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特殊相対性理論
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本項は特殊相対性理論の解説である。特殊相対論は電磁気学、相対論的量子力学、場の量子論、一般相対性理論など広範な物理学の基礎となる理論である。
== 原理 ==
;光速度不変の原理 :真空中の光の速度はどの慣性系から見ても一定である。
;特殊相対性原理 :どの慣性系でも物理法則は同じ形式で表される。
光速度不変の原理のいう慣性系とは、ニュートン力学における慣性系である。光速度不変の原理を支持する実験的証拠は、マイケルソン・モーリーの実験にある。特殊相対性原理は、ガリレイの相対性原理の拡張である。
== 世界間隔 ==
世界点 <math>t_1, x_1, y_1, z_1</math> で発された光が、世界点 <math>t_2, x_2, y_2, z_2</math> に光が到達したする。このとき、世界間隔を
:<math>s_{12}^2 = c^2(t_2-t_1)^2 -(x_2-x_1)^2 - (y_2-y_1)^2 - (z_2-z_1)^2</math>
と定義すると、<math>c^2(t_2-t_1)^2</math> と <math>(x_2-x_1)^2 + (y_2-y_1)^2 + (z_2-z_1)^2</math> はどちらも光の移動距離の二乗であるから、 <math>s_{12}^2 =0</math> となる。また、この現象を別の慣性系で観測してみよう。<math>t_1, x_1, y_1, z_1</math> に対応する座標を <math>t'_1, x'_1, y'_1, z'_1</math> とし、<math>t_2, x_2, y_2, z_2</math> に対応する座標を <math>t'_2, x'_2, y'_2, z'_2</math> とする。このとき、この慣性系における世界間隔は、
:<math>{s'}_{12}^2 = c^2(t'_2-t'_1)^2 - (x'_2-x'_1)^2 - (y'_2-y'_1)^2 - (z'_2-z'_1)^2</math>
となり、やはり光速度不変の原理より、<math>{s'}_{12}^2 = 0 </math> となる。
すなわち、一般に <math>s_{12}^2 = c^2(t_2-t_1)^2 -(x_2-x_1)^2 - (y_2-y_1)^2 - (z_2-z_1)^2</math> という量はある慣性系で<math>s_{12}^2 =0</math>ならば、他の慣性系でも<math>{s'}_{12}^2 = 0 </math>となる。それでは、世界間隔が0でないとき他の慣性系での世界間隔はどうなるだろうか。無限小だけ離れた世界点 <math>t, x, y, z</math> と <math>t+dt, x+dx, y+dy, z+dz</math> の間の世界間隔
:<math>ds^2 = c^2dt^2 - dx^2 - dy^2 - dz^2</math>
は、もちろん <math>ds^2 = 0</math> なら他の慣性系でも <math>ds'^2 = 0</math> となる。さらにこれらは同次の微小量だから、これらは比例の関係
:<math>ds^2 = ads'^2</math>
にある。<math>a </math> は時間と空間の一様性により、時間と座標に依存することができない。また、空間の等方性より、2つの慣性系の相対速度の方向にも依存しない。よって、<math>a </math>は慣性系の相対速度の大きさのみに依存する。
慣性系 <math>K,K_1,K_2</math>において、系 <math>K </math> から見た系 <math>K_1, K_2 </math> の相対速度の大きさを <math>V_1,V_2 </math> とし、系 <math>K_1 </math> から見た系 <math>K_2 </math> の相対速度の大きさを <math>V_{12} </math> とすると、
:<math>ds^2 = a(V_1)ds_1^2</math>
:<math>ds^2 = a(V_2)ds_2^2</math>
:<math>ds_1^2 = a(V_{12})ds_2^2 </math>
ここで、第一式と第二式より、
:<math>ds_1^2 = \frac{a(V_2)}{a(V_1)}ds_2^2 </math>
であるから、
:<math>\frac{a(V_2)}{a(V_1)} = a(V_{12}) </math>
右辺の <math>V_{12} </math> は <math>V_1,V_2 </math> のなす角に依存するけれど、左辺は <math>V_1,V_2 </math> のみに依存してその角に依存しない。よって<math>a(V_{12}) </math> は <math>V_{12} </math> にはよらない定数である。それを <math>a </math> とすると、<math>a = 1 </math> である。よって、
:<math>ds^2 = ds'^2</math>
である。これを積分して
:<math>s^2 = s'^2 </math>
を得る。すなわち、世界間隔は慣性系によらない量である。
[[ファイル:World_line_(ja).svg|サムネイル|306x306ピクセル]]
ある点を選んで、これを原点 <math>O</math> とする。原点から時空のいろいろな点の間の世界間隔 <math>s^2</math> を考えることができる。
光円錐の内部にある点は<math>s^2 > 0</math> である。<math>l</math> を原点からのユークリッド距離とする。このとき、<math>s^2 = c^2t^2 -l^2 > 0</math>であるから、<math>t = 0</math> すなわち原点と同じ時刻にあるような慣性系は存在しない。よって、光円錐の内部は原点と時間的な隔離にあるということが出来る。未来光円錐の内部を絶対的未来、過去光円錐の内部を絶対的過去という。
光円錐の外部は <math>s^2 < 0</math> である。同じように、<math>s^2 = c^2t^2 -l^2< 0</math>であるから、<math>l^2 = 0</math> すなわち原点と同じ座標にある慣性系は存在しない。よって、光円錐の外部は原点と空間的な隔離にあり、因果を持つ事が出来ない。
== ローレンツ変換 ==
慣性系 <math>K</math> の座標を <math>ct,x</math>、 慣性系 <math>K'</math> の座標を <math>ct',x'</math> とする。<math>K'</math> は <math>K</math> に対して速度 <math>V</math> の一様な並進運動をしているとき、2つの慣性系の間の対応を求めよう。また、<math>t = 0</math> で2つの慣性系の原点は一致していて、<math>x,x'</math> 軸は同じ方向とする。
まず、<math>ct',x'</math> は <math>ct,x</math> に関する一次関数でなくてはならない。なぜなら、二次以上の項が含まれていると、世界間隔が任意の慣性系で不変であるという条件 <math>c^2dt'^2 - dx'^2 = c^2dt^2 - dx^2</math> が満たされないからである。さらに、<math>t = 0</math> で2つの慣性系の原点は一致するという条件から、定数項は0となる。結局、 <math>ct',x'</math> は <math>ct,x</math> の一次の同次式ということになる。
また、<math>K'</math> 系で静止している物体(<math>x'=\mathrm{const}.</math>)を <math>K</math> 系で観察すると、 <math>x = Vt + \mathrm{const.}</math> すなわち、<math>x'</math> は <math>x - Vt</math> に比例して、その比例係数を <math>\gamma</math> とすると、 <math>x' = \gamma(x-Vt)</math> と表される。<math>ct' = \gamma(act + bx)</math> と置くと、
:<math>cdt' = \gamma(acdt + bdx),\, dx' = \gamma(-Vdt + dx).</math>
世界間隔が慣性系で不変であるから、
:<math>\begin{align}
c^2dt'^2 - dx'^2 &= \gamma^2\{(acdt+bdx)^2 - (-Vdt + dx)^2\} \\
&= \gamma^2 \{(a^2c^2-V^2)dt^2 + (b^2-1)dx^2 + 2(abc+V)dtdx\} \\
&= c^2dt^2 - dx^2
\end{align}</math>
すなわち、
:<math>\begin{cases} \gamma^2 (a^2c^2-V^2) = c^2 \\ \gamma^2 (b^2-1) = -1 \\ abc+V=0 \end{cases}</math>
第三式を第二式に代入して、 <math>\gamma^2\left(a^2 - \frac{V^2}{c^2}\right) = a^2. </math> これを第一式と比較して <math>a=1.</math> 第三式より <math>b = -\frac V c .</math> 第二式より <math>\gamma = \frac{1}{\sqrt{1-\frac{V^2}{c^2}}}.</math>ここで、<math>\gamma,a</math> は正に選ばなくてはいけない。<math>\gamma</math> が負であるとすれば <math>x' = \gamma(x-Vt)</math> から <math>x</math> と <math>x'</math> が逆向きとなってしまう。それは慣性系 <math>K,K'</math> の設定と異なる。<math>a</math> も同じ理由である。
<math>\beta = \frac V c</math> とすると、ローレンツ変換は
:<math>\begin{pmatrix} ct' \\ x' \end{pmatrix} = \gamma \begin{pmatrix} 1 & -\beta \\ -\beta & 1 \end{pmatrix}\begin{pmatrix} ct \\ x \end{pmatrix}</math>
と書かれる。
[[ファイル:Lt_hyperbolic_functions_2.svg|サムネイル|313x313ピクセル|ローレンツ変換の図示]]
ローレンツ変換をまた別の方法で求めよう。ローレンツ変換を原点からの世界間隔 <math>s^2 = (ct)^2 -x^2</math> が変化しないミンコフスキー空間の回転として表してみる。<math>s^2</math> を正として <math>t>0</math> の部分は、 <math>ct = s \cosh \theta, \, x = s \sinh \theta</math> と表すことが出来る。この点を回転角 <math>-\psi</math> だけ回転させた点 <math>ct',x'</math> は、
:<math>\begin{align} ct' &= s \cosh(\theta - \psi ) \\ &= s \cosh \theta \cosh \psi - s \sinh \theta \sinh \psi \\ &= ct \cosh \psi - x \sinh \psi \end{align}</math>
:<math>\begin{align} x' &= s \sinh(\theta - \psi ) \\ &= s \sinh \theta \cosh \psi - s \cosh \theta \sinh \psi \\ &= x \cosh \psi - ct \sinh \psi \end{align}</math>
という変換になる。
行列で表すと、<math>\begin{pmatrix} ct' \\ x' \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} \cosh \psi & -\sinh \psi \\ -\sinh \psi & \cosh \psi \end{pmatrix} \begin{pmatrix} ct \\ x \end{pmatrix}</math> である。前述の議論より、ローレンツ変換は線型変換だから、この変換が時空間全体に適用されると考えるべきである。実際に、<math>s^2</math> が正で <math>t<0</math> の部分については、<math>\theta \to \theta + \psi</math> として上の変換を得る。<math>s^2</math> が負で <math>x>0</math> の部分には、 <math>\theta \to \theta - \psi</math>、<math>x<0</math> の部分には、 <math>\theta \to \theta + \psi</math> と変換すれば良い。<math>K</math>系での原点 <math>x=0</math> は <math>K'</math> 系では、<math>ct' = ct \cosh \psi,\, x' = -ct \sinh \psi</math> である。二式を割って、<math>\tanh \psi =- \frac{x'}{ct'} = \frac V c.</math> ここで、<math>\frac{x'}{t'} </math> は <math>K'</math> での <math>K</math> の原点の速度に等しいから <math>-V</math> である。双曲線関数の公式 <math>1 - \tanh^2 \psi = \frac{1}{\cosh^2 \psi}</math>から、<math>\cosh \psi = \frac{1}{\sqrt{1-\frac{V^2}{c^2}}}, \, \sinh \psi = \tanh \psi \cosh \psi = \frac{\frac V c}{\sqrt{1-\frac{V^2}{c^2}}}</math> となる。 この結果は前述の結果と一致する。また、<math>\psi</math> はラピディティと呼ばれる。
=== 速度の合成則 ===
慣性系 <math>K</math> に対し、系 <math>K'</math> は速度 <math>V_1</math> の一様な並進運動を行っている。また、系 <math>K''</math> は <math>K'</math> に対して、速度 <math>V_2</math> の一様な並進運動を行っている。このとき、 <math>K''</math> は <math>K</math> から見てどのような運動を行っているだろうか?
<math>\tanh \theta_1 = \frac{V_1}{c},\, \tanh \theta_2 = \frac{V_2}{c}</math> としてラピディティを導入すると、
:<math>\begin{align}
\begin{pmatrix} ct'' \\ x'' \end{pmatrix} &=
\begin{pmatrix} \cosh \theta_2 & -\sinh \theta_2 \\ -\sinh \theta_2 & \cosh\theta_2 \end{pmatrix} \begin{pmatrix} ct' \\ x' \end{pmatrix} \\
&= \begin{pmatrix} \cosh \theta_2 & -\sinh \theta_2 \\ -\sinh \theta_2 & \cosh\theta_2 \end{pmatrix} \begin{pmatrix} \cosh \theta_1 & -\sinh \theta_1 \\ -\sinh \theta_1 & \cosh\theta_1 \end{pmatrix} \begin{pmatrix} ct \\ x \end{pmatrix} \\
&= \begin{pmatrix} \cosh (\theta_1 + \theta_2) & -\sinh (\theta_1 + \theta_2) \\ -\sinh (\theta_1 + \theta_2) & \cosh(\theta_1 + \theta_2) \end{pmatrix} \begin{pmatrix} ct \\ x \end{pmatrix}.
\end{align} </math>
すなわち、<math>K''</math> は <math>K</math> に対して、ラピディティ <math>\theta = \theta_1 + \theta_2</math> のローレンツ変換である。ニュートン力学では速度の合成は速度の和であったが、特殊相対論では速度の合成はラピディティの足し算であるということである。<math>K</math> から見た <math>K''</math> の速度 <math>\frac V c = \tanh \theta</math> を<math>V_1,V_2</math> で表すと、双曲線関数の加法定理 <math>\tanh (\theta_1 + \theta_2) = \frac{\tanh \theta_1 + \tanh \theta_2}{1 + \tanh \theta_1 \tanh \theta_2}</math> より、<math>\frac V c =\frac{\frac{V_1}{c} + \frac{V_2}{c}}{1 + \frac{V_1V_2}{c^2}}</math> である。この式は速度が光速度よりも十分小さいとする極限ではニュートン力学における通常の速度の合成に帰着する。実際、 <math>V = \frac{V_1 + V_2}{1 + \frac{V_1V_2}{c^2}}</math> から、<math>c \to \infty</math> とすると、<math>V = V_1 + V_2</math> を得る。ラピディティを経由せずに速度の合成則を求めることも可能である。詳しくは[[特殊相対論 速度の合成則|速度の合成則]]を参照すること。
== テンソル ==
<math>x^0 = ct, x^1 = x, x^2 = y, x^3 = z</math> とする。
ここでは、アインシュタインの規約を採用する。すなわち、項の中に上下に同じギリシャ文字の添字があるときは0から3までの和を取るものとする。例えば、
:<math>A^\mu A_\mu = A^0 A_0 + A^1 A_1 + A^2 A_2 + A^3 A_3</math>
あるいは、
:<math>\eta_{\mu\nu}dx^\mu dx^\nu = \eta_{00}dx^0 dx^0 + \eta_{01}dx^0 dx^1 + \eta_{02}dx^0 dx^2 + \cdots + \eta_{10}dx^1 dx^0 + \cdots + \eta_{20}dx^2 dx^0 + \cdots</math>
この式には、 <math>4 \times 4 = 16</math> 通りの項が現れる。
また、ラテン文字の添字のときは、 1から3までの和を取る。
=== ローレンツ変換 ===
微小世界間隔が
:<math> ds^2 = c^2dt^2 - dx^2 - dy^2 - dz^2 = \eta_{\mu\nu}dx^\mu dx^\nu</math>
となるように、 計量テンソル <math>\eta_{\mu\nu}</math> を定める。
すなわち、<math>\eta_{\mu\nu} = \begin{pmatrix} 1 & 0 & 0 & 0 \\ 0 & -1 & 0 & 0 \\ 0 & 0 & -1 & 0 \\ 0 & 0 & 0 & -1\end{pmatrix}= \operatorname{diag}(1,-1,-1,-1)</math> である。
また、 <math>\eta_{\mu\nu}</math> の逆行列を <math>\eta^{\mu\nu} = \operatorname{diag}(1,-1,-1,-1)</math> とする。
ローレンツ変換は線形変換であるから、行列 <math>\Lambda^\mu{}_\nu</math> を使って、
:<math>x'^\mu = \Lambda^\mu{}_ \nu x^\nu</math>
と書ける。この変換がローレンツ変換であるためには、世界間隔を不変に保つこと、すなわち、
:<math>ds'^2 = \eta_{\mu\nu}dx'^\mu dx'^\nu =ds^2 = \eta_{\mu\nu} dx^\mu dx^\nu</math>
でなくてはならない。
:<math>\eta_{\mu\nu}dx'^\mu dx'^\nu = \eta_{\mu\nu}\Lambda^\mu{}_\lambda dx^\lambda \Lambda^\mu{}_\sigma dx^\sigma</math>
であるから、
:<math>\eta_{\mu\nu}\Lambda^\mu{}_\lambda \Lambda^\mu{}_\sigma = \eta_{\lambda \sigma}</math>
がローレンツ変換である条件である。
行列 <math>\Lambda^\mu{}_\nu</math> の逆行列を <math>\Lambda_{\mu}{}^{\nu}</math> とすると、
:<math>\Lambda_{\mu}{}^{\nu} = \eta_{\mu\alpha}\Lambda^{\alpha}{}_{\beta}\eta^{\beta\nu}</math>
で与えられる。
=== 四元ベクトル ===
ローレンツ変換によって、座標の変換
:<math>x'^\mu = \Lambda^\mu{}_ \nu x^\nu</math>
と同じ変換をする四成分 <math>A^\mu</math> を反変ベクトルという。
すなわち反変ベクトルは
:<math>A'^\mu = \Lambda^\mu{}_ \nu A^\nu</math>
と変換する。
また、共変ベクトル <math>A_ \mu</math>を
:<math>A_0 = A^0,A_1 = -A^1,A_2 = -A^2,A_3 = -A^3</math>
あるいは、<math>A_ \mu = \eta_{\mu \nu} A^ \nu</math> によって定義する。
:<math>A^\mu A_\mu = (A^0)^2 - (A^1)^2- (A^2)^2- (A^3)^2</math>
によってベクトルの大きさの二乗を定義する。
共変ベクトルの変換は
:<math>A'_ \mu = \eta_{\mu\nu}A'^{\nu} = \eta_{\mu\nu}\Lambda^\nu{}_{\lambda} A^{\lambda} = \eta_{\mu\nu}\Lambda^\nu{}_{\lambda}\eta^{\lambda\sigma} A_{\sigma} = \Lambda_{\mu}{}^{\sigma}A_{\sigma}</math>
となる。
=== テンソル ===
ローレンツ変換によって、反変ベクトルあるいは共変ベクトルの <math>n</math> 個の積のように変換するものを<math>n</math> 階テンソルという。四元ベクトルは1階テンソルである。スカラーは0階テンソルである。例えば二階テンソル <math>T^{\mu}{}_\nu</math> は
:<math>T'^{\mu}{}_\nu = \Lambda^{\mu}{}_{\alpha}\Lambda_{\nu}{}^{\beta} T^{\alpha}{}_{\beta}</math>
と変換する。
:<math>\frac{\partial}{\partial x'^\mu} = \frac{\partial x^\nu}{\partial x'^\mu}\frac{\partial}{\partial x^\nu} = \Lambda_{\mu}{}^{\nu}\frac{\partial}{\partial x^\nu}</math>
である(ここで、<math>\frac{\partial}{\partial x^\mu}</math> は下付き添字として扱う)から、微分は共変ベクトルと同じように変換する。よって、ベクトル(あるいはテンソル)の微分
:<math>\frac{\partial A^\mu}{\partial x^\nu} = A^\mu{}_{,\nu}</math>
は二階テンソルになる。そこで、微分はカンマで表して、テンソル添字として扱うことにする。
=== 基底 ===
<math>D</math> を多様体の次元とする。<math>i,j,\mu,\nu</math> 等は<math>1,2,\cdots, D</math> を動くものとする。
ベクトル解析では基底は、<math>\boldsymbol e_i = \frac{\frac{\partial \boldsymbol r}{\partial x^i}} {\left|\frac{\partial \boldsymbol r}{\partial x^i}\right|}</math> と定義していた。ここで、<math>\left|\frac{\partial \boldsymbol r}{\partial x^i}\right|</math> で割っているのは、規格化のためで、必須ではない。そこで、基底として <math>\frac{\partial \boldsymbol r}{\partial x^i}</math> を取ることが出来るだろう。基底として重要なものは変換則である。<math>\frac{\partial \boldsymbol r}{\partial x^i}</math> と <math>\frac{\partial}{\partial x^i}</math> は同じ変換を受けるから、<math>\frac{\partial}{\partial x^i}</math> を基底として採用しても問題ない。これからは微分作用素のことをベクトルとして扱うことになる。これを、<math> \partial_i = \frac{\partial}{\partial x^i}</math> と略記する。
さて、基底<math> \partial_ \mu</math>によって張られる<math>A = A^\mu \partial_\mu</math> を反変ベクトルという。基底は<math>\partial_\mu = \frac{\partial x'^\nu}{\partial x^\mu}\partial'_\nu</math> と変換する。反変ベクトルを別の座標系で表すと、<math>A = A'^\mu \partial'_\mu</math>となる。2つの基底の間の成分の関係は、
:<math>A = A^\mu \partial_\mu = A^\mu \frac{\partial x'^\nu}{\partial x^\mu}\partial'_\nu = A'^\nu \partial'_\nu</math>
より、<math>A'^\mu = \frac{\partial x'^\mu}{\partial x^\nu}A^\nu</math> と変換することが分かる。これは前に述べた反変ベクトルの変換則である。実際、座標変換がローレンツ変換のときは、<math>A'^\mu = \Lambda^\mu{}_ \nu A^\nu</math>となる。
双対空間の基底として、<math> dx^i(\partial_j) = \delta^i{}_j</math> を定義すると、
:<math>dx^i(A) = A^i, dx'^i(A) = A'^i</math> となる。また、
:<math>dx'^i(A) = A'^i = \frac{\partial x'^i}{\partial x^j} A^j = \frac{\partial x'^i}{\partial x^j} dx^j(A)</math>
であるから、
:<math>dx'^i = \frac{\partial x'^i} {\partial x^j} dx^j</math>
との変換則を得る。
<math> dx^i</math> によって張られた、<math> B = B_i dx^i</math> を共変ベクトルという。共変ベクトルという名前は、 <math> B_i</math> が基底<math> \partial_ \mu</math>と同じように変換するから名付けられた。また、反変ベクトルという名前は基底<math> \partial_ \mu</math>と反対の変換をするからである。
<math> \partial_ \mu</math>と <math> dx^i</math>をいつくか組み合わせて、 <math>\partial_{\mu_1}\otimes \cdots \otimes \partial_{\mu_r}\otimes dx^{\nu_1} \otimes \cdots \otimes dx^{\nu_s} </math> という量を作って、これによって張られるものをテンソルという。すなわち、テンソルは <math>T = T^{\mu_1\cdots \mu_r}{}_{\nu_1\cdots \nu_s} \, \partial_{\mu_1}\otimes \cdots \otimes \partial_{\mu_r}\otimes dx^{\nu_1} \otimes \cdots \otimes dx^{\nu_s}</math> と書かれる。
== 自由粒子の作用 ==
特殊相対論的な自由粒子の作用 <math>S_{\mathrm{mat}}</math> を求めよう。特殊相対性原理より、それは慣性系の選択に依存しない量でなくてはいけない。すなわち、ローレンツ変換に対して不変でなくてはならない。世界間隔 <math>ds^2</math> はローレンツ変換に対して不変な量であるから、これを使って、
:<math>S_{\mathrm{mat}} = -mc \int_a^b ds</math>
のように書けるだろう。ここで、 <math>m</math> は粒子に固有の定数で、後にこれが質量であることを示す。
:<math>S_{\mathrm{mat}} = -mc^2 \int_{t_a}^{t_b} \sqrt{1-\frac{v^2}{c^2}}dt</math>
であるから、対応するラグランジアンは
:<math>L_{\mathrm{mat}} = -mc^2\sqrt{1-\frac{v^2}{c^2}}</math>
である。ところで、ニュートン力学は特殊相対論の <math>v \ll c</math> とした極限の場合と考えられるので、 <math>L_{\mathrm{mat}}</math> は <math>v \ll c</math> の条件でニュートン力学の自由粒子のラグランジアンに一致するべきである。実際、
:<math>L_{\mathrm{mat}} \approx -mc^2\left( 1 - \frac 1 2 \frac{v^2}{c^2} \right) = -mc^2 + \frac 1 2 mv^2</math>
となる。第一項の定数項は無視して、ニュートン力学のラグランジアンに一致することが確かめられた。ここにきて、定数 <math>m</math> が粒子の質量であることも確定する。
運動量 <math>\boldsymbol p</math> は<math>\frac{\partial L_{\mathrm{mat}}}{\partial \boldsymbol v}</math> であり、エネルギー <math>E</math> は <math>E = \boldsymbol p \cdot \boldsymbol v - L_{\mathrm{mat}}</math> と定義される。この式に従って計算すると、
:<math>\begin{align}\boldsymbol p &=
\frac{\partial L_{\mathrm{mat}}}{\partial \boldsymbol v} \\
&= -mc^2 \frac{\partial v^2}{\partial \boldsymbol v} \frac{d}{dv^2} \sqrt{1 - \frac{v^2}{c^2}} \\
&= -mc^2(2\boldsymbol v)\left( -\frac 1 2 \frac{1}{c^2} \frac{1}{\sqrt{1 - \frac{v^2}{c^2}}} \right) \\
&= \frac{m \boldsymbol v}{\sqrt{1 - \frac{v^2}{c^2}}}
\end{align} </math>
:<math>\begin{align} E &= \boldsymbol p \cdot \boldsymbol v - L_{\mathrm{mat}} \\
&= \frac{mv^2}{\sqrt{1 - \frac{v^2}{c^2}}} + mc^2 \sqrt{1 - \frac{v^2}{c^2}} \\
&= \frac{mc^2}{\sqrt{1 - \frac{v^2}{c^2}}}
\end{align} </math>
となる。エネルギー <math>E</math> は粒子の速度が0の場合でも0にならず、<math>E=mc^2</math> が残る。これを静止エネルギーという。
=== 4元運動量 ===
4元運動量 <math>p^\mu</math> を
:<math>p^\mu = m\frac{dx^{\mu}}{d\tau}</math>
として定義しよう。<math>d\tau = \sqrt{1 - \frac{v^2}{c^2}}dt</math> であることを考えると、 <math>p^\mu = \frac{m}{\sqrt{1 - \frac{v^2}{c^2}}} \frac{dx^\mu}{dt} </math> であるから、時間成分と空間成分を分けて書くと
:<math>p^\mu = \left(\frac{mc}{\sqrt{1 - \frac{v^2}{c^2}}} ,\frac{m\boldsymbol v}{\sqrt{1 - \frac{v^2}{c^2}}} \right) = \left(\frac E c ,\boldsymbol p\right).</math>
ここで、 <math>dx^\mu dx_\mu = c^2 d\tau^2</math> の両辺を <math>d\tau ^2 </math> で割って <math>m^2</math> を掛けると <math>p^\mu p_\mu = m^2 c^2</math>が得られる。この式に4元運動量の成分を代入すると
:<math>E^2 = m^2c^4 + \boldsymbol p^2 c^2</math>
を得る。
同じように、4元速度 <math>u^\mu </math> を定義することが出来る。
:<math>u^\mu = \frac{dx^{\mu}}{d\tau} = \left(\frac{c}{\sqrt{1 - \frac{v^2}{c^2}}} ,\frac{\boldsymbol v}{\sqrt{1 - \frac{v^2}{c^2}}} \right) . </math>
また、<math>u^\mu u_\mu = c^2. </math>
== 電磁気学 ==
粒子の作用はローレンツ不変な形式でなくてはならない。すなわち、作用は粒子の世界線に沿ったスカラー <math>P</math> の積分と4元ベクトル <math>Q_\mu</math> の線積分の和
:<math>S = \int_a^b P ds + \int_a^b Q_\mu dx^\mu</math>
の形に限られるだろう。自由粒子については <math>P = -mc,\, Q_\mu = 0</math> なのであった。
次に、世界線に沿った線積分の作用を考えてみよう。このような場と相互作用する粒子の作用 <math>S_{\mathrm{int}}</math> は、<math>P=0</math>、<math> Q_\mu = -qA_\mu</math> として
:<math>S_{\mathrm{int}} = -q \int_a^b A_\mu dx^\mu </math>
となる。4元ベクトル <math>A_\mu</math> は電磁場(あるいは4元ポテンシャル、電磁ポテンシャル)と呼ばれ、 <math>q</math> は電荷と呼ばれる量である。電磁場 <math>A^\mu</math> の成分は、<math>A^\mu = \left(\frac \phi c, \boldsymbol A \right)</math> であり、<math>\phi</math> はスカラーポテンシャル、<math>\boldsymbol A</math> はベクトルポテンシャルと呼ばれる。
作用の時間成分と空間成分を分けて書くと
:<math>S_{\mathrm{int}} = q \int_a^b (-\phi dt + \boldsymbol A \cdot \boldsymbol dr) = q \int_a^b (-\phi + \boldsymbol A \cdot \boldsymbol v) dt. </math>
自由粒子の作用と合わせると、
:<math>S_{\mathrm{mat}} + S_{\mathrm{int}} = \int_{t_a}^{t_b}\left(-mc^2 \sqrt{1 - \frac{v^2}{c^2}} - q\phi + q\boldsymbol A \cdot \boldsymbol v \right)dt</math>
となる。この被積分関数が電磁場中の粒子のラグランジアン <math>L</math> である。
電磁場中の運動方程式を求めるためには、オイラーラグランジュ方程式
:<math>\frac{d}{dt} \frac{\partial L}{\partial \boldsymbol v} = \frac{\partial L}{\partial \boldsymbol r}</math>
を求めれば良い。
:<math>\frac{\partial L}{\partial \boldsymbol v} = \frac{m\boldsymbol v}{\sqrt{1 - \frac{v^2}{c^2}}} + q \boldsymbol A = \boldsymbol p + q \boldsymbol A </math>
:<math>\frac{\partial L}{\partial \boldsymbol r} = q\nabla(\boldsymbol A \cdot \boldsymbol v) - q \nabla \phi = q(\boldsymbol v \cdot \nabla) \boldsymbol A + q \boldsymbol v \times (\nabla \times \boldsymbol A) - q \nabla \phi </math>
また、<math>\frac{d \boldsymbol A}{d t} = \frac{\partial \boldsymbol A}{\partial t} + \sum_{i=1,2,3} \frac{dx^i}{dt}\frac{\partial \boldsymbol A}{\partial x^i} = \frac{\partial \boldsymbol A}{\partial t} + (\boldsymbol v \cdot \nabla)\boldsymbol A </math> である。
最終的に、オイラーラグランジュ方程式は
:<math>\frac{d \boldsymbol p}{dt} = -q\nabla \phi -q\frac{\partial \boldsymbol A}{\partial t} + q\boldsymbol v \times (\nabla \times \boldsymbol A) </math>
となる。これが粒子の運動方程式である。第一項と第二項の電荷当たりにかかる力を電場 <math>\boldsymbol E</math> といい、第三項の速度に直交する部分を磁場 <math>\boldsymbol B </math> という。
:<math>\boldsymbol E = -\nabla \phi -\frac{\partial \boldsymbol A}{\partial t}</math>
:<math>\boldsymbol B = \nabla \times \boldsymbol A</math>
また、運動方程式は <math>\frac{d \boldsymbol p}{dt} = q(\boldsymbol E + \boldsymbol v \times \boldsymbol B) </math> となり右辺はローレンツ力と呼ばれる。
電場と磁場の定義より
:<math>\nabla \times \boldsymbol E = \nabla\times \nabla \phi - \frac{\partial}{\partial t} \nabla \times \boldsymbol A = -\frac{\partial \boldsymbol B}{\partial t}</math>
:<math>\nabla \cdot \boldsymbol B = \nabla \cdot \nabla \times \boldsymbol A = 0</math>
である。これでマクスウェルの方程式のうち二式を得る。
ここで、もう一度粒子の運動方程式を求めることにしよう。今度は4元形式を崩さない形で求める。
粒子の作用は
:<math>S_{\mathrm{mat}} = -mc\int_a^b ds</math>
:<math>S_{\mathrm{int}} = -q\int_a^b A_\mu dx^\mu = -q\int_a^b A_\mu \frac{dx^\mu}{d\tau} d\tau</math>
である。作用の変分は、
:<math>\begin{align} \delta S_{\mathrm{mat}} &= -mc \delta \int_a^b \sqrt{dx^\mu dx_\mu}\\
&= -mc\int_a^b \frac{\delta(dx^\mu) dx_\mu + dx^\mu \delta(dx_\mu)}{2\sqrt{dx^\mu dx_\mu}}\\
&= -mc\int_a^b \frac{2dx^\mu \delta(dx_\mu)}{2cd\tau}\\
&= -m\int_a^b \frac{dx^\mu}{d\tau} d(\delta x_\mu)\\
&= -m\int_a^b u^\mu \frac{d(\delta x_\mu)}{d\tau}d\tau \\
&= -mu^\mu\delta x_\mu |_a^b + m\int_a^b \frac{du^\mu}{d\tau}\delta x_\mu d\tau \\
&= m\int_a^b \frac{du^\mu}{d\tau}\delta x_\mu d\tau
\end{align} </math>
であり、
:<math>\begin{align}\delta S_{\mathrm{int}} &= -q \delta \int_a^b A_\mu \frac{dx^\mu}{d\tau} d\tau\\
&= -q\int_a^b A_{\mu,\nu}\delta x^\nu \frac{dx^\mu}{d\tau} d\tau - q\int_a^b A_\mu \frac{d\delta x^\mu}{d\tau} d\tau\\
&= -q\int_a^b A_{\mu,\nu}\delta x^\nu \frac{dx^\mu}{d\tau} d\tau - q A_\mu \delta x^\mu |_a^b + q\int_a^b \frac{dA_\nu}{d\tau} \delta x^\nu d\tau \\
&= -q\int_a^b (A_{\mu,\nu} - A_{\nu,\mu})u^\mu \delta x^\nu d\tau
\end{align} </math>
である。電磁場の強度 <math>F_{\mu\nu} </math> を <math>F_{\mu\nu} = A_{\nu,\mu} - A_{\mu,\nu} </math> と定義すると、
:<math>\delta S_{\mathrm{int}} = -q\int_a^b F^{\mu\nu}u_\nu \delta x_\mu d\tau </math>
となる。<math>\delta(S_{\mathrm{mat}} + S_{\mathrm{int}}) = 0 </math> より、運動方程式
:<math>m \frac{d u^\mu}{d\tau} = qF^{\mu\nu}u_\nu </math>
を得る。
:<math>F_{\mu\nu} </math>は反対称 <math>F_{\mu\nu} = -F_{\nu\mu
}</math> であるから、対角成分 <math>F_{\mu\mu}</math> は0。つまり電磁場テンソルの上半分の6成分を調べれば残りは分かる。
電磁場の強度 <math>F_{\mu\nu} </math> の成分は
:<math>F_{01} = -\frac 1 c \frac{\partial A_x}{\partial t} - \frac 1 c \frac{\partial \phi}{\partial x} = \frac{E_x}{c}</math>
:<math>F_{12} = -\frac{\partial A_y}{\partial x} + \frac{\partial A_x}{\partial y} = -B_z</math>
等により求められる。行列形式で書くと
:<math>F_{\mu\nu} = \begin{pmatrix} 0 & \frac{E_x}{c} & \frac{E_y}{c} & \frac{E_z}{c} \\
-\frac{E_x}{c} & 0 & -B_z & B_y \\
- \frac{E_y}{c} & B_z & 0 & -B_x \\
- \frac{E_z}{c} & -B_y & B_x & 0 \end{pmatrix} </math>
:となる。また、
:<math>F^{\mu\nu} = \begin{pmatrix} 0 & -\frac{E_x}{c} & -\frac{E_y}{c} & -\frac{E_z}{c} \\
\frac{E_x}{c} & 0 & -B_z & B_y \\
\frac{E_y}{c} & B_z & 0 & -B_x \\
\frac{E_z}{c} & -B_y & B_x & 0 \end{pmatrix}</math>
である。ちなみに、<math>F_{ij} = -\varepsilon_{ijk}B_k</math> である。実際、<math>-\varepsilon_{ijk}B_k = -\varepsilon_{ijk}(-\varepsilon_{klm}\partial_lA_m) = A_j{}_{,i} - A_i{}_{,j}.</math> ただし、<math>A_i</math> に負号がついていることに注意。
:<math>m \frac{d u^\mu}{d\tau} = qF^{\mu\nu}u_\nu </math>
の <math>\tau</math> を <math>t</math> に変換してローレンツ因子の分を除すると、
:<math>\frac{dp^\mu}{dt} = qF^{\mu\nu}\frac{dx_\nu}{dt}</math>
を得る。<math>\mu = 1,2,3</math> については、ローレンツ力の式 <math>\frac{d \boldsymbol p}{dt} = q(\boldsymbol E + \boldsymbol v \times \boldsymbol B)</math> となる。
<math>\mu = 0</math> について計算すると、[[ファイル:特殊相対論数式1.svg|110x110ピクセル]] を得る。ここで、[[ファイル:特殊相対論数式2.svg|フレームなし|17x17ピクセル]] は粒子の相対論的エネルギーである。これは電磁場が粒子に対してする仕事である。磁場は粒子に対して仕事をしないことがわかる。
=== 電磁場の作用 ===
電磁場の作用を求めるにあたって、まずは電磁場と相互作用する粒子の作用 <math>S_{\mathrm{int}}</math> に少しの変更を加えよう。これはある粒子の経路について変分をとるから、一つの粒子に対する作用であったが、電磁場の作用を求めるために、これを存在するすべての粒子に対する和に変更しなくてはいけない。作用は、
:<math>S_{\mathrm{int}} = -\sum_i q_i\int_a^b A_\mu dx^\mu</math>となる。ここで、<math>i</math> は存在する全ての粒子のラベルである。積分はそれぞれの粒子の世界線に沿った経路ものになる。電荷密度 <math>\rho</math> をディラックのデルタ関数を使って
:<math>\rho = \sum_i q_i\delta (\boldsymbol r - \boldsymbol r_i)</math>
と定義する。<math>\boldsymbol r_i</math> は <math>i</math> 番目の電荷の位置ベクトルである。さらに、4元電流密度 <math>j^\mu</math>を
:<math>j^\mu = \rho \frac{dx^\mu}{dt} = (c\rho, \rho \boldsymbol v) = (c\rho,\boldsymbol j)</math>
と定義する。ここで、4元電流密度は <math>\rho \frac{dx^\mu}{d\tau}</math> ではない。 <math>\rho</math> がスカラーではないからこの量が4元ベクトルとはならためである。電荷密度 <math>\rho</math> がスカラーではないことはローレンツ収縮が起こるためである。ある微小領域 <math>dV</math> に存在する電荷はローレンツ不変だが、微小領域の体積 <math>dV</math> はローレンツ収縮によって変化しうる。これに伴って電荷密度 <math>\rho</math> も変化するためローレンツ不変ではない。微小領域に存在する電荷は <math>dq = \rho dV</math> でこの量はローレンツ不変である。両辺に <math>dx^\mu</math> を掛けて、
:<math>dq dx^\mu = \rho dV dx^\mu = \rho dV dt \frac{dx^\mu}{dt}.</math>
ここで、<math>dVdt</math> はスカラーである。なぜなら、ローレンツ変換によって、<math>dV' = dV \sqrt{1 - \frac{V^2}{c^2}}</math> (ローレンツ収縮)、<math>dt' = \frac{dt}{\sqrt{1-\frac{V^2}{c^2}}}</math> との変換を受けるからである。あるいは、ローレンツ変換の行列の行列式が1である事からも分かる。<math>dqdx^\mu</math> は4元ベクトルだから、<math>\rho \frac{dx^\mu}{dt}</math> は4元ベクトルである。
4元電流密度を使うと、作用は、
:<math>S_{\mathrm{int}} = -\sum_i q_i\int_a^b A_\mu dx^\mu = -\int_a^b \sum_i q_i A_\mu \frac{dx^\mu}{dt}dt = -\int_a^b \int A_\mu j^\mu dVdt </math>
となる。
次に、電磁場自身の作用 <math>S_{\mathrm{em}}</math> をもとめよう。電磁場の作用はゲージ変換について不変であるべきだ。すなわち、作用はゲージ不変な <math>F_{\mu\nu}</math> によって作られなくてはいけない。もし <math>A_\mu</math> が顕に含まれているとゲージ不変ではなくなる。さらに、電磁場は経験的に重ね合わせの原理を満たすことが分かっている。すなわち、第一の粒子がある場をつくり、また第二の粒子が場をつくるならば、この2つの粒子によって作られる場は粒子の作る場の単純な足し合わせであるということである。この原理を満たすためには、変分によって導かれる運動方程式は <math>F_{\mu\nu}</math> の一次の式であればよい。変分によって得られる式の次数はラグランジアンの次数から1を引いたものであるから、ラグランジアンは <math>F_{\mu\nu}</math> に対する二次の式である。これらの条件を満たす量は <math>F_{\mu\nu}F^{\mu\nu}</math> のみである。比例定数を適当に選ぶと、電磁場の作用は、
:<math>S_{\mathrm{em}} = -\frac{1}{4\mu_0c} \int F_{\mu\nu}F^{\mu\nu} d^4 x </math>
となる。ここで、<math>d^4 x = cdt dxdydz</math> である。
その変分は、
:<math>\delta S_{\mathrm{em}} = -\frac{1}{4\mu_0c} \int ( \delta F_{\mu\nu}F^{\mu\nu} + F_{\mu\nu}\delta F^{\mu\nu}) d^4 x = -\frac{1}{2\mu_0c} \int F^{\mu\nu} \delta F_{\mu\nu} d^4 x </math>
ここで、<math>\delta F_{\mu\nu} = \delta A_{\nu,\mu} - \delta A_{\mu,\nu} </math> であり、 <math>F^{\mu\nu} \delta A_{\nu,\mu} = -F^{\nu\mu} \delta A_{\nu,\mu} = -F^{\mu\nu} \delta A_{\mu,\nu} </math> であるから、
:<math>\delta S_{\mathrm{em}} = -\frac{1}{\mu_0c} \int F^{\mu\nu} \delta A_{\nu,\mu} d^4 x. </math>
さらに、<math>F^{\mu\nu}\delta A_{\nu,\mu} = (F^{\mu\nu}\delta A_{\nu})_{,\mu} - F^{\mu\nu}{}_{,\mu} \delta A_{\nu} </math> であるから、右辺第一項について四次元のガウスの定理を用いると、
:<math>\int (F^{\mu\nu}\delta A_{\nu})_{,\mu} d^4 x = \int F^{\mu\nu}\delta A_{\nu} dS_\mu </math>
である。無限遠では場は0となるから <math>F^{\mu\nu} = 0 </math> であり、時間の端点では <math>\delta A_\mu = 0 </math> であるから、この積分は0となる。
結局作用の変分は、
:<math>\delta S_{\mathrm{em}} = \frac{1}{\mu_0c} \int F^{\mu\nu}{}_{,\mu} \delta A_{\nu} d^4 x. </math>
となる。
:<math> \delta S_{\mathrm{int}} = -\frac{1}{c} \int j^\mu \delta A_\mu d^4 x </math>
と合わせると、電磁場の運動方程式
:<math> F^{\mu\nu}{}_{,\mu} = \mu_0 j^\nu </math>
を得る。
<math>\nu = 0</math> について計算すると、
:<math>\nabla \cdot \boldsymbol E = c^2\mu_0\rho</math>
を得る。慣習によりこの比例定数を <math>c^2\mu_0 = \frac{1}{\varepsilon_0}</math> と書くことが多い。すなわち、
:<math>\nabla \cdot \boldsymbol E = \frac{\rho}{\varepsilon_0}</math>
となる。
<math>\nu = 1,2,3</math> について計算すると、
:<math>\nabla \times \boldsymbol B - \frac{1}{c^2}\frac{\partial \boldsymbol E}{\partial t} = \mu_0 \boldsymbol j</math>
が得られる。これでマクスウェルの方程式の四本の式が得られた。
次に、四元電流密度の発散を計算すると
:<math>j^\mu{}_{,\mu} = \frac{1}{\mu_0}F^{\nu\mu}{}_{,\nu\mu}</math>
となる。ここで、電磁場テンソルが反対称であることから、アインシュタインの記法なしで
:<math>F^{\beta\alpha}{}_{,\alpha\beta} = -F^{\alpha\beta}{}_{,\alpha\beta}</math>
であり、微分の添字は対称であることから、<math>F^{\nu\mu}{}_{,\nu\mu} = 0</math> となる。従って
:<math>j^\mu{}_{,\mu} = 0</math>
を得る。これをベクトル形式で書くと
:<math>\frac{\partial \rho}{\partial t} + \nabla \cdot \boldsymbol j = 0</math>
となる。これは連続の式である。
ここでは、連続の式をマクスウェルの方程式から求めたが、これは電荷と電流の定義より自明に成り立つ式である。一つの電子について証明すれば十分だから、そのときは、
:<math>\rho = q\delta(\boldsymbol r - \boldsymbol r_0),\, \boldsymbol j = q \boldsymbol v \delta(\boldsymbol r - \boldsymbol r_0) </math>
となる。
:<math>\frac{\partial \rho( \boldsymbol r - \boldsymbol r_0)}{\partial t} = -q\frac{\partial \boldsymbol r_0}{\partial t}\frac{\partial\delta( \boldsymbol r - \boldsymbol r_0)}{\partial \boldsymbol r_0} = -q\boldsymbol v \frac{\delta( \boldsymbol r - \boldsymbol r_0 )}{\partial \boldsymbol r} </math>
さらに、<math>\nabla \cdot \boldsymbol j = q \nabla \cdot (\boldsymbol v \delta(\boldsymbol r - \boldsymbol r_0)) = q \boldsymbol v \frac{\partial \boldsymbol \delta(\boldsymbol r - \boldsymbol r_0) }{\partial \boldsymbol r}. </math>
=== ゲージ変換 ===
任意の関数 <math>\chi</math> について、 <math>A'_\mu = A_\mu - \frac{\partial \chi}{\partial x^\mu}</math> と変換しても、 <math>\boldsymbol E,\boldsymbol B</math> は変化しない。この変換をゲージ変換という。ゲージ変換はスカラーポテンシャルとベクトルポテンシャルを分けて書くと <math>\phi' = \phi -\frac{\partial \chi}{\partial t},\, \boldsymbol A' = \boldsymbol A + \nabla \chi</math> である。このゲージ自由度のお陰で、我々は電磁ポテンシャルにゲージ条件を課して計算しやすいように変形することができる。例えば、ローレンツゲージ <math>A^{\mu}_{,\mu} = 0</math> や、クーロンゲージ <math>\nabla \cdot \boldsymbol A = 0</math> 。あるいは、<math>j^\mu = 0</math> の場合には、常に <math>\phi = 0</math> で、かつ <math>\nabla \cdot \boldsymbol A = 0</math> である放射ゲージを取ることができる。
任意の電磁ポテンシャル <math>A_\mu</math> からローレンツゲージを満たす電磁ポテンシャル <math>A'^{\mu}</math> へのゲージ変換を求めよう。条件は、 <math>A'^{\mu}{}_{,\mu} = 0 = A^{\mu}{}_{,\mu} - \chi^{,\mu}{}_{,\mu}</math> より、<math>\Box \chi = A^{\mu}{}_{,\mu}. </math>
クーロンゲージについては、<math>\nabla \cdot \boldsymbol A' = \nabla \cdot \boldsymbol A + \triangle \chi</math> より、<math>\triangle \chi = -\nabla \cdot \boldsymbol A. </math>
<math>\phi = 0</math> となるゲージのためには、<math>\boldsymbol E = -\nabla \phi - \frac{\partial \boldsymbol A}{\partial t} = -\frac{\partial}{\partial t}\left(\boldsymbol A + \int \nabla \phi dt\right) </math> だから、<math>\chi = \int \phi dt</math> とすればいい。さらに、<math>j^\mu = 0</math> の場合は、時間に依存しない関数の勾配をつけ加えることで、<math>\phi = 0</math> を保ったまま、<math>\nabla \cdot \boldsymbol A' = 0</math> とすることができる。その関数は<math>\triangle \chi' = -\nabla \cdot \boldsymbol A </math>であるが、右辺は <math>-\frac{\partial}{\partial t} \nabla \cdot \boldsymbol A = \nabla \cdot \boldsymbol E = 0</math> となるから時間に依存しない。すなわち、<math>\chi'</math> は時間に依存しないからこの関数の勾配を加えれば放射ゲージが得られる。
=== マクスウェルの方程式 ===
マクスウェルの方程式の第一の組
:<math>\nabla \times \boldsymbol E = -\frac{\partial \boldsymbol B}{\partial t}</math>(ファラデーの電磁誘導の法則)
:<math>\nabla \cdot \boldsymbol B = 0</math>(磁気単極子は存在しないこと)
と第二の組
:<math>\nabla \cdot \boldsymbol E = \frac{\rho}{\varepsilon_0}</math>(ガウスの法則)
:<math>\nabla \times \boldsymbol B = \mu_0 \boldsymbol j+ \varepsilon_0\mu_0 \frac{\partial \boldsymbol E}{\partial t}</math>(アンペール–マクスウェルの法則)
を合わせてマクスウェルの方程式という。
ガウスの法則をある体積で積分すると、
ガウスの定理より、
:<math>\int \nabla \cdot \boldsymbol E dV = \oint \boldsymbol E \cdot d\boldsymbol S </math>
であるから、
:<math>\oint \boldsymbol E \cdot d\boldsymbol S = \int \frac{\rho}{\varepsilon_0}dV.</math>
同様に、<math>\oint \boldsymbol B \cdot d\boldsymbol S = 0</math>
ストークスの定理より、
:<math>\int \boldsymbol B \cdot d\boldsymbol S = \oint \boldsymbol B \cdot d\boldsymbol l </math>
だから、アンペール–マクスウェルの式をある面で積分すると、
:<math>\oint \boldsymbol B \cdot d\boldsymbol l = \mu_0 \int(\boldsymbol j + \varepsilon_0 \boldsymbol E) d\boldsymbol S </math>
を得る。
ファラデーの電磁誘導の法則についても同様に
:<math>\oint \boldsymbol E \cdot d\boldsymbol l = -\frac{\partial}{\partial t}\int \boldsymbol B \cdot d\boldsymbol S = -\frac{d\Phi}{dt}. </math>
ここで、<math>\Phi = \int \boldsymbol B \cdot d\boldsymbol S </math> は磁束と呼ばれる。<math>\oint \boldsymbol E \cdot d\boldsymbol l </math> は閉曲線を一周したときの起電力 <math>V </math> である。
<math>N </math> 回巻きのコイルならば、そのコイルに生じる起電力 <math>V </math> は
:<math>V = -N\frac{d\Phi}{dt} </math>
となる。
第一の組は四元形式では、<math>F_{\alpha\beta,\gamma}+F_{\beta\gamma,\alpha}+F_{\gamma\alpha,\beta} = 0</math> と書かれる。この式が正しいことは電磁ポテンシャルを代入すればすぐにわかる。このことを示そう。まず、添字に同じ文字がある場合は <math>F_{\alpha\alpha,\beta}+F_{\alpha\beta,\alpha}+F_{\beta\alpha,\alpha}</math> となり自明に0となるから意味をなさない。すなわち、添字はすべて異なるものでなくてはならない。式 <math>F_{\alpha\beta,\gamma}+F_{\beta\gamma,\alpha}+F_{\gamma\alpha,\beta}</math> を <math>\{\alpha,\beta,\gamma\}</math> で略記する。添字は循環的だから、 <math>\{\alpha,\beta,\gamma\}</math> で <math>\alpha</math> が一番小さいとしていい。さらに、<math>\{\alpha,\beta,\gamma\}</math> と <math>\{\alpha,\gamma,\beta\}</math> は同値な式を与えるから、<math>\alpha < \beta < \gamma</math> としていい。結局この式で独立なものは <math>\{0,1,2\},\{0,1,3\},\{0,2,3\},\{1,2,3\}</math> の4つしかない。それぞれの場合について計算すると時間成分を含む3式は第一式、空間成分のみの式は第二式を与えることが分かる。
電磁場の強さの双対テンソルを <math>\tilde F^{\mu\nu} = \frac 1 2 \varepsilon^{\mu\nu\alpha\beta}F_{\alpha\beta}</math> で定義すると、<math>F_{\alpha\beta,\gamma}+F_{\beta\gamma,\alpha}+F_{\gamma\alpha,\beta} = 0</math> は <math>\tilde F^{\mu\nu}{}_{,\mu} = 0</math> と等価となる。実際、<math>\tilde F^{\mu\nu}{}_{,\mu} = \frac 1 2 \varepsilon^{\mu\nu\alpha\beta}F_{\alpha\beta}{}_{,\mu}</math> であるが、例えば <math>\nu=1</math> のときは <math>\frac 1 2 \varepsilon^{\mu 1 \alpha\beta}F_{\alpha\beta,\mu} = F_{02,3} + F_{23,0}+F_{30,2}</math> となるからである。
最終的に、マクスウェル方程式は
<math> F^{\mu\nu}{}_{,\mu} = \mu_0 j^\nu </math>
<math>\tilde F^{\mu\nu}{}_{,\mu} = 0</math>
ときれいな形に書くことができる。
ところで、<math> F^{\mu\nu}{}_{,\mu} = \mu_0 j^\nu </math> を電磁ポテンシャルを使って書くと、<math>A^{\nu,\mu}{}_{,\mu} - A^{\mu,\nu}{}_{,\mu} = \mu_0 j^\nu</math> となる。ここで、電磁ポテンシャルにはある関数の勾配を足しても良い自由度があるから、この自由度を利用して <math>A^\mu{}_{,\mu} = 0</math> となるポテンシャルを選ぶことができる。さらに、ダランベルシアン <math>\Box = \partial^\mu \partial_\mu = \frac{1}{c^2} \frac{\partial^2}{\partial t^2} - \triangle</math> を導入すると、マクスウェルの方程式は、<math>\Box A^\nu = \mu_0 j^\nu</math> となる。
この方程式の解は
:<math>A^\mu(\boldsymbol x,t) = \frac{\mu_0}{4\pi}\int\frac{j^\mu(\boldsymbol x',t-R/c)}{R}d^3x' + A^\mu_0</math>
これがマクスウェルの方程式の一般解である。ただし、 <math>R = |\boldsymbol x - \boldsymbol x'|</math> , <math>A^\mu_0</math> は <math>\Box A^\mu_0 = 0</math> の解であって境界条件に合うように定める。
時間変化が無いときには、
:<math>\varphi = \frac{1}{4\pi \varepsilon_0} \int \frac{\rho}{R}dV </math>
:<math>\boldsymbol A = \frac{\mu_0}{4\pi}\int\frac{\boldsymbol j}{R}dV </math>
となる。この式から直ちに、ビオ・サバールの法則
:<math>\boldsymbol B = \frac{\mu_0}{4\pi}\int\nabla\frac{1}{R}\times \boldsymbol jdV = \frac{\mu_0}{4\pi}\int\frac{\boldsymbol j \times\boldsymbol R}{R^3}dV </math>
が求まる。
ところで、<math>\nabla \times \boldsymbol E = -\frac{\partial \boldsymbol B}{\partial t}</math> という式は磁場が時間変化すると電場の回転が発生すると解釈することが出来る。ところが、電磁ポテンシャルを基本的な量として考えるとまた違った解釈が可能だ。すなわち、電場や磁場はすべて電磁ポテンシャルから発生するという立場のもとでは、磁場が時間変化するということは、そこに時間変化するベクトル・ポテンシャルの回転が存在するだろう。そして、時間変化するベクトル・ポテンシャルの回転によって電場の回転が生ずる。すなわち、ベクトル・ポテンシャルによって磁場の時間変化と電場の回転が同時に生じるということである。
電流を0とした式 <math>\nabla \times \boldsymbol B = \varepsilon_0\mu_0 \frac{\partial \boldsymbol E}{\partial t}</math> もこれと同様に考えることが出来る。<math>\varepsilon_0\frac{\partial \boldsymbol E}{\partial t} </math> は変位電流と呼ばれる。それは <math>\nabla \times \boldsymbol B = \mu_0 \left(\boldsymbol j+ \varepsilon_0 \frac{\partial \boldsymbol E}{\partial t}\right)</math> として、変位電流は電流 <math>\boldsymbol j</math> と一緒に磁場の回転を作るように見えるからである。これも電磁ポテンシャルを基本的な量として考えると分かりやすい。<math>\nabla \times \boldsymbol B - \varepsilon_0\mu_0 \frac{\partial \boldsymbol E}{\partial t}= \mu_0 \boldsymbol j </math> と変形してから左辺に電磁ポテンシャルを代入して、ゲージ条件としてローレンツ条件を採用すると、<math>\Box \boldsymbol A = \mu_0\boldsymbol j</math> となる。この式は、電流密度 <math>\boldsymbol j</math> がベクトル・ポテンシャルを生成する式として見ることが出来る。すなわち、電流と変位電流が磁場の回転を起こすというよりも、電流が <math>\Box \boldsymbol A</math> すなわち <math>\nabla \times \boldsymbol B - \varepsilon_0\mu_0 \frac{\partial \boldsymbol E}{\partial t} </math> に影響を与えるのだと考えるほうが良いだろう。その観点では、アンペール–マクスウェルの式は <math>\nabla \times \boldsymbol B - \varepsilon_0\mu_0 \frac{\partial \boldsymbol E}{\partial t}= \mu_0 \boldsymbol j </math> とする方が物理的な意味に合っているのかもしれない。
'''場の平均化'''
電荷や電流はデルタ関数の足し合わせで定義していたが、このままでは電子の数が多い場合では計算しきれない。そこで、このような場合は位置によって平均化したものを使う。こうすることで、<math>\rho,\boldsymbol j </math> は有限の値を取ることになる。
== エネルギー運動量テンソル ==
電磁場のエネルギー運動量テンソル
:<math>T^{\mu\nu} = \frac{1}{\mu_0}(-F^{\mu\rho}F^{\nu}{}_\rho + \frac 1 4 \eta^{\mu\nu}F^{\alpha\beta}F_{\alpha\beta})</math>
の各成分を調べよう。
:<math>F^{\mu\nu} = \begin{pmatrix} 0 & -\frac{E_x}{c} & -\frac{E_y}{c} & -\frac{E_z}{c} \\
\frac{E_x}{c} & 0 & -B_z & B_y \\
\frac{E_y}{c} & B_z & 0 & -B_x \\
\frac{E_z}{c} & -B_y & B_x & 0 \end{pmatrix}</math>
であったから、
:<math>F^{\mu}{}_{\nu} = \begin{pmatrix} 0 & -\frac{E_x}{c} & -\frac{E_y}{c} & -\frac{E_z}{c} \\
-\frac{E_x}{c} & 0 & B_z & -B_y \\
-\frac{E_y}{c} & -B_z & 0 & B_x \\
-\frac{E_z}{c} & B_y & -B_x & 0 \end{pmatrix} </math>
である。
:<math>T^{00} = \frac{1}{\mu_0}(-F^{0\rho}F^{0}{}_\rho + \frac 1 4 F^{\alpha\beta}F_{\alpha\beta}) = \frac{1}{\mu_0}\left(\frac{E^2}{c^2} + \frac 1 2 \left(-\frac{E^2}{c^2} + B^2\right) \right)= \frac{\varepsilon_0}{2}E^2 + \frac{1}{2\mu_0}B^2 </math>
:<math>T^{i0} = \frac{1}{\mu_0}(-F^{i\rho}F^{0}{}_{\rho}) = \frac{1}{\mu_0}(-F^{ij}F^{0}{}_{j}) =\frac{1}{\mu_0}(\varepsilon_{ijk} B_k \frac{E_j}{c}) </math>
:<math>T^{ii} = \frac{1}{\mu_0}\left(-\frac{E_i^2}{c^2} + B_{a_1}^2 + B_{a_2}^2 - \frac 1 2 \left(-\frac{E^2}{c^2} + B^2\right)\right) = \frac{1}{\mu_0}\left(-\frac{E_i^2}{c^2} - B_i^2 + \frac 1 2 \left(\frac{E^2}{c^2} + B^2\right)\right) </math>
ここで、<math>a_1,a_2</math> は1,2,3のうち、<math>i</math> ではないもののそれぞれである。
<math>i \neq j</math> のときは、
:<math>T^{ij} = \frac{1}{\mu_0}\left(-\frac{E_iE_j}{c^2} - B_iB_j\right) </math>
ここで、電磁場のエネルギー密度を
:<math>W = \frac{\varepsilon_0}{2}E^2 + \frac{1}{2\mu_0}B^2 </math>
で定義する。さらに、ポインティング・ベクトルを
:<math>\boldsymbol S = \frac{1}{\mu_0} {\boldsymbol E \times \boldsymbol B} </math>
で、マクスウェルの応力テンソルを
:<math>\sigma_{ij} = -\varepsilon_0 E_iE_j - \frac{1}{\mu_0} B_iB_j + \frac 1 2 \delta_{ij} \left( \varepsilon E^2 + \frac{1}{\mu_0}B^2 \right) </math>
で定義すると、エネルギー運動量テンソルは
:<math>T^{\mu\nu} = \begin{pmatrix} W & \frac{S_x}{c} & \frac{S_y}{c} & \frac{S_z}{c} \\
\frac{S_x}{c} & \sigma_{xx} & \sigma_{xy} & \sigma_{xz} \\
\frac{S_y}{c} & \sigma_{yx} & \sigma_{yy} & \sigma_{yz} \\
\frac{S_z}{c} & \sigma_{zx} & \sigma_{zy} & \sigma_{zz} \end{pmatrix}</math>
と書かれる。
== ディラック方程式 ==
特殊相対論的な量子力学の方程式を導こう。
:<math>E^2 = m^2c^4 + \boldsymbol p^2 c^2</math>
に対して、量子力学でやったように
:<math>E \rightarrow i \hbar \frac{\partial}{\partial t},\, \boldsymbol p \rightarrow -i\hbar \nabla</math>
という置き換えをすると、
:<math>-\hbar^2 \frac{\partial^2 \psi}{\partial t^2} = c^4m^2\psi - \hbar^2c^2 \triangle \psi </math>
整理して、
:<math>\left(\Box + \frac{m^2c^2}{\hbar^2}\right)\psi = 0 </math>
が得られる。この方程式はクライン・ゴルドン方程式と呼ばれる。しかし、これには確率解釈が出来ないという問題がある。そこで、時間に対する一階微分方程式
:<math>i\gamma^\mu \partial_\mu \psi = \frac{mc}{\hbar}\psi </math>
を仮定して、これがクライン・ゴルドン方程式に帰着するように係数 <math>\gamma^\mu</math> を求めてみよう。
:<math>\frac{m^2c^2}{\hbar^2}\psi = (i\gamma^\nu\partial_\nu)(i\gamma^\mu\partial_\mu)\psi = - \gamma^\mu \gamma^\nu \partial_\mu \partial_\nu \psi</math>
これが、<math>- \Box\psi </math> に等しくてはならないから、
:<math>(\gamma^0)^2 = 1,(\gamma^1)^2 = -1, (\gamma^2)^2 = -1,(\gamma^3)^2 = -1 </math>
かつ、<math>\alpha \neq \beta </math> のとき、<math>\gamma^\alpha \gamma^\beta = 0 </math> とならなければいけないが、このような実数 <math>\gamma^\mu </math> は存在しない。 そこで、改めて <math>\gamma^\mu </math> を行列として探してみる。
:<math>\gamma^\mu \gamma^\nu = \frac 1 2 (\gamma^\mu\gamma^\nu + \gamma^\nu\gamma^\mu) + \frac 1 2 (\gamma^\mu\gamma^\nu - \gamma^\nu\gamma^\mu)</math>
と変形できる。 <math>\partial_\mu\partial_\nu(\gamma^\mu\gamma^\nu - \gamma^\nu\gamma^\mu) = 0 </math> であるから
:<math>- \gamma^\mu \gamma^\nu \partial_\mu \partial_\nu \psi = - \frac 1 2(\gamma^\mu\gamma^\nu + \gamma^\nu\gamma^\mu)\partial_\mu\partial_\nu\psi</math>
と変形できる。これが、
:<math>- \Box\psi = -\eta^{\mu\nu}\partial_\mu\partial_\nu \psi </math>
に等しいという条件から、
:<math>\gamma^\mu\gamma^\nu + \gamma^\nu\gamma^\mu = 2\eta^{\mu\nu} </math>
でなくてはならない。このような <math>\gamma^\mu </math> として、
:<math>\gamma^0 = \begin{pmatrix}0 & 1 \\ 1 & 0\end{pmatrix} </math> , <math>\gamma^i = \begin{pmatrix} 0 & \sigma_i \\ -\sigma_i & 0 \end{pmatrix} </math>
を取ることが出来る。ここで、
:<math>\sigma_1 = \begin{pmatrix}0 &1 \\1 &0\end{pmatrix}\mbox{, } \quad
\sigma_2 = \begin{pmatrix}0 &-i \\i &0\end{pmatrix} \mbox{, } \quad
\sigma_3 =\begin{pmatrix}1 &0 \\0 &-1\end{pmatrix} </math>
はパウリ行列である。
よって、ディラック方程式
:<math>\left(i\gamma^\mu \partial_\mu - \frac{mc}{\hbar}\right) \psi = 0 </math>
を得る。
さらに、 <math>c = \hbar = 1 </math> となる自然単位系を使うと、
:<math>(i\gamma^\mu \partial_\mu - m)\psi = 0</math>
となる。
ディラック共役を
:<math>\bar \psi = \psi^\dagger \gamma^0 </math>
で定義する。
== ゲージ理論入門 ==
=== U(1)ゲージ理論 ===
ここでは、<math>c=\hbar = \mu_0 = 1</math> となる自然単位系を採用する。
ディラック方程式
:<math>(i\gamma^\mu \partial_\mu - m)\psi = 0</math>
を導くラグランジアンは
:<math>\mathcal{L} = \bar \psi (i\gamma^\mu \partial_\mu - m) \psi</math>
である。このラグランジアンは波動関数を偏角 <math>\alpha</math> だけ変える大域的な変換 <math>\psi' = e^{i\alpha}\psi</math> によって不変である。しかし、全空間で一斉に等しい位相の変換を受けるというのは一般的ではない気がする。そこで、もっと一般に各時空点でそれぞれ異なった位相の変換を受けるという、局所的な位相変換でもラグランジアンが不変になるようにしたい。つまり、局所的な位相変換
:<math>\psi' = e^{-ie\chi}\psi</math>
でもラグランジアンを不変にしたい。そのために、微分 <math>\partial_\mu</math> の代わりに共変微分 <math>D_\mu</math> を
:<math>D_\mu = \partial_\mu - ieA_\mu</math>
のように導入して、ラグランジアン <math>\mathcal{L} = \bar \psi (i\gamma^\mu D_\mu - m) \psi</math> を不変にするための <math>A_\mu </math> の変換則を求める。
そのためには、
:<math>D'_\mu \psi' = (D_\mu\psi)e^{-ie\chi}</math>
であればいい。
:<math>D'_\mu \psi' = (\partial_\mu - ieA'_\mu) e^{-ie\chi}\psi = [(\partial_\mu - ieA'_\mu - ie\partial_\mu\chi) \psi] e^{-ie\chi} </math>
であるから、<math>D_\mu \psi = (\partial_\mu - ieA_\mu)\psi</math> と比較して、変換則
:<math>A'_\mu = A_\mu - \partial_\mu \chi</math>
を得る。
結局ラグランジアンは、
:<math>\mathcal{L} = \bar \psi [i\gamma^\mu (\partial_\mu - ieA_\mu) - m] \psi = \bar \psi (i\gamma^\mu \partial_\mu - m) \psi - e \bar \psi \gamma^\mu \psi A_\mu </math>
ここで、四元電流密度を
:<math>j^\mu = -e\bar \psi \gamma^\mu \psi</math>
と定義して、ラグランジアンに電磁場のラグランジアンを追加すると、
:<math>\mathcal L = \bar \psi (i\gamma^\mu \partial_\mu - m) \psi - j^\mu A_\mu - \frac 1 4 F^{\mu\nu}F_{\mu\nu}. </math>
<math>A_\mu </math> というのは電磁場である。
=== クリストッフェル記号 ===
特殊相対論はローレンツ変換に対して不変な理論であって、それはテンソル式で表されている。これを拡張して、任意の座標変換に対して不変になるようにしよう。
テンソルの微分
:<math>\partial_\mu A^\nu</math>
において、 <math>\mu</math> はローレンツ変換では、テンソル添字になるが、一般座標変換ではテンソル添字にならない。そこで、代わりに、共変微分を
:<math>D_\mu A^\nu = \partial_\mu A^\nu + \Gamma^\nu_{\mu \alpha}A^\alpha </math>
として導入して、これがテンソルとなるようにしたい。そのためには、
:<math>D'_\mu A'^\nu = \frac{\partial x^\alpha}{\partial x'^\mu}\frac{\partial x'^\nu}{\partial x^\beta} D_\alpha A^\beta</math>
とならなければいけない。
:<math>D'_\mu A'^\nu = \partial'_\mu\left(\frac{\partial x'^\nu}{\partial x^\beta} A^\beta\right) + {\Gamma'^\nu}_{\mu\gamma}\frac{\partial x'^\gamma}{\partial x^\beta} A^\beta</math>
ここで、
:<math>\partial'_\mu\left(\frac{\partial x'^\nu}{\partial x^\beta} A^\beta\right) = \frac{\partial x'^\alpha}{\partial x'^\mu}\partial_\alpha\left(\frac{\partial x'^\nu}{\partial x^\beta} A^\beta\right) = \frac{\partial x'^\alpha}{\partial x'^\mu} \frac{\partial^2 x'^\nu}{\partial x^\alpha \partial x^\beta} A^\beta +\frac{\partial x'^\alpha}{\partial x'^\mu}\frac{\partial x'^\nu}{\partial x^\beta} \frac{\partial A^\beta}{\partial x^\alpha} </math>
である。
さらに、
:<math>\frac{\partial x^\alpha}{\partial x'^\mu}\frac{\partial x'^\nu}{\partial x^\beta} D_\alpha A^\beta = \frac{\partial x^\alpha}{\partial x'^\mu}\frac{\partial x'^\nu}{\partial x^\beta} \frac{\partial A^\beta}{\partial x^\alpha} + \frac{\partial x^\alpha}{\partial x'^\mu}\frac{\partial x'^\nu}{\partial x^\beta} \Gamma^\beta_{\alpha\gamma}A^\gamma</math>
であるから、ここから、
:<math>{\Gamma'^\nu}_{\mu\gamma}\frac{\partial x'^\gamma}{\partial x^\beta} + \frac{\partial x'^\alpha}{\partial x'^\mu} \frac{\partial^2 x'^\nu}{\partial x^\alpha \partial x^\beta} = \frac{\partial x^\alpha}{\partial x'^\mu}\frac{\partial x'^\nu}{\partial x^\gamma} \Gamma^\gamma_{\alpha\beta} </math>
さらに、<math>\frac{\partial x'^\gamma}{\partial x^\beta} </math> の逆行列は <math>\frac{\partial x^\beta}{\partial x'^\gamma} </math> であるから、これを両辺にかけると、
:<math>{\Gamma'^\nu}_{\mu\gamma} =\frac{\partial x^\beta}{\partial x'^\gamma}\frac{\partial x^\alpha}{\partial x'^\mu}\frac{\partial x'^\nu}{\partial x^\delta} \Gamma^\delta _{\alpha\beta} - \frac{\partial x^\beta}{\partial x'^\gamma} \frac{\partial x'^\alpha}{\partial x'^\mu} \frac{\partial^2 x'^\nu}{\partial x^\alpha \partial x^\beta}</math>
ここで、
:<math>- \frac{\partial x^\beta}{\partial x'^\gamma} \frac{\partial x'^\alpha}{\partial x'^\mu} \frac{\partial^2 x'^\nu}{\partial x^\alpha \partial x^\beta} = -\frac{\partial}{\partial x^\beta}\left( \frac{\partial x^\beta}{\partial x'^\gamma} \frac{\partial x'^\alpha}{\partial x'^\mu} \frac{\partial x'^\nu}{\partial x^\alpha} \right) + \frac{\partial x'^\nu}{\partial x^\alpha}\frac{\partial^2 x^\beta}{\partial x^\beta \partial x'^\gamma}\frac{\partial x^\alpha}{\partial x'^\mu} + \frac{\partial x'^\nu}{\partial x^\alpha}\frac{\partial^2 x^\alpha}{\partial x^\beta \partial x'^\mu}\frac{\partial x^\beta}{\partial x'^\gamma} = \frac{\partial x'^\nu}{\partial x^\alpha}\frac{\partial^2 x^\alpha}{\partial x'^\gamma \partial x'^\mu}</math>
となるから、結局
:<math>\Gamma'^{\lambda }{}_{\mu \nu} = \frac{\partial x'^\lambda}{\partial x^\alpha}\frac{\partial x^\beta}{\partial x'^\mu}\frac{\partial x^\gamma}{\partial x' ^\nu} \Gamma^\alpha_{\beta\gamma} + \frac{\partial x'^\lambda}{\partial x^\alpha}\frac{\partial^2 x^\alpha}{\partial x'^\mu \partial x'^\nu} </math>
を得る。この式の第一項はテンソルの変換のようだが、第二項が存在するために、クリストッフェル記号はテンソルではない。そもそも、クリストッフェル記号がテンソルではないことはその定義からもすぐにわかることだ。クリストッフェル記号がテンソルであったとすると、ベクトルの微分がテンソルでないのだから、その和である共変微分をテンソルにすることが出来なくなってしまう。
== 付録 ==
ポアソン方程式
<math>\triangle \varphi(\boldsymbol x) = -f(\boldsymbol x)</math>
の特殊解を求める。ポアソン方程式は線型だから、全空間を無限小の体積 <math>dV</math> を持つ空間に分割し、点 <math>\boldsymbol x'</math> の位置にある <math>f(\boldsymbol x')</math> が存在して、その他では <math>f = 0</math> となる場合に作る <math>\varphi</math> の足し合わせが特殊解となる。
<math>\nabla \cdot \nabla \varphi = -f(\boldsymbol x) </math>
を <math>\boldsymbol x'</math> を中心する球座標を採用し、原点を中心とする半径 <math>r</math> の球で積分して、ガウスの定理を使うと、
<math>\int_V \nabla \cdot \nabla \varphi(\boldsymbol x) = \oint_S \nabla \varphi(\boldsymbol x) \cdot d\boldsymbol S = -\int_V f(\boldsymbol x) dV = -f(\boldsymbol x')dV </math>
となる。ここで、<math>\nabla \varphi</math> は対称性より、<math>r</math> のみの関数で、動径方向のベクトルであるから、
<math>\oint_S \nabla \varphi(\boldsymbol x) \cdot d\boldsymbol S = 4\pi r^2 \nabla \varphi(r) \cdot \boldsymbol e_r </math>
となる。
<math>\nabla \varphi(r) = -\frac{f(\boldsymbol x')dV}{4\pi r^2} \boldsymbol e_r </math>
と、
<math>\nabla \varphi = \frac{d\varphi(r)}{dr} \boldsymbol e_r </math>
より、
<math>\varphi(r) = \frac{f(\boldsymbol x')dV}{4\pi r} </math>
を得る。
これを足し合わせた関数
<math>\varphi(\boldsymbol x) = \frac{1}{4\pi}\int\frac{f(\boldsymbol x')}{r}dV </math>
がポアソン方程式の特殊解となる。
次に、偏微分方程式 <math>\Box \varphi(\boldsymbol x, t) = f(\boldsymbol x, t)</math> の特殊解を求める。これは線型だから、ポアソン方程式に対してやったように、無限小の空間に分割して、その足し合わせとして解を求める。点 <math>\boldsymbol x'</math> を中心に球座標を取れば、<math>\varphi</math> は球対称だから、<math>\varphi</math> は <math>r</math> のみの関数である。<math>r>0</math> の点では、
<math>\frac{1}{c^2} \frac{\partial^2 \varphi}{\partial t^2} - \frac{1}{r^2}\frac{\partial}{\partial r}\left(r^2\frac{\partial \varphi}{\partial r}\right) = 0</math>
が成り立つ。ここで、
<math>\varphi = \frac{\chi}{r}</math>
と置くと、
<math>\frac{1}{c^2} \frac{\partial^2 \chi}{\partial t^2} - \frac{\partial^2 \chi}{\partial r^2} = 0</math>
となる。これは波動方程式だから、解は <math>g_1,g_2</math> を適当な関数として、
<math>\chi = g_1\left(t - \frac{r}{c}\right) + g_2\left(t + \frac{r}{c}\right)</math>
となる。<math>g_1\left(t - \frac{r}{c}\right)</math> は時間経過によって波面が広がっていく解である。しかし、<math>g_2\left(t + \frac{r}{c}\right)</math> は、それとは逆の時間経過によって波面が <math>\boldsymbol x'</math> に収束していく解となる。このような解は物理的に意味を持たないから、<math>g_1\left(t - \frac{r}{c}\right)</math> のみを採用する:
<math>\varphi = \frac{g_1\left(t - \frac{r}{c}\right)}{r}</math>
次に、<math>g_1</math> の具体的な形を求めたい。<math>r</math> が十分小さい領域では、
<math>\left|\frac{\partial \varphi}{\partial t}\right| \ll |\triangle \varphi|</math>
となるから、<math>\Box \varphi \approx - \triangle \varphi </math> と近似される。これはポアソン方程式と同じ式となるから、
<math>\varphi = \frac{f\left(\boldsymbol x', t - \frac{r}{c}\right)dV}{4\pi r}</math>
となる。これを <math>\boldsymbol x'</math> について足し合わせれば、特殊解
<math>\varphi(\boldsymbol x, t) = \frac{1}{4\pi}\int\frac{f\left(\boldsymbol x', t - \frac{r}{c}\right)}{r}dV</math>
を得る。ただし、<math>r = |\boldsymbol x - \boldsymbol x' |</math> である。
=== 自然単位系 ===
一般に、我々が何かを測るというとき、それは何かを何かと比較するということを意味する。例えば、我々が、奈良の大仏の高さは15メートルだというとき、これは奈良の大仏の高さは地球の子午線の北極から赤道までの長さの1000万分の15であるということを言っている。この場合は奈良の大仏の高さを地球の子午線の長さと比較することによって測っている。このように、ものを測る際の基準を単位というが、単位は全く任意に設定することができる。
すなわち、換算方法さえ定めていれば、どの量をどんな単位で測ってもいいということである。例えば、時間間隔をメートルで測ってもいい。具体的には、時間をその間に光が真空中で移動する距離で表すなどの方法が考えられる。
<math>c,\, \hbar</math> などの物理定数を基準に作った単位を自然単位系という。相対論的量子力学では、<math>c = \hbar = 1</math> とした自然単位系が使われることが多い。このような単位系を使うと式に登場する物理定数を書く必要がなくなるため簡単になる。
例えば、<math>c=1</math> とするとき、この右辺は無次元量の1である。すなわち、左辺の光速度も無次元量となる。最高の速度である光速度が1ということは、すべての速度は0から1までの実数値で表せることになる。実用には向かないが、宇宙全体を俯瞰する理論物理の視点で考えてみれば、扱いやすいだろう。
<math>c=1</math> に国際単位系での光速度を代入すると、<math>1=299~792~458 \, \rm{m/s}</math> あるいは、<math>1 \, \rm{s} = 299~792~458 \, \rm{m}</math> となる。これは、時間をメートルによって計るということを意味する。あるいは、長さを秒によって計るとしてもいいが、メートルの方がより基本的な単位だろうから、時間をメートルで測るということにしておこう。
次に、<math>\hbar = 1</math> としよう。これは、<math>\hbar = 1.054~571~817 \, \rm{J\, s}</math> だから、<math>1 = 1.054~571~817 \times 10^{-34} \, \rm{J\, s}</math> ということを意味する。ここで、<math>\rm{J\, s} = \rm{kg\, m^2\, s^{-1}}</math> だから、<math>1\, \rm{kg} = \frac{1}{1.054~571~817 \times 10^{-34}} \, \rm{m^{-2}\, s} = \frac{299~792~458}{1.054~571~817 \times 10^{-34}} \, \rm{m^{-1}}</math> となる。これで、質量をメートルで測ることができる。
これで、秒とキログラムのメートルとの関係が分かった。それらの組み立てで <math>{\rm kg}^a \, {\rm m}^b\, {\rm s}^c</math> と表される単位は自然単位系では <math>{\rm m}^{-a+b+c}</math> となることが分かる。実際に自然単位系を使う場合は <math>\rm m</math> よりも <math>\rm GeV</math> を使うことが多い。その場合は、<math>{\rm kg}^a \, {\rm m}^b\, {\rm s}^c \to {\rm GeV}^{a-b-c}</math> となる。
素粒子物理学では、さらに <math>\mu_0 = 1</math> とした単位系が使われる。この単位系では、電磁的な単位もGeVの冪で表される。
さらに自然単位系を発展させて、重力定数 <math>G</math> とボルツマン定数 <math>k</math> を1とすると、すべての物理量が無次元量となる。これは自然単位系の極北と言えるだろう。
== 参考文献 ==
* エリ・デ・ランダウ、イェ・エム・リフシッツ著、恒藤敏彦他訳『場の古典論(原著第6版)』東京図書(1978)
== 旧版 ==
{{進捗状況}}
{{蔵書一覧}}
* [[特殊相対論 はじめに|はじめに]]
* [[特殊相対論 歴史的導入|歴史的導入]]
* [[特殊相対論 テンソル|テンソル]]
* 計算例
** [[特殊相対論 時間の遅れ|時間の遅れ]]
** [[特殊相対論 ローレンツ収縮|ローレンツ収縮]]
** [[特殊相対論 速度の合成則|速度の合成則]]
* [[特殊相対論 4元運動量|4元運動量]]
<!-- E = mc^2 !!! -->
* [[特殊相対論 運動方程式|運動方程式]]
* [[特殊相対論 電磁気学への導入|電磁気学への導入]]
{{DEFAULTSORT:とくしゆそうたいろん}}
[[Category:特殊相対論|*]]
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高校化学 物質の三態
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{{pathnav|高等学校の学習|高等学校理科|高等学校化学|[[高等学校 化学|化学]]|pagename=物質の三態|frame=1|small=1}}物質は温度・圧力によって物質の状態が変化する。物質自体は同じであり、状態だけ変わるので物理変化である。[[w:化学変化|化学変化]]とは違うので注意すること。
== 物質の三態 ==
物質は、固体・液体・気体の3つの状態をとる。これを物質の'''三態'''という。一般に、物質の温度や圧力を変化させていくと、物質の状態が変わる。物質の三態は、物質を構成する粒子の集合する状態によって決まり、粒子の熱運動の激しさと、分子に働く引力との関係によって決まっている。
== 三態変化 ==
[[File:Chemical name state change japanese.svg|thumb|500px|状態変化の名称<br>固体から気体になる昇華の例としては、たとえばドライアイス(固体の二酸化炭素)や、ヨウ素の単体があります。]]
・固体から液体になる変化を'''融解'''、液体から気体になる変化を'''蒸発(気化)'''と呼ぶ。気体から液体になる変化を'''凝縮(液化, 凝結, 凝析)'''、液体から固体になる変化を'''凝固'''と呼ぶ。固体から気体になる変化を'''昇華'''、気体から固体になる変化を'''凝華'''という。<BR>
状態が変わっても物質の名前は変わらない。ただし例外として水(H<sub>2</sub>O)がある。水は固体を特別に'''氷'''、液体を'''水'''、気体を'''水蒸気'''と呼ぶ。また、液体窒素など慣用的に呼ばれるものもある。ただしどのような状態でも化学式は変わらない。<BR>
また、純物質において固体が液体になる温度は物質ごとに決まっており、その温度をその物質の'''融点(凝固点)'''と呼ぶ。同様に液体が気体になる温度をその物質の'''沸点'''と呼ぶ。大気圧での水の融点は0度、沸点は100度である。
{{-}}
== 状態図 ==
<gallery widths="400px" heights="350px">
File:水の状態図.svg|<center>水の状態図</center>
File:二酸化炭素の状態図.svg|
<center>二酸化炭素の状態図</center>
</gallery>
ふつうの純物質は、温度と圧力が決まると、その状態が決まる。
温度と圧力によって、その物質がどういう状態をとるかを表した図を'''状態図'''という。
図に、水の状態図と、二酸化炭素の状態図を表す。
図の中央付近にある3本の曲線が交わったところは'''三重点'''といい、気体・液体・固体の状態が共存する。
なお、図中にある 1.013×10<sup>5</sup> Pa は、大気圧である。図より、大気圧で水の融点は0 ℃、沸点は100 ℃であることが確認できる。
また、物質の温度と圧力を高めていき、温度と圧力がそれぞれの臨界点を超える高温・高圧になると、その物質は'''超臨界状態'''という状態になる。超臨界状態では、液体と気体の区別がなくなる<ref>そもそも、なぜ気体と液体の区別があるのかというと、気液平衡の状態が存在するからである。気液平衡状態では気体と液体という2つの異なる状態が共存するため、気体と液体を区別する意味が生まれる。もし、気体と液体が両立する状態がなく、気体から液体へ連続的に変化するならば気体と液体を区別する必要はなくなる。超臨界状態とは、そのように、気体と液体が連続的に変化する状態である。超臨界流体は気体と液体の区別がなくなるとは、このような意味である。</ref>。
二酸化炭素の超臨界状態ではカフェインをよく溶かすため、コーヒー豆のカフェインの抽出に利用されている。
== ※ 範囲外?: 絶対零度 ==
物質はどんなに冷却しても、-273.15 ℃ (0 K) までしか冷却しない。この温度のことを'''絶対零度'''という。
[[カテゴリ:物質|ふしつのさんたい]]
[[Category:高等学校化学|ふしつのさんたい]]
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会社法第580条
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2026-05-24T05:18:15Z
Tomzo
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wikitext
text/x-wiki
[[法学]]>[[民事法]]>[[商法]]>[[会社法]]>[[コンメンタール会社法]]>[[第3編 持分会社 (コンメンタール会社法)]]
==条文==
(社員の責任)
;第580条
# 社員は、次に掲げる場合には、連帯して、[[持分会社]]の債務を弁済する責任を負う。
##当該持分会社の財産をもってその債務を完済することができない場合
##当該持分会社の財産に対する強制執行がその効を奏しなかった場合(社員が、当該持分会社に弁済をする資力があり、かつ、強制執行が容易であることを証明した場合を除く。)
# 有限責任社員は、その出資の価額(既に持分会社に対し履行した出資の価額を除く。)を限度として、持分会社の債務を弁済する責任を負う。
==解説==
本条は、持分会社の社員が会社の債権者に対して負う「直接責任」の要件と範囲を定めた規定である。
社員は、会社が債務を履行しない場合(補充性)、会社の債権者に対して直接弁済する責任を負う。ただし、社員に認められる抗弁権は民法の保証人とは異なり、[[催告の抗弁|催告の抗弁権]]はなく、会社の弁済資力と執行の容易性を証明した場合にのみ執行を拒めるという、[[検索の抗弁]]に類似した独自の抗弁権(第1項2号)が認められている。
また、すべての社員が全債務を負うわけではない。無限責任社員は会社の全債務について連帯して無限の責任を負うが、有限責任社員(合資会社の有限責任社員や合同会社の社員)は、自身の出資価額を限度とした有限責任にとどまる。合同会社では社員の加入時に出資履行が必須であるため破綻後に新たな責任は生じないが、合資会社の有限責任社員において未履行の出資がある場合は、その未履行額の範囲内で直接の支払い責任(第2項)が生じる。
==関連条文==
*[[会社法第581条]](社員の抗弁)
*[[会社法第588条]](無限責任社員であると誤認させる行為等をした有限責任社員の責任)
*[[会社法第589条]](社員であると誤認させる行為をした者の責任)
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{{前後
|[[コンメンタール会社法|会社法]]
|[[第3編 持分会社 (コンメンタール会社法)|第3編 持分会社]]<br>
[[第3編 持分会社 (コンメンタール会社法)#2|第2章 社員]]<br>
|[[会社法第579条]]<br>(持分会社の成立)
|[[会社法第581条]]<br>(社員の抗弁)
}}
{{stub|law}}
[[category:会社法|580]]
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高校化学 電池と電気分解
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{{pathnav|高等学校の学習|高等学校理科|高等学校化学|[[高等学校 化学|化学]]|pagename=電池と電池分解|frame=1|small=1}}
== イオン化傾向 ==
金属が水または水溶液中で陽イオンになりやすい性質を、'''イオン化傾向'''という。
=== 亜鉛と銅のイオン化傾向 ===
硫酸銅(II) <chem>CuSO4</chem> 水溶液に亜鉛板 <chem>Zn</chem> を入れると、亜鉛の表面に銅が付着する。これは、亜鉛 <chem>Zn</chem> は銅 <chem>Cu</chem> よりもイオン化傾向が大きいため、<chem>Zn</chem> がイオン化し、<chem>Cu</chem> の単体が析出したためである。
* <chem>Zn -> Zn^2+ + 2e^-</chem>
* <chem>Cu^2+ + 2e^- -> Cu</chem>
=== 銅と銀のイオン化傾向 ===
銅と銀のイオン化傾向を比べるために、硝酸銀<chem>AgNO3</chem>の溶液に銅板を入れる。すると、銅板の表面に銀が析出する。一方、銅は陽イオンとなり溶ける。この銅イオンのため溶液はしだいに青くなる。以上の変化を反応式で書くと、
:<chem>Cu + 2Ag^+ -> Cu^2+ + 2Ag</chem>
なお、この反応で生じた銀を、生じ方が樹木が伸びるように析出した銀が伸びることから'''銀樹'''(ぎんじゅ)という。
また、硫酸銅(II) <chem>CuSO4</chem> の溶液に銀板をいれても、変化しない。
これらのことから、銅は銀よりもイオン化傾向が大きいことがわかる。
=== イオン化列 ===
さまざまな溶液や金属の組み合わせで、イオン化傾向の比較の実験を行った結果、イオン化傾向の大きさが決定された。
イオン化傾向の大きい金属を並べた金属のイオン化列は、以下のようになる。
: <chem>Li > K > Ca > Na > Mg > Al > Zn > Fe > Ni > Sn > Pb > H2 > Cu > Hg > Ag > Pt > Au</chem>
水素は金属では無いが比較のため、イオン化列に加えられる。金属原子は他にもあるが、高校化学ではこの金属のイオン化列がよく使われる。
語呂合わせとして、
「{{Big|{{Ruby|リッチ|Li}}に{{Ruby|か|K}}そう{{Ruby|か|Ca}}{{Ruby|な|Na}}、{{Ruby|ま|Mg}}{{Ruby|あ|Al}}、{{Ruby|あ|Zn}}{{Ruby|て|Fe}}{{Ruby|に|Ni}}{{Ruby|すん|Sn}}{{Ruby|な|Pb}}、{{Ruby|ひ|H2}}{{Ruby|ど|Cu}}{{Ruby|す|Hg}}{{Ruby|ぎ|Ag}}る{{Ruby|ハク|Pt}}{{Ruby|金|Au}}}}」
がある。
{| class="wikitable" style="width:100%"
|+ イオン化列と反応性
! イオン化列 || K || Ca || Na || Mg || Al || Zn || Fe || Ni || Sn || Pb || (H2) || Cu || Hg || Ag || Pt || Au
|-
|空気中での反応||colspan="3" style="text-align:center"|速やかに酸化 ||colspan="9" style="text-align:center"|表面に酸化皮膜 ||colspan="4" style="text-align:center"|酸化されない。
|-
|水との反応||colspan="3" style="text-align:center"|常温で反応して水素を発生。||colspan="4" style="text-align:center"|高温の水蒸気と反応||colspan="9" style="text-align:center"|反応しない。
|-
|酸との反応||colspan="11" style="text-align:center"|塩酸、希硫酸と反応して水素を発生する。 ||colspan="3" style="text-align:center"|酸化力の強い酸(<chem>HNO3</chem>など)に溶ける。 ||colspan="2" style="text-align:center"|王水にのみ溶ける。
|}
==== 酸素との反応性 ====
イオン化傾向の大きい金属の溶解も、酸化の現象も、ともに物質からの電子の放出の現象であるように、一般にイオン化傾向が大きい金属ほど、酸化をされやすい金属である。実際に <chem>K,\, Ca,\, Na</chem> の純物質の表面は、空気中ではすぐに酸化をして金属光沢を失い、放置すると内部まで酸化をする。
<chem>Mg,\, Al,\, Fe,\, Cu</chem> などは、空気中に放置すると、やがて表面に酸化物の皮膜を生じる。酸化物の皮膜の化学式はそれぞれ、<chem>MgO,\, Al2O3,\, Fe2O3,\, Cu2O,\, CuO</chem> などである。
==== 水との反応 ====
水との反応と、イオン化傾向との関係については、アルカリ金属やアルカリ土類金属のK , Ca , Naとは、常温で水と激しく反応し、水酸化物を生じ、また、水素を発生する。
マグネシウム Mg は常温の水とは反応しづらく、沸騰させた水にMgを入れた場合や、高温の水蒸気に Mg を作用させた場合には、反応して水酸化物および水素を発生する。
: <chem>Mg + 2H2O -> Mg(OH)2 + H2</chem>
Al、Zn、Feでは、金属を加熱した状態で、高温の水蒸気を作用させると反応が起こり、酸化物および水素を発生する。反応後の生じる物質は、水酸化物では無く、酸化物なので注意。
: <chem>2Al + 3H2O -> Al2O3 + 3H2</chem>
: <chem>3Fe + 4H2O -> Fe3O4 + 4H2</chem>
Niおよび、Niよりイオン化傾向の小さい金属は、水とは反応しない。
==== 酸との反応 ====
一般に、水素よりもイオン化傾向の大きい金属の単体は、希硫酸や塩酸などと反応し、酸のH<sup>+</sup>を還元するので水素を発生し、金属自身は陽イオンになる。
* Mgと酸
Mgは希塩酸とも強く反応し、水素を生じる。
(KやCaについては、溶媒の水そのものと激しく反応するので、ここでは考察対象から外される。)
* Al,Zn,Feと酸
Al,Zn,Feは希塩酸 <chem>HCl</chem> や希硫酸 <chem>H2SO4</chem> とも反応し、水素を発生する。
: <chem>2Al + 3H2O -> Al2O3 + 3H2</chem>
: <chem>Zn + 2HCl -> ZnCl2 + H2</chem>
: <chem>Fe + H2SO4 -> FeSO4 + H2</chem>
* Pbと酸
Pbは希酸とは反応しない。
* Cu,Hg,Agと酸
Cu,Hg,Agは塩酸や希硫酸には溶けない。これらCuとHgとAgは、水素よりもイオン化傾向が小さい。これを溶かす酸には、硝酸<chem>HNO3</chem>か、熱した濃硫酸<chem>H2SO4</chem>が必要である。これらの酸(<chem>HNO3</chem> あるいは <chem>H2SO4</chem>)は、強い酸化力をもつ。
:(濃硝酸) <chem>3Cu + 8HNO3 -> 3Cu( NO3 )2 + 2NO + 4H2O</chem>
:(希硝酸) <chem>Cu + 4HNO3 -> Cu( NO3 )2 + 2NO2 + 2H2O</chem>
:(熱濃硫酸)<chem>Cu + 2H2SO4 -> CuSO4 + 2H2O + 2SO2</chem>
これらの反応のとき、水素は発生せず、希硝酸では <chem>NO</chem> が発生し、濃硝酸では <chem>NO2</chem> が発生し、硫酸では二酸化硫黄 <chem>SO2</chem> が発生する。
== 電池 ==
=== 電池の仕組み ===
二種類の金属単体を電解質水溶液に入れ、極間を導線でつなぐと電池ができる。これはイオン化傾向が大きい金属が電子を放出して陽イオンとなって溶け、電子が導線を伝って、水溶液中のイオン化傾向の小さい金属のイオンが電子を得て析出するためである。
電子が流れ出す側の電極の金属を'''負極'''、電子を受け取る側の金属の電極を'''正極'''という。正極と負極の電位差を'''起電力'''という。正極で還元される物質を'''正極活物質'''、負極で酸化される物質を'''負極活物質'''という。また、電子を集め回路に送る役割を持つものを集電体という。
=== ダニエル電池 ===
[[File:Galvanic cell-ja.png|400px|thumb|ダニエル電池の構造]]
亜鉛板Znを入れたZnSO<sub>4</sub>水溶液と、銅板Cuを入れたCuSO<sub>4</sub>水溶液を、両方の溶液が混ざらないように素焼き板(溶液は混合しないがイオンは通過できる)などで区切った電池をダニエル電池という。素焼き板の間をSO<sub>4</sub><sup>2-</sup>が亜鉛板側に移動する。CuSO<sub>4</sub>水溶液は濃く、ZnSO<sub>4</sub>水溶液は薄い方がよい(Znの溶出が進み、Cuの析出が進む方向)。
:起電力:1.1 V
負極では、亜鉛が負極活物質であり集電体でもある。正極では、硫酸銅が正極活物質となり、銅板が集電体となる。
陽極(負極)での反応
:<chem>Zn -> Zn2+ + 2e-</chem>
陰極(正極)での反応
:<chem>Cu^2+ + 2e- -> Cu</chem>
=== 乾電池 ===
[[画像:Zincbattery.png|200px|thumb|right|マンガン乾電池の内部構造<br>1.正極端子 2.集電体(炭素棒) 3.負極(亜鉛) 4.正極(二酸化マンガン) 5.電解液(塩化亜鉛・塩化アンモニウム) 6.負極端子]]
電池の電解液は液体であるから、そのままでは持ち運びに不便である。電解液を糊状にして携帯できるようにしたものを'''乾電池'''という。
代表的な乾電池に'''マンガン乾電池'''がある。マンガン乾電池には、デンプンで糊状にした塩化アンモニウムが電解液となる。
'''マンガン乾電池'''
:負極:亜鉛
:電解液:塩化亜鉛、塩化アンモニウム
:正極:二酸化マンガン
:起電力:1.5 V
反応式は、負極では亜鉛が以下のように反応して溶け出る。
:<math> \mathrm{ Zn \rightarrow Zn^{2+} + 2e^- } </math>
:<math> \mathrm{ Zn^{2+}+4NH_4^{+} \rightarrow [Zn(NH_3)_4]^{2+} + 4H^+ } </math>
正極では
<chem>MnO2 + H+ + e- -> MnO(OH)</chem>
炭素棒は集電体であり電子を媒介するだけで反応しない。電子を受け取るのは MnO<sub>2</sub> である。
'''アルカリマンガン乾電池'''
[[ファイル:Alkaline-battery.svg|200px|thumb|right|アルカリマンガン乾電池の構造1.正極端子 2.集電体 3.負極(亜鉛)4.セパレータ 5.正極(二酸化マンガン)6.外装 7.ガスケット 8.保護キャップ 9.負極端子]]
:負極:亜鉛
:電解液:水酸化カリウム
:正極:二酸化マンガン
:起電力: 1.5 V
;反応式
:負極:<chem>Zn + 2OH^- -> ZnO + H2O + 2e-</chem>
:正極:<chem>MnO2 + H2O + e^- -> MnO(OH) + OH^-</chem>
基本的にはマンガン乾電池の電解液を水酸化カリウムに変えたものである。一般にアルカリ乾電池と言われる。アルカリ乾電池はマンガン乾電池よりも容量が多い。アルカリ電池はボタン型電池としても使用される。
=== 二次電池 ===
ダニエル電池や乾電池は、使用すると徐々に起電力が低下し、再び電池として使えるようにはならない。このような電池を'''一次電池'''という。充電によって逆反応を起こし、繰り返して使用できる電池を蓄電池または'''二次電池'''という。
電池から電流を取り出している状態を'''放電'''という。
=== 鉛蓄電池 ===
鉛蓄電池は代表的な二次電池で、自動車のバッテリーなどに利用される。
:負極:鉛
:電解液:硫酸水溶液
:正極:酸化鉛(IV)
:起電力:2.1 V
[[ファイル:Photo-CarBattery.jpg|200px|thumb|鉛蓄電池の外観(自動車用)]]
'''放電'''
放電時の反応は、
負極:<chem>Pb + SO4^2- -> PbSO4 + 2e^-</chem>
正極:<chem>PbO2 + 4H^+ + SO4^2- + 2e^- -> PbSO4 + 2H2O</chem>
である。放電では、正極と負極の両方に、<chem>PbSO4</chem> が付着する。電解液である硫酸は消費され、硫酸の濃度は低下していく。
'''充電'''
充電時は放電の逆反応が起こる。
負極:<chem>PbSO4 + 2e^- -> Pb + SO4^2-</chem>
正極:<chem>PbSO4 + 2H2O -> PbO2 + 4H^+ + SO4^2- + 2e^-</chem>
鉛蓄電池の反応をまとめると次のようになる。
<chem>{Pb {+} 2H2SO4 {+} PbO2} <=>[\text{放 電}][\text{充 電}] 2PbSO4 {+} {2H2O}</chem>
放電時は極板の質量が増加し、硫酸の濃度が減少する。逆に、充電時は極板の質量が減少し、硫酸の濃度が増加する。
=== 燃料電池 ===
[[Image:Solid oxide fuel cell protonic.svg|thumb|燃料電池。 (水素-酸素系)<br>左側から供給された水素 H<sub>2</sub> の一部は、正極でイオン化され、負極にたどり着き、酸素 O<sub>2</sub> と反応し水になる。<br>anode = 陰極 , cathode = 正極 , Fuel = 燃料 , electrolyte = 電解質 .]]
燃料電池は、水素などの燃料を酸素と反応させ、酸化還元反応のエネルギーを電気として取り出す電池である。陽極の燃料が水素の場合は、陰極で酸素および回収した電子と反応し水になる。様々な方式の燃料電池がある。
'''リン酸型燃料電池'''
:負極:水素
:電解液:リン酸水溶液
:正極:酸素
:起電力:1.2 V
電解質にリン酸水溶液を用いる。負極に水素を供給し、正極には酸素を供給する。負極で起きる反応は、
:負極: <chem>2H2 -> 4H+ + 4e-</chem>
である。負極で生じた水素イオンが電解質を移動し、正極で酸素によって酸化される。
:正極:<chem>O2 + 4H+ + 4e- -> 2H2O</chem>
全体の反応は <chem>2H2 + O2 -> 2H2O</chem> となる。
正極と負極は多孔質になっており、水素や酸素を通過させられるようになっている。
この燃料電池の生成物が水だけなので、環境にやさしいと考えられている。
燃料となる水素は、余剰電力を使った水の電気分解によって製造することができる。この場合、電気エネルギーを水素として化学エネルギーに変換して貯蔵し、必要なときに燃料電池で電気エネルギーを取り出す装置として考えることができる。
'''アルカリ型燃料電池'''とは、電解質に水酸化カリウム KOH などを用いる方式である。
:負極:水素
:電解液:水酸化カリウム水溶液
:正極:酸素
他に、固体高分子型や固体酸化物型などがある。
=== リチウムイオン電池 ===
リチウムイオン電池は軽く、起電力が大きいので、携帯電話やノートパソコン、電気自動車、蓄電所など幅広く利用されている。
:負極: Liと黒鉛Cの化合物
:電解液:リチウム塩および有機溶媒
:正極: コバルト酸リチウム LiCoO<sub>2</sub>
:起電力: 3.7 V
放電時の反応
負極:<chem>Li_{\it{x}}C_6 -> {6C} + {\it{x}}\, {Li+} + {\it{x}}\, e-</chem><ref>負極の反応を <chem>LiC_6 -> Li_{(1-{\it{x}})}{C6} + {\it{x}}\, {Li+} + {\it{x}}\, e-</chem> とすることもある。これは、電池内に余分なリチウム原子があるだけの違いである。実際、 <math>1-x</math> の分のリチウム原子はずっと黒鉛に格納されたままで、反応には寄与しない。</ref>
正極:<chem>Li_{(1-{\it{x}})}{CoO2} + {\it{x}}\, {Li+} + {\it{x}}\, {e^-} -> LiCoO2</chem>
充電時はこの逆反応が起こる。すなわち、
負極:<chem> {6C} + {\it{x}}\, {Li+} + {\it{x}}\, {e^-} -> Li_{\it{x}}C6</chem>
正極:<chem>LiCoO2 -> Li_{(1-{\it{x}})}{CoO2} + {\it{x}}\, {Li+} + {\it{x}}\, {e^-}</chem>
となる。ここで、<math>x</math> は <math>0 <x \le 1</math> を満たす実数である。負極 <chem>Li_{\it{x}}C_6</chem> は黒鉛の中に、リチウム原子が炭素原子と <math>x : 6</math> の割合で格納されている化合物である。リチウム原子は黒鉛の層の間に格納されている(層間化合物)。最大で炭素原子6個につき、リチウム原子1個を格納できる。また、<chem>6C</chem> というのは単なる黒鉛のことである。
[[ファイル:Lithium-cobalt-oxide-3D-balls.png|サムネイル|コバルト酸リチウムの構造。酸素(赤)とコバルト(青)による層と、リチウム(紫)の層が交互に積層した構造である。]]
また、正極のコバルト酸リチウムは、酸素、コバルト、リチウムの層が重なった層状の構造である。電解液は炭酸エチレンや炭酸ジメチル、炭酸ジエチルなどの有機溶媒に <chem>LiPF6</chem> を溶かしたものが使用される。
<gallery widths="250px">
ファイル:Ethylene carbonate.png|炭酸エチレン
ファイル:Dimethyl carbonate Structural Formulae.svg|炭酸ジメチル
ファイル:Diethylcarbonat.svg|炭酸ジエチル
</gallery>
==== 参考事項 ====
リチウムイオン電池は他の電池と違い、水溶液を電解液として用いることができない。これは、リチウムのイオン化傾向が高く、水に酸化されてしまうためである。
<chem>2Li + 2H2O -> 2LiOH + H2</chem>
従って、電解液の溶媒はリチウムイオンを溶かすことができる有機化合物の極性分子になる。
コバルト酸リチウム <chem> Li{CoO2}</chem> は、<chem>Li+</chem> の層を <chem>O^2-</chem> の層で囲む構造をしている。この層の間には引力が働いているが、リチウムイオン電池を充電すると、一部のリチウムは離脱して <chem> Li_{(1-{\it{x}})}{CoO2}</chem> となる。このとき、<chem>Li+</chem> と <chem>O^2-</chem> の間に働く引力が小さくなり、相対的に <chem>O^2-</chem> の層と <chem>O^2-</chem> の層の間の斥力が大きくなる。この効果は、離脱するリチウムの量が多いほど大きくなり、<math>x</math> の値が <math>0.5</math> を超えるとコバルト酸リチウムに不可逆的な構造変化が起きる。従って、実用上は <math>x \le 0.5</math> に抑えられる。また、<math>x</math> が <math>0.5</math> を超える状態は過充電と呼ばれ、コバルト酸リチウムの酸素が放出され、電解液と反応を起こすため危険である。
==== 全固体電池 ====
リチウムイオン電池の電解液の部分を固体電解質に変えたものを全固体電池という。
全固体電池は可燃性の有機溶媒を使用しないため安全性が向上する。また、エネルギー密度も向上すると考えられている。
固体電解質には、硫化物系や、酸化物系、高分子系などが用いられる。
=== その他の実用電池 ===
実用電池には上述した乾電池や鉛蓄電池の他にも、さまざまな電池があるが、イオン化傾向を利用しているということなどの基本的な仕組みは変わらない。
{| class="wikitable"
|+ その他の実用電池
|-
! colspan="2" rowspan="2" |名称|| colspan="3" |電池の構成|| rowspan="2"| 起電力/V
|-
! 負極 !! 電解質 !! 正極
|-
! rowspan="3" |一次電池
! リチウム電池
| Li
| 有機電解質
| MnO<sub>2</sub>
| 3.0
|-
! 酸化銀電池
| Zn
| KOH
| Ag<sub>2</sub>O
| 1.55
|-
! 空気亜鉛電池
| Zn
| KOH
| O<sub>2</sub>
| 1.4
|-
! rowspan="2"|二次電池
! ニッケル・カドミウム電池
| Cd
| KOH
| NiO(OH)
| 1.2
|-
! ニッケル水素電池
| MH<br>(水素吸蔵合金)
| KOH
| NiO(OH)
| 1.2
|-
|}
;リチウム電池
:負極: Li
:電解液:LiClO<sub>4</sub> および有機溶媒
:正極:<chem>MnO2</chem>
:起電力:3.0 V
:一次電池
リチウムは水と反応するので、電解質に水を使うことができない。このため、エチレンカーボネートなどの有機物を電解に用いる。
リチウム電池は長寿命のため、時計や電卓、心臓用ペースメーカなどに用いられている。また、ボタン型電池の内名称がCで始まるものはこのリチウム電池である。
;酸化銀電池
:負極: Zn
:電解液:KOH水溶液
:正極: Ag<sub>2</sub>O
:起電力: 1.55 V
:一次電池
銀電池ともいう。銀電池は電圧が安定しているため、時計や電子体温計などに用いられる場合が多い。ボタン型電池の内、名称がSで始まるものは銀電池である。
;空気亜鉛電池
:一次電池
空気電池ともいう。空気電池は軽量なので、よく補聴器に用いられている。購入時には、空気の侵入をふせぐシールが貼られている。使用し始める際には、シールをはがす。シールをはがすと放電が始まる。はがしたシールを貼り直しても、保存は効かない。
;ニッケルカドミウム電池
:負極: Cd
:電解液:KOH水溶液
:正極: オキシ水酸化ニッケル NiO(OH)
:起電力: 1.2V
:ニ次電池
ニッケルカドミウム電池は電動工具などによく利用されている。カドミウムの有害性の問題があるので、生産量は減少しており、代替品としてニッケル水素電池に置き換えられていっている。
;ニッケル水素電池
:負極: 水素吸蔵合金(MH)
:電解液:KOH水溶液
:正極: オキシ水酸化ニッケル NiO(OH)
:起電力: 1.3V
:ニ次電池
負極の水素吸蔵合金は、結晶格子の間に水素を取り込め、必要に応じて取り込んだ水素を放出できる。ニッケル水素電池は自動車のハイブリッドカーのバッテリーに用いられる。
<!-- '''ボルタ電池'''[[File:ボルタの電池.svg|thumb|400px|ボルタの電池の原理図。酸が硫酸ではなく塩酸 HCl の場合。]]ボルタ電池は教科書では次のような説明がされるが、不正確な部分があるため、定期試験で出題されない限りは、覚える必要はない。
:希硫酸 H<sub>2</sub>SO<sub>4</sub> の中に亜鉛板Znと銅板Cuを入れたもの。
負極(亜鉛板)での反応
:Zn → Zn<sup>2+</sup> + 2e<sup>-</sup>
正極(銅板)での反応
:2H<sup> + </sup> + 2e<sup>-</sup> → H<sub>2</sub>↑
==== 起電力 ====
ボルタの電池では、得られる両極間の電位差は、1.1Vである。起電力は、両電極の金属の組み合わせによって決まる物質固有の値である。
==== 電池と酸化還元との関係 ====
ボルタの電池の亜鉛板で起きている反応は、電子を放出することから酸化反応である。また銅板で起きている反応は、電子を受けとっているので還元反応である。
=== 電池図 ===
:(-) Zn | H<sub>2</sub>SO<sub>4</sub>aq |Cu (+)
==== 分極 ====
ボルタ電池では、正極の銅板で発生する水素が銅板を包むので、銅板と溶媒とのあいだの電子の移動が妨げられる'''分極'''が起きる。このような分極を防ぐために酸化剤を溶液に加える。この分極を防ぐ目的で加える酸化剤を'''減極剤'''という。減極剤としては過酸化水素水 H<sub>2</sub>O<sub>2</sub>,またはMnO<sub>2</sub>,またはPbO<sub>2</sub>を使用する。{{clear}}
-->
== 電気分解 ==
電解質の水溶液に電極を2本入れて、それぞれの電極に外部の直流電源から電気を通じると、各電極で水溶液中の物質に化学反応を起こせる。これを'''電気分解'''という。
電気分解で、直流電源の負極につないだ側の電極を'''陰極(カソード)'''、正極につないだ側の電極を'''陽極(アノード)'''という。
陰極では、電源の負極から電子が送られてくるので、陰極では還元反応が起こる。陽極では、電解質から電子が流入するため、酸化反応が起こる。
なお、電気分解の電極には、化学的に安定な白金 Pt や炭素 C などを用いる。
この電気分解は、金属の精錬などに利用されている。
陰イオンのイオン化傾向は<chem>NO3^- > SO4^2- > OH^- > Cl^- > Br^- > I^-</chem>である。語呂合わせとして、
{{Ruby|昇|NO3-}}{{Ruby|龍|SO4^2-}}の{{Ruby|水|OH-}}は{{Ruby|演|Cl-}}{{Ruby|習|Br-}}{{Ruby|用|I-}}
がある。
=== 電気分解の反応 ===
==== 陰極での反応 ====
水溶液の電気分解では、水溶液中で、もっとも還元されやすい物質が電子を受け取り、還元反応が起こる。 従って、Cu<sup>2+</sup>、Ag<sup>+</sup>などのイオン化傾向の小さい金属イオンが溶けていれば、これらの金属が析出する。
K<sup>2+</sup>、Na<sup>+</sup>などのイオン化傾向の大きい金属イオンしか溶けてない場合、かわりにH<sub>2</sub>Oが還元されるため水素H<sub>2</sub>が発生する。
==== 陽極での反応 ====
電極が Pt, Au, 炭素の場合、イオン化傾向が OH<sup>-</sup> より小さい Cl<sup>-</sup>, I<sup>-</sup> , Br<sup>-</sup> があれば、酸化されてCl<sub>2</sub>, I<sub>2</sub>などが発生する。
イオン化傾向が OH<sup>-</sup> より大きい SO<sub>4</sub><sup>2-</sup>, NO<sub>3</sub><sup>-</sup> は酸化されにくいため、かわりに H<sub>2</sub>O が還元される酸素O<sub>2</sub>が発生する。
塩基性溶液では、OH<sup>-</sup> が酸化されて O<sub>2</sub> が発生する。
白金や炭素以外の物質を陽極(Cuの場合が多い)にした場合、陽極が酸化されて溶け出す。
=== 塩化銅水溶液の電気分解 ===
電極には、炭素電極または白金 Pt を用いる。塩化銅CuCl<sub>2</sub>水溶液では、陰極付近の水溶液では、電源から電子が送られてくるので以下の還元反応が起こり、陰極からは銅が析出する。
:陰極: Cu + 2e<sup>-</sup> → Cu
陽極では、電源へ電子が奪われるので、以下の酸化反応が起こり、陽極からは塩素が発生する。
:陽極: 2Cl<sup>-</sup> → Cl<sub>2</sub> + 2e<sup>-</sup>
=== 硫酸銅(II)水溶液の電気分解 ===
電極には、白金 Pt を用いるとする。硫酸銅 CuSO<sub>4</sub> 水溶液。
:陰極: Cu<sup>2+</sup> + 2e<sup>-</sup> → Cu
陰極での反応は還元反応である。
:陽極: 2H<sub>2</sub>O → O<sub>2</sub> + 4H<sup>+</sup> + 4e<sup>-</sup>
陽極での反応は酸化反応である。
この硫酸銅での電気分解の現象は、銅の電気精錬に応用されている。
=== 水の電気分解 ===
純水な水は電気を通さないので、導電性を高めるために硫酸か水酸化ナトリウムを加える。
;水酸化ナトリウムを加えた場合
H2とNaのイオン化傾向を比べた場合、Na>H<sub>2</sub>なので、陰極で還元されるのは水素イオンH<sup>+</sup>である。
:陰極: 2H<sup>+</sup> + 2e<sup>-</sup> → H<sub>2</sub>↑
陰極では、水素H<sub>2</sub>が発生。
:陽極: O<sub>2</sub>が発生。<br />
=== 電気分解の実用例 ===
==== 水酸化ナトリウムの製造 ====
工業的な水酸化ナトリウムの製造にはイオン交換膜法が使われている。
[[File:イオン交換膜法によるNaOHの製造法.svg|thumb|500px|イオン交換膜法によるNaOHの製造法<br>(※ この反応で陰極側に加える液体は、図では「純水」としてあるが、実際は導電性をもたせるために、うすめの水酸化ナトリウムを加える。検定教科書では「純水」と表記してある教科書もあるので、高校生は、気にしなくて良い。)]]
図のように陽イオン交換膜による隔壁でへだてて片方に陽極、もう片方に陰極の電極を配置する。
そして、陽極側にNaCl水溶液を入れる。電圧をなにも加えて無い状体では、NaイオンとClイオンに分離している。
そして電圧を加えると、電気分解が起きる。
陰極では
:<math> \mathrm{ 2H_2O + 2e^- \rightarrow H_2 + 2OH^- } </math> (還元)
陽極では
:<math> \mathrm{ 2Cl^- \rightarrow Cl_2 + 2e^-} </math> (酸化)
という反応が起きる。
その結果、Cl<sup>-</sup>イオンが発生する。このCl<sup>-</sup>イオンは陽イオン交換膜を通れず、Cl<sup>-</sup>イオンはそのまま陽極側にとどまる。そしてCl<sup>-</sup>イオンは陽極のプラス電荷を受け取って塩素ガスになり気体となって排出される。
いっぽうで、Na<sup>+</sup>イオンはそのまま水溶液中にとどまり、また陽イオン交換膜を通過する。
いっぽう陰極側ではOH<sup>-</sup>は陽イオン交換膜を通過できないので、そのまま陰極側にとどまる。また、水素イオンH<sup>+</sup>は陰極で電荷を受け取り、水素ガスを発生して、排出される。
こうして、陰極側の溶液ではNa<sup>+</sup>イオンとOH<sup>-</sup>イオンばかりになる。
Naはイオン化傾向が水よりも大きいので、陰極ではNa<sup>+</sup>はイオンのままである。なので陰極では水H<sub>2</sub>Oだけが還元されてOH<sup>-</sup>ができる。
こうして、陰極ではNaOHの濃度の高い水溶液が得られる。この水溶液を濃縮することによって、水酸化ナトリウムNaOHが得られる。
;隔膜法
以前は、アスベストなどをもちいた隔膜法が用いられていた。この隔膜法も、電気分解を用いる。濃い食塩水(塩化ナトリウム水溶液)を電気分解する方法で水酸化ナトリウムは生産できる。電気分解したときに、塩素の気体が発生するので、気体を排出することにより、溶液中にNa<sup>+</sup>イオンを多くさせている。
なお、陽イオン交換膜をもちいた方法とは違い、隔膜法の隔膜では塩素イオンも通過してしまうので、この方法では、得られる水溶液に不純物としてNaClが混ざる。
また、陽極は炭素Cである。陰極は鉄網Feである。隔膜の外部を鉄網で覆っている。
陽極では
:<math> \mathrm{ 2Cl^- \rightarrow Cl_2 + 2e^-} </math>
陰極では
:<math> \mathrm{ 2H_2O + 2e^- \rightarrow H_2 + 2OH^- } </math>
という反応が起きる。Naはイオン化傾向が水よりも大きいので、水が還元されてOH<sup>-</sup>ができる。
陰極で発生したOH<sup>-</sup>によってNaOHができるが、そのままだと陽極のCl2と反応してしまいNaClになってしまうので、NaとClとを結合させず隔離するために、隔膜としてアスベスト(「石綿」ともいう。)などでつくった多孔質の膜を用いる。アスベストは人体に有害である。
なお、水酸化ナトリウムのことを苛性ソーダともいう。
==== 銅の精錬 ====
[[File:Electrorefining copper jp.svg|thumb|400px|銅の電気精錬]]
銅の鉱石を、コークスCなどとの加熱反応で還元したものは、純度が約99%で、'''粗銅'''とよばれる。粗銅には、亜鉛や銀などの不純物が含まれるので、純度をあげためには、不純物を分離する必要があり、そのために電解が利用されている。
硫酸銅(II)水溶液をもちいる。そのさいの電極(陽極)に、純度をあげたい銅を用いる。つまり、粗銅を陽極に用いる。純度の高い銅を陰極に用いる。電気分解により、次の反応が起こる。
:陰極: Cu<sup>2</sup> + 2e<sup>-</sup> → Cu
:陽極: Cu → Cu<sup>2</sup> + 2e<sup>-</sup>
陽極からは、銅だけが溶け出すのではなく、イオン化傾向の大きい鉄や亜鉛やニッケルなども溶け出す。しかし陰極で析出するのは、ほとんど銅だけなので、よって陰極にて高純度の銅が得られる、という仕組みである。
粗銅中に含まれている銀や金はイオン化傾向が銅よりも小さいため、陽極の下に沈殿する。これを'''陽極泥'''(ようきょくでい、anode slime)という。
陰極には純度の高い純度99.99%程度の銅が析出する。これを純銅という。
==== 融解塩の電解 ====
アルミニウムやマグネシウムやアルカリ金属やアルカリ土類金属はイオン化傾向が大きいため、そのイオンをふくむ溶液を電気分解しても、アルミニウムなどの単体は得られない。そこで、イオン化傾向の大きい金属を電気分解で得たいときは、塩や酸化物を融解し、これを電気分解することで単体を得る。このような方法を、'''溶融塩電解'''('''熔融塩電解'''、ようゆうえん でんかい)または'''融解塩電解'''という。
===== アルミニウムの精錬 =====
酸化アルミニウムAl<sub>2</sub>O<sub>3</sub>の電気分解によって、アルミニウムが得られる。
酸化アルミニウムAl<sub>2</sub>O<sub>3</sub>は、鉱石のボーキサイト(Al<sub>2</sub>O<sub>3</sub>・nH<sub>2</sub>O)から、つくられる。そのボーキサイトからの酸化アルミニウムのつくりかたの説明は省略する(検定教科書でも、くわしい説明は省略)。Al<sub>2</sub>O<sub>3</sub>は、アルミナとも呼ばれる。
アルミニウムを得たい場合、アルミナAl<sub>2</sub>O<sub>3</sub>は融点 2072 °Cと非常に高いため、そのままでは融解させづらい。そこで融点を下げるため、氷晶石Na<sub>3</sub> AlF<sub>6</sub>(融点 1012℃)を、割合が氷晶石9.5重量%ほど加えると、溶融温度が下がり、融点が約970℃になる。これを炭素電極によって電気分解によって、陰極で、アルミニウムができる。
陽極では、電極の炭素が空気中の酸素と反応して、COやCO<sub>2</sub>ができる。
:(陰極) Al<sup>3+</sup> + 3e<sup>-</sup> → Al
この一連のアルミニウムの電解方法を'''ホール・エルー法'''(Hall-Héroult process)という。
=== 電気分解と電気量との関係 ===
==== 単位の定義 ====
;クーロン
1Aの電流が1秒間、流れこんで貯まったときの電気量を1'''クーロン'''という。記号はCである。
電気量をQとすると、電流iで時間t秒の電流を流した場合は、Qとiとtの関係は、
:Q = i × t
である。
;ファラデー定数
1molの電子がもつ電荷を'''ファラデー定数'''という。ファラデー定数 F は
<math>F = e N_A = 1.602~176~634 \times 10^{-19}\ \text{C} \times 6.022~140~76\times 10^{23}\ \text{mol}^{-1} = 96~485.332~123~310~0184\ \text{C/mol} </math>
である。
有効数字を三桁とすると、ファラデー定数は F = 96 500 C/mol である。
==== ファラデーの電気分解の法則 ====
* 電気分解によって、電極で変化する物質量は、与えた電気量に比例する。
* 電気分解によって、価数の異なる物質の変化を比べた場合、同じ電気量で変化する物質量は物質の価数に反比例する。あるいは物質の(1/価数)に比例する。
この法則を、電気分解における'''ファラデーの法則'''という。([[高等学校物理基礎/電気と磁気#電磁誘導|ファラデーの'''電磁誘導'''の法則]]との混同に注意)
;例1
AgNO<sub>3</sub> の電気分解では、96 500 C の電気量で物質量 '''1 mol''' の Ag が析出する。なぜなら、 Ag は1価であり、反応式は
:<math> \mathrm{ Ag^+ + e^- \rightarrow Ag } </math>
のように反応するからである。
;例2
CuSO<sub>4</sub> の電気分解では、96 500 C の電気量で'''0.5mol'''のCuが析出する。なぜなら、Cuは'''2'''価であり、反応式は
:<math> \mathrm{ Cu^{2+} + 2e^- \rightarrow Cu } </math>
のように反応するから、銅を1分子析出させるのに電子が2個必要だからである。
;例3
H<sub>2</sub>SO<sub>4</sub>の電気分解では、96 500 C の電気量で'''0.5mol'''のH<sub>2</sub>が発生する。反応式は
:<math> \mathrm{ 2H^+ + 2e^- \rightarrow H_2 } </math>
のように反応するから、水素H<sub>2</sub>を1分子発生させるのに電子が2個必要だからである。
これ等の例のように、発生物の物質量を求める場合の手順は、
# まず反応式を書いてから、
# その式での、電子eの係数と生成物の係数との比を元に、発生物の物質量を計算する。
というふうに計算する。
[[カテゴリ:高等学校化学|てんちとてんきふんかい]]
[[カテゴリ:電気分解]]
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高校化学 化学平衡
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== 化学平衡 ==
可逆反応において、順方向の反応と逆方向との反応速度がつりあって反応物と生成物の組成比が巨視的に変化しなくなる状態を扱う分野である。
== 可逆反応 ==
水素とヨウ素の混合気体を容器に入れ、一定温度に保っておくと、一部が反応してヨウ化水素を生じ、水素・ヨウ素・ヨウ化水素の混合気体になる。また、この容器にヨウ化水素だけを入れて同じ温度に保っておくと、一部が分解して水素とヨウ素が生じ、やはり水素・ヨウ素・ヨウ化水素の混合気体になる。
このように、水素とヨウ素の化合、ヨウ化水素の分解のように、ある反応に対してその逆の反応も起こるとき、一方を正反応、他方を逆反応といい、このどちらも進むような反応を'''可逆反応'''とよぶ。また、一方向にしか進まない反応を'''不可逆反応'''という。
== 平衡移動 ==
=== ルシャトリエの原理 ===
可逆反応が平衡状態にあるとき、温度や圧力の条件を変化させると、正反応または逆反応のどちらかが進んで、新たな平衡状態になる。この現象を'''平衡移動'''という。
可逆反応が平衡状態にあるとき、濃度・温度・圧力といった条件を変化させると、条件の変化を和らげる向きに反応が進んで、平衡が移動する。これは、'''ルシャトリエの原理'''(平衡移動の原理)とよばれる。
条件変化を和らげる向きとは、条件変化の効果を打ち消す向きに反応が進むことを示している。つまり、圧力を上げれば、総気体分子数が少なくなる圧力が下がる向きに反応が進み、温度を上げれば吸熱する向きに反応が進むことになる。
例えば、<chem>N2 + 3H2 <=> 2NH3</chem> <math>\quad \Delta H = -92.2\,\mathrm{kJ}</math> について考える。
ここで、窒素 <chem>N2</chem> の濃度を増加させると、<chem>N2</chem> の増加をやわらげる方向、<chem>N2</chem> が減少する右へ平衡が移動する。<chem>N2</chem> の濃度を減少させると、<chem>N2</chem> の減少をやわらげる方向、<chem>N2</chem> が増加する左へ平衡が移動する。
圧力を大きくすると、圧力の増大をやわらげる、つまり、気体分子の数が減少する右に平衡が移動する。圧力を小さくすると、圧力の減少をやわらげる、つまり、気体分子の数が増加する左に平衡が移動する<ref>反応式を見てみると、左辺の気体分子は合計で4、右辺は2である。つまり、右の反応が進むと気体分子数が減り、左の反応が進むと気体分子数が増える。</ref>。
ほか、反応に関係のない気体が加わっても、平衡は変化しない。同様に、触媒を加えても、平衡は変化しない。
温度を上げると、温度の増加をやわらげる方向、つまり、吸熱反応の左に平衡が移動する。温度を下げると(冷却すると)、温度の減少をやわらげる方向、つまり、発熱反応の右に平衡が移動する。
ほか、温度・圧力など一定のままでアンモニア <chem>NH3</chem> の濃度を上げても、加えたアンモニアの一部はルシャトリエの原理により、<chem>N2</chem> や <chem>H2</chem> の生成で消費され、つまり上記の化学式で左方向の反応が一時的に強まり、やがて、また平衡に達する。
ルシャトリエの原理は、熱化学方程式にも、有効である。
<math> \mathrm{N_2} + \mathrm{3H_2} = \mathrm{2NH_3} + 92.2 kJ </math>
たとえば <chem>N2</chem> , <chem>H2</chem>, <chem>NH3</chem> の混合気体で、もし圧力一定のまま温度を上げた場合は、ルシャトリエの原理および上の式から、左側に進む反応( <chem>N2</chem>および<chem>H2</chem> のほうが生成される)が起き、言い換えれば(熱化学方程式ではなく化学反応式だが)平衡が左に移動する。
* 他の物質の例
<chem>2NO2 <=> N2O4 </chem>
<math> \mathrm{2NO_2} = \mathrm{N_2O_4} + 57.2 kJ </math>
上記の <chem>NO2</chem> , <chem>N2O4</chem> の混合気体を冷却すると、冷却とは温度の減少だから、ルシャトリエの原理により温度減少を打ち消すように温度上昇の反応が起きるはずなので、よって発熱反応である右方向の反応が進み、結果として <chem>N2O4</chem> の濃度が増える。
なお、<chem>NO2</chem> , <chem>N2O4</chem> の混合気体の(冷却ではなく)温度を上げると、左向きの反応が進む。
=== 平衡定数 ===
:<chem>\it{a} \, \rm{A} \, {+} \, \it{b} \, \rm{B} <=> \it{x} \, \rm{C} \, {+} \, \it{y} \, \rm{D}</chem>
のような可逆反応が起こるとき、この反応系が化学平衡に達すると、化学平衡のときの各物質の濃度の間には、Kを定数として、次の関係が成り立つ。
:<math>
\frac{[\mathrm C]^x [\mathrm D]^y}{[\mathrm A]^a [\mathrm B]^b} = K
</math>
この関係を'''化学平衡の法則'''といい、そのときの定数Kを'''平衡定数'''という。1つの反応系では、温度が決まれば平衡定数は一定値をとる。あるいは、上で定義された平衡定数の定義が、濃度の平衡によることから'''濃度平衡定数'''ともいい、その意味で表す際には、記号K<sub>c</sub>を用いる。
化学平衡の法則の証明は簡単である。右向きの化学反応 <chem>\it{a} \, \rm{A} \, {+} \, \it{b} \, \rm{B} -> \it{x} \, \rm{C} \, {+} \, \it{y} \, \rm{D}</chem> は <math>a</math> 個の分子 <chem>A</chem> と <math>b</math> 個の分子 <chem>B</chem> の衝突によって起こる。この衝突が起きる確率は、 <math>[\mathrm{A}]^a[\mathrm{B}]^b</math> に比例する。たとえば、反応系の中に微小な区画を考えて、その微小区画の中に分子が存在するとき分子は衝突すると考えることにすると、1個の分子 <chem>A</chem> が微小区画に存在する確率は、 <math>[\mathrm A]</math> に比例する。また、2個の分子 <chem>A</chem> が微小区画に存在する確率(つまり、2個の分子 <chem>A</chem> が微小区画において衝突する確率)は、 <math>[\mathrm A]^2</math> に比例する。このように考えていくと、微小区画に <math>a</math> 個の分子 <chem>A</chem> と <math>b</math> 個の分子 <chem>B</chem> が存在する確率は、<math>[\mathrm{A}]^a[\mathrm{B}]^b</math> に比例することがわかる。これは、ある微小区画において、分子が衝突する確率だが、微小区画がどこにあっても、そこで衝突が発生する確率は変わらないから、これが、反応系において衝突が発生する確率であることは明らかだろう。
次に、左向きの化学反応 <chem>\it{a} \, \rm{A} \, {+} \, \it{b} \, \rm{B} <- \it{x} \, \rm{C} \, {+} \, \it{y} \, \rm{D}</chem> が起きる確率も、同様に <math>[\mathrm C]^x [\mathrm D]^y</math> に比例する。平衡状態では、右向きの反応と左向きの反応が起きる確率は等しい。その反応の頻度は、それぞれ <math>[\mathrm{A}]^a[\mathrm{B}]^b</math>、<math>[\mathrm C]^x [\mathrm D]^y</math> に比例するのだから、この2つの量は比例する:
<math>
[\mathrm C]^x [\mathrm D]^y = K [\mathrm A]^a [\mathrm B]^b
</math>
これは、化学平衡の法則に他ならない。
=== 圧平衡定数 ===
上で定義された濃度平衡定数とは異なる平衡定数として、各々の反応物・生成物の分圧 <math>p</math> をもとに定義する平衡定数がある。平衡時の分圧を考えると、次のように'''圧平衡定数''' <math>K_p</math> が定義される。
濃度平衡定数と圧平衡定数には、反応式が
<chem>\it{a} \, \rm{A} \, {+} \, \it{b} \, \rm{B} <=> \it{x} \, \rm{C} \, {+} \, \it{y} \, \rm{D}</chem>
で表わされる場合に、分圧がモル濃度と比例することから、次の関係式がある。
:<math>
K_p=\frac{p_C^x p_D^y}{p_A^ap_B^b}=K_c(RT)^{(x+y)-(a+b)}
</math>
この関係式を導出する。理想気体の状態方程式の
:<math>pV=nRT</math>
は、圧力Vを右辺に移動すれば、
:<math>p=\left(\frac{n}{V}\right)RT=cRT </math>
と、圧力 <math>p</math> とモル濃度 <math>c</math> の関係式となり、圧力と温度とが比例する。この <math>p = cRT</math> を状態方程式を、圧平衡定数の式に代入すれば、
:<math>
K_p=\frac{p_C^x p_D^y}{p_A^a p_B^b}=\frac{([C]RT)^x ([D]RT)^y}{([A]RT)^a ([B]RT)^b}=\frac{[C]^x [D]^y}{[A]^a [B]^b} \frac{(RT)^x (RT)^y}{(RT)^a (RT)^b}=K_c(RT)^{(x+y)-(a+b)}
</math>
以上の計算例は、2個の反応物から2個の生成物が生じる反応式の場合だったが、他の反応式でも同様に、圧平衡定数と濃度平衡定数の関係式がある。
== 電離平衡 ==
酢酸を水に溶かすと、次のように電離し平衡状態になる<ref>より正確には、<chem>CH3COOH + H2O<=> CH3COO- + H3O+</chem>であるが、このように略す。</ref>。
<chem>CH3COOH <=> CH3COO- + H+</chem>
このような化学平衡を'''電離平衡'''という。
酢酸の電離平衡についても、化学平衡の法則を当てはめると、
<math>\frac{[\mathrm{CH_3COO^-}][\mathrm{H^+}]}{[\mathrm{CH_3COOH}]} = K_a</math>
となる。この平衡係数を'''電離定数'''という。
弱塩基についても同様に考えることができる。アンモニアの電離では、
<chem>NH3 + H2O <=> NH4+ + OH-</chem>
より、
<math>\frac{[\mathrm{{NH_4}^+}][\mathrm{OH^-}]}{[\mathrm{NH_3}][\mathrm{H_2O}]} = K</math>
となる。ここで、<math>[\mathrm{H_2O}]</math> は非常に大きいため一定と近似していい。電離定数 <math>K_b</math> を <math>K_b = K[\mathrm{H_2O}]</math> として、
<math>\frac{[\mathrm{{NH_4}^+}][\mathrm{OH^-}]}{[\mathrm{NH_3}]} = K_b</math>
となる。
=== 弱酸・弱塩基の電離 ===
モル濃度 <math>c</math> の弱酸 <chem>HA</chem> の水溶液では、電離度を <math>\alpha</math> とすると、<chem>[H+]</chem> と <chem>[A-]</chem> は <math>c\alpha</math> に等しくなる。従って、電離定数 <math>K_a</math> は、次のように表される。
{| class="wikitable"
|+
!
!<chem>HA</chem>
!<chem><=></chem>
!<chem>A-</chem>
!<chem>H+</chem>
|-
|電離前
|<math>c</math>
|
|<math>0</math>
|<math>0</math>
|-
|電離
|<math>-c\alpha</math>
|
|<chem>c\alpha</chem>
|<chem>c\alpha</chem>
|-
|平衡
|<math>c(1-\alpha)</math>
|
|<chem>c\alpha</chem>
|<chem>c\alpha</chem>
|}
:<math>
K_a=\mathrm{\frac{[H^+][A^-]}{[HA]}}=\frac{c\alpha \cdot c\alpha}{(c-c\alpha)}=\frac{c\alpha^2}{1-\alpha}
</math>
ここで、電離度 <math>\alpha</math> が1より十分に小さい場合、 <math>\frac{1}{1-\alpha} \approx 1</math> と近似して、<math>
K_a=\frac{c\alpha^2}{1-\alpha} \approx c\alpha^2
</math> である。これより、<math>\alpha = \sqrt{\frac{K_a}{c}}</math>を得る。
(無限等比級数を知っている場合、この近似は次のように理解することが出来る。<math>0 \le \alpha < 1</math> のとき、無限等比級数の和より、<math>1 + \alpha + \alpha^2 + \alpha^3 + \cdots = \frac{1}{1-\alpha}</math> である。つまり、<math>
\frac{c\alpha^2}{1-\alpha} = c\alpha^2(1 + \alpha + \alpha^2 + \cdots) = c\alpha^2 + c\alpha^3 + c\alpha^4 + \cdots \approx c\alpha^2.
</math>)
この水溶液の水素イオン濃度は <math>[\mathrm{H^+}] = c\alpha = \sqrt{cK_a}</math> である。
次に、電離度 <math>\alpha</math> が1より十分に小さくない場合は、 <math>1-\alpha \approx 1</math> と近似することはできない。
<math>
K_a=\frac{c\alpha^2}{1-\alpha}
</math> より、 二次方程式 <math>c\alpha^2 + K_a\alpha -K_a = 0</math> を <math>\alpha</math> について解いて、 <math>\alpha = \frac{-K_a + \sqrt{K_a^2 + 4cK_a}}{2c}</math> である。
水素イオン濃度は <math>[\mathrm{H^+}] = c\alpha = \frac{-K_a + \sqrt{K_a^2 + 4cK_a}}{2}</math> である。
この場合も濃度が電離定数よりも十分大きい場合 <math> c \gg K_a </math> と近似すると、
<math>[\mathrm{H^+}] = \sqrt{cK_a}</math>
となる。
電離度がだいたい <math>\alpha < 0.05</math> の場合、<math>\frac{1}{1-\alpha} \approx 1</math> の近似を行うことが出来るが。<math>\alpha \ge 0.05</math> のときは近似は行わない。
=== 水の電離 ===
水はわずかに電離して、'''電離平衡'''の状態になっている。
:<chem> H_2 O <=> H^+ + OH^- </chem>
:化学平衡の法則より、水の平衡定数 <math>K</math> は次のようになる。
:<math>
K=\mathrm{\frac{[H^+][OH^-]}{[H_2O]}}
</math>
水はわずかにしか電離しないので、濃度 <chem>[H2O]</chem> の値はほぼ一定とみなせる。そこで、<math>
K_{\mathrm w}=K\mathrm{[H_2O]}
</math> とすると、
<math>
K_{\mathrm w}=K\mathrm{[H_2O]=[H^+][OH^-]}
</math>
これより、<chem>[H+]</chem> と <chem>[OH- ]</chem> の積の値も温度一定のときに一定値となる。この <math>K_{\mathrm w}</math> を'''水のイオン積'''という。
25 ℃ における <math>K_{\rm w}</math>の値は
:<math>
K_{\mathrm w} = [\mathrm{H^+}][\mathrm{OH^-}] = 1.0 \times 10^{-14} \, \mathrm{mol^2/L^2}
</math><br />
このイオン積の値は酸や塩基中など常に成り立つ。
また、温度がかわると水のイオン積の値は変化する。
水のイオン積と常温付近の温度の関係は、下記のとおり。
{| class="wikitable"
|-
! 温度/℃ !! K<sub>w</sub>/(mol<sup>2</sup>/L<sup>2</sup>)
|-
| 20 || 0.29×10<sup>-14</sup>
|-
| 25 || 1.01×10<sup>-14</sup>
|-
| 30 || 1.47×10-<sup>14</sup>
|-
|}
:
また、水の電離は吸熱反応であり(※ 上の表と関連づけて覚えよう。)、熱化学方程式は
:<chem> H^+ + OH^- <=> H_2O </chem><math>\quad \Delta H = -56\,\mathrm{kJ}</math>
である。
=== pOH ===
水素イオン指数 <math>\rm pH</math> は <math>\mathrm{pH} = -\log_{10} [\mathrm{H^+}]</math> で定義されるものであった。
水酸化イオンについても、 <math>\mathrm{pOH} = -\log_{10} [\mathrm{OH^-}]</math> を定義する。<math>\rm pH</math> と <math>\rm pOH</math> について、イオン積から次の公式が成り立つ。
<math>
[\mathrm{H^+}][\mathrm{OH^-}] = 1.0 \times 10^{-14}
</math>
より両辺の対数をとって、
<math>
\log_{10}[\mathrm{H^+}]+\log_{10}[\mathrm{OH^-}] = -14
</math>
から
<math>\mathrm{pH} + \mathrm{pOH} = 14</math>
あるいは
:<math>\mathrm{pH} = 14 - \mathrm{pOH}</math>
を得る。
=== 加水分解 ===
弱酸と強塩基の塩、または弱塩基と強酸の塩は水に溶けると、ほとんど完全に電離し次のように加水分解する。
弱酸と強塩基の塩(酢酸ナトリウムの場合)
<chem>CH3COONa -> CH3COO^- + Na^+</chem>
<chem>CH3COO^- + H2O <=> CH3COOH + OH^-</chem>
弱塩基と強酸の塩(塩化アンモニウムの場合)
<chem>NH4Cl -> NH4^+ + Cl^-</chem>
<chem>NH4^+ + H2O <=> NH3 + H3O^+</chem>
ここで、酢酸イオンの加水分解の平衡定数 <math>K</math> は
<math>K = \frac{\mathrm{[CH_3COOH]}\mathrm{[OH^-]}}{\mathrm{[CH_3COO^-]}\mathrm{[H_2O]}}</math>
である。 <chem>\mathrm{[H_2O]}</chem> は一定と考え、<math>K_{\mathrm h} = K\mathrm{[H_2O]}</math> と置くと
<math>K_{\mathrm h} = \frac{\mathrm{[CH_3COOH]}\mathrm{[OH^-]}}{\mathrm{[CH_3COO^-]}}</math>
が成り立つ。この <math>K_{\mathrm h}</math> を加水分解定数という。
アンモニウムイオンについても同様に考える。平衡定数 <math>K</math> は
<math>K = \frac{\mathrm{[NH_3]}\mathrm{[H_3O^+]}}{\mathrm{[NH_4^+]}\mathrm{[H_2O]}}</math>
加水分解定数 <math>K_{\mathrm h} = K \mathrm{[H_2O]}</math> を定義すると
<math>K_{\mathrm h} = \frac{\mathrm{[NH_3]}\mathrm{[H_3O^+]}}{\mathrm{[NH_4^+]}} = \frac{\mathrm{[NH_3]}\mathrm{[H^+]}}{\mathrm{[NH_4^+]}}</math>
加水分解定数 <chem>K_{\mathrm h}</chem> と、弱酸または弱塩基の電離定数 <math>K_{\mathrm a}</math> または <math>K_{\mathrm b}</math> について
<math>K_{\mathrm w} = K_{\mathrm a}K_{\mathrm h}</math>
<math>K_{\mathrm w} = K_{\mathrm b}K_{\mathrm h}</math>
が成り立つ。
実際、酢酸ナトリウムの場合、
<math>K_{\mathrm a} = \frac{[\mathrm{CH_3COO^-}][\mathrm{H^+}]}{[\mathrm{CH_3COOH}]},\quad K_{\mathrm h} = \frac{\mathrm{[CH_3COOH]}\mathrm{[OH^-]}}{\mathrm{[CH_3COO^-]}}</math>
より
<math>K_{\mathrm a}K_{\mathrm h} = \mathrm{[H^+]}\mathrm{[OH^-]} = K_{\mathrm w}</math>
また、塩化アンモニウムの場合、
<math>K_{\mathrm b} = \frac{[\mathrm{{NH_4}^+}][\mathrm{OH^-}]}{[\mathrm{NH_3}]},\quad K_{\mathrm h} = \frac{\mathrm{[NH_3]}\mathrm{[H^+]}}{\mathrm{[NH_4^+]}}</math>
より
<math>K_{\mathrm b}K_{\mathrm h} = \mathrm{[H^+]}\mathrm{[OH^-]} = K_{\mathrm w} </math>
である。
=== 塩のpH ===
弱酸と強塩基の塩を水に溶かすと、塩は完全に電離し、一部が加水分解し水酸化物イオンが生じるため液性は塩基性を示す。
弱酸と強塩基の塩(酢酸ナトリウムの場合)
<chem>CH3COONa -> CH3COO^- + Na^+</chem>
<chem>CH3COO^- + H2O <=> CH3COOH + OH^-</chem>
同様に、弱塩基と強酸の塩の水溶液は酸性を示す。
弱塩基と強酸の塩(塩化アンモニウムの場合)
<chem>NH4Cl -> NH4^+ + Cl^-</chem>
<chem>NH4^+ + H2O <=> NH3 + H3O^+</chem>
ここで、弱塩基と強酸の塩であるモル濃度 <math>c</math> の塩化アンモニウム水溶液の水素イオン濃度を求める。
塩化アンモニウムは完全に電離するため、電離後のアンモニウムイオンのモル濃度は <math>c </math> である。
<chem>NH4Cl -> NH4^+ + Cl^-</chem>
電離したアンモニウムイオンの内、加水分解するアンモニウムイオンの物質量の割合 <math>\beta =</math> 加水分解した<chem>NH4^+</chem>/電離した<chem>NH4^+</chem> を定義し、<math>\beta</math> を加水分解度と呼ぶ。
アンモニウムイオンの加水分解の量的関係は次の表のとおりである。
{| class="wikitable"
|+
!
!<chem>NH4^+</chem>
!<chem>H2O</chem>
!<chem><=></chem>
!<chem>NH3</chem>
!<chem>H3O^+</chem>
|-
|電離後
|<math>c</math>
|
|
|<math>0</math>
|<math>0</math>
|-
|加水分解
|<math>-c\beta</math>
|
|
|<chem>c\beta</chem>
|<chem>c\beta</chem>
|-
|平衡
|<math>c(1-\beta)</math>
|
|
|<chem>c\beta</chem>
|<chem>c\beta</chem>
|}
加水分解度 <math>\beta</math> が1より十分に小さい場合
:<math>
K_{\mathrm h}=\mathrm{\frac{[NH_3][H^+]}{[NH_4^+]}}=\frac{c\beta \cdot c\beta}{(c-c\beta)}=\frac{c\beta^2}{1-\beta} \approx c\beta^2
</math><ref><chem>H^+ = H3O^+</chem> に注意</ref>
より、 <math>\beta = \sqrt{\frac{K_{\mathrm h}}{c}}</math> である。
水素イオン濃度は <math>\mathrm{[H^+]} = c \beta = \sqrt{cK_{\mathrm h}} = \sqrt{c\frac{K_{\mathrm w}}{K_{\mathrm b}}}</math> である。(<math>K_{\mathrm b}</math> はアンモニアの電離定数、<math>K_{\mathrm w}</math> は水のイオン積)
演習問題
モル濃度が <math>c</math> の酢酸ナトリウム水溶液のpHを、酢酸の電離定数 <math>K_{\mathrm a}</math>と水のイオン積 <math>K_{\mathrm w}</math> で表せ。
=== 緩衝液 ===
少量の酸や塩基を加えたり、薄めたりしてもpHがほとんど変化しない溶液を、'''{{Ruby|緩衝|かんしょう}}液'''あるいは'''緩衝溶液'''という。弱酸とその塩、または弱塩基とその塩の混合水溶液などが緩衝液として使われる。また、このようにpHを一定に保つような作用を'''緩衝作用'''という。
代表的な緩衝液として、酢酸 CH<sub>3</sub>COOH と酢酸ナトリウム CH<sub>3</sub>COONa との混合水溶液がある。この溶液中の酢酸ナトリウムは、電離してCH<sub>3</sub>COO<sup>-</sup>とNa<sup>+</sup>とを生じる。一方、酢酸も電離するが、酢酸ナトリウムの電離により生じるCH<sub>3</sub>COO<sup>-</sup>の影響で、ルシャトリエの原理により、電離平衡は大きく酢酸の側に偏る。従って、実際には酢酸はほとんど電離せず、酢酸分子として水中に存在している。このとき、[[高等学校化学基礎/酸と塩基の反応#ブレンステッド・ローリーによる酸・塩基の定義|ブレンステッド・ローリーの定義]]によると、酢酸はブレンステッド酸、酢酸イオンはブレンステッド塩基である。
まず、この混合溶液に酸を加えると、生じたH<sup>+</sup>は酢酸イオンと反応して、酢酸を生じる。これにより、[H<sup>+</sup>] はほとんど増加しない。また、この混合溶液に塩基を加えると、生じたOH<sup>-</sup>は酢酸分子と反応して中和される。従って、[OH<sup>-</sup>] もほとんど増加しない。
この溶液において緩衝作用が最大になるのは、酢酸と酢酸イオンのモル濃度が等しいときである。
生物は体内のpHの変化に弱いため、緩衝液を体液として持っている。詳しくは[[高等学校生物]]を参照。
== 溶解平衡 ==
例えば、塩化ナトリウムを水に加えていくと、やがて溶けきれなくなり、飽和溶液になる。このような状態を'''溶解平衡'''といい、<chem>NaCl ->Na+ +Cl-</chem> の電離平衡が成立する。ここで、この飽和溶液に濃塩酸を加えると、新たに塩化ナトリウムが沈殿してくる。これは、濃塩酸を加えることにより <chem>[Cl-]</chem> が増加し、ルシャトリエの原理により上式の平衡が左に移動するからである。濃塩酸の代わりに塩化水素ガスを吹き込んでも同様の結果が得られる。
このように、ある電解質の飽和溶液に、その電解質を構成するイオンと同じ種類のイオン(共通イオン)を生じる別の電解質を加えることで、もとの電解質の溶解度が減少して沈殿を生じる現象を、'''共通イオン効果'''という。
=== 溶解度積 ===
塩化銀AgClのような難溶性の塩でも、水に加えれば、わずかながら電離をする。
:<chem>AgCl -> Ag+ + Cl-</chem>
この難溶性の塩の場合も、以下のように平衡定数が定義できる。
:<math>
\frac{[\mathrm {Ag^+}] [\mathrm {Cl^-}]}{[\mathrm {AgCl}]}=K
</math>
[AgCl]の濃度の値は、一定値と見なせるから、これを右辺に移項して、
:<math>
[\mathrm {Ag^+}] [\mathrm {Cl^-}] = K[\mathrm {AgCl}] = K_{\rm SP}
</math>
として、式が得られる。この式の、
:<math>
[\mathrm {Ag^+}] [\mathrm {Cl^-}] = K_{\rm SP}
</math>
を塩化銀の'''溶解度積'''(solubility product)といい、記号 <math>K_{\rm SP}</math> で表す。
平衡定数Kが温度のみの関数であり、<chem>[AgCl]</chem> は一定と見なせることから、溶解度積 <math>K_{\rm SP}</math> もまた温度のみの関数で濃度に無関係である。
塩化銀以外の他の難溶性の塩に対しても、同様に溶解度積が定義できる。一般の塩 <chem>A_{\it m}B_{\it n}</chem> に対しては、溶解度積の定義 <math>K_{\rm SP}</math> は、反応式が次の式の場合、
<math>\mathrm{A}_m\mathrm{B}_n \rightleftharpoons m\mathrm{A^{{\it n}+}} + n\mathrm{B^{{\it m}-}}</math>
化学平衡の法則より <math>\frac{[\mathrm{A^{{\it n}+}}]^m[\mathrm{B^{{\it m}-}}]^n}{[\mathrm{A}_m\mathrm{B}_n]} = K</math>
溶解度積 <math>K_{\rm SP}</math> は、
:<math>
[\mathrm {A^{{\it n}+}}]^m [\mathrm {B^{{\it m}-}}]^n = K_{\mathrm{SP}}
</math>
で定義される。
塩化銀の水溶液に、塩化ナトリウムNaClを加えると、塩化ナトリウムは容易に電離することから、溶液中の塩素イオン濃度 [Cl]<sup>-</sup> が増える。すると、平衡定数を一定に保つには、 銀イオン濃度 <chem>[Ag+]</chem> を減らさなければならなくなる。従って、塩化銀の電離が減少し、塩化銀銀の沈殿が生じる。これは共通イオン効果の一種である。
塩化ナトリウムの代わりに、塩酸HClや塩化カリウムKClなどを加えても塩化銀の沈殿現象は起こる。
この場合、銀イオンと塩素イオンのイオン積[Ag]<sup>+</sup> [Cl]<sup>-</sup>が溶解度積 K<sub>SP</sub> よりも大きくなると沈殿を生じる。
:[Ag]<sup>+</sup> [Cl]<sup>-</sup> > K<sub>SP</sub> ・・・沈殿を生じて、 [Ag]<sup>+</sup> [Cl]<sup>-</sup> = K<sub>SP</sub> となる。
:[Ag]<sup>+</sup> [Cl]<sup>-</sup> ≦ K<sub>SP</sub> ・・・沈殿を生じない。
== 演習問題 ==
次の水溶液の水素イオン濃度とpH を求めよ。
酢酸の電離定数を <math> K_{\mathrm a} = 1.8 \times 10^{-5}\, \mathrm{mol/L}</math>、アンモニアの電離定数を <math> K_{\mathrm b} = 1.8 \times 10^{-5}\, \mathrm{mol/L}</math>、水のイオン積を <math>K_{\mathrm w} = 1.0 \times 10^{-14}\, (\mathrm{mol/L})^2</math> とする。
<math>\sqrt{1.8}=1.3,\sqrt{3.6}=1.9,\sqrt{56}=7.5,\sqrt{39.2}=6.3,\log 1.3=0.1,\log 7.7=0.9,\log 2.3=0.4</math> とする。
解答は次の形式で行うこと。
<math>[\mathrm H^+] = A \times 10^{-B}\, \mathrm{mol/L}</math>
ここで、<math>A</math>は二桁の小数、<math>B</math> は整数である。
<quiz>
{<math>0.10 \,\mathrm{mol/L}</math> の酢酸水溶液
|type="{}"}
<math> A=</math> { 1.3 _5} <math> B=</math> { 3 _5} <math> \mathrm{pH}=</math> { 2.9 _5}
{<math>0.10\, \mathrm{mol/L}</math> のアンモニア水溶液
|type="{}"}
<math> A=</math> { 7.7 _5} <math> B=</math> { 12 _5} <math> \mathrm{pH}=</math> { 11.1 _5}
{<math>0.10\, \mathrm{mol/L}</math> の酢酸ナトリウム水溶液
|type="{}"}
<math> A=</math> { 1.3 _5} <math> B=</math> { 9 _5} <math> \mathrm{pH}=</math> { 8.9 _5}
{<math>5.0 \,\times 10^{-5} \mathrm{mol/L}</math> の酢酸水溶液
|type="{}"}
<math> A=</math> { 2.3 _5} <math> B=</math> { 5 _5} <math> \mathrm{pH}=</math> { 4.6 _5}
</quiz>
{{解答|解答}}
===0.10 mol/L の酢酸水溶液===
<math>
\begin{align}
{[\mathrm{H}^+]} &= \sqrt{cK_{\mathrm{a}}}\\
&= \sqrt{0.10\,\mathrm{mol/L}\times 1.8 \times 10^{-5} \,\mathrm{mol/L}} \\
&= \sqrt{1.8 \times 10^{-6}\,(\mathrm{mol/L})^2}\\
&= \sqrt{1.8} \times 10^{-3}\,\mathrm{mol/L}\\
&= 1.3 \times 10^{-3}\,\mathrm{mol/L}
\end{align}
</math>
<math>
\mathrm{pH} = -\log(1.3 \times 10^{-3}) = 3 - \log 1.3 = 3 - 0.1 = 2.9
</math>
===0.10 mol/L のアンモニア水溶液===
<math>
\begin{align}
{[\mathrm{OH}^-]} &= \sqrt{cK_{\mathrm{b}}}\\
&= \sqrt{0.10\,\mathrm{mol/L}\times 1.8 \times 10^{-5} \,\mathrm{mol/L}} \\
&= \sqrt{1.8 \times 10^{-6}\,(\mathrm{mol/L})^2}\\
&= \sqrt{1.8} \times 10^{-3}\,\mathrm{mol/L}\\
&= 1.3 \times 10^{-3}\,\mathrm{mol/L}
\end{align}
</math>
<math>
\begin{align}
{[\mathrm{H}^+]} &= \frac{K_{\mathrm w}}{[\mathrm{OH}^-]}\\
&= \frac{1.0 \times 10^{-14}\, (\mathrm{mol/L})^2}{1.3 \times 10^{-3}\,\mathrm{mol/L}}\\
&= 7.7 \times 10^{-12}\,\mathrm{mol/L}
\end{align}
</math>
<math>
\mathrm{pH} = -\log(7.7 \times 10^{-12}) = 12 - 0.9 = 11.1
</math>
===0.10 mol/L の酢酸ナトリウム水溶液===
<math>
\begin{align}
K_{\mathrm{h}} &= \frac{K_{\mathrm{w}}}{K_{\mathrm{a}}}\\
&= \frac{1.0 \times 10^{-14}\,(\mathrm{mol/L})^2}{1.8 \times 10^{-5}\,\mathrm{mol/L}}\\
&= 5.6 \times 10^{-10}\,\mathrm{mol/L}
\end{align}
</math>
<math>
\begin{align}
{[\mathrm{OH}^-]} &= \sqrt{cK_{\mathrm h}}\\
&= \sqrt{0.10\,\mathrm{mol/L} \times 5.6 \times 10^{-10} \,\mathrm{mol/L}}\\
&= \sqrt{5.6 \times 10^{-11}\,(\mathrm{mol/L})^2} \\
&= 7.5 \times 10^{-6}\,\mathrm{mol/L}
\end{align}
</math>
<math>
\begin{align}
[\mathrm{H}^+] &= \frac{K_{\mathrm{w}}}{[\mathrm{OH}^-]}\\
&= \frac{1.0 \times 10^{-14}\,(\mathrm{mol/L})^2}{7.5 \times 10^{-6}\,\mathrm{mol/L}}\\
&= 1.3 \times 10^{-9}\,\mathrm{mol/L}
\end{align}
</math>
したがって、
<math>
\mathrm{pH} = -\log(1.3 \times 10^{-9}) = 9 - 0.1 = 8.9
</math>
===<math> 5.0\,\times 10^{-5}\mathrm{mol/L} </math> の酢酸水溶液===
<math>
\begin{align}
{[\mathrm{H}^+]} &= \frac{-K_a + \sqrt{K_a^2 + 4cK_a}}{2}\\
&= \frac{-1.8 \times 10^{-5} + \sqrt{(1.8 \times 10^{-5})^2 + 4 \times 1.8 \times 10^{-5} \times 5.0 \times 10^{-5}}}{2}\\
&= \frac{-1.8 \times 10^{-5} + \sqrt{3.24 \times 10^{-10} + 3.6 \times 10^{-9}}}{2}\\
&= \frac{-1.8 \times 10^{-5} + \sqrt{3.924 \times 10^{-9}}}{2}\\
&= \frac{-1.8 \times 10^{-5} + 6.3 \times 10^{-5}}{2}\\
&= 2.25 \times 10^{-5}\,\mathrm{mol/L}
\end{align}
</math>
したがって、
<math>
[\mathrm{H}^+] = 2.3 \times 10^{-5}\,\mathrm{mol/L}
</math>
<math>
\mathrm{pH} = -\log(2.3 \times 10^{-5}) = 5 - \log 2.3 = 5 - 0.4 = 4.6
</math>
{{証明終わり}}
[[カテゴリ:高等学校化学|かかくへいこう]]
[[Category:高等学校教育]]
[[Category:化学]]
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高校化学 元素と周期表
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299785
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2026-05-24T04:09:47Z
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wikitext
text/x-wiki
{{pathnav|高等学校の学習|高等学校理科|高等学校化学|[[高等学校 化学|化学]]|pagename=元素と周期表|frame=1|small=1}}
=== 古典元素と遷移元素 ===
[[ファイル:元素の分類.png|right]]
3~12族までの元素を'''遷移元素'''、1,2族、13~18族の元素を'''典型元素'''という<ref>12族を含めず3~11族を遷移元素とする場合もある。</ref>。
'''典型元素'''は、1族から順に18族まで価電子数が規則的に変化する。価電子の数は18族は0であり、その他は族番号の1の位と等しい。価電子の数が周期的に変化するため、それに伴って性質も周期的に変化する。したがって、同じ族に属している元素('''同族元素''')は互いに似た化学的性質を持つ。
典型元素はさらに、それぞれの性質から次のような分類がされる。
* '''アルカリ金属''': Hを除く1族
* '''アルカリ土類金属''': 2族<ref>令和4年度実施の教育課程からBe, Mgも加わった。</ref>
* '''ハロゲン''': 17族
* '''貴ガス'''<ref>2005年に英語での名称が「rare gas」から「noble gas」に改称されたのに合わせ、令和4年度実施の教育課程において希ガス(正字:稀ガス)から改称された。</ref>: 18族
一方、'''遷移元素'''は価電子数はほとんど変化せず、周期性も見られないが、周期表の隣り合う元素と互いに似た化学的性質を持つことが多い。また、イオンや化合物は有色であることが多いほか、酸化数のとり方が複数あることも特徴である。
典型・遷移元素という分類の他、次のような分類のしかたもある。
* '''金属元素''': 単体が金属であるもの
* '''非金属元素''': 単体が非金属であるもの
'''金属'''とは、金属光沢があって、展性・延性をもち、電気や熱を伝えやすい性質をもった物質のことであり(→[[高等学校化学I/物質と原子#原子からなる物質|物質と原子]])、単体がこの性質をもつ元素を'''金属元素'''と呼んでいる。遷移元素はすべて金属元素であり、典型金属に比べて密度が大きく融点が高い傾向にある。金属元素の原子は陽イオンになることが多い。また、単体が金属でない元素を'''非金属元素'''と呼び、17・18族はすべて非金属元素である。18族はイオンになりにくく、また1族の水素は陽イオンになることが多いが、その他の非金属元素は陰イオンになることが多い。
=== 周期表と性質の変化 ===
[[高等学校化学I/物質と原子#周期表と周期律|物質と原子]]の章で学んだように、元素を原子番号の順に並べた表を'''周期表'''と呼ぶ。
周期表の中で、左上の水素と、右上にある典型元素は非金属元素であり、その他中央~左下にかけては金属元素が分布している。ただし、ホウ素やケイ素など、金属元素と非金属元素の境目にあるような物質は、金属と非金属との中間的な性質をもつものが多い。
ある原子から、電子を1個取り去って陽イオンとするために必要なエネルギーを、'''第1イオン化エネルギー'''と呼ぶ。これを単にイオン化エネルギーとも呼ぶ。これが小さければ小さいほど陽イオンになりやすく、そのような性質をもった元素を'''陽性'''が強いという。また、ある原子の最外殻電子に電子を1つ加えて陰イオンとする時に原子が放出するエネルギーを'''電子親和力'''と呼ぶ。これが小さければ小さいほど陽イオンになりやすく、そのような性質をもった元素を'''陽性'''が強いという。電子親和力が大きいということは陰イオンの状態の方が安定だから陰イオンになりやすく陰性が強い。
同じ周期の中では、族番号が小さいほどイオン化エネルギーが小さくなる。また、電子親和力は族番号が大きいほど大きくなる。同じ族の中で比較すると、周期が次になるほどイオン化エネルギーは小さくなり、電子親和力は小さくなる。したがって、周期表の中では、右上の元素ほど陰性が強く、左下の元素ほど陽性が強いということがいえる。
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{{DEFAULTSORT:ひきんそくけんそのたんたいとかこうふつ けんそとしゆうきひよう}}
[[Category:高等学校化学]]
[[カテゴリ:元素]]
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高校化学 非金属元素
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wikitext
text/x-wiki
{{pathnav|高等学校の学習|高等学校理科|高等学校化学|[[高等学校 化学|化学]]|frame=1|small=1}}
== 水素と貴ガス ==
=== 水素 ===
[[ファイル:周期表-H.png|right]]
[[File:H,1.jpg|150px|right]]
'''水素'''は、単体として宇宙で最も多く存在する元素である。地球上では水 H<sub>2</sub>O として最も多く存在する。単体 H<sub>2</sub> は常温常圧で無色無臭の気体である。
;製法
工業的には、石油や天然ガスを高温水蒸気と反応させて、得られる。他には、純粋な水素を作る場合は、水を電気分解する。
実験室では、塩酸や希硫酸などの強酸に、亜鉛などの金属を加える。水素は水に溶けにくいため、水上置換で捕集する。
;主な性質・反応
* 空気中で容易に燃焼し、水になる。酸素との混合気体は爆発的に燃焼する。
*: <chem>2H2 + O2 -> H2O</chem>
* 高温では還元性をもち、高温で金属などの酸化物を還元する。
*: <chem>CuO + H2 ->[\Delta] Cu + H2O</chem>
* 殆どの元素と化合して水素化合物を作る。
*: <chem>2 F2 + 2 H2O -> 4HF + O2</chem>
※化学反応式の矢印の上にΔをつけると、加熱が必要な反応であることを示す。
水素化合物は、水素結合により化合しているため、極性分子である。また、化合する元素が周期表の右側にいるほど酸性、左側にいるほど塩基性が強くなる。
水素は、アンモニア、塩化水素、メタノールなどの原料である。
水素は燃焼における生成物が水だけなので、環境に負荷をかけにくい新しいエネルギー源として注目されており、燃料電池自動車(FCV)や水素式燃料電池駆動電車(FV)の開発が進められている。
=== 貴ガス ===
[[File:周期表-希ガス.png|right]]
'''貴ガス'''(noble gas)<ref>希ガス(稀ガス、rare gas)とも</ref>は、18族元素のヘリウム He, ネオン Ne, アルゴン Ar, クリプトン Kr, キセノン Xe, ラドン Rn の総称である<ref>18族元素にはオガネソン Og もあるがこの元素の性質はあまり解明されていない。</ref>。
18族元素は価電子をもたないため、他の原子と結合したり、イオンになることがほとんどない。したがって、化学反応を起こして化合物となることがほとんどない。また、単体の気体として、原子1個で1つの分子を形成している。このような分子を'''単原子分子'''と呼ぶ。
==== 単体 ====
貴ガスには次のような物質がある。これらはいずれも無色無臭で、常温常圧で気体である。また、いずれも融点および沸点が低い。
* '''ヘリウム''' (He): 風船や飛行船を浮かせるために用いられる。また、すべての物質の中で、融点がもっとも低い(-269℃、4K)ので、超伝導など極低温の実験の際の冷媒に液体ヘリウムが用いられる。
* '''ネオン''' (Ne): ネオンサインなどに用いられる。
* '''アルゴン''' (Ar): 溶接するときの酸化防止ガスに用いられる。空気中に0.93%存在する。
* '''クリプトン''' (Kr): 電球などに用いられる。
* '''キセノン'''(Xe): カメラのストロボなどに用いられる。
* ラドン (Rn): 放射能があり、放射線治療などに用いられる。
{|align="center" style="border:solid #aaffaa 1px;"
|[[File:He,2.jpg|100px]]||[[File:Ne,10.jpg|100px]]||[[File:Ar,18.jpg|100px]]||[[File:Kr,36.jpg|100px]]||[[File:Xe,54.jpg|100px]]
|-
|style="text-align:center"|ヘリウム
|style="text-align:center"|ネオン
|style="text-align:center"|アルゴン
|style="text-align:center"|クリプトン
|style="text-align:center"|キセノン
|}
貴ガスは原子単体で安定なため、普通は化合物にならない。ガラス管に内圧が低くなるよう貴ガスを封入し電圧をかけることで、それぞれ異なった色の光を放つ([[高等学校物理/原子物理#陰極線|真空放電]]という)。そのため、電球やネオンサインとして用いられるものが多い。
{|align="center" style="border:solid #aaffaa 1px;"
|[[File:HeTube.jpg|100px]]||[[File:NeTube.jpg|100px]]||[[File:ArTube.jpg|100px]]||[[File:KrTube.jpg|100px]]||[[File:XeTube.jpg|100px]]
|-
|style="text-align:center"|ヘリウム
|style="text-align:center"|ネオン
|style="text-align:center"|アルゴン
|style="text-align:center"|クリプトン
|style="text-align:center"|キセノン
|}
==== エキシマ(発展) ====
アルゴン気体とフッ素気体をつめた放電管に放電をすると、不安定なアルゴンフッ素 ArF (エキシマ)が一時的に生成し、それが分解する際に波長197 nmの紫外線を放出する。
この光は、[[高校物理 電磁気学#半導体|半導体]]製造の際の光化学反応の光源に使われている。また、キセノンでもハロゲンとのエキシマによってレーザー光が放出されることが知られている。
==== 化合物 ====
貴ガスは、反応性が低く化合物を作らないと考えられていたが、1960年代に、<chem>XePtF6</chem> や <chem>XeF4</chem> などキセノンの化合物の合成に成功した。その後も貴ガスの化合物は合成されたが、ネオンの化合物は未だ合成に成功していない。
キセノンとフッ素ガスを混合した気体に放電または熱を加えてできた、二フッ化キセノン XeF<sub>2</sub> や四フッ化キセノン XeF<sub>4</sub> や六フッ化キセノン XeF<sub>6</sub> の固体は無色である。
== ハロゲン ==
[[ファイル:周期表-ハロゲン.png|右]]
周期表の17族に属する、フッ素 F、塩素 Cl、臭素 Br、ヨウ素 I、アスタチン At を'''ハロゲン'''という<ref>17族元素にはテネシン Ts もあるがこの元素の性質はあまり解明されていない。</ref>。
ハロゲンの原子は最外殻に価電子を7つ持っており、1価の陰イオンになりやすく、化合物をつくりやすい。そのため、天然では、ハロゲンは鉱物(ホタル石 CaF<sub>2</sub> 、岩塩 NaCl etc.)として存在している場合が多い。または、海水中に陰イオンとしてハロゲンが存在している場合も多い。
=== 単体 ===
ハロゲンの単体はいずれも'''二原子分子'''で有色、有毒である。
沸点(bp)・融点(mp)は、原子番号の大きいものほど高い。
ハロゲンの単体は酸化力が強い。酸化力の強さは原子番号が小さいほど大きくなる。つまり酸化力の強さは、
:<chem>F2 > Cl2 > Br2 > I2</chem>
である。
たとえば、ヨウ化カリウム水溶液に塩素を加えると、ヨウ素は酸化されて単体となる。
:<chem>2KI + Cl2 -> 2KCl + I2 </chem>
逆に、塩化カリウム水溶液にヨウ素を加えても、ヨウ素よりも塩素のほうが酸化力が強いため、反応は起こらない。
また、ハロゲンの各元素ごとの酸化力の違いは、水や水素との反応にも関わる。
最も酸化力のつよいフッ素は、水と激しく反応し、酸素を発生する。
:<chem>2 F2 + 2 H2O -> 4 HF + O2</chem>
{|border=1 cellspacing=0 align=center text-align=center style="text-align:center"
|- style="background:silver"
! !! フッ素 F<sub>2</sub> !! 塩素 Cl<sub>2</sub> !! 臭素 Br<sub>2</sub> !! ヨウ素 I<sub>2</sub>
|-
| rowspan="2" | 色・状態
| [[File:F,9.jpg|180px]] || [[File:Cl,17.jpg|180px]] || [[File:Br,35.jpg|180px]] || [[File:I,53.jpg|170px]]
|-
|| 淡黄色・気体 || 黄緑色・気体 || 赤褐色・液体 || 黒紫色・固体
|-
| 融点 (℃) || -220 || -101 || -7 || 114
|-
| 沸点 (℃) || -138 || -34 || 59 || 184
|-
| 酸化力
| colspan="4" | 大 ←――――――――――――――――――――――――――――――――――→ 小
|-
| rowspan="2" | 水との反応 || 激しく反応して<br>酸素 O<sub>2</sub> が発生 || 一部が反応<br>HCl などを生じる || rowspan="2"| 塩素より反応は弱いが、<br>似た反応をする || rowspan="2" | 水に反応しにくく、<br>水に溶けにくい
|-
|| 2H<sub>2</sub>O + 2F<sub>2</sub><br />→ 4HF + O<sub>2</sub> || 2H<sub>2</sub>O + Cl<sub>2</sub> <br />⇄ HCl + HClO
|-
| rowspan="2" | 水素との反応 || 低温・暗所でも<br />爆発的に反応 || 光を当てることで<br />爆発的に反応 || 高温にすると反応 || 高温にすると一部が反応
|}
==== フッ素 ====
常温常圧下では淡黄緑色の気体である。
酸化力が非常に強く、様々な物質と激しく反応する。ガラスでさえフッ素を吹き付けると燃えるように反応するため扱いが難しい。
水や水素との反応物であるフッ化水素(HF)が水に溶けたフッ化水素酸(HFaq)はガラスを侵すため、ポリエチレン容器に入れ保管する。
==== 塩素 ====
塩素 Cl<sub>2</sub> は常温常圧で黄緑色の有毒な気体である。
塩素は歴史的に衣類の漂白剤として用いられていたが、第一次世界大戦で毒ガス兵器として用いられ、約3000人を殺害した。
===== 製法 =====
工業的:塩化ナトリウム水溶液の電気分解を用いたイオン交換膜法で生成する。
実験室的:
①酸化マンガン(IV)に濃塩酸を加え、加熱する。
: <chem>MnO2 + 4HCl ->[\Delta] MnCl2 + 2H2O + Cl2 ^</chem>
:なお、この反応では塩素と同時に水も生成する。さらに、濃塩酸には[[#ハロゲンの化合物|次節]]に見るように揮発性がある。したがって、この反応により得られる気体は純粋な塩素ではなく、水や塩化水素を少量含んでいる。それらを取り除くため、この気体を水と濃硫酸に順番に通す。まず水に通すことで、揮発した塩化水素が吸収される。次いで濃硫酸に通すことで、濃硫酸の吸湿作用により気体中の水が吸収され、純粋な塩素を得ることができる。なお、この水・濃硫酸に通す順番を逆にしてはならない。先に濃硫酸に通した後水に通しても、得られる気体の中には最後に通した水から蒸発した水蒸気が含まれているためである。塩素は空気よりも重いため、濃硫酸を通したあとの塩素を、下方置換で集める。
②塩化ナトリウム、酸化マンガン(IV)に濃硫酸を加えて加熱する。
:<chem>2NaCl + 3H2SO4 + MnO2 ->[\Delta] MnSO4 + 2NaHSO4 + 2H2O + Cl2 ^</chem>
③さらし粉に塩酸を加える。
:<chem>CaCl(ClO).H2O + 2HCl -> CaCl2 + 2H2O + Cl2 ^</chem>
④高度さらし粉に稀塩酸を加える。
:<chem>Ca(ClO)2.2H2O + 4HCl -> CaCl2 + 4H2O + 2Cl2 ^</chem>
※化学反応式の右辺の↑は、矢印のすぐ左の生成物が気体であることを示している。
===== 性質 =====
塩素 Cl<sub>2</sub> の水溶液を'''塩素水'''という。塩素は、水に少し溶けて、その一部が'''次亜塩素酸''' <chem>HClO</chem> になる。
:<chem>Cl2 + H2O -> HCl + HClO</chem>
次亜塩素酸は弱酸性で、強い酸化作用がある。これは、普通の塩素イオンの酸化数が-1なのに対し、次亜塩素酸イオン中の塩素原子の酸化数が+1なので還元されやすいためである。
塩素水および次亜塩素酸は、漂白剤や殺菌剤として水道やプールの水の殺菌などに広く用いられている。
: <chem>HClO + H^+ + 2e^- -> H2O + Cl^-</chem>
* さらし粉
水酸化カルシウムと塩素を反応させると、さらし粉(主成分:<chem>CaCl(ClO) * {H2O} </chem>)ができる。
また、<chem>Ca(ClO)2.2H2O</chem> を高度さらし粉(次亜塩素酸カルシウム)という。
高度さらし粉は、漂白剤や殺菌剤として利用される。いわゆるカルキとは、さらし粉のこと。ドイツ語のクロールカルキを略してカルキと読んでいる。
* その他
塩素はさまざまな金属と反応して塩化物となる。たとえば、単体の塩素の中に加熱した銅線を入れると、煙状の塩化銅(II) CuCl<sub>2</sub> を生成する。
: <chem>Cu + Cl2 ->[\Delta] CuCl2</chem>
==== 臭素 ====
臭素(Br<sub>2</sub>)は常温常圧で赤褐色の'''液体'''である。この性質は非金属元素の単体では唯一であり、全元素で見ても他には水銀のみである。水に少し溶け、赤褐色の溶液(臭素水)となる。また、有機溶媒のヘキサンやエタノールに可溶である
==== ヨウ素 ====
ヨウ素(I<sub>2</sub>)は常温常圧で黒紫色の固体である。'''昇華性'''があり、加熱すると固体から液体にならず直接気体となる。これを利用して、固体のヨウ素の純度を上げることができる。1リットルビーカーに不純物を含むヨウ素の固体を入れ、ガスバーナーで加熱する。ビーカーの上部には冷水を入れた丸底フラスコを置いておく。加熱によりヨウ素のみが気体となり、上昇してフラスコの底部付近で冷やされて固体に戻る。そのため、フラスコ底部に純度の高いヨウ素の針状結晶が析出する。
ヨウ素は水に溶けにくいが、エーテルなどの有機溶媒にはよく溶ける。また、ヨウ化カリウム水溶液にもよく溶けて褐色の溶液となる。
デンプン水溶液にヨウ素を溶かしたヨウ化カリウム水溶液を加えると、青紫色を呈する。このようにデンプンにヨウ素を作用させて青紫色となる反応を'''ヨウ素デンプン反応'''と呼ぶ。これにより、ヨウ素やデンプンの検出ができる。なお、ヨウ素デンプン反応が起こっている容器を加熱すると透明になるが、冷却するとまた青紫色に戻る。
ヨウ素デンプン反応を用いた試薬に、ヨウ化カリウムデンプン紙がある。これは、ろ紙にデンプンとヨウ化カリウムを含ませたものであり、酸化力の強い物質の検出に用いられる。酸化力の強い物質がある場合、ヨウ化カリウムは酸化されてヨウ素の単体となる。
: <chem>2I- -> I2 + e^-</chem>
このヨウ素がデンプンに作用して紫色から青紫色に変化する。
=== 化合物 ===
==== ハロゲン化水素 ====
ハロゲンは水素と化合して'''ハロゲン化水素'''となる。いずれも無色刺激臭の気体である。
また、ハロゲン化水素の水溶液は酸性を示す。
{|border=1 cellspacing=0 align=center text-align=center style="text-align:center"
|- style="background:silver"
! colspan="2" | 名称 !! フッ化水素 !! 塩化水素 !! 臭化水素 !! ヨウ化水素
|-
| colspan="2" | 組成式 || HF || HCl || HBr || HI
|-
| colspan="2" | 沸点(℃) || 20 || -85 || -67 || -35
|-
| rowspan="4" | 水溶液 || 名称 || フッ化水素酸 || 塩酸 || 臭化水素酸 || ヨウ化水素酸
|-
| 酸の強さ || '''弱酸''' || colspan="3" | 強酸
|-
| +AgNO<sub>3</sub>aq || AgF(水に可溶) || AgCl↓(白) || AgBr↓(淡黄) || AgI↓(黄)
|-
| 更に+NH<sub>3</sub>aq || - || 沈澱が再溶解 || 沈澱が少し溶ける || 沈澱は溶けない
|}
ハロゲン水溶液の酸性は、フッ化水素酸だけが弱酸である。それ以外は強酸である。
※化学式横の↓は、沈澱が生じたことを表す。
===== フッ化水素 =====
フッ化水素(HF)は、ホタル石(主成分 CaF<sub>2</sub>)に濃硫酸を加えて加熱することで、得られる。
: <chem>CaF2 + H2SO4 ->[\Delta] 2HF + CaSO4</chem>
フッ化水素は水によく溶け、弱酸の'''フッ化水素酸'''となる。
フッ化水素酸は、ガラスの主成分である二酸化ケイ素(SiO<sub>2</sub>)を溶かすため、保存するときはポリエチレン容器に保存する。
: <chem>SiO2 + 6HF -> H2SiF6 + 2H2O</chem>
生成物は水とヘキサフルオロケイ酸である。
工業の用途として、ガラスの表面処理や、くもりガラスの製造に、フッ化水素酸が用いられる。
フッ化水素だけ沸点が他のハロゲン化水素よりも高いが、これは、フッ化水素では水素結合が生じるからである。フッ化水素酸だけ弱酸である理由も、同様に水素結合によって電離度が低くなっているためである。
===== 塩化水素 =====
水素と塩素の混合物に光を当てると、激しく反応して塩化水素(HCl)を生じる。
塩化水素は、実験室では塩化ナトリウムに濃硫酸を加え加熱することで得られる。(不揮発性酸による揮発性酸の遊離反応)
: <chem>NaCl + H2SO4 ->[\Delta] NaHSO4 + HCl ^</chem>
[[File:Hydrochloric acid ammonia.jpg|right|200px|thumb|塩化水素とアンモニアの反応 <br> 白煙( NH<sub>4</sub>Cl )を生じる]]
塩化水素は水によく溶け、その水溶液は'''塩酸'''である。濃度の濃いものは濃塩酸、薄いものは希塩酸と呼ばれる。塩酸は強酸性を示し、多くの金属と反応して水素を発生する。
:<chem>2HCl + Zn -> ZnCl2 + H2 ^</chem>
また、強酸性であることから、弱酸の塩と反応して塩を生じ、弱酸を遊離させる。
: <chem>HCl + NaHCO3 -> NaCl + H2O + CO2</chem>
塩酸には揮発性があり、常温で一部が気体となる。そのため、アンモニアのついたガラス棒を近づけると、塩酸の気体とアンモニアとが触れて反応し、塩化アンモニウム NH<sub>4</sub>Clの固体が生じ、白煙が見える。この反応は、塩化水素やアンモニアの検出に用いられる。
: <chem>HCl + NH3 -> NH4Cl</chem>
==== ハロゲン化銀・ハロゲン化鉛 ====
ハロゲン化銀は、フッ化銀を除いて、一般に水に溶けにくい。このため、ハロゲンの化合物の水溶液に、硝酸銀をくわえると、塩化銀、臭化銀、ヨウ化銀などのハロゲン化銀が沈殿する。
{|border=1 cellspacing=0 align=center text-align=center style="text-align:center"
|- style="background:silver"
! 名称 !! フッ化銀 !! 塩化銀 !! 臭化銀 !! ヨウ化銀 !! !! フッ化鉛(II) !! 塩化鉛(II) !! 臭化鉛(II) !! ヨウ化鉛(II)
|-
| 組成式 || AgF || AgCl || AgBr || AgI || || PbF<sub>2</sub> || PbCl<sub>2</sub> || PbBr<sub>2</sub> || PbI<sub>2</sub>
|-
| 色 || 黄色 || 白色 || 淡黄色 || 黄色 || || 白色 || 白色 || 白色 || 黄色
|-
| 水への溶けやすさ || 溶けやすい || 溶けにくい || 溶けにくい || 溶けにくい || || 溶けにくい || 溶けにくい || 溶けにくい || 溶けにくい
|-
| 熱水への溶けやすさ || 溶けやすい || 溶けにくい || 溶けにくい || 溶けにくい || || || 溶ける || 溶ける || 溶ける
|}塩化水素(HCl)
塩化銀、臭化銀、ヨウ化銀には感光性があり、生じた沈澱に光を当てると銀が遊離する。また、これらはいずれもチオ硫酸ナトリウム水溶液によく溶ける。アンモニア水への溶けやすさは異なり、塩化銀はよく溶け、臭化銀も一部溶けるが、ヨウ化銀は溶けない。
==== 塩素のオキソ酸 ====
分子中に酸素を含む酸を'''オキソ酸'''という。
塩素のオキソ酸には、酸化数の異なる次の4つがある。
{|border=1 cellspacing=0 align=center text-align=center style="text-align:center"
|- style="background:silver"
! 名称 !! width=100px | 次亜塩素酸 !! width=100px | 亜塩素酸 !! width=100px | 塩素酸 !! width=100px|過塩素酸
|-
| 化学式 || HClO || HClO<sub>2</sub> || HClO<sub>3</sub> || HClO<sub>4</sub>
|-
| 性質 || 殺菌・漂白作用 || 殺菌・漂白作用 || 強力な酸化剤 || 塩は爆発性
|}
右にいくほど強酸性である。
;さらし粉
さらし粉・高度さらし粉(化学式: CaCl(ClO)・H<sub>2</sub>O、Ca(ClO)<sub>2</sub>)は、次亜塩素酸イオンを含むため、その酸化作用により漂白剤や殺菌剤として広く用いられている。水酸化カルシウムと塩素を反応させることで得られる。
: <chem>Ca(OH)2 + Cl2 -> CaCl(ClO) * {H2O} </chem>
;塩素酸 および 塩素酸塩
::(※ 検定教科書では「酸素」の単元で習う場合が多い。)
塩素酸HClO<sub>3</sub>は不安定な物質だが、カリウムやナトリウムの塩は安定で、強い酸化剤である。塩素酸カリウムKClO<sub>3</sub>は酸化マンガン(IV)を触媒として用いて加熱すると酸素を発生するため、花火やマッチの火薬中に燃焼を助けるため含まれる。
: <chem>2KClO3 ->[\Delta] 2KCl + 3O2 ^</chem>
==== ハロゲン化物と日用品 ====
ハロゲンの化合物のなかには、日用品の中に広く用いられている物もある。たとえば、フッ素化合物の一つ、ポリテトラフルオロエチレン(テフロン)はフライパンの表面に薄く塗られ、焦げ付きを防ぐ役割を果たしている。また、臭化銀はその感光性を利用して、写真のフィルムに用いられている。塩素は多くのビニル・プラスチック製品に含まれている。また、ヨウ素は消毒剤や うがい薬 に用いられている。
==== まぜるな危険 ====
洗剤の「まぜるな危険」の化学反応(執筆中)
== 16族元素 ==
[[ファイル:周期表-OS.png|右]]
16族に属する'''酸素'''(O)、'''硫黄'''(S)はともに価電子を6つ持ち、2価の陰イオンになる。ともに単体は同素体を持つ。
=== 酸素 ===
酸素の単体には、原子2個で1つの分子を作っている'''酸素'''(O<sub>2</sub>)と、原子3個で1つの分子を作っている'''オゾン'''(O<sub>3</sub>)がある。いずれも常温では気体であるが、大きく異なった性質を示す。
酸素は空気中で約21%ふくまれる。また、酸素は地殻を構成する主な元素でもあり、地殻のおよそ半分は酸素でできている。地殻中ではSO<sub>2</sub>
==== 単体 ====
[[ファイル:Dioxygen-3D-vdW.png|右|サムネイル|100x100ピクセル|酸素 O<sub>2</sub> 分子]]
'''酸素'''(O<sub>2</sub>)は常温で無色無臭の気体である。
工業的な製法は、液体空気の分留または水の電気分解によって酸素を得る。
実験室で酸素を得るには、過酸化水素水に酸化マンガン(IV)を加えればよい。この反応で酸化マンガン(IV)は触媒として働き、過酸化水素が分解して酸素を発生する。
: <chem>2H2O2 ->[(MnO2)] 2H2O + O2 ^</chem>
※化学反応式の矢印の上に括弧で物質を書くと、その物質がその反応における触媒であることを示す。
また、塩素酸カリウムと酸化マンガン(IV)を混合して加熱してもよい(熱分解反応)。この反応でもやはり酸化マンガン(IV)は触媒として働く。
:<chem>2KClO3 ->[\Delta \, (MnO2)] 2KCl + 3O2 ^</chem>
酸素は水に溶けにくいので、水上置換により捕集する。
液体酸素は磁性を持ち、磁石にくっつく。
==== オゾン ====
[[ファイル:Ozone-3D-vdW.png|右|サムネイル|100x100ピクセル|オゾン O<sub>3</sub> 分子]]
'''オゾン'''(O<sub>3</sub>)は、酸素中で無声放電(音の小さい放電)を行うか、強い紫外線を当てることで生成する。
:<chem>3O2 <=> 2O3</chem>
オゾン O<sub>3</sub> は分解しやすく、分解の際に強い酸化作用を示す。オゾンは淡青色・特異臭の気体で、人体には有害である。漂白作用も持つ。
また、オゾンは酸化作用によりヨウ化カリウムデンプン紙を青変する。
:<chem>2KI + O3 + H2O -> 2KOH + O2 + I2</chem>
このためオゾンは水で湿らせたヨウ化カリウムデンプン紙により検出できる。
大気中には上空25 kmほど(成層圏)にオゾンが豊富に含まれる層があり、オゾン層と呼ばれる。オゾン層は人体に有害な紫外線を吸収する働きがあるが、冷蔵庫などに用いられていたフロンガスがオゾンを分解し、このオゾン層が南極付近で局所的に薄くなる現象(オゾンホール)が発生し、環境問題として取り上げられた。現在ではフロンガスの規制などの対策により回復過程にあり、遅くとも21世紀中には全快する見込みである。([[高等学校 地学]]も参照。)
==== 化合物 ====
酸素の化合物は一般に'''酸化物'''と呼ばれる。酸素はあらゆる物質と化合することができ、一般に金属元素とはイオン結合、非金属元素とは共有結合による酸化物を作る。
酸化物は、酸や塩基との反応の仕方から3通りに分類される。
{| class="wikitable" style="float: right;"
|+酸化物の分類
!酸性酸化物
|CO<sub>2</sub> , NO<sub>2</sub> , SiO<sub>2</sub> , SO<sub>2</sub> , SO<sub>3</sub> , Cl<sub>2</sub>O<sub>7</sub> など
|-
!塩基性酸化物
|Na<sub>2</sub>O , MgO , CaO , Fe<sub>2</sub>O<sub>3</sub> , CuO , BaO など
|-
!両性酸化物
|Al<sub>2</sub>O<sub>3</sub> , ZnO
|-
|}
* '''酸性酸化物''' : 水に溶けて酸性を示したり、塩基と反応して塩を生じる酸化物を、'''酸性酸化物'''という。
* '''塩基性酸化物''' : 水に溶けて塩基性を示したり、酸と反応して塩を生じる酸化物を、'''塩基性酸化物'''という。
* '''両性酸化物''': 酸・塩基のどちらとも反応して塩を生じる酸化物を、'''両性酸化物'''という。
一般に、非金属元素の酸化物は酸性酸化物であり、金属元素の酸化物は塩基性酸化物である。
; 酸性酸化物の例
{| class="wikitable" style="float: right;"
!酸性酸化物
|CO<sub>2</sub> , NO<sub>2</sub> , SiO<sub>2</sub> , SO<sub>2</sub> , SO<sub>3</sub> , Cl<sub>2</sub>O<sub>7</sub> など
|-
|}
二酸化炭素や二酸化硫黄など、非金属元素の酸化物の多くは、酸性酸化物である。
酸性酸化物の定義により、酸性酸化物は水に溶けると、酸性を示す。
: <chem>SO3 + H2O -> H2SO4</chem>
:: ※ H<sub>2</sub>SO<sub>4</sub>は酸。
また、酸性酸化物は塩基と反応すると、塩をつくる。
: <chem>SO2 + 2NaOH -> Na2SO3 + H2O</chem>
:: ※ Na<sub>2</sub>SO<sub>3</sub>は塩。
二酸化炭素(CO<sub>2</sub>)は塩基と反応して塩を生じる。
:<chem>CO2 + Ca(OH)2 -> CaCO3 + H2O</chem>
:: ※ CaCO<sub>3</sub>は塩。
二酸化窒素(NO<sub>2</sub>)は水に溶けて硝酸(HNO<sub>3</sub>)となる。
: <chem>3NO2 + H2O -> 2HNO3 + NO</chem>
一般に、酸性酸化物が水と反応するとオキソ酸が生じる。
; 塩基性酸化物の例
{| class="wikitable" style="float: right;"
!塩基性酸化物
|Na<sub>2</sub>O , MgO , CaO , Fe<sub>2</sub>O<sub>3</sub> , CuO , BaO など
|-
|}
水に溶けて塩基性を示したり、酸と反応して塩を生じる酸化物を、'''塩基性酸化物'''という。
:<chem>Na2O + H2O -> 2NaOH</chem>
:: ※ NaOHは塩基。
'''金属元素の酸化物の多くは、塩基性酸化物である'''。酸化カルシウムや酸化ナトリウムなどが、塩基性酸化物である。
酸化カルシウム(CaO)は水に溶けて水酸化カルシウム(Ca(OH)<sub>2</sub>)となる。
:<chem>CaO + H2O -> Ca(OH)2</chem>
また、これは酸と反応して塩を生じる。
: <chem>CaO + 2HCl -> CaCl2 + H2O</chem>
; 両性酸化物の例
{| class="wikitable" style="float: right;"
!両性酸化物
|Al<sub>2</sub>O<sub>3</sub> , ZnO
|-
|}
酸・塩基のどちらとも反応して塩を生じる酸化物を、両性酸化物という。
酸化アルミニウム(Al<sub>2</sub>O<sub>3</sub>)や酸化亜鉛(ZnO)は、酸とも塩基とも反応して塩を生じる。
: <chem>Al2O3 + 6HCl -> 2AlCl3 + 3H2O</chem>
:<chem>Al2O3 + 2NaOH + 3H2O -> 2Na[Al(OH)4]</chem>
下の式の生成物は、テトラヒドロキシドアルミン酸ナトリウムである。
==== オキソ酸 ====
塩素の酸性酸化物を水に溶かすと、水と反応して酸を生じる。
塩素の酸化物には、いくつかの種類があるが、一例として酸を生じる反応として、下記の化学反応がある。
:<chem>Cl2O7 + H2O -> 2HClO4</chem>
リンの酸性酸化物も、水と反応し、酸を生じる。
:<chem>P4O10 + 6H2O -> 4H3PO4</chem>
また、このように酸性酸化物を水と反応させて得られた酸は、分子中に酸素原子と水素原子を含む場合が多い。 塩素の場合は、過塩素酸 HClO<sub>4</sub> などが得られるし、窒素の場合は、亜硝酸(HNO<sub>2</sub>)と硝酸(HNO<sub>3</sub>)などが得られるし、分子式を見ればわかるように酸素原子と原子が分子中に含まれてる。
{| class="wikitable" style="float: right;"
! style="text-align: center;" |化学式
!名称
!酸の強さ
!Clの酸化数
|-
|HClO<sub>4</sub>
|過塩素酸
|つよい側
|+7
|-
|HClO<sub>3</sub>
|塩素酸
|
|+5
|-
|HClO<sub>2</sub>
|亜鉛素酸
|
|+3
|-
|HClO
|次亜鉛素酸
|よわい側
|+1
|-
|}
一般に、分子中に酸素分子のある構造の酸のことを'''オキソ酸'''という。オキソ酸の分子構造について、塩素原子や窒素原子など、由来となった酸性酸化物の元素を中心原子と設定する。
中心元素が同じであれば、結合している酸素の数が多いほど、オキソ酸の酸性は強くなる。
たとえば窒素のオキソ酸として亜硝酸(HNO<sub>2</sub>)と硝酸(HNO<sub>3</sub>)があるが、硝酸の方が強い酸である。
また、中心元素が第3周期のリン、硫黄、塩素であるようなオキソ酸は、この順に酸性が強くなる。リン酸(H<sub>3</sub>PO<sub>4</sub>)は弱酸であるが、硫酸(H<sub>2</sub>SO<sub>4</sub>)は強酸であり、過塩素酸(HClO<sub>4</sub>)はさらに強い酸性を示す。
塩素のオキソ酸の酸性の順は、
: (つよい側) HClO<sub>4</sub> > HClO<sub>3</sub> > HClO<sub>2</sub> > HClO (よわい側)
名称は
: HClO<sub>4</sub> 過塩素酸。 HClO<sub>3</sub> 塩素酸。 HClO<sub>2</sub> 亜鉛素酸。HClO 次亜鉛素酸。
である。
=== 硫黄 ===
==== 単体 ====
'''硫黄'''(S)の単体には、斜方硫黄、単斜硫黄、ゴム状硫黄などの同素体がある。単体は火山地帯から多く産出され、また重油の精製過程のひとつである'''脱硫'''の工程において多く得られる。日本では、この脱硫で得られた硫黄により国内需要を全て賄っている。
; 斜方硫黄(S<sub>8</sub>)
[[ファイル:Sulfur.jpg|100x100ピクセル]] 斜方硫黄は常温で安定な黄色・塊状の結晶である。硫黄原子が8つ環状に結合して1つの分子を形成している。融点は113℃。
; 単斜硫黄(S<sub>8</sub>)
[[ファイル:Cyclooctasulfur-above-3D-balls.png|100x100ピクセル]] 単斜硫黄は高温(95.5℃以上)で安定な黄色・針状の結晶である。硫黄原子が8つ環状に結合して1つの分子を形成している。斜方硫黄を加熱することで得られる。
; ゴム状硫黄(S<sub>x</sub>)
ゴム状硫黄は黒褐色の無定形固体である。ただし、純粋なものは黄色を示すものがある。数十万の硫黄原子がジグザグに結合しているため、引っ張ると結合角が変わり弾力性がある。
斜方硫黄を加熱すると琥珀色の液体となる。これを加熱し続けると次第に暗褐色となり、粘性が増してくる。さらに加熱すると濃青色の液体となり、これを水中に入れ急冷するとゴム状硫黄となる。
* 反応性
硫黄は、高温で反応性が高い。
[[ファイル:Sulfur-burning-at-night.png|右|サムネイル|150x150ピクセル|硫黄の燃焼]]
硫黄は高温では多くの元素と化合して硫化物となる。たとえば鉄粉と硫黄の粉末を混合して加熱すると、硫化鉄(II) FeS が生じる。
: <chem>Fe + S ->[\Delta] FeS</chem>
また、空気中で青白い炎をあげて燃焼し、二酸化硫黄となる。
: <chem>S + O2 ->[\Delta] SO2</chem>
==== 化合物 ====
===== 硫化水素 =====
'''硫化水素'''(H{{sub|2}}S)は無色腐卵臭の気体である。火山ガスや温泉に豊富に含まれる。よく言われる「硫黄の臭い」は硫黄ではなくこれである(硫黄の単体は無臭)。人体に有毒であるため、使用時には十分な換気に注意しなければならない。硫化水素は水に溶け、弱酸性を示す。
: <chem>H2S <=> HS^- + H^+ <=> S^{2-} {+} 2H^+</chem>
実験室では硫化鉄(II)に強酸を加えることで得られる。
: <chem>FeS + 2HCl -> FeCl2 + H2S ^</chem>
: <chem>FeS + H2SO4 -> FeSO4 + H2S ^</chem>
硫化水素は多くの場合に還元剤として働き、二酸化硫黄を還元して硫黄の単体を生じる。
: <chem>2H2S + SO2 -> 2H2O + 3S v</chem>
多くの金属イオンと反応して硫化物の沈殿を作るため、金属イオンの分離や検出に多く用いられる。
: <chem>Fe^{2+} {+} H2S -> 2H^{+} {+} FeS v</chem>
{| class="wikitable"
|+ 主な硫化物沈澱とその色
|-
| style="background-color:#BBB; text-align:center" | '''硫化物沈澱''' || Ag<sub>2</sub>S || PbS || CuS || FeS※ || NiS※ || CdS || MnS※ || ZnS※
|-
| style="background-color:#BBB; text-align:center" | '''色''' || colspan="5" style="text-align:center" | 黒 || style="text-align:center" | 黄 || style="text-align:center" | 淡黄 || style="text-align:center" | 白
|}
※酸性条件下では沈澱しない。
ちなみに、温泉卵の黒は硫化鉄の色である。
===== 二酸化硫黄 =====
'''二酸化硫黄'''('''亜硫酸ガス'''、SO<sub>2</sub>)は刺激臭をもつ無色の有毒な気体で、火山ガスや温泉などに含まれる。
酸性酸化物であり、水に溶けて'''亜硫酸'''(H<sub>2</sub>SO<sub>3</sub>)を生じ、弱酸性を示す。
: <chem>SO2 + H2O <=> HSO3- + H^+</chem>
実験室では、銅を濃硫酸に加えて加熱するか、亜硫酸塩を希硫酸と反応させることにより得られ、下方置換で捕集する。
: <chem>Cu + 2H2SO4 ->[\Delta] CuSO4 + 2H2O + SO2 ^</chem>
: <chem>NaHSO3 + H2SO4 -> NaHSO4 + H2O + SO2 ^</chem>
: <chem>Na2SO3 + H2SO4 -> Na2SO4 + H2O + SO2 ^</chem>
工業的には、硫黄の燃焼により製造される。
: <chem>S + O2 ->[\Delta] SO2</chem>
二酸化硫黄は還元性があり、漂白作用がある。ただし、硫化水素のような強い還元剤がある場合は、酸化剤として作用する。
硫黄を含む物質は燃焼により二酸化硫黄を生じる。二酸化硫黄の水溶液は、弱い酸性を示す。
硫黄は石油や石炭に多く含まれているため、このような化石燃料を大量に燃焼させると、大気中に多量の二酸化硫黄が放出され、雨水に溶け込み、酸性雨の原因となる。
===== 三酸化硫黄 =====
'''三酸化硫黄'''('''無水硫酸'''、SO<sub>3</sub>)は、有毒の結晶である。
水と激しく反応して硫酸を生成する。
:<chem>SO3 + H2O -> H2SO4</chem>
工業的には、二酸化硫黄を空気中の酸素で酸化して得る。このとき用いる触媒が、'''酸化バナジウム(Ⅴ)'''(V<sub>2</sub>O<sub>5</sub>)である。
:<chem>2SO2 + O2 ->[(V2O5)] 2SO3</chem>
===== 硫酸 =====
'''硫酸'''(H{{sub|2}}SO{{sub|4}})は工業的に'''接触法'''(接触式硫酸製造法)により、酸化バナジウム(Ⅴ)を主成分とする触媒をもちいて、次のような工程で製造されている。
# 硫黄 S を燃焼させ、二酸化硫黄 SO<sub>2</sub> を作る。
#: <chem>S + O2 ->[\Delta] SO2</chem>
# 二酸化硫黄と酸素との混合気体を乾燥させ、酸化バナジウム(Ⅴ)を触媒として反応させて三酸化硫黄 SO<sub>3</sub> を作る。
#: <chem>2SO2 + O2 ->[(V2O5)] 2SO3</chem>
# 三酸化硫黄を濃硫酸に吸収させ、濃硫酸中の水と反応させて'''発煙硫酸'''<sup>※</sup>とする。
#: <chem>SO3 + H2O -> H2SO4</chem>
# 集めた発煙硫酸を水また稀硫酸で稀釈し、濃硫酸とする。
※ 発煙硫酸は硫酸が炭化している訳ではなく、空気中で煙のように目視できることが名前の由来。
硫酸は、硫黄のオキソ酸である。通常はH{{sub|2}}SO{{sub|4}}の水溶液を硫酸と呼ぶ。硫酸は無色透明で粘性があり、密度の大きい重い液体である。濃度により性質が異なり、濃度90%以上程度の濃いものを'''濃硫酸'''といい、薄いものを'''稀硫酸'''と呼ぶ。
濃硫酸を水で稀釈することで稀硫酸が得られる。稀釈する際は水を入れたビーカーを水を張った水槽中に入れ、冷却しながら濃硫酸を静かに加えるようにする。これは、硫酸の水への溶解エンタルピーの絶対値が非常に大きいためである。もし、逆に濃硫酸に水を加えるようにすると、放出された熱によって水が激しく蒸発して濃硫酸が跳ねることがあり、非常に危険である。
[[ファイル:Sulfuric_acid_burning_tissue_paper.jpg|右|サムネイル|200x200ピクセル]]
濃硫酸には次のような性質がある。
* '''脱水作用''': 有機化合物の分子内に含まれている酸素原子や水素原子を、水分子H{{sub|2}}Oとして奪う。たとえば紙([[高校化学 天然高分子化合物#セルロース|セルロース]])に濃硫酸を垂らすと、その部分から酸素と水素が奪われ、炭化する。このとき、硫酸自身は還元されて二酸化硫黄となる。
* 吸湿作用: 強い吸湿作用があり、中性・酸性気体の乾燥剤として用いられる。
* 不揮発性: 沸点が高く不揮発性なので、'''揮発性の酸の塩と反応して揮発性の酸を遊離する'''。
*: <chem>NaCl + H2SO4 -> NaHSO4 + HCl ^</chem>
* 酸化作用: 金属を加え加熱すると、銅・銀・水銀などのイオン化傾向の小さい金属を酸化するようになる。加熱した濃硫酸を'''熱濃硫酸'''と呼ぶこともある。
*: <chem>Cu + 2H2SO4 ->[\Delta] CuSO4 + 2H2O + SO2 ^</chem>
稀硫酸は強酸であり、多くの金属と反応して水素を発生する。なお、濃硫酸は水を余り含まないため電離度が小さく、殆ど酸性を示さない。
硫酸イオン(SO{{sub|4}}{{sup|2-}})はBa{{sup|2+}}やCa{{sup|2+}}と反応して白色沈澱を生じる。そのため、これらのイオンの検出・分離に用いられる。また日常生活においても、硫酸はカーバッテリーや非常用電源などとして使われる[[高校化学 電池と電気分解#鉛蓄電池|鉛蓄電池]]の電解液として用いられている。
また、肥料や薬品の製造にも用いられる。
== 15族元素 ==
[[ファイル:周期表-NP.png|右]]
'''窒素'''(N)、'''リン'''('''燐'''、P)はともに15族に属する非金属元素である。価電子を5つ持つ。
=== 窒素 ===
==== 単体 ====
'''窒素'''(N{{sub|2}})は常温常圧で無色無臭の気体である。窒素原子2つが三重結合して1つの分子を作っている、二原子分子の気体である。空気中に体積比でおよそ78%含まれており、工業的には液体空気の分留により生産される。
実験室では、亜硝酸アンモニウムの熱分解で得る。
:<chem>NH4NO2 ->[\Delta] N2 + 2H2O</chem>
液体の窒素('''液体窒素'''、-196℃、7K)は物質の冷却にしばしば用いられている。窒素は水上置換で捕集する。
==== 化合物 ====
===== アンモニア =====
'''アンモニア'''(NH{{sub|3}})は無色刺激臭の気体である。水に非常に溶けやすく、水溶液はアンモニア水と呼ばれ、弱塩基性を示す。
: <chem>NH3 + H2O -> NH4+ + OH^-</chem>
沸点は-33.4℃である。
アンモニアは、工業的には、高温高圧下で四酸化三鉄 <chem>Fe3O4</chem> などの触媒を用いて窒素と水素を直接反応させる'''ハーバー・ボッシュ法'''により製造される。
: <chem>N2 + 3 H2 ->[\Delta \, (Fe3O4)] 2 NH3</chem>
実験室では、塩化アンモニウムと水酸化カルシウムの粉末を混合して加熱することにより得られる。水に非常に溶けやすく空気より軽いため、'''上方置換'''で捕集する。
: <chem>2NH4Cl + Ca(OH)2 -> CaCl2 + 2H2O + 2NH3 ^</chem>(弱塩基遊離反応)
アンモニアが生成したことを確かめるには、[[高校化学 水素と貴ガス#ハロゲン化水素|濃塩酸]]を近づければよい。アンモニアと濃塩酸が反応して塩化アンモニウムの白煙を生じる。
: <chem>NH3 + HCl -> NH4Cl</chem>
水溶液中のアンモニウムイオン(NH{{sub|4}}{{sup|+}})を検出する際には、ネスラー試薬が用いられる。アンモニウムイオンがあれば黄色~褐色の沈殿を生じる。
アンモニアは、硝酸の原料、あるいは尿素((NH<sub>2</sub>)<sub>2</sub>CO)などの窒素肥料の原料などとしても利用される。
:<chem>CO2 + 2NH3 -> (NH2)2CO + H2O</chem>
===== 窒素酸化物 =====
窒素の酸化物は数種類あり、それらの総称を'''窒素酸化物'''と呼ぶ。主なものに'''一酸化窒素'''(NO)と'''二酸化窒素'''(NO{{sub|2}})がある。一般に、窒素酸化物NO<sub>x</sub>を'''ノックス'''と呼ぶ。
; 一酸化窒素 (NO)
常温で無色の気体。水に溶けにくい。'''希硝酸に銅'''を加えることで発生する。空気中で酸化されやすいため、'''水上置換'''で捕集する。
: <chem>3Cu + 8HNO3 -> 3Cu(NO3)2 + 4H2O + 2NO ^</chem>
空気中での酸化の反応式は、
: <chem>2NO + O2 -> 2NO2</chem>
である。
; 二酸化窒素 (NO{{sub|2}})
[[ファイル:CopperReaction.JPG|右|300x300ピクセル]]
常温で赤褐色の刺激臭を持つ気体。水に溶けやすく、反応して硝酸 <chem>HNO3</chem> となる。
: <chem>3NO2 + H2O -> 2HNO3 + NO</chem>
実験室では'''濃硝酸に銅'''を加えることで発生する。水に溶けやすいので'''下方置換'''で捕集する。
: <chem>Cu + 4HNO3 -> Cu(NO3)2 + 2H2O + 2NO2 ^</chem>
空気中では一部で2分子が結合して'''四酸化二窒素''' <chem>N2O4</chem> となる。
: <chem>2NO2 <=> N2O4</chem>
窒素は常温では燃焼しない。すなわち酸素と反応して酸化物にならない。しかし、高温下では窒素と酸素が直接反応して窒素酸化物を生じる。また化石燃料の燃焼によっても窒素酸化物が生成する。そのため車のエンジンなどから窒素酸化物が発生し、大気中に放出されたものが雨水に吸収され、[[高校化学 水素と貴ガス#二酸化硫黄|硫黄酸化物]]と同様に酸性雨の原因となる。
===== 硝酸 =====
'''硝酸''' <chem>HNO3</chem> は窒素のオキソ酸であり、有名な強酸である。通常は<chem>HNO3</chem>の水溶液を硝酸と呼ぶ。濃度によりやや異なる性質を示し、濃度の濃いものを'''濃硝酸'''、薄いものを'''希硝酸'''と呼ぶ。硝酸は揮発性の酸であるため、実験室では硝酸塩に濃硫酸を加えることにより得られる。(不揮発性酸による揮発性酸の遊離反応)
: <chem>NaNO3 + H2SO4 -> NaHSO4 + HNO3</chem>
硝酸の製法は、工業的には、'''オストワルト法'''により製造される。次のような工程を経て硝酸が得られる。
# アンモニアと空気の混合気体を、触媒の白金 Pt に触れさせ、800℃〜900℃でアンモニアを酸化させて一酸化窒素とする。
#: <chem>4NH3 + 5O2 ->[\Delta \, (Pt)] 4NO + 6H2O</chem>
# 一酸化窒素を空気中でさらに酸化して、二酸化窒素とする。
#: <chem>2NO + O2 -> 2NO2</chem>
# 二酸化窒素を水に吸収させ、硝酸とする。ここで発生する一酸化窒素は回収し、2に戻って再び酸化する。
#: <chem>3NO2 + H2O -> 2HNO3 + NO</chem>
硝酸は無色の水溶液であるが、光や熱により分解して二酸化窒素と酸素を生じる。そのため、保管の際には、褐色瓶に入れ冷暗所で保存するようにする。
: <chem>4HNO3 -> 4NO2 + 2H2O + O2</chem>
市販の硝酸(濃度約60%)は発煙性を示す。
稀硝酸・濃硝酸ともに強い酸化作用を持っており、金・白金以外の金属を酸化して溶かす。イオン化傾向の大きい金属と反応するとき窒素酸化物を生じる。希硝酸からは一酸化窒素が、濃硝酸からは二酸化窒素がそれぞれ発生する。
:(希硝酸)<chem>3Cu + 8HNO3 -> 3Cu(NO3)2 + 4H2O + 2NO ^</chem>
:(濃硝酸)<chem>Cu + 4HNO3 -> Cu(NO3)2 + 2H2O + 2NO2 ^</chem>
また硝酸は強酸であり、イオン化傾向の大きい金属と反応して水素を発生する。
: <chem>2Al + 6HNO3 -> 2Al(NO3)3 + 3H2 ^</chem>
* 不動態
ただし、鉄 Fe やアルミニウム Al やニッケル Ni は、硝酸とは反応して水素を発生するが、濃硝酸に加えても溶けない。これは、金属の表面が酸化され、水に溶けにくい緻密な酸化被膜を生成して、内部が保護され、反応が内部まで進行しなくなるためである。このような状態を'''不動態'''という。
* その他
硝酸塩はほとんど水に溶ける。そのため、ガラス器具にこびりついた金属類を洗浄する際に用いられることも多い。
また、硝酸は火薬、染料、医薬品の製造に用いられる。
{{コラム|硝石|硝酸塩の一つである硝酸カリウムは、天然には硝石として存在する。この硝石は、原始的な方法で製造することができる。硝石のおおもとの原料は、糞尿である。尿などにふくまれるアンモニアが、土壌中でさまざまな物質と反応して、硝酸イオンを多く含む物質になる。この硝酸イオンを原料に、カリウムをふくむ{{ruby|灰汁|あく}}とともに煮ると化学反応をして硝酸カリウムになる。中世や近世では、この硝石を中間材料として、火薬などを作っていた。}}
==== 窒素の応用 ====
たとえば、ポテトチップスなどのような油で揚げたスナック菓子の酸化防止のため、袋の中に窒素が詰められる。酸素があると、油が酸化してしまうが、代わりに何らかの気体を詰める必要があるので、窒素を袋の中につめているのである。
=== リン ===
==== 単体 ====
'''リン'''('''燐'''、P)は5種類の同素体を持つ。代表的なものは'''白リン'''(黄リン、P{{sub|4}})と'''赤リン''' (P{{sub|x}})の2つである。
'''白リン'''(P{{sub|4}})は淡黄色の蠟状固体であり、人体にきわめて有毒である。空気中で自然発火するため、水中に保存する。二硫化炭素(CS{{sub|2}})に溶ける。
[[ファイル:Red_phosphorus_in_a_tube_-_P_15_.jpg|右|150x150ピクセル]]
'''赤リン'''(P{{sub|x}})は暗赤色の粉末状固体であり、弱い毒性を持つ。二硫化炭素(CS{{sub|2}})に溶けない。赤リンはマッチの箱の擦り薬として用いられている。{{コラム|マッチの発明の歴史|1669年に発火温度の低い燐が発見されてから最初のマッチ(燐寸)が発明されるまでには200年ほどを要した。最初期のマッチは火つきは悪く、火がつくと飛び散り、二酸化硫黄の腐卵臭がすると欠点だらけであった。これらの欠点は1931年に黄燐マッチが開発されることで改善し、火つきの非常に良いマッチが誕生した。しかし、こちらも黄燐の猛毒性、僅かな摩擦・衝撃での発火、温度上昇による自然発火などの別の問題点があった。同じ燐でも自然発火温度が高く、毒性も弱い赤燐が1845年に発見されると、その10年後には赤燐を用いた安全マッチが開発された。このマッチは現在のものと殆ど相違ない。日本では、1875年に最初のマッチが作られたとされる。なお、西部劇などに見られるマッチは硫化燐マッチであり、黄燐マッチではない。}}
単体のリンは燐酸カルシウム(Ca<sub>3</sub>(PO<sub>4</sub>)<sub>2</sub>)を主成分とする鉱石に珪砂([[高校化学 非金属元素#二酸化ケイ素|二酸化珪素]]を主成分とする砂)を混ぜて電気炉中で強熱して作られる。このとき得られるのは黄燐である。黄燐は窒素中で長時間加熱(250℃付近)することで赤燐となる。
==== 酸化物 ====
リンを空気中で燃焼させると、'''十酸化四リン'''(五酸化二燐、<chem>P4O10</chem>)の白煙を生じる。
: <chem>4P + 5O2 ->[\Delta] P4O10</chem>
十酸化四リンは白色の粉末状固体であり、強い吸湿性を示し、乾燥剤として用いられる。この吸湿性から、空気中に放置すると空気中の水蒸気を吸収して自分自身がその水に溶ける。この現象を'''潮解'''という。 十酸化四リンは水と反応して'''リン酸''' <chem>H3PO4</chem> となる。
: <chem>P4O10 + 6H2O -> 4H3PO4</chem>
リン酸は酢酸のような弱酸よりは強いが、塩酸のような強酸よりは弱い、中程度の強さの酸である。 リンは生物にとって必要不可欠な元素である。生物は、[[高校化学 天然高分子化合物#核酸|アデノシン]](アデニン+リボース)にリンが高エネルギーリン酸結合により3つ化合した化合物である[[高等学校理科 生物基礎/細胞とエネルギー#代謝とATP|ATP]](アデノシン三リン酸)にエネルギーを保存し、利用する。農業においても必要な元素で、リン酸肥料として用いられる。主なものとして、リン鉱石と硫酸と水との反応から得られるリン酸二水素カルシウム <chem>Ca(H2PO4)2</chem> と、硫酸カルシウム <chem>CaSO4</chem> との混合物である'''過リン酸石灰'''がある。 この過リン酸石灰が、リン肥料の主成分である。 リン酸カルシウム <chem>Ca3(PO4)2</chem> およびヒドロキシアパタイト <chem>Ca5(PO4)3(OH)</chem> は、動物の骨や歯の主成分である。
植物の成長に必要な必須元素のうち、窒素・燐・カリウムは'''肥料の三要素'''と呼ばれる。
== 14族元素 ==
[[ファイル:周期表-CSi.png|右]]
'''炭素''' C 、'''ケイ素''' Si はともに14族に属する元素である。価電子を4個持つ。
=== 炭素 ===
'''炭素''' (C) は生物を構成する重要な元素であり、多くの化学製品にも含まれている。炭素を含む物質は一般に'''有機物'''と呼ばれる。有機化合物については別の章で詳しく学ぶ。この節では、炭素の単体、一酸化炭素、二酸化炭素について説明する。
==== 単体 ====
炭素の単体は共有結合の結晶であり、結合の仕方によっていくつかの同素体が存在する。
; ダイヤモンド (C)
[[ファイル:Apollo_synthetic_diamond.jpg|左|サムネイル|150x150ピクセル|ダイヤモンド]]
[[ファイル:DiamantEbene01.png|右|サムネイル|150x150ピクセル|ダイヤモンドの構造]]
'''ダイヤモンド'''は無色の固体で、1つの炭素原子が4つの炭素原子と正四面体の頂点方向に共有結合し、それが多数連結して結晶を形成している。共有結合の結晶であるため、非常に融点・沸点が高く、地球上で最も硬い物質として知られている。電気は通さないが、熱はよく伝える。宝石としての利用のほか、工業的には研磨剤としても使われる。光の屈折率が大きい。
{{-}}
; 黒鉛 (C)
[[ファイル:GraphiteUSGOV.jpg|左|サムネイル|150x150ピクセル|黒鉛]]
[[ファイル:Graphit_gitter.png|右|サムネイル|187x187ピクセル|グラフェン黒鉛(グラファイト)の一層をグラフェンと呼ぶ。上図ではグラフェンが4層描かれている。]]
'''黒鉛'''は金属光沢のある黒色の固体で、炭素原子が正六角形の層状構造を持っている。各層は3つの共有結合によって形成され、残りの価電子は'''自由電子'''として層間を移動する。この自由電子の存在により、黒鉛は電気をよく通し、熱伝導性も高い。層と層の結合は弱いため、黒鉛は柔らかく、鉛筆の芯や電気分解用の電極として使用される。
{{-}}
; フラーレン(C60、C70など)
[[ファイル:C60a.png|右|サムネイル|140x140ピクセル|フラーレン]]
'''フラーレン'''は茶褐色の固体で、多数の炭素原子が球状に結合している。右図はC60フラーレンのモデルで、炭素原子が60個、サッカーボール状に結合している。20世紀後半に発見された物質で、現在も研究が進んでいる。純粋なフラーレンは電気を通さないが、アルカリ金属を添加すると超伝導性を示すことがある。有機溶媒に溶ける性質を持つ。
{{-}}
; グラフェン
'''グラフェン'''は炭素原子が六角形に配列した一層のシート状の物質で、非常に強く柔軟であり、電気や熱を効率よく伝える。
{{-}}
; カーボンナノチューブ
'''カーボンナノチューブ'''は、炭素原子が六角形に結びついたグラフェンシートを丸めて筒状にしたナノ材料。日本人が開発した。非常に高い強度と優れた電気・熱伝導性を持ち、宇宙エレベーターのケーブルとして検討されている。
{{-}}
; 無定形炭素
[[ファイル:Binchotan_(charcoal).jpg|サムネイル|180x180ピクセル|活性炭]]
炭素の同素体とは異なり、黒鉛や[[高校化学 脂肪族炭化水素|炭化水素]]が不規則に結合し、結晶構造を明確に持たない([[高校化学 結晶#アモルファス|アモルファス]]状態の)固体がある。これを'''無定形炭素'''と呼ぶ。木炭やコークスが代表的で、この中でも'''活性炭'''は多孔質であり、さまざまな物質を吸着する性質があるため、消臭剤などに用いられている。
{{-}}
==== 酸化物 ====
炭素が空気中で燃焼すると、酸化物が生成される。
; 一酸化炭素 (CO)
炭素や有機化合物が空気中で不完全燃焼すると、'''一酸化炭素''' (CO) が生じる。一酸化炭素は無色無臭の気体で、非常に有毒である。吸入すると血液中のヘモグロビンと結合し、酸素の運搬を阻害する。水には溶けにくい。
二酸化炭素と炭素の単体を高温接触させることでも得られる。
: <chem>CO2 + C ->[\Delta] 2CO</chem>(酸化還元反応)
実験室では、[[高校化学 酸素を含む脂肪族化合物#ギ酸|蟻酸]]に濃硫酸を加えることで一酸化炭素を生成できる。
: <chem>HCOOH -> H2O + CO ^</chem>(脱水反応)
工業的には、水蒸気を高温のコークスに作用させることで得られる。
: <chem>C + H2O ->[\Delta] H2 + CO</chem>(酸化還元反応)
::※水素と一酸化炭素の混合ガスを'''水性ガス'''という。[[高校化学 酸素を含む脂肪族化合物#メタノール|メタノール]]の原料となる。
空気中では青白い炎を上げて燃焼し、二酸化炭素を生じる。
: <chem>2CO + O2 ->[\Delta] 2CO2</chem>
一酸化炭素は還元性を持ち、金属酸化物を還元して単体にする性質がある。
: <chem>CuO + CO -> Cu + CO2</chem>
; 二酸化炭素 (CO2)
炭素や有機化合物が空気中で完全燃焼すると、'''二酸化炭素''' (CO2) が生じる。実験室では炭酸カルシウムに塩酸を加えて発生させることができる。
: <chem>CaCO3 + 2HCl ->[\Delta] CaCl2 + H2O + CO2 ^</chem>
工業的には、[[高校化学 典型金属#カルシウム|石灰石]]の熱分解によって二酸化炭素が得られる。
二酸化炭素は無色無臭の気体で、毒性はない。酸性酸化物であり、水に溶けると炭酸水素イオン <chem>HCO3^-</chem> を生成し、弱酸性を示す。
: <chem>CO2 + H2O <=> HCO3^- + H^+</chem>
また、塩基と反応して塩を作る。
: <chem>CO2 + 2NaOH -> Na2CO3 + H2O</chem>
二酸化炭素を'''石灰水'''(水酸化カルシウム水溶液)に通すと、炭酸カルシウムが生成され白濁する。この反応は二酸化炭素の検出に用いられる。
: <chem>Ca(OH)2 + CO2 -> H2O + CaCO3 v</chem>
[[ファイル:Dry_Ice_Pellets_Subliming.jpg|右|サムネイル|150x150ピクセル|ドライアイス]]
二酸化炭素の固体は分子結晶で、'''ドライアイス'''として知られ、冷却剤として使用される。常圧下で'''昇華性'''を持ち、液体にならずに直接気体となる。
二酸化炭素は生物の活動によって放出・吸収される。呼吸では、酸素を吸収して糖類と反応し、エネルギーを取り出す過程で二酸化炭素が生成される。
: <chem>C6H12O6 + 6O2 -> 6H2O + 6CO2</chem>
※この反応で合成される[[高等学校理科 生物基礎/細胞とエネルギー|ATP]]は38分子
逆に、植物は光のエネルギーを用いて二酸化炭素を吸収し、糖類を合成する。この過程を'''光合成'''という。
: <chem>6CO2 + 6H2O -> C6H12O6 + 6O2</chem>
※反応エンタルピーは2803 kJ
また、微生物の中には[[高校化学 天然高分子化合物#糖類|糖類]]を醱酵させ、エネルギーを得るものがあり、その過程で二酸化炭素が生じる。
: <chem>C6H12O6 -> 2C2H5OH + 2CO2</chem>
※この反応で合成されるATPは2分子
=== ケイ素 ===
'''ケイ素'''('''珪素'''、Si)は酸素の次に多く地殻中に含まれている元素である。水晶などの鉱物にも含まれている。半導体の主な原料であり、工業的に重要な元素となっている。ケイ素は'''シリコン'''ともいう。
※地殻の元素含有量は、O<sub>2</sub> > Si > Al > Feの順である。
==== 単体 ====
[[ファイル:SiliconCroda.jpg|右|サムネイル|200x200ピクセル|ケイ素]]
'''ケイ素'''(Si)は金属光沢をもつ銀灰色の固体である。ケイ素は金属ではないが金属光沢をもつ。[[ファイル:Monokristalines_Silizium_für_die_Waferherstellung.jpg|左|サムネイル|294x294ピクセル|ケイ素の単結晶電子部品の製造などに用いられる。これを薄く切断してシリコンウェハーにする。]]
ケイ素は天然には単体として存在せず、酸化物を還元することにより製造される。単体は共有結合の結晶であり、ダイヤモンドと同様の構造でケイ素原子が結合する。そのためダイヤモンド同様融点・沸点は高く、固い結晶を作る。導体と不導体の中間程度の電気抵抗を持つ[[高校物理 電磁気学#半導体|半導体]]で、太陽電池やコンピュータ部品に用いられる。
シリコンの結晶に、わずかにリンやホウ素を加えたものは、電気をよく通すものになる。これらは半導体である。
* その他
[[ファイル:Silicon-unit-cell-3D-balls.png|サムネイル|80x80ピクセル|ケイ素の単体の結晶構造]]
ケイ素の結晶構造は、ダイヤモンドの結晶構造と同じ。
{{-}}{{コラム|シリセン|シリセンは、ケイ素(シリコン)原子が六角形に配列し、グラフェンに似た二次元シート構造を持つ新しい物質である。シリコンは通常、三次元のダイヤモンド構造を取るが、シリセンではケイ素原子が平面状に並び、蜂の巣状の構造を作り出す。このため、シリセンは「シリコン版グラフェン」とも呼ばれることがある。
シリセンは、グラフェンと同様に優れた電子的特性を持ち、次世代のエレクトロニクス材料として注目されている。特に、シリコンベースの既存の半導体技術との互換性が期待されており、ナノテクノロジーやトランジスタ、センサーなどの分野での応用が研究されている。
ただし、シリセンはグラフェンよりも安定性が低く、空気中では速やかに酸化されるため、特定の条件下でしか安定した形で存在できない。一般的には金属基板の上に成長させることで安定させる技術が使われている。
シリセンはその特性を利用して、エレクトロニクスやスピントロニクス、さらにはエネルギー材料などの広い分野で革新的な技術を生み出す可能性があるが、まだ研究段階にあるため、今後の発展が期待される。}}{{-}}
==== 二酸化ケイ素 ====
[[ファイル:Quartz_(USA).jpg|右|サムネイル|180x180ピクセル|水晶]]
'''二酸化ケイ素'''('''シリカ'''、二酸化珪素、<chem>SiO2</chem>)は自然界で石英として存在する。透明な石英の結晶は水晶と呼ばれ、宝石として用いられる。また、砂状のものは{{ruby|珪砂|けいしゃ}}と呼ばれ、{{ruby|硝子|ガラス}}の原料となる。
ガラスは身近な様々な場面で用いられている。科学においては耐熱器具や光ファイバーに用いられている。
二酸化ケイ素は常温では共有結合結晶である。ケイ素原子と酸素原子との結合は非常に強く、固く安定な結晶を作る。また、強い結合のためか、融点も高く(1550℃)、塩酸にも溶けない。しかし、フッ化水素酸とは反応して溶ける。
: <chem>SiO2 + 6HF -> H2SiF6 + 2H2O</chem>
[[ファイル:Silica_gel.jpg|右|150x150ピクセル]]
また、二酸化ケイ素は酸性酸化物であり、塩基と反応して珪酸塩を生じる。たとえば水酸化ナトリウムと反応して、ケイ酸ナトリウム <chem>Na2SiO3</chem> を生じる。
: <chem>SiO2 + 2NaOH -> Na2SiO3 + H2O</chem>
そして、上述で得られたケイ酸ナトウリムに水を加えて加熱すると、粘性の大きい透明の'''水ガラス''' <chem>Na2O.nSiO2</chem> と言う物質が得られる。水ガラスは、その粘性や透明性から、よく水飴に例えられる。
水ガラスに塩酸を加えると、白色ゲル状のケイ酸 <chem>H2SiO3</chem>が得られる。
: <chem>Na2SiO3 + 2HCl -> H2SiO3 + 2NaCl</chem>
※ 実際は組成が安定せず、できるのが <chem>H2SiO3</chem> のみとは限らない
※ <chem>H2SiO3</chem>は水にほぼ不溶だが(なので、教材によっては「白色ゲル状の沈殿」のように沈殿として説明される場合もよくあるが)、慣習的に「ケイ酸」と言う。炭酸 <chem>H2CO3</chem> との類推で考えると覚えやすいだろう。
このとき塩化ナトリウムが副生成物としてできるので、塩化ナトリウムを水洗して除き、のこったケイ酸を加熱乾燥すると'''シリカゲル'''が得られる。シリカゲルは多孔質であり、また空気中では水分を吸着するため、乾燥剤や吸着剤として用いられる。(シリカゲルは多孔質なので表面積が大きく、そのため効率的に水分を吸着できる。)
* 発展: 水晶振動子
電子工業における水晶の応用として、'''水晶振動子'''としての利用がある。
水晶に電圧を掛けると、一定の周期で振動することから、クオーツ時計などの発振器として利用されている。
----
{{コラム||
SiO<sub>2</sub>が酸性酸化物であることと、上記のケイ酸ナトリウムの合成式
: <chem>SiO2 + 2NaOH -> Na2SiO3 + H2O</chem>
はバラバラに覚えるのではなく、下記のように関連付けて覚えよう。
教科書では二酸化ケイ素は「酸性酸化物なので」上記の反応が起きる、的な事が書いてあるだろうが、それよりも炭素との類推で考えるほうが覚えやすい。二酸化炭素も水酸化ナトリウムと反応して炭酸ナトリウムを生じる性質がある。そもそも二酸化炭素もニ酸化ケイ素も上記のような類似性があるので、同じ「酸性酸化物」というグループに入れられている。二酸化ケイ素も二酸化炭素も、ともに酸性酸化物である。
このように、酸性酸化物をあたかも酸であるかのように考えると、塩基との反応を中和反応のように理解できるので暗記の負担が減る。
※ただし、酸化物に限定した概念であるので一般の酸・塩基の拡張にはならない(一般の酸・塩基は必ずしも酸化物とは限らない)。例えば、塩酸 HCl は酸化物ではない。
同様に、塩基性酸化物は必要に応じて塩基という概念の拡張のように解釈することもできる。なお、塩基性酸化物である酸化カルシウム CaO は所謂「石灰」のことであり、実際に塩基性の物質である。
纏めると、酸性酸化物は厳密には酸ではない場合もあるが(炭酸のように、酸性酸物が酸である場合もある)、塩基と反応させた際に酸と塩基の中和反応のような生成物が得られる場合が多い。同様、塩基性酸化物も酸と反応させた際に酸と塩基の中和反応のような生成物が得られる事が多い。
長々と説明したが、要するに反応式
: <chem>SiO2 + 2NaOH -> Na2SiO3 + H2O</chem>
をそのまま暗記しようとするのではなく、炭酸の中和反応と似たメカニズムとして覚えるのが効率的だという話である。
なお、炭酸ナトリウムの工業的な製法は上述の式とは異なり、[[高校化学_典型金属#アンモニアソーダ法(ソルベー法)|アンモニアソーダ法(ソルベー法)]]を用いる。
}}
[[Category:高等学校化学|ひきんそくけんそ]]
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== 水素と貴ガス ==
=== 水素 ===
[[ファイル:周期表-H.png|right]]
[[File:H,1.jpg|150px|right]]
'''水素'''は、単体として宇宙で最も多く存在する元素である。地球上では水 H<sub>2</sub>O として最も多く存在する。単体 H<sub>2</sub> は常温常圧で無色無臭の気体である。
;製法
工業的には、石油や天然ガスを高温水蒸気と反応させて、得られる。他には、純粋な水素を作る場合は、水を電気分解する。
実験室では、塩酸や希硫酸などの強酸に、亜鉛などの金属を加える。水素は水に溶けにくいため、水上置換で捕集する。
;主な性質・反応
* 空気中で容易に燃焼し、水になる。酸素との混合気体は爆発的に燃焼する。
*: <chem>2H2 + O2 -> H2O</chem>
* 高温では還元性をもち、高温で金属などの酸化物を還元する。
*: <chem>CuO + H2 ->[\Delta] Cu + H2O</chem>
* 殆どの元素と化合して水素化合物を作る。
*: <chem>2 F2 + 2 H2O -> 4HF + O2</chem>
※化学反応式の矢印の上にΔをつけると、加熱が必要な反応であることを示す。
水素化合物は、水素結合により化合しているため、極性分子である。また、化合する元素が周期表の右側にいるほど酸性、左側にいるほど塩基性が強くなる。
水素は、アンモニア、塩化水素、メタノールなどの原料である。
水素は燃焼における生成物が水だけなので、環境に負荷をかけにくい新しいエネルギー源として注目されており、燃料電池自動車(FCV)や水素式燃料電池駆動電車(FV)の開発が進められている。
=== 貴ガス ===
[[File:周期表-希ガス.png|right]]
'''貴ガス'''(noble gas)<ref>希ガス(稀ガス、rare gas)とも</ref>は、18族元素のヘリウム He, ネオン Ne, アルゴン Ar, クリプトン Kr, キセノン Xe, ラドン Rn の総称である<ref>18族元素にはオガネソン Og もあるがこの元素の性質はあまり解明されていない。</ref>。
18族元素は価電子をもたないため、他の原子と結合したり、イオンになることがほとんどない。したがって、化学反応を起こして化合物となることがほとんどない。また、単体の気体として、原子1個で1つの分子を形成している。このような分子を'''単原子分子'''と呼ぶ。
==== 単体 ====
貴ガスには次のような物質がある。これらはいずれも無色無臭で、常温常圧で気体である。また、いずれも融点および沸点が低い。
* '''ヘリウム''' (He): 風船や飛行船を浮かせるために用いられる。また、すべての物質の中で、融点がもっとも低い(-269℃、4K)ので、超伝導など極低温の実験の際の冷媒に液体ヘリウムが用いられる。
* '''ネオン''' (Ne): ネオンサインなどに用いられる。
* '''アルゴン''' (Ar): 溶接するときの酸化防止ガスに用いられる。空気中に0.93%存在する。
* '''クリプトン''' (Kr): 電球などに用いられる。
* '''キセノン'''(Xe): カメラのストロボなどに用いられる。
* ラドン (Rn): 放射能があり、放射線治療などに用いられる。
{|align="center" style="border:solid #aaffaa 1px;"
|[[File:He,2.jpg|100px]]||[[File:Ne,10.jpg|100px]]||[[File:Ar,18.jpg|100px]]||[[File:Kr,36.jpg|100px]]||[[File:Xe,54.jpg|100px]]
|-
|style="text-align:center"|ヘリウム
|style="text-align:center"|ネオン
|style="text-align:center"|アルゴン
|style="text-align:center"|クリプトン
|style="text-align:center"|キセノン
|}
貴ガスは原子単体で安定なため、普通は化合物にならない。ガラス管に内圧が低くなるよう貴ガスを封入し電圧をかけることで、それぞれ異なった色の光を放つ([[高等学校物理/原子物理#陰極線|真空放電]]という)。そのため、電球やネオンサインとして用いられるものが多い。
{|align="center" style="border:solid #aaffaa 1px;"
|[[File:HeTube.jpg|100px]]||[[File:NeTube.jpg|100px]]||[[File:ArTube.jpg|100px]]||[[File:KrTube.jpg|100px]]||[[File:XeTube.jpg|100px]]
|-
|style="text-align:center"|ヘリウム
|style="text-align:center"|ネオン
|style="text-align:center"|アルゴン
|style="text-align:center"|クリプトン
|style="text-align:center"|キセノン
|}
==== エキシマ(発展) ====
アルゴン気体とフッ素気体をつめた放電管に放電をすると、不安定なアルゴンフッ素 ArF (エキシマ)が一時的に生成し、それが分解する際に波長197 nmの紫外線を放出する。
この光は、[[高校物理 電磁気学#半導体|半導体]]製造の際の光化学反応の光源に使われている。また、キセノンでもハロゲンとのエキシマによってレーザー光が放出されることが知られている。
==== 化合物 ====
貴ガスは、反応性が低く化合物を作らないと考えられていたが、1960年代に、<chem>XePtF6</chem> や <chem>XeF4</chem> などキセノンの化合物の合成に成功した。その後も貴ガスの化合物は合成されたが、ネオンの化合物は未だ合成に成功していない。
キセノンとフッ素ガスを混合した気体に放電または熱を加えてできた、二フッ化キセノン XeF<sub>2</sub> や四フッ化キセノン XeF<sub>4</sub> や六フッ化キセノン XeF<sub>6</sub> の固体は無色である。
== ハロゲン ==
[[ファイル:周期表-ハロゲン.png|右]]
周期表の17族に属する、フッ素 F、塩素 Cl、臭素 Br、ヨウ素 I、アスタチン At を'''ハロゲン'''という<ref>17族元素にはテネシン Ts もあるがこの元素の性質はあまり解明されていない。</ref>。
ハロゲンの原子は最外殻に価電子を7つ持っており、1価の陰イオンになりやすく、化合物をつくりやすい。そのため、天然では、ハロゲンは鉱物(ホタル石 CaF<sub>2</sub> 、岩塩 NaCl etc.)として存在している場合が多い。または、海水中に陰イオンとしてハロゲンが存在している場合も多い。
=== 単体 ===
ハロゲンの単体はいずれも'''二原子分子'''で有色、有毒である。
沸点(bp)・融点(mp)は、原子番号の大きいものほど高い。
ハロゲンの単体は酸化力が強い。酸化力の強さは原子番号が小さいほど大きくなる。つまり酸化力の強さは、
:<chem>F2 > Cl2 > Br2 > I2</chem>
である。
たとえば、ヨウ化カリウム水溶液に塩素を加えると、ヨウ素は酸化されて単体となる。
:<chem>2KI + Cl2 -> 2KCl + I2 </chem>
逆に、塩化カリウム水溶液にヨウ素を加えても、ヨウ素よりも塩素のほうが酸化力が強いため、反応は起こらない。
また、ハロゲンの各元素ごとの酸化力の違いは、水や水素との反応にも関わる。
最も酸化力のつよいフッ素は、水と激しく反応し、酸素を発生する。
:<chem>2 F2 + 2 H2O -> 4 HF + O2</chem>
{|border=1 cellspacing=0 align=center text-align=center style="text-align:center"
|- style="background:silver"
! !! フッ素 F<sub>2</sub> !! 塩素 Cl<sub>2</sub> !! 臭素 Br<sub>2</sub> !! ヨウ素 I<sub>2</sub>
|-
| rowspan="2" | 色・状態
| [[File:F,9.jpg|180px]] || [[File:Cl,17.jpg|180px]] || [[File:Br,35.jpg|180px]] || [[File:I,53.jpg|170px]]
|-
|| 淡黄色・気体 || 黄緑色・気体 || 赤褐色・液体 || 黒紫色・固体
|-
| 融点 (℃) || -220 || -101 || -7 || 114
|-
| 沸点 (℃) || -138 || -34 || 59 || 184
|-
| 酸化力
| colspan="4" | 大 ←――――――――――――――――――――――――――――――――――→ 小
|-
| rowspan="2" | 水との反応 || 激しく反応して<br>酸素 O<sub>2</sub> が発生 || 一部が反応<br>HCl などを生じる || rowspan="2"| 塩素より反応は弱いが、<br>似た反応をする || rowspan="2" | 水に反応しにくく、<br>水に溶けにくい
|-
|| 2H<sub>2</sub>O + 2F<sub>2</sub><br />→ 4HF + O<sub>2</sub> || 2H<sub>2</sub>O + Cl<sub>2</sub> <br />⇄ HCl + HClO
|-
| rowspan="2" | 水素との反応 || 低温・暗所でも<br />爆発的に反応 || 光を当てることで<br />爆発的に反応 || 高温にすると反応 || 高温にすると一部が反応
|}
==== フッ素 ====
常温常圧下では淡黄緑色の気体である。
酸化力が非常に強く、様々な物質と激しく反応する。ガラスでさえフッ素を吹き付けると燃えるように反応するため扱いが難しい。
水や水素との反応物であるフッ化水素(HF)が水に溶けたフッ化水素酸(HFaq)はガラスを侵すため、ポリエチレン容器に入れ保管する。
==== 塩素 ====
塩素 Cl<sub>2</sub> は常温常圧で黄緑色の有毒な気体である。
塩素は歴史的に衣類の漂白剤として用いられていたが、第一次世界大戦で毒ガス兵器として用いられ、約3000人を殺害した。
===== 製法 =====
工業的:塩化ナトリウム水溶液の電気分解を用いたイオン交換膜法で生成する。
実験室的:
①酸化マンガン(IV)に濃塩酸を加え、加熱する。
: <chem>MnO2 + 4HCl ->[\Delta] MnCl2 + 2H2O + Cl2 ^</chem>
:なお、この反応では塩素と同時に水も生成する。さらに、濃塩酸には[[#ハロゲンの化合物|次節]]に見るように揮発性がある。したがって、この反応により得られる気体は純粋な塩素ではなく、水や塩化水素を少量含んでいる。それらを取り除くため、この気体を水と濃硫酸に順番に通す。まず水に通すことで、揮発した塩化水素が吸収される。次いで濃硫酸に通すことで、濃硫酸の吸湿作用により気体中の水が吸収され、純粋な塩素を得ることができる。なお、この水・濃硫酸に通す順番を逆にしてはならない。先に濃硫酸に通した後水に通しても、得られる気体の中には最後に通した水から蒸発した水蒸気が含まれているためである。塩素は空気よりも重いため、濃硫酸を通したあとの塩素を、下方置換で集める。
②塩化ナトリウム、酸化マンガン(IV)に濃硫酸を加えて加熱する。
:<chem>2NaCl + 3H2SO4 + MnO2 ->[\Delta] MnSO4 + 2NaHSO4 + 2H2O + Cl2 ^</chem>
③さらし粉に塩酸を加える。
:<chem>CaCl(ClO).H2O + 2HCl -> CaCl2 + 2H2O + Cl2 ^</chem>
④高度さらし粉に稀塩酸を加える。
:<chem>Ca(ClO)2.2H2O + 4HCl -> CaCl2 + 4H2O + 2Cl2 ^</chem>
※化学反応式の右辺の↑は、矢印のすぐ左の生成物が気体であることを示している。
===== 性質 =====
塩素 Cl<sub>2</sub> の水溶液を'''塩素水'''という。塩素は、水に少し溶けて、その一部が'''次亜塩素酸''' <chem>HClO</chem> になる。
:<chem>Cl2 + H2O -> HCl + HClO</chem>
次亜塩素酸は弱酸性で、強い酸化作用がある。これは、普通の塩素イオンの酸化数が-1なのに対し、次亜塩素酸イオン中の塩素原子の酸化数が+1なので還元されやすいためである。
塩素水および次亜塩素酸は、漂白剤や殺菌剤として水道やプールの水の殺菌などに広く用いられている。
: <chem>HClO + H^+ + 2e^- -> H2O + Cl^-</chem>
* さらし粉
水酸化カルシウムと塩素を反応させると、さらし粉(主成分:<chem>CaCl(ClO) * {H2O} </chem>)ができる。
また、<chem>Ca(ClO)2.2H2O</chem> を高度さらし粉(次亜塩素酸カルシウム)という。
高度さらし粉は、漂白剤や殺菌剤として利用される。いわゆるカルキとは、さらし粉のこと。ドイツ語のクロールカルキを略してカルキと読んでいる。
* その他
塩素はさまざまな金属と反応して塩化物となる。たとえば、単体の塩素の中に加熱した銅線を入れると、煙状の塩化銅(II) CuCl<sub>2</sub> を生成する。
: <chem>Cu + Cl2 ->[\Delta] CuCl2</chem>
==== 臭素 ====
臭素(Br<sub>2</sub>)は常温常圧で赤褐色の'''液体'''である。この性質は非金属元素の単体では唯一であり、全元素で見ても他には水銀のみである。水に少し溶け、赤褐色の溶液(臭素水)となる。また、有機溶媒のヘキサンやエタノールに可溶である
==== ヨウ素 ====
ヨウ素(I<sub>2</sub>)は常温常圧で黒紫色の固体である。'''昇華性'''があり、加熱すると固体から液体にならず直接気体となる。これを利用して、固体のヨウ素の純度を上げることができる。1リットルビーカーに不純物を含むヨウ素の固体を入れ、ガスバーナーで加熱する。ビーカーの上部には冷水を入れた丸底フラスコを置いておく。加熱によりヨウ素のみが気体となり、上昇してフラスコの底部付近で冷やされて固体に戻る。そのため、フラスコ底部に純度の高いヨウ素の針状結晶が析出する。
ヨウ素は水に溶けにくいが、エーテルなどの有機溶媒にはよく溶ける。また、ヨウ化カリウム水溶液にもよく溶けて褐色の溶液となる。
デンプン水溶液にヨウ素を溶かしたヨウ化カリウム水溶液を加えると、青紫色を呈する。このようにデンプンにヨウ素を作用させて青紫色となる反応を'''ヨウ素デンプン反応'''と呼ぶ。これにより、ヨウ素やデンプンの検出ができる。なお、ヨウ素デンプン反応が起こっている容器を加熱すると透明になるが、冷却するとまた青紫色に戻る。
ヨウ素デンプン反応を用いた試薬に、ヨウ化カリウムデンプン紙がある。これは、ろ紙にデンプンとヨウ化カリウムを含ませたものであり、酸化力の強い物質の検出に用いられる。酸化力の強い物質がある場合、ヨウ化カリウムは酸化されてヨウ素の単体となる。
: <chem>2I- -> I2 + e^-</chem>
このヨウ素がデンプンに作用して紫色から青紫色に変化する。
=== 化合物 ===
==== ハロゲン化水素 ====
ハロゲンは水素と化合して'''ハロゲン化水素'''となる。いずれも無色刺激臭の気体である。
また、ハロゲン化水素の水溶液は酸性を示す。
{|border=1 cellspacing=0 align=center text-align=center style="text-align:center"
|- style="background:silver"
! colspan="2" | 名称 !! フッ化水素 !! 塩化水素 !! 臭化水素 !! ヨウ化水素
|-
| colspan="2" | 組成式 || HF || HCl || HBr || HI
|-
| colspan="2" | 沸点(℃) || 20 || -85 || -67 || -35
|-
| rowspan="4" | 水溶液 || 名称 || フッ化水素酸 || 塩酸 || 臭化水素酸 || ヨウ化水素酸
|-
| 酸の強さ || '''弱酸''' || colspan="3" | 強酸
|-
| +AgNO<sub>3</sub>aq || AgF(水に可溶) || AgCl↓(白) || AgBr↓(淡黄) || AgI↓(黄)
|-
| 更に+NH<sub>3</sub>aq || - || 沈澱が再溶解 || 沈澱が少し溶ける || 沈澱は溶けない
|}
ハロゲン水溶液の酸性は、フッ化水素酸だけが弱酸である。それ以外は強酸である。
※化学式横の↓は、沈澱が生じたことを表す。
===== フッ化水素 =====
フッ化水素(HF)は、ホタル石(主成分 CaF<sub>2</sub>)に濃硫酸を加えて加熱することで、得られる。
: <chem>CaF2 + H2SO4 ->[\Delta] 2HF + CaSO4</chem>
フッ化水素は水によく溶け、弱酸の'''フッ化水素酸'''となる。
フッ化水素酸は、ガラスの主成分である二酸化ケイ素(SiO<sub>2</sub>)を溶かすため、保存するときはポリエチレン容器に保存する。
: <chem>SiO2 + 6HF -> H2SiF6 + 2H2O</chem>
生成物は水とヘキサフルオロケイ酸である。
工業の用途として、ガラスの表面処理や、くもりガラスの製造に、フッ化水素酸が用いられる。
フッ化水素だけ沸点が他のハロゲン化水素よりも高いが、これは、フッ化水素では水素結合が生じるからである。フッ化水素酸だけ弱酸である理由も、同様に水素結合によって電離度が低くなっているためである。
===== 塩化水素 =====
水素と塩素の混合物に光を当てると、激しく反応して塩化水素(HCl)を生じる。
塩化水素は、実験室では塩化ナトリウムに濃硫酸を加え加熱することで得られる。(不揮発性酸による揮発性酸の遊離反応)
: <chem>NaCl + H2SO4 ->[\Delta] NaHSO4 + HCl ^</chem>
[[File:Hydrochloric acid ammonia.jpg|right|200px|thumb|塩化水素とアンモニアの反応 <br> 白煙( NH<sub>4</sub>Cl )を生じる]]
塩化水素は水によく溶け、その水溶液は'''塩酸'''である。濃度の濃いものは濃塩酸、薄いものは希塩酸と呼ばれる。塩酸は強酸性を示し、多くの金属と反応して水素を発生する。
:<chem>2HCl + Zn -> ZnCl2 + H2 ^</chem>
また、強酸性であることから、弱酸の塩と反応して塩を生じ、弱酸を遊離させる。
: <chem>HCl + NaHCO3 -> NaCl + H2O + CO2</chem>
塩酸には揮発性があり、常温で一部が気体となる。そのため、アンモニアのついたガラス棒を近づけると、塩酸の気体とアンモニアとが触れて反応し、塩化アンモニウム NH<sub>4</sub>Clの固体が生じ、白煙が見える。この反応は、塩化水素やアンモニアの検出に用いられる。
: <chem>HCl + NH3 -> NH4Cl</chem>
==== ハロゲン化銀・ハロゲン化鉛 ====
ハロゲン化銀は、フッ化銀を除いて、一般に水に溶けにくい。このため、ハロゲンの化合物の水溶液に、硝酸銀をくわえると、塩化銀、臭化銀、ヨウ化銀などのハロゲン化銀が沈殿する。
{|border=1 cellspacing=0 align=center text-align=center style="text-align:center"
|- style="background:silver"
! 名称 !! フッ化銀 !! 塩化銀 !! 臭化銀 !! ヨウ化銀 !! !! フッ化鉛(II) !! 塩化鉛(II) !! 臭化鉛(II) !! ヨウ化鉛(II)
|-
| 組成式 || AgF || AgCl || AgBr || AgI || || PbF<sub>2</sub> || PbCl<sub>2</sub> || PbBr<sub>2</sub> || PbI<sub>2</sub>
|-
| 色 || 黄色 || 白色 || 淡黄色 || 黄色 || || 白色 || 白色 || 白色 || 黄色
|-
| 水への溶けやすさ || 溶けやすい || 溶けにくい || 溶けにくい || 溶けにくい || || 溶けにくい || 溶けにくい || 溶けにくい || 溶けにくい
|-
| 熱水への溶けやすさ || 溶けやすい || 溶けにくい || 溶けにくい || 溶けにくい || || || 溶ける || 溶ける || 溶ける
|}塩化水素(HCl)
塩化銀、臭化銀、ヨウ化銀には感光性があり、生じた沈澱に光を当てると銀が遊離する。また、これらはいずれもチオ硫酸ナトリウム水溶液によく溶ける。アンモニア水への溶けやすさは異なり、塩化銀はよく溶け、臭化銀も一部溶けるが、ヨウ化銀は溶けない。
==== 塩素のオキソ酸 ====
分子中に酸素を含む酸を'''オキソ酸'''という。
塩素のオキソ酸には、酸化数の異なる次の4つがある。
{|border=1 cellspacing=0 align=center text-align=center style="text-align:center"
|- style="background:silver"
! 名称 !! width=100px | 次亜塩素酸 !! width=100px | 亜塩素酸 !! width=100px | 塩素酸 !! width=100px|過塩素酸
|-
| 化学式 || HClO || HClO<sub>2</sub> || HClO<sub>3</sub> || HClO<sub>4</sub>
|-
| 性質 || 殺菌・漂白作用 || 殺菌・漂白作用 || 強力な酸化剤 || 塩は爆発性
|}
右にいくほど強酸性である。
;さらし粉
さらし粉・高度さらし粉(化学式: CaCl(ClO)・H<sub>2</sub>O、Ca(ClO)<sub>2</sub>)は、次亜塩素酸イオンを含むため、その酸化作用により漂白剤や殺菌剤として広く用いられている。水酸化カルシウムと塩素を反応させることで得られる。
: <chem>Ca(OH)2 + Cl2 -> CaCl(ClO) * {H2O} </chem>
;塩素酸 および 塩素酸塩
::(※ 検定教科書では「酸素」の単元で習う場合が多い。)
塩素酸HClO<sub>3</sub>は不安定な物質だが、カリウムやナトリウムの塩は安定で、強い酸化剤である。塩素酸カリウムKClO<sub>3</sub>は酸化マンガン(IV)を触媒として用いて加熱すると酸素を発生するため、花火やマッチの火薬中に燃焼を助けるため含まれる。
: <chem>2KClO3 ->[\Delta] 2KCl + 3O2 ^</chem>
==== ハロゲン化物と日用品 ====
ハロゲンの化合物のなかには、日用品の中に広く用いられている物もある。たとえば、フッ素化合物の一つ、ポリテトラフルオロエチレン(テフロン)はフライパンの表面に薄く塗られ、焦げ付きを防ぐ役割を果たしている。また、臭化銀はその感光性を利用して、写真のフィルムに用いられている。塩素は多くのビニル・プラスチック製品に含まれている。また、ヨウ素は消毒剤や うがい薬 に用いられている。
==== まぜるな危険 ====
洗剤の「まぜるな危険」の化学反応(執筆中)
== 16族元素 ==
[[ファイル:周期表-OS.png|右]]
16族に属する'''酸素'''(O)、'''硫黄'''(S)はともに価電子を6つ持ち、2価の陰イオンになる。ともに単体は同素体を持つ。
=== 酸素 ===
酸素の単体には、原子2個で1つの分子を作っている'''酸素'''(O<sub>2</sub>)と、原子3個で1つの分子を作っている'''オゾン'''(O<sub>3</sub>)がある。いずれも常温では気体であるが、大きく異なった性質を示す。
酸素は空気中で約21%ふくまれる。また、酸素は地殻を構成する主な元素でもあり、地殻のおよそ半分は酸素でできている。地殻中ではSO<sub>2</sub>
==== 単体 ====
[[ファイル:Dioxygen-3D-vdW.png|右|サムネイル|100x100ピクセル|酸素 O<sub>2</sub> 分子]]
'''酸素'''(O<sub>2</sub>)は常温で無色無臭の気体である。
工業的な製法は、液体空気の分留または水の電気分解によって酸素を得る。
実験室で酸素を得るには、過酸化水素水に酸化マンガン(IV)を加えればよい。この反応で酸化マンガン(IV)は触媒として働き、過酸化水素が分解して酸素を発生する。
: <chem>2H2O2 ->[(MnO2)] 2H2O + O2 ^</chem>
※化学反応式の矢印の上に括弧で物質を書くと、その物質がその反応における触媒であることを示す。
また、塩素酸カリウムと酸化マンガン(IV)を混合して加熱してもよい(熱分解反応)。この反応でもやはり酸化マンガン(IV)は触媒として働く。
:<chem>2KClO3 ->[\Delta \, (MnO2)] 2KCl + 3O2 ^</chem>
酸素は水に溶けにくいので、水上置換により捕集する。
液体酸素は磁性を持ち、磁石にくっつく。
==== オゾン ====
[[ファイル:Ozone-3D-vdW.png|右|サムネイル|100x100ピクセル|オゾン O<sub>3</sub> 分子]]
'''オゾン'''(O<sub>3</sub>)は、酸素中で無声放電(音の小さい放電)を行うか、強い紫外線を当てることで生成する。
:<chem>3O2 <=> 2O3</chem>
オゾン O<sub>3</sub> は分解しやすく、分解の際に強い酸化作用を示す。オゾンは淡青色・特異臭の気体で、人体には有害である。漂白作用も持つ。
また、オゾンは酸化作用によりヨウ化カリウムデンプン紙を青変する。
:<chem>2KI + O3 + H2O -> 2KOH + O2 + I2</chem>
このためオゾンは水で湿らせたヨウ化カリウムデンプン紙により検出できる。
大気中には上空25 kmほど(成層圏)にオゾンが豊富に含まれる層があり、オゾン層と呼ばれる。オゾン層は人体に有害な紫外線を吸収する働きがあるが、冷蔵庫などに用いられていたフロンガスがオゾンを分解し、このオゾン層が南極付近で局所的に薄くなる現象(オゾンホール)が発生し、環境問題として取り上げられた。現在ではフロンガスの規制などの対策により回復過程にあり、遅くとも21世紀中には全快する見込みである。([[高等学校 地学]]も参照。)
==== 化合物 ====
酸素の化合物は一般に'''酸化物'''と呼ばれる。酸素はあらゆる物質と化合することができ、一般に金属元素とはイオン結合、非金属元素とは共有結合による酸化物を作る。
酸化物は、酸や塩基との反応の仕方から3通りに分類される。
{| class="wikitable" style="float: right;"
|+酸化物の分類
!酸性酸化物
|CO<sub>2</sub> , NO<sub>2</sub> , SiO<sub>2</sub> , SO<sub>2</sub> , SO<sub>3</sub> , Cl<sub>2</sub>O<sub>7</sub> など
|-
!塩基性酸化物
|Na<sub>2</sub>O , MgO , CaO , Fe<sub>2</sub>O<sub>3</sub> , CuO , BaO など
|-
!両性酸化物
|Al<sub>2</sub>O<sub>3</sub> , ZnO
|-
|}
* '''酸性酸化物''' : 水に溶けて酸性を示したり、塩基と反応して塩を生じる酸化物を、'''酸性酸化物'''という。
* '''塩基性酸化物''' : 水に溶けて塩基性を示したり、酸と反応して塩を生じる酸化物を、'''塩基性酸化物'''という。
* '''両性酸化物''': 酸・塩基のどちらとも反応して塩を生じる酸化物を、'''両性酸化物'''という。
一般に、非金属元素の酸化物は酸性酸化物であり、金属元素の酸化物は塩基性酸化物である。
; 酸性酸化物の例
{| class="wikitable" style="float: right;"
!酸性酸化物
|CO<sub>2</sub> , NO<sub>2</sub> , SiO<sub>2</sub> , SO<sub>2</sub> , SO<sub>3</sub> , Cl<sub>2</sub>O<sub>7</sub> など
|-
|}
二酸化炭素や二酸化硫黄など、非金属元素の酸化物の多くは、酸性酸化物である。
酸性酸化物の定義により、酸性酸化物は水に溶けると、酸性を示す。
: <chem>SO3 + H2O -> H2SO4</chem>
:: ※ H<sub>2</sub>SO<sub>4</sub>は酸。
また、酸性酸化物は塩基と反応すると、塩をつくる。
: <chem>SO2 + 2NaOH -> Na2SO3 + H2O</chem>
:: ※ Na<sub>2</sub>SO<sub>3</sub>は塩。
二酸化炭素(CO<sub>2</sub>)は塩基と反応して塩を生じる。
:<chem>CO2 + Ca(OH)2 -> CaCO3 + H2O</chem>
:: ※ CaCO<sub>3</sub>は塩。
二酸化窒素(NO<sub>2</sub>)は水に溶けて硝酸(HNO<sub>3</sub>)となる。
: <chem>3NO2 + H2O -> 2HNO3 + NO</chem>
一般に、酸性酸化物が水と反応するとオキソ酸が生じる。
; 塩基性酸化物の例
{| class="wikitable" style="float: right;"
!塩基性酸化物
|Na<sub>2</sub>O , MgO , CaO , Fe<sub>2</sub>O<sub>3</sub> , CuO , BaO など
|-
|}
水に溶けて塩基性を示したり、酸と反応して塩を生じる酸化物を、'''塩基性酸化物'''という。
:<chem>Na2O + H2O -> 2NaOH</chem>
:: ※ NaOHは塩基。
'''金属元素の酸化物の多くは、塩基性酸化物である'''。酸化カルシウムや酸化ナトリウムなどが、塩基性酸化物である。
酸化カルシウム(CaO)は水に溶けて水酸化カルシウム(Ca(OH)<sub>2</sub>)となる。
:<chem>CaO + H2O -> Ca(OH)2</chem>
また、これは酸と反応して塩を生じる。
: <chem>CaO + 2HCl -> CaCl2 + H2O</chem>
; 両性酸化物の例
{| class="wikitable" style="float: right;"
!両性酸化物
|Al<sub>2</sub>O<sub>3</sub> , ZnO
|-
|}
酸・塩基のどちらとも反応して塩を生じる酸化物を、両性酸化物という。
酸化アルミニウム(Al<sub>2</sub>O<sub>3</sub>)や酸化亜鉛(ZnO)は、酸とも塩基とも反応して塩を生じる。
: <chem>Al2O3 + 6HCl -> 2AlCl3 + 3H2O</chem>
:<chem>Al2O3 + 2NaOH + 3H2O -> 2Na[Al(OH)4]</chem>
下の式の生成物は、テトラヒドロキシドアルミン酸ナトリウムである。
==== オキソ酸 ====
塩素の酸性酸化物を水に溶かすと、水と反応して酸を生じる。
塩素の酸化物には、いくつかの種類があるが、一例として酸を生じる反応として、下記の化学反応がある。
:<chem>Cl2O7 + H2O -> 2HClO4</chem>
リンの酸性酸化物も、水と反応し、酸を生じる。
:<chem>P4O10 + 6H2O -> 4H3PO4</chem>
また、このように酸性酸化物を水と反応させて得られた酸は、分子中に酸素原子と水素原子を含む場合が多い。 塩素の場合は、過塩素酸 HClO<sub>4</sub> などが得られるし、窒素の場合は、亜硝酸(HNO<sub>2</sub>)と硝酸(HNO<sub>3</sub>)などが得られるし、分子式を見ればわかるように酸素原子と原子が分子中に含まれてる。
{| class="wikitable" style="float: right;"
! style="text-align: center;" |化学式
!名称
!酸の強さ
!Clの酸化数
|-
|HClO<sub>4</sub>
|過塩素酸
|つよい側
|+7
|-
|HClO<sub>3</sub>
|塩素酸
|
|+5
|-
|HClO<sub>2</sub>
|亜鉛素酸
|
|+3
|-
|HClO
|次亜鉛素酸
|よわい側
|+1
|-
|}
一般に、分子中に酸素分子のある構造の酸のことを'''オキソ酸'''という。オキソ酸の分子構造について、塩素原子や窒素原子など、由来となった酸性酸化物の元素を中心原子と設定する。
中心元素が同じであれば、結合している酸素の数が多いほど、オキソ酸の酸性は強くなる。
たとえば窒素のオキソ酸として亜硝酸(HNO<sub>2</sub>)と硝酸(HNO<sub>3</sub>)があるが、硝酸の方が強い酸である。
また、中心元素が第3周期のリン、硫黄、塩素であるようなオキソ酸は、この順に酸性が強くなる。リン酸(H<sub>3</sub>PO<sub>4</sub>)は弱酸であるが、硫酸(H<sub>2</sub>SO<sub>4</sub>)は強酸であり、過塩素酸(HClO<sub>4</sub>)はさらに強い酸性を示す。
塩素のオキソ酸の酸性の順は、
: (つよい側) HClO<sub>4</sub> > HClO<sub>3</sub> > HClO<sub>2</sub> > HClO (よわい側)
名称は
: HClO<sub>4</sub> 過塩素酸。 HClO<sub>3</sub> 塩素酸。 HClO<sub>2</sub> 亜鉛素酸。HClO 次亜鉛素酸。
である。
=== 硫黄 ===
==== 単体 ====
'''硫黄'''(S)の単体には、斜方硫黄、単斜硫黄、ゴム状硫黄などの同素体がある。単体は火山地帯から多く産出され、また重油の精製過程のひとつである'''脱硫'''の工程において多く得られる。日本では、この脱硫で得られた硫黄により国内需要を全て賄っている。
; 斜方硫黄(S<sub>8</sub>)
[[ファイル:Sulfur.jpg|100x100ピクセル]] 斜方硫黄は常温で安定な黄色・塊状の結晶である。硫黄原子が8つ環状に結合して1つの分子を形成している。融点は113℃。
; 単斜硫黄(S<sub>8</sub>)
[[ファイル:Cyclooctasulfur-above-3D-balls.png|100x100ピクセル]] 単斜硫黄は高温(95.5℃以上)で安定な黄色・針状の結晶である。硫黄原子が8つ環状に結合して1つの分子を形成している。斜方硫黄を加熱することで得られる。
; ゴム状硫黄(S<sub>x</sub>)
ゴム状硫黄は黒褐色の無定形固体である。ただし、純粋なものは黄色を示すものがある。数十万の硫黄原子がジグザグに結合しているため、引っ張ると結合角が変わり弾力性がある。
斜方硫黄を加熱すると琥珀色の液体となる。これを加熱し続けると次第に暗褐色となり、粘性が増してくる。さらに加熱すると濃青色の液体となり、これを水中に入れ急冷するとゴム状硫黄となる。
* 反応性
硫黄は、高温で反応性が高い。
[[ファイル:Sulfur-burning-at-night.png|右|サムネイル|150x150ピクセル|硫黄の燃焼]]
硫黄は高温では多くの元素と化合して硫化物となる。たとえば鉄粉と硫黄の粉末を混合して加熱すると、硫化鉄(II) FeS が生じる。
: <chem>Fe + S ->[\Delta] FeS</chem>
また、空気中で青白い炎をあげて燃焼し、二酸化硫黄となる。
: <chem>S + O2 ->[\Delta] SO2</chem>
==== 化合物 ====
===== 硫化水素 =====
'''硫化水素'''(H{{sub|2}}S)は無色腐卵臭の気体である。火山ガスや温泉に豊富に含まれる。よく言われる「硫黄の臭い」は硫黄ではなくこれである(硫黄の単体は無臭)。人体に有毒であるため、使用時には十分な換気に注意しなければならない。硫化水素は水に溶け、弱酸性を示す。
: <chem>H2S <=> HS^- + H^+ <=> S^{2-} {+} 2H^+</chem>
実験室では硫化鉄(II)に強酸を加えることで得られる。
: <chem>FeS + 2HCl -> FeCl2 + H2S ^</chem>
: <chem>FeS + H2SO4 -> FeSO4 + H2S ^</chem>
硫化水素は多くの場合に還元剤として働き、二酸化硫黄を還元して硫黄の単体を生じる。
: <chem>2H2S + SO2 -> 2H2O + 3S v</chem>
多くの金属イオンと反応して硫化物の沈殿を作るため、金属イオンの分離や検出に多く用いられる。
: <chem>Fe^{2+} {+} H2S -> 2H^{+} {+} FeS v</chem>
{| class="wikitable"
|+ 主な硫化物沈澱とその色
|-
| style="background-color:#BBB; text-align:center" | '''硫化物沈澱''' || Ag<sub>2</sub>S || PbS || CuS || FeS※ || NiS※ || CdS || MnS※ || ZnS※
|-
| style="background-color:#BBB; text-align:center" | '''色''' || colspan="5" style="text-align:center" | 黒 || style="text-align:center" | 黄 || style="text-align:center" | 淡黄 || style="text-align:center" | 白
|}
※酸性条件下では沈澱しない。
ちなみに、温泉卵の黒は硫化鉄の色である。
===== 二酸化硫黄 =====
'''二酸化硫黄'''('''亜硫酸ガス'''、SO<sub>2</sub>)は刺激臭をもつ無色の有毒な気体で、火山ガスや温泉などに含まれる。
酸性酸化物であり、水に溶けて'''亜硫酸'''(H<sub>2</sub>SO<sub>3</sub>)を生じ、弱酸性を示す。
: <chem>SO2 + H2O <=> HSO3- + H^+</chem>
実験室では、銅を濃硫酸に加えて加熱するか、亜硫酸塩を希硫酸と反応させることにより得られ、下方置換で捕集する。
: <chem>Cu + 2H2SO4 ->[\Delta] CuSO4 + 2H2O + SO2 ^</chem>
: <chem>NaHSO3 + H2SO4 -> NaHSO4 + H2O + SO2 ^</chem>
: <chem>Na2SO3 + H2SO4 -> Na2SO4 + H2O + SO2 ^</chem>
工業的には、硫黄の燃焼により製造される。
: <chem>S + O2 ->[\Delta] SO2</chem>
二酸化硫黄は還元性があり、漂白作用がある。ただし、硫化水素のような強い還元剤がある場合は、酸化剤として作用する。
硫黄を含む物質は燃焼により二酸化硫黄を生じる。二酸化硫黄の水溶液は、弱い酸性を示す。
硫黄は石油や石炭に多く含まれているため、このような化石燃料を大量に燃焼させると、大気中に多量の二酸化硫黄が放出され、雨水に溶け込み、酸性雨の原因となる。
===== 三酸化硫黄 =====
'''三酸化硫黄'''('''無水硫酸'''、SO<sub>3</sub>)は、有毒の結晶である。
水と激しく反応して硫酸を生成する。
:<chem>SO3 + H2O -> H2SO4</chem>
工業的には、二酸化硫黄を空気中の酸素で酸化して得る。このとき用いる触媒が、'''酸化バナジウム(Ⅴ)'''(V<sub>2</sub>O<sub>5</sub>)である。
:<chem>2SO2 + O2 ->[(V2O5)] 2SO3</chem>
===== 硫酸 =====
'''硫酸'''(H{{sub|2}}SO{{sub|4}})は工業的に'''接触法'''(接触式硫酸製造法)により、酸化バナジウム(Ⅴ)を主成分とする触媒をもちいて、次のような工程で製造されている。
# 硫黄 S を燃焼させ、二酸化硫黄 SO<sub>2</sub> を作る。
#: <chem>S + O2 ->[\Delta] SO2</chem>
# 二酸化硫黄と酸素との混合気体を乾燥させ、酸化バナジウム(Ⅴ)を触媒として反応させて三酸化硫黄 SO<sub>3</sub> を作る。
#: <chem>2SO2 + O2 ->[(V2O5)] 2SO3</chem>
# 三酸化硫黄を濃硫酸に吸収させ、濃硫酸中の水と反応させて'''発煙硫酸'''<sup>※</sup>とする。
#: <chem>SO3 + H2O -> H2SO4</chem>
# 集めた発煙硫酸を水また稀硫酸で稀釈し、濃硫酸とする。
※ 発煙硫酸は硫酸が炭化している訳ではなく、空気中で煙のように目視できることが名前の由来。
硫酸は、硫黄のオキソ酸である。通常はH{{sub|2}}SO{{sub|4}}の水溶液を硫酸と呼ぶ。硫酸は無色透明で粘性があり、密度の大きい重い液体である。濃度により性質が異なり、濃度90%以上程度の濃いものを'''濃硫酸'''といい、薄いものを'''稀硫酸'''と呼ぶ。
濃硫酸を水で稀釈することで稀硫酸が得られる。稀釈する際は水を入れたビーカーを水を張った水槽中に入れ、冷却しながら濃硫酸を静かに加えるようにする。これは、硫酸の水への溶解エンタルピーの絶対値が非常に大きいためである。もし、逆に濃硫酸に水を加えるようにすると、放出された熱によって水が激しく蒸発して濃硫酸が跳ねることがあり、非常に危険である。
[[ファイル:Sulfuric_acid_burning_tissue_paper.jpg|右|サムネイル|200x200ピクセル]]
濃硫酸には次のような性質がある。
* '''脱水作用''': 有機化合物の分子内に含まれている酸素原子や水素原子を、水分子H{{sub|2}}Oとして奪う。たとえば紙([[高校化学 天然高分子化合物#セルロース|セルロース]])に濃硫酸を垂らすと、その部分から酸素と水素が奪われ、炭化する。このとき、硫酸自身は還元されて二酸化硫黄となる。
* 吸湿作用: 強い吸湿作用があり、中性・酸性気体の乾燥剤として用いられる。
* 不揮発性: 沸点が高く不揮発性なので、'''揮発性の酸の塩と反応して揮発性の酸を遊離する'''。
*: <chem>NaCl + H2SO4 -> NaHSO4 + HCl ^</chem>
* 酸化作用: 金属を加え加熱すると、銅・銀・水銀などのイオン化傾向の小さい金属を酸化するようになる。加熱した濃硫酸を'''熱濃硫酸'''と呼ぶこともある。
*: <chem>Cu + 2H2SO4 ->[\Delta] CuSO4 + 2H2O + SO2 ^</chem>
稀硫酸は強酸であり、多くの金属と反応して水素を発生する。なお、濃硫酸は水を余り含まないため電離度が小さく、殆ど酸性を示さない。
硫酸イオン(SO{{sub|4}}{{sup|2-}})はBa{{sup|2+}}やCa{{sup|2+}}と反応して白色沈澱を生じる。そのため、これらのイオンの検出・分離に用いられる。また日常生活においても、硫酸はカーバッテリーや非常用電源などとして使われる[[高校化学 電池と電気分解#鉛蓄電池|鉛蓄電池]]の電解液として用いられている。
また、肥料や薬品の製造にも用いられる。
== 15族元素 ==
[[ファイル:周期表-NP.png|右]]
'''窒素'''(N)、'''リン'''('''燐'''、P)はともに15族に属する非金属元素である。価電子を5つ持つ。
=== 窒素 ===
==== 単体 ====
'''窒素'''(N{{sub|2}})は常温常圧で無色無臭の気体である。窒素原子2つが三重結合して1つの分子を作っている、二原子分子の気体である。空気中に体積比でおよそ78%含まれており、工業的には液体空気の分留により生産される。
実験室では、亜硝酸アンモニウムの熱分解で得る。
:<chem>NH4NO2 ->[\Delta] N2 + 2H2O</chem>
液体の窒素('''液体窒素'''、-196℃、7K)は物質の冷却にしばしば用いられている。窒素は水上置換で捕集する。
==== 化合物 ====
===== アンモニア =====
'''アンモニア'''(NH{{sub|3}})は無色刺激臭の気体である。水に非常に溶けやすく、水溶液はアンモニア水と呼ばれ、弱塩基性を示す。
: <chem>NH3 + H2O -> NH4+ + OH^-</chem>
沸点は-33.4℃である。
アンモニアは、工業的には、高温高圧下で四酸化三鉄 <chem>Fe3O4</chem> などの触媒を用いて窒素と水素を直接反応させる'''ハーバー・ボッシュ法'''により製造される。
: <chem>N2 + 3 H2 ->[\Delta \, (Fe3O4)] 2 NH3</chem>
実験室では、塩化アンモニウムと水酸化カルシウムの粉末を混合して加熱することにより得られる。水に非常に溶けやすく空気より軽いため、'''上方置換'''で捕集する。
: <chem>2NH4Cl + Ca(OH)2 -> CaCl2 + 2H2O + 2NH3 ^</chem>(弱塩基遊離反応)
アンモニアが生成したことを確かめるには、[[高校化学 水素と貴ガス#ハロゲン化水素|濃塩酸]]を近づければよい。アンモニアと濃塩酸が反応して塩化アンモニウムの白煙を生じる。
: <chem>NH3 + HCl -> NH4Cl</chem>
水溶液中のアンモニウムイオン(NH{{sub|4}}{{sup|+}})を検出する際には、ネスラー試薬が用いられる。アンモニウムイオンがあれば黄色~褐色の沈殿を生じる。
アンモニアは、硝酸の原料、あるいは尿素((NH<sub>2</sub>)<sub>2</sub>CO)などの窒素肥料の原料などとしても利用される。
:<chem>CO2 + 2NH3 -> (NH2)2CO + H2O</chem>
===== 窒素酸化物 =====
窒素の酸化物は数種類あり、それらの総称を'''窒素酸化物'''と呼ぶ。主なものに'''一酸化窒素'''(NO)と'''二酸化窒素'''(NO{{sub|2}})がある。一般に、窒素酸化物NO<sub>x</sub>を'''ノックス'''と呼ぶ。
; 一酸化窒素 (NO)
常温で無色の気体。水に溶けにくい。'''希硝酸に銅'''を加えることで発生する。空気中で酸化されやすいため、'''水上置換'''で捕集する。
: <chem>3Cu + 8HNO3 -> 3Cu(NO3)2 + 4H2O + 2NO ^</chem>
空気中での酸化の反応式は、
: <chem>2NO + O2 -> 2NO2</chem>
である。
; 二酸化窒素 (NO{{sub|2}})
[[ファイル:CopperReaction.JPG|右|300x300ピクセル]]
常温で赤褐色の刺激臭を持つ気体。水に溶けやすく、反応して硝酸 <chem>HNO3</chem> となる。
: <chem>3NO2 + H2O -> 2HNO3 + NO</chem>
実験室では'''濃硝酸に銅'''を加えることで発生する。水に溶けやすいので'''下方置換'''で捕集する。
: <chem>Cu + 4HNO3 -> Cu(NO3)2 + 2H2O + 2NO2 ^</chem>
空気中では一部で2分子が結合して'''四酸化二窒素''' <chem>N2O4</chem> となる。
: <chem>2NO2 <=> N2O4</chem>
窒素は常温では燃焼しない。すなわち酸素と反応して酸化物にならない。しかし、高温下では窒素と酸素が直接反応して窒素酸化物を生じる。また化石燃料の燃焼によっても窒素酸化物が生成する。そのため車のエンジンなどから窒素酸化物が発生し、大気中に放出されたものが雨水に吸収され、[[高校化学 水素と貴ガス#二酸化硫黄|硫黄酸化物]]と同様に酸性雨の原因となる。
===== 硝酸 =====
'''硝酸''' <chem>HNO3</chem> は窒素のオキソ酸であり、有名な強酸である。通常は<chem>HNO3</chem>の水溶液を硝酸と呼ぶ。濃度によりやや異なる性質を示し、濃度の濃いものを'''濃硝酸'''、薄いものを'''希硝酸'''と呼ぶ。硝酸は揮発性の酸であるため、実験室では硝酸塩に濃硫酸を加えることにより得られる。(不揮発性酸による揮発性酸の遊離反応)
: <chem>NaNO3 + H2SO4 -> NaHSO4 + HNO3</chem>
硝酸の製法は、工業的には、'''オストワルト法'''により製造される。次のような工程を経て硝酸が得られる。
# アンモニアと空気の混合気体を、触媒の白金 Pt に触れさせ、800℃〜900℃でアンモニアを酸化させて一酸化窒素とする。
#: <chem>4NH3 + 5O2 ->[\Delta \, (Pt)] 4NO + 6H2O</chem>
# 一酸化窒素を空気中でさらに酸化して、二酸化窒素とする。
#: <chem>2NO + O2 -> 2NO2</chem>
# 二酸化窒素を水に吸収させ、硝酸とする。ここで発生する一酸化窒素は回収し、2に戻って再び酸化する。
#: <chem>3NO2 + H2O -> 2HNO3 + NO</chem>
硝酸は無色の水溶液であるが、光や熱により分解して二酸化窒素と酸素を生じる。そのため、保管の際には、褐色瓶に入れ冷暗所で保存するようにする。
: <chem>4HNO3 -> 4NO2 + 2H2O + O2</chem>
市販の硝酸(濃度約60%)は発煙性を示す。
稀硝酸・濃硝酸ともに強い酸化作用を持っており、金・白金以外の金属を酸化して溶かす。イオン化傾向の大きい金属と反応するとき窒素酸化物を生じる。希硝酸からは一酸化窒素が、濃硝酸からは二酸化窒素がそれぞれ発生する。
:(希硝酸)<chem>3Cu + 8HNO3 -> 3Cu(NO3)2 + 4H2O + 2NO ^</chem>
:(濃硝酸)<chem>Cu + 4HNO3 -> Cu(NO3)2 + 2H2O + 2NO2 ^</chem>
また硝酸は強酸であり、イオン化傾向の大きい金属と反応して水素を発生する。
: <chem>2Al + 6HNO3 -> 2Al(NO3)3 + 3H2 ^</chem>
* 不動態
ただし、鉄 Fe やアルミニウム Al やニッケル Ni は、硝酸とは反応して水素を発生するが、濃硝酸に加えても溶けない。これは、金属の表面が酸化され、水に溶けにくい緻密な酸化被膜を生成して、内部が保護され、反応が内部まで進行しなくなるためである。このような状態を'''不動態'''という。
* その他
硝酸塩はほとんど水に溶ける。そのため、ガラス器具にこびりついた金属類を洗浄する際に用いられることも多い。
また、硝酸は火薬、染料、医薬品の製造に用いられる。
{{コラム|硝石|硝酸塩の一つである硝酸カリウムは、天然には硝石として存在する。この硝石は、原始的な方法で製造することができる。硝石のおおもとの原料は、糞尿である。尿などにふくまれるアンモニアが、土壌中でさまざまな物質と反応して、硝酸イオンを多く含む物質になる。この硝酸イオンを原料に、カリウムをふくむ{{ruby|灰汁|あく}}とともに煮ると化学反応をして硝酸カリウムになる。中世や近世では、この硝石を中間材料として、火薬などを作っていた。}}
==== 窒素の応用 ====
たとえば、ポテトチップスなどのような油で揚げたスナック菓子の酸化防止のため、袋の中に窒素が詰められる。酸素があると、油が酸化してしまうが、代わりに何らかの気体を詰める必要があるので、窒素を袋の中につめているのである。
=== リン ===
==== 単体 ====
'''リン'''('''燐'''、P)は5種類の同素体を持つ。代表的なものは'''白リン'''(黄リン、P{{sub|4}})と'''赤リン''' (P{{sub|x}})の2つである。
'''白リン'''(P{{sub|4}})は淡黄色の蠟状固体であり、人体にきわめて有毒である。空気中で自然発火するため、水中に保存する。二硫化炭素(CS{{sub|2}})に溶ける。
[[ファイル:Red_phosphorus_in_a_tube_-_P_15_.jpg|右|150x150ピクセル]]
'''赤リン'''(P{{sub|x}})は暗赤色の粉末状固体であり、弱い毒性を持つ。二硫化炭素(CS{{sub|2}})に溶けない。赤リンはマッチの箱の擦り薬として用いられている。{{コラム|マッチの発明の歴史|1669年に発火温度の低い燐が発見されてから最初のマッチ(燐寸)が発明されるまでには200年ほどを要した。最初期のマッチは火つきは悪く、火がつくと飛び散り、二酸化硫黄の腐卵臭がすると欠点だらけであった。これらの欠点は1931年に黄燐マッチが開発されることで改善し、火つきの非常に良いマッチが誕生した。しかし、こちらも黄燐の猛毒性、僅かな摩擦・衝撃での発火、温度上昇による自然発火などの別の問題点があった。同じ燐でも自然発火温度が高く、毒性も弱い赤燐が1845年に発見されると、その10年後には赤燐を用いた安全マッチが開発された。このマッチは現在のものと殆ど相違ない。日本では、1875年に最初のマッチが作られたとされる。なお、西部劇などに見られるマッチは硫化燐マッチであり、黄燐マッチではない。}}
単体のリンは燐酸カルシウム(Ca<sub>3</sub>(PO<sub>4</sub>)<sub>2</sub>)を主成分とする鉱石に珪砂([[高校化学 非金属元素#二酸化ケイ素|二酸化珪素]]を主成分とする砂)を混ぜて電気炉中で強熱して作られる。このとき得られるのは黄燐である。黄燐は窒素中で長時間加熱(250℃付近)することで赤燐となる。
==== 酸化物 ====
リンを空気中で燃焼させると、'''十酸化四リン'''(五酸化二燐、<chem>P4O10</chem>)の白煙を生じる。
: <chem>4P + 5O2 ->[\Delta] P4O10</chem>
十酸化四リンは白色の粉末状固体であり、強い吸湿性を示し、乾燥剤として用いられる。この吸湿性から、空気中に放置すると空気中の水蒸気を吸収して自分自身がその水に溶ける。この現象を'''潮解'''という。 十酸化四リンは水と反応して'''リン酸''' <chem>H3PO4</chem> となる。
: <chem>P4O10 + 6H2O -> 4H3PO4</chem>
リン酸は酢酸のような弱酸よりは強いが、塩酸のような強酸よりは弱い、中程度の強さの酸である。 リンは生物にとって必要不可欠な元素である。生物は、[[高校化学 天然高分子化合物#核酸|アデノシン]](アデニン+リボース)にリンが高エネルギーリン酸結合により3つ化合した化合物である[[高等学校理科 生物基礎/細胞とエネルギー#代謝とATP|ATP]](アデノシン三リン酸)にエネルギーを保存し、利用する。農業においても必要な元素で、リン酸肥料として用いられる。主なものとして、リン鉱石と硫酸と水との反応から得られるリン酸二水素カルシウム <chem>Ca(H2PO4)2</chem> と、硫酸カルシウム <chem>CaSO4</chem> との混合物である'''過リン酸石灰'''がある。 この過リン酸石灰が、リン肥料の主成分である。 リン酸カルシウム <chem>Ca3(PO4)2</chem> およびヒドロキシアパタイト <chem>Ca5(PO4)3(OH)</chem> は、動物の骨や歯の主成分である。
植物の成長に必要な必須元素のうち、窒素・燐・カリウムは'''肥料の三要素'''と呼ばれる。
== 14族元素 ==
[[ファイル:周期表-CSi.png|右]]
'''炭素''' C 、'''ケイ素''' Si はともに14族に属する元素である。価電子を4個持つ。
=== 炭素 ===
'''炭素''' (C) は生物を構成する重要な元素であり、多くの化学製品にも含まれている。炭素を含む物質は一般に'''有機物'''と呼ばれる。有機化合物については別の章で詳しく学ぶ。この節では、炭素の単体、一酸化炭素、二酸化炭素について説明する。
==== 単体 ====
炭素の単体は共有結合の結晶であり、結合の仕方によっていくつかの同素体が存在する。
; ダイヤモンド (C)
[[ファイル:Apollo_synthetic_diamond.jpg|左|サムネイル|150x150ピクセル|ダイヤモンド]]
[[ファイル:DiamantEbene01.png|右|サムネイル|150x150ピクセル|ダイヤモンドの構造]]
'''ダイヤモンド'''は無色の固体で、1つの炭素原子が4つの炭素原子と正四面体の頂点方向に共有結合し、それが多数連結して結晶を形成している。共有結合の結晶であるため、非常に融点・沸点が高く、地球上で最も硬い物質として知られている。電気は通さないが、熱はよく伝える。宝石としての利用のほか、工業的には研磨剤としても使われる。光の屈折率が大きい。
{{-}}
; 黒鉛 (C)
[[ファイル:GraphiteUSGOV.jpg|左|サムネイル|150x150ピクセル|黒鉛]]
[[ファイル:Graphit_gitter.png|右|サムネイル|187x187ピクセル|グラフェン黒鉛(グラファイト)の一層をグラフェンと呼ぶ。上図ではグラフェンが4層描かれている。]]
'''黒鉛'''は金属光沢のある黒色の固体で、炭素原子が正六角形の層状構造を持っている。各層は3つの共有結合によって形成され、残りの価電子は'''自由電子'''として層間を移動する。この自由電子の存在により、黒鉛は電気をよく通し、熱伝導性も高い。層と層の結合は弱いため、黒鉛は柔らかく、鉛筆の芯や電気分解用の電極として使用される。
{{-}}
; フラーレン(C60、C70など)
[[ファイル:C60a.png|右|サムネイル|140x140ピクセル|フラーレン]]
'''フラーレン'''は茶褐色の固体で、多数の炭素原子が球状に結合している。右図はC60フラーレンのモデルで、炭素原子が60個、サッカーボール状に結合している。20世紀後半に発見された物質で、現在も研究が進んでいる。純粋なフラーレンは電気を通さないが、アルカリ金属を添加すると超伝導性を示すことがある。有機溶媒に溶ける性質を持つ。
{{-}}
; グラフェン
'''グラフェン'''は炭素原子が六角形に配列した一層のシート状の物質で、非常に強く柔軟であり、電気や熱を効率よく伝える。
{{-}}
; カーボンナノチューブ
'''カーボンナノチューブ'''は、炭素原子が六角形に結びついたグラフェンシートを丸めて筒状にしたナノ材料。日本人が開発した。非常に高い強度と優れた電気・熱伝導性を持ち、宇宙エレベーターのケーブルとして検討されている。
{{-}}
; 無定形炭素
[[ファイル:Binchotan_(charcoal).jpg|サムネイル|180x180ピクセル|活性炭]]
炭素の同素体とは異なり、黒鉛や[[高校化学 脂肪族炭化水素|炭化水素]]が不規則に結合し、結晶構造を明確に持たない([[高校化学 結晶#アモルファス|アモルファス]]状態の)固体がある。これを'''無定形炭素'''と呼ぶ。木炭やコークスが代表的で、この中でも'''活性炭'''は多孔質であり、さまざまな物質を吸着する性質があるため、消臭剤などに用いられている。
{{-}}
==== 酸化物 ====
炭素が空気中で燃焼すると、酸化物が生成される。
; 一酸化炭素 (CO)
炭素や有機化合物が空気中で不完全燃焼すると、'''一酸化炭素''' (CO) が生じる。一酸化炭素は無色無臭の気体で、非常に有毒である。吸入すると血液中のヘモグロビンと結合し、酸素の運搬を阻害する。水には溶けにくい。
二酸化炭素と炭素の単体を高温接触させることでも得られる。
: <chem>CO2 + C ->[\Delta] 2CO</chem>(酸化還元反応)
実験室では、[[高校化学 酸素を含む脂肪族化合物#ギ酸|蟻酸]]に濃硫酸を加えることで一酸化炭素を生成できる。
: <chem>HCOOH -> H2O + CO ^</chem>(脱水反応)
工業的には、水蒸気を高温のコークスに作用させることで得られる。
: <chem>C + H2O ->[\Delta] H2 + CO</chem>(酸化還元反応)
::※水素と一酸化炭素の混合ガスを'''水性ガス'''という。[[高校化学 酸素を含む脂肪族化合物#メタノール|メタノール]]の原料となる。
空気中では青白い炎を上げて燃焼し、二酸化炭素を生じる。
: <chem>2CO + O2 ->[\Delta] 2CO2</chem>
一酸化炭素は還元性を持ち、金属酸化物を還元して単体にする性質がある。
: <chem>CuO + CO -> Cu + CO2</chem>
; 二酸化炭素 (CO2)
炭素や有機化合物が空気中で完全燃焼すると、'''二酸化炭素''' (CO2) が生じる。実験室では炭酸カルシウムに塩酸を加えて発生させることができる。
: <chem>CaCO3 + 2HCl ->[\Delta] CaCl2 + H2O + CO2 ^</chem>
工業的には、[[高校化学 典型金属#カルシウム|石灰石]]の熱分解によって二酸化炭素が得られる。
二酸化炭素は無色無臭の気体で、毒性はない。酸性酸化物であり、水に溶けると炭酸水素イオン <chem>HCO3^-</chem> を生成し、弱酸性を示す。
: <chem>CO2 + H2O <=> HCO3^- + H^+</chem>
また、塩基と反応して塩を作る。
: <chem>CO2 + 2NaOH -> Na2CO3 + H2O</chem>
二酸化炭素を'''石灰水'''(水酸化カルシウム水溶液)に通すと、炭酸カルシウムが生成され白濁する。この反応は二酸化炭素の検出に用いられる。
: <chem>Ca(OH)2 + CO2 -> H2O + CaCO3 v</chem>
[[ファイル:Dry_Ice_Pellets_Subliming.jpg|右|サムネイル|150x150ピクセル|ドライアイス]]
二酸化炭素の固体は分子結晶で、'''ドライアイス'''として知られ、冷却剤として使用される。常圧下で'''昇華性'''を持ち、液体にならずに直接気体となる。
二酸化炭素は生物の活動によって放出・吸収される。呼吸では、酸素を吸収して糖類と反応し、エネルギーを取り出す過程で二酸化炭素が生成される。
: <chem>C6H12O6 + 6O2 -> 6H2O + 6CO2</chem>
※この反応で合成される[[高等学校理科 生物基礎/細胞とエネルギー|ATP]]は38分子
逆に、植物は光のエネルギーを用いて二酸化炭素を吸収し、糖類を合成する。この過程を'''光合成'''という。
: <chem>6CO2 + 6H2O -> C6H12O6 + 6O2</chem>
※反応エンタルピーは2803 kJ
また、微生物の中には[[高校化学 天然高分子化合物#糖類|糖類]]を醱酵させ、エネルギーを得るものがあり、その過程で二酸化炭素が生じる。
: <chem>C6H12O6 -> 2C2H5OH + 2CO2</chem>
※この反応で合成されるATPは2分子
=== ケイ素 ===
'''ケイ素'''('''珪素'''、Si)は酸素の次に多く地殻中に含まれている元素である。水晶などの鉱物にも含まれている。半導体の主な原料であり、工業的に重要な元素となっている。ケイ素は'''シリコン'''ともいう。
※地殻の元素含有量は、O<sub>2</sub> > Si > Al > Feの順である。
==== 単体 ====
[[ファイル:SiliconCroda.jpg|右|サムネイル|200x200ピクセル|ケイ素]]
'''ケイ素'''(Si)は金属光沢をもつ銀灰色の固体である。ケイ素は金属ではないが金属光沢をもつ。[[ファイル:Monokristalines_Silizium_für_die_Waferherstellung.jpg|左|サムネイル|294x294ピクセル|ケイ素の単結晶電子部品の製造などに用いられる。これを薄く切断してシリコンウェハーにする。]]
ケイ素は天然には単体として存在せず、酸化物を還元することにより製造される。単体は共有結合の結晶であり、ダイヤモンドと同様の構造でケイ素原子が結合する。そのためダイヤモンド同様融点・沸点は高く、固い結晶を作る。導体と不導体の中間程度の電気抵抗を持つ[[高校物理 電磁気学#半導体|半導体]]で、太陽電池やコンピュータ部品に用いられる。
シリコンの結晶に、わずかにリンやホウ素を加えたものは、電気をよく通すものになる。これらは半導体である。
* その他
[[ファイル:Silicon-unit-cell-3D-balls.png|サムネイル|80x80ピクセル|ケイ素の単体の結晶構造]]
ケイ素の結晶構造は、ダイヤモンドの結晶構造と同じ。
{{-}}{{コラム|シリセン|シリセンは、ケイ素(シリコン)原子が六角形に配列し、グラフェンに似た二次元シート構造を持つ新しい物質である。シリコンは通常、三次元のダイヤモンド構造を取るが、シリセンではケイ素原子が平面状に並び、蜂の巣状の構造を作り出す。このため、シリセンは「シリコン版グラフェン」とも呼ばれることがある。
シリセンは、グラフェンと同様に優れた電子的特性を持ち、次世代のエレクトロニクス材料として注目されている。特に、シリコンベースの既存の半導体技術との互換性が期待されており、ナノテクノロジーやトランジスタ、センサーなどの分野での応用が研究されている。
ただし、シリセンはグラフェンよりも安定性が低く、空気中では速やかに酸化されるため、特定の条件下でしか安定した形で存在できない。一般的には金属基板の上に成長させることで安定させる技術が使われている。
シリセンはその特性を利用して、エレクトロニクスやスピントロニクス、さらにはエネルギー材料などの広い分野で革新的な技術を生み出す可能性があるが、まだ研究段階にあるため、今後の発展が期待される。}}{{-}}
==== 二酸化ケイ素 ====
[[ファイル:Quartz_(USA).jpg|右|サムネイル|180x180ピクセル|水晶]]
'''二酸化ケイ素'''('''シリカ'''、二酸化珪素、<chem>SiO2</chem>)は自然界で石英として存在する。透明な石英の結晶は水晶と呼ばれ、宝石として用いられる。また、砂状のものは{{ruby|珪砂|けいしゃ}}と呼ばれ、{{ruby|硝子|ガラス}}の原料となる。
ガラスは身近な様々な場面で用いられている。科学においては耐熱器具や光ファイバーに用いられている。
二酸化ケイ素は常温では共有結合結晶である。ケイ素原子と酸素原子との結合は非常に強く、固く安定な結晶を作る。また、強い結合のためか、融点も高く(1550℃)、塩酸にも溶けない。しかし、フッ化水素酸とは反応して溶ける。
: <chem>SiO2 + 6HF -> H2SiF6 + 2H2O</chem>
[[ファイル:Silica_gel.jpg|右|150x150ピクセル]]
また、二酸化ケイ素は酸性酸化物であり、塩基と反応して珪酸塩を生じる。たとえば水酸化ナトリウムと反応して、ケイ酸ナトリウム <chem>Na2SiO3</chem> を生じる。
: <chem>SiO2 + 2NaOH -> Na2SiO3 + H2O</chem>
そして、上述で得られたケイ酸ナトウリムに水を加えて加熱すると、粘性の大きい透明の'''水ガラス''' <chem>Na2O.nSiO2</chem> と言う物質が得られる。水ガラスは、その粘性や透明性から、よく水飴に例えられる。
水ガラスに塩酸を加えると、白色ゲル状のケイ酸 <chem>H2SiO3</chem>が得られる。
: <chem>Na2SiO3 + 2HCl -> H2SiO3 + 2NaCl</chem>
※ 実際は組成が安定せず、できるのが <chem>H2SiO3</chem> のみとは限らない
※ <chem>H2SiO3</chem>は水にほぼ不溶だが(なので、教材によっては「白色ゲル状の沈殿」のように沈殿として説明される場合もよくあるが)、慣習的に「ケイ酸」と言う。炭酸 <chem>H2CO3</chem> との類推で考えると覚えやすいだろう。
このとき塩化ナトリウムが副生成物としてできるので、塩化ナトリウムを水洗して除き、のこったケイ酸を加熱乾燥すると'''シリカゲル'''が得られる。シリカゲルは多孔質であり、また空気中では水分を吸着するため、乾燥剤や吸着剤として用いられる。(シリカゲルは多孔質なので表面積が大きく、そのため効率的に水分を吸着できる。)
* 発展: 水晶振動子
電子工業における水晶の応用として、'''水晶振動子'''としての利用がある。
水晶に電圧を掛けると、一定の周期で振動することから、クオーツ時計などの発振器として利用されている。
----
{{コラム||
SiO<sub>2</sub>が酸性酸化物であることと、上記のケイ酸ナトリウムの合成式
: <chem>SiO2 + 2NaOH -> Na2SiO3 + H2O</chem>
はバラバラに覚えるのではなく、下記のように関連付けて覚えよう。
教科書では二酸化ケイ素は「酸性酸化物なので」上記の反応が起きる、的な事が書いてあるだろうが、それよりも炭素との類推で考えるほうが覚えやすい。二酸化炭素も水酸化ナトリウムと反応して炭酸ナトリウムを生じる性質がある。そもそも二酸化炭素もニ酸化ケイ素も上記のような類似性があるので、同じ「酸性酸化物」というグループに入れられている。二酸化ケイ素も二酸化炭素も、ともに酸性酸化物である。
このように、酸性酸化物をあたかも酸であるかのように考えると、塩基との反応を中和反応のように理解できるので暗記の負担が減る。
※ただし、酸化物に限定した概念であるので一般の酸・塩基の拡張にはならない(一般の酸・塩基は必ずしも酸化物とは限らない)。例えば、塩酸 HCl は酸化物ではない。
同様に、塩基性酸化物は必要に応じて塩基という概念の拡張のように解釈することもできる。なお、塩基性酸化物である酸化カルシウム CaO は所謂「石灰」のことであり、実際に塩基性の物質である。
纏めると、酸性酸化物は厳密には酸ではない場合もあるが(炭酸のように、酸性酸物が酸である場合もある)、塩基と反応させた際に酸と塩基の中和反応のような生成物が得られる場合が多い。同様、塩基性酸化物も酸と反応させた際に酸と塩基の中和反応のような生成物が得られる事が多い。
長々と説明したが、要するに反応式
: <chem>SiO2 + 2NaOH -> Na2SiO3 + H2O</chem>
をそのまま暗記しようとするのではなく、炭酸の中和反応と似たメカニズムとして覚えるのが効率的だという話である。
なお、炭酸ナトリウムの工業的な製法は上述の式とは異なり、[[高校化学_典型金属#アンモニアソーダ法(ソルベー法)|アンモニアソーダ法(ソルベー法)]]を用いる。
}}
[[Category:高等学校化学|ひきんそくけんそ]]
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高校化学 典型金属
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{{pathnav|高等学校の学習|高等学校理科|高等学校化学|[[高等学校 化学|化学]]|pagename=典型金属|frame=1|small=1}}
== アルカリ金属 ==
=== 金属と水の反応モデル ===
以降の無機化学の単元において、金属と水溶液との反応を考える上では、以下のようなモデルを用いる。※実測はされていない
:ある金属元素Mが水中にある。このとき、周りの水と反応することにより金属の表面が水酸化物M(OH){{sub|x}}で覆われる(皮膜形成)。
:この水酸化物M(OH){{sub|x}}が
::水に可溶ならば、水酸化物皮膜が全て水に溶けて金属の表面が露出し、水と反応して水酸化物M(OH){{sub|x}}が生成する。そしてまた水酸化物被膜が全て水に溶けて金属の表面が露出し・・・と反応を繰り返し、最終的には金属が全て水酸化物となって水に溶ける。
::水に難溶ならば、水酸化物皮膜が生成した時点で反応が止まり、その金属は水と反応しない。
なお、イオン化傾向がMg以下の金属の水酸化物は水に難溶である。
=== 単体 ===
[[File:Lithium paraffin.jpg|right|200px|thumb|リチウムの保存. <br>リチウムは密度が灯油よりも小さいため、灯油に浮く。]]
[[File:Kalium.jpg|right|150px|thumb|切断したカリウム]]
水素を除く1族元素のリチウム Li, ナトリウム Na, カリウム K, ルビジウム Rb, セシウム Cs, フランシウム Fr のことを'''アルカリ金属'''という。
アルカリ金属の単体は、いずれも銀白色の固体である。融点が低く軟らかい金属で、カッターで簡単に切断することができる。
アルカリ金属の原子は価電子を1個もち、1価の陽イオンになりやすい。
このため、アルカリ金属の原子は酸化されやすく、天然には単体ではなく塩として存在する。
単体を得るには、化合物の融解塩電解を行う。加熱して融解させた化合物に炭素電極を入れ、電気分解を行うと、陰極側に金属の単体が析出する。
: <chem>{X+} + {e^-} -> {X} v</chem> (XはLi、Na、Kなど)
アルカリ金属は反応性が高く、イオン化傾向が大きいので還元性も高い。アルカリ金属は常温で空気中の酸素や水、塩素と簡単に反応する。特に水とは、アルカリ金属は常温で水と反応して水素を発生しながら激しく反応し、反応後の溶液は強塩基性の水溶液になる。
: <chem>4X + O2 -> 2X2O</chem>
: <chem>2X + 2H2O -> 2XOH + H2 ^</chem> (XはLi、Na、Kなど)
: <chem>2X + Cl2 -> 2XCl</chem>
そのため、アルカリ金属の単体を保存する際には、空気中の酸素や水との反応を防ぐために'''石油中'''(灯油)に保存する。リチウムは石油よりも軽いため、石油に浮く。また、単体は素手で触れず、必ずピンセットなどを用いて扱う。
<!--
水だけでなく、ヒドロキシル基(-OH)を持つアルコールやフェノールとも水素を発生しながら反応して、アルコキシド、フェノキシドとなる。
: 2R-OH + 2X → 2R-OX + H{{sub|2}} (Rは炭化水素基、XはLi、Na、Kなど)
-->
{| class="wikitable" align=right
|+ アルカリ金属の単体の性質
|-
|- style="background:silver"
! 元素名 !! 元素記号 !! 融点/℃ || 沸点/℃ || 密度/(g/cm<sup>3</sup>) || 炎色反応
|-
| リチウム || Li || 180 || 1347 || 0.53 || 赤
|-
| ナトリウム|| Na || 98 || 883 || 0.97 || 黄
|-
| カリウム || K || 64 || 774 || 0.86 || 赤紫
|-
| ルビジウム || Rb || 39 || 688 || 1.53 || 赤
|-
| セシウム || Cs || 28 || 678 || 1.87 || 青
|-
|}
イオンは'''炎色反応'''を示し、白金線にイオン水溶液をつけガスバーナーの炎に入れると、リチウムイオンでは赤色に、ナトリウムイオンでは黄色に、カリウムでは赤紫色にそれぞれ炎が色づく。
{|align="center" style="border:solid #aaffaa 1px; text-align:center;"
|[[File:FlammenfärbungLi.png|52px|リチウムの炎色反応]]||[[File:FlammenfärbungNa.png|50px|ナトリウムの炎色反応]]||[[File:FlammenfärbungK.png|50px|カリウムの炎色反応]]
|-
|Li||Na||K
|}
=== アルカリ金属の化合物 ===
アルカリ金属は様々な化合物を作る。この章ではアルカリ金属の中でも、特にナトリウムの化合物について学ぶ。
==== 水酸化物 ====
アルカリ金属の単体が水と反応すると水酸化物となる。たとえばリチウムは水酸化リチウム(LiOH)に、ナトリウムは水酸化ナトリウム(NaOH)に、カリウムは水酸化カリウム(KOH)になる。
水酸化ナトリウムは、工業的には塩化ナトリウム NaCl 水溶液の電気分解によって製造される。
常温では白色の固体であり、水によく溶けて、いずれの水溶液も強塩基性を示す。このため皮膚を冒す性質があり、取り扱いに注意する。
[[ファイル:Sodium_hydroxide.jpg|右|サムネイル|200x200ピクセル|水酸化ナトリウム]]
水酸化ナトリウムと水酸化カリウムの固体は吸湿性があり、空気中に放置すると水蒸気を吸収してその水に溶けてしまう。この現象を'''{{ruby|潮解|ちょうかい}}'''(deliquescenece)という。
水溶液も吸湿性があるため、長時間放置すると溶液の濃度が変化する。従って精密さを要する実験では、直前に水溶液を調整するようにするとともに、中和滴定などにより正確な濃度を測る必要がある。
また水酸化ナトリウムは水分を吸収するだけでなく、空気中の二酸化炭素も吸収して炭酸塩の炭酸ナトリウム(Na{{sub|2}}CO{{sub|3}})を生じる。
: <chem>2NaOH + CO2 -> Na2CO3 + H2O</chem>
この性質から、二酸化炭素の吸収剤として用いられることがある。
水酸化ナトリウムの産業上の用途は、製紙業でのパルプの製造、石油の精製、繊維の製造、石鹸の製造、などがある。 水酸化ナトリウムは'''{{ruby|苛性|かせい}}ソーダ'''とも呼ばれる。
==== 炭酸塩・炭酸水素塩 ====
'''炭酸水素ナトリウム'''(NaHCO{{sub|3}})と'''炭酸ナトリウム'''(Na{{sub|2}}CO{{sub|3}})は共に白色の粉末である。工業的には'''アンモニアソーダ法'''により製造される。
==== アンモニアソーダ法(ソルベー法) ====
アンモニアソーダ法は炭酸ナトリウムの工業的製法である。
# 塩化ナトリウムの飽和水溶液にアンモニアと二酸化炭素を通す。 <chem>NaCl + NH3 + CO2 + H2O -> NaHCO3 + NH4Cl</chem>
# 炭酸水素ナトリウムを加熱する。 <chem>2NaHCO3 -> Na2CO3 + CO2 ^ + H2O</chem>
[[ファイル:アンモニアソーダ法反応過程.svg|右|サムネイル|550x550ピクセル|アンモニアソーダ法の反応経路図]]
;
反応で生じた生成物は次のように再利用できる。
# 炭酸カルシウムを加熱して酸化カルシウムと二酸化炭素を得る。
#: <chem>CaCO3 -> CaO + CO2</chem>
# 1.で得た酸化カルシウムに水をくわえ、水酸化カルシウムとする。
#: <chem>CaO + H2O -> Ca(OH)2</chem>
# 2.で得た水酸化カルシウムを1.で得た塩化アンモニウムと反応させ、塩化カルシウムとアンモニアを得る。なお、このアンモニアは回収して1.の反応で再利用できる。
#: <chem>2NH4Cl + Ca(OH)2 -> CaCl2 + 2NH3 + 2H2O</chem>
アンモニアソーダ法は全体としては、 <chem>2NaCl + CaCO3 -> Na2CO3 + CaCl2</chem> という反応式で表される。
原料がCaCO{{sub|3}}(石灰岩、秩父などで大量に採れる)とNaCl(食塩、買えなくても海水から作れる)とNH{{sub|3}}(アンモニア、ハーバー・ボッシュ法で大量生産できる)のみと非常に安価なので、アンモニアソーダ法は「安く大量生産を目指す」工業的製法としては最も理想形に近いと言われている。
なお、塩化アンモニウムそのものにも肥料などとしての用途もあるので、上記3の酸化カルシウム+アンモニアの生成を行わない場合もある。
なお、図中の分子式と名称は
:水酸化カルシウム Ca(OH)2 , 塩化アンモニウム <chem>NH4Cl</chem> , 塩化カルシウム CaCl{{sub|2}} , 炭酸水素ナトリウム <chem>NaHCO3</chem>
==== 炭酸ナトリウム ====
炭酸水素ナトリウムは、熱分解して炭酸ナトリウム(sodium carbonate)となる。炭酸ナトリウムは白色の粉末で、水に溶け、水溶液は塩基性を示す。
炭酸ナトリウムは加熱しても、分解しない。
炭酸ナトリウムは弱酸と強塩基の塩であり、水に溶けると加水分解して塩基性を示す。
<chem>Na2CO3 -> 2 {Na^+} + CO3^{2-}</chem>
<chem>CO3^{2-} {+} H2O <=> {HCO3^-} + OH^-</chem>
炭酸ナトリウム水溶液を冷却すると十水和物 <chem>Na2CO3*10H2O</chem> の無色透明の結晶が得られる。この <chem>Na2CO3*10H2O</chem> の結晶は空気中に放置すると水和水の大部分を失って、白色粉末の一水和物 <chem>Na2CO3*H2O</chem> となる。この現象は'''{{ruby|風解|ふうかい}}'''(efflorescence)と呼ばれる。
炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム共に強酸と反応して二酸化炭素を生じる。(弱酸遊離反応)
<chem>Na2CO3 + 2H2SO4 -> Na2SO4 + H2O + CO2 ^</chem>
炭酸ナトリウムは、ガラスや石鹼の製造などに用いられる。
※ガラスの原料は二酸化珪素 <chem>SiO2</chem> であるが、これを珪酸ナトリウム <chem>Na2SiO3</chem> にする反応において、水酸化ナトリウムよりも炭酸ナトリウムの方がよく用いられる。<chem>SiO2 + NaOH -> Na2SiO3 + H2O</chem>という反応と<chem>SiO + Na2CO3 -> Na2SiO3 + CO2</chem>という反応を比べた時、左の反応は反応性が高いものの、生成された <chem>H2O</chem> が反応の系内に残るので逆反応が起こり、平衡状態となって反応が見かけ上止まってしまう。それに対し、右の反応は生成された <chem>CO2</chem> が反応の系外に脱出するので、ルシャトリエの原理により平衡が正反応の向きに偏って反応がより一層進行する。そのため、通常は炭酸ナトリウムが用いられる。
==== 炭酸水素ナトリウム ====
炭酸水素ナトリウム <chem>NaHCO3</chem> は白色粉末で、水に少し溶け、水溶液は加水分解により弱塩基性を示す。炭酸水素ナトリウムは'''{{ruby|重曹|じゅうそう}}'''ともいう。(重曹は「重炭酸曹達」の略である。「重炭酸」は「炭酸水素」の別名であり、「{{ruby|曹達|ソーダ}}」はナトリウムの和名である。)
炭酸水素ナトリウムを熱すると、分解して二酸化炭素を発生する。
<chem>2NaHCO3 -> Na2CO3 + H2O + CO2 v</chem>
(上記の反応は、ソルベー法での炭酸水素ナトリウムの分解反応と同じ。)
炭酸水素ナトリウムの用途は、発泡剤やベーキングパウダー(ふくらし粉)、入浴剤の発泡剤成分、などとして用いられている。
また、強酸で、二酸化炭素を発生する。
<chem>NaHCO3 + HCl -> NaCl + H2O + CO2 v</chem>
==== 塩化物 ====
[[ファイル:NaCl-zoutkristallen_op_Schott_Duran_100_ml.JPG|右|サムネイル|200x200ピクセル|塩化ナトリウムの結晶]]
水酸化ナトリウムに塩酸を加えると、中和反応を起こし塩化ナトリウム(NaCl)を生ずる。
<chem>NaOH + HCl -> NaCl + H2O</chem>
塩化ナトリウムは天然では岩塩に豊富に含まれており、食塩の主成分としても有名である。工業的には海水を濃縮することにより得られる。
塩化ナトリウムを融解塩電解すると単体のナトリウムが得られる。
<chem>2NaCl -> 2Na v Cl2 ^</chem>
塩化ナトリウム水溶液を電気分解すると、陽極からは塩素、陰極からは水素が発生する。このとき陰極側では水の電気分解反応が起こっており、水酸化物イオンが生じている。
<chem>2H2O -> H2 + 2 OH^-</chem>
溶液中にはナトリウムイオンが残るため、陰極付近では水酸化ナトリウムの水溶液が得られる。この原理は工業的な水酸化ナトリウムおよび塩素・水素の製造法として応用されており、陽イオン交換膜を用いることから'''イオン交換膜法'''と呼ばれる。
== 2族元素 ==
周期表の2族の元素は、すべて金属元素である。2価の価電子をもち、2価の陽イオンになりやすい。天然には塩として存在している。
2族元素のことをアルカリ土類金属という<ref>アルカリ土類金属の定義として、「Be,Mgを除く2族元素」と定義しているところもある。これは、後述するようにBe,Mgとその他の2族元素の性質に異なるところがあるからである。</ref>。
=== アルカリ土類金属元素 ===
2族元素の単体はアルカリ金属元素の単体よりも硬い。
[[ファイル:Magburn1.jpg|右|サムネイル|250x250ピクセル|マグネシウムの燃焼]]
2族元素の単体は、いずれも、空気中で激しく燃焼して酸化物を生じる。たとえばマグネシウムは白い強い光を出しながら燃焼して白色の酸化マグネシウム(MgO)を生じる。
: <chem>2Mg + O2 -> 2MgO</chem>
マグネシウムは二酸化炭素とも熱や光を出しながら激しく反応する。
: <chem>2Mg + CO2 -> 2MgO + C</chem>
2族元素の酸化物はいずれも塩基性酸化物であり、酸と反応する。例えば酸化マグネシウムは塩酸と反応して塩化マグネシウムを生ずる。
: <chem>MgO + 2HCl -> MgCl2 + H2O</chem>
[[ファイル:Magnesium_chloride.jpg|右|サムネイル|200x200ピクセル|塩化マグネシウムの潮解]]
塩化マグネシウムは白色の固体であり、潮解性がある。
ベリリウム・マグネシウムとアルカリ土類金属とでは、次のような違いがある。
* '''炎色反応'''
*: ベリリウム、マグネシウムの単体は炎色反応を示さない。アルカリ土類金属元素は炎色反応を示し、イオンの水溶液を白金線の先につけてガスバーナーの炎に入れるとカルシウムでは橙赤色に、ストロンチウムでは紅色に、バリウムでは黄緑色に、それぞれ炎が色づく。
{| align="center" style="border:solid #aaffaa 1px; text-align:center;"
|[[ファイル:FlammenfärbungCa.png|153x153ピクセル|カルシウムの炎色反応]]
|[[ファイル:FlammenfärbungSr.png|152x152ピクセル|ストロンチウムの炎色反応]]
|-
|Ca
|Sr
|}
{| class="wikitable" align="right"
|+2族元素の単体の性質
|- style="background:silver"
!
!元素名
!元素記号
!融点/℃
!密度/(g/cm<sup>3</sup>)
!炎色反応
|-
| rowspan="2" |
|ベリリウム
|Be
|1282
|1.85
|示さない
|-
|マグネシウム
|Mg
|649
|1.74
|示さない
|-
| rowspan="3" |アルカリ
土類金属
|カルシウム
|Ca
|839
|1.55
|橙赤
|-
|ストロンチウム
|Sr
|769
|2.54
|紅
|-
|バリウム
|Ba
|729
|3.59
|黄緑
|-
|}
* 水との反応性
*: アルカリ土類金属の単体は常温で水と反応し、水素を発生する。
*:: <chem>Ca + 2H2O -> Ca(OH)2 + H2 ^</chem>
*: 一方で、ベリリウムやマグネシウムの単体は常温では水と反応しない。ただし、マグネシウムは熱水と反応して水素を発生しながら水酸化物となる。
*:: <chem>Mg + 2H2O -> Mg(OH)2 + H2 ^</chem>
* 硫酸塩の水への溶けやすさ
*: 例外的に、硫酸ベリリウム、硫酸マグネシウムは水に溶けやすい。だが、それ以外のアルカリ土類金属の硫酸塩は水に溶けにくい。
ベリリウムには他の金属が衝撃的にぶつかっても火花が飛び散りづらい性質があるため、特殊な金槌の材料としてベリリウム系の合金が使われていることも多い。
酸化マグネシウム MgO は融点が高く(約2800℃)、'''耐火煉瓦'''や'''坩堝'''の材料などに用いられている。
=== バリウム ===
水酸化バリウムの水溶液などに稀硫酸を加えると、硫酸バリウム BaSO<sub>4</sub> の白色沈澱が得られる。
硫酸バリウム BaSO<sub>4</sub> は白色の粉末で、水に溶けず、酸にも反応しない。
硫酸バリウムの実社会の用途として、医療ではこの性質(水に溶けにくい、酸に反応しない、など)を利用して、胃や腸など消化器官の様子をX線撮影するための造影剤として用いられる。
バリウムおよび硫酸バリウムはX線を透過させにくいため、X線撮影の際に人体内のバリウムのある場所でX線が遮断されて撮影装置にX線が届かなくなり、胃や腸でのバリウムの様子が見える、という仕組みである。
=== カルシウム ===
[[ファイル:Calcium_unter_Argon_Schutzgasatmosphäre.jpg|右|サムネイル|200x200ピクセル|カルシウムの単体]]
'''カルシウム'''(Ca)はアルカリ土類金属のひとつである。単体は塩化カルシウムの融解塩電解により得られる。
[[ファイル:Big-Calcium-Bubble.ogv|右|サムネイル|250x250ピクセル|二酸化炭素の発生]]
==== 酸化物 ====
単体を空気中で燃焼させると酸化カルシウム(CaO)を生じる。酸化カルシウムは'''{{ruby|生石灰|せいせっかい}}'''とも呼ばれる。
: <chem>2Ca + O2 -> 2CaO</chem>
酸化カルシウムに水を加えると熱を出しながら水酸化カルシウム <chem>Ca(OH)2</chem> を生じる。
: <chem>CaO + H2O -> Ca(OH)2</chem>
酸化カルシウムは水を吸収し、そのさい発熱することから、乾燥剤や発熱材として用いられる。ただし、酸性気体とは反応してしまうため、塩基性・中性気体の乾燥にしか使えない。
==== 水酸化物 ====
酸化カルシウムに水を加えると熱を出しながら水酸化カルシウム <chem>Ca(OH)2</chem> を生ずる。
: <chem>CaO + H2O -> Ca(OH)2</chem>
逆に、水酸化カルシウムを加熱すると酸化カルシウムが得られる。
: <chem>Ca(OH)2 -> CaO + H2O</chem>
水酸化カルシウムはカルシウムを水と反応させることによっても得られる。
: <chem>Ca + 2H2O -> Ca(OH)2 + H2 ^</chem>
水酸化カルシウムは白色の粉末であり、'''消石灰'''とも呼ばれる。水酸化カルシウムの水溶液は塩基性を示し、一般に'''石灰水'''(lime water)と呼ばれる。 石灰水に二酸化炭素を通じると、炭酸カルシウムの白色沈澱を生じて白濁する。この反応は二酸化炭素の検出に用いられる。
: <chem>Ca(OH)2 + CO2 -> CaCO3 v + H2O</chem>
白濁した石灰水に更に二酸化炭素を通じ続けると、沈澱が炭酸水素カルシウムとなって再溶解し、無色の水溶液になる。
: <chem>CaCO3 + CO2 + H2O -> Ca(HCO3)2</chem>
この炭酸水素カルシウム水溶液を加熱すると、再び炭酸カルシウムの沈澱が生じる。
: <chem>Ca(HCO3)2 -> CaCO3 v + CO2 ^ + H2O </chem>
水酸化カルシウム水溶液に塩酸を加えると、塩化カルシウムが生じる。塩化カルシウムは吸湿性があり、乾燥剤としてしばしば用いられる。
: <chem>Ca(OH)2 + 2HCl -> CaCl2 + 2H2O</chem>
水酸化カルシウム水溶液に塩素を通じると、[[高等学校化学I/非金属元素の単体と化合物#塩素のオキソ酸|さらし粉]]を生ずる。
: <chem>Ca(OH)2 + Cl2 -> CaCl(ClO)*H2O</chem>
水酸化カルシウムは'''漆喰'''に使われている。
==== 塩化物 ====
塩化カルシウム CaCl{{sub|2}}は、エンカルという名称で用いられる。
使用用途は乾燥剤と融雪剤である。中性なのであらゆる気体の乾燥に使えるが、唯一アンモニアとは反応してしまうためアンモニアの乾燥はできない。
夏にエンカルをグラウンドに撒くことがある。これは、大気中の水分をエンカルが吸うことにより、地表が湿って砂埃が舞うのが抑えられるためである。
==== 炭酸塩 ====
炭酸カルシウム CaCO{{sub|3}} の固体は、天然には石灰岩や大理石として存在する。
'''鍾乳洞'''や'''鍾乳石'''は、炭酸カルシウムが地下水に一旦溶けて炭酸水素ナトリウムとなり、その後炭酸カルシウムに戻って再度固まったものである。
炭酸カルシウムは塩酸などの強酸と反応して、二酸化炭素を発生する。
: <chem>CaCO3 + 2HCl -> CaCl2 + H2O + CO2 ^</chem>
炭酸カルシウムは、セメントの原料や、チョークの原料、ガラスの原料、歯みがき粉の原料などとして、使われている。
==== 硫酸塩 ====
水酸化カルシウム水溶液に硫酸を加えると、硫酸カルシウム CaSO{{sub|4}} の白色沈澱を生じる。硫酸カルシウムは天然には二水和物が'''{{ruby|石膏|セッコウ}}'''として存在する。石膏を約130℃で焼くことにより、二分の一水和物である'''焼き石膏'''の白色粉末となる。
: <chem>Ca(OH)2 + H2SO4 -> CaSO4 + 2H2O</chem>
焼き石膏の粉末に水を少量混ぜると、硬化して体積が少し増え、石膏になる。石膏像('''{{ruby|塑|そ}}像''')や医療用ギプスは、この性質を利用している。ただし、重量があるせいなのかギプスとしての用途は近年薄れてきている。その代わり、建材としての用途が増えてきた。
カルシウムやバリウムの硫酸塩は水に溶けにくく、この性質は陽イオンの系統分離において重要である。また日常生活においても重要で、硫酸カルシウムは建築材や医療用ギプスに、硫酸バリウムBaSO<sub>4</sub>はX線撮影の造影剤として用いられる。
=== 発展: 硬水と軟水 ===
Ca{{sup|2+}}やMg{{sup|2+}}を多く含む水を'''硬水'''という。それらが少量しか含まれていない水のことを'''軟水'''という。
日本では、一般に地下水には硬水、河川水には軟水が多い。
また、硬水を飲むと下痢を起こしてしまうので、食用には硬水は不適切である。
しかし、農業用水に硬水を使う分には問題がない。
もしボイラーで硬水を使うと、沈澱が残るので、配管の詰まりを起こしやすく、不適切である。
大陸の河川水は緩流であり鉱物質が充分溶け込めるので硬水が多い。
一方、日本では急流が多いため河川水に鉱物質が充分に溶けず軟水が多い。
{{コラム|水の硬度|水溶液中のイオン <chem>Ca^2+</chem> や <chem> Mg^2+</chem> がすべて <chem>CaCO3</chem> として存在していると考えたときの <chem>CaCO3</chem> の 1L 当たりの質量を硬度という。
基本的に水の硬度の数値が低いほど軟水である。いっぽう、水の硬度の数値が高いと硬水である。
::硬度60 mg/Lまでが軟水。
::硬度120 mg/L以上は硬水。
::硬度60~120 mg/Lは中軟水である。}}
== アルミニウム ==
'''アルミニウム Al''' は13族の金属元素で、価電子を3個持ち、3価の陽イオンになりやすい。
銀白色の軽い金属である。展性や延性が大きく、薄く伸ばしてアルミニウム箔(いわゆるアルミホイル)として用いられている。また、電気伝導性も良く、熱伝導性も良い。熱伝導性が良いことから、鍋などに用いられる。
アルミニウムの単体を空気中に放置すると、表面に緻密な酸化膜(酸化アルミニウム Al{{sub|2}}O{{sub|3}} )の被膜ができ、内部を保護する。
アルミニウムに銅やマグネシウムを追加した合金である'''ジュラルミン'''は軽く機械的にも強いので、航空機に用いられている。
=== 製法 ===
==== バイヤー法 ====
アルミニウムは天然では'''ボーキサイト''' Al<sub>2</sub>O<sub>3</sub>・nH<sub>2</sub>O として存在する。ボーキサイトに濃い水酸化ナトリウム溶液を加えてアルミン酸ナトリウム <chem>2Na[Al(OH)4]</chem> が得られる。正確にはテトラヒドロキソアルミン酸ナトリウムという。
: <chem>Al2O3 + 2NaOH + 3H2O -> 2Na[Al(OH)_4]</chem>
アルミン酸ナトリウムの溶液を冷却し、加水分解がおこると水酸化アルミニウムAl(OH)<sub>3</sub> の沈澱が析出する。
: <chem> Na[Al(OH)4] -> Al(OH)3 + NaOH</chem>
生じたAl(OH)<sub>3</sub> を分離して、このAl(OH)3を1200 ℃に加熱して酸化アルミニウム <chem>Al2O3</chem> にする。
Al<sub>2</sub>O<sub>3</sub> は'''アルミナ'''という。アルミナは融点が 2054 ℃ と高いので、融点を次の融解塩電解という処理で下げる。
これらのボーキサイトからアルミナまでの工程を'''バイヤー法'''という。
なお、アルミナは耐熱剤の原料として用いられる。
==== 熔融塩電解 ====
[[ファイル:Mineraly.sk_-_bauxit.jpg|代替文=ボーキサイト|サムネイル|200x200ピクセル|ボーキサイト]]
鉱石の'''ボーキサイト'''を処理して酸化アルミニウム <chem>Al2O3</chem> にかえたあと、氷晶石(<chem>Na3AlF6</chem>、ヘキサフルオロアルミン酸ナトリウム)とともに熔融塩電解して製造される。('''エルー・ホール法''')
: <chem>Al^3+ + 3e^- -> Al v</chem>
アルミニウムの電解には、大量の電力が必要となる。
製造の過程で得られるアルミナ <chem>Al2O3</chem> は水に溶けにくい白色の固体である。氷晶石は、このアルミナの融点を降下させるために加えられる。
アルミニウムの粉末は、空気中または酸素中で熱すると、激しく燃える。
;テルミット法
アルミニウムの粉末と酸化鉄 <chem>Fe2O3</chem> などの金属酸化物の粉末を混合して加熱すると、高温を発生しながら、金属酸化物が還元され金属単体が得られる。例えば酸化鉄(III)とアルミニウムを混合して加熱すると、鉄が得られる。
: <chem>2Al + Fe2O3 -> Al2O3 + 2Fe v</chem>
アルミニウム単体のこの酸化反応を'''テルミット法'''といい、鉄道のレールの熔接に用いられている。
===両性元素===
アルミニウムは'''両性元素'''であり、酸とも塩基とも反応して水素を生じる。例えば、塩酸と反応して水素を発生しながら塩化アルミニウムを生じる
: <chem>2Al + 6HCl -> 2AlCl3 + 3H2 ^</chem>
が、水酸化ナトリウム水溶液とも反応して、水素を発生しながらテトラヒドロキソアルミン酸イオンを生じる。
: <chem>2Al + 2NaOH + 6H2O -> 2Na+ + 2[Al(OH)4]^- + 3H2 ^</chem>
しかし、アルミニウムは濃硝酸に溶けない。これは、反応開始直後に金属表面に緻密な酸化被膜を形成し、反応が金属内部まで進行しなくなるためである。このように、緻密な酸化皮膜により保護されて、それ以上は反応が進行しない状態を'''不動態'''という。
'''アルマイト'''という材料は、アルミニウムの表面を人工的に酸化させることで厚い不動態の膜で保護させ、そのアルミニウムの耐久性を上げた材料であり、日本で開発された。
===イオン===
アルミニウムイオン <chem>Al^3+</chem> の水溶液は無色透明である。これに水酸化ナトリウム水溶液を少量加えると、水酸化アルミニウムの白色ゼリー状沈澱を生じる。
: <chem>Al^3+ + 3 NaOH -> 3 Na+ + Al(OH)3 v</chem>
しかし、水酸化ナトリウム水溶液を過剰に加えると、沈澱が再溶解して無色の水溶液となり、テトラヒドロキソアルミン酸イオンを生じる。
: <chem>Al(OH)3 + NaOH -> Na+ + [Al(OH)4]^-</chem>
テトラヒドロキソアルミン酸イオン水溶液に塩酸を加えると逆に水酸化アルミニウムの白色沈澱を生じ、過剰に加えれば塩化アルミニウムを生じる。塩化アルミニウムは潮解性のある白色の固体であるが、水に溶けやすく、電離してアルミニウムイオンを生じる。
=== 水酸化アルミニウム ===
アルミニウムイオンを含んだ水溶液に、塩基を加えると、水酸化アルミニウム <chem>Al(OH)3</chem> の白色ゲル状の沈殿が生じる。 水酸化アルミニウムを熱すると、酸化アルミニウム <chem>Al2O3</chem> が生じる。
水酸化アルミニウム <chem>Al(OH)3</chem> は酸とも強塩基とも反応して溶けることのできる、両性水酸化物である。
: <chem>Al(OH)3 + 3HCl -> AlCl3 + 3H2O</chem>
: <chem>Al(OH)3 + NaOH -> Na[Al(OH)4]</chem>
余談だが、アンモニア NH<sub>3</sub>のような弱塩基では水酸化アルミニウムは溶けない。
=== 酸化アルミニウム ===
酸化アルミニウム <chem>Al2O3</chem> は、'''アルミナ'''(alumina)とも呼ばれ、白色の粉末で、水に溶けない。また、融点が高い(融点:2054℃)。 酸化アルミニウム <chem>Al2O3</chem> は、酸にも強塩基にも溶ける両性酸化物であるが、アンモニア水には溶けない。
: <chem>Al2O3 + 6HCl -> 2AlCl3 + 3H2O</chem>
: <chem>Al2O3 + 2NaOH + 3 H2O -> 2Na[Al(OH)4]</chem>
[[ファイル:Cut_Ruby.jpg|代替文=ルビー|サムネイル|150x150ピクセル|ルビー]]
[[ファイル:SaphirSynthetique.jpg|代替文=サファイア|サムネイル|150x150ピクセル|サファイア]]
また、鉱物のルビーやサファイアは酸化アルミニウムの結晶である。酸化アルミニウムの結晶に、ごく微量のクロムが混入すると赤いルビーになり、鉄やチタンが混入すると青いサファイアとなる。{{コラム|人工鉱物|アルミナやクロムまたは鉄などに高温や高圧などを加えて熱することで、ルビーやサファイアを人工的に作ることができる。
人工ダイヤモンドは、その硬さを活用して、工場などの大型の回転カッターなどの切れ味を増すための材料として応用されている。}}
=== 明礬 ===
[[ファイル:Alun.jpg|代替文=ミョウバンの結晶|サムネイル|200x200ピクセル|ミョウバンの結晶]]
硫酸カリウム水溶液と硫酸アルミニウム水溶液とを混合して濃縮して得られる結晶は、硫酸カリウムアルミニウム十二水和物 AlK(SO{{sub|4}}){{sub|2}}・12H{{sub|2}}O の結晶であり、この硫酸カリウムアルミニウム十二水和物を'''{{ruby|明礬|ミョウバン}}'''という。
明礬の結晶は無色透明で正八面体形をしている。 明礬を水に溶かすと、<chem>Al^3+</chem> 、<chem>K^+</chem> 、<chem>SO4^2-</chem> の各イオンに電離する。 <chem>AlK(SO4)2*12H2O -> {Al^3+} + {K^+} + 2 {SO4^{2-}} + 12 H2O</chem>
明礬のように、2種類以上の塩が結合して物質を'''複塩'''という。
明礬を焼くと、無水物である'''焼き明礬'''を得る。ミョウバンは温度による溶解度の変化が激しく、低温の水には少量しか溶けないが、温度を上げるとよく溶けるようになる。
=== 補:両性金属の反応モデル ===
[[#金属と水の反応モデル]]において、水酸化物皮膜を用いて金属と水の反応を説明した。
ここでは、同様にして両性金属元素の反応モデルを考える。
水中にある金属Mは水と反応して表面に水酸化物M(OH){{sub|x}}の皮膜を作る。
ここで、酸HXを加えると水酸化物皮膜と反応して塩が生成される。塩は完全に電離するので金属の表面が露出し、水酸化物皮膜が生成される。また水酸化物が酸と反応して金属の表面が露出し・・・と反応が進行し、最終的に全て塩となって水に溶ける。
また、塩基YOHを加えると、水酸化物イオンと水酸化物が反応して錯イオンを形成する。錯イオンは水に可溶なので金属の表面が露出し(以下略)と反応が進行し、最終的に全て錯イオンとなって水に溶ける。
== スズと鉛 ==
スズ Sn と鉛 Pb は、ともに周期表14族であり、原子は価電子を4個もち、ともに酸化数が+2または+4の化合物をつくり、ともに両性元素であり、ともにイオン化傾向は水より大きい。
=== スズ ===
[[ファイル:Metal_cube_tin.jpg|代替文=スズ|サムネイル|200x200ピクセル|スズ]]
'''{{ruby|錫|スズ}}'''(Sn)は銀白色の固体である。展性や延性に富み、また比較的さびにくい金属である。酸とも塩基とも反応して、水素を発生する。
: <chem>Sn + 2HCl -> SnCl2 + H2</chem>
: <chem>Sn + 2NaOH + 2H2O -> [Sn(OH)4]^2- + 2 Na^+ + H2</chem>
錫は、青銅や'''{{ruby|半田|ハンダ}}'''など合金の材料でもある。
また、錫はメッキに多用される。鉄にスズをメッキしたものは'''ブリキ'''と呼ばれ、缶詰や金属玩具などに用いられる。
{| align="center" style="border:none; text-align:center;"
|[[ファイル:Assorted_bronze_castings.JPG|右|サムネイル|183x183ピクセル|青銅]]
|[[ファイル:HK_Food_Grass_Jelly_Canned_with_Tinplate_a.jpg|右|サムネイル|201x201ピクセル|ブリキの缶詰]]
|}
====化合物====
化合物中での錫の酸化数には +2 と +4 があるが、酸化数+4 のほうが安定である。
錫を塩酸に溶かした溶液から、塩化錫 <chem>SnCl2</chem> が得られる。
: <chem>SnCl2 + 2Cl^- -> SnCl4 + 2e^-</chem>
塩化錫(II)二水和物 <chem>SnCl2*2H2O</chem> は無色の結晶であり、その水溶液には還元作用がある。
=== 鉛 ===
[[ファイル:Metal_cube_lead.jpg|代替文=鉛|サムネイル|200x200ピクセル|鉛]]
'''鉛''' Pb は青白色の軟らかい金属である。鉛とその化合物は有毒である。
鉛は、両性元素であり、硝酸、強塩基の水溶液と反応して溶ける。しかし、硝酸と稀硫酸には、鉛の表面に難溶性の皮膜(塩化鉛 PbCl<sub>2</sub> や、硫酸鉛 PbSO<sub>4</sub> の皮膜は、水に難溶)が発生するため溶けない。
<chem>Pb + 2HNO3 -> Pb(NO3)2 + H2</chem> <chem>Pb + 2NaOH + 2H2O -> [Pb(OH)4]^2- + 2Na^+ + H2</chem>
ただし、塩酸と希硫酸には溶けない。また、アンモニア水のような弱塩基にも溶けない。
酸化鉛PbOは黄色く、古くは、黄色の顔料として用いられた。
鉛は放射線の遮蔽材や鉛蓄電池に使われている。
鉛の化合物は水に溶けにくいものが多いが、硝酸鉛 <chem>Pb(NO3)2</chem> や酢酸鉛 <chem>(CH3COO)2Pb</chem> は水によく溶ける。
====イオン====
鉛(II)イオン <chem>Pb^2+</chem> は様々な沈澱を作る。アンモニア水や少量の水酸化ナトリウム水溶液を加えると、水酸化鉛(II)の白色沈澱を生じる。
: <chem>Pb^2+ + 2OH^- -> Pb(OH)2 v</chem>
ただし、水酸化ナトリウム水溶液を過剰に加えると、テトラヒドロキソ鉛(II)酸イオンを生じて沈澱が再溶解する。
: <chem>Pb(OH)2 + 2NaOH -> 2Na^+ + [Pb(OH)4]2-</chem>
鉛(II)イオン水溶液に塩酸を加えると、塩化鉛(II)の白色沈澱を生じる。
: <chem>Pb^2+ + 2HCl -> 2 H^+ + PbCl2 v</chem>
これを加熱すると、鉛(II)イオンを生じて再溶解する。
: <chem>PbCl2 -> Pb^2+ + 2Cl^-</chem>
鉛(II)イオン水溶液に稀硫酸を加えると、硫酸鉛(II)の白色沈澱を生じる。
: <chem>Pb^2+ + H2SO4 -> 2H^+ + PbSO4</chem>
鉛(II)イオン水溶液に硫化水素を加えると、硫化鉛(II)の黒色沈澱を生じる。
: <chem>Pb^2+ + H2S -> 2H^+ + PbS v</chem>
鉛(II)イオン水溶液にクロム酸カリウム水溶液を加えると、クロム酸鉛(II)の黄色沈澱を生じる。
: <chem>Pb^2+ + CrO4^2- -> PbCrO4 v</chem>
鉛(II)イオン水溶液にヨウ化カリウム水溶液を加えると、ヨウ化鉛(II)の黄色沈澱を生じる。
: <chem>Pb^2+ + 2I^- -> PbI2</chem>
== セラミックス ==
ガラス、セメント、陶磁器などのように、無機物質に加熱処理などしたものを、'''セラミックス'''という。
また、このようなセラミック製品を製造する産業を、セラミック産業という。
「{{ruby|窯|かま}}」の字を用いて{{ruby|窯|よう}}業ともいう他、原材料に珪酸塩化合物を用いることが多いことから、珪酸塩工業ともいう。
=== 共通する性質 ===
セラミックスには多くの種類があるが、多くのセラミックス材料に共通する性質として、
:力を加えても変形しづらい。延性・展性は無い
:絶縁体である
:耐熱性に優れる。しかし、急激な温度変化に対しては弱い
:錆びない
がある。 なお、硬いという長所は、加工が難しいという短所でもある。
=== セメント ===
水を加えると硬化するものを'''セメント'''という。建築材料として用いられる'''ポルトランドセメント'''は、石灰石、粘土(SiO<sub>2</sub>, Al<sub>2</sub>O<sub>3</sub>など)、酸化鉄Fe<sub>2</sub>O<sub>3</sub>などを粉砕して混合したのち、1500 ℃で加熱したものに、少量の石膏(CaSO<sub>4</sub>・2H<sub>2</sub>O)を加えて粉砕したものである。製造のとき、石灰石が高熱で処理され、酸化カルシウム <chem>CaO</chem> になる。
砂利、砂、水をセメントで固めたものを'''コンクリート'''という。また、セメントに砂を混ぜたものは、'''モルタル'''という。
[[ファイル:Liepaja_Karosta_falochron_polnocny_2.jpg|サムネイル|コンクリートで作られた消波ブロック]]
セメントやコンクリートには、カルシウム Ca が含まれている。 石膏は、硬化を遅らせて調節するために添加されている。
コンクリートは圧縮の力には強いが、引っ張りの力には弱いので、引っ張りに強い鉄筋を入れた鉄筋コンクリート(reinforced concrete, RC)として用いる。
コンクリートは、材料中の水酸化カルシウム Ca(OH)<sub>2</sub> により、塩基性を示す。また、この塩基性により、内部の鉄筋が酸から保護される。空気中の酸性物質などにより、コンクリートは次第に中性に中和されていき、強度が低下していく。また、鉄筋を保護していたコンクリートが劣化すると、内部の鉄筋も酸に腐食されやすくなる。
=== ガラス ===
ガラスはケイ酸塩を主成分として、ナトリウム Na、カリウム Kなどを含んでいる。
[[ファイル:Chartres_RosetteNord_121_DSC08241.jpg|サムネイル|503x503ピクセル|ステンドグラスには金属酸化物で着色されたガラスが使用されている。]]
ガラスの結晶構造は不規則であり、一定の融点を持たない。高温にすると水飴のように軟らかくなるが、冷えると固まる。
ガラスの結晶は[[高校化学 結晶#アモルファス|アモルファス]]である。
ガラスは無色透明であるが、金属酸化物を加えることで着色することができる。
ほぼ二酸化ケイ素だけで出来ている高純度のガラスを、'''石英ガラス'''といい、紫外線の透過性が高く、また耐熱性も高いので、光学機器や耐熱ガラスや光ファイバーなどに利用されている。
しかし、石英ガラスは耐熱性が高すぎるため融点が高く、製造時の溶融加工が容易でないので、一般のガラス製品には添加物をくわえて融点を下げたソーダ石灰ガラスなどが用いられている。
窓ガラスなどに用いられる一般のガラスは、ソーダ石灰ガラスであり、<chem>SiO2</chem> のほか、<chem>Na2O</chem> と<chem>CaO</chem> を主成分としている。
このソーダ石灰ガラスの製法は、珪砂(主成分 <chem>SiO2</chem>)に、炭酸ナトリウム <chem>Na2CO3</chem> や石灰石を添加して作る。
[[ファイル:Schott_Duran_glassware.jpg|サムネイル|ホウケイ酸ガラスの実験器具]]
ガラスを高温に熱していったとき、ガラスが軟らかくなり始める軟化点または軟化温度という。ソーダ石灰ガラスの軟化点は630 ℃だが、石英ガラスの軟化点は1650 ℃である。
理科実験などで用いるビーカーやフラスコなど、理科学器具に用いられるガラスの材質には、{{ruby|硼|ほう}}珪酸ガラスが用いられている。 硼珪酸ガラスは、硼砂(主成分 B<sub>2</sub>O<sub>3</sub>)と珪砂からなるガラスである。硼珪酸ガラスは熱膨張率が低いため耐熱性も高く、耐食性も高いことから、理科実験器具用のガラスとして用いられている。
酸化鉛 PbO を含んだ鉛ガラスは密度が大きく、また、X線など放射線の吸収能も大きいため、放射線遮蔽窓として用いられる。 また、鉛ガラスは屈折率が大きいため、光学レンズとしても用いられる。
=== 陶磁器 ===
粘土や砂、岩石の粉などを焼き固めて、陶磁器が作られる。
[[ファイル:Chinese_-_Dish_with_Flowering_Prunus_-_Walters_492365_-_Interior.jpg|サムネイル|清の磁器]]
陶器は約1000℃で焼き固めて作られる。磁器は陶石を原料として、700~900℃で素焼き({{ruby|釉薬|ゆうやく}}を掛けずに焼く)したのち、釉薬を塗り、1100℃~1500℃で本焼きをする。磁器は硬く、白色で吸水性がない。叩くと金属音を発する。原料にガラス成分が少ないと陶器となり、ガラス成分が十分に含まれている場合、磁器となる。
[[ファイル:Covered_Jar,_Imari_ware,_Edo_period,_18th_century,_Chinese_lion_and_phoenix_design_in_underglaze_blue_and_overglaze_enamel_-_Tokyo_National_Museum_-_DSC05337.JPG|サムネイル|伊万里の磁器({{Ruby|色絵獅子鳳凰文有蓋大壺|いろえししほうおうもんゆうがいたいこ}} 東京国立博物館蔵)]]
また、土器は600℃から900℃で素焼きした陶磁器である。
[[ファイル:火焔土器-“Flame-Rimmed”_Cooking_Vessel_(Kaen_doki)_MET_2015_300_258_Burke_website.jpg|サムネイル|縄文時代の土器]]
焼き固めとは、高温にすることで、粒子の表面が部分的に融け、そのあと冷ましていくことで、粒子どうしが接着する。
これらの焼き物の表面には、焼く前に、石英などの粉末からなる釉薬<ref>{{ruby|上薬|うわぐすり}}とも</ref>が表面に塗られる。高温にすると釉薬が融けガラスになる。表面がガラスで保護されることで吸水性がなくなる。
=== アルミナ ===
Al<sub>2</sub>O<sub>3</sub>は硬くて丈夫なので、様々な材料に用いられる。
例えば研磨剤に用いられている。
* 電気工業への応用
アルミナは絶縁性が高いためICチップなどの絶縁材にも用いられる<ref>『セラミック材料』、工業高校教科書、文部科学省</ref>。 熱伝導性も比較的よく、電気回路で生じたジュール熱を外部に放散しやすいので、温度上昇による誤動作を防ぎやすい。
* 医療への応用
また、医療用の人工骨などにアルミナ材料の人工骨を用いても、生体適合性が良いため拒否反応などを起こさない。人体にアルミナは自然には接着しないので、ボルトなどで人工的に人工骨を既存の骨に固定する必要がる。
=== ニューセラミックス ===
* 酸化ジルコニウム
酸化ジルコニウム ZrO<sub>2</sub> およびそれに添加物を加えた材料では、結晶中に自然に生じた欠陥が、まるでシリコン半導体でいう導電性を高めるための添加物と似た役割を生じて、酸化ジルコニウム中の欠陥が酸化ジルコニウムの導電性に影響を与える。その結果、酸化ジルコニウムは、空気中の酸素濃度により導電性が変わる。このため、酸化ジルコニウムは酸素センサとして用いられる。
* 酸化チタン
酸化チタン TiO<sub>2</sub> は、光が当たると、有機物を分解する。この有機物の分解作用のため、光の当たった酸化チタンは、殺菌や消臭などの効果をもつ。酸化チタンそのものは減らずに残り続けるので、触媒的に働くことから、このような光のあたった酸化チタンによる分解作用が、'''光触媒'''と呼ばれる([[高校化学 化学反応とエンタルピー#化学反応と光|こちら]]も参照)。
この分解のエネルギー源は、酸化チタンが紫外線を吸収し、そのエネルギーによって酸化チタンの酸化力が高まり、そして有機物を分解する。
さて太陽電池としても、酸化チタンは利用されている。酸化チタンそのものは紫外線しか吸収しないため効率が低いため、色素を添加して、色素に可視光を吸収をさせて、そのエネルギーを酸化チタンが利用できるように工夫した太陽電池が開発されており、色素増感型太陽電池と言われている。
また、色素と光によってエネルギーを得る仕組みが、植物の光合成の仕組みに似ていることから、生物学的にも興味を持たれている。
この他、酸化チタンは白色であり、人体に無害なので、化粧などの白色顔料としても用いられている。
超親水性という性質もあり、水に濡れても水が水滴にならず全体に広がるので、自動車のフロントガラスなどの添加剤に応用されている。
* 酸化錫 SnO2
酸化錫 SnO2 では、表面に酸素を吸着する性質がある。そして、プロパンガスや一酸化炭素などにさらされると、吸着された酸素が燃焼して、もとの酸化スズに戻る。この吸着と酸素の離脱のさい、導電性が変わるため、プロパンガスなど可燃性ガス濃度を測るセンサーとして用いられる。
* セラミック製コンデンサー
コンデンサーは[[高等学校物理基礎/電気と磁気#静電誘導と誘電分極|誘導分極]]を利用する素子なので、材料として絶縁物質が求められる。もし金属のように電気を通してしまうと、そもそもコンデンサーとしての役割を持たない。
セラミックは絶縁体であるため、コンデンサーとして利用されている。
コンデンサー材料としては、チタン酸バリウム BaTiO<sub>3</sub> などがある。
* 圧電性セラミックス
チタン酸ジルコン酸鉛 PbTiO<sub>3</sub> や チタン酸バリウム BaTiO<sub>3</sub> などに圧力をくわえると、電圧が発生する。これを利用して、圧力センサーなどに用いる。なお、チタン酸バリウムは、コンデンサー材料としても用いられている。このように、圧電の仕組みと、コンデンサーの誘電分極の仕組みとは、関連性がある。
なお、このような圧電性の材料に交流電圧を加えると振動することから、音波や振動の発生源としても用いられる。更に、その[[高校物理 電磁気学#共振回路|共振周波数]]がその振動体に加えられた圧力や荷重などの外部の力によって変化することから、圧力センサーなどにも圧電材料が応用されている。
* 生体セラミックス
ハイドロキシアパタイトは、骨の主成分でもある。そのため、ハイドロキシアパタイトでつくった人工骨は、もともとの骨に接着しやすく、拒否反応なども起こりにくいので、医療用の人工骨などに利用される。なお、拒否反応などが無く、生体に接着しやすい性質を、生体親和性という。
* 炭化チタンTiC、炭化ホウ素B<sub>4</sub>C
炭化物のセラミックスの中には、硬度がかなり高く、また適度に靭性もあり、丈夫なものがある。このため、炭化チタン TiC などは切削工具などに用いられる。炭化ケイ素や窒化ケイ素なども、耐熱性が高い。
自動車エンジンやガスタービンなどに、これらの耐熱セラミックスが用いられる。
=== 半導体およびセラミックの温度-電気特性 ===
半導体やセラミックスには、温度の上昇に伴って、電気抵抗が下がるものがある(金属は温度が上がると電気抵抗が上がる)。
このような特性が実用化されている例として、電子機器での温度変化時の電圧など出力の安定化のための部品、温度センサなどがある。
[[カテゴリ:高等学校化学|てんけいきんそく]]
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高校化学 遷移金属
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{{pathnav|高等学校の学習|高等学校理科|高等学校化学|[[高等学校 化学|化学]]|pagename=遷移金属|frame=1|small=1}}[[File:Eisen 1.jpg|100px|鉄|代替文=鉄|サムネイル]]
== 鉄 ==
=== 性質 ===
'''鉄''' Fe の単体は灰白色で比較的やわらかい。また、合金にして鉄道のレール、流し台や窓枠のステンレス鋼、建築材の鉄骨など、さまざまなものに鉄が用いられている。[[File:Castingiron.jpg|100px|鉄製品の鋳|代替文=鉄製品の鋳造|サムネイル]]
=== 製法 ===
鉄鉱石からの鉄の精錬では、赤鉄鉱 <chem>Fe2O3</chem> や磁鉄鉱 <chem>Fe3O4</chem> などの鉄鉱石を溶鉱炉で溶かし、コークス <chem>C</chem> 、石灰石 <chem>CaCO3</chem> を加えて発生する一酸化炭素 <chem>CO</chem> で還元して、鉄をつくる。
[[ファイル:Hochofenprozess.PNG|サムネイル|477x477ピクセル|高炉プロセスの概略図。Trocken -und Vorwärmzone:乾燥および予熱Reductionzone :還元の領域 。 Kohlungzone :浸炭の領域
Schmelzzone :融解の領域 。 Roheisen :銑鉄schlacke :スラグ
Erz :鉱石 。 koks :コークス 。 zuschläge :追加物Gichtgas :高炉ガス
]]
: <chem>CO</chem> の生成: <chem>C + O2 -> CO2</chem>
: <chem>CO2 + C -> 2CO</chem>
鉄鉱石は段階的に次のように還元される。
<math>\mathrm{ Fe_2O_3 \rightarrow Fe_3O_4 \rightarrow FeO \rightarrow Fe } </math>
それぞれの反応式は
[450℃] <chem>3Fe2O3 + CO -> 2Fe3O4 + CO2</chem>
[800℃] <chem>Fe3O4 + CO -> 3FeO + CO2</chem>
[1200℃] <chem>FeO + CO -> Fe + CO2</chem>
全体での反応は次の反応式で表される。
<chem>Fe2O3 + 3CO -> 2Fe + 3CO2 </chem>
また、不純物を取り除くため'''石灰石''' CaCO<sub>3</sub> を加える。石灰石によりシリカSiO<sub>2</sub>やアルミナAl<sub>2</sub>O<sub>3</sub>などの脈石(岩石を構成する成分)が分離される。 このようにして高炉で得られた鉄を'''{{ruby|銑鉄|せんてつ}}'''という。
なお、高炉の内側の耐火性のレンガにより、高炉は高温に耐えられるようになっている。
石灰石は、鉱石中のケイ酸塩と反応し'''スラグ''' CaSiO<sub>3</sub> を形成する。スラグは密度が銑鉄より軽いため、スラグは銑鉄に浮かぶ。スラグはセメントの原料になるため、スラグは廃棄せず分離して回収する。
また、炭素や石灰石の添加は、融点を下げる役割も有る。凝固点降下と同じ原理である。一般に混合物は融点が下がる。
銑鉄は炭素を質量比4%ほど含む。鉄中の炭素が多いと、粘りが無くなり、衝撃などに対して脆く、硬いが割れやすくなる。 このような鉄は、割れやすいが混合物のため融点が低く、また流動性も良いため鋳造に用いられる。そのため、炭素含有量の多い鉄は{{ruby|鋳鉄|ちゅうてつ}}と呼ばれる。
鋳鉄は割れやすいため、建築材などには不便である。 丈夫な鉄を得るには銑鉄の炭素量を適量に減らす必要があり、転炉で酸素を加えて燃焼させて取り除く。転炉には、酸素吹き込み転炉などを用いる。この酸素吹き込みの酸化熱が、鉄を溶かし続ける熱源に使える。
炭素を0.02%~2%ほど含む鉄を'''鋼'''という。
建築材などの構造材に用いられるのは、十分な硬さと強さをもたせた鋼である。
:
添加物のため融点は下がり、およそ1400℃で融解し、溶鉱炉の底に溶けた鉄がたまる。 なお、1200℃での反応の式について、温度が高くなりすぎると、逆方向に反応が進んでしまいCO<sub>2</sub>によるFeの酸化が起きるので、1200℃程度を保つ必要がある。
鉄の化学的性質として、鉄の単体および銑鉄や鋳鉄は、湿った空気中で酸化されやすく、さびやすい。 さびを防ぐため、合金として、鋼にクロム Cr やニッケル Ni などを混ぜた合金が'''ステンレス鋼'''である。このステンレス鋼は化学的な耐食性が高く、さびにくいため、建築材や台所部材として用いられる。
=== 鉄の化学的性質 ===
純度の高い鉄の単体は、灰白色であり、比較的やわらかい。
鉄には酸化数+2または酸化数+3の化合物がある。
鉄の酸化物には、黒色の酸化鉄(II) FeO 、赤褐色の酸化鉄(III)Fe<sub>2</sub>O<sub>3</sub> 、黒色の四酸化三鉄 Fe<sub>3</sub>O<sub>4</sub> などがある。
鉄は、湿った空気中で酸化されやすい。鉄の赤さびは、 酸化鉄(III) Fe<sub>2</sub>O<sub>3</sub> である。
鉄は、酸に溶けて、水素を生じる。: <chem>Fe + 2HCl -> FeCl2 + H2 v</chem>
希硫酸に加えると、水素を発生して溶け、淡緑色の溶液になる。この水溶液から水を蒸発させて濃縮すると、硫酸鉄(II)七水和物 FeSO<sub>4</sub>・7H<sub>2</sub>O が得られる。
濃硝酸では、表面に皮膜ができる不動態となり、それ以上は反応が進行しない。
=== 強磁性体 ===
鉄 Fe 、ニッケル Ni 、コバルト Co は、単体で磁性を帯びることができる金属である。
一方、銅やアルミニウムは、磁化されない。
鉄、ニッケル、コバルトのように、磁石になることができる物質を'''強磁性体'''という。
銅の特徴として、銅は電気の伝導性が良く、また熱の伝導性も良い。なお、一般に純金属の熱伝導性と電気伝導性は比例する。
=== 鉄イオンの水溶液 ===
鉄イオンは陽イオンであるが2価と3価のものがある。価数により異なる性質をもつ。
=== 鉄(II)イオン ===
鉄(II)イオン Fe{{sup|2+}} は淡緑色をしている。アンモニア水や水酸化ナトリウム水溶液のような塩基と反応して水酸化鉄(II)の緑白色沈殿を生じる。
: <chem>Fe^2+ + 2OH- -> Fe(OH)2 v</chem>
この沈殿は空気中で酸化されて水酸化鉄(Ⅲ)になる。
: <chem>4Fe(OH)2 + O2 + 2H2O -> 4Fe(OH)3</chem>
硫化水素とは塩基性条件下で反応して、硫化鉄(II)の黒色沈殿を生じる。酸性条件下では反応しない。
: <chem>Fe^2+ + S2- -> FeS v</chem>
酸化剤である過酸化水素水を加えると、イオンが酸化されてFe{{sup|3+}}となり、黄褐色の水溶液となる。
* ヘキサシアノ鉄(Ⅲ)酸カリウム水溶液 K{{sub|3}}[Fe(CN){{sub|6}}] をFe{{sup|2+}}水溶液に加えると、'''ターンブル青'''と呼ばれる濃青色の沈殿を生じる。一方、Fe{{sup|3+}}水溶液に加えると暗褐色の水溶液となる。
このヘキサシアノ鉄(Ⅲ)酸カリウム水溶液の反応は、鉄イオンの検出に用いられる。
=== 鉄(Ⅲ)イオン ===
一方、鉄(Ⅲ)イオン Fe{{sup|3+}} は黄褐色をしている。アンモニア水や水酸化ナトリウム水溶液のような塩基と反応して水酸化鉄(Ⅲ)の赤褐色沈殿を生じる。
: <chem>Fe^3+ + 3OH- -> Fe(OH)3 v</chem>
硫化水素とは塩基性条件下で反応して、一度イオンを還元してFe{{sup|2+}}とした後、硫化鉄(II)の黒色沈殿を生じる。酸性条件下ではイオンを還元してFe{{sup|2+}}とするのみで、沈殿を生じない。
: <chem>Fe^2+ + S^2- -> FeS v</chem>
鉄(Ⅲ)イオンの塩として、塩化鉄(Ⅲ)六水和物 FeCl{{sub|3}}・6H{{sub|2}}O がある。黄褐色の固体であるが、潮解性がある。
[[File:Chlorid železitý.JPG|center|200px|塩化鉄(Ⅲ)六水和物の潮解|代替文=塩化鉄(Ⅲ)六水和物の潮解|サムネイル]]
鉄イオンは上記の他にも次のような反応をする。これらは、鉄イオンの検出・分離に有用である。
[[File:Eisen(III)-Ionen und Thiocyanat.JPG|150px|鉄(Ⅲ)イオン水溶液(左)にチオシアン酸カリウム水溶液を加える(右)|代替文=鉄(Ⅲ)イオン水溶液(左)にチオシアン酸カリウム水溶液を加える(右)|サムネイル]]
* チオシアン酸カリウム水溶液 KSCN をFe{{sup|3+}}水溶液に加えると、血赤色の水溶液となる。なお、Fe{{sup|2+}}水溶液とは反応しない。
*: <chem>Fe^3+ + SCN- -> [FeSCN]^{2+}</chem>
* ヘキサシアノ鉄(II)酸カリウム水溶液 K{{sub|4}}[Fe(CN){{sub|6}}] をFe{{sup|3+}}水溶液に加えると、'''ベルリン青'''と呼ばれる濃青色の沈殿を生じる。
これらのチオシアン酸カリウム水溶液 KSCN やヘキサシアノ鉄(Ⅲ)酸カリウム水溶液の反応は、鉄イオンの検出に用いられる。
[[File:Eisen(II),(III).JPG|center|250px|左から、鉄(II)イオン、ターンブルブルー、鉄(Ⅲ)イオン、ベルリンブルー|代替文=左から、鉄(II)イオン、ターンブルブルー、鉄(Ⅲ)イオン、ベルリンブルー|サムネイル]]
なお、ベルリン青とターンブル青は、色調は異なるが、同一の化合物である。
== 銅 ==
[[ファイル:Cu,29.jpg|代替文=|サムネイル|200x200ピクセル|銅]]
'''銅''' Cu は赤色の金属光沢をもつ金属である。展性・延性に富み、電気伝導性・熱伝導性が大きいことから、電線、調理器具、装飾品等、幅広く用いられている。
[[ファイル:StatueOfLiberty01.jpg|代替文=緑青に覆われた自由の女神|サムネイル|220x220ピクセル|緑青に覆われた自由の女神]]
銅は空気中で風雨にさらされると'''{{ruby|緑青|ろくしょう}}'''と呼ばれる青緑色の錆を生じる。たとえば名古屋城の屋根や、アメリカの自由の女神などは緑色をしているが、これは緑青によるものである。
: <chem>2Cu + CO2 + H2O + O2 -> CuCO3*Cu(OH)2</chem>
日本では、昭和後期まで緑青は毒性が強いと考えられていたが、動物実験による検証で、毒性はほとんど無いことが分かった。
=== 製法 ===
銅の鉱産資源は、化合してない単体が産出することもあるが、ほとんどは黄銅鉱 <chem>CuFeS2</chem> などの鉱石として産出する。 銅の鉱石を加熱してニッケルや金などの不純物を含む粗銅を作り、これを電解精錬することにより純度の高い銅(99.97%程度)が得られる。電気精錬では、硫酸銅(II)水溶液を電解液として、陽極には粗銅板を、陰極は純銅版として電気分解をすると、陽極の粗銅が溶解して銅(II)イオンを生じ、陰極には銅が析出する。
: '''陽極''': <chem>Cu -> {Cu^{2+}} + 2e-</chem>
: '''陰極''': <chem>{Cu^{2+}} + 2{e^-} -> Cu</chem>
陽極の下には溶液に溶けなかった金や銀などの不純物がたまる。これを'''陽極泥'''という。
=== 銅の精錬 ===
銅の精錬には、まず、黄銅鉱など銅鉱石を溶鉱炉で溶かす。溶鉱炉にはコークスCおよびケイ砂SiO<sub>2</sub>を加える。
: <math>\mathrm{ 2CuFeS_2 + 4O_2 + 2SiO_2 \rightarrow Cu_2S + FeSiO_3 + 3SO_2 }</math>
硫化銅Cu<sub>2</sub>Sは「かわ」とよばれる。この硫化銅は炉の下層に沈む。FeSiO<sub>3</sub> は上層に分離する。溶鉱で発生したFeSiO3<sub>3</sub>は「からみ」という。なおFeSiO<sub>3</sub> の式をFeOSiO<sub>2</sub>と書く場合もある。
この硫化銅を転炉で空気を吹き込むと、銅が遊離する。
: <math>\mathrm{ Cu_2S + O_2 \rightarrow 2Cu + SO_2 } </math>
こうして転炉で作った銅を'''粗銅'''という。粗銅の純度は98.5%程度である。
=== 化学的な性質 ===
銅は塩素と激しく反応して、塩化銅(II)を生じる。
: <chem>Cu + Cl2 -> CuCl2</chem>
銅はイオン化傾向が小さく、希硫酸や塩酸には溶けない。しかし、硝酸や熱濃硫酸(濃硫酸であり加熱したもの)といった酸化力の強い酸には溶けて、銅(II)イオンを生じる。
: '''希硝酸''': <chem>3Cu + 8HNO3 -> 3Cu(NO3)2 + 4H2O + 2NO ^</chem>
: '''濃硝酸''': <chem>Cu + 4HNO3 -> Cu(NO3)2 + 2H2O + 2NO2 ^</chem>
: '''熱濃硫酸''': <chem>Cu + 2H2SO4 -> CuSO4 + 2H2O + SO2 ^</chem>
=== 水溶液の性質 ===
[[ファイル:CopperSulphate.JPG|代替文=銅(II)イオン水溶液|サムネイル|銅(II)イオン水溶液]]
銅(II)イオン <chem>Cu^{2+}</chem> 水溶液は青色をしている。これに水酸化ナトリウム水溶液、またはアンモニア水を少量加えると、水酸化銅(II) <chem>Cu(OH)2</chem> の青白色沈殿を生じる。
: <chem>{Cu^{2+}} + 2OH^- -> Cu(OH)2 v</chem>
これに、さらにアンモニア水を過剰に加えると、テトラアンミン銅(II)イオン <chem>[Cu(NH3)4]^{2+}</chem> を生じて溶け、深青色の水溶液となる。
: <chem>Cu(OH)2 + 4NH3 -> {[Cu(NH3)4]^{2+}} + 2OH-</chem>
=== 酸化物 ===
水酸化銅(II)を加熱すると、黒色の酸化銅(II) <chem>CuO</chem> を生じる。
: <chem>Cu(OH)2 -> CuO + H2O</chem>
酸化銅(II)は黒色であるが、高温で加熱すると赤色の酸化銅(I) <chem>Cu2O</chem> となる。
{| align="center" style="border:solid #aaffaa 1px; text-align:center;"
|[[ファイル:CopperIIoxide.jpg|192x192ピクセル|酸化銅(II)]]
|[[ファイル:CopperIoxide.jpg|251x251ピクセル|酸化銅(I)]]
|-
|酸化銅(II)
|酸化銅(I)
|}
=== 硫化物 ===
銅(II)イオン水溶液に硫化水素 <chem>H2S</chem> を通じると、硫化銅(II) <chem>CuS</chem> の黒色沈殿を生じる。
: <chem>{Cu^2+} + H2S -> 2 {H+} + {CuS} v</chem>
[[ファイル:Copper_sulfate.jpg|代替文=硫酸銅(II)五水和物|サムネイル|102x102ピクセル|硫酸銅(II)五水和物]]
銅と硫酸の化合物である硫酸銅(II)五水和物 <chem>CuSO4*5H2O</chem> は青色の結晶である。水に溶かすと青色の水溶液となる。これを加熱すると白色の硫酸銅(II)無水物 <chem>CuSO4</chem> の粉末となるが、水を加えると再び青色となる。この反応は水の検出に用いられる。
[[ファイル:Hydrating-copper(II)-sulfate.jpg|代替文=水の検出|中央|サムネイル|250x250ピクセル|水の検出]]
=== 銅の合金 ===
銅は、さまざまな合金の原料である。
: {{ruby|黄|おう}}銅(ブラス)とは、銅と亜鉛との合金である。
: 青銅(ブロンズ)とは、銅とスズとの合金である。
: 白銅とは、銅とニッケルとの合金である。
: 洋銀とは、銅と亜鉛とニッケルの合金である。
{| align="center" style="border:solid #aaffaa 1px; text-align:center;"
|[[ファイル:Trombone_CG_Bach42AG.jpg|200x200ピクセル|黄銅]]
|[[ファイル:Baltesspannarna_Gbg_-_J_P_Molin.jpg|200x200ピクセル|青銅]]
|[[ファイル:100JPY.JPG|300x300ピクセル|白銅]]
|-
|黄銅(金管楽器)
|青銅(ブロンズ像)
|白銅(100円玉)
|}
: 十円硬貨は銅に、亜鉛3%と錫2%を含む青銅である。
: 五円硬貨は黄銅である。五円硬貨の質量は 3.75 g であり、これは一{{Ruby|匁|もんめ}}に等しい。
: 五百円硬貨には洋銀が使われている。
== 銀 ==
銀 '''Ag''' は白色の金属光沢をもつ金属である。すべての金属の中で、熱伝導性と電気伝導性が最も高い。
銀イオンの水溶液は無色であるが、水酸化ナトリウム水溶液、または少量のアンモニア水を加えると、酸化銀(I) <chem>Ag2O</chem> の褐色沈殿を生じる。
: <chem>2Ag+ + 2OH- -> Ag2O v + H2O</chem>
この沈殿に、さらに過剰のアンモニア水を加えると、沈殿が溶けてジアンミン銀(I)イオン <chem>[Ag(NH3)2]+</chem> を生じ、無色の水溶液となる。
: <chem>Ag2O + 4NH3 + H2O -> 2[Ag(NH3)2]+ + 2OH-</chem>
:※ 銅の単元でも似たような反応を説明したが、いくつかの金属元素の水酸化物の沈殿は、過剰のアンモニア水を加えることで[[高校化学 化学結合#配位結合|錯イオン]]を形成することでイオン化して水溶液になる。これを知っていれば、あとはどの金属がどの色の沈殿なのかだけを追加で覚えればいい。
:一方、金属元素の水酸化物の沈殿に、アンモニア以外の単なる水酸化ナトリウムだけを加えても沈殿しない(少なくとも鉄の水酸化物、および銅の水酸化物はそうである)。錯イオン化が、溶ける理由の本質であると考えるのが妥当だろう。
銀イオン水溶液にクロム酸水溶液を加えると、クロム酸銀の赤褐色沈殿を生じる。
: <chem>{2Ag+} + CrO4^{2-} -> Ag2CrO4 v</chem>
銀イオン水溶液に硫化水素を通じると、硫化銀の黒色沈殿を生じる。
: <chem>2Ag+ + H2S -> Ag2S v + 2H+</chem>
* ハロゲン化物イオンとの反応
銀イオン水溶液に塩酸<chem>HCl</chem>を加えると、塩化銀の白色沈殿を生じる。塩酸に限らず、ハロゲン化水素の水溶液を加えると、ハロゲン化銀の沈殿を生じる。
: <chem>Ag+ + Cl- -> AgCl v</chem>(白色)
: <chem>Ag+ + Br- -> AgBr v</chem>(淡黄色)
: <chem>Ag+ + I- -> AgI v</chem>(黄色)
* ハロゲン化銀
フッ化銀 <chem>AgF</chem> は、水に溶けやすい。フッ化銀以外のハロゲン化銀は水に溶けにくい。塩化銀、臭化銀は、アンモニア水、チオ硫酸ナトリウム水溶液、シアン化カリウム水溶液全てに、錯イオンを形成して溶ける。水溶液はいずれも無色。ヨウ化銀は溶解度が非常に小さく、溶けない。(水に対する溶解度 は<math>10^{-8}\, \mathrm{mol/L}</math> 、アンモニア水に対する溶解度も <math>10^{-5} \, \mathrm{mol/L}</math> 程度と非常に小さい。) また、ハロゲン化銀は、光を当てると、分解して、銀が遊離する。この性質を感光性といい、アナログカメラの写真はこの性質を利用している。カメラのフィルムには臭化銀 <chem>AgBr</chem> などが感光剤として含まれており、その感光性から写真を撮影することができる。
ほか、塩化銀の沈殿にチオ硫酸ナトリウム <chem>Na2S2O3</chem> 水溶液を加えると、ビス(チオスルファト)銀(I)酸イオンを生じ、無色の水溶液となる。
: <chem>AgCl + 2Na2S2O3 -> [Ag(S2O3)2]^3- + 3 Na+ + NaCl</chem>
=== イオン化傾向 ===
銀はイオン化傾向の小さい金属であり、塩酸や希硫酸には溶けない。しかし、熱濃硫酸や硝酸といった酸化力の強い酸には溶けて気体を発生する。
: 熱濃硫酸: <chem>2Ag + 2H2SO4 -> Ag2SO4 + 2H2O + SO2 ^</chem>
: 濃硝酸: <chem>Ag + 2HNO3 -> AgNO3 + H2O + NO2 ^</chem>
: 希硝酸: <chem>3Ag + 4HNO3 -> 3AgNO3 + 2H2O + NO ^</chem>
== 金と白金 ==
=== 金 ===
[[ファイル:Achaemenid_coin_daric_420BC_front.jpg|サムネイル|アケメネス朝ペルシアの金貨。紀元前5世紀ごろ]]
'''金''' Au は金属光沢のある黄橙色の金属である。イオン化傾向が低く、反応性が低いことから単体として天然に存在する。純粋な金は柔らかく、展性・延性は全金属中最大である。密度は 19.3 g/cm<sup>3</sup> で、融点は1064 ℃である。金は通常の酸とは反応しないが、濃塩酸と濃硝酸を3:1で混合した'''王水'''(aqua regia)には溶ける。
王水では、塩酸と硝酸が反応し塩化ニトロシル <chem>NOCl</chem> となって金と反応する。
<chem>HNO3 + 3HCl <=> 2HO + NOCl + Cl2</chem>
<chem>Au + NOCl + Cl2 + HCl <=> H[AuCl4] + NO</chem>
{{multiple image|align=center|direction=horizontal|total_width=760|caption_align=center|image1=Dissolution of gold in aqua regia (I).JPG|alt1=|caption1=初期の状態|image2=Dissolution of gold in aqua regia (II).JPG|alt2=|caption2=中間の状態|image3=Dissolution of gold in aqua regia (III).JPG|alt3=|caption3=最終の状態|header_align=center|header='''王水に溶ける金'''}}
=== 白金 ===
[[ファイル:Platin_1.jpg|代替文=白金|左|サムネイル|152x152ピクセル|白金]]
[[ファイル:Sponsored_lantern_at_temple.jpg|代替文=金の利用|サムネイル|150x150ピクセル|金の利用]]
'''白金''' Pt は金属光沢のある白色の金属である。金と同様イオン化傾向が低く、反応性が低い。
金や白金は多く産出しないため、貴金属と呼ばれ、古くから硬貨や装飾品などに用いられてきた。しかしこれらは近年工業的に重要な物質となってきている。たとえば金は精密電子部品の配線に用いられ、また白金は化学反応を速める触媒として用いられる。かつて、メートル原器の材質として用いられていた。
白金も金と同様に王水に溶ける。
{{multiple image|align=center|direction=horizontal|total_width=760|caption_align=center|image1=Plaatina reageerimine kuningveega 01.JPG|alt1=|caption1=王水の中にある[[:en:Wikipedia:Commemorative coins of the Soviet Union#Platinum coins|ソビエトの白金記念硬貨]]|image2=Plaatina reageerimine kuningveega 02.JPG|alt2=|caption2=中間の状態|image3=Plaatina reageerimine kuningveega 03.JPG|alt3=|caption3=四日後の状態|header_align=center|header='''王水に溶ける白金'''}}
== 亜鉛 ==
'''亜鉛''' '''Zn''' は周期表12族の元素であり、原子は価電子を2個もち、2価の陽イオンになりやすい。
亜鉛の単体は、銀白色の金属である。 亜鉛は両性元素であり、酸とも塩基とも反応して水素を発生する。たとえば塩酸と水素を発生しながら反応して塩化亜鉛になる。
: <chem>Zn + 2HCl -> ZnCl2 + H2 ^</chem>
また、強塩基の水酸化ナトリウムと反応し、水素を発生してテトラヒドロキソ亜鉛(II)酸イオンを生じる。
: <chem>Zn + 2NaOH + 2H2O -> 2Na^+ + [Zn(OH)4]^2- + H2 ^</chem>
[[ファイル:Zinc_oxide.jpg|代替文=酸化亜鉛|サムネイル|200x200ピクセル|酸化亜鉛]]
* 用途
たとえば、一般的な乾電池の負極は亜鉛板でできている。 また、鉄板に亜鉛をメッキした板は'''トタン'''と呼ばれ、屋根やバケツなどに用いられる。
==== 亜鉛の化合物とイオン ====
亜鉛に塩酸を加えると先に見たように、水素を発生しながら溶け、塩化亜鉛 <chem>ZnCl2</chem> を生じる。塩化亜鉛は水に溶ける物質で、水溶液中では亜鉛イオン <chem>Zn^2+</chem> として存在している。 この亜鉛イオン水溶液に水酸化ナトリウム水溶液またはアンモニア水を少量加えると、水酸化亜鉛 <chem>Zn(OH)2</chem> の白色ゼリー状沈殿を生じる。
: <chem>Zn^2+ + 2OH^- -> Zn(OH)2 v</chem>
しかし、これに水酸化ナトリウム水溶液またはアンモニア水を過剰量加えると、沈殿は溶けて無色透明の水溶液となる。水酸化ナトリウム水溶液ではテトラヒドロキソ亜鉛(II)酸イオン <chem>[Zn(OH)4]^2-</chem> を生じ、アンモニア水ではテトラアンミン亜鉛(II)イオン <chem>[Zn(NH3)4]^2+</chem> を生じる。
: <chem>Zn(OH)2 + 2NaOH -> 2Na^+ + [Zn(OH)4]^2-</chem>
: <chem>Zn(OH)2 + 4NH3 -> [Zn(NH3)4]^2+ + 2OH^-</chem>
アンモニア水を過剰に加えて弱塩基性とした亜鉛イオン水溶液に硫化水素を通じると、硫化亜鉛 <chem>ZnS</chem> の白色沈殿を生じる。
: <chem>Zn^2+ + S^2- -> ZnS v</chem>
=== 酸化亜鉛 ===
酸化亜鉛 <chem>ZnO</chem> は白色の粉末で、水に溶けにくく、白色絵の具の顔料として用いられる。 <chem>ZnO</chem> は両性酸化物であり、塩酸にも水酸化ナトリウムにも溶ける。
: <chem>ZnO + 2HCl -> ZnCl2 + H2O</chem>
: <chem>ZnO + 2NaOH + H2O -> Na2[Zn(OH)4]</chem>
酸化亜鉛は亜鉛華(あえんか)とも呼ばれ、白色顔料などに用いられる。
=== 硫化亜鉛 ===
亜鉛イオン <chem>Zn^2+</chem> を含む水溶液を中性または塩基性にして、硫化水素を通じると、硫化亜鉛 <chem>ZnS</chem> の白色沈殿が生じる。
: <chem>Zn^2+ + S^2- -> ZnS v</chem>
硫化亜鉛は夜光塗料などに用いられる。
== 水銀とカドミウム ==
=== カドミウム ===
'''カドミウム''' Cd はニッケルとともにニッケル-カドミウム電池として用いられる。
カドミウムイオンは硫化物イオンと結合して黄色の沈殿である硫化カドミウムを生じる。
: <chem>Cd^2+ + S^2- -> CdS v</chem>
硫化カドミウムは黄色絵の具の顔料として用いられる。
[[ファイル:Cadmium_sulfide.jpg|サムネイル|硫化カドミウム]]
=== 水銀 ===
[[ファイル:Hg_Mercury.jpg|右|サムネイル|200x200ピクセル|水銀]]
'''水銀''' Hg は常温常圧で液体として存在する唯一の単体金属<ref>単体金属では、ガリウムの融点が 29.76 ℃ であり、室温でも液体になり得る。常温や室温という語には明確な定義がないものの、一般的には29℃は常温と呼ぶにはやや高いだろう。なお、合金ではガリンスタン(ガリウム、インジウム、錫の合金)が常温で液体となる。</ref>である。水銀は他の金属と合金をつくりやすく、水銀の合金を'''アマルガム'''という。
水銀イオンは硫化物イオンと結合して黒色の沈殿を生じる。
: <chem>Hg^2+ + S^2- -> HgS v</chem>
水銀は、天然には辰砂(しんしゃ、主成分:HgS)などとして産出する。
[[ファイル:Cinnabar on Dolomite.jpg|サムネイル|辰砂。別名賢者の石とも呼ばれていた。]]
水銀は、蛍光灯にも用いられる。水銀は他の液体と比べて密度が高いため、圧力計に用いられていた。また、温度計にも用いられていた。現在では、水俣条約により水銀灯や水銀温度計、水銀圧力計の製造は国際的に禁止されている。
カドミウムや水銀などの重金属類は、工業でよく用いられるが、しばしば公害を引き起こした。たとえば水銀の化合物は水俣病の原因物質であり、カドミウムはイタイイタイ病の原因物質である。
{{-}}
== クロム・マンガン・タングステン ==
=== クロム ===
[[ファイル:Chrom.PNG|200x200ピクセル|クロム|代替文=クロム|サムネイル]]
'''クロム''' Cr は空気中でも水中でも常温で安定な金属である。クロムは、銀白色の光沢を持つ。
化合物中での酸化数は、おもに+6または+3を取る。
クロムは、空気中では表面に酸化物の緻密な皮膜ができるので(不動態)、それ以上は酸化されず、安定である。
鉄の表面に施すクロムめっきは、この不動態の性質を利用して、さびを防ぐものである。
クロムは、ステンレス鋼の材料でもある。
==== イオン ====
酸化数が+6のクロムの多原子イオンの主なものに、水溶液の黄色いクロム酸イオン <chem>CrO4^2-</chem> がある。この水溶液は黄色であるが、酸を加えて溶液を酸性にすると、同じく酸化数が+6の二クロム酸イオン <chem>Cr2O7^2-</chem> となり、橙色の水溶液となる。
逆に、橙色の二クロム酸イオン水溶液に塩基を加えて溶液を塩基性にすると、クロム酸イオンの黄色水溶液となる。
{| align="center"
|[[ファイル:Kaliumchromat.jpg|315x315ピクセル|クロム酸カリウム水溶液]]
|
|[[ファイル:Kaliumdichromat.jpg|318x318ピクセル|二クロム酸カリウム水溶液]]
|- align="center"
|K{{sub|2}}CrO{{sub|4}}(黄色)<br>クロム酸カリウム水溶液
|
|K{{sub|2}}Cr{{sub|2}}O{{sub|7}}(橙色)<br>二クロム酸カリウム水溶液
|}
クロム酸イオンは、さまざまな金属イオンと反応して沈殿となる。たとえば、クロム酸イオン水溶液に銀イオンを加えると、クロム酸銀の赤褐色沈殿が生成する。
: <chem>CrO4^2- + 2 Ag^+ -> Ag2CrO4 v</chem>
また、クロム酸イオン水溶液に鉛(II)イオンやバリウムイオンを加えると、ともに黄色の沈殿を生じる。
: <chem>CrO4^2- + Pb^2+ -> PbCrO4 v</chem>(クロム酸鉛(II))
: <chem>CrO4^{2-} {+} Ba^2+ -> BaCrO4 v</chem>(クロム酸バリウム)
* 酸化作用
希硫酸を加えて酸性とした赤橙色の二クロム酸イオン水溶液は強い酸化剤であり、自身は還元されてクロム(Ⅲ)イオン <chem>Cr^3+</chem> の緑色水溶液となる。
: <chem>Cr2O7^2- + 14H^+ + 6e^- -> 2Cr^3+ + 7H2O</chem>
=== マンガン ===
[[ファイル:Mangan_1.jpg|右|100x100ピクセル|マンガン]]
'''マンガン''' Mn は銀白色の金属である。空気中で簡単に酸化されるので、単体では用いない。合金の材料として、マンガンは利用されることがある。 イオン化傾向が鉄より大きく、また、酸にマンガンは溶ける。
==== 過マンガン酸カリウム ====
過マンガン酸カリウム <chem>KMnO4</chem> は酸化剤として有名で、過マンガン酸カリウム水溶液は赤紫色であるが、自身は還元されてマンガン(II)イオン <chem>Mn2+</chem> の淡桃色水溶液となる。
: <chem>MnO4- + 8 H+ + 5 e- -> Mn^2+ + 4H2O</chem>
この<chem>Mn2+</chem>水溶液にアンモニア水を加えて塩基性とした後、硫化水素を通じると、硫化マンガン(II)の淡桃色沈殿を生じる。
: <chem>Mn^2+ + S^2- -> MnS v</chem>
二酸化マンガンから過マンガン酸イオン水溶液を得ることができる。二酸化マンガンに水酸化カリウム水溶液を加えて加熱すると、緑色のマンガン酸イオン水溶液 <chem>MnO4^2-</chem> となる。これに希硫酸を加えると過マンガン酸イオンの赤紫色水溶液となる。
==== 二酸化マンガン ====
二酸化マンガン <chem>MnO2</chem> は、黒色の粉末をしている。 過酸化水素水の分解を早める触媒として作用する。
: <chem>2H2O2 -> 2H2O + O2</chem> (触媒:<chem>MnO2</chem>)
また、酸化剤でもあり、たとえば塩酸を酸化して塩素とする。
: <chem>4HCl + MnO2 -> MnCl2 + 2H2O + Cl2</chem>
二酸化マンガンは、日常的にもマンガン乾電池で原料の一つとして用いられている。
=== タングステン ===
タングステン W は融点が3422 ℃ときわめて高く、耐熱性が大きいので、電球のフィラメントなどに用いられる。 金属の単体では、タングステンが最も融点が高い。
また、炭化タングステン WC は、かなり硬い。
== 合金 ==
[[ファイル:Sauce_boat.jpg|右|サムネイル|ステンレス鋼のソースボート(肉汁ボート)]]
[[ファイル:Dewoitine_D.333_Cassiopée_F-ANQB_Algérie_1938.jpg|サムネイル|200x200ピクセル|ジュラルミンが航空機に用いられた例。画像は旅客機 D.333 。フランス国 Dewoitine社。]]
[[ファイル:Jug_Egypt_Louvre_OA7436.jpg|サムネイル|250x250ピクセル|真鍮(黄銅)の水差し。この画像の水差しは14世紀のエジプトで用いられていた。]]
2種類以上の金属を溶融して混合したあとに凝固させたものを'''合金'''という。
一般に合金では、元の金属単体よりも硬さが増す。また一般に合金の電気抵抗は、もとの金属よりも合金の電気抵抗が上がる。これは合金元素によって結晶配列が乱れるからである。
主要な合金の例を示す。
* 黄銅
: 銅60%~70%と亜鉛10%~40%の合金。
: 銅が60%程度で亜鉛が40%程度の黄銅を六四黄銅という。銅が70%程度で、亜鉛が30%程度の黄銅を七三黄銅という。
: 合金化により硬くなり、強度が高まる。色は黄色い。[[w:ブラスバンド]]のブラスとは黄銅のことである。真鍮ともいう。
* 青銅
: 銅とスズの合金。
: ブロンズともいう。亜鉛などが加えられる場合もある。銅とスズのみを主成分とする青銅を、すず青銅という。
: 合金化により硬くなり、強度が高まる。鏡として用いられる場合もある(青銅鏡)。
* 白銅
: 銅80%とニッケル20%の合金。
: 組成中のNiの増加とともに、色が銅の赤色からニッケルの白色に変わっていく。
: 腐食しづらく耐食性が良い。日本の貨幣の50円硬貨や100円硬貨の材料。
* 洋銀
: 組成:Cuに,Ni=5%~30%,Zn=5%~30%
: ニッケルシルバともいう。
* ステンレス鋼
: 組成:Fe=70%,Cr=20%,Ni=10%
: 鉄にクロムとニッケルなどを混ぜたもの。錆びにくい。
* ジュラルミン
: 組成:Al 95 %,Cu,Mg,Mn
: 軽くて強度が大きいので航空機材料や自動車材料などに用いられる。
* はんだ
: 鉛とスズの合金。融点が低い。はんだは電気回路部品の接合などに用いられたが、鉛の有害性が指摘され、最近では無鉛はんだが用いられる。
* ニクロム
: ニッケル60%~80%とクロム20%の合金。ニッケルとクロムだからニクロムという。
: 電気抵抗が大きい。電気抵抗材料に用いられるニクロム線の材料である。
=== ブリキとトタン ===
[[ファイル:Fe_corrosion.svg|サムネイル]]
酸素や水と接触した金属は表面で酸化還元反応を起こし、金属がイオン化し脱落する。この反応を腐食という。イオン化した金属が酸化物や水酸化物となって表面に堆積したものを錆という。
鋼板にスズをメッキしたものを'''ブリキ'''、亜鉛をメッキしたものを'''トタン'''という。イオン化傾向が <chem>Zn > Fe > Sn</chem> のため、ブリキはスズが鉄の腐食を防いでいる。しかし、メッキが傷つき鉄が露出した箇所に水がつくと、イオン傾向の大きい鉄がスズよりもイオン化しやすいため、鉄が腐食しやすい。トタンは、亜鉛が鉄より腐食しやすいが、鉄が露出した箇所があってもイオン化傾向の大きい亜鉛が鉄よりイオン化しやすいため、内部の鉄の腐食が防がれる。
つまり、傷がなく鉄が露出していない場合はブリキの方が錆びにくいが、傷がついた場合はトタンの方が錆びにくい。このため、ブリキは缶詰や金属玩具などに用いられ、トタンは屋根やバケツなどに用いられる。
[[ファイル:Tin toys.JPG|thumb|180px|right|ブリキの玩具]]
[[ファイル:Hückeswagen - Kölner Straße - Tennishalle 02 ies.jpg|サムネイル|トタンの屋根]]
=== その他の合金 ===
'''水素吸蔵合金'''
ランタン-ニッケル合金やチタン-鉄合金などは、常温で合金の結晶間に水素を吸蔵する性質を持つ。加熱などによって水素を放出することができる。これらの合金は、自身の体積の1000倍以上の水素を吸蔵できるものもある。
ランタン-ニッケル合金を使用したニッケル水素電池はハイブリッド自動車で使用されている。今後は燃料電池自動車の燃料タンクとしても期待され開発が進められている。チタン-鉄合金系の水素吸蔵合金も存在する。
'''形状記憶合金'''
チタンとニッケルの合金には、特定の高温で成形した形状を記憶し、常温で変形しても加熱することで元の形に戻る特性を持つものがある。これを形状記憶合金という。眼鏡フレームなどで利用されている。
'''超伝導合金'''
ある物質は、非常に低温(絶対零度に近い温度)で電気抵抗がゼロになる。この現象を利用した超伝導合金として、スズとニオブの合金が代表例である。超伝導合金は、強い電磁石を作る際や医療用MRI(磁力を利用して人体の断層写真を撮影する装置)などに使用されている。
スズ-ニオブ系のほかにも、さまざまな超伝導合金が知られている。
'''アモルファス合金'''
アモルファス合金は、結晶構造を持たない非晶質の合金である。製法としては、高温状態で柔らかくなった金属を急冷することで、原子が通常の結晶構造での位置に配置される前に固化する。このため、結晶構造を持たず、異なる特性を示すことが多い。
アモルファス合金は、磁気記録用ヘッドなどに利用されており、鉄系のアモルファス合金は耐腐食性が必要な環境で使われることがある。ただし、高温で加工すると結晶化してしまうため、高温での加工ができないという短所がある。
[[カテゴリ:高等学校化学|せんいきんそく]]
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高校化学 脂肪族炭化水素
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{|border=1 cellspacing=0 align=right text-align=center style="text-align:center"
|- style="background:silver"
!分子式!!名称!!構造式
|-
|CH{{sub|4}}||'''メタン'''||[[File:Methan Lewis.svg|70px|メタン]]
|-
|C{{sub|2}}H{{sub|6}}||'''エタン'''||[[File:Ethan_Lewis.svg|100px|エタン]]
|-
|C{{sub|3}}H{{sub|8}}||'''プロパン'''||[[File:Propan_Lewis.svg|150px|プロパン]]
|-
|C{{sub|4}}H{{sub|10}}||'''ブタン'''||[[File:Butan_Lewis.svg|150px|ブタン]]
|-
|C{{sub|5}}H{{sub|12}}||'''ペンタン'''||[[File:Pentane.svg|150px|ペンタン]]
|-
|C{{sub|6}}H{{sub|14}}||'''ヘキサン'''||[[File:Hexane_displayed.svg|160px|ヘキサン]]
|}
脂肪族炭化水素の内、鎖式炭化水素ですべて単結合な化合物を'''アルカン、'''二重結合が一個だけある化合物を'''アルケン'''、三重結合が一個だけある化合物を'''アルキン'''という。
環式炭化水素ですべて単結合な化合物を'''シクロアルカン'''という。
[[File:Cyclopentane.svg|thumb|left|シクロペンタン]]
たとえば図のシクロペンタンは、シクロアルカンの一種である。
{{-}}
== アルカン ==
アルカンは分子式がC{{sub|n}}H{{sub|2n+2}}と書け、不飽和度0である。右におもなアルカンの分子式と名称、構造式を示す。
=== アルカンが含まれる物質 ===
天然ガスの主成分は、メタン CH<sub>4</sub> である。また、都市ガス(ガス導管を通じて供給される天然ガス)の主成分もメタンである。液化石油ガス(プロパンガスともいう。主にガスボンベによって供給される。)の主成分はプロパンやブタンなどのアルカンである。
また、ガソリンには、さまざまなアルカンなどの有機化合物が含まれている。
=== アルカンの立体構造 ===
'''メタン'''は分子式CH{{sub|4}}であり、四面体構造をしている。
炭素原子間の単結合と三重結合は自由に回転できるが、二重結合は回転することができない<ref>これは量子力学的な性質によるものである。</ref>。
したがって、アルカンの炭素間は自由に回転できる。
プロパンの炭素は折れ線状に並んでいる。
=== アルカンの性質 ===
{|border=1 cellspacing=0 align=right text-align=center style="text-align:center"
|- style="background:silver"
!分子式!!名称!!沸点
|-
|CH{{sub|4}}||'''メタン'''|| -161 ℃
|-
|C{{sub|2}}H{{sub|6}}||'''エタン'''|| -89 ℃
|-
|C{{sub|3}}H{{sub|8}}||'''プロパン'''|| -42 ℃
|-
|C{{sub|4}}H{{sub|10}}||'''ブタン'''|| -1 ℃
|-
|C{{sub|5}}H{{sub|12}}||'''ペンタン'''||36 ℃
|-
|C{{sub|6}}H{{sub|14}}||'''ヘキサン'''||69 ℃
|}
直鎖のアルカンは、炭素数が増えるにつれてファンデルワールス力が強くなるため沸点・融点が次第に高くなる。たとえば常温では、炭素数1のメタンから炭素数4のブタンまでは気体であるが、炭素数5のペンタンや炭素数6のヘキサンは液体である<ref>プロパンを主成分とするプロパンガスは常温で気体だが、8気圧程度にに加圧することで常温でも液体となる。一方、メタンを主成分とする天然ガスは、常温で加圧しても液化しない。</ref>。
また、アルカンの炭素数が4以上になると、そのアルカンには構造異性体が存在する。炭素原子数が多くなると異性体の数は爆発的に増加し、たとえば炭素数4のブタンは他に1種類のみ異性体を持つが、炭素数10のデカンは他に74種の異性体を持つ。さらに、炭素数20のエイコサンになると、他に36万種を超える異性体が存在する。
=== アルカンの性質 ===
* 水に溶けにくいが、有機溶媒(ジエチルエーテルやトルエンなど)によく溶ける。
* ススをほとんど出さずに燃えて、二酸化炭素と水を生じる。
* 固体や液体のアルカンは、水より密度が小さく、水に浮く。
=== 置換反応 ===
常温でアルカンは安定であり、薬品と化学反応を起こしにくい。しかし、光を当てると(おもに紫外線による作用で)、アルカンがハロゲン元素と反応して、アルカンの水素原子がハロゲン原子と置き換わってハロゲン化水素を生じる反応が起こる。これを'''置換反応'''という。
==== メタン ====
[[File:Methane-2D-stereo.svg|thumb|100px|メタン]]
'''メタン'''は分子式CH{{sub|4}}の、もっとも炭素数が少ない基本的なアルカンである。常温では無色の気体であり、また無臭である<ref>都市ガスはメタンが主成分であり、ガス漏れを気づきやすくするために、臭いのある気体が混ぜてある。</ref>。
実験室では、酢酸ナトリウムと水酸化ナトリウムを混合して加熱することで得られる。なお、この実験では水上置換法で捕集する。
: <chem>CH3COONa + NaOH -> Na2CO3 + CH4 ^ </chem>
メタンは光を当てるとハロゲンと置換反応を起こす。たとえば、メタンに光を当てながら塩素と反応させると、次のように1つずつ水素が塩素に置き換わる。
:<chem>CH4 + Cl2 -> HCl + CH3Cl</chem>(クロロメタン、塩化メチル)
:<chem>CH3Cl + Cl2 -> HCl + CH2Cl2</chem>(ジクロロメタン、塩化メチレン)
:<chem>CH2Cl2 + Cl2 -> HCl + CHCl3</chem> (トリクロロメタン、クロロホルム)
:<chem>CHCl3 + Cl2 -> HCl + CCl4</chem> (テトラクロロメタン、四塩化炭素)
塩化メチレンは沸点が40℃と分溜しやすいので、有機溶媒としてよく用いられる。サスペンス系の作品において、「クロロホルムを染み込ませた布を口にあてがい、対象を眠らせる」という演出が用いられるが、クロロホルムにそんな作用は存在しない。クロロホルムは粘膜を強く刺激するため、使われた対象は眠るどころか激痛で暴れ回ってしまう。間違っても人に使用しないようにしよう。四塩化炭素はかつて有機溶媒として広く用いられていたが、高い発癌性を持つと判明したため現在は使われていない。
* メタンハイドレート
[[Image:Burning hydrate inlay US Office Naval Research.jpg|right|frame| メタンと水に分離し燃えるメタンハイドレート。左上にクラスレートの構造を示す。 (University of Göttingen, GZG. Abt. Kristallographie)<br />出典: アメリカ地質調査所。]]
近年、日本近海の海底など、世界のいくつかの海底の多くの場所の地層中で、氷の結晶中にメタンが存在している事が明らかになった。この海底のメタンの含まれた氷を'''メタンハイドレート'''という。採掘されたメタンハイドレートの外見はドライアイスに似ている。採掘されたメタンハイドレートに点火すると、メタンが燃え、また、最終的に氷が熱で解けて水になる。
将来のエネルギー資源として、メタンハイドレートが注目されているが、現状では実用化されていない。
== アルケン ==
{| style="text-align:center" cellspacing="0" border="1" align="right"
!分子式
!名称
!構造式
!沸点
|-
|C{{sub|}}H{{sub|2}}=C{{sub|}}H{{sub|2}}
|エチレン
(エテン)
|[[ファイル:Ethylene.svg|150x150ピクセル|エチレン]]
| -104 ℃
|-
|C{{sub|}}H{{sub|2}}=CHC{{sub|}}H{{sub|3}}
|プロピレン
(プロペン)
|[[ファイル:Propene-2D-flat.png|150x150ピクセル|プロピレン]]
| -47 ℃
|-
|C{{sub|}}H{{sub|2}}=CHC{{sub|2}}H{{sub|5}}
|1-ブテン
|[[ファイル:1-Butene_Formula_V.1.svg|150x150ピクセル|プロピレン]]
| -6 ℃
|}
アルケンは分子式がC{{sub|n}}H{{sub|2n}}と書け、不飽和度1である。アルケンは不飽和炭化水素である。右におもなアルカンの分子式と名称、構造式を示す。
'''エチレン'''の水素原子1個をメチル基 CH<sub>3</sub>- に置き換えると、'''プロピレン'''('''プロペン''')になる。
エチレン(ethylene)はエテン(ethene)の慣用名である。IUPAC命名法ではエテンであるが、慣用名のエチレンの使用も認められている。
=== シス-トランス異性体 ===
アルケンは二重結合が含まれているが、二重結合の部分は回転ができないため、そのため、いくつかのアルケンでは、異性体が存在する。このような異性体を、'''シス-トランス異性体'''(cis-trans isomers、'''幾何異性体''')という。
たとえば 2-ブテン では、シス形(cis form)とトランス形(trans form)という2種類の異性体が存在する。
----
* シス形
[[ファイル:Cis-2-Buten.svg|200x200ピクセル]] [[ファイル:Cis-but-2-ene-3D-balls.png|200x200ピクセル]]
cis-2-ブテン
融点:-139 ℃
沸点:4 ℃
----
* トランス形
[[ファイル:Trans-2-Buten.svg|200x200ピクセル]] [[ファイル:Trans-but-2-ene-3D-balls.png|200x200ピクセル]]
trans-2-ブテン
融点:-106 ℃
沸点:1 ℃
=== 付加反応 ===
二重結合や三重結合の一つが切れて、そこに原子や原子団が結合する反応を'''付加反応'''という。アルケンは二重結合を含むため付加反応を起こしやすい。
たとえばエチレンは、臭素と反応すると、付加反応により、1,2-ジブロモエタンになる。
: [[ファイル:Bromine-adds-to-ethene.png|左|サムネイル|500x500ピクセル|エチレンの臭素付加反応の化学反応式]]
また、エチレンは、触媒として白金やニッケルを用いいて、水素を付加させるとエタンが生成する。
: [[ファイル:エチレンの水素付加.svg|500x500ピクセル|エチレンの水素付加]]
赤褐色の臭素水に不飽和結合を持つ分子を通すと臭素が付加し、臭素水の赤褐色が消える。この反応は未知の分子が不飽和結合を持っているか検出する反応に利用される。
: [[ファイル:Ear.png|左|サムネイル|750x750ピクセル|付加反応の例]]
{{-}}
*補:付加反応の仕組み
二重結合や三重結合は、実は異なる2つの結合が同時に起こることで生じる。片方は'''σ結合'''(シグマ けつごう)という強い結合で、もう片方は配位結合である。三重結合の場合は配位結合が二重に起こっている。<br>付加反応においては、この二種の結合のうち弱い方である配位結合が切れることによって付加物が付加する余地が生まれている。
==== マルコフニコフ則 ====
[[ファイル:Markovnikov's_rule_illust_for_beginner_student_in_japanese.svg|左|サムネイル|700x700ピクセル|マルコフニコフ則]]
{{-}} アルケンの二重結合に、HX{{efn|HClやH<sub>2</sub>O (H-OH) など}}が付加するとき、二種類の生成物が考えられるが、このとき、二重結合している炭素原子に結合しているHが多いほうに、HXのHが付加し、少ない方にXが付加した化合物が多く生成する。これを'''マルコフニコフ則'''(Markovnikov rule)という。
例えば、プロペンと塩化水素の付加反応では、生成物のうち2クロロプロパンが99%を占める。
=== 酸化 ===
また、不飽和炭化水素は酸化剤と反応して酸化される。赤紫色の過マンガン酸カリウム水溶液にたとえばエチレンを通じると、エチレンは酸化され、二酸化マンガンの黒色沈殿を生じるとともに赤紫色が消える。このような反応は、メタンをはじめアルカンでは起こらない。
=== その他 ===
その他、アルケンは次のような有機化合物一般の性質をもつ。
* 水に溶けにくい。
* エーテルなどの有機溶媒によく溶ける。
* ススを少し出しながら燃えて、二酸化炭素と水を生じる。
==== エチレン ====
[[ファイル:Ethylene_3D.png|サムネイル|エチレン]]
'''エチレン'''(ehtylene)は分子式C{{sub|2}}H{{sub|4}}の、もっとも炭素数が少ない基本的なアルケンである。常温では無色の気体である。二重結合で結びついている炭素原子と、それに直接結合した原子はすべて同一平面上にあるため、右図のようにエチレン分子は全ての原子が同一平面上にある。
エチレンは、実験室ではエタノールの分子内脱水により得られる。エタノールに濃硫酸を加え、160−170℃程度で加熱すると、エタノールの分子内で脱水反応がおこり、エチレンが生成する。
: [[ファイル:Ethanol_to_ethylene.svg|左|サムネイル|500x500ピクセル|エチレンの生成の化学反応式]]
{{-}}
また、エチレンは二重結合を含むため、赤褐色の臭素水に通じると、付加反応により臭素の色が消え無色になる。
: [[ファイル:Bromine-adds-to-ethene.png|左|サムネイル|500x500ピクセル|エチレンの臭素付加反応の化学反応式]]
{{-}} さらに、赤紫色の過マンガン酸カリウム水溶液に通じると、エチレンは酸化され、黒色の二酸化マンガンの沈殿が生じる。
工業的には、ナフサの熱分解でエチレンが得られる。エチレンは様々な薬品の合成原料であり、工業的に重要な物質である。
エチレンは、植物ホルモンでもある。
== アルキン ==
{| style="text-align:center" cellspacing="0" border="1" align="right"
!分子式
!名称
!構造式
!沸点
|-
|C{{sub|2}}H{{sub|2}}
|'''アセチレン'''
|[[ファイル:Acetylene-2D.svg|150x150ピクセル|アセチレン]]
| -74 ℃
|-
|C{{sub|3}}H{{sub|4}}
|'''プロピン'''
|[[ファイル:Propyne-2D-flat-1.svg|150x150ピクセル|プロピン]]
| -23 ℃
|}
右図のアセチレンのように、炭素間の結合に三重結合を1つ含み分子式が C{{sub|n}}H{{sub|2n-2}} と書ける炭化水素を'''アルキン'''(alkyne)という。右に、おもなアルカンの分子式と名称、構造式を示す。
アセチレンの立体構造は、すべての原子が直線上にならぶ配置になっている。三重結合の部分は、回転できない。
=== アルキンの性質 ===
アルキンは三重結合のため、'''付加反応'''を起こしやすく、酸化剤と反応して酸化される。
また、アルキンは次のような有機化合物一般の性質をもつ。
* 水に溶けにくい。
* エーテルなどの有機溶媒によく溶ける。
* ススを多く出しながら燃えて、二酸化炭素と水を生じる。
燃焼時のススの多さは不飽和度が高いほど多くなり、その時の炎も明るくなる。
==== アセチレン ====
[[ファイル:Acetylene-2D.svg|サムネイル|アセチレンの構造式]]
[[ファイル:Acetylene-3D-balls.png|サムネイル|アセチレン分子の形状]]
'''アセチレン'''は分子式C{{sub|2}}H{{sub|2}}の、もっとも炭素数が少ない基本的なアルキンである。構造式は、 '''HC≡CH''' である。常温ではアセチレンは無色の気体である。三重結合で結びついている炭素原子と、それに直接結合した原子はすべて同一直線上にあるため、右図のようにエチレン分子は全ての原子が一直線上にある。
アセチレンは、実験室では炭化カルシウムCaC{{sub|2}}('''カルシウムカーバイド''')を水と反応させることにより得られる{{efn|CaC<sub>2</sub>はCa<sup>2+</sup>とC<sup>-</sup>≡C<sup>-</sup>のイオン結合からなる物質のため、OH<sup>-</sup>2個とCa<sup>2+</sup>が結合し、余ったH<sup>+</sup>2個がC<sup>-</sup>≡C<sup>-</sup>と結合する}}。炭化カルシウムを細かな穴をあけたアルミ箔で包み、水を入れた水槽に入れると、アセチレンが発生する。アセチレンは水に溶けないため、水上置換法により捕集する。
[[ファイル:Calcium carbide and water.webm|サムネイル|250x250ピクセル|炭化カルシウムと水を反応させる様子]]
: <chem>CaC2 + 2H2O -> Ca(OH)2 + C2H2 ^</chem>
なお、アセチレンの工業的な製法では、石油などに含まれるアルカンを熱分解(クラッキングという)して、アセチレンをつくる。
[[ファイル:Beveridge_brothers_rosebud_0.jpg|225x225ピクセル|酸素アセチレン炎|代替文=酸素アセチレン炎|サムネイル]]
アセチレンは、溶接用のバーナーの炎に用いられる。アセチレンに酸素を混ぜて点火すると、3000 ℃を超える高温の炎が得られる。そのため、金属の溶接や切断の際に酸素アセチレン炎が用いられる。
なお、炭化カルシウム <chem>CaC2</chem> のことをカーバイドともいう。しかし、炭化カルシウム以外の物質でも、金属の炭化物のこともカーバイドというので、暗記の必要性は低い。
=== アセチレンの反応 ===
==== 付加反応 ====
三重結合は付加反応を受けやすい。そのため、アセチレンに白金やニッケルなどを触媒として水素と反応させると、付加反応によりエチレンやエタンを生じる。
: [[ファイル:Synthesis_Ethylene.svg|左|サムネイル|500x500ピクセル|アセチレンC{{sub|2}}H{{sub|2}}への水素の付加によって、エチレンH<sub>2</sub>C=CH<sub>2</sub>が生じた反応]]
{{-}}
==== 臭素との反応 ====
また、アセチレンは三重結合を含むため、赤褐色の臭素水に通じると、付加反応により1-1-2-2-テトラブロモエタンが生じるため臭素の色が消え、無色になる。
==== 水との付加 ====
硫酸水銀 HgSO<sub>4</sub> を触媒として、アセチレンに水が付加することにより、不安定な中間生成物を経て、最終的にアセトアルデヒドを生じる。アセチレンは、まずはじめにビニルアルコール(CH{{sub|2}}CH(OH))になるが、これは非常に不安定であり、アセトアルデヒド(CH{{sub|3}}CHO)になる。
: [[ファイル:Ethin_Ethanal.svg|左|サムネイル|600x600ピクセル|アセチレンへの水の付加。まんなかの式にある、途中の生成物はビニルアルコール。いちばん右の式にある、最終的な生成物がアセトアルデヒド。]]
{{-}}ビニルアルコールはエノール体、アセトアルデヒドはケト体というものに分類され、この反応は「ケトエノール互変異性化」と呼ばれる。一般に、ケト体↔︎エノール体の反応において、平衡はケト体側へと偏る。
{{-}}
==== その他 ====
塩化水素を付加させると塩化ビニル <chem>CH2=CHCl</chem> を生じる。
<chem>CH#CH +HCl -> CH2=CHCl</chem>
==== 銀アセチリド ====
アンモニア性硝酸銀溶液にアセチレンを通じると、爆発性の銀アセチリド <chem>AgC=CAg</chem> の白色沈殿を生じる。{{-}}
==== 過マンガン酸カリウム水溶液 ====
塩基性の過マンガン酸カリウム水溶液(赤紫色の状態)に通じると、MnO2の沈殿が生じる。
{{-}}
==== 赤熱した鉄 ====
アセチレンが、赤熱した鉄にふれると、鉄が触媒として作用し、アセチレンの3分子が重合して、ベンゼンが生じる。
: [[ファイル:Reppe-chemistry benzene.svg|左|サムネイル|アセチレンの3分子重合。右側の式がベンゼン環]]
{{-}}
== シクロアルカン ==
{| style="text-align:center" cellspacing="0" border="1" align="right"
!分子式
!名称
!構造式
|-
|C{{sub|4}}H{{sub|8}}
|'''シクロブタン'''
|[[ファイル:Cyclobutane.svg|102x102ピクセル|シクロブタン]]
|-
|C{{sub|5}}H{{sub|10}}
|'''シクロペンタン'''
|[[ファイル:Cyclopentane.svg|100x100ピクセル|シクロペンタン]]
|-
|C{{sub|6}}H{{sub|12}}
|'''シクロヘキサン'''
|[[ファイル:Cyclohexane-compressed.svg|100x100ピクセル|シクロヘキサン]]
|}
一般式C{{sub|n}}H{{sub|2n}}で表される環式炭化水素を'''シクロアルカン'''という。炭素間の結合がすべて単結合である。右におもなシクロアルカンの分子式と名称および構造式を示す。
シクロアルカンの「シクロ(cyclo-)」とは環式であることを表す接頭辞であり、英語のサイクル cycle に相当し、「シクロアルカン」とは環式のアルカンであることを示している。
==== 一般的な性質 ====
シクロアルカンは飽和炭化水素であり、[[高校化学 脂肪族炭化水素#アルカン|アルカン]]に似た性質をもつ。
* 光を当てると'''置換反応'''を起こす。
* 水に溶けにくい。
* エーテルなどの有機溶媒によく溶ける。
* 燃えてもススをほとんど出さずに燃えて、二酸化炭素と水を生じる。
==== シクロヘキサン ====
シクロヘキサンは分子式C{{sub|6}}H{{sub|12}}のシクロアルカンである。分子の構造として次の2種類が存在する。
* いす型: [[ファイル:Konf_vzorec_cyklohexan-Z.PNG|50x50ピクセル|シクロヘキサン-いす型]]
* 舟型: [[ファイル:Konf_vzorec_cyklohexan-C.PNG|50x50ピクセル|シクロヘキサン-舟型]]
舟型は不安定な構造であり、通常はいす型の構造をとる。
== シクロアルケン ==
[[ファイル:Cyclohexene_for_highscool.svg|サムネイル|200x200ピクセル|シクロへキセン。 融点: -104℃。 沸点:83℃。]]
環状構造で炭素原子間に二重結合を1個もつ炭化水素を '''シクロアルケン'''(cycloalkene)という。 一般式はC<sub>n</sub>H<sub>2n-2</sub>で表される。
シクロアルケンの化学的性質は、鎖式構造のアルケンに似た性質があり、付加反応を起こしやすい。
シクロアルケンには、シクロペンテンC<sub>5</sub>H<sub>8</sub>やシクロヘキセンC<sub>6</sub>H<sub>10</sub>などがある。
== 参考事項 ==
=== シクロアルキン ===
環状構造で炭素原子間に三重結合を1個もつ炭化水素を'''シクロアルキン'''(cycloalkyne)という。一般式はC<sub>n</sub>H<sub>2n-4</sub>で表される。
炭素数が多く結合に柔軟性がある場合のみ存在し、通常は非常に不安定である。
分子模型セットを持っている人は確かめてほしいが、炭素数が7以下だと三重結合を含む環状構造を作るのがとても難しい。炭素数8ならば歪みがあるものの、辛うじて環状構造を形成することができる。実際、安定して単離されるのはシクロオクチンC<sub>8</sub>H<sub>12</sub>である。炭素数10では炭素数8に比べて安定した環状構造を取るが、炭素原子同士の距離が近いので容易に化学反応を起こし、環状構造が壊れてしまう。そのため、シクロアルキンは非常に存在しにくい炭化水素であると言える。
一般に、炭素数が多くなるほど環状構造は不安定になる。
高校化学で考える必要はないが、「シクロアルカンとシクロアルケンはあるけどシクロアルキンは存在しないのか」という疑問を解消するため紹介した。
=== アルケン以外のシス-トランス異性体 ===
環状構造の単結合も回転することができないため、環構造を含む化合物はアルケンと同様にシス-トランス異性体が存在する。
また、錯体についてもシス-トランス異性体が存在する場合がある。
この、アルケン以外のシス-トランス異性体は難関大入試では定番のテーマである。
==脚注==
===注釈===
<references group="注釈"></references>
{{DEFAULTSORT:しほうそくたんかすいそ}}
[[Category:高等学校化学]]
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高校化学 酸素を含む脂肪族化合物
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2026-05-24T04:14:21Z
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wikitext
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== アルコール ==
炭化水素の水素をヒドロキシ基 -OHで置換した構造の化合物を'''アルコール'''という。
{|border=1 cellspacing=0 align=right text-align=center style="text-align:center"
|- style="background:silver"
! 示性式 !! 名称 !! 構造式
|-
| CH{{sub|3}}OH || '''メタノール''' || [[File:Methanol Lewis.svg|100px|メタノール]]
|-
| C{{sub|2}}H{{sub|5}}OH || '''エタノール''' || [[File:Ethanol-structure.png|150px|エタノール]]
|}
アルコールは分子中のヒドロキシ基の個数や結合の仕方による、いくつかの分類がある。
アルコール分子中のヒドロキシ基の個数を'''価数'''という。分子中のヒドロキシ基が1個のものを1価アルコール、2個のものを2価アルコールなどという。2価以上のものを多価アルコールという。
{|border=1 cellspacing=0 align=center text-align=center style="text-align:center"
|- style="background:silver"
! 分類 !! 名称 !! 化学式 !! 融点 !! 沸点
|-
| 一価アルコール || メタノール<br />エタノール<br />1-プロパノール<br />1-ブタノール || CH{{sub|3}}-OH<br />CH{{sub|3}}-CH{{sub|2}}-OH<br />CH{{sub|3}}-CH{{sub|2}}-CH{{sub|2}}-OH<br />CH{{sub|3}}-CH{{sub|2}}-CH{{sub|2}}-CH{{sub|2}}-OH<br /> || -98℃<br />-115℃<br />-127℃<br />-90℃ || 65℃<br />78℃<br />97℃<br />117℃
|-
| 二価アルコール || エチレングリコール<br />(1,2-エタンジオール) || [[File:Glikol.svg|100px|エチレングリコール]] || -13℃ || 198℃
|-
| 三価アルコール || グリセリン<br />(1,2,3-プロパントリオール)|| [[File:Glycerin - Glycerol.svg|150px|グリセリン]] || 18℃ || 290℃(分解)
|-
|}
ヒドロキシ基に結合している炭素原子に結合している炭素原子の個数が、1または0個ものを'''第一級アルコール'''、2個のものを'''第二級アルコール'''、3個のものを'''第三級アルコール'''という。
{|border=1 cellspacing=0 align=center text-align=center style="text-align:center"
|- style="background:silver"
!分類!!構造!!化合物の例!!沸点
|-
|第一級<br />アルコール||[[File:第一級アルコール.svg|150px|第一級アルコール]]||1-ブタノール<br />2-メチル-1-プロパノール||117℃<br />118℃
|-
|第二級<br />アルコール||[[File:第二級アルコール.svg|150px|第二級アルコール]]||[[File:2ブタノール.svg|200px|2-ブタノール]]<br />2-ブタノール||99℃
|-
|第三級<br />アルコール||[[File:第三級アルコール.svg|150px|第三級アルコール]]||[[File:Tert bütil alkol ücüncül bir alkol.svg|150px|2-メチル-2-プロパノール]]<br />2-メチル-2-プロパノール||83℃
|}
二クロム酸カリウムなどで、第一級アルコールと第二級アルコールを酸化すると、それぞれアルデヒド、ケトンを生じ、アルデヒドをさらに酸化するとカルボン酸になる。第三級アルコールは酸化されにくい。
=== アルコールの性質 ===
==== 水溶性 ====
アルコールは親水性のヒドロキシ基と疎水性の炭化水素基をもつ。そのため、エタノールなどの低級アルコールや、グリセリンのような-OH基の多いアルコールは、水に溶けやすい。
炭素数の割合が多くなると炭化水素としての性質が強くなり、水に溶けにくくなる。たとえば、炭素数が4の1-ブタノールや炭素数が5の1-ペンタノールは水に難溶である。
また、アルコールは水に溶けても電離しないため中性である。
==== 融点と沸点 ====
アルコールのOH基によって、水素結合が形成されるため、分子量が同程度の炭化水素と比べて、沸点や融点が高い。
=== アルコールの反応 ===
==== ナトリウムとの反応 ====
アルコールに金属ナトリウムNaを加えると、水素が発生し、ナトリウムアルコキシド <chem>R-ONa</chem> を生じる。
* <chem>2R-OH + 2Na -> 2R-ONa + H2 ^</chem>
* <chem>2CH3OH + 2Na -> 2CH3ONa + H2 ^</chem>
* <chem>2C2H5OH + 2Na -> 2C2H5ONa + H2 ^</chem>(エタノールの場合)
なお、<chem>CH3ONa</chem> はナトリウムメトキシド、<chem>C2H5ONa </chem> は ナトリウムエトキシド と言う。
炭素数が多いほどナトリウムと穏やかに反応するようになる。この反応は有機化合物中のヒドロキシ基の有無を調べる一つの方法である。
ナトリウムアルコキシド <chem>R-ONa</chem> に水を加えると、加水分解して水酸化ナトリウムを生じるため塩基性を示す。
: <chem>R-ONa + H2O -> R-OH + NaOH</chem>
==== 酸化反応 ====
* アルコールに二クロム酸カリウムなどの酸化剤を用いて酸化させた場合
:第一級アルコールを酸化させると、まずアルデヒドになり、アルデヒドがさらに酸化すると、カルボン酸になる。
:第二級アルコールは、酸化されるとケトンになる。
:第三級アルコールは、酸化されにくい。
:
第一級アルコール [[File:第一級アルコール.svg|100px|第一級アルコール]] <chem> -> </chem> アルデヒド[[File:Aldehyd - Aldehyde.svg|100px|]] <chem> -> </chem> カルボン酸[[File:Carboxylic-acid.svg|100px|]]
第二級アルコール [[File:第二級アルコール.svg|100px|第二級アルコール]] <chem> -> </chem> ケトン[[File:Keton - Ketone.svg|100px|]]
==== 脱水反応 ====
濃硫酸 <chem>H2SO4</chem> を加熱して約130℃にしたものに、アルコールを加えると、アルコール分子内での脱水反応が起きたり、もしくはアルコールの2分子間で脱水反応が起きて、エーテルやアルケンを生じる。
具体的には、エタノール <chem>C2H5OH</chem> と濃硫酸 <chem>H2SO4</chem> とを混合し、約170℃に加熱すると分子内脱水によりエチレン <chem>H2C = CH2</chem> を生じる。
:<chem>C2H5OH -> C2H4 + H2O</chem>
一方、エタノールと濃硫酸を混合したものを約130℃に加熱すると、分子間脱水してジエチルエーテルを生じる。
:<chem>2C2H5OH -> C2H5OC2H5 + H2O</chem>
なお、このジエチルエーテルの生成のように、2つの分子間から水などの小さな分子がとれて1つの分子になることを、縮合という。
=== メタノール ===
'''メタノール''' CH{{sub|3}}OH は、無色透明の液体である。
人体には有毒で、飲むと失明の恐れがある。水と混和する。
メタノールの製法は、触媒に酸化亜鉛 ZnO と <chem>Cr2O3</chem> を用いて、一酸化炭素 CO と水素 H<sub>2</sub> とを反応させる。
:<chem>CO + 2H2 -> CH3OH</chem>
メタノールは、溶媒や燃料のほか、薬品の原料や化学製品の原料などとして、用いられている.
二クロム酸カリウム水溶液などによりメタノールは酸化され、ホルムアルデヒドとなる。
: <math>\mathrm{CH_3OH} \xrightarrow{-2 \mathrm H (*)} \mathrm{HCHO}</math>
<br />
:(*)水素原子が分子から奪われる酸化反応である。
=== エタノール ===
'''エタノール''' C{{sub|2}}H{{sub|5}}OH は無色透明の液体である。酒類に含まれるが、人体に有害である。グルコースなどの水溶液に酵母を加えて発酵させて、エタノールが得られる。
:発酵: <chem>C6H12O6 -> 2C2H5OH + 2CO2</chem>
工業的にはエチレンに水分子を付加することにより合成される。
:合成: <chem>CH2=CH2 + H2O -> CH3CH2OH</chem>
濃硫酸には脱水作用があるため、エタノールと濃硫酸とを混合して加熱すると脱水反応がおこる。しかし、温度により異なった脱水反応がおこり、異なる物質が生成する。130℃程度で反応させるとエタノール2分子から水が取り除かれてジエチルエーテルを生じる。
: <chem>2C2H5OH -> C2H5-O-C2H5 + H2O</chem>
一方、160℃程度で反応させるとエタノール1分子の中で水が取り除かれ、エチレンを生じる。
: <chem>C2H5OH -> CH2=CH2 + H2O</chem>
=== 多価アルコール ===
==== エチレングリコール ====
[[File:Glikol.svg|100px|thumb|エチレングリコール]]
'''エチレングリコール'''(1,2エタンジオール)は、2価アルコールであり、無色で粘性が高い、不揮発性の液体である。水と混和する。
自動車のラジエーターの不凍液として用いられる。また、合成繊維や合成樹脂の原料としてもエチレングリコールは用いられる。
エチレングリコールには甘味があるが、毒性がある。
[[File:Ethylenoxide-2.svg|thumb|エチレンオキシド]]
エチレンを(ある触媒のもと)酸素と反応させ、エチレンオキシドという物質をつくる。
そして、そのエチレンオキシドを(酸によって)加水分解させ、エチレングリコールをつくれる。
==== グリセリン ====
[[File:Glycerol structure.svg|thumb|グリセリン]]
1,2,3-プロパントリオール(グリセリン)は、3価アルコールであり、無色で粘性が高い、不揮発性の液体である。水とは任意の割合で溶け合う。無毒であり甘味があるので、化粧品や医薬品の原料などに用いられる。火薬(ニトログリセリン)の原料や合成樹脂の原料ともなる。
動物の体内に存在する油脂は、グリセリンと脂肪酸のエステルである。
=== ザイツェフ則 ===
[[ファイル:Zaitsev's rule illust for beginner student jp.svg|中央|サムネイル|700x700ピクセル|ザイツェフ則]] アルコールの脱水反応によって、アルケンが生成されるとき、二種類の生成物が考えられるが、このうち、元々結合している水素原子が少ないほうの炭素原子から水素原子を取り除いた構造の生成物の方が多く得られる。この経験則をザイツェフ則という。
マルコフニコフ則と合わせて、標語的に、水素を持てるものは更に与えられ(マルコフニコフ則)、持っていないものは持っているものまでも取り上げられる(ザイツェフ則)と考えると覚えやすい。
== エーテル ==
酸素原子に2個の炭化水素基が結合した構造 <chem>R-O-R'</chem> をもつ化合物を'''エーテル'''という。エーテル中での-O-の結合を、エーテル結合という。
{| class="wikitable" style="text-align:center; float: right;"
!示性式
!名称
!構造式
!沸点
|-
|CH{{sub|3}}-O-CH{{sub|3}}
|ジメチルエーテル
|[[ファイル:Dimethyl-ether-2D-flat.png|100x100ピクセル|ジメチルエーテル]]
| -25℃
|-
|C{{sub|2}}H{{sub|5}}-O-C{{sub|2}}H{{sub|5}}
|ジエチルエーテル
|[[ファイル:Diethyl-ether-2D-flat.png|150x150ピクセル|ジエチルエーテル]]
|34℃
|-
|C{{sub|2}}H{{sub|5}}-O-C{{sub|}}H{{sub|3}}
|エチルメチルエーテル
|[[File:Ethylmethylether Structural Formulae.png|150x150ピクセル]]
|7℃
|}
=== エーテルの性質 ===
エーテルは1価アルコールと構造異性体の関係にある。たとえばジメチルエーテルとエタノールは互いに異性体である。
エーテルはヒドロキシ基 -OH を持たないため、水に溶けにくく、水素結合をしないため、エーテルの沸点・融点はアルコールよりも低い。 たとえば、沸点はジメチルエーテル CH<sub>3</sub>-O-CH<sub>3</sub> の融点は -145℃であり沸点は -25℃ であり、分子量が同程度のエタノール(沸点78 ℃)とくらべて、かなり低い。
また、エーテルは、ナトリウムとも反応しない。
アルコールを濃硫酸と混合して脱水縮合させることでエーテルが生成する。
=== ジエチルエーテル ===
ジエチルエーテルは無色で揮発性の液体であり、引火しやすいため取り扱いに注意が必要である。麻酔性がある。 ジエチルエーテルは水には溶けにくく、有機物をよく溶かすので、有機溶媒としても用いられる。油脂などの有機化合物を抽出する際の溶媒として、ジエチルエーテルが用いられる。
エタノールに濃硫酸を加えて130~140°Cで加熱するとジエチルエーテルが生成する。
単にエーテルというと、ジエチルエーテルを指す。
=== エーテルの合成 ===
ナトリウムアルコキシド <chem>R-ONa</chem> とハロゲン化炭化水素 <chem>R'X</chem> の縮合によってエーテルが生成する。
<chem>R-ONa + R'X -> R-O-R' + NaX</chem>
== カルボニル化合物 ==
原子団[[ファイル:カルボニル基.svg|100x100ピクセル|カルボニル基]]をカルボニル基といい、カルボニル基をもつ化合物のことをカルボニル化合物という。
ホルミル基 -CHO をもつ化合物を'''アルデヒド'''という。
ホルミル基はカルボニル基の一方が水素である構造をしている。
[[ファイル:Aldehyde.png|サムネイル|アルデヒドの一般形]]
また、カルボニル基に2個の炭化水素基が結合した化合物 R -CO- R’ のことを'''ケトン'''という。
カルボニル化合物には、アルデヒド、ケトン、カルボン酸などがある。
{{-}}
== アルデヒド ==
{| style="text-align:center" cellspacing="0" border="1" align="right"
!示性式
!名称
!構造式
|-
|HCHO
|'''ホルムアルデヒド'''
|[[ファイル:Formaldehyde-2D.svg|100x100ピクセル|ホルムアルデヒド]]
|-
|CH{{sub|3}}CHO
|'''アセトアルデヒド'''
|[[ファイル:Acetaldehyde-2D-flat.svg|130x130ピクセル|アセトアルデヒド]]
|}
=== 性質 ===
[[高校化学 酸素を含む脂肪族化合物#アルコール|アルコール]]で学んだように、第一級アルコールを酸化するとアルデヒドが得られ、アルデヒドを酸化するとカルボン酸になる。
* 還元性
ホルミル基には'''還元性'''があり、他の物質を還元して自らは酸化されやすい。つまりアルデヒドはカルボン酸になりやすい。
: <math>\mathrm{R-CHO} \xrightarrow{+ \mathrm O (*)} \mathrm{R-COOH}</math>
:: (*) 酸素を受け取る酸化反応が起こる。
そのため、アルデヒドは'''銀鏡反応'''や'''フェーリング反応'''といった還元性の有無を調べる反応により検出することができる。
* 水溶性
分子量の小さいアルデヒドやケトンは、水に溶けやすい。
=== 銀鏡反応 ===
[[ファイル:MiroirArgent.JPG|サムネイル|250x250ピクセル|銀鏡反応]]
アンモニア性硝酸銀水溶液にアルデヒドを加えて加熱すると、銀イオン Ag<sup>+</sup> が還元されて、銀 Ag が析出する。これを'''{{Ruby|銀鏡|ぎんきょう}}反応'''といい、アルデヒドのような還元性のある物質を検出することに利用される。 試験管に銀が付着して鏡のようになることから、銀鏡という名前が付いている。
銀鏡反応は、以下のような反応である。 このアンモニア性硝酸銀水溶液にアルデヒドなどの還元性のある物質を加え、湯浴で加熱すると、ジアンミン銀(I)イオンが還元されて単体の銀が析出し、試験管の壁に付着する。アルデヒド自身は酸化されてカルボン酸となる。
: <chem>RCHO + 2[Ag(NH3)2]+ + 3OH- -> RCOOH + 4NH3 + H2O + 2Ag v</chem>
=== フェーリング反応 ===
[[ファイル:Kupfer(II)-Ionen1.jpg|サムネイル|209x209ピクセル|左から硫酸銅(II)水溶液、テトラアンミン銅(II)イオン Cu(NH<sub>3</sub>)<sub>4</sub>の溶液(フェーリング液もこれと似た色)、フェロシアン化銅(II)Cu<sub>2</sub>[Fe(CN)<sub>6</sub>](フェーリング反応後の酸化銅(Ⅰ)沈殿と似た色の沈殿)(注: フェーリング反応ではありませんが、似た色をしているので参考に掲載しています)]]
'''フェーリング液'''と呼ばれる液体にアルデヒドを加えて加熱すると、フェーリング液中の銅(II)イオンCu<sup>2+</sup>が還元されて、酸化銅(I) Cu<sub>2</sub>Oの赤色沈殿が生成することから、アルデヒドが還元性をもつことを確認することができる。この反応をフェーリング反応という。なお、アルデヒド自身はこのフェーリング反応で酸化されてカルボン酸となる。
* 参考
: フェーリング液とは、硫酸銅(Ⅱ)、酒石酸ナトリウムカリウムと、水酸化ナトリウムの混合水溶液である。硫酸銅(Ⅱ)水溶液をA液、酒石酸ナトリウムカリウムと水酸化ナトリウムの混合水溶液をB液として、A液とB液とを使用直前に混合して調整する。これは、フェーリング液が不安定で、長期間保存することができないためである。A液は硫酸銅(Ⅱ)水溶液なので青色をしているが、これにB液を加え混合したフェーリング液は、銅(Ⅱ)の錯イオンを生じて深青色の水溶液となる。
=== ホルムアルデヒド ===
[[ファイル:Formaldehyde-2D.svg|サムネイル|100x100ピクセル|ホルムアルデヒド]]
'''ホルムアルデヒド''' HCHO はもっとも単純な構造のアルデヒドであり、水に溶けやすい無色刺激臭の気体である。ホルマリンはホルムアルデヒドの約37%水溶液であり、動物標本の保存溶液や、消毒剤として用いられる。
ホルムアルデヒドはメタノールを酸化することで得られる。銅線を加熱して酸化銅(Ⅱ)とし、これを試験管に入れたメタノールに近づけると、メタノールが酸化されてホルムアルデヒドを生じる。
: <chem>CH3OH + CuO -> HCHO + H2O + Cu</chem>
なお、銅線を加熱して酸化銅にする方程式は
: <chem>2Cu2 + O -> 2CuO</chem>
なので、これとまとめて、反応式を
: <chem>2CH3OH + O2 -> 2HCHO + 2H2O</chem>
と書く場合もある。
なお、ホルムアルデヒドがさらに酸化されると、ギ酸になる。ギ酸も条件によってはさらに酸化されて二酸化炭素と水を生じる。
=== アセトアルデヒド ===
[[ファイル:Acetaldehyde-2D-flat.svg|サムネイル|130x130ピクセル|アセトアルデヒド]]
'''アセトアルデヒド''' CH{{sub|3}}CHO は分子中に炭素が2つあるアルデヒドであり、水や有機溶媒によく溶ける。
実験室ではアセトアルデヒドは、エタノールを酸化することで得られる。エタノールに酸化剤として硫酸酸性の二クロム酸カリウム K<sub>2</sub>Cr<sub>2</sub>O<sub>7</sub> 水溶液を加え加熱すると、アセトアルデヒドが生じる。
: <chem>3C2H5OH + Cr2O7^2- + 8H+ -> 3CH3CHO + 2Cr3+ + 7H2O</chem>
また、工業的にはアセトアルデヒドの製法は、塩化パラジウム PdCl<sub>2</sub> と塩化銅 CuCl<sub>2</sub> を触媒に用いて、酸素によってエチレンを酸化することでも得られる。
: <chem>2CH2=CH2 + O2 -> 2CH3CHO</chem>
アセトアルデヒドは、酢酸の原料や防腐剤として用いられる。
アセトアルデヒドがさらに酸化されると、酢酸になる。
: <chem>CH3CHO -> CH3COOH</chem><br />
=== 飲酒とアセトアルデヒド ===
日本酒や洋酒など、市販のアルコール飲料は、エタノールの水溶液である。
ヒトが酒(エタノール水溶液)を飲むと、おもに腸でエタノールが吸収され、血管を通って肝臓に運ばれ、そして肝臓で酵素によってアセトアルデヒド CH<sub>3</sub>CHO に分解される。さらに別の酵素によって、酢酸 CH<sub>3</sub>COOH に変化する。そして最終的に、二酸化炭素と水に分解される。
=== 発展 カルボニル基の極性 ===
カルボニル基には極性があり、Cが電荷δ<sup>+</sup>を帯びており、Oがδ<sup>ー</sup>の電荷をおびている。
二重結合を介して、
: <big><big>C</big><sup>δ<sup>+</sup></sup> <big>=</big> <big>O</big><sup>δ<sup>ー</sup></sup></big>
のように分極している。
また、カルボニル基をもつ簡単な分子は水に溶けやすいのは、カルボニル基の酸素原子が溶液の水素分子と水素結合をするためである。つまり、C=Oは親水基である。
[[ファイル:Ketone-general.svg|サムネイル|ケトンの一般式]]
== ケトン ==
カルボニル基に2つの炭化水素基が結合した有機化合物を'''ケトン'''と呼ぶ。右には主なケトンを示す。
{| style="text-align:center" cellspacing="0" border="1" align="right"
!示性式
!名称
!構造式
|-
|CH{{sub|3}}COCH{{sub|3}}
|'''アセトン'''
|[[ファイル:Aceton_(chemical_structure).svg|150x150ピクセル|アセトン]]
|}
{{-}}
=== 一般的な性質 ===
第二級アルコールを酸化するとケトンが得られる。逆に、ケトンを還元すると、第二級アルコールになる。
ケトンはアルデヒドと同様にC=Oの二重結合を持つ。ケトンはアルデヒドと異なり、ケトンは還元性を持たない。そのため、ケトンは銀鏡反応やフェーリング反応を起こさない。
また、アルデヒドはさらに酸化されてカルボン酸となるが、ケトンは酸化されにくい。
=== アセトン ===
'''アセトン''' CH{{sub|3}}COCH{{sub|3}} はもっとも単純な構造のケトンである。アセトンは無色の芳香のある液体(沸点56 ℃)であり、アセトンは水に混ざりやすい。また、アセトンは、有機溶媒としても用いられる場合がある。
実験室でのアセトンの製法は、第二級アルコールである2-プロパノール CH{{sub|3}}CH(OH)CH{{sub|3}} を酸化することで得られる。2-プロパノールに酸化剤の硫酸酸性二クロム酸カリウム水溶液を加え加熱すると、アセトンを生じる。
: <chem>3CH3CH(OH)CH3 + Cr2O7^2- + 8H+ -> 3CH3COCH3 + 2Cr3+ + 7H2O</chem>
また、アセトンは酢酸カルシウムの乾留によっても、実験室でアセトンを得ることができる。酢酸カルシウムの固体を試験管に入れ、加熱すると、アセトンを生じる。
: <chem>(CH3COO)2Ca -> CH3COCH3 + CaCO3</chem>
工業的には、クメン法によって作られる。
== ヨードホルム反応 ==
水酸化ナトリウム水溶液のような塩基性溶液中、アセトンにヨウ素を反応させると、特有の臭気をもつ'''ヨードホルム''' CHI<sub>3</sub> の黄色沈殿が生成する。この反応を'''ヨードホルム反応'''という。
このヨードホルム反応は、アセチル基 CH<sub>3</sub>CO- を持つケトンやアルデヒド、または部分構造 CH<sub>3</sub>CH(OH)-(1-ヒドロキシエチル基)を持つアルコールが起こす。
酢酸はCH<sub>3</sub>CO-構造を含むが、酢酸はカルボン酸であり、ケトンやアルデヒドではないのでヨードホルム反応は起こさない。酢酸エチルも、ヨードホルム反応を起こさない。
ヨードホルム反応の起きる代表的な化合物は、アセトン、アセトアルデヒド、エタノール、2-プロパノールなどである。
== カルボン酸 ==
カルボキシ基 -COOH を含む化合物を'''カルボン酸'''という。
{| style="text-align:center" cellspacing="0" border="1" align="right"
!示性式
!名称
!構造式
|-
|HCOOH
|'''ギ酸'''
|[[ファイル:Formic_acid.svg|100x100ピクセル|ギ酸]]
|-
|CH{{sub|3}}COOH
|'''酢酸'''
|[[ファイル:Acetic_acid_2.svg|140x140ピクセル|酢酸]]
|}
=== カルボン酸の性質 ===
[[高校化学 酸素を含む脂肪族化合物#アルデヒド|アルデヒド]]の部分で学んだように、アルデヒドを酸化するとカルボン酸が得られる。
カルボン酸の酸性の原因は、COOHの部分の水素Hが水溶液中で電離するからである。
{| class="sortable wikitable"
|+カルボン酸の性質
!分類
!名称
!示性式
!融点
!その他
|-
| rowspan="5" |飽和モノカルボン酸
|ギ酸
|HCOOH
|8.40℃
|アリから発見
|-
|酢酸
|CH{{sub|3}}COOH
|16.7 ℃
|食酢の成分
|-
|プロピオン酸
|CH{{sub|3}}CH{{sub|2}}COOH
| -20.8℃
|乳製品に含まれる
|-
|パルミチン酸
|C<sub>15</sub>H<sub>31</sub>-COOH
|63°C
|
|-
|ステアリン酸
|C<sub>17</sub>H<sub>35</sub>-COOH
|71°C
|
|-
| rowspan="5" |不飽和モノカルボン酸
|アクリル酸
|CH{{sub|2}}=CHCOOH
|14℃
|塗料、接着剤など
|-
|メタクリル酸
|CH{{sub|2}}=CHCOOCH{{sub|3}}
|16℃
| --
|-
|オレイン酸
|C<sub>17</sub>H<sub>33</sub>-COOH
|13°C
|二重結合1個
|-
|リノール酸
|C<sub>17</sub>H<sub>31</sub>-COOH
| -5°C
|二重結合2個
|-
|リノレン酸
|C<sub>17</sub>H<sub>29</sub>-COOH
| -11°C
|二重結合3個
|-
| rowspan="2" |飽和ジカルボン酸
|シュウ酸
|HOOC-COOH
|187℃(分解)
|ホウレン草などに存在
|-
|アジピン酸
|HOOC–(CH{{sub|2}}){{sub|4}}–COOH
|153℃
|ナイロンの原料
|-
| rowspan="2" |不飽和ジカルボン酸
|フマル酸
|C{{sub|2}}H{{sub|2}}(COOH){{sub|2}}
|300℃(封管中)
|植物に含まれる
|-
|マレイン酸
|C{{sub|2}}H{{sub|2}}(COOH){{sub|2}}
|133℃
|合成樹脂の原料
|-
| rowspan="3" |ヒドロキシ酸
|乳酸
|CH{{sub|3}}CH(OH)COOH
|17℃
|ヨーグルトの成分
|-
|酒石酸
|(CH(OH)COOH){{sub|2}}
|170℃
|ブドウの果実中に存在
|-
|リンゴ酸
|HOOC-CH(OH)-CH<sub>2</sub>-COOH
|100°C
|果実中に存在
|}
脂肪族の1価カルボン酸を'''脂肪酸'''という。
分子中の炭素数が少ない脂肪酸を'''低級脂肪酸'''、炭素の多い脂肪酸を'''高級脂肪酸'''という。また、炭素間結合が単結合のみの脂肪酸を'''飽和脂肪酸'''、二重結合または三重結合を含む脂肪酸を'''不飽和脂肪酸'''という<ref>飽和脂肪酸は炭素原子に結合できる水素が飽和している。不飽和脂肪酸は二重結合または三重結合の部分に水素を付加出来るため、炭素原子に結合できる水素が飽和していないという意味である。</ref>。
分子中にカルボキシ基を1つ持つカルボン酸を1価カルボン酸(モノカルボン酸: mono-carboxylic acid)といい、カルボキシ基を2つ持つカルボン酸を2価カルボン酸(ジカルボン酸: di-carboxylic acid)という。
=== ギ酸 ===
[[ファイル:Formic_acid_85_percent.jpg|サムネイル|ギ酸]]
'''ギ酸'''('''蟻酸''') HCOOH は常温常圧では刺激臭のある無色の液体で、水溶液は酸性を示す。ギ酸は人体に有害で皮膚や粘膜を侵す。
ギ酸はホルミル基を持つため、還元性があり、酸化剤と反応させるとギ酸自身は酸化されて二酸化炭素となる。
[[ファイル:FormicAcid-Aldehyde_and_Carboxyl-ja.svg|中央|300x300ピクセル|ギ酸の分子構造]]
ギ酸は濃硫酸を加えて加熱すると一酸化炭素を生じる。
<chem>HCOOH -> H2O + CO ^</chem>
カルボン酸で還元性をもつ物質は例外的であり、ギ酸 HCOOH とシュウ酸 HOOC-COOH は還元性をもつ。
=== 酢酸 ===
[[ファイル:AceticAcid012.jpg|右|サムネイル|氷酢酸]]
'''酢酸'''('''醋酸''') CH{{sub|3}}COOH は常温常圧では刺激臭のある無色の液体で、水溶液は酸性を示す。
酢酸は、亜鉛などの金属と反応して水素を発生する。
: <chem>Zn + 2CH3COOH -> (CH3COO)2Zn + H2 ^</chem>
また、酢酸は弱酸だが炭酸よりは強い酸であるため、炭酸塩と反応して二酸化炭素を生じる。
: <chem>CH3COOH + NaHCO3 -> CH3COONa + H2O + CO2 ^ </chem>
また、酢酸は融点が17 ℃であり、純度の高い酢酸は冬場になると氷結してしまう。そのような酢酸を'''氷酢酸'''と呼ぶ。
酢酸は次のように2分子が水素結合で結合した二量体として存在する。
[[ファイル:Acetic Acid Hydrogenbridge V.1.svg|left|サムネイル|酢酸の二量体]]
このため、酢酸の気体から分子量を測定する実験をすると、実験方法によっては、酢酸の分子量60の2倍の値である分子量120ほどの実験値が得られる場合もある。
カルボン酸が同程度の分子量のアルコールやアルカンよりも沸点や融点が高いのは、カルボン酸がこのように二量体を形成するからである。
なお、二量体のため、酢酸は有機溶媒にも溶ける。
=== マレイン酸とフマル酸 ===
'''マレイン酸'''と'''フマル酸''' COOHCH=CHCOOH はどちらも不飽和ジカルボン酸であり、シス-トランス異性体の関係にある。マレイン酸とフマル酸の化学的性質は大きく異なる。マレイン酸は分子内で水素結合を形成し、フマル酸は分子間で水素結合を形成するため、フマル酸の方が分子間力が強く、融点が高くなる。
{| class="wikitable"
|+シス-トランス異性体
!マレイン酸(シス形)
!フマル酸(トランス形)
|-
| [[ファイル:Maleic_acid.svg|マレイン酸]]
| [[ファイル:Fumaric_acid-structure.svg|フマル酸]]
|}マレイン酸は160℃で加熱すると脱水反応を起こし'''無水マレイン酸'''になる。これは、2つのカルボキシ基の位置関係の違いによるものである。カルボキシ基の位置が遠いトランス形のフマル酸では脱水反応は起こらない。
[[ファイル:Maleic_acid_dehydration-ja.svg|中央|マレイン酸の脱水]]
=== その他のカルボン酸 ===
カルボン酸は果物に多く含まれている。たとえばブドウに含まれる酒石酸や、柑橘類に含まれるクエン酸、リンゴに含まれるリンゴ酸はいずれもカルボン酸である。
分子中にCOOH基とOH基をもつカルボン酸を'''ヒドロキシ酸'''という。
乳酸は、糖類の発酵によって生じる。
==== 鏡像異性体 ====
[[ファイル:Lactic-acid_enantiomer_jp.svg|サムネイル|500x500ピクセル|乳酸の光学異性体]]
乳酸は、ヨーグルトなどの乳製品に含まれているヒドロキシ酸である。乳酸は炭素原子に結合している4つの原子や原子団が、4つとも異なる。このように、4本の腕にそれぞれ異なる置換基が結合した炭素原子を、'''不斉炭素原子'''という。たとえば、乳酸 CH{{sub|3}}CH(OH)COOH には不斉炭素原子が1個存在する。
[[ファイル:Lactic_acid-stereocenter.svg|中央|300x300ピクセル|乳酸の不斉炭素原子]]
上図を見ると分かるように、*印をつけた炭素原子の周りに、それぞれ色分けされた4つの異なる置換基が結合しているのが分かる。この*印がついた炭素原子が不斉炭素原子である。
ここで上の構造式は平面上に書かれているが、現実にはこの分子は立体として存在する。不斉炭素原子を中心とした正四面体の各頂点に、結合軸が配置しているのである。すると、構造式が上のように同一であっても、立体的にはどう動かしても重ね合わせることのできないものが存在する。これらは、たがいに鏡に写した関係にある。
このように、鏡写しの関係になった異性体を'''鏡像異性体'''という<ref>鏡像異性体のことを光学異性体ということもあるが、この名称は現在推奨されていない。</ref>。
鏡像異性体の一方をL体といい、もう一方をD体という。
一般に、鏡像異性体は、融点や密度などの物理的性質や、化学反応に対する化学的性質はほとんど同じである。しかし、旋光性や、味、匂いなどの生理作用が異なる。
鏡像異性体は右手と左手の関係に例えることができる。右手と左手は鏡写しの関係になっている。つまり、鏡に写した右手は左手と同じように見える。同様に、鏡に写した左手は右手に見える。しかし、右手を回転させても左手と重ね合わせることはできない。
なお、'''{{ruby|旋光|せんこう}}'''とは、物質の結晶に[[高校物理 波#光の性質|偏光]]を通したときに、その偏光の振動面が回転することである。
=== 水溶液中の水素結合 ===
カルボン酸が比較的に水に溶けやすいものが多いのは、水素結合によるものである。
また、カルボン酸と同程度の分子量のアルコールよりも、カルボン酸は水溶性が高い。
とはいえ、酢酸こそ水に溶けやすいものの、無水酢酸は水に溶けにくい。
== エステル ==
-COO- で表される構造を'''エステル結合'''という。エステル結合をもつ化合物を'''エステル'''といい、エステルを生成する脱水反応を'''エステル化'''という。
カルボン酸とアルコールを酸触媒で加熱するとエステルが生成する。
[[File:Esterification-ja.png|500px|center|エステル化]]
比較的小さな分子量のエステルは果物に似た香りを持つため、香料に使用されるものもある。また、自然界にも、果実の香り成分として、小さな分子量のエステルが存在している。
エステルは水には溶けにくく、有機溶媒に溶ける。
エステルは加水分解してカルボン酸とアルコールが生成する。
[[File:氧化酯基.PNG|400px|center|加水分解]]
:
エステル化反応は可逆反応であり、エステル化と同時に加水分解も起こっている。そのため、エステルを多く生成するためにしばしば脱水剤や触媒として濃硫酸が用いられる。
=== けん化 ===
エステルは、水酸化ナトリウムのような強塩基の水溶液をくわえて加熱すると、カルボン酸の塩とアルコールに加水分解される。このような、強塩基によるエステルの加水分解反応を'''けん化'''という。
: <chem>R-COO-R' + NaOH -> R-COONa + R'-OH</chem>
=== 酢酸エチル ===
酢酸とエタノールの混合物に触媒として濃硫酸をくわえて加熱すると、'''酢酸エチル'''CH3-COO-C2H5 が得られる。
:<chem>CH3-CO-OH + H-O-C2H5 -> CH3-COO-C2H5 + H2O</chem>
酢酸エチルは、果実のような香りをもつため、香料として用いられる。
酢酸エチルは、沸点77℃であり、揮発性の液体であり、水より軽い。
=== カルボン酸以外のエステル ===
カルボン酸とアルコールの反応だけではなく、オキソ酸とアルコールとの間の脱水反応もエステル化と呼ぶ。例えば、アルコールであるグリセリンと、オキソ酸である硝酸が脱水・エステル化すると、'''ニトログリセリン'''を生じる。ニトログリセリンは爆発性のある物質で、ダイナマイトなどに用いられる。
:<chem>CH2(OH)-CH(OH)-CH2OH + 3HNO3 -> CH2(ONO2)-CH(ONO2)-CH2ONO2</chem>
:[[File:Nitroglycerin vzorec.png|center|thumb|ニトログリセリン]]
== 油脂 ==
[[File:油脂の構造.svg|thumb|300px|油脂の構造]]
脂肪酸とグリセリン <chem>C3H5(OH)3</chem> がエステル結合した化合物を'''油脂'''という。
[[File:Glycerol structure.svg|thumb|グリセリン(1,2,3-プロパントリオール)]]
:
油脂のうち、常温で固体の油脂を'''脂肪'''、液体の油脂を'''脂肪油'''という。
脂肪は飽和脂肪酸により構成されているものが多く、脂肪油は不飽和脂肪酸により構成されているものが多い。
これは、飽和脂肪酸は直線状であるのに対して、不飽和脂肪酸は C=C 二重結合の部分で折れ曲がった形をしているためである。不飽和脂肪酸では C=C での折れ曲がりの立体構造により分子同士が近づきにくくなるので、分子間力が働きにくくなり、不飽和脂肪酸の融点は低くなる。
天然の油脂を構成する脂肪酸には炭素数が16か18のものが多い。
以下に、油脂を構成する主な脂肪酸の例を示す。
{|border=1 cellspacing=0 align=center text-align=center style="text-align:center;"
|- style="background:silver"
! !! 飽和脂肪酸!!colspan="2" | 不飽和脂肪酸
|-
| 名称 || '''ステアリン酸''' || '''オレイン酸''' || '''リノール酸'''
|-
| 示性式 || C{{sub|17}}H{{sub|35}}COOH || C{{sub|17}}H{{sub|33}}COOH || C{{sub|17}}H{{sub|31}}COOH
|-
| 分子模型 || [[File:Stearic acid spacefill.gif|200px|ステアリン酸分子模型]] || [[File:Oleic-acid-3D-vdW.png|200px|オレイン酸分子模型]] || [[File:Linolenic-acid-3D-vdW.png|200px|リノール酸分子模型]]
|}
[[File:Breakfast - bread, margarine and honey.jpg|thumb|硬化油の例 - マーガリン]]
不飽和脂肪酸の炭素間二重結合では、アルケンと同様に付加反応が起こる。油脂を構成する不飽和脂肪酸に、ニッケル Ni を触媒として用いて水素を付加させると、融点が高くなるため、常温で固体の油脂へと変化する。このようにして脂肪油から生じた固体の油脂を'''硬化油'''という。植物油をもととする硬化油はマーガリンなどに用いられる。硬化により飽和脂肪酸とすることには、長期間の保存の間に空気中の酸素が不飽和結合に付加して酸化されることを防ぐ役割もある。
{{-}}
=== 油脂のけん化 ===
油脂に水酸化ナトリウムを加えて加熱すると、油脂は'''けん化(鹸化)'''されて、高級脂肪酸のナトリウム塩('''セッケン(石鹸)''')とグリセリンになる。
洗い物などでもちいる石鹸とは、このような高級脂肪酸のナトリウム塩である。
[[File:セッケンの反応式.svg|800px|]]<br />
さて、油脂1分子に、エステル結合が3つある。よって油脂1molのけん化には、水酸化ナトリウム3molが必要になる。
セッケンは弱酸と強塩基の塩であるが、水中ではセッケンは一部が加水分解し、弱塩基性を示す。
:<chem>R-COONa + H2O -> R-COOH + Na+ + OH-</chem>
セッケンの炭化水素基部分(図中 R- の部分)は疎水性である。セッケンのカルボキシル基COONaの部分は親水性である。
[[File:MicelleColor.png|thumb|right|250px|ミセル]]
水中では、多数のセッケンの疎水基の部分どうしが集まり、親水基を外側にして集まる構造のコロイド粒子の'''ミセル'''になる。
セッケン分子のように、分子中に親水基と疎水基を合わせ持つ物質を'''界面活性剤'''という。
セッケン水に油を加えると、セッケンの疎水部分が油を向いて、多数のセッケン分子が油を取り囲むので、油の小滴が水中に分散する。このような現象を'''乳化'''という。そして、セッケンのように、乳化をおこさせる物質を'''乳化剤'''という。
セッケンの洗浄作用の理由は、主に、この乳化作用によって、油を落とすことによる。
セッケンは水の表面張力を低下させる。
== セッケン ==
油脂に水酸化ナトリウム水溶液を加え加熱すると'''けん化'''(鹸化、正字:鹼化)して、高級脂肪酸のナトリウム塩とグリセリンを生じる。この高級脂肪酸の塩を'''セッケン'''(石鹸、正字:石鹼)という。脂肪酸は弱酸であり、水酸化ナトリウムは強塩基であるから、これらの塩であるセッケンの水溶液は弱塩基性を示す。
[[File:セッケンの反応式.svg|800px|]]<br />
セッケン分子は、'''疎水性'''の炭化水素基と、'''親水性'''のイオン基からなる。このように、親水基と疎水基を両方持つ物質を'''界面活性剤'''あるいは乳化剤という。
:[[File:セッケン分子の構造.svg|400px|セッケン分子の構造]]
[[File:Micel olie in water.gif|thumb|ミセル]]
このセッケン分子は疎水部を内側に、親水部を外側に向けて寄り集まった状態で集まって粒子(ミセル)を形成し、水に溶けている。水溶液中に油が存在すると、セッケン分子が油の周囲を取り囲み、疎水部は油となじみ、親水部は外側へ向いて、微粒子を形成し水溶液中へ分散し、水溶液は白濁する。この現象を'''乳化'''という。
[[File:Mydlo micela-tuk.png|center|乳化作用]]
この乳化作用により、油汚れを洗浄することができる。
マヨネーズの油と水をくっつける、卵黄のレシチンも乳化剤である。
なお、一般に、水と油の界面に配列する物質が、食べられない物質の場合に界面活性剤という場合が多い。いっぽう、食品などからつくった場合などで、食べられる場合には乳化剤という場合が多い。明確には決まっていない。
セッケンがカルシウムイオンCa<sup>+</sup>やマグネシウムイオンMg<sup>+</sup>などの溶けた硬水と混じると、水に溶けにくい塩 (R-COO)<sub>2</sub>Ca などが生じるので、セッケンの洗浄力がなくなり、泡立ちも悪くなる。
=== 界面活性剤の分類 ===
陽イオン界面活性剤には、洗浄力は無く、柔軟剤などとして使われる。陽イオン界面活性剤による洗剤は、'''逆性セッケン'''とも言われる。
{| class="wikitable"
|+ 界面活性剤の分類
|-
! 分類 !! 構造 !! 特徴 !! 用途
|-
| 陰イオン性<br />界面活性剤 || [[File:硫酸アルキルナトリウム.svg|400px|]] || 親水基が<br />陰イオン || 台所用洗剤<br />シャンプー<br />洗濯用洗剤
|-
| 陽イオン性<br />界面活性剤 || [[File:アルキルトリメチルアンモニウム塩化物.svg|400px|]] || 親水基が<br />陽イオン || 柔軟剤<br />リンス<br />殺菌剤
|-
| 両性<br />界面活性剤 || [[File:Nアルキルベタイン.svg|550px|]] || 親水基に<br />陰イオンと陽イオンの<br />両方をもつ || 食器用洗剤<br />柔軟剤<br />リンス<br />シャンプー
|-
| 非イオン<br />界面活性剤 || ポリオキシエチレンアルキルエーテル<br />CH<sub>3</sub>-CH<sub>2</sub>-CH<sub>2</sub>-・・・-CH<sub>2</sub>-O(CH<sub>2</sub>CH<sub>2</sub>O)<sub>n</sub>H || 親水基が電離しない || 衣料用洗剤<br />乳化剤<br />
|-
|}
セッケンは、陰イオン性界面活性剤である。
両性界面活性剤は、酸性溶液中では陽イオンになり、塩基性溶液中では陰イオンになる。
=== 合成洗剤 ===
しかし、セッケン分子は <chem>Ca^2+</chem>や <chem>Mg^2+</chem>と反応して水に溶けにくい塩を生じる。そのため、イオンを多く含む硬水や海水中では洗浄力が落ちる。
このようなセッケンの短所を改良したアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム R-C{{sub|6}}H{{sub|4}}-SO{{sub|3}}{{sup|-}}Na{{sup|+}}(略称:ABS)やアルキル酸ナトリウム R-SO{{sub|3}}{{sup|-}}Na{{sup|+}} (略称:AS)は、高級アルコールや石油などから人工的に合成される。
これらアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムやアルキル酸ナトリウムを'''合成洗剤'''という。
* ASの製法
ASの製法は、高級アルコールの1-ドデカノール C<sub>12</sub>H<sub>25</sub>-OH に濃硫酸 H2SO4 を作用させるとエステル化されることで硫酸水素ドデシル C<sub>12</sub>H<sub>25</sub>-SO{{sub|3}}H ができ、この硫酸水素ドデシルを水酸化ナトリウムで中和することで硫酸ドデシルナトリウム C<sub>12</sub>H<sub>25</sub>-SO{{sub|3}}Na が得られる。
[[File:硫酸ドデシルナトリウムの合成式.svg|700px|硫酸ドデシルナトリウムの合成式 :C<sub>12</sub>H<sub>25</sub>-OH → C<sub>12</sub>H<sub>25</sub>-SO{{sub|3}}H → C<sub>12</sub>H<sub>25</sub>-SO{{sub|3}}Na]]
* ABSの製法
炭化水素基が結合したベンゼン(アルキルベンゼン)を濃硫酸とスルホン化すると、アルキルベンゼンスルホン酸が得られる。このアルキルベンゼンスルホン酸を水酸化ナトリウムで中和することでアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムが得られる。
[[File:アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムの合成式.svg|700px|アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムの合成式]]
=== 合成洗剤の性質 ===
セッケン水溶液は弱塩基性である。いっぽう、合成洗剤は強酸と強塩基の塩であるため、加水分解せず、よってアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどの水溶液は中性である。また、合成洗剤は、硬水中でも持ち手も、不溶性の沈殿を作りにくい。
合成洗剤の分子は、疎水部と親水部からなり、乳化作用により油汚れを洗浄することができる。
=== 洗濯用洗剤のビルダー ===
合成洗剤には、その洗剤としての働きを助けるため、界面活性剤以外にも、さまざまな成分が入っている。
ひとくちの合成洗剤といっても、台所用洗剤や洗濯用洗剤など、いろいろとあり、その種類によって、組成などの違う。
洗濯用洗剤では、合成洗剤の添加剤を'''ビルダー'''という。
たとえば、洗浄力を落とすカルシウムイオンやマグネシウムイオンを取り除くため(合成洗剤はセッケンとは違い、これらのイオンがある硬水でも洗浄力を持つが、それでも、これらのイオンが無い軟水のほうが良い洗浄効果をもつ)、'''ゼオライト'''(アルミノケイ酸ナトリウム)などが入ってる。
なお、かつてリン酸塩がこれらのイオンを除くための添加剤として用いられていたが、排水が河川などの富栄養化をまねき水質汚染の原因となるため、現在はあまり用いられてない。日本では、1980年ごろから、合成洗剤での水の軟水化のための添加剤がリン酸塩からゼオライトに切り換えられた。
そのほか、タンパク質汚れを落とすための分解酵素プロテアーぜや、油汚れを落とすための脂肪分解酵素リパーぜなど、酵素が添加されていたりする。
また、一般にアルカリ性のほうが汚れが落ちやすいので、炭酸ナトリウムが添加剤として加えられる。なお、台所洗剤やシャンプーでは、アルカリが身体を痛めるため、このようなアルカリ性の物質は加えられない。
{{DEFAULTSORT:しほうそくかこうふつ あるこおる}}
[[Category:高等学校化学]]
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高校化学 気体の性質
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{{pathnav|高等学校の学習|高等学校理科|高等学校化学|[[高等学校 化学|化学]]|pagename=気体の性質|frame=1|small=1}}
以下、[[高等学校物理基礎|物理基礎]]を既習であるものとする。必要があれば[[高校物理 熱力学]]も参照。
== 理想気体と実在気体 ==
==== 理想気体と実在気体 ====
実際の気体はボイル・シャルルの法則は、高温・低圧の場合はよく当てはまるが、低温・高圧の場合には、ずれが大きくなってくる。ボイル・シャルルの法則が、厳密に成り立つ気体を考えると、計算の都合がいい。このような、ボイル・シャルルの法則が厳密に成り立つ想像上の気体のことを'''理想気体'''という。現実の気体を'''実在気体'''という。[[File:理想気体からのズレ 温度一定.svg|thumb|500px|理想気体からのズレ。 温度一定]]
;ファンデルワールスの状態方程式
分子の大きさと分子間力を考慮して、理想気体の状態方程式を改良した'''ファンデルワールスの状態方程式'''がある。
ファンデルワールスの状態方程式は、
:<math> \left(P + \frac{n^2}{V^2} a\right)(V-nb) = nRT </math>
である。a,bは定数であり、aが分子間力、bが分子の大きさを反映したものである。
まず式中のaの係数について考えよう。実在気体はファンデルワールス力により分子同士に引力が働いている。そのため、理想気体と比較すると実在気体の圧力は小さくなる。なぜなら、圧力は気体分子が壁に及ぼす単位面積当たりの力積であり、壁に衝突する分子は分子間力によって箱の内側に向かう力を受ける。そのため壁に及ぼす力積が小さくなるためである。
一つの分子について壁に及ぼす力積の分子間力による減少量は、近くにいる分子が多いほど多くなると考えられるため、体積あたりの物質量(物質量密度) <math>\frac{n}{V}</math> に比例する。さらに、一定時間の間に壁に衝突する分子の数も物質量密度 <math>\frac{n}{V}</math> に比例する。最終的に理想気体からの圧力の減少量は <math>\left(\frac{n}{V}\right)^2</math> に比例すると考えられる。
実在気体の圧力に、ファンデルワールス力による圧力の減少量を補正して、理想気体としたときの圧力に換算すると
<math>P + \frac{n^2}{V^2} a</math>
となる。
係数bは、実在気体の分子が有限の体積を持つことによる体積排除効果を反映している。
<math>V-nb</math>
は正である必要があるので、<math>V>nb</math> となる。この体積の下限は気体分子そのものが占有する体積であり、bは1 mol の分子が占有する体積である。
== 分圧の法則 ==
反応しあわない分子式の異なる気体を混合させた複数種の気体を、一つの密閉した容器に混ぜた気体を、'''混合気体'''という。
混合して生じた混合気体の圧力を、その混合気体の'''全圧'''という。
例として、2種の気体Aと気体Bを混ぜた混合気体を考える。混合気体の各成分AとBをそれぞれ別に、Aだけにして同じ容器に同じ温度で入れた時の圧力を気体Aの'''分圧'''という。同様に、気体Bを気体Bだけにしておなじ容器に同じ温度で入れたときの圧力を気体Bの分圧という。
気体Aの分圧を<math>p_A</math> として、気体Bの分圧を<math>p_B</math> とすると、全圧pと分圧の間に次の関係が成り立つことが知られている。
<math> p=p_A +p_B </math>
このような、「全圧は分圧の和に等しい。」という関係式を'''ドルトンの分圧の法則'''という。
気体成分が3個以上の場合でも、同様の結果が成り立つ。3種の場合は、気体A,B,Cについて、全圧と分圧の関係は、
<math> p=p_A +p_B+p_C </math>
である。気体成分の種類の数に関わらず、これらの「全圧は分圧の和に等しい。」という関係式を'''ドルトンの分圧の法則'''という。
=== 分圧の法則の導出 ===
分圧の法則は、「混合気体でも、状態方程式が各成分単独の場合と同様に成り立つ」と仮定すれば、状態方程式から分圧の法則を導出できる。この法則は、気体成分の種類が何種類でも成り立つが、説明のため、気体成分は3種類と仮定しよう。混合気体の物質量について、以下のような関係が導出できる。
<math> n= n_A +n_B + n_C </math>
これを示そう。まず、状態方程式より、全圧の状態方程式を表すと、
<math> pv=nRT </math>
である。
このとき、分圧と物質量は、分圧の定義より、次の式になる。
<math> p_A v=n_A RT </math>
<math> p_B v=n_B RT </math>
<math> p_C v=n_C RT </math>
これ等の3個の式を足し合わせると
<math> (p_A +p_B +p_C ) v= ( n_A +n_B + n_C ) RT </math>
これを、pv=nRTで割ると、
<math> \frac{p_A +p_B +p_C }{p} = \frac{ n_A +n_B + n_C }{n} </math>
また、物質量の<math> n </math> と、 <math> n_A +n_B + n_C </math> との関係は、質量保存の法則より、以下の関係が成り立つ。
<math> n= n_A +n_B + n_C </math>
これより、
<math> \frac{p_A +p_B +p_C }{p} = \frac{ n_A +n_B + n_C }{n} =1 </math>
つまり、
<math> \frac{p_A +p_B +p_C }{p} =1 </math>
両辺に分母を掛けて
<math> p_A +p_B +p_C =p </math>
これは、分圧の法則に他ならない。
かくして、ドルトンの分圧の法則は導出された。
=== 分圧とモル分率の関係 ===
混合気体の物質量の総和に対する、各成分の物質量の比を'''モル分率'''という。
たとえば、3種類の混合気体A,B,CにおけるAのモル分率は
<math> \frac{n_A}{n} </math>
である。
同様に、Bのモル分率は、
<math> \frac{n_B}{n} </math>
である。
モル分率と全圧について、次の関係式が成り立つ。
各成分の分圧は、全圧にその成分のモル分率を掛けたものに等しい。
<math> p_A v=n_A RT </math> ・・・(1)
<math> pv=nRT </math> ・・・(2)
これより、(1)を (2)で割って、
<math> \frac{p_A}{ p}= \frac{n_A}{n} </math>
分母の全圧pを両辺に掛ければ、
<math> p_A = p \frac{n_A}{n} </math>
となり、命題「各成分の分圧は、全圧にその成分のモル分率を掛けたものに等しい。」を状態方程式から導出できた。以上。
=== 水上置換法の分圧 ===
水素H<sub>2</sub>などを水上置換法で集める場合を考える。水上置換法で集められる気体は、水蒸気の混じった混合気体である。捕集した気体の圧力には、水蒸気の分圧が含まれている。
この例の水素の場合、水素のみの分圧を求めたい場合は、捕集した気体の全圧から、水蒸気の分圧を差し引く必要がある。
つまり水素の分圧<math> p_{H_2}</math>は、全圧<math>P </math>から水蒸気の分圧<math>p_{H_2 O} </math>を差し引いた値になる。
<math> p_{H_2} = P - p_{H_2 O} </math>
大気圧下での水蒸気圧については表などで与えられるので、それを利用する。なお、参考値を言うと、温度27 ℃で、水蒸気圧は 3.6 kPa である。
=== 平均分子量 ===
酸素と窒素のまじった大気中の空気などのように、2種類以上の気体が混在してる時、この混合気体を、仮に1種類の気体からなると仮定して、その気体の分子量を算出したものを'''平均分子量'''という。たとえば、空気は混合気体であり、主成分の窒素と酸素の物質量の割合が、
窒素:酸素=4:1
であるが、モル質量が窒素28 g/molであり、酸素は32 g/molなので、空気の平均分子量は
28.0 g/mol × <math>\frac{4}{5}</math> + 32.0 g/mol × <math> \frac{1}{5}</math> = 28.8 g/mol
となる。
実際にはアルゴンや二酸化炭素なども含まれているので、これより少し式や値は変わるが、ほとんど同じ値になる。
以上の例では、大気中の空気を例に平均分子量を解説したが、なにも空気で何くても平均分子量は必要に応じて定義される。
[[カテゴリ:高等学校化学|きたいのせいしつ]]
[[カテゴリ:気体]]
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高校化学 溶液の性質
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{{pathnav|高等学校の学習|高等学校理科|高等学校化学|[[高等学校 化学|化学]]|pagename=溶液の性質|frame=1|small=1}}
== 溶液 ==
[[Image:SaltInWaterSolutionLiquid.jpg|thumb|水に食塩を溶かし食塩水を作っている時の画像。]]
水 H<sub>2</sub>O に、塩化ナトリウム NaCl を、混ぜると、塩化ナトリウムは水中に拡散していき、やがて肉眼では見えなくなる。そして、混ぜた食塩の量が少なければ、水中にも食塩は沈殿しない。このように、液体に混ぜた物質が、沈殿や凝集物を作らず、液中に拡散することを'''溶解'''という。そして、水のように他のものを溶解する物体を'''溶媒'''という。塩化ナトリウムのように溶けた側の物質を'''溶質'''という。
溶媒が液体の場合に、溶解によって生じた均一な混合液体を'''溶液'''という。
この例の場合は、食塩の量をもっと増やすと、やがて、かき混ぜても、溶けきらずに、時間が経てば底に食塩の沈殿が貯まるようになる。
このように、一定量の溶媒に溶ける溶質の量には限度がある。この溶ける限度の限界まで、溶質が溶けている状態の溶液を'''飽和溶液'''という。これに対して、溶質がまだ溶ける溶液を'''不飽和溶液'''という。
== 電解質 ==
塩化ナトリウムNaClを水に溶かすと、ナトリウムイオンNa<sup>+</sup>と塩素イオンCl<sup>-</sup>のような、正負のイオンに分かれる。このように溶解の際に、イオンに分かれる現象を'''電離'''という。そして、水に解けて電離する物質を'''電解質'''という。
グルコースの溶液は、水に溶けても電解しない。このような水に溶けても電解しない物質を'''非電解質'''という。
電解現象と溶解とを混同しないように注意しよう。
電解質のうち、塩化ナトリウムの水溶液と、酢酸の水溶液との比較をすると、酢酸は溶解をするし電離もするが、塩化ナトリウムよりも電離しづらいことが分かっている。
電解質のうち、塩化ナトリウムのように電離をしやすい物質を'''強電解質'''という。酢酸のように、溶液中のイオンの電離が弱い物質を'''弱電解質'''という。
== 水和 ==
[[File:Dipole water.png|thumb|150px|水分子の極性の概念図。]]
[[File:Na+H2O.svg|thumb|水分子によって水和したナトリウムイオン。]]
水分子の酸素原子が分子中の電子を引き付けるため、酸素原子は負の電荷を帯び、水素原子は正の電荷を帯びる。このような分子を極性分子という。
塩化ナトリウムを水に入れると、電離したそれぞれのイオン原子1個ずつについて、ナトリウムイオンNa<sup>+</sup>は水分子の陰性の酸素原子と引き合い、塩素イオンCl<sup>-</sup>は水分子の陽性の水素原子と引き合う。その結果、イオン原子は、周囲を水の分子によって囲まれる。
このように、溶質原子が水分子によって取り囲まれる現象を'''水和'''という。溶媒が水でない場合には、イオンが溶媒に取り囲まれるこのような現象は、'''溶媒和'''と呼ばれる。
食塩の水和では、ナトリウムイオンでは隣に水分子の酸素原子の側が来る。塩素イオンでは、隣に水分子の水素原子の側が来る。
水和しているイオンを'''水和イオン'''という。
{{clear}}
== 親水基と疎水基 ==
エタノールC<sub>2</sub>H<sub>5</sub>OHやグルコースC<sub>6</sub> H<sub>12</sub> O<sub>6</sub> などは水に良く溶ける。このエタノールの分子は、分子中にヒドロキシ基 OH を持つ。エタノールでは、このヒドロキシ基の部分が、水分子と水素結合を生じて、エタノール分子が水和をする。グルコース分子も、実はヒドロキシル基を持っており、このヒドロキシ基の部分が、水分子と水素結合を生じて、グルコース分子が水和をする。
このエタノール分子中のヒドロキシ基のように、水和されやすい原子団の部分を'''親水基'''という。水和されやすい性質を'''親水性'''という。
これに対して、ベンゼンC6H6などは水に溶けない。このような分子は極性をもたない無極性分子である。一般に、親水基を持たない無極性分子は、水には溶けない。
また、エタノール分子中のエチル基C<sub>2</sub>H<sub>5</sub>の部分は、極性を持たず、この部分は水和には寄与していない。この分子の他にも、一般の炭化水素CmHnは無極性で、水和には寄与しない。このような、炭化水素のみからなりエタノールと違って親水基を持たない炭化水素分子は水和されにくい。このような親水性をもたない原子団を'''疎水基'''という。水和されにくい性質を'''疎水性'''という。
無極性分子からなるヨウ素I<sub>2</sub>やナフタレンC<sub>10</sub> H<sub>8</sub> は、無極性分子の液体であるベンゼンC<sub>6</sub> H<sub>6</sub>や、四塩化炭素CCl <sub>4 </sub>(テトラクロロメタン)には、よく溶ける。
このように無極性分子の物質は、無極性分子の液体に溶けやすい。いっぽう、極性分子の物質は、極性分子からなる水に溶けやすいのであった。
これらのように、一般に極性の似ている分子は溶けあいやすい。
[[ファイル:Ethanol-structure.svg|thumb|left|200px|エタノールの構造式]]
{{clear}}
== 溶解度 ==
[[Image:SolubilityVsTemperature.png|right|400px|thumb|様々な物質の溶解度曲線]]
ある一定の温度で、ある一定の質量の溶媒に対して、溶質を溶かして、溶質が溶けきる最大限の飽和溶液を得た場合、その飽和溶液に溶けている溶質の量を'''溶解度'''という。つまり、溶解度とは、未混合の溶媒に対して、この溶媒は、これから、どれだけの溶質を溶かせるかという能力のことである。溶解度と濃度とは、別の概念なので、混同しないように。
溶解度の数値の表し方は、2種類ある。
一般的なのは、溶媒の質量100gに対して、溶かせる溶質の質量の割合、またはその溶質の質量で定義する方法である。
溶解度の単位は、無次元で表す場合もあるが、無次元だと状況が分かりづらいという考えのもと、g/100gや、gなどと表す場合もある。
溶解度は、溶媒の温度によって変化する。溶媒が水の水溶液の場合、水の温度によって、溶解度は変化する。
水に溶かす溶質では、一般に水の温度が高まるほど、ほとんどの溶質で、溶解度は高まる。ただし、例外的に水酸化カルシウムCa(OH) <sub>2</sub>など、いくつかの分子では、温度上昇によって溶解度が下がる物質もある。
溶解度の温度変化をグラフで表したものを'''溶解度曲線'''という。
== 再結晶法 ==
不純物の混ざった混合物の固体に対して、その各成分の溶解度が大きく異なる場合は、その混合質を、熱した溶媒に飽和するまで溶かし、飽和後に冷却をしていけば、溶解度の小さい物質の側から先に、結晶が析出をしていくので不純物を取り除ける。このように、何らかの方法で溶質の結晶を析出させて不純物を取り除き精製する方法を'''再結晶法'''という。
再結晶という語について、この例では、水溶液を用いた再結晶を紹介したが、再結晶とは、なにも水溶液にかぎらず、何らかの方法で結晶をいったん溶解または溶融させて、そのあとに結晶を析出させてえられた結晶ならば、一般に再結晶という。
なお、溶媒を冷却していく時に、あらかじめ他の実験で得られた、その物質の、平均的な溶解度を超えるまで冷やしても、析出しない場合がある。このように通常の溶解度を超えて溶質を含んでいる状態を'''過飽和'''という。溶質を溶解度よりも過飽和に含んでいる溶液のことを'''過飽和溶液'''という。過飽和の状態は不安定であるので、過飽和溶液の場合は、少量の撹拌や振動などが加わるだけで、結晶の析出を始める。
溶質の種類によっては、再結晶法で結晶分子中に水分子が化合した結晶が得られる場合がある。このように結晶分子と化合している水を結晶水あるいは水和水という。結晶水は、加熱などによって除去できる場合が多い。
結晶から水和水を除去することを無水化などという。無水化して得られた結晶水を含まない固体を'''無水物'''という。
結晶が水和水を含む物質に対する溶解度の定義は、無水物の質量を、溶質の質量とみなして、溶解度を定義する。
== 沸点上昇 ==
砂糖水や食塩水は、100 ℃にしても沸騰しない。
不揮発性の溶質を溶媒に溶解させると溶液の沸点が上昇する現象を'''沸点上昇'''という。
純溶媒の沸点t<sub>1</sub> と溶液の沸点t<sub>2</sub>との沸点の差Δt<sub>b</sub>=t<sub>2</sub>- t<sub>1</sub>を'''沸点上昇度'''という。
水が蒸気になる時に、水に溶けていた溶質は蒸気からは追い出され、蒸気には溶質は混じらない。このときに、溶質を追い出すためには、蒸気にエネルギーを与えなければならない。その結果、溶質がなかった場合より、高い温度にしないと沸騰しないのである。
沸点上昇Δt<sub>b</sub> は質量モル濃度cに比例するので、式で書けば、
:Δt<sub>b</sub> = K<sub>b</sub> c
である。
なお、質量モル濃度とは、溶媒 1kgあたりに溶けている、溶質の物質量のことである。
なお、沸点上昇度Δt<sub>b</sub>の比例係数をK<sub>b</sub> とした。比例係数K<sub>b</sub> の単位は、K/(mol/kg)つまりK・kg/molで定義される。この比例係数K<sub>b</sub>を'''モル沸点上昇'''という。
=== 蒸気圧降下 ===
[[Image:Water vapor pressure graph.jpg|thumb|right|300px|水の蒸気圧を縦軸に取って、温度(単位は℃)を横軸に取ったグラフ。<br> 水は通常は100度において沸騰し、その時の蒸気圧は101.325kPaという標準的な大気圧に等しい。]]
真空ポンプなどで水が入った溶液の周囲の気体を減圧していくと、100 ℃にならなくても沸騰する。このときの気体圧を'''飽和蒸気圧'''という。この飽和蒸気圧が、溶液では下がり、より減圧しないと沸騰しなくなる。このことを'''蒸気圧降下'''という。
== 凝固点降下 ==
砂糖水や食塩水を冷やしても0 ℃では凍らない。このように不揮発性の溶質を溶媒に溶かすと溶媒の凝固点が下がる。
水が氷になる時に、溶質を追い出す。このときに、溶質を追い出すためには、溶質の動きを押さえなければならない。その結果、溶質がなかった場合よりも低い温度にしないと氷にならないのである。
不揮発性の溶質を溶媒に溶解させると溶液の凝固点が下がる現象を'''凝固点降下'''という。
純溶媒の凝固点t<sub>1</sub>と溶液の凝固点t<sub>2</sub>との凝固点の差Δt<sub>f</sub>=t<sub>1</sub>- t<sub>2</sub> を'''凝固点降下度'''という。
凝固点降下度は質量モル濃度 m に比例するので、凝固点降下度 Δt<sub>f</sub> の比例係数を K<sub>f</sub> としたとき、つまり
:Δt<sub>f</sub> = K<sub>f</sub> m
の比例係数 K<sub>f</sub> の単位は、K・kg/mol である。この比例係数 K<sub>f</sub>を'''モル凝固点降下'''という。
== 過冷却 ==
[[File:Supercooling cooling-curve jp.svg|thumb|600px|過冷却]]
右図のように、冷却による温度変化と時間との関係をあらわしたグラフのことを'''冷却曲線'''という。
液体を冷却していって凝固点になっても、すぐには凝固しない。この状態を'''過冷却'''という。
冷却が進んで凝固点よりも少し温度が下がってから、凝固点まで温度が上がり、凝固が始まる。
凝固点降下と過冷却の関係は、右図のグラフのようになる。
== 浸透圧 ==
=== 半透膜 ===
セロハンは、水分子など小さな分子は通すが、スクロース分子などの大きな分子を通さない。このように、分子サイズの小さな分子を通し、分子サイズの大きな分子を通さない膜を'''半透膜'''という。
半透膜には、セロハン膜の他にも、動物の膀胱膜や、セルロースを硝酸でニトロ化した化合物の一種のコロジオンという物質から作られるコロジオン膜や、生物の細胞膜がある。
ろ紙はセルロースなどの溶質を通してしまうため、ろ紙は半透膜ではない。
=== 浸透圧 ===
[[Image:Pressione osmotica.jpg|thumb|濃度を均等にしようと、浸透がされる。]]
U字管の下部を半透膜で仕切って、片側に純水を入れ、もう片方にスクロース溶液を入れると、純水の一部がスクロース溶液の側に移動して、純水の液面が下がる。この現象を浸透という。このように両溶液に濃度差がある場合は、溶液を薄めて濃度差を無くそうとする力が働くので、この濃度差を無くそうとする力を'''浸透圧'''という。
両液の水位を等しくするには、スクロース水溶液に圧力を加えないといけない。この圧力の大きさを浸透圧の大きさとする。
浸透圧を数値化する際や数式化する際に、純水を基準にして、純水と溶液との浸透圧を、単に浸透圧と言って用いる場合が多い。
=== ファントホッフの式 ===
絶対温度Tで、濃度cの溶液の浸透圧Πは、気体定数をRとして、
Π = cRT
であることが知られている。
モル濃度cは、溶液中のモル数をnとして、その体積をVとすれば、
:c=n/V
である。(1L=1000cm<sup>3</sup>なので、モル濃度を体積に換算できる。)
これを浸透圧の公式に代入して、
:ΠV = nRT
という式が得られる。このように、気体の状態方程式 PV = nRT と似た形の式が得られる。この ΠV = nRT の式を浸透圧に関する'''ファントホッフの式'''という。
== コロイド溶液 ==
[[Image:Milk glass.jpg|right|250px|thumb|牛乳は脂肪が分散したコロイドである。]]
直径がおよそ10<sup>-9</sup> mから、10<sup>-7</sup> mの粒子を'''コロイド粒子'''という。デンプンはコロイド粒子である。
コロイド粒子はろ紙を通過できるが、半透膜を通過できない。
コロイド粒子が液体中に均一に分散している液を'''コロイド溶液'''という。
コロイド粒子を分散させている液体を'''分散媒'''といい、コロイド溶液中のコロイド粒子を'''分散質'''という。
=== コロイドの種類 ===
==== 会合コロイド ====
[[ファイル:Micel_olie_in_water.gif|サムネイル|ミセル]]
セッケン分子は、親水性の水に水和しやすい部分と、疎水性の水とは水和しない部分とからなる。 疎水性の部分が、まるで疎水コロイドと同じように集まり、その結果としてセッケン分子は数百個ほど集まる。しかし、分子に親水性の部分があるので、まるで保護コロイドのように、セッケン分子は沈殿せず、コロイド溶液であり続ける。
このセッケン分子が凝集する際、親水性の部分を外側に向けて集まり、疎水性の部分は内側に向けて集まる。 セッケン分子の集合体のように、親水基と疎水基を持つ分子が、親水基を外側に向けて集合したものを'''ミセル'''という。
このようなコロイドを'''会合コロイド'''という。会合コロイドは親水コロイドの一種に分類される。
[[ファイル:Molekula_mýdla.PNG|中央|セッケン分子の構造]]
==== 分子コロイド ====
デンプンやタンパク質の分子は大きく、分子1個でコロイド粒子として存在する。このようなコロイドを'''分子コロイド'''という。
==== 分散コロイド ====
溶媒には本来溶解しない不溶性物質が細かく分散される事によって構成されるコロイド。 炭素や水酸化鉄など疎水コロイドの多くを占める。
=== 水酸化鉄(Ⅲ)のコロイド溶液 ===
沸騰している水に、塩化鉄FeCl<sub>3</sub> を少量ほど加えると、赤色の水酸化鉄Fe(OH)<sub>3</sub> のコロイド溶液ができる。
:<math> \mathrm{FeCl_3 + 3 H_2 O \rightarrow Fe(OH)_3 + 3HCl} </math>
Fe(OH)<sub>3</sub> は水に不溶であり、これのコロイド溶液は不溶のFe(OH)<sub>3</sub> が水に分散したものである。このような不溶の物質が分散したコロイド溶液を'''分散コロイド'''という。
=== 電気泳動 ===
U字管にコロイド溶液を入れ、電極を用いて、直流電圧を掛けておくと、コロイド粒子はいっぽうの電極の側に移動する。
電気を用いて液体の中から特定の粒子を移動させる現象を'''電気泳動'''(electrophoresis)という。
このことから、コロイド粒子は電荷を帯びている事が分かる。コロイド粒子は溶液ごとに、正または負の電荷を帯びている事が分かる。
水酸化鉄 Fe(OH)<sub>3</sub> は正に帯電している。コロイド粒子が正に帯電している場合を'''正コロイド''' (positive colloid)という。また水酸化アルミニウムAl(OH)<sub>3</sub>は正に帯電している。水酸化アルミニウムも正コロイドである。
一般に金属の水酸化物と液体との混合物がコロイド溶液になる場合は、正コロイドであることが多い。
負電荷び帯電するコロイドを'''負コロイド'''という。負コロイドの具体例は、粘土、イオウS、CuS などの金属硫化物、デンプン,Au, Ag, Pt, などである。
コロイドが沈殿しないのは、この帯電によって、互いの粒子どうしを反発させているからである。
では、なぜコロイドが電荷を帯びるのか。水酸化鉄Fe(OH)<sub>3</sub>のコロイドが正に帯電するのは、化合物中のOH基の部分が、溶液中の陽イオンのH<sup>+</sup>あるいはFe<sup>+</sup>を吸引しやすいからだと考えられている。
セッケンのコロイドでは、コロイド粒子そのものがイオン化している。
セッケンは
:<math> \mathrm{ (R-COONa) \rightarrow (R-COO^{-}) + nNa^{+} } </math>
と電離する。
=== 疎水コロイド ===
水酸化鉄Fe(OH)<sub>3</sub> のコロイド溶液に、少量の電解質を加えるとコロイドが沈殿する。
粘土のコロイド溶液に電解質を加えても同様に沈殿をする。
水酸化鉄は正コロイドであり、粘土は負コロイドであることから、この沈殿現象はコロイドが正負どちらの電荷でも生じる。
少量の電解質で沈殿するのは、最初に加えた電解質によって、コロイド粒子に反対符号のイオンが吸着し、その結果、分子間力が増えた結果、凝集しあって沈殿するからである。
このように少量の電解質で沈殿するコロイドを'''疎水コロイド'''という。疎水コロイドが少量の電解質で沈殿する現象を'''凝析'''という。
海水の陽イオンによって粘土のコロイドが凝集する。これは地理で習う三角州の形成の原因である。
=== 親水コロイド ===
いっぽう、デンプンやタンパク質のコロイドは、多量の電解質を加えないと沈殿しない。このデンプンやタンパク質の化学式を見ると、-OH基や-COOH基や-NH<sub>2</sub>基などの基がある。これらは水と吸着しやすい親水性の原子団の親水基である。
このため、沈殿させるには、水との吸着を無くすために多量の電解質を加えて、溶液全体のイオンにおける、水の影響を薄めて吸着を無くさなければならない。電解質を加えても溶液全体の電荷の合計自体は同じだが、水素結合は、他の結合よりも強いことを思いだそう。
デンプンやタンパク質などのように、水和しているコロイドを'''親水コロイド'''という。
親水コロイドに多量の電解質を加えて沈殿させることを'''塩析'''という。
電気泳動に関して、親水コロイドは水和のため、疎水コロイドと比べて、親水コロイドは移動速度が小さい。
==== 保護コロイド ====
疎水コロイドと親水コロイドとを混ぜたコロイド溶液は、どういった特性を持つだろうか。
疎水コロイドが、電解質を加えても沈殿しにくくなる。
親水コロイドは疎水コロイドと吸着しても、親水コロイドの親水性のため、少量の電解質を加えても親水コロイドは沈殿しない。その親水コロイドと吸着した疎水コロイドは、吸着している親水コロイドが少量の電解質では沈殿しないため、一緒の疎水コロイドも少量の電解質では沈殿しない。
このように親水性の高い親水コロイドとの吸着を仲立ちとして疎水コロイドが沈殿しづらくなる現象を、親水コロイドによる'''保護'''あるいは'''保護作用'''といい、この親水コロイドによる疎水コロイドの保護を目的として加える親水コロイドを加えた場合、その親水コロイドを'''保護コロイド'''という。
保護コロイドの例として、タンパク質の一種であるゼラチンや、墨汁に含まれるニカワなどがある。
ゼラチンもニカワも親水コロイドでもある。
インキに含まれるアラビアゴムも保護コロイドである。ゴムというと、つい連想で輪ゴムのような固体状のものを連想しがちかもしれないが、このアラビアゴムの純物質は、多糖類であり、水溶性が高い親水コロイドである。
=== コロイドの生じる要因 ===
=== ゾルとゲル ===
==== ゲル ====
[[Image:Konnyaku.jpg|thumb|こんにゃく。ゲルの例。]]
ゼラチンのコロイド溶液を冷やすと固体状に固まる。寒天のコロイド溶液を冷やすと固体状に固まる。
このようにコロイド溶液が冷えて固まったものを'''ゲル'''という。
ゲルを乾燥させたものを'''キセロゲル'''(xerogel)という。高野豆腐やシリカゲルは、キセロゲルである。
乾かした寒天やゼラチンなどもキセロゲルである。キセロゲルを水につけると水を吸って膨らむ。これを'''膨潤'''(ぼうじゅん)という。
==== ゾル ====
コロイド溶液とも言う。
コロイド粒子が分散している流動性のある溶液のこと。
=== チンダル現象 ===
コロイド粒子が光を散乱させ、光の通路が輝いて見える現象。
=== ブラウン運動 ===
コロイド粒子が、熱運動する分散媒粒子に衝突されて行う不規則な運動。
== その他(※ 範囲外) ==
水50 mLとエタノール50 mLを混ぜると、合計の容積は97 mLになり、単独の液体の体積の単純な和よりも小さくなる。
これは、エタノール分子の方が水分子より大きいため、エタノール分子の間に水分子が入り込んでいるためである。
[[カテゴリ:高等学校化学|ようえきのせいしつ]]
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高校化学 化学反応の速さ
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== 反応の速さ ==
化学反応の反応速度は、注目した物質の変化の速度で表す。反応速度で濃度に着目するときは、モル濃度の変化速度で考えるのが一般である。
化学反応する物質Aが <math>\Delta t</math> の間に濃度が <math>\Delta [\mathrm A]</math> 変化したとすると、この反応速度 <math>v_A</math> は <math>v_A = \left|\frac{\Delta[\mathrm A]}{\Delta t}\right|</math> と表される。
ここで、絶対値がついているのは、反応速度を正の値にするためである。
Aが反応物で、Bが生成物の場合は、Aの濃度は減少するためため、 <math>\Delta [\mathrm A] < 0</math> なので、 <math>v_A = -\frac{\Delta[\mathrm A]}{\Delta t}</math>である。反応物Bの濃度は増加するため、<math>\Delta [\mathrm B] > 0</math> より、<math>v_B = \frac{\Delta[\mathrm B]}{\Delta t}</math> である。
具体的に、<chem>H2 + I2 -> 2HI</chem> の反応速度について考えよう。
注目する物質が3種類あるので、濃度変化の速度の定義には、3通りの定義の仕方が生じる。物質によって、反応速度が違ってしまうと不便なので、そういうことが無くなるように、定義式で化学反応式の係数の逆数を濃度変化速度に掛けるのが一般である。
つまり、以上をまとめると、このHIの反応での3種類の物質の反応速度vの定義式は以下のようになる。
<math> v=-\frac{\Delta [\rm H_2]}{\Delta t}=-\frac{\Delta [\rm I_2]}{\Delta t}=\frac{1}{2} \frac{\Delta [\rm HI]}{\Delta t} </math>
なお、反応速度の単位には mol/(L・min) を用いるのが一般である。
以上は反応速度の定義式であった。
つぎに、実際の化学反応で、反応速度を性質を考えよう。まず、ヨウ化水素HIの生成の例で考えよう。水素 H とヨウ素 I の濃度を色々変えて実験された結果、次の結果が、実際の測定でも確認されている。
反応速度vは、左辺の反応物<math> [\rm H_2] </math>と<math> [\rm I_2] </math>の濃度に比例する。つまり、
<math> v=k[\rm H_2][\rm I_2] </math>
である。ただしkは、反応速度の比例定数。この式の意味を考えてみれば、反応が起こるには、反応に必要な物質どうしが接触または衝突することが必要なのであろうということが想像できる。
他の物質の化学反応の場合も考慮して、反応速度の一般の式を求めよう。
a[A]+b[B] +c[C]+ ・・・・ → x[X]+y[Y]+・・・・
となるとき、ほとんどの物質で、反応速度は次の式で表される。反応速度は、
<math> v=k {[\rm{A}]}^a \cdot [{\rm B}]^b \cdot [{\rm C}]^c </math>
となる。
反応速度の式で、係数のaを[A]に乗じたりしているのは、たとえばa=3のときには、反応式
3[A] + b[B] ・・・・ → x[X]+y[Y]+・・・・
の式は、以下のように、
[A] + [A] + [A] + b[B] ・・・・ → x[X]+y[Y]+・・・・
のように書けるからである。
==== 多段階反応と律速段階 ====
上記のような例に従わない場合の、代表的な例として <chem>N2O5</chem> がある。この物質の反応の仕組みも解明されているので、これを説明する。まず <chem>N2O5</chem> の反応式は、
<chem> 2N2O5 -> 2N2O4 + O2 </chem>
である。式から推定した反応速度vは、
<math> v=k [\rm N_2O_5]^2 </math>
である。しかし、実際の反応速度を測定した結果は、
<math> v=[\rm N_2O_5] </math>
である。
では、次にこの謎を解明しよう。
じつは、<chem>N2O5</chem> から <chem>N2O4</chem> が生成される反応は、ひとつの反応では無いのである。
以下に示すような順序で、4個の反応が行われているのである。
<chem> N2O5 -> N2O3 + O2 </chem> ・・・・(1)
<chem> N2O3 -> NO + NO2 </chem> ・・・・(2)
<chem> N2O5 + NO -> 3NO2 </chem> ・・・・(3)
<chem> 2NO2 -> N2O4 </chem> ・・・・(4)
この一つ一つの反応を'''素反応'''という。また、<chem>N2O5</chem>の反応のように、複数の素反応からなる反応を'''多段階反応'''という。
式(1)の左辺の反応物と式(4)の右辺の生成物を見ると、<chem>N2O5</chem> と <chem>N2O4</chem>がある。これが反応速度の謎の正体である。
式(1)から式(2)、式(3)、式(4)のそれぞれの反応速度を、反応式から推定すると、
<chem> N2O5 -> N2O3 + O2 </chem> ・・・・(1) <math> v_1 = k_1 [\rm N_2O_5] </math>
<chem> N2O3 -> NO + NO2 </chem> ・・・・(2) <math> v_2 = k_2 [\rm N_2O_3] </math>
<chem> N2O5 + NO -> 3NO2 </chem> ・・・・(3) <math> v_3 = k_3 [\rm N_2O_5] [NO] </math>
<chem> 2NO2 -> N2O4 </chem> ・・・・(4) <math> v_4 = k_4 [\rm NO_2]^2 </math>
となる。実験の結果では、4つの素反応の中で、もっとも反応速度が小さいのは式(1)の反応であることが知られている。このように、多段階反応では、もっとも反応速度が遅い反応によって、全体の反応速度が決まる。
全体の反応を決定する素反応を'''律速段階'''という。
=== 反応速度を変える条件 ===
* 温度の影響
温度が増えると、常温付近では、だいたい10℃あがるごとに、反応速度が2倍から3倍程度になる。
この理由は、温度が増えると、活性化エネルギー以上のエネルギーをもつ分子が増えるからである。
* 触媒の影響
触媒もまた、反応速度を変える。前の節で既に記述したので、必要ならば参照のこと。
=== アレニウスの式 ===
化学者のアレニウスが、多くの物質の反応速度と温度との関係を調べた結果、実験法則として、以下の関係式が分かった。
反応速度定数kは、活性化エネルギーを <math> E_a </math> 絶対温度をTとすると、以下の式で表される。
<math> k=A e^{\frac{-E_a}{RT}} </math>
ここで、Rは気体定数、eはネイピア数である。
この実験式を'''アレニウスの式'''という。
<!--
==== 分子運動論によるアレニウスの式の解釈 ====
アレニウスの式の意味は、状態方程式を用いて、分子運動論的に、これを解釈できる。(高等数学などを用いた、より詳細な分子運動論の解明が、マクスウェルやボルツマンらによってなされたが、高校レベルを超えるので、それは省く。)
まず、ここでは高校レベルの気体分子運動論を用いた説明をする。
状態方程式 PV=nRT を用いよう。これを位置エネルギーの概念と組み合わせる。(ここでエネルギーと組み合わせて説明するのは、化学では、結合エネルギーやイオン化エネルギーなど、エネルギーを用いるので、それと組み合わせて説明しようという思惑が、我々にはあるということを、読者は念頭に置こう。)
空気中で、圧力と位置エネルギーの概念を組み合わせると、気圧による重さの概念が出てくる。
気圧とはその上にある空気の重さによる圧力および力のことだから、高さがΔhだけ上昇したときの気圧の変化ΔPは
ΔP = -ρg Δh
である。
右辺にマイナスの符号がつくのは、標高が高くなるほど気圧が下がるからである。
いっぽう、気体の状態方程式 PV=nRTは、ボルツマン定数k_Bを用いれば
<math>PV=N K_B T </math>
に書き換えられる。ボルツマン定数は高校物理(3年生の程度)で習うので、物理を参照のこと。ボルツマン定数を知らなければ、ここでは、とりあえず、普遍気体定数Rが、分子1molあたりの温度と圧力と圧力の関係式の係数だったのに対し、ボルツマン定数は分子1個あたりの関係式の係数と思っておけば良い。
上式で、nは空気分子のモル数[mol]であり、Nは空気分子の粒子数、k_Bはボルツマン定数とする。
状態方程式を圧力の方程式 ΔP = -ρg Δh と連立させるため、状態方程式を式変形して、密度の方程式にしよう。空気分子1個あたりの質量をmとすると、
<math> P = (N/V) k_B T = (Nm/V) k_B T /m </math>
密度ρは
ρ = Nm/V
だから、圧力を密度を用いて表せば、
P = ρkT/m
である。
さて、以降の説明では高さhが変わっても絶対温度は T= (一定) とする。
気圧Pが標高で変わるように、P,n,N、ρは高さhの関数である。従って、関数で有ることが分かるように、
P(h) [Pa] , n(h) [mol] ,N(h) 、 ρ(h) [g/m^3] などと書こう。
<math> P(h)V = n(h)RT = N(h) k_B T </math>
気圧の変化式 ΔP = -ρg Δh と状態方程式 <math> P(h)V=n(h)RT=N(h) k_B T </math> で割って連立して、
<math> \frac{\Delta P}{P} = \frac{-\rho g \Delta h}{\rho k_B T/m} = \frac{-mg \Delta h}{k_B T} </math>
となる。よって
<math> \frac{\Delta P}{P} = \frac{-mg \Delta h}{k_B T} </math>
ここで T= (一定) に注意して、上式を積分して解くと、
<math> P = Ce^{-mg \Delta h/(k_B T)} </math>
・・・ただしCは積分定数であり任意定数。
となる。
高さ h=0 での気圧を P(0) とすれば、高さhでの気圧P(h)は、
<math> P(h) = P(0) e^{ \frac{-mg \Delta h}{k_B T} } </math>
となる。この式により、圧力を測ることで、高さを算出できるので、この式を測高公式という。
実際に、気圧を用いて標高を簡易的に測る標高計や高度計などの測定器は実在する。
さて、我々の思惑は化学反応のアレニウスの式
<math> k=A e^{\frac{-E_a}{RT}} </math>
である。まだ、測高公式で終わりではない。
この式と、個数あたりに変形した状態方程式<math> PV = N k_B T </math>により
<math> \frac{P(h)}{P(0)} = \frac{N(h)k_B T / V}{N(0)k_B T/V} = \frac{N(h)}{N(0)} = e^{\frac{-mg \Delta h}{k_B T}} = e^{\frac{-mg (h-0)}{k_B T}}=e^{\frac{-mg h)}{k_B T}} </math>
となり、上式の途中の式変形を省いてまとめると、
<math> \frac{P(h)}{P(0)} = e^{\frac{-mg h}{k_B T}} </math>
となる。だいぶ、アレニウスの式に近づいたが、まだアレニウスの式ではない。
圧力の比の式を、分子数の比の式 N(h)/N(0) に変える必要がある。または密度の比 ρ(h)/ρ(0)であっても良い。
空気分子の比は、
<math> \frac{N(h)}{N(0)} = e^{\frac{-mg h}{k_B T}} </math>
となる。ここで、読者は、上式で、空気分子数の比は、空気分子の存在確率の比でもある、と考えなさい。
つまり,空気分子の存在確率を pr とすると、確率prは<math> e^{\frac{-mg h}{k_B T}} </math>に比例する。
そして、上式は、空気分子のエネルギー状態に対する、その存在確率の公式だと、考えなさい。
つまり mgh を位置エネルギー E=mgh とおいて、
pr ∝ <math> e^{-\frac{E}{k_B T}} </math>
と、考えるのである。
<math> e^{-\frac{E}{k_B T}} </math> のことを、'''ボルツマン因子'''という。
さて、物理現象には、「温度が高くなるほど、○○が増える」という現象が、いろいろと存在する。
これらの他の現象にも、ボルツマン因子の考え方は適用でき、多少の式変形を伴うが、実は物理学や化学の色々な関係式で、ボルツマン因子が活用できることが分かっている。
化学反応におけるアレニウスの式も、その一つであることが分かっている。
実際に式変形をすると、ボルツマン因子の
<math> e^{-\frac{E}{k_B T}} </math>
のエネルギーEを活性化エネルギー<math> E_a </math>にして、式中の指数の分母のボルツマン定数
<math> k_B </math>
を代わりに普遍気体定数Rにすれば、アレニウスの式の指数部分と同じになる。なお、アレニウスの式は
<math> k=A e^{-\frac{E_a}{RT}} </math>
で、あった。このkは反応速度係数であり、ボルツマン定数では無いので、混同しないように注意。
;備考
歴史的には、アレニウスはボルツマンの研究とは独立して、さまざまな実験結果を整理することから、アレニウスの式を発見した。
また、ボルツマンがボルツマン因子を発見したのは、物理学者マクスウェルらによる気体分子運動論の理論を発展させた結果からであって、べつに上式のように状態方程式から発見したのでは無い。
また大学教育では、教員らが学生への教育で、マクスウェルらが用いた数学的な手法を、先に学生に教育したいという教育的な都合によって、紹介が省かれる場合も有る。
そのような理由から、大学レベルの物理の書籍では、測高公式によるボルツマン因子の定式化を紹介しない場合もある。
もっとも紹介しない本があると言っても、紹介してる学術書も有る由緒ある考え方なので心配なく学習して良い。
たとえば、米国の著名な物理学者ファインマンによる彼の物理の書籍<ref>ファインマン、『ファインマン物理学〈2〉光・熱・波動』、岩波書店</ref>でも、測高公式による確率的な考え方は、紹介されている。
なお物理学の計算では、計算の簡略化のため、<math> \beta = 1/(k_B T) </math> と置いて、ボルツマン因子を
<math> e^{(-\beta E)} </math>
とも、あらわす場合もある。この場合、<math> \beta </math>は温度<math> T </math>の関数になる。
-->
== 活性化エネルギー ==
[[File:ヨウ化水素の活性化エネルギー.svg|thumb|350px|ヨウ化水素による活性化エネルギーの説明]]
[[File:Activation energy ja.svg|right|thumb|300px|活性化エネルギーの概念図。図中の値の大小関係は、本文中のものとは違うので注意。]]
たとえば、ヨウ化水素HIの生成の反応、つまり、ヨウ素Iと水素Hを容器に入れて高温にして起こす反応では、
<chem> H2 + I2 -> 2HI </chem>
では、なにも熱を加えない常温のままだと、反応は起こらない。また結合エネルギーの和は、左辺の <math> \rm H_2 + I_2 </math> のほうが右辺の2HIの和より大きい。エネルギー的にはエネルギーの低いほうが安定なので、2HIのほうが安定なはずなのに、熱を加えないと、反応が始まらないのである。
この状態から察するに、化学反応をする原子は、もとの分子よりエネルギーの高い状態を経由する必要がある。
たとえば、ヨウ化水素の生成の反応
<chem> H2 + I2 -> 2HI </chem>
では、解離エネルギーにより推測される必要なエネルギーと、実際の反応に要するエネルギーが一致しない。解離エネルギーを考えると、
<math> H_2 + 432 kJ \rightarrow H + H </math>
<math> I_2 + 149 kJ \rightarrow I + I </math>
により、合計で432 + 149 = 581 kJ のエネルギーが必要だと推測できる。しかし、実際の反応でのエネルギーは、そうではない。
HIの2molの生成でも、必要なエネルギーは348 kJ が必要であり、これは、解離エネルギーの和の581 kJよりも小さい。なお、この場合のヨウ化水素の反応温度は、およそ400 ℃である。348 kJを 1 molあたりに換算すると、174 kJ/molである。
以上のような実験結果から、実際の反応では、分子は解離状態を経由しないと考えられている。代わりに経由するのは、活性化錯体という状態であり、高温などのエネルギーを与えた状態の間のみに生じる、反応分子どうしの複合体である'''活性化錯体'''という複合体を経由して、そこから結合相手を変えて反応式右辺の生成物(この場合はHI)を生じる反応が行われていると考えられる。
この反応物と生成物との中間の状態を'''遷移状態(活性化状態)'''と言い、その活性化状態にするために必要な最小のエネルギーを'''活性化エネルギー'''という。反応が起こるためには、活性化エネルギー以上のエネルギーが分子に加わる必要がある。
=== 触媒 ===
一般に、反応において、その反応に適した触媒があれば、活性化エネルギーは小さくなる。そのため、適した触媒により、反応がより速く進むようになる。
では、下記に具体例を見ていこう。
過酸化水素水 <chem>H2O2</chem> は、そのままでは、常温では、ほとんど分解せず、ゆっくりと分解する。
<chem> H2O2 -> 2 H2 O + O2 </chem>
しかし、少量の二酸化マンガンを加えると、分解は速まり、酸素の発生が激しくなる。そして、二酸化マンガンの量は、反応の前後では変化しない。この二酸化マンガンのように、自身は量が変化せず、反応の速度を変える働きのある物質を'''触媒'''という。
触媒では、反応熱は変わらない。
この二酸化マンガンのように反応速度を上げるものを正触媒という。また、反応速度を下げる触媒を負触媒という。ふつう、触媒といったら、正触媒のことを指す。
正触媒で反応速度が増える仕組みを分子レベルで考察すれば、一般に、触媒の表面では、触媒の吸着力により、もとの結合が弱められ、そのため、反応物の活性化錯体を作るエネルギーが減少し、したがって原子の組み換えをするためのエネルギーが減少したことから活性化エネルギーが減少するからである。
{{clear}}
[[File:触媒とヨウ化水素の活性化エネルギー.svg|thumb|350px|ヨウ化水素の反応における、触媒と活性化エネルギーの関係。]]
ヨウ化水素の場合、白金が触媒になる。白金があると、ヨウ化水素の反応での活性化エネルギーが小さくなる。また、活性化エネルギーが小さくなったため、反応も速くなる。触媒があっても、反応熱は変化しない。
== 脚注 ==
<references />
[[カテゴリ:高等学校化学|かかくはんのうのはやさ]]
[[カテゴリ:化学反応]]
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中学校社会 歴史/人類の出現
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私達、現在の人間の直接の祖先である 新人 ( しんじん ) が、20万年前には、あらわれていました。 新人を、 現生人類 ( げんせいじんるい ) とも言い、また、 ホモ=サピエンス とも言います。 フランス南部からは クロマニョン人 のあとが発見されています。
現生人類を含む、直立姿勢を完成した脳の大きな人類。 もともとギリシア哲学以来、人間の本質は英知の優れていることにあると考えられてきた。 これに応じて、賢い人間という意味でこの名がある。
ホモ・サピエンスは約30万~20万年前にアフリカで誕生し、5万年前以降にアフリカを出て、ヨーロッパ、アジア、シベリア、オセアニア、そして米国へと大拡散していったのです。 それ以前に世界各地にいた原人や旧人と、ホモ・サピエンスが生きていた時期は重なりますが、ホモ・サピエンスだけが生き残り、原人、旧人は滅びていきます。
日本列島へのホモ・サピエンスの渡来も、この地球規模の大きな流れの中の一コマとして、捉えることができます。 日本列島にはじめてホモ・サピエンスが現れたのは、今から38000年ほど前のことでした。 かつては、その頃の日本列島とアジア大陸は陸続きで、祖先たちはそこを歩いて渡ってきたと考えられていました。
=== 課題 ===
◉人類は、どこで生まれて、どのように広がっていったのだろう。
◉人類は、どのように生活していたのだろう。
◉猿と人の違いはなんだろうか。
まとめよう。
== {{Ruby|猿人|えんじん}} ==
最初の人類は、次に言う{{Ruby|'''猿人'''|えんじん}}とされています。アフリカのチャドで440万年以上前(約700万年前とされている)の{{Ruby|地層|ちそう}}から発見されている(ここで見つかった猿人をサヘラントロプス=チャデンシスという)猿人は二本足で立って歩ける二足歩行(にそくほこう)が可能だったといわれています。
二足歩行ができるようになった結果、手で使う道具が発達していき、それにともなって知能も発達していったと考えられています。
猿人は石をそのまま使っていただけだった(ただし一部では打製石器を使っていた)。{{Ruby|'''打製石器'''|だせいせっき}}は{{Ruby|旧石器|きゅうせっき}}とも呼ばれます。このような打製石器までしか使っていない時代を{{Ruby|'''旧石器時代'''|きゅうせっきじだい}}といわれています。
さらにその後、{{Ruby|類人猿|るいじんえん}}という種類の人類も誕生しました。類人猿の特徴は直立二足歩行をしていてこの頃から打製石器の本格的な使用を始めました。
その後の100万年〜200万年後の時代の間に、人類はアフリカから出て、各地に散らばっていきました。
== {{Ruby|原人|げんじん}} ==
今から200万年ほど前に{{Ruby|'''原人'''|げんじん}}があらわれました。
アジア大陸の中国の{{Ruby|北京|ペキン}}の近くの{{Ruby|周口店|しゅうこうてん}}からは、 {{Ruby|北京原人|ペキンげんじん}}(シナントロプス=ペキネンシス)のあとが発見されています。
北京原人は火を使用していたことが分かっています。
インドネシアのジャワ島からはジャワ原人のあとが発見されています。
ドイツからはハイデルベルク人が発見されています。
原人は、言葉を話せました。また、火も道具として使っていました。
石器は、打製石器を使っています。旧石器時代にふくまれます。
== {{Ruby|旧人|きゅうじん}} ==
ドイツのネアンデルタールから旧人の '''ネアンデルタール人''' のあとが発見されています。
== {{Ruby|新人|しんじん}} ==
[[Image:Lascaux painting.jpg|thumb|300px|ラスコー洞窟の壁画]]
私達、現在の人間の直接の祖先である{{Ruby|'''新人'''|しんじん}}が、20万年前には、あらわれていました。
新人を、{{Ruby|現生人類|げんせいじんるい}}とも言い、また、 '''ホモ=サピエンス''' とも言います。
あはは
ホモ→ホモ・サピエンス
フランス南部からは '''クロマニョン人''' のあとが発見されています。クロマニョン人が住んでいた洞窟の壁画から、当時の生活がわかり、狩りをしていたらしいことが絵から分かります。
そのほか、クロマニョン人は打製石器や骨角器を使っていました。
フランスの洞窟の壁画のラスコーの壁画や、スペインの洞窟のアルタミラの壁画などから、動物の絵が見つかっており、どうやら狩りの成功を、クロマニョン人は、いのっていたようです。
我が国でも新人は発見されています。
新人になると、磨製石器を使用していたので、新石器時代です。
そして、人類の始まりから原人までは、旧石器の打製石器を使っているので旧石器時代です。
[[Category:中学校歴史|じんるいのしゅつげん]]
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/* {{Ruby|新人|しんじん}} */
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私達、現在の人間の直接の祖先である 新人 ( しんじん ) が、20万年前には、あらわれていました。 新人を、 現生人類 ( げんせいじんるい ) とも言い、また、 ホモ=サピエンス とも言います。 フランス南部からは クロマニョン人 のあとが発見されています。
現生人類を含む、直立姿勢を完成した脳の大きな人類。 もともとギリシア哲学以来、人間の本質は英知の優れていることにあると考えられてきた。 これに応じて、賢い人間という意味でこの名がある。
ホモ・サピエンスは約30万~20万年前にアフリカで誕生し、5万年前以降にアフリカを出て、ヨーロッパ、アジア、シベリア、オセアニア、そして米国へと大拡散していったのです。 それ以前に世界各地にいた原人や旧人と、ホモ・サピエンスが生きていた時期は重なりますが、ホモ・サピエンスだけが生き残り、原人、旧人は滅びていきます。
日本列島へのホモ・サピエンスの渡来も、この地球規模の大きな流れの中の一コマとして、捉えることができます。 日本列島にはじめてホモ・サピエンスが現れたのは、今から38000年ほど前のことでした。 かつては、その頃の日本列島とアジア大陸は陸続きで、祖先たちはそこを歩いて渡ってきたと考えられていました。
=== 課題 ===
◉人類は、どこで生まれて、どのように広がっていったのだろう。
◉人類は、どのように生活していたのだろう。
◉猿と人の違いはなんだろうか。
まとめよう。
== {{Ruby|猿人|えんじん}} ==
最初の人類は、次に言う{{Ruby|'''猿人'''|えんじん}}とされています。アフリカのチャドで440万年以上前(約700万年前とされている)の{{Ruby|地層|ちそう}}から発見されている(ここで見つかった猿人をサヘラントロプス=チャデンシスという)猿人は二本足で立って歩ける二足歩行(にそくほこう)が可能だったといわれています。
二足歩行ができるようになった結果、手で使う道具が発達していき、それにともなって知能も発達していったと考えられています。
猿人は石をそのまま使っていただけだった(ただし一部では打製石器を使っていた)。{{Ruby|'''打製石器'''|だせいせっき}}は{{Ruby|旧石器|きゅうせっき}}とも呼ばれます。このような打製石器までしか使っていない時代を{{Ruby|'''旧石器時代'''|きゅうせっきじだい}}といわれています。
さらにその後、{{Ruby|類人猿|るいじんえん}}という種類の人類も誕生しました。類人猿の特徴は直立二足歩行をしていてこの頃から打製石器の本格的な使用を始めました。
その後の100万年〜200万年後の時代の間に、人類はアフリカから出て、各地に散らばっていきました。
== {{Ruby|原人|げんじん}} ==
今から200万年ほど前に{{Ruby|'''原人'''|げんじん}}があらわれました。
アジア大陸の中国の{{Ruby|北京|ペキン}}の近くの{{Ruby|周口店|しゅうこうてん}}からは、 {{Ruby|北京原人|ペキンげんじん}}(シナントロプス=ペキネンシス)のあとが発見されています。
北京原人は火を使用していたことが分かっています。
インドネシアのジャワ島からはジャワ原人のあとが発見されています。
ドイツからはハイデルベルク人が発見されています。
原人は、言葉を話せました。また、火も道具として使っていました。
石器は、打製石器を使っています。旧石器時代にふくまれます。
== {{Ruby|旧人|きゅうじん}} ==
ドイツのネアンデルタールから旧人の '''ネアンデルタール人''' のあとが発見されています。
== {{Ruby|新人|しんじん}} ==
[[Image:Lascaux painting.jpg|thumb|300px|ラスコー洞窟の壁画]]
私達、現在の人間の直接の祖先である{{Ruby|'''新人'''|しんじん}}が、20万年前には、あらわれていました。
新人を、{{Ruby|現生人類|げんせいじんるい}}とも言い、また、 '''ホモ=サピエンス''' とも言います。
あはは、面白い名前。あっはっはっはっ
ホモ→ホモ・サピエンス
フランス南部からは '''クロマニョン人''' のあとが発見されています。クロマニョン人が住んでいた洞窟の壁画から、当時の生活がわかり、狩りをしていたらしいことが絵から分かります。
そのほか、クロマニョン人は打製石器や骨角器を使っていました。
フランスの洞窟の壁画のラスコーの壁画や、スペインの洞窟のアルタミラの壁画などから、動物の絵が見つかっており、どうやら狩りの成功を、クロマニョン人は、いのっていたようです。
我が国でも新人は発見されています。
新人になると、磨製石器を使用していたので、新石器時代です。
そして、人類の始まりから原人までは、旧石器の打製石器を使っているので旧石器時代です。
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Tomzo
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私達、現在の人間の直接の祖先である 新人 ( しんじん ) が、20万年前には、あらわれていました。 新人を、 現生人類 ( げんせいじんるい ) とも言い、また、 ホモ=サピエンス とも言います。 フランス南部からは クロマニョン人 のあとが発見されています。
現生人類を含む、直立姿勢を完成した脳の大きな人類。 もともとギリシア哲学以来、人間の本質は英知の優れていることにあると考えられてきた。 これに応じて、賢い人間という意味でこの名がある。
ホモ・サピエンスは約30万~20万年前にアフリカで誕生し、5万年前以降にアフリカを出て、ヨーロッパ、アジア、シベリア、オセアニア、そして米国へと大拡散していったのです。 それ以前に世界各地にいた原人や旧人と、ホモ・サピエンスが生きていた時期は重なりますが、ホモ・サピエンスだけが生き残り、原人、旧人は滅びていきます。
日本列島へのホモ・サピエンスの渡来も、この地球規模の大きな流れの中の一コマとして、捉えることができます。 日本列島にはじめてホモ・サピエンスが現れたのは、今から38000年ほど前のことでした。 かつては、その頃の日本列島とアジア大陸は陸続きで、祖先たちはそこを歩いて渡ってきたと考えられていました。
=== 課題 ===
◉人類は、どこで生まれて、どのように広がっていったのだろう。
◉人類は、どのように生活していたのだろう。
◉猿と人の違いはなんだろうか。
まとめよう。
== {{Ruby|猿人|えんじん}} ==
最初の人類は、次に言う{{Ruby|'''猿人'''|えんじん}}とされています。アフリカのチャドで440万年以上前(約700万年前とされている)の{{Ruby|地層|ちそう}}から発見されている(ここで見つかった猿人をサヘラントロプス=チャデンシスという)猿人は二本足で立って歩ける二足歩行(にそくほこう)が可能だったといわれています。
二足歩行ができるようになった結果、手で使う道具が発達していき、それにともなって知能も発達していったと考えられています。
猿人は石をそのまま使っていただけだった(ただし一部では打製石器を使っていた)。{{Ruby|'''打製石器'''|だせいせっき}}は{{Ruby|旧石器|きゅうせっき}}とも呼ばれます。このような打製石器までしか使っていない時代を{{Ruby|'''旧石器時代'''|きゅうせっきじだい}}といわれています。
さらにその後、{{Ruby|類人猿|るいじんえん}}という種類の人類も誕生しました。類人猿の特徴は直立二足歩行をしていてこの頃から打製石器の本格的な使用を始めました。
その後の100万年〜200万年後の時代の間に、人類はアフリカから出て、各地に散らばっていきました。
== {{Ruby|原人|げんじん}} ==
今から200万年ほど前に{{Ruby|'''原人'''|げんじん}}があらわれました。
アジア大陸の中国の{{Ruby|北京|ペキン}}の近くの{{Ruby|周口店|しゅうこうてん}}からは、 {{Ruby|北京原人|ペキンげんじん}}(シナントロプス=ペキネンシス)のあとが発見されています。
北京原人は火を使用していたことが分かっています。
インドネシアのジャワ島からはジャワ原人のあとが発見されています。
ドイツからはハイデルベルク人が発見されています。
原人は、言葉を話せました。また、火も道具として使っていました。
石器は、打製石器を使っています。旧石器時代にふくまれます。
== {{Ruby|旧人|きゅうじん}} ==
ドイツのネアンデルタールから旧人の '''ネアンデルタール人''' のあとが発見されています。
== {{Ruby|新人|しんじん}} ==
[[Image:Lascaux painting.jpg|thumb|300px|ラスコー洞窟の壁画]]
私達、現在の人間の直接の祖先である{{Ruby|'''新人'''|しんじん}}が、20万年前には、あらわれていました。
新人を、{{Ruby|現生人類|げんせいじんるい}}とも言い、また、 '''ホモ=サピエンス''' とも言います。
ホモ→ホモ・サピエンス
フランス南部からは '''クロマニョン人''' のあとが発見されています。クロマニョン人が住んでいた洞窟の壁画から、当時の生活がわかり、狩りをしていたらしいことが絵から分かります。
そのほか、クロマニョン人は打製石器や骨角器を使っていました。
フランスの洞窟の壁画のラスコーの壁画や、スペインの洞窟のアルタミラの壁画などから、動物の絵が見つかっており、どうやら狩りの成功を、クロマニョン人は、いのっていたようです。
我が国でも新人は発見されています。
新人になると、磨製石器を使用していたので、新石器時代です。
そして、人類の始まりから原人までは、旧石器の打製石器を使っているので旧石器時代です。
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高等学校倫理/ギリシャの思想Ⅱ
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椎楽
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== 古代ギリシア ==
[[File:古代ギリシャ関連地図.png|thumb|400px|古代ギリシアの植民地]]
古代ギリシア人は当初、古代エジプト文明の影響を受けて文化を発達させてきた。やがて、古代ギリシア人は独自の文化を作り上げ、建築や彫刻などの美術の世界にすぐれた創造力を発揮しただけでなく、今なお読み次がれる文学を生み出し、哲学を生み出した。また、ポリス(都市国家)という共同体の中で民主的な社会制度を作り上げていった。
ギリシア文化がその後の西洋思想や様々な学問に与えた影響は計り知れない。特に理性的にものごとを考察しようとする合理的精神や人間のあるべき姿を追求する理想主義の生き方は古代ギリシアが後世に伝えたすぐれた遺産である。
=== ポリス ===
古代ギリシアの文化を生み出し、育んだのがポリスの生活である。それぞれのポリスには国家の守護神を祭る神殿のほか、アゴラ(公共広場)や野外劇場などがあり、市民たちはそこでの生活を通じて所属するポリスへの愛着や他のポリスへの競争心を育てていった。
ポリスごとに政治体制などの違いがあり、絶えずポリス間の抗争はあったが、言語・宗教・デルフィの神託・オリンピックの元になったオリンピアの祭典などによって、一民族としての意識は持ち続けていた。また、古代ギリシア社会は多数の奴隷による労働によって支えられた奴隷制社会であり、市民だけが自由であった。市民たちにとっては、労働とは奴隷のすることとみなされた。市民は政治に参加したり、軍務に着いたり、学問や芸術についてアゴラで対話したりすることの方が大切だとされた。このようなポリスでの生活と文化がその後のギリシア哲学の形成に大きな影響を与えることになる。
== 哲学のはじまり ==
=== 自然哲学 ===
ギリシアで哲学が生まれたのは紀元前6世紀ごろである。人々は「人間とは何か」「世界はどうしてできているのか」といったことを考えるようになった。はじめ、人々はこれらを神々の働きを中心とした神話(ミュトス)によって説明しようとした('''神話的世界観''')。しかし、古代ギリシアの植民都市であったミレトスを中心として、自然を合理的に説明することで、世界や人間存在などの万物の'''根源'''('''アルケー''')について探求する動きが生まれた。そこで重視されたのが、人間固有の能力である理性('''ロゴス'''、logos)に基づいた合理的な考え方である。
そうした中、エジプトで数学を学んだ'''タレス'''は「'''万物の根源は水である'''」と主張し、「水」によって自然界の生成変化を説明しようとした。タレスによる説明の特徴は、ある一つのものを基準としてとらえること(一元論)、経験・観察に基づいていること、世界を感覚可能な自然物によって説明しようとしたことにある。
タレス以降、さまざまな哲学者があらわれ、タレスとは異なるアルケーを主張した。たとえば'''ヘラクレイトス'''は世界を動的にとらえたため、「万物は流転する」ととなえ、アルケーを「火」とした。
また、'''ピタゴラス'''は数学の比例などに注目し、アルケーは「数」であるとした。ピタゴラスは数学上の発見も多い。
'''デモクリトス'''はアルケーを分割不可能な「原子(アトム、アトモン)」であるとした。
このような哲学者たちが、ギリシアおよび周辺のイタリアやエーゲ海東岸の小アジアなどの植民都市に登場し、世界や人間についての自由で大胆な問いを発した。「哲学」はこのように、われわれをとりまく自然界の根源をさぐるいとなみ('''自然哲学''')として出発したのだ。
彼らの著作は長い歴史の中で様々な不運が積み重なって、現代ではまとまったものとして残ってはいない。しかし、その後の西洋哲学の基礎を作り上げたという事実に変わりはない。また、ピタゴラスやデモクリトスなどは数学や自然科学にも多大な影響を与え、近代科学の発展を準備することになった。
{| class="wikitable"
|-
! 自然哲学者 !! アルケー !! 出身地
|-
| タレス || 水 || ミレトス (エーゲ海東部の港湾都市)
|-
| ヘラクレイトス || 火 || エフェソス (エーゲ海東部の港湾都市)
|-
| ピタゴラス || 数(整数) || サモス島 (エーゲ海東部の島)
|-
| エンペドクレス || 火・風(空気)・土・水 || アクラガス (シチリア島の都市)
|-
| デモクリトス || 原子('''アトム''', アトモン) || アブデラ (エーゲ海北岸の都市)
|}
=== 発展・古代ギリシアと科学 ===
ピタゴラスは(直角三角形の)「三平方の定理」の発見者でもあるとされる。海外では、直角三角形のこの定理は「ピタゴラスの定理」(に相当する訳語)と言われるのが普通である。ピタゴラスのほかタレスも、幾何学の研究をしていた。このように古代ギリシアでは、数学が重視されていた。
歴史学では一般に、古代ギリシアでこのように数学が論理思考の手段として尊重されるようになった背景として、半島国家であるギリシアは異民族(地中海周辺の異民族)との貿易などのために世界共通の知識土台が必要となったこと、統一された「ギリシア」という国家が存在せず、ポリスごとに文化や社会制度が異なっていたことがあげられる。どこでも共通に必要とされることの多い計算法や作図手法などが、論理的な説明の手段として尊重されるようになっていき数学として論理的に体系化されただろう、と考える通説が、歴史学などではよく言われる。そして、数学と同様に、土などの物質や風などの自然現象も、民族にかかわらず共通であろう。このような背景のもと、自然哲学が古代ギリシアで盛んになっていったと思われる。
当時、エジプトなどギリシア以外の外国でも計算術や作図法はあったが、しかし、それら外国の計算法・作図法では、ギリシアほど論理的な厳密化はなされなかったようだ。そのため、論理的な証明を重んじる数学の発祥の有力な地として、古代ギリシアが発祥地だろうと考えられている。ギリシアで数学が論理的に整備された背景として、民主主義が言われる。民主制では、自らの意見を的確かつ誰でもわかるように説明することが求められたため論理学・数学が発展したのだろうと考えられている。
しかし、古代ギリシアの自然哲学は、自然の観察と経験を元にした考察が重視された反面、実験による検証法は確立していなかった。こうした制限があったため、後述するように、弁論をもてあそぶソフィストの流行を迎えることになる。
== ソフィスト ==
[[File:The_Parthenon_in_Athens.jpg|200px|thumb|パルテノン神殿。古代ギリシアのポリスの一つ、アテネの中心に建てられた神殿。]]
紀元前5世紀ごろになると、古代ギリシア社会がさらに発展し、特にアテネにて民主制が成立すると、人々の関心は自然から人間や社会へと移っていった。そうした中で活躍したのが'''ソフィスト'''とよばれる人々である。彼らは数学や自然哲学、政治、法律などを修め、市民たちに様々な学問を教えるようになった。かれらはポリスからポリスへと渡り歩いていたため、法律や道徳がポリスごとにちがうことをよく知っており、善悪や正邪の基準も決して絶対的ではないと論じた。特に'''プロタゴラス'''は「'''人間は万物の尺度である'''」という言葉を残した。物事の真偽をはかるものさし(尺度)は絶対的な何かではなく、ひとりひとりの人間の考え方や感じ方にあるというのである(人間中心主義)。
特にかれらが重視したのが弁論術である。ソフィストは人々を説得し、自分の主張を伝えるための方法を発達させていった。特にアテネのような民主政のポリスでは、民会や法廷で自分の考えを的確に伝え、説得する技術は非常に重要だったからである。しかし、ソフィストたちの議論はやがてわざと論理を誤用する詭弁を用いたり、巧妙な説得の技術を用いて人々の注目を集めるだけのものとなった。もともとソフィストたちには「真理とは何か」と問う気持ちは強くなかったのが原因である。
かれらの新しい思想は古いしきたりや権威から自由なものの考え方を広めるのに貢献した。その一方で、普遍的・客観的な真理を追究しようという姿勢は軽視された。
== まとめ ==
タレスは「万物の根源は水である」と主張した。エンペドクレスは「万物の根源は、火、水、空気、土の4つが万物の構成要素である」とした。もちろん現代の我々からしてみれば、この主張は化学的に間違っている事を知っている。また、デモクリトスは「万物の根源は原子(アトム)だ」と主張した。しかし、デモクリトスのいう「原子」は理科(化学)で習う「原子」とは大きく異なる。
では、どうして、古代ギリシアの自然哲学者たちについて学ぶのだろうか。「大昔はいまほど科学が発達してなかった」ことを確認するためだろうか。それならば、わざわざ彼らの考えたことを見るまでもないだろう。
古代ギリシアのあらゆる学問をまとめたアリストテレスによれば、「哲学する」ということは、この世界のありように驚きをもって接し、それが「何であるのか」「何ゆえか」というものごとの原理・原因・根拠への問いを行い、それを根気強く探求する営みだという。このことから言えることは、古代ギリシアの自然哲学者が'''何を'''考えたのかについて知ることは重要ではなく、'''どのように'''考えたのかが重要だということである。彼らは自然界の営みを「当たり前のこと」とせず、神話による説明にも止まらず、自然を観察することによって自然を理解しようとした。これはこの世界がどのようなものであるのかを探り、'''世界観'''を確立する試みの例である。それは神の意思や運命といった自然を越えたものから自由になろうとする試みでもあり、究極的には自分はどう生きるのかという問いかけにもつながっていく。
このことは、あとでソクラテス、プラトン、アリストテレスやルネサンス以降の思想家たちについて見ていくときにも思い起こしてほしい。
[[カテゴリ:高等学校教育|こたいきりしあのてつかく]]
[[カテゴリ:社会科教育|こたいきりしあのてつかく]]
[[カテゴリ:高等学校倫理|こたいきりしあのてつかく]]
[[カテゴリ:哲学史|こうこうりんりこたいきりしあのてつかく]]
[[カテゴリ:ギリシャ]]
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教育基本法第15条
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Fukupow
34984
脚注追加
299793
wikitext
text/x-wiki
{{Pathnav|法学|教育基本法|コンメンタール教育基本法|frame=1}}
== 条文 ==
(宗教教育)
; 第15条
# 宗教に関する寛容の態度、宗教に関する一般的な教養及び宗教の社会生活における地位は、教育上尊重されなければならない。
# 国及び地方公共団体が設置する学校は、特定の宗教のための宗教教育その他宗教的活動をしてはならない。
=== 旧教育基本法 ===
; 第9条(宗教教育)
# 宗教に関する寛容の態度及び宗教の社会生活における地位は、教育上これを尊重しなければならない。
# 国及び地方公共団体が設置する学校は、特定の宗教のための宗教教育その他宗教的活動をしてはならない。
== 解説 ==
本条は、[[w:宗教教育|宗教教育]]について規定している。一口に宗教教育といっても意味や内容は様々であり、ここでは次の5つについて説明する。
; 宗教的寛容教育
: 信仰をはじめとする価値観が多様化する社会において、信仰の有無、宗派の違いなどによる差別・偏見を排除し、宗教間の相互理解を促進し、[[w:思想・良心の自由|思想・良心の自由]]や[[w:信教の自由|信教の自由]]を具体化するための教育を指す。第1項の「宗教に関する寛容の態度」「宗教の社会生活における地位」に関する教育は、これに該当する。
; 宗教知識教育
: 国語や社会などの授業の一環として、宗教に関連する事項を一般的な知識として客観的に教育することを指す。第1項の「宗教に関する一般的な教養」に関する教育は、これに該当する。
; 宗派教育
: 特定の宗派の教義に沿って行われる指導を指す。第2項の「特定の宗教のための宗教教育」に該当し、日本の[[w:国立学校|国立学校]]・[[w:公立学校|公立学校]]では、[[w:政教分離原則|政教分離原則]]により禁じられていることとなる。ただし、[[w:私立学校|私立学校]]については、教育職員免許法で「宗教」の免許状が与えられると規定されているように、宗派教育を行うことは可能である。
; 宗教的情操教育
: 宗教的情操、すなわち諸宗教に共通する感情、いわゆる「畏敬の念」「宗教心」を教えることを指す。本条には、これに直接関係する文言はないが、昭和10年(1935年)11月28日発普第160号文部次官通牒「宗教的情操ノ涵養ニ関スル件」<ref>{{Cite web|url=https://www.chuo-u.ac.jp/uploads/2018/10/5925_3102772.pdf|title=238 学校における宗教教育の取扱方改正要綱に付指令〔昭和二十年十月〕|format=pdf|website=中央大学史資料集 第15集|publisher=中央大学|accessdate=2026-05-24}}</ref>において、「学校ニ於テ宗派的教育ヲ施スコトハ絶対ニ之ヲ許サザルモ人格ノ陶冶ニ資スル為学校教育ヲ通ジテ宗教的情操ノ涵養ヲ図ルハ極メテ必要ナリ」とされたことを契機に、日本での宗教教育について長く影響を及ぼしている。
; 対宗教安全教育
: [[w:オウム真理教|オウム真理教]]の[[w:地下鉄サリン事件|地下鉄サリン事件]]などを踏まえ、無差別大量殺人行為などの反社会的行為を団体の活動とするような、いわゆる[[w:カルト|カルト]]や[[w:セクト|セクト]]と呼ばれるような団体からの勧誘活動などから自身を守り、[[w:伝統宗教|伝統宗教]]・[[w:新興宗教|新興宗教]]の区別なく、「宗教」の名前を冠するものに対して適正な判断力・批判力を養う教育を指す。本条には、これに直接関係する文言はない。
== 参照条文 ==
* [[教育職員免許法第4条]](種類)
* [[教育職員免許法第9条]](効力)
== 判例 ==
#[https://www.courts.go.jp/hanrei/55882/detail2/index.html 進級拒否処分取消、退学命令処分等取消請求事件]([[w:神戸高専剣道実技拒否事件|神戸高専剣道実技拒否事件]] 最高裁判所第二小法廷判決、平成8年3月8日、平成7年(行ツ)第74号、最高裁判所民事判例集50巻3号469頁)
#;信仰上の理由により剣道実技の履修を拒否した市立高等専門学校の学生に対する原級留置処分及び退学処分が裁量権の範囲を超える違法なものであるとされた事例
#:市立高等専門学校の校長が、信仰上の理由により剣道実技の履修を拒否した学生に対し、必修である体育科目の修得認定を受けられないことを理由として二年連続して原級留置処分をし、さらに、それを前提として退学処分をした場合において、右学生は、信仰の核心部分と密接に関連する真しな理由から履修を拒否したものであり、他の体育種目の履修は拒否しておらず、他の科目では成績優秀であった上、右各処分は、同人に重大な不利益を及ぼし、これを避けるためにはその信仰上の教義に反する行動を採ることを余儀なくさせるという性質を有するものであり、同人がレポート提出等の代替措置を認めて欲しい旨申し入れていたのに対し、学校側は、代替措置が不可能というわけでもないのに、これにつき何ら検討することもなく、右申入れを一切拒否したなど判示の事情の下においては、右各処分は、社会観念上著しく妥当を欠き、裁量権の範囲を超える違法なものというべきである。
== 脚注 ==
{{reflist}}
== 参考文献 ==
* {{Cite book |和書 |author=浪本勝年・三上昭彦編著 |date=2008-10-15 |title=「改正」教育基本法を考える ――逐条解説―― [改訂版] |publisher=北樹出版 |isbn=9784779301346}}
* {{Cite book |和書 |author=曽我雅比児著 |date=2015-04-20 |title=公教育と教育行政 改訂版 ――教職のための教育行政入門―― |publisher=大学教育出版 |isbn=9784864293006}}
----
{{前後
|[[コンメンタール教育基本法|教育基本法]]
|第2章 教育の実施に関する基本
|[[教育基本法第14条]]<br />(政治教育)
|[[教育基本法第16条]]<br />(教育行政)
}}
{{stub|law}}
[[category:教育基本法|15]]
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高校化学 結晶
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wikitext
text/x-wiki
{{pathnav|高等学校の学習|高等学校理科|高等学校化学|[[高等学校 化学|化学]]|pagename=結晶|frame=1|small=1}}
この単元では、結晶をはじめとする固体の構造について学ぶ。
==固体の構造==
===結晶===
粒子が規則的に配列している固体を'''結晶'''という。結晶は主に金属結晶、イオン結晶、分子結晶、共有結合結晶の4種に分類される。
結晶中の規則正しい粒子配列を'''結晶格子'''という。また、結晶格子の繰り返し構造の最小単位を'''単位格子'''という。
結晶構造において、1個の原子にもっとも近い原子の数を'''配位数'''という。配位数は、結晶格子の種類によって決まる。配位数を計算する際には、単位格子内の原子だけでなく、隣接する格子の原子も考慮する必要がある。
結晶構造を持つ個体物質を'''結晶質'''という。
===アモルファス===
構成単位の配列に規則性を持たずに集合した個体物質を'''非晶質'''という。非晶質の構造には周期性がなく、このような状態を'''アモルファス'''('''無定形''')という。
原子が不規則に配列した金属を'''アモルファス金属'''という。
アモルファス金属は高温で融解した金属を急速冷却することで得られる。アモルファス金属及びその合金は強靭性・対腐食性・強力な磁気性など、通常の金属にはない特徴を持っている。
珪素元素が不規則に配列された'''アモルファスシリコン'''は通常の珪素結晶に比べて安価であり、薄膜に加工できることから太陽電池・液晶パネル等に用いられている。
二酸化珪素<chem>SiO2</chem>は通常は共有結合結晶として存在する(水晶・石英)が、水晶・珪砂を高温で融解して凝固させると、非晶質である'''石英硝子'''を得る。これは光ファイバーの原料として活用されている。
窓・コップなど一般的に用いられる硝子は'''{{ruby|曹達石灰硝子|ソーダせっかいガラス}}'''といい、珪素原子・酸素原子からなる立体網目構造にナトリウムイオンやカルシウムイオンを入れ込んだ非晶質でできている。融点は不定であり、加熱によって変形する。
== 金属結晶 ==
金属結合では、原子は規則的に配列をして結晶を作る。金属結晶では、単位格子は主に3種類ある。列記すると、
* '''面心立方格子''' Al, Cu, Ag, Ni,Au, Pt など
* '''体心立方格子''' Fe, W, Ba、およびアルカリ金属のLi, Na,K など
* '''六方最密構造''' Zn, Mg, Co など
である。<gallery widths="200px" heights="200px">
Image:Cubique a faces centrees A1.svg|面心立方格子の模式図
Image:Lattice body centered cubic.svg|体心立方構造の模式図
File:Hexagonal close packed.png|六方最密充填構造
</gallery>{{clear}}
=== 単位格子中の原子の数 ===
;体心立方格子
[[ファイル:CCC_crystal_cell_(opaque).svg|右|サムネイル|体心立方格子構造]]
単位格子の中に1個の原子があり、単位格子の立方体の8頂点にあるそれぞれの原子は単位格子の中に<math>\frac 1 8</math> 存在する。
したがって、単位格子中の原子の数は
<math>\frac 1 8 \cdot 8 + 1 =2</math>
; 面心立方格子
立法体の隅の原子は、格子に属する部分の大きさが球の<math> \frac{1}{8} </math>である。これが8か所ある
面の中央の原子は、大きさが、球の <math> \frac{1}{2} </math> である。これが6か所ある。
したがって、単位格子中の原子の数は
: <math> \frac{1}{8} \times8 +\frac{1}{2}\times 6 = 4 </math>
; 六方最密構造の原子数
六方最密構造の所属原子数は、図から分かるように、2個である。
'''面心立方格子の配位数'''
面心立方格子では、配位数は12である。単位格子の図を見ると、面心に位置する原子は8個の隣接原子と接触している。しかし、単位格子の図だけでは、隣接する格子にある原子も含めて考える必要がある。具体的には、単位格子を中心に4つの近接原子が省略されているため、面心立方格子の配位数は12である。
'''体心立方格子の配位数'''
体心立方格子の場合、単位格子の中心に位置する原子に注目する。体心立方格子の中央の原子は、周囲の8個の原子と接触している。したがって、体心立方格子の配位数は8である。
'''六方最密構造の配位数'''
六方最密構造では、単位格子内の中央の原子に注目すると、計算が簡単になる。単位格子内では、中央の原子は9個の隣接原子と接触している(6個の上面の原子と、下面の3個の原子)。そのため、配位数は12である。
=== 原子半径 ===
[[ファイル:体心立方格子の原子半径の求め方.svg|サムネイル|400x400ピクセル|体心立方格子の原子半径の求め方]]
密度を求めるには、単位格子の1辺あたりの長さを知らなければならない。もし、原子半径 r と、単位格子の1辺あたりの長さ l には、図からわかるように、次の関係がある。
体心立方格子の場合、原子半径rと、単位格子の1辺あたりの長さ l との関係式は、図のように三平方の定理より、
: <math> 4r= \sqrt{3} r </math>
よって
: <math> r= \frac{\sqrt{3} }{4} l </math>
である。
[[ファイル:面心立方格子の原子半径の求め方.svg|サムネイル|400x400ピクセル|面心立方格子の原子半径の求め方]]
面心立方格子の、原子半径rと、単位格子の1辺あたりの長さ l との関係式は、三平方の定理より、
: <math> r= \frac{\sqrt{2} }{4} l </math>
である。
=== 充填率 ===
単位格子中に原子の占める体積の割合を'''充填率'''という。充填率を計算で求めるには、定義どおりに、単位格子中の体積を、単位格子の体積で割れば、求まる。
* 体心立方格子の場合
まず、単位格子中の原子の体積は、以前の節で説明したように、原子2個分の体積である。
つまり体積は、
: <math> 2 \times \frac{4}{3}\pi r^3</math>
である。
そして、 体心立方格子の場合の原子半径rと、単位格子の1辺あたりの長さ l との関係式は、前の節で計算した通り、
: <math> r= \frac{\sqrt{3} }{4} l </math>
なので、これによって充填率が求まる。
: 充填率 = <math>\frac{ 2 \times \frac{4}{3}\pi r^3}{l^3} = \frac{ 2 \times \frac{4}{3}\pi \times \frac{3 \sqrt{3} }{64} l^3}{l^3} = \frac{\sqrt{3}}{8}\pi \approx 0.68</math>
よって体心立方格子の充填率は 68% である。
* 面心立方格子の場合
: 充填率 = <math>\frac{ 4 \times \frac{4}{3}\pi r^3}{l^3} = \frac{ 4 \times \frac{4}{3}\pi \times \frac{2 \sqrt{2} }{64} l^3}{l^3} = \frac{\sqrt{2}}{6}\pi \approx 0.74</math>
よって面心立方格子の充填率は 74% である。
== イオン結晶 ==
=== イオン結晶の仕組み ===
[[ファイル:Sodium-chloride-3D-ionic.png|240px|thumb|塩化ナトリウムNaClのイオン結晶の模式図]]
個体のNaClは、同じ数のNa<sup>+</sup>とCl<sup>-</sup>が交互に並んだ結晶構造になっている(図を参照のこと。紫色の球はNa<sup>+</sup>を表し、緑色の球はCl<sup>-</sup>を表す。)。イオン結合による結晶を'''イオン結晶'''という。イオン結晶は、全体としては電気的に中性となる。イオン結晶を表すには'''組成式'''が用いられる。組成式は化学式の一種であり、同じく化学式の一種である分子式との違いは、物体がイオン結晶を取るか否かである。(つまり、H<sub>2</sub>Oは分子式であり、NaClは組成式である。)このような違いが存在するのは、分子には区切りがあるのに対し、イオン結晶には区切りがないためであり、イオン結晶を化学式で表すのに最小単位を取ろうとしたためである。粒子同士の結合のうち、イオン結合は強い結合であるため、イオン結晶は融点が高く、硬い。しかし、外部からの力には弱い。これは、外部からの力によって結晶がずれ、陽イオンや陰イオン同士が隣り合うことで反発するためである。また、結晶のままでは電気は導かないが、水溶液にしたり、融解させると電気を導くようになる。
=== イオン結晶の構造 ===
[[ファイル:NaCl-estructura cristalina.svg|240px|thumb|塩化ナトリウムNaClの単位格子]]
右の図は、塩化ナトリウムNaClの単位格子を表している。NaClにおけるNa<sup>+</sup>とCl<sup>-</sup>の配位数は、ともに6である。
図より、塩化ナトリウムの単位格子に含まれるイオンの数は、点に<math>\frac 1 8</math>個、辺に<math>\frac 1 4</math>個、面に<math>\frac 1 2</math>個含まれているため、次のようになる。<br>
Na<sup>+</sup>:<math>\frac 1 4 \times 12 + 1 \times 1 =4</math> Cl<sup>-</sup>:<math>\frac 1 8 \times 8 + \frac 1 2 \times 6 =4</math> <br>
よって、それぞれ4つづつあるので、イオンの数の比は Na<sup>+</sup>:Cl<sup>-</sup>=1:1 となり、組成式はNaClとなる。
===イオン結晶が安定である条件===
陽イオンと陰イオンの比が1:1となるイオン結晶の構造には、'''NaCl型'''、'''CsCl型'''、'''ZnS型'''などがある(それぞれの配位数は6、8、4)。イオン結晶がどの構造を取るかは、一般には陽イオンと陰イオンの半径比によって定まる。
それぞれのイオンは反対符号のイオンと接していて、その数が多いほど安定である。すなわち、'''配位数が大きい結晶ほど安定'''である。しかし、陰イオンと陽イオンの半径比が大きくなりすぎると陰イオン同士が接してしまうので不安定になる。
以下、単位格子の一辺の長さを<math>a</math>、陽イオンの半径を<math>r^+</math>、陰イオンの半径を<math>r^-</math>とする。
;NaCl型の場合
[NaCl型単位格子の平面図]
図より<math>a=2(r^{+}+r^-)</math>・・・①
陽イオンを小さくしていくと陰イオン同士が接するようになり、このとき単位格子の対角線を考えると①から<math>2\sqrt{2} (r^{+}+r^-) = 4r^-</math>が成り立つ。
よってイオン半径比は<math>\frac{r^+}{r^-} = \sqrt{2}-1 \fallingdotseq 0.414</math>である。
さらに陽イオンを小さくすると陽イオンと陰イオンが離れることで陰イオン同士の反発力により結晶が不安定となる。
したがって、<math>\frac{r^+}{r^-} \geqq 0.414</math>であれば配位数6のNaCl型構造をとることができる。実際のNaClのイオン半径比は<math>\frac{0.116[\mathrm{nm}]}{0.167[\mathrm{nm}]} \fallingdotseq 0.695</math>である。
;CsCl型の場合
[CsCl型単位格子の平面図]
図より<math>\sqrt{3}a = 2(r^{+}+r^-)</math>・・・②
NaCl型と同様、陰イオンと陽イオン及び陰イオン同士が接する場合を考えると、②より<math>2\sqrt{3} r^- = 2(r^{+}+r^-)</math>が成り立ち、イオン半径比は<math>\frac{r^+}{r^-} = \sqrt{3}-1 \fallingdotseq 0.732</math>である。
NaCl型と同様、イオン半径比がこれより小さくなると不安定になるので、<math>\frac{r^+}{r^-} \geqq 0.732</math>であれば配位数8のCsCl型構造をとることができる。実際のCsClのイオン半径比は<math>\frac{0.181[\mathrm{nm}]}{0.167[\mathrm{nm}]} \fallingdotseq 1.08</math>である。
;ZnS型の場合
[ZnS型単位格子の平面図]
図より<math>\frac{\sqrt{3}}{2} a = 2(r^{+}+r^-)</math>・・・③
NaCl型と同様、陰イオンと陽イオン及び陰イオン同士が接する場合を考えると、③より<math>\sqrt{6} r^- = 2(r^{+}+r^-)</math>が成り立ち、イオン半径比は<math>\frac{r^+}{r^-} = \frac{\sqrt{6}-2}{2} \fallingdotseq 0.225</math>である。
NaCl型と同様、イオン半径比がこれより小さくなると不安定になるので、<math>\frac{r^+}{r^-} \geqq 0.225</math>であれば配位数3のZnS型構造をとることができる。
これらを綜合して、イオン数比が1:1であるイオン結晶について、<math>\frac{r^+}{r^-} \geqq 0.732</math>のときCsCl型、<math>0.732 > \frac{r^+}{r^-} \geqq 0.414</math>のときNaCl型、<math>0.414 > \frac{r^+}{r^-} \geqq 0.225</math>のときZnS型の構造をとることが推測される。
なお、実際にはこれらから推測される構造と異なる構造をとる物質も存在する。
また、イオン数比が1:1でない場合、'''CaF<sub>2</sub>型'''、'''ReO<sub>3</sub>型'''など、単位格子の種類が爆増する。
==分子結晶==
===分子結晶の性質===
分子間力によって形成される結晶を'''分子結晶'''という。水、二酸化炭素、沃素、ナフタレン、蔗糖などの結晶は分子結晶である。
分子間力は比較的弱い力なので、分子結晶は軟らかい。また、沸点・融点が低く常温で液体・気体であるものが多い。無極性分子からなる二酸化炭素・沃素・ナフタレンなどは分子間力が非常に弱いので昇華・凝華する。
分子からなる純物質は通電しない。しかし、塩化水素・酢酸など溶媒に溶けると電離して通電可能になるような物質も存在する。
氷の結晶中では水分子が水素結合で互いに結びついているが、正四面体型の立体構造をとるので隙間が多くなっている。そのため、氷が融解して水になると一部の水素結合が切断され、水分子の一部が隙間に入り込む。このため、氷の密度は液体の水より小さく、氷は水に浮く。
他の殆どの物質では、固体は液体に沈む。
なお、'''水が最大密度を取るのは4℃である'''。このため、[[高等学校 地学/生命の進化#全球凍結|全球凍結下]]であっても海底付近の水温は4℃に保たれ、生命が生き永らえたたとされる。
===双極子モーメント===
分子や原子間の結合の極性の大きさを示す尺度として、以下のような量が定義されている。
'''双極子モーメント'''
正電荷 +q [C]と負電荷 -q [C]がr [m]だけ離れているとき、μ = qr [C・m]を'''双極子モーメント'''という。
{| class="wikitable"
|+ 双極子モーメントの例
|-
! 物質 !! μ /10<sup>-30</sup> (C・m)
|-
|style="text-align:center"| HF ||style="text-align:center"| 6.09
|-
|style="text-align:center"| HCl ||style="text-align:center"| 3.70
|-
|style="text-align:center"| HBr ||style="text-align:center"| 2.80
|-
|style="text-align:center"| HI ||style="text-align:center"| 1.50
|-
|}
双極子モーメントが大きいほど、その分子・原子の極性が大きい。
また、双極子モーメントを測定することによって、'''共有結合にイオン結合性がどれほど混ざっているかを調べることができる'''。
HClの双極子モーメント・結合距離それぞれの測定値は<math>\mu = 3.70 \times 10^{-30} \, \mathrm{C \cdot m}, r = 1.27 \times 10^{-10} \, \mathrm{m}</math>である。仮にH-Clが純粋なイオン結合で結びついていたとして双極子モーメントを求めると、<chem>H+, Cl-</chem>それぞれが持つ電荷は[[高等学校物理/原子物理#ミリカンの実験|電気素量]]<math>|e| = 1.60 \times 10^{-19} \, \mathrm{C}</math>に等しいので、結合距離の測定値から<math>\mu_0 = 1.60 \times 10^{-19} \, \mathrm{C} \times 1.27 \times 10^{-10} \, \mathrm{m} \fallingdotseq 2.03 \times 10^{-29} \, \mathrm{C \cdot m}</math>である。
これらの比をとると、<math>\frac{\mu}{\mu_0} = \frac{3.70 \times 10^{-30} \, \mathrm{C \cdot m}}{2.03 \times 10^{-29} \, \mathrm{C \cdot m}} \fallingdotseq 0.18</math>なので、HClの結合には約18%のイオン結合性があるとわかる。
==共有結合結晶==
非金属元素の原子が次々に共有結合した構造からなる結晶を'''共有結合結晶'''という。共有結合結晶は結晶全体が共有結合によって強固に結びついているので、一般的に融点が非常に高く、極めて硬い。水に難溶且つ通電しないものが多い。
'''ダイヤモンド({{ruby|金剛石|こんごうせき}})'''は炭素原子が4つの価電子を全て使って次々に共有結合で繫ってできた共有結合結晶である。正四面体型の炭素結晶が三次元的に繰り返される結晶構造をとる。無色透明で[[w:モース硬度]]は最高ランクの10と非常に硬い。但し、[[w:靱性]]は低いのでハンマーで叩くと容易に割れる。融点が高く、通電しない。
[ダイヤモンドの単位格子の図]
ダイヤモンドの配位数は4で、その単位格子には8つの炭素原子が含まれている。この単位格子中の原子配列は、単位格子の頂点とそれぞれの面の中に原子が並び、その立方体を8等分した小立方体の一つおきの中心に原子が加わった配列となっている。
'''黒鉛(グラファイト)'''の結晶も共有結合結晶であり、4つの価電子のうち3つを使い次々に共有結合で繫ってできた共有結合結晶である。正六角形の網目状の平面構造が弱い分子間力で層状に折り重なって結晶をなしている。そのため、黒鉛は薄くて剥がれやすい。共有結合を形成するときに一つ余った価電子は自由電子として平面構造の中を動けるので、黒鉛は通電する。
珪素結晶は'''ダイヤモンドと同じ構造'''であるが、電気伝導性が導体と絶縁体の中間なので'''半導体'''と呼ばれる。詳しくは[[高校物理 電磁気学#半導体|こちら]]を参照。
'''二酸化珪素の結晶も共有結合結晶'''であり、珪素原子と酸素原子の共有結合Si-Oが三次元的に繰り返されてできる。二酸化珪素の構造は温度によって異なる。
[[カテゴリ:高等学校化学|けつしよう]]
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Alexis Jazz
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text/x-wiki
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高校化学 無機化学まとめ
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高校化学で扱われる気体の発生、沈殿反応、イオン・化合物の色などについてまとめた。
== 気体 ==
乾燥剤欄の×は、その気体と乾燥剤が反応してしまうことを示す。
{| class="wikitable"
|+ 気体の製法と性質
|-
!rowspan="3"|気体 !! rowspan="3"|化学反応式 !! rowspan="3"|反応様式 !! rowspan="3"|性質 !! colspan="5"|乾燥剤 !! rowspan="3"|捕集法
|-
! colspan="2"|酸性 !! 中性 !! colspan="2"|塩基性
|-
! 十酸化四燐 !! 濃硝酸 !! 塩化カルシウム !! 酸化カルシウム !! ソーダ石灰
|-
| 水素 || <chem>Zn + H2SO4 -> ZnSO4 + H2 ^</chem>(稀硫酸) || 酸化還元反応 || 中性 || ○ || ○ || ○ || ○ || ○ || 水上置換
|-
| 酸素 || <chem>2H2O2 ->[(MnO2)] 2H2O + O2 ^</chem><br><chem>2KClO3 ->[\Delta (MnO2)] 2KCl + 3O2 ^</chem> || 酸化還元反応 || 中性 || ○ || ○ || ○ || ○ || ○ || 水上置換
|-
| オゾン || <chem>3O2 -> 2O3</chem> || 無声放電/光化学反応 || 中性 || ○ || ○ || ○ || ○ || ○ || -
|-
| 窒素 || <chem>NH4NO2 ->[\Delta] 2H2O + N2 ^</chem> || 熱分解反応 || 中性 || ○ || ○ || ○ || ○ || ○ || 水上置換
|-
|塩素 || <chem>MnO2 + 4HCl ->[\Delta] MnCl2 + 2H2O + Cl2 ^</chem><br><chem>Ca(ClO)2.2H2O + 4HCl-> CaCl2 + 4H2O + 2Cl2 ^</chem> || 酸化還元反応 || 酸性 || ○ || ○ || ○ || × || × || 下方置換
|-
| 塩化水素 || <chem>NaCl + H2SO4 -> NaHSO4 + HCl ^</chem>(濃硫酸) || 不揮発性酸による揮発性酸の遊離反応 || 酸性 || ○ || ○ || ○ || × || × || 下方置換
|-
| フッ化水素 || <chem>CaF2 + H2SO4 -> CaSO4 + 2HF ^ </chem>(濃硫酸) || 酸化還元反応 || 酸性 || ○ || ○ || ○ || × || × || 下方置換
|-
| 硫化水素 || <chem>FeS + H2SO4 -> FeSO4 + H2S ^ </chem>(稀硫酸)<br><chem>FeS + 2HCl -> FeCl2 + H2S ^</chem>(稀塩酸) || 弱酸遊離反応 || 酸性 || ○ || × ※1 || ○ || × || × || 下方置換
|-
| アンモニア || <chem> 2NH4Cl + Ca(OH)2 ->[\Delta] CaCl2 + 2H2O + 2NH3 ^ </chem><br><chem>(NH4)2SO4 + 2NaOH ->[\Delta] Na2SO4 + 2H2O + 2NH3 ^</chem> || 弱塩基遊離反応 || 塩基性 || × || × || × ※2 || ○ || ○ || 上方置換
|-
| rowspan="2"|二酸化硫黄 || <chem>Cu + 2H2SO4 ->[\Delta] CuSO4 + 2H2O + SO2 ^ </chem>(熱濃硫酸) || 酸化還元反応 || rowspan="2"|酸性 || rowspan="2"|○ || rowspan="2"|○ || rowspan="2"|○ || rowspan="2"|× || rowspan="2"|× || rowspan="2"|下方置換
|-
| <chem>NaHSO3 + H2SO4 -> NaHSO4 + H2O + SO2 ^</chem>(稀硫酸)<br><chem>2NaHSO3 + H2SO4 -> Na2SO4 + 2H2O + 2SO2 ^</chem>(稀硫酸) || 弱酸遊離反応
|-
| 一酸化窒素 || <chem>3Cu + 8HNO3 -> 3Cu(NO3)2 + 4H2O + 2NO ^</chem>(稀硝酸) || 酸化還元反応 || 中性 || ○ || ○ || ○ || ○ || ○ || 水上置換
|-
| 二酸化窒素 || <chem>Cu + 4HNO3 -> Cu(NO3)2 + 2H2O + 2NO2 ^</chem>(濃硝酸) || 酸化還元反応 || 酸性 || ○ || ○ || ○ || × || × || 下方置換
|-
| rowspan="3"|一酸化炭素 || <chem>R + nO2 -> x H2O + y CO2 + z CO ^</chem>※3 || 不完全燃焼 || rowspan="3"|中性 || rowspan="3"|○ || rowspan="3"|○ || rowspan="3"|○ || rowspan="3"|○ || rowspan="3"|○ || rowspan="3"|水上置換
|-
| <chem>HCOOH ->[\Delta] H2O + CO ^</chem> || 脱水反応
|-
| <chem>CO2 + C ->[\Delta] 2CO</chem><br><chem>C + H2O ->[\Delta] H2 + CO ^</chem> || 酸化還元反応
|-
| rowspan="2"|二酸化炭素 || <chem>CaCO3 + 2HCl -> CaCl2 + H2O + CO2 ^ </chem> || 弱酸遊離反応 || rowspan="2"|酸性 || rowspan="2"|○ || rowspan="2"|○ || rowspan="2"|○ || rowspan="2"|× || rowspan="2"|× || rowspan="2"|下方置換
|-
| <chem>2NaHCO3 ->[\Delta] Na2CO3 + H2O + CO2</chem> || 熱分解反応
|}
※1:濃硫酸は硫化水素と酸化還元反応を起こして単体の硫黄を生成する。
:<chem>H2SO4 + H2S -> S + SO2 + 2H2O</chem>
※2:アンモニアは塩化カルシウムと付加反応を起こして塩化カルシウム八アンモニア付加物を生成する。
:<chem>8NH3 + CaCl2 -> CaCl2.8(NH3)</chem>
※3:Rは有機化合物を表す。ここでは、炭素の単体も含む。
== 沈殿 ==
* 硝酸イオン <chem>NO3^-</chem>
: 沈殿しにくい
* 塩化物イオン <chem>Cl-</chem>
: <chem>Ag^+,Pb^2+,Hg2^2+</chem>と沈殿をつくる。<chem>AgCl</chem> は光で分解、<chem>PbCl2</chem> は熱湯に溶ける。
* 硫酸イオン <chem>SO4^2-</chem>
: <chem>Ba^2+,Ca^2+,Sr^2+,Pb^2+</chem>と沈殿をつくる。{{ruby|馬|Ba}}{{ruby|鹿|Ca}}に{{ruby|する|Sr}}{{ruby|な|Pb}}硫酸。
* 炭酸イオン <chem>CO3^2-</chem>
: アルカリ金属、<chem>NH4^+</chem>以外と沈殿をつくる。
* クロム酸イオン <chem>CrO4^2-</chem>
: <chem>Ba^2+,Pb^2+,Ag^+</chem>と沈殿をつくる。{{ruby|バ|Ba}}{{ruby|ナ|Pb}}ナを{{ruby|銀|Ag}}{{ruby|貨|褐}}で買ったら{{ruby|苦労|CrO4}}した。Ba,Pbの沈殿はバナナと同じ黄色。Agは赤褐色。
* 水酸化物イオン <chem>OH^-</chem>
: イオン化傾向で <chem> Li^+</chem> ~ <chem>Na^+</chem> 沈殿しにくい、<chem>Mg^2+</chem> ~ <chem> Cu^2+</chem> + <chem>Mn^2+</chem> 水酸化物が沈殿、<chem>Hg^2+,Ag^+</chem> 水酸化物が分解し酸化物が沈殿。水酸化物は加熱すると酸化物が生成する。<chem>Na^+</chem>までは<chem>NaOH</chem>水溶液が沈殿を作りにくいことから連想できる。<chem>Hg^2+,Ag^+</chem>は個別に覚え、その間のイオン化傾向の金属イオンは沈殿すると覚える。
* 硫化物イオン <chem>S^2-</chem>
: イオン化傾向で <chem> Li^+</chem> ~ <chem> Al^3+</chem> 沈殿しにくい、<chem>Mn^2+</chem> + <chem>Zn^2+</chem> ~ <chem>Ni^2+</chem> 中・塩基性で沈殿、<chem>Cd^2+</chem> + <chem>Sn^2+</chem> ~ <chem>Ag^+</chem> 沈殿する。{{ruby|あら|Al}}{{ruby|ま|Mn}}、{{ruby|あ|Zn}}{{ruby|に|Ni}}、た{{ruby|か|Cd}}{{ruby|す|Sn}}{{ruby|ぎ|Ag}}!
=== 錯イオン ===
水酸化ナトリウムの水溶液を過剰に加え、沈殿が錯イオンを形成し溶解するもの。両性金属 + <chem>Cr^3+</chem>。
<chem>Al(OH)3 ->[NaOH] [Al(OH)4]^-</chem>
<chem>Zn(OH)2 ->[NaOH] [Zn(OH)4]^2-</chem>
<chem>Sn(OH)2 ->[NaOH] [Zn(OH)4]^2-</chem>
<chem>Pb(OH)2 ->[NaOH] [Pb(OH)4]^2-</chem>
<chem>Cr(OH)3 ->[NaOH] [Cr(OH)4]^-</chem>
アンモニアの水溶液を過剰に加え、沈殿が錯イオンを形成し溶解するもの。<chem>Cu^2+,Cd^2+,Ag^+,Ni^2+,Zn^2+</chem>。{{ruby|どう|Cu}}{{ruby|か|Cd}}{{ruby|銀|Ag}}{{ruby|に|Ni}}{{ruby|会えん|Zn}}か。
<chem>Cu(OH)2 ->[NH3] [Cu(NH3)4]^2+</chem>
<chem>Ag2O ->[NH3] [Ag(NH3)2]^+</chem>
<chem>Ni(OH)2 ->[NH3] [Ni(NH3)6]^2+</chem>
<chem>Zn(OH)2 ->[NH3] [Zn(NH3)4]^2+</chem>
<chem>Cd(OH)2 ->[NH3] [Cd(NH3)4]^2+</chem>
これらの錯イオンは、ジアンミン銀(I)イオン、ヘキサアンミンニッケル(II)イオンを除いて配位数4である。
<chem>Fe^2+</chem> または <chem>Fe^3+</chem> を含む水溶液に、ヘキサシアニド鉄(II)酸カリウム <chem>K4[Fe(CN)6]</chem> 水溶液、ヘキサシアニド鉄(III)酸カリウム <chem>K3[Fe(CN)6]</chem> 水溶液、チアシオン酸カリウム <chem>KSCN</chem> 水溶液を加える。
{| class="wikitable"
|+
!
!<chem>Fe^2+</chem>
!<chem>Fe^3+</chem>
|-
|<chem>K4[Fe(CN)6]</chem>
|青白色沈殿
|濃青色沈殿
|-
|<chem>K3[Fe(CN)6]</chem>
|濃青色沈殿
|褐色溶液
|-
|<chem>KSCN</chem>
|変化なし
|血赤色溶液
|}
この内、青白色沈殿と褐色溶液になるものについては問われにくい。
=== 金属イオンの分離 ===
金属イオンの沈殿を利用して、水溶液中の金属イオンを次の1から6の群に分離することが出来る。
# <chem>Cl-</chem> によって沈殿するもの。 <chem>Ag+,Pb2+,Hg2^2+</chem>
# 強酸性条件下で <chem>S^2-</chem> と沈殿するもの。<chem>Cu^2+,Cd^2+,Sn^2+</chem><ref>イオン化傾向で <chem>Cd^2+</chem> + <chem>Sn^2+</chem> ~ <chem>Ag^+</chem> の範囲にあるもの</ref>
# 塩基性条件下で <chem>OH-</chem> と沈殿するもの。<chem>Fe^3+,Al^3+,Cr^3+</chem>
# 中・塩基性で <chem>S^2-</chem> と沈殿するもの。<chem>Zn^2+,Mn^2+,Ni^2+</chem>
# <chem>CO3^2-</chem> と沈殿するもの。<chem>Ca^2+,Ba^2+,Sr^2+</chem>
# 1から5までで沈殿しないもの。<chem>Na+,K+</chem> など
[[ファイル:金属イオンの分離.svg|中央|サムネイル|1011x1011ピクセル|「HCl 塩基性」の部分は「HCl 酸性」と読み替えること]]
== 色 ==
高校化学で扱われる化合物の色について扱う。
塩化物、硫酸塩、炭酸塩はすべて白。<!-- i.e. <chem>AgCl,PbCl2,Hg2Cl2,BaSO4,CaSO4,SrSO4,PbSO4,BaCO3</chem> -->
=== 水溶液中のイオン ===
<chem>Fe^2+</chem>:淡緑 <chem>Fe^3+</chem>:黄褐 <chem>Cu^2+</chem>:青 <chem>Ni^2+</chem>:緑 <chem>Cr^3+</chem>:緑 <chem>Mn^2+</chem>:淡桃 <chem>MnO4^-</chem>:赤紫 <chem>CrO4^2-</chem>:黄 <chem>Cr2O7^2-</chem>:赤橙 <chem>[Cu(NH3)4]^2+</chem>:深青 <chem>[Cr(OH)4]^-</chem>:濃緑 <chem>[Ni(NH3)6]^2+</chem>:青紫
[[ファイル:Дихромат калия.jpg|中央|サムネイル|Cr2O72-]]
[[ファイル:Potassium chromate sоlution.jpg|中央|サムネイル|<chem>CrO4^2-</chem>]]
[[ファイル:Synthesizing Copper Sulfate.jpg|中央|サムネイル|<chem>Cu^2+</chem>]]
[[ファイル:Green rust from FeSO4.jpg|中央|サムネイル|<chem>Fe^2+</chem>]]
=== 酸化物 ===
<chem>CuO</chem>:黒 <chem>Cu2O</chem>:赤 <chem>Fe2O3</chem>:赤褐 <chem>Fe3O4</chem>:黒 <chem>FeO</chem>:黒 <chem>Al2O3</chem>:白 <chem>Ag2O</chem>:褐色 <chem>ZnO</chem>:白 <chem>MnO2</chem>:黒 <chem>HgO</chem>:黄
[[ファイル:CopperIIoxide.jpg|中央|サムネイル|<chem>CuO</chem>]]
[[ファイル:CopperIoxide.jpg|中央|サムネイル|<chem>Cu2O</chem>]]
[[ファイル:Iron(III)-oxide-sample.jpg|中央|サムネイル|<chem>Fe2O3</chem>]]
[[ファイル:Fe3O4.JPG|中央|サムネイル|<chem>Fe3O4</chem>]]
[[ファイル:Iron(II) oxide.jpg|中央|サムネイル|<chem>FeO</chem>]]
[[ファイル:Oxid hlinitý.PNG|中央|サムネイル|<chem>Al2O3</chem>]]
[[ファイル:Zinc oxide sample.jpg|中央|サムネイル|<chem>ZnO</chem>]]
[[ファイル:Manganese(IV) oxide.jpg|中央|サムネイル|<chem>MnO4</chem>]]
[[ファイル:HgOpowder.jpg|中央|サムネイル|<chem>HgO</chem>]]
=== 水酸化物 ===
<chem>Fe(OH)2</chem>:緑白 <chem>Fe(OH)3</chem>:赤褐 <chem>Cu(OH)2</chem>:青白 <chem>Cr(OH)3</chem>:灰緑 <chem>Ni(OH)2</chem>:緑 その他:白
[[ファイル:Hydroxid železitý.PNG|中央|サムネイル|<chem>Fe(OH)3</chem>]]
[[ファイル:სპილენძის ჰიდროქსიდი.jpg|中央|サムネイル|<chem>Cu(OH)2</chem>]]
=== クロム酸塩 ===
<chem>BaCrO4</chem>:黄 <chem>PbCrO4</chem>:黄 <chem>Ag2CrO4</chem>:赤褐
=== 硫化物 ===
<chem>ZnS</chem> :白 <chem>CdS</chem>:黄 <chem>MnS</chem>:淡赤 <chem>SnS</chem>:褐 その他:黒
[[ファイル:Zinc_sulfide.jpg|中央|サムネイル|<chem>ZnS</chem>]]
[[ファイル:Cadmium_sulfide.jpg|中央|サムネイル|<chem>CdS</chem>]]
[[ファイル:Sulfid_manganatý.PNG|中央|サムネイル|<chem>MnS</chem>]]
=== 炎色反応 ===
{{ruby|リ|Li}}{{ruby|アカ|赤}}ー{{ruby|な|Na}}{{ruby|き|黄}}{{ruby|K|K}}{{ruby|村|紫}}{{ruby|動|Cu}}{{ruby|力|緑}}{{ruby|借る|Ca}}{{ruby|とう|橙}}{{ruby|する|Sr}}も{{ruby|くれない|紅}}{{ruby|馬|Ba}}{{ruby|力|緑}}
Li(赤),Na(黄),K(紫),Cu(緑),Ca(橙),Sr(紅),Ba(黄緑)
<gallery>
ファイル:Flametest--.swn.jpg|ガスバーナーの色
ファイル:FlammenfärbungLi.png|リチウム
ファイル:Flametest--Na.swn.jpg|ナトリウム
ファイル:FlammenfärbungK.png|カリウム
ファイル:FlammenfärbungCa.png|カルシウム
ファイル:FlammenfärbungSr.png|ストロンチウム
ファイル:Flametest--Cu.swn.jpg|銅
ファイル:BaCl Flame colour.jpg|バリウム
</gallery>
=== 気体 ===
* <chem>Cl2</chem> 黄緑
* <chem>NO2</chem> 赤褐
* <chem>O3</chem> 淡青
* <chem>F2</chem> 淡黄
== その他 ==
試薬の保存
:フッ化水素酸はガラスを溶かすのでポリエチレン容器に保存。
:黄リンは空気中で自然発火するので水中保存。
:硝酸は光化学反応で二酸化窒素に分解されるので褐色瓶中で冷暗所に保存。
:過酸化水素水はガラスに不純物として微量に含まれる金属を触媒とした分解反応で酸素を生じるのでポリエチレン容器に入れガス抜きの穴を開けた蓋をつけて保存。
両性金属:<chem>Al,\, Zn,\, Sn,\, Pb</chem> {{ruby|あ|Al}}{{ruby|あ|Zn}}{{ruby|すん|Sn}}{{ruby|な|Pb}}りと両性に愛される。
潮解性:<chem>NaOH,\, KOH,\, H3PO4,\, P4O10,\, CaCl2</chem>
風解性:<chem>Na2CO3.10H2O, \, CuSO4.5H2O</chem>
[[カテゴリ:無機化学]]
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アイヌ語
0
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298726
2026-05-23T17:15:04Z
BrassSnail
71325
/* 入門編 */
299774
wikitext
text/x-wiki
{{Pathnav|語学|frame=1}}
{{Wikipedia|アイヌ語}}
{{Wiktionary|カテゴリ:アイヌ語}}
'''アイヌ語'''は、北海道を中心に樺太、千島列島、本州北部などで話されてきた言語です。日本語と同じく、他の言語との系統関係の分かっていない「孤立した言語」に分類されます。日本語にとっては唯一の陸続きの言語で、古くから互いに言葉を借用し合うなどの大きな関わりがありました。日常の語彙、特に儀礼用語には、日本語とアイヌ語とで共通するものや似ているものが数多くあります。語法の面でも、「〜をやってみる」などの表現は日本語と全く同じような言い方で、隣り合って話されてきた近さが感じられます。
アイヌ語の基本的な語順は日本語と同じ主語-目的語-述語です。母音は五種類で、子音も日本語と同じものが多く、上述のように同じ発想の表現もあるため、日本語話者にとっては比較的習得しやすい言語といえます。
その一方、非常に強力な造語力を持ち、多くの要素を繋げて一つの長い単語で文のような役割を表すことなどもできます。
== ウィキブックスでの編集方針 ==
アイヌ語には表記法にバリエーションがある。ウィキブックスは教科書の類に入るので、学習時の分かり易さのためとして、最も多く使われている表記とは異なる表記を採ることがある。ただし、これまでに全く使われていない独自表記は避けた。
また、長きに亙って公的な言語として使われてこなかったなどの理由から、アイヌ語には現代社会の事物・概念を表す言葉が不足しがちである。これを解決するために、様々な場で新語や新しい表現などを作り使おうとする取り組みが行われているが、本書ではこれらを教材の中に積極的に取り入れることはせず、使用する場合であっても、試行的な表現であることやこれまで実際に使われてきた表現とは違うことなどができるだけ判るようにする。
==[[アイヌ語 入門編|入門編]]==
*[[アイヌ語の世界へようこそ]]
*[[アイヌ語 文字入力の準備|文字入力の準備]]
*[[アイヌ語 文字と発音|文字と発音]]
**[[アイヌ語 付録:キリル文字対照表|付録:キリル文字対照表]]
*[[アイヌ語 アクセント|アクセント]]
*[[アイヌ語 音の変化|音の変化]]
*[[付録:アイヌ語 表記の揺れについて|付録:表記の揺れについて]]
*[[アイヌ語 方言について|アイヌ語の方言について]]
==話す、聞く==
=== 会話練習 ===
#[[アイヌ語定型文練習 タンペ へマンタ アン?|これは何?]]
#[[アイヌ語 自己紹介|自己紹介]]
=== 例文集(慣用句、よく使う文) ===
* 挨拶
*
== [[アイヌ語 文法|文法]] ==
*「~は~だ」の形の文
*否定
*動詞の種類
*人称接辞
*位置名詞
==[[アイヌ語 テーマ別重要語彙|テーマ別 重要語彙]]==
*[[アイヌ語 数の数え方|数の数え方]]
*[[アイヌ語 暦|暦]]
*[[アイヌ語 人称接辞の一覧|地域毎の人称接辞一覧]]
*[[アイヌ語 位置名詞の一覧|位置名詞一覧]]
*動植物
== 学習に役立つ本・ウェブサイト<!-- 辞書欄を除いては、情報が溢れないようにし、入門者にも使いやすく信頼の置けるものを重点的に載せてください。 -->==
=== 総合 ===
* [https://www.ff-ainu.or.jp/web/potal_site/index.html アイヌ民族文化財団 アイヌ語ポータルサイト]
* [https://www.bunka.go.jp/seisaku/kokugo_nihongo/kokugo_shisaku/kikigengo/ainu/index.html 文化庁 アイヌ語に関するリンク集]
=== 音声を聞く ===
* [https://ainugo.nam.go.jp/search/media?typeCont=on&typeAudio=on&typeVideo=on 国立アイヌ民族博物館アイヌ語アーカイブ 資料検索]
* [https://ainugo.hm.pref.hokkaido.lg.jp/generalSearchResult.aspx ほっかいどう アイヌ語アーカイブ|北海道博物館]
* [https://www.youtube.com/@user-jr8bk2iy1n YouTube 公益財団法人アイヌ民族文化財団のチャンネル]
* [https://www.ff-ainu.or.jp/web/learn/language/animation/index.html オルシペスウォプ 口承文芸視聴覚資料作成事業|アイヌ民族文化財団]
* [https://www.stv.jp/radio/ainugo/index.html STVアイヌ語ラジオ講座]
:: テキストなどは[https://www.ff-ainu.or.jp/web/potal_site/radio.html ここ]から見れる。
=== 独習書・文法書など ===
* 『ニューエクスプレスプラス アイヌ語』(ISBN 978-4-560-08868-5)中川裕(2021)
::「会話から文法を一冊で学べる入門書に」という言葉の通り、初めてアイヌ語を学ぶ人にはおすすめの一冊。CDやアプリで音声を聞く事もできる。
* 『アイヌ語広文典』(ISBN 978-4-560-09963-6)中川裕(2025)
::アイヌ語学習のためのハンドブック。発音・表記から諸方言の違い、文法、表現、文芸、歴史までを解説する大著。本格的に学ぼうとするときにはたいへん役に立つ。
*『言語学大辞典』第一巻(ISBN 978-4-385-15213-4)亀井孝 他編 所収「アイヌ語」田村すゞ子(1997)
:: 分冊版の『言語学大辞典セレクション 日本列島の言語』(ISBN 4-385-15207-1)にも同じ内容が書かれている。
=== 辞書・単語集 ===
パソコンの場合、これらのページでControl (Ctrl) + Fキーを押すと、素早く検索できる。
==== 書籍版 ====
*『アイヌ語千歳方言辞典』中川裕(1995)
*『アイヌ語沙流方言辞典』田村すゞ子(1996)
*『萱野茂のアイヌ語辞典』萱野茂(1996)
==== ウェブサイト ====
*[https://ainugo.nam.go.jp/ 国立アイヌ民族博物館アイヌ語アーカイブ]
::辞書以外の資料からも検索できる。辞書は、田村すず子『アイヌ語沙流方言辞典』(1996)、萱野茂著『萱野茂のアイヌ語辞典』(1996)、知里真志保『分類アイヌ語辞典 植物編・動物編』(1953)の3冊を基にしている。
*アイヌ語ポータルサイトより
** [https://www.ff-ainu.or.jp/teach/files/ishikari_tango.pdf 単語リスト(アイヌ語・日本語)-石狩川-]
** [https://www.ff-ainu.or.jp/teach/files/saru_tango.pdf 単語リスト(アイヌ語・日本語)-沙流-]
** [https://www.ff-ainu.or.jp/teach/files/karahuto_tango.pdf 単語リスト(アイヌ語・日本語)-カラフト]-
* [https://kampisos.aynu.io/ kampisos.aynu.io — Kampisos - アイヌ語コーパス検索]
*[https://itah.aynu.org/ja 樺太アイヌ語の単語リスト]
*[http://tommy1949.world.coocan.jp/aynudictionary.htm 富田隆 氏によるアイヌ語電子辞書]
::
=== 物語 ===
*『アイヌ神謡集』知里幸惠 ISBN 978-4-00-320801-4、[https://www.aozora.gr.jp/cards/001529/files/44909_29558.html 青空文庫]
== その他 ==
=== アイヌ語を使って創作、執筆などを行う取り組み===
[[incubator:Wp/ain/Main_Page|アイヌ語版ウィキペディア]]
[https://otarunay.at-ninja.jp/taimuzu.html アイヌタイムズ]
[https://wiki.aynu.org/wiki/Mosem Aynuwiki]
[https://parunpe.mystrikingly.com/ パルンペ(parunpe)]
=== アイヌ語やアイヌ文化を題材、モチーフとした創作 ===
==== 漫画 ====
*[https://www.shueisha.co.jp/books/search/search.html?seriesid=37334 ゴールデンカムイ]
[[カテゴリ:語学]]
[[カテゴリ:アイヌ語|*]]
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wikitext
text/x-wiki
{{Pathnav|語学|frame=1}}
{{Wikipedia|アイヌ語}}
{{Wiktionary|カテゴリ:アイヌ語}}
'''アイヌ語'''は、北海道を中心に樺太、千島列島、本州北部などで話されてきた言語です。日本語と同じく、他の言語との系統関係の分かっていない「孤立した言語」に分類されます。日本語にとっては唯一の陸続きの言語で、古くから互いに言葉を借用し合うなどの大きな関わりがありました。日常の語彙、特に儀礼用語には、日本語とアイヌ語とで共通するものや似ているものが数多くあります。語法の面でも、「〜をやってみる」などの表現は日本語と全く同じような言い方で、隣り合って話されてきた近さが感じられます。
アイヌ語の基本的な語順は日本語と同じ主語-目的語-述語です。母音は五種類で、子音も日本語と同じものが多く、上述のように同じ発想の表現もあるため、日本語話者にとっては比較的習得しやすい言語といえます。
その一方、非常に強力な造語力を持ち、多くの要素を繋げて一つの長い単語で文のような役割を表すことなどもできます。
== ウィキブックスでの編集方針 ==
アイヌ語には表記法にバリエーションがある。ウィキブックスは教科書の類に入るので、学習時の分かり易さのためとして、最も多く使われている表記とは異なる表記を採ることがある。ただし、これまでに全く使われていない独自表記は避けた。
また、長きに亙って公的な言語として使われてこなかったなどの理由から、アイヌ語には現代社会の事物・概念を表す言葉が不足しがちである。これを解決するために、様々な場で新語や新しい表現などを作り使おうとする取り組みが行われているが、本書ではこれらを教材の中に積極的に取り入れることはせず、使用する場合であっても、試行的な表現であることやこれまで実際に使われてきた表現とは違うことなどができるだけ判るようにする。
==[[アイヌ語 入門編|入門編]]==
*[[アイヌ語の世界へようこそ]]
*[[アイヌ語 文字入力の準備|文字入力の準備]]
*[[アイヌ語 文字と発音|文字と発音]]
**[[アイヌ語 付録:キリル文字対照表|付録:キリル文字対照表]]
*[[アイヌ語 アクセント|アクセント]]
*[[アイヌ語 音の変化|音の変化]]
*[[付録:アイヌ語 表記の揺れについて|付録:表記の揺れについて]]
*[[付録:アイヌ語 方言について|付録:アイヌ語の方言について]]
==話す、聞く==
=== 会話練習 ===
#[[アイヌ語定型文練習 タンペ へマンタ アン?|これは何?]]
#[[アイヌ語 自己紹介|自己紹介]]
=== 例文集(慣用句、よく使う文) ===
* 挨拶
*
== [[アイヌ語 文法|文法]] ==
*「~は~だ」の形の文
*否定
*動詞の種類
*人称接辞
*位置名詞
==[[アイヌ語 テーマ別重要語彙|テーマ別 重要語彙]]==
*[[アイヌ語 数の数え方|数の数え方]]
*[[アイヌ語 暦|暦]]
*[[アイヌ語 人称接辞の一覧|地域毎の人称接辞一覧]]
*[[アイヌ語 位置名詞の一覧|位置名詞一覧]]
*動植物
== 学習に役立つ本・ウェブサイト<!-- 辞書欄を除いては、情報が溢れないようにし、入門者にも使いやすく信頼の置けるものを重点的に載せてください。 -->==
=== 総合 ===
* [https://www.ff-ainu.or.jp/web/potal_site/index.html アイヌ民族文化財団 アイヌ語ポータルサイト]
* [https://www.bunka.go.jp/seisaku/kokugo_nihongo/kokugo_shisaku/kikigengo/ainu/index.html 文化庁 アイヌ語に関するリンク集]
=== 音声を聞く ===
* [https://ainugo.nam.go.jp/search/media?typeCont=on&typeAudio=on&typeVideo=on 国立アイヌ民族博物館アイヌ語アーカイブ 資料検索]
* [https://ainugo.hm.pref.hokkaido.lg.jp/generalSearchResult.aspx ほっかいどう アイヌ語アーカイブ|北海道博物館]
* [https://www.youtube.com/@user-jr8bk2iy1n YouTube 公益財団法人アイヌ民族文化財団のチャンネル]
* [https://www.ff-ainu.or.jp/web/learn/language/animation/index.html オルシペスウォプ 口承文芸視聴覚資料作成事業|アイヌ民族文化財団]
* [https://www.stv.jp/radio/ainugo/index.html STVアイヌ語ラジオ講座]
:: テキストなどは[https://www.ff-ainu.or.jp/web/potal_site/radio.html ここ]から見れる。
=== 独習書・文法書など ===
* 『ニューエクスプレスプラス アイヌ語』(ISBN 978-4-560-08868-5)中川裕(2021)
::「会話から文法を一冊で学べる入門書に」という言葉の通り、初めてアイヌ語を学ぶ人にはおすすめの一冊。CDやアプリで音声を聞く事もできる。
* 『アイヌ語広文典』(ISBN 978-4-560-09963-6)中川裕(2025)
::アイヌ語学習のためのハンドブック。発音・表記から諸方言の違い、文法、表現、文芸、歴史までを解説する大著。本格的に学ぼうとするときにはたいへん役に立つ。
*『言語学大辞典』第一巻(ISBN 978-4-385-15213-4)亀井孝 他編 所収「アイヌ語」田村すゞ子(1997)
:: 分冊版の『言語学大辞典セレクション 日本列島の言語』(ISBN 4-385-15207-1)にも同じ内容が書かれている。
=== 辞書・単語集 ===
パソコンの場合、これらのページでControl (Ctrl) + Fキーを押すと、素早く検索できる。
==== 書籍版 ====
*『アイヌ語千歳方言辞典』中川裕(1995)
*『アイヌ語沙流方言辞典』田村すゞ子(1996)
*『萱野茂のアイヌ語辞典』萱野茂(1996)
==== ウェブサイト ====
*[https://ainugo.nam.go.jp/ 国立アイヌ民族博物館アイヌ語アーカイブ]
::辞書以外の資料からも検索できる。辞書は、田村すず子『アイヌ語沙流方言辞典』(1996)、萱野茂著『萱野茂のアイヌ語辞典』(1996)、知里真志保『分類アイヌ語辞典 植物編・動物編』(1953)の3冊を基にしている。
*アイヌ語ポータルサイトより
** [https://www.ff-ainu.or.jp/teach/files/ishikari_tango.pdf 単語リスト(アイヌ語・日本語)-石狩川-]
** [https://www.ff-ainu.or.jp/teach/files/saru_tango.pdf 単語リスト(アイヌ語・日本語)-沙流-]
** [https://www.ff-ainu.or.jp/teach/files/karahuto_tango.pdf 単語リスト(アイヌ語・日本語)-カラフト]-
* [https://kampisos.aynu.io/ kampisos.aynu.io — Kampisos - アイヌ語コーパス検索]
*[https://itah.aynu.org/ja 樺太アイヌ語の単語リスト]
*[http://tommy1949.world.coocan.jp/aynudictionary.htm 富田隆 氏によるアイヌ語電子辞書]
::
=== 物語 ===
*『アイヌ神謡集』知里幸惠 ISBN 978-4-00-320801-4、[https://www.aozora.gr.jp/cards/001529/files/44909_29558.html 青空文庫]
== その他 ==
=== アイヌ語を使って創作、執筆などを行う取り組み===
[[incubator:Wp/ain/Main_Page|アイヌ語版ウィキペディア]]
[https://otarunay.at-ninja.jp/taimuzu.html アイヌタイムズ]
[https://wiki.aynu.org/wiki/Mosem Aynuwiki]
[https://parunpe.mystrikingly.com/ パルンペ(parunpe)]
=== アイヌ語やアイヌ文化を題材、モチーフとした創作 ===
==== 漫画 ====
*[https://www.shueisha.co.jp/books/search/search.html?seriesid=37334 ゴールデンカムイ]
[[カテゴリ:語学]]
[[カテゴリ:アイヌ語|*]]
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Python/Ursina
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233022
2026-05-24T05:24:17Z
~2026-31015-91
91573
/* Ursinaのインストール方法 */
299798
wikitext
text/x-wiki
= Python/Ursinaの概要 =
Ursinaは、Pythonで利用できるオープンソースのゲームエンジンであり、特に3Dゲームの開発に特化しています。Ursinaはシンプルで直感的なAPIを提供し、初心者からプロのゲーム開発者まで幅広いユーザーに使いやすい環境を提供します。Pythonの基本的な知識があれば、誰でも簡単にゲームを作成することができます。
== 主な機能 ==
1. 3Dレンダリング: Ursinaは3Dレンダリングをサポートし、高品質なグラフィックスを実現します。3Dモデルの読み込みやテクスチャの適用、ライティング、シャドウなどの機能が備わっています。
2. アニメーション: Ursinaはアニメーションの作成と制御をサポートしており、オブジェクトの移動や回転などを簡単に実現することができます。
3. ユーザーインターフェース: Ursinaにはユーザーインターフェースの作成を補助する機能があり、ボタン、テキスト、イメージなどのUI要素を簡単に追加することができます。
4. 物理エンジン: Ursinaには物理エンジンが組み込まれており、物体の運動や衝突検知などの物理シミュレーションを行うことができます。
5. クロスプラットフォーム: Ursinaはクロスプラットフォーム対応であり、Windows、macOS、Linuxなどのオペレーティングシステムで動作します。
== Python/Ursinaのコード例 ==
<strong>コードは検証されていません。問題があれば修正をお願いします。</strong>
=== 3Dオブジェクトの表示 ===
:<syntaxhighlight lang=python3>
from ursina import *
app = Ursina()
# 3Dオブジェクトの作成
cube = Entity(model='cube', color=color.orange)
app.run()
</syntaxhighlight>
=== アニメーションの制御 ===
:<syntaxhighlight lang=python3>
from ursina import *
app = Ursina()
# アニメーション用の関数
def update():
cube.rotation_y += 1
cube.rotation_x += 1
# 3Dオブジェクトの作成
cube = Entity(model='cube', color=color.orange)
app.run()
</syntaxhighlight>
=== 物理シミュレーションの実行 ===
:<syntaxhighlight lang=python3>
from ursina import *
app = Ursina()
# 物理エンジンの初期化
window.color = color.black
world = Ursina()
# 地面の追加
ground = Entity(model='cube', scale=(20, 0.5, 20), position=(0, -2, 0), collider='box')
# キューブの追加
cube = Entity(model='cube', scale=(1, 1, 1), position=(0, 5, 0), collider='box', color=color.orange)
# キューブを落下させる力を追加
cube.animate_y(0, duration=1, curve=curve.in_out_sine)
app.run()
</syntaxhighlight>
== Ursinaのインストール方法 ==
Ursinaはpipコマンドを使用して簡単にインストールすることができます
。以下のコマンドを実行して
[[カテゴリ: pip install ursina]]
gur747x55ybd0v615brvlzu5y8uts6t
付録:アイヌ語 表記の揺れについて
0
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2026-05-23T17:14:09Z
BrassSnail
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298732
wikitext
text/x-wiki
[[アイヌ語]] > 入門編 > 表記の揺れについて
アイヌ語は江戸時代に記録が始まってから、日本人、ロシア人、イタリア人、イギリス人、そしてアイヌ自身、他にも様々な言語を持つ人々によって、多様に記録されてきました。記録する人それぞれの使用言語やその他の要因により、アイヌ語の表記法には多くのバリエーションがあります。ここでは、最近あまり使用されなくなってきた方法も含め、アイヌ語文書の歴史上現れてきた表記の方法を、できるだけ多く挙げました。ちゃんとした表記がまだ定まっていないため、この中から基本的には自分の好きな方法で書いても構いませんが、あまり使われていない表記だと誤解を生む可能性もあるので、他の人に向けて書くときはそれなりの配慮も必要かもしれません<ref>責任は持てません。</ref>。
「この発音は日本語で云々~」などと、あたかもアイヌ語と日本語の発音が同一かのように書いている場所がありますが、この中には厳密には同じでないもの、割と違うものもあります。お互いで一番近い発音だというくらいに捉えて下さい。
'''まだ記述の途上なので信頼はしないでください。また、執筆者の偏見があることは否定できません。'''
このページでは、仮名、ラテン文字、キリル文字の表記揺れを纏めています。この他の文字の表記にはまだ十分な歴史が無いと考えられるので、ここには載せません。
== すべての表記法に共通のもの ==
=== 無声音と有声音(清音と濁音)の区別 ===
アイヌ語には、日本語にあるような有声音と無声音の違い(カとガなどのような音の関係)で意味の変わることがない。そのため、同じ言葉が日本語などの話者には違って聞こえることもある。
初期の記録では(アイヌ自身によるものも含め)、区別して書かれることが多かったが、最近ではめっきり少なくなっている。Wikibooksではこれらの違いを区別せずに全て無声音の文字(k,pなど、仮名は濁点を付けない)で書くか、カナ表記の場合のみ区別して書く。
例文:huci, tan sintoko opitta en⹀kore! フチ、 タ<small>ン</small> シ<small>ン</small>トコ オピッタ エ<small>ン</small>コレ! (Wikibooksではこれを、場合によっては、フヂ、 タ<small>ン</small> シ<small>ン</small>ドコ オビッタ エ<small>ン</small>ゴレ! のように書く<ref>ただ、清濁の発声は(お互いに区別されることが無いため)個人差や状況による差が非常に大きいので、この単語や文なら絶対にこう発音されるなどということはない。</ref>)
区別して書いているものの例:[[oldwikisource:Page:The_Gospel_in_Many_Tongues_(1930).pdf/7|The_Gospel_in_Many_Tongues_(1930)の7ページ目(ウィキソース)]]や、アイヌ神謡集(1922、知里幸惠編)[https://www.aozora.gr.jp/cards/001529/files/44909_29558.html 青空文庫]など
{| class="wikitable"
|+基本的には実際の音に関わりなく文字は無声音の方を使う
!無声音(清音)
!有声音(濁音)
|-
|k к
|g г
|-
|t т
|d д
|-
|p п
|b б
|-
|c ч
|z џ
|-
|r̊ ҏ
|ř р
|}
=== 連音の音変化 ===
アイヌ語では、特定の音の並びなどが現れたとき、音が変化する。詳細は別のページに譲るが、このようなときは、単語が分かりやすいように元の発音で書くか、変化したあとの実際の発音で書くかが問題となる。慣れてくるとどちらで書かれていても正しく読むことが出来るようになるが、慣れるまでは混乱する。
(Wikibooksでは、どうしましょう。ラテン文字は元の語形のまま、仮名では実際の発音を示す、という表記の教材も幾つかあるが⋯⋯。)
一応、この方法で表記する場合、次のようになる。
{| class="wikitable"
|+文章が思いつかなかったのでうまく文章に出来る方がいればお願いします
|’an
|hi
|’or
|ta
|pon
|seta
|-
| colspan="2" |アニ
| colspan="2" |オッタ
|ポィ
|セタ
|}
アイヌ語アーカイブでは、「_」(アンダーライン)を使って「a=kor_ nispa」や「a=ne _hine」、「oka=an __hike<ref>2つで原文ママ。一箇所だけにしか現れない表記ではないため誤りではなく、それぞれ連音とh音落ちを表していると思われる。</ref>」のように表している。
=== mかnか確定しない音 ===
kanpi/kampi、tunpu/tumpuのようにそれ以上分けられない単語の中に/mp/か/mm/の音があると、その/m/の音がnかmのどちらなのか決定できない。この場合、mかnかどちらかを選んで統一することになるが、別の文字を使うこともある。例えば、『世界言語学大辞典』ではラテン文字表記でこの音に{{Lang|ain-Latn|n̄}}を使っている。
{| class="wikitable"
|+
!方法
!anpe<ref>an(ある) + pe(もの)という組み合わせになっている。</ref>
!kampi<ref>紙という意味で、これ以上分解できない(と考えられている)。</ref>
!isampe<ref>isam(無い、いない) + pe(もの)という組み合わせ。</ref>
|-
|仮名1
|アㇴペ
|カンピ
|イサㇺペ
|-
|仮名2
|アンペ
|カンピ
|イサㇺペ
|-
|仮名3
|アンペ
|カㇺピ
|イサㇺペ
|-
|仮名4
|アンペ
|カンピ
|イサンペ
|-
|仮名5
|アㇴペ
|カㇺピ
|イサㇺペ
|-
|ラテン1
|anpe
|kanpi
|isampe
|-
|ラテン2
|anpe
|{{Lang|ain-Latn|kan̄pi}}
|isampe
|-
|ラテン3
|anpe
|kampi
|isampe
|-
|キリル1
|анпэ
|канпи
|ишампэ
|-
|キリル2
|анпэ
|каӊпи<ref>ӊを使ったのはあくまで一例。</ref>
|ишампэ
|-
|キリル3
|анпэ
|канпи
|ишампэ
|}
== カナ表記 ==
=== タ行ウ段の仮名(tu) ===
この発音は現代日本語では「トゥ」と表記されることが多い。
==== 方法1:日本語と同じ ====
「トゥ」を使って、日本語と同じように表す。ただし、アイヌ語の感覚ではタやマ等と同じ一音であるため、少し違和感がある。また、この表記では日本語話者にも正しく読めない人が居るほか、表記法によってはトゥで「tow」を示す場合もあるので、紛らわしい。
==== 方法2:ツ、ツ゚、ト゚ ====
一文字で表す方法。アイヌ語の感覚に合うし、違う音と間違えられる心配もない。ただ、読み方を知らないと読めない。
{| class="wikitable"
|+
|トゥ
|ツ
|ト゚
|ツ゚
|}
=== チャ行(ca, ci, cu, ce, co) ===
チャ・チ・チュ・チェ・チョの音は、現代の日本語では(チを除いて)2字を使って表す。日本語ではこれらの音が基本的な音でないため問題はないのだが、アイヌ語ではカ行やサ行と変わらない基本的な発音である<ref>ただし、ti+(a,u,e,o)から派生した説もある。</ref>。このため、アイヌ語の音規則に則って1字で表そうとする人もいる。
==== 方法1:日本語と同じ ====
日本語と同じように「チャ・チ・チュ・チェ・チョ」と表す。日本語話者には分かり易く正しい発音もしやすい<ref>厳密には、日本語とアイヌ語とではほんの少し違う(とは言ってもアイヌ語にも日本語にもそれより大きな地域差や個人差がある)。</ref>が、一文字で表せないため切れ目が分かりづらかったり、2音で読んでしまったりする可能性がある。
==== 方法2:サ行に半濁点を付けて表す ====
江戸時代のアイヌ語の表記では、チェ音を「セ゚」で表した。この表記は、現代でも使われることがある。また日本語のツァの音を「サ゚」で表すこともあった。
稀に、これらを拡張して、「サ゚・チ・ス゚・セ゚・ソ゚」のように表すこともある。このような表記は明治以降はアイヌ語の母語話者が多く使った。
一文字で表せるため切れ目もわかりやすいが、慣れるまでは混乱する。
==== 方法3:新たな仮名を作る ====
面倒だからいっそ新しく作ってしまえとばかりに、新しく作ってしまった人もいる。例えばこの[https://note.com/qvarie/n/n5f935a37b354 noteの投稿]の画像にあるようなものだが、現時点では殆ど使われることはない。また作った人とその周辺の人しか読めない。
{| class="wikitable"
|+チャ行の表記(方法1と2を組み合わせる人もいる)
!方法
!ca
!ci
!cu
!ce
!co
|-
|1
|チャ
|チ
|チュ
|チェ
|チョ
|-
|2
|サ゚
|シ゚
|ス゚
|セ゚
|ソ゚
|-
|3
| colspan="5" |省略
|}
=== ヤ行エ段の仮名(ye) ===
ローマ字ではyeやjeのように表される音だが、日本語にはこの音を表す一文字の仮名がない<ref>昔はあったが、奈良時代頃にはeとの区別が無くなった。<br />yeもeもある(奈良時代以前)→yeに合流(平安初期)→eに変化(江戸時代頃)のように変わっていったと考えられている。</ref>。日本語では外来語の発音を表すとき、多くの場合はイェを使うが、「エ」や「イエ」で代用することも多い<ref>エルサレムやイエーガーマイスターなど</ref>。アイヌ語では「エ」や「イエ」とは別の基本的な音なので、区別したうえで一文字で書きたい。2つの要求に対する、挑戦と妥協がここにある。
==== 方法1:イェ ====
日本語と同じように書く方法。一音なのに二文字を使って表さないといけないので見た目が少し悪くなる。また、「イエ」のように発音してしまう可能性がある。
==== 方法1′:イェ ====
方法1とほぼ同じだが、半角文字を利用することで一音であることが分かり易くなる。入力が少しし難くなり、見た目が少し悪くなる。
==== 方法2:𛄡 ====
ユニコードには一文字の仮名が登録されているので、それを使う。多くの機器でまだ表示できず、入力出来るようにするにも手間がいる。
==== 方法3:エ(’eを𛀀で表す) ====
奈良時代(それ以前には日本語にもeとyeの区別があった)の日本で行われていたような表記。わかりにくい。
{| class="wikitable"
|+yeの表記色々
!方法
!’e
!ye
|-
|1
|エ
|イェ
|-
|1′
|エ
|イェ
|-
|2
|エ
|𛄡
|-
|3
|𛀀
|エ
|-
|(3′)
|(エ)
|(𛀀)
|-
|2+3
|𛀀
|𛄡
|}
=== ワ行(wa, wi, wu, we, wo)<ref>ちなみに、wiという音節は通常存在しない。</ref> ===
日本語では古くにワ行の音の多くがア行に同化したが、表記の上では書き分けが続いた。ア行とワ行で発音の異なるアイヌ語を表記するときでも日本語と同じように書き分けていた<ref>江戸時代の文書ではあまり書き分けられていない。(’eにもweにもヱとエの両方が使われている。)これは日本語の表記も概ね同じで、ヱとエの出てくる場所を語源に基づいて厳格に使い分けるようになったのは明治時代からのこと。</ref>が、戦後に「現代仮名遣い」が公布されると表記の面でもこの仮名を使わなくなったため、その影響を受けてアイヌ語表記にも混乱が生じた。
==== 方法1:ワ・(ウィ)・ウ・ウェ・ウォ ====
今の日本語と同じような表記。アイヌ語では一音で認識されるところが二文字になっている。
==== 方法2:ワ・(ヰ)・ウ・ヱ・ヲ ====
前述の通り、明治時代以降は現代仮名遣いの公布されるまでこちらの表記が使われていた。現代の日本語話者には慣れるまで少し読みにくいという難点がある。
{| class="wikitable"
|+ワ行
!方法
!wa
!wi
!wu
!we
!wo
|-
|1
|ワ
|ウィ
|ウ
|ウェ
|ウォ
|-
|2
|ワ
|ヰ
|ウ
|ヱ
|ヲ
|}
=== 音節末のイ・ウ (-y, -w) ===
ラテン文字ではA'''y'''nu(A'''j'''nu)・ina'''w'''(ina'''ŭ''')と表す部分の文字。聞こえ方はア行のイ・ウとあまり変わらないが、異なる音として認識される。
==== 方法1:普通の大きさ ====
ア行のイ・ウと同じように書く。
==== 方法2:小書き ====
順当に考えれば、他の子音と同じように小さく書くのが理にかなっている。また読み難くなるわけでもなく、むしろ切れ目が分かりやすいが、方法1ほどは使われていない。tuの音節とtowの音節が紛らわしいからなのか。
{| class="wikitable"
|+
!方法
!Aynu
!inaw
|-
|1
|アイヌ
|イナウ
|-
|2
|アィヌ
|イナゥ
|}
=== 音節末子音k,t,p,s ===
昔は、ク、ツ、プ、シ、ス等の普通の大きさの仮名で書かれていたが、最近は殆んどそのような事はない。後に続く音にとって表記を分ける場合といつも同じように表記する場合とがある。またsについては聞こえる発音によってㇲとㇱを書き分ける場合もある。
==== 方法1:全ての場所で同じ表記 ====
場所に関わらず、pならㇷ゚、tならッ(またはㇳ)、kならㇰ、sならㇱ(またはㇲ)とする方法。
==== 方法2:次に同じ子音が来るときはッを使う ====
日本語の撥音と同じ発音になる、pp, kk, ssのような音は日本語に倣ってッを使う方法。tの後に子音が続いたときに区別できない。また、カナ表記から発音を確定できない。
{| class="wikitable"
|+大仮名による表記は省略
!方法
!hoppa
!sattek
!yakka
|-
|1
|ホㇷ゚パ
|サッテㇰ
|ヤㇰカ
|-
|2
|ホッパ
|サッテㇰ
|ヤッカ
|}
{| class="wikitable"
|+sの表記
!
!cis
!assap
!aswa
|-
|発音通り
|チㇱ
|アㇲサㇷ゚
|アㇲワ
|-
|全部ㇱ
|チㇱ
|アㇱサㇷ゚
|アㇱワ
|-
|全部ㇲ
|チㇲ
|アㇲサㇷ゚
|アㇲワ
|-
|ssをッ
|チㇱ
|アッサㇷ゚
|アㇱワ/アㇲワ
|}
=== 音節末のr ===
こちらも昔はラ・リ・ル・レ・ロのような普通の大きさで書かれていた。
==== 方法1:前の母音と同じ段の小書き ====
アイヌ語では、音節末のrは前の母音の音がかなり残って聞こえる。そのためこの様に表記する。情報処理が少し複雑で、一部の単語は正確に表せない。
==== 方法2:実際に聞こえる発音に近づける ====
「前の母音の音がかなり残って聞こえる」とは言うが、実際にはあとの母音のほうが残って聞こえる単語もある。そのような単語もなるべく忠実に表す方法。単純な機械変換は出来なくなる。
==== 方法3:全てㇽを使う ====
色々諦めた。
{| class="wikitable"
|+複雑です<ref>ここではyukarとarkiを例に出したが、全ての方言でユカㇽ、アㇼキのように発音される訳では無い。</ref>
!方法
!karpa
!kirir
!kur
!peker
!kor
!
!yúkar
!arki
|-
|1
|カㇻパ
|キリㇼ
|クㇽ
|ペケㇾ
|コㇿ
|
|ユカㇻ
|アㇻキ
|-
|2
|カㇻパ
|キリㇼ
|クㇽ
|ペケㇾ
|コㇿ
|
|ユカㇽ
|アㇼキ
|-
|3
|カㇽパ
|キリㇽ
|クㇽ
|ペケㇽ
|コㇽ
|
|ユカㇽ
|アㇽキ
|}
=== 音節末のn,m ===
日本語にンという仮名があるため新たな仮名を作る必要は無かったが、小書きでないので見た目に音節が分かり難かったりする。
=== アクセントの表記法 ===
現在仮名には、アクセントを表記する方法が無い。アイヌ語はアクセント表記をしなければ意味が通じないというほどの言語ではない。そのためアルファベット表記でもアクセントを表示しないことはけっこうあるが、やはり初学者向けの場合や例外アクセントの単語では表記したいこともある。
発音の仕方は[[アイヌ語 アクセント|ここ]]を参照のこと。
==== 方法1:傍点を使う ====
文字の上や右に付ける傍点で表す。
==== 方法2:ひらがなを使う ====
アクセントのある音節をひらがなで表す。
==== 方法3:上線を使う ====
日本語の辞書などの方式と同じように、アクセントのある部分に線を引く。アイヌ語は日本語の東京式アクセントと違い音の高くなる部分が単語の区別に重要なので、上がる部分に線を引く。
==== 方法4:分音記号や囲み文字、その他記号などを使う ====
文字や記号、特殊文字を追加して示す方法。コピー貼付けしても情報が失われないが、使う文字によってはいくつかの端末で表示できないことがある。
==== 方法5:太字にする ====
直感的に分かりやすいが、対応していない環境があったり、太字にしたのがわからない場合があったりする。
{| class="wikitable"
|+アクセント表記
!方法
!kamúy
!sések
!asitóma
|-
|1
|カ<span style="text-emphasis-style: sesame;">ム</span>ィ
|<span style="text-emphasis-style: sesame;">セ</span>セㇰ
|アㇱ<span style="text-emphasis-style: sesame;">ト</span>マ
|-
|2
|カむィ
|せセㇰ
|アシとマ
|-
|3
|カ<span style="border-top:1px solid black;position:relative;padding-top:1px;">ム<span style="position:absolute;top:0;bottom:67%;left:0%;border-left:1px solid black;">​</span></span>ィ
|<span style="border-top:1px solid black;position:relative;padding-top:1px;">セ<span style="position:absolute;top:0;bottom:67%;left:0%;border-left:1px solid black;">​</span></span>セㇰ
|アシ<span style="border-top:1px solid black;position:relative;padding-top:1px;">ト<span style="position:absolute;top:0;bottom:67%;left:0%;border-left:1px solid black;">​</span></span>マ
|-
|4の例1
|カム⃣ィ
|セ⃣セㇰ
|アシト⃣マ
|-
|4の例2
|カꜛムィ
|ꜛセセㇰ
|アシꜛトマ
|-
|5
|カ'''ム'''ィ
|'''セ'''セㇰ
|アシ'''ト'''マ
|}
== ラテン文字表記 ==
=== サ行 ===
実際の発音を反映してs/shやs/šで書き分けることもある。
=== チャ行 ===
同じく、実際の発音を反映してc/chやs/čで書き分けることがある。
=== ヤ行 ===
==== 方法1:y ====
==== 方法2:j ====
=== ワ行 ===
==== 方法1:w ====
==== 方法2:ŭ ====
=== 人称接辞の表記 ===
==== 方法1:普通に書く ====
==== 方法2:ダブルハイフン(⹀)(代用でイコール(=))を用いる ====
ほとんどの単語は人称接辞が付いた形では辞書に載っていないため、人称接辞であることを示して調べやすくするためにこうする。正式なものではないが広く使われており、これを使った表記のほうがむしろ多い。イコールは代用と書いたが、先に使われていたのはこちらの方。
== キリル文字表記 ==
キリル文字表記は、ロシア語風の表記と、音素表記の見た目の差が大きい。ここでは音素表記について解説し、ロシア語風の表記は別のページで扱う。また、日本語での情報が少ないため、一層不正確な解説となる。
== 脚注 ==
[[カテゴリ:アイヌ語]]
<references />
== 参考文献 ==
[https://www.aa.tufs.ac.jp/~asako/unwritten/01-nakagawa.pdf アイヌ人によるアイヌ語表記への取り組み(中川裕)]
6xl1nxidc9ig6z9hwaetwyb7dohrlut
アイヌ語 アクセント
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293736
2026-05-23T17:09:52Z
BrassSnail
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text/x-wiki
アクセントはそれほど難しくない。日本語よりも遥かに簡単。
== i. 基本的な原理 ==
アイヌ語のアクセントは高低アクセントである。アクセントのある音節の後は高くても低くても良い<ref>基本的には段々と自然に下がってゆく。</ref>が、アクセントのある音節の前の音節は必ず低く発音する。樺太方言や北海道の美幌方言、静内方言などではアクセントの区別ははっきりしない。
基本的に、初めの音節が開音節か閉音節かで決まる。
# 1音節の単語では、開音節でも閉音節でも、当然アクセントはその音節にある。また、開音節の単語は樺太アイヌ語で長音になる。
#* 例)<span style="text-emphasis-style: sesame;">キ</span>ㇰ kík 〜を叩く | <span style="text-emphasis-style: sesame;">プ</span> pú (樺:<span style="text-emphasis-style: sesame;">プ</span>ー pū) 倉 | '''エ''' é (樺:'''エー''' ē) 食べる
# 最初の音節が閉音節なら、最初の音節にアクセントがある。
#* 例)<span style="text-emphasis-style: sesame;">ア</span>ィヌ áy-nu 人 | '''ポ'''<small>ン</small>ノ pón-no 少し | チ<span style="text-emphasis-style: sesame;">ョ</span>ㇿポキヒ cór-po-ki-hi 〜の枝
# 最初の音節が開音節なら、2つ目の音節にアクセントがある。
#* 例)チ<span style="text-emphasis-style: sesame;">セ</span> ci-sé 家 | カ'''ム'''ィ ka-múy 神 | イ<span style="text-emphasis-style: sesame;">ク</span>パスィ i-kú-pa-suy 奉酒箆
# ただし、3.には例外も少数ある。これを例外アクセントというが、そこまで例外的でもない。詳しくは下を参照。
#* 例)<span style="text-emphasis-style: sesame;">ユ</span>カㇻ yú-kar (樺太:<span style="text-emphasis-style: sesame;">ユ</span>ーカラ yū-ka-ra) ユカル(神謡)<ref>北海道方言ではこの意味だが、樺太方言では単に「歌」という意味。</ref> | '''シ'''サㇺ sí-sam (樺:'''シー'''サㇺ sī-sam) 和人
アクセントは基本的に1単語につき1個だが、複合語などの場合、稀に2個以上アクセントを持つ単語がある。このとき、2つ目のアクセントの前も音を下げる。(<span style="text-emphasis-style: sesame;">コ</span><small>ン</small>カ<span style="text-emphasis-style: sesame;">ニ</span> kónkaní 金、シ'''ロ'''カ'''ニ''' sirókaní 銀など)また、付属語類(アナㇰ anak ~は 等)にアクセントが付くことは通常ない。
アクセントの後は、急な変化をセず、自然に少しづつ下がっていくことが多い。
== ii. 例外アクセント ==
最初の音節が開音節でも、その音節にアクセントのある単語がある。このような単語を例外アクセントの単語という。この一部を日本語訳とともに下に示した。また、このとき、樺太アイヌ語では、アクセントの部分(はじめの音節)が長母音になる(例:'''ウ'''セィ úsey '''у'''шэй → '''ウー'''セィ ūsey уушэй)。元は北海道アイヌ語(の原型)でも長母音で、その後に長短の区別が消滅してアクセントの区別に変化したと言われている。
先頭の語が一音節の合成語だと、そのアクセント位置が移動せずに例外アクセントになることがある(mát + ák → mátakなど)。ただし、移動することもある(mát + ápa → matápaなど)。これには一定の規則のようなものはあるが、方言によって変わることもあるし、一つ一つ覚えていった方が多分早い。
{| class="wikitable sortable mw-collapsible mw-collapsed"
|+単語の例
!カナ
!ラテン
!キリル
!日本語訳
|-
|イネ
|íne
|инэ
|4の
|-
|ウセィ
|usey
|ушэй
|湯
|-
|ウナ
|úna
|уна
|灰
|-
|カニ
|kani
|кани
|私
|-
|クスヱㇷ゚
|kusuwep
|кушуўэп
|ハト
|-
|クレ
|kure
|курэ
|飲ませる
|-
|ケラ
|kera
|кэра
|味
|-
|シサㇺ
|sísam
|шишам
|和人
|-
|シノ
|sino
|шино
|本当に
|-
|セセㇰ
|sesek
|шэшэк
|熱い
|-
|サ゚ペ(チャペ)
|cape
|чапэ
|猫
|-
|チポ
|cipo
|чипо
|船に乗る/漕ぐ
|-
|ソ゚カ(チョカ)
|coka
|чока
|(相手を含まない)わたしたち
|-
|タタタタ
|tatatata
|тaтaтaтa
|〜を切り刻む
|-
|ツ゚キ(トゥキ)
|tuki
|туки
|杯
|-
|テレ
|tere
|тэрэ
|~を待つ
|-
|トカㇷ゚
|tokap
|токaп
|昼間
|-
|トペ𛅧(トペ<small>ン</small>)
|topen
|топэн
|甘い
|-
|パセ
|pase
|пашэ
|重い,えらい
|-
|ペカ𛅧ケ(ペカ<small>ン</small>ケ)
|pekanke
|пэкaнкэ
|浮かぶ
|-
|ハポ
|hapo
|гaпо
|お母さん
|-
|フチ
|huci
|гучи
|祖母、おばあさん
|-
|フラ
|hura
|гурa
|におい
|-
|フレ
|hure
|гурэ
|赤い
|-
|レラ
|rera
|рэрa
|風
|-
|ニサㇷ゚
|nisap
|нишaп
|急に
|-
|ニナ
|nina
|нинa
|薪取りをする
|-
|ヌマ𛅧(ヌマ<small>ン</small>)
|numan
|нумaн
|昨日
|-
|ミチ
|mici
|мичи
|父
|-
|ミナ
|mina
|минa
|笑う
|-
|ユカㇻ
|yukar
|йукaр
|ユカㇻ(英雄叙事詩)
|-
|ユポ
|yupo
|йупо
|お兄さん
|}
== iii. アクセントの移動 ==
単語の頭に人称接辞<ref>動詞や名詞などについて、誰の動作や物かを示す部分。アイヌ語の学習で特に大事なものの一つ。x章のx回(未定)で詳しく説明する。今は読み流すだけでもよい。</ref>がついた場合、アクセントが移動することがある。これは方言によっても相異なる。
=== 沙流方言の場合 ===
* ''e='', ''ci='', の場合は開音節なので、その次の音節にアクセントが来る。
** e=é
** ci=kár
* ''en='', ''un='' の場合は閉音節なので、アクセントは人称接辞に来る。
** én=kore
* ''a='', ''i='', ''eci=''がついた場合、元の位置から移動しない。
** a=nukár, a=réspa
** i=nukár, i=eháyta
** eci=nukár, eci=síknu
== iv. 表記の仕方「´」 ==
アクセントの表記には、(ラテン、キリル両方の)アルファベットでは、アキュートアクセント(´)を使う。カナでは定まった表記法がない。また、長音にアクセントがある場合、サーカムフレックスを付けて、アクセントと長音を表す。また、どの文字でも、状況や表記方針、人によって、
# 全てのアクセントを表記する。
# 例外アクセントの単語のみ表記する。
# アクセントを表記しない。
と、対応が分かれる。
また、仮名表記では確立した方法がない。表記する場合、
# 傍点を使う。例:カ<span style="text-emphasis-style: sesame;">ム</span>ィ
# 太字にする。例:カ'''ム'''ィ
# 囲み文字を使う。例:カム⃣ィ
# 平仮名を使う。カむィ
などの方法がある。
全てのアクセントを表記するときの例を下に示した。
イソ⃣サ<small>ン</small>ケカムィ アナㇰ パ⃣セ カム⃣ィ ネ ルヱ ネ。 isósankekamuy anak páse kamúy ne ruwe ne. フクロウはえらいカムイなのだ。
'''タ'''<small>ン</small>ト '''ア'''リキキノ ク'''ネ'''ㇷ゚キ クス ク'''テ'''ケヘ '''ア'''ㇻカ。 今日は一生懸命働いたので、手が痛い。(ニューエクスプレス アイヌ語〈白水社、中川裕 著〉より引用、どちらも沙流方言)
== v. 付属語のアクセント ==
「anak 〜は」「yakka 〜けれど」「hine 〜して」などの付属語類は、前の単語と一まとまりでで発音されることが多く、通常アクセントは付かない。
== 註釈 ==
[[カテゴリ:アイヌ語]]
[[カテゴリ:アクセントと声調]]
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高校化学 化学反応とエンタルピー
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text/x-wiki
{{pathnav|高等学校の学習|高等学校理科|高等学校化学|[[高等学校 化学|化学]]|pagename=化学反応とエンタルピー|frame=1|small=1}}
このページでは、いわゆる'''熱化学'''の内容について扱う。熱力学と関連が深い分野なので、[[高等学校物理基礎|物理基礎]]の既習を前提とする。必要があれば[[高校物理 熱力学]]も参照。
化学反応が起こると、多くの場合反応物と生成物の化学エネルギーの差により熱の出入りが起こる。以下では、この現象を定量的に考える。
==化学反応と熱==
化学反応が起こり、人間の観察の対象となる部分を'''系'''という。系の外側を'''外界'''という。
すると、熱力学第一法則<math>\Delta U = Q - W</math>において、ΔUは内部エネルギーの変化量、Qは'''系が外界から受け取った熱'''、Wは'''系が外界にした仕事'''を表すと言える。
定積変化ではW=0となるため、熱力学第一法則よりΔU=Qである。つまり、定積の系では反応に伴う熱の出入りの量は内部エネルギーの変化量に等しい。
しかし、化学反応を定積条件下で行うことはまずないため、この場合を考えるのは物理学の範疇になる。
定圧変化を考える前に、以下のように'''エンタルピー'''を定義する。
'''エンタルピー'''
Uを系の内部エネルギー、Pを系の内圧、Vを系の体積としたとき、<math>H = U + PV</math>を'''エンタルピー(熱含量、焓)'''という。単位は'''ジュール(J)'''である。
すると、定圧変化におけるエンタルピー変化は、<math>\Delta H = (U_1 + P V_1) - (U_0 + P V_0) = U_1 - U_0 + P(V_1 - V_0) = \Delta U + P \Delta V</math>となる。定圧変化では体積が変化するので、'''系は外界に仕事をする'''。このときの仕事WはPΔVに等しい。故に、熱力学第一法則より<math>\Delta H = \Delta U + W = Q </math>となる。
ここから、定圧の系において'''反応に伴う熱の出入りの量はエンタルピー変化に等しい'''ということがわかる(逆にいうと、そうなるようにエンタルピーを上手く定義したと言える)。エンタルピーは物質が持つエネルギーを表す物理量の一つである。
一般に、物質は'''エンタルピーが低いほど安定'''である。
==反応エンタルピー==
定圧条件下で化学反応により放出・吸収される熱量を'''反応エンタルピー'''といい、ΔHで表す。
反応エンタルピー = ('''生成物'''が持つエンタルピー) - ('''反応物'''が持つエンタルピー)である。
系の熱を外界に放出しながら進む反応を'''発熱反応'''、外界の熱を系に吸収しながら進む反応を'''吸熱反応'''という。
発熱反応では系の熱を外界に放出するので、系が持つエネルギーすなわちエンタルピーは減少する。つまり、'''発熱反応ではΔHは負'''である。
吸熱反応では外界の熱を系に吸収するので、系が持つエンタルピーは増加する。つまり、'''吸熱反応ではΔHは正'''である。
化学反応に伴うエンタルピー変化を表すとき、以下の2点に注意する。
:①物質の種類が同じでも、'''状態が違えばエンタルピーは異なる'''。
::物質の後ろに、固体ならば(固)または(s)、液体ならば(液)または(l)、気体ならば(気)または(g)と付ける。※sはsolid、lはliquid、gはgasの略である。
:::例)CO<sub>2</sub>(g)、H<sub>2</sub>O(液)
::同素体を持つ物質は括弧の中に同素体名を書いて区別する。
:::例)C(黒鉛)、C(ダイヤモンド)、S(斜方硫黄)
:②'''注目する物質の係数を1とする'''。
::注目する物質の物質量を1molとみなして考える。係数が分数になっても構わない。
この2点を踏まえると、1molの水素が完全燃焼して液体の水が生成し、286kJの熱量が放出された反応は以下のように書ける。
[1] 化学反応式を書く
:<chem>2H2 + O2 -> 2H2O</chem>
[2] 着目する物質の係数を1にする
:<chem>H2 + 1/2 O2 -> H2O</chem>
[3] 物質の状態とエンタルピー変化を付記する。
:<chem>H2 (s) + 1/2 O2(s) -> H2O(l)</chem><math>\quad \Delta H = -286 \, \mathrm{kJ}</math>
このような反応式を、'''エンタルピー変化を付した反応式'''という。<!-- 一部の参考書ではこちらも「熱化学方程式」「熱化学反応式」としていましたが、旧来の熱化学方程式との混同を避けるため採用しません。 -->
なお、エンタルピー変化を付した反応式は、'''現実には起こり得ない反応も多い'''。起こり得ない理由は後述する。
==反応エンタルピーの種類==
反応エンタルピーは、反応の種類によっては固有の名称で呼ばれるものもある。
それらは着目する物質1molあたりの熱量(単位:kJ/mol)で表されるが、'''反応式の中では単位のうち/molを省略する'''。
;'''燃焼エンタルピー'''
物質1molが'''完全燃焼'''するときの反応エンタルピー。
:例)<chem>CO(g) + 1/2 O2(g) -> CO2(g)</chem><math>\quad \Delta H = -283 \, \mathrm{kJ}</math>
;'''生成エンタルピー'''
化合物1molを構成元素の'''単体'''から生成するときの反応エンタルピー。※単体の生成エンタルピーは0とし、同素体が存在する元素は25℃で最も安定な同素体から生成する反応を用いる。
:例)<chem>1/2 N2(g) + 1/2 O2(g) -> NO(g)</chem><math>\quad \Delta H = -90.3 \, \mathrm{kJ}</math>
;'''溶解エンタルピー'''
溶質1molが'''多量の溶媒'''に溶解するときの反応エンタルピー。溶媒が水の場合、aqという記号を用いる。※aqはaquaの略である。
:例)<chem>NaOH(S) + aq -> NaOHaq</chem><math>\quad \Delta H = -44.5 \, \mathrm{kJ}</math>
なお、化学式にaqをつけたものは、その物質が水溶液の状態であることを表す。
;'''中和エンタルピー'''
酸と塩基が反応し、'''水'''1molが生成するときの反応エンタルピー。
:例)<chem>H^+ aq + OH^- aq -> H2O(l)</chem><math>\quad \Delta H = 56.5 \, \mathrm{kJ}</math>
;状態変化とエンタルピー
物質の状態変化においても熱の出入りが発生するため、エンタルピー変化を用いて表せる。便宜上、反応エンタルピーの一種に分類する。名前は、状態変化の名(融解、蒸発、昇華、凝固、凝縮、凝華)にエンタルピーをくっつければよい。
:例)<chem>H2O(g) -> H2O(l)</chem><math>\quad \Delta H = -41 \, \mathrm{kJ}</math>
なお、融解エンタルピーと凝固エンタルピー、蒸発エンタルピーと凝縮エンタルピー、昇華エンタルピーと凝華エンタルピーはそれぞれ逆反応の関係にあるので、お互いに反応式の両辺を入れ替えてΔHの符号を反転させれば一致する。
==ヘスの法則==
[[File:Hess cycles NaOH jp.svg|500px]]
図のように、固体の水酸化ナトリウムから塩化ナトリウムを生成する反応には2つの経路があるが、どちらの経路で合成を行っても、出入りする熱量(反応エンタルピー)の総和は同じである。
化学反応の際のエンタルピー変化は反応前後の物質の種類・状態で決まり、途中の反応経路や反応方法に依存しない。このことを'''ヘスの法則'''または'''総熱量保存則'''という。
ヘスの法則を応用することで、複数の反応式から未知の反応エンタルピーを求めることができる。
;応用1:反応式の連立
以下の反応の反応エンタルピーQ[kJ/mol]を求めたい。
:<chem>C(graphite) + 1/2 O2(g) -> CO(g)</chem><math>\quad \Delta H = Q \, \mathrm{kJ}</math>・・・Ⅰ
黒鉛、一酸化炭素の燃焼エンタルピーは以下と判明している。
:<chem>C(graphite) + O2(g) -> CO2(g)</chem><math>\quad \Delta H = -394 \, \mathrm{kJ}</math>・・・Ⅱ
:<chem>CO(g) + 1/2 O2 -> CO2(g)</chem><math>\quad \Delta H = -283 \, \mathrm{kJ}</math>・・・Ⅲ
ヘスの法則より、ⅡとⅠ+Ⅲはエンタルピー変化が等しいので、ⅡからⅢを引けばⅠを求められる。
:<chem>C(graphite) + O2(g) - CO(g) - 1/2 O2 -> CO2(g) - CO2(g)</chem><math>\quad \Delta H = -394 - (-283) \, \mathrm{kJ}</math>
:<chem>C(graphite) + 1/2 O2(g) -> CO(g)</chem><math>\quad \Delta H = -111 \, \mathrm{kJ}</math>※
:<math>\therefore Q = -111 [\mathrm{kJ/mol}]</math>
※化学反応式で引き算が残ったら移項する。
;応用2:エンタルピー図の利用
[[File:ヘスの法則svg.svg|thumb|250px|H<sub>2</sub>Oの凝集エンタルピーを求める。]]
<!-- 縦軸は本来「エンタルピー」にするべきだが、良い画像がなかったので旧課程版の画像を流用している。 -->
エンタルピー変化を表した図を'''エンタルピー図'''という。
エンタルピー図を利用すると、未知の反応エンタルピーを視覚的に求めることができる。
:<chem>H2(g) + 1/2 O2(g) -> H2O(l)</chem><math>\quad \Delta H = -286 \, \mathrm{kJ}</math>
:<chem>H2(g) + 1/2 O2(g) -> H2O(g)</chem><math>\quad \Delta H = -242 \, \mathrm{kJ}</math>
右のエンタルピー図から、水の凝集エンタルピーQは<math>Q = -44 [\mathrm{kJ/mol}]</math>と求まる。
なお、単体や完全燃焼化合物を基準にするとエンタルピー図を書きやすいが、'''燃焼性生物は低エンタルピー、単体は高エンタルピーとなることが多い'''。
;応用3:生成エンタルピーと反応エンタルピーの関係
エンタルピー図を書くことによって、次の関係がわかる。
:反応エンタルピー = ('''生成物'''の生成エンタルピー) - ('''反応物'''の生成エンタルピー)
当然、この関係を利用して反応エンタルピーを求めることもできる。
;応用4:結合エンタルピー
分子内の1mol(602214076000000000000000本)の'''共有結合'''を切断して気体状(ばらばら状態)の原子にするために必要なエネルギーを、その共有結合の'''結合エンタルピー'''([[高等学校物理/原子物理#原子核反応|結合エネルギー]])という。結合を切断するためにエネルギーが必要になるため、ΔHは必ず'''正'''である。
:例)<chem>H-H (g) -> 2H(g)</chem><math>\quad \Delta H = 436 \, \mathrm{kJ}</math>
※<chem>H-H</chem>は<chem>H2</chem>のままで書いても良い。
エンタルピー図を書くことによって、以下の関係がわかる。
:反応エンタルピー = ('''反応物'''の結合エンタルピー) - ('''生成物'''の結合エンタルピー)
;応用5:格子エンタルピー(発展)
1molのイオンからなるイオン結晶のイオン結合を切断して気体状のイオンにするのに必要なエネルギーを、そのイオン結合の'''格子エンタルピー'''(格子エネルギー)という。格子エンタルピーは、そのイオン結晶が安定かどうかの指標になる。
直接的に求めることは不可能だが、ヘスの法則を利用して間接的に求めることはできる。
*例題
NaCl(s)の生成エンタルピーを-411[kJ/mol]、NaCl(s)の昇華エンタルピーを92[kJ/mol]、Cl<sub>2</sub>の結合エンタルピーを243[kJ/mol]、Na(g)のイオン化エネルギーを496[kJ/mol]、Cl(g)の電気親和力を-349[kJ/mol]とする。Na(s)の格子エンタルピーQ[kJ/mol]を求めよ。
*解答
それぞれの反応エンタルピーを付した化学反応式は以下のようになる。
:①<chem>Na(s) + 1/2 Cl2(g) -> NaCl(s)</chem><math>\quad \Delta H = -41 \, \mathrm{kJ}</math>
:②<chem>Na(s) -> Na(g)</chem><math>\quad \Delta H = 92 \, \mathrm{kJ}</math>
:③<chem>Cl2(g) -> 2Cl(g)</chem><math>\quad \Delta H = 243 \, \mathrm{kJ}</math>
:④<chem>Na(g) -> Na^+(g) + e^-</chem><math>\quad \Delta H = 496 \, \mathrm{kJ}</math>
:⑤<chem>Cl(g) + e^- -> Cl^- (g)</chem><math>\quad \Delta H = -349 \, \mathrm{kJ}</math>
:⑥<chem>NaCl(s) -> Na^+(g) + Cl^- (g)</chem><math>\quad \Delta H = Q \, \mathrm{kJ}</math>
エンタルピー図を書くと、ヘスの法則より-①+②+1/2 ③+④=-⑤+⑥がわかる。
ΔHの部分にのみ着目して計算すると、<math>-(-411) + 92 + \frac{243}{2} + 496 = -(-349) + Q</math>すなわち<math>Q = 411+92+\frac{243}{2}+496-349 = 771.5</math>であり、有効数字を考慮すると<math>Q = 772 [\mathrm{kJ/mol}]</math>と求まる。
;反応エンタルピーの測定
反応エンタルピーは、反応による熱の吸収・放出を測定することにより求められる。測定には水温変化を利用する。
水溶液の質量をm[kg]、温度変化をΔT[K]、比熱をc[J/(g・K)]とすると、発熱量(吸熱量)Qは<math>Q = mc \Delta T</math>である。反応エンタルピーの'''絶対値'''はQを物質量で割れば求まる。反応エンタルピーの符号は発熱反応か吸熱反応華どうかで判断する。
==化学反応が自発的に進む要因==
; エントロピー
一般に、物質はエンタルピーが低い方が安定なので、発熱反応では反応が自発的に進みやすい。しかし、エンタルピーが高くなる反応なのにも拘らず、自発的に進む吸熱反応は私たちの身の回りに溢れている。氷の溶解がその最たる例である。
このように、エンタルピーだけでは反応が自発的に進むかどうかを判断することはできない。そこで、以下のような量を考える。
'''エントロピー'''
熱源の温度をT、熱源との熱の出入りの量をQとしたとき、<math>S = \frac{Q}{T}</math>を'''エントロピー(内転効率、熵)'''という。単位は'''ジュール毎ケルビン(J/K)'''である。
エントロピーは'''系の乱雑さを表す物理量'''であり、可逆な熱機関(熱効率が理論最大値をとる熱機関)では保存される。
熱力学第二法則より、熱は高温物体から低温物体に伝わっていく。この過程において、低温物体のエントロピーは増大する。一般に、孤立系、及び断熱系において不可逆変化が生じた場合、その系のエントロピーは増大する。これを'''エントロピー増大則'''という。例えば、溶解などの拡散する変化はエンタルピー増大則に従ったものである。
これを踏まえると、化学反応が自発的に反応するかどうかは「エンタルピー変化による安定化の度合い」と「エントロピー変化による乱雑さ増大の度合い」の兼ね合いで判断することができる。
; ギブスの自由エネルギー
系の乱雑さが増大する度合いは、熱運動が激しいほど大きくなる。よって、系の乱雑さはエントロピーと絶対温度の積で表される。
そこで、乱雑さとエンタルピーによる安定化を同時に考えるため、以下のような量を導入する。
'''ギブスの自由エネルギー'''
系のエンタルピーをH、系のエントロピーをS、系の内部の絶対温度をTとしたとき、<math>G = H - TS</math>を'''ギブスの自由エネルギー'''という。単位は'''ジュール(J)'''である。
Hが小さいほど安定、Sが大きいほど安定なので、Gが小さいほど安定である。故に、自由エネルギー変化ΔGが'''負'''ならば、安定な方向に反応が進むので自発的に反応する。ΔGが0ならば化学平衡の状態にある。ΔGが'''正'''ならば自発的に反応せず、逆反応が進む。なお、エンタルピー変化・エントロピー変化ともに負ならば低温条件で反応が進行し、ともに正ならば高温条件で反応が進行する。
エンタルピー変化を付した反応式上では成り立っても現実に起こらない反応があるのは、その反応において自由エネルギー変化が負にならないためである。
;補足:熱力学第三法則
絶対零度では完全結晶(分子欠落や不純物のない結晶)の取りうる配置は1通りなので、エントロピーは0と考えられる。故に、次の法則が成り立つ。
'''熱力学第三法則'''
完全結晶のエントロピーは絶対零度下では全て等しい。
この法則は「有限回の操作では絶対零度に到達することはできない」という定理と同値である。
熱力学は、第零法則(「物体AとB、BとCがそれぞれ熱平衡ならばAとCも熱平衡にある」という法則)、第一法則、第二法則だけでなくこの第三法則を加えて初めて完成する。
==化学反応と光==
光は電磁波の一種であり、波長の長い方から電波、赤外線、可視光線、紫外線、X線、γ線に分けられる。波長が短いほどエネルギーは大きくなる([[高等学校物理/原子物理#光の粒子性]]を参照)。
なお、虹の七色は'''{{ruby|赤橙黄緑青藍紫|せきとうおうりょくせいらんし}}'''である。
;化学発光
反応物と生成物のエネルギーの差を光エネルギーとして放出する反応を'''化学発光'''('''化学冷光'''、'''化学ルミネセンス''')という。
*ルミノール反応
塩基性条件下で'''ルミノール'''(<chem>C8H7N3O2</chem>)を過酸化水素などを用いて酸化すると、青く発光する。遷移元素の錯体が存在すれば強く反応するため、血液の検出に用いられる。
*蛍光物質
'''蓚酸ジフェニル'''(<chem>C14H10O4</chem>)は、酸化されるときにエネルギーを'''蛍光物質'''に与え、発光させる。ケミカルライトに用いられる。
炎色反応も化学発光の一つである。ホタルやクラゲなど、生物による化学発光は'''生物発光'''という。([[高等学校 生物/効果器]]も参照。)
;光化学反応
化学反応を起こさせるのは熱だけではない。可視光線や紫外線などの吸収により起こったり促進されたりする反応を'''光化学反応'''という。
*ハロゲン化銀の感光
[[高校化学 ハロゲン#ハロゲン化銀・ハロゲン化鉛|ハロゲン化銀]]は光に当てると銀を遊離する('''感光性''')。歴史的には臭化銀<chem>AgBr</chem>(Silver Bromide)が写真に用いられ、有名人の写真を意味する「ブロマイド」の語源となっている。
*水素と塩素の爆発
水素と塩素の混合気体に強い光を当てると、爆発的に反応して塩化水素を生じる。
*ベンゼンの付加反応
[[高校化学 芳香族化合物#ベンゼン|ベンゼン]]<chem>C6H6</chem>は付加反応が起こりづらいが、紫外線を照射すると塩素原子が付加してヘキサクロロシクロヘキサン<chem>C6H6Cl6</chem>を生じる
*光触媒
光が当たると触媒の働きを示す物質を'''光触媒'''という。例えば、'''チタニア'''('''酸化チタン(Ⅳ)''')<chem>TiO2</chem>に酢酸などの有機化合物が付着した状態で光を当てると、有機化合物が二酸化炭素と水に分解される。チタニアは家屋の外壁や太陽電池に用いられている。2024年現在、チタニアと酸化タングステン以外の光触媒は未だ実用化に至っていない。
*光合成
植物は光エネルギーを利用して、二酸化炭素と酸素から'''グルコース'''('''葡萄糖''')<chem>C6H12O6</chem>を合成する。この反応は、<chem>6CO2(g) + 12H2O(l) -> C6H12O6(s) + 6O2(g) + 6H2O(l)</chem><math>\Delta H = 2803 \mathrm{kJ}</math>と書き表される。多数のグルコースが繫って[[高校化学 天然高分子化合物|高分子化合物]]を形成すると、'''澱粉'''となる。([[高等学校生物/光合成]]も参照。)
日焼けやプラスチックゴミの分解によるマイクロプラスチックの発生も光化学反応によるものである。
==補足:熱化学方程式==
2022年度以前の課程では、長らくエンタルピーではなく'''熱化学方程式'''('''熱化学反応式''')が用いられていた。
熱化学方程式では、化学反応式中に等号『=』を用いるほか、熱量を反応式に足して記していた。
例えば、光合成の反応は熱化学方程式では以下のように書き表される。
:<chem>6CO2(g) + 12H2O(l) + 668 kcal = C6H12O6(s) + 6O2(g) + 6H2O(l)</chem> ※1 kcal = 4184 J
ここで、エンタルピー変化を付した反応式とは'''熱量の符号が逆'''になっていることがわかる。これは、エンタルピー変化を付した反応式では'''系の物質の視点'''に立っているのに対して、熱化学方程式は'''外界の観察者の視点'''に立っているためである。
よって、2022年度施行課程以前の教科書・参考書を使用する際は注意が必要である。
熱化学方程式が廃止された理由としては、熱化学方程式は『日本の高校でしか通用しない概念』であったことが挙げられる。大学や海外ではエンタルピーを用いるのが普通なので、そこで熱化学を学習すると先述の通り熱量の符号が逆転してしまい、学習者に大きな混乱を与えていた。また、化学の様々な分野がある中で反応式中に『=』が登場するのは熱化学方程式だけであったので、他の分野との整合が取れていなかったのも一因と考えられる。
*参考文献:数研出版特集『[https://www.chart.co.jp/subject/rika/scnet/76/Snet76-2.pdf 「反応熱」から「反応エンタルピー」へ]』
{{DEFAULTSORT:かかくはんのうとえんたるひ}}
[[Category:高等学校化学]]
[[カテゴリ:化学反応]]
[[カテゴリ:エネルギー]]
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ソクラテス以前の哲学
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== 哲学の起こり ==
[[File:古代ギリシャ関連地図.png|thumb|400px|古代ギリシアの植民地]]
書店などに行けば「経営哲学」「人生哲学」など「○○哲学」と題された書籍を目にすることは多い。だが、これらの書籍の大半は著者の生き様などの回顧録や人生訓・処世訓と言ってよい。
では改めて問いたい。「哲学とは何か」と。
所謂「哲学書」と呼ばれるものを開けば、先ほどのような人生訓や処世訓はほとんど出てこない。何やら小難しい表現で、いかにも著者がしかめっ面をして、考えても仕方のなさそうなことを延々と論じているかのようだ。
こうしたズレはとどのつまり「哲学とは何か」が確定されていないことと無縁ではない。他の学問――例えば物理学、医学、法学などでは、まずその学問そのものが確定されていないことはない。融通無碍のように見られがちな社会学ですら、「社会学」そのものが何を探究の対象としているのかは確定されている。
現在、私たちが「哲学」と呼んでいる学問は古代ギリシア由来の思想に寄るところが多いと言われる。だから、中にはわざわざ「西洋哲学」と呼び、仏教や儒教、ヒンドゥーなどのアジア圏の思想を「東洋哲学(インド哲学、中国哲学など)」と呼ぶことへの批判や違和感の表明も決して珍しいものではない。
確かに「哲学」においては、ユダヤ・キリスト教思想(ヘブライズム)とギリシア思想(ヘレニズム)抜きに考察することは大変難しい。「哲学」は批判的にせよ肯定的にせよ、この二つを取り込んできたからだ。
だが、そのことは「哲学のルーツ」と位置付けられたソクラテス以前の哲学を探究すること自体が、「哲学とは何か」を探究することをも内在することを示している。すなわち、古代ギリシア哲学は哲学史的な始まりであると共に、私たちの哲学の試みの出発点でもある。
とはいえ、ソクラテス以前の哲学者たちの思想の全容を知ることは大変困難である。というのは、彼らが直接著述したもののほとんどは残されておらず、わずかな断片が残っているにすぎないためである。
また、ソクラテス以前の思想を知る重要な手がかりであるアリストテレスの『形而上学』の第一巻は、「アリストテレス哲学史」であると言わざるを得ない。そのため、アリストテレスの哲学史観から逃れることができない。読者の中には高校で「倫理」を履修した方もいるだろう。もちろん、高校「倫理」で習った自然哲学者たちの記述もまたアリストテレスによる哲学史的な整理の影響の下にある。一般向けの哲学史の教科書もまた大抵は同じである。
だが、そのことを差し引いても、ソクラテス以前の哲学者の探究の試みを知ることの意義は大きいのは前述の通りである。
まずは、私たちもこの世界の有り様に驚きをもって接し、「すべての事物の{{ruby|原理|アルケー}}」を求める飽くなき探究の旅に出ることにしよう。
{{clear}}
== ミレトス学派 ==
[[Image:Thales.jpg|thumb|200px|タレス]]
普通、小アジアはイオニア地方のミレトス出身のタレス(Thalēs, 紀元前624年頃 - 紀元前546年頃)を哲学の起源とするのが一般的である。さらに、アナクシマンドロス(Anaximandros,紀元前610年頃 - 紀元前546年)、アナクシメネス(Anaximenēs, 紀元前585年頃 - 紀元前525年頃)を加えた3人はミレトス学派とよばれる。
タレスを哲学の祖として位置付けたのはアリストテレスであった<ref>『形而上学』Α3.983b6(岩波文庫版p.32)</ref>。アリストテレスの言葉に耳を傾けてみよう。
「あの最初に哲学した人々のうち、その大部分は、{{ruby|質料|ヒレー}}の意味でのそれのみをすべての事物の{{ruby|もとのもの|アルケー}}〔原理〕であると考えた。(中略)タレスは、あの知恵の愛求〔哲学〕の始祖であるが、「{{ruby|水|ヒドール}}」がそれであると言っている。(それゆえに大地も水のうえにあると唱えた。)そして、かれがこの見解をいだくに至ったのは、おそらく、すべてのものの養分が水気のあるものであり、熱そのものさえもこれから生じまたこれによって生存しているのを見てであろう、しかるに、すべてのものが'''それから'''生成するところの'''それ'''こそは、すべてのものの{{ruby|原理|アルケー}}〔始まり・もと〕だから、というのであろう。たしかにこうした理由でこの見解をいだくに至ったのであろうが、さらにまた、すべてのものの種子は水気のある{{ruby|自然性|フイシス}}をもち、そして水こそは水気のあるものにとってその自然の原理であるという理由からであろう。」(『形而上学』岩波文庫版pp.32-33, ルビ・句読点・カッコは原文ママ。また、引用にあたり、原文の傍点は太字化している)
ここで注意したいのは、この文においてアリストテレスは自らの四原因論の質料因にタレスを位置付けているということである。
また、タレスを「神話的な思考を超えた、学問的精神のはじまり」<ref>『高等学校 新倫理』(清水書院, 2016年検定済)p.24</ref>と言われることがあるが、これはいささか贔屓の引き倒しの感がある。というのも、タレスは「世界は生きた(生命をもつ)ものであり、神々(ダイモーン)に充ち満ちている」<ref>『ギリシア哲学者列伝(上)』p.31, カッコは原文ママ。</ref>としたと言われているからである。
ミレトス学派の提示した世界観の特徴は以下の3点にまとめられる。
* 一元論的
* 経験・観察に基づく探究
* この世界を感覚可能な自然物によって説明する
{{clear}}
== コスモスの思想 ==
=== ピュタゴラス派 ===
=== ヘラクレイトス ===
== エレア派 ==
== 多元論 ==
=== エンペドクレス ===
=== アナクサゴラス ===
=== デモクリトス ===
== 関連項目 ==
== 脚注 ==
<references/>
== 参考文献 ==
* 『原典による 哲学の歴史』(久保陽一・河合淳編, 公論社, 2002年)
* 『ギリシア哲学者列伝(上)(中)(下)』(ディオゲネス・ラエルティオス著・加来彰俊訳, 岩波書店, 1984年)
* 『形而上学』(アリストテレス著・出 隆訳, 岩波書店, 1959年)
{{wikipedia|ギリシア哲学}}
{{Wikiquote|タレス}}
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アイヌ語 表記の揺れについて
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カテゴリ:Pip install ursina
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from ursina import *
from ursina.prefabs.first_person_controller import FirstPersonController
app = Ursina()
# ブロックのテクスチャ(今回はシンプルな色分け)
grass_texture = color.green
stone_texture = color.gray
# ブロックのクラス定義
class Voxel(Button):
def __init__(self, position=(0,0,0), texture=grass_texture):
super().__init__(
parent=scene,
position=position,
model='cube',
origin_y=0.5,
texture=texture,
color=color.white,
highlight_color=color.lime
)
# マウス操作時の処理
def input(self, key):
if self.hovered:
# 左クリックでブロックを配置
if key == 'left mouse down':
voxel = Voxel(position=self.position + mouse.normal, texture=grass_texture)
# 右クリックでブロックを破壊
if key == 'right mouse down':
destroy(self)
# 15x15の地面(3D空間)を生成
for z in range(15):
for x in range(15):
# 地面は緑、下層は石ブロック
Voxel(position=(x, 0, z), texture=grass_texture)
Voxel(position=(x, -1, z), texture=stone_texture)
# 一人称視点のプレイヤーを追加(移動やジャンプが可能)
player = FirstPersonController()
app.run()
kwuyivth3q389lxpggprv1ljzyoqm4j