレーターメソッド]]があります。 ==== 繰返し構文 ==== Crystalの繰返し構文には、while と untilの2つがあります<ref>for も do-while も loop もありません。</ref>。 ===== while ===== while(ホワイル)は条件が'''真'''である間、式を実行しつづけます。 ;構文:<syntaxhighlight lang=crystal> while 条件式 式1 式2 : 式n end </syntaxhighlight> : Rubyと違い、条件式の後ろに <code>do</code> をつけることは出来ません。 ;while文のコード例:<syntaxhighlight lang=crystal line> i = 0 p! ( while i < 10 p! i i += 1 break i if i > 5 end ) </syntaxhighlight> : 2行目の <code>i < 5</code>が真の間、次の2行を繰返します。 : 4行目の <code>i += 1</code> は <code>i = i + 1</code> の構文糖 ;実行結果:<syntaxhighlight lang="text"> (while i < 10 p!(i) i = i + 1 if i > 5 break i end end)# => i # => 0 i # => 1 i # => 2 i # => 3 i # => 4 i # => 5 6 </syntaxhighlight> ===== until ===== until(アンティル)は条件が'''偽'''である間、式を実行しつづけます。whileとは条件に対する挙動が逆です。 ;構文:<syntaxhighlight lang=crystal> until 条件式 [ do ] 文1 文2 : 文n end </syntaxhighlight> : <code>do</code> は省略できます。 ;untilのコード例:<syntaxhighlight lang=crystal line> i = 0 until i == 3 puts i i += 1 end </syntaxhighlight> : 2行目の <code>i == 3</code>が偽の間、次の2行を繰返します。 ;実行結果:<syntaxhighlight lang="text"> 0 1 2 </syntaxhighlight> ===== for ===== Crystalにはforがありませんが、コレクションのイテレーションメソッドを使うことで繰返しを簡素に実現出来ます。 ==== Rangeオブジェクト ==== Rangeオブジェクトは、整数の区間を表し範囲演算子 <code>開始 ... 終了</code> で生成します。 ;コード:<syntaxhighlight lang=crystal> rng = 1..3 puts rng.class rng.each do | n | puts "#{n}番"; end </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang="text"> Range(Int32, Int32) 1番 2番 3番 </syntaxhighlight> ==== Arrayオブジェクト ==== Arrayオブジェクトは、任意の Crystal オブジェクトを要素として持つことができます。 配列式<code>[要素1, 要素2, … 要素n]</code> で生成します。 ;コード:<syntaxhighlight lang=crystal> animals = ["ネコ", "金魚", "ハムスター"] puts animals.class animals.each do | animal | puts "動物 #{animal}" end </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang="text"> Array(String) 動物 ネコ 動物 金魚 動物 ハムスター </syntaxhighlight> ==== NamedTupleオブジェクト ==== NamedTupleオブジェクトは、任意の Crystal オブジェクトをキーに、任意の Crystal オブジェクトを値に持つことができる連想配列です。 NamedTuple式<code>{キー1 => 値1, キー2 => 値2, キーn => 値n}</code> で生成します。 また、キーが Symbol の場合 NamedTuple式<code>{キー1: 値1, キー2: 値2, キーn: 値n}</code> で生成することが出来ます。 ;コード:<syntaxhighlight lang=crystal> animals = {cat: "ネコ", gold_fish: "金魚", hamster: "ハムスター"} puts animals.class animals.each do | en, animal | puts "動物 #{en}: #{animal}" end </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang="text"> NamedTuple(cat: String, gold_fish: String, hamster: String) 動物 cat: ネコ 動物 gold_fish: 金魚 動物 hamster: ハムスター </syntaxhighlight> このように、Crystalではforがなくてもコレクションのメソッドで同様の処理を実現できます。 ===== loop ===== loop、ありません。 while true で代用します。 ;loopの代用コード例:<syntaxhighlight lang=crystal line> i = 1 while true puts "0b%b" % i i <<= 1 break if i > 2**8 end </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang="text"> 0b1 0b10 0b100 0b1000 0b10000 0b100000 0b1000000 0b10000000 0b100000000 </syntaxhighlight> :5行目の、<code>break if i > 2**8</code>でループを脱出するようにしています。この様に break や return あるいは例外が上がらないとループは永久に終わりません。 :このコードは、Crystalにはない do-while文を模倣する例にもなっています。 ==== イテレーターメソッド ==== ===== Integer#times ===== Integer#timesは与えられたブロックをオブジェクトの示す整数値回くりかえします。 :コード<syntaxhighlight lang=crystal> 3.times{ puts "Hello, world!" } </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang="text"> Hello, world! Hello, world! Hello, world! </syntaxhighlight> ;繰返したい処理が2行以上ある場合:<syntaxhighlight lang=crystal> 3.times { puts "Hello" puts "World" puts "" } </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang="text"> Hello World Hello World Hello World </syntaxhighlight> ;ループ変数を使た例:<syntaxhighlight lang=crystal> 3.times do |i| puts "#{i}の倍は#{2 * i}" end </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang="text"> 0の倍は0 1の倍は2 2の倍は4 </syntaxhighlight> ;ブロックを伴わないtimesメソッド:<syntaxhighlight lang=crystal> iter = 3.times puts iter.class puts iter.next # 0 puts iter.next # 1 puts iter.next # 2 # puts iter.next # `next': StopIteration: iteration reached an end </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang="text"> Int::TimesIterator(Int32) 0 1 2 </syntaxhighlight> : Integer#times にブロックを渡さないと、Int::TimesIterator([T])オブジェクトが返ります。 : Int::TimesIterator([T])オブジェクトは外部イテレーターと呼ばれnextメソッドで反復を行えます。 == 脚註 == <references /> == 外部リンク == * [https://crystal-lang.org/ The Crystal Programming Language] {{---}} 公式サイト ** [https://crystal-lang.org/api/1.5.0/ Crystal 1.5.0 リファレンス] ** [https://play.crystal-lang.org/#/cr Compile & run code in Crystal] {{---}} playground [[Category:Crystal|*]] [[Category:プログラミング言語]] {{NDC|007.64}} jrz8g4lhvmg0kqnysglnmdpgwmerw31 Wikibooks:GUS2Wiki 4 35248 205540 205483 2022-07-19T19:27:47Z Alexis Jazz 56315 Updating gadget usage statistics from [[Special:GadgetUsage]] ([[phab:T121049]]) wikitext text/x-wiki {{#ifexist:Project:GUS2Wiki/top|{{/top}}}} 以下のデータは 2022-07-17T05:21:16Z に最終更新されたキャッシュです。 {| class="sortable wikitable" ! ガジェット !! data-sort-type="number" | 利用者の数 !! data-sort-type="number" | 活動中の利用者 |- |Navigation popups || 79 || 1 |- |edittop || 52 || 1 |- |gadget-exlinks || 45 || 0 |- |gadget-UTCLiveClock || 43 || 0 |- |wikEd || 42 || 1 |- |gadget-JSL || 18 || 0 |- |gadget-modernskin-thunks || 12 || 0 |- |gadget-Blackskin || 7 || 0 |- |gadget-removeAccessKeys || 7 || 0 |} * [[特別:GadgetUsage]] * [[w:en:User:Alexis Jazz/GUS2Wiki|GUS2Wiki]] alu5sxpewok4gjf1h6m1trj0q6srih8 利用者・トーク:Honooo/MSW&MSGnl 3 35250 205539 2022-07-19T17:05:45Z Honooo 14373 白紙ページ制作 wikitext text/x-wiki phoiac9h4m842xq45sp7s6u21eteeq1 利用者:大西 たくみ 2 35251 205549 2022-07-20T02:26:27Z 大西 たくみ 69311 ページの作成:「あ」 wikitext text/x-wiki hvd23q5tbfujxurzgzzejnfrhqh3rnk