Wikibooks
jawikibooks
https://ja.wikibooks.org/wiki/%E3%83%A1%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%82%B8
MediaWiki 1.47.0-wmf.3
first-letter
メディア
特別
トーク
利用者
利用者・トーク
Wikibooks
Wikibooks・トーク
ファイル
ファイル・トーク
MediaWiki
MediaWiki・トーク
テンプレート
テンプレート・トーク
ヘルプ
ヘルプ・トーク
カテゴリ
カテゴリ・トーク
Transwiki
Transwiki‐ノート
TimedText
TimedText talk
モジュール
モジュール・トーク
Event
Event talk
プログラミング
0
846
299674
293514
2026-05-20T00:34:09Z
~2026-30065-60
91535
/* プログラミング言語 */ +2
299674
wikitext
text/x-wiki
{{Pathnav|メインページ|工学|情報技術|frame=1}}
プログラミングとは、コンピューターに特定のタスクを実行させるための命令や指示を記述する作業を指します。コンピューターはプログラムと呼ばれる一連の命令を実行することで機能します。これらの命令は、プログラミング言語を使って記述されます。
具体的には以下のようなことが含まれます。
; 問題の分析と設計
: プログラムを作成する前に、解決したい問題を分析し、アルゴリズム(解決方法)を設計します。
; コーディング
: 設計したアルゴリズムをコンピューターが理解できる形式の命令(プログラミング言語)で記述します。
; テストとデバッグ
: 作成したプログラムが意図した通りに動作するかをテストし、エラー(バグ)があれば修正します。
; 実装とデプロイ
: テストを経て完成したプログラムを実際のシステムやアプリケーションに実装し、デプロイします
; 保守とアップデート
: デプロイ後も、新しい要求や環境の変化に合わせてプログラムを保守・更新していきます。
プログラミングには様々な言語とツールが使われますが、根本的には以下の3つの基本概念を扱います。
; シーケンス(順次実行) : 命令を順に実行すること
; 選択制御(条件分岐) : 条件に応じて処理を変えること
; 反復制御(ループ) : 同じ処理を繰り返し実行すること
プログラミングの目的は、人間にとって複雑で手間のかかるタスクをコンピューターに自動化させることにあります。適切にプログラミングされたコンピューターは、高速かつ正確に作業を行うことができます。
== コンピュータ言語 ==
{{進捗状況}}
コンピュータ言語(Computer Language)は、コンピュータや計算機と人間の間で情報をやり取りするための形式言語の総称です。コンピュータ言語は、コンピュータが理解しやすい形式で命令や指示を表現するために設計されています。コンピュータ言語は、大きく以下の3つのカテゴリーに分類されます:
; 機械語(Machine Language)
: コンピュータが直接理解できる最も基本的な言語形式で、バイナリ(0と1の組み合わせ)で表されます。
: 各命令やデータが特定のハードウェアの命令セットに対応しており、特定のプロセッサやアーキテクチャに固有です。
; アセンブリ言語(Assembly Language)
: 機械語に対応するニーモニック(助記符)を使用して記述される低水準言語です。
: アセンブリ言語は機械語と1対1で対応しており、人間が理解しやすく、かつコンピュータが直接実行可能です。
; 高水準言語(High-Level Language)
: 人間にとって理解しやすく、抽象度が高い形式で記述されるプログラミング言語です。
: 高水準言語は計算や処理の複雑さを隠蔽し、開発者がプログラムのロジックや機能に集中できるように設計されています。
: 高水準言語には、Python、Java、C++、JavaScript、C#などがあります。
また、広義のコンピュータ言語には、プログラミング言語だけでなく、データベースクエリ言語やマークアップ言語など、コンピュータとのインタラクションや情報の記述に使われる言語全般を指すこともあります。
# データベースクエリ言語(Query Language)
#: データベース管理システム(DBMS)とやり取りするための言語で、データの問い合わせや操作を行います。代表的な言語にSQL(Structured Query Language)があります。
# マークアップ言語(Markup Language)
#: 文書やデータの構造や意味を記述するための言語で、タグや要素を使って情報をマークアップします。代表的な言語にHTML(HyperText Markup Language)やXML(eXtensible Markup Language)があります。
これらのコンピュータ言語は、それぞれ異なる目的や文脈で使用され、コンピュータとのインタラクションやデータ処理を可能にします。
{{Wikipedia|コンピュータ言語}}
{{Main|コンピュータ言語}}
=== アセンブリ言語 ===
* [[x86アセンブラ]] {{進捗|50%|2020-07-11}}
* [[CASL]] - 国家試験「[[基本情報技術者試験]]」に出題するために開発されたアセンブリ言語。
----
<categorytree mode="pages" hideroot="on"> アセンブリ言語 </categorytree>
=== プログラミング言語 ===
<!--
:(※編集者への注意)言語名はなるべくアルファベット順に並べてください。
* [[ActionScript]] :死語 -->
* [[Ada]]
* [[ALGOL]]
* [[AWK]]
* [[BASIC]] {{進捗|75%|2014-02-09}}
** [[プチコン|SMILEBASIC]]
** ※ VBAについては別セクションで紹介。
* [[Bash_Shell_Scripting]]
* [[C++]]
** [[More C++ Idioms]]
* [[C言語]] {{進捗|75%|2020-07-11}}
* [[C Sharp|C#]]
* [[COBOL]]
* [[D言語]] {{進捗|50%|2020-07-11}}
* [[Dart]]
* [[Fortran]] {{進捗|00%|2014-02-09}}
* [[GNU Octave]]
* [[Go]] {{進捗|25%|2020-06-19}}
* [[Haskell]]
* [[HSP]]
* [[Java]] {{進捗|25%|2020-07-11}}
* [[JavaScript]] {{進捗|75%|2020-07-11}}
* [[Kotlin]] {{進捗|25%|2020-07-11}}
* [[Lisp]] {{進捗|00%|2014-02-09}}
* [[Logo]]
* [[MathML]] {{進捗|00%|2020-05-12}}
* [[Nim]]
* [[Objective-C]]
* [[Odin]]
* [[OpenOffice.org Basic]]
* [[Perl]] {{進捗|50%|2020-06-19}}
* [[PHP]] {{進捗|50%|2020-06-19}}
* [[PL/I]]
* [[PL/M]]
* [[Prolog]]
* [[Python]] {{進捗|75%|2020-06-19}}
* [[Ruby]]
* [[Rust]]
* [[Scala]]
* [[scrach3]]
* [[Scheme]]
* [[SQL]] {{進捗|25%|2020-07-11}} ※ MySQL の単元は[[プログラミング#データベース|別の節]]でリンクを記載。
* [[Swift]]
* [[TypeScript]]
* [[V]]
* [[Zig]]
----
<categorytree mode="pages" hideroot="on"> プログラミング言語 </categorytree>
=== マークアップ言語 ===
----
<categorytree mode="pages" hideroot="on"> マークアップ言語 </categorytree>
=== 問い合わせ言語 ===
----
<categorytree mode="pages" hideroot="on"> 問い合わせ言語 </categorytree>
== データベース ==
=== 仕様 ===
* [[SQL]] {{進捗|25%|2020-07-11}}
=== 実装 ===
* [[MySQL]] {{進捗|25%|2020-07-11}} (mariaDB もココ)
* [[PostgreSQL]]
* [[SQLite]]
== 低レイヤープログラミング ==
低レイヤープログラミングとは、コンピューターのハードウェアに近い低レベルの抽象化層でプログラミングを行うことを指します。
具体的には以下のようなプログラミングが低レイヤープログラミングに含まれます。
* アセンブリ言語プログラミング
* システムプログラミング (OSカーネル、デバイスドライバ、ファームウェアなど)
* ベアメタルプログラミング (ハードウェアに直接プログラムを展開)
低レイヤープログラミングの特徴は、以下のようなことが挙げられます。
# ハードウェアの動作を直接制御できる
# プログラムの実行効率が高い
# メモリアクセスなどの低レベルな操作が可能
# 抽象化の層が薄いため、ハードウェア依存性が高い
一方で、プログラミングの複雑さが高く、移植性に乏しい、デバッグが難しいなどの課題もあります。
低レイヤープログラミングは、OSやデバイスドライバ、組み込みシステム、リアルタイムシステムなどで重要な役割を果たしますが、通常のアプリケーション開発では高級言語を使うことが一般的です。
=== ファームウェア ===
ファームウェアとは、電子機器の内部に組み込まれているソフトウェアのことです。ハードウェアを制御し、機器の基本的な動作を実現するプログラムです。
具体的な特徴は以下の通りです。
* 電子機器に予めインストールされており、機器の起動時に読み込まれる
* メモリ(ROM、フラッシュメモリなど)に保存されている
* ハードウェアの低レベルの制御を行う
* 機器固有の機能を実現するため、機器ごとにカスタマイズされる
* ファームウェアのアップデートにより機能拡張や不具合修正を行うことができる
例えば、スマートフォンのOSやデジタルカメラの制御ソフトウェア、ルーターの設定ユーティリティなどがファームウェアに該当します。機器の種類によってファームウェアの役割は異なりますが、ハードウェアとソフトウェアの橋渡し的な役割を果たすものと言えます。
* [[UEFIアプリケーションの書き方]] {{進捗|00%|2020-07-11}}
=== 機械語 ===
機械語は、コンピュータが直接理解し実行するための最も基本的なプログラム言語です。機械語はコンピュータのプロセッサが解釈できる形式で、バイナリコード(0と1の列)で表されます。機械語は、コンピュータ内部の命令セットアーキテクチャに依存し、それぞれの命令は特定の操作(加算、論理演算など)やデータの移動を示します。
* [[機械語]] {{進捗|25%|2020-07-11}}
=== アセンブリ言語 ===
アセンブリ言語は機械語に比べてわずかに高い抽象化レベルの言語です。アセンブリ言語のコードは、アセンブラによって機械語に変換されます。
アセンブリ言語では、機械語の命令に人間が判読できる記号的な表現(ニーモニック)を対応させています。例えばADDは加算命令、MOVはデータ移動命令などです。
このように、アセンブリ言語は機械語よりは人間が理解しやすい言語ですが、依然としてCPUの低レベル命令を直接書く必要があり、高級言語に比べると生産性は低くなります。
* [[アセンブリ言語]]
=== その他 ===
* [[オペレーティングシステム]] {{進捗|25%|2020-07-11}}
== ハードウェア記述言語 ==
* [[VHDL]]
== 各論 ==
=== フレームワークやライブラリ ===
* [[Vulkan]]
* [[SPIR-V]]
* [[OpenGL]]
* [[OpenGLプログラミング]]
* [[Xプログラミング]]
* [[GNOMEフレームワーク]] {{進捗|25%|2020-07-11}}
* [[GTKプログラミング]] {{進捗|25%|2020-07-11}}
* [[Qtプログラミング]] {{進捗|25%|2020-07-11}}
* [[CGI]] {{進捗|50%|2020-07-11}}
* <del>[[Chainer]]</del>'''開発終了'''
=== マークアップ言語および関連技術 ===
* [[HTML]] {{進捗|75%|2020-07-11}}
* [[MML]]
* [[SVG]] {{進捗|50%|2020-07-11}}
* [[Markdown]]
* [[Asciidoc]]
=== ソケットプログラミング ===
* [[WinSock]] {{進捗|100%|2020-07-11}}
* [[Unixソケットプログラミング]] {{進捗|100%|2020-07-11}}
== Office マクロ ==
* [[Visual Basic for Applications]] (VBA)
* [[Pythonマクロ|LibreOffice Python マクロ]]
* [[OpenOffice.org Basic]]
** [[OpenOffice.org_Calc_Basic | OpenOffice.org Calc Basic]]
** [[OpenOffice.org_Base_Basic | OpenOffice.org Base Basic]]
== その他 ==
* [[Windows API]] {{進捗|25%|2020-07-11}}
* [[ゲームプログラミング]] {{進捗|25%|2020-07-11}}
* [[OSS開発ツール]] {{進捗|25%|2020-07-11}}
* [[基本情報技術者試験]] - 国家試験([[情報処理技術者]])。[[基本情報技術者試験/ソフトウェア開発|プログラミング]]に関する問題が出題される。
* [[難解プログラミング言語の作り方]]
== 基本的な概念 ==
以下に、プログラミングに関連する基本的な概念とプロセスをいくつか説明します。
;プログラミング言語:プログラミング言語は、人が理解しやすい形でコンピューターに指示を与えるための記述手段です。代表的なプログラミング言語には、Python、Java、C++、JavaScript、Rubyなどがあります。それぞれの言語には特定の用途や特徴があります。
;アルゴリズム:アルゴリズムは、特定の問題を解決するための手順や手法のセットです。プログラマはアルゴリズムを設計し、それをプログラムの中に実装します。良いアルゴリズムの選択は、プログラムの性能や効率に大きな影響を与えることがあります。
;データ構造:データ構造は、データを効率的に保存・管理・操作するための方法です。配列、リスト、ツリー、ハッシュテーブルなどがあり、プログラマは適切なデータ構造を選択してプログラムを設計します。
;プログラムの設計と実装:プログラミングは、問題解決のためにアルゴリズムとデータ構造を使用してプログラムを設計し、それを実際のプログラミング言語で実装するプロセスです。この際、シンタックス(文法)やセマンティクス(意味論)といった言語の特性を理解して適切にコードを書く必要があります。
;デバッグとテスト:プログラムが完成したら、デバッグとテストが行われます。デバッグはプログラム内のエラーや不具合を見つけて修正するプロセスであり、テストはプログラムが正確に動作するか確認するプロセスです。
;ソフトウェアエンジニアリング:プログラミングはソフトウェアエンジニアリングの一環であり、プログラミングだけでなく、要件分析、設計、テスト、メンテナンスなどソフトウェア開発ライフサイクル全体を包括します。
プログラミングはコンピューターサイエンスの中心的な要素であり、コンピューターを活用して問題を解決するための重要なスキルとなっています。
{{See|データ構造とアルゴリズム}}
プログラミングは、その周辺にさまざまな技術やツールが存在し、これらはプログラマーや開発者が効率的に作業を進めるために利用されます。
以下に、プログラミングの周辺技術や関連する領域をいくつか挙げてみましょう。
;統合開発環境(IDE):IDEは、プログラムの開発を支援するための統合ツールセットです。コードの編集、デバッグ、ビルド、プロジェクト管理などの機能を提供し、開発者が効率的かつ便利に作業を進めることができます。例えば、Visual Studio、Eclipse、IntelliJ IDEAなどがあります。
;バージョン管理システム:バージョン管理システムは、コードの変更履歴を管理し、チームでの協力やコードの追跡を容易にします。GitやSubversionなどがよく使われます。
;デバッグツール:デバッグツールは、プログラムの実行時に発生するエラーや不具合を特定して修正するのに役立ちます。デバッガーはコードのステップ実行や変数の監視などを可能にします。
;コンテナ技術:コンテナ技術(Dockerなど)は、アプリケーションやサービスを環境から切り離し、独立して動作させるための技術です。これにより、環境依存性を減少させ、開発から本番環境までの一貫性を確保します。
;仮想化技術:仮想化技術は、物理的なハードウェア上に仮想的な環境を作り出す技術で、開発環境のセットアップやテスト、サーバーの効率的な利用に役立ちます。仮想マシン(VM)や仮想ネットワークなどが含まれます。
;テストフレームワーク:テストフレームワークは、プログラムが正しく動作しているかどうかを確認するためのテストを効率的に実施するためのツールやライブラリです。JUnit(Java向けの単体テストフレームワーク)、pytest(Python向けのテストフレームワーク)などがあります。
;クラウドプラットフォーム:クラウドプラットフォームは、プログラムやアプリケーションをクラウド上で実行するための基盤を提供します。AWS、Azure、Google Cloud Platformなどがクラウドプロバイダーの例です。
;API(Application Programming Interface):APIは、ソフトウェアコンポーネント同士が情報をやり取りするためのインターフェースを提供します。外部のサービスやライブラリを利用するために重要な概念です。
これらの技術やツールは、プログラミングをより効率的かつ効果的に行うために欠かせないものであり、コンピューターサイエンスやソフトウェアエンジニアリングの領域で幅広く活用されています。
== 最初に学ぶプログラミング言語の選び方 ==
プログラミング言語の選択については、学ぶ目的や環境に応じて異なる選択肢があります。以下は、初めて学ぶプログラミング言語を選ぶ際に考慮すべきいくつかのポイントです。
;目的に合った言語を選ぶ:プログラミング言語には、それぞれ得意とする分野があります。例えば、Web開発にはJavaScript、データ分析にはPython、システムプログラミングにはCやC++などがよく使われます。学ぶ目的に合った言語を選ぶことで、効率的に学ぶことができます。
;学習リソースの充実度:学習リソースが豊富であるかどうかも、言語選択において重要なポイントです。初心者向けの学習リソースが充実している言語を選ぶことで、スムーズな学習ができるでしょう。また、オンライン上には無料で利用できる学習リソースも多数存在するため、選択肢を広げることも大切です。
;コミュニティの活発さ:言語のコミュニティが活発であれば、初心者でも質問や情報収集がしやすく、学習のサポートが受けやすいです。また、コミュニティに参加することで、プログラミングに対するモチベーションを高めることもできます。
;言語の文法の理解しやすさ:初めて学ぶプログラミング言語は、その文法がわかりやすいものが望ましいです。理解しやすい文法を持つ言語を選ぶことで、学習のスピードが上がるでしょう。
;プログラミング言語の人気度:人気のある言語は、コミュニティの活発さや学習リソースの充実度が高い傾向があります。また、人気のある言語は求人市場でも需要が高いため、将来的なキャリアアップの可能性を見据えて選ぶこともできます。
=== 共通知識 ===
* [[プログラミング/初歩的な課題集]]
* [[プログラミング/共通知識]]
* [[オブジェクト指向]]
== プログラミングに関するトピック ==
* [[/Null安全性|Null安全性]]
* [[/型安全性|型安全性(Type Safety)]]
* [[/メモリ安全性|メモリ安全性(Memory Safety)]]
* [[/スレッド安全性|スレッド安全性(Thread Safety)]]
* [[/セキュリティ|セキュリティ]]
* [[/make|make]]
* [[/ジェネリックプログラミング|ジェネリックプログラミング]]
* [[/ダックタイピング|ダックタイピング]]
* [[/テンソル|テンソル]]
* [[/データ構造|データ構造]]
* [[/プログラミング・パラダイム|プログラミング・パラダイム]]
* [[/リテラル|リテラル]]
* [[/列挙型|列挙型]]
* [[/リフレクション|リフレクション]]
* [[/型推論|型推論]]
* [[/変数|変数]]
* [[/式と演算子|式と演算子]]
* [[/固定幅整数|固定幅整数]]
* [[/浮動小数点数|浮動小数点数]]
* [[/多倍長整数|多倍長整数]]
* [[/短絡評価|短絡評価]]
* [[/連想配列|連想配列]]
* [[/遅延評価|遅延評価]]
* [[/配列|配列]]
* [[/関数型プログラミング|関数型プログラミング]]
== カテゴリツリー ==
{{#カテゴリツリー:プログラミング}}
== 下位階層のページ ==
<div style="max-height: 24rem; overflow-y: scroll;">
{{特別:前方一致ページ一覧/{{PAGENAME}}/|hideredirects=yes|stripprefix=yes}}
</div>
{{DEFAULTSORT:ふろくらみんく}}
[[Category:プログラミング|*]]
[[Category:プログラミング言語]]
[[Category:計算機科学]]
[[Category:情報技術]]
{{NDC|007.64}}
92uvba8tmqnppfj0mfas31oy4mvuokj
高等学校物理基礎/電気と磁気
0
1939
299685
299324
2026-05-20T10:02:15Z
Nermer314
62933
299685
wikitext
text/x-wiki
{{pathnav|高等学校の学習|高等学校理科|高等学校物理|高等学校 物理基礎|pagename=電気と磁気|frame=1|small=1}}
本項は[[高等学校 物理基礎]]の電気と磁気の解説である。
==電気==
===生活の中の電気===
====電気と生活====
現代社会において、私たちの日常生活には電気が欠かせない。多くの製品が電気を用いて動作しており、その理由はさまざまだが、主な要因は以下の通りだ。
まず第一に、電気は様々な別のエネルギー形態に変換できることが挙げられる。例えば、電熱線を使用すれば電気エネルギーを熱エネルギーに変換し、暖房や調理などに利用することができる。また、電球や発光ダイオード(LED)を使用すれば、電気エネルギーを光エネルギーに変換して照明を行うことができる。さらに、電動機を使用すれば、電気エネルギーを機械的な運動エネルギーに変換して様々な機器や輸送手段を動かすことができる。
次に、電池やコンデンサを使用してエネルギーを貯蔵し、持ち運ぶことができる点も重要だ。これにより、モバイルデバイスや携帯電話など、電源に接続されていない場所でも電気を利用することが可能となる。また、電線を使用して長距離を送電することができるため、発電所から家庭や工場まで電気を供給することが可能だ。
さらに、電子製品は計算能力や信号の伝達能力が優れており、情報技術や通信分野で広く利用されている。また、電気は比較的に安全に取り扱うことができ、少量のエネルギーでも効率的に利用することができる点も大きな利点だ。
このように、電気は私たちの生活において欠かせないエネルギー源となっており、様々な面で便利さや効率性を提供している。
====電動機と発電機====
電動機と発電機は、現代の電気工学において重要な役割を果たしている。これらの装置は、電気エネルギーと機械的な運動エネルギーの相互変換を可能にし、さまざまな産業や日常生活において使用されている。
;電動機:
:電動機({{Lang-en-short|electric motor}})は電気エネルギーを機械的な運動に変換する装置だ。一般的な電動機は、導線が磁場内で動くことによって発生する力([[#ローレンツ力|ローレンツ力]])を利用して動作する。この原理に基づき、電動機は直流電動機と交流電動機の二種類に分けられる。直流電動機は直流電源からの電力を使用し、交流電動機は交流電源からの電力を使用する。電動機は、工場の機械や産業用機器、家庭用家電製品など、さまざまな用途に広く使用されている。
;発電機:
:発電機({{Lang-en-short|generator}})は、運動エネルギーを電気エネルギーに変換する装置だ。一般的な発電機は、導線が磁場内で動くことによって電気を発生させる。主に回転運動を利用して電気を生成するため、発電機は機械的なエネルギーを電気エネルギーに変換する発電所で広く使用されている。発電所では、さまざまなエネルギー源(水力、風力、火力、原子力など)が利用され、それらの運動エネルギーが発電機によって電気エネルギーに変換される。
両者は相互に関連しており、電動機は発電機と同様の原理で動作しますが、逆のプロセスを行いる。つまり、電動機は電気エネルギーを機械的な運動に変換し、発電機は機械的な運動を電気エネルギーに変換する。このように、電動機と発電機は現代の産業や生活において欠かせない装置であり、エネルギーの効率的な利用に貢献している。
====直流・交流と電波====
直流と交流は電気の流れ方を表す用語であり、また電波は電磁波の一種である。以下にそれぞれの概要を示す。
; 直流 (Direct Current, DC): 電池などの電源から供給される電流のうち、電極の正極から負極へ一方向に流れる電流を指す。直流は一定の電圧と極性を持ち、一定の方向に流れる特性を持つ。直流の利点は安定性と制御の容易さであり、電池式機器や一部の電子機器で使用される。
; 交流 (Alternating Current, AC): 発電所などの電源から供給される電流のうち、定期的に正負が逆転する電流を指す。交流は定期的に波形を変化させるため、電力の送電や変圧、変換が容易であり、長距離送電に適している。また、家庭や工業用電気回路で広く使用されている。
実際には、直流と交流は機器や回路によって相互変換されることがある。
例えば、ダイオードを使用して交流を直流に変換する整流が行われる。
; 電波 (Electromagnetic Waves)
: 電波は、電磁波の一種であり、電場と磁場が周期的に振動する波動だ。電波は様々な周波数を持ち、それによって異なる特性や用途がある。電波は主に放送、通信、無線通信、レーダーなどの分野で広く利用されている。
: 電波の振動は空間を伝播し、電磁波として進行する。電波は真空中や空気中を伝播するため、導体を必要としない。これは、電波が電子の移動に依存せず、電場と磁場の振動によって生じるためだ。
: 電波は周波数によって分類される。低周波数の電波は、主にAMラジオや地上波テレビなどの放送に使用される。一方、高周波数の電波は、FMラジオや携帯電話、Wi-Fi、衛星通信などの通信に使用される。また、極超短波の電波は、レーダーやミクロ波オーブンなどに利用される。
: 電波はその特性から、情報の送受信や物体の探知、測定などに幅広く応用されている。そして、現代の通信技術や無線技術の発展において重要な役割を果たしている。
== 静電気 ==
プラスチックの下敷きなどで髪をこすると帯電する現象などのように、物質が電気を帯びることを'''帯電'''という。物体をこすって発生させる静電気を'''摩擦電気'''という。
ガラス棒を絹の布でこすると、ガラス棒は正の電気に帯電し、絹は負の電気に帯電する。
電気の量を'''電荷'''あるいは'''電気量'''という。
電荷の単位は'''クーロン'''である。クーロンの記号はCである。
静電気による電荷どうしに働く力を'''静電気力'''という。
なお、帯電していない状態を電気的に中性である、という。
金属のように、電気を通せる物体を'''導体'''という。プラスチックやガラスやゴムのように電気を通さない物質を'''絶縁体'''あるいは'''不導体'''という。
金属は導体である。
電気の正体は'''電子'''という粒子である。この電子は負電荷を帯びている。(電子の電荷が負に定義されているのは、人類が電子を発見する前に電荷の正負の定義が行われ、あとから電子が見つかった際に電子の電荷を調べたら負電荷だったからである。)
[[File:Metalic bond model.svg|thumb|400px|金属中での自由電子の模式図]]
金属が導体なのは、金属中の電子は、もとの原子を離れて、その金属全体の中を自由に動けるからである。金属中の電子のように、物質中を自由に動ける状態の電子を、'''自由電子'''という。
電流とは、自由電子が移動することである。
いっぽう、絶縁体は、自由電子をもたない。絶縁体の電子は、すべて、もとの原子に束縛されて閉じ込められていて、自由には動けない。
正電荷とは、物質に電子が欠乏している状態である。
負電荷とは、物質が電子を多く持っている状態である。
帯電していない絶縁体の物質をこすりあわせて、両方を摩擦電気に帯電させた場合、片方は正電荷を生じ、もう片方の物質は負電荷を生じる。このとき、発生した正電荷の大きさと負電荷の大きさは同じである。
これは、電子が移動して、片方の物質は電子が不足し、もう片方は等量の電子が過剰になっているからである。
このように、電子は生成も消滅もしない。これを'''電荷保存則'''あるいは'''電気量保存則'''と言う。
=== 静電誘導 ===
[[Image:Electrostatic induction.svg|thumb|upright=1.5|導体は、近くの電荷によって表面に電荷が誘導される。物体内部の静電気力の大きさはゼロである。]]
電気的に中性であった導体の物質(仮に物質Aとする)に帯電した別の物質(仮に物質Bとする)を接触させずに近づけると、物質Aには、帯電物質Bの電荷に引き寄せられて、物体Aの内部で反対符号の電荷が帯電物体Bに近い側の表面に生じる。また、帯電物体Bと同じ電荷は反発するので、物体A内部の帯電物体Bとは遠い側の表面に生じる。
このような現象を'''静電誘導'''という。静電誘導で生じた電荷の正電荷の量と負電荷の量は等量である。(電気量保存の法則)
導体の内部に静電気力は無い。もしあったとすると、自由電子などの電荷が動き、電流が流れ続けることになるが、そのような現象は実在しないので不合理になる。したがって、導体の内部に静電気力は無い。
表面に電荷が集まるのは、導体の内部に静電気力を作らせないためである。したがって静電誘導で引き寄せられる電荷の大きさは、外部から導体内部への静電気力を打ち消すだけの大きさである。
この導体内部の電荷がゼロになる性質を応用すると、中空の導体で出来た物体を用いて、静電気力を遮蔽することができる。これを静電遮蔽という。
=== 誘電分極 ===
[[File:Pith ball electroscope operating principle.svg|thumb|300px|誘電分極の概念図]]
絶縁体に電荷を近づけた場合は、導体とは違い、物体Aの内部の電子は自由に表面には集まれないが、物体内部の原子の正負の電荷の極性を持った部分が、外部の静電気力に引き寄せられるように、近づけた電荷に近い側には異種の電荷が生じ、遠い側には、同種の電荷が生じる。
原子や分子が外部の静電気力によって、正負の電荷の部分が生じることを'''分極'''といいい、外部の電化によって起こる、このような分極のしかたを'''誘電分極'''という。
絶縁体は、静電気力にさらされると誘電分極を行うので、絶縁体のことを'''誘電体'''ともいう。
導体に静電誘導された正負の電荷は、導体を切断などをすれば正電荷と負電荷を別個に取り出すことができる。しかし誘電体の正負の電荷は、原子や分子と密接に結びついているため、正負の電荷を分かれて取り出すことは出来ない。
{{clear}}
==電場と磁場==
===電荷と電場===
====電荷====
[[Image:Static repulsion.jpg|thumb|セロテープの同じ電荷による反発]]
[[Image:Static attraction.jpg|thumb|セロテープの異電荷よる引き寄せ]]
ある物質が電気を帯びている(帯電している)とき、その帯電の大小の程度を'''電荷'''という。さまざまな物質をいろいろな方法で帯電させた結果、電荷には、帯電した2個のものどうしを近づけた時に引っ張り合うもの(引力が働く)と反発しあうもの(斥力がはたらく)の2種類があることが分かった。
このような、帯電している物体に働く力を'''静電気力'''という。
べつの帯電したものを、他にもいくつか用意して、近づけて実験する2個の物体の組み合わせを変えると、組み合わせによって、2個の物体どうしに引力が働く場合もあれば、斥力が働く場合もあることが分かった。この引力と斥力の関係は、帯電した電荷の種類に応じることがわかった。
==== 正電荷と負電荷 ====
結論を言うと、電荷には正負の2種類がある。正の電荷どうしの物体を近づけたときは反発しあう。負の電荷どうしを近づけたときも反発しあう。正と負の電荷を近づけた時には引力が働く。
つまり、同符号の電荷を近づけた場合は、反発力が生じる。異符号の電荷を近づけた場合は、引力が生じる。
{{clear}}
==== 静電気力 ====
[[File:Coulomb.jpg|thumb|150px|クーロンの肖像。Charles Augustin de Coulomb]]
[[Image:Bcoulomb.png|thumb|left|300px|クーロンが静電気力の測定に用いた、ねじり計り]]
[[File:Coulomb torsion.svg|thumb|300px|]]
静電気どうしの力の強さは、実験的には、電荷の間に働く力は、重力の場合と同様に力を及ぼし合う2物体の間の距離の2乗に反比例することが知られている。更に、電荷の大きさが大きいほど電荷間に働く力が大きいことも考慮すると、距離''r''だけ離れてそれぞれが電荷<math>q _1</math>、<math>q _2</math>を持っている2物体の間に働く力''F''は、
:<math>
F = k\frac{q_1 q_2}{r^2} = \frac 1 {4\pi\epsilon} \frac {q _1 q _2}{r^2}
</math>
で与えられる。これを'''クーロンの法則'''という。ここで、<math>k</math>は比例定数であり、両電荷の周囲にある物体の種類により変化する定数である。真空中での電場を考えた場合のkの値は、
:<math>k_0 = 9.0 \times 10^9 </math> N・m<sup>2</sup>/C<sup>2</sup>(クーロンの比例定数)
である。また、<math>\epsilon</math>は後ほど登場する誘電率と呼ばれる物理定数である。誘電率は、両電荷の周囲にある物体の種類により変化する定数である。誘電率については、この文を初めて読んだ段階では、まだ知らなくても良い。のちに物理IIで誘電率を詳しく解説する。
誘電率<math>\epsilon</math>とクーロンの比例定数kには上式の関係
:<math>k= \frac 1 {4\pi\epsilon}</math>
がある。
物体のまわりに蓄積されるものを'''電荷'''と呼ぶ。電気力によって反発しあったり、引きつけあったりする物体を'''電荷を持つ'''物体と呼ぶ。また、ここで観察される静電気力を、'''クーロン力'''と呼ぶことがある。
2個の電荷どうしがおよぼす力は同じであり、したがって'''作用・反作用の法則'''に従っている。
[[Image:Coulombslawgraph.svg|thumb|center|300px|2個の点電荷の間に働く力の関係。<br>クーロンの法則によるとF1=F2となる。]]
ここで、電荷の単位はCで与えられる。記号のCは「クーロン」と読む。
{{-}}
----
*例題
[[File:クーロンの法則 例題1.svg|thumb|クーロンの法則 例題1]]
図のように、2本の糸に、それぞれ同じ質量mで、同じ符号と大きさの電荷qの球が、ぶらさがってる。これは、クーロン力で反発するので、図のように、糸が角度θをなす。
このとき、質量mによる重力と、電荷qによるクーロン力との関係について、式を立てよ。なお、必要ならば、糸の張力はTとすること。
{{-}}
解法
:[[File:クーロンの法則 例題1 解法.svg|thumb|left|400px|クーロンの法則 例題1 解法]]
図のような位置関係になるので、図のように式を立てればよい。
:※ このように、電気磁気学の問題では、図をきちんと書いて、解法を考える必要がある。数式だけで計算すると、立式ミスなどの原因になる。
{{-}}
----
※ 上記の2本の糸にぶらさがった球のクーロン力の例題は、電気磁気学のどの入門書にもあるような典型的な問題であるので、読者はきちんと理解すること。
{{-}}
----
*問題例
**問題
電荷<math>q _1</math>, <math>q _2</math>の間の距離がrの場合と2rの場合では、間に働く力の大きさはどちらがどれだけ大きいか答えよ。
また、距離が2rの時の2点間の力の大きさを答えよ。
**解答
クーロン力は、物体間の距離の逆2乗に比例するので、距離が2rの時は、rの時の大きさの<math>\frac 1 4</math>となる。また、働く力の大きさは、クーロン力の式を用いて、
:<math>
f = \frac 1 {4\pi\epsilon _0} \frac {q _1 q _2}{4r^2}
</math>
となる。
----
====電場 ====
既に、ある電荷Aのまわりの別の電荷Bには、その電荷からの距離の逆2乗に比例した力がかかることを述べた。
[[File:電場の重ね合わせ.svg|thumb|400px|電場の重ね合わせ]]
ここで、電荷Bが受ける力は、その電荷Bの大きさに比例することを合わせて考えると、その電荷Bの大きさにかかわらず、電荷Aの大きさだけで決まる量を導入しておくと都合がよい。ここで、そのような量として'''電場'''(でんば)を導入する。このとき、電場<math>\vec E</math>の中にある電荷<math>q</math>に働く力<math>\vec F</math>は、
:<math>\vec F = q \vec E</math>
で与えられる。電場は単位電荷に働く力と考えることもでき、電場の単位はN/Cである。「電場」は、「電界」(でんかい)とも呼ばれる。
(日本の物理学では「電場」と呼ぶことが多く、また、日本の電気工学では「電界」と呼ばれることが多い。英語では“electric field”で共通している。)
上のクーロン力の結果と合わせると、電荷Aのまわりに別の電荷が存在しないとき、電荷<math>q</math>の電荷がまとう電場<math>\vec E</math>は、
:<math>\vec E = \frac 1 {4\pi\epsilon _0} \frac {q}{r^2} \vec e _r</math>
で与えられる。ただし、rは電荷からの距離であり、<math>\vec e _r</math>は、電荷とある点を結んだ直線上で、電荷と反対方向を向いた単位ベクトルである。
電荷の回りの電場は、平面上で放射状のベクトルとなることに注意。
{|
| [[File:VFPt minus thumb.svg|150px|thumb|負電荷の周りの電場の向き]]
| [[File:VFPt plus thumb.svg|150px|thumb|正電荷の周りの電荷の向き]]
|}
電場はベクトルである。電荷が2個あるときは、それぞれの電荷がつくる電場を、重ね合わせればよい。
:<math> \vec E = \vec {E_1} + \vec {E_2} </math>
である。
電荷が3個以上のときも、同様に重ね合わせれば良い。
図のように、電荷から出る電場の方向を図示したものを'''電気力線'''という。
電荷が複数ある場合には、実際に新たに置かれた電荷が受ける力は、それらを足し合わせたものとなる。したがって、複数の電荷がある場合の周囲の電界は、それぞれの電荷が作る電界ベクトルの和となる(重ね合わせの原理)。
<!-- 電気力線 -->
[[File:Camposcargas.PNG|thumb|left|300px|同符号の電荷どうし(左)を近づけた場合は反発しあう。異なる符号の電荷どうし(右)を近づけた場合は引き付け合う。]]
[[File:VFPt dipole electric manylines.svg|thumb|center|200px|異符号の電荷どうしの場合の電気力線]]
{{clear}}
電気力線を図示する場合は、正電荷から力線が出て、負電荷で力線が吸収されるように書く。力線は、電場を図示したものなので、電荷以外の場所では、力線が分岐することはない。
力線が生成するのは正電荷の場所のみである。力線が消滅するのは、負電荷の場所のみである。
言い換えれば、力線が電荷以外の場所で消滅することはないし、電荷以外の場所で力線が生成することはない。
導体の内部の電場はゼロであった。言い換えれば、電気力線は、導体の内部には進入できない。
[[File:VFPt image charge plane horizontal.svg|200px|thumb|電気力線は、導体の内部には進入できない。]]
<!-- ガウスの法則 -->
[[File:E FieldOnePointCharge.svg|電気力線の分布]]
点電荷からは、図のように、放射状に電気力線が出る。クーロンの法則の係数にある
:<math>\frac{1}{4 \pi \epsilon _0} \frac{q_1 q_2}{r^2}</math>
のうちの、分母の
<math>4 \pi r^2</math>
は、球の表面積の公式に等しいので、電気力線の密度に比例して、電場の強さあるいは静電気力の強さが決まると考えられる。
静電誘導では、導体内部には静電気力が働いていないのであった。これは、電場という概念を用いて言い換えれば、導体内部の電場はゼロである、と言える。
====電位====
クーロン力は力であるから、それに逆らって別の電荷を近づけた場合は、近づけた別の電荷は仕事をしたことになる。また、近づけた電荷を手放せば、クーロン力によって力を受け、仕事をすることになるから、近づいた状態にある別電荷は位置エネルギーを蓄えていることになる。
したがって、クーロン力に対しても位置エネルギーを定義することができる。(なお、衛星軌道上の物体のような、地表から大きく離れた場所の重力も、クーロン力と同様に逆2乗力なので、ここで考えた計算手法は重力による位置エネルギーにも応用できる。重力加速度gを用いた力mgというのは地表近くでの近似にすぎない。)
クーロン力による電場の定義では、単位電荷に対して電場を定義したのと同様、位置エネルギーに対しても、単位電荷に応じて定義できる量を導入すると都合がよい。このような量を'''電位'''と呼ぶ。電位の単位は'''ボルト'''という。
クーロン力の結果と、<math>q</math>の電荷から距離''r''だけ離れた点の電位Vは、電場の積分計算で得られる。(積分をまだ習ってない学年の読者は、分からなくても気にせず、次の結果へと進んでください。)結果のみを記すと、
:<math>V=\frac{1}{4\pi\epsilon _0} \frac{q}{r}</math>
となる。
電位Vの点に''q''の電荷を置いたとき、この電荷のクーロン力による位置エネルギー''U''は、電位Vを用いれば、
:<math>U = qV</math>
となる。したがって、電位<math>V_1</math>ボルトの点から電位<math>V_2</math>ボルトの位置へと電荷''q''が静電気力を受けて移動するとき、静電気力のする仕事''W''は
:<math>W = q(V_2 - V_1)</math>
となる。
{{-}}
[[File:一様な電場.svg|thumb|500px|一様な電場]]
いっぽう、一様な電場においては、電位の式を、電場を用いて簡単に表すことができる。距離''d''だけ離れた平行平板電極の間に一様な電場<math>\vec E</math>が生じているとき、この電界の中に置いた電荷''q''は静電気力<math>q\vec E</math>を受ける。この電荷が電界の向きに沿って一方の電極から他方の電極まで移動するとき、電界のする仕事''W''は <math>W = qEd</math> となる。これより、2極板の電位差''V''は、
:<math>V=Ed</math>
で表すことができることがわかる。式を変形して
:<math>E= \frac{V}{d}</math>
とすることもできる。ここで、単位を考えると、右辺は電圧を距離で割ったものであるから、電界の単位として[N/C]のほか[V/m]を用いることもできることがわかる。
電位の単位は'''ボルト'''であり、この量は既に[[中学校理科]]などで扱った[[w:電圧|電圧]]の単位と'''同じ'''単位である。実際に電気回路に電圧をかけることは、回路中の電子に電場をかけて動かすことと'''等しい'''。
静電誘導によって、導体内部の電場はゼロであった。このことから、導体の表面は、電位が等しい。導体表面は互いに等電位である。
電位の基準は、実用上は、地面の電位をゼロに置くことが多い。電気回路の一部を大地につなぐことを接地または'''アース'''という。回路をアースして、そのつないだ部分の電位をゼロと見なすことが多い。
*問題例
**問題
直線上で距離0, bの点に、電荷q, q'を持つ物体が置いてある。この時、位置a(a<b)の点の電位を求めよ。
**解答
電位の式を用いればよい。電荷が複数あるときには、電位はそれぞれの電荷がつくり出す電荷の和になることに注意。答えは、
:<math>V = \frac{1}{4\pi\epsilon _0} (\frac{q}{a} + \frac{q'}{b-a})</math>
となる。
----
導体表面は等電位なので、よって、電気力線は導体表面に垂直である。
このことから、電気力線と電場は垂直である。
電場が重ね合わせられるように、電位も重ね合わせられる。なぜなら電位とは、電場を考えてる経路にて積分したものであるから。
学校のテストなどでは、電位の計算のさい、クーロン力の方向の勘違いなどによる計算ミスなどをふせぐため、電場を求めてから、それを積分して、電位を求めるのが、計算上は安全である。
== 静電誘導と誘電分極 ==
=== コンデンサー ===
[[File:コンデンサー 構造と原理.svg|thumb|400px|コンデンサー]]
'''コンデンサー'''は、図のように、2枚の電極が向かいあい、回路中に電荷を蓄積できる部分を与える素子である。
[[File:コンデンサー 充電の仕組み.svg|thumb|500px|コンデンサーの充電の仕組み]]
コンデンサーに電荷を蓄えることを'''充電'''という。コンデンサーから電荷を放出させることを'''放電'''という。
コンデンサの両端にある電位Vが与えられたとき、コンデンサには、電位に比例する電荷Qが蓄積される。このとき、コンデンサの蓄積能力を記号で C とおいて、
:<math>Q=CV</math>
としてCを取る。Cは'''静電容量'''と呼ばれ、単位はF('''ファラド''')で与えられる。
1ファラドは実用上は大きすぎるので、10<sup>-12</sup>ファラドを単位にした1pF(ピコファラド)や、10<sup>-6</sup>ファラドを単位にした1μF(マイクロファラド)が使われることが多い。
{{-}}
=== 平行板コンデンサー ===
[[File:平行板コンデンサー 電場.svg|thumb|400px|平行板コンデンサーの電場]]
極板が平行なコンデンサーを平行板コンデンサーという。
平行板コンデンサーの、極板どうしの電場は、一様な電場である。
この平行板コンデンサーの静電容量Cの式は、後述する理由により、
:<math>C=\epsilon_0 \frac{S}{d}</math>
で与えられる。ここで、Sは導体平面の面積であり、dは導体間の距離である。
実験的にも、この静電容量の公式は、正しいことが確かめられている。
* 平行板コンデンサーの静電容量の公式の導出
ここで与えた静電容量は、'''平面上に電荷が一様に分布する'''との仮定で導かれる。このとき、導体間に生じる電界Eは、導体が持つ電荷をQ, -Qとした時、
まず、極板の電荷密度が、極板のどこでも一定だと仮定して(そのためには、コンデンサーの広さ(つまり面積)が、じゅうぶんに広いと仮定する必要がある。ともかく、このような仮定により、電荷密度は)、
:電荷密度=<math>Q/S</math>
である。
電気力線の性質として、プラスの電荷から生じてマイナスの電荷で吸収されるので、よって平行板コンデンサー間の電気力線の分布は、図のように、電気力線が、プラス極板から垂直に、マイナス極板へ向かって電気力線が出て、そしてマイナス極板に電気力線が吸収される。
電場は、導体間の各点で、
:<math>E = \frac{Q/S}{\epsilon _0} =\frac{Q}{\epsilon _0 S}</math>
で与えられる。電場が求められたので、ここから電位を計算できる。導体間の各点で電場の大きさが均一なので、電位の大きさは電場の大きさに2点間の距離をかけたものになる。ここで、電位Vは、
:<math>V=Ed=\frac{d}{\epsilon_0S}Q</math>
となるが、この式と静電容量Cの定義を見比べると、
:<math>C=\epsilon_0\frac{S}{d}</math>
が得られる。
== 電流と電気回路 ==
[[Image:Wheatstonebridge.svg|right|thumb|300px|alt=A Wheatstone bridge has four resistors forming the sides of a diamond shape. A battery is connected across one pair of opposite corners, and a galvanometer across the other pair. |電気回路の例。読者が、この図の意味が分かるようになるのが、本節の目標の一つである。ちなみに「ホイットストン・ブリッジ」(Wheatstone bridge)という回路である。<br>R1やR2、R3、Rxは抵抗。V<sub>G</sub>を丸で囲っている記号は電圧計。<br>A、B、C、Dは単なる回路の合流している接点。]]
導線などの導体内の電気の流れを'''電流'''という。電流の強さは'''アンペア'''という単位で表す。1アンペアの定義は次の通りである。
1秒間に1クーロン(記号C)の電流が通過することを1'''アンペア'''という。
アンペアの記号はAである。また、電流は、単位時間あたりの電荷の通過量でもあるので、電流の単位をA = C/sである。
電流Iと時間tで導線断面を通過する電荷Qの関係を式で表すと、
:<math>I=\frac{Q}{t}</math>
である。
電流の向きの取り方については、自由電子は負電荷を持っているから、自由電子の向きとは反対向きに電流の向きをとることに注意せよ。
次に電流と自由電子の速度との関係を考える。
自由電子の電荷の絶対値をeとすると、自由電子は負電荷であるから、自由電子の電荷はマイナス符号がつき-eである。
=== オームの法則 ===
ドイツ人の物理学者オームは次のような法則を発見した。
「ほとんどの導体では、電流 I が流れている導体中の2点の点 <math>P_1</math>と点 <math>P_2</math> 間の電位差 <math>E = E_1 - E_2</math> は、電流 I に比例する。」
この実験法則を'''オームの法則'''という。
式で表すと、電位差をVとして、電流をIとした場合に、比例係数をRとして、
:V=RI
である。
ここで、電位と電流の比例係数Rを'''電気抵抗'''あるいは単に'''抵抗'''という。
電気抵抗の単位はオームと言い、記号はΩで表す。
慣習的に、抵抗の記号はRであらわす場合が多い。
=== 電気回路 ===
[[File:Ohm's Law with Voltage source TeX.svg|right|thumb|電気回路図の例。電源は交流電源。vが電圧。Rが抵抗。iは電流。]]
電気回路へエネルギーを供給する電源として定電圧の直流電源を考える。回路の2地点間にある一定の電圧を供給し続けるものである。電圧源の回路図記号としては[[File:Cell.svg|30px|電圧源]]が用いられる。記号の長い側が正極であり、プラスの電位である。記号の短い側は負極である。
乾電池は、直流電源として取り扱って良い。
なお、これらは直流電源である。交流の場合は一般化した電圧源として[[File:Voltage Source.svg|30px|交流電圧源]]の記号を用いる。また特に正弦波交流電圧源であれば[[File:Voltage Source (AC).svg|30px|正弦波交流電圧源]]の記号を用いる。
==== 抵抗器 ====
[[File:3 Resistors.jpg|thumb|抵抗]]
'''抵抗器'''(resistor)は、通常は単に'''抵抗'''と呼ばれる回路素子であり、与えられた電気エネルギーを単純に消費する素子である。回路図記号は[[File:Resistor symbol America.svg|60px|抵抗]]あるいは[[File:Resistor symbol IEC.svg|60px|負荷]]であるが、本書では、両者とも抵抗の回路図記号として用いることにする。(画像素材の確保の都合のため、両方の記号が本書では混在します。ご容赦ください。)
{{clear}}
===== 抵抗器の図記号 =====
日本では、抵抗器の図記号は、従来はJIS C 0301(1952年4月制定)に基づき、ギザギザの線状の図記号で図示されていたが、現在の、国際規格のIEC 60617を元に作成されたJIS C 0617(1997-1999年制定)ではギザギザ型の図記号は示されなくなり、長方形の箱状の図記号で図示することになっている。旧規格であるJIS C 0301は、新規格JIS C 0617の制定に伴って廃止されたため、旧記号で抵抗器を図示した図面は、現在ではJIS非準拠な図面になってしまう。しかし、拘束力は無いため、現在も従来の図記号が多用されている。
<gallery>
ファイル:Resistor_symbol_America.svg|従来規格の図記号
ファイル:Resistor_symbol_IEC.svg|新規格の図記号
</gallery>
==== 電気回路図記号の例 ====
<gallery>
ファイル:固定抵抗器.svg|固定抵抗器
File:Variable resistor as rheostat symbol GOST.svg|可変抵抗器
ファイル:電池.svg|電池、直流電源(長い方が正極)
File:Voltage Source (AC).svg|交流電源
ファイル:SPST-Switch.svg|スイッチ
ファイル:コンデンサ.svg|コンデンサ
File:Inductor h wikisch.svg|コイル
File:Symbole amperemetre.png|電流計
File:Symbole voltmetre.png|電圧計
File:Earth Ground.svg|接地
ファイル:Fuse.svg|ヒューズ
</gallery>
==== 直列と並列 ====
複数の回路素子が1つの線上に配置されているような接続を'''直列接続'''といい、複数の回路素子が二股に分かれるように配置されている接続を'''並列接続'''という。
直列接続においては、それぞれの回路素子に流れる電流は全て等しい。一方、並列接続においてはそれぞれの回路素子の両端にかかる電圧が全て等しい。
また、直列接続においてはそれぞれの回路素子にかかる電圧の和が全電圧となり、並列接続においてはそれぞれの回路素子を流れる電流の和が全電流となる。
==== 直列での合成抵抗 ====
抵抗が複数接続されている場合、その複数の抵抗をまとめてあたかも1つの抵抗が接続されているかのような等価的な回路を考えることができる。複数の抵抗と等価な1つの抵抗を'''合成抵抗'''という。
[[ファイル:Resistors in series.svg|thumb|直列抵抗]]
抵抗が''n''個直列に接続されている場合を考える。抵抗<math>R_1, R_2, \cdots, R_n</math>が直列に接続されている場合、各抵抗を流れる電流は等しく、これを''i''とする。各抵抗<math>R_k (k = 1, 2, \cdots, n)</math>にかかる電圧を<math>v_k</math>とすると、オームの法則より
:<math>v_k = R_ki (k = 1, 2, \cdots, n)</math>
が成り立つ。このとき直列抵抗の両端の電圧''v''は、
:<math>v = \sum_{k=1}^n v_k = \sum_{k=1}^n R_k i = i\sum_{k=1}^n R_k</math>
である。これと等価な抵抗''R''が1つだけ接続されているような等価回路を考えるとき、
:<math>v = Ri</math>
が成り立つから、したがってこれらの''n''個の直列抵抗の合成抵抗''R''として
:<math>R = \sum_{k=1}^n R_k</math>
を得る。すなわち、直列合成抵抗は各抵抗の総和となる。
==== 並列での合成抵抗 ====
[[ファイル:Resistors in parallel.svg|thumb|並列抵抗]]
同様に、抵抗が''n''個並列に接続されている場合を考える。抵抗<math>R_1, R_2, \cdots, R_n</math>が並列に接続されている場合、各抵抗の両端の電圧は等しく、これを''v''とする。各抵抗<math>R_k (k = 1, 2, \cdots, n)</math>を流れる電流を<math>i_k</math>とすると、オームの法則より
:<math>v = R_ki_k (k = 1, 2, \cdots, n)</math>
が成り立つ。このとき並列抵抗へ流れ込む電流''i''は、
:<math>i = \sum_{k=1}^n i_k = \sum_{k=1}^n \frac{v}{R_k} = v\sum_{k=1}^n \frac{1}{R_k}</math>
である。これと等価な抵抗''R''が1つだけ接続されているような等価回路を考えるとき、
:<math>v = Ri</math>
が成り立つから、したがってこれらの''n''個の並列抵抗の合成抵抗''R''として
:<math>\frac{1}{R} = \sum_{k=1}^n \frac{1}{R_k}</math>
を得る。すなわち、並列合成抵抗の逆数は各抵抗の逆数の総和となる。
==== 電力 ====
抵抗Rを電流Iが流れるとき、その部分の発熱のエネルギーは、1秒あたりにRI<sup>2</sup>である。これを'''ジュール熱'''という。名前の由来は物理学者のジュールが調べたからである。オームの法則より、V=RIでもあるので、ジュール熱はVIとも書ける。
そこで、ひとまず、熱の考察には離れて、次の量を定義する。電気回路のある2点間を流れる電流Iと、その2点間の電圧Vとの積VIを'''電力'''と定義する。電力の記号はPで表わされることが多い。
電力の単位のジュール毎秒J/sをWという単位で表し、この単位Wはワットと読む。
つまり電力は記号で
:P=VI
である。
==== 抵抗率 ====
導線の太さや長さによって抵抗の大きさは変わる。直感的に太いほうが流れやすいのは分かるだろう。また、並列接続と対応させることでも導線が太いほうが流れやすいことは言える。
実際に電気抵抗は、導線の太さに反比例して小さくなることが実験的に確認されている。そこで、つぎのような式においてみよう。
抵抗をRとした場合、導線の太さを面積で表しAとすれば、比例定数にkを用いれば、
:R ∝ 1/A
である。( ∝は、比例関係を表す数学記号。)
さらに、導線は材質や太さが同じならば、導線が長いほど抵抗が、長さに比例して抵抗が大きくなることが、確認されている。そこで、さらに、抵抗体の長さを考慮した式に表してみれば、次のようになる。抵抗帯の長さを''l''とすれば
:R ∝ L/A
である。
さらに、導線の材質によって、抵抗の大きさは変わる。同じ長さで同じ太さの抵抗でも、材質によって抵抗の大きさは異なる。そこで、材質ごとの比例定数をρとおけば、抵抗の式は以下の式で記述される。
:<math>R=\rho \frac{l}{A}</math>
ρは'''抵抗率'''と呼ばれる。抵抗率の単位は Ω m である。
== 磁力 ==
=== 磁場 ===
[[File:Magnetic field near pole.svg|thumb|right|200px|棒磁石の周りに方位磁針を置いて磁場の向きを調べる。]]
磁石のまわりには別の磁石を動かす力のもととなるものが生じている。
これを'''磁場'''あるいは'''磁界'''と呼ぶ。
鉄やコバルトやニッケルに磁石を近づけると、磁石に吸い付けられる。
また、鉄やコバルトやニッケルに強い磁化を与えると、鉄やコバルトやニッケルそのものが磁場を周囲に及ぼすようになる。
このような、もともとは磁場を持たなかった物体が、強い磁場を受けたことによって磁場を及ぼすようになる現象を'''磁化'''という。
あるいは電荷の静電誘導と対応させて、磁化のことを'''磁気誘導'''ともいう。
そして、鉄やコバルトやニッケルのように、磁石に引き付けられ、さらに磁化をする能力がある物体を'''強磁性体'''という。
鉄とコバルトとニッケルは強磁性体である。
銅は磁化しないし、銅は磁石に引きつけられないので、銅は強磁性体ではない。
;磁気遮蔽
静電誘導を利用した、静電遮蔽と言われる、中空の導体をつかって物質を囲むことで外部電場を遮蔽する方法があったのと同様の、磁気の遮蔽が、強磁性体でも出来る。中空の強磁性体を用いて、強磁性体の内部は磁場を遮蔽できる。これを'''磁気遮蔽'''という。磁気シールドともいう。
==== 磁力線 ====
磁場の向きが分かるように図示しよう。磁石の作る磁場の方向は、砂に含まれる砂鉄の粉末を磁石に、ちりばめて、ふりかけることで観察できる。
[[File:Magnet0873.png|left|300px|砂鉄による磁力線の観察]]
{{clear}}
これを図示すると、下図のようになる。(画像素材の確保の都合上、写真と図示とでは、N極とS極が逆になっています。ご容赦ください。)
[[File:VFPt cylindrical magnet.svg|thumb|left|300px|磁力線の図示]]
このような磁場の図を'''磁力線'''という。磁力線の向きは、磁石のN極から磁力線が出て、S極に磁力線が吸収されると定義される。棒磁石では、磁力の発生源となる場所が、棒磁石の両端の先端付近に集中する。そこで、棒磁石の両端の先端付近を'''磁極'''という。
このような磁石のつくる磁力線の形は、電気力線での、異符号の電荷どうしがつくる電気力線に似ている。
[[File:VFPt dipole electric manylines.svg|thumb|center|200px|異符号の電荷どうしの場合の電気力線]]
1つの棒磁石ではN極の磁気の強さと、S極の磁気の強さは等しい。また、磁石には、必ずN極とS極とが存在する。N極とS極の、どちらか片方だけを取り出すことは出来ない。たとえ棒磁石を切断しても、切断面に磁極が出現する。このような現象のおこる理由は、そもそも棒磁石を構成する強磁性体の原子の1個ずつが小さな磁石であり、それら小さな原子の磁石が、いくつも整列して、大きな棒磁石になっているからである。
仮想的に、磁極がS極またはN極の片方だけ現れた現象を理論計算のために考えることがあるが、このような片側だけの磁極を磁気'''単磁極'''という。磁気'''単磁極は観測されていない'''。
{{clear}}
棒磁石などからの、片側の磁極あたりの、磁極からの磁場の強さのことを、そのまま「磁極の強さ」(Magnetic charge)と呼ぶ。あるいは'''磁荷'''や'''磁気量'''という。
これから、この磁化と磁場の関係を式で表すことを考える。
まず、棒磁石には磁極が両側に2個あるので、計算を簡単にするために、棒磁石の両端の距離が大きく、反対側の磁極の大きさを無視できる磁石を考えよう。
このような磁石を用いて、実験したところ、次の法則が分かった。磁力の強さは2個の物体の磁気量m<sub>1</sub>およびm<sub>2</sub>に比例し、2個の物体間の距離rの2乗に反比例する。
式で表すと、
:<math>f = k_m \frac{q_1 q_2}{r^2}</math>
で表される。(k<sub>m</sub>は比例定数)
これを発見者のクーロンの名にちなんで、'''磁気に関するクーロンの法則'''という。磁気量mの単位は'''ウェーバ'''といい、記号はWbで表す。
比例定数k<sub>m</sub>と1ウェーバの大きさとの関係は、1メートル離れた1Wbどうしの磁極にはたらく力を約6.33×10<sup>4</sup>として、
比例係数k<sub>m</sub>は、
:k<sub>m</sub> =6.33×10<sup>4</sup> N・m<sup>2</sup>/Wb<sup>2</sup>
である。
つまり、
:<math>f = k_m \frac{m_1 m_2}{r^2} = 6.33\times10^4 \frac {m_1 m_2}{r^2}</math>
である。
==== 磁場の式 ====
静電気力に対して、電場が定義されたように、磁気力に対しても、場が定義されると都合が良い。磁気量m<sub>1</sub>が作る、次の量を'''磁場の強さ'''あるいは'''磁場の大きさ'''と言い、記号はHで表す。
:<math>H = k_m \frac{m_1}{r^2} = 6.33\times10^4 \frac {m_1}{r^2}</math>
磁場の強さHの単位はN/Wbである。Hを用いると、磁気量m<sub>2</sub>にはたらく磁気力fは、
:<math>f = m_2H</math>
と表せる。
== 電流がつくる磁場 ==
===アンペールの法則===
[[Image:Electromagnetism.svg|thumb|right|電流の方向と磁束密度の方向の関係.<br>磁束の向きは、右ねじの法則の向きである。.]]
物理学者のエルステッドは、電流の実験をしている際に、たまたま近くにおいてあった方位磁石が動くのを確認した。彼が詳しく調べた結果、以下のことが分かった。
電流が流れているときには、そのまわりには、磁場が生じる。向きは、電流の方向に右ねじが進むように、右ねじを回す向きと同じなので、これを'''右ねじの法則'''という。
アンペールが、磁場の大きさを調べた結果、磁場の大きさHは、電流Iが直線的に流れているとき、直線電流の周りの磁場の大きさは、導線からの距離をaとすると、磁場の大きさHは、
:<math>H=\frac{1}{2\pi a}I</math>
であることが知られている。
これを'''アンペールの法則'''という。
磁場の大きさHの単位は、N/Wbであるが、いっぽうアンペールの法則の式をみればアンペア毎メートルA/mでもある。
;電磁石
[[File:Simple electromagnet2.gif|thumb|電磁石の例.]]
[[画像:VFPt Solenoid correct.svg|thumb|right|電磁石コイルにより発生した磁界(断面図)]]
導線をコイル状に巻けば、アンペールの法則で導線の周囲に発生する磁場が重なりあう。このようにした磁場を強めたコイルを'''電磁石'''という。導線に電流を流しているときにのみ、電磁石は磁場を発生する。導線に電流を流すのを止めると、電磁石の磁場は消える。
=== 磁束密度 ===
磁場の大きさHに、次の節で扱うローレンツ力の現象のため、比例係数μ(単位はニュートン毎アンペア N/A<sup>2</sup>)を掛けて、記号Bで表し、
:B=μH
とすることがある。この量Bを'''磁束密度'''という。磁場の大きさHの向きと磁束密度Bの向きは'''同じ向き'''である。
また、磁場の大きさHと磁束密度Bの比例係数を'''透磁率'''という。
== ローレンツ力 ==
[[File:Lorentzkraft-graphic-part1.PNG|thumb|ローレンツ力の向き。電荷で考えた場合。<br>速度vから磁束密度Bに右ねじを回した向きがローレンツ力Fの向き。]]
[[File:Lorentzkraft-graphic-part2.PNG|thumb|ローレンツ力の向き。<br>電流Iから磁束密度Bに右ねじを回した向きがローレンツ力Fの向き。]]
まず、導線を用意したとしよう。この導線は固定されずに静止しているとして、もし導線に力が加われば、導線が動けるようにしてるとしよう。
この導線に電流を流しただけでは、べつに導線は動かない。しかし、この導線に、外部の磁石による磁場が加わると、導線が動く。このような、磁場と電流の相互作用によって、導線に生じる力を'''ローレンツ力'''という。
ローレンツ力の向きは、導線の電流の向きと磁場の向きに垂直である。電流Iの向きから磁束密度Bの向きに右ねじを回す向きと同じである。
また、ローレンツ力の大きさは、導線の長さ''l''と、磁場の導線との垂直方向成分に比例する。
ローレンツ力の大きさFを式で表せば、電流と磁場とが垂直だとして、磁場を受けている導線の形状が直線形だとして、電流をIとして、導線の長さを''l''として、導線にかかっている外部磁場の磁束密度をBとすれば、
:<math>F=IBl</math>
で表せる。
ローレンツ力の公式に、クーロンの法則などでは見られたような比例係数(係数Kなど。)が含まれないのは、そもそも、このローレンツ力の現象を元に、磁気量ウェーバWbの単位および磁束密度Bの単位が、決定されているからである。
また、「磁束密度」の名称が、「磁束」・「密度」というのは、実は磁束密度の単位のN/(A・m)は、単位を式変形するとWb/m<sup>2</sup>でもあることが由来である。この単位Wb/m<sup>2</sup>を、電気工学者のテスラの名にちなみ、単位Wb/m<sup>2</sup>
を'''テスラ'''と言い、記号Tで表す。
:T = Wb/m<sup>2</sup>
このローレンツ力の現象が、電気機器のモータ(電動機)の原理である。{{clear}}
==電磁誘導==
アンペールの法則では、電流の周りに磁場ができるのであった。
:では逆に、磁場を用いて電流を起こすような現象はあるだろうか?
実は、磁石を動かすなどして、磁場を伴う物体が運動すると、そのまわりには電場が生じる。
仮に、コイルの近くでそれを行なったとすると、生じた電場によってコイルの中には電流が流れる。
生じる電場の大きさは、
:<math>\vec E = \frac 1 {2\pi a} \frac {\Delta \vec B}{\Delta t}</math>
となる。(半径aの円形のコイルの場合。)
Eの単位はV/mであり、Bの単位はTである。
この現象を'''電磁誘導'''といい、電磁誘導によって発生した電流を'''誘導電流'''という。
また、誘導電流の向きは、磁石の動きによる、コイルの中を通る磁束の変化を妨げる向きに、電流が流れる。(誘導電流もアンペールの法則に従い、周囲に磁場を作る。)
この誘導電流が、コイルの中を通る磁束の変化を妨げる向きに誘導電流が流れる現象を'''レンツの法則'''という。
同じ領域に''N''回巻かれたコイルが置かれた場合、ファラデーの電磁誘導の法則は、次のようになる。
: <math>\mathcal{E} = - N{{d\Phi_B} \over dt}</math>
ここで、<math>\mathcal{E}</math>は起電力、Φ<sub>B</sub> は磁束とする。''N''は電線の巻数とする。
この電磁誘導の現象が、火力発電や水力発電などの発電機の原理である。これ等の発電では、永久磁石を回転させることで、発電をしている。火力や水力というのは、機器の回転を得る手段にすぎない。また、発電所の発電には、永久磁石の回転を利用しているため、発生する電圧や電流は周期的な波形になり、次に説明する交流波形になる。
== 交流回路 ==
[[File:Waveforms.svg|thumb|400px|交流波形の例。<br>上から順に、<br>正弦波、<br>方形波、<br>三角波、<br>のこぎり波。]]
回路への入力電圧が周期的に時間変化する回路の電圧および電流を'''交流'''という。これに対し、乾電池などによって発生する電圧や電流のように、時間によらず一定な電圧や電流は'''直流'''という。
交流波形が何秒で1周するかという時間を'''周期'''という。周期の記号は<math>T</math>で表し単位は秒sである。
:<math>f = \frac{1}{T}</math>
1秒間に波形が何周するかという回数を'''周波数'''あるいは'''振動数'''(英語は、ともにfrequency)という。
電気の業界では周波数という用語を用いることが多い。物理の波の理論では振動数という表現を用いることが多い。
周波数の単位は1/sであるが、これを'''ヘルツ'''という単位で表し、単位記号'''Hz'''を用いて周波数fを表す。
交流電流や交流電圧が正弦波の場合は、これらのパラメータを用いて
:<math>i(t) = I_0\sin(2\pi ft + \theta_i) = I_0\sin\left(\frac{2\pi}{T}t + \theta_i\right)</math>
:<math>v(t) = V_0\sin(2\pi ft + \theta_v) = V_0\sin\left(\frac{2\pi}{T}t + \theta_v\right)</math>
と書くことができる。
sinとは三角関数である。知らなければ数学IIなどを参考にせよ。
このときのsinの係数<math>I_0</math>や<math>V_0</math>を'''振幅'''といい、また時刻''t''=0における電流や電圧の値を示し、時間波形を決定する<math>\theta_i</math>や<math>\theta_v</math>を'''初期位相'''という。
発電所から一般家庭に送られてくる電圧は交流電圧である。東日本では50Hzであり、西日本では60Hzである。これは明治時代の発電機の輸入時に、東日本の事業者はヨーロッパから50Hz用の発電機を輸入し、西日本の事業者はアメリカから60Hzの発電機を輸入したことによる。
発電所から一般の家庭などに送られる電流の周波数を'''商用周波数'''という。
商用電源の電圧振幅は約140Vである。これは<math>100\times\sqrt{2}</math>Vである。
キロヘルツとは1000Hzのことである。キロヘルツはkHzと書く。
;コイルの自己誘導
交流電流に対しては、電流と同じ振動数で、アンペールの法則で発生する磁場も振動する。
導線でつくられたコイルは、直流電流では、ただの導線としてはたらく。しかし、交流電流に対しては、電磁誘導により自己の発生させた磁場を妨げるような電流および起電力が発生する。これを'''自己誘導'''という。
自己誘導による起電力の大きさは、電流の時間変化率に比例する。自己誘導の起電力を式で書けば、比例係数をLとして、
:<math>e=-L\frac{\Delta I}{\Delta t}</math>
である。
この比例係数<math>L</math>を'''自己インダクタンス'''という。自己インダクタンスの次元はV・S/mだが、これを'''ヘンリー'''という単位で表し、単位にHという記号を用いる。
;相互誘導
[[ファイル:Transformer Flux.svg|thumb|相互誘導を利用した変圧器(transformer)]]
鉄心に二つのコイルを巻き、コイルの片方の電流を変化させると、アンペールの法則によって生じていた磁束も変化するから、反対側のコイルには、この磁束密度の変化を打ち消すような向きに起電力が発生する。この現象を'''相互誘導'''と言う。
電圧を入力させた側のコイルを'''1次コイル'''と言い、誘導起電力を発生させる側のコイルを'''2次コイル'''という。
相互誘導による起電力の大きさは、電流の時間変化率に比例する。相互誘導の起電力を式で書けば、比例係数をMとして、(相互誘導の比例係数はLでは無い。)式は、
:<math>e=-M\frac{\Delta I}{\Delta t}</math>
である。
この比例係数<math>M</math>を'''相互インダクタンス'''という。相互インダクタンスの次元は、自己インダクタンスの単位と同じで'''ヘンリー''' Hである。
この相互インダクタンスの大きさは、両方のコイルの巻き数どうしの積に比例する。
== 電磁波 ==
[[File:Onde electromagnetique.svg|thumb|400px|電磁波の概略図。電場と磁場とは直交している。]]
磁場の動きによって電場が引き起こされることを電磁誘導のセクションで見た。
実際には電場の変化によって磁場が引き起こされることも知られている。
これによって何もない空間中を電場と磁場が伝播していくことが予想される。
電磁波の速度を物理学者のマクスウェルが計算で求めたところ、電磁波の速度は、真空中では常に一定で、かつ波の速度cを計算で求めたところ、
:c=3.0×10<sup>8</sup> m/s
となり、既に知られていた光速に一致した。
このことから、光は電磁波の一種であることが分かった。
波は波長λが長いほど、振動数fが小さくなる。波の波長λと振動数fの積fλは一定で、これは波の速度vに等しい。つまり
:v=fλ
である。
電磁波の場合は、速度が光速のcなので
:c=fλ
である。
=== 電磁波の分類 ===
* 電波
放送用のテレビやラジオの電波は、電磁波の一種である。波長が0.1mm以上の電磁波が電波に分類される。なお、電波のうち、波長が1mm~1cmのミリメートルの電波をミリ波という。同様に、波長が1cm~10cmの電波をセンチ波という。波長10cm~100cm(=1m)の電波はUHFと言われ、テレビ放送などに使われるUHF放送は、この電波である。波長1m~10mの電波はVHFと言われる。テレビ放送のVHF放送は、この電波である。
* 赤外線
波長が0.1mm以下で、可視光線(可視光の最大波長は780 nm程度)より波長が長い電磁波は赤外線という。「赤」の「外」という理由は、可視光の最大波長の色が赤色だからである。赤外線そのものには色はついていない。市販の赤外線ヒーターなどが赤色に発光する製品があるのは、使用者が動作確認をできるようにするために、製品に赤色のランプを併置しているからである。赤外線は、物体に吸収されやすく、吸収の際、熱を発生するので、ヒーターなどに応用される。なお、太陽光にも赤外線は含まれる。
:発見の経緯
そもそも赤外線が発見された経緯は、イギリスの天文学者のハーシェルが太陽光をプリズムで分光した際に、赤色の光線のとなりの、目には色が見えない部分が温度上昇していることが発見されたという経緯がある。
* 可視光線
[[Image:Linear visible spectrum.svg]]
{| class="wikitable" style="float:right; text-align:right; margin:0px 0px 7px 7px;"
|-
!色
!波長
!エネルギー
|-
| style="background-color:#CEB0F4; text-align:center;" |紫
|380-450 nm
|2.755-3.26 eV
|-
| style="background-color:#B0CCF4; text-align:center;" |青
|450-495 nm
|2.50-2.755 eV
|-
| style="background-color:#B4F4B0; text-align:center;" |緑
|495-570 nm
|2.175-2.50 eV
|-
| style="background-color:#F4F4B0; text-align:center;" |黄色
|570-590 nm
|2.10-2.175 eV
|-
| style="background-color:#F4DDB0; text-align:center;" |橙色
|590-620 nm
|1.99-2.10 eV
|-
| style="background-color:#F4B0B0; text-align:center;" |赤
|620-750 nm
|1.65-1.99 eV
|}
我々、人間の目に見える可視光線の波長は、約780ナノメートルから約380ナノメートルの程度である。可視光の中で波長が最も長い領域の色は赤色である。可視光の中で波長が最も短い領域の色は紫色である。
光そのものには、色はついていない。我々、人間の脳が、目に入った可視光を、色として感じるのである。
太陽光をプリズムなどで分光すると、波長ごとに軌跡がわかれる。この分光した光線は、他の波長を含まず、ただ一種の波長なので、このような光線および光を'''単色光'''という。
また、白色は単色光ではない。'''白色光'''とは、全ての色の光が混ざった状態である。
同様に、黒色という単色光もない。黒色とは、可視光が無い状態である。
{{clear}}
* 紫外線
紫外線は化学反応に影響を与える作用が強い。殺菌消毒などに応用される。太陽光にも紫外線は含まれる。人間の肌の日焼けの原因は、紫外線がメラニン色素を酸化させるからである。
:発見の経緯
赤外線は太陽光のプリズムによる分光で発見された。
「では、分光された紫色の光線のとなりにも、なにか目には見えない線があるのでは?」というふうなことが学者たちによって考えられ、
ドイツの物理学者リッターにより化学的な実験方法を用いて、紫外線の存在も実証された。
* X線およびガンマ線
医療用のレントゲンなどの透過写真で用いられるX線も電磁波の一種である。生物の細胞を分子レベルで傷つけ、発がん性が有る。
ガンマ線も同様に、透過写真にも応用されるが、生物の細胞を分子レベルで傷つけ、発がん性が有る。
{{clear}}
----
===電気に関する探求活動===
??
[[Category:高等学校教育|物ふつり1てんき]]
[[カテゴリ:電気|高ふつり1てんき]]
[[Category:物理学教育|高ふつり1てんき]]
s718f1q4mtxyp9lwqvi0z6f7tkq49ps
高等学校物理/力学
0
1943
299686
299630
2026-05-20T10:02:54Z
Nermer314
62933
299686
wikitext
text/x-wiki
{{pathnav|高等学校の学習|高等学校理科|高等学校物理|高等学校 物理|pagename=力学|frame=1|small=1}}
== 物体の運動 ==
[[高等学校理科 物理基礎]]では、物体の運動を直線上の運動を中心に扱った。物理では、より複雑な平面上の運動を扱う。平面上の運動では、直線上の運動とは違って、物体の位置を表わすのに必要な量が2つになる。これらは通常<math>x,\ y</math>とされ、どちらも時刻<math>t</math>の一意の関数となる。
これらの関数はどんなものでもよいが、ここでは主に、実際の物体の運動としてよくあらわれるものを扱う。
=== 平面上の運動 ===
{{See also|[[高等学校物理基礎/力学#2次元・3次元における位置・速度・加速度|高等学校物理基礎/力学]]}}
平面上,すなわち2次元において,時刻<math>t</math>における位置は<math>\overrightarrow r(t)=(x(t),\ y(t))</math>,微小時間<math>\mathit{\Delta}t</math>間の変位は<math>\mathit{\Delta}\overrightarrow r =\overrightarrow r(t +\mathit{\Delta}t)-\overrightarrow r(t)=(\mathit{\Delta}x,\ \mathit{\Delta}y)</math>と定義される。このとき
:<math>\bar \overrightarrow v =\frac{\overrightarrow r(t +\mathit{\Delta}t)-\overrightarrow r(t)}{\mathit{\Delta}t}=\frac{\mathit{\Delta}\overrightarrow r}{\mathit{\Delta}t}</math>
を<math>\mathit{\Delta}t</math>間の平均速度,<math>\mathit{\Delta}t\to 0</math>の極限
:<math>\overrightarrow v(t)=\lim_{\mathit{\Delta}t\to 0}\frac{\overrightarrow r(t +\mathit{\Delta}t)-\overrightarrow r(t)}{\mathit{\Delta}t}=\frac{d\overrightarrow r(t)}{dt}=\left(\frac{dx(t)}{dt},\ \frac{dy(t)}{dt}\right)=(\dot x(t),\ \dot y(t))=(v_x(t),\ v_y(t))</math>
を時刻<math>t</math>での(瞬間)速度という。なお,時刻<math>t</math>での速さ(速度の大きさ)は
:<math>v =|\overrightarrow v|=\sqrt{{v_x}^2 +{v_y}^2}</math>.
この場合も,速度から位置が求まり,各成分毎に
:<math>x(t)= x(0)+\int _0 ^t v_x(t)dt</math>
:<math>y(t)= y(0)+\int _0 ^t v_y(t)dt</math>
が成り立ち,これらをベクトルを用いてひとまとめにして任意の時刻<math>t</math>における位置
:<math>\overrightarrow r(t)=\overrightarrow r(0)+\int _0 ^t\overrightarrow v(t)dt</math> (1.1)
が求められる。
また,
:<math>\bar \overrightarrow a =\frac{\overrightarrow v(t +\mathit{\Delta}t)-\overrightarrow v(t)}{\mathit{\Delta}t}=\frac{\mathit{\Delta}\overrightarrow v}{\mathit{\Delta}t}</math> (<math>\mathit{\Delta}\overrightarrow v</math>は微小時間<math>\mathit{\Delta}t</math>間の速度変化)
を<math>\mathit{\Delta}t</math>間の平均加速度,<math>\mathit{\Delta}t\to 0</math>の極限
:<math>\begin{align}\overrightarrow a(t)=\lim_{\mathit{\Delta}t\to 0}\frac{\overrightarrow v(t +\mathit{\Delta}t)-\overrightarrow v(t)}{\mathit{\Delta}t}& =\frac{d\overrightarrow v(t)}{dt}=\left(\frac{dv_x(t)}{dt},\ \frac{dv_y(t)}{dt}\right)=(\dot v_x(t),\ \dot v_y(t))\\ & =\frac{d^2\overrightarrow r(t)}{dt^2}=\left(\frac{d^2x(t)}{dt^2},\ \frac{d^2y(t)}{dt^2}\right)=(\ddot x(t),\ \ddot y(t))\end{align}</math>
を時刻<math>t</math>での(瞬間)加速度という。
この場合も,加速度から速度が求まり,各成分毎に
:<math>v_x(t)=v_x(0)+\int _0 ^t\frac{dv_x(t)}{dt}dt</math>
:<math>v_y(t)=v_y(0)+\int _0 ^t\frac{dv_y(t)}{dt}dt</math>
が成り立ち,これらをベクトルを用いてひとまとめにして任意の時刻<math>t</math>における速度
:<math>\overrightarrow v(t)=\overrightarrow v(0)+\int _0 ^t\overrightarrow a(t)dt</math> (1.2)
が求められる。なお,これら<math>\overrightarrow r(0), \overrightarrow v(0)</math>の値を初期値という。
特に,加速度一定のときの運動は'''等加速度運動'''といわれ,上記の公式(1.2, 1)はそれぞれ
:{|
|-
|<math>\overrightarrow v(t)</math>
|<math>=\overrightarrow v(0)+\int _0 ^t\overrightarrow adt</math> (1.3)
|-
|
|<math>=\overrightarrow v(0)+\overrightarrow at</math>
|}
:<math>\overrightarrow r(t)=\overrightarrow r(0)+\int _0 ^t(\overrightarrow v(0)+\overrightarrow at)dt =\overrightarrow r(0)+\overrightarrow v(0)t +\frac{1}{2}\overrightarrow at^2</math>
となる。
運動方程式は、力が物体が受ける加速度に比例するという点はかわらない。
しかし、今回は力と加速度はどちらもベクトル量である。よって、外力<math>\overrightarrow f=(f_x,\ f_y)</math>が働き,加速度<math>\overrightarrow a=(a_x,\ a_y)</math>で運動する物体の運動方程式は
:<math>
m\overrightarrow a =\overrightarrow f
</math>
とかかれる。
通常は、この方程式を解く場合は要素ごとにわけ、
:<math>
ma_x = f_x
</math>
:<math>
ma_y = f_y
</math>
とかかれる。
*問題例
**問題
時刻t = 0に、
:<math>
\overrightarrow x = (0,\ 0)
</math>
を
:<math>
v = \frac 1 {\sqrt 2} (1,\ 1)v _0
</math>
で通過した物体の時刻tでの位置を求めよ。
**解答
物体のx方向とy方向は互いに独立に等速直線運動をする。
ここではx方向もy方向も速度
:<math>
v = \frac 1 {\sqrt 2} v _0
</math>
なので、等速直線運動の式のベクトル量とした量
:<math>
\overrightarrow x = \overrightarrow v ( t - t _0) + \overrightarrow x _0
</math>
に代入すると、
:<math>
\overrightarrow x =
\frac 1 {\sqrt 2} (1,\ 1)v _0 t
</math>
となる。
要素ごとにかくと、
:<math>
x = \frac 1 {\sqrt 2} v _0 t
</math>
:<math>
y= \frac 1 {\sqrt 2} v _0 t
</math>
となる。
** 問題
時刻t=0に原点(0, 0)をy方向に速度<math>v _0</math>で等速直線運動していた質量mの物体に、
x方向の一様な力fがかかり始めた。この場合、時刻tにおける物体の位置と
速度を求めよ。
** 解答
x軸方向には等加速度運動となる。
物体が受ける加速度は、運動方程式により
:<math>
a = \frac f m
</math>
となる。
さらにx方向の初速度0,初期位置0であることを等加速度直線運動の式に
代入すると、
:<math>
x = \frac 1 2 a t^2
</math>
:<math>
= \frac 1 2 \frac f m t^2
</math>
:<math>
v = a t
</math>
:<math>
= \frac f m t
</math>
となる。
さらに、y軸方向の運動は等速運動であり、その初速度は、<math>v _0</math>,初期位置は0であるので、
この値を等速運動の式に代入すると、
:<math>
y = v _0 t
</math>
:<math>
v _y = v _0
</math>
が得られる。
== 運動量と力積 ==
この章では運動量(うんどうりょう、momentum)を扱う。運動量は、物体の衝突に置いてエネルギーと並び、保存量となる重要な量である。また、この章では力積(りきせき、impulse)という量も導入する。力積は運動量の時間変化を表わす量であり、その導出は運動方程式を用いて成される。
物体が動いている場合、物体の速度と質量の積を物体の運動量
:<math>\overrightarrow p = m\overrightarrow v</math> (2.1)
と定義する。運動方程式
:<math>m\frac{d\overrightarrow v(t)}{dt}=\overrightarrow f</math> (<math>\overrightarrow v(t)</math>は時刻<math>t</math>における速度,<math>\overrightarrow f</math>は合力)
の両辺を時刻<math>t = t_1</math>から<math>t = t_2</math>まで積分すると
:<math>\int _{t_1}^{t_2}m\frac{d\overrightarrow v(t)}{dt}dt =\int _{t_1}^{t_2}\overrightarrow fdt</math>
:<math>\therefore\int _{t_1}^{t_2}md\overrightarrow v(t)=\int _{t_1}^{t_2}\overrightarrow fdt</math>
:<math>\therefore[m\overrightarrow v(t)]_{t_1}^{t_2}=\int _{t_1}^{t_2}\overrightarrow fdt</math> (注:<math>\overrightarrow f</math>は一定とは限らぬので右辺は積分実行できない)
:<math>\therefore m\overrightarrow v(t_2)- m\overrightarrow v(t_1)=\int _{t_1}^{t_2}\overrightarrow fdt</math>
となる。<math>\overrightarrow v(t_1)=\vec{v_1}, \overrightarrow v(t_2)=\vec{v_2}</math>とすると
:<math>m\vec{v_2}- m\vec{v_1}=\int _{t_1}^{t_2}\overrightarrow fdt</math>. (2.2)
この式の左辺は運動量変化,右辺は力積(りきせき、impulse)である。よって,'''運動量変化は力積に等しい'''('''運動量の原理''')ことが分かる。運動量変化を<math>\mathit{\Delta}\overrightarrow p</math>,力積を<math>\overrightarrow I</math>とすると
:<math>\mathit{\Delta}\overrightarrow p = m(\vec{v_2}-\vec{v_1}), \overrightarrow I =\int _{t_1}^{t_2}\overrightarrow fdt,\ \mathit{\Delta}\overrightarrow p =\overrightarrow I</math>.
特に,<math>\overrightarrow f =</math>一定のとき,<math>t_2 - t_1 =\mathit{\Delta}t</math>とおくと
:<math>\overrightarrow I =\overrightarrow f(t_2 - t_1)=\overrightarrow f\mathit{\Delta}t</math>.
* 発展: 微分と変化量
微分を用いた導出については、[[古典力学]]も参照。
* 問題例
** 問題
静止していた物体に時間<math>\mathit{\Delta}t</math>の間ある方向に一様な力fをかけた。物体が得た
運動量はどれだけか。さらに、物体の質量をmとすると、物体がその方向に
得た速度はどれだけか。
** 解答
運動量の変化分は物体が受けた力積に等しいので、物体が受けた力積を計算すれば
よい。物体が受けた力積は
:<math>
f\mathit{\Delta}t
</math>
に等しいので、物体が得た運動量も
:<math>
f\mathit{\Delta}t
</math>
に等しい。さらに、運動量が
:<math>
p = m v
</math>
を満たすことを考えると、物体の速度は
:<math>
\frac 1 m f\mathit{\Delta}t
</math>
となる。
運動量は、物体が全く力を受けない場合には保存される。これは物体に力が働かない場合には、物体の受ける力積は0であり物体の運動量変化も0であることから当然である。
さらに、複数の物体の運動量については、別の重要な性質が見られる。それは、複数の物体のもつ運動量の総和はそれらの物体の間の衝突に際して保存するということである。これはつまり、例えばある2つの物体が衝突した場合、始めに2物体がそれぞれ持っていた運動量の和は衝突が終わった後に2物体が持っている運動量の和に等しいということである。ここで、いくつかの物体がある場合それらの持つ運動量の総和を、対応する物体系の全運動量という。
物体の衝突について、運動量は常に保存する。しかし、物体系の全エネルギーは常に保存するとは限らない。一般に物体の衝突についてエネルギーは常に失われていく。もっとも物体系に限らない全エネルギーは常に一定であるので、物体が持っていたエネルギーは音や熱の形で物体系の外に逃げて行くのである。物体が衝突について失うエネルギーは衝突に関わる物体が持っている物性定数によって決まる。この係数を'''反発係数'''('''反撥係数'''、はんぱつけいすう、coefficient of restitution)と呼び、eなどの記号で書く。反発係数は、物体が衝突したする前後での物体間の相対速度の比によって定められる。
特に物体1と物体2が衝突前に速度 <math>v_1,\ v_2</math>を持っており、衝突後に速度<math>v_1',\ v_2'</math>を持ったとすると、反発係数eは
:<math>v_1' - v_2' = -e(v_1 - v_2)\quad\therefore e = - \frac {v_1' - v_2'} {v_1 - v_2} </math>
で定められる。ここで、右辺の始めの<math>-</math>符合は、衝突の前後で物体の速度がより大きい物体は、衝突前により小さい速度を持っていた物体よりも衝突後にはより小さい速度を持つことになるからである。
そのため、反発係数は一般に正の数である。
また反発係数は1より小さい数であり、物体間の相対速度は衝突前より衝突後の方が小さくなる。
特に<math>e = 1</math>の場合を'''(完全)弾性衝突'''(elastic collision)と呼び、いっぽう<math>0<e<1</math>の場合を'''非弾性衝突'''(inelastic collision)、<math>e=0</math>の場合を'''完全非弾性衝突'''と呼ぶ。弾性衝突の場合は、力学的エネルギーは保存することが知られている。一方、非弾性衝突の
場合は物体系の全エネルギーは失われる。
* 問題例
** 問題
ある静止している物体2に運動量pで運動している物体が衝突した。この場合、
衝突した後の物体2が運動量<math>p _2</math>を得たとすると、衝突後の物体1の運動量は
どれだけとなったか。
** 解答
運動量保存則を考えると、衝突の前後で物体1と物体2で構成される物体系の全運動量は保存する。
ここで、衝突前の物体系の全運動量はpであるので、衝突後の物体系の全運動量もpとなる。
さらに、物体2の衝突後の運動量が
<math>p _2</math>なので、物体1の運動量は
:<math>
p - p _2
</math>
となる。
ここで、物体系の全運動量が保存されることは、運動に関する 作用・反作用の法則 から従う。
作用反作用の法則を用いると、物体系の間の衝突に際して、衝突に関わるそれぞれの物体が受ける力は、大きさが等しく向きは反対となる。
この場合、それぞれの力に対して、衝突の時間<math>\Delta t</math>をかけたものは
衝突に際してそれぞれの物体が受け取る力積に等しい。
ここで、衝突に関して働く力の力積を全ての物体について足し合わせると、それらの和は、上のことから0となる。
しかし、全運動量の計算ではまさにそのような全物体についての運動量の総和を計算しているので、
衝突によって得られるような力積の総和は、0に等しい。
よって、衝突に際して物体系の持つ全運動量は保存される。
これを'''運動量保存則'''(うんどうりょう ほぞんそく、momentum conservation law)という。
* 問題例
** 問題
質量mの2つの物体が速度<math>v _1</math>, <math>v _2</math>
で移動している。これらの物体が衝突した場合、
衝突後のそれぞれの物体の速度を、エネルギー保存則と運動量保存則を用いて
計算せよ。ただし、物体の衝突に関してエネルギーは保存するとする。
** 解答
この問題は2つの同じ大きさの物体を異なった速度でぶつけた場合
その結果がどうなるかを計算する問題である。
実験の結果によると、一方が静止しており一方が動いている場合、
動いていた物体は静止し、静止していた物体は動いていた物体が持っていた
速度と同じ速度で動きだすことが知られている。ここでは、それらの
結果が計算によって確かめられることを見ることが出来る。
衝突後の物体の速度をそれぞれ物体1については<math>v _1'</math>,物体2については
<math>v _2'</math>とする。この場合、物体の衝突について全エネルギーが保存されることを
用いると、
:<math>
1/2 m v _1^2 + 1/2 m v _2^2
=
1/2 m v _1'{}^2 + 1/2 m v'{} _2^2
</math>
が得られる。さらに、物体の衝突について物体系の全運動量が保存されることを用いると、
:<math>
m v _1
+ m v _2 =
m v _1'
+ m v _2'
</math>
これらは、<math>v' _1</math>, <math>v '_2</math>についての2次方程式であり、解くことが出来る。実際計算すると、解として
:<math>
(v '_1,\ v' _2 )=(v _1,\ v _2),\ (v _2,\ v _1)
</math>
が得られる。前者の解は衝突に際して物体の速度が変化せぬことを示しているが、これは実際の情况として考え難いので、後者の解が現実の解となる。この結果を見ると、物体が持つ速度が入れ替わることが分かる。
このことは実際に同じ大きさの球を用いて実験を行うと、確かめることができる。
<!-- これは例えば、
<math>v _1=v,\ v _2=0</math>の時を考えると、衝突後の結果は
<math>v _1=0,\ v _2=v</math>となり、実験の結果を再現することになる。
-->
== 剛体のつり合い ==
位置のみをもち,大きさがないのが質点である。'''剛体'''とは,大きさがあるが力を加えようが形も大きさも変わらぬ物体のことである。
===角運動量と力のモーメント===
剛体の運動を考える前に質点の一定平面上の運動について次のような一般的考察を行う。
時刻<math>t</math>において<math>xy</math>平面内の位置<math>\overrightarrow r=(x,\ y)</math>を速度<math>\overrightarrow v=(v_x,\ v_y)</math>で運動し,力<math>\overrightarrow F=(F_x,\ F_y)</math>が働いている質量<math>m</math>の物体の運動方程式を成分に分けて表せば
:<math>m\frac{dv_x}{dt}=F_x,\qquad\qquad\qquad\qquad\;\cdots\cdots</math>①
:<math>m\frac{dv_y}{dt}=F_y.\qquad\qquad\qquad\qquad\;\cdots\cdots</math>②
②<math>\times x -</math>①<math>\times y</math>より
:<math>m\left(x\frac{dv_y}{dt}-y\frac{dv_x}{dt}\right)=xF_y -yF_x</math>
:<math>\therefore \frac{d}{dt}\{m(xv_y -yv_x)\}=xF_y -yF_x.\cdots</math>③
この左辺の
:<math>L=m(xv_y -yv_x)</math> (3.1)
を原点Oまわりの角運動量という。
ここで<math>\overrightarrow v</math>と<math>\overrightarrow r</math>のなす角を<math>\theta,\ x</math>軸と<math>\overrightarrow r</math>のなす角を<math>\phi</math>とすると
:<math>x=r\cos\phi,\ v_x=v\cos(\theta +\phi),\ y=r\sin\phi,\ v_y=v\sin(\theta +\phi)</math>.
これらを(3.1)に代入すると
:<math>L=m(r\cos\phi\cdot v\sin(\theta +\phi)-r\sin\phi\cdot v\cos(\theta +\phi))=mrv\sin\theta</math> (3.1a)
が得られる。なお,これをベクトルで表すと
:<math>\overrightarrow L=m\overrightarrow r\times \overrightarrow v=\overrightarrow r\times \overrightarrow p</math> (3.1b)
となり,角運動量ベクトルは位置ベクトルと速度ベクトルのベクトル積の質量倍,もしくは位置ベクトルと運動量ベクトルのベクトル積と表せる。(3.1b)を計算すると,平面上であるため位置ベクトルと速度ベクトルのz成分は0であるから
:<math>\overrightarrow L=m(x,\ y,\ 0)\times (v_x,\ v_y,\ 0)=(my\cdot 0-m\cdot 0\cdot v_y,\ m\cdot 0\cdot v_x-mx\cdot 0,\ mxv_y-myv_x)=(0,\ 0,\ mxv_y-myv_x)</math>
となり,角運動量のx, y成分は0で,z成分が(3.1)の右辺と一致する。角運動量ベクトルはz軸方向を向く,すなわち面の法線ベクトルである。
物体を回転させる力の効果の大きさを表す量を'''力のモーメント'''という。それは角運動量を時間微分したもの,すなわち力のモーメントNは
:<math>N=\frac{dL}{dt}=\frac{d}{dt}\{m(xv_y -yv_x)\}=xF_y -yF_x</math> (3.2)
である。これは力のモーメントが加えられた結果として角運動量が変化するという因果関係を表す。特に<math>N=0</math>ならば
:<math>\frac{dL}{dt}=0\quad\therefore L=</math>一定
となり,力のモーメントのつり合うと角運動量が保存するという'''角運動量保存則'''を表す。また<math>\overrightarrow F</math>と<math>\overrightarrow r</math>のなす角を<math>\mathit{\Theta}</math>とすると
:<math>F_x=F\cos(\mathit{\Theta}+\phi),\ F_y=F\sin(\mathit{\Theta}+\phi)</math>.
よって'''原点Oまわりの力のモーメント'''を<math>N</math>で表すと
:<math>N=xF_y -yF_x=r\cos\phi\cdot F\sin(\mathit{\Theta}+\phi)-r\sin\phi\cdot F\cos(\mathit{\Theta}+\phi)=rF\sin\mathit{\Theta}</math>. (3.3)
ここに<math>r\sin\mathit{\Theta}</math>は原点から力<math>\overrightarrow F</math>の作用線に下した垂線の長さであり,これを力<math>\overrightarrow F</math>の'''原点に対する腕の長さ'''という。ただし力のモーメントは力<math>\overrightarrow F</math>が位置ベクトル<math>\overrightarrow r</math>を反時計回りに回す向きを正としている(時計回りの際は<math>\mathit{\Theta}<0</math>で<math>r\sin\mathit{\Theta}<0</math>と考える)。勿論これは(3.1b)を時間微分して原点Oまわりの力のモーメントベクトルを導出することもでき
:<math>\overrightarrow N=\frac{d\overrightarrow L}{dt}=m\frac{d\overrightarrow r}{dt}\times \overrightarrow v+m\overrightarrow r\times \frac{d\overrightarrow v}{dt}=\overrightarrow r\times\overrightarrow F</math>[N・m] (3.4)
となる(同じベクトル同士のベクトル積は0になるので<math>\frac{d\overrightarrow r}{dt}\times \overrightarrow v=\overrightarrow v\times\overrightarrow v=0</math>)。これより大きさは<math>N=rF\sin\mathit{\Theta}</math>となり(3.3)と一致する。
=== 剛体に働く力のモーメント ===
前で示した通り原点Oまわりの力のモーメントは
:<math>\overrightarrow N=\overrightarrow r\times\overrightarrow F</math> (3.4)
でありその大きさは<math>N=rF\sin\mathit{\Theta}</math>[N・m]である。剛体においては力のつり合いとこの力のモーメントのつり合いを見る必要がある。
=== 重心 ===
物体の各部分に働く重力の作用点を'''重心'''({{Lang-en-short|centre of gravity}})或いは質量中心({{Lang-en-short|centre of mass}})という。<math>n</math>物体(質量:<math>m_1,\ m_2,\ \cdots\cdots,\ m_n</math>,位置<math>\vec{r_1},\ \vec{r_2},\ \cdots\cdots,\ \vec{r_n}</math> (<math>n</math>は自然数)の重心の位置<math>\vec{r_\mathrm{G}}</math>は以下のように定義される。
:<math>\vec{r_\mathrm{G}}=\frac{m_1\vec{r_1}+m_2\vec{r_2}+\cdots\cdots +m_n\vec{r_n}}{m_1+m_2+\cdots\cdots +m_n}</math>.
また重心速度<math>\vec{v_\mathrm{G}}</math>は<math>\frac{d\vec{r_k}}{dt}=\vec{v_k}\ (k=1,\ 2,\ \cdots\cdots,\ n)</math>とすると
:<math>\vec{v_\mathrm{G}}=\frac{d\vec{r_\mathrm{G}}}{dt}=\frac{m_1\vec{v_1}+m_2\vec{v_2}+\cdots\cdots +m_n\vec{v_n}}{m_1+m_2+\cdots\cdots +m_n}</math>.
== 円運動と単振動 ==
ここでは、初等的な平面上の運動の1つとして、円運動({{Lang-en-short|circular motion}})と単振動({{Lang-en-short|simple harmonic motion}})をあつかう。円運動は、単振り子(たんふりこ、simple pendlum)の運動の類似物としても重要である。それとともに、このページでは万有引力による運動も扱う。
万有引力はいわゆる重力と同じ力であり、
物体と物体の間に必ず生じる力である。一方これらの力は非常に弱いため、
惑星のように大きな質量を持った物体の運動にしか関わらない。
ここでは、太陽のまわりを回転する惑星のような大きなスケールの運動もあつかう。このような運動は円に近い軌道となることがある。このため、惑星の運動を理解する上で、円運動を理解することが重要である。
=== 円運動 ===
物体が円を描くように運動することを円運動と呼ぶ。円を描くような運動は、例えば、円形のグラウンドのまわりを走る人間のように人間が意思を持って行なう場合も指すが、自然現象として起こる場合も多い。例えば、太陽のまわりを回る地球の運動や、地球の回りを回る月の運動は、いずれも円運動で記述される。また、一定の長さをもったひもと一定の質量を持った物体で作られた振り子の運動は、ひもを固定した点から一定の距離をおいて運動しているため、物体は円軌道上を運動しており、広い意味での円軌道ととらえることも出来る。ここでは、このような場合のうちで代表的なものとして、完全な円軌道上を運動する物体の運動をあつかう。
円軌道上を運動する物体の座標も一般の場合と同様
:<math>\overrightarrow r(t)=(x(t),\ y(t))</math>
で表わされる。特に円軌道を表わす関数は[[高等学校数学II いろいろな関数]]で扱った三角関数に対応している。
* 発展: 三角関数を用いた円の表示
ここで、円運動が三角関数を用いて表されることを述べたが、このことは[[高等学校数学C]]の'''媒介変数表示'''を用いている。媒介変数表示について詳しくは、対応する項を参照してほしい。
半径rの円上を等しい速度で、円運動する物体の運動を記述することを考える。
さらに、座標を取る場合原点の位置は円運動の中心の位置とする。
この場合の物体の運動は、x, y座標を用いて、
:<math>
x = r \cos (\omega t +\delta)
</math>
:<math>
y = r \sin (\omega t +\delta)
</math>
によって書かれる。ただし、この場合<math>\omega</math>は角速度と呼ばれ単位は rad/s で与えられる。ただし、ここで rad は[[w:ラジアン]]であり、[[w:弧度法]]によって角度を表わした場合の単位である。弧度法については[[高等学校数学II いろいろな関数]]を参照。角速度は円運動をしている物体がどの程度の時間で円を一周するかに対応している。なお,高等学校の物理において角速度はスカラーとして扱う。また、この量は下で分かるのだが、円運動している物体の速度に比例する。
また、角速度に対応して、
:<math>
T = \frac {2\pi} \omega
</math>
で与えられる量を[[w:周期]]といい、周期の単位は s である。周期は物体が何秒間ごとに
円状を1周するかを表わす量である。この場合には物体は周期 T ごとに円状を1周する。さらに、
:<math>
f = \frac \omega {2\pi}
</math>
を[[w:振動数]]と呼ぶ。振動数は周期とは逆に、単位時間当たりに物体が円状を何周するかを
数える量である。振動数の単位には通常 Hz を用いる。これは、 1/s に等しい単位である。
また、周期Tと、振動数fは、関係式
:<math>
Tf = 1
</math>
を満たす。この式はある円運動をしている物体について、その物体の円運動の
周期に対応する時間の間には、物体は円状を1周だけするということに対応する。
また、
:<math>
x = r \cos (\omega t +\delta)
</math>
:<math>
y = r \sin (\omega t +\delta)
</math>
の式で<math>\delta</math>は物体の位置の[[w:位相]]と呼ばれ、物体が円状のどの点にいるかを示す
値である。
また、この場合の物体の速度のx, y要素は
:<math>v_x =\frac{dx}{dt}= -r \omega \sin \omega t</math>
:<math>v_y =\frac{dy}{dt}= r \omega \cos \omega t</math>
で与えられる。この式と、後の円運動の加速度の導出については、後の発展を参照。ここで、物体の速さをvとすると、
:<math>
v = \sqrt {v _x ^2 +v _x ^2}
= \sqrt {r^2 \omega^2 (\sin^2 \omega t +\cos^2 \omega t) }
= r \omega
</math>
となり、物体の速度は<math>r\omega</math>で与えられることが分かる。
さらに、
:<math>
\overrightarrow r \cdot \overrightarrow v
</math>
を計算すると、
:<math>
\overrightarrow r \cdot \overrightarrow v
</math>
:<math>
=( r \cos \omega t,\ r \sin \omega t) \cdot (-r \omega \sin \omega t,\ r \omega \cos \omega t)
</math>
:<math>
= r^2 \omega (\cos \omega t \sin \omega t - \cos \omega t \sin \omega t)
</math>
:<math>
= 0
</math>
となり、円運動をしている物体の速度と円運動の中心を原点とした場合の座標は直交していることが分かる。さらに、円運動をしている物体の加速度は、
:<math>\frac{dv_x}{dt^2}= -r \omega^2 \cos \omega t</math>
:<math>\frac{dv_y}{dt^2}= -r \omega^2 \sin \omega t</math>
となる。これは
:<math>\overrightarrow a = -\omega ^2 \overrightarrow r</math>
に対応しており、円運動をおこなう物体の加速度は、円運動をする物体の座標と
ちょうど反対向きになることが分かる。
* 発展: 円運動の速度と加速度
ここでは、円運動の速度と加速度を与えたが、この値は物体の運動が決まれば決まる値なので、円運動の式から計算できる。ただ、実際にこれらの式を得るためには、円運動の式の'''微分'''を行う必要があるため、ここでは詳しく扱わない。導出については、[[古典力学]]を参照。
* 問題例
** 問題
半径rの円上を角速度<math>\omega</math>で運動する物体の加速度の大きさを計算せよ。
** 解答
:<math>
\overrightarrow a = -\omega^2 \overrightarrow r
</math>
に注目するとよい。右辺について円運動をしている物体の座標が常に
:<math>
\overrightarrow r ^2 = r^2
</math>
を満たすことに注目すると、
:<math>
|\overrightarrow a| = \sqrt {\overrightarrow a^2}
</math>
:<math>
= \sqrt {r^2 \omega^4} = r \omega^2
</math>
となる。
** 問題
50Hzで円運動している物体の円運動の周期を計算せよ。
** 解答
:<math>
T = \frac 1 f
</math>
を用いると、
:<math>
T = \frac 1 {50}\,\textrm s
</math>
:<math>
= 0.020 \, \textrm s
</math>
となる。
==== 円運動の方程式 ====
以上より,円運動の加速度の成分は
:向心成分:<math>a_\mathrm{C}=r{\omega}^2=\frac{v^2}{r},</math>
:接線成分:<math>a_\mathrm{T}=\frac{dv}{dt}</math>.
よって,円運動する物体の質量を<math>m</math>,向心方向に働く力,すなわち'''向心力'''({{Lang-en-short|centripetal force}})を<math>F_\mathrm{C}</math>,接線方向に働く力を<math>F_\mathrm{T}</math>とおくと運動方程式は
:<math>mr{\omega}^2=F_\mathrm{C}\Longleftrightarrow m\frac{v^2}{r}=F_\mathrm{C},</math> (4.1)
:<math>m\frac{dv}{dt}=F_\mathrm{T}</math>. (4.2)
* ※ 執筆中(読者に協力をお願いします。)
[[w:向心力]]、[[w:遠心力]](centrifugal force)
=== 単振動 ===
円運動と関係の深い物体の運動として、単振動({{Lang-en-short|simple harmonic oscillation}})があげられる。単振動はあらゆる振動現象の基本になっており、応用範囲が広い運動である。円運動と同様、単振動も三角関数を用いて運動が記述される。また、周期や位相がある点も円運動と同じである。また、単振動は波動に関わる現象とも関係が深く、位相、振幅などの量を共有している。
ここからは、単振動をする物体の性質をより詳しく見て行く。
単振動は様々な情况であらわれるが、単純な例としては'''フックの法則'''で支配されるばねに接続された物体の運動がある。ここでは、ばね定数<math>k</math>のばねに質量<math>m</math>の物体を接続するとする。ばねの自然長の位置を原点として時刻<math>t</math>における原点からの物体の位置を<math>x(t)</math>とおく場合、この物体に関する運動方程式は
:<math>m\frac{d^2x(t)}{dt^2}= - kx(t)</math>
で与えられる。この方程式の両辺を<math>m</math>で割ると、加速度は
:<math>\frac{d^2x(t)}{dt^2}= -\frac{k}{m}x(t)</math>……①
で与えられることが分かる。このように、加速度と物体の座標が負の比例係数を持って比例関係にある式が、単振動の運動方程式である。単振動の振動中心を<math>x_\mathrm{C}</math>(単振動では振動中心は定数),角振動数を<math>\omega</math>とし,この運動方程式の解を
:<math>x(t)= x_\mathrm{C}+ a\sin\omega t +b\cos\omega t</math>…②
とおくと
:<math>\dot x(t)=\omega(a\cos\omega t -b\sin\omega t)</math>
:<math>\therefore \ddot x(t)=-\omega^2(a\sin\omega t +b\cos\omega t)=-\omega^2(x(t)- x_\mathrm{C})</math> (∵②)
[[w:振幅|振幅]]が<math>A=\sqrt{a^2+b^2}</math>であることを用い,以上を整理して時刻<math>t</math>における物体の運動を位置<math>x(t)</math>,速度<math>v(t)</math>,加速度<math>a(t)</math>で表すと
:<math>x(t)= x_\mathrm{C}+ A \sin (\omega t +\delta),</math> (4.3)
:<math>v(t)= \frac{dx(t)}{dt} = A\omega\cos (\omega t +\delta),</math> (4.4)
:<math>\begin{align}a(t)=\frac{d^2 x(t)}{dt^2}& = -A\omega ^2 \sin (\omega t +\delta)\\ & =-\omega^2(x(t)- x_\mathrm{C})\end{align}</math> (4.5)
となる。<math>\delta</math>は初期位相である。なお,(4.5)と①より
:<math>\omega^2 x(t)=\frac{k}{m}x(t)\ \therefore \omega=\sqrt{\frac{k}{m}}\ (\because\omega >0)</math>
となる。
*発展: 単振動の運動方程式
ここで、単振動の運動方程式と、単振動の運動の式を与えたが、実際には単振動の運動の式は運動方程式から導出できるがこれについては[[w:微分方程式]]を扱う必要があるので詳しい導出については、[[古典力学]]を参照。
<math>\sin</math>関数は関数の値の増加に伴って周期的な振動を行なう関数なので、物体は、<math>x=0</math> のまわりで周期的な振動をすることが分かる。
ただし、この場合においてはこれらの量は物体の円運動ではなく、物体の振動についての量であり、それぞれ単位時間当たりに何[rad]だけ位相が進むかの量と振動の周期の中で、どの位置に物体がいるかを表す量に対応している。また、周期と振動数も円運動の場合と同じ定義で与えられる。
:<math>T = \frac {2\pi}\omega</math>
:<math>f =\frac \omega {2\pi}</math>
* 問題例
** 問題
質量mを持つある物体について、ばね定数<math>k _1</math>のばねとばね定数<math>k _2</math>のばねに
つながれた場合では、 どちらの場合の方が物体の角速度が大きくなるか。
ただし、<math>k _1>k _2</math>が成り立つとする。また、周期と振動数についてはどうなるか。
** 解答
この場合にはこの単振動の角振動数は、
:<math>
\omega = \sqrt {\frac k m}
</math>
で与えられる。この量はばね定数kが大きいほど大きいので、角振動数は
ばね定数<math>k _1</math>を持つばねの角振動数の方がばね定数<math>k _2</math>を持つばねの角振動数
より大きくなる。また、単振動の振動数は単振動の角振動数に比例するので、
振動数についても、 ばね定数<math>k _1</math>を持つばねの振動数の方がばね定数<math>k _2</math>を
持つばねの振動数より大きくなる。一方、この場合の周期については、
:<math>
T = \frac {2\pi} \omega = 2\pi \sqrt {\frac m k}
</math>
が成り立つため、ばね定数kが小さいほど大きくなる。よって、周期については
ばね定数<math>k _2</math>を持つばねの周期の方がばね定数<math>k _1</math>を持つばねの周期
より大きくなる。
** 問題
重力のある中に長さlのひもでつるされた物体によって作られた物体の
鉛直下向きに垂直な方向の運動が単振動となることを求めよ。
ただし、振り子の動く範囲は小さいものとする。
このように単振動をする振り子を 単振り子(たんふりこ、simple pendlum) と呼ぶことがある。
** 解答
ひも が固定されている位置から鉛直に下ろした直線と、物体がつながれている ひも がなす角度を <math>\theta</math> とする。この場合、図形的に考えるとこの場合の水平方向の運動方程式は
:<math>m a _x =- mg \sin \theta </math>
となる。ここで、<math>\theta</math> が小さい場合、
:<math>\theta \sim \frac x l</math>
となることに注意すると、運動方程式は
:<math>a _x = -g \frac x l</math>
:<math>a _x = - \frac g l x</math>
となり先ほどのばねにつながれた物体の運動方程式と等しくなる。
よって、この物体の運動も単振動で記述されることが分かった。さらに、
先ほどの角振動数と比較すると、この場合の角振動数<math>\omega</math>は
:<math>\omega = \sqrt{\frac g l}</math>
となることが分かる。
これらの結果から[[小学校理科]]の結果である
:単振り子について
::物体の重さは振り子の周期と関係しない。
::振り子のひもの長さが長くなるにつれて、振り子の周期は長くなる。
の実験事実が運動方程式の結果と一致することが確かめられる。
== 万有引力 ==
{{see also|高等学校地学}}
この章では、万有引力による運動を扱う。万有引力は全ての物体の間に存在しているが、その力が媒介する運動として有名なものは太陽の回りを回転する地球の運動や、地球自身の回りを回転する月の運動である。実際にはこのような何かの回りを回転する構造は宇宙全体に広く見られる。
例えば、空に見られる星は恒星と呼ばれるが、これらの星の回りにも太陽に対する地球と同じように、惑星が回りを回っていると考えられ、実際にそのような惑星が確認された恒星もある(系外惑星)。
このように宇宙の中で万有引力による回転運動は広く観測される。ここではこのような運動は物体間に働くどのような力によって記述されるかを見ていく。
* 発展: 万有引力発見の歴史
歴史的には、逆にこのような物体の間の運動を説明するような力を考えることで
物体間に働く力が発見された。歴史について詳しくは[[w:ニュートン]]などを参照。
=== 万有引力の法則 ===
まずは、物体間に働く万有引力(glavitational constant)の法則を述べる。種々の観測の結果によると、質量<math>m_1</math>を持つ物体と質量<math>m_2</math>を持つ物体の間には
:<math>F = -G \frac{m _1 m _2}{r^2}</math>
で表わされる力が働く。ここでGは物体によらない定数で、'''万有引力定数'''という。
値は<math> G = 6.67 \times 10^{-11} \, {\mathrm{N}\cdot\mathrm{m}^2/\mathrm{kg}^2} </math> である。
万有引力の法則
:<math>F = -G \frac{m _1 m _2}{r^2}</math>
::F: 万有引力
::G: 万有引力定数
::r: 物体間の距離
万有引力は物体間の距離の2乗に逆比例する力である。
物体の少なくとも片方が惑星のように巨大な場合、物体間の距離rは、重心間の距離である。
地球の万有引力を考える。地球の質量をM、地球の半径をR、測定する物体の質量をmとした場合、重力Fは
:<math>F = -G \frac{M m}{R^2}</math>
となる。
これが地表近くでは大きさが mg と等しいので、
:<math>G \frac{M m}{R^2} = mg </math>
変形して
:<math>G M = gR^2 </math>
となる。計算問題のさい、この変形が用いられる場合がある。
;地球の自転の影響
地球は自転をしており、重力の計算では、厳密には自転による遠心力も考える必要があるが、しかし、自転の遠心力の大きさは、万有引力の<math>\frac{1}{300}</math>倍程度しかないので、通常は自転による遠心力を無視する場合が多い。
なお、地球の自転の遠心力は、赤道上でもっとも大きくなる。
=== 静止衛星 ===
人工衛星が、地球の自転と同じ周期で、自転と同じ向きに等速円運動をすれば、その人工衛星は地上から見て、つねに地面の上空にあるので、地上の観測者からは静止して見える。このような人工衛星のことを'''静止衛星'''という。
** 問題
質量mの物体が質量Mの大きな物体の回りを、万有引力の力を向心力として、半径rの円運動をしている。この場合の円運動の角速度を求めよ。
** 解答
半径r、角速度<math>\omega</math>の円運動をする場合の物体の向心力 は
:<math>- mr \omega ^2</math>
である。一方、質量mと質量Mの物体の間の距離がrである場合、2つの物体間に働く重力は、重力の変数をfとすると、
:<math>f = - G\frac{mM}{r^2}</math>
で与えられる。よって、これらの力が等しくなる場合に、質量mの物体は質量Mの物体のまわりを円運動で回転(公転)することができる。よって、<math>\omega</math>を求める式は、
:<math>- mr \omega^2 = - G\frac{mM}{r^2}</math>
:<math>\omega = \sqrt { G\frac M{r^3} }</math>
となる。
=== 万有引力による位置エネルギー ===
地球表面での重力による位置エネルギーを考えられるのと同様に、万有引力による位置エネルギーも考えることができる。
:※ 読者が積分を知ってることを前提に説明する。数学3の積分をまなんだほうが理解は早い。進学校などでは、積分で位置エネルギーを求めるのが実態である。
万有引力による位置エネルギーを求めるには、万有引力を積分すればいい。
質量Mの物体からrの距離に質量mの物体が存在するとする。ただし、Mはmよりはるかに
大きいとする。無限遠点を基準にすると(つまり無限遠では位置エネルギーがゼロ)、この場合、質量mの物体の位置エネルギーは
:<math>U = -G \frac {mM} r</math>
で与えられる。
符号にマイナスがつくことの物理的な解釈は、重力をつくりだす物体に近づくほど、その物体のつくりだす重力圏を脱出するには、エネルギーが追加的に必要になるからであると解釈できる。
無限遠では r=+∞ とすればよく、結果、 U=0 になる。
なお、万有引力は保存力であるので、位置エネルギーは、無限遠点からの経路によらず、現在の位置だけで決まる。
* 図参照
のように与えられる。また、このグラフは直観的な意味を持っている。
実は、このグラフの傾きはグラフが表わす位置エネルギーを持つ点に物体を置いた場合、
その物体が力を受ける方向とその大きさを表わしている。ここでは、
位置エネルギーの傾きが常にr=0に落ち込む方向に生じているため物体Mから距離r
(rは任意の実数。)の点に静止している物体は必ずMの方向に吸い込まれて行くことを
表わしている。(詳しくは[[古典力学]]参照。)
* 問題例
** 問題
ある惑星上にある物体を宇宙の無限遠まで到達させるために宇宙船に惑星上で
与えなくてはいけない速度はどのように表わされるか。ただし、計算については
最初に宇宙船が出発した惑星以外の天体からの影響は無視するとする。
また、惑星の半径はR、 惑星の質量はMとする。
** 解答
惑星の引力による位置エネルギーは惑星表面で
:<math>- G\frac {mM} R</math>
であり、無限円点では0である。ただし、mは宇宙船の質量とした。
一方、宇宙船が無限円点に達するには、宇宙船の速度が無限円点でちょうど0に
等しくなればよい。ここで、惑星上での宇宙船の速度をvとすると、
エネルギー保存則より、
:<math>\frac 1 2 m v^2 - G\frac {mM} R = 0 - 0</math>
となる。よってこの式からvを求めればよい。答は、
:<math>v = \sqrt {2G\frac {M} R }</math> (答)
上記の計算から分かるように、一般に、万有引力だけを受けて運動する物体の力学的エネルギーは、
:<math>E = \frac 1 2 m v^2 - G\frac {mM} R = </math> '''一定'''
である。
=== 人工衛星の軌道 ===
==== 宇宙速度 ====
[[画像:Newton Cannon.svg|thumb|300px|Cが第一宇宙速度の軌道。]]
仮に高い山から物体を水平に発射したとき(空気抵抗は無視する)、地球のまわりを回り続けるために必要な最小の初速度のことを'''第一宇宙速度'''という。 第一宇宙速度は、遠心力と向心力がつりあう速度である。
第一宇宙速度は、秒速では7.91 km/sである。
;第一宇宙速度の計算
:<math> m\frac{ {v_1}^2 }{r} = G \frac{mM}{R^2}</math>
v<sub>1</sub>について觧き、
:<math> v_1 = \sqrt {gR} </math>
なお、およそ R = 6400 × 10<sup>3</sup> m である。 g = 9.8 m/s<sup>2</sup> である。
:<math> v_1 = \sqrt {9.8 \times 6400 \times 10^3 } = 7.9 \times 10^3\, \textrm {m/s} = 7.9 \,\textrm {km/s} </math> (答)
----
さらに初速度が大きくなると、物体は[[高等学校数学C/平面上の曲線#楕円|楕円]]軌道になる。
初速度が約11.2km/sになると、軌道は[[高等学校数学C/平面上の曲線#放物線|放物線]]になり、物体は無限の彼方に飛んでゆく。
この約11.2km/sのことを'''第二宇宙速度'''という。これは、無限遠の点で、速度が0を超える値になるために必要な初速度である。
なので、計算で第二宇宙速度を求めるにはエネルギー保存則を計算には使う。
;第二宇宙速度の計算
:<math>\frac 1 2 m {v_2}^2 - G\frac {mM} R = 0 - 0</math>
の式からvを求め、
:<math>v_2 = \sqrt {\frac {2GM} R }</math>
にさらに <math> GM = gR^2 </math> を代入して、
:<math> v_2 = \sqrt { 2gR }</math>
これに関係する定数を代入すればいい。
なお、およそ R = 6400 × 10<sup>3</sup> m である。 g = 9.8 m/s<sup>2</sup> である。
:<math> v_2 = \sqrt { 2 \times 9.8 \times 6400 \times 10^3 } \, \textrm {m/s} = 1.1 \times 10^4 \, \textrm {m/s}</math> (答)
----
初速度 11.2km/s以上では、軌道は[[高等学校数学C/平面上の曲線#双曲線|双曲線]]になり、物体は無限の彼方に飛んでゆく。
{{コラム|無重量状態|地球の周囲をまわっている人工衛星の中で、物の重量が無くなり浮かべる理由は、重力と遠心力が釣り合っているからである。このような状態のことを'''無重量状態'''という。
世間では国際宇宙ステーションの中で物が浮かぶ映像などが有名であるが、これも無重量状態である。
地表から離れて重力が弱まったから人工衛星の中が無重力になったのではない。
もし向心力としての重力が無いのなら、衛星の軌道は円軌道ではなく直線軌道になってしまい、宇宙の彼方に飛んでいっていってしまうだろう。
無重量状態のことを無重力状態という場合も多い。}}
;第三宇宙速度
地球から射出したとき、太陽系外に出るために必要な最小の初速度のことを'''第三宇宙速度''' という。第三宇宙速度の値は約16.7 km/sである。
=== ケプラーの法則 ===
ギリシャ時代から中世まで信じられてきた[[w:天動説|天動説]]({{Lang-en-short|geocentric theory}})に対し,16世紀半ばに[[w:ニコラウス・コペルニクス|コペルニクス]]は全ての[[w:惑星|惑星]]({{Lang-en-short|planet}})が太陽を中心とした円運動をしている[[w:地動説|地動説]]を提唱した。その後[[w:ティコ・ブラーエ|ティコ・ブラーエ]]は長年にわたり惑星の観測を行い,その観測結果を引継いだ[[w:ヨハネス・ケプラー|ケプラー]]はこれらの結果をもとに計算を行い,惑星の運行に関する法則,'''ケプラーの法則'''({{Lang-en-short|Kepler's laws}})を発見した。なお,教科書は太陽と惑星の関係で論じているが,他にも惑星と衛星(自然衛星,人工衛星)でも成り立つ。
==== ケプラーの第一法則 ====
惑星(衛星)は太陽(惑星)を1つの焦点とする楕円運動をする('''楕円軌道の法則''')。
==== ケプラーの第二法則 ====
[[File:Elliptical motion of man-made satellight.png|thumb|right|640px|図 人工衛星の楕円運動]]
惑星(衛星)と太陽(惑星)を結ぶ動径が単位時間に描く面積('''面積速度''')は一定である('''面積速度一定の法則''')。
* 証明
:地球の周りを運動する人工衛星について考える。右図のように地球の中心を原点として<math>xy</math>平面をとり,地球の質量を<math>M</math>,人工衛星の質量を<math>m</math>,万有引力定数を<math>G</math>,時刻<math>t</math>における人工衛星の位置を<math>\overrightarrow r(t)=(x(t),\ y(t))</math>とおく。人工衛星の角運動量<math>L</math>は
::<math>L=m\left(x(t)\frac{dy(t)}{dt}-y(t)\frac{dx(t)}{dt}\right)</math>. ((3.1)を参照)
:両辺を時間微分して
::<math>\begin{align}\frac{dL}{dt} & =m\left(\frac{dx(t)}{dt}\frac{dy(t)}{dt}+x(t)\frac{d^2y(t)}{dt^2}-\frac{dy(t)}{dt}\frac{dx(t)}{dt}-y(t)\frac{d^2x(t)}{dt^2}\right) \\ & =m\left(x(t)\frac{d^2y(t)}{dt^2}-y(t)\frac{d^2x(t)}{dt^2}\right).\cdots\cdots(*)\end{align}</math>
:ここで,時刻<math>t</math>における人工衛星の運動方程式は
::<math>m\frac{d^2\overrightarrow r(t)}{dt^2}=-G\frac{Mm}{x(t)^2+y(t)^2}\Longleftrightarrow\begin{cases}m\frac{d^2x(t)}{dt^2}=-G\frac{Mm\cdot x(t)}{(x(t)^2+y(t)^2)^\frac{3}{2}} \\ m\frac{d^2y(t)}{dt^2}=-G\frac{Mm\cdot y(t)}{(x(t)^2+y(t)^2)^\frac{3}{2}}\end{cases}</math>
::<math>\therefore \frac{d^2x(t)}{dt^2}=-G\frac{M\cdot x(t)}{(x(t)^2+y(t)^2)^\frac{3}{2}},\ \frac{d^2y(t)}{dt^2}=-G\frac{M\cdot y(t)}{(x(t)^2+y(t)^2)^\frac{3}{2}}</math>.
:これらを<math>(*)</math>に代入して
::<math>\frac{dL}{dt}=m\left\{x(t)\cdot\left(-G\frac{M\cdot y(t)}{(x(t)^2+y(t)^2)^\frac{3}{2}}\right)-y(t)\cdot\left(-G\frac{M\cdot x(t)}{(x(t)^2+y(t)^2)^\frac{3}{2}}\right)\right\}=0</math>.
:ゆえに角運動量<math>L</math>は一定である(角運動量は保存する)。
:ここで,時刻<math>t</math>における人工衛星の速度<math>\frac{d\overrightarrow r(t)}{dt}=\overrightarrow v(t)</math>とし,図のように人工衛星の位置ベクトル<math>\overrightarrow r(t)</math>と速度ベクトル<math>\overrightarrow v(t)</math>のなす角を<math>\theta</math>,位置ベクトル<math>\overrightarrow r(t)</math>と<math>x</math>軸とのなす角を<math>\phi</math>とする。以上より
::<math>\begin{align}\frac{L}{2m}&=\frac{1}{2}\left(x(t)\frac{dy(t)}{dt}-y(t)\frac{dx(t)}{dt}\right) \\ &=\frac{1}{2}(|\overrightarrow r(t)|\cos\phi\cdot |\overrightarrow v(t)|\sin(\theta+\phi)-|\overrightarrow r(t)|\sin\phi\cdot |\overrightarrow v(t)|\cos(\theta+\phi)) \\ & =\frac{1}{2}(|\overrightarrow r(t)||\overrightarrow v(t)|\{\sin\theta(\cos^2\phi+\sin^2\phi)+\cos\phi\cos\theta\sin\phi-\sin\phi\cos\theta\cos\phi\} \\ & =\frac{1}{2}|\overrightarrow r(t)||\overrightarrow v(t)|\sin\theta=\mathrm{const}.\end{align}</math> (<math>\mathrm{const}.</math>は一定の意味)
===ケプラーの第三法則===
惑星(衛星)の公転周期<math>T</math>の2乗は楕円軌道の長半径(半長軸)<math>a</math>の3乗に比例する('''調和の法則''')。
:<math>\frac{T^2}{a^3}=\mathrm{const}.</math>
*証明
まずは、公転軌道が真円である場合を考える。
:恒星の質量をM、惑星の質量をm、公転半径をaとする。
:惑星は恒星の周りを等速円運動するので、角速度をω、万有引力定数をGとすると、万有引力の法則と円運動方程式より
::<math>m a \omega^2 = G \frac{Mm}{a^2}</math>
::<math>\therefore \omega = \sqrt{\frac{GM}{a^3}}</math>
:この等速円運動の周期Tを求めると、
::<math>T = \frac{2\pi}{\omega} = 2\pi \sqrt{\frac{a^3}{GM}}</math>
:両辺の平方をとると、
::<math>T^2 = 4\pi^2 \frac{a^3}{GM}</math>
::<math>\therefore \frac{T^2}{a^3} = \frac{4\pi^2}{GM} = \mathrm{const}.</math>//
次に、公転軌道が楕円である場合を考える。
:恒星の質量をM、惑星の質量をm、楕円の長半径をa、短半径をb、恒星から近日点・遠日点迄の距離をそれぞれ<math>R_1, R_2</math>とする。
:この楕円の面積は<math>\pi ab</math>であり([[高等学校数学III/積分法#面積|参照]])、楕円の面積速度を<math>V_s</math>、公転周期を<math>T</math>とすると面積速度の定義より
::<math>V_s T = \pi ab</math>
:惑星が<math>r = R_1, R_2</math>の位置にいるときの速度をそれぞれ<math>\vec{v_1}, \vec{v_2}</math>とすると
::<math>\vec{v_1} \cdot \vec{R_1} = 0, \vec{v_2} \cdot \vec{R_2} = 0</math>
:よってケプラーの第二法則より
::<math>\frac{1}{2} R_1 v_1 = \frac{1}{2} R_2 v_2</math>
::<math>\therefore \frac{v_2}{v_1} = \frac{R_1}{R_2}</math>
:また、万有引力定数をGとすると力学的エネルギー保存則より
::<math>\frac{1}{2} m v^2_1 - G\frac{Mm}{R_1} = \frac{1}{2} m v^2_2 - G\frac{Mm}{R_2}</math>
::<math>\therefore \frac{1}{2}v^2_1 \{1 - (\frac{v_2}{v_1})^2\} = \frac{GM}{R_1} (1 - \frac{R_1}{R_2})</math>
::<math>\therefore \frac{1}{2} v^2_1 \{1 - (\frac{R_1}{R_2})^2\} = \frac{GM}{R_1} (1-\frac{R_1}{R_2})</math>
::<math>\therefore \frac{1}{2} v^2_1 (1+\frac{R_1}{R_2}) = \frac{GM}{R_1}</math>
::<math>\therefore v_1 = \sqrt{\frac{2R_2GM}{R_1(R_1+R_2)}}</math>
:面積速度について、
::<math>V_s = \frac{1}{2} R_1 v_1 = \sqrt{\frac{R_1R_2GM}{2(R_1+R_2)}}</math>
:ケプラーの第一法則より恒星は楕円の焦点の片方に存在するので、
::<math>R_1+R_2 = 2a, b = \sqrt{R_1R_2}</math>
::<math>\therefore V_s = b\sqrt{\frac{GM}{4a}}</math>
::<math>\therefore b\sqrt{\frac{GM}{4a}} T = \pi ab</math>
::<math>\therefore \frac{GMT^2}{4a} = \pi^2 a^2</math>
::<math>\therefore \frac{T^2}{a^3} = \frac{4\pi^2}{GM} = \mathrm{const}</math>.//
楕円の場合でも、真円と同じ<math>T^2 = \frac{4\pi^2}{GM} a^3</math>という結果が得られた。
[[Category:高等学校教育|物ふつり2ちからとうんとう]]
[[Category:物理学|高ふつり2ちからとうんとう]]
[[Category:物理学教育|高ふつり2ちからとうんとう]]
[[Category:高等学校理科 物理II|ちからとうんとう]]
czx29ojxyrqvfuyzx6ajer77kr9mq6k
高等学校物理/原子物理
0
1946
299681
299519
2026-05-20T09:56:40Z
Nermer314
62933
299681
wikitext
text/x-wiki
{{pathnav|高等学校の学習|高等学校理科|高等学校物理|高等学校 物理|pagename=原子物理|frame=1|small=1}}
== 電子と光 ==
=== 電子の発見と測定 ===
==== 陰極線 ====
[[File:12. Тлеечко празнење.ogv|thumb|400x400px|真空放電の実験動画|中央]]
図のように両極に電極を封入したガラス管に高電圧を加えるとき、内部の気体を抜いていくと管全体が内部気体特有の発光を示す。このような稀薄気体による放電を'''真空放電'''という。最近は減りつつあるが、蛍光灯は真空のガラス管に少量の水銀蒸気を入れて真空放電を起こすことにより、水銀から紫外線を発生させて蛍光塗料を光らせている。
1858年、ドイツのプリュッカーは真空放電の実験の中で、ガラス管内の真空度を増すとあるとき管内の光が消えて正極側の管壁が蛍光を発することを発見した。これを受けて、1874年にイギリスのクルックスが「負極から出た何かが正極に向かって進んで管壁にぶつかることによって蛍光する」というアイディアを提唱した。ここで、正極・負極をそれぞれ'''陽極'''・'''陰極'''、陰極から出る何かを'''陰極線'''と名づけた。
<gallery widths="150">
File:Katódsugarak mágneses mezőben(1).jpg|クルックス管。陰極は右側にある。陽極は下部にある。
File:Katódsugarak mágneses mezőben(2).jpg|陰極線は、陰極から飛び出て進み、管壁にぶつかって蛍光を発させる。十字状の物体と同じ形の影が出来ることから陰極線が物体に遮られることも確認できる。
File:Katódsugarak mágneses mezőben(3).jpg|U字磁石を配置して平行な磁場を与えると、陰極線は上に曲げられる。
File:Katódsugarak mágneses mezőben(4).jpg|今度はU字磁石を逆に配置して平行な磁場を与えると、陰極線は下に曲げられる。
</gallery>
その後、さまざまな実験により陰極線の性質が解明された。
*写真フィルムを感光する
*蛍光物質に当てると発光を示す
*物体に遮られ、その後ろに影を作る
*電場や磁場に、負電荷と同様の影響を受ける
*これらの性質は陰極の金属の種類や管内の気体の種類に依存しない
これらを総合すると、「陰極線は負電荷を持つある特定の粒子の流れで、その粒子はすべての金属に含まれる」という仮説が立つ。
この粒子の正体を調べるために、次のような実験が行われた。
==== トムソンの実験 ====
1897年、イギリスのトムソンは陰極線が電場や磁場でどのように曲げられるかを詳しく調べた。
真空中に間隔d、長さlの平行平板電極a, bを上から順に置き、電極面に平行に、電極間に向けて左から速さvで質量m、電荷-eの荷電粒子を入射する。電極の右端から距離Lだけ離れたところに蛍光物質を塗ったスクリーンを置いて粒子の到達地点を記録する。電子の入射方向にx軸をとり、電極の左端を通りスクリーンに平行な直線をy軸とする。また、表から裏の向きにz軸をとる。粒子の質量mは非常に小さい値と考えられるので、重力の影響は無視する。
まず、極板間にy軸の負の向きに大きさVの電圧をかける。このとき、極板間の電場は一様になるので、電場の強さは<math>E = \frac{V}{d}</math>と求まる。粒子は負電荷なので電場の向きと逆、すなわちy軸の正の向きに電場からの力を受け、その大きさは<math>F = |-e| E = \frac{eV}{d}</math>である。よって粒子の加速度は運動方程式より<math>a = \frac{eV}{md}</math>と求まる。
このとき、x軸方向は等速直線運動、y軸方向は等加速度運動をするので、xy平面上では放物運動をすると見做せる。x軸方向で考えると、速さvでlだけ移動する時間は、きはじの法則より<math>t_1 = \frac{l}{v}</math>である。y軸方向で考えると、粒子が電極を抜ける瞬間のy座標は<math>y_1 = \frac{1}{2} at^2_1 = \frac{el^2V}{2mdv^2}</math>と求まる。
電極を抜けた粒子は等速直線運動を行うので、粒子が電極を抜けてからスクリーンに到達する時間はx軸方向で考えると<math>t_2 = \frac{L}{v}</math>である。y軸方向は位置<math>y_1</math>に達したときの速度で等速運動をするので、<math>v_y = at_1 = \frac{elV}{mdv}</math> である。よって、電極を通過した後のy方向の移動距離は<math>y_2 = v_y t_2 = \frac{elLV}{mdv^2}</math>と求まる。スクリーンに到達したときの粒子のy座標は<math>y_0 = y_1 + y_1 = \frac{el^2V}{2mdv^2} + \frac{elLV}{mdv^2} = \frac{el(l+2L)V}{2mdv^2}</math>である。
次に、電極間にだけz軸の正方向に一様な磁場を加える。入射した粒子が直進するように磁場を調整すると、粒子が電場から受けるクーロン力と磁場から受けるローレンツ力が釣り合うので、磁束密度の大きさについて力の釣り合いの式より<math>B = \frac{V}{vd}</math>が成り立つ。よって<math>y_0 = \frac{el(l+2L)B}{2mv}</math>である。
これらを総合すると、<math>y_0 = \frac{e}{m} \times \frac{l(l+2L)B}{2v} </math>より<math>\frac{e}{m} = \frac{2y_0v}{l(l+2L)B} = \frac{2y_0E}{l(l+2L)B^2} = \frac{y_0V}{l(\frac{l}{2}+L)dB^2}</math>と求まる。
この<math>\frac{e}{m}</math>を荷電粒子の'''比電荷'''という。当時、最終的に求まった式に含まれる定数はすべて測定可能だったので、比電荷の値を求めることができた。具体的には、<math>\frac{e}{m} \fallingdotseq 1.75882001076 \times 10^{11}</math> C/kgである。
この比電荷は陰極に用いる金属や管内の気体の種類に依存しないので、物質の中には負電荷を持った粒子が共通に含まれることが証明された。この粒子は'''電子'''と名付けられた。現在では、この電子が電気の正体であると判っている。
なお、電子の具体的な質量や電気量の測定は1909年のミリカンの実験を待つことになる。
==== ミリカンの実験 ====
ミリカンの実験とは、霧吹きなどで作成した油滴の微小な飛沫に、X線やラジウムなどで帯電させる。そして、外部から電場を印加する。すると、油滴の重力(下向き)のほかに、電場による静電気力(上向きになるように電極板を設置する)が働くので、釣り合って静止する状態になった時の電場から、電荷の値を確かめる実験である。
油滴の質量をm、電気量を-q、電場の強さをE、重力加速度をgとすると、油滴に働く重力とクーロン力が釣り合っているので、<math>mg = |-q|E</math>である。
電場の強さを0にすると、油滴は自由落下運動を始めるが、空気抵抗によって終端速度vで落下するようになる。このとき、油滴に働く重力と空気抵抗力が釣り合っているので、空気抵抗の比例定数をkとして<math>mg = kv</math>が成り立つ。
総合して、<math>q = \frac{kv}{E}</math>を得る。
この実験を繰り返したときに算出・測定される電荷の値が全て 1.6×10<sup>-6</sup> Cの整数倍になったので、電子1個の電荷が 1.6×10<sup>-19</sup> Cだと分かった。
なお、この 1.6×10<sup>-19</sup> Cのことを'''電気素量'''という。
現在では、電気素量は <math>e = 1.602 \, 176 \, 634 \times 10^{-19} \, \mathrm C</math> と定義されている。
この値と先ほどの比電荷の値から、電子の質量は<math>m \fallingdotseq 9.1093837015 \times 10^{-30} </math> kgと求まる。
{{コラム|ミリカン以前の電気素量の測定|
ラボアジエなどの電気分解の実験により、金属の電気分解の実験の時に発生する気体が帯電していることは古くから知られていた。実験物理学者タウンゼントは、発生した気体のモル数と静電誘導などによって発生した電荷の合計を測定することにより、電子1個あたりの電荷(電気素量)を概算した。
現代の電子の電荷と桁が同じくらいの精度で、タウンゼントは電気素量の測定値を得た。
}}
=== 光の粒子性 ===
==== 光電効果 ====
[[File:Photoelectric effect diagram no label.svg|thumb|300px|電子の運動エネルギーの最大値と、光の振動数との関係]]
負の電荷に帯電させてある金属板に、紫外線を当てると、電子が飛び出してくることがある。また、放電実験用の負極に電子を当てると、電子が飛び出してくることがある。この現象を、'''光電効果'''という。1887年、ヘルツによって、光電効果が発見された。レーナルトによって、光電効果の特徴が明らかになった。
当てる光の振動数が、一定の高さ以上だと、光電効果が起きる。この振動数を'''限界振動数'''といい、これより低周波数の光では、光電効果が起こらない。また、限界振動数のときの波長を、'''限界波長'''という。
限界振動数は物質によって異なる。亜鉛板では紫外線でないと光電効果が起きないが、セシウムでは可視光でも光電効果が起きる。
光電効果とは、物質中(主に金属)の電子が光からエネルギーを受け取って外部に飛び出す現象のことである。
この飛び出した電子を'''光電子'''という。
光電効果には次のような特徴的な性質がある。
:* 光の振動数がある振動数(限界振動数)以上でないと起こらない。
:* 光電子の運動エネルギーの最大値は当てた光の振動数のみに依存し、光の強さには依存しない。
:* 単位時間あたりに飛び出す光電子数は、光の強さに比例する。
これらの性質のうち、1番目と2番目の性質は(それまでの)古典物理学では説明できない。
つまり、光を電磁波という波動の性質だけで捉えていては辻褄が合わないのである。
仮に電磁波の電場によって金属から電子が放出すると考えた場合、光の強さが大きくなるにつれ光波の振幅が大きくなるので、電場も大きくなるはずである。
しかし、実験結果によれば光電子の運動エネルギーは光の強さには依存しない。
よって光電効果は古典物理学では説明できない。
===== アインシュタインの 光量子仮説 =====
上述の矛盾(古典的な電磁波理論では、光電効果を説明できないこと)を解決するために、次のような'''光量子仮説'''がアインシュタインによって提唱された。
* 光は、光子の流れである。光子を、光量子ともいう。
* 光子1個の光エネルギー <math>E</math>は、光の振動数 <math>\nu </math> に比例する。
*:<math>E=h\nu</math>
比例定数 <math>h = 6.62607015 \times 10 ^{-34} \, \mathrm{J \cdot s}</math>を'''プランク定数'''という。
光電効果を起こすのに必要な最小エネルギーを'''仕事関数'''という。仕事関数の値は金属の種類によって異なる。
仕事関数を <math>W</math>とすると、光子の得る運動エネルギーの最大値 <math>K_0</math>について、次式が得られる。
:<math> K _0 = h \nu - W </math> (1.1)
この式より、光電効果が起こる条件は <math>h \nu \geqq W</math> となる。これは <math>k_0 \geqq 0</math>に相当する。
これより、限界振動数 <math>\nu_0</math>について、<math>h\nu_0=W</math>が成り立つ。
この光量子仮説により、光電効果の1番目と2番目の性質を容易に矛盾なく説明できるようになった。波動は粒子のように振舞うのである。
なお、光電効果の3番目の性質から、ある場所の光の強さはその場所の単位面積と単位時間及び飛来する光子の数に比例することが分かる。
*エネルギーの単位
電子や光子一個のエネルギーは非常に小さいので、ジュール(J)をそのまま用いると使い勝手が悪い。そのため、新たにエネルギーの単位を設定する。
真空中において電子一個を1Vで加速するときに電子が得る運動エネルギーを'''電子ボルト'''('''エレクトロンボルト''')という(記号:eV)。<math>1 \mathrm{eV} = 1.60 \times 10^{-19} \mathrm{J}</math>である。
例)
*銅の仕事関数は4.65eV
{{コラム|光波長の測定|
そもそも、光波長はどうやって測定されたのだろうか。
現在では、例えば原子の発光スペクトルの波長測定なら、回折格子をプリズムとして使うことによって、波長ごとに分け、波長が測定されている。
可視光の波長の測定は回折格子によって測定するわけだが、ではその回折格子の細かい数百nm〜数千nm程度の間隔の格子溝をどうやって作るのか、という問題に行き着く。
歴史的には、下記のように、可視光の波長が測定されていった。
まず、1805年ごろの「ヤングの実験」で有名なヤングらの研究により、可視光の波長は、おおむね 100 nm(10<sup>-7</sup>m) 〜 1000 nm 程度であることは、この頃から既に予想されていた。
その後、ドイツのレンズの研磨工だったフラウンホーファーが優れた回折格子を開発し、可視光の波長を精密に測定する事に成功した。フラウンホーファーは回折格子を作るために細い針金を用いた加工装置を製作し、その加工機で製作された回折格子を用いて光波長の測定を始めたのが研究の起こりである。1821年、フラウンホーファーは格子を130 本/cmも並べた回折格子を製作した。<ref>『現代総合科学教育大系 SOPHIA21 第7巻 運動とエネルギー』、講談社、発行:昭和59年4月21日第一刷発行発行</ref>
また、1870年にはアメリカのラザフォードがスペキュラムという光の反射性の高い合金を用いた反射型の回折格子を製作し、これによって700 本/mmもの格子のある回折格子を製作した。
更にこの頃、送り螺子の潤滑のために水銀を使う水銀浮遊法が、研究開発で行われた。
後の時代、より高精度な波長測定が物理学者マイケルソンによって行われた。
干渉計を用いて反射鏡を精密螺子で細かく動かすことにより高精度な波長測定器を作り、この測定器によってカドミウムの赤色スペクトル線を測定した。測定波長は643.84696 nmだった。マイケルソンの測定方法では、赤色スペクトル光の波長を当時のメートル原器と比較することで測定した。<ref>川上親考ほか『新図詳エリア教科辞典 物理』、学研、発行:1994年3月10日新改訂版第一刷、P.244 および P.233</ref>
このマイケルソンの制作した干渉計にも、水銀浮遊法の技術が取り入れられている<ref>クリス・エヴァンス 著、橋本洋・上野滋 共訳『精密の歴史』、大河出版、2001年11月28日 再版、185ページ</ref>。
更に螺子の技術革新で、弾力性のある材質で螺子を作ることによって誤差を均し高精度とする技術マートン・ナットが、イギリスの物理学者トーマス・ラルフ・マートンなどによって開発された。
なお、現代でも、研究用として干渉計を用いた波長測定器が用いられている。メートル原器は、マイケルソン当時は長さの基準だったが、1983年以降は標準には用いられていない。現在のメートルの定義は以下の通り。
;メートルの定義
:真空中の光速 <math>c</math> を単位 m/s で表したときに、その数値を {{val|299792458}} と定めることによって定義される。
:ここで、秒はセシウム周波数 <math>\Delta \nu_{\mathrm{Cs}}</math> によって定義される。
}}
==== 光電効果の測定 ====
[[File:Cellule photoelectriqie.JPG|thumb|300px|光電効果の実験]]
[[File:Caracteristique courant tension (frequence fixe).JPG|thumb|300px|電位と光電流の関係]]
右の実験図のように、光電管の陰極に限界振動数ν<sub>0</sub>よりも振動数が大きい光を当てると、光電子が飛び出し陽極に流れ込む。このときの電流を'''光電流'''という。
光電流の測定結果は右のグラフのようになる。
陽極の電位が正であれば飛び出した光電子は全て陽極に流れこむため、電圧を高くしても光電流の大きさは一定である。
陽極の電位が0であっても、光電子は運動エネルギー<math>K_0</math>を持って飛び出すので、陽極に到達することができる。
陽極の電位を負にしてさらに下げると、光電子は電場から受けるクーロン力によって運動を妨げられ、ある電位 <math>-V_0</math>で陽極に到達する前に運動エネルギーが0になってしまう。このときの電圧 <math>V_0</math>を'''阻止電圧'''といい、<math>K_0 = eV_0</math>が成り立つ。
つまり、阻止電圧を測定すれば光電子の持つ運動エネルギー <math>K_0</math>を求めることができる。
このとき、光の振動数 <math>\nu</math>または光の波長 <math>\lambda</math>が判っていれば、<math>K_0 = h \nu - W = \frac{hc}{\lambda} - W</math>より金属の仕事関数 <math>W</math>も求めることができる。
ただし、陽極と陰極で金属の種類が異なるとき、これらの仕事関数の違いに伴い'''接触電位差'''が表れるため、それも考慮しなければならない。
なお、光電効果によってプランク定数を測定することもできる。
=== X線 ===
==== X線の発見 ====
[[File:Rotating anode x-ray tube (labeled).jpg|thumb|250px|X線管<br>陰極から出た陰極線を陽極に照射すると、X線が出る。]]
[[File:Tube RX a fenetre laterale.png|thumb|X線管の原理]]
レントゲンは、1895年、放電管を用いて陰極線の実験をしていたとき、放電管の近くに置いてあった写真乾板が感光している事に気付いた。
レントゲンは、陰極線が硝子に当たったとき、何か未知のものが放射されてると考え、これをX線と名づけた。
軈て、種々の実験によってX線は性質が明らかになった。
*磁場や電場で曲がらない。(この事から、X線は荷電粒子ではない事が分かる)
*X線を照射された物質はイオンに電離する。('''電離作用''')
*可視光線を通さない物質でも、X線なら透過できる場合がある。(医療診断に応用されている。)
*蛍光物質を光らせる。
などの性質がある。
==== X線の発生とスペクトル ====
上のX線菅の図において、電流による発熱で陰極から放出された'''熱電子'''は高い電圧によって加速され、'''ターゲット'''(陽極)に衝突する。このとき、一個の電子の持つエネルギーの一部または全部がX線光子のエネルギーとなり、残りは陽極熱に変換される。
発生するX線のスペクトルは、ある最短の波長から始まってそれより長い波長を連続的に含む。これを'''連続X線'''という。
電子のエネルギーが全てX線光子のエネルギーに変わるとき、<math>E = h\nu = \frac{hc}{\lambda}</math>よりX線の波長は最短となる。このときのX線の振動数をν<sub>0</sub>、波長をλ<sub>0</sub>、加速電圧をVとすると、電子の初速度が0のとき、<math>eV_0 = h\nu_0 = \frac{hc}{\lambda_0}</math>が成り立つ。すなわち、最短波長は<math>\lambda_0 = \frac{hc}{eV}</math>と求まる。
[[File:TubeSpectrum.jpg|thumb|240px|特性X線(K線)]]
右の図のように、連続X線の他に特定のエネルギーを持つX線が強く放射される場合があり、これを'''固有X線'''('''特性X線''')という。固有X線の波長はターゲットの材質で決まる。
{{-}}
==== X線の波動性 ====
1912年、物理学者ラウエは、X線を単結晶に当てると、写真フィルムに図のような斑点の模様にあることを発見した。これを'''ラウエ斑点'''といい、結晶中の原子が回折格子の役割をしたことで発生した干渉現象である。
[[File:Bragg diffraction 2.svg|thumb|400px|ブラッグの条件]]
1912年、ブラッグは、反射が強めあう条件式を発見した。
この条件式
:<math>2d\sin\theta = n\lambda</math>(nは非負整数)
を'''ブラッグの条件'''という。
上式のdは格子面の間隔の幅である。
これは結晶面での回折や屈折を無視した場合の式であり、実際にはもう少し複雑な式となる。
<!-- 2023年奈良女子大学後期日程などに電子波の屈折を考慮したブラッグ反射の問題が出題。今後、新傾向として注意すべし @2025/08/13 -->
{{-}}
==== X線の粒子性 ====
* コンプトン効果
X線を物質に当てて散乱された後のX線を調べると、その中に元のX線の波長よりも長いものが含まれることがわかった。このように散乱X線の波長が伸びる現象は物理学者コンプトンによって解明されたので、'''コンプトン効果'''('''コンプトン散乱''')という。
[[File:Compton ex1.jpg||400px|thumb|right|コンプトンによる実験略図。なお、図中の「単結晶」は波長の測定用であり <ref>原島鮮『初等量子力学』(裳華房、2014年第40版、初版は1972年)</ref> 、「単結晶」の材質は方解石の結晶であり、散乱波長はブラッグ反射などを活用して測定する。(コンプトン本人の論文“The Spectrum of Scattered X-Rays”(May 9, 1923).に、方解石(calcite)を使っていることと、ブラッグ反射(Bragg ?)させている事が書かれている。)]]
この現象は、X線を波と考えたのでは説明がつかない。(仮に波と考えた場合、散乱では波長が変化しないので散乱光の波長は入射X線と同じになるはず。)
さて、波動の理論でコンプトン効果を説明できないなら、粒子の理論で説明をすれば良いだろう。
この当時、アインシュタインは光量子仮説に基づき、光子はエネルギー<math>E=h\nu</math>だけでなく、次の式で表される運動量 <math>p</math>も持つことを発見している。
<math>p=\frac{h\nu}{c}(=\frac{h\nu}{\nu \lambda}=\frac{h}{\lambda})</math>
物理学者コンプトンは、この発見を利用し、波長λのX線を、運動量<math>\frac{h}{\lambda}</math>
とエネルギー<math>\frac{hc}{\lambda}</math>を持つ粒子(光子)の流れと考え、
X線の散乱を、この光子が物質中のある電子と完全弾性衝突をした結果と考えた。
:コンプトンはこの考えに基づき、光子と電子の間に運動量保存則及びエネルギー保存則が成り立つと仮定して計算して、実験結果と良く合う結果が得られることを発見した。
[[File:Compton effect illust.svg|thumb|400px|コンプトン効果<br>この図を見ると、あたかも真空中を漂う電子に電磁波を照射したように見えるが、そうではない。実際にコンプトンが行った実験は、石墨の炭素などの物質にX線を照射する実験である。図中の電子は、炭素などの分子が提供する電子である。<!-- コンプトン本人の論文に、このような感じの図が書かれており、それでこのような図が普及したものと思われる。-->]]
解法は、下記のとおり。
:エネルギー保存の式を立てる。
:運動量の保存の式を立てる。
----
エネルギー保存の式
:<math>\frac{hc}{\lambda} = \frac{hc}{\lambda '} + \frac{1}{2}mv^2 \qquad \qquad</math> (1.2a)
運動量保存の式
:x軸: <math> \frac{h}{\lambda} =\frac{h}{\lambda '} \cos \theta + mv \cos \phi \quad</math> (1.2b)
:y軸: <math> 0 =\frac{h}{\lambda '} \sin \theta - mv \sin \phi \qquad</math>(1.2c)
----
この3つの式を連立し、<math>v</math>と<math>\phi</math>を消去して<math>\lambda,\lambda ',\theta</math>の関係式を求めればよい。
ⅰ)まず、式(1.2b),(1.2c)から<math>\phi</math>を消去する。<br>
式(1.2b)から
:<math>(mv \cos \phi)^2 = (\frac{h}{\lambda}-\frac{h}{\lambda '} \cos \theta)^2
</math>
式(1.2c)から
:<math>(mv \sin \phi)^2 = (-\frac{h}{\lambda '} \sin \theta)^2</math>
この両式を加えると
:<math>m^2 v^2 = (\frac{h}{\lambda}-\frac{h}{\lambda '} \cos \theta)^2+(-\frac{h}{\lambda '} \sin \theta)^2+\frac{h^2}{\lambda '^2}</math>
この右辺を整頓すると、
:<math>m^2 v^2 =\frac{h^2}{\lambda^2}-2\frac{h^2}{\lambda \lambda '}\cos \theta
+\frac{h^2}{\lambda '^2}\quad</math> (1.2d)
を得る。
ⅱ)式(1.2d)を式(1.2e)に代入してvを消去する<br>
式(1.2a)の右辺の第2項を変形して式(1.2d)を代入する。
:<math>\frac{1}{2}mv^2 =\frac{1}{2m}m^2v^2 = \frac{1}{2m}\bigl(\frac{h^2}{\lambda^2}-2\frac{h^2}{\lambda \lambda '}\cos \theta\bigr)+\frac{h^2}{\lambda '^2}</math>
これを式(1.2a)の右辺に代入すると
:<math>\frac{hc}{\lambda} = \frac{hc}{\lambda '} + \frac{1}{2m}\Bigl(\frac{h^2}{\lambda^2}-2\frac{h^2}{\lambda \lambda '}\cos \theta +\frac{h^2}{\lambda '^2}\Bigr)</math>
両辺を<math>hc</math>で割ると
:<math>\frac{1}{\lambda} = \frac{1}{\lambda '} + \frac{h}{2mc}\Bigl(\frac{1}{\lambda^2}-2\frac{1}{\lambda \lambda '}\cos \theta +\frac{1}{\lambda '^2}\Bigr)</math> (1.2e)
を得る。
この式の右辺の第2項の括弧内を次のように変形する。
:<math>\frac{1}{\lambda^2}-2\frac{1}{\lambda \lambda '}\cos \theta +\frac{1}{\lambda '^2}=\bigl(\frac{1}{\lambda}-\frac{1}{\lambda'}\bigr)^2+\frac{2}{\lambda \lambda'}(1-\cos \theta)</math>
この式を式(1.2e)の右辺第2項に代入すると
:<math>\frac{1}{\lambda} = \frac{1}{\lambda'} +
\frac{h}{2mc} \left\{
\bigl(\frac{1}{\lambda}-\frac{1}{\lambda'}\bigr)^2+\frac{2}{\lambda \lambda'}(1-\cos \theta)
\right\}</math>
この式の右辺の第1項を移行し、式を変形すると
:<math>\frac{\lambda'-\lambda}{\lambda\lambda '}=
\frac{h}{2mc}\left\{
\bigl(\frac{\lambda'-\lambda}{\lambda \lambda'}\bigr)^2+\frac{2}{\lambda \lambda'}(1-\cos \theta)
\right\}</math>
両辺に<math>\lambda \lambda'</math>を掛けると
:<math>\lambda'-\lambda=
\frac{h}{2mc}\left\{
\frac{(\lambda'-\lambda)^2}{\lambda \lambda'}+2(1-\cos \theta)
\right\}</math> (1.2f)
X線の散乱では、<math>\lambda'\fallingdotseq \lambda</math>なので
:<math>\frac{(\lambda'-\lambda)^2}{\lambda \lambda'}</math>は、波長に比べて非常に小さい値になり無視できる。
故に式(1.2f)から
:<math>\lambda'-\lambda \fallingdotseq
\frac{h}{mc}
(1-\cos \theta)
\qquad</math> (1.2g)
これで、所望の式が導出された。
----
=== 粒子の波動性 ===
==== 物質波 ====
フランスのド・ブロイは、波と考えられてた光が粒子の性質を持つならば、電子も粒子としての性質だけでなく波動としての性質を持つだろうと考えた。
そして、電子だけでなく、一般の粒子に対しても、その考えを適用し、次の公式を提唱した。
:運動量 <math>p</math>の粒子は波動性をもち、その波長は次式で与えられる。
:<math>\lambda = \frac{h}{p} </math>
これはド・ブロイによる仮説であったが、現在では正しいと認められている。
この波は、'''物質波'''と呼ばれる。'''ド・ブロイ波'''ともいう。
すなわち、光子や電子に限らず、あらゆる物質は粒子性と波動性を併せ持つといえる。
この物質波という説によると、電子線を物質に当てれば回折などの現象が起きるはずである。
1927年〜1928年にかけて、デビッソンとガーマーは、ニッケルなどの物質に電子線を当てる実験を行い、X線回折と同様に電子線でも回折が起きることを実証した。日本でも1928年に菊池正士が雲母片に電子線を当てる実験により回折が起きることを確認した。
電子線の波長は、高電圧をかけて電子を加速して速度を高めれば、物質波の波長はかなり小さくできるので、可視光の波長よりも小さくなる。
そのため、可視光では観測できなかった結晶構造が、電子波やX線などで観測できるようになった。生物学でウイルスが電子顕微鏡で観測できるようになったのも、電子の物質波が可視光よりも大幅に小さいからである。
=== 粒子と波動の二重性 ===
*電子ビームによる波動性の干渉実験
[[Image:Egun.jpg|thumb|250px|right|ブラウン管の電子銃]]
[[ファイル:double-slit.svg|thumb|right|350px|電子の二重スリットの干渉実験]]
[[ファイル:Doubleslitexperiment_results_Tanamura_1.gif|thumb|left|250px|二重スリット実験の結果]]
電子銃は電子を放出する装置である。
電子銃をもちいて、1個ずつ電子を当てる実験を、二重スリットを使って実験すると、図のように、波動のように、電子の多く当たった場所と電子の少なく当たる場所との縞模様ができる。
{{-}}
このように、電子にも粒子性と波動性があり、電子は粒子でありつつ、二重スリットに向かって電子を撃ち込むと干渉を起こすという波動性も持っている。
上述のような、さまざまな実験の結果から、すべての物質には、原子程度の大きさでは、波動性と粒子性の両方の性質をもつと考えられている。
このことを'''粒子と波動の二重性'''という。
{{コラム|電子顕微鏡|
光学顕微鏡(レンズを用いる顕微鏡)では、回折が起こることによって光の波長よりも小さな物体を見ることが非常に困難となる。'''分解能'''(2点を識別できる限界の距離)は10<sup>-7</sup>m(100nm)程度である。
より高い分解能を得るため、光よりも波長が短い電子線を用いる'''電子顕微鏡'''が発明された。電子顕微鏡では、加速電圧を高くすることで高い分解能を得られる。ただし、電磁波によるレンズ作用を用いることによる'''収差'''(像の歪み)などの障碍から、現在の最高分解能は10<sup>-10</sup>m(0.1nm)ほどに留まっている。
この分解能では、ウイルスどころか金属・酸素などの原子すらも観察することが可能であるが、中性子・陽子・電子などは小さすぎて観察できない。
}}
副読本:朝永振一郎『光子の裁判』1949年(朝永振一郎は1965年にノーベル物理学賞を受賞した物理学者だが、[[高等学校文学国語/化物の進化|寺田寅彦]]と同様に一般向けの書籍を多数執筆する文豪でもあった。この作品では、光子になぞらえた「波乃光子」という被告の裁判を舞台に、粒子と波動の二重性の不思議さを繙いている。)
*不確定性関係
[[File:Bundesarchiv Bild183-R57262, Werner Heisenberg.jpg|thumb|物理学者ハイゼンベルグ <br>不確定性原理の主要な提唱者である。]]
電子などの量子の位置や運動量は確定してる訳ではなく、物理量を測定するとその状態に対応する確率分布に従った値が得られれる。位置と運動量について標準偏差を計算する事ができるが、位置の標準偏差と運動量について標準偏差の積は必ず <math> \frac{h}{4\pi} </math> 以上となる。このことを'''不確定性関係'''という。
{{-}}
== 原子・原子核・素粒子 ==
===原子===
陰極線に関連する実験から、全ての原子に負の電荷を持つ電子が含まれると考えられたが、原子は電気的に中性なので正の電荷を帯びた部分が存在するはずである。
そこで、原子の構造について様々な説が登場した。
比電荷の測定を行ったトムソンは、一様に正に帯電した球の中を電子が運動しているというプラムプディングモデル(ブドウパンモデル)を提唱した。長岡半太郎は、フランスのジャン・ペランが提唱した、正電荷を持つ粒子の周りを電子が公転している土星型モデルを定量化して大幅に補強した。しかし、実際に採択されたのは以下のようなモデルだった。
[[File:Geiger-Marsden experiment expectation and result (Japanese).svg|right|400px|thumb|]]
ドイツのガイガーとニュージーランドのマースデンは、α粒子を薄い金箔に当てる実験を行い、α粒子の散乱の様子を調べた。(なお、α粒子の正体はヘリウムの原子核。)その結果、ほとんどのα粒子は金箔を素通りするが、金箔中の一部の場所の近くを通ったα粒子だけが大幅に散乱する現象を発見した。
α粒子は電子の7000倍以上の質量を持つことから、電子の影響で大きく曲げられたとは考えにくい。そこで、原子内の狭い部分に集中した正電荷がα粒子に強い斥力を及ぼし、その部分が原子の質量の大部分を占めていると考えて計算を行い、実験結果をうまく説明することに成功した。
原子(10<sup>-10</sup>)内の正電荷が集中した10<sup>-15</sup>~10<sup>-14</sup>程度の重い部分は'''原子核'''と名付けられた。
原子は、中心に原子核があり、そのまわりを電子が運動するというラザフォードモデルとよばれるモデルによって説明される。ラザフォードモデルは、土星型モデルを発展させたものとも言える。
*ラザフォードモデル
原子は、全体としては電気的に中性であり、負の電荷を有する'''電子'''を'''電子殻'''に持つ。
ここで、ミリカンの実験 による結果などから、電子の質量は水素イオンの質量の約1/1840程度しかないことが分かっている。
すなわち、原子は電子と陽イオンとが含まれるが、質量の大部分は陽イオンがもつことが分かる。
原子核の大きさは原子全体の1/10000程度であるため、'''原子の大部分は真空'''である。
原子核は、正の電荷をもつZ個の'''陽子'''と、電気的に中性な(A−Z)個の'''中性子'''からなる。
陽子と中性子の個数の合計を'''質量数'''という。
陽子と中性子の質量はほぼ等しいため、原子核の質量は、質量数Aにほぼ比例する。
==== 統一原子質量単位 ====
原子の質量は極めて小さいため、キログラム(kg)をそのまま用いるのは不便である。そこで、(同位体を除いて)118種類ある原子のうちどれかを基準として考えたい。ここで、他の様々な原子と化合できるため質量比較がしやすいこと、同位体<sup>13</sup>Cなどの存在比が極めて小さいことなどから、炭素原子を基準にするのが適当である。
<sup>12</sup>C原子一個の質量を12と定義する単位系を'''統一原子質量単位'''という。単位はDa('''ダルトン''')であるが、廃止されたamu('''アトミックマスユニット''')を用いる人もいる。
[[高等学校化学基礎/物質量#原子量|化学基礎で原子量を習った]]が、原子質量単位は質量を表す単位なのに対し、原子量は質量そのものでなく質量比を表しているので単位はなく無次元である。混同しないように注意しよう。
==== 水素原子のスペクトル ====
高温の物体から発光される光には、どの(可視光の)色の波長(周波数)もあり、このような連続的な波長の光を連続スペクトルという。
いっぽう、ナトリウムや水素などの、特定の物質に電圧がかけられ放電したときに発光する波長は、特定の数本の波長しか含まれておらず、このようなスペクトルを輝線という。
パルマーは、水素原子の数本ある輝線の波長が、次の公式で表現できることに気づいた。
:<math>\lambda = 3.65 \times 10^{-7} \mathrm{m} \times \left( {n^2 \over n^2 - 4} \right).\quad(n=3,\ 4,\ 5,\ 6,\cdots\cdots)</math> (2.1)
上式中のmはメートル単位という意味。
その後、水素以外の原子や、可視光以外の領域についても、物理学者たちによって調べられ、次の公式へと、物理学者リュードベリによって、まとめられた。
:<math>\frac{1}{\lambda} =R \left( \frac{1}{m^2} -\frac{1}{n^2} \right).\ \left(\begin{array}{lcl}m =1,\ 2,\ 3,\cdots\cdots, \\ n = m+1,\ m+2,\ m+3,\cdots\cdots \end{array}\right)</math> (2.2)
上式のRは'''リュードベリ定数'''といい、<math>R=1.097373156815712 \times 10^7 \, \mathrm{/m}</math>である。
この公式の<math>m=1, 2, 3</math>をそれぞれ'''ライマン/パルマー/パッシェン 系列'''という。
==== 量子論と原子の構造 ====
[[File:Stationary wave Quantum rule in atom.svg|thumb|300px|原子内の定常波]]
ラザフォードの原子模型に従えば、電子は、まるで惑星の公転のように原子核を中心とする円軌道の上を一定の速度で運動する。
円運動する質点は加速度をもつので、このモデルの電子は加速度運動を続けることになる。
ところが古典電磁気学で、加速度運動を行う電荷は電磁波を放出してエネルギーを失うという法則が既に発見されていた。
この法則によれば、原子核の周りを回る電子は電磁波を放出し続け、エネルギーを絶えず減らしていく。それにつれ電子は原子核に向けて落下していくため、原子核との距離を小さくしながら原子核の周りを回転し、やがて原子核に衝突してしまう。円軌道の上を安定的に運動することは不可能なのである。
デンマークのボーアはラザフォードの原子模型の深刻な矛盾を克服し、さらに水素原子の放出する線スペクトルについても説明できる原子模型を作るため、
プランクの提唱したエネルギー量子化の考えとアインシュタインの光量子論を取り入れた大胆な仮説を立てた(1913年)。
*仮説1:量子条件
原子核を中心とする半径 <math>r</math>の円軌道を速さ <math>v</math>で回転する電子の軌道角運動量<math>rp=mrv</math>は<math>\frac{h}{2\pi}</math>の正整数倍しかとりえない,すなわち
:<math>mrv=n\frac{h}{2\pi} \quad (n=1,\ 2,\ 3,\cdots\cdots)</math> (2.3)
を満たさねばならない(角運動量の量子化)。この状態を'''定常状態'''、この条件を'''量子条件'''という。
:このボーアの式の正整数nを'''量子数'''という。
後年(1924年)、ド・ブロイは、物質粒子は波動性を持ち、その波(物質波)は、波長
:<math>\lambda=\frac{h}{p}=\frac{h}{mv}</math>
をもつと提唱した。また,(2.3)を変形すると
:<math>2\pi r=n\frac{h}{mv}=n\lambda</math>.
これらは電子の軌道一周の長さが電子の物質波の波長の正整数倍のとき,電子波は定常波になることを示している。
:これは、円軌道上に定常波ができるための条件と同じである。
*仮説2:振動数条件
電子はある決まった飛び飛びのエネルギーしか持たない。このとびとびのエネルギー値を'''エネルギー準位'''という。
:電子がエネルギー順位を<math>E'</math>から<math>E(<E')</math>に遷移する(エネルギーを失う)ときには、<math>E'-E=h\nu</math>できまる振動数<math>\nu</math>の一個の光子を放出し、
:逆にエネルギー準位 Eの電子が外部からエネルギー<math>h\nu = E'-E</math>を得ると、エネルギー準位E'に遷移する。
==== エネルギー準位 ====
[[File:Circular-motion-electron-in-atom jp.svg|thumb|400px|水素原子内での電子の円運動]]
水素原子において、電子軌道上にある電子のエネルギーを求めたいが、そのためには水素原子の半径を求める必要がある。
量子数<math>n</math>のとき水素の電子が原子核<math>H^+</math>を中心とする半径<math>r_n</math>の円軌道上を一定の速度<math>v_n</math>で運動しているとすれば、円運動方程式は
:<math> m \frac{v^2_n}{r_n} = k_0 \frac {e^2}{r^2} </math>
で表される。
一方、電子が定常波の条件を満たす必要があるので、前項の式(1)から、
:<math> v_n = \frac {nh}{2 \pi m r } \qquad \qquad (2)</math>
である。
この<math>v</math>を先ほどの円運動の式に代入して整頓すれば
:<math> r_n = \frac {h^2}{4 \pi ^2 k_0 me^2} n^2\qquad \qquad (3)</math>(<math>n=1, 2, 3\cdots</math>)
になる。こうして、水素原子の電子の軌道半径が求まる。
<math>n=1</math>のときの半径 <math>r_1</math>を'''ボーア半径'''という。
原子の世界でも、運動エネルギーKと位置エネルギーUの和が、エネルギーである。
位置エネルギーUは、この水素の電子の場合なら、静電気エネルギーを求めれば充分であり、電位の式によって求められて、
:<math> U = - k_0 \frac {e^2}{r}</math>
となる。
運動エネルギーKは、<math> K = \frac{1}{2}mv^2</math>なので
:<math> E = K+U = \frac{1}{2}mv{}^2 - k_0 \frac {e^2}{r}</math>
上式の右辺第一項に、
:円運動方程式<math> m \frac{v^2}{r} = k_0 \frac {e^2}{r^2} </math>の両辺にrを掛けた
<math> m v^2 = k_0 \frac {e^2}{r} </math>を代入すれば、
:<math>E(= E_n )= K+U = \frac{1}{2} k_0 \frac {e^2}{r}- k_0 \frac {e^2}{r} = - \frac{k_0e^2}{2r} </math>
となる。
さらに、これに電子の軌道半径<math>r=r_n</math>として式(3)を代入すれば、
:<math>E_n = -\frac{2\pi ^2 k_0{}^2 me^4} {h^2} \frac{1}{n^2} \quad (n=1,2,3,,,) \qquad \qquad (4)</math>
となる。これが水素原子のエネルギー準位である。
エネルギー準位の公式をよく見ると、エネルギーが連続的ではなく離散的な負の値をとることが判る。
<math>n=1</math>のとき、エネルギーが最低なので安定である。よって、電子は通常、<math>n=1</math>の状態であり、なろうとする。これを'''基底状態'''、<math>n=2, 3, \cdots</math>のときを'''{{ruby|励起|れいき}}状態'''という。
{{コラム|[[高校化学 無機化学まとめ#炎色反応|炎色反応]]の原理|
高温の炎中にある種の金属粉末や金属化合物を置くと、試料が熱エネルギーによって解離し原子化される。それぞれの原子は熱エネルギーによって電子が励起され、外側に存在する高エネルギーの電子軌道へと移動する。励起された電子が安定な基底状態に戻ろうとする際に、余分なエネルギーを電磁波として放出する。電磁波の周波数が、ちょうど可視光線の範囲に入る場合が有る。このとき、炎色反応として肉眼で観察できる。
なお、原子の電子軌道のエネルギーは連続した値ではなく飛び飛びの値であるため、励起された電子が基底状態に戻る際に放出されるエネルギーも連続した値ではない。このため、炎色反応として放出された光は連続スペクトルではなく輝線スペクトルを示す。また、元素によっても電子軌道のエネルギーはある程度決まるため、元素によって特徴的な輝線スペクトルを示す。これが、炎色反応を示す元素の種類により、炎色反応によって放出される光の色が決まる理由である。
}}
なお、
:<math> -\frac{2\pi ^2 k_0{}^2 me^4} {h^2}</math>に諸定数の値を入れて計算すると
:ほぼ<math> - \frac{13.6}{n^2} \ \ \mathrm{eV}</math>となるので、
:水素原子のエネルギー準位は
:<math>E_n \fallingdotseq -\frac{13.6}{n^2} \, \mathrm{eV}</math>と書ける。
:<math>E_1 \fallingdotseq 13.6 \, \mathrm{eV}</math>は水素のイオン化エネルギーの値に等しく、実験値によく一致することが判った。
;補:水素原子のスペクトルの経験式の理論的導出
水素原子の発する光のスペクトルの実測値を表すリュードベリの経験式については既に説明した。
ボーアの水素原子モデルに基づいて得られたエネルギー準位と振動数条件を用いれば、この式が以下のように理論的に導出できる。
任意の正整数<math>m, n \; (n>m)</math>を考える。
振動数条件により電子がエネルギー準位<math>E_n</math>から、低いエネルギー準位<math>E_m</math>に遷移するときに1個放出する光子の振動数は<math>\nu=\frac{E_n-E_m}{h}</math>である。
この光子の波長λは
<math>\frac{1}{\lambda} = \frac{E_n-E_m}{ch}</math>
で与えられるので、右辺のエネルギー準位に式(4)を代入すると
:<math>\frac{1}{\lambda} = \frac{2\pi ^2 k_0{}^2 me^4} {ch^3}(\frac{1}{m^2}-\frac{1}{n^2}) \qquad \qquad (5)</math>
が得られる。
<math>\mathbf{R} := \frac{2\pi ^2 k_0{}^2 me^4} {ch^3}</math>
でリュードベリ定数を定義すると、式(5)は
:<math>\frac{1}{\lambda} = {\bf R}(\frac{1}{m^2}-\frac{1}{n^2}) \qquad \qquad (5')</math>
Rの定義式中の諸定数に値をいれて計算すると
:<math>{\bf R} = 1.097373156815712\times 10^7 \rm{ /m} \qquad \qquad \qquad (6)</math>
驚くべきことに、リュードベリの経験式が、見事に導出できたのである。
これは、ボーアの仮説の妥当性を示すものと言えよう。
なお、実際の特性スペクトルの波長は、原子内部の電子の影響により若干摺れる。そういった内部電子の補正を考慮した、より精度の高い式として「[[w:モーズリーの公式]]」というのが知られている。歴史的には先にモーズリーの式が発見され、後からモーズリーとは別に独立に研究されていた上述のようなボーアやラザフォードの理論を用いると、モーズリーの公式もうまく説明できるという事が物理学者コッセルによって発見された<ref>山本義隆『原子・原子核・原子力』、岩波書店、2015年3月24日 第1刷、140ページ</ref>。モーズリーの公式については、大学の量子化学などの教科書に記載があるだろう。
;フランク・ヘルツの実験
[[File:FranckHertzHgTube.jpg|thumb|right|upright=0.5|実験装置。Cは陰極でヒータで加熱し熱電子を放出させる。Gはグリッド。Aは陽極。]]
ドイツのフランクとヘルツは、気体放電での電子の働きを調べるため、水銀蒸気を封入した図のような装置で実験を行った。
フィラメントCから飛び出す電子を、Cと網目状のグリッドGとの間に加える電圧Vで加速する。Gの後ろに電極Aを置き、Aに到達した電子の数を電流計で調べる。GA間にはCG間と逆向きに僅かな電圧(0.5V程度)を加え、電子がGに到達しても運動エネルギーが0に近ければAに到達できなくした。CG間の電圧を上げながらAに到達する電子の数を調べ、[グラフ]のような実験結果を得た。
[[File:Franck-Hertz en.svg|thumb|center|縦軸が電流で横軸が電圧。]]
電子の数は電圧の増加とともに増すが、4.5~5V付近をピークに減少し、再び増加する。その後、約4.9Vの間隔で同様の増減を繰り返す。また、4.9eVに相当する波長のスペクトルも発生していた。
ボーアは、この実験結果を「4.9eVは水銀原子の基底状態と励起状態のエネルギーの差であり、電子の運動エネルギーが加速電圧で4.9eVに達した時に水銀原子が励起して電子が運動エネルギーを失う」と説明した。
その後、FG間から波長2.537×10<sup>-7</sup>(4.9eVのエネルギーに相当)の紫外線が発生していることが確認された。これは、励起された水銀原子が基底状態に戻る時にそのエネルギー準位の差に相当する波長の光子を放出して生じたものと考えられ、原子には離散的な値のエネルギー準位が存在するというボーアの仮説が実験で裏付けられた。
なお、固有X線の発生原理もエネルギー準位で説明することができる。
=== 原子核 ===
==== 原子核の構造 ====
原子核は、陽子と中性子からできている。二つを総称して'''核子'''という。
陽子は正電荷をもち、中性子は電荷をもたない。
原子核の陽子同士はクーロン力によって反撥し合うが、陽子と中性子を結ぶ'''核力'''がクーロン力よりも強いため、それが核子同士を繫ぎ止めている。
なお、原子番号の低い元素において、陽子と中性子の個数はほぼ同数である場合が多い。例えば、酸素や窒素では陽子・中性子ともに同数である。一方、元素番号の高い元素ほど、陽子よりも中性子が多い。例えばウラン235は中性子数が陽子数の1.5倍である。これには核力の性質が関係していると考えられている<ref>山本義隆『原子・原子核・原子力』、岩波書店、2015年3月24日 第1刷、190ページ</ref>。
陽子と中性子の数の和は'''質量数'''と呼ばれる。
元素の原子核の陽子の数は、その元素の周期表の'''原子番号'''である。
質量数が<math>A</math>の原子核は非常に強い核力のために、小さな球体状の空間の中に固まっており、その半径rは、
<math>1.2 \sim 1.4\times 10^{-15} \sqrt[3]{A}</math>
であることが知られている。
==== 同位体 ====
同じ元素でも、中性子の数が異なる原子がある。これらを互いに'''同位体'''('''アイソトープ''')という。例えば、水素に対する重水素・三重水素、酸素に対するオゾンなどがそうである。水素の原子核は陽子1つであり、重水素(D)の原子核を'''重陽子'''、三重水素(T)の原子核を'''三重陽子'''という。また、重水素からなる水分子<chem>D2O</chem>を'''重水'''という。
一般に、同じ元素であれば同位体でも化学的性質は同一であるが、物理的性質は大きく異なる場合がある。
原子の質量は、イオン化した原子を加速して電場・磁場が軌道にもたらす影響を調べることで求められる。
トムソンは、電場と磁場を加えた空間にイオンを入射させ、比電荷の同じイオンがスクリーン上の同じ放物線上に集まるような装置を制作した。これにより、ネオンの同位体が発見された。
トムソンの研究室にいたイギリスのアストンは、トムソンの装置を基にイオンの速さにかかわらず比電荷が同じであればスクリーン上の一点に集まるような装置('''質量分析器''')を製作した。この装置により多くの同位体が発見され、それらの質量と存在比も精密に測定された。
==== 放射能と放射線 ====
元素の中には、'''放射線'''を出す性質をもつものがあり、この性質を'''放射能'''という。
また、放射能をもつ物質は'''放射性物質'''といわれる。放射能を持つ同位体を'''放射性同位体'''という。
放射線には3種類存在し、それぞれ'''α線'''、'''β線'''、'''γ線'''という。
α崩壊は、親原子核からα粒子が放射される現象である。α粒子の正体はヘリウム原子核である。α崩壊後、親原子核の質量数は4小さくなり、原子番号は2小さくなる。
β崩壊は、親原子核の中性子が陽子と電子に変化することで、電子が放射される現象である。なお、放出された電子はβ粒子ともよばれる。β崩壊後、親原子核の質量数は変化しないが、原子番号は1増加する。
γ線は、α崩壊またはβ崩壊直後の励起状態にある原子核が、よりエネルギーの低い状態に遷移するときに放射される(かつてはγ崩壊と呼んだが、原子核が崩壊していないので用語廃止された)。γ線の正体は光子で、X線より波長の短い電磁波である。
α崩壊やβ崩壊によってもとの原子核の数は徐々に減っていくが、これらの崩壊は原子核の種類ごとに決まった一定の確率で起きるので、崩壊によってもとの原子核の数が減る速度は原子核の個数に比例して変化する。しかし、崩壊によってもとの原子核の数が半減するのにかかる時間は、原子核の種類だけによってきまる。そこで、この時間のことをその原子核の '''半減期''' と呼ぶ。崩壊によって原子核の個数がどれだけになるかは、この半減期を用いて記述することができる。原子核の最初の個数を<math>N_0</math>、原子核の半減期を<math>T</math>、時刻<math>t</math>での原子核の個数を<math>N(t)</math>とすると、
:<math>N(t)=N_0 \left(\frac{1}{2}\right)^{\frac{t}{T}}</math>
が成り立つ。
放射線に関しては様々な単位が用いられる。
かつてはキュリー、エルグ、ラド、レントゲン、レムなどの単位が用いられていたが、現在ではSI単位系に沿って以下の単位が用いられる。(ただし、現在でも前述の単位を用いる場合がある)
{| class="wikitable"
|+ 放射線のSI系列単位
|-
! 物理量 !! 単位 !! 記号 !! 説明
|-
|放射能の強さ||ベクレル||Bq||原子核が毎秒一個の割合で崩壊するときの放射能の強さを1Bqとする。
|-
|照射線量||クーロン毎キログラム||C/Kg||放射線の照射によって0℃、1013hPaの空気1cm<sup>3</sup>あたりに3.335641×10<sup>−10</sup> C(1 {{ruby|esu|静電単位}})のイオン電荷が発生したときの放射線の総量を2.58<u>0</u>×10<sup>−4</sup> C/kg(1 {{ruby|R|レントゲン}})と定義する。
|-
|吸収線量||グレイ||Gy||1Kgの物質が放射線の吸収と共に1Jのエネルギーを得たときの吸収線量を1Gyとする。
|-
|線量当量||シーベルト||Sv||吸収線量に、放射線の種類ごとに定められた人体の障害の受けやすさを表す線質係数(修正係数)を掛けたもの。例えば等価線量を求めたいなら放射線荷重係数を掛け、実効線量を求めたいならさらに組織荷重係数を掛ける。
|-
|線量率||シーベルト毎時||Sv/h||単位時間あたりに受ける放射線の量
|}
ちなみに、1キュリーは37GBq(37ギガベクレル、370億ベクレル)に等しい。
生体が放射能を受けることを'''被曝'''という。※'''「被爆」表記は意味が違うので絶対用いないように'''。
放射線は電離作用を持つので生物細胞に影響を及ぼし、遺伝子を破壊することで癌を発症させたり奇形を発生させたりする。被曝量が大きい場合には急性の障碍を引き起こすこともある。この影響を最小限にするには、放射線源から離れる、浴びる時間を短くする、鉛で放射線を遮るなどの対策が必須である。一方で、自然界には放射線がありふれている。普段の生活では食事による内部被曝や宇宙線による被曝などで年間2.4mSvほどの放射線を自然界から受けている。これらは被曝量が少ないため人体に害はない。また、放射線は非破壊検査、癌治療、レントゲン撮影、農作物の品種改良などの分野で応用されている。
手塚治虫は、自著『火の鳥』の「未来編」にて栽培促進に利用される放射線と、そこにおける事故を描いている。1967年の時点で既に放射線の産業利用の可能性と事故が起こったときの重大性を読み取っていたのである。
なお、福島原発事故の処理水放出が取り沙汰されているが、あれは国際基準よりも厳しい基準で安全性を確認してから放出しているため、一部が騒いでいるような汚染ではない。
===== 発展:半減期公式の導出 =====
原子核の崩壊速度は、原子核の個数に比例すると述べた。実は、上に述べた公式はこの情報だけから純粋に数学的に導き出すことができるものである。発展的な数学を用いるが、興味のある読者のためにその概要を記しておく。
原子核の個数と崩壊速度の間の比例定数は原子核の種類によって決まる。この定数をその原子核の'''崩壊定数'''という。崩壊定数が<math>\lambda</math>の原子核の時刻<math>t</math>での個数を<math>N(t)</math>とすると、その変化速度、すなわち<math>N(t)</math>の時間微分は、
:<math>\frac{d}{dt} N(t) = -\lambda N(t)</math>
で表される。このような、ある関数とその微分との関係を表した式を微分方程式といい、微分方程式を満たすような関数を求めることを、微分方程式を解くという。変数分離法によりこの微分方程式を解くと、
:<math>\frac{dN(t)}{N(t)}=-\lambda dt</math>
:<math>\int \frac{dN(t)}{N(t)}=-\lambda \int dt</math>
:<math>\log |N(t)|= -\lambda t + C</math>(<math>C</math>は積分定数)
よって
:<math>N(t) = e^{-\lambda t + C} = e^{C} e^{-\lambda t} \qquad</math><small>※<math>N(t)\geqq0</math>より絶対値記号は無視してよい。</small>
ここで<math>e^{C}</math>は積分定数の値によって定まる初期値なので、原子核の初期個数<math>N_0</math>とみてよい。
:<math>\therefore N(t)= N_0 e^{-\lambda t}</math>・・・(*)
半減期<math>T</math>は<math>N(t)=\frac{1}{2}N_0</math>なる<math>t</math>のことなので、式(*)より
:<math>\frac{1}{2}N_0 = N_0 e^{-\lambda T}</math>
:<math>\frac{1}{2}=e^{-\lambda T}</math>
:<math>-\log 2 = -\lambda T</math>
:<math>T=\frac{\log 2}{\lambda}</math>
よって
:<math>N(t)=N_0 e^{-\lambda t}=N_0 (e^{-\log 2})^{\frac{t}{T}}=N_0 \left(\frac{1}{2}\right)^{\frac{t}{T}}</math>
が得られる。
==== 原子核反応 ====
[[File:Cloud chamber ani bionerd.gif|thumb|right|300px|霧箱の実験。陽子は電荷(正電荷)をもっているため、霧箱でも観測することができる。 (※ この画像は、陽子の観測実験ではない。)<br>霧箱(蒸気の充満した装置)を使うことで、何らかの粒子が通過したとき蒸気が凝集するので、粒子の軌跡が可視化されるのである(飛行機雲と同じ原理)。磁場を加えた場合の、軌跡の曲率等などから、比電荷までも予想できる。]]
* 陽子の発見
ラザフォードは、窒素ガスを密閉した箱にα線源があると、正電荷をもった粒子が発生することを発見した。
この正電荷の粒子が、陽子である。つまり、ラザフォードは陽子を発見した。
同時に、酸素も発生することを発見し、その理由は窒素が酸素に変換されたからであり、つまり、原子核が変わる反応も発見した。
これらのことを式にまとめると、
:<math>_{\ 7}^{14} \mathrm{N} + {}_{2}^{4} \mathrm{He} \rightarrow {}_{\ 8}^{17} \mathrm{O} + {}_{1}^{1} \mathrm{H} </math>
である。
このように、ある元素の原子が、別の元素の原子に変わる反応のことを '''原子核反応'''('''核反応''')という。また、上のような反応式を'''核反応式'''という。
化学反応では原子の種類が変わらずその組合せが変わるだけであったが、核反応では別の種類の原子が生まれる。
正電荷を持つ二つの原子核の間には電磁気力により斥力が働く。核反応は、2つの原子核がこの斥力に打ち克って核力が働く近距離に近づいた時に初めて起こる。そのため、核反応を起こすには大きな運動エネルギーが必要であり、そのためにサイクロトロン・ベータトロン等の加速器が用いられる。
一般に、核反応では'''反応の前後で質量数の和と電気量の和は保存される'''ことがわかっている。
{{コラム|霧箱|
霧箱は、種類にもよるが、普通、エタノールまたはアルゴンの気体が封入される<ref>山本義隆『原子・原子核・原子力』、岩波書店、2015年3月24日 第1刷発行、P80</ref>。
霧箱のような実験装置の用途として、陽子の実験の用途のほか、原子核反応の回数を観測する目的でも使うことが出来る。放射線の測定器のガイガーカウンターの原理も、霧箱と類似している。放射線測定器であるガイガー・ミュラー管には気体(アルゴンやエチレンガスなどの不活性な気体)が封入されている。霧箱のように気気体を封入した測定管に、高電圧をかけた電気極板を追加することで、放射線を捉えるようにしたものがガイガー管である[https://www.agc.a.u-tokyo.ac.jp/radioecology/pdf/190930_radioecology_supplement2.pdf]。物理学者ガイガーは、このような測定器を開発し、さらに原子核反応によって生成されるヘリウム分子を集めて気体として封入し、当時としては最高水準の精度でアボガドロ定数を測定する事に成功した<ref>山本義隆『原子・原子核・原子力』、岩波書店、2015年3月24日 第1刷発行、P81</ref>。これは、プランクの熱輻射の理論から算出されたものや、物理学者ベランがブラウン運動から求めたものに匹敵する精度であった<ref>山本義隆『原子・原子核・原子力』、岩波書店、2015年3月24日 第1刷発行、P82</ref>。<br />
}}
* 中性子の発見
ラザフォードは1920年頃に既に陽子と同じ質量で電気的に中性な粒子の存在を予言していた。1930年、ドイツのボーテがポロニウムから放出されるα線をベリリウムに当てると透過力の強い放射線が出ることを発見し、翌年にキュリー夫妻がこれをパラフィン([[高校化学 脂肪族炭化水素#アルカン|アルカン]]のうち炭素数が20以上のもの。水素を多く含む。)に当てると陽子が飛び出すことを発見した。夫妻は放射線をγ線と考えてコンプトン効果で説明しようと試みたが、非現実的な仮定を余儀なくされて頓挫した。イギリスのチャドウィックはこの放射線をヘリウムや窒素に当て、これを電荷を持たず陽子とほぼ等しい質量の粒子の粒子線と考えると辻褄があうことを示し、1932年に論文を提出した。この粒子は中性子、放射線は中性子線と名付けられた。
*質量とエネルギーの等価性
原子核は、それを構成する核子である陽子と中性子が自由であるときの質量の和より、小さい質量をもつ。この減った質量を、'''質量欠損'''と呼ぶ。
質量数A、原子番号Zの原子核の質量欠損<math>\Delta m</math>を、式で書けば,
原子核の質量をm、陽子と中性子の質量をそれぞれ<math>m_p,\ m_n</math>としたとき、
:<math>\Delta m = m_{p}Z+m_{n}(A-Z)- m</math>である。<br />
なお、原子にもよるが、一般に質量欠損の大きさは、1%程度<ref>[https://kotobank.jp/word/%E8%B3%AA%E9%87%8F%E6%AC%A0%E6%90%8D-74242 コトバンク『日本大百科全書(ニッポニカ)の解説』(坂東弘治、元場俊雄)など ]</ref>である。
陽子と中性子が核力によって結合すると、その結合エネルギーに等しいエネルギーのガンマ線が放出される。アインシュタインの[[特殊相対性理論]]によれば、質量mとエネルギーEには、
: <math>E=m c^2</math>
という関係がある。
エネルギーと質量の等価性によれば、陽子と中性子が結合したときに放出されるγ線のエネルギーに等価な質量が減ることになるが、これが原子核の質量欠損である。{{コラム|原子レベルの質量の測定法|
[[File:Mass spectrometer schematics.png|thumb|right|質量分析器の模式図。試料導入部およびイオン源(左下)、分析部(左上、磁場偏向型)、イオン検出部(右上)、データ処理部(右中)からなる。]]
そもそも、どうやって原子や分子の質量を精度よく測定するか?
一般に原子レベルの質量測定法として精密科学でよく知られるものとして、右図のような、磁場によって荷電粒子を曲げる方式のものがある。このような磁場とローレンツ力を用いた方式による質量測定は一般に、「磁場偏向型」といわれる。
このような装置により、磁場や電化の大きさは実験的に決定できるので、曲率が質量の関数になるので、つまり半径から質量が逆算できる。
測定対象の元素材料が中性の原子であっても、その原子が固体なら、それに電子ビームを当てて、電子によって弾き飛ばされた材料が帯電してイオン化しているので、それから、上記のような磁場による質量測定が可能になる。
なお、同位体の存在やその質量も、このころ、このような装置で発見された。
原子質量がいくつもの元素で測定できるので、派生的に、化学の理論で分かる原子番号Zと原子量A及び原子の質量の測定値MをもとにZ,AからMを求めるワイツゼッカーの公式が作成された。
また、レインウォーターらにより原子半径の予想値なども算出されていった。
}}
このことから、陽子と中性子がバラバラに存在する時よりも、纏まって原子核を構成しているときの方がエネルギーが質量欠損分<math>\Delta mc^2</math>だけ小さいことがわかる。逆に、原子核をバラバラの核子にするには<math>\Delta mc^2</math>のエネルギーを与える必要がある。この意味で、<math>\Delta mc^2</math>を'''結合エネルギー'''という。化学で扱った[[高校化学 化学反応とエンタルピー#ヘスの法則|結合エンタルピー]]は原子と分子の話であったが、こちらは核子と原子核の話である。
質量数Aは核子の数なので、核子一つあたりの結合エネルギーは<math>\frac{\Delta mc^2}{A}</math>と表される。これの値は軽い原子核の領域で急激に増大し、鉄が最も最大となる。故に、'''核反応においては鉄が最も安定'''な元素である。
*核エネルギーと核分裂
核反応では、原子核の質量の和が反応の前後で変化する。質量和が減少する場合、その差が'''核エネルギー'''となる。このとき、結合エネルギーの和は増大し、核エネルギーは結合エネルギー和の変化量に等しい。一回の化学反応で解放されるエネルギーは数eV程度であるのに対し、一回の核反応で解放されるエネルギーは数MeVを超える。例えば、リチウム7と水素が衝突してヘリウム2つになる核反応では、1.68×10<sup>12</sup>Jという厖大なエネルギーが発生する。これは石油40トンを燃やして得られるエネルギーに相当する。
ドイツのハーンとシュトラスマンは、ウランに中性子を照射したときの反応性生物の中に、ウランとほぼ半分の質量を持つバリウム141などの原子核が含まれることを発見した。このように、一つの原子核がいくつかの原子核に分かれる反応を'''核分裂'''という。ウランのように質量数が多い原子核は、一つの原子核でいるよりも二つの原子核に分裂した方がエネルギー的に安定である。これが核分裂の起こる原因である。
核分裂は歴史的には原子爆弾に利用された。日本は原子爆弾を実戦使用された唯一の国である。
現代では、核分裂は'''原子力発電所'''で使用されている。
ウラン235やプルトニウム239を'''核燃料'''とし、熱運動する気体分子と同程度の速さの中性子を衝突させると様々な壊れ方の核分裂が起こる。このとき、いずれの場合も200MeV程度のエネルギーが解放され、2、3個の速い中性子が出る。この速い中性子を'''減速材'''(水や重水など)に衝突させて減速することで、別の核燃料に衝突させやすくする。このようにして次々に核分裂が起こることを'''連鎖反応'''という。原子力発電は、核分裂で発生した熱エネルギーでタービンを回して発電している。中性子を吸収する'''制御棒'''を用いることで核分裂が爆発的に起こらない且つ停止しないように制御している。連鎖反応が持続的に保たれる条件がちょうど満たされるとき、「原子炉は'''臨界'''にある」という。臨界状態では中性子数は一定に保たれる。原子炉の稼働は臨界点の近くで行われている。少ない燃料では中性子が核反応することなく散逸するので、臨界にあるための核燃料の量に下限があり、これを'''臨界量'''という。
原子力発電は、発電量は他の方式に比べて圧倒的であるが、安全対策や放射性廃棄物の処理などの問題がある。
2011年の東日本大震災では地震そのものには余裕で耐えたものの、津波により電源がロストしたことで炉心の冷却機能が失われて'''炉心融解'''('''メルトダウン''')が起こり、爆発とともに莫大な量の放射性物質が散布される、という事故が発生した。原子力発電の稼働にあたっては、このような重大事故に対する厳重かつ多重の安全対策が必須である。([[w:福島第一原子力発電所事故]]も参照。)
また、核分裂により生じる放射性元素の中には半減期が数百万年にも及ぶものが含まれ、これらの処理をどのように行うかも重要な課題である。
なお、原子力発電には'''沸騰水型'''と'''加圧水型'''の2種類がある。
*核融合
必要があれば[[高等学校地学]]も参照。
恒星では原子核同士が衝突することで質量数の大きな原子核が生まれている。このように、より大きな質量数の大きな原子核ができる反応を'''核融合反応'''という。
軽い原子核が核融合を起こすとき、結合エネルギーが増加し、その差のエネルギーが解放される。
太陽の中では、4個の水素原子核(陽子)から幾つかの段階を経て1個のヘリウム原子核が生成されている。このとき、約27MeVのエネルギーが解放される。
太陽は水素と核融合により生じるヘリウムから構成されており、水素が尽きると寿命を迎える。しかし、太陽よりも質量の大きな星ではヘリウムも核融合反応を起こして炭素が生成される。中心温度が15億Kを越えていれば炭素も核融合反応を起こしてネオンが生成し、その後は十分な質量があればネオン→酸素→珪素→鉄と核融合反応が進行する。鉄はこれ以上核融合反応を起こさないのである時点で恒星は寿命を迎え、超新星爆発を起こす。このとき、さらなる反応によりニッケル・金などのさらに重い元素が生成される。
初期の宇宙には水素・ヘリウム・リチウムあたりの軽い元素しか存在しなかったと推定され、長い年月で様々な恒星で核融合反応が進行することによって他の元素が十分量生成されてきたと考えられている。
核融合は核分裂とほぼ同時代に発見されたが、連続的に発生させるには数億℃の環境が必要であることから、当初はあまり注目されなかった。
核融合反応自体は短時間ながらも地上で起こすことに成功している。例えば、原子爆弾の進化系である水素爆弾は、原子爆弾の爆発により生まれる膨大な熱エネルギーを利用して核融合反応を起こすことによって原爆の威力を更に高めている。史上最強の水素爆弾ツァーリ・ボンバの爆発では、2.1×10<sup>17</sup>Jものエネルギーが放出されたとされている。
現在では、核融合発電の実用化が盛んに研究されている。核融合発電は核分裂を利用した従来の原子力発電に比べて圧倒的に安全でコストパフォーマンスも良いが、核融合反応の安定的な持続に未だ成功していないので、お目にかかれるのはまだ先である。
===素粒子===
素粒子は物質を構成する最小単位である。現在素粒子として17種類が発見されている。素粒子には、クォーク、レプトン、ゲージ粒子、ヒッグス粒子がある。陽子や中性子はクォークから構成されている。電子は素粒子である。
素粒子には、同じ質量や寿命を持つが、電荷の符号が異なる粒子が存在する。例えば、電子には、電荷が <math>e</math> の陽電子が存在する。[[ファイル:Standard_Model_of_Elementary_Particles-ja.svg|中央|フレームなし|300x300ピクセル]]
==== クォーク ====
陽子や中性子はアップクォークとダウンクォークと呼ばれるクォークから構成される。クォークは6種類あり、それぞれ3世代に分類される。アップクォークとダウンクォークは第一世代に分類され、アップクォークとダウンクォークに性質が似ているが質量がそれよりも重いクォークが存在する。第二世代には、チャームクォークとストレンジクォーク、第三世代にはトップクォークとボトムクォークが存在する。
アップ、チャーム、トップクォークは電荷 <math>\frac{2}{3}e</math> を持ち、ダウン、ストレンジ、ボトムクォークは電荷 <math>-\frac{1}{3}e</math> をもつ。
{| class="wikitable"
|+ クォーク
|-
! 電荷 !! 第1世代 !! 第2世代 !! 第3世代
|-
! <math>\frac{2}{3}e</math>
| アップ (u)
| チャーム (c)
| トップ (t)
|-
! <math>-\frac{1}{3}e</math>
| ダウン (d)
| ストレンジ (s)
| ボトム (b)
|-
|}
=== ハドロン ===
クォークは、必ず複合粒子を形成し、単独で取り出すことができないと考えられている。これをクォークの閉じ込めという。クォーク間に働く力は量子色力学により説明される。量子色力学によれば、それぞれのクォークには三種類の異なる色荷を持つ異なる状態が存在する。三種類の色荷は光の三原色になぞらえて赤、青、緑と名前がついている。クォークの反粒子の色荷は反赤、反青、反緑である。クォークによる複合粒子は、色荷の合計が白である必要がある。
クォークの複合粒子を'''ハドロン(強粒子)'''という。ハドロンには、3つのクォークからなる'''バリオン(重粒子)'''と、2つのクォークからなる中間子(メソン)がある。歴史的にはハドロンを素粒子に含めた時代もあり、その時は素粒子が数百種類を数えていた。現在ではハドロンを素粒子に含めない。
バリオンの重要な例には陽子と中性子がある。陽子は uud で構成され、中性子は udd で構成される。
電荷は
:中性子 <math>\frac{2}{3}e - \frac{1}{3}e - \frac{1}{3}e=0</math>
:陽子 <math>\frac{2}{3}e + \frac{2}{3}e - \frac{1}{3}e=e</math>
となる。
[[ファイル:量子色力学-01.svg|リンク=https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:%E9%87%8F%E5%AD%90%E8%89%B2%E5%8A%9B%E5%AD%A6-01.svg|中央|サムネイル|陽子や中性子の色荷は、赤+青+緑=白である。]]
メソンは、2つのクォークからなる複合粒子である。色荷を考えると、クォークと反クォークで構成される必要がある。なぜなら、クォークの色荷、赤、青、緑から2つを選んでも白色になることはなく、複合粒子を構成できない。クォークと反クォークからは、赤+反赤=白のようになるから、複合粒子を形成することができる。
メソンの重要な例には <math>\pi</math> 中間子がある。電荷により <math>\pi^+, \pi^-,\pi^0</math> の三種類があり、原子核の中の核子を結合させる核力を担っている。それぞれ
<math>\pi^+=u\bar d, \pi^-=\bar u d,\pi^0 = \frac{u \bar u - d \bar d}{\sqrt 2}</math>
で構成される。
==== レプトン ====
電子は素粒子である。電子に似た性質を持つが質量が電子よりも重い粒子として、ミュー粒子、タウ粒子が確認されている。ミュー粒子は電子の200倍、タウ粒子は電子の3500倍の質量を持つ。
また、ニュートリノと呼ばれる粒子が存在する。ニュートリノは物質とはほとんど反応しないため、検出が難しい。電子ニュートリノ、ミューニュートリノ、タウニュートリノが存在する。スーパーカミオカンデでの実験からニュートリノには質量があることが知られているが、その値は非常に小さい。
{| class="wikitable"
|+レプトン
!電荷
|第一世代
|第二世代
|第三世代
|-
! <math>-e</math>
| 電子 (e<sup>ー</sup> )
| μ粒子 (''μ''<sup>ー</sup> )
| τ粒子 (''τ''<sup>ー</sup> )
|-
!0
| 電子ニュートリノ(''ν''<sub>e</sub> )
| μニュートリノ(''ν''<sub>''μ''</sub> )
| τニュートリノ(''ν''<sub>''τ''</sub> )
|}
==== 4つの力 ====
自然界に働くすべての力は4つの力に分類することができる。電磁気力、強い力、弱い力、重力である。
例えば、机の上の物体に働く抗力や摩擦力などは原子の周りの電子による反発力で説明できるから、電磁気力を起源とする。電磁気力は光子によって媒介される力である。
強い力はグルーオンによって媒介される。強い力はクォークを閉じ込め複合粒子を形成したり、核力の起源となる。強い力は量子色力学によって説明される。
弱い力は、W粒子とZ粒子により媒介され、主にベータ崩壊を引き起こす。W粒子とZ粒子をまとめてウィークボソンという。弱い力はワインバーグ・サラム理論によって、電磁気力と統一的に説明される。電磁気力と弱い力を統一した力を電弱力という。
重力を媒介する素粒子を重力子というが、まだ発見されていない。
グルーオンのように、力を媒介する粒子のことを'''ゲージ粒子'''という。
{| class="wikitable" style="float: right; text-align: center; margin: 2pt;"
|+ 4つの力とゲージ粒子
|-
! 力の種類
! ゲージ粒子
! 相対的強さ
! 到達距離
! 力の源
|-
! 電磁気力
| 光子(フォトン)<br>(電磁場を量子化したもの)
|10<sup>-2</sup>
|∞
|電荷
|-
! 強い力<br>(クォークを引き付けあう力のこと。)
| グルーオン
|1(基準)
|10<sup>-15</sup>m
|色荷
|-
! 弱い力<br>(β崩壊を司る力のこと)
| ウィークボソン(W粒子、Z粒子)
|10<sup>-5</sup>
|10<sup>-17</sup>m
|弱荷
|-
! 万有引力(重力)<br>
| 重力子(グラビトン)<br>(未発見)
|'''10<sup>-38</sup>'''
|∞
|質量
|-
|}
==== ヒッグス粒子 ====
ヒッグス場という場は真空において対称性を破ることになる。これを'''自発的対称性の破れ'''という。このときに現れる粒子がヒッグス粒子である。また、ヒッグス場が対称性を破ることによりウィークボソンが質量を獲得する。このことをヒッグス機構という。また、クォークや電子、μ粒子、τ粒子の質量はヒッグス場によって与えられる。
ちなみに、強い力を説明する量子色力学と電弱力を説明するワインバーグ・サラム理論は、ヤン・ミルズ理論の特殊な場合である。ヤン・ミルズ理論においては、力を媒介する粒子はそのままでは質量を持つことができない。そのため、ウィークボソンの質量を説明するためにヒッグス機構が必要となる。また、ヒッグス機構においても、残った対称性のために光子は質量を持たない。
==== 反物質 ====
素粒子には反粒子が存在するから、複合粒子には、構成する素粒子が反粒子となった粒子が存在する。例えば、陽子 <math>p = uud</math> には反陽子 <math>\bar p = \bar u \bar u \bar d</math> が存在する。中性子にも、反中性子 <math>\bar n = \bar u \bar d \bar d</math> が存在する。反粒子で構成された物質を'''反物質'''という。
粒子と反粒子が衝突すると、衝突前のエネルギーと同じエネルギーを持つ光子が2つ以上放出されて消滅する。この現象を'''対消滅'''という。
逆に、光子から粒子と反粒子が生成されることを'''対生成'''という。対生成は光子が近くの原子核と作用する必要がある。
現在の宇宙においては反物質は少量しか存在しないが、宇宙の黎明期には物質と同程度存在し、対消滅によってその殆どが消えたと考えられている。あるいは、宇宙の未知の領域に反物質のみで構成された領域も存在するという仮説が立っている。
(発展)病院などで使われる陽電子断層撮像法(PET)は、β<sup>+</sup>崩壊によって陽電子を放出する <sup>18</sup>F などを含む化合物を体内に取り込み、 発生した陽電子が電子と対消滅して発生するγ線を観測することによって、体内を調べる技術である。
==== スピン ====
電子や陽子や中性子などは、スピンという磁石のような性質をもっている。磁石にN極とS極があるように、スピンにも、2種類の向きがある。スピンのこの2種類の向きは、上向きスピンと下向きスピンがある。
全ての分子は電子や陽子や中性子を含むのに、多くの物質があまり磁性を持たないのは、反対符号のスピンをもつ電子が結合しあうことでスピンが打ち消しあうからである。
物質に静磁場を加えつつ高周波電磁波を加えると、原子核のスピンによって、電磁波が発生する。この電磁波を観測するのが、核磁気共鳴法(NMR、nuclear magnetic resonance)の原理である。 医療で用いられるMRI(magnetic resonance imaging)は、核磁気共鳴法を利用して人体内部を観測する機器である。
素粒子も、通常はスピンをもつ。
μ粒子のスピンという性質による磁気と、μ粒子の透過性の高さを利用して、物質内部の磁場の観測方法として既に研究されており、このような観測技術をμオンスピン回転という。超伝導体の内部の観測などにも、μオンスピン回転による観測が研究されている。
==== 発展:力の統一 ====
現代物理学において、自然界に存在する力はすべて電磁気力・弱い力・強い力・重力の4つに統一されている。
これらの力は宇宙誕生時は一つの力だったと考えられており、現在この4つの力をさらに統一しようとする試みが行われている。
電磁気力と弱い力を統一する'''電弱統一理論'''は既に完成しており、ワインバーグ=サラム理論の名で1979年にノーベル物理学賞を受賞している。電弱統一理論は、ヒッグス粒子の発見によって理論が裏付けられた。強い力と電弱統一理論を統一する'''大統一理論'''は未完成ではあるものの、裏付けとなる現象の観測待ちとなっている。
3つの力と重力を統一する'''超大統一理論'''は'''万物の理論'''と呼ばれ、さまざまなアプローチで構築が進められているが、ある一つの大きな問題が存在する。
それは、'''重力は他の力に比べて圧倒的に弱い'''という事実である。日常生活で考えてみると、磁石で鉄をくっつけられることから「巨大な地球の重力がかなり小さい磁石の電磁気力に負けている」と気がつくことができる。
重力が弱い理由はいくつか考えられているが、その中でも有名なものは「'''重力子が他の素粒子が到達することのできない次元方向に拡散しているため'''」という仮説である。これは素粒子を質点でなく大きさをもつ一次元の弦(あるいは二次元以上の膜)とみなし、素粒子の種類の違いを振動の仕方の違いに対応させる'''超弦理論'''という理論の研究の中で生まれた仮説である。素粒子の種類の違いを表現するには我々の住む三次元空間では振動方向が足りないことから、「この世界は本当はもっと高次元な空間である」との仮説が生まれ、その中で唱えられ始めた。超弦理論の一つであるM理論では、「この世界は十次元空間と一次元時間の十一次元時空間であり、余剰次元は小さく丸まっている(コンパクト仮説)」という方向で理論が構築されている。なぜ重力子のみが余剰次元方向に拡散できるかについては、「他の素粒子は開いた弦でありこの三次元空間に張り付いているが、重力子は閉じた弦であって空間に縛られない」という仮説が立っている。
この仮説では重力のみが弱い理由を合理的に説明できているが、重力子が未だ未発見であること、光子すらも届かない余剰次元空間の存在を確認する手段がないことが難点である。
とりあえず、万物の理論として2024年現在最も有力視されている理論がM理論である。これ以上の深入りは避ける。
==== 発展:CP対称性の破れ ====
コバルト60を極低温に冷却し、磁場をかけて多数のコバルト原子の電子殻の孤立電子スピンの方向をそろえた状態で、コバルト60がベータ崩壊して発生するベータ粒子の出る方向を調べる実験が行われた。
実験の結果、コバルト60がベータ崩壊してベータ粒子の出てくる方向は、コバルト60のスピンの磁気の方向と逆の方向に多く放出されているのが観測された。これは、崩壊の確率が異なっており、ベータ崩壊の対称性が破れていることになる。このような実験事実により、弱い力は空間反転に対して非対称である。このことをパリティ対称性の破れという。
そこで、空間反転と同時に、粒子を反粒子に変える変換に対する対称性、CP対称性は保たれると考えられたが、これもK中間子に関する実験によりCP対称性は破られることが分かった。
1973年、小林誠と益川敏英は、CP対称性の破れを説明するためにはクォークが3世代以上存在する必要があるとする理論('''小林益川理論''')を発表した。当時はクォークはアップ、ダウン、ストレンジの三種類しか発見されていなかったが、後に残りのクォークが実験で発見された。
その後、高エネルギー加速器研究機構(KEK)にある加速器KEKBで行われたB中間子に関する実験から、小林・益川理論が実験的に検証された。
さらに、C変換とP変換と同時に、時間を反転させる操作に対する対称性、CPT対称性が考えられた。現在では、CPT対称性は成り立つと考えられている。
== 脚注・参考文献など ==
[[Category:高等学校教育|物ふつり2けんしとけんしかく]]
[[Category:物理学|高ふつり2けんしとけんしかく]]
[[Category:物理学教育|高ふつり2けんしとけんしかく]]
[[Category:高等学校理科 物理II|けんしとけんしかく]]
3wwpe0hpnshtew0et4sdtftcad2hd4o
高等学校理数数学
0
2130
299672
272410
2026-05-20T00:27:57Z
~2026-30297-95
91534
/* 統計的な推測 */
299672
wikitext
text/x-wiki
[[高等学校数学]]>高等学校理数数学
== 科目概要 ==
高等学校理数科で扱われている科目。
理数数学I、理数数学II、理数数学特論の三科目に分かれる。(理数数学I、IIが必修科目)
高等学校普通科数学の単元を履修順を入れ替えて再構成し、発展事項を追加した上で学ぶ。(なお、普通科であっても進学校ならば扱う発展事項も含む。)
{| class="wikitable" style="width:100%"
|+ 学習指導要領における性格づけ<ref>[https://www.mext.go.jp/content/20230217-mxt_kyoiku02-100002620_05.pdf 高等学校学習指導要領(平成30年度告示)解説 理数編 -文部科学省]</ref>
! style="width:15%; text-align:center" | 科目とその性格
! style="width:40%; text-align:center"| 含まれる単元とその内容(括弧内は対応する普通科数学の単元)
! style="width:45%; text-align:center"| 備考など
|-
|'''理数数学I'''
:事象を数学的に考察し表現する基礎的な能力を養い、知識や技能などを的確に活用する態度を育てることをねらいとし、中学校数学の学習内容を踏まえつつ「理数数学II」及び「理数数学特論」の履修への基礎を築くものである。
|
#数と式([[高等学校数学I/数と式|数学I「数と式」]])
#*数と集合
#**簡単な無理数の計算
#**集合と命題
#*式
#**式の展開と因数分解
#**一次不等式
#図形と計量([[高等学校数学A/図形の性質|数学A「図形の性質」]]、[[高等学校数学I/図形と計量|数学I「図形と計量」]])
#*平面図形
#**三角形の性質
#**円の性質
#**作図
#*空間図形
#**直線と平面の位置関係
#**多面体
#*三角比
#**鋭角の三角比
#**鈍角の三角比
#**正弦定理・余弦定理
#*図形の計量
#**三角形の面積
#**内心と面積の関係
#二次関数([[高等学校数学I/二次関数|数学I「二次関数」]]、[[高等学校数学III/極限#分数関数と無理関数|数学III「極限」内「分数関数・無理関数」]])
#*二次関数とそのグラフ
#**関数の表記f(x)
#**二次関数
#**二次関数のグラフと平行移動・対称移動
#*二次関数の値の変化
#**二次関数の最大・最小
#**二次関数と二次方程式
#*二次不等式
#*分数関数・無理関数
#指数関数・対数関数([[高等学校数学II/指数関数・対数関数|数学II「指数関数・対数関数」]])
#*指数関数
#**指数の拡張
#**指数関数
#*対数関数
#**対数
#**対数関数
#**常用対数
#データの分析([[高等学校数学I/データの分析|数学I「データの分析」]]、[[高等学校数学B/数学と社会生活#回帰分析|数学B「数学と社会生活」内「回帰分析」]])
#*データの散らばり
#**分散、標準偏差
#*データの相関
#**散布図、相関係数
#*仮説検定の考え方
#*回帰分析
#**線形回帰
#**最小二乗法
#**回帰式
#**対数目盛り
#場合の数と確率([[高等学校数学A/場合の数と確率|数学A「場合の数と確率」]])
#*場合の数
#**集合の要素の個数
#**数え上げの原則
#**順列・組合せ
#*確率
#**確率とその基本的な法則
#***余事象、排反、期待値
#**独立な試行と確率
#**条件付き確率
#**期待値
|(普通科数学にない発展・拡充事項の例)
:「数と式」において、真理値表を用いて「<Math>p \implies q</Math>」の否定が「<Math>p \cap \overline{q}</Math>」であることを扱う。
:「図形と計量」において、三角形の垂心・傍心<ref group="注釈" name="普通科">普通科の進学校でも扱う</ref>、ヘロンの公式<ref group="注釈" name="普通科"></ref>を扱う。
:「二次関数」において、二次不等式の解析的解法と代数的解法を比較しそれぞれの利点を理解することを扱う他、「理数物理」と関連した内容(電気抵抗の並列接続、単振子など)も触れる。
:「指数関数・対数関数」において、「理数化学」と関連した内容(水素イオン指数)に触れる。
:「場合の数と確率」において、3つ以上の集合の交わり<ref group="注釈">3つの集合までは普通科の進学校でも扱う</ref>や重複組合せ<ref group="注釈" name="普通科"></ref>を扱う。
|-
|'''理数数学II'''
:事象を数学的に考察し表現する能力を伸ばし、知識及び技能などを積極的に活用する態度を育てることをねらいとし、「理数数学I」の基礎の上に立って、理数に関する学科の特色が生かされるようにしている。
:この科目は複数年次にわたって履修することが考えられるが、その場合は学習の系統性に留意して指導計画の作成にあたることが大切である。
|
#いろいろな式([[高等学校数学II/式と証明・高次方程式|数学II「いろいろな式」]])
#*式
#**多項式の乗法・除法、分数式
#**二項定理
#*等式と不等式の証明
#*高次方程式など
#**複素数と二次方程式
#**高次方程式
#数列([[高等学校数学B/数列|数学B「数列」]])
#*数列とその和
#**等差数列と等比数列
#**いろいろな数列
#*漸化式と数学的帰納法
#**漸化式と数列
#**数学的帰納法
#三角関数と複素数平面([[高等学校数学II/三角関数|数学II「三角関数」]]、[[高等学校数学III/複素数平面|数学C「平面上の曲線と複素数平面」内「複素数平面」]])
#*角の拡張
#*三角関数
#**三角関数
#**三角関数の基本的な性質
#*三角関数の加法定理
#**2倍角の公式、三角関数の合成
#**和↔︎積の公式
#*複素数平面
#**複素数平面
#**ド・モアブルの定理
#図形と方程式([[高等学校数学II/図形と方程式|数学II「図形と方程式」]]、[[高等学校数学C/平面上の曲線|数学C「平面上の曲線と複素数平面」内「平面上の曲線」]])
#*直線と円
#**点と直線
#**円の方程式
#*軌跡と領域
#**軌跡と方程式
#**不等式の表す領域
#*平面上の曲線
#**二次曲線 (直交座標による表示)
#**媒介変数による表示
#**極座標による表示
# 極限([[高等学校数学III/極限|数学III「極限」]])
#*数列の極限
#**数列{<math>{r^n}</math>} の極限
#**無限等比級数の和
#*関数とその極限
#**合成関数と逆関数
#**関数の値の極限
#**関数の連続性
#微分法([[高等学校数学II/微分・積分の考え|数学II「微分・積分の考え」内「微分の考え」]]、[[高等学校数学III/微分法|数学III「微分法」]])
#*導関数
#**微分係数と導関数
#**関数の和・差・積・商の導関数
#**合成関数・逆関数の導関数
#**三角関数・指数関数・対数関数の導関数
#*導関数の応用
#**接線、関数の値の増減、極大・極小、グラフの凹凸、速度・加速度
#積分法([[高等学校数学II/微分・積分の考え|数学II「微分・積分の考え」内「積分の考え」]]、[[高等学校数学III/積分法|数学III「積分法」]])
#*不定積分と定積分
#**積分とその基本的な性質・置換積分法・部分積分法
#*いろいろな関数の積分
#*積分の応用
#**面積、体積、曲線の長さ
#統計的な推測([[高等学校数学B/確率分布と統計的な推測|数学B「統計的な推測」]])
#*確率分布
#**確率変数と確率分布
#**確率変数の平均、分散、標準偏差
#**二項分布
#**正規分布
#*統計的な推測
#**母集団と標本
#**区間推定・仮説検定
|(普通科数学にない発展・拡充事項の例)
:「いろいろな式」において、三次関数における解と係数の関係<ref group="注釈" name="普通科"></ref>について扱う。
:「数列」において、隣接三項間漸化式<ref group="注釈" name="普通科"></ref>や分数漸化式<ref group="注釈" name="普通科"></ref>など、様々なタイプの漸化式を扱う。
:「三角関数と複素数平面」において、和↔︎積の公式<ref group="注釈" name="普通科"></ref>を扱う他、「理数物理」に関連した内容(音の合成など)に触れたり複素関数(一次関数・分数関数に限る)について扱う。
:「図形と方程式」において、2円の共有点の座標や共通接線、共有点を通る曲線等<ref group="注釈" name="普通科"></ref>について扱う他、「理数物理」に関連した内容(二次曲線における反射の法則など)について触れる。
:「極限」において、無限級数で定義される関数(<Math>y = \sum_{n=1}^{\infty} (\frac{1}{x^2+1})^n</Math>など)について扱う。
:「微分法」において、一次と二次の近似式<ref group="注釈" name="普通科"></ref>を扱う他、逆三角関数や双曲線関数・逆双曲線関数などを扱う。
:「積分法」において、微分方程式<ref group="注釈" name="普通科"></ref>や台形公式、シンプソンの公式を扱う。
:「統計的な推測」において、一様分布や<Math>\tau</Math>検定、<Math>\chi^2</Math>検定を扱う。
|-
|'''理数数学特論'''
:より広い数学の分野にわたって事象を数学的に考察し表現する能力を伸ばし、知識や技能などを積極的に活用する態度を育てることをねらいとしている。
:生徒の特性や学校の実態、単位数等に応じて内容を適宜選択して履修させる科目である。
|
#ベクトル([[高等学校数学C/ベクトル|数学C「ベクトル」]])
#*平面上のベクトル
#**ベクトルとその演算
#**ベクトルの内積
#*空間とベクトル
#**空間座標、空間におけるベクトル
#行列とその応用([[高等学校数学C/数学的な表現の工夫#行列による表現とその演算|数学C「数学的な表現の工夫」内「行列による表現とその演算」]]、[[旧課程(-2012年度)高等学校数学C/行列#行列の応用|旧々課程数学C「行列とその応用」内「行列の応用」]])
#*行列による表現とその演算
#**行列による表現
#**行列の和と差、実数倍
#**行列の積
#**逆行列
#*行列の応用
#**連立一次方程式
#**一次変換
#離散グラフ([[高等学校数学C/数学的な表現の工夫#離散グラフによる表現|数学C「数学的な表現の工夫」内「離散グラフによる表現」]])
#**一筆書き
#**最短経路
#**隣接行列
#**経路の数え上げと行列の累乗
#数学と生活や社会との関わり([[高等学校数学A/数学と人間の活動|数学A「数学と人間の活動」]]、[[高等学校数学B/数学と社会生活|数学B「数学と社会生活<ref group="注釈">「回帰分析」は理数数学I「データの分析」の範囲</ref>」]])
#*数量や図形と人間の活動
#**約数と倍数・ユークリッドの互除法・記数法
#**平面や空間における座標・2点間の距離
#*数学と文化
#**数学史
#**ゲーム・パズルの中の数学
#*数学的と社会生活
#**数学を利用した問題解決
#**社会の中の数学
|(普通科数学にない発展・拡充事項の例)
:「ベクトル」において、空間における直線の方程式<ref group="注釈" name="普通科"></ref>や、平面の方程式<ref group="注釈" name="普通科"></ref>を扱う他、それらの位置関係を考察したり、交点・交線の方程式を求めることを扱う。
:「行列」において、普通科の新課程で復活しなかった「行列の応用」の内容を扱う。また、行列がベクトルの拡張であることについて触れる。
:「離散グラフ」において、完全グラフや四色問題、ラムゼーの定理などを扱う。
|}
数学C「数学的な表現方法の工夫」内「データの表現方法の工夫」(パレート図、バブルチャート等を用いたデータの表現)のみ対応する単元が存在しない。
以下、このページでは普通科数学で扱わない発展事項について記載していく。
その他普通科でも扱う内容については上の表から各自参照すること。
<!-- ↑の表に挙げた内容を(普通科数学のページとの兼ね合いも考えながら)どんどん追加していきましょう。 -->
== 理数数学I ==
=== 数と式 ===
==== 真理値表 ====
=== 図形と計量 ===
==== 球面三角法 ====
=== 二次関数 ===
=== 指数関数・対数関数 ===
=== データの分析 ===
=== 場合の数と確率 ===
==== 3つ以上の集合と要素の個数 ====
== 理数数学Ⅱ ==
=== いろいろな式 ===
==== 整式の最大公約数・最小公倍数 ====
※数の最大公約数・最小公倍数については理数数学特論及び[[高等学校数学A/数学と人間の活動#最小公倍数・最大公約数|普通科数学A]]の内容であることに留意。
整式<math>A</math>が整式<math>B</math>で割り切れるとき、<math>B</math>を<math>A</math>の'''約数'''、<math>A</math>を<math>B</math>の'''倍数'''という。<br>
2つ以上の整式の共通の約数を、それらの'''公約数'''、共通の倍数を'''公倍数'''といい、公約数のうち次数の最も高いものを'''最大公約数'''といい、公倍数のうち次数の最も低いものを'''最小公倍数'''という。<br>
(注意)普通、整式の約数、倍数では単なる数の因数を考えない。<br>
<br>
*問題例
**問題
:<math>x^3 -4x^2 +3x\ ,\ 6x^4 -15x^3 -9x^2</math>
の最大公約数と最小公倍数を求めよ。
**解答
:<math>x^3 -4x^2 +3x=x(x^2 -4x +3)=x(x-1)(x-3)</math>
:<math>6x^4 -15x^3 -9x^2=3x^2(2x^2 -5x -3)=3x^2(x-3)(2x+1)</math>
よって、最大公約数は<math>x(x-3)</math>、最小公倍数は<math>x^2(x-1)(x-3)(2x+1)</math><br>
<br>
2つの整式が、数の因数以外に共通の因数を持たないとき、これらの整式は'''互いに素'''であるという。
**例
<math>(x+1)(x-3)</math>と<math>(x+2)(x+3)</math>は互いに素である。<br>
<br>
2つの整式と、その最大公約数、最小公倍数との間の関係について考える。例えば
:<math>A=(x+1)(x+2)\ ,\ B=(x+1)(x-1)</math>
の最大公約数を<math>G</math>、最小公倍数を<math>L</math>とすると
:<math>G=x+1\ ,\ L=(x+1)(x+2)(x-1)</math>
である。
このとき、<math>A\ ,\ B</math>を<math>G</math>で割った商をそれぞれ<math>A'\ ,\ B'</math>とすると
:<math>A=GA'\ ,\ A'=x+2</math>
:<math>B=GB'\ ,\ B'=x-1</math>
となり、<math>A'\ ,\ B'</math>は互いに素である。
:<math>L=(x+1)(x+2)(x-1)=GA'B'</math>
であるから、<math>LG=GA'B'G=(GA')(GB')=AB</math>が成り立つ。
{| style="border:2px solid greenyellow;width:80%" cellspacing=0
|style="background:greenyellow"|'''最大公約数と最小公倍数'''
|-
|style="padding:5px"|
整式<math>A\ ,\ B</math>の最大公約数を<math>G</math>、最小公倍数を<math>L</math>とし、<math>A\ ,\ B</math>を<math>G</math>で割った商をそれぞれ<math>A'\ ,\ B'</math>とすると<br>
1<math>. \qquad A=GA'\ ,\ B=GB'</math><br>
2<math>. \qquad A'\ ,\ B'</math>は互いに素<br>
3<math>. \qquad L=GA'B'\ ,\ LG=AB</math>
|}
=== 数列 ===
==== 階比数列 ====
==== 対数漸化式 ====
=== 三角関数と複素数平面 ===
==== 複素関数 ====
<!-- w=az, w=a/zの型のみ扱う。 -->
=== 図形と方程式 ===
==== 円と円の共有点 ====
*問題例
**問題
2つの円
:<math>x^2 + y^2 =25\ ,\ x^2 + y^2 - 2x - y -15 =0</math>
の共有点の座標を求めよ。
**解答
2つの方程式から、<math>x^2 + y^2</math>を消去して
:<math>2x+y-10=0</math>……(1)
(1)を<math>x^2 + y^2 =25</math>に代入し整理すると
:<math>x^2 -8x +15=0</math>
ゆえに
:<math>x=3\ ,\ 5</math>
(1)から<br>
<math>x=3</math>のとき<math>y=4</math>、<math>x=5</math>のとき<math>y=0</math><br>
よって、求める共有点の座標は
:<math>(3\ ,\ 4)\ ,\ (5\ ,\ 0)</math>
==== 2円の共通接線の方程式 ====
==== 2円の交点を通る曲線 ====
==== 楕円の補助円 ====
==== 二次曲線の準円 ====
==== 二次曲線の回転と標準化 ====
==== 二次曲線の判別式 ====
=== 極限 ===
==== 無限級数で定義される関数 ====
=== 微分法 ===
==== 逆三角関数 ====
sin、cos、tanとその逆数csc、sec、cotの逆関数をまとめて'''逆三角関数'''という。逆三角関数を表記するとき、元の関数に接頭辞'''arc'''をつける。(「arc」は「arcus(弓)」の略。)
三角関数の逆関数をそのまま考えようとすると、一つの入力に対して複数出力されてしまうため、定義域を制限して考える。
逆三角関数の定義域はそれぞれ、
*arcsin:<math>[-\frac{\pi}{2}, \frac{\pi}{2}]</math>
*arccos:<math>[0, \pi]</math>
*arctan:<math>[-\frac{\pi}{2}, \frac{\pi}{2}]</math>
である。
例)<math>\sin \frac{\pi}{6} =\frac{1}{2}</math>より、定義域に注意すると<math>\arcsin \frac{1}{2} = \frac{\pi}{6}</math> である。
各関数のグラフは右図のようになる。
[[ファイル:Mplwp inverse trigonometric functions piaxis.svg|サムネイル|右|代替文=逆三角関数のグラフ|逆三角関数のグラフ]]
'''逆三角関数の微分'''
<math>(\arcsin x)' = \frac{1}{\sqrt{1-x^2}}</math>
<math>(\arccos x)' = - \frac{1}{\sqrt{1-x^2}}</math>
<math>(\arctan x)' = \frac{1}{1+x^2}</math>
*導出
:<math>y=\arcsin x \iff x = \sin y</math>
:<math>\frac{d}{dx} x = \frac{d}{dx} \sin y </math>
:<math>1 = \frac{dy}{dx} \cos y</math>
:<math>\frac{dy}{dx} = \frac{1}{\cos y}</math>
:<math>\cos y = \sqrt{1- \sin^2 y} = \sqrt{1-x^2} (\because -\frac{\pi}{2} \leqq y \leqq \frac{\pi}{2})</math>
:<math>\therefore (\arcsin x)' = \frac{1}{\sqrt{1-x^2}}</math>
arccosも同様。
:<math>y = \arctan x \iff x = \tan y</math>
:<math>\frac{d}{dx} x = \frac{d}{dx} \tan y</math>
:<math>1 = \frac{dy}{dx} \cdot \frac{1}{\cos^2 y}</math>
:<math>\frac{dy}{dx} = \cos^2 y = \frac{1}{1+\tan^2y} = \frac{1}{1+x^2}</math>
==== 双曲線関数 ====
==== 逆双曲線関数 ====
=== 積分法 ===
==== 楕円関数系の積分 ====
==== 微分方程式 ====
未知関数を含む方程式を'''関数方程式'''という。
未知関数の導関数を含む関数方程式を'''微分方程式'''といい、「微分方程式を解く」とは微分方程式を満たす全ての関数を求めることである。
(例)<math>\frac{dy}{dx}=a</math>
両辺をxについて積分すると、
<math>y=ax+C</math>(Cは任意の定数)
これがこの微分方程式の解である。
<math>y'=2x</math>のように、第一次導関数までを含む微分方程式を'''一階微分方程式'''という。<math>y''=6x</math>のように、第二次導関数までを含む微分方程式を'''二階微分方程式'''という。一般に、第n次導関数までを含む微分方程式を'''n階微分方程式'''という。<math>x=y'+3y''</math>のように、導関数の一次結合で表された微分方程式を'''線形微分方程式'''という。線形微分方程式のうち、導関数とは関係ない変数の項の値が0であるものを'''斉次微分方程式'''という。微分方程式のうち、未知関数が一つの変数で表されるものを'''常微分方程式'''という。
; '''微分方程式の解法'''
ここでは、'''変数分離形'''と呼ばれる常微分方程式のみ扱う。
*例題
微分方程式<math>y'x=y</math>を解け。
*解答
与式は<math>\frac{dy}{dx} x = y</math>と書ける。
:①<math>y=0</math>のとき
::<math>\frac{dy}{dx}=0</math>より与式が成立するので、定数関数<math>y=0</math>はこの微分方程式の解である。
:②<math>y \neq 0</math>のとき
::<math>x=0</math>は与式を満たさないので<math>x \neq 0</math>
::'''形式的に'''※変形して<math>\frac{dy}{y} = \frac{dx}{x}</math>('''変数分離''')
::両辺にインテグラルをつけて<math>\int \frac{dy}{y} = \int \frac{dx}{x}</math>
::<math>\therefore \log |y| = \log |x| + C</math>(C は積分定数)
::<math>\therefore |y| = e^{C} |x|</math>
::<math>y = \pm e^{C} x</math>
::<math>A = \pm e^{C}</math> とおくと、
::<math>y = A x </math>(<math>x \neq 0, A \neq 0</math>より<math>y \neq 0</math>を満たす。)
:①、②より、この微分方程式の解は<math>y = kx</math>(k は任意の実数)である。
※<math>\frac{dy}{dx}</math>で一つの記号であり<math>dx</math>と<math>dy</math>に分離する操作は本来認められていないので、「形式的に」という表現を用いた。
*問題
**以下の微分方程式を解け。
**#<math>y' = \sin x</math>
**#<math>y'' = \log x</math>
**#<math>y' = 2xy</math>
**#<math>y'' = 3x^2y</math>
<!-->ここに非線形微分方程式(2次形式の簡単なタイプ)の例題と問題<-->
一般に、微分方程式の解は任意定数を含むものとなる。このような解を'''一般解'''という。微分方程式に含まれる変数に対し何かしらの条件が与えられると、微分方程式の解に含まれる任意定数の値を定めることができる。このような条件を'''初期条件'''といい、定数の定まった解を'''特殊解'''という。
<!-->ここに特殊解を求める問題<-->
微分方程式は、[[物理学]]で広く用いられている。大学以上の物理は微分方程式を解く学問であると言っても過言ではないだろう。
例えば、等加速度直線運動は<math>\frac{d^2x}{dt^2} = a</math>(xは変位、tは時間、aは加速度)という二階線形常微分方程式で表される。
:両辺を一回積分して<math>\frac{dx}{dt} = at + C_1</math>を得る。<math>\frac{dx}{dt}</math>は時刻tにおける速度なので、積分定数<math>C_1</math>は運動を始めた時刻での速度(初速度)<math>v_0</math>を表す。
:両辺をもう一度積分して<math>x = \frac{1}{2}at^2 + v_0 t + C_2</math>を得る。xは変位なので、積分定数<math>C_2</math>は運動を始めた時刻での位置(初期位置)<math>x_0</math>を表す。
これで、積分結果が[[高等学校物理基礎/力学#等加速度直線運動|物理基礎]]で習った等加速度直線運動の公式に一致することを確かめられた。
[[高等学校 物理|高校物理]]の範囲で登場する公式の微分方程式表示の例を以下に示す。
*<math>\frac{d^2x}{dt^2} = -A \omega^2 \sin (\omega t)</math>(円運動・単振動)
*<math>\frac{dQ}{dt} = I</math>(電流の定義)
*<math>V = -N\frac{d \Phi}{dt}</math>(ファラデーの電磁誘導の法則)
*<math>V_L = -L\frac{dI}{dt}</math>(自己誘導)
*<math>V_M = -M\frac{dI}{dt}</math>(相互誘導)
==== 積分方程式 ====
<!-- 定数型、変数型、2元連立、被積分関数が(第3次までの)導関数の式であるもの -->
==== 台形公式 ====
==== シンプソンの公式 ====
===統計的な推測===
====微積分学による連続型確率変数の解析====
連続型確率変数に於ける平均・分散の公式の証明
ド・モアブル=ラプラスの定理
中心極限定理
歪度
尖度
エントロピー
積率母関数
特性関数
キュムラント母関数
確率母関数
====一様分布====
====ポアソン分布====
ポアソン検定
====<math>F</math>分布====
<math>F</math>検定
====<math>t</math>分布====
<math>t</math>検定
====<math>\chi^2</math>分布====
<math>\chi^2</math>検定
====コーシー・ローレンツ分布====
== 理数数学特論 ==
=== ベクトル ===
==== 平面の方程式 ====
1点<math>\mathrm{A}(x_1\ ,\ y_1\ ,\ z_1)</math>を通り、ベクトル<math>\vec{n} = (a\ ,\ b\ ,\ c)</math>に垂直な平面<math>\alpha</math>の方程式を考える。<br>
点<math>\mathrm{P}(x\ ,\ y\ ,\ z)</math>が平面<math>\alpha</math>上にあるための必要十分条件は
<center><math>\vec{AP} =0</math> または <math>\vec{AP} \perp \vec{n}</math></center>
すなわち
:<math>\vec{n} \cdot \vec{AP} =0</math>
となることである。<br>
ここで、<math>\vec{OA} = \vec{a}\ ,\ \vec{OP} = \vec{p}</math>とおくと
:<math>\vec{n} \cdot (\vec{p} - \vec{a})=0</math>
となる。これは、'''平面<math>\alpha</math>のベクトル方程式'''である。<br>
ベクトルを成分で表すと、<math>\vec{p} - \vec{a}=(x-x_1\ ,\ y-y_1\ ,\ z-z_1)</math>であるから
<center><math>a \left(x-x_1 \right) + b \left(y-y_1 \right) + c \left(z-z_1 \right) =0</math></center>
{| style="border:2px solid orange;width:80%" cellspacing=0
|style="background:orange"|'''平面の方程式'''
|-
|style="padding:5px"|
<math>\vec{n} = (a\ ,\ b\ ,\ c) \ne 0</math>とするとき、点<math>\mathrm{A}(x_1\ ,\ y_1 ,\ z_1)</math>を通り、ベクトル<math>\vec{n}</math>に垂直な平面の方程式は
<center><math>a \left(x-x_1 \right) + b \left(y-y_1 \right) + c \left(z-z_1 \right) =0</math></center>
|}
上の定理から、'''平面は<math>\ x\ ,\ y ,\ z\ </math>の1次方程式<math>ax+by+cz+d=0</math>で表される'''ことがわかる。<br>
平面に垂直な直線をその平面の'''法線'''といい、平面に垂直なベクトルをその平面の'''法線ベクトル'''という。
*問題例
**問題
次の平面の方程式を求めよ。<br>
(i) 点<math>\mathrm{A}(1\ ,\ 2\ ,\ 3)</math>を通り、<math>\vec{n} = (4\ ,\ 3\ ,\ -2)</math>を法線ベクトルとする平面<br>
(ii) 2点<math>\mathrm{A}(2\ ,\ 1\ ,\ 4)\ ,\ \mathrm{B}(5\ ,\ 3\ ,\ 5)</math>に対して、点<math>\mathrm{A}</math>を通り直線<math>\mathrm{A} \mathrm{B}</math>を法線とする平面
**解答
(i)
:<math>4(x-1)+3(y-2)-2(z-3)=0</math>
:<math>4x+3y-2z-4=0</math>
(ii) <math>\vec{AB} = (3\ ,\ 2\ ,\ 1)</math>であるから
:<math>3(x-2)+2(y-1)+1(z-4)=0</math>
:<math>3x+2y+z-12=0</math>
特別な平面について考えてみよう。
*問題例
**問題
次の方程式はどのような平面を表しているか。<br>
(i)
:<math>2x+y-6=0</math>
(ii)
:<math>z=-3</math>
**解答
(i) 与えられた方程式を変形すると
:<math>2(x-3)+1(y-0)+0(z-0)=0</math>
よって、'''点<math>(3\ ,\ 0\ ,\ 0)</math>を通り、ベクトル<math>(2\ ,\ 1\ ,\ 0)</math>に垂直な平面'''を表す。<br>
(ii) 与えられた方程式を変形すると
:<math>0(x-0)+0(y-0)+1(z+3)=0</math>
よって、'''点<math>(0\ ,\ 0\ ,\ -3)</math>を通り、z軸に垂直な平面(xy平面に平行な平面)'''を表す。
==== 点と平面の距離 ====
点<math>\mathrm{P}(x_1\ ,\ y_1\ ,\ z_1)</math>と平面<math>\alpha</math> <math>ax+by+cz+d=0</math>との距離<math>h</math>を求めよう。<br>
点<math>\mathrm{P}</math>から平面<math>\alpha</math>へ下ろした垂線の足を<math>\mathrm{H}</math>とし、<math>\alpha</math>上に1点<math>\mathrm{A}(x_2\ ,\ y_2\ ,\ z_2)</math>をとる。<br>
また、<math>\alpha</math>の法線ベクトル<math>\vec{n} = (a\ ,\ b\ ,\ c)</math>と<math>\vec{AP}</math>のなす角を<math>\theta</math>とすると
:<math>h = |\vec{AP}|\ |\cos \theta| = |\vec{AP}|\ \frac{|\vec{n} \cdot \vec{AP}|}{|\vec{n}|\ |\vec{AP}|} = \frac{|\vec{n} \cdot \vec{AP}|}{\sqrt{a^2+b^2+c^2}}</math>
ここで
:<math>\vec{n} \cdot \vec{AP} = a \left(x_1 -x_2 \right) + b \left(y_1 -y_2 \right) + c \left(z_1 -z_2 \right) = ax_1 + by_1 +cz_1 - \left(ax_2 +by_2 +cz_2 \right)</math>
点<math>\mathrm{A}</math>は<math>\alpha</math>上にあるから
:<math>ax_2 +by_2 +cz_2 =-d</math>
よって
:<math>\vec{n} \cdot \vec{AP} = ax_1 + by_1 +cz_1 +d</math>
{| style="border:2px solid orange;width:80%" cellspacing=0
|style="background:orange"|'''点と平面の距離'''
|-
|style="padding:5px"|
点<math>(x_1\ ,\ y_1\ ,\ z_1)</math>と平面<math>ax+by+cz+d=0</math>との距離<math>h</math>は
<center><math>h = \frac{|ax_1 + by_1 +cz_1 +d|}{\sqrt{a^2+b^2+c^2}}</math></center>
|}
*問題例
**問題
点<math>(-3\ ,\ 1\ ,\ 2)</math>と平面<math>2x+3y-6z+1=0</math>の距離を求めよ。
**解答
:<math>h=\frac{|2 \times (-3) + 3 \times 1 + (-6) \times 2 +1|}{\sqrt{2^2+3^2+(-6)^2}}=\frac{|-14|}{7}=2</math>
==== 直線の方程式 ====
定点<math>\mathrm{A}(x_1\ ,\ y_1\ ,\ z_1)</math>を通り、<math>\vec{0}</math>でないベクトル<math>\vec{d} = (a\ ,\ b\ ,\ c)</math>に平行な直線<math>g</math>の方程式を考える。<br>
点<math>\mathrm{P}(x\ ,\ y\ ,\ z)</math>が直線<math>g</math>上にあるための必要十分条件は、<math>\mathrm{P}</math>に対応して
<center><math>\vec{AP} = t \vec{d}</math></center>
となる実数<math>t</math>が定まることである。
:<math>\vec{OP} = \vec{OA} + \vec{AP}</math>
であるから、<math>\vec{p} = \vec{OP}\ ,\ \vec{a} = \vec{OA}</math>とおくと
:<math>\vec{p} = \vec{a} + t \vec{d}</math>
となる。これを、'''直線<math>g</math>のベクトル方程式'''という。<br>
このベクトル方程式を成分で表すと
:<math>\vec{p} =(x\ ,\ y\ ,\ z)\ ,\ \vec{a}=(x_1\ ,\ y_1\ ,\ z_1)\ ,\ \vec{d}=(a\ ,\ b\ ,\ c)</math>
であるから
<center><math>\left(x\ ,\ y\ ,\ z \right) = \left(x_1 +at\ ,\ y_1 +bt\ ,\ z_1 +ct \right)</math></center>
よって
<center><math>x = x_1 +at\ ,\ y = y_1 +bt\ ,\ z = z_1 +ct</math> ……(1)</center>
(1)から<math>t</math>を消去すると、次のことがいえる。
{| style="border:2px solid orange;width:80%" cellspacing=0
|style="background:orange"|'''直線の方程式(1)'''
|-
|style="padding:5px"|
<math>abc \ne 0</math>であるとき、定点<math>\mathrm{A}(x_1\ ,\ y_1 ,\ z_1)</math>を通り、ベクトル<math>\vec{d} = (a\ ,\ b\ ,\ c)</math>に平行な直線の方程式は
<center><math>\frac{x-x_1}{a} = \frac{y-y_1}{b} = \frac{z-z_1}{c}</math></center>
|}
直線<math>g</math>に平行なベクトル<math>\vec{d} = (a\ ,\ b\ ,\ c)</math>を直線<math>g</math>の'''方向ベクトル'''という。また、(1)を直線<math>g</math>の'''媒介変数表示'''という。
*問題例
**問題
点<math>\mathrm{A} (1\ ,\ -2\ ,\ 3)</math>を通り、ベクトル<math>\vec{d} = (2\ ,\ -2\ ,\ 3)</math>に平行な直線の方程式を求めよ。
**解答
:<math>\frac{x-1}{2} = \frac{y-(-2)}{-2} = \frac{z-3}{3}</math>
整理して
:<math>\frac{x-1}{2} = \frac{y+2}{-2} = \frac{z-3}{3}</math>
2点<math>\mathrm{A}(x_1\ ,\ y_1\ ,\ z_1)\ ,\ \mathrm{B}(x_2\ ,\ y_2\ ,\ z_2)</math>を通る直線は、ベクトル<math>\vec{AB}=(x_2-x_1\ ,\ y_2-y_1\ ,\ z_2-z_1)</math>に平行であるから、次のことがいえる。
{| style="border:2px solid orange;width:80%" cellspacing=0
|style="background:orange"|'''直線の方程式(2)'''
|-
|style="padding:5px"|
2点<math>\mathrm{A}(x_1\ ,\ y_1\ ,\ z_1)\ ,\ \mathrm{B}(x_2\ ,\ y_2\ ,\ z_2)</math>を通る直線の方程式は
<center><math>\frac{x-x_1}{x_2-x_1} = \frac{y-y_1}{y_2-y_1} = \frac{z-z_1}{z_2-z_1}</math></center>
|}
*問題例
**問題
2点<math>\mathrm{A}(1\ ,\ 2\ ,\ 3)\ ,\ \mathrm{B}(2\ ,\ -1\ ,\ 5)</math>を通る直線の方程式を求めよ。
**解答
:<math>\frac{x-1}{2-1} = \frac{y-2}{-1-2} = \frac{z-3}{5-3}</math>
整理して
:<math>x-1 = \frac{y-2}{-3} = \frac{z-3}{2}</math>
特殊な直線の方程式について考えてみよう。
:<math>x = x_1 +at\ ,\ y = y_1 +bt\ ,\ z = z_1 +ct</math> ……(1)
で、<math>abc=0</math>であるときについて考える。
例えば、<math>a \ne 0\ ,\ b \ne 0\ ,\ c=0</math>であるとき
:<math>\frac{x-x_1}{a} = \frac{y-y_1}{b}\ ,\ z = z_1</math>
となる。これはxy平面に平行な直線<math>g</math>を表している。<br>
また、<math>a \ne 0\ ,\ b=c=0</math>であるとき
:<math>y=y_1\ ,\ z = z_1</math>
となる。これはx軸に平行な直線<math>g</math>を表している。<br>
*問題例
**問題
次の方程式はどのような直線を表すか。<br>
(i)
:<math>x=2\ ,\ y-2 = \frac{z-3}{-1}</math>
(ii)
:<math>x=-1\ ,\ y=4</math>
**解答
(i)<br>
与えられた方程式から、<math>y=2</math>とおくと<math>z=3</math>となる。<br>
したがって、この直線は点<math>\mathrm{A}(2\ ,\ 2\ ,\ 3)</math>を通る。
方向ベクトルは、<math>\vec{d} = (0\ ,\ 1\ ,\ -1)</math>であるから、yz平面に平行である。<br>
よって、この方程式は'''点<math>\mathrm{A}(2\ ,\ 2\ ,\ 3)</math>を通り、<math>\vec{d} = (0\ ,\ 1\ ,\ -1)</math>に平行な直線(yz平面に平行な直線)'''を表す。<br>
(ii)<br>
この直線は2平面<math>x=-1\ ,\ y=4</math>の交線である。<br>
よって、この方程式は'''点<math>\mathrm{A}(-1\ ,\ 4\ ,\ 0)</math>を通り、z軸に平行な直線'''を表す。<br>
=== 行列とその応用 ===
==== 4次以上の正方行列における行列式 ====
=== 離散グラフ ===
==== 完全グラフ ====
==== 四色問題 ====
==== ラムゼーの定理 ====
=== 数学と生活や社会との関わり ===
==== フェルマーの小定理 ====
== 脚注 ==
{{reflist}}
<references group="注釈"/>
[[カテゴリ:高等学校数学|こうとうかつこうりすうすうかく]]
hufkc21z9r39ly3xt188rvaec10i2l9
299673
299672
2026-05-20T00:29:35Z
~2026-30297-95
91534
/* 数学と生活や社会との関わり */
299673
wikitext
text/x-wiki
[[高等学校数学]]>高等学校理数数学
== 科目概要 ==
高等学校理数科で扱われている科目。
理数数学I、理数数学II、理数数学特論の三科目に分かれる。(理数数学I、IIが必修科目)
高等学校普通科数学の単元を履修順を入れ替えて再構成し、発展事項を追加した上で学ぶ。(なお、普通科であっても進学校ならば扱う発展事項も含む。)
{| class="wikitable" style="width:100%"
|+ 学習指導要領における性格づけ<ref>[https://www.mext.go.jp/content/20230217-mxt_kyoiku02-100002620_05.pdf 高等学校学習指導要領(平成30年度告示)解説 理数編 -文部科学省]</ref>
! style="width:15%; text-align:center" | 科目とその性格
! style="width:40%; text-align:center"| 含まれる単元とその内容(括弧内は対応する普通科数学の単元)
! style="width:45%; text-align:center"| 備考など
|-
|'''理数数学I'''
:事象を数学的に考察し表現する基礎的な能力を養い、知識や技能などを的確に活用する態度を育てることをねらいとし、中学校数学の学習内容を踏まえつつ「理数数学II」及び「理数数学特論」の履修への基礎を築くものである。
|
#数と式([[高等学校数学I/数と式|数学I「数と式」]])
#*数と集合
#**簡単な無理数の計算
#**集合と命題
#*式
#**式の展開と因数分解
#**一次不等式
#図形と計量([[高等学校数学A/図形の性質|数学A「図形の性質」]]、[[高等学校数学I/図形と計量|数学I「図形と計量」]])
#*平面図形
#**三角形の性質
#**円の性質
#**作図
#*空間図形
#**直線と平面の位置関係
#**多面体
#*三角比
#**鋭角の三角比
#**鈍角の三角比
#**正弦定理・余弦定理
#*図形の計量
#**三角形の面積
#**内心と面積の関係
#二次関数([[高等学校数学I/二次関数|数学I「二次関数」]]、[[高等学校数学III/極限#分数関数と無理関数|数学III「極限」内「分数関数・無理関数」]])
#*二次関数とそのグラフ
#**関数の表記f(x)
#**二次関数
#**二次関数のグラフと平行移動・対称移動
#*二次関数の値の変化
#**二次関数の最大・最小
#**二次関数と二次方程式
#*二次不等式
#*分数関数・無理関数
#指数関数・対数関数([[高等学校数学II/指数関数・対数関数|数学II「指数関数・対数関数」]])
#*指数関数
#**指数の拡張
#**指数関数
#*対数関数
#**対数
#**対数関数
#**常用対数
#データの分析([[高等学校数学I/データの分析|数学I「データの分析」]]、[[高等学校数学B/数学と社会生活#回帰分析|数学B「数学と社会生活」内「回帰分析」]])
#*データの散らばり
#**分散、標準偏差
#*データの相関
#**散布図、相関係数
#*仮説検定の考え方
#*回帰分析
#**線形回帰
#**最小二乗法
#**回帰式
#**対数目盛り
#場合の数と確率([[高等学校数学A/場合の数と確率|数学A「場合の数と確率」]])
#*場合の数
#**集合の要素の個数
#**数え上げの原則
#**順列・組合せ
#*確率
#**確率とその基本的な法則
#***余事象、排反、期待値
#**独立な試行と確率
#**条件付き確率
#**期待値
|(普通科数学にない発展・拡充事項の例)
:「数と式」において、真理値表を用いて「<Math>p \implies q</Math>」の否定が「<Math>p \cap \overline{q}</Math>」であることを扱う。
:「図形と計量」において、三角形の垂心・傍心<ref group="注釈" name="普通科">普通科の進学校でも扱う</ref>、ヘロンの公式<ref group="注釈" name="普通科"></ref>を扱う。
:「二次関数」において、二次不等式の解析的解法と代数的解法を比較しそれぞれの利点を理解することを扱う他、「理数物理」と関連した内容(電気抵抗の並列接続、単振子など)も触れる。
:「指数関数・対数関数」において、「理数化学」と関連した内容(水素イオン指数)に触れる。
:「場合の数と確率」において、3つ以上の集合の交わり<ref group="注釈">3つの集合までは普通科の進学校でも扱う</ref>や重複組合せ<ref group="注釈" name="普通科"></ref>を扱う。
|-
|'''理数数学II'''
:事象を数学的に考察し表現する能力を伸ばし、知識及び技能などを積極的に活用する態度を育てることをねらいとし、「理数数学I」の基礎の上に立って、理数に関する学科の特色が生かされるようにしている。
:この科目は複数年次にわたって履修することが考えられるが、その場合は学習の系統性に留意して指導計画の作成にあたることが大切である。
|
#いろいろな式([[高等学校数学II/式と証明・高次方程式|数学II「いろいろな式」]])
#*式
#**多項式の乗法・除法、分数式
#**二項定理
#*等式と不等式の証明
#*高次方程式など
#**複素数と二次方程式
#**高次方程式
#数列([[高等学校数学B/数列|数学B「数列」]])
#*数列とその和
#**等差数列と等比数列
#**いろいろな数列
#*漸化式と数学的帰納法
#**漸化式と数列
#**数学的帰納法
#三角関数と複素数平面([[高等学校数学II/三角関数|数学II「三角関数」]]、[[高等学校数学III/複素数平面|数学C「平面上の曲線と複素数平面」内「複素数平面」]])
#*角の拡張
#*三角関数
#**三角関数
#**三角関数の基本的な性質
#*三角関数の加法定理
#**2倍角の公式、三角関数の合成
#**和↔︎積の公式
#*複素数平面
#**複素数平面
#**ド・モアブルの定理
#図形と方程式([[高等学校数学II/図形と方程式|数学II「図形と方程式」]]、[[高等学校数学C/平面上の曲線|数学C「平面上の曲線と複素数平面」内「平面上の曲線」]])
#*直線と円
#**点と直線
#**円の方程式
#*軌跡と領域
#**軌跡と方程式
#**不等式の表す領域
#*平面上の曲線
#**二次曲線 (直交座標による表示)
#**媒介変数による表示
#**極座標による表示
# 極限([[高等学校数学III/極限|数学III「極限」]])
#*数列の極限
#**数列{<math>{r^n}</math>} の極限
#**無限等比級数の和
#*関数とその極限
#**合成関数と逆関数
#**関数の値の極限
#**関数の連続性
#微分法([[高等学校数学II/微分・積分の考え|数学II「微分・積分の考え」内「微分の考え」]]、[[高等学校数学III/微分法|数学III「微分法」]])
#*導関数
#**微分係数と導関数
#**関数の和・差・積・商の導関数
#**合成関数・逆関数の導関数
#**三角関数・指数関数・対数関数の導関数
#*導関数の応用
#**接線、関数の値の増減、極大・極小、グラフの凹凸、速度・加速度
#積分法([[高等学校数学II/微分・積分の考え|数学II「微分・積分の考え」内「積分の考え」]]、[[高等学校数学III/積分法|数学III「積分法」]])
#*不定積分と定積分
#**積分とその基本的な性質・置換積分法・部分積分法
#*いろいろな関数の積分
#*積分の応用
#**面積、体積、曲線の長さ
#統計的な推測([[高等学校数学B/確率分布と統計的な推測|数学B「統計的な推測」]])
#*確率分布
#**確率変数と確率分布
#**確率変数の平均、分散、標準偏差
#**二項分布
#**正規分布
#*統計的な推測
#**母集団と標本
#**区間推定・仮説検定
|(普通科数学にない発展・拡充事項の例)
:「いろいろな式」において、三次関数における解と係数の関係<ref group="注釈" name="普通科"></ref>について扱う。
:「数列」において、隣接三項間漸化式<ref group="注釈" name="普通科"></ref>や分数漸化式<ref group="注釈" name="普通科"></ref>など、様々なタイプの漸化式を扱う。
:「三角関数と複素数平面」において、和↔︎積の公式<ref group="注釈" name="普通科"></ref>を扱う他、「理数物理」に関連した内容(音の合成など)に触れたり複素関数(一次関数・分数関数に限る)について扱う。
:「図形と方程式」において、2円の共有点の座標や共通接線、共有点を通る曲線等<ref group="注釈" name="普通科"></ref>について扱う他、「理数物理」に関連した内容(二次曲線における反射の法則など)について触れる。
:「極限」において、無限級数で定義される関数(<Math>y = \sum_{n=1}^{\infty} (\frac{1}{x^2+1})^n</Math>など)について扱う。
:「微分法」において、一次と二次の近似式<ref group="注釈" name="普通科"></ref>を扱う他、逆三角関数や双曲線関数・逆双曲線関数などを扱う。
:「積分法」において、微分方程式<ref group="注釈" name="普通科"></ref>や台形公式、シンプソンの公式を扱う。
:「統計的な推測」において、一様分布や<Math>\tau</Math>検定、<Math>\chi^2</Math>検定を扱う。
|-
|'''理数数学特論'''
:より広い数学の分野にわたって事象を数学的に考察し表現する能力を伸ばし、知識や技能などを積極的に活用する態度を育てることをねらいとしている。
:生徒の特性や学校の実態、単位数等に応じて内容を適宜選択して履修させる科目である。
|
#ベクトル([[高等学校数学C/ベクトル|数学C「ベクトル」]])
#*平面上のベクトル
#**ベクトルとその演算
#**ベクトルの内積
#*空間とベクトル
#**空間座標、空間におけるベクトル
#行列とその応用([[高等学校数学C/数学的な表現の工夫#行列による表現とその演算|数学C「数学的な表現の工夫」内「行列による表現とその演算」]]、[[旧課程(-2012年度)高等学校数学C/行列#行列の応用|旧々課程数学C「行列とその応用」内「行列の応用」]])
#*行列による表現とその演算
#**行列による表現
#**行列の和と差、実数倍
#**行列の積
#**逆行列
#*行列の応用
#**連立一次方程式
#**一次変換
#離散グラフ([[高等学校数学C/数学的な表現の工夫#離散グラフによる表現|数学C「数学的な表現の工夫」内「離散グラフによる表現」]])
#**一筆書き
#**最短経路
#**隣接行列
#**経路の数え上げと行列の累乗
#数学と生活や社会との関わり([[高等学校数学A/数学と人間の活動|数学A「数学と人間の活動」]]、[[高等学校数学B/数学と社会生活|数学B「数学と社会生活<ref group="注釈">「回帰分析」は理数数学I「データの分析」の範囲</ref>」]])
#*数量や図形と人間の活動
#**約数と倍数・ユークリッドの互除法・記数法
#**平面や空間における座標・2点間の距離
#*数学と文化
#**数学史
#**ゲーム・パズルの中の数学
#*数学的と社会生活
#**数学を利用した問題解決
#**社会の中の数学
|(普通科数学にない発展・拡充事項の例)
:「ベクトル」において、空間における直線の方程式<ref group="注釈" name="普通科"></ref>や、平面の方程式<ref group="注釈" name="普通科"></ref>を扱う他、それらの位置関係を考察したり、交点・交線の方程式を求めることを扱う。
:「行列」において、普通科の新課程で復活しなかった「行列の応用」の内容を扱う。また、行列がベクトルの拡張であることについて触れる。
:「離散グラフ」において、完全グラフや四色問題、ラムゼーの定理などを扱う。
|}
数学C「数学的な表現方法の工夫」内「データの表現方法の工夫」(パレート図、バブルチャート等を用いたデータの表現)のみ対応する単元が存在しない。
以下、このページでは普通科数学で扱わない発展事項について記載していく。
その他普通科でも扱う内容については上の表から各自参照すること。
<!-- ↑の表に挙げた内容を(普通科数学のページとの兼ね合いも考えながら)どんどん追加していきましょう。 -->
== 理数数学I ==
=== 数と式 ===
==== 真理値表 ====
=== 図形と計量 ===
==== 球面三角法 ====
=== 二次関数 ===
=== 指数関数・対数関数 ===
=== データの分析 ===
=== 場合の数と確率 ===
==== 3つ以上の集合と要素の個数 ====
== 理数数学Ⅱ ==
=== いろいろな式 ===
==== 整式の最大公約数・最小公倍数 ====
※数の最大公約数・最小公倍数については理数数学特論及び[[高等学校数学A/数学と人間の活動#最小公倍数・最大公約数|普通科数学A]]の内容であることに留意。
整式<math>A</math>が整式<math>B</math>で割り切れるとき、<math>B</math>を<math>A</math>の'''約数'''、<math>A</math>を<math>B</math>の'''倍数'''という。<br>
2つ以上の整式の共通の約数を、それらの'''公約数'''、共通の倍数を'''公倍数'''といい、公約数のうち次数の最も高いものを'''最大公約数'''といい、公倍数のうち次数の最も低いものを'''最小公倍数'''という。<br>
(注意)普通、整式の約数、倍数では単なる数の因数を考えない。<br>
<br>
*問題例
**問題
:<math>x^3 -4x^2 +3x\ ,\ 6x^4 -15x^3 -9x^2</math>
の最大公約数と最小公倍数を求めよ。
**解答
:<math>x^3 -4x^2 +3x=x(x^2 -4x +3)=x(x-1)(x-3)</math>
:<math>6x^4 -15x^3 -9x^2=3x^2(2x^2 -5x -3)=3x^2(x-3)(2x+1)</math>
よって、最大公約数は<math>x(x-3)</math>、最小公倍数は<math>x^2(x-1)(x-3)(2x+1)</math><br>
<br>
2つの整式が、数の因数以外に共通の因数を持たないとき、これらの整式は'''互いに素'''であるという。
**例
<math>(x+1)(x-3)</math>と<math>(x+2)(x+3)</math>は互いに素である。<br>
<br>
2つの整式と、その最大公約数、最小公倍数との間の関係について考える。例えば
:<math>A=(x+1)(x+2)\ ,\ B=(x+1)(x-1)</math>
の最大公約数を<math>G</math>、最小公倍数を<math>L</math>とすると
:<math>G=x+1\ ,\ L=(x+1)(x+2)(x-1)</math>
である。
このとき、<math>A\ ,\ B</math>を<math>G</math>で割った商をそれぞれ<math>A'\ ,\ B'</math>とすると
:<math>A=GA'\ ,\ A'=x+2</math>
:<math>B=GB'\ ,\ B'=x-1</math>
となり、<math>A'\ ,\ B'</math>は互いに素である。
:<math>L=(x+1)(x+2)(x-1)=GA'B'</math>
であるから、<math>LG=GA'B'G=(GA')(GB')=AB</math>が成り立つ。
{| style="border:2px solid greenyellow;width:80%" cellspacing=0
|style="background:greenyellow"|'''最大公約数と最小公倍数'''
|-
|style="padding:5px"|
整式<math>A\ ,\ B</math>の最大公約数を<math>G</math>、最小公倍数を<math>L</math>とし、<math>A\ ,\ B</math>を<math>G</math>で割った商をそれぞれ<math>A'\ ,\ B'</math>とすると<br>
1<math>. \qquad A=GA'\ ,\ B=GB'</math><br>
2<math>. \qquad A'\ ,\ B'</math>は互いに素<br>
3<math>. \qquad L=GA'B'\ ,\ LG=AB</math>
|}
=== 数列 ===
==== 階比数列 ====
==== 対数漸化式 ====
=== 三角関数と複素数平面 ===
==== 複素関数 ====
<!-- w=az, w=a/zの型のみ扱う。 -->
=== 図形と方程式 ===
==== 円と円の共有点 ====
*問題例
**問題
2つの円
:<math>x^2 + y^2 =25\ ,\ x^2 + y^2 - 2x - y -15 =0</math>
の共有点の座標を求めよ。
**解答
2つの方程式から、<math>x^2 + y^2</math>を消去して
:<math>2x+y-10=0</math>……(1)
(1)を<math>x^2 + y^2 =25</math>に代入し整理すると
:<math>x^2 -8x +15=0</math>
ゆえに
:<math>x=3\ ,\ 5</math>
(1)から<br>
<math>x=3</math>のとき<math>y=4</math>、<math>x=5</math>のとき<math>y=0</math><br>
よって、求める共有点の座標は
:<math>(3\ ,\ 4)\ ,\ (5\ ,\ 0)</math>
==== 2円の共通接線の方程式 ====
==== 2円の交点を通る曲線 ====
==== 楕円の補助円 ====
==== 二次曲線の準円 ====
==== 二次曲線の回転と標準化 ====
==== 二次曲線の判別式 ====
=== 極限 ===
==== 無限級数で定義される関数 ====
=== 微分法 ===
==== 逆三角関数 ====
sin、cos、tanとその逆数csc、sec、cotの逆関数をまとめて'''逆三角関数'''という。逆三角関数を表記するとき、元の関数に接頭辞'''arc'''をつける。(「arc」は「arcus(弓)」の略。)
三角関数の逆関数をそのまま考えようとすると、一つの入力に対して複数出力されてしまうため、定義域を制限して考える。
逆三角関数の定義域はそれぞれ、
*arcsin:<math>[-\frac{\pi}{2}, \frac{\pi}{2}]</math>
*arccos:<math>[0, \pi]</math>
*arctan:<math>[-\frac{\pi}{2}, \frac{\pi}{2}]</math>
である。
例)<math>\sin \frac{\pi}{6} =\frac{1}{2}</math>より、定義域に注意すると<math>\arcsin \frac{1}{2} = \frac{\pi}{6}</math> である。
各関数のグラフは右図のようになる。
[[ファイル:Mplwp inverse trigonometric functions piaxis.svg|サムネイル|右|代替文=逆三角関数のグラフ|逆三角関数のグラフ]]
'''逆三角関数の微分'''
<math>(\arcsin x)' = \frac{1}{\sqrt{1-x^2}}</math>
<math>(\arccos x)' = - \frac{1}{\sqrt{1-x^2}}</math>
<math>(\arctan x)' = \frac{1}{1+x^2}</math>
*導出
:<math>y=\arcsin x \iff x = \sin y</math>
:<math>\frac{d}{dx} x = \frac{d}{dx} \sin y </math>
:<math>1 = \frac{dy}{dx} \cos y</math>
:<math>\frac{dy}{dx} = \frac{1}{\cos y}</math>
:<math>\cos y = \sqrt{1- \sin^2 y} = \sqrt{1-x^2} (\because -\frac{\pi}{2} \leqq y \leqq \frac{\pi}{2})</math>
:<math>\therefore (\arcsin x)' = \frac{1}{\sqrt{1-x^2}}</math>
arccosも同様。
:<math>y = \arctan x \iff x = \tan y</math>
:<math>\frac{d}{dx} x = \frac{d}{dx} \tan y</math>
:<math>1 = \frac{dy}{dx} \cdot \frac{1}{\cos^2 y}</math>
:<math>\frac{dy}{dx} = \cos^2 y = \frac{1}{1+\tan^2y} = \frac{1}{1+x^2}</math>
==== 双曲線関数 ====
==== 逆双曲線関数 ====
=== 積分法 ===
==== 楕円関数系の積分 ====
==== 微分方程式 ====
未知関数を含む方程式を'''関数方程式'''という。
未知関数の導関数を含む関数方程式を'''微分方程式'''といい、「微分方程式を解く」とは微分方程式を満たす全ての関数を求めることである。
(例)<math>\frac{dy}{dx}=a</math>
両辺をxについて積分すると、
<math>y=ax+C</math>(Cは任意の定数)
これがこの微分方程式の解である。
<math>y'=2x</math>のように、第一次導関数までを含む微分方程式を'''一階微分方程式'''という。<math>y''=6x</math>のように、第二次導関数までを含む微分方程式を'''二階微分方程式'''という。一般に、第n次導関数までを含む微分方程式を'''n階微分方程式'''という。<math>x=y'+3y''</math>のように、導関数の一次結合で表された微分方程式を'''線形微分方程式'''という。線形微分方程式のうち、導関数とは関係ない変数の項の値が0であるものを'''斉次微分方程式'''という。微分方程式のうち、未知関数が一つの変数で表されるものを'''常微分方程式'''という。
; '''微分方程式の解法'''
ここでは、'''変数分離形'''と呼ばれる常微分方程式のみ扱う。
*例題
微分方程式<math>y'x=y</math>を解け。
*解答
与式は<math>\frac{dy}{dx} x = y</math>と書ける。
:①<math>y=0</math>のとき
::<math>\frac{dy}{dx}=0</math>より与式が成立するので、定数関数<math>y=0</math>はこの微分方程式の解である。
:②<math>y \neq 0</math>のとき
::<math>x=0</math>は与式を満たさないので<math>x \neq 0</math>
::'''形式的に'''※変形して<math>\frac{dy}{y} = \frac{dx}{x}</math>('''変数分離''')
::両辺にインテグラルをつけて<math>\int \frac{dy}{y} = \int \frac{dx}{x}</math>
::<math>\therefore \log |y| = \log |x| + C</math>(C は積分定数)
::<math>\therefore |y| = e^{C} |x|</math>
::<math>y = \pm e^{C} x</math>
::<math>A = \pm e^{C}</math> とおくと、
::<math>y = A x </math>(<math>x \neq 0, A \neq 0</math>より<math>y \neq 0</math>を満たす。)
:①、②より、この微分方程式の解は<math>y = kx</math>(k は任意の実数)である。
※<math>\frac{dy}{dx}</math>で一つの記号であり<math>dx</math>と<math>dy</math>に分離する操作は本来認められていないので、「形式的に」という表現を用いた。
*問題
**以下の微分方程式を解け。
**#<math>y' = \sin x</math>
**#<math>y'' = \log x</math>
**#<math>y' = 2xy</math>
**#<math>y'' = 3x^2y</math>
<!-->ここに非線形微分方程式(2次形式の簡単なタイプ)の例題と問題<-->
一般に、微分方程式の解は任意定数を含むものとなる。このような解を'''一般解'''という。微分方程式に含まれる変数に対し何かしらの条件が与えられると、微分方程式の解に含まれる任意定数の値を定めることができる。このような条件を'''初期条件'''といい、定数の定まった解を'''特殊解'''という。
<!-->ここに特殊解を求める問題<-->
微分方程式は、[[物理学]]で広く用いられている。大学以上の物理は微分方程式を解く学問であると言っても過言ではないだろう。
例えば、等加速度直線運動は<math>\frac{d^2x}{dt^2} = a</math>(xは変位、tは時間、aは加速度)という二階線形常微分方程式で表される。
:両辺を一回積分して<math>\frac{dx}{dt} = at + C_1</math>を得る。<math>\frac{dx}{dt}</math>は時刻tにおける速度なので、積分定数<math>C_1</math>は運動を始めた時刻での速度(初速度)<math>v_0</math>を表す。
:両辺をもう一度積分して<math>x = \frac{1}{2}at^2 + v_0 t + C_2</math>を得る。xは変位なので、積分定数<math>C_2</math>は運動を始めた時刻での位置(初期位置)<math>x_0</math>を表す。
これで、積分結果が[[高等学校物理基礎/力学#等加速度直線運動|物理基礎]]で習った等加速度直線運動の公式に一致することを確かめられた。
[[高等学校 物理|高校物理]]の範囲で登場する公式の微分方程式表示の例を以下に示す。
*<math>\frac{d^2x}{dt^2} = -A \omega^2 \sin (\omega t)</math>(円運動・単振動)
*<math>\frac{dQ}{dt} = I</math>(電流の定義)
*<math>V = -N\frac{d \Phi}{dt}</math>(ファラデーの電磁誘導の法則)
*<math>V_L = -L\frac{dI}{dt}</math>(自己誘導)
*<math>V_M = -M\frac{dI}{dt}</math>(相互誘導)
==== 積分方程式 ====
<!-- 定数型、変数型、2元連立、被積分関数が(第3次までの)導関数の式であるもの -->
==== 台形公式 ====
==== シンプソンの公式 ====
===統計的な推測===
====微積分学による連続型確率変数の解析====
連続型確率変数に於ける平均・分散の公式の証明
ド・モアブル=ラプラスの定理
中心極限定理
歪度
尖度
エントロピー
積率母関数
特性関数
キュムラント母関数
確率母関数
====一様分布====
====ポアソン分布====
ポアソン検定
====<math>F</math>分布====
<math>F</math>検定
====<math>t</math>分布====
<math>t</math>検定
====<math>\chi^2</math>分布====
<math>\chi^2</math>検定
====コーシー・ローレンツ分布====
== 理数数学特論 ==
=== ベクトル ===
==== 平面の方程式 ====
1点<math>\mathrm{A}(x_1\ ,\ y_1\ ,\ z_1)</math>を通り、ベクトル<math>\vec{n} = (a\ ,\ b\ ,\ c)</math>に垂直な平面<math>\alpha</math>の方程式を考える。<br>
点<math>\mathrm{P}(x\ ,\ y\ ,\ z)</math>が平面<math>\alpha</math>上にあるための必要十分条件は
<center><math>\vec{AP} =0</math> または <math>\vec{AP} \perp \vec{n}</math></center>
すなわち
:<math>\vec{n} \cdot \vec{AP} =0</math>
となることである。<br>
ここで、<math>\vec{OA} = \vec{a}\ ,\ \vec{OP} = \vec{p}</math>とおくと
:<math>\vec{n} \cdot (\vec{p} - \vec{a})=0</math>
となる。これは、'''平面<math>\alpha</math>のベクトル方程式'''である。<br>
ベクトルを成分で表すと、<math>\vec{p} - \vec{a}=(x-x_1\ ,\ y-y_1\ ,\ z-z_1)</math>であるから
<center><math>a \left(x-x_1 \right) + b \left(y-y_1 \right) + c \left(z-z_1 \right) =0</math></center>
{| style="border:2px solid orange;width:80%" cellspacing=0
|style="background:orange"|'''平面の方程式'''
|-
|style="padding:5px"|
<math>\vec{n} = (a\ ,\ b\ ,\ c) \ne 0</math>とするとき、点<math>\mathrm{A}(x_1\ ,\ y_1 ,\ z_1)</math>を通り、ベクトル<math>\vec{n}</math>に垂直な平面の方程式は
<center><math>a \left(x-x_1 \right) + b \left(y-y_1 \right) + c \left(z-z_1 \right) =0</math></center>
|}
上の定理から、'''平面は<math>\ x\ ,\ y ,\ z\ </math>の1次方程式<math>ax+by+cz+d=0</math>で表される'''ことがわかる。<br>
平面に垂直な直線をその平面の'''法線'''といい、平面に垂直なベクトルをその平面の'''法線ベクトル'''という。
*問題例
**問題
次の平面の方程式を求めよ。<br>
(i) 点<math>\mathrm{A}(1\ ,\ 2\ ,\ 3)</math>を通り、<math>\vec{n} = (4\ ,\ 3\ ,\ -2)</math>を法線ベクトルとする平面<br>
(ii) 2点<math>\mathrm{A}(2\ ,\ 1\ ,\ 4)\ ,\ \mathrm{B}(5\ ,\ 3\ ,\ 5)</math>に対して、点<math>\mathrm{A}</math>を通り直線<math>\mathrm{A} \mathrm{B}</math>を法線とする平面
**解答
(i)
:<math>4(x-1)+3(y-2)-2(z-3)=0</math>
:<math>4x+3y-2z-4=0</math>
(ii) <math>\vec{AB} = (3\ ,\ 2\ ,\ 1)</math>であるから
:<math>3(x-2)+2(y-1)+1(z-4)=0</math>
:<math>3x+2y+z-12=0</math>
特別な平面について考えてみよう。
*問題例
**問題
次の方程式はどのような平面を表しているか。<br>
(i)
:<math>2x+y-6=0</math>
(ii)
:<math>z=-3</math>
**解答
(i) 与えられた方程式を変形すると
:<math>2(x-3)+1(y-0)+0(z-0)=0</math>
よって、'''点<math>(3\ ,\ 0\ ,\ 0)</math>を通り、ベクトル<math>(2\ ,\ 1\ ,\ 0)</math>に垂直な平面'''を表す。<br>
(ii) 与えられた方程式を変形すると
:<math>0(x-0)+0(y-0)+1(z+3)=0</math>
よって、'''点<math>(0\ ,\ 0\ ,\ -3)</math>を通り、z軸に垂直な平面(xy平面に平行な平面)'''を表す。
==== 点と平面の距離 ====
点<math>\mathrm{P}(x_1\ ,\ y_1\ ,\ z_1)</math>と平面<math>\alpha</math> <math>ax+by+cz+d=0</math>との距離<math>h</math>を求めよう。<br>
点<math>\mathrm{P}</math>から平面<math>\alpha</math>へ下ろした垂線の足を<math>\mathrm{H}</math>とし、<math>\alpha</math>上に1点<math>\mathrm{A}(x_2\ ,\ y_2\ ,\ z_2)</math>をとる。<br>
また、<math>\alpha</math>の法線ベクトル<math>\vec{n} = (a\ ,\ b\ ,\ c)</math>と<math>\vec{AP}</math>のなす角を<math>\theta</math>とすると
:<math>h = |\vec{AP}|\ |\cos \theta| = |\vec{AP}|\ \frac{|\vec{n} \cdot \vec{AP}|}{|\vec{n}|\ |\vec{AP}|} = \frac{|\vec{n} \cdot \vec{AP}|}{\sqrt{a^2+b^2+c^2}}</math>
ここで
:<math>\vec{n} \cdot \vec{AP} = a \left(x_1 -x_2 \right) + b \left(y_1 -y_2 \right) + c \left(z_1 -z_2 \right) = ax_1 + by_1 +cz_1 - \left(ax_2 +by_2 +cz_2 \right)</math>
点<math>\mathrm{A}</math>は<math>\alpha</math>上にあるから
:<math>ax_2 +by_2 +cz_2 =-d</math>
よって
:<math>\vec{n} \cdot \vec{AP} = ax_1 + by_1 +cz_1 +d</math>
{| style="border:2px solid orange;width:80%" cellspacing=0
|style="background:orange"|'''点と平面の距離'''
|-
|style="padding:5px"|
点<math>(x_1\ ,\ y_1\ ,\ z_1)</math>と平面<math>ax+by+cz+d=0</math>との距離<math>h</math>は
<center><math>h = \frac{|ax_1 + by_1 +cz_1 +d|}{\sqrt{a^2+b^2+c^2}}</math></center>
|}
*問題例
**問題
点<math>(-3\ ,\ 1\ ,\ 2)</math>と平面<math>2x+3y-6z+1=0</math>の距離を求めよ。
**解答
:<math>h=\frac{|2 \times (-3) + 3 \times 1 + (-6) \times 2 +1|}{\sqrt{2^2+3^2+(-6)^2}}=\frac{|-14|}{7}=2</math>
==== 直線の方程式 ====
定点<math>\mathrm{A}(x_1\ ,\ y_1\ ,\ z_1)</math>を通り、<math>\vec{0}</math>でないベクトル<math>\vec{d} = (a\ ,\ b\ ,\ c)</math>に平行な直線<math>g</math>の方程式を考える。<br>
点<math>\mathrm{P}(x\ ,\ y\ ,\ z)</math>が直線<math>g</math>上にあるための必要十分条件は、<math>\mathrm{P}</math>に対応して
<center><math>\vec{AP} = t \vec{d}</math></center>
となる実数<math>t</math>が定まることである。
:<math>\vec{OP} = \vec{OA} + \vec{AP}</math>
であるから、<math>\vec{p} = \vec{OP}\ ,\ \vec{a} = \vec{OA}</math>とおくと
:<math>\vec{p} = \vec{a} + t \vec{d}</math>
となる。これを、'''直線<math>g</math>のベクトル方程式'''という。<br>
このベクトル方程式を成分で表すと
:<math>\vec{p} =(x\ ,\ y\ ,\ z)\ ,\ \vec{a}=(x_1\ ,\ y_1\ ,\ z_1)\ ,\ \vec{d}=(a\ ,\ b\ ,\ c)</math>
であるから
<center><math>\left(x\ ,\ y\ ,\ z \right) = \left(x_1 +at\ ,\ y_1 +bt\ ,\ z_1 +ct \right)</math></center>
よって
<center><math>x = x_1 +at\ ,\ y = y_1 +bt\ ,\ z = z_1 +ct</math> ……(1)</center>
(1)から<math>t</math>を消去すると、次のことがいえる。
{| style="border:2px solid orange;width:80%" cellspacing=0
|style="background:orange"|'''直線の方程式(1)'''
|-
|style="padding:5px"|
<math>abc \ne 0</math>であるとき、定点<math>\mathrm{A}(x_1\ ,\ y_1 ,\ z_1)</math>を通り、ベクトル<math>\vec{d} = (a\ ,\ b\ ,\ c)</math>に平行な直線の方程式は
<center><math>\frac{x-x_1}{a} = \frac{y-y_1}{b} = \frac{z-z_1}{c}</math></center>
|}
直線<math>g</math>に平行なベクトル<math>\vec{d} = (a\ ,\ b\ ,\ c)</math>を直線<math>g</math>の'''方向ベクトル'''という。また、(1)を直線<math>g</math>の'''媒介変数表示'''という。
*問題例
**問題
点<math>\mathrm{A} (1\ ,\ -2\ ,\ 3)</math>を通り、ベクトル<math>\vec{d} = (2\ ,\ -2\ ,\ 3)</math>に平行な直線の方程式を求めよ。
**解答
:<math>\frac{x-1}{2} = \frac{y-(-2)}{-2} = \frac{z-3}{3}</math>
整理して
:<math>\frac{x-1}{2} = \frac{y+2}{-2} = \frac{z-3}{3}</math>
2点<math>\mathrm{A}(x_1\ ,\ y_1\ ,\ z_1)\ ,\ \mathrm{B}(x_2\ ,\ y_2\ ,\ z_2)</math>を通る直線は、ベクトル<math>\vec{AB}=(x_2-x_1\ ,\ y_2-y_1\ ,\ z_2-z_1)</math>に平行であるから、次のことがいえる。
{| style="border:2px solid orange;width:80%" cellspacing=0
|style="background:orange"|'''直線の方程式(2)'''
|-
|style="padding:5px"|
2点<math>\mathrm{A}(x_1\ ,\ y_1\ ,\ z_1)\ ,\ \mathrm{B}(x_2\ ,\ y_2\ ,\ z_2)</math>を通る直線の方程式は
<center><math>\frac{x-x_1}{x_2-x_1} = \frac{y-y_1}{y_2-y_1} = \frac{z-z_1}{z_2-z_1}</math></center>
|}
*問題例
**問題
2点<math>\mathrm{A}(1\ ,\ 2\ ,\ 3)\ ,\ \mathrm{B}(2\ ,\ -1\ ,\ 5)</math>を通る直線の方程式を求めよ。
**解答
:<math>\frac{x-1}{2-1} = \frac{y-2}{-1-2} = \frac{z-3}{5-3}</math>
整理して
:<math>x-1 = \frac{y-2}{-3} = \frac{z-3}{2}</math>
特殊な直線の方程式について考えてみよう。
:<math>x = x_1 +at\ ,\ y = y_1 +bt\ ,\ z = z_1 +ct</math> ……(1)
で、<math>abc=0</math>であるときについて考える。
例えば、<math>a \ne 0\ ,\ b \ne 0\ ,\ c=0</math>であるとき
:<math>\frac{x-x_1}{a} = \frac{y-y_1}{b}\ ,\ z = z_1</math>
となる。これはxy平面に平行な直線<math>g</math>を表している。<br>
また、<math>a \ne 0\ ,\ b=c=0</math>であるとき
:<math>y=y_1\ ,\ z = z_1</math>
となる。これはx軸に平行な直線<math>g</math>を表している。<br>
*問題例
**問題
次の方程式はどのような直線を表すか。<br>
(i)
:<math>x=2\ ,\ y-2 = \frac{z-3}{-1}</math>
(ii)
:<math>x=-1\ ,\ y=4</math>
**解答
(i)<br>
与えられた方程式から、<math>y=2</math>とおくと<math>z=3</math>となる。<br>
したがって、この直線は点<math>\mathrm{A}(2\ ,\ 2\ ,\ 3)</math>を通る。
方向ベクトルは、<math>\vec{d} = (0\ ,\ 1\ ,\ -1)</math>であるから、yz平面に平行である。<br>
よって、この方程式は'''点<math>\mathrm{A}(2\ ,\ 2\ ,\ 3)</math>を通り、<math>\vec{d} = (0\ ,\ 1\ ,\ -1)</math>に平行な直線(yz平面に平行な直線)'''を表す。<br>
(ii)<br>
この直線は2平面<math>x=-1\ ,\ y=4</math>の交線である。<br>
よって、この方程式は'''点<math>\mathrm{A}(-1\ ,\ 4\ ,\ 0)</math>を通り、z軸に平行な直線'''を表す。<br>
=== 行列とその応用 ===
==== 4次以上の正方行列における行列式 ====
=== 離散グラフ ===
==== 完全グラフ ====
==== 四色問題 ====
==== ラムゼーの定理 ====
=== 数学と生活や社会との関わり ===
====オイラーのトーシェント関数====
== 脚注 ==
{{reflist}}
<references group="注釈"/>
[[カテゴリ:高等学校数学|こうとうかつこうりすうすうかく]]
t2oba44khf8fzaovd6jabkruhlqzh23
民法第388条
0
4308
299649
299629
2026-05-19T12:11:49Z
Tomzo
248
299649
wikitext
text/x-wiki
[[法学]]>[[民事法]]>[[民法]]>[[コンメンタール民法]]>[[第2編 物権 (コンメンタール民法)|第2編 物権]]
== 条文 ==
(法定地上権)
;第388条
: 土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属する場合において、その土地又は建物につき抵当権が設定され、その実行により所有者を異にするに至ったときは、その建物について、地上権が設定されたものとみなす。この場合において、地代は、当事者の請求により、裁判所が定める。
== 解説 ==
{{wikipedia|法定地上権}}
#[[抵当権]]の実行により法律上の権限を失った建物の存続を保護するための制度である。本条は公益目的の強行規定であり、たとえ当事者間で法定地上権の成立を排除する特約があっても、その特約は無効である。
#土地と建物の所有者が同一であるのであれば、抵当権設定時において建物の保存登記がされてなかったとしても法定地上権は成立する。
=== 要件 ===
#抵当権設定時に土地上に建物が存在すること
#抵当権設定時に土地と建物の所有者が同一であること
#抵当権の実行により、土地と建物の所有者が異なるに至ったこと
== 関連条文 ==
*[[民法第265条]](地上権の内容)
*[[民法第268条]](地上権の存続期間)
*[[民事執行法第81条]](法定地上権)
== 判例 ==
#<span id="最判昭和29年12月23日"/>[https://www.courts.go.jp/hanrei/56056/detail2/index.html 建物収去、土地明渡請求](最高裁判決 昭和29年12月23日)[[民法第249条]]
#;土地共有者の一人だけについて民法第388条本文の事由が生じた場合と法定地上権の成否
#:土地共有者の一人だけについて民法第388条本文の事由が生じたとしても、これがため他の共有者の意思如何に拘らずそのものの持分までが無視されるべきいわれはなく、当該共有土地については、なんら地上権は発生しない。
#[https://www.courts.go.jp/hanrei/54897/detail2/index.html 建物収去土地明渡請求](最高裁判決 昭和36年02月10日)
#;法定地上権の成立しない事例
#:土地に対する抵当権設定の当時、当該建物は未だ完成しておらず、しかも原判決認定の事情に照らし<u>更地としての評価に基き抵当権を設定したことが明らかであるとき</u>は、たとえ抵当権者において右建物の築造をあらかじめ承認した事実があつても、民法第388条の適用を認むべきではない。
#[https://www.courts.go.jp/hanrei/55115/detail2/index.html 建物収去土地明渡請求](最高裁判決 昭和44年02月14日)
#;抵当権設定当時土地および建物の所有者が異なるがその抵当権の実行による競落の際これが同一人の所有に帰していた場合と民法388条の適用
#:抵当権設定当時土地および建物の所有者が異なる場合においては、その土地または建物に対する抵当権の実行による競落の際、右土地およぴ建物が同一人の所有に帰していても、民法388条の規定は適用または準用されない。
#[https://www.courts.go.jp/hanrei/51887/detail2/index.html 貸金請求](最高裁判決 昭和44年11月04日) [[民法第249条]],[[民法第555条]],[[土地区画整理法第99条]],[[土地区画整理法第85条]],[[土地区画整理法第98条]]
##'''仮換地上の建物の競落と法定地上権'''
##:従前の土地の所有者の所有する仮換地上の建物が抵当権の実行により競落されたときは、従前の土地について法定地上権が成立し、競落人は、右法定地上権に基づいて仮換地の使用収益が許されるものと解するのが相当である。
##'''仮換地の一部分につき売買契約を締結した場合と仮換地の使用収益権'''
##:土地の売買契約が仮換地につきその一部分を特定して締結され従前の土地そのものにつき買受部分を特定してされたものでないときは、特段の事情のないかぎり、仮換地全体の地積に対する当該特定部分の地積の比率に応じた従前の土地の共有持分について売買契約が締結され、買主と売主とは従前の土地の共有者となるとともに、仮換地上に準共有関係として従前の土地の持分の割合に応じた使用収益権を取得するものと解するのが相当である。
##'''従前の土地の共有者の一人の所有する仮換地上建物が競落された場合に法定地上権の成立が認められた事例'''
##:前項の場合において、売主と買主との協議により、仮換地上の買受部分を買主の所有とする旨の合意が成立していたときは、買主が買受土地上に建築所有する建物につき設定された抵当権の実行により、右建物の競落人のため従前の土地について法定地上権が成立し、競落人は右法定地上権に基づいて仮換地上の建物敷地を占有しうべき権原を取得するものと解するのが相当である。
##'''仮換地上の建物の競落により法定地上権が成立した場合において土地区画整理事業施行者から使用収益部分の指定を受けない間における競落人の建物所有による敷地の占有と不法占有の成否'''
##:仮換地上の建物が競落されたことにより従前の土地に法定地上権が成立したときは、右法定地上権について土地区画整理事業施行者から仮換地上に使用収益すべき部分の指定を受けない間においても、競落人の建物所有による敷地の占有は、抵当権設定者たる仮換地使用収益権者との関係では不法占有とならない。
#[https://www.courts.go.jp/hanrei/52063/detail2/index.html 建物収去土地明渡請求](最高裁判決 昭和46年12月21日)
#;建物の共有者の一人がその敷地を所有する場合と法定地上権の成否
#:建物の共有者の一人がその敷地を所有する場合において、右土地に設定された抵当権が実行され、第三者がこれを競落したときは、右土地につき、建物共有者全員のために、法定地上権が成立するものと解すべきである。
#[https://www.courts.go.jp/hanrei/62850/detail2/index.html 建物収去土地明渡等請求](最高裁判決 昭和47年11月02日)
##'''土地に対する第一順位抵当権の設定後第二順位抵当権の設定前に地上に建物が建築された場合における第二順位抵当権の実行と法定地上権の成否'''
##:土地に対する第一順位抵当権の設定当時その地上に建物がなく、第二順位抵当権の設定当時には建物が建築されていた場合に、第二順位抵当権者の申立により土地が競売されたときでも、右建物のため法定地上権が成立するものではない
##'''更地に対する抵当権者が建物の建築を承認した場合と法定地上権の成否'''
##:土地の抵当権設定当時その土地が更地であつた場合には、その後に地上に建物が建築されることを抵当権者が承認した事実があつても、土地の競売により、右建物のため法定地上権が成立するものではない。
#[https://www.courts.go.jp/hanrei/52024/detail2/index.html 建物収去土地明渡等請求および建物退去土地明渡等反訴請求](最高裁判決 昭和48年09月18日) [[民法第177条]]
#;土地およびその地上建物の所有者が建物の所有権移転登記を経由しないまま土地につき抵当権を設定した場合と法定地上権の成否
#:土地およびその地上建物の所有者が建物の取得原因である譲受につき所有権移転登記を経由しないまま土地に対し抵当権を設定した場合であつても、法定地上権の成立を妨げない。
#[https://www.courts.go.jp/hanrei/53298/detail2/index.html 建物収去、土地明渡、法定地上権確認等](最高裁判決 昭和52年10月11日)
#;土地及びその地上の非堅固建物の所有者が土地につき抵当権を設定したのち地上建物を取り壊して堅固建物を建築した場合に堅固建物の所有を目的とする法定地上権が成立するとされた事例
#:土地及びその地上の非堅固建物の所有者が土地につき抵当権を設定したのち地上建物を取り壊して堅固建物を建築した場合において、抵当権者が、抵当権設定当時、近い将来地上建物が取り壊され堅固建物が建築されることを予定して右土地の担保価値を算定したものであるときは、堅固建物の所有を目的とする法定地上権の成立を妨げない。
#[https://www.courts.go.jp/hanrei/53328/detail2/index.html 建物収去等土地明渡](最高裁判決 昭和53年09月29日) [[民法第177条]]
#;土地及びその地上建物の所有者が土地につき所有権移転登記を経由しないまま建物に抵当権を設定した場合と法定地上権の成否
#:土地及びその地上建物の所有者が建物につき抵当権を設定したときは、土地の所有権移転登記を経由していなくても、法定地上権の成立を妨げない。
#[https://www.courts.go.jp/hanrei/52740/detail2/index.html 建物収去土地明渡](最高裁判決 平成2年01月22日)
#;土地を目的とする一番抵当権設定当時土地と地上建物の所有者が異なつていたが後順位抵当権設定当時同一人の所有に帰していた場合と法定地上権の成否
#:土地を目的とする一番抵当権設定当時土地と地上建物の所有者が異なり、法定地上権成立の要件が充足されていなかつた場合には、土地と建物が同一人の所有に帰した後に後順位抵当権が設定されたとしても、抵当権の実行により一番抵当権が消滅するときは、法定地上権は成立しない。
#<span id="最判平成6年12月20日"/>[https://www.courts.go.jp/hanrei/52468/detail2/index.html 建物収去土地明渡等](最高裁判決 平成6年12月20日)
#;地上建物の共有者の一人にすぎない土地共有者の債務を担保するため土地共有者の全員が各持分に共同して抵当権を設定した場合に法定地上権が成立しないとされた事例
#:地上建物の共有者九人のうちの一人である土地共有者甲の債務を担保するため土地共有者の全員が共同して各持分に抵当権を設定し、かつ、甲以外の土地共有者らが甲の妻子である場合に、右抵当権の実行により甲だけについて民法388条本文の事由が生じたとしても、甲以外の土地共有者らが法定地上権の発生をあらかじめ容認していたとみることができる客観的、外形的事実があるとはいえず、共有土地について法定地上権は成立しない。
#[https://www.courts.go.jp/hanrei/52576/detail2/index.html 短期賃貸借解除等](最高裁判決 平成9年02月14日)
#;所有者が土地及び地上建物に共同抵当権を設定した後に右建物が取り壊されて新建物が建築された場合の法定地上権の成否
#:所有者が土地及び地上建物に共同抵当権を設定した後右建物が取り壊され、右土地上に新たに建物が建築された場合には、新建物の所有者が土地の所有者と同一であり、かつ、新建物が建築された時点での土地の抵当権者が新建物について土地の抵当権と同順位の共同抵当権の設定を受けたなどの特段の事情のない限り、新建物のために法定地上権は成立しない。
#[https://www.courts.go.jp/hanrei/34908/detail2/index.html 建物収去土地明渡請求事件](最高裁判決 平成19年07月06日)
#;土地を目的とする先順位の甲抵当権が消滅した後に後順位の乙抵当権が実行された場合において,土地と地上建物が甲抵当権の設定時には同一の所有者に属していなかったが乙抵当権の設定時には同一の所有者に属していたときの法定地上権の成否
#:土地を目的とする先順位の甲抵当権と後順位の乙抵当権が設定された後,甲抵当権が設定契約の解除により消滅し,その後,乙抵当権の実行により土地と地上建物の所有者を異にするに至った場合において,当該土地と建物が,甲抵当権の設定時には同一の所有者に属していなかったとしても,乙抵当権の設定時に同一の所有者に属していたときは,法定地上権が成立する。
----
{{前後
|[[コンメンタール民法|民法]]
|[[第2編 物権 (コンメンタール民法)|第2編 物権]]<br>
[[第2編 物権 (コンメンタール民法)#10|第10章 抵当権]]<br>
[[第2編 物権 (コンメンタール民法)#10-2|第2節 抵当権の効力]]
|[[民法第387条]]<br>(抵当権者の同意の登記がある場合の賃貸借の対抗力)
|[[民法第389条]]<br>(抵当地の上の建物の競売)
}}
{{stub|law}}
[[category:民法|388]]
e7veht2iuneu9zn7emeya0f4821vl1e
会社法第577条
0
6384
299677
281582
2026-05-20T06:17:55Z
Tomzo
248
299677
wikitext
text/x-wiki
[[法学]]>[[民事法]]>[[商法]]>[[コンメンタール会社法]]>[[第3編 持分会社 (コンメンタール会社法)]]
==条文==
【定款の記載又は記載事項・任意的記載事項】
;第577条
: [[会社法第576条|前条]]に規定するもののほか、[[持分会社]]の[[定款]]には、この法律の規定により定款の定めがなければその効力を生じない事項及びその他の事項でこの法律の規定に違反しないものを記載し、又は記録することができる。
==解説==
[[会社法第576条|前条]]において、定款に必須事項を規定するが、その他、以下の事項を規定することができる。
#定款の定めがなければその効力を生じない事項
##持分の譲渡に関する条件([[会社法第585条|第585条]])
##:原則、他の社員全員等の承認を要するが緩和することができる。
##社員の業務執行の方法([[会社法第590条|第590条]])
##*持分会社の社員は業務の執行をするが、一部の社員の業務執行を定款で制限できる(出資のみの有限責任社員を創出できる)。
##*社員複数時の取り扱い - 原則社員の過半数によるが、これを破れる。
##業務執行社員の選出、選解任の方法、監督の方法([[会社法第591条|第591条]]、[[会社法第592条|第592条]])
##業務執行社員による事業報告([[会社法第593条|第593条]])
##業務執行社員の競業・利益相反取引の禁止の解除([[会社法第594条|第594条]]、[[会社法第595条|第595条]])
##代表社員の選出([[会社法第599条|第599条]])
##社員の退社の条件([[会社法第606条|第606条]]、[[会社法第607条|第607条]])
##社員の地位の一般承継([[会社法第608条|第608条]])
##計算書類閲覧の制限([[会社法第618条|第618条]])
##定款変更における総同意の緩和([[会社法第637条|第637条]])
#その他の事項でこの法律の規定に違反しないもの
##利益等の分配に関するもの
##*利益の配当を請求する方法その他の利益の配当に関する事項([[会社法第621条|第621条]])
##*利益又は損失の一方についてのみ分配の割合についての定め([[会社法第622条|第622条]])
##*出資の払戻しを請求する方法その他の出資の払戻しに関する事項([[会社法第624条|第624条]])
##*残余財産の分配([[会社法第666条|第666条]])
##:以上に関する取り決めが無い場合、「損益分配の割合について定款の定めがないときは、その割合は、各社員の出資の価額に応じて定める。([[会社法第622条|第622条第1項]])」に見られるように、出資を基準に社員分配することが公平の理念に適うが、全てが有限責任社員である合同会社には適用できても、合名会社・合資会社においては、無限責任会社に対する定量的な権利と責任を曖昧にすることは適当では無いので、定款に明記すべき事項となっている。
##その他
##*会社の存続期間・解散事由([[会社法第641条|第641条]])
==関連条文==
----
{{前後
|[[コンメンタール会社法|会社法]]
|[[第3編 持分会社 (コンメンタール会社法)|第3編 持分会社]]<br>
[[第3編 持分会社 (コンメンタール会社法)#1|第1章 設立]]<br>
|[[会社法第576条]]<br>(定款の記載又は記載事項)
|[[会社法第578条]]<br>(合同会社の設立時の出資の履行)
}}
{{stub|law}}
[[category:会社法|577]]
p8mfu8cgih45xa8g4qk9erxixn0nr4p
299678
299677
2026-05-20T07:09:06Z
Tomzo
248
299678
wikitext
text/x-wiki
[[法学]]>[[民事法]]>[[商法]]>[[コンメンタール会社法]]>[[第3編 持分会社 (コンメンタール会社法)]]
==条文==
【定款の記載又は記載事項・任意的記載事項】
;第577条
: [[会社法第576条|前条]]に規定するもののほか、[[持分会社]]の[[定款]]には、この法律の規定により定款の定めがなければその効力を生じない事項及びその他の事項でこの法律の規定に違反しないものを記載し、又は記録することができる。
==解説==
[[会社法第576条|前条]]において、定款に必須事項を規定するが、その他、以下の事項を規定することができる。
#定款の定めがなければその効力を生じない事項
##持分の譲渡に関する条件([[会社法第585条|第585条]])
##:原則、他の社員全員等の承認を要するが緩和することができる。
##社員の業務執行の方法([[会社法第590条|第590条]])
##*持分会社の社員は業務の執行をするが、一部の社員の業務執行を定款で制限できる(出資のみの有限責任社員を創出できる)。
##*社員複数時の取り扱い - 原則社員の過半数によるが、これを破ることができる。
##業務執行社員の選出、選解任の方法、監督の方法([[会社法第591条|第591条]]、[[会社法第592条|第592条]])
##業務執行社員による事業報告([[会社法第593条|第593条]])
##業務執行社員の競業・利益相反取引の禁止の解除([[会社法第594条|第594条]]、[[会社法第595条|第595条]])
##代表社員の選出([[会社法第599条|第599条]])
##社員の退社の条件([[会社法第606条|第606条]]、[[会社法第607条|第607条]])
##社員の地位の一般承継([[会社法第608条|第608条]])
##計算書類閲覧の制限([[会社法第618条|第618条]])
##定款変更における総同意の緩和([[会社法第637条|第637条]])
#その他の事項でこの法律の規定に違反しないもの
##利益等の分配に関するもの
##*利益の配当を請求する方法その他の利益の配当に関する事項([[会社法第621条|第621条]])
##*利益又は損失の一方についてのみ分配の割合についての定め([[会社法第622条|第622条]])
##*出資の払戻しを請求する方法その他の出資の払戻しに関する事項([[会社法第624条|第624条]])
##*残余財産の分配([[会社法第666条|第666条]])
##:以上に関する取り決めが無い場合、「損益分配の割合について定款の定めがないときは、その割合は、各社員の出資の価額に応じて定める。([[会社法第622条|第622条第1項]])」に見られるように、出資を基準に社員分配することが公平の理念に適うが、全てが有限責任社員である合同会社には適用できても、合名会社・合資会社においては、無限責任会社に対する定量的な権利と責任を曖昧にすることは適当では無いので、定款に明記すべき事項(慣習)となっている。
##:この場合、定款の記載例として以下のものが挙げられる。
##:*損益分配の比率を記載するパターン
##:*:「当会社の損益分配の比率は、出資の価額に関わらず、次のとおりとする。
##:*::社員A(無限責任・労務出資):50%
##:*::社員B(有限責任・金銭出資):50%」
##:*労務や信用をあらかじめ「いくら相当の価値があるか」社員間で合意し、「評価(金銭換算)」して定款に記載するパターン
##:*:「社員Aの出資の目的は労務とし、その評価額は金500万円とする。」
##その他
##*会社の存続期間・解散事由([[会社法第641条|第641条]])
==関連条文==
----
{{前後
|[[コンメンタール会社法|会社法]]
|[[第3編 持分会社 (コンメンタール会社法)|第3編 持分会社]]<br>
[[第3編 持分会社 (コンメンタール会社法)#1|第1章 設立]]<br>
|[[会社法第576条]]<br>(定款の記載又は記載事項)
|[[会社法第578条]]<br>(合同会社の設立時の出資の履行)
}}
{{stub|law}}
[[category:会社法|577]]
qwqbioo4rbuuntwny23d0ihlxu0qpok
会社法施行規則第36条
0
11439
299679
268702
2026-05-20T07:43:13Z
Tomzo
248
299679
wikitext
text/x-wiki
[[法学]]>[[民事法]]>[[商法]]>[[会社法]]>[[会社法施行規則]]
==条文==
(市場価格のある単元未満株式の買取りの価格)
;第36条
: [[会社法第193条|法第193条]]第1項第1号に規定する法務省令で定める方法は、次に掲げる額のうちいずれか高い額をもって同号に規定する株式の価格とする方法とする。
:#[[会社法第192条|法第192条]]第1項の規定による請求の日(以下この条において「請求日」という。)における当該株式を取引する市場における最終の価格(当該請求日に売買取引がない場合又は当該請求日が当該市場の休業日に当たる場合にあっては、その後最初になされた売買取引の成立価格)
:#請求日において当該株式が[[公開買付け]]等の対象であるときは、当該請求日における当該公開買付け等に係る契約における当該株式の価格
==解説==
[[上場株式]]における、単元未満株式の単元未満株主による買取請求([[会社法第192条|法第192条]])の買取価格の及びそれを準用する売渡請求([[会社法第194条|法第194条]])の売渡価格の決定方法について定める。
#通常の取引時においては、請求日における市場の終値(請求日に取引がない場合は、その後最初についた取引価格)
#当該株式が公開買付けの対象である場合は、買付の価格
による。
==関連条文==
----
{{前後
|[[会社法施行規則]]
|[[会社法施行規則#2|第2編 株式会社]]<br>
[[会社法施行規則#2-2|第2章 株式]]<br>
[[会社法施行規則#2-2-4|第4節 単元株式数]]<br>
|[[会社法施行規則第35条]]<br>(単元未満株式についての権利)
|[[会社法施行規則第37条]]<br>(市場価格のある単元未満株式の売渡しの価格)
}}
{{stub|law}}
[[category:会社法施行規則|036]]
hv4ruziz0lbh07c9k20haa1y2lqniws
高校物理 熱力学
0
18234
299687
281298
2026-05-20T10:03:33Z
Nermer314
62933
299687
wikitext
text/x-wiki
{{pathnav|高等学校の学習|高等学校理科|高等学校物理|高等学校 物理|pagename=熱力学|frame=1|small=1}}
== 気体 ==
=== ボイルの法則 ===
[[File:Boyle's law final.gif]](参考画像)
シリンダーの中に入れられた気体を、温度を一定に保ちながらピストンを押して圧力をn倍にすると、気体の体積は<math>\frac 1 n</math> 倍になる。このことから、温度一定のとき、気体の圧力<math>p</math>と体積<math>V</math>は反比例する:
:<math>pV = k</math> (k:定数)
また、変化前の気体の圧力と体積を<math>p_1 </math>, <math>V_1</math>、変化後の圧力と体積を<math>p_2 </math>, <math>V_2</math> とすると、
:<math>p_1 V_1 = p_2V_2</math>
と表現できる。
=== シャルルの法則 ===
[[File:Charles and Gay-Lussac's Law animated.gif]](参考画像)
気体を圧力を一定に保ちながら気体の温度を変化させると、気体の体積 <math>V</math> と絶対温度 <math>T</math> は比例する:
:<math>\frac V T = k</math> (k:定数)
また、変化前の気体の圧力と絶対温度を<math>V_1 </math>, <math>T_1</math>、変化後の圧力と体積を<math>V_2 </math>, <math>T_2</math> とすると、
:<math>\frac{V_1}{T_1} = \frac{V_2}{T_2}</math>
と表現できる。
=== ボイル・シャルルの法則 ===
ボイルの法則から、気体の体積 <math>V</math> と圧力 <math>p</math> は反比例し、シャルルの法則から、気体の体積 <math>V</math> と絶対温度 <math>T</math> は比例する。これらより、気体の体積 <math>V</math> は絶対温度 <math>T</math> に比例し圧力 <math>p</math> に反比例する:
:<math>V = k \frac T p</math> より <math>\frac {pV}{T} = k</math> (k:定数)
=== 理想気体 ===
ボイル・シャルルの法則から、圧力を上げたり、温度を下げていくと気体の体積は 0 に近づくはずである。しかし、現実には気体分子の体積や、分子間力が存在するため、ボイル・シャルルの法則からは外れることになる。ボイル・シャルルの法則が厳密に成り立つ仮想的な気体を'''理想気体'''といい、現実に存在する気体を'''実在気体'''という。理想気体では、気体分子の体積と分子間力が無視できる。
高音低圧では、実在気体は理想気体として近似できることが知られている。また、分子量が小さくて無極性分子である気体も分子間力の影響が小さいので理想気体として近似できる。
=== 理想気体の状態方程式 ===
1 mol の理想気体について、ボイル・シャルルの法則の定数 <math>R = \frac {pV}{T}</math> の値は、<math>R = 8.31 \,\mathrm{J/(mol \cdot K)} = 8.31 \times 10^3 \,\mathrm{Pa\cdot L/(mol \cdot K)}</math> <ref>単位に注意。<math>\mathrm{J=N\cdot m = Pa \cdot m^3 = 10^3 \, Pa \cdot L}</math></ref>であり、<math>R</math> を'''気体定数'''という。
理想気体の物質量が <math>n</math> の場合、気体の体積は物質量に比例するため、 <math>R = \frac{p}{T}\frac{V}{n}</math> より <math>pV = nRT</math> を得る。これを理想気体の状態方程式という。
=== 実在気体の状態方程式===
<math>Z = \frac{pV}{nRT}</math>を'''圧縮因子'''という。理想気体においては常にZ=1である。
圧縮因子の値が1からかけ離れているほど、その気体は理想気体からかけ離れている。0≦Z<1ならば分子間力、z>1ならば分子自体の体積の影響が大きい。
理想気体の状態方程式に補正を加えて実在気体の実際の振る舞いに近づける方法はいくつかあるが、ここでは以下のような方法を紹介する。
実在気体の圧力を<math>p_r</math>、体積を<math>V_r</math>とする。
分子間力が働くと、分子が器壁に衝突する際に近くの分子に引き寄せられて圧力が低くなる。
下記の気体分子運動論の結果から考察して、衝突の勢いの減少量・衝突頻度ともに<math>\frac{n}{V}</math>となるので、気体の分子間力によって壁が受ける圧力の減少量は<math>\frac{n^2}{V^2_r}</math>に比例する。比例定数をaとおくと、分子間力を考慮して補正した圧力は、<math>p_r + a\frac{n^2}{V^2_r}</math>である。
気体の体積とは、気体分子が自由に動くことのできる三次元領域の体積のことである。分子自身の体積によりこの体積の値は減少する。このとき、減少した体積を'''排除体積'''という。1molあたりの排除体積をbとすると、分子自身の体積を考慮して補正した体積は、<math>V_r - nb</math>となる。
これらを理想気体の状態方程式に代入すると、<math>(p_r + a \frac{n^2}{V^2_r}) (V_r - nb) = nRT</math>となる。この状態方程式を'''ファンデルワールスの状態方程式'''、これに従う気体を'''ファンデルワールス気体'''、定数a, bを'''ファンデルワールス定数'''という。ファンデルワールス定数は気体の種類にのみ依存する。
ファンデルワールスの状態方程式は、補正が簡単かつ応用範囲が広い。しかし、低温領域において、ファンデルワールス気体の振る舞いは理想気体とも実在気体ともずれてしまう。振る舞いがよく近似できる最低温度を'''臨界温度'''という。
現在では、更に修正された形の状態方程式が提案されている。
== 気体分子運動論 ==
気体の圧力という巨視的な状態について、気体分子の運動といった微視的な視点から考察してみよう。
=== 容器に衝突した分子の運動量変化 ===
[[File:立方体容器中の気体分子.svg|thumb|300px|立方体容器中の気体分子]]
圧力の仕組みを分子1個1個から考える。気体分子は質点とする。
一辺の長さLの立方体の容器に、気体が入っているとしよう。分子1個の質量を<math>m</math>とする。これが速度 <math>v</math> で運動していたとして、速度 <math>v</math> の<math>x</math>成分を <math>v_x</math> とする。
{{-}}
[[File:気体分子の壁の衝突 1.svg|thumb|400px|気体分子の壁の衝突]]
容器の中で運動している分子が、<math>x</math> 軸に垂直な右側の壁にあたったとする。壁は、静止していて、弾性衝突であるとする。よって、衝突の前後で、分子の速度の大きさは変わらない。
{{-}}
[[File:気体分子の衝突と力積.svg|thumb|400px|気体分子の衝突と力積]]
分子の運動量の変化は、図より、以下のようになる。
:<math> mv_x - m(-v_x)=2mv_x </math>
これは、容器の側から見れば、同じ大きさの力積を気体分子1個から受けとることになる。つまり、<math>x</math> 軸に垂直な容器の壁が、気体分子1個の1回の衝突で受けた力積は <math> 2mv_x</math>である。
時間 <math>t</math> の間に、この分子が壁に衝突する回数は <math> \frac{v_xt}{2L} </math> である。なぜならば、往復に2Lの距離を移動して、速度は <math>v_x</math> だからである。(壁は右側と左側の両方にあるが、左側の壁が受ける力積は右側の壁の力積にはならないので、片方の壁だけが受ける衝突だけの力積を計算する必要がある。)
衝突回数 <math> \frac{v_xt}{2L} </math> と、1回の衝突の力積 <math> 2mv_x</math> を掛け、時間 t で割れば、単位時間あたりに壁が受ける力積が出てくる。
:<math> 2mv_x \cdot \frac{v_xt}{2L} \cdot \frac{1}{t} = \frac{mv_x{}^2}{L}</math>
単位時間あたりの力積とは、<math>F\Delta t</math>の<math>\Delta t</math>が1なので、力そのものである。つまり、これが気体分子1個が壁に及ぼす力である。
次に気体分子全体が壁に与える力を求めたい。まず速度<math> v_x</math>は分子ごとに異なるので、分子速度の平均で考える必要がある。 <math>v_x^2</math> の平均を <math> \bar{v_x^2}</math> で表そう。
分子の数を <math>N</math> 個とすれば、気体分子全体が右側の壁に与える力Fは、
:<math> F= \frac{Nm \bar{v_x{}^2}}{L}</math>
これを壁の面積 S=L<sup>2</sup>で割れば、右側の壁に与える圧力 Pが求まる。
:<math> P=\frac{Nm \bar{v_x{}^2}}{L^3}</math>
ここで、<math> L^3 </math> は、容器の体積である。
したがって、圧力Pは、
:<math> P=\frac{Nm \bar{v_x{}^2}}{V}</math>
と書ける。
速度のx方向成分 <math>v_x</math> と、速度 <math>v</math> の関係を求める。
N個の分子の <math>v,v_y,v_z
</math> の2乗の平均を <math>\bar{v^2},\bar{v_y ^2},\bar{v_z ^2}
</math> とすると、三平方の定理より、
:<math> \bar{v^2} =\bar{v_x{}^2}+ \bar{v_y{}^2}+ \bar{v_z{}^2} </math>
である。
ここで <math> \sqrt{\bar{v^2}} </math> を'''2乗平均速度'''という。二乗平均速度は速度の絶対値の平均と多少値が違う。平均に関しては[[w:平均]]に詳しい解説があるので、適宜参照されたし。ただし高校段階ではこの平均の問題に深入りする必要は全くない。
また、気体の速度に特別な方向は無いと考えられるので<ref>ここでは、重力の影響は無視して考えている。</ref>、
:<math> \bar{v_x{}^2}= \bar{v_y{}^2}= \bar{v_z{}^2} </math>
である。
よって、
:<math> \bar{v_x{}^2} = \frac{\bar{v^2}}{3} </math>
である。
これを圧力の式に代入すれば、
:<math> P=\frac{Nm \bar{v{}^2}}{3V}</math>
となる。
==== 気体分子の運動エネルギー ====
:<math> p=\frac{Nm \bar{v{}^2}}{3V}</math> から <math> pV=\frac{Nm \bar{v{}^2}}{3}</math>を得る。気体のモル数 <math>n</math> と分子数はアボガドロ定数 <math>N_\mathrm A</math> の関係 <math>N = n N_\mathrm A</math> を代入し、理想気体の状態方程式 <math>pV = nRT</math> と比較すれば、
:<math> nRT=\frac{nN_\mathrm A m \bar{v{}^2}}{3}</math>
:<math> \frac 1 2 m \bar{v^2} = \frac 3 2 \left(\frac R {N_\mathrm A}\right)T</math>
を得る。ここで、ボルツマン定数 <math>k_\mathrm B = \frac R {N_\mathrm A}</math> を定義<ref>ボルツマン定数は単に <math>k</math> とも表される。</ref>すると、
:<math> \frac 1 2 m \bar{v^2} = \frac 3 2 k_\mathrm B T</math> を得る。
これが、気体分子1個の運動エネルギーの平均値である。
==== 気体分子の速度 ====
気体分子1個の運動エネルギーの平均値の式 <math> \frac 1 2 m \bar{v^2} = \frac 3 2 k_\mathrm B T</math> を <math> \sqrt{\bar{v{}^2}}</math> について解けば、2乗平均速度 <math> \sqrt{\bar{v{}^2}}</math> が求まる。
:<math> \sqrt{\bar{v{}^2}} = \sqrt{\frac{3k_\mathrm B T}{m}} = \sqrt{\frac{3RT}{mN_\mathrm A}} = \sqrt{\frac{3RT\times 10^3}{M}}</math>
ここで、分子量 <math>M</math> は <math>M = mN_\mathrm A \times 10^3</math> <ref><math>mN_\mathrm{A}</math> は 1 mol の分子の質量を kg で表したものである。 分子量 M は 1 mol の分子の質量を g で表したものだから、 <math>10^3</math> の係数が必要になる。</ref>を満たすことを使った。
この式から 0 °C(273.15 K) における酸素分子の速さの平均を求めてみると 461 m/s であり、0℃における音速の 332 m/s よりも速く運動していることが分かる。
=== 内部エネルギー ===
気体の内部エネルギーは分子の熱運動による運動エネルギーと分子間力による位置エネルギーの和である。
ここで、分子間力による位置エネルギーは無視できるほど小さいので、内部エネルギーは熱運動による運動エネルギーに等しいとする。
単原子分子の場合は分子の回転を無視できるため、内部エネルギーは運動エネルギーのみからなると見なしてよい。
単原子分子理想気体の内部エネルギー <math>U</math> は
:<math> U = \frac{3}{2} NkT = \frac 3 2 nRT</math>
である。
== 熱力学 ==
=== 気体のする仕事 ===
シリンダー内に気体を入れ、なめらかに動く表面積 <math>S</math> のピストンで閉じ込める。ピストンの外の大気圧が <math>p</math> のとき、シリンダー内の圧力も <math>p </math> である<ref>ピストン外とシリンダー内の圧力が違うとすると、ピストンはなめらかに動く(=ピストンとシリンダー間の摩擦が存在しない)ため、ピストンが動いてしまう。</ref>。シリンダー内の気体に熱を与え、気体をゆっくり膨張させる。ピストンが <math>\Delta l </math> 動いたときまで、気体がピストンに加える力は <math>pS</math> である。気体がピストンにした仕事 <math>W'</math> は <math>W' = pS\Delta l = p\Delta V</math> である。
=== p-Vグラフ ===
気体の圧力が変化する場合でも、p-Vグラフで囲まれた面積から気体が外部にする仕事を求められる。
積分を使って表すと、 <math>W'=\int_{v_1}^{v_2}p(v)\,dv</math>である。
=== 定積変化と定圧変化と等温変化と断熱変化 ===
定積変化では、気体の体積は一定なので、気体が外部にする仕事は <math>W' = p\Delta V = 0</math> である。従って熱力学第一法則より、<math>\Delta U = Q</math> である。
定圧変化では、気体が外部にする仕事は <math>W' = p\Delta V</math> なので、気体がされた仕事は <math>W = -W' = -p\Delta V</math> 。熱力学第一法則より、<math>\Delta U = Q -p\Delta V</math> である。
等温変化では、気体の内部エネルギーの変化は0である。熱力学第一法則より <math>0 = \Delta U = Q + W</math> である。
断熱変化では、外部との熱の出入りがないので、 <math>Q = 0</math> である。熱力学第一法則より <math>\Delta U = W</math> である。
(熱伝導の大きいシリンダーで)ピストンをゆっくと動かすと、シリンダー内の気体の温度を外気温と同じに保つことができるため、等温変化が実現できる。
熱伝導の小さいシリンダーを使ったり、ピストンを極めてすばやく動かすと外部と気体の熱の出入りが無視できるため、断熱変化が実現できる。
== モル比熱 ==
気体1molに対して、温度を1K上げるのに必要な熱量を'''モル比熱'''という。
:<math>n</math> の気体に熱量 <math>Q </math> を与えて温度 <math>\Delta T</math> だけ上がったとすれば、モル比熱 <math>C</math> は
:<math>C = \frac{Q}{n\Delta T}</math>
である。
さて、気体の温度を上げると、状態方程式から分かるように圧力や体積が変わる。もし、気体を変形が可能な容器(たとえばピストンヘッドが動けるシリンダー内部)に入れれば、温度を上昇させる際に気体は膨張し容積が上昇するので、外部に仕事をすることになる。
一方で、容器が変形しない場合は、定積変化となるから体は外部に仕事をしない。
これらを考えると、容器の条件によって、比熱が変わるので、条件ごとに区別をする必要がある。
=== 定積モル比熱 ===
定積変化の場合のモル比熱を'''定積モル比熱'''という。
定積モル比熱 <math>C_V</math>は定義より、 <math>C_V = \frac{Q}{n\Delta T}</math> である。
定積変化では体積一定なので熱力学第一法則より
:<math>\Delta U = Q\quad\therefore\Delta U = nC_V\Delta T = Q</math>.
もし気体が単原子分子理想気体ならば、内部エネルギーの変化量は
:<math>\Delta U= \frac{3}{2} nR\Delta T </math>
であったので
:<math> \frac{3}{2} nR\Delta T =nC_V \Delta T</math>
より
:<math> C_V = \frac{3}{2} R </math> (単原子分子理想気体)
である。
=== 定圧モル比熱 ===
定圧変化の場合のモル比熱を'''定圧モル比熱'''という。
単分子原子理想気体の定圧モル比熱を求めてみよう。圧力 <math>p</math>で物質量 <math>n</math> の単分子原子理想気体の温度が <math>\Delta T</math> 上がったときの内部エネルギーの変化量 <math>\Delta U</math> は
:<math>\Delta U = Q - p\Delta V</math>
である。理想気体の状態方程式より、定圧変化では圧力一定のなので、
:<math>p\Delta V = nR\Delta T</math>
である。
また、単分子原子気体の内部エネルギーの変化は
:<math>\Delta U = \frac{3}{2} nR\Delta T</math>
である。これを代入して
:<math>Q = \Delta U + p \Delta V = \frac 5 2 nR\Delta T</math>
を得る。定圧モル比熱は <math>Q = nC_p\Delta T</math> が成り立つので
:<math>C_p = \frac 5 2 R</math>
同様にして、二原子分子理想気体においては<math>C_V = \frac{5}{2}R, C_p = \frac{7}{2} R </math>であることが証明できる。
熱力学第一法則の式<math>\Delta U = Q - W</math>に<math>Q = nC_V \Delta T, W = p\Delta V = nr \Delta T, \Delta U = nC_V \Delta T</math>を代入すると、<math>C_V = C_p - R</math>すなわち<math>C_p - C_V = R</math>を得る。これを'''マイヤーの関係式'''(マイヤーの法則)という。
定圧モル比熱と定積モル比熱の比<math>\gamma = \frac{C_p}{C_V}</math>を'''比熱比'''という。
=== ポアソンの法則 ===
理想気体が(P, V, T)の状態から(P+ΔP, V+ΔV, T+ΔT)の状態に移ったとする。それぞれの状態について、理想気体の状態方程式より
<math>\begin{cases} PV = nRT \\ (P + \Delta P)(V + \Delta V) = nR(T + \Delta T) \end{cases}</math>
である。変形すると<math>P \Delta V + V \Delta P + \Delta P \Delta V = nR\Delta T</math>である。ここで、微小量同士の積を無視することにすると、<math>P \Delta V + V \Delta P = nR\Delta T</math>を得る。<!-->全微分による導出も可能。<-->
熱力学第一法則
:<math>\Delta U = Q - W</math>
において、<math>\Delta U = nC_V\Delta T</math>、<math>W = P\Delta V</math>、断熱変化のとき<math>Q = 0</math>より、
:<math>nC_V\Delta T = -P\Delta V</math>
である。先ほど得た式を用いてΔTを消去すると、
:<math>C_V V \Delta P = -(C_V+R)P\Delta V</math>
である。整理して
:<math>\frac{\Delta P}{P} = -\frac{C_V+R}{C_V} \frac{\Delta V}{V}</math>
を得る。ここで、マイヤーの法則より<math>C_V + R = C_p</math>、比熱比の定義より
:<math>\gamma = \frac{C_p}{C_V}</math>
なので、
:<math>\frac{\Delta P}{P} = -\gamma\frac{\Delta V}{V}</math>
である。両辺それぞれ積分すると、
:<math>\int \frac{dP}{P} = -\gamma \int \frac{dV}{V}</math>
より積分定数をAとして
:<math>\log P = - \gamma \log V + A</math>
である。変形して
:<math>\log P + \log V^{\gamma} = \log PV^{\gamma} = A</math>
すなわち
:<math>PV^{\gamma} = e^A = \mathrm{const}.</math>
である。この、<math>PV^{\gamma} = \mathrm{const}.</math>という関係を'''ポアソンの法則'''という。
ポアソンの法則はまた、<math>p = \frac{nRT}{V}</math> を代入すれば<math>nR=\mathrm{const}.</math>より
:<math>TV^{\gamma-1} = \mathrm{const}.</math>
と変形することができる。これもポアソンの法則という。
== 熱機関 ==
=== 熱機関とサイクル ===
熱を受け取って仕事を行う装置を'''熱機関'''と呼ぶ。ガソリンエンジンやジェットエンジン、火力発電所や原子力発電所の蒸気タービンも熱機関である。
熱機関は、ピストンが膨張し元の体積に戻るといったように、周期的に状態を繰り返す。この一連の過程を'''サイクル'''と呼ぶ。
正の仕事を行う熱機関では、必ず高温熱源から熱を得て仕事を行い、熱を低温熱源に捨てる。したがって、熱は高温部から低温部へ移動する。
一方、冷凍機のように外部からのエネルギー供給があれば、低温熱源から高温熱源へ熱を移動させることができる。外部からエネルギーが供給されていない場合、高温部から低温部への熱の移動は起こり得るが、その逆は不可能である。これが'''熱力学第二法則'''である。
逆方向の現象が起こり得ない変化を'''不可逆変化'''と呼ぶ。逆方向の現象が起こり得る場合は'''可逆変化'''という。
たとえば、摩擦によって止まる物体の場合、静止している物体が周囲から熱(摩擦熱の逆に相当するエネルギー)を受け取って運動を始める現象は自然界に存在しない。このような現象も不可逆変化の一例である。
=== 熱効率 ===
[[File:Carncyklus.png|thumb|熱サイクルの例.]]
[[File:Carnot heat engine 2.svg|300px|thumb|right|熱機関には高温熱源と低音熱源が必要になる。]]
気体を膨張させて仕事を取り出す熱機関が、あるとする。この熱機関の内部気体を圧縮させて戻すのにも、エネルギーが必要である。したがって、加熱膨張させて仕事をさせたあとは、熱機関の熱を放熱しないと、圧縮に膨張時と同じエネルギーが必要になり、熱機関として価値が無くなる。だから熱機関を繰り返し利用して仕事をさせるためには、加熱をして膨張をしたあとに、気体を収縮させる際に、冷却あるいは放熱して元の圧力や体積に戻すことになる。
;低温熱源
したがって、熱機関には冷却源や放熱先が必要である。このような冷却源や放熱先を低温熱源という。(冷却をする場合は、当然に冷却源が必要である。放熱をさせる場合も、放熱先は温度が熱機関よりも低い必要があるから、結局、冷却源があることと同等になる。)低温熱源という呼び方に関して、熱を捨てる先なのに熱源というのは奇妙と感じるかもしれないが、便宜上、こういうので、慣れて頂きたい。
;高温熱源
対して、膨張をさせるための気体の加熱に必要な熱源を高温熱源という。言葉通り、高温熱源の温度は、低温熱源の温度よりも高い。
;熱効率
このように、サイクルとして繰り返し使用できる熱機関には、高温熱源と低音熱源の、温度の異なる2個の熱源が必要になる。
逆に言うと、たった一個の熱源だけでは、熱機関から仕事を取り出せない。
仕事として取り出せるエネルギーWは、高温熱源で得た熱量Q<sub>1</sub>のうち、低温熱源で捨てることになる熱量Q<sub>2</sub>を引いた残りQ<sub>1</sub>-Q<sub>2</sub>である。
:'''W=Q<sub>1</sub>-Q<sub>2</sub>'''
熱機関を動かすのに必要なエネルギーは、最低でも高温熱源の熱量Q<sub>1</sub>は必要である。
熱機関が高温熱源から吸収した熱量の内、仕事に変えた割合を'''熱効率'''といい
:<math>e=\frac{W}{Q_1}</math>
で表される。
熱効率eは、現実の機械では1より小さくなる。
熱効率の定義式に、W=Q<sub>1</sub>-Q<sub>2</sub>を代入すれば、
:<math>e=\frac{Q_1-Q_2}{Q_1}</math>
となる。
== その他 ==
=== 状態量 ===
気体の変数の変数p,V,Tは、理想気体であれ、ファンデルワールス気体であれ、状態方程式(理想気体かファンデルワールス気体かは、ここでは問わない)があるならば、変数p,V,Tのうちの、どれか二つが決まれば、気体の状態方程式から残りの変数も決まる。こうして3変数p,V,Tが決まる。
内部エネルギーは、理想気体であれ、ファンデルワールス気体であれ、どちらにしても、変数p,V,Tのうち、どれか二つが決まれば、気体の方程式から残りの変数も決まる。決まった3変数のp,V,Tによって、内部エネルギーも決まってしまう。このような、状態変数によってのみ決まる物理量を'''状態量'''という。
3変数のp,V,Tが決まれば内部エネルギーも決定されるので、内部エネルギーは状態量である。
内部エネルギーを決める3変数のうち、真に独立変数なのは、そのうちの2個のみである。変数p,V,Tのどれを2個まで独立変数に選んでもいいが、残りの1個は既に選んだ変数の従属変数になる。
どの変数を独立変数に選ぶと、知りたい答えが求めやすいかは、問題による。
(多変数の関数の微分積分については、大学理科系で扱う。多変数関数の微分を偏微分という。解説は高校範囲を超える。)
=== 理想気体の断熱変化 ===
状態 <math>(p_1,V_1,T_1)</math> にある比熱比 <math>\gamma</math> の理想気体が断熱変化で状態 <math>(p_2,V_2,T_2)</math> になったとする。この過程で気体が外部にした仕事を <math>W</math> とする。ポアソンの法則より
<math>pV^\gamma = K</math>
が常に一定であることを使って、 <math>W</math> を計算すると、
<math>\begin{align}
W &= \int_{V_1}^{V_2} pdV\\
&= K\int_{V_1}^{V_2} V^{-\gamma}dV \\
&= \frac{K}{1-\gamma} \left. V^{1-\gamma} \right|_{V_1}^{V_2}\\
&= \frac{1}{1-\gamma}\left( K V_2^{1-\gamma} - K V_1^{1-\gamma}\right)\\
&= \frac{1}{1-\gamma}\left(p_2 V_2 - p_1 V_1\right)\\
&= \frac{1}{1-\gamma}(nRT_2-nRT_1)
\end{align} </math>
となる。
また、断熱変化では、熱の交換はないから、<math>Q = 0</math>。熱力学第一法則より、この過程の間の内部エネルギーの変化 <math>\Delta U</math> は、
<math>\Delta U = -W = \frac{1}{\gamma -1}(nRT_2-nRT_1).</math>
=== 理想気体の等温変化 ===
状態 <math>(p_1,V_1,T)</math> にある理想気体が等温変化で状態 <math>(p_2,V_2,T)</math> になったとする。この過程で気体が外部にした仕事を <math>W</math> とする。理想気体の状態方程式
<math>pV = nRT</math>
で <math>nRT</math> は一定だから、<math>W</math> は、
<math>\begin{align}
W &= \int_{V_1}^{V_2} pdV\\
&= nRT \int_{V_1}^{V_2} \frac{dV}{V} \\
&= nRT \log V |_{V_1}^{V_2}\\
&= nRT (\log V_2 - \log V_1)\\
&= nRT\log \frac{V_2}{V_1}
\end{align} </math>
と計算できる。
また、理想気体の等温変化では内部エネルギーは変化しないから、<math>\Delta U= 0</math>。熱力学第一法則より、この過程の間に気体が吸収した熱量 <math>Q</math> は、
<math>Q = W = nRT\log \frac{V_2}{V_1}.</math>
=== カルノーサイクル ===
[[File:Carncyklus.png|thumb|カルノーサイクル]]
高温熱源 <math>T_\mathrm H</math> と低温熱源 <math>T_\mathrm L</math> による次のようなサイクルを'''カルノーサイクル'''という。
# 最初、シリンダーの温度は高温熱源と同じ温度である(状態1)
# 高温熱源に接触したまま等温膨張する(状態2)
# 断熱膨張し、シリンダーの温度は低温熱源と同じになる(状態3)
# 低温熱源と接触させ、等温圧縮する(状態4)
# 断熱圧縮し、シリンダーの温度は低温熱源と同じになる(状態1に戻る)
:
カルノーサイクルの作動流体が理想気体であるとき、カルノーサイクルの効率を具体的に求めてみよう。
まず、状態1から状態2の間の仕事W<sub>12</sub>は等温膨張での仕事なので、公式より、
:<math>W_{12}=nRT_\mathrm H \log\frac{V_2}{V_1} </math>
である。
状態3から状態4の間の仕事W<sub>34</sub>は等温圧縮での仕事は
:<math>W_{34}=nRT_\mathrm L \log\frac{V_4}{V_3}</math>
状態2から状態3の間の仕事W23は断熱膨張での仕事であり、
:<math>W_{23}=\frac{1}{\gamma -1}(nRT_\mathrm L-nRT_\mathrm H)</math>
である。
状態4から状態1の間の仕事W<sub>41</sub>は断熱圧縮での仕事は、
:<math>W_{41}=\frac{1}{\gamma -1}(nRT_\mathrm L-nRT_\mathrm H) </math>
:よって、
:<math>W_{41}=-W_{23}</math>
である。
機関が1サイクルの間にした仕事は、
:<math>W_{12}+W_{23}+W_{34}+W_{41}</math>
である。
このうち、
:<math>W_{23}=-W_{41}</math>
なので、仕事として残るのは、
:<math>W_{12}+W_{34}</math>
であり、
:<math>W_{12}=nRT_\mathrm H \log\frac{V_2}{V_1} </math>
:<math>W_{34}=nRT_\mathrm L \log\frac{V_4}{V_3}</math>
だから、
:<math>W_{12}+W_{34}=nRT_\mathrm H\log\frac{V_2}{V_1}+nRT_\mathrm L\log\frac{V_4}{V_3}</math>
である。これが、この機関が1サイクルで行う正味の仕事である。
ところで、<math>\frac{V_2}{V_1}</math>と、<math>\frac{V_3}{V_4}</math>の関係を求めよう。
状態方程式pV=nRTより、
:<math>p_1V_1=p_2V_2</math> (1)
:<math>p_3V_3=p_4V_4</math> (2)
である。さらにポアソンの公式より、
:<math>p_4V_4{}^{\gamma}=p_1V_1{}^{\gamma}</math> (3)
:<math>p_2V_2{}^{\gamma}=p_3V_3{}^{\gamma}</math> (4)
である。式(3)と式(4)の両辺を割ると、
<math>\frac{p_1}{p_2}\left(\frac{V_1}{V_2}\right)^\gamma = \frac{p_4}{p_3}\left(\frac{V_4}{V_3}\right)^\gamma</math>
今度は式(1)と式(2)をそれぞれ変形して、
<math>\frac{p_1}{p_2} = \frac{V_2}{V_1}</math>
<math>\frac{p_4}{p_3} = \frac{V_3}{V_4}</math>
となるから、
<math>\left(\frac{V_1}{V_2}\right)^{\gamma-1} =\left(\frac{V_4}{V_3}\right)^{\gamma-1}</math>
すなわち、
<math>\frac{V_1}{V_2}=\frac{V_4}{V_3} </math>
あるいは、
<math>\log\frac{V_4}{V_3} = - \log\frac{V_2}{V_1}</math>
となるから、
:<math>W_{12}+W_{34}=nR(T_\mathrm H-T_\mathrm L)\log\frac{V_2}{V_1}</math>
と書ける。
これが、カルノーサイクルの、1サイクルでの正味の仕事である。
==== カルノーサイクルの効率 ====
カルノーサイクルの熱効率を導出してみよう。
[[File:Carncyklus.png|thumb|カルノーサイクル]]
カルノーサイクルが高温熱源から受け取る熱量Q1は、行程1→2であり、この行程は等温変化なので、受け取った熱量はすべて仕事になっている。行程1→2での等温変化の仕事は、
:<math>W_{12}=nRT_\mathrm H\log\frac{V_2}{V_1} </math>
であったので。これが高温熱源から受け取った熱量Q1に等しい。つまり
:<math>Q_1=nRT_\mathrm H\log\frac{V_2}{V_1}</math>
である。
熱効率eの式は、高温熱源から受け取った熱量をQとして、正味の仕事をWとすれば、
:<math>e=\frac{W}{Q}</math>
であった。
これに、既に求めた、熱量Q<sub>1</sub>とW<sub>12</sub>を代入すれば、
:<math>e=\frac{W}{Q}=\frac{nR(T_\mathrm H-T_\mathrm L)\log(V_2/V_1)}{nRT_\mathrm H\log(V_2/V_1)}</math>
である。これを約分して整理すれば、
:<math>e=1- \frac{T_\mathrm L}{T_\mathrm H}</math>
である。これがカルノーサイクルの効率<ref>これは、作動流体を理想気体に限らずとも成り立つ。[[熱力学/熱力学第二法則]]を参照せよ。</ref>である。これは絶対温度だけで決まる。
実際の熱機関の効率は、不可逆変化を含み、これよりも低くなる。
熱機関の効率が最大になるのは、熱機関が可逆である場合である。
=== エネルギー等分配の法則 ===
速度について、
:<math> \bar{v^2} =\bar{v_x{}^2}+ \bar{v_y{}^2}+ \bar{v_z{}^2} </math>
であったから、運動エネルギーについても、
:<math> \frac{1}{2}m \bar{v^2} =\frac{1}{2}m \bar{v_x{}^2}+ \frac{1}{2}m \bar{v_y{}^2}+ \frac{1}{2}m \bar{v_z{}^2} </math>
である。これに、単原子分子理想気体の内部エネルギーの式
:<math>U= \frac{1}{2} Nm \bar{v{}^2} = \frac{3}{2} NkT </math>
とを合わせて、運動エネルギーは各方向成分を求める。各方向とも等分されるのが妥当なので、したがって、各方向の運動エネルギーは
:<math> \frac{1}{2}m \bar{v_x{}^2}= \frac{1}{2}m \bar{v_y{}^2}= \frac{1}{2}m \bar{v_z{}^2}= \frac{1}{2} kT </math>
となる。
このことから、運動の自由度1個につき、エネルギーが<math> \frac{1}{2} kT </math>ずつ等分される事がわかる。これを'''エネルギー等分配の法則'''という。
2原子分子では、運動の自由度は、分子速度の3方向に加えて、回転運動が2個、加わる。二つの分子を結ぶ軸に垂直な方向の平面上の線が回転軸の方向になるので、面の自由度2個が加わる。
よって、2原子分子では、理想気体の内部エネルギーの式は、
:<math> U= \frac{1}{2} m \bar{v^2} =5 \frac{1}{2} kT = \frac{5}{2} kT </math>
になる。
2原子分子の内部エネルギーが<math>\frac{5}{2} kT </math>になることは、実験的にも比熱の測定によって確認されている。
=== 固体のモル比熱 ===
アボガドロ数 <math>N_A</math> 個の原子で構成されている固体を考える。原子は位置の自由度と運動量の自由度を合わせて6の自由度があるから、固体の自由度は <math>6N_A</math> である。内部エネルギーはエネルギー等分配則より
:<math> U = 6N_A \times \frac{1}{2} kT = 3N_AkT </math>
となるから、
: <math>C_V = 3N_A k = 3R </math>
となる。これを、デュロン=プティの法則という。
=== 熱膨張率 ===
物体は温度が上昇すると体積が膨張する。温度が1℃上昇するに連れて体積の増加する割合を'''体膨張率'''という。長さが、温度の1℃増加あたりに、長さの膨張する割合を線膨張率という。線膨張率はプラスチックが最も高い。線膨張率をαとして、長さをL、加熱後の長さの変化量をΔL、加熱後の温度上昇をΔTとすると、定義より
:<math>\frac{\Delta L}{L}=\alpha\Delta T</math>
の関係式が成り立つ。膨張量が小さい場合の近似式として、線膨張率αと体積膨張率βとの間に、以下の近似式が知られている。
:<math>\beta=3\alpha</math>.
* 導出
導出は、物体の体積をV、その変化量をΔVとすると、
:<math>V+\Delta V=\left(L+\Delta L\right)^3</math>
および
:<math>V=L^3</math>
の関係より、
:<math>1+\frac{\Delta V}{V}=\left(1+\frac{\Delta L}{L}\right)^3</math>
さらに、近似式
:<math>\left(1+\frac{\Delta L}{L}\right)^3=1+3\frac{\Delta L}{L}</math>
により、
:<math>1+\frac{\Delta V}{V}=1+3\frac{\Delta L}{L}</math>
両辺から1を引き、この問題設定では体積膨張率βが、
:<math>\beta=\frac{\Delta V}{V}</math>
であり、線膨張率αが
:<math>\alpha=\frac{\Delta L}{L}</math>
なので、結局は
:<math>\beta=3\alpha</math>
となる。
----
ここまでで、高校物理の熱力学での発展的話題は終了である。これより先の水準の話題は、大学での範囲になる。
[[Category:高等学校教育|物ふつり2ねつりきかく]]
[[カテゴリ:熱力学|高ふつり2ねつりきかく]]
[[Category:物理学教育|高ふつり2ねつりきかく]]
[[Category:高等学校理科 物理II|ねつりきかく]]
2djmvxdnzbdcigk91e8vezvr98ho2gj
高等学校物理基礎/熱
0
18241
299683
299418
2026-05-20T10:00:44Z
Nermer314
62933
299683
wikitext
text/x-wiki
{{pathnav|高等学校の学習|高等学校理科|高等学校物理|高等学校 物理基礎|pagename=熱|frame=1|small=1}}
== 温度 ==
[[File:Brownian motion large.gif|thumb|right|240px|ブラウン運動の概念図(シミュレーション)。黒色の媒質粒子の衝突により、黄色の微粒子が不規則に運動している。]]
物体の温度とは、実はその物体を構成している、それぞれの分子や原子の運動の強さのことである。この温度による運動は不規則である。
温度が低く固体の場合は熱運動の強さが弱いので、分子は分子どうしの引力で抑えこまれ、物体は固体状の形状を保つ。
固体でも、分子は、結晶の格子点を中心に運動している。液体では、外部から力を加えると、体積は変わらないものの、流動して容易に形を変える事ができる。
固体を加熱するなどして温度を高めると、いずれ、固体から液体へ変わる。これは、熱運動が強まり、もはや結晶の構造を取るのが不可能になったからである。
液体を加熱していくと、いずれ、気体へ変わる。気体は熱運動が、分子間力よりもはるかに大きく、もはや、各分子がバラバラに離れて行動している状態である。したがって、液体から固体になると体積が増える。
なお、液体から気体への変化にかぎらず、一般に物体は温度が上がると、ほとんどの物質で体積が増える。
ここでは、温度とは、物質を構成している分子や原子の運動がどのくらい強いかという、状態を表す数値だということを理解して頂きたい。
物体の状態を表す、固体・液体・気体といった状態のことを'''相'''という。固体のことを固相と言ったり、液体のことを液相と言ったり、気体のことを気相と言ったりする場合もある。
=== セルシウス温度 ===
[[ファイル:Clinical thermometer 38.7.JPG|thumb|300px|セルシウス温度計]]
温度の単位として実用上、多く用いられている℃単位の摂氏温度は、'''セルシウス温度'''とも言う。
このセルシウス温度では、温度の値の基準として、大気圧 1atmのもとで、純水と氷の共存する温度を'''0℃'''と定め、純水が沸騰するときの温度を'''100℃'''と定めらている。
そして、0℃と100℃の間の温度を'''100等分'''している。
:;これは旧定義で、現在はボルツマン定数を使った定義に置換わっています。
温度計の種類にアルコール温度計や水銀温度計などあるが、これらは物体の温度が上がることによる膨張を、温度の測定器として利用した器具である。
いっぽう、温度があがることで体積が膨張するのは、なにも液体に限らず、気体や固体でも温度が上がれば膨張する。
== 熱量 ==
1kgの物体と、べつの1kgの物体を合わせて、重量計に載せれば、測定値は2kgになる。だが、容器に入った10℃の水に、等量の10℃の水を注いでも、20℃にはならない。
いっぽう、温度を上げるには、エネルギーが必要だが、エネルギーは足しあわせができる。
このような理由から、加熱された物体に蓄えられた熱エネルギーと温度とを区別する必要がある。
そこで、熱エネルギーのことを'''熱量'''といい、これは温度とは区別する。
熱量の単位は、熱量はエネルギーの一種なので、力学的エネルギーの単位(ジュール:J)と同じであり、熱量の単位に'''ジュール'''(記号は'''J''' )を用いる。
なお、熱量の単位にはジュール(J)の他に、'''カロリー'''(記号はcal)という単位もある。カロリーは、水1gの温度を1K上昇させるのに必要な熱エネルギーのことである。栄養学の分野ではカロリーが用いられることが多い。物理学や化学では、特に断りがない限り、熱量の単位には、ジュールを用いる。
== 気体と温度との関係 ==
ここでは、気体の膨張を利用した温度計について、説明したい。気体には様々な性質があるが、この節では、温度測定に必要なことを主に説明する。
まず、気体の力学的な性質について説明する。
大気について考えよう。大気とは地球を包む空気の層のことである。空気にも重さがあるので、大気の中にいる物体には、その物体の上方にある空気の重さによって、圧力がかかる。
我々は大気圧にさらされている。一般に、気体の力は、分布して力が掛かるので単位面積あたりの力で考える必要がある。この単位面積あたりの力を'''圧力'''という。圧力の単位はN/m<sup>2</sup>で表す。
Nとは力の単位のニュートンであり、1ニュートン(1N)とは、質量1kgの物体に加速度1m/s<sup>2</sup>を増加できる力のことである。
mは長さの単位のメートルのことである。面積あたりの力を考えているので、mが2乗されてm<sup>2</sup>になっている。
このN/m<sup>2</sup>の単位を、そのままでも用いることもあるのだが、この単位N/m<sup>2</sup>のをPaと表す。Paの読みかたは、パスカルと読む。
1N/m<sup>2</sup>と1Paの大きさの基準は同じである。
つまり
:1N/m<sup>2</sup> = 1Pa
である。
;ヘクトパスカル
なお、大気圧をパスカル表示したときに、指数部の桁数が10<sup>5</sup>とやや計算には大きくて不便なので、補助単位として、気象分野では'''ヘクトパスカル'''を用いる場合がある。ヘクトパスカルはhPaと表す。
ヘクトとは100(百)を表す接頭語である。
つまり、
:1hPa = 100Pa
である。
なぜ「ヘクト」のような中途半端な接頭辞を用いているかと言うと、嘗て使われていたバール(bar)という単位と換算するときに、1mbar=1hpaという等式が成り立つためである。
現在はあまり見なくなったが、1気圧に対応するアトム(atm)という単位も用いられることがある。
1atm = 1013.25 hpa
;mmHg
水銀柱の上部の液面からの深さ760mmの底部に掛かる圧力の大きさが1atmの大きさに、ほぼ等しいので、この水銀柱の760mm深さの圧力を760mmHgというふうに書く。Hgとは、化学式の水銀の記号Hgに由来している。このように圧力の単位には'''mmHg'''という単位もある。
1mmHgと1atmの大きさの関係は、
:1atm = 760 mmHg
という関係である。
=== 気体の熱膨張 ===
さて、この節で扱うのは、気体と温度との関係であった。たとえば、ピストンを用いて気体を封じたシリンダーなどで、内部の気体を熱した時に、内部気体がピストンを押して容積を膨らますことからの振る舞いを考えれば、気体は熱すれば膨張するのが分かるだろう。
この節では、ピストンやシリンダといった場合は、小学校や中学校の理科の実験などで扱ったような、注射器のような形のピストンで、直感的に考えて構わない。
これらピストンとシリンダーの組み合わせと、似たような原理の装置で、気体の圧力が測定できる。ピストンに外部から、何らかの機構で力を加え、外部の力を変化させれば、その外部の力と内部の気体による力とが釣り合うときの外部の力を調べれば、内部の圧力も計算によって求まる。
=== ボイルの法則 ===
[[File:Legge di Boyle dati originali.jpg|thumb|400px|ボイルの法則<br>縦軸が圧力。横軸が体積。値はロバート・ボイル本人のオリジナルデータ。]]
ボイルという人物が、一定温度での気体の圧力と気体の体積との関係を調べたところ、法則性を発見した。
外部から、ピストンを押しこむなどして、気体の体積を半分にすると、気体の圧力が'''2倍'''になる。気体の体積を<math>\frac{1}{3}</math>'''倍'''にすると、圧力が'''3倍'''になる。同様に、気体の体積を<math>\frac{1}{4}</math>'''倍'''にすると、圧力が'''4倍'''になる。
以下、気体体積の<math>\frac{1}{5}</math>'''倍'''や<math>\frac{1}{6}</math>'''倍'''でも同様に続く。べつに気体体積は整数倍でなくても、
:<math>\frac{1}{3.942}</math>'''倍'''とか、どんな数字でも、同様の法則が成り立つ。
これ等をまとめると、気体の圧力pと体積Vとの関係には、以下の関係式がある。
:'''pV=K'''
(Kは定数)
この関係式を、'''ボイルの法則'''という。
{{clear}}
=== シャルルの法則 ===
[[File:Gay-lussac schema.jpg|thumb|right|300px|シャルルの法則の概念図<br>縦軸は体積で、このグラフではミリリットル単位。横軸の温度はこのグラフでは℃単位。]]
さて、シャルルという人物が、温度と容積の関係を測って研究したところ、法則性を発見した。大気圧の状況下では、気体を1℃、上昇させると、0℃の体積の<math>\frac{1}{273}</math>ずつ膨張することを、シャルルは発見した。
これを式で表すと、0℃のときの気体の体積をV0として、一般の温度の体積をVとすると、温度t ℃のときの関係式は、
:<math>V=V_0(1 + \frac{t}{273})</math>
であることを、シャルルは発見した。
==== 絶対零度 ====
シャルルの観測結果をグラフに書くと、-273.15℃で、理論上では気体は体積が0になる。-273.15℃を'''絶対零度'''という。絶対零度以下の温度は、存在しない。
なお、この節では。計算の都合上、特に断らない限り、絶対零度は273℃として扱うことにする。
絶対零度の-273.15℃とは、熱運動の全くない状態である。
==== 絶対温度 ====
温度の新しい単位として、マイナス273℃を基準とした、新しい温度単位を考える。
'''絶対温度'''を導入し、単位をケルビンとして、単位の記号は[K]で、絶対温度をT K と表した場合、ケルビン単位の絶対温度T[K]とセルシウス温度t ℃との関係は、
:T = t +273
とする。
絶対温度を用いて、気体の膨張式が
<math>V=V_0(1 + \frac{t}{273})=V_0 \frac{273+t}{273}=V_0 \frac{T}{273}</math>
と書け、結論をまとめると、
:<math>V=V_0 \frac{T}{273}</math>
となる。
変数どうしをまとめれば、
:<math>\frac{V}{T} = \frac{V_0}{273}</math>
である。
なお、273Kが0℃となる。つまり、T<sub>0</sub>=273Kとすれば、
:<math>\frac{V}{T} = \frac{V_0}{T_0}</math>
となり、つまり、<math>\frac{V}{T} </math>は、大気圧のもとでは、定数であることがわかる。
この体積Vと温度Tの関係式は、なにも気体の圧力が大気圧でなくても成り立つことが、実験でも確認されて、分かっている。
定数をK<sub>2</sub>とまとめれば、
:<math>\frac{V}{T} = K_2</math>
を'''シャルルの法則'''という。
=== ボイル・シャルルの法則 ===
ボイルの法則とシャルルの法則を、組み合わせることを考えてみよう。まずボイルの法則とは、圧力をpとして体積をVとすれば、'''ボイルの法則'''は、
:<math>pV=K_1</math> K<sub>1</sub>は定数。
であった。
'''シャルルの法則'''とは、温度をTとすれば、
:<math>\frac{V}{T} = K_2</math> K<sub>2</sub>は定数。
であった。(ここで、Tの単位は[K]である。)
これら、二つの法則から、どうやら、
:<math>\frac{PV}{T}=K_3</math> K<sub>3</sub>は定数。
という法則が、成り立ちそうな予感がしそうだろうと、読者は思うだろう。実際に、この法則は成り立つと、実験的に確認されている。
そこで、気体における法則の式、
:<math>\frac{PV}{T}=K_3</math> K<sub>3</sub>は定数。
を、'''ボイル・シャルルの法則'''という。
このボイル・シャルルの法則は、気体が、「漏れ」などはしないかぎり、つまり容積の内部気体の物質が、一定量の場合に成り立つ。
== 気体の状態方程式 ==
;モル
分子の数6.02×10<sup>23</sup>個を1モルと言う。モルの記号は'''mol'''である。もし、読者がモルについて知らなければ、化学Iを参照のこと。
;アボガドロの法則
気体は、分子の種類によらず、温度0℃で圧力101kPaでは、分子量が1molあたり、体積22.4リットル(''l'')を取ることが、実験的に知られている。分子量が2molになれば、温度と圧力が同じなら、体積は2倍になるというふうに、体積は分子量に比例をする。
これを'''アボガドロの法則'''という。
なお、22.4''l''をメートル単位で表せば、2.24×10^-2[m<sup>3</sup>]である。(1000L = 1m<sup>3</sup> から導ける。)
;気体の状態方程式
そこで、アボガドロの法則をボイル・シャルルの法則と組み合わせることを考えよう。
圧力をp[Pa]、体積をV[m<sup>3</sup>]、分子量をn[mol]、温度をT[K]としよう。
まず、ボイル・シャルルの法則とは、
:<math>\frac{PV}{T}=K_3</math> K<sub>3</sub>は定数。
という法則であった。
アボガドロの法則による、温度T一定かつ圧力P一定の条件下で、分子量nと体積Vが比例するということから、
:<math>\frac{PV}{T} = n R </math> Rは定数。
と書ける。定数を、わざわざ '''R''' と書いたのは、この値は分子の種類によらず、一定だからである。また、Rは圧力にもよらず一定であり、温度や体積にもよらず一定である。つまり、Rは完全に定数である。この定数Rを'''普遍気体定数'''(universal gas constant)あるいは単に'''気体定数'''という。
この普遍気体定数Rの値は実験で求められ、測定結果は単位を [J/(mol・K)]で表した場合は
: R = 8.31 [J/(mol・K)]
である。
分母のTを移項すれば、
:<math>PV = nRT </math>
と書ける。
この式 <math>PV = nRT </math> を'''気体の状態方程式'''という。
一般に、気体の圧力・体積・温度の関係を計算する場合は、ボイルの式やシャルルの式などから計算するのではなく、気体の状態方程式から、必要な計算式を導く。
=== 状態方程式の変形 ===
;モル濃度との関係で場合
なお、体積あたりのモル濃度をc[mol/m<sup>3</sup>]とすれば、 C=n/V なので
:<math>P = cRT </math>
とも書ける。
こう書くと、気体の圧力はモル濃度に比例するとも考えられる。
;密度との関係で表した場合
また、気体の密度ρ[kg/m<sup>3</sup>]は、分子1モルあたりの質量(これを'''分子量'''という。)をMとすれば<math>\rho = \frac{nM}{V} </math>となるので、この密度ρを用いて、状態方程式を表せば、
:<math>P = \frac{\rho}{M} RT </math>
である。
== ランフォードの考察 ==
今でこそ、熱はエネルギーの形態の一つであることが分かっている。しかし、昔の人類はそうでなかった。
ヨーロッパやアメリカでは、かつては力学的な仕事と熱とが別の量だと考えられていて、熱は「熱素」という架空の物質による現象だと思われていた時代があった。この熱素が熱や温度の原因であると考える仮説を熱素説という。
ランフォードという、1753年生まれのアメリカ人の科学者が、この熱素説に疑いを抱いた。彼は仕事柄、大砲の砲身の金属を削る実務に関わったことがあった。この金属を削る際の観察で、削るたびに金属から熱が発生することから、むしろ「削りの仕事こそが熱の発生原因であろう。熱素説は間違いだ。」と考え、熱素説を疑った。
彼は金属の削りくずの比熱を実験で調べ、それが削る前の比熱と変わらないという実験結果から、「もしも熱素の流出が熱の原因ならば、削り屑からは熱素が流出しているので、比熱が変わらないと、おかしい。実験によると、削り屑の比熱は、もとの金属の比熱と変わらない。だから熱素説は間違いだ。」と結論づけた。
イギリスの化学者ハンフリー・デービーも、このランフォードの意見に賛同し、デービーも1799年、2個の氷を摩擦すると熱が発生して溶解するという実験を行った。
== 仕事当量 ==
[[Image:Joule's Apparatus (Harper's Scan).png|300px|thumb|落下する“おもり”の位置エネルギーを利用して、水を攪拌して場合の"温度"を調べることで、温度と位置エネルギーの関係を調べるための、ジュールによる実験装置。]]
ジュールが、水と温度を求めるため、右図のような羽根車で水をかき回す実験装置を用いて実験したところ、水の温度を1℃あげるには、位置エネルギーが4.19[J]ほど必要だということが分かった。
これは運動エネルギーや位置エネルギーといった力学的な仕事と、熱との関係を調べたので、'''4.19[J/cal]'''のことを'''熱の仕事等量'''という。
== 比熱 ==
水の場合は、1K上昇させるのに1gあたり4.19Jの仕事が必要ということが分かっているが、他の物質では、この値は異なる。物体の温度を1K上昇させるのに必要なエネルギーは、物体ごとよって異なる。
そこで、次のような、新しい物性値が定義された。
:1gの物質を、温度を1Kだけ上昇させるのに、必要な熱量を、比熱という。比熱の単位はジュール毎グラムケルビン J/(g・K) である。
あるいは1kgあたりの熱量によって比熱を定義する場合もあり、この場合は単位は J/(kg・K) である。
式で表すと、物体に加えた熱量をQ[J]とし、その質量をm[g]とし、その物体の比熱をc[J/(g・K)]とし、その物体の温度上昇をΔT[K]とすれば、
:Q = mc ΔT
である。
比熱の大きいほど、温度が変化しづらい。比熱の大きほど、温まりにくく、冷めにくい。
== 熱容量 ==
ある物体を1K上昇させるのに必要な熱エネルギーを'''熱容量'''という。熱容量の単位は[J/K]である。(ジュール毎ケルビン)。
定義を数式で表せば、物体に加えた熱量をQ[J]とし、その物体の熱容量をC[J/K]とし、その物体の温度上昇をΔT[K]とすれば、
:Q = C ΔT
である。
;比熱と熱容量の関係
比熱c[J/(g・K)]と熱容量C[J/K]の関係は、質量をm[kg]とすれば、
:C=mc
である。
== 熱伝導 ==
二つの固体の物体があったとして、その二物体は温度が異なるとしよう。高温の物体と、低温の物体とを接触させると、高温の物体から熱が低温の物体へ移動し、高温の物体は冷えて、低温の物体は温まる。
これは熱が、高温物体の側から、低温物体の側へと伝わったことになる。
この現象を'''熱伝導'''という。
== 熱の伝わり方 ==
熱は、外部から手を加えなければ、自然と温度の高い所から、温度の低いところへと移動していく。
その結果、温度の高かった場所は、熱を手放していき、だんだんと温度は低くなる。逆に、周囲と比べて温度の低かった場所は、しだいに温度が高くなる。そして、いつしか、ふたつの箇所の温度は同じになる。このような熱の移動が無い状態を'''熱平衡'''という。
いっぽう、熱が、温度の低いところから、温度の高い所へと自然に移動することは無い。
さて、静止した物体での熱の伝わり方には、大きく分ければ、'''熱伝導'''と'''対流'''と'''熱放射'''の三つに分けられる。
=== 対流 ===
[[File:ConvectionCells.svg|thumb|right|300px|上と下とで温度差のある流体での、対流の一例。下から入力された熱は、対流によって流体上部へと運ばれ、流体表面からの熱放出によって冷やされた後は流体下部へと潜る。]]
液体と気体とを総称して'''流体'''という場合がある。文字通り、液体や気体は流れる事ができるから、流体という。静止している場合でも、便宜上、流体という場合がある。特に流体が静止していることを、呼称で明示したい場合には、静止流体などと呼ぶ場合もある。
気体や液体などの流体の一部に温度差があり、その流体が運動をすると、熱を持った物体そのものが運動をするので、結果的に熱を運ぶことになる。このような場合は、熱伝達といい、熱伝達と熱伝導とは区別される。とくに、その運動する流体の、運動の発生源が温度差による密度変化による場合は、この流体の運動は循環運動をする場合が多い。なぜなら、暖められて密度が軽くることで浮力が発生し、そのため暖められた流体が上方に移動し、かわりに元から上部にあった冷たい流体が押しのけられ、押しのけられた冷たい物体は重力によって降りてくる。このように、温度差によって生じる流体の循環運動のことを'''対流'''という。
{{clear}}
=== 熱放射 ===
[[Image:Hot metalwork.jpg|250px|thumb|right|可視光の熱放射が、このような熱された金具で見ることができる。赤外線領域での放射は、人間の目と画像で撮影されたカメラには見えないが、赤外線カメラでは撮影できる。]]
絶対零度以外の温度を持つ、すべての物体は電磁波を放出している。常温で放射する電磁波は赤外線領域にあり、人間の目には見えない。高温になるほど、物体の放射電磁波の周波数が高くなり、可視領域へと入っていく。溶鉱炉などで、高温で溶けた金属が光るのは、この放射光によるものである。このような高温物体から電磁波がでることを'''熱放射、'''あるいは単に'''放射'''という。熱輻射と言う場合もある。
この放射電磁波によっても、エネルギーが高温側の物体から低温側の物体に輸送される。低温側からも放射電磁波が出るが、高温側の物体のほうが放射電磁波のエネルギーが大きいので、差し引きして、結局は、高温側から低温側へとエネルギーが移る。
== 内部エネルギー ==
物体が静止していても、物質内の分子は熱運動をしていて、温度が高いほど、その運動が激しくなるのであった。そのため、静止している物体でも、温度による熱運動のエネルギーを持っている。また、静止している物体でも、その物体を構成する分子どうしが起こす分子間引力による位置エネルギーを持っている。
このような物体内部の運動エネルギーや位置エネルギーの総和を'''内部エネルギー'''という。記号はUで表す。温度が高いほど熱運動は激しくなるから、温度Tが高くなるにつれて内部エネルギーUも大きくなる。
=== 熱力学第一法則 ===
理想気体に、外から熱をあたえたとすると、気体の漏れなどが無ければ、与えた熱量Q[J]の分だけ内部エネルギーU[J]は増加する。
また、外から圧縮などをして力学的仕事W[J]を加えた場合も、その分だけ内部エネルギーは増加する。気体が外部に仕事W[J]をした場合は、その分だけ内部エネルギーU[J]が減る。
これらをまとめると、内部エネルギーU[J]の増加量をΔU、外から加えた熱量をQ[J]として、外部との力学的仕事のやりとりをW[J]とした場合、
:<math>\Delta U =Q-W\Longleftrightarrow Q=\Delta U+W</math>
となる。
(上式のWの符号は、気体が膨張して外部に力学的仕事をする場合は<math>W>0</math>、気体が外部から圧縮をされて力学的仕事をされる場合は<math>W<0</math>とする。)
この式<math> \Delta U =Q-W </math>は、気体の漏れなどが無ければ、必ず成り立つ。この式を、'''熱力学第一法則'''という。
なお、この記事では、Wの符号の向きとして、気体が行った仕事を正の向きに取ったが、他書によっては気体にされた仕事を正の向きに取る場合もある。その場合、式のWの符号が逆になるので注意のこと。Wの符号をどちらに定義するにせよ、気体が圧縮などの仕事をされたら、内部エネルギーは増え、気体が膨張して外部に仕事をしたら内部エネルギーは減る。
=== 断熱変化 ===
外部との熱のやりとりがない状態で、気体の圧力・体積・温度などの状態を変化させることを'''断熱変化'''あるいは'''断熱過程'''という。断熱変化のとき、第一法則の式(ΔU=Q+W)は、Q=0なので、
:<math> \Delta U =W </math>
である。
具体的に断熱変化と見なせる場合は、断熱性能の高い容器などに入れた気体で、特に熱源による加熱をせず、また冷却源による冷却などもしない場合は、気体の状態変化は断熱変化と見なして良い。また、断熱性能が通常の容器でも、特に熱源による加熱をせず、また冷却源による冷却などもしない場合なら、熱が伝わるにはある程度の時間が掛かるので、短時間的には断熱変化と近似しても良い場合もある。
=== 定積変化 ===
[[File:Isochoric process.png|thumb|right|240px|定積変化]]
体積を変えずに温度や圧力を変化させることを'''定積変化'''という。他の呼びかたでは、「等積変化」や「等容変化」や「定容変化」という場合もある。物理では定積変化という呼び方が一般に用いられるので、本記事でも、その呼び方に合わせる。
体積が変わらないので、仕事Wは W=0 である。
:<math> \Delta U =Q </math>
{{clear}}
=== 等温変化 ===
[[File: Isothermal_process.png|thumb|right|240px|等温変化。<br>黄色の面積が系が外部にする仕事になる。]]
気体が状態変化をするとき、温度が一定のまま、状態変化をすることを等温変化という。外部とは熱のやりとりが必要である。なぜならば、もし熱のやりとりが無いと、気体が膨張して外部に仕事をした場合は、仕事をした分だけ内部エネルギーが減ってしまい温度変化をしてしまう。だから、等温変化には外部との熱のやりとりが必要である。理想気体の場合は、
:<math>PV =</math>'''一定'''
である。
{{clear}}
=== 定圧変化 ===
[[File:Isobaric process.png|thumb|right|240px|定圧変化。<br>図の黄色の面積がW=PΔVとなる。]]
気体の圧力が一定のまま、体積や温度などの状態が状態変化をすることを'''定圧変化'''という。等圧変化ともいう。呼び方は、本記事では、なるべく「定圧変化」を用いるとする。
このとき、気体が行った力学的仕事Wと体積Vの関係は、
:<math> W=P \Delta V </math>
である。
== 熱膨張率 ==
物体は温度が上昇すると体積が膨張する。これを'''熱膨張'''('''熱膨脹'''、ねつぼうちょう、thermal expantion)という。温度が1[℃](あるいは1[K])上昇するに連れて体積の増加する割合を'''体膨張率'''(たいぼうちょうりつ、coefficient of cubical expansion)という。
いっぽう、長さが、温度の1℃増加あたりに、長さの膨張する割合を、'''線膨張率'''(せんぼうちょうりつ、coefficient of linear expantion)という。
金属は熱伝導率が高い。中でも銀Agが最も高く、Cu、Au、Al、などがこれに次いでいる。
線膨張率はプラスチックが最も高い。
線膨張率をαとして、長さをL、加熱後の長さの変化量をΔL、加熱後の温度上昇をΔTとすると、定義より
<math>\frac{\Delta L}{L}=\alpha\Delta T</math>
の関係式が成り立つ。
あるいは、以下のように記述することもできる。
:<math>L_t = L_0 (1 + \alpha t)</math>
:<math>V_t = V_0 (1 + \beta t)</math>
膨張量(あるいは温度変化の区間)が小さい場合の近似式として、線膨張率αと体積膨張率βとの間に、以下の近似式が知られている。
<math>\beta=3\alpha</math>
* 導出
導出は、物体の体積をV、その変化量をΔVとすると、
<math>V+\Delta V=\left(L+\Delta L\right)^3</math>
および
<math>V=L^3</math>
の関係より、
<math>1+\frac{\Delta V}{V}=\left(1+\frac{\Delta L}{L}\right)^3</math>
さらに、近似式
<math>\left(1+\frac{\Delta L}{L}\right)^3=1+3\frac{\Delta L}{L}</math>
により、
<math>1+\frac{\Delta V}{V}=1+3\frac{\Delta L}{L}</math>
両辺から1を引き、この問題設定では体積膨張率βが、
<math>\beta=\frac{\Delta V}{V}</math>
であり、線膨張率αが
<math>\alpha=\frac{\Delta L}{L}</math>
なので、結局は
<math>\beta=3\alpha</math>
となる。(以上、導出。)
[[カテゴリ:物理学]]
n2siq3v2ol8t43niusznskbca5lelcb
高校物理 波
0
21131
299688
299417
2026-05-20T10:04:09Z
Nermer314
62933
299688
wikitext
text/x-wiki
{{pathnav|高等学校の学習|高等学校理科|高等学校物理|高等学校 物理|pagename=波|frame=1|small=1}}
==波==
=== 波とは ===
湖などの静かな水面に小石を投げ込むと、石の着水した箇所を中心にして、波紋が広がっていく。
湖に小石を投げ込む例の場合、このとき水面に浮かんだ木の葉は、波の上下につられて、木の葉の位置も上下に振動はするが、しかし木の葉は波紋の広がる方向には流れていかない。木の葉は、前後左右方向には移動しない。このように水面にできる波のことを、水面波という。
このように、波というのは、振動の方向(水面波の場合は上下方向)と、波の伝わる方向(水面波の場合は前後左右方向)との2種類の方向を持っている。
この水面波のような、振動の方向と、波の伝わる方向とが、別方向の波を、横波という。
:※ 厳密にいうと、水面波は、横波ではない。液体の表面の波は、横波とは、やや違う機構である。縄跳びなどで一端を持ち上下に振動させると、波のような振動ができるが、それが横波である。厳密には、横波は、固体にしか伝わらない。地学などを学ぶときは、液体の表面の波は横波ではないとして扱うので、注意のこと、
水面波における水のように、波を伝える物質のことを'''媒質'''という。
また、小石の着水した場所のように、波において最初に振動が起きる場所を、'''波源'''という。
=== 波の発生と進行 ===
[[File:横波の発生と進行.svg|thumb|500px|波の発生と進行]]
波とは、右図のように、波源での振動が媒質を変位が伝わっていく現象である。
波形のもっとも高い場所を'''山'''といい、もっとも低い場所を'''谷'''という。
右図の場合、波源は手である。波が伝わるには時間が掛かる。波形が伝わる速度を v とすると、波形の移動距離をΔxとした場合、その間の時間をΔtとすれば、
:<math> v = \frac{\Delta x}{\Delta t} </math>
である。
{{-}}
=== 正弦波 ===
[[File:Transverse-wave y-x graph jp.svg|thumb|400px|横波 <br />y-x図<br />ある時刻での波形]]
波における、山の高さ、あるいは谷の深さを、'''振幅'''と言う。振動の大きさは、減衰が無ければ、波源で起きた振動の大きさと等しい。
山から次の山までの長さを、'''波長'''という。波長は谷と谷との間の長さでもある。山と山との間の長さは、谷と谷との間の長さに等しい。
{{-}}
[[File:正弦波の発生.svg|thumb|400px|正弦波の発生]]
一般に波は様々な形を取るが、高校物理では簡単な形状に限定する。
もっとも基本的な形の波として、正弦波が扱われるので、この正弦波の物理を考えていこう。正弦波とは、波形が正弦関数となる波である。また、右図の手の振動のように、波形が正弦波になるような波源の振動を、単振動という。
[[File:Simple harmonic oscillator.gif|frame|left|バネによって吊り下げられた重りの振動は、平衡点まわりでは正弦波として近似できる。]]
[[File:AC wave Positive direction.gif|frame|center|]]
{{-}}
:(※ ここに波のy-t図)
波の波形は移動するが、1つの yーxグラフ だけでは、その移動の速度などを図示できない。
波形と時間に関する関係を図示するため、yーtグラフが描かれることも多い。
波形は形が繰り返してるので、ある位置を1つの山が通過しても、しばらく時間が経過すれば、次の山が到来してきて、同じ形を繰り返す。ここで、同じ波形が現れるまでの時間を'''周期'''と呼ぶ。周期の単位は秒 s である。また、周期の記号は、 T と書かれる。
1秒間に同じ波形を繰り返す振動の回数を'''振動数'''という。振動数は、 f と書かれることが多い。周期が T のとき、T秒間に点が1度現れるのだから、1秒間には 1/T回の点が現れる。このことから、一般に正弦波については、
:<math>
f = \frac 1 T
</math>
が成り立つ。振動数の単位はヘルツ Hz が用いられるが、これは 1/s に等しい。
ここで、物質中を振動が伝わる速度を v と置く。物質の性質によって異なる定数であり、振動の性質にはよらない。例えば、音が空気中を伝わる速度は音の高低に関わらず一定である。波が伝わる速度と波の周期が与えられたとき、波が1周期のうちに進む距離を計算することができる。これは、例えば正弦波では波のある1点(例えば最も振動が正の向きに大きいとき)間の距離に対応する。この距離を波の'''波長'''と呼ぶ。
:波長の図
波長は通常<math>\lambda</math>で表される。波長<math>\lambda</math>は振動が1周期内に進む距離なので、波の速度vと周期Tを用いて計算できる。一般に
:<math>v = \frac \lambda T</math>
が成り立つ。
*式
波の波形における位置xと時間tと、その地点での変位 y の関係を式で表せる。なお、式の角度の単位は度数法(°)とする。90°で直角の単位である。
:<math>y = A \sin (360 ^\circ(\frac t T - \frac x \lambda))</math>
あるいは、
:<math>A \sin (360^\circ(\frac t T - \frac x \lambda) + \delta)</math>
のような式になる。
なぜ、上記のような式になるかを考えよう。
証明の簡単化のため、
:<math>y = A \sin (360^\circ(\frac t T - \frac x \lambda))</math>
の場合を考えよう。
まず、位置x=0のとき、周期と時間の定義から、その波形は、周期と同じ時間が経ったときに波形が1周するはずだから、
:<math>y(x=0,t) = A \sin (360^\circ \frac t T)</math>
のような形になるはずである。
つぎに、この振動が速度vで広がることを考えると、点 x での式は
:<math>A \sin (360^\circ\frac 1 T(t - \frac x v))</math>
となる。なぜなら、地点 x では、振動が <math>\frac x v</math> だけ遅れて来るからである。
この式 <math>y=A \sin (360^\circ \frac 1 T(t - \frac x v))</math> でも正弦波の公式なのだが、さらに <math>v = \frac \lambda T</math>の関係を用いると、この式は
:<math>y=A \sin (360^\circ (\frac t T - \frac x \lambda))</math>
と変形できる。
また、上の式の仮定では 時刻t=0 で 点x=0 では、振動が 0 だったと仮定しているが、実際にはその地点でちょうど正弦運動の最も高い部分や最も低い部分にいてもその波は正弦波となる。この分を取り入れるため、上の式に
:<math>y=A \sin (360^\circ(\frac t T - \frac x \lambda) + \delta)</math>
のように定数(ここでは<math>\delta</math>)を入れることもある。ここで<math>\delta</math>は位相と呼ばれる。
*問題例
**問題
振幅3 m, 周期2 s, 波長0.5 mで与えられる正弦波の式を述べよ。ただし位相は0としてよい。
**解答
:<math>
A \sin (360^\circ(\frac t T - \frac x \lambda))
</math>
を使えばよい。答えは
:<math>
3 \sin (360^\circ (\frac t 2 - \frac x {0.5}))
</math>
となる。
;備考(※ 範囲外)
水面を一定リズムでつついた時などの水面波は、たとえそのリズムの周期が精密に一定周期であっても、正弦波ではない。なぜなら、水面波の波面の発生のさい、水面の表面張力などが水面に作用していたり、さまざまな力が混ざっており、このため、水面波の波面の形状は、正弦波とは、ややズレている。また、媒質の水が部分的に円運動をしているなど、横波なのか縦波なのか、あまりハッキリとは区別できない。このように、水面波の仕組みは複雑である。
しかし、計算のための概略的な近似として、水面波の水面の形状にも近似的に正弦波を用いる場合がある。
== 縦波 ==
[[File:Longitudinal wave jp.svg|thumb|none|600px|縦波の模式図]]
図のように、ばねを水平に置き、端部を持ち、ばねの長さ方向に振動させると、波の振動の方向と、波の進行方向とが、同じ方向になる。
このように、振動の方向と、進行の方向とが、同じ方向である波を'''縦波'''という。
ばねの縦波の場合、図のように、ばねが引き伸ばされて'''疎'''になった部分と、ばねが集中して'''密'''になっている部分が、出来る。
ばねに限らず、一般に、縦波では必ず、疎密が出来るので、縦波のことを'''疎密波'''ともいう。
音の正体である音波も縦波である。音は、空気中や液体中を縦波として伝わる振動である。
[[File:Wanderwelle-Animation.gif|thumb|right|横波の伝わり方。]]
[[File:P-wave longitudinal-wave jp.svg|thumb|right|300px|縦波のイメージ。地震のP波は縦波である。]]
== 重ね合わせの原理 ==
=== 重ね合わせの原理 ===
[[File:Superposition-principle of wave jp.svg|thumb|500px|重ね合わせの原理]]
2つ以上の波が出会った場合を考えよう。2つ波が重なりあったとき、そこで得られる波の変位は、それらの波の変位を足しあわせたものになる。これを'''重ね合わせの原理'''という。
つまり、2つの波が重なっている、ある位置での波の変位を、それぞれ元の波の変位を y1 および y2 としたとき、その位置での、重ね合わさった波の変位 y は
:<math> y=y_1 + y_2 </math>
である。
波どうしは、ぶつかっても壊れず、そのままお互いを通り抜ける。また、波の速度も、重なっても、それぞれの波のもとの速度と同じままである。波が出会ったり、重なったりしても、けっして、相手の波の進行を妨げたりはしないし、相手の波から進行を妨げられたりもしない。つまり、相手の波と接触しても、波の進行は、相手の波とは無関係に、そのまま進行し続ける。このような性質を'''波の独立性'''という。
図では、単純な形の横波であらわしたが、縦波や、もっと複雑な形の波(横波・縦波とも)でも、同様に、重ね合わせの原理が成り立つ。
なお、複数の波が重なり合ってできた波を'''合成波'''という。
正弦波のみからなる合成波の式は[[高等学校数学II/三角関数#三角関数の合成|三角関数の合成]]で求めることができる。逆に、合成波の式を単一の正弦波の式に分解することもできる。一般に、合成波の式を別々の波の式に分解する手法として[[電子工学/フーリエ変換|フーリエ変換]]が知られる。
{{-}}
=== 定常波 ===
これからの節では、ひもの波が端で反射することを考える。
まず、そのための準備として、2つの波で、波長、振幅の等しくて方向の逆な2つの波があったとして、その波が重なることを考えよう。
[[File:Wavemachine.gif|thumb|ウェーブマシン。この動画では、定常波の実験は、していない。]]
ウェーブマシンを使うと、このような波が端部で反射して、波長・振幅の等しくて方向の逆な波の重なりあう様子が観測できる。
また、ギターの弦など、弦の振動では、このような波長、振幅の等しくて、方向の重なり合った波形が観測できる。(なお、ギターの場合、両端が固定されているが、このような状態を固定端という。のちの節で後述する。)
これらのような波の合成では、下図のような、波形の進行しない波ができ、これを'''定常波'''という、または定在波ともいう。
いっぽう、もとの波のように、波形が進む波を'''進行波'''という。
[[ファイル:Standing_wave.gif|frame|none|両端を固定した場合の定常波。振動していない赤い点が、節。節と節の中間に位置する振幅が最大の場所が、腹。波形が進行していない様子がわかる。]]
定常波で、まったく振動していない部分を'''節'''といい、大きく振動する部分を'''腹'''という。
では、理論的に定常波を考えていこう。
先ほどの節の合成波のように、こんどは2個の、大きさと波長の等しい進行波の波形を書いて、合成していこう。
1/4 周期ごとに波形を描くと、節と節の間の長さは、もとの波の波長の <math> \frac{ \lambda }{2}</math> となることが分かる。
[[File:定常波と進行波の関係.svg|thumb|500px|none|定常波と進行波の関係]]
節の部分では、合成結果がプラスマイナス0になるので、節では変位しないのである。
{{-}}
=== 自由端反射と固定端反射 ===
波は、媒質が変化する場所で反射する。また、波は端部で反射する。この節では、端部での波の反射について考える。
*固定端
[[File:Fixed-end-reflection jp.svg|thumb|280px|left|固定端反射<br />合成波は省略してある。波線部は仮想的な波形で、実際には観測できない。]]
[[File:固定端反射 with 合成波.svg|thumb|280px|right|合成波つきの固定端反射の図]]
端部が固定されている場合を'''固定端'''という。端部では変位が0であるから(端部の変位が0でないと「固定」という条件と矛盾する)、入射波と反射波とを合成した結果は、端部では合成波の変位が必ず0である。このためには、反射波の変位は、入射波と上下が反転していて、大きさは同じある必要がある。
結果的に、固定端の場合の反射波は、変位が上下の反転をしていて、変位の大きさ(絶対値)は同じで、進行方向が逆向きである。
{{-}}
*自由端
[[File:Free-end-reflection jp.svg|thumb|280px|left|自由端反射<br />合成波は省略してある。]]自由端反射は、図のように、単に折り返しただけである。
[[File:自由端反射 with 合成波.svg|thumb|280px|right|合成波つきの自由端反射の図]]
:(※ 記述中)
{{-}}
== 平面波 ==
=== 波の干渉 ===
[[File:Swimming Pool Interferometry.jpg|thumb|300px|波の干渉。(イメージ画像)]]
[[画像:Interferenz.jpg|thumb|left|2波の干渉]]
水面上で2点が振動すると、それぞれの点を波源に波紋が広がる。その2個の波紋が水面上で平面上に広がるので、波紋どうしが重なり合うので、合成波が出来る。
合成した場所によっては、山と山とが重なり合って大きく振動する場所もある。またある場所では、山と谷が重なり合って、振動を打ち消しあって、弱めあう場所もある。
このように、波と波とが重なって、振動を強めあったり弱めあったりすることを '''波の干渉''' という。
高校物理では、簡単のため、2つの波源の振動数が同じ場合を考える。
どこで干渉が強めあうかは、波長が決まれば、計算できる。この計算法を、高校物理の波の単元で習う。
[[File:Two-Slit_Diffraction.png|thumb|300px|干渉条件の作図が出来上がるまで、「二重スリットの実験」の図で代用。]]
ある点Pの、波源1からの距離を ''l1'' として( ''l1'' はベクトルではなく絶対値)、波源2からの距離を ''l2'' とした場合(ベクトルではなく絶対値)、距離の差が波長λの整数倍であれば、山と山とが重なり合い、谷と谷とが重なり合うので、
:<math>|l_1 - l_2| = m \lambda = 2m \times \frac{ \lambda }{2}</math>
である。
また、山と谷の間隔は、<math> \frac{ \lambda }{2}</math> なので、
:<math>|l_1 - l_2| = m \lambda + \frac{ \lambda }{2} = (2m+1) \times \frac{ \lambda }{2}</math>
のときに、波が弱めあう。
:(※ 記述中)
:(※ 作図をお願い)
=== ホイヘンスの原理 ===
波の位相が等しい点をつないだ面を、'''波面'''と呼ぶ。波面についての実験を紹介する。
波面が直線の波を直線波などという。
いっぽう、波紋を考えれば分かるように、波源の振動は、円弧上に広がっていく。このような円弧上の波面に注目して、このような、円弧の波面の波を球面波という。
[[File:Huygens principle.gif|thumb|300px|ホイヘンスの原理。図の左側が直線波をホイヘンスの原理で考えた例である。]]
ホイヘンスは、波面を無数の波源の集まりと見なせる、と考えた。次の図を参照せよ。
直線波の場合は、右図の通り。
また、このような '''ホイヘンスの原理'''で考えた場合の、無数の波源の1つ1つの作る波の1つ1つを'''素元波'''という。
光が空気中からガラスに入ると屈折するが、境界上での波の屈折などの現象は、ホイヘンスの原理によって、図のように説明できる。
たとえば直線波は、波源が直線上に並ぶ無数の素元波の重ね合わせと見なせる、とホイヘンスの原理では、考えることができる。
[[Image:Refraction - Huygens-Fresnel principle.svg|thumb|300px|ホイヘンスの原理による波の屈折]]
ある1点から伝わる波(例えば水面に何かを落とした場合)を作り、その様子を観察する。
この場合、生じる波は波が生じた1点(波源)を中心として、円になるはずである。これは、波源からの距離が等しい点は、同じ時刻に等しい位相を持つからである。
上の例は波がある1点から始まる場合である。波が複数の点から始まる場合には生じる波は既に述べた重ね合わせの原理から、これらの重ね合わせになるはずである。このことは例えば、波面が直線になる場合('''平面波''')のように、波源が連続的に存在する場合にも同様である。
ホイヘンスの原理を用いると波面の進行についていくつかの事柄を述べることができる。これらは個別に実験的に確認できる。
平面波の各点を波源とした場合、平面波の波面上の各点から等距離にある包絡線は、波面に平行な直線となる。このことから、平面波は直進することがわかる。
{{-}}
=== 屈折 ===
[[Image:Refraction - Huygens-Fresnel principle.svg|thumb|300px|ホイヘンスの原理による波の屈折。(再掲)]]
また、光が空気中からガラスに入ると屈折するが、媒質が変化すると屈折が起きるのは、速度が変わるからである。ホイヘンスの原理の図から分かるように、境界面から先では速度が変化してしまうから、波面が屈折してしまうのである。
また、この屈折の角度の比率から、波の速度の比率を出せる。
:<math> \frac{\sin i}{\sin r} = n_{12} </math>
である。値 <math> n_{12} </math> が'''屈折率'''である。
{{-}}
[[File:Refraction-index for-calculation jp.svg|thumb|400px|屈折率の式計算のための図]]
なぜなら、右図のように点A,B,C,Dを取ると、
:<math> \frac{AD \sin i}{AD \sin r} = \frac{v_1 t}{v_2 t} = \frac{v_1}{v_2} = n_{12} </math>
よって、
:<math>\frac{v_1}{v_2} = n_{12} </math>
である。
=== 回折 ===
[[Image:Refraction on an aperture - Huygens-Fresnel principle.svg|thumb|300px|ホイヘンスの原理による波の回折]]
回折は、すき間が小さいほど、 あるいは 障害物が小さいほど、回折が著しくなる。これは、ホイヘンスの原理によって、すき間などが小さいほど、そのあいだにある素元波の数が少なくなるので、波面を構成している素元波の個数が減り、素元波1つ1つの特徴が露わになるからだ、と考えられる。
====== 反射 ======
平面波が壁などにぶつかったとき、壁の各点を波源とした包絡線は、壁と平面波の波面の角度を保って、方向を反対にした平面となる。これは、反射の法則を表す結果である。
:[[画像:Reflection angles.svg|200px|反射]]
== 光 ==
=== 光の性質 ===
*光の種類
人間が目で感じ取れる光のことを'''可視光'''という。その色は光の波長によって異なる。太陽光のように、さまざまな波長を含んで色合いの感じ取れない光を'''白色光'''という。単一波長のみの光を'''単色光'''という。
一般に、光といえば可視光である。しかし、場合によっては赤外線・紫外線も光に含める。これらはともに'''電磁波'''の一種である。電磁波については[[高等学校物理/原子物理|原子分野]]を参照。
{{コラム|赤方遷移|遠い天体からの光の波長が伸びる現象を赤方遷移という。遠い天体からくる可視光線は地球に到達する頃には波長が長くなって赤外線になっているので、ハワイにあるすばる望遠鏡のような、赤外線にも対応した望遠鏡が有用である。遠くの天体ほど遷移が大きいことが判明しており、宇宙が膨張していると考えられた要因にもなっている。}}
*光の速さ
光が一瞬で伝わることは古代から知られていたが、古代ギリシャの哲学者たちの多くは、光は限りなく速い(光速の値が無限大)と考えていた。
座標の考え方を発明し、虹ができる仕組みを解明したルネ・デカルトや、天体運動論の先駆けとなったヨハネス・ケプラーも、光速の値は無限大と考えていた。
光の速さを最初に求めようとしたのは、イタリアのガリレオ・ガリレイである。ガリレオは、稲妻が輝くとき稲光の始点と終点を観測できることから、光速の値を有限と考え、以下のような実験を行った。
:①遠く離れた二つの山の頂上に2人の人物A、Bを立たせ、覆いを被せた灯火を持たせる。
:②Aが灯火の覆いを取ってBに光を送る。
:③Bは光が見えたら自分の灯火の覆いを取ってAに光を返す。Aはこの間の時間を測定する。
:④距離を変えながら同じ測定を繰り返し、距離と時間の差から光速を求める。
この実験では、光速の値が大きすぎたため、求めることはできなかった。しかし、光速が無限ではなく有限の値であると考えた点で意義のある実験である。
デンマークのオーレ・レーマーは、木星を回る衛星の蝕(木星の背後に隠れる現象)を観察し、蝕の間隔が木星と地球の位置関係により異なることから光速の値が有限であることを証明した。この測定結果をもとに、クリスティアーン・ホイヘンスが光速の値を計算した。求まった値は約2.2×10<sup>8</sup>であった。
地球上の測定可能な距離を使って初めて光速を測定しようと試みたのはフランスのアルマン・フィゾーとレオン・フーコーである。2人は初めは共同して光速の測定を試みたが、意見の対立からそれぞれ独自に研究を進めた。
フィゾーは、ハーフミラー(光の一部を反射させ、一部を透過する鏡)と平面鏡の間に歯車を置いた装置で光速を測定した。
:歯数N、隙間の数Nの歯車の回転数をf、回転周期をT、平面鏡と歯車の距離をLとする。また、光源は観測者とハーフミラーを結ぶ直線に対して直角の方向にあり、光源を出てハーフミラーに当たった光は平面鏡の方面に反射し、平面鏡から戻ってきた光はハーフミラーを透過して観測者の目に入るものとする。
:歯車がゆっくり回転しているときはある隙間Aを通り抜けて平面鏡で反射した光が同じ隙間Aを通って戻るので明るく見える。
:fの値を大きくしていくと、反射光が隙間Aの隣の歯Bに遮られ、観測者に届かなく状況が生じる。
:最初に最も暗くなるのは、光が往復距離2Lを進む間(1)に歯車の隙間を隣の歯が遮る分だけ回転する(2)ときである。
:このとき、(1)に要する時間は<math>\frac{2L}{c}</math>、(2)に要する時間は<math>\frac{T}{2N} = \frac{1}{2Nf}</math>なので、<math>\frac{2L}{c} = \frac{1}{2Nf}</math>すなわち<math>c = 4NfL</math>のとき、最初に最も暗くなる。
この実験において、L=8633 m, N=720, f=12.6 /sであった。求めた式に代入すると、cの値は約3.13×10<sup>8</sup>と求まる。
それから1年後、フーコーは、20ヤード(約18m)の距離で光速を測定できる装置を開発した。装置の改良を進めた結果、光速の値は約2.98×10<sup>8</sup>と求まった。
この装置では、水中における光速も測定できた。フーコーは水中に於いて光速の値が空中での値より小さくなることを証明し、光は粒子ではなく波動だとする説が採用された(光粒子説では、光の屈折を粒子が力を受けて加速するためと考えていたので、それが否定された)。なお、今日では光を粒子でも波動でもあるとする説が採用されている([[高等学校物理/原子物理|原子物理]]を参照)。
現在では、真空中での光速の値は2.99792458×10<sup>8</sup>であることが知られている。この値を元に、今日では光が<math>\frac{1}{299792458}</math>秒の間に進む距離を1 mと定義している。
*光の分散・スペクトル
白色光をプリズムに通すと、赤から紫まで連続的に分かれた光がみえる。これは、屈折率が光の波長によって異なるためで、それぞれの光がそれぞれの波長に応じた角度で屈折するためである。
このように、光が屈折により様々な色の光に分かれることを光の'''分散'''という。光をその波長で分けたものを'''スペクトル'''という。光を分散させてスペクトルを得る装置を'''分光器'''という。
なお、赤外線・紫外線という名前の由来は、光を分散させたときにそれぞれ赤・紫よりも外側の領域に屈折することである。
白熱灯の光は、高温のフィラメントから出る光であり、そのスペクトルは様々な波長の光が広範囲で連続的に並んでいるので、'''連続スペクトル'''という。一方、水銀灯などの光は、幾つかの輝いた線('''輝線''')が飛び飛びに分布しているので、'''線スペクトル'''という。一般に、高音の固体・液体から出る光は連続スペクトル、高温の気体が出す光はその気体特有の線スペクトルである。
ナトリウムを含む化合物をガスバーナーで熱し、高温になった蒸気は黄色の線スペクトルを示す。一方、高温の白熱灯の光をナトリウム蒸気に通すと、白熱灯の連続スペクトルから黄色の線スペクトルが抜けたスペクトルを得る。これは、ナトリウムが黄色の線スペクトルを吸収したことを示し、これを'''吸収スペクトル'''という。
太陽の連続スペクトルの中には多くの暗線('''フラウンホーファー線''')が見られる。これは、太陽から発せられた連続スペクトルを持つ光が、太陽や地球の大気に一部を吸収されて生じた吸収スペクトルである。フラウンホーファー線の波長から、太陽近辺に水素・ヘリウム・ナトリウム・マグネシウム・カルシウム・鉄などの元素が分布することが判明した。
{{コラム|虹|虹は、空気中に浮かんでいる水滴によって太陽光が2回屈折するときの分散で起こる。このとき、入射光と反射する赤色の光との角度は約42°である。通常は入射光の水滴内での反射は1回だが、反射が2回起こることもある。このとき、虹の外側に暗い虹が出現し、内側の明るい虹を主虹、外側の暗い虹を副虹という。虹は本来は完全な円形であり、条件が良ければ環状になった虹を観測できる。虹に関連した自然現象としては、ハロ・幻日・環天頂アーク・環水平アーク・幻日環・ラテラルアークなどがある。
<br>
文化的な話をすると、「虹の袂には宝物が埋まっている」とする伝説が世界各地に残っている。また、虹の色の数は文化によって異なる。日本・韓国・オランダ・イタリアでは7色だが、アメリカ・イギリスでは6色、ドイツ・フランス・中国・メキシコでは5色、インドネシアでは4色、南アジアでは2色と、かなり差がある。これは、色の分節の仕方・その色を表す語彙の有無が国や文化によって異なるためである。}}
*光の散乱
光が微細粒子に当たると、通常の反射とは異なり、光が四方に散る。このような現象を、光の'''散乱'''という。
大気中の気体分子のように光の波長より小さな粒子による散乱では、波長が短いほど散乱される割合が大きい。太陽光が大気を通過するとき、波長の短い青系統の光は大気中で多く散乱され、私たちの目に入る。よって、晴れた昼間の空は青く見える。夕方は太陽光が大気中を長い距離を通過するため、最後まで散乱されずに残った赤系統の光が目に多く入り、空が赤く見える。
なお、大気の密度の{{ruby|斑|むら}}や目の感度などの事情で、空は紫ではなく青く見える。
光の波長と同じ程度の大きさの粒子による散乱では、どの色もほぼ同じ強さで散乱されるので、様々な波長の光が混ざった白色光に見える。雲がほぼ白色なのは、これが理由である。
*偏光
太陽光や電灯の光は、様々な方向に振動する横波の集まりであり、このような光を'''自然光'''という。一方、自然光が結晶などを通過したとき、振動方向が特定の方向に偏る場合がある。このように、振動方向が偏った光を'''偏光'''という。偏光を作る板を'''偏光板'''という。自然光を1枚の偏光板に通して見るとき、偏光板を回転させて通過する光の振動方向を変えても、明るさは変化しない。これは、自然光には様々な方向に振動する光が含まれているからである。自然光を2枚の偏光板に通してみるとき、片方の偏光板を回転させると回転角によって明るさが変化し、丁度90度になるところで完全に何も見えないほど暗くなる。
光が縦波であれば、波の進行方向と振動方向が等しいので偏光は起こらない。偏光が起こることから、光は縦波でなく横波であることがわかる。
自然光がガラスや海面などに反射するとき、特定方向の偏光を多く含むようになる。このとき、偏光板を用いて反射光を取り除くと、反射面の先がよく見えるようになる。これは、カメラの偏光フィルタや釣りの際のサングラスなどに応用されている。
=== 屈折 ===
平面波が屈折率の異なる2つの物質の間を通過したとき、その波面は物質の屈折率の比に応じて屈折する。このことも反射の場合と同様の理由で示される。ただし、屈折率の違いに応じて、物質中の波の速度が異なることを用いる。
:作図
また、屈折率に応じてある反射角に対する屈折角は変化するが、その大きさを表す式をスネルの法則と呼ぶ。
:<math>
n _i \sin \theta _i = n _r \sin \theta _ r
</math>
ここで、
<math>\theta _i,\theta _r,n _i,n _r</math>はそれぞれ入射角、屈折角、入射する側の物質の屈折率、入射される側の物質の屈折率に対応する。
<!--
また、屈折が起こるときには同時に反射も起こっている。反射される波と屈折する波の割合は各々の物質の屈折率によって決まる。
-->
* 全反射
屈折率が大きい媒質から小さい媒質に光が入るときに、入射光が境界面を透過せず、すべて反射する現象が起きる。これを全反射という。全反射は、入射角が大きくなると起こる。
[[Image:RefractionReflextion.svg|thumb|center|650px|屈折(左図)と全反射(右図)。]]
全反射が起こる限界の角度を'''臨界角'''という。
臨界角よりも入射角が大きいと全反射が起こる。
臨界角 ''θ<sub>c</sub>'' は以下のように表される。
:<math>\sin \theta_c = \left( \frac{n_2}{n_1} \right) </math>
:{|
|''n<sub>1</sub>''
|:
|入射元の物質の屈折率
|-
|''n<sub>2</sub>''
|:
|入射先の物質の屈折率
|}
{{コラム|蜃気楼|}}
===レンズ===
*レンズの種類
*凸レンズによる実像
*凸レンズによる虚像
*凹レンズによる実像
*凹レンズによる虚像
*レンズの写像公式
*組合せレンズ
{{コラム|顕微鏡・望遠鏡の原理}}
===鏡===
*鏡の種類
*凹面鏡による実像
*凹面鏡による虚像
*凸面鏡による実像
*凸面鏡による虚像
*鏡の写像公式
=== 回折 ===
*回折とは
[[File:Wavelength=slitwidthspectrum.gif|thumb|回折]]
平面波が細いスリットを通過したとき、通過した後の波は円状になる。これは、波源が1点に収縮されたためである。
*ヤングの実験
*回折格子
*薄膜干渉
*ニュートンリング
[[カテゴリ:振動と波動]]
r8xxentkk1vmvu5rfu6lf5s61nuqouv
高等学校物理基礎/力学
0
24775
299682
286769
2026-05-20T09:58:38Z
Nermer314
62933
299682
wikitext
text/x-wiki
{{pathnav|高等学校の学習|高等学校理科|高等学校物理|高等学校 物理基礎|pagename=力学|frame=1|small=1}}
=物体の運動=
==位置と変位==
[[File:高校物理I 等速直線運動 平均の速度.svg|thumb|280px|変位]]
直線上を物体が運動するとき,直線に沿って座標軸(<math>x</math>軸)をとることで物体の'''位置'''({{Lang-en-short|position}})を表せる。物体の位置変化を'''変位'''({{Lang-en-short|displacement}})といい,時刻<math>t_1,\ t_2\ (t_1<t_2)</math>〔単位:s(秒)〕における物体の位置がそれぞれ<math>x_1,\ x_2</math>〔単位:m(メートル)〕であるとき,変位<math>\mathit{\Delta}x</math>は
:<math>\mathit{\Delta}x=x_2-x_1</math>
であり。変位の大きさが2点間距離を表し,正負の符号が移動方向を表す。
==速度==
===速さ===
物体が運動するとき, その移動距離を経過時間で割ったもの, すなわち単位時間あたりの移動距離を'''速さ'''({{Lang-en-short|speed}})という。速さにおいては向きを考えない。運動している物体の移動距離を<math>s</math>, 経過時間を<math>\mathit{\Delta}t</math>とすると, 物体の速さ<math>v</math>は次のように表される。
:<math>v = s \div \mathit{\Delta}t=\frac{s}{\mathit{\Delta}t}</math>. (1.1)
速さの単位は時間と距離の単位によって決まる。よく用いられるのは, m/s(メートル毎秒)である。また, 日常生活では距離の単位をkm(キロメートル), 時間の単位をh(時)とするkm/h(キロメートル毎時)もよく使われる。
===速度===
速さが同じでも向きが異ならば異なる方向に進む。運動の様子を知るには速さだけでなく向きも考えねばならない。速さに向きの要素を加えたもの,すなわち単位時間あたりの変位を'''速度'''({{Lang-en-short|velocity}})という。たとえば、西へ走る40㎞/hの車Aと東へ走る40㎞/hの車Bは速さは等しいが、向きは反対である。このことを表すために正負の記号を利用する。つまり、西を正・東を負とするとAの速度は+40㎞/h, Bの速度は-40㎞/hと表記できる。
このように大きさと向きを持つ量を'''ベクトル'''({{Lang-en-short|vector}}, 独: Vektor)といい, その記号は<math>\vec{v}</math>と書く。ただし, 先ほどのように直線上(1次元)においては速度の値に±が書かれている場合には矢印を省略して単に<math>v</math>と書いてもよい。逆に,速さのように大きさのみを持つ量を'''スカラー'''({{Lang-en-short|scalar}})という。
なお,平面(2次元)・空間(3次元)上の運動や高度な運動の表し方等は後程説明する。
===平均速度と瞬間速度===
[[File:平均速度と瞬間速度.svg|thumb|300px|平均速度と瞬間速度]]
時刻<math>t_1</math>[s]における位置を<math>x_1</math>[m], 時刻<math>t_2</math>[s]における位置を<math>x_2</math>[m](ただし<math> t_1<t_2 </math>)としたとき, 位置の変位は<math>x_2 - x_1 = \mathit{\Delta}x</math>, 経過時間は<math>t_2 - t_1 = \mathit{\Delta}t</math>で表される。このとき,
:<math>\bar v = \frac{x_2 - x_1}{t_2 - t_1} =\frac{\mathit{\Delta}x}{\mathit{\Delta}t}</math>. (1.2)
(1.2)はある区間における単位時間あたりの変位を表している。こうして求められる速度を'''平均速度'''<math>\bar v</math>(バーvと読む)という。なお,(1.1)で得られた速さも経過時間における平均の速さである。
このとき<math>\mathit{\Delta}t</math>の値を極めて小さくする(すなわち<math>t_2</math>を限りなく<math>t_1</math>に近づける)と平均速度<math>\bar v</math>は時刻<math>t_1</math>における'''瞬間速度'''を表す。時刻<math>t</math>における瞬間速度<math>v</math>は以下のように位置<math>x</math>の一階微分で求められる。
:<math>v =\lim_{\mathit{\Delta}t\to 0}\frac{\mathit{\Delta}x}{\mathit{\Delta}t} =\frac{dx}{dt}</math>.
普通,速度(速さ)は瞬間速度(速さ)をさす。自動車などの速度計に代表される速さの測定器で表示される数値は瞬間の速さである。
===等速直線運動===
<gallery widths=300px heights=250px>
File:等速直線運動 x-t.svg|等速直線運動 x-t グラフ
File:等速直線運動 v-t.svg|等速直線運動 v-t グラフ
</gallery>
一直線上を一定の速さで進む運動を'''等速直線運動'''({{Lang-en-short|linear motion of uniform speed}})あるいは'''等速度運動'''({{Lang-en-short|motion of uniform velecity}})という。時刻<math>t</math>において位置<math>x(0)</math>から<math>+ x</math>方向に速度<math>v</math>で等速直線運動した物体の位置<math>x(t)</math>は(<math>x(t)</math>は<math>x</math>が時刻<math>t</math>の関数であることを表す)
:<math>x(t) =\int vdt = vt+C</math>. (<math>C</math>は積分定数)
時刻<math>t=0</math>において
:<math>x(0)=v\cdot 0+C=C\Longleftrightarrow C=x(0)</math>.
したがって
:<math>x(t)=x(0)+vt</math>
となる。この初期位置<math>x(0)</math>は'''初期条件'''({{Lang-en-short|initial condition}})である。なお,変位<math>\mathit{\Delta}x = x(t) - x(0)</math>とおくと
:<math>\mathit{\Delta}x = vt</math>.
===速度の合成と分解===
流れるプールや動く歩道(エスカレーター)を想像すると,流れに乗って動くときと流れに逆らって動くときでは感覚が違うであろう。動く歩道上を(動く歩道の進行方向と同じ向きに)歩く人の速さは,静止歩道上に歩く人の速さよりも大きくなる。これは歩行速度に動く歩道の速度が加わるからである。
====直線上での速度の合成====
船が川の流れに対して平行に進んでいる場合を考える。静水中の船の速度を<math>v_1</math>,地面に対する川の水の流れの速度を<math>v_2</math>とするとき,地面に対する船の速度<math>v</math>は次式で表される。
:<math>v = v_1 + v_2</math>.
物体の速度<math>v</math>が上式のように表されるとき,速度<math>v</math>を<math>v_1</math>と<math>v_2</math>との'''合成速度'''といい,合成速度を求めることを'''速度の合成'''という。直線上の運動では,どの向きを正とするかを考えてから速度の和を取る。
====平面上(2次元)での速度の合成====
[[File:速度の合成 川を横切る船.svg|thumb|280px|速度の合成]]
水が流れている川の上を横切ろうとする船を考える。流水中でも静水中と同じ出力で船が動く場合,静水中での速度が<math>\vec{v_1}</math>の船が水の流れる速度が<math>\vec{v_2}</math>である川の上を横切るとき,地面に対する船の速度<math>v</math>は次式で表される。
:<math>\overrightarrow v = \vec{v_1}+\vec{v_2}</math>. (1.3)
右図のように,川の流れの速さのぶんだけ船は下流に流される。よって,合成速度の向きは図のように斜めの方向になる。
====速度の分解====
(1.3)は速度<math>\overrightarrow v</math>を速度<math>\vec{v_1},\ \vec{v_2}</math>に分ける式と考えることもできる。このような見方を'''速度の分解'''といい,分解された速度<math>\vec{v_1},\ \vec{v_2}</math>を'''分速度'''という。
2次元において,速度<math>\overrightarrow v</math>をたがいに垂直な座標軸である<math>x</math>軸,<math>y</math>軸方向へ分解し,それぞれの分速度を<math>\vec{v_x},\ \vec{v_y}</math>とする。分速度<math>\vec{v_x},\ \vec{v_y}</math>の大きさに座標軸の向きを表す正負の符号をつけたものを,<math>\overrightarrow v</math>の<math>x</math>成分,<math>y</math>成分といい,それぞれ<math>v_x,\ v_y</math>とすると,<math>\overrightarrow v =(v_x,\ v_y)</math>と表せる。このとき,<math>\overrightarrow v</math>の大きさ(速さ)を<math>v, \overrightarrow v</math>と<math>x</math>軸とのなす角を<math>\theta</math>とすると
:<math>v_x = v\cos \theta,\ v_y = v\sin \theta,\ v = \sqrt{{v_x}^2 + {v_y}^2}</math>.
===相対速度===
[[File:相対速度 電車の中から見た場合.svg|thumb|280px|相対速度 電車の中から見た場合]]
動く物体Aから観測した他の物体Bの速度のことを,'''Aに対するBの相対速度'''({{Lang-en-short|relative velocity}})という。観測者の速度が基準である。
動いている電車の中に観測者がおり,外は雨が降っているとする。電車の中の観測者から見て,雨の速度はどう見えるか? 雨の方向と電車の動く方向とが違う為,ベクトルで考える必要がある。
電車の速度を<math>\overrightarrow{v_\text{A}}</math>とし,雨の速度(つまり雨の落下速度)を<math>\overrightarrow{v_\text{B}}</math> とする。この関係をベクトルで表記すると
:<math>\overrightarrow{v_\text{AB}} = \overrightarrow{v_\text{B}} - \overrightarrow{v_\text{A}}</math>.
==加速度==
[[File:瞬間の加速度.svg|thumb|300px|平均加速度と瞬間加速度]]
速度のグラフの傾き,ある瞬間の速度の増減の度合い,すなわち,単位時間あたりの速度変化を'''加速度'''({{Lang-en-short|acceleration}})〔単位:m/s<math>^2</math>(メートル毎秒毎秒)〕という。
時刻<math>t_1</math>での速度を<math>v_1</math>,時刻<math>t_2</math>での速度を<math>v_2</math>とした場合,単位時間当たりの速度の変化量を表す'''平均加速度'''<math>\bar a</math>は次式で表される。
:<math>\bar a= \frac{v_2 - v_1}{t_2-t_1}= \frac{\mathit{\Delta}v}{\mathit{\Delta} t}</math>.
このとき<math>\mathit{\Delta}t</math>の値を極めて小さくする(すなわち<math>t_2</math>を限りなく<math>t_1</math>に近づける)と平均加速度<math>\bar a</math>は時刻<math>t_1</math>における'''瞬間加速度'''を表す。普通,加速度は瞬間加速度をさす。時刻<math>t</math>における(瞬間)加速度<math>a</math>は以下のように速度<math>v</math>の一階微分又は位置<math>x</math>の二階微分で求められる。
:<math>a =\lim_{\mathit{\Delta}t\to 0}\frac{\mathit{\Delta}v}{\mathit{\Delta}t} =\frac{dv}{dt}= \frac{d^2 x}{dt^2}</math>. (1.4)
===等加速度直線運動===
滑らかな斜面上で物体を静かに放すと物体は一定加速度で直線運動する。このような運動を'''等加速度直線運動'''({{Lang-en-short|linear motion of uniform acceleration}})という。
加速度<math>a</math>で等加速度直線運動をしている物体を考える。時刻<math>t</math>における物体の速度<math>v(t)</math>は
:<math>v(t) =\int adt = at+C_1</math>. (<math>C_1</math>は積分定数)
時刻<math>t=0</math>において
:<math>v(0)=a\cdot 0+C_1=C_1\Longleftrightarrow C_1=v(0)</math>.
したがって
:<math>v(t)=v(0)+at</math> (1.5)
となる。更に,時刻<math>t</math>における物体の位置<math>x(t)</math>は
:<math>x(t) =\int v(t)dt =\int (v(0)+ at)dt = v(0)t + \frac{1}{2} at^2+C_2</math>. (<math>C_2</math>は積分定数)
時刻<math>t=0</math>において
:<math>x(0)=v(0)\cdot 0+\frac{1}{2}a\cdot 0^2+C_2=C_2\Longleftrightarrow C_2=x(0)</math>.
したがって
:<math>x(t)=x(0)+v(0)t+\frac{1}{2}at^2</math> (1.6)
となる。これら初速度<math>v(0)</math>,初期位置<math>x(0)</math>は初期条件である。
また,(1.5)を変形すると
:<math>t =\frac{v(t) - v(0)}{a}</math>
が得られ,これを(1.6)に代入すると
:<math>x = x(0)+ v(0)\frac{v(t) - v(0)}{a} + \frac{1}{2} a\left(\frac{v(t) - v(0)}{a}\right)^2 \quad\therefore v(t)^2 - v(0)^2 = 2a(x(t)- x(0))</math> (1.7)
が得られる。なお,変位<math>\mathit{\Delta}x= x(t)- x(0)</math>とおくと,(1.6), (1.7)は
:<math>\mathit{\Delta}x = v(0)t + \frac{1}{2} at^2</math>
:<math>v(t)^2 - v(0)^2 = 2a\mathit{\Delta}x</math>
に変形できる。
===2次元・3次元における位置・速度・加速度===
時刻<math>t</math>における位置は2次元においては<math>\overrightarrow r(t)=(x(t),\ y(t))</math>,3次元においては<math>\overrightarrow r(t)=(x(t),\ y(t),\ z(t))</math>と定義される。以下では主に3次元の場合を中心に説明する。
時刻<math>t</math>における位置は<math>\overrightarrow r(t)=(x(t),\ y(t),\ z(t))</math>,微小時間<math>\mathit{\Delta}t</math>間の変位は<math>\mathit{\Delta}\overrightarrow r =\overrightarrow r(t +\mathit{\Delta}t)-\overrightarrow r(t)=(\mathit{\Delta}x,\ \mathit{\Delta}y,\ \mathit{\Delta}z)</math>と定義される。このとき
:<math>\bar \overrightarrow v =\frac{\overrightarrow r(t +\mathit{\Delta}t)-\overrightarrow r(t)}{\mathit{\Delta}t}=\frac{\mathit{\Delta}\overrightarrow r}{\mathit{\Delta}t}</math>
を<math>\mathit{\Delta}t</math>間の平均速度,<math>\mathit{\Delta}t\to 0</math>の極限
:<math>\overrightarrow v(t)=\lim_{\mathit{\Delta}t\to 0}\frac{\overrightarrow r(t +\mathit{\Delta}t)-\overrightarrow r(t)}{\mathit{\Delta}t}=\frac{d\overrightarrow r(t)}{dt}=\left(\frac{dx(t)}{dt},\ \frac{dy(t)}{dt},\ \frac{dz(t)}{dt}\right)=(v_x(t),\ v_y(t),\ v_z(t))</math> (1.8)
を時刻<math>t</math>での(瞬間)速度という。なお,時刻<math>t</math>での速さ(速度の大きさ)は
:<math>v(t) =|\overrightarrow v(t)|=\sqrt{v_x(t)^2 +v_y(t)^2 +v_z(t)^2}</math>.
この場合も,速度から位置が求まり,各成分毎に
:<math>x(t)= x(0)+\int _0 ^t v_x(t)dt</math>
:<math>y(t)= y(0)+\int _0 ^t v_y(t)dt</math>
:<math>z(t)= z(0)+\int _0 ^t v_z(t)dt</math>
が成り立ち,これらをベクトルを用いてひとまとめにして任意の時刻<math>t</math>における位置
:<math>\overrightarrow r(t)=\overrightarrow r(0)+\int _0 ^t\overrightarrow v(t)dt</math> (1.9)
が求められる。
また,
:<math>\bar \overrightarrow a =\frac{\overrightarrow v(t +\mathit{\Delta}t)-\overrightarrow v(t)}{\mathit{\Delta}t}=\frac{\mathit{\Delta}\overrightarrow v}{\mathit{\Delta}t}</math> (<math>\mathit{\Delta}\overrightarrow v</math>は微小時間<math>\mathit{\Delta}t</math>間の速度変化)
を<math>\mathit{\Delta}t</math>間の平均加速度,<math>\mathit{\Delta}t\to 0</math>の極限
:<math>\begin{align}\overrightarrow a(t)=\lim_{\mathit{\Delta}t\to 0}\frac{\overrightarrow v(t +\mathit{\Delta}t)-\overrightarrow v(t)}{\mathit{\Delta}t}& =\frac{d\overrightarrow v(t)}{dt}=\left(\frac{dv_x(t)}{dt},\ \frac{dv_y(t)}{dt},\ \frac{dv_z(t)}{dt}\right)\\ & =\frac{d^2\overrightarrow r(t)}{dt^2}=\left(\frac{d^2x(t)}{dt^2},\ \frac{d^2y(t)}{dt^2},\ \frac{d^2z(t)}{dt^2}\right)\end{align}</math> (1.10)
を時刻<math>t</math>での(瞬間)加速度という。
この場合も,加速度から速度が求まり,各成分毎に
:<math>v_x(t)=v_x(0)+\int _0 ^t\frac{dv_x(t)}{dt}dt</math>
:<math>v_y(t)=v_y(0)+\int _0 ^t\frac{dv_y(t)}{dt}dt</math>
:<math>v_z(t)=v_z(0)+\int _0 ^t\frac{dv_z(t)}{dt}dt</math>
が成り立ち,これらをベクトルを用いてひとまとめにして任意の時刻<math>t</math>における速度
:<math>\overrightarrow v(t)=\overrightarrow v(0)+\int _0 ^t\overrightarrow a(t)dt</math> (1.11)
が求められる。なお,これら初期条件<math>\overrightarrow r(0), \overrightarrow v(0)</math>の値を初期値という。
特に,加速度一定のときの運動は'''等加速度運動'''({{Lang-en-short|motion of uniform acceleration}})といわれ,上記の公式(1.11, 9)はそれぞれ
:<math>\begin{cases}\overrightarrow v(t)=\overrightarrow v(0)+\int _0 ^t\overrightarrow adt=\overrightarrow v(0)+\overrightarrow at \\ \overrightarrow r(t)=\overrightarrow r(0)+\int _0 ^t(\overrightarrow v(0)+\overrightarrow at)dt =\overrightarrow r(0)+\overrightarrow v(0)t +\frac{1}{2}\overrightarrow at^2\end{cases}</math> (1.12)
となる。
==落体の運動==
===自由落下===
重力だけが働いて初速度0で落下する運動を'''自由落下'''という。
===鉛直投射===
====鉛直投げ下ろし====
鉛直下向きに<math>y</math>軸をとり,投げ下ろした時刻を<math>t = 0</math>として,物体を投げ下ろした位置を<math>y_0</math>,初速度の大きさを<math>v_0</math>,時刻<math>t</math>における物体の速度を<math>v</math>,位置を<math>y</math>とすると,加速度は重力加速度<math>g</math>であるから
:<math>v = v_0 + gt</math>
:<math>y = y_0 + v_0 t + \frac{1}{2} gt^2</math>
:<math>v^2 - v_0^2 = 2g(y - y_0)</math>
が得られる。なお,物体の初速度の大きさ<math>v_0 = 0</math>,すなわち物体が前述の'''自由落下'''運動をするとき,上3式は
:<math>v = gt</math>
:<math>y = y_0 + \frac{1}{2} gt^2</math>
:<math>v^2 = 2g(y - y_0)</math>
となり,自由落下の式が得られる。
====鉛直投げ上げ====
鉛直上向きに<math>y</math>軸をとり,投げ上げた時刻を<math>t = 0</math>として,物体を投げ上げた位置を<math>y_0</math>,初速度の大きさを<math>v_0</math>,時刻<math>t</math>における物体の速度を<math>v</math>,位置を<math>y</math>とすると,加速度は重力加速度<math>-g</math>であるから
:<math>v = v_0 - gt</math>
:<math>y = y_0 + v_0 t - \frac{1}{2} gt^2</math>
:<math>v^2 - v_0^2 = -2g(y - y_0)</math>
が得られる。
===水平投射===
物体をある高さから水平方向に投げ出すことを'''水平投射'''という。
物体を水平方向に初速度の大きさ<math>v_0</math>で投げ出したときの運動を考える。初速度の向きに<math>x</math>軸,鉛直下向きに<math>y</math>軸をとり,時刻<math>t</math>における物体の位置を<math>\overrightarrow r(t)=(x(t),\ y(t))</math>,速度を<math>\overrightarrow v(t)=(v_x(t),\ v_y(t))</math>とする。物体を投げ出した時刻を<math>t = 0</math>,物体を投げ出した位置を<math>\overrightarrow r(0)=(0,\ 0)</math>とする。初速度<math>\overrightarrow v(0)=(v_0,\ 0)</math>である。<math>x</math>軸方向には正の向きに速さ<math>v_0</math>の等速度運動,<math>y</math>軸方向には初速度0,正の向きに加速度<math>g</math>の等加速度運動をするから,時刻<math>t</math>における物体の加速度<math>\overrightarrow a =\left(\frac{dv_x}{dt},\ \frac{dv_y}{dt}\right)</math>は
:<math>\overrightarrow a =(0,\ g)</math>.
したがって,(1.12)より
:<math>\overrightarrow v(t)=\overrightarrow v(0)+\int _0 ^t\overrightarrow adt =(v_0,\ gt).\ \left(\because v_x(t)= v_0 +\int _0 ^t 0dt = v_0,\ v_y(t)= 0 +\int _0 ^t gdt = gt\right)</math>
これを(1.9)に代入すると
:<math>\overrightarrow r(t)=\overrightarrow r(0)+\int _0 ^t\overrightarrow v(t)dt =\left(v_0t,\ \frac{1}{2}gt^2\right).\ \left(\because x(t)= 0 +\int _0 ^t v_0dt =v_0t,\ y(t)= 0 +\int _0 ^t gtdt =\frac{1}{2}gt^2\right)</math>
以上より
:<math>v_x = v_0</math>
:<math>v_y = gt</math>
:<math>x = v_0t</math> (1.13)
:<math>y =\frac{1}{2}gt^2</math> (1.14)
となる。(1.13)より
:<math>t =\frac{x}{v_0}</math>
となり,(1.14)に代入すると
:<math>y =\frac{1}{2}g\left(\frac{x}{v_0}\right)^2 =\frac{gx^2}{2v_0^2}</math> (1.15)
が得られる。
===斜方投射===
[[File:斜方投射の運動.svg|thumb|400px|斜方投射]]
物体を斜め向きに投げ出すことを'''斜方投射'''という。
図のように物体を初速度の大きさ<math>v_0</math>で斜め上向きに投げ出す場合を考える。初速度の水平成分の向きに<math>x</math>軸,鉛直上向きに<math>y</math>軸をとり,時刻<math>t</math>における物体の位置を<math>\overrightarrow r(t)=(x(t),\ y(t))</math>,速度を<math>\overrightarrow v(t)=(v_x(t),\ v_y(t))</math>とする。物体を投げ出した時刻を<math>t = 0</math>,物体を投げ出した位置を<math>\overrightarrow r(0)=(0,\ 0)</math>とする。初速度<math>\overrightarrow v(0)=(v_0\cos\theta,\ v_0\sin\theta)</math>である。<math>x</math>軸方向には正の向きに速さ<math>v_0\cos\theta</math>の等速度運動,<math>y</math>軸方向には初速度<math>v_0\sin\theta</math>,加速度<math>-g</math>の等加速度運動をするから,時刻<math>t</math>における物体の加速度<math>\overrightarrow a =\left(\frac{dv_x}{dt},\ \frac{dv_y}{dt}\right)</math>は
:<math>\overrightarrow a =(0,\ -g)</math>.
したがって,(1.12)より
:<math>\overrightarrow v(t)=\overrightarrow v(0)+\int _0 ^t\overrightarrow adt =(v_0\cos\theta,\ v_0\sin\theta - gt).\ \left(\because\begin{array}{lcl}v_x(t)= v_0\cos\theta +\int _0 ^t 0dt =v_0\cos\theta, \\ v_y(t)= v_0\sin\theta -\int _0 ^t gdt = v_0\sin\theta - gt\end{array}\right)</math>
これを(1.9)に代入すると
:<math>\overrightarrow r(t)=\overrightarrow r(0)+\int _0 ^t\overrightarrow v(t)dt =\left(v_0t\cos\theta,\ v_0t\sin\theta -\frac{1}{2}gt^2\right).\ \left(\because\begin{array}{lcl}x(t)= 0 +\int _0 ^t v_0\cos\theta dt = v_0t\cos\theta, \\ y(t)= 0 +\int _0 ^t(v_0\sin\theta - gt)dt = v_0t\sin\theta -\frac{1}{2}gt^2\end{array}\right)</math>
以上より
:<math>v_x = v_0\cos\theta</math>
:<math>v_y = v_0\sin\theta -gt</math>
:<math>x = v_0t\cos\theta</math> (1.16)
:<math>y = v_0t\sin\theta -\frac{1}{2}gt^2</math> (1.17)
となる。(1.16)より
:<math>t =\frac{x}{v_0\cos\theta}</math>
となり,(1.17)に代入すると
:<math>y = v_0\frac{x}{v_0\cos\theta}\sin\theta -\frac{1}{2}g\left(\frac{x}{v_0\cos\theta}\right)^2 = x\tan\theta -\frac{gx^2}{2(v_0\cos\theta)^2}</math> (1.18)
が得られる。
(1.15), (1.18)より水平投射された物体や斜方投射された物体の軌跡は放物線になることがわかる。このような運動を'''放物運動'''という。
=力と運動=
==力==
物理において,'''力とは物体を変形させたり物体の速度を変えたりする働き'''のことである。力の働きは,大きさ・向き・作用点の3つで決まり,これらを力の3要素という。力の大きさの単位にはニュートン(N)を用いる。
なお,本頁では都合上,重力・張力・抗力・弾性力などの力については「様々な力と運動」の節で,作用・反作用については「運動の法則」の節で扱う。
===力の合成と分解===
[[File:Vector parallelogram.PNG|right|200px|thumb|ある物体に向きの違う力<math>F_1</math>(青矢印)と力<math>F_2</math>(青矢印)を加えると物体に加わる合力は図のような(<math>F_1,\ F_2</math>を辺とする)平行四辺形の対角線の向きになる。]]
====力の合成====
1物体にいくつかの力が同時に働くとき,それらの力を合わせた働きをする1つの力を考えることができる。この力を'''合力'''といい,合力を求めることを'''力の合成'''という。
同一作用線上の同じ向き,又は逆向きの2力<math>\vec{F_1},\ \vec{F_2}</math>の合力<math>\overrightarrow F</math>の大きさはそれぞれの力の大きさの和や差で求められる。また,異なる方向に働く2力<math>\vec{F_1},\ \vec{F_2}</math>の合力<math>\overrightarrow F</math>は2力のベクトルを隣合う2辺とする平行四辺形の対角線の矢印に一致する。これを力の平行四辺形の法則といい,このように求めた2力<math>\vec{F_1},\ \vec{F_2}</math>の合力<math>\overrightarrow F</math>は次式で表される。
:<math>\overrightarrow F =\vec{F_1}+\vec{F_2}</math>.
====力の分解====
[[File:2力の分解.svg|thumb|200px|2力の分解]]
1力をそれと同じ働きをするいくつかの力の組に分けることができる。これを'''力の分解'''といい,分けられたそれぞれの力を'''分力'''という。
力の平行四辺形の法則を用いて,1力<math>\overrightarrow F</math>は任意方向の2力に分解できる。これを繰り返すと,1力を任意方向のいくつかの力に分解できる。力を分解する場合,互いに垂直な2方向に分解することが多い。力<math>\overrightarrow F</math>を<math>x</math>軸,<math>y</math>軸の二方向に分解し,それぞれの分力を<math>\vec{F_x},\ \vec{F_y}</math>とする。これらの大きさの向きを表す正負の符号をつけたものを,<math>\overrightarrow F</math>の<math>x</math>成分,<math>y</math>成分といい,それぞれ<math>F_x,\ F_y</math>と表す。このとき,<math>\overrightarrow F</math>の大きさを<math>F,\ \overrightarrow F</math>と<math>x</math>軸とのなす角を<math>\theta</math>とすると
:<math>F_x = F\cos\theta,\ F_y = F\sin\theta,\ F =\sqrt{{F_x}^2 +{F_y}^2}</math>.
===力のつり合い===
====2力のつり合い====
[[File:2力のつりあい.svg|thumb|300px|2力のつりあい]]
物体に2力<math>\vec{F_1},\ \vec{F_2}</math>が働いてつり合うとき,2力は同一作用線上にあり,大きさが等しく逆向きであるから
:<math>\vec{F_1}+\vec{F_2}=\overrightarrow 0</math>.
このことから,2力がつり合うときは,2力の合力は<math>\overrightarrow 0</math>であることがわかる。
==運動の法則==
===運動の第1法則 慣性の法則===
物体に力が働かぬか,又は力がつりあっているとき,その物体は静止又は等速直線運動を続ける。これを'''慣性の法則'''と呼ぶ。
===運動の第2法則 運動の法則===
質量<math>m</math>の物体に働く外力の和が<math>\overrightarrow F</math>のとき,物体に生ずる加速度を<math>\overrightarrow a</math>とすると,次の運動方程式が成り立つ。
:<math>m \overrightarrow a = \overrightarrow F.\ (\Leftrightarrow\overrightarrow F = m \overrightarrow a)</math> (2.1)
なお,(1.4)をを用いて,運動方程式は
:<math>m\frac{d\overrightarrow v}{dt} = \overrightarrow F</math> (2.1)<math>'</math>
:<math>m\frac{d^2 \overrightarrow r}{dt^2} = \overrightarrow F</math> (2.1)<math>''</math>
とも表される。
===運動の第3法則 作用・反作用の法則===
2物体A, Bが互いに力を及ぼしあっている(相互作用をしている)とき,
:<math>f_\mathrm{AB} =</math>BがAに及ぼす力
:<math>f_\mathrm{BA} =</math>AがBに及ぼす力
として
:<math>f_\mathrm{AB} = -f_\mathrm{BA}</math> (2.2)
が成り立つ。つまり,AがBに及ぼす力とBがAに及ぼす力は大きさが等しくて向きが逆である。
===単位と次元===
====単位====
物理量はすべて,基準量の何倍かを表す数値に単位記号を付けて表す。即ち次の関係がある。
:物理量=数値×単位.
力学では'''MKS単位系'''が用いられており,長さはm(メートル),質量はkg(キログラム),時間はs(秒)を'''基本単位'''として定めている。この3単位に物理学など科学分野や技術分野で用いられる4単位(電流はA(アンペア),温度はK(ケルビン),物質量はmol(モル),光度はcd(カンデラ))を加えた合計7単位を基本単位として定めたのが'''国際単位系'''('''SI''')である。また,基本単位から導かれる単位を'''誘導単位'''('''組立単位''')とよぶ。
==様々な力と運動==
[[File:National prototype kilogram K20 replica.jpg|thumb|キログラム原器。米国で保管されているキログラム原器の複製品の画像。フランスの国際キログラム原器と共通化している。]]
===重力===
地球上の全物体には,地球が鉛直下向きに引く力,'''重力'''が働いている。質量を<math>m</math>〔kg〕,重力加速度の大きさを<math>g</math>〔m/s<math>^2</math>〕,重力の大きさ('''重さ'''ないし'''重量''')を<math>W</math>〔N〕とすると,(2.1)より
:<math>mg = W \quad\therefore W = mg</math> (2.3)
となる。つまり,重力の大きさは質量に比例し,質量<math>m</math>〔kg〕の物体に働く重力の大きさ<math>W</math>〔N〕は<math>mg</math>〔N〕である。地球上において重力加速度の大きさ<math>g</math>は約9.8m/s<math>^2</math>なので,質量1kgの物体に働く重力の大きさは約9.8Nである。なお,重力加速度の大きさは惑星によっても異なるし,同じ惑星においても緯度により若干変わる。
====質量====
(2.3)より'''質量'''は物体に力が働いた場合の加速度の生じにくさ,即ち'''慣性の大きさを表す量'''('''慣性質量''')であることが分かる。質量は物体固有の量であり,場所によらない。質量の単位である1kgは,国際度量衡局にある国際キログラム原器の質量と定められていたが,2019年5月からプランク定数とよばれる普遍的な定数に基づく定義へと変更された。
===抗力===
束縛条件(拘束条件)を使って運動方程式を解いてみねば分からぬ未知の力を'''抗力'''あるいは'''束縛力''','''拘束力'''といい,それには糸の'''張力'''や面又は線の抗力(面や線に沿って運動する物体に面又は線が及ぼす力)などがあり,構成している分子間力の合力である。抗力の面に垂直な成分或いは法線方向の分力を'''垂直抗力''',面に平行な成分或いは接線方向の分力を'''摩擦力'''という。
====張力====
[[File:おもりの引き上げ.svg|thumb|150px|図1]][[File:糸でつながれた2物体 解法.svg|thumb|200px|図2]]
図1のように質量<math>m</math>の物体に鉛直下向きに重力<math>mg</math>,鉛直上向きに伸び縮みのない糸が物体を引く力(張力)<math>T</math>が働いており,物体の加速度を鉛直上向きに<math>a</math>とすると,運動方程式は
:<math>ma = T-mg</math>.
続いて,図2のように水平でなめらかな机上に質量<math>M</math>の台車があり,その台車に質量の無視できる糸がつながれ,滑車を介して糸の先に質量<math>m</math>の小物体が吊り下げられている場合を考えよう。台車の加速度の大きさを<math>a</math>とおくと,束縛条件より小物体の加速度の大きさも<math>a</math>である。台車が受ける垂直抗力の大きさを<math>N</math>とおくと,台車の運動方程式は(上段が水平方向,下段が鉛直方向)
:<math>\begin{cases} Ma = T\;\cdots\cdots (*) \\ M\cdot 0 = Mg - N\quad\therefore N = Mg.\end{cases}</math>
小物体の運動方程式は(鉛直方向)
:<math>ma = mg -T.\cdots(**)</math>
<math>(*)+(**)</math>より
:<math>(M + m)a = mg \quad\therefore a =\frac{m}{M + m}g</math>.
<math>(*)</math>に代入
:<math>M\frac{m}{M + m}g = T \quad\therefore T =\frac{Mm}{M + m}g</math>.
=====アトウッドの器械=====
[[File:Atwood.svg|right|thumb|200px|アトウッドの器械で吊り下げられている2物体に対する自由体図([[:en:free body diagram]])。]]
右図のように質量の無視できる糸の両端に質量<math>m_1</math>と質量<math>m_2</math>の2物体が滑車を介して吊り下げられている場合を考える(ただし<math>m_1 > m_2</math>)。重力加速度を<math>g</math>とすると,質量<math>m_1</math>の物体には鉛直下向きに重力<math>W_1 = m_1g</math>,質量<math>m_2</math>の物体には鉛直下向きに重力<math>W_2 = m_2g</math>が働いている。質量<math>m_1</math>の物体の加速度の大きさを<math>a</math>,質量<math>m_2</math>の物体の加速度の大きさを<math>a'</math>(一応説明のため),糸の張力の大きさを<math>T</math>とおくと,2物体の鉛直方向の運動方程式は
:<math>m_1a = m_1g - T\cdots\cdots(\triangle)</math>
:<math>m_2a' = T - m_2g\quad\cdots(\square)</math>
束縛条件は
:<math>a = a'.\qquad\qquad\cdots\cdots(\bigstar)</math>
<math>(\bigstar)</math>より,質量<math>m_2</math>の物体の加速度の大きさは<math>a</math>である(実際はこの程度の束縛条件は自明で最初から<math>a</math>としてしまって構わない)。よって,<math>(\square)</math>は
:<math>m_2a = T - m_2g.\quad\cdots(\square)'</math>
<math>(\triangle)+(\square)'</math>より
:<math>(m_1 + m_2)a =(m_1 - m_2)g\quad\therefore a =\frac{m_1 - m_2}{m_1 + m_2}g</math>.
<math>(\triangle)</math>に代入
:<math>m_1\frac{m_1 - m_2}{m_1 + m_2}g= m_1g - T\Longleftrightarrow T = 2\frac{m_1m_2}{m_1 + m_2}g</math>.
====静止摩擦力====
[[File:静止摩擦の初等力学.svg|thumb|250px|静止摩擦力と抗力]]
'''静止摩擦力'''は,静止している物体を外から引く力に応じてその大きさを変化させ,摩擦がなかったならば物体が行うであろう運動を妨げる向きに働く。その最大値を'''最大静止摩擦力'''或いは'''最大摩擦力'''といい,最大摩擦力の大きさは垂直抗力に比例することが分かっている。静止摩擦力,最大摩擦力の大きさをそれぞれ<math>F,\ F_\mathrm{max}</math>,静止摩擦係数を<math>\mu</math>,垂直抗力の大きさを<math>N</math>とおくと
:<math>F\leqq F_\mathrm{max}=\mu N</math>. (2.4)
====動摩擦力====
[[File:動摩擦の模式図.svg|thumb|250px|動摩擦力]][[File:引く力と動摩擦.svg|thumb|right|250px|物体を引く力と、摩擦力との関係]]
物体に働く外力が最大摩擦力を越えると,動摩擦力が働く。動摩擦力は物体の運動を妨げる向きに働き,その大きさは垂直抗力に比例する。動摩擦力を<math>F'</math>,動摩擦係数を<math>\mu'</math>とおくと
:<math>F'=\mu'N</math>. (2.5)
なお,動摩擦係数は静止摩擦係数より小さい,即ち動摩擦力は最大摩擦力より小さいことが分かっている。
===弾性力===
{|
|[[File:ばねの自然長 縦.svg|thumb|200px|フックの法則]]
|[[File:ばねの自然長 横.svg|thumb|200px|フックの法則]]
|[[File:フックの法則 直線の範囲.svg|thumb|200px|フックの法則]]
|}
ばねに何も力が加わっていないときのばねの長さをばねの'''自然長'''という。一端を固定したばねの他端にばねが伸びる方向に力を加えるとばねは伸び,逆にばねが縮む方向に力を加えるとばねは縮む。その際ばねは自然長に戻ろうとする性質があり,このような力を加えたときに生じた変形が力を加えるのを止めると元に戻る性質を'''弾性'''({{Lang-en-short|elasticity}})という。この弾性に基づいて生ずる力を'''弾性力'''({{Lang-en-short|elastic force}})という。ばね弾性力はばねの両端で,自然長に向かう向きに働き,その大きさはばねが自然長から伸び縮みした距離に比例しこれを'''フックの法則'''({{Lang-en-short|Hooke's law}})という。ばねが伸びる方向に<math>x</math>軸をとり,ばねの自然長の位置を原点にし,ばねの位置を<math>x</math>〔m〕,ばね定数を<math>k</math>〔N/m〕とすると,ばねの弾性力<math>F</math>〔N〕は
:<math>F=-kx</math>. (2.6)
なお,これは'''復元力'''ともよばれる。また,ばねの伸び縮みがあまりにも大きくなるとこれは成り立たなくなる。
===圧力===
単位面積あたりに垂直に加わる力を'''圧力'''({{Lang-en-short|pressure}})という。面積<math>S</math>[m<math>^2</math>]の面に対して垂直に大きさ<math>F</math>[N]の力が加わるとき,圧力を<math>P</math>[Pa又はN/m<math>^2</math>]とおくと
:<math>P=\frac{F}{S}</math> (2.7)
である。単位のPaはパスカルといい,1Pa=1N/m<math>^2</math>である。
====水圧====
[[File:Pressure distribution on an immersed cube.png|thumb|400px|水圧の説明図。水深が深くなるほど、比例して水圧が強くなる。水圧の方向は、物体の面に垂直方向に働く。]]
水による圧力を'''静水圧'''又は'''水圧'''という。空気や水のような気体や液体はまとめて'''流体'''といい,静止流体中の任意の点を通る1つの面を考えるとき,この面についてのその点の静水圧はつねに面に垂直な圧力で,しかも同一の点では考える面の向きによらず等しい圧力を持つ。
水圧,大気圧をそれぞれ<math>p,\ p_0</math>,水の密度を<math>\rho</math>とおく。水中の鉛直方向の長さ<math>dz</math>,底面積<math>A</math>の微小円柱における力のつり合いは,鉛直下向きを正とすると
:<math>0=pdA-\left(p+\frac{dp}{dz}dz\right)dA+\rho gdAdz\Longleftrightarrow \frac{dp}{dz}dzdA=\rho gdAdz</math>
:<math>\therefore \frac{dp}{dz}=\rho g</math>.
両辺を<math>z</math>で積分すると
:<math>\int \frac{dp}{dz}dz=\int \rho gdz\Longleftrightarrow p=\rho gz+C</math> (<math>C</math>は積分定数)
水の表面,すなわち<math>z=0</math>において<math>p_0=\rho g\cdot 0+C\Longleftrightarrow C=p_0</math>であるから上式に代入して深さ<math>h</math>,すなわち<math>z=h</math>における水圧は
:<math>p=p_0+\rho gh</math> (2.8)
である。
====浮力====
プールに入ると,体が軽くなったように感ずることがある。流体の内部にある物体の表面には流体からの圧力が作用する。圧力は深い程大きいから流体中の物体に作用する圧力の合力は上向きになり,この合力を'''浮力'''({{Lang-en-short|buoyancy}})という。浮力は物体のところにあった流体に作用する重力とつり合っていたので,一般に'''流体中の物体に作用する浮力の大きさはその物体が押しのけた流体に作用する重力の大きさに等しい'''。これを'''アルキメデスの原理'''({{Lang-en-short|Archimedes' principle}})という。
===抵抗力と終端速度===
実際の身の回りの運動では空気抵抗が無視できぬことが多い。空気や水など流体の抵抗とは流体中で物体の運動を妨げる向きに作用する力のことを指す。物体の速さが小さな間は流体中を運動する物体の受ける抵抗力の大きさ<math>F</math>は速さ<math>v</math>に比例するから
:<math>F=kv</math> (<math>k</math>は定数) (2.9)
と表せる。速さ<math>v</math>に比例する抵抗を粘性抵抗という。
以下では風のない空気中を時刻<math>t</math>における速さ<math>v(t)</math>に比例する抵抗力<math>kv(t)</math>を受けながら鉛直下方に落下する質量<math>m</math>の物体の運動を考える。鉛直下向きに<math>y</math>軸をとり,重力加速度の大きさを<math>g</math>とおくと,物体の運動方程式は
:<math>m\frac{dv(t)}{dt}=mg-kv(t)</math>
:<math>\therefore\frac{dv(t)}{dt}=g-\frac{k}{m}v(t)</math>.
ここで
:<math>\int \left(-\frac{k}{m}\right)=-\frac{k}{m}t</math> (ここでは積分定数は後に打消されるため不要)
より
:<math>v(t)=e^{-\frac{k}{m}t}\int e^{\frac{k}{m}t}\cdot gdt=e^{-\frac{k}{m}t}\left(\frac{mg}{k}e^{\frac{k}{m}t}+C\right)=\frac{mg}{k}+Ce^{-\frac{k}{m}t}</math> (Cは積分定数) (2.10)
<math>t=0</math>において<math>v(0)=0</math>より(境界条件)
:<math>0=\frac{mg}{k}+Ce^{-\frac{k}{m}0}\Longleftrightarrow C=-\frac{mg}{k}</math>.
これを(2.10)に代入して
:<math>v(t)=\frac{mg}{k}(1-e^{-\frac{k}{m}t})</math>. (2.11)
したがって'''終端速度'''({{Lang-en-short|terminal velocity}})は
:<math>\lim_{t\to\infty}v(t)=\frac{mg}{k}</math>. (2.12)
ちなみにこの物体の時刻<math>t</math>における物体の位置は
:<math>\begin{align}y(t) & =y(0)+\int_0^t v(t)dt \\ & =y(0)+\int_0^t\left\{\frac{mg}{k}(1-e^{-\frac{k}{m}t})\right\} dt \\ & =y(0)+\frac{mg}{k}\left[t+\frac{m}{k}e^{-\frac{k}{m}t}\right]_0^t \\ & =y(0)+\frac{mg}{k}\left(t+\frac{m}{k}e^{-\frac{k}{m}t}-\frac{m}{k}\right).\end{align}</math>
雨は地上より非常に高いところから降ってくるが,雨滴の速さが大きくなり過ぎぬのはかなり上空で既に終端速度に達しているからと考えられる。
=仕事とエネルギー=
==仕事==
物理では,'''物体に力を加えて動かしたとき,力は物体に対して'''「'''仕事をした'''」という。
==運動エネルギー==
===運動エネルギーと仕事(1次元)===
1次元空間(<math>x</math>軸上)の運動を考える。運動方程式
:<math>m\frac{dv}{dt}= F</math> (2.1)<math>'</math>
に<math>v =\frac{dx}{dt}</math>を掛けて
:<math>mv\frac{dv}{dt}= F\frac{dx}{dt}</math>.
両辺を<math>t = t_1</math>から<math>t = t_2</math>まで積分すると
:<math>\int _{t_1}^{t_2}mv\frac{dv}{dt}dt =\int _{t_1}^{t_2}F\frac{dx}{dt}dt\quad\therefore\int _{t_1}^{t_2}mvdv =\int _{t_1}^{t_2}Fdx</math>.
時刻<math>t = t_1</math>のとき<math>v = v_1,\ x = x_1</math>,時刻<math>t = t_2</math>のとき<math>v = v_2,\ x = x_2</math>と考えて<math>\begin{array}{c|c}t & t_1\to t_2 \\ \hline v & v_1\to v_2 \\ \hline x & x_1\to x_2 \\ \end{array}</math>とすると
:<math>\int _{v_1}^{v_2}mvdv =\int _{x_1}^{x_2}Fdx\quad\therefore\frac{1}{2}m{v_2}^2 -\frac{1}{2}m{v_1}^2 =\int _{x_1}^{x_2}Fdx</math>. (3.1)(≪注≫ <math>F</math>は一定とは限らぬから右辺は積分実行できない)
この<math>\frac{1}{2}mv^2</math>を'''運動エネルギー'''({{Lang-en-short|kinetic energy}})という。特に,力<math>F</math>が一定のとき
:<math>\frac{1}{2}m{v_2}^2 -\frac{1}{2}m{v_1}^2 =F(x_2-x_1)</math>. (3.1a)
(3.1)の右辺は力<math>F</math>のした仕事を表している。ゆえに(1次元においては)'''運動エネルギー変化は仕事に等しい'''('''エネルギーの原理''')という因果関係が分かる。
===運動エネルギーと仕事(2・3次元)===
====力が一定の場合====
[[File:斜めの力の仕事.svg|thumb|300px|力の向きと動かす向きが違う場合]]
まず力<math>\overrightarrow F</math>が一定の場合を考える。時刻<math>t</math>において速度<math>\overrightarrow v(t)</math>で運動する質量<math>m</math>の物体の運動方程式
:<math>m\frac{d\overrightarrow v(t)}{dt}=\overrightarrow F\quad\therefore \frac{d\overrightarrow v(t)}{dt}=\frac{\overrightarrow F}{m}=</math>一定.
これと(1.12)より時刻<math>0\sim t</math>における運動エネルギー変化はこの間の物体の変位を<math>\mathit{\Delta}\overrightarrow r=\overrightarrow r(t)-\overrightarrow r(0)</math>として
:<math>\begin{align}\frac{1}{2}m\overrightarrow v(t)^2-\frac{1}{2}m\overrightarrow v(0)^2 & =\frac{1}{2}m\left(\overrightarrow v(0)+\int_0^t\frac{d\overrightarrow v(t)}{dt}dt\right)^2-\frac{1}{2}m\overrightarrow v(0)^2 \\ & =\frac{1}{2}m\left\{2\overrightarrow v(0)\frac{d\overrightarrow v(t)}{dt}t+\left(\frac{d\overrightarrow v(t)}{dt}t\right)^2\right\} \\ & =m\frac{d\overrightarrow v(t)}{dt}\cdot\left(\overrightarrow v(0)t+\frac{1}{2}\frac{d\overrightarrow v(t)}{dt}t^2\right) \\ & =m\frac{d\overrightarrow v(t)}{dt}\cdot(\overrightarrow r(t)-\overrightarrow r(0))=\overrightarrow F\cdot\mathit{\Delta}\overrightarrow r.\ (3.2)\end{align}</math>
ここで<math>\overrightarrow F</math>と<math>\mathit{\Delta}\overrightarrow r</math>とのなす角を<math>\theta</math>とすると,この間に力<math>\overrightarrow F</math>がした仕事<math>W</math>は
:<math>W=\overrightarrow F\cdot\mathit{\Delta}\overrightarrow r=|\overrightarrow F||\mathit{\Delta}\overrightarrow r|\cos\theta</math> (3.2a)
と与えられる。なお仕事の単位はJ=N・mである(ジュール)。
==位置エネルギー==
仕事が始点と終点のみで決まり,経路によらぬ力を'''保存力'''({{Lang-en-short|conservative force}})(例:重力,弾性力,万有引力,静電気力等),その他の力(仕事が経路による力)を'''非保存力'''(例:摩擦力等)という。
保存力の場合,始点<math>\vec{r_0}</math>を決めるとその始点<math>\vec{r_0}</math>を基準とした終点<math>\overrightarrow r</math>での保存力<math>\vec{f_\mathrm{C}}</math>の'''位置エネルギー'''({{Lang-en-short|potential energy}})<math>U(\overrightarrow r)</math>が決まる。
:<math>U(\overrightarrow r)=-\int_\vec{r_0}^\overrightarrow r \vec{f_\mathrm{C}}\cdot d\overrightarrow r</math>. (3.3)
===重力による位置エネルギー===
鉛直上方に<math>y</math>軸をとり,<math>y=0</math>の点を基準とした<math>y=h</math>での質量<math>m</math>の物体の位置エネルギー<math>U</math>は,重力加速度を<math>g</math>とすると,重力は<math>-mg</math>であるから
:<math>U=-\int_0^h (-mg)dy=mgh</math>. (3.4)
また,時刻<math>t</math>において<math>y=y(t)</math>の位置にある質量<math>m</math>の物体の時刻<math>t=0</math>から<math>t=t</math>までの位置エネルギー変化<math>\mathit{\Delta}U</math>は,重力加速度を<math>g</math>とすると
:<math>\mathit{\Delta}U=-\int_{y(0)}^{y(t)}(-mg)dy=mg(y(t)-y(0))</math>. (3.4a)
===弾性力による位置エネルギー===
[[File:弾性力と位置エネルギー.svg|thumb|200px|弾性力と位置エネルギー]][[File:弾性エネルギーの差.svg|thumb|200px|弾性エネルギーの差]]
右図のように壁に取付けられたばね定数<math>k</math>のばねにつながれた質量<math>m</math>の物体において,水平方向右向きに<math>x</math>軸をとり,ばねの長さが自然長のときの物体の位置を原点とする。物体が<math>x</math>の位置にあるとき,運動方程式
:<math>m\frac{d^2x}{dt^2}=-kx</math>.
よって,原点を基準とした位置<math>x</math>での物体の位置エネルギー<math>U</math>は
:<math>U=-\int_0^x (-kx)dx=\frac{1}{2}kx^2</math>. (3.5)
なお,この弾性力による位置エネルギーを'''弾性エネルギー'''({{Lang-en-short|elastic energy}})ともいう。また,時刻<math>t</math>において<math>x=x(t)</math>の位置にある質量<math>m</math>の物体の時刻<math>t=0</math>から<math>t=t</math>までの位置エネルギー(弾性エネルギー)変化<math>\mathit{\Delta}U</math>は
:<math>\mathit{\Delta}U=-\int_{t_1}^{t_2}(-kx(t))dx=\frac{1}{2}kx(t_2)^2-\frac{1}{2}x(t_1)^2</math>. (3.5a)
==力学的エネルギー保存==
[[File:力学的エネルギー 鉛直落下.svg|thumb|250px|落下運動と力学的エネルギー]]
運動エネルギーと位置エネルギーの和を'''力学的エネルギー'''({{Lang-en-short|mechanical energy}})という。運動エネルギー,位置エネルギー,力学エネルギーをそれぞれ<math>K,\ U,\ E</math>とおくと
:<math>E=K+U</math>. (3.6)
右図のように質量<math>m</math>の物体を地上からの高さ<math>h_2</math>から高さ<math>h_1</math>まで落下させるとする。物体には鉛直下向きに重力<math>mg</math>(保存力)が働いている。(3.1a)より
:<math>\frac{1}{2}m{v_1}^2-\frac{1}{2}m{v_2}^2=-mg(h_1-h_2)\iff \frac{1}{2}m{v_1}^2+mgh_1=\frac{1}{2}m{v_2}^2+mgh_2</math>.
上式の同値変形後の式を見ると,<math>h_1</math>地点での物体の運動エネルギーと位置エネルギーの和が<math>h_2</math>地点での物体の運動エネルギーと位置エネルギ-の和が等しい,すなわち'''保存力場での質点の運動は力学的エネルギーが一定'''であることが分かる。
:<math>E=K+U=</math>一定.(3.7)
これを'''力学的エネルギー保存則'''({{Lang-en-short|law of conservation of mechanical energy}})という。
[[category:物理基礎|りきかく]]
[[カテゴリ:力学]]
eihzq92g2i11hhma61rrok354qqdkd8
高等学校物理基礎/波動
0
31202
299684
246660
2026-05-20T10:01:27Z
Nermer314
62933
299684
wikitext
text/x-wiki
{{pathnav|高等学校の学習|高等学校理科|高等学校物理|高等学校 物理基礎|pagename=波|frame=1|small=1}}
波動は物体の運動の基本的な形態の一つで、行っては帰る行っては帰るの繰り返しは、様々なインスピレーションを与える。波動は最先端の物理学に密接にかかわる分野の一つである。波力発電は、今後もっとも重要な発電方法の一つとなるだろう。
「発展」とつく単元は[[高等学校 物理]]の内容や、高校範囲外の内容を含む。物理基礎の内容を補完し、理解を深めるために設置されている。
==波とは何か==
[[File:2006-01-14 Surface waves.jpg|thumb|220px|[[表面波]]|代替文=]]
静かな水面にゆっくりと石を投げると, 石の落ちたところを中心として同心円状の波紋が広がる。このように, ある点で生じた振動が周囲に伝わっていく現象を'''波''', または'''波動'''という。
波には振動を伝える物質が必要である。振動を伝える物質のことを'''媒質'''という。そして、石が落ちたところのように振動が始まった点を'''波源'''という。
[[File:Simple harmonic motion animation.gif|thumb|220px|波に乗って移動する点は振動する。|代替文=]]
次に静かな水面に紙を浮かべ, そこに波を送ってみよう。すると, 紙は波の進む方向には進まずに上下するだけである。このことから, 波は媒質が移動するのではなく波源からの振動が伝わっていく現象であることが分かる。
== 波の性質 ==
=== 波と媒質の運動 ===
==== 波の発生 ====
水平に張った紐やバネの一端を上下に動かすと、動かし方によって様々な波が発生する。
ごく短い間振動させると、単独の波('''パルス''')が発生する。その一方、絶えず振動させ続けると連続的な波が生じる。
実際に波を発生させると、振動によって変形した部分が平行移動していくように見える。しかし、媒質の各点は振動によって上下に動いているだけであり、媒質自体が平行移動する訳ではない。媒質の各点の、元の位置からのズレを'''変位'''と呼ぶ。
物体が往復する運動のことを'''単振動'''と呼ぶ。円運動を一つの座標軸上に投影した運動も単振動になる。(詳しくは[[高等学校 物理/単振動]]を参照。)
物体が一回の振動に要する時間<Math>T</Math>[s]を'''周期'''、1秒あたりの振動回数<Math>f</Math>[Hz]を'''振動数'''と呼ぶ。振動数の単位「Hz」は'''ヘルツ'''と読み、1/sを表す。
次の関係が成り立つ。
:<Math>f=\frac{1}{T}</Math>
物体の変位の時間変化をグラフにすると、'''正弦曲線'''(<Math>y=a\sin\theta</Math>や<Math>y=b\cos\theta</Math>のようなグラフ)となる。また、振動の中心から振動の端までの長さ<Math>A</Math>[m]を'''振幅'''と呼ぶ。
波源の単振動は周囲の媒質に伝わり、各点は波源よりも遅れて単振動を始める。その振幅と周期は波源のそれに等しい。
振動する媒質の各点を連ねた線を'''波形'''という。また、波形が正弦曲線となる波を特に'''正弦波'''と呼ぶ。
==== 波の記述 ====
波形の最も高い場所を'''山'''、最も低い場所を'''谷'''と呼ぶ。山の高さ、谷の深さは振幅に一致する。
隣り合う山と谷の間隔など、波一つ分の長さ<Math>\lambda</Math>[m]を'''波長'''と呼ぶ。<Math>\lambda</Math>は「ラムダ」と読むギリシャ文字で、アルファベットの<Math>l</Math>(ここでは「length」の<Math>l</Math>)に対応する。
山や谷が進む速さ<Math>v</Math>[m/s]を'''波の速さ'''と呼ぶ。
波は波源の媒質が一回振動する時間(周期)の間に一波長分進むので、次の関係が成り立つ。
:<Math>v=\frac{\lambda}{T}</Math>
この式は、周期と振動数の関係式を用いて以下のように表せる。
:<Math>v=f\lambda</Math>
波について、位置(x)と媒質の変位(y)の関係を表すグラフを'''y-xグラフ'''と呼ぶ。このグラフは、ある時刻の波形そのものを表す。
これに対し、ある位置における時間(t)と媒質の変位(y)の関係を表すグラフを'''y-tグラフ'''と呼ぶ。このグラフはある位置における媒質の変位の時間経過を表す。正弦波の場合、いずれも正弦曲線で表されるため、グラフを読み取る際に注意する必要がある。
波の進む向きに波形を僅かに進めると、媒質の各点の動きがわかる。正弦波では、媒質の変位方向の速さについて、山・谷の位置で最小(0)、変位が0の位置で最大となる。
媒質がどのような振動状態にあるかを表す量を'''位相'''と呼ぶ。([[位相空間論]]の位相とは異なる。)
同じ振動状態にあるときを'''同位相'''、逆の振動状態にあるときを'''逆位相'''と呼ぶ。
例えば媒質上の2点について、
*ともに山で媒質の速度が0である場合は同位相
*変位の符号が逆で絶対値が等しい場合、逆位相
*ともに変位が0であっても、媒質の運動方向が逆である場合は逆位相
である。
同位相である2点の振動を比較すると、変位の大小がどの時刻においても一致する。一方、逆位相である2点の振動の変位は、一方が最大ならば他方は最小である。
また、原点(<Math>x=0</Math>)に関して、時刻<Math>t=0</Math>における位相を'''初期位相'''と呼ぶ。
; '''発展:正弦波の式'''
証明は物理基礎の範囲を大きく逸脱するため省くが、x軸の正の方向に進む正弦波について、その変位<Math>y</Math>は以下の式で表される。
:<Math>y = A \sin \{2\pi (\frac{t}{T} - \frac{x}{\lambda}) + \phi \}</Math>
ここで、<Math>A</Math>[m]は振幅、<Math>t</Math>[s]は時刻、<Math>T</Math>[s]は周期、<Math>x</Math>[m]は位置、<Math>\lambda</Math>[m]は波長、<Math>\phi</Math>[rad]は初期位相を表す。なお、「rad」は[[高等学校数学II/三角関数#弧度法|ラジアン]]のことである。
なお、x軸の負の方向に進む正弦波の式は以下である。
:<Math>y = A \sin \{2\pi (\frac{t}{T} + \frac{x}{\lambda}) + \phi \}</Math>
==== 横波・縦波 ====
媒質の振動方向が波の進行方向に垂直である波を'''横波'''という。
今まで見てきた波は全て横波である。
これに対し、媒質の振動方向が波の進行方向に平行である波を縦波という。
縦波は媒質が密集した部分('''密部''')と疎らな部分('''疎部''')の繰り返しが伝わるので、'''疎密波'''とも呼ばれる。のちに学習する音波は縦波である。
縦波は媒質が固体・液体・気体のいずれの状態であっても伝わるが、横波は固体中でしか伝わらない(光波を除く)。
縦波では横波のような波形が見られず波の状態がわかりづらいため、y-xグラフにおいてx軸の正の向きに変位するときはy軸の正の向きに変位をとり、x軸の負の向きに変位するときはy軸の負の向きに変位をとる。こうすることにより、縦波を横波のように表示して横波と同じように考えることができる。
==== 波とエネルギー ====
地震波や津波が建物の倒壊などの深刻な被害を齎すことからわかるように、波はエネルギーを運んでいる。
波の進行方向に垂直な単位面積を単位時間に通過する波のエネルギーを、'''波の強さ'''と呼ぶ。正弦波では単振動のエネルギーが伝えられ、その波の強さは波の振幅または振動数が大きいほど大きくなる。
; '''発展:波の強さの式'''
正弦波の強さ<Math>I</Math>[J/m^2・s]は以下のように表される。
:<Math>I = 2 \pi^2 \rho v f^2 A^2</Math>
ここで、<Math>\rho</Math>[kg/m^3]は媒質の密度、<Math>v</Math>[m/s]は波の速さ、<Math>A</Math>[m]は振幅、<Math>f</Math>[Hz]は振動数を表す。
{{コラム|地震波|
地球の内部で急激な変動が起こり、それが伝わって生じる波を'''地震波'''という。[[中学校理科 第2分野/大地の変化#地震|中学校で学んだ]]ように、地震波には速く伝わるP波と遅く伝わるS波が存在する。P波は縦波、S波は横波である。地震波を地上で観測すると、P波は観測されるがS波が観測されない地域が存在する。このことから、地球内部には横波の伝わらない液体の部分が存在すると考えられている。それが地球の外殻である。}}
=== 一直線上を伝わる波 ===
==== 重ね合わせの原理 ====
媒質の両端から単独の波(パルス)を送る。2つの波が出会うと重なり合って波形が変わるが、その後元の波形に戻り、何事もなかったかのように進む。
このとき、波が重なり合ったときの変位<Math>y</Math>は2つの波の変位<Math>y_1, y_2</Math>の和になっている。
つまり、<Math>y = y_1 + y_2 </Math>が成り立つ。
これを'''重ね合わせの原理'''といい、重なり合ってできた波を'''合成波'''という。
重ね合わせの原理は、単独の波・連続的な波・3つ以上の波の全てにおいて成り立つ。
波が重なり合ったとき、媒質の各点に複数の波の変位が同時に伝わるが、それが互いの波の進行を妨げたり他の波に影響を与えることはない。これを'''波の独立性'''という。
これらのことはウェーブマシンという器械で簡単に確かめられる。
==== 定常波 ====
速さが同じで逆方向に進む、波長・振幅の等しい正弦波が重なると、合成波はどちらにも進んでいないように見える。このとき、全く振動しない所('''節''')と大きく振動する所('''腹''')が交互に並んで見える。このように、進行しないように見える波を'''定常波'''('''定在波''')という。進行する波は'''進行波'''と呼ぶ。
2つの波の位相を考えることにより、媒質のある点が2つの波の定常波における腹・節のどちらになるのかを判断することができる。
媒質のある点において、2つの波が同位相であれば変位の和がそれぞれの変位の2倍になるので腹である。2つの波が逆位相であれば変位の和は打ち消しあって0になるので節である。
; '''発展:定常波の式'''
波形が同じで向きが逆である2つの正弦波を以下とする。
:<Math>y_1 = A \sin \{2\pi (\frac{t}{T} - \frac{x}{\lambda}) + \phi_1 \}</Math>
:<Math>y_2 = A \sin \{2\pi (\frac{t}{T} + \frac{x}{\lambda}) + \phi_2 \}</Math>
このとき、重ね合わせの原理より、定常波の変位は以下のようになる。
:<Math>y = y_1 + y_2</Math>
:<Math> = A \sin \{2\pi (\frac{t}{T} - \frac{x}{\lambda}) + \phi \} + A \sin \{2\pi (\frac{t}{T} + \frac{x}{\lambda}) + \phi \}</Math>
:<Math> = 2A \cos (2\pi \frac{x}{\lambda} + \frac{\phi_2 - \phi_1}{2}) \sin (2\pi \frac{t}{T} + \frac{\phi_2 + \phi_1}{2})</Math>
この式を見ると、sinの中身はtの関数であり、cosの中身はxの関数である。
このことから、位置<Math>x</Math>における定常波の振幅<Math>A(x)</Math>は
:<Math>A(x) = 2A | \cos (2\pi \frac{x}{\lambda} + \frac{\phi_2 - \phi_1}{2}) |</Math>
と表せる。
この式から、「振幅の最大値は2Aで、最大値を取る位置xが飛び飛びに存在する」ことと、「振幅が0になるxが飛び飛びに存在する」ことがわかる。
<Math>A(x) = 2A</Math>となる位置<Math>x</Math>を考えると、<Math>2\pi \frac{x}{\lambda} + \frac{\phi_2 - \phi_1}{2} = n\pi</Math>を満たす位置<Math>x</Math>が腹である。
同様に<Math>A(x) = 0</Math>となる位置<Math>x</Math>を考えると、<Math>2\pi \frac{x}{\lambda} + \frac{\phi_2 - \phi_1}{2} = (n+\frac{1}{2})\pi</Math>を満たす位置<Math>x</Math>が節である。
また、2つの波の初期位相<Math>\phi_1 , \phi_2</Math>がともに0である場合を考えると、上の式から「腹と節は半波長(<Math>\frac{\lambda}{2}</Math>)ごとに現れる」ことと、「腹と節は四半波長(<Math>\frac{\lambda}{4}</Math>)間隔で交互に現れる」ことがわかる。
==== 自由端反射・固定端反射 ====
ウェーブマシンの一端から発生させた波を観察すると、波は反対側の端の点に達したのち、その点で折り返して戻ってくる。このような現象を'''反射'''という。反射波を'''入射波'''、反射後の波を'''反射波'''という。
反射する点において、媒質が自由に振動できる端を'''自由端'''、媒質が振動できないよう固定されている端を'''固定端'''という。
自由端では、入射波の山・谷がそのまま反射波の山・谷となる。このような反射を'''自由端反射'''という。
固定端では、[[高等学校物理基礎/力学#運動の第3法則 作用・反作用の法則|作用反作用の法則]]により入射波の山・谷が反転して反射波の谷・山となる。このような反射を'''固定端反射'''という。
単独の波の反射において、自由端反射の場合は入射波を延長した波を自由端を軸に折り返し、固定端反射の場合は入射波を延長した波を上下反転させて固定端を軸に折り返すと反射波が作図できる。また、重ね合わせの原理を用いることで合成波も作図できる。
連続的な正弦波の反射において、反射波も正弦波であるので、入射波と反射波の合成波は定常波となる。自由端の場合、端は定常波の腹となる。固定端の場合、端は定常波の節となる。
=== 発展:平面上を伝わる波 ===
[[高等学校 物理]]で学ぶ内容のうち、第2節「音」を学ぶ上で知っておくべき事項を纏めた。
==== 波面 ====
水面上の一点を振動させると、波源を中心に円形の波紋が広がる。このとき、同一円周上の各点は同位相である。このような、位相が等しい点を連ねた面を'''波面'''といい、波面が平面になる波を'''平面波'''、波面が球面になる波を'''球面波'''という。
波面は波の進む向きと常に垂直である。波と垂直に交わる線を'''射線'''という。射線は波の進む向きを表す。
==== 波の干渉 ====
水面上の2点を振動させると、これらの点を波源とする波が広がる。このとき、山同士・谷同士が重なる場所は振幅が大きくなり、山と谷が重なる場所は振幅が小さくなる。このように、波が重なって振動を強め合ったり弱め合ったりする現象を'''波の干渉'''という。
振幅<Math>A</Math>で同位相で振動する2つの波源<Math>S_1, S_2</Math>から出る波の波長を<Math>\lambda</Math>とする。波源<Math>S_1, S_2</Math>からの距離をそれぞれ<Math>l_1, l_2</Math>とすると、距離の差は<Math>| l_1 - l_2 |</Math>であるので、非負整数<Math>m</Math>を用いると干渉の条件式は以下のようになる。
:強め合う条件:<Math>| l_1 - l_2 | = m\lambda = 2m \cdot \frac{\lambda}{2}</Math>
:弱め合う条件:<Math>| l_1 - l_2 | = (m+\frac{1}{2}) \lambda = (2m+1) \frac{\lambda}{2}</Math>
なお、波源<Math>S_1, S_2</Math>が逆位相で振動する場合は、
:強め合う条件:<Math>| l_1 - l_2 | = (m+\frac{1}{2}) \lambda = (2m+1) \frac{\lambda}{2}</Math>
:弱め合う条件:<Math>| l_1 - l_2 | = m\lambda = 2m \cdot \frac{\lambda}{2}</Math>
と条件式が入れ替わるので注意が必要である。
また、この2式を満たす点を連ねた曲線は、波源<Math>S_1, S_2</Math>を焦点とする[[高等学校数学C/平面上の曲線#双曲線|双曲線]]となる。
==== 反射・屈折 ====
媒質の境目を'''境界面'''という。
境界面に垂直な直線('''境界面の法線''')が入射波の進行方向と成す角を'''入射角'''、反射波の進行方向と成す角を'''反射角'''という。
波の反射では、入射角<Math>i</Math>と反射角<Math>j</Math>について以下が成り立つ。
:<Math>i = j</Math>
これを'''反射の法則'''という。
波の速さが異なる2つの媒質の境界面に波が斜めに入射する時、波の進行方向が変わる。この現象を'''屈折'''といい、屈折した後の波を'''屈折波'''と呼ぶ。波が屈折する時、反射波も同時に生じている。
境界面の法線が屈折波の進行方向と成す角を'''屈折角'''という。
入射角<Math>i</Math>、反射角<Math>r</Math>、媒質1, 2での波の速さ<Math>v_1, v_2</Math>、波長<Math>\lambda_1, \lambda_2</Math>について、以下が成り立つ。
:<Math>\frac{\sin i}{\sin r} = \frac{v_1}{v_2} = \frac{\lambda_1}{\lambda_2} = n_{12}</Math>
これを'''屈折の法則'''という。
<Math>n_{12}</Math>は、媒質1に対する媒質2の'''(相対)屈折率'''である。
==== 波の回折 ====
波が障碍物に当たった場合、障碍物の隙間を通ってその背後まで回り込む。
このような現象を'''波の回折'''という。
音や電波が障碍物の陰であっても届くのは、回折によるものである。
回折は、隙間や障碍物の幅に対して波長が小さいとき目立たないが、同程度以上になると目立つようになる。
==音==
=== 音の性質 ===
==== 音波 ====
物体が振動すると、その振動は縦波となって空気などの媒質を伝わっていく。このような縦波を'''音'''('''音波''')という。音の波源を'''音源'''('''発音体''')という。
我々は声帯を震えさせて声を出し、鼓膜が振動することで音を聞く。
==== 音の三要素 ====
音の波形は'''オシロスコープ'''を用いて観察することができる。
; '''音の大きさ'''
同じ振動数の音が聞こえている時、振幅が大きくなると音は大きくなる。音の大きさは人間の主観に基づいた量であるのに対し、エネルギーに基づいた物理量を'''音の強さ'''という。音の強さ<Math>I</Math>[dB]は波の強さと同様に求められる。
; '''音の高さ'''
振動数が大きければ大きいほど高音になる。1オクターブ上の音にするには、振動数を2倍すれば良い。人間が聞くことのできる音の振動数は20~2万Hzの範囲にある。この人間の可聴域よりも高い音を'''超音波'''という。例えば、一般的な犬笛は3万Hzの音を出し、イルカの出す超音波は15万Hzにも達する。逆に、可聴域よりも低い音を'''超低周波音'''と呼ぶ。
; '''音色'''
身の回りの音の殆どは単純な正弦波ではなく、複雑な波形をしている。この波形の違いが音色の違いを生み、より豊かで深みのある音を作りだしている。
音の大きさ・高さ・音色を'''音の三要素'''と呼ぶ。
==== 音の速さ ====
空気中の音速は、温度が高くなるほど大きくなる。
1気圧、<Math>t</Math>[℃]の空気中での音速<Math>V</Math>[m/s]は、
:<Math>V = 331.5 + 0.6t</Math>
である。
常温(15℃)での音速は上の式から約340m/sと計算できる。
音は縦波であるため、液体や固体でも伝わる。水中では音速は空気中の4〜5倍であり、固体中は更に速い。真空中では媒質がないので音は伝わらない。
==== 音の伝わり方 ====
音波も反射・屈折・回折・干渉など波の諸現象が発生する。
音の反射は山びこなどに見ることができる。イルカやコウモリなどは超音波の反射音で獲物や障碍物までの距離や方向を把握する。音が短時間で繰り返し反射すると、音源が振動をやめた後もしばらく音が残ることがある。これを'''残響'''という。音楽ホールは音が心地よく響くよう、残響を考慮に入れて設計されている。
空気など同じ媒質の中でも、温度の違いなどで部分的に音の速さが異なれば、音は屈折しながら進む。
人間の声は波長が1〜3m程度であり、身の回りの障碍物の大きさと同程度かそれより長いため、回折が起こりやすい。
同じ振動数の音を2つのスピーカーから出すと、音がよく聞こえる場所と聞こえにくい場所ができる。これは、音の干渉によって空気の振動を強め合う場所と弱め合う場所ができるからである。
==== 唸り ====
振動数が僅かに異なる2つの音叉を同時に鳴らすと、音の大小が周期的に繰り返されて聞こえる。このような現象を'''唸り'''という。唸りは、2つの音波の重なり合いで生じる。
2つの音波の振動数を<Math>f_1, f_2</Math>とすると、唸りの回数<Math>f</Math>は
:<Math>f = |f_1 -f_2|</Math>
と表せる。
2つの音波の振動数が接近している場合にのみ唸りは聞こえる。
また、低音になればなるほど唸りは起こりにくい。
=== 共振・共鳴 ===
=== 発展:ドップラー効果 ===
[[category:物理基礎|はとう]]
2r9tbw4d9oy2791ptn1nryfd58m4ap6
高等学校数学B/確率分布と統計的な推測
0
32693
299671
299459
2026-05-20T00:19:16Z
~2026-30297-95
91534
299671
wikitext
text/x-wiki
{{pathnav|frame=1|高等学校数学|高等学校数学B}}
本項は[[高等学校数学B]]の「確率分布と統計的な推測」の解説です。
この分野は数学Iの[[高等学校数学I/データの分析|データの分析]]、数学Aの[[高等学校数学A/場合の数と確率|確率]]と関連があります。
同じく数学Bの[[高等学校数学B/数列|数列]]、数学Ⅱの[[高等学校数学II/微分・積分の考え|微分・積分の考え]]を既習であるものとします。また、この分野を学習後に同じく数学Bの[[高等学校数学B/数学と社会生活|数学と社会生活]]で扱うデータ解析の内容も参照することを推奨します。
<Math>k</Math>は自然数で<Math>1 \leq k \leq n</Math>を満たすものとします。
== 確率分布 ==
===確率分布===
; 確率変数と確率分布
試行の結果によってどの値をとるか定まり、とり得る値の各々に対してその値をとる確率が定まるような変数を'''確率変数'''と呼ぶ。
確率変数<Math>X</Math>のとり得る値が<Math>x_1, x_2, \cdots, x_n</Math>であるとき、<Math>X</Math>が値<Math>x_k</Math>をとる確率 を<Math>P(X=x_k)</Math>、<Math>a \leq x_k \leq b</Math>である確率 <Math>P(a \leq X \leq b)</Math>のように表す。
<Math>P(X=x_k)</Math>を<Math>p_k</Math>と表すこととすると、<Math>x_k</Math>と<Math>p_k</Math>の対応関係は以下のようになる。
<table border="1">
<tr><th><div class="center"><Math>X</Math></div></th><td><div class="center"><Math>x_1</Math></div></td><td><div class="center"><Math>x_2</Math></div></td><td><div class="center"><Math>\cdots</Math></div></td><td><div class="center"><Math>\cdots</Math></div></td><td><div class="center"><Math>x_n</Math></div></td><th><div class="center">計</div></th></tr>
<tr><th><div class="center"><Math>P</Math></div></th><td><div class="center"><Math>p_1</Math></div></td><td><div class="center"><Math>p_2</Math></div></td><td><div class="center"><Math>\cdots</Math></div></td><td><div class="center"><Math>\cdots</Math></div></td><td><div class="center"><Math>p_n</Math></div></td><th><div class="center"><Math>1</Math></div></th></tr>
</table>
この対応関係を<Math>X</Math>の'''確率分布'''あるいは単に'''分布'''と呼び、確率変数<Math>X</Math>はこの'''分布に従う'''という。
このとき、常に<Math>p_k \geq 0</Math>であり、<Math>\sum_{k=1}^{n}p_k=1</Math>である。
; 期待値と分散
<Math>X</Math>の確率分布が以下の表であるとする。
<table border="1">
<tr><th><div class="center"><Math>X</Math></div></th><td><div class="center"><Math>x_1</Math></div></td><td><div class="center"><Math>x_2</Math></div></td><td><div class="center"><Math>\cdots</Math></div></td><td><div class="center"><Math>\cdots</Math></div></td><td><div class="center"><Math>x_n</Math></div></td><th><div class="center">計</div></th></tr>
<tr><th><div class="center"><Math>P</Math></div></th><td><div class="center"><Math>p_1</Math></div></td><td><div class="center"><Math>p_2</Math></div></td><td><div class="center"><Math>\cdots</Math></div></td><td><div class="center"><Math>\cdots</Math></div></td><td><div class="center"><Math>p_n</Math></div></td><th><div class="center"><Math>1</Math></div></th></tr>
</table>
このとき、<Math>\sum_{k=1}^{n}x_kp_k</Math>を<Math>X</Math>の'''期待値'''と呼び、<Math>E(X)</Math>または<Math>m</Math>または<Math>\mu</Math>で表す(<Math>\mu</Math>はギリシャ文字で、アルファベットの<Math>m</Math>に対応する文字である)。
次に、確率変数<Math>(X-m)^2</Math>を考える。この確率変数の期待値を<Math>X</Math>の'''分散'''と呼び、<Math>V(X)</Math>で表すこととする(Vは「分散」の英語「Variance」の略。<math>\mathrm{Var} (X)</math>と書く場合もある)。
このとき、期待値の定義から<Math>V(X) = E\{ (X-m)^2 \} = \sum_{k=1}^{n}(x_k-m)^2p_k</Math>であり、<Math>V(X)</Math>の単位は測定単位の二乗(例えば<Math>X</Math>の単位が<Math>\mathrm{cm}</Math>なら<Math>V(X)</Math>の単位は<Math>\mathrm{cm}^2</Math>)である。そこで、<Math>\sqrt{V(X)}</Math>を<Math>X</Math>の'''標準偏差'''と呼び、<Math>\sigma(X)</Math>で表すこととする(<Math>\sigma</Math>は<Math>\Sigma</Math>の小文字である)。
分散を表す式を変形すると、
<Math>V(X) =\sum_{k=1}^{n}(x_k-m)^2p_k</Math>
<Math>=\sum_{k=1}^{n}(x_k^2-2mx_k+m^2)p_k</Math>
<Math>=\sum_{k=1}^{n}x_k^2p_k-2m\sum_{k=1}^{n}x_kp_k+m^2\sum_{k=1}^{n}p_k</Math>
<Math>=\sum_{k=1}^{n}x_k^2p_k-2m\cdot m+m^2\cdot 1</Math>
<Math>=\sum_{k=1}^{n}x_k^2p_k-m^2</Math>
となり、<Math>\sum_{k=1}^{n}x_k^2p_k</Math>は確率変数<Math>X^2</Math>の期待値に等しいので<Math>V(X)= E(X^2) - \{ E(X) \}^2</Math>が成り立つ。
今までの事項を纏めると以下のようになる。
<Math>X</Math>の期待値:<Math>E(X)= m = \mu =\sum_{k=1}^{n}x_kp_k</Math>
<Math>X</Math>の分散:<Math>V(X)=E\{(X-m)^2\}=E(X^2)- \{E(X)\}^2</Math>
<Math>X</Math>の標準偏差:<Math>\sigma(X)=\sqrt{V(X)}</Math>
確率変数<Math>X</Math>の期待値・分散・標準偏差のことをそれぞれ<Math>X</Math>の'''分布の平均・分散・標準偏差'''とも呼ぶ。標準偏差は分布の平均を中心として<Math>x_k</Math>の散らばる傾向の程度を表しており、'''標準偏差の値が小さいほど<Math>x_k</Math>は分布の平均の近傍に集中する'''。
なお、分散と標準偏差を纏めて'''散布度'''、代表値と合わせて'''分布の特性値'''と呼ぶ。
{{コラム|サンクトペテルブルクのパラドックス|
:次のようなゲームを考える。
:「公正なコイン1枚を表が出るまで繰り返し投げ、表が出たら終了する。コインを投げた回数を<Math>n</Math>とするとき、<Math>2^{n-1}</Math>円の賞金がもらえる。」
:<Math>n</Math>回目に表が出る確率を<Math>p_n</Math>、賞金を<Math>X_n</Math>とおくと、<Math>X_n</Math>は確率変数であり、<Math>p_n =( \frac{1}{2})^{n-1} \cdot \frac{1}{2} = (\frac{1}{2})^n, X_n = 2^{n-1}</Math>なので、裏が出続けたときのこのゲームの期待値は<Math>\sum_{k=1}^{\infty} p_k X_k = \sum_{k=1}^{\infty} (\frac{1}{2})^{k} 2^{k-1} = \sum_{k=1}^{\infty} (\frac{1}{2})^{k-k+1} = \sum_{k=1}^{\infty} \frac{1}{2} = \infty</Math>(円)となり、'''参加費がいくらであってもこのゲームに参加した方が良い'''と考えられる。この結論は本当に正しいのだろうか?
:参加費を一万円と設定すると、参加費よりも大きい賞金が得られる確率は14回以上連続で裏が出る場合で、<Math>(\frac{1}{2})^{14} \fallingdotseq 0.006</Math>%以下と非常に小さい。主催者の立場になると、現実的に大きな金額を支払うことはできないので、賞金に上限を設定する必要がある。例えば、20回まで裏が出続けた場合はそこで打ち切りとし、<Math>2^{20}=1048576</Math>すなわち約105万円を上限とする。このときの期待値は<Math>\sum_{k=1}^{20}p_k X_k + (\frac{1}{2})^{20} \cdot 2^{20} = \frac{20}{2} + 1 = 11</Math>(円)となる。上限を設定した途端、期待値は<Math>\infty</Math>から十数円程度に変わってしまった。
:現実的に考えると期待値は十数円程度に収まることがわかったが、「主催者が資金を無限に持っている」という前提で思考実験したときについては解決していない。この場合については、[[高等学校数学II/指数関数・対数関数|対数]]で定義される「効用」という概念を用いてこのパラドックスを回避する方法が見つかっている。
:この話題からは、「あらかじめゲームを何回繰り返すかを決めておけば、比較的公平な賭け金を設定できる」ということがわかる。逆に、「賭け金が公平かどうか確かめる」ことも同様にできる。
}}
; 確率変数の変換
<Math>X</Math>の確率分布が以下の表であるとする。
<table border="1">
<tr><th><div class="center"><Math>X</Math></div></th><td><div class="center"><Math>x_1</Math></div></td><td><div class="center"><Math>x_2</Math></div></td><td><div class="center"><Math>\cdots</Math></div></td><td><div class="center"><Math>\cdots</Math></div></td><td><div class="center"><Math>x_n</Math></div></td><th><div class="center">計</div></th></tr>
<tr><th><div class="center"><Math>P</Math></div></th><td><div class="center"><Math>p_1</Math></div></td><td><div class="center"><Math>p_2</Math></div></td><td><div class="center"><Math>\cdots</Math></div></td><td><div class="center"><Math>\cdots</Math></div></td><td><div class="center"><Math>p_n</Math></div></td><th><div class="center"><Math>1</Math></div></th></tr>
</table>
<Math>a,b</Math>を定数とすると、一次式<Math>Y=aX+b</Math>で定められる<Math>Y</Math>も確率変数となり、そのとる値は<Math>y_k = a x_k+b</Math>となる。よって<Math>Y</Math>の確率分布は以下の表のようになる。
<table border="1">
<tr><th><div class="center"><Math>Y</Math></div></th><td><div class="center"><Math>y_1</Math></div></td><td><div class="center"><Math>y_2</Math></div></td><td><div class="center"><Math>\cdots</Math></div></td><td><div class="center"><Math>\cdots</Math></div></td><td><div class="center"><Math>y_n</Math></div></td><th><div class="center">計</div></th></tr>
<tr><th><div class="center"><Math>P</Math></div></th><td><div class="center"><Math>p_1</Math></div></td><td><div class="center"><Math>p_2</Math></div></td><td><div class="center"><Math>\cdots</Math></div></td><td><div class="center"><Math>\cdots</Math></div></td><td><div class="center"><Math>p_n</Math></div></td><th><div class="center"><Math>1</Math></div></th></tr>
</table>
確率変数<Math>X</Math>に対して上のような<Math>Y</Math>を考えることを'''確率変数の変換'''と呼ぶ。
<Math>Y</Math>の期待値・分散・標準偏差は以下のようになる。
<Math>E(Y)= \sum_{k=1}^{n}y_kp_k = \sum_{k=1}^{n}(ax_k+b)p_k = a \sum_{k=1}^{n}x_kp_k + b \sum_{k=1}^{n}p_k = aE(X)+b</Math>
<Math>V(Y)= \sum_{k=1}^{n}\{y_k- E(Y)\}^2 p_k =a^2 \sum_{k=1}^{n}\{x_k- E(X)\}^2p_k = a^2V(X)</Math>
<Math>\because y_k-E(Y) = ax_k+b-\{aE(X)+b\} = a \{x_k - E(X)\}</Math>
<Math>\sigma(Y)=\sqrt{V(Y)}=|a| \sqrt{V(X)}=|a| \sigma(X)</Math>
=== 同時分布 ===
確率変数<Math>X, Y, Z, \cdots</Math>と実数<Math>a, b, c, \cdots</Math>に対し<Math>X=a, Y=b, Z=c, \cdots</Math>が同時に成り立つ確率を<Math>P(X=a, Y=b, Z=c, \cdots)</Math>のように表すこととする。
2つの確率変数<Math>X, Y</Math>についてとりうる値がそれぞれ<Math>x_1, x_2, \cdots , x_n</Math>、<Math>y_1, y_2, \cdots , y_m</Math>であるとする。<Math>P(X=x_i, Y=y_j) = r_{ij}</Math>とおいたとき、以下の表のように全ての<Math>i, j</Math>の組み合わせにおいて<Math>(x_i, y_j)</Math>と<Math>p_{ij}</Math>との対応が得られる。
<table border="1">
<tr><th><Math>X</Math><nowiki>\</nowiki><Math>Y</Math></th><th><div class="center"><Math>y_1</Math></div></th><th><div class="center"><Math>y_2</Math></div></th><th><div class="center"><Math>\cdots</Math></div></th><th><div class="center"><Math>\cdots</Math></div></th><th><div class="center"><Math>\cdots</Math></div></th><th><div class="center"><Math>y_m</Math></div></th><th><div class="center">計</div></th></tr>
<tr><th><div class="center"><Math>x_1</Math></div></th><td><div class="center"><Math>r_{11}</Math></div></td><td><div class="center"><Math>r_{12}</Math></div></td><td><div class="center"><Math>\cdots</Math></div></td><td><div class="center"><Math>\cdots</Math></div></td><td><div class="center"><Math>\cdots</Math></div></td><td><div class="center"><Math>r_{1m}</Math></div></td><th><div class="center"><Math>p_1</Math></div></th></tr>
<tr><th><div class="center"><Math>x_2</Math></div></th><td><div class="center"><Math>r_{21}</Math></div></td><td><div class="center"><Math>r_{22}</Math></div></td><td><div class="center"><Math>\cdots</Math></div></td><td><div class="center"><Math>\cdots</Math></div></td><td><div class="center"><Math>\cdots</Math></div></td><td><div class="center"><Math>r_{2m}</Math></div></td><th><div class="center"><Math>p_2</Math></div></th></tr>
<tr><th><div class="center"><Math>\vdots</Math></div></th><td><div class="center"><Math>\vdots</Math></div></td><td><div class="center"><Math>\vdots</Math></div></td><td><div class="center"><Math>\ddots</Math></div></td><td><div class="center"><Math>\ddots</Math></div></td><td><div class="center"><Math>\ddots</Math></div></td><td><div class="center"><Math>\vdots</Math></div></td><th><div class="center"><Math>\vdots</Math></div></th></tr>
<tr><th><div class="center"><Math>\vdots</Math></div></th><td><div class="center"><Math>\vdots</Math></div></td><td><div class="center"><Math>\vdots</Math></div></td><td><div class="center"><Math>\ddots</Math></div></td><td><div class="center"><Math>\ddots</Math></div></td><td><div class="center"><Math>\ddots</Math></div></td><td><div class="center"><Math>\vdots</Math></div></td><th><div class="center"><Math>\vdots</Math></div></th></tr>
<tr><th><div class="center"><Math>\vdots</Math></div></th><td><div class="center"><Math>\vdots</Math></div></td><td><div class="center"><Math>\vdots</Math></div></td><td><div class="center"><Math>\ddots</Math></div></td><td><div class="center"><Math>\ddots</Math></div></td><td><div class="center"><Math>\ddots</Math></div></td><td><div class="center"><Math>\vdots</Math></div></td><th><div class="center"><Math>\vdots</Math></div></th></tr>
<tr><th><div class="center"><Math>x_n</Math></div></th><td><div class="center"><Math>r_{n1}</Math></div></td><td><div class="center"><Math>r_{n2}</Math></div></td><td><div class="center"><Math>\cdots</Math></div></td><td><div class="center"><Math>\cdots</Math></div></td><td><div class="center"><Math>\cdots</Math></div></td><td><div class="center"><Math>r_{nm}</Math></div></td><th><div class="center"><Math>p_n</Math></div></th></tr>
<tr><th><div class="center">計</div></th><td><div class="center"><Math>q_1</Math></div></td><td><div class="center"><Math>q_2</Math></div></td><td><div class="center"><Math>\cdots</Math></div></td><td><div class="center"><Math>\cdots</Math></div></td><td><div class="center"><Math>\cdots</Math></div></td><td><div class="center"><Math>q_m</Math></div></td><th><div class="center"><Math>1</Math></div></th></tr>
</table>
このような対応を<Math>X</Math>と<Math>Y</Math>の'''同時分布'''という。
各<Math>i, j</Math>について、それぞれ<Math>P(X=x_i) = \sum_{j=1}^{m}r_{ij} =p_i, P(Y=y_j)= \sum_{i=1}^{n}r_{ij} = q_j </Math>が成り立つので、<Math>X, Y</Math>の確率分布はそれぞれ以下のようになる。
<table border="1">
<tr><th><div class="center"><Math>X</Math></div></th><td><div class="center"><Math>x_1</Math></div></td><td><div class="center"><Math>x_2</Math></div></td><td><div class="center"><Math>\cdots</Math></div></td><td><div class="center"><Math>\cdots</Math></div></td><td><div class="center"><Math>x_n</Math></div></td><th><div class="center">計</div></th></tr>
<tr><th><div class="center"><Math>P</Math></div></th><td><div class="center"><Math>p_1</Math></div></td><td><div class="center"><Math>p_2</Math></div></td><td><div class="center"><Math>\cdots</Math></div></td><td><div class="center"><Math>\cdots</Math></div></td><td><div class="center"><Math>p_n</Math></div></td><th><div class="center"><Math>1</Math></div></th></tr>
</table>
<table border="1">
<tr><th><div class="center"><Math>Y</Math></div></th><td><div class="center"><Math>y_1</Math></div></td><td><div class="center"><Math>y_2</Math></div></td><td><div class="center"><Math>\cdots</Math></div></td><td><div class="center"><Math>\cdots</Math></div></td><td><div class="center"><Math>y_m</Math></div></td><th><div class="center">計</div></th></tr>
<tr><th><div class="center"><Math>P</Math></div></th><td><div class="center"><Math>q_1</Math></div></td><td><div class="center"><Math>q_2</Math></div></td><td><div class="center"><Math>\cdots</Math></div></td><td><div class="center"><Math>\cdots</Math></div></td><td><div class="center"><Math>q_m</Math></div></td><th><div class="center"><Math>1</Math></div></th></tr>
</table>
; 確率変数の和の期待値
2つの確率変数<Math>X, Y</Math>について、和<Math>X+Y</Math>もまた確率変数であり、同時分布表と確率変数変換の等式から、確率変数の和の期待値について<Math>E(X+Y)= E(X)+E(Y)</Math>、<Math>E(aX+bY)=aE(X)+bE(Y)</Math>が成り立つことがわかる。これは確率変数が3つ以上であっても同様に成り立つ。
; 事象の独立・従属
一般に2つの事象<Math>A,B</Math>において<Math>P_A(B)=P(B)</Math>が成り立つとき、事象<Math>A</Math>が起こることは事象<Math>B</Math>の起こる確率に無関係である。これを事象<Math>A</Math>は事象<Math>B</Math>に'''独立'''であるという。このとき、確率の乗法定理により<Math>P(A \cap B)=P(A)P(B)</Math>が成り立つ。この式は<Math>P_B(A)=P(A)</Math>と同値であるため、事象<Math>B</Math>が起こることも事象Aの起こる確率に無関係、つまり事象<Math>B</Math>は事象<Math>A</Math>に独立であると言える。よって、<Math>P(A \cap B)=P(A)P(B)</Math>が成り立つとき、2つの事象<Math>A, B</Math>は'''互いに独立'''である。独立でない場合は2つの事象<Math>A, B</Math>は'''従属'''であるという。なお、事象<Math>A, B</Math>の独立・従属と対応する確率変数<Math>X,Y</Math>の独立・従属は一致する。
;確率変数の積の期待値
2つの確率変数<Math>X, Y</Math>について、積<Math>XY</Math>もまた確率変数である。<Math>X, Y</Math>が'''互いに独立なとき'''、同時分布表より確率変数の積の期待値は以下のように計算される。
<Math>E(XY)= \sum_{i=1}^{n} \sum_{j=1}^{m} (x_iy_j)(p_iq_j) = \sum_{i=1}^{n}x_ip_i \cdot \sum_{j=1}^{m}y_jq_j = E(X)E(Y)</Math>
これは3つ以上の確率変数においても'''互いに独立ならば'''成立する。
; 確率変数の和の分散
確率変数<Math>X+Y</Math>の分散について考える。
<Math>V(X+Y)=E\{(X+Y)^2\} - \{E(X+Y)\}^2 </Math>
<Math>= E(X^2+2XY+Y^2)-\{E(X)+E(Y)\}^2 </Math>
<Math>= E(X^2)+2E(XY)+E(Y^2) - \{E(X)\}^2 - 2E(X)E(Y)- \{E(Y)\}^2</Math>
このとき、確率変数<Math>X, Y</Math>が'''互いに独立ならば'''<Math>E(XY)=E(X)E(Y)</Math>を用いることで、
上式<Math>=E(X^2)+E(Y^2)-\{E(X)\}^2-\{E(Y)\}^2</Math>
<Math>=[E(X^2)-\{E(X)\}^2]+[E(Y^2)-\{E(Y)\}^2]</Math>
<Math>=V(X)+V(Y)</Math>と変形できる。
同様に、確率変数変換の等式より確率変数<Math>X,Y</Math>が'''互いに独立ならば'''<Math>V(aX+bY)=a^2V(X)+b^2V(Y)</Math>が成り立つ。
これらは3つ以上の確率変数においても'''互いに独立ならば'''成立する。
; 確率変数の積の分散(発展)
確率変数<Math>XY</Math>の分散について考える。
分散の性質より<Math>V(XY)=E(X^2Y^2)- \{ E(X) \}^2 \{ E(Y) \}^2</Math>と変形できる。
'''<Math>X ,Y</Math>が互いに独立ならば<Math>X^2,Y^2</Math>も互いに独立である'''ので、<Math>E(X^2Y^2)=E(X^2)E(Y^2)</Math>が成り立つ。
よって<Math>V(XY)=E(X^2)E(Y^2) - { E(X) }^2 {E(Y)}^2</Math>となる。
ここで分散の性質より上式は<Math>[V(X)+\{ E(X) \}^2] [V(Y)+\{ E(Y) \}^2] - \{ E(X) \}^2 \{ E(Y) \}^2</Math>と変形できるので、
展開して<Math>V(XY)=V(X)V(Y) + \{ E(X) \}^2V(Y) + \{E(Y) \}^2 V(X)</Math>となる。
これは3つ以上の確率変数においても'''互いに独立ならば'''成立する。
なお、上記で紹介した確率変数の和の分散、確率変数の積の期待値・分散については、確率変数が従属である場合には確率変数のとる値を用いて直接計算する必要がある。
{{コラム|共分散と分散|
[[高等学校数学I/データの分析#相関係数|数学Iで扱った]]ように、データ系列x, yについて、xの偏差とyの偏差の積の平均値を'''共分散'''と呼び、<math>S_{xy}</math>で表した。
確率変数<math>X, Y</math>に対して共分散は<math>\mathrm{Cov} [X, Y]</math>と書かれる(「Cov」は「共分散」の英語「Covariance」の略)。
共分散の定義式を先述の期待値の性質を用いて変形する。
:<math>\mathrm{Cov} [X, Y]=E [ \{ X-E(X) \} \{ Y-E(Y) \} ]</math>
:<math>=E \{ XY - YE(X) - XE(Y) + E(X)E(Y) \}</math>
:<math>=E (XY) - E \{ YE(X) \} - E \{ XE(Y) \} + E \{ E(X)E(Y) \}</math>(<math>\because</math>和の期待値は期待値の和)
:<math>=E(XY) - E(X)E(Y) - E(Y)E(X) + E(X)E(Y)</math>(<math>\because</math>定数倍は期待値の外に出せる・定数の期待値はその定数そのもの)
:<math>=E(XY)-E(X)E(Y)</math>
つまり、共分散は「(期待値の積)-(積の期待値)」で容易に求まる。
ここで<math>Y=X</math>を代入すると、共分散の定義式は<math>E [ \{ X - E(X) \}^2]</math>、上で求めた式は<math>E(X^2) - \{ E(X) \}^2</math>と、いづれの場合も<math>X</math>の分散<math>V(X)</math>に一致する。
すなわち、共分散は分散を拡張した概念であるといえる。
共分散を用いると、独立でない場合の確率変数の積の期待値・和の分散を表すことができる。
:<math>E(XY)=E(X)E(Y)+\mathrm{Cov}[X, Y]</math>(※上で求めた共分散と期待値の関係より)
:<math>V(X\pm Y)=V(X)\pm2\mathrm{Cov}[X, Y]+V(Y)</math>(※定義通り<math>E( [ \{X-E(X)\}\pm\{Y-E(Y)\} ]^2 )</math>を計算すれば求まる)
}}
=== 二項分布 ===
確率<Math>p</Math>で<Math>A</Math>か<Math>B</Math>かの2通りの結果をとる試行('''ベルヌーイ試行''')を'''独立に<Math>n</Math>回繰り返したとき'''、<Math>A</Math>が起こる回数<Math>X</Math>の確率分布は[[高等学校数学A/場合の数と確率#反復試行の確率|反復試行の確率]]より以下のようになる。ただし、<Math>0 < p < 1, q=1-p</Math>である。
<table border="1">
<tr><th><div class="center"><Math>X</Math></div></th><td><div class="center"><Math>0</Math></div></td><td><div class="center"><Math>1</Math></div></td><td><div class="center"><Math>\cdots</Math></div></td><td><div class="center"><Math>\cdots</Math></div></td><td><div class="center"><Math>r</Math></div></td><td><div class="center"><Math>\cdots</Math></div></td><td><div class="center"><Math>\cdots</Math></div></td><td><div class="center"><Math>n</Math></div></td><th><div class="center">計</div></th></tr>
<tr><th><div class="center"><Math>P</Math></div></th><td><div class="center"><Math>{}_n \mathrm C_0 q^n</Math></div></td><td><div class="center"><Math>{}_n \mathrm C_1 pq^{n-1}</Math></div></td><td><div class="center"><Math>\cdots</Math></div></td><td><div class="center"><Math>\cdots</Math></div></td><td><div class="center"><Math>{}_n \mathrm C_r p^r q^{n-r}</Math></div></td><td><div class="center"><Math>\cdots</Math></div></td><td><div class="center"><Math>\cdots</Math></div></td><td><div class="center"><Math>{}_n \mathrm C_n p^n</Math></div></td><th><div class="center"><Math>1</Math></div></th></tr>
</table>
表の確率は[[高等学校数学II/式と証明・高次方程式#二項定理|二項定理]]の展開式の各項と一致している。
このような分布のことを'''二項分布'''と呼び、<Math>B(n, p)</Math>のように書く。確率変数<Math>X</Math>が二項分布<Math>B(n, p)</Math>に従うことを<Math>X \sim B(n, p)</Math>と表す。
事象<Math>A</Math>の起こる確率が<Math>p</Math>である試行を'''独立に<Math>n</Math>回行うとき'''、第<Math>k</Math>回目の試行で事象<Math>A</Math>が起これば<Math>1</Math>、起こらなければ<Math>0</Math>の値をとる確率変数を<Math>X_k</Math>とおく。
このとき、<math>X_k</math>は以下のような確率分布に従う。
<table border="1">
<tr><th><div class="center"><Math>X_k</Math></div></th><td><div class="center"><Math>1</Math></div></td><td><div class="center"><Math>0</Math></div></td><th><div class="center">計</div></th></tr>
<tr><th><div class="center"><Math>P</Math></div></th><td><div class="center"><Math>p</Math></div></td><td><div class="center"><Math>q</Math></div></td><th><div class="center"><Math>1</Math></div></th></tr>
</table>
このような確率分布を'''ベルヌーイ分布'''(0-1分布)という。
ベルヌーイ分布の
:期待値は定義より<Math>E(X_k)=1 \cdot p+0 \cdot q=p</Math>である。
:分散は<Math>E(X^2_k)=1^2 \cdot p+0^2 \cdot q=p</Math>より<Math>V(X_k)=E(X^2_k)- \{E(X)\}^2 =p-p^2=p(1-p)=pq</Math>である。
<Math>X= \sum_{k=1}^{n} X_k</Math>とおくと、確率変数<Math>X</Math>は<Math>n</Math>回の反復試行において事象<Math>A</Math>が起こる回数であるから、<Math>X \sim B(n, p)</Math>である。
よって、確率変数の和の期待値・分散を求める公式を用いて、
<Math>E(X)=E(\sum_{k=1}^{n} X_k)=\sum_{k=1}^{n} E(X_k)=\sum_{k=1}^{n}p=np</Math>
<Math>V(X)=V(\sum_{k=1}^{n} X_k)=\sum_{k=1}^{n} V(X_k)=\sum_{k=1}^{n}pq=npq</Math>
である。
纏めると、以下のようになる。
<Math>X \sim B(n, p)</Math>のとき、
<Math>E(X)=np</Math>、<Math>V(X)=npq</Math>、<Math>\sigma (X)=\sqrt{npq}</Math>
ただし、<Math>q=1-p</Math>
{{コラム|負の二項分布|
:成功確率が<Math>p</Math>であるベルヌーイ試行を'''独立に繰り返す'''とき、<Math>k</Math>回成功するまでの'''失敗回数<Math>X</Math>'''が従う確率分布を'''負の二項分布'''と呼ぶ。
:<Math>n</Math>回成功するまでの失敗回数を<Math>r</Math>、<Math>q=1-p</Math>とすると、[[高等学校数学A/場合の数と確率#重複組み合わせ|重複組合せ]]を用いて<Math> P(X=r) = {}_n \mathrm H_r p^n q^r</Math>と計算できる。
:このとき、<Math>E(X)=\frac{nq}{p}, V(X)=\frac{nq}{p^2}</Math>が成り立つ。
:
:負の二項分布を「<Math>a</Math>回成功するまでの'''試行回数<Math>X</Math>'''」で定義することもある。
:この場合、<Math>a</Math>回成功するまでに<Math>b</Math>回試行する確率は<Math> P(X=a) = {}_{a-1} \mathrm C_{b-1} p^a q^{a-b}</Math>と計算でき、<Math>E(X)=\frac{a}{p}, V(X)=\frac{aq}{p}</Math>が成り立つ。
}}
=== 正規分布 ===
<!-- ヒストグラムの幅を小さくして連続型確率変数のグラフに落とし込むことや正規分布曲線のグラフ等は視覚的に表現した方がわかりやすいので、可能ならこれらの図表を追加してください。 -->
; 連続型確率変数
度数分布表で表された、ある変量<Math>X</Math>についてのデータがある。このとき、'''<Math>X</Math>が階級値をとる確率はその階級の相対度数であると考えて良い'''。つまり、<Math>X</Math>は階級値の値をとる確率変数であり、その分布は相対度数の分布と一致する。この確率分布を図示するには、各階級の上の長方形の面積がその階級の相対度数を表すようなヒストグラムを書けば良い。
データの大きさを増し、階級の幅も狭くしていくと、ヒストグラムの形は一つの曲線に近づいていく。そこで、連続的な値をとる確率変数<Math>X</Math>に対し、<Math>a \leq X \leq b</Math>となる確率が<Math>y</Math>ー<Math>x</Math>グラフ上の曲線<Math>y=f(x)</Math>と直線<Math>x=a, x=b</Math>と<Math>x</Math>軸で囲まれた領域の面積で表されるように一つの曲線を対応させる。このような曲線を<Math>X</Math>の'''分布曲線'''という。
連続的な値をとる確率変数を'''連続型確率変数'''といい、<Math>f(x)</Math>を'''確率密度関数'''と呼ぶ。なお、<Math>f(x)</Math>の定義域は実数全体のことも、その一部分のこともある。今まで扱ってきたような、飛び飛びの値をとる確率変数は'''離散型確率変数'''と呼ぶ。なお、離散型確率変数に対して<math>f(k)=P(X=k)</math>を満たす関数<math>f(k)</math>を'''確率質量関数'''という。
'''確率密度関数の性質'''
常に<Math>f(x) \geq 0</Math>
<Math>P(a \leq X \leq b) = \int_a ^b f(x)\, dx </Math><sup>※</sup>
<Math>X</Math>のとる値の範囲が<Math>\alpha \leq X \leq \beta</Math>のとき、<Math>\int_\alpha^\beta f(x)\, dx = 1</Math>
※<math>b=a</math>の場合は<math>P(X=a)=\int_a^a f(x)dx=0</math>である。これは、定性的には「とり得る値が無限個あるうちからある1つの定数に定まる確率は0」と説明される。
以下、特に断りがない場合、確率変数は連続型であるとする。
確率変数<Math>X</Math>のとる値の範囲が<Math>\alpha \leq X \leq \beta</Math>でその確率密度関数が<Math>f(x)</Math>であるとき、期待値・分散・標準偏差は定積分を用いて以下のように定義される。
<Math>E(X)=m=\int_\alpha^\beta xf(x) \, dx</Math>
<Math>V(X)=\int_\alpha^\beta (x-m)^2 f(x) \, dx</Math>
<Math>\sigma (X) = \sqrt{V(X)}</Math>
これは<Math>\alpha=-\infty, \beta=\infty</Math>の場合も含む。
離散型確率変数の期待値・分散の公式と比べると、<Math>\sum_{k=1}^{n}</Math>を<Math>\int_\alpha^\beta</Math>に、<Math>x_k</Math>を<Math>x</Math>に、<Math>p_k</Math>を<Math>f(x)</Math>に置き換えただけで同じ形をしていることがわかる。
; 累積分布関数(発展)
確率密度関数のグラフを直線<Math>x=u</Math>で区切った左側の面積を<Math>F(u)</Math>と置くと、<Math>F(u)</Math>は<Math>x</Math>が<Math>u</Math>以下の値を取る確率('''累積確率''')に一致する。このとき、<Math>F(x)</Math>を'''累積分布関数'''または'''確率分布関数'''と呼ぶ。その定義より、累積分布関数と確率密度関数の間には<Math>F(x) = \int_{-\infty}^x f(t) \, dt \iff f(x) = F'(x)</Math>という関係がある。つまり、確率密度関数の<Math>x=u</Math>における値<Math>f(u)</Math>は累積分布関数<Math>F(x)</Math>の<Math>x=u</Math>における微分係数である。実際には累積分布関数が微分不可能な場合があるため、累積分布関数を確率密度関数の原始関数として定義することが多い。
; 正規分布
確率変数<Math>X</Math>が実数<Math>m</Math>と正の実数<Math>\sigma</Math>を用いて表される関数<Math>f(x) = \frac{1}{\sqrt{2 \pi} \sigma} e^{-\frac{(x-m)^2}{2\sigma^2}}</Math>を確率密度関数に持つとき、この<Math>X</Math>の分布を'''正規分布'''または'''ガウス分布'''と呼び、<Math>N(m, \sigma^2)</Math>のように表す。また、曲線<Math>y=f(x)</Math>を'''正規分布曲線'''と呼ぶ。ここでは、確率変数<Math>X</Math>が正規分布<Math>N(m, \sigma^2)</Math>に従うことを<Math>X \sim N(m, \sigma^2)</Math>と表すこととする。
<Math>X \sim N(m, \sigma^2)</Math>のとき、<Math>m=E(X), \sigma = \sigma(X)</Math>が成り立つ。証明は数Ⅲレベルの積分の知識が必要なため省略する。なお、<Math>e=2.71828\cdots</Math>は「ネイピア数」と呼ばれる無理数である。詳しくは数学Ⅲの[[高等学校数学III/微分法|微分]]で扱う。
また、以下のような性質がある。
'''正規分布の性質'''
平均値と最頻値と中央値が一致する
曲線は直線<Math>x=m</Math>に関して対称で、<Math>f(x)</Math>は<Math>x=m</Math>で最大値をとる。
<Math>x</Math>軸を漸近線とする
標準偏差の値の大小と曲線の山の高低が対応している。
正規分布は連続型確率変数の分布の代表例である。身の周りの現象の中には、観測される変量の分布が正規分布に近いものが多くあり、正規分布を有効に利用することができる。最も有名な例を出すと、偏差値の導出に利用されている。
; 標準正規分布
正規分布のうち、特に<Math>N(0, 1)</Math>を'''標準正規分布'''と呼ぶ。
<Math>X \sim N(m, \sigma^2)</Math>のとき、<Math>Y=aX+b</Math>とすると<Math>Y \sim N(am+b, a^2 \sigma^2)</Math>であることが知られている。そこで<Math>Z=\frac{X-m}{\sigma}</Math>とすると<Math>Z \sim N(0, 1)</Math>であり<sup>※</sup>、<Math>f(z)=\frac{1}{\sqrt{2\pi}} e^{-\frac{z^2}{n}}</Math>が成り立つ。
このように、正規分布に従うある確率変数を標準正規分布に従う確率変数に変換することを、'''標準化'''と呼ぶ。
※どのような確率分布であっても、<math>Z=\frac{X-E(E)}{\sigma(X)}</math>とおけば<math>E(Z)=0, V(Z)=1</math>が成り立つことが知られている。これを'''標準化公式'''という。正規分布の場合は<math>Y=aX+b</math>というアフィン変換に対して分布の種類を変えないので「標準化後も正規分布」と言うことができる。
標準正規分布に従う確率変数<Math>Z</Math>において<Math>P(0 \leq Z \leq u) = p(u)</Math>としたとき、<Math>p(u)</Math>がとる値を纏めた表を'''(標準)正規分布表'''と呼ぶ。正規分布を利用する際には必須になる表であり、大学入試においても問題冊子の最後の方に載せられていることが多い。本書の最終項に載せているので、演習問題を解くときに利用すると良い。
一般の分布であっても、応用上は分布表の値を参照するかエクセル等に計算させる場合が殆どである。
標準正規分布における確率について、次の等式が成り立つ。
:<Math>P(-u \leq Z \leq 0)=P(0 \leq Z \leq u)=p(u)</Math>
:<Math>P(-u \leq Z \leq u) = 2p(u)</Math>
:<Math>P(Z \leq 0)=P(Z \geq 0)=0.5</Math>
なお、正規分布表の値は累積密度関数<Math>F(x) = \frac{1+ \mathrm{erf}(\frac{x-m}{\sqrt{2}\sigma})}{2}</Math>の<Math>x=u</Math>における微分係数である。ここで<Math>\mathrm{erf}(x)</Math>は'''誤差関数'''と呼ばれる[[W:特殊関数|特殊関数]]で、<Math>\mathrm{erf}(x) = \frac{2}{\sqrt{\pi}} \int_0^x e^{-t^2} \, dt</Math>で定義される。
正規分布から構成される確率分布として<math>t</math>分布、<math>\chi^2</math>分布、<math>F</math>分布の3つが存在する。他によく用いられる分布として、一様分布とポアソン分布が存在する。ベルヌーイ分布は一様分布の特別な場合である。詳しくは[[高等学校理数数学#統計的な推測|理数数学]]で解説する。
; 正規化
二項分布<Math>B(n, p)</Math>に従う確率変数<Math>X</Math>について、<Math>X=r</Math>となる確率を<Math>n</Math>を大きくしながら計算し、そのグラフを書くと、次第にグラフが左右対称になっていくことがわかる。
そこで、二項分布を正規分布で近似することを考える。
'''二項分布の正規分布による近似'''
<Math>n</Math>が十分大きいとき、<Math>X \sim B(n, p)</Math>ならば近似的に<Math>X \sim N(np, npq)</Math>である。
一般に、ある確率分布に従う変数を正規分布に従う変数に近似する変換を'''正規化'''あるいは'''正規近似'''と呼ぶ。
二項分布に従う確率変数を正規化した後、さらに標準化することで正規分布表を活用することができる。先ほどの標準化の式に<Math>m=np, \sigma=\sqrt{npq}</Math>を代入するだけなので、そこまで手間はかからない。
なお、二項分布においてはベルヌーイ試行の確率<Math>p</Math>が0.5に近ければ近いほど正規近似の精度が上がることが知られている。
二項分布の<math>n\to\infty</math>の極限を考えると、正規分布に分布収束することが知られている。これはド・モアブル=ラプラスの定理(或いは中心極限定理)によって示される。
{{コラム|半整数補正|
:<Math>X \sim B(16, 0.5)</Math>とすると<Math>m = 16 \cdot 0.5 = 8, \sigma = \sqrt{16 \cdot 0.5 \cdot (1-0.5) } = 2</Math>である。
:ここで、整数<Math>r ( 1 \leq r \leq 16)</Math>に対し<Math>P(X=r)</Math>が<Math>r</Math>を底辺の中心とする幅1の長方形の面積で表されるような<Math>r</Math>ー<Math>P</Math>グラフを考える。
:このグラフに<Math>Y \sim N(8, 2^2)</Math>の確率密度関数のグラフを重ねると、例えば<Math>P = P(6 \leq X \leq 10) </Math>について<Math>P \fallingdotseq P(5.5 \leq Y \leq 10.5)</Math>であることがわかる。
:<Math>Z=\frac{Y-8}{2}</Math>とおくと<Math>Z \sim N(0, 1)</Math>であるから<Math>P \fallingdotseq P(-1.25 \leq Z \leq 1.25) = 2p(1.25) = 0.78870</Math>
:二項分布から直接求めると<Math>(0.5)^{16} \cdot \sum_{k=6}^{10} {}_{16} \mathrm C_k = 0.78988\cdots</Math>であり、高い精度で近似できることがわかる。
:このように、<Math>m, \sigma</Math>について0.5だけ{{ruby|摺|ず}}らして置き換えることを'''半整数補正'''と呼ぶ。
:なお、半整数補正を行わないで計算すると、<Math>P \fallingdotseq P(6 \leq Y \leq 10) = P(-1 \leq Z \leq 1) = 2p(1) = 0.68269</Math>となり、近似値が小さくなる。
:<Math>np, nq</Math>がともに5より大きいならば、半整数補正により実用上十分な精度で近似値を確保することができる。半整数補正を行わない場合は<Math>np, nq</Math>ともにかなり大きくないと良い精度にならない。
}}
== 統計的な推測 ==
=== 標本調査 ===
調べたい対象全体のデータを集める調査を'''全数調査'''と呼ぶ。国勢調査などがこれにあたる。全数調査は対象が厖大な場合に多くの労力・時間・費用を必要とする。また、工場等においては調査によって製品が傷つく場合(耐久試験など)には好ましくない。このような場合、対象全体から一部を抜き出して調べ、その結果から全体の状況を推測する調査を行う。このような調査を'''標本調査'''と呼ぶ。
標本調査における調べたい対象全体の集合を'''母集団'''、調査のために母集団から抜き出された要素の集合を'''標本'''と呼び、母集団から標本を抜き出すことを標本の'''抽出'''と呼ぶ。また、母集団の要素の個数を'''母集団の大きさ'''、標本の要素の個数を'''標本の大きさ'''と呼ぶ。なお、ここでの「母」は「そこから何かを生じさせるもとになるもの」を意味する(「酵母」、「母校」等と同じ用法)。
標本調査では標本を母集団の正しい縮図にするために、標本が特別な属性を持つものに偏らないようにする必要がある。母集団の各要素を等しい確率で抽出することを'''無作為抽出'''と呼び、無作為抽出で選ばれた標本を'''無作為標本'''と呼ぶ。無作為抽出では乱数賽や乱数表などが用いられることがある。詳しくは「[[w:乱数生成]]」を参照。
全ての要素を母集団全体から無作為抽出することは容易ではないため、層化抽出法、クラスター抽出法、多段抽出法などさまざまな抽出方法が編み出されており、それぞれに長所・短所が存在する。
;母集団分布
母集団に属する要素についてのデータをある変量の値の集合と考えることで、 ここまで扱ってきたような統計的手法が使える。
大きさ<Math>N</Math>の母集団において、変量<Math>x</Math>のとる値と要素の個数をそれぞれ<Math>x_1 x_2 \cdots x_n, f_1 f_2 \cdots f_n</Math>と置く。
このとき、変量xの度数分布表は以下のようになる。
<table border="1">
<tr><th>階級値</th><td><div class="center"><Math> x_1 x_2 \cdots\cdots x_n</Math></div></td><td><div class="center">計</div></td></tr>
<tr><th>度数</th><td><div class="center"><Math> f_1 f_2 \cdots\cdots f_n</Math></div></td><td><div class="center"><Math>N</Math></div></td></tr>
</table>
また、変量<Math>x</Math>の平均<Math>\mu</Math>と標準偏差<Math>\sigma</Math>は以下のように求められる。
<Math>\mu = \frac{1}{N} \sum_{k=1}^{n}x_kf_k = \sum_{k=1}^{n}x_k\frac{f_k}{N}</Math>
<Math>\sigma=\sqrt{\frac{1}{N} \sum_{k=1}^{n} (x_k - \mu)^2 f_k} = \sqrt{\sum_{k=1}^{n} (x_k - \mu)^2 \frac{f_k}{N}}</Math>
この母集団から大きさ<Math>n=1</Math>で無作為抽出するとき、その要素における変量<Math>x</Math>の値<Math>X</Math>は偶然に支配されるが、<Math>X=x_k</Math>となる確率<Math>p_k</Math>は<Math>p_k = \frac{f_k}{N}</Math>で与えられる。
よって<Math>X</Math>は以下のような確率分布を持つ確率変数と考えられる。
<table border="1">
<tr><th><Math>X</Math></th><td><div class="center"><Math> x_1 x_2 \cdots\cdots x_n</Math></div></td><td><div class="center">計</div></td></tr>
<tr><th><Math>P</Math></th><td><div class="center"><Math> \frac{f_1}{N} \frac{f_2}{N} \cdots\cdots \frac{f_n}{N}</Math></div></td><td><div class="center"><Math>N</Math></div></td></tr>
</table>
この確率分布は母集団の相対度数の分布と一致する<sup>※</sup>。
※このことから、度数分布に於いて相加平均の式で求めた<math>E(X)</math>と期待値の式で求めた<math>E(X)</math>が常に一致することがわかる。則ち期待値は相加平均の拡張であり、期待値を平均とも呼ぶのはこれが由来である。
一般に、母集団における変量xの分布を'''母集団分布'''、その平均値を'''母平均'''、分散を'''母分散'''、標準偏差を'''母標準偏差'''と呼ぶ。
上の確率分布から、大きさ1の無作為標本における変量<Math>x</Math>の値<Math>X</Math>と母平均<Math>\mu</Math>、母分散<Math>\sigma^2</Math>、母標準偏差<Math>\sigma</Math>について、<Math>E(X)=\mu, V(X)=\sigma^2, \sigma(X)=\sigma</Math>が成り立つ。
実際の統計では母集団の大きさが非常に大きく、母集団分布は度数分布と同様に連続型確率変数の分布として近似される。そこで、正規分布に近似することで具合が良くなる場合が多い。
; 復元抽出
母集団から標本を抽出するのに、毎回元に戻しながら次のものを取り出す抽出を'''復元抽出'''と呼ぶ。逆に、取り出したものを戻さずに続けて抽出することを'''非復元抽出'''と呼ぶ。
大きさ<Math>n</Math>の標本の要素における変量<Math>x</Math>の値を<Math>X_1, X_2 \cdots X_n</Math>と置く。標本が復元抽出によるものならば、母集団から大きさ1の標本を無作為抽出することを<Math>n</Math>回繰り返す反復試行であるから、<Math>X_k</Math>はそれぞれが母集団分布に従う互いに独立な確率変数となる。非復元抽出の場合でも、母集団の大きさ<Math>N</Math>が標本の大きさ<Math>n</Math>より十分大きい(<Math>N>>n</Math>)場合には近似的に復元抽出による標本と見なすことができる。
; 標本平均
大きさ<Math>n</Math>の標本について、<Math>\overline{X} = \frac{1}{n} \sum_{k=1}^{n} X_k</Math>を'''標本平均'''、<Math>S^2=\frac{1}{n} \sum_{k=1}^{n} (X_k - \overline{X})^2</Math>を'''標本分散'''、<Math> S = \sqrt{\frac{1}{n} \sum_{k=1}^{n} (X_k - \overline{X})^2}</Math>を'''標本標準偏差'''と呼ぶ。
<Math>X_k</Math>は「母集団から標本を抽出する」という試行の結果で値が定まる確率変数なので、<Math> \overline{X}, S^2, S</Math>も同様の試行の結果で値が定まる確率変数である。
復元抽出の場合、確率変数の値<Math>X_k</Math>は大きさ1の標本の確率変数と見なすことができ、それぞれ母集団分布に従うので、<Math>E(X_k)=\mu, V(X_k)=\sigma^2, \sigma(X_k)=\sigma</Math>が成り立つ。
<Math>X_k</Math>はそれぞれ互いに独立なので、確率変数の和の期待値・分散を求める公式より
<Math>E(\overline{X}) = E(\frac{1}{n} \sum_{k=1}^{n} X_k) = \frac{1}{n} \sum_{k=1}^{n}E(X_k) = \frac{1}{n} \cdot n\mu= \mu</Math>
<Math>V(\overline{X})=V(\frac{1}{n} \sum_{k=1}^{n} X_k) = \frac{1}{n^2} \sum_{k=1}^{n} V(X_k) = \frac{1}{n^2} \cdot n\sigma^2 = \frac{\sigma^2}{n}</Math>
<Math>\sigma(\overline{X}) = \sqrt{V(\overline{X})}=\frac {\sigma}{\sqrt{n}}</Math>
非復元抽出の場合も<Math>N>>n</Math>ならば同様である。
; 標本比率
母集団全体の中である特性Aを持つ要素の割合を特性Aの'''母比率'''、標本の中で特性Aを持つ要素の割合を特性Aの'''標本比率'''と呼ぶ。
特性Aの母比率が<Math>p</Math>である十分大きな母集団から、大きさがnの標本を無作為抽出するとき、標本の中で特性Aを持つ要素の個数を<Math>T</Math>とおくと、<Math>T \sim B(n, p)</Math>である。ここで、<Math>q=1-p</Math>として正規化すると、近似的に<Math>T \sim N(np, npq)</Math>である。
特性Aの標本比率を<Math>R</Math>とおくと、<Math>R=\frac{T}{n}</Math>より<Math>R</Math>は確率変数であり、
<Math>E(R) = \frac{1}{n} E(T) = \frac{1}{n} \cdot np= p</Math>
<Math>V(R) = \frac{1}{n^2} E(T) = \frac{1}{n^2} \cdot npq = \frac{pq}{n}</Math>
であるので、近似的に<Math>R \sim N(p, \frac{pq}{n})</Math>である。
特性Aの母比率が<Math>p</Math>である母集団において、特性Aを持つ要素を1、持たない要素を0で表す変量<Math>x</Math>を考える。このとき、<Math>X_k</Math>はそれぞれ1または0である。特性Aの標本比率<Math>R</Math>はこれらのうち値が1であるものの割合であるから、<Math>R = \frac{1}{n} \sum_{k=1}^{n} X_k = \overline{X}</Math>が成り立つ。よって、'''標本比率は標本平均の特別な場合'''である。
一般に、標本平均<Math>\overline{X}</Math>について以下の法則が成り立つ。
'''標本平均の分布'''
標本の大きさ<Math>n</Math>が大きいとき、'''近似的に'''<Math>\overline{X} \sim N(\mu, \frac{\sigma^2}{n})</Math>である。
母集団分布が正規分布のとき、'''常に'''<Math>\overline{X} \sim N(\mu, \frac{\sigma^2}{n})</Math>である。
; {{中付きルビ||大数|たいすう}}の法則
標本標準偏差について、<Math>\lim_{n \to \infty} \sigma(\overline{X}) = \lim_{n \to \infty} \frac{\sigma}{\sqrt{n}} = 0</Math>より、<Math>n</Math>が大きくなると<Math>\overline{X}</Math>は母平均<Math>\mu</Math>の近くに集中して分布する。すなわち、<Math>\overline{X}</Math>が<Math>\mu</Math>に近い値をとる確率を<Math>p</Math>とすると、<Math>\lim_{n \to \infty}p = 1</Math>である。
<Math>\lim_{n \to \infty}</Math>は「<Math>n</Math>を限りなく大きくする」という意味の記号である。詳しくは[[高等学校数学III/極限|こちら]]を参照。
したがって、以下が成り立つ。
'''大数の法則'''
大きさ<Math>n</Math>の無作為標本の標本平均<Math>\overline{X}</Math>は<Math>n</Math>が大きくなるにつれて母平均<Math>\mu</Math>に近づく。
=== 区間推定 ===
; 母平均の推定
母集団が大きいとき、母平均を求めるには時間も労力も相当にかかる。そこで、標本平均から母平均を推定することを考える。
標本の大きさ<Math>n</Math>が大きいとき、近似的に<Math>\overline{X} \sim N(\mu, \frac{\sigma^2}{n})</Math>であるのは先程学んだ。<Math>\overline{X}</Math>の標準化を考えて<Math>Z=\frac{\overline{X} - \mu}{\frac {\sigma}{\sqrt{n}}}</Math>とおくと、近似的に<Math>Z \sim N(0,1)</Math>である。
ここで正規分布表より<Math>P(|Z| \leq 1.96) \fallingdotseq 0.95</Math>なので、
<Math>P(\mu-1.96\cdot \frac{\sigma}{\sqrt{n}} \leq \overline{X} \leq \mu+1.96\cdot \frac{\sigma}{\sqrt{n}}) \fallingdotseq 0.95</Math>
すなわち<Math>P(\overline{X}-1.96\cdot \frac{\sigma}{\sqrt{n}} \leq \mu \leq \overline{X}+1.96\cdot \frac{\sigma}{\sqrt{n}}) \fallingdotseq 0.95</Math>である。
この式は区間<Math>\overline{X}-1.96\cdot \frac{\sigma}{\sqrt{n}} \leq x \leq \overline{X}+1.96\cdot \frac{\sigma}{\sqrt{n}}</Math>が値<Math>\mu</Math>を含むことが約95%の確実さで期待できることを示している。
この区間を母平均<Math>\mu</Math>に対する'''信頼度'''95%の'''信頼区間'''と呼び、<Math>[\overline{X}-1.96\cdot \frac{\sigma}{\sqrt{n}} , \overline{X}+1.96\cdot \frac{\sigma}{\sqrt{n}}]</Math>のように表す。
母平均<Math>\mu</Math>に対して信頼度95%の信頼区間を求めることを、「母平均<Math>\mu</Math>を信頼度95%で'''区間推定する'''」という。
信頼度95%とは、大きさ<Math>n</Math>の無作為抽出を繰り返し、得られたそれぞれの標本平均に対し区間推定をして信頼区間を多数作ると、母平均<Math>\mu</Math>の含まれる区間が95%の割合で現れることが期待できることを指している。
信頼度99%で推定する場合、正規分布表より<Math>P(|Z| \leq 2.58) \fallingdotseq 0.99</Math>なので、信頼区間は<Math>[\overline{X}-2.58\cdot \frac{\sigma}{\sqrt{n}} , \overline{X}+2.58\cdot \frac{\sigma}{\sqrt{n}}]</Math>となる。
なお、実際の統計では母標準偏差<Math>\sigma</Math>がわからない場合が多いので、<Math>n</Math>が大きいときは代わりに標本標準偏差<Math>S</Math>を用いて良い。
;母比率の推定
母平均と同様、標本比率<Math>R</Math>から母比率<Math>p</Math>を区間推定することもできる。
標本の大きさ<Math>n</Math>が大きいとき、先ほど学んだように<Math>R \sim N(p, \frac{pq}{n})</Math>である。したがって、母平均の推定の場合と同様に考えて<Math>P(R-1.96 \sqrt{\frac{pq}{n}} \leq p \leq R+1.96 \sqrt{\frac{pq}{n}}) \fallingdotseq 0.95</Math>である。
<Math>q=1-p</Math>であり、大数の法則より<Math>n</Math>が大きいとき<Math>p</Math>は<Math>R</Math>と見做して良いから、<Math>Q=1-R</Math>とおくと、母比率<Math>p</Math>に対する信頼度95%の信頼区間は<Math>[R-1.96 \sqrt{\frac{RQ}{n}}, R+1.96 \sqrt{\frac{RQ}{n}} ]</Math>である。
信頼度99%で推定する場合、標本平均の場合と同様に考えて信頼区間は<Math>[R-2.58 \sqrt{\frac{RQ}{n}}, R+2.58 \sqrt{\frac{RQ}{n}} ]</Math>となる。
<Math>X_k</Math>のとる値は1または0であるから、<Math>X^2_k=X_k</Math>である。ここで<Math>R=\overline{X}</Math>を用いると、標本分散<Math>S^2</Math>について以下のように変形できる。
<Math>S^2 = \frac{1}{n} \sum_{k=1}^{n} (X_k - \overline{X})^2 </Math>
<Math>= \frac{1}{n} \sum_{k=1}^{n} (X^2_k - 2X_k \overline{X} + \overline{X^2}) </Math>
<Math>= \frac{1}{n} \sum_{k=1}^{n} X^2_k - \frac{2}{n} \cdot n \overline{X} \cdot \sum_{k=1}^{n} X_k + \overline{X^2} </Math>
<Math>= \frac{1}{n} \sum_{k=1}^{n} X_k - 2\overline{X^2} + \overline{X^2} </Math>
<Math>= \overline{X} - \overline{X^2} </Math>
<Math>= R-R^2</Math>
<Math>= R(1-R)</Math>
先ほど母標準偏差<Math>\sqrt{pq} (q=1-p)</Math>を確率変数<Math>\sqrt{RQ} (Q=1-R)</Math>で置き換えたが、上式より<Math>\sqrt{RQ}=S</Math>なので、この置き換えは母平均の推定で行なった「母標準偏差<Math>\sigma</Math>を標本標準偏差<Math>S</Math>で置き換える」ことの特別な場合である。
ここでは信頼区間を大括弧[]で表したが、実は一般に区間<Math>a \leq x \leq b</Math>は「閉区間」と呼ばれ、<Math>[a, b]</Math>で表される。詳しくは数学Ⅲの[[高等学校数学III/極限|極限]]で扱う。
なお、ある区間でもって母集団の特性値を推定する区間推定に対し、一つの値から母集団の特性値を推定することを'''点推定'''と呼ぶ。例として、大数の法則を利用して標本平均から母平均を近似することが挙げられる。区間推定と点推定を併せて'''統計的推定'''と呼ぶ。
=== 仮説検定 ===
数学Iで扱ったように、仮説検定とは以下の手順で仮説が正しいか判断する手法である。
# 正しいかどうか判断したい仮説[1]に反する仮説[2]を立てる
# 仮説[2]のもとで事象が起こる確率を調べる。
# 確率が小さく、仮説[2]のもとで事象が起こりにくいと判断できるとき、仮説[2]は正しくないと判断できる。
# 仮説[2]が偽と判断されたため、それに反する仮説[1]が真であると判断される。
なお、仮説[2]が正しくないと判断できないとき、'''仮説[1]の真偽を判断することはできない'''
仮説[1]を'''対立仮説'''、仮説[2]を'''帰無仮説'''と呼び、仮説が正しくないと判断することを「仮説を'''棄却する'''」という。棄却の基準となる確率を'''有意水準'''あるいは'''危険率'''と呼び、<Math>\alpha</Math>で表す。有意水準にはよく5%(<Math>\alpha=0.05</Math>)、1%(<Math>\alpha=0.01</Math>)が用いられる。有意水準に対して帰無仮説が棄却されるような確率変数の値の範囲を'''棄却域'''と呼ぶ。また、有意水準<Math>\alpha</Math>を用いて仮説検定を行うことを「有意水準<Math>\alpha</Math>で'''検定する'''」という。なお、対立仮説、帰無仮説をそれぞれ「仮説<Math>H_1</Math>:〇〇」「仮説<Math>H_0</Math>:☆☆(〇〇でない)」のように表すこともある。また、仮説が棄却されないことを「仮説を'''採択する'''」という場合がある。
数学Iでは、公正なコインを投げて裏表の出る回数を調べる試行の相対度数から帰無仮説のもとで事象が起こる確率を求めたが、ここでは正規分布を利用することを考える。
;両側検定
母比率の検定において、帰無仮説のもとで二項分布に従う確率変数<Math>X</Math>を設定すると、正規分布表を利用することができる。
{| style="border:2px solid skyblue;width:80%" cellspacing=0
|style="background:skyblue"|例題
|-
|style="padding:5px"|
:ある一枚の硬貨について、表が出る確率を<Math>p</Math>とする。コインを100回投げて63回表が出たとき、「この硬貨は歪んでいる(<Math>p \neq 0.5</Math>)」と判断してよいか、有意水準5%で検定することにした。
:帰無仮説として「この硬貨に歪みはなく、<Math>p=0.5</Math>である」を立てると、100回コインを投げて表の出る回数<Math>X</Math>について、<Math>X \sim B(100, 0.5)</Math>である。ここで期待値<Math>m</Math>と標準偏差<Math>\sigma</Math>を求めると、<Math>m=100 \cdot 0.5 = 50, \sigma = \sqrt{100 \cdot 0.5 \cdot (1-0.5)}=5</Math>なので、<Math>Z=\frac{X-50}{5}</Math>とおくと近似的に<Math>Z \sim N(0, 1)</Math>である。
:正規分布表から<Math>P(|Z| \leq 1.96) \fallingdotseq 0.95</Math>なので、有意水準5%における棄却域は<Math>Z \leq -1.96, 1.96 \leq Z</Math>である。
:<Math>X=63</Math>のとき、<Math>Z=\frac{63-50}{5}=2.6</Math>であり、この値は棄却域に入るので帰無仮説を棄却できる。よって、この硬貨は歪んでいると判断して良い。
|}
上の例題において、正規近似と標準化を同時に行なっていることに注意。
母平均の検定も、同様に行うことができる。
{| style="border:2px solid skyblue;width:80%" cellspacing=0
|style="background:skyblue"|例題
|-
|style="padding:5px"|
:250g入りと表示された塩の袋の山から、無作為に100袋を抽出して重さを調べたところ、平均値が248.9gであった。標本標準偏差が4.5gであるとき、1袋あたりの重さが表示通りであると判断して良いか、有意水準1%で検定することにした。
:重さの標本平均を<Math>\overline{X}</Math>とおき、帰無仮説「母平均<Math>\mu</Math>について、<Math>\mu = 250</Math>である」を立てる。標本の大きさが十分大きいと考えると、母標準偏差の代わりに標本標準偏差を用いて良いので、帰無仮説が正しいとき、近似的に<Math>\overline{X} \sim N(250, \frac{4.5^2}{100})</Math>である。
:<Math>\frac{4.5^2}{100}=0.45^2</Math>であるから、<Math>Z = \frac{ \overline{X} - 250}{0.45}</Math>とすると近似的に<Math>Z \sim N(0, 1)</Math>である。
:正規分布表から<Math>P(|Z| \leq 2.58) \fallingdotseq 0.99</Math>なので、有意水準1%における棄却域は<Math>Z \leq -2.58, 2.58 \leq Z</Math>である。
:<Math>\overline{X} = 248.9</Math>のとき、<Math>Z=\frac{248.9-250}{0.45} \fallingdotseq -2.4</Math>であり、これは棄却域に入らないので、帰無仮説を棄却できない。すなわち、1袋あたりの重さが表示通りでないとは判断できない。
|}
なお、上の例題において<Math>\alpha=0.05</Math>ならば帰無仮説を棄却できる。このように、有意水準の値を変えると結論が変わる場合がある。
上の二つの例題では、棄却域を正規分布の両側にとっている。このような検定を'''両側検定'''と呼ぶ。
; 片側検定
両側検定に対し、棄却域を正規分布の片側にとる検定を'''片側検定'''と呼ぶ。
両側検定との違いは、対立仮説が「確率(平均)値が示されている値通りである」でなく「確率(平均)値が上がった(下がった)」である点である。
{| style="border:2px solid skyblue;width:80%" cellspacing=0
|style="background:skyblue"|例題
|-
|style="padding:5px"|
:ある種子の発芽率は従来80%であったが、発芽しやすいように品種改良した。品種改良した種子から無作為に400個抽出して種を蒔いたところ、342個が発芽した。品種改良によって発芽率が上がったかどうか、有意水準1%で検定することにした。
:品種改良した種子の発芽率を<Math>p</Math>とする。品種改良によって発芽率が下がったことは考慮しないので、前提として<Math>p \geq 0.8</Math>である。この前提のもとで発芽率が上がったならば<Math>p>0.8</Math>である。
:この前提のもとで帰無仮説「発芽率が上がらなかった(<Math>p=0.8</Math>)」を立てる。帰無仮説が正しいとすると、400個のうち発芽する種子の個数を<Math>X</Math>としたとき<Math>X \sim B(400, 0.8)</Math>である。
:ここで期待値<Math>m</Math>と標準偏差<Math>\sigma</Math>を求めると、<Math>m=400 \cdot 0.8 = 320, \sigma = \sqrt{400 \cdot 0.8 \cdot (1-0.8)}=8</Math>なので、<Math>Z=\frac{X-320}{8}</Math>とおくと近似的に<Math>Z \sim N(0, 1)</Math>である。
:正規分布表から<Math>P(0 \leq Z \leq 2.33) \fallingdotseq 0.49</Math>なので、有意水準1%における棄却域は<Math> 2.33 \leq Z </Math>である。
:<Math>X=342</Math>のとき、<Math>Z=\frac{342-320}{8}=2.75</Math>であり、この値は棄却域に入るので帰無仮説を棄却できる。よって、品種改良により発芽率が上がったと判断して良い。
|}
棄却域を片側にとっているため、正規分布で近似する値は<Math>1-\alpha</Math>ではなく<Math>0.5-\alpha</Math>であることに注意。
仮説検定の問題を解く際は、文脈から両側検定なのか片側検定なのか判断することになるので、文章読解力が必要になる。
なお、実際に検定を行うとき、「両側検定・片側検定の片方で帰無仮説が棄却されないからもう片方を試す」という操作は「検証が恣意的」と判断されてしまう可能性があるためしてはいけない。
; 過誤(発展)
仮説検定を行うと、2種類の誤りが生じる可能性がある。
一つは、帰無仮説が本当は正しいのにも拘らず、得られたデータが棄却域に入ってしまったことにより帰無仮説が棄却されることである。これを'''第一種の過誤'''と呼ぶ。このとき有意水準<Math>\alpha</Math>は第一種の過誤が起こる確率であり、有意水準のことを「危険率」とも呼ぶのはこれが理由である。
もう一つは、帰無仮説が本当は誤っているにも拘らず、得られたデータが棄却域に入らなかったために帰無仮説を採択してしまうことである。これを'''第二種の過誤'''と呼ぶ。
纏めると、以下の表のようになる。
<table border="1">
<tr><th></th><td><div class="center">'''帰無仮説を棄却'''</div></td><td><div class="center">'''帰無仮説を採択'''</div></td></tr>
<tr><th>帰無仮説が正しい</th><td><div class="center">第一種の過誤</div></td><td><div class="center">正しい判断</div></td></tr>
<tr><th>帰無仮説が誤り</th><td><div class="center">正しい判断</div></td><td><div class="center">第二種の過誤</div></td></tr>
</table>
この二つの過誤を品質管理に当てはめると、第一種の過誤は「本当は製品に問題がないにも拘らず、製品の検査段階で不良品と判断して出荷しないこと」に対応し、'''生産者リスク'''と呼ばれる。また、第二種の過誤は「本当は製品に問題があるにも拘らず、検査段階で問題なしと判断され出荷されてしまうこと」に対応し、'''消費者リスク'''と呼ばれる。
== 演習問題 ==
== 付録 ==
=== 正規分布表 ===
<Math>p(-u)=p(u)</Math>なので、<Math>u</Math>が正の値のときみ記載する。
<table border="3">
<tr><th><Math>u</Math></th><th>.00</th><th>.01</th><th>.02</th><th>.03</th><th>.04</th><th>.05</th><th>.06</th><th>.07</th><th>.08</th><th>.09</th></tr>
<tr><th>0.0</th><td>0.00000</td><td>0.00399</td><td>0.00798</td><td>0.01197</td><td>0.01595</td><td>0.01994</td><td>0.02392</td><td>0.02790</td><td>0.03188</td><td>0.03586</td></tr>
<tr><th>0.1</th><td>0.03983</td><td>0.04380</td><td>0.04776</td><td>0.05172</td><td>0.05567</td><td>0.05962</td><td>0.06356</td><td>0.06750</td><td>0.07142</td><td>0.07535</td></tr>
<tr><th>0.2</th><td>0.07963</td><td>0.08317</td><td>0.08706</td><td>0.09095</td><td>0.09484</td><td>0.09870</td><td>0.10257</td><td>0.10642</td><td>0.11026</td><td>0.11409</td></tr>
<tr><th>0.3</th><td>0.11791</td><td>0.12172</td><td>0.12552</td><td>0.12930</td><td>0.13307</td><td>0.13683</td><td>0.14058</td><td>0.14431</td><td>0.14803</td><td>0.15173</td></tr>
<tr><th>0.4</th><td>0.15542</td><td>0.15910</td><td>0.16276</td><td>0.16640</td><td>0.17003</td><td>0.17365</td><td>0.17724</td><td>0.18082</td><td>0.18439</td><td>0.18793</td></tr>
<tr><th>0.5</th><td>0.19136</td><td>0.19497</td><td>0.19847</td><td>0.20194</td><td>0.20540</td><td>0.20884</td><td>0.21226</td><td>0.21566</td><td>0.21904</td><td>0.22241</td></tr>
<tr><th>0.6</th><td>0.22575</td><td>0.22947</td><td>0.23237</td><td>0.23565</td><td>0.23891</td><td>0.24215</td><td>0.24537</td><td>0.24857</td><td>0.25175</td><td>0.25490</td></tr>
<tr><th>0.7</th><td>0.25804</td><td>0.26115</td><td>0.26424</td><td>0.26731</td><td>0.27035</td><td>0.27337</td><td>0.27637</td><td>0.27935</td><td>0.28231</td><td>0.28524</td></tr>
<tr><th>0.8</th><td>0.28815</td><td>0.29103</td><td>0.29389</td><td>0.29673</td><td>0.29955</td><td>0.30234</td><td>0.30511</td><td>0.30785</td><td>0.31057</td><td>0.31327</td></tr>
<tr><th>0.9</th><td>0.31594</td><td>0.31859</td><td>0.32121</td><td>0.32381</td><td>0.32639</td><td>0.32894</td><td>0.33417</td><td>0.33398</td><td>0.33646</td><td>0.33891</td></tr>
<tr><th>1.0</th><td>0.34135</td><td>0.34376</td><td>0.34614</td><td>0.34850</td><td>0.35083</td><td>0.35314</td><td>0.35543</td><td>0.35769</td><td>0.35993</td><td>0.36214</td></tr>
<tr><th>1.1</th><td>0.36433</td><td>0.36650</td><td>0.36864</td><td>0.37076</td><td>0.37286</td><td>0.37493</td><td>0.37698</td><td>0.37900</td><td>0.38100</td><td>0.38298</td></tr>
<tr><th>1.2</th><td>0.38493</td><td>0.38686</td><td>0.38877</td><td>0.39065</td><td>0.39251</td><td>0.39435</td><td>0.39617</td><td>0.39796</td><td>0.39973</td><td>0.40148</td></tr>
<tr><th>1.3</th><td>0.40320</td><td>0.40490</td><td>0.45608</td><td>0.40824</td><td>0.40988</td><td>0.41149</td><td>0.41309</td><td>0.41466</td><td>0.41620</td><td>0.41774</td></tr>
<tr><th>1.4</th><td>0.41924</td><td>0.42073</td><td>0.42220</td><td>0.42364</td><td>0.42507</td><td>0.42647</td><td>0.42786</td><td>0.42922</td><td>0.43056</td><td>0.43189</td></tr>
<tr><th>1.5</th><td>0.43319</td><td>0.43448</td><td>0.43575</td><td>0.43699</td><td>0.43822</td><td>0.43943</td><td>0.44062</td><td>0.44179</td><td>0.44295</td><td>0.44408</td></tr>
<tr><th>1.6</th><td>0.44520</td><td>0.44630</td><td>0.44738</td><td>0.44845</td><td>0.44950</td><td>0.45053</td><td>0.45154</td><td>0.45254</td><td>0.45352</td><td>0.45449</td></tr>
<tr><th>1.7</th><td>0.45544</td><td>0.45637</td><td>0.45728</td><td>0.45819</td><td>0.45907</td><td>0.45994</td><td>0.46080</td><td>0.46164</td><td>0.46246</td><td>0.46327</td></tr>
<tr><th>1.8</th><td>0.46407</td><td>0.46485</td><td>0.46562</td><td>0.46638</td><td>0.46712</td><td>0.46784</td><td>0.46856</td><td>0.46926</td><td>0.46995</td><td>0.47062</td></tr>
<tr><th>1.9</th><td>0.47128</td><td>0.47193</td><td>0.47252</td><td>0.47320</td><td>0.47381</td><td>0.47441</td><td>0.47500</td><td>0.47558</td><td>0.47615</td><td>0.47670</td></tr>
<tr><th>2.0</th><td>0.47725</td><td>0.47778</td><td>0.47831</td><td>0.47882</td><td>0.47933</td><td>0.47972</td><td>0.48030</td><td>0.48077</td><td>0.48124</td><td>0.48169</td></tr>
<tr><th>2.1</th><td>0.48214</td><td>0.48257</td><td>0.48300</td><td>0.48341</td><td>0.48382</td><td>0.48422</td><td>0.48461</td><td>0.48500</td><td>0.48537</td><td>0.48574</td></tr>
<tr><th>2.2</th><td>0.48610</td><td>0.48645</td><td>0.48679</td><td>0.48713</td><td>0.48746</td><td>0.48778</td><td>0.48809</td><td>0.48840</td><td>0.48870</td><td>0.48899</td></tr>
<tr><th>2.3</th><td>0.48928</td><td>0.48956</td><td>0.48983</td><td>0.49010</td><td>0.49036</td><td>0.49061</td><td>0.49086</td><td>0.49111</td><td>0.49134</td><td>0.49158</td></tr>
<tr><th>2.4</th><td>0.49180</td><td>0.49202</td><td>0.49224</td><td>0.49245</td><td>0.49266</td><td>0.49286</td><td>0.49305</td><td>0.49324</td><td>0.49343</td><td>0.49361</td></tr>
<tr><th>2.5</th><td>0.49379</td><td>0.49396</td><td>0.49413</td><td>0.49430</td><td>0.49446</td><td>0.49461</td><td>0.49477</td><td>0.49492</td><td>0.49506</td><td>0.49520</td></tr>
<tr><th>2.6</th><td>0.49534</td><td>0.49547</td><td>0.49560</td><td>0.49573</td><td>0.49586</td><td>0.49598</td><td>0.49609</td><td>0.49621</td><td>0.49632</td><td>0.49643</td></tr>
<tr><th>2.7</th><td>0.45653</td><td>0.49664</td><td>0.49674</td><td>0.49683</td><td>0.49693</td><td>0.49702</td><td>0.49711</td><td>0.49720</td><td>0.49728</td><td>0.49737</td></tr>
<tr><th>2.8</th><td>0.49745</td><td>0.49752</td><td>0.49760</td><td>0.49767</td><td>0.49774</td><td>0.49781</td><td>0.49788</td><td>0.49795</td><td>0.49801</td><td>0.49807</td></tr>
<tr><th>2.9</th><td>0.49813</td><td>0.49819</td><td>0.49825</td><td>0.49830</td><td>0.49836</td><td>0.49841</td><td>0.49846</td><td>0.49851</td><td>0.49856</td><td>0.49860</td></tr>
<tr><th>3.0</th><td>0.49865</td><td>0.49869</td><td>0.49874</td><td>0.49878</td><td>0.49882</td><td>0.49886</td><td>0.49889</td><td>0.49893</td><td>0.49897</td><td>0.49900</td></tr>
<tr><th>3.1</th><td>0.49990</td><td>0.49907</td><td>0.49910</td><td>0.49913</td><td>0.49916</td><td>0.49918</td><td>0.49921</td><td>0.49924</td><td>0.49926</td><td>0.49929</td></tr>
<tr><th>3.2</th><td>0.49931</td><td>0.49934</td><td>0.49936</td><td>0.49938</td><td>0.49940</td><td>0.49942</td><td>0.49944</td><td>0.49946</td><td>0.49948</td><td>0.49950</td></tr>
<tr><th>3.3</th><td>0.49952</td><td>0.49953</td><td>0.49955</td><td>0.49957</td><td>0.49958</td><td>0.49960</td><td>0.49961</td><td>0.49962</td><td>0.49964</td><td>0.49965</td></tr>
<tr><th>3.4</th><td>0.49966</td><td>0.49968</td><td>0.49969</td><td>0.49970</td><td>0.49971</td><td>0.49972</td><td>0.49973</td><td>0.49974</td><td>0.49975</td><td>0.49976</td></tr>
<tr><th>3.5</th><td>0.49977</td><td>0.49978</td><td>0.49978</td><td>0.49979</td><td>0.49980</td><td>0.49981</td><td>0.49982</td><td>0.49982</td><td>0.49983</td><td>0.49984</td></tr>
</table>
{{DEFAULTSORT:こうとうかつこうすうかくB かくりつふんふととうけいてきなすいそく}}
[[Category:高等学校数学B|かくりつふんふととうけいてきなすいそく]]
[[カテゴリ:確率分布]]
[[Category:統計学]]
ok4s3fg2hsxmd8o06c86pk85il0qsdp
高等学校数学I
0
32722
299648
299641
2026-05-19T12:01:30Z
Tomzo
248
[[Special:Contributions/Tkkn46tkkn46|Tkkn46tkkn46]] ([[User talk:Tkkn46tkkn46|会話]]) による編集を取り消し、Tomzo による直前の版へ差し戻す
239346
wikitext
text/x-wiki
{{pathnav|frame=1|高等学校の学習|高等学校数学}}
;科目とその性格
:必履修科目として、中学校との接続に配慮するとともに、この科目だけで高等学校数学の履修を終える生徒及び引き続き数学を履修する生徒の双方に配慮した内容で構成し、すべての生徒の数学的に考える資質・能力の基礎を培う。
;科目とその性格
:含まれる単元とその内容
#[[高等学校数学I/数と式|数と式]]
#*数と集合
#**簡単な無理数の計算
#**集合と命題
#*式
#**式の展開と因数分解
#**一次不等式
#[[高等学校数学I/図形と計量|図形と計量]]
#*三角比
#**鋭角の三角比
#**鈍角の三角比
#**正弦定理、余弦定理
#*図形の計量
#[[高等学校数学I/2次関数|二次関数]]
#*二次関数とそのグラフ
#*二次関数の値の変化
#**二次関数の最大・最小
#**二次関数と二次方程式
#*二次不等式
#[[高等学校数学I/データの分析|データの分析]]
#*データの散らばり
#**分散、標準偏差
#*データの相関
#**散布図、相関係数
#*仮説検定の考え方
{{DEFAULTSORT:現こうとうかつこうすうかく1}}
[[Category:数学]]
[[Category:数学教育]]
[[Category:学校教育]]
[[Category:普通教育]]
[[Category:後期中等教育]]
[[Category:高等学校教育]]
[[Category:高等学校数学I|*]]
a9c3mwq8yv4t3kytrvzbzgi2rzgr2rh
高校物理 電磁気学
0
35532
299689
299501
2026-05-20T10:04:45Z
Nermer314
62933
299689
wikitext
text/x-wiki
{{pathnav|高等学校の学習|高等学校理科|高等学校物理|高等学校 物理|pagename=電磁気学|frame=1|small=1}}
== クーロン力(静電気力) ==
電荷 <math>q_1,q_2</math> の点電荷を置くと、点電荷の間には
:<math>F = k\frac{q_1q_2}{r^2}</math> (1.1)
の力が働く。ここで <math>r</math> は点電荷の間の距離である。この力'''をクーロン力(静電気力''')という。<math>k</math>はクーロン力の比例定数(電気クーロン定数、静電定数)と呼ばれ、その値は電荷の周りを満たしている物質により異なる。真空中での比例定数は <math>k_0 = 8.99 \times 10^9 \,\ \mathrm{N\cdot m^2/C^2}</math> である。
<math>F > 0</math> のときは、<math>q_1,\ q_2</math> は同符号なので、点電荷に働く力は斥力であり、<math>F < 0</math> のときは、<math>q_1,\ q_2</math> は異符号なので、点電荷に働く力は引力である。
クーロン力定数の代わりに <math>k =\frac{1}{4\pi\varepsilon}</math> で定義される定数 <math>\varepsilon</math> を使うほうが今後の計算がしやすくなる。<math>\varepsilon</math> を物質の誘電率という。真空中のクーロン力定数に対応する誘電率は <math>k_0 =\frac{1}{4\pi\varepsilon_0}</math> で定義され、電気定数あるいは真空の誘電率という。
== 電場 ==
クーロンの法則によれば、点電荷の間には静電気力が働く。これは点電荷は離れた場所にある電荷に直接力を及ぼすという考え方である。このような考え方を遠隔作用という。しかし、電荷はどのようにして離れた場所に力を及ぼすのだろうか。点電荷が空間に対して'''電場'''('''電界''')という場を作り出し、その電場がはなれた位置にある電荷に力を及ぼすという考え方もできる。このような考え方を近接作用という。
位置ベクトル<math>\overrightarrow r</math>における電場ベクトル<math>\vec E(\overrightarrow r)</math> は、電荷に対して静電気力を与える場として定義される。電場中に試験電荷 <math>q</math> を置くとき、試験電荷が受ける静電気力の大きさは電荷の大きさに比例するから、<math>1\,\mathrm C</math> あたりの静電気力として電場を定義する。試験電荷が受ける静電気力を <math>\overrightarrow F(\overrightarrow r)</math> とするとき、電場は
:<math>\overrightarrow E(\overrightarrow r) = \frac{\overrightarrow F(\overrightarrow r)}{q}</math>(1.2)
で定義される。電場の単位はニュートン毎クーロン <math>\mathrm{N/C}</math> である。(1.2)を変形すると
:<math>\overrightarrow F(\overrightarrow r)= q \overrightarrow E(\overrightarrow r)</math>. (1.2a)
(1.2a)は、電場<math>\overrightarrow E</math>中に置かれた電荷<math>q</math>が受ける力を指す。
=== 点電荷の作る電場 ===
[[ファイル:VFPt_plus_thumb.svg|サムネイル|150x150ピクセル|正電荷の周りの電場の向き]]
以上のように定義された電場がどのように生み出されるのかについて考えよう。<math>\vec{r_0}</math>の位置に静止した点電荷 <math>Q</math> があり、<math>\overrightarrow r</math> の位置に試験電荷 <math>q</math> を置くとき、試験電荷が受ける静電気力は
<math>\overrightarrow F(\overrightarrow r) = kQq\frac{\overrightarrow r-\vec{r_0}}{\left|\overrightarrow r-\vec{r_0}\right|^3}</math>
である。したがって、その点における電場は
:<math>\overrightarrow E(\overrightarrow r)=\frac{\overrightarrow F(\overrightarrow r)}{q}=kQ\frac{\overrightarrow r-\vec{r_0}}{\left|\overrightarrow r-\vec{r_0}\right|^3}</math> (1.3)
となる。ただし、電場の方向は位置ベクトルと平行で <math>E > 0</math> のとき外向き、<math>E < 0</math> のとき内向きである。
=== 重ね合わせの原理 ===
[[ファイル:電場の重ね合わせ.svg|サムネイル|220x220ピクセル|電場の重ね合わせ]]
複数の点電荷がつくる電場 <math>\overrightarrow E</math> は、それぞれの点電荷がその点につくる電場 <math>\vec{E_i}</math> のベクトル和である。これを'''電場の重ね合わせの原理'''という。
:<math>\overrightarrow E = \vec{E_1}+\vec{E_2}+\cdots</math>. (1.4)
===電気力線===
'''電気力線'''とは電場の方向を接線とする曲線である。
'''電場に垂直な平面を貫く電気力線の単位面積あたりの本数は、電場の強さの値に等しいものとする'''。
電気力線には、以下のような性質がある。
*電気力線の接線は電場の方向に等しい。従って、電気力線が枝分かれしたり交わることはない。
*正電荷から出て負電荷に入る
*電場が強い場所では密である
物理基礎で扱った静電誘導・静電遮蔽・誘導分極は、電気力線を用いることでベクトルの引き算として説明することができる。
ある曲線を貫く電気力線の密度を与える概念として電束密度がある。電束密度 <math>D </math> は物質の誘電率 <math>\varepsilon </math> を使って <math>D = \varepsilon E </math> で定義される。また、電束は面積が <math>S </math> の曲面と電束密度 <math>D </math> が垂直で一定であるときに、<math>\Phi_e =SD= \varepsilon SE </math> で定義される。
電荷 <math>Q </math> の点電荷から出る電束を考えよう。点電荷を中心とし半径が <math>r</math> の球面を考える。この面での電場の強さは <math>E = \frac{1}{4\pi \varepsilon} \frac{Q}{r^2}</math> である。電束密度は <math>D = \varepsilon E = \frac{1}{4\pi} \frac{Q}{r^2} </math> となる。また、球の表面積は <math>4 \pi r^2 </math> であるから、球面を貫く電束は <math>\Phi_e = Q </math> となる。
これを一般化すると次のガウスの法則を得る。
'''任意の閉曲面(ガウス面)を貫く電束は、閉曲面の内部にある電荷の和 <math>Q </math> に等しい。'''
式で書くと<math>\oiint_S \vec{E}\cdot d\vec{S}=\frac{Q}{\varepsilon}</math>となる。ここで、左辺はガウス面を貫く電気力線の本数に等しい。則ち、電気力線の総数は電束を誘電率で割った値である。
==電位==
電場中に置かれた電荷が静電気力(クーロン力)を受けて運動するとき,静電気力は電荷に対して仕事する。静電気力は保存力なので,その仕事は重力がする仕事と同様,始点と終点の位置によって決まり,途中の経路によらない。したがって,重力と同様に静電気力による位置エネルギーが定義できる。電場において,重力場における「高さ」に対応する概念が電位である。
<math>xy</math>平面を水平面に,鉛直上向きに<math>z</math>軸をとり,<math>-z</math>方向を向いた一様な電場<math>\overrightarrow E =(0,\ 0,\ -E)</math>を考える。この電場から電荷<math>q</math>の受ける力は<math>q\overrightarrow E</math>,これに逆らって電荷をゆっくり運ぶ力は<math>-q\overrightarrow E =(0,\ 0,\ qE)</math>.この電荷が<math>r</math>の位置で持つ位置エネルギーは,この力<math>-q\overrightarrow E</math>で<math>q</math>を基準点(原点O)から<math>\overrightarrow r</math>まで運ぶ仕事でそれは運ぶ経路によらず<math>U(\overrightarrow r)= -q\overrightarrow E\cdot\overrightarrow r = qEz</math>.そこで'''電位'''を単位電荷あたりの位置エネルギー
:<math>V(\overrightarrow r)= U(\overrightarrow r)\div q = Ez</math>
で定義する。
重力が等高面(位置エネルギー一定の面)に垂直で下(位置エネルギーの低くなる向き)を向いているのと同様,'''電場は等電位面に垂直で電位の低くなる向き'''を向いている。
一般の静電場の場合も同様で,<math>r</math>位置で電荷<math>q</math>がもつ位置エネルギーが,電場から受ける<math>q\overrightarrow E</math>に逆らって<math>-q\overrightarrow E</math>を加え,基準点<math>\vec{r_0}</math>からその点<math>\overrightarrow r</math>まで電荷をゆっくり運ぶ仕事
:<math>U_\mathrm{C}(\overrightarrow r)=\int _{r_0}^r -q\overrightarrow E\cdot d\overrightarrow r = -q\int _{r_0}^r \overrightarrow E\cdot d\overrightarrow r</math> (1.5)
で定義される。静電気力が保存力であるためこの積分は<math>\vec{r_0}</math>から<math>\overrightarrow r</math>への経路によらない。そこで,'''電位'''を'''単位電荷あたりの静電気力による位置エネルギー'''
:<math>V(\overrightarrow r)=\frac{U(\overrightarrow r)}{q}= -\int _{r_0}^r \overrightarrow E\cdot d\overrightarrow r</math> (1.6)
で定義する。つまり,ある点の電位とは,基準点からその点まで電荷をゆっくり運ぶために外力が単位電荷あたりにせねばならぬ仕事のことである。この定義より質量<math>m</math>,電荷<math>q</math>の粒子に対する電場中でのエネルギー保存則は次のように表される。
:<math>\frac{1}{2}mv^2 + qV =</math>一定.(1.7)
また定義より,電荷<math>q</math>を電場の力<math>q\overrightarrow E</math>に抗して<math>\vec{r_1}</math>から<math>\vec{r_2}</math>まで運ぶために外力のする仕事<math>W_\mathrm{EF}</math>は
:<math>W_\mathrm{EF}= q(V(\vec{r_2})-V(\vec{r_1}))= -q\int _\vec{r_1}^\vec{r_2} \overrightarrow E\cdot d\overrightarrow r</math> (1.8)
で与えられる。この<math>V(\vec{r_2})-V(\vec{r_1})</math>を'''電位差'''又は'''電圧'''という。つまり2点間の電位差(電圧)とは電場に抗して電荷をその2点間で運ぶために単位電荷あたりの要する仕事である。
点電荷<math>Q</math>が原点にあるときの電位を求めよう。このとき電場は(1.3)で与えられるから,(1.6)は
:<math>V(\overrightarrow r)= -\int _{r_0}^r k\frac{Q}{r^2} (\vec{e}_r \cdot d\vec{r})= -\int _{r_0}^r k\frac{Q}{r^2}dr= kQ\left(\frac{1}{r}-\frac{1}{r_0}\right)</math>
となる。基準点を無限遠(<math>r_0\to\infty</math>)にとると,点電荷<math>Q</math>がとる電場の電位は
:<math>V(\overrightarrow r)= k\frac{Q}{r}</math>. (1.9)
なお、電位は<math>\phi,</math> 電圧は<math>U</math>で書くこともある。
*等電位面
== コンデンサー ==
[[ファイル:コンデンサー_充電の仕組み.svg|サムネイル|500x500ピクセル|コンデンサーの充電の仕組み]]
図のように2枚の金属板を平行に向かい合わせて、電源をつなげると、自由電子が導線を通り金属板に電荷が蓄えられる。
平行板コンデンサーの2つの金属板にそれぞれ <math>Q,\ -Q</math> の電荷が蓄えられているとき、極板間の電位差 <math>V</math> は次の関係がある。
:<math>Q = CV</math>
ここで、<math>C</math> をコンデンサーの電気容量という。 電気容量の単位はファラド <math>\mathrm F</math> が使われる。<math>\mathrm F = \mathrm{C/V}</math> である。
=== 平行板コンデンサーの電気容量 ===
[[ファイル:平行板コンデンサー_電場.svg|サムネイル|400x400ピクセル|平行板コンデンサーの電場]]
極板の間隔 <math>d </math> で面積 <math>S</math> の平行板コンデンサーの電気容量 <math>C</math> を求める。
コンデンサーに電荷 <math>Q </math> が蓄えられており、このときの極板間の電位差を <math>V</math> とする。このとき、極板の間には極板に垂直で一様な電場 <math>E</math> が発生する。極板の外には電場は存在しないとする。
極板間の電場は <math>E = \frac V d</math> である。
<math>Q</math> に帯電しただけ極板を囲むような閉曲面(直方体を考えると計算しやすい)を考える。この閉曲面から出る電束は <math>\Phi_e = S\varepsilon E = \varepsilon S \frac V d</math> である。
また、ガウスの法則より、 <math>\Phi_e = Q</math> である。この2つが等しいから
:<math>Q = \varepsilon S \frac V d </math>
より、 <math>C = \frac Q V = \varepsilon \frac S d</math> を得る。
=== コンデンサーの蓄えるエネルギー ===
電気容量 <math>C </math> のコンデンサーが <math>Q </math> の電荷を蓄え、極板間の電位差が <math>V </math> のとき、コンデンサーの蓄えるエネルギー <math>U</math> を求める。
コンデンサーに電荷 <math>Q' </math> の電荷が蓄えられたとき、極板間の電位差は <math>V' = \frac{Q'}{C}</math> である。この状態で微小電荷 <math>dQ'</math> を運ぶために必要な仕事は <math>V' dQ' = \frac{Q'}{C}dQ'</math> である。これを <math>Q'</math> が 0 から <math>Q</math> になるまで積分すればコンデンサーの蓄えるエネルギー <math>U</math> が求まる。
:<math>U = \int_0^Q \frac{Q'}{C}dQ' = [\frac{Q'^2}{2C}]_0^Q = \frac 1 2 \frac{Q^2}{C}</math>
したがって、<math>U = \frac 1 2 \frac{Q^2}{C} = \frac 1 2 CV^2 = \frac 1 2 QV</math> である。
=== コンデンサーの接続 ===
====並列接続====
コンデンサーを並列につなげたとき、このコンデンサー全体としてみたときの電気容量を求める。
電気容量 <math>C_1 ,\,C_2 </math> の電気容量を並列につなげ、電圧 <math>V </math> の電源をつなげる。
それぞれのコンデンサーに蓄えられる電荷 <math>Q_1 ,\,\ Q_2 </math> は
:<math>Q_1 = C_1V,\,Q_2 = C_2 V</math> である。
コンデンサーが蓄えた電荷の合計は <math>Q_1 + Q_2 =C_1V + C_2 V = (C_1 + C_2)V</math> である。
コンデンサー全体としてみたときの合成電気容量 <math>C </math> について <math>Q_1 + Q_2 = CV</math> となるので、これと比較して
:<math>C = C_1 + C_2</math>
を得る。
一般に、各iについて<math>Q_i : C_i</math>という比は一定となる。
====直列接続====
コンデンサーを直列につなげたとき、このコンデンサー全体としてみたときの電気容量を求める。
電気容量 <math>C_1 ,\,C_2 </math> の電気容量を直列につなげ、電圧 <math>V </math> の電源をつなげる。2つのコンデンサーが蓄える電荷は等しい<ref>2つのコンデンサーの間の電荷保存則より、2つのコンデンサーが蓄える電荷は等しい。</ref>ので、これを <math>Q</math> とする。それぞれのコンデンサーの電圧 <math>V_1,\ V_2 </math> は
:<math>V_1 = \frac Q {C_1} ,\,V_2 \frac{Q}{C_2}</math>
である。この和が電源の電圧 <math>V </math> に等しいので
:<math>V = V_1 + V_2 = \frac{Q}{C_1} + \frac{Q}{C_2}</math>
コンデンサー全体としてみたときの合成電気容量 <math>C</math> は <math>V = \frac Q C</math> となるので、これと比較して
:<math>\frac 1 C = \frac{1}{C_1} + \frac{1}{C_2}</math>
である<ref>コンデンサーの合成電気容量の式の形は、抵抗の合成抵抗のものと、直列・並列が逆になっている。</ref>。
一般に、各iについて<math>V_i : \frac{1}{C_i}</math>という比は一定となる。
=== 金属板や誘電体を差し込んだコンデンサー ===
誘電体の誘電率 <math>\varepsilon</math> と真空の誘電率 <math>\varepsilon_0</math> の比 <math>\varepsilon_\mathrm r = \frac{\varepsilon}{\varepsilon_0}</math> を'''比誘電率'''という。
真空中で極板面積 <math>S</math>、極板間隔 <math>d</math> の平行板コンデンサーの電気容量 <math>C_0</math> は <math>C_0 = \varepsilon_0 \frac S d</math> である。
このコンデンサーの極板間に比誘電率 <math>\varepsilon_\mathrm r</math> の誘電体をすきまなく挿入したとき、コンデンサーの電気容量 <math>C</math> は
:<math>C = \varepsilon_\mathrm r \varepsilon_0 \frac S d = \varepsilon_\mathrm r C_0</math>
である。
=== 球形コンデンサー ===
=== 円筒コンデンサー ===
== 直流回路 ==
===電流===
導体断面を単位時間あたりに通過する電気量(電荷)を'''電流'''({{Lang-en-short|electric current}})という〔単位:'''A'''('''アンペア''')〕。時刻<math>t</math>において,電気量を<math>Q(t)</math>とすると,微小時間<math>\mathit{\Delta}t</math>間に電荷が<math>Q(t+\mathit{\Delta}t)-Q(t)</math>通過するとき,電流<math>I(t)</math>は
:<math>I(t)=\lim_{\mathit{\Delta}t\to 0}\frac{Q(t+\mathit{\Delta}t)-Q(t)}{\mathit{\Delta}t}=\frac{dQ(t)}{dt}</math>
である。また,断面積 <math>S</math> ,単位体積あたりの自由電子数が<math>n</math>の導体を電流が流れるとき,その電流の大きさ <math>I</math> は電気素量を <math>e</math> ,自由電子の速さを <math>v</math> として
:<math>I=enSv</math>
である。
=== 電池の内部抵抗 ===
電池の内部にもわずかに電気抵抗は存在する。これを電池の'''内部抵抗'''という。
起電力 <math>E </math> 、内部抵抗 <math>r</math> の電池に電流 <math>I</math> が流れるとき、電池の端子電圧 <math>V</math> は、内部抵抗による電圧降下は <math>rI</math> であるから
:<math>V = E -rI</math>
である。
=== ジュール熱と消費電力 ===
電圧を<math>V</math>,電流を<math>I</math>とすると,単位時間あたりの発熱量(ジュール熱)<math>P</math>は
:<math>P=IV</math>.
起電力<math>E</math>、内部抵抗<math>r</math>の電池に<math>R</math>の抵抗をつなぐとき、抵抗での電位差<math>V</math>はオームの法則より<math>V=RI</math>,回路に流れる電流<math>I</math>は<math>I = \frac{E}{r+R}</math>であるから、抵抗での消費電力 <math>P</math> は
:<math>P = RI^2 = \frac{RE^2}{(r+R)^2}</math>
である。
ここで、<math>R</math> を変えたときの消費電力<math>P</math>の最大値を求める。
:<math>P = \frac{RE^2}{(r+R)^2} = \frac{E^2}{\frac{r^2}{R} + 2r +R}\cdots\cdots (*)</math>
*解1
:<math>(*)</math>の両辺を<math>R</math>で微分すると
::<math>\frac{dP}{dR}=\frac{-E^2(-\frac{r^2}{R^2}+1)}{(\frac{r^2}{R} + 2r + R)^2}=\frac{E^2(r^2-R^2)}{(r^2+2Rr+R^2)^2}=\frac{E^2(r-R)}{(r+R)^3}</math>.
:<math>\frac{dP}{dR}=0</math>のとき
::<math>R=r</math>.
:よって<math>R>0</math>における<math>P</math>の増減表は以下のようになる。
::<math>\begin{array}{c|c}R & (0)\cdots\; r\;\cdots \\ \hline \frac{dP}{dR} & \quad\ +\ \ 0\ \ - \\ \hline P & \quad\ \nearrow\frac{E^2}{4r}\searrow \\ \end{array}</math> よって,<math>R=r</math>のとき極大値<math>\frac{E^2}{4r}</math>をとる。
*解2
:相加平均・相乗平均より
::<math>\frac{r^2}{R} + R \ge 2\sqrt{\frac{r^2}{R}\cdot R} = 2r</math>. (等号成立は <math>\frac{r^2}{R} = R</math> すなわち <math>R = r</math> のとき)
つまり、 <math>R = r</math> で <math>\frac{r^2}{R} + R</math> は最小値 <math>2r</math> を取る。すなわち、<math>P = \frac{E^2}{\frac{r^2}{R} + R + 2r}</math> は最大値 <math>\frac{E^2}{4r}</math> を取る。
===キルヒホッフの第1法則===
任意の結接点において,'''流入電流の和は流出電流の和に等しい'''。
:<math>\sum_\mathrm{inflow}I_i=\sum_\mathrm{outflow}I_{i'}'</math>.
===キルヒホッフの第2法則===
任意の閉回路に対して,'''起電力'''({{Lang-en-short|electromotive force}})'''の和は電圧降下'''({{Lang-en-short|voltage drop}})'''の和に等しい'''。
:<math>\sum_\mathrm{closed\ circuit}V_\mathrm{emf}=\sum_\mathrm{closed\ circuit}V_\mathrm{drop}</math>.
===電流計と電圧計===
電流計の仕組み・分流器・電圧計の仕組み・倍率機
===抵抗の測定===
====抵抗率の温度変化====
<math>\rho_t = \rho_0(1+\alpha t)</math>が成り立つ。ただし、<math>\alpha</math> は抵抗の'''温度係数'''である。
この式は[[高等学校物理基礎/熱#熱膨張|線膨脹・体膨脹]]と同じ形である。
====メートルブリッジ====
====ホイートストンブリッジ====
===電位差計===
===非直線抵抗===
=== 定常状態 ===
==半導体==
必要があれば[[高等学校 化学基礎]]及び[[高等学校 化学]]を参照。
===半導体の種類===
'''半導体'''は、導体と絶縁体の中間の通電性を持つ物質である。'''珪素(シリコン)'''はその代表格である。
珪素(Si)の結晶はダイヤモンド型共有結合結晶であり、非常に硬く熱に強い。そのため、'''セラミック'''として様々な用途で用いられる。(人工衛星の外壁、庖丁、陶器etc.)詳しくは[[高校化学 14族元素#ケイ素|無機化学]]を参照。ゲルマニウム(Ge)も共有結合結晶をつくる元素である。Si、Geともに価電子数は4で、これらを互いに共有することによって共有結合をなす。
SiやGeは、常温では抵抗率が大きく通電性が低いものの、高温下では自由電子が生じて通電性が高まる。このような半導体を'''真性半導体'''という。真性半導体に微量の不純物を入れると、通電性が高まる。このような半導体を'''不純物半導体'''という。
電流の担い手を'''キャリア'''という。
真性半導体に微量のアルミニウム(Al)やインジウム(In)などを混ぜたものを'''p型半導体'''という。AlやInは価電子を3つしか持たないので、共有結合をするには電子が一個不足し、電子のない所ができる。これを'''正孔(ホール)'''という。電場を与えると、電子が移動して正孔を埋める。移った電子がいたところが新たな正孔となるのでまた別の電子が移動し・・・と繰り返すことによりホールが電場の向きに移動し、電流の担い手となる。よって、'''p型半導体のキャリアは正孔'''である。p型のpは正孔が正電荷(positive charge)であることに由来する。
真性半導体に微量の燐(P)やアンチモン(Sb)などを混ぜたものを'''n型半導体'''という。PやSbは価電子を5つ持つので、4つが共有結合に加わり1つ余ってしまう。この余った1つは結晶を自由に動き回ることによって電流の担い手となる。よって、'''n型半導体のキャリアは電子'''である。n型のnは電子が負電荷(negative charge)であることに由来する。
===ダイオード===
p型とn型を接合('''pn接合''')し、両端に電極をつけた部品を'''半導体ダイオード'''という。p型半導体側を'''アノード'''、n型半導体側を'''カソード'''、接合した面を'''接合面'''という。接合面付近ではキャリアが殆ど存在しない領域が発生し、この領域を'''欠乏層'''または'''空乏層'''という。欠乏層の両端間には残存キャリアに由来する電位差が発生し、これを'''拡散電圧'''という。
半導体ダイオードは一方向にのみ電流を流す作用('''整流作用''')を持つ。整流作用は、交流電流から直流電流への変換や、AEDが電気ショック前に行う充電などに応用されている。
ダイオードの'''順方向'''(アノード→カソードの向き)に電圧を加えると、拡散電圧と逆向きに加わる電場によってp型の中の正孔がn型へ、n型の中の電子がp型へ引かれ、pn接合面で一対づつ結合して消える('''再結合''')。その一方で、電極からはキャリアが供給され続ける。よって、電流が流れ続ける('''順方向バイアス''')。
ダイオードの'''逆方向'''(カソード→アノードの向き)に電圧を加えると、拡散電圧と同じ向きに加わる電場によってp型の中の正孔はp型側の電極へ、n型の中の電子はn型側の電極へ引かれ、p型で負電荷・n型で正電荷が過剰になって空乏層が広がる。このとき少数キャリアは電源に引き寄せられて空乏層を超え、微小電流のみが流れる('''逆方向バイアス''')。
半導体に光が当たると半導体を構成する原子から電子が離れ、正孔が生まれる。このとき、pn接合面付近に電位差が生まれるのでn型側の電極に電子、p型側の電極に正孔が集まる。よって、p型が正極、n型が不極の電池となる。このような仕組みの電池を'''太陽電池'''という。
太陽電池とは逆に電気を光に変換する半導体部品を'''発光ダイオード'''という。砒化ガリウム(GaAs)のような半導体のpn接合に順方向の電圧を加えると、キャリアが再結合する際に発光する。発光ダイオードは太陽電池と同様に光を当てると起電力を生じる。このとき、発光する色と同色の光を当てると起電力が大きくなる。
===トランジスタ===
電気信号を増幅する働き('''増幅作用''')を持つ電子部品を'''トランジスタ'''という。
'''バイポーラトランジスタ'''(BJT)は3つの不純物半導体を組合せた部品であり、p型2つの間にn型を挟んだ'''pnp型トランジスタ'''とn型2つの間にp型を挟んだ'''npn型トランジスタ'''が存在する。バイポーラトランジスタを構成する3つの部分をそれぞれ'''エミッタ'''(E)、'''ベース'''(B)、'''コレクタ'''(C)という。バイポーラトランジスタでは電子・正孔の双方がキャリアとして振舞う。
npn型のC-E間に電圧を加えた状態でE-B間に順方向の電圧を加えると、EからBに向かってキャリアが送り込まれ、その大部分はCへと流れ込む。よって、Bの電極に流れる電流はCの電極に流れる電流よりも非常に大きな値となる。これを利用すると、'''B電流の小さな変化をC電流の大きな変化に変換できる'''。pnp型でも同様にして増幅作用を確かめられる。
バイポーラトランジスタは、B電流の制御によりCに電流が流れる状態(ON)と全く流れない状態(OFF)を作ることができる。これをトランジスタの'''スイッチング作用'''という。
C電流のON-OFFによってデジタル信号を作り出すことができ、計算等の処理を電気回路で行うことができる。
'''ユニポーラトランジスタ'''('''電界効果トランジスタ'''、FET)はバイポーラトランジスタと異なり、電子・正孔の片方のみがキャリアとして振舞う。
半導体基板の上に絶縁層(二酸化珪素)を挟んで金属電極が載せられた構造のユニポーラトランジスタを'''金属酸化被膜半導体電界効果トランジスタ'''(MOSFET)という。バイポーラトランジスタのエミッタ・ベース・コレクタに対応する部分を'''ソース'''(S)、'''ゲート'''(G)、'''ドレイン'''(D)という。ソース・ドレイン電極にn型・基盤にp型半導体を用いたMOSFETを'''nチャネルMOSFET'''(nMOS)、ソース・ドレイン電極にp型・基盤にn型半導体を用いたMOSFETを'''pチャネルMOSFET'''(pMOS)という。nMOSのキャリアは電子、pMOSのキャリアは正孔である。
ソースとドレインの間はG電圧の印加に伴うキャリア数の増減によって形成される'''チャネル'''(反転層)を通じて導電する。バイポーラトランジスタがB電流の制御でC電流を調節したように、MOSFETはG電圧の制御によりS-D間の電流を調節する。
nMOSとpMOSを同一基板上で相補的に配置したトランジスタを'''相補型MOSFET'''(CMOS)という。
CMOSはバイポーラトランジスタに比べて消費電力が少なく、集積化に適している。そのため、現在最も用いられているトランジスタはCMOSである。
===LSI===
コンピュータの黎明期には、トランジスタに相当するものとして'''真空管'''が用いられていた。これは当時画期的な電子部品だったが、真空管を用いたコンピュータは耐久性が低く、発熱しやすく、装置が巨大になるという欠点を抱えていた。
真空管に代わってトランジスタが用いられるようになると、コンピュータの小型化と演算回路の高速化が進んだ。
その後、多数のトランジスタやコンデンサー、抵抗などの電気素子を小さな基盤上に集積した'''集積回路(IC)'''が発明されると、コンピュータの小型化と高性能化は怒濤の早さで進んだ。1000個以上の素子を集積したICを特に'''大規模集積回路(LSI)'''というが、2024年現在では10億を超えるトランジスタを実装したLSIが量産されている。
集積回路内の回路素子は、半導体である珪素(Si)が酸化されると絶縁体(SiO<sub>2</sub>)に変わるという性質を利用している。シリコンウエハースを局所的に酸化し、微小領域を絶縁体で囲む。この中にp型・n型の領域を形成すると、互いに絶縁された多数の微小ユニポーラトランジスタが出来上がる。同じ表面にコンデンサーや抵抗も形成し、これらを配線することでICが完成する。
LSIの高機能化・高性能化・低消費電力化を実現するには、より微細な回路素子を高密度に集積することが求められる。処理工程の精密な制御技術と回路パターン形成のための精密な写真技術の進歩により、2024年現在では30 nmを下回る寸法の回路パターンを持つものも量産されている。
LSIはCPU・RAMの主用部品だが、それ以外にも多様な部品に使われている。高速応答性が要求される領域では、砒化ゲルマニウム(GeAs)やガリウムインジウムリン(InGaP)といったシリコン以外の半導体を使ったLSIも用いられている。また、近年は二酸化珪素の代わりに酸化ハフニウム(HfO<sub>2</sub>)を絶縁膜とするものも使われている。
===コンデンサーやダイオードを含む直流回路===
=磁気=
以下では磁気を扱う。その際[[w:クロス積|外積(ベクトル積)]]を用いることがあるので必要に応じて参照されたい。
==磁気力と磁場==
磁石に鉄粉をかけると磁石の両端によく付着する。この鉄粉を吸引する力の原料力とみられる部分(最も強い部分)を磁石の'''磁極'''という。磁極同士或いは磁石同士,電流同士,電流と磁石が互いに引き合い或いは斥け合う力のことを'''磁気力'''('''磁力''')という。磁極の強さを表す量を'''磁気量'''('''磁荷''')という。磁荷の単位はウェーバー <math>\mathrm{Wb}</math> である<ref>磁石の磁荷は、正の磁荷と負の磁荷は必ずセットで存在する。電荷のように、正の磁荷だけが存在することはないと考えられている。単体で存在する正あるいは負の磁荷を磁気単極子という。磁気単極子は今まで観測されたことがないが、物理学上の仮説である大統一理論によれば、磁気単極子が存在することが予想されている。</ref>。
2つの点電荷の間にクーロンの法則が成り立つように、2つの点磁荷の間にもクーロンの法則が成り立つ。
つまり磁気力<math>F</math>に就て、
:<math>F = k_m\frac{m_1m_2}{r^2}</math>
である。
ここで<math>m_1, m_2</math>はそれぞれの点磁荷の磁気量、<math>k_m</math>は比例定数(磁気クーロン定数)である。真空中では<math>k_m = 6.33\times10^4 \, \mathrm{N\cdot m^2/Wb^2}</math>。真空の誘電率を <math>k_0=\frac{1}{4\pi\varepsilon_0}</math> で定義したのと同じように、真空の透磁率(磁気定数)を <math>k_m=\frac{1}{4\pi\mu_0}</math> で定義する。
電場が電荷に力を及ぼす空間の性質である一方,'''磁場'''('''磁界)'''は運動している電荷に力を及ぼす空間の性質である。磁場は電場と同様に,大きさと向きを持つベクトルである。磁場ベクトル<math>\overrightarrow H</math>の点に,磁気量 <math>m</math> の磁極を置いたとき,この磁極に働く力を <math>F</math> とすると
:<math>\overrightarrow H =\frac{\overrightarrow F}{m}</math> (2.1)
が成り立つ。
===磁束密度===
'''磁束密度'''を<math>\overrightarrow B</math>は,磁場<math>\overrightarrow H</math>と'''透磁率''' <math>\mu</math> を用いて
:<math>\overrightarrow B =\mu \overrightarrow H </math>(2.2)
と表される。なお,この磁束密度<math>\overrightarrow B</math>のことを単に磁場と呼ぶこともある。
真空の透磁率は<math>\mu_0 = 1.26 \times 10^{-6} \, \mathrm{N/A^2} \fallingdotseq 4 \pi \times 10^{-7}\, \mathrm{N/A^2}</math> である。物質の比透磁率は<math>\mu_r = \frac{\mu}{\mu_0}</math>で求められる。地球大気の比透磁率はほぼ1であり、鉄の比透磁率は8000である。
==電流が作る磁場==
電流<math>\overrightarrow I</math>の流れている導線Cを微小区間に分割する。電流によって作り出される磁場を定めている'''ビオ・サヴァールの法則'''({{Lang-en-short|Biot–Savart law}})により,位置<math>\vec{r'}</math>にある微小区間<math>dl</math>の電流が位置<math>\overrightarrow r</math>に作る磁束密度は
:<math>d\overrightarrow B(\overrightarrow r)=\frac{\mu _0}{4\pi}\cdot\frac{\overrightarrow I\times(\overrightarrow r-\vec{r'})}{|\overrightarrow r-\vec{r'}|^3}dl</math>. (2.3)
電流全体の作る磁束密度は全微小区間からの寄与を足し合わせれば,つまり積分すれば求まる。
:<math>\overrightarrow B(\overrightarrow r)=\frac{\mu _0}{4\pi}\int\frac{\overrightarrow I\times(\overrightarrow r-\vec{r'})}{|\overrightarrow r-\vec{r'}|^3}dl</math>. (2.4)
===無限に長い直線電流===
[[File:Biot–Savart law long linear currents.png|thumb|right|225px|無限に長い直線電流]][[Image:Right hand rule.png|thumb|right|右ねじの法則]]
右図のように,電流にそって<math>z</math>をとり,磁場を求める点Pを通るように<math>x</math>軸をとると<math>(\overline{\mathrm{OP}}=r)</math>,<math>xyz</math>空間において<math>\overrightarrow r=(r,\ 0,\ 0).\ \vec{r'}=(0,\ 0,\ z')</math>とおくと<math>z</math>軸上の微小区間<math>[z',\ z'+dz']</math>の電流が点Pに作る磁束密度は[[w:クロス積|外積]]の性質より<math>\overrightarrow I</math>と<math>\overrightarrow r-\vec{r'}</math>に垂直,すなわち
:<math>d\overrightarrow B(\overrightarrow r)=(0,\ dB(r),\ 0)</math>
と<math>y</math>成分のみで,<math>|\overrightarrow r-\vec{r'}|=\sqrt{r^2 +{z'}^2}</math>であるから
:<math>dB(r)=\frac{\mu _0}{4\pi}\frac{I\sin\theta}{r^2 +{z'}^2}dz'=\frac{\mu _0I}{4\pi}\frac{rdz'}{(r^2+{z'}^2)^{\frac{3}{2}}}</math>.
よって電流全体が作る磁束密度<math>B</math>は(2.4)より
:<math>B(r)=\frac{\mu _0I}{4\pi}\int _{-\infty}^\infty \frac{rdz'}{(r^2+{z'}^2)^{\frac{3}{2}}}</math>.
ここで,<math>z'=r\tan\phi</math>とすると
:<math>\frac{dz'}{d\phi}=r\frac{\cos ^2\phi-\sin\phi(-\sin\phi)}{\cos ^2\phi}=\frac{r}{\cos ^2\phi}\quad\therefore dz'=\frac{rd\phi}{\cos ^2\phi}\quad\begin{array}{c|c}z' & -\infty\to \infty \\ \hline \phi & -\frac{\pi}{2}\to \frac{\pi}{2} \\ \end{array}</math>
であるから(置換積分)
:<math>B(r)=\frac{\mu _0I}{4\pi}\int _{-\frac{\pi}{2}}^\frac{\pi}{2} \frac{r\frac{rd\phi}{\cos ^2\phi}}{(r^2+r^2\tan^2\phi)^{\frac{3}{2}}}=\frac{\mu _0I}{4\pi}\int _{-\frac{\pi}{2}}^\frac{\pi}{2} \frac{\cos\phi}{r}d\phi=\frac{\mu _0I}{4\pi r}[\sin\phi]_{-\frac{\pi}{2}}^\frac{\pi}{2}=\frac{\mu_0 I}{2\pi r}</math>.
以上より直線電流が作る磁束密度は電流まわりに渦巻き状に分布し,電流から垂直距離<math>r</math>離れた位置では
:大きさ:<math>B(r)=\frac{\mu_0 I}{2\pi r}\Longleftrightarrow H(r)=\frac{I}{2\pi r}\ (\because(2.2))</math> (2.5)
:向き:<math>I</math>に垂直な面内で<math>I</math>に対して右回り('''右ねじの法則''')
===円形電流===
半径rの円形導線に大きさIの電流が流れるとき、円の中心での磁場の強さHは<math>H = \frac{I}{2r}</math>と表される。
導出は直線電流の場合と同様である。
===ソレノイド===
導線を密に巻いた十分に長い円筒状のコイルを'''ソレノイド'''という。
ソレノイドの作る磁場は、一定の間隔で並ぶ円形電流が周囲に作る磁場の重ね合わせと考えると、<math>H=nI</math>と求まる。但し、nはコイルの'''単位長さあたりの'''巻数である。
==磁場が電流に及ぼす力==
[[Image:Fleming's_Left_Hand_Rule.png|thumb|right|フレミングの左手の法則]]
磁束密度(磁場)<math>\overrightarrow B</math>が長さ<math>l</math>の電流<math>\overrightarrow I</math>に及ぼす力(電磁力,アンペール力)<math>\overrightarrow F</math>は
:<math>\overrightarrow F=l\overrightarrow I\times\overrightarrow B</math>
と表され,磁束密度<math>\overrightarrow B</math>と電流<math>\overrightarrow I</math>のなす角を<math>\theta</math>として[[w:クロス積|外積]]の性質より
:大きさ:<math>F=lIB\sin\theta</math> (磁場<math>\overrightarrow H</math>と真空の透磁率<math>\mu _0</math>を用いると(2.2)より<math>F=\mu _0lIH\sin\theta</math>)
:向き:'''フレミングの左手の法則'''に従う,或いは電流の向きと磁場の向きに垂直に立てた右ねじを電流の向きから磁場の向きに回したときに右ねじの進む向き
2つの平行電流が及ぼしあう力を求めてみよう。
十分に長い2本の平行導線P,Qをrだけ離し、それぞれに大きさI<sub>1</sub>,I<sub>2</sub>の電流を流す。電流の向きが等しいとき、PがQの長さlの部分に及ぼすアンペール力は、<math>F = I_2 B_1 l = I_2 \frac{\mu I_1}{ 2\pi r} l = \frac{\mu I_1 I_2}{2 \pi r}l</math>と求まる。このとき、QがPのlの部分に及ぼすアンペール力はFと同じ大きさで同じ向きである。
電流の向きが反対のとき、及ぼしあうアンペール力の向きも反対となる。
==ローレンツ力==
一般に荷電粒子が磁場を横切ると,磁場から力を受けることが知られている。電場<math>\overrightarrow E</math>,磁束密度<math>\overrightarrow B</math>の中で,速度<math>\overrightarrow v</math>,電荷<math>q</math>の荷電粒子に働く力
:<math>\overrightarrow F=q(\overrightarrow E+\overrightarrow v\times\overrightarrow B)</math>,
特に磁束密度<math>\overrightarrow B</math>の中で速度<math>\overrightarrow v</math>,電荷<math>q</math>の荷電粒子に働く力
:<math>\overrightarrow F=q\overrightarrow v\times\overrightarrow B</math>
をローレンツ力({{Lang-en-short|Lorentz force}})という。磁束密度<math>\overrightarrow B</math>と速度<math>\overrightarrow v</math>のなす角を<math>\theta</math>として[[w:クロス積|外積]]の性質より
:大きさ:<math>F=qvB\sin\theta</math>
:向き:'''フレミングの左手の法則'''に従う,或いは正電荷のときに荷電粒子の速度の向きと磁場の向きに垂直に立てた右ねじを速度の向きから磁場の向きに回したときに右ねじの進む向き(負電荷では逆になる)
サイクロトロン・ベータトロン
==磁束==
閉曲線Cの正の向きを定め,その向きに右ねじを回してねじが進む向きにCの囲む面の法線ベクトル<math>\overrightarrow n</math>をとる。Cの囲む面の面積を<math>S</math>としてCを貫く磁束<math>\mathit{\Phi}</math>は
:<math>\mathit{\Phi}=\int\overrightarrow B\cdot\overrightarrow ndS</math>
特に<math>\overrightarrow B\cdot\overrightarrow n</math>が一様であるときは
:<math>\mathit{\Phi}=\overrightarrow B\cdot\overrightarrow nS=BS\cos\theta</math>.
==電磁誘導==
===誘導起電力===
コイルの両端に検流計を繋ぎ、棒磁石をコイルに近づけたり遠ざけたりすると検流計の針が振れる。このように、閉回路を貫く磁場(磁束)の時間変化によって閉回路に電圧が生じて電流を生ずる現象を'''電磁誘導'''という。生じた電圧を'''誘導起電力'''、電流を'''誘導電流'''という。
誘導起電力は以下の'''レンツの法則'''に従う。
:誘導起電力は、誘導電流による磁束が外部から加えられた磁束変化を妨げる方向に発生するような向きに生じる。
具体例)鉛直に立てられたコイルに棒磁石のN極を近づけると、磁束の増加する方向(鉛直下向き)とは逆向き(鉛直上向き)の磁束が発生する向き(時計回り)に誘導電流が流れる。
イギリスのファラデーは、実験を通して「コイルに発生する誘導起電力の大きさはコイルを貫く磁束の単位時間あたりの変化量とコイルの巻数に比例する」という事実を発見した。これを定式化したのが、次の'''ファラデーの電磁誘導の法則'''である。
:<math>V = - N \frac{\Delta \Phi}{\Delta t}</math>
負の符号は、レンツの法則による。また、Nはコイルの巻数である。
一般に、誘導起電力<math>V_\mathrm{emf}</math>は
:<math>V_\mathrm{emf}=-\frac{d\mathit{\Phi}}{dt}</math>.
と表される。
電磁誘導は、コイルを磁場に出し入れする場合も起こる。
長さlの導線が磁束密度Bの磁場を速さvで横切り、磁場ベクトルと導線の速度ベクトルのなす角度がθであるとき、誘導起電力は以下の式で表される。
:<math>V_\mathrm{emf}=-\frac{d\mathit{\Phi}}{dt}=-\frac{d(Blvt\cos(\frac{\pi}{2}-\theta))}{dt}=-Bl\frac{d(vt)}{dt}\sin\theta=-Blv\sin\theta</math>.
また,誘導起電力の大きさを単位電荷あたりのローレンツ力がする仕事として考えると以下のような求め方もできる。
:<math>|V_\mathrm{emf}| = l |\vec{v} \times \vec{B}| = vBl \sin \theta</math>
無限に長い2本の導線に起電力<math>V_0</math>の電池と抵抗値<math>R</math>の抵抗を直列に繋げ、長さ<math>l</math>の軽い導線を乗せる。磁束密度<math>B</math>の磁場を回路に垂直にかけ、乗せた導線に質量<math>m</math>の錘をつけて速さ<math>v</math>で引き上げる。
導線の両端に生じる誘導起電力の大きさは、<math>\sin 90^\circ = 1</math>より<math>vBl</math>である。レンツの法則より誘電起電力の向きは電池の向きと逆なので、回路に流れる電流の大きさを<math>I</math>とするとキルヒホッフの第二法則より<math>V_0 - vBl = RI</math>である。
時間をtとしてItを両辺にかけて変形すると、<math>IV_0t = vt IBl + I^2 Rt</math>。導線と錘は等速運動をするので、重力加速度を<math>g</math>とするとローレンツ力と重力の釣り合いより<math>IBl = mg</math>である。導線と錘の移動距離<math>vt</math>を<math>h</math>とおくと、最終的にこのような式となる。
:<math>IV_0t = mgh + RI^2 t</math>
左辺は電池のする仕事、右辺は重力による位置エネルギーと抵抗で発生するジュール熱である。
このように、誘電起電力が発生する場合もエネルギー収支を考えることが可能である。
なお、導線の速さが変化する場合でも、レンツの法則より速度変化を妨げる向きに誘導起電力が発生するため、最終的に等速運動となる。
=== 渦電流 ===
コイルと同様に、金属板の上で磁石を動かしたりするときにも金属板に誘導電流が流れる。これを'''渦電流'''という。
S極が上の磁石を銅板上で動かすと、磁石が遠ざかる側は銅板を下向きに貫く磁束が減少するため、レンツの法則より磁束が増加する向きに電流が流れる。逆に、磁石が近付く側は磁束が減少する向きに電流が流れる。例えば、右向きに動かす場合は左回転の渦電流が発生する。
渦電流は磁気力によって生ずるため、銅板と磁石の接触は必ずしも必要ではない。
このように、環状のコイルでない場合にも誘導電流は発生する。さらに、金属が存在しない空間においても、磁場が変化するとその周りに電場が生ずる。これを'''誘導電場'''という。
渦電流が応用された製品として、大型車に用いられる補助ブレーキや、IHC(電磁気調理器、Induction Heating Cooker)がある。
=== 自己誘導 ===
先ほど学んだように、コイルに一定の電流を流すと一定の磁場が生じる。ここでは、流す電流を変化させた場合を考える。
コイルに流れる電流を変化させるとき、レンツの法則より電流の作る磁場の変化を妨げる向きの磁束が生じ、誘導起電力は電流の増減を妨げる向きに発生する。故に、電流の変化は瞬時には起こらない。
このように、コイルに流れる電流の変化を妨げる向きにコイルに誘導起電力が生じることを'''自己誘導'''という。また、自己誘導による誘導起電力を'''逆起電力'''という。
電流が作る磁場の強さHは電流Iに比例し、コイルを貫く磁束ΦもIに比例する。よって、比例定数をkとして
:<math>\Phi = kI</math>
と表せる。
<math>\Delta t</math>秒間の変化を考えると、電流の変化<math>\Delta I</math>と磁束の変化<math>\Delta \Phi</math>の間には
:<math>\Delta \Phi = k \Delta I</math>
という関係が成り立つ。
よって、ファラデーの電磁誘導の法則より
:<math>V = - N \frac{\Delta \Phi}{\Delta t} = - Nk\frac{\Delta I}{\Delta t}</math>
であり、比例定数をLとおくと
:<math>V_L = -L \frac{\Delta I}{\Delta t}</math>
となる。
この比例定数Lはコイルの自己誘導の大きさを表し、'''自己インダクタンス'''(自己誘導係数、自己誘導子)という。
自己インダクタンスの単位は'''ヘンリー'''(記号:H (=m<sup>2</sup>・kg / s<sup>2</sup>・A<sup>2</sup>))である。
単位長さあたりの巻数n、長さl、断面積Sのコイルに透磁率μの芯を入れる場合を考える。
コイル内部の磁束密度は
:<math>B = \mu H = \mu n I</math>
コイルを貫く磁束は
:<math>\Phi = BS = \mu n I S</math>
よって先ほどの比例定数kは
:<math>k = \mu n S</math>
コイルの巻き数は
:<math>N = nl</math>
よって
:<math>L = Nk = nl \cdot \mu nS = \mu n^2 l S</math>
ここで、μの単位はN/A<sup>2</sup>、nの単位は1/m、lの単位はm、Sの単位はm<sup>2</sup>であり、N=m・kg/s<sup>2</sup>なので、自己インダクタンスの単位Hが基本単位表記でm<sup>2</sup>・kg / s<sup>2</sup>・A<sup>2</sup>となることを確かめられた。
自己インダクタンスLのコイルに流れる電流を0からIにするには、逆起電力に逆らって仕事をする必要がある。この仕事がコイルに蓄えられるエネルギーUとなる。
:<math>U = \int_{0}^{I} LI dI = \frac{1}{2}LI^2</math>
=== 相互誘導 ===
二つのコイルが存在するとき、コイル1の電流の変化によって生じる磁束の変化の影響でコイル2に誘導起電力が生じる現象を'''相互誘導'''という。
二つのコイルを貫く磁束は同一のものであるから、コイル2に生じる誘導起電力はコイル1の電流<math>I_1</math>の時間変化の割合に比例する。
よって、比例定数をMとして
:<math>V_M = -M \frac{\Delta I_1}{\Delta t}</math>
このMを'''相互インダクタンス'''(相互誘導係数、相互誘導子)という。単位は自己インダクタンスと同じくHである。
相互インダクタンスの値は、2つのコイルの巻数や形状、芯の透磁率、コイルの相互位置などによって決まる。
== 交流 ==
===交流の発生===
辺ABの長さがl、巻数1の長方形コイルABCDが磁束密度Bの磁場の中で速さv,角速度ωで回転している状況を考える。ただし、磁場の向きは時刻0におけるコイルの向きに対して鉛直上向きであるとする。
A→B→C→Dの向きを正とすると、時刻tにおいて辺ABに生じる誘導起電力は<math>vBl \sin \omega t</math>であり、辺DCにも同符号で同じ大きさの誘導機電力が生じる。辺BCと辺ADは磁場を横切らずに回転するので誘導起電力は生じない。故に、コイル全体では誘導起電力<math>V = 2vBl \sin \omega t</math>である。
辺BCの長さが2rであるとすると、<math>v = r \omega</math>より<math>V = 2r\omega Bl \sin \omega t</math>である。
このとき、<math>t</math>の値によってVは符号(=向き)を変えながら周期的に変化する。このような電圧を'''交流電圧'''といい、<math>\omega t</math>を'''位相'''という。
<math>\sin \omega t = 1</math>のときVは最大値<math>2r\omega Bl</math>をとり、これを<math>V_0</math>と書く('''交流電圧の最大値''')。
このコイルを回路に組み込むと、周期的に向きが変わる電流が流れる。これを'''交流電流'''、略して'''交流'''という。
交流の周期T、周波数fはそれぞれ<math>T = \frac{2\pi}{\omega}, f = \frac{1}{T} = \frac{\omega}{2\pi}</math>と表される。
<math>\omega = 2\pi f</math>を'''角周波数'''という。
交流の周波数は東日本では50Hz、西日本では60Hzである。これは、電気機械を輸入した国の違い(東:ドイツ、西:アメリカ)から発生した違いである。現在の世界において交流に複数の周波数を採用している国は非常に珍しく、一つの国の中で 50Hzと60Hzの独立した系統を有し、かつ周波数変換施設で連系しているのは日本のみである。
交流電圧はファラデーの電磁誘導の法則から導出することもできる。
コイル面の面積は<math>S = 2rl</math>であり、コイルを貫く磁束は<math>\Phi = BS \cos \omega t</math>である。
ファラデーの電磁誘導の法則より<math>V = -\frac{d\Phi}{dt} = -\frac{d}{dt}(BS \cos \omega t) = -BS \frac{d}{dt} \cos \omega t = BS\omega \sin \omega t</math>
ここで<math>BS \omega = 2Brl \omega = V_0</math>であり、<math>V = V_0 \sin \omega t</math>が得られた。
このとき、<math>\Phi_0 = BS</math>はコイルを貫く磁束の最大値である。
交流においてもオームの法則が成り立つので、回路に繋いだ抵抗の抵抗値をRとすると<math>I = \frac{V_0}{R} \sin \omega t</math>である。<math>\sin \omega t = 1</math>のとき電流は最大値<math>\frac{V_0}{R}</math>をとり、これを<math>I_0</math>と表す('''交流電流の最大値''')。
このとき、電流と電圧の時間的変化の仕方は等しいので、電流と電圧は'''同位相'''である。
同位相な電圧と電流について、常に<math>V_0 = RI_0</math>である。
家庭で使用される100Vの交流電圧の最大値は約141Vであり、交流電圧は-141~141Vの間で周期的に変化している。100Vというのは、この交流のする仕事が100Vの直流のする仕事に等しいことからきている。このように、交流電圧・交流電流の大きさにはそこから計算される電力が直流と同等の効果を持つような値が用いられる。これを'''実効値'''という。交流電圧計や交流電流計の値は実効値で示される。
電球の消費電力Pについて考えると、<math>P = IV = I_0V_0 \sin^2 \omega t = \frac{I_0V_0}{2} (1-\cos 2\omega t)</math>となり、<math>0 \sim I_0 V_0</math>[W]の間で周期的に変化する。その時間平均をとると、P-tグラフから<math>\overline{P} = \frac{1}{2} I_0 V_0</math>とわかる。ここで、直流と同様に<math>\overline{P} = I_eV_e = RI^2_e = \frac{V^2_e}{R}</math>という式が成り立つように実効値<math>I_e, V_e</math>を定めたい。この条件を満たすような実効値の定め方は一意であり、それは<math>I_e := \frac{I_0}{\sqrt{2}}, V_e := \frac{V_0}{\sqrt{2}}</math>である。
これらの議論から、<math>V_e = R I_e</math>が成り立つ。
実効値を用いると、直流の場合と同様に電力・オームの法則の計算ができる。
実効値に対して、各時刻における電流値・電圧値をそれぞれの'''瞬間値'''(瞬時値)という。<math>I_0, V_0</math>は瞬間値の最大値である。
電磁誘導を用いて交流電圧を変える装置を'''変圧器'''(トランス)という。変圧器は、巻数の異なる2つのコイルを共通の鉄芯(コア)に巻きつけた構造をしている。交流電源側のコイルを'''一次コイル'''、もう片方のコイルを'''二次コイル'''という。
一次コイルに交流電圧が流れると交流は常に大きさと向きが変化するため、鉄芯内の磁束<math>\Phi</math>が変化して電磁誘導が起こる。それぞれのコイルに発生する誘導起電力を<math>V_1, V_2</math>、コイルの巻数を<math>N_1, N_2</math>とする。
鉄芯の内部を貫く磁束が鉄芯外部に漏れないものとすると、磁束・磁束の時間変化ともに両方のコイルに共通なので<math>V_1 = -N_1 \frac{d\Phi}{dt}, V_2 = -N_2 \frac{d \Phi}{dt}</math>である。
<math>V_1, V_2</math>の実効値を<math>V_e, V_\varepsilon</math>とすると、<math>V_e : V_\varepsilon = N_1 : N_2</math>となり、コイルの巻数の比と交流電圧の比が等しくなる。
電流損失が無視できる場合、一次コイルの電力と二次コイルの電力は等しいのでエネルギー保存則が成り立ち、二次コイルの電圧を高くすると二次コイルの電流は小さくなる。
発電所で発電された交流電気は変圧器によって超高電圧に上げてから送電されている。これは、送電線に流れる電流を小さくして送電線で発生するジュール熱(=エネルギー損失)を小さくするためである。
街に届いた交流電気は再度変圧器によって100Vに変換されてから各家庭に届けられる。
===交流回路===
コイルやコンデンサーを含む交流回路では、電流と電圧に位相差が生じることが知られている。そのため、交流回路について考えるとき、<math>I = I_0 \sin \omega t, V = V_0 \sin (\omega t + \phi)</math>とおいて<math>V_0, I_0</math>の関係及び<math>\phi</math>を明確にすることが重要である。
====交流と抵抗====
抵抗のみが接続されている場合、先ほど求めた関係式<math>V_0 = RI_0</math>から電流と電圧の位相差は<math>\phi = 0</math>であるとわかる。すなわち、交流電圧<math>V_R</math>と交流電圧<math>I_R</math>は同位相である。
交流電圧と交流電流の時間変化を考える時、xy平面上で原点を中心に一定の角速度で回転する二つのベクトルを考えることがある。原点を始点として、回転角が位相に対応し<math>|\vec{I_R}| = I_{R_0}, |\vec{V_R}| = V_{R_0}</math>となるように<math>\vec{I_R}, \vec{V_R}</math>をとる。このとき、各ベクトルのy成分が交流電流・交流電圧それぞれの瞬間値を表す。
電気素子を一つだけ繋いだ交流回路において、<math>X = \frac{V_0}{I_0} = \frac{V_e}{I_e}</math>で定義される量を'''リアクタンス'''(誘導抵抗、感応抵抗)という。単位は抵抗値と同じくΩを用いる。リアクタンスは交流に対する抵抗の働きを表す。
抵抗のリアクタンスは<math>X_R = R</math>であり、交流の周波数に関係なく一定である。
====交流とコイル====
コイルを含む回路に交流電圧を加えるとき、直流電圧を加えるときよりも流れる電流が小さくなる。すなわち、コイルは交流電流に対して抵抗のような働きをし、リアクタンスを考えることができる。
交流電源とコイルのみからなる回路について、コイルに生じる誘導起電力を<math>V'</math>、コイルの自己インダクタンスを<math>L</math>とする。
キルヒホッフの第二法則より<math>V + V' = 0</math>であり、<math>V' = -L \frac{\Delta I}{\Delta t}</math>なので、<math>V = L \frac{\Delta I}{\Delta t}</math>・・・(*)と求まる。
<math>\Delta I</math>は時刻<math>t \sim t+\Delta t</math>間の電流変化なので、
:<math>\Delta I = I_0 \sin \{ \omega (t + \Delta t) \} - I_0 \sin \omega t</math>
::<math>=I_0 \sin (\omega t + \omega \Delta t) - I_0 \sin \omega t</math>
::<math>=I_0 (\sin \omega t \cdot \cos \omega \Delta t + \cos \omega t \cdot \sin \omega \Delta t) - I_0 \sin \omega t</math>
ここで<math>|\Delta t| \ll 1</math>と見做して<math>\lim_{\theta \to 0} \sin \theta = \theta, \lim_{\theta \to 0} \cos \theta = 1</math>の関係を用いると、
:<math>\Delta I \fallingdotseq I_0 (\sin \omega t + \omega \Delta t \cos \omega t - \sin \omega t)</math>
::<math>= \omega I_0 \cos \omega t \cdot \Delta t</math>
:<math>\therefore \frac{\Delta I}{\Delta t} = \omega I_0 \cos \omega t</math>
と求まる。
これを(*)に代入すると、
:<math>V_0 \sin (\omega t + \phi) = L \omega I_0 \cos \omega t </math>
これが<math>t</math>の恒等式となるので、<math>V_0 = \omega L I_0</math>かつ<math>\sin (\omega t + \phi) = \cos \omega t</math>が<math>t</math>の恒等式である。
すなわち、<math>X_L = \omega L, \phi = \frac{\pi}{2}</math>である。
ここから、コイルの交流電圧<math>V_L</math>の位相は交流電流<math>I_L</math>の位相より<math>\frac{\pi}{2}</math>進み、コイルのリアクタンスは交流の周波数が大きいほど大きいことがわかる。
なお、微分を用いると以下のように導出される。
:<math>V = L \frac{dI}{dt} = L I_0 \frac{d}{dt} \sin \omega t = \omega L I_0 \cos \omega t = \omega L I_0 \sin(\omega t + \frac{\pi}{2})</math>
この回路において、コイルの消費電力<math>P_L</math>は以下のように求まる。
:<math>P_L = I_L V_L = I_0 \sin \omega t \cdot V_0 \sin (\omega t + \frac{\pi}{2}) = I_0 V_0 \sin \omega t \cos \omega t = \frac{1}{2} I_0 V_0 \sin 2 \omega t</math>
正弦関数は周期関数なので、<math>P_L</math>の時間平均は<math>\overline{P_L}=0</math>となることがわかる。
====交流とコンデンサ====
コンデンサーに直流電圧を加えると、コンデンサの充電が終わるまで電流が流れ、その後電流は流れなくなる。一方、交流電流を加えると、電圧の向きが常に変わるのでコンデンサが充電・放電を繰り返し、回路に電流が流れ続ける。このとき、コンデンサの両端に電位差が生じ、コンデンサは抵抗と同様の働きをする。すなわち、コンデンサでもリアクタンスを考えることができる。
交流電源とコンデンサのみからなる回路について、コンデンサの電気容量を<math>C</math>、電気量を<math>Q</math>とする。
電流の定義より<math>I = \frac{\Delta Q}{\Delta t}</math>であり、<math>Q = CV</math>より<math>I = C\frac{\Delta V}{\Delta t}</math>・・・(@)と求まる。
<math>\Delta V</math>は時刻<math>t \sim t + \Delta t</math>間の電圧変化なので、
:<math>\Delta V = V_0 \sin \{ \omega (t + \Delta t) + \phi \} - V_0 \sin (\omega t + \phi)</math>
::<math>= V_0 \sin \{ (\omega t + \phi) + \omega \Delta t \} - V_0 \sin (\omega t + \phi)</math>
::<math>= V_0 \{ \sin (\omega t + \phi) \cdot \cos \omega \Delta t + \cos (\omega t + \phi) \cdot \sin \omega \Delta t \} - V_0 \sin (\omega t + \phi)</math>
ここで先ほどと同様に<math>|\Delta t| \ll 1</math>と見做して近似すると、
:<math>\Delta V \fallingdotseq V_0 \{ \sin(\omega t + \phi) + \omega \Delta t \cos (\omega t + \phi) \} - V_0 \sin (\omega t + \phi) </math>
::<math>= \omega V_0 \cos (\omega t + \phi) \cdot \Delta t</math>
:<math>\therefore \frac{\Delta V}{\Delta t} = \omega V_0 \cos (\omega t + \phi)</math>
これを(@)に代入すると、
:<math>I_0 \sin \omega t = C \omega V_0 \cos (\omega t + \phi)</math>
これが<math>t</math>の恒等式となるので、<math>I_0 = C \omega V_0</math>かつ<math>\sin \omega t = \cos (\omega t + \phi)</math>が<math>t</math>の恒等式である。
すなわち、<math>X_C = \frac{1}{\omega C}, \phi = - \frac{\pi}{2}</math>である。
ここから、コンデンサの交流電圧<math>V_C</math>の位相は交流電流<math>I_C</math>の位相より<math>\frac{\pi}{2}</math>遅れ、コンデンサのリアクタンスは交流の周波数が小さいほど大きいことがわかる。
なお、微分を用いると以下のように導出される。
:<math>Q = CV</math>より<math>\frac{dQ}{dt} = C \frac{dV}{dt}</math>
:<math>I = \frac{dQ}{dt} = CV_0 \frac{d}{dt} \sin \omega t = \omega CV_0 \cos \omega t = \omega CV_0 \sin (\omega t + \frac{\pi}{2})</math>
:<math>\therefore V = \frac{I_0}{\omega C} \sin (\omega t - \frac{\pi}{2})</math>
この回路において、コンデンサの消費電力<math>P_C</math>は以下のように求まる。
:<math>P_C = I_C V_C = I_0 \sin \omega t \cdot V_0 \sin (\omega t - \frac{\pi}{2}) = - I_0 V_0 \sin \omega t \cos \omega t = -\frac{1}{2} I_0 V_0 \sin 2 \omega t</math>
正弦関数は周期関数なので、<math>P_C</math>の時間平均は<math>\overline{P_C}=0</math>となることがわかる。
====インピーダンス====
交流電源に抵抗R、コイルL、コンデンサCを直列に繋いだ回路('''RLC直列回路''')を考える。
回路全体の瞬間電圧は<math>V = V_R + V_L + V_R</math>であるが、RLCそれぞれの交流電圧の位相が不揃いなので最大電圧は<math>V_0 < V_{R_0} + V_{L_0} + V_{C_0}</math>である。
そこで、位相差を考慮するためにベクトル図を利用する。
直列接続ではR、L、Cそれぞれに流れる電流が同じなので、電流を基準に考える。
x軸の正方向に<math>\vec{I_0}</math>をとる。
:<math>\vec{V_{R_0}}</math>は<math>\vec{I_0}</math>との位相差が<math>0</math>なのでx軸の正方向を向く。
:<math>\vec{V_{L_0}}</math>は<math>\vec{I_0}</math>との位相差が<math>\frac{\pi}{2}</math>なのでy軸の正方向を向く。
:<math>\vec{V_{C_0}}</math>は<math>\vec{I_0}</math>との位相差が<math>-\frac{\pi}{2}</math>なのでy軸の負方向を向く。
<math>\vec{V_0} = \vec{V_{R_0}} + \vec{V_{L_0}} + \vec{V_{C_0}}</math>なので、両辺のベクトルの長さを考えると三平方の定理より<math>V_0 = \sqrt{V^2_{R_0} + (V_{L_0} - V_{C_0})^2}</math>と容易に求まった。
電気素子を複数繋いだ交流回路について、<math>Z = \frac{V_0}{I_0} = \frac{V_e}{I_e}</math>で定義される量を'''インピーダンス'''という。単位はリアクタンスと同様にΩを用いる。インピーダンスは交流回路における合成抵抗の働きを表す。
この直流回路について、<math>V^2_0 = (RI_0)^2 + \{ (\omega L - \frac{1}{\omega C}) I_0 \}^2</math>より<math>V_0 = I_0 \sqrt{R^2 + (\omega L - \frac{1}{\omega C})^2}</math>なので、<math>Z = \sqrt{R^2 + (\omega L - \frac{1}{\omega C})^2}</math>と求まる。
この回路全体の交流電流に対して回路全体の交流電圧の位相が<math>\phi</math>進むとすると、ベクトル図を書くことにより<math>\tan \phi = \frac{\omega L - \frac{1}{\omega C}}{R}</math>と求まる。
同様にして、交流電源に抵抗R、コイルL、コンデンサCを並列に繋いだ回路('''RLC並列回路''')のインピーダンスを求める。
並列接続ではR、L、Cそれぞれに掛かる電圧が同じなので、電圧を基準に考える。
x軸の正方向に<math>\vec{V_0}</math>をとる。
:<math>\vec{I_{R_0}}</math>は<math>\vec{V_0}</math>との位相差が<math>0</math>なのでx軸の正方向を向く。
:<math>\vec{I_{L_0}}</math>は<math>\vec{V_0}</math>との位相差が<math>-\frac{\pi}{2}</math>なのでy軸の負方向を向く。
:<math>\vec{I_{C_0}}</math>は<math>\vec{V_0}</math>との位相差が<math>\frac{\pi}{2}</math>なのでy軸の正方向を向く。
<math>|\vec{I_{R_0}}| = \frac{V_0}{R}, |\vec{I_{L_0}}| = \frac{V_0}{\omega L}, |\vec{I_{C_0}}| = \omega C V_0</math>より、<math>I_0 = V_0 \sqrt{\frac{1}{R^2} + (\omega C - \frac{1}{\omega L})^2}</math>。
よって、<math>Z = \frac{V_0}{I_0} = \frac{1}{\sqrt{\frac{1}{R^2} + (\omega C - \frac{1}{\omega L})^2}}, \tan \phi = \frac{\omega C - \frac{1}{\omega L}}{\frac{1}{R}}</math>
なお、直列・並列の双方においてインピーダンスを三角関数の加法定理を用いて求めることもできるが、計算が非常に煩雑なため省略する。
RLC直列回路・RLC並列回路ともにコイル・コンデンサーの消費電力は0であるため、回路全体の消費電力の時間平均は抵抗のみについて考えれば良い。
直列接続の場合、ベクトル図より<math>R = Z \cos \phi</math>なので、
:<math>\overline{P} = R I^2_e = Z \cos \phi \cdot I^2_e = I_eV_e \cos \phi</math>
並列接続の場合、ベクトル図より<math>\frac{1}{R} = \frac{1}{Z} \cos \phi</math>なので、
:<math>\overline{P} = \frac{V^2_e}{R} = \frac{\cos \phi}{Z} \cdot V^2_e = I_e V_e \cos \phi</math>
よって、繋ぎ方に関係なく<math>\overline{P} = I_e V_e \cos \phi</math>が成り立つ。
この<math>\cos \phi</math>を'''力率'''という。
一般に、交流に対して<math>S=IV</math>を'''皮相電力'''(単位:<math>\mathrm{V\cdot{A}}</math>)、<math>Q=IV\sin\phi</math>を'''無効電力'''(単位:<math>\mathrm{var}</math>)、<math>P=IV\cos\phi</math>を'''有効電力'''(単位:<math>\mathrm{W}</math>)という。
<math>\sin\phi</math>を力率に対して'''無効率'''という。
有効電力は素子の消費電力であり、無効電力は電源と素子を行き交う電力である。素子では無効電力の消費と発生を繰り返している。
皮相電力・無効電力・有効電力を図示すると、「斜辺が皮相電力ベクトル、対辺が無効電力ベクトル、隣辺が有効電力ベクトル」となる直角三角形ができる。この三角形を用いることで「力率を0.6から0.8に上げるためには、並列接続するコンデンサの静電容量は幾つがよいか」のような力率改善の問題を解くことができるようになる。
インピーダンス(Z)は一般に複素数であり、その実部をレジスタンス(R)、虚部をリアクタンス(X)という。このリアクタンスは上で扱ったリアクタンスと一致する。上で扱ったインピーダンスは正確には「インピーダンスの絶対値」である。
インピーダンスが複素数であることは、ベクトル図のxy平面を複素数平面に置き換えればイメージできるであろう。
<!--インピーダンスは数学IIにおける虚数の導入時、その応用として紹介されることがある。利用者:~2025-20152自身は体脂肪率の測定の話題でインピーダンスに虚数が用いられていること、シュレディンガー方程式に虚数が用いられていることを紹介された。-->
インピーダンスの逆数をアドミタンス(Y)といい、その実部をコンダクタンス(G)、虚部をサセプタンス(B)という。
これら6つを纏めてイミタンスという。
インピーダンスの合成は複素数表示ならば「直列接続は各インピーダンスの総和」「並列接続は各インピーダンスの逆数総和の逆数」となり、容易に求まる。同様にアドミタンスの合成も複素数表示ならば「直列接続は各アドミタンスの逆数総和の逆数」「並列接続は各アドミタンスの総和」と求まる。
====共振回路====
RLC直列回路において、交流電圧の周波数が特定の値になったときに大きな電流が流れる。これを'''共振'''という。<!--音波とは違って共鳴とは言わない。-->
共振が起こるときの交流の周波数('''共振周波数''')<math>f_0</math>を求める。
:<math>I_0 = \frac{V_0}{Z} = \frac{V_0}{\sqrt{R^2 + (\omega L - \frac{1}{\omega C})^2}}</math>である。
:角周波数<math>\omega</math>を変化させるとき、<math>I_0</math>が最大となるのは<math>Z</math>が最小値をとるときである。
:そのときの角周波数を<math>\omega_0</math>とおくと<math>\omega_0 L - \frac{1}{\omega_0 C} = 0</math>すなわち<math>\omega_0 = \frac{1}{\sqrt{LC}}</math>。
:<math>\therefore f_0 = \frac{1}{2\pi \sqrt{LC}}</math>
回路の電気抵抗が小さければ、交流の周波数が共振周波数に一致した際非常に大きな電流が回路に流れる。このような回路を'''共振回路'''という。
共振回路はラジオ・テレビの電磁波受信回路などに利用されている。
====電気振動====
直流電源にコンデンサC、コイルLを並列に繋ぎ、コンデンサの導線にスイッチを付けて直流電流側とコイル側の導線を切り替えられるようにする。スイッチを直流電源側に入れてコンデンサを充電し、その後スイッチをコイル側に入れて蓄えた電荷を放電させる。このとき、一定の周期で向きが変わる電流('''振動電流''')が流れ続ける。このような現象を'''電気振動'''、このような回路を'''振動回路'''という。
コイル・コンデンサのそれぞれに対して最大電圧と最大電流の間の関係式を立てると、
:<math>V_{L_0} = \omega L I_0</math>
:<math>V_{C_0} = \frac{1}{\omega C}I_0</math>
並列接続なので<math>V_{L_0} = V_{C_0}</math>であり、<math>\omega = \frac{1}{\sqrt{LC}}</math>と求まる。
よって、この振動回路の振動の周波数('''固有周波数''')は<math>f = \frac{1}{2\pi\sqrt{LC}}</math>と求まる。
電気振動ではコンデンサーの極板間に生じる電場とコイルに流れる電流の作る磁場との間でエネルギーが相互伝達する。
回路の電気抵抗が無視できる場合、以下のエネルギー保存則が成り立つ。
:<math>\frac{1}{2}CV^2_0 = \frac{1}{2} CV^2 + \frac{1}{2} LI^2 = \frac{1}{2} LI^2_0</math>
実際には導線やコイルの電気抵抗によりエネルギー損失が発生(ジュール熱に変換)されるため、振動電流は時間を追うごとに減衰する。
回路の電気抵抗が非常に大きい場合、コンデンサの放電が一瞬で止まってしまい、電気振動が見られなくなる。
===電磁波===
[[高校物理 波#光の性質|波動分野]]・[[高等学校物理/原子物理|原子分野]]も参照。
====電磁波の発生と発見====
イギリスのマクスウェルは電磁気についての理論研究から、変動する電場・磁場が真空中であっても光速の横波として伝わることに気づき、光もこの波の一種であるとの予想を立てた。これはドイツのヘルツによって証明された。この波は'''電磁波'''と名前がついた。
電磁誘導の節でも述べたが、金属のない空間であっても、磁場が変化するとその周りの空間に誘導電場を生ずる。逆に、電場が変化するとその周りの空間に誘導磁場が生じる。
振動回路に電気振動が起こると、コンデンサの極板間に振動電場が生じるので、これによって振動磁場を生ずる。この磁場がさらに振動電場を生じ・・・と繰り返すことによって、電気力線と磁力線の振動が電磁波として遠方へ伝わっていく。
電場・磁場それぞれの振動方向と電磁波の進行方向は互いに直交し、同位相で振動する。真空の誘電率・透磁率と光速の間には以下の関係式が成り立つ。
:<math>c = \frac{1}{\sqrt{\varepsilon_0\mu_0}}</math>
電気振動によって生じた電磁波の振動数は振動回路の固有周波数に一致する。
====電磁波の性質====
電磁波の送信アンテナと受信アンテナを平行にすると電磁波をよく受信する。しかし、直角にすると受信しづらくなる。これは、電磁波が一定方向に偏って振動する横波であることを示す。
FM放送(超短波)とAM放送(中波)ではAMの方が山影に電波が届きやすい。これは、波長が長いほど回折しやすいという波の性質に一致する。また、回折波が干渉を起こす場合がある。
トンネルの中はAM放送も受信しにくくなる。このように、電磁波は遮蔽される性質がある。
電磁波が金属板によって反射される性質は、衛星通信用のマイクロ波パラボラアンテナに応用されている。([[高等学校数学C/平面上の曲線#焦点の性質]]も参照)
電磁波をパラフィンなどの面に斜めに当てると、電磁波は屈折を起こす。
====電磁波の種類====
*電波:波長0.1mm以上のもの。1m未満のものは'''マイクロ波'''ともいう。
*赤外線:物質に吸収されると熱エネルギーに変わりやすいことから'''熱線'''とも。
*可視光線:人間が感光できる光。
*紫外線:照射した物質に化学変化を起こさせやすいことから'''化学線'''とも。
*X線:レントゲン写真に使われる。
*γ線:非常に大きいエネルギーを持つ。
鉄の温度を上昇させると赤熱する(鉄火)。このように、高温物体からは赤外線・可視光線を主とする電磁波が放射されている。この現象を'''熱放射'''という。
==注釈・脚注==
<references/>
{{DEFAULTSORT:てんしきかく}}
[[Category:高等学校教育]]
[[カテゴリ:電磁気学]]
4o52oyz2t4i23zaav558mqbkkazmyn4
法定地上権
0
35820
299651
211143
2026-05-19T22:00:58Z
Tomzo
248
転送先を [[w:法定地上権]] から [[民法第388条]] に変更しました
299651
wikitext
text/x-wiki
#redirect[[民法第388条]]
6a7carkh8jo2fengr3bgxvhk194wqk9
解析学基礎/フーリエ級数
0
45528
299676
285309
2026-05-20T00:36:58Z
~2026-30297-95
91534
299676
wikitext
text/x-wiki
{{Pathnav|数学|解析学|解析学基礎|frame=1}}
ここでは、フーリエ級数と関数のフーリエ展開について扱う。フーリエ変換については[[解析学基礎/フーリエ変換]]を参照。
[[物理数学II フーリエ解析]]も参照。
{{stub}}
==周期関数==
ある関数<math>f(x)</math>が<math>T(>0)</math>に関して全区間で
:<math>f(x+T)=f(x)</math>
を満足するとき、<math>f(x)</math>を'''周期関数'''(periodical function)、<math>T</math>を<math>f(x)</math>の'''周期'''(period)という。また、「<math>f(x)</math>は周期<math>T</math>を持つ」という表現もする。
このとき、<math>n \in \mathbb{Z}</math>として
:<math>f(x+nT)=f(x)</math>
が成り立つ。
そのため、周期のうち最も基本的なものという意味で最小の<math>T</math>を'''基本周期'''(fundamental period)や'''最小周期'''(least period)とも呼ぶ。
周期関数は、幾何学的には「グラフが平行移動対称である」ような関数といえる。
基本周期<math>T</math>を持つ<math>f(x)</math>について、<math>f(ax+b)</math>の基本周期を求める。
:<math>g(x)=ax+b</math>とすると、
:<math>f(ax+b)=f(g(x))=(g \circ f) (x)</math>・・・(*)である。
:これが基本周期<math>\psi</math>を持つとすると、
:<math>(f \circ g) (x) = (f \circ g) (x+\psi)</math>が成り立つ。
:<math>(f \circ g) (x+\psi) = f ( g(x+\psi)) = f(a(x+\psi)+b) = f(ax+a\psi+b)</math>なので、
:(*)より<math>f(ax+b)=f(ax+b+a\psi)</math>・・・(^)が成り立つ。
:ここで<math>g(x)=X</math>とおくと(^)は<math>f(X+a\psi)=f(X)</math>と書ける。
:故に<math>a\psi</math>は<math>f(x)</math>の周期の一つであるが、
:<math>f(x)</math>は周期<math>T</math>を持つので<math>a\psi=nT</math>が成り立たなければならない。
:よって<math>a\psi=nT \iff \psi = \frac{nT}{a}</math>
:ここで<math>\psi</math>は<math>f(ax+b)</math>の基本周期なので、<math>\psi</math>が最小の正数であるとき
:<math>\psi = \frac{T}{|a|}</math>である。
これは、「<math>f(kx)</math>のグラフは<math>f(x)</math>のグラフを<math>\frac{1}{|k|}</math>倍に縮小したものである」という幾何的な性質に一致する。
周期関数として最も有名な関数は[[解析学基礎/三角関数|三角関数]]である。
:<math>\sin x</math>は周期<math>\tau</math>を持つ。
:<math>\cos x</math>は周期<math>\tau</math>を持つ
:<math>\tan x</math>周期<math>\frac{\tau}{2}</math>を持つ。
周期関数のグラフは波形なので、周期関数を'''波形関数'''ともいう。
<math>y=\sin x</math>、<math>y=\cos x</math>のグラフは正弦波と呼ばれる美しい曲線を描く。正弦波からの{{ruby|歪|ひず}}みが小さい波形関数は正弦波により近似されるが、歪みが著しいときは単一の正弦波では精度良く近似できない。そのため、振幅の異なる複数の正弦波で波形関数を近似することを考える。
[[高等学校数学III/微分法#近似式|近似式]]の次数を高くして[[解析学基礎/テイラー級数|テイラー展開]]を導いたときと同様の考え方をすると、近似に用いる正弦波の数が増えるほど(近似に用いる正弦波の振幅が適当ならば)近似の精度が良くなり、∞個の正弦波を用いれば元の波形と一致するはずである。
そのため、周期関数は正弦関数の無限和に展開できる。
この事実を利用したのが、以下で扱うフーリエ展開である。
==フーリエ展開==
周期関数は物理的には時間を変数とした関数である。
そのため、一般の周期Tを持つ周期関数のフーリエ展開を考えるとき、角周波数<math>\omega</math>を導入すると便利である。
最も[[高等学校物理基礎/波動#波の発生|周波数]]の低い波('''基本波''')を表す正弦関数・余弦関数の周期は<math>\tau</math>なので、角周波数は<math>\omega=\frac{\tau}{T}</math>と定義される。
無限級数<math>S_\infty (x)=\frac{a_0}{2}+\sum_{n=1}^{\infty} (a_n\cos n\omega x + b_n\sin n\omega x)</math>を'''フーリエ級数'''(Fourier series)といい、<math>f(x)</math>をフーリエ級数で表すことを'''フーリエ展開'''(Fourier expansion)という。
級数を決定する各係数<math>a_0, a_n, b_n</math>を'''フーリエ係数'''(Fourier coefficient)という。
<math>a_0</math>を特に'''定数項'''(constant term)と呼ぶが、<math>a_0</math>は電気的には時間に依存しない'''直流部'''を表す。そのため、DC componentという名称も用いられる。
<math>a_1, b_1</math>は基本波成分の最大値(注:<math>\max_x \{ \sin x \}=\max_x \{ \cos x \}=1</math>)なので、'''基本波項'''(fundamental term)と呼ばれる。
<math>a_2, b_2</math>は基本波の二倍の周波数成分の最大値なので、'''第二次高調波項'''(second harmonics)と呼ばれる。
以下、<math>a_n, b_n</math>は同様に'''第n次高調波'''(''n'' -th harmonics, hyper harmonics)と呼ばれる。
同じ<math>k</math>という次数の周波数を持つ成分は[[解析学基礎/三角関数#加法定理|三角関数の合成]]により<math>a_k\cos k\omega x + b_k\sin k\omega x = \sqrt{a^2_k+b^2_k} \sin (k\omega x + \arctan \frac{a_k}{b_k}) = \sqrt{a^2_k + b^2_k} \cos (k\omega x - \arctan \frac{b_k}{a_k})</math>と、単一の[[高等学校物理/力学#単振動|単振動]]の式で書ける。
故に、フーリエ級数は以下のように変形される。
:<math>\frac{a_0}{2} + \sum_{n=1}^\infty (a_n\cos n\omega x + b_n \sin n\omega x) = \frac{a_0}{2} \sum_{n=1}^\infty A_n \sin (n\omega x + \theta_n) = \frac{a_0}{2} + \sum_{n=1}^\infty B_n \cos (n\omega x - \phi_n)</math>
(但し<math>A_n=B_n=\sqrt{a^2_n+b^2_n}, \theta_n = \arctan \frac{a_n}{b_n}, \phi_n=\arctan \frac{b_n}{a_n}</math>)
フーリエ級数は三角関数の線型結合で与えられるので、基本波成分はフーリエ級数の張る線型空間の基底、則ちベクトルとみなせる。
一般に関数空間はベクトル空間の公理を満たすため、関数をベクトルと見做すことができる。詳しくは[[関数解析学]]で扱うが、先行して幾つかの概念を導入する。
周期Tを持つ関数<math>f(x), g(x)</math>の内積<math>\langle f, g \rangle</math>は次のように定義される。
:<math>\langle f, g \rangle = \int_0^T f(x) g(x) dx</math>
これは内積空間の公理を満たすので、内積と呼んで良い。
<math>f(x)</math>について自身との内積の正の平方根をとったものを<math>f(x)</math>のノルムという。
:<math>\| f \| = \sqrt{\langle f, f \rangle} = \sqrt{\int_0^T \{ f(x) \}^2 dx}</math>
これはノルム空間の公理を満たすので(以下略)。
フーリエ級数の基本波成分<math>\sin n\omega x, \cos n\omega x</math>の内積を考える。
<math>\sin n\omega x, \cos n\omega x</math>の周期は<math>\frac{\tau}{n\omega}</math>なので、
:<math>\langle \sin n\omega x, \cos n\omega x \rangle = \int_0^\frac{\tau}{n\omega} \sin n\omega x \cos n\omega x dx = \frac{1}{2} \int_0^\frac{\tau}{n\omega} \sin (2n\omega x) dx = \frac{-1}{4n\omega} \left[ -\cos (2nx) \right]_0^\frac{\tau}{n\omega} = \frac{\cos 0-\cos 2\tau}{4n\omega} = 0</math>
よって、<math>\sin nx, \cos nx</math>は'''内積が0なので直交しているといってよい'''。
<math>\| \sin n\omega x \|, \| \cos n\omega x \|</math>を求める。
:<math>\| \sin n\omega x \| = \sqrt{\int_0^\frac{\tau}{n\omega} \sin^2 n\omega x dx}=\sqrt{\frac{\tau}{2\omega}}</math>
:<math>\| \cos n\omega x \| = \sqrt{\int_0^\frac{\tau}{n\omega} \cos^2 n\omega x dx}=\sqrt{\frac{\tau}{2\omega}}</math>
よって、<math>\sin n\omega x, \cos n\omega x</math>を正規化した<math>\sqrt{\frac{2\omega}{\tau}} \sin x, \sqrt{\frac{2\omega}{\tau}} \cos x</math>は'''正規直交基底'''である。
この事実を用いることで、'''フーリエ係数が元の関数に関する一周期の定積分で求まる'''ことがわかる。
:展開前の関数及び展開後の級数を<math>f(x)</math>とおく。
:定数項は<math>f(x)</math>の一周期の積分平均をとれば求まるので、<math>a_0 = \frac{2}{T} \int_0^T f(x) dx</math>
:<math>\langle f(x) ,\cos n\omega x \rangle</math>をとると<math>b_n</math>を含む成分が全て0となって消えるので、<math>a_n = \frac{2}{T} \int_0^T f(x) \cos n\omega x dx</math>
:<math>\langle f(x) ,\sin n\omega x \rangle</math>をとると<math>a_n</math>を含む成分が全て0となって消えるので、<math>b_n = \frac{2}{T} \int_0^T f(x) \sin n\omega x dx</math>
これらの式は普通に積分しても得られるが、計算が非常に煩雑になるため割愛する。
==フーリエ展開の例==
偶関数をフーリエ展開するとき、奇関数である<math>\sin x</math>が入ると偶関数ではなくなってしまうため、<math>\sin n\omega x</math>の係数である<math>b_n</math>は0であると容易に判断できる。
同様に、奇関数をフーリエ展開するとき<math>a_0=a_n=0</math>であると容易にわかる。
<math>f(x+\frac{T}{2})=-f(x)</math>を満たす周期関数を<math>\frac{T}{2}</math>-'''奇対称関数'''という。
:定義式から<math>f(x+\frac{T}{2})+f(x)=0</math>であり、左辺をフーリエ展開すると
:<math>a_0 + \sum_{n=0}^\infty \left[ \sin(n\omega x+ \theta_n) + \sin \{ n\omega(x+ \frac{T}{2}) +\theta_n \} \right]=0</math>
:これがxに関する恒等式なので、
:<math>a_0=0 \land n:\mathrm{even}.</math>が成立の必要十分条件である。
よって、奇対称関数のフーリエ展開は<math>a_{2n-1}</math>を含む項と<math>b_{2n-1}</math>を含む項で示される。
同様に、<math>f(x+\frac{T}{2})=f(x)</math>を満たす周期関数を<math>\frac{T}{2}</math>-'''偶対称関数'''といい、そのフーリエ変換は<math>a_{2n}</math>を含む項と<math>b_{2n}</math>を含む項で示される。
以上を踏まえ、実際の波形関数をフーリエ展開してみよう。
*問題
*以下の波形関数をフーリエ展開せよ
*#{{ruby|矩形|くけい}}波<math>f(x) = \begin{cases} A \quad (x \in [0, \frac{T}{2}]) \\ -A \quad (x \in [\frac{T}{2}, T]) \end{cases}</math>
*#三角波<math>f(x)= \begin{cases} \frac{4A}{T}x \quad (x \in [0, \frac{T}{4}]) \\ 2A - \frac{4A}{T}x \quad (x \in [\frac{T}{4}, \frac{3T}{4}]) \\ \frac{4A}{T}(x-T) \quad (x \in [\frac{3T}{4}, T]) \end{cases}</math>
*#{{ruby|鋸歯|きょし}}波<math>f(x) =\frac{A}{T}x \quad (x \in [0, T))</math>
*#半波整流波<math>f(x) = \begin{cases} A \sin \omega x \quad (x \in [0, \frac{T}{2} ]) \\ 0 \quad (x \in [\frac{T}{2}, T]) \end{cases}</math>
*#平均値反転全波整流波<math>f(x)=\frac{4A}{T^2}\left( x-\frac{T}{2} \right)^2 \quad (x \in [0, T))</math>
*解答
*#
*#:<math>f(x)</math>は奇関数であるが、<math>f(x+\frac{T}{2})=f(x)</math>を満たすので<math>\frac{T}{2}</math>-偶対称関数でもあり、<math>a_0=a_n=b_{2n}=0</math>。
*#:<math>b_{2n-1}=\frac{2}{T} \left( \int_0^\frac{T}{2} A \sin (2n-1)\omega x dx + \int_{\frac{T}{2}}^T (-A) \sin (2n-1)\omega x dx \right)</math>
*#:<math>=-\frac{2A}{(2n-1)\omega T} \left( \left[ \cos (2n-1)\omega x \right]_0^\frac{T}{2} + \left[ \cos (2n-1)\omega x \right]_T^{\frac{T}{2}} \right)</math>
*#:<math>=-\frac{2A}{(2n-1)\tau} \left( 2\cos \frac{(2n-1)\tau}{2} - \cos (2n-1)\tau -\cos 0 \right)</math>
*#:<math>=\frac{8A}{(2n-1)\tau}</math>
*#:よってこの矩形波のフーリエ展開は以下である。
*#:<math>f(x)= \sum_{n=1}^{\infty} \frac{8A}{(2n-1)\tau} \sin (2n-1)\omega x \left(= \sum_{n:\mathrm{odd}.} \frac{8A}{n\tau} \sin n\omega x \right)</math>
*#
*#:<math>f(x)</math>は奇関数であるが、<math>f(x+\frac{T}{2})=-f(x)</math>を満たすので<math>\frac{T}{2}</math>-奇対称関数でもあり、<math>a_0=a_n=b_{2n-1}=0</math>。
*#:<math>b_{2n-1}=\frac{2}{T}\int_0^t f(t) \sin(2n-1)\omega x dx</math>
*#:<math>= \frac{8}{T} \int_0^{\frac{T}{4}} \frac{4A}{T}x\sin (2n-1)\omega x dx</math>
*#:<math>=\frac{32A}{(2n-1)^2\omega^2T^2} [ -(2n-1)\omega x \cos(2n-1)\omega x+\sin(2n-1)\omega x ]_0^\frac{T}{4}</math>
*#:<math>=\frac{32A(-1)^n}{(2n-1)^2\tau^2}</math>
*#:よって、この三角波のフーリエ展開は以下である。
*#:<math>f(x)=\sum_{n=1}^\infty \frac{(-1)^n32A}{(2n-1)^2\tau^2} \sin(2n-1)\omega x</math>
*#:<br>
*#
*#:<math>f(x)</math>は周期延長すると奇関数とみることができなくなるので、<math>a_n=0</math>のみ成り立つ。
*#:<math>f(x)</math>は全区間に拡張しても特異点を持たないので、積分区間にTを含んでも通常の積分のように計算してよい。
*#:<math>a_0=\frac{2}{T} \int_0^T \frac{A}{T}x = \frac{A}{T^2} [ x^2 ]_0^T=A</math>
*#:<math>b_n=\frac{2}{T} \int_0^T \frac{A}{T}x\sin n\omega x dx = \frac{2A}{n^2\omega^2T^2} [ -n\omega x\cos n\omega x + \sin n\omega x ]_0^T </math>
*#:<math>=\frac{2A}{n^2\tau^2}\cdot(-n\tau)</math>
*#:<math>=-\frac{2A}{n\tau}</math>
*#:よって、この鋸歯波のフーリエ展開は以下である。
*#:<math>f(x)=\frac{A}{2}-\sum_{n=1}^\infty \frac{2A}{n\tau} \sin n\omega x</math>
*#:<br>
*#
*#:<math>a_0=\frac{2}{T} \left( \int_0^\frac{T}{2} A\sin\omega x dx + \int_{\frac{T}{2}}^T 0 dx \right)=\frac{2A}{T\omega} \left( [-\cos\omega x]_0^\frac{T}{2} \right)=\frac{2A}{\tau}</math>
*#:<math>a_n=\frac{2}{T} \left( \int_0^\frac{T}{2} A\sin \omega x \cos n\omega x dx + \int_{\frac{T}{2}}^T 0\cos n\omega x dx \right)</math>
*#:<math>=\frac{2A}{T} \int_0^\frac{T}{2} \{ \sin(n+1)\omega x - \sin(n-1)\omega x \}dx</math>(<math>\because</math>積和の公式)
*#:<math>=\frac{2A}{\tau} \left( \left[ \frac{\cos(n+1)\omega x}{n+1} \right]_{\frac{T}{2}}^0+\left[ \frac{\cos(n-1)\omega x}{n-1} \right]_0^\frac{T}{2} \right)</math>
*#:<math>=\begin{cases} 0 \; (n:\mathrm{odd}.) \\ -\frac{4A}{\tau(n+1)(n-1)} \; (n:\mathrm{even}.) \end{cases}</math>
*#:<math>b_n=\frac{2}{T} \left( \int_0^\frac{T}{2} A\sin \omega x \sin n\omega x dx + \int_{\frac{T}{2}}^T 0\sin n\omega x dx \right)</math>
*#:<math>=\frac{A}{T} \int_0^\frac{T}{2} \{ \cos(n-1)\omega x - \cos(n+1)\omega x \}dx</math>(<math>\because</math>積和の公式)
*#:<math>n\neq1</math>のとき
*#:<math>b_n=0</math>
*#:<math>b_1=\frac{2A}{T}\int_0^\frac{T}{2} \frac{1-\cos2\omega x}{2} dx</math>
*#:<math>=\frac{2A}{T}\int_0^\frac{T}{2} \sin^2 \omega x dx</math>
*#:<math>=\frac{A}{2T} \left[ 2x - \frac{1}{\omega} \sin 2\omega x \right]_0^\frac{T}{2}</math>
*#:<math>=\frac{A}{2}</math>
*#:よって、この半波整流波のフーリエ展開は以下である。
*#:<math>f(x)=\frac{2A}{\tau}+\frac{A}{2}\sin\omega x - \sum_{n=1}^\infty \frac{4A\cos2n\omega x}{(4n^2-1)\tau}</math>
*#:<br>
*#
*#:<math>f(x)</math>は偶関数なので<math>b_n=0</math>。
*#:<math>a_0=\frac{2}{T} \int_0^T \frac{4A}{T^2} \left( x-\frac{T}{2} \right)^2 dx</math>
*#:<math>=\frac{8A}{T^3} \int_0^T \left( x^2-Tx+\frac{T^2}{4} \right) dx</math>
*#:<math>=\frac{8A}{T^3} \left[ \frac{x^3}{3} - \frac{T}{2}x^2 + \frac{T^2}{4}x \right]_0^T</math>
*#:<math>\frac{8A}{T^3} \cdot \frac{T^3}{12}(7-6)</math>
*#:<math>=\frac{2A}{3}</math>
*#:<math>a_n=\frac{2}{T} \int_0^T \frac{4A}{T^2} \left( x-\frac{T}{2} \right)^2 \cos n\omega x dx</math>
*#:<math>=\frac{8A}{T^3} \int_0^T \left( x^2\cos n\omega x -Tx\cos n\omega x +\frac{T^2}{4}\cos n\omega x \right) dx</math>
*#:<math>=\frac{8A}{n^2\omega^2 T^3} \left[ \left\{ n\omega \left( x^2 -Tx + \frac{T^2}{4} \right) - \frac{1}{n\omega} \right\} \sin n\omega x + (2x+1) \cos n\omega x \right]_0^T</math>
*#:<math>=\frac{8A}{n^2\omega^2 T^3} \cdot 2T</math>
*#:<math>=\frac{16A}{n^2\tau^2}</math>
*#:よって、この平均値反転全波整流波のフーリエ展開は以下である。
*#:<math>f(x)=\frac{A}{3}+\sum_{n=1}^\infty \frac{16A}{n^2\tau^2} \cos n\omega x</math>
高校数学で三角関数の積和公式を習ったときは「何に使うのかわからん」と思った人もいるであろう。実は、このようにフーリエ係数(すなわち積分)の計算を簡略化するのに役立つのである。
なお、テイラー展開とは異なり、'''展開後の無限級数が元の関数に完全に一致するわけではない'''。
*不連続点近傍ではフーリエ級数が振動して元の関数に一致しない('''ギブズ現象''')
*ディリクレ条件などの不満足によって元の関数と異なる挙動を示す
*一葉収束せず各点収束するので局所的に摺れる
*関数の定義域が二乗可積分である場合各点収束せず二乗平均収束するので摺れる
==収束条件==
フーリエ級数の収束条件に関する議論は、それまでは非常に曖昧だった数学的概念を厳密に定義し直そう、という運動の契機となった。
ある区間毎に別々に定義された関数を'''区分的に定義された関数'''という。
次を満足する関数を'''区分的に連続な関数'''という。
:不連続点が高々有限個
:任意点の右側極限・左側極限ともに収束する(発散する点が存在しない)
区分的に定義された関数が任意点に於いて右微分・左微分ともに収束するとき、'''区分的に滑らかな関数'''という。
区分的に滑らかならば区分的に連続であり、逆は一般には成り立たない。
'''フーリエ級数の収束定理'''
<math>f(x)</math>が区分的に滑らかであるとき、<math>f(x)</math>に対応するn項フーリエ級数<math>S_n (x)</math>の極限は各点収束し、以下が成り立つ。
<math>\lim_{n \to \infty} (x) = \begin{cases} f(x) \quad (x\text{が 連 続 点 で あ る と き}) \\ \frac{1}{2} \left\{ \lim\limits_{t \to x^-} f(t) + \lim\limits_{u \to x^+} f(u) \right\} \quad (x\text{が 不 連 続 点 で あ る と き}) \end{cases}</math>
*証明
(執筆中)
==複素フーリエ展開==
==参考文献==
鳥居粛, 藤川英司, 伊藤泰郎『電気数学』森北出版 2003年
[[Category:解析学]]
[[Category:フーリエ解析]]
hgjzzikhpe8ht5g5qthkjktibwmqcm2
利用者・トーク:Tkkn46tkkn46
3
47105
299650
295402
2026-05-19T14:55:18Z
Tomzo
248
/* ご注意 */ 新しい節
299650
wikitext
text/x-wiki
== 目次の条文の範囲について ==
本件は、章・節・款ごとに範囲がわかるよう確認しながら作成しています。法文と合わせるつもりはありません。--[[利用者:Tomzo|Tomzo]] ([[利用者・トーク:Tomzo|トーク]]) 2026年1月10日 (土) 17:52 (UTC)
:単純な、記号返還程度は目を瞑りますが、本文編集に関しては編集意図がある場合もあるため、法律学(他の分野も同様)に知見に基づかない編集は遠慮していただけませんか(「これは説明の箇所なので見出しとは異なります。内容を吟味せず専修するのはやめてください。」の「専修」は「編集」の誤記)。--[[利用者:Tomzo|Tomzo]] ([[利用者・トーク:Tomzo|トーク]]) 2026年1月17日 (土) 03:56 (UTC)
== コンメンタールの作成について ==
多分よくお分かりになっていないから書きます。
[[Wikibooks:ウィキプロジェクト_法学_コンメンタール執筆ガイドライン#大前提]]をご覧ください。まず、「コンメンタール」というのは、法令の逐条解説を言います。逐条解説であればウィキブックスの役割である教科書の範疇です。法の条文だけ書いたものはコンメンタールとは言わず、やるのであれば、ウィキソースの範疇となります。
ここで、「でも、『解説のない』ページがほとんどではないか」と反論されるかもしれません。
これには事情があって、過去、2名のユーザーによる濫造がありました。その都度注意はしていたのですが、なかなか止めない。それでも、最初のうちは基礎的な法律(法令には重要な基礎法令とそうでもないトリビアなものの段階的差があります。法律を扱う者には常識ですね)に関しての作成であったので、「まあ、法学の教科書ということであれば、どうせ作ることにはなるのだから、『作成依頼』のつもりで残しておくか、自分を含め誰かが解説を書いていくだろう」ということで残してはいましたが、それから、あまりにもトリビアな法令のまで作成することが多くなったため、削除・作成ブロックを含めた警告までしています(<span id="これら"/>[[利用者・トーク:Preppedia#コンメンタールについて]]、[[利用者・トーク:Gggofuku#コンメンタールについて]]、[[利用者・トーク:Gggofuku#解説を書いてください]] 等参照)。
ではさらに、「でも、Tomzoも『解説』のない記事を書いているではないか」と反論されるかもしれません。
これは、どういうことかと言うと、昨年5月ころまでは解説の補充に努めておりましたがその頃、4件ほど重要な依頼が来ていたのをきっかけに「[[Wikibooks:削除依頼]]」に関する懸案を一斉に片付けようと思い立ち、見直していたところ、上の2名のユーザー作成に対する[[Wikibooks:削除依頼#複数の非接続コンメンタール]]と出くわし、結果500個以上の記事を削除することとなりました。その際、目次に対して、コンメンタールの条文が1個でも作成されているものは削除せず残しました。併せて[[Wikibooks:ウィキプロジェクト 法学]]を立ち上げ、[[Wikibooks:ウィキプロジェクト 法学 コンメンタール執筆ガイドライン|コンメンタール執筆ガイドライン]]を作成しました。ここに、以下の文言を挿入しています。
:「○○法第xx条」というページは、「コンメンタール○○法」という目次のページからリンクされます。したがって、「コンメンタール○○法」という目次ページは、ページ「○○法第xx条」に先行して、またはページ「○○法第xx条」が作成されたら速やかに作成される必要があります。目次ページの作成がない場合、条文のページはテスト投稿として削除される場合があります。
:*目次ページ「コンメンタール○○法」だけが、大量に作成され、その後、条文のページが全く作成されず放置されたという事態がありました。これは、上に記した「逐条解説を作る」という目的からかなり離れた行為と考えます。これが、繰り返されないよう、'''目次ページ「コンメンタール○○法」が作成された後、遅滞なく5箇条程度(「目的」や「定義」を記した第1条や第2条は2箇条分とカウントしても良いでしょう)の作成がない場合、テスト投稿とみなしたいと思います(本プロジェクト立ち上げ前のものは残します)。'''
これは、最低限5条は書いて、「コンメンタールとして育てる意思は見せろ」ということです。ということで、1条でも書いていれば残した手前、せめて、この後のため、残した目次ページで、5条程度以上になるよう追加作業をしています。また、既存のページでも『執筆依頼』としてすら出来が悪そうなもの(フォーマットに満たないもの)を虱潰しにチェックして、せめての『執筆依頼』レベルに引き上げているところです(これまで約半年)。また、基礎的な法律(憲・民・刑・商・民訴・刑訴)については、欠けているのも教科書として困るのでこれは別途補充しました。以上が、私の「『解説』のない記事を」書くことに対する理由です。
ということで、改めて申し上げます。コンメンタール記事には必ず解説をつけるようにしてください。今現在、解説のない記事は大量にありますから、これ以上、トリビアな条文を増やすことよりも、現状の記事の解説を入れていくことの方が、はるかにウィキブックスへの貢献となります。。--[[利用者:Tomzo|Tomzo]] ([[利用者・トーク:Tomzo|トーク]]) 2026年1月20日 (火) 08:27 (UTC)
:多分あなたは、法律に関して正当な教育を受けたことがないのだと思いますが、そのような方がコンメンタールの本文に対して、編集をするのはやめていただけませんか。間違った編集をしていないか、全件チェックするのは大変なので。教科書作りは、自分の知っている領域で展開するものです。--[[利用者:Tomzo|Tomzo]] ([[利用者・トーク:Tomzo|トーク]]) 2026年2月1日 (日) 07:51 (UTC)
::作成にあたって同じ間違いが繰り返されています。私が行った修正を確認し、間違いを繰り返さないようにしてください。--[[利用者:Tomzo|Tomzo]] ([[利用者・トーク:Tomzo|トーク]]) 2026年2月22日 (日) 07:27 (UTC)
:::[[Wikibooks:ウィキプロジェクト 法学 コンメンタール執筆ガイドライン|コンメンタール執筆ガイドライン]]にあるとおり、号数のレベルまでは番号付きリストを使ってください。--[[利用者:Tomzo|Tomzo]] ([[利用者・トーク:Tomzo|トーク]]) 2026年2月22日 (日) 16:30 (UTC)
::::なぜ、そのような編集がなされているかわからないまま、編集するのはやめてください。差し戻しの理由などがわからない場合は、[[Wikibooks・トーク:ウィキプロジェクト 法学 コンメンタール執筆ガイドライン]]などで、質問や提案を行ってください。なお、これは、コミュニケーションの要請です。--[[利用者:Tomzo|Tomzo]] ([[利用者・トーク:Tomzo|トーク]]) 2026年2月23日 (月) 15:46 (UTC)
== マンションの再生等の円滑化に関する法律について ==
[[マンションの再生等の円滑化に関する法律]]は[[マンションの建替え等の円滑化に関する法律]]の改正であって新法ではありません。他のコンメンタール同様改正の手法により対応してください。新旧対応表は[https://www.moj.go.jp/content/001443228.pdf ここ]にあります。--[[利用者:Tomzo|Tomzo]] ([[利用者・トーク:Tomzo|トーク]]) 2026年2月4日 (水) 06:33 (UTC)
:マンションの再生等の円滑化に関する法律 を作成後
:マンションの建替え等の円滑化に関する法律 の削除をお願いします。←←←
:名称、内容が変わっていて、対応が困難です。
:検討よろしくお願いします。--[[利用者:Tkkn46tkkn46|Tkkn46tkkn46]] ([[利用者・トーク:Tkkn46tkkn46|トーク]]) 2026年2月4日 (水) 06:39 (UTC)
::法改正がなされた場合の編集は、例えば、[[:カテゴリ:民事訴訟法 2022年改正]]をご覧ください。
::とは言え、多分、あなたは法律に関して一定の修養等の経験はないものと理解します。そういう方が法律の教科書の作成に参加するのは無理ですし、それに携わっている編集者にとっては、チェック等の労を要しかなり迷惑です。教科書作りに参加するのであれば、自分が取得した、または、きちんとした教育プロセス(AI検索などという安易な方法ではなく、なお、AI検索も正しい質問を入れないと正しい答えは期待できません。GIGOというやつです)において取得途中をまとめる過程の知識を反映すべきです。
::上記の件に関しては、当初作成者による削除依頼ということで一旦削除したいと思います。--[[利用者:Tomzo|Tomzo]] ([[利用者・トーク:Tomzo|トーク]]) 2026年2月4日 (水) 06:51 (UTC)
== ウィキブックスへの参加について ==
あなたが、「[[トーク:量子力学#【要望】素人です。]]」に書かれた以下のことについて。
:あなたは○○に関して一定の修養等の経験はないものと理解します。そういう方が○○の教科書の作成に参加するのは無理ですし、それに携わっている編集者にとっては、チェック等の労を要しかなり迷惑です。教科書作りに参加するのであれば、自分が取得した、または、きちんとした教育プロセス(AI検索などという安易な方法ではなく、...
わかっているじゃないですか。まさにそのとおりなのです。
WMPは、記法等に特徴があって、その記法ができればページが「Wiki」らしくなり、あたかも参加できているという満足感を与えてしまうという傾向があり、フォーマットに異常にこだわる編集者が出現するという傾向があります。これは特に、「[[Wikibooks:児童・生徒の方々へ]]」の対象者(中でも中学生)に顕著に現れます、そうでなくてもADHD的な傾向を持った人に多いようです。それでも、ウィキペディアの場合は、一般の投稿者の数が圧倒的であり、そういう編集のみの編集者はあまり目立ちませんし、管理者も多いので適切に対応できているのでしょう。一方、本ウィキブックスは、活発な編集者も多くなく、また、管理者は実質私一人の状態となっているので、そのような、編集は目立つ反面、統制が十分に取れません。
ウィキペディアをはじめとしてWMPは、みんなが知識を出し合って共有しようというプロジェクトです。まず、知識があり、それをWikiの記法(MediaWiki)によって書き表そうというものです。WMPに参加しようとする知識ある人のほとんどは、MediaWikiを踏まえた上で、伝えたい知識をどういう表現で伝えれば適切に伝えられるかを考えながら、プロジェクトに参加しています。したがって、知識ない編集者が、その記法に対して無遠慮な編集をすると、本来伝える知識があり伝えたかった編集者の意図を損なう可能性があります。この点が、知識・知見のない編集者が不用意に編集に参加することを懸念する最大の点です。
「[[トーク:量子力学#【要望】素人です。]]」における、[[利用者:Nermer314|Nermer314]]さんへのリクエストは、「小学生にでも量子力学がわかるように記述しろ」と言っているようにしか見えず「小中学校で理科を、高校で物理を学んでから来い」としか言いようがないかなと思います。また、コンメンタールの編集は上に書いたとおり、「解説」なしでの新規作成は原則認めるつもりはありませんし、あなたが、無定見に追加している「参照条文」の欄は、「解説」あっての「参照」であるので、今後の編集は遠慮いただきたいと思います。引き続き、同様の編集をやるようであれば、「ウィキブックスとは何か」をご理解いただくために、編集を一旦止めることも検討いたします。また、このように、WMPは編集者間でのコミュニケーションにより、プロジェクトが進められていますが、[[Wikibooks・トーク:ウィキプロジェクト 法学 コンメンタール執筆ガイドライン]]その他の編集を見る限りにおいて、あなたが、論旨(主張は何か、その主張の根拠となっている事項は何か)を明確に論理立てて、記述する能力に著しく欠けている印象は否めません。その辺りを十分にご配慮の上、参加していただくことを希望します。
再度繰り返しますが、ウィキブックスは教科書、すなわち、知識体系を提供する場です。あなたの「知識」を提供をお待ちしております。--[[利用者:Tomzo|Tomzo]] ([[利用者・トーク:Tomzo|トーク]]) 2026年3月6日 (金) 09:42 (UTC)
:知らない分野への投稿はやめてください。これは、投稿態度に対する警告と理解してください。--[[利用者:Tomzo|Tomzo]] ([[利用者・トーク:Tomzo|トーク]]) 2026年3月11日 (水) 13:01 (UTC)
== ご注意 ==
現在のウィキブックスへの投稿について、改めて、いくつかお願いがあります。
まず、本文記事への投稿ですが、法律関連での投稿でもお話ししたとおり、本文の構成や文書表現なども執筆者の考えに基づいたものである可能性が非常に高いです。これを、そのテーマについて伝達するには、さらに良い構成や表現があると思って書き換えられるということは、そのページの編集に参加できるだけの知識を持ち合わせているということになります。残念ながら、今までの投稿を見て、あなたにそのような知識があるとは思えません。編集の参加に当たっては、コンメンタールであれば解説を要するのと同様、数学の記事であれば、数式の解説や証明の記載といったものが必要です。編集内容に関して「参加のための参加」は、好ましくないので、基本的にあなたが書ける分野(何らかの知識を有している分野)であるということを示していただかない限り差し戻さざるを得ません。また、差し戻しにも関わらず同様の投稿が続くようであれば投稿を制限する場合もあります。
次に、各記事のトークページについてですが、トークページは、記事の具体的な改善提案や、その合意形成のための議論を行う場です。そのため、まず、その改善が必要であることを他の参加者が理解できるように(=「論理的に」)示す必要があり、そうでなければ、単なる「テスト投稿」に過ぎません。また、同一内容の繰り返しや、抽象的な意見・解釈の投稿が続く場合、議論の可読性や他の利用者の参加に支障が出ることがあります。
なお、あなたのご指摘の多くである言葉遣い・仮名漢字の不統一は、ご指摘のページで伝えたいことを伝えるのに支障を生じていません。数式を見直すなど、そのページが伝えたいことに関して加筆等があり、そのついでに、そのような編集をすることは無益とまでは言えませんが、そのような編集にこだわることはあまり生産的とは言えません。
今後は、
・各投稿は具体的な改善提案に絞るり、それを他の参加者が理解できる言葉で記述すること
・同一趣旨の繰り返し投稿は行わないこと
・投稿は簡潔にまとめること
を意識してください。
また、まとまった考えや疑問点がある場合は、ここのノートにだらだらと書くのではなく、まず、ご自身の利用者トークページ等に整理したうえで提示するようお願いします。
以上は、編集態度に対するご注意ですので、返答は不要です。繰り返しますが、あなたが書ける分野について、読者にわかるよう論理的に編集することについては歓迎こそすれ文句を言うつもりはありません。--[[利用者:Tomzo|Tomzo]] ([[利用者・トーク:Tomzo|トーク]]) 2026年5月19日 (火) 14:55 (UTC)
94mtqt6eo3omyhqjp4faz03cj5nbgsl
利用者:Tkkn46tkkn46
2
48053
299690
299595
2026-05-20T11:38:44Z
Tkkn46tkkn46
89925
/* 自然科学(4類) */ 420物理学に追加
299690
wikitext
text/x-wiki
== 関連項目 ==
*[[Wikibooks:日本十進分類法]]
*[[:Category:日本十進分類法|カテゴリ:日本十進分類法]]
*[[w:日本十進分類法]]
== 総記(0類) ==
== 哲学(1類) ==
== 歴史(2類) ==
== 社会科学(3類) ==
<div style="column-count:2; column-gap:24px;">
* 300 社会科学
* 310 政治
** 311 政治学、政治思想
** 312 政治史・事情
** 313 国家の形態、政治体制
** 314 議会
** 315 政党、政治結社
** 316 国家と個人・宗教・民族
** 317 行政
** 318 地方自治、地方行政
** 319 外交、国際問題
* 320 法律
** 321 法学
** 322 法制史
** 323 憲法
** 324 民法、民事法
** 325 商法、商事法
** 326 刑法、刑事法
** 327 司法、訴訟手続法
** 328 諸法
** 329 国際法
* 330 経済
** 331 経済学、経済思想
** 332 経済史・事情、経済体制
** 333 経済政策、国際経済
** 334 人口、土地、資源
** 335 企業、経営
** 336 経営管理
** 337 貨幣、通貨
** 338 金融、銀行、信託
** 339 保険
* 340 財政
** 341 財政学、財政思想
** 342 財政史・事情
** 343 財政政策、財務行政
** 344 予算、決算
** 345 租税
** 346
** 347 公債、国債
** 348 専売、国有財産
** 349 地方財政
* 350 統計
* 360 社会
* 370 教育
** 371 教育学、教育思想
** 372 教育史・事情
** 373 教育政策、教育制度、教育行財政
** 374 学校経営・管理、学校保健
** 375 教育課程、学習指導、教科別教育
** 376 幼児・初等・中等教育
** 377 大学、高等・専門教育、学術行政
*** [[高等学校数学]]
** 378 障害児教育(特別支援教育)
** 379 社会教育
* 380 風俗習慣、民俗学、民族学
* 390 国防、軍事
</div>
== 自然科学(4類) ==
<div style="column-count:2; column-gap:24px;">
* 400 自然科学
* 410 数学
::初等数学シリーズ
::*[[初等数学]]
::*[[初等幾何学]]
::*[[初等整数論]]
::*[[初等数学索引]]
::*[[初等数学用語索引]]
::*[[初等数学記号集]]
::*[[初等数学公式集]]
:::*[[初等数学公式集/初等幾何]]
::::*[[初等数学公式集/初等幾何/平面図形]]
::::*[[初等数学公式集/初等幾何/表面積]]
::::*[[初等数学公式集/初等幾何/体積]]
:::*[[初等数学公式集/解析幾何]]
::::*[[初等数学公式集/解析幾何/証明]]
::::*[[初等数学公式集/解析幾何/コラム]]
:::::(参考)とも言う。
::中等数学シリーズ
::*[[中等数学]]
::高等数学シリーズ
::*[[高等数学]](大学以上の課程で取り扱う数学)
** 411 代数学
** 412 数論(整数論)
** 413 解析学
** 414 幾何学
** 415 位相数学
** 416
** 417 確率論、数理統計学
** 418 計算法
** 419 和算、中国算法
* 420 物理学
::初等物理学シリーズ
::*[[初等物理学]]
::*[[初等物理学記号集]]
::*[[初等物理学公式集]]
::*[[初等物理学公式集/初等力学]]
** 421 理論物理学
** 422
** 423 力学
** 424 振動学、音響学
** 425 光学
** 426 熱学
** 427 電磁気学
** 428 物性物理学
** 429 原子物理学
* 430 化学
* 440 天文学、宇宙科学
* 450 地球科学、地学
* 460 生物科学、一般生物学
* 470 植物学
* 480 動物学
* 490 医学
</div>
== 技術(5類) ==
== 産業(6類) ==
== 芸術(7類) ==
== 言語(8類) ==
== 文学(9類) ==
<div style="column-count:2; column-gap:24px;">
* [[:Category:日本十進分類法/900|900 文学]]
** 901 文学理論・作法
** 902 文学史、文学思想史
** 903 参考図書(レファレンスブック)
** 904 論文集、評論集、講演集
** 905 逐次刊行物
** 906 団体
** 907 研究法、指導法、文学教育
** 908 叢書、全集、選集
** 909 児童文学研究
* 910 日本文学
* 920 中国文学
* 929 その他の東洋文学
* 930 英米文学
* 940 ドイツ文学
* 949 その他のゲルマン文学
* 950 フランス文学
* 959 プロバンス文学
* 960 スペイン文学
* 969 ポルトガル文学
* 970 イタリア文学
* 979 その他のロマンス文学
* 980 ロシア・ソビエト文学
* 989 その他のスラブ文学
* 990 その他の諸言語文学
** 991 ギリシア文学
** 992 [[:Category:日本十進分類法/992|ラテン文学]]
** 993 その他のヨーロッパ文学
** 994 アフリカ文学
** 995 アメリカ諸言語の文学 <span style="background-color:#dde;">※10版3刷での変更</span>
** 996
** 997 オーストラリア諸言語の文学 <span style="background-color:#dde;">※10版3刷での変更</span>
** 998
** 999 国際語(人工語)による文学
</div>
jpz3osskpt119b40fnowfa9roa70ldf
299692
299690
2026-05-20T11:49:44Z
Tkkn46tkkn46
89925
/* 社会科学(3類) */ 高校物理の追加
299692
wikitext
text/x-wiki
== 関連項目 ==
*[[Wikibooks:日本十進分類法]]
*[[:Category:日本十進分類法|カテゴリ:日本十進分類法]]
*[[w:日本十進分類法]]
== 総記(0類) ==
== 哲学(1類) ==
== 歴史(2類) ==
== 社会科学(3類) ==
<div style="column-count:2; column-gap:24px;">
* 300 社会科学
* 310 政治
** 311 政治学、政治思想
** 312 政治史・事情
** 313 国家の形態、政治体制
** 314 議会
** 315 政党、政治結社
** 316 国家と個人・宗教・民族
** 317 行政
** 318 地方自治、地方行政
** 319 外交、国際問題
* 320 法律
** 321 法学
** 322 法制史
** 323 憲法
** 324 民法、民事法
** 325 商法、商事法
** 326 刑法、刑事法
** 327 司法、訴訟手続法
** 328 諸法
** 329 国際法
* 330 経済
** 331 経済学、経済思想
** 332 経済史・事情、経済体制
** 333 経済政策、国際経済
** 334 人口、土地、資源
** 335 企業、経営
** 336 経営管理
** 337 貨幣、通貨
** 338 金融、銀行、信託
** 339 保険
* 340 財政
** 341 財政学、財政思想
** 342 財政史・事情
** 343 財政政策、財務行政
** 344 予算、決算
** 345 租税
** 346
** 347 公債、国債
** 348 専売、国有財産
** 349 地方財政
* 350 統計
* 360 社会
* 370 教育
** 371 教育学、教育思想
** 372 教育史・事情
** 373 教育政策、教育制度、教育行財政
** 374 学校経営・管理、学校保健
** 375 教育課程、学習指導、教科別教育
** 376 幼児・初等・中等教育
** 377 大学、高等・専門教育、学術行政
*** [[高等学校数学]]
***[[高等学校物理]] *スペースなしの物理
****[[高等学校物理/力学]]
***[[高等学校 物理]]*スペースありの物理
****[[高校物理 波]]*高校物理
** 378 障害児教育(特別支援教育)
** 379 社会教育
* 380 風俗習慣、民俗学、民族学
* 390 国防、軍事
</div>
== 自然科学(4類) ==
<div style="column-count:2; column-gap:24px;">
* 400 自然科学
* 410 数学
::初等数学シリーズ
::*[[初等数学]]
::*[[初等幾何学]]
::*[[初等整数論]]
::*[[初等数学索引]]
::*[[初等数学用語索引]]
::*[[初等数学記号集]]
::*[[初等数学公式集]]
:::*[[初等数学公式集/初等幾何]]
::::*[[初等数学公式集/初等幾何/平面図形]]
::::*[[初等数学公式集/初等幾何/表面積]]
::::*[[初等数学公式集/初等幾何/体積]]
:::*[[初等数学公式集/解析幾何]]
::::*[[初等数学公式集/解析幾何/証明]]
::::*[[初等数学公式集/解析幾何/コラム]]
:::::(参考)とも言う。
::中等数学シリーズ
::*[[中等数学]]
::高等数学シリーズ
::*[[高等数学]](大学以上の課程で取り扱う数学)
** 411 代数学
** 412 数論(整数論)
** 413 解析学
** 414 幾何学
** 415 位相数学
** 416
** 417 確率論、数理統計学
** 418 計算法
** 419 和算、中国算法
* 420 物理学
::初等物理学シリーズ
::*[[初等物理学]]
::*[[初等物理学記号集]]
::*[[初等物理学公式集]]
::*[[初等物理学公式集/初等力学]]
** 421 理論物理学
** 422
** 423 力学
** 424 振動学、音響学
** 425 光学
** 426 熱学
** 427 電磁気学
** 428 物性物理学
** 429 原子物理学
* 430 化学
* 440 天文学、宇宙科学
* 450 地球科学、地学
* 460 生物科学、一般生物学
* 470 植物学
* 480 動物学
* 490 医学
</div>
== 技術(5類) ==
== 産業(6類) ==
== 芸術(7類) ==
== 言語(8類) ==
== 文学(9類) ==
<div style="column-count:2; column-gap:24px;">
* [[:Category:日本十進分類法/900|900 文学]]
** 901 文学理論・作法
** 902 文学史、文学思想史
** 903 参考図書(レファレンスブック)
** 904 論文集、評論集、講演集
** 905 逐次刊行物
** 906 団体
** 907 研究法、指導法、文学教育
** 908 叢書、全集、選集
** 909 児童文学研究
* 910 日本文学
* 920 中国文学
* 929 その他の東洋文学
* 930 英米文学
* 940 ドイツ文学
* 949 その他のゲルマン文学
* 950 フランス文学
* 959 プロバンス文学
* 960 スペイン文学
* 969 ポルトガル文学
* 970 イタリア文学
* 979 その他のロマンス文学
* 980 ロシア・ソビエト文学
* 989 その他のスラブ文学
* 990 その他の諸言語文学
** 991 ギリシア文学
** 992 [[:Category:日本十進分類法/992|ラテン文学]]
** 993 その他のヨーロッパ文学
** 994 アフリカ文学
** 995 アメリカ諸言語の文学 <span style="background-color:#dde;">※10版3刷での変更</span>
** 996
** 997 オーストラリア諸言語の文学 <span style="background-color:#dde;">※10版3刷での変更</span>
** 998
** 999 国際語(人工語)による文学
</div>
g4gxgbfm5ct2crx16gq787jwku39j4d
カテゴリ:V
14
48101
299675
2026-05-20T00:34:51Z
~2026-30065-60
91535
/* */ +cat
299675
wikitext
text/x-wiki
[[category:プログラミング言語]]
soln8tgoq96j6q45zvoet9sljkax9ij
カテゴリ:Book:ChromeOS
14
48102
299680
2026-05-20T08:38:13Z
~2026-30228-88
91540
hd
299680
wikitext
text/x-wiki
78jekjkeji
6vh0y0p56s4nj01m26m8h1xesb20iuw
利用者:竹前海斗
2
48103
299691
2026-05-20T11:41:32Z
竹前海斗
91544
/* */
299691
wikitext
text/x-wiki
左:博多商人コイツミこと竹前海斗ファンクラブ会報の読者提供、右:時事通信
5bazk361nr60bwn4q9ofszywoyh23pm