Wikibooks jawikibooks https://ja.wikibooks.org/wiki/%E3%83%A1%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%82%B8 MediaWiki 1.47.0-wmf.14 first-letter メディア 特別 トーク 利用者 利用者・トーク Wikibooks Wikibooks・トーク ファイル ファイル・トーク MediaWiki MediaWiki・トーク テンプレート テンプレート・トーク ヘルプ ヘルプ・トーク カテゴリ カテゴリ・トーク Transwiki Transwiki‐ノート TimedText TimedText talk モジュール モジュール・トーク Event Event talk 統計力学I ミクロカノニカル集合 0 2133 302097 300365 2026-08-07T15:10:15Z Nermer314 62933 /* 2準位系を用いた例 */ 302097 wikitext text/x-wiki <small> [[統計力学I]] > ミクロカノニカル集合</small> ==ミクロカノニカル集合== <math>W</math> を微視的状態数として、エントロピーを <math>S = \ln W</math> で定義する。 === 圧力 === 面積 <math>A</math> の円柱状の容器に気体を入れ、質量が <math>m</math> の滑らかに動くピストンを取り付ける。ピストンの高さを <math>z</math> とすると、全系のエネルギー <math>E = U + mgz</math> は保存される。系のエントロピーは <math>S(U,z) = S(E-mgz,z)</math> であり、平衡状態ではエントロピーが最大となるから、<math>\frac{dS}{dz} = 0</math> より、 <math>-mg \left(\frac{\partial S}{\partial U}\right)_z + \left(\frac{\partial S}{\partial z}\right)_U = 0</math> となる。よって、圧力 <math>p</math> は <math>p = \frac{mg}{A} = \frac 1 A \frac{\left(\frac{\partial S}{\partial z}\right)_U}{\left(\frac{\partial S}{\partial U}\right)_z} = \frac{\left(\frac{\partial S}{\partial V}\right)_U}{\left(\frac{\partial S}{\partial U}\right)_V} = -\left(\frac{\partial U}{\partial V}\right)_S </math> で与えられることが分かる。また、温度 <math>T</math> と呼ばれるものを <math>\frac 1 T = \left(\frac{\partial S}{\partial U}\right)_V</math> で定義する。 === 理想気体の計算 === <math>N</math> 個の単原子分子の理想気体の内部エネルギーは <math>U = \frac{1}{2m}\sum_{i=1}^{3N}p_i^2</math> で与えられる。ここで、 <math>\sum_{i=1}^{3N}p_i^2 \le 2mU</math> で与えられる。<math>p_i</math> についての <math>3N</math> 次元球の体積は、 <math>\frac{(2\pi mU)^{\frac{3}{2}N}}{\Gamma(\frac{3}{2}N + 1)}</math> である。<math>N</math> は通常アヴォガドロ数程度のオーダーだから、これは <math>U</math> について急激に増加する関数である。よって、状態数は、 <math>\Omega_0(U) = \frac{1}{N!}\left(\frac{V}{(\Delta x)^3}\right)^N \frac{1}{(\Delta p)^{3N}} \frac{(2\pi mU)^{\frac{3}{2}N}}{\Gamma(\frac{3}{2}N + 1)}</math> で与えられる。量子力学によれば、<math>\Delta x \Delta p = h</math> となるから、スターリングの近似 <math>\Gamma(x) \approx x! \approx \left(\frac{x}{e}\right)^x</math> によって、 <math>\Omega_0(U) \approx \left(\frac{V}{h^3}\left(2\pi m U\right)^{\frac 3 2} \left(\frac{e}{3N/2}\right)^{\frac 3 2} \left(\frac{e}{N}\right) \right)^N </math> と近似できる。エントロピーは <math>S = \ln \Omega_0(U) = N\ln \left(\frac{V}{Nh^3}\left(\frac{4\pi m U}{3N}\right)^{\frac 3 2} \right) + \frac 5 2 N</math> となる。 この表式によれば、 <math>\left(\frac{\partial S}{\partial V}\right)_U = \frac N V</math> となる。また、 <math>\left(\frac{\partial S}{\partial V}\right)_U = \left(\frac{\partial U}{\partial V}\right)_S\left(\frac{\partial S}{\partial U}\right)_V = \frac{p}{T}</math> と合わせれば、 <math>pV = NT</math> を得る。ここで、ボルツマン定数を <math>k</math> として、 <math>T^* = \frac T k</math> と定義すれば、 <math>pV = NkT^*</math> となる。これは、理想気体の状態方程式であるから、<math>T^*</math> は通常の熱力学温度と一致する。また、<math>\frac 1 T = \left(\frac{\partial S}{\partial U}\right)_V</math> で定義された温度 <math>T</math> は、定数倍を除いて通常の熱力学温度と同じものだということが分かる。<math>T</math> はエネルギーの次元を持ち、<math>T^*</math> の次元は熱力学温度である。ボルツマン定数 <math>k</math> というのは、統計力学で定義したエネルギーの次元を持つ <math>T</math> を、使い慣れたケルヴィンに換算するための換算定数でしかない。<math>T^*</math> を使うと公式に至る所にボルツマン定数が登場するが、<math>T</math> を使えばボルツマン定数が陽に現れなくなる。また、<math>S^* = kS = k \ln W</math> とすれば、 <math>\frac 1 {T^*} = \left(\frac{\partial S^*}{\partial U}\right)_V</math> となって、<math>T^*</math> との整合性が保たれる。 もし、熱力学温度 <math>T^*</math> の式が知りたい場合は、 <math>T \to kT, S \to \frac S k</math> と変換する。 === エントロピー === <math>dS = \left(\frac{\partial S}{\partial U}\right)_V dU + \left(\frac{\partial S}{\partial V}\right)_U dV</math> ここで、 <math>\left(\frac{\partial S}{\partial V}\right)_U = \left(\frac{\partial U}{\partial V}\right)_S\left(\frac{\partial S}{\partial U}\right)_V = \frac{p}{T}</math> となるから、 <math>dS = \frac 1 T dU + \frac p T dV = \frac{dQ}{T}</math> 両辺に <math>k</math> をかけると、 <math>kdS = \frac{dQ}{T^*}</math> となる。これは、熱力学でのエントロピーの定義と同じであるから、 <math>kS</math> は熱力学でのエントロピーと一致するものである。 ===ミクロカノニカル集合の定義=== ある物体系を取りだして、その物体全体としてある一定のエネルギー Eを取る状態だけを取りだしたとき、その状態の集まりをその物体系の ミクロカノニカル集合という。 例えば、N個の理想気体が集まったとき、そのうちの1つだけが :<math> E= \frac 1 2 m v^2 </math> となるようなvを満たし、他の物体が静止しているとき、この物体系は エネルギーEのミクロカノニカル集合に含まれる。 ミクロカノニカル集合は結局のところ物体系の内でエネルギーの合計値が 一定になる部分だけを取りだした部分である。 ===エントロピーの統計力学的な定義=== 熱力学ではエントロピーをある系に対してdQだけの熱が 流れ込んだとき、その系は :<math> dS = \frac {dQ} T </math> だけのエントロピーを受け取ったものと定義した。 このとき、エントロピーは系の乱雑さの指標となる。 つまり、物体系を放置して外界との接触を断ったとき、 系の中の状態の変化は、系内の乱雑さをより増やす方向に 進むのである。 例えば、コーヒーとミルクを混ぜたとき、2種の飲み物が混ざるのは、 お互いがより多くの場所を占めようとして動きまわった結果と取ることが出来る。 実際にはどちらの液体も何らかの分子からなっており、それらは熱を持っている以上 常に微小な運動を行なっており、最初にかたまっていたものは(ここでは コーヒーに注ぎこまれたミルク)は速やかにコーヒー全体にいきわたってしまい、 再び同じ位置に戻って来ることは出来なくなるのである。 (粒子の分子が行なう微細な運動を歴史的な事情からブラウン運動と呼ぶ。) このことは、熱力学の第2法則の説明と見ることが出来る。 つまり、ある物体系がある他の物体系と相互作用するとき、 それらを合わせた全系では、それらが取りうる状態が最も多くなるように 運動が行なわれるである。先ほどのコーヒーとミルクの例では、 ミルクの分子にしてみれば、 コーヒーの分子とミルクの分子の相互作用は、それらの距離が互いに分子半径 程度になるまでは無視できるほど弱いので、(このことは、コーヒーとミルクの分子が 互いに電気的に中正であることによる。(多分です。化学科の人がいたらコメントを お願いします。) )それらの運動は互いに無視することができ、結局 ミルクの運動は真空(?)に保たれた箱の中に 理想気体が放たれたときと同じ情况であると 考えることが出来る。このとき 理想気体は速やかに箱全体に広がるが、このことは理想気体全体が 取りうる状態の数を増やしている。つまり、理想気体内の ここの粒子に取って自分が占めうる場所が放たれる前と 比べて増えているわけであり、これは自分が取りうる状態が 増えたものと解釈できる。 つまり、運動は結局物体が取りうる状態数が増える方向に進むのであり、 これはエントロピーの定義と一致している。 つまり、エントロピー <math>\sim</math> 状態数 のように考えることが出来る。 しかし、これらの状態数の数は非常に多くのものになりうる。 このことは、ある1molの理想気体を取りだしたとき、その中には <math>10 ^{23}</math>個もの粒子が含まれていることから明白である。 これらの状態数を簡便に扱うために、エントロピーSは状態数wを用いて、 :<math> s = k _B \ln w </math> と定義することが一般的である。 ここで、<math>k _B</math>はボルツマン定数といい、次元は [J/K]である。 :<math> S = dQ /T </math> としたとき、次元が整合的になっていることに注意。 ===等重率の仮定=== ある物体系を取ったとき、それらの内でエネルギーが 等しいものは全て等しい確率で実現されるという仮定を 等重率の仮定と呼ぶ。これらはつまり、あるミクロカノニカル集合 を取ったとき、それらの全ての状態が等しい確率で 実現されるということを要求している。 これらは非常に数多くの物体系が互いに頻繁にお互いのエネルギーを 交換しているとき、うまく実現されうると考えられる。 ただし、ある1つの物体を除いて全ての物体が静止しているという極端な 情况もおこり得ることを予測してしまうように思える。 実際そのとおりなのだがこれらは等重率の仮定をおいてもやはり非常に 起こりづらくなっている。 例えば、ある100個の物体がそれぞれ100個のエネルギーが異なる 状態を占め得るとし、それぞれの物体が取り得る状態のもつエネルギーは 互いに同じであるものとし、エネルギーごとの間隔も同じであるものとする。 このとき、エネルギーを100単位これらの間で分けるとき、 ある1つが全てのエネルギーを受け取る場合の数は 100個の物体についてそれらが起こり得るので100通りであるが、 100個の物体が1個ずつ分けあう場合の数は、 最初の1単位を受け取る仕方が100通り、次が99通り、次が98通りというように 数えて行くと、100!だけあることが分かる。 つまり、等重率の仮定をおくと1つの粒子が全てのエネルギーを 1つの粒子が持って行くような極端な場合が排除されるので 合理的な仮定と呼ぶことが出来る。 また、エネルギーだけによって物体系の取り得る状態が決まるという 非常にわかりやすい描像が得られる。 ===ミクロカノニカル集合による温度の計算=== ====計算の準備==== 熱力学的な関係から、 温度は :<math> T = \frac{\partial{E}}{\partial{S}} </math> によって定められる。 ミクロカノニカル集合を用いて計算を行なう場合、 ある物体系を取ってその物体系の状態からあるエネルギーEに対応する ミクロカノニカル集合を取りだしたとき、 その状態数を数えることで物体のエントロピーが得られる。 つまり、あるEに対するエントロピーTが決まるので、それを用いて 温度を計算することが出来、ある物理系の状態を定めたときの エネルギーの値を計算することが出来るのである。 これらの計算ではしばしばスターリングの公式が用いられる。 この式は、 :<math> \ln n! \approx n\ln n - n </math> で与えられる。 <math>\ln n \approx \int_{n-1}^n \ln x \, dx</math> と近似すれば、 <math>\ln n! = \ln 2 + \ln 3 + \cdots + \ln n \approx \int_1^n \ln x \, dx = n \ln n - n + 1.</math> となる。したがって、<math>n</math> が十分大きいとき <math> \ln n! \approx n\ln n - n </math> となる。 より正確なスターリングの公式は <math>n! \sim \sqrt{2\pi}n^{n+1/2}e^{-n}</math> で与えられる。証明は[[高等学校数学III/積分法#演習問題|高等学校数学III/積分法#演習問題第四問]]を参照せよ。 ====2準位系を用いた例==== ある粒子が2つの状態しか持たないとする。 エネルギーが低い方のエネルギーを <math>-\varepsilon</math>、 高い方のエネルギーを <math>\varepsilon</math> とする。 <math>N</math> 個の粒子のうち、高い状態にある粒子数を <math>{N_+}</math> とすると、系のエネルギーは <math> E=\varepsilon {N_+}-\varepsilon{N_-} </math> である。 エントロピーは <math> S=k_{\mathrm B}\ln\frac{N!}{{N_+}!{N_-}!} </math> で与えられる。 スターリングの公式 <math> \ln n! \simeq n\ln n-n </math> を用いると、 <math> \frac{S}{k_{\mathrm B}} \simeq N\ln N-N -({N_+}\ln {N_+}-{N_+}) -({N_-}\ln{N_-}-{N_-}) </math> したがって、 <math> \frac{S}{k_{\mathrm B}} = N\ln N -{N_+}\ln {N_+} -{N_-}\ln{N_-} </math> となる。 エネルギーの式から <math> {N_+}=\frac{N+E/\varepsilon}{2} </math> なので、 <math> \frac{S}{k_{\mathrm B}} = N\ln N -\frac{N+E/\varepsilon}{2} \ln\!\left(\frac{N+E/\varepsilon}{2}\right) -\frac{N-E/\varepsilon}{2} \ln\!\left(\frac{N-E/\varepsilon}{2}\right) </math> となる。 熱力学の関係 <math> \frac1T=\left(\frac{\partial S}{\partial E}\right)_N </math> より、 <math> \frac1T = \frac{k_{\mathrm B}}{2\varepsilon} \ln\!\left( \frac{N-E/\varepsilon} {N+E/\varepsilon} \right) </math> が得られる。 これを <math>E</math> について解くと、 <math> E = -\varepsilon N \tanh\!\left( \frac{\varepsilon}{k_{\mathrm B}T} \right) </math> となる。 温度が十分高い極限 <math> T\to\infty </math> では、 <math> E\to0 </math> となる。 一方、 <math> T\to0 </math> では、 <math> E\to-\varepsilon N </math> となる。 == ラグランジュの未定乗数法 == (未記述) [[カテゴリ:統計力学|とうけいりきかく1 みくろかのにかるしゆうこう]] fyzhrfv5e7t137k5xk5otegajlybnda 302098 302097 2026-08-07T15:49:12Z Nermer314 62933 /* 2準位系を用いた例 */ 302098 wikitext text/x-wiki <small> [[統計力学I]] > ミクロカノニカル集合</small> ==ミクロカノニカル集合== <math>W</math> を微視的状態数として、エントロピーを <math>S = \ln W</math> で定義する。 === 圧力 === 面積 <math>A</math> の円柱状の容器に気体を入れ、質量が <math>m</math> の滑らかに動くピストンを取り付ける。ピストンの高さを <math>z</math> とすると、全系のエネルギー <math>E = U + mgz</math> は保存される。系のエントロピーは <math>S(U,z) = S(E-mgz,z)</math> であり、平衡状態ではエントロピーが最大となるから、<math>\frac{dS}{dz} = 0</math> より、 <math>-mg \left(\frac{\partial S}{\partial U}\right)_z + \left(\frac{\partial S}{\partial z}\right)_U = 0</math> となる。よって、圧力 <math>p</math> は <math>p = \frac{mg}{A} = \frac 1 A \frac{\left(\frac{\partial S}{\partial z}\right)_U}{\left(\frac{\partial S}{\partial U}\right)_z} = \frac{\left(\frac{\partial S}{\partial V}\right)_U}{\left(\frac{\partial S}{\partial U}\right)_V} = -\left(\frac{\partial U}{\partial V}\right)_S </math> で与えられることが分かる。また、温度 <math>T</math> と呼ばれるものを <math>\frac 1 T = \left(\frac{\partial S}{\partial U}\right)_V</math> で定義する。 === 理想気体の計算 === <math>N</math> 個の単原子分子の理想気体の内部エネルギーは <math>U = \frac{1}{2m}\sum_{i=1}^{3N}p_i^2</math> で与えられる。ここで、 <math>\sum_{i=1}^{3N}p_i^2 \le 2mU</math> で与えられる。<math>p_i</math> についての <math>3N</math> 次元球の体積は、 <math>\frac{(2\pi mU)^{\frac{3}{2}N}}{\Gamma(\frac{3}{2}N + 1)}</math> である。<math>N</math> は通常アヴォガドロ数程度のオーダーだから、これは <math>U</math> について急激に増加する関数である。よって、状態数は、 <math>\Omega_0(U) = \frac{1}{N!}\left(\frac{V}{(\Delta x)^3}\right)^N \frac{1}{(\Delta p)^{3N}} \frac{(2\pi mU)^{\frac{3}{2}N}}{\Gamma(\frac{3}{2}N + 1)}</math> で与えられる。量子力学によれば、<math>\Delta x \Delta p = h</math> となるから、スターリングの近似 <math>\Gamma(x) \approx x! \approx \left(\frac{x}{e}\right)^x</math> によって、 <math>\Omega_0(U) \approx \left(\frac{V}{h^3}\left(2\pi m U\right)^{\frac 3 2} \left(\frac{e}{3N/2}\right)^{\frac 3 2} \left(\frac{e}{N}\right) \right)^N </math> と近似できる。エントロピーは <math>S = \ln \Omega_0(U) = N\ln \left(\frac{V}{Nh^3}\left(\frac{4\pi m U}{3N}\right)^{\frac 3 2} \right) + \frac 5 2 N</math> となる。 この表式によれば、 <math>\left(\frac{\partial S}{\partial V}\right)_U = \frac N V</math> となる。また、 <math>\left(\frac{\partial S}{\partial V}\right)_U = \left(\frac{\partial U}{\partial V}\right)_S\left(\frac{\partial S}{\partial U}\right)_V = \frac{p}{T}</math> と合わせれば、 <math>pV = NT</math> を得る。ここで、ボルツマン定数を <math>k</math> として、 <math>T^* = \frac T k</math> と定義すれば、 <math>pV = NkT^*</math> となる。これは、理想気体の状態方程式であるから、<math>T^*</math> は通常の熱力学温度と一致する。また、<math>\frac 1 T = \left(\frac{\partial S}{\partial U}\right)_V</math> で定義された温度 <math>T</math> は、定数倍を除いて通常の熱力学温度と同じものだということが分かる。<math>T</math> はエネルギーの次元を持ち、<math>T^*</math> の次元は熱力学温度である。ボルツマン定数 <math>k</math> というのは、統計力学で定義したエネルギーの次元を持つ <math>T</math> を、使い慣れたケルヴィンに換算するための換算定数でしかない。<math>T^*</math> を使うと公式に至る所にボルツマン定数が登場するが、<math>T</math> を使えばボルツマン定数が陽に現れなくなる。また、<math>S^* = kS = k \ln W</math> とすれば、 <math>\frac 1 {T^*} = \left(\frac{\partial S^*}{\partial U}\right)_V</math> となって、<math>T^*</math> との整合性が保たれる。 もし、熱力学温度 <math>T^*</math> の式が知りたい場合は、 <math>T \to kT, S \to \frac S k</math> と変換する。 === エントロピー === <math>dS = \left(\frac{\partial S}{\partial U}\right)_V dU + \left(\frac{\partial S}{\partial V}\right)_U dV</math> ここで、 <math>\left(\frac{\partial S}{\partial V}\right)_U = \left(\frac{\partial U}{\partial V}\right)_S\left(\frac{\partial S}{\partial U}\right)_V = \frac{p}{T}</math> となるから、 <math>dS = \frac 1 T dU + \frac p T dV = \frac{dQ}{T}</math> 両辺に <math>k</math> をかけると、 <math>kdS = \frac{dQ}{T^*}</math> となる。これは、熱力学でのエントロピーの定義と同じであるから、 <math>kS</math> は熱力学でのエントロピーと一致するものである。 ===ミクロカノニカル集合の定義=== ある物体系を取りだして、その物体全体としてある一定のエネルギー Eを取る状態だけを取りだしたとき、その状態の集まりをその物体系の ミクロカノニカル集合という。 例えば、N個の理想気体が集まったとき、そのうちの1つだけが :<math> E= \frac 1 2 m v^2 </math> となるようなvを満たし、他の物体が静止しているとき、この物体系は エネルギーEのミクロカノニカル集合に含まれる。 ミクロカノニカル集合は結局のところ物体系の内でエネルギーの合計値が 一定になる部分だけを取りだした部分である。 ===エントロピーの統計力学的な定義=== 熱力学ではエントロピーをある系に対してdQだけの熱が 流れ込んだとき、その系は :<math> dS = \frac {dQ} T </math> だけのエントロピーを受け取ったものと定義した。 このとき、エントロピーは系の乱雑さの指標となる。 つまり、物体系を放置して外界との接触を断ったとき、 系の中の状態の変化は、系内の乱雑さをより増やす方向に 進むのである。 例えば、コーヒーとミルクを混ぜたとき、2種の飲み物が混ざるのは、 お互いがより多くの場所を占めようとして動きまわった結果と取ることが出来る。 実際にはどちらの液体も何らかの分子からなっており、それらは熱を持っている以上 常に微小な運動を行なっており、最初にかたまっていたものは(ここでは コーヒーに注ぎこまれたミルク)は速やかにコーヒー全体にいきわたってしまい、 再び同じ位置に戻って来ることは出来なくなるのである。 (粒子の分子が行なう微細な運動を歴史的な事情からブラウン運動と呼ぶ。) このことは、熱力学の第2法則の説明と見ることが出来る。 つまり、ある物体系がある他の物体系と相互作用するとき、 それらを合わせた全系では、それらが取りうる状態が最も多くなるように 運動が行なわれるである。先ほどのコーヒーとミルクの例では、 ミルクの分子にしてみれば、 コーヒーの分子とミルクの分子の相互作用は、それらの距離が互いに分子半径 程度になるまでは無視できるほど弱いので、(このことは、コーヒーとミルクの分子が 互いに電気的に中正であることによる。(多分です。化学科の人がいたらコメントを お願いします。) )それらの運動は互いに無視することができ、結局 ミルクの運動は真空(?)に保たれた箱の中に 理想気体が放たれたときと同じ情况であると 考えることが出来る。このとき 理想気体は速やかに箱全体に広がるが、このことは理想気体全体が 取りうる状態の数を増やしている。つまり、理想気体内の ここの粒子に取って自分が占めうる場所が放たれる前と 比べて増えているわけであり、これは自分が取りうる状態が 増えたものと解釈できる。 つまり、運動は結局物体が取りうる状態数が増える方向に進むのであり、 これはエントロピーの定義と一致している。 つまり、エントロピー <math>\sim</math> 状態数 のように考えることが出来る。 しかし、これらの状態数の数は非常に多くのものになりうる。 このことは、ある1molの理想気体を取りだしたとき、その中には <math>10 ^{23}</math>個もの粒子が含まれていることから明白である。 これらの状態数を簡便に扱うために、エントロピーSは状態数wを用いて、 :<math> s = k _B \ln w </math> と定義することが一般的である。 ここで、<math>k _B</math>はボルツマン定数といい、次元は [J/K]である。 :<math> S = dQ /T </math> としたとき、次元が整合的になっていることに注意。 ===等重率の仮定=== ある物体系を取ったとき、それらの内でエネルギーが 等しいものは全て等しい確率で実現されるという仮定を 等重率の仮定と呼ぶ。これらはつまり、あるミクロカノニカル集合 を取ったとき、それらの全ての状態が等しい確率で 実現されるということを要求している。 これらは非常に数多くの物体系が互いに頻繁にお互いのエネルギーを 交換しているとき、うまく実現されうると考えられる。 ただし、ある1つの物体を除いて全ての物体が静止しているという極端な 情况もおこり得ることを予測してしまうように思える。 実際そのとおりなのだがこれらは等重率の仮定をおいてもやはり非常に 起こりづらくなっている。 例えば、ある100個の物体がそれぞれ100個のエネルギーが異なる 状態を占め得るとし、それぞれの物体が取り得る状態のもつエネルギーは 互いに同じであるものとし、エネルギーごとの間隔も同じであるものとする。 このとき、エネルギーを100単位これらの間で分けるとき、 ある1つが全てのエネルギーを受け取る場合の数は 100個の物体についてそれらが起こり得るので100通りであるが、 100個の物体が1個ずつ分けあう場合の数は、 最初の1単位を受け取る仕方が100通り、次が99通り、次が98通りというように 数えて行くと、100!だけあることが分かる。 つまり、等重率の仮定をおくと1つの粒子が全てのエネルギーを 1つの粒子が持って行くような極端な場合が排除されるので 合理的な仮定と呼ぶことが出来る。 また、エネルギーだけによって物体系の取り得る状態が決まるという 非常にわかりやすい描像が得られる。 ===ミクロカノニカル集合による温度の計算=== ====計算の準備==== 熱力学的な関係から、 温度は :<math> T = \frac{\partial{E}}{\partial{S}} </math> によって定められる。 ミクロカノニカル集合を用いて計算を行なう場合、 ある物体系を取ってその物体系の状態からあるエネルギーEに対応する ミクロカノニカル集合を取りだしたとき、 その状態数を数えることで物体のエントロピーが得られる。 つまり、あるEに対するエントロピーTが決まるので、それを用いて 温度を計算することが出来、ある物理系の状態を定めたときの エネルギーの値を計算することが出来るのである。 これらの計算ではしばしばスターリングの公式が用いられる。 この式は、 :<math> \ln n! \approx n\ln n - n </math> で与えられる。 <math>\ln n \approx \int_{n-1}^n \ln x \, dx</math> と近似すれば、 <math>\ln n! = \ln 2 + \ln 3 + \cdots + \ln n \approx \int_1^n \ln x \, dx = n \ln n - n + 1.</math> となる。したがって、<math>n</math> が十分大きいとき <math> \ln n! \approx n\ln n - n </math> となる。 より正確なスターリングの公式は <math>n! \sim \sqrt{2\pi}n^{n+1/2}e^{-n}</math> で与えられる。証明は[[高等学校数学III/積分法#演習問題|高等学校数学III/積分法#演習問題第四問]]を参照せよ。 ====2準位系を用いた例==== ある粒子が2つの状態しか持たないとする。 エネルギーが低い方のエネルギーを <math>-\varepsilon</math>、 高い方のエネルギーを <math>\varepsilon</math> とする。 <math>N</math> 個の粒子のうち、高い状態にある粒子数を <math>{N_+}</math> とすると、系のエネルギーは <math> E=\varepsilon {N_+}-\varepsilon{N_-} </math> である。 エントロピーは <math> S=k_{\mathrm B}\ln\frac{N!}{{N_+}!{N_-}!} </math> で与えられる。 スターリングの公式 <math> \ln n! \simeq n\ln n-n </math> を用いると、 <math> \frac{S}{k_{\mathrm B}} \simeq N\ln N-N -({N_+}\ln {N_+}-{N_+}) -({N_-}\ln{N_-}-{N_-}) </math> したがって、 <math> \frac{S}{k_{\mathrm B}} = N\ln N -{N_+}\ln {N_+} -{N_-}\ln{N_-} </math> となる。 エネルギーの式から <math> {N_+}=\frac{N+E/\varepsilon}{2} </math> なので、 <math> \frac{S}{k_{\mathrm B}} = N\ln N -\frac{N+E/\varepsilon}{2} \ln\!\left(\frac{N+E/\varepsilon}{2}\right) -\frac{N-E/\varepsilon}{2} \ln\!\left(\frac{N-E/\varepsilon}{2}\right) </math> となる。 熱力学の関係 <math> \frac1T=\left(\frac{\partial S}{\partial E}\right)_N </math> より、 <math> \frac1T = \frac{k_{\mathrm B}}{2\varepsilon} \ln\!\left( \frac{N-E/\varepsilon} {N+E/\varepsilon} \right) </math> が得られる。 これを <math>E</math> について解くと、 <math> E = -\varepsilon N \tanh\!\left( \frac{\varepsilon}{k_{\mathrm B}T} \right) </math> となる。 温度が十分高い極限 <math> T\to\infty </math> では、 <math> E\to0 </math> となる。 一方、 <math> T\to0 </math> では、 <math> E\to-\varepsilon N </math> となる。 ==== ゴム弾性 ==== ゴムを長さ <math>a</math> の分子が連なったものと考える。それぞれの分子は1次上で、右向きと左向きの2つの状態を取れるとする。分子数 <math>N</math> とするとき、右向きの分子の数を <math>N_+</math>、左向きの分子の数を <math>N_-</math> とする。このとき、ゴムの長さは <math>L = a( N_+-N_-)</math> となる。これと <math>N=N_++N_-</math> より、 <math>N_+= \frac{Na+L}{2a},N_-= \frac{Na-L}{2a}</math> となる。エントロピーは前回と同様に <math>\begin{align}\frac{S}{k_{\mathrm B}} &=N\ln N -{N_+}\ln {N_+} -{N_-}\ln{N_-} \\ &= N\ln N -\left( \frac{Na+L}{2a}\right)\ln \frac{Na+L}{2a} -\left( \frac{Na-L}{2a}\right)\ln \frac{Na-L}{2a}\\ \end{align} </math> となる。ここで、内部エネルギーが一定のとき張力は <math>f = -T \frac{dS}{dL}</math> となるため、 <math>f =\frac{kT}{2a}\ln\frac{Na+L}{Na-L} </math> を得る。<math>L</math> が十分小さいときは <math>f= \frac{kT}{Na^2}L</math> となる。これはフックの法則である。 == ラグランジュの未定乗数法 == (未記述) [[カテゴリ:統計力学|とうけいりきかく1 みくろかのにかるしゆうこう]] l4z7fpxc96bvtu1qhezessb05v6tc6k 高等学校古文/歴史書 0 9084 302099 299413 2026-08-07T16:37:01Z 椎楽 32225 /* 高校における学習 */ 302099 wikitext text/x-wiki ==歴史書== 中国は伝統的に歴史を重んじ、歴史書にある意味特別な地位を与えてきた。 理由のひとつとしては、中国における祖霊信仰の伝統が考えられる。すなわち、子孫によって祀られない霊は、鬼神となって災いをなすとの信仰があり、子孫に忘れられず祀られるよう記録を残したということである。 もう一つの理由としては、王朝の統治においてその正統性を証する、即ち、前代の王朝が、天下を治めるのに適当でないと、天が判じて王朝を変えた(放伐)ので、現在の王朝は正統であるとの思想(易姓革命)が、史書の作成及びその前提としての研究を盛んにしたものと考えられる。 ただし、歴史を記述することの理想は高いものが形成されていたことは、以下の記事が物語る。 :春秋左氏伝 襄公二十五年 ::齊太史書曰「崔杼弒莊公」、崔杼殺之。其弟復書、崔杼復殺之。少弟復書、崔杼乃捨之。 :::(斉の宰相である崔杼が、君主である荘公を不行跡を原因とし殺して、弟の景公を即位させたのを受け)斉の太史(歴史官)が史書に、「崔杼が莊公を弒逆した」と記載した。崔杼は、(書き直させようとしたが、聞き入れなかったので)この太史を殺した。その弟が、太史となり、やはり同様に記録した。崔杼は、その弟も殺した。末の弟が、太史となり、やはり同様に記録した。崔杼は、あきらめそのまま記録させた。 ===代表的歴史書=== ====正史以前==== *『書経(尚書)』 *『春秋』 *:孔子が編纂したとされる歴史書。非常に簡潔な表現であるため、いくつかの注釈書が著されており、そのうち古典とされるものに、『春秋左氏伝』『春秋公羊伝』『春秋穀梁伝』があり、特に、『春秋左氏伝』は『左伝』とも略され、最も広く受け入れられた注釈書である。 *『戦国策』 ====正史==== 上記の理由により、各王朝は自己の王朝を正当化するために国家事業として歴史書を編纂しており、それを正史と呼ぶ。清代において、特に正統とされる24の史書を取り上げ「'''二十四史'''」と呼ぶ。但し、そのうち、司馬遷『[[/史記|史記]]』、班固『漢書』、陳寿『三国志]]』、范曄『後漢書』、沈約『宋書』は王朝の事業ではなく、私撰の体裁を取っている。ただし、これらについても司馬遷が太史公という地位にあり、王宮内の歴史文書に容易に触れうる地位にいたこと等から、在野の歴史家の著したものと言うよりは、時の皇帝の承認を得て撰じたものであると理解する方が自然であろう。 正史は、史記以来の伝統により、統治者である皇帝(又は王)の伝記である本紀とそれに仕える人々などの伝記である伝・列伝により構成する紀伝体という書式によっている。 ====正史以外の歴史書==== 正史を元に、その他の歴史書(雑史)を含めた、数々の官撰又は私撰の歴史書が著されている。 * 司馬光『資治通鑑』 *:北宋の政治家であり学者・文学者(詩人)でもある司馬光が、皇帝英宗の命により編纂した通史。正史と異なり、年ごとの出来事を追う編年体によっている。名文の誉れが高く通史の傑作であり、中国において長く通史のスタンダードの地位を得ていた。 * 曾先之『[[/十八史略|十八史略]]』 *: 元代の曾先之によりまとめられた入門書。曾先之は、この著者である他の経歴は伝えられていない。正史からつまみ食い的な切り出しによる構成や、いわゆる野史を出典とする、出典不明の改変があるなどより史的価値や文学的価値はほとんど無く、中国本土では忘れ去られていた。しかし、日本においては、たまたま、入門書として伝わり、広く読まれ、あたかも漢籍の古典かのごとく残ることとなった。 ====高校における学習==== 高校においては、限られた時間の中で、主立った作品群すら読むことは難しいであろうし、試験や受験を前提とした学習において、それは不必要ですらある。 とりあえず、作品として意識すべき作品は『'''[[/史記|史記]]'''』と『'''[[/十八史略|十八史略]]'''』のみであり、その他は、作品として知識を得ておく必要はない。この2作品ですら、全てを読むことは、高校学習のレベルとしては超えている。最初のうちは「故事成語」の出典となる部分から取りかかることを勧める。 しかしながら、漢文学、ことに史書はその楽しみを覚えると、一生の趣味としても良い位の深い広がりを持った領域である。試験や受験だけのつきあいにとどまらず、一生の楽しみとして身につけることとなれば、あなたの読書人生を深くすることに違いないと信ずる。また、これを楽しみにすることにより、漢文(だけでなく国語一般)の成績が上がっているという思わぬ副産物を生むこともあるだろう。小手先の受験技術だけではなく、その本質に近づくことが、結局、受験などにも役に立つことになることは銘記しておいた方がよいだろう(これは、漢文・国語に限らず、英語や数学など全ての教科に言えることだが)。 とりあえず、これらの書に題材を取る日本の小説を読むと、全体像が把握でき、細部がわからなくても意味を類推できたりするので、気分転換もかねて以下の書籍を読むことを勧める。 * 司馬遼太郎『項羽と劉邦』 * 中島敦『李陵』『弟子』 * 陳舜臣『小説十八史略』 何ならマンガもよい。主なマンガには以下が挙げられる。 * 横山光輝『史記』(小学館)、『項羽と劉邦』(潮出版社) * 久松文雄『史記1~10』(講談社/ゴマブックス) [[Category:高等学校教育_国語_漢文|れきししよ]] [[Category:高等学校教育_国語_漢文_歴史書|*]] [[Category:日本語|こうとうかつこうこふん_かんふん]] pbgmj0ha2v2j4yh57gnp85aqlvzymfd