Wikibooks
jawikibooks
https://ja.wikibooks.org/wiki/%E3%83%A1%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%82%B8
MediaWiki 1.47.0-wmf.24
first-letter
メディア
特別
トーク
利用者
利用者・トーク
Wikibooks
Wikibooks・トーク
ファイル
ファイル・トーク
MediaWiki
MediaWiki・トーク
テンプレート
テンプレート・トーク
ヘルプ
ヘルプ・トーク
カテゴリ
カテゴリ・トーク
Transwiki
Transwiki‐ノート
TimedText
TimedText talk
モジュール
モジュール・トーク
Event
Event talk
Wikibooks:談話室
4
30
304860
304689
2026-10-18T14:18:35Z
~2026-55601-40
92821
/* 「判例」の該当性について */
304860
wikitext
text/x-wiki
{{談話室}}
ある程度時間のたった議論は[[/過去ログ]]に移動されます。最新の過去ログは [[特別:固定リンク/291757|2026年01月24日 (土) 01:14(UTC)の版]]です(確認日: 2026年1月26日)。過去ログ化の方法については[[Wikibooks:過去ログ化のガイドライン]]を参照ください。
{{/告知}}
== WikipediaからWikibooksへのテンプレートの移入とTranswiki名前空間 ==
Wikipediaで使用されているテンプレートの多くがWikibooks上では導入されておらず、いつものWikipediaの記法でWikibooksを執筆しようとするとテンプレート不在のエラーが多発します。そこでWikipediaからテンプレートを移入 (移植) したいのですが、3点教えて頂きたいことがございます。
# (移入かゼロから自力作成するかは問わず) Wikibooks上でのテンプレートの新規作成は、事前に合意形成などが必要なのでしょうか?それとも好き勝手作っていいものなのでしょうか?
# 仮に移入してくる時には、他言語版からの翻訳時と同様の履歴継承方法 (Oldid指定で継承元を示す、あるいはテンプレート名+日時明記する) で問題ないでしょうか?
# 「[[Wikibooks:蔵書一覧/テンプレート一覧#Transwiki名前空間]]」によると、テンプレートを置く名前空間はWikibooksテンプレート空間の場合と、Transwiki名前空間と2種類あるように読めるのですが、このTranswiki名前空間にあるテンプレート群は何なのでしょうか?
質問の背景をお伝えしておくと、私の活動している法学の分野では伝統的に法律の概説はWikipediaに執筆し、逐条解説 (1つ1つの条文の細かい解釈や具体例などの提示) はWikibooksに譲るという棲み分けを行ってきたようです。現在私がWikipedia上で加筆している記事の記述が逐条解説まで踏み込んで肥大化してしまったので、一部はWikibooks側に書いた方が良さそうだ、と判断しました。ご存じのとおりWikipediaでは「[[w:Wikipedia:検証可能性|Wikipedia:検証可能性]]」が重視されていて、そのノリで信頼性の高い出典をガチガチに揃えて逐条解説の下書きをしていたのですが、いざ下書きをWikibooksのサンドボックスに投稿したところ ([[Special:Permalink/264757|編集差分]])、出典・脚注系のテンプレートがことごとく存在せずにエラーが出ています。
また、Transwiki名前空間にあるらしい「仮リンク」のテンプレートは、Wikipediaでも多用していたのでWikibooksでも使用したいのですが、Transwiki上にある「仮リンク」はWikibooksで <nowiki>{{{{仮リンク|あいうえお|en|ABC}}}}</nowiki> と記述してそのまま使えるのか、いまいちよく分かりません。[[特別:リンク元/Transwiki:仮リンク]] を見ても、現時点でWikibooksの標準名前空間で使用しているケースはゼロのようです。
Wikipediaと比較してWikibooksの活動が過疎ぎみなのは承知しておりまして、ここで愚痴を言いたいわけではなく、何とか使える形にしたいという前向きな質問の意図だと汲んで頂ければ幸いです。--[[利用者:ProfessorPine|ProfessorPine]] ([[利用者・トーク:ProfessorPine|トーク]]) 2024年12月7日 (土) 03:15 (UTC)
:一年以上、議論が止まっていますが、重要な問題なので検討を継続したいと思います。
:個人的には、翻訳などと同様移植元の履歴が継承されていれば問題はなかろうと考えています。--[[利用者:Tomzo|Tomzo]] ([[利用者・トーク:Tomzo|トーク]]) 2026年1月26日 (月) 00:10 (UTC)
::{{コメント2|横から失礼}} 私は管理者などをやったことがないのでわからないのですが、Wiki間インポートを実施するのはいかがですか?
::その後に、Wikibooksに合う形に微調整した方が楽に感じます。
::おそらくですが、[[WB:IP]]を見る感じ、コピーアンドペーストは推奨されてない方法に思います。
::私が、管理者権限を持っていたら、協力したいのですが、[[利用者:Tomzo|Tomzo]]さんなどの管理者の協力が必須に感じます…--[[利用者:なまえみてい|なまえみてい]] ([[利用者・トーク:なまえみてい|トーク]]) 2026年2月4日 (水) 10:40 (UTC)
== 「デスクトップLinux入門」を作りたい ==
サーバーではなくデスクトップ向けの,GNU/Linuxディストリビューションのインストール・利用方法を解説した文書をつくりたいと思っています。構想は[[利用者:KASAI_Toushi/デスクトップLinux入門]]にあります。
これにあたって,二つほど質問があります。
* この構想は,Wikibooksでは受け入れられますか?
* タイトルは「デスクトップLinux入門」で問題ないでしょうか?
[[利用者:KASAI Toushi|KASAI Toushi]] ([[利用者・トーク:KASAI Toushi|トーク]]) 2025年2月28日 (金) 03:55 (UTC)
:内容に関してコメントはしかねますが(後述)、原則として受け入れには何ら問題はないと思います。むしろ歓迎です。
:[[情報技術]]にリンク元を作成して、後はツリー構造で作成することをお勧めします。
:「サーバーではなくデスクトップ向けの」という教科書を既存のLinux関係の教科書から分割して作成するのが適当かは不明ですので、それは知見者の方の間で相談いただければと思います。ただ、統合することのメリットが希薄なようであれば、作成することが、wikibooksにはメリットとは考えます。--[[利用者:Tomzo|Tomzo]] ([[利用者・トーク:Tomzo|トーク]]) 2025年2月28日 (金) 07:06 (UTC)
ご返信ありがとうございます。分割すべきかどうかはまだ分からないので、利用者ページに下書きを書いておきます。
[[利用者:KASAI Toushi|KASAI Toushi]] ([[利用者・トーク:KASAI Toushi|トーク]])
== 編集合戦の件 ==
@[[利用者:Tomzo|Tomzo]]様
~2025-47348氏とHousehome100氏の編集合戦について、どの版まで差し戻しになりますか?(4月中旬から彼らが編集に関わり始めましたが、彼らが関わる前の版にまで遡るのか、編集合戦が発生した(と判断できる)編集の直前の版になるのか)。もし彼らが関わる前の版に戻すとなると、(~2025-47348氏が行った)すじ肉氏が嘗て書いた問題のある版の修正が取り消されることになるので、それの再修正に多くの労力を割くことになりそうです。--[[特別:投稿記録/~2025-49873|~2025-49873]] ([[利用者・トーク:~2025-49873|会話]]) 2025年5月2日 (金) 08:07 (UTC)
:本来、ブロック中の編集者が別アカウントで作成した記事は、ブロックの意味をなくすため新規ページは削除、加筆等の編集は削除の上、不可視化とすべきところですが、今回はあまりにも量が多いため、個別の要望を待って対処したいと思います。もし、ページ削除・不可視化等が必要でしたら、最新版を適当なものにするなどご対応の上、削除等の依頼をお願いします。過去履歴の不可視化まで必要ないとお考えであれば、適当と考えられる最新版作成(過去の版へのリバートも可)で十分足りるとは考えています。--[[利用者:Tomzo|Tomzo]] ([[利用者・トーク:Tomzo|トーク]]) 2025年5月2日 (金) 08:24 (UTC)
== 移動依頼 ==
[[旧課程(-2012年度)高等学校数学A/集合と論理]]を[[高等学校数学I/集合と論理]]へ移動お願いします。
*理由:「集合と命題」の内容は2013年度以降『数学I』の範囲になっている。
--[[特別:投稿記録/~2025-57596|~2025-57596]] ([[利用者・トーク:~2025-57596|会話]]) 2025年5月24日 (土) 02:25 (UTC)
:対応に関して 「[[トーク:高等学校数学#「学習指導要領」改正に伴う課程の変動について]]」を作成しましたので、ご確認ください。--[[利用者:Tomzo|Tomzo]] ([[利用者・トーク:Tomzo|トーク]]) 2025年5月28日 (水) 06:56 (UTC)
== 検索した時に予測候補(サジェスト)が出ないようにできませんか? ==
以前は無かったはずです。人によっては不快に感じると思います。--[[特別:投稿記録/~2025-67762|~2025-67762]] ([[利用者・トーク:~2025-67762|会話]]) 2025年6月14日 (土) 14:13 (UTC)
:それは難しいと思います。--[[利用者:KINGDOM OF ITALY|KINGDOM OF ITALY]] ([[利用者・トーク:KINGDOM OF ITALY|トーク]]) 2025年7月31日 (木) 08:24 (UTC)
== 管理者の再信任のための「定期的な投票」実施について ==
皆さん、こんにちは。このたび、[[Wikibooks:管理者の辞任#管理者の再信任投票]]に基づく2025年9月末で任期末を迎える現管理者3名の再信任のための「定期的な投票」を実施したく存じます。方針によれば、「各管理者に対し原則として毎年」行われるべき再信任投票ですが、ここ5年間行われておらず(前回は[[Wikibooks:管理者への立候補/再信任投票/202009|2020年9月]])、現管理者の方3名の無投票での留任が続いております。そこで当コミュニティの事前告知期間も踏まえ2週間後の2025年9月1日(予定)に投票ページとして「[[Wikibooks:管理者への立候補/再信任投票 202509]]」を作成いたします。そこから2週間(336時間)の投票期間を設けたいと存じます。なお、管理者の一人である {{admin|かげろん}} さんは、この再信任投票開始の時点までに活動がない場合には方針に基づき自動退任となります。以上につきまして何かコメントなどございましたらお寄せください。それでは何卒よろしくお願いいたします。--[[利用者:Shokupan|Shokupan]] ([[利用者・トーク:Shokupan|トーク]]) 2025年8月18日 (月) 04:27 (UTC)
:{{コメント2|報告}} 事前告知のとおり、[[Wikibooks:管理者への立候補/再信任投票 202509|管理者の再信任投票ページ]]を作成いたしましたので、ご報告いたします。--[[利用者:Shokupan|Shokupan]] ([[利用者・トーク:Shokupan|トーク]]) 2025年9月1日 (月) 04:16 (UTC)
== 根気が足りない…… ==
現在[[沖縄語]]を執筆しているのですが、全て書き終わる前に根気が尽きてしまいそうです。
[[沖縄語]]を執筆したとて、正直誰の役に立つのか分かりませんし、需要があるのかもよく分かりませんし、そもそもwikibooksの知名度からして執筆しても自分以外見ないのではないかとさえ思うと書く意味はなんなのかなと思います。
今、完成している語学のページは、私が知る限り[[ペルシア語]]だけです。沖縄語も完成させたいという気持ちはありますが、書くべき章を整理したところあまりにも膨大で……。
章は「初級」「中級」「上級」に分けました。根気が続かなかったら途中で私は失踪すると思いますが、同時に、沖縄語は現在消滅の危機にあり、私が失踪したら誰も続きを書いてくれないだろうな……と思います。
じゃあ書かないと!とは思うのですが、なんかやる気が足りないです。
長々と申し訳ありませんでした。もしこれを読んでくださる方がおりましたら、なにかコメントをくださると嬉しいです。また、ウチナーグチのわかる方がいらっしゃいましたら、[[沖縄語]]に軽く目を通して変なところはないか見てくださると助かります。--[[利用者:さきじょーぐー|さきじょーぐー]] ([[利用者・トーク:さきじょーぐー|トーク]]) 2025年9月18日 (木) 09:28 (UTC)
:お疲れ様です。
:当方も哲学・倫理学・歴史を中心にいろいろ書いているのですが、2年前の事案でウィキブレイク状態で、ほとんど大したものは書いていません。さきじょーぐーさんが沖縄語のページを充実させていらっしゃること、敬服しております。
:確かにここは知名度も低いのですが、ウィキペディアほどにはおかしな人物が来ないですし、自由にできると思ってはいかがでしょうか。
:なお、沖縄語は全くわからないのでそちらの方には力になれません……。申し訳ないです。--[[利用者:椎楽|椎楽]] ([[利用者・トーク:椎楽|トーク]]) 2025年9月21日 (日) 11:20 (UTC)
::ありがとうございます。まだwikiに参加したばかりなので出会ったことはありませんが、おかしな方があまり来ないというのは、沖縄という政治的に揉めやすいものを扱っているのもありとても嬉しいです。頑張って執筆します。--[[利用者:さきじょーぐー|さきじょーぐー]] ([[利用者・トーク:さきじょーぐー|トーク]]) 2025年9月24日 (水) 05:13 (UTC)
== 申し訳ありませんがご協力ください。 ==
===ご挨拶===
まずは、皆様にご挨拶させていただきます。アンサイクロペディアから参りました、「たけのこの土」と申します。まだまだ頭の硬い方には慣れていませんが、どうぞよろしくお願いします。
===お願いしたい点===
この度、Wikipediaでも活動したいと思い、アカウント作成をしようとしたところ、まさかの自分が使用しているIPアドレスが広域ブロックを受けているということで、アカウントを作成することができませんでした。Wikipediaとアカウントが共通しているということでこちらなら出来るかもしれないとアカウント作成したところ、作成できたので…。
ということで、お手数ではございますが、IPの広域ブロック解除に詳しい方がいらっしゃいましたら、解除していただけるとありがたく存じます。--[[利用者:たけのこの土|たけのこの土]] ([[利用者・トーク:たけのこの土|トーク]]) 2025年10月9日 (木) 03:08 (UTC)
== <span lang="en" dir="ltr">Help us decide the name of the new Abstract Wikipedia project</span> ==
<div lang="en" dir="ltr">
<section begin="function1"/>
{{int:Hello}}. Please help pick a name for the new Abstract Wikipedia wiki project. This project will be a wiki that will enable users to combine functions from [[:f:|Wikifunctions]] and data from Wikidata in order to generate natural language sentences in any supported languages. These sentences can then be used by any Wikipedia (or elsewhere).
There will be two rounds of voting, each followed by legal review of candidates, with votes beginning on 20 October and 17 November 2025. Our goal is to have a final project name selected on mid-December 2025. If you would like to participate, then '''[[m:Special:MyLanguage/Abstract Wikipedia/Abstract Wikipedia naming contest|please learn more and vote now]]''' at meta-wiki.
{{Int:Feedback-thanks-title}}
<section end="function1"/>
</div>
-- [[User:Sannita (WMF)|User:Sannita (WMF)]] ([[User talk:Sannita (WMF)|talk]]) 2025年10月20日 (月) 11:42 (UTC)
<!-- User:Sannita (WMF)@metawiki が https://meta.wikimedia.org/w/index.php?title=Distribution_list/Global_message_delivery&oldid=29432175 のリストを使用して送信したメッセージ -->
== 運動のいくつかの委員会で新任のボランティア委員を募集中 ==
<section begin="announcement-content" />
例年10月から12月の期間に、ウィキメディア運動の委員会の一部では新任のボランティア委員を募集します。
それぞれの委員会の詳細は、個別のページがメタウィキにありますのでご参照ください。
* [[m:Special:MyLanguage/Affiliations Committeee|提携団体委員会]](略称AffCom、Affiliations Committee)
* [[m:Special:MyLanguage/Ombuds commission|オンブズ委員会]](頭字語OC=Ombuds commission)
* [[m:Special:MyLanguage/Wikimedia Foundation/Legal/Community Resilience and Sustainability/Trust and Safety/Case Review Committee|事案評価委員会]](頭字語CRC=Case Review Committee)
これら委員会への立候補申請は2025年10月30日から受け付けます。立候補の受付〆切は、提携団体委員会が2025年12月11日、オンブズ委員会と事案評価委員会は2025年12月11日です。立候補申請の手順は[[m:Special:MyLanguage/Wikimedia Foundation/Legal/Committee appointments|Meta-wiki(メタウィキ)にある任命ページ]]をご一読願います。ご質問はその議論ページに投稿するか、メールの場合は cst[[File:At sign.svg|16x16px|link=|(_AT_)]]wikimedia.org 宛にお送りください。
委員会支援チームの一同より
<section end="announcement-content" />
-[[m:User:MKaur (WMF)| MKaur (WMF)]] 2025年10月30日 (木) 14:12 (UTC)
<!-- User:MKaur (WMF)@metawiki が https://meta.wikimedia.org/w/index.php?title=Distribution_list/Global_message_delivery&oldid=29517125 のリストを使用して送信したメッセージ -->
== Wikimedians of Japan User Group 2025-10 ==
'''全体ニュース'''
* 1月から6月までの[https://wikimediafoundation.org/who-we-are/transparency/2025-1/ 透明性レポート](英語)が公表されました。
* 提携団体委員会、オンブズ委員会、事案審査委員会への[[:m:Wikimedia_Foundation/Legal/Committee_appointments/ja|応募]]受付が開始されました。
'''ESEAPハブからのおしらせ'''[[File:ESEAP logo horizontal.svg|40px|link=:m:ESEAP_Hub/ja]]
* 11月9日16時(JST)から[[:m:Event:ESEAP_Community_Call_53_(9_November_2025)|オンラインミーティング]]が行われます。
'''Wikimedians of Japan User Groupからのおしらせ'''[[File:Wikimedians of Japan User Group Logoonly.svg|20px|link=:m:Wikimedians_of_Japan_User_Group]]
* 11月7日、8日に開催される[https://www.k-of.jp/2025/ 関西オープンフォーラム]に参加します。
* 11月22日に開催される[https://event.ospn.jp/osc2025-fukuoka/ OSC福岡]に参加します。また、翌23日には[https://techplay.jp/event/987206 オープンデータを作ろう! with ウィキメディアもくもく会 in 北九州]を[https://www.osmf.jp OSMFJ]と共催します。
'''[[:w:ja:メインページ|日本語版ウィキペディア]]'''[[File:Wikipedia-logo-v2.svg|20px|link=:w:ja:]]
* [[:w:ja:Wikipedia:ウィキペディア・アジア月間|アジア月間]]が行われます。
* 今月は以下の記事が[[:w:ja:Wikipedia:良質な記事/良質な記事の選考|良質な記事の選考]]を通過しました。
**[[:w:ja:魚梁船|魚梁船]]
**[[:w:ja:生得性仮説|生得性仮説]]
**[[:w:ja:炎舞|炎舞]]
**[[:w:ja:エリダヌス座|エリダヌス座]]
**[[:w:ja:中堀由希子|中堀由希子]]
**[[:w:ja:いて座|いて座]]
**[[:w:ja:スティーブン (イングランド王)|スティーブン (イングランド王)]]
**[[:w:ja:君と宇宙を歩くために|君と宇宙を歩くために]]
**[[:w:ja:久隔帖|久隔帖]]
* 今月の1枚
[[File:Lunar eclipse of 2025 September 7 (Montage s3).jpg|alt=|left|thumb|200x200px|2025年9月7日の皆既[[:w:ja:月食|月食]]の時系列画像]]
'''[[:f:|ウィキファンクションズ]]'''[[File:Wikifunctions-logo.svg|20px|link=:f:]]
*
* 抽象ウィキペディア(Abstract Wikipedia)の[[:m:Abstract_Wikipedia/Abstract_Wikipedia_naming_contest|正式名称]]の第1回投票は11月3日までです。
'''11月のイベント情報'''
* 11/1 [https://tobemori-seeds.com/archives/2999 とべもりウィキペディアタウン]
* 11/8 [https://mykoho.jp/article/012084/9874593/9964880 ウィキペディアタウン in 北見ワークショップ]
* 11/8 [https://www.lib.city-hokuto.ed.jp/akeno/event-info/316/ ウィキペディアタウン@北杜in明野]
* 11/9 [https://www2.city.tahara.aichi.jp/section/library/info/2511wikiatumi.html ウィキペディアタウンin渥美]
* 11/9 [https://www.city.higashikurume.lg.jp/library/1024999/1027652.html ウィキペディアタウンin東久留米 ~武蔵野鉄道引き込み線~]
* 11/15 [https://www.town.nakai.kanagawa.jp/soshiki/chiikibosaikachiikijohohan/citypromo/3716.html ウィキペディアタウンin里都]
* 11/23 [https://facebook.com/events/s/wikipedia%E3%83%95%E3%83%B3%E3%82%AB%E3%82%AF14%E5%9D%82%E5%8F%A3%E5%AE%89%E5%90%BE/1534587237725121/ Wikipediaブンガク 坂口安吾]
* 11/29 [https://www.city.yokkaichi.lg.jp/www/contents/1724135632047/index.html みんなで「あさけ」界隈を歩いてウィキペディアと世界地図に足跡を残そう!]
* 11/30 [https://www.city.inazawa.aichi.jp/museum/0000005195.html ウィキペディアタウン稲沢]
'''前回配信:2025年9月30日'''
<hr style="border-top: 2px 破線 #7F9AEB; border-bottom: none;">
配信元: ''[[:m:Wikimedians of Japan User Group|Wikimedians of Japan User Group]]''<br />
<small>[[:m:Talk:Wikimedians of Japan User Group/メールマガジン|フィードバック]]。[[:m:Wikimedians of Japan User Group/メールマガジン/targets list| 登録・削除]]。</small>2025年10月31日 (金) 09:53 (UTC)
<hr style="border-top: 2px 破線 #7F9AEB; border-bottom: none;">
<!-- User:Chqaz-WMJPUG@metawiki が https://meta.wikimedia.org/w/index.php?title=Wikimedians_of_Japan_User_Group/%E3%83%A1%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%9E%E3%82%AC%E3%82%B8%E3%83%B3/targets_list&oldid=29400209 のリストを使用して送信したメッセージ -->
== <span lang="en" dir="ltr">Reminder: Help us decide the name of the new Abstract Wikipedia project</span> ==
<div lang="en" dir="ltr">
<section begin="function2"/>
{{int:Hello}}. Reminder: Please help to choose name for the new Abstract Wikipedia wiki project. The finalist vote starts today. The finalists for the name are: <span lang="en" dir="ltr" class="mw-content-ltr">Abstract Wikipedia, Multilingual Wikipedia, Wikiabstracts, Wikigenerator, Proto-Wiki</span>. If you would like to participate, then '''[[m:Special:MyLanguage/Abstract Wikipedia/Abstract Wikipedia naming contest|please learn more and vote now]]''' at meta-wiki.
{{Int:Feedback-thanks-title}}
<section end="function2"/>
</div>
-- [[User:Sannita (WMF)|User:Sannita (WMF)]] ([[User talk:Sannita (WMF)|talk]]) 2025年11月20日 (木) 14:21 (UTC)
<!-- User:Sannita (WMF)@metawiki が https://meta.wikimedia.org/w/index.php?title=Distribution_list/Global_message_delivery&oldid=29583860 のリストを使用して送信したメッセージ -->
== Wikimedians of Japan User Group 2025-11 ==
'''全体ニュース'''
* ウィキメディア財団の[[:foundation:File:Wikimedia_Foundation_FY_24-25_Audit_Report.pdf|監査報告]](英語)が公表されました。
* 提携団体委員会、オンブズ委員会、事案審査委員会への[[:m:Wikimedia_Foundation/Legal/Committee_appointments/ja|応募]]は12月11日までです。
* ウィキマニア2027はチリのサンディエゴで開催されることが決定しました。
'''ESEAPハブからのおしらせ'''[[File:ESEAP logo horizontal.svg|40px|link=:m:ESEAP_Hub/ja]]
* 12月6日17時半(JST)から[[:m:Event:ESEAP_Community_Call_54_(6_December_2025)|オンラインミーティング]]が行われます。
'''Wikimedians of Japan User Groupからのおしらせ'''[[File:Wikimedians of Japan User Group Logoonly.svg|20px|link=:m:Wikimedians_of_Japan_User_Group]]
* 12月6日に大阪大学中之島センターにて、[[:m:Wikimedians of Japan User Group/events/West-Japan Wikimedia Conference 2025|West-Japan Wikimedia Conference 2025]]を開催します。
* 翌7日には[https://opendata-mokumoku2025.peatix.com/view もくもく会]を開催します。
'''[[:w:ja:メインページ|日本語版ウィキペディア]]'''[[File:Wikipedia-logo-v2.svg|20px|link=:w:ja:]]
* 今月は以下の記事が[[:w:ja:Wikipedia:良質な記事/良質な記事の選考|良質な記事の選考]]を通過しました。
**[[:w:ja:根岸町 (仙台市)|根岸町 (仙台市)]]
**[[:w:ja:遮光器土偶|遮光器土偶]]
**[[:w:ja:尾去沢銅山事件|尾去沢銅山事件]]
**[[:w:ja:雄勝地区|雄勝地区]]
**[[:w:ja:ギャラクシー・ズー|ギャラクシー・ズー]]
**[[:w:ja:ジ・アート・オブ・チャーリー・チャン・ホックチャイ|ジ・アート・オブ・チャーリー・チャン・ホックチャイ]]
**[[:w:ja:第一次ポエニ戦争の講和条約|第一次ポエニ戦争の講和条約]]
**[[:w:ja:道鏡|道鏡]]
**[[:w:ja:八方池|八方池]]
**[[:w:ja:マケドニア名称論争|マケドニア名称論争]]
**[[:w:ja:連室細管|連室細管]]
**[[:w:ja:オヴィリ|オヴィリ]]
**[[:w:ja:原阿佐緒|原阿佐緒]]
**[[:w:ja:宇佐八幡宮神託事件|宇佐八幡宮神託事件]]
**[[:w:ja:薬師岳の圏谷群|薬師岳の圏谷群]]
**[[:w:ja:うしかい座|うしかい座]]
**[[:w:ja:上海郵便局|上海郵便局]]
**[[:w:ja:日本大辞書|日本大辞書]]
**[[:w:ja:細川ガラシャ|細川ガラシャ]]
* 今月の1枚
[[File:Irozaki 20210131-2.jpg|alt=|thumb|200x200px|静岡県南伊豆町にある[[:w:ja:石廊崎|石廊崎]]の先端の画像|none]]
'''[[:wmfblog:|Diff]]'''
Diffはウィキメディアに関するブログプラットフォームです。今月から毎月Diffの掲載された記事を紹介します。タイトル / 著者;翻訳者 (掲載日) の順で記載しています。
* [https://diff.wikimedia.org/ja/2025/11/01/%e3%80%8c%e3%82%a6%e3%82%a3%e3%82%ad%e3%83%9a%e3%83%87%e3%82%a3%e3%82%a2%e3%82%bf%e3%82%a6%e3%83%b3in%e5%b2%a9%e6%9d%91%e3%80%8d%e3%81%ab%e5%8f%82%e5%8a%a0%e3%81%99%e3%82%8b/ 「ウィキペディアタウンin岩村」に参加する] / Asturio Cantabrio (2025/11/01)
* [https://diff.wikimedia.org/ja/2025/11/02/%e3%82%a6%e3%82%a3%e3%82%ad%e3%83%a1%e3%83%87%e3%82%a3%e3%82%a2%e3%83%bb%e3%83%af%e3%83%bc%e3%83%ab%e3%83%89in%e5%9b%b3%e6%9b%b8%e9%a4%a8%e7%b7%8f%e5%90%88%e5%b1%952025%ef%bc%9a%e3%82%a6%e3%82%a3/ ウィキメディア・ワールドin図書館総合展2025:ウィキマニア・ナイロビ参加報告] / Wadakuramon ( 2025/11/02)
* [https://diff.wikimedia.org/ja/2025/11/02/%e3%80%8c%e3%82%a6%e3%82%a3%e3%82%ad%e3%83%9a%e3%83%87%e3%82%a3%e3%82%a2%e3%81%ab%e3%82%83%e3%82%a6%e3%83%b3-vol-8%e2%91%a1-%e6%96%87%e5%8c%96%e8%b2%a1xwikipedia%e3%80%8d%e3%81%ab%e5%8f%82/ 「ウィキペディアにゃウン vol.8② 文化財×Wikipedia」に参加する] / Asturio Cantabrio (2025/11/02)
* [https://diff.wikimedia.org/ja/2025/11/03/wikipedia%e8%a8%98%e4%ba%8b%e3%80%8c%e6%b8%af%e5%8d%97%e5%8f%b0%e3%82%b7%e3%83%8d%e3%82%b5%e3%83%ad%e3%83%b3%e3%80%8d%e3%82%92%e4%bd%9c%e6%88%90%e3%81%99%e3%82%8b/ Wikipedia記事「港南台シネサロン」を作成する] / Asturio Cantabrio (2025/11/03)
* [https://diff.wikimedia.org/ja/2025/11/03/%e3%82%a6%e3%82%a3%e3%82%ad%e3%83%a1%e3%83%87%e3%82%a3%e3%82%a2%e3%82%82%e3%81%8f%e3%82%82%e3%81%8f%e4%bc%9a2025%e5%b9%b410%e6%9c%88%e6%9d%b1%e4%ba%ac%e3%81%a7%e8%aa%95%e7%94%9f%ef%bc%81wikidata/ ウィキメディアもくもく会2025年10月東京で誕生!Wikidata項目欠落検索ツール『Wikidata Missing』] / Ecute (2025/11/03)
* [https://diff.wikimedia.org/ja/2025/11/04/%e3%82%a6%e3%82%a3%e3%82%ad%e3%83%9e%e3%83%8b%e3%82%a22027%e9%96%8b%e5%82%ac%e5%9c%b0%e6%b1%ba%e5%ae%9a/ ウィキマニア2027開催地決定] / Wikimania Steering Committee (2025/11/04)
* [https://diff.wikimedia.org/ja/2025/11/06/73%e6%ad%b3%e3%81%ae%e3%82%a6%e3%82%a3%e3%82%ad%e3%83%a1%e3%83%87%e3%82%a3%e3%82%a2%e3%83%b3%e3%81%ae%e4%b8%80%e6%97%a5/ 73歳のウィキメディアンの一日] / Wadakuramon (2025/11/06)
* [https://diff.wikimedia.org/ja/2025/11/07/%e3%82%a6%e3%82%a3%e3%82%ad%e3%82%ab%e3%83%b3%e3%83%95%e3%82%a1%e3%83%ac%e3%83%b3%e3%82%b9%e3%83%bb%e3%82%bd%e3%82%a6%e3%83%ab2025%e3%80%81%e3%82%a6%e3%82%a3%e3%82%ad%e3%83%a1%e3%83%87%e3%82%a3/ ウィキカンファレンス・ソウル2025、ウィキメディアの未来は多様性にあり] / Wikimedia Korea ; Wadakuramon (2025/11/07)
* [https://diff.wikimedia.org/ja/2025/11/14/%e3%82%a6%e3%82%a3%e3%82%ad%e3%83%9a%e3%83%87%e3%82%a3%e3%82%a2%e5%88%a9%e7%94%a8%e8%80%85%e3%81%ab%e6%96%b0%e3%81%97%e3%81%84%e3%83%88%e3%83%ac%e3%83%b3%e3%83%89/ ウィキペディア利用者に新しいトレンド] Marshall Miller ; Omotecho (2025/11/14)
* [https://diff.wikimedia.org/ja/2025/11/16/%e9%96%a2%e8%a5%bf%e3%82%aa%e3%83%bc%e3%83%97%e3%83%b3%e3%83%95%e3%82%a9%e3%83%bc%e3%83%a9%e3%83%a0%e3%81%a7%e3%82%a6%e3%82%a3%e3%82%ad%e3%83%9e%e3%83%8b%e3%82%a2%e3%81%ae%e8%a9%b1%e3%82%92%e3%81%97/ 関西オープンフォーラムでウィキマニアの話をしました] / Wadakuramon (2025/11/16)
* [https://diff.wikimedia.org/ja/2025/11/26/%e3%82%a6%e3%82%a3%e3%82%ad%e3%83%a1%e3%83%87%e3%82%a3%e3%82%a2%e5%9b%b3%e6%9b%b8%e9%a4%a8%ef%bc%9a100%e4%b8%87%e4%bb%b6%e3%81%ae%e3%83%aa%e3%83%b3%e3%82%af%e3%81%a8%e3%81%9d%e3%81%ae%e5%85%88/ ウィキメディア図書館:100万件のリンクとその先] / Vipin SJ;Omotecho (2025/11/26)
* [https://diff.wikimedia.org/ja/2025/11/27/international-semantic-web-conference-2025-%e3%81%ab%e5%8f%82%e5%8a%a0%e3%81%97%e3%81%9f%e3%82%a6%e3%82%a3%e3%82%ad%e3%83%a1%e3%83%87%e3%82%a3%e3%82%a2%e3%83%b3%e3%81%ae%e6%84%9f%e6%83%b3/ International Semantic Web Conference 2025 に参加したウィキメディアンの感想] / Eugene Ormandy (2025/11/27)
'''前回配信:2025年10月31日'''
<hr style="border-top: 2px 破線 #7F9AEB; border-bottom: none;">
配信元: ''[[:m:Wikimedians of Japan User Group|Wikimedians of Japan User Group]]''<br />
<small>[[:m:Talk:Wikimedians of Japan User Group/メールマガジン|フィードバック]]。[[:m:Wikimedians of Japan User Group/メールマガジン/targets list| 登録・削除]]。</small>2025年11月30日 (日) 13:06 (UTC)
<hr style="border-top: 2px 破線 #7F9AEB; border-bottom: none;">
<!-- User:Chqaz-WMJPUG@metawiki が https://meta.wikimedia.org/w/index.php?title=Wikimedians_of_Japan_User_Group/%E3%83%A1%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%9E%E3%82%AC%E3%82%B8%E3%83%B3/targets_list&oldid=29717105 のリストを使用して送信したメッセージ -->
== Wikimedians of Japan User Group 2025-12 ==
'''全体ニュース'''
* ウィキペディアは1月15日で25周年を迎えます。同時に[[:m:Event:Wikipedia_25_Virtual_Celebration/ja|バーチャルお祝い会]]も開催されます。
* 1月20日にBernadette Meehanさんがウィキメディア財団のCEOに就任します。
'''ESEAPハブからのおしらせ'''[[File:ESEAP logo horizontal.svg|40px|link=:m:ESEAP_Hub/ja]]
* 2027年のESEAPサミットは日本で開催することに決定しました。
'''Wikimedians of Japan User Groupからのおしらせ'''[[File:Wikimedians of Japan User Group Logoonly.svg|20px|link=:m:Wikimedians_of_Japan_User_Group]]
* 1月31日に開催される[https://event.ospn.jp/osc2026-osaka/ OSC大阪]に参加します。
* [https://www.youtube.com/@WikimediaJaUG YouTubeチャンネル]を作成しました。
* 12月6日に[[:m:Wikimedians of Japan User Group/events/West-Japan Wikimedia Conference 2025|West-Japan Wikimedia Conference 2025]]を開催しました。
'''[[:w:ja:メインページ|日本語版ウィキペディア]]'''[[File:Wikipedia-logo-v2.svg|20px|link=:w:ja:]]
* 今月は以下の記事が[[:w:ja:Wikipedia:良質な記事/良質な記事の選考|良質な記事の選考]]を通過しました。
**[[:w:ja:ロンドン自然史博物館の天井|ロンドン自然史博物館の天井]]
**[[:w:ja:ミャンマーの歴史|ミャンマーの歴史]]
**[[:w:ja:ボーラーン|ボーラーン]]
**[[:w:ja:天蓋の聖母 (ラファエロ)|天蓋の聖母 (ラファエロ)]]
**[[:w:ja:流行神|流行神]]
**[[:w:ja:瑠璃坏|瑠璃坏]]
**[[:w:ja:や座|や座]]
**[[:w:ja:京坂キリシタン一件|京坂キリシタン一件]]
**[[:w:ja:ベトナムの歴史|ベトナムの歴史]]
**[[:w:ja:オニオオハシ|オニオオハシ]]
**[[:w:ja:白瑠璃碗 (正倉院宝物)|白瑠璃碗 (正倉院宝物)]]
**[[:w:ja:漢字|漢字]]
**[[:w:ja:貞享の半知|貞享の半知]]
**[[:w:ja:カンボジア文学|カンボジア文学]]
**[[:w:ja:足利政知|足利政知]]
* 今月の1枚
[[File:DSC_1418-DeNoiseAI-low-light_(1).jpg|alt=|thumb|200x200px|静岡県南伊豆町にある[[:w:ja:ヤマセミ|ヤマセミ]]のホバリング|none]]
'''1月のイベント情報'''
* 1/10 [[:w:ja:Wikipedia:オフラインミーティング/ウィキペディア25周年記念エディタソン|ウィキペディア25周年記念エディタソン]]
* 1/25 [https://okunoto-archive.jp/202512/223/ ウィキペディアタウンin珠洲]
* 1/25 [https://www.city.tambasasayama.lg.jp/chuotoshokan/information/27347.html ウィキペディアタウンin丹波篠山 Vol.2~丹波篠山の自慢「丹波黒」を世界に発信~]
'''[[:wmfblog:|Diff]]'''
タイトル / 著者;翻訳者 (掲載日) の順で記載しています。
* [https://diff.wikimedia.org/ja/2025/12/01/%e3%82%aa%e3%83%bc%e3%83%97%e3%83%b3%e3%82%bd%e3%83%bc%e3%82%b9%e3%82%ab%e3%83%b3%e3%83%95%e3%82%a1%e3%83%ac%e3%83%b3%e3%82%b92025kyoto%e3%81%ab%e5%8f%82%e5%8a%a0/ オープンソースカンファレンス2025Kyotoに参加] / VZP10224 (2025/12/01)
* [https://diff.wikimedia.org/ja/2025/12/03/%e3%82%a6%e3%82%a3%e3%82%ad%e3%83%a1%e3%83%87%e3%82%a3%e3%82%a2%e3%83%bb%e3%83%af%e3%83%bc%e3%83%ab%e3%83%89in%e5%9b%b3%e6%9b%b8%e9%a4%a8%e7%b7%8f%e5%90%88%e5%b1%952025%ef%bc%9a6%e4%ba%ba%e3%81%ae/ ウィキメディア・ワールドin図書館総合展2025:6人のオンラインフォーラム] / Wadakuramon (2025/12/03)
* [https://diff.wikimedia.org/ja/2025/12/13/%e3%82%a6%e3%82%a3%e3%82%ad%e3%83%a1%e3%83%87%e3%82%a3%e3%82%a2%e3%83%bb%e3%83%af%e3%83%bc%e3%83%ab%e3%83%89in%e5%9b%b3%e6%9b%b8%e9%a4%a8%e7%b7%8f%e5%90%88%e5%b1%952025%ef%bc%9a%e3%83%96%e3%8w3%bc/ ウィキメディア・ワールドin図書館総合展2025:ブース展示と横浜エディタソン] / Wadakuramon (2025/12/13)
* [https://diff.wikimedia.org/ja/2025/12/14/%e3%80%8c%e3%82%a6%e3%82%a3%e3%82%ad%e3%83%9a%e3%83%87%e3%82%a3%e3%82%a2%e3%82%bf%e3%82%a6%e3%83%b3in%e5%92%8c%e6%ad%8c%e5%b1%b12025%e3%80%8d%e3%81%ab%e5%8f%82%e5%8a%a0%e3%81%99%e3%82%8b/ 「ウィキペディアタウンin和歌山2025」に参加する] / Asutrio Cantabrio (2025/12/14)
* [https://diff.wikimedia.org/ja/2025/12/14/12%e6%9c%88%e3%82%92%e6%b5%b7%e5%a4%96%e3%81%ae%e3%82%a6%e3%82%a3%e3%82%ad%e3%83%a1%e3%83%87%e3%82%a3%e3%82%a2%e3%83%b3%e3%81%a8%e9%81%8e%e3%81%94%e3%81%99/ 12月を海外のウィキメディアンと過ごす] / Wadakuramon (2025/12/14)
* [https://diff.wikimedia.org/ja/2025/12/16/diff%e3%81%af2026%e5%b9%b4%e3%81%be%e3%81%a7%e3%81%8a%e4%bc%91%e3%81%bf%e3%81%97%e3%81%be%e3%81%99/ Diffは2026年までお休みします] / Chris Koerner ; Wadakuramon (2025/12/16)
* [https://diff.wikimedia.org/ja/2025/12/17/%e6%ad%a3%e5%80%89%e9%99%a2%e5%b1%95-%e3%81%a8-%e8%a8%98%e4%ba%8b%e5%9f%b7%e7%ad%86-%e7%91%a0%e7%92%83%e5%9d%8f%e3%81%a8%e3%82%82%e3%81%86%e4%b8%80%e3%81%a4%e3%81%ae%e7%99%bd%e7%91%a0%e7%92%83/ 正倉院展 と 記事執筆 -瑠璃坏ともう一つの白瑠璃碗-] / Lin Xiangru (2025/12/17)
* [https://diff.wikimedia.org/ja/2025/12/19/%e3%82%a6%e3%82%a3%e3%82%ad%e3%83%9e%e3%83%8b%e3%82%a22026%e3%81%ab%e5%90%91%e3%81%91%e3%81%a6/ ウィキマニア2026に向けて] / Wikimania Core Organizing Team (2025/12/19)
* [https://diff.wikimedia.org/ja/2025/12/19/west-japan-wikimedia-conference-2025%e5%8f%82%e5%8a%a0%e8%a8%98%ef%bc%9a%e6%a8%aa%e6%b5%9c%e3%82%a8%e3%83%87%e3%82%a3%e3%82%bf%e3%82%bd%e3%83%b3%e3%82%92%e7%b4%b9%e4%bb%8b/ West-Japan Wikimedia Conference 2025参加記:横浜エディタソンを紹介] / Wadakuramon (2025/12/19)
* [https://diff.wikimedia.org/ja/2025/12/19/%e3%82%a6%e3%82%a3%e3%82%ad%e3%83%a1%e3%83%87%e3%82%a3%e3%82%a2%e8%b2%a1%e5%9b%a32026-27%e5%b9%b4%e6%ac%a1%e8%a8%88%e7%94%bb%e3%81%ae%e3%82%b4%e3%83%bc%e3%83%ab%e7%ad%96%e5%ae%9a%ef%bc%9a%e3%82%a6/ ウィキメディア財団2026-27年次計画のゴール策定:ウィキメディア運動の重点となる質問] / Selena Deckelmann ; Omotecho (2025/12/19)
* [https://diff.wikimedia.org/ja/2025/12/23/%e6%97%a5%e6%9c%ac%e3%81%ae%e3%82%a6%e3%82%a3%e3%82%ad%e3%83%a1%e3%83%87%e3%82%a3%e3%82%a2%e3%83%b3%e3%81%8cwikiconference-seoul-2025%e3%81%ab%e5%8f%82%e5%8a%a0%e3%81%97%e3%81%a6%e3%81%8d%e3%81%9f/ 日本のウィキメディアンがWikiConference Seoul 2025に参加してきた記録] / Narumi.SBT (2025/12/23)
'''前回配信:2025年11月30日'''
<hr style="border-top: 2px 破線 #7F9AEB; border-bottom: none;">
配信元: ''[[:m:Wikimedians of Japan User Group|Wikimedians of Japan User Group]]''<br />
<small>[[:m:Talk:Wikimedians of Japan User Group/メールマガジン|フィードバック]]。[[:m:Wikimedians of Japan User Group/メールマガジン/targets list| 登録・削除]]。</small>2025年12月31日 (水) 11:04 (UTC)
<hr style="border-top: 2px 破線 #7F9AEB; border-bottom: none;">
<!-- User:Chqaz-WMJPUG@metawiki が https://meta.wikimedia.org/w/index.php?title=Wikimedians_of_Japan_User_Group/%E3%83%A1%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%9E%E3%82%AC%E3%82%B8%E3%83%B3/targets_list&oldid=29848173 のリストを使用して送信したメッセージ -->
== ほぼ同内容かつ似た題名の記事の並立について(日本語方言など) ==
[[日本語/方言]]と[[日本語の方言]]は同じような題で同じような内容を載せていますが、この2つはどう違うのでしょう。同じ意図で作ったものならどちらかに統合すべきだと思いますが、統合後はどちらの記事名にするのが良いでしょうか。
加えて、こういった例は他にも必ず存在する気がするのですが、そういった場合の方針などがあれば教えていただきたいです。--[[利用者:BrassSnail|BrassSnail]] ([[利用者・トーク:BrassSnail|トーク]]) 2026年1月12日 (月) 13:28 (UTC)
:こちらでシスオペをやっております、[[利用者:Tomzo|Tomzo]] ([[利用者・トーク:Tomzo|トーク]])と申します。
:ご指摘ありがとうございます。本件ご指摘のとおりだと思います。手続き導入からは日が浅いものの、「[[Wikibooks:統合提案]]」という手続きがありますのでご紹介いたします。そちらで、ご提案をいただけるのとありがたいのですが、お忙しいようであれば、機会を見計らい私が対応いたします。
:WBとWPが微妙に異なることとして、ある一つの事柄についての記述でも、教科書として伝える層や伝える体系が異なると記述が異なることとなり、別ページを構成することがあるということで、これは、各々の体系のもので存続させることがあります。または、共通の記述に関してリンクを貼ることで対応するなどの手法も考えられます。この辺りは、決まった手法があるわけではないので、作成の過程で議論によって決めていくことなのかなと思っています。--[[利用者:Tomzo|Tomzo]] ([[利用者・トーク:Tomzo|トーク]]) 2026年1月12日 (月) 16:43 (UTC)
::ご教授ありがとうございます。そちらで提案させていただきました。。--[[利用者:BrassSnail|BrassSnail]] ([[利用者・トーク:BrassSnail|トーク]]) 2026年1月15日 (木) 15:27 (UTC)
== Thank You for Last Year – Join Wiki Loves Ramadan 2026 ==
Dear Wikimedia communities,
We hope you are doing well, and we wish you a happy New Year.
''Last year, we captured light. This year, we’ll capture legacy.''
In 2025, communities around the world shared the glow of Ramadan nights and the warmth of collective iftars. In 2026, ''Wiki Loves Ramadan'' is expanding, bringing more stories, more cultures, and deeper global connections across Wikimedia projects.
We invite you to explore the ''Wiki Loves Ramadan 2026'' [[m:Special:MyLanguage/Wiki Loves Ramadan 2026|Meta page]] to learn how you can participate and [[m:Special:MyLanguage/Wiki Loves Ramadan 2026/Participating communities|sign up]] your community.
📷 ''Photo campaign on '' [[c:Special:MyLanguage/Commons:Wiki Loves Ramadan 2026|Wikimedia Commons]]
If you have questions about the project, please refer to the FAQs:
* [[m:Special:MyLanguage/Wiki Loves Ramadan/FAQ/|Meta-Wiki]]
* [[c:Special:MyLanguage/Commons:Wiki Loves Ramadan/FAQ|Wikimedia Commons]]
''Early registration for updates is now open via the '''[[m:Special:RegisterForEvent/2710|Event page]]'''''
''Stay connected and receive updates:''
* [https://t.me/WikiLovesRamadan Telegram channel]
* [https://lists.wikimedia.org/postorius/lists/wikilovesramadan.lists.wikimedia.org/ Mailing list]
We look forward to collaborating with you and your community.
'''The Wiki Loves Ramadan 2026 Organizing Team''' 2026年1月16日 (金) 19:45 (UTC)
<!-- User:ZI Jony@metawiki が https://meta.wikimedia.org/w/index.php?title=Distribution_list/Non-Technical_Village_Pumps_distribution_list&oldid=29879549 のリストを使用して送信したメッセージ -->
== <span lang="en" dir="ltr">Annual review of the Universal Code of Conduct and Enforcement Guidelines</span> ==
<div lang="en" dir="ltr">
<section begin="announcement-content" />
I am writing to you to let you know the annual review period for the Universal Code of Conduct and Enforcement Guidelines is open now. You can make suggestions for changes through 9 February 2026. This is the first step of several to be taken for the annual review. [[m:Special:MyLanguage/Universal Code of Conduct/Annual review/2026|Read more information and find a conversation to join on the UCoC page on Meta]].
The [[m:Special:MyLanguage/Universal Code of Conduct/Coordinating Committee|Universal Code of Conduct Coordinating Committee]] (U4C) is a global group dedicated to providing an equitable and consistent implementation of the UCoC. This annual review was planned and implemented by the U4C. For more information and the responsibilities of the U4C, [[m:Special:MyLanguage/Universal Code of Conduct/Coordinating Committee/Charter|you may review the U4C Charter]].
Please share this information with other members in your community wherever else might be appropriate.
-- In cooperation with the U4C, [[m:User:Keegan (WMF)|Keegan (WMF)]] ([[m:User talk:Keegan (WMF)|talk]])<section end="announcement-content" />
</div>
2026年1月19日 (月) 21:01 (UTC)
<!-- User:Keegan (WMF)@metawiki が https://meta.wikimedia.org/w/index.php?title=Distribution_list/Global_message_delivery&oldid=29905753 のリストを使用して送信したメッセージ -->
== 無期限保護について ==
こんばんは。本日からWikibooksの編集を始めました。なまえみていです。
色々なページを見ていて、無期限 <s>保護</s> <u>半保護</u> がなされているページが多く感じられます。もちろん、度重なる荒らし、管理者不足など理由はあるのだと思いますが、Wikipediaに慣れている私からすると、厳しすぎる対応だと思います。(Wikipediaでは基本的に無期限は合意形成がないとできない)
ただでさえ、Wikibooksを編集する利用者が少ないのに、積極的に <u>半</u> 保護していると、新規利用者ができづらいと考えます。
[[日本の大学受験ガイド#入試対策]]にある大学のうち保護されているものの解除を検討していただけないでしょうか?
学生による新規参入はWikibooksの存続に大きく影響すると思います。--[[利用者:なまえみてい|なまえみてい]] ([[利用者・トーク:なまえみてい|トーク]]) 2026年1月23日 (金) 16:55 (UTC) <small> 意味合いが変わってしまうので取り消し線と下線で訂正しました。--[[利用者:なまえみてい|なまえみてい]] ([[利用者・トーク:なまえみてい|トーク]]) 2026年1月24日 (土) 01:24 (UTC)</small>
:はじめまして、[[利用者:Tomzo|Tomzo]] ([[利用者・トーク:Tomzo|トーク]])と申します。
:本件、一応説明いたしますと、WPに比べると当プロジェクトは、参加者もさながら管理者も圧倒的に少なく、多少の「いわゆる」民主的運営を犠牲にしてでも厳しい措置を取らざるを得ないという事情があります。また、作成保護に関して、強い保護は「Wikibooksのテーマになる可能性が非常に少ないもの」のみについてかけるようにし、その他は基本半保護のはずです(WPも実質永久半保護の記事は少なくありません)。初回ログイン後、数日平穏な編集が継続される限り、特に支障はないはずです。そのような記事に関しては、なまえみていさんも来週には編集可能となると思いますが、どうしても、すぐに編集したいという記事があるのであれば、[[Wikibooks:管理者伝言板#保護解除依頼]]に指定してご依頼ください。--[[利用者:Tomzo|Tomzo]] ([[利用者・トーク:Tomzo|トーク]]) 2026年1月24日 (土) 01:04 (UTC)
::(返信) ご丁寧にありがとうございます。
::jawpと同じ基準ならおそらく、数時間で自動承認されるので私は困らないのですが、新規利用者が生まれにくく、利用者不足を加速させてしまうのかなと思った次第です。
::私の方でお手伝いできることがありましたら、ご協力したいと考えています。失礼します。--[[利用者:なまえみてい|なまえみてい]] ([[利用者・トーク:なまえみてい|トーク]]) 2026年1月24日 (土) 01:20 (UTC)
== Wikimedians of Japan User Group 2026-1 ==
'''全体ニュース'''
* [[:m:Stewards/Elections_2026|スチュワード選挙2026]]及び[[:m:Stewards/Confirm/2026|現在のスチュワードへの信任投票]]への投票が2月6日 14:00 (UTC) から2月27日 14:00 (UTC) まで行われます。
* ウィキマニア2026の[[:wikimania:2026:Program|プログラム募集]]が3月1日まで行われています。
* 来年度のウィキメディア財団の年次計画についての[[:m:Talk:Wikimedia_Foundation_Annual_Plan/2026-2027|意見募集]]が行われています。
'''ESEAPハブからのおしらせ'''[[File:ESEAP logo horizontal.svg|40px|link=:m:ESEAP_Hub/ja]]
* 2月1日16時(JST)から[[:m:Event:ESEAP_Community_Call_55_(1_February_2026)|オンラインミーティング]]が行われます。
'''Wikimedians of Japan User Groupからのおしらせ'''[[File:Wikimedians of Japan User Group Logoonly.svg|20px|link=:m:Wikimedians_of_Japan_User_Group]]
* [https://www.ospn.jp オープンソースカンファレンス]のコミュニティサポーターになりました。
* 2月27,28日に開催される[https://event.ospn.jp/osc2026-spring/ OSC東京]に参加します。
* [[:m:「Diff」2025年日本語版記事索引|「Diff」2025年日本語版記事索引]]を公開しました。
'''[[:w:ja:メインページ|日本語版ウィキペディア]]'''[[File:Wikipedia-logo-v2.svg|20px|link=:w:ja:]]
* 今月は以下の記事が[[:w:ja:Wikipedia:良質な記事/良質な記事の選考|良質な記事の選考]]を通過しました。
**[[:w:ja:マルキアヌス|マルキアヌス]]
**[[:w:ja:高瀬渓谷の噴湯丘と球状石灰石|高瀬渓谷の噴湯丘と球状石灰石]]
**[[:w:ja:帯金式甲冑|帯金式甲冑]]
**[[:w:ja:百済の里|百済の里]]
**[[:w:ja:仙人掌群鶏図|仙人掌群鶏図]]
**[[:w:ja:(54598) ビエノール|(54598) ビエノール]]
**[[:w:ja:平成の大合併|平成の大合併]]
**[[:w:ja:正倉院展|正倉院展]]
**[[:w:ja:駿河竹千筋細工|駿河竹千筋細工]]
**[[:w:ja:横浜中華街の歴史|横浜中華街の歴史]]
**[[:w:ja:毛利輝元の四国・九州出兵|毛利輝元の四国・九州出兵]]
* 今月の1枚
[[File:251123 Shinsenkyo Hakone Japan26s3.jpg|alt=|thumb|200x200px|神奈川県箱根町に所在する[[:w:ja:神仙郷|神仙郷]]|none]]
'''2月のイベント情報'''
* 1/10 [[:w:ja:Wikipedia:オフラインミーティング/ウィキペディア25周年記念エディタソン|ウィキペディア25周年記念エディタソン]]
* 2/7 [https://peatix.com/event/4795657 ウィキペディアタウン神保町 Vol.3]
* 2/7 [[:w:ja:プロジェクト:アウトリーチ/ウィキペディアタウン#近畿|駅まちウィキペディア 動くエディタン編集室 vol.1 京都丹後鉄道あかまつ号]]
* 2/14 [https://www.city.ichinoseki.iwate.jp/library/topics/page.php?p=679 ウィキペディアタウン in 東山]
* 2/15 [https://www.city.toda.saitama.jp/koho-toda/260101/kouza04.html ウィキペディアタウン戸田 つくろう!戸田市の歴史事典]
* 2/15 [https://iselib.city.ise.mie.jp/ise/?id=262 ウィキペディアタウン伊勢Vol.3]
* 2/28 [[:w:ja:プロジェクト:アウトリーチ/ウィキペディアタウン#近畿|丹後古墳ウォーカー 歩いて発見!古代丹後の推し古墳をウィキで紹介! #1 大宮町東川岸]]
'''[[:wmfblog:|Diff]]'''
タイトル / 著者;翻訳者 (掲載日) の順で記載しています。
* [https://diff.wikimedia.org/ja/2026/01/09/%e5%9b%b3%e6%9b%b8%e9%a4%a8%e7%b7%8f%e5%90%88%e5%b1%952025%e3%81%ae%e3%80%8cedit-tango%e3%80%8d%e3%83%96%e3%83%bc%e3%82%b9/ 図書館総合展2025の「edit Tango」ブース] / Asturio Cantabrio (2026/01/09)
* [https://diff.wikimedia.org/ja/2026/01/11/%e3%82%a6%e3%82%a3%e3%82%ad%e3%83%9a%e3%83%87%e3%82%a3%e3%82%a2%e6%97%a5%e6%9c%ac%e8%aa%9e%e7%89%88%e3%82%b3%e3%83%9f%e3%83%a5%e3%83%8b%e3%83%86%e3%82%a3%e3%81%ae%e6%ad%b4%e5%8f%b2%e3%82%92%e3%82%a6/ ウィキペディア日本語版コミュニティの歴史をウィキペディアに刻む] / Wadakuramon (2026/01/11)
* [https://diff.wikimedia.org/ja/2026/01/13/%e3%82%a6%e3%82%a3%e3%82%ad%e3%83%9a%e3%83%87%e3%82%a3%e3%82%a225%e5%91%a8%e5%b9%b4%e8%a8%98%e5%bf%b5%e3%82%a8%e3%83%87%e3%82%a3%e3%82%bf%e3%82%bd%e3%83%b3%e3%81%ab%e5%8f%82%e5%8a%a0%e3%81%97%e3%81%be/ ウィキペディア25周年記念エディタソンに参加しました] / Wadakuramon (2026/01/13)
* [https://diff.wikimedia.org/ja/2026/01/21/%e3%82%a2%e3%82%b8%e3%82%a2%e6%9c%88%e9%96%932025-%e3%82%92%e7%b5%82%e3%81%88%e3%81%a6/ アジア月間2025 を終えて] / Lin Xiangru (2026/01/21)
* [https://diff.wikimedia.org/ja/2026/01/26/%e3%82%a6%e3%82%a3%e3%82%ad%e3%83%9a%e3%83%87%e3%82%a3%e3%82%a225%e5%91%a8%e5%b9%b4%e8%a8%98%e5%bf%b5%e3%83%90%e3%83%bc%e3%82%b9%e3%83%87%e3%83%bc%e3%83%bb%e3%82%b1%e3%83%bc%e3%82%ad%e3%83%bb%e3%82%bd/ ウィキペディア25周年記念バースデー・ケーキ・ソング!] / Wadakuramon (2026/01/26)
'''前回配信:2025年12月31日'''
<hr style="border-top: 2px 破線 #7F9AEB; border-bottom: none;">
配信元: ''[[:m:Wikimedians of Japan User Group|Wikimedians of Japan User Group]]''<br />
<small>[[:m:Talk:Wikimedians of Japan User Group/メールマガジン|フィードバック]]。[[:m:Wikimedians of Japan User Group/メールマガジン/targets list| 登録・削除]]。</small>2026年1月31日 (土) 12:17 (UTC)
<hr style="border-top: 2px 破線 #7F9AEB; border-bottom: none;">
<!-- User:Chqaz-WMJPUG@metawiki が https://meta.wikimedia.org/w/index.php?title=Wikimedians_of_Japan_User_Group/%E3%83%A1%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%9E%E3%82%AC%E3%82%B8%E3%83%B3/targets_list&oldid=29923679 のリストを使用して送信したメッセージ -->
== ほかの利用者さんとの対話について ==
昨年の12月25日にある利用者さんの会話ページで話題を追加したのですが、その利用者さんは私が投稿する2週間ほど前から今月頭まで活動なさっておらず、活動再開後も現在に至るまで返答をいただけておりません。
気づいていらっしゃらないのか故意に返信なさっていないのかはわからないのですが、このような場合、再度会話ページでお知らせするのが良いのか、それとも他に適切な方法があるのでしょうか?
私自身としてはその話題が記事の品質に大きく関わる内容であり対話を行いたいのですが、過剰に返答を求めて当該の利用者さんや他の方に粘着的な行動だと受け取られてしまうと困りますので、こちらで相談させていただきます。--[[利用者:飛火野|飛火野]] ([[利用者・トーク:飛火野|トーク]]) 2026年2月18日 (水) 14:28 (UTC)
:{{コメント2|コメント}} こんにちは。初めまして。
:この場合、対話拒否としてコメント依頼を提出したりできそうですが([[Wikibooks:コメント依頼/すじにくシチュー|例]])、Wikipediaみたいに制度が整ってなさそうですし、準備が大変です。
:ひとまず、異論なしとして、[[利用者:飛火野|飛火野]]さんが正しいと思う様に編集してみたらいかがでしょうか?
:待っていても、何も始まらないですし……--[[利用者:なまえみてい|なまえみてい]] ([[利用者・トーク:なまえみてい|トーク]]) 2026年2月18日 (水) 17:47 (UTC)
::一般記事は、書かれた段階で「誰が書いたか」というものではなくなりますので、適当でないと思える記述は、適当と思うものに書き換えても全く構いません。--[[利用者:Tomzo|Tomzo]] ([[利用者・トーク:Tomzo|トーク]]) 2026年2月19日 (木) 12:37 (UTC)
:::お二人とも、返信ありがとうございます。記事本体には追々手を加えさせていただきます。
:::返信の内容から拝察するに、私の投稿記録をご覧になっていただけたのだと思うのですが、あのような質問になった経緯を時系列順に記しますと、
:::1)当該の編集([https://ja.wikibooks.org/w/index.php?title=%E6%B0%97%E5%80%99%E5%AD%A6/%E3%82%B1%E3%83%83%E3%83%9A%E3%83%B3%E3%81%AE%E6%B0%97%E5%80%99%E5%8C%BA%E5%88%86&oldid=251398 こちら])を見て生成AIによる生成物を、十分に検証できないのに投稿なさっているのではないかという疑義を抱いた
:::2)他の記事([https://ja.wikibooks.org/wiki/%E6%BA%96%E6%83%91%E6%98%9F こちら]や[https://ja.wikibooks.org/wiki/%E5%8F%A4%E7%94%9F%E7%89%A9%E5%AD%A6/%E5%A4%A7%E8%A6%8F%E6%A8%A1%E7%B5%B6%E6%BB%85%E3%82%A4%E3%83%99%E3%83%B3%E3%83%88 こちら]など)でも同様の編集をなさっているのが見受けられた
:::3)もし当該の編集が私の考えているような「AIで生成し、さらにその内容の検証(この場合、日本の「気候学」や「古生物学」の記述として妥当なのかの判断)を十分に行えないままで投稿なさっているのであれば、手を止めていただく必要があるのではないかと考えた
:::4)しかし、私の勇み足であっては失礼ですので、まずは編集の意図を確認した
:::というところです。
:::確かに、今思うと誘導尋問的で、必要以上に迂遠な聞き方になってしまっていたとは思うのですが、私としてはまず当該利用者さんの編集の意図をお伺いしたいと思っています。--[[利用者:飛火野|飛火野]] ([[利用者・トーク:飛火野|トーク]]) 2026年2月19日 (木) 14:27 (UTC)
== どうしてwikibooksが必要なのか ==
そのまんま--[[利用者:Guest A1|Guest A1]] ([[利用者・トーク:Guest A1|トーク]]) 2026年2月25日 (水) 09:28 (UTC)
<del>:はじめまして。tkkn46tkkn46 と申します。</del>
:wikipediaは、リンク?ハイパーテキスト?ハイパーリンク? がステキ。(任意へリンク)
:wikibooksは、目次ページがあって、章、節、号、款、目
:(例:<nowiki>[[Wikibooks:ウィキプロジェクト 法学 コンメンタール執筆ガイドライン]]</nowiki>)
:wikibooksは、wikipediaより本のイメージに近い思います。
:wikibooksで、「単語」だけ?だと、wikipediaでイイんじゃないの思います。
:wikipediaは、辞書のイメージです。本に、ならないタイトルだとキツイと思います。
:以下、wikibooksへのいつの日にか私の希望
:①標準機能内で、本なので、目次ページを参考に、ページ間の移動が楽だと助かります。
: F7(前頁へ)F8(後頁へ)?F6(1つ上へ)F9(1つ下へ)
: 現在は、ページ内のフッターで、自作しています。
:②標準機能内で、books内の索引の自動作成機能。
:もしかしたら、誰かが開発済みカモ。アドバイスいただけると助かります。--[[利用者:Tkkn46tkkn46|Tkkn46tkkn46]] ([[利用者・トーク:Tkkn46tkkn46|トーク]]) 2026年2月25日 (水) 11:53 (UTC)
:wikidiaryがあれば、Guest A1様の投稿はステキかも。--[[利用者:Tkkn46tkkn46|Tkkn46tkkn46]] ([[利用者・トーク:Tkkn46tkkn46|トーク]]) 2026年2月25日 (水) 12:12 (UTC)
::お二人に。
::'''[[Wikibooks:児童・生徒の方々へ]]'''をきちんと読んでいただくことを希望いたします。--[[利用者:Tomzo|Tomzo]] ([[利用者・トーク:Tomzo|トーク]]) 2026年2月25日 (水) 12:37 (UTC)
== 過去ログ化のガイドラインについて ==
[[Wikibooks:過去ログ化のガイドライン|このガイドライン]]はすじにくシチューさん一人で作成されてから草案状態が10年経ちました。正式にガイドライン化したいと考えています。
その前に一つ提案をいたします(この議論では実際に変更するわけではありません)。今現在、日本語版wikibooksではサブページ方式ではなく、固定リンク方式を使っていますが、個人的にはサブページ方式を使ったほうがよいと思います。
理由として
# サブページ方式の方が感覚的に実行しやすく、煩わしくない。
# サブページ方式の方がログの保存方法の変更がしやすい。固定リンク方式の場合「今まで1年ごとに過去ログ化していたけど10年ごとに変更したい」となったときに対応が出来ません。
# サプページ方式の欠点として、[[Wikibooks:過去ログ化のガイドライン|ガイドライン]]では「他の方法(サブページをつくるなど)と比べて、固定版方式では編集方法をまちがった場合の差し戻しが容易なことが根拠です。」とありますが、むしろサブページ方式の方が2で挙げた場合もそうですが、差し戻し、過去ログページの削除で対応できるため簡単に対応できます。
本当はを作成されたすじにくシチューさんに理由や意図をお聞きしたいのですが、無期限ブロックされており、お聞きすることが出来ません。皆さんに賛成か反対か、反対ならその理由などをお聞きしたいです。
具体的な提案
サブページ方式で[[Wikibooks:過去ログ]]を作成し[[Wikibooks:過去ログ/談話室]]など項目別にサブページを作成する。ログを追加しないと考えられるものに関しては無期限半保護する。
wikipediaでは[[Wikipedia:談話室/過去ログ]]のような形式ですが、wikibooksでは[[Wikibooks:過去ログ]]で過去ログを一括で管理したいと考えています。「理由として」でも挙げたとおり、やり直しが利くのでとりあえず賛成していただいても大丈夫だと思います。
今後の流れ(←これに関しても意見があればお寄せください)
# この議論で1週間程で御意見を募集する、議論で大まかに決める。
# 決定した内容で良いかを投票する(投票権は投票用の議論が開始された時点で自動承認されているユーザーまたはウィキメディアプロジェクトに参加してから3ヶ月経過しているユーザーで考えています。)
# 実際に過去ログ化をして1ヶ月ほど経過したら問題が生じていないかを議論する
# [[Wikibooks:過去ログ化のガイドライン]]を正式にガイドライン化する議論をする
--[[利用者:なまえみてい|なまえみてい]] ([[利用者・トーク:なまえみてい|トーク]]) 2026年2月28日 (土) 12:58 (UTC)
:こんにちは、編集お疲れ様です。
:現在の[[Wikibooks:過去ログ化のガイドライン|過去ログ化のガイドライン]]の作成された経緯については、こちらの[[特別:固定リンク/101028#過去ログ作業の公式方針を整備すべき|談話室での議論]]をご参照ください。この議論を経て草案ではありますが、いちおうガイドラインとして現状運用されています。なまえみていさんは、現在のガイドラインとは別方式による過去ログ化のガイドラインをお考えのようですので、まずはご自身の利用者ページ下などになまえみていさん式のガイドライン草案を作成されてみてはいかがでしょうか。現行草案と別方式草案の2案を提示した方が、コミュニティの意見も集まりやすくなるのではないかと思います。また、ここ談話室では議論の呼びかけにとどめ、本格的な議論は[[Wikibooks・トーク:過去ログ化のガイドライン|ガイドライン議論ページ]]でした方がよいかと思います。--[[利用者:Shokupan|Shokupan]] ([[利用者・トーク:Shokupan|トーク]]) 2026年3月15日 (日) 23:44 (UTC)
== Wikimedians of Japan User Group 2026-2 ==
'''全体ニュース'''
* ウィキマニア2026の[[:wikimania:2026:Program|プログラム募集]]が3月1日まで行われています。
* [https://diff.wikimedia.org/2026/02/11/announcing-new-policies-related-to-the-use-of-wikimedia-sites-for-advocacy-purposes/ 一部のグローバルポリシー]が変更されました。
'''ESEAPハブからのおしらせ'''[[File:ESEAP logo horizontal.svg|40px|link=:m:ESEAP_Hub/ja]]
* 3月7日17時30分(JST)から[[:m:Event:ESEAP_Community_Call_56_(7_March_2026)|オンラインミーティング]]が行われます。
* [[:m:ESEAP_Conference_2026/ja|ESEAPカンファレンス2026]]の登録が開始されました。
'''Wikimedians of Japan User Groupからのおしらせ'''[[File:Wikimedians of Japan User Group Logoonly.svg|20px|link=:m:Wikimedians_of_Japan_User_Group]]
* 3月1日に[https://peatix.com/event/4847333/view ウィキペディア25周年記念交流会]を開催します。
'''[[:w:ja:メインページ|日本語版ウィキペディア]]'''[[File:Wikipedia-logo-v2.svg|20px|link=:w:ja:]]
* 今月は以下の記事が[[:w:ja:Wikipedia:良質な記事/良質な記事の選考|良質な記事の選考]]を通過しました。
**[[:w:ja:山田美妙|山田美妙]]
**[[:w:ja:スペクトル分類|スペクトル分類]]
**[[:w:ja:横手市|横手市]]
**[[:w:ja:上杉憲方|上杉憲方]]
**[[:w:ja:パノルムスの戦い|パノルムスの戦い]]
**[[:w:ja:都市伝説解体センター|都市伝説解体センター]]
**[[:w:ja:市川少女歌舞伎|市川少女歌舞伎]]
**[[:w:ja:うお座|うお座]]
**[[:w:ja:南アフリカ文学|南アフリカ文学]]
* 今月の1枚
[[File:JRH_Senmo-Main-Line_H100-44.jpg|alt=|thumb|200x200px|オホーツク海沿岸部を走行する[[:w:ja:JR北海道H100形気動車|H100形気動車]]|none]]
'''3月のイベント情報'''
* 3/8 [https://www.facebook.com/events/731133399814596/ WikiGap in Kanagawa 2026]
* 3/21 [[:w:ja:プロジェクト:アウトリーチ/ウィキペディアタウン#近畿|ウィキペディアタウンin網野町木津~駅まちウィキペディア「夕日ヶ浦木津温泉駅」~]]
'''[[:wmfblog:|Diff]]'''
タイトル / 著者;翻訳者 (掲載日) の順で記載しています。
* [https://diff.wikimedia.org/ja/2026/02/01/%e3%82%a6%e3%82%a3%e3%82%ad%e3%83%9a%e3%83%87%e3%82%a3%e3%82%a225%e5%91%a8%e5%b9%b4%e8%a8%98%e5%bf%b5%e3%83%89%e3%82%ad%e3%83%a5%e3%83%a1%e3%83%b3%e3%82%bf%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%82%b7%e3%83%aa%e3%83%bc/ ウィキペディア25周年記念ドキュメンタリーシリーズ] / Wadakuramon (2026/02/01)
* [https://diff.wikimedia.org/ja/2026/02/12/lod%e3%83%81%e3%83%a3%e3%83%ac%e3%83%b3%e3%82%b82025%e3%81%a7%e6%97%a5%e6%9c%ac%e3%81%ae%e3%80%8c%e6%b5%b7%e3%81%ae%e9%a7%85%e3%80%8d%e3%82%92%e3%82%aa%e3%83%bc%e3%83%97%e3%83%b3%e3%83%87%e3%83%bc/ LODチャレンジ2025で日本の「海の駅」をオープンデータ化 ― 約200件の海のインフラをWikidataに追加] / Ecute (2026/02/12)
* [https://diff.wikimedia.org/ja/2026/02/25/%e9%96%89%e6%a0%a1%e3%81%99%e3%82%8b%e5%b0%8f%e5%ad%a6%e6%a0%a1%e3%81%ae%e8%a8%98%e9%8c%b2%e3%82%92%e3%82%a6%e3%82%a3%e3%82%ad%e3%83%9a%e3%83%87%e3%82%a3%e3%82%a2%e3%81%ab%e6%ae%8b%e3%81%99/ 閉校する小学校の記録をウィキペディアに残す] / VZP10224 (2026/02/25)
* [https://diff.wikimedia.org/ja/2026/02/25/eseap%e3%83%8f%e3%83%96%e3%82%92%e6%8e%a8%e9%80%b2%e3%81%99%e3%82%8b%e4%ba%ba%e3%80%85/ ESEAPハブを推進する人々] / FelianiESEAP Hub ; Wadakuramon (2026/02/25)
'''前回配信:2025年1月31日'''
<hr style="border-top: 2px 破線 #7F9AEB; border-bottom: none;">
配信元: ''[[:m:Wikimedians of Japan User Group|Wikimedians of Japan User Group]]''<br />
<small>[[:m:Talk:Wikimedians of Japan User Group/メールマガジン|フィードバック]]。[[:m:Wikimedians of Japan User Group/メールマガジン/targets list| 登録・削除]]。</small>2026年2月28日 (土) 13:14 (UTC)
<hr style="border-top: 2px 破線 #7F9AEB; border-bottom: none;">
<!-- User:Chqaz-WMJPUG@metawiki が https://meta.wikimedia.org/w/index.php?title=Wikimedians_of_Japan_User_Group/%E3%83%A1%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%9E%E3%82%AC%E3%82%B8%E3%83%B3/targets_list&oldid=30083678 のリストを使用して送信したメッセージ -->
== Wikibooks: (ウイキブックス コロン)が現在何種類あるか教えて下さい。 ==
ウイキブックス コロンの全リストのページを教えて下さい。あいうえお順が望ましいです。リンクだけ。
よろしくお願いします。
>Wikibooks:ウィキブックスへようこそ(参照)
>新規参加者にとって参考になるページ
>ページ名に「Wikibooks:」とつくものは、ウィキブックスのプロジェクトそのものに関するページです。その中でも新規参加者にとって役に立つと思われるページをリストしておきます。
11種類以上だと思います。--[[利用者:Tkkn46tkkn46|Tkkn46tkkn46]] ([[利用者・トーク:Tkkn46tkkn46|トーク]]) 2026年3月13日 (金) 03:54 (UTC)
:{{コメント2|コメント}} [[特別:ページ一覧|こちら]]で「名前空間」をWikibooksに指定し、検索すれば全リストが表示されます。
:なお、談話室は本来、これからのWikibooksについて話し合うものですので、個人的な質問は談話室ではなく[[WB:HD|こちら]]にお願いします。--[[利用者:なまえみてい|なまえみてい]] ([[利用者・トーク:なまえみてい|トーク]]) 2026年4月16日 (木) 04:39 (UTC)
== ノートページの呼び方は、全部で何通りあるか教えて下さい。 ==
①ノートの呼び方の種類の数です。違いです。
②「ノート」は ノートページの意味ですか。
③「議論」は 議論ページと呼びませんか。
よろしくお願いします。
>Help:ノートページ(wikipedia参照)
>^ ノートページはトークページ(talk page)とも呼ばれるが、日本語版の「会話ページ」は、名前空間名がそう翻訳されている「利用者についての」トークページのみを指すことがしばしばある。--[[利用者:Tkkn46tkkn46|Tkkn46tkkn46]] ([[利用者・トーク:Tkkn46tkkn46|トーク]]) 2026年3月13日 (金) 03:56 (UTC)
== <span lang="en" dir="ltr">Upcoming deployment of CampaignEvents extension to Wikibooks</span> ==
<div lang="en" dir="ltr">
<section begin="message"/>
Hello everyone,
We are writing to inform you that the [[mw:Help:Extension:CampaignEvents|CampaignEvents extension]] will be deployed to all Wikibooks projects during the week of '''23 March 2026'''.
This follows last year’s broader rollout across Wikimedia projects. We realized that Wikibooks was not included at the time, and we’re now addressing that to ensure consistency across all communities.
The CampaignEvents extension provides tools to support event and campaign organization on-wiki, including features like on-wiki event registration and collaboration lists(global event list).
We welcome any questions, feedback, or concerns you may have. We are also happy to support anyone interested in trying out the tools.
''Apologies if this message is not in your preferred language. If you’re able to help translate it for your community, please feel free to do so.''
<section end="message"/>
</div>
<bdi lang="en" dir="ltr">[[User:Udehb-WMF|Udehb-WMF]] ([[User talk:Udehb-WMF|トーク]]) 2026年3月19日 (木) 18:22 (UTC)</bdi>
<!-- User:Udehb-WMF@metawiki が https://meta.wikimedia.org/w/index.php?title=User:Udehb-WMF/sandbox/MM_target&oldid=30284073 のリストを使用して送信したメッセージ -->
== Bot Flag Request for [[{{ns:User}}:SchlurcherBot]] ==
Appologies for posting in English. Also, I could not locate a dedicated page for bot request in {{#language:{{CONTENTLANGUAGE}}}} {{SITENAME}}, so I am posting here. Please direct me to the correct page if one exists. Thank you.
* '''Bot name''': [[{{ns:User}}:SchlurcherBot]]
* '''Bot operator''': [[commons:User:Schlurcher]]
* '''Bot task''': Automatically convert links from <code>http://</code> to <code>https://</code> (secure protocol migration)
* '''Technical details''': Please see [[metawiki:User:SchlurcherBot|meta:User:SchlurcherBot]] for full details, including the expected number of affected URLs on {{#language:{{CONTENTLANGUAGE}}}} {{SITENAME}}.
* '''Bot flags on other projects:''': [[metawiki:Steward_requests/Bot_status/2025-12#Global_bot_status_for_User:SchlurcherBot|Global bot status granted]]. Also flagged on [[:w:en:Wikipedia:Bots/Requests for approval/SchlurcherBot|English Wikipedia]], [[:w:de:Wikipedia:Bots/Anträge_auf_Botflag/Archiv/2025#2025-02-14_–_SchlurcherBot|German Wikipedia]], [[:w:fr:Wikipédia:Bot/Statut/Archive_12#(Traité)_SchlurcherBot|French Wikipedia]], [[:w:it:Wikipedia:Bot/Autorizzazioni/Archivio/2025#SchlurcherBot|Italian Wikipedia]], [[:w:pl:Wikipedia:Boty/Zgłoszenia/2025#Wikipedysta:SchlurcherBot|Polish Wikipedia]], [[:w:pt:Wikipédia:Robôs/Pedidos_de_aprovação/Arquivo/2025#SchlurcherBot|Portuguese Wikipedia]], and [[commons:Commons:Bots/Requests/SchlurcherBot2|Commons]]. For a full list, see: [[metawiki:Special:CentralAuth/SchlurcherBot|sulutil:SchlurcherBot]]
* '''Comment''': The bot is globally approved and active on the top 10 Wikipedia projects. As this wiki has opted out of the global bot policy, I am requesting permission to perform these link updates on {{#language:{{CONTENTLANGUAGE}}}} {{SITENAME}} as well. Please let me know if a local bot flag can be granted or if you have any questions. Thank you. --[[利用者:Schlurcher|Schlurcher]] ([[利用者・トーク:Schlurcher|トーク]]) 2026年3月26日 (木) 22:21 (UTC)
::{{RFB|対処}} I have done your request.--[[利用者:Tomzo|Tomzo]] ([[利用者・トーク:Tomzo|トーク]]) 2026年3月26日 (木) 23:13 (UTC)
:::Thanks. --[[利用者:Schlurcher|Schlurcher]] ([[利用者・トーク:Schlurcher|トーク]]) 2026年3月27日 (金) 08:39 (UTC)
== Wikimedians of Japan User Group 2026-3 ==
'''全体ニュース'''
* ウィキメディア財団理事会はすべての言語版のウィキニュースを閉鎖することを承認しました。ウィキニュースは5月4日から読み取り専用になります。
'''ESEAPハブからのおしらせ'''[[File:ESEAP logo horizontal.svg|40px|link=:m:ESEAP_Hub/ja]]
* 4月4日16時(JST)から[[:m:Event:ESEAP_Community_Call_57_(4_April_2026)|オンラインミーティング]]が行われます。
* [[:m:ESEAP_Conference_2026/ja|ESEAPカンファレンス2026]]の登録が開始されました。
'''Wikimedians of Japan User Groupからのおしらせ'''[[File:Wikimedians of Japan User Group Logoonly.svg|20px|link=:m:Wikimedians_of_Japan_User_Group]]
* 4月18日に開催される[https://event.ospn.jp/osc2026-kagawa/ OSC香川]に参加します。
'''[[:w:ja:メインページ|日本語版ウィキペディア]]'''[[File:Wikipedia-logo-v2.svg|20px|link=:w:ja:]]
* 4月17日まで[[:w:ja: Wikipedia:日本・韓国_友好編集月間|日本・韓国 友好編集月間]]が行われています。
* 今月は以下の記事が[[:w:ja:Wikipedia:良質な記事/良質な記事の選考|良質な記事の選考]]を通過しました。
**[[:w:ja:普通自転車の交差点進入禁止|普通自転車の交差点進入禁止]]
**[[:w:ja:京都市の観光|京都市の観光]]
**[[:w:ja:克美茂愛人殺害事件|克美茂愛人殺害事件]]
**[[:w:ja:アフガニスタンの歴史|アフガニスタンの歴史]]
**[[:w:ja:養老山地|養老山地]]
**[[:w:ja:唐津藩|唐津藩]]
**[[:w:ja:京都の歴史|京都の歴史]]
**[[:w:ja:ムウタスィム|ムウタスィム]]
**[[:w:ja:トゥーランガリラ交響曲|トゥーランガリラ交響曲]]
**[[:w:ja:ガリレオ裁判|ガリレオ裁判]]
**[[:w:ja:優しい世界へ|優しい世界へ]]
**[[:w:ja:金属有機構造体|金属有機構造体]]
**[[:w:ja:聖なるタラ|聖なるタラ]]
**[[:w:ja:ギターを弾く女|ギターを弾く女]]
**[[:w:ja:八方尾根のケルン|八方尾根のケルン]]
**[[:w:ja:ひばり号|ひばり号]]
**[[:w:ja:マリモ|マリモ]]
**[[:w:ja:スイスの歴史|スイスの歴史]]
* 今月の1枚
[[File:260110_Kosei-ji_Kyoto_Japan12s3.jpg|alt=|thumb|200x200px|京都市に位置する[[:w:ja:光清寺_(京都市)|光清寺]]の心字庭「心和の庭」 |none]]
'''4月のオフラインイベント情報'''
* 4/19 [https://www.facebook.com/events/1437162964770290 Wikipediaブンガク 吉屋信子 ]
'''前回配信:2025年2月28日'''
<hr style="border-top: 2px 破線 #7F9AEB; border-bottom: none;">
配信元: ''[[:m:Wikimedians of Japan User Group|Wikimedians of Japan User Group]]''<br />
<small>[[:m:Talk:Wikimedians of Japan User Group/メールマガジン|フィードバック]]。[[:m:Wikimedians of Japan User Group/メールマガジン/targets list| 登録・削除]]。</small>2026年3月31日 (火) 11:00 (UTC)
<hr style="border-top: 2px 破線 #7F9AEB; border-bottom: none;">
<!-- User:Chqaz-WMJPUG@metawiki が https://meta.wikimedia.org/w/index.php?title=Wikimedians_of_Japan_User_Group/%E3%83%A1%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%9E%E3%82%AC%E3%82%B8%E3%83%B3/targets_list&oldid=30083678 のリストを使用して送信したメッセージ -->
== Action Required: Update templates/modules for electoral maps (Migrating from P1846 to P14226) ==
Hello everyone,
This is a notice regarding an ongoing data migration on Wikidata that may affect your election-related templates and Lua modules (such as <code>Module:Itemgroup/list</code>).
'''The Change:'''<br />
Currently, many templates pull electoral maps from Wikidata using the property [[:d:Property:P1846|P1846]], combined with the qualifier [[:d:Property:P180|P180]]: [[:d:Q19571328|Q19571328]].
We are migrating this data (across roughly 4,000 items) to a newly created, dedicated property: '''[[:d:Property:P14226|P14226]]'''.
'''What You Need To Do:'''<br />
To ensure your templates and infoboxes do not break or lose their maps, please update your local code to fetch data from [[:d:Property:P14226|P14226]] instead of the old [[:d:Property:P1846|P1846]] + [[:d:Property:P180|P180]] structure. A [[m:Wikidata/Property Migration: P1846 to P14226/List|list of pages]] was generated using Wikimedia Global Search.
'''Deadline:'''<br />
We are temporarily retaining the old data on [[:d:Property:P1846|P1846]] to allow for a smooth transition. However, to complete the data cleanup on Wikidata, the old [[:d:Property:P1846|P1846]] statements will be removed after '''May 1, 2026'''. Please update your modules and templates before this date to prevent any disruption to your wiki's election articles.
Let us know if you have any questions or need assistance with the query logic. Thank you for your help! [[User:ZI Jony|ZI Jony]] using [[利用者:MediaWiki message delivery|MediaWiki message delivery]] ([[利用者・トーク:MediaWiki message delivery|トーク]]) 2026年4月3日 (金) 17:11 (UTC)
<!-- User:ZI Jony@metawiki が https://meta.wikimedia.org/w/index.php?title=Distribution_list/Non-Technical_Village_Pumps_distribution_list&oldid=29941252 のリストを使用して送信したメッセージ -->
== 「Lintエラーが生じる件について」 の対応について教えて下さい。 ==
>...このLintエラーは「優先度 高」になっていて、...
私は、機械的?な話である事を理解しました。(別件コメント:私的?には、ガイドラインの「本ガイドラインの有効性(そもそも論)」の方が「優先度 もっと高?」のような気がしました。別件コメント無視して下さい。)
>...修正する必要があると考えます。... >...対応はおろか、...>...実害がないので...
○○法第1章 : の各行バックスラッシュ 1個を削除するだけではないカモ。
①idが、目次ページの他に、条文ページ(判例を含む)もありました。
②アンカー?第○章、第○条の漢字文字タイトル改正関係なしに、数字の便利さ使用もありカモ
でした。←←←
③新規の目次ページ編集者は大変だろうな。感覚でした。
④[[Wikibooks:ウィキプロジェクト 法学 コンメンタール執筆ガイドライン/目次ページ]]
[[Wikibooks:ウィキプロジェクト 法学 コンメンタール執筆ガイドライン/条文ページ]]
の2種類はどうなりますか。
<nowiki>==<span id="1"/>第1章 総則 (第1条~第5条)==</nowiki>
<nowiki>:</nowiki><nowiki>[[○○法第1条|第1条]]</nowiki>(目的)==
...
⑤間違っている事をガイドラインに載せるのは、望ましくない。
フッターに影響するのは困る。
普通に他と同様に?ガイドラインのダブルスタンダードそのままで、←←←トリプル可???
閲覧操作に違いがなければイイナです。私の理解です。
⑥リンター?の操作は、何がいいですか。wikibooksの標準機能にありますか。手作業?見てからです。
⑦wikipedia他はどのようにしていますか。放ったらかし?
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%89%B9%E5%88%A5:LintErrors/self-closed-tag
自己終了タグ (561 件のエラー)
>...より質の高い教科書作りに...(ガイドライン議論より)
>...「提案に従う義務はありません。」と記載していながら、...(〃)
>...返信もありません(編集活動は続けられています)...(〃)
>...彼(私?)の問いかけは論理的なものではないと考えます。...(利用者・トーク:Tomzo#お願いより)
と言われませんように。--[[利用者:Tkkn46tkkn46|Tkkn46tkkn46]] ([[利用者・トーク:Tkkn46tkkn46|トーク]]) 2026年4月6日 (月) 13:46 (UTC)
== Lint エラーの自己終了タグ (3,295 件のエラー)以外。他のエラー多数について、皆さんは、どのように考えておられますか。 ==
[[Wikibooks・トーク:ウィキプロジェクト 法学 コンメンタール執筆ガイドライン#Lintエラーが生じる件について]] の続き。
談話室にしました。下に続けるのも?です。
①他のエラー多数の扱い。
②リンターは、自動的に編集してくれますか。抽出だけですか。
③リンターに、自作定義オプションを追加できますか。それを編集してくれるとうれしい。
④おすすめのリンターを教えて下さい。AIでもいけそうな気もしました。エラー全部のLLM?
>...彼の問いかけは論理的なものではないと考えます。...(利用者・トーク:Tomzo#お願いより)
と言われませんように。--[[利用者:Tkkn46tkkn46|Tkkn46tkkn46]] ([[利用者・トーク:Tkkn46tkkn46|トーク]]) 2026年4月6日 (月) 13:49 (UTC)
:{{コメント2|コメント}} 私たちの議論をご覧になっての質問ということで、ご回答致します。
:# 他のエラーも同様に修正するのが理想です。ただ、我々の能力的な問題があったり、量があったりでそのままにされているだけです。
:# 質問の意図が汲めなかったのですが、問題の箇所を修正すれば自動的にLintエラーのページからは表示されなくなります。
:# おそらく、我々は大元の設定はいじれないかと思います。
:# おすすめのLintエラーの意味がわかりません。ウィキペディアではBotが良く使われますが、同じエラーでもケースバイケースなのでLintエラーに対してはあまり使われていない印象です。結局、現時点では人間の判断が必要です。
:質問に対する答えになってるでしょうか?--[[利用者:なまえみてい|なまえみてい]] ([[利用者・トーク:なまえみてい|トーク]]) 2026年4月16日 (木) 04:33 (UTC)
== アイコン?テンプレート?を探しています。英語でも。このページ「○○○」は、まだ書きかけです。出来上がるまでマッテ。 ==
他、例えば、
・このページ「○○○」は、まだ書きかけです。出来上がるまで余計な事言うな。
・このページ「○○○」は、まだ書きかけです。出来上がるまでコメントするな。
・このページ「○○○」は、まだ書きかけです。△△△日まで余計な事言うな。過ぎればOK。
・このページ「○○○」は、コメントされても、返信しません。
(参考例) 以下は、ただちにコメントOKの例。
[[トランプ#関連項目]]を転写。
このページ「○○○○」は、まだ書きかけです。加筆・訂正など、協力いただける皆様の編集を心からお待ちしております。また、ご意見などがありましたら、お気軽にトークページへどうぞ。--[[利用者:Tkkn46tkkn46|Tkkn46tkkn46]] ([[利用者・トーク:Tkkn46tkkn46|トーク]]) 2026年4月11日 (土) 12:59 (UTC)
== スタイルマニュアル の ナビゲーションをつける について4点教えて下さい。 ==
[[Wikibooks:スタイルマニュアル#ナビゲーションをつける]]
①>このうち、1(テンプレート:Pathnav)を使用して下さい。
上記があるので、2、3を<nowiki><del></del></nowiki>にして下さい。
②><nowiki>{{[[テンプレート:Pathnav|Pathnav]]|メインページ|親項目|子項目}}</nowiki>
>最上位ページは「メインページ」にすること(英語の使用の回避)
メインページ が必要ですか。1行目のアイコンと同じに見えます。
③できれば、pathnav行を 削除したい。表示の重複。
例
[[トランプ]] <nowiki>{{Pathnav|メインページ|ゲーム|frame=1}}</nowiki>
[[数学]] <nowiki>{{Pathnav|メインページ|frame=1|small=1}}</nowiki>
ゲームの場合、ゲームはイラナイのか。ナントカナルです。
④法文は、次行をどうして使わなかったのですか。フッタを使っているのですか。
<nowiki>top:[[本のタイトル]] / previous:[[前のページ]] - up:[[章タイトル]] - next:[[次のページ]]</nowiki>--[[利用者:Tkkn46tkkn46|Tkkn46tkkn46]] ([[利用者・トーク:Tkkn46tkkn46|トーク]]) 2026年4月14日 (火) 13:30 (UTC)
== カテゴリー内。最新記事の日付を表示できますか。自動更新。ついでに、全記事の最終更新日もです。 ==
記事内に自動更新 日付の事例を探しています。
①(現在)トランプ記事の総数は、...以下の 76 ページを表示しています。
[[カテゴリ:トランプ#カテゴリ: “トランプ”]]
②次行、わかりやすいです。(ちょっと年表示が気になったけど、年表示しないのがステキ。曜日も。新型手動)
[[利用者:AkiR27User#※作成・編集ページ]]※4/15時点
前行、wikibooksが自動的に、表示してほしい。
4/15(水)時点のトランプ記事の総数は、...以下の 76 ページを表示しています。(カテゴリー内)
↑↑↑
??? wikibooksの言い分。そのくらい、人間が投稿履歴を見て、判断できるだろ。情報は提供している。手動。
??? カテゴリー内でマジックワードが使えますか。
(参考) [[w:Help:マジックワード]]--[[利用者:Tkkn46tkkn46|Tkkn46tkkn46]] ([[利用者・トーク:Tkkn46tkkn46|トーク]]) 2026年4月15日 (水) 03:15 (UTC)
== Request for comment (global AI policy) ==
<bdi lang="en" dir="ltr" class="mw-content-ltr">
Apologies for writing in English. {{int:Please-translate}}
A [[:m:Requests for comment/Artificial intelligence policy|request for comment]] is currently being held to decide on a global AI policy. {{int:Feedback-thanks-title}}
[[利用者:MediaWiki message delivery|MediaWiki message delivery]] ([[利用者・トーク:MediaWiki message delivery|トーク]]) 2026年4月26日 (日) 00:57 (UTC)
</bdi>
<!-- User:Codename Noreste@metawiki が https://meta.wikimedia.org/w/index.php?title=Distribution_list/Global_message_delivery&oldid=30424282 のリストを使用して送信したメッセージ -->
== Wikimedians of Japan User Group 2026-4 ==
'''全体ニュース'''
* ユニバーサル行動規範調整委員会委員(U4C)の立候補は5月11日21時(JST)までです。
* 5月18日から6月1日21時までU4C委員の投票が行われます。
* ウィキメディア財団理事会はすべての言語版のウィキニュースを閉鎖することを承認しました。ウィキニュースは5月4日から読み取り専用になります。
'''ESEAPハブからのおしらせ'''[[File:ESEAP logo horizontal.svg|40px|link=:m:ESEAP_Hub/ja]]
* 5月3日15時(JST)から[[:m:Event:ESEAP_Community_Call_58_(3_May_2026)|オンラインミーティング]]が行われます。
* 5月15日から17日まで台湾で[[:m:ESEAP_Conference_2026/ja|ESEAPカンファレンス2026]]が開催されます。
'''Wikimedians of Japan User Groupからのおしらせ'''[[File:Wikimedians of Japan User Group Logoonly.svg|20px|link=:m:Wikimedians_of_Japan_User_Group]]
* 5月23日に開催される[https://event.ospn.jp/osc2026-nagoya/ OSC名古屋]に参加します。
'''[[:w:ja:メインページ|日本語版ウィキペディア]]'''[[File:Wikipedia-logo-v2.svg|20px|link=:w:ja:]]
* 今月は以下の記事が[[:w:ja:Wikipedia:良質な記事/良質な記事の選考|良質な記事の選考]]を通過しました。
**[[:w:ja:オシダ科|オシダ科]]
**[[:w:ja:美濃電気軌道セミボ510形電車|美濃電気軌道セミボ510形電車]]
**[[:w:ja:シャンブル|シャンブル]]
**[[:w:ja:東山地域 (一関市)|東山地域 (一関市)]]
**[[:w:ja:三方領地替え (1817年)|三方領地替え (1817年)]]
**[[:w:ja:フサイン・ブン・ハムダーン|フサイン・ブン・ハムダーン]]
**[[:w:ja:マリアノ・リベラ|マリアノ・リベラ]]
**[[:w:ja:ナポレオンと田虫|ナポレオンと田虫]]
**[[:w:ja:我が心は石にあらず|我が心は石にあらず]]
**[[:w:ja:フランク・フラゼッタ|フランク・フラゼッタ]]
**[[:w:ja:紀藤真琴|紀藤真琴]]
**[[:w:ja:三ヶ島葭子|三ヶ島葭子]]
**[[:w:ja:平野 (大阪市)|平野 (大阪市)]]
**[[:w:ja:丹沢湖|丹沢湖]]
* 今月の1枚
[[File:Matsumoto-castle-2026-HK.jpg|alt=|thumb|200x200px|ライトアップされた[[:w:ja:光清寺_(京都市)|松本城]] |none]]
'''5月のオフラインイベント情報'''
* 5/10 [[:w:ja:プロジェクト:アウトリーチ/ウィキペディアタウン#2026-05-10_ウィキペディアタウン_in_吉野地区|ウィキペディアタウン in 吉野地区]]
* 5/10 [https://countries-romantic.connpass.com/event/389840/ 花博鶴見緑地で学ぶ 地図とWikipediaの編集体験]
'''[[:wmfblog:|Diff]]'''
タイトル / 著者;翻訳者 (掲載日) の順で記載しています。
* [https://diff.wikimedia.org/ja/2026/03/02/%e3%82%a6%e3%82%af%e3%83%a9%e3%82%a4%e3%83%8a%e3%81%ae%e3%82%a6%e3%82%a3%e3%82%ad%e3%83%a1%e3%83%87%e3%82%a3%e3%82%a2%e3%83%b3%e3%81%af%e3%81%93%e3%81%ae%e5%9b%b0%e9%9b%a3%e3%81%aa%e5%86%ac%e3%82%92/ ウクライナのウィキメディアンはこの困難な冬をどう過ごしているか―4人の物語] / Anton Protsiuk ; Wadakuramon (2026/03/02)
* [https://diff.wikimedia.org/ja/2026/03/04/%e6%9d%b1%e4%ba%ac%e3%81%a7%e3%81%ae%e3%82%a6%e3%82%a3%e3%82%ad%e3%83%9a%e3%83%87%e3%82%a3%e3%82%a225%e5%91%a8%e5%b9%b4%e8%a8%98%e5%bf%b5%e4%ba%a4%e6%b5%81%e4%bc%9a%e3%81%af%e5%a4%a7%e7%9b%9b%e6%b3%81/ 東京でのウィキペディア25周年記念交流会は大盛況でした] / Wadakuramon (2026/03/04)
* [https://diff.wikimedia.org/ja/2026/03/10/%e3%82%a6%e3%82%a3%e3%82%ad%e3%83%a1%e3%83%87%e3%82%a3%e3%82%a2%e6%8f%90%e6%90%ba%e5%9b%a3%e4%bd%93%e3%81%ae%e5%b0%86%e6%9d%a5%e5%83%8f%e3%82%92%e6%8f%90%e6%a1%88/ ウィキメディア提携団体の将来像を提案] / Kaarel ; Omotecho (2026/03/10)
* [https://diff.wikimedia.org/ja/2026/03/11/%e3%82%a6%e3%82%a3%e3%82%ad%e7%a5%9d%e3%81%84%ef%bc%9a%e3%83%a1%e3%83%ab%e3%83%b4%e3%82%a1%e3%83%83%e3%83%88%ef%bc%8d%e7%9f%a5%e8%ad%98%e3%80%81%e3%82%b3%e3%83%9f%e3%83%a5%e3%83%8b%e3%83%86%e3%82%a3/ ウィキ祝い:メルヴァット-知識、コミュニティ、信頼を築いた10年] / Jan Beránek (WMF), Natalia Szafran-Kozakowska ; Wadakuramon (2026/03/11)
* [https://diff.wikimedia.org/ja/2026/03/16/%e3%82%a4%e3%83%99%e3%83%b3%e3%83%88%e4%b8%80%e8%a6%a7%e3%81%ae%e7%a7%bb%e5%8b%95%e6%83%85%e5%a0%b1%ef%bc%9adiff%e3%81%ae%e3%82%a4%e3%83%99%e3%83%b3%e3%83%88%e3%82%ab%e3%83%ac%e3%83%b3%e3%83%80/ イベント一覧の移動情報:Diffのイベントカレンダーはメタ・ウィキに移りました] / Chris Koerner ; Wadakuramon (2026/03/16)
* [https://diff.wikimedia.org/ja/2026/03/16/%e8%91%ac%e5%84%80%e3%81%a7%e5%ad%a6%e3%82%93%e3%81%a0%e3%80%81%e3%82%a6%e3%82%a3%e3%82%ad%e3%83%9a%e3%83%87%e3%82%a3%e3%82%a2%e3%81%a8%e3%83%9c%e3%83%aa%e3%83%93%e3%82%a2%e3%81%a8%e6%97%a5%e6%9c%ac/ 葬儀で学んだ、ウィキペディアとボリビアと日本のこと:知識と愛情の物語] / Carlillasa ; Wadakuramon (2026/03/16)
* [https://diff.wikimedia.org/ja/2026/04/02/wikidata%e3%83%af%e3%83%bc%e3%82%af%e3%82%b7%e3%83%a7%e3%83%83%e3%83%9720260327%ef%bc%a0%e7%ad%91%e6%b3%a2%e5%a4%a7%e5%ad%a6%e6%9d%b1%e4%ba%ac%e3%82%ad%e3%83%a3%e3%83%b3%e3%83%91%e3%82%b9/ Wikidataワークショップ20260327@筑波大学東京キャンパス] / Eugene Ormandy (2026/04/02)
* [https://diff.wikimedia.org/ja/2026/04/04/%e4%ba%ba%e5%b7%a5%e7%9f%a5%e8%83%bd%e5%ad%a6%e4%bc%9a%e7%ac%ac68%e5%9b%9eswo%e7%a0%94%e7%a9%b6%e4%bc%9a%e3%81%ab%e7%99%bb%e5%a0%b4%e3%81%97%e3%81%9fwikimedia%e3%81%ae%e8%a9%b1/ 人工知能学会第68回SWO研究会に登場したWikimediaの話] / Eugene Ormandy (2026/04/04)
* [https://diff.wikimedia.org/ja/2026/04/06/jacet%e8%8b%b1%e8%aa%9e%e8%be%9e%e6%9b%b8%e7%a0%94%e7%a9%b6%e4%bc%9a2025%e5%b9%b4%e5%ba%a6%e7%ac%ac2%e5%9b%9e%e4%be%8b%e4%bc%9a%e3%81%a7wikipedia%e3%81%ae%e7%99%ba%e8%a1%a8%e3%82%92%e5%ae%9f%e6%96%bd/ JACET英語辞書研究会2025年度第2回例会でWikipediaの発表を実施] / Eugene Ormandy (2026/04/06)
* [https://diff.wikimedia.org/ja/2026/04/07/%e6%8f%90%e6%90%ba%e5%9b%a3%e4%bd%93%e8%aa%8d%e5%ae%9a%e3%81%ae%e4%b8%80%e6%99%82%e5%81%9c%e6%ad%a2%e6%9c%9f%e9%96%93%e3%81%8c2026%e5%b9%b49%e6%9c%88%e3%81%be%e3%81%a7%e5%bb%b6%e9%95%b7%e3%81%95/ 提携団体認定の一時停止期間が2026年9月まで延長されました] / CAlmog-WMF ; YShibata (2026/04/07)
* [https://diff.wikimedia.org/ja/2026/04/07/%e3%82%a6%e3%82%af%e3%83%a9%e3%82%a4%e3%83%8a%e3%81%ae%e6%96%87%e5%8c%96%e3%82%92%e4%b8%96%e7%95%8c%e3%81%b8%e4%bc%9d%e3%81%88%e3%81%be%e3%81%97%e3%82%87%e3%81%86%ef%bc%9a%e7%ac%ac6%e5%9b%9e%e3%82%a6/ ウクライナの文化を世界へ伝えましょう:第6回ウクライナの文化外交月間がウィキペディアで始まりました!] / OlesiaLukaniuk WMUA ; Wadakuramon (2026/04/07)
* [https://diff.wikimedia.org/ja/2026/04/13/%e5%b0%91%e6%95%b0%e8%80%85%e3%81%ae%e3%81%9f%e3%82%81%e3%81%ae%e3%82%a6%e3%82%a3%e3%82%ad%e3%81%af%e7%ac%ac1%e5%9b%9e%e3%80%8c%e3%82%a2%e3%83%95%e3%83%aa%e3%82%ab%e3%81%ae%e5%b0%91%e6%95%b0%e8%80%85/ 少数者のためのウィキは第1回「アフリカの少数者キャンペーン」を2026年4月に開催します] / Fulani215 ; Wadakuramon (2026/04/13)
* [https://diff.wikimedia.org/ja/2026/04/17/%e7%a7%81%e3%81%9f%e3%81%a1%e3%81%8c%e3%83%9c%e3%83%aa%e3%83%93%e3%82%a2%e3%81%a7%e5%8f%96%e3%82%8a%e7%b5%84%e3%82%93%e3%81%a7%e3%81%84%e3%82%8b%e7%b9%94%e7%89%a9%e3%81%a8%e8%a1%a3%e6%96%99/ 私たちがボリビアで取り組んでいる織物と衣料] / NairaWM BO ; Wadakuramon (2026/04/17)
* [https://diff.wikimedia.org/ja/2026/04/23/%e6%97%a5%e9%9f%93%e3%82%a8%e3%83%87%e3%82%a3%e3%82%bf%e3%82%bd%e3%83%b32026%e3%81%a7%e6%9b%b8%e3%81%84%e3%81%9f3%e6%9c%ac%e3%81%ae%e8%a8%98%e4%ba%8b/ 日韓エディタソン2026で書いた3本の記事] / Wadakuramon (2026/04/23)
* [https://diff.wikimedia.org/ja/2026/04/24/%e3%82%a6%e3%82%a3%e3%82%ad%e3%83%9a%e3%83%87%e3%82%a3%e3%82%a2%e3%82%92%e3%81%8a%e7%a5%9d%e3%81%84%e3%81%99%e3%82%8b%e3%81%ae%e3%81%af%e3%80%81%e7%a7%81%e3%81%9f%e3%81%a1%e3%81%ae%e3%82%b3%e3%83%9f/ ウィキペディアをお祝いするのは、私たちのコミュニティを祝うことでもあります] / N1ny4 t ; Wadakuramon (2026/04/24)
* [https://diff.wikimedia.org/ja/2026/04/28/%e3%82%a6%e3%82%a3%e3%82%ad%e3%83%a1%e3%83%87%e3%82%a3%e3%82%a2%e8%b2%a1%e5%9b%a3%e5%b9%b4%e6%ac%a1%e8%a8%88%e7%94%bb-2026-2027%e3%81%ae%e3%81%94%e7%b4%b9%e4%bb%8b/ ウィキメディア財団年次計画/2026-2027のご紹介] / Wikimedia Foundation ; Omotecho (2026/04/28)
'''前回配信:2025年3月31日'''
<hr style="border-top: 2px 破線 #7F9AEB; border-bottom: none;">
配信元: ''[[:m:Wikimedians of Japan User Group|Wikimedians of Japan User Group]]''<br />
<small>[[:m:Talk:Wikimedians of Japan User Group/メールマガジン|フィードバック]]。[[:m:Wikimedians of Japan User Group/メールマガジン/targets list| 登録・削除]]。</small>2026年4月30日 (木) 11:03 (UTC)
<hr style="border-top: 2px 破線 #7F9AEB; border-bottom: none;">
<!-- User:Chqaz-WMJPUG@metawiki が https://meta.wikimedia.org/w/index.php?title=Wikimedians_of_Japan_User_Group/%E3%83%A1%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%9E%E3%82%AC%E3%82%B8%E3%83%B3/targets_list&oldid=30361722 のリストを使用して送信したメッセージ -->
== 【要望】テンプレートについて教えて下さい。テンプレート:Pathnavのような、Wikinavがありますか。 ==
:<nowiki>{{Wikinav|交換法則}}</nowiki> 左記のカンジです。wikipediaへリンクです。文字w:を非表示。2step?
:新規作成の、wikipediaへのリダイレクトページが不要の気がしました。
:(使用例)
:[[初等数学公式集/解析幾何/コラム#外積の計算]]
:[[交換法則]]
:<nowiki>#redirect[[w:交換法則]]</nowiki>
--[[利用者:Tkkn46tkkn46|Tkkn46tkkn46]] ([[利用者・トーク:Tkkn46tkkn46|トーク]]) 2026年5月27日 (水) 10:50 (UTC)
== <span lang="en" dir="ltr">Vote now in the 2026 U4C election</span> ==
<div lang="en" dir="ltr">
<section begin="announcement-content" />
Eligible voters are asked to participate in the 2026 [[m:Special:MyLanguage/Universal_Code_of_Conduct/Coordinating_Committee|Universal Code of Conduct Coordinating Committee]] election. More information–including an eligibility check, voting process information, candidate information, and a link to the vote–are available on Meta at the [[m:Special:MyLanguage/Universal_Code_of_Conduct/Coordinating_Committee/Election/2026|2026 Election information page]]. The vote closes on 2 June 2026 at [https://zonestamp.toolforge.org/1780358400 00:00 UTC].
Please vote if your account is eligible. Results will be available by 14 June 2026. -- In cooperation with the U4C,<section end="announcement-content" />
</div>
[[m:User:Keegan (WMF)|Keegan (WMF)]] ([[m:User talk:Keegan (WMF)|talk]]) 2026年5月27日 (水) 17:14 (UTC)
<!-- User:Keegan (WMF)@metawiki が https://meta.wikimedia.org/w/index.php?title=Distribution_list/Global_message_delivery&oldid=30513860 のリストを使用して送信したメッセージ -->
== ESEAP Strategy Summit 2027開催決定のお知らせ ==
先日開催された、[[meta:ESEAP Conference 2026|ESEAP Conference 2026]]にて、来年2027年5月にESEAP Strategy Summit 2027を大阪で開催することが発表されました。詳細はこれからの検討事項となりますが、決定次第[[meta:ESEAP Strategy Summit 2027|ESEAP Strategy Summit 2027]]のページにて公開されるほか、適宜こちらのお知らせにて随時投稿させていただきますので、興味のある方、当日お手伝いなどいただける方はMeta-WikiのESEAP Strategy Summit 2027のページをご確認いただくか、[[meta:Wikimedians of Japan User Group|Wikimedians of Japan User Group]]にメンバーとして参加いただくことをご検討ください。--[[利用者:VZP10224(WjpUG)|VZP10224(WjpUG)]] ([[利用者・トーク:VZP10224(WjpUG)|トーク]]) 2026年5月28日 (木) 11:27 (UTC)
== Wikimedians of Japan User Group 2026-5 ==
'''ESEAPハブからのおしらせ'''[[File:ESEAP logo horizontal.svg|40px|link=:m:ESEAP_Hub/ja]]
* 6月6日15時(JST)から[[:m:Event:ESEAP_Community_Call_59_(6_June_2026)|オンラインミーティング]]が行われます。
'''Wikimedians of Japan User Groupからのおしらせ'''[[File:Wikimedians of Japan User Group Logoonly.svg|20px|link=:m:Wikimedians_of_Japan_User_Group]]
* 6月1日から31日まで[[:w:ja:Event:日本ボリビア友好2026|日本ボリビア友好オンラインエディタソン]]を開催します。
* 6月27日に開催される[https://event.ospn.jp/osc2026-do/ OSC北海道]に参加します。
* [[:m:Grants:Programs/Wikimedia_Community_Fund/General_Support_Fund/Wikimedians_of_Japan_User_Group_2026-27_Annual_Plan|助成金申請]]が承認されました。
'''[[:w:ja:メインページ|日本語版ウィキペディア]]'''[[File:Wikipedia-logo-v2.svg|20px|link=:w:ja:]]
* 今月は以下の記事が[[:w:ja:Wikipedia:良質な記事/良質な記事の選考|良質な記事の選考]]を通過しました。
**[[:w:ja:オシダ科|オシダ科]]
**[[:w:ja:美濃電気軌道セミボ510形電車|美濃電気軌道セミボ510形電車]]
**[[:w:ja:シャンブル|シャンブル]]
**[[:w:ja:東山地域 (一関市)|東山地域 (一関市)]]
**[[:w:ja:三方領地替え (1817年)|三方領地替え (1817年)]]
**[[:w:ja:フサイン・ブン・ハムダーン|フサイン・ブン・ハムダーン]]
**[[:w:ja:マリアノ・リベラ|マリアノ・リベラ]]
**[[:w:ja:ナポレオンと田虫|ナポレオンと田虫]]
**[[:w:ja:我が心は石にあらず|我が心は石にあらず]]
**[[:w:ja:フランク・フラゼッタ|フランク・フラゼッタ]]
**[[:w:ja:紀藤真琴|紀藤真琴]]
**[[:w:ja:三ヶ島葭子|三ヶ島葭子]]
**[[:w:ja:平野 (大阪市)|平野 (大阪市)]]
**[[:w:ja:丹沢湖|丹沢湖]]
* 今月の1枚
[[File:旧岩淵水門.jpg|alt=|thumb|200x200px|東京都北区の[[:w:ja:旧岩淵水門|岩淵水門]]|none]]
'''6月のオフラインイベント情報'''
* 6/6 [https://edit-tango.webnode.jp/l/edittango/ ウィキペディアタウン in 天女の里]
* 6/7 [https://edit-tango.webnode.jp/l/edittango/ ウィキペディア見本市 in 第4回みすずフェスタ]
* 6/27 [[:w:ja:プロジェクト:アウトリーチ/ウィキペディアタウン#2026-06-27_ウィキペディアタウン_in_丹後町2026|ウィキペディアタウン in 丹後町]]
'''[[:wmfblog:|Diff]]'''
タイトル / 著者;翻訳者 (掲載日) の順で記載しています。
* [https://diff.wikimedia.org/ja/2026/04/23/%e8%87%aa%e5%88%86%e3%81%ae%e3%80%8c%e6%b4%bb%e5%8b%95%e6%ad%b4%e3%80%8d%e3%82%92%e6%9b%b8%e3%81%84%e3%81%a6%e3%81%bf%e3%82%8b/ 自分の「活動歴」を書いてみる] / Lin Xiangru (2026/04/23)
* [https://diff.wikimedia.org/ja/2026/05/03/wikipedia%e8%a8%98%e4%ba%8b%e3%80%8e%e5%b8%82%e5%b7%9d%e5%b0%91%e5%a5%b3%e6%ad%8c%e8%88%9e%e4%bc%8e%e3%80%8f%e3%81%ae%e5%9f%b7%e7%ad%86%e3%81%ab%e3%81%a4%e3%81%84%e3%81%a6/ Wikipedia記事『市川少女歌舞伎』の執筆について] / のりまき (2026/05/03)
* [https://diff.wikimedia.org/ja/2026/05/07/%e6%a8%aa%e6%b5%9c%e4%b8%ad%e8%8f%af%e8%a1%97%e3%81%ae%e6%ad%b4%e5%8f%b2%ef%bc%9a%e4%b8%ad%e5%9b%bd%e6%96%99%e7%90%86%e3%81%ae%e3%83%86%e3%83%bc%e3%83%9e%e3%83%91%e3%83%bc%e3%82%af%e3%81%a8%e6%97%a5/?fbclid=IwY2xjawRsaTJleHRuA2FlbQIxMQBzcnRjBmFwcF9pZBAyMjIwMzkxNzg4MjAwODkyAAEeHzJBybslx3HqplC-5NsUD8hbdsj5sJDGda98CnGXQw5SL9tMrDGlXokf1dg_aem_sgRY_7nG6qRvDemytzjpFQ 横浜中華街の歴史:中国料理のテーマパークと日中/日台関係の鏡として] / のりまき (2026/05/07)
* [https://diff.wikimedia.org/ja/2026/05/19/%e3%83%90%e3%83%bc%e3%83%8a%e3%83%87%e3%83%83%e3%83%88ceo%e3%81%a8%e6%97%a5%e6%9c%ac%e3%81%ae%e3%82%b3%e3%83%9f%e3%83%a5%e3%83%8b%e3%83%86%e3%82%a3%e3%81%ae%e5%87%ba%e4%bc%9a%e3%81%84/ バーナデットCEOと日本のコミュニティの出会い] / Wadakuramon (2026/05/19)
* [https://diff.wikimedia.org/ja/2026/05/22/%e6%97%a5%e9%9f%93%e3%82%a8%e3%83%87%e3%82%a3%e3%82%bf%e3%82%bd%e3%83%b32026-%e3%82%92%e9%96%8b%e5%82%ac%e3%81%97%e3%81%be%e3%81%97%e3%81%9f/ 日韓エディタソン2026 を開催しました] / Lin Xiangru (2026/05/22)
* [https://diff.wikimedia.org/ja/2026/05/22/%e6%97%a5%e6%9c%ac%e3%81%a8%e3%83%9c%e3%83%aa%e3%83%93%e3%82%a2%e3%81%ae%e5%8f%8b%e5%a5%bd%e3%82%a8%e3%83%87%e3%82%a3%e3%82%bf%e3%82%bd%e3%83%b3%e3%82%926%e6%9c%88%e3%81%ab%e9%96%8b%e5%82%ac%e3%81%97/ 日本とボリビアの友好エディタソンを6月に開催します!] / Wadakuramon (2026/05/22)
* [https://diff.wikimedia.org/ja/2026/05/27/%e6%b5%b7%e5%a4%96%e3%81%ae%e3%82%a6%e3%82%a3%e3%82%ad%e3%83%a1%e3%83%87%e3%82%a3%e3%82%a2%e3%83%b3%e3%81%a8%e4%bb%b2%e8%89%af%e3%81%8f%e3%81%aa%e3%82%8b%e6%96%b9%e6%b3%95/ 海外のウィキメディアンと仲良くなる方法] / Ga2by (2026/05/27)
* [https://diff.wikimedia.org/ja/2026/05/28/2027%e5%b9%b4%e3%81%aeeseap-strategy-summit%e3%82%92%e6%97%a5%e6%9c%ac%e3%81%a7%e9%96%8b%e5%82%ac/ 2027年のESEAP Strategy Summitを日本で開催] / VZP10224 (2026/05/28)
* [https://diff.wikimedia.org/ja/2026/05/28/eseap2026%e3%81%a7%e7%99%ba%e8%a1%a8%e3%81%97%e3%81%9f%e6%a8%aa%e6%b5%9c%e3%82%a8%e3%83%87%e3%82%a3%e3%82%bf%e3%82%bd%e3%83%b3%e3%81%a8%e3%80%81%e3%83%94%e3%82%bf%e3%83%90%e3%83%b3%e3%82%ac%e3%83%b3/ ESEAP2026で発表した横浜エディタソンと、ピタバンガン高雄] / Wadakuramon (2026/05/28)
* [https://diff.wikimedia.org/ja/2026/05/30/wm%e8%b2%a1%e5%9b%a3%e3%83%90%e3%83%bc%e3%83%8a%e3%83%87%e3%83%83%e3%83%88ceo%e3%81%8c%e6%97%a5%e6%9c%ac%e3%81%ae%e3%83%a1%e3%83%87%e3%82%a3%e3%82%a2%e3%81%ab%e7%99%bb%e5%a0%b4/ WM財団バーナデットCEOが日本のメディアに登場] / Wadakuramon (2026/05/30)
'''前回配信:2026年4月30日'''
<hr style="border-top: 2px 破線 #7F9AEB; border-bottom: none;">
配信元: ''[[:m:Wikimedians of Japan User Group|Wikimedians of Japan User Group]]''<br />
<small>[[:m:Talk:Wikimedians of Japan User Group/メールマガジン|フィードバック]]。[[:m:Wikimedians of Japan User Group/メールマガジン/targets list| 登録・削除]]。</small>2026年5月31日 (日) 14:11 (UTC)
<hr style="border-top: 2px 破線 #7F9AEB; border-bottom: none;">
<!-- User:Chqaz-WMJPUG@metawiki が https://meta.wikimedia.org/w/index.php?title=Wikimedians_of_Japan_User_Group/%E3%83%A1%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%9E%E3%82%AC%E3%82%B8%E3%83%B3/targets_list&oldid=30576890 のリストを使用して送信したメッセージ -->
== RFC about AI-generated content in Wikimedia Commons ==
<bdi lang="en" dir="ltr">Apologies for writing in English, please help translate this message to your language. You are invited to participate in a [[c:Commons:Requests for comment/Policy update for AI content|request for comment on Wikimedia Commons about a policy update for AI content]]. This may affect files that are uploaded to Wikimedia Commons for use on this project. Thank you. [[m:User:Codename Noreste|Codename Noreste]] ([[m:User talk:Codename Noreste|トーク]])</bdi> 2026年6月23日 (火) 17:11 (UTC)
<!-- User:Codename Noreste@metawiki が https://meta.wikimedia.org/w/index.php?title=Distribution_list/Global_message_delivery&oldid=30513860 のリストを使用して送信したメッセージ -->
== <span lang="en" dir="ltr">Deployment of Legal and Safety Contacts Link in the Footer of Your Wiki</span> ==
<div lang="en" dir="ltr">
<section begin="Message"/>
'''Legal & Safety Contacts'''
Hello community, the Wikimedia Foundation has provided a [[wmf:Special:MyLanguage/Legal:Wikimedia Foundation Legal and Safety Contact Information|single legal and safety contact page]], to be linked in the footer of your wiki, to ensure access to accurate legal information. This is a regulatory requirement. We have already rolled out links to English, German, Italian, Spanish and other wikis and we will deploy to your wiki soon. [[m:Special:MyLanguage/Wikimedia_Foundation_Legal_and_Safety_Contacts_FAQ|Please read more on the project page]] and leave any comments in this thread or on the [[m:Special:MyLanguage/Talk:Wikimedia Foundation Legal and Safety Contacts FAQ|talk page]].
<section end="Message"/>
</div>
-- [[User:Sannita (WMF)|User:Sannita (WMF)]] ([[User talk:Sannita (WMF)|talk]]) 2026年6月25日 (木) 13:30 (UTC)
<!-- User:Sannita (WMF)@metawiki が https://meta.wikimedia.org/w/index.php?title=User:Sannita_(WMF)/Mass_sending_test&oldid=30731267 のリストを使用して送信したメッセージ -->
== Wikimedians of Japan User Group 2026-6 ==
'''全体ニュース'''
* 7月21日から25日までパリで[[:wikimania:2026:Wikimania/ja|ウィキマニア]]が行われます。
'''ESEAPハブからのおしらせ'''[[File:ESEAP logo horizontal.svg|40px|link=:m:ESEAP_Hub/ja]]
* 7月5日15時(JST)からオンラインミーティングが行われます。
'''Wikimedians of Japan User Groupからのおしらせ'''[[File:Wikimedians of Japan User Group Logoonly.svg|20px|link=:m:Wikimedians_of_Japan_User_Group]]
* 法人化の準備を進めています。
* [[:w:ja:Event:日本ボリビア友好2026|日本ボリビア友好オンラインエディタソン]]を開催しました。
*[https://event.ospn.jp/osc2026-do/ OSC北海道]に参加しました。
'''[[:w:ja:メインページ|日本語版ウィキペディア]]'''[[File:Wikipedia-logo-v2.svg|20px|link=:w:ja:]]
* 今月は以下の記事が[[:w:ja:Wikipedia:良質な記事/良質な記事の選考|良質な記事の選考]]を通過しました。
**[[:w:ja:宮城県における平成の大合併|宮城県における平成の大合併]]
**[[:w:ja:文化財の保存と修復|文化財の保存と修復]]
**[[:w:ja:障害学|障害学]]
**[[:w:ja:エドワード・グレイ|エドワード・グレイ]]
**[[:w:ja:トカラ列島の本土復帰|トカラ列島の本土復帰]]
**[[:w:ja:お狂言師|お狂言師]]
**[[:w:ja:ぬい活|ぬい活]]
**[[:w:ja:夜の踊り子|夜の踊り子]]
**[[:w:ja:P-47II MD|P-47II MD]]
**[[:w:ja:ウルフキテル|ウルフキテル]]
**[[:w:ja:雅楽|雅楽]]
**[[:w:ja:上久世荘|上久世荘]]
**[[:w:ja:タイガとココア|タイガとココア]]
**[[:w:ja:くじら座タウ星|くじら座タウ星]]
**[[:w:ja:尼子山トンネル火災事故|尼子山トンネル火災事故]]
* 今月の1枚
[[File:Cherry_tree_and_Mount_Iwate_in_spring_2026.jpg|alt=|thumb|200x200px|[[:w:ja:小岩井農場|小岩井農場]]と[[:w:ja:岩手山|岩手山]]|none]]
'''7月のオフラインイベント情報'''
* 7/11 [https://www.city.yaizu.lg.jp/event/info-00563.html 焼津市ウィキペディアタウン~八雲と歩く焼津Wiki旅~]
* 7/19 [https://edit-tango.webnode.jp/イベント/ ウィキペディアにゃウンvol.9 part.1 峰山城下町]
* 7/29 [https://kumanichi.com/event/1993906 図書館×Wikipedia 地域発信ワークショップ]
'''[[:wmfblog:|Diff]]'''
タイトル / 著者;翻訳者 (掲載日) の順で記載しています。
* [https://diff.wikimedia.org/ja/2026/06/15/%e6%97%a5%e6%9c%ac%e3%81%ae%e5%ad%a6%e7%94%9f%e3%82%a6%e3%82%a3%e3%82%ad%e3%83%9a%e3%83%87%e3%82%a3%e3%82%a2%e3%83%b3%e3%82%b5%e3%83%bc%e3%82%af%e3%83%ab%e3%81%8c%e5%90%8c%e4%ba%ba%e8%aa%8c%e3%82%92/ 日本の学生ウィキペディアンサークルが同人誌を刊行] / Wadakuramon (2026/06/15)
'''前回配信:2026年5月31日'''
<hr style="border-top: 2px 破線 #7F9AEB; border-bottom: none;">
配信元: ''[[:m:Wikimedians of Japan User Group|Wikimedians of Japan User Group]]''<br />
<small>[[:m:Talk:Wikimedians of Japan User Group/メールマガジン|フィードバック]]。[[:m:Wikimedians of Japan User Group/メールマガジン/targets list| 登録・削除]]。</small>2026年6月30日 (火) 13:44 (UTC)
<hr style="border-top: 2px 破線 #7F9AEB; border-bottom: none;">
<!-- User:Chqaz-WMJPUG@metawiki が https://meta.wikimedia.org/w/index.php?title=Wikimedians_of_Japan_User_Group/%E3%83%A1%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%9E%E3%82%AC%E3%82%B8%E3%83%B3/targets_list&oldid=30576890 のリストを使用して送信したメッセージ -->
== {{NDC|021}} が 日本十進分類法/000 と表示されます。一致する方法を教えて下さい。 ==
:[[ウィキペディアの書き方#他言語版ウィキペディアの書き方]]
:(参考)
:[[Wikibooks:日本十進分類法#021.4 編集 編纂]]
--[[利用者:Tkkn46tkkn46|Tkkn46tkkn46]] ([[利用者・トーク:Tkkn46tkkn46|トーク]]) 2026年7月1日 (水) 12:51 (UTC)
:: ご質問の場合は、[[:カテゴリ:日本十進分類法/021]]を作成すれば、一致させることができます。ただ、個人的には、そのカテゴリに入るべきページがきわめて少ないのであれば、そのカテゴリは細分化されすぎであり、作成は時期尚早と考えます。 --[[利用者:Kyube|kyube]] ([[利用者・トーク:Kyube|トーク]]) 2026年7月1日 (水) 14:45 (UTC)
== 最近の更新で (感謝) を押してみた。記事に変化はありません。 ==
[[ウィキペディアの書き方]] に説明はありませんでした。--[[利用者:Tkkn46tkkn46|Tkkn46tkkn46]] ([[利用者・トーク:Tkkn46tkkn46|トーク]]) 2026年7月1日 (水) 21:06 (UTC)
: 日本語版wikibooksでは説明がないですね。[[w:Wikipedia:通知/感謝]]をお読みください。この機能は利用者に感謝を伝えるものですから、記事やページに変化を生じさせるものではありません。
: これに限らず日本語版wikibooksに説明がないものはまず日本語版wikipediaにないか探したほうが良いです。 --[[利用者:Kyube|kyube]] ([[利用者・トーク:Kyube|トーク]]) 2026年7月2日 (木) 17:03 (UTC)
== 孤立しているページについて ==
[[特別:孤立しているページ|孤立しているページの一覧]]に、[[C++/キャスト]]や[[C++/クイックツアー]]が表示されていました。しかし、[[C++#下位階層のページ]]を確認すると、これらのページへのリンクが存在しています。
ただし、このリンクは 直接記述されたものではなく、「特別:前方一致ページ一覧/{PAGENAME}/|hideredirects=yes|stripprefix=yes」というテンプレートによって自動的にリンクされたものです。
この場合、孤立ページの判定では「直接リンク」が必要なため、テンプレートによる自動リンクでは孤立ページの解消として扱われないようです。
このままだと、「孤立ページに載っているのに、リンクされているように見える」という誤解を招く可能性があります。
そこで、誤解を防ぐために、直接リンクとして[[C++/キャスト]]や[[C++/クイックツアー]]を記述する編集を行いたいと考えています。
あくまで、ほかの利用者の混乱を避けるための対応であり、荒らし目的ではありません。ご理解とご協力をお願いいたします。--[[利用者:AkiR27User|AkiR27User]] ([[利用者・トーク:AkiR27User|トーク]]) 2026年7月8日 (水) 08:30 (UTC)
== 最近の更新は1ページだけですか。もっと見たい。 ==
いい方法のurlを教えて下さい。--[[利用者:Tkkn46tkkn46|Tkkn46tkkn46]] ([[利用者・トーク:Tkkn46tkkn46|トーク]]) 2026年7月13日 (月) 21:41 (UTC)
== Request for comment (the future of Abstract Wikipedia) ==
<bdi lang="en" dir="ltr" class="mw-content-ltr">
Apologies if this has not yet been translated into your wiki's language. {{int:Please-translate}}
You are invited to voice your opinions in a [[:m:Requests for comment/The future of Abstract Wikipedia|request for comment about the future of Abstract Wikipedia]]. {{Int:Feedback-thanks-title}}
[[:m:User:Kowal2701|Kowal2701]] ([[:m:User talk:Kowal2701|talk]]) 2026年7月24日 (金) 12:24 (UTC)
</bdi>
<!-- User:DreamRimmer@metawiki が https://meta.wikimedia.org/w/index.php?title=Distribution_list/Global_message_delivery&oldid=30513860 のリストを使用して送信したメッセージ -->
== ウィキバーシティからの大規模な内容の移行、統合について ==
WikiversityはWikibooksの姉妹プロジェクト(Wikibooksより派生した)であり、主に学習活動の支援や学習教材の作成を目的とし、また各種の二次的研究および独自研究も視野に入れる活動群、プラットフォームです。ただし、ここで公開する教材は主として補助教材であり、教科書的内容は守備範囲ではありません(Wikibooksの領域です)。
本来はそういうものとして計画されているはずなのですが、現在はWikibooksと大差のない教科書的内容のページがほとんどを占めています。現在Wikiversityではプロジェクトのこれからのあり方に関する議論がなされており、参加者間でも今後に関しての具体的な計画やビジョンが共有されている訳ではないのですが、教科書的内容(現在ある記事の大部分)はWikibooksに移行・統合すべきという意見自体は概ね一致しています。
Wikiversityは初期から今まで過疎が続いており、記事の量も質もここにはかなり劣りますが、それでもWikibooksにはない記事や章構成を持った分野はあり、多少なりと有益な部分もあると思います。--[[利用者:BrassSnail|BrassSnail]] ([[利用者・トーク:BrassSnail|トーク]]) 2026年7月24日 (金) 14:52 (UTC)
== Wikimedians of Japan User Group 2026-7 ==
'''全体ニュース'''
* [[:w:ja:ウィキメディアン・オブ・ザ・イヤー|Wikimedian of the Year]]名誉賞を梅本聖さん(User:Hijiri)が受賞されました。
* [[:m:Updating_the_ecosystem_of_Wikimedia_organizations/Recognition_and_Funding_for_Movement_Organizations|ウィキメディア運動組織の認定・資金提供のあり方を見直す提案]]について意見募集が行われています。
* [[:m:Global_Resource_Distribution_Committee/Grantmaking_Strategy_2026|2026年の助成金戦略に関する提案]]について意見募集が行われています。
'''Wikimedians of Japan User Groupからのおしらせ'''[[File:Wikimedians of Japan User Group Logoonly.svg|20px|link=:m:Wikimedians_of_Japan_User_Group]]
* 8月1日に開催される[https://event.ospn.jp/osc2026-kyoto/ OSC京都]に参加します。
* 8月8日、9日に開催される[https://coscup.org/2026/en/ coscup]に参加します。
* 8月22日にウィキデータ勉強会#2を開催します。
* 法人化に関する[[:m:Wikimedians of Japan User Group/法人設立|ページ]]を作成しました。
'''[[:w:ja:メインページ|日本語版ウィキペディア]]'''[[File:Wikipedia-logo-v2.svg|20px|link=:w:ja:]]
* 今月は以下の記事が[[:w:ja:Wikipedia:良質な記事/良質な記事の選考|良質な記事の選考]]を通過しました。
**[[:w:ja:1960年桑絹村長選挙|1960年桑絹村長選挙]]
**[[:w:ja:豚肉食のタブー|豚肉食のタブー]]
**[[:w:ja:松岡寺|松岡寺]]
**[[:w:ja:易 (占い)|易 (占い)]]
**[[:w:ja:象と鯨図屏風|象と鯨図屏風]]
* 今月の1枚
[[File:Cherry_blossoms_along_the_moat_of_Hirosaki_Castle_at_night_20260420h.jpg|alt=|thumb|200x200px|[[:w:ja:弘前城|弘前城]]の夜桜|none]]
'''8月のオフラインイベント情報'''
* 8/5,19 [[:w:ja:プロジェクト:アウトリーチ/ウィキペディアタウン#2026-08-05・2026-08-19_地域の記録をみんなの手で残して発信しよう_in_松戸|地域の記録をみんなの手で残して発信しよう in 松戸]]
'''[[:wmfblog:|Diff]]'''
タイトル / 著者;翻訳者 (掲載日) の順で記載しています。
* [https://diff.wikimedia.org/ja/2026/07/07/%e4%ba%ac%e5%a4%a7%e3%80%8c%e3%83%a1%e3%83%87%e3%82%a3%e3%82%a2%e6%96%87%e5%8c%96%e5%ad%a6%e3%80%8d%e8%ac%9b%e7%be%a9%e3%82%92%e8%81%b4%e8%ac%9b/ 京大「メディア文化学」講義を聴講] / Lin Xiangru (260707)
* [https://diff.wikimedia.org/ja/2026/07/07/%e6%97%a5%e6%9c%ac%e3%83%9c%e3%83%aa%e3%83%93%e3%82%a2%e5%8f%8b%e5%a5%bd%e3%82%a8%e3%83%87%e3%82%a3%e3%82%bf%e3%82%bd%e3%83%b3%e3%81%af%e5%a4%a7%e6%88%90%e5%8a%9f%e3%81%a7%e3%81%97%e3%81%9f%ef%bc%81/ 日本ボリビア友好エディタソンは大成功でした!] / Carlillassa, Wadakuramon (2026/07/07)
* [https://diff.wikimedia.org/ja/2026/07/09/gemini-canvas-%e3%82%92%e6%b4%bb%e7%94%a8%e3%81%97%e3%81%a6%e5%ae%b6%e7%b3%bb%e5%9b%b3%e4%bd%9c%e6%88%90%e3%82%92%e8%87%aa%e5%8b%95%e5%8c%96%e3%81%97%e3%81%a6%e3%81%bf%e3%82%8b/ Gemini canvas を活用して家系図作成を自動化してみる] / Lin Xiangru (2026/07/09)
* [https://diff.wikimedia.org/ja/2026/07/27/%e6%96%b0%e3%81%9f%e3%81%aa%e6%88%90%e6%9e%9c%e3%82%92%e9%81%94%e6%88%90-%e6%ad%b4%e5%8f%b2%e3%82%92%e5%88%bb%e3%82%93%e3%81%a0%e3%82%a6%e3%82%a3%e3%82%ad%e3%83%a1%e3%83%87%e3%82%a3%e3%82%a2%e6%97%a5/ 新たな成果を達成! 歴史を刻んだウィキメディア日本ボリビア友好会] / Carlillasa ; Wadakuramon (2026/07/27)
* [https://diff.wikimedia.org/ja/2026/07/27/%e3%82%a6%e3%82%a3%e3%82%ad%e3%83%9e%e3%83%8b%e3%82%a22026-%e8%b2%a2%e7%8c%ae%e3%81%99%e3%82%8b%e5%96%9c%e3%81%b3/ ウィキマニア2026: 貢献する喜び] / Wikimedia Foundation ; Wadakuramon (2026/07/27)
* [https://diff.wikimedia.org/ja/2026/07/27/%e5%9b%b3%e6%9b%b8%e9%a4%a8%e7%b7%8f%e5%90%88%e5%b1%95%e3%81%b8%e3%81%ae%e5%8f%82%e5%8a%a0/ 図書館総合展への参加] / VZP10224 (2026/07/27)
* [https://diff.wikimedia.org/ja/2026/07/27/%e3%82%a6%e3%82%a3%e3%82%ad%e3%83%87%e3%83%bc%e3%82%bf%e5%8b%89%e5%bc%b7%e4%bc%9a%e3%82%92%e5%a7%8b%e3%82%81%e3%81%be%e3%81%97%e3%81%9f/ ウィキデータ勉強会を始めました] / Wadakuramon (2026/07/27)
* [https://diff.wikimedia.org/ja/2026/07/29/%e3%82%a6%e3%82%a3%e3%82%ad%e3%83%a1%e3%83%87%e3%82%a3%e3%82%a2%e3%83%b3%e3%83%bb%e3%82%aa%e3%83%96%e3%83%bb%e3%82%b6%e3%83%bb%e3%82%a4%e3%83%a4%e3%83%bc2026%e5%8f%97%e8%b3%9e%e8%80%85%e3%81%ab/ ウィキメディアン・オブ・ザ・イヤー2026受賞者に会おう!] / Wikimedia Foundation ; Wadakuramon (2026/07/29)
'''前回配信:2026年6月30日'''
<hr style="border-top: 2px 破線 #7F9AEB; border-bottom: none;">
配信元: ''[[:m:Wikimedians of Japan User Group|Wikimedians of Japan User Group]]''<br />
<small>[[:m:Talk:Wikimedians of Japan User Group/メールマガジン|フィードバック]]。[[:m:Wikimedians of Japan User Group/メールマガジン/targets list| 登録・削除]]。</small>2026年7月31日 (金) 13:55 (UTC)
<hr style="border-top: 2px 破線 #7F9AEB; border-bottom: none;">
<!-- User:Chqaz-WMJPUG@metawiki が https://meta.wikimedia.org/w/index.php?title=Wikimedians_of_Japan_User_Group/%E3%83%A1%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%9E%E3%82%AC%E3%82%B8%E3%83%B3/targets_list&oldid=30828137 のリストを使用して送信したメッセージ -->
== 管理者の再信任のための「定期的な投票」実施について(2026年) ==
皆さん、こんにちは。このたび、[[Wikibooks:管理者の辞任#管理者の再信任投票]]に基づく2026年9月末で任期末を迎える現管理者2名の再信任のための「定期的な投票」を実施したく存じます。そこで当コミュニティの事前告知期間も踏まえ2週間後の2026年9月5日(予定)に投票ページとして「[[Wikibooks:管理者への立候補/再信任投票 202609]]」を作成いたします。そこから2週間(336時間)の投票期間を設けたいと存じます。なお、管理者の一人である {{admin|Kanjy}} さんは、2年以上、編集も権限行使もないため、この再信任投票開始の時点までに活動がない場合には[[Wikibooks:管理者の辞任#自動退任について|方針に基づき自動退任]]となります。以上につきまして何かコメントなどございましたらお寄せください。それでは何卒よろしくお願いいたします。--[[利用者:Shokupan|Shokupan]] ([[利用者・トーク:Shokupan|トーク]]) 2026年8月22日 (土) 02:12 (UTC)
:{{コメント2|報告}} 事前告知のとおり、[[Wikibooks:管理者への立候補/再信任投票 202609|管理者の再信任投票ページ]]を作成いたしましたので、ご報告いたします。--[[利用者:Shokupan|Shokupan]] ([[利用者・トーク:Shokupan|トーク]]) 2026年9月5日 (土) 02:33 (UTC)
== Wikimedians of Japan User Group 2026-8 ==
'''全体ニュース'''
* 提携団体の新規認定の一時停止は[[:m:Affiliations_Committee/Extension_of_the_pause_on_new_affiliate_recognition|延長]]されます。
* [[:m:Users_with_Extended_Rights_Conference_2026|拡張権限保持者カンファレンス2026]]の申込みは9月4日までです。
'''ESEAPハブからのおしらせ'''[[File:ESEAP_logo_horizontal.svg|40px|link=:m:ESEAP_Hub/ja]]
* 9月6日15時(JST)から[[:m:Event:ESEAP_Community_Call_61_(6_September_2026)|オンラインミーティング]]が行われます。
'''Wikimedians of Japan User Groupからのおしらせ'''[[File:Wikimedians of Japan User Group Logoonly.svg|20px|link=:m:Wikimedians_of_Japan_User_Group]]
* Wikimaniaに関する[[:m:Wikimedians_of_Japan_User_Group/Release_20260823|声明]]を発表しました。
* 9月11日から13日にかけて[https://peatix.com/event/5119488 日韓ウィキメディアン交流イベントin唐津・太宰府]をウィキメディア韓国と共同で開催します。
'''[[:w:ja:メインページ|日本語版ウィキペディア]]'''[[File:Wikipedia-logo-v2.svg|20px|link=:w:ja:]]
* 今月は以下の記事が[[:w:ja:Wikipedia:良質な記事/良質な記事の選考|良質な記事の選考]]を通過しました。
**[[:w:ja:高輪消防署二本榎出張所|高輪消防署二本榎出張所]]
**[[:w:ja:柳川一件|柳川一件]]
**[[:w:ja:第1回十字軍|第1回十字軍]]
**[[:w:ja:易 (占い)|易 (占い)]]
**[[:w:ja:1960年桑絹村長選挙|1960年桑絹村長選挙]]
**[[:w:ja:カリホルニウム|カリホルニウム]]
**[[:w:ja:力学系|力学系]]
**[[:w:ja:松岡寺|松岡寺]]
**[[:w:ja:象と鯨図屏風|象と鯨図屏風]]
**[[:w:ja:オルペウス|オルペウス]]
**[[:w:ja:ナースィル・アッダウラ|ナースィル・アッダウラ]]
**[[:w:ja:探検部|探検部]]
**[[:w:ja:豚肉食のタブー|豚肉食のタブー]]
**[[:w:ja:リズム・アンド・ブルース|リズム・アンド・ブルース]]
**[[:w:ja:リカンカブール山|リカンカブール山]]
**[[:w:ja:膣|膣]]
**[[:w:ja:歌舞伎町の歴史|歌舞伎町の歴史]]
**[[:w:ja:眠り猫|眠り猫]]
**[[:w:ja:ボリソフ彗星 (2I/Borisov)|ボリソフ彗星 (2I/Borisov)]]
**[[:w:ja:ワースィク|ワースィク]]
**[[:w:ja:道の駅もてぎ|道の駅もてぎ]]
**[[:w:ja:弘田由己子|弘田由己子]]
**[[:w:ja:エクリプス (競走馬)|エクリプス (競走馬)]]
* 今月の1枚
[[File:TH2113_Hamanako-Sakume-STA.jpg|alt=|thumb|200x200px||none]]
'''9月のオフラインイベント情報'''
* 9/21 [https://edit-tango.webnode.jp/イベント/ ウィキペディアにゃウンvol.9 part.2 丹後のものづくり]
'''前回配信:2026年7月31日'''
<hr style="border-top: 2px 破線 #7F9AEB; border-bottom: none;">
配信元: ''[[:m:Wikimedians of Japan User Group|Wikimedians of Japan User Group]]''<br />
<small>[[:m:Talk:Wikimedians of Japan User Group/メールマガジン|フィードバック]]。[[:m:Wikimedians of Japan User Group/メールマガジン/targets list| 登録・削除]]。</small>2026年8月31日 (月) 13:08 (UTC)
<hr style="border-top: 2px 破線 #7F9AEB; border-bottom: none;">
<!-- User:Chqaz-WMJPUG@metawiki が https://meta.wikimedia.org/w/index.php?title=Wikimedians_of_Japan_User_Group/%E3%83%A1%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%9E%E3%82%AC%E3%82%B8%E3%83%B3/targets_list&oldid=30828137 のリストを使用して送信したメッセージ -->
== サーバー切り替え - ご利用のウィキは間もなく短時間読み取り専用に切り替わります ==
<section begin="server-switch"/><div class="plainlinks">
[[:m:Special:MyLanguage/Tech/Server switch|他の言語で読む]] • [https://meta.wikimedia.org/w/index.php?title=Special:Translate&group=page-Tech%2FServer+switch&language=&action=page&filter= {{int:please-translate}}]
[[foundation:|ウィキメディア財団]]ではデータセンター間でのトラフィックの切り替えを行います。 災害が起こった場合でも、ウィキペディアとその他のウィキメディア・ウィキが確実にオンラインとなるようにするための措置です。
全トラフィックの切り替えは'''{{#time:n月j日|2026-09-23|ja}}'''に行います。 テストは '''[https://zonestamp.toolforge.org/{{#time:U|2026-09-23T14:00|en}} {{#time:H:i e|2026-09-23T14:00}}]''' に開始されます。
残念ながら [[mw:Special:MyLanguage/Manual:What is MediaWiki?|MediaWiki]] の技術的制約により、切り替え作業中はすべての編集を停止する必要があります。 ご不便をおかけすることをお詫びするとともに、将来的にはそれが最小限にとどめられるよう努めます。
作業開始の30分前から、すべてのウィキで画面にバナーを表示する予定です。 このバナーはメンテナンス作業の終了まで表示されます。
バナーテキストの[https://meta.wikimedia.org/w/index.php?title=Special%3ATranslate&group=Centralnotice-tgroup-read_only_banner&task=view&language=&filter=&action=translate 翻訳や校正]にご協力ください、
'''閲覧は可能ですが、すべてのウィキにおいて編集ができないタイミングが短時間あります。'''
* {{#time:Y年n月j日(l)|2026-09-23|ja}}には、最大1時間ほど編集できない時間が発生します。
* この間に編集や保存を行おうとした場合、エラーメッセージが表示されます。 その間に行われた編集が失われないようには努めますが、保証することはできません。 エラーメッセージが表示された場合、通常状態に復帰するまでお待ちください。 その後、編集の保存が可能となっているはずです。 しかし念のため、保存ボタンを押す前に、行った変更のコピーをとっておくことをお勧めします。
''その他の影響'':
* バックグラウンドジョブが遅くなり、場合によっては失われることもあります。 赤リンクの更新が通常時よりも遅くなる場合があります。 特に他のページからリンクされているページを作成した場合、そのページは通常よりも「赤リンク」状態が長くなる場合があります。 長時間にわたって実行されるスクリプトは、停止しなければなりません。
* コードの実装は通常の週と同様に行う見込みです。 しかしながら、作業上の必要性に合わせ、ケースバイケースでいずれかのコードフリーズが計画時間に発生することもあります。
* [[mw:Special:MyLanguage/GitLab|GitLab]]は90分ほどの間に利用不可になります。
必要に応じてこの計画は延期されることがあります。 [[wikitech:Switch_Datacenter|wikitech.wikimedia.orgで工程表を見られます]]。 変更はすべて工程表で発表しますので、ご参照ください。
'''この情報を皆さんのコミュニティで共有してください。'''</div><section end="server-switch"/>
[[m:user:Trizek (WMF)|Trizek (WMF)]] 2026年9月15日 (火) 12:58 (UTC)
<!-- User:Trizek (WMF)@metawiki が https://meta.wikimedia.org/w/index.php?title=Distribution_list/Non-Technical_Village_Pumps_distribution_list&oldid=30513874 のリストを使用して送信したメッセージ -->
== Your feedback wanted: Remove ''(Language link added:) and similar'' edits from Special:RecentChanges ==
''(Apologies for posting in English. You can help by translating it)''
Hello, I’m Danny from [[:en:w:Wikimedia_Deutschland|Wikimedia Deutschland’s]] [[m:Wikidata_For_Wikimedia_Projects|Wikidata For Wikimedia Projects]] team.<br/>
We have been investigating and examining how Wikidata’s use in the [[Special:RecentChanges]] and [[Special:Watchlist]] pages can be made to be more useful, or less ‘noisy’ (fewer edits that have little value to the reader).
We are currently exploring to make a change in the volume and the type of Wikidata edits that appear in these pages, and '''we need your feedback''' to help us ensure this is a positive change for the Wikis and won’t disrupt your workflows.<br/>
Language links are also known as sitelinks or interlanguage links and describe when a Wikidata item is connected to a Wiki, adding it to the language dropdown tool for other connected Wikis.
[[File:Types of Lang Link changes.png|x350px|frame|A variety of "Language Link" edits as seen in the Recent Changes feed]]
The request for feedback is whether you support the removal of these language link edits from the Recent Changes and Watchlist feed, or would you oppose such a change and if so, why?
Please share you thoughts on the dedicated '''[[m:Talk:Wikidata_For_Wikimedia_Projects/Clearer_Wikidata_Edit_Summaries/Hide_Language_Link_edits|metawiki Talk page]]'''.
Further information about this change: [[m:Wikidata_For_Wikimedia_Projects/Clearer_Wikidata_Edit_Summaries/Hide_Language_Link_edits|m:Wikidata_For_Wikimedia_Projects/Hide_Language_Link_edits]]
Thank you for any participation or feedback you give, -- [[m:User:Danny_Benjafield_(WMDE)|User:Danny Benjafield (WMDE)]] 2026年9月25日 (金) 11:46 (UTC)
<!-- User:Danny Benjafield (WMDE)@metawiki が https://meta.wikimedia.org/w/index.php?title=User:Danny_Benjafield_(WMDE)/MassMessage_test_list&oldid=31080832 のリストを使用して送信したメッセージ -->
== ESEAP翻訳者の募集 ==
ESEAP(東アジア・東南アジア・大洋州)地域における多言語コミュニケーションの促進とコミュニティへの参加意欲を高めるため、ESEAPハブでは、[[meta:ESEAP Hub/Activity/Community Translator Service|コミュニティ翻訳者プログラム]]への参加を希望する有能な人材を募集しています。
現在、以下の分野で日本語を話せる方を募集しています。
* 翻訳(文章)
* 通訳(ライブイベント/会議)
応募方法:応募は随時受け付けています。「コミュニティ翻訳者応募フォーム」より、必要事項をご記入の上、ご提出ください。[https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLScRlsOfpim2RxU1vBJZmK5UQm8elxUw6zS9vegzLDR78paVPQ/viewform 応募フォーム]
今後必要となるスキルをお持ちの候補者の方には、こちらからご連絡させていただきます。ご質問がございましたら、contact@eseap.org までお気軽にお問い合わせください。--[[利用者:VZP10224(WjpUG)|VZP10224(WjpUG)]] ([[利用者・トーク:VZP10224(WjpUG)|トーク]]) 2026年9月27日 (日) 06:00 (UTC)
== Wikimedians of Japan User Group 2026-9 ==
'''全体ニュース'''
* 来年、チリのサンティアゴで開催されるWikimania 2027の[[:wikimania:2027:Scholarships/ja|参加費用補助の申請]]は10月31日までです。
'''ESEAPハブからのおしらせ'''[[File:ESEAP logo horizontal.svg|40px|link=:m:ESEAP_Hub/ja]]
* 10月3日15時(JST)から[[:m:Event:ESEAP_Community_Call_62_(3_October_2026)|オンラインミーティング]]が行われます。
'''Wikimedians of Japan User Groupからのおしらせ'''[[File:Wikimedians of Japan User Group Logoonly.svg|20px|link=:m:Wikimedians_of_Japan_User_Group]]
* 10月20日から22日まで開催される図書館総合展に[[:w:ja:プロジェクト:アウトリーチ/ウィキメディア・ワールド2026|ウィキメディア・ワールド 2026]]と題して出展します。
* 上記イベントに関連して10月31日から11月13日にかけて[[:w:ja:Event:鎌倉エディタソン|オンライン鎌倉エディタソン]]を、10月18日に[[:w:ja:Event:オフライン鎌倉エディタソン|オフラインエディタソン]]を開催します。
* 10月17日に開催される[https://event.ospn.jp/osc2026-fall/ OSC東京]に参加します。
* ESEAPハブからの[[:m:Wikimedians_of_Japan_User_Group/Notice_20260929-1|翻訳者/通訳者募集のお知らせ]]を掲載しました。
* [[:m:Wikimedians_of_Japan_User_Group/Notice_20260929-2|Wiki Loves Peace開催のお知らせ]]を掲載しました。
'''[[:w:ja:メインページ|日本語版ウィキペディア]]'''[[File:Wikipedia-logo-v2.svg|20px|link=:w:ja:]]
* 今月は以下の記事が[[:w:ja:Wikipedia:良質な記事/良質な記事の選考|良質な記事の選考]]を通過しました。
** [[:w:ja:名古屋におけるシュルレアリスム|名古屋におけるシュルレアリスム]]
** [[:w:ja:ブルーベリー銀河|ブルーベリー銀河]]
** [[:w:ja:足利直義|足利直義]]
** [[:w:ja:束帯|束帯]]
** [[:w:ja:ウトゥルンク|ウトゥルンク]]
** [[:w:ja:トスティ・ゴドウィンソン|トスティ・ゴドウィンソン]]
** [[:w:ja:琵琶湖若狭湾快速鉄道|琵琶湖若狭湾快速鉄道]]
** [[:w:ja:ダークエネルギーサーベイ|ダークエネルギーサーベイ]]
** [[:w:ja:十島村 (鹿児島県大島郡1946年)|十島村 (鹿児島県大島郡1946年)]]
** [[:w:ja:フォーマルハウト|フォーマルハウト]]
** [[:w:ja:列女伝|列女伝]]
** [[:w:ja:倚子|倚子]]
** [[:w:ja:エルフガー (マーシア伯)|エルフガー (マーシア伯)]]
** [[:w:ja:南鳥島事件|南鳥島事件]]
** [[:w:ja:直腸|直腸]]
** [[:w:ja:ラプラス変換|ラプラス変換]]
** [[:w:ja:進駐軍クラブ|進駐軍クラブ]]
** [[:w:ja:ロシアの歴史|ロシアの歴史]]
** [[:w:ja:筑紫箏|筑紫箏]]
** [[:w:ja:COROT|COROT]]
* 今月の1枚
[[File:Shin_Yamabiko_bridge_and_Kurobe_Torokko_railway.jpg|alt=|thumb|200x200px|[[:w:ja:山彦橋|山彦橋]]を渡る[[:w:ja:黒部峡谷鉄道|黒部峡谷鉄道]]のトロッコ電車|none]]
'''10月のイベント情報'''
* 10/3 [https://edit-tango.webnode.jp/イベント/ 丹後古墳ウォーカーvol.2 網野銚子山古墳フェス&ロー鉄サミット]
* 10/4 [https://www.siofest.com/event/Wikipedia_bungaku Wikipediaブンガク鎌倉詩人 vol.2]
* 10/12 [https://www.city.natori.miyagi.jp/page/46132.html ウィキペディアタウン in 名取]
* 10/31 [https://www.lib.city-hokuto.ed.jp/mukawa/event-info/126/ ウィキペディアタウン@北杜 in 武川町]
'''[[:wmfblog:|Diff]]'''
タイトル / 著者;翻訳者 (掲載日) の順で記載しています。
* [https://diff.wikimedia.org/ja/2026/07/31/%e3%82%b7%e3%83%b3%e3%83%9d%e3%82%b8%e3%82%a6%e3%83%a0%e3%80%8c%e3%83%87%e3%82%b8%e3%82%bf%e3%83%ab%e3%82%a2%e3%83%bc%e3%82%ab%e3%82%a4%e3%83%96%e6%8e%a8%e9%80%b2%e5%9f%ba%e6%9c%ac%e6%b3%95%e3%81%ae/ シンポジウム「デジタルアーカイブ推進基本法の実現に向けて」参加記録] / Ga2by (2026/07/31)
* [https://diff.wikimedia.org/ja/2026/08/05/notebooklm%e3%81%af%e3%82%a6%e3%82%a3%e3%82%ad%e3%83%9a%e3%83%87%e3%82%a3%e3%82%a2%e3%81%ae%e5%9f%b7%e7%ad%86%e3%82%b5%e3%83%9d%e3%83%bc%e3%83%88%e3%81%ab%e4%bd%bf%e3%81%88%e3%82%8b%e3%81%ae%e3%81%8b/ NotebookLMはウィキペディアの執筆サポートに使えるのか?] / Lin Xiangru (2026/08/05)
* [https://diff.wikimedia.org/ja/2026/08/13/eseap%e3%82%ab%e3%83%b3%e3%83%95%e3%82%a1%e3%83%ac%e3%83%b3%e3%82%b92026%e5%8f%82%e5%8a%a0%e8%80%85%e7%b5%8c%e9%a8%93%e8%ab%87%ef%bc%88%e5%89%8d%e7%b7%a8%ef%bc%89/ ESEAPカンファレンス2026参加者経験談(前編)] / Wadakuramon (2026/08/13)
* [https://diff.wikimedia.org/ja/2026/08/17/eseap%e3%82%ab%e3%83%b3%e3%83%95%e3%82%a1%e3%83%ac%e3%83%b3%e3%82%b92026%e5%8f%82%e5%8a%a0%e8%80%85%e7%b5%8c%e9%a8%93%e8%ab%87%ef%bc%88%e5%be%8c%e7%b7%a8%ef%bc%89/ ESEAPカンファレンス2026参加者経験談(後編)] / Wadakuramon (2026/08/17)
* [https://diff.wikimedia.org/ja/2026/08/19/ai%e3%81%8c%e7%9f%a5%e8%ad%98%e3%82%92%e5%89%b5%e3%82%8b%ef%bc%9f%e2%80%95llm-wiki%e3%81%a8%e3%82%a6%e3%82%a3%e3%82%ad%e3%83%a1%e3%83%87%e3%82%a3%e3%82%a2%e3%83%b3%e3%83%bb%e3%83%a0%e3%83%bc%e3%83%96/ AIが知識を創る?―LLM Wikiとウィキメディアン・ムーブメントに関する考察] / Ga2by (2026/08/19)
* [https://diff.wikimedia.org/ja/2026/08/19/%e6%ac%a1%e3%80%85%e3%81%ab%e3%81%a4%e3%81%aa%e3%81%8c%e3%81%a3%e3%81%a6%e3%81%84%e3%81%8f%e8%97%a9-%e5%b7%9d%e8%b6%8a%e8%97%a9%e3%81%a8%e4%bd%90%e5%80%89%e8%97%a9%e3%81%ae%e3%81%8a%e3%81%af/ 次々につながっていく藩 – 川越藩と佐倉藩のおはなし] / Lin Xiangru (2026/08/19)
* [https://diff.wikimedia.org/ja/2026/08/20/%e8%a3%9c%e5%8a%a9%e9%87%91%e6%94%af%e7%b5%a6%e6%88%a6%e7%95%a5%e3%81%ae%e8%8d%89%e6%a1%88%e3%80%81-grdc%e3%82%88%e3%82%8a%e5%8d%94%e8%ad%b0%e3%82%92%e5%91%bc%e3%81%b3%e3%81%8b%e3%81%91/ 補助金支給戦略の草案、 GRDCより協議を呼びかけ] / Lajmmoore, Mervat ; Omotecho (2026/08/20)
* [https://diff.wikimedia.org/ja/2026/08/30/%e6%b8%8b%e6%b2%a2%e6%95%ac%e4%b8%89%e3%81%a8%e9%9b%86%e5%90%88%e7%9f%a5%ef%bc%9a%e6%97%a5%e6%9c%ac%e5%b8%b8%e6%b0%91%e6%96%87%e5%8c%96%e7%a0%94%e7%a9%b6%e6%89%80%e3%82%a8%e3%83%87%e3%82%a3%e3%82%bf/ 渋沢敬三と集合知:日本常民文化研究所エディタソン参加記] / Wadakuramon (2026/08/30)
* [https://diff.wikimedia.org/ja/2026/09/01/%f0%9f%8c%b8%e3%81%95%e3%81%8f%e3%82%89%e3%83%bb%e3%82%b5%e3%82%af%f0%9f%8c%b8%e4%bd%90%e5%80%89%e5%9f%8e%e4%b8%8b%e7%94%ba%e3%83%bb%e5%8f%96%e6%9d%90%e6%97%85%e8%a1%8c/ 🌸さくら・サク🌸佐倉城下町・取材旅行] / Lin Xiangru (2026/09/01)
* [https://diff.wikimedia.org/ja/2026/09/01/%e3%82%a6%e3%82%a3%e3%82%ad%e3%83%87%e3%83%bc%e3%82%bf%e3%81%ae%e7%ac%ac2%e5%9b%9e%e5%8b%89%e5%bc%b7%e4%bc%9a%e3%82%92%e8%a1%8c%e3%81%84%e3%81%be%e3%81%97%e3%81%9f/ ウィキデータの第2回勉強会を行いました] / Pusf.smbd (2026/09/01)
* [https://diff.wikimedia.org/ja/2026/09/03/japan-wikimedia-conference-2026-%e3%81%ae%e7%99%ba%e8%a1%a8%e8%80%85%e5%8b%9f%e9%9b%86%e4%b8%ad%ef%bc%81/ Japan Wikimedia Conference 2026 の発表者募集中!] / Wadakuramon (2026/09/03)
* [https://diff.wikimedia.org/ja/2026/09/06/%e8%ad%98%e5%88%a5%e5%ad%90%e3%81%af%e6%a4%9c%e8%a8%bc%e3%81%95%e3%82%8c%e3%80%81%e3%83%87%e3%83%bc%e3%82%bf%e3%81%af%e6%94%be%e7%bd%ae%e3%81%95%e3%82%8c%e3%82%8b-%e2%80%95%e5%8c%96%e5%ad%a6%e7%89%a9/ 識別子は検証され、データは放置される? ―化学物質をめぐる Wikipedia と Wikidata の温度差] / Lin Xiangru (2026/09/06)
* [https://diff.wikimedia.org/ja/2026/09/10/%e5%9c%b0%e5%85%83%e3%81%ae%e8%a9%b1%e3%82%92%e6%ae%8b%e3%81%99-%e3%82%a6%e3%82%a3%e3%82%ad%e6%9d%91%e3%83%bb%e6%b1%9f%e6%99%af%e3%80%81%e3%82%a4%e3%83%99%e3%83%b3%e3%83%88%e7%b7%a8/ 地元の話を残す——ウィキ村・江景、イベント編] / Aspere, Wikimedia Korea (2026/09/10)
* [https://diff.wikimedia.org/ja/2026/09/11/%e5%9c%b0%e5%9f%9f%e3%82%92%e3%81%95%e3%81%8c%e3%81%97%e3%81%a6-%e3%82%a6%e3%82%a3%e3%82%ad%e6%9d%91%e3%83%bb%e6%b1%9f%e6%99%af%e3%80%81%e9%81%8b%e5%96%b6%e7%b7%a8/ 地域をさがして——ウィキ村・江景、運営編] / Aspere, Wikimedia Korea (2026/09/11)
* [https://diff.wikimedia.org/ja/2026/09/11/%e5%85%b8%e6%8b%a0%e3%83%87%e3%83%bc%e3%82%bf%e3%82%82%e3%82%b3%e3%83%a2%e3%83%b3%e3%82%ba%e3%82%82%e3%80%81%e3%82%a4%e3%83%99%e3%83%b3%e3%83%88%e3%81%ae%e3%83%aa%e3%83%b3%e3%82%af%e9%9b%86%e3%81%a8/ 典拠データもコモンズも、イベントのリンク集としてまとめちゃえ!] / Lin Xiangru (2026/09/11)
* [https://diff.wikimedia.org/ja/2026/09/12/%e3%82%a6%e3%82%a3%e3%82%ad%e3%83%a1%e3%83%87%e3%82%a3%e3%82%a2%e7%b7%a8%e9%9b%86%e8%a8%98%e9%8c%b2-%e5%b2%a9%e8%88%b9%e5%9c%b0%e8%94%b5%e5%a0%82-%e9%8e%8c%e5%80%89%e5%b8%82%e3%80%80%e3%80%9c/ ウィキメディア編集記録: 岩船地蔵堂 (鎌倉市) 〜鎌倉エディタソンに向けて] / Twkz0731 (2026/09/12)
* [https://diff.wikimedia.org/ja/2026/09/12/%e3%82%b3%e3%83%9f%e3%83%a5%e3%83%8b%e3%83%86%e3%82%a3%e3%82%92%e8%82%b2%e3%81%a6%e3%82%8b%ef%bc%9acode4lib-japan-2026%e5%8f%82%e5%8a%a0%e8%a8%98/ コミュニティを育てる:Code4Lib Japan 2026参加記] / Wadakuramon (2026/09/12)
* [https://diff.wikimedia.org/ja/2026/09/13/%e5%9c%b0%e5%9f%9f%e3%81%ae%e3%83%9c%e3%83%a9%e3%83%b3%e3%83%86%e3%82%a3%e3%82%a2%e4%bd%93%e9%a8%93%e3%82%92%e3%82%a6%e3%82%a3%e3%82%ad%e3%83%a1%e3%83%87%e3%82%a3%e3%82%a2%e3%83%b3%e3%83%bb%e3%83%a0/ 地域のボランティア体験をウィキメディアン・ムーブメントにつなげる—富良野での体験記] / Ga2by (2026/09/13)
* [https://diff.wikimedia.org/ja/2026/09/16/%e5%b0%8f%e3%81%95%e3%81%aa%e3%82%a4%e3%83%99%e3%83%b3%e3%83%88%e3%81%a7%e3%82%82bot%e3%81%af%e5%bd%b9%e3%81%ab%e7%ab%8b%e3%81%a4-%e2%80%95-%e3%83%97%e3%83%ad%e3%82%b0%e3%83%a9%e3%83%9f%e3%83%b3/ 小さなイベントでもBotは役に立つ ― プログラミング初心者による Bot 活用記] / Lin Xiangru (2026/09/16)
* [https://diff.wikimedia.org/ja/2026/09/17/%e6%97%a5%e9%9f%93%e3%82%a6%e3%82%a3%e3%82%ad%e3%83%a1%e3%83%87%e3%82%a3%e3%82%a2%e3%83%b3%e4%ba%a4%e6%b5%81%e3%82%a4%e3%83%99%e3%83%b3%e3%83%88-in-%e5%94%90%e6%b4%a5-%e3%82%92%e9%96%8b%e5%82%ac/ 日韓ウィキメディアン交流イベント in 唐津 を開催しました] / Lin Xiangru (2026/09/17)
* [https://diff.wikimedia.org/ja/2026/09/19/%e5%94%90%e6%b4%a5-%e4%b9%9d%e5%b7%9e%e3%81%ae%e8%ad%9c%e4%bb%a3%e5%a4%a7%e5%90%8d%e3%81%ae%e5%9c%b0%e3%80%81%e3%81%9d%e3%81%97%e3%81%a6%e9%9f%93%e5%9b%bd%e3%81%a8%e3%81%ae%e7%b8%81/ 唐津 – 九州の譜代大名の地、そして韓国との縁] / Lin Xiangru (2026/09/19)
* [https://diff.wikimedia.org/ja/2026/09/19/%e5%90%8d%e8%ad%b7%e5%b1%8b%e5%9f%8e%e5%9d%80%e3%81%8b%e3%82%89%e9%9f%93%e5%9b%bd%e3%82%92%e6%9c%9b%e3%82%80%ef%bc%9a%e6%97%a5%e9%9f%93%e3%82%a8%e3%83%87%e3%82%a3%e3%82%bf%e3%82%bd%e3%83%b3in%e5%94%90/ 名護屋城址から韓国を望む:日韓エディタソンin唐津参加記] / Wadakuramon (2026/09/19)
* [https://diff.wikimedia.org/ja/2026/09/22/%e3%82%ab%e3%83%bc%e3%82%bd%e3%83%ab%e3%82%92%e4%bd%bf%e3%82%8f%e3%81%9a%e3%81%abwikipedia%e3%82%92%e7%b7%a8%e9%9b%86%e3%81%97%e3%81%9f%e3%81%84/ カーソルを使わずにWikipediaを編集したい] / Ga2by (2026/09/22)
* [https://diff.wikimedia.org/ja/2026/09/24/%e3%80%8c%e3%81%a9%e3%81%86%e3%81%ab%e3%81%8b%e3%81%aa%e3%82%8b%e3%80%8d%e3%80%81%e3%81%a8%e3%81%84%e3%81%86%e3%82%88%e3%82%8a%e3%80%8c%e3%81%a9%e3%81%86%e3%81%ab%e3%81%8b%e3%81%99%e3%82%8b%e3%80%8d/ 「どうにかなる」、というより「どうにかする」- 編集履歴は何を伝えるか] / Lin Xiangru (2026/09/24)
* [https://diff.wikimedia.org/ja/2026/09/29/wikimania-2026-%e5%8f%82%e5%8a%a0%e3%83%ac%e3%83%9d%e3%83%bc%e3%83%88%e2%91%a0-%e3%81%8d%e3%81%a3%e3%81%8b%e3%81%91%e3%81%a8%e4%ba%ac%e4%b8%b9%e5%be%8c%e3%82%a4%e3%83%99%e3%83%b3%e3%83%88/ Wikimania 2026 参加レポート① – きっかけと京丹後イベント] / Lin Xiangru (2026/09/29)
* [https://diff.wikimedia.org/ja/2026/09/29/%e8%8b%a5%e8%80%85%e3%81%9f%e3%81%a1%e3%81%ae%e3%83%91%e3%83%8d%e3%83%ab%e3%81%a8%e9%8e%8c%e5%80%89%e3%82%a8%e3%83%87%e3%82%a3%e3%82%bf%e3%82%bd%e3%83%b3%ef%bc%9a%e5%9b%b3%e6%9b%b8%e9%a4%a8%e7%b7%8f/ 若者たちのパネルと鎌倉エディタソン:図書館総合展2026での挑戦] / Wadakuramon (2026/09/29)
'''前回配信:2026年8月31日'''
<hr style="border-top: 2px 破線 #7F9AEB; border-bottom: none;">
配信元: ''[[:m:Wikimedians of Japan User Group|Wikimedians of Japan User Group]]''<br />
<small>[[:m:Talk:Wikimedians of Japan User Group/メールマガジン|フィードバック]]。[[:m:Wikimedians of Japan User Group/メールマガジン/targets list| 登録・削除]]。</small>2026年9月30日 (水) 09:59 (UTC)
<hr style="border-top: 2px 破線 #7F9AEB; border-bottom: none;">
<!-- User:Chqaz-WMJPUG@metawiki が https://meta.wikimedia.org/w/index.php?title=Wikimedians_of_Japan_User_Group/%E3%83%A1%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%9E%E3%82%AC%E3%82%B8%E3%83%B3/targets_list&oldid=31038046 のリストを使用して送信したメッセージ -->
== 「判例」の該当性について ==
[[行政事件訴訟法第37条の5]]において、[[User:Tomzo]]により掲載基準の押し付けによるrvvが行われています。
本案訴訟では問題にならない条文に関する「判例」は、判例集には載らないでしょう。--[[特別:投稿記録/~2026-52525-81|~2026-52525-81]] ([[利用者・トーク:~2026-52525-81|トーク]]) 2026年10月1日 (木) 03:51 (UTC)
加えて、Wikipediaの方針やガイドラインをそのままWikibooksに持ち込んで独自の理論を提唱してきて迷惑極まりないです。--[[特別:投稿記録/~2026-52525-81|~2026-52525-81]] ([[利用者・トーク:~2026-52525-81|トーク]]) 2026年10月1日 (木) 03:54 (UTC)
[[民法第877条]]、[[民法第879条]]も同様です。家事事件について、オールラウンダー系の判例集に掲載されることはまずありません。
--[[特別:投稿記録/~2026-52525-81|~2026-52525-81]] ([[利用者・トーク:~2026-52525-81|トーク]]) 2026年10月1日 (木) 03:59 (UTC)
すでに有名判例集の事件が載っているのならrvするのもわかりますが、空欄だったのなら専門分野系の判例集やLEX/DBなどの網羅的な判例データベースを引用するのはむしろ有益かと思います(現に、法律書の判例索引をみるとLEX/DBが挙げられているのも見受けられますし。)。読者視点に立てばTomzoさんの形式的論理に固執した行為は有害無益ですね。--[[特別:投稿記録/~2026-53249-29|~2026-53249-29]] ([[利用者・トーク:~2026-53249-29|トーク]]) 2026年10月3日 (土) 08:59 (UTC)
*{{user|Tomzo}} 例えば多数の判決が判例として列挙されているときに整理する際に「判例集#主要な判例集とその略称」を使うのならわかるのですが、掲載判例を0にするための根拠にすべきでないことは管理者である以上弁えるべきかと。沈黙を貫くのでなく弁明や反省をすべきでしょう。そのような態度や能力不足からも管理者の辞任を勧告します。--[[特別:投稿記録/~2026-55601-40|~2026-55601-40]] ([[利用者・トーク:~2026-55601-40|トーク]]) 2026年10月18日 (日) 14:18 (UTC)
== Wikidata Sitelink changes in Recent Changes and Watchlist ==
''(Apologies for cross-posting in English, translating it will help spread the message)''
Editors on group 1 wikis, including Wikiquote, Wikibooks, Wikiversity, Wikivoyage, and Wikisource, will no longer see notifications on [[Special:RecentChanges|Recent Changes]] and [[Special:Watchlist|Watchlist]] when a link to ''another'' language version of a page is added, removed, or changed in its Wikidata item. This change will begin on '''October 5 at 07:00 UTC''' as a two-week trial to reduce high-volume, low-value notifications and make higher-value changes easier to identify. Editors who rely on these notifications should be aware of the change and can share feedback or concerns on the [[m:Wikidata For Wikimedia Projects/Clearer Wikidata Edit Summaries/Hide Language Link edits|project]] or [[m:Talk:Wikidata_For_Wikimedia_Projects/Clearer_Wikidata_Edit_Summaries/Hide_Language_Link_edits|talk page]].<br/>Please reach out if you have any questions, thank you! -- [[User:Danny_Benjafield_(WMDE)|Danny Benjafield (WMDE)]] ([[User_talk:Danny_Benjafield_(WMDE)|talk]]) sent via [[利用者:MediaWiki message delivery|MediaWiki message delivery]] ([[利用者・トーク:MediaWiki message delivery|トーク]]) 2026年10月1日 (木) 12:42 (UTC)
<!-- User:Danny Benjafield (WMDE)@metawiki が https://meta.wikimedia.org/w/index.php?title=User:Danny_Benjafield_(WMDE)/MassMessage_test_list&oldid=31106967 のリストを使用して送信したメッセージ -->
== すじにくシチュー氏が元気だった頃 ==
はじめまして。すじブックスです。ホームウィキはjawpですが、数年前、まだすじにくシチュー氏が元気だった頃、何度かjawbに寄稿していたこともあります。ときどきjawbの最近の更新もチェックしに来ています。相当嫌われているすじにく氏をテーマにするにあたって、副アカウントでの投稿ですが、ご容赦いただけると幸いです。
さて、単刀直入に私の問題意識を申しますと、jawbはずいぶんと勢いを失ったということです。私の体感ですが、すじにく氏が一日中ここにいた時代は、もっと活発でした。かつてjawbのサブプロジェクトだったjawvでは、プロジェクト存続に関する議論が行われている最中ですが、jawbも他人事ではないと思います。
もう一つの問題意識はすじにく氏に対する投稿ブロックについてです。すじにく氏はコミュニティからはひどく煙たがられており、氏のせいでjawbを去った編集者がいたことも承知しています。傍若無人な態度や対話拒否、暴言もありましたし、利用者ページを見れば、危うい思考を見て取れます。しかし、粗製乱造とはいえ、大量に記事を書いていたのもまた事実であります。今のjawbの現状を見ると、記事がないよりあったほうがマシだと感じるうえに、すじにく氏は枠を作ってくれていたように思います。少なくとも更新履歴に勢いを作ってくれていました。勢いがあるとか、自分にも貢献できるスタブがあるといった理由から、プロジェクトに人が集まってくると私は考えています。
まあ、しかし、すじにく氏謹製の英単語帳なんかを見ると、鼻持ちならない代物ですけど。それでも、十分に大きいコミュニティなら、たくさんの人が関わって、立派な単語帳に育っていたんじゃないでしょうか。もちろん、すじにく氏のブロックが、すなわちjawbの失速に繋がったとは言いませんが、もったいないことをしたんじゃないでしょうか?
すじにく氏は検定教科書を揃え、一日の大半の時間を教科書執筆に捧げていました。時間的・労力的観点から、すじにく氏のように活動できる人は、ここには他にいません。そういえばjawbでは、翻訳ソフトを使用して巧妙に剽窃された海賊版教科書もひっそりと問題になりましたが(現在も問題かもしれませんが)、少なくともすじにく氏はそのようなことをしません。なぜなら、氏の執筆への思いは、誠実だからです(もちろん、猪突猛進で独りよがりなのは否めません、対話拒否も)。氏のコモンズの履歴を確認すると、大量の画像資料(古典の音読まで含まれています)をアップロードしているのが分かります。しかもライセンスはパブリックドメインです。氏は手慰みに執筆しているのではなく、フリーな教科書に貢献したいという純粋な気持ちで取り組んでいるように感じます。
ところで、最近の更新を追っていると、真面目に取り組んでいる編集記録の合間に、きな臭いアカウント作成記録が挟まり、荒らしが好き勝手して去ってゆく荒野になりつつあるように見えます。記事そのものの執筆ではなく、教科書の整理や管理の記録が目立ちます。私がわずかながら寄稿していた数年前はすじにく氏が編集記録を彩っていたのに、今はあっけらかんとしているように感じます。
すじにく氏のブロックの議論にも問題があったように思います。逐一コミュニティとすじにく氏のやりとりを追っていたわけではありませんが、Honooo氏がすじにく氏を執拗におちょくって、反撃に出たところを捕まえて報告していたように見えます。Honooo氏はグローバルブロックされて、今年はLTAにもなりました。ウィキメディア財団以外のあちこちのウィキでも暴れ回っています。jawbのコミュニティはLTAに踊らされていたのではないでしょうか?
すじにく氏のブロック後も、ブロック破りと思われる編集がちらほらありましたし、Househome100氏として活動していた時期もありました。一方、Honooo氏がHousehome100氏のブロック破りを指摘しなければ放置されていたように思います。そもそもコミュニティはすじにく氏のブロックの頃から、あまり積極的ではなかったように感じます。Honooo氏がしつこく喧嘩を売って、追い詰めていただけで、コミュニティとすじにく氏は十分に対話できていなかったように思います。すじにく氏ともう一度話し合い、堂々と活動させてもいいんじゃないでしょうか?
最後に、ここまでお読みいただきありがとうございます。私はすじにく氏ではないことを断言しておきます。私の文体から明らかだと思います。アカウント名すじブックスは、すじにく氏のあの独特な匂いのする文章にまみれていた時代を懐かしんで付けました。--[[利用者:すじブックス|すじブックス]] ([[利用者・トーク:すじブックス|トーク]]) 2026年10月12日 (月) 18:12 (UTC)
:すじにくシチューの投稿ブロックに関わったので、応答責任があるかなぁと思い返信を差し上げます。
:まず、最初にすじブックスさんがすじにくシチューと同一人物でないことはよくわかります。文章の内容は理路整然としており、アレの対話(というよりも、一方的な演説)に見られる感情任せの荒っぽいものではありません。また、あの独特の粘着質かつ黒柳徹子さんのエッセイでしか見たことがない独特の読点の打ち方でないこともその証左となります。まぁ、あそこまで癖のある文体は中々お目にかかれないです(笑)。
:さて。そもそも、彼/彼女がブロックされたのはHonooo氏とは関係なく、私への暴言です。参考:[[トーク:中学校社会_歴史/第二次世界大戦#無題]]・談話室過去ログ https://ja.wikibooks.org/w/index.php?oldid=291757
:彼/彼女とは何度も「対話ならざる対話」を続けてきましたが、はっきり言うとアレと「コミュニケーション」を取ると疲弊します。それに、意にそぐわない差し戻しなどをすればすぐに激高して罵倒が始まります。それの応答に時間費やされるんですよ? こっちは。あっちは感情的に罵倒すれば気が済んだんでしょうけど、こっちはすじにくシチューのどこが間違っているのかを手持ちの文献やら本文やらを照らし合わせて修正するんです。
:で、それはすじにくシチューがいなくなった今でも続いています。
:正直、あれは勢いではなく、荒れていただけです。すじにくシチューがなぜか出没せず、落ち着いたときに[[利用者:義務教育学校及び高等学校学習指導要領|義務教育ボーイ]]が出て、さらにすじにくが復帰して一時期ダブルで活動していたときの、精神的な疲弊は尋常ではなかったです。義務教育ボーイがブロックされて以来、脱力してブレイクに入り、今でもその影響を引きずっています。そんな中、すじにくシチューもブロックされたとき、ほっとしました。「すじにく氏のあの独特な匂いのする文章にまみれていた時代を懐かし」むどころではないです。
:なお、Househome100は私でもすじにくシチューの複垢を見抜けたので、結局どこかでブロックされたと思います。
:私は現状、すじにくシチューのようにコンビニ辺りで売っている豆知識本と中高生向け学参片手に気分で粗造乱造する執筆者よりも、Linguaeさんの[[ガリア戦記]]のように、堅実に仕事を進める方がもっと増える方がよいと考えています。--[[利用者:椎楽|椎楽]] ([[利用者・トーク:椎楽|トーク]]) 2026年10月13日 (火) 13:30 (UTC)
9y1kb66hrtobzpjvfspz1usykemhtg4
高等学校数学III/積分法
0
1933
304875
304244
2026-10-19T05:53:52Z
~2026-55692-88
92812
/* 面積 */
304875
wikitext
text/x-wiki
{{pathnav|高等学校の学習|高等学校数学|高等学校数学III|pagename=積分法|frame=1|small=1}}
ここでは、数学IIの[[高等学校数学II/微分・積分の考え|微分・積分の考え]]で学んだ積分の性質についてより詳しく扱う。また、三角関数や指数・対数関数などの関数の積分についても学習する。
[[高等学校数学]]の全ての分野を学んだ後に学習に取り組んでほしい。
== 不定積分 ==
=== 積分の基本的な性質 ===
積分法について
<math>\int \{ f(x) + g(x) \} dx = \int f(x) dx + \int g(x) dx ,</math>
<math>\int af(x) dx = a \int f(x) dx</math>(aは定数)
が成り立つ。
導出
<math>\int \{ f(x) + g(x) \} dx = \int f(x) dx + \int g(x) dx</math>
の両辺を微分すると、
左辺 =右辺 = <math> f + g</math>
が従う。
よって、
<math>\int \{ f(x) + g(x) \} dx = \int f(x) dx + \int g(x) dx</math>
の両辺は一致する。
(実際には2つの関数の導関数が一致するとき、
それらの関数には定数だけのちがいがある。
仮に、F(x)とG(x)が共通の導関数h(x)を持ったとする。
このとき、
<math>(F(x)-G(x) )' = h(x)- h(x) = 0</math>
となるが、0の原始関数は定数Cであることが分かる。
よって、両辺を積分すると、
<math>F(x)-G(x) = C</math>
となり、F(x)とG(x)には定数だけの差しかないことが確かめられた。
よって、
<math>\int \{ f(x) + g(x) \} dx = \int f(x) dx + \int g(x) dx</math>
は定数だけのちがいを含んで成り立つ式である。
より一般に、不定積分が絡む等式は定数分の差を含めて成り立つというのが通例である。)
<math>\int af(x) dx = a \int f(x) dx</math>
についても両辺を微分すると、
左辺=右辺= a f(x)
が従う。
よって、
<math>\int af dx = a\int f dx</math>
が成り立つことが分る。
関数 <math>f(x)</math> の原始関数を <math>F(x)</math> とすると
<math>\int_a^b f(x) \, = F(b)-F(a) = -(F(a)-F(b)) = -\int_b^af(x)\, dx</math> である。
<math>\int_{a}^{c} f(x) \, dx + \int_{c}^{b} f(x) \, dx = (F(c) - F(a)) + (F(b) - F(c)) = F(b) - F(a) = \int_{a}^{b} f(x) \, dx</math>
=== 置換積分法 ===
関数の原始関数を求める手段として、
積分変数を別の変数で置き換えて積分を行なう手段が知られている。
これを置換積分と呼ぶ。
<math>\int f(g(x)) dg(x) = \int f(g(x)) g'(x) dx</math>
導出
<math>\int f(g(x)) dg(x) =F(g(x))</math>を<math>x</math>について微分すると、
<math>F'(g(x)) = f(g(x))g'(x)</math>
再び<math>x</math>について積分すると、
<math>\int f(g(x)) dg(x) = \int f(g(x)) g'(x) dx</math>
また、特に
*<math>\int f(ax+b) dx = \frac{1}{a} \int f(ax+b) d(ax+b)</math>
*<math>\int \{f(x)\}^n f'(x) dx = \frac{1}{n+1} \{f(x)\}^{n+1} + C (n \ne -1)</math>
*<math>\int \frac{f'(x)}{f(x)} dx = \log | f(x) | + C</math>
例えば、<math>\int (ax+b)^2 dx</math>を考える。
<math>t = ax+b</math>と置く。
この両辺を微分すると
<math>dt = adx</math>
が成り立つことを考慮すると、
{|
|-
|<math>\int t^2 \frac {dt} a</math>
|<math>=\frac{ t^3} {3a} + C</math>
|-
|
|<math>=\frac{ (ax+b)^3} {3a} + C</math>
|}
となることがわかる。
実際この式をxで微分すると
<math>
(ax+b)^2
</math>
と一致することが分る。
置換積分を使わずに計算することも出来る。
{|
|-
|<math>\int (ax+b)^2 dx</math>
|<math>=\int (a^2x^2+2abx +b^2) dx</math>
|-
|
|<math>= \frac {a^2} 3 x^3 +abx^2 +b^2x + C'</math>
|-
|
|<math>= \frac {a^2} 3 x^3 +abx^2 +b^2x + \frac {b^3} {3a} +C</math>
|}
(<math>C'=\frac {b^3} {3a} +C</math>と置き換えた。)
<math>=\frac{ (ax+b)^3} {3a} + C</math>
となり確かに一致する。
=== 部分積分法 ===
関数の積の積分を行なうときある関数の微分だけを取りだして積分すると、うまく積分できる場合がある。関数 <math>g(x)</math> の原始関数を <math>G(x)</math> とすると
<math>\int f(x) g(x) \, dx = f(x) G(x) - \int f'(x) G(x) \, dx</math>
導出
積の微分法より <math>\{f(x)G(x)\}' = f'(x)G(x) + f(x)g(x)</math> である。これを移項して
<math>f(x)g(x) = \{f(x)G(x)\}' - f'(x)G(x)</math>
である。両辺をxで積分して
<math>\int f(x) g(x) \, dx = f(x) G(x) - \int f'(x) G(x) \, dx</math>
が得られる。
例えば、
{|
|-
|<math>\int x (ax+b)^3 dx</math>
|<math>=\int x \left(\frac {(ax+b)^4} {4a} \right)' dx</math>
|-
|
|<math>=x \left(\frac {(ax+b)^4} {4a} \right)- \int (x)' \frac {(ax+b)^4} {4a} dx</math>
|-
|
|<math>=x \left(\frac {(ax+b)^4} {4a} \right)- \int (x)' \frac {(ax+b)^4} {4a} dx</math>
|-
|
|<math>=x \left(\frac {(ax+b)^4} {4a} \right)- \int \frac {(ax+b)^4} {4a} dx</math>
|-
|
|<math>=x \left(\frac {(ax+b)^4} {4a} \right)- \frac {(ax+b)^5} {20a^2} </math>
|}
部分積分を <math>n</math> 回行うと、
<math>\begin{align}
\int f(x) g(x) \, dx &= f(x) g^{(-1)}(x) - \int f'(x) g^{(-1)}(x) \, dx \\
&= f(x) g^{(-1)}(x) -f'(x) g^{(-2)}(x) + \int f''(x) g^{(-2)}(x) \, dx \\
&= f(x) g^{(-1)}(x) - f'(x) g^{(-2)}(x) + f''(x) g^{(-3)}(x) + \cdots + (-1)^n \int f^{(n)}(x) g^{(-n)}(x) \, dx
\end{align}</math>
となる。 ここで、<math>g^{(-1)}(x)</math> は <math>g(x)</math> の不定積分の任意の一つ。<math>g^{(-2)}(x)</math> は <math>g^{(-1)}(x)</math> の不定積分の任意の一つ。... <math>g^{(-n)}(x)</math> は <math>g^{(-n+1)}(x)</math> の不定積分の任意の一つというように定める。このように、積分記号で何回も不定積分を計算するのはやや面倒なので、次のような表を作ってみると計算しやすい。
{|class="wikitable" style="background: #ffffff; text-align: center;"
|+
!符号
!微分
!積分
|-
|<math>+</math>
|<Math>f(x)</math>
|<Math>g(x)</math>
|-
|<math>-</math>
|<Math>f'(x)</math>
|<Math>g^{(-1)}(x)</math>
|-
|<math>+</math>
|<Math>f''(x)</math>
|<Math>g^{(-2)}(x)</math>
|-
|<math>-</math>
|<Math>f^{(3)}(x)</math>
|<Math>g^{(-3)}(x)</math>
|-
|<math>\cdots</math>
|<Math>\cdots</math>
|<Math>\cdots</math>
|-
|<math>(-)^n</math>
|<Math>f^{(n)}(x)</math>
|<Math>g^{(-n)}(x)</math>
|}
この表から、部分積分を <math>n</math> 回行った結果は、
一行目の符号 × 一行目の微分 × 二行目の積分 + 二行目の符号 × 二行目の微分 × 三行目の積分 + ... + <math>\int</math> n行目の符号 × n行目の微分 × n行目の積分 dx
と求まる。n行目の微分 が 0 であった場合は、最後の積分は消えて、不定積分は
一行目の符号 × 一行目の微分 × 二行目の積分 + 二行目の符号 × 二行目の微分 × 三行目の積分 + ... + n-1行目の符号 × n-1行目の微分 × n行目の積分 + C
となる。
この方法は俗に'''瞬間部分積分法'''と呼ばれており、部分積分を複数回繰り返す際の計算を非常に簡略化できるため、受験数学では重宝されるテクニックの一つである。記述で用いる場合、上の表をそのまま記述するよりも、「部分積分を繰り返し用いると」という文言の後に瞬間部分積分で求めた結果を記述するのが無難である。
=== いろいろな関数の積分===
==== 多項式関数の積分 ====
<math>n \ne -1</math>のとき、<math>\left(\frac{1}{n+1} x^{n+1}\right)'=x^n</math>なので、
<math>\int x^n dx = \frac{1}{n+1} x^{n+1} + C</math>
<math>n = -1</math>のとき、<math>(\log |x| )' = \frac{1}{x} = x^{-1}</math>なので、
<math>\int x^{-1} dx = \int \frac {1}{x} dx = \log |x| + C</math>
が成り立つ。
==== 三角関数の積分 ====
*<math>(\sin x )' = \cos x</math>
*<math>(\cos x )' = -\sin x</math>
*<math>(\tan x )' = \frac{1}{\cos^2 x}</math>
が成り立つことを考慮すると、
*<math>\int \cos x dx= \sin x + C</math>
*<math>\int \sin x dx = - \cos x + C</math>
*<math>\int \frac{1}{\cos^2 x } dx = \tan x + C</math>
となることが分る。
<math>\int \tan x dx</math>は、置換積分法を使って
{|
|-
|<math>\int \tan x dx</math>
|<math>=\int \frac{\sin x}{\cos x} dx</math>
|-
|
|<math>=\int \frac{-(\cos x)'}{\cos x} dx</math>
|-
|
|<math>= - \int \frac{(\cos x)'}{\cos x} dx</math>
|-
|
|<math>= - \log | \cos x | + C</math>
|}
:
:なお同様に、<math>\frac{1}{\tan x} = \frac{\cos x}{\sin x}</math> であるので、<math>\int \frac{1}{\tan x} dx = \int \frac{\cos x}{\sin x} dx =\int \frac{(\sin x)'}{\sin x} dx = \log \left|\sin x\right| + C</math>
:
より一般に有理関数 <math>R(x,y)</math> に対して、<math>\int R(\sin\theta,\cos\theta) \,d\theta</math> について考える。 <math>t = \tan \frac{\theta}{2}</math> とおく。 <math>\tan^2\frac{\theta}{2} + 1 = \frac{1}{\cos^2\frac{\theta}{2}}</math> よって <math>\cos^2\frac{\theta}{2} = \frac{1}{1+t^2}</math>である。<math>\frac{dt}{d\theta} = \frac{d}{d\theta}\tan\frac{\theta}{2} = \frac{1}{2\cos^2\frac{\theta}{2}} = \frac{1}{2}(t^2+1)</math> であり、<math>\cos\theta = 2\cos^2\frac{\theta}{2} - 1 = \frac{1-t^2}{1+t^2}</math> かつ <math>\sin\theta = \tan\theta\cos\theta = \frac{2\tan\frac{\theta}{2}}{1-\tan^2\frac{\theta}{2}}\cos\theta =
\frac{2t}{1+t^2}</math>
である。よって
<math>\int R(\sin\theta,\cos\theta) \,d\theta
= \int R\left(\frac{2t}{1+t^2}, \frac{1-t^2}{1+t^2}\right) \, \frac{2dt}{1+t^2}</math>
と有理関数の積分にもち込める。
幾何学的は、この変換は単位円上の点 <math>P(\cos \theta, \sin \theta)</math>と点 <math>A(-1,0)</math> を結ぶ直線の勾配 <math>t</math> で変換したものである。実際円周角の定理より <math>\angle xAP = \frac 1 2 \angle xOP = \frac \theta 2</math>より <math>t = \tan \frac{\theta} 2.</math>
被積分関数の周期が <math>\pi</math> の場合は、被積分関数は <math>\sin 2\theta,\cos 2 \theta</math> の有理関数なので、 <math>t = \tan\theta</math> と置換すると計算が楽である。被積分関数が <math>\sin^2\theta,\cos^2\theta,\sin\theta\cos\theta</math> の有理関数となるときもこの範疇に属する。<math>t = \tan\theta</math> と置換したとき、<math>\cos^2\theta = \frac{1}{1+\tan^2\theta}=\frac{1}{1+t^2}</math>, <math>\sin^2\theta = \tan^2 \theta \cos^2 \theta = \frac{t^2}{1+t^2}</math> , <math>\sin\theta \cos\theta = \pm\sqrt{\sin^2\theta \cos^2\theta} = \frac{t}{1+t^2}</math> (<math>\sin\theta \cos\theta</math> と <math>\tan\theta = \frac{\sin\theta}{\cos\theta}</math> の正負は一致するため), <math>d \theta = \frac {dt}{1 + t^2}</math> となる。
例 <math>\int\frac{1}{\sin x \cos x}dx</math> は <math>t = \tan x</math> と置換すると、<math>\int \frac {1}{\sin x \cos x}dx = \int \frac {1+t^2}{t} \frac { dt}{1+t^2} = \ln|\tan x| + C. </math> <math>t = \tan \frac{\theta}{2}</math> と置換してしまうと、<math>\int \frac{1}{\sin x \cos x}\,dx = \int \frac {1+t^2}{t(1-t^2)}\,dt = \ln \left|\frac{t}{1-t^2}\right| + C' = \ln|\tan x| + C </math> と計算量が少し増える。
==== 指数・対数関数の積分 ====
指数関数について
<math>(e^x )' = e^x</math>
が成り立つことを用いると、
<math>\int e^x dx = e^x + C</math>
が得られる。
また、 <math>\left(\frac{a^x}{\ln a}\right)' = a^x</math> なので、 <math>\int a^x \, dx=\frac{a^x}{\ln a}</math> である。
また、<math>\log |x|</math>の
原始関数も求めることが出来る。
{|
|<math>\int \log |x| dx </math>
|<math>=\int (x)' \log |x| dx </math>
|-
|
|<math>=x \log |x| -\int x (\log |x|)' dx </math>
|-
|
|<math>=x \log |x| -\int x \frac 1 x dx </math>
|-
|
|<math>=x \log |x| -\int dx </math>
|-
|
|<math>=x \log |x| -x + C</math>
|}
となる。
有理関数 <math>R(x)</math> に対して、積分 <math>\int R(e^x) \, dx</math> は <math>t = e^x</math> すると <math>\frac{dt}{dx} = e^x = t</math> より
<math>\int R(e^x) \, dx = \int R(t) \frac{dt}{t}.</math>
==== 二次無理関数の積分(発展) ====
有理関数 <math>R(x,y)</math> に対して、積分 <math>\int R(x,\sqrt{ax^2 + bx + c}) \, dx</math> について考えよう。平方根の中身は平方完成することによって、<math>\sqrt{p^2-x^2},\sqrt{x^2+p^2},\sqrt{x^2-p^2}</math>のいずれかの形になる。それぞれの場合について、<math>x = p\sin \theta,x = p\tan\theta,x = \frac{p}{\cos \theta}</math> と変数変換すると三角関数の積分に帰着する。
また、<math>y^2 = ax^2 +bx + c</math> は二次曲線で、特に <math>a>0</math> のときは双曲線となる(<math>y^2 -a\left(x+\frac{b}{2a}\right)^2 = \frac{-b^2 + 4ac}{4a}</math>より<ref>右辺が0のとき双曲線とはならないが、このときは簡単に平方根を外すことが出来るので考える必要はない。</ref>)。このとき、<math>y=\pm \sqrt a x + t</math> すなわち <math>t = \mp \sqrt a x + \sqrt{ax^2 + bx + c}</math> と変換するとうまく計算できる(符号はどちらを選択しても良い)。幾何学的には、双曲線の漸近線に平行で切片が <math>t</math> の直線 <math>y=\pm \sqrt a x + t</math> と双曲線のただ一つの交点 <math>(x,y)</math> を変数 <math>t</math> で表したものである。
例 <math>\int \frac{dx}{\sqrt{x^2-1}} </math> は <math>t = x + \sqrt{ x^2-1}</math> と置換すると、<math>\frac 1 t = x - \sqrt{x^2-1}</math> なので、<math>t + \frac 1 t = 2x</math> すなわち <math>2dx = \left(1 - \frac 1 {t^2}\right)dt</math> また、 <math>t - \frac 1 t = 2\sqrt{x^2-1}</math>.なので、<math>\int \frac{dx}{\sqrt{x^2-1}} = \int \frac{1-\frac{1}{t^2}}{t-\frac 1 t}dt = \int \frac{dt}{t} = \ln |x + \sqrt{x^2-1}| + C </math> である。
ところで、この変換は双曲線 <math>y^2 = x^2 - 1</math> と直線 <math>y = -x + t</math> のただ一つの交点による変換であった。その交点を方程式を解いて <math>t</math> で表すと、<math>x = \frac 1 2 \left(t + \frac 1 t\right), \, y =\frac 1 2 \left(t - \frac 1 t\right)</math> を得る。これは双曲線の媒介変数表示の一つである。また、 <math>t \rightarrow e^t</math> とすると、<math>x = \frac{e^t + e^{ -t} }{2} = \cosh t, \, y = \frac{e^t - e^{-t}}{2} = \sinh t.</math> これは <math>x > 0</math> の部分の双曲線の媒介変数表示である。最右辺は双曲線関数と呼ばれ、三角関数と似た性質を持つ。関数名の <math>\mathrm{h}</math> はhyperbolaに由来する。例えば、双曲線の方程式より得られる <math>\cosh^2 t - \sinh^2 t = 1</math> は <math>\sin^2\theta + \cos^2\theta = 1</math> とよく似ている。例示の不定積分は <math>x = \cosh t</math> と置換しても解くことが出来るが、ほとんど同じことなので省略する。
== 定積分 ==
定積分について、不定積分と同じように以下が成り立つ。
'''定積分の置換積分法'''
<math>\alpha < \beta</math>のとき、閉区間<math>[\alpha, \beta]</math>で微分可能な関数<math>x=g(t)</math>に対し、<math>a=g(\alpha), b=g(\beta)</math>ならば<math>\int_{a}^{b} f(x) \, dx = \int_{\alpha}^{\beta} f(g(t)) g'(t) \, dt </math>
'''定積分の部分積分法'''
<math>\int_{a}^{b} f(x) g'(x) \, dx = \left[ f(x) g(x) \right]^{a}_{b} - \int_{a}^{b} f'(x) g(x) \, dx </math>
*問題
**以下の定積分を求めよ(Hint:5, 6は漸化式を利用する)
**#<math>\int_{0}^{1} |e^x - \frac{3}{2}| \, dx</math>
**#<math>\int_{1}^{0} \frac{x-2}{(3-x)^2} \, dx</math>
**#<math>\int_{-5}^{5} x \sqrt{x^2-9} \, dx</math>
**#<math>\int_{3}^{7} x \log (x^2 - 2) \, dx </math>
**#<math>\int_{0}^{\frac{\pi}{2}} \sin^n x \, dx</math>
**#<math>\int_{0}^{\frac{\pi}{4}} \tan^n x \, dx</math>
=== 特殊な定積分 ===
==== 円 ====
<math>a < b</math> とする。積分 <math>\int_a ^b \sqrt{(x-a)(b-x)}\, dx</math> は <math>y = \sqrt{(x-a)(b-x)}</math> とすると、<math>\left(x-\frac{a+b}{2} \right) + y^2 = \left(\frac{a-b}{2} \right)^2</math> より、被積分関数 <math>y</math> は中心 <math>\frac{a+b}{2}</math> で半径 <math>\frac{b-a}{2}</math>の円周の上半分であり、積分区間もその両端なので、積分の値は半円の面積に等しく、<math>\int_a ^b \sqrt{(x-a)(b-x)} \, dx = \frac{\pi}{2}\left(\frac{b-a}{2}\right)^2</math> である。
==== King Property ====
一般に、関数 <math>f(a-x)</math> のグラフは関数 <math>f(x)</math> のグラフを直線 <math>x = \frac a 2</math> で対称移動したものである。
従って、連続関数 <math>f(x)</math> を区間 <math>\left[\frac{a+b}{2},b\right]</math> で積分した値 <math>\int_{\frac{a+b}{2}}^{b} f(x) \, dx</math> と、連続関数 <math>f(a+b-x)</math> を区間 <math>\left[a,\frac{a+b}{2}\right]</math> で積分した値 <math>\int_{a}^{\frac{a+b}{2}} f(a+b-x)\, dx</math> は等しい:
:<math>\int_{\frac{a+b}{2}}^{b} f(x) \, dx = \int_{a}^{\frac{a+b}{2}} f(a+b-x) \, dx.</math>
この等式は単に、 <math>x \to a+b-x</math> の変数変換によっても導出できる。
この等式より、 <math>\int_a^b f(x) \, dx = \int_{a}^{\frac{a+b}{2}} f(x)\, dx +\int_{\frac{a+b}{2}}^{b} f(x) \, dx = \int_{a}^{\frac{a+b}{2}} [f(x) + f(a+b-x)] \, dx </math> が導かれる。
この公式は、<math>f(x) + f(a+b-x)</math> が簡単な形になる定積分で役に立つ。
例えば、<math>\begin{align}\int_{0}^{\frac{\pi}{2}} \frac{\sin x}{\sin x + \cos x} \, dx &= \int_{0}^{\frac{\pi}{4}} \left[\frac{\sin x}{\sin x + \cos x} +\frac{\sin (\frac{\pi}{2}-x)}{\sin (\frac{\pi}{2}-x) + \cos (\frac{\pi}{2}-x)}\right]\, dx \\
&= \int_{0}^{\frac{\pi}{4}} \left[\frac{\sin x}{\sin x + \cos x} +\frac{\cos x}{\cos x + \sin x}\right]\, dx \\ &= \int_{0}^{\frac{\pi}{4}}dx = \frac{\pi}{4}.\end{align} </math>
King Property の応用例は <math>\int_{-1}^{1} \frac{x^2}{1+e^x} \, dx = \frac 1 3</math> , <math>\int_0^{\frac \pi 4} \ln(1+\tan x)\, dx = \frac \pi 8 \log 2</math> , <math>\int_0^{\frac \pi 2} \log (\sin x) \, dx = -\frac{\pi}{2}\log 2</math>, <math>\int_0^{2\pi} \cos^2\left(\frac{\pi\tan{x}}{2+2\tan{x}}\right)dx=\frac{\pi}{2}</math> などがある。計算してみよ。
=== 定積分と不等式 ===
一般に、連続関数について次のことが成り立つ。
:閉区間<math>[a, b]</math>において<math>f(x) \leqq g(x)</math>ならば、<math>\int_{a}^{b} f(x) \, dx \leqq \int_{a}^{b} g(x) \, dx</math>
:等号成立条件は閉区間<math>[a, b]</math>において恒等的に<math>f(x) = g(x)</math>であること。
*例題
:調和級数の第n部分和が<math>\log(n+1)</math>より大きいことを証明せよ。
*解答
自然数kに対して<math>k \leqq x \leqq k+1</math>のとき<math>\frac{1}{k} \geqq \frac{1}{x}</math>であり、等号は常には成り立たないので<math>\int_{k}^{k+1} \frac{dx}{k} > \int_{k}^{k+1} \frac{dx}{x}</math>である。故に<math>\sum_{k=1}^{n} \int_{k}^{k+1} \frac{dx}{k} > \sum_{k=1}^{n} \int_{k}^{k+1} \frac{dx}{x}</math>。
このとき、(左辺)<math>= \sum_{k=1}^{n} \frac{1}{k} \int_{k}^{k+1} dx = \sum_{k=1}^n \frac{1}{k}</math>より左辺は調和級数の第n部分和であり、(右辺)<math>= \sum_{k=1}^{n} \int_{k}^{k+1} \frac{dx}{x} = \int_{1}^{n+1} \frac{dx}{x} = \left[ \log(x) \right]_{1}^{n+1} = \log(n+1) - \log(1) = \log(n+1)</math>なので、題意は示された。
===発展:広義積分===
'''広義積分'''とは、通常の定積分の範囲を超えて積分区間が無限であったり被積分関数が積分区間内で'''特異点'''(値が定義されなかったり微分不可能だったり不連続であったりする点)を持つ場合に、極限を用いて定義される定積分である。
定積分<math>\int_a^b f(x) \, dx</math>において、<math>b \to \infty</math>の極限を<math>\int_a^\infty f(x) \, dx</math>、<math>a \to -\infty</math>の極限を<math>\int_{-\infty}^b f(x) \, dx</math>のように表す。
例えば、<math>\int_0^\infty e^{-x} dx</math>は以下のように計算できる。
:<math>\int_0^\infty e^{-x} dx</math>
:<math>=\lim_{b \to \infty} \int_0^b e^{-x} dx</math>
:<math>=\lim_{b \to \infty} [-e^{-x}]_0^b </math>
:<math>=\lim_{b \to \infty} (-\frac{1}{e^b} + 1)</math>
:<math>=1</math>
但し、極限操作の前に定積分を計算してよいのは以下の場合に限られる。
:被積分関数が連続(定積分可能)
:積分区間の内部に特異点が存在しない(特異点が端点のみ)
:求めたい積分が(条件)収束する(発散しない)
積分区間の上端が正の無限大で下端が負の無限大のとき、広義積分は以下のように計算される。
:<math>\int_{-\infty}^{\infty} f(x) \, dx = \lim_{a \to -\infty} \lim_{b \to \infty} \int_a^b f(x) \, dx = \lim_{a\to\infty} \int_{-a}^0 f(x)dx + \lim_{b\to\infty} \int_{0}^b f(x)dx</math>
決して<math>\int_{-\infty}^{\infty} f(x) \, dx = \lim_{A \to \infty} \int_{-A}^A f(x) \, dx</math>(対称極限)のように計算してはならない<sup>※</sup>。
例えば、<math>\int_{-\infty}^{\infty} \frac{x}{1+x^2} \, dx</math>は
:<math>\int_{-\infty}^{\infty} \frac{x}{1+x^2} \, dx=\lim_{a\to\infty}\int_{-a}^0 \frac{x}{1+x^2}dx + \lim_{b\to\infty} \int_{0}^b \frac{x}{1+x^2}</math>
:<math>=\lim_{a\to\infty}\left[ -\frac{1}{2} \log(1+x^2) \right]_{-a}^0+\lim_{b\to\infty}\left[ \frac{1}{2} \log(1+x^2) \right]_{0}^b</math>
:<math>=-\frac{1}{2}\lim_{a\to\infty} \log(1+a^2) + \frac{1}{2} \lim_{b\to\infty}\log(1+b^2)</math>
:<math>=\infty-\infty</math>
のように発散するが、対称極限のように計算すると
:<math>\lim_{A \to \infty} \int_{-A}^{A} \frac{x}{1+x^2} \, dx = \lim_{A\to\infty}0 =0</math>
という誤った結果を得る。
この例のように、非積分関数が奇関数であっても<math>\int_{-\infty}^{\infty} f(x) \, dx=0</math>は一般には成り立たない。同様に、偶関数であっても<math>\int_{-\infty}^\infty f(x)\,dx=2\int_0^\infty f(x)\,dx</math>は一般には成り立たない。あくまでも、'''上端と下端を独立に考えて極限を取る'''ことに注意が必要である。
特異点<math>(\lambda, f(\lambda))</math>を含む区間<math>[a, b]</math>での定積分は以下のように計算される。
:<math>\int_a^b f(x)dx = \lim_{c\to\lambda^-} \int_a^c f(x)dx + \lim_{d\to\lambda^+} \int_d^b f(x)dx </math>
先程と同様に、対称極限 <math>\lim_{\varepsilon\to\lambda} \left(\int_a^\varepsilon f(x)dx + \int_\varepsilon^b f(x)dx\right)</math>として計算してはならない。
例えば<math>\int_{-1}^{1} \frac{dx}{x}</math>は
:<math>\int_{-1}^1 \frac{dx}{x}=\lim_{a\to0^-}\int_{-1}^a \frac{dx}{d} + \lim_{b\to0^+} \int_{b}^1 \frac{dx}{x}</math>
:<math>=\lim_{a\to0^-} \left[ \log|x| \right]_{-1}^a + \lim_{b\to0^+} \left[ \log|x| \right]_{b}^1</math>
:<math>=\lim_{a\to0^-} \left( \log |a| - \log 1 \right) + \lim_{b\to0^+} \left( \log 1 - \log b \right)</math>
:<math>=\infty-\infty</math>
と発散するが、対称極限のように計算すると
:<math>\lim_{\varepsilon\to0^+} \left(\int_{-1}^{-\varepsilon} \frac{dx}{x} + \int_\varepsilon^1 \frac{dx}{x} \right)</math>
:<math>=\lim_{\varepsilon\to0^+} \left( \log \varepsilon - \log \varepsilon \right) = 0</math>
と誤った結果を得る。
この例のように、特異点を含む場合は特異点に片側から異なる近づけ方で近づける片側極限の和として考える必要がある。
※広義積分を対称極限として計算した値を'''コーシー主値'''という。物理系への応用では通常の広義積分でなくコーシー主値を採用する場面もある。なお、広義積分が'''収束するならば'''コーシー主値と通常の広義積分は一致する。
例えば、以下が成り立つ。
:<math>\int_{-\infty}^\infty e^{-ax^2} dx = \sqrt{\frac{\pi}{a}}</math>
これは'''ガウス積分'''と呼ばれる有名な結果である。
この値の導出には[[解析学基礎/多変数関数の微積分#広義重積分|重積分やヤコビ行列といった大学範囲の数学]]が良く用いられるが、一応は高校数学のみで証明可能である。後述の演習問題を参照。
この結果は[[高等学校数学B/確率分布と統計的な推測#正規分布|正規分布の確率密度関数]]の導出に用いられる。
:元となる関数は<math>y=e^{-x^2}</math>。
:平均値<math>\mu</math>を軸に持ってくる平行移動をして<math>y=e^{-(x-\mu)^2}</math>。
:分布の広さ(ばらつきの大きさ)を標準偏差<math>\sigma</math>に合わせるため<math>\mu \pm \sigma</math>で極値をとるように変形して<math>y=e^{-\frac{(x-\mu)^2}{2\sigma^2}}</math>
:ガウス積分の結果より<math>\int_{-\infty}^\infty e^{-\frac{(x-\mu)^2}{2\sigma^2}} \, dx = \sqrt{2\pi}\sigma</math>。
:確率密度関数は<math>\int_{-\infty}^{\infty} f(x) \, dx=1</math>を満たすので、元の関数を<math>\sqrt{2\pi}\sigma</math>(定数)で割って<math>y=\frac{1}{\sqrt{2\pi}\sigma} e^{-\frac{(x-\mu)^2}{2\sigma^2}}</math>。
:これは正規分布の特徴を適切に表すため、確率密度関数として適当である。
他に、<math>\int_{-\infty}^{\infty} \sin(x^2) \, dx = \int_{-\infty}^{\infty} \cos(x^2) \, dx = \sqrt{\frac{\pi}{2}}</math>('''フレネル積分''')が有名な結果である。なお、この積分は不定積分を[[w:初等関数]]で表すことができない。
広義積分の応用例として、'''[[解析学基礎/フーリエ変換|フーリエ変換]]'''や'''[[解析学基礎/ラプラス変換|ラプラス変換]]'''が存在する。
:<math>\text{ℱ}[f(x)](\xi):=\int_{-\infty}^\infty f(x)e^{-2\pi{i}\xi{x}}dx</math>
:<math>\text{ℒ}[f(x)](s):=\int_0^\infty f(x)e^{-sx}dx</math>
これらは物理的には[[信号処理]]や[[制御工学]]に応用されているほか、数学では[[関数解析学]]と呼ばれる分野にも関わる概念である。
'''演習問題1'''
次の不定積分を求めよ。
:(1)<math>\int \tan xdx</math>
:(2)<math>\int \frac{1}{\cos ^2x}dx</math>
:(3)<math>\int \log xdx</math>
:(4)<math>\int x\log xdx</math>
:(5)<math>\int x^2\log xdx</math>
:(6)<math>\int x^3\log xdx</math>
:(7)<math>\int x\sin xdx</math>
:(8)<math>\int x^2\sin xdx</math>
:(9)<math>\int x^2e^xdx</math>
:(10)<math>\int \frac{dx}{\sin x}</math>
:(11)<math>\int \frac{dx}{\cos x}</math>
{{解答}}
:(1)<math>-\log |\cos x|+C</math>
:(2)<math>\tan x+C</math>
:(3)<math>x\log x-x+C</math>
:(4)<math>\frac{x^2\log x}{2}-\frac{x^2}{4}+C</math>
:(5)<math>\frac{x^3\log x}{3}-\frac{x^3}{9}+C</math>
:(6)<math>\frac{x^4\log x}{4}-\frac{x^4}{16}+C</math>
:(7)<math>\sin x-x\cos x+C</math>
:(8)<math>2x\sin x+(2-x^2)\cos x+C</math>
:(9)<math>(x^2-2x+2)e^x+C</math>
:(10) <math> t = \tan\frac x 2 </math> と置換すると、
<math>
\begin{align}
\int \frac{dx}{\sin x} &= \int \frac{1+t^2}{2t}\frac{2dt}{1+t^2}\\
&= \int \frac{dt}{t}\\
&= \log |t| + C\\
&= \log \left|\tan\frac x 2 \right| + C.
\end{align}</math>
別解
<math>\begin{align}
\int \frac{dx}{\sin x} &= \int \frac{dx}{2\sin\frac x 2 \cos \frac x 2}\\
&= \int \frac{\cos\frac x 2 dx}{2\sin\frac x 2 \cos^2 \frac x 2}\\
&= \int \frac{(\tan \frac x 2)'dx}{\tan \frac x 2}\\
&= \log \left|\tan\frac x 2 \right| + C.
\end{align}</math>
<math>\begin{align}
\int \frac{dx}{\sin x} &= \int \frac{\sin x}{\sin^2 x} dx\\
&= \int \frac{\sin x}{1- \cos^2 x} dx\\
&= \frac 1 2 \int \frac{\sin x}{1 - \cos x} dx + \frac 1 2 \int \frac{\sin x}{1 + \cos x} dx\\
&= \frac 1 2 \int \frac{(1 - \cos x)'}{1 - \cos x} dx - \frac 1 2 \int \frac{(1 + \cos x)'}{1 + \cos x} dx\\
&= \frac 1 2 \log \left|\frac{1-\cos x}{1+\cos x} \right| + C \\
&= \frac 1 2 \log \frac{1-\cos x}{1 + \cos x} + C.
\end{align}</math>
ちなみに、半角の公式より
<math>\log \left|\tan\frac x 2 \right| = \frac 1 2 \log \left|\frac{\sin^2 \frac x 2}{\cos^2 \frac x 2}\right| = \frac 1 2 \log \frac{1-\cos x}{1 + \cos x} </math>
が成り立つ。
:(11)
<math>
\begin{align}
\int \frac{dx}{\cos x} &= \int \frac{dx}{\sin(x + \frac \pi 2)}\\
&= \log \left|\tan\left(\frac x 2 + \frac \pi 4 \right) \right| + C.
\end{align}</math>
別解
<math> t = \tan\frac x 2 </math> と置換すると、
<math>
\begin{align}
\int \frac{dx}{\cos x} &= \int \frac{1+t^2}{1-t^2} \frac{2dt}{1+t^2}\\
&= \int \frac{2dt}{1-t^2}\\
&= \int \frac{dt}{1+t} + \int \frac{dt}{1-t}\\
&= \log \left|\frac{1+t}{1-t}\right| + C\\
&= \log \left|\frac{1+\tan\frac x 2}{1-\tan\frac x 2}\right| + C.\\
\Big( &= \log \left|\tan\left(\frac x 2 + \frac \pi 4\right) \right| + C \Big)
\end{align}</math>
なお、部分分数分解について、
<math>f(t) = \frac{2}{1-t^2} = \frac{A}{1+t} + \frac{B}{1-t}</math>
とすると、
<math>A = \lim_{t\to -1}(1+t)f(t) = \lim_{t\to -1} \frac{2(1+t)}{1-t^2} = \lim_{t\to -1} \frac{2}{1-t} = 1</math>,
<math>B = \lim_{t\to 1}(1-t)f(t) = \lim_{t\to 1} \frac{2(1-t)}{1-t^2} = \lim_{t\to 1} \frac{2}{1+t} = 1</math>
より係数が求まる。
別解2
<math>\begin{align}
\int \frac{dx}{\cos x} &= \int \frac{\cos x}{\cos^2 x} dx\\
&= \int \frac{\cos x}{1- \sin^2 x} dx\\
&= \frac 1 2 \int \frac{\cos x}{1 - \sin x} dx + \frac 1 2 \int \frac{\cos x}{1 + \sin x} dx\\
&= -\frac 1 2 \int \frac{(1 - \sin x)'}{1 - \sin x} dx + \frac 1 2 \int \frac{(1 + \sin x)'}{1 + \sin x} dx\\
&= \frac 1 2 \log \left|\frac{1+\sin x}{1 - \sin x} \right| + C \\
&= \frac 1 2 \log \frac{1+\sin x}{1 - \sin x} + C.
\end{align}</math>
これも、
<math>\log \left|\tan\left(\frac x 2 + \frac \pi 4\right) \right| = \frac 1 2 \log \frac{1-\cos (x + \frac \pi 2)}{1 + \cos(x + \frac \pi 2)} = \frac 1 2 \log \frac{1+\sin x}{1 -\sin x} </math>
である。
{{証明終わり}}
==積分の応用==
===面積===
ある関数f(x)の原始関数を求める演算は
f(x)とx軸に挟まれた領域の面積を求める演算に等しい。
このことを用いて、ある関数によって作られた領域の面積を求めることが出来る。
[[画像:Integral_x%5E2_0-1.png|right|x^2の0から1までの積分]]
例えば、
<math>
\int _0 ^1 x^2 dx = \frac 1 3
</math>
は、放物線<math> y = x^2</math>、直線<math>x=0</math>、直線<math>x=1</math>の囲む領域の面積に等しい。
'''面積(Ⅰ)'''
曲線<math>y=f(x)</math>と2直線<math>x=a, x=b</math>及びx軸で囲まれた領域の面積は、
閉区間<math>[a, b]</math>で常に<math>f(x) \geqq 0</math>のとき<math>S = \int_{a}^{b} f(x) dx</math>
閉区間<math>[a, b]</math>で常に<math>f(x) \leqq 0</math>のとき<math>S = -\int_{a}^{b} f(x) dx </math>
厳密な証明は既に数学Ⅱで扱った。
2曲線で囲まれた領域の面積についても、同様である。
'''面積(Ⅱ)'''
2曲線<math>y=f(x), y=g(x)</math>と2直線<math>x=a, x=b</math>で囲まれた領域の面積は、
閉区間<math>[a, b]</math>で常に<math>f(x) \geqq g(x)</math>のとき<math>S = \int_{a}^{b} \{ f(x) - g(x) \} dx</math>
y軸まわりで考えた場合も同様である。
'''面積(Ⅲ)'''
2曲線<math>x=h(y), x=i(y)</math>と2直線<math>y=c, y=d</math>で囲まれた領域の面積は、
閉区間<math>[c, d]</math>で常に<math>h(y) \geqq i(y)</math>のとき<math>S = \int_{c}^{d} \{ h(y) - i(y) \} dy</math>
媒介変数表示された曲線の場合、xとyの好きな方で面積の式を考えてパラメータに関する式へと置換積分すれば良い。
{{コラム|ガウス=グリーンの定理|
'''[[解析学基礎/ベクトル解析#積分定理|ガウス=グリーンの定理]]'''という以下のような公式が存在する。
:閉曲面Sで囲まれた空間の領域をV、曲面の外向き法線の方向余弦を(l, m, n)、微分可能な関数をf, g, hとするとき、<math>\iiint_{V} (\frac{\partial f}{\partial x} + \frac{\partial g}{\partial y} + \frac{\partial h}{\partial z}) dV = \iint_{S} (fl+gm+hn) dS </math>
この定理を高校レベルの求積で使えるように調整すると、以下のようになる。
:曲線<math>\begin{cases} x = f(t) \\ y = g(t) \end{cases}</math>について、<math>[a, b]</math>の範囲でtの増加とともに点<math>P(f(t), g(t))</math>がxy平面上を原点中心に反時計回りに動くときに線分<math>\mathrm{OP}</math>が通過する領域の面積は、<math>\int_{a}^{b} \frac{1}{2} \{ x g'(t) - y f'(t) \} dt</math>
この定理を用いると通常の積分で面積を求めるよりも遙かに計算量が少なくて済み、答えのみ書けば良い場合や検算用のツールとしては非常に役立つ。
}}
; '''発展:極座標系における面積'''
[[高等学校数学C/平面上の曲線#極座標|極座標系]]においても、直交座標系と同様に微積分を考えることができる。ここでは、その一例として極方程式で表された曲線における面積について扱う。
'''面積(Ⅳ)'''
曲線<math>r=r(\theta)</math>と2直線<math>\theta = \alpha, \theta = \beta</math>で囲まれた部分の面積は、
<math>S = \int_{\alpha}^{\beta} \frac{1}{2} \{ r(\theta) \}^2 d\theta</math>
*証明
基本的には直交座標の場合と同様である。
:曲線<math>r=r(\theta)</math>と2直線<math>\theta = \alpha, \theta = \tau</math>で囲まれた部分の面積を<math>S(\tau)</math>とおく。
:<math>\Delta \tau > 0</math>として<math>\tau + \Delta \tau</math>の場合を考える。
:閉区間<math>[\tau, \tau + \Delta \tau]</math>における<math>r(\theta)</math>の最小値を<math>m</math>、最大値を<math>M</math>とおくと、微小な扇形の面積を考えることにより<math>\frac{1}{2}m^2\Delta \tau \leqq S(\tau + \Delta \tau) - S(\tau) \leqq \frac{1}{2} M^2 \Delta \tau</math>が得られる。
:上の不等式の各辺を<math>\Delta \tau</math>で割ると、<math>\frac{1}{2}m^2 \leqq \frac{S(\tau + \Delta \tau) - S(\tau)}{\Delta \tau} \leqq \frac{1}{2}M^2</math>
:<math>\Delta \tau \to 0</math>の極限を考えると、
::<math>r(\tau)</math>は連続関数なので<math>\frac{1}{2} m^2 \to \frac{1}{2} \{ r(\tau) \}^2, \frac{1}{2} M^2 \to \frac{1}{2} \{ r(\tau) \}^2</math>
::微分の定義より<math>\frac{S(\tau + \Delta \tau) - S(\tau)}{\Delta \tau} \to S'(\tau)</math>
:よってはさみうちの原理より<math>S'(\tau) = \frac{1}{2} \{ r(\tau) \}^2</math>
:これにて示された。
この公式は、'''<math>\theta</math>が偏角である場合のみ用いることができる'''。もし<math>\theta</math>が偏角ではない場合、<math>\theta</math>と偏角<math>\phi</math>の関係を求めて置換積分する必要がある。
; '''楕円の面積'''
'''楕円の面積'''
楕円<math>\frac{x^2}{a^2}+\frac{y^2}{b^2}=1</math>の面積は、
<math>S=\pi ab</math>
*導出
楕円<math>\frac{x^2}{a^2}+\frac{y^2}{b^2}=1</math>を<math>y</math>について解くと
:<math>y=\pm\frac{b}{a}\sqrt{a^2-x^2}</math>
となる。そのうち<math>y=\frac{b}{a}\sqrt{a^2-x^2}</math>は半楕円(楕円の上半分)を示している。その半楕円の面積を2倍したものが楕円の面積''S''となるので
:<math>S=2\int _{-a} ^a \frac{b}{a}\sqrt{a^2-x^2} = \frac{2b}{a}\int _{-a} ^a \sqrt{a^2-x^2} = \frac{2b}{a} \times \frac{\pi a^2}{2} = \pi ab</math>
となる。
=== 体積 ===
ある立体<math>V_0</math>の<math>x = t</math>における断面積が有限な値で、その値が <math>t</math>の関数<math>S(t)</math>となるとき、この立体を平面<math>x = a</math>,<math>x = b</math>(ただし、<math>a < b</math>)で切り取った領域の体積は、底面積<math>S(t)</math>に極めて小さい高さ<math>dt</math><ref>なお、この時、<math>dt</math>が<math>S(t)</math>に対して積分区間で常に鉛直方向の関係にあることが保証されていなければならない。</ref>の積<math>S(t) \, dt</math>の区間<math>[a,b]</math>における累積であるので、以下の式で表すことができる。
:<math> V = \int_a^{b} S(t) \, dt</math>
(例1)
:<math>O(0,0,0), A(1,0,0), B(1,1,0), C(1,0,2)</math>である三角錐を考える。
:この三角錐を平面<math>x=t (0\leqq t \leqq 1)</math>で切断すると、断面の三角形の各座標は<math>A_t(t,0,0), B_t(t,t,0), C_t(t,0,2t)</math>となる。この時、<math>\triangle{A_t B_t C_t}</math>の面積<math>S(t)=t^2</math>となる。
:これを、区間<math>[0,1]</math>で積分すると、
:<math> V = \int_0^{1} S(t) \, dt = \int_0^{1} t^2 \, dt = \left[ \frac{t^3}{3}\right]_{0}^{1} = \frac{1}{3}</math>となる<ref>三角錐<math>O-ABC</math>は、<math>\triangle{ABC}</math>を底面(<math>S=1</math>)とし、<math>OA</math>を高さ(<math>1</math>)とする三角錐なので、体積は、<math>\frac{1}{3}</math>となり、正しい。</ref>。
(例2)
:設問
:#<math>O(0,0,0), A(1,0,0), B(0,1,0), C(1,1,0), D(0,0,1), E(1,0,1), F(0,1,1), G(1,1,1)</math>である立方体を想定。
:#平面<math>x=t (0\leqq t \leqq 1)</math>で切断し、<math>\square{O_t A_t B_t C_t}</math>を得る。
:#線分<math>O_t A_t , A_t B_t , B_t C_t , C_t O_t </math>に、各々点<math>O_t, A_t, B_t, C_t</math>から、長さ<math>t</math>である点<math>H_t, I_t, J_t, K_t</math>をとり、<math>\square{H_t I_t J_t K_t}</math>を<math>S_t</math>とする。
:#<math>t</math>を区間<math>[0,1]</math>で変化させた時、<math>S_t</math>が通過する部分の体積<math>V</math>を求めよ。なお、<math>S_t</math>が正方形である証明は省略してよい。
:解答
:#<math>S_t</math>の1辺の長さを<math>l</math>とおくと、<math>l^2 = t^2 + (1-t)^2 = 2t^2 - 2t + 1</math>
:#<math>S_t</math>の面積<math>S(t)</math>は<math>l^2</math>であるから、<math>S(t) = 2t^2 - 2t + 1</math>
:#これを、区間<math>[0,1]</math>で積分すると、
:#<math> V = \int_0^{1} S(t) \, dt = \int_0^{1} (2t^2 - 2t + 1) \, dt = \left[ \frac{2t^3}{3} - t^2 +t \right]_{0}^{1} = \frac{2}{3}</math>となる。
; '''回転体の体積'''
<math>y= f(x) (a \le x \le b )</math>
で与えられる曲線をx軸の回りに回転させて作られる立体の体積Vは、
<math>V = \int _a ^b \pi \{ f(x) \}^2 dx</math>
で与えられる。
導出
立体をx軸に垂直であり、x=cを満たす面とx=c+hを満たす面で切ると(hは小さな
定数)、その切断面で挟まれた立体は半径 f(c)の円と半径 f(c+h)の円
ではさまれた立体となる。
しかし、hが極めて小さいとき、この図形は半径f(c),高さhの円柱で
近似できる。
よってこの2つの面に関して、得られた図形の体積は
<math>
h \times \pi (f(c) )^2
</math>
となる。
これを<math>a<c<b</math>満たす全てのcについて足し合わせると、
<math>
S = \int _a ^b \pi ( f(x))^2 dx
</math>
が得られる。
同様に、<math>x = g(y) (c \le x \le d )</math>で与えられる曲線をy軸の回りに回転させて作られる立体の体積Vは、
:<math>V = \int _c ^d \pi \{ g(y) \}^2 dy</math>
で与えられる。
例えば、
<math>
y= x^2 ~(0<x<1)
</math>
をx軸の回りに回転させて得られる図形の体積は、
:図形の絵?
<math>
S = \int_0^1 \pi (x^2)^2 dx
</math>
<math>
=\pi \int_0^1 x^4 dx
</math>
<math>
=\frac {\pi} 5
</math>
となる。
;球の体積
球の体積<math>V=\frac{4}{3}\pi r^3</math>の導出
半径''r''の球は半円<math>y=\sqrt{r^2-x^2}</math>を''x''軸の周りに回転させてつくることができる。
:<math>V=\pi \int_{-r}^r \sqrt{r^2-x^2}^2 dx=\pi \int_{-r}^r (r^2-x^2) dx= \frac{4}{3}\pi r^3</math>
また体積を''r''で微分すると球の表面積<math>S=4\pi r^2</math>が得られる。
; 補:バームクーヘン積分
上記の回転体の公式の導出では「円盤の面積を積分」しているが、「円筒の側面積」を積分しても同様の結果が得られる。この考え方を'''バームクーヘン積分(円筒分割積分)'''と呼ぶ。
バームクーヘン積分による回転体の体積の公式
曲線<math>y=f(x)</math>とx軸、直線<math>x=a, x=b</math>に囲まれた部分をx軸周りに一回転した立体の体積は、
<math>V = 2\pi \int_{a}^{b} x f(x) dx</math>
*導出
:閉区間<math>[x, x + \Delta x](\Delta x > 0)</math>においてx軸と曲線<math>y=f(x)</math>で挟まれた領域をy軸周りに一回転してできる立体の体積を<math>\Delta V</math>とし、同区間におけるf(x)の最小値をm、最大値をMとおく。
:このとき、<math>\pi \{(x + \Delta x)^2 - x^2 \}m \leqq \Delta V \leqq \pi \{(x + \Delta x)^2 - x^2 \}M</math>
:変形すると<math>\pi(2x + \Delta x)m \leqq \frac{\Delta V}{\Delta x} \leqq \pi (2x + \Delta x)M</math>
:<math>\lim_{\Delta x \to + 0} m = \lim_{\Delta x \to + 0} M = f(x)</math>なのではさみうちの原理より<math>\lim_{\Delta x \to + 0} \frac{\Delta V}{\Delta x} = 2 \pi x f(x)</math>
:<math>\therefore \frac{dV}{dx} = 2 \pi x f(x)</math>
:<math>\Delta x < 0</math>でも同様。
:この微分方程式を解く(詳細は[[高等学校理数数学#微分方程式|こちら]])と、
::<math>dV = 2 \pi x f(x) dx</math>
::<math>\int dV = \int 2 \pi x f(x) dx</math>
::<math>V = 2 \pi \int x f(x) dx + C</math>(Cは積分定数)
:閉区間<math>[a, b]</math>で定積分を考えると、<math>V = 2 \pi \int_{a}^{b} x f(x) dx</math>となる。
記述問題で用いる場合、念のため上のように証明しておくと良い。
; 補:パップス・ギュルダンの定理
図形Aを、図形Aと交わらない直線の周りに一回転してできる立体の体積は、V=(Aの重心が描く円の円周長)×(Aの面積)で求まる。
この定理は大学入試においては非常に有名な裏技であり知っておいて損はないが、記述で用いると完全にアウトである。この定理を用いるのは、選択肢形式の問題かどうしても記述の白紙解答を避けたい場合のみに限ろう。(もっとも、重心がわかる図形で出題されるのはごく稀だが。)
{{コラム|一般の軸を中心とした回転体の体積の求め方|
一般に空間中の直線Lの周りの回転体('''斜軸回転体''')の体積は、回転軸Lに垂直な平面で回転体を切った断面積を考えて求めることができる。
ここでは、回転前の図形が座標平面上に存在する場合を扱う。
; '''例題'''
xy平面において<math>L:y=x, C:y=x^2</math>で囲まれた部分を, 直線Lの周りに一回転してできる立体の体積を求めよ。
解答)
:曲線C上の点<math>\mathrm{P}(x, x^2)</math>から直線Lに下ろした垂線の足を<math>\mathrm{H}(t, t)</math>とし、直線L上に点<math>\mathrm{Q}(x, x)</math>をとる。
:与えられた条件より<math>0 \leqq x \leqq 1</math>である。
:このとき<math>\overline{\mathrm{PH}} = \frac{|x-x^2|}{\sqrt{2}} = \frac{x-x^2}{\sqrt{2}} (\because 0 \leqq x \leqq 1 \implies x \geqq x^2)</math>より、
:<math>t = \overline{\mathrm{OH}} = \overline{\mathrm{OQ}} - \overline{\mathrm{HQ}} = \overline{\mathrm{OQ}} - \overline{\mathrm{PH}} = \sqrt{2}x - \frac{x-x^2}{\sqrt{2}} = \frac{x+x^2}{\sqrt{2}}</math>
:<math>\therefore dt = \frac{1+2x}{\sqrt{2}} dx</math>
:tの積分範囲は0→√2なので、xの積分範囲は0→1である。
:故に、<math>V = \pi \int_{0}^{\sqrt{2}} \overline{\mathrm{PH}}^2 dt = \pi \int_{0}^{1} \left(\frac{x-x^2}{\sqrt{2}}\right)^2 \cdot \frac{1+2x}{\sqrt{2}} dx</math>
:<math>= \frac{\pi}{2 \sqrt{2}} \int_{0}^{1} (2x^5-3x^4+x^2) dx = \frac{\sqrt{2} \pi}{4} \left[ \frac{1}{3} x^6 - \frac{3}{5} x^5 + \frac{1}{3} x^3 \right]_{0}^{1} </math>
:<math>= \frac{\sqrt{2} \pi}{60}</math>
この解答を簡潔に纏めると、直線Lをt軸と見做してt軸についての回転体の式を立て、それをx軸についての回転体の式へと置換積分している。
斜軸回転体の体積を求める方法は他にもあるので、簡潔に纏める。
①傘型分割積分
上の例題で考えると、長さ<math>\overline{\mathrm{PQ}}</math>、微小幅<math>\Delta x</math>の部分をLの周りに一回転すると、傘型状の図形(円錐の側面)になる。
その面積(正確には微小体積)を積分すると回転体の体積が出てくる。この考え方を'''傘型分割積分'''という。不足なく論理展開を記述できれば、入試でこの考え方を用いても減点される可能性は低いだろう。
この過程を一般化すると、以下の公式を導くことができる。
:曲線<math>y=f(x)</math>と直線<math>mx+n, x=a, x=b</math>で囲まれた部分を直線<math>y=mx+n</math>の周りで一回転した体積は、
:<math>V = \pi \cos \theta \int_{a}^{b} \{ f(x) - (mx+n) \}^2 dx</math>
:ただし、<math>\tan \theta = m</math>(回転軸がx軸となす角がθである)
この公式は完全に裏技なので、記述問題では(証明なしに)使用しない方が無難である。
例題の別解1)
:傘型分割積分の公式より<math>V=\pi\cos\frac{\pi}{4} \int_0^1 (x^2-x)^2dx=\frac{\pi}{\sqrt{2}} \int_0^1 (x^4-2x^3+x^2)dx </math>
:<math>= \frac{\pi}{\sqrt{2}} \left[ \frac{1}{5}x^5 - \frac{1}{2}x^4 + \frac{1}{3}x^3 \right]_0^1=\frac{\pi}{\sqrt{2}}\left(\frac{1}{5}+\frac{1}{3}-\frac{1}{2}\right)</math>
:<math>=\frac{\pi}{30\sqrt{2}}=\frac{\sqrt{2}\pi}{60}</math>
②回転移動の利用
図形全体を回転移動することにより、回転軸をx軸(もしくはy軸)に重ねることで、強引に回転体の公式に代入する方法。
回転移動には[[高等学校数学C/複素数平面#回転移動|複素数平面の知識]]、[[高等学校数学C/数学的な表現の工夫#一次変換|行列の知識]]のどちらを用いても良い。
この方法では、回転後の図形の方程式が媒介変数表示で出現する場合がある。その場合、回転体の公式を媒介変数についての積分へと置換積分すれば良い。
例題の別解2-1)
:<math>y=f(x)</math>を原点中心に<math>\theta</math>回転した図形の方程式は<math>-x\sin\theta+y\cos\theta=f(x\cos\theta+y\sin\theta)</math>なので、
:<math>-\frac{\pi}{4}</math>回転してLをx軸に重ねるとCの方程式は
:<math>\frac{y-x}{\sqrt{2}}=\left(\frac{x+y}{\sqrt{2}}\right)^2</math>
:<math>\begin{cases}s=x+y \\ t=x-y \end{cases}</math>と置換すると<math>t=\frac{s^2}{\sqrt{2}}</math>であり、
:上下の和と差を考えて<math>\begin{cases} 2x=s+t \\ 2t= s-t \end{cases}</math>
:よって媒介変数表示は
:<math>\begin{cases} x=\frac{s+\frac{s^2}{\sqrt{2}}}{2}=\frac{\sqrt{2}s+s^2}{2\sqrt{2}} \\ y= \frac{s-\frac{s^2}{\sqrt{2}}}{2}=\frac{\sqrt{2}s-s^2}{2\sqrt{2}} \end{cases}</math>
:交点<math>(1,1)</math>は<math>(0, \sqrt{2})</math>に移るので
:<math>V=\pi\int_0^\sqrt{2} y^2dx=\pi\int_0^\sqrt{2} \left(\frac{\sqrt{2}s-s^2}{2\sqrt{2}}\right)^2 \frac{d}{ds}\left(\frac{\sqrt{2}s+s^2}{2\sqrt{2}}\right)ds</math>
:<math>=\frac{\pi}{16}\int_0^\sqrt{2} (s^4-2\sqrt{2}s^3+2s^2)(\sqrt{2}s+1)ds</math>
:<math>=\frac{\pi}{16}\int_0^\sqrt{2} (\sqrt{2}s^5-3s^4+2s^2)ds</math>
:<math>=\frac{\pi}{16}\left[\frac{\sqrt{2}}{6}s^6-\frac{3}{5}s^5+\frac{2}{3}s^3\right]_0^\sqrt{2}</math>
:<math>=\frac{\pi}{16}\left(\frac{4\sqrt{2}}{3}-\frac{12\sqrt{2}}{5}+\frac{4\sqrt{2}}{3}\right)</math>
:<math>=\frac{\sqrt{2}\pi}{4}(\frac{10}{15}-\frac{9}{15})</math>
:<math>=\frac{\sqrt{2}\pi}{60}</math>
例題の別解2-2)
:<math>C</math>上の点<math>(t, t^2)</math>を<math>-\frac{\pi}{4}</math>回転した点を<math>X, Y</math>とする。
:<math>\begin{pmatrix} X \\ Y \end{pmatrix}=\begin{pmatrix} \cos(-\frac{\pi}{4}) & -\sin(-\frac{\pi}{4}) \\ \sin(-\frac{\pi}{4}) & \cos(-\frac{\pi}{4}) \end{pmatrix} \begin{pmatrix} t \\ t^2 \end{pmatrix}</math>
:<math>=\frac{1}{\sqrt{2}}\begin{pmatrix} 1 & 1 \\ -1 & 1 \end{pmatrix}\begin{pmatrix} t \\ t^2 \end{pmatrix}</math>
:<math>=\frac{1}{\sqrt{2}}\begin{pmatrix} t^2+t \\ t^2-t \end{pmatrix}</math>
:交点<math>(1,1)</math>は<math>(0, \sqrt{2})</math>に移るので
:<math>V=\pi\int_0^\sqrt{2} Y^2 dX=\pi\int_0^1 \left( \frac{t^2-t}{\sqrt{2}} \right)^2 \frac{d}{dt}\left(\frac{t^2+t}{\sqrt{2}}\right) dt</math>
:<math>=\frac{\pi}{2\sqrt{2}}\int_0^1 (t^4-2t^3+t^2)(2t+1)dt</math>
:<math>=\frac{\pi}{2\sqrt{2}}\int_0^1 (2t^5-3t^4+t^2)dt</math>
:<math>=\frac{\sqrt{2}\pi}{4}\left[ \frac{1}{3}t^6-\frac{3}{5}t^5+\frac{1}{3}t^3 \right]_0^1</math>
:<math>=\frac{\sqrt{2}\pi}{4}\left(\frac{1}{3}+\frac{1}{3}-\frac{3}{5}\right)</math>
:<math>=\frac{\sqrt{2}\pi}{60}</math>
}}
=== 曲線の長さと運動の道のり ===
==== 曲線の長さ ====
曲線<math>\begin{cases} x=f(t) \\ y=g(t) \end{cases}</math>の長さを考える。
:<math>f(t), g(t)</math>とも2階微分可能(第一次導関数が連続)とする。
:<math>a \leqq t \leqq b</math>として閉区間<math>[a, t]</math>における曲線の長さを<math>s(t)</math>とおく。
:<math>t</math>の増分<math>\Delta t</math>が十分小さいとき、<math>\Delta s \fallingdotseq \sqrt{(\Delta x)^2 + (\Delta y)^2}</math>より<math>\frac{\Delta s}{\Delta t} = \sqrt{(\frac{\Delta x}{\Delta t})^2 + (\frac{\Delta y}{\Delta t})^2}</math>
:<math>\Delta t \to 0</math>のとき、<math>\frac{ds}{dt} = \sqrt{(\frac{dx}{dt})^2 + (\frac{dy}{dt})^2}</math>
:この微分方程式を解くと、
::<math>ds = \sqrt{(\frac{dx}{dt})^2 + (\frac{dy}{dt})^2}dt</math>
::<math>\int ds = \int \sqrt{(\frac{dx}{dt})^2 + (\frac{dy}{dt})^2}dt</math>
::<math>s = \int \sqrt{(\frac{dx}{dt})^2 + (\frac{dy}{dt})^2}dt + C</math>(Cは積分定数)
:ここで<math>s(t)</math>の定義より<math>s(b) - s(a) = \int_{a}^{b} \sqrt{(\frac{dx}{dt})^2 + (\frac{dy}{dt})^2}dt</math>
よって、以下のようになる。
曲線の長さ(Ⅰ)
曲線<math>\begin{cases} x=f(t) \\ y=g(t) \end{cases}</math>の閉区間<math>[a, b]</math>における長さLは、
<math>L = \int_{a}^{b} \sqrt{(\frac{dx}{dt})^2 + (\frac{dy}{dt})^2}dt</math>
曲線の式が<math>y=f(x)</math>で与えられている場合、<math>\begin{cases} x=t \\ y=f(t) \end{cases}</math>と考えて上の公式に代入すると、以下のようになる。
曲線の長さ(Ⅱ)
曲線<math>y=f(x)</math>の閉区間<math>[a, b]</math>における長さLは、
<math>L = \int_{a}^{b} \sqrt{1 + (\frac{dy}{dx})^2}dt</math>
==== 速度と道のり ====
[[高等学校数学III/微分法#速度と加速度|微分法で学んだ]]ように、数直線上を運動する点Pの時刻tにおける位置,速度がそれぞれ<math>x(t), v(t)</math>で与えられるとき、<math>v(t) = \frac{d}{dt} x(t)</math>という関係式が成り立った。微分と積分は逆演算の関係にあるので、<math>x(t) = \int v(t) dt + C</math>(Cは積分定数)という関係も成り立つ。このとき、積分定数Cは初期位置<math>x_0</math>を表す。
点Pが<math>t=a</math>から<math>t=b</math>まで運動するとき、位置の変化量は<math>x(b) - x(a) = \int_{a}^{b} v(t) dt</math>で与えられる。すなわち<math>x(b) = x(a) + \int_{a}^{b} v(t) dt</math>であり、<math>x(a)</math>が初期位置<math>x_0</math>を表すことが確かめられた。
また、上の場合において道のりは<math>\int_{a}^{b} |v(t)| dt</math>と計算できる。位置の変化量と道のりが一致するのは、恒等的に<math>x(t) \geqq 0</math>が成り立つ場合のみである。
平面上の運動も同様である。
なお、加速度は位置の二階微分なので、加速度を二階積分すれば位置が求まる。よって、時刻tにおける加速度が<math>a(t) = a</math>であるときの位置は、<math>x(t) = \int \! \int a(t) dt \; dt = \int (at + v_0) dt = \frac{1}{2}at^2 + v_0 t + x_0</math>である。([[高等学校物理基礎/力学#等加速度直線運動|等加速度直線運動]]の式)
{{コラム|ベクトル関数|変数tの値を決めるとベクトルA(t)の値が一意に定まるとき、A(t)をtの'''[[解析学基礎/ベクトル解析#ベクトル関数|ベクトル関数]]'''という。基本ベクトルを用いると、ベクトル関数は基本ベクトルのスカラー倍の足し算に分解することができる。このとき、基本ベクトルにかかる係数をベクトル関数の'''成分'''という。ベクトル関数の定義より、成分はtの関数になる。
つまり、'''ベクトル関数に関する微積分はその成分をそれぞれ微分/積分すれば良い'''ということがわかる。
例えば、速度を表すベクトル関数<math>\vec{v}(t) = \begin{pmatrix} 2t \\ 3t^2-1 \end{pmatrix}</math>があったとして、初期位置<math>\begin{pmatrix} x_0 \\ y_0 \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 0 \\ 0 \end{pmatrix}</math>とすると時刻tにおける位置は<math>\vec{x}(t) = \int \vec{v}(t) dt = \begin{pmatrix} \int (2t) dt \\ \int (3t^2-1) dt \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} t^2 \\ t^3-t \end{pmatrix}</math>、時刻tにおける加速度は<math>\vec{a}(t)
= \frac{d}{dt} \vec{v}(t) = \begin{pmatrix} \frac{d}{dt}(2t) \\ \frac{d}{dt}(3t^2-1) \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 2 \\ 6t \end{pmatrix}</math>というベクトル関数になる。また、<math>t=0</math>から<math>t=2</math>まで運動したときの位置の変化量ベクトルは<math>\begin{pmatrix} \Delta x \\ \Delta y \end{pmatrix} = \int_{0}^{2} \vec{v}(t) dt = \begin{pmatrix} \int_{0}^{2} (2t) dt \\ \int_{0}^{2} (3t^2-1) dt \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} \left[ t^2 \right]_{0}^{2} \\ \left[ t^3-t \right]_{0}^{2} \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 4 \\ 6 \end{pmatrix}</math>と求まる 。
すなわち、速度・加速度・位置・道のり等に関する問題はベクトル関数の微積分を計算する問題であると言える。
}}
== 区分求積法 ==
これまでに学んだように、積分は微分の逆演算であると同時に、座標平面上での面積計算でもある。この項では、座標平面上の面積計算の方法の一つである区分求積法、および積分法との関連について学ぶ。
[[File:Riemann Integration 1.png|thumb|300px|面積計算]]
右図のようなある曲線<math>y=f(x)</math>がある。単純のため、ここではつねに<math>f(x)>0</math>であるものとして考える。この曲線と、''x''軸、および直線<math>x = a, x = b (a < b)</math>によって囲まれる領域の面積''S''を求める。この面積は[[#面積]]の項で学んだように、
: <math>S = \int_a^b f(x)dx</math>
と積分法を用いて計算することができた。では、これをもう少し原始的な方法で近似的に求めることを考えてみよう。
曲線を含む図形の面積を求めることは簡単ではないが、例えば三角形や長方形、台形などの直線で囲まれた図形の面積を求めることは難しくない。そこで、下図のようにy=f(x)を棒グラフで近似し、長方形の面積の和を計算することで、求めたい面積''S''に近い値を求めることができる。左下のように棒グラフの幅が大きいと誤差も大きいが、棒グラフの幅を狭くすればするほど、すなわち分割数を多くするほど、徐々に求めたい面積の値に近づけることができる。そこで、この区間[''a'',''b'']を''n''等分し、その時の長方形の面積の総和を求め、その後で<math>n \to \infty</math>の極限を考えることにする。このようにして、区間を細かく等分割し、長方形の面積の総和を求めることにより図形の面積を求める方法を、'''区分求積法'''と呼ぶ。
:[[File:Riemann Integration 4.png|350px|棒グラフによる近似]][[File:Riemann Integration 5.png|350px|さらに細かな棒グラフによる近似]]
[[File:Integral numericky obd.svg|thumb|左側で近似]][[File:Somme-superiori.png|thumb|右側で近似]]
<math>y=f(x)</math>を棒グラフで近似するとき、右図のように、長方形の左上の頂点を曲線上に取る方法と、右上の頂点を曲線上に取る方法がある。どちらの方法でも、分割数を大きくすればいずれ求めたい面積に近づくが、まずは左上の頂点を曲線上に取る方法で考えることにする。
ここでは面積を求めたい区間を、単純のため[0, 1]とする。区間[0, 1]を''n''等分するとき、それぞれの長方形の左端のx座標は、
:<math>0, \frac{1}{n}, \frac{2}{n}, \cdots, \frac{n-1}{n}</math>
となる。ここで、一般に第''k''番目の長方形について考えることにする。ただし、いちばん左側の長方形を第0番目とし、いちばん右側の長方形を第''n''-1番目とする。第''k''番目の長方形の左端のx座標は<math>\frac{k}{n}</math>であるから、この長方形の高さは<math>f\left(\frac{k}{n}\right)</math>となり、また長方形の幅は<math>\frac{1}{n}</math>である。そのため、この長方形の面積<math>s_k</math>は、
:<math>s_k = \frac{1}{n}f\left(\frac{k}{n}\right)</math>
となる。したがって、これらの長方形の面積の総和<math>S_n</math>は、
:<math>S_n = \sum_{k = 0}^{n-1} s_k = \frac{1}{n}\sum_{k = 0}^{n-1} f\left(\frac{k}{n}\right)</math>
この<math>S_n</math>は、区間[0, 1]を''n''等分した時の長方形の面積の総和であるが、''n''を大きくすればするほど、次第にもとの面積に近づいていく。したがって、<math>n\to\infty</math>の極限を考え、
:<math>S = \lim_{n\to\infty} S_n = \lim_{n\to\infty} \frac{1}{n}\sum_{k=0}^{n-1} f\left(\frac{k}{n}\right)</math>
となる。このようにして、求めたい面積を計算することができる。さらに、ここでこの区間の面積が積分法により計算できたことから、
:<math>\lim_{n\to\infty} \frac{1}{n}\sum_{k=0}^{n-1} f\left(\frac{k}{n}\right) = \int_0^1f(x)dx</math>
が成り立つ。また、長方形の右上の頂点を曲線上に取る場合は、同様にして
:<math>S = \lim_{n\to\infty} \frac{1}{n}\sum_{k=1}^{n} f\left(\frac{k}{n}\right) = \int_0^1f(x)dx</math>
となる。
区分求積法を計算するとき、'''シグマの範囲の有限個のズレは無視して良い'''。nを無限大に飛ばした極限を考えるとき、有限個あるズレの値は全て0に収束するからである。<br>
つまり、l, mを自然数として<math>\lim_{n \to \infty} \frac{1}{n} \sum_{k=l}^{n-m} f\left(\frac{k}{n}\right) = \int_0^1f(x)dx</math>である。
区分求積法は、より一般には次の式で表される。
:<math>\int_{a}^{b} f(x) dx = \lim_{n \to \infty} \sum_{k=l}^{n-m} f(x_k) \Delta x</math>
:ただし、<math>\Delta x = \frac{b-a}{n}, x_k = a + k\Delta x</math>
証明は先ほどと同様である。<br>
大学においては、積分の定義を微分の逆演算ではなく、この式の右辺のような和('''リーマン和'''という)の極限とする場合がある。数学Ⅱで扱った微分積分学の基本定理は、リーマン和(面積計算)と原始関数(微分の逆演算)という二つの概念を結びつけている定理であると言える。
なお、<math>\lim_{n \to \infty} \sum_{k=an+l}^{bn-m} f\left(\frac{k}{n}\right) = \int_{a}^{b} f(x) dx</math>が成り立つ。
'''演習問題2'''
:次の極限値を求めよ。
:(1) <math>\lim_{n\to\infty} \sum_{k=1}^{n} \frac{1}{n+k} </math>
:(2) <math>\lim_{n\to\infty} \sum_{k=1}^{n} \frac{k}{n^2+k^2} </math>
:(3) <math>\lim_{n\to\infty} \left(\frac{(2n)!}{n!n^n}\right)^\frac{1}{n}</math><ref group="ヒント">対数を取る</ref>
{{解答}}
(1)
<math>\begin{align}
\lim_{n\to\infty} \sum_{k=1}^{n} \frac{1}{n+k} &= \lim_{n\to\infty} \frac 1 n \sum_{k=1}^{n} \frac{1}{1+\frac k n} \\
&= \int_0^1 \frac{dx}{1+x}\\
&= [\log(1+x)]_0^1\\
&= \log 2.
\end{align} </math>
ちなみに、この結果は交代調和級数 <math>\sum_{n=1}^\infty \frac{(-1)^{n-1}}{n} = 1 - \frac 1 2 + \frac 1 3 - \frac 1 4 + \cdots</math> の値を求めることに利用できる。実際
<math>
\begin{align}
\sum_{k=1}^{2n} \frac{(-1)^{k-1}}{k} &= 1 - \frac{1}{2} + \cdots + \frac{1}{2n-1} - \frac{1}{2n} \\
&= 1 + \frac{1}{2} + \cdots + \frac{1}{2n-1} + \frac{1}{2n} - 2\left(\frac{1}{2} + \frac{1}{4} + \cdots + \frac{1}{2n}\right) \\
&= 1 + \frac{1}{2} + \cdots + \frac{1}{2n-1} + \frac{1}{2n} - \left(1 + \frac{1}{2} + \cdots + \frac{1}{n}\right) \\
&= \frac{1}{n+1} + \frac{1}{n+1} + \cdots + \frac{1}{n+n} \\
&= \sum_{k=1}^n \frac{1}{n+k}
\end{align}
</math>
より、
<math>
\lim_{n\to\infty}\sum_{k=1}^{2n} \frac{(-1)^{k-1}}{k} = \lim_{n\to\infty}\sum_{k=1}^n \frac{1}{n+k} = \log 2
</math>
となる。また、
<math>
\lim_{n\to\infty}\sum_{k=1}^{2n+1} \frac{(-1)^{k-1}}{k} = \lim_{n\to\infty}\left(\sum_{k=1}^{2n} \frac{(-1)^{k-1}}{k} + \frac{1}{2n+1}\right) = \log 2.
</math>
従って、<math>\sum_{n=1}^\infty \frac{(-1)^{n-1}}{n} = \log 2 </math> を得る。
(2)
<math>\begin{align}
\lim_{n\to\infty} \sum_{k=1}^{n} \frac{k}{n^2+k^2} &= \lim_{n\to\infty} \frac 1 n \sum_{k=1}^{n} \frac{\frac{k}{n}}{1+\frac{k^2}{n^2}}\\
&= \int_0^1 \frac{xdx}{1+x^2}\\
&= \left[\frac 1 2 \log(1+x^2)\right]_0^1\\
&= \frac 1 2 \log 2.
\end{align}</math>
(3)
<math>\begin{align}
\log \left(\frac{(2n)!}{n!n^n}\right)^\frac{1}{n} &= \frac 1 n \log\left\{\left(\frac{n+1}{n}\right)\left(\frac{n+2}{n}\right)\cdots \left(\frac{n+2}{n}\right) \right\} \\
&= \frac 1 n \sum_{k=1}^n \log\left(1+\frac{k}{n}\right)
\end{align}</math>
となるから、
<math>\begin{align}
\lim_{n\to\infty}\log \left(\frac{(2n)!}{n!n^n}\right)^\frac{1}{n} &= \int_0^1 \log(1+x)dx\\
&= [(1+x)\log(1+x)-(1+x)]_0^1\\
&= 2\log 2 - 1.
\end{align}</math>
したがって、
<math>\begin{align}
\lim_{n\to\infty} \left(\frac{(2n)!}{n!n^n}\right)^\frac{1}{n} &= \frac 4 e.
\end{align}</math>
{{証明終わり}}
== 演習問題 ==
* [[高等学校数学III 積分法/演習問題|不定積分44題]]
* [[/演習問題]]
'''演習問題3'''
第一問、第二問は基本問題である。第三問から第六問は難しい。
'''第一問(ウォリスの積分)'''
:<math>n</math> は非負整数とし、<math>I_n = \int_{0}^{\frac \pi 2}\sin^n x \, dx</math> とする。
:(1) <math>\int_{0}^{\frac{\pi}{2}}\sin^n x \, dx = \int_{0}^{\frac{\pi}{2}}\cos^n x \, dx</math> を示せ。
:(2) <math>I_n = \frac{n-1}{n}I_{n-2}\quad (n \ge 2)</math> を示せ。
:(3) <math>I_n</math> を求めよ。
'''第二問(ベータ関数の特殊値)'''
:<math>m,n</math> は非負整数、<math>\alpha,\beta</math> は <math>\beta > \alpha</math> なる実数とし、<math>I_{m,n} = \int_\alpha^\beta (x-\alpha)^m(\beta - x)^n \, dx</math> とする。
:(1) <math>I_{m,n} = \frac{n}{m+1} I_{m+1,n-1} \quad (n\ge 1) </math> を示せ。
:(2) <math>I_{m,n}</math> を求めよ。
:(3) <math>\int_0^{\frac{\pi}{2}} \sin^{2m+1}\theta \cos^{2n+1}\theta d\theta </math> を求めよ。
'''第三問(ウォリスの公式)'''
:非負整数 <math>n</math> に対し、<math>I_n = \int_{0}^{\frac \pi 2}\sin^n x \, dx</math> とする。必要に応じて第一問の結果を用いてよい。
:(1) <math>n \ge 1</math> のとき <math>1 < \frac{I_{2n}}{I_{2n+1}} < \frac{I_{2n-1}}{I_{2n+1}}</math> を示せ。
:(2) <math> \lim_{n \to \infty} \frac{2 \cdot 2}{1 \cdot 3} \frac{4 \cdot 4}{3 \cdot 5} \cdots \frac{2n \cdot 2n}{(2n-1)(2n+1)} </math> を求めよ。
:(3) <math> I_{2n}I_{2n+1} </math> を求めよ。
:(4) <math> \lim_{n \to \infty} \sqrt n I_{2n+1} </math> を求めよ。
:(5) <math> \lim_{n \to \infty} \frac{2^{2n}(n!)^2}{\sqrt n (2n)!} </math> を求めよ。
'''第四問(スターリングの近似)'''
:数列 <math>\{a_n\}</math> を <math>a_n = \frac{n!}{n^{n+1/2}e^{-n}} </math> で定める。必要に応じて第三問の結果を用いてよい。
:(1) <math> \int_{k-1}^k \log x \, dx </math> の値を台形の面積で評価することによって、整数 <math>k \ge 2</math> について <math> \log k - \frac 1 2 \{\log k - \log(k-1)\} < \int_{k-1}^k \log x \, dx < \log k - \frac{1}{2k} </math> が成り立つことを示せ。
:(2) 正の整数 <math>n</math> について <math> - \frac{1}{4n} < \sum_{k=n+1}^{2n} \log k - \left(2n+\frac 1 2\right)\log 2n + \left(n+\frac 1 2\right)\log n + n < 0 </math> が成り立つことを示せ。
:(3) <math> \lim_{n\to \infty}\frac{a_{2n}}{a_n} </math> を求めよ。
:(4) <math> \lim_{n\to \infty}a_n </math> を求めよ。
'''第五問(バーゼル問題)'''
:非負整数 <math>n</math> に対し、<math>I_n = \int_{0}^{\frac \pi 2}\cos^n x \, dx,\, J_n = \int_{0}^{\frac \pi 2}x^2 \cos^n x \, dx</math> とする。
:(1) <math> n > 0</math> について <math>I_{2n} = n(2n-1)J_{2n-2} - 2n^2 J_{2n}</math> が成り立つことを示せ。
:(2) <math> 0 \le x \le \frac \pi 2</math> について、<math> \frac{2}{\pi}x \le \sin x</math> が成り立つことを示せ。
:(3) <math>J_{2n} \le \frac{\pi^2 I_{2n}}{8(n+1)}</math> を示せ。
:(4) <math>\sum_{k=1}^{\infty} \frac{1}{k^2} </math> を求めよ。
'''第六問(ガウス積分)'''
:非負整数 <math>n</math> に対し、<math>I_n = \int_{0}^{\frac \pi 2}\cos^n x \, dx</math> とする。必要に応じて第三問の結果を用いて良い。
:(1) <math> x > 0 </math> のとき、<math> 1-x^2 < e^{-x^2} < \frac{1}{1+x^2} </math> が成り立つことを示せ。
:(2) <math> \frac \pi 4 < \theta_0 < \frac \pi 2 </math> とする。正の整数 <math>n </math> について <math> \int_0^1 (1-x^2)^n dx < \int_0^{\tan\theta_0} e^{-nx^2}dx < \int_0^{\tan \theta_0} \frac{1}{(1+x^2)^n} dx </math> を示せ。
:(3) <math> \sqrt n I_{2n+1} \le \int_0^\infty e^{-x^2}dx \le \sqrt n I_{2n-2} </math> を示せ。ただし、<math>\int_0^\infty e^{-x^2}dx = \lim_{a \to \infty} \int_0^a e^{-x^2}dx </math> である。
:(4) <math> \int_{0}^\infty e^{-x^2}dx </math> を求めよ。
'''解答'''
{{解答|第一問}}
(1) <math> t = \frac \pi 2 - x </math> と変数変換すると、<math> \int_0^{\frac \pi 2} \sin^n x dx = \int_{\frac \pi 2}^0 \sin^n\left(\frac \pi 2 - t\right)(-dt) = \int_0^{\frac \pi 2} \cos^n t dt </math> となる。
(2)
<math> \begin{align}
\int_0^{\frac \pi 2} \sin^n x dx &= \left[-\sin^{n-1}x \cos x \right]_{0}^{\frac{\pi}{2}} + (n-1)\int_0^{\frac \pi 2} \sin^{n-2} x \cos^2 x dx \\
&= (n-1)\left(\int_0^{\frac \pi 2} \sin^{n-2} x dx - \int_0^{\frac \pi 2} \sin^n x dx \right)\\
\end{align} </math>
従って、<math>I_n = \frac{n-1}{n}I_{n-2}</math> となる。
(3) <math> I_0 = \int_0^{\frac \pi 2} dx = \frac \pi 2,\, I_1 = \int_0^{\frac \pi 2} \sin x dx = 1. </math> よって、<math> n </math> が偶数のときは
<math> \begin{align}
I_n &= \frac{n-1}{n}\frac{n-3}{n-2} \cdots \frac 1 2 I_0 \\
&= \frac{n-1}{n}\frac{n-3}{n-2} \cdots \frac 1 2 \frac \pi 2.
\end{align} </math>
<math> n </math> が奇数のときは、
<math> \begin{align}
I_n &= \frac{n-1}{n}\frac{n-3}{n-2} \cdots \frac 2 3 I_1 \\
&= \frac{n-1}{n}\frac{n-3}{n-2} \cdots \frac 2 3
\end{align} </math>
となる。
{{証明終わり}}
{{解答|第二問}}
(1)
<math>\begin{align}
\int_\alpha^\beta (x-\alpha)^m(\beta - x)^n \, dx &= \left[\frac{1}{m+1}(x-\alpha)^{m+1}(\beta-x)^n\right]_\alpha^\beta + \int_\alpha^\beta\frac{n}{m+1}(x-\alpha)^{m+1}(\beta-x)^{n-1}dx\\
&= \frac{n}{m+1}\int_\alpha^\beta(x-\alpha)^{m+1}(\beta-x)^{n-1}dx.
\end{align} </math>
(2)
<math>\begin{align}
I_{m,n} &= \frac{n}{m+1}I_{m+1,n-1} \\
&= \cdots \\
&= \frac{n}{m+1} \frac{n-1}{m+2} \cdots \frac{1}{m+n} I_{m+n,0} \\
&= \frac{m!n!}{(m+n)!}I_{m+n,0}
\end{align} </math>
ここで、
<math>I_{m+n,0} = \int_\alpha^\beta(x-\alpha)^{m+n} dx = \frac{(\beta-\alpha)^{m+n+1}}{m+n+1} </math>
となる。よって、
<math>I_{m,n} = \frac{m!n!}{(m+n+1)!}(\beta-\alpha)^{m+n+1} </math>
を得る。
(3) <math>t = \sin^2\theta </math> と変数変換すると、 <math>dt = 2\sin\theta\cos\theta d\theta </math> より、
<math>\int_0^{\frac{\pi}{2}} \sin^{2m+1}\theta \cos^{2n+1}\theta d\theta = \frac 1 2 \int_0^1 t^m (1-t)^n dt = \frac{m!n!}{2(m+n+1)!}. </math>
{{証明終わり}}
{{解答|第三問}}
(1) <math>0 < x < \frac \pi 2 </math> のとき、<math>0 < \sin x < 1 </math> だから、<math>\sin^{2n+1} x < \sin^{2n} x < \sin^{2n-1} x </math> となる。これを積分して、<math>I_{2n+1} < I_{2n} < I_{2n-1} </math> を得る。よって、<math>1 < \frac{I_{2n}}{I_{2n+1}} < \frac{I_{2n-1}}{I_{2n+1}}</math> である。
(2) 第一問(3)より、
<math>\begin{align}
\frac{I_{2n}}{I_{2n+1}} &= \frac{2n-1}{2n}\frac{2n-3}{2n-2} \cdots \frac 1 2 \frac \pi 2 \times \frac{2n+1}{2n}\frac{2n-1}{2n-2} \cdots \frac 3 2\\
&= \frac{1 \cdot 3}{2 \cdot 2} \frac{3 \cdot 5}{4 \cdot 4} \cdots \frac{(2n-1)(2n+1)}{2n \cdot 2n} \frac \pi 2
\end{align}</math>
となる。また、<math>\frac{I_{2n-1}}{I_{2n+1}} = \frac{2n+1}{2n} = 1 + \frac{1}{2n} </math> となるから、(1) より、 <math>1 < \frac{I_{2n}}{I_{2n+1}} < \frac{I_{2n-1}}{I_{2n+1}} = 1 + \frac{1}{2n} </math> を得る。これより、<math>\lim_{n\to\infty} \frac{I_{2n}}{I_{2n+1}} = 1 </math> となるから、<math> \lim_{n \to \infty} \frac{2 \cdot 2}{1 \cdot 3} \frac{4 \cdot 4}{3 \cdot 5} \cdots \frac{2n \cdot 2n}{(2n-1)(2n+1)} = \frac \pi 2 </math> を得る。
(3) 第一問(3)より、<math>I_{2n} I_{2n+1} = \frac{1}{2n+1} \frac{\pi}{2} </math> である。
(4) <math>\frac{I_{2n}}{I_{2n+1}} = \frac{I_{2n}I_{2n+1}}{I_{2n+1}^2} = \frac{1}{2n+1}\frac \pi 2 I_{2n+1}^{-2} </math> である。<math>\sqrt{2n+1} I_{2n+1} = \sqrt{\frac{I_{2n+1}}{I_{2n}}\frac{\pi}{2}} </math> より、<math>\lim_{n\to\infty} \sqrt{2n+1} I_{2n+1} = \lim_{n\to\infty} \sqrt{\frac{I_{2n+1}}{I_{2n}}\frac{\pi}{2}} = \sqrt{\frac{\pi}{2}} </math> となる。また、
<math>\begin{align}
\frac{\sqrt \pi}{2} &= \lim_{n\to\infty} \sqrt{\frac{2n+1}{2}} I_{2n+1}\\
&= \lim_{n\to\infty} \sqrt{n}\sqrt{1+\frac{1}{2n}} I_{2n+1}\\
&= \lim_{n\to\infty} \sqrt{n}I_{2n+1}
\end{align} </math>
となるから、<math>\lim_{n\to\infty} \sqrt{n}I_{2n+1} = \frac{\sqrt \pi}{2} </math> を得る。
(5)
<math>\begin{align}
I_{2n+1} &= \frac{2n}{2n+1}\frac{2n-2}{2n-1}\cdots \frac 2 3\\
&= \frac{\{2n(2n-2)\cdots 2\}^2}{(2n+1)!}\\
&= \frac{(2^n n!)^2}{(2n+1)!}
\end{align} </math>
より、
<math>\begin{align}
\lim_{n\to\infty} \sqrt{n}I_{2n+1} &= \lim_{n\to\infty} \frac{\sqrt n}{2n+1} \frac{2^{2n}(n!)^2}{(2n)!}\\
&= \lim_{n\to\infty} \frac{1}{2\sqrt n + \frac{1}{\sqrt n}} \frac{2^{2n}(n!)^2}{(2n)!}\\
&= \lim_{n\to\infty} \frac{1}{2\sqrt n} \frac{2^{2n}(n!)^2}{(2n)!}
\end{align} </math>
となるから、
<math> \lim_{n \to \infty} \frac{2^{2n}(n!)^2}{\sqrt n (2n)!} = \sqrt \pi </math>
を得る。
'''解説'''
<math> \lim_{n \to \infty} \frac{2 \cdot 2}{1 \cdot 3} \frac{4 \cdot 4}{3 \cdot 5} \cdots \frac{2n \cdot 2n}{(2n-1)(2n+1)} = \frac \pi 2 </math> はウォリスの公式と呼ばれる。整数の乗除のみで円周率が計算されるという点で興味深いが、収束はとても遅く実用的ではない。例えば、<math>\pi > 3.05</math> を証明するためには <math>n=8</math> まで計算しなくてはならない<ref><math>2\cdot \frac{2\cdot 2}{1\cdot 3} \cdots \frac{16\cdot 16}{15\cdot 17} =</math> 213084064972800/69850115960625 = 2147483648/703956825 = 3.05058...</ref>。また <math>\pi > 3.14</math> を示すには <math>n=493</math> まで計算する必要がある。ちなみに単調増加性は <math>\frac{2n \cdot 2n}{(2n-1)(2n+1)} = \frac{1}{1-\frac{1}{(2n)^2}} > 1</math> から従う。
また、<math> \lim_{n \to \infty} \frac{2^{2n}(n!)^2}{\sqrt n (2n)!} = \sqrt \pi </math> もウォリスの公式と呼ばれる。これはスターリングの公式やガウス積分を証明するために必要となる。
{{証明終わり}}
{{解答|第四問}}
(1)
[[ファイル:Bounding_the_Integral_of_log_x_with_Trapezoids.svg|サムネイル|log x の台形近似]]
<math>\log x </math> は上に狭義凸な関数だから、<math>\int_{k-1}^k \log x \, dx</math> は、直線 <math>x = k-1,\,x=k</math> と <math>y = \log x</math> の2つの交点を結んだ線分と <math>x</math> 軸、直線 <math>x = k-1,k</math> によって切り取られる台形(図の青の領域)の面積よりも大きい。台形の面積は、<math>\frac 1 2 \{\log k + \log(k-1)\} = \log k - \frac 1 2 \{\log k - \log(k-1)\}</math> である。また、 <math>\int_{k-1}^k \log x \, dx</math> は、<math>y = \log x</math> の任意の接線と <math>x</math> 軸、直線 <math>x = k-1,k </math> によって切り取られる台形(図のピンクの領域)の面積よりも小さい。特に <math>x = k</math> で接線を引くと、その傾きは <math>\frac 1 k</math> だから、接線と直線 <math>x = k-1</math> の交点の <math>y</math> 座標は <math>\log k - \frac 1 k</math> である。よって、この台形の面積は <math>\log k - \frac{1}{2k} </math> となる。従って、
<math> \log k - \frac 1 2 \{\log k - \log(k-1)\} < \int_{k-1}^k \log x \, dx < \log k - \frac{1}{2k} </math>
を得る。
(2)
<math>\log k - \frac 1 2 \{\log k - \log(k-1)\} < \int_{k-1}^k \log x \, dx </math>
より、<math>\log k < \int_{k-1}^k \log x \, dx + \frac 1 2 \{\log k - \log(k-1)\} </math> となる。よって、
<math>\begin{align}
\sum_{k=n+1}^{2n} \log k &< \int_n^{2n} \log x \, dx + \frac 1 2 (\log 2n - \log n) \\
&= \left[x\log x - x\right]_n^{2n} + \frac 1 2 (\log 2n - \log n) \\
&= \left(2n + \frac 1 2\right)\log 2n - \left(n + \frac 1 2 \right) \log n - n
\end{align} </math>
となる。また、<math>\log k > \int_{k-1}^k \log x \, dx + \frac{1}{2k} </math> より、
<math>\begin{align}
\sum_{k=n+1}^{2n} \log k &> \int_n^{2n} \log x \, dx + \sum_{k=n+1}^{2n} \frac{1}{2k} \\
&= \left[x\log x - x\right]_n^{2n} + \frac 1 2 \left(\frac{1}{2n} - \frac{1}{n} + \sum_{k=n}^{2n-1} \frac{1}{k}\right) \\
\end{align}</math>
となる。ここで、<math>\frac 1 x </math> は <math>x > 0 </math> で単調減少だから、
<math>\sum_{k=n}^{2n-1} \frac{1}{k} > \int_n^{2n} \frac{dx}{x} = \log 2n - \log n </math>
となる。従って、
<math>\begin{align}
\sum_{k=n+1}^{2n} \log k &> \left(2n + \frac 1 2\right)\log 2n - \left(n + \frac 1 2 \right) \log n - n - \frac{1}{4n} \\
\end{align}</math>
を得る。
(3)
<math>\begin{align}
\log \frac{a_{2n}}{a_n} &= \log a_{2n} - \log{a_n}\\
&= \log (2n)! - \left(2n + \frac 1 2 \right) \log 2n + 2n - \log n! + \left(n + \frac 1 2 \right)\log n - n\\
&= \sum_{k=n+1}^{2n}\log k - \left(2n + \frac 1 2 \right) \log 2n + \left(n + \frac 1 2 \right)\log n + n
\end{align}</math>
であるから、(2) より <math>-\frac{1}{4n} < \log \frac{a_{2n}}{a_n} < 0</math> となる。従って、
<math>\lim_{n\to\infty} \log \frac{a_{2n}}{a_n} = 0</math>
あるいは、
<math>\lim_{n\to\infty} \frac{a_{2n}}{a_n} = 1 </math>
を得る。
(4)
<math>\begin{align}
\frac{2^{2n}(n!)^2}{\sqrt n (2n)!} &= \frac{2^{2n}}{\sqrt n} \left(\frac{n!}{n^{n+\frac 1 2}e^{-n}}\right)^2 \frac{(2n)^{2n+\frac 1 2}e^{-2n}}{(2n)!} \frac{\left(n^{n+\frac 1 2}e^{-n}\right)^2}{(2n)^{2n+\frac 1 2}e^{-2n}}\\
&= \frac{1}{\sqrt 2} \frac{a_n^2}{a_{2n}}
\end{align}</math>
であるから、
<math>\lim_{n\to\infty} a_n = \lim_{n\to\infty} \sqrt 2 \frac{2^{2n}(n!)^2}{\sqrt n (2n)!} \frac{a_{2n}}{a_n} = \sqrt{2\pi} </math>
を得る。
'''解説'''
(1)は凹関数の定積分の値を台形で評価する問題である。このような台形近似の問題は難関大ではよく見られる。
(4) から <math>\lim_{n\to\infty} \frac{n!}{\sqrt{2\pi} n^{n+1/2}e^{-n}} = 1</math> を得る。これは、<math>n</math> が大きいとき階乗を <math>n! \approx \sqrt{2\pi} n^{n+\frac 1 2} e^{-n}</math> と近似できることを意味する。これがスターリングの近似である。
本問は<math> \lim_{n\to \infty}\frac{a_{2n}}{a_n} </math>を求めてから <math> \lim_{n\to \infty}a_n </math> を求めさせているためやや遠回りに思うかもしれない。数列 <math>\{a_n\}</math> が0以外の実数に収束することを既知とすれば <math> \lim_{n\to \infty}\frac{a_{2n}}{a_n} = \frac{\lim_{n\to \infty}a_{2n}}{\lim_{n\to \infty}a_n} = 1 </math> となることはすぐに分かる。しかし、数列が収束することの条件について高校では詳しく扱わないため、厳密に <math> \lim_{n\to \infty}a_n </math> を求めるためには <math> \lim_{n\to \infty}\frac{a_{2n}}{a_n} </math> を経由する必要がある。一般に、下に有界な単調減少数列は収束するということが知られている<ref>詳しくは [[解析学基礎/実数]]を参照</ref>。これを認めれば、数列 <math>\{a_n\}</math> が収束することは、次のように証明することができる。
<math>\log k > \int_{k-1}^k \log x \, dx + \frac{1}{2k} </math>
より、
<math>\begin{align}
\log n ! &= \sum_{k=2}^n \log k \\
&> \int_{1}^n \log x \, dx + \frac 1 2 \sum_{k=2}^n\frac{1}{k}\\
&> n\log n - n + 1 + \frac 1 2 \int_{2}^{n+1}\frac{dx}{x}\\
&= n\log n - n + 1 + \frac 1 2 \{\log(n+1) - \log 2\}
\end{align} </math>
<math>\begin{align}
\log a_n &= \log n! - \left(n + \frac 1 2\right)\log n + n \\
&> \frac 1 2 \{\log(n+1) - \log n \} + 1 - \frac 1 2 \log 2\\
&> 1 - \frac 1 2 \log 2
\end{align} </math>
となるから、<math> a_n > \frac e \sqrt{2} </math> より下に有界である。
また、
<math> \begin{align}
\log \frac{a_{n+1}}{a_n} &= \log(n+1) - \left(n + \frac 3 2\right)\log(n+1) + n+1 + \left(n+\frac 1 2\right)\log n - n\\
&= \frac 1 2 \{\log(n+1)+\log n\} - \int_n^{n+1} \log x dx\\
&< 0
\end{align} </math>
から、<math> a_{n+1} < a_n. </math> すなわち単調減少であるから、<math>\{a_n\}</math> は収束する。
{{証明終わり}}
{{解答|スターリングの近似の応用}}
スターリングの近似は階乗を含む極限の問題に応用できる。例えば、演習問題2の(2)は、
<math>\begin{align}
\lim_{n\to\infty} \left(\frac{(2n)!}{n!n^n}\right)^\frac{1}{n} &= \lim_{n\to\infty} \left(\frac{\sqrt{2\pi}(2n)^{2n+1/2}e^{-2n}}{\sqrt{2\pi}n^{n+1/2}e^{-n}n^n}\right)^\frac{1}{n}\\
&= \lim_{n\to\infty} \left(\frac{2^{2n + 1/2}}{e^{n}}\right)^\frac{1}{n}\\
&= \frac 4 e.
\end{align}</math>
また、スターリングの近似から二項分布の極限が正規分布に収束することが証明できる。
二項分布の確率分布は、
<math>P(X=k) = \frac{n!}{k!(n-k)!}p^kq^{n-k} </math>
である。スターリングの近似より、
<math>\begin{align}
\frac{n!}{k!(n-k)!}p^kq^{n-k} &\approx \frac{\sqrt{2\pi}n^{n+\frac 1 2}e^{-n}}{\sqrt{2\pi}k^{k+\frac 1 2}e^{-k}\sqrt{2\pi}(n-k)^{n-k+\frac 1 2}e^{-(n-k)}}p^kq^{n-k}\\
&= \frac{1}{\sqrt{2\pi}} \left(\frac{np}{k}\right)^k \left(\frac{nq}{n-k}\right)^{n-k} \sqrt{\frac{n}{k(n-k)}}
\end{align}</math>
となる。ここで、<math>\lim_{n\to\infty} \frac k n = p </math> であるから、 <math>\lim_{n\to\infty}\sqrt{\frac{n}{k(n-k)}} = \lim_{n\to\infty}\sqrt{\frac{1}{n\frac k n (1-\frac k n)}} = \frac{1}{\sqrt{npq}}</math> となる。
次に、<math>\log (1+x) \approx x - \frac 1 2 x^2 </math> の近似式を使うと、
<math>\begin{align}\log \left(\frac{np}{k}\right)^k &= k\log \left(1 - \frac{k-np}{k}\right) \\ &\approx -(k-np) - \frac 1 2 \frac{(k-np)^2}{k} \end{align}</math>
<math>\begin{align}\log \left(\frac{nq}{n-k}\right)^{n-k} &= (n-k)\log \left(1 - \frac{n-k-nq}{n-k}\right) \\ &\approx -(n-k-nq) - \frac 1 2 \frac{(n-k-nq)^2}{n-k} \\
&= -(np-k) - \frac 1 2 \frac{(np-k)^2}{n-k}\end{align}</math>
となる。さらに、
<math>\begin{align}\log \left(\frac{np}{k}\right)^k \left(\frac{nq}{n-k}\right)^{n-k} &\approx -\frac 1 2 \frac{(k-np)^2}{k}-\frac 1 2 \frac{(np-k)^2}{n-k}\\
&= -\frac 1 2 \frac{(k-np)^2}{npq} \left(\frac{npq}{k} + \frac{npq}{n-k}\right)\\
&\approx -\frac 1 2 \frac{(k-np)^2}{npq} \left(\frac{pq}{p} + \frac{pq}{1-p}\right)\\
&= -\frac 1 2 \frac{(k-np)^2}{npq}
\end{align}</math>
となる。最終的に、
<math>P(X=k) \approx \frac{1}{\sqrt{2\pi npq}} e^{-\frac{(k-np)^2}{2npq}}</math>
を得る。これは、平均 <math>\mu = np</math> 分散 <math>\sigma^2 = npq</math> の正規分布である。
{{証明終わり}}
{{解答|第五問}}
(1)
<math>\begin{align}
I_{2n} &= \int_0^{\frac \pi 2} \cos^{2n}x dx \\
&= \left[x\cos^{2n}x\right]_0^{\frac \pi 2} + 2n\int_0^{\frac \pi 2} x\sin x \cos^{2n-1}x dx\\
&= 2n \left[\frac 1 2 x^2 \sin x \cos^{2n-1}x\right]_0^{\frac \pi 2} - n\int_0^{\frac \pi 2} x^2 \{\cos^{2n}x - (2n-1)\sin^2 x \cos^{2n-2}x \} dx \\
&= - n\int_0^{\frac \pi 2} x^2 \{\cos^{2n}x - (2n-1)(1-\cos^2 x) \cos^{2n-2}x \} dx \\
&= n(2n-1)J_{2n-2} -2n^2 J_{2n}.
\end{align} </math>
(2) <math> 0 \le x \le \frac \pi 2</math> で <math>\sin x</math> は上に凸であるから、<math> \frac{2}{\pi}x \le \sin x</math> となる。
(3)
<math>
\begin{align}
J_{2n} &= \int_0^{\frac \pi 2} x^2 \cos^{2n}x dx \le \frac{\pi^2}{4} \int_0^{\frac \pi 2} \sin^2 x \cos^{2n} x dx \\
&= \frac{\pi^2}{4} (I_{2n} - I_{2n+2}) \\
&= \frac{\pi^2}{4} \frac{I_{2n}}{2n+2}
\end{align}
</math>
となる。ただし、最後の行への変形で第一問(2)の漸化式を使った。
(4) (1) より、
<math>
\begin{align}
\frac{1}{n^2} &= \frac{(2n-1)J_{2n-2}}{n I_{2n}} - \frac{2J_{2n}}{I_{2n}}\\
&= \frac{2J_{2n-2}}{I_{2n-2}} - \frac{2J_{2n}}{I_{2n}}
\end{align} </math>
となる。ただし、最後の行への変形で第一問(2)の漸化式を使った。
よって、
<math> \sum_{k=1}^n \frac{1}{k^2} = \sum_{k=1}^n \left(\frac{2J_{2k-2}}{I_{2k-2}} - \frac{2J_{2k}}{I_{2k}}\right) = \frac{2J_{0}}{I_{0}} - \frac{2J_{2n}}{I_{2n}} </math>
となる。ここで、<math>J_0 = \int_0^{\frac \pi 2} x^2 dx = \frac{\pi^3}{24},\, I_0 = \frac \pi 2</math> より、<math>\frac{2J_{0}}{I_{0}} = \frac{\pi^2}{6}. </math> また、<math> 0 < \frac{J_{2n}}{I_{2n}} \le \frac{\pi^2}{8(n+1)} </math> より、<math>\lim_{n\to\infty}\frac{J_{2n}}{I_{2n}} = 0 </math> となるから、<math> \sum_{k=1}^\infty \frac{1}{k^2} = \frac{\pi^2}{6} </math> を得る。
'''解説'''
本問の導出はY. Matsuoka, ''An elementary proof of the formula <math>\textstyle\sum_{k=1}^\infty 1/k^2 = \pi^2/6</math>'', Amer. Math. Monthly '''68''' (1961), no. 5, 485–487.による。
<math>\zeta(s) = \sum_{n=1}^\infty \frac{1}{n^s}</math> はゼータ関数と呼ばれるもので、数論において重要な関数である。この問題から <math>\zeta(2) =\frac{\pi^2}{6}</math> である。また、<math>\zeta(1) = \sum_{n=1}^\infty \frac{1}{n}</math> は調和級数であるため発散する。
<math>s</math> が実数のとき、<math>s > 1</math> で <math>\zeta(s)</math> は収束することを示すことができる。実際、<math>\frac{1}{n^s} < \int_{n-1}^n \frac{dx}{x^s}</math> となるから、<math>\sum_{n=2}^m \frac{1}{n^s} < \int_1^m \frac{dx}{x^s} = \frac{1}{s-1}(1-m^{1-s}) < \frac{1}{s-1}</math> であるから上界を持つ。また、各項は正であるため <math>\sum_{n=1}^m \frac{1}{n^s}</math> は単調増加である。従って、 <math>\zeta(s)</math> は <math>s > 1</math> のとき収束する。
<math>s < 1</math> のとき、<math>\frac{1}{n} < \frac{1}{n^s}</math> から、<math>\sum_{n=1}^m \frac{1}{n} < \sum_{n=1}^m \frac{1}{n^s}</math> となるため発散する。
'''<math>\zeta(4)</math>の値'''
この手法を拡張することで、<math>\zeta(4) = \sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{n^4}</math> の値を求めることができる。<math>K_n = \int_0^{\frac{\pi}{2}} x^4 \cos^{n}x\,dx</math> とする。部分積分より、
<math>J_{2n} = \frac{n(2n-1)}{6}K_{2n-2} - \frac{n^2}{3}K_{2n}</math>
となる。<math>I_{2n}</math> で割って、第一問(2)の式を使うと、
<math>\frac{3}{n^2}\frac{J_{2n}}{I_{2n}} = \frac{K_{2n-2}}{I_{2n-2}} - \frac{K_{2n}}{I_{2n}}</math>
を得る。この和を取ると、
<math>\sum_{n=1}^{N}\frac{3}{n^2}\frac{J_{2n}}{I_{2n}} = \frac{K_{0}}{I_{0}} - \frac{K_{2N}}{I_{2N}}</math>
となる。ここで、本問の(4)より <math> \sum_{m=1}^n \frac{1}{m^2} = \frac{2J_{0}}{I_{0}} - \frac{2J_{2n}}{I_{2n}} </math> と <math> \sum_{m=1}^\infty \frac{1}{m^2} = \frac{2J_{0}}{I_{0}}</math> が成り立つので、
<math> \frac 1 2 \sum_{m=n+1}^\infty \frac{1}{m^2} = \frac{J_{2n}}{I_{2n}} </math>
となる。これを代入して、
<math>\sum_{n=1}^{N}\sum_{m=n+1}^\infty\frac{3}{2n^2 m^2} = \frac{K_{0}}{I_{0}} - \frac{K_{2N}}{I_{2N}}</math>
となる。簡単な計算から、<math>\frac{K_0}{I_0} = \frac{\pi^4}{80}</math> となる。また、 <math> 0 \le x \le \frac \pi 2</math> で <math> \frac{2}{\pi}x \le \sin x</math> となるから、
<math>K_{2n} \le \frac{\pi^4}{16}\int_0^{\frac \pi 2} \sin^4 x \cos^{2n}x \, dx = \frac{\pi^4}{16} (I_{2n}-2I_{2n+2}+I_{2n+4}) = \frac{3\pi^4}{16(2n+2)(2n+4)}I_{2n}</math>
より、<math>\frac{K_{2n}}{I_{2n}} \to 0 (n\to\infty)</math>を得る。よって、
<math>\sum_{n=1}^{\infty}\sum_{m=n+1}^\infty\frac{1}{n^2 m^2} = \frac{\pi^4}{120}</math>
である。さらに、
<math>(\zeta(2))^2 = \left(\sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{n^2}\right)^2 = \sum_{n=1}^{\infty}\sum_{m=1}^{\infty}\frac{1}{n^2m^2} = \sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{n^4} + 2\sum_{n=1}^{\infty}\sum_{m=n+1}^{\infty}\frac{1}{n^2m^2}</math>
である。よって、
<math>\sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{n^4} = \frac{\pi^4}{90} </math>
を得る。
{{証明終わり}}
{{解答|第六問}}
(1) <math>f(x) = e^x - x - 1</math> とすると、<math>f'(x) = e^x - 1 ,\, f''(x) = e^x</math> だから、<math>f(x) </math> は上に狭義凸な関数で最小値は <math>f(0) = 0</math> である。従って、<math>x \neq 0</math> のとき <math>e^x > x + 1</math> である。よって、<math>e^{-x^2} > 1-x^2.</math> また、<math>e^{-x} < \frac{1}{1+x}</math> に <math>x^2</math> を代入して <math>e^{-x^2} < \frac{1}{1+x^2}</math> を得る。
(2) (1) より、<math>(1-x^2)^n < e^{-nx^2} </math> であるから、積分して
<math>\int_0^1 (1-x^2)^n dx < \int_0^1 e^{-nx^2} dx </math>
を得る。同様に、<math>e^{-nx^2} < \frac{1}{(1+x^2)^n}</math> を積分して
<math>\int_0^{\tan \theta_0}e^{-nx^2} dx < \int_0^{\tan\theta_0}\frac{1}{(1+x^2)^n}dx</math>
を得る。<math> \frac \pi 4 < \theta_0 < \frac \pi 2 </math> より、<math>1 < \tan\theta_0</math> である。また、<math>e^{-nx^2} > 0</math> から
<math>\int_0^{1}e^{-nx^2} dx < \int_0^{\tan \theta_0}e^{-nx^2} dx </math>
となる。したがって、
<math> \int_0^1 (1-x^2)^n dx < \int_0^{\tan\theta_0} e^{-nx^2}dx < \int_0^{\tan \theta_0} \frac{1}{(1+x^2)^n} dx </math>
である。
(3) <math>x = \sin \theta</math> と変数変換して、
<math>\begin{align}
\int_0^1 (1-x^2)^n dx &= \int_0^{\frac \pi 2} (1-\sin^2\theta)^n \cos\theta d\theta\\
&= \int_0^{\frac \pi 2} \cos^{2n+1}\theta d\theta\\
&= I_{2n+1}
\end{align} </math>
となる。また、<math>x = \tan\theta</math> と変数変換して、
<math>\begin{align}
\int_0^{\tan \theta_0} \frac{dx}{(1+x^2)^n} &= \int_0^{\theta_0} \cos^{2n}\theta \frac{d\theta}{\cos^2\theta}\\
&= \int_0^{\theta_0} \cos^{2n-2}\theta d\theta
\end{align} </math>
となる。さらに、<math>y = \sqrt n\,x</math> と変数変換すると、
<math>\int_0^{\tan \theta_0} e^{-nx^2}dx = \frac{1}{\sqrt n} \int_0^{\sqrt n\tan\theta_0} e^{-y^2}dy </math>
となる。よって、(2)より
<math> \sqrt n I_{2n+1} < \int_0^{\sqrt n\tan\theta_0} e^{-y^2}dy < \sqrt n \int_0^{\theta_0} \cos^{2n-2}\theta d\theta \le \sqrt n I_{2n-2} </math>
を得る。ここで <math>\theta_0 \to \frac \pi 2 - 0</math> とすると <math>\sqrt n\tan\theta_0 \to \infty</math> だから
<math> \lim_{\theta_0 \to \frac \pi 2 - 0}\int_0^{\sqrt n\tan\theta_0} e^{-y^2}dy = \lim_{a \to \infty}\int_0^{a} e^{-y^2}dy = \int_0^\infty e^{-x^2}dx </math>
である。したがって
<math> \sqrt n I_{2n+1} \le \int_0^\infty e^{-x^2}dx \le \sqrt n I_{2n-2} </math>
を得る。
(4) 第一問(2)の <math>I_{2n-2} = \frac{2n}{2n-1}I_{2n}</math> と、第三問(2)より、<math>\lim_{n\to\infty}\frac{I_{2n}}{I_{2n+1}}=1</math> となる。これと第三問(4)の極限を使用すると
<math>\sqrt n I_{2n-2} = \frac{2n}{2n-1}\cdot\frac{I_{2n}}{I_{2n+1}}\cdot\sqrt n I_{2n+1}\to \frac{\sqrt\pi}{2} \quad(n\to\infty)</math>
を得る。よって(3)とはさみうちの原理より
<math>\int_0^{\infty} e^{-x^2}dx = \frac{\sqrt \pi}{2}.</math>
'''解説'''
(4) の被積分関数は偶関数だから、
<math>\int_{-\infty}^{\infty} e^{-x^2}dx = \sqrt \pi </math>
となる。ここで、 <math>x \to \sqrt a x</math> (<math>a</math> は正の実数)と変換すると、<math> \int_{-\infty}^\infty e^{-ax^2}dx = \sqrt{\frac{\pi}{a}} </math> を得る。これを使うと正規分布の確率密度関数が<math> \frac{1}{\sqrt{2\pi \sigma^2}} \int_{-\infty}^\infty e^{-\frac{(x-\mu)^2}{2\sigma^2}}dx = 1 </math> と正規化されていることが分かる。また、
<math> \begin{align}
\int_{-\infty}^\infty e^{-ax^2}dx &= [xe^{-ax^2}]_{-\infty}^{\infty} + \int_{-\infty}^\infty 2ax^2 e^{-ax^2}dx\\
&= \int_{-\infty}^\infty 2ax^2 e^{-ax^2}dx
\end{align} </math>
より、<math> \int_{-\infty}^\infty x^2 e^{-ax^2}dx = \frac 1 2 \sqrt{\frac{\pi}{a^3}} </math> を得る。よって、正規分布の分散は
<math> \begin{align}
V[X] &= \frac{1}{\sqrt{2\pi \sigma^2}} \int_{-\infty}^\infty (x-\mu)^2 e^{-\frac{(x-\mu)^2}{2\sigma^2}}dx\\
&= \frac{1}{\sqrt{2\pi \sigma^2}} \int_{-\infty}^\infty x^2 e^{-\frac{x^2}{2\sigma^2}}dx\\
&= \sigma^2
\end{align} </math>
となる。
{{証明終わり}}
== 脚注 ==
<references/>
<references group="ヒント"/>
{{DEFAULTSORT:こうとうかつこうすうかくIII せきふんほう}}
[[Category:高等学校数学III|せきふんほう]]
[[カテゴリ:積分法]]
qpg6sim8shkza2swlpehib09c363cxh
ガリア戦記
0
3514
304866
304531
2026-10-18T15:50:25Z
Linguae
449
/* 各巻対訳 */ 進捗
304866
wikitext
text/x-wiki
__notoc__
<!--【2006年4月23日起稿】-->
{{NDC|992|かりあせんき}}
{{NDC|232|かりあせんき}}
*[[古典ラテン語]]>'''ガリア戦記'''
*[[ラテン文学]]>'''ガリア戦記'''
<div style="font-family:Arial Black;font-style:normal;font-size:18pt;color:#990033;text-align:center;background-color:#fee;">C · IVLII · CAESARIS · COMMENTARII · DE · BELLO · GALLICO</div>
:
[[画像:Commentarii_de_Bello_Gallico.jpg|thumb|right|240px|1783年刊行の『ガリア戦記』と『内乱記』]]
[[画像:Lionel Royer - Vercingetorix Throwing down His Weapons at the feet of Julius Caesar.jpg|thumb|right|280px|カエサル(右)と対面する[[w:ウェルキンゲトリクス|ウェルキンゲトリークス]](左)(リオネル=ノエル・ロワイエ [[w:fr:Lionel Royer|(fr)]] 画、1899年)]]
<div style="background-color:#fff; width:70%;">[[w:古代ローマ|古代ローマ]]の政治家・武将・著述家である[[w:ガイウス・ユリウス・カエサル|ガイウス・ユリウス・カエサル4世]]([[w:la:Gaius_Iulius_Caesar|Gaius Iulius Caesar IV]])が[[w:ガリア戦争|ガリア戦争]]([[w:la:Bellum_Gallicum|Bellum Gallicum]])の経過を[[w:古典ラテン語|古典ラテン語]]で著述した[[w:ラテン文学|ラテン文学]]の古典的名著『ガリア戦記』([[wikt:la:Commentarii_de_bello_Gallico|Commentarii de bello Gallico]])の[[ラテン語]]・[[日本語]]対訳。第8巻のみ[[w:アウルス・ヒルティウス|アウルス・ヒルティウス]]([[w:la:Aulus_Hirtius|Aulus Hirtius]])による著作。
刊行当時の書名は、『ガイウス・ユリウス・カエサルの業績(戦績)に関する覚え書』(C. Iulii Caesaris Commentarii Rerum Gestarum)であったと推定され、『'''[[内乱記]]'''』と併せたものであった。
ルネサンス期以降は『ガイウス・ユリウス・カエサルのガリア戦争および内戦に関する覚え書』(C. Iulii Caesaris Commentarii de Bello Gallico et Civili)と題して刊行されていた(右の画像)。</div>
<div style="background-color:#dfd; width:70%;"> 『ガリア戦記』は、ガリア戦争の当事者であるカエサルが、簡潔明晰かつ客観的に描写することにより自らの戦争の正当性を示し<ref name="ガリア戦記">[https://kotobank.jp/word/%E3%82%AC%E3%83%AA%E3%82%A2%E6%88%A6%E8%A8%98-47339 ガリア戦記(がりあせんき)とは? 意味や使い方 - コトバンク]</ref>、自らに対する種々の非難に対する弁明を意図したものである<ref name="ガリア戦記"/>。簡潔雄渾な名文として名高く<ref name="ガリア戦記"/>、第一級の歴史書であるとともにラテン文学の傑作とされている<ref name="ガリア戦記"/>。</div>
<br><br>
<div style="border:solid #999 1px;background:#F8F8F8;max-width:60%;padding:0.5em 1em;margin:0.5em auto;align:left;overflow:auto;text-align:justify;">
『ガリア戦記』冒頭部分の英語圏の人による朗読を聴いてみよう。
Gallia est omnis<!--omnes--> dīvīsa in partēs trēs; quārum ūnam incolunt Belgae, aliam Aquītānī, tertiam quī<!--qui--> ipsōrum linguā Celtae, nostrā Gallī appellantur. Hī omnēs linguā, īnstitūtīs, lēgibus inter sē differunt. Gallōs ab Aquītānīs Garumna flūmen, ā Belgīs Mātrona et Sēquana dīvidit.
::::: [[File:La-cls-de-bello-gallico.ogg]]
::::::([[w:Vorbis|Ogg Vorbis]] 音声ファイル、<strong>長さ 54秒</strong>、155 kbps)
</div>
== 各巻対訳 ==
*[[ガリア戦記 第1巻]](54節){{進捗|25%|2009-07-28}}<u>(作成途上)</u>:[[w:ヘルウェティイ族|ヘルウェティイー族]]との戦役。[[w:アリオウィストゥス|アリオウィストゥス]]との戦役。
*[[ガリア戦記 第2巻]](35節){{進捗|75%|2022-04-25}}:[[w:ベルガエ人|ベルガエ人]]同盟軍との戦役、大西洋岸の征服。
*[[ガリア戦記 第3巻]](29節){{進捗|75%|2022-10-31}}:アルプスの戦い、[[w:アレモリカ|大西洋岸]]および[[w:アクィタニア|アクィータニア]]の平定。 <!--【2007年4月30日から】-->
*[[ガリア戦記 第4巻]](38節){{進捗|75%|2023-07-24}}:[[w:ゲルマニア|ゲルマーニア]]人との戦役。[[w:ブリタンニア|ブリタンニア]]への初めての遠征。
*[[ガリア戦記 第5巻]](58節){{進捗|75%|2024-09-23}}:ブリタンニアへの再遠征。[[w:エブロネス族|エブローネース族]]ら諸部族の蜂起。
*[[ガリア戦記 第6巻]](44節){{進捗|75%|2025-10-26}}:ガッリアと[[w:ゲルマニア|ゲルマーニア]]の社会と風習。エブローネース族らの平定。
*[[ガリア戦記 第7巻]](90節){{進捗|50%|2026-10-18}}:[[w:ウェルキンゲトリクス|ウェルキンゲトリークス]]らが率いるガッリア同盟軍との戦役。
*ガリア戦記 第8巻(55節):<u>(掲載未定)</u>
== 注解編と用例集 ==
[[画像:Vercingétorix se rend à César 1886 HPMotte.jpg|thumb|right|280px|カエサルのもとへ向かう[[w:ウェルキンゲトリクス|ウェルキンゲトリークス]](アンリ=ポール・モット [[w:fr:Henri-Paul Motte|(fr)]] 画、1886年)]]
;注解編
*<span style="background-color:#ffd;">[[/注解編]] {{進捗|25%|2024-09-23}}</span> <small>(2020年3月27日から)</small>
**<span style="background-color:#ffd;">[[/注解編/写本と校訂版|/写本と校訂版]] {{進捗|25%|2025-07-27}}</span><!-- 2020-04-17 --> <small>(2020年4月17日から)</small>
**<span style="background-color:#ffd;">[[/注解編/表記のゆれ|/表記のゆれ]] {{進捗|00%|2026-03-29}}</span><!--(2026-03-29)--> <small>(2026年3月29日から)</small>
*各巻の注解
**<span style="background-color:#ffd;">[[ガリア戦記 第1巻/注解|/第1巻注解]] {{進捗|25%|2020-06-01}}</span> <small>(2020年3月27日から)</small>
**<span style="background-color:#ffd;">[[ガリア戦記 第2巻/注解|/第2巻注解]] {{進捗|25%|2022-05-05}}</span> <small>(2021年8月26日から)</small>
**<span style="background-color:#ffd;">[[ガリア戦記 第3巻/注解|/第3巻注解]] {{進捗|25%|2022-10-27}}</span> <small>(2022年3月27日から)</small>
**<span style="background-color:#ffd;">[[ガリア戦記 第4巻/注解|/第4巻注解]] {{進捗|25%|2023-07-10}}</span> <small>(2022年10月20日から)</small>
**<span style="background-color:#ffd;">[[ガリア戦記 第5巻/注解|/第5巻注解]] {{進捗|25%|2024-09-23}}</span> <small>(2023年07月20日から)</small>
**<span style="background-color:#ffd;">[[ガリア戦記 第6巻/注解|/第6巻注解]] {{進捗|25%|2025-11-05}}</span> <small>(2024年09月09日から)</small>
**<span style="background-color:#ffd;">[[ガリア戦記 第7巻/注解|/第7巻注解]] {{進捗|00%|2026-08-12}}</span> <small>(2025年10月20日から)</small>
;用例集
*<span style="background-colo:#ffd;">[[/用例集]] {{進捗|25%|2020-03-29}}</span><!-- 2020-03-29 -->
;ガリア語
*<span style="background-colo:#ffd;">[[/ガリア語の名前]] {{進捗|00%|2025-12-07}}</span><!-- 2021-09-25 -->
== 付録1 ==
{{Wikipedia|ガリア戦記|ガリア戦記}}
{{Wiktionary|la:Commentarii_de_bello_Gallico|ガリア戦記}}
{{Commons|Category:Gallic_War|ガリア戦争}}
<!--
*[[/あらすじ]]:各巻のあらすじ
-->
*[[/内容目次]]:巻・章・節の内容を記した目次 {{進捗|75%|2011-04-02}}
*[[/参照画像一覧]]:本文で参照した画像一覧 {{進捗|75%|2026-06-14}}
*[[/ガリアの河川]]:本書で言及される河川 {{進捗|00%|2023-01-07}}<!--【2021年11月22日より】-->
*[[/関連年表]]
*[[/対訳語彙集 (羅和)]] - [[/対訳語彙集 (羅英)]]
**[[/人物一覧 (羅和)]]
**[[/部族一覧 (羅和)]]
**[[/地名一覧 (羅和)]] {{進捗|25%|2010-04-07}}
== 付録2 ==
*<span style="background-color:#ffa;">'''[[古代ローマの不定時法]]''' {{進捗|50%|2020-08-24}}</span> <!-- 2016-12-31 -->
*<span style="background-color:#ffb;">[[ガイウス・ユリウス・カエサルの著作/ラテン語の紀年法|/ラテン語の紀年法]] {{進捗|75%|2009-01-12}}</span>
*<span style="background-color:#ffb;">[[ガイウス・ユリウス・カエサルの著作/古代ローマの攻城兵器|/古代ローマの攻城兵器]] {{進捗|00%|2019-08-06}}</span>
*<span style="background-color:#ffffcc;">[[ガイウス・ユリウス・カエサルの著作/古代ローマの軍旗類|/古代ローマの軍旗類]] {{進捗|00%|2022-01-22}}</span><!--【2022年1月22日より】-->
*[[ガイウス・ユリウス・カエサルの著作/通貨・計量単位|/通貨・計量単位]] {{進捗|25%|2020-12-27}}</span>
== 原文出典 ==
{{Wikisource|la:Commentarii de bello Gallico|ガリア戦記}}
{{進捗状況}}
*ラテン語版ウィキソース:[[s:la:Commentarii_de_bello_Gallico|Commentarii de bello Gallico]](ただし、校訂本の出典記載なし! しかも誤植が多いので注意! α系写本の影響が強いと思われる。)
:以下の校訂本を参照しながら、できるだけα系写本の影響を尊重しつつ、原文を修整した。
*トイプナー古典叢書(<small>[[w:la:Bibliotheca_scriptorum_Graecorum_et_Romanorum_Teubneriana|Bibliotheca scriptorum Graecorum et Romanorum Teubneriana]]</small>)
**C. Iulii Caesaris Commentarii Rerum Gestarum, edidit [[w:de:Otto_Seel|Otto Seel]], vol.I. Bellum Gallicum, [[w:la:Lipsia|Lipsiae]], Teubner, 1961.
*:(オットー・ゼール(1907-1975)編。現代の代表的な校訂本。β系写本の影響がやや強い。絶版。)
**C. Iulii Caesaris Commentarii Rerum Gestarum, edidit [[w:de:Wolfgang_Hering|Wolfgang Hering]], vol.I. Bellum Gallicum, Lipsiae, Teubner, 1987.
*: ISBN 978-3-322-00351-5 (ISBN 3-322-00351-5)
*:(ヴォルフガング・ヘーリンク編。最近の校訂本。写本の異同などの情報量、文の完成度はゼール版より劣ると思われる。)
== 参考文献 ==
*ラテン語・英語対訳
**CAESAR: The Gallic War (with an English translation), by H. J. Edwards, [[w:en:Loeb_Classical_Library|Loeb Classical Library]](#72), [[w:en:Harvard_University_Press|Harvard University Press]], ISBN 979-0-674-99080-7
**:(1917年の初版以来、[[w:ローブ・クラシカルライブラリー|ローブ古典叢書]]の一冊として刊行され続けている読み物としての普及版)
*ラテン語・日本語対訳
**『カエサル『ガリア戦記』第I巻』遠山一郎 訳注、大学書林、2009年、ISBN 978-4-475-02446-4
*日本語訳
**『ガリア戦記』 カエサル著、近山金次訳、岩波文庫(岩波書店)、1964年、ISBN 978-4-00-334071-4
**『ガリア戦記』 カエサル著、國原吉之助訳、講談社学術文庫、1994年、ISBN 978-4-06-159127-1
*英語訳
**CAESAR: The Gallic War (A new English translation) by Carolyn Hammond, [[w:en:Oxford World's Classics|Oxford World's Classics(OWC)]], [[w:en:Oxford University Press|Oxford University Press]], First published 1996 ; Reissued 2008、ISBN 978-0-19-954026-6(近年の新訳)
*注釈書
**Gould, H.E. & J.L. Whiteley. C. Iuli Caesaris Commentariorum De Bello Gallico. Liber Quartus. (London: Macmillan & Co Ltd., 1968).;初級者向けの英文注釈がある。
**Caesar: De Bello Gallico V, Edited by R.C.Carrington (再版Bristol Classical Press, 1984), ISBN 0-86292-136-8
etc.
== 関連項目 ==
*<span style="background-color:#ffea;">[[古典ラテン語]] {{進捗|00%|2018-04-18}} </span><!-- 2018-04-18 --> <small>(2018年4月18日から)</small>
*<span style="background-color:#ffe;">[[羅馬史略]] {{進捗|00%|2022-08-18}}</span><!-- 2022-08-18 --> <small>(2022年8月18日から)</small>
== 関連記事 ==
*英語版ウィキソース:[[s:en:Commentaries_on_the_Gallic_War|Commentaries on the Gallic War]](英語訳)
*フランス語版ウィキソース:[[s:fr:La_Guerre_des_Gaules|La Guerre des Gaules]](仏語訳)
:
*ラテン語版ウィクショナリー:[[wikt:la:Commentarii_de_bello_Gallico|wikt:la:Commentarii de bello Gallico]]
== 脚注 ==
<references />
== 外部リンク ==
** [https://scaife.perseus.org/library/ Scaife Viewer | Library]
*** [https://scaife.perseus.org/library/urn:cts:latinLit:phi0448/ Scaife Viewer | Julius Caesar]
**** '''[https://scaife.perseus.org/reader/urn:cts:latinLit:phi0448.phi001.perseus-lat2:1.1.1-1.1.5/ Scaife Viewer | De Bello Gallico]'''
****: [https://scaife.perseus.org/reader/urn:cts:latinLit:phi0448.phi001.perseus-eng2:1.1/ Scaife Viewer | Gallic War]
=== Latein.me ===
*[https://www.latein.me/ Latein-Wörterbuch - Latein.me] (ラテン語-ドイツ語オンラインリソース)
**[https://www.latein.me/text/3/Caesar Caesar - Übersetzungen] (カエサルの著作)
***[https://www.latein.me/text/3/Caesar/33/De+Bello+Gallico+%28I%29/p/0 De Bello Gallico (I)] (第1巻)
***[https://www.latein.me/text/3/Caesar/34/De+Bello+Gallico+%28II%29/p/0 De Bello Gallico (II)] (第2巻)
***[https://www.latein.me/text/3/Caesar/35/De+Bello+Gallico+%28III%29/p/0 De Bello Gallico (III)] (第3巻)
***[https://www.latein.me/text/3/Caesar/36/De+Bello+Gallico+%28IV%29/p/0 De Bello Gallico (IV)] (第4巻)
***[https://www.latein.me/text/3/Caesar/37/De+Bello+Gallico+%28V%29/p/0 De Bello Gallico (V)] (第5巻)
***[https://www.latein.me/text/3/Caesar/38/De+Bello+Gallico+%28VI%29/p/0 De Bello Gallico (VI)] (第6巻)
***[https://www.latein.me/text/3/Caesar/39/De+Bello+Gallico+%28VII%29/p/0 De Bello Gallico (VII)] (第7巻)
***[https://www.latein.me/text/3/Caesar/40/De+Bello+Gallico+%28VIII%29/p/0 De Bello Gallico (VIII)] (第8巻)
<!--[http://www.forumromanum.org/literature/caesar/gallic.html Commentaries on the Gallic War]("corpus scriptorum latinorum" ラテン文学のデジタルライブラリー;英仏訳と地図付)
[http://www.debellogallico.org/index.cgi/bgtext Commentarii de Bello Gallico](ガリア戦記の日本語対訳サイト)
[http://itunes.apple.com/jp/podcast/classics-texts-caesar-de-bello/id183722640 Classics Texts :: Caesar, De Bello Gallico 2 (Study Speed)](『[[ガリア戦記 第2巻]]』の各節を[[w:ITunes|iTunes]]向けに読み上げた音声ファイルのダウンロードサイト)
-->
[[Category:ガリア戦記|*]]
[[Category:ラテン語|かりあせんき]]
[[Category:古典ラテン文学|かりあせんき]]
[[Category:ガイウス・ユリウス・カエサルの著作|かりあせんき]]
be5i85jnedv4zdq0cjdg982m1f9rbud
高校化学 非金属元素
0
10476
304883
299787
2026-10-19T09:53:51Z
Nermer314
62933
304883
wikitext
text/x-wiki
{{pathnav|高等学校の学習|高等学校理科|高等学校化学|[[高等学校 化学|化学]]|pagename=非金属元素|frame=1|small=1}}
== 水素と貴ガス ==
=== 水素 ===
[[ファイル:周期表-H.png|right]]
[[File:H,1.jpg|150px|right]]
'''水素'''は、単体として宇宙で最も多く存在する元素である。地球上では水 <chem>H2O</chem> として最も多く存在する。単体 <chem>H2</chem> は常温常圧で無色無臭の気体である。
;製法
工業的には、石油や天然ガスを高温の水蒸気と反応させて得る。たとえば、メタンと水蒸気の反応は次のようになる。
:<chem>CH4 + H2O -> CO + 3H2</chem>
純粋な水素を得るには、水を電気分解する。
実験室では、塩酸や希硫酸に、亜鉛などの金属を加える。水素は水に溶けにくいため、水上置換で捕集する。
:<chem>Zn + 2HCl -> ZnCl2 + H2</chem>
:<chem>Zn + H2SO4 -> ZnSO4 + H2</chem>
;主な性質・反応
* 空気中で容易に燃焼し、水になる。酸素との混合気体は爆発的に燃焼する。
*: <chem>2H2 + O2 -> 2H2O</chem>
* 高温では還元性をもち、金属の酸化物を還元する。
*: <chem>CuO + H2 ->[\Delta] Cu + H2O</chem>
* 多くの元素と化合して水素化合物をつくる。
*: <chem>H2 + Cl2 -> 2HCl</chem>
*: <chem>N2 + 3H2 <=> 2NH3</chem>
※化学反応式の矢印の上にΔをつけると、加熱が必要な反応であることを示す。
水素化合物の性質は、化合する元素によって異なる。周期表の右側の17族の元素との化合物(<chem>HCl</chem> など)は酸性を示し、15族の <chem>NH3</chem> は塩基性を示す。
水素は、アンモニア、塩化水素、メタノールなどの原料である。
水素は燃焼における生成物が水だけであるので、環境に負荷をかけにくい新しいエネルギー源として注目されており、燃料電池自動車や燃料電池を用いた鉄道車両の開発が進められている。
=== 貴ガス ===
[[File:周期表-希ガス.png|right]]
'''貴ガス'''<ref>希ガス(稀ガス)とも</ref>は、18族元素のヘリウム <chem>He</chem>, ネオン <chem>Ne</chem>, アルゴン <chem>Ar</chem>, クリプトン <chem>Kr</chem>, キセノン <chem>Xe</chem>, ラドン <chem>Rn</chem> の総称である<ref>18族元素にはオガネソン <chem>Og</chem> もあるがこの元素の性質はあまり解明されていない。</ref>。
18族元素は価電子をもたないため、他の原子と結合したり、イオンになることがほとんどない。したがって、化学反応を起こして化合物となることがほとんどない。また、単体の気体として、原子1個で1つの分子を形成している。このような分子を'''単原子分子'''と呼ぶ。
==== 単体 ====
貴ガスには次のような物質がある。これらはいずれも無色無臭で、常温常圧で気体である。また、いずれも融点および沸点が低い。
* '''ヘリウム''' (<chem>He</chem>): 風船や飛行船を浮かせるために用いられる。また、すべての物質の中で、沸点がもっとも低い(<math>-269\ ^\circ\mathrm{C}</math>、<math>4\ \mathrm{K}</math>)ので、超伝導など極低温の実験の際の冷媒に液体ヘリウムが用いられる。
* '''ネオン''' (<chem>Ne</chem>): ネオンサインなどに用いられる。
* '''アルゴン''' (<chem>Ar</chem>): 溶接するときの酸化防止ガスに用いられる。空気中に0.93%存在する。
* '''クリプトン''' (<chem>Kr</chem>): 電球などに用いられる。
* '''キセノン'''(<chem>Xe</chem>): カメラのストロボなどに用いられる。
* ラドン (<chem>Rn</chem>): 放射能があり、放射線治療などに用いられる。
{|align="center" style="border:solid #aaffaa 1px;"
|[[File:He,2.jpg|100px]]||[[File:Ne,10.jpg|100px]]||[[File:Ar,18.jpg|100px]]||[[File:Kr,36.jpg|100px]]||[[File:Xe,54.jpg|100px]]
|-
|style="text-align:center"|ヘリウム
|style="text-align:center"|ネオン
|style="text-align:center"|アルゴン
|style="text-align:center"|クリプトン
|style="text-align:center"|キセノン
|}
貴ガスは原子単体で安定なため、普通は化合物にならない。ガラス管に内圧が低くなるよう貴ガスを封入し電圧をかけることで、それぞれ異なった色の光を放つ([[高等学校物理/原子物理#陰極線|真空放電]]という)。そのため、電球やネオンサインとして用いられるものが多い。
{|align="center" style="border:solid #aaffaa 1px;"
|[[File:HeTube.jpg|100px]]||[[File:NeTube.jpg|100px]]||[[File:ArTube.jpg|100px]]||[[File:KrTube.jpg|100px]]||[[File:XeTube.jpg|100px]]
|-
|style="text-align:center"|ヘリウム
|style="text-align:center"|ネオン
|style="text-align:center"|アルゴン
|style="text-align:center"|クリプトン
|style="text-align:center"|キセノン
|}
==== エキシマ(発展) ====
アルゴン気体とフッ素気体をつめた放電管に放電をすると、不安定なアルゴンフッ素 <chem>ArF</chem> (エキシマ)が一時的に生成し、それが分解する際に波長 <math>193\ \mathrm{nm}</math> の紫外線を放出する。
この光は、[[高校物理 電磁気学#半導体|半導体]]製造の際の光化学反応の光源に使われている。また、キセノンでもハロゲンとのエキシマによってレーザー光が放出されることが知られている。
==== 化合物 ====
貴ガスは、反応性が低く化合物を作らないと考えられていたが、1960年代に、<chem>XePtF6</chem> や <chem>XeF4</chem> などキセノンの化合物の合成に成功した。その後も貴ガスの化合物は合成されたが、ネオンの化合物は未だ合成に成功していない。
キセノンとフッ素ガスを混合した気体に放電または熱を加えてできた、二フッ化キセノン <chem>XeF2</chem> や四フッ化キセノン <chem>XeF4</chem> や六フッ化キセノン <chem>XeF6</chem> の固体は無色である。
== ハロゲン ==
[[ファイル:周期表-ハロゲン.png|右]]
周期表の17族に属する、フッ素 <chem>F</chem>、塩素 <chem>Cl</chem>、臭素 <chem>Br</chem>、ヨウ素 <chem>I</chem>、アスタチン <chem>At</chem> を'''ハロゲン'''という<ref>17族元素にはテネシン <chem>Ts</chem> もあるがこの元素の性質はあまり解明されていない。</ref>。
ハロゲンの原子は最外殻に価電子を7個もっており、1価の陰イオンになりやすく、化合物をつくりやすい。そのため、天然では、ハロゲンは鉱物(ホタル石 <chem>CaF2</chem> 、岩塩 <chem>NaCl</chem> etc.)として存在している場合が多い。または、海水中に陰イオンとしてハロゲンが存在している場合も多い。
=== 単体 ===
ハロゲンの単体はいずれも'''二原子分子'''で有色、有毒である。
沸点(bp)・融点(mp)は、原子番号の大きいものほど高い。
;ハロゲンの単体の酸化力
ハロゲンの単体は酸化力が強い。酸化力の強さは原子番号が小さいほど大きくなる。つまり酸化力の強さは、
:<chem>F2 > Cl2 > Br2 > I2</chem>
である。
たとえば、ヨウ化カリウム水溶液に塩素を加えると、ヨウ素は酸化されて単体となる。
:<chem>2KI + Cl2 -> 2KCl + I2 </chem>
逆に、塩化カリウム水溶液にヨウ素を加えても、ヨウ素よりも塩素のほうが酸化力が強いため、反応は起こらない。
同様に、臭化カリウム水溶液に塩素を通じると臭素が、ヨウ化カリウム水溶液に臭素水を加えるとヨウ素が遊離する。
:<chem>2KBr + Cl2 -> 2KCl + Br2</chem>
:<chem>2KI + Br2 -> 2KBr + I2</chem>
このように、酸化力の強いハロゲンの単体は、それより酸化力の弱いハロゲンの陰イオンを酸化して、単体を遊離させる。原子番号が小さいハロゲンほど原子が小さく、原子核が電子を引きつける力が強いため、電子を受け取って陰イオンになりやすい。これが、酸化力の強さの順の理由である。
また、ハロゲンの各元素ごとの酸化力の違いは、水や水素との反応にも関わる。
最も酸化力のつよいフッ素は、水と激しく反応し、酸素を発生する。
:<chem>2 F2 + 2 H2O -> 4 HF + O2</chem>
{| class="wikitable" style="text-align:center"
! !! フッ素 <chem>F2</chem> !! 塩素 <chem>Cl2</chem> !! 臭素 <chem>Br2</chem> !! ヨウ素 <chem>I2</chem>
|-
! 外観
| [[File:F,9.jpg|180px]] || [[File:Cl,17.jpg|180px]] || [[File:Br,35.jpg|180px]] || [[File:I,53.jpg|170px]]
|-
! 色・状態
| 淡黄色・気体 || 黄緑色・気体 || 赤褐色・液体 || 黒紫色・固体
|-
! 融点 (℃)
| -220 || -101 || -7 || 114
|-
! 沸点 (℃)
| -188 || -34 || 59 || 184
|-
! 酸化力
| colspan="4" | 大 ←―――――――――――――→ 小
|-
! 水との反応
| 激しく反応して<br>酸素 <chem>O2</chem> が発生 || 一部が反応して<br><chem>HCl</chem> などを生じる || 塩素より反応は弱いが、<br>似た反応をする || 水に反応しにくく、<br>水に溶けにくい
|-
! 水との反応式
| <chem>2F2 + 2H2O -> 4HF + O2</chem> || <chem>Cl2 + H2O <=> HCl + HClO</chem> || ||
|-
! 水素との反応
| 低温・暗所でも<br>爆発的に反応 || 光を当てることで<br>爆発的に反応 || 高温にすると反応 || 高温にすると一部が反応
|}
==== フッ素 ====
常温常圧下では淡黄色の気体である。
酸化力が非常に強く、さまざまな物質と激しく反応するため、扱いが難しい。
水や水素との反応物であるフッ化水素(<chem>HF</chem>)が水に溶けたフッ化水素酸(<chem>HF</chem> 水溶液)はガラスを侵すため、ポリエチレン容器に入れ保管する。
==== 塩素 ====
塩素 <chem>Cl2</chem> は常温常圧で黄緑色の有毒な気体である。
塩素は歴史的に衣類の漂白剤として用いられていたが、第一次世界大戦では毒ガス兵器としても用いられた。
===== 製法 =====
工業的:塩化ナトリウム水溶液の電気分解を用いたイオン交換膜法で生成する。
実験室的:
①酸化マンガン(IV)に濃塩酸を加え、加熱する。
: <chem>MnO2 + 4HCl ->[\Delta] MnCl2 + 2H2O + Cl2 ^</chem>
:なお、この反応では塩素と同時に水も生成する。さらに、濃塩酸には[[#塩化水素|#塩化水素]]で見るように揮発性がある。したがって、この反応により得られる気体は純粋な塩素ではなく、水や塩化水素を少量含んでいる。それらを取り除くため、この気体を水と濃硫酸に順番に通す。まず水に通すことで、揮発した塩化水素が吸収される。次いで濃硫酸に通すことで、濃硫酸の吸湿作用により気体中の水が吸収され、純粋な塩素を得ることができる。なお、この水・濃硫酸に通す順番を逆にしてはならない。先に濃硫酸に通した後水に通しても、得られる気体の中には最後に通した水から蒸発した水蒸気が含まれているためである。塩素は空気よりも重いため、濃硫酸を通したあとの塩素を、下方置換で集める。
②塩化ナトリウム、酸化マンガン(IV)に濃硫酸を加えて加熱する。
:<chem>2NaCl + 3H2SO4 + MnO2 ->[\Delta] MnSO4 + 2NaHSO4 + 2H2O + Cl2 ^</chem>
③さらし粉に塩酸を加える。
:<chem>CaCl(ClO).H2O + 2HCl -> CaCl2 + 2H2O + Cl2 ^</chem>
④高度さらし粉に希塩酸を加える。
:<chem>Ca(ClO)2.2H2O + 4HCl -> CaCl2 + 4H2O + 2Cl2 ^</chem>
※化学反応式の右辺の↑は、矢印のすぐ左の生成物が気体であることを示している。
===== 性質 =====
塩素 <chem>Cl2</chem> の水溶液を'''塩素水'''という。塩素は、水に少し溶けて、その一部が'''次亜塩素酸''' <chem>HClO</chem> になる。
:<chem>Cl2 + H2O <=> HCl + HClO</chem>
次亜塩素酸は弱酸で、強い酸化作用がある。これは、塩化物イオンの塩素原子の酸化数が -1 であるのに対し、次亜塩素酸イオン中の塩素原子の酸化数が +1 であるので還元されやすいためである。
塩素水および次亜塩素酸は、漂白剤や殺菌剤として水道やプールの水の殺菌などに広く用いられている。
: <chem>HClO + H+ + 2e- -> H2O + Cl-</chem>
* さらし粉
水酸化カルシウムと塩素を反応させると、さらし粉(主成分:<chem>CaCl(ClO).H2O</chem>)ができる。
:<chem>Ca(OH)2 + Cl2 -> CaCl(ClO).H2O</chem>
また、<chem>Ca(ClO)2.2H2O</chem> を高度さらし粉(次亜塩素酸カルシウム)という。
高度さらし粉は、漂白剤や殺菌剤として利用される。いわゆるカルキはさらし粉のことであり、ドイツ語のクロールカルキを略したものである。
* その他
塩素はさまざまな金属と反応して塩化物となる。たとえば、単体の塩素の中に加熱した銅線を入れると、煙状の塩化銅(II) <chem>CuCl2</chem> を生成する。
: <chem>Cu + Cl2 ->[\Delta] CuCl2</chem>
==== 臭素 ====
臭素(<chem>Br2</chem>)は常温常圧で赤褐色の'''液体'''である。この性質は非金属元素の単体では唯一であり、全元素で見ても他には水銀のみである。水に少し溶け、赤褐色の溶液(臭素水)となる。また、有機溶媒のヘキサンやエタノールに可溶である。
==== ヨウ素 ====
ヨウ素(<chem>I2</chem>)は常温常圧で黒紫色の固体である。'''昇華性'''があり、加熱すると固体から液体にならず直接気体となる。これを利用して、固体のヨウ素の純度を上げることができる。1リットルビーカーに不純物を含むヨウ素の固体を入れ、ガスバーナーで加熱する。ビーカーの上部には冷水を入れた丸底フラスコを置いておく。加熱によりヨウ素のみが気体となり、上昇してフラスコの底部付近で冷やされて固体に戻る。そのため、フラスコ底部に純度の高いヨウ素の針状結晶が析出する。
ヨウ素は水に溶けにくいが、エーテルなどの有機溶媒にはよく溶ける。また、ヨウ化カリウム水溶液にもよく溶けて褐色の溶液となる。
デンプン水溶液にヨウ素を溶かしたヨウ化カリウム水溶液を加えると、青紫色を呈する。このようにデンプンにヨウ素を作用させて青紫色となる反応を'''ヨウ素デンプン反応'''と呼ぶ。これにより、ヨウ素やデンプンの検出ができる。なお、ヨウ素デンプン反応が起こっている容器を加熱すると透明になるが、冷却するとまた青紫色に戻る。
ヨウ素デンプン反応を用いた試薬に、ヨウ化カリウムデンプン紙がある。これは、ろ紙にデンプンとヨウ化カリウムを含ませたものであり、酸化力の強い物質の検出に用いられる。酸化力の強い物質がある場合、ヨウ化カリウムは酸化されてヨウ素の単体となる。
: <chem>2I- -> I2 + 2e-</chem>
このヨウ素がデンプンに作用して、試験紙が青紫色に変化する。
=== 化合物 ===
==== ハロゲン化水素 ====
ハロゲンは水素と化合して'''ハロゲン化水素'''となる。いずれも無色刺激臭の気体である。
また、ハロゲン化水素の水溶液は酸性を示す。
{| class="wikitable" style="text-align:center"
! colspan="2" | 名称 !! フッ化水素 !! 塩化水素 !! 臭化水素 !! ヨウ化水素
|-
| colspan="2" | 組成式 || <chem>HF</chem> || <chem>HCl</chem> || <chem>HBr</chem> || <chem>HI</chem>
|-
| colspan="2" | 沸点(℃) || 20 || <math>-85</math> || <math>-67</math> || <math>-35</math>
|-
| rowspan="4" | 水溶液 || 名称 || フッ化水素酸 || 塩酸 || 臭化水素酸 || ヨウ化水素酸
|-
| 酸の強さ || '''弱酸''' || colspan="3" | 強酸
|-
| +<chem>AgNO3</chem>aq || <chem>AgF</chem>(水に可溶) || <chem>AgCl v</chem>(白) || <chem>AgBr v</chem>(淡黄) || <chem>AgI v</chem>(黄)
|-
| 更に+<chem>NH3</chem>aq || - || 沈澱が再溶解 || 沈澱が少し溶ける || 沈澱は溶けない
|}
ハロゲン化水素の水溶液の酸性は、フッ化水素酸だけが弱酸であり、それ以外は強酸である。
===== フッ化水素 =====
フッ化水素(<chem>HF</chem>)は、ホタル石(主成分 <chem>CaF2</chem>)に濃硫酸を加えて加熱することで、得られる。
: <chem>CaF2 + H2SO4 ->[\Delta] 2HF + CaSO4</chem>
フッ化水素は水によく溶け、弱酸の'''フッ化水素酸'''となる。
フッ化水素酸は、ガラスの主成分である二酸化ケイ素(<chem>SiO2</chem>)を溶かすため、保存するときはポリエチレン容器に保存する。
: <chem>SiO2 + 6HF -> H2SiF6 + 2H2O</chem>
生成物は水とヘキサフルオロケイ酸である。
工業の用途として、ガラスの表面処理や、くもりガラスの製造に、フッ化水素酸が用いられる。
フッ化水素だけ沸点が他のハロゲン化水素よりも高いが、これは、フッ化水素では水素結合が生じるからである。フッ化水素酸だけ弱酸である理由も、同様に水素結合によって電離度が低くなっているためである。
===== 塩化水素 =====
水素と塩素の混合物に光を当てると、激しく反応して塩化水素(<chem>HCl</chem>)を生じる。
塩化水素は、実験室では塩化ナトリウムに濃硫酸を加え加熱することで得られる。(不揮発性酸による揮発性酸の遊離反応)
: <chem>NaCl + H2SO4 ->[\Delta] NaHSO4 + HCl ^</chem>
[[File:Hydrochloric acid ammonia.jpg|right|200px|thumb|塩化水素とアンモニアの反応 <br> 白煙( <chem>NH4Cl</chem> )を生じる]]
塩化水素は水によく溶け、その水溶液は'''塩酸'''である。濃度の濃いものは濃塩酸、薄いものは希塩酸と呼ばれる。塩酸は強酸性を示し、多くの金属と反応して水素を発生する。
:<chem>2HCl + Zn -> ZnCl2 + H2 ^</chem>
また、強酸性であることから、弱酸の塩と反応して塩を生じ、弱酸を遊離させる。
: <chem>HCl + NaHCO3 -> NaCl + H2O + CO2</chem>
塩酸には揮発性があり、常温で一部が気体となる。そのため、アンモニアのついたガラス棒を近づけると、塩酸の気体とアンモニアとが触れて反応し、塩化アンモニウム <chem>NH4Cl</chem>の固体が生じ、白煙が見える。この反応は、塩化水素やアンモニアの検出に用いられる。
: <chem>HCl + NH3 -> NH4Cl</chem>
==== ハロゲン化銀・ハロゲン化鉛 ====
ハロゲン化銀は、フッ化銀を除いて、一般に水に溶けにくい。このため、ハロゲンの化合物の水溶液に、硝酸銀をくわえると、塩化銀、臭化銀、ヨウ化銀などのハロゲン化銀が沈殿する。
{| class="wikitable" style="text-align:center"
! 名称 !! フッ化銀 !! 塩化銀 !! 臭化銀 !! ヨウ化銀 !! !! フッ化鉛(II) !! 塩化鉛(II) !! 臭化鉛(II) !! ヨウ化鉛(II)
|-
| 組成式 || <chem>AgF</chem> || <chem>AgCl</chem> || <chem>AgBr</chem> || <chem>AgI</chem> || || <chem>PbF2</chem> || <chem>PbCl2</chem> || <chem>PbBr2</chem> || <chem>PbI2</chem>
|-
| 色 || 黄色 || 白色 || 淡黄色 || 黄色 || || 白色 || 白色 || 白色 || 黄色
|-
| 水への溶けやすさ || 溶けやすい || 溶けにくい || 溶けにくい || 溶けにくい || || 溶けにくい || 溶けにくい || 溶けにくい || 溶けにくい
|-
| 熱水への溶けやすさ || 溶けやすい || 溶けにくい || 溶けにくい || 溶けにくい || || || 溶ける || 溶ける || 溶ける
|}
塩化銀、臭化銀、ヨウ化銀には感光性があり、生じた沈澱に光を当てると銀が遊離する。また、これらはいずれもチオ硫酸ナトリウム水溶液によく溶ける。アンモニア水への溶けやすさは異なり、塩化銀はよく溶け、臭化銀も一部溶けるが、ヨウ化銀は溶けない。
==== 塩素のオキソ酸 ====
分子中に酸素を含む酸を'''オキソ酸'''という。
塩素のオキソ酸には、酸化数の異なる次の4つがある。
{| class="wikitable" style="text-align:center"
! 名称 !! width=100px | 次亜塩素酸 !! width=100px | 亜塩素酸 !! width=100px | 塩素酸 !! width=100px|過塩素酸
|-
| 化学式 || <chem>HClO</chem> || <chem>HClO2</chem> || <chem>HClO3</chem> || <chem>HClO4</chem>
|-
| 塩素の酸化数 || +1 || +3 || +5 || +7
|-
| 性質 || 殺菌・漂白作用 || 殺菌・漂白作用 || 強力な酸化剤 || 塩は爆発性
|}
右にいくほど強酸性である。
;さらし粉
さらし粉・高度さらし粉(化学式:<chem>CaCl(ClO).H2O</chem>、<chem>Ca(ClO)2.2H2O</chem>)は、次亜塩素酸イオンを含むため、その酸化作用により漂白剤や殺菌剤として広く用いられている。水酸化カルシウムと塩素を反応させることで得られる。
: <chem>Ca(OH)2 + Cl2 -> CaCl(ClO).H2O</chem>
;塩素酸 および 塩素酸塩
::(※ 検定教科書では「酸素」の単元で習う場合が多い。)
塩素酸 <chem>HClO3</chem> は不安定な物質だが、カリウムやナトリウムの塩は安定で、強い酸化剤である。塩素酸カリウム <chem>KClO3</chem> は酸化マンガン(IV)を触媒として用いて加熱すると酸素を発生するため、花火やマッチの火薬中に燃焼を助けるため含まれる。
: <chem>2KClO3 ->[\Delta] 2KCl + 3O2 ^</chem>
==== ハロゲン化物と日用品 ====
ハロゲンの化合物のなかには、日用品の中に広く用いられているものもある。たとえば、フッ素化合物の一つ、ポリテトラフルオロエチレン(テフロン)はフライパンの表面に薄く塗られ、焦げ付きを防ぐ役割を果たしている。また、臭化銀はその感光性を利用して、写真のフィルムに用いられている。塩素は多くのビニル・プラスチック製品に含まれている。また、ヨウ素は消毒剤や うがい薬 に用いられている。
==== まぜるな危険 ====
塩素系の漂白剤やカビ取り剤には、次亜塩素酸ナトリウム <chem>NaClO</chem> が含まれている。これに、塩酸を含む酸性の洗剤を混ぜると、次の反応が起こり、有毒な塩素 <chem>Cl2</chem> が発生する。
:<chem>NaClO + 2HCl -> NaCl + H2O + Cl2</chem>
イオン反応式では、次のように表される。
:<chem>ClO- + Cl- + 2H+ -> Cl2 + H2O</chem>
これは、酸化数が +1 の塩素と -1 の塩素から、酸化数 0 の塩素の単体が生じる反応である。塩素は有毒であるので、これらの洗剤を混ぜて使ってはならない。このため、容器には「まぜるな危険」と表示されている。
== 16族元素 ==
[[ファイル:周期表-OS.png|右]]
16族に属する'''酸素'''(<chem>O</chem>)、'''硫黄'''(<chem>S</chem>)はともに価電子を6個もち、2価の陰イオンになる。ともに単体は同素体をもつ。
=== 酸素 ===
酸素の単体には、原子2個で1つの分子を作っている'''酸素'''(<chem>O2</chem>)と、原子3個で1つの分子を作っている'''オゾン'''(<chem>O3</chem>)がある。いずれも常温では気体であるが、大きく異なった性質を示す。
酸素は空気中に21%含まれる。また、酸素は地殻を構成する主な元素でもあり、地殻のおよそ半分(質量比)は酸素でできている。地殻中では、二酸化ケイ素 <chem>SiO2</chem> やケイ酸塩、金属の酸化物などの化合物として存在する。
==== 単体 ====
[[ファイル:Dioxygen-3D-vdW.png|右|サムネイル|100x100ピクセル|酸素 <chem>O2</chem> 分子]]
'''酸素'''(<chem>O2</chem>)は常温で無色無臭の気体である。
工業的な製法は、液体空気の分留または水の電気分解によって酸素を得る。
実験室で酸素を得るには、過酸化水素水に酸化マンガン(IV)を加えればよい。この反応で酸化マンガン(IV)は触媒として働き、過酸化水素が分解して酸素を発生する。
: <chem>2H2O2 ->[(MnO2)] 2H2O + O2 ^</chem>
※化学反応式の矢印の上に括弧で物質を書くと、その物質がその反応における触媒であることを示す。
また、塩素酸カリウムと酸化マンガン(IV)を混合して加熱してもよい(熱分解反応)。この反応でもやはり酸化マンガン(IV)は触媒として働く。
:<chem>2KClO3 ->[\Delta \, (MnO2)] 2KCl + 3O2 ^</chem>
酸素は水に溶けにくいので、水上置換により捕集する。
液体酸素は磁石に引きつけられる性質(常磁性)をもつ。
==== オゾン ====
[[ファイル:Ozone-3D-vdW.png|右|サムネイル|100x100ピクセル|オゾン <chem>O3</chem> 分子]]
'''オゾン'''(<chem>O3</chem>)は、酸素中で無声放電(音の小さい放電)を行うか、強い紫外線を当てることで生成する。
:<chem>3O2 <=> 2O3</chem>
オゾン <chem>O3</chem> は分解しやすく、分解の際に強い酸化作用を示す。オゾンは淡青色・特異臭の気体で、人体には有害である。漂白作用ももつ。
また、オゾンは酸化作用によりヨウ化カリウムデンプン紙を青変する。
:<chem>2KI + O3 + H2O -> 2KOH + O2 + I2</chem>
このためオゾンは水で湿らせたヨウ化カリウムデンプン紙により検出できる。
大気中には上空25 kmほど(成層圏)にオゾンが豊富に含まれる層があり、オゾン層と呼ばれる。オゾン層は人体に有害な紫外線を吸収する働きがあるが、冷蔵庫などに用いられていたフロンガスがオゾンを分解し、このオゾン層が南極付近で局所的に薄くなる現象(オゾンホール)が発生し、環境問題として取り上げられた。現在ではフロンガスの規制などの対策により回復過程にあり、遅くとも21世紀中には全快する見込みである。([[高等学校 地学]]も参照。)
==== 化合物 ====
酸素の化合物は一般に'''酸化物'''と呼ばれる。酸素はあらゆる物質と化合することができ、一般に金属元素とはイオン結合、非金属元素とは共有結合による酸化物を作る。
酸化物は、酸や塩基との反応の仕方から3通りに分類される。
{| class="wikitable" style="float: right;"
|+酸化物の分類
!酸性酸化物
|<chem>CO2, NO2, SiO2, SO2, SO3, Cl2O7</chem> など
|-
!塩基性酸化物
|<chem>Na2O, MgO, CaO, Fe2O3, CuO, BaO</chem> など
|-
!両性酸化物
|<chem>Al2O3, ZnO</chem>
|-
|}
;酸化物の分類
* '''酸性酸化物''' : 水に溶けて酸性を示したり、塩基と反応して塩を生じる酸化物を、'''酸性酸化物'''という。
* '''塩基性酸化物''' : 水に溶けて塩基性を示したり、酸と反応して塩を生じる酸化物を、'''塩基性酸化物'''という。
* '''両性酸化物''': 酸・塩基のどちらとも反応して塩を生じる酸化物を、'''両性酸化物'''という。
一般に、非金属元素の酸化物は酸性酸化物であり、金属元素の酸化物は塩基性酸化物である。
; 酸性酸化物の例
{| class="wikitable" style="float: right;"
!酸性酸化物
|<chem>CO2, NO2, SiO2, SO2, SO3, Cl2O7</chem> など
|-
|}
二酸化炭素や二酸化硫黄など、非金属元素の酸化物の多くは、酸性酸化物である。
酸性酸化物の定義により、酸性酸化物は水に溶けると、酸性を示す。
: <chem>SO3 + H2O -> H2SO4</chem>
:: ※ <chem>H2SO4</chem>は酸。
また、酸性酸化物は塩基と反応すると、塩をつくる。
: <chem>SO2 + 2NaOH -> Na2SO3 + H2O</chem>
:: ※ <chem>Na2SO3</chem>は塩。
二酸化炭素(<chem>CO2</chem>)は塩基と反応して塩を生じる。
:<chem>CO2 + Ca(OH)2 -> CaCO3 + H2O</chem>
:: ※ <chem>CaCO3</chem>は塩。
二酸化窒素(<chem>NO2</chem>)は水に溶けて硝酸(<chem>HNO3</chem>)となる。
: <chem>3NO2 + H2O -> 2HNO3 + NO</chem>
一般に、酸性酸化物が水と反応するとオキソ酸が生じる。
; 塩基性酸化物の例
{| class="wikitable" style="float: right;"
!塩基性酸化物
|<chem>Na2O, MgO, CaO, Fe2O3, CuO, BaO</chem> など
|-
|}
水に溶けて塩基性を示したり、酸と反応して塩を生じる酸化物を、'''塩基性酸化物'''という。
:<chem>Na2O + H2O -> 2NaOH</chem>
:: ※ <chem>NaOH</chem>は塩基。
'''金属元素の酸化物の多くは、塩基性酸化物である'''。酸化カルシウムや酸化ナトリウムなどが、塩基性酸化物である。
酸化カルシウム(<chem>CaO</chem>)は水に溶けて水酸化カルシウム(<chem>Ca(OH)2</chem>)となる。
:<chem>CaO + H2O -> Ca(OH)2</chem>
また、これは酸と反応して塩を生じる。
: <chem>CaO + 2HCl -> CaCl2 + H2O</chem>
; 両性酸化物の例
{| class="wikitable" style="float: right;"
!両性酸化物
|<chem>Al2O3, ZnO</chem>
|-
|}
酸・塩基のどちらとも反応して塩を生じる酸化物を、両性酸化物という。
酸化アルミニウム(<chem>Al2O3</chem>)や酸化亜鉛(<chem>ZnO</chem>)は、酸とも塩基とも反応して塩を生じる。
: <chem>Al2O3 + 6HCl -> 2AlCl3 + 3H2O</chem>
:<chem>Al2O3 + 2NaOH + 3H2O -> 2Na[Al(OH)4]</chem>
下の式の生成物は、テトラヒドロキシドアルミン酸ナトリウムである。酸化亜鉛も同様に反応する。
:<chem>ZnO + 2HCl -> ZnCl2 + H2O</chem>
:<chem>ZnO + 2NaOH + H2O -> Na2[Zn(OH)4]</chem>
==== オキソ酸 ====
酸性酸化物を水に溶かすと、水と反応して酸を生じる。
塩素の酸化物には、いくつかの種類があるが、酸を生じる反応の一例として、次の反応がある。
:<chem>Cl2O7 + H2O -> 2HClO4</chem>
リンの酸性酸化物も、水と反応し、酸を生じる。
:<chem>P4O10 + 6H2O -> 4H3PO4</chem>
このように、酸性酸化物を水と反応させて得られる酸は、分子中に酸素原子と水素原子を含むものが多い。塩素の場合は過塩素酸 <chem>HClO4</chem> などが、窒素の場合は亜硝酸(<chem>HNO2</chem>)や硝酸(<chem>HNO3</chem>)などが得られる。いずれも、分子式からわかるように、分子中に酸素原子を含んでいる。
{| class="wikitable" style="float: right;"
! style="text-align: center;" |化学式
!名称
!酸の強さ
!<chem>Cl</chem>の酸化数
|-
|<chem>HClO4</chem>
|過塩素酸
|つよい側
|+7
|-
|<chem>HClO3</chem>
|塩素酸
|
|+5
|-
|<chem>HClO2</chem>
|亜塩素酸
|
|+3
|-
|<chem>HClO</chem>
|次亜塩素酸
|よわい側
|+1
|-
|}
一般に、分子中に酸素原子を含む酸のことを'''オキソ酸'''という。オキソ酸の分子構造について、塩素原子や窒素原子など、由来となった酸性酸化物の元素を中心原子と設定する。
;オキソ酸の酸性の強さ
中心元素が同じであれば、結合している酸素の数が多いほど、オキソ酸の酸性は強くなる。
たとえば窒素のオキソ酸として亜硝酸(<chem>HNO2</chem>)と硝酸(<chem>HNO3</chem>)があるが、硝酸の方が強い酸である。
また、中心元素が第3周期のリン、硫黄、塩素であるようなオキソ酸は、この順に酸性が強くなる。リン酸(<chem>H3PO4</chem>)は弱酸であるが、硫酸(<chem>H2SO4</chem>)は強酸であり、過塩素酸(<chem>HClO4</chem>)はさらに強い酸性を示す。
塩素のオキソ酸の酸性の順は、
: (つよい側) <chem>HClO4 > HClO3 > HClO2 > HClO</chem> (よわい側)
名称は、<chem>HClO4</chem> が過塩素酸、<chem>HClO3</chem> が塩素酸、<chem>HClO2</chem> が亜塩素酸、<chem>HClO</chem> が次亜塩素酸である。
=== 硫黄 ===
==== 単体 ====
'''硫黄'''(<chem>S</chem>)の単体には、斜方硫黄、単斜硫黄、ゴム状硫黄などの同素体がある。単体は火山地帯から多く産出され、また重油の精製過程のひとつである'''脱硫'''の工程において多く得られる。日本では、この脱硫で得られた硫黄により国内需要を全て賄っている。
; 斜方硫黄(<chem>S8</chem>)
[[ファイル:Sulfur.jpg|100x100ピクセル]] 斜方硫黄は常温で安定な黄色・塊状の結晶である。硫黄原子が8個環状に結合して1個の分子を形成している。融点は113℃である。
; 単斜硫黄(<chem>S8</chem>)
[[ファイル:Cyclooctasulfur-above-3D-balls.png|100x100ピクセル]] 単斜硫黄は高温(95.5℃以上)で安定な黄色・針状の結晶である。硫黄原子が8個環状に結合して1個の分子を形成している。斜方硫黄を加熱することで得られる。
; ゴム状硫黄(<chem>Sx</chem>)
ゴム状硫黄は黒褐色の無定形固体である。ただし、純粋なものは黄色を示すものがある。多数の硫黄原子がジグザグに結合しているため、引っ張ると結合角が変わり弾力性がある。
斜方硫黄を加熱すると琥珀色の液体となる。これを加熱し続けると次第に暗褐色となり、粘性が増してくる。さらに沸点に近い温度まで加熱した液体を、水中に入れて急冷するとゴム状硫黄となる。
* 反応性
硫黄は、高温で反応性が高い。
[[ファイル:Sulfur-burning-at-night.png|右|サムネイル|150x150ピクセル|硫黄の燃焼]]
硫黄は高温では多くの元素と化合して硫化物となる。たとえば鉄粉と硫黄の粉末を混合して加熱すると、硫化鉄(II) <chem>FeS</chem> が生じる。
: <chem>Fe + S ->[\Delta] FeS</chem>
また、空気中で青白い炎をあげて燃焼し、二酸化硫黄となる。
: <chem>S + O2 ->[\Delta] SO2</chem>
==== 化合物 ====
===== 硫化水素 =====
'''硫化水素'''(<chem>H2S</chem>)は無色腐卵臭の気体である。火山ガスや温泉に豊富に含まれる。よく言われる「硫黄の臭い」は硫黄ではなくこれである(硫黄の単体は無臭)。人体に有毒であるため、使用時には十分な換気に注意しなければならない。硫化水素は水に溶け、弱酸性を示す。
: <chem>H2S <=> H+ + HS- <=> 2H+ + S^2-</chem>
実験室では硫化鉄(II)に強酸を加えることで得られる。
: <chem>FeS + 2HCl -> FeCl2 + H2S ^</chem>
: <chem>FeS + H2SO4 -> FeSO4 + H2S ^</chem>
硫化水素は多くの場合に還元剤として働き、二酸化硫黄を還元して硫黄の単体を生じる。
: <chem>2H2S + SO2 -> 2H2O + 3S v</chem>
多くの金属イオンと反応して硫化物の沈殿を作るため、金属イオンの分離や検出に多く用いられる。
: <chem>Fe^2+ + H2S -> FeS v + 2H+</chem>
{| class="wikitable"
|+ 主な硫化物沈澱とその色
|-
| style="background-color:#BBB; text-align:center" | '''硫化物沈澱''' || <chem>Ag2S</chem> || <chem>PbS</chem> || <chem>CuS</chem> || <chem>FeS</chem>※ || <chem>NiS</chem>※ || <chem>CdS</chem> || <chem>MnS</chem>※ || <chem>ZnS</chem>※
|-
| style="background-color:#BBB; text-align:center" | '''色''' || colspan="5" style="text-align:center" | 黒 || style="text-align:center" | 黄 || style="text-align:center" | 淡赤 || style="text-align:center" | 白
|}
※酸性条件下では沈澱しない。
===== 二酸化硫黄 =====
'''二酸化硫黄'''('''亜硫酸ガス'''、<chem>SO2</chem>)は刺激臭をもつ無色の有毒な気体で、火山ガスや温泉などに含まれる。
酸性酸化物であり、水に溶けて'''亜硫酸'''(<chem>H2SO3</chem>)を生じ、弱酸性を示す。
: <chem>SO2 + H2O <=> HSO3- + H+</chem>
実験室では、銅を濃硫酸に加えて加熱するか、亜硫酸塩を希硫酸と反応させることにより得られ、下方置換で捕集する。
: <chem>Cu + 2H2SO4 ->[\Delta] CuSO4 + 2H2O + SO2 ^</chem>
: <chem>NaHSO3 + H2SO4 -> NaHSO4 + H2O + SO2 ^</chem>
: <chem>Na2SO3 + H2SO4 -> Na2SO4 + H2O + SO2 ^</chem>
工業的には、硫黄の燃焼により製造される。
: <chem>S + O2 ->[\Delta] SO2</chem>
二酸化硫黄は還元性があり、漂白作用がある。ただし、硫化水素のような強い還元剤がある場合は、酸化剤として作用する。
このように二酸化硫黄が還元剤にも酸化剤にもなるのは、<chem>SO2</chem> の硫黄原子の酸化数 +4 が、硫黄のとりうる酸化数(<chem>H2S</chem> の -2 から <chem>H2SO4</chem> の +6 まで)の中間にあるためである。還元剤として働くときは酸化数 +6 の硫酸イオンになり、酸化剤として働くときは酸化数 0 の硫黄になる。
:(還元剤)<chem>SO2 + 2H2O -> SO4^2- + 4H+ + 2e-</chem>
:(酸化剤)<chem>SO2 + 4H+ + 4e- -> S + 2H2O</chem>
たとえば、硫酸酸性の過マンガン酸カリウム水溶液に二酸化硫黄を通じると、二酸化硫黄が還元剤として働き、赤紫色が消える。
:<chem>5SO2 + 2KMnO4 + 2H2O -> K2SO4 + 2MnSO4 + 2H2SO4</chem>
硫黄を含む物質は燃焼により二酸化硫黄を生じる。二酸化硫黄の水溶液は、弱い酸性を示す。
硫黄は石油や石炭に多く含まれているため、このような化石燃料を大量に燃焼させると、大気中に多量の二酸化硫黄が放出され、雨水に溶け込み、酸性雨の原因となる。
===== 三酸化硫黄 =====
'''三酸化硫黄'''('''無水硫酸'''、<chem>SO3</chem>)は、有毒の結晶である。
水と激しく反応して硫酸を生成する。
:<chem>SO3 + H2O -> H2SO4</chem>
工業的には、二酸化硫黄を空気中の酸素で酸化して得る。このとき用いる触媒が、'''酸化バナジウム(V)'''(<chem>V2O5</chem>)である。
:<chem>2SO2 + O2 ->[(V2O5)] 2SO3</chem>
===== 硫酸 =====
'''硫酸'''(<chem>H2SO4</chem>)は工業的に'''接触法'''(接触式硫酸製造法)により、酸化バナジウム(V)を主成分とする触媒をもちいて、次のような工程で製造されている。
# 硫黄 <chem>S</chem> を燃焼させ、二酸化硫黄 <chem>SO2</chem> を作る。
#: <chem>S + O2 ->[\Delta] SO2</chem>
# 二酸化硫黄と酸素との混合気体を乾燥させ、酸化バナジウム(V)を触媒として反応させて三酸化硫黄 <chem>SO3</chem> を作る。
#: <chem>2SO2 + O2 ->[(V2O5)] 2SO3</chem>
# 三酸化硫黄を濃硫酸に吸収させて'''発煙硫酸'''<ref>発煙硫酸は、空気中で揮発した三酸化硫黄が水蒸気と反応して白煙を生じることが名前の由来である。</ref>とする。
# 集めた発煙硫酸を希硫酸で薄めて、濃硫酸とする。
#: <chem>SO3 + H2O -> H2SO4</chem>
オストワルト法による硝酸の製造と、接触法による硫酸の製造の流れを、次の表にまとめる。
{| class="wikitable"
! 製法 !! 第1段階 !! 第2段階 !! 第3段階
|-
| オストワルト法(硝酸) || <chem>NH3</chem> を白金触媒のもとで 800〜900 ℃で <chem>O2</chem> と反応させ、<chem>NO</chem> にする || <chem>NO</chem> を <chem>O2</chem> と反応させ、<chem>NO2</chem> にする || <chem>NO2</chem> を <chem>H2O</chem> と反応させ、<chem>HNO3</chem> にする(生じた <chem>NO</chem> は回収して第2段階で再利用する)
|-
| 接触法(硫酸) || <chem>S</chem> を燃焼させ、<chem>SO2</chem> にする || <chem>SO2</chem> を <chem>V2O5</chem> 触媒のもとで <chem>O2</chem> と反応させ、<chem>SO3</chem> にする || <chem>SO3</chem> を濃硫酸に吸収させて発煙硫酸とし、希硫酸で薄めて濃硫酸にする
|}
接触法の3つの段階をまとめると、次の式になる。
:<chem>2S + 3O2 + 2H2O -> 2H2SO4</chem>
すなわち、硫黄 1 mol から、理論上は硫酸 1 mol が得られる。
硫酸は、硫黄のオキソ酸である。通常は<chem>H2SO4</chem>の水溶液を硫酸と呼ぶ。硫酸は無色透明で粘性があり、密度の大きい重い液体である。濃度により性質が異なり、濃度約90%以上の濃いものを'''濃硫酸'''といい、薄いものを'''希硫酸'''と呼ぶ。
濃硫酸を水で希釈することで希硫酸が得られる。希釈する際は水を入れたビーカーを水を張った水槽中に入れ、冷却しながら濃硫酸を静かに加えるようにする。これは、硫酸が水に溶けるときの発熱が非常に大きいためである。もし、逆に濃硫酸に水を加えるようにすると、放出された熱によって水が激しく蒸発して濃硫酸が跳ねることがあり、非常に危険である。
[[ファイル:Sulfuric_acid_burning_tissue_paper.jpg|右|サムネイル|200x200ピクセル]]
濃硫酸には次のような性質がある。
;濃硫酸の性質
* '''脱水作用''': 有機化合物の分子内に含まれている酸素原子や水素原子を、水分子<chem>H2O</chem>として奪う。たとえば紙([[高校化学 天然高分子化合物#セルロース|セルロース]])に濃硫酸を垂らすと、その部分から酸素と水素が奪われ、炭化する。
* 吸湿作用: 強い吸湿作用があり、中性・酸性気体の乾燥剤として用いられる。
* 不揮発性: 沸点が高く不揮発性であるので、'''揮発性の酸の塩と反応して揮発性の酸を遊離する'''。
*: <chem>NaCl + H2SO4 -> NaHSO4 + HCl ^</chem>
* 酸化作用: 金属を加え加熱すると、銅・銀・水銀などのイオン化傾向の小さい金属を酸化するようになる。加熱した濃硫酸を'''熱濃硫酸'''と呼ぶこともある。
*: <chem>Cu + 2H2SO4 ->[\Delta] CuSO4 + 2H2O + SO2 ^</chem>
希硫酸は強酸であり、多くの金属と反応して水素を発生する。なお、濃硫酸は水をあまり含まないため電離度が小さく、ほとんど酸性を示さない。
硫酸イオン(<chem>SO4^2-</chem>)は <chem>Ba^2+</chem> や <chem>Pb^2+</chem> と反応して白色沈澱を生じる。そのため、これらのイオンの検出・分離に用いられる。また日常生活においても、硫酸はカーバッテリーや非常用電源などとして使われる[[高校化学 電池と電気分解#鉛蓄電池|鉛蓄電池]]の電解液として用いられている。
また、肥料や薬品の製造にも用いられる。
== 15族元素 ==
[[ファイル:周期表-NP.png|右]]
'''窒素'''(<chem>N</chem>)、'''リン'''('''燐'''、<chem>P</chem>)はともに15族に属する非金属元素である。価電子を5個もつ。
=== 窒素 ===
==== 単体 ====
'''窒素'''(<chem>N2</chem>)は常温常圧で無色無臭の気体である。窒素原子2個が三重結合して1個の分子をつくっている、二原子分子の気体である。空気中に体積比でおよそ78%含まれており、工業的には液体空気の分留により生産される。
実験室では、亜硝酸アンモニウムの熱分解で得る。
:<chem>NH4NO2 ->[\Delta] N2 + 2H2O</chem>
液体の窒素('''液体窒素'''、<math>-196\ ^\circ\mathrm{C}</math>、<math>77\ \mathrm{K}</math>)は物質の冷却にしばしば用いられている。窒素は水上置換で捕集する。
==== 化合物 ====
===== アンモニア =====
'''アンモニア'''(<chem>NH3</chem>)は無色刺激臭の気体である。水に非常に溶けやすく、水溶液はアンモニア水と呼ばれ、弱塩基性を示す。
: <chem>NH3 + H2O <=> NH4+ + OH-</chem>
沸点は <math>-33.4\ ^\circ\mathrm{C}</math> である。
アンモニアは、工業的には、高温高圧下で四酸化三鉄 <chem>Fe3O4</chem> などの触媒を用いて窒素と水素を直接反応させる'''ハーバー・ボッシュ法'''により製造される。
: <chem>N2 + 3H2 <=>[\Delta \, (Fe3O4)] 2NH3</chem>
実験室では、塩化アンモニウムと水酸化カルシウムの粉末を混合して加熱することにより得られる。水に非常に溶けやすく空気より軽いため、'''上方置換'''で捕集する。
: <chem>2NH4Cl + Ca(OH)2 -> CaCl2 + 2H2O + 2NH3 ^</chem>(弱塩基遊離反応)
アンモニアが生成したことを確かめるには、[[高校化学 水素と貴ガス#ハロゲン化水素|濃塩酸]]を近づければよい。アンモニアと濃塩酸が反応して塩化アンモニウムの白煙を生じる。
: <chem>NH3 + HCl -> NH4Cl</chem>
水溶液中のアンモニウムイオン(<chem>NH4+</chem>)を検出する際には、ネスラー試薬が用いられる。アンモニウムイオンがあれば黄色~褐色の沈殿を生じる。
アンモニアは、硝酸の原料、あるいは尿素(<chem>(NH2)2CO</chem>)などの窒素肥料の原料などとしても利用される。
:<chem>CO2 + 2NH3 -> (NH2)2CO + H2O</chem>
===== 窒素酸化物 =====
窒素の酸化物は数種類あり、それらの総称を'''窒素酸化物'''と呼ぶ。主なものに'''一酸化窒素'''(<chem>NO</chem>)と'''二酸化窒素'''(<chem>NO2</chem>)がある。一般に、窒素酸化物 <chem>NO_x</chem> を'''ノックス'''と呼ぶ。
; 一酸化窒素 (<chem>NO</chem>)
常温で無色の気体。水に溶けにくい。'''希硝酸に銅'''を加えることで発生する。空気中で酸化されやすいため、'''水上置換'''で捕集する。
: <chem>3Cu + 8HNO3 -> 3Cu(NO3)2 + 4H2O + 2NO ^</chem>
空気中での酸化の反応式は、
: <chem>2NO + O2 -> 2NO2</chem>
である。
; 二酸化窒素 (<chem>NO2</chem>)
[[ファイル:CopperReaction.JPG|右|300x300ピクセル]]
常温で赤褐色の刺激臭を持つ気体。水に溶けやすく、反応して硝酸 <chem>HNO3</chem> となる。
: <chem>3NO2 + H2O -> 2HNO3 + NO</chem>
実験室では'''濃硝酸に銅'''を加えることで発生する。水に溶けやすいので'''下方置換'''で捕集する。
: <chem>Cu + 4HNO3 -> Cu(NO3)2 + 2H2O + 2NO2 ^</chem>
空気中では一部で2分子が結合して'''四酸化二窒素''' <chem>N2O4</chem> となる。
: <chem>2NO2 <=> N2O4</chem>
窒素は常温では燃焼しない。すなわち酸素と反応して酸化物にならない。しかし、高温下では窒素と酸素が直接反応して窒素酸化物を生じる。また化石燃料の燃焼によっても窒素酸化物が生成する。そのため車のエンジンなどから窒素酸化物が発生し、大気中に放出されたものが雨水に吸収され、[[高校化学 水素と貴ガス#二酸化硫黄|硫黄酸化物]]と同様に酸性雨の原因となる。
===== 硝酸 =====
'''硝酸''' <chem>HNO3</chem> は窒素のオキソ酸であり、有名な強酸である。通常は<chem>HNO3</chem>の水溶液を硝酸と呼ぶ。濃度によりやや異なる性質を示し、濃度の濃いものを'''濃硝酸'''、薄いものを'''希硝酸'''と呼ぶ。硝酸は揮発性の酸であるため、実験室では硝酸塩に濃硫酸を加えることにより得られる。(不揮発性酸による揮発性酸の遊離反応)
: <chem>NaNO3 + H2SO4 -> NaHSO4 + HNO3</chem>
硝酸の製法は、工業的には、'''オストワルト法'''により製造される。次のような工程を経て硝酸が得られる。
# アンモニアと空気の混合気体を、触媒の白金 <chem>Pt</chem> に触れさせ、800℃〜900℃でアンモニアを酸化させて一酸化窒素とする。
#: <chem>4NH3 + 5O2 ->[\Delta \, (Pt)] 4NO + 6H2O</chem>
# 一酸化窒素を空気中でさらに酸化して、二酸化窒素とする。
#: <chem>2NO + O2 -> 2NO2</chem>
# 二酸化窒素を水に吸収させ、硝酸とする。ここで発生する一酸化窒素は回収し、2に戻って再び酸化する。
#: <chem>3NO2 + H2O -> 2HNO3 + NO</chem>
3つの段階をまとめると(第3段階で生じる <chem>NO</chem> を再利用し、すべて硝酸に変えるとすると)、次の式になる。
:<chem>NH3 + 2O2 -> HNO3 + H2O</chem>
すなわち、アンモニア 1 mol から、理論上は硝酸 1 mol が得られる。
窒素は、化合物の中でさまざまな酸化数をとる。おもな物質の窒素の酸化数を、次の表にまとめる。
{| class="wikitable" style="text-align:center"
! 物質
| <chem>NH3</chem> || <chem>N2</chem> || <chem>N2O</chem> || <chem>NO</chem> || <chem>HNO2</chem> || <chem>NO2</chem> || <chem>HNO3</chem>
|-
! 窒素の酸化数
| -3 || 0 || +1 || +2 || +3 || +4 || +5
|}
オストワルト法は、酸化数 -3 の窒素(<chem>NH3</chem>)を、酸化数 +5 の窒素(<chem>HNO3</chem>)まで酸化する方法である。硝酸が金属と反応して <chem>NO</chem> や <chem>NO2</chem> を生じるのは、硝酸の窒素原子(酸化数 +5)が還元されるためである。
硝酸は無色の水溶液であるが、光や熱により分解して二酸化窒素と酸素を生じる。そのため、保管の際には、褐色瓶に入れ冷暗所で保存するようにする。
: <chem>4HNO3 -> 4NO2 + 2H2O + O2</chem>
濃度の高い濃硝酸は揮発性が強く、空気中で白煙を生じる。これを'''発煙硝酸'''という。
希硝酸・濃硝酸ともに強い酸化作用を持っており、金・白金以外の金属を酸化して溶かす。金属と反応するときは水素ではなく窒素酸化物を生じる。希硝酸からは一酸化窒素が、濃硝酸からは二酸化窒素がそれぞれ発生する。
:(希硝酸)<chem>3Cu + 8HNO3 -> 3Cu(NO3)2 + 4H2O + 2NO ^</chem>
:(濃硝酸)<chem>Cu + 4HNO3 -> Cu(NO3)2 + 2H2O + 2NO2 ^</chem>
* 不動態
ただし、鉄 <chem>Fe</chem> やアルミニウム <chem>Al</chem> やニッケル <chem>Ni</chem> は、希硝酸には溶けるが、濃硝酸に加えても溶けない。これは、金属の表面が酸化され、水に溶けにくい緻密な酸化被膜を生成して、内部が保護され、反応が内部まで進行しなくなるためである。このような状態を'''不動態'''という。
* その他
硝酸塩はほとんど水に溶ける。そのため、ガラス器具にこびりついた金属類を洗浄する際に用いられることも多い。
また、硝酸は火薬、染料、医薬品の製造に用いられる。
{{コラム|硝石|2=硝酸塩の一つである硝酸カリウムは、天然には硝石として存在する。この硝石は、原始的な方法で製造することができる。硝石のおおもとの原料は、糞尿である。尿などにふくまれるアンモニアが、土壌中でさまざまな物質と反応して、硝酸イオンを多く含む物質になる。この硝酸イオンを原料に、カリウムをふくむ{{ruby|灰汁|あく}}とともに煮ると化学反応をして硝酸カリウムになる。中世や近世では、この硝石を中間材料として、火薬などを作っていた。}}
==== 窒素の応用 ====
たとえば、ポテトチップスなどのような油で揚げたスナック菓子の酸化防止のため、袋の中に窒素が詰められる。酸素があると、油が酸化してしまうが、代わりに何らかの気体を詰める必要があるので、窒素を袋の中につめているのである。
=== リン ===
==== 単体 ====
'''リン'''('''燐'''、<chem>P</chem>)はいくつかの同素体をもつ。代表的なものは'''白リン'''(黄リン、<chem>P4</chem>)と'''赤リン''' (<chem>P_x</chem>)の2つである。
'''白リン'''(<chem>P4</chem>)は淡黄色の蠟状固体であり、人体にきわめて有毒である。空気中で自然発火するため、水中に保存する。二硫化炭素(<chem>CS2</chem>)に溶ける。
[[ファイル:Red_phosphorus_in_a_tube_-_P_15_.jpg|右|150x150ピクセル]]
'''赤リン'''(<chem>P_x</chem>)は暗赤色の粉末状固体であり、弱い毒性をもつ。二硫化炭素(<chem>CS2</chem>)に溶けない。赤リンはマッチの箱の擦り薬として用いられている。{{コラム|マッチの発明の歴史|2=1669年に発火温度の低い燐が発見されてから最初のマッチ(燐寸)が発明されるまでには150年以上を要した。最初期のマッチは火つきは悪く、火がつくと飛び散り、二酸化硫黄の刺激臭がすると欠点だらけであった。これらの欠点は1830年ごろに黄燐マッチが開発されることで改善し、火つきの非常に良いマッチが誕生した。しかし、こちらも黄燐の猛毒性、わずかな摩擦・衝撃での発火、温度上昇による自然発火などの別の問題点があった。同じ燐でも自然発火温度が高く、毒性も弱い赤燐が1845年に発見されると、その10年後には赤燐を用いた安全マッチが開発された。このマッチは現在のものとほとんど相違ない。日本では、1875年に最初のマッチが作られたとされる。なお、西部劇などに見られるマッチは硫化燐マッチであり、黄燐マッチではない。}}
単体のリンは燐酸カルシウム(<chem>Ca3(PO4)2</chem>)を主成分とする鉱石に珪砂([[高校化学 非金属元素#二酸化ケイ素|二酸化珪素]]を主成分とする砂)とコークスを混ぜて電気炉中で強熱して作られる。このとき得られるのは黄燐である。
: <chem>2Ca3(PO4)2 + 6SiO2 + 10C -> 6CaSiO3 + 10CO + P4</chem>
黄燐は窒素中で長時間加熱(250℃付近)することで赤燐となる。
==== 酸化物 ====
リンを空気中で燃焼させると、'''十酸化四リン'''(五酸化二燐、<chem>P4O10</chem>)の白煙を生じる。
: <chem>4P + 5O2 ->[\Delta] P4O10</chem>
十酸化四リンは白色の粉末状固体であり、強い吸湿性を示し、乾燥剤として用いられる。この吸湿性から、空気中に放置すると空気中の水蒸気を吸収して自分自身がその水に溶ける。この現象を'''潮解'''という。 十酸化四リンは水と反応して'''リン酸''' <chem>H3PO4</chem> となる。
: <chem>P4O10 + 6H2O -> 4H3PO4</chem>
リン酸は酢酸のような弱酸よりは強いが、塩酸のような強酸よりは弱い、中程度の強さの酸である。 リンは生物にとって必要不可欠な元素である。生物は、[[高校化学 天然高分子化合物#核酸|アデノシン]](アデニン+リボース)にリン酸が3つ結合した化合物(リン酸どうしの2つの結合は高エネルギーリン酸結合である)である[[高等学校理科 生物基礎/細胞とエネルギー#代謝とATP|ATP]](アデノシン三リン酸)にエネルギーを保存し、利用する。農業においても必要な元素で、リン酸肥料として用いられる。主なものとして、リン鉱石と硫酸と水との反応から得られるリン酸二水素カルシウム <chem>Ca(H2PO4)2</chem> と、硫酸カルシウム <chem>CaSO4</chem> との混合物である'''過リン酸石灰'''がある。
: <chem>Ca3(PO4)2 + 2H2SO4 -> Ca(H2PO4)2 + 2CaSO4</chem>
この過リン酸石灰が、リン肥料の主成分である。 リン酸カルシウム <chem>Ca3(PO4)2</chem> およびヒドロキシアパタイト <chem>Ca5(PO4)3(OH)</chem> は、動物の骨や歯の主成分である。
植物の成長に必要な必須元素のうち、窒素・リン・カリウムは'''肥料の三要素'''と呼ばれる。
== 14族元素 ==
[[ファイル:周期表-CSi.png|右]]
'''炭素''' <chem>C</chem> 、'''ケイ素''' <chem>Si</chem> はともに14族に属する元素である。価電子を4個もつ。
=== 炭素 ===
'''炭素''' (<chem>C</chem>) は生物を構成する重要な元素であり、多くの化学製品にも含まれている。炭素を含む物質(一酸化炭素・二酸化炭素・炭酸塩などを除く)は、一般に'''有機物'''と呼ばれる。有機化合物については別の章で詳しく学ぶ。ここでは、炭素の単体、一酸化炭素、二酸化炭素について説明する。
==== 単体 ====
炭素の単体は共有結合の結晶であり、結合の仕方によっていくつかの同素体が存在する。
; ダイヤモンド (<chem>C</chem>)
[[ファイル:Apollo_synthetic_diamond.jpg|左|サムネイル|150x150ピクセル|ダイヤモンド]]
[[ファイル:DiamantEbene01.png|右|サムネイル|150x150ピクセル|ダイヤモンドの構造]]
'''ダイヤモンド'''は無色の固体で、1つの炭素原子が4つの炭素原子と正四面体の頂点方向に共有結合し、それが多数連結して結晶を形成している。共有結合の結晶であるため、非常に融点・沸点が高く、天然の物質の中で最も硬いものとして知られている。電気は通さないが、熱はよく伝える。宝石としての利用のほか、工業的には研磨剤としても使われる。光の屈折率が大きい。
{{-}}
; 黒鉛 (<chem>C</chem>)
[[ファイル:GraphiteUSGOV.jpg|左|サムネイル|150x150ピクセル|黒鉛]]
[[ファイル:Graphit_gitter.png|右|サムネイル|187x187ピクセル|黒鉛(グラファイト)の一層をグラフェンと呼ぶ。上図ではグラフェンが4層描かれている。]]
'''黒鉛'''は金属光沢のある黒色の固体で、炭素原子が正六角形の層状構造を持っている。各層は3つの共有結合によって形成され、残りの1個の価電子は'''自由電子'''として層に沿って移動する。この自由電子の存在により、黒鉛は電気をよく通し、熱伝導性も高い。層と層の結合は弱いため、黒鉛は柔らかく、鉛筆の芯や電気分解用の電極として使用される。
{{-}}
; フラーレン(<chem>C60</chem>、<chem>C70</chem>など)
[[ファイル:C60a.png|右|サムネイル|140x140ピクセル|フラーレン]]
'''フラーレン'''は茶褐色の固体で、多数の炭素原子が球状に結合している。右図は<chem>C60</chem>フラーレンのモデルで、炭素原子が60個、サッカーボール状に結合している。20世紀後半に発見された物質で、現在も研究が進んでいる。純粋なフラーレンは電気を通さないが、アルカリ金属を添加すると超伝導性を示すことがある。有機溶媒に溶ける性質を持つ。
{{-}}
; グラフェン
'''グラフェン'''は炭素原子が六角形に配列した一層のシート状の物質で、非常に強く柔軟であり、電気や熱を効率よく伝える。
{{-}}
; カーボンナノチューブ
'''カーボンナノチューブ'''は、炭素原子が六角形に結びついたグラフェンシートを丸めて筒状にしたナノ材料である。日本人の飯島澄男が1991年に発見した。非常に高い強度と優れた電気・熱伝導性を持ち、宇宙エレベーターのケーブルとして検討されている。
{{-}}
; 無定形炭素
[[ファイル:Binchotan_(charcoal).jpg|サムネイル|180x180ピクセル|活性炭]]
結晶構造を明確にもたない炭素に、黒鉛や[[高校化学 脂肪族炭化水素|炭化水素]]が不規則に結合した([[高校化学 結晶#アモルファス|アモルファス]]状態の)固体がある。これを'''無定形炭素'''と呼ぶ。木炭やコークスが代表的で、この中でも'''活性炭'''は多孔質であり、さまざまな物質を吸着する性質があるため、消臭剤などに用いられている。
{{-}}
==== 酸化物 ====
炭素が空気中で燃焼すると、酸化物が生成される。
; 一酸化炭素 (<chem>CO</chem>)
炭素や有機化合物が空気中で不完全燃焼すると、'''一酸化炭素''' (<chem>CO</chem>) が生じる。一酸化炭素は無色無臭の気体で、非常に有毒である。吸入すると血液中のヘモグロビンと結合し、酸素の運搬を阻害する。水には溶けにくい。
二酸化炭素と炭素の単体を高温接触させることでも得られる。
: <chem>CO2 + C ->[\Delta] 2CO</chem>(酸化還元反応)
実験室では、[[高校化学 酸素を含む脂肪族化合物#ギ酸|蟻酸]]に濃硫酸を加えることで一酸化炭素を生成できる。
: <chem>HCOOH -> H2O + CO ^</chem>(脱水反応)
工業的には、水蒸気を高温のコークスに作用させることで得られる。
: <chem>C + H2O ->[\Delta] H2 + CO</chem>(酸化還元反応)
::※水素と一酸化炭素の混合ガスを'''水性ガス'''という。[[高校化学 酸素を含む脂肪族化合物#メタノール|メタノール]]の原料となる。
空気中では青白い炎を上げて燃焼し、二酸化炭素を生じる。
: <chem>2CO + O2 ->[\Delta] 2CO2</chem>
一酸化炭素は還元性を持ち、金属酸化物を還元して単体にする性質がある。
: <chem>CuO + CO -> Cu + CO2</chem>
; 二酸化炭素 (<chem>CO2</chem>)
炭素や有機化合物が空気中で完全燃焼すると、'''二酸化炭素''' (<chem>CO2</chem>) が生じる。実験室では炭酸カルシウムに塩酸を加えて発生させることができる。
: <chem>CaCO3 + 2HCl -> CaCl2 + H2O + CO2 ^</chem>
工業的には、[[高校化学 典型金属#カルシウム|石灰石]]の熱分解によって二酸化炭素が得られる。
二酸化炭素は無色無臭の気体で、毒性はない。酸性酸化物であり、水に溶けると炭酸水素イオン <chem>HCO3^-</chem> を生成し、弱酸性を示す。
: <chem>CO2 + H2O <=> HCO3^- + H+</chem>
また、塩基と反応して塩を作る。
: <chem>CO2 + 2NaOH -> Na2CO3 + H2O</chem>
二酸化炭素を'''石灰水'''(水酸化カルシウム水溶液)に通すと、炭酸カルシウムが生成され白濁する。この反応は二酸化炭素の検出に用いられる。
: <chem>Ca(OH)2 + CO2 -> H2O + CaCO3 v</chem>
[[ファイル:Dry_Ice_Pellets_Subliming.jpg|右|サムネイル|150x150ピクセル|ドライアイス]]
二酸化炭素の固体は分子結晶で、'''ドライアイス'''として知られ、冷却剤として使用される。常圧下で'''昇華性'''を持ち、液体にならずに直接気体となる。
二酸化炭素は生物の活動によって放出・吸収される。呼吸では、酸素を吸収して糖類と反応し、エネルギーを取り出す過程で二酸化炭素が生成される。
: <chem>C6H12O6 + 6O2 -> 6H2O + 6CO2</chem>
※この反応で合成される[[高等学校理科 生物基礎/細胞とエネルギー|ATP]]は38分子
逆に、植物は光のエネルギーを用いて二酸化炭素を吸収し、糖類を合成する。この過程を'''光合成'''という。
: <chem>6CO2 + 6H2O -> C6H12O6 + 6O2</chem>
※反応エンタルピーは、グルコース1 mol あたり <math>+2803\ \mathrm{kJ}</math>(吸熱)である。
また、微生物の中には[[高校化学 天然高分子化合物#糖類|糖類]]を発酵させ、エネルギーを得るものがあり、その過程で二酸化炭素が生じる。
: <chem>C6H12O6 -> 2C2H5OH + 2CO2</chem>
※この反応で合成されるATPは2分子
=== ケイ素 ===
'''ケイ素'''('''珪素'''、<chem>Si</chem>)は酸素の次に多く地殻中に含まれている元素である。水晶などの鉱物にも含まれている。半導体の主な原料であり、工業的に重要な元素となっている。ケイ素は'''シリコン'''ともいう。
※地殻の元素含有量(質量比)は、<chem>O > Si > Al > Fe</chem> の順である。
==== 単体 ====
[[ファイル:SiliconCroda.jpg|右|サムネイル|200x200ピクセル|ケイ素]]
'''ケイ素'''(<chem>Si</chem>)は金属光沢をもつ銀灰色の固体である。ケイ素は金属ではないが金属光沢をもつ。[[ファイル:Monokristalines_Silizium_für_die_Waferherstellung.jpg|左|サムネイル|294x294ピクセル|ケイ素の単結晶。電子部品の製造などに用いられる。これを薄く切断してシリコンウェハーにする。]]
ケイ素は天然には単体として存在せず、酸化物を還元することにより製造される。工業的には、二酸化ケイ素をコークスで還元して得る。
: <chem>SiO2 + 2C -> Si + 2CO</chem>
単体は共有結合の結晶であり、ダイヤモンドと同様の構造でケイ素原子が結合する。そのためダイヤモンドと同様に融点・沸点は高く、硬い結晶をつくる。導体と不導体の中間程度の電気抵抗をもつ[[高校物理 電磁気学#半導体|半導体]]で、太陽電池やコンピュータ部品に用いられる。
ケイ素の結晶に、わずかにリンやホウ素を加えたものは、電気をよく通すようになる。これらも半導体である。
* その他
[[ファイル:Silicon-unit-cell-3D-balls.png|サムネイル|80x80ピクセル|ケイ素の単体の結晶構造]]
ケイ素の結晶構造は、ダイヤモンドの結晶構造と同じである。
{{-}}{{コラム|シリセン|2=シリセンは、ケイ素(シリコン)原子が六角形に配列し、グラフェンに似た二次元シート構造を持つ新しい物質である。シリコンは通常、三次元のダイヤモンド構造を取るが、シリセンではケイ素原子が平面状に並び、蜂の巣状の構造を作り出す。このため、シリセンは「シリコン版グラフェン」とも呼ばれることがある。
シリセンは、グラフェンと同様に優れた電子的特性を持ち、次世代のエレクトロニクス材料として注目されている。特に、シリコンベースの既存の半導体技術との互換性が期待されており、ナノテクノロジーやトランジスタ、センサーなどの分野での応用が研究されている。
ただし、シリセンはグラフェンよりも安定性が低く、空気中では速やかに酸化されるため、特定の条件下でしか安定した形で存在できない。一般的には金属基板の上に成長させることで安定させる技術が使われている。
シリセンはその特性を利用して、エレクトロニクスやスピントロニクス、さらにはエネルギー材料などの広い分野で革新的な技術を生み出す可能性があるが、まだ研究段階にあるため、今後の発展が期待される。}}{{-}}
==== 二酸化ケイ素 ====
[[ファイル:Quartz_(USA).jpg|右|サムネイル|180x180ピクセル|水晶]]
'''二酸化ケイ素'''('''シリカ'''、二酸化珪素、<chem>SiO2</chem>)は自然界で石英として存在する。透明な石英の結晶は水晶と呼ばれ、宝石として用いられる。また、砂状のものは{{ruby|珪砂|けいしゃ}}と呼ばれ、{{ruby|硝子|ガラス}}の原料となる。
ガラスは身近な様々な場面で用いられている。科学においては耐熱器具や光ファイバーに用いられている。
二酸化ケイ素は常温では共有結合結晶である。ケイ素原子と酸素原子との結合は非常に強く、固く安定な結晶を作る。また、結合が強いため、融点も高く(<math>1700\ ^\circ\mathrm{C}</math>)、塩酸にも溶けない。しかし、フッ化水素酸とは反応して溶ける。
: <chem>SiO2 + 6HF -> H2SiF6 + 2H2O</chem>
[[ファイル:Silica_gel.jpg|右|150x150ピクセル]]
また、二酸化ケイ素は酸性酸化物であり、塩基と反応して珪酸塩を生じる。たとえば水酸化ナトリウムと反応して、ケイ酸ナトリウム <chem>Na2SiO3</chem> を生じる。
: <chem>SiO2 + 2NaOH -> Na2SiO3 + H2O</chem>
上記で得られたケイ酸ナトリウムに水を加えて加熱すると、粘性の大きい透明の'''水ガラス''' <chem>Na2O.nSiO2</chem> という物質が得られる。水ガラスは、その粘性や透明性から、よく水飴にたとえられる。
水ガラスに塩酸を加えると、白色ゲル状のケイ酸 <chem>H2SiO3</chem>が得られる。
: <chem>Na2SiO3 + 2HCl -> H2SiO3 + 2NaCl</chem>
※ 実際は組成が安定せず、できるのが <chem>H2SiO3</chem> のみとは限らない
※ <chem>H2SiO3</chem>は水にほぼ不溶だが(そのため、教材によっては「白色ゲル状の沈殿」のように沈殿として説明される場合もよくあるが)、慣習的に「ケイ酸」と言う。炭酸 <chem>H2CO3</chem> との類推で考えると覚えやすいだろう。
このとき塩化ナトリウムが副生成物としてできるので、塩化ナトリウムを水洗して除き、のこったケイ酸を加熱乾燥すると'''シリカゲル'''が得られる。シリカゲルは多孔質であり、また空気中では水分を吸着するため、乾燥剤や吸着剤として用いられる。(シリカゲルは多孔質なので表面積が大きく、そのため効率的に水分を吸着できる。)
* 発展: 水晶振動子
電子工業における水晶の応用として、'''水晶振動子'''としての利用がある。
水晶に電圧を掛けると、一定の周期で振動することから、クオーツ時計などの発振器として利用されている。
----
{{コラム| |2=
<chem>SiO2</chem>が酸性酸化物であることと、上記のケイ酸ナトリウムの合成式
: <chem>SiO2 + 2NaOH -> Na2SiO3 + H2O</chem>
は別々に覚えるのではなく、次のように関連づけて覚えるとよい。
教科書には、二酸化ケイ素は酸性酸化物であるから上記の反応が起こる、と書かれていることが多いが、炭素との類推で考えるほうが覚えやすい。二酸化炭素も水酸化ナトリウムと反応して炭酸ナトリウムを生じる性質がある。二酸化炭素と二酸化ケイ素には、このような類似性があるので、ともに「酸性酸化物」というグループに入れられている。
このように、酸性酸化物をあたかも酸であるかのように考えると、塩基との反応を中和反応のように理解できるので暗記の負担が減る。
※ただし、酸化物に限定した概念であるので一般の酸・塩基の拡張にはならない(一般の酸・塩基は必ずしも酸化物とは限らない)。例えば、塩酸 <chem>HCl</chem> は酸化物ではない。
同様に、塩基性酸化物は必要に応じて塩基という概念の拡張のように解釈することもできる。なお、塩基性酸化物である酸化カルシウム <chem>CaO</chem> はいわゆる「石灰」のことであり、実際に塩基性の物質である。
まとめると、酸性酸化物は厳密には酸ではない場合もあるが(炭酸のように、酸性酸化物が水と反応して酸になる場合もある)、塩基と反応させた際に酸と塩基の中和反応のような生成物が得られる場合が多い。同様に、塩基性酸化物も酸と反応させた際に酸と塩基の中和反応のような生成物が得られることが多い。
要するに、反応式
: <chem>SiO2 + 2NaOH -> Na2SiO3 + H2O</chem>
をそのまま暗記しようとするのではなく、炭酸の中和反応と似た反応として覚えるのが効率的である。
なお、炭酸ナトリウムの工業的な製法は上述の式とは異なり、[[高校化学_典型金属#アンモニアソーダ法(ソルベー法)|アンモニアソーダ法(ソルベー法)]]を用いる。
}}
== 気体の製法と性質のまとめ ==
この章で扱った主な気体について、実験室での製法、捕集法、性質、検出法を次の表にまとめる。
{| class="wikitable"
! 気体 !! 実験室での製法(例) !! 捕集法 !! 色・におい !! 水溶液の性質 !! 検出法(例)
|-
| <chem>H2</chem> || 亜鉛に希硫酸を加える || 水上置換 || 無色・無臭 || (水に溶けにくい) || 点火すると音を立てて燃え、水が生じる
|-
| <chem>O2</chem> || 過酸化水素水に酸化マンガン(IV)を加える || 水上置換 || 無色・無臭 || (水に溶けにくい) || 火のついた線香を入れると、炎を上げて燃える
|-
| <chem>N2</chem> || 亜硝酸アンモニウム水溶液を加熱する || 水上置換 || 無色・無臭 || (水に溶けにくい) || ―
|-
| <chem>Cl2</chem> || 酸化マンガン(IV)に濃塩酸を加えて加熱する || 下方置換 || 黄緑色・刺激臭 || 酸性 || 湿ったヨウ化カリウムデンプン紙が青紫色になる
|-
| <chem>HCl</chem> || 塩化ナトリウムに濃硫酸を加えて加熱する || 下方置換 || 無色・刺激臭 || 強酸性 || アンモニアに触れると白煙を生じる
|-
| <chem>H2S</chem> || 硫化鉄(II)に希硫酸を加える || 下方置換 || 無色・腐卵臭 || 弱酸性 || 湿った酢酸鉛(II)紙が黒くなる
|-
| <chem>SO2</chem> || 亜硫酸水素ナトリウムに希硫酸を加える || 下方置換 || 無色・刺激臭 || 弱酸性 || 硫化水素と反応して、硫黄が生じて白濁する
|-
| <chem>NH3</chem> || 塩化アンモニウムと水酸化カルシウムを混合して加熱する || 上方置換 || 無色・刺激臭 || 弱塩基性 || 濃塩酸に近づけると白煙を生じる
|-
| <chem>NO</chem> || 銅に希硝酸を加える || 水上置換 || 無色 || (水に溶けにくい) || 空気に触れると赤褐色の <chem>NO2</chem> になる
|-
| <chem>NO2</chem> || 銅に濃硝酸を加える || 下方置換 || 赤褐色・刺激臭 || 酸性 || ―
|-
| <chem>CO</chem> || ギ酸に濃硫酸を加えて加熱する || 水上置換 || 無色・無臭 || (水に溶けにくい) || ―
|-
| <chem>CO2</chem> || 炭酸カルシウムに希塩酸を加える || 下方置換 || 無色・無臭 || 弱酸性 || 石灰水に通すと白濁する
|}
;気体の捕集法
水に溶けにくい気体は水上置換で集める。水に溶けやすい気体は、空気より重い(分子量が空気の平均分子量 28.8 より大きい)ものは下方置換、空気より軽いものは上方置換で集める。
=== 気体の乾燥剤 ===
発生させた気体に含まれる水蒸気を除くには、乾燥剤を用いる。乾燥剤と気体が反応しないように、組み合わせを選ぶ必要がある。
{| class="wikitable"
! 乾燥剤 !! 性質 !! 乾燥に使えない気体
|-
| 濃硫酸 || 酸性 || <chem>NH3</chem>(中和する)、<chem>H2S</chem>(酸化される)
|-
| 十酸化四リン <chem>P4O10</chem> || 酸性 || <chem>NH3</chem>
|-
| 塩化カルシウム <chem>CaCl2</chem> || 中性 || <chem>NH3</chem>(<chem>CaCl2</chem> と結合する)
|-
| ソーダ石灰(<chem>CaO</chem> と <chem>NaOH</chem> の混合物) || 塩基性 || <chem>Cl2, HCl, H2S, SO2, NO2, CO2</chem> などの酸性の気体
|}
アンモニアの乾燥には、ソーダ石灰や酸化カルシウムを用いる。
[[Category:高等学校化学|ひきんそくけんそ]]
21ohbzatbkm5xmg3rzpo1fiwusqfvj8
ガリア戦記 第7巻
0
12163
304863
304851
2026-10-18T14:49:34Z
Linguae
449
/* 34節 */ 訳注
304863
wikitext
text/x-wiki
[[Category:ガリア戦記|7]] [[Category:ガリア戦記 第7巻|*]]
[[ガリア戦記]]> '''第7巻''' >[[ガリア戦記 第7巻/注解|注解]]
<div style="text-align:center">
<span style="font-size:20px; font-weight:bold; font-variant-caps: petite-caps; color:white; background: rgb(47,94,255);background: linear-gradient(180deg, rgba(47,94,255,1) 0%, rgba(24,56,255,1) 50%, rgba(0,8,255,1) 100%);"> C IVLII CAESARIS COMMENTARIORVM BELLI GALLICI </span>
<span style="font-size:40px; font-weight:bold; color:white; background: rgb(47,94,255);background: linear-gradient(180deg, rgba(47,94,255,1) 0%, rgba(24,56,255,1) 50%, rgba(0,8,255,1) 100%);"> LIBER SEPTIMVS </span>
</div>
[[画像:Gaule -52.png|thumb|right|150px|ガリア戦記 第7巻の情勢図(BC52年)。<br>黄色の領域がローマ領。桃色が同盟部族領。]]
{| id="toc" style="align:left;clear:all;" align="left" cellpadding="5"
! style="background:#ccccff; text-align:left;" colspan="2" | ガリア戦記 第7巻 目次
|-
| style="text-align:right; font-size: 0.86em;"|
'''[[#カルヌーテース族の蜂起|カルヌーテース族の蜂起]]''':<br />
'''[[#ウェルキンゲトリークスとガッリア同盟軍の蜂起|ウェルキンゲトリークスとガッリア同盟軍の蜂起]]''':<br />
<br />
'''[[#アウァーリクム攻略戦|アウァーリクム攻略戦]]''':<br />
<br />
<br />
'''[[#ゲルゴウィア攻略戦、ハエドゥイー族の離反|ゲルゴウィア攻略戦、ハエドゥイー族の離反]]''':<br />
<br />
<br />
'''[[#ラビエーヌスのルテティア遠征|ラビエーヌスのルテティア遠征]]''':<br />
'''[[#ガッリア戦乱の拡大|ガッリア戦乱の拡大]]''':<br />
'''[[#アレスィア攻囲戦|アレスィア攻囲戦]]''':<br />
<br />
<br />
'''[[#ガッリア同盟軍主力の降伏|ガッリア同盟軍主力の降伏]]''':<br />
<br />
<br />
| style="text-align:left; font-size: 0.86em;"|
[[#1節|01節]] |
[[#2節|02節]] |
[[#3節|03節]] <br />
[[#4節|04節]] |
[[#5節|05節]] |
[[#6節|06節]] |
[[#7節|07節]] |
[[#8節|08節]] |
[[#9節|09節]] |
[[#10節|10節]] <br />
[[#11節|11節]] |
[[#12節|12節]] |
[[#13節|13節]] <br />
[[#14節|14節]] |
[[#15節|15節]] |
[[#16節|16節]] |
[[#17節|17節]] |
[[#18節|18節]] |
[[#19節|19節]] |
[[#20節|20節]] <br />
[[#21節|21節]] |
[[#22節|22節]] |
[[#23節|23節]] |
[[#24節|24節]] |
[[#25節|25節]] |
[[#26節|26節]] |
[[#27節|27節]] |
[[#28節|28節]] |
[[#29節|29節]] |
[[#30節|30節]] <br />
[[#31節|31節]] <br />
[[#32節|32節]] |
[[#33節|33節]] |
[[#34節|34節]] |
[[#35節|35節]] |
[[#36節|36節]] |
[[#37節|37節]] |
[[#38節|38節]] |
[[#39節|39節]] |
[[#40節|40節]] <br />
[[#41節|41節]] |
[[#42節|42節]] |
[[#43節|43節]] |
[[#44節|44節]] |
[[#45節|45節]] |
[[#46節|46節]] |
[[#47節|47節]] |
[[#48節|48節]] |
[[#49節|49節]] |
[[#50節|50節]] <br />
[[#51節|51節]] |
[[#52節|52節]] |
[[#53節|53節]] |
[[#54節|54節]] |
[[#55節|55節]] |
[[#56節|56節]] <br />
[[#57節|57節]] |
[[#58節|58節]] |
[[#59節|59節]] |
[[#60節|60節]] |
[[#61節|61節]] |
[[#62節|62節]] <br />
[[#63節|63節]] |
[[#64節|64節]] |
[[#65節|65節]] |
[[#66節|66節]] |
[[#67節|67節]] <br />
[[#68節|68節]] |
[[#69節|69節]] |
[[#70節|70節]] <br />
[[#71節|71節]] |
[[#72節|72節]] |
[[#73節|73節]] |
[[#74節|74節]] |
[[#75節|75節]] |
[[#76節|76節]] |
[[#77節|77節]] |
[[#78節|78節]] |
[[#79節|79節]] |
[[#80節|80節]] <br />
[[#81節|81節]] |
[[#82節|82節]] |
[[#83節|83節]] |
[[#84節|84節]] |
[[#85節|85節]] |
[[#86節|86節]] |
[[#87節|87節]] |
[[#88節|88節]] <br />
[[#89節|89節]] |
[[#90節|90節]] <br />
[[#脚注|脚注]]<br />
[[#参考リンク|参考リンク]]<br />
|}
<br style="clear:both;" />
__notoc__
==カルヌーテース族の蜂起==
===1節===
*<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/1節]] {{進捗|00%|2025-10-26}}</span>
[[画像:Maccari-Cicero.jpg|thumb|right|250px|[[w:カティリナ弾劾演説|カティリーナ弾劾演説]]をする[[w:マルクス・トゥッリウス・キケロ|キケロー]](左中央)(チェザレ・マッカリによる19世紀のフレスコ画)。[[w:プブリウス・クロディウス・プルケル|クローディウス]]はこれを越権行為であるとして、カエサルの政敵となっていたキケローを一時的に亡命へ追い込み、ついにはキケローの友人ミローの配下によって殺害された。]]
[[画像:Pompei_Magnus_Antiquarium.jpg|thumb|right|250px|[[w:グナエウス・ポンペイウス|グナエウス・ポンペイウス]]の胸像。クローディウス殺害に伴う騒乱を収拾するべく、[[w:元老院|元老院]]によりポンペイウスが単独の[[w:執政官|執政官]]に選出され、首都ローマと本土イタリアを制圧した。一方、カエサルも属州で新たに徴兵して兵力を増した。元老院派はカエサルの勢力が強大になることを恐れて、カエサル自身から将兵を取り上げて召還すべきと主張したが、ポンペイウスは不和を避けて宥和を図った。]]
:
;首都ローマの政情不安、ガッリア人領袖たちの謀計
*<!--❶--><sup>(1)</sup> [[wikt:en:quietus#Latin|Quieta]] [[wikt:en:Gallia#Latin|Gallia]],
**[[w:ガリア|ガッリア]]が鎮定されると、
*Caesar, ut [[wikt:en:constituerat|constituerat]],
**カエサルは、定めていたように、
*in [[wikt:en:Italia#Latin|Italiam]] ad [[wikt:en:conventus#Noun|conventus]] [[wikt:en:agendus#Latin|agendos]] [[wikt:en:proficiscitur|proficiscitur]].
**イタリアに、巡回裁判を行なうために出発する。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:ここでいうイタリアとは、カエサルの属州であった<br> [[w:ガリア・キサルピナ|ガッリア・キサルピーナ]]を指す。<br> カエサルは、巡回裁判を除けば、おもに[[w:ラヴェンナ|ラウェンナ]]に<br> 滞在していたと考えられる。[[内乱記_第1巻#5節|『内乱記』第1巻5節]]を参照。)</span>
:
*[[wikt:en:ibi#Latin|Ibi]] [[wikt:en:cognoscit|cognoscit]] de <P.> [[wikt:en:Clodius#Latin|Clodii]] [[wikt:en:caedes#Latin|caede]],
**そこで[[w:プブリウス・クロディウス・プルケル|プーブリウス・クローディウス]]の殺害について知って、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:クローディウスは護民官を務めた<ruby><rb>[[w:ポプラレス|民衆派]]</rb><rp>(</rp><rt>ポプラレス</rt><rp>)</rp></ruby> の政治家で、<br> カエサルから恩義を受けていた。<br> かの弁論家[[w:マルクス・トゥッリウス・キケロ|キケロー]]やその友人ティトゥス・ミロー [[w:la:Titus_Annius_Milo|Milo]] ら<br> <ruby><rb>[[w:オプティマテス|元老院派]]</rb><rp>(</rp><rt>オプティマテス</rt><rp>)</rp></ruby> と激しく対立し、ミローの配下によって殺害された。)</span>
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:<P.> ([[wikt:en:Publius#Latin|Publii]]) 「プーブリウスの」は ρ系写本にのみ記されている。)</span>
*<de> <u>senatus</u>que <u>consulto</u> [[wikt:en:certior#Latin|certior]] [[wikt:en:factus#Participle|factus]], ut omnes [[wikt:en:iunior#Latin|iuniores]] Italiae [[wikt:en:coniurarent|coniurarent]],
**イタリアの全青年に<small>(新兵として)</small>宣誓するようにとの元老院決議について知らされて、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:この事態を収拾すべく元老院派の[[w:グナエウス・ポンペイウス|ポンペイウス]]が単独の執政官<br> (''[[w:de:Consul sine collega|consul sine collega]]'')に選任されて本土イタリアを掌握した。)</span>
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:<de> は現存する写本にはなく、近世以降に挿入提案されたもの。)</span>
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注: [[wikt:en:senatus_consultum#Latin|senātūs cōnsultum]] ([[wikt:en:ultimus#Latin|ultimum]]) 「[[w:セナトゥス・コンスルトゥム・ウルティムム|元老院(の最終)決議]]」<br> ; dē [[wikt:en:senatus_consulto#Latin|senātūs cōnsultō]] 「元老院決議について」)</span>
*<u>dilectum</u> [[wikt:en:totus#Latin|tota]] [[wikt:en:provincia#Latin|provincia]] habere [[wikt:en:instituo#Latin|instituit]].
**<small>(カエサルは)</small>属州<small>〔ガッリア・キサルピーナ〕</small>全体での徴集をすることを決定する。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:dilectus#Noun|dilectum]] は、[[wikt:en:delectus#Noun_2|delectum]] と表記している校訂版もある。)</span>
:
*<!--❷--><sup>(2)</sup> Eae res in Galliam [[wikt:en:transalpinus#Latin|Transalpinam]] celeriter [[wikt:en:perferuntur|perferuntur]].
**その状況は、[[w:ガリア・ナルボネンシス|ガッリア・トラーンサルピーナ]]<small>〔アルプスの向こう側のガッリア〕</small>に速やかに報知された。
:
*[[wikt:en:addunt|Addunt]] ipsi et [[wikt:en:adfingunt|adfingunt]] [[wikt:en:rumor#Latin|rumoribus]] [[wikt:en:Galli#Latin|Galli]],
**[[w:ガリア人|ガッリア人]]たち自身が風評に想像して付け加えたのは、
*quod res [[wikt:en:poscere|poscere]] [[wikt:en:videbatur|videbatur]]:
**事態が要求すると思われていたことで、
*[[wikt:en:retineri|retineri]] <u>urbano</u> [[wikt:en:motus#Noun_2|motu]] Caesarem
**カエサルは、都<small>〔[[w:ローマ|ローマ市]]〕</small>の騒乱に束縛されて、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:urbanus#Adjective|urbānus]] は「都市の」「都会の」と訳されるが、<br> とりわけ「首都[[w:ローマ|ローマ市]]の」を意味する。)</span>
*neque in [[wikt:en:tantus#Latin|tantis]] [[wikt:en:dissensio#Latin|dissensionibus]] ad [[wikt:en:exercitus#Noun|exercitum]] venire posse.
**これほどの対立においては、軍隊のもとへ来ることができない、<br>ということである。
:
*<!--❸--><sup>(3)</sup> Hac [[wikt:en:impulsus#Participle|impulsi]] [[wikt:en:occasio#Latin|occasione]],
**このような好機に刺激されて、
*qui iam ante se [[wikt:en:populus#Noun|populi]] Romani [[wikt:en:imperium#Latin|imperio]] [[wikt:en:subiectus#Latin|subiectos]] [[wikt:en:dolerent|dolerent]],
**すでに以前から自分たちがローマ国民の支配に服属させられているのを悲嘆している者たちは、
*[[wikt:en:libere#Adverb_2|liberius]] atque [[wikt:en:audacter#Latin|audacius]] de bello [[wikt:en:consilium#Latin|consilia]] [[wikt:en:inire|inire]] [[wikt:en:incipiunt|incipiunt]].
**より自由に、かつ、より向こう見ずに、戦争について謀議に取りかかり始める。
:
[[画像:Brennus_mg_9724.jpg|thumb|right|250px|[[w:ブレンヌス|ブレンヌス]]の胸像。BC4世紀([[w:紀元前387年|387年]])に、ローマ軍を破って、ローマ市を占領した。アッコーと同じセノネース族の族長だったとされている。]]
*<!--❹--><sup>(4)</sup> [[wikt:en:indictus#Latin|Indictis]] inter se principes Galliae [[wikt:en:concilium#Latin|conciliis]] [[wikt:en:silvestris#Latin|silvestribus]] ac [[wikt:en:remotus#Latin|remotis]] locis
**ガッリアの領袖たちは、森林や人里離れた場所での会合を互いに申し合わせて、
*[[wikt:en:queruntur|queruntur]] de [[wikt:en:Acco#Latin|Acconis]] [[wikt:en:mors#Latin|morte]];
**アッコーの死について嘆く。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[ガリア戦記 第6巻#44節|第6巻44節]]を参照。)</span>
*<u>posse</u> hunc [[wikt:en:casus#Latin|casum]] ad ipsos [[wikt:en:recidere#Verb_4|recidere]] [[wikt:en:demonstrant#Latin|demonstrant]];
**彼<small>〔アッコー〕</small>の結末が彼ら自身へ降りかかりうることを説く。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:posse#Verb|posse]] の位置は、<br> α系写本では hunc の前だが、<br> β系写本では hunc casum ad ipsos recidere <u>posse</u> demonstrant <br> となっている。)</span>
:
*<!--❺--><sup>(5)</sup> [[wikt:en:miserantur|miserantur]] [[wikt:en:communis#Latin|communem]] Galliae [[wikt:en:fortuna#Latin|fortunam]];
**ガッリア共通の境遇をあわれむ。
*omnibus [[wikt:en:pollicitatio#Latin|pollicitationibus]] ac [[wikt:en:praemium#Latin|praemiis]] [[wikt:en:deposcunt|deposcunt]]
**<small>(以下の者たちを)</small>あらゆる約束と恩賞によって求める。
*qui [[wikt:en:bellum#Latin|belli]] <u>initia</u> [[wikt:en:faciant|faciant]] et sui [[wikt:en:caput#Latin|capitis]] [[wikt:en:periculum#Latin|periculo]] Galliam in [[wikt:en:libertas#Latin|libertatem]] [[wikt:en:vindicent|vindicent]].
**戦端を開いて、自らを危険にさらしても、ガッリアを解放する者たちを。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:~ in libertatem vindicare;~を解放する)</span>
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、α系写本では [[wikt:en:initia#Latin|initia]] (複数形) だが、<br> β系写本では [[wikt:en:initium#Latin|initium]] (単数形) となっている。)</span>
:
*<!--❻--><sup>(6)</sup> In primis [[wikt:en:ratio#Latin|rationem]] esse [[wikt:en:habendus#Latin|habendam]] [[wikt:en:dicunt|dicunt]],
**とりわけ、<small>(以下のような)</small>方策を採るべきであると述べる。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:in_primis#Latin|in primis]] は、[[wikt:en:inprimis#Adverb|
inprimis]] と表記している校訂版もある。)</span>
*[[wikt:en:priusquam#Latin|prius quam]] eorum [[wikt:en:clandestinus#Latin|clandestina]] consilia [[wikt:en:efferantur|efferantur]],
**彼らの秘密の計画が漏らされるより前に、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:反ローマの挙兵のはかりごとが漏れる前に)</span>
*ut Caesar ab [[wikt:en:exercitus#Noun|exercitu]] [[wikt:en:intercludatur|intercludatur]].
**カエサルが軍隊から切り離されるように、と。
:
*<!--❼--><sup>(7)</sup> Id esse [[wikt:en:facilis#Latin|facile]],
**それは容易なことである。
*quod neque legiones [[wikt:en:audeant|audeant]] [[wikt:en:absens#Latin|absente]] [[wikt:en:imperator#Latin|imperatore]] ex [[wikt:en:hiberna#Noun|hibernis]] [[wikt:en:egredi|egredi]],
**というのは、[[w:ローマ軍団|諸軍団]]は将軍<small>〔カエサル〕</small>が不在のときにあえて冬営から出て行こうとはしないし、
*neque [[wikt:en:imperator#Latin|imperator]] sine [[wikt:en:praesidium#Latin|praesidio]] ad legiones [[wikt:en:pervenire#Latin|pervenire]] [[wikt:en:possit|possit]].
**将軍は護衛なしに諸軍団のところへ到着することはできないのだから。
: <!-- [[wikt:en:| -->
*<!--❽--><sup>(8)</sup> [[wikt:en:postremo#Adverb|Postremo]] in [[wikt:en:acies#Latin|acie]] <u>praestare</u> [[wikt:en:interfici|interfici]],
**結局のところ、戦列において討ち死にする方がましである。
**:<span style="color:#009900;">(訳注:[[wikt:en:praestare|praestare]] ~ [[wikt:en:quam#Adverb|quam]] …「…よりも~がより優る」)</span>
*<u>quam</u> non [[wikt:en:vetus#Latin|veterem]] belli [[wikt:en:gloria#Latin|gloriam]] [[wikt:en:libertas#Latin|libertatem]]<nowiki>que</nowiki> quam a [[wikt:en:maior#Noun|maioribus]] [[wikt:en:acceperint|acceperint]], [[wikt:en:recuperare#Latin|recuperare]].
**先祖から受け継いだかつての戦争の栄誉および自由を取り戻さないことよりは。
<!--
<span style="color:#009900;"></span>
<small></small>
**:<span style="color:#009900;">(訳注:
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:
-->
===2節===
[[画像:Chartres_1.jpg|thumb|right|320px|カルヌーテース族([[w:la:Carnutes|Carnutes]])の名を残す現在の[[w:シャルトル|シャルトル]]([[w:en:Chartres|Chartres]])の象徴である[[w:シャルトル大聖堂|シャルトル大聖堂]]([[w:世界遺産|世界遺産]])。[[ガリア戦記 第6巻#13節|第6巻13節]]⑩項で既述のように、カルヌーテース族の土地はガッリアの中心・聖地と見なされていた。ガッリアがキリスト教化されると、[[w:司教|司教座]]が置かれて、宗教的中心地となった。]]
*<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/2節]] {{進捗|00%|2025-11-05}}</span>
;ガッリア諸部族の会合で、カルヌーテース族が開戦動議
:
*<!--❶--><sup>(1)</sup> His rebus [[wikt:en:agitatus#Latin|agitatis]],
**これらの事柄が論議されて、
*[[wikt:en:profiteor#Latin|profitentur]] [[wikt:en:Carnutes#Latin|Carnutes]],
**カルヌーテース族の者が公言したことには、
*se [[wikt:en:nullus#Determiner|nullum]] [[wikt:en:periculum#Latin|periculum]] [[wikt:en:communis#Latin|communis]] [[wikt:en:salus#Latin|salutis]] causa [[wikt:en:recusare#Latin|recusare]],
**<small>(ガッリア)</small>共通の安全のためにはいかなる危険をも辞さない、
*[[wikt:en:princeps#Latin|principes]]<nowiki>que</nowiki> ex omnibus bellum [[wikt:en:facturus#Latin|facturos]] [[wikt:en:pollicentur|pollicentur]];
**かつ<small>(ガッリア方)</small>総勢の先鋒として戦争を遂行するであろうと約束する。
:
*<!--❷--><sup>(2)</sup> et, [[wikt:en:quoniam#Latin|quoniam]] in [[wikt:en:praesentia#Noun|praesentia]] [[wikt:en:obses#Latin|obsidibus]] [[wikt:en:cavere#Verb_2|cavere]] inter se non [[wikt:en:possint|possint]],
**目下のところ、人質により互いに保証し合うことはできなかったので、
*ne res [[wikt:en:efferatur|efferatur]],
**事が漏らされないように、
*<u>ut</u> [[wikt:en:ius_iurandum#Latin|iure iurando]] ac [[wikt:en:fides#Latin|fide]] [[wikt:en:sanciatur|sanciatur]], [[wikt:en:petunt|petunt]],
**誓約と信義でもって批准するように求める。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、写本ST<sup>c</sup> では ut だが、<br> 写本 T<sup>1</sup>・ρ系では at 、<br> 写本BMLNV・χ系では aut となっている。)</span>
*[[wikt:en:conlatus#Latin|conlatis]] [[wikt:en:militaris#Adjective|militaribus]] [[wikt:en:signum#Latin|signis]],
**軍旗が運び集められて、
*[[wikt:en:quo#Etymology_2_2|quo]] [[wikt:en:mos#Latin|more]] eorum [[wikt:en:gravissimus#Latin|gravissima]] [[wikt:en:caerimonia#Latin|caerimonia]] [[wikt:en:continetur|continetur]],
**それは彼らの慣習で最も荘重な<ruby><rb>神聖儀式</rb><rp>(</rp><rt>カエリモーニア</rt><rp>)</rp></ruby>として保たれているのだが、
*ne [[wikt:en:factus#Latin|facto]] [[wikt:en:initium#Latin|initio]] belli ab reliquis [[wikt:en:deserantur|deserantur]].
**開戦したら、ほかの<small>(部族の)</small>者たちから見放されないように、ということである。
: <!-- [[wikt:en:| -->
*<!--❸--><sup>(3)</sup> Tum [[wikt:en:conlaudatus#Latin|conlaudatis]] [[wikt:en:Carnutes#Latin|Carnutibus]],
**それから、カルヌーテース族が賞賛されて、
*[[wikt:en:datus#Participle|dato]] [[wikt:en:ius_iurandum#Latin|iure iurando]] ab omnibus, qui [[wikt:en:aderant|aderant]],
**訪れていたすべての者たちによって誓約が交わされて、
*[[wikt:en:tempus#Latin|tempore]] eius rei [[wikt:en:constitutus#Participle|constituto]]
**その事の時期を決定すると、
*ab [[wikt:en:concilium#Latin|concilio]] [[wikt:en:disceditur|disceditur]].
**<small>(ガッリアの領袖たちは)</small>会合から立ち去る。
<!--
<span style="color:#009900;"></span>
<small></small>
**:<span style="color:#009900;">(訳注:
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:
-->
===3節===
[[画像:Cathédrale_Sainte-Croix_d'Orléans_2008_PD_16.JPG|thumb|right|280px|ケナブム(Cenabum)すなわち現在の[[w:オルレアン|オルレアン]]の聖十字架大聖堂。ここもカルヌーテース族の[[w:オッピドゥム|城塞都市]]で、ガッリアの[[w:ドルイド|ドルイド]]たちが集まる聖地だったという。ローマの[[w:ルキウス・ドミティウス・アウレリアヌス|アウレリアヌス帝]](Aurelianus)によって再建されたのでアウレリアヌスの都市(アウレリアヌム [[w:la:Aurelianum|Aurelianum]])と改称され、オルレアン(Orléans)と転訛した。キリスト教化によってここにも[[w:司教|司教座]]が置かれて、布教の中心地になった。]]
*<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/3節]] {{進捗|00%|2025-11-17}}</span>
;カルヌーテース族がケナブム進駐
:
*<!--❶--><sup>(1)</sup> [[wikt:en:ubi#Latin|Ubi]] ea dies venit,
**その日が来ると、
*[[wikt:en:Carnutes#Latin|Carnutes]],
**カルヌーテース族は、
*Cotuato et Conconnetodumno [[wikt:en:dux#Latin|ducibus]], [[wikt:en:desperatus#Latin|desperatis]] hominibus,
**捨て身覚悟の連中であるコトゥアトゥスとコンコンネトドゥムヌスを指導者として、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:ガリア語では、<br> コトゥアトス ''[[w:fr:Cotuatos|Cotuatos]]''、<br> コンコンネトドゥムノス ''[[w:fr:Conconnetodumnos|Conconnetodumnos]]''。)</span>
*<u>Cenabum</u> [[wikt:en:signum#Latin|signo]] [[wikt:en:datus#Participle|dato]] [[wikt:en:concurrunt|concurrunt]]
**号令が発せられるとともに<u>ケナブム</u>に襲来する。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:ケナブムは、現在の[[w:オルレアン|オルレアン]]。)</span>
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:fr:Cenabum|Cenabum]] はケルト語風の読みで、''[[ガリア戦記/注解編/写本と校訂版#Vossius|Vossius]]'' による修正提案。<br> 写本では genabim, genebim, genebin などとなっている。<br> ⇒ [[wikt:en:Genabum#Latin|Genabum]])</span>
*[[wikt:en:civis#Latin|cives]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:Romanus#Adjective|Romanos]], qui [[wikt:en:negotiandi|negotiandi]] causa [[wikt:en:ibi#Latin|ibi]] [[wikt:en:constiterant|constiterant]],
**そこには、商いを営むためにローマ市民たちが滞在していて、
*in his [[wikt:en:Gaius#Latin|Gaium]] [[wikt:en:Fufius#Latin|Fufium]] Citam, [[wikt:en:honestus#Latin|honestum]] [[wikt:en:eques#Latin|equitem]] [[wikt:en:Romanus#Adjective|Romanum]],
**彼らの中には、気高いローマ人[[w:エクィテス|騎士]]ガーイウス・フーフィウス・キタがいて
*qui rei [[wikt:en:frumentarius#Latin|frumentariae]] [[wikt:en:iussus#Noun|iussu]] Caesaris [[wikt:en:praeerat|praeerat]],
**カエサルの指図により糧秣調達を統率していたが、
*[[wikt:en:interficiunt|interficiunt]] [[wikt:en:bonum#Noun_2|bona]]<nowiki>que</nowiki> eorum [[wikt:en:diripiunt|diripiunt]].
**<small>(カルヌーテース勢は彼らローマ市民たちを)</small>殺害して、彼らの財産を略奪する。
:
*<!--❷--><sup>(2)</sup> Celeriter ad omnes Galliae [[wikt:en:civitas#Latin|civitates]] [[wikt:en:fama#Latin|fama]] [[wikt:en:perfertur|perfertur]].
**速やかに全ガッリア部族のもとへ、評判が報知される。
*Nam, <u>ubique</u> [[wikt:en:maior#Latin|maior]] atque [[wikt:en:inlustrior|inlustrior]] [[wikt:en:incidit#Etymology_1|incidit]] res,
**なぜなら、より重大でより目立った事態が起こればどこであろうが、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、主要写本ω の大半では [[wikt:en:ubique#Latin|ubique]] だが、写本STでは [[wikt:en:ubi#Latin|ubi]] 、<br> さらに [[wikt:en:ubicumque#Latin|ubicumque]] という異読もあり、<br> ''[[ガリア戦記/注解編/写本と校訂版#Schneider,K.E.Chr.|Chr. Schneider]]'' は ubi quae と修正提案している。)</span>
*[[wikt:en:clamor#Latin|clamore]] per [[wikt:en:ager#Latin|agros]] [[wikt:en:regio#Latin|regiones]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:significant#Latin|significant]];
**耕地や<small>(集落の)</small>区域を介して、大声で呼びかける。
*<u>hinc</u> [[wikt:en:alius#Latin|alii]] [[wikt:en:deinceps#Latin|deinceps]] [[wikt:en:excipiunt|excipiunt]]
**ここから、別の者たちが続けて引き受けて、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、α系写本の大半では [[wikt:en:hanc#Latin|hanc]] だが、<br> β系写本では [[wikt:en:hinc#Latin|hinc]] 「ここから」、<br> 写本Sでは [[wikt:en:hunc|hunc]] となっている。)</span>
*et [[wikt:en:proximus#Noun|proximis]] [[wikt:en:tradunt|tradunt]];
**近隣の者たちへ伝える。
*ut tum [[wikt:en:accidit#Etymology_1|accidit]].
**そのときにも<small>(同様のことが)</small>起こったのである。
: <!-- [[wikt:en:| -->
*<!--❸--><sup>(3)</sup> Nam, quae <u>Cenabi</u> [[wikt:en:oriens#Latin|oriente]] [[wikt:en:sol#Latin|sole]] gesta essent,
**ケナブムで日が昇るときになされていたこと<small>〔襲撃〕</small>が、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:Cenabi はケルト語風の読みで、''[[ガリア戦記/注解編/写本と校訂版#Vossius|Vossius]]'' による修正提案。<br> 主要写本ω では genabi となっている。 ⇒ [[wikt:en:Genabum#Latin|Genabum]])</span>
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:gestus#Latin|gesta]] [[wikt:en:essent#Etymology_1|essent]] は [[wikt:en:gero#Latin|gerō]] の3人称・複数・過去完了・受動・接続法。)</span>
*ante [[wikt:en:primus#Latin|primam]] [[wikt:en:confectus#Latin|confectam]] [[wikt:en:vigilia#Latin|vigiliam]]
**第一夜警時の終わる前頃には
**:<span style="color:#009900;">(訳注:第一夜警時は、日の入から真夜中までの時間帯の前半「宵の口」。<br> [[古代ローマの不定時法#夜警時|#夜警時]] を参照。)</span>
*in finibus [[wikt:en:Arverni#Latin|Arvernorum]] audita sunt,
**アルウェルニー族の領土において聞かれた。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:auditus#Latin|audita]] [[wikt:en:sunt#Latin|sunt]] は [[wikt:en:audio#Latin|audiō]] の3人称・複数・完了・受動・直説法)</span>
*[[wikt:en:qui#Latin|quod]] [[wikt:en:spatium#Latin|spatium]] est [[wikt:en:mille#Latin|milium]] [[wikt:en:passus#Etymology_2|passuum]] circiter [[wikt:en:centum#Latin|centum]] [[wikt:en:sexaginta#Latin|sexaginta]](CLX).
**約160ローママイルもの隔たりがあったのに。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:1[[ガイウス・ユリウス・カエサルの著作/通貨・計量単位#ミーッレ・パッスーム、ミーリア(ローママイル)|ローママイル]]は約1.48 kmで、160マイルは約240 km)</span>
<!--
<span style="color:#009900;"></span>
<small></small>
**:<span style="color:#009900;">(訳注:
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:
-->
==ウェルキンゲトリークスとガッリア同盟軍の蜂起==
===4節===
[[画像:Vercingetorix stater CdM.jpg|thumb|right|200px|“<span style="font-family:Times New Roman;font-size:15pt;">(VERCIN)GETORIXS</span>”の名と横顔が刻まれた金貨。]]
[[画像:Vercingétorix_par_Millet.jpg|thumb|right|250px|[[w:ウェルキンゲトリクス|ウェルキンゲトリークス]]の立像(フランスのアリーズ=サント=レーヌ <small>[[w:fr:Alise-Sainte-Reine|Alise-Sainte-Reine]]</small>)。<br>近代[[w:ナショナリズム|ナショナリズム]]の高揚とともに[[w:フランス|フランス]]国民が自らを古代[[w:ガリア人|ガッリア人]]の末裔と見なすようになると([[w:ガリア起源説|ガッリア起源説]])、ガッリア諸部族を率いて[[w:古代ローマ|古代ローマ]]と戦った彼は「'''フランス最初の英雄'''」として祀り上げられた。[[w:フランス第二帝政|第二帝政]]期に皇帝[[w:ナポレオン3世|ナポレオン3世]]の命により[[w:アレシアの戦い|アレスィア古戦場]]の発掘調査が実施され、[[w:1865年|1865年]]にはその地に彫刻家エメ・ミレ([[w:fr:Aimé Millet|Aimé Millet]])による高さ7メートルの銅像が建立された。<br>([[w:fr:Vercingétorix_(statue_d'Aimé_Millet)|fr:La statue de Vercingétorix]])]]
[[画像:Statue-vercingetorix-jaude-clermont.jpg|thumb|right|250px|[[w:ウェルキンゲトリクス|ウェルキンゲトリークス]]の騎馬像([[w:fr:Statue équestre de Vercingétorix (Frédéric Auguste Bartholdi)|fr]])。彼の出身地ゲルゴウィアの近く、[[w:クレルモン=フェラン|クレルモン=フェラン市]]中央広場に建つ。[[w:1903年|1903年]]に、[[w:自由の女神像 (ニューヨーク)|自由の女神像]]の作者として著名な彫刻家[[w:フレデリク・バルトルディ|フレデリク・オーギュスト・バルトルディ]]によって建立された。[[w:フランス語|フランス語]]で「我は皆の自由のために武器を取った」« J’ai pris les armes pour la liberté de tous » と刻まれている。]]
*<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/4節]] {{進捗|00%|2025-11-24}}</span>
;アルウェルニー族のウェルキンゲトリークスが挙兵、ガッリア諸部族同盟軍を指揮する
:
*<!--❶--><sup>(1)</sup> [[wikt:en:similis#Latin|Simili]] [[wikt:en:ratio#Latin|ratione]] ibi
**そこ<small>〔アルウェルニー族領〕</small>でも同様のやり方によって、
*[[wikt:en:Vercingetorix#Latin|Vercingetorix]],
**[[w:ウェルキンゲトリクス|ウェルキンゲトリークス]]という、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:ガリア語 [[wikt:en:Reconstruction:Gaulish/Werkingetorix|*Werkingetorīx]] は「戦士たちの最高の王」という意味で、<br> ガッリア同盟軍の最高司令官にふさわしい呼び名である。<br> 《[[ガリア戦記/ガリア語の名前#Vercingetorix|'''ガリア語の名前'''#Vercingetorix]]》 を参照せよ。)</span>
*[[wikt:fr:Celtillus|Celtilli]] filius, [[wikt:en:Arvernus#Latin|Arvernus]],
**ケルティッルスの息子で[[w:アルウェルニ族|アルウェルニー族]]の者で、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:''[[w:en:Celtillus|Celtillus]]'' はガリア語で「小さなケルト人」という意味だと解される。)</span>
*[[wikt:en:summus#Adjective|summae]] [[wikt:en:potentia#Latin|potentiae]] [[wikt:en:adulescens#Noun|adulescens]],
**最高の影響力のある青年が、
*cuius [[wikt:en:pater#Latin|pater]] [[wikt:en:principatus#Latin|principatum]] Galliae [[wikt:en:totus#Etymology_1|totius]] [[wikt:en:obtinuerat|obtinuerat]]
**──その父<small>〔ケルティッルス〕</small>はガッリア全体の主導権を占めていたが、
*et ob eam causam, quod [[wikt:en:regnum#Latin|regnum]] [[wikt:en:adpetebat|adpetebat]], ab [[wikt:en:civitas#Latin|civitate]] erat [[wikt:en:interfectus#Latin|interfectus]],
**王位を求めたという理由により、部族の者によって誅殺されていたのであるが、──
*[[wikt:en:convocatus#Latin|convocatis]] suis [[wikt:en:cliens#Latin|clientibus]]
**自らの庇護者たちを招集して、
*facile [[wikt:en:incendit|incendit]].
**容易に焚き付けた。
:
*<!--❷--><sup>(2)</sup> [[wikt:en:cognitus#Participle|Cognito]] eius [[wikt:en:consilium#Latin|consilio]]
**彼の計画を知ると、
*ad [[wikt:en:arma#Latin|arma]] [[wikt:en:concurritur|concurritur]].
**<small>(人々は)</small>武器のもとへ群がり集まった。
*[[wikt:en:prohibetur|Prohibetur]] ab [[wikt:fr:Gobannitio|Gobannitione]], [[wikt:en:patruus#Latin|patruo]] suo, [[wikt:en:reliquus#Latin|reliquis]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:princeps#Noun_3|principibus]],
**彼の<small>(父方の)</small>おじゴバンニティオやほかの領袖たちにより妨げられた。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:''[[w:fr:Gobannitio|Gobannitio]]'' は「鍛冶屋」か「鍛冶の神」に由来する名前と解される。)</span>
*qui hanc [[wikt:en:temptandus#Latin|temptandam]] [[wikt:en:fortuna#Latin|fortunam]] non [[wikt:en:existimabant|existimabant]];
**その者たちは、このような運命を試すべきとは考えていなかったのだ。
*[[wikt:en:expellitur|expellitur]] ex [[wikt:en:oppidum#Latin|oppido]] [[wikt:en:Gergovia#Latin|Gergovia]];
**<small>(ウェルキンゲトリークスは)</small>城塞都市ゲルゴウィアから追放される。
:
*<!--❸--><sup>(3)</sup> non [[wikt:en:destitit|destitit]] tamen
**しかしながら<small>(彼は計画を)</small>取り止めず、
*atque in agris habet [[wikt:en:dilectus#Noun|dilectum]] [[wikt:en:egens#Latin|egentium]] ac [[wikt:en:perditor#Noun|perditorum]].
**野に貧窮者たちやならず者たちを徴集する。
:
*Hac [[wikt:en:coactus#Latin|coacta]] [[wikt:en:manus#Latin|manu]],
**こうした手勢が集められ、
*[[wikt:en:quoscumque|quoscumque]] [[wikt:en:adit#Latin|adit]] ex civitate,
**部族のうちで<small>(彼が)</small>会った者は誰であれ、
*ad suam [[wikt:en:sententia#Latin|sententiam]] [[wikt:en:perducit|perducit]];
**自らの意図に引き込んだ。
:
*<!--❹--><sup>(4)</sup> [[wikt:en:hortatur|hortatur]] ut [[wikt:en:communis#Latin|communis]] [[wikt:en:libertas#Latin|libertatis]] causa [[wikt:en:arma#Latin|arma]] [[wikt:en:capiant|capiant]],
**<small>(ガッリア)</small>共通の自由のために武器を取るように鼓舞した。
*[[wikt:en:magnus#Latin|magnis]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:coactus#Latin|coactis]] [[wikt:en:copia#Latin|copiis]]
**大軍勢が集められて、
*[[wikt:en:adversarius#Latin|adversarios]] suos, a quibus paulo ante erat [[wikt:en:eiectus#Latin|eiectus]],
**少し前に<small>(彼をゲルゴウィアから)</small>放逐したところの敵対者たちを、
*[[wikt:en:expellit|expellit]] ex civitate.
**部族から追放する。
*[[wikt:en:rex#Latin|Rex]] ab suis [[wikt:en:appellatur|appellatur]].
**<small>(ウェルキンゲトリークスは)</small>配下の者たちから王と呼ばれている。
:
*<!--❺--><sup>(5)</sup> [[wikt:en:dimittit|Dimittit]] [[wikt:en:quoque#Latin|quoque]] [[wikt:en:versus#Adverb|versus]] [[wikt:en:legatio#Latin|legationes]];
**<small>(ウェルキンゲトリークスは)</small>あらゆる方向へ使節団を派遣して、
*[[wikt:en:obtestatur|obtestatur]] ut in [[wikt:en:fides#Latin|fide]] [[wikt:en:maneant|maneant]].
**誓約に留まるようにと、懇願する。
:
*<!--❻--><sup>(6)</sup> Celeriter sibi
**速やかに、自分たち<small>〔アルウェルニー族〕</small>に対して
*[[wikt:en:Senones#Latin|Senones]], [[wikt:en:Parisii#Latin|Parisios]], [[wikt:en:Pictones#Latin|Pictones]], [[wikt:en:Cadurci#Latin|Cadurcos]], <u>Turonos</u>, [[wikt:en:Aulerci#Latin|Aulercos]], [[wikt:en:Lemovices#Latin|Lemovices]], <u>Andes</u>
**セノネース族、パリースィイー族、ピクトネース族、カドゥルキー族、<br><u>トゥロニイー族</u>、アウレルキー族、レモウィーケース族、アンデース族、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部のトゥロニイー族 ''[[w:Turoni|Turoni]]'' は、トゥロネース族 ''[[wikt:en:Turones#Latin|Turonēs]]'' ともいう。)</span>
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:二つ目の下線部は、α系写本では [[wikt:en:Andi#Latin|Andos]]「アンディー族」だが、<br> ''[[ガリア戦記/注解編/写本と校訂版#Glareanus|Glareanus]]'' は、[[wikt:en:Andes#Latin|Andēs]]「アンデース族」と修正提案し、<br> これは別名「アンデカーウィー族」''[[wikt:en:Andecavi#Latin|Andecāvī]]'' ともいう。)</span>
*reliquosque omnes, qui [[wikt:en:Oceanus#Latin|Oceanum]] [[wikt:en:adtingunt|adtingunt]], [[wikt:en:adiungit|adiungit]];
**および<ruby><rb>大洋<span style="color:#009900;">〔[[w:大西洋|大西洋]]〕</span></rb><rp>(</rp><rt>オーケアヌス</rt><rp>)</rp></ruby>に接するほかの全部族を、加盟させる。
*omnium [[wikt:en:consensus#Latin|consensu]]
**すべての者たちの同意により、
*ad eum [[wikt:en:defertur|defertur]] [[wikt:en:imperium#Latin|imperium]].
**彼<small>〔ウェルキンゲトリークス〕</small>に<small>(諸部族の)</small>軍勢指揮権が譲り渡される。
:
*<!--❼--><sup>(7)</sup> Qua [[wikt:en:oblatus#Latin|oblata]] [[wikt:en:potestas#Latin|potestate]]
**<small>(ウェルキンゲトリークスは)</small>その権限が任されると、
*omnibus his civitatibus [[wikt:en:obses#Latin|obsides]] [[wikt:en:imperat|imperat]],
**これらすべての部族に人質<small>(の供出)</small>を命令して、
*[[wikt:en:certus#Latin|certum]] numerum [[wikt:en:miles#Latin|militum]] ad se celeriter [[wikt:en:adduci#Latin|adduci]] [[wikt:en:iubet#Latin|iubet]],
**兵の一定の数が自分のもとへ速やかに動員されることを命じる。
:
*<!--❽--><sup>(8)</sup> [[wikt:en:arma#Latin|armorum]] [[wikt:en:quantum#Latin|quantum]] [[wikt:en:quisque#Latin|quaeque]] civitas [[wikt:en:domi#Latin|domi]] [[wikt:en:quisque#Latin|quodque]] ante tempus [[wikt:en:efficiat|efficiat]], [[wikt:en:constituit#Latin|constituit]];
**おのおのの部族が本国で、武器のどれほどをその時期の前に生産するかを、決定した。
*in primis [[wikt:en:equitatus#Latin|equitatui]] [[wikt:en:studet|studet]].
**とりわけ、[[w:騎兵|騎兵隊]]を熱心に求めた。
: <!-- [[wikt:en:| -->
*<!--❾--><sup>(9)</sup> Summae diligentiae summam [[wikt:en:imperium#Latin|imperii]] [[wikt:en:severitas#Latin|severitatem]] addit;
**<small></small>(ウェルキンゲトリークスは)最高の入念さに、命令の最高の厳格さを付け加える。
*magnitudine [[wikt:en:supplicium#Latin|supplicii]] [[wikt:en:dubitans#Latin|dubitantes]] cogit.
**重大な刑罰をふんぎりが付かぬ者たちへ強いる。
: <!-- [[wikt:en:| -->
*<!--❿--><sup>(10)</sup> Nam maiore commisso delicto <u>igni</u> atque omnibus tormentis necat,
**すなわち、より重大な違反を犯したら、火とあらゆる拷問によって誅殺した。
*leviore de causa auribus desectis aut singulis effossis oculis domum remittit,
**より軽微な場合については、両耳を切り取り、あるいは眼を一つずつ繰り抜いて、郷里へ送還する。
*ut sint reliquis documento et magnitudine poenae perterreant alios.
**ほかの者たちへの警告となり、懲罰の重大さが別の者たちを畏怖させるようにである。
<!--
<span style="color:#009900;"></span>
<small></small>
**:<span style="color:#009900;">(訳注:
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:
-->
===5節===
*<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/5節]] {{進捗|00%|2025-12-14}}</span>
;ビトゥリゲース族が、ガッリア同盟軍に寝返る
:
*<!--❶--><sup>(1)</sup> His [[wikt:en:supplicium#Latin|suppliciis]] celeriter [[wikt:en:coactus#Latin|coacto]] [[wikt:en:exercitus#Noun|exercitu]],
**<small>(ウェルキンゲトリークスは)</small>これらの刑罰により速やかに軍隊を徴集して、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:「軍隊」と訳される [[wikt:en:exercitus#Noun|exercitus]] には「鍛えられて規律がある」という意味合いがあり、<br> これまでカエサルがガッリア人の軍勢をこのように表現したことはまれであった。)</span>
*[[wikt:en:Lucterius#Latin|Lucterium]] [[wikt:en:Cadurcus#Latin|Cadurcum]], [[wikt:en:summus#Latin|summae]] hominem [[wikt:en:audacia#Latin|audaciae]],
**この上なく豪胆な人物であるカドゥルキー族のルクテリウスを
*cum parte [[wikt:en:copiarum#Noun_2|copiarum]] in [[wikt:en:Ruteni#Latin|Rutenos]] [[wikt:en:mittit|mittit]];
**軍勢の一部とともにルテーニー族のところに遣わす。
*ipse in [[wikt:en:Bituriges#Latin|Bituriges]] [[wikt:en:proficiscitur|proficiscitur]].
**<small>(ウェルキンゲトリークス)</small>自身はビトゥリゲース族のところに出発する。
:
; ビトゥリゲース族が、ハエドゥイー族に、対ウェルキンゲトリークスのための援兵を依頼
*<!--❷--><sup>(2)</sup> Eius [[wikt:en:adventus#Latin|adventu]]
**彼<small>〔ウェルキンゲトリークス〕</small>の到来により、
*[[wikt:en:Bituriges#Latin|Bituriges]] ad [[wikt:en:Aeduos|Haeduos]], quorum erant in [[wikt:en:fides#Latin|fide]],
**ビトゥリゲース族は、彼らが庇護下にあった[[w:ハエドゥイ族|ハエドゥイー族]]のもとへ、
*[[wikt:en:legatus#Latin|legatos]] [[wikt:en:mittunt|mittunt]] [[wikt:en:subsidium#Latin|subsidium]] [[wikt:en:rogatum#Verb|rogatum]],
**使節たちを、<small>(ハエドゥイー族からの)</small>援兵を依頼するために派遣する。
*[[wikt:en:quo#Adverb|quo]] [[wikt:en:facile#Latin|facilius]] hostium copias [[wikt:en:sustinere|sustinere]] [[wikt:en:possint|possint]].
**それにより、敵の軍勢をより容易に持ちこたえることができるようにということであった。
:
; ハエドゥイー族が、ビトゥリゲース族に対して援兵を派兵
*<!--❸--><sup>(3)</sup> [[wikt:en:Aedui#Latin|Haedui]] de [[wikt:en:consilium#Latin|consilio]] [[wikt:en:legatus#Latin|legatorum]], quos Caesar ad [[wikt:en:exercitus#Noun|exercitum]] [[wikt:en:reliquerat|reliquerat]],
**[[w:ハエドゥイ族|ハエドゥイー族]]は、カエサルが軍隊のもとへ残していた<ruby><rb>[[w:レガトゥス|総督副官]]</rb><rp>(</rp><rt>レーガートゥス</rt><rp>)</rp></ruby>たちの助言により、
*copias [[wikt:en:equitatus#Noun|equitatus]] [[wikt:en:peditatus#Latin|peditatus]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:subsidium#Latin|subsidio]] [[wikt:en:Bituriges#Latin|Biturigibus]] [[wikt:en:mittunt|mittunt]].
**[[w:騎兵|騎兵隊]]と[[w:歩兵|歩兵隊]]の軍勢をビトゥリゲース族に対する援兵として派遣する。
:
; ハエドゥイー族の援兵が、ビトゥリゲース族の寝返りを怖れて、途中で逃げ帰ってしまう
*<!--❹--><sup>(4)</sup> Qui cum ad flumen [[wikt:en:Liger#Latin|Ligerim]] [[wikt:en:venissent|venissent]], quod [[wikt:en:Bituriges#Latin|Bituriges]] ab [[wikt:en:Aeduis|Haeduis]] [[wikt:en:dividit#Latin|dividit]],
**その者たち<small>〔援兵〕</small>は、ビトゥリゲース族を[[w:ハエドゥイ族|ハエドゥイー族]]から分け隔てるリゲル川のたもとへやって来たときに、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:リゲル川 [[w:la:Liger|Liger]] は、現在の[[w:ロワール川|ロワール川]]。<br> 本書に登場するビトゥリゲース・クビ族 ''[[w:en:Bituriges Cubi|Bituriges Cubi]]'' は、<br> ロワール川西岸の[[w:シェール県|シェール県]]の辺りに居住していた。<br> 対して、[[w:ハエドゥイ族|ハエドゥイー族]]は、<br> ロワール川東岸の[[w:ニエーヴル県|ニエーヴル県]]の辺りに居住していた。)</span>
[[画像:Map of Eduens people-fr.svg|thumb|right|250px|[[w:ハエドゥイ族|ハエドゥイー族]]を軸とするガッリアの合従連衡(<small>フランス語表記</small>)。赤い部分がハエドゥイー族(Eduens)、桃色・茶色の部分が同盟部族、灰色の部分が敵対する[[w:アルウェルニ族|アルウェルニー族]](Arvernes)とセクアニ族(Sequanes)の領域である。茶色のビトゥリゲース族(Bituriges)と赤いハエドゥイー族(Eduens)の境界に沿ってリゲル川([[w:ロワール川|ロワール川]])が流れていることが見て取れる。川の西岸はビトゥリゲース族とアルウェルニー族の勢力圏になっている。]]
*paucos dies ibi [[wikt:en:moratus#Participle|morati]]
**わずかな日々をそこでぐずぐずして、
*neque flumen [[wikt:en:transire#Latin|transire]] [[wikt:en:ausus#Participle|ausi]] [[wikt:en:domus#Latin|domum]] [[wikt:en:revertuntur|revertuntur]]
**川をあえて渡らずに、故国に引き返す。
:
*<!--❺--><sup>(5)</sup> [[wikt:en:legatus#Latin|legatis]]<nowiki>que</nowiki> nostris [[wikt:en:renuntiant|renuntiant]]
**<small>(ハエドゥイー族の援兵たちが)</small>我が方<small>〔ローマ方〕</small>の<ruby><rb>[[w:レガトゥス|総督副官]]</rb><rp>(</rp><rt>レーガートゥス</rt><rp>)</rp></ruby>たちに報告したことには、
*se [[wikt:en:Bituriges#Latin|Biturigum]] [[wikt:en:perfidia#Latin|perfidiam]] [[wikt:en:veritus#Latin|veritos]] [[wikt:en:revertisse|revertisse]],
**自分たち<small>〔援兵〕</small>は、ビトゥリゲース族の寝返りを恐れて引き返した。
*quibus id [[wikt:en:consilium#Latin|consilii]] fuisse [[wikt:en:cognoverint|cognoverint]],
**彼らには、以下のような謀計があったことを探知したのだ。
*ut, si flumen [[wikt:en:transissent#Latin|transissent]], una ex parte ipsi, altera [[wikt:en:Arverni#Latin|Arverni]] se [[wikt:en:circumsisterent|circumsisterent]].
**もし川を渡ったら、一方から<small>(ビトゥリゲース族)</small>自身が、他方から[[w:アルウェルニ族|アルウェルニー族]]が自分たちを包囲するというものだ、と。
:
*<!--❻--><sup>(6)</sup> Id ea<span style="background-color:#ffa;">[[wikt:la:-ne|ne]]</span> de causa, quam [[wikt:en:legatus#Latin|legatis]] <u>pronuntiarunt</u>,
**そのことは<small>(援兵たちが)</small><ruby><rb>[[w:レガトゥス|総督副官]]</rb><rp>(</rp><rt>レーガートゥス</rt><rp>)</rp></ruby>たちに報告した理由によって<small>(なしたのか?)</small>
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:-ne#Latin|-ne]] ~ [[wikt:en:an#Latin|an]] …;~であるか、あるいは…であるか。)</span>
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部の [[wikt:en:pronuntiarunt|pronuntiarunt]]<sub> (直接法・完了形)</sub> は古い印刷本 ''[[ガリア戦記/注解編/写本と校訂版#クリティカル・アパラトゥスとその略号|edd.vett.]]'' の記述で、<br> α系写本では [[wikt:en:pronuntiarint|pronuntiarint]]<sub> (接続法・完了形)</sub> だが、<br> β系写本では [[wikt:en:pronuntiaverint|pronuntia<u>ve</u>rint]]<sub> (接続法・完了形)</sub> となっている。)</span>
*<span style="background-color:#ffa;">[[wikt:la:an|an]]</span> [[wikt:en:perfidia#Latin|perfidia]] [[wikt:en:adductus#Latin|adducti]] [[wikt:en:fecerint|fecerint]],
**あるいは<small>(ビドゥリゲース族の)</small>寝返りに動かされて、なしたのか?
*[[wikt:en:quod#Conjunction|quod]] [[wikt:en:nihil#Latin|nihil]] nobis [[wikt:en:constat#Latin|constat]],
**我々<small>〔ローマ人〕</small>には何ら定かではないので、
*non [[wikt:en:videtur|videtur]] pro [[wikt:en:certus#Latin|certo]] esse <u>proponendum</u>.
**確言するべきであるとは思われない。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:~ pro certo ponere;~を確かであると主張する)</span>
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、α系写本では [[wikt:en:proponendum|<u>pro</u>ponendum]] だが、<br> β系写本では [[wikt:en:ponendum|ponendum]] となっている。)</span>
: <!-- [[wikt:en:| -->
; ビトゥリゲース族が、ローマ人やハエドゥイー族から離反して、アルウェルニー族と同盟してしまう
*<!--❼--><sup>(7)</sup> [[wikt:en:Bituriges#Latin|Bituriges]] eorum [[wikt:en:discessus#Noun|discessu]]
**ビトゥリゲース族は、彼ら<small>〔援兵〕</small>の撤収により、
*[[wikt:en:statim#Latin|statim]] <u>se</u> cum [[wikt:en:Arverni#Latin|Arvernis]] <u>coniunguntur</u>.
**ただちに[[w:アルウェルニ族|アルウェルニー族]]と<small>(同盟を)</small>結んだ。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、α系写本では [[wikt:en:iunguntur|iunguntur]] だが、<br> β系写本では se ~ [[wikt:en:coniungunt|coniungunt]] となっている。)</span>
<!--
<span style="color:#009900;"></span>
<small></small>
**:<span style="color:#009900;">(訳注:
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:
-->
===6節===
*<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/6節]] {{進捗|00%|2025-12-15}}</span>
[[画像:Warsaw Royal Castle GM (12).JPG|thumb|right|200px|[[w:グナエウス・ポンペイウス|グナエウス・ポンペイウス]]の立像([[w:ワルシャワ歴史地区|ワルシャワ王宮]])。彼は首都の騒乱を鎮めるために単独の[[w:執政官|執政官]]として大権を与えられ、イタリアの徴兵権を得た。[[w:三頭政治|三頭政治]]後のこの混乱期に、彼はカエサルの政敵たちからこぞって支持されたが、危機に瀕していたカエサルを打倒する絶好の機会を見送った。これは重大な逸機であり、数年後にポンペイウスにとって致命的な結果をもたらすことになる。]]
;諸軍団と分断されて苦慮するカエサル
:
*<!--❶--><sup>(1)</sup> His rebus in Italiam Caesari [[wikt:en:nuntiatus#Latin|nuntiatis]],
**これらの事情がイタリアにいるカエサルへ知らされると、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:ここでいうイタリアとは、<br> カエサルの属州[[w:ガリア・キサルピナ|ガッリア・キサルピーナ]]のことである。)</span>
*cum iam ille [[wikt:en:urbanus#Latin|urbanas]] res [[wikt:en:virtus#Latin|virtute]] [[wikt:en:Gnaei#Latin|Gnaei]]<sub> ([[wikt:en:Cn.#Latin|Cn.]])</sub> [[wikt:en:Pompeius#Proper_noun|Pompei]] [[wikt:en:commodior#Latin|commodiorem]] in [[wikt:en:status#Noun_11|statum]] [[wikt:en:pervenisse#Latin|pervenisse]] [[wikt:en:intellegeret|intellegeret]],
**彼は、もはや都<small>〔[[w:ローマ|ローマ市]]〕</small>の事態は[[w:グナエウス・ポンペイウス|グナエウス・ポンペイウス]]の果断さによってより相応な状態に至ったと認識したので、
*in [[wikt:en:Gallia_transalpina#Latin|Transalpinam Galliam]] [[wikt:en:profectus#Latin|profectus]] est.
**ガッリア・トラーンサルピーナ<small>〔アルプスの向こう側のガッリア〕</small>に出発した。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[#1節|1節]]②項で言及された Galliam Transalpinam は<br> アルプスの西側「長髪のガッリア」全般を指すと思われるが、<br> ここではどちらかといえば<br> ガッリア南部のローマ属州ガッリア・トラーンサルピーナ<br> すなわち後の[[w:ガリア・ナルボネンシス|ガッリア・ナルボーネーンスィス]]を指す。)</span>
:
*<!--❷--><sup>(2)</sup> [[wikt:en:eo#Adverb|Eo]] cum [[wikt:en:venisset|venisset]],
**<small>(カエサルが)</small>そこに来たときに、
*magna [[wikt:en:difficultas#Latin|difficultate]] [[wikt:en:adficiebatur|adficiebatur]], qua [[wikt:en:ratio#Latin|ratione]] ad [[wikt:en:exercitus#Noun|exercitum]] [[wikt:en:pervenire#Latin|pervenire]] [[wikt:en:posset#Latin|posset]].
**どのような方策で軍隊のもとへ到達することができるか、という大きな困難に苦悩させられていた。
:
*<!--❸--><sup>(3)</sup> Nam, si [[wikt:en:legio#Latin|legiones]] in [[wikt:en:provincia#Latin|provinciam]] [[wikt:en:arcesseret|arcesseret]],
**なぜなら、もし、諸[[w:ローマ軍団|軍団]]を属州<small>〔ガッリア・トラーンサルピーナ〕</small>に呼び寄せるのならば、
*se [[wikt:en:absens#Latin|absente]] in [[wikt:en:iter#Latin|itinere]] [[wikt:en:proelium#Latin|proelio]] [[wikt:en:dimicaturus#Latin|dimicaturas]] [[wikt:en:intellegebat|intellegebat]];
**自分<small>〔カエサル〕</small>が不在のままで、行軍中に戦闘を闘うことになるであろうと理解していた。
: <!-- [[wikt:en:| -->
*<!--❹--><sup>(4)</sup> si ipse ad exercitum [[wikt:en:contenderet|contenderet]],
**もし<small>(カエサル)</small>自身が<small>(大部隊の護衛なしで)</small>軍隊のもとへ急いで行くのならば、
*<u>ne</u> iis <u>quidem</u> eo tempore qui quieti [[wikt:en:viderentur|viderentur]],
**そのときには、中立を保っていると見られる者たちでさえも、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:iis#Latin|iis]] はβ系写本の記述で、α系写本では [[wikt:en:his#Latin|his]] となっている。)</span>
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:ne quidem|ne ~ quidem]]「~でさえ…ない」)</span>
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:quietus#Latin|quietus, quieti]]「平和的な、中立的な」)</span>
*suam [[wikt:en:salus#Latin|salutem]] [[wikt:en:recte#Latin|recte]] [[wikt:en:committi|committi]] [[wikt:en:videbat|videbat]].
**自分の身の安全を良く託されるとは思えなかったのだ。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:前年まで、すなわち第6巻までの戦争は主としてガッリア北部・中部などで闘われていたので、<br> [[ガリア戦記 第6巻#44節|第6巻44節]]で既述のように、ローマ諸軍団はガッリア北部・中部周辺に冬営させられていた。<br> 今回は軍団が駐留していないガッリア中南部を中心に反乱が起こったので、<br> カエサルと諸軍団は分断された。<br> そのため、カエサルが大部隊の護衛なしで北上すれば、<br> 同盟部族にさえ寝首を掻かれる怖れがあったのである。)
<!--
<span style="color:#009900;"></span>
<small></small>
**:<span style="color:#009900;">(訳注:
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:
-->
===7節===
*<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/7節]] {{進捗|00%|2025-12-19}}</span>
;ルクテリウスとカエサルのナルボーをめぐる駆け引き
[[画像:Narbonne_panorama.jpg|thumb|right|300px|'''ナルボー'''(Narbo)すなわち現在の[[w:ナルボンヌ|ナルボンヌ市]](Narbonne)の街並み。ローマ人が[[w:ドミティア街道|ドミティア街道]]の拠点として植民市'''コロニア・ナルボー・マルティウス'''(Colonia Narbo Martius)を建設し、後には[[w:ローマ内戦 (紀元前49年-紀元前45年)|ローマ内乱]]のときにもカエサル派の根拠地となった。その重要性から帝政期には州都に昇格し、[[w:属州|属州]]名も[[w:ガリア・ナルボネンシス|ガッリア・ナルボネンスィス]]に改められたほどである。]]
[[画像:Via_domitia_map600x600_(1).png|thumb|right|200px|[[w:ドミティア街道|ドミティア街道]](Via Domitia)の経路。ローマ人によってイタリアと[[w:ヒスパニア|ヒスパーニア]]を結ぶ重要な街道として整備された。本節でカエサル側の軍勢が往復したのもこの街道である。]]
:
; カドゥルキー族のルクテリウスが、ルテーニー族を同盟に引き入れる
*<!--❶--><sup>(1)</sup> [[wikt:en:interim#Latin|Interim]] [[wikt:en:Lucterius#Latin|Lucterius]] [[wikt:en:Cadurcus#Latin|Cadurcus]]
**その間に、カドゥルキー族のルクテリウスが
*in [[wikt:en:Ruteni#Latin|Rutenos]] [[wikt:en:missus#Participle|missus]]
**ルテーニー族のところに遣わされて、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[#5節|5節]]の冒頭で述べられた。<br> ルテーニー族 ''[[w:en:Ruteni|Ruteni]]'' は現在の[[w:アヴェロン県|アヴェロン県]]の<br> [[w:ロデーズ|ロデーズ]]辺りにいたとされる。)</span>
*eam [[wikt:en:civitas#Latin|civitatem]] [[wikt:en:Arverni#Latin|Arvernis]] [[wikt:en:conciliat|conciliat]].
**その部族に[[w:アルウェルニ族|アルウェルニー族]]との仲を取り持つ。
:
; ルクテリウスが、ローマ属州内の拠点都市ナルボーを目指す
*<!--❷--><sup>(2)</sup> [[wikt:en:progressus#Participle|Progressus]] in [[wikt:en:Nitiobriges#Latin|Nitiobriges]] et [[wikt:en:Gabali#Latin|Gabalos]]
**<small>(彼は)</small>ニティオブリゲース族とガバリー族のところに進んで行き、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:ニティオブリゲース族<br> またはニティオブロゲース族 ''[[w:en:Nitiobroges|Nitiobroges]]'' は<br> 現在の[[w:ロット=エ=ガロンヌ県|ロット=エ=ガロンヌ県]][[w:アジャン|アジャン]]辺り、<br> ガバリー族 ''[[w:en:Gabali|Gabali]]'' は現在の[[w:ロゼール県|ロゼール県]]辺りにいたらしい。)</span>
*ab [[wikt:en:uterque#Latin|utrisque]] [[wikt:en:obses#Latin|obsides]] [[wikt:en:accipit|accipit]]
**双方から人質たちを受け取って、
*et, magna [[wikt:en:coactus#Latin|coacta]] [[wikt:en:manus#Latin|manu]],
**多くの手勢を徴集すると、
*in [[wikt:en:provincia#Latin|provinciam]] [[wikt:en:Narbo#Latin|Narbonem]] [[wikt:en:versus#Latin|versus]] [[wikt:en:eruptio#Latin|eruptionem]] facere [[wikt:en:contendit|contendit]].
**<small>(ローマ人の)</small>[[w:属州|属州]]内のナルボーに向かって出撃することを急ぐ。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:ナルボー [[w:la:Narbo|Narbo]] は、ローマ人が建設した地中海岸の植民市で、<br> ヒスパーニアとイタリアを結ぶ拠点であった。<br> 現在の[[w:ナルボンヌ|ナルボンヌ]]。)</span>
:
; カエサルもナルボーを目指す
*<!--❸--><sup>(3)</sup> Qua re [[wikt:en:untiatus#Latin|nuntiata]]
**その事を報告されると、
*Caesar omnibus [[wikt:en:consilium#Latin|consiliis]] [[wikt:en:antevertendus#Latin|antevertendum]] <span style="color:#009900;font-size:8pt;">(esse)</span> [[wikt:en:existimavit|existimavit]], ut [[wikt:en:Narbo#Latin|Narbonem]] [[wikt:en:proficisceretur|proficisceretur]].
**カエサルは、ナルボーに出発することを、あらゆる計画に先立ってするべきであると考えた。
:
*<!--❹--><sup>(4)</sup> [[wikt:en:eo#Adverb|Eo]] cum [[wikt:en:venisset|venisset]],
**<small>(カエサルは)</small>そこへやって来ると、
*[[wikt:en:timens#Latin|timentes]] [[wikt:en:confirmat#Latin|confirmat]],
**<ruby><rb>怖気</rb><rp>(</rp><rt>おじけ</rt><rp>)</rp></ruby>ている者たちを元気付けて、
*[[wikt:en:praesidium#Latin|praesidia]]
**守備隊を
*in [[wikt:en:Ruteni#Latin|Rutenis]] [[wikt:en:provincialis#Latin|provincialibus]], [[wikt:en:Volcae#Latin|Volcis]] [[wikt:en:Arecomici#Latin|Arecomicis]], [[wikt:en:Tolosates#Latin|Tolosatibus]]
**属州側のルテーニー族、[[w:ウォルカエ族|ウォルカエ]]・アレコミキー族、トローサーテース族<small>(らの領内)</small>に、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:上述のように、属州外の<u>ルテーニー族</u>は[[w:アルウェルニ族|アルウェルニー族]]と結んでいる。)</span>
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[w:ウォルカエ族|ウォルカエ族]]は、西側に住むテクトサゲース族 ''[[w:en:Tectosages|Tectosages]]'' と<br> 東側に住むアレコミキー族 ''[[w:en:Arecomici|Arecomici]]'' の2支族に分かれていた。)</span>
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:トローサーテース族 ''[[w:fr:Tolosates|Tolosates]]'' は、ウォルカエ・テクトサゲース族の分派とされ、<br> 現在の[[w:トゥールーズ|トゥールーズ]]の近くにいたと考えられている。)</span>
*[[wikt:en:circum#Preposition|circum]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:Narbo#Latin|Narbonem]], quae [[wikt:en:locum#Latin|loca]] hostibus erant [[wikt:en:finitimus#Latin|finitima]],
**および敵方に隣接した地である[[w:ナルボンヌ|ナルボー]]周辺に
*[[wikt:en:constituit#Latin|constituit]];
**駐留させる。
:
*<!--❺--><sup>(5)</sup> partem [[wikt:en:copiae#Noun_2|copiarum]] ex [[wikt:en:provincia#Latin|provincia]]
**属州<small>〔ガッリア・トラーンサルピーナ〕</small>からの軍勢の一部、
*[[wikt:en:supplementum#Latin|supplementum]]<nowiki>que</nowiki>, quod ex Italia [[wikt:en:adduxerat|adduxerat]],
**およびイタリアから率いて来た補充兵を
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:後者の補充兵 supplementum は、[[#1節|1節]]で既述のように、<br> [[w:ガリア・キサルピナ|ガッリア・キサルピーナ]]で徴募された軍団兵であろう。)</span>
*in [[wikt:en:Helvii#Latin|Helvios]], qui fines [[wikt:en:Arverni#Latin|Arvernorum]] [[wikt:en:contingunt|contingunt]],
**[[w:アルウェルニ族|アルウェルニー族]]の領土に接しているヘルウィイー族のところに
*[[wikt:en:convenire#Latin|convenire]] [[wikt:en:iubet#Latin|iubet]].
**集結することを命じる。
<!--
<span style="color:#009900;"></span>
<small></small>
**:<span style="color:#009900;">(訳注:
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:
-->
===8節===
*<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/8節]] {{進捗|00%|2026-01-03}}</span>
[[画像:Carte-cevennes-france.png|thumb|right|200px|フランスにおける[[w:中央高地 (フランス)|中央高地]](Massif Central)とセヴェンヌ山地(Cévennes)の位置]]
[[画像:Col_de_legal.jpeg|thumb|right|200px|[[w:雪|雪]]に覆われた[[w:オーヴェルニュ地域圏|オーヴェルニュ高地]]。オーヴェルニュ(Auvergne)の名は[[w:アルウェルニ族|アルウェルニー族]](Arverni)に由来する。]]
[[画像:Causse_Mejean_Evening.jpg|thumb|right|200px|城壁のように続くケウェンナ(セヴェンヌ)山地の断崖]]
[[画像:France_Massif_central.jpg|thumb|right|200px|[[w:アルウェルニ族|アルウェルニー族]]の勢力圏であった[[w:中央高地 (フランス)|中央高地]](Massif Central)の領域(着色部分)。平野の多いフランスにおいて山塊としてそびえ立つ。]]
:
;カエサルがケウェンナ山地を越えてアルウェルニー族の領内へ突入
*<!--❶--><sup>(1)</sup> His rebus [[wikt:en:comparatus#Latin|comparatis]],
**これらの事が整えられて、
*[[wikt:en:repressus#Latin|represso]] iam [[wikt:en:Lucterius#Latin|Lucterio]] et [[wikt:en:remotus#Latin|remoto]],
**<small>(カドゥルキー族の)</small>ルクテリウスはすでに押し留められ、遠ざけられた。
*quod [[wikt:en:intrare#Latin|intrare]] intra [[wikt:en:praesidium#Latin|praesidia]] [[wikt:en:periculosus#Latin|periculosum]] [[wikt:en:putabat|putabat]],
**──というのは<small>(ローマ人の)</small>守備の範囲内に踏み込むことは危険なことであると<small>(ルクテリウスが)</small>見なしていたからであるが、──
*in [[wikt:en:Helvii#Latin|Helvios]] [[wikt:en:proficiscitur|proficiscitur]].
**<small>(そこで、カエサルは)</small>ヘルウィイー族のところに出発する。
:
; カエサルが、アルウェルニー族の要害ケウェンナ山を越える
*<!--❷--><sup>(2)</sup> <u>Etsi</u> mons <u>Cevenna</u>, qui [[wikt:en:Arverni#Latin|Arvernos]] ab [[wikt:en:Helvii#Latin|Helviis]] [[wikt:en:discludit|discludit]],
**[[w:アルウェルニ族|アルウェルニー族]]をヘルウィイー族から隔てている<u>ケウェンナ山</u>は、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:山の名は写本によって Cebenna または Cevenna となっており、<br> [[w:ガイウス・プリニウス・セクンドゥス|大プリーニウス]]が記した [[wikt:en:Cebenna#Latin|Cebenna]] がガリア語に近いようである。<br> 現在名はセヴェンヌ山地 Cévennes と呼ばれ、<br> [[w:中央高地 (フランス)|フランス中央高地]](Massif Central)の南東部にそそり立っている。)</span>
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:etsi#Latin|etsi]] ~ [[wikt:en:tamen#Latin|tamen]] …「~としても、にもかかわらず…」)</span>
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:mons#Latin|mons]] は β系写本の記述で、α系写本にはない。)</span>
*[[wikt:en:durissimus#Latin|durissimo]] tempore anni
**最も厳しい時季に
*[[wikt:en:altissimus#Latin|altissima]] [[wikt:en:nix#Latin|nive]] iter [[wikt:en:impediebat|impediebat]],
**豪[[w:雪|雪]]によって道を閉ざしていたのであるが、
*<u>tamen</u> [[wikt:en:discussus#Latin|discussa]] [[wikt:en:nix#Latin|nive]] sex in [[wikt:en:altitudo#Latin|altitudinem]] [[wikt:en:pes#Latin|pedum]]
**にもかかわらず<small>(カエサル勢は)</small>深さ6<u>ペース</u>の雪を粉砕して、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:1[[ガイウス・ユリウス・カエサルの著作/通貨・計量単位#ペース|ペース]]は約29.6cmで、6ペースは約1.8メートル弱。)</span>
*atque ita [[wikt:en:via#Latin|viis]] [[wikt:en:patefactus#Latin|patefactis]] [[wikt:en:summus#Latin|summo]] [[wikt:en:miles#Latin|militum]] <u>sudore</u>
**このように兵士たちの最大の努力によって道が開かれて、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、α系写本では [[wikt:en:sudor#Latin|sudore]]「汗」だが、<br> β系写本では [[wikt:en:labor#Latin|labore]]「労苦」 となっている。)</span>
*ad fines [[wikt:en:Arverni#Latin|Arvernorum]] [[wikt:en:pervenit#Latin|pervenit]].
**[[w:アルウェルニ族|アルウェルニー族]]の領土へ到達した。
:
; アルウェルニー族が、カエサルの奇襲に周章狼狽する
*<!--❸--><sup>(3)</sup> Quibus [[wikt:en:oppressus#Latin|oppressis]] [[wikt:en:inopinans#Latin|inopinantibus]],
**<small>(アルウェルニー族は)</small>彼らに対する<small>(カエサルの)</small>攻撃を予期していなかったが、
*quod se <u>Cevenna</u> ut [[wikt:en:murus#Latin|muro]] [[wikt:en:munitus#Latin|munitos]] [[wikt:en:existimabant|existimabant]],
**──というのは、自分たちは<u>ケウェンナ</u>を壁として防御されていると考えていたからであり、
*ac <u>ne</u> [[wikt:en:singularis#Latin|singulari]] <u>quidem</u> [[wikt:en:umquam#Latin|umquam]] homini eo tempore anni [[wikt:en:semita#Latin|semitae]] [[wikt:en:patuerant|patuerant]],
**かつ、その時季には、個人にとってさえも、小道はかつて開かれていなかったからであるが、──
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:ne quidem|ne ~ quidem]]「~でさえ…ない」)</span>
*[[wikt:en:eques#Latin|equitibus]] [[wikt:en:imperat|imperat]],
**<small>(カエサルは)</small>騎兵たちに命令する。
*ut, [[wikt:en:quam#Adverb|quam]] [[wikt:en:late#Latin|latissime]] [[wikt:en:possint|possint]], [[wikt:en:vagentur|vagentur]]
**できるだけ広く動き回り、
*et [[wikt:en:quam#Adverb|quam]] maximum hostibus [[wikt:en:terror#Latin|terrorem]] [[wikt:en:inferant|inferant]].
**敵たちに最大限の恐怖を引き起こすように、と。
:
; ウェルキンゲトリークスが、ビトゥリゲース族のもとから軍勢を取って返す
*<!--❹--><sup>(4)</sup> Celeriter haec [[wikt:en:fama#Latin|fama]] ac <u>nuntiis</u>
**これらのことは速やかに風評や伝令たちによって、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、主要写本ω では [[wikt:en:nuntii#Latin|nuntii]] だが、<br> ''[[ガリア戦記/注解編/写本と校訂版#Manutius|Manutius]]'' が [[wikt:en:nuntiis#Etymology_1|nuntiis]] と修正提案している。)</span>
*ad [[wikt:en:Vercingetorix#Latin|Vercingetorigem]] [[wikt:en:perferuntur|perferuntur]];
**[[w:ウェルキンゲトリクス|ウェルキンゲトリークス]]のもとへ報知される。
*quem [[wikt:en:perterritus#Latin|perterriti]] omnes [[wikt:en:Arverni#Latin|Arverni]] [[wikt:en:circumsistunt|circumsistunt]] atque [[wikt:en:obsecrant|obsecrant]],
**彼<small>〔ウェルキンゲトリークス〕</small>を、脅かされている[[w:アルウェルニ族|アルウェルニー族]]の皆が取り巻いて、嘆願する。
*ut suis [[wikt:en:fortuna#Latin|fortunis]] [[wikt:en:consulat#Latin|consulat]],
**自分たち<small>〔アルウェルニー族〕</small>の境遇に配慮してくれるように、
*<u>neve</u> ab hostibus <u>diripiantur</u>,
**自分たち<small>〔アルウェルニー族〕</small>が敵<small>〔ローマ人〕</small>によって略奪されることを許容しないように、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:この行は、α系写本では [[wikt:en:neve#Latin|neve]] ab hostibus [[wikt:en:diripiantur|diripiantur]] <br> β系写本では [[wikt:en:neu#Latin|neu]] se ab hostibus [[wikt:en:diripi|diripi]] [[wikt:en:patiatur|patiatur]] となっている。)</span>
*[[wikt:en:praesertim#Latin|praesertim]] cum [[wikt:en:videat|videat]] [[wikt:en:omnis#Latin|omne]] ad se bellum [[wikt:en:translatus#Participle|translatum]].
**とりわけ、すべての戦争が自分たちへ向けられると<small>(彼が)</small>見なしているのであるから
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:praesertim cum ~;とりわけ~であるから)</span>
: <!-- [[wikt:en:| -->
*<!--❺--><sup>(5)</sup> Quorum ille [[wikt:en:prex#Latin|precibus]] [[wikt:en:permotus#Latin|permotus]]
**彼<small>〔ウェルキンゲトリークス〕</small>は、その者たちの懇願に揺り動かされて、
*[[wikt:en:castra#Latin|castra]] ex [[wikt:en:Bituriges#Latin|Biturigibus]] [[wikt:en:movet|movet]] in [[wikt:en:Arverni#Latin|Arveruos]] [[wikt:en:versus#Latin|versus]].
**陣営をビトゥリゲース族のところから[[w:アルウェルニ族|アルウェルニー族]]のところに向けて行軍する。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:castra movet 「陣営を動かす」=「行軍する」)</span>
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:現在の[[w:ブールジュ|ブールジュ]]辺りから[[w:クレルモン=フェラン|クレルモン=フェラン]]辺りに南下したようである。)</span>
<!--
<span style="color:#009900;"></span>
<small></small>
**:<span style="color:#009900;">(訳注:
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:
-->
===9節===
*<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/9節]] {{進捗|00%|2026-01-12}}</span>
;カエサルが北上して諸軍団と合流するが、同盟軍はゴルゴビナ攻略をめざす
:
*<!--❶--><sup>(1)</sup> At Caesar, [[wikt:en:biduum#Latin|biduum]] in his locis [[wikt:en:moratus#Participle|moratus]],
**それに対して、カエサルは2日間、この地に留まった。
*quod haec de [[wikt:en:Vercingetorix#Latin|Vercingetorige]] usu ventura [[wikt:en:opinio#Latin|opinione]] [[wikt:en:praeceperat|praeceperat]],
**──というのは、[[w:ウェルキンゲトリクス|ウェルキンゲトリークス]]についてこれ<small>〔陣営の移動〕</small>が起こると予想をしていたからだが、──
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:usu venire 「起こる」→ usu [[wikt:en:venturus#Latin|ventūra]] (esse) 「起こるであろう」)</span>
*per causam [[wikt:en:supplementum#Latin|supplementi]] [[wikt:en:equitatus#Noun|equitatus]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:cogendus#Latin|cogendi]]
**補充兵と騎兵隊を徴集するためという口実のもとに、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:per causam 「口実のもとに」)</span>
*ab [[wikt:en:exercitus#Noun|exercitu]] [[wikt:en:discedit|discedit]];
**軍隊から離れる。
:
*<!--❷--><sup>(2)</sup> [[wikt:en:Brutus#Latin|Brutum]] [[wikt:en:adulescens#Noun|adulescentem]] his copiis [[wikt:en:praeficit|praeficit]];
**<small>(カエサルは)</small><u>青年ブルートゥス</u>にこの軍勢を指揮させる。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:青年ブルートゥスとは、<br> [[w:デキムス・ユニウス・ブルトゥス・アルビヌス|デキムス・ブルートゥス]](<small>[[w:la:Decimus_Iunius_Brutus_Albinus|Decimus Iunius Brutus Albinus]]</small>)のことで、<br> [[ガリア戦記 第3巻#14節|第3巻14節]]でカエサルの艦隊を指揮した。)</span>
*hunc [[wikt:en:monet#Latin|monet]], ut in omnes partes [[wikt:en:eques#Latin|equites]] quam [[wikt:en:late#Latin|latissime]] [[wikt:en:pervagentur|pervagentur]]:
**彼には、[[w:騎兵|騎兵]]たちがあらゆる方面にできるだけ広く駆け回るようにと、忠告する。
*<u>daturum</u> se <u>operam</u>, ne longius [[wikt:en:triduum#Latin|triduo]] ab [[wikt:en:castra#Latin|castris]] [[wikt:en:absit#Latin|absit]].
**自分<small>〔カエサル〕</small>は、3日間より長く陣営から離れないように、努力をするであろう、と。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:opera#Latin|operam]] dare 「努力をする」→ operam [[wikt:en:daturus#Latin|datūrum]] (esse) 「努力をするであろう」)</span>
[[画像:Image-Vienne-Cropped.jpg|thumb|right|300px|'''ウィエンナ'''(Vienna)すなわち現在のヴィエンヌ(Vienne)。ロダヌス川(現[[w:ローヌ川|ローヌ川]])のほとりにある当地は、南仏[[w:プロヴァンス|プロヴァンス地方]]と北仏[[w:ブルゴーニュ地域圏|ブルゴーニュ地方]]を結ぶ交通の要衝として、古代ローマ時代から栄え、今もローマ時代の遺跡が多く残る。]]
:
; カエサルが、急いでウィエンナへ北進する
*<!--❸--><sup>(3)</sup> His [[wikt:en:constitutus#Participle|constitutis]] rebus,
**これらの事を決定すると、
*<u>omnibus</u> suis [[wikt:en:inopinans#Latin|inopinantibus]],
**配下の皆が予期しないほど、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:omnibus は β系写本の記述で、<br> α系写本にはない。)</span>
*quam [[wikt:en:maximus#Latin|maximis]] potest [[wikt:en:iter#Latin|itineribus]],
**できるかぎりの強行軍で、
*[[wikt:en:Vienna#Etymology_1|Viennam]] [[wikt:en:pervenit#Latin|pervenit]].
**<u>ウィエンナ</u>に到着する。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:ウィエンナ [[w:la:Vienna|Vienna]] は、<br> 現在の[[w:ヴィエンヌ (イゼール県)|ヴィエンヌ]] ''[[w:en:Vienne, Isère|Vienne]]'')</span>
:
; カエサルが、ハエドゥイー族領を抜けて、2個軍団が冬営するリンゴネース族領へ向けて北上する
*<!--❹--><sup>(4)</sup> [[wikt:en:ibi#Latin|Ibi]] [[wikt:en:nactus#Latin|nactus]] [[wikt:en:recens#Latin|recentem]] [[wikt:en:equitatus#Latin|equitatum]], quem [[wikt:en:multus#Latin|multis]] ante diebus eo [[wikt:en:praemiserat|praemiserat]],
**そこで、何日も前にそこに先遣していたまだ新兵の騎兵隊を得て、
[[画像:Langres_FR_(march_2008).jpg|thumb|right|300px|リンゴネース族(Lingones)の名を残す[[w:ラングル|ラングル]](Langres)の街の雪景色]]
*neque [[wikt:en:diurnus#Latin|diurno]] neque [[wikt:en:nocturnus#Latin|nocturno]] itinere [[wikt:en:intermissus#Latin|intermisso]]
**昼間も夜間も行軍を中断せずに、
*per fines [[wikt:en:Aedui#Latin|Haeduorum]]
**[[w:ハエドゥイ族|ハエドゥイー族]]の領土を通って、
*in [[wikt:en:Lingones#Latin|Lingones]] [[wikt:en:contendit|contendit]],
**<u>リンゴネース族のところ</u>に急いだ。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:リンゴネース族 [[w:la:Lingones|Lingones]] の首邑は<br> 現在の[[w:ラングル|ラングル]] ''[[w:en:Langres|Langres]]'' で、<br> ローマ時代には [[w:la:Andematunnum|Andematunnum]] と呼ばれたが、<br> ''[[wikt:fr:Lingones|Lingones]]'' の転訛が ''[[wikt:fr:Langres|Langres]]'' である。)</span>
*[[wikt:en:ubi#Latin|ubi]] [[wikt:en:duo#Latin|duae]] [[wikt:en:legio#Latin|legiones]] [[wikt:en:hiemabant|hiemabant]],
**そこには、2個[[w:ローマ軍団|軍団]]が冬営していた。
*ut, si [[wikt:en:aliquis#Latin|quid]] etiam de sua [[wikt:en:salus#Latin|salute]] ab [[wikt:en:Aedui#Latin|Haeduis]] [[wikt:en:iniretur|iniretur]] [[wikt:en:consilium#Latin|consilii]], [[wikt:en:celeritas#Latin|celeritate]] [[wikt:en:praecurreret|praecurreret]].
**もし<small>(カエサル)</small>自らの安全についてさえ、ハエドゥイー族により何らかの謀計が始められても、速やかに凌駕するように。
:
; カエサルが、リンゴネース族領の軍団冬営地へ到着して、諸軍団へ集結を指令する
*<!--❺--><sup>(5)</sup> [[wikt:en:eo#Adverb|Eo]] cum [[wikt:en:pervenisset|pervenisset]],
**<small>(カエサルは)</small>そこへ到着したときに、
*ad reliquas [[wikt:en:legio#Latin|legiones]] [[wikt:en:mittit|mittit]]
**残りの軍団のもとへ<small>(伝令を)</small>遣わす。
*<u>prius</u>que omnes in unum locum [[wikt:en:cogit|cogit]], <u>quam</u> de eius [[wikt:en:adventus#Latin|adventu]] [[wikt:en:Arverni#Latin|Arvernis]] [[wikt:en:nuntiari|nuntiari]] [[wikt:en:posset#Latin|posset]].
**彼の到着について[[w:アルウェルニ族|アルウェルニー族]]に知らされ得るより早く、総勢が一か所に集結するように、と。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:priusquam#Latin|prius ~ quam]] …;…より早く~)</span>
: <!-- [[wikt:en:| -->
; ウェルキンゲトリークスが、ボイイー族がいるゴルゴビナの攻略を企図する
*<!--❻--><sup>(6)</sup> Hac re [[wikt:en:cognitus#Participle|cognita]],
**この事を知ると、
*[[wikt:en:Vercingetorix#Latin|Vercingetorix]] rursus in [[wikt:en:Bituriges#Latin|Bituriges]] [[wikt:en:exercitus#Noun|exercitum]] [[wikt:en:reducit|reducit]]
**[[w:ウェルキンゲトリクス|ウェルキンゲトリークス]]は再びビトゥリゲース族のところに軍隊を連れ戻して、
*atque [[wikt:en:inde#Latin|inde]] [[wikt:en:profectus#Participle_2|profectus]] Gorgobinam, [[wikt:en:Boii#Latin|Boiorum]] [[wikt:en:oppidum#Latin|oppidum]],
**そこから、[[w:ボイイ族|ボイイー族]]の城塞都市であるゴルゴビナへ出発した。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:ゴルゴビナ ''[[w:en:Gorgobina|Gorgobina]]'' は、現在の候補地としては、<br> [[w:ニエーヴル県|ニエーヴル県]]のサン=パリズ=ル=シャテル<small>([[w:en:Saint-Parize-le-Châtel|Saint-Parize-le-Châtel]])</small><br> [[w:アンドル=エ=ロワール県|アンドル=エ=ロワール県]]のラ・ゲルシュ([[w:en:La Guerche|La Guerche]])<br> あるいは、[[w:シェール県|シェール県]]のサン=サテュル([[w:fr:Saint-Satur|Saint-Satur]])などが挙げられている。)</span>
*quos ibi [[wikt:en:helvetico|Helvetico]] [[wikt:en:proelium#Latin|proelio]] [[wikt:en:victus#Participle|victos]]
**──[[w:ヘルウェティイ族|ヘルウェーティイー族]]の戦闘で打ち負かされた彼らをそこに、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:ボイイー族はヘルウェーティイー族とともにガッリアに移動して、カエサルに敗れていた。第1巻28節~29節を参照。)</span>
*Caesar [[wikt:en:conlocaverat#Latin|conlocaverat]] [[wikt:en:Aedui#Latin|Haeduis]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:adtribuerat#Latin|adtribuerat]],
**カエサルは宿営させ、ハエドゥイー族<small>(の庇護)</small>に委ねていたのだが、──
*[[wikt:en:oppugnare#Latin|oppugnare]] [[wikt:en:instituit#Latin|instituit]].
**<small>(ウェルキンゲトリークスはゴルゴビナの)</small>攻略を決意した。
<!--
<span style="color:#009900;"></span>
<small></small>
**:<span style="color:#009900;">(訳注:
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:
-->
===10節===
[[画像:Caesar's_campaign_to_Agedincum_in_52BC.png|thumb|right|250px|前節までのカエサルの[[w:ナルボンヌ|ナルボー]]からアゲディンクムへの進路(青線)および[[w:ウェルキンゲトリクス|ウェルキンゲトリークス]]の進路(赤線)。青字名は親ローマ部族、赤字名は反ローマ部族。カエサルは[[w:アルウェルニ族|アルウェルニー族]]の本拠ゲルゴウィアを突くと見せかけてウェルキンゲトリークスを引き寄せ、その間に[[w:ブルゴーニュ地域圏|ブルゴーニュ]]に冬営していた諸軍団と合流できた。これに対して、ウェルキンゲトリークスはボイイー族を攻めようとする。]]
*<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/10節]] {{進捗|00%|2026-01-16}}</span>
;カエサルがアゲディンクムを発って、ボイイー族支援に向かう
:
; カエサルが抱えることになった「大きな困難」とは?
*<!--❶--><sup>(1)</sup> Magnam haec res Caesari [[wikt:en:difficultas#Latin|difficultatem]] ad [[wikt:en:consilium#Latin|consilium]] [[wikt:en:capiendus#Latin|capiendum]] [[wikt:en:adferebat|adferebat]]<!--:-->,
**この事態は、カエサルが作戦を立てるためには、大きな困難を引き起こしていた。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:haec res 「この事態」とは、<br> ウェルキンゲトリークスが<br> ハエドゥイー族の庇護下にあったボイイー族を攻めること。)</span>
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:magnam ~ difficultatem 「大きな困難を」)</span>
*si reliquam partem [[wikt:en:hiems#Latin|hiemis]] uno loco [[wikt:en:legio#Latin|legiones]] [[wikt:en:contineret|contineret]],
**もし、冬の残りの期間に、諸[[w:ローマ軍団|軍団]]を1か所に留めておくならば、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:前節で述べられたように、<br> カエサルはリンゴネース族の軍団冬営地に着いたときに、<br> 諸軍団に1か所に集結するべく伝令を遣わしていた。)</span>
*ne, [[wikt:en:stipendiarius#Latin|stipendiariis]] [[wikt:en:Haedui#Latin|Haeduorum]] [[wikt:en:expugnatus#Latin|expugnatis]], [[wikt:en:cunctus#Latin|cuncta]] Gallia [[wikt:en:deficeret|deficeret]],
**[[w:ハエドゥイ族|ハエドゥイー族]]の朝貢国が攻略されて、ガッリア全体が背くのではないか?
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:「ハエドゥイー族の朝貢国」とは、ボイイー族のこと。)</span>
*quod [[wikt:en:nullus#Determiner|nullum]] amicis in eo [[wikt:en:praesidium#Latin|praesidium]] <u>videret positum esse</u>;
**──というのは、彼<small>〔カエサル〕</small>においては、友邦に対するいかなる守備隊も置かれていないと<small>(ガッリアが)</small>見るからである──。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、<br> [[ガリア戦記/注解編/写本と校訂版#写本の系図|α系写本]]のうち、χ系・M・B・S写本などでは [[wikt:en:videret|videret]] [[wikt:en:positus#Latin|positum]] esse 、<br> α系写本のうち、写本M・L・Nなどでは [[wikt:en:videretur|videretur]] positum esse 、<br> β系写本では、positum videret となっている。)</span>
*si [[wikt:en:mature#Adverb|maturius]] ex [[wikt:en:hiberna#Noun|hibernis]] [[wikt:en:educeret|educeret]],
**もし、尚早に冬営地から<small>(諸軍団を)</small>進発させれば、
*ne ab re [[wikt:en:frumentarius#Latin|frumentaria]] [[wikt:en:durus#Latin|duris]] [[wikt:en:subvectio#Latin|subvectionibus]] [[wikt:en:laboraret|laboraret]].
**<small>(降雪時期の)</small>糧秣供給の厄介な輸送によって苦労するのではないか?
:
*<!--❷--><sup>(2)</sup> <u>Praestare</u> [[wikt:en:visus#Participle|visum]] est tamen omnes [[wikt:en:difficultas#Latin|difficultates]] [[wikt:en:perpeti#Verb|perpeti]],
**しかしながら、あらゆる困難に耐えることの方が<u>優っている</u>ように見える。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:praestare|praestare]] ~ [[wikt:en:quam#Adverb|quam]] …「…よりも~が優る」)</span>
*<u>quam</u> [[wikt:en:tantus#Latin|tanta]] [[wikt:en:contumelia#Latin|contumelia]] [[wikt:en:acceptus#Latin|accepta]] omnium suorum [[wikt:en:voluntas#Latin|voluntates]] [[wikt:en:alienare#Latin|alienare]].
**これほどの恥辱を受けて、配下の皆の意欲を遠ざけてしまう<u>よりは</u>。
:
*<!--❸--><sup>(3)</sup> Itaque [[wikt:en:cohortatus#Latin|cohortatus]] [[wikt:en:Haedui#Latin|Haeduos]] de [[wikt:en:supportandus#Latin|supportando]] [[wikt:en:commeatus#Noun|commeatu]],
**こうして、<small>(カエサルは)</small>ハエドゥイー族に軍需物資の輸送について、激励して、
*[[wikt:en:praemittit|praemittit]] ad [[wikt:en:Boii#Latin|Boios]], qui de suo [[wikt:en:adventus#Latin|adventu]] [[wikt:en:doceant|doceant]]
**[[w:ボイイ族|ボイイー族]]のもとへ、<small>(カエサル)</small>自らの到着について知らせるための者たちを先遣して、
*[[wikt:en:hortentur|hortentur]]<nowiki>que</nowiki> ut in [[wikt:en:fides#Latin|fide]] [[wikt:en:maneant|maneant]] atque hostium [[wikt:en:impetus#Latin|impetum]] magno animo [[wikt:en:sustineant|sustineant]].
**<small>(カエサルへの)</small>信義に留まって、敵たちの襲撃に大いなる決意をもって持ちこたえるように、と激励させた。
[[画像:Aqueduc2.jpg|thumb|right|250px|アゲディンクム、すなわちセノネース族(Senones)の名を残す現在の[[w:サンス|サーンス]](Sens)に建てられたローマ時代の[[w:水道橋|水道橋]]遺跡。]]
: <!-- [[wikt:en:| -->
*<!--❹--><sup>(4)</sup> Duabus [[wikt:en:Agedincum#Latin|Agedinci]] legionibus atque [[wikt:en:impedimentum#Latin|impedimentis]] [[wikt:en:totus#Latin|totius]] [[wikt:en:exercitus#Noun|exercitus]] [[wikt:en:relictus#Latin|relictis]],
**アゲディンクムに、2個軍団および軍隊全体の輜重を残すと、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:アゲディンクムは敵対するセノネース族の首邑だが、<br> [[ガリア戦記 第6巻#44節|第6巻44節]]で6個軍団を冬営させていた。<br> 現在の[[w:サンス|サーンス]]。)</span>
*ad [[wikt:en:Boii#Latin|Boios]] [[wikt:en:proficiscitur|proficiscitur]].
**[[w:ボイイ族|ボイイー族]]のもとへ出発した。
<!--
<span style="color:#009900;"></span>
<small></small>
**:<span style="color:#009900;">(訳注:
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:
-->
===11節===
[[画像:France_-_Loiret_-_Montargis_-_Passerelle_vers_l'écluse.JPG|thumb|right|250px|ウェッラウノドゥーヌムの候補地の一つであるモンタルジ(Montargis)の運河沿いの景観。セノネース族の城塞都市ウェッラウノドゥーヌム(Vellaunodunum)が現在のどの地点に当たるのか定説はない。アゲディンクム(現在の[[w:サンス|サーンス]])とケナブム(現在の[[w:オルレアン|オルレアン]])の中間地点であると考えられることから、モンタルジ([[w:en:Montargis|Montargis]])、ボーヌ=ラ=ロランド([[w:en:Beaune-la-Rolande|Beaune-la-Rolande]])やシャトー=ランドン([[w:en:Château-Landon|Château-Landon]])などが候補地に挙げられている。]]
*<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/11節]] {{進捗|00%|2026-02-02}}</span>
;セノネース族のウェッラウノドゥーヌムを降し、カルヌーテース族のケナブムを攻略
:
*<!--❶--><sup>(1)</sup> [[wikt:en:alter#Latin|Altero]] die
**<small>(カエサルは出発して)</small>翌日に、
*cum ad [[wikt:en:oppidum#Latin|oppidum]] [[wikt:en:Senones#Latin|Senonum]] [[wikt:en:Vellaunodunum#Latin|Vellaunodunum]] [[wikt:en:venisset|venisset]],
**セノネース族の城塞都市ウェッラウノドゥーヌムへやって来たときに、
*ne [[wikt:en:aliquem|quem]] post se hostem [[wikt:en:relinqueret|relinqueret]],
**自らの後方に何らかの敵を残しておかないように、
*[[wikt:en:quo#Latin|quo]] [[wikt:en:expeditior#Latin|expeditiore]] re [[wikt:en:frumentarius#Adjective|frumentaria]] [[wikt:en:uteretur|uteretur]],
**そのことにより、妨げなく糧秣供給を享受するように、
*[[wikt:en:oppugnare#Latin|oppugnare]] [[wikt:en:instituit#Latin|instituit]]
**<small>(同市の)</small>攻囲を決めて、
*<u>idque</u> [[wikt:en:biduum#Latin|biduo]] [[wikt:en:circumvallavit|circumvallavit]];
**それ<small>〔城塞都市〕</small>を2日間で<small>(塁壁で)</small>囲んだ。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、α系写本では [[wikt:en:id#Latin|id]]<nowiki>que</nowiki> だが、<br> β系写本では [[wikt:en:eo#Etymology_4|eo]]<nowiki>que</nowiki> となっている。)</span>
:
; セノネース族の城塞都市ウェッラウノドゥーヌムが降伏する
*<!--❷--><sup>(2)</sup> [[wikt:en:tertius#Latin|tertio]] die
**3日目に、
*[[wikt:en:missus#Participle|missis]] ex [[wikt:en:oppidum#Latin|oppido]] [[wikt:en:legatus#Noun|legatis]] de [[wikt:en:deditio#Latin|deditione]],
**城塞都市から降伏についての使節たちが遣わされて来て、
*[[wikt:en:arma#Latin|arma]] [[wikt:en:conferri|conferri]],
**武器が運び集められること、
*[[wikt:en:iumentum#Latin|iumenta]] [[wikt:en:produci#Latin|produci]],
**役畜が引き渡されること、
*[[wikt:en:sescenti#Latin|sescentos]] [[wikt:en:obses#Latin|obsides]] [[wikt:en:dari#Latin|dari]] [[wikt:en:iubet#Latin|iubet]].
**600名の人質が供出されることを<small>(カエサルが)</small>命じる。
:
; ウェッラウノドゥーヌムに副官トレボーニスと守備隊を残し、カエサル自身はケナブムへ向かう
*<!--❸--><sup>(3)</sup> Ea qui [[wikt:en:conficeret|conficeret]],
**それらのことを成就するための者として、
*[[wikt:en:Gaius#Latin|Gaium]] [[wikt:en:Trebonius#Latin|Trebonium]] [[wikt:en:legatus#Latin|legatum]] [[wikt:en:relinquit|relinquit]].
**<ruby><rb>[[w:レガトゥス|総督副官]]</rb><rp>(</rp><rt>レーガートゥス</rt><rp>)</rp></ruby> [[w:ガイウス・トレボニウス|ガーイウス・トレボーニウス]]を<small>(ウェッラウノドゥーヌムに)</small>残留させる。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[w:la:Gaius Trebonius|Gaius Trebonius]] は、カエサルの副官の一人。)</span>
*Ipse, ut quam primum iter <u>faceret</u><ref>faceret はα系写本の表記で、β系写本では conficeret となっている。</ref>,
**<small>(カエサル)</small>自身は、できるだけ素早く<small>(ゴルゴビナへの)</small>行軍を成就するように、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:quam#Adverb|quam]] [[wikt:en:primum#Latin|primum]] 〜「できるだけ素早く〜」)</span>
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、α系写本では [[wikt:en:faceret|faceret]] だが、<br> β系写本では [[wikt:en:conficeret|conficeret]] となっている。)</span>
*[[wikt:en:Genabum#Latin|Cenabum]] [[wikt:en:Carnutes#Latin|Carnutum]] [[wikt:en:proficiscitur|proficiscitur]];
**カルヌーテース族のケナブムに出発する。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:ケナブム Cenabum はケルト語風の読みで、現在の[[w:オルレアン|オルレアン]]。)</span>
:
*<!--❹--><sup>(4)</sup> qui tum primum [[wikt:en:adlatus#Latin|adlato]] [[wikt:en:nuntium#Latin|nuntio]] de [[wikt:en:oppugnatio#Latin|oppugnatione]] [[wikt:en:Vellaunodunum#Latin|Vellaunoduni]],
**そのとき彼ら<small>〔カルヌーテース族〕</small>は、当初はウェッラウノドゥーヌムの攻囲についての報告をもたらされて、
*cum [[wikt:en:longe#Latin|longius]] eam rem <u>ductum</u> [[wikt:en:iri#Latin|iri]] [[wikt:en:existimarent|existimarent]],
**その事・軍事作戦はより長く引き延ばされて行われると考えていたので、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:ductus#Noun_2|ductus]] は、軍事的な指揮・作戦などを表す。[[#62節]]も同様。)</span>
*[[wikt:en:praesidium#Latin|praesidium]] [[wikt:en:Genabum#Latin|Cenabi]] [[wikt:en:tuendus#Latin|tuendi]] causa, quod eo [[wikt:en:mitterent|mitterent]], [[wikt:en:comparabant|comparabant]].
**ケナブムを固守するために、守備隊をそこへ派遣することを準備していた。
:
; カエサルが、カルヌーテース族の城塞都市ケナブムの攻囲を翌日に延期する
*<!--❺--><sup>(5)</sup> [[wikt:en:huc#Latin|Huc]] [[wikt:en:biduum#Latin|biduo]] [[wikt:en:pervenit#Etymology_1|pervenit]].
**<small>(カエサルは)</small>ここ<small>〔ケナブム〕</small>へ2日間で到着する。
*[[wikt:en:castra#Latin|Castris]] ante oppidum [[wikt:en:positus#Participle|positis]],
**城塞都市の前に陣営を設置したが、
*[[wikt:en:dies#Latin|diei]] [[wikt:en:tempus#Latin|tempore]] [[wikt:en:exclusus#Latin|exclusus]]
**日の時刻<small>〔夕刻〕</small>によって妨げられたので、
*in posterum [[wikt:en:oppugnatio#Latin|oppugnationem]] [[wikt:en:differt|differt]],
**翌日に攻囲を延期する。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:in posterum = in [[wikt:en:posterus#Latin|posterum]] [[wikt:en:diem#Latin|diem]]「翌日に」)</span>
*[[wikt:en:quisque#Latin|quaeque]] ad eam rem [[wikt:en:usus#Latin|usui]] [[wikt:en:sint#Latin|sint]],
**その事<small>〔攻囲〕</small>に有益になることは何であれ、
*[[wikt:en:miles#Latin|militibus]] [[wikt:en:imperat|imperat]];
**兵士たちに命令する。
[[画像:Orleans.jpg|thumb|right|400px|ケナブム(Cenabum)すなわち現在の[[w:オルレアン|オルレアン]](Orléans)を流れるリゲル川(現在の[[w:ロワール川|ロワール川]])の景観。左が北岸のオルレアン聖十字架大聖堂、右がジョージ5世橋と思われる。]]
:
*<!--❻--><sup>(6)</sup> et, quod oppidum [[wikt:en:Genabum#Latin|Cenabum]] [[wikt:en:pons#Latin|pons]] [[wikt:en:flumen#Latin|fluminis]] [[wikt:en:Liger#Latin|Ligeris]] [[wikt:en:contingebat|contingebat]],
**城塞都市ケナブムには、リゲル川の橋が接していたので、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:リゲル川は、現在の[[w:ロワール川|ロワール川]]。)</span>
*[[wikt:en:veritus#Latin|veritus]] ne [[wikt:en:noctu#Adverb|noctu]] ex oppido [[wikt:en:profugerent|profugerent]],
**夜間に城塞都市から<small>(敵勢が)</small>逃亡するのではないかと恐れて、
*[[wikt:en:duo#Latin|duas]] legiones in [[wikt:en:arma#Latin|armis]] [[wikt:en:excubare|excubare]] [[wikt:en:iubet#Latin|iubet]].
**<small>(カエサルは)</small>2個[[w:ローマ軍団|軍団]]に武装して寝ずの番をすることを命じる。
:
; ケナブムの住民たちが退避し始める
*<!--❼--><sup>(7)</sup> [[wikt:en:Genabensis#Noun|Cenabenses]] paulo ante mediam noctem
**ケナブムの人々は、真夜中の少し前に
*[[wikt:en:silentium#Latin|silentio]] ex oppido [[wikt:en:egressus#Participle|egressi]]
**沈黙のうちに城塞都市から出て、
*flumen [[wikt:en:transire#Latin|transire]] [[wikt:en:coeperunt|coeperunt]].
**川を渡り始めた。
:
; カエサルの諸軍団がケナブムを制圧する
*<!--❽--><sup>(8)</sup> Qua re per [[wikt:en:explorator#Latin|exploratores]] [[wikt:en:nuntiatus#Latin|nuntiata]]
**その事が偵察者たちによって報告されると、
*Caesar legiones, quas [[wikt:en:expeditus#Latin|expeditas]] esse [[wikt:en:iusserat|iusserat]]
**カエサルは、戦備を整えることを命じていた諸軍団を、
*[[wikt:en:porta#Latin|portis]] [[wikt:en:incensus#Participle|incensis]]
**<small>(ケナブムの)</small>城門を焼き打ちさせた後で、
*[[wikt:en:intromittit|intromittit]] atque oppido [[wikt:en:potitur|potitur]],
**<small>(軍団を)</small>送り込み、城塞都市を占領させて、
*[[wikt:en:perpaucus#Latin|perpaucis]] ex hostium numero [[wikt:en:desideratus#Latin|desideratis]] [[wikt:en:quin#Latin|quin]] [[wikt:en:cunctus#Latin|cuncti]] [[wikt:en:caperentur#Etymology_1|caperentur]],
**敵のうちからわずかな数を取り逃がしたが、むしろ皆がことごとく捕らえられた。
*quod [[wikt:en:pons#Latin|pontis]] atque [[wikt:en:iter#Latin|itinerum]] [[wikt:en:angustia#Latin|angustiae]] <u>multitudinis</u> fugam [[wikt:en:intercluserant|intercluserant]].
**──というのは、橋や道の狭さが、大勢の逃亡をさえぎったからである。──
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、α系写本では [[wikt:en:multitudinis|multitudinis]]<sub> (単数・属格)</sub> だが、<br> β系写本では [[wikt:en:multitudini|multitudini]]<sub> (単数・与格)</sub> となっている。)</span>
: <!-- [[wikt:en:| -->
; カエサル勢がケナブムを略奪・焼き討ち。リゲル川を渡ってビトゥリゲース族領へ達する
*<!--❾--><sup>(9)</sup> Oppidum [[wikt:en:diripit|diripit]] atque [[wikt:en:incendit|incendit]],
**<small>(カエサルは)</small>城塞都市を略奪し、焼き討ちして、
*[[wikt:en:praeda#Latin|praedam]] militibus [[wikt:en:donat#Latin|donat]],
**略奪品を兵士たちに与える。
*[[wikt:en:exercitus#Noun|exercitum]] <u>Ligerem</u> [[wikt:en:traducit|traducit]]
***軍隊にリゲル川を渡らせて、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、α系写本では [[wikt:en:Ligerem|Ligerem]] だが、<br> β系写本では Ligerim となっている。)</span>
*atque in [[wikt:en:Bituriges#Latin|Biturigum]] fines [[wikt:en:pervenit#Etymology_1|pervenit]].
*ビトゥリゲース族の領土に到達する。
<!--
<span style="color:#009900;"></span>
<small></small>
**:<span style="color:#009900;">(訳注:
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:
-->
===12節===
[[画像:Sancerre.jpg|thumb|right|250px|ビトゥリゲース族の城塞都市があったと考えられる[[w:サンセール|サンセール]]([[w:en:Sancerre|Sancerre]])の街並み。カエサルがケナブム(現[[w:オルレアン|オルレアン]])からリゲル川(現[[w:ロワール川|ロワール川]])沿いに当初の目的地であったゴルゴビナへ向かい、後にアウァーリクム(現[[w:ブールジュ|ブールジュ]])へ右折したと見なせば、この地がノウィオドゥーヌムであったとも考えられる。街の名 Sancerre の意味が「カエサルに捧げられた」であるという説もある。現在は[[w:ロワールワイン|ロワールワイン]]の産地として有名で、辛口の白ワインなどの銘柄「Sancerre」にもなっている。]]
[[画像:Neung-sur-Beuvron_église_Saint-Denis_1.jpg|thumb|right|250px|城塞都市ノウィオドゥーヌム(Noviodunum)の所在地として現在有力視されている[[w:ロワール=エ=シェール県|ロワール=エ=シェール県]]のヌン=スュル=ブーヴロン([[w:en:Neung-sur-Beuvron|Neung-sur-Beuvron]])のサン=ドニ教会。カエサルは当初の目的地であったボイイー族のゴルゴビナへは真っ直ぐ向かわずに大きく迂回しており、ケナブム(現[[w:オルレアン|オルレアン]])の南方約45kmにあるこの地点(Beuvron川沿いのNeung)がノウィオドゥーヌムであると推定されている。上空からは、ガッリア時代の城塞都市跡の輪郭が見て取れるという。しかしながら、ボイイ族からは遠い位置にある。]]
*<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/12節]] {{進捗|00%|2026-02-02}}</span>
;ビトゥリゲース族のノウィオドゥーヌムを降すが、敵の騎兵が来援
:
*<!--❶--><sup>(1)</sup> [[wikt:en:Vercingetorix#Latin|Vercingetorix]], ubi de Caesaris [[wikt:en:adventus#Latin|adventu]] [[wikt:en:cognovit#Latin|cognovit]],
**[[w:ウェルキンゲトリクス|ウェルキンゲトリークス]]は、カエサルの到来について知るや否や、
*[[wikt:en:oppugnatio#Latin|oppugnatione]] <u>destitit</u>
**<small>(ボイイー族の城塞都市ゴルゴビナの)</small>攻略を取り止めて、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、<br> α系写本では [[wikt:en:destitit|destitit]]<sub> (完了形)</sub> だが、<br> β系写本や印刷本では [[wikt:en:desistit#Latin|desistit]]<sub> (現在形)</sub> となっている。)</span>
*atque [[wikt:en:obviam#Adverb|obviam]] Caesari [[wikt:en:proficiscitur|proficiscitur]].
**カエサルの方に向かって進発する。
:
*<!--❷--><sup>(2)</sup> Ille oppidum [[wikt:en:Biturigēs|Biturigum]] [[wikt:en:positus#Latin|positum]] in via [[wikt:en:Noviodunum#Latin|Noviodunum]] [[wikt:en:oppugnare#Latin|oppugnare]] [[wikt:en:instituerat|instituerat]].
**彼<small>〔カエサル〕</small>は、途中に位置しているビトゥリゲース族の[[w:オッピドゥム|城塞都市]]ノウィオドゥーヌムの攻略を決めていた。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:どこへの途中なのか明記されていないため、その解釈により場所についての解釈が変わるようである。)</span>
:
; カエサルの城塞都市ノウィオドゥーヌムへの降伏条件
*<!--❸--><sup>(3)</sup> [[wikt:en:qui#Determiner|Quo]] ex oppido
**その城塞都市から
*cum legati ad eum [[wikt:en:venissent|venissent]] [[wikt:en:oratum#Verb|oratum]] ut sibi [[wikt:en:ignosceret|ignosceret]] suaeque vitae [[wikt:en:consuleret|consuleret]],
**使節たちが彼<small>〔カエサル〕</small>のもとへ、自分たちを容赦して生命を助けるように嘆願するために、やって来たときに、
*ut celeritate reliquas res [[wikt:en:conficeret|conficeret]], [[wikt:en:qui#Determiner|qua]] [[wikt:en:pleraque#Latin|pleraque]] erat [[wikt:en:consecutus#Latin|consecutus]],
**<small>(カエサルは)</small>多くのことを実行してきた迅速さによって、ほかの事を成し遂げるために、
*arma [[wikt:en:conferri|conferri]],
**武具が運び集められること、
*[[wikt:en:quus#Latin|equos]] [[wikt:en:produci#Verb_2|produci]],
**馬匹が引き渡されること、
*obsides [[wikt:en:dari#Latin|dari]] [[wikt:en:iubet#Latin|iubet]].
**人質が供出されること、を命じる。
:
*<!--❹--><sup>(4)</sup> Parte iam obsidum [[wikt:en:traditus#Participle|tradita]],
**すでに人質の一部が移送されて、
*cum [[wikt:en:reliqua#Latin|reliqua]] [[wikt:en:administrarentur|administrarentur]],
**残り<small>(の人質たち)</small>が処置されていたときに、
*[[wikt:en:centurio#Latin|centurionibus]] et paucis [[wikt:en:miles#Latin|militibus]] [[wikt:en:intromissus#Latin|intromissis]], qui arma [[wikt:en:iumentum#Latin|iumenta]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:conquirerent|conquirerent]],
**<ruby><rb>[[w:ケントゥリオ|百人隊長]]</rb><rp>(</rp><rt>ケントゥリオ</rt><rp>)</rp></ruby>たちや若干の兵士たちが、武器や[[w:使役動物|役畜]]を探し集めるべく<small>(城塞都市の中に)</small>送り込まれていたのだが、
*[[wikt:en:equitatus#Noun|equitatus]] hostium procul [[wikt:en:visus#Latin|visus]] est, qui [[wikt:en:agmen#Latin|agmen]] [[wikt:en:Vercingetorix#Latin|Vercingetorigis]] [[wikt:en:antecesserat|antecesserat]].
**ウェルキンゲトリークスの隊列に先行していた敵の[[w:騎兵|騎兵隊]]が遠くに望見された。
:
; ウェルキンゲトリークスの来援に気づいた城塞の者たちが、籠城に転じる
*<!--❺--><sup>(5)</sup> Quem [[wikt:en:simulatque|simulatque]] [[wikt:en:oppidanus#Noun|oppidani]] [[wikt:en:conspexerunt|conspexerunt]] atque in [[wikt:en:spes#Latin|spem]] [[wikt:en:auxilium#Latin|auxilii]] [[wikt:en:venerunt|venerunt]],
**それ<small></small>を城塞都市の者たちが視認して、救援の希望を抱くや否や、
*[[wikt:en:clamor#Latin|clamore]] [[wikt:en:sublatus#Etymology_1|sublato]]
**雄叫びを上げて、
*arma capere,
**武具を取ること、
*portas [[wikt:en:claudere#Etymology_1|claudere]],
**城門を閉じること、
*[[wikt:en:murus#Latin|murum]] [[wikt:en:complere|complere]] [[wikt:en:coeperunt|coeperunt]].
**城壁を<small>(兵で)</small>満たすこと、を始めた。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:sublato は [[wikt:en:tollo|tollo]] の分詞)</span>
: <!-- [[wikt:en:| -->
; 城塞民たちの心変わりに感づいたローマ人の将兵たちが城外に撤収する
*<!--❻--><sup>(6)</sup> [[wikt:en:centurio#Latin|Centuriones]] in oppido,
**城塞都市の中の<small>(カエサルの配下の)</small>百人隊長たちは、
*cum ex [[wikt:en:significatio#Latin|significatione]] Gallorum [[wikt:en:novus#Latin|novi]] [[wikt:en:aliquis#Latin|aliquid]] ab iis [[wikt:en:iniri#Latin|iniri]] consilii [[wikt:en:intellexissent|intellexissent]],
**ガッリア人たちの兆候から、彼らによる何らかの新たな謀りごとが始められていると察知していたので、
*[[wikt:en:gladius#Latin|gladiis]] [[wikt:en:destrictus#Latin|destrictis]]
**<ruby><rb>[[w:グラディウス (武器)|長剣]]</rb><rp>(</rp><rt>グラディウス</rt><rp>)</rp></ruby> を抜いて、
*portas [[wikt:en:occupaverunt|occupaverunt]]
**城門を占拠して、
*suosque omnes [[wikt:en:incolumis#Latin|incolumes]] [[wikt:en:receperunt|receperunt]].
**配下たち皆を無傷なままで退却させた。
<!--
<span style="color:#009900;"></span>
<small></small>
**:<span style="color:#009900;">(訳注:
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:
-->
===13節===
*<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/13節]] {{進捗|00%|2026-02-15}}</span>
[[画像:Caesar's_campaign_to_Noviodunum_in_52BC.png|thumb|right|250px|ノウィオドゥーヌムに至るカエサルの進路(青線)および[[w:ウェルキンゲトリクス|ウェルキンゲトリークス]]の進路(赤線)。青字名は親ローマ部族、赤字名は反ローマ部族。カエサルはアゲディンクムを発してからウェッラウノドゥーヌム、ケナブム、ノウィオドゥーヌムを続けて降し、ボイイー族のゴルゴビナ攻略を諦めたウェルキンゲトリークスもノウィオドゥーヌム来援に駆けつけて来た。ここに、初めて両軍が騎兵戦で激突することになった。]]
;同盟軍の騎兵を撃退、城塞都市を再び降して、アウァーリクム攻めに向かう
:
; カエサルが、騎兵戦の切り札としてゲルマーニア騎兵を繰り出す
*<!--❶--><sup>(1)</sup> Caesar ex castris [[wikt:en:equitatus#Latin|equitatum]] [[wikt:en:educi#Latin|educi]] [[wikt:en:iubet#Latin|iubet]],
**カエサルは、陣営から[[w:騎兵|騎兵隊]]を進発させることを命じて、
*<u>[[wikt:en:proelium#Latin|proelium]]</u> [[wikt:en:equester#Latin|equestre]] [[wikt:en:committit|committit]];
**<small>(ウェルキンゲトリークス勢と)</small>騎兵戦を交える。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、<br> α系写本では proelium だが、<br> β系写本では proelium<u>que</u> となっている。)</span>
*[[wikt:en:laborans#Latin|laborantibus]] iam suis
**配下の者たちがすでに苦戦していたときに、
*[[wikt:en:Germanus#Adjective|Germanos]] [[wikt:en:eques#Latin|equites]] circiter CCCC([[wikt:en:quadringentos|quadringentos]]) [[wikt:en:submittit|submittit]],
**<small>(カエサルは)</small>[[w:ゲルマニア|ゲルマーニア]]人の騎兵たち約400騎を救援に派遣する。
*quos ab [[wikt:en:initium#Latin|initio]] <u>habere [[wikt:en:secum#Latin|secum]]</u> [[wikt:en:instituerat|instituerat]].
**その者らは<small>(戦いの)</small>当初から自分のそばに保持すると決めていたものであった。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、<br> χ系・B・M・S写本では habere secum だが、<br> β系・L・N写本では secum habere となっている。)</span>
:
; ゲルマーニア騎兵が、ウェルキンゲトリークス配下の騎兵を一蹴する
*<!--❷--><sup>(2)</sup> Eorum [[wikt:en:impetus#Latin|impetum]] [[wikt:en:Galli#Latin|Galli]] [[wikt:en:sustineo#Latin|sustinere]] non [[wikt:en:potuerunt|potuerunt]]
**彼ら<small>〔ゲルマーニア人騎兵〕</small>の突撃に<small>(敵側の)</small>ガッリア人たちは持ちこたえることができず、
*atque in fugam [[wikt:en:coniectus#Participle|coniecti]]
**敗走に追いやられて、
*multis [[wikt:en:amissus#Latin|amissis]]
**大勢の者を失い、
*se ad [[wikt:en:agmen#Latin|agmen]] [[wikt:en:receperunt|receperunt]].
**<small>(後方にいたウェルキンゲトリークスの)</small>隊列に退却した。
:
; 城塞都市ノウィオドゥーヌムがカエサルの軍門に降る
*Quibus [[wikt:en:profligatus#Latin|profligatis]],
**彼ら<small>〔ウェルキンゲトリークスの騎兵隊〕</small>が制圧されると、
*rursus [[wikt:en:oppidanus#Noun|oppidani]] [[wikt:en:perterritus#Latin|perterriti]]
**[[w:オッピドゥム|城塞都市]]<small>〔ノウィオドゥーヌム〕</small>の者たちは再び怖れをなして、
*[[wikt:en:comprehensus#Latin|comprehensos]] eos, quorum [[wikt:en:opera#Latin|opera]] [[wikt:en:plebs#Latin|plebem]] [[wikt:en:concitatus#Latin|concitatam]] [[wikt:en:existimabant|existimabant]],
**その働きかけによって民衆を扇動したと<small>(城塞の民が)</small>考えていたところの者たちを拘束して、
*ad Caesarem [[wikt:en:perduxerunt|perduxerunt]]
**カエサルのもとへ連行して、
*seseque ei [[wikt:en:dediderunt|dediderunt]].
**自分たちも彼<small>〔カエサル〕</small>に降伏した。
: <!-- [[wikt:en:| -->
; カエサルが、ビトゥリゲース族の城塞都市アウァーリクムを目指す
*<!--❸--><sup>(3)</sup> Quibus rebus [[wikt:en:confectus#Latin|confectis]],
**それらの事が成し遂げられると、
*Caesar ad oppidum [[wikt:en:Avaricum#Latin|Avaricum]],
**カエサルは、[[w:オッピドゥム|城塞都市]]アウァーリクムへ、
*quod erat [[wikt:en:maximus#Latin|maximum]] [[wikt:en:munitissimus#Latin|munitissimum]]<nowiki>que</nowiki> in finibus [[wikt:en:Bituriges#Latin|Biturigum]] atque [[wikt:en:ager#Latin|agri]] [[wikt:en:fertilissimus#Latin|fertilissima]] [[wikt:en:regio#Latin|regione]],
**──それはビトゥリゲース族の領土で耕地の最も肥沃な地方にあり、最大かつ最も要塞化されていたが、──
*[[wikt:en:profectus#Etymology_3|profectus]] est,
**<small>(そこへ)</small>出発した。
*quod eo oppido [[wikt:en:receptus#Latin|recepto]]
**──というのは、その城塞都市を獲得することで、
*[[wikt:en:civitas#Latin|civitatem]] [[wikt:en:Bituriges#Latin|Biturigum]] se in [[wikt:en:potestas#Latin|potestatem]] [[wikt:en:redacturus#Latin|redacturum]] [[wikt:en:confidebat|confidebat]].
**ビトゥリゲースの部族国家を<small>(カエサルの)</small>隷下に引き戻すであろうと、確信していたからである──。
<!--
<span style="color:#009900;"></span>
<small></small>
**:<span style="color:#009900;">(訳注:
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:
-->
==アウァーリクム攻略戦==
===14節===
*<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/14節]] {{進捗|00%|2026-03-08}}</span>
;ウェルキンゲトリークスが兵站妨害と焦土戦術を決断
:
*<!--❶--><sup>(1)</sup> [[wikt:en:Vercingetorix#Latin|Vercingetorix]] tot [[wikt:en:continuus#Latin|continuis]] [[wikt:en:incommodum#Latin|incommodis]] [[wikt:en:Vellaunodunum#Latin|Vellaunoduni]], [[wikt:en:Genabum#Latin|Cenabi]], [[wikt:en:Noviodunum#Latin|Novioduni]] [[wikt:en:acceptus#Latin|acceptis]]
**[[w:ウェルキンゲトリクス|ウェルキンゲトリークス]]は、ウェッラウノドゥーヌム、ケナブム、ノウィオドゥーヌムと、このような多くの引き続く敗北をこうむると、
*suos ad [[wikt:en:concilium#Latin|concilium]] [[wikt:en:convocat#Latin|convocat]].
**麾下の者たちを会合へ召集する。
: <!-- [[wikt:en:| -->
; ウェルキンゲトリークスが、ローマ勢の糧道を断つことを提言
*<!--❷--><sup>(2)</sup> [[wikt:en:docet|Docet]] longe alia ratione esse bellum [[wikt:en:gerendus#Latin|gerendum]] atque antea [[wikt:en:gestus#Participle|gestum]] sit.
**以前に遂行されていたのとはまったく別の作戦で戦争が遂行されるべきである、と説く。
*Omnibus [[wikt:en:modus#Latin|modis]] huic rei studendum, ut [[wikt:en:pabulatio#Latin|pabulatione]] et [[wikt:en:commeatus#Noun|commeatu]] Romani [[wikt:en:prohibeantur|prohibeantur]].
**ローマ人たちが[[w:糧秣|糧秣]]徴発と物資輸送を妨げられるべく、この事をあらゆる方法で追求するべきだ。
:
*<!--❸--><sup>(3)</sup> Id esse facile,
**そのことは、容易である。
*quod [[wikt:en:equitatus#Latin|equitatu]] ipsi [[wikt:en:abundent#Latin|abundent]]
**というのは<small>(我々ガッリア勢)</small>自身は[[w:騎兵|騎兵隊]]がたくさんおり、
*et quod anni tempore [[wikt:en:subleventur|subleventur]].
**<small>(冬という)</small>時季に支えられているのだから。
:
; ローマ人が穀物倉に群がるところを騎兵で襲撃するべし
*<!--❹--><sup>(4)</sup> [[wikt:en:pabulum#Latin|Pabulum]] [[wikt:en:secari|secari]] non posse;
**<small>(この時季には)</small><ruby><rb>[[w:秣|秣]]</rb><rp>(</rp><rt>まぐさ</rt><rp>)</rp></ruby> は刈り取られることができない。
*[[wikt:en:necessario#Adverb|necessario]] [[wikt:en:dispersus#Latin|dispersos]] hostes ex [[wikt:en:aedificium#Latin|aedificiis]] [[wikt:en:petere|petere]];
**敵たち<small>〔ローマ勢〕</small>はやむなく分散して、家屋から<small>(糧秣を)</small>求める。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:ほとんどの会話が間接話法を採る本書で、<br> ローマ勢が「敵」hostes と表現されることは極めてまれである。)</span>
*hos omnes [[wikt:en:cotidie#Latin|cotidie]] ab [[wikt:en:eques#Latin|equitibus]] <u>deleri</u> posse.
**これら皆を日々に<small>(ガッリア側の)</small>騎兵隊によって壊滅させることができる。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、β系写本では [[wikt:en:deleri|deleri]]「滅ぼされる」だが、<br> α系写本では [[wikt:en:diligi#Latin|diligi]]「分断される」となっている。)</span>
:
; 焦土戦術をもって、ローマ人と軍馬を飢えさせるべし
*<!--❺--><sup>(5)</sup> Praeterea [[wikt:en:salus#Latin|salutis]] causa rei [[wikt:en:familiaris#Adjective|familiaris]] [[wikt:en:commodum#Latin|commoda]] [[wikt:en:neglegendus#Latin|neglegenda]];
**さらに<small>(同盟諸部族に共通の)</small>安全のために、私有資産の利益はなおざりにされるべきだ。
*[[wikt:en:vicus#Latin|vicos]] atque [[wikt:en:aedificium#Latin|aedificia]] [[wikt:en:incendi#Verb_2|incendi]] [[wikt:en:oportet#Latin|oportere]]
**<small>(以下のような領域の)</small>村々や建物は焼かれるべきだ。
*hoc spatio ab Boia quoque versus, quo [[wikt:en:pabulandi#Verb|pabulandi]] causa [[wikt:en:adire#Latin|adire]] posse [[wikt:en:videantur|videantur]].
**[[w:ボイイ族|ボイイー族]]のところから四方八方へ糧秣徴発するために赴くことができると思われる領域では。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:主要写本ω にある ab Boia「ボイイー族のところから」は、<br> 現代では「街道から」ab via と修正読みされることが多い。)</span>
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:quoque#Latin|quōque]] [[wikt:en:versus#Adverb|versus]] = [[wikt:en:quisque#Latin|quōquō]] versus「あらゆる方向へ」)</span>
[[画像:Eglise_saint_parize_le_chatel.jpg|thumb|right|250px|ボイイ族(Boii)の領内であったと思われる現在のサン=パリーズ=ル=シャテルの教会。ボイイー族の首邑ゴルゴビナは、[[w:ニエーヴル県|ニエーヴル県]]のサン=パリーズ=ル=シャテル([[w:en:Saint-Parize-le-Châtel|Saint-Parize-le-Châtel]])あるいは[[w:シェール県|シェール県]]のラ・ゲルシュ=スュル=ローボワ([[w:en:La Guerche-sur-l'Aubois|La Guerche-sur-l'Aubois]])の近辺にあったと推定されている。]]
:
*<!--❻--><sup>(6)</sup> Harum ipsis rerum copiam [[wikt:en:suppeto#Latin|suppetere]],
**<small>(ガッリア勢)</small>自身には、これらの物は、豊富に貯えてある。
*quod quorum in finibus bellum [[wikt:en:geratur|geratur]], eorum [[wikt:en:ops#Noun_4|opibus]] [[wikt:en:subleventur|subleventur]];
**──というのは、戦争が遂行される領土内の者たちの、彼らの助力に支えられているからだ。──
:
*<!--❼--><sup>(7)</sup> Romanos <u>aut</u> [[wikt:en:inopia#Latin|inopiam]] non [[wikt:en:laturus#Latin|laturos]] <span style="color:#009900;">(esse)</span>
**ローマ人たちは、あるいは<small>(糧食の)</small>欠乏に耐えられないであろうし、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:aut#Latin|aut]] ~ aut …「あるいは~あるいは…」)</span>
*<u>aut</u> magno <u>cum</u> periculo longius <u>ab</u> castris [[wikt:en:processurus#Latin|processuros]] <span style="color:#009900;">(esse)</span>;
**あるいは大きな危険とともに陣営からより遠くに進み出るであろう。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:cum は、ρ系写本・写本Tの記述で、<br> α系写本・写本Vにはない。)</span>
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:ab は、α系・ρ系写本・写本Vの記述で、写本Tでは a となっている。)</span>
:
*<!--❽--><sup>(8)</sup> neque [[wikt:en:interesse#Latin|interesse]], ipsos<u>ne</u> [[wikt:en:interficiant|interficiant]], [[wikt:en:impedimentum#Latin|impedimentis]]<u><nowiki>ne</nowiki></u> [[wikt:en:exuant|exuant]],
**<small>(ローマ人の)</small>当人たちを殺戮するか、輜重を奪い取るか、<small>(どちらであろうが)</small>違いはない。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:-ne#Latin|-ne]] は疑問小辞。~ -ne, … -ne 「~か、…か」)</span>
*quibus [[wikt:en:amissus#Latin|amissis]] bellum [[wikt:en:geri#Latin|geri]] non [[wikt:en:possit|possit]].
**それら<small>〔輜重〕</small>を失えば、戦争を遂行することができないのだから。
:
*<!--❾--><sup>(9)</sup> Praeterea oppida [[wikt:en:incendi#Verb_2|incendi]] [[wikt:en:oportet#Latin|oportere]],
**さらに、<small>(以下のような)</small>[[w:オッピドゥム|城塞都市]]は焼かれなければならない。
*quae non [[wikt:en:munitio#Latin|munitione]] et loci natura <u>ab omni</u> sint <u>periculo</u> [[wikt:en:tutus#Latin|tuta]],
**防塁や地勢によってあらゆる危険から守られていない<small>(城塞都市は)</small>。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:ab [[wikt:en:omni#Latin|omni]] [[wikt:en:periculum#Latin|periculo]] 「あらゆる危険から」)</span>
*<u>neu</u> suis sint ad <u>detrectandam</u> [[wikt:en:militia#Latin|militiam]] [[wikt:en:receptaculum#Latin|receptacula]]
**麾下の者たちにとっては<small>(城塞都市が)</small>[[w:兵役逃れ|兵役を忌避すること]]のための隠れ場所になることがないように、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:neu#Latin|neu]] は α系写本の記述で、β系写本では [[wikt:en:ne#Latin|ne]] となっている。)</span>
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:detrectandam|detrectandam]] は α系・ρ系写本の表記で、π系写本では [[wikt:en:detractandam|detractandam]] となっている。)</span>
*neu [[wikt:en:Romani#Latin|Romanis]] [[wikt:en:propositus#Latin|proposita]] ad [[wikt:en:copia#Latin|copiam]] [[wikt:en:commeatus#Noun|commeatus]] [[wikt:en:praeda#Latin|praedam]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:tollendus#Latin|tollendam]],
**ローマ人たちにとって<small>(城塞都市が)</small>豊富な物資や戦利品を奪うための置き場所ともならないように。
:
*<!--❿--><sup>(10)</sup> Haec si [[wikt:en:gravis#Latin|gravia]] aut [[wikt:en:acerbus#Latin|acerba]] [[wikt:en:videantur|videantur]],
**もし、これら<small>(の作戦)</small>が厳しい、または苦しいと見えるとしても、
*multo illa [[wikt:en:graviter#Latin|gravius]] <u>aestimare</u>, [[wikt:en:liber#Noun_6|liberos]], [[wikt:en:coniunx#Latin|coniuges]] in [[wikt:en:servitus#Latin|servitutem]] [[wikt:en:abstrahi|abstrahi]], ipsos [[wikt:en:interfici|interfici]];
**それより、子供や配偶者たちが奴隷状態で連れ去られ、自身が殺されることの方が、はるかに厳しいと判断されるべきだ。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、α系写本では [[wikt:en:aestimare|aestimare]] だが、 <br> β系写本では [[wikt:en:aestimari|aestimari]] [[wikt:en:debere|debere]] となっている。)</span>
*quae sit [[wikt:en:necesse#Latin|necesse]] [[wikt:en:accido#Etymology_1|accidere]] [[wikt:en:victus#Participle|victis]].
**それらのことは、打ち負かされた者たちには、起こることが必然なのである。
<!--
<span style="color:#009900;"></span>
<small></small>
**:<span style="color:#009900;">(訳注:
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:
-->
===15節===
[[画像:Bourges_-_002_-_Low_Res.jpg|thumb|right|300px|'''アウァーリクム'''(Avaricum)すなわちビトゥリゲース族(Bituriges)の名を残すともいわれる現在の[[w:ブールジュ|ブールジュ]](Bourges)の[[w:サン=テチエンヌ大聖堂 (ブールジュ)|サン=テティエンヌ大聖堂]]([[w:世界遺産|世界遺産]])。この街はガッリア時代からこの地方の中心的な城塞都市であり、現代ではそれほど大都会ではないが、世界遺産の大聖堂や音楽祭などで広く知られている。]]
[[画像:Bourges.JPG|thumb|right|300px|アウァーリクムすなわち[[w:ブールジュ|ブールジュ]]の大聖堂から眺めた街並み。'''ビトゥリゲース族'''はかつてはイタリア北部に移住したこともある強大な部族で、この当時はブルディガラ(Burdigala:現在の[[w:ボルドー|ボルドー]])周辺にいたビトゥリゲース・ウィウィスキ族(Bituriges Vivisci)およびアウァーリクム周辺にいた'''ビトゥリゲース・クビ族'''(Bituriges Cubi)の二派に分かれていた。『ガリア戦記』に登場するのはビトゥリゲース・クビ族の方である。]]
*<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/15節]] {{進捗|00%|2026-03-08}}</span>
;焦土戦術開始、しかしアウァーリクムの防衛を決定
:
; 焦土戦術として、ビトゥリゲース族の街々が焼かれる
*<!--❶--><sup>(1)</sup> Omnium [[wikt:en:consensus#Latin|consensu]]
**<small>(会合の参加者)</small>全員の合意により
*hac [[wikt:en:sententia#Latin|sententia]] [[wikt:en:probatus#Latin|probata]],
**<small>(ウェルキンゲトリークスの)</small>この意向が承認されると、
*uno die [[wikt:en:amplius|amplius]] [[wikt:en:viginti|viginti]]<sub> (XX)</sub> [[wikt:en:urbs#Latin|urbes]] [[wikt:en:Bituriges#Latin|Biturigum]] [[wikt:en:incenduntur|incenduntur]].
**一日で、20より多いビトゥリゲース族の街々が焼かれる。
:
; ほかの諸部族の街々も焼かれる
*<!--❷--><sup>(2)</sup> Hoc idem fit in reliquis [[wikt:en:civitas#Latin|civitatibus]]:
**これと同じことが、ほかの諸部族でも行なわれて、
*in omnibus partibus
**あらゆる方面において、
*[[wikt:en:incendium#Latin|incendia]] [[wikt:en:conspiciuntur|conspiciuntur]];
**炎上が望見される。
*quae <u>etsi</u> magno cum [[wikt:en:dolor#Latin|dolore]] omnes [[wikt:en:ferebant|ferebant]],
**それらの皆が大きな悲嘆とともに耐えていたとしても、
*<u>tamen</u> hoc sibi [[wikt:en:solacium#Latin|solacii]] [[wikt:en:proponebant|proponebant]],
**しかし、自分らにとっての<small>(以下の)</small>慰めを抱いていた。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:etsi#Latin|etsi]] ~ [[wikt:en:tamen#Latin|tamen]] …<br> 「~としても、にもかかわらず…」)</span>
*quod se prope [[wikt:en:exploratus#Latin|explorata]] [[wikt:en:victoria#Latin|victoria]]
**勝利はほぼ確実なものとされて、
*celeriter [[wikt:en:amissus#Latin|amissa]] [[wikt:en:reciperaturus#Latin|reciperaturos]] <span style="color:#009900;">(esse)</span>
**失ったものを速やかに回復するであろう、
*[[wikt:en:confidebant|confidebant]].
**と確信していたことである。
:
; アウァーリクムは、焦土戦術か、それとも防衛すべきか?
*<!--❸--><sup>(3)</sup> [[wikt:en:deliberatur|Deliberatur]] de [[wikt:en:Avaricum#Latin|Avarico]] in [[wikt:en:communis#Latin|communi]] [[wikt:en:concilium#Latin|concilio]], [[wikt:en:incendi#Latin|incendi]] <u>placeret</u> an [[wikt:en:defendi#Latin|defendi]].
**合同の会合において、アウァーリクムについて (も) 焼き討ちが良いか、あるいは防衛か、が吟味される。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、α系写本では [[wikt:en:placeret|placeret]]<sub> (接続法・未完了過去)</sub> だが、<br> β系写本では [[wikt:en:placeat|placeat]]<sub> (接続法・現在)</sub> となっている。)</span>
:
; ビトゥリゲース族が、要害であるアウァーリクムの防衛を懇願する
*<!--❹--><sup>(4)</sup> [[wikt:en:procumbunt|Procumbunt]] omnibus Gallis ad pedes [[wikt:en:Bituriges#Latin|Bituriges]],
**<small>(会合に参加していた)</small>すべてのガッリア人の足元へ、ビトゥリゲース族の者たちはひれ伏す。
*ne [[wikt:en:pulcherrimus#Latin|pulcherrimam]] prope <u>[[wikt:en:totus#Latin|totius]] Galliae</u> [[wikt:en:urbs#Latin|urbem]], quae <u>et</u> [[wikt:en:praesidium#Latin|praesidio]] et [[wikt:en:ornamentum#Latin|ornamento]] sit [[wikt:en:civitas#Latin|civitati]],
**ほぼ全ガッリアの街々で最も美しいもの、部族にとっては要害でも誉れでもあるものを、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:totius Galliae は α系写本の語順で、β系写本では Galliae totius となっている。)</span>
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:et は β系写本にはあるが、α系写本にはない。)</span>
*suis manibus [[wikt:en:succendo#Latin|succendere]] [[wikt:en:cogerentur|cogerentur]];
**自分たちの手で燃やすことを強いられないように、と(懇願した)。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:ne ~ cogerentur;~を強いられないように)</span>
:
; アウァーリクムの地の利
*<!--❺--><sup>(5)</sup> facile se loci natura [[wikt:en:defensurus#Latin|defensuros]] [[wikt:en:dicunt|dicunt]],
**自分たちは<small>(アウァーリクムを)</small>地勢によって容易に防衛するだろう、と述べる。
*quod prope ex omnibus partibus [[wikt:en:flumen#Latin|flumine]] et [[wikt:en:palus#Latin|palude]] [[wikt:en:circumdatus#Latin|circumdata]]
**というのは<small>(アウァーリクムは)</small>ほぼあらゆる方向から川や沼地で囲まれており、
*unum habeat et [[wikt:en:perangustus#Latin|perangustum]] [[wikt:en:aditus#Latin|aditum]].
**一つだけ、非常に狭い進入路を持っているからだ。
[[画像:Bourges_2.JPG|thumb|right|300px|アウァーリクムすなわち[[w:ブールジュ|ブールジュ]]の大聖堂から眺めた沼地。イェーヴル川([[w:fr:Yèvre (Cher)|fr:Yèvre]])と沼地は、カエサルが書いたようにガッリア時代からこの街を囲んでいる。]]
:
; アウァーリクムの防衛が認められる
*<!--❻--><sup>(6)</sup> [[wikt:en:datur#Latin|Datur]] [[wikt:en:petens#Latin|petentibus]] [[wikt:en:venia#Latin|venia]]
**<small>(アウァーリクムの防衛を)</small>求める者たちに許可が与えられる。
*[[wikt:en:dissuadens#Latin|dissuadente]] primo [[wikt:en:Vercingetorix#Latin|Vercingetorige]],
**[[w:ウェルキンゲトリクス|ウェルキンゲトリークス]]は当初は思い止まらせていたが、
*post [[wikt:en:concedens#Latin|concedente]] et [[wikt:en:prex#Latin|precibus]] ipsorum et [[wikt:en:misericordia#Latin|misericordia]] [[wikt:en:vulgus#Latin|vulgi]].
**後には、彼ら当人の懇願にも、民衆への哀れみにも、譲歩した。
*[[wikt:en:defensor#Latin|Defensores]] [[wikt:en:oppidum#Latin|oppido]] [[wikt:en:idoneus#Latin|idonei]] [[wikt:en:deliguntur|deliguntur]].
**城塞都市の適切な防衛者たちが選ばれる。
<!--
<span style="color:#009900;"></span>
<small></small>
**:<span style="color:#009900;">(訳注:
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:
-->
===16節===
*<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/16節]] {{進捗|00%|2026-03-22}}</span>
;アウァーリクムをめぐる両軍の駆け引き
:
; ウェルキンゲトリークスが、アウァーリクムから16マイル離れたところに宿営する
*<!--❶--><sup>(1)</sup> [[wikt:en:Vercingetorix#Latin|Vercingetorix]] [[wikt:en:minor#Latin|minoribus]] Caesarem [[wikt:en:iter#Latin|itineribus]] [[wikt:en:subsequitur|subsequitur]]
**[[w:ウェルキンゲトリクス|ウェルキンゲトリークス]]は、カエサルを緩やかな行軍で追尾して、
*et locum [[wikt:en:castra#Latin|castris]] [[wikt:en:eligit#Latin|deligit]] [[wikt:en:palus#Latin|paludibus]] [[wikt:en:silva#Latin|silvis]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:munitus#Latin|munitum]]
**沼地や森林で防御された地点を陣営のために選んだ。
*ab [[wikt:en:Avaricum#Latin|Avarico]] longe milia passuum [[wikt:en:sedecim#Latin|sedecim]]<sub> (XVI)</sub>.
**アウァーリクムから16<u>ローママイル</u>隔たっていた。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:1[[ガイウス・ユリウス・カエサルの著作/通貨・計量単位#ミーッレ・パッスーム、ミーリア(ローママイル)|ローママイル]]は約1.48 kmで、16マイルは約24 km)</span>
:
; ウェルキンゲトリークスが、斥候を放ってアウァーリクムを探り、部下たちに指図する
*<!--❷--><sup>(2)</sup> Ibi per [[wikt:en:certus#Latin|certos]] [[wikt:en:explorator#Latin|exploratores]]
**そこで、一定の斥候たちを通して、
*in [[wikt:en:singulus#Latin|singula]] diei tempora, quae ad [[wikt:en:Avaricum#Latin|Avaricum]] <u>agerentur</u>, [[wikt:en:cognoscebat|cognoscebat]]
**日中の毎時、アウァーリクム近傍で行なわれていることを探知して、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、α系写本では [[wikt:en:agerentur|agerentur]] だが、<br> β系写本では [[wikt:en:gererentur|gererentur]] となっている。)</span>
*et, [[wikt:en:quis#Latin|quid]] [[wikt:en:fieri#Latin|fieri]] [[wikt:en:vellet#Latin|vellet]], [[wikt:en:imperabat|imperabat]].
**<small>(彼自身が)</small>なされることを欲していることを<small>(麾下の者たちに)</small>命令していた。
:
; ウェルキンゲトリークスとローマ勢の糧秣調達をめぐる攻防
*<!--❸--><sup>(3)</sup> Omnes nostras [[wikt:en:pabulatio#Latin|pabulationes]] [[wikt:en:frumentatio#Latin|frumentationes]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:observabat|observabat]]
**我が方<small>〔ローマ勢〕</small>の[[w:糧秣|秣や糧食]]の徴発の一部始終を注視していて、
*[[wikt:en:dispersus#Latin|dispersos]]<nowiki>que</nowiki>, cum longius necessario [[wikt:en:procederent|procederent]], [[wikt:en:adoriebatur|adoriebatur]]
**<small>(ローマ勢が)</small>分散して、やむを得ずにはるか遠くに進み出たときに、<small>(ガッリア勢が)</small>襲いかかって、
*[[wikt:en:magnus#Latin|magno]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:incommodum#Latin|incommodo]] [[wikt:en:adficiebat|adficiebat]],
**<small>(ローマ勢に)</small>大きな損害を与えていた。
*[[wikt:en:etsi#Latin|etsi]], quantum [[wikt:en:ratio#Latin|ratione]] [[wikt:en:provideri|provideri]] [[wikt:en:poterat|poterat]], ab nostris [[wikt:en:occurrebatur|occurrebatur]],
**とはいえ、できるかぎり用心する判断により<small>(敵の襲撃を)</small>我が方<small>〔ローマ勢〕</small>によって阻止していた。
*ut [[wikt:en:incertus#Latin|incertis]] temporibus [[wikt:en:diversus#Latin|diversis]]<nowiki>que</nowiki> itineribus [[wikt:en:iretur|iretur]].
**不確定な時間帯にまったく別々の道を行き来するというように。
<!--
<span style="color:#009900;"></span>
<small></small>
**:<span style="color:#009900;">(訳注:
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:
-->
===17節===
[[画像:Carte_du_Cher.svg|thumb|right|250px|アウァーリクム、すなわち現在の[[w:ブールジュ|ブールジュ市]](Bourges)のあるフランス・[[w:シェール県|シェール県]]の地図。中心にブールジュがあり、右下(南東)のラ・ゲルシュ=スュル=ローボワ([[w:en:La Guerche-sur-l'Aubois|La Guerche-sur-l'Aubois]])の近辺にボイイー族の首邑ゴルゴビナ(Gorgobina)があったと推定されている。右(東)隣の[[w:ニエーヴル県|ニエーヴル県]](Nièvre)が[[w:ハエドゥイ族|ハエドゥイー族]]の版図であった。]]
*<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/17節]] {{進捗|00%|2026-03-28}}</span>
;アウァーリクム攻囲に取りかかるローマ軍の糧秣欠乏
:
; カエサルが、アウァーリクム攻囲のための堡塁工事に着手
*<!--❶--><sup>(1)</sup> [[wikt:en:castra#Latin|Castris]] ad eam partem [[wikt:en:oppidum#Latin|oppidi]] [[wikt:en:positus#Participle|positis]] Caesar,
**カエサルは、[[w:オッピドゥム|城塞都市]]の<small>(以下に述べるような)</small>方面に陣営を設置して、
*quae [[wikt:en:intermissus#Latin|intermissa]] a flumine et a <u>paludibus</u>
**──<small>(その方面は)</small>川や沼地により<small>(外部から)</small>遮断されて、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、α系写本では [[wikt:en:paludibus|paludibus]] だが、<br> β系写本では [[wikt:en:palude#Latin|palude]] となっている。)</span>
*[[wikt:en:aditus#Noun_3|aditum]], ut supra [[wikt:en:diximus#Latin|diximus]], [[wikt:en:angustus#Latin|angustum]] [[wikt:en:habebat|habebat]],
**<u>前に述べたように</u>、狭い進入路を持っているというものであるが、──
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[#15節|15節]]⑤項では、<br> ほぼあらゆる方向から川や沼地で囲まれており、<br> 一つだけ、非常に狭い進入路を持っている、<br> と言及された。)</span>
*[[wikt:en:agger#Latin|aggerem]] [[wikt:en:apparare#Latin|apparare]],
**<small>(さらに)</small><ruby><rb>[[w:土塁|土塁]]</rb><rp>(</rp><rt>アッゲル</rt><rp>)</rp></ruby> を装備すること、
*[[wikt:en:vinea#Latin|vineas]] [[wikt:en:ago#Latin|agere]],
**<ruby><rb>[[w:ウィネア|工作小屋]]</rb><rp>(</rp><rt>ウィネア</rt><rp>)</rp></ruby> を駆動すること、
*[[wikt:en:turris#Latin|turres]] duas [[wikt:en:constituo#Latin|constituere]] [[wikt:en:coepit|coepit]];
**2つの<ruby><rb>[[w:攻城塔|攻城櫓]]</rb><rp>(</rp><rt>トゥッリス</rt><rp>)</rp></ruby> を建てること、を始めた。
*nam [[wikt:en:circumvallo#Latin|circumvallare]] loci natura [[wikt:en:prohibebat|prohibebat]].
**なぜなら<small>(城塞都市を)</small>堡塁で囲むことを地勢が妨げていたからだ。
<div style="text-align:center;">
{|
|-
|[[画像:Caesar's Gallic war; (Allen and Greenough's ed.) (1898) (14781415375).jpg|thumb|right|350px|城壁(図中の左端)を攻略するために築かれた<ruby><rb>土塁</rb><rp>(</rp><rt>アッゲル</rt><rp>)</rp></ruby> の復元画([[ガリア戦記_第2巻#12節|第2巻12節]]で既出)。左上には、両軍の<ruby><rb>[[w:攻城塔|攻城櫓]]</rb><rp>(</rp><rt>トゥッリス</rt><rp>)</rp></ruby>が描かれている。]]
|[[画像:Bender - Vinea.JPG|thumb|right|350px|<ruby><rb>工作小屋</rb><rp>(</rp><rt>ウィネア</rt><rp>)</rp></ruby> [[wikt:en:vinea|vinea]] の復元画([[ガリア戦記_第2巻#12節|第2巻12節]]で既出)。敵の矢玉などから身を守りながら城壁に近づくために用いられたと考えられている。]]
|}
</div>
:
; カエサルが、同盟者であるボイイー族やハエドゥイー族に、糧秣徴発を促す
*<!--❷--><sup>(2)</sup> De re [[wikt:en:frumentarius#Adjective|frumentaria]]
**<small>(カエサルは)</small>[[w:糧秣|糧秣]]調達について、
*[[wikt:en:Boii#Latin|Boios]] atque [[wikt:en:Haedui#Latin|Haeduos]] [[wikt:en:adhortari|adhortari]] non [[wikt:en:destitit|destitit]];
**[[w:ボイイ族|ボイイー族]]や[[w:ハエドゥイ族|ハエドゥイー族]]を鼓舞することを止めなかった。
*quorum [[wikt:en:alter#Latin|alteri]], quod [[wikt:en:nullus#Determiner|nullo]] [[wikt:en:studium#Latin|studio]] [[wikt:en:agebant|agebant]], non multum [[wikt:en:adiuvabant|adiuvabant]],
**彼らのうち一方<small>〔ハエドゥイー族〕</small>は、何らの努力を行なわなかったので、あまり助けにならなかった。
*[[wikt:en:alter#Latin|alteri]] non magnis [[wikt:en:facultas#Latin|facultatibus]], quod [[wikt:en:civitas#Latin|civitas]] erat [[wikt:en:exiguus#Latin|exigua]] et [[wikt:en:infirmus#Latin|infirma]],
**他方<small>〔ボイイー族〕</small>は、貧弱かつ無力な部族であったので、大した貯えもなく、
*celeriter quod [[wikt:en:habuerunt|habuerunt]] [[wikt:en:consumpserunt|consumpserunt]].
**早々と持っていたものを消費し切ってしまった。
:
; 糧秣の欠乏が続くが、ローマの将兵たちが耐え抜く
*<!--❸--><sup>(3)</sup> [[wikt:en:summus#Latin|Summa]] [[wikt:en:difficultas#Latin|difficultate]] rei [[wikt:en:frumentarius#Adjective|frumentariae]] [[wikt:en:adfectus#Latin|adfecto]] [[wikt:en:exercitus#Noun|exercitu]]
**<small>(ローマ人の)</small>軍隊は糧秣調達の大いなる困難さに苦悩させられながらも、
*[[wikt:en:tenuitas#Latin|tenuitate]] [[wikt:en:Boii#Latin|Boiorum]],
**──<small>(その困難は)</small>ボイイー族の微力さ、
*[[wikt:en:indiligentia#Latin|indiligentia]] [[wikt:en:Haedui#Latin|Haeduorum]],
**ハエドゥイー族の怠慢、
*[[wikt:en:incendium#Latin|incendiis]] [[wikt:en:aedificium#Latin|aedificiorum]],
**<small>(敵勢による)</small>家屋の焼き打ちによるものであったが、──
*usque eo ut [[wikt:en:complures#Determiner|complures]] dies [[wikt:en:frumentum#Latin|frumento]] [[wikt:en:miles#Latin|milites]] [[wikt:en:caruerint|caruerint]]
**かなりの日々にわたって兵士たちは糧食を欠くまでになり、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:usque#Latin|usque]] eo ut ~「~まで」)</span>
*et [[wikt:en:pecus#Latin|pecore]] ex [[wikt:en:longinquior#Latin|longinquioribus]] [[wikt:en:vicus#Latin|vicis]] [[wikt:en:adactus#Latin|adacto]]
**かなり遠方の村々から家畜を駆り立てたので
*[[wikt:en:extremus#Latin|extremam]] [[wikt:en:fames#Latin|famem]] [[wikt:en:sustentarent|sustentarent]],
**極限の飢えに耐え通すまでになったのであるが、
*[[wikt:en:nullus#Determiner|nulla]] tamen <u>vox est ab iis</u> [[wikt:en:auditus#Latin|audita]] populi Romani [[wikt:en:maiestas#Latin|maiestate]] et [[wikt:en:superior#Latin|superioribus]] [[wikt:en:victoria#Latin|victoriis]] [[wikt:en:indignus#Latin|indigna]].
**しかしながら、ローマ人民の威厳やかつての勝利にふさわしからぬ声は、彼らから何ら聞かれなかった。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、α系写本では [[wikt:en:vox#Latin|vox]] est <u>ab</u> iis だが、<br> β系写本では <u>ex</u> iis vox est となっている。)</span>
:
; ローマ人将兵たちがカエサルに攻囲の継続を訴える
*<!--❹--><sup>(4)</sup> [[wikt:en:quin#Latin|Quin]] etiam Caesar cum in [[wikt:en:opus#Latin|opere]] [[wikt:en:singulus#Latin|singulas]] [[wikt:en:legio#Latin|legiones]] [[wikt:en:appellaret|appellaret]],
**いやそればかりか、カエサルが作業中のそれぞれの[[w:ローマ軍団|軍団]]に呼びかけたとき、
*et, si [[wikt:en:acerbe#Latin|acerbius]] [[wikt:en:inopia#Latin|inopiam]] [[wikt:en:ferrent#Latin|ferrent]], se [[wikt:en:dimissurus#Latin|dimissurum]] <span style="color:#009900;"><sub>(esse)</sub></span> [[wikt:en:oppugnatio#Latin|oppugnationem]] [[wikt:en:diceret|diceret]],
**もし、とても過酷に欠乏に耐えているのならば、自分は攻囲を放棄するであろう、とカエサルが言っていたときに、
:
*<!--❺--><sup>(5)</sup> [[wikt:en:universi#Latin|universi]] ab eo, ne id [[wikt:en:faceret|faceret]], [[wikt:en:petebant|petebant]] :
**<small>(各軍団の)</small>一同は、彼<small>〔カエサル〕</small>に、それ<small>〔攻囲の放棄〕</small>をしないように求めていた。
*sic se complures annos illo [[wikt:en:imperans#Latin|imperante]] [[wikt:en:meruisse|meruisse]],
**自分たちは<small>(以下のように)</small>幾年にもわたって彼<small>〔カエサル〕</small>の麾下で努めてきた。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:sic ~ ut …「…のように~である」)</span>
*ut [[wikt:en:nullus#Determiner|nullam]] [[wikt:en:ignominia#Latin|ignominiam]] [[wikt:en:acciperent|acciperent]], <u>nusquam incepta</u> re [[wikt:en:discederent|discederent]]:
**何ら不名誉を蒙ってないし、事<small>〔戦役〕</small>が完遂されないまま<small>(戦列を)</small>離脱することは決してなかったのだ。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、α系写本では [[wikt:en:nusquam#Latin|nusquam]] [[wikt:en:inceptus#Latin|incepta]] だが、<br> β系写本では [[wikt:en:numquam#Latin|numquam]] [[wikt:en:infectus#Adjective|infecta]] となっている。)</span>
:
*<!--❻--><sup>(6)</sup> hoc se [[wikt:en:ignominia#Latin|ignominiae]] <u>loco [[wikt:en:laturus#Latin|laturos]]</u> <span style="color:#009900;"><sub>(esse)</sub></span>, si [[wikt:en:inceptus#Latin|inceptam]] [[wikt:en:oppugnatio#Latin|oppugnationem]] [[wikt:en:reliquissent|reliquissent]];
**もし<small>(自分たちが)</small>着手した攻囲を放棄してしまったならば、自分たちはこの状態を不名誉と見なすであろう。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、β系写本では loco laturos の語順だが、<br> α系写本では laturos loco の語順となっている。)</span>
:
*<!--❼--><sup>(7)</sup> <u>praestare</u> omnes [[wikt:en:perferre|perferre]] [[wikt:en:acerbitas#Latin|acerbitates]],
**あらゆる厳しさに持ちこたえることは<small>(以下のこと)</small>よりましである。
**:<span style="color:#009900;">(訳注:[[wikt:en:praestare|praestare]] ~ [[wikt:en:quam#Adverb|quam]] …「…よりも~がより優る」)</span>
*<u>quam</u> non [[wikt:en:civis#Latin|civibus]] Romanis, qui [[wikt:en:Genabum#Latin|Cenabi]] [[wikt:en:perfidia#Latin|perfidia]] Gallorum [[wikt:en:interissent|interissent]], [[wikt:en:parentarent|parentarent]].
**ケナブムでガッリア人たちの不義により滅びたローマ市民たちの仇討ちをしないよりも。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[#3節|3節]]①項を参照。仇討ちをしないのなら、苦しむ方がましである、の意)</span>
:
*<!--❽--><sup>(8)</sup> Haec [[wikt:en:idem#Latin|eadem]] [[wikt:en:centurio#Latin|centurionibus]] [[wikt:en:tribunus#Latin|tribunis]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:miles#Latin|militum]]
**これらと同じことを、<ruby><rb>[[w:ケントゥリオ|百人隊長]]</rb><rp>(</rp><rt>ケントゥリオ</rt><rp>)</rp></ruby>たちや<ruby><rb>[[w:トリブヌス・ミリトゥム|兵士長官]]</rb><rp>(</rp><rt>トリブヌス・ミリトゥム</rt><rp>)</rp></ruby>たちに、
*[[wikt:en:mandabant|mandabant]], ut per eos ad Caesarem [[wikt:en:deferrentur|deferrentur]].
**彼らを通じてカエサルに申し立てるように、依頼していた。
<!--
<span style="color:#009900;"></span>
<small></small>
**:<span style="color:#009900;">(訳注:
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:
-->
===18節===
*<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/18節]] {{進捗|00%|2026-04-13}}</span>
;カエサルがウェルキンゲトリークス不在の敵陣へ迫る
:
; カエサルは、ウェルキンゲトリークスが糧秣の欠乏によりローマ勢の糧秣徴発隊を襲撃に向かったと知る
*<!--❶--><sup>(1)</sup> Cum iam [[wikt:en:murus#Latin|muro]] [[wikt:en:turris#Latin|turres]] [[wikt:en:adpropinquassent#Latin|adpropinquassent]],
**すでに<small>(アウァーリクムの)</small>城壁に<small>(ローマ勢の)</small>[[w:攻城塔|攻城櫓]]が近づいていた際に、
*ex [[wikt:en:captivus#Noun|captivis]] Caesar [[wikt:en:cognovit#Latin|cognovit]],
**カエサルは、捕虜たちから<small>(以下のことを)</small>知った。
*[[wikt:en:Vercingetorix#Latin|Vercingetorigem]], [[wikt:en:consumptus#Latin|consumpto]] [[wikt:en:pabulum#Latin|pabulo]],
**[[w:ウェルキンゲトリクス|ウェルキンゲトリークス]]は[[w:糧秣|糧秣]]を消費し切ると、
*castra [[wikt:en:movisse#Latin|movisse]] propius [[wikt:en:Avaricum#Latin|Avaricum]],
**陣営をアウァーリクムのより近くに移動させて、
*atque ipsum cum [[wikt:en:equitatus#Latin|equitatu]] [[wikt:en:expeditus#Noun|expeditis]]<nowiki>que</nowiki>, qui inter [[wikt:en:eques#Latin|equites]] [[wikt:en:proeliari#Verb|proeliari]] [[wikt:en:consuessent#Latin|consuessent]],
**彼自身は、[[w:騎兵|騎兵]]隊、および騎兵たちの間で争闘することに習熟していた[[w:軽装歩兵|軽装歩兵]]たちとともに、
*<u>insidiarum</u> causa eo [[wikt:en:profectus#Etymology_3|profectum]], quo nostros postero die [[wikt:en:pabulatum#Verb|pabulatum]] [[wikt:en:venturus#Latin|venturos]] [[wikt:en:arbitraretur#Latin|arbitraretur]].
**我が方<small>〔ローマ勢〕</small>が翌日に糧秣徴発にやって来るであろうと思われるところで待ち伏せするために、出発した、と。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、α系写本では [[wikt:en:insidiarum|insidiarum]] だが、<br> β系写本では [[wikt:en:insidiandi#Latin|insidiandi]] となっている。)</span>
[[画像:AVARICUM Battaglia 52 aC.png|thumb|right|300px|アウァーリクム攻略戦の布陣図(<small>イタリア語</small>)。中央がアウァーリクム(AVARICUM)、右下の赤枠内がカエサルと8個軍団の陣営、赤い矢印の先端がローマ軍の土塁。左上の楕円形がウェルキンゲトリークスが移動させた陣営。]]
[[画像:Funerary chariot in the archeological museum of Strasbourg.jpg|thumb|right|300px|[[w:ハルシュタット文化|ハルシュタット文化]]の墳墓の副葬品として発掘された '''四輪荷馬車''' のレプリカ(仏ストラスブール考古学博物館)。]]
:
*<!--❷--><sup>(2)</sup> Quibus rebus [[wikt:en:cognitus#Participle|cognitis]]
**<small>(カエサルは)</small>それらの事情を知るや、
*media nocte [[wikt:en:silentium#Latin|silentio]] [[wikt:en:profectus#Etymology_3|profectus]]
**真夜中の静けさのうちに出発して、
*ad hostium castra [[wikt:en:mane#Adverb_2|mane]] [[wikt:en:pervenit#Etymology_2|pervenit]].
**敵の陣営の辺りへ朝方に到着した。
:
*<!--❸--><sup>(3)</sup> Illi, celeriter per [[wikt:en:explorator#Latin|exploratores]] [[wikt:en:adventus#Latin|adventu]] Caesaris [[wikt:en:cognitus#Participle|cognito]]
**あの者たちは、速やかに斥候たちを通じてカエサルの到来を知るや、
*<u>carros</u> [[wikt:en:impedimentum#Latin|impedimenta]]<nowiki>que</nowiki> sua in [[wikt:en:artior#Latin|artiores]] [[wikt:en:silva#Latin|silvas]] [[wikt:en:abdiderunt#Latin|abdiderunt]],
**自分たちの<u>四輪荷馬車</u>と[[w:輜重|輜重]]をとても深い森の中に隠して、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:四輪荷馬車 [[wikt:en:carrus#Latin|carrus]] は、例えば右の画像のものを参照。)</span>
*copias omnes in loco [[wikt:en:editus#Latin|edito]] atque [[wikt:en:apertus#Latin|aperto]] [[wikt:en:instruxerunt#Latin|instruxerunt]].
**全軍勢を高くそびえて開けている場所に配置した。
:
*<!--❹--><sup>(4)</sup> Qua re [[wikt:en:nuntiatus#Latin|nuntiata]]
**その事を報告されて、
*Caesar celeriter [[wikt:en:sarcina#Latin|sarcinas]] [[wikt:en:conferri#Latin|conferri]],
**カエサルは速やかに<small>(兵士たちの)</small>[[w:背嚢|背嚢]]が運び集められること、
*[[wikt:en:arma#Latin|arma]] [[wikt:en:expediri#Latin|expediri]] [[wikt:en:iussit#Verb|iussit]].
**武具が<small>(すぐ使えるように)</small>整えられることを命じた。
<!--
<span style="color:#009900;"></span>
<small></small>
**:<span style="color:#009900;">(訳注:
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:
-->
===19節===
*<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/19節]] {{進捗|00%|2026-04-20}}</span>
;丘の上のガッリア勢と沼沢を挟んで対峙する
:
; ガッリア勢の陣営の地勢
*<!--❶--><sup>(1)</sup> [[wikt:en:collis#Latin|Collis]] erat <u>leniter</u> ab [[wikt:en:infimus#Latin|infimo]] [[wikt:en:adclivis#Latin|adclivis]].
**<small>(ガッリア勢がいる)</small>丘陵はふもとから緩やかに、登り坂になっていた。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、β系・χ系・B・M・S・N<sup>c</sup> 写本では [[wikt:en:leviter#Latin|leviter]] 、<br> L・N写本では [[wikt:en:breviter#Latin|breviter]] だが、<br> より劣った写本 ''[[ガリア戦記/注解編/写本と校訂版#クリティカル・アパラトゥスとその略号|codd.deter.]]'' では [[wikt:en:leniter#Latin|leniter]] となっている。
*Hunc ex omnibus fere partibus [[wikt:en:palus#Latin|palus]] [[wikt:en:difficilis#Latin|difficilis]] atque [[wikt:en:impeditus#Latin|impedita]] [[wikt:en:cingebat#Latin|cingebat]]
**これ<small>〔丘陵〕</small>を、ほぼすべての方角から、不便で通りにくい沼地が取り巻いていて、
*non [[wikt:en:latior#Latin|latior]] [[wikt:en:pes#Latin|pedibus]] [[wikt:en:quinquaginta#Latin|quinquaginta]].
**<small>(その沼地は)</small>50<u>[[w:ペース (長さ)|ペース]]</u>より幅広くなかった。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:1[[ガイウス・ユリウス・カエサルの著作/通貨・計量単位#ペース|ペース]]は約29.6cmで、50ペースは約15メートル弱。)</span>
:
; 丘の周囲を部族ごとに分かれて守備している
*<!--❷--><sup>(2)</sup> Hoc se [[wikt:en:collis#Latin|colle]] [[wikt:en:interruptus#Latin|interruptis]] [[wikt:en:pons#Latin|pontibus]]
**この丘陵において、橋梁を破却すると、
*Galli [[wikt:en:fiducia#Latin|fiducia]] loci [[wikt:en:continebant#Latin|continebant]]
**ガッリア人たちは、地勢を頼りに留まっていて、
*[[wikt:en:generatim#Latin|generatim]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:distributus#Latin|distributi]] in civitates
**<small>(軍勢を)</small>諸部族の種族ごとに分けて配置させて、
*omnia [[wikt:en:vadum#Latin|vada]] ac [[wikt:en:saltus#Etymology_2|saltus]] eius [[wikt:en:palus#Latin|paludis]] <u>certis custodiis</u> [[wikt:en:obtinebant#Latin|obtinebant]],
**その沼地の、すべての浅瀬や隘路を <u>一定の護衛兵たちによって</u> 占領していた。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部の [[wikt:en:certus#Latin|certis]] [[wikt:en:custodia#Latin|custodiis]] は β系写本の記述で、α系写本にはない。)</span>
*<u>sic</u> animo [[wikt:en:paratus#Latin|parati]] <u>ut</u>, si eam [[wikt:en:palus#Latin|paludem]] Romani [[wikt:en:perrumpo#Latin|perrumpere]] [[wikt:en:conarentur#Latin|conarentur]], [[wikt:en:haesitans#Latin|haesitantes]] [[wikt:en:premerent#Latin|premerent]] ex loco [[wikt:en:superior#Latin|superiore]];
**もしローマ勢がその沼地を強行突破せんと試みたならば、ぐずぐずしている者らを高地から圧倒する心積もりであった。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:sic#Latin|sīc]] ~, [[wikt:en:ut#Latin|ut]] ・・・「…であるように~である」)</span>
:
; 両軍は互角か?
*<!--❸--><sup>(3)</sup> ut, qui [[wikt:en:propinquitas#Latin|propinquitatem]] loci [[wikt:en:videret#Latin|videret]],
**<small>(両軍の)</small>陣地が近接していることを見た者は、
*[[wikt:en:paratus#Latin|paratos]] prope [[wikt:en:aequus#Latin|aequo]] <u>Marte</u> ad [[wikt:en:dimicandum#Latin|dimicandum]] [[wikt:en:existimaret#Latin|existimaret]],
**<small>(ガッリア勢がローマ勢に対して)</small>ほぼ互角の戦い<small>(の条件)</small>で闘うつもりでいると考えただろう。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、[[wikt:en:Mars#Proper_noun_22|Mars]]「戦争の神マールス」ではなく、<br> [[wikt:en:Mars#Noun_4|Mars]]「戦争、闘い」そのものを指す。)</span>
; ガッリア勢は不利なのに虚勢を張っているのか?
*qui [[wikt:en:iniquitas#Latin|iniquitatem]] [[wikt:en:condicio#Latin|condicionis]] [[wikt:en:perspiceret#Latin|perspiceret]],
**<small>(ガッリア勢の)</small>条件の不利なことを見通した者は、
*[[wikt:en:inanis#Latin|inani]] [[wikt:en:simulatio#Latin|simulatione]] sese [[wikt:en:ostentare#Latin|ostentare]] [[wikt:en:cognosceret#Latin|cognosceret]].
**<small>(ガッリア勢が)</small>虚栄の見せかけで己を誇示していることを、理解しただろう。
:
; カエサルが、至近距離の敵への攻撃にいきり立つ将兵らを教え諭す
*<!--❹--><sup>(4)</sup> [[wikt:en:indignans#Latin|Indignantes]] [[wikt:en:miles#Latin|milites]] Gaesar,
**カエサルは<small>(ガッリア勢の誇示に)</small>憤慨している兵士たちに、
*quod [[wikt:en:conspectus#Noun_2|conspectum]] suum hostes <u>perferre</u> [[wikt:en:possent#Latin|possent]] [[wikt:en:tantulus#Latin|tantulo]] [[wikt:en:spatium#Latin|spatio]] [[wikt:en:interiectus#Latin|interiecto]],
**──というのも、これほどのわずかな距離しか介在してないのに、敵勢が自分らを<small>(平然と)</small>見据えていられるためだが──
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、α系写本では [[wikt:en:perferre#Latin|perferre]] だが、β系写本では [[wikt:en:ferre#Latin|ferre]] となっている。)</span>
*et signum proelii [[wikt:en:exposcens#Latin|exposcentes]] [[wikt:en:edocet#Latin|edocet]],
**および戦闘の合図を熱心に求めている者たちに対して<small>(以下のように)</small>説く。
*[[wikt:en:quantus#Latin|quanto]] [[wikt:en:detrimentum#Latin|detrimento]] et [[wikt:en:quot#Latin|quot]] [[wikt:en:vir#Latin|virorum]] [[wikt:en:fortis#Latin|fortium]] [[wikt:en:mors#Latin|morte]] [[wikt:en:necesse#Adverb|necesse]] sit [[wikt:en:constare#Latin|constare]] [[wikt:en:victoria#Latin|victoriam]];
**勝利を確実にすることが、どれほどの損害と、どれほど多くの勇敢な<ruby><rb>兵士</rb><rp>(</rp><rt>ウィル</rt><rp>)</rp></ruby>たちの死を必要とするか、を。
: <!-- [[wikt:en:| -->
; 多くのローマ兵が死に瀕すれば、カエサル自身が戦争犯罪で弾劾されるだろう
*<!--❺--><sup>(5)</sup> quos cum <u>sic</u> [[wikt:en:animus#Latin|animo]] [[wikt:en:paratus#Latin|paratos]] [[wikt:en:videat#Latin|videat]], <u>ut</u> [[wikt:en:nullus#Determiner|nullum]] pro sua [[wikt:en:laus#Latin|laude]] [[wikt:en:periculum#Latin|periculum]] [[wikt:en:recusent#Latin|recusent]],
**彼ら<small>〔兵士たち〕</small>が己の賞賛のためにいかなる危険をも辞さない心積もりであると<small>(カエサルは)</small>見て取ったので、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:sic#Latin|sīc]] ~, [[wikt:en:ut#Latin|ut]] ・・・「…であるように~である」)</span>
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:pro sua laude 「自らの賞賛のために」は、「カエサルの賞賛のために」と解することもできる。<br> しかし、共和制国家に忠誠を誓っているはずの兵士らが、カエサル個人のために命を投げ出そうとする記述は、<br> 野心家カエサルが軍隊を私兵化しようとしている野望をさらけ出すことになり、政敵たちを利することになる。)</span>
*[[wikt:en:summus#Latin|summae]] se [[wikt:en:iniquitas#Latin|iniquitatis]] [[wikt:en:condemnari#Latin|condemnari]] [[wikt:en:debere#Latin|debere]], [[wikt:en:nisi#Conjunction|nisi]] eorum [[wikt:en:vita#Latin|vitam]] sua [[wikt:en:salus#Latin|salute]] [[wikt:en:habeat#Latin|habeat]] [[wikt:en:carior#Latin|cariorem]].
**<small></small>彼ら<small>〔兵士〕</small>の生命を己<small>〔カエサル〕</small>の安全より貴重と思わない限り、自分<small>〔カエサル〕</small>は極度の不正のために告発されるに違いない。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:すでにサビーヌスら多くのローマ市民が戦死しており、ここでさらに多くのローマ市民を死なせることは、<br> カエサルから軍隊を取り上げることを主張していた政敵たちから厳しく糾弾されることになったであろう。)</span>
: <!-- [[wikt:en:| -->
*<!--❻--><sup>(6)</sup> Sic [[wikt:en:miles#Latin|milites]] [[wikt:en:consolatus#Latin|consolatus]]
**<small>(カエサルは)</small>このように兵士たちを<ruby><rb>宥</rb><rp>(</rp><rt>なだ</rt><rp>)</rp></ruby>めて、
*eodem die [[wikt:en:reducit#Latin|reducit]] in castra
**同日に陣営の中に連れ戻して、
*[[wikt:en:reliquus#Latin|reliqua]]<nowiki>que</nowiki> quae ad [[wikt:en:oppugnatio#Latin|oppugnationem]] <u>[[wikt:en:pertinebant#Latin|pertinebant]] [[wikt:en:oppidum#Latin|oppidi]]</u> [[wikt:en:administrare#Latin|administrare]] [[wikt:en:instituit#Latin|instituit]].
**城塞都市<small>〔アウァーリクム〕</small>の攻略に関わっているほかのことに従事することを決めた。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、χ系・B・M・S写本では pertinebant oppidi の語順だが、<br> L・N・β系写本では oppidi pertinebant の語順となっている。)</span>
<!--
<span style="color:#009900;"></span>
<small></small>
**:<span style="color:#009900;">(訳注:
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:
-->
===20節===
*<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/20節]] {{進捗|00%|2026-05-04}}</span>
;ウェルキンゲトリークスが味方に弁明し、捕虜に問い質す
:
*<!--❶--><sup>(1)</sup> [[wikt:en:Vercingetorix#Latin|Vercingetorix]], cum ad suos [[wikt:en:redisset#Latin|redisset]], [[wikt:en:proditio#Latin|proditionis]] [[wikt:en:insimulatus#Latin|insimulatus]],
**[[w:ウェルキンゲトリクス|ウェルキンゲトリークス]]は、味方のもとに戻った際に、<small>(以下のことで)</small>裏切りだと非難されていた。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:以下、[[wikt:en:quod#Conjunction|quod]] ~ で箇条書き。)</span>
*quod [[wikt:en:castra#Latin|castra]] [[wikt:en:propius#Latin|propius]] [[wikt:en:Romani#Latin|Romanos]] [[wikt:en:movisset#Latin|movisset]],
**陣営をローマ人たちのより近くに移動させていたこと、
*quod cum omni [[wikt:en:equitatus#Noun|equitatu]] [[wikt:en:discessisset#Latin|discessisset]],
**全[[w:騎兵|騎兵隊]]とともに<small>(陣営を)</small>離れていたこと、
*quod sine [[wikt:en:imperium#Latin|imperio]] [[wikt:en:tantus#Latin|tantas]] [[wikt:en:copiae#Latin|copias]] [[wikt:en:reliquisset#Latin|reliquisset]],
**司令権<small>(を持つ者)</small>なしに、これほど多くの軍勢を置き去りにしていたこと、
*quod eius [[wikt:en:discessus#Noun|discessu]] [[wikt:en:Romani#Latin|Romani]] [[wikt:en:tantus#Latin|tanta]] [[wikt:en:opportunitas#Latin|opportunitate]] et [[wikt:en:celeritas#Latin|celeritate]] [[wikt:en:venissent#Latin|venissent]];
**彼<small>〔ウェルキンゲトリークス〕</small>の退去によりローマ人がこれほどの好機とこれほどの迅速さでやって来ていたこと、である。
:
*<!--❷--><sup>(2)</sup> non haec omnia [[wikt:en:fortuito#Latin|fortuito]] aut sine [[wikt:en:consilium#Latin|consilio]] [[wikt:en:accido#Etymology_1|accidere]] [[wikt:en:potuisse#Latin|potuisse]];
**──これらすべてが偶然に、あるいは謀りごとなしに起こることはあり得なかったのだ。
*[[wikt:en:regnum#Latin|regnum]] illum Galliae <u>malle</u> Caesaris [[wikt:en:concessus#Noun|concessu]] <u>quam</u> ipsorum habere [[wikt:en:beneficium#Latin|beneficio]]
**彼<small>〔ウェルキンゲトリークス〕</small>は<small>(ガッリア人)</small>自身の厚遇を得ることよりもむしろカエサルの許しにより[[w:ガリア|ガッリア]]の王権<small>(を持つこと)</small>を好んでいるのだ。──
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:malle#Latin|malle]] ~ quam …「…よりも、むしろ~を好む(選ぶ)」)</span>
**:<span style="color:#009900;">(訳注:ウェルキンゲトリークスが王権を望むあまり、同盟部族の生命をカエサルに売り渡したということである。)</span>
[[画像:Vercingetorix_stater_n2_CdM_alternate.jpg|thumb|right|250px|[[w:ウェルキンゲトリクス|ウェルキンゲトリークス]]の横顔が刻まれたガッリアの金貨(パリの[[w:ビブリオテーク・ナショナル|仏国立図書館]]貨幣部蔵)]]
:
; ━━ウェルキンゲトリークスの弁明が始まる━━
*<!--❸--><sup>(3)</sup> [[wikt:en:talis#Latin|tali]] [[wikt:en:modus#Latin|modo]] [[wikt:en:accusatus#Latin|accusatus]]
**こんな風に非難されて、
*ad haec [[wikt:en:respondit#Latin|respondit]]:
**<small>(ウェルキンゲトリークスは)</small>これらのことへ答えた。
*Quod [[wikt:en:castra#Latin|castra]] [[wikt:en:movisset#Latin|movisset]],
**陣営を移動させていたことは、
*[[wikt:en:factus#Latin|factum]] [[wikt:en:inopia#Latin|inopia]] [[wikt:en:pabulum#Latin|pabuli]],
**[[w:糧秣|糧秣]]の欠乏によりなされたのであり、
*etiam ipsis [[wikt:en:hortans#Latin|hortantibus]];
**<small>(ガッリア人たち)</small>自身が熱心に勧めることさえしているのだ。
*quod [[wikt:en:propius#Latin|propius]] [[wikt:en:Romani#Latin|Romanos]] [[wikt:en:accessisset#Latin|accessisset]],
**ローマ人たちのより近くに近寄っていたことは、
*[[wikt:en:persuasus#Latin|persuasum]] loci [[wikt:en:opportunitas#Latin|opportunitate]], qui se <u>ipsum</u> [[wikt:en:munitio#Latin|munitione]] [[wikt:en:defenderet#Latin|defenderet]];
**<small>(移動先の丘陵が)</small>それ自体を<small>(沼地という天然の)</small>要害により守っているという地の利に納得させられたのだ。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:上記の se <u>ipsum</u> munitione defenderet 「そのものを防御物によって守る」は主要写本 ω の記述で、<br>''[[ガリア戦記/注解編/写本と校訂版#Bentley,_Thomas|Th. Bentley]]'' は se <u>ipse sine</u> munitione defenderet 「そのものが防御物なしで守る」と修正提案している。)</span>
:
; 騎兵は、湿地帯での任務に適していない
*<!--❹--><sup>(4)</sup> [[wikt:en:eques#Latin|equitum]] vero [[wikt:en:opera#Latin|operam]]
**騎兵たちの働きはまさに、
*neque in loco [[wikt:en:paluster#Latin|palustri]] [[wikt:en:desiderari#Latin|desiderari]] [[wikt:en:debuisse#Latin|debuisse]]
**沼沢地において望まれるべきものではなかったし、
**:<span style="color:#009900;">(訳注:湿地・沼地では、ぬかるみに馬の足が取られるため、<br> 騎兵の長所である機動力が著しく低下し、<br> 速さを活かした偵察・突撃・迂回・追撃などがし難くなる。)</span>
*et [[wikt:en:illic#Adverb|illic]] fuisse [[wikt:en:utilis#Latin|utilem]], quo sint [[wikt:en:profectus#Participle_2|profecti]].
**<small>(騎兵たちが)</small>発って行ったところにおいては有効だったのだ。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[#16節|16節]]冒頭の説明によれば、<br> ウェルキンゲトリークスが最初に宿営した場所は、<br> アウァーリクムから16マイル離れ、沼地や森林に守られていた。<br> [[#19節|19節]]では、より近い、沼地に囲まれたゆるやかな丘陵に移動したという。<br> この移動前後の地勢の優劣を、カエサルは必ずしも明瞭に説明していない。)</span>
:
; 兵は拙速を尊ぶ
*<!--❺--><sup>(5)</sup> [[wikt:en:summa#Latin|Summam]] [[wikt:en:imperium#Latin|imperii]]
**<small>(軍勢の)</small>最高司令権は、
*se [[wikt:en:consulto#Adverb|consulto]] [[wikt:en:nullus#Latin|nulli]] [[wikt:en:discedens#Latin|discedentem]] [[wikt:en:tradidisse#Latin|tradidisse]],
**<small>(ウェルキンゲトリークス)</small>自らが意図的に、立ち去るに当たって、誰にも委託しなかった。
*[[wikt:en:ne#Latin|ne]] is [[wikt:en:multitudo#Latin|multitudinis]] [[wikt:en:studium#Latin|studio]] ad [[wikt:en:dimicandus#Latin|dimicandum]] [[wikt:en:impelleretur#Latin|impelleretur]];
**その者が大勢の熱意によって<small>(ローマ人と)</small>闘うことに駆り立てられないように、である。
*cui rei <u>propter animi [[wikt:en:mollities#Latin|mollitiem]]</u> [[wikt:en:studere#Latin|studere]] omnes [[wikt:en:videret#Latin|videret]],
**その事<small>〔闘って決着を付けること〕</small>を、<u>心の柔弱さのゆえに</u>、皆が求めたがっている。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:「心の柔弱さのゆえに、闘いがしたくなる」というのは、<br> 一見すると奇妙に感じられるが、ここでの柔弱さ([[wikt:en:mollities#Latin|mollities]])とは、<br> 長期の攻囲戦の労苦や疲弊に持ちこたえる忍耐力のなさを指し、<br> 長い苦難から逃避するために早期決戦を志向する心理を意味すると考えられる。)</span>
*quod [[wikt:en:diutius#Latin|diutius]] [[wikt:en:labor#Latin|laborem]] ferre non [[wikt:en:possent#Latin|possent]].
**──というのは、<small>(兵は)</small>より長く<small>(攻囲戦の)</small>労苦に耐えることができないからだ──。
**:<span style="color:#009900;"> (訳注:[[w:孫子 (書物)|孫子]]に曰く「兵は拙速を聞くも、未だ巧の久しきを<ruby><rb>睹</rb><rp>(</rp><rt>み</rt><rp>)</rp></ruby>ざるなり」<ref>[[wikt:en:故に兵は拙速を聞くも、未だ巧の久しきを睹ざるなり|故に兵は拙速を聞くも、未だ巧の久しきを睹ざるなり]]
「戦争というものは、拙劣に短期決戦を挑んだ事例は聞くが、巧妙に長期戦を続けた事例は聞かない」の意。長い戦争は人々を消耗させ、疲弊させてしまう。</ref>)</span>
:
; ローマ人は、闘わずに退却したではないか
*<!--❻--><sup>(6)</sup> Romani si [[wikt:en:casu#Latin|casu]] [[wikt:en:intervenerint#Latin|intervenerint]], [[wikt:en:fortuna#Latin|fortunae]],
**もしローマ人たちが偶然に現われたのならば、命運に<small>(感謝するべきであり)</small>、
*si [[wikt:en:alicuius#Latin|alicuius]] [[wikt:en:indicium#Latin|indicio]] [[wikt:en:vocatus#Latin|vocati]], huic [[wikt:en:habendus#Latin|habendam]] [[wikt:en:gratia#Latin|gratiam]],
**もし<small>(ローマ人たちが)</small>何者かの申し立てに呼ばれて来たのならば、その者に感謝するべきだ。
*quod <u>et</u> [[wikt:en:paucitas#Latin|paucitatem]] eorum ex loco [[wikt:en:superior#Latin|superiore]] [[wikt:en:cognosco#Latin|cognoscere]]
**──というのは、より高い位置から彼ら<small>〔ローマ人〕</small>の少なさを知ることも、
*<u>et</u> [[wikt:en:virtus#Latin|virtutem]] [[wikt:en:despicio#Latin|despicere]] [[wikt:en:potuerint#Latin|potuerint]],
**<small>(ローマ人の)</small>武勇とやらを見下すこともできたのだから。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:et ~ et …「~も…も」)</span>
*qui [[wikt:en:dimico#Latin|dimicare]] non [[wikt:en:ausus#Participle|ausi]]
**彼ら<small>〔ローマ人〕</small>は闘うことをあえてせずに、
*[[wikt:en:turpiter#Latin|turpiter]] se in castra [[wikt:en:receperint#Latin|receperint]].
**見苦しくも陣営に退却したのだ──。
:
; ガッリア人が勝つのだから、カエサルに寝返るはずがない
*<!--❼--><sup>(7)</sup> [[wikt:en:imperium#Latin|Imperium]] se <u>ab</u> Caesare per [[wikt:en:proditio#Latin|proditionem]] [[wikt:en:nullus#Latin|nullum]] [[wikt:en:desidero#Latin|desiderare]],
**自分<small>〔ウェルキンゲトリークス〕</small>は、カエサルから裏切りを通じて、どのような司令権も望んではいない。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:上の (2) 項では、味方のガッリア人たちは、ウェルキンゲトリークスが<br> カエサルにより [[wikt:en:regnum#Latin|regnum]](王権、支配権)を得ようとしていると非難したのに対し、<br> 彼は [[wikt:en:imperium#Latin|imperium]](軍隊司令権、または支配権)という言葉を巧妙に引きずって答えている。<br> もちろん、言葉を変えたのは、筆者カエサル自身であろう。)</span>
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:ab はα系写本の記述で、β系写本では a となっている。)</span>
*quod habere [[wikt:en:victoria#Latin|victoria]] [[wikt:en:posset#Latin|posset]],
**<small>(支配権は、ローマ人に対する)</small>勝利によって得られるものであり、
*quae iam esset sibi atque omnibus [[wikt:en:Galli#Latin|Gallis]] [[wikt:en:exploratus#Latin|explorata]];
**<small>(勝利は)</small>もはや自分とすべてのガッリア人にとって確実なものとされているのだ。
*quin etiam ipsis <u>remittere</u>,
**いやそればかりか<small>(以下の様であれば、ガッリア人たち)</small>自身に<small>(司令官職を)</small>返還しているだろう。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部の [[wikt:en:remitto#Latin|remittere]] は、写本Sの記述および ''[[ガリア戦記/注解編/写本と校訂版#Stephanus_(Estienne)|Stephanus]]'' や ''[[ガリア戦記/注解編/写本と校訂版#Vascosanus|Vascosanus]]'' による修正提案で、<br> β系・χ系写本・写本B・M・L・N では [[wikt:en:remitteret#Latin|remitteret]] となっている。)</span>
*si sibi <u>magis</u> [[wikt:en:honor#Latin|honorem]] [[wikt:en:tribuo#Latin|tribuere]], <u>quam</u> ab se [[wikt:en:salus#Latin|salutem]] [[wikt:en:accipio#Latin|accipere]] [[wikt:en:videantur#Latin|videantur]].
**もし<small>(ガッリア人が)</small>自分から安全を受け取っているよりも、むしろ顕職を自分に授けていると思っているのならば、だが。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:magis#Latin|magis]] ~, quam …「…というよりは、むしろ~」)</span>
:
; 捕虜のローマ人たちに訊いてみなさい
*<!--❽--><sup>(8)</sup> <!--▲直接話法--><span style="background-color:#e8e8ff;"> <span style="color:#009900;">«</span> Haec ut [[wikt:en:intellegatis#Latin|intellegatis]], <span style="color:#009900;">»</span> </span> [[wikt:en:inquit#Latin|inquit]], <!--▲直接話法--><span style="background-color:#e8e8ff;"> <span style="color:#009900;">«</span> a me [[wikt:en:sincere#Latin|sincere]] [[wikt:en:pronuntiari#Latin|pronuntiari]], [[wikt:en:audite#Latin|audite]] [[wikt:en:Romanus#Adjective|Romanos]] [[wikt:en:miles#Latin|milites]]. <span style="color:#009900;">»</span> </span>
**「これらは諸君が理解しているように、私により率直に示された。ローマ兵たちに聞いてみよ」と言った。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:<!--▲直接話法--><span style="background-color:#e8e8ff;"> <span style="color:#009900;">«</span> ~ <span style="color:#009900;">»</span> </span> の箇所は、直接話法で記されている。)</span>
:
*<!--❾--><sup>(9)</sup> [[wikt:en:producit#Latin|Producit]] [[wikt:en:servus#Latin|servos]], quos in [[wikt:en:pabulatio#Latin|pabulatione]] paucis ante diebus [[wikt:en:exceperat#Latin|exceperat]] et [[wikt:en:fames#Latin|fame]] [[wikt:en:vinculum#Latin|vinculis]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:excruciaverat#Latin|excruciaverat]].
**数日前に糧秣徴発しているのを<small>(彼が)</small>ひっ捕らえて、飢えと鎖で拷問していたところの奴隷たちを引き出す。
**:<span style="color:#009900;">(訳注:[[wikt:en:calo#Noun_5|cālō]] カーロー(軍属奴隷)と呼ばれる輜重や陣営を管理する奴隷たちのことであろう。)</span>
:
*<!--❿--><sup>(10)</sup> Hi iam ante [[wikt:en:edoctus#Latin|edocti]], quae [[wikt:en:interrogatus#Latin|interrogati]] [[wikt:en:pronuntiarent#Latin|pronuntiarent]],
**彼ら<small>〔奴隷〕</small>は、すでに前もって<small>(ガッリア勢から)</small>訊問された際に語ることを<small>(ローマ人から)</small>教え込まれており、
**:<span style="color:#009900;">(訳注:カエサルは奴隷たちが誰に教え込まれたのか明記していないため、<br> ウェルキンゲトリークスに教え込まれたと訳している場合もある。)</span>
*[[wikt:en:miles#Latin|milites]] se esse [[wikt:en:legionarius#Latin|legionarios]] [[wikt:en:dicunt#Latin|dicunt]];
**自分たちは[[w:軍団兵|軍団兵]]であると言った。
**:<span style="color:#009900;">(訳注:糧秣徴発に出かけていた者は、たとえ軍団兵でも軽装であったであろうが、<br> 奴隷たちは、もともと戦争で捕虜になったガッリア人たち等であったと考えられるので、<br> 地中海人種のローマ人とは容易に見分けが付きそうなものではある。)</span>
*[[wikt:en:fames#Latin|fame]] <u>et</u> [[wikt:en:inopia#Noun_2|inopia]] [[wikt:en:adductus#Latin|adductos]] [[wikt:en:clam#Latin|clam]] ex castris [[wikt:en:exisse#Latin|exisse]], si [[wikt:en:aliquis#Latin|quid]] [[wikt:en:frumentum#Latin|frumenti]] aut [[wikt:en:pecus#Latin|pecoris]] in agris [[wikt:en:reperio#Latin|reperire]] [[wikt:en:possent#Latin|possent]];
**<small>(奴隷たち曰く)</small>飢えと欠乏に動かされて、何か穀物または家畜が野に見出せないかと、ひそかに陣営から抜け出した。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:et はα系写本の記述で、β系写本では atque となっている。)</span>
:
*<!--⓫--><sup>(11)</sup> [[wikt:en:similis#Latin|simili]] omnem [[wikt:en:exercitus#Noun|exercitum]] [[wikt:en:inopia#Noun_2|inopia]] [[wikt:en:premi#Latin|premi]],
**<small>(ローマ人の)</small>全軍隊が同様の欠乏に悩まされて、
*<u>nec</u> iam [[wikt:en:vis#Latin|vires]] [[wikt:en:sufficio#Latin|sufficere]] [[wikt:en:quisquam#Latin|cuiusquam]] <u>nec</u> ferre [[wikt:en:opus#Latin|operis]] [[wikt:en:labor#Latin|laborem]] posse;
**もはや<small>(兵士の)</small>誰もが十分な能力がなく、<small>(城攻めの)</small>作業の労苦に耐えることができない。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:nec ~ nec …「~でもなく、…でもない」)</span>
*itaque [[wikt:en:statuisse#Latin|statuisse]] [[wikt:en:imperator#Latin|imperatorem]], si [[wikt:en:nihil#Latin|nihil]] in [[wikt:en:oppugnatio#Latin|oppugnatione]] oppidi <u>profecissent</u>, [[wikt:en:triduum#Latin|triduo]] [[wikt:en:exercitus#Noun|exercitum]] [[wikt:en:deduco#Latin|deducere]].
**こうして将軍<small>〔カエサル〕</small>は、もし城塞都市の攻略において何ら得られないならば、3日間で軍隊を連れ帰ると決めた。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、写本S・L・Nでは [[wikt:en:profecissent#Latin|profecissent]]<sub> (3人称・<u>複数</u>・過去完了・接続法)</sub> だが、<br> β系写本では [[wikt:en:profecisset#Latin|profecisset]]<sub> (3人称・<u>単数</u>・過去完了・接続法)</sub> となっており、<br> χ系および写本B・Mでは proficissent という綴りになっている。)</span>
: <!-- [[wikt:en:| -->
*<!--⓬--><sup>(12)</sup> <!--▲直接話法--><span style="background-color:#e8e8ff;"> <span style="color:#009900;">«</span> Haec, <span style="color:#009900;">»</span> </span> [[wikt:en:inquit#Latin|inquit]], <!--▲直接話法--><span style="background-color:#e8e8ff;"> <span style="color:#009900;">«</span> a me, <span style="color:#009900;">»</span> </span> [[wikt:en:Vercingetorix#Latin|Vercingetorix]],
**「これぞ」「私によって」とウェルキンゲトリークスは言った。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:以下、<!--▲直接話法--><span style="background-color:#e8e8ff;"> <span style="color:#009900;">«</span> ~ <span style="color:#009900;">»</span> </span> の箇所は、直接話法で記されている。)</span>
*<!--▲直接話法--><span style="background-color:#e8e8ff;"> <span style="color:#009900;">«</span> [[wikt:en:beneficium#Latin|beneficia]] [[wikt:en:habetis#Latin|habetis]], quem [[wikt:en:proditio#Latin|proditionis]] [[wikt:en:insimulatis#Verb|insimulatis]];
**「裏切りだと諸君が糾弾している<small>(私という)</small>者のおかげで得ているのだ。
*<!--➡直接話法--><span style="background-color:#e8e8ff;"> cuius [[wikt:en:opera#Latin|opera]] sine [[wikt:en:vester#Latin|vestro]] [[wikt:en:sanguis#Latin|sanguine]]
**その<small>(私という)</small>者の尽力により、諸君らの流血なしに、
*<!--➡直接話法--><span style="background-color:#e8e8ff;"> tantum [[wikt:en:exercitus#Noun|exercitum]] [[wikt:en:victor#Latin|victorem]] [[wikt:en:fames#Latin|fame]] <u>paene</u> [[wikt:en:consumptus#Latin|consumptum]] [[wikt:en:videtis#Latin|videtis]];
**これほどの軍隊の勝利者<small>〔ローマ人〕</small>を飢えにより、ほとんど滅ぼしたのを諸君は見ているのだ。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:paene は β系写本の記述で、α系写本にはない。)</span>
*<!--➡直接話法--><span style="background-color:#e8e8ff;"> quem [[wikt:en:turpiter#Latin|turpiter]] se ex <u>hac</u> fuga [[wikt:en:recipiens#Latin|recipientem]]
**彼ら<small>〔ローマ人〕</small>が見苦しくもこのような逃亡から退却したところを、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:hac は β系写本の記述で、α系写本にはない。)</span>
*<!--➡直接話法--><span style="background-color:#e8e8ff;"> ne [[wikt:en:aliqua#Pronoun|qua]] [[wikt:en:civitas#Latin|civitas]] suis finibus [[wikt:en:recipiat#Latin|recipiat]],
**<small>(それらの退却したローマ人を)</small>どの部族も自らの領土に受け入れないように、
*<!--➡直接話法--><span style="background-color:#e8e8ff;"> a me [[wikt:en:provisus#Latin|provisum]] est. <span style="color:#009900;">»</span> </span>
**私<small>〔ウェルキンゲトリークス〕</small>により、手配された。」
<!--
<span style="color:#009900;"></span>
<small></small>
**:<span style="color:#009900;">(訳注:
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:
-->
===21節===
*<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/21節]] {{進捗|00%|2026-05-10}}</span>
;ウェルキンゲトリークスの誠心とアウァーリクムの重要性を確認
:
*<!--❶--><sup>(1)</sup> [[wikt:en:conclamat#Latin|Conclamat]] omnis [[wikt:en:multitudo#Latin|multitudo]]
**群集すべてが雄叫びを上げて、
*et suo [[wikt:en:mos#Latin|more]] [[wikt:en:arma#Latin|armis]] [[wikt:en:concrepat#Latin|concrepat]],
**自分たちの慣習で武具を打ち鳴らす。
*quod facere in eo [[wikt:en:consuerunt#Verb_2|consuerunt]], cuius [[wikt:en:oratio#Latin|orationem]] [[wikt:en:adprobant#Latin|adprobant]];
**<small>(演説した)</small>その者の雄弁に賛同したら、その者に対してそれをすることが常であったのだ。
*summum esse [[wikt:en:Vercingetorix#Latin|Vercingetorigem]] [[wikt:en:dux#Latin|ducem]],
**[[w:ウェルキンゲトリクス|ウェルキンゲトリークス]]は最高の将帥であり、
*<u>nec</u> de eius [[wikt:en:fides#Latin|fide]] [[wikt:en:dubitandus#Latin|dubitandum]],
**彼の信義については疑念を抱くべきではなく、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:nec#Latin|nec]] ~, nec …「~でもないし、…でもない」)</span>
*<u>nec</u> [[wikt:en:maior#Latin|maiore]] [[wikt:en:ratio#Latin|ratione]] bellum [[wikt:en:administrari#Latin|administrari]] posse.
**これ以上の作戦で戦争を指導することはできない<small>(と、叫んで武具を打ち鳴らす)</small>。
:
*<!--❷--><sup>(2)</sup> [[wikt:en:statuunt#Latin|Statuunt]], ut decem<sub> (X)</sub> milia hominum [[wikt:en:delectus#Latin|delecta]] ex omnibus [[wikt:en:copiae#Latin|copiis]] in oppidum <u>mittantur</u>,
**<small>(彼らは)</small>すべての軍勢から選り抜かれた兵員1万を<small>(アウァーリクムの)</small>[[w:オッピドゥム|城塞都市]]の中に派遣すると決定する。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、α系写本では [[wikt:en:mittantur#Latin|mittantur]] だが、<br> β系写本では [[wikt:en:submittantur#Latin|submittantur]] となっている。)</span>
:
*<!--❸--><sup>(3)</sup> nec [[wikt:en:solus#Latin|solis]] [[wikt:en:Bituriges#Latin|Biturigibus]] [[wikt:en:communis#Latin|communem]] [[wikt:en:salus#Latin|salutem]] [[wikt:en:committendus#Latin|committendam]] [[wikt:en:censent#Latin|censent]],
**<small>(ガッリア)</small>共通の安全をビトゥリゲース族だけに託すべきではないと考える。
*quod <u>penes eos</u>, si id oppidum [[wikt:en:retinuissent#Latin|retinuissent]],
**というのは、<u>彼らのもとで</u>、その城塞都市を維持したか否かが、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、<br> 主要写本ω では [[wikt:en:penes#Latin|penes]] eos 「彼らのもとで」だが、<br> オックスフォード写本 ''[[ガリア戦記/注解編/写本と校訂版#Codex_Oxoniensis_Andino|codd. Andino. Oxon.]]'' や ''[[ガリア戦記/注解編/写本と校訂版#Aldus|Aldus]]'' は paene in eo 「ほぼそのことにおいて」としている。)</span>
*[[wikt:en:summa#Latin|summam]] victoriae [[wikt:en:consto#Latin|constare]] [[wikt:en:intellegebant#Latin|intellegebant]].
**勝利の天王山を確かなものにすること、を理解していたからである。
<!--
<span style="color:#009900;"></span>
<small></small>
**:<span style="color:#009900;">(訳注:
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:
-->
===22節===
*<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/22節]] {{進捗|00%|2026-06-01}}</span>
;アウァーリクムの籠城ガッリア勢が坑道戦で攻防に努める
:
*<!--❶--><sup>(1)</sup> [[wikt:en:singularis#Latin|Singulari]] [[wikt:en:miles#Latin|militum]] nostrorum [[wikt:en:virtus#Latin|virtuti]]
**我が方<small>〔ローマ勢〕</small>の兵士の卓越した武勇に、
*[[wikt:en:consilium#Latin|consilia]] [[wikt:en:quisque#Latin|cuiusque]] [[wikt:en:modus#Latin|modi]] [[wikt:en:Galli#Latin|Gallorum]] [[wikt:en:occurrebant#Latin|occurrebant]],
**<small>(敵勢は)</small>ガッリア人のあらゆる流儀の方策で抗戦していた。
*ut est summae [[wikt:en:genus#Latin|genus]] [[wikt:en:sollertia#Latin|sollertiae]]
**確かに<small>(ガッリア人は)</small>このうえなく器用な種族であり、
*atque ad [[wikt:en:omnia#Noun|omnia]] [[wikt:en:imitandus#Latin|imitanda]] et [[wikt:en:efficiendus#Latin|efficienda]], quae ab [[wikt:en:quisque#Latin|quoque]] [[wikt:en:traduntur#Latin|traduntur]], [[wikt:en:aptissimus#Latin|aptissimum]].
**誰かによって教えられることすべてを模倣すること、造り出すことにとても適しているのだ。
:
; 鉄鉱山の土地柄で、坑道戦を展開する
*<!--❷--><sup>(2)</sup> Nam <u>et</u> [[wikt:en:laqueus#Latin|laqueis]] [[wikt:en:falx#Latin|falces]] [[wikt:en:avertebant#Latin|avertebant]],
**すなわち、輪縄で<small>(ローマ勢の)</small>破城鎌をそらし、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:et ~, et …「~でもあり、…でもある」)</span>
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:破城鎌([[w:en:Falx|falx]])については、右図や[[ガリア戦記 第5巻#42節|第5巻42節]]を参照)</span>
[[画像:Falx_bgiu.png|thumb|right|250px|破城鎌([[w:en:Falx|falx]])の想像画(再掲)]]
[[画像:Doura_Europos_tunnel.jpg|thumb|right|250px|ローマ支配下の城砦跡に残る[[w:坑道|坑道]]の例(シリアの[[w:ドゥラ・エウロポス|ドゥラ・エウロポス]]遺跡)。[[w:サーサーン朝|サーサーン朝]]軍が[[w:坑道戦|坑道戦]]のために掘削したと考えられている。]]
*quas, cum [[wikt:en:destinaverant#Latin|destinaverant]],
**それを縛り付けておいてから、
*[[wikt:en:tormentum#Latin|tormentis]] [[wikt:en:introrsus#Latin|introrsus]] [[wikt:en:reducebant#Latin|reducebant]],
**巻揚げ機で<small>(城塞都市の)</small>内部に引き込んでいたし、
*<u>et</u> [[wikt:en:agger#Latin|aggerem]] [[wikt:en:cuniculus#Latin|cuniculis]] [[wikt:en:subtrahebant#Latin|subtrahebant]],
**<small>(ローマ勢の)</small><ruby><rb>[[w:アッゲル|土塁]]</rb><rp>(</rp><rt>アッゲル</rt><rp>)</rp></ruby> を[[w:坑道|坑道]]によって陥没させたりもした。
*<u>eo</u> [[wikt:en:scienter#Latin|scientius]]
**<small>(以下の理由により、彼らはそのことに)</small>より習熟しているのだ。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:eo#Pronoun_5|eō]] ~ [[wikt:en:quod#Conjunction|quod]] …「…という理由で~」)</span>
*<u>quod</u> apud eos magnae sunt [[wikt:en:ferraria#Latin|ferrariae]]
**──というのも、彼らのもとには多くの[[w:鉄鉱石|鉄鉱]]山があり、
*atque [[wikt:en:omnis#Latin|omne]] [[wikt:en:genus#Latin|genus]] [[wikt:en:cuniculus#Latin|cuniculorum]] [[wikt:en:notus#Latin|notum]]
**坑道のあらゆる類いが知られていて
*atque [[wikt:en:usitatus#Latin|usitatum]] est.
**慣れていただけに<small>(習熟しているのだ)</small>。──
:
; アウァーリクムの全周に防御のための櫓を建てる
*<!--❸--><sup>(3)</sup> [[wikt:en:totus#Latin|Totum]] autem [[wikt:en:murus#Latin|murum]] ex omni parte
**他方で、城壁の全体をあらゆる方向から、
*[[wikt:en:turris#Latin|turribus]] [[wikt:en:contabulaverant#Latin|contabulaverant]]
**<ruby><rb>[[w:攻城塔|攻城櫓]]</rb><rp>(</rp><rt>トゥッリス</rt><rp>)</rp></ruby>を<small>(何層にも)</small>構築しておいて、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:動詞 [[wikt:en:contabulo#Latin|contabulare]] は「板張りする」。[[内乱記_第2巻#9節|『内乱記』第2巻9節]]には [[wikt:en:contabulatio#Latin|contabulatio]]「床板張り」という単語が出て来る。)</span>
*atque has [[wikt:en:corium#Latin|coriis]] [[wikt:en:intexerant#Latin|intexerant]].
**これらを皮革で覆っていた。
:
*<!--❹--><sup>(4)</sup> Tum [[wikt:en:creber#Latin|crebris]] [[wikt:en:diurnus#Latin|diurnis]] [[wikt:en:nocturnus#Latin|nocturnis]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:eruptio#Latin|eruptionibus]]
**それから、たびたび昼間も夜間も出撃して、
*aut [[wikt:en:agger#Latin|aggeri]] [[wikt:en:ignis#Latin|ignem]] [[wikt:en:inferebant#Latin|inferebant]]
**あるいは土塁に火災を引き起こしたり、
*aut [[wikt:en:miles#Latin|milites]] [[wikt:en:occupatus#Latin|occupatos]] in [[wikt:en:opus#Latin|opere]] [[wikt:en:adoriebantur#Latin|adoriebantur]],
**あるいは工事に従事している<small>(ローマ人)</small>兵士たちを襲撃したりした。
[[画像:University_of_Queensland_Pitch_drop_experiment-white_bg.jpg|thumb|right|200px|<ruby><rb>[[w:ピッチ (樹脂)|樹脂]]</rb><rp>(</rp><rt>ピッチ</rt><rp>)</rp></ruby>の滴下実験の様子(豪州[[w:クイーンズランド大学|クイーンズランド大学]])。[[w:木材|木材]]を密閉加熱すると[[w:木炭|木炭]]が得られるが、その残り物から[[w:乾留液#木タール|木タール]]を[[w:蒸留|蒸留]]させた残り<ruby><rb>滓</rb><rp>(</rp><rt>かす</rt><rp>)</rp></ruby>がピッチである。樹木から得られるピッチは、黒色で[[w:粘度|粘っこく]]、高温で燃焼する。中世ヨーロッパでは城砦の防衛に使用され、城壁に近づく敵の上から熱したピッチを注いで焼死させたりしたという([[w:fr:Poix (matière)|fr:poix]])。]]
*et nostrarum [[wikt:en:turris#Latin|turrium]] [[wikt:en:altitudo#Latin|altitudinem]],
**我が方<small>〔ローマ勢〕</small>の[[w:攻城塔|攻城櫓]]の高さを、
*[[wikt:en:quantum#Latin|quantum]] has [[wikt:en:cotidianus#Latin|cotidianus]] agger [[wikt:en:expresserat#Latin|expresserat]],
**毎日のようにこれらを<small>(ローマ側の)</small>土塁が押し出した分だけ、
*[[wikt:en:commissus#Latin|commissis]] suarum [[wikt:en:turris#Latin|turrium]] [[wikt:en:malus#Noun_5|malis]] [[wikt:en:adaequabant#Latin|adaequabant]],
**自分たち<small>〔ガッリア勢〕</small>の櫓を、柱を組み立てることにより、<small>(ローマ側の櫓の高さと)</small>等しくしようとした。
:
*<!--❺--><sup>(5)</sup> et [[wikt:en:apertus#Latin|apertos]] [[wikt:en:cuniculus#Latin|cuniculos]]
**<small>(ローマ勢が掘削した)</small>坑道の露出したところを
*[[wikt:en:praeustus#Latin|praeusta]] et [[wikt:en:praeacutus#Latin|praeacuta]] [[wikt:en:materia#Latin|materia]]
**先端を焼いて尖らせた木材や、
*et [[wikt:en:pix#Latin|pice]] [[wikt:en:fervefactus#Latin|fervefacta]]
**熱した<ruby><rb>[[w:ピッチ (樹脂)|樹脂]]</rb><rp>(</rp><rt>ピッチ</rt><rp>)</rp></ruby>や、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:pix は<ruby><rb>[[w:歴青|瀝青]]</rb><rp>(</rp><rt>れきせい</rt><rp>)</rp></ruby>と訳されることもあるが、とくに[[w:ピッチ (樹脂)|ピッチ]]を指す<ref>[https://kotobank.jp/word/%E6%9C%A8%E3%81%9F%E3%83%BC%E3%82%8B-3173189 木タール] などを蒸留したあとに残る黒色の物質。</ref>。<br> [[w:歴青|瀝青]]は「ビチューメン」ともいい、ラテン語の [[wikt:en:bitumen#Latin|bitūmen]] に由来する。<br> [[w:ピッチ (樹脂)|ピッチ]]([[w:en:Pitch (resin)|Pitch]])は、ラテン語の [[wikt:en:pix#Latin|pix]] に由来する。)</span>
*et [[wikt:en:maximus#Latin|maximi]] [[wikt:en:pondus#Latin|ponderis]] [[wikt:en:saxum#Latin|saxis]] [[wikt:en:morabantur#Etymology_1|morabantur]]
**たいへんな重さの岩石で、<small>(ローマ勢の掘削を)</small>滞らせたり、
*[[wikt:en:moenia#Latin|moenibus]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:adpropinquo#Latin|adpropinquare]] [[wikt:en:prohibebant#Latin|prohibebant]].
**<small>(ローマ勢が)</small>城壁に接近することを<small>(ガッリア勢が)</small>妨げたりしていた。
<!--
<span style="color:#009900;"></span>
<small></small>
**:<span style="color:#009900;">(訳注:
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:
-->
===23節===
{{Commons|Category:Murus gallicus|Murus gallicus}}
*<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/23節]] {{進捗|00%|2026-06-14}}</span>
;ガッリア式城壁の構造
:
*<!--❶--><sup>(1)</sup> [[wikt:en:murus#Latin|Muri]] autem omnes [[wikt:en:Gallicus#Latin|Gallici]] hac fere [[wikt:en:forma#Latin|forma]] sunt.
**ところで、ガッリアの<ruby><rb>城壁</rb><rp>(</rp><rt>ムルス</rt><rp>)</rp></ruby>のすべては、ほぼ以下のような形態である。
:
; 木材を2ペースずつ等間隔で離して、ずっと並べていく
*<u>Trabes</u> [[wikt:en:derectus#Latin|derectae]] [[wikt:en:perpetuus#Latin|perpetuae]] <u>in longitudinem</u>
**<u><ruby><rb>木材</rb><rp>(</rp><rt>トラプス</rt><rp>)</rp></ruby></u>が<small>(城壁の)</small><u><ruby><rb>長手方向</rb><rp>(</rp><rt>ロンギトゥードー</rt><rp>)</rp></ruby></u>に、<small>(垂直に)</small>真っ直ぐに、ずっと続いて、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:trabs#Latin|trabes]] は、とくに梁のような水平材を指していると思われる。)</span>
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:in [[wikt:en:longitudo#Latin|longitudinem]] は、ここでは、城壁に沿った長手方向を指す。)</span>
[[画像:Murus gallicus de Lyon Fourvière - Maquette de Nicolas Hirsch - Service Archéologique de la Ville de Lyon - Détail structure.jpg|thumb|right|300px|ガッリア式城壁の[[w:ジオラマ|ジオラマ]](仏[[w:リヨン|リヨン市]]考古学局)。木材を約60cmの間隔で並べる。]]
*[[wikt:en:par#Latin|paribus]] [[wikt:en:intervallum#Latin|intervallis]], [[wikt:en:distans#Latin|distantes]] inter se [[wikt:en:binus#Latin|binos]] [[wikt:en:pes#Latin|pedes]],
**等間隔で、互いに2<u>ペース</u>ずつ離れて、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:1[[ガイウス・ユリウス・カエサルの著作/通貨・計量単位#ペース|ペース]]は約29.6cmで、2ペースは約60 cm弱。)</span>
*in [[wikt:en:solum#Latin|solo]] [[wikt:en:conlocantur#Latin|conlocantur]].
**<ruby><rb>地面</rb><rp>(</rp><rt>ソルム</rt><rp>)</rp></ruby>に配置される。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:右の画像を参照。)</span>
:
; 木材をつなぎ合わせ、土砂を埋めて、石材をかぶせる
[[画像:2018 Rheinisches Landesmuseum Trier, Keltischer Wehrmauer.jpg|thumb|right|300px|同じく城壁のジオラマ(独[[w:トリーア|トリーア市]])。]]
*<!--❷--><sup>(2)</sup> [[wikt:en:hae#Latin|Hae]] [[wikt:en:revinciuntur#Latin|revinciuntur]] [[wikt:en:introrsus#Latin|introrsus]]
**これら<small>〔木材〕</small>は、内側で緊結されて、
**:<span style="color:#009900;">(訳注:明瞭な説明ではなく、肝心な記述が欠落している。<br> 上記の2ペースずつ等間隔で並べられた平行な木材は、<br> 節末で述べられるような40ペースの長い木材によって<br> 井桁状に組み合わされて、鉄の釘で固定されたようである。<br> 右上と右のジオラマの画像を参照。)</span>
*et [[wikt:en:multus#Latin|multo]] [[wikt:en:agger#Latin|aggere]] [[wikt:en:vestiuntur#Latin|vestiuntur]];
**多くの<ruby><rb>土砂</rb><rp>(</rp><rt>アッゲル</rt><rp>)</rp></ruby>で覆われる。
*ea autem, quae [[wikt:en:diximus#Verb|diximus]], [[wikt:en:intervallum#Latin|intervalla]]
**さらに、前述した<small>(2ペースの)</small>間隔には、
*[[wikt:en:grandis#Latin|grandibus]] in [[wikt:en:frons#Latin:_forehead|fronte]] [[wikt:en:saxum#Latin|saxis]] <u>efferciuntur</u>.
**前面に大きな<ruby><rb>石塊</rb><rp>(</rp><rt>サクスム</rt><rp>)</rp></ruby>が詰め込まれる。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、ρ系写本・写本V では [[wikt:en:efferciuntur#Latin|efferciuntur]] と表記され、<br> α系写本・写本T では [[wikt:en:effarciuntur#Latin|effarciuntur]] と表記されるが、<br> [[w:母音弱化|母音弱化]]の語形である前者の方が、共和制末期のカエサルが用いたと考えられる。)</span>
[[画像:Keltenmauer.gif|thumb|right|280px|ガッリア式城壁の構成図(上が側面、中が上面、下が前面)。木材を水平な井桁状に並べて[[w:釘|釘]]で緊結し、土砂で覆って何層にも重ね、前面には石をはめ込む。井桁状の骨組によって[[w:破城槌|破城槌]]など横からの力(水平荷重)に耐えられるように工夫されている。]]
:
*<!--❸--><sup>(3)</sup> His [[wikt:en:conlocatus#Latin|conlocatis]] et [[wikt:en:coagmentatus#Latin|coagmentatis]]
**<u>これら</u>が配置されて結び合わされると、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:<u>これら</u> とは、上述の木材や石材のこと。)</span>
*alius [[wikt:en:insuper#Latin|insuper]] [[wikt:en:ordo#Latin|ordo]] [[wikt:en:additur#Latin|additur]],
**上に別の<ruby><rb>階層</rb><rp>(</rp><rt>オルドー</rt><rp>)</rp></ruby>が付け加えられる。
*ut idem illud [[wikt:en:intervallum#Latin|intervallum]] [[wikt:en:servetur#Latin|servetur]],
**その同じ<small>(2ペースの)</small>間隔が保たれて、
*neque inter se [[wikt:en:contingant#Latin|contingant]] [[wikt:en:trabs#Latin|trabes]],
**かつ<ruby><rb>木材</rb><rp>(</rp><rt>トラプス</rt><rp>)</rp></ruby>が互いに接触しないように、
**:<span style="color:#009900;">(訳注:上下の層の水平材どうしが接触しないように、<br> 互い違いに並べているようである。)</span>
*sed [[wikt:en:par#Latin|paribus]] [[wikt:en:intermissus#Latin|intermissae]] [[wikt:en:spatium#Latin|spatiis]] [[wikt:en:singulus#Latin|singulae]]
**けれども、等間隔で間をあけられたそれぞれ<small>(の木材)</small>は、
*[[wikt:en:singulus#Latin|singulis]] [[wikt:en:saxum#Latin|saxis]] [[wikt:en:interiectus#Latin|interiectis]]
**それぞれの<ruby><rb>石塊</rb><rp>(</rp><rt>サクスム</rt><rp>)</rp></ruby>が間に挟まれることによって、
*[[wikt:en:arte#Adverb|arte]] [[wikt:en:contineantur#Latin|contineantur]].
**緊密に連結される。
:
*<!--❹--><sup>(4)</sup> Sic [[wikt:en:deinceps#Latin|deinceps]] omne [[wikt:en:opus#Latin|opus]] [[wikt:en:contexitur#Latin|contexitur]], [[wikt:en:dum#Latin|dum]] [[wikt:en:iustus#Latin|iusta]] [[wikt:en:murus#Latin|muri]] [[wikt:en:altitudo#Latin|altitudo]] [[wikt:en:expleatur#Latin|expleatur]].
**このように、<ruby><rb>城壁</rb><rp>(</rp><rt>ムルス</rt><rp>)</rp></ruby>の十分な高さが満たされるまで、すべての<ruby><rb>工作物</rb><rp>(</rp><rt>オプス</rt><rp>)</rp></ruby>が続けて組み立てられる。
[[画像:Bibracte_murus_gallicus1.jpg|thumb|right|300px|ガッリア式城壁の[[w:ジオラマ|ジオラマ]](仏[[w:ビブラクテ|ビブラクテ]]遺跡のケルト文明博物館)。この構造形式はカエサルの記述から「[[w:ムルス・ガリクス|ムルス・ガリクス]](ガッリア壁)」と呼ばれるが、ガッリアに限らず、[[w:鉄器時代|鉄器時代]]末期すなわちBC1世紀頃の後期[[w:ラ・テーヌ文化|ラ・テーヌ文化]]が及んだ各地に遺構として残る。木材どうしを緊結するために数百トンもの[[w:鉄|鉄]]の[[w:釘|釘]]を用いているのが大きな特徴で、[[w:鉄#製錬|製鉄]]・[[w:鋳造|鋳造]]技術の発達を示す。]]
:
; ガッリア式城壁は、外観が見事で、城塞都市の防御にも有益
:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:以下、cum ~ tum … の構文「~だけでなく、また…でもある」。)</span>
*<!--❺--><sup>(5)</sup> Hoc <u>cum</u> in [[wikt:en:species#Latin|speciem]] [[wikt:en:varietas#Latin|varietatem]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:opus#Latin|opus]] [[wikt:en:deformis#Latin|deforme]] non est [[wikt:en:alternus#Latin|alternis]] [[wikt:en:trabs#Latin|trabibus]] ac [[wikt:en:saxum#Latin|saxis]],
**<ruby><rb>この</rb><rp>(</rp><rt>ホク</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>工作物</rb><rp>(</rp><rt>オプス</rt><rp>)</rp></ruby>は、互い違いの<ruby><rb>木材</rb><rp>(</rp><rt>トラプス</rt><rp>)</rp></ruby>と<ruby><rb>石塊</rb><rp>(</rp><rt>サクスム</rt><rp>)</rp></ruby>により、変化に富む外観において不格好でなく、
*quae [[wikt:en:rectus#Latin|rectis]] [[wikt:en:linea#Latin|lineis]] suos [[wikt:en:ordo#Latin|ordines]] [[wikt:en:servant#Latin|servant]],
**──それら<small>〔木材と石〕</small>は真っ直ぐな線により、その<ruby><rb>階層</rb><rp>(</rp><rt>オルドー</rt><rp>)</rp></ruby>を保っているのだが──
*<u>tum</u> ad [[wikt:en:utilitas#Latin|utilitatem]] et [[wikt:en:defensio#Latin|defensionem]] [[wikt:en:urbs#Latin|urbium]]
**同様に、都市の防御の有益性のためにも、
*summam [[wikt:en:habet#Latin|habet]] [[wikt:en:opportunitas#Latin|opportunitatem]],
**きわめて好都合となっている。
*quod et ab [[wikt:en:incendio#Latin|incendio]] [[wikt:en:lapis#Latin|lapis]] et ab [[wikt:en:aries#Latin|ariete]] [[wikt:en:materia#Latin|materia]] [[wikt:en:defendit#Latin|defendit]],
**──というのは、<ruby><rb>石材</rb><rp>(</rp><rt>ラピス</rt><rp>)</rp></ruby>が火災からも、<ruby><rb>材木</rb><rp>(</rp><rt>マーテリア</rt><rp>)</rp></ruby>が<ruby><rb>[[w:破城槌|破城槌]]</rb><rp>(</rp><rt>はじょうつい</rt><rp>)</rp></ruby>からも、防護しており、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:et ~ et …「~でもあり、…でもある」)</span>
*quae [[wikt:en:perpetuus#Latin|perpetuis]] [[wikt:en:trabs#Latin|trabibus]] [[wikt:en:pes#Latin|pedes]] [[wikt:en:quadragenus#Latin|quadragenos]] [[wikt:en:plerumque#Adverb|plerumque]] [[wikt:en:introrsus#Latin|introrsus]] [[wikt:en:revinctus#Latin|revincta]]
**それ<small>〔短手方向の材木〕</small>は、たいてい40<u>ペース</u>にわたって<small>(長手方向に)</small>続く<ruby><rb>木材</rb><rp>(</rp><rt>トラプス</rt><rp>)</rp></ruby>により内部で緊結されており、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:1[[ガイウス・ユリウス・カエサルの著作/通貨・計量単位#ペース|ペース]]は約29.6cmで、40ペースは約12メートル。)</span>
*neque [[wikt:en:perrumpi#Latin|perrumpi]] neque [[wikt:en:distrahi#Latin|distrahi]] potest.
**突破されることも、引きはがされることもできないからである。──
<!--
<span style="color:#009900;"></span>
<small></small>
**:<span style="color:#009900;">(訳注:
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:
-->
===24節===
[[画像:Avaricum_westpoint_july_2006.jpg|thumb|right|350px|[[w:アウァリクム包囲戦|アウァーリクム攻略戦]]の[[w:ジオラマ|ジオラマ]]<small>([[w:陸軍士官学校 (アメリカ合衆国)|米国陸軍士官学校]]博物館)</small>。ローマ軍の<ruby><rb>[[w:アッゲル|土塁]]</rb><rp>(</rp><rt>アッゲル</rt><rp>)</rp></ruby>は、城壁(奥)の手前に材木と土砂を積み重ねた構築物が築き上げられ、左右の土手道をそれぞれ4層の[[w:攻城塔|攻城櫓]]が城壁に迫る。土塁の周辺には<ruby><rb>[[w:ウィネア|工作小屋]]</rb><rp>(</rp><rt>ウィネア</rt><rp>)</rp></ruby>(vinea)を多数つないだ通路(坑道)が延びている。手前には2台の<ruby><rb>投射機</rb><rp>(</rp><rt>スコルピオ</rt><rp>)</rp></ruby>が見える。]]
*<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/24節]] {{進捗|00%|2026-06-15}}</span>
;ローマ勢が徹夜の土塁工事、籠城ガッリア勢の攻勢
:
; ローマ勢が、25日間で大がかりな攻城設備を構築する
*<!--❶--><sup>(1)</sup> His [[wikt:en:tot#Latin|tot]] rebus [[wikt:en:impeditus#Latin|impedita]] [[wikt:en:oppugnatio#Latin|oppugnatione]]
**これら多くの事情により攻囲が妨げられて、
*[[wikt:en:miles#Latin|milites]],
**兵士たちは、
*cum [[wikt:en:totus#Etymology_1|toto]] tempore <u>luto</u> [[wikt:en:frigus#Latin|frigore]] et [[wikt:en:adsiduus#Latin|adsiduis]] [[wikt:en:imber#Latin|imbribus]] <u>tardarentur</u>,
**常時、<ruby><rb><u>泥土</u></rb><rp>(</rp><rt>ルトゥム</rt><rp>)</rp></ruby>、寒さと絶え間ない<ruby><rb>雨嵐</rb><rp>(</rp><rt>イムベル</rt><rp>)</rp></ruby>によって遅らせられていたが、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部の [[wikt:en:lutum#Latin|luto]] は、β系写本の記述で、<br> α系写本にはない。)</span>
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部の二つ目は、<br> χ系・β系写本では [[wikt:en:tardarentur#Latin|tardarentur]] だが、<br> 写本B・M・Sでは traderentur、<br> 写本L・Nでは terrerentur などとなっている。)</span>
*tamen [[wikt:en:continens#Adjective|continenti]] [[wikt:en:labor#Latin|labore]] omnia haec [[wikt:en:superaverunt#Latin|superaverunt]]
**しかしながら、絶え間ない労働によってこれらすべてに打ち克って、
*et diebus XXV<small> ([[wikt:en:quinque#Latin|quinque]] et [[wikt:en:viginti#Latin|viginti]])</small>
**25日間で、
*[[wikt:en:agger#Latin|aggerem]] [[wikt:en:latus#Latin:_wide|latum]] [[wikt:en:pes#Latin|pedes]] CCCXXX<small> ([[wikt:en:trecenti#Latin|trecenti]] [[wikt:en:triginta#Latin|triginta]])</small>, [[wikt:en:altus#Latin|altum]] pedes LXXX<small> ([[wikt:en:octoginta#Latin|octoginta]])</small> [[wikt:en:exstruxerunt#Latin|exstruxerunt]].
**幅330<u>ペース</u>、高さ80<u>ペース</u>の<ruby><rb>[[w:アッゲル|土塁]]</rb><rp>(</rp><rt>アッゲル</rt><rp>)</rp></ruby>を築き上げた。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:1[[ガイウス・ユリウス・カエサルの著作/通貨・計量単位#ペース|ペース]]は約29.6cmで、幅330ペースは約98メートル。高さ80ペースは約24メートル。)</span>
:
; アウァーリクムに籠城するガッリア勢が、攻囲するローマ勢の土塁に夜襲をしかける
*<!--❷--><sup>(2)</sup> Cum is [[wikt:en:murus#Latin|murum]] hostium paene [[wikt:en:contingeret#Latin|contingeret]],
**それ<small>〔ローマ側の土塁〕</small>が敵の城壁にほとんど接しようとしていたとき、
*et Caesar ad [[wikt:en:opus#Latin|opus]] [[wikt:en:consuetudo#Latin|consuetudine]] [[wikt:en:excubaret#Latin|excubaret]]
**かつ、カエサルが習慣により作業のそばで寝ずの番をしていて、
*[[wikt:en:miles#Latin|milites]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:hortaretur#Latin|hortaretur]], ne [[wikt:en:aliquod#Latin|quod]] [[wikt:en:omnino#Latin|omnino]] [[wikt:en:tempus#Latin|tempus]] ab [[wikt:en:opus#Latin|opere]] [[wikt:en:intermitteretur#Latin|intermitteretur]],
**いかなる時も作業がまったく中断されないように、と兵士たちを励ましていたときに、
*paulo ante tertiam [[wikt:en:vigilia#Latin|vigiliam]]
**第三夜警時の少し前に、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:第三夜警時は、真夜中から日の出までの時間帯の前半。「未明」<br> [[古代ローマの不定時法#夜警時|#夜警時]] を参照。)</span>
*est [[wikt:en:animadversus#Participle|animadversum]] [[wikt:en:fumo#Latin|fumare]] [[wikt:en:agger#Latin|aggerem]],
**土塁に煙が上がっていることが気付かれた。
*quem [[wikt:en:cuniculus#Latin|cuniculo]] hostes [[wikt:en:succenderant#Latin|succenderant]];
**<small>(その土塁を)</small>[[w:坑道|坑道]]によって敵たちが焼き討ちしていたものである。
:
*<!--❸--><sup>(3)</sup> [[wikt:en:idem#Latin|eodem]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:tempus#Latin|tempore]]
**そして同時に、
*[[wikt:en:totus#Latin|toto]] [[wikt:en:murus#Latin|muro]] [[wikt:en:clamor#Latin|clamore]] [[wikt:en:sublatus#Latin:_raised|sublato]],
**<small>(アウァーリクムの)</small>城壁全体で雄叫びが上がって、
*duabus portis ab [[wikt:en:uterque#Latin|utroque]] [[wikt:en:latus#Latin:_side|latere]] [[wikt:en:turris#Latin|turrium]]
**二つの城門より、<small>(ローマ勢の)</small>[[w:攻城塔|攻城櫓]]の両方の側面から
*[[wikt:en:eruptio#Latin|eruptio]] [[wikt:en:fiebat#Latin|fiebat]].
**<small>(ガッリア勢による)</small>突撃がなされていた。
:
*<!--❹--><sup>(4)</sup> Alii [[wikt:en:fax#Latin|faces]] atque [[wikt:en:aridus#Latin|aridam]] <u>materiam</u> de [[wikt:en:murus#Latin|muro]] in [[wikt:en:agger#Latin|aggerem]] [[wikt:en:eminus#Latin|eminus]] [[wikt:en:iaciebant#Latin|iaciebant]],
**<small>(ガッリア勢の)</small>他の者たちは、<ruby><rb>[[w:たいまつ|松明]]</rb><rp>(</rp><rt>たいまつ</rt><rp>)</rp></ruby>および乾いた材木を、城壁から<small>(ローマ側の)</small>土塁に、遠くから投げ込んで、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、β系写本では [[wikt:en:materiam#Latin|materiam]] だが、<br> α系写本では [[wikt:en:materiem#Latin|materiem]] となっている。<br> 文法学者[[w:カエサレアのプリスキアヌス|プリスキアーヌス]]は、カエサルの文法書 "De Analogia" について materiam と引用している。)</span>
*[[wikt:en:pix#Latin|picem]] [[wikt:en:reliquus#Latin|reliquas]]<nowiki>que</nowiki> res, quibus [[wikt:en:ignis#Latin|ignis]] [[wikt:en:excitari#Latin|excitari]] potest, [[wikt:en:fundebant#Latin|fundebant]],
**<ruby><rb>[[w:ピッチ (樹脂)|樹脂]]</rb><rp>(</rp><rt>ピッチ</rt><rp>)</rp></ruby>や、火を燃え立たせられるほかのもの<small>〔可燃物〕</small>を注ぎ込んだ。
*ut, [[wikt:en:quo#Latin:_where|quo]] primum <u>curreretur</u> aut cui rei [[wikt:en:ferretur#Latin|ferretur]] [[wikt:en:auxilium#Latin|auxilium]],
**それで、まずどこに駆け付けるのか、あるいはどの事態に支援がなされるのか、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、α系写本では [[wikt:en:curreretur#Latin|curreretur]] だが、<br> β系写本では [[wikt:en:occurreretur#Latin|occurreretur]] となっている。)</span>
*vix [[wikt:en:ratio#Latin|ratio]] [[wikt:en:iniri#Latin|iniri]] posset.
**<small>(ローマ兵には)</small>ほとんど分別され得なかった。
:
*<!--❺--><sup>(5)</sup> Tamen, quod [[wikt:en:institutum#Latin|instituto]] Caesaris <u>semper duae</u> [[wikt:en:legio#Latin|legiones]] pro [[wikt:en:castra#Latin|castris]] [[wikt:en:excubabant#Latin|excubabant]]
**しかしながら、カエサルの定めにより常に2個[[w:ローマ軍団|軍団]]が陣営の前に寝ずの番をしていたので、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、α系写本の語順では semper duae だが、<br> β系写本の語順では duae semper となっている。)</span>
*[[wikt:en:plus#Latin|plures]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:partitus#Latin|partitis]] [[wikt:en:tempus#Latin|temporibus]] erant in [[wikt:en:opus#Latin|opere]],
**かつ、より多くの者たちが時間を割り当てられて作業していたので、
*celeriter [[wikt:en:factus#Latin|factum]] est,
**<small>(防戦は)</small>速やかになされた。
*ut <u>alii</u> [[wikt:en:eruptio#Latin|eruptionibus]] [[wikt:en:resisterent#Latin|resisterent]],
**ある者たちは<small>(ガッリア勢の)</small>突撃に抵抗しており、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:alii ~ alii …「~する者もいれば、…する者もいる。」)</span>
*<u>alii</u> [[wikt:en:turris#Latin|turres]] [[wikt:en:reducerent#Latin|reducerent]]
**別のある者たちは[[w:攻城塔|攻城櫓]]を引き戻して、
*[[wikt:en:agger#Latin|aggerem]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:interscinderent#Latin|interscinderent]],
**土塁を<small>(城壁側から)</small>切り離していた。
*omnis vero ex [[wikt:en:castra#Latin|castris]] [[wikt:en:multitudo#Latin|multitudo]] ad [[wikt:en:restinguendum#Verb|restinguendum]] [[wikt:en:concurreret#Latin|concurreret]].
**さらに陣営から大勢の皆が、消火するために急ぎ集まっていた。
<!--
<span style="color:#009900;"></span>
<small></small>
**:<span style="color:#009900;">(訳注:
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:
-->
===25節===
*<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/25節]] {{進捗|00%|2026-06-29}}</span>
;籠城ガッリア勢が必死の防戦
:
*<!--❶--><sup>(1)</sup> Cum in omnibus locis, <u>[[wikt:en:consumptus#Latin|consumpta]] iam reliqua parte noctis</u>, [[wikt:en:pugnaretur#Latin|pugnaretur]],
**<u>すでに夜も明けて</u>、至る所で戦われていたときに、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部の直訳は「すでに夜の残りの部分も費やされて」。)</span>
*[[wikt:en:semper#Latin|semper]]<nowiki>que</nowiki> hostibus [[wikt:en:spes#Latin|spes]] [[wikt:en:victoria#Latin|victoriae]] [[wikt:en:redintegraretur#Latin|redintegraretur]],
**かつ、常に敵たちにとって勝利の希望が蘇っており、
*<u>eo magis, quod</u> [[wikt:en:deustus#Latin|deustos]] [[wikt:en:pluteus#Latin|pluteos]] [[wikt:en:turris#Latin|turrium]] [[wikt:en:videbant#Latin|videbant]] nec facile [[wikt:en:adire#Latin|adire]] [[wikt:en:apertus#Latin|apertos]] ad [[wikt:en:auxiliandum#Verb|auxiliandum]] [[wikt:en:animadvertebant#Latin|animadvertebant]],
**<span style="font-family:Times New Roman;font-size:11pt;">[[w:攻城塔|攻城櫓]]の<ruby><rb>障壁</rb><rp>(</rp><rt>プルテウス</rt><rp>)</rp></ruby>が<ruby><rb>焼き落された</rb><rp>(</rp><rt>デウストゥス</rt><rp>)</rp></ruby>のを見ていて、<ruby><rb>身を曝した者</rb><rp>(</rp><rt>アペルトゥス</rt><rp>)</rp></ruby>たちが救援のために容易に近づけないのに気付いていた<u>のでなおさらだったが</u>、</span>
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:eo magis quod|eo magis quod]] ~ 「~なので、その分だけ、より一層」。[[ガリア戦記 第3巻#14節|第3巻14節]]も参照。)</span>
*[[wikt:en:semper#Latin|semper]]<nowiki>que</nowiki> ipsi [[wikt:en:recens#Adjective|recentes]] [[wikt:en:defessus#Latin|defessis]] [[wikt:en:succederent#Latin|succederent]]
**常に彼ら自身<small>〔籠城ガッリア勢〕</small>は新たな者たちが疲れ果てた者たちに交代しており、
*[[wikt:en:omnis#Latin|omnem]]<nowiki>que</nowiki> Galliae [[wikt:en:salus#Latin|salutem]] <u>in illo [[wikt:en:vestigium#Latin|vestigio]] temporis [[wikt:en:positus#Participle|positam]] <span style="color:#009900;"><small>(esse)</small></span></u> [[wikt:en:arbitrarentur#Latin|arbitrarentur]],
**ガッリアのすべての安全が、<u>その瞬間にかかっている</u>と思われていたので、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部の直訳は「その時の足跡(瞬間)に置かれている」。)</span>
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:以上の cum ~ arbitrarentur, が状況や理由を説明する副文で、以下が主文となっている。)</span>
*[[wikt:en:accidit#Etymology_1|accidit]] [[wikt:en:inspectans#Latin|inspectantibus]] nobis,
**我が方<small>〔ローマ勢〕</small>が見ているなかで起こったのは、
*[[wikt:en:quod#Pronoun|quod]] [[wikt:en:dignus#Latin|dignum]] [[wikt:en:memoria#Latin|memoria]] [[wikt:en:visus#Participle|visum]] [[wikt:en:praetereundus#Latin|praetereundum]] non [[wikt:en:existimavimus#Latin|existimavimus]].
**記憶に値すると思われたことを<small>(我がローマ勢が)</small>見過ごすべきではないと考えていたことである。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:この主文の主語を省略せずに記せば、以下のようになる。<br> [id], quod dignum memoria visum [esse] praetereundum [esse] non existimavimus.)</span>
[[画像:048_Conrad_Cichorius,_Die_Reliefs_der_Traianssäule,_Tafel_XLVIII_(Ausschnitt 01).jpg|thumb|right|250px|<ruby><rb>[[w:スコルピオ|投射機]]</rb><rp>(</rp><rt>スコルピオー</rt><rp>)</rp></ruby>を操作する[[w:ダキア人|ダキア人]]の彫刻([[w:トラヤヌスの記念柱|トラヤヌス帝の記念柱]]に刻まれた[[w:レリーフ|レリーフ]])。]]
[[画像:Balliste_fireing.jpg|thumb|right|250px|<ruby><rb>[[w:スコルピオ|投射機]]</rb><rp>(</rp><rt>スコルピオー</rt><rp>)</rp></ruby>([[w:en:Scorpio (dart-thrower)|Scorpio]])の現代における復元。]]
:
*<!--❷--><sup>(2)</sup> [[wikt:en:quidam#Determiner|Quidam]] ante portam oppidi [[wikt:en:Gallus#Noun|Gallus]], <u>qui</u>
**城塞都市の城門の前にいた、ある<small>(1人の)</small>ガッリア人が、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部の qui は、β系写本の記述で、α系写本にはない。)</span>
*per [[wikt:en:manus#Latin:_hand|manus]] [[wikt:en:sebum#Latin|sebi]] ac [[wikt:en:pix#Latin|picis]] [[wikt:en:traditus#Participle|traditas]] [[wikt:en:glaeba#Latin|glaebas]]
**手から手へと渡された<ruby><rb>獣脂</rb><rp>(</rp><rt>セーブム</rt><rp>)</rp></ruby>や<ruby><rb>[[w:ピッチ (樹脂)|樹脂]]</rb><rp>(</rp><rt>ピッチ</rt><rp>)</rp></ruby>の塊を、
*in [[wikt:en:ignis#Latin|ignem]] <u>e regione</u> turris [[wikt:en:proiciebat#Latin|proiciebat]]:
**攻城櫓の正面にある火炎の中に投げ込んでいたが、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:e_regione#Latin|ē regiōne]]「まっすぐに」「~の真向かいに」。)</span>
*[[wikt:en:scorpio#Latin|scorpione]] ab [[wikt:en:latus#Latin:_side|latere]] [[wikt:en:dexter#Latin|dextro]] [[wikt:en:traiectus#Participle|traiectus]]
**<ruby><rb>[[w:スコルピオ|投射機]]</rb><rp>(</rp><rt>スコルピオー</rt><rp>)</rp></ruby>で右の横腹を射られて、
*[[wikt:en:exanimatus#Latin|exanimatus]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:concidit#Verb|concidit]].
**息絶えて倒れた。
:
*<!--❸--><sup>(3)</sup> Hunc ex [[wikt:en:proximus#Noun|proximis]] unus [[wikt:en:iacens#Latin|iacentem]] [[wikt:en:transgressus#Latin|transgressus]]
**彼が倒れているのを、すぐ近くの者たちのうちの1人が乗り越えて、
*[[wikt:en:idem#Latin|eodem]] illo [[wikt:en:munus#Latin|munere]] [[wikt:en:fungebatur#Latin|fungebatur]];
**その同じ<ruby><rb>任務</rb><rp>(</rp><rt>ムーヌス</rt><rp>)</rp></ruby>を果たしていた。
*[[wikt:en:idem#Latin|Eadem]] [[wikt:en:ratio#Latin|ratione]] [[wikt:en:ictus#Noun_4|ictu]] [[wikt:en:scorpio#Latin|scorpionis]] [[wikt:en:exanimatus#Latin|exanimato]]
**<small>(その第2の者が)</small>同様に<ruby><rb>[[w:スコルピオ|投射機]]</rb><rp>(</rp><rt>スコルピオー</rt><rp>)</rp></ruby>の射撃で息絶えさせられると
*alteri [[wikt:en:successit#Latin|successit]] tertius
**<small>(息絶えた)</small>第2の者に第3の者が代わって、
*et tertio quartus,
**<small>(さらに)</small>第3の者に第4の者が<small>(代わった)</small>。
: <!-- [[wikt:en:| -->
*<!--❹--><sup>(4)</sup> <u>nec prius</u> ille est a [[wikt:en:propugnator#Latin|propugnatoribus]] [[wikt:en:vacuus#Latin|vacuus]] [[wikt:en:relictus#Participle|relictus]] locus
**防戦者たちは、持ち場を放棄することがなかった。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:直訳は「その場(ille locus)は、防戦者たちによって空<small>〔無人〕</small>にして置かれることがなかった。」)</span>
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:nec [[wikt:en:prius#Adverb|prius]] ~ [[wikt:en:quam#Conjunction|quam]] …「…するまでは~しなかった」)</span>
*<u>quam</u> [[wikt:en:restinctus#Latin|restincto]] [[wikt:en:agger#Latin|aggere]] atque <u>omni ex parte</u> [[wikt:en:submotus#Latin|submotis]] hostibus [[wikt:en:finis#Latin:_end|finis]] est [[wikt:en:pugnandi#Verb|pugnandi]] [[wikt:en:factus#Latin:_done|factus]].
**<ruby><rb>[[w:アッゲル|土塁]]</rb><rp>(</rp><rt>アッゲル</rt><rp>)</rp></ruby>が鎮火されて、そのすべての方面から敵たちが追い払われて、戦いに終止符が打たれる<u>までは</u>。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、omni <u>ex</u> parte は ''[[ガリア戦記/注解編/写本と校訂版#Ciacconius|Ciacconius]]'' による修正で、<br> α系写本では omni <u>ea</u> parte <br> β系写本では omni parte となっている。)</span>
<!--
<span style="color:#009900;"></span>
<small></small>
**:<span style="color:#009900;">(訳注:
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:
-->
===26節===
*<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/26節]] {{進捗|00%|2026-07-13}}</span>
;アウァーリクム脱出の企て、女たちの絶叫
:
; 万策尽きたガッリア勢が、アウァーリクム脱出を企てる
*<!--❶--><sup>(1)</sup> [[wikt:en:omnia#Noun|Omnia]] [[wikt:en:expertus#Participle|experti]] [[wikt:en:Galli#Latin|Galli]],
**ガッリア人たちはあらゆることを試みたが、
*quod res [[wikt:en:nullus#Determiner|nulla]] [[wikt:en:successerat#Latin|successerat]],
**何ら事が成功しなかったので、
*[[wikt:en:posterus#Latin|postero]] die [[wikt:en:consilium#Latin|consilium]] [[wikt:en:ceperunt#Latin|ceperunt]] ex [[wikt:en:oppidum#Latin|oppido]] [[wikt:en:profugio#Latin|profugere]],
**<small>(戦いの夜が明けて)</small>翌日には、<small>(アウァーリクムの)</small><ruby><rb>城塞都市</rb><rp>(</rp><rt>オッピドゥム</rt><rp>)</rp></ruby>から退避する計画を立てた。
*[[wikt:en:hortans#Latin|hortante]] et [[wikt:en:iubens#Latin|iubente]] [[wikt:en:Vercingetorix#Latin|Vercingetorige]].
**[[w:ウェルキンゲトリクス|ウェルキンゲトリークス]]によって促され、命じられたものであった。
:
; 脱出をはかるガッリア勢の期待とその理由
*<!--❷--><sup>(2)</sup> Id [[wikt:en:silentium#Latin|silentio]] noctis [[wikt:en:conatus#Participle|conati]]
**そのこと<small>〔アウァーリクムからの退避〕</small>を夜の静けさのうちに試みても、
*non magna <u>iactura</u> suorum
**味方の大きな<ruby><rb>犠牲</rb><rp>(</rp><rt>ヤクトゥーラ</rt><rp>)</rp></ruby>もなしに、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:iactura#Noun|iactura]] は「投げ捨てること」、比喩的に「損害、犠牲」。)</span>
*sese [[wikt:en:effecturus#Latin|effecturos]] <span style="color:#009900;"><small>(esse)</small></span> [[wikt:en:sperabant#Latin|sperabant]],
**自分たちは成し遂げるだろうと期待していた。
*<u>propterea quod</u> <u>neque</u> longe ab oppido [[wikt:en:castra#Latin|castra]] [[wikt:en:Vercingetorix#Latin|Vercingetorigis]] [[wikt:en:aberant#Latin|aberant]],
**──というのも、ウェルキンゲトリークスの陣営は<small>(アウァーリクムの)</small></small><ruby><rb>城塞都市</rb><rp>(</rp><rt>オッピドゥム</rt><rp>)</rp></ruby>からあまり離れていなかったし、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:propterea_quod#Latin|propterea quod]] ~「なぜなら~からである」。)</span>
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:neque ~ et …「~ではなく、…である」)</span>
*<u>et</u> [[wikt:en:palus#Latin|palus]], <u>quae [[wikt:en:perpetuus#Latin|perpetua]]</u> [[wikt:en:intercedebat#Latin|intercedebat]], [[wikt:en:Romani#Latin|Romanos]] ad [[wikt:en:insequendum#Verb|insequendum]] [[wikt:en:tardabat#Latin|tardabat]].
**沼地も絶え間なく介在していて、ローマ人たちの追跡を遅らせていたからだ。──
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:二つ目の下線部は、α系写本の語順は quae perpetua だが、<br> β系写本の語順は perpetua quae となっている。)</span>
:
; 母親たちが男たちに、女子供を置き去りにして敵のいけにえにするな、と哀願する
*<!--❸--><sup>(3)</sup> [[wikt:en:iam#Latin|Iam]]<nowiki>que</nowiki> <u>hoc</u> facere [[wikt:en:noctu#Latin|noctu]] [[wikt:en:apparabant#Latin|apparabant]],
**すでに、<u>このことを</u>実行することを夜間に準備していた。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、主要写本ω では [[wikt:en:haec#Latin|haec]]<sub> (中性・複数・対格)</sub> だが、<br> 最初の印刷本 [[ガリア戦記/注解編/写本と校訂版#Editio_princeps|ed.pr]] では [[wikt:en:hoc#Latin:_this|hoc]]<sub> (中性・単数・対格)</sub> としている。)</span>
*<u>cum</u> [[wikt:en:mater#Latin|matres]] [[wikt:en:familia#Latin|familiae]] [[wikt:en:repente#Adverb_2|repente]] in [[wikt:en:publicum#Noun|publicum]] [[wikt:en:procurrerunt#Latin|procurrerunt]],
**そのときに家族の母親たちが不意に公の場に走り出て来て、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部の cum は、「倒逆のcum」([[wikt:en:cum inversum|cum inversum]])と呼ばれ、<br> cum 以下 ~ impediret までの副文が、上記の主文よりも重要な構文の中心になる。)</span>
*[[wikt:en:flens#Latin|flentes]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:proiectus#Latin|proiectae]] ad [[wikt:en:pes#Latin|pedes]] suorum
**泣きながら、味方<small>(の男たち)</small>の足元に<small>(身を)</small>投げ出して、
*omnibus [[wikt:en:prex#Latin|precibus]] [[wikt:en:petierunt#Latin|petierunt]],
**あらゆる懇願でもって頼んだ。
*ne se et [[wikt:en:communis#Latin|communes]] [[wikt:en:liberi#Noun_2|liberos]] hostibus ad [[wikt:en:supplicium#Latin|supplicium]] [[wikt:en:dederent#Latin|dederent]],
**自分たち<small>〔女たち〕</small>と<small>(男たちとの)</small>共通の子供たちを、処刑されることのために敵方に引き渡さないで、
*<u>quos</u> ad [[wikt:en:capiendus#Latin|capiendam]] [[wikt:en:fuga#Latin|fugam]] [[wikt:en:natura#Latin|naturae]] et [[wikt:en:vis#Latin|virium]] [[wikt:en:infirmitas#Latin|infirmitas]] [[wikt:en:impediret#Latin|impediret]].
**それらの者<small>〔女子供たち〕</small>が逃亡をとるためには、性質や体力の弱さが、妨げるのだ、と。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、α系写本では [[wikt:en:quos#Latin|quos]]<sub> (男性・複数・対格)</sub> だが、<br> β系写本では [[wikt:en:quas#Latin|quas]]<sub> (女性・複数・対格)</sub> となっている。)</span>
:
; 窮した母親たちが、男たちの脱出の兆候をローマ人に伝えようとする
*<!--❹--><sup>(4)</sup> [[wikt:en:ubi#Latin|Ubi]] eos in [[wikt:en:sententia#Latin|sententia]] [[wikt:en:perstare#Latin|perstare]] [[wikt:en:viderunt#Latin|viderunt]],
**彼ら<small>〔男たち〕</small>が<small>(女・子供を置き去りで脱出するという)</small>意思を固持していると<small>〔女たちが〕</small>見て取るや、
*[[wikt:en:quod#Conjunction|quod]] [[wikt:en:plerumque#Adverb|plerumque]] in [[wikt:en:summus#Latin|summo]] [[wikt:en:periculum#Latin|periculo]] [[wikt:en:timor#Latin|timor]] [[wikt:en:misericordia#Latin|misericordiam]] non [[wikt:en:recipit#Latin|recipit]],
**──というのは、たいてい最大級の危険においては、恐怖が<ruby><rb>憐憫</rb><rp>(</rp><rt>れんびん</rt><rp>)</rp></ruby>の<ruby><rb>情</rb><rp>(</rp><rt>じょう</rt><rp>)</rp></ruby>を受け入れないものであるからだが、──
*[[wikt:en:conclamo#Latin|conclamare]] et [[wikt:en:significo#Latin|significare]] de [[wikt:en:fuga#Latin|fuga]] [[wikt:en:Romani#Latin|Romanis]] [[wikt:en:coeperunt#Latin|coeperunt]].
**<small>(女たちは)</small>叫び声を上げて、ローマ人たちに<small>(男たちの)</small>逃亡について知らしめ始めた。
:
; ガッリア勢の男たちが、ローマ側の騎兵隊を恐れて、アウァーリクム脱出を断念する
*<!--❺--><sup>(5)</sup> [[wikt:en:qui#Determiner|Quo]] [[wikt:en:timor#Latin|timore]] [[wikt:en:perterritus#Latin|perterriti]] [[wikt:en:Galli#Latin|Galli]],
**<small>(女たちがローマ側へ男たちの脱出について報知したことで)</small>その恐怖によって脅かされたガッリア人<small>(の男)</small>たちは、
*[[wikt:en:ne#Latin:_no|ne]] ab [[wikt:en:equitatus#Latin|equitatu]] Romanorum [[wikt:en:via#Latin|viae]] [[wikt:en:praeoccuparentur#Latin|praeoccuparentur]],
**ローマ方の[[w:騎兵|騎兵隊]]によって道があらかじめ占拠されないように、
*[[wikt:en:consilium#Latin|consilio]] [[wikt:en:destiterunt#Latin|destiterunt]].
**<small>(アウァーリクムからの脱出の)</small>計画を取り止めた。
<!--
<span style="color:#009900;"></span>
<small></small>
**:<span style="color:#009900;">(訳注:
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:
-->
===27節===
[[画像:Avaricum_westpoint_july_2006.jpg|thumb|right|300px|[[w:アウァリクム包囲戦|アウァーリクム攻略戦]]の[[w:ジオラマ|ジオラマ]](再掲;[[w:陸軍士官学校 (アメリカ合衆国)|米国陸軍士官学校]]博物館)。ローマ軍の<ruby><rb>[[w:アッゲル|土塁]]</rb><rp>(</rp><rt>アッゲル</rt><rp>)</rp></ruby>の周辺には、<ruby><rb>[[w:ウィネア|工作小屋]]</rb><rp>(</rp><rt>ウィネア</rt><rp>)</rp></ruby>(vinea)の両端を開いて多数つないだ廊下状の通路(坑道)が延びている。]]
*<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/27節]] {{進捗|00%|2026-08-01}}</span>
;ローマ軍が大雨の中でアウァーリクムの城壁を占拠
:
*<!--❶--><sup>(1)</sup> Postero die Caesar,
**翌日にカエサルは、
*[[wikt:en:promotus#Latin|promota]] [[wikt:en:turris#Latin|turri]]
**<small>(後退していた)</small>[[w:攻城塔|攻城櫓]]<small>(の1基)</small>が前進させられて、
*<u>perfectis</u><nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:opus#Latin|operibus]], quae facere [[wikt:en:instituerat#Latin|instituerat]],
**実施を定めていた作業が<u>成し遂げられると</u>、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、<br> π系写本では [[wikt:en:perfectis#Latin|perfectīs]] 「完成されると」だが、<br> α系・ρ系写本では [[wikt:en:derectis#Latin|dērēctīs]] 「整えられると」<br> となっている。)</span>
*magno [[wikt:en:coortus#Latin|coorto]] <u>imbre</u>
**激しい嵐が起こったが、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、α系写本では [[wikt:en:imbre#Latin|imbre]] だが、β系写本では [[wikt:en:imbri#Latin|imbri]] となっている。)</span>
*non [[wikt:en:inutilis#Latin|inutilem]] hanc ad [[wikt:en:capiendus#Latin|capiendum]] [[wikt:en:consilium#Latin|consilium]] [[wikt:en:tempestas#Latin|tempestatem]] <u>arbitratus est</u>,
**作戦計画を立てるために、この天候は不利ではないと思われた。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、α系写本では [[wikt:en:arbitratus#Participle|arbitratus]] est だが、β系写本では単に arbitratus となっている。)</span>
*[[wikt:en:quod#Conjunction|quod]] paulo [[wikt:en:incautius#Adverb|incautius]] [[wikt:en:custodia#Latin|custodias]] in [[wikt:en:murus#Latin|muro]] [[wikt:en:dispositus#Latin|dispositas]] [[wikt:en:videbat#Latin|videbat]],
**──というのは、城壁に配置された番兵たちが少しより油断していると見ていたからだが、──
*<u>suosque</u> [[wikt:en:languide#Adverb|languidius]] in [[wikt:en:opus#Latin|opere]] [[wikt:en:versor#Latin|versari]] [[wikt:en:iussit#Verb|iussit]]
**配下の者たちには<small>(わざと)</small>より緩慢に作業に従事することを命じて、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、α系写本では [[wikt:en:suos#Latin|suōs]]<nowiki>que</nowiki> だが、β系写本では [[wikt:en:suos#Latin|suōs]] [[wikt:en:quoque#Adverb|quoque]] となっている。)</span>
*et, [[wikt:en:quid#Pronoun_2|quid]] [[wikt:en:fieri#Latin|fieri]] [[wikt:en:vellet#Latin|vellet]], [[wikt:en:ostendit#Latin|ostendit]].
**何がなされることを<small>(カエサルが)</small>欲しているか、を示した。
:
*<!--❷--><sup>(2)</sup> [[wikt:en:legio#Latin|Legionibus]]<nowiki>que</nowiki> <u>extra castra intra [[wikt:en:vinea#Latin|vineas]]</u> in occulto [[wikt:en:expeditus#Participle|expeditis]],
**[[w:ローマ軍団|諸軍団]]が<u>陣営の外の<ruby><rb>[[w:ウィネア|工作小屋]]</rb><rp>(</rp><rt>ウィネア</rt><rp>)</rp></ruby>の内側で</u>ひそかに準備を整えており、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、写本や校訂版によって異同がある。[[ガリア戦記_第7巻/注解/27節#注記|注記]]を参照。)</span>
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:in_occulto#Latin|in occulto]]「ひそかに」「隠れた所で」)</span>
*[[wikt:en:cohortatus#Latin|cohortatus]], ut [[wikt:en:aliquando#Latin|aliquando]] pro [[wikt:en:tantus#Latin|tantis]] [[wikt:en:labor#Latin|laboribus]] [[wikt:en:fructus#Latin:_noun|fructum]] victoriae [[wikt:en:perciperent#Latin|perciperent]],
**<small>(カエサルは)</small>やっと、これほどの労苦の見合う勝利の報酬を我がものとするように激励し、
*iis, qui [[wikt:en:primus#Latin|primi]] [[wikt:en:murus#Latin|murum]] [[wikt:en:adscendissent#Latin|adscendissent]], [[wikt:en:praemium#Latin|praemia]] [[wikt:en:proposuit#Latin|proposuit]]
**一番乗りとして城壁に登った者たちには、恩賞を約束して、
*[[wikt:en:miles#Latin|militibus]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:signum#Latin|signum]] [[wikt:en:dedit#Latin|dedit]].
**兵士たちに号令を発した。
:
*<!--❸--><sup>(3)</sup> Illi [[wikt:en:subito#Adverb_8|subito]] ex omnibus partibus [[wikt:en:evolaverunt#Latin|evolaverunt]]
**彼ら<small>〔ローマ軍団兵〕</small>は不意にあらゆる方角から飛び出して、
*[[wikt:en:murus#Latin|murum]]<nowiki>que</nowiki> celeriter [[wikt:en:compleverunt#Latin|compleverunt]].
**速やかに<small>(アウァーリクムの)</small>城壁を埋め尽くしたのだ。
<!--
<span style="color:#009900;"></span>
<small></small>
**:<span style="color:#009900;">(訳注:
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:
-->
===28節===
*<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/28節]] {{進捗|00%|2026-08-11}}</span>
;ローマ軍がアウァーリクムの市民4万人を大虐殺
:
*<!--❶--><sup>(1)</sup> Hostes re nova [[wikt:en:perterritus#Latin|perterriti]],
**敵たち<small>〔籠城するガッリア勢〕</small>は新たな事態に脅かされて、
*[[wikt:en:murus#Latin|muro]] [[wikt:en:turris#Latin|turribus]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:deiectus#Participle|deiecti]]
**<small>(ローマ兵によって)</small>城壁や櫓から追い落とされて、
*in [[wikt:en:forum#Latin|foro]] ac locis [[wikt:en:patentior#Latin|patentioribus]] [[wikt:en:cuneatim#Latin|cuneatim]] [[wikt:en:constiterunt#Etymology_1|constiterunt]],
**<ruby><rb>広場</rb><rp>(</rp><rt>フォルム</rt><rp>)</rp></ruby>や開けた場所に楔状に立ちふさがった。
*hoc animo, ut, si [[wikt:en:aliqui#Latin|qua]] ex parte [[wikt:en:obviam#Adverb|obviam]] <span style="color:#009900;">[</span>contra<span style="color:#009900;">]</span> [[wikt:en:veniretur#Latin|veniretur]], [[wikt:en:acies#Latin|acie]] [[wikt:en:instructus#Latin|instructa]] [[wikt:en:depugnarent#Latin|depugnarent]].
**もし、どの方向から相対して対抗して来られても、戦列を整えて決戦しようという心積もりでいたのだ。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:contra#Latin|contra]] は α系・π系写本・写本Rにある記述だが、<br> 写本U にはなく、削除提案されている。)</span>
:
*<!--❷--><sup>(2)</sup> Ubi [[wikt:en:nemo#Latin|neminem]] in aequum locum sese [[wikt:en:demitto#Latin|demittere]], sed [[wikt:en:totus#Latin:_whole|toto]] [[wikt:en:undique#Latin|undique]] [[wikt:en:murus#Latin|muro]] [[wikt:en:circumfundi#Latin|circumfundi]] [[wikt:en:viderunt#Latin|viderunt]],
**<small>(ローマ兵が)</small>誰も平らな所に降りて来ず、しかし城壁全体の至る所で取り囲まれたことを見たときに、
*[[wikt:en:veritus#Latin|veriti]], ne [[wikt:en:omnino#Latin|omnino]] spes fugae [[wikt:en:tolleretur#Latin|tolleretur]],
**<small>(籠城ガッリア勢は)</small>逃亡のあらゆる希望を奪われないかと怖れて、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:veriti, [[wikt:en:ne#Latin:_no|ne]] ~ 「~ではないかと恐れて」恐れの表現。)</span>
*[[wikt:en:abiectus#Latin|abiectis]] [[wikt:en:arma#Latin|armis]]
**武器を投げ捨てて、
*[[wikt:en:ultimus#Latin|ultimas]] oppidi partes
**城塞都市の<small>(ローマ勢から)</small>最も遠くの方面を
*[[wikt:en:continens#Latin|continenti]] [[wikt:en:impetus#Latin|impetu]] [[wikt:en:petiverunt#Latin|petiverunt]],
**絶え間ない殺到によって求めた。
:
*<!--❸--><sup>(3)</sup> <u>pars</u><nowiki>que</nowiki> ibi, cum [[wikt:en:angustus#Latin|angusto]] [[wikt:en:exitus#Latin|exitu]] portarum se ipsi [[wikt:en:premerent#Latin|premerent]], a militibus,
**ある者たちは、城門の狭い出口で自分らで互いに押し合っていたので、そこで<small>(ローマ人)</small>兵士たちによって<small>(殺され)</small>、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:pars#Latin|pars]] ~, pars …「ある者たちは~、別の者たちは…」。)</span>
*<u>pars</u> iam [[wikt:en:egressus#Latin|egressa]] portis ab [[wikt:en:eques#Latin|equitibus]] est [[wikt:en:interfectus#Latin|interfecta]].
**別の者たちはすでに城門を出ていたが、<small>(ローマ側の)</small>[[w:騎兵|騎兵]]たちによって虐殺された。
:
*<!--❹--><sup>(4)</sup> [[wikt:en:nec#Latin|Nec]] fuit [[wikt:en:quisquam#Pronoun|quisquam]], qui [[wikt:en:praeda#Latin|praedae]] [[wikt:en:studeret#Latin|studeret]].
**<small>(ローマ勢には)</small>戦利品を熱心に求める何者もいなかった。
*[[wikt:en:sic#Latin|Sic]] et <u>Cenabi</u> [[wikt:en:caedes#Latin|caede]] et [[wikt:en:labor#Latin|labore]] [[wikt:en:opus#Latin|operis]] [[wikt:en:incitatus#Latin|incitati]]
**このように、ケナブムの<small>(ローマ市民の)</small>殺害にも、(攻城)作業の労苦にも煽られて
**:<span style="color:#009900;">(訳注:カルヌーテース族によるローマ市民の殺害については[[#3節|3節]]を参照。)</span>
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部の cenabi は、α系写本では [[wikt:en:Genabi#Latin|genabi]] <br> ρ系写本や写本Tでは [[wikt:en:Genabensi#Adjective|genabensi]]<br> 写本Uおよび写本Tの一部では cenabensi となっている。<br> なお、cenabi, cenabensi はケルト語風の表記である。)</span>
*non [[wikt:en:aetas#Latin|aetate]] [[wikt:en:confectus#Latin|confectis]],
**<small>(ローマ勢は)</small>年老いた者たちも、
*non [[wikt:en:mulier#Latin|mulieribus]],
**妻女たちも、
*non [[wikt:en:infans#Noun|infantibus]] [[wikt:en:pepercerunt#Latin|pepercerunt]].
**乳幼児たちも<small>(虐殺することを)</small>思いとどまらなかった。
**:<span style="color:#009900;">(訳注:ビトゥリゲース族はローマ市民の殺害には関与しておらず、報復される対象とするのは的外れである。</span>
**:<span style="color:#009900;">ましてや非戦闘員である老人・女性・子供たちまで殺戮するのは、戦争の狂気というしかない。)</span>
:
*<!--❺--><sup>(5)</sup> [[wikt:en:denique#Latin|Denique]] ex omni <u><span style="color:#009900;">eo</span></u> numero, qui fuit circiter milium XL<small> ([[wikt:en:quadraginta#Latin|quadraginta]])</small>,
**ついには、約40000名もいたすべての人員のうち、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部の [[wikt:en:eo#Latin:_there|eo]] は β系写本の記述で、α系写本にはない。)</span>
*vix DCCC<small> ([[wikt:en:octingenti#Latin|octingenti]])</small>, qui primo [[wikt:en:clamor#Latin|clamore]] [[wikt:en:auditus#Latin|audito]] se ex oppido <u>eiecerunt</u>,
**やっと800名が、はじめにどよめきを聞いて、城塞都市から急ぎ出て、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、α系写本では [[wikt:en:eiecerunt#Latin|eiecerunt]]<small> (直接法・完了)</small> だが、<br> β系写本では [[wikt:en:eiecerant#Latin|eiecerant]]<small> (直接法・過去完了)</small> となっている。)</span>
*[[wikt:en:incolumis#Latin|incolumes]] ad [[wikt:en:Vercingetorix#Latin|Vercingetorigem]] [[wikt:en:pervenerunt#Latin|pervenerunt]].
**無傷のままで[[w:ウェルキンゲトリクス|ウェルキンゲトリークス]]のもとへ到着した。
:
*<!--❻--><sup>(6)</sup> Quos ille multa iam nocte <u>silentio</u> ex fuga [[wikt:en:excepit#Latin|excepit]],
**彼<small>〔ウェルキンゲトリークス〕</small>は、逃亡して来たその者たちを、すでに夜も更けた<u>静寂のうちに</u>迎え入れた。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、α系写本では [[wikt:en:silentio#Latin|silentio]] だが、β系写本にはない。<br> 他方、β系写本では [[wikt:en:sic#Latin|sic]] とあるが、α系写本にはない。)</span>
*[[wikt:en:veritus#Latin|veritus]], ne qua in castris ex eorum [[wikt:en:concursus#Latin:_convergence|concursu]] et [[wikt:en:misericordia#Latin|misericordia]] [[wikt:en:vulgus#Latin|vulgi]] seditio <u>oreretur</u>,
**彼らの密集や一般兵士たちの同情から、陣営の中で何らかの暴動が生じないように怖れて、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:ne [[wikt:en:aliqui#Latin|qua (aliqua)]] ~ [[wikt:en:seditio#Latin|seditio]]「何らかの暴動が~ないように」
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、一部の写本は [[wikt:en:oreretur#Latin|oreretur]] だが、<br> 他の写本では [[wikt:en:oriretur#Latin|oriretur]] となっているが、語形の相違。)</span>
*ut procul in via [[wikt:en:dispositus#Latin|dispositis]] [[wikt:en:familiaris#Noun|familiaribus]] suis [[wikt:en:princeps#Latin|principibus]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:civitas#Latin|civitatum]],
**自らの郎党たちや部族の領袖たちを<small></small>(陣営の)遠くから道沿いに配置して、
*[[wikt:en:disparandus#Latin|disparandos]] [[wikt:en:deducendus#Latin|deducendos]]<nowiki>que</nowiki> ad suos [[wikt:en:curaret#Latin|curaret]],
**<small>(敗走者たちを)</small>味方のもとへ、引き離して連れて行くように手配した。
*quae [[wikt:en:cuique#Latin|cuique]] civitati pars castrorum ab [[wikt:en:initium#Latin|initio]] [[wikt:en:obvenerat#Latin|obvenerat]].
**陣営の各部分は、おのおのの部族にはじめから与えられていたのだ。
<!--
<span style="color:#009900;"></span>
<small></small>
**:<span style="color:#009900;">(訳注:
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:
-->
===29節===
*<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/29節]] {{進捗|00%|2026-08-11}}</span>
[[画像:Vercingetorix stater CdM.jpg|thumb|right|250px|[[w:ウェルキンゲトリクス|ウェルキンゲトリークス]]の横顔が刻まれたガリアの金貨(パリの[[w:ビブリオテーク・ナショナル|仏国立図書館]]貨幣部蔵)]]
;ウェルキンゲトリークスが演説で味方を鼓舞する
:
*<!--❶--><sup>(1)</sup> Postero die [[wikt:en:concilium#Latin|concilio]] [[wikt:en:convocatus#Latin|convocato]],
**翌日に、会合が召集されると、
*[[wikt:en:consolatus#Latin|consolatus]] [[wikt:en:cohortatus#Latin|cohortatus]]<nowiki>que</nowiki> est,
**<small>(ウェルキンゲトリークスは、味方の者たちを)</small>慰めて、励ました:
*<u>ne</u> se [[wikt:en:admodum#Latin|admodum]] animo [[wikt:en:demitterent#Latin|demitterent]],
**あまり気を落とさないように、
*<u>ne</u> [[wikt:en:perturbarentur#Latin|perturbarentur]] [[wikt:en:incommodum#Latin|incommodo]].
**敗北により取り乱さないように、と。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:上の下線部は、α系写本では [[wikt:en:ne#Latin:_no|ne]] ~ ne だが、<br> β系写本では ne ~ [[wikt:en:neve#Latin|neve]] となっている。)</span>
:
*<!--❷--><sup>(2)</sup> Non [[wikt:en:virtus#Latin|virtute]] neque in [[wikt:en:acies#Latin|acie]] [[wikt:en:vicisse#Latin|vicisse]] [[wikt:en:Romani#Latin|Romanos]],
**ローマ人たちが勝ったのは、武勇においてでも、戦列<small>〔野外の合戦〕</small>においてでもなく、
*sed [[wikt:en:artificium#Noun|artificio]] [[wikt:en:quidam#Determiner|quodam]] et [[wikt:en:scientia#Latin:_knowledge|scientia]] [[wikt:en:oppugnatio#Latin|oppugnationis]],
**ある種の技巧および攻城戦の知識によるものであって、
*cuius rei [[wikt:en:fuerint#Latin|fuerint]] ipsi [[wikt:en:imperitus#Latin|imperiti]].
**その事柄に<small>(ガッリア人)</small>自身が通じていなかったのだ。
**:<span style="color:#009900;">(訳注:[[ガリア戦記 第5巻#42節|第5巻42節]]では、ネルウィイー族らガッリア北部のベルガエ勢はローマ人の攻城術をまねていた。)</span>
:
*<!--❸--><sup>(3)</sup> [[wikt:en:erro#Latin:_wander|Errare]], si [[wikt:en:aliqui#Latin|qui]] in [[wikt:en:bellum#Latin|bello]] omnes [[wikt:en:secundus#Adjective|secundos]] rerum [[wikt:en:proventus#Latin|proventus]] [[wikt:en:exspectent#Latin|exspectent]].
**誰であれ、戦争において、万事が順調な成功になることを期待するのならば、<small>(その者らは)</small>誤っている。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:語順が判りにくいが、<br> 物事のすべて(omnes rerum)が幸運な結果(secundos proventus)であることを期待するのならば~。)</span>
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:errare の意味上の主語([[wikt:en:eos#Latin|eos]])が省略されている。)</span>
:
*<!--❹--><sup>(4)</sup> Sibi [[wikt:en:numquam#Latin|numquam]] [[wikt:en:placuisse#Latin|placuisse]] [[wikt:en:Avaricum#Latin|Avaricum]] [[wikt:en:defendi#Latin|defendi]],
**自分<small>〔ウェルキンゲトリークス〕</small>にとって、アウァーリクムが防衛されることは決して好ましいものではなかった。
*cuius rei [[wikt:en:testis#Latin:_witness|testes]] ipsos [[wikt:en:haberet#Latin|haberet]];
**その事の証人は<small>(諸君ら)</small>自身である。
*sed <u>factum</u> [[wikt:en:inprudentia#Latin|inprudentia]] [[wikt:en:Bituriges#Latin|Biturigum]] et [[wikt:en:nimius#Latin|nimia]] [[wikt:en:obsequentia#Latin|obsequentia]] reliquorum, <u>uti</u> hoc [[wikt:en:incommodum#Latin|incommodum]] [[wikt:en:acciperetur#Latin|acciperetur]].
**だが、ビトゥリゲース族の軽率さと、ほかの者たちの過度な同調により、この敗北を蒙るようになったのだ。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:factus#Latin:_done|factum]] (esse) ~ [[wikt:en:uti#Latin:_how|uti]] …「…ようになった」)</span>
:
*<!--❺--><sup>(5)</sup> Id tamen se celeriter [[wikt:en:maior#Adjective_2|maioribus]] [[wikt:en:commodum#Latin:noun|commodis]] [[wikt:en:sanaturus#Latin|sanaturum]] <span style="color:#009900;">(esse)</span>.
**しかしながら、自分がそれ<small>〔敗北〕</small>を速やかに大いなる勝利によって埋め合わせるであろう。
:
*<!--❻--><sup>(6)</sup> Nam quae ab reliquis [[wikt:en:Galli#Latin:_Gauls|Gallis]] civitates [[wikt:en:dissentirent#Latin|dissentirent]],
**一方、<small>(ウェルキンゲトリークスら)</small>ほかのガッリア人たちとは意見を相異する諸部族、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:先行詞 [[wikt:en:civitas#Latin|civitates]] が quae 以下の関係文中に入り込む倒置の語順。)</span>
*has sua [[wikt:en:diligentia#Noun|diligentia]] [[wikt:en:adiuncturus#Latin|adiuncturum]] <span style="color:#009900;">(esse)</span>
**彼ら<small>〔諸部族〕</small>を自分<small>〔ウェルキンゲトリークス〕</small>の入念さにより合流させるであろうし、
*atque unum [[wikt:en:consilium#Latin|consilium]] [[wikt:en:totus#Latin:_whole|totius]] [[wikt:en:Gallia#Latin|Galliae]] [[wikt:en:effecturus#Latin|effecturum]] <span style="color:#009900;">(esse)</span>,
**全ガッリアの考えを一つにするであろう。
*cuius [[wikt:en:consensus#Latin|consensui]] ne orbis quidem terrarum [[wikt:en:possit#Latin|possit]] [[wikt:en:obsistere#Latin|obsistere]];
**その団結には、全世界でさえ邪魔することはできない。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:ne quidem|ne ~ quidem]]「~でさえ…ない」)</span>
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:orbis#Latin|orbis]] [[wikt:en:/terrarum#Latin|terrarum]]「全世界」)</span>
*[[wikt:en:id#Latin|id]]<nowiki>que</nowiki> se [[wikt:en:prope#Adverb|prope]] iam [[wikt:en:effectus#Latin:_participle|effectum]] habere.
**それを自分<small>〔ウェルキンゲトリークス〕</small>は、ほとんどすでに成し遂げたと思う。
:
*<!--❼--><sup>(7)</sup> [[wikt:en:interea#Latin|Interea]] [[wikt:en:aequus#Latin|aequum]] esse ab iis [[wikt:en:communis#Latin|communis]] [[wikt:en:salus#Latin|salutis]] causa [[wikt:en:impetrari#Latin|impetrari]],
**その間に<small>(ガッリアの)</small>共通の安全のために、彼ら<small>〔ガッリア人〕</small>によって<small>(以下のように)</small>達成されることが好都合である。
*ut castra [[wikt:en:munio#Latin|munire]] [[wikt:en:instituerent#Latin|instituerent]],
**陣営を防御することを実施するように、
*[[wikt:en:quo#Latin:_where|quo]] [[wikt:en:facilius#Latin|facilius]] [[wikt:en:repentinus#Latin|repentinos]] hostium [[wikt:en:impetus#Latin|impetus]] <u>sustinerent</u>.
**それにより、敵たち<small>〔ローマ人〕</small>の予期せぬ襲撃に対して、より容易に持ちこたえられるように。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、α系写本では [[wikt:en:sustinerent#Latin|sustinerent]] だが、<br> β系写本では [[wikt:en:sustinere#Latin|sustinere]] [[wikt:en:possent#Latin|possent]] となっている。)</span>
<!--
<span style="color:#009900;"></span>
<small></small>
**:<span style="color:#009900;">(訳注:
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:
-->
===30節===
*<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/30節]] {{進捗|00%|2026-08-29}}</span>
;ガッリア勢がウェルキンゲトリークスに心服し、希望を抱く
:
*<!--❶--><sup>(1)</sup> Fuit haec [[wikt:en:oratio#Latin|oratio]] non [[wikt:en:ingratus#Latin|ingrata]] [[wikt:en:Galli#Latin:_Gauls|Gallis]],
**この演説は、ガッリア人たちにとっては不快なものではなかった。
*et maxime, quod ipse animo non [[wikt:en:defecerat#Latin|defecerat]], [[wikt:en:tantus#Latin|tanto]] [[wikt:en:acceptus#Latin|accepto]] [[wikt:en:incommodum#Latin|incommodo]],
**──というのは、とりわけ<small>(ウェルキンゲトリークス)</small>自身がこれほどの敗北を蒙っても意気消沈することなく、
*neque <u>se</u> [[wikt:en:in_occultum#Latin|in occultum]] [[wikt:en:abdiderat#Latin|abdiderat]]
**秘密の場所に身を隠したり、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部の再帰代名詞 se は 最初の印刷本 [[ガリア戦記/注解編/写本と校訂版#Editio_princeps|''ed. pr.'']] で挿入されたもので、主要写本 ω にはない。)</span>
*et [[wikt:en:conspectus#Latin:_noun|conspectum]] [[wikt:en:multitudo#Latin|multitudinis]] [[wikt:en:fugerat#Latin|fugerat]]<!--,-->;
**大勢の見ているところを避けたりしなかったからである──。
:
*<!--❷--><sup>(2)</sup> [[wikt:en:plus#Latin:_adverb|plus]]<nowiki>que</nowiki> animo [[wikt:en:provideo#Latin|providere]] et [[wikt:en:praesentio#Latin|praesentire]] [[wikt:en:existimabatur#Latin|existimabatur]],
**<small>(ウェルキンゲトリークスは他の者よりも)</small>より先見の明があり、予感していると考えられていた。
*quod re [[wikt:en:integer#Latin|integra]]
**──というのは、事態が手つかずのままで、
*[[wikt:en:primo#Latin:_adverb|primo]] [[wikt:en:incendendus#Latin|incendendum]] <span style="color:#009900;">(esse)</span> [[wikt:en:Avaricum#Latin|Avaricum]],
**当初はアウァーリクムが焼き払われるべきだと<small>(主張し)</small>、
*post [[wikt:en:deserendus#Latin|deserendum]] <span style="color:#009900;">(esse)</span>, [[wikt:en:censuerat#Latin|censuerat]].
**後には<small>(アウァーリクムは)</small>放棄されるべきだ、と主張していたからだ──。
:
*<!--❸--><sup>(3)</sup> [[wikt:en:itaque#Latin|Itaque]] <u>ut</u> [[wikt:en:reliquus#Latin|reliquorum]] [[wikt:en:imperator#Latin|imperatorum]] res adversae [[wikt:en:auctoritas#Latin|auctoritatem]] [[wikt:en:minuunt#Latin|minuunt]],
**それゆえに、逆境がほかの将軍たちの影響力を減ずる一方で、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:ut#Conjunction|ut]] ~, [[wikt:en:sic#Latin|sic]] …「~であるように、同様に…」あるいは「~である一方で、…」。)</span>
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:res#Latin|res]] [[wikt:en:adversus#Participle|adversae]]「逆境、(戦争における)敗北」。)</span>
*<u>sic</u> huius <u>ex contrario</u> [[wikt:en:dignitas#Latin|dignitas]] <u>incommodo</u> [[wikt:en:acceptus#Latin|accepto]] <u>in dies</u> [[wikt:en:augebatur#Latin|augebatur]].
**それどころか、彼の威厳は、災難を蒙っても、日ごとに高まっていたのだ。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:ex_contrario#Latin|ex contrario]]「それどころか」。)</span>
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:incommodum#Latin|incommodum]]「不運、災難、(戦争における)敗北」。)</span>
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:in_dies#Latin|in dies]]「日に日に」「日ごとに」。)</span>
: <!-- [[wikt:en:| -->
*<!--❹--><sup>(4)</sup> [[wikt:en:simul#Latin|Simul]] <u>in spem [[wikt:en:veniebant#Latin|veniebant]]</u> eius [[wikt:en:adfirmatio#Latin|adfirmatione]] de reliquis [[wikt:en:adiungendus#Latin|adiungendis]] [[wikt:en:civitas#Latin|civitatibus]];
**同時に、彼の断言によって<small>(ガッリア人たちは)</small>ほかの諸部族を合流させることについて希望を抱いていた。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:in [[wikt:en:spes#Latin|spem]] [[wikt:en:venio#Latin|venire]]「希望を抱くようになる」。)</span>
*[[wikt:en:primum#Adverb|primum]]<nowiki>que</nowiki> eo tempore [[wikt:en:Galli#Latin:_Gauls|Galli]] [[wikt:en:castra#Latin|castra]] [[wikt:en:munio#Latin|munire]] [[wikt:en:instituerunt#Latin|instituerunt]],
**そのときに初めて、ガッリア人たちは陣営の防備を固めることに着手した。
*et <u>sic</u> <u>sunt</u> animo <u>consternati</u>, homines [[wikt:en:insuetus#Latin|insueti]] [[wikt:en:labor#Latin|laboris]],
**<small>(陣営の防備という)</small>労苦に慣れていない人々が、<u>気持ちが狼狽していたので、</u>
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:sic#Latin|sic]] ~, [[wikt:en:ut#Conjunction|ut]] …「~であるので、その結果…ほどだった」。)</span>
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部の sunt は主要写本 ω の記述だが、erant とする修正提案もある。<br> sunt なら未完了過去 (sunt consternati)、erant なら過去完了 (erant consternati) になる。)</span>
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部の [[wikt:en:consternati#Latin|consternati]] は主要写本 ω の記述だが、<br> ''[[ガリア戦記/注解編/写本と校訂版#Nipperdey|Nipperdey]]'' は [[wikt:en:confirmati#Latin|confirmati]] と修正提案している。)</span>
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:写本の読みは sunt [[wikt:en:consternati#Latin|consternati]] 「(彼らは)恐怖に陥っていた、混乱していた。」だが、<br> 修正読みでは sunt [[wikt:en:confirmati#Latin|confirmati]] 「(彼らは)励まされた」。)</span>
*<u>ut</u> omnia, quae [[wikt:en:imperarentur#Latin|imperarentur]], sibi [[wikt:en:patiendus#Latin|patienda]] <span style="color:#009900;">(esse)</span> <u>et perferenda <span style="color:#009900;">(esse)</span></u> [[wikt:en:existimarent#Latin|existimarent]].
**自分たちにとって、命令されたことすべてを耐えるべきであり、<u>成就するべきである</u>と考えるに至ったほどであった。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部の et [[wikt:en:perferenda#Latin|perferenda]] (esseは省略されている) はβ系写本の記述で、<br> α系写本にはない。)</span>
<!--
<span style="color:#009900;"></span>
<small></small>
**:<span style="color:#009900;">(訳注:
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:
-->
===31節===
*<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/31節]] {{進捗|00%|2026-08-29}}</span>
;ウェルキンゲトリークスがほかの諸部族を勧誘し、兵力を補充する
:
; ウェルキンゲトリークスが、さらに多くの部族に同盟を誘いかける
*<!--❶--><sup>(1)</sup> Nec minus, quam est [[wikt:en:pollicitus#Latin|pollicitus]],
**約束したことに劣らず、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:nec#Latin|nec]] [[wikt:en:minus#Adverb_4|minus]] [[wikt:en:quam#Latin|quam]] ~「~に劣らず」。)</span>
*[[wikt:en:Vercingetorix#Latin|Vercingetorix]] animo [[wikt:en:laborabat#Latin|laborabat]], ut reliquas [[wikt:en:civitas#Latin|civitates]] [[wikt:en:adiungeret#Latin|adiungeret]],
**[[w:ウェルキンゲトリクス|ウェルキンゲトリークス]]は、ほかの諸部族を加盟させるように、心から努力した。
*atque <u>earum principes donis pollicitationibusque</u> [[wikt:en:adliciebat#Latin|adliciebat]].
**それらの領袖たちに贈物を約束することによって、誘い込もうとしていた。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、β系写本では earum [[wikt:en:princeps#Noun_3|principes]] [[wikt:en:donum#Latin|donis]] [[wikt:en:pollicitatio#Latin|pollicitationibus]]<nowiki>que</nowiki> だが、<br> α系写本では eas donis pollicitationibus となっている。)</span>
:
*<!--❷--><sup>(2)</sup> Huic rei [[wikt:en:idoneus#Latin|idoneos]] homines [[wikt:en:deligebat#Latin|deligebat]],
**この事<small>〔同盟に誘うこと〕</small>に適切な人物たちを<small>(ウェルキンゲトリークスが)</small>選び出して、
*quorum [[wikt:en:quisque#Latin|quisque]] aut [[wikt:en:oratio#Latin|oratione]] [[wikt:en:subdolus#Latin|subdola]] aut [[wikt:en:amicitia#Latin|amicitia]]
**その者たちのおのおのは、巧妙な演説により、あるいは友情により、
*[[wikt:en:facillime#Latin|facillime]] <u>capere</u> posset.
**かなり容易に<small>(同盟者を)</small>得ることができた。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、χ系写本・写本Lでは [[wikt:en:capere#Latin|capere]] だが、<br> β系写本では [[wikt:en:capi#Latin|capi]] となっている。)</span>
:
; アウァーリクムからの逃亡者たちに、武具と衣服を支給する
*<!--❸--><sup>(3)</sup> <span style="color:#009900;">[eos]</span> qui [[wikt:en:Avaricum#Latin|Avarico]] [[wikt:en:expugnatus#Latin|expugnato]] [[wikt:en:refugerant#Latin|refugerant]],
**<small>(ウェルキンゲトリークスは)</small>アウァーリクムが攻略されたので逃げて来ていた者たちに、
*[[wikt:en:armandus#Latin|armandos]] [[wikt:en:vestiendus#Latin|vestiendos]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:curat#Latin|curat]];
**武装させられ、服を着せられるように、手配する。
:
; 同盟部族に徴集する兵員の数と集まる期日を指示する
*<!--❹--><sup>(4)</sup> [[wikt:en:simul#Latin|simul]], ut [[wikt:en:deminutus#Latin|deminutae]] [[wikt:en:copiae#Latin|copiae]] [[wikt:en:redintegrarentur#Latin|redintegrarentur]],
**同時に、減り衰えた軍勢が補充されるように、
*[[wikt:en:imperat#Latin|imperat]] [[wikt:en:certus#Latin|certum]] <u>numerum</u> militum civitatibus, <u>quem</u> et <u>quam ante diem</u> in castra [[wikt:en:adduci#Latin|adduci]] [[wikt:en:velit#Latin|velit]],
**諸部族に、兵の一定の<u>数</u>を<u>どれほど</u>、かつ、<u>いつの日の前までに</u>陣営に連れて来ることを欲しているかを指図し、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:qui#Determiner|quem]] [[wikt:en:numerus#Latin|numerum]] 「どれほどの数を」。)</span>
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:qui#Determiner|quam]] ante [[wikt:en:dies#Latin|diem]] 「いつの日の前までに」。)</span>
*[[wikt:en:sagittarius#Noun|sagittarios]]<u>que</u> omnes, quorum erat [[wikt:en:permagnus#Latin|permagnus]] <u>numerus in Gallia</u>, [[wikt:en:conquiri#Latin|conquiri]] et ad se [[wikt:en:mitti#Latin|mitti]] [[wikt:en:iubet#Latin|iubet]].
**ガッリアにかなり大勢がいた弓兵のすべてを、徴募して自分<small>〔ウェルキンゲトリークス〕</small>のもとへ派遣することを命じる。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、α系写本の語順は numerus in Gallia で、<br> β系写本の語順は in Gallia numerus となっている。)</span>
*His rebus celeriter id, quod [[wikt:en:Avaricum#Latin|Avarici]] [[wikt:en:deperierat#Latin|deperierat]], [[wikt:en:expletur#Latin|expletur]].
**これらの事により、速やかに、アウァーリクムで壊滅していたそれら<small>(の軍勢)</small>が補充される。
:
; ニティオブロゲース族の王テウトマトゥスが、騎兵隊らとともにウェルキンゲトリークスに合流する
*<!--❺--><sup>(5)</sup> [[wikt:en:interim#Latin|Interim]] [[wikt:en:Teutomatus#Latin|Teutomatus]], [[wikt:en:Ollovico#Latin|Olloviconis]] filius, rex <u>Nitiobrogum</u>,
**その間に、オッロウィコーの息子で、ニティオブロゲース族の王であるテウトマトゥスが、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、主要写本ω では Nitiobrogum だが、<br> 写本Uの一部では [[wikt:en:Nitiobriges#Latin|Nitiobrigum]] となっている。)</span>
*cuius pater ab [[wikt:en:senatus#Latin|senatu]] nostro amicus erat [[wikt:en:appellatus#Latin|appellatus]],
**その父<small>〔オッロウィコー〕</small>は、我が方<small>〔ローマ人〕</small>の[[w:元老院 (ローマ)|元老院]]から友人と呼ばれていたのだが、
*cum magno [[wikt:en:eques#Latin|equitum]] suorum numero et quos ex [[wikt:en:Aquitania#Latin|Aquitania]] [[wikt:en:conduxerat#Latin|conduxerat]] ad eum [[wikt:en:pervenit#Etymology_2|pervenit]].
**自らの騎兵の多数およびアクィーターニアから募っていた者たちとともに、彼<small>〔ウェルキンゲトリークス〕</small>のもとへ到着した。
<!--
<span style="color:#009900;"></span>
<small></small>
**:<span style="color:#009900;">(訳注:
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:
-->
==ゲルゴウィア攻略戦、ハエドゥイー族の離反==
===32節===
*<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/32節]] {{進捗|00%|2026-09-23}}</span>
;ハエドゥイー族内紛の危機
:
*<!--❶--><sup>(1)</sup> Caesar [[wikt:en:Avarici#Latin|Avarici]] complures dies [[wikt:en:commoratus#Latin|commoratus]]
**カエサルは、アウァーリクムに幾日も留まって、
*[[wikt:en:summus#Latin|summam]]<nowiki>que</nowiki> ibi [[wikt:en:copia#Latin|copiam]] [[wikt:en:frumentum#Latin|frumenti]] et reliqui [[wikt:en:commeatus#Latin:_noun|commeatus]] [[wikt:en:nactus#Latin|nactus]]
**そこでかなり多量の糧食やほかの必需品を手に入れて、
*[[wikt:en:exercitus#Latin:_noun|exercitum]] ex [[wikt:en:labor#Latin:_work|labore]] atque [[wikt:en:inopia#Latin:_noun|inopia]] <u>reficit</u>.
**軍隊を労苦や欠乏から回復させた。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、χ系・β系写本では [[wikt:en:reficit#Latin|reficit]]<sub> (現在形)</sub> だが、<br> φ系写本では [[wikt:en:refecit#Latin|refecit]]<sub> (完了形)</sub> となっている。)</span>
:
*<!--❷--><sup>(2)</sup> Iam [[wikt:en:prope#Adverb|prope]] [[wikt:en:hiems#Latin|hieme]] [[wikt:en:confectus#Latin|confecta]],
**すでに、ほぼ冬は過ぎ去り、
*cum ipso anni tempore ad [[wikt:en:gerendus#Latin|gerendum]] bellum [[wikt:en:vocaretur#Latin|vocaretur]] et ad hostem [[wikt:en:proficisci#Latin|proficisci]] [[wikt:en:constituisset#Latin|constituisset]],
**<small>(カエサルが)</small>まさにその時季に戦争を遂行するために呼び寄せられて、敵の方へ発つことを決意していたときに、
*<u>sive</u> eum ex [[wikt:en:palus#Latin|paludibus]] [[wikt:en:silva#Latin|silvis]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:elicio#Latin|elicere]] <u>sive</u> [[wikt:en:obsidio#Latin|obsidione]] [[wikt:en:premo#Latin|premere]] [[wikt:en:posset#Latin|posset]],
**<u>あるいは</u><small>(敵を)</small>沼地や森林から誘い出せるか、<u>あるいは</u>包囲により圧倒することができるか、というときに、
**:<span style="color:#009900;">(訳注:sive ~ sive …「あるいは~、あるいは…」)</span>
*[[wikt:en:legatus#Latin:_noun|legati]] ad eum [[wikt:en:princeps#Latin:_noun|principes]] [[wikt:en:Haedui#Latin|Haeduorum]] [[wikt:en:veniunt#Latin|veniunt]]
**[[w:ハエドゥイ族|ハエドゥイー族]]の領袖たちが使節として彼<small>〔カエサル〕</small>のもとへやって来る。
*[[wikt:en:oratum#Latin:_supine|oratum]], ut maxime [[wikt:en:necessarius#Latin:_unavoidable|necessario]] tempore [[wikt:en:civitas#Latin|civitati]] [[wikt:en:subveniat#Latin|subveniat]]<!--;-->:
**きわめて緊急の時に、部族を助けてくれるように、と頼むために。
:
; ハエドゥイー族の救援要請(以下、間接話法)
*<!--❸--><sup>(3)</sup> [[wikt:en:summus#Latin|summo]] esse in [[wikt:en:periculum#Latin|periculo]] rem,
**事態は最大の危機にある。
*quod, cum [[wikt:en:singulus#Latin|singuli]] [[wikt:en:magistratus#Latin|magistratus]] [[wikt:en:antiquitus#Latin|antiquitus]] [[wikt:en:creari#Latin|creari]] atque [[wikt:en:regius#Latin|regiam]] [[wikt:en:potestas#Latin|potestatem]] <u>annum</u> [[wikt:en:obtineo#Latin|obtinere]] [[wikt:en:consuessent#Latin|consuessent]],
**──というのは、昔から一人ずつの統領が選出されて、一年ごとに支配権力に就くことが常であったのに、
**:<span style="color:#009900;">(訳注:[[ガリア戦記 第1巻#16節|第1巻16節]]によれば、ウェルゴブレトゥス [[w:la:Vergobretus|Vergobretus]]という最高官職が毎年選ばれて大権を司る。)</span>
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、α系写本では [[wikt:en:annum#Latin|annum]] だが、<br> β系写本では [[wikt:en:annuam#Adjective|annuam]] となっている。)</span>
*duo [[wikt:en:magistratus#Latin|magistratum]] [[wikt:en:gerant#Latin|gerant]]
**2名が統領を司り、
*et se [[wikt:en:uterque#Latin|uterque]] eorum legibus <u>creatum esse</u> [[wikt:en:dicat#Latin:_speak|dicat]].
**彼らの双方ともに自分は法により<small>〔合法的に〕</small>選出されたのであると言っているのだから──。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、α系写本では [[wikt:en:creatus#Latin|creatum]] esse だが、<br> β系写本では esse は省かれている。)</span>
: <!-- [[wikt:en:| -->
{{wikipedia|en:Convictolitavis}}
*<!--❹--><sup>(4)</sup> Horum esse alterum [[wikt:en:Convictolitavis#Latin|Convictolitavem]], [[wikt:en:florens#Latin|florentem]] et [[wikt:en:inlustris#Latin|inlustrem]] [[wikt:en:adulescens#Noun|adulescentem]]<!--,-->;
**彼らの一方は、コンウィクトリタウィスで、声望があり、秀でた青年である。
*alterum [[wikt:en:Cotus#Latin|Cotum]], [[wikt:en:antiquissimus#Latin|antiquissima]] familia [[wikt:en:natus#Latin:_born|natum]]
**他方は、コトゥスで、とても古くからの家系に生まれて、
*atque ipsum hominem summae [[wikt:en:potentia#Latin|potentiae]] et magnae [[wikt:en:cognatio#Latin|cognationis]],
**自身も最大勢力と多くの縁戚関係をもつ人物であり、
*cuius frater Valetiacus proximo anno eundem [[wikt:en:magistratus#Latin|magistratum]] [[wikt:en:gesserit#Latin|gesserit]].
**その兄弟ウァレティアクスは前年に同じ統領を司っていたのである。
: <!-- [[wikt:en:| -->
*<!--❺--><sup>(5)</sup> Civitatem esse omnem in [[wikt:en:arma#Latin|armis]];
**部族は皆が武装している。
*[[wikt:en:divisus#Latin|divisum]] [[wikt:en:senatus#Latin|senatum]], divisum [[wikt:en:populus#Latin:_people|populum]], <u>suas</u> [[wikt:en:cuiusque#Latin|cuiusque]] eorum [[wikt:en:clientela#Latin|clientelas]].
**評議会も分裂し、民衆も分裂し、彼ら<small>〔2名〕</small>の<small>(それぞれの)</small>庇護民となっている。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部の suas は主要写本ωの記述だが、より劣った写本では in suas となっている。)</span>
*[[wikt:en:quodsi#Latin|Quodsi]] [[wikt:en:diutius#Latin|diutius]] [[wikt:en:alatur#Latin|alatur]] [[wikt:en:controversia#Latin|controversia]],
**もしこれ以上、紛争が進められれば、
*fore uti pars cum parte civitatis [[wikt:en:confligat#Latin|confligat]].
**部族の派閥と派閥が激突することになるであろう。
*Id ne [[wikt:en:accidat#Etymology_1|accidat]], [[wikt:en:positus#Latin|positum]] in eius [[wikt:en:diligentia#Latin|diligentia]] atque [[wikt:en:auctoritas#Latin|auctoritate]].
**それが起こらないかは、彼(カエサル)の入念さと影響力にかかっている。
<!--
<span style="color:#009900;"></span>
<small></small>
**:<span style="color:#009900;">(訳注:
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:
-->
===33節===
*<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/33節]] {{進捗|00%|2026-10-04}}</span>
;カエサルがハエドゥイー族の権力をコンウィクトリタウィスに与える
:
; カエサルが、ハエドゥイー族の内紛を危惧する
*<!--❶--><sup>(1)</sup> Caesar, <u>etsi</u> a bello atque hoste [[wikt:en:discedo#Latin|discedere]] [[wikt:en:detrimentosus#Latin|detrimentosum]] esse [[wikt:en:existimabat#Latin|existimabat]],
**カエサルは、戦争や敵から離れることは損害をもたらすものである、と考えていたのではあるが、
*<u>tamen</u> non [[wikt:en:ignorans#Latin|ignorans]], [[wikt:en:quantus#Latin|quanta]] ex [[wikt:en:dissensionibus#Latin|dissensionibus]] [[wikt:en:incommodum#Noun|incommoda]] [[wikt:en:oriri#Latin|oriri]] [[wikt:en:consuessent#Latin|consuessent]],
**しかしながら、[[wikt:ja:内訌|内訌]]からどれほどの災厄が生じることが常であるか、知らないではなかったし、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:etsi#Latin|etsi]] ~, [[wikt:en:tamen#Latin|tamen]] …「~ではあるが、しかしながら…」)</span>
*ne [[wikt:en:tantus#Latin|tanta]] et [[wikt:en:tam#Latin|tam]] [[wikt:en:coniunctus#Latin:_participle|coniuncta]] [[wikt:en:populus#Latin|populo]] [[wikt:en:Romanus#Adjective|Romano]] [[wikt:en:civitas#Latin|civitas]],
**──これほど大きく、これほどローマ人民と協同している<small>(ハエドゥイーの)</small>{{ruby|部族国家|キーウィタース}}が、
*quam ipse semper [[wikt:en:aluisset#Latin|aluisset]] [[wikt:en:omnis#Latin|omnibus]]<nowiki>que</nowiki> rebus [[wikt:en:ornasset#Latin|ornasset]],
**彼らのことを<small>(カエサル)</small>自身は常に助成して、かつあらゆる事柄で敬意を表していたのだが、
*ad [[wikt:en:vis#Latin|vim]] atque [[wikt:en:arma#Latin|arma]] [[wikt:en:descenderet#Latin|descenderet]],
**<small>(彼らが内紛という)</small>暴力や戦乱に沈み込まないように、
*atque ea pars, quae [[wikt:en:minus#Latin:_adverb|minus]] sibi [[wikt:en:confideret#Latin|confideret]], [[wikt:en:auxilia#Latin|auxilia]] a [[wikt:en:Vercingetorix#Latin|Vercingetorige]] [[wikt:en:arcesseret#Latin|arcesseret]],
**かつ、自分たちにとって劣勢だと確信している一派が[[w:ウェルキンゲトリクス|ウェルキンゲトリークス]]の支援を呼び寄せないように──
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:ne ~ civitas, ~ descenderet, ~ arcesseret「~部族が、~沈まないように、~招かないように」)</span>
*huic rei [[wikt:en:praevertendus#Latin|praevertendum]] [[wikt:en:existimavit#Latin|existimavit]],
**この事柄は<small>(戦争遂行よりも)</small>優先されるべき、と考えた。
:
; ハエドゥイー族の内紛を沙汰すべく、カエサル自らが赴く
*<!--❷--><sup>(2)</sup> et, quod [[wikt:en:lex#Latin|legibus]] [[wikt:en:Haedui#Latin|Haeduorum]] iis, qui summum [[wikt:en:magistratus#Latin|magistratum]] [[wikt:en:obtinerent#Latin|obtinerent]], [[wikt:en:excedo#Latin|excedere]] ex finibus non [[wikt:en:liceret#Latin|liceret]],
**──というのは、[[w:ハエドゥイ族|ハエドゥイー族]]の法により、最高官職に就いている者は領土から出ることを許されないので──
*ne [[wikt:en:aliquid#Latin:_pronoun|quid]] de [[wikt:en:ius#Latin:_justice|iure]] aut de [[wikt:en:lex#Latin|legibus]] eorum [[wikt:en:deminuisse#Latin|deminuisse]] [[wikt:en:videretur#Latin|videretur]],
**<small>(カエサルが)</small>彼らの法令あるいは法制について何ら軽視したとは思われないように、
[[画像:FR-58-Decize29.JPG|thumb|right|250px|デケティア([[w:la:Decetia|Decetia]])すなわち現在のドスィーズ([[w:fr:Decize|Decize]])の景観。[[w:ハエドゥイ族|ハエドゥイー族]]の版図であった[[w:ニエーヴル県|ニエーヴル県]]の南部にあり、リゲル川(現[[w:ロワール川|ロワール川]])のほとりに位置している。]]
*ipse in [[wikt:en:Haedui#Latin|Haeduos]] [[wikt:en:proficisci#Latin|proficisci]] [[wikt:en:statuit#Latin|statuit]]
**<small>(カエサル)</small>自身がハエドゥイー族のもとに出発することを決心した。
*[[wikt:en:senatus#Latin|senatum]]<nowiki>que</nowiki> omnem et <u>quos inter [[wikt:en:controversia#Latin|controversia]] [[wikt:en:esset#Latin:_be|esset]]</u>
**かつ、<u>評議会</u>の全員、および紛争が介在しているところの者たちを
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:部族国家の合議制統治機関を、カエサルの『ガリア戦記』では<br> ローマの元老院になぞらえて [[wikt:en:senatus#Latin|senatus]] と呼んでいるが、<br> 区別して「評議会」と訳す。)</span>
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:quos inter ~ は、関係節の関係代名詞 quos が<br> 前置詞 inter の前に出ている語順。)</span>
*ad se [[wikt:en:Decetia#Latin|Decetiam]] [[wikt:en:evocavit#Latin|evocavit]].
**デケティアの自分<small>〔カエサル〕</small>のもとへ呼び出した。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:デケティア [[w:la:Decetia|Decetia]] は、現在の[[w:en:Decize|Decize]] ドシーズ(ドゥスィズ<ref>Decize の発音は [[wikt:fr:Decize|Decize]] を参照せよ。</ref>)であると考えられている。)</span>
:
*<!--❸--><sup>(3)</sup> Cum prope omnis civitas eo [[wikt:en:convenisset#Latin|convenisset]], [[wikt:en:doceretur#Latin|doceretur]]<nowiki>que</nowiki>
**部族のほぼすべての<small>(主だった)</small>者たちがそこに集まっていたときに、<small>(以下のことが)</small>報知された。
*[[wikt:en:paucus#Latin|paucis]] [[wikt:en:clam#Latin|clam]] [[wikt:en:convocatus#Latin|convocatis]] [[wikt:en:alius#Latin|alio]] loco, [[wikt:en:alius#Latin|alio]] tempore atque [[wikt:en:oportuerit#Latin|oportuerit]],
**わずかな者たちが密かに、あるべきはずとは別の場所、別の時に呼び集められて、
*[[wikt:en:fratrem#Latin|fratrem]] a [[wikt:en:fratre#Latin|fratre]] [[wikt:en:renuntiatus#Latin|renuntiatum]] <span style="color:#009900;">[esse]</span>,
**兄により弟<small>(の就位)</small>が告げられたというのだ。
**:<span style="color:#009900;">(訳注:前年に統領であった兄ウァレティアクスによって<br> 弟コトゥスの統領への就位が告げられたということであろう。)</span>
*<span style="font-size:11pt;">cum leges <u>duo</u> ex una familia [[wikt:en:vivus#Latin|vivo]] [[wikt:en:utroque#Latin|utroque]] <u>non solum</u> [[wikt:en:magistratus#Latin|magistratus]] [[wikt:en:creari#Latin|creari]] [[wikt:en:vetarent#Latin|vetarent]], <u>sed etiam</u> in [[wikt:en:senatus#Latin|senatu]] esse [[wikt:en:prohiberent#Latin|prohiberent]],</span>
**<span style="font-size:11pt;">──法が、一家族の2名が双方とも存命中に、統領に選出されるのを禁じるだけでなく、<u>評議会</u>にいることも禁じているのに──</span>
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:non [[wikt:en:solum#Latin:_adverb|solum]] ~ [[wikt:en:sed#Latin|sed]] [[wikt:en:etiam#Latin|etiam]] …「~のみならず、…もまた」)</span>
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、χ・β系写本や写本B・M・Sでは [[wikt:en:duo#Latin|duo]] だが、<br> 写本L・Nでは [[wikt:en:duos#Latin|duos]] となっている。)</span>
*[[wikt:en:Cotus#Latin|Cotum]] [[wikt:en:imperium#Latin|imperium]] [[wikt:en:depono#Latin|deponere]] [[wikt:en:coegit#Latin|coegit]]<!--,-->;
**(カエサルは)コトゥスに支配権を放棄することを強要した。
: <!-- [[wikt:en:| -->
*<!--❹--><sup>(4)</sup> [[wikt:en:Convictolitavis#Latin|Convictolitavem]], qui per [[wikt:en:sacerdos#Latin|sacerdotes]] [[wikt:en:mos#Latin|more]] [[wikt:en:civitas#Latin|civitatis]] [[wikt:en:intermissus#Latin|intermissis]] [[wikt:en:magistratus#Latin|magistratibus]] [[wikt:en:esset#Latin:_be|esset]] [[wikt:en:creatus#Latin|creatus]],
**コンウィクトリタウィスは、統領が空位になったときに、部族の規則により、<u>祭司</u>を通じて選出されたので、
**:<span style="color:#009900;">(訳注:ここでいう祭司 sacerdos が[[ガリア戦記 第6巻#13節|第6巻13節]]以下で説明された[[w:ドルイド|ドルイド]]と同じか否かは不詳である。)</span>
*[[wikt:en:potestas#Latin|potestatem]] [[wikt:en:obtineo#Latin|obtinere]] [[wikt:en:iussit#Latin|iussit]].
**<small>(カエサルは彼に)</small>権力の座に就くことを命じた。
<!--
<span style="color:#009900;"></span>
<small></small>
**:<span style="color:#009900;">(訳注:
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:
-->
===34節===
*<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/34節]] {{進捗|00%|2026-10-18}}</span>
;ハエドゥイー族を動員し、ローマ軍をカエサルとラビエーヌスの二隊に分散
: <!-- [[wikt:en:| -->
*<!--❶--><sup>(1)</sup> Hoc decreto interposito,
**この決定により仲裁すると、
*cohortatus [[wikt:en:Haedui#Latin|Haeduos]],
**<small>(カエサルは)</small>[[w:ハエドゥイ族|ハエドゥイー族]]に以下のように励ました。
*ut controversiarum ac dissensionis obliviscerentur
**<small>(部族内部の)</small>紛争や不和を忘れるように、
*atque omnibus omissis his rebus
**かつ、これらすべての事情を度外視して、
*huic bello servirent,
**<small>(ウェルキンゲトリークスとの)</small>この戦争に尽くすように、
*<u>[[wikt:en:ea#Latin:_things|ea]]<nowiki>que</nowiki>, quae</u> meruissent, praemia ab se devicta Gallia exspectarent,
**ガッリアが征服されたときには<small>(彼らが)</small>受けるに値する自分<small>〔カエサル〕</small>からの恩賞を期待するように、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部の [[wikt:en:ea#Latin:_things|ea]]<nowiki>que</nowiki> quae は、最初の印刷本 [[ガリア戦記/注解編/写本と校訂版#Editio_princeps|ed. pr.]] による修正で、<br> α系・ρ系写本では [[wikt:en:ea#Latin:_things|ea]] quae <br> π系写本では atque quae となっている。)</span>
*equitatum<nowiki>que</nowiki> omnem et peditum milia X([[wikt:en:decem#Latin|decem]]) sibi celeriter mitterent,
**<small>(ハエドゥイー族の)</small>騎兵隊のすべてと歩兵1万名を自分<small>〔カエサル〕</small>に速やかに派遣するように、
*quae in praesidiis rei frumentariae causa disponeret,
**それらは糧食供給のために守備隊として分けて置くものである、と。
*exercitum in duas partes divisit:
**<small>(カエサルは)</small>軍隊を二つの方面軍に分けた。
[[画像:Brioude pont.JPEG|thumb|right|250px|エラウェル川([[w:la:Elaver|Elaver]])こと現在の[[w:アリエ川|アリエ川]](Allier)。ハエドゥイー族領の境辺りでリゲル川([[w:la:Liger|Liger]])こと現[[w:ロワール川|ロワール川]]([[w:fr:Loire (fleuve)|Loire]])に合流する。]]
: <!-- [[wikt:en:| -->
*<!--❷--><sup>(2)</sup> quattuor legiones in [[wikt:en:Senones#Latin|Senones]] [[wikt:en:Parisii#Latin|Parisios]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:Labienus#Latin|Labieno]] ducendas dedit,
**4個[[w:ローマ軍団|軍団]]をセノネース族やパリスィイー族のところに率いて行くべく[[w:ティトゥス・ラビエヌス|ラビエーヌス]]に委ねた。
**:<span style="color:#009900;">(訳注:ラビエーヌス [[w:la:Titus Labienus|Labienus]] のこの遠征については[[#57節|57節]]~62節で述べられる。)</span>
*sex ipse in [[wikt:en:Arverni#Latin|Arvernos]] ad oppidum [[wikt:en:Gergovia#Latin|Gergoviam]] secundum flumen [[wikt:en:Elaver#Latin|Elaver]] duxit;
**6個を自身<small>〔カエサル〕</small>がアルウェルニー族のところの城塞都市ゲルゴウィアへエラウェル川に沿って率いて行った。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:エラウェル川 [[w:la:Elaver|Elaver]] は現在の[[w:アリエ川|アリエ川]] Allier である。)</span>
*equitatus partem illi [[wikt:en:adtribuit#Latin|adtribuit]], partem sibi reliquit.
**騎兵隊の一部は彼<small></small>(ラビエーヌス)に割り当てて、(残りの)部分は自分のもとに残した。
: <!-- [[wikt:en:| -->
*<!--❸--><sup>(3)</sup> Qua re cognita
**その事を知ると、
*[[wikt:en:Vercingetorix#Latin|Vercingetorix]] omnibus interruptis eius fluminis pontibus
**[[w:ウェルキンゲトリクス|ウェルキンゲトリークス]]はその川のすべての橋を破却しながら、
*ab altera fluminis parte iter facere coepit.
**川の別の側を行軍し始めた。
<!--
<span style="color:#009900;"></span>
<small></small>
**:<span style="color:#009900;">(訳注:
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:
-->
===35節===
'''カエサルが陽動によってエラウェル川に架橋、渡河する'''
*① Cum uterque utrimque exisset exercitus<ref>utrimque exisset exercitus はα系写本の記述で、β系写本では utrique esset exercitui となっている。</ref>, in conspectu, fereque e regione castris castra ponebant<ref>ponebant はα系写本の記述で、β系写本では poneret となっている。</ref>,
**(ガッリア勢とローマ勢の)軍隊の双方が互いに視界にあって、ほぼ真向かいに互いの陣営を設置したときに、
*dispositis exploratoribus, necubi effecto ponte Romani copias traducerent,
**(ウェルキンゲトリークスは)ローマ人の軍勢がどこにも橋を造って渡河しないように、偵察者たちを分けて置き、
*erat in magnis Caesaris<ref>Caesaris はα系写本などの記述で、π系写本などでは Caesari となっている。</ref> difficultatibus res,
**カエサルにとって事態は大きな困難になっていた。
*ne maiorem aestatis partem flumine impediretur,
**夏の大部分(の対岸の敵との交戦)が川により妨げられるのではないか、
*quod non fere ante autumnum [[w:la:Elaver|Elaver]] vado transiri solet.
**というのは、[[w:アリエ川|エラウェル川]]は秋の前はほとんど浅瀬を渡らない習わしであったからだ。
*② Itaque, ne id accideret, silvestri loco castris positis
**こうして、それが生じないように、森林地帯に陣営を設置した。
*e regione unius eorum pontium, quos [[w:la:Vercingetorix|Vercingetorix]] rescindendos curaverat,
**[[w:ウェルキンゲトリクス|ウェルキンゲトリークス]]が切り裂かれるように手配していたところの橋の一つの真向かいに。
*postero die cum duabus legionibus in occulto restitit;
**翌日に、2個[[w:ローマ軍団|軍団]]とともに密かなところに留まった。
*③ reliquas copias cum omnibus impedimentis, ut consueverat, misit,
**残りの軍勢(=4個軍団)をすべての輜重とともに、通常のように、出発させた。
*captis<ref>写本(ω)では captis となっているが、Herald Fuchs の校訂版(1932年)では sic collocatis という記述が提案されている。etc.</ref> quibusdam cohortibus, uti numerus legionum constare videretur.
**軍団の数を保っていると(敵から)見られるように、いくつかの<ruby><rb>[[w:コホルス|歩兵大隊]]</rb><rp>(</rp><rt>コホルス</rt><rp>)</rp></ruby>を含ませていた。
*④ His quam longissime possent egredi<ref>egredi はα系写本の記述で、β系写本では progredi となっている。</ref> iussis,
**彼ら(4個軍団)には、できる限り遠くまで前進することを命じた。
*cum iam ex diei tempore coniecturam ceperat<ref>ceperat はα系写本の記述で、β系写本では caperet となっている。</ref> in castra perventum,
**すでに、日の時刻から(彼らが)宿営地に到達したと(カエサルが)推測をしたときに、
*isdem sublicis, quarum pars inferior integra remanebat, pontem reficere coepit.
**(前述の)同じ橋杭は、そのより下方の部分が損なわれないで残っていたので、橋を修復し始めた。
*⑤ Celeriter effecto opere
**速やかに工事が成し遂げられて、
*legionibusque traductis et loco castris idoneo delecto
**(2個)軍団が渡河させられて、陣営に適切な地点を選んで、
*reliquas copias revocavit.
**残りの軍勢(=4個軍団)を呼び戻した。
*⑥ Vercingetorix re cognita,
**ウェルキンゲトリークスは事態を知って、
*ne contra suam voluntatem dimicare cogeretur,
**自らの意向に反して(ローマ勢と)争闘することを強いられないように、
*magnis itineribus antecessit.
**強行軍で(ゲルゴウィアに向けて)先行した。
===36節===
[[画像:FR-63-Gergovie.JPG|thumb|right|300px|[[w:ゲルゴウィア|ゲルゴウィア]]([[w:la:Gergovia|Gergovia]])すなわち現在のジェルゴヴィ高地([[w:fr:Plateau de Gergovie|Plateau de Gergovie]])の[[w:ピュイ=ド=ドーム県|ピュイ=ド=ドーム県]]県道978号(D978)からの眺望。19世紀の[[w:ウジェーヌ・ストッフェル|ウジェーヌ・ストッフェル]]大佐(colonel Eugène Stoffel)の発掘調査によって、城砦やローマ軍の溝の遺構などが発見され、当地がゲルゴウィアの古戦場だと確認された。]]
[[画像:Siège_GergovieI_-52.png|thumb|right|300px|ゲルゴウィアにおける両軍の布陣図。山の頂にある城塞都市に隣接してガッリア諸部族の陣営(黄色部分)、右方にローマ軍の大きな陣営(赤色部分)と左下にローマ軍の小さな陣営(赤色部分)が見える。推定される位置関係は19世紀の[[w:ウジェーヌ・ストッフェル|ストッフェル]]大佐の発掘調査に依拠しており、小陣営があった地点は現在のラ・ロシュ=ブランシュ([[w:fr:La Roche-Blanche (Puy-de-Dôme)|La Roche-Blanche]])だと考えられている。]]
'''両軍がゲルゴウィアの要衝に陣営を築く'''
*① Caesar ex eo loco quintis castris [[w:la:Gergovia|Gergoviam]] pervenit
**カエサルは(渡河した)その地点から5回目の宿営で[[w:ゲルゴウィア|ゲルゴウィア]]に到着した。
*equestrique eo die proelio levi facto,
**(到着した)その日に(ガッリア勢と)軽微な[[w:騎兵|騎兵]]戦を闘って、
*perspecto urbis situ, quae posita in altissimo monte omnes aditus difficiles habebat,
**山の非常に高いところに位置し、すべての接近路を困難なものとしている(ゲルゴウィアの)町の地勢を認識して、
*de expugnatione<ref>expugnatione はα系写本の記述で、β系写本では oppugnatione となっている。</ref> desperavit,
**(拙速に突撃するような)攻略については断念して、
*de obsessione non prius agendum constituit, quam rem frumentariam expedisset.
**糧食調達の整備をするより前には、攻囲について行なうべきでないと決心した。
*② At [[w:la:Vercingetorix|Vercingetorix]], castris prope oppidum in monte<ref>in monte はβ系写本の記述で、α系写本にはない。</ref> positis,
**それに対して、[[w:ウェルキンゲトリクス|ウェルキンゲトリークス]]は、山中の城塞都市の近くに陣営を設置して、
*mediocribus circum se intervallis separatim singularum civitatium<ref>civitatium はB・M・L・N写本の記述で、χ・S・β系写本では civitatum となっている。</ref> copias conlocaverat
**自陣の周りに、適切な間隔で個々の部族の軍勢を別々に駐屯させて、
*atque omnibus eius iugi collibus occupatis, qua despici poterat,
**その尾根のうち(山麓を)見下ろすことができたすべての丘陵を占有して、
*horribilem speciem praebebat;
**恐ろしげな姿を現わした。
*③ principesque earum civitatium<ref>civitatium はA・Q・B・M・L・N写本の記述で、Q・S・β系写本では civitatum となっている。</ref>, quos sibi ad consilium capiendum delegerat,
**(ウェルキンゲトリークス)自らが作戦を立てるために選び出していた諸部族の領袖たちに
*prima luce cotidie ad se convenire iubebat,
**毎日、夜明けに自分のところへ集まることを命じた。
*seu quid communicandum, seu quid administrandum videretur,
**何らかのことを伝達・協議するのか、あるいは何らかのことを指導するのだと思われる。
**:<span style="color:#009900;">(訳注:seu ~ seu …「あるいは~、あるいは…」)</span>
*④ neque ullum fere diem intermittebat, quin equestri proelio interiectis sagittariis,
**騎兵戦に弓兵を介在させることを、ほとんどどの日も中断せずに、
*quid in quoque esset animi ac virtutis suorum, perspiceretur<ref>perspiceretur はα系写本の記述で、T写本では perspiceret、β系写本では periclitaretur となっている。</ref>.
**どのような心構えや武勇が、配下の者たちのおのおのにあるかを、吟味した。
*⑤ Erat e regione oppidi collis sub ipsis radicibus montis
**山のその麓の下方に、城塞都市の真向かいに、丘陵があって、
*egregie munitus atque ex omni parte circumcisus;
**あらゆる方面から周囲が険しくて、(その地形により)すばらしく護られていた。
*quem si tenerent nostri, et aquae magna parte et pabulatione libera prohibituri hostes videbantur.
**もし、それを我が方(ローマ勢)が占めれば、水源の大半と自由な糧秣徴発から敵たちを妨げるであろうと思われた。
*⑥ Sed is locus praesidio ab his, non nimis firmo, tenebatur.
**だが、その地点は、彼ら(ガッリア勢)により、大して強力ではない守備隊で占められていた。
*⑦ Tamen silentio noctis Caesar ex castris egressus,
**にもかかわらず(昼間ではなく)夜の静けさのうちに、カエサルは陣営から出撃して、
*priusquam subsidio ex oppido veniri posset,
**城塞都市(のそばの陣営)から援兵に来られるより前に、
*deiecto praesidio potitus loco duas ibi legiones conlocavit
**守備隊を追い出して、地点を占拠して、そこに2個[[w:ローマ軍団|軍団]]を駐屯させた。
*fossamque duplicem duodenum pedum a maioribus castris ad minora perduxit,
**12[[w:ペース (長さ)|ペース]](=約3.6mの幅)の二重の堀を、より大きな陣営から(この丘陵の)より小さな陣営へ至らしめた。
*ut tuto ab repentino hostium incursu singuli commeare possent.
**敵たちの不意の襲撃から安全に、1人1人が往来することができるように。
===37節===
'''ハエドゥイー族のコンウィクトリタウィスがガッリア同盟軍に内応する'''
*① Dum haec ad [[w:la:Gergovia|Gergoviam]] geruntur,
**これらがゲルゴウィアのところでなされている間に、
*Convictolitavis [[w:la:Haedui|Haeduus]],
**[[w:ハエドゥイ族|ハエドゥイー族]]のコンウィクトリタウィスは、
*cui magistratum adiudicatum a Caesare demonstravimus,
**その者はカエサルによって統領として承認されたと([[#33節|33節]]で)既述したが、
*sollicitatus ab Arvernis pecunia cum quibusdam adulescentibus conloquitur,
**[[w:アルウェルニ族|アルウェルニー族]]により金銭でそそのかされて、ある若者たちと談判した。
*quorum erat princeps Litaviccus atque eius fratres,
**その者たちの領袖は[[w:リタウィックス|リタウィックス]]とその兄弟たちであり、
*amplissima familia nati adulescentes.
**とても強大な一族に生まれた若者たちだった。
*② Cum his praemium communicat
**彼らとともに(アルウェルニー族からの)報酬を共有して、
*hortaturque, ut se liberos et imperio natos meminerint.
**自分たちが自由民で支配層の生まれであるのを思い起こせ、と鼓舞した。
*③ Unam esse Haeduorum civitatem, quae certissimam Galliae victoriam distineat<ref>distineat はM・N・π・R写本などの記述で、Q・U写本などでは destineat 、A・B・S写本などでは dedistineat などとなっている。</ref>;
**ハエドゥイーの部族国家は、ガッリアの至極確実な勝利を阻んでいる唯一のものであり、
*eius auctoritate reliquas contineri;
**その声望により、ほかの(同盟部族の)ものたちが(ローマ側に)保持されているが、
*qua traducta locum consistendi Romanis in Gallia non fore.
**それが(ガッリア勢に)引き入れられることによって、ガッリアにおいてローマ人が留まり続ける場はないであろう。
*④ Esse nonnullo se Caesaris beneficio adfectum,
**自分はカエサルの少なからぬ恩義をかけられているが、
*sic tamen, ut iustissimam apud eum causam obtinuerit;
**しかし、彼(カエサル)のもとで至極合法的な理由を手に入れたまでであり、
*sed plus communi libertati tribuere.
**しかし、(ガッリアの)共通の自由に従うことの方がより大きい。
*⑤ Cur enim potius Haedui de suo iure et de legibus ad Caesarem disceptatorem quam Romani ad Haeduos veniant?
**なぜ実際、ハエドゥイー族は自らの法令や法制について、ローマ人がハエドゥイー族へ来るよりむしろ、カエサルを仲裁者とするのか?
*⑥ Celeriter adulescentibus et oratione magistratus et praemio deductis,
**若者たちは速やかに、統領の演説と報酬によって導き入れられた。
*cum se vel principes eius consilii fore profiterentur,
**自分たちがその謀計の首謀者にすらなろうと申し出たときに、
*ratio perficiendi quaerebatur,
**(謀計を)成し遂げる方法が求められた。
*quod civitatem temere ad suscipiendum bellum adduci posse non confidebant.
**というのは、部族がむやみに(ローマ人との)戦争実行へ動かされることができるとは確信していなかったからだ。
*⑦ Placuit, ut Litaviccus decem illis milibus, quae Caesari ad bellum mitterentur, praeficeretur atque ea ducenda curaret,
**リタウィックスに、カエサルに戦争のために派遣されるあの(歩兵)1万名を指揮させ率いさせるのが良いとされた。
**:<span style="color:#009900;">(訳注:歩兵1万名については[[#34節|34節]]を参照。)</span>
*fratresque eius ad Caesarem praecurrerent.
**彼の兄弟たちは、カエサルのところへ先立って行った。
*Reliqua qua ratione agi placeat constituunt.
**残りのことが、どのようなやり方で行なわれるのが良いかが決められた。
===38節===
'''リタウィックスの鼓舞でハエドゥイー族の歩兵1万が挙兵する'''
*① Litaviccus accepto exercitu
**リタウィックスは(1万名の)歩兵隊を受け取って、
*cum milia passuum circiter XXX(triginta)<ref>XXX(triginta) はα系写本の記述で、β系写本では XL(quadraginta) となっている。</ref> ab<ref>ab は写本(ω)の記述であるが、モイゼル(Henricus Meusel)は a を提案している。</ref> [[w:la:Gergovia|Gergovia]] abesset,
**[[w:ゲルゴウィア|ゲルゴウィア]]から約30[[w:ローママイル|ローママイル]](=45km弱)離れたところに来たときに、
*convocatis subito militibus lacrimans,
**兵士たちを突然に呼び集めて、泣きながら、
*② "Quo proficiscimur," inquit, "milites?
**「兵士らよ、どこへ我々は進むのか?」と言った。
*Omnis noster equitatus, omnis nobilitas interiit;
**「我が方(ハエドゥイー族)のすべての[[w:騎兵|騎兵隊]]とすべての高貴な者たちは滅んだ。
*principes civitatis, [[w:la:Eporedorix|Eporedorix]] et Viridomarus,
**部族の領袖たち、エポレドリクスとウィリドマルスは、
*insimulati proditionis ab Romanis indicta causa interfecti sunt.
**裏切りの罪を着せられて、ローマ人たちによって、弁解の余地なく殺されてしまったのだ。
**:<span style="color:#009900;">(訳注:indicta causa「弁解の余地なく」)</span>
*③ Haec ab ipsis<ref>ipsis はα系写本の記述で、β系写本では his となっている。</ref> cognoscite, qui ex ipsa caede fugerunt;
**これは、その虐殺から逃げて来た当人たちから聞き知ってくれ。
*nam ego fratribus atque omnibus meis propinquis interfectis
**なぜなら、私は、兄弟たちやすべての我が親族たちが殺されて
*dolore prohibeor, quae gesta sunt, pronuntiare."
**悲嘆により、なされたことを物語ることを妨げられているからだ。」
*④ Producuntur hi<ref>hi はφ・β系写本の記述で、A写本では ii 、Q写本では hii となっている。</ref>, quos ille edocuerat quae dici vellet,
**彼(リタウィックス)が言って欲しいことを教え込んでいた者たちが連れ出されて来て、
*atque eadem, quae Litaviccus pronuntiaverat, multitudini exponunt:
**リタウィックスが物語ったのと同じことを群衆に説明した。
*⑤ multos<ref>multos はα系写本の記述で、β系写本では omnes となっている。</ref> equites [[w:la:Haedui|Haeduorum]] interfectos, quod conlocuti cum Arvernis dicerentur;
**ハエドゥイー族の多くの騎兵たちは、アルウェルニー族と談判したと言われたので、殺された、と。
*ipsos se inter multitudinem militum occultasse atque ex media caede fugisse.
**(彼ら)自身は、兵士ら多数の間に身を隠して、虐殺の最中から逃げて来たのだ、と。
*⑥ Conclamant Haedui et Litaviccum obsecrant, ut sibi consulat.
**ハエドゥイー族の者たちは叫び声を上げて、リタウィックスに、自分たちに(どうするべきか)助言するように懇願した。
*"Quasi vero" inquit ille "consilii sit res, ac non necesse sit
**彼は言った「実にあたかも、事態が協議するべきというかのようだ。(協議する)必要はないのだ。
*nobis Gergoviam contendere et cum Arvernis nosmet coniungere.
**我々にとって、ゲルゴウィアに急行して、アルウェルニー族と我々が合流することは。
*⑦ An dubitamus, quin nefario facinore admisso Romani iam ad nos interficiendos concurrant?
**非道の悪行を犯したローマ人がもはや我々を殺戮するために襲いかかって来ることを疑うのかね?
*⑧ Proinde, si quid in nobis animi est,
**それゆえに、もし我々に何らかの心構えがあるならば、
*persequamur eorum mortem, qui indignissime interierunt,
**とても不面目に滅びた者たちの死に仇討ちしようではないか。
*atque hos latrones interficiamus."
**かの略奪者たち(ローマ人)を誅殺しようではないか。」
*Ostendit cives Romanos, qui eius praesidii fiducia una erant<ref>erant は写本(ω)の記述であるが、モムゼン(Mommsen)らは ierant を提案している。</ref>:
**(リタウィックスは)彼の護衛を信頼して一緒にいたローマ市民たちを示した。
*⑨ Continuo<ref>Continuo はβ系写本の記述で、α系写本にはない。</ref> magnum numerum frumenti commeatusque diripit,
**ただちに、(ローマ市民たちの)糧食や必需品の多数を略奪して、
*ipsos crudeliter excruciatos interficit.
**当人たちを残酷に拷問して殺した。
*⑩ Nuntios tota civitate Haeduorum dimittit,
**ハエドゥイー族の伝令たちを、部族全体にわたって遣わして、
*in<ref>in はβ系写本の記述だが、α系写本にはない。</ref> eodem mendacio de caede equitum et principum permovet<ref>permovet はL・N写本の記述だが、B写本では permanet 、χ・M・S・β系写本などでは permonet となっている。</ref>;
**騎兵や領袖たちの虐殺について、同じ嘘によって扇動した。
*hortatur ut simili ratione atque ipse fecerit suas iniurias persequantur.
**(リタウィックス)自身がしたのと同様のやり方で、自分たちの(受けた)無法に仇討ちするようにと鼓舞した。
===39節===
'''エポレドリクスがハエドゥイー勢1万の寝返りをカエサルに知らせる'''
*① [[w:la:Eporedorix|Eporedorix]] [[w:la:Haedui|Haeduus]], summo loco natus adulescens et summae domi potentiae,
**[[w:ハエドゥイ族|ハエドゥイー族]]の[[w:エポレドリクス|エポレドリクス]]は、最高の身分に生まれた青年で、本国で最高の権勢にあった。
*et una Viridomarus, pari aetate et gratia, sed genere dispari,
**とともに、[[w:ウィリドマルス|ウィリドマルス]]も、同じ年輩で、同様に敬意を受けていたが、異なる階級であった。
*quem Caesar ab Diviciaco sibi traditum ex humili loco ad summam dignitatem perduxerat,
**カエサルは彼を[[w:ディウィキアクス|ディウィキアクス]]により託されて、低い身分から最高の地位へと引き立てていた。
**:<span style="color:#009900;">(訳注:ディウィキアクスはかつてローマに援助を求めた有力者で、カエサルに殺されたドゥムノリクスの兄弟。)</span>
*in equitum numero convenerant nominatim ab eo evocati.
**(その2人は)彼(カエサル)から名指しで呼び出されて、[[w:騎兵|騎兵]]として(ローマの陣中に)一緒に来ていた。
*② His erat inter se de principatu contentio
**彼ら(2人)には、互いに指揮官の座についての競争があって、
*et in illa magistratuum controversia
**あの統領をめぐる紛争においても
**:<span style="color:#009900;">([[#32節|32節]]~33節を参照。)</span>
*alter pro Convictolitavi, alter pro Coto summis opibus pugnaverant<ref>pugnaverant はα系写本の記述で、β系写本では pugnaverat となっている。</ref>.
**一方は[[w:コンウィクトリタウィス|コンウィクトリタウィス]]のために、他方は[[w:コトゥス|コトゥス]]のために、最大限の助力で奮闘していた。
*③ Ex his Eporedorix cognito Litavicci consilio
**彼らのうちエポレドリクスが[[w:リタウィックス|リタウィックス]]の謀計を知って、
*media fere nocte rem ad Caesarem defert;
**ほぼ真夜中に、事情をカエサルのところへ報知した。
*orat ne patiatur civitatem pravis adulescentium consiliis ab amicitia populi Romani deficere;
**(ハエドゥイーの)部族が青年たちのゆがんだ謀計によってローマ人民の友好から背くことを容認しないように懇願した。
*quod futurum provideat, si se tot hominum milia cum hostibus coniunxerint,
**もし、このように多くの幾千もの同胞が敵たちと協同するならば、(上記の)ことが生じると用心するように、と。
*quorum salutem neque propinqui neglegere,
**(寝返った1万の歩兵たちの)縁者たちは彼らの身の安全をなおざりにすることはないし、
*neque civitas levi momento aestimare posset.
**部族が(寝返った歩兵たちの)影響力を軽く評価できない、と。
===40節===
'''カエサルが4個軍団を率いてハエドゥイー勢1万を制止し、リタウィックスは逃亡'''
*① Magna adfectus sollicitudine hoc nuntio Caesar,
**この知らせにより、大きな不安を感じたカエサルは、
*quod semper [[w:la:Haedui|Haeduorum]] civitati praecipue indulserat,
**常に[[w:ハエドゥイ族|ハエドゥイーの部族]]にとくに気遣っていたので、
*nulla interposita dubitatione legiones expeditas quattuor equitatumque omnem ex castris educit;
**何らためらいを差しはさまずに、戦備を整えた4個[[w:ローマ軍団|軍団]]と[[w:騎兵|騎兵隊]]すべてを陣営から進発させた。
*② nec fuit spatium tali tempore ad contrahenda castra,
**このような情勢で、陣営を縮小するための余地はなかった。
**:<span style="color:#009900;"> (訳注:[[#36節|36節]]で、カエサルはゲルゴウィアの大きな陣営および敵に近い小さな陣営を6個軍団で守っていた。)</span>
*quod res posita in celeritate videbatur;
**というのは、事態は迅速さにかかっていると思われたからだ。
*C.(Gaium) Fabium legatum cum legionibus duabus castris praesidio relinquit.
**総督副官[[w:ガイウス・ファビウス|ガイウス・ファビウス]]を2個軍団とともに陣営の守備に残しておいた。
*③ Fratres Litavicci cum comprehendi iussisset,
**(カエサルは)リタウィックスの兄弟たちを拘束することを命じていたのだが、
*paulo ante reperit ad hostes fugisse.
**少し前に(ゲルゴウィアの)敵たちのところへ去ったことを探り出した。
*④ Adhortatus milites ne necessario tempore itineris labore permoveantur,
**(カエサルは)緊急の時に、行軍の労苦により乱されないように、兵士たちを激励して、
*cupidissimis omnibus progressus milia passuum [[w:la:Viginti quinque|XXV]] agmen Haeduorum conspicatus<ref>conspicatus はα系写本の記述で、β系写本では conspicatur となっている。</ref>
**皆がとても熱中していたので、25[[w:|ローママイル]](約37km)進んで、ハエドゥイー族の隊列を視認した。
*immisso equitatu iter eorum moratur atque impedit
**騎兵隊を突進させて、彼ら(ハエドゥイー勢)の行軍を妨げて、停止させた。
*interdicitque omnibus ne quemquam interficiant.
**(ハエドゥイー勢を)誰一人殺さないように(ローマ勢の)皆に禁じた。
*⑤ [[w:la:Eporedorix|Eporedorigem]] et Viridomarum, quos illi interfectos existimabant,
**彼ら(ハエドゥイー勢)が、殺されたものと考えていた者たち、[[w:エポレドリクス|エポレドリクス]]と[[w:ウィリドマルス|ウィリドマルス]]に、
*inter equites versari suosque appellare iubet.
**(ハエドゥイー勢の)騎兵たちの間を歩き回って、味方に呼びかけることを命じた。
*⑥ His cognitis et Litavicci fraude perspecta Haedui manus tendere,
**彼ら(2人)に気付いて、リタウィックスのごまかしを見通して、ハエドゥイー族の者たちは手を差し出して、
*deditionem significare et proiectis armis mortem deprecari incipiunt.
**降伏の意を表して、武器を投げ出して、死を赦免されることを求め始めた。
*⑦ Litaviccus cum suis clientibus,
**[[w:リタウィックス|リタウィックス]]は、配下の子分たちとともに、
*quibus more Gallorum nefas est etiam in extrema fortuna deserere patronos,
**ガッリア人の風習では、最悪の境遇にあってさえも(子分が自分の)親分を見捨てることは非道であったので、
*[[w:la:Gergovia|Gergoviam]] profugit.
**(親分・子分ともども)[[w:ゲルゴウィア|ゲルゴウィア]]に逃れた。
===41節===
'''副官ファビウスの報告:ゲルゴウィアの敵勢がローマ陣営に襲来'''
*① Caesar nuntiis ad civitatem [[w:la:Haedui|Haeduorum]] missis,
**カエサルは伝令たちを[[w:ハエドゥイ族|ハエドゥイー]]の部族(当局)に遣わして、
*qui suo beneficio conservatos docerent quos iure belli interficere potuisset,
**彼ら(伝令)に、戦時の権限により殺せた者たち(歩兵1万)は(カエサル)自らの恩恵により許されたのだ、と説かせた。
*tribusque horis noctis exercitui ad quietem datis castra ad [[w:la:Gergovia|Gergoviam]] movit.
**(カエサルは)夜の3時間を軍隊に休息のために与えて、陣営を引き払ってゲルゴウィアの方へ向かった。
**:<span style="color:#009900;">(訳注:古代ローマの不定時法では、夏季の夜の3時間は、現在の定時法の3時間よりかなり短い。)</span>
*② Medio fere itinere equites a Fabio missi,
**(ゲルゴウィアへの)道程のほぼ中間のところで、ファビウスから[[w:騎兵|騎兵]]たちが遣わされて来て、
*quanto res in periculo fuerit, exponunt.
**事態がどれほどの危機にあるか、を打ち明けた。
*Summis copiis castra oppugnata demonstrant,
**(ガッリア勢の)最大級の軍勢により(ローマ勢の)陣営が攻撃された、と説明した。
*cum crebro integri defessis succederent
**そのときに(ガッリア勢は)たびたび新たな者たちが疲労した者たちに交代していたが、
*nostrosque adsiduo labore defatigarent,
**我が方(ローマ勢)は絶え間ない労苦により疲れ果てていた。
*quibus propter magnitudinem castrorum perpetuo esset isdem in vallo permanendum.
**彼ら(ローマ勢)にとり、陣営の大きさのために、同じ者たちが防柵の中に留まらざるを得なかった。
**:<span style="color:#009900;">(訳注:カエサルは[[#40節|40節]]②項で「陣営を縮小するための余地はなかった」とあらかじめ弁解している。)</span>
*③ Multitudine sagittarum atque omnis generis<ref>omnis generis はα系写本の記述で、β系写本では omni genere となっている。</ref> telorum multos vulneratos;
**(ガッリア勢からの)矢の多数と飛び道具のあらゆる類いによって(ローマ勢の)多くのものが傷つけられた。
*ad haec sustinenda magno usui fuisse tormenta.
**これに持ちこたえるために、投石器が大いに役立った。
*④ Fabium discessu eorum duabus relictis portis obstruere ceteras
**ファビウスは、彼ら(ガッリア勢)が退却すると、2つの門を残して、ほか(の門)を閉鎖した。
*pluteosque vallo addere et se in posterum diem similemque casum apparare<ref>similemque casum apparare はα系写本の記述で、β系写本では similem ad casum parare となっている。</ref>.
**胸壁を防柵を付け加えて、翌日における似たような状況に備えた。
*⑤ His rebus cognitis Caesar
**これらの事態を知って、カエサルは、
*summo studio militum ante ortum solis in castra pervenit.
**兵士たちの最大級の努力によって、日の出の前に(ゲルゴウィアの)陣営に到着した。
===42節===
'''ハエドゥイー族の者たちが反ローマ暴動を引き起こす'''
*① Dum haec ad [[w:la:Gergovia|Gergoviam]] geruntur,
**これらがゲルゴウィアの辺りでなされている間に、
*[[w:la:Haedui|Haedui]] primis nuntiis ab Litavicco acceptis
**[[w:ハエドゥイ族|ハエドゥイー族]]の者たちは、[[w:リタウィックス|リタウィックス]]からの最初の知らせを受け取ったが、
*nullum sibi ad cognoscendum spatium relinquunt.
**自分たちには(この知らせを)調べるための余地を何ら残さなかった。
*② Impellit alios avaritia, alios iracundia et temeritas
**ある者たちを貪欲さが、ある者たちを激しやすさや無分別が駆り立てた。
*─ quae maxime illi hominum generi est innata ─ ut levem auditionem habeant pro re comperta.
**あの種族の人々はとりわけ、軽率な風聞を確認された事として見なすように、生まれついているのだ。
*③ Bona civium Romanorum diripiunt, caedes faciunt, in servitutem abstrahunt.
**(ハエドゥイー族の者たちは)ローマ市民たちの財産を略奪し、殺戮を行なって、隷属状態に引きずり込んだ。
*④ Adiuvat rem proclinatam Convictolitavis
**(さらに)傾いた事態を[[w:コンウィクトリタウィス|コンウィクトリタウィス]]が助長して、
*plebemque ad furorem impellit, ut facinore admisso ad sanitatem reverti pudeat.
**民衆を狂暴さへと、悪行を犯して冷静さへ引き返すことを恥と思うように、駆り立てた。
*⑤ M.(Marcum) Aristium tribunum militum iter ad legionem facientem
**<ruby><rb>[[w:トリブヌス・ミリトゥム|兵士長官]]</rb><rp>(</rp><rt>トリブヌス・ミリトゥム</rt><rp>)</rp></ruby>であるマルクス・アリスティウスが[[w:ローマ軍団|軍団]]のところへ旅しているところを
*fide data ex oppido [[w:la:Cabillonum|Cavillono]] educunt;
**(安全の)保証を与えて、城塞都市カウィッロヌムから連れ出した。
**:<span style="color:#009900;">(訳注:カウィッロヌム Cavillonum はカビッロヌム Cabillonum とも綴り、現在の[[w:シャロン=スュル=ソーヌ|シャロン=スュル=ソーヌ]])</span>
*idem facere cogunt eos, qui negotiandi causa ibi constiterant.
**そこに商売をするために定住していた(ローマ人の)者たちにも同じことをするように強要した。
*⑥ Hos continuo <in><ref>in は写本にないが、近世の活字本から挿入されている。</ref> itinere adorti omnibus impedimentis exuunt;
**直ちに彼らを途中で襲撃して、すべての手荷物を奪い取った。
*repugnantes diem noctemque obsident;
**抵抗する者たちを昼夜にわたって包囲した。
*multis utrimque interfectis
**(ハエドゥイー族とローマ人の)双方とも多くの者たちが殺されて、
*maiorem multitudinem armatorum<ref>armatorum はα系写本の記述で、β系写本では ad arma となっている。</ref> concitant.
**(ハエドゥイー族の)より多くの群衆を武装へと扇動した。
===43節===
'''ハエドゥイー族当局がカエサルに屈服。ガッリア大動乱の予感'''
*① Interim nuntio adlato omnes eorum milites in potestate Caesaris teneri,
**その間に、彼ら(ハエドゥイー族)の兵士すべてがカエサルの権力下で支配されているという知らせがもたらされて、
*concurrunt ad Aristium,
**(ハエドゥイー族当局の者たちは)アリスティウスのところへ急ぎ集まって、
*nihil publico factum consilio demonstrant;
**(ローマ市民に対する襲撃は)何ら公けに企てがなされたものではないと説明した。
*② quaestionem de bonis direptis decernunt,
**(部族当局は、ローマ市民から)略奪された財産についての究明を決定して、
*Litavicci fratrumque bona publicant,
**リタウィックスと兄弟たちの財産を没収し、
*legatos ad Caesarem sui purgandi gratia mittunt.
**カエサルのところへ使節たちを、自分たちを赦免することのために遣わした。
*③ Haec faciunt reciperandorum<ref>reciperandorum はα系写本の記述で、β系写本では recuperandorum となっている。</ref> suorum causa;
**これらを、配下の者たち(=歩兵1万名)を取り戻すために行なったのだ。
*sed contaminati facinore et capti compendio ex direptis bonis,
**しかし(彼らは)悪行に汚染されていて、略奪した財産の利得にとらわれており、
*quod ea res ad multos pertinebat, timore<ref>timore はα系写本の記述で、β系写本では et timore となっている。</ref> poenae exterriti
**その事に多くの者たちが関与していたので、懲罰の恐れに脅かされて、
*consilia clam de bello inire incipiunt
**ひそかに戦争の謀計に取りかかり始めて、
*civitatesque reliquas legationibus sollicitant.
**ほかの諸部族を使節派遣によって、そそのかした。
*④ Quae tametsi Caesar intellegebat, tamen quam mitissime potest legatos appellat;
**カエサルはそのようなことを認識していたけれども、(ハエドゥイー族の)使節たちにできるだけ平静に話しかけた。
*nihil se propter inscientiam levitatemque vulgi gravius de civitate iudicare
**自分は(ハエドゥイー族の)民衆の無知や軽率さのために、部族を何ら厳重に裁断することはない、と。
*neque de sua in [[w:la:Haedui|Haeduos]] benevolentia deminuere.
**自分のハエドゥイー族に対する好意を減ずることはない、と。
*⑤ Ipse maiorem Galliae motum exspectans,
**(カエサル)自身は、ガッリアのより大きな動乱を予期しており、
*ne ab omnibus civitatibus circumsisteretur,
**すべての部族によって包囲されることがないように、
*consilia inibat, quemadmodum ab<ref>ab はχ系写本の記述で、φ系写本では a となっており、β系写本にはない。</ref> [[w:la:Gergovia|Gergovia]] discederet ac rursus omnem exercitum contraheret,
**どのようにゲルゴウィアから撤退して再び軍隊全体を集結するか、策定に取りかかった。
*ne profectio nata ab<ref>ab はα系写本の記述で、β系写本では a となっている。</ref> timore defectionis similis<ref>similis はα系写本の記述で、β系写本では similisque となっている。</ref> fugae videretur.
**(諸部族の)背反の恐れから生じた出発が、逃亡同然と見られないように。
===44節===
'''ゲルゴウィアの急所の尾根'''
[[画像:Plateau_of_Gergovia.jpg|thumb|center|900px|ゲルゴウィア([[w:la:Gergovia|Gergovia]])すなわち現在のジェルゴヴィ高地([[w:fr:Plateau de Gergovie|Plateau de Gergovie]])の全景(南方のル・クレスト [[w:fr:Le Crest|Le Crest]] から撮影)。<br>画像中央の右下に、ローマ勢が占領して小さい方の陣営を築いていたと推定されているラ・ロシュ=ブランシュ([[w:fr:La Roche-Blanche (Puy-de-Dôme)|La Roche-Blanche]])の丘陵が見える。<br>本節①項で言及されているのは画像の左端に写る丘陵と思われ、尾根伝いにほぼ平坦なゲルゴウィアの山頂(画像中央)に続いている。<br>これらの位置関係の推定は、19世紀の[[w:ウジェーヌ・ストッフェル|ウジェーヌ・ストッフェル]]大佐(colonel Eugène Stoffel)の発掘調査に依拠したものである。]]
[[画像:La_Roche_Blanche.JPG|thumb|right|300px|ローマ勢が占領して小さい方の陣営を築いていたと推定されているラ・ロシュ=ブランシュ([[w:fr:La Roche-Blanche (Puy-de-Dôme)|La Roche-Blanche]])の丘陵]]
*① Haec cogitanti accidere visa est facultas bene rei gerendae<ref>rei gerendae はα系写本の記述で、β系写本では gerendae rei となっている。</ref>.
**(カエサルが)これらを考慮しているときに、事をうまく行なえる可能性が生じたと思われた。
*Nam cum in minora castra operis perspiciendi causa venisset,
**すなわち、(ローマ勢の)小さい方の陣営に、作業を視察するためにやって来たときに、
*animadvertit collem qui ab hostibus tenebatur nudatum hominibus,
**敵たちによって占められていた丘陵が、無人にされているのに気付いた。
*qui superioribus diebus vix prae multitudine cerni poterat.
**それは、前日には、(ガッリア勢の)大勢の者たちのためにほとんど見分けが付けられないものだった。
*② Admiratus quaerit ex perfugis causam,
**(カエサルは)驚いて、(ゲルゴウィアからの)[[w:脱走兵|脱走兵]]たちに理由を尋ねた。
*quorum magnus ad eum cotidie numerus confluebat.
**その者たちの多数は、毎日、彼(カエサル)のところへ群がり集まっていたのだ。
**:<span style="color:#009900;">(訳注:[[#14節|14節]]⑨項で既述のように、ガッリア勢は[[w:兵役逃れ|兵役忌避]]の多さに悩まされていた。)</span>
*③ Constabat inter omnes
**(脱走兵たち)皆の間では同じ意見であった。
*─ quod iam ipse Caesar per exploratores cognoverat ─
**─ すでにカエサル自身が偵察者たちを通して知っていたことであったが ─
*dorsum esse eius iugi prope aequum, sed silvestre<ref>silvestre はβ系写本の記述で、α系写本では hunc silvestrem となっている。</ref> et angustum,
**その尾根の背面はほぼ平地で、しかし森林におおわれて狭く、
*qua esset aditus ad alteram partem oppidi<ref>partem oppidi はα系写本の記述で、β系写本では oppidi partem となっている。</ref>;
**それによって城塞都市の別の方面への出入口となっている、と。
*④ vehementer huic illos loco<ref>vehementer huic illos loco はα系写本の記述で、β系写本では huic loco vehementer illos となっている。</ref> timere nec iam aliter sentire,
**この地帯を彼ら(ガッリア勢)が極度に恐れ、すでに感じていたことには、
*uno colle ab Romanis occupato, si alterum amisissent,
**ローマ人によって一つの丘陵が占領されているので、もしもう一方をも失ったならば、
*quin paene circumvallati atque omni exitu et pabulatione interclusi viderentur;
**(ゲルゴウィアが)ほとんど包囲されて、あらゆる出口と糧秣徴発を阻まれると思われたのである。
*ad hunc muniendum locum<ref>locum はβ系写本の記述で、α系写本にはない。</ref> omnes a [[w:la:Vercingetorix|Vercingetorige]] evocatos.
**この地帯の辺りを防御するために、[[w:ウェルキンゲトリクス|ウェルキンゲトリークス]]により総勢が召集されていたのだ、と。
===45節===
'''ローマ勢の陽動部隊が敵を引き付け、本隊が敵の本陣を目指す'''
*① Hac re cognita Caesar mittit complures equitum turmas eodem<ref>eodem はβ系写本の記述で、α系写本では eisdem などとなっており、またモイゼル(Meusel)は eo de と解釈している。</ref> media nocte;
**この事を知って、カエサルは多数の[[w:騎兵|騎兵]]<ruby><rb>小隊</rb><rp>(</rp><rt>トゥルマ</rt><rp>)</rp></ruby>を同じところに真夜中に派遣した。
**:<span style="color:#009900;"> (訳注:騎兵小隊 turma は、ローマの同盟部族などからなる騎兵の単位で、30騎ほどからなるとされている。)</span>
*imperat his<ref>his はβ系写本の記述で、α系写本にはない。</ref> ut paulo tumultuosius omnibus locis vagarentur<ref>vagarentur はα系写本の記述で、β系写本では pervagentur となっている。</ref>.
**彼らには、いくらか騒々しく、あらゆる場所を動き回るように命令した。
*② Prima luce magnum numerum impedimentorum ex castris mulorumque produci deque his stramenta detrahi
**夜明けに、陣営から多数の荷馬や[[w:ラバ|ラバ]]を連れ出して、これらから[[w:鞍|荷鞍]]を取り去って、
*mulionesque cum cassidibus equitum specie ac simulatione collibus circumvehi iubet.
**ラバ引きの者たちを鉄兜とともに、騎兵の外見と真似をさせて、丘々を乗り回すことを命じた。
*③ His paucos addit equites, qui latius ostentationis causa vagarentur<ref>vagarentur はα系写本の記述で、β系写本では vagentur となっている。</ref>.
**彼らに少数の騎兵を付き添わせて、より広く見せびらかすために動き回らせた。
*Longo circuitu easdem omnes iubet petere regiones.
**(ラバ引きと騎兵の)皆には、長く迂回して、同じ一帯を目指すことを命じた。
*④ Haec procul ex oppido videbantur, ut erat a Gergovia despectus in castra,
**これらは<ruby><rb>[[w:オッピドゥム|城塞都市]]</rb><rp>(</rp><rt>オッピドゥム</rt><rp>)</rp></ruby>から遠くに望見され、ゲルゴウィアから(ローマ勢の)陣営が眺められたほどであったが、
*neque tanto spatio certi quid esset explorari poterat.
**これほどの距離のために(ガッリア勢からは)何ごとか確かなことは探り出されなかった。
*⑤ Legionem unam eodem iugo mittit
**(カエサルは)1個[[w:ローマ軍団|軍団]]を同じ尾根に派遣して、
*et paulum progressam inferiore constituit loco silvisque occultat.
**いくらか前進させて低い場所に駐留させ、森林に隠した。
*⑥ Augetur Gallis suspicio
**(これらを見た)ガッリア人には疑念が増されて、
*atque omnes illo ad munitionem copiae traducuntur.
**軍勢のすべてがあそこ(=無人にしていた急所の丘陵)へ防御のために移動した。
*⑦ Vacua castra hostium Caesar conspicatus
**カエサルは敵たちの(ゲルゴウィア山頂の)陣営が空であると気付いて、
*tectis insignibus suorum occultatisque signis militaribus
**配下の者たちの標章を覆い隠し、軍旗を隠して、
*raros milites, ne ex oppido animadverterentur, ex maioribus castris in minora traducit
**兵士たちをまばらに、城塞都市から気付かれないように、大きい方の陣営から小さい方に移動させた。
*legatisque, quos singulis legionibus praefecerat, quid fieri velit, ostendit;
**個々の軍団を指揮させていた<ruby><rb>[[w:レガトゥス|副官]]</rb><rp>(</rp><rt>レガトゥス</rt><rp>)</rp></ruby>たちに、何がなされることを欲しているかを示した。
*⑧ in primis monet ut contineant milites,
**第一に、兵士たちを抑え留めるように戒めた。
*ne studio pugnandi aut spe praedae longius progrediantur;
**(兵士たちが)戦うことの熱意、あるいは略奪の希望により、より遠くまで進み出ないように、と。
*⑨ quid iniquitas loci habeat incommodi proponit;
**地勢の不利がどれほど敗北を生じるかを示した。
*hoc una celeritate posse vitari<ref>vitari はβ系写本の記述で、α系写本では mutari となっている。</ref>;
**迅速さのみがこれを避けることができる。
*occasionis esse rem, non proelii.
**事の成否は、戦闘にではなく、好機にかかっている。
*⑩ His rebus expositis signum dat
**これらの事柄を説明して、(副官たちに進軍の)号令を出した。
*et ab dextra parte alio ascensu eodem tempore Haeduos mittit.
**右の方面からは、別の登り道を(ローマ軍本隊と)同時に[[w:ハエドゥイ族|ハエドゥイー族]](の騎兵)を派遣した。
===46節===
'''ローマ軍の本隊が防壁を越えて、敵陣の一部を占拠'''
*① Oppidi murus ab<ref>ab はB・M・L・N写本の記述で、β系写本では a となっている。</ref> planitie atque initio ascensus recta regione,
**(ゲルゴウィアの)<ruby><rb>[[w:オッピドゥム|城塞都市]]</rb><rp>(</rp><rt>オッピドゥム</rt><rp>)</rp></ruby>の城壁は、平地や登り道の始まりから真っ直ぐに(=直線距離で)、
*si nullus amfractus<ref>amfractus はα系写本の記述で、β系写本では anfractus となっている。</ref> intercederet, mille CC(mille ducenti)<ref>mille CC(=1200) はα系写本の記述で、β系写本では CC(=200)となっている。</ref> passus aberat;
**もし何らの湾曲が間になければ、1200[[w:パッスス|パッスス]](=約1.8km)離れていた。
*② quicquid huc circuitus ad molliendum clivum accesserat<ref>accesserat は写本(ω)の記述だが、オットー・ゼール [[w:de:Otto Seel|Otto Seel]] の校訂では accesserit としている。</ref>,
**ここに(山の斜面の)傾斜を緩和するために、何らかの回り道が付け加わっていて、
*id spatium itineris augebat.
**その道のりの距離を増していた。
*③ A medio fere colle in longitudinem, ut natura montis ferebat,
**丘陵のほぼ真ん中から、山の地形が作り出したかのように、長きにわたって、
*ex grandibus saxis sex pedum murum qui nostrum<ref>nostrum は中世の写本(ω)の記述だが、近世の版では nostrorum となっている。</ref> impetum tardaret,
**大きな石垣からなる6[[w:ペース (長さ)|ペース]](=約1.8m)もの、我が方(ローマ勢)の突進を遅らせる防壁を、
*praeduxerant Galli,
**ガッリア人は引いて来ており、
*atque inferiore omni spatio vacuo relicto
**(その石垣の防壁)より下方のすべての空間は人気なく残されていて、
*superiorem partem collis usque ad murum oppidi densissimis castris compleverant.
**丘陵のより上方の部分を、城塞都市の城壁の方へ続けざまに、とても密集した(各部族ごとの)陣営で満たしていた。
*④ Milites dato signo celeriter ad munitionem perveniunt
**(ローマ人の)兵士たちは号令を与えられて、速やかに(石垣の)防壁のところへ到達して、
*eamque transgressi trinis castris potiuntur;
**それを越えて行って、3つの(部族ごとの)陣営を占拠した。
*⑤ ac tanta fuit in castris capiendis<ref>castris capiendis はα系写本の記述で、β系写本では capiendis castris となっている。</ref> celeritas,
**(3つの)陣営を奪取することにおいて、これほどにも迅速さがあったので、
*ut Teutomatus, rex Nitiobrogum, subito in tabernaculo oppressus,
**その結果、[[w:ニティオブロゲス族|ニティオブロゲス族]]の王[[w:テウトマトゥス|テウトマトゥス]]は、[[w:テント|天幕]]において突然に襲われて、
*ut meridie conquieverat, superiore corporis parte nudata<ref>nudata はα系写本の記述で、β系写本では nuda となっている。</ref>
**昼寝をしていたが、上半身は裸のままで、
*vulnerato equo vix se ex manibus praedantium militum eriperet.
**傷付けられた馬によって、略奪している(ローマ人)兵士の手から、やっと自らを救い出した。
===47節===
'''血気にはやるローマ兵たちの猪突猛進、ガッリア女たちの命乞い'''
*① Consecutus id quod animo proposuerat
**心に決めていたことを達成したので、
*Caesar receptui cani iussit
**カエサルは退却ラッパを吹くことを命じた。
*legionique decimae, quacum erat, contionatus signa constituit.
**彼とともにいた[[w:第10軍団エクェストリス|第10軍団]]に呼びかけて、軍旗を停止した。
**:<span style="color:#009900;">(訳注:第10軍団はガッリア戦争初期からの最古参の軍団。軍旗を停止するとは、進軍を止めること。)</span>
*② Ac<ref>ac はα系写本の記述で、β系写本では at となっている。</ref> reliquarum legionum milites non exaudito<ref>exaudito はα系写本の記述で、β系写本では audito となっている。</ref> sono tubae,
**ほかの[[w:ローマ軍団|軍団]]の兵士たちは、ラッパの響きを聞き取れなかった。
*quod satis magna valles intercedebat,
**というのは、十分に大きな峡谷が間にあったからである。
*tamen ab<ref>ab はα系写本の記述で、β系写本では a となっている。</ref> tribunis militum legatisque, ut erat a Caesare praeceptum, retinebantur;
**しかしながら、<ruby><rb>[[w:トリブヌス・ミリトゥム|兵士長官]]</rb><rp>(</rp><rt>トリブヌス・ミリトゥム</rt><rp>)</rp></ruby>たちや<ruby><rb>[[w:レガトゥス|総督副官]]</rb><rp>(</rp><rt>レガトゥス</rt><rp>)</rp></ruby>たちにより、カエサルから指図されていたように、制止されていた。
*③ Sed elati spe celeris victoriae et hostium fuga et superiorum temporum secundis proeliis
**だが(兵士たちは)迅速な勝利の希望や、敵たちの逃亡や、それ以前のときの順調な戦闘により、高慢になっていて、
*nihil adeo arduum sibi esse existimaverunt<ref>esse existimaverunt はα系写本の記述で、β系写本では existimabant となっている。</ref>, quod non virtute consequi possent,
**自分たちにとって、武勇で達することができないほどの困難なものはまったく何もない、と考えており、
*neque finem prius sequendi fecerunt quam muro oppidi portisque adpropinquarunt.
**(ゲルゴウィアの)城塞都市の城壁や城門に近付くまでは、追及を終結させなかった。
*④ Tum vero ex omnibus urbis partibus orto clamore,
**すると、まさに(ゲルゴウィアの)町のあらゆる方面から叫び声が発せられて、
*qui longius aberant, repentino tumultu perterriti,
**(城内の)遠い方に離れていた者たちは、予期せぬ騒ぎに脅えており、
*cum hostem intra portas esse existimarent,
**敵(=ローマ人)が城門の内側にいると考えたので、
*sese ex oppido eiecerunt.
**城塞都市から急ぎ出た。
*⑤ Matres familiae de muro vestem argentumque iactabant
**家庭の母親たちは、城壁から衣類や貨幣をたびたび投げやった。
*et pectore nudo prominentes passis manibus obtestabantur Romanos,
**そして胸を裸にして(城壁の上に)進み出て、手を伸ばしてローマ人たちに哀願した。
*ut sibi parcerent
**自分たちを容赦するように、
*neu, sicut Avarici fecissent, ne a mulieribus quidem atque infantibus abstinerent;
**(ローマ人が)アウァーリクムでしたように女たちや子供たちでさえも赦免しないことのないように、と。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:ne quidem|ne ~ quidem]]「~でさえ…ない」)</span>
**:<span style="color:#009900;">(訳注:ローマ人がアウァーリクムでした行為については、[[#28節|28節]]④項を参照。)</span>
*⑥ nonnullae de muris<ref>muris はα系写本の記述で、β系写本では mure となっている。</ref> per manus demissae sese militibus tradebant.
**少なからぬ者たちは、城壁から手で降ろされて、(ローマ人)兵士たちに身を任せた。
[[画像:Gergovie_mur_pano2.jpg|thumb|center|700px|ゲルゴウィア([[w:la:Gergovia|Gergovia]])すなわち現在のジェルゴヴィ高地([[w:fr:Plateau de Gergovie|Plateau de Gergovie]])で発掘された城壁の遺構。]]
*⑦ L.(Lucius) Fabius centurio legionis VIII(octavae),
**[[w:第8軍団アウグスタ|第8軍団]]の<ruby><rb>[[w:ケントゥリオ|百人隊長]]</rb><rp>(</rp><rt>ケントゥリオ</rt><rp>)</rp></ruby>であるルキウス・ファビウスは、
*quem inter suos eo die dixisse constabat
**配下の者たちの間で、その日、(以下のように)言ったことが知られていた。
*excitari se Avaricensibus praemiis neque commissurum, ut prius quisquam murum ascenderet,
**自分はアウァーリクムの恩賞に奮い立たせられて、何者かが(自分)より早く城壁を登るようなことは生じさせない、と。
*tres suos nactus manipulares
**(ファビウスは)同じ隊の兵士である3人の配下と遭遇して、
**:<span style="color:#009900;">(訳注:manipulares は「[[w:マニプルス|歩兵中隊]]の」とも解されるが、ここでは「同じ隊の兵士」という意味であろう。)</span>
*atque ab his sublevatus murum ascendit,
**彼らによって持ち上げられて城壁を登った。
*hos<ref>hos はα系写本の記述で、π系写本では eos 、ρ系写本では eo となっている。</ref> ipse rursus singulos exceptans in murum extulit.
**彼らは(ファビウス)自身が再び1人ずつ引き出して、城壁に導き上げた。
===48節===
'''ガッリア勢が城塞都市に引き返して、防戦に努める'''
*① Interim hi<ref>hi はα系・π系・R写本の記述で、U写本では ii となっている。</ref> qui ad alteram partem oppidi, ut supra demonstravimus, munitionis causa convenerant,
**その間に、前に述べたように、<ruby><rb>[[w:オッピドゥム|城塞都市]]</rb><rp>(</rp><rt>オッピドゥム</rt><rp>)</rp></ruby>の別の方面へ、防御のために集結していた(ガッリア勢の)者たちは、
**:<span style="color:#009900;">(訳注:[[#45節|45節]]⑥項で述べられている。)</span>
*primo exaudito clamore,
**初めに叫び声を聞き取り、
*inde etiam crebris nuntiis incitati oppidum ab Romanis teneri,
**さらに、城塞都市がローマ人たちによって占領されたという頻繁な知らせにさえも駆り立てられて、
*praemissis equitibus magno concursu<ref>concursu はα系写本の記述で、β系写本では cursu となっている。</ref> eo contenderunt.
**[[w:騎兵|騎兵]]たちを先遣して、(歩兵たちも)駆けに駆けて、そこ(=城塞都市)へ急いだ。
[[画像:Auvergne_Gaul_coin_CdM.jpg|thumb|right|300px|[[w:アルウェルニ族|アルウェルニー族]]の兵士が刻まれた貨幣([[w:ビブリオテーク・ナショナル|仏国立図書館]]貨幣部所蔵)]]
*② Eorum ut quisque primus venerat,
**彼らの(城塞都市に)到着した者から順々に
**:<span style="color:#009900;">(訳注:quisque primus「最初の者ごとに;順々に」)</span>
*sub muro consistebat suorumque pugnantium numerum augebat.
**城壁の下に陣取って、味方の戦う者たちの数を増した。
*③ Quorum cum magna multitudo convenisset,
**その者たちの大群集が集結したときに、
*matres familiae quae paulo ante Romanis de muro manus tendebant,
**少し前にはローマ人たちに城壁から手を差し出していた家庭の母親たちが
*suos obtestari
**味方に哀願して、
*et more Gallico passum capillum ostentare liberosque in conspectum proferre coeperunt.
**ガッリアの風習により、髪を広げて示し、子供たちを(男たちの)眼前に運び始めた。
*④ Erat Romanis nec loco nec numero aequa contentio;
**ローマ人たちにとっては、地の利でも(兵の)数でも、対等な闘いはなかった。
*simul et cursu et spatio pugnae defatigati
**と同時に、戦いの疾走や時間(の長さ)に疲弊させられていて、
*non facile recentes atque integros sustinebant.
**(ガッリア勢の)新来かつ無傷の者たちに、容易に持ちこたえられなかった。
===49節===
'''カエサルが劣勢の自軍に副官セクスティウスを増援する'''
*① Caesar cum iniquo loco pugnari hostiumque augeri copias videret,
**カエサルは(戦闘が自軍に)不利な場所で戦われていること、かつ敵方の軍勢が増やされていることを見たので、
*praemetuens suis
**配下の者たちを気遣って、
*ad T.(Titum) Sextium legatum, quem minoribus castris praesidio reliquerat, misit,
**小さい方の陣営に守備として残しておいた<ruby><rb>[[w:レガトゥス|総督副官]]</rb><rp>(</rp><rt>レガトゥス</rt><rp>)</rp></ruby>ティトゥス・セクスティウスのところへ(伝令を)遣わして、
**:<span style="color:#009900;">(訳注:セクスティウスについては、すでに副官として[[ガリア戦記 第6巻#1節|第6巻1節]]で言及されている。)</span>
*ut cohortes ex castris celeriter educeret
**陣営から(いくつかの)<ruby><rb>[[w:コホルス|歩兵大隊]]</rb><rp>(</rp><rt>コホルス</rt><rp>)</rp></ruby>を速やかに進発させるように、
*et sub infimo colle ab dextro latere hostium constitueret,
**かつ丘陵のふもとの下方で、敵方の右の側面に布陣するように、と。
*② ut, si nostros loco depulsos vidisset, quominus libere hostes insequerentur terreret.
**もし我が方が(戦闘の)場所から追いやられたのを見たら、敵方が自由に追撃することにならぬよう脅かすためである。
*③ Ipse paulum ex eo loco cum legione progressus, ubi constiterat,
**(カエサル)自身は、停止していた場所から、軍団とともに少し前進して、
**:<span style="color:#009900;">([[#47節|47節]]①項で既述のように、カエサルとともに停止していたのは[[w:第10軍団エクェストリス|第10軍団]]である。)</span>
*eventum pugnae exspectabat.
**戦いの決着を待っていた。
===50節===
'''激戦の末、敗勢に陥るローマ軍'''
*① Cum acerrime comminus pugnaretur, hostes loco et numero, nostri virtute confiderent,
**(両軍により)激烈に格闘して戦われていて、敵方は地の利と(兵の)数を、我が方(ローマ軍)が武勇を頼りとしていたときに、
*subito sunt Haedui visi ab latere nostris aperto,
**突如として、我が方にとって開けた側面(=右側)から、[[w:ハエドゥイ族|ハエドゥイー族]]の者たち(の姿)が見られた。
**:<span style="color:#009900;">(訳注:「開けた側面から」ab latere aperto とは、兵士の[[w:スクトゥム|長盾]]で覆われていない右側を指す。)</span>
*quos Caesar ab dextra parte alio ascensu manus distinendae causa miserat.
**カエサルがその者たちを右の方面から別の登り道により(敵の)部隊を分散しておくために派遣していたのだ。
**:<span style="color:#009900;">(訳注:この事は、[[#45節|45節]]⑩項で述べられている。)</span>
*② Hi similitudine armorum vehementer nostros perterruerunt,
**彼らの武具が(ガッリア勢のものと)似ていることが、我が方(の兵士たち)を極度に怖れさせた。
*ac tametsi dextris humeris<ref>humeris が写本(ω)の記述であるが、umeris とするのも一般的となっている。</ref> exsertis animadvertebantur, quod insigne pactum<ref>pactum はHellerによる修正提案で、写本(ω)では pacatum となっており、研究者たちにより他の修正も提案されている。</ref> esse consuerat,
**(ハエドゥイー勢は)右の肩を脱いでいるのが視認され、その印は(味方として)定められているのが常であったが、
*tamen id ipsum sui fallendi causa milites ab hostibus factum existimabant.
**けれども(ローマ人の)兵士たちは、それ自体が自分たちを欺くために、敵方によりなされたと考えたのだ。
[[画像:Dorf_La_Roche_Blanche.JPG|thumb|right|300px|ゲルゴウィア([[w:la:Gergovia|Gergovia]])すなわち現在のジェルゴヴィ高地([[w:fr:Plateau_de_Gergovie|Plateau de Gergovie]])の遠景(南方のル・クレスト [[w:fr:Le_Crest|Le Crest]] から撮影)。画像中央がローマ軍が小さい方の陣営を設置していたと推定されているラ・ロシュ=ブランシュ([[w:fr:La_Roche-Blanche_(Puy-de-Dôme)|La Roche Blanche]])の丘陵で、山頂からこの丘陵の辺りが激戦地だったと思われる。現在は山麓にかけて住宅地が広がっている。]]
*③ Eodem tempore L.(Lucius) Fabius centurio quique una murum ascenderant,
**同じ時に、<ruby><rb>[[w:ケントゥリオ|百人隊長]]</rb><rp>(</rp><rt>ケントゥリオ</rt><rp>)</rp></ruby>ルキウス・ファビウスおよび一緒に城壁を登っていた者たちは、
**:<span style="color:#009900;">(訳注:ファビウスらについては、[[#47節|47節]]⑦項で述べられている。)</span>
*circumventi atque interfecti de<ref>de はβ系写本の記述で、α系写本にはない。</ref> muro praecipitabantur.
**(ガッリア勢に)取り囲まれ、殺害されて、城壁から突き落とされた。
*④ M.(Marcus) Petronius, eiusdem legionis centurio,
**同じ[[w:ローマ軍団|軍団]]の百人隊長マルクス・ペトロニウスは、
**:<span style="color:#009900;">(訳注:ファビウスと同じ軍団とは、[[#47節|47節]]⑦項で述べられているように[[w:第8軍団アウグスタ|第8軍団]]である。)</span>
*cum portas<ref>portas は写本(ω)の記述だが、portam と単数形にする修正も提案されている。</ref> excidere conatus esset,
**城門を突き破って出ることを試みていたときに、
*a multitudine oppressus ac sibi desperans multis iam vulneribus acceptis,
**(敵の)大勢によって圧倒されて、すでに多くの傷を受けて自分に絶望しており、
*manipularibus suis, qui illum secuti erant<ref>secuti erant はα系写本の記述で、β系写本では erant secuti となっている。</ref>,
**彼に付き従っていた同じ隊の配下の者たちに、
*"quoniam" inquit "me una vobiscum servare non possum,
**曰く「私と諸君を一緒に救うことはできないのだから、
*vestrae quidem certe vitae prospiciam, quos cupiditate gloriae adductus in periculum deduxi.
**せめて、栄誉の欲に引き寄せられて危険に引きずり込んでしまった諸君の生命にはきっと見通しを与えるであろう。
*⑤ Vos data facultate vobis consulite."
**諸君は(生き延びる)可能性が与えられているから、諸君(自身)を助けたまえ。」
*Simul in medios hostes inrupit duobusque interfectis reliquos a porta paulum submovit.
**と同時に、敵方の真ん中に押し入って、2名を殺害して、ほかの者たちを城門からいくらか退けた。
*⑥ Conantibus auxiliari suis
**(ペトロニウスは自分の)支援を試みる配下の者たちに、
*"frustra" inquit "meae vitae subvenire conamini, quem iam sanguis viresque deficiunt.
**曰く「もはや血も活力も尽き果てた私の生命を助けることを試みているのは無益だ。
*Proinde abite, dum est facultas, vosque ad legionem recipite."
**ゆえに(生き延びる)可能性がある間に立ち去れ。諸君は軍団のところへ退却せよ。」
*Ita pugnans post paulum<ref>paulum はα系・ρ系写本の記述で、π系写本では paululum となっており、paulo という修正提案もされている。</ref> concidit ac suis saluti fuit.
**こうして(ペトロニウスは)戦って少し後で斃れ、配下の者たちにとっては救いとなった。
===51節===
[[画像:Monument_gergovie_fr.jpg|thumb|right|290px|[[w:ゲルゴウィアの戦い|ゲルゴウィア戦勝]]記念碑。[[w:1903年|1903年]]に[[w:クレルモン=フェラン|クレルモン=フェラン市]]出身の建築家ジャン・テラール([[w:fr:Jean Teillard|Jean Teillard]])が、侵略者カエサルを撃退した郷土の英雄[[w:ウェルキンゲトリクス|ウェルキンゲトリークス]]に捧げるためにジェルゴヴィ高地([[w:fr:Plateau_de_Gergovie|Plateau de Gergovie]])に建立したものである。]]
[[画像:Plaque_Napoléon_III_Gergovie.jpg|thumb|right|300px|[[w:ゲルゴウィアの戦い|ゲルゴウィア]]の地に残る銘板。フランス語で「[[w:ナポレオン3世|ナポレオン3世]]は、1862年のゲルゴウィアの[[w:オッピドゥム|城塞都市]](跡)訪問の結果、メルドーニュ(Merdogne)の住民たちの要求に対して、1865年1月11日の政令によって、彼らの村にジェルゴヴィ([[w:fr:Gergovie|Gergovie]])の名を与えることを決定した。」<!-- «A la suite de sa visite sur l'oppidum de Gergovia en 1862, Napoléon III, à la demande des habitants de Merdogne, décida d'attribuer à leur village le nom de Gergovie, par décret du 11 janvier 1865.»-->]]
'''カエサルが一敗地に塗れる'''
*① Nostri cum undique premerentur,
**我が方(ローマ軍)は、至る所で圧倒されたので、
*XLVI(sex et quadraginta)<ref>XLVI はα系写本の記述で、β系写本では sex et XL となっている(どちらも46)。</ref> centurionibus amissis deiecti sunt loco.
**46名の<ruby><rb>[[w:ケントゥリオ|百人隊長]]</rb><rp>(</rp><rt>ケントゥリオ</rt><rp>)</rp></ruby> を失い、(激戦の)場所から追いやられた。
*Sed intolerantius Gallos insequentes
**けれども、容赦なく追撃して来るガッリア人たちを
*legio decima tardavit, quae pro subsidio paulo aequiore loco constiterat.
**予備部隊(もしくは要撃部隊)として、いくらか平らな所に陣取っていた[[w:第10軍団エクェストリス|第10軍団]]が妨げた。
**:<span style="color:#009900;">(訳注:[[#47節|47節]]①項で既述のように、第10軍団はカエサルとともに待機していた。)</span>
*② Hanc rursus XIII(tertiae decimae) legionis cohortes exceperunt,
**これ(=第10軍団)をさらに、第13軍団の諸<ruby><rb>[[w:コホルス|大隊]]</rb><rp>(</rp><rt>コホルス</rt><rp>)</rp></ruby>が支えた。
*quae ex castris minoribus eductae cum T.(Tito) Sextio legato ceperant locum<ref>ceperant locum はα系写本の記述で、β系写本では locum ceperant となっている。</ref> superiorem.
**それらは<ruby><rb>[[w:レガトゥス|総督副官]]</rb><rp>(</rp><rt>レガトゥス</rt><rp>)</rp></ruby>ティトゥス・セクスティウスとともに小さい方の陣営から進発してより高い所を占めていたのだ。
**:<span style="color:#009900;">(訳注:[[#49節|49節]]を参照。)</span>
*③ Legiones ubi primum planitiem attigerunt,
**諸[[w:ローマ軍団|軍団]]は、平野に達するや否や、
*infestis contra hostes signis constiterunt.
**敵方に抗して戦備を整えて陣取った。
*④ [[w:la:Vercingetorix|Vercingetorix]] ab radicibus collis suos intra munitiones reduxit.
**[[w:ウェルキンゲトリクス|ウェルキンゲトリークス]]は、配下の者たちを丘陵の麓から(ゲルゴウィアの)防備の内側に連れ戻した。
*Eo die milites sunt paulo minus [[wikt:la:Septingenti|septingenti]] desiderati.
**その日、(ローマ軍は)700名よりいくらか少ない兵士を失った。
<br>
:<span style="color:#009900;">(訳注:カエサルとウェルキンゲトリークスは、たびたび交えた騎兵戦ではカエサルが勝っているが、</span>
:<span style="color:#009900;">両軍の主力部隊である歩兵どうしが激突したこの戦闘は、地の利もあって、ウェルキンゲトリークスが完勝した。</span>
:<span style="color:#009900;">カエサルは第8軍団など古参の部隊を投入しながら、歴戦の百人隊長と兵士たちを多く失った。)</span>
===52節===
'''敗軍の将カエサルが兵士たちを責める'''
*① Postero die Caesar contione advocata
**翌日にカエサルは(兵士たちの)集会を召集して、
*temeritatem cupiditatemque militum<ref>cupiditatemque militum はα系写本の記述で、β系写本では militum cupiditatemque となっている。</ref> reprehendit,
**兵士たちの無思慮や功名心をとがめた。
*quod sibi ipsi iudicavissent, quo procedendum aut quid agendum videretur,
**というのは、どこへ進み出るべきか、あるいは何がなされるべきと思われるのか、自分たちに対し自分たちで判断してしまったからだ。
*neque signo recipiendi dato constitissent
**退却することの合図を与えられても留まりもせず、
*neque ab<ref>ab はα系写本の記述で、β系写本では a となっている。</ref> tribunis militum legatisque retineri potuissent.
**<ruby><rb>[[w:トリブヌス・ミリトゥム|兵士長官]]</rb><rp>(</rp><rt>トリブヌス・ミリトゥム</rt><rp>)</rp></ruby>や<ruby><rb>[[w:レガトゥス|総督副官]]たち</rb><rp>(</rp><rt>レガトゥス</rt><rp>)</rp></ruby>により制止されることもできなかったからだ。
*② Exposuit quid iniquitas loci posset, quod<ref>quod は写本(ω)では quid となっているが、近世以降の校訂者たちは quod と修正提案している。</ref> ipse ad [[w:la:Avaricum Biturigum|Avaricum]] sensisset,
**地の利のなさがどれほど影響するのか、(カエサル)自身がアウァーリクムで判断したことを説明した。
*cum sine duce et sine equitatu deprehensis hostibus
**将帥もなく騎兵隊もない敵たちを探し当てたときに、
**:<span style="color:#009900;">(訳注:[[#18節|18節]]~[[#19節|19節]]を参照。そのときガッリア勢は、ウェルキンゲトリークスが騎兵隊を連れて出て不在であった。)</span>
*exploratam victoriam dimisisset,
**確実であった勝利を諦めたのだ。
*ne parvum modo detrimentum in contentione propter iniquitatem loci accideret.
**地の利のなさのために、闘いにおいてほんのわずかな損害も生じないように(勝利を諦めたのだ)。
*③ Quanto opere<ref>Quanto opere はα系写本の記述で、β系写本では Quantopere となっている。</ref> eorum animi magnitudinem admiraretur,
**彼ら(兵士たち)の大胆さに(カエサルが)驚嘆すればするほど、
**:<span style="color:#009900;">(訳注:quanto opere ~ tanto opere …/quantopere ~ tantopere …「~すればするほど、ますます…」)</span>
*quos non castrorum munitiones, non altitudo montis, non murus oppidi tardare potuisset,
**彼らのことを(ガッリア勢の)陣営の防備も、山の高さも、[[w:オッピドゥム|城塞都市]]の城壁も妨げることができなかったのではあるが、
*tanto opere<ref>tanto opere はα系・T・ρ系写本の記述で、V写本では tantopere となっている。</ref> licentiam arrogantiamque reprehendere,
**それだけにますます(兵士たちの)勝手気ままさや高慢さを(カエサルは)非難する(と言った)。
*quod plus se quam imperatorem de victoria atque exitu rerum sentire existimarent;
**というのは、自分たちが将軍(カエサル)よりも勝利と事の結末についてよく判断していると考えていたからだ。
*④ nec<ref>nec はα系写本の記述で、β系写本では non となっている。</ref> minus se ab<ref>ab はα系写本の記述で、β系写本では in となっている。</ref> milite modestiam et continentiam quam virtutem atque animi magnitudinem desiderare.
**自分(カエサル)は兵士たちに、武勇や大胆さよりも、慎重さや自制心を望んでいるのだ。
*:<span style="color:#009900;">(訳注:カエサルは兵士たちを上のように責めたが、兵士たちを統制できなかった責任は最高司令官にある。)</span>
===53節===
'''カエサルとローマ軍がゲルゴウィアから撤退'''
*① Hac habita contione et ad extremam orationem confirmatis militibus,
**(カエサルは)このような熱弁を振るって、演説の最後に、兵士たちを元気付けた。
*ne ob hanc causam animo permoverentur
**このような理由のために心をかき乱されないように、
*neu, quod iniquitas loci attulisset, id virtuti hostium tribuerent,
**かつ、地の利のなさが引き起こしたことを、敵方の武勇に転嫁しないように、と。
*eadem de profectione cogitans, quae ante senserat,
**(ゲルゴウィアからの)出発については、以前から判断していたのと同じことを考えていて、
**:<span style="color:#009900;">(訳注:[[#43節|43節]]⑤項を参照。ゲルゴウィアからの撤退が敗走同然に見られないようにと、考えていたのであろう。)</span>
*legiones ex castris eduxit aciemque idoneo loco constituit.
**諸[[w:ローマ軍団|軍団]]を陣営から進発させて、適切な場所に戦列を整えた。
*② Cum [[w:la:Vercingetorix|Vercingetorix]] nihilo minus < intra munitiones remaneret neque > in aequum locum descenderet,
**[[w:ウェルキンゲトリクス|ウェルキンゲトリークス]]が、防備の内側に留まったばかりか、平らな場所に降りてこなかったので、
**:<span style="color:#009900;">(訳注:< intra munitiones remaneret neque > は、写本になく、近代に挿入提案された修正案の一つ。)</span>
*levi facto equestri proelio, atque secundo, in castra exercitum reduxit.
**軽微な騎兵戦を行なって、順調のうちに軍隊を陣営に連れ戻した。
*③ Cum hoc idem postero die fecisset,
**翌日もこれと同じことを行なって、
*satis ad Gallicam ostentationem minuendam militumque animos confirmandos factum existimans
**ガッリア人の誇示を弱めること、および(ローマ人)兵士の心を強固にすることが十分になされたと考えたので、
*in [[w:la:Haedui|Haeduos]] movit castra.
**[[w:ハエドゥイ族|ハエドゥイー族]]のところに陣営を移(すために出発)した。
*④ Ne tum quidem insecutis hostibus
**そのとき、敵方は決して追撃して来なかったので、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:ne quidem|ne ~ quidem]]「~でさえ…ない」)</span>
*tertio die ad flumen [[w:la:Elaver|Elaver]] pontes<ref>pontes はα系写本の記述で、β系写本では pontem となっている。</ref> reficit<ref>reficit はχ系・B・M・L・N写本の記述で、S写本では refecit となっている。</ref> eoque exercitum<ref>eoque exercitum はα系写本の記述で、β系写本では exercitumque となっている。</ref> traducit<ref>traducit はα系写本の記述で、β系写本では traduxit となっている。</ref>.
**3日目にはエラウェル川(=現在の[[w:アリエ川|アリエ川]])のところで橋を再建して、そこで軍隊を渡らせた。
===54節===
'''ハエドゥイー族のエポレドリクスとウィリドマルスらがカエサルのもとから立ち去る'''
*① Ibi a Viridomaro atque [[w:la:Eporedorix|Eporedorige]] [[w:la:Haedui|Haeduis]] appellatus discit
**そこで(カエサルが)[[w:ハエドゥイ族|ハエドゥイー族]]の[[w:ウィリドマルス|ウィリドマルス]]と[[w:エポレドリクス|エポレドリクス]]から話しかけられて知ったことには、
**:<span style="color:#009900;">(訳注:[[#39節|39節]]~[[#40節|40節]]を参照。ウィリドマルスとエポレドリクスはカエサルの軍勢に従軍していたと思われる。)</span>
*cum omni equitatu Litaviccum ad sollicitandos Haeduos profectum;
**[[w:リタウィックス|リタウィックス]]がすべての騎兵隊とともに、ハエドゥイー族の者たちをそそのかすために出発したという。
**:<span style="color:#009900;">(訳注:[[#40節|40節]]を参照。リタウィックスは謀計が破れたので、ゲルゴウィアに逃れていた。)</span>
*opus esse ipsos antecedere ad confirmandam civitatem.
**部族の支持を固めるために、(彼ら)自身が(リタウィックスより)先行することが必須であるというのだ。
*② Etsi multis iam rebus perfidiam Haeduorum<ref>perfidiam Haeduorum はα系写本の記述で、β系写本では Haeduorum perfidiam となっている。</ref> Caesar<ref>Caesar はβ系写本の記述で、α系写本にはない。</ref> perspectam habebat
**カエサルは、すでに多くの事により、ハエドゥイー族の背信行為を目にして来ており、
**:<span style="color:#009900;">(訳注:Etsi ~, tamen …「~としても、しかしながら…」)</span>
*atque horum discessu admaturari defectionem civitatis existimabat,
**この者たちが(カエサルのもとから)立ち去ることで、(ハエドゥイー)部族の背反が一層促進されると考えていたのだが、
*tamen eos retinendos non censuit<ref>censuit はπ系写本の記述で、α系・ρ系写本では constituit となっている。</ref>,
**しかしながら、彼ら(2人)を束縛するべきではないと考慮した。
*ne aut inferre iniuriam videretur aut dare<ref>dare はα系写本の記述で、β系写本では daret となっている。</ref> timoris aliquam<ref>timoris aliquam はα系写本の記述で、β系写本では aliquam timoris となっている。</ref> suspicionem.
**(カエサルが)無法行為を起こすと思われないように、あるいは(彼らを)怖れているという何らかの疑念を与えないように。
*③ Discedentibus his breviter sua in Haeduos merita exposuit,
**(カエサルは)立ち去る彼らに、ハエドゥイー族における自分の功績を手短に説明した。
*quos et quam humiles accepisset, compulsos in oppida, multatos agris,
**彼らが、どれほど無力であったのを引き受けたことか、[[w:オッピドゥム|城塞都市]]に押し込められ、耕地を台無しにされて、
**:<span style="color:#009900;">(訳注:et ~, et …「~でもあり、…でもある。」)</span>
*omnibus ereptis sociis<ref>sociis「同盟者たち」 はβ系写本の記述で、α系写本では copiis「軍勢」となっている。</ref>, imposito stipendio, obsidibus summa cum contumelia extortis,
**すべての同盟者たちを奪い取られ、貢物を課せられて、たいへんな侮辱とともに人質をもぎ取られていたことか。
*④ et quam in fortunam quamque in amplitudinem deduxisset,
**かつ、どれほどの境遇に、どれほどの高位に(カエサルが)引き上げもしたことか。
*ut non solum in pristinum statum redissent,
**その結果(ハエドゥイー族は)かつての地位に戻っただけでなく、
*sed omnium temporum dignitatem et gratiam antecessisse viderentur.
**(以前の)あらゆる時期の品格や信望をも越えていると思われる。
*His datis mandatis eos ab se dimisit.
**このような訓示を与えて、彼ら(2人)を自分のもとから送り出した。
===55節===
'''エポレドリクスとウィリドマルスらがローマの拠点ノウィオドゥーヌムで寝返る'''
[[画像:Nevers_-_Vue_depuis_la_rive_sud_de_la_Loire.jpg|thumb|center|700px|ノウィオドゥーヌム([[w:la:Nivernum|Noviodunum]])=現・[[w:ヌヴェール|ヌヴェール]]([[w:fr:Nevers|Nevers]])における、リゲル川([[w:la:Liger|Liger]])=現・[[w:ロワール川|ロワール川]]([[w:fr:Loire (fleuve)|Loire]])の岸辺の景観]]
*① [[w:la:Nivernum|Noviodunum]] erat oppidum [[w:la:Haedui|Haeduorum]] ad ripas [[w:la:Liger|Ligeris]] opportuno loco positum.
**ノウィオドゥーヌムは、[[w:ハエドゥイ族|ハエドゥイー族]]の[[w:オッピドゥム|城塞都市]]で、リゲル川(現[[w:ロワール川|ロワール川]])岸の好都合な所に位置していた。
**:<span style="color:#009900;">(訳注:『ガリア戦記』には同名の都市が計3か所載っているが、こちらは現在の[[w:ヌヴェール|ヌヴェール]] Nevers である。<br> 「[[ガリア戦記/ガリア語の名前#Nouio-dūnon|ガリア語の名前 #Nouio-dūnon]]」を参照せよ。)</span>
*② Huc Caesar omnes obsides Galliae, frumentum, pecuniam publicam,
**ここに、カエサルは、ガッリアのすべての人質たちや、糧食、公金、
*suorum atque exercitus impedimentorum magnam partem contulerat;
**および自分と軍隊の[[w:輜重|輜重]]の大部分を運び集めていた。
*③ huc magnum numerum equorum huius belli causa in [[w:la:Italia|Italia]] atque [[w:la:Hispania|Hispania]] coemptum miserat.
**ここに、この戦争のためにイタリアと[[w:ヒスパニア|ヒスパニア]]から買い集めた馬匹の多数を送っておいた。
*④ Eo cum [[w:la:Eporedorix|Eporedorix]] Viridomarusque venissent et de statu civitatis cognovissent,
**そこに、[[w:エポレドリクス|エポレドリクス]]と[[w:ウィリドマルス|ウィリドマルス]]がやって来て、(以下のような)部族の情勢について察知したときに、
[[画像:Bibracte333_crop.JPG|thumb|right|400px|[[w:ビブラクテ|ビブラクテ]]の[[w:オッピドゥム|城塞都市]]跡に整備された城壁の遺構]]
*Litaviccum [[w:la:Bibracte|Bibracti]] ab Haeduis receptum,
**(すなわち)リタウィックスが、ハエドゥイー族の者たちによって[[w:ビブラクテ|ビブラクテ]]に迎え入れられ、
*─ quod est oppidum apud eos maximae auctoritatis ─,
**それ(ビブラクテ)は彼ら(ハエドゥイー族)のもとで最大の影響力を持つ城塞都市であるが、
*Convictolitavem<ref>Convictolitavem はβ系・N写本の記述で、χ系・B・M・S・L写本では Convictolitabim となっている。</ref> magistratum magnamque partem senatus ad eum convenisse,
**統領コンウィクトリタウィスと評議会の大半の者たちが彼(リタウィックス)のもとへ参集し、
*legatos ad [[w:la:Vercingetorix|Vercingetorigem]] de pace et<ref>et は α系・U写本の記述で、π系・R写本では et de となっている。</ref> amicitia concilianda publice missos,
**[[w:ウェルキンゲトリクス|ウェルキンゲトリークス]]のところへ和平と友好を仲介するべく公けに使節たちが遣わされた(ことを知った)ので、
*non praetermittendum instans<ref>instans はβ系写本の記述で、α系写本にはない。</ref> tantum commodum existimaverunt.
**(エポレドリクスとウィリドマルスは)眼前にあるこれほどの好機を放置するべきではないと考えたのだ。
*⑤ Itaque interfectis Novioduni custodibus quique eo negotiandi aut itineris<ref>aut itineris はβ系写本の記述で、α系写本にはない。</ref> causa convenerant,
**こうして(2人は)ノウィオドゥーヌムの(ローマ側の)番兵たちや商用や旅行のために来訪していた者たちを殺害し、
*pecuniam atque equos inter se partiti sunt;
**金銭および馬匹を互いに分け合った。
*⑥ obsides civitatum Bibracte ad magistratum deducendos curaverunt;
**(ガッリアの)部族の人質たちをビブラクテの統領のところへ連れて行くように手配した。
*⑦ oppidum, quod a<ref>a はα系写本の記述で、β系写本では ab となっている。</ref> se teneri non posse iudicabant,
**(ノウィオドゥーヌムの)城塞都市は、自分たちによって固守することはできないと判断したので、
*ne cui esset usui Romanis, incenderunt;
**ローマ人たちの有益になることがないように、焼き打ちした。
*⑧ frumenti quod subito potuerunt navibus avexerunt,
**糧食のうち、急いで(運ぶことが)できるものを船団で運び去って、
*reliquum flumine atque incendio corruperunt.
**残りのものを川(に流すこと)により、および焼き打ちにより、役立たないようにした。
*⑨ Ipsi ex finitimis regionibus copias cogere,
**(彼ら)自身は、近隣の地方から軍勢を徴集して、
*praesidia custodiasque ad ripas Ligeris disponere
**リゲルの川岸のたもとへ守備隊や番兵を分配して、
*equitatumque omnibus locis iniciendi timoris causa ostentare coeperunt,
**(ローマ人に)恐怖(の感情)を起こさせるために、[[w:騎兵|騎兵隊]]に誇示をさせ始めた。
*si ab re frumentaria Romanos excludere
**もし、ローマ人たちが糧食調達することを阻止するなら、
*† aut adductos inopia in provincia<ref>in provincia は、α系写本では ex provincia「属州から」、β系写本では provincia となっているが、コンスタン Constans やクロッツ A.Klotz らにより in provincia「属州に」と修正提案されている。</ref> expellere<ref>expellere「駆逐する」 はα系写本の記述で、β系写本では excludere「阻止する、妨げる」 となっている。</ref> † possent.
**あるいは(糧食などの)欠乏により、属州に駆逐することができるなら、と。
**:<span style="color:#009900;">(訳注:† ~ † は、写本の文章が崩れて校訂者を迷わせていることを表す記号。修正提案されている。)</span>
*⑩ Quam ad spem multum eos adiuvabat,
**そのような希望へ、彼らを大いに励まし助けたのは、
*quod Liger ex nivibus creverat,
**リゲル川(の水位)が雪水により増したことで、
*ut omnino vado non posse transiri videretur.
**すべての浅瀬が渡らせられることができないと思われたのである。
===56節===
'''カエサルが属州へは戻らず、増水したリゲル川の渡河を敢行'''
*① Quibus rebus cognitis Caesar maturandum sibi censuit,
**それらの事態を知ると、カエサルは自らにとって(以下のことを)急ぐべきだと考慮した。
*si esset in perficiendis pontibus periclitandum,
**もし、橋を造り上げる最中に(敵勢と闘うという)危険を冒すのであれば、
*ut prius, quam essent maiores eo coactae copiae, dimicaret.
**そこに(敵方の)より多くの軍勢が集結するよりも早く闘うように(急ぐべきだと)。
*② Nam ut commutato consilio iter in provinciam converteret,
**なぜなら、作戦を変更して、属州([[w:ガリア・ナルボネンシス|ガッリア・トラーンサルピーナ]])に進路を方向転換するようにと、
*ne metu quidem<ref>ne metu quidem はα系写本の記述で、β系写本では nemo tunc quidem 、そのほか近代の校訂者によって修正提案が行なわれている。</ref> necessario faciendum<ref>faciendum はβ系写本の記述で、α系写本では faciundum となっている。</ref> existimabat;
**(ガッリア勢への)怖れによって行なうことは決して必要ではない、と考えたのだ。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:ne quidem|ne ~ quidem]]「~でさえ…ない」)</span>
*cum infamia atque indignitas rei
**(属州に撤退するという)事の不名誉や恥辱が、
**:<span style="color:#009900;">(訳注:cum ~ tum …「~であるのと同様に特に…である」)</span>
*et oppositus mons Cevenna<ref>Cevenna はχ系・U写本の記述で、π系・R写本の記述では Cebenna、φ系写本では Cevennae となっている。</ref> viarumque difficultas impediebat,
**およびケウェンナ山地が相対して道の(通行の)困難なことが、(属州への撤退を)妨げていたし、
**:<span style="color:#009900;">(訳注:ケウェンナ山地 mons Cevenna は現在のセヴェンヌ山地。[[#8節|8節]]を参照。)</span>
*tum maxime quod abiuncto [[w:la:Titus_Labienus|Labieno]] atque iis legionibus, quas una miserat, vehementer timebat.
**同様に、とりわけ[[w:ティトゥス・ラビエヌス|ラビエーヌス]]と一緒に派遣していた諸[[w:ローマ軍団|軍団]]から遠ざけられて、非常に心配してもいたのだ。
*③ Itaque admodum magnis diurnis nocturnisque itineribus confectis
**こうして、昼間も夜間も非常な強行軍を成し遂げて、
*contra omnium opinionem ad [[w:la:Liger|Ligerem]]<ref>Ligerem はα系写本の記述で、β系写本では Ligerim となっている。</ref> venit
**皆の予想に反して、リゲル川(=現[[w:ロワール川|ロワール川]])の辺りにやって来た。
*④ vadoque per equites invento pro rei necessitate opportuno,
**事態の緊急性に見合う好都合な浅瀬を、[[w:騎兵|騎兵]]たちを通じて見出して、
*ut brachia modo atque humeri<ref>humeri はA・φ系・ρ系写本の記述で、Q写本では umeri となっている。</ref> ad sustinenda arma liberi ab aqua esse possent,
**やっと腕と肩を、武器を差し上げるために、水から自由になることができた。
*disposito equitatu, qui vim fluminis refringeret,
**川の流れの圧力を妨げるべく、騎兵隊を分けて置いて、
*atque hostibus primo aspectu perturbatis,
**敵方は(ローマ勢を)初めに一見するや狼狽していたので、
*⑤ incolumem exercitum traduxit
**(カエサルは)軍隊を無傷のまま渡河させた。
*frumentumque in agris et pecoris copiam nactus
**耕地の穀物、および大量の家畜を獲得して、
*repleto his rebus exercitu
**これらの物を軍隊に補充して、
*iter in Senones facere instituit.
**セノネース族のところに行軍することを決めた。
**:<span style="color:#009900;">(訳注:セノネース族の方面には、副官ラビエーヌスと4個軍団を派遣していた。)</span>
==ラビエーヌスのルテティア遠征==
===57節===
'''副官ラビエーヌスがルテティア制圧に向かう'''
*① Dum haec apud Caesarem geruntur,
**これらがカエサルのもとで遂行されている間に、
*[[w:la:Titus Labienus|Labienus]] eo supplemento, quod nuper ex Italia venerat,
**[[w:ティトゥス・ラビエヌス|ラビエーヌス]]は、最近イタリアから来ていた補充兵(予備兵)を
**:<span style="color:#009900;">(訳注:[[#34節|34節]]で既述のようにラビエーヌスはカエサルから4個軍団とともにガッリア北部の制圧を委ねられていた。</span>
**:<span style="color:#009900;">また、[[#1節|1節]]で既述のようにカエサルはイタリア(属州[[w:ガリア・キサルピナ|ガッリア・キサルピーナ]])で部隊を徴兵していた。)</span>
*relicto [[w:la:Agedincum|Agedinci]], ut esset impedimentis praesidio,
**アゲディンクムに、[[w:輜重|輜重]]にとっての守備隊となるように、残留させて、
**:<span style="color:#009900;">(訳注:[[#10節|10節]]で既述のように、カエサルはアゲディンクム(現在の[[w:サンス|サンス]])に全軍の輜重を残していた。)</span>
*cum quattuor legionibus Luteciam<ref>Luteciam はα系写本の記述で、π系写本では Luceciam 、ρ系写本では Lucetiam となっている。[[ガリア戦記 第6巻#3節|第6巻3節]]では Lutetia(m) とも綴られている。</ref> proficiscitur.
**4個軍団とともに[[w:ルテティア|ルテティア]]に出発した。
**:<span style="color:#009900;">(訳注:ルテティア Lutetia は写本ではルテキア Lutetia とも綴られる。[[ガリア戦記 第6巻#3節|第6巻3節]]を参照。)</span>
*Id est oppidum Parisiorum, quod positum est<ref>quod positum est はα系写本の記述で、β系写本では単に positum となっている。</ref> in insula fluminis [[w:la:Sequana|Sequanae]].
**それ(ルテティア)は[[w:パリシイ族|パリスィイ族]]の<ruby><rb>[[w:オッピドゥム|城塞都市]]</rb><rp>(</rp><rt>オッピドゥム</rt><rp>)</rp></ruby>で、セクアナ川(=現[[w:セーヌ川|セーヌ川]])の中洲に位置している。
*② Cuius adventu ab hostibus cognito
**彼(ラビエーヌス)の到来が敵方により知られると、
*magnae ex finitimis civitatibus copiae convenerunt.
**近隣の諸部族から大軍勢が集結していた。
*③ Summa imperii traditur Camulogeno Aulerco,
**(北部ガッリア勢の)最高司令権は、[[w:アウレルキ族|アウレルキ族]]の[[w:カムロゲヌス|カムロゲヌス]]に託された。
*qui prope confectus aetate
**その者はかなり年老いていたが、
*tamen propter singularem scientiam rei militaris ad eum est honorem evocatus.
**けれども、彼の卓越した軍事の知識のために、顕職に召集されたのだ。
*④ Is cum animadvertisset perpetuam esse paludem,
**彼(カムロゲヌス)は、沼地が絶え間なくあることに気付いていたので、
*quae influeret in Sequanam atque illum omnem locum magnopere impediret,
**それはセクアナ(川)に流れ込み、かの一帯すべてを大いに近付きにくくしていたので、
*hic consedit nostrosque transitu prohibere instituit.
**ここに陣取って、我が方(ローマ勢)が渡河するのを妨げることに決めた。
===58節===
'''ラビエーヌスがメトロセドゥムを陥落させ、ルテティアのガッリア勢と対峙'''
*① [[w:la:Titus Labienus|Labienus]] primo vineas agere, cratibus atque aggere paludem explere
**[[w:ティトゥス・ラビエヌス|ラビエーヌス]]は初めに、<ruby><rb>[[w:ウィネア|工作小屋]]</rb><rp>(</rp><rt>ウィネア</rt><rp>)</rp></ruby>を駆ること、柴や土砂で沼地を埋め立てること、
*atque iter munire conabatur.
**および道を築くこと、を試みた。
*② Postquam id difficilius confieri<ref>confieri はχ系・β系写本の記述で、Q写本では confici となっている。</ref> animadvertit,
**それが成し遂げられることが困難だと気付いた後で、
*silentio e castris tertia vigilia egressus
**(敵に知られないように)静けさのうちに第三夜警時に陣営から進発して、
*eodem, quo venerat, itinere Metlosedum<ref>Metlosedum はコンスタン L.-A. Constans による修正で、π系・U写本では Metiosedum 、α系・ρ系写本では Mellodunum などとなっており、写本により表記がさまざまである。</ref> pervenit.
**やって来たのと同じ道程により、メトロセドゥムに到達した。
**:<span style="color:#009900;">(訳注:メトロセドゥム Metlosedum は、写本によりメティオセドゥム Metiosedum とも綴られ、</span>
**:<span style="color:#009900;">後にはメロドゥーヌム [[w:la:Melodunum|Melodunum]] として知られる。現在の[[w:ムラン|ムラン]] [[w:fr:Melun|Melun]] である。)</span>
*③ Id est oppidum [[w:la:Senones|Senonum]] in insula [[w:la:Sequana|Sequanae]] positum, ut paulo ante de [[w:la:Lutetia|Lutecia]] diximus.
**それはセノネース族の城塞都市で、少し前に[[w:ルテティア|ルテティア]]について述べたように、セクアナ川の[[w:中州|中州]]に位置している。
**:<span style="color:#009900;">(訳注:ルテティアすなわち現在の[[w:パリ|パリ]]の中心部に[[w:シテ島|シテ島]]や[[w:サン=ルイ島|サン=ルイ島]]という[[w:セーヌ川|セーヌ川]]の中州があるように、</span>
**:<span style="color:#009900;">現在のムランの中心部にもサン=テティエンヌ島 [[w:fr:Île Saint-Étienne|Île Saint-Étienne]] というセーヌ川の中州がある。)</span>
*④ Deprensis<ref>deprensis という語形はα系写本の記述で、β系写本では deprehensis となっている。</ref> navibus circiter quinquaginta celeriterque coniunctis
**約50隻の船を探し出して、速やかに結び合わせて(舟橋として)、
*atque eo militibus iniectis
**そこに兵士たちを投入して、
*et rei novitate perterritis oppidanis,
**事の新奇さに<ruby><rb>[[w:オッピドゥム|城塞都市]]</rb><rp>(</rp><rt>オッピドゥム</rt><rp>)</rp></ruby>の者たちは脅えて、
*quorum magna pars erat ad bellum evocata,
**彼ら(住民)の大部分は戦争へ徴集されていた(ため不在であった)ので、
*sine contentione oppido potitur.
**(ラビエーヌスは)闘うことなしに(中州にあるメトロセドゥムの)城塞都市を掌握した。
*⑤ Refecto ponte, quem superioribus diebus hostes resciderant, exercitum traducit
**それ以前の日々に敵方が破却していた橋を再建して、軍隊を(中州から対岸へ)渡らせて、
*et secundo flumine ad Luteciam iter facere coepit.
**川に沿ってルテティアの方へ行軍を始めた。
*⑥ Hostes re cognita ab iis, qui Metlosedo<ref>Metlosedo はコンスタン L.-A. Constans による修正で、β系・S写本では Metiosedo 、χ系写本では Melloduno 、B・M・L・N写本では Ametlodone(あるいは Ametclodone)などとなっている。</ref> fugerant,
**敵方は、メトロセドゥムから逃げて来た者たちから事態を知って、
*Luteciam incendi pontesque eius oppidi rescindi iubent;
**ルテティアを焼打ちすること、その城塞都市の橋を破却すること、を命じた。
*ipsi profecti a palude ad ripas<ref>ad ripas はχ系・B・M・L・N写本の記述で、S・Vおよびρ系写本では in ripas 、T写本では in ripa となっている。</ref> Sequanae
**彼ら自身は、沼地からセクアナの川岸へ出発して、
*e regione Luteciae contra Labieni castra considunt.
**ルテティア(の対岸)に向かってラビエーヌスの陣営に対抗して陣取った。
===59節===
'''ガッリア諸部族が迫り、ラビエーヌスが作戦変更を決断'''
*① Iam Caesar a [[w:la:Gergovia|Gergovia]] discessisse audiebatur,
**すでに、カエサルが[[w:ゲルゴウィア|ゲルゴウィア]]から撤退したことが聞かれていたし、
*iam de [[w:la:Haedui|Haeduorum]] defectione et secundo Galliae motu rumores adferebantur,
**もはや、[[w:ハエドゥイ族|ハエドゥイー族]]の背反や、ガッリアの動乱の順調さについての噂がもたらされていた。
*Gallique in conloquiis
**(当地の)ガッリア人たちは会話の中で、
*interclusum itinere et [[w:la:Liger|Ligeri]] Caesarem inopia frumenti coactum in provinciam contendisse confirmabant.
**カエサルが行軍やリゲル(渡河)を遮られて、糧食の欠乏により属州([[w:ガリア・ナルボネンシス|ガッリア・トラーンサルピーナ]])に急ぐことを強いられた、と確言した。
*② Bellovaci autem defectione Haeduorum cognita,
**一方で、ベッロウァキ族もハエドゥイー族の背反を知って、
**:<span style="color:#009900;">(訳注:ベッロウァキ族は、ハエドゥイー族の仲介によりカエサルに降伏していた。[[ガリア戦記 第2巻#14節|第2巻14節]]~15節を参照。)</span>
*qui iam<ref>qui iam は古典学者 ニコラエス・ハインシウス1世 [[w:en:Nikolaes_Heinsius_the_Elder|Nikolaes Heinsius the Elder]] による修正提案で、χ系・S・β系写本では qui 、B・M・L・N写本では quia となっている。</ref> ante erant per se infideles,
**彼ら自身もすでに以前から(カエサルやローマ人に)忠誠的でなかったが、
*manus cogere atque aperte bellum parare coeperunt.
**手勢を徴集して、公けに戦争を準備することを始めた。
*③ Tum [[w:la:Titus Labienus|Labienus]] tanta rerum commutatione
**そこで、[[w:ティトゥス・ラビエヌス|ラビエーヌス]]はこれほどの事態の変動により、
*longe aliud sibi capiendum consilium, atque antea senserat, intellegebat,
**自分にとって、以前に判断していたのとはまったく別の作戦が立てられるべきだ、と考えた。
**:<span style="color:#009900;">(訳注:aliud ~ atque …「…とは別の~」)</span>
*④ neque iam, ut aliquid adquireret proelioque hostes lacesseret,
**もはや、何らかのものを獲得したり、敵方に戦闘を挑むようにではなく、
**:<span style="color:#009900;">(訳注:neque ut ~, sed ut …「~ようにではなく、…ように」)</span>
*sed ut incolumem exercitum Agedincum reduceret, cogitabat.
**軍隊を無傷のままでアゲディンクム(=現[[w:サンス|サンス]])に連れ戻すように、と考えた。
**:<span style="color:#009900;">(訳注:アゲディンクムには輜重と守備隊が残されていた。[[#10節|10節]]・[[#57節|57節]]を参照。)</span>
*⑤ Namque altera ex parte Bellovaci,
**実際、一方の側からはベッロウァキ族が、
*quae civitas in Gallia maximam habet opinionem virtutis, instabant,
**ガッリアにおいて武勇に最大の評判を持つその部族が、迫りつつあった。
*alteram Camulogenus parato atque instructo exercitu tenebat:
**他方からは、カムロゲヌスが軍隊を準備し、整列させて、進んでいた。
*tum legiones a praesidio atque impedimentis interclusas
**そのとき、(ラビエーヌス麾下の)諸軍団は(アゲディンクムにいる)守備隊や輜重から遮られて、
*maximum flumen distinebat.
**とても大きな(セクアナ)川が阻んでいた。
*⑥ Tantis subito difficultatibus obiectis
**突然に、これほどの困難が投げ出されたので、
*ab animi virtute auxilium petendum videbat.
**武勇の心構えに救いを求めるべきだと(ラビエーヌスは)思った。
===60節===
'''ラビエーヌスが陽動戦術に努める'''
*① Itaque<ref>Itaque はS・β系写本の記述で、α系写本にはない。</ref> sub vesperum consilio convocato
**こうして([[w:ティトゥス・ラビエヌス|ラビエーヌス]]は)夕方に会議を召集して、
*cohortatus, ut ea, quae imperasset, diligenter industrieque administrarent,
**(彼が)命令したことを入念かつ勤勉に従事するように鼓舞した。
*naves, quas [[w:la:Melodunum|Metlosedo]]<ref>Metlosedo はコンスタン L.-A. Constans による修正で、χ系・S・β系写本では Metiosedo 、B・M写本では ameclodone 、L・N写本では a mellodone 、<i>etc</i>. となっている。</ref> deduxerat, singulas equitibus Romanis attribuit,
**[[w:ムラン|メトロセドゥム]]から引いて来ていた船団を、ローマ人騎士たち1人ずつに配分して、
*et prima confecta vigilia IIII(quattuor) milia passuum secundo flumine silentio progredi
**第一夜警時が終わる頃に、4ローママイル(6km弱)下流に静けさのうちに進発すること、
*ibique se exspectari<ref>exspectari はα系・T・ρ系写本の記述で、S・V写本では exspectare などとなっている。</ref> iubet.
**かつ、そこで自分(ラビエーヌス)を待つことを命じた。
*② Quinque cohortes, quas minime firmas ad dimicandum esse existimabat,
**(白兵戦を)闘うためにはあまり強くないと(ラビエーヌスが)考えていた5個<ruby><rb>[[w:コホルス|歩兵大隊]]</rb><rp>(</rp><rt>コホルス</rt><rp>)</rp></ruby>
*castris praesidio relinquit;
**陣営にとっての守備隊として残留させた。
*quinque eiusdem legionis reliquas
**同じ軍団の残りの5個(歩兵大隊)を
*de media nocte cum omnibus impedimentis adverso flumine magno tumultu proficisci imperat.
**真夜中から、すべての[[w:輜重|輜重]]とともに、上流の方に大きな喧騒でもって出発することを命令した。
*④ Conquirit etiam lintres;
**小舟さえも探し集めて、
*has magno sonitu remorum incitatas in eandem partem mittit.
**これらを大きな音とともに[[w:櫂|櫂]]を駆って、同じ方面に派遣した。
*Ipse post paulo silentio egressus cum tribus legionibus
**(ラビエーヌス)自身は、少し後で静けさのうちに3個[[w:ローマ軍団|軍団]]とともに進発して、
*eum locum petit, quo naves appelli iusserat.
**船団が停められることを命じていた地点へ行った。
===61節===
'''ラビエーヌスの陽動により、敵将カムロゲヌスが兵力を分散'''
*① Eo cum esset ventum,
**(ラビエーヌスの軍勢が)そこにやって来たときに、
*exploratores hostium, ut omni fluminis parte erant dispositi,
**敵方の偵察者たちが(セクアナ)川の至る所に分けて置かれていたが、
*inopinantes, quod magna subito erat coorta tempestas,
**突然に大きな嵐が生じたので(ローマ勢の襲撃を)予期していなかった者たちは、
*ab<ref>ab はχ系・B・M・L・N写本の記述で、S・β系写本では a となっている。</ref> nostris opprimuntur;
**我が方(ローマ勢)によって不意を襲われたのだ。
*② exercitus equitatusque equitibus Romanis administrantibus, quos ei negotio praefecerat,
**歩兵隊と騎兵隊が、(ラビエーヌスが)任務を指揮させていたローマ人騎士たちの指導により、
*celeriter transmittitur.
**速やかに(セクアナ川を)渡らせられた。
*③ Uno fere tempore sub lucem hostibus nuntiatur
**夜明け前のほぼ一時に(以下のことが)敵方に報知された。
*in castris Romanorum praeter consuetudinem tumultuari
**ローマ人の陣営において、通例に反して、騒がれていること、
*et magnum ire agmen adverso flumine
**大きな隊列が上流の方へ行軍していること、
*sonitumque remorum in eadem parte exaudiri
**(船を漕ぐ)櫂の音が同じ方面で聞き取られたこと、
*et paulo infra milites navibus transportari.
**少し下流で兵士たちが船で(セクアナ川を)渡されたこと、である。
*④ Quibus rebus auditis,
**それらの事態が聞かれて、
*quod existimabant tribus locis transire legiones atque omnes perturbatos defectione [[w:la:Haedui|Haeduorum]] fugam parare,
**(ローマ勢の)諸軍団が3か所で渡河したこと、[[w:ハエドゥイ族|ハエドゥイー族]]の背反により総勢が取り乱して逃亡を準備していること、を考えたので、
*suas quoque copias in tres partes distribuerunt.
**自分たちの軍勢をも3方面に分配した。
*⑤ Nam praesidio e regione castrorum relicto
**すなわち(一隊がローマ勢の)陣営の真向かいに守備隊として残され、
*et parva manu Metlosedum<ref>Metlosedum はQ写本の記述で、χ系・β系写本では Metiosedum 、などとなっている。</ref> versus missa,
**(別の)わずかな手勢が[[w:ムラン|メトロセドゥム]]の方面へ派遣され、
*quae tantum progrediatur<ref>progrediatur はα系写本の記述で、Q・S・β系写本では progrederetur となっている。</ref>, quantum naves processissent,
**(ローマ勢の)船団が進み出るだけ、(ガッリア兵も)前進するようにした。
*reliquas copias contra Labienum duxerunt.
**残りを軍勢をラビエーヌスに対して(カムロゲヌス自身が)率いて行った。
===62節===
'''ラビエーヌスがカムロゲヌス麾下のガッリア勢を各個撃破して、カエサルと合流'''
*① Prima luce et nostri omnes erant transportati
**夜明けに、我が方(ローマ勢)は総勢が(セクアナ川の左岸に)渡されていたし、
*et hostium acies cernebatur.
**敵方の戦列も見分けられた。
*② [[w:la:Titus Labienus|Labienus]] milites cohortatus,
**[[w:ティトゥス・ラビエヌス|ラビエーヌス]]は兵士たちを(以下のように)鼓舞した。
*ut suae pristinae virtutis et tot<ref>tot はS・β系写本の記述で、α系写本にはない。</ref> secundissimorum proeliorum retinerent memoriam<ref>retinerent memoriam はχ系・B・M・L・N写本の記述で、S・β系写本では memoriam retinerent となっている。</ref>
**自分たちのかつての武勇とこのようにとてもうまくいっている諸戦闘を記憶に留めるように、
*atque ipsum Caesarem, cuius ductu saepe numero hostes superassent, praesentem adesse existimarent,
**かつ、その指揮によって何度もしばしば敵方を打ち破って来たカエサル当人が目下居合わせていると考えるように、と。
*dat signum proelii.
**(それから)戦闘の号令を発した。
*③ Primo concursu ab dextro cornu, ubi septima legio constiterat,
**最初の激突は、[[w:第7軍団クラウディア・ピア・フィデリス|第7軍団]]が布陣していた(ローマ軍の)右翼からで、
*hostes pelluntur atque in fugam coniciuntur;
**敵方は撃退されて、逃亡に追いやられた。
*④ ab sinistro, quem locum duodecima legio tenebat,
**第12軍団が場所を占めていた左翼からは、
*cum primi ordines hostium transfixi pilis<ref>pilis はβ系写本の記述で、α系写本では telis となっている。</ref> concidissent,
**敵方の最前列(の兵たち)が投げ槍で突き通されて斃れたのだが、
*tamen acerrime reliqui resistebant
**けれども残りの者たちがとても激烈に抵抗していて、
*nec dabat suspicionem fugae quisquam.
**誰も逃亡の予兆を示さなかった。
*⑤ Ipse dux hostium Camulogenus suis aderat atque eos cohortabatur.
**敵方の将帥カムロゲヌス自身は、麾下の者たちに居合わせて、彼らを激励していた。
*⑥ At<ref>cohortabatur. At はχ系写本などの記述で、別の写本では記述が異なる。</ref> incerto nunc etiam<ref>nunc etiam はB・M・L・N写本の記述で、χ系・S・β系写本では etiamnunc となっている。</ref> exitu victoriae,
**勝敗の帰趨は今もなお不確実だったが、
*cum septimae legionis tribunis esset nuntiatum, quae in sinistro cornu gererentur,
**第7軍団の<ruby><rb>[[w:トリブヌス・ミリトゥム|兵士長官]]</rb><rp>(</rp><rt>トリブヌス・ミリトゥム</rt><rp>)</rp></ruby>たちに、左翼で<ruby><rb>出来</rb><rp>(</rp><rt>しゅったい</rt><rp>)</rp></ruby>したことが報告されたときに、
*post tergum hostium legionem ostenderunt signaque intulerunt.
**敵方の背後に(第7)軍団を差し向けて、軍旗を進めた(=進撃した)。
*⑦ Ne eo quidem tempore quisquam loco cessit,
**その時でさえ、(ガッリア勢の)誰も(戦闘の)場から退却しなかった
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:ne quidem|ne ~ quidem]]「~でさえ…ない」)</span>
*sed circumventi omnes interfectique sunt.
**けれども、総勢が包囲されて(ローマ軍により)殺戮された。
*Eandem fortunam tulit Camulogenus.
**同じ不幸をカムロゲヌスも蒙った。
*⑧ At ii<ref>ii はχ系写本の記述で、他の写本では記述が異なる。</ref>, qui praesidio contra castra Labieni erant relicti,
**これに対して、ラビエーヌスの陣営に対して守備隊として残されていた(ガッリア勢の)者たちは、
*cum proelium commissum audissent, subsidio suis ierunt collemque ceperunt,
**(両軍が)戦闘を交えているのを聞き付けたので、味方の援兵として出て行って、丘陵を占めていたが、
*neque nostrorum militum victorum impetum sustinere potuerunt.
**勝勢の我が方(ローマ軍)の兵士たちの突撃を持ちこたえることができなかった。
*⑨ Sic cum suis fugientibus permixti,
**このようにして、敗走している味方と混じり合ったときに、
*quos non silvae montesque texerunt, ab equitatu sunt interfecti.
**森林や山岳が覆い隠すことのなかったその者たちは、(ローマ側の)騎兵隊によって殺戮された。
*⑩ Hoc negotio confecto Labienus revertitur Agedincum,
**この戦役が成し遂げられると、ラビエーヌスは[[w:サンス|アゲディンクム]]に引き返した。
*ubi impedimenta totius exercitus relicta erant;
**そこには軍隊全体の[[w:輜重|輜重]]が残されていたのだ。
*inde die Ⅲ.<ref>inde die Ⅲ. は近代の校訂者による修正提案で、Q・M・S・N・β系写本では単に inde 、他の写本では別の記述になっている。</ref> cum omnibus copiis ad Caesarem pervenit.
**そこから3日目(=2日後)にすべての軍勢とともにカエサルのところへ到着した。
==ガッリア戦乱の拡大==
===63節===
'''ハエドゥイー族がウェルキンゲトリークスに主導権争いを挑む'''
*① Defectione [[w:la:Haedui|Haeduorum]] cognita bellum augetur.
**[[w:ハエドゥイ族|ハエドゥイー族]]の背反が知られて、戦乱は拡大された。
*② Legationes in omnes partes circummittuntur;
**(ハエドゥイー族らにより)使節たちがあらゆる方面に遣わされまくり、
*quantum gratia, auctoritate, pecunia valent, ad sollicitandas civitates nituntur;
**信望、勢力や金銭によってできる限り、諸部族をそそのかすことに努めた。
**:<span style="color:#009900;">(訳注:quantum ~ valere「~によってできる限り」)</span>
*③ nacti obsides, quos Caesar apud eos deposuerat,
**カエサルが彼ら(ハエドゥイー族)のもとに預けて置いた人質たちを手に入れて、
*horum supplicio dubitantes territant.
**彼ら(人質たち)の処刑(を示唆すること)によって、決心がつかぬ者たちを恐れさせた。
*④ Petunt a [[w:la:Vercingetorix|Vercingetorige]] Haedui, ut ad se veniat rationesque belli gerendi communicet;
**ハエドゥイー族は、[[w:ウェルキンゲトリクス|ウェルキンゲトリークス]]に、自分たちのところへ来て戦争遂行の戦略を協議するように要求した。
*re impetrata contendunt, ut ipsis summa imperii tradatur.
**その事が成し遂げられると、(ハエドゥイー族)自身に最高司令権が委ねられるように頑張った。
*Et re<ref>et re は近代の校訂者による修正提案で、β系写本では re 、α系写本では et rem となっている。</ref> in controversiam deducta totius Galliae concilium [[w:la:Bibracte|Bibracte]] indicitur.
**その事が論争の状態に置かれて、[[w:ビブラクテ|ビブラクテ]]でのガッリア全体の会合が公示された。
*Eodem conveniunt<ref>Eodem conveniunt はα系写本の記述で、β系写本では単に conveniunt 、etc.となっている。</ref> undique frequentes.
**同じところに至る所からたくさんの者たちが集まって来た。
*⑥ Multitudinis suffragiis res permittitur;
**(最高司令権の)事は衆人の票決に任せられて、
*ad unum omnes Vercingetorigem probant imperatorem.
**衆議一決により、ウェルキンゲトリークスを将軍(最高司令官)として承認した。
**:<span style="color:#009900;">(訳注:ad unum omnes「最後の一人に至るまですべて」)</span>
*⑦ Ab hoc concilio Remi, Lingones, Treveri afuerunt,
**この会合へは、[[w:レミ族|レーミー族]]、リンゴネス族、トレウェリ族が不在であった。
*illi quod amicitiam Romanorum sequebantur,
**前者(レーミー族とリンゴネス族)は、ローマ人との友好を遵守したので(不在であった)。
*Treveri quod aberant longius et ab<ref>ab はα系写本の記述で、β系写本では a となっている。</ref> [[w:la:Germani|Germanis]] premebantur,
**トレウェリ族は、はるか遠くに離れており、[[w:ゲルマニア|ゲルマニア]]人により圧迫されていた。
*quae fuit causa quare toto abessent bello
**それが、何ゆえに(ウェルキンゲトリークスによる)戦争全体に関与しなかったかの理由であり、
*et neutris auxilia mitterent.
**(ウェルキンゲトリークスとカエサルの)どちら側にも援軍を派遣しなかった。
*⑧ Magno dolore Haedui ferunt se deiectos principatu,
**ハエドゥイー族は、自分たちが盟主の座から遠ざけられて、とても憤懣やるかたなかったし、
*queruntur fortunae commutationem
**境遇の変わりようを嘆いて、
*et Caesaris indulgentiam in se<ref>indulgentiam in se はα系写本の記述で、β系写本では in se indulgentiam となっている。</ref> requirunt
**カエサルの自分たちへの寛大さを惜しんだ。
*neque tamen suscepto bello suum consilium ab reliquis separare audent.
**けれども戦争を引き受けてしまったので、あえて自分たちの作戦計画をほか(の諸部族)と異にしなかった。
*⑨ Inviti summae spei adulescentes Eporedorix et Viridomarus Vercingetorigi parent.
**たいへんな野心を持つ青年たち[[w:エポレドリクス|エポレドリクス]]と[[w:ウィリドマルス|ウィリドマルス]]は、意に反してウェルキンゲトリークスに服従した。
===64節===
'''ウェルキンゲトリークスがガッリア諸部族の誘降・服従を謀る'''
*① Ipse<ref>ipse はα系写本の記述で、β系写本では ille となっている。</ref> imperat reliquis civitatibus obsides denique ei rei constituit diem;
**(ウェルキンゲトリークス)自身は、ほかの諸部族に人質(の供出)を命令して、のみならずその事の期日を決めた。
*huc omnes equites, [[wikt:la:quindecim|XV(quindecim)]] milia numero, celeriter convenire iubet.
**そこに、1万5000名の数のすべての[[w:騎兵|騎兵]]に、速やかに集結することを命じた。
*② Peditatu quem antea habuerit se fore contentum dicit
**(歩兵については)自分は、以前から持っていた[[w:歩兵|歩兵隊]]で満足するであろうと言った。
*neque fortunam temptaturum aut in acie<ref>in acie はα系写本の記述で、β系写本では単に acie となっている。</ref> dimicaturum,
**(歩兵で)武運を試すことはしないであろうし、あるいは野戦で(白兵戦を)闘うこともないであろう、と。
*sed quoniam abundet equitatu,
**しかし、騎兵隊は豊富であるから、
*perfacile esse factu frumentationibus pabulationibusque Romanos prohibere;
**ローマ人たちの糧食・糧秣徴発を妨げることは、とても容易である、と。
*③ aequo modo animo sua ipsi frumenta corrumpant aedificiaque incendant,
**ただ平静な心で、自分たちの穀物を自身で傷めて、(穀物の)建屋を焼打ちするように。
*qua rei familiaris iactura perpetuum imperium libertatemque se consequi videant.
**資産の犠牲により、永久の領有権と自由を自分たちが獲得することを思え、と。
*④ His constitutis rebus
**これらの事が決定されると、
*[[w:la:Haedui|Haeduis]] Segusiavisque, qui sunt finitimi provinciae, decem milia peditum imperat;
**[[w:ハエドゥイ族|ハエドゥイー族]]および(ローマ人の)属州に隣接するセグスィアウィ族には1万の歩兵(の供出)を命令していたが、
*huc addit equites [[wikt:la:octingenti|octingentos]].
**この中に、800騎の騎兵たち(の供出)を付け加えた。
*⑤ His praeficit fratrem Eporedorigis bellumque inferri<ref>inferri はα系写本の記述で、β系写本では inferre となっている。</ref> Allobrogibus iubet.
**彼らをエポレドリクスの兄弟に指揮させて、アッロブロゲス族に戦争をしかけることを命じた。
*⑥ Altera ex parte Gabalos proximosque <u>[[wikt:en:pagus#Latin|pagos]]</u> Arvernorum in Helvios,
**別の方面から、ガバリ族および近隣のアルウェルニー族の諸<u>郷</u>に、ヘルウィイ族のところに(攻め入るように)、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:''pagus'' (郷) はここでは、部族の領土の農村区画を指す行政用語<ref name="pagus">''[[w:en:Pagus]]'' 等を参照。</ref>。)</span>
*item Rutenos Cadurcosque ad fines Volcarum Arecomicorum depopulandos mittit.
**同様に、ルテーニー族およびカドゥルキー族に、ウォルカエ・アレコミキ族の領土を荒らしまわるべく派遣した。
*⑦ Nihilo minus clandestinis nuntiis legationibusque Allobrogas<ref>Allobrogas はα系写本の記述で、β系写本では Allobroges となっている。</ref> sollicitat,
**それにもかかわらず、隠密に伝令たちや使節たちにより、アッロブロゲス族を(蜂起を)そそのかした。
*quorum mentes nondum ab<ref>ab はβ系写本の記述で、α系写本では ab となっている。</ref> superiore bello resedisse sperabat.
**彼ら(アッロブロゲス族)の心がかつての戦争からまだ静まっていないことを期待したのだ。
**:<span style="color:#009900;">(訳注:アッロブロゲス族は、BC61年にローマに反旗を翻し、翌BC60年に鎮圧されていた。[[ガリア戦記 第1巻#6節|第1巻6節]]を参照。)</span>
*⑧ Horum principibus pecunias,
**彼らの領袖たちに金銭を(約束し)、
*civitati autem imperium totius provinciae pollicetur.
**さらに部族には(カエサル統治下の)属州全体の支配権をも約束したのだ。
===65節===
'''カエサルと同盟諸部族の防戦。ゲルマニア騎兵を呼び寄せる'''
*① Ad hos omnes casus provisa erant praesidia cohortium duarum et viginti,
**これらすべての出来事に対して、(カエサルは)22個<ruby><rb>[[w:コホルス|歩兵大隊]]</rb><rp>(</rp><rt>コホルス</rt><rp>)</rp></ruby>からなる守備隊を用意していた。
*quae ex ipsa coacta<ref>coacta はχ系・β系写本の記述で、φ系写本にはない。</ref> provincia ab L.(Lucio) Caesare legato
**それらは、<ruby><rb>[[w:レガトゥス|総督副官]]</rb><rp>(</rp><rt>レガトゥス</rt><rp>)</rp></ruby>ルキウス・カエサルによって属州全体から徴集されたもので、
**:<span style="color:#009900;">(訳注:ここでいう属州とは、[[w:ガリア・ナルボネンシス|ガッリア・トラーンサルピーナ]]を指すと思われる。</span>
**:<span style="color:#009900;">ルキウス・ユリウス・カエサル4世 [[w:en:Lucius Julius Caesar IV|Lucius Julius Caesar IV]] は本書の著者カエサルと4代前の高祖父を共有する元執政官。[[w:en:Julii Caesares|Julii Caesares]] を参照。)</span>
*ad omnes partes opponebantur.
**あらゆる方面に対して配置された。
*② Helvii sua sponte cum finitimis proelio congressi pelluntur
**[[w:ヘルウィイ族|ヘルウィイ族]]は、自分たちの意思により、近隣(の諸部族)と戦闘で争って撃退され、
**:<span style="color:#009900;">(訳注:この部族については[[#7節|7節]]~8節を参照。)</span>
*et C.(Gaio) Valerio Domnotauro<ref>Domnotauro はS・L・N写本の記述で、A・B・N写本では Donnotauro 、χ系・π系写本では Donotauro となっており、ρ系写本には記述がない。</ref>, Caburi filio, principe civitatis,
**カブルスの息子で、部族の領袖であるガイウス・ウァレリウス・ドムノタウルス
**:<span style="color:#009900;">(訳注:彼は、ローマとの友好により、ローマ人風の名前を与えられていたのであろう。)</span>
*compluribusque aliis interfectis intra oppida ac muros<ref>ac muros はα系写本の記述で、β系写本では murosque となっている。</ref> compelluntur.
**および他のかなりの者たちが殺戮されて、<ruby><rb>[[w:オッピドゥム|城塞都市]]</rb><rp>(</rp><rt>オッピドゥム</rt><rp>)</rp></ruby>と城壁の内側に追い込まれた。
*③ Allobroges crebris ad [[w:la:Rhodanus|Rhodanum]] dispositis praesidiis
**[[w:アッロブロゲス族|アッロブロゲス族]]は、ロダヌス(=現[[w:ローヌ川|ローヌ川]])のところへ密に守備隊を分け置いて、
*magna cum cura et diligentia suos fines tuentur.
**たいへんな注意と入念さにより、自分たちの領土を守った。
*④ Caesar quod hostes equitatu superiores esse intellegebat
**カエサルは、敵方が[[w:騎兵|騎兵隊]]で(自軍より)優っていると認識していたので、
*et interclusis omnibus itineribus nulla re ex provincia atque Italia sublevari poterat,
**かつ、すべての道が遮られて、属州やイタリアから何ら支援されることができなかったので、
**:<span style="color:#009900;">(訳注:属州 provincia とはガッリア・トラーンサルピーナ、イタリア Italia とは[[w:ガリア・キサルピナ|ガッリア・キサルピーナ]]のことであろう。)</span>
*trans [[w:la:Rhenus|Rhenum]] in [[wikt:la:Germania|Germaniam]] mittit ad eas civitates, quas superioribus annis pacaverat,
**レヌス(=現[[w:ライン川|ライン川]])の向こう側の[[w:ゲルマニア|ゲルマニア]]に、先年に平定していた諸部族のところへ(使節を)遣わした。
**:<span style="color:#009900;">(訳注:ゲルマニア遠征や平定については、[[ガリア戦記 第4巻#16節|第4巻16節]]~19節、[[ガリア戦記 第6巻#9節|第6巻9節]]~10節を参照。)</span>
*equitesque ab his arcessit et levis armaturae pedites,
**彼らから、騎兵たち、および[[w:ウェリテス|軽い武装の歩兵]]たちを呼び寄せた。
*qui inter eos proeliari consuerant.
**その者ら(軽装歩兵)は、彼ら(騎兵)の間で戦闘することが常であったのだ。
*⑤ Eorum adventu, quod minus idoneis equis utebantur,
**彼ら(ゲルマニア騎兵)が到着すると、(戦闘に)あまり適していない馬を使役していたので、
**:<span style="color:#009900;">(訳注:ゲルマニア人の馬の使用については、[[ガリア戦記 第4巻#2節|第4巻2節]]を参照。)</span>
*a tribunis militum reliquisque equitibus Romanis atque evocatis equos sumit
**<ruby><rb>[[w:トリブヌス・ミリトゥム|兵士長官]]</rb><rp>(</rp><rt>トリブヌス・ミリトゥム</rt><rp>)</rp></ruby>たちやほかのローマ人騎士たちや<ruby><rb>再徴集兵</rb><rp>(</rp><rt>エウォカティ</rt><rp>)</rp></ruby>たちから、馬匹を取り上げて、
*[[w:la:Germani|Germanis]]que distribuit.
**ゲルマニア人たちに分配した。
===66節===
'''属州へと南下するカエサル、迎え撃とうとするウェルキンゲトリークス'''
*① Interea dum haec geruntur,
**その間に、これらが出来している間に、
*hostium copiae ex Arvernis
**敵方の(歩兵の)軍勢が(滞陣していたゲルゴウィアの)[[w:アルウェルニ族|アルウェルニー族]]のところから、
*equitesque qui toti Galliae erant imperati conveniunt.
**および全ガッリアの命令されていた[[w:騎兵|騎兵]]たちが、(ウェルキンゲトリークスのところに)集結して来た。
*② Magno horum coacto numero,
**これらの(ガッリア兵の)多数が徴集されて、
*cum Caesar in Sequanos per extremos Lingonum fines iter faceret,
**カエサルが、[[w:セクアニ族|セクアニ族]]のところに(向かって)[[w:リンゴネス族|リンゴネス族]]の領土の外縁を通って行軍していたときに、
**:<span style="color:#009900;">(訳注:属州へは、リンゴネス族と後述のマンドゥビイ族の間を通ってセクアニ族領を通らねばならなかった。)</span>
*quo facilius subsidium provinciae ferri<ref>ferri はα系写本の記述で、β系写本では ferre となっている。</ref> posset,
**(それは)属州(ガッリア・トラーンサルピーナ)に援兵をより容易にもたらせるようにするためであったが、
*circiter milia passuum X(decem) ab Romanis trinis castris [[w:la:Vercingetorix|Vercingetorix]] consedit
**[[w:ウェルキンゲトリクス|ウェルキンゲトリークス]]は、ローマ人たちから約10ローママイル(15km)のところに、3つの陣営にて陣取った。
*③ convocatisque ad concilium praefectis equitum
**(ウェルキンゲトリークスは)騎兵の指揮官たちを会合へ召集して、
*venisse tempus victoriae demonstrat;
**勝利の時が来たと、明言した。
*fugere in provinciam Romanos Galliaque excedere.
**ローマ人たちは属州に逃亡して、ガッリアから立ち退きつつある、と。
*④ Id sibi ad praesentem obtinendam libertatem satis esse;
**それは、自分たちにとって目下のところ、自由を維持するためには十分であるが、
*ad reliqui temporis pacem atque otium parum profici;
**将来の平和と平穏は不充分にしか得られない。
*maioribus enim coactis copiis reversuros
**なぜなら(ローマ人たちは)より大きな軍勢を徴集して(ガッリアに)戻って来るであろうし、
*neque finem bellandi facturos.
**戦争することに結末をつけることはないであろう。
*Proinde agmine impeditos adorirentur<ref>adorirentur はA・β系写本の記述で、M・L・N写本では adoriantur 、S写本では adorantur 、Q・B・M写本ではadorientur となっている。</ref>.
**それゆえに、(ローマ勢の)行軍によって重荷となっている(輜重隊の)者たちを襲撃するのだ。
*⑤ Si pedites suis auxilium ferant atque in eo morentur, iter facere<ref>facere はα系写本の記述で、β系写本では confici となっている。</ref> non posse;
**もし(ローマ勢の)歩兵たちが味方を支援し、そのことで滞留するならば、(属州へ)行軍することはできない。
*si ─id quod magis futurum confidat─
**もし、─(我は)むしろそうなるであろうと期待することであるが─
*relictis impedimentis suae saluti consulant,
**(ローマ歩兵たちが)[[w:輜重|輜重]]を残して、自分たちの身の安全に意を用いるならば、
*et usu rerum necessariarum et dignitate spoliatum iri.
**必需品の使用や(ローマ人としての)品格をはぎ取られることになる。
*⑥ Nam de equitibus hostium,
**なぜなら、敵方の騎兵については
**<span style="color:#009900;">:(訳注:著者カエサルはここでは、間接話法でありながら、ローマ勢について hostium「敵方の」と表現している。)</span>
*quin nemo eorum progredi modo extra agmen audeat,
**彼ら(ローマ騎兵)のうち誰も、<ruby><rb>行軍縦隊</rb><rp>(</rp><rt>アグメン</rt><rp>)</rp></ruby>の外にすら、あえて進み出ようとしないこと、
*et ipsos quidem non<ref>et ipsos quidem non はα系写本の記述で、β系写本では ne ipsos quidem となっている。</ref> debere dubitare.
**(そのことを、諸君ら)自身は決して疑念を持つことなかれ。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:ne quidem|ne ~ quidem]]「~でさえ…ない」)</span>
*Id quo maiore faciant animo,
**それ(=輜重隊への襲撃)を、より大胆な心構えで実行してもらうために、
*copias se omnes pro castris habiturum et terrori hostibus futurum.
**自分(ウェルキンゲトリークス)が軍勢すべてを陣営の前に保持しておくであろうし、敵方の心胆を寒からしめるであろう。
*⑦ Conclamant equites
**(ガッリア勢の)騎兵たちは(以下のように)叫んだ。
*sanctissimo iure iurando confirmari oportere,
**最も神聖な誓約によって確証されなければならぬ。
*ne tecto recipiatur, ne ad liberos, ne ad parentes, ad<ref>ne ad …, ne ad …, ad が写本(ω)の記述であるが、モイゼル Meusel は ne ad …, ad …, ad と修正提案をしている。</ref> uxorem aditum habeat,
**(以下の者は)家に迎え入れられたり、子供たちや親たちや妻女たちのところへ近づくことがないように。
*qui non bis per agmen hostium perequitasset<ref>perequitasset はα系写本の記述で、β系写本では perequitarit となっている。</ref>.
**敵方(ローマ勢)の隊列を越えて(往復の)2度、騎馬で駆け抜けることがなかった者は。
**:<span style="color:#009900;">(訳注:敵中突破と生還を成し遂げなかった騎兵は、復員してはならない、と誓約したのである。)</span>
===67節===
'''カエサル麾下のゲルマニア騎兵がウェルキンゲトリークスを一蹴'''
*① Probata re atque omnibus iure iurando adactis
**これが賛同されて、(ガッリア騎兵の)皆が誓約させられて、
*postero die in tres partes distributo equitatu
**翌日に、[[w:騎兵|騎兵隊]]を3つの分隊に分配した。
*duae se acies ab duobus lateribus ostendunt,
**2隊は(ローマ勢の左右)2つの側面から<ruby><rb>戦闘隊形</rb><rp>(</rp><rt>アキエス</rt><rp>)</rp></ruby>として現われた。
*una a<ref>a はβ系写本の記述で、α系写本にはない。</ref> primo agmine iter impedire coepit.
**1隊は(ローマ勢の)前衛から行軍を妨げ始めた。
*② Qua re nuntiata
**その事が報告されて、
*Caesar suum quoque equitatum tripertito divisum contra hostem ire iubet.
**カエサルは麾下の騎兵隊おのおのを3つに配分して、敵に対して向かって行くことを命じた。
*Pugnatur una omnibus in partibus.
**(騎兵戦が)同時にすべての方面で戦われた。
*③ Consistit agmen;
**(ローマ勢の)<ruby><rb>行軍縦隊</rb><rp>(</rp><rt>アグメン</rt><rp>)</rp></ruby>は一歩も引かなかった。
*impedimenta intra legiones recipiuntur.
**[[w:輜重|輜重]]は諸[[w:ローマ軍団|軍団]]の内側に後退した。
*④ Si qua in parte nostri laborare aut gravius premi videbantur,
**もし、我が方(ローマ勢)のある部隊が苦戦したり、またはひどく押されぎみだと思われたならば、
*eo signa inferri Caesar aciemque constitui<ref>constitui はα系写本の記述で、β系写本では converti 、T写本では conferri となっている。</ref> iubebat;
**カエサルはそこに進撃して戦列を組織することを命じた。
**:<span style="color:#009900;">(訳注:signa inferre「軍旗を進める、進撃する」)</span>
*quae res et hostes ad insequendum tardabat et nostros spe auxilii confirmabat.
**その事が、敵方が追撃して来るのを遅らせもしたし、我が方が支援の希望により元気付けられもした。
*⑤ Tandem Germani ab dextro latere summum iugum nacti hostes loco depellunt,
**ついに、ゲルマニア人(騎兵)たちが右の側面から尾根の頂きを掌握して、敵方をその場から追いやった。
*fugientes usque ad flumen,
**逃亡する(ガッリア騎兵の)者たちを川の辺りまで(追って)、
*ubi [[w:la:Vercingetorix|Vercingetorix]] cum pedestribus copiis consederat,
**そこには[[w:ウェルキンゲトリクス|ウェルキンゲトリークス]]が[[w:歩兵|歩兵]]の軍勢とともに陣取っていたのだが、
*persecuntur<ref>persecuntur はα系写本の記述で、β系写本では persequuntur となっている。</ref> compluresque interficiunt.
**(ゲルマニア騎兵が敵を川辺まで)追撃して、かなりの者たちを殺戮した。
*⑥ Qua re animadversa
**その事が(敵方に)気付かれて、
*reliqui ne circumirentur<ref>circumirentur はA・φ系写本の記述で、Q・β系写本では circumvenirentur となっている。</ref> veriti se fugae mandant.
**(ガッリア勢の)残りの者たちは、包囲されないようにと怖れて、逃亡に身を任せた。
*Omnibus locis fit caedes.
**(こうしてローマ方により)あらゆる場所で虐殺が行なわれた。
*⑦ Tres nobilissimi [[w:la:Haedui|Haedui]] capti ad Caesarem perducuntur:
**[[w:ハエドゥイ族|ハエドゥイー族]]の3人の高位の貴族が捕らえられて、カエサルのところへ連行されて来た。
*Cotus, praefectus equitum, qui controversiam cum Convictolitavi proximis comitiis habuerat,
**コトゥスは騎兵指揮官で、最近の会議でコンウィクトリタウィスと(統領の座をめぐって)係争した。
**:<span style="color:#009900;">(訳注:[[#32節|32節]]~33節を参照。)</span>
*et Cavarillus, qui post defectionem Litavicci pedestribus copiis praefuerat,
**カウァリッルスは、リタウィックスの背反の後に、歩兵の軍勢を指揮していた。
*et Eporedorix, quo duce ante adventum Caesaris Haedui cum Sequanis bello contenderant.
**エポレドリクスは、カエサルの到来以前にハエドゥイー族の将帥としてセクアニ族と戦争を闘っていた。
**:<span style="color:#009900;">(訳注:この人物は、ウィリドマルスとともにカエサルを裏切ったエポレドリクスとは同名異人である。)</span>
==アレスィア攻囲戦==
===68節===
[[画像:Alésia.jpg|thumb|right|300px|[[w:アレシアの戦い|アレスィア古戦場]]であるとほぼ確実視されている仏アリーズ=サント=レーヌ村([[w:fr:Alise-Sainte-Reine|Alise-Sainte-Reine]])近郊のオソワ山(Mont Auxois)という丘陵の西端にある[[w:ウェルキンゲトリクス|ウェルキンゲトリークス]]像(<small>[[w:fr:Vercingétorix_(statue d'Aimé Millet)|Statue de Vercingétorix]]</small>)。<small>[http://maps.google.co.jp/?ie=UTF8&ll=47.538579,4.490544&spn=0.001172,0.002401&t=h&z=19&brcurrent=3,0x0:0x0,1 Googleマップ]</small>の航空写真にもこの巨像が写っている。<br>当地はフランス東部[[w:ブルゴーニュ地域圏|ブルゴーニュ地方]][[w:コート=ドール県|コート=ドール県]](<small>[[w:fr:Côte-d'Or|Côte-d'Or]]</small>)のオソワ地域(<small>[[w:fr:Auxois (région)|L'Auxois]]</small>)にあり、県都[[w:ディジョン|ディジョン]]市街から西北西へ約4.5kmの地点に位置する。ディジョン方面から県道905号(D905)を北西に進んで行くと、ヴナレ=レ=ローム(<small>[[w:fr:Venarey-les-Laumes|Venarey-les-Laumes]]</small>)から東の郊外にかけて古戦場跡が広がる。<br>オソワ(Auxois)という地域名・山名は、ラテン語の Alesiensis pagus「アレスィア郷」が転訛し、アリーズ(Alise)の名もアレスィア(Alesia)に由来すると考えられている。サント=レーヌ([[w:fr:Sainte Reine|Sainte Reine]] 聖レグニア)とはこの地でAD252年に殉教したキリスト教徒ガッリア人女性で、カトリック教会から聖人に列せられている。]]
'''ウェルキンゲトリークスがアレスィア入城、カエサルは攻囲を決断'''
*① Fugato omni equitatu
**すべての[[w:騎兵|騎兵隊]]が逃げてしまったので、
*[[w:la:Vercingetorix|Vercingetorix]] copias suas<ref>suas はβ系写本の記述で、α系写本にはない。</ref>, ut pro castris conlocaverat, reduxit
**[[w:ウェルキンゲトリクス|ウェルキンゲトリークス]]は、陣営の前に配置するようにしていた麾下の(歩兵の)軍勢を呼び戻して、
*protinusque [[w:la:Alesia|Alesiam]], quod est oppidum Mandubiorum, iter facere coepit
**すぐに、マンドゥビイ族の<ruby><rb>[[w:オッピドゥム|城塞都市]]</rb><rp>(</rp><rt>オッピドゥム</rt><rp>)</rp></ruby>である[[w:アレシア|アレスィア]]へ行軍し始めた。
*celeriterque impedimenta ex castris educi et se subsequi iussit.
**かつ、速やかに陣営から[[w:輜重|輜重]]を進発させること、および自分に追随すること、を命じた。
*② Caesar impedimentis in proximum collem deductis,
**カエサルは、輜重を近隣の丘陵に移させて、
*duabus legionibus praesidio relictis,
**2個[[w:ローマ軍団|軍団]]を(輜重の)守備隊として(その丘陵に)残留させた。
*secutus quantum diei tempus est passum,
**日中の時間が許される限り(ガッリア勢を)追跡して、
*circiter tribus milibus hostium ex novissimo agmine interfectis
**敵方の後衛のうちから約3000人を殺戮して、
*altero die ad Alesiam castra fecit.
**翌日には、アレスィアの辺りに陣営を張った。
*③ Perspecto urbis situ
**(アレスィアの)都市の地勢を吟味して、
*perterritisque hostibus, quod equitatu, qua maxime parte exercitus confidebant, erant pulsi,
**敵方は、部隊の大部分において頼りにしていた騎兵隊が撃退されていたので、怖れおののいていたから、
*adhortatus ad laborem milites circumvallare instituit.
**(カエサルは)兵士たちを労役に駆り立てて、(敵陣を)[[w:堡塁|堡塁]]で囲むことを決断した。
===69節===
[[画像:Alise2.jpg|thumb|right|300px|[[w:アレシア|アレスィア]]にあったローマ時代の[[w:フォルム|フォルム]](広場)や[[w:バシリカ|バシリカ]](教会堂)などと思われる遺跡([http://maps.google.co.jp/?ie=UTF8&t=h&brcurrent=3,0x0:0x0,1&ll=47.539477,4.5008&spn=0.002343,0.004801&z=18 Googleマップ]の航空写真を参照)。現在、オソワ山(Mont Auxois)と呼ばれているこの丘陵は、頂きが平坦な台地状になっており、その中央のさらに高い所に[[w:オッピドゥム|オッピドゥム]](城塞都市)があったと思われる。<br>上の画像からは、同等の高さの丘陵が周囲を取り巻いていることが見て取れる。<br>『ガリア戦記』に書かれたアレスィアの所在地については諸説があって永らく不明であったが、ゲルゴウィアと同様に19世紀のウジェーヌ・ストッフェル大佐(colonel Eugène Stoffel)の発掘調査によってローマ軍の遺構などが発見され、地勢もカエサルの記述にかなり合っていると見なされて、オソワ山とその中腹にあるアリーズ=サント=レーヌが有力視されることになった。]]
'''アレスィアの地勢、ローマ軍の攻囲線'''
*① Ipsum erat oppidum [[w:la:Alesia|Alesia]] in colle summo admodum edito loco,
**[[w:アレシア|アレスィア]]の<ruby><rb>[[w:オッピドゥム|城塞都市]]</rb><rp>(</rp><rt>オッピドゥム</rt><rp>)</rp></ruby>そのものは、丘陵の頂きにおいて、ひときわ高い地点にあって、
*ut nisi obsidione expugnari non posse videretur.
**攻囲(包囲)以外には攻略されることができないと思われた。
*② Cuius collis radices duo duabus ex partibus flumina subluebant.
**その丘陵のふもとを2つの方面から、2つの川が流れていた。
*③ Ante id<ref>id はα系写本の記述で、β系写本にはない。</ref> oppidum planities circiter milia passuum Ⅲ(tria) in longitudinem patebat;
**その城塞都市の前に、約3ローママイル(4.5km)の間隔で、平地が広がっていた。
*④ reliquis ex omnibus partibus colles mediocri interiecto spatio
**ほかのすべての方面からは(いくつかの)丘陵が適度な空間を置いており、
*pari altitudinis fastigio oppidum cingebant.
**同等の高さの頂上で(アレスィアの)城塞都市を取り巻いていた。
*⑤ Sub muro, quae pars collis ad orientem solem spectabat,
**(アレスィアの)丘陵の日が昇る方(=東方)へ面していた部分の城壁の下には、
*hunc omnem locum copiae Gallorum compleverant
**このすべての場所を、ガッリア人たちの軍勢が満たしていて、
*fossamque et maceriam sex in altitudinem pedum praeduxerant.
**堀、および高さ6[[w:ペース (長さ)|ペース]](約1.8m)の防壁を前に引いていた。
**:<span style="color:#009900;">(訳注:[[wikt:en:maceria|maceria]] は、軍事用語としては、立てこもるための城壁<ref><i>muraille (pour se retrancher)</i>(ラルース社の羅仏辞典 <small>“Dictionnaire MaxiPoche Plus latin-français et français-latin”</small> を参照)</ref>を指す。)</span>
*⑥ Eius munitionis quae ab Romanis instituebatur circuitus XI<ref>XI はα系写本の記述で、β系写本では X となっている。</ref> milia passuum tenebat.
**ローマ人たちによって建てられようとしていた塁壁の周囲は、11ローママイル(約16km)を占めていた。
**:<span style="color:#009900;">(訳注:α系写本では 11マイル=約16km、β系写本では 10マイル=約15km となっている。)</span>
*⑦ Castra opportunis locis erant posita
**(ローマ勢の)陣営は(戦略上)都合良い地点に設置されていて、
**:<span style="color:#009900;">(訳注:歩兵・騎兵の陣営が計8か所に置かれていたようである。)</span>
*ibique<ref>ibique はα系写本の記述で、β系写本では itemque となっている。</ref> castella XXIII(viginti tria) facta,
**同じく23基の砦が造られた。
*quibus in castellis interdiu stationes ponebantur,
**それらの砦には、昼間は、歩哨たちが置かれて、
*ne qua subito eruptio fieret;
**不意に何らかの突撃がなされないようにした。
*haec eadem noctu excubitoribus ac firmis praesidiis tenebantur.
**この同じところが、夜間は、寝ずの番兵および強力な守備隊により固守された。
===70節===
'''カエサル麾下のゲルマニア騎兵が、再びガッリア騎兵を虐殺'''
*① Opere instituto
**(ローマ人により)[[w:堡塁|堡塁]]が建てられだして、
*fit equestre proelium in ea planitie,
**かの平地において[[w:騎兵|騎兵]]戦がなされた。
*quam intermissam collibus tria milia passuum in longitudinem patere supra demonstravimus.
**それ(平地)は(周囲の)丘陵から3ローママイル(約4.5km)の間隔を空けて広がっていることを、[[#69節|前]]に述べた。
*Summa vi ab utrisque contenditur.
**(騎兵戦は)双方の主力によって闘われた。
*② Laborantibus nostris Caesar Germanos submittit
**苦戦している我が方(ローマ騎兵)に対して、カエサルは[[w:ゲルマニア|ゲルマニア]]人(騎兵)を援けに派遣した。
*legionesque pro castris constituit, ne qua subito inruptio ab hostium peditatu fiat.
**諸[[w:ローマ軍団|軍団]]を陣営の前に駐留させて、不意に何らかの突入が敵方の[[w:歩兵|歩兵隊]]によってなされないようにした。
*③ Praesidio legionum addito nostris animus augetur;
**軍団の守備が加わって、我が方(ローマ勢の)勇気が増された。
*hostes in fugam coniecti se ipsi multitudine impediunt
**敵方(の騎兵)は敗走に追いやられて、彼ら自身が自分たち(の敗走)を大勢であることにより妨げた。
*atque angustioribus portis relictis coacervantur<ref>coacervantur は近世の写本(ς)の記述で、α系写本では coacervati tum 、β系写本では coartantur となっている。</ref>.
**さらに(ガッリア陣地の)諸門がとても狭いままにしておかれたので(騎兵たちが)積み重ねられた。
*④ Germani acrius usque ad munitiones sequuntur.
**ゲルマニア人(騎兵)たちは(ガッリア騎兵たちを)苛烈に、防塁のところまで追撃した。
*⑤ Fit magna caedes.
**(こうして)大虐殺が起こった。
*Nonnulli relictis equis fossam transire et maceriam transcendere conantur.
**(ガッリア騎兵の)幾人かは、馬を置き去りにして、堀を越えること、および防壁を登り越えることを試みた。
*Paulum legiones Caesar quas pro vallo constituerat promoveri iubet.
**カエサルは、防柵の前に駐留させていた諸軍団に、いくらか前進することを命じた。
*⑥ Non minus qui intra munitiones erant perturbantur Galli:
**防塁の内側にいたガッリア人たちも(騎兵たちに)劣らず狼狽した。
*veniri ad se confestim existimantes ad arma conclamant;
**(ローマ勢により)自分たちのところへ直ちにやって来られると考えた者たちは、防具を取れと叫んだ。
*nonnulli perterriti in oppidum inrumpunt.
**(ガッリア勢の)幾人かは、怖れおののいて(丘陵の頂きにある)城塞都市の中に押し入った。
*⑦ [[w:la:Vercingetorix|Vercingetorix]] iubet portas claudi, ne castra nudentur.
**[[w:ウェルキンゲトリクス|ウェルキンゲトリークス]]は、陣営が無防備にされないように、(防塁の)諸門が閉じられることを命じた。
*Multis interfectis, compluribus equis captis Germani sese recipiunt.
**(ガッリア騎兵の)多くが殺戮され、おびただしい馬が捕獲されて、ゲルマニア人(騎兵)たちは退却した。
===71節===
[[画像:Statue_Vercingetorix_st_germain_en_laye.JPG|thumb|right|250px|[[w:ウェルキンゲトリクス|ウェルキンゲトリークス]]の立像(<small>パリ郊外の[[w:サン=ジェルマン=アン=レー|サン=ジェルマン=アン=レー]] [[w:fr:Saint-Germain-en-Laye|Saint-Germain-en-Laye]]</small>)。[[w:アレシアの戦い|アレスィア古戦場]](<small>現在のアリーズ=サント=レーヌ</small>)にある巨大な銅像と同様に彫刻家エメ・ミレ([[w:fr:Aimé Millet|Aimé Millet]])によって建立された。]]
[[画像:Napoleon3.PNG|thumb|right|250px|ウジェーヌ・ストッフェル大佐(colonel Eugène Stoffel)をして[[w:アレシア|アレスィア]]およびゲルゴウィアの発掘調査をさせた立役者・皇帝[[w:ナポレオン3世|ナポレオン3世]]の肖像。[[w:ガリア起源説|ガッリア起源説]]により、王政に反感を持つフランスの共和派や庶民は、旧[[w:ブルボン家|ブルボン王朝]]を[[w:クロヴィス1世|クロヴィス]]や[[w:ユーグ・カペー|カペー]]にさかのぼるゲルマン系の[[w:フランク人|フランク人]]と見なし、自分たちのルーツを[[w:ケルト人|ケルト系]]の古代[[w:ガリア人|ガッリア人]]に求めた。ナポレオン3世はこのような国民の意識を利用して、[[w:ナショナリズム|ナショナリズム]]の高揚および帝政の基盤強化を図ったのである。]]
'''ウェルキンゲトリークスが援兵召集のため騎兵を放ち、籠城策を定める'''
*① [[w:la:Vercingetorix|Vercingetorix]], priusquam munitiones ab Romanis perficiantur,
**[[w:ウェルキンゲトリクス|ウェルキンゲトリークス]]は、ローマ人たちによって塁壁が完成されるより前に、
*consilium capit omnem ab se equitatum noctu dimittere.
**自分のところから[[w:騎兵|騎兵隊]]のすべてを夜間に送り出すことを計画した。
*② Discedentibus mandat
**(アレスィアから)退去する(騎兵の)者たちに(以下のように)指図した。
*ut suam quisque eorum civitatem adeat
**彼ら(騎兵)のおのおのが自らの部族に行くように、
*omnesque qui per aetatem arma ferre possint ad bellum cogant.
**かつ、年齢により武器を手に取ることができる者たちの皆を戦争へ徴集するように、と。
*③ Sua in illos merita proponit obtestaturque
**(ウェルキンゲトリークスは)彼ら(ガッリア人たち)における自分の功績に言及して(以下のように)懇願した。
*ut suae salutis rationem habeant
**自分の身の安全を顧慮してくれるように、
*neu se optime de communi libertate meritum in cruciatum hostibus<ref>in cruciatum hostibus はβ系写本の記述で、α系写本では hostibus in cruciatum となっている。</ref> dedant.
**かつ(ガッリア)共通の自由について功績が最上である自分を、敵方の責め苦に渡すことがないように、と。
*Quod si indiligentiores fuerint,
**ところが、もし(騎兵たちがウェルキンゲトリークスたちの安全に)無関心であったならば、
*milia hominum delecta octoginta una secum interitura demonstrat.
**選りすぐりの兵員8万名が自分と一緒に滅びるであろう、と明言した。
*④ Ratione inita frumentum se exigue dierum XXX(triginta) habere<ref>frumentum ~ habere はβ系写本の記述で、χ系・φ系あるいはモイゼル H. Meusel の修正提案など、写本や校訂者により語順が異なっていたり、単語が欠けていたりする。</ref>,
**見積もったところ、自分たちはわずかに30日分の穀物を保有しているが、
*sed paulo etiam longius tolerari posse parcendo.
**しかし節約することにより、なおいくらか長く耐え忍ぶことができる、と。
*⑤ His datis mandatis,
**これらの指図を与えてから、
*qua erat nostrum opus<ref>erat nostrum opus はβ系写本の記述で、α系写本では単に opus erat となっている。</ref> intermissum, secunda vigilia silentio equitatum mittit<ref>mittit はχ系・B・M・S写本の記述で、β系写本では dimittit となっている。</ref>.
**我が方(ローマ勢)の構築物が中断しているところから、第二夜警時に静けさのうちに、騎兵隊を送り出した。
*⑥ Frumentum omne ad se referri iubet,
**穀物をすべて自分のところへ運んで来ることを命じて、
*capitis poenam iis qui non paruerint constituit;
**服従しなかった者たちを極刑に処すと決めた。
*⑦ pecus, cuius magna erat copia a Mandubiis<ref>a Mandubiis はβ系写本の記述で、α系写本では ab Manduviis となっている。</ref> compulsa, viritim distribuit;
**家畜は、マンドゥビイ族によって大量に集められていたが、個々に分配した。
*frumentum parce et paulatim metiri instituit;
**穀物を節約して少しずつ量り分けることを定めた。
*⑧ copias omnes quas pro oppido collocaverat in oppidum recepit.
**<ruby><rb>[[w:オッピドゥム|城塞都市]]</rb><rp>(</rp><rt>オッピドゥム</rt><rp>)</rp></ruby>の前に駐留させていた(歩兵の)軍勢すべてを城塞都市の中に退却させた。
*⑨ His rationibus auxilia Galliae exspectare et bellum parat administrare<ref>parat administrare はα系写本の記述で、β系写本では administrare parat となっている。</ref>.
**これらの手段により、ガッリア(諸部族)の援軍を待つこと、および戦争を指導しようとしたのである。
===72節===
'''カエサルが、より大掛かりな攻囲陣地を構築する'''
*① Quibus rebus cognitis<ref>cognitis がこの位置にあるのはα系写本の記述で、β系写本では captivis の後となっている。</ref> ex perfugis et captivis
**それらの事情を脱走兵たちや捕虜たちから知って、
*Caesar haec genera munitionis instituit.
**カエサルは以下の類いの塁壁工事に取りかかった。
<br>
*'''前線の切り立った空堀'''
*Fossam pedum XX(viginti) derectis lateribus duxit,
**20[[w:ペース (長さ)|ペース]](約6m)の(幅の)垂直な側面の堀を引いた。
*ut eius fossae<ref>fossae がこの位置にあるのはβ系写本の記述で、α系写本では summa(e) の後になっている。</ref> solum tantundem pateret, quantum summa<ref>summa はβ系写本の記述で、α系写本では summae となっている。</ref> labra distarent<ref>distarent はα系写本の記述で、β系写本では distabant となっている。</ref>.
**その堀(の底)は、頂きの縁が離れているのとちょうど同じ分だけ広がるようにした。
**:<span style="color:#009900;">(訳注:上辺と底の幅が等間隔になるような切り立った空堀にした。)</span>
*② Reliquas omnes munitiones ab ea fossa pedes<ref>pedes はα系写本の記述で、β系写本では pedibus となっている。</ref> CCCC(quadringentos) reduxit.
**ほかのすべての塁壁は、その堀から400ペース(約120m)後ろに引いた。
**:<span style="color:#009900;">(訳注:写本にあるこの数字は、19世紀のウジェーヌ・ストッフェル大佐(colonel Eugène Stoffel)の</span>
**:<span style="color:#009900;">発掘調査によって400[[w:パッスス|パッスス]](約600m)と修正された。この堀は、アレスィアの西方に引かれたと思われる。)</span>
*Id hoc consilio,
**それは、以下の考えによる。
*quoniam tantum spatium necessario esset<ref>spatium necessario esset はβ系写本の記述で、α系写本では esset necessario spatio となっている。</ref> complexus
**これほどの空間が包囲されなければならないのであるから、
*nec facile totum corpus<ref>corpus はα系写本の記述で、β系写本では opus となっており、ρ系写本にはない。</ref> corona militum cingeretur,
**すべての包囲作業が兵士たちの<ruby><rb>哨兵線</rb><rp>(</rp><rt>コロナ</rt><rp>)</rp></ruby>で取り囲まれるのは容易ではない。
*ne de improviso aut noctu ad munitiones hostium multitudo<ref>hostium multitudo はα系写本の記述で、β系写本では multitudo hostium となっている。</ref> advolaret
**不意に、あるいは夜間に、敵方の大勢が(ローマ側の)塁壁へ突進することがないように、
*aut interdiu tela in nostros operi destinatos conicere possent<ref>possent はα系写本の記述で、β系写本では posset となっている。</ref>.
**あるいは日中に、工事中の我が方(ローマ勢)に飛道具が投げ付けられることができないように。
<br>
[[画像:Fosse.Saint.Pierre.en.Chastres.png|thumb|right|300px|二重の堀およびその背後の堡塁(土塁と障壁・櫓)の模式図([[w:ウジェーヌ・エマニュエル・ヴィオレ・ル・デュク|ヴィオレ=ル=デュク]]著『中世フランス建築体系辞典』[[s:fr:Dictionnaire raisonné de l’architecture française du XIe au XVIe siècle - Tome 5, Fossé|(s)]]より)。]]
[[画像:AlesiaFortifications.JPG|thumb|right|300px|[[w:アレシアの戦い|アレスィア古戦場]]跡に再現された、二重の堀およびその背後の堡塁(土塁と鹿柴、胸壁・鋸壁、櫓)。]]
*'''二重の堀'''
*③ Hoc intermisso spatio
**この空間をあけて、
*duas fossas XV(quindecim) pedes latas eadem altitudine perduxit;
**15ペース(約4.5m)の幅の2つの堀を、同じ深さ(15ペース)で張り巡らせた。
*quarum interiorem campestribus ac demissis locis
**それらの内側(の堀)の平地で低く下がった所には、
**:<span style="color:#009900;">(訳注:内側の堀とは、アレスィアに近い東側の堀と考えられている。)</span>
*aqua ex flumine derivata complevit.
**川から導かれた水で満たした。
<br>
*'''土塁と防柵、胸壁と鋸壁、鹿柴、櫓'''
*④ Post eas aggerem ac vallum XII(duodecim) pedum exstruxit.
**それらの後ろには、12ペース(約3.6mの高さ)の<ruby><rb>[[w:土塁|土塁]]</rb><rp>(</rp><rt>アッゲル</rt><rp>)</rp></ruby>と<ruby><rb>防柵</rb><rp>(</rp><rt>ウァッルム</rt><rp>)</rp></ruby>を築き上げた。
*Huic loricam pinnasque adiecit
**これに<ruby><rb>胸壁</rb><rp>(</rp><rt>ロリカ</rt><rp>)</rp></ruby>と<ruby><rb>鋸壁</rb><rp>(</rp><rt>ピンナ</rt><rp>)</rp></ruby>を付け加えて、
**:<span style="color:#009900;">(訳注:胸壁と鋸壁とは、[[ガリア戦記 第5巻#40節|第5巻40節]]で既出のように、凹凸形に編み込まれた柴の壁)</span>
*grandibus cervis eminentibus ad commissuras pluteorum atque aggeris,
**障壁と土塁の接合部の辺りに大きな<ruby><rb>鹿柴</rb><rp>(</rp><rt>ケルウス</rt><rp>)</rp></ruby>を突き出させて、
**:<span style="color:#009900;">(訳注:<ruby><rb>鹿柴</rb><rp>(</rp><rt>ろくさい</rt><rp>)</rp></ruby>(鹿砦または<ruby><rb>逆茂木</rb><rp>(</rp><rt>さかもぎ</rt><rp>)</rp></ruby>)とは、鹿の角のように枝分かれした杭や枝を逆立てた杭囲い。</span>
**:<span style="color:#009900;">障壁とは、防柵の前に取り付けられた胸壁と鋸壁の総称であろう。)</span>
*qui ascensum hostium tardarent,
**敵方が登って来るのを妨げようとした。
*et turres toto opere circumdedit, quae pedes LXXX(octoginta) inter se distarent.
**構築物の全体を、互いに80ペース(約24m)離れて立つ櫓で取り巻いた。
===73節===
'''カエサルは、攻囲陣地をさらに障害物で補強する'''
*① Erat eodem tempore et materiari et frumentari et tantas munitiones fieri necesse
**材木収集と糧食徴発、およびこれほどの塁壁工事がなされることが、同時に必要であった。
*deminutis nostris copiis, quae longius ab<ref>ab はα系写本の記述で、β系写本では a となっている。</ref> castris progrediebantur.
**我が方の軍勢(ローマ勢)は減じており、陣営からはるか遠くに進み出ていた。
*Ac nonnumquam opera nostra Galli temptare
**いくたびか、我が方の構築物に、ガッリア人が攻撃すること(を試み)、
*atque eruptionem ex oppido pluribus portis summa vi facere conabantur.
**かつ、<ruby><rb>[[w:オッピドゥム|城塞都市]]</rb><rp>(</rp><rt>オッピドゥム</rt><rp>)</rp></ruby>の多くの門から、主力でもって出撃することを試みた。
*② Quare ad haec rursus opera addendum Caesar putavit,
**そのゆえに、この構築物へさらに(以下の障害物が)付け加えられるべきだとカエサルは考えた。
*quo minore numero militum munitiones defendi possent.
**それによって、より少ない数の兵士で塁壁が防衛されることができるように、と。
[[画像:Archeodrome_Beaune_8.jpg|thumb|right|300px|[[w:アレシアの戦い|アレスィア古戦場]]跡に再現された攻囲陣地(上の画像と同じ物)。堡塁(土塁と障壁と櫓)の前の平地に、樹枝が突き出た「尖り杭」(奥)と落とし穴を枝で覆った「百合」(手前)が見える。]]
[[画像:Trous.de.loup.png|thumb|right|300px|サイコロの五つ目状に並べられた落とし穴「百合」(lilium)の模式図([[w:ウジェーヌ・エマニュエル・ヴィオレ・ル・デュク|ヴィオレ=ル=デュク]]著『中世フランス建築体系辞典』[[s:fr:Dictionnaire raisonné de l’architecture française du XIe au XVIe siècle - Tome 5, Fossé|(s)]]より)。図の上部が五つ目状の配列を、図の下部が落とし穴の断面図を示す。この断面図では、尖らされた樹幹の先端が、傾斜した穴の突き固められた底から4本指ほど突き出ていると解釈しているようである。カエサルの記述からは、地表から突き出ているとも解釈できる。]]
[[画像:Aiguillon.png|thumb|right|200px|鉄の鉤が固定された杭「刺」の模式図([[w:ウジェーヌ・エマニュエル・ヴィオレ・ル・デュク|ヴィオレ=ル=デュク]]著『中世フランス建築体系辞典』[[s:fr:Dictionnaire raisonné de l’architecture française du XIe au XVIe siècle - Tome 5, Fossé|(s)]]より)。]]
[[画像:Archeodrome_Beaune_2.jpg|thumb|right|300px|[[w:アレシアの戦い|アレスィア古戦場]]跡に再現された攻囲陣地(上の画像と同じ物)。いちばん手前に「刺」が再現されている。]]
:
'''尖り杭'''
*Itaque truncis arborum aut admodum firmis ramis abscisis
**こうして、樹木の幹、あるいは非常に強固な枝が切り取られて、
*atque horum delibratis ac praeacutis cacuminibus
**これらの皮がむかれて、<ruby><rb>梢</rb><rp>(</rp><rt>こずえ</rt><rp>)</rp></ruby>が<ruby><rb>尖</rb><rp>(</rp><rt>とが</rt><rp>)</rp></ruby>らされて、
*perpetuae fossae quinos pedes altae ducebantur.
**5[[w:ペース (長さ)|ペース]](約1.5m)ずつの連続した堀が引かれた。
*③ Huc illi stipites demissi
**ここに、あの樹幹が沈められて、
*et ab infimo revincti, ne revelli possent, ab ramis eminebant.
**底から固くしばられて、はぎ取ることができないようにして、枝から(地上に)突き出るようにしていた。
*④ Quini erant ordines coniuncti inter se atque implicati;
**5列ずつが、互いにつなげられて、結び合わされた。
*quo qui intraverant se ipsi acutissimis vallis induebant.
**そこに踏み込んだ者は、自身が自らをきわめて鋭い杭に陥れた。
*Hos cippos appellabant.
**(将兵たちは)これらを<ruby><rb>尖り杭</rb><rp>(</rp><rt>キップス</rt><rp>)</rp></ruby>と呼んだ。
**:<span style="color:#009900;">(訳注:[[wikt:en:cippus|cippus]]「尖り杭」は「墓標」とも訳されるが、後者は古典期以降のラテン語で長方形の墓碑を指す<ref><small>POSTCLASSIQUE</small> <i>[[w:fr:Cippe|cippe]] (colonne funéraire rectangulaire)</i>(ラルース社の羅仏辞典 <small>“Dictionnaire MaxiPoche Plus latin-français et français-latin”</small> を参照)</ref>。)</span>
:
'''百合'''
*⑤ Ante<ref>ante はβ系写本の記述で、α系写本にはない。</ref> quos<ref>quos はα系写本の記述で、β系写本では hos となっている。</ref> obliquis ordinibus in quincuncem dispositis
**それらの前に、(サイコロの)<ruby><rb>五つ目状</rb><rp>(</rp><rt>クィンクンクス</rt><rp>)</rp></ruby>に斜めの列に配置されて、
*scrobes tres in altitudinem pedes fodiebantur
**深さ3ペース(約90cm)の穴が掘られた。
*paulatim angustiore ad infimum fastigio.
**しだいに、より狭く、底の方へ傾斜を付けて。
*⑥ Huc teretes stipites [[w:la:Femur|feminis]] crassitudine
**ここに、太ももの厚さの丸みを帯びた樹幹が
*ab summo praeacuti et praeusti demittebantur,
**先端から尖らせられ、焦がされて(穴の底に)突き刺された。
*ita ut non amplius digitis quattuor ex terra<ref>ex terra はα系写本の記述で、V・ρ系写本では e terra 、T写本では contra となっている。</ref> eminerent;
**4本の指より長くないほど地中から突き出るように。
*⑦ simul confirmandi et stabiliendi causa
**同時に、強固にして固定するために、
*singuli ab infimo solo pedes terra exculcabantur;
**それぞれ底から1ペース(約30cm)だけ土で突き固められた。
*reliqua pars scrobis ad occultandas insidias viminibus ac virgultis integebatur.
**穴の残りの部分は、わなを隠すために、柳の細枝や若枝で覆われた。
*⑧ Huius generis octoni ordines ducti ternos inter se pedes distabant.
**この類いを、8列ずつ、3ペース(約90cm)ずつ互いに離して、作った。
*Id ex similitudine floris lilium appellabant.
**(将兵たちは)それを花との類似から、<ruby><rb>[[w:ユリ|百合]]</rb><rp>(</rp><rt>リリウム</rt><rp>)</rp></ruby>と呼んだ。
:
'''刺'''
*⑨ Ante haec taleae pedem longae ferreis hamis infixis totae in terram infodiebantur
**これらの前に、鉄製の鉤が打ち込まれた長さ1ペース(約30cm)の棒の全体が地中に埋め込まれた。
*mediocribusque intermissis spatiis omnibus locis disserebantur,
**適度な空間を間にあけて、至る所に配置された。
*quos stimulos nominabant.
**(将兵たちは)それらを刺と呼んだ。
{| class="wikitable"
|-
! colspan="2" | [[w:la:Obsidio Alesiae|Obsidio Alesiae]]
|-
| style="vertical-align:top; text-align:left; width:35em;" |[[画像:Fortificazioni alesia png.png|thumb|left|500px|[[w:アレシアの戦い|アレシアの戦い]]における攻囲陣地の構成(図の説明はイタリア語)。]]
|}
===74節===
'''ガッリア人の来援に備えて、外周にも同様の塁壁を張り巡らす'''
*① His rebus perfectis
**これらの物が造り上げられると、
*regiones secutus quam potuit aequissimas pro loci natura
**地勢に応じて、できるかぎり好都合な地帯を探し求めて、
*XIIII(quattuordecim) milia passuum complexus
**14ローママイル(約21km)を取り巻いて、
*pares eiusdem generis munitiones,
**(内周の塁壁と規模が)匹敵する同じ類いの塁壁を
*diversas ab his, contra exteriorem hostem perfecit,
**これら(内周)に対置させて、外側の敵に対抗して造り上げた。
*ut ne magna quidem multitudine, si ita accidat equitatus<ref>equitatus はシェーラー(Schoeller)による修正提案で、写本(ω)では eius であるが、近代の校訂者たちにより修正提案がなされている。</ref> discessu,
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:ne quidem|ne ~ quidem]]「~でさえ…ない」)</span>
**もし[[w:騎兵|騎兵隊]]の退去によりこのようなこと(外敵との遭遇)が生じても、決して大軍により
*munitionum praesidia circumfundi possent;
**塁壁の守備隊が包囲されることができないように。
*② <ne> autem<ref>ne autem は近代の校訂者による修正提案で、α系・π系写本では aut、ρ系写本では ut となっている。</ref> cum periculo ex castris egredi cogatur,
**(ローマ勢が)危険を伴って陣営から進発することを強いられることもないように、
*dierum XXX(triginta) pabulum frumentumque habere omnes convectum iubet.
**30日分の[[w:糧秣|秣(まぐさ)や穀物]]を運び集めて保持することを皆に命じた。
===75節===
'''ガッリア同盟が各部族に動員を要請する'''
*① Dum haec apud<ref>apud はα系写本の記述で、β系写本では ad となっている。</ref> [[w:la:Alesia|Alesiam]] geruntur,
**これらが[[w:アレシア|アレスィア]]のもとで遂行されている間に、
*Galli concilio principum indicto
**ガッリア人たちは、領袖たちの会合を課して、
*non omnes hos<ref>omnes hos はα系写本の記述で、β系写本では単に omnes となっている。</ref> qui arma ferre possent, ut censuit [[w:la:Vercingetorix|Vercingetorix]], convocandos statuunt,
**[[w:ウェルキンゲトリクス|ウェルキンゲトリークス]]が見積もったように武器を扱える者たち皆を召集するべき、ではないと判断した。
*sed certum numerum cuique ex civitate<ref>ex civitate はα系写本の記述で、β系写本では civitati となっている。</ref> imperandum,
**けれども、おのおのの部族から一定の兵数(の供出)を命令すること(を決めた)。
*ne tanta multitudine confusa nec moderari nec discernere suos nec frumentandi rationem<ref>frumentandi rationem はT・U・R写本などの記述で、V・U写本などでは frumenti rationem となっている。</ref> habere possent.
**これほどの大軍で混乱したり、味方を指揮できなかったり判別できなかったり、ということがないように。
*② Imperant [[w:la:Haedui|Haeduis]] atque eorum clientibus, Segusiavis, Ambivaretis, Aulercis Brannovicibus, Blannoviis, milia XXXV(triginta quinque);
**[[w:ハエドゥイ族|ハエドゥイー族]]とその庇護民であるセグスィアウィ族、アンビウァレティ族、アウレルキ・ブランノウィケス族、ブランノウィイ族に3万5千名を命令した。
*parem numerum Arvernis adiunctis Eleutetis, Cadurcis, Gabalis, Vellaviis,
**[[w:アルウェルニ族|アルウェルニー族]]に隣接しているエレウテティ族、カドゥルキー族、ガバリ族、ウェッラウィイ族に同等の兵数。
*qui sub imperio Arvernorum esse consuerunt;
**彼らはアルウェルニー族の支配下にいるのが常であった。
*③ Sequanis, Senonibus, Biturigibus, Santonis, Rutenis, Carnutibus duodena milia;
**セクアニ族、セノネース族、ビトゥリゲース族、サントネス族、ルテーニー族、カルヌーテース族には1万2千ずつ。
*Bellovacis X(decem); totidem Lemovicibus;
**ベッロウァキ族に1万。レモウィケス族に同じだけ多く(1万)。
*octona Pictonibus et Turonis et Parisiis et Helvetiis;
**ピクトネス族とトゥロニ族とパリスィイ族と[[w:ヘルウェティイ族|ヘルウェティイ族]]に8(千)ずつ。
*Senonibus<ref>Senonibus は写本(ω)にある記述だが、sen<a Suessi>onibus「6(千)ずつをスエッスィオニス族…に」などさまざまな修正提案がなされている。</ref>, Ambianis, Mediomatricis, Petrocoriis, Nerviis, Morinis, Nitiobrogibus quina milia;
**セノネース族、アンビアニ族、メディオマトリキ族、ペトロコリイ族、ネルウィイ族、モリニ族、ニティオブロゲス族に5千ずつ。
**:<span style="color:#009900;">(訳注:Senonibus「セノネース族」は既出のためスエッスィオネス族などに書き替える修正提案がなされ、以下は校訂版によっては兵数がずれる。</span>
**:<span style="color:#009900;">しかし、スエッスィオネス族 Suessiones は[[ガリア戦記 第2巻#12節|第2巻12節]]でレーミー族を通じてカエサルに降伏しており、</span>
**:<span style="color:#009900;">第8巻6節でも「レーミー族に委ねられていた」「同盟者」と記されているので、アレスィアには出兵していないであろう。)</span>
*Aulercis Cenomanis totidem; Atrebatibus IIII;
**アウレルキ・ケノマニ族に同じだけ多く(5千)。アトレバテス族に4(千)。
*Veliocassis, Lexoviis et Aulercis Eburovicibus terna;
**ウェリオカッセス族、レクソウィイ族とアウレルキ・エブロウィケス族に3(千)ずつ。
*Rauracis et Boiis<ref>Boiis はα系写本の記述で、β系写本では Bois となっている。</ref> bina;
**ラウラキ族とボイイ族に2(千)ずつ。
*XXX<ref>XXX はα系写本の記述で、さまざまな修正提案がなされている。</ref> milia universis civitatibus, quae Oceanum attingunt
**<ruby><rb>大洋<span style="color:#009900;">〔[[w:大西洋|大西洋]]〕</span></rb><rp>(</rp><rt>オーケアヌス</rt><rp>)</rp></ruby>に接する諸部族全体に3万。
**:<span style="color:#009900;">(訳注:この数は写本により異なっており、混乱している。)</span>
*quaeque eorum consuetudine Aremoricae appellantur,
**それらは、彼ら(ガッリア人)の慣習でアレモリカエと呼ばれており、
*quo sunt in numero Coriosolites, Redones, Ambibarii, Caletes, Osismi, Veneti, Lemovices, Unelli.
**コリオソリテス族、レドネス族、アンビバリイ族、カレテス族、オスィスミ族、ウェネティ族、レモウィケス族、ウネッリ族がそれらに数えられる。
*⑤ Ex his Bellovaci suum numerum non compleverunt<ref>compleverunt はα系写本の記述で、β系写本では contulerunt となっている。</ref>,
**これらのうちで、ベッロウァキ族は、自分たちの(割り当てられた)数を満たさなかった。
*quod se suo nomine atque arbitrio cum Romanis bellum gesturos dicebant
**というのは、彼らは自らの名と裁量でもってローマ人と交戦するであろうと言ったのだ。
*neque cuiusquam imperio obtemperaturos;
**(自分たちは)何者の命令にも服従しないであろう、と。
*rogati tamen ab<ref>ab はα系写本の記述で、β系写本では a となっている。</ref> Commio pro eius hospitio duo milia una miserunt.
**けれども、[[w:コンミウス|コンミウス]]の懇願により、彼を賓客としているために、2千名を一緒に送り出した。
**:<span style="color:#009900;">(訳注:ベッロウァキ族は要求された兵数の5分の1しか出さなかったが、第8巻22節ではこの出兵をも含めてカエサルから責められる。)</span>
===76節===
'''コンミウスもガッリア同盟軍に内応、約25万の大軍が集結'''
*① Huius opera Commii, ut antea demonstravimus, fideli atque utili
**前に述べたように、この[[w:コンミウス|コンミウス]]の信頼すべき有益な働きを
**:<span style="color:#009900;">(訳注:[[ガリア戦記 第4巻#21節|第4巻21節]]・[[ガリア戦記 第4巻#27節|27節]]・[[ガリア戦記 第4巻#35節|35節]]、[[ガリア戦記 第5巻#22節|第5巻22節]]、[[ガリア戦記 第6巻#6節|第6巻6節]]を参照。)</span>
*superioribus annis erat usus in [[w:la:Britannia Maior|Britannia]] Caesar;
**カエサルは先年(BC55~54年)に[[w:ブリタンニア|ブリタンニア]]において役立てていた。
**:<span style="color:#009900;">(訳注:コンミウスは、[[w:ローマによるブリタンニア侵攻 (紀元前55年-紀元前54年)|カエサルのブリタンニア侵攻]]の先導役を務めていた。後にブリタンニアで王となる。)</span>
*quibus ille pro meritis civitatem eius immunem esse iusserat,
**彼(カエサル)はそれらの功績の見返りに、彼(コンミウス)の部族が免税となることを命じており、
*iura legesque reddiderat atque ipsi Morinos attribuerat.
**権能や法度を元に戻してやり、(コンミウス)自身にモリニ族(の統治)をも委ねていた。
*② Tamen tanta<ref>tamen tanta はα系写本の記述で、β系写本では tanta tamen となっている。</ref> universae Galliae consensio fuit libertatis vindicandae et pristinae belli laudis recuperandae,
**けれども、自主独立が求められるべきで、かつての戦争の誉れが取り戻されるべきだという、ガッリア全体の合意があった。
*ut neque beneficiis neque amicitiae memoria moverentur
**その結果、(カエサルからの)厚遇にも友情の記憶にも揺り動かされず、
*omnesque et animo et opibus in id bellum incumberent.
**(ガッリアの)皆が闘志によっても兵力によっても、その戦争に没頭していたのだ。
*③ Coactis equitum milibus VIII(octo) et peditum circiter CCL(ducenti quinquaginta)<ref>CCL はβ系写本の記述で、α系写本では CCXL または CCXXXX となっている。</ref>
**[[w:騎兵|騎兵]]8千騎と[[w:歩兵|歩兵]]およそ250(千)名が徴集されて、
**:<span style="color:#009900;">(訳注:歩兵の数は、β系写本では25万、α系写本では24万と異なっている。)</span>
*haec in Haeduorum finibus recensebantur, numerusque inibatur, praefecti constituebantur.
**これら(の軍勢)が[[w:ハエドゥイ族|ハエドゥイー族]]の領土で閲兵されて、数が見積もられて、指揮官たちが決められた。
*④ Commio Atrebati, Viridomaro et [[w:la:Eporedorix|Eporedorigi]] [[w:la:Haedui|Haeduis]],
**アトレバテス族の[[w:コンミウス|コンミウス]]、ハエドゥイー族のウィリドマルスとエポレドリクス、
*[[w:la:Vercassivellaunus|Vercassivellauno]] Arverno, consobrino Vercingetorigis, summa imperii traditur.
**[[w:ウェルキンゲトリクス|ウェルキンゲトリークス]]の従兄弟である[[w:アルウェルニ族|アルウェルニー族]]のウェルカッスィウェッラウヌスに、最高司令権が託された。
*His delecti ex civitatibus attribuuntur, quorum consilio bellum administraretur.
**彼らに、諸部族から選ばれた者たちが付与されて、その者たちの協議により戦争が指導された。
*⑤ Omnes alacres et fiduciae pleni ad [[w:la:Alesia|Alesiam]] proficiscuntur,
**皆が、活気があって自身に満ち、[[w:アレシア|アレスィア]]へ向けて出発した。
*⑥ neque erat omnium quisquam qui adspectum modo tantae multitudinis sustineri posse arbitraretur,
**これほどの大軍を一見しただけで持ちこたえられる者は、誰一人いないと思われた。
*praesertim ancipiti proelio,
**とりわけ(内周と外周の)両面の戦闘で、
*cum ex oppido eruptione pugnaretur, foris tantae copiae equitatus peditatusque cernerentur.
**城塞都市からは出撃により戦われ、外からは騎兵と歩兵のこれほどの軍勢が視認されるのであるから。
===77節===
'''飢餓状態のアレスィアで、クリトグナトゥスが極論を唱える'''
*① At ii qui [[w:la:Alesia|Alesiae]] obsidebantur
**ところが、[[w:アレシア|アレスィア]]に包囲されていた者たちは、
*praeterita die qua auxilia suorum exspectaverant,
**味方の援軍を待ち望んでいた日も経過して、
*consumpto omni frumento,
**すべての糧食を消費し尽くして、
*inscii quid in [[w:la:Haedui|Haeduis]] gereretur,
**[[w:ハエドゥイ族|ハエドゥイー族]]のところにおいて何がなされているのかを知らず、
*concilio coacto de exitu suarum fortunarum consultabant.
**会合を召集して、自分たちの命運の結末について協議した。
*② Ac variis dictis sententiis
**そして、さまざまな意見が述べられた。
*quarum pars deditionem,
**それらの一部は降伏を、
*pars dum vires suppeterent eruptionem censebat,
**別の一部は、活動力が十分にある間に突撃することを考慮していた。
*non praetereunda oratio [[w:la:Critognatus|Critognati]] videtur propter eius singularem et nefariam crudelitatem.
**クリトグナトゥスの演説は、彼の特異で非道な残酷さのために、看過されるべきではないと思われる。
<br>
'''クリトグナトゥスの演説が始まる'''
*③ Hic summo in Arvernis ortus loco et magnae habitus auctoritatis,
**彼は、[[w:アルウェルニ族|アルウェルニー族]]において最高の身分に生まれ、大きな影響力を持つとみなされていた。
<br>
'''降伏論者は最低の輩だ'''
*"Nihil" inquit "de eorum sententia dicturus sum, qui turpissimam servitutem deditionis nomine appellant,
**「最も恥ずべき隷属を降伏という名で呼んでいる者たちの意見については、(私は)何も述べないであろう」と言った。
*neque hos habendos civium loco neque ad concilium adhibendos censeo.
**「この者たちは市民の身分を持つべきではないし、会合へ招き入れられるべきでもない、と(私は)考える。
<br>
'''突撃論者には辛抱が欠けている'''
*④ Cum his mihi res sit, qui eruptionem probant;
**突撃に賛同した者たちとともに、私の関わりはあるべきだ。
*quorum in consilio omnium vestrum consensu
**その者たちの考えには、君たち皆の同意があるだろうし、
*pristinae residere virtutis memoria videtur.
**かつての武勇の記憶が残っていることと思われる。
*⑤ Animi est ista mollitia, non virtus, paulisper inopiam ferre non posse.
**しばらくの間も(糧食の)欠乏に耐えることができない(君らの)ことは、気の弱さであって、武勇ではない。
*Qui se ultro morti offerant facilius reperiuntur quam qui dolorem patienter ferant.
**自発的に玉砕して逝った者たちは、苦痛に辛抱強く耐えた者たちよりも、より容易に見出されるのだ。
*⑥ Atque ego hanc sententiam probarem ─tantum apud me dignitas potest─,
**しかし私は(突撃という)この意見に賛同したであろう。それほど、私にとっても価値がある。
*si nullam praeterquam vitae nostrae iacturam fieri viderem;
**(ただし)もし、我々(ガッリア勢)の生命が投げ出されること以外に(方策が)何もないと思ったならばだ。
*⑦ sed in consilio capiendo omnem Galliam respiciamus, quam ad nostrum auxilium concitavimus.
**けれども、作戦を立てるに当たっては、我々のために援軍を(我々が)呼び寄せた全ガッリアを顧慮しよう。
*⑧ Quid hominum milibus LXXX(octoginta) uno loco interfectis
**(我々ガッリア勢)8万の人間が(アレスィア)1か所で殺戮されたら、
*propinquis consanguineisque nostris animi fore existimatis,
**我々の親類縁者たちの士気はどうなると(君らは)判断しているのか。
*si paene in ipsis cadaveribus proelio decertare cogentur?
**もし、ほとんど(我々)自身の亡骸の中で(味方が)決戦することを強いられたら?
*⑨ Nolite hos vestro auxilio exspoliare qui vestrae salutis causa suum periculum neglexerunt,
**君らの身の安全のために、己の危険を顧みなかった者たちのことを、君らが援助すること(の機会)を奪わないでくれ。
*nec stultitia ac temeritate vestra aut animi imbecillitate omnem Galliam prosternere et perpetuae servituti subicere.
**君らの愚かさや無思慮、または心の弱さによって、全ガッリアを滅ぼすことや永久の隷属に委ねることがないように。
<br>
'''ローマ人たちが恐れているのを見よ'''
*⑩ An quod ad diem non venerunt, de eorum fide constantiaque dubitatis?
**それとも(援軍が)期日までにやって来なかったので、彼らの誠実さや剛直さについて(君らは)疑っているのか?
*Quid ergo?
**それでは(あれは)何だ?
*Romanos in illis ulterioribus munitionibus animine causa cotidie exerceri putatis?
**ローマ人たちがあの向こう側の塁壁のところで、趣味のために毎日たえず働かされていると(君らは)思うのか?
*⑪ Si illorum nuntiis confirmari non potestis omni aditu praesaepto,
**もし、すべての出入口を(防柵で)遮られて、(援軍の到来を)彼らの伝令により(君らが)確証できないのならば、
*his utimini testibus adpropinquare eorum adventum,
**こちらの者たち(ローマ人)を、彼ら(援軍)の到来が近づいている証人として示せ。
*cuius rei timore exterriti diem noctemque in opere versantur.
**(援軍の到来という)その事態の恐れに戦慄して(ローマ人たちは)昼も夜も工事に従事しているのだ。
<br>
'''クリトグナトゥスの意見は?'''
*⑫ Quid ergo mei consilii est?
**それでは、私の考えは何であるか?
*Facere quod nostri maiores nequaquam pari bello Cimbrorum Teutonumque fecerunt:
**我々の先祖たちが(今回とは)決して比べものにならない[[w:キンブリ・テウトニ戦争|キンブリ族・テウトニ族との戦争]]でしたことをするのだ。
*qui in oppida compulsi ac simili inopia subacti
**彼ら(先祖たち)は、[[w:オッピドゥム|城塞都市]]に押し込められて、(今回と)似たような欠乏により衰弱させられて、
*eorum corporibus, qui aetate ad bellum inutiles videbantur, vitam toleraverunt
**加齢により戦争に役立たないと思われた者たちの肉体(を食べること)によって、生命を持ちこたえて、
*neque se hostibus tradiderunt.
**敵方に降伏しなかったのだ。
*⑬ Cuius rei si exemplum non haberemus,
**もし、そういう事態の先例を我々が持たなかったとしても、
*tamen libertatis causa institui et posteris prodi pulcherrimum iudicarem.
**けれども、自由のために、最も栄誉なことが決断され、子孫たちに伝えられることと、私は思いたい。
*⑭ Nam quid illi simile bello fuit?
**実際、あの戦争に(今回と)似ている何があっただろうか?
*Depopulata Gallia Cimbri magnaque inlata calamitate
**キンブリ族はガッリアを荒らしまわって、大きな災禍をもたらしたが、
*finibus quidem nostris aliquando excesserunt atque alias terras petierunt;
**あるとき我々の領土から立ち去って、他の土地を求めて行った。
*iura, leges, agros, libertatem nobis reliquerunt.
**権限、法度、耕地、自由を我々(ガッリア人)に残して行ったのだ。
*⑮ Romani vero quid petunt aliud aut quid volunt
**しかし、ローマ人たちは(以下に挙げることの)他に何を求め、何を欲しているのだろうか。
**:<span style="color:#009900;">(訳注:「しかし、ローマ人が求め、欲しているのは、以下のことである」の意。)</span>
*nisi invidia adducti quos fama nobiles potentesque bello cognoverunt,
**高貴で戦争に力強い(ガッリアの)者たちを名声で知って羨望に駆られた以外には、
*horum in agris civitatibusque considere atque his aeternam iniungere servitutem?
**彼らの土地や部族共同体に居座って、彼らを永遠の隷属を課すること以外には。
*Neque enim ulla alia condicione bella gesserunt.
**実際、(ローマ人は)他のいかなる条件でも決して戦争を遂行したことがなかった。
*⑯ Quodsi ea quae in longinquis nationibus geruntur ignoratis,
**もし、遠方の種族のところでなされていることを(君らが)知らないのであれば、
*respicite finitimam Galliam,
**ガッリアの隣人たちを見渡しなさい。
*quae in provinciam redacta,
**(彼らはローマの)[[w:属州|属州]]になることを余儀なくされ、
*iure et legibus commutatis,
**権限や法度を変えられて、
*securibus subiecta perpetua premitur servitute."
**(ローマの)権力に服属させられて、永久の隷属に苦しめられているのだ。
===78節===
'''マンドゥビイ族の投降をカエサルが拒む'''
*① Sententiis dictis
**(いくつかの)意見が述べられて、
*constituunt ut ii, qui valetudine aut aetate inutiles sunt<ref>sunt はα系写本の記述で、β系写本では sint となっている。</ref> bello, oppido excedant
**(ガッリア人たちは)健康または年齢により戦争に役立たない者たちは[[w:オッピドゥム|城塞都市]]を退去するように決めた。
*atque omnia prius experiantur quam ad Critognati sententiam descendant;
**さらに、クリトグナトゥスの意見に同意するよりも、まずあらゆることを試みるように(決めた)。
*② illo tamen potius utendum consilio,
**けれども(以下の場合には)むしろ彼(クリトグナトゥス)の意見を実行するべきだ。
*si res cogat atque auxilia morentur,
**もし、事態が強いて、援軍が遅滞させられるのならば、
*quam aut deditionis aut pacis subeundam condicionem.
**降伏あるいは講和条件を受諾することよりも(クリトグナトゥスの意見を実行するべきだ)、と。
*③ Mandubii qui eos oppido receperant,
**彼ら(ガッリア勢)を城塞都市に受け入れていたマンドゥビイ族は、
*cum liberis atque uxoribus exire coguntur.
**子供たちや妻女たちとともに(城塞都市から)出て行くことを強いられた。
*④ Hi cum ad munitiones Romanorum accessissent,
**彼らは、ローマ人たちの塁壁のところへ近づいたときに、
*flentes omnibus precibus orabant, ut se in servitutem receptos cibo iuvarent.
**自分たちを奴隷として受け入れて食糧で助けてくれるように、泣きながらあらゆる懇願で頼んだ。
*⑤ At Caesar dispositis in vallo custodibus<ref>custodibus はα系写本の記述で、β系写本では custodiis となっている。</ref> recipi prohibebat.
**だが、カエサルは、防柵の中に番兵を分けて置き、(マンドゥビイ族を)受け入れることを禁じた。
===79節===
'''ガッリア同盟軍の来援、アレスィアの歓呼'''
*① Interea Commius reliquique duces, quibus summa imperii permissa erat,
**その間に、最高司令権を任されていた[[w:コンミウス|コンミウス]]とほかの将帥たちが、
*cum omnibus copiis ad Alesiam perveniunt
**すべての軍勢とともに[[w:アレシア|アレスィア]]の辺りへ到着して、
*et colle exteriore occupato
**より外側の丘陵を占拠して、
**:<span style="color:#009900;">(訳注:現在のミュスィ=ラ=フォス村 [[w:fr:Mussy-la-Fosse|Mussy-la-Fosse]]<ref>[http://maps.google.com/maps?q=47.521944,4.438611&hl=fr&ie=UTF8&ll=47.522012,4.438648&spn=0.01849,0.027423&t=h&z=15 Google map]を参照。</ref> のある丘陵であると思われる。)</span>
*non longius mille passibus ab nostris munitionibus considunt.
**我が方(ローマ勢)の塁壁から1ローママイル(約1.5km)ほども遠くないところに陣取った。
**:<span style="color:#009900;">(訳注:現在のヴナレ=レ=ローム [[w:fr:Venarey-les-Laumes|Venarey-les-Laumes]] 市街<ref>[http://maps.google.com/maps?q=47.542778,4.445833&hl=fr&ie=UTF8&ll=47.543106,4.458475&spn=0.036965,0.054846&t=h&z=14 Google map]を参照。</ref>の周辺であると思われる。)</span>
*② Postero die equitatu ex castris educto
**翌日に、[[w:騎兵|騎兵隊]]が陣営から進発させられて、
*omnem eam planitiem quam in longitudinem milia passuum III(tria)<ref>milia passuum III はβ系写本の記述で、α系写本では quattuor milia passuum などとなっている。</ref> patere demonstravimus, complent
**3ローママイル(約4.5km)の長さにわたり広がっていることを既述した平地のすべてを、満たした。
**:<span style="color:#009900;">(訳注:[[#69節|69節]]を参照。現在のローム平原に当たると思われる。)</span>
*pedestresque copias paulum ab eo loco abditas in locis superioribus constituunt.
**[[w:歩兵|歩兵]]の軍勢を、その地からいくらか遠ざけて、より高いところに駐留させた。
**:<span style="color:#009900;">(訳注:上記の丘陵のより高い所であると思われる。)</span>
*③ Erat ex oppido Alesia despectus in campum.
**アレスィアの[[w:オッピドゥム|城塞都市]]からは(その)平地に眺望があった。
*Concurrunt<ref>concurrunt はα系写本の記述で、β系写本では concurritur となっている。</ref> his auxiliis visis;
**これらの援軍が現われると(アレスィアのガッリア人たちは)群がり集まった。
*fit gratulatio inter eos
**彼らの間で祝賀がなされて、
*atque omnium animi ad laetitiam excitantur.
**皆の心が喜びへと鼓舞された。
*④ Itaque productis copiis ante oppidum considunt
**こうして(アレスィアの)軍勢が出撃させられて、城塞都市の前に陣取って、
*et proximam fossam cratibus integunt atque aggere explent
**最も近い堀を、柴で蔽って、土砂を充満させて、
*seque ad eruptionem atque omnes casus comparant.
**突撃やあらゆる有事に戦備を整えた。
===80節===
'''ゲルマニア騎兵らローマ勢が来援ガッリア騎兵をも打ち破る'''
*① Caesar omni exercitu ad utramque partem munitionum<ref>munitionum はα系写本の記述で、β系写本では munitionis となっている。</ref> disposito,
**カエサルは、すべての[[w:歩兵|歩兵隊]]を、塁壁の(内周と外周)両側に分けて置き、
*ut, si usus veniat, suum quisque locum teneat et noverit,
**もし、必要が生じたら、おのおのが自らの部署を知って固守するようにした。
*equitatum ex castris educi et proelium committi iubet.
**[[w:騎兵|騎兵隊]]を陣営から進発させて、交戦することを命じた。
*② Erat ex omnibus castris, quae summum undique iugum tenebant, despectus
**至る所で尾根の頂きを占めていた(ローマ勢の)すべての陣営から(騎兵戦の)眺望があった。
*atque omnes milites intenti<ref>intenti はα系写本の記述で、β系写本では intenti animi、Fuchs は intentis animis と修正提案している。</ref> pugnae proventum<ref>pugnae proventum はα系写本の記述で、β系写本では proventum pugnae となっている。</ref> exspectabant.
**すべての兵士たちは(観戦に)没頭して、戦いの結果を待っていた。
*③ Galli inter equites raros sagittarios expeditosque levis armaturae interiecerant,
**ガッリア人たちは、弓兵たちと軽装歩兵たちをまばらに、騎兵たちの間に置いていて、
*qui suis cedentibus auxilio succurrerent
**その者たち(弓兵と軽装歩兵)は、味方が後退するのを支援するために馳せ寄って、
*et nostrorum equitum impetus sustinerent.
**我が方(ローマ勢)の騎兵の突撃に持ちこたえていた。
*Ab his complures de improviso vulnerati proelio excedebant.
**彼らによって(ローマ側騎兵の)かなりの者たちが、思いがけず負傷させられて、戦闘から退いた。
*④ Cum suos pugna superiores esse Galli confiderent
**ガッリア人たちが、味方が戦いで優勢であることを確信したとき、
*et nostros multitudine premi viderent,
**かつ、我が方(ローマ勢)が多勢(のガッリア騎兵)により圧倒されているのを見て取ったときに、
*ex omnibus partibus et ii qui munitionibus continebantur
**あらゆる方面から(ローマ勢の)塁壁によって囲まれていた者たちも、
*et hi<ref>hi はφ系・β系写本の記述で、χ系写本では ii となっている。</ref> qui ad auxilium convenerant
**(アレスィア)救援のために集結して来ていた者たちも、
*clamore et ululatu suorum animos confirmabant.
**大声やわめき声によって味方の闘志を強めた。
*⑤ Quod in conspectu omnium res gerebatur
**(両軍の)皆の環視の中で合戦が遂行されたので、
*neque recte ac<ref>ac はα系・π系写本の記述で、ρ系写本では aut となっている。</ref> turpiter factum celari poterat,
**立派な行為または見苦しい行為も隠されることができなかったので、
*utrosque et laudis cupiditas et timor ignominiae ad virtutem excitabant<ref>excitabant はB・M・L・N・R写本などの記述で、χ系・B・S・π系・U写本などでは excitabat となっている。</ref>.
**賞賛への功名心も、不名誉への恐れも、双方を武勇へと駆り立てた。
*⑥ Cum a meridie prope ad solis occasum dubia victoria pugnaretur,
**正午から、ほぼ日没の頃まで、勝利が不確実なまま戦われていたときに、
*Germani una in parte confertis turmis
**ゲルマニア人たちが、騎兵部隊を一か所に密集させて、
*in hostes impetum fecerunt eosque propulerunt;
**敵方に突撃を行ない、彼ら(ガッリア騎兵)を駆逐した。
*⑦ quibus in fugam coniectis
**その者たち(ガッリア騎兵)は逃亡に追いやられて、
*sagittarii circumventi interfectique sunt.
**弓兵たちは包囲されて殺戮された。
*⑧ Item ex reliquis partibus nostri cedentes usque ad castra insecuti
**我が方(ローマ勢)の残りの部隊も、撤退する(ガッリア騎兵の)者たちを陣営のところまで追撃して、
*sui colligendi facultatem non dederunt.
**立ち直る機会を与えなかった。
*⑨ At ii qui ab [[w:la:Alesia|Alesia]] processerant,
**そして、[[w:アレシア|アレスィア]]から進み出ていた者たちは、
*maesti prope victoria desperata se in oppidum receperunt.
**ほとんど絶望的な勝利に悲嘆して、城塞都市に退却した。
===81節===
'''ガッリア来援軍と籠城軍がローマ陣地に夜襲をしかける'''
*① Uno die intermisso Galli
**ガッリア人たちは一日を間に置いて、
*atque hoc spatio magno cratium, scalarum, harpagonum numero effecto
**この間に、多数の柴、[[w:梯子|梯子]]、鉤竿を調達して、
*media nocte silentio ex castris egressi
**真夜中に静けさのうちに陣営から進発して、
*ad campestres munitiones accedunt.
**平地の(ローマ勢の)塁壁の辺りへ近づいた。
*② Subito clamore sublato, qua significatione
**突然に雄叫びを上げて、それを合図として、
*qui in oppido obsidebantur de suo adventu cognoscere possent,
**[[w:オッピドゥム|城塞都市]]の中に包囲されている者たちが、自分たちの到来について認識できるようにした。
*crates proicere, fundis, sagittis, lapidibus nostros de vallo proturbare
**柴を投げ込み、投石器で、矢で、石でもって我が方(ローマ勢)を防柵から追い出すこと、
*reliquaque quae ad oppugnationem pertinent parant administrare.
**(塁壁の)攻略のために役立つほかのことに従事すること、を目論んだ。
*③ Eodem tempore clamore exaudito
**同時に(来援軍の)雄叫びを聞き取って、
*dat tuba signum suis [[w:la:Vercingetorix|Vercingetorix]] atque ex oppido educit.
**[[w:ウェルキンゲトリクス|ウェルキンゲトリークス]]は、麾下の者たちにラッパで指図を与えて、城塞都市から進発させた。
*④ Nostri, ut superioribus diebus, suus cuique<ref>suus cuique はβ系写本の記述で、χ系・B・M・S写本では ut cuique となっている。</ref> erat locus attributus, ad munitiones accedunt;
**我が方(ローマ勢)は、以前の日々に、おのおのの部署が割り当てられており、塁壁のところへ近寄った。
*fundis librilibus sudibusque, quas in opere disposuerant, ac glandibus Gallos proterrent.
**堡塁に分配されていたポンド投石器や杭、並びに玉によって、ガッリア人たちを追い払った。
**:<span style="color:#009900;">(訳注:librilis funda「ポンド投石器」;古代ローマの1ポンド [[w:la:Libra pondus|libra]] は約327グラム<ref>[[w:en:Ancient Roman units of measurement#Weight]]を参照。</ref>。)</span>
*⑤ Prospectu tenebris adempto multa utrimque vulnera accipiuntur.
**眺望が暗闇により奪われて、双方が多くの傷を蒙った。
*Complura tormentis tela coniciuntur.
**かなり多くの飛び道具が(巻上式)投石機によって投じられた。
*⑥ At [[w:la:Marcus Antonius|M.(Marcus) Antonius]] et [[w:la:Gaius Trebonius|C.(Gaius) Trebonius]] legati,
**[[w:マルクス・アントニウス|マルクス・アントニウス]]と[[w:ガイウス・トレボニウス|ガイウス・トレボニウス]] [[w:レガトゥス|両副官]]は、
*quibus hae partes ad defendendum obvenerant,
**この方面を防衛するために割り当てられていたが、
*qua ex parte nostros premi intellexerant,
**我が方(ローマ勢)が押されぎみであると見なした一帯のために、
*his auxilio ex ulterioribus castellis deductos submittebant.
**この者たちを支援するために、向こう側の砦から引き出した者たちを(援兵として)派遣した。
===82節===
'''アレスィア内外のガッリア勢が障害物に阻まれて退く'''
*① Dum longius ab munitione aberant Galli,
**ガッリア人たちは(ローマ勢の)塁壁から遠くに離れていた間は、
*plus multitudine telorum proficiebant;
**飛び道具の多さによって、前進していた。
*posteaquam propius successerunt,
**(塁壁の方へ)さらに近くに進入して来た後では、
*aut se ipsi<ref>ipsi はβ系写本の記述で、α系写本にはない。</ref> stimulis inopinantes induebant
**あるいは、思いがけず自ら「刺」に陥り、
**:<span style="color:#009900;">(訳注:stimulus「刺」については、[[#73節|73節]]⑨項を参照。)</span>
*aut in scrobes delati transfodiebantur
**あるいは、穴に陥落して(「百合」で)突き刺されたり、
**:<span style="color:#009900;">(訳注:「穴」と「百合」については、[[#73節|73節]]⑤~⑧項を参照。)</span>
*aut ex vallo ac turribus traiecti pilis muralibus interibant.
**あるいは、防柵や櫓から[[w:ピルム・ムーリアリス|防壁槍]]で射抜かれて逝った。
**:<span style="color:#009900;">(訳注:防壁槍については、[[ガリア戦記 第5巻#40節|第5巻40節]]を参照。)</span>
*② Multis undique vulneribus acceptis
**(ガッリア勢は)至る所で多くの傷を負ったが、
*nulla munitione perrupta,
**どの(ローマ側の)塁壁も突破されなかった。
*cum lux appeteret,
**<ruby><rb>暁光</rb><rp>(</rp><rt>ぎょうこう</rt><rp>)</rp></ruby>が(空を)染めたとき、
*veriti ne ab latere aperto ex superioribus castris eruptione circumvenirentur,
**開けた側面から、(ローマ勢の)高所の陣営からの突撃によって包囲されないようにと怖れて、
**:<span style="color:#009900;">(訳注:開けた側面とは、盾で守られていない右側のこと。)</span>
*se ad suos receperunt.
**味方のところへ退却した。
*③ At interiores
**それに対して、(アレスィア攻囲の)内側の者たちは、
*dum ea quae a [[w:la:Vercingetorix|Vercingetorige]] ad eruptionem praeparata erant<ref>praeparata erant は、写本(ω)ではpraeparaverant だが、このように修正提案されている。あるいは、a Vercingetorige が削除提案されている。</ref> proferunt,
**[[w:ウェルキンゲトリクス|ウェルキンゲトリークス]]により、突撃のために準備していたものを運び出して
*priores fossas explent,
**一番前の堀を埋めている間に、
*diutius in his rebus administrandis morati
**これらの事に従事することに、より長く妨げられて、
*prius suos discessisse cognoverunt quam munitionibus adpropinquarent.
**塁壁に近づくよりも前に味方(=来援軍)が退去したことを知ったのだ。
*Ita re infecta in oppidum reverterunt.
**こうして、事は達成されていないものの、[[w:オッピドゥム|城塞都市]]に引き返した。
===83節===
'''ウェルカッスィウェッラウヌスが兵6万を率いて急所の丘へ向かう'''
*① Bis magno cum detrimento repulsi Galli
**大きな損害とともに二度も撃退されたガッリア人たちは、
*quid agant consulunt;
**何をなすべきかを協議した。
*locorum peritos adhibent;
**(その)土地に熟知した者たちを招いた。
*ex his superiorum castrorum situs munitionesque cognoscunt.
**この者たちから、(ローマ勢の)高いところの陣営の位置や塁壁を調べ上げた。
*② Erat a septentrionibus collis,
**(アレスィアの)北方に丘陵があって、
**:<span style="color:#009900;">(訳注:これは現在のレア山 le Mont Réa であると思われ、山頂にはメネルー=ル=ピトワ村<ref>[[w:fr:Ménétreux-le-Pitois]]や[http://maps.google.fr/maps?f=q&hl=fr&geocode=&q=m%C3%A9n%C3%A9treux+le+pitois&sll=42.423457,8.789063&sspn=23.611541,40.957031&ie=UTF8&t=h&hq=&hnear=M%C3%A9n%C3%A9treux-le-Pitois,+C%C3%B4te-d'Or,+Bourgogne&ll=47.55475,4.460106&spn=0.018507,0.010042&z=15 Google map]などを参照。</ref>がある。)</span>
*quem propter magnitudinem circuitus
**その周囲の大きさのために、
*opere circumplecti non potuerant nostri,
**我が方(ローマ勢)は、堡塁により囲い込むことができずにいた。
*necessarioque<ref>-que はβ系写本の記述で、α系写本にはない。</ref> paene iniquo loco et leniter<ref>leniter はπ系写本の記述で、α系・ρ系写本では leviter となっている。</ref> declivi castra fecerunt<ref>fecerunt はα系写本の記述で、β系写本では fecerant となっている。</ref>.
**やむをえず、ほとんど不利でゆるやかに傾斜した地点に陣営を造った。
*③ Haec C.(Gaius) Antistius Reginus et C.(Gaius) Caninius Rebilus legati
**これを、ガーイウス・アンティスティウス・レーギーヌスとガイウス・カニニウス・レビルス [[w:レガトゥス|両副官]]が
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:''[[w:fr:Caius Antistius Reginus|Gaius Antistius Reginus]]'' は[[ガリア戦記_第6巻#1節|第6巻1節]]で既出。[[#90節|90節]]で後出。)</span>
*cum duabus legionibus obtinebant.
**2個軍団とともに占めていた。
*④ Cognitis per exploratores regionibus duces hostium
**敵方の将帥たちは、偵察者たちを通じて一帯を調べ上げて、
*LX(sexaginta) milia ex omni numero deligunt
**総員のうちから6万名を選抜した。
*earum civitatum quae maximam virtutis opinionem habebant;
**武勇において大きな評判を得ている部族のうち(から選抜した)。
*⑤ quid quoque pacto agi placeat, occulte inter se constituunt;
**何が、どんな方法で行なわれるのがよいか、互いに密かに取り決めた。
*adeundi tempus definiunt, cum meridie<ref>meridie は中世の写本(ω)の記述であるが、近世の写本(ς)では meridies となっている。</ref> esse videatur.
**正午であると思われる頃を突撃する時と定めた。
*⑥ His copiis Vercassivellaunum Arvernum,
**この軍勢を、[[w:アルウェルニ族|アルウェルニー族]]のウェルカッスィウェッラウヌス、
*unum ex quattuor ducibus, propinquum [[w:la:Vercingetorix|Vercingetorigis]], praeficiunt.
**(すなわち)4人の将帥たちの1人で、[[w:ウェルキンゲトリクス|ウェルキンゲトリークス]]の親族である者に、指揮させた。
*⑦ Ille ex castris prima vigilia egressus
**彼(ウェルカッスィウェッラウヌス)は、陣営から第一夜警時に進発して、
*prope confecto sub lucem itinere
**夜明け前にほぼ行軍が成し遂げられて、
*post montem se occultavit
**山の後ろに身を隠して、
*militesque ex nocturno labore sese reficere iussit.
**兵士たちに夜間の疲労を回復しておくことを命じた。
*⑧ Cum iam meridies adpropinquare videretur,
**すでに正午に近付いていると思われたときに、
*ad ea castra, quae supra demonstravimus, contendit;
**前に述べた陣営のところへ急いだ。
**:<span style="color:#009900;">(訳注:本節②項を参照。)</span>
*eodemque tempore equitatus ad campestres munitiones accedere
**同時に(ガッリア来援軍の)[[w:騎兵隊|騎兵隊]]が平地の(ローマ勢の)塁壁のところへ近付き、
*et reliquae copiae pro castris sese ostendere coeperunt.
**残りの軍勢が陣営の前に姿を現わし始めた。
===84節===
'''ウェルキンゲトリークスらアレスィア籠城軍も善戦する'''
*① [[w:la:Vercingetorix|Vercingetorix]] ex arce [[w:la:Alesia|Alesiae]] suos conspicatus ex oppido egreditur;
**[[w:ウェルキンゲトリクス|ウェルキンゲトリークス]]は、[[w:アレシア|アレスィア]]の高台から味方を望見して、[[w:オッピドゥム|城塞都市]]から進発した。
*a castris<ref>a castris はβ系写本の記述で、α系写本では単に castris となっている。</ref>, longurios, musculos, falces
**陣営から、長い竿、小屋、破城鎌や、
**:<span style="color:#009900;">(訳注:falx「破城鎌」については、[[ガリア戦記 第5巻#42節|第5巻42節]]を参照。)</span>
*reliquaque quae eruptionis causa paraverat profert.
**(塁壁を)突破するために準備していたほかのものを運び出した。
*② Pugnatur uno tempore omnibus locis atque omnia temptantur;
**一時にあらゆる場所で戦われて、あらゆることが試みられた。
*quae minime visa pars firma est, huc concurritur.
**あまり堅固ではないと思われる部分、ここへ襲いかかった。
*③ Romanorum manus tantis munitionibus distinetur
**ローマ人の手勢は、これほどの(長大な)塁壁により離して置かれていて、
*nec facile pluribus locis occurrit.
**より多くの場所には容易に駆け付けられなかった。
*④ Multum ad terrendos nostros valet clamor qui post tergum pugnantibus exstitit,
**戦っている者たちの背後で生じた雄叫びは、我が方(ローマ勢)を怖れさせるために大いに力があった。
*quod suum periculum in aliena vident virtute<ref>virtute「武勇」 はβ系写本の記述で、α系写本では salute「安全」 となっている。</ref> constare;
**というのは、自分たち(ローマ勢)の危険が他人(ガッリア勢)の武勇に依拠していると思ったから。
*omnia enim plerumque, quae absunt, vehementius hominum mentes perturbant.
**なぜなら(そこに)不在であるものすべてはたいてい、人間の心を激しく混乱させるものであったからである。
===85節===
'''ウェルカッスィウェッラウヌスが急所の丘を攻める'''
*① Caesar idoneum locum nactus
**カエサルは適当な場所を得て,
*quid quaque in<ref>quaque in はβ系写本の記述で、α系写本では qua ex となっている。</ref> parte geratur cognoscit;
*何が各方面でなされているのかを認識した。
*laborantibus submittit.
**苦戦している者たちに(援兵を)派遣した。
*② Utrisque ad animum occurrit unum esse illud tempus, quo maxime contendi conveniat:
**双方にとって、最も雌雄を決するべきはこの時のみであるということが、心に生じた。
*③ Galli, nisi perfregerint munitiones, de omni salute desperant;
**ガッリア人たちは、(ローマ人の)塁壁を突破しない限り、あらゆる身の安全に絶望することになる。
*Romani, si rem obtinuerint, finem laborum omnium exspectant.
**ローマ人は、もし事を成就したら、すべての労苦の終わるということを期待した。
*④ Maxime ad superiores munitiones laboratur, quo [[w:la:Vercassivellaunus|Vercassivellaunum]] missum demonstravimus.
**ウェルカッスィウェッラウヌスが派遣されたと既述した、より高い塁壁の辺りで(ローマ勢は)とりわけ苦戦した。
*Iniquum loci ad declivitatem fastigium magnum habet momentum.
**けわしい地形の不利な傾斜が(ローマ勢にとって)大きな影響力を持った。
*⑤ Alii tela coniciunt, alii testudine facta subeunt;
**(ガッリア勢の)ある者は飛び道具を投げやって、ある者は[[w:テストゥド|亀甲陣形]]を形成して突き進んだ。
*defatigatis invicem integri succedunt.
**疲労させられた者たちに対しては、新手の者たちが交代した。
*⑥ Agger ab universis in munitionem coniectus
**土が総勢により(ローマ人の)塁壁に投じられて、
*et ascensum dat Gallis
**ガッリア人たちに登り道を与えもしたし、
*et ea, quae in terra occultaverant Romani, contegit;
**ローマ人たちが地中に隠しておいたもの(障害物)を埋め込んでしまった。
*nec iam arma nostris nec vires suppetunt.
**我が方(ローマ勢)には、もはや武器も活力も十分になかった。
===86節===
'''危急存亡の秋、両軍の苦闘'''
*① His rebus cognitis
**これらの事態を知って、
*Caesar [[w:la:Titus Labienus|Labienum]] cum cohortibus sex subsidio laborantibus mittit;
**カエサルは、[[w:ティトゥス・ラビエヌス|ラビエーヌス]]を6個<ruby><rb>[[w:コホルス|歩兵大隊]]</rb><rp>(</rp><rt>コホルス</rt><rp>)</rp></ruby>とともに援兵として苦戦している者たちへ派遣した。
*② imperat, si sustinere non possit<ref>possit はχ系・B・M・S・β系写本の記述で、L・N写本では posset となっている。</ref>, deductis cohortibus eruptione pugnaret<ref>pugnaret はα系写本の記述で、β系写本では pugnet となっている。</ref>;
**もし(塁壁の防衛が)持ちこたえられなかったならば、諸大隊を引率して突撃によって戦うように、と命令していた。
*id nisi necessario ne faciat.
**それは、やむをえないのでなければ行なわないように(と命じていた)。
*③ Ipse adit reliquos, cohortatur ne labori succumbant;
**(カエサル)自身は、ほかの者たちを訪れて、労苦に屈服しないようにと鼓舞した。
*omnium superiorum dimicationum fructum in eo die atque hora docet consistere.
**これまでのあらゆる奮闘の結実がこの日、この時にかかっていることを説いた。
*④ Interiores desperatis campestribus locis propter magnitudinem munitionum
**(アレスィアに包囲されている)内側の者たちは、塁壁の大規模さのために、平坦な地点(での突破)を断念して、
*loca praerupta ex ascensu temptant;
**けわしい場所を登り坂から攻撃してみた。
*huc ea quae paraverant conferunt.
**ここに、準備していたものを運び集めた。
*⑤ Multitudine telorum ex turribus propugnantes deturbant,
**たくさんの飛び道具によって、防戦している者たちを櫓から駆逐した。
*aggere et cratibus fossas explent,
**土砂や柴で堀を埋めて、
*falcibus vallum ac loricam rescindunt.
**破城鎌によって防柵や胸壁を切り裂いた。
**:<span style="color:#009900;">(訳注:falx「破城鎌」については、[[ガリア戦記 第5巻#42節|第5巻42節]]を参照。)</span>
===87節===
'''カエサルの救援、ラビエーヌスの作戦'''
*① Mittit primo<ref>primo はφ系・ρ系写本の記述で、χ系・π系写本では primum となっている。</ref> [[w:la:Decimus Iunius Brutus Albinus|Brutum adulescentem]] cum cohortibus Caesar,
**カエサルは、初めに[[w:デキムス・ユニウス・ブルトゥス・アルビヌス|青年ブルトゥス]]を諸<ruby><rb>[[w:コホルス|歩兵大隊]]</rb><rp>(</rp><rt>コホルス</rt><rp>)</rp></ruby>とともに派遣して、
**:<span style="color:#009900;">(訳注:デキムス・ブルトゥスには[[ガリア戦記 第3巻#14節|第3巻14節]]で艦隊を、本巻[[#9節|9節]]②項では騎兵隊を指揮させている。)</span>
*post cum aliis C.(Gaium) Fabium legatum;
**後に副官のガイウス・ファビウスをほかの隊とともに(派遣した)。
*postremo ipse, cum vehementius pugnaretur,
**最後には(カエサル)自身が、激しく戦われていたので、
*integros subsidio adducit.
**新手の者たちを援兵として率いて行った。
*② Restituto proelio ac repulsis hostibus
**戦況が回復され、敵方が撃退されると、
*eo quo Labienum miserat contendit;
**ラビエーヌスを派遣していたところに急いだ。
*cohortes IIII(quattuor) ex proximo castello deducit,
**近隣の砦から4個歩兵大隊を引き出して、
*equitum partem se<ref>se はβ系写本の記述で、α系写本にはない。</ref> sequi,
**[[w:騎兵|騎兵]]のある一部には、自らに随行することを、
*partem circumire exteriores munitiones et ab<ref>ab はα系写本の記述で、β系写本では a となっている。</ref> tergo hostes adoriri iubet.
**別の一部には、外側の塁壁を取り囲んで、敵方を背後から襲撃することを命じた。
*③ Labienus, postquam neque aggeres neque fossae vim hostium sustinere poterant,
**ラビエーヌスは、土塁も堀も敵方の武力に持ちこたえることができなかった後で、
*coactis una XL(quadraginta) cohortibus, quas ex proximis praesidiis deductas fors obtulit,
**近隣の宿営地から、はからずも引き出しておいた40個歩兵大隊を集結させて、
**:<span style="color:#009900;">(訳注:この数は、写本によって異なり、モイゼルらは undecim「11個」と提案している。)</span>
*Caesarem per nuntios facit certiorem, quid faciendum existimet.
**何がなされるべきと考えたのかを、カエサルに伝令を通じて報告した。
*Accelerat Caesar, ut proelio intersit.
**カエサルは、戦闘(の場)に居合わせるように急いで行った。
===88節===
'''雌雄決し、ガッリア来援軍が敗走'''
*① Eius adventu ex colore vestitus cognito, quo insigni in proeliis uti consuerat,
**彼(カエサル)の到来が、(彼が)戦闘において目印として用いるのが常であった衣服の色から認識され、
**:<span style="color:#009900;">(訳注:カエサルは、真紅の外套を着用していたようである。)</span>
*turmisque equitum et cohortibus visis quas se sequi iusserat,
**(カエサルが)自らに随行することを命じていた諸<ruby><rb>[[w:騎兵|騎兵]]小隊</rb><rp>(</rp><rt>トゥルマ</rt><rp>)</rp></ruby>や諸<ruby><rb>[[w:コホルス|歩兵大隊]]</rb><rp>(</rp><rt>コホルス</rt><rp>)</rp></ruby>が望見されて、
*ut de locis superioribus haec declivia et devexa cernebantur,
**(ウェルカッスィウェッラウヌスらが派遣された)高地から、これらの斜面や急坂が見分けられたので、
*hostes proelium committunt.
**敵方(ガッリア勢)は戦端を開いた。
*② Utrimque clamore sublato
**(ガッリア来援軍とアレスィア籠城軍の)双方から雄叫びが上げられて、
*excipit rursus ex vallo atque omnibus munitionibus clamor.
**さらに、防柵やすべての塁壁から(ローマ勢の)雄叫びが続いた。
*Nostri omissis pilis gladiis rem gerunt.
**我が方(ローマ勢)は<ruby><rb>[[w:ピルム|投槍]]</rb><rp>(</rp><rt>ピルム</rt><rp>)</rp></ruby>を放棄して、<ruby><rb>[[w:グラディウス (武器)|長剣]]</rb><rp>(</rp><rt>グラディウス</rt><rp>)</rp></ruby>で合戦した。
*③ Repente post tergum equitatus cernitur;
**不意に(ガッリア勢の)背後に(ローマ勢の)騎兵隊が見分けられた。
**:<span style="color:#009900;">(訳注:87節②項で、カエサルは騎兵隊に外壁を迂回して敵を背後から襲撃するように命じていた。)</span>
*cohortes aliae adpropinquant.
**別の諸<ruby><rb>歩兵大隊</rb><rp>(</rp><rt>コホルス</rt><rp>)</rp></ruby>も接近して来た。
*Hostes terga vertunt;
**敵方(ガッリア勢)は、(ローマ勢に)背を向けた。
*fugientibus equites occurrunt.
**逃げる者たち(ガッリア勢)を(ローマ勢の)騎兵たちが追撃した。
*Fit magna caedes.
**大虐殺が起こった。
*④ Sedullus, dux et princeps Lemovicum, occiditur;
**レモウィケス族の将帥で領袖であるセドゥッルスが斃された。
*[[w:la:Vercassivellaunus|Vercassivellaunus]] Arvernus vivus in fuga comprehenditur;
**[[w:アルウェルニ族|アルウェルニー族]]のウェルカッスィウェッラウヌスは逃亡中に生きたまま捕らえられた。
*signa militaria LXXIIII(septuaginta quattuor) ad Caesarem referuntur;
**(ガッリア勢の)74本の軍旗がカエサルのところへ運んで来られた。
*pauci ex tanto numero se incolumes<ref>se incolumes はα系写本の記述で、β系写本では incolumes se となっている。</ref> in castra recipiunt.
**これほどの兵数のうち、わずかな者たち(だけ)が無傷のまま陣営に退却した。
*⑤ Conspicati ex oppido caedem et fugam suorum
**(アレスィアの)[[w:オッピドゥム|城塞都市]]から味方の虐殺や逃亡を視認した者たちは、
*desperata salute copias a munitionibus reducunt.
**身の安全に絶望して、軍勢を塁壁から(城塞都市に)呼び戻した。
*⑥ Fit protinus hac re audita ex castris Gallorum fuga.
**この事態が聞かれるとただちに、(来援に来ていた)ガッリア人たちの陣営から逃亡が生じた。
*Quodnisi crebris subsidiis ac totius diei labore milites essent defessi,
**もし、たびたびの(味方への)支援や一日中の働きにより兵士たちが疲れ果てていなかったならば、
*omnes hostium copiae deleri potuissent.
**敵方(ガッリア来援軍)の全軍勢が壊滅させられることが可能であっただろう。
*⑦ De media nocte missus equitatus novissimum agmen consequitur;
**真夜中の頃に、派遣されていた(ローマ勢の)騎兵隊が(ガッリア勢の)後衛に追いついて、
*magnus numerus capitur atque interficitur;
**(ガッリア勢の)大多数が捕らえられ、かつ殺戮された。
*reliqui ex fuga in civitates discedunt.
**(ガッリア来援軍の)残りの者たちは、逃亡して諸部族のところに逃げのびた。
==ガッリア同盟軍主力の降伏==
===89節===
[[画像:Vercingétorix se rend à César 1886 HPMotte.jpg|thumb|right|330px|「カエサルの陣営に投降するウェルキンゲトリークス」<br>“Vercingétorix se rendant au camp de César”、<br>アンリ=ポール・モット([[w:fr:Henri-Paul_Motte|Henri-Paul Motte]])画、1886年。<br>[[w:ル・ピュイ=アン=ヴレ|ル・ピュイ=アン=ヴレ]]のクロザティエ美術館([[w:fr:Musée Crozatier au Puy-en-Velay|Musée Crozatier]] au [[w:fr:Le Puy-en-Velay|Puy-en-Velay]])蔵。]]
[[画像:Lionel Royer - Vercingetorix Throwing down His Weapons at the feet of Julius Caesar.jpg|thumb|right|330px|「ウェルキンゲトリークスが彼の武器をユリウス・カエサルの足元に投げ捨てる」“Vercingétorix jette ses armes aux pieds de Jules César”、リオネル=ノエル・ロワイエ([[w:fr:Lionel Royer|Lionel-Noël Royer]])
画、1899年。[[w:ル・ピュイ=アン=ヴレ|ル・ピュイ=アン=ヴレ]]のクロザティエ美術館([[w:fr:Musée Crozatier au Puy-en-Velay|Musée Crozatier]] au [[w:fr:Le Puy-en-Velay|Puy-en-Velay]])蔵。]]
[[画像:Coin_Vercingetorix.jpg|thumb|right|300px|ローマがBC48年に発行した[[w:デナリウス|デナリウス銀貨]]。ウェルキンゲトリークスの横顔が刻まれているとも言われ、[[w:マメルティヌスの牢獄|トゥッリアヌム牢獄]]に虜囚となっているかつてのガッリアの盟主を見せしめにしたものとも考えられる。彼はBC46年に処刑されたが、カエサルもBC44年に暗殺された。]]
'''ウェルキンゲトリークスとアレスィア籠城軍の降伏'''
*① Postero die [[w:la:Vercingetorix|Vercingetorix]] concilio convocato
**(来援軍が敗走した)翌日に、[[w:ウェルキンゲトリクス|ウェルキンゲトリークス]]は会合を召集して、
*id bellum se suscepisse<ref>se suscepisse はα系写本の記述で、β系写本では suscepisse se となっている。</ref>
**この戦争を引き受けたことは
*non suarum necessitatum<ref>necessitatum はχ系・S・L・N・β系写本の記述で、B・M写本では necessitatium となっている。</ref>, sed communis libertatis causa demonstrat,
**自らの(野心の)必要性からではなく、(ガッリア)共通の自由のためだ、と明言した。
*② et quoniam sit fortunae cedendum,
**運命には従うべきものなのであるから、
*ad utramque rem se illis offerre,
**(敗軍の将として、以下の)どちらの事にも、自ら(の処遇)を彼ら(ガッリア人たち)に委ねよう。
*seu morte sua Romanis satisfacere
**あるいは(ウェルキンゲトリークス)自らの死によってローマ人たちに償うこと(を欲する)にせよ、
*seu vivum tradere velint.
**あるいは生きたまま(ローマ人たちに)引き渡すことを欲するにせよ、と。
*③ Mittuntur de his rebus ad Caesarem legati.
**これらの事柄について、カエサルのところへ使節たちが遣わされた。
*Iubet arma tradi, principes produci.
**(カエサルは)武器が引き渡されること、領袖たちが連行されて来ることを命じた。
*④ Ipse in munitione pro castris consedit;
**(カエサル)自身は、陣営の前の塁壁のところに腰掛けた。
*eo duces producuntur.
**そこに(アレスィアに籠城していた)将帥たちが連行されて来た。
*Vercingetorix deditur, arma proiciuntur.
**ウェルキンゲトリークスが引き渡されて、武器が投げ捨てられた。
*⑤ Reservatis [[w:la:Haedui|Haeduis]] atque Arvernis,
**(カエサルは)[[w:ハエドゥイ族|ハエドゥイー族]]と[[w:アルウェルニ族|アルウェルニー族]](の将兵たち)を保持しておいた。
*si per eos civitates reciperare<ref>reciperare はχ系・B<sup>1</sup>・S・U写本の記述で、B<sup>c</sup>・M・L・N・π系・R写本では recuperare となっている。</ref> posset,
**彼らによって両部族国家を(同盟国として)回復できないだろうかと(考えたのだ)。
*ex reliquis captivis toto exercitui capita singula praedae nomine distribuit.
**残りの(諸部族の)捕虜たちから、全軍(のローマ人)に一名ずつを戦利品という名目で分配した。
===90節===
[[画像:Autun_porte_Saint-André.JPG|thumb|right|300px|[[w:オータン|オータン市]]に遺されたローマ時代からの聖アンドレ門。[[w:ビブラクテ|ビブラクテ]]を首邑としていた[[w:ハエドゥイ族|ハエドゥイー族]]は、ローマ帝政初期に東方の平地に移り、「[[w:アウグストゥス|アウグストゥス]]の砦」を意味するアウグストドゥーヌム([[w:la:Augustodunum|Augustodunum]])を建設して首邑とした。これが現在のオータン(Autun)となっている。]]
[[画像:Clermont_vu_de_Montjuzet.JPG|thumb|right|300px|[[w:クレルモン=フェラン|クレルモン=フェラン市]]の街並み。ローマに降伏した[[w:アルウェルニ族|アルウェルニー族]]は、後に首邑のゲルゴウィアを廃城とされ、北方の平野にあるネメトゥム(Nemetum)に移住させられた。帝政初期に[[w:アウグストゥス|アウグストゥス]]に由来するアウグストネメトゥム([[w:la:Augustonemetum|Augustonemetum]])に改称して、[[w:クレルモン教会会議|クレルモン教会会議]]が開かれるなど宗教的中心地として栄え、現在のクレルモン=フェランに至る。]]
'''ハエドゥイー族とアルウェルニー族の降伏、諸軍団の冬営'''
*① His rebus confectis in [[w:la:Haedui|Haeduos]] proficiscitur;
**これらの事が成し遂げられて、(カエサルは)[[w:ハエドゥイ族|ハエドゥイー族]]のところに出発した。
*civitatem recipit.
**同部族を(同盟国として)回復した。
*② Eo legati ab Arvernis missi:
**そこに、[[w:アルウェルニ族|アルウェルニー族]]から使節たちが遣わされて来て、
*quae imperaret, se facturos pollicentur.
**自分たちは(カエサルが)命令したことを行なうであろう、と約束した。
*Imperat magnum numerum obsidum.
**(カエサルは)多数の人質(の供出)を命令した。
*③ Legiones in hiberna mittit.
**(カエサルは)諸[[w:ローマ軍団|軍団]]を冬営地に派遣した。
*Captivorum circiter XX(viginti) milia Haeduis Arvernisque reddit.
**捕虜たち約2万人をハエドゥイー族とアルウェルニー族に返還した。
*④ [[w:la:Titus Labienus|T.<small>(Titum)</small> Labienum]] duabus cum<ref>duabus cum はχ系・B・M・S写本の記述で、L・N・β系写本では cum duabus となっている。</ref> legionibus et equitatu in Sequanos proficisci iubet;
**[[w:ティトゥス・ラビエヌス|ティトゥス・ラビエーヌス]]を2個軍団および[[w:騎兵|騎兵隊]]とともにセクアニ族のところに出発することを命じた。
*huic M.<small>(Marcum)</small> Sempronium Rutilum attribuit.
**彼には、マルクス・[[w:センプロニウス氏族|センプロニウス]]・ルティルスを付属させた。
*⑤ C.<small>(Gaium)</small> Fabium legatum et L.<small>(Lucium)</small> Minucium Basilum cum legionibus duabus in Remis conlocat,
**副官 ガーイウス・ファビウスとルキウス・ミヌキウス・バスィルスを2個軍団とともにレーミー族のところに配置した。
**:<span style="color:#009900;">(訳注:バスィルスは[[ガリア戦記 第6巻#29節|第6巻29節]]で騎兵隊を指揮した。)</span>
*ne quam ab<ref>ab はφ系写本の記述で、χ系・β系写本では a となっている。</ref> finitimis Bellovacis calamitatem accipiant.
**(レーミー族が)近隣のベッロウァキ族から何らかの災禍を蒙らないようにしたのである。
*⑥ C.<small>(Gaium)</small> Antistium Reginum in Ambivaretos,
**ガーイウス・アンティスティウス・レーギーヌスをアンビウァレティ族のところに、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:''[[w:fr:Caius Antistius Reginus|Gaius Antistius Reginus]]'' は[[ガリア戦記_第6巻#1節|第6巻1節]]、[[#83節|本巻83節]]で既出。)</span>
*T.<small>(Titum)</small> Sextium in Bituriges,
**ティトゥス・セクスティウスをビトゥリゲース族のところに、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[w:en:Titus Sextius|Titus Sextius]] も[[ガリア戦記_第6巻#1節|第6巻1節]]で既出。第6巻の年からカエサルの副官、<br> [[w:三頭政治#第二回三頭政治|第二回三頭政治]]では[[w:アフリカ属州|アフリカ属州]]の総督を務め、[[w:マルクス・アエミリウス・レピドゥス|レピドゥス]]に引き継ぐ。)
*C.<small>(Gaium)</small> Caninium Rebilum in Rutenos cum singulis legionibus mittit.
**ガーイウス・カニニウス・レビルスをルテーニー族のところに、それぞれ1個軍団とともに派遣した。
*⑦ [[w:la:Quintus Tullius Cicero|Q.<small>(Quintum)</small> Tullium Ciceronem]] et P.<small>(Publium)</small> Sulpicium
**[[w:クィントゥス・トゥッリウス・キケロ|クィーントゥス・トゥッリウス・キケロー]]とプーブリウス・スルピキウス(・ルーフス)を
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:カエサルの副官 ''[[w:en:Sulpicia_gens#Sulpicii_Rufi|Publius Sulpicius Rufus]] は、<br> [[ガリア戦記_第4巻#22節|第4巻22節]]で既述。[[内乱記_第1巻#74節|『内乱記』第1巻74節]]でも言及される。<br> [[w:紀元前48年|BC48年]]に[[w:プラエトル|法務官]]、[[w:紀元前42年|BC42年]]に[[w:ケンソル|監察官]]に任官する。)</span>
*[[w:la:Cabillonum|Cavilloni]]<ref>Cavilloni はβ系写本の記述で、α系写本などでは Cabilloni となっている。</ref> et [[w:la:Matisco|Matiscone]] in Haeduis ad Ararim rei frumentariae causa conlocat.
**ハエドゥイー族のところのアラル川沿いのカウィッロヌムとマティスコに、糧秣調達のために配置した。
**:<span style="color:#009900;">(訳注:カウィッロヌムは現在の[[w:シャロン=スュル=ソーヌ|シャロン=スュル=ソーヌ]]、マティスコは現在の[[w:マコン|マコン]]。)</span>
*Ipse [[w:la:Bibracte|Bibracte]] hiemare constituit.
**(カエサル)自身は、[[w:ビブラクテ|ビブラクテ]]で冬営することを決めた。
*⑧ His litteris<ref>his litteris「これらが書簡により(知られると)」はα系写本の記述で、β系写本では huius anni rebus「この年の事績が(知られると)」と異なっており、huius anni rebus <ex Caesaris> litteris「この年の事績が<カエサルの>書簡により(知られると)」 などと修正提案されている。」</ref> cognitis Romae dierum viginti supplicatio redditur.
**これらが(カエサルの)書簡により知られると、ローマで20日間の感謝祭が許された。
**:<span style="color:#009900;">(訳注:[[ガリア戦記 第2巻#35節|第2巻35節]]では、かつてない15日間の感謝祭が決議されたが、今回はそれを超えるものであった。)</span>
----
*<span style="background-color:#99ff99;">「ガリア戦記 第7巻」了。「[[ガリア戦記 第8巻]]」へ続く。</span>
==脚注==
<references />
==参考リンク==
'''ウィキペディア英語版など'''
*'''[[w:en:Category:Tribes of ancient Gaul|Category:Tribes of ancient Gaul]]'''('''[[w:Category:ガリアの部族|Category:ガリアの部族]]''')- [[w:fr:Catégorie:Personnalité gauloise|fr:Catégorie:Personnalité gauloise]]
**[[w:en:Allobroges|Allobroges]](アッロブロゲス族)
**'''[[w:en:Arverni|Arverni]]'''('''[[w:アルウェルニ族|アルウェルニー族]]''')
**:'''[[w:en:Vercingetorix|Vercingetorix]]'''('''[[w:ウェルキンゲトリクス|ウェルキンゲトリークス]]''')- '''<span style="background-color:#ffff00;">[[w:la:Vercingetorix|la:Vercingetorix]]</span>'''
**:[[w:fr:Celtillos|fr:Celtillos]](ケルティッルス);ウェルキンゲトリークスの父
**:[[w:fr:Gobannitio|fr:Gobannitio]](ゴバンニティオ);ウェルキンゲトリークスのおじ
**:[[w:en:Vercassivellaunos|Vercassivellaunos]](ウェルカッスィウェッラウヌス) - <span style="background-color:#ffff00;">[[w:la:Vercassivellaunus|la:Vercassivellaunus]]</span>
**:Critognatus(クリトグナトゥス)- <span style="background-color:#ffff00;">[[w:la:Critognatus|la:Critognatus]]</span>
**[[w:en:Atrebates|Atrebates]](アトレバテス族)
**:[[w:en:Commius|Commius]]([[w:コンミウス|コンミウス]]):ガッリアとブリタンニアにおけるアトレバテス族の王
**[[w:en:Aedui|Aedui]]([[w:ハエドゥイ族|ハエドゥイー族]])- '''<span style="background-color:#ffff00;">[[w:la:Haedui|la:Haedui]]</span>''';ガッリア中部の有力部族 - [[w:fr:Éduens|fr:Éduens]] <[[w:fr:Catégorie:Éduens|fr:Catégorie:Éduens]]
**:[[w:en:Convictolitavis|Convictolitavis]](コンウィクトリタウィス)- [[w:fr:Convictolitavis|fr:Convictolitavis]]
**:[[w:fr:Cotos|fr:Cotos]](コトゥス)
**:[[w:fr:Litaviccos|fr:Litaviccos]](リタウィックス)
**:エポレドリクス - <span style="background-color:#ffff00;">[[w:la:Eporedorix|la:Eporedorix]]</span>
**:ウィリドマルス
**[[w:en:Andes (Andecavi)|Andes (Andecavi)]](アンデス族);現在の[[w:アンジェ|アンジェ]](Angers)周辺の部族
**[[w:en:Aulerci|Aulerci]](アウレルキ族);現在のフランス北西部に居住していた部族連合
**[[w:en:Bellovaci|Bellovaci]](ベッロウァキ族)
**[[w:en:Bituriges|Bituriges]](ビトゥリゲース族);現在の[[w:ブールジュ|ブールジュ]](Bourges)周辺の部族。[[#5節|5節]]でガッリア同盟軍に寝返る。
**[[w:en:Boii|Boii]](ボイイ族)- <span style="background-color:#ffff00;">[[w:la:Boii|la:Boii]]</span>;[[w:ボヘミア|ボヘミア]]([[w:la:Bohemia|la:Bohemia]])から移住してきた部族
**Cadurci(カドゥルキー族);現在の[[w:カオール|カオール]](Cahors)周辺の部族 - [[w:fr:Cadurques|fr:Cadurques]]
**:[[w:en:Lucterius|Lucterius]](ルクテリウス);カドゥルキー族の指導者、[[#5節|5節]]を参照。
**[[w:en:Carnutes|Carnutes]](カルヌーテース族);現在の[[w:シャルトル|シャルトル]](Chartres)周辺の部族
**[[w:en:Gabali|Gabali]](ガバリ族)
**Haedui ⇒ Aedui
**[[w:en:Helvii|Helvii]](ヘルウィイ族);ガッリア南部にいたローマの同盟部族
**[[w:en:Lemovices|Lemovices]](レモウィケス族);現在の[[w:リモージュ|リモージュ]](Limoges)周辺の部族
**:[[w:en:Sedullos|Sedullos]](セドゥッルス Sedullus);レモウィケス族の将帥・領袖
**[[w:en:Lingones|Lingones]](リンゴネス族)- [[w:fr:Lingons|fr:Lingons]];現在のラングル([[w:en:Langres|Langres]])周辺の部族
**[[w:en:Mandubii|Mandubii]](マンドゥビイ族);[[w:アレシア|アレスィア]]周辺にいた部族
**Nitiobroges(ニティオブロゲス族)- [[w:fr:Nitiobroges|fr:Nitiobroges]]
**:[[w:fr:Ollovico|fr:Ollovico]](オッロウィコ);ローマ元老院から友人と呼ばれた王
**:[[w:fr:Teutomatos|fr:Teutomatos]](テウトマトゥス);王で、オッロウィコの子
**[[w:en:Parisii (Gaul)|Parisii (Gaul)]]([[w:パリシイ族|パリスィイ族]]);現在の[[w:パリ|パリ]]周辺の部族
**[[w:en:Pictones|Pictones]](ピクトネス族);現在の[[w:ポワチエ|ポワティエ]](Poitiers)周辺の部族
**[[w:en:Remi|Remi]](レーミー族)
**[[w:en:Ruteni|Ruteni]](ルテーニー族)
**[[w:en:Segusiavi|Segusiavi]](セグスィアウィ族)
**[[w:en:Senones|Senones]](セノネース族)- <span style="background-color:#ffff00;">[[w:la:Senones|la:Senones]]</span>;現在の[[w:サン (ヨンヌ県)|サン]](Sens)周辺の部族
***[[w:en:Acco|Acco]](アッコー)
**[[w:en:Sequani|Sequani]](セクアニ族)
**[[w:en:Treveri|Treveri]](トレウェリ族)
**[[w:en:Turones|Turones]](トゥロニ族/トゥロネス族);現在の[[w:トゥール (アンドル=エ=ロワール県)|トゥール]](Tours)周辺の部族
**[[w:en:Volcae|Volcae]](ウォルカエ族)
*<span style="background-color:#ffff00;">[[w:la:Germani|la:Germani]]</span>(ゲルマニア人)
*'''ガッリアの地名''' - '''[[w:la:Categoria:Urbes Franciae|la:Categoria:Urbes Franciae]]'''(フランスの都市)
**<span style="background-color:#ffff00;">[[w:la:Agedincum|la:Agedincum]]</span>(アゲディンクム);現在の[[w:サンス|サンス]]([[w:en:Sens|Sens]])
**[[w:en:Alesia_(city)|Alesia (city)]]([[w:アレシア|アレスィア]])- <span style="background-color:#ffff00;">[[w:la:Alesia|la:Alesia]]</span>:現在のアリーズ=サント=レーヌ([[w:fr:Alise-Sainte-Reine|fr:Alise-Sainte-Reine]])
**:'''[[w:en:Battle_of_Alesia|Battle of Alesia]]'''('''[[w:アレシアの戦い|アレスィアの戦い]]''')- '''<span style="background-color:#ffff00;">[[w:la:Alesiae_pugna|la:Alesiae pugna]]</span>'''
**[[w:en:Avaricum|Avaricum]] ⇒ [[w:en:Bourges|Bourges]](アウァーリクム - 現在の[[w:ブールジュ|ブールジュ]])- <span style="background-color:#ffff00;">[[w:la:Avaricum_Biturigum|la:Avaricum Biturigum]]</span>
**[[w:en:Bibracte|Bibracte]]([[w:ビブラクテ|ビブラクテ]]) - <span style="background-color:#ffff00;">[[w:la:Bibracte|la:Bibracte]]</span>:[[w:ハエドゥイ族|ハエドゥイー族]]の首邑。現在のボーヴレ山([[w:fr:Mont_Beuvray|fr:Mont Beuvray]])の山頂に位置していた。
**<span style="background-color:#ffff00;">[[w:la:Cabillonum|la:Cabillonum]]</span>(カビッロヌム/カウィッロヌム)- 現在の[[w:シャロン=スュル=ソーヌ|シャロン=スュル=ソーヌ]]([[w:fr:Chalon-sur-Saône|fr:Chalon-sur-Saône]])
**[[w:en:Cenabum|Cenabum]](ケナブム)- 現在の[[w:オルレアン|オルレアン]] - [[w:fr:Cenabum|fr:Cenabum]]
**<span style="background-color:#ffff00;">[[w:la:Decetia|la:Decetia]]</span>(デケティア)- [[w:en:Decize|en:Decize]] - 現在のドスィーズ(ドシーズ)([[w:fr:Decize|fr:Decize]])
**[[w:en:Gergovie|Gergovie]](ゲルゴウィア)- <span style="background-color:#ffff00;">[[w:la:Gergovia|la:Gergovia]]</span>
**:'''[[w:en:Battle of Gergovia|Battle of Gergovia]]'''('''[[w:ゲルゴウィアの戦い|ゲルゴウィアの戦い]]''')- '''<span style="background-color:#ffff00;">[[w:la:Obsidio Gergoviensis|la:Obsidio Gergoviensis]]</span>'''
**[[w:en:Gorgobina|Gorgobina]](ゴルゴビナ);ボイイ族が定住した城塞都市。現在のサン=パリズ=ル=シャテル([[w:en:Saint-Parize-le-Châtel|Saint-Parize-le-Châtel]])またはラ・ゲルシュ([[w:en:La Guerche|La Guerche]])
**'''[[w:en:Lutetia|Lutetia]]'''('''[[w:ルテティア|ルテティア]]'''/ルテキア);[[w:パリシイ族|パリスィイ族]]の首邑、現在の[[w:パリ|パリ市]] - <span style="background-color:#ffff00;">[[w:la:Lutetia|la:Lutetia]]</span>
**<span style="background-color:#ffff00;">[[w:la:Matisco|la:Matisco]]</span>(マティスコ);現在の[[w:マコン|マコン]](Mâcon)
**Metlosenum(メトロセドゥム/メティオセドゥム/メロドゥーヌム);現在の[[w:ムラン|ムラン]] - <span style="background-color:#ffff00;">[[w:la:Melodunum|la:Melodunum]]</span>
**[[w:en:Narbonne|Narbonne]]([[w:ナルボンヌ|ナルボンヌ]];ラテン名ナルボ)- <span style="background-color:#ffff00;">[[w:la:Narbo|la:Narbo]]</span>;ガッリア南部・地中海岸のローマの拠点
**[[w:en:Noviodunum|Noviodunum]](ノウィオドゥーヌム)- 現在のヌン=スュル=ブーヴロン([[w:en:Neung-sur-Beuvron|Neung-sur-Beuvron]])と推定されている。従来はローヌ川沿いの[[w:サンセール|サンセール]]([[w:en:Sancerre|Sancerre]])が有力だった
**[[w:en:Vellaunodunum|Vellaunodunum]](ウェッラウノドゥーヌム)- [[w:fr:Vellaunodunum|fr:Vellaunodunum]];現在のモンタルジ([[w:en:Montargis|Montargis]])やボーヌ=ラ=ロランド([[w:en:Beaune-la-Rolande|Beaune-la-Rolande]])、シャトー=ランドン([[w:en:Château-Landon|Château-Landon]])などと推定されている
**[[w:en:Vienne, Isère|Vienne, Isère]](ヴィエンヌ;ラテン名ウィエンナ)- [[w:la:Vienna|la:Vienna]]
*'''ガッリアの地形'''
**Cevenna(ケウェンナ山地):現在のセヴェンヌ山地([[w:fr:Cévennes|fr:Cévennes]]・[[w:en:Cévennes|Cévennes]])
**<span style="background-color:#ffff00;">[[w:la:Elaver|la:Elaver]]</span>(エラウェル川):現在の[[w:アリエ川|アリエ川]]([[w:fr:Allier (rivière)|fr:Allier (rivière)]])
**<span style="background-color:#ffff00;">[[w:la:Liger|la:Liger]]</span>(リゲル川):現在の[[w:ロワール川|ロワール川]]([[w:fr:Loire (fleuve)|fr:Loire (fleuve)]])
**<span style="background-color:#ffff00;">[[w:la:Rhenus|la:Rhenus]]</span>(レヌス川):現在の[[w:ライン川|ライン川]]([[w:fr:Rhin|fr:Rhin]])
**<span style="background-color:#ffff00;">[[w:la:Rhodanus|la:Rhodanus]]</span>(ロダヌス川):現在の[[w:ローヌ川|ローヌ川]]([[w:fr:Rhône|fr:Rhône]])
**<span style="background-color:#ffff00;">[[w:la:Sequana|la:Sequana]]</span>(セクアナ川):現在の[[w:セーヌ川|セーヌ川]]([[w:fr:Seine|fr:Seine]])
*ローマ勢
**[[w:en:Mark_Antony|Mark Antony]]([[w:マルクス・アントニウス|マルクス・'''アントニウス''']])- <span style="background-color:#ffff00;">[[w:la:Marcus_Antonius|la:Marcus Antonius]]</span>
**[[w:en:Decimus_Junius_Brutus_Albinus|Decimus Junius '''Brutus''' Albinus]]([[w:デキムス・ユニウス・ブルトゥス・アルビヌス|デキムス・ユニウス・'''ブルトゥス'''・アルビヌス]])- <span style="background-color:#ffff00;">[[w:la:Decimus_Iunius_Brutus_Albinus|Decimus Iunius Brutus Albinus]]</span>([[#9節|9節]])
**[[w:en:Quintus Tullius Cicero|Quintus Tullius '''Cicero''']]([[w:クィントゥス・トゥッリウス・キケロ|クィントゥス・トゥッリウス・'''キケロ''']])- <span style="background-color:#ffff00;">[[w:la:Quintus Tullius Cicero|la:Quintus Tullius Cicero]]</span>:カエサルの副官
**Gaius '''Fabius'''(ガイウス・'''ファビウス'''):カエサルの副官
**[[w:en:Titus Labienus|Titus '''Labienus''']]([[w:ティトゥス・ラビエヌス|ティトゥス・'''ラビエーヌス''']])- <span style="background-color:#ffff00;">[[w:la:Titus Labienus|la:Titus Labienus]]</span>:カエサルの副官
**[[w:en:Trebonius|'''Trebonius''']]([[w:ガイウス・トレボニウス|ガイウス・'''トレボニウス''']])- <span style="background-color:#ffff00;">[[w:la:Gaius_Trebonius|la:Gaius Trebonius]]</span>:カエサルの副官
**[[w:en:Lucius Julius Caesar IV|Lucius Julius '''Caesar''' IV]](ルキウス・ユリウス・'''カエサル'''4世):総督カエサルの副官で、4代前の高祖父を共有する。BC64年に執政官を務めた。
*イタリア方面
**[[w:en:Cisalpine_Gaul|Cisalpine Gaul]]([[w:ガリア・キサルピナ|ガッリア・キサルピーナ]]) - [[w:la:Gallia Cisalpina|la:Gallia Cisalpina]]
**[[w:en:Populares|Populares]]([[w:ポプラレス|ポプラレス]];民衆派)- [[w:la:Populares|la:Populares]]
**:[[w:en:Publius_Clodius_Pulcher|Publius Clodius Pulcher]]([[w:プブリウス・クロディウス・プルケル|プブリウス・クロディウス・プルケル]]) - [[w:la:Publius_Clodius_Pulcher|la:Publius Clodius Pulcher]]
**[[w:en:Optimates|Optimates]]([[w:オプティマテス|オプティマテス]];元老院派)
**:[[w:en:Cicero|Cicero]]([[w:マルクス・トゥッリウス・キケロ|マルクス・トゥッリウス・キケロ]])- [[w:la:Marcus_Tullius_Cicero|la:Marcus Tullius Cicero]]
**:[[w:en:Titus_Annius_Milo|Titus Annius Milo]](ティトゥス・アンニウス・ミロ)- [[w:la:Titus_Annius_Milo|la:Titus Annius Milo]]
**:[[w:en:Pompey|Pompey]]([[w:グナエウス・ポンペイウス|グナエウス・ポンペイウス]])- [[w:la:Gnaeus_Pompeius_Magnus|la:Gnaeus Pompeius Magnus]]
g58ib3asyr4y5495rtl9hrj2op8x08s
中学校社会 歴史 旧石器時代から縄文時代へ
0
19188
304879
269338
2026-10-19T09:48:53Z
Kontributor 2K
91415
([[c:GR|GR]]) [[c:COM:FR|File renamed]]: [[File:Yoshinogari-iseki tateanashiki-juukyo.JPG]] → [[File:Yoshinogari-iseki tateana-tatemono.jpg]] [[c:COM:FR#FR2|Criterion 2]] (meaningless or ambiguous name) · 「竪穴式住居」の表記は完全に誤っているわけではないが、現代の日本考古学界ではほぼ使われていない。現代的な表記(竪穴建物 tateana-tatemono)を提案。
304879
wikitext
text/x-wiki
:: [[中学校社会 歴史]] > 旧石器時代から縄文時代へ
----
=== 課題 ===
日本列島の人々はどのような生活をしていたのだろうか。
日本列島の生活や文化の様子は、どのように変化していったのだろうか。
== 氷河時代の日本 ==
[[File:Sinomegaceros yabei - National Museum of Nature and Science, Tokyo - DSC06925.JPG|thumb|left|200px|オオツノシカ骨格標本。]]
今から数万年も前の{{Ruby|'''氷河時代'''|ひょうがじだい}} には、地上で今よりも多く氷った土地があって、そのため海水面が今よりも低く、我が国は大陸(たいりく)と地続きでした。
'''ナウマンゾウ''' や '''オオツノジカ''' や マンモス などの動物も、我が国にやってきました。(※「オオツノジカ」とは、大きな{{Ruby|角|つの}}の{{Ruby|鹿|しか}}だから、オオツノジカという。)
ナウマンゾウなどの骨の化石が、我が国で発見されています。野尻湖では、ナウマンゾウとオオツノジカの化石が発見されています。
この時代の気候については、植物の化石からも、地層などから、寒い地域に多い木の花粉の化石が多く見つかっており、今よりも気候が寒冷だったらしいことが分かっています。
[[ファイル:Mamut NDH 2.JPG|thumb|right|200px|マンモスの復元模型]]
:(※ マンモス: 更新世後期の寒冷期にシベリアから北海道に渡来した亜寒帯動物郡の象。同じ頃エゾシカ・ヘラジカなども来ました。)
=== 3万年前 ===
3万年前には、日本列島に人間(新人)がやってきていました。まだ、石器時代であり、 <span style="font-size: large;">打製石器</span>(だせい せっき) を使っています{{Ruby|'''旧石器時代'''|きゅうせっきじだい}}です。
当時の人間の生活は、大型動物の狩りをしたり、木の実などを採集していました。
我が国にも、旧石器時代があったことが、考古学の調査により、知られています。
この時代は、まだ土器は作られておらず、{{Ruby|先土器時代|せんどきじだい}}ともいいます。
住居は、簡単なつくりの小屋や、洞窟(どうくつ)など暮らしていました。
まだ、きちんとした農業は、始まっていません。そもそも、人々は、一つの場所には定住せず、えもの の動物を追って、移り住んでいたと考えられており、したがって農業をする必要もありません。
* {{Ruby|岩宿遺跡|いわじゅくいせき}}
群馬県の {{Ruby|'''岩宿遺跡'''|いわじゅくいせき}}からは、三万年前の地層と二万年前の地層から、打製石器のかけらが見つかっています。
{{Ruby|岩宿遺跡|いわじゅくいせき}}の石器は1946年に発見されました。青年の{{Ruby|相沢忠洋|あいざわただひろ}}により、発見されました。
相沢により、群馬県の関東ローム層の地層から、石器のような、{{Ruby|黒曜石|こくようせき}}のかけらが発見されます。
相沢は、この石の破片を、大学に調査してもらおうと思い、{{Ruby|明治大学|めいじだいがく}}に石の{{Ruby|破片|}}の{{Ruby|調査|ちょうさ}}を{{Ruby|依頼|いらい}}しました。(※ 学校名の「明治大学」は、覚えなくて良い。)
明治大学などの学者の調査で、この遺跡が一万年以上前の遺跡であることが分かり、我が国に旧石器時代があったことが証明されます。
人類は
猿人
原人
新人
の順番
=== 1万年前〜 ===
約1万年前ごろから、気候が温暖になりはじめました。
== 約1万年前〜 ==
[[File:Jomon Vessel with Flame-like Ornamentation, attributed provenance Umataka, Nagaoka-shi, Niigata, Jomon period, 3000-2000 BC - Tokyo National Museum - DSC05620.JPG|thumb|250px|{{Ruby|縄文土器|じょうもんどき}}]]
そして約1万年前には、ついに氷河時代が終わり、南極や氷河の氷が溶けて、海水面が上がっていました。海水面の上昇により、日本列島が大陸(ユーラシア大陸)から切り離され、ほぼ現在の形になっていました。
我が国では、ナウマンゾウやオオツノジカは、絶滅しました。
この時代に、西アジアなどを中心に世界では農業が始まりました。気候が暖かくなったこともあり、農作物が育ちやすくなったと考えられています。
また、土器も、世界では作られ始めました。
== 縄文時代 ==
我が国でも、しだいに農業や土器の生産が始まっていきました。農業では、クリなど、実のなるものを栽培していました。クリやドングリなどを食料にしていました。植物の栽培など、原始的な農業は始まっていたが、まだ本格的な農業は、この時代には始まっていないと考えられています。
我が国の土器は、食料の煮炊きや、保存などのために用いられました。ドングリなどを{{Ruby|煮炊|にた}}きしていました。
(ドングリは、煮て、アクを抜かないと、食べられません。クリは、アクがないので、煮なくても食べられます。)
我が国の、このころの土器は、表面に縄の文様がついているので、{{Ruby|'''縄文土器'''|じょうもんどき}}と言われます。
そして、我が国での、この時代を{{Ruby|'''縄文時代'''|じょうもんじだい}}といいます。
[[File:Yoshinogari-iseki tateana-tatemono.jpg|thumb|250px|right|{{Ruby|弥生|やよい}}時代の竪穴建物(復元、吉野ヶ里遺跡)。<br />※ 縄文時代とは別の時代(弥生時代)の画像です。画像を代用しています。]]
縄文時代の人の家の{{Ruby|建物|たてもの}}は、{{Ruby|'''竪穴建物'''|たてあなたてもの}}といって、地面に穴をほりさげたあとに、柱を立てて、草ぶきの屋根をかけただけの住居にすんでいました。
[[File:Kasori midden preserve north.jpg|thumb|200px|left|加曽利貝塚(かそり かいづか)、北貝層断面]]
縄文人の集落が あったとおもわれる場所からは、貝がらが多い場所が、たくさんでてきます。
この貝がらが多くある場所を{{Ruby|'''貝塚'''|かいづか}}と言います。
縄文時代の石器には、打製石器の他に、表面を{{Ruby|磨|みが}}いた{{Ruby|'''磨製石器'''|ませいせっき}}が見つかっています。
また、矢じりの石器などが見つかっており、弓矢が作られていたらしいことが分かっています。この時代は、弓矢による狩りでは、動きの素早いシカやイノシシなどの中型の{{Ruby|獣|けもの}}を狩っていたと思われています。
磨製石器は、石の{{Ruby|槍先|やりさき}}や、石の矢じり、{{Ruby|斧|おの}}などに使われています。
動物の骨でつくった {{Ruby|'''骨角器'''|こっかくき}}という刃物も、みつかっています。
骨角器でつくった{{Ruby|釣|つ}}り{{Ruby|針|ばり}}や もり(水中の魚を突き刺す武器) なども、見つかっています。
打製石器を旧石器ということがあるように、磨製石器を{{Ruby|'''新石器'''|しんせっき}}とも言います。
この時代の住まいとして、穴に柱を立てて、草や木の枝で屋根を作っただけの{{Ruby|'''竪穴建物'''|たてあなたてもの}}が出てきました。
[[Image:JomonStatue.JPG|thumb|right|200px|{{Ruby|土偶|どぐう}}。亀ヶ岡遺跡で出土]]
縄文の{{Ruby|遺跡|いせき}}からは、{{Ruby|'''土偶'''|どぐう}}という土を焼き固めて作られた、女性のような形の人形が見つかる場合があります。
土偶(どぐう)は、食料が増えることを{{Ruby|祈|いの}}ったり、女性の安産をいのったものだと考えられています。
{{Ruby|貝塚|かいづか}}には、たとえば{{Ruby|'''大森貝塚'''|おおもりかいづか}}があります。明治時代に、アメリカ人のモースが大森貝塚を発見しました。この大森貝塚の発見が、きっかけとなり、日本各地で貝塚の調査や発掘が、始まりました。
ほかの貝塚には、福井県の{{Ruby|鳥浜貝塚|とりはまかいづか}}や、千葉県の{{Ruby|加曽利貝塚|かそりかいづか}}があります。
* {{Ruby|三内丸山遺跡|さんないまるやまいせき}}
[[ファイル:Reconstructed Pillar Supported Structure.jpg|right|thumb|300px|六本柱建物(復元)]]
青森県の {{Ruby|'''三内丸山遺跡'''|さんないまるやまいせき}}は、今からおよそ5000年前の集落だと思われています。三内丸山遺跡からは、{{Ruby|栗|くり}}の木を栽培した{{Ruby|形跡|けいせき}}が見つかっています。
多くの土器や石器のあとも、みつかっています。
大型の{{Ruby|掘立|ほった}}て{{Ruby|柱|ばしら}}も、見つかっています。掘立て柱の用途は、まだ分かっていません。
ヒスイの玉や、黒曜石(こくようせき)で出来た刃物のようなものも、見つかっています。
ヒスイは、この地ではとれず、新潟県の{{Ruby|糸魚川|いといがわ}}などの他の土地で取れるので、他の地域と交易があったのだろう、ということが考えられています。
この{{Ruby|三内丸山遺跡|さんないまるやまいせき}}は、縄文時代を知る遺跡として、代表的な遺跡です。
* {{Ruby|屈葬|くっそう}}
縄文人の死者の骨は、姿勢が、手足を折り曲げて、{{Ruby|葬|ほうむ}}られている骨が多く見つかっています。このような葬り方を{{Ruby|屈葬|くっそう}}と言います。この姿勢で葬った理由は、まだ分かっていません。
:※ ウィキペディアに、屈葬の画像が無いので、外部の資料で画像を確認ください。
この時代の社会は、村長はいたが、まだ、貴族などの階級などは無かったと思われています。住居の大きさや、墓などの遺跡を調べても、だれの住居や墓でも、それほど大きさに変わりはなく、副葬品なども少なく、よって貴族などはいなかったと思われています。
以上のような縄文時代が、紀元前500年くらいまで、約1万年と数千年ほど続きました。
イネの栽培については、一説では、すでに縄文時代の後期から、大陸から伝わってきた稲作により、九州を中心に日本各地でイネの栽培が始まっていたという説があります( (※ 範囲外:)「縄文稲作」説とか「縄文農耕」説とか言われる)。一方、定説では、縄文時代のあとの弥生時代から日本各地でイネの栽培が始まったというのが定説です。
{{clear}}
[[Category:中学校歴史|きゆうせつきしたいからしようもんしたいへ]]
hdbfmyraijuzijyqrs5jfp29lqm8o4n
高等学校古文/漢詩/香炉峰下、新卜山居、草堂初成、偶題東壁
0
22279
304874
289462
2026-10-19T05:40:06Z
~2026-55946-19
92828
/* 現代語訳 */ 表現の改善
304874
wikitext
text/x-wiki
== 本文 ==
{{#invoke:Kanbun|kanbun|香炉峰下、新タニ卜シ[二]山居ヲ[一]、\\\O草堂初メテ成リ、偶題ス[二]東壁ニ[一]\\\O\O\O\O\O\O\O\O\O\O\O白居易\\
日高ク睡リ足リテ猶ホ慵シ[レ]起クルニ\\小閣ニ重ネテ[レ]衾ふすまヲ不[レ]怕おそレ[レ]寒キヲ\\
遺愛寺ノ鐘ハ欹そばだテテ[レ]枕ヲ聴キ\\香炉峰ノ雪ハ撥かかゲテ[レ]簾すだれヲ看ル\\匡きやう廬ろハ便すなはチ是レ逃ルルノ[レ]名ヲ地\\
司馬ハ仍なホ為リ[二]送ルノ[レ]老ヲ官[一]\\心泰やすク身寧やすキハ是レ帰スル処\\故郷何ゾ独リ在ランヤ[二]長安ノミニ[一]}}
==白文 訓読文==
<big>'''香炉峰下新卜山居草堂初成偶題東壁'''</big> 香炉峰下新たに山居を{{ruby|卜|ぼく}}し 草堂初めて成り{{ruby|偶|たまたま}}東壁に題す
<big>'''日高睡足猶慵起'''</big> 日高く{{ruby|睡|ねむ}}り足りて 猶お起くるに{{ruby|慵|ものう}}し
<big>'''小閣重衾不怕寒'''</big> 小閣に{{ruby|衾|ふすま}}を重ねて 寒きを{{ruby|怕|おそ}}れず
<big>'''遺愛寺鐘欹枕聴'''</big> 遺愛寺の鐘は 枕を{{ruby|欹|そばだ}}てて聴き
<big>'''香炉峰雪撥簾看'''</big> 香炉峰の雪は {{ruby|簾|すだれ}}を{{ruby|撥|かか}}げて看る
<big>'''匡廬便是逃名地'''</big> {{ruby|匡廬|きょうろ}}は便ち是れ名を逃るるの地
<big>'''司馬仍為送老官'''</big> 司馬は仍お{{ruby|老|おい}}を送るの官{{ruby|為|た}}り
<big>'''心泰身寧是帰処'''</big> 心泰く身寧きは {{ruby|是|こ}}れ帰する処
<big>'''故郷何独在長安'''</big> 故郷 {{ruby|何|なん}}ぞ独り長安に在るのみならんや
==現代語訳==
[[File:Mount_Lushan_-_fog.JPG|right|200px|thumb|廬山]]
*(第一句)太陽が高くのぼり、睡眠時間も十分なのに、なお起きるのが億劫だ。
*(第二句)小さな家でふとんを重ねて寝ているので、寒さの心配はない。
*(第三句)遺愛寺の鐘は、枕を高くしてじっと聴き
*(第四句)香炉峰の雪は、すだれを高く上げて眺める。
*(第五句)ここ廬山は、世間一般の名声から逃れるためには相応しい地。
*(第六句)司馬という官職も老後を過ごすためには相応しい官職だ。
*(第七句)心も身も安らぐ場所こそが帰るべき場所。
*(第八句)どうして故郷は長安だけであろうか、いや故郷は長安だけではない。
==鑑賞==
中唐期の詩人白居易の七言律詩。
朝廷への越権行為により左遷された地で作られた詩である。
隠遁生活のような日常を詠じる中に作者の無念の思いも伝わってくる。
なお、第四句は清少納言の『[[高等学校国語総合/枕草子|枕草子]]』「香炉峰の雪」でもよく知られている。
ある雪の日、中宮定子から「少納言よ、香炉峰の雪いかならむ」と問われた清少納言は、
この詩の第四句をふまえて、格子を上げさせ簾を高く上げさせたという。
==押韻==
*寒・看・官・安
[[Category:高等学校教育_国語_漢文_漢詩|こうろほうかあらたにさんきよをほくしそうとうはしめてなりたまたまとうへきにたいす]]
gb5q5p55yelbqiquqjfavvdhmudfwca
中学受験社会/歴史/上巻
0
26149
304880
304823
2026-10-19T09:48:54Z
Kontributor 2K
91415
([[c:GR|GR]]) [[c:COM:FR|File renamed]]: [[File:Yoshinogari-iseki tateanashiki-juukyo.JPG]] → [[File:Yoshinogari-iseki tateana-tatemono.jpg]] [[c:COM:FR#FR2|Criterion 2]] (meaningless or ambiguous name) · 「竪穴式住居」の表記は完全に誤っているわけではないが、現代の日本考古学界ではほぼ使われていない。現代的な表記(竪穴建物 tateana-tatemono)を提案。
304880
wikitext
text/x-wiki
{{Pathnav|メインページ|小学校・中学校・高等学校の学習|中学受験参考書|中学受験社会|中学受験社会/歴史|frame=1}}
[[{{PAGENAME}}]]では、中学受験社会の歴史分野について、太古~平安時代を解説します。
== はじめに ==
=== 時代の表し方 ===
; 時代
: 歴史学習で使う時代の表し方には、まず「時代」があります。これは、「奈良時代」「江戸時代」などと、大きなことがら(都や天皇が変わる)ごとに時代を変えていく表し方です。
; 西暦
: {{ruby|西暦|せいれき}}は、イエス・キリストが生まれたとされる年を西暦1年として表します。今は西暦{{CURRENTYEAR}}年です。西暦1年より前の年を「{{ruby|'''紀元前'''|きげんぜん}}(B.C.) 〇年」と表します。なお、西暦1年以降の年を「{{ruby|'''紀元後'''|きげんご}}(A.D.)〇年」と表します。
; 世紀
: 「{{ruby|世紀|せいき}}」とは、100年ごとに区切って、年を数える単位です。西暦1年から西暦100年までが1世紀です。西暦101年から西暦200年までが2世紀です。西暦2001年から西暦2100年までを21世紀と言います。たとえば、105年は2世紀、1853年は19世紀です。
===単位の表し方===
*米に関する単位
*長さと面積の単位
*お金に関する単位
== {{ruby|旧石器|きゅうせっき}}時代 ==
=== {{ruby|氷河期|ひょうがき}} - 1万年前のくらし ===
1万年くらい前までは、地球は'''{{ruby|氷河期|ひょうがき}}'''と言って、今よりもずっと冷えていたのです。その結果、海水面は今よりも低く、ユーラシア大陸と日本は陸続きだったのです。そのため、大陸の北の方から'''マンモス'''や'''オオツノジカ'''が、南の方から'''ナウマンゾウ'''などの陸上動物が日本にやってきました。これらの動物の化石が、日本列島でも発見されています。
[[File:Sinomegaceros yabei - National Museum of Nature and Science, Tokyo - DSC06925.JPG|thumb|left|200px|オオツノシカの{{ruby|骨格標本|こっかくひょうほん}}]]
古い時代の物が発掘される場所を '''{{ruby|遺跡|いせき}}''' と言います。長野県の {{ruby|[[w:野尻湖遺跡|野尻湖遺跡]]|のじりこいせき}} などから、ナウマンゾウの化石が見つかっています。この発見により、ユーラシア大陸と日本が陸続きで、ナウマンゾウやオオツノジカが渡って来たことが証明されました。
これらの動物達と同じくらいの時期か、しばらくあとに、人間もやってきたと考えられています。それが日本人の{{ruby|[[wikt:祖先|祖先]]|そせん}}です。
{{clear}}
=== {{ruby|旧石器時代|きゅうせっきじだい}} ===
[[ファイル:JapanesePaleolithic VariousChippedStoneTools.jpg|サムネイル|石同士を打って作った打製石器]][[File:National park stone tools.jpg|thumb|440px|外国での石器の例]]
'''{{ruby|石器|せっき}}'''といって、石を砕いてとがらせた物や、石をみがいて作った物が見つかっています。おそらく、石器は動物の狩りをしたり、野菜や果物をとったりするときなどに利用されたのだろうと考えられています。
石を打ち砕いて作ったと思われる石器を'''<span style="color:red">{{ruby|打製石器|だせいせっき}}'''</span>と言います。打製石器を多く使っていた時代を '''{{ruby|旧石器時代|きゅうせっきじだい}}''' と言います。この旧石器時代は、後述する縄文時代よりも、さらに古い時代です。縄文時代の石器には、旧石器時代とは違い、{{ruby|磨製石器|ませいせっき}}という、石同士を磨き合わせて作った石器があります。旧石器時代には、まだ磨製石器はありません。また、土器が製造されてなかったため、この時代は、「'''先土器時代'''」や「'''無土器時代'''」とも呼ばれます。
==== {{ruby|岩宿遺跡|いわじゅくいせき}} ====
[[ファイル:ObsidianOregon.jpg|thumb|250px|アメリカ合衆国オレゴン州レイク郡で採取された黒耀石]]
群馬県の '''岩宿遺跡''' からは、一万年以上前にできた地層から打製石器のかけらが見つかっています。岩宿遺跡の石器は、'''{{ruby|相沢忠洋|あいざわただひろ}}'''という青年により1949年に発見されました。
相沢により、群馬県の関東ローム層の地層から、石器のような{{ruby|黒耀石|こくようせき}}の欠片が発見されました。相沢は、この破片を大学に調査してもらおうと思い、{{Ruby|明治|まいじ}}大学に石の破片の調査を依頼しました。学者の調査で、この遺跡が一万年以上前の遺跡であることが分かり、日本に今までなかったとされた旧石器時代があったことが証明されました。
== {{ruby|縄文|じょうもん}}時代――土器の使用 ==
[[File:Jomon Vessel with Flame-like Ornamentation, attributed provenance Umataka, Nagaoka-shi, Niigata, Jomon period, 3000-2000 BC - Tokyo National Museum - DSC05620.JPG|thumb|250px|縄文土器]]
地球の氷河期から数千年経つと、氷河期が終わり、地球は暖かくなり、海面は上昇し、日本列島は海に周囲を囲まれた島になりました。
このころ、日本列島に住んでいる人々は土器 を作りだしました。その土器に縄目の文様(模様)がついているので、この土器は {{ruby|'''縄文土器'''|じょうもんどき}} と呼ばれます。
今から約1万6,500年前 (紀元前145世紀) から、今から約3,000年前 (紀元前10世紀) あたりまでの時代を、<span style="color:red">{{Ruby|'''縄文時代'''|じょうもんじだい}}</span>と言います。
[[File:Yoshinogari-iseki tateana-tatemono.jpg|thumb|250px|right|弥生時代の竪穴建物(復元、吉野ヶ里遺跡)。]]
縄文時代は、{{ruby|'''竪穴建物'''|たてあなたてもの}} (竪穴住居)といって、地面に穴をほりさげたあとに、柱を立てて草ぶきの屋根をかけた住居に住んでいました。かつては{{ruby|'''竪穴式住居'''|たてあなしきじゅうきょ}}という呼び方もありました。
[[File:Kasori midden preserve north.jpg|thumb|200px|{{ruby|加曽利貝塚|かそりかいづか}}の北貝層断面]]
縄文人の{{ruby|集落|しゅうらく}}があったと考えられる場所からは、貝がらなどを含む、生活ごみが発掘されました。このような場所を<span style="color:red">'''{{ruby|貝塚|かいづか}}'''</span> と言います。
前述しましたが、縄文時代の石器には、打製石器の他に、石同士で表面を磨き合わせて作った <span style="color:red">{{Ruby|'''磨製石器'''|ませいせっき}}</span>が見つかっています。磨製石器は、石の{{ruby|槍先|やりさき}}や、石の矢じり、{{ruby|斧|おの}}などに使われていました。
動物の骨でつくった <span style="color:red">'''{{ruby|骨角器|こっかくき}}'''</span> という刃物も、みつかっています。{{ruby|釣り針|つりばり}}や もり (水中の魚を突き刺す武器)などに使用されたと考えられています。
[[Image:JomonStatue.JPG|thumb|right|200px|亀ヶ岡遺跡で出土した土偶]]
縄文時代の遺跡から、<span style="color:red">{{Ruby|'''土偶'''|どぐう}}</span>という、女性のような形の、土を焼きかためた人形が見つかる場合があります。土偶は、食料が増えることを{{Ruby|祈|いの}}ったり、女性の安産を祈ったものだと考えられていますが、本当なのかは不明です。
有名な貝塚として、{{ruby|大森|おおもり}}貝塚が知られています。明治時代にアメリカ人のエドワード・モースが大森貝塚を発見しました。この大森貝塚の発見がきっかけとなり、日本各地で貝塚の調査や発掘が始まりました。それ以外にも、福井県の{{ruby|鳥浜|とりはま}}貝塚や千葉県の{{ruby|加曽利|かそり}}貝塚があります。
=== {{ruby|三内丸山遺跡|さんない まるやま いせき}} ===
[[ファイル:Reconstructed Pillar Supported Structure.jpg|right|thumb|300px|六本柱建物 (復元) ]]
青森県の '''三内丸山遺跡''' からは、栗の木を、{{ruby|栽培|さいばい}}した形跡が見つかっています。また、多くの土器や石器のかけらもみつかっています。大型の{{ruby|掘立て柱|ほったてばしら}} の穴も見つかっています。掘立て柱の用途はまだ分かっていません。ヒスイの玉や、黒曜石で出来た刃物のようなものも見つかっています。ところが、ヒスイはこの地ではとれず、新潟県の{{ruby|糸魚川|いといがわ}}などの他の土地で取れるので、他の地域と{{ruby|交易|こうえき}}があったと考えられています。
この三内丸山遺跡は、縄文時代を知る遺跡として代表的な遺跡です。
{{Clear}}
==== {{ruby|屈葬|くっそう}} ====
[[ファイル:Oguruwa shell mounds-Flexed burial.jpg|300px|屈葬]]
縄文人の死者の骨は、手足を折り曲げて、{{ruby|葬|ほうむ}}られている遺体が多く見つかっています。このような葬り方を{{ruby|屈葬|くっそう}}と言います。これは、死者から発生すると考えられていた悪霊を寄せ付けないようにするためと考えられています。
{{clear}}
== {{ruby|弥生|やよい}}時代――ムラからクニへ ==
〜'''米づくりがはじまる'''〜<br>
[[Image:YayoiJar.JPG|right|250px|thumb|弥生式土器。<br>紀元1世紀から3世紀に製作されたもの。]]
紀元前の5世紀ごろ、ユーラシア大陸の中国 や朝鮮半島あたりの人々から、米による稲作 が、日本に伝わりました。
米作りは、まず西日本に伝わり、西日本から東日本へと、米作りが広がっていき、東北地方まで広がりました。
この時代の農具の多くは、まだ、木製 です。ただし、米作りとともに鉄器 の技術 も日本に伝わっているので、一部では鉄を用いた農具も見つかっています。
穂から米をとるのに、{{Ruby|石包丁|いしぼうちょう}} が、使われました。
* 弥生土器
また、このころ、土器は、縄文土器よりも うすくて かたい <span style="color:red">{{Ruby|'''弥生土器'''|やよいどき}} </span>を作るようになりました。かつては{{Ruby|'''弥生式土器'''|やよいしきどき}} と言う呼び方もありました。「弥生」とは、学者が発見した場所が、東京の弥生町 で見つかったので、「弥生土器」と、よばれています。
縄文土器と弥生土器の違いは、弥生時代のころには、土器をつくる技術が進歩したので、土器の形が 変わったのだろうと考えられています。
* {{Ruby|高床倉庫|たかゆかそうこ}}
米の保管には、<span style="color:red">{{Ruby|'''高床倉庫''' |たかゆかそうこ}}</span>が使用されました。かつては{{Ruby|'''高床式倉庫'''|たかゆかしきそうこ}} と言う呼び方もありました。
高床倉庫が高いのは、ねずみなどの動物が入りづらくするためというのが主な理由だろうと考えられています。風通しをよくし、湿気を逃すため、という理由もあるでしょう。ねずみの害を防ぐという理由の有力な根拠として、地面から床までの柱の、柱の頂上に「ネズミがえし」がついていて、動物などが登れないように工夫した高床倉庫が見つかっています。
<gallery widths="200px" heights="200px">
Image:Takayukasikisouko.JPG|高床倉庫 妻側より (復元、神奈川県、大塚・{{Ruby|歳勝土|さいかちど}}遺跡)
File:Yoshinogari-iseki takayukashiki-souko.JPG|高床倉庫 (復元、吉野ヶ里遺跡)
</gallery>
弥生時代の多くの住まいは、竪穴建物です。
{{clear}}
* 金属器
[[ファイル:DotakuBronzeBellLateYayoi3rdCenturyCE.jpg|thumb|銅鐸 (日本の青銅器)]]
大陸や朝鮮半島から米作りがつたわるととも)に、{{Ruby|青銅器|せいどうき}} や鉄器 などの金属器 が伝わりました。そして、日本でも弥生時代中に、金属器がつくられるようになりました。
青銅 とは、銅 と すず(金属のひとつ) とを溶かしてまぜあわせた金属でつくられた、合金 です。
青銅器には、銅剣 や、{{Ruby|銅矛|どうほこ}} 、{{Ruby|銅鐸|どうたく}} 、{{Ruby|銅鏡|どうきょう}} などがあります。
<gallery widths="200px" heights="200px">
File:Koujindani Remains 03.JPG|銅矛と共に出土した銅鐸 (島根県・出雲市の{{ruby|荒神谷|こうじんだに}}遺跡) 。古墳時代の遺跡。
ファイル:YayoiBronzeSpearTip1-2ndCenturyKyushu.jpg|弥生時代の銅矛 (九州で出土、1–2世紀)
</gallery>
青銅器は、おもに祭りに使われました。一方、鉄器は、農具や武器などの実用品に使われました。
* {{Ruby|登呂遺跡|とろいせき}}
[[File:2004年08月25日 登呂遺跡の復元竪穴状平地建物.jpg|thumb|240px|right|登呂遺跡。復元、竪穴状平地建物。]]
静岡県の{{Ruby|登呂|とろ}}遺跡 からは、竪穴建物に似た平地建物と、高床倉庫が見つかっています。水田の跡もあります。水路やあぜ道は、矢板 という板で、仕切られています。
* {{Ruby|吉野ケ里遺跡|よしのがりいせき}}
[[File:Yoshinogari-iseki zenkei.JPG|thumb|440px|right|吉野ケ里遺跡。遠景]]
これは佐賀県吉野ヶ里町にあります。
まわりを{{Ruby|濠|ほり}} でかこまれた {{Ruby|'''環壕集落'''|かんごうしゅうらく}} である。
人骨からは矢尻が刺さっているものも見つかっています。これらのことから、人々のあいだで争いがあったことが予想できます。
堀の内側からは、多くの高床倉庫が見つかっています。
おそらくは、米作りによって、食料生産が増えたので人口が多くなって、それぞれの集落で、多くの人口を養うために米の生産量を増やす必要が生じたため、土地や水が必要になり、なので、集落どうしで土地や水をめぐっての争いが起きたのだろうと思われています。
このような争いが、身分の差を作っていった理由の一つだとも思われています。
この吉野ケ里遺跡は、弥生時代を知る遺跡として、代表的な遺跡です。
=== {{Ruby|『漢書』地理誌|かんじょちりし}} ===
~中国の歴史書に見る日本~
この頃の日本にはまだ文字がありません。ですが、中国の王朝の国には、文字がありました。
その中国の歴史書から、日本の様子も、分かります。
中国の、今の中華人民共和国のあたりに、紀元前1世紀ごろの当時あった帝国の'''漢''' という国の歴史書の『漢書』の中の『地理誌』では、日本の弥生時代のころのようすについても、記述が書かれています。
: (漢書にかかれた漢は、前漢である。前漢については後述。漢には、時代によって前漢と後漢がある。)
その頃、漢の人は日本を<span style="color:red">{{Ruby|'''倭'''|わ}} </span>と呼び、日本人を{{Ruby|'''倭人'''|わじん}}と呼んでいます。
漢書によると、そのころの、日本は、100あまりの国に分かれており、漢の王朝へ、定期的に貢物 を持って、あいさつ に やってくるそうです。
日本は、{{Ruby|楽浪郡|らくろうぐん}}(今の朝鮮半島) のむこうにあるようです。
{{コラム|中国の王朝の変化|
漢も、最初からあったわけではありません。
:{{Ruby|夏|か}} :古代文明の{{Ruby|黄河|こうが}}文明があったあと、しばらくして{{Ruby|夏|か}}という国がありました。
:{{Ruby|殷|いん}} :そのあと、紀元前1500年ごろに、殷 という国が出きました。
:{{Ruby|周|しゅう}} :つぎに、紀元前1100年ごろに、周 が殷をほろぼします。
:紀元前8世紀に、その周が分裂しました。
:{{Ruby|秦|しん}} :紀元前221年に、秦 が統一しました
:{{Ruby|漢|かん}} :その秦 が漢 に滅ぼされました。
漢は一度ほろびました。そのあと再び漢の王朝になったので、前漢 と後漢 とに分けられました。
:さらに後漢が分裂しました。
:三国時代 :多くの諸国の中から有力な勢力が三つ勝ち残った三国時代になりました。
三国時代とは、「三国志」などで有名な、{{Ruby|魏|ぎ}}・{{Ruby|呉|ご}}・{{Ruby|蜀|しょく}} の三国の時代です。
三国の中で魏が、もっとも強く、最終的に魏が、三国を統一します。統一したあとの王朝の名は「魏」ではなく、別の名前なのですが、まだ覚えなくても良いです。
ここまで、国名だけを、まとめると
「殷 、周 、秦 、漢 、三国時代 」となります。
}}
後漢の歴史書の{{Ruby|『後漢書』東夷伝 |ごかんじょ とういでん}}によると、倭の{{Ruby|奴国|なこく}}の王が、後漢に外交の使者をおくり、日本から漢に貢物を送ったことが記されています。
{{Ruby|奴|な}}とは、100あまり、あった国のうちの一つだと、思われています。
[[File:King of Na gold seal.jpg|260px|thumb|left|金印 (きんいん) 。漢委奴国王印]]
[[File:King of Na gold seal imprint 1935.jpg|thumb|right|金印の印文。漢委奴國王印文]]
漢の皇帝の{{Ruby|光武帝|こうぶてい}} は、日本の奴国王に<span style="color:red">'''金印'''</span>を授けたといいます。
金印は、江戸時代の1784年に、今の福岡県の博多湾の{{Ruby|志賀島|しかのしま}}で、発見されています。金印の印の面には、文字がほられ、「漢委奴国王」と、ほられています。「漢委奴国王」は、「かん の わ のな こくおう」などと読みます。
{{clear}}
=== {{ruby|邪馬台国|やまたいこく}} ===
* {{Ruby|『魏志』倭人伝 |ぎし わじんでん}}
中国大陸の3世紀ごろの歴史書の '''『魏志』倭人伝''' では、日本の3世紀ごろは、国の数が30あまりになっていることが分かります。東夷伝では100あまりの国が、魏志倭人伝では30ほどの国まで減っているので、このあいだの長い年月に、統一が進んでいったことが分かります。
そして、日本にこれら30あまりの国を従えた <span style="color:red">'''{{ruby|邪馬|やま}}台国'''</span> がありました。邪馬台国は、名を <span style="color:red">{{Ruby|'''卑弥呼'''|ひみこ}}</span> という女の人物が治めていました。
倭人伝によると、倭 の国では、もともとは男の王をたてていたようですが、戦争が続いたので、卑弥呼を女王にしたようです。
邪馬台国の場所は、現在まだ不明であり、近畿説と九州説があります。
もし、倭人伝の記述どおりの方向に場所を特定しようとすると、九州の南の太平洋の海の上に出てしまい、倭人伝の方向の記述が、あてになりません。
邪馬台国の場所の有力な説は、九州北部にあったという説と、奈良県の{{Ruby|大和|やまと}}にあったという説です。
邪馬台国は、魏に、外交の使いを送ります。
卑弥呼は、魏の皇帝から、 '''{{Ruby|親魏倭王|しんぎわおう}}'''という称号の入った<span style="color:red">'''金印'''</span> と、そのほか、100枚の銅鏡と、絹の織物や、毛織物などを、日本は受け取りました。
倭人伝によると、卑弥呼の政治は、まじないや占いによるものだったようです。卑弥呼は、宮殿にこもりきりで、人々の前には、ほとんど姿を見せなかったようです。卑弥呼の弟が、宮殿に出入りをしていて、卑弥呼からの指示を人々につたえていたらしいです。実務は、弟など、卑弥呼でない人物が行っていたようです。
卑弥呼が死ぬと、大きな墓が作られ、また、100人あまりの{{Ruby|奴隷|どれい}} が、いっしょに埋められました。
倭人伝により、当時の日本の様子が分かります。
身分の差は、人々のあいだに、すでにありました。道端で身分の違う者どうしが出会うと、身分のひくい側のほうが道をゆずったといいます。
服装は、女性は{{Ruby|'''貫頭衣'''|かんとうい}} という、布のまんなかに、顔をだすための穴をあけただけの服を着ていたようです。
また、税の制度があると、倭人伝に書かれています。{{Ruby|市|いち}}も、開かれているようです。
== {{Ruby|古墳|こふん}}時代 ==
[[画像:NintokuTomb Aerial photograph 2007.jpg|thumb|前方後円墳。{{Ruby|仁徳天皇陵|にんとくてんのうりょう}}と思われている{{Ruby|大仙|だいせん}}古墳<br />大阪府堺市]]
3世紀から4世紀ごろになると、王や豪族の間で大きな墓が作られ始めました。
このような、大きな王などをほうむった大きな墓を <span style="color:red"><big>古墳</big></span> といいます。特に近畿地方や瀬戸内海の沿岸に見られました。
この、3世紀ごろの時代から、7世紀ごろまでの時代を {{Ruby|古墳|こふん}}時代 と言います。
古墳には、いろいろな形のものがあります。円形に盛り上がった古墳を円墳と言います。四角く盛り上がった古墳を方墳と言います。円墳と方墳があわさったような、かぎ穴のような形の古墳を <span style="color:red"><big>前方後円墳</big></span>(といいます。
大阪府の堺市にある <big>{{Ruby|大仙|だいせん}}(大山)古墳</big> は、日本で最大の面積の古墳です。
大仙古墳は、まわりが3重の{{Ruby|濠|ほり}}で、かこまれています。
ほかの場所でも、古墳が発見されています。代表的な古墳としては、
:{{Ruby|稲荷山|いなりやま}}古墳…埼玉県
:{{Ruby|五色塚|ごしきづか}}古墳…兵庫県
:{{Ruby|高松塚|たかまつづか}}古墳…奈良県明日香村
:{{Ruby|江田船山|えだふなやま}}古墳…熊本県
などがあります。
* 古墳の副葬品
[[File:KofunSoldier.jpg|thumb|left|140px|はにわ。武装男子立像]]
[[画像:HaniwaHorse.JPG|thumb|190px|はにわ。馬形埴輪]]
古墳からは、鏡や玉、剣などの副葬品が、発見されている。他にも、<span style="color:red"><big>はにわ</big></span>(埴輪)という、土を焼いて作られた人型や馬型などの置き物が、発見されています。
{{clear}}
==== 大和朝廷 ====
奈良県の{{Ruby|大和|やまと}}地方には、大きな古墳が多い。このことから、この大和の地方に、有力な勢力があったと、考えられている。この奈良地方の有力な豪族たちの政治勢力を '''大和政権''' といます。
この大和政権の政府を <span style="color:red"><big>大和朝廷</big></span>(やまと ちょうてい) といい、その最高権力者を <span style="color:red"><big>大王</big></span>(おおきみ) といいます。
大王(おおきみ)の一族は、後の天皇とよばれる一族である。
{{コラム|キビとイズモの王朝|
当時の日本には、地方によっては、ヤマト政権の他にも有力な豪族の治める王国があった。今でいう島根県あたりの出雲や、今でいう岡山県あたりの吉備での、ヤマト以外の豪族たちの政権である。これらの政権を、大和朝廷や大和政権に対応して、出雲のほうは出雲政権とかイズモ政権とかイズモ王国、吉備のほうは吉備政権やキビ政権や吉備王国やキビ王国などと呼ぶこともあります。
最終的に、のちの時代に日本を支配することになったのは奈良を中心とする政権の大和朝廷である。
イズモ政権やキビ政権については、まだ学者たちが研究中のこともあり、よく分かっていないことが多い。
}}
[[File:Inariyama sword.JPG|thumb|350px|right|まんなかの剣が発掘された金錯銘鉄剣]]
埼玉県の稲荷山古墳から見つかった鉄剣には、'''ワカタケル'''大王の名が刻まれた文がありました。文を読むと、この地方の王は、ワカタケル大王に使えていたようです。
熊本県の {{ruby|江田船山|えだふなやま}}古墳 にも、おなじ名前の刻まれた鉄刀があり、ワカタケル大王の支配する領域が、関東地方から九州までの広い範囲に、およんでいたことが、分かります。
正確に言うと、当時はまだ漢字しか文字がなかったので、稲荷山の鉄剣には115字の漢字が刻まれており、その漢字の中に「{{Ruby|獲加多支鹵|ワカタケル}}大王」という名が、刻まれています。
また江田船山古墳で発掘されたの鉄刀には、「獲□□□鹵大王」と, 一部が読めなくなっていますが、同じ名前が刻まれています。
後の日本の神話の書の『古事記』や、後の歴史書の『日本書紀』などから「ワカタケル」という人物の存在が知られているので、鉄剣などがワカタケルの存在を裏付ける証拠になったのです。日本書紀に「{{ruby|幼武|わかたけ}}天皇」という記述があるのです。
ワカタケル大王とは、 {{Ruby|雄略|ゆうりゃく}}天皇 だということが分かっています。
* 氏と姓
日本国内では、日本国内での大和朝廷による勢力拡大が進むにつれ、豪族において、{{Ruby|氏|うじ}}と{{Ruby|姓|かばね}}とによる、後の氏姓制度が作られました。
'''氏'''は、主に、血のつながった者どうしの集団で, たとえば, {{Ruby|蘇我氏|そがし}}・{{Ruby|物部|もののべ}}氏・{{Ruby|大伴|おおとも}}氏などが, '''姓''' とは、政治の地位による称号で、たとえば「{{Ruby|臣|おみ}}」や「{{Ruby|連|むらじ}}」という姓があります。
* 渡来人
5世紀ごろ、朝鮮半島や中国大陸から、多くの人が日本に渡ってきて、日本に移り住んだ。このように、古い時代に外国から日本に移り住んだ人たちを {{Ruby|渡来人|とらいじん}} といいます。
この5世紀頃の渡来人により、外国の文化が日本に多く伝わりました。
* '''漢字'''が日本に伝わりました。
* '''{{Ruby|儒教|じゅきょう}}''' が伝わりました。儒教とは、中国の{{Ruby|孔子|こうし}}が始めた、政治や道徳の思想です。
* 用水路の土木技術や、{{Ruby|機|はた}}織りの技術、農具や工具や武器などをつくる技術など、新しい技術も、日本に伝わります。
* 仏教の伝来
また、538年に 仏教も、外国から伝わりました。
仏教は、紀元前5世紀ごろのインドで、 {{ruby|釈迦|しゃか}}が始めました。
{{clear}}
== {{Ruby|飛鳥|あすか}}時代 ==
~{{Ruby|聖徳太子|しょうとくたいし}}の登場~
{| class="wikitable" style="float:right"
|+ 聖徳太子のころ
| 年 || 年令 || 太子の行ったこと || 社会のできごと
|-
! style="text-align: left;" colspan="4" | 6世紀
|-
| || || || 豪族どうしが争う
|-
|574 || 1才 || 聖徳太子が生まれる ||
|-
| || || || {{Ruby|蘇我|そが}}氏が権力をにぎる
|-
|589 || || || {{Ruby|隋|ずい}}が中国を統一する
|-
|593 || 20才 || 聖徳太子が摂政となる ||
|-
! style="text-align: left;" colspan="4" |7世紀
|-
|603 || 30才 || 冠位十二階を定める ||
|-
|604 || 31才 || 十七条の憲法を定める ||
|-
|607 || 34才 || 小野妹子を遣隋使として送る ||
|-
|618 || || || 隋がほろんで{{Ruby|唐|とう}}となる
|-
|622 || 49年 || 聖徳太子がなくなる ||
|-
|645 || || || 大化の改新
|-
|}
日本では、6世紀ごろから 豪族の影響力が強まり, 豪族同士の戦いや争いも出てきました。
後に、{{ruby|蘇我|そが}}氏が{{Ruby|物部|もののべ}}氏と争います。
蘇我氏は、仏教などの渡来人の伝える外国文化の受け入れに積極的でした。いっぽう、物部氏は、仏教には反対でした。
[[ファイル:Prince Shotoku with Two Princes by Kano Osanobu 1842.png|180px|thumb|聖徳太子が描かれた肖像画。まんなかの、一番、背の高い人物が聖徳太子。]]
推古天皇は、<big>摂政</big>(せっしょう)として<span style="color:red"><big>聖徳太子</big></span>(しょうとく たいし)という人物をたて、聖徳太子に、朝廷の強さをますための、あたらしい法律や政治のしくみをつくらせる。
摂政とは、天皇のかわりに、政治の実務を行なうものです。天皇がなんらかの理由で政治の実務が行えない時に、摂政が、たてられます。歴史的には、天皇が幼い場合や、天皇が女性の場合に、摂政がたてられることが多いです。
聖徳太子は 厩戸皇子(うまやどの おうじ) とも言われます。
聖徳太子は蘇我馬子と協力し、これらの改革をすすめました。
聖徳太子らによる改革では、'''<span style="color:red">冠位十二階の制</span>'''と、<span style="color:red"><big>十七条の憲法</big></span>(じゅうななじょう の けんぽう)があります。
* 冠位十二階の制(かんいじゅうにかい の せい)
冠位十二階の制は、家柄に関係なく有能な役人を採用するための制度です。能力や手柄(てがら)によって、役人に位(くらい)が与えられます。位は、一代かぎりです。
役人の位を12段階に分けたので、このような名前で呼ばれます。これ以前は、家柄によって位が与えられたのが、あらためられました。
* 十七条の憲法(じゅうななじょう の けんぽう)
役人の心がまえを、記したものです。豪族などに対して、役人としての心がまえを述べたものでしょう。
内容を現代風に訳すと、およそ、次のようなことが書かれています。
:1条 :争いをやめ、'''仲良くしなさい'''。
:2条 :仏教を'''保護'''しなさい。
:3条 :天皇の命令には、'''したがい'''なさい。
:12条 :百姓(ひゃくしょう)などの民(たみ)から、'''かって'''に税や貢物(みつぎもの)をとっては、いけません。
:17条 :重要なことを決めるときには、'''話し合い'''で決めなさい。
その他にも、いろんなことが書かれていて、全部で17条あるので、十七条の憲法と言います。
もともとの文は漢文で書かれています。この聖徳太子の時代には、まだ、ひらがなが、ありません。のちの歴史書の『日本書紀』(にほんしょき)に、十七条の憲法の原文があります。
原文は、けっこう長いです。
:(小学生は、原文をおぼえなくてもいいです。)
原文に、読みやすいように送り仮名をつけ、記述の一部を抜粋(ばっすい)すると、
:一(いち)に曰く(いわく)、和(わ)を以て貴し(とうとし)と為し(なし)、忤(さか)ふること無きを宗(むね)とせよ。(後略)<br/>
:二に曰く、篤く(あつく)三宝(さんぽう)を敬へ(うやまえ)。三宝とは仏(ほとけ)・法(のり)・僧(ほうし)なり。(後略)<br/>
:三に曰く、詔(みことのり)を承り(うけたまわり)ては必ず謹(つつし)め、君をば天(あめ)とす、臣をば地(つち)とす。(略)<br/>
(中略)
:十二に曰く、国司(くにのみこともち)・国造(くにのみやつこ)、百姓(おおみたから)に斂る(おさめる)ことなかれ。国に二君(ふたりのきみ)非(な)く、民に両主(ふたりのあるじ)無し、率土(くにのうち)の兆民(おおみたから)、王(きみ)をもって主となす。(略)<br/>
(中略)
:十七に曰く、夫れ事独り断むべからず。必ず衆(もろもろ)とともに宜しく論(あげつら)ふべし。(後略)
といったふうに、書かれています。
十七条の憲法は、「憲法」と言っても、現代の日本の「日本国憲法」(にほんこく けんぽう)のような、他の法律の基本となる民主主義の理念や、日本国の国家理念がふくまれたものとは、ちがうので、混同しないでください。
聖徳太子らの行った重要な政策には、外交政策も、あります。中国を支配していた<big>隋</big>(ずい)という帝国(ていこく)との外交です。ある国と、別の国とが、政治の取り引きをすることを外交と言います。
607年に、外交の使者として '''<span style="color:red">{{Ruby|小野妹子|おののいもこ}}</span>'''たちを 隋に送りました。<span style="color:red"><big>遣隋使</big></span>(けんずいし)の派遣(はけん)です。
なお、小野妹子は男です。
{{Ruby|隋|ずい}}に外交の使者を派遣するので「遣隋使」といいます。
外交の結果、日本は隋と国交を結びます。国交とは、それまで、つきあいのなかった2つの国どうしが、平和に、かかわりを持ち始めることです。
また、隋の文化や制度は日本よりも進んでいたので、多くの文化や制度を、日本は取り入れます。
隋と国交をむすぶとき、日本は、隋と日本とを対等の立場で、国交を結ぼうとします。そして、対等の立場で国交をむすぶことに、日本は成功します。
それ以前の外交では、中国大陸の帝国には、周辺国が貢物を持ってきて、中国の帝国の属国として外交をむすぶことが、ふつうでした。
当時の隋は、朝鮮半島の{{Ruby|高句麗|こうくり}}と敵対していたので、高句麗と日本が協力することを恐れたのだろう、と言われています。
隋の歴史書である『隋書』(ずいしょ)に、この妹子との外交に関する記述があります。
:(小学生は原文を覚えなくてもいいです。)
[[ファイル:Sui-yangdi.jpg|thumb|隋の皇帝である煬帝(ようだい)。真ん中の人物が楊帝。]]
隋の皇帝へと、小野妹子が差し出した国書(こくしょ)には、
「日出ずる処(ひ いずるところ)の天子(てんし)、書(しょ)を日(ひ)没する処(ぼっするところ)の天子に致す(いたす)。恙無きや(つつがなきや)」 ※おぼえなくて良い
(原文 :日出處天子致書日沒處天子無恙) ※おぼえなくて良い
とあります。両国とも「天子」(てんし)という表現を用いていることに注目してください。つまり、日本の天皇と、中国大陸の皇帝を、同じ地位(ちい)と見ているわけです。
ほかにも、日本のことを「日出ずる処」と書いて、隋(ずい)を「日没する処」と書いてあります。
当初、この日本からの国書を読んだ隋の皇帝の煬帝(ようだい)は、日本を無礼な国だと思い激怒したといいます。
『隋書』には、漢文で書かれています。これを日本語に読み下すと
:訳 :帝は国書を読んだが、不満であった。部下の外交官に言うには「日本からの書は、無礼である。二度と私に日本からの国書を見せるでない。」
と、なります。
ですが、隋の皇帝・{{Ruby|煬帝|ようだい}}は高句麗との戦争を有利にすすめるため、隋は日本に良い待遇をしたのです。
日本の側も、隋と高句麗都との敵対した情勢に関する情報をつかんでおり、その情勢を利用して外交での交渉に利用したのです。
==== 飛鳥文化 ====
聖徳太子が政治をおこなっていた時期でもある7世紀ごろ、今でいう奈良県である飛鳥地方に都が置かれていました。この時代のことを <big>飛鳥時代</big>(あすかじだい) といい、この時代の文化を <big>飛鳥文化</big>(あすかぶんか) といいます。
この飛鳥文化は仏教を中心とした文化である。
* 法隆寺
[[ファイル:Horyu-ji08s3200.jpg|thumb|法隆寺。金堂と五重塔]]
[[File:Shakyamuni Triad Horyuji2.JPG|thumb|法隆寺の釈迦三尊像(金堂)]]
聖徳太子は、法隆寺を、607年に、建てさせます。法隆寺の場所は、今でいう奈良県にあります。法隆寺は、現存する木造建築の中で、世界最古の木造建築です。法隆寺は、世界文化遺産に1993年に登録されました。
法隆寺には、 <big>釈迦三尊像</big>(しゃか さんぞんぞう) や <big>百済観音像</big>(くだらかんのんぞう) 、おさめられている。
[[ファイル:Tamamushi Shrine.JPG|thumb|right|200px|玉虫厨子]]
そのほか、法隆寺には絵画の<big>玉虫厨子</big>(たまむしのずし)など、多くの美術品が、おさめられている。
法隆寺の柱は、円柱の中央が、ふくらんでいる。これはギリシア建築に多く見られる特徴でエンタシスという特徴である。
その他、唐草文様などが美術品に見られるが、唐草文様の発祥はギリシアである。
これらのことから、ギリシアや中東の美術文化が、おそらくは中国大陸を通して、日本に美術文化が入って来ていることが分かる。
さて、聖徳太子は、四天王寺(してんのうじ)も、建てさせます。場所は、今でいう大阪府です。
飛鳥時代の、ほかの寺では、広隆寺(こうりゅうじ)の弥勒菩薩像(みろく ぼさつぞう)も、飛鳥時代の仏像として有名である。
<gallery widths="200px" heights="200px">
Image:Maitreya Koryuji.JPG|弥勒菩薩像。京都、広隆寺。
</gallery>
==== 聖徳太子の死後 ====
622年に、聖徳太子が、死にます。
聖徳太子の死後は、蘇我氏が権力が強まります。
蘇我馬子(そがのうまこ)も、626年に、なくなります。
まず、蘇我馬子の子である<big>蘇我蝦夷</big>(そがの えみし)の権力が、強まります。さらに、馬子の孫であり、蝦夷の子である<big>蘇我入鹿</big>(そがのいるか)の権力が強まります。
643年に、蘇我入鹿は、山背大兄王(やましろのおおえのおう)という聖徳太子の子である人物と、山背大兄王 の一族を滅ぼします。
このような強権的な蘇我氏に対して、豪族たちからの不満が高まります。
* 乙巳の変(いっしのへん) ※ 小学生は、おぼえなくて良い。
<big>645年</big>に、ついに、皇族の<span style="color:red"><big>中大兄皇子</big></span>(なかのおおえの おうじ)と、豪族の<span style="color:red"><big>中臣鎌足</big></span>(なかとみの かまたり)(藤原鎌足)との協力により、蘇我入鹿は殺害されます。蝦夷は、この事件を知り、自殺します。
この蘇我氏の死亡した事件を 乙巳の変(いっしのへん) という。 (※ 小学生は、おぼえなくて良い。)
* 大化の改新(たいか の かいしん)
このあと、中大兄皇子らが権力を取り、政治改革を色々と行なう。この皇子らの改革を <span style="color:red"><big>大化の改新</big></span>(たいか の かいしん) という。645年に年号(ねんごう)を「大化」(たいか)に定めたので、この一連の改革は大化の改新と呼ばれています。
「大化」という年号により、日本では、はじめて年号が定められます。年号をさだめることは、中国大陸の帝国を参考にしたのです。
645年の覚え方には、「虫殺し」(むしごろし、645ろし)と覚える語呂合わせ(ごろあわせ)が、あります。
645年 :大化の改新 虫殺し(645ろし)
645年の一連の事件により、皇極天皇(こうぎょくてんのう)は退位して、皇極元・天皇の弟の孝徳天皇(こうとくてんのう)が645年に天皇になります。
==== 改新の詔 ====
:(かいしん の みことのり)
中国大陸では、すでに618年に隋(ずい)が滅んでおり、<big>唐</big>(とう)という帝国になっていた。日本も、これに対して、政治改革をする必要があった。
さて、改革の内容はと言うと・・・
646年に<big>改新の詔</big>(かいしん の みことのり)が出されます。これは改革内容の方針や目標を表したものです。この詔の発見は『日本書紀』で発見されています。
改革の内容は、以下の、<big>公地公民</big>(こうちこうみん)、<big>班田収授</big>(はんでんしゅうじゅ)、租(そ)・庸(よう)・調(ちょう)、<big>国司</big>(こくし)の設置(せっち)、です。
* 公地公民(こうちこうみん)
これまでは豪族や皇族たちが持っていた土地は、すべて朝廷のものになります。豪族や皇族が持っていた人民も、朝廷が持つことになります。この命令が<big>公地公民</big>(こうちこうみん)です。朝廷が管理できない土地の存在を禁止します。同様に、朝廷が管理できない住民の存在も禁止します。
* 班田収授(はんでんしゅうじゅ)
人民の<big>戸籍</big>(こせき)を作り、人民に耕作をさせるための<big>口分田</big>(くぶんでん)という田を与え耕作させます。
この当時の戸籍とは、人民をひとりずつ、公文書に登録することで、住所や家族の名や年齢、家の世帯主、などを把握することです。
この飛鳥時代に、すでに「戸籍」という言葉がありました。
このような情報の管理は、税をとることが目的です。税の台帳である<big>計帳</big>(けいちょう)をつくるため、戸籍が必要なのです。
現在の日本での戸籍とは、「戸籍」の意味が少しちがうので、注意してください。「計帳」という言葉は、この飛鳥時代の言葉です。詔の本文に書かれています。
詔の本文に、「初造戸籍計帳班田収授之法。」とあります。現代風に読みやすく区切りを入れれば、「初 造 戸籍 計帳 班田収授之法。」とでも、なりましょう。
目的は、収穫から税収をとるためです。前提として、公地公民が必要です。
6年ごとに人口を調査します。
税を取るにも、まずは人口を正しく把握しないと、いけないわけです。女にも、 口分田が与えられます。
原則として、6才以上の男に2反(720歩=約24アール)の田を与え、女(6才以上)には男の3分の2(480歩=約16アール)の田を与えています。5才以下には与えられません。
死んだ人の分の田は、国に返すことになっていました。
* 租(そ)・庸(よう)・調(ちょう)
{| class="wikitable" style="float:right"
|+ <span style="font-size: large;">一般の人々の負担</span>
! colspan="2" | <span style="font-size: large;">種類</span> ||<span style="font-size: large;">内容</span>
|-
| rowspan="3" |<SPAN STYLE="FONT-WEIGHT:NORMAL;"><span style="font-size: large;"> 税 </span></SPAN>
|<SPAN STYLE="FONT-WEIGHT:NORMAL;"><span style="font-size: large;">租</span></SPAN>
|収穫(しゅうかく)の約3%の稲(いね)
|-
|<SPAN STYLE="FONT-WEIGHT:NORMAL;"><span style="font-size: large;">調</span></SPAN>
|地方の特産物(糸、きぬ、わた、塩、<br />魚、海そう、鉄、・・・)などを納める。
|-
|<SPAN STYLE="FONT-WEIGHT:NORMAL;"><span style="font-size: large;">庸</span></SPAN>
|麻の布を納める。(労役の代わり。)
|-
| rowspan="1" |<SPAN STYLE="FONT-WEIGHT:NORMAL;"><span style="font-size: large;"><br /> 兵 <br /> 役 </span></SPAN>
|<SPAN STYLE="FONT-WEIGHT:NORMAL;"><span style="font-size: large;">防人</span></SPAN>
|九州北部で兵士を3年。
|-
|}
税(ぜい)の種類です。
祖(そ)とは、田の収穫量の、およそ3%を、国に納めよ(、という税です。
調(ちょう)とは、絹(きぬ)や、地方の特産物を、国に納めよ、という税です。
庸(よう)とは、都に出てきて年10日以内の労働をせよという労役(ろうえき)か、または布を納めよ、という税です。
前提として、公地公民(こうちこうみん)や班田収授(はんでんしゅうじゅ)などが必要です。
この他、防人(さきもり)という、九州で警備(けいび)の兵士をする、兵役(へいえき)の仕事がありました。租庸調(そようちょう)を都に運ぶ負担も、他の農民たちの負担でした。
この防人のつらさを歌った歌として、つぎのような歌が、残っています。
<div style="border:1px solid #000000;">
'''さきもりの歌''' ( 『万葉集』(まんようしゅう)より )
:: 唐衣(からころも) 裾(すそ)に取りつき 泣く子らを 置きてそ来ぬや 母(おも)なしにして
::(現代語訳) 唐衣の 裾(すそ)に、すがって 泣きつく子どもたちを (防人に出るため)置いてきてしまったなあ、 (あの子たちには)母もいないのに
</div>
{{clear}}
* 国・郡・里
政府の組織や、地方行政の組織にも、改革が加わります。
まず、日本全国をいくつかの 国(くに) に分けて管理し、国は郡(こおり)に分けられ、郡は里(さと)に分けられます。
<div style="font-size:120%;">
<pre>
国 (国司)
┃
郡 (郡司)
┃
里 (里長)
</pre>
</div>
国には、中央の朝廷から、<big>国司</big>(こくし)という役人が派遣され、この国司によって、それぞれの国が管理されます。
郡を管理する役職は、<big>郡司</big>(ぐんじ)という役職の役人に管理させます。たいて、その地方の豪族が郡司です。
==== 国際情勢 ====
7世紀のなかばになると、朝鮮半島で戦乱が起きます。
660年に百済(くだら)が、 <big>新羅</big>(しらぎ) という国に滅ぼされます。
朝鮮半島には百済という国があって、その百済は、日本とは親しかったのでした。
新羅は、唐(とう)の協力を、えています。
* 白村江の戦い(はくすきのえ の たたかい)
日本は百済を復活させるため、新羅と戦争をします。663年に、中大兄皇子の指導により朝鮮半島に軍を送り、日本 対 新羅の戦争が起きます。これが<big>白村江の戦い</big>(はくすきのえ[はくそんこう] の たたかい) です。新羅と唐の連合軍に、大敗しました。
なお、後に新羅は676年に高句麗(こうくり)も滅ぼし、朝鮮半島を統一することになります。
==== 日本国内の強化 ====
白村江の戦い にやぶれた日本は、国内の政治に集中します。中大兄皇子は、唐と新羅の攻撃にそなえるため、九州の防備を強化します。九州北部に <big>防人</big>(さきもり) という防衛のための兵士たちを置き、水城(みずき)という土塁(どるい)と濠(ほり)を作ります。さらに北九州や瀬戸内海周辺の西日本の各地に山城(やまじろ)を作ります。
667年に、中大兄皇子は都を移します。奈良の飛鳥(あすか)から、今でいう滋賀県である近江(おうみ)に都を移します。大津宮に都が移ります。
この都を近江(おうみ)にうつしたことも、攻撃に備えてなのかもしれません。近江は、飛鳥よりも内陸にあります。
668年に中大兄皇子は天皇として即位し、天智天皇(てんじ てんのう)になります。
668年に、法典である 近江令(おうみりょう) が出来ます。天智天皇が中臣鎌足に命じ、役人たちに編纂(へんさん)させたものです。
全国的な戸籍である 庚午年籍(こうごねんじゃく) が作成されます。
* 壬申の乱(じんしんのらん)
天智天皇がなくなると、天皇の座をめぐり、天智の弟の大海人皇子(おおあまのおうじ)と、天智の子の大友皇子(おおとものおうじ)とが、672年に争い戦争になる。これを <big>壬申の乱</big>(じんしんのらん) という。大海人皇子が勝ち、大海人皇子が <big>天武天皇</big>(てんむてんのう) になる。
天武天皇の死後、皇后の持統天皇(じとうてんのう)が即位します。持統天皇は、都を奈良に移し、藤原京(ふじわらきょう)を建設させます。
==== 大宝律令 ====
:(たいほう りつりょう)
701年の文武天皇(もんむてんのう)のときに、 <span style="color:red"><big>大宝律令</big></span>(たいほうりつりょう) という法典が完成する。この大宝律令を編纂(へんさん)した人物は、<big>藤原不比等</big>(ふじわらの ふひと) らが中心に編纂(へんさん)した。藤原不比等は、中臣鎌足(なかとみのかまたり)の子である。
「律」は罪人をさばくためのい刑法で、「令」(りょう)は役所や役人などに対する法律です。
政府の中央組織には 二官八省(にかんはっしょう) が置かれた。
二官には、紙をまつる宗教を行なう神祇官(じんぎかん)と、一般の政務をおこなう太政官(だじょうかん)がおかれた。
太政官の下に、大蔵省などの八省が置かれた。
班田収授や、租庸調(そようちょう)も定められた。
<div style="font-size:120%;">
<pre>
┏━━中務省
┏━太政官━━━╋━━式部省
┃ ┣━━民部省
天皇━┫ ┣━━兵部省
┃ ┣━━刑部省
┃ ┣━━大蔵省
┗━神祇官 ┣━━宮内省
┗━━治部省
</pre>
</div>
:中務省(なかつかさしょう)の仕事は、詔(みことのり)や勅(ちょく)の作成。
:式部省(しきぶしょう)の仕事は、役人の人事や教育。
:民部省(みんぶしょう)の仕事は、戸籍や租税。
:兵部省(ひょうぶしょう)の仕事は、軍事や警備。
:刑部省(ぎょうぶしょう)の仕事は、刑罰や裁判。
:大蔵省(おおくらしょう)の仕事は、物資の管理や財政。
:宮内省(くないしょう)の仕事は、宮中の事務や庶務。
:治部省(じぶしょう)の仕事は、儀式や外交。
== {{Ruby|奈良|なら}}時代 ==
[[File:Heijokyo.jpg|right|500px|平城京 条坊図]]
文武天皇(もんむてんのう)のつぎの天皇である元明天皇(げんめいてんのう)の時代に、都が移る。710年に、奈良の <span style="color:red"><big>平城京</big></span>(へいじょうきょう) へと移る。藤原京から平安京に移る。
年号をおぼえる語呂合わせは「なんと(7、10)、うつくしい(きれいな)平城京」。
794年に平安京(へいあんきょう)に都が移るまで、この平城京が都である。平城京に都があった710年から80年間ほどの時代を<big>奈良時代</big>(ならじだい) と言う。
平城京は、道の通りが碁盤目(ごばんめ)のように、区画(くかく)が整理されています。このような、碁盤目のような区画のつくりを 条坊制(じょうぼうせい) と言います。
{{clear}}
[[File:Wadokaichin coin 8th century Japan.jpg|thumb|left|200px|和同開珎]]
経済では、この奈良時代の都では、<span style="color:red"><big>和同開珎</big></span>(わどうかいちん)という貨幣が708年に発行され、流通していました。
これより古い貨幣には、7世紀後半の天武天皇の頃に富本銭(ふほんせん)という貨幣がつくられています。
* 税について。墾田永年私財法(こんでん えいねん しざい の ほう)
農民は貧しく(まずしく)、多くの農民は竪穴住居に住んでいた。また、人口が増えたので口分田は不足した。税の負担は重く、口分田を捨てて逃げ出す農民が増えた、
朝廷は税を増やすため、田を増やす必要があり、そのため、法律を変え、開墾した3代にわたり、田を所有できるように法を制定した。これが <big>三世一身の法</big>(さんぜい いっしん の ほう) であり723年の出来事である。
さらに743年には、期限が無く所有し続けられる <big>墾田永年私財法</big>(こんでん えいねん しざい ほう) が制定された。
これは、つまり公地公民の原則を廃止したことになる。
また、貴族や豪族は、これを利用し、私有地を広げた。この貴族の私有地は、のちに 荘園(しょうえん) と呼ばれることになる。
* 古事記、日本書紀
712年に<span style="color:red"><big>『古事記』</big></span>(こじき)という天皇家や貴族などにつたわる神話の時代をまとめた書が、できます。この『古事記』は、天武天皇により編纂が命じられ、712年に完成しました。
『古事記』は、稗田阿礼(ひえだのあれ)が、暗記していた神話や歴史を、太安万侶(おおのやすまろ)が3巻の書にまとめた書です。
神話の時代から推古天皇にいたるまでの出来事が古事記に書かれています。
また、日本の歴史書の『日本書紀』が720年に完成します。神話の時代の伝説から、7世紀末ごろの持統天皇にいたるまでの国家と天皇の歴史を書いた、歴史書のような書です。
日本書紀の編纂は、時代順に出来事を書く編年体(へんねんたい)で記述しています。
日本書紀は、舎人親王(とねりしんのう)らが、全30巻にまとめています。
{{clear}}
=== 大仏づくり ===
聖武天皇のころ、飢饉(ききん)がつづいたり、貴族の反乱が起きたりします。
[[File:Daibutsu of Todaiji 3.jpg|thumb|right|300px|東大寺盧舎那仏像]]
737年には病気の天然痘(てんねんとう)が流行り、多くの死者が出る。
740年には、九州で、貴族の藤原広嗣(ふじわらのひろつぐ)による反乱も起きた。
政治が不安定になる。
また、人口が増えて公地公民が上手くいかなくなってきた。
聖武天皇は、仏教の力に、すがる。
まず741年に国ごとに <big>国分寺</big> (こくぶんじ)と <big>国分尼寺</big> (こくぶんにじ)を建てさせる。
都には <big>東大寺</big> (とうだいじ)を建てさせた。
743年に、東大寺の本尊(ほんぞん)として大仏を作らせる。
東大寺の大仏は、盧遮那仏(るしゃなぶつ)という仏です。 ※おぼえなくて良い。
<big>行基</big>(ぎょうき)という僧(そう)がいました。彼は、民衆のために用水の池や端をつくったりしながら、諸国をまわって教えをといていたので、民衆に、したわれていました。
しかし、朝廷は、はじめは、行基の行動をとりしまります。当時は、民衆への仏教の布教が禁止されていたし、寺の外での活動も禁止されています。
朝廷からは、おそらく行基は、民衆をそそのかす危険人物だろう、と思われていたのです。
さて、大仏を作るのは、とても多くの労働力を必要とするので、朝廷には、民衆の支持が必要でした。このため、民衆に慕われていた僧の行基(ぎょうき)の活動を認めます。
=== 遣唐使と鑑真 ===
:(けんとうし と がんじん)
中国大陸の帝国が唐にかわっても、かつての遣隋使(けんずいし)と同様に、日本から中国の唐に、外交の使者の (けんとうし)<span style="color:red"><big>遣唐使</big></span> を送ります。
遣唐使は、奈良時代のあいだは、おこなわれています。
のちの時代の平安時代に遣唐使は廃止されます。奈良時代には、まだ遣唐使は廃止されません。
717年に唐にわたった 阿倍仲麻呂(あべのなかまろ) や、仲麻呂と供に唐にわたったこともある 吉備真備(きびのまきび) が遣唐使として有名です。
なお、最初の遣唐使として630年に唐に派遣された犬上御田鍬(いぬがみ の みたすき)は、最後の遣隋使でも、あります。
阿倍仲麻呂は、日本に帰ろうとして乗った船が難破(なんぱ)し、日本に帰れず、最終的に唐の皇帝に仕えることになります。
吉備真備は日本に帰れます。吉備真備は2回も唐にわたり、日本に帰れます。
* 鑑真(がんじん)
[[ファイル:Ganjin wajyo portrait.JPG |thumb|鑑真和尚像]]
日本の朝廷らは、唐の有名な僧の <span style="color:red"><big>鑑真</big></span>(がんじん) に、日本でも仏教をひろめてほしいと、鑑真を日本へ招き(まねき)ます。この招きを受け、鑑真は日本への渡航をおこないますが、5回も失敗し、6回目で日本に着きます。6回目で日本についたころには、鑑真は失明しています。海の水しぶきをあびつづけることは、目に悪いのです。
鑑真は、奈良に <big>唐招提寺</big>(とうしょうだいじ) を開きました。
{{clear}}
=== 天平文化 ===
:(てんぴょう ぶんか)
奈良時代の文化は、仏教の影響と、唐との交流の影響が、特徴(とくちょう)です。
とくに、聖武天皇の治めた 天平(てんぴょう) の年号の時代に、この傾向が強いので、この奈良時代の文化を 天平文化(てんぴょうぶんか) と言います。
[[Image:Shoso-in.jpg|thumb|300px|正倉院正倉]]
[[Image:Azekura-dukuri JPN.JPG|thumb|right|230px|校倉造(あぜくらつくり)。正倉院の宝物庫は、三角形の断面の木を組み合わせたつくりの校倉造で、つくられている。]]
東大寺にある <big>正倉院</big>(しょうそういん) には、奈良時代の美術品や、聖武天皇が日用した道具などが収められています。
:※ 有名な宝物で「螺鈿紫檀五絃琵琶」(らでんしたんごげんのびわ、図参照)や「瑠璃杯」(るりのつき)が保存されているのですが、ウィキペディアに画像がありません。外部サイトや参考書で、画像をお探しください。
宝物には、ギリシャやペルシャ、インドなどから運ばれてきたものもある。シルクロードという中国大陸からヨーロッパまでの貿易の通路を通ってきた宝物である。後世の言い方だが正倉院のことを「シルクロードの終着駅」とも例える。
<gallery widths="250px">
Image:RED LACQUERED CABINET Shosoin N2.JPG|赤漆文欟木御厨子
Image:8Lobed Mirror Inlay Shosoin.jpg|平螺鈿背八角鏡
Image:Silver Backed Bronze Mirror Shosoin.JPG|金銀山水八卦背八角鏡
Image:LADIES UNDER TREES SCREEN4th Shosoin.JPG|鳥毛立女屏風第4 部分
Image:ROCHECHI Screen Panel Shosoin NH44.JPG|羊木臈纈屏風
Image:Silver Incense Burner Shosoin.JPG|銀薫炉
Image:Gold Silver Painted BOX Shosoin.JPG|蘇芳地金銀絵箱蓋
</gallery>
(※ 赤漆文欟木御厨子〜蘇芳地金銀絵箱蓋は、おぼえなくて良い。)
文学では、和歌(わか)をまとめた<big>万葉集</big>(まんようしゅう)が759年ごろから編纂(へんさん)されます。
貴族の作った和歌だけでなく、農民や防人などの様々な身分の者が作ったと思われる和歌も収録されています。
合計で4500首の歌が収録されています。
貴族の歌人では、柿本人麻呂(かきのもとのひとまろ)や大伴家持(おおとものやかもち)、山上憶良(やまのうえのおくら)、山部赤人(やまべのあかひと)などが有名です。
万葉集の文字の読みは、万葉仮名(まんようがな)という、漢字の音で日本語を表す読みです。たとえば、次のような句を次のように読みます。
:(万葉仮名文)去來子等 早日本邊 大伴乃 御津乃濱松 待戀奴良武 (※ おぼえなくて良い。)
:(訓)いざ子ども 早く日本(やまと)へ 大伴(おおとも)の 御津(みつ)の浜松(はままつ) 待ち恋ひぬらむ(まちこいぬらん)
{{clear}}
== {{Ruby|平安|へいあん}}時代 ==
〜<big>貴族がさかえた時代</big>〜<br>
かつての天平文化の仏教保護の政策などにより、仏教の僧や寺院の影響力が強くなる。
のちの天皇や朝廷は、これらの仏教勢力を嫌がり、そのため、<big>桓武天皇</big>(かんむてんのう)により、寺院の多い現在でいう奈良県から京都府へと都をうつす。まず784年に京都府の 長岡京(ながおかきょう) にうつす。さらに794年に京都府の <span style="color:red"><big>平安京</big></span>(へいあんきょう) にうつす。
<big>鳴くよ(794、なくよ) ウグイス 平安京<ref>鳴くよ(794、なくよ) 感動(桓武天皇、かんどう) 平安京 とも言う。</ref></big>
「ホーホケキョー」とウグイスは鳴きますが、それと「へいあんきょう」をかけたダジャレの語呂合わせ(ごろあわせ)です。
平安時代(へいあんじだい)の当時に、こういうダジャレがあったわけでは、ありません。現代の私たちが、歴史上の出来事のおきた年をおぼえるための語呂合わせ(ごろあわせ)です。
[[画像:HeiankyouMapJapanese.svg|900px]]
奈良から平安京への寺院の移転は禁止されます。
他にも、社会の変化で、もはや、公地公民による昔の政治が上手くいかなくなり、政治のしかたを改める必要もあったのだろう。
平安京に都を移してから約400年間は、政治の中心地は平安京だったので、この時代を <big>平安時代</big>(へいあんじだい) という。
くわしくいうと、後に1192年に武士である源頼朝が権力をにぎる鎌倉幕府(かまくら ばくふ)ができますが、794年から1192年までを平安時代と言うことが多い。
なお、平安時代より、あとの武士による政治の時代になっても、都は平安京のままです。明治時代に東京に都が移るまでは、平安京が日本の都でした。平安京のつくりは、唐の都である 長安(ちょうあん) を、参考にしています。
桓武天皇は、公地公民が上手くいかない理由の一つである、税負担の重さに改革の手をつけます。
税負担の重さを減らしました。
雑用(ぞうよう)の日数を60日から30日に減らします。
また、桓武天皇の政権は、東北地方に支配を広げます。
東北地方の <big>蝦夷</big>(えみし) とよばれる人々は朝廷の支配に反対し、たびたび反乱を起こしていました。朝廷は <big>坂上田村麻呂</big>(さかのうえのたむらまろ) という人物を <big>征夷大将軍</big>(せいいたいしょうぐん) という役職(やくしょく)に任命し(797年)、彼に東北の平定を命じ、東北の平定のため、東北に兵を送らせます。
蝦夷の族長はアテルイ(阿弖流為)という人物で、アテルイの兵力と、対する田村麻呂らの朝廷軍との戦いです。
結果的に、田村麻呂の側が勝ちます。つまり朝廷の側が勝ちます。
アテルイは負け、802年に降伏(こうふく)します。アテルイは平安京に連行されたのち、京にて処刑されます。
田村麻呂は、アテルイの命を助けるよう減刑をもとめましたが、貴族たちの反対により、アテルイは処刑されました。
東北での戦争のさい、胆沢城(いさわじょう、場所は岩手県) などが田村麻呂らにより築かれ、朝廷による東北支配の拠点になります。
* 仏教界の変化
[[ファイル:最澄像 一乗寺蔵 平安時代.jpg|thumb|left|最澄]]
[[ファイル:Kukai2.jpg|thumb|空海]]
平安時代に入り、奈良時代の仏教とは、変化をした。<big>天台宗 </big>(てんだいしゅう)や<big>真言宗</big>(しんごんしゅう)という新しい宗派(しゅうは)ができ、それが広まった。奈良時代の仏教とはちがい、新しい平安時代の宗派は、山奥(やまおく)で修行(しゅぎょう)をしたりする仏教である。
僧の<big>最澄</big>(さいちょう)と僧の<span style="color:red"><big>空海</big></span>(くうかい)による、新しい仏教の考え方が広まった。おそらくは朝廷が、奈良時代の政治に深く介入した従来の仏教勢力をきらい、かわりに新しい宗派を保護したのだろう。
最澄も空海も、遣唐使と共に唐にわたり留学し、唐の新しい仏教の教えを学んできた僧である。
最澄は805年に日本に帰国し、比叡山(ひえいざん、滋賀県にある。)に 延暦寺(えんりゃくじ) をたて、<big>天台宗 </big>(てんだいしゅう)をひろめた。最澄は伝教大師(でんきょうだいし)とも言われます。
空海は806年に帰国し、高野山(こうやさん、和歌山県にある。)に 金剛峯寺(こんごうぶじ) をたて、<big>真言宗</big>(しんごんしゅう)をひろめた。空海は 弘法大師(こうぼうだいし)のことです。ことわざの「弘法も筆のあやまり」(こうぼうもふでのあやまり)の弘法大師のことです。
比叡山と言い、高野山と言い、ともに山であることに注目もしよう。朝廷の、仏教の政治介入をきらう事とも、つじつまがあう。
* 荘園(しょうえん)
奈良時代に墾田永年私財法により、開梱した土地の所有が認められるようになったので、貴族たちや寺社は農民らに開墾をさせ、貴族の所有する土地を広げていった。この貴族の所有する私有地が <span style="color:red"><big>荘園</big></span>(しょうえん) である。
また、平安時代に、貴族や寺社の所有する荘園には税をおさめなくてもよいという、貴族につごうのいい権利が出来た。
税を収めない権利を<big>不輸の権</big>(ふゆのけん)と言い、荘園への役人の立ち入りを拒否(きょひ)できる権利を<big>不入の権</big>(ふにゅうのけん)といいます。
これら不輸不入の権もあり、貴族の荘園は、どんどんふえていき、朝廷の税収は減るので財政は悪化し、律令政治が上手くいかなくなります。
有力な貴族でない者の荘園は国司に取り上げられたり、他の豪族にうばわれることもあったので、そのような有力でない者は、朝廷の有力な貴族に、形式的だが荘園を寄付した。これを<big>寄進</big>(きしん) という。
* 摂関政治(せっかんせいじ)
9世紀の中頃になると藤原鎌足(ふじわらのかまたり、中臣鎌足のこと。)の子孫の一族の<big>藤原氏</big>(ふじわらし) が、権力を強めます。
藤原氏の一族は、代々、娘を天皇の妃(きさき)にしています。
すると、藤原氏は天皇の母方の親戚(しんせき)ということになるので、藤原氏の権力が強まる、という仕組みで、さらに権力を強めました。
[[File:Fujiwara no Michinaga 2.jpg|thumb|300px|藤原道長(ふじわらの みちなが)]]
藤原氏の一族では、とくに11世紀の前半に <span style="color:red"><big>藤原道長</big></span>(ふじわらの みちなが) と、道長の子の<big>藤原頼通</big>(ふじわらのよりみち)らの親子が権力をにぎっていた時代が、もっとも勢力が、さかんでした。
道長が有名なので、よく、教科書などに道長が取り上げられますが、藤原氏の権力は、べつに11世紀に急に強まったわけではなく、9世紀ごろから藤原良房(ふじわらのよしふさ)が摂政になったりなど、すでに藤原氏の勢力が強かったです。皇族以外で摂政になったのは、良房が、はじめてです。
天皇が幼いときは、藤原氏の者が摂政になり政治の実権(じっけん)を握り、天皇が成人しても藤原氏は関白(かんぱく)という地位になり実権をにぎり、政治を行いつづける、という手法で権力を強めました。このような摂政や関白として政治を行なうという政治の方法を <span style="color:red"><big>摂関政治</big></span>(せっかん せいじ) といいます。
道長の読んだ歌で、つぎの歌があります。
:<big><big>「この世(よ)をば わが世とぞ思ふ(おもう) 望月(もちづき)の 欠けたることも なしと思へば(おもえば)」</big></big>
意味は、「この世は 自分(道長)のためにあるようなものだ 望月(=満月)のように 何も足りないものはない」という意味です。
<div style="border:1px solid #000000;">
:藤原実資(ふじわら さねすけ)の日記。
::寛永2年(1018年)、今日は道長さまの娘さまの威子(いし)さまが、中宮(ちゅうぐう)になられる日である。道長さまが私(=日記の作者。実資)を呼んで、こう、いわれた。
::「和歌をよもうと思う。君もかならず歌をかえしたまえ。」と言われた。
:::私は返事をして「きっと歌をかえしましょう。」と答えた。
::つづけて、道長さまはこう言われた。「自慢(じまん)の歌なのだよ。べつにあらかじめ作っておいた歌では無いがね。」と。
:そして、歌をよまれた。「この世をば 我が世とぞ思う 望月の 欠けたることも なしと思わば。」と。
:::私は答えた。「とても、すばらしい歌です。かえす歌も作れません。(道長いがいの)みんなで、このお歌を唱和するのがよろしいでしょう。」ともうしあげた。みんなも、私の言葉におうじ、この歌を唱和した。道長さまは、たいそう気をよくして、歌をかえさなかった私をせめなかった。
:(『小右記』(しょうゆうき)より。藤原実資(さねすけ)の日記。一部分。)
</div>
[[ファイル:Byodoin Phoenix Hall Uji 2009.jpg|300px|thumb|left|平等院 鳳凰堂]]
道長の子である<big>藤原頼通</big>(ふじわらの よりみち) は、<big>平等院鳳凰堂</big>(びょうどういんほうおうどう)を、たてさせています。十円玉に描かれている、あの建物(たてもの)は、平等院鳳凰堂の絵です。
[[ファイル:10JPY.JPG|thumb|10円]]
{{clear}}
=== 平安時代の文化 ===
* 遣唐使の廃止と、国風文化
まず、894年に、遣唐使が廃止されます。
:語呂合わせ:<big>白紙(はくし、894)に戻そう(もどそう) 遣唐使</big>
[[File:Sugawara Michizane.jpg|thumb|200px|菅原道真(すがわらの みちざね)]]
菅原道真(すがわらの みちざね)の進言によります。
遣唐使の廃止の理由は、すでに唐から多くのことを学んであること、中国大陸で内乱が多く唐が弱っていること、船の遭難(そうなん)など死の危険が多く有能な人材の命を損ないかねないこと、経済的な負担が大きい、などです。
この遣唐使の廃止により、日本の貴族文化では、だんだん、中国大陸の文化の影響(えいきょう)が、うすれていきます。
かわりに日本独自の貴族文化が発展していきます。この平安時代に発展した日本独自の貴族文化を<big>国風文化</big>(こくふうぶんか) と言います。
なお、その後、菅原道真は藤原氏と対立し、901年には太宰府(だざいふ)に追放されてしまいます。
[[画像:Hiragana origin new.svg|thumb|right|300px|漢字からひらがなへの変化]]
* かな文字の発明
ひらがな や カタカナ などの <big>かな文字</big> が、平安時代に発明されます。
ひらがなは、漢字の形をくずして、発明されました。カタカナは漢字の へん や つくり などの一部をもとに発明されました。
[[ファイル:Katakana origin new.svg|thumb|left|300px|カタカナの由来]]
{{clear}}
この時代、ひらがなやカタカナは、女が用いる字であった。貴族の<span style="color:red"><big>紀貫之</big></span>(きの つらゆき)は男だが、名を隠し、女を名乗り<big>『土佐日記』</big>(とさにっき)を描いた。
紀貫之が、国司(こくし)として、四国の土佐(とさ)に派遣されていたので、土佐から京にかえるまでの様子をしるした日記です。
ほかにも、<big>古今和歌集</big>(こきんわかしゅう、紀貫之の編集) や<big>竹取物語</big>(たけとりものがたり) などが、かな文字を用いた作品です。
古今和歌集は、<big>紀貫之</big>(きのつらゆき)という人物による編集です。醍醐天皇(だいごてんのう)の命令により、紀貫之らが編集しました。
* その他の文化
[[Image:Miniature Model of HigashiSanjoDono.jpg|thumb|375px|典型的な寝殿造である東三条殿の復元模型(京都文化博物館)
----
1. 寝殿(しんでん)、2. 北対(きたのたい)、3. 細殿(ほそどの)、4. 東対(ひがしのたい)、5. 東北対(ひがしきたのたい)、6. 侍所(さむらいどころ)、7. 渡殿(わたどの)、8. 中門廊(ちゅうもんろう)、9. 釣殿(つりどの)]]
[[image:安部正弘の肖像.jpg|thumb|left|150px|江戸時代の束帯(阿部正弘)]]
[[File:十二単です.JPG|thumb|150px|left|五衣唐衣裳(俗称 十二単)(京都御所にて)]]
平安時代には、貴族の衣服の正装(せいそう・・・正式な服のこと)が変わります。
男の貴族の服は <big>束帯</big>(そくたい) になり、女の貴族の服は <big>十二単</big>(じゅうにひとえ) になります。
貴族の住居の形が <big>寝殿造</big>(しんでんづくり) になる。
絵画には、日本の風景などを書いた <big>大和絵</big>(やまとえ) が出てくる。寝殿造りの屋敷の屏風(びょうぶ)や ふすま などに大和絵が描かれた。絵巻物などにも大和絵は描かれた。
{{clear}}
[[ファイル:Chouju thief.jpg|thumb|right|300px|鳥獣戯画の一部分]]
大和絵の作品では、<big>鳥獣戯画</big>(ちょうじゅうぎが)や<big>源氏物語絵巻</big>(げんじものがたりえまき)などが有名です。
鳥獣戯画(ちょうじゅうぎが)は、当時の社会を風刺するために、かえるやさる、うさぎなどの動物たちを擬人的に描いて表現した絵です。
{{clear}}
文学の物語では『源氏物語』(げんじものがたり)という創作(そうさく)の物語が、貴族の紫式部(むらさきしきぶ)によって描かれました。この源氏物語は、主人公は貴族の「光源氏」という人物で、光る人物を中心にして貴族の恋愛などを書いています。
なお、名前が後の幕府の源氏(げんじ)と似ていますが、べつに光源氏は武士ではありません。源氏物語が出来た1007年ごろは、まだ鎌倉幕府はありません。紫式部は女です。藤原為時(ためとき)の娘です。
大和絵にも、「源氏物語絵巻」(げんじものがたりえまき)が、描かれました。絵画を使って、物語を絵で表したものを絵巻物(えまきもの)といいます。
随筆では、貴族の清少納言(せいしょうなごん)が『枕草子』を記しました。清少納言が 日常生活や自然を観察して、感想を述べたものです。
清少納言は女です。
* 浄土教(じょうどきょう)
[[Image: Kuya Portrait.JPG |thumb|right|200px|空也の像 (六波羅蜜寺) ]]
平安時代の中ごろは、伝染病が流行ったり(はやったり)、災害が起きたりしたので、社会の不安が大きくなった。このため、宗教では、人々に安心を与える宗教が、平安時代の半ば(なかば)ごろから、流行る(はやる)ようになる。
[[ファイル:Uji Byodo-in Phönixhalle Innen Amida-Buddha 2.jpg|thumb|200px|left|阿弥陀如来像 (平等院・鳳凰堂)]]
浄土教という信仰が流行るようになる。阿弥陀如来(あみだにょらい)にすがり、「{{ruby|南無阿弥陀仏|なむあみだぶつ}}」と念仏を唱えていれば、死後には、極楽浄土へ行ける、という信仰である。
浄土教を布教した人物では、<big>空也</big>(くうや)という人物が有名である。空也(生:903年〜没:972年)は、10世紀中ごろ、諸国をまわり、庶民に浄土教を布教していた。人が集まる市(いち)で布教していたことから、空也は、市聖(いちのひじり)とも呼ばれます。
仏教の教えによると、1052年は釈迦が死んでから1000年後ということらしく、死後1000年ともなると釈迦の教えがおとろえて世の中が悪くなるという思想があり、この思想は <big>末法</big>(まっぽう) と言われた。この末法思想もあって、浄土信仰は広まっていった。
{{clear}}
[[ファイル:Konjikido-Ooido.jpg|right|240px|thumb|金色堂。外側の覆堂(おおいどう)]]
地方にも浄土教がひろまり、各地に阿弥陀仏をまつる寺院である 阿弥陀堂(あみだどう) がたてられた。たとえば岩手県の平泉(ひらいずみ)には <big>中尊寺金色堂</big>(ちゅうそんじ こんじきどう)という阿弥陀堂 が、たてられた。大分県に富貴寺大堂(ふきじ おおどう)が、たてられた。
{{clear}}
=== 平安時代の武士たち ===
平安時代には、地方の豪族たちは私有地を広げていったのであった。
9世紀の中ごろから、豪族や有力な農民たちは、自分たちの土地や財産をまもるためには、兵力をたくわえていった。一族の者や、手下の農民たちに武装させるようになった。
このようにして、<span style="color:red"><big>武士</big></span>が、できていった。
武士たちは、一族の かしら を棟梁(とうりょう)として、それぞれの一族ごとに<big>武士団</big>を結成していった。
貴族の中にも、これにならい、武士団をつくり棟梁となって兵を指揮する者が、地方貴族から出てきた。源氏や平氏などが、そのような貴族の武士である。
源氏も平氏も天皇の子孫です。
武士の中には、朝廷に対して反乱を起こす者も出てきました。
* 平将門(たいらの まさかど)の乱
10世紀の935年に、平将門(たいらの まさかど)が反乱を関東地方で起こします。朝廷は、ほかの武士の助けを借りて、将門の反乱を鎮圧します。
* 藤原純友(ふじわらの すみとも)の乱
939年には、藤原純友(ふじわらの すみとも)が反乱を瀬戸内海の周辺で起こし、海賊らを率いて反乱を起こします。朝廷は、ほかの武士の助けを借りて、反乱を鎮圧します。
朝廷の力だけでは、この2つの反乱をしずめることはできず、ほかの武士の協力をえる必要があり、これらの反乱により武士の影響力が増すことになった。
この2つの反乱のことを、起きた年の年号をとり 承平・天慶の乱(じょうへい・てんぎょう の らん) と言う。
* 東北地方での反乱
10世紀の1051年には東北地方で反乱が起き、安倍頼時らが反乱を起こします。この反乱の鎮圧を、源氏である源頼義(みなもとのよりよし)および源義家(みなもとのよしいえ)らの兵が鎮圧します。この反乱と鎮圧の争乱を 前九年の役(ぜんくねん の えき) と言います。
源氏が鎮圧を行ったので、関東地方では源氏の影響力が強まります。
=== 院政 ===
:(いんせい)
11世紀の半ばすぎごろになると、藤原氏の影響力は弱まり、天皇には、藤原氏とは関係のうすい <big>後三条天皇</big>(ごさんじょうてんのう) が即位した。天皇は、藤原氏の政治に不満をもつ貴族も用いて、政治の実権を天皇にもどした。
天皇は1069年には荘園整理令(しょうえん せいりれい)を出し、不法な荘園を取りしまった。
次の天皇の <big>白河天皇</big>(しらかわ てんのう) も、天皇中心の政治を行った。
1086年には生存中(せいぞんちゅう)に次の天皇の堀河天皇(ほりかわ てんのう)に位をゆずり、白河 元・天皇は上皇として、政治の実権をにぎります。
上皇の住む住居が 院(いん) と呼ばれていたので、上皇による政治を <big>院政</big>(いんせい) と言います。
堀河天皇の死後は、白河の孫である 鳥羽天皇(とばてんのう) が即位する。この鳥羽天皇も白河上皇の次の鳥羽上皇(とば じょうこう)になった。
鳥羽上皇の次は、後白河 元・天皇が後白河上皇となり、院政を行った。
このようにして院政が100年ばかり、続いて(つづいて)いく。
いっぽう、藤原氏の権力は、おとろえていった。
さて、天皇家の内部でも天皇と上皇との権力をめぐって対立が起きてくる。
これにくわえて、藤原氏の内部の対立も加わり、ついに1156年には戦乱が起きる。
<big>保元の乱</big>(ほうげん の らん)である。
上皇の側の崇徳上皇(すとく じょうこう)には、左大臣の藤原頼長(ふじわらの よりなが)、平氏の平忠正(たいらの ただまさ)、源氏の源為義(みなもとの ためよし)が、従った(したがった)。
[[ファイル:Taira no Kiyomori.jpg|thumb|200px|平清盛(たいらの きよもり)。]]
天皇の側の後白河天皇には、関白の藤原忠通(ふじわらの ただみち)、平氏の<span style="color:red"><big>平清盛</big></span>(たいらの きよもり)、源次の源義朝(みなもとの よしとも)が、従った。
勝ったのは、御白河天皇の側である。
つまり平清盛と源義朝が加わった側が勝っている。
この乱の後、1159年に、保元の乱での恩賞に不満をいだいた源義朝が兵をあげ乱をおこしたが、平清盛らの軍に鎮圧される。これが <big>'''平治の乱'''</big>(へいじのらん) です。
この件により、平氏の影響力が強まります。
* 平氏の台頭(たいとう)
清盛は、武士の力を利用しようとする後白河上皇との関係を深めます。
1167年には、清盛は武士としては初めての太政大臣(だじょう だいじん)になります。
{{clear}}
==脚注==
<references />
== 関連項目 ==
* 次へ進む:[[中学受験社会/歴史/中巻]]
{{スタブ|小}}
{{デフォルトソート:ちゆうかくしゆけんれきし1}}
[[Category:社会]]
[[Category:中学受験参考書|れきし1]]
{{カテゴリ準備|中学受験社会|小学校社会|ちゆうかくしゆけんれきし1|れきし1}}
d3ccw97pzngaf2ha9824dpf3dtdmap9
小学校社会/6学年/歴史編/上巻
0
28428
304881
304824
2026-10-19T09:48:57Z
Kontributor 2K
91415
([[c:GR|GR]]) [[c:COM:FR|File renamed]]: [[File:Yoshinogari-iseki tateanashiki-juukyo.JPG]] → [[File:Yoshinogari-iseki tateana-tatemono.jpg]] [[c:COM:FR#FR2|Criterion 2]] (meaningless or ambiguous name) · 「竪穴式住居」の表記は完全に誤っているわけではないが、現代の日本考古学界ではほぼ使われていない。現代的な表記(竪穴建物 tateana-tatemono)を提案。
304881
wikitext
text/x-wiki
{{Pathnav|メインページ|小学校・中学校・高等学校の学習|小学校の学習|小学校社会|小学校社会/6学年|小学校社会/6学年/歴史編|frame=1}}<!-- 当ページを編集される方は、学習指導要領解説社会編や検定教科書を参考に編集してください。また、小学生向けであることに留意してください。 -->
このページは旧版です
このページでは、日本の歴史について、{{Ruby|安土桃山|あづちももやま}}時代までを学びましょう。{{Ruby|江戸|えど}}時代{{Ruby|以降|いこう}}についての{{ruby|下巻|げかん}}は[[小学校社会/6学年/歴史編/下巻|こちら]]です。
また、人物についてくわしく学ぶ「人物事典」は[[小学校社会/6学年/歴史編/人物事典|こちら]]です。政治や日本の世界へのかかわりについて学ぶ「政治・国際編」は[[小学校社会/6学年/政治・国際編|こちら]]です。
== はじめに ==
=== 時代の表し方 ===
[[File:日本の時代の年表.png|450px|thumb|時代の流れ]]
* 時代
** 歴史学習で使う時代の表し方には、まず「時代」があります。これは、「{{ruby|奈良|なら}}時代」「{{ruby|江戸|えど}}時代」などと、大きなことがら(政治の{{Ruby|拠点|きょてん}}が移る,{{Ruby|天皇|てんのう}}が変わるなど)ごとに時代を変えていく表し方です。なお、室町時代のうち1392年までを「{{Ruby|南北朝|なんぼくちょう}}時代」、1467年{{Ruby|以降|いこう}}を「{{Ruby|戦国|せんごく}}時代」ということもあります。
* 西暦
** {{ruby|西暦|せいれき}}は、[[w:イエス・キリスト|イエス・キリスト]]が生まれたとされる年を西暦1年として年を表す表し方です。現在は西暦{{CURRENTYEAR}}年です。
* 世紀
** {{ruby|世紀|せいき}}とは、100年ごとに区切って年を数える単位です。西暦1年から西暦100年までが1世紀です。西暦101年から西暦200年までが2世紀です。西暦2001年から西暦2100年までを21世紀といいます。たとえば、105年は2世紀、1853年は19世紀です。
== 大昔の{{Ruby|暮|く}}らしとくにづくり ==
;大昔の{{Ruby|暮|く}}らし
[[File:Jomon Vessel with Flame-like Ornamentation, attributed provenance Umataka, Nagaoka-shi, Niigata, Jomon period, 3000-2000 BC - Tokyo National Museum - DSC05620.JPG|thumb|250px|縄文土器]]
いまから1万5000年ほど前になると、{{ruby|氷河|ひょうが}}期が終わり、地球の気候があたたかくなりました。
そして、いまから1万2000年ほど前のころ、日本列島に住んでいる人たちは、海や川の近くに住んで、石や{{ruby|骨|ほね}}でつくった{{ruby|刃|は}}物や{{ruby|槍|やり}}や矢をつかって、シカやイノシシなどの動物を、とらえて食料にしていました。
同じころ、日本列島に住んでいた人たちは、'''{{ruby|土器|どき}}'''をつくるようになりました。その土器に縄の{{ruby|模様|もよう}}がついているので、この時代に作られた土器を {{ruby|縄文|じょうもん}}土器 といいます。
この土器は、食べ物を{{ruby|煮炊|にた}}きしたりするための、今でいう なべ のような物です。
今から約1万2000年前から約3,000年前までの時代のことを、 '''{{Ruby|縄文|じょうもん}}時代''' といいます。
[[File:Yoshinogari-iseki tateana-tatemono.jpg|thumb|250px|right|弥生時代の竪穴建物の復元、{{ruby|佐賀|さが}}県{{ruby|吉野ヶ里|よしのがり}}遺跡]]
縄文時代の人の家の建物は、'''{{ruby|竪穴|たてあな}}建物''' といい地面に穴をほりさげたあとに、柱を立て、草ぶきの屋根をかけただけの住居にすんでいました。
[[File:Kasori midden preserve north.jpg|thumb|200px|加曽利貝塚、北貝{{ruby|層|そう}}断面]]
縄文時代の人の集落があったと思われる場所からは、多くの貝がらが{{ruby|発掘|はっくつ}}されています。
この貝がらが多く発掘された、集落だったと思われる場所を {{ruby|貝塚|かいづか}} といいます。貝塚からは、貝がら以外にも、動物の{{ruby|骨|ほね}}や、魚の骨などが出土することもよくあります。
なお、貝塚には、たとえば{{ruby|東京|とうきょう}}都の{{ruby|大森|おおもり}}貝塚や、{{ruby|福井|ふくい}}県の{{ruby|鳥浜|とりはま}}貝塚や、{{ruby|千葉|ちば}}県の{{ruby|加曽利|かそり}}貝塚などがあります。
なお、貝塚や石器などに限らず古い時代の物が見つかる場所のことを、 '''{{ruby|遺跡|いせき}}''' といいます。
遺跡などから出土する物によって、その時代の{{ruby|暮|く}}らしもわかります。
魚{{ruby|釣|つ}}りに必要な、「釣り{{ruby|針|ばり}}」と「もり」が、縄文時代の遺跡から出土することも多く、漁もしていたことがわかります。
なお、動物の骨は、とがらせて使うことが多く、とがらせたものを {{ruby|骨角器|こっかくき}} といいます。骨角器のようなとがった骨も出土することがあります。狩りなどで、槍の先の武器として使ったりすることが多かったものと思われます。
[[Image:JomonStatue.JPG|thumb|right|200px|土偶({{ruby|亀ヶ岡|かめがおか}}遺跡)]]
縄文の{{ruby|遺跡|いせき}}から、'''{{ruby|土偶|どぐう}}''' という、土を焼き固めた、女性のような形の人形が見つかる場合があります。
土偶は、食料が増えることや女性の安産をいのったものだと考えられています。
[[ファイル:Reconstructed Pillar Supported Structure.jpg|right|thumb|300px|六本柱建物(復元)]]
{{ruby|青森|あおもり}}県の '''{{ruby|三内丸山遺跡|さんないまるやまいせき}}''' は、約5500年前から約1500年前の間の集落だったということがわかっています。
この三内丸山遺跡から、木を{{ruby|栽培|さいばい}}した{{ruby|形跡|けいせき}}が見つかっています。
つまり、すでにこの時代から農業をしていたことがわかります。
また、多くの土器や石器のあとも見つかっています。
大型の、{{ruby|掘立|ほった}}て柱も、見つかっています。掘立て柱の{{ruby|用途|ようと}}はまだ分かっていません。
ヒスイの玉や、{{ruby|黒曜石|こくようせき}}でできた{{ruby|刃|は}}物のようなものも見つかっています。
ヒスイは、この地ではとれず、新潟県の{{ruby|糸魚|いとい}}川などの他の土地でとれるので、他の{{ruby|地域|ちいき}}と交易があったのだろう、と考えられています。
この三内丸山遺跡は、縄文時代を知る遺跡として代表的な遺跡です。
{{ruby|縄文|じょうもん}}時代の次の時代は、{{ruby|弥生|やよい}}時代です。
;{{ruby|弥生|やよい}}時代
'''~米づくりがはじまる~'''
[[Image:YayoiJar.JPG|right|250px|thumb|{{ruby|弥生|やよい}}土器]]
いまから2400年ぐらい前のころ、ユーラシア大陸や{{ruby|朝鮮|ちょうせん}}半島あたりの人々から、米による{{ruby|稲作|いなさく}}が、日本に伝わりました。
米作りは、まず西日本につたわり、西日本から東日本へと、米作りが広がっていき、東北地方にまで広がりました。
この時代の農具の多くは、まだ木製です。ただし、米作りとともに鉄器の技術も日本に伝わっているので、一部では鉄を用いた農具も見つかっています。
{{ruby|穂|ほ}}から米をとるときに、 {{ruby|石包丁|いしぼうちょう}} が、使われました。
* {{ruby|弥生|やよい}}土器
** また、このころ、土器は、{{ruby|縄文|じょうもん}}土器よりも うすくて かたい '''{{ruby|弥生|やよい}}土器''' をつくるようになりました。「{{ruby|弥生|やよい}}」とは、学者が発見した場所が、{{ruby|東京|とうきょう}}の弥生町(現在の{{ruby|文京|ぶんきょう}}区)だったので、弥生の土器という意味で、「弥生土器」とよばれています。
** 縄文土器と弥生土器の形のちがいについては、弥生時代のころには、土器をつくる技術が進歩したので、土器の形が かわったのだろう、と考えられています。
* {{ruby|高床|たかゆか}}倉庫
** 米は、 '''{{ruby|高床|たかゆか}}倉庫''' で保管されていました。
高床倉庫が高いのは、ねずみ などの動物が入りづらくするためです。なお、風通しをよくするため、という理由も考えられます。ねずみの害を防ぐという理由の有力な{{ruby|根拠|こんきょ}}として、地面から床までの柱の、柱のてっぺんに、「かえし」がついていて、動物などが登れないように工夫した高床倉庫が見つかっています。
<gallery widths="200px" heights="200px">
Image:Takayukasikisouko.JPG|高床倉庫 妻側より(復元、{{ruby|神奈川|かながわ}}県、{{ruby|大塚|おおつか}}・{{ruby|歳勝土遺跡|さいかちどいせき}})
File:Yoshinogari-iseki takayukashiki-souko.JPG|高床倉庫(復元、{{ruby|佐賀|さが}}県{{ruby|吉野ヶ里遺跡|よしのがりいせき}})
</gallery>
{{ruby|弥生|やよい}}時代の多くの住まいは、{{ruby|竪穴|たてあな}}建物です。
{{clear}}
* 金属器
[[ファイル:DotakuBronzeBellLateYayoi3rdCenturyCE.jpg|thumb|銅鐸]]
大陸や{{ruby|朝鮮|ちょうせん}}半島から米作りがつたわるとともに、青銅器や鉄器などの金属器が、伝わります。そして、日本でも、弥生時代中に、金属器がつくられるようになりました。
青銅とは、銅 と すず(金属の1つ)を、とかしてまぜあわせた金属でつくられた、合金です。
青銅器には、銅{{ruby|剣|けん}}や、銅{{ruby|矛|ほこ}}、銅{{ruby|鐸|たく}}、銅{{ruby|鏡|きょう}}などが、あります。
<gallery widths="200px" heights="200px">
File:Koujindani Remains 03.JPG|銅矛とともに出土した銅鐸({{ruby|島根|しまね}}県・{{ruby|出雲|いづも}}市の{{ruby|荒神谷|こうじんだに}}遺跡)。{{ruby|古墳|こふん}}時代の遺跡。
ファイル:YayoiBronzeSpearTip1-2ndCenturyKyushu.jpg|弥生時代の銅矛(九州で出土、1~2世紀)
</gallery>
青銅器は、おもに祭りに使われるようになります。
いっぽう、鉄器は、農具や武器などの実用品につかわれるようになります。
* {{ruby|登呂遺跡|とろいせき}}
[[File:2004年08月25日 登呂遺跡の復元竪穴状平地建物.jpg|thumb|240px|right|登呂遺跡。復元、竪穴状平地建物。]]
{{ruby|静岡|しずおか}}県にある、{{ruby|登呂遺跡|とろいせき}}からは、{{ruby|竪穴|たてあな}}建物に似た平地建物と、{{ruby|高床|たかゆか}}倉庫が見つかっています。{{ruby|水田|すいでん}}のあともあります。
* {{ruby|吉野ケ里遺跡|よしのがりいせき}}
[[File:Yoshinogari-iseki zenkei.JPG|thumb|440px|right|吉野ケ里遺跡,遠景]]
{{ruby|佐賀|さが}}県にあります。
まわりを{{ruby|濠|ほり}}でかこまれた {{ruby|環壕|かんごう}}集落 です。
矢がささった{{ruby|人骨|じんこつ}}も見つかっています。これらのことから、人々のあいだで争いがあったことが予想できます。
濠の内側からは、多くの高床倉庫が見つかっています。
おそらくは、米作りによって、食料生産が増えたので人口が多くなって、
:それぞれの集落で、多くの人口を養うために米の生産量を増やす必要が生じて、
:そのため、土地や水が必要になり、
:集落どうしで、土地や水をめぐっての争いが起きたのだろうと思われています。
このような争いが、身分の差を作っていった理由の一つだとも、思われています。
この吉野ケ里遺跡は、弥生時代を知る遺跡として、代表的な遺跡です。
;日本の統一へ
* 邪馬台国
中国大陸の3世紀ごろの歴史書では、日本の3世紀ごろは、国の数が30あまりになっていることが分かりました。
そして、日本にはこれら30あまりの国をしたがえた {{ruby|邪馬台国|やまたいこく}} がありました。邪馬台国で、代表的な地位にあった人物は、'''{{ruby|卑弥呼|ひみこ}}''' という女性です。{{ruby|彼女|かのじょ}}の政治は、まじないやうらないによるものだったようです。
邪馬台国の場所は、わかっていません。
邪馬台国は、{{ruby|魏|ぎ}} に、外交の使いを送りました。
<!-- 「魏」という国名は、検定教科書に無く、範囲外だが、検定教科書どおりに「中国」というのも紛らわしいので(日本の中国・四国地方と混同の恐れあり)、本wikiでは「魏」を使う。なお、日本文教出版でこの時代を紹介し、chinaについては日本文教出版は「中国」と表記。東京書籍は他の時代だが「大陸」などで表現をゴマかす。 隋や唐について、光村は「中国(隋)」や「中国(唐)」の表記。-->
[[File:King of Na gold seal.jpg|260px|thumb|left|金印。]]
57年、日本は、{{ruby|魏|ぎ}}の{{ruby|皇帝|こうてい}}から、'''金印'''などを受け取りました。
<!-- 日本文教出版『日本の歩み』検定教科書で、金印を紹介。 -->
{{-}}
;{{ruby|古墳|こふん}}時代
[[画像:NintokuTomb Aerial photograph 2007.jpg|thumb|{{ruby|仁徳天皇陵|てんのうりょう}}と思われている{{ruby|大山|だいせん}}古墳。前方後円墳、{{ruby|大阪|おおさか}}府{{ruby|堺|さかい}}市]]
3世紀から4世紀ごろになると、王や{{ruby|豪族|ごうぞく}}をほうむる大きな墓がつくられはじめました。
このような、大きな王などをほうむった大きな墓を '''{{ruby|古墳|こふん}}'''といいます。
古墳は,特に{{ruby|近畿|きんき}}地方から{{ruby|瀬戸内海沿岸|せとないかいえんがん}}の{{ruby|地域|ちいき}}に見られます。
この、3世紀ごろから7世紀ごろの時代を '''古墳時代''' といいます。
古墳時代の文化のことを 古墳文化 といいます。
古墳には、いろいろな形のものがあります。円形に{{ruby|盛|も}}り上がった古墳を{{ruby|円墳|えんふん}}といいます。四角く盛り上がった古墳を{{ruby|方墳|ほうふん}} といいます。円墳と方墳があわさったような、かぎ{{ruby|穴|あな}}のような形の古墳を {{ruby|前方後円墳|ぜんぽうこうえんふん}} といいます。
{{ruby|大阪|おおさか}}府{{ruby|堺|さかい}}市にある {{ruby|大仙|だいせん}}(大山)古墳 は、日本で最大の面積の古墳です。
大仙古墳は、まわりが3重の{{ruby|濠|ほり}}で、かこまれています。
* 古墳の{{ruby|副葬|ふくそう}}品
[[File:KofunSoldier.jpg|thumb|left|140px|はにわ。{{ruby|武装|ぶそう}}男子立像({{ruby|群馬|ぐんま}}県{{ruby|太田|おおた}}市出土)]]
[[画像:HaniwaHorse.JPG|thumb|190px|はにわ。(馬形{{ruby|埴輪|はにわ}})]]
古墳からは、鏡や玉、{{ruby|剣|つるぎ}}などの副葬品が発見されている。ほかにも、'''はにわ''' という、土を焼いて作られた人型や馬型などの置き物が発見されています。
{{clear}}
==== {{ruby|大和政権|やまとせいけん}} ====
{{ruby|奈良|なら}}県の{{ruby|大和|やまと}}地方には、大きな{{ruby|古墳|こふん}}が多く発見されています。このことからこの地方に、有力な勢力があったと考えられている。この地方の有力な{{ruby|豪族|ごうぞく}}たちの政治勢力を '''{{ruby|大和政権|やまとせいけん}}''' といいます。
この大和政権の政府を 大和{{ruby|朝廷|ちょうてい}} と言い、その最高{{ruby|権力|けんりょく}}者を {{ruby|大王|おおきみ}} といいます。
[[File:Inariyama sword.JPG|thumb|350px|right|真ん中の、{{ruby|縦|たて}}に長いものが、{{ruby|発掘|はっくつ}}された{{ruby|鉄剣|てっけん}}。]]
{{ruby|埼玉|さいたま}}県の{{ruby|稲荷山|いなりやま}}古墳から見つかった{{ruby|鉄剣|てっけん}}には、「ワカタケル大王」という名が{{ruby|刻|きざ}}まれた文が発見されました。この文から、この地方の王は、ワカタケル大王に使えていたことがわかります。
{{ruby|熊本|くまもと}}県の {{ruby|江田船山|えだふなやま}}古墳 にも、一部が読めなくなっていましたが、「ワ□□□ル大王」という同じ名の刻まれた鉄刀があり、ワカタケル大王の支配する{{ruby|領域|りょういき}}が、{{ruby|関東|かんとう}}地方から{{ruby|九州|きゅうしゅう}}までの広い{{ruby|範囲|はんい}}におよんでいたことがわかります。
{{コラム|ヤマトタケルの物語|
{{ruby|皇子|おうじ}}であるヤマトタケルノミコトは、{{ruby|武勇|ぶゆう}}にすぐれていました。かれは父の命令で九州に行き、{{ruby|朝廷|ちょうてい}}にしたがわない{{ruby|豪族|ごうぞく}}である クマソ をたおしました。
それから{{ruby|関東|かんとう}}に行き、広い野原で焼きうちにあってしまいましたが、きりぬけて、関東を{{ruby|征服|せいふく}}しました。
しかし、タケルは帰る{{ruby|途中|とちゅう}}で、病気で なくなりました。そして、タケルは大きな白い鳥になって、{{ruby|大和|やまと}}のほうへ飛んでいきました。
}}
* {{ruby|仏教|ぶっきょう}}の伝来
また、{{ruby|仏教|ぶっきょう}}も、外国から伝わりました。538年に、{{ruby|朝鮮|ちょうせん}}半島の{{ruby|百済|くだら}}という国の王から、仏像や{{Ruby|経典|きょうてん}}が、日本の{{ruby|天皇|てんのう}}に送られました。
{{clear}}
== {{ruby|天皇|てんのう}}を中心とした国づくり ==
~{{ruby|聖徳太子|しょうとくたいし}}の登場~
{| class="wikitable" style="float:right"
|+ {{ruby|聖徳太子|しょうとくたいし}}
| 年 || 年{{ruby|齢|れい}} || {{ruby|行|おこな}}ったこと || 社会のできごと
|-
! style="text-align: left;" colspan="4" | 6世紀
|-
| || || || {{ruby|豪族|ごうぞく}}どうしが争う
|-
|574 || 1才 || 聖徳太子が生まれる ||
|-
| || || || {{ruby|蘇我|そが}}氏が{{ruby|権力|けんりょく}}をにぎる
|-
|589 || || || {{ruby|隋|ずい}}が中国を統一する
|-
|593 || 20才 || 聖徳太子が{{ruby|摂政|せっせい}}になる ||
|-
! style="text-align: left;" colspan="4" |7世紀
|-
|603 || 30才 || {{ruby|冠位十二階|かんいじゅうにかい}}を定める ||
|-
|604 || 31才 || {{ruby|十七条|じゅうななじょう}}の{{ruby|憲法|けんぽう}}を定める ||
|-
|607 || 34才 || {{ruby|小野妹子|おののいもこ}}を{{ruby|遣隋使|けんずいし}}として送る ||
|-
|618 || || || {{ruby|隋|ずい}}がほろんで{{ruby|唐|とう}}になる
|-
|622 || 49才 || 聖徳太子がなくなる ||
|-
|645 || || || {{ruby|大化|たいか}}の改新
|-
|}
<!-- ネットではデマで「今の検定教科書に『聖徳太子』の名前は無く、『厩戸王』になっている。」というデマがありますが、
日本文教出版、『日本の歩み 小学校の社会6上』、平成22年3月10日 検定済み版、平成25年2月10日発行、30ページ・31ページ、
東京書籍、『新しい社会6上』、27ページ、平成22年2月10日 検定済み版、平成26年1月15日 発行、27ページ、
光村書店、『社会6』、平成22年3月10日 検定版、平成26年2月5日 発行、32ページ、
などに、堂々と『聖徳太子』と書いてあります。デマに騙されないようにしましょう。 -->
日本では、6世紀ごろから、{{ruby|豪族|ごうぞく}}の{{ruby|影響力|えいきょうりょく}}が強まりました。豪族の{{ruby|反乱|はんらん}}や、豪族どうしの争いも起こり始めました。
この、豪族どうしの争いで、最終的に587年ごろ、{{ruby|蘇我馬子|そがのうまこ}}が勝ちました。
そして、女性である '''{{ruby|推古天皇|すいこてんのう}}''' による政治が行われましたが、蘇我氏の{{ruby|影響|えいきょう}}下にありました。
[[File:Prince Shotoku face2.svg|180px|thumb|聖徳太子]]
'''{{ruby|聖徳太子|しょうとくたいし}}'''({{ruby|厩戸王|うまやどのおう}})は、おばの推古天皇の政治を{{ruby|補助|ほじょ}}する {{ruby|摂政|せっしょう}}という仕事につきました。
:※ なお当時、「摂政」という用語は無い。のちの時代に、幼少の天皇や女性天皇などを助ける仕事のことを「摂政」と呼ぶようになった。
聖徳太子は蘇我馬子と協力し、これらの{{ruby|改革|かいかく}}をすすめました。
聖徳太子らによる改革のひとつに、'''{{ruby|十七条|じゅうしちじょう}}の{{ruby|憲法|けんぽう}}'''の制定があります。
* 十七条の憲法
役人の心がまえを記したものです。豪族などに対して、役人としての心がまえを述べたものでしょう。
{| style="border:1px solid #777; background-color:#ffffff; width:100%; margin:0.25em 0"
| style="padding:0.25em 0.5em" |'''十七条の憲法(要約)'''
1条 争いをやめ、なかよくしなさい。
2条 仏教を厚く保護しなさい。
3条 {{Ruby|天皇|てんのう}}の命令には{{ruby|従|したが}}いなさい。
5条 {{Ruby|裁判|さいばん}}は、公正に行いなさい。
12条 農民などの{{ruby|民|たみ}}から、勝手に税やみつぎ物をとってはいけません。
17条 重要なことを決めるときには、話し合いで決めなさい。
|}
聖徳太子らの行った重要な{{ruby|政策|せいさく}}には、外交政策もあります。ユーラシア大陸の一部を支配していた '''{{ruby|隋|ずい}}''' という国との外交です。
607年に、外交の使者として '''{{ruby|小野妹子|おののいもこ}}''' たちを 隋に送ります。この使者を '''{{ruby|遣隋使|けんずいし}}''' といいます。
なお、小野妹子は男だと考えられています。
外交の結果、日本は隋と国交を結びました。また、隋の文化や制度は日本よりも進んでいたので、日本は多くの文化や制度を取り入れました。
* {{ruby|冠位十二階|かんいじゅうにかい}}の制
聖徳太子らによる改革には、'''{{ruby|冠位十二階|かんいじゅうにかい}}の制'''というものもあります。これは、家がらに関係なく有能な役人を採用するための制度です。能力や手がらによって、役人に位が与えられます。位は、一代かぎりです。
役人の位を12{{ruby|段階|だんかい}}に分けたので、このような名前で{{ruby|呼|よ}}ばれます。
<!-- 東京書籍の教科書で、冠位十二階を紹介している。 -->
* {{Ruby|法隆寺|ほうりゅうじ}}の{{Ruby|建立|こんりゅう}}
[[ファイル:Horyu-ji08s3200.jpg|thumb|法隆寺。{{ruby|金堂|きんどう}}と{{ruby|五重塔|ごじゅうのとう}}]]
[[File:Shakyamuni Triad Horyuji2.JPG|thumb|法隆寺の{{ruby|釈迦三尊像|しゃかさんぞんぞう}}(金堂)]]
聖徳太子は、607年に, 現在の{{ruby|奈良|なら}}県に{{Ruby|法隆寺|ほうりゅうじ}}を建てさせました。法隆寺は、現存する木造建築としては世界最古です。法隆寺は、1993年に世界文化{{ruby|遺産|いさん}}に登録されました。
;さまざまな{{ruby|改革|かいかく}}
622年に、{{ruby|聖徳太子|しょうとくたいし}}が{{ruby|亡|な}}くなりました。聖徳太子の死後には、{{ruby|蘇我|そが}}氏の{{Ruby|権力|けんりょく}}が強まりました。
{{ruby|蘇我馬子|そがのうまこ}}も、626年に、なくなりました。
まず、蘇我馬子の子である{{ruby|蘇我蝦夷|そがのえみし}}の権力が強まりました。さらに、馬子の孫であり、蝦夷の子である 蘇我{{Ruby|入鹿|いるか}} の権力が強まりました。
'''645年'''に{{ruby|皇族|こうぞく}}の'''{{ruby|中大兄皇子|なかのおおえのおうじ}}'''と、{{ruby|豪族|ごうぞく}}の '''{{ruby|中臣鎌足|なかとみのかまたり}}''' との協力により、蘇我入鹿は殺害されました。蝦夷は、この事件を知り、自殺しました。
* {{Ruby|大化|たいか}}の{{Ruby|改新|かいしん}}
このあと、中大兄皇子らが権力を取り、さまざまな政治{{Ruby|改革|かいかく}}を行いました。この改革を {{Ruby|大化|たいか}}の{{Ruby|改新|かいしん}} といいます。645年に元号を「大化」と定めたので、この一連の改革は大化の改新と呼ばれています。
「大化」という元号により、日本では、はじめて元号が定められました。これは、中国を手本としたものでした。
* {{Ruby|公地公民|こうちこうみん}}
これまでは{{ruby|豪|ごう}}族や皇族たちが持っていた土地は、すべて朝廷のもの(朝廷が管理する)になりました。これを '''{{Ruby|公地公民|こうちこうみん}}''' といいます。
* {{Ruby|戸籍|こせき}}をつくる
人民の {{Ruby|戸籍|こせき}} を作り、それにもとづいて国が人々に土地を{{Ruby|与|あた}}え、仕事をさせました。
この当時の戸籍は、人民を1人ずつ、{{Ruby|公文書|こうぶんしょ}}に登録することで、住所や家族の名や年{{ruby|齢|れい}}、家の世帯主などを{{ruby|把握|はあく}}するためのものでした。
* {{Ruby|租|そ}}・{{Ruby|調|ちょう}}・{{ruby|庸|よう}}
{| class="wikitable" style="float:right"
|+ <span style="font-size: large;">{{ruby|一般|いっぱん}}の人々の{{ruby|負担|ふたん}}</span>
! colspan="2" | <span style="font-size: large;">種類</span> ||<span style="font-size: large;">内容</span>
|-
| rowspan="3" |<span style="font-size: large;"> 税 </span>
|<span style="font-size: large;">{{Ruby|租|そ}}</span>
|{{ruby|収穫|しゅうかく}}の約3~10%の{{ruby|稲|いね}}を{{ruby|納|おさ}}める。
|-
|<span style="font-size: large;">調</span>
|地方の特産物(糸、{{Ruby|絹|きぬ}}、わた、塩、<br />魚、海そう、鉄など)を納める。
|-
|<span style="font-size: large;">庸</span>
|都で年10日ほど働くか、布を納める。
|-
| rowspan="1" |<span style="font-size: large;"> {{ruby|兵役|へいえき}} </span>
|<span style="font-size: large;">{{ruby|防人|さきもり}}</span>
|九州北部で兵士を3年行う。
|-
|}
税の種類です。
:{{Ruby|租|そ}}とは、田の{{ruby|収穫|しゅうかく}}量の、約3~10%を、国に{{ruby|納|おさ}}める税です。
:{{Ruby|調|ちょう}}とは、地方の特産物を、国に納める税です。
:{{Ruby|庸|よう}}とは、都に出てきて年10日ほど働くか、布を納める税です
このほかに、{{Ruby|防人|さきもり}}という、九州で兵士として{{ruby|警備|けいび}}を行う、{{Ruby|兵役|へいえき}}の仕事がありました。
この防人のつらさを歌った歌として、つぎのような歌が残っています。
<div style="border:1px solid #000000;">
'''さきもりの歌''' (『{{Ruby|万葉集|まんようしゅう}}』より )
:: {{中付きルビ|3|唐|から|衣|ころも|裾|すそ}}に取りつき泣く子らを置きてそ来ぬや{{Ruby|母|おも}}なしにして
::(現代語{{Ruby|訳|やく}})唐衣のにすがって泣きつく子どもたちを、(防人に出るため)置いてきてしまったなあ。あの子たちには母もいないのに。
</div>
{{clear}}
* {{Ruby|大宝律令|たいほうりつりょう}}
701年に、 '''{{Ruby|大宝律令|たいほうりつりょう}}''' という、税金や都についての{{ruby|法律|ほうりつ}}が完成しました。
<!-- ※日本文教出版の教科書で、「大宝律令」という言葉が紹介されている。-->
;{{ruby|奈良|なら}}時代
[[File:Heijokyo.jpg|right|500px|平城京のイメージ図]]
710年に、都が{{ruby|奈良|なら}}の {{ruby|平城京|へいじょうきょう}} へと移りました。
この都が平城京にあった時代を '''{{ruby|奈良|なら}}時代''' といいます。
<!-- 厳密にはのちの794年に平安京に移る前に、長岡京に移っています。 -->
平城京は、{{ruby|碁盤|ごばん}}の目のように、区画が整理されています。
{{clear}}
{{clear}}
* 古事記と日本書紀
712年に『'''{{ruby|古事記|こじき}}'''』という{{Ruby|天皇家|てんのう}}や{{Ruby|貴族|きぞく}}などに伝わる、神話の時代をまとめた書がつくられました。
<!-- 日本文教出版の教科書で、古事記と日本書紀が紹介されている。-->
古事記には、神話の時代から{{Ruby|推古|すいこ}}天皇にいたるまでの出来事が書かれています。
また、日本の歴史書である『{{ruby|日本書紀|にほんしょき}}』が720年に完成しました。神話の時代の伝説から、7世紀末ごろの持統天皇に{{Ruby|至|いた}}るまでの国家と天皇の歴史について書いた書です。
{{clear}}
=== 大仏づくり ===
[[File:Daibutsu of Todaiji 3.jpg|thumb|right|300px|東大寺の大仏]]
[[File:Emperor Shomu Face2.svg|thumb|聖武天皇]]
8世紀のなかごろ、都では病気が流行し、多くの死者が出たり、さらに、{{ruby|貴族|きぞく}}の{{Ruby|反乱|はんらん}}が起きたりしたため、世の中が混乱しました。
{{Ruby|仏教|ぶっきょう}}を信じた'''{{ruby|聖武天皇|しょうむてんのう}}'''は、仏教の力を借りて人々の不安をしずめ、社会を安定させようとしました。
まず741年に国(今でいう都道府県)ごとに {{ruby|国分寺|こくぶんじ}} を建てさせました。
都には {{ruby|東大寺|とうだいじ}}を建てさせ、そのなかに大仏を作らせました。
[[ファイル:Gyouki Face2.svg|thumb|行基]]
このころ、'''{{ruby|行基|ぎょうき}}'''という{{ruby|僧|そう}}がいました。かれは、{{ruby|渡来人|とらいじん}}の子孫で、{{Ruby|民衆|みんしゅう}}のために用水の池や橋を造りながら、{{Ruby|諸国|しょこく}}をまわって教えを説いていたので、多くの人々にしたわれていました。
しかし、{{Ruby|朝廷|ちょうてい}}は、はじめは、行基の行動をとりしまりました。当時は、{{Ruby|民衆|みんしゅう}}への仏教の布教は禁止されていました。
朝廷からは、行基は{{Ruby|危険|きけん}}な人物だろうと思われていたのです。
大仏を作るのは、とても多くの労働力を必要とするので、朝廷には、人々の支持が必要でした。このため、民衆にしたわれていた僧の行基の活動を{{Ruby|認|みと}}めました。
{{-}}
=== {{Ruby|遣唐使|けんとうし}}と{{Ruby|鑑真|がんじん}} ===
中国の{{Ruby|帝国|ていこく}}が{{Ruby|唐|とう}}に変わっても、かつての{{Ruby|遣隋使|けんずいし}}と同様に、日本から中国の唐に、外交の使者の {{Ruby|遣唐使|けんとうし}} を送りました。
遣唐使として有名な人物には、{{Ruby|阿倍仲麻呂|あべのなかまろ}} や、{{Ruby|吉備真備|きびのまきび}} などがいます。
<!--※ 安倍仲麻呂は、教育出版の教科書で、章末のコラムで名前を紹介している。また、日本文教出版の教科書で、阿倍仲麻呂や吉備真備の名前を紹介している。-->
阿倍仲麻呂は、日本に帰国するために乗った船が{{ruby|難破|なんぱ}}したため日本に帰国できず、最終的に唐の{{Ruby|皇帝|こうてい}}に仕えることになりました。
吉備真備は日本に帰れました。吉備真備は2回唐にわたり、2回とも日本に帰国できました。
* {{Ruby|鑑真|がんじん}}
日本の朝廷らは、唐の有名な僧の '''{{Ruby|鑑真|がんじん}}''' に、日本でも仏教をひろめてほしいと、鑑真を日本へ招きました。これを受け、鑑真は日本へわたりましたが、5回も失敗し、6回目にようやく日本に着きました。6回目に日本についたころには、失明しました。
鑑真は、{{Ruby|奈良|なら}}に '''{{Ruby|唐招提寺|とうしょうだいじ}}''' を開き,そして多くの日本人の僧を育てました。
{{clear}}
* 正倉院
[[Image:Shoso-in.jpg|thumb|300px|正倉院正倉]]
[[Image:Azekura-dukuri JPN.JPG|thumb|right|230px|正倉院の宝物庫]]
{{Ruby|東大寺|とうだいじ}}にある {{Ruby|正倉院|しょうそういん}} には、{{ruby|奈良|なら}}時代の美術品や、{{Ruby|聖武天皇|しょうむてんのう}}が愛用した道具などが{{Ruby|収|おさ}}められています。
※「{{Ruby|螺鈿紫檀五絃琵|らでんしたんごげんのびわ}}」(図参照)や「{{Ruby|瑠璃杯|るりのつき}}」などの{{Ruby|宝物|ほうもつ}}も{{Ruby|保存|ほぞん}}されているのですが、画像を用意できません。外部サイトや参考書などで、画像を{{ruby|探|さが}}してください。
<gallery widths="250px">
Image:RED LACQUERED CABINET Shosoin N2.JPG|{{Ruby|赤漆文欟木御厨子|せきしつぶんかんぼくのおんずし}}
Image:8Lobed Mirror Inlay Shosoin.jpg|{{Ruby|平螺鈿背八角鏡|へいらでんはいのはっかくきょう}}
Image:Silver Backed Bronze Mirror Shosoin.JPG|{{Ruby|金銀山水八卦背八角鏡|きんぎんさんすいはっけはいのはっかくきょう}}
Image:LADIES UNDER TREES SCREEN4th Shosoin.JPG|{{Ruby|鳥毛立女屏風|とりげりつじょのびょうぶ}}第4(部分)
Image:ROCHECHI Screen Panel Shosoin NH44.JPG|{{Ruby|羊木臈纈屏風|ひつじきろうけちのびょうぶ}}
Image:Silver Incense Burner Shosoin.JPG|{{Ruby|銀薫炉|ぎんのくんろ}}
Image:Gold Silver Painted BOX Shosoin.JPG|{{Ruby|蘇芳地金銀絵箱蓋|すおうじきんぎんえのはこ}}
</gallery>
(これらはあくまで参考です。)
* 万葉集
和歌をまとめた {{Ruby|万葉集|まんようしゅう}} が759年ごろから{{Ruby|編纂|へんさん}}されました。
{{Ruby|貴族|きぞく}}だけでなく、農民や{{Ruby|防人|さきもり}}など様々な身分の者が作ったと思われる和歌も{{Ruby|収録|しゅうろく}}されています。
合計で4500首の歌が収録されています。
{{clear}}
== 貴族のくらしと文化 ==
~{{ruby|貴族|きぞく}}がさかえた時代~
:{{Ruby|桓武天皇|かんむてんのう}}は794年に都を{{ruby|京都|きょうと}}の '''{{ruby|平安京|へいあんきょう}}''' にうつしました。
[[画像:HeiankyouMapJapanese.svg|800px]]
奈良から平安京への寺院の移転は禁止されました。
他にも、社会の変化で、もはや、{{ruby|公地公民|こうちこうみん}}による昔の政治がうまくいかなくなり、政治のしかたを改める必要もあったのだと思われます。
政治の中心地が平安京であった、約400年間の時代を '''{{Ruby|平安|へいあん}}時代''' といいます。
* {{Ruby|摂関|せっかん}}政治
9世紀の中ごろになると{{Ruby|藤原鎌足|ふじわらのかまたり}}({{ruby|中臣|なかとみの}}鎌足)の子孫の一族である '''藤原氏''' が、{{Ruby|権力|けんりょく}}を強めました。
藤原氏の一族は、代々、{{Ruby|娘|むすめ}}を{{ruby|天皇|てんのう}}の きさき(妻)にしています。
すると、藤原氏は天皇の母方の親せきということになるので、藤原一族の権力が強まる、という仕組みで、さらに権力を強めました。
[[File:Fujiwara no Michinaga Face2.svg|thumb|{{Ruby|藤原道長|ふじわらのみちなが}}]]
藤原氏は、天皇が{{Ruby|幼|おさな}}いときは、藤原氏の者が{{Ruby|摂政|せっしょう}}となり政治の{{ruby|実権|じっけん}}をにぎり、天皇が成人しても藤原氏は{{Ruby|関白|かんぱく}}という地位になり実権をにぎり、政治を行いつづける、という手法で権力を強めました。
<!-- 日本文教出版の教科書で、藤原の一族について「関白」という言葉が紹介されている。-->
道長は、次の歌をよみました。
'''「この世をば わが世とぞ思{{ruby|ふ|(う)}} {{ruby|望月|もちづき}}の 欠けたることも なしと思{{Ruby|へ|(え)}}ば」'''
(この世は、望月(満月)のように欠けているものがなく、まるで{{ruby|私|わたし}}(道長)の物のようだ。)
[[ファイル:Byodoin Phoenix Hall Uji 2009.jpg|300px|thumb|left|平等院鳳凰堂]]
{{Ruby|道長|みちなが}}の子である {{ruby|藤原頼通|ふじわらのよりみち}} は、{{Ruby|京都|きょうと}}に '''{{Ruby|平等院鳳凰堂|びょうどういんほうおうどう}}''' を建てさせました。現在の10円玉の表面にもえがかれています。
[[ファイル:10JPY.JPG|thumb|現在の10円玉]]
{{clear}}
;平安時代の文化
* {{ruby|遣唐使|けんとうし}}の中止と国風文化
{{ruby|菅原道真|すがわらのみちざね}}の進言により、894年に{{ruby|遣唐使|けんとうし}}が中止されました。
[[File:Sugawara Michizane.jpg|thumb|200px|菅原道真]]
遣唐使の廃止の理由は、すでに唐から多くのことを学んであること、ユーラシア大陸で{{Ruby|内乱|ないらん}}が多く唐が弱っていること、船の{{Ruby|遭難|そうなん}}など死の{{Ruby|危険|きけん}}が多く有能な人材の命を損ないかねないこと、{{Ruby|経済|けいざい}}的な{{Ruby|負担|ふたん}}が大きい、などです。
この遣唐使の廃止により、日本の{{中付きルビ|2|貴|き|族|ぞく}}文化では、だんだんユーラシア大陸の文化の{{ruby|影響|えいきょう}}がうすれたかわりに、{{ruby|国風文化|こくふうぶんか}}と{{ruby|呼|よ}}ばれる日本独自の貴族文化が{{Ruby|発展|はってん}}しました。
[[画像:Hiragana origin new.svg|thumb|right|300px|漢字からひらがなへの変化]]
* かな文字の発明
ひらがな や カタカナ などの '''かな文字''' が、平安時代に発明されました。
ひらがなは、漢字の形をくずして発明されました。カタカナは漢字の へん や つくり などの一部をもとに発明されました。
[[ファイル:Katakana origin new.svg|thumb|left|300px|カタカナの由来]]
{{clear}}
ほかにも、歌集である'''{{Ruby|古今和歌集|こきんわかしゅう}}''' や '''{{Ruby|竹取物語|たけとりものがたり}}''' は、かな文字を用いた作品です。
* その他の文化
[[Image:Miniature Model of HigashiSanjoDono.jpg|thumb|375px|典型的な寝殿造である{{ruby|東三条殿|ひがしさんじょうどの}}の復元{{ruby|模型|もけい}}(京都}文化博物館)
----
1. {{ruby|寝殿|しんでん}}、2. {{ruby|北対|きたのたい}}、3. {{Ruby|細殿|ほそどの}}、4. {{Ruby|東対|ひがしのたい}}、5. {{Ruby|東北対|ひがしきたのたい}}、6. {{ruby|侍所|さむらいどころ}}、7. {{ruby|渡殿|わたどの}}、8. {{Ruby|中門廊|ちゅうもんろう}}、9. {{ruby|釣殿|つりどの}}]]
[[image:安部正弘の肖像.jpg|thumb|left|150px|{{Ruby|江戸|えど}}時代の束帯]]
[[File:十二単です.JPG|thumb|150px|left|十二単、京都{{Ruby|御所|ごしょ}}にて]]
{{Ruby|平安|へいあん}}時代には、貴族の衣服({{Ruby|正装|せいそう}})が変わります。
男の{{ruby|貴族|きぞく}}の服は {{ruby|束帯|そくたい}} になり、女の貴族の服は {{ruby|十二単|じゅうにひとえ}} となりました。
<!-- 一部の教科書が、束帯および十二単について紹介している -->
貴族の住居の形が {{ruby|寝殿造|しんでんづくり}} になりました。
{{clear}}
[[画像:Genji emaki azumaya.jpg|thumb|300px|right|大和絵『源氏物語絵巻』 <br>
源氏物語は人気作となり、絵巻物まで作られるほどになりました。この絵は、源氏物語の作品のなかの場面をえがいたものです。]]
文学の物語では『{{ruby|源氏|げんじ}}物語』という{{ruby|創作|そうさく}}の物語が、貴族である{{ruby|紫式部|むらさきしきぶ}}によって書かれました。貴族の「{{ruby|光源氏|ひかるげんじ}}」という人物を主人公にして貴族の{{ruby|恋愛|れんあい}}などを書いています。
「源氏物語{{ruby|絵巻|えまき}}」も{{ruby|描|えが}}かれました。
{{ruby|随|ずい}}筆では、貴族である{{ruby|清少納言|せいしょうなごん}}が『枕草子』を記しました。清少納言が、日常生活や自然を観察して、感想をつづったものです。
絵画には、日本の風景などを書いた {{ruby|大和絵|やまとえ}} が現れ、寝殿造の{{ruby|屋敷|やしき}}の{{ruby|屏風|びょうぶ}}や ふすま などに描かれました。さきほど紹介した源氏物語絵巻も、大和絵です。
<!-- 「大和絵」は、教育出版が紹介している -->
{{clear}}
== 武士の世の中へ ==
;平安時代の武士たち
平安時代には、地方の{{ruby|豪族|ごうぞく}}たちが{{ruby|私有|しゆう}}地を広げていきました。
9世紀の中ごろから、豪族や有力な農民たちは、自分たちの土地や財産をまもるためには、兵力をたくわえました。一族の者や、手下の農民たちに{{ruby|武装|ぶそう}}させるようになりました。
このようにして、'''武士'''ができていきました。武士たちは、一族の かしら をリーダーとして、それぞれの一族ごとに 武士団 を結成しました。
* 平氏
[[ファイル:Taira no Kiyomori.jpg|thumb|200px|平清盛]]
この時代に、{{ruby|天皇|てんのう}}の{{ruby|座|ざ}}をめぐって{{ruby|皇族|こうぞく}}どうしで{{ruby|権力|けんりょく}}争いが起きると、武士たちは、これらの戦いに加わりました。
その結果、 '''{{ruby|平清盛|たいらのきよもり}}'''の加わっていた '''{{ruby|平氏|へいし}}''' の側が勝利したので、清盛が権力をにぎっていきました。
そして1167年には、平清盛は、武士としては初めて {{ruby|太政大臣|だいじょうだいじん}} の位につきました。
平清盛は、清盛のむすめを、天皇の{{ruby|后|きさき}}(妻)にさせました。
このようにして、平氏の一族が、{{ruby|朝廷|ちょうてい}}での重要な役職を得ていき、権力を強めました。
[[File:Itsukushima Hiroshima.JPG|thumb|250px|厳島神社。平氏の一族は、一族の{{ruby|繁栄|はんえい}}を厳島神社に願った。{{ruby|国宝|こくほう}}。世界{{ruby|遺産|いさん}}。]]
清盛は 海の神をまつっている {{ruby|厳島|いつくしま}}神社 を{{ruby|敬|うやま}}いました。厳島神社は、今でいう{{ruby|広島|ひろしま}}県の{{ruby|瀬戸内海|せとないかい}}の側にあります。
そして厳島神社の神を、平氏一族がまつるべき{{ruby|氏神|うじがみ}}としました。
しかし、平氏の{{ruby|独裁|どくさい}}的な政治に、ほかの貴族やほかの武士などからの不満が高まっていきました。
それらがのちに、平氏をたおすことへとつながりました。
* {{ruby|源氏|げんじ}}と{{ruby|平氏|へいし}}の戦い
ついに1180年、{{ruby|皇族|こうぞく}}は、{{ruby|平氏|へいし}}をほろぼすように命令を下しました。
[[File:Minamoto2.jpg|thumb|250px|源頼朝と伝えられる人物
:頼朝が子供のころ、{{ruby|平治|へいじ}}の{{ruby|乱|らん}}で頼朝の父の{{ruby|義朝|よしとも}}が平氏と戦って敗北したので、小さいころに源頼朝は、伊豆に流されていた。やがて成人して大人になった頼朝が、平氏への反乱をした。]]
{| class="wikitable" style="float:right"
|+ 源氏と平氏の戦い
! 年 !! おもなできごと
|-
| 1180 || 源頼朝が{{ruby|伊豆|いず}}(現在の{{ruby|静岡|しずおか}}県)で挙兵するが、{{ruby|石橋山|いしばしやま}}の戦い で平氏にやぶれる<br> 源頼朝が富士川の戦いで平氏をやぶる
|-
| 1181 || {{ruby|平清盛|たいらのきよもり}}がなくなる
|-
| 1183 || {{ruby|源義仲|みなもとのよしなか}}が、{{ruby|倶利伽羅峠|くりからとうげ}}の戦いで平氏をやぶる
|-
| 1184 || {{ruby|源義経|みなもとの よしつね}}が {{ruby|一ノ谷|いちのたに}}の戦い で平氏をやぶる
|-
| 1185 || 源義経が{{ruby|八島|やしま}}の戦いで平氏をやぶる <br> 源義経が{{ruby|壇ノ浦|だんのうら}}の戦いで平氏をやぶる <br> 平氏がほろびる
|-
|}
{{-}}
* {{ruby|源平|げんぺい}}の戦い
{{ruby|源頼朝|みなもとのよりとも}} は、関東で兵をあげました。{{ruby|富士|ふじ}}川の戦いで平氏をやぶったあと、頼朝は関東の{{ruby|鎌倉|かまくら}}に、とどまって、勢力の{{ruby|基盤|きばん}}をかためました。
そして頼朝は、平氏に不満をもっている武士の{{ruby|北条氏|ほうじょうし}}など関東の武士とも協力して、勢力をのばしていきました。
頼朝は、自らは鎌倉にとどまり、代わりに弟の '''{{ruby|源義経|みなもとのよしつね}}''' の兵を借りて、平氏を西へと追いつめていきました。
1185年、{{ruby|源義経|みなもとのよしつね}}らはついに本州の西の{{ruby|端|はし}}である今の{{ruby|山口|やまぐち}}県の{{ruby|下関|しものせき}}で起こった {{Ruby|壇ノ浦|だんのうら}}の戦いで、ついに平氏をほろぼしました。
これらの源氏と平氏との一連の戦いを「{{ruby|源平|げんぺい}}の戦い」あるいは「源平合戦」といいます。
[[File:Minamoto no Yoshitsune Face2.svg|thumb|源義経]]
;{{ruby|鎌倉|かまくら}}時代
{{ruby|平氏|へいし}}の{{ruby|滅亡|めつぼう}}後、頼朝が{{ruby|朝廷|ちょうてい}}に要求したことより、新しい制度として、国ごとに守護が1人ずつ置かれ、{{ruby|荘園|しょうえん}}や公領には '''{{ruby|地頭|じとう}}''' が置かれました。
守護の{{ruby|役割|やくわり}}は、その国の軍や{{ruby|警察|けいさつ}}の管理者でした。地頭の役割は、{{ruby|荘園|しょうえん}}および公領の管理や、税である{{ruby|年貢|ねんぐ}}の取り立てでした。
頼朝は1185(1192)年に朝廷から '''{{ruby|征夷大将軍|せいいたいしょうぐん}}''' に任命されました。
頼朝は{{ruby|鎌倉|かまくら}}(現在の{{ruby|神奈川|かながわ}}県)に、武家による政治の{{ruby|拠点|きょてん}}である {{ruby|鎌倉幕府|かまくらばくふ}}を開きました。鎌倉に幕府があった時代を '''{{ruby|鎌倉|かまくら}}時代''' といいます。
この鎌倉時代から、政治の{{ruby|権力|けんりょく}}が朝廷から幕府へと移っていき、武家政治の時代となっていきました。
幕府の行政の仕組みは、朝廷による制度とは {{ruby|異|こと}}なります。
{{ruby|将軍|しょうぐん}}の家来の武士のことを '''{{ruby|御家人|ごけにん}}''' といいます。
将軍は、「'''ご{{ruby|恩|おん}}'''」と{{ruby|呼|よ}}ばれる、御家人たちの土地の{{ruby|権利|けんり}}を保証する{{ruby|政策|せいさく}}をとるかわりに、{{ruby|奉公|ほうこう}}と呼ばれる、御家人たちは将軍のために{{ruby|警備|けいび}}を行ったり、戦争の時には戦ったりするという{{ruby|主従|しゅじゅう}}関係を、 '''ご恩と奉公''' といいます。
[[File:ご恩と奉公.svg|thumb|400px|ご恩と奉公]]
「'''いざ{{ruby|鎌倉|かまくら}}'''」といって、御家人は戦いが起きれば、すぐに鎌倉へと行って将軍に指示を聞き、将軍のために戦うべき、とされていました。<!-- 東京書籍などが紹介 -->
この主従関係は、土地を仲立ちとしています。
御家人たちの{{ruby|屋敷|やしき}}は、{{ruby|武家造|ぶけづくり}}という作りで、屋敷のまわりに{{ruby|堀|ほり}}があったり、{{ruby|塀|へい}}で囲まれていたりと、戦いにそなえたつくりになっています。
「{{ruby|一所懸命|いっしょけんめい}}」という言葉がありますが、これは、御家人たちが自分たちの領地を守るために命がけで戦う様子からできた言葉です。なお、これが転じて「{{ruby|一生|いっしょう}}懸命」となりました。
[[ファイル:Hojo Masako.jpg|thumb|200px|北条政子({{ruby|菊池容斎|きくちようさい}} 画、{{ruby|江戸|えど}}時代)]]
頼朝の死後は、頼朝の長男である{{ruby|頼家|よりいえ}}が次の{{ruby|将軍|しょうぐん}}となり、さらに次の将軍は頼朝の次男である{{ruby|実朝|さねとも}}となりましたが、幕府の{{ruby|実権|じっけん}}は、有力な御家人である北条氏の一族がにぎっていました。頼朝の妻は '''{{ruby|北条政子|ほうじょう まさこ}}''' で、その父である {{ruby|北条時政|ほうじょうときまさ}} が {{ruby|執権|しっけん}} という役職につき、北条時政らが幕府の実権をにぎりました。
北条氏のように、執権として政治の実権をにぎる政治の方法を {{ruby|執権|しっけん}}政治 といいます。
* {{ruby|承久|じょうきゅう}}の{{ruby|乱|らん}}
頼朝の死後、1221年に{{ruby|朝廷|ちょうてい}}は、政治の{{ruby|実権|じっけん}}を武士から取りかえそうとして、幕府をたおせという命令を出しました。
このとき、{{ruby|北条政子|ほうじょうまさこ}}は、武士たちに、「あなたたちに頼朝があたえたご{{ruby|恩|おん}}は、山よりも高く、海よりも深いものです。その恩にむくいようとするものは、力を合わせて{{ruby|敵軍|てきぐん}}をうちとり、{{ruby|幕府|ばくふ}}をまもるでしょう。」と、武士たちによびかけ、武士たちをまとめた。
この結果、北条氏の幕府軍と、朝廷の軍との戦争になり、北条氏の側が勝利しました。
そして、幕府の権力は、{{ruby|朝廷|ちょうてい}}をしのぐほどになりました。
また、幕府は、武士のための{{ruby|法律|ほうりつ}}をととのえました。
* 武士のくらし
[[Image:Yabusame 02.jpg|thumb|やぶさめ]]
武士は、日ごろから [[w:流鏑馬|やぶさめ]] などの武芸にはげんでいました。「やぶさめ」とは、馬にのって走りながら、いくつもある板の的をつぎつぎに{{ruby|射|い}}る武芸のことです。
{{-}}
* モンゴルとの戦い
* モンゴル{{ruby|帝国|ていこく}}の{{ruby|元|もと}}
13世紀、中国をふくむユーラシア大陸の広い{{ruby|地域|ちいき}}では モンゴル民族が モンゴル{{ruby|帝国|ていこく}}を築いていました。
モンゴル帝国はユーラシア大陸を制圧すると、モンゴルの国号(国名)を {{ruby|元|げん}} に変えました。
* {{ruby|元寇|げんこう}}
モンゴルは、まず{{ruby|朝鮮|ちょうせん}}をしたがえました。つづいて、日本にも、モンゴルに{{ruby|従|したが}}えと、元は使者を日本によこしました。
しかし、ときの{{ruby|執権|しっけん}}であった{{ruby|北条時宗|ほうじょうときむね}}は、これを断りました。
そして、元は、1274年と1281年の2度にわたって、軍隊とともに日本にせめこみました。
最終的には暴風雨のえいきょうにより元軍が引き上げたので日本が勝利しましたが、元との戦いでは元軍の火薬を用いた新兵器(日本では「てつはう」と{{ruby|呼|よ}}ばれた)、毒矢、元軍の集団戦に苦戦しました。
[[ファイル:Mōko Shūrai Ekotoba.jpg|thumb|700px|1274年のモンゴル軍の{{ruby|襲来|しゅうらい}}において、矢が飛びかい、てつはうが{{ruby|炸裂|さくれつ}}する中を、モンゴル軍へこうげきする御家人の {{ruby|竹崎季長|たけさきすえなが}} と、応戦・{{ruby|逃亡|とうぼう}}するモンゴル兵]]
右の合戦の絵は、{{ruby|蒙古襲来絵詞|もうこしゅうらいえことば}}という絵巻物の一部の絵です。
「蒙古」とはモンゴルのことです。
{{clear}}
1度目の戦いのあと、幕府は次のモンゴル軍がせめこんでくるのに備え、今の{{ruby|福岡|ふくおか}}県にある{{ruby|博多|はかた}}湾の{{ruby|沿岸|えんがん}}に こうげきを防ぐための{{ruby|石垣|いしがき}}である'''{{ruby|石塁|せきるい}}'''を築かせました。
1281年に、元の軍勢は、14万人もの大軍を率いてふたたび日本に おそいかかりましたが、日本が勝利しました。
この2度の元軍の{{ruby|襲来|しゅうらい}}を あわせて '''{{ruby|元寇|げんこう}}''' といいます。
御家人は元寇で多くの費用を使いましたが、幕府は ご{{ruby|恩|おん}}としてのほうびの土地を、十分に用意できなかったので、{{ruby|御家人|ごけにん}}は{{ruby|幕府|ばくふ}}に不満を持つようになりました。
* その他
{{ruby|鎌倉|かまくら}}時代には、{{ruby|彫刻|ちょうこく}}で {{ruby|金剛力士像|こんごうりきしぞう}}がつくられました。<!-- 教育出版の教科書で紹介している-->
※金剛力士像の画像が用意できないので、ここには画像をのせません。
金剛力士像は、{{ruby|奈良|なら}}県の{{ruby|東大寺|とうだいじ}}の{{ruby|南大門|なんだいもん}}にあります。
{{-}}
== 今に伝わる室町文化 ==
[[File:Kinkaku Yoshimitsu2.svg|thumb|left|300px|金閣と足利義満]]
[[File:Ginkaku yoshimasa2.svg|thumb|center|300px|銀閣と足利義政]]
<!-- 検定教科書に「鹿苑寺」や「慈照寺」などの名称は無いです。「金閣」「銀閣」のみです。東京書籍『新しい社会6』、光村書店『社会6』および、日本文教出版『日本の歩み 小学生の社会6上』で確認。 -->
{{-}}
1336年、今の{{ruby|京都|きょうと}}の{{Ruby|室町|むろまち}}に{{ruby|室町|むろまち}}幕府ができました。
1394年、室町幕府の3代{{ruby|将軍|しょうぐん}}である{{ruby|足利義満|あしかがよしみつ}}は、京都の{{Ruby|北山|きたやま}}に '''{{Ruby|金閣|きんかく}}''' を建てました。金閣には、金ぱくがはられています。
1482年、室町幕府の8代将軍である{{Ruby|足利義政|あしかがよしまさ}}は、京都の{{Ruby|東山|ひがしやま}}に '''{{ruby|銀閣|ぎんかく}}''' を建てました。銀閣には、銀ぱくは はられていません。
{{-}}
* 生活
[[File:Tukinami huuzoku taue.jpg|thumb|400px|室町時代の田植えの様子。『{{ruby|月次風俗図屏風|つきなみふうぞくずびょうぶ}}』より]]
色々な村で、用水路や共用地の管理など村の運営のしかたについて、寺社などに集まって自主的に相談しあって決めるようにするなど、農民どうしの集まりが開かれるようになりました。
室町時代には、農民は、{{Ruby|厳|きび}}しい領主に対しては、集団で対立するようになりました。
{{ruby|年貢|ねんぐ}}が重い場合は、集団で領主におしかけてうったえでたり、全員が村から{{ruby|逃亡|とうぼう}}したりして{{ruby|対抗|たいこう}}しました。
{{-}}
* 室町文化
* {{Ruby|書院造|しょいんづくり}}
[[File:Takagike Kashihara JPN 001.jpg|thumb|400px|書院造]]
'''{{Ruby|書院造|しょいんづくり}}'''という、和室の様式が出てきました。
特ちょうは、
* {{ruby|違|ちが}}い{{ruby|棚|だな}}という、{{ruby|段差|だんさ}}になった棚がある
* {{ruby|障子|しょうじ}}やふすまがある
* {{ruby|畳|たたみ}}の{{ruby|床|ゆか}}がある
などです。
これが、今の和室の様式につながっています。
* 水墨画
[[ファイル:SesshuToyo.jpg|left|thumb|180px|水墨画。秋冬山水図のうち秋景(東京国立博物館)]]
[[ファイル:Portrait of Sesshu.jpg|thumb|220px|雪舟]]
鎌倉時代に、中国から '''{{ruby|水墨画|すいぼくが}}''' の技法が日本に伝わりました。
はじめ日本では、水墨画は、仏教の世界をえがくためにえがかれました。
しかし、室町時代になり、{{ruby|雪舟|せっしゅう}}は、水墨画と仏教を分けて考え、仏教にとらわれずに、自然の風景などの水墨画をえがきました。
{{コラム|雪舟|雪舟は、{{ruby|幼|おさな}}いとき、今の{{ruby|岡山|おかやま}}県の{{ruby|興福寺|こうふくじ}}に{{ruby|預|あず}}けられていました。しかし雪舟はそこで{{ruby|修行|しゅぎょう}}をせず絵ばかりかいていました。そこでおこった{{ruby|和尚|おしょう}}は雪舟を柱にしばりつけました。しばらくして和尚が様子を見に行くと、雪舟の足元にねずみがいたので、追いはらおうとしましたが、ねずみは動きません。雪舟が、なみだでかいたねずみだったのです。和尚は、それ{{ruby|以降|いこう}}、絵をかくのを{{Ruby|認|みと}}めました。}}
[[File:Sesshu - View of Ama-no-Hashidate.jpg|thumb|600px|雪舟の水墨画、『{{ruby|天橋立図|あまのはしだてず}}』]]
{{-}}
* 茶の湯
書院造の部屋で、おちついた作法にしたがって茶を飲む、'''{{ruby|茶|ちゃ}}の{{ruby|湯|ゆ}}'''が始まりました。茶の湯は、今でも{{ruby|茶道|さどう}}として、受けつがれています。
* {{Ruby|能|のう}}
{{ruby|観阿弥|かんあみ}}と{{Ruby|世阿弥|ぜあみ}}の親子が、芸能のひとつである '''{{ruby|能|のう}}''' を形成しました。
{{clear}}
== {{Ruby|戦国|せんごく}}の世の統一 ==
* {{ruby|鉄砲|てっぽう}}とキリスト教の伝来
{{-}}
* {{ruby|鉄砲|てっぽう}}
[[ファイル:Arquebus.jpg|thumb|right|300px|種子島{{ruby|火縄銃|ひなわじゅう}}<br>当時の鉄砲は,つつ先から火薬とたまをいれるものでした。なお,たまがとどくきょりは,100mほどだといわれています。]]
1543年に,現在の鹿児島県の島である{{ruby|種子島|たねがしま}}に,ポルトガル人を乗せた船が流れ着きました。
このとき, ポルトガル人から'''{{ruby|鉄砲|てっぽう}}'''が日本に伝わりました。それまでの日本では鉄砲は知られておらず, 日本にとっては鉄砲は新しい兵器でした。
やがて日本の各地に鉄砲の情報が広がり、大量に鉄砲が作られるようになりました。
鉄砲が日本に伝わってから少しあとのころ,キリスト教が日本に伝わりました。
[[File:Xabier face2.svg|thumb|250px|ザビエル]]
1549年にはスペイン人の{{ruby|宣教師|せんきょうし}}である'''ザビエル'''が日本の{{ruby|鹿児島|かごしま}}に来て,'''キリスト教'''を伝えました。
そのあと,他の宣教師も,次々と日本にやってきました。
宣教師は,日本とヨーロッパとのあいだの貿易の世話もしたので,大名たち(特に西日本)の中にはキリスト教を保護する者もいました。
このようなことをきっかけに,日本は,ポルトガルやスペインとの貿易を始めました。ポルトガル人・スペイン人の商船が,{{Ruby|九州|きゅうしゅう}}の{{ruby|長崎|ながさき}}や{{ruby|平戸|ひらど}}や,{{ruby|大阪|おおさか}}の{{ruby|堺|さかい}}の港などを{{ruby|訪|おとず}}れて貿易をするようになりました。
;天下統一へ
~'''織田信長・豊臣秀吉・徳川家康'''~
* 織田信長
* 桶狭間の戦い
[[File:Odanobunaga.jpg|250px|thumb|織田信長]]
[[File:Sengoku period 1565.png|thumb|500px|1565年の領地の様子]]
<!-- ※教育出版の教科書に書いてあります。 -->
{{ruby|戦国|せんごく}}時代には各地に大名がおり,多くの大名どうしが争っていた。1560年{{ruby|以降|いこう}}から,まず,{{ruby|尾張|おわり}}(現在の愛知県の西部)の大名であった '''{{ruby|織田信長|おだのぶなが}}'''が勢力を{{ruby|拡大|かくだい}}し始めました。
1560年に,愛知県にいる織田の領地に,となりの静岡県の{{ruby|今川義元|いまがわよしもと}}がせめこみ、{{ruby|桶狭間|おけはざま}}の戦い が起こりました。
この戦いで,今川義元を織田らの軍が{{ruby|討|う}}ち取り,今川義元は{{ruby|亡|な}}くなりました。このため,今川軍は命令の{{ruby|系統|けいとう}}がくずれてしまい,敗北しました。
桶狭間の戦い以降,信長は西へと勢力を拡大しました。1568年には,{{ruby|室町幕府|むろまちばくふ}}の{{ruby|足利|あしかが}}氏の一族である{{ruby|足利義昭|あしかがよしあき}}を{{ruby|支援|しえん}}して京都に入りました。義昭はのちに,室町幕府の15代{{ruby|将軍|しょうぐん}}となりました。
1569年,信長は,キリスト教の{{ruby|宣教師|せんきょうし}}と初めて出会い,かれにキリスト教の布教を許可しました。信長本人はキリスト教の信者ではなく,信長のねらいは宣教師のもたらす情報などがねらい,あるいは当時に信長と{{ruby|敵対|てきたい}}していた仏教勢力への{{ruby|対策|たいさく}}などと,いっぱんに言われています。
1571年には, 仏教勢力である{{ruby|延暦寺|えんりゃくじ}}が織田を{{Ruby|裏|うら}}切ったことから、織田信長は,{{ruby|比叡山延暦寺|ひえいざんえんりゃくじ}} を焼き{{ruby|討|う}}ちにしました。
<!-- ※ 日本文教出版の教科書『日本のあゆみ』で,延暦寺の焼き討ちなどを紹介しています。 -->
そして,1573年ごろ,室町幕府は ほろびました。
* 長篠の戦い
[[File:Battle of Nagashino word2.svg|700px|thumb|長篠の戦い。左側が織田・徳川の連合軍。右側が武田軍。]]
1575年に{{ruby|三河|みかわ}}(現在の{{ruby|愛知|あいち}}県の東部)で、{{ruby|織田|おだ}}・{{ruby|徳川|とくがわ}}の{{ruby|同盟|どうめい}}と,{{ruby|甲斐|かい}}の大名の{{ruby|武田勝頼|たけだかつより}}らの戦争である '''{{ruby|長篠|ながしの}}の戦い'''が起きました。この戦いでは,織田・徳川の同盟が勝利し,武田は敗北しました。
{{-}}
{{Clear}}
* {{Ruby|安土城|あづちじょう}}
<!-- ※ 小学の範囲内です。検定教科書に想像図や復元図などがかいてあります。 -->
1576年,織田信長は{{ruby|近江|おうみ}}(現在の{{ruby|滋賀|しが}}県)にある小高い山の上に '''{{ruby|安土城|あづちじょう}}''' を築かせました。
安土城の城下町では,自由に商売をできるようにしたので,とてももうかりました。
また,安土の城下町には,キリスト教の学校や教会も建てられました。
安土城の城下町付近では、商業をさかんにするため,関所で通行税をとることを{{ruby|廃止|はいし}}しました。
なお、このような政策を {{ruby|楽市楽座|らくいちらくざ}}といいます。
* 本能寺の変
[[File:Sengoku period 1582.png|thumb|400px|1582年の領地の様子]]
{{Ruby|織田信長|おだのぶなが}}を、家臣の '''{{ruby|明智光秀|あけちみつひで}}'''が{{ruby|裏|うら}}切り,明智の軍が信長におそいかかり,この本能寺で信長は{{ruby|死亡|しぼう}}しました。
なお、この一連の事件を '''本能寺の{{Ruby|変|へん}}''' といいます。
'''信長は,天下統一をなしとげられませんでした。'''
'''信長は,天下統一をしていません。'''
天下統一ならず,信長は死亡します。
{{-}}
;豊臣秀吉の{{Ruby|台頭|たいとう}}
[[File:Toyotomi_Hideyoshi_c1598_Kodai-ji_Temple.png|thumb|250px|豊臣秀吉。秀吉は,もともと農民でしたが,武士になりました。そして,信長に{{Ruby|認|みと}}められ,信長の部下になりました。]]
[[File:Osaka Castle Keep tower of 「A figure of camp screen of the Osaka summer」.jpg|thumb|大阪城]]
信長の死を聞いた'''{{ruby|豊臣秀吉|とよとみひでよし}}'''は,ただちに毛利との停戦をし,そして京都・大阪に向かい,{{Ruby|明智光秀|あけちみつひで}}をたおしました。
その後も,秀吉にさからう大名をつぎつぎとたおし,支配をかためていきました。
このようにして,しだいに秀吉の地位は高まっていき,信長の領地を受けついでいきました。
1583年に秀吉は,大阪城を築かせ,そこを{{Ruby|本拠地|ほんきょち}}にしました。
そのあと,秀吉は各地の大名たちを平定して{{Ruby|従|したが}}えていきました。
そして1590年には,秀吉に従わなかった{{Ruby|北条|ほうじょう}}氏の治める関東の{{Ruby|小田原|おだわら}}をせめ,{{ruby|北条氏政|ほうじょううじまさ}}をほろぼしました。
1590年,秀吉に従っていなかった東北の{{Ruby|伊達|だて}}氏など東北の大名も,秀吉に従いました。こうして、'''秀吉が天下統一をなしとげました。'''
;秀吉の政策
* {{Ruby|検地|けんち}}
農民からねんぐを取るための土地の調査を'''{{Ruby|検地|けんち}}'''といいます。
検地は信長の時代からも行われていたが,秀吉は各地でちがっていた長さや面積などの単位を全国で統一させました。
そして記録によって,田畑の面積や,田の{{Ruby|収穫高|しゅうかくだか}}である'''{{ruby|石高|こくだか}}''',その田畑を耕す農民の名前などが記録される {{Ruby|検地帳|けんちちょう}} が作られました。
検地帳によって耕作者がはっきりしたので,農民は田畑を持つ{{Ruby|権利|けんり}}を{{Ruby|認|みと}}められましたが,同時にねんぐを{{Ruby|納|おさ}}める義務を負うことになり,土地を勝手に はなれることができなくなりました。また,かつての{{Ruby|荘園|しょうえん}}のように土地の権利がはっきりしない土地がなくなりました。
* '''{{Ruby|刀狩|かたながり}}'''
1588年に、豊臣秀吉は'''{{Ruby|刀狩令|かたながりれい}}'''という、農民から刀や{{Ruby|鉄砲|てっぽう}}などの武器を{{Ruby|没収|ぼっしゅう}}する命令を出しました。
表向きの理由は,{{Ruby|京都|きょうと}}の{{Ruby|方広寺|ほうこうじ}}に大仏を作るので材料の鉄が必要であるためですが、秀吉の実際のねらいは,{{Ruby|一揆|いっき}}を防ぐためといわれています。
<div style="border:1px solid #000000;">
:'''{{Ruby|刀狩令|かたながりれい}}'''
:{{Ruby|百姓|ひゃくしょう}}が刀・やり・鉄砲などの武器をもつことを禁止する。ねんぐを出ししぶり,一揆をおこすものは,{{Ruby|厳|きび}}しくばっする。
:とりあげた刀は,大仏をつくるためのくぎなどにするから,百姓は仏のめぐみで,この世だけでなく,あの世でも救われるだろう。
</div>
;朝鮮出兵
日本を統一した秀吉は,つぎに,外国を{{Ruby|征服|せいふく}}しようとしました。そのため,中国を征服しようとしました。このための足がかりとして,まず{{Ruby|朝鮮|ちょうせん}}に通行の許可や協力などをもとめたが,朝鮮に断られたため,朝鮮との戦争になり,2度にわたって朝鮮に兵を送って戦争をしました。
この戦争を,'''朝鮮出兵''' とか '''朝鮮{{Ruby|侵略|しんりゃく}}'''といいます。
秀吉の朝鮮出兵は2度あります。
最終的に日本は朝鮮・明の連合軍に敗北しました。
1598年に日本国内で秀吉が病死し,日本軍は日本にひきあげ,朝鮮出兵は終わりました。
{{-}}
{{コラム|朝鮮出兵の結果|朝鮮出兵の結果として、
* 日本の{{Ruby|諸|しょ}}大名などからの豊臣氏への信用が弱まり,のちに,豊臣氏がほろしていくきっかけの一つになる。
* 朝鮮に大きな{{Ruby|被害|ひがい}}をあたえた。
* 戦争でほろんだ明の力も弱まる。
などのことが起こりました。}}
;徳川家康
[[File:Tokugawa_Ieyasu2.JPG|thumb|300px|徳川家康]]
1590年,秀吉の命令によって,家康の領地が関東に移され,{{Ruby|江戸城|えどじょう}}が家康の{{Ruby|拠点|きょてん}}となりました。家康が江戸に移る前は,{{Ruby|三河|みかわ}}(今でいう愛知県の東部)の大名でした。
豊臣秀吉が{{Ruby|亡|な}}くなると,徳川家康の勢力が強まりました。
* {{Ruby|関ヶ原|せきがはら}}の戦い
[[File:Sekigaharascreen.jpg|thumb|500px|関ヶ原の戦い<br>絵の右側にいるのが徳川軍。絵の左側にいるのが豊臣軍。]]
1600年、{{Ruby|関ヶ原|せきがはら}}(今の岐阜県)で、徳川家康が率いる軍と,豊臣秀吉が率いる軍が戦いました。これを '''関ヶ原の戦い''' といいます。結果は,徳川家康が率いる軍の勝利でした。
* {{Ruby|江戸幕府|えどばくふ}}
:1603年,{{Ruby|朝廷|ちょうてい}}から{{Ruby|徳川家康|とくがわいえやす}}は {{Ruby|征夷大将軍|せいいたいしょうぐん}} に任命されました。
:家康は{{Ruby|江戸|えど}}(現在の東京)に'''{{Ruby|幕府|ばくふ}}'''を開きました。これが'''江戸幕府'''であり,この時から'''江戸時代'''が始まりました。江戸時代は260年ほど続きます。
* 大阪城をせめる
:1614年 家康により,{{Ruby|豊臣|とよとみ}}氏をほろぼすための戦争を始めました。
そして,この戦いに敗れた豊臣氏は,ほろぼされました。
* 江戸の工事
[[File:Edo P detail.jpg|500px|thumb|江戸城]]
江戸のまちは,江戸幕府より前は,政治の中心地になったことがなかったので,やや不便でした。
そのため家康は,日本全国の大名に資金や人手を{{Ruby|提供|ていきょう}}させて,江戸の町を広げる工事をさせました。江戸城を広げる工事も行われました。
{{-}}
;まとめ : 信長・秀吉・家康
{| class="wikitable" style="float:right"
|+ {{ruby|信長|のぶなが}}・{{Ruby|秀吉|ひでよし}}・{{Ruby|家康|いえやす}}の時代
| 織田信長 <br>[[File:Odanobunaga face.png|150px|織田信長の顔。]]|| 豊臣秀吉 <br>[[File:Toyotomi hideyoshi face.png|150px|豊臣秀吉の顔。]]|| 徳川家康 <br>[[File:Tokugawa Ieyasu2 face.png|150px|徳川家康の顔。]]
|-
| 1534 {{Ruby|尾張|おわり}}(現在の{{Ruby|愛知|あいち}}県の西部)の大名の子として生まれる || 1537 尾張に農民の子として生まれる || 1542 三河(現在の愛知県の東部)の大名の子として生まれる
|-
| 1560 {{Ruby|今川|いまがわ}}氏を破る || ||
|-
| 1562 家康と連合する || || 1562 信長と連合する
|-
| 1573年 {{Ruby|足利|あしかが}}氏を{{Ruby|京都|きょうと}}から追い出す<br />(室町幕府をほろぼす) || ||
|-
| style="text-align: left;" colspan="3" | 1575 '''{{Ruby|長篠|ながしの}}の戦い'''で,信長と家康の連合軍が,武田の軍をたおす
|-
| 1576 {{Ruby|安土城|あづちじょう}}を築く || ||
|-
| 1582 {{Ruby|明智光秀|あけちみつひで}}におそわれ,<br />信長は自害する({{ruby|本能寺|ほんのうじ}}の変) || <br>1582 秀吉が光秀をたおす ||
|-
| || 1583 {{Ruby|大阪城|おおさかじょう}}を築く ||
|-
| || 1588 '''{{Ruby|刀狩|かたながり}}'''を命じる ||
|-
| || 1590 日本を統一する || 1590 秀吉の命令で,関東に領地をうつす
|-
| || 1592 {{Ruby|朝鮮|ちょうせん}}をせめる ||
|-
| || 1597 ふたたび朝鮮をせめる ||
|-
| || 1598 病死する ||
|-
| || || 1600 関ヶ原の戦いで勝つ
|-
| || || 1603 {{Ruby|征夷大将軍|せいいたいしょうぐん}}になり,'''{{Ruby|江戸幕府|えどばくふ}}'''をひらく
|-
| || || 1615 豊臣氏をほろぼす
|-
| || || 1618 病死する
|-
|}
{{clear}}
つぎのような句があります。
'''{{Ruby|織田|おだ}}がつき {{Ruby|羽柴|はしば}}がこねし 天下もち'''
'''すわりしままに 食うは{{Ruby|徳川|とくがわ}}'''
「{{Ruby|羽柴|はしば}}」とは,豊臣秀吉のことです。秀吉は,「豊臣秀吉」と名乗る前には,「羽柴秀吉」と長く名乗っていました。
「織田」とは,織田信長のことです。
「徳川」とは,徳川家康のことです。
なぜ,このような歌で説明されるようになったのか,「ヒント」をもとに自分の言葉で説明してみましょう。
ヒント:織田は「もちをついて」、つまりもちをやわらかくしています。羽柴は「もちをこね」、つまり織田がついたもちをさらにやわらかくしています。そして徳川は「すわりしままに食う」、つまりもち作りに協力していないのに、{{Ruby|優雅|ゆうが}}にもちを食べています。
{{clear}}
また、かれらの性格をあらわした,つぎのような句があります。
{| class="wikitable"
|+
| 織田信長 <br>[[File:Odanobunaga face.png|150px|織田信長の顔。]]|| 豊臣秀吉 <br>[[File:Toyotomi hideyoshi face.png|150px|豊臣秀吉の顔。]]|| 徳川家康 <br>[[File:Tokugawa Ieyasu2 face.png|150px|徳川家康の顔。]]
|-
| 鳴かぬなら <br> 殺してしまえ <br> ホトトギス || 鳴かぬなら <br> 鳴かせてみせよう <br> ホトトギス || 鳴かぬなら <br> 鳴くまで待とう <br> ホトトギス
|-
|}
織田信長は「逆らうものは{{Ruby|排除|はいじょ}}する」という{{Ruby|姿勢|しせい}}をとり、豊臣秀吉は「逆らうものは{{Ruby|従|したが}}わせる」という姿勢をとり、徳川家康は「逆らうものは従うまで待つ」、つまりチャンスを{{Ruby|探|さぐ}}るという姿勢をとっています。
{{clear}}
<!-- ここにヨーロッパから伝わった言葉の記述がありましたが、2020年度教科書では削除されているため削除しました -->
当時の日本人がヨーロッパ人を'''「{{Ruby|南蛮人|なんばんじん}}」'''と{{Ruby|呼|よ}}んだので,日本によるヨーロッパとの貿易を'''{{Ruby|南蛮貿易|なんばんぼうえき}}'''といいます。
<!-- ※ 小学教科書の章末コラムなどで,「南蛮」の用語がある。日本文教出版,教育出版など -->
[[File:Nanbansen Carrack by Kano Naizen.jpg|thumb|left|350px|{{Ruby|南蛮屏風|なんばんびょうぶ}}(※ 一部分)<br>南蛮貿易のようすがかかれています。日本人がえがいたものです。]]
[[カテゴリ:小学校社会|6れきし1]]
ffzs9t97axqan1k71l55oacotuzi4nz
小学校社会/6学年/歴史編/歴史の始まり
0
32852
304882
304825
2026-10-19T09:48:58Z
Kontributor 2K
91415
([[c:GR|GR]]) [[c:COM:FR|File renamed]]: [[File:Yoshinogari-iseki tateanashiki-juukyo.JPG]] → [[File:Yoshinogari-iseki tateana-tatemono.jpg]] [[c:COM:FR#FR2|Criterion 2]] (meaningless or ambiguous name) · 「竪穴式住居」の表記は完全に誤っているわけではないが、現代の日本考古学界ではほぼ使われていない。現代的な表記(竪穴建物 tateana-tatemono)を提案。
304882
wikitext
text/x-wiki
{{Nav}}
{{Pathnav|メインページ|小学校・中学校・高等学校の学習|小学校の学習|小学校社会|小学校社会/6学年|小学校社会/6学年/歴史編|frame=1}}
{| class="wikitable" style="width:100%"
|+ この章の概要
|<!--(ア) 狩猟・採集や農耕の生活,古墳,大和朝廷(大和政権)による統一の様子を手掛かりに,むらからくにへと変化したことを理解すること。その際,神話・伝承を手掛かりに,国の形成に関する考え方などに関心をもつこと。-->
★時代区分:原始時代、石器時代、縄文時代、弥生時代、古墳時代</br>
★取り扱う年代:おおむね5世紀以前
;狩猟・採集から農耕へ
: 大昔、日本に人々が住みはじめたころ、人々は、木の実をひろったり(採集)、動物や魚を狩などでつかまえて(狩猟)、食料や衣服としていました。このころ、ものを切ったりするのに使った道具は石でできていました。このような道具を、'''石器'''といい、この時代を「'''石器時代'''」と言います。時代がだんだん進むと、人々は、土を火で焼き固めると固くなってうつわなどを作ること('''土器''')ができることを発見します。最初は低い温度で厚くもろい器や人形('''土偶''')を作っていましたが(このような土器を「'''縄文土器'''」といい、この時代を「'''縄文時代'''」と言います)、さらに時代が進んで薄く硬い土器が作られるようになりました(このような土器を「'''弥生式土器'''」といい、この時代を「'''弥生時代'''」と言います)。
: 縄文時代から弥生時代に変わるころ、人々は狩猟・採集のくらしから田んぼや畑をたがやして米などを作る生活('''農耕''')をするようになりました。狩猟・採取の生活から農耕生活になると、人々は定住し「'''むら'''」ができます。人々が互いに行き来するようになると、「むら」はだんだん大きくなり、また、いくつかの「むら」が集まって「'''くに'''」となります。
;「くに」の統一
: 「くに」を統治する王や女王は、海を越えて中国や朝鮮半島など大陸に使者を送ったりしました。その結果、大陸から'''青銅'''や'''鉄'''を作る技術や'''文字'''(「'''漢字'''」)などの文化が流入しました。鉄器が普及したことで石器は使われることがなくなり「石器時代」は終わります。この時代、「くに」の王など有力者は、墓として「'''古墳'''」を作りましたが、そこには'''{{ruby|埴輪|はにわ}}'''などのほか、青銅製の鏡(銅鏡)などが副葬されています(この時代を「'''古墳時代'''」とも言います)。
:そして、これらの「くに」をまとめて今の日本の元を作ったのが、天皇を長とした'''{{ruby|大和|やまと}}朝廷(大和政権)'''です。統一前に「くに」をひきいていた有力者などは'''豪族'''と呼ばれます。
|}
== 大昔の暮らし ==
[[File:Paleolithic Stone Tools from Hokkaido - Joy of Museums - National Museum of Nature and Science, Tokyo.jpg|thumb|250px|北海道で出土したナイフ状の石器]]
;<span id="石器時代"/>石器時代と狩猟生活
:日本に人類が住み始めたのは、いろいろな説がありますが、ほりだされたもので確かめられるところでは、だいたい3万8000年前と言われています。
:そのころ、日本列島に住んでいる人たちは、海や川の近くに住んで、石や骨でつくった刃物や槍や矢をつかって、シカやイノシシなどの動物を、とらえて食料にしていました。このような石や骨でつくった道具を、'''石器'''といい、この時代を「'''石器時代'''」と言います。動物の骨は、とがらせて使うことが多く、とがらせたものを {{ruby|骨角器|こっかくき}} と言います。骨角器のようなとがった骨も出土することがあります。狩りなどで、槍の先の武器として使ったりすることが多かったものと思われます。
:石器も、最初のうちは、石をただ割ったものを使っていたのですが、時代がくだると、固い石をといでするどくしたり、{{ruby|黒曜石|こくようせき}}と言われるガラスに似た石をうすくとがらせてナイフのようにしたものも見られます。
;{{ruby|考古学|こうこがく}}
:この時代には文字がありませんでしたから、何が起こったのかという記録は残っていません。しかし、土をほりかえしてみると、このように使った土器や、とって食べたと思われる動物の骨、火を使ったあとなどが見つかることがあります。このようなものを、よく調べて大昔はどうであったかを研究する学問を'''考古学'''と言います。
=== 縄文時代 ===
[[file:Jomon Vessel with Flame-like Ornamentation, attributed provenance Umataka, Nagaoka-shi, Niigata, Jomon period, 3000-2000 BC - Tokyo National Museum - DSC05620.JPG|thumb|200px|縄文土器
]]
:人々は、土を火で焼き固めて'''土器'''をつくるようになりました。その土器に縄の模様がついているので、この時代に作られた土器を {{ruby|縄文|じょうもん}}土器 と言います。この土器は、採取した木の実などを貯めたり、食べ物を煮炊きする「なべ」に用いたりしました。ふちに、炎のような飾りをつけたものは実用的ではありませんが、神々や祖先をまつる時に用いられたものと考えられています。
:この縄文土器を使用した、約1万2000年前から約3000年前までの時代のことを、 '''{{Ruby|縄文|じょうもん}}時代''' と言います。
[[Image:JomonStatue.JPG|thumb|left|150px|土偶({{ruby|亀ヶ岡|かめがおか}}遺跡)]]
;土偶
:器だけでなく、土を焼き固めた人形が見つかる場合があります。これを、'''{{ruby|土偶|どぐう}}'''といっています。土偶は、食料が増えることや女性の安産をいのったものだと考えられています。
{{-}}
;貝塚
[[File:Kasori midden preserve north.jpg|thumb|200px|加曽利貝塚、北貝層断面]]
:土地を掘り返すと、多くの貝がらがまとまって発見されることがあります。そこには、貝がら以外にも、動物の骨や、魚の骨、土器の破片などが出土することもよくあります。研究の結果、これは、縄文時代の人々が住み着いた土地で、貝がらなどをごみとして捨てた場所であることがわかりました。これを、'''{{ruby|貝塚|かいづか}}'''といい、周辺に縄文の人々の集落があったことがわかります。
:貝塚には、東京都の{{ruby|大森|おおもり}}貝塚や、福井県の{{ruby|鳥浜|とりはま}}貝塚や、千葉県の{{ruby|加曽利|かそり}}貝塚などが有名です。
:貝塚や石器などに限らず古い時代の物が見つかる場所のことを、 '''遺跡'''と言います。遺跡などから出土する物(これを出土品や遺物と言います)によって、その時代の暮らしもわかります。
:魚つりに必要な、「釣り針」と「もり」が、縄文時代の遺跡から出土されることも多く、漁もしていたことがわかります。
:縄文時代の人の家の建物は、<span id="竪穴住居"/>'''{{ruby|竪穴|たてあな}}建物'''(竪穴住居) といい地面に穴をほりさげたあとに、柱を立て、草ぶきの屋根をかけた建物<ref>それでは、「『竪穴建物』ではない建物」とはどういうものでしょう。柱を固定するのに穴を掘って建てたものを、現在でも「{{ruby|掘立|ほった}}て小屋」といって、{{ruby|粗末|そまつ}}な建物のたとえに使います(実際に、そのやり方で建てる建物はほとんどありません)。穴を掘って柱を固定するだけなので大変簡単な建物の建て方({{ruby|工法|こうほう}})ですが、この工法だと、うめられた木材の柱は、地面の水分によってすぐに腐って、建物がだめになります。時代がくだると、地面に大きな石(「{{ruby|束石|つかいし}}」といいます)をしいてその上に柱を置き、横組みによって、おのおのの柱が倒れないような工法になりました。こうすることで、木造の建物でも長期間使い続けることができるようになったのです。現在の木造建築の多くはコンクリートで硬い基礎をつくり、その上に置いて固定する工法となっています。</ref>にすんでいました。
==== 三内丸山遺跡 ====
[[ファイル:Reconstructed Pillar Supported Structure.jpg|right|thumb|200px|三内丸山遺跡 六本柱建物(復元)]]
:青森県の '''{{ruby|三内丸山|さんないまるやま}}遺跡''' は、約5500年前から約1500年前の間の縄文時代の集落だったということがわかっています。
:この三内丸山遺跡から、クリ、クルミ、トチといった実のなる樹木を栽培したあとが見つかっています。つまり、すでにこの時代から一種の農耕が始まっていたものと考えられています。
:また、多くの土器や石器のあとも見つかっており、大型の{{ruby|掘立|ほった}}て柱の跡も、見つかっていますが、この用途はまだ分かっていません。
:ヒスイの玉や、黒曜石でできた刃物のようなものも見つかっています。ヒスイは、この地ではとれず、新潟県の{{ruby|糸魚川|いといがわ}}などの他の土地でとれるので、他の地域と交易があったのだろう、と考えられています。
:この三内丸山遺跡は、縄文時代を知る遺跡として代表的な遺跡です。
{{-}}
=== 弥生時代 ===
[[Image:YayoiJar.JPG|right|200px|thumb|弥生土器]]
;{{ruby|弥生|やよい}}土器
:約3000年前から、土器は、それまでの縄文土器に比べて、うすくかたいものとなりました。これは、縄文土器に比べて、土を焼き固めるのに高い温度で焼き固めることができるよう技術が進歩したためです。これを、'''{{ruby|弥生|やよい}}土器'''(または、「弥生式土器」)と言います<ref>1884年(明治17年)に東京府本郷区向ヶ岡弥生町(現在の東京都文京区弥生)の貝塚(向ヶ岡貝塚 東京大学構内)で発見されたためこの名がついています。</ref>。
:この弥生土器を使用した、約3000年前から約1800年位前(紀元後3世紀中期)までの時代のことを、 '''{{Ruby|弥生|やよい}}時代''' と言います。
;{{ruby|稲作|いなさく}}のはじまり
:縄文時代の生活は狩猟・採集によるものが主でした。縄文時代の後期になって農耕をやっていたと考えられますが、あまり大規模なものではありません。'''弥生時代'''を特徴づけるのは、稲作をはじめ定住したことです。
:2400年ぐらい前のころから、現代中国の{{ruby|揚子江|ようすこう}}(または、{{ruby|長江|ちょうこう}})周辺から、日本に'''水田'''(田んぼ)を用いて米を栽培する技術('''稲作''')が伝わりました。
:稲作は、まず西日本につたわり、西日本から東日本へと、米作りが広がっていき、東北地方南部にまで広がりました<ref>弥生時代の遺跡は、新潟県北部と千葉県・茨城県を結んだ線より西側で発見されており、弥生時代には東北まで稲作ができる品種がなかったと考えられています。</ref>。
:この時代の農具は、まだ、木製や石器です<ref>北部九州の一部では鉄を用いた農具も見つかっています。</ref>。{{ruby|穂|ほ}}から米をとるときに、 {{ruby|石包丁|いしぼうちょう}} が、使われました。
;<span id="むら"/>「むら」の誕生
:米は乾燥させると、長期間保管ができます。米を大量に保管することで、冬など食料となるものが少なくなる時期でも、人々は安定した生活をおくることができます<ref>同じような穀物に、小麦やトウモロコシがあります。小麦は、乾燥した土地を好むので日本の気候にあまり合いませんし、トウモロコシは、まだ日本に伝わっていませんでした。</ref>。米は縄文時代から採集または水田を使わずに栽培されていたことがわかっていますが、水田を作って栽培することで、収穫量が大きく上がります。一方で、土地をならして水田をつくったり、ため池などの水源を確保し水を引く水路を作ったりする作業は少人数でやるのはむずかしいことです。そして、一度作った水田は何年も使い続けないと、また、荒れ地をきりひらいて水田を作ることから始めないといけなくなります。稲作を続けていくために、人々は水田を中心に定住を始めます。米などの農作物が安定して取れることで人口が増えていき、やがて、多くの人々が住む「'''むら'''」ができます<ref>「むら」ということばは、「むらがる・むれる(集まる)」や「むれ(集まったもの)」と関係があると言われています。</ref>。
;{{ruby|高床|たかゆか}}倉庫
:米は、 '''{{ruby|高床|たかゆか}}倉庫''' で保管されていました。
:高床倉庫が高いのは、ねずみ などの動物が入りづらくするためです。なお、風通しをよくするため、という理由も考えられます。ねずみの害を防ぐという理由の有力な根拠として、地面から床までの柱の、柱のてっぺんに、「かえし」がついていて、動物などが登れないように工夫した高床倉庫が見つかっています。弥生時代の多くの住まいは、縄文時代同様、[[w:竪穴建物|竪穴建物]]でした。
<gallery widths="200px" heights="200px">
Image:Takayukasikisouko.JPG|高床倉庫 妻側より(復元、神奈川県、{{ruby|大塚|おおつか}}・{{ruby|歳勝土|さいかちど}}遺跡)
File:Yoshinogari-iseki takayukashiki-souko.JPG|高床倉庫(復元、佐賀県{{ruby|吉野ヶ里|よしのがり}}遺跡)
File:2004年08月25日 登呂遺跡の復元竪穴状平地建物.jpg|thumb|240px|right|弥生時代の[[w:竪穴状平地建物|竪穴状平地建物]](復元、静岡県{{ruby|登呂|とろ}}遺跡)
File:Yoshinogari-iseki tateana-tatemono.jpg|thumb|250px|right|弥生時代の竪穴建物(復元、佐賀県吉野ヶ里遺跡)
</gallery>
;金属器の伝来
:およそ2300年前、青銅器や鉄器などの金属器とその製造法が伝わります。
:青銅とは、銅 と すず(金属の1つ)を、とかしてまぜあわせた金属でつくられた合金です<ref>ブロンズとも呼ばれます。銅像の多くの材料は青銅です。皆さんの身の回りにある、もっと身近な青銅製のものは十円硬貨(十円玉)でしょう。</ref>。比較的低い温度で溶けて加工することができるという特徴があります。鉄は、今でも身近にある非常に硬い金属ですが、製造するためには、青銅より強い火力を必要とします。世界の歴史では、まず、金属器としては青銅が普及し、続いて実用的な鉄が普及したのですが、日本には、ほぼ同時期に伝来したと考えられ、青銅器は、おもに祭りの道具を作るのに使われ、鉄器が、農具や武器などの実用品につかわれるようになりました。
:石器の原料である石に比べると、鉄は加工が簡単で強くするどいものを作ることができるため、鉄の農具は農地を深くたがやすことができるようになり、鉄器で耕した農地は石器で耕した農地より豊かになり、石器を使う人たちを圧倒するようになります。こうして、鉄器など金属器を使い始めると、石器が使われなくなるため、それ以降を[[#石器時代|石器時代]]とはいわなくなります<ref>世界の歴史では、使われる金属器によって「青銅器時代」「鉄器時代」ということもあり、現代も含めて「鉄器時代」ですが、皆さんは覚える必要はありません。「石器時代」が終わったことだけ理解しておいてください。</ref>。
:青銅器は表面がさびても形を残す性質があるため、銅{{ruby|剣|けん}}や、銅{{ruby|矛|ほこ}}、銅{{ruby|鐸|たく}}、銅{{ruby|鏡|きょう}}などが残っています。一方、鉄は、うめられると、さびてボロボロになってしまいますし、鉄自体、貴重なものだった<ref name="鉄">鉄は、材料となる砂鉄や鉄鉱石が日本では希少で、製造に大量の炭を使い、{{ruby|鍛治|かじ}}という特殊な技術が必要であったため、当時の生活から見るとかなり高価なものでした。</ref>ので、再利用して、あらたな道具として作り直されることが多く、当時のものはほとんど残っていません。
<gallery widths="200px" heights="200px">
ファイル:YayoiBronzeSpearTip1-2ndCenturyKyushu.jpg|弥生時代の銅矛(九州で出土、1~2世紀)
ファイル:DotakuBronzeBellLateYayoi3rdCenturyCE.jpg|thumb|銅鐸
</gallery>
{{-}}
[[file:Toro Site 1.jpg|thumb|200px|登呂遺跡全景]]
;{{ruby|登呂|とろ}}遺跡
:静岡県の登呂遺跡は、1943年(昭和18年)発見され、1947年に考古学・人類学・地質学など各分野の学者が加わった日本で初めての総合的な発掘調査が行われた遺跡です。8万平方メートルを超える水田跡や井戸の跡、[[w:竪穴状平地建物|竪穴建物に似た平地建物]]・[[w:高床建物|高床建物]]を建てたあとが検出されました。この他にも、農耕や狩猟、魚釣りのための木製道具や火起こしの道具、占いに用いた骨などが出土しました。
{{-}}
[[File:Yoshinogari-iseki zenkei.JPG|thumb|440px|right|吉野ケ里遺跡,遠景]]
;{{ruby|吉野ケ里|よしのがり}}遺跡
:佐賀県の吉野ヶ里遺跡は、昔から、遺物の出土が見られた土地でしたが、工業用地開発にあたり調査をしたところ、1989年に弥生時代の大規模な集落あとであることが発見されました。
:この遺跡は、まわりを{{ruby|濠|ほり}}でかこまれた {{ruby|環壕|かんごう}}集落 であるところに特徴があります。ほりの内側からは、多くの高床倉庫が見つかっています。ほりは集落を守るためにめぐらされたと考えられています。
:また、矢がささった人骨も見つかっており、これらのことから、人々のあいだで争いがあったことが想像できます。おそらくは、米作りによって、食料生産が増えたので人口が多くなって、それぞれの集落で、さらに多くの人口を養うために米の生産量を増やす必要が生じ、集落どうしで、土地や水をめぐっての争いが起きたのだろうと思われています。このような争いが、身分の差を作っていった理由の一つだとも、思われています。
{{-}}
=== 「むら」から「くに」へ ===
;「くに」の誕生<!--
::*「むら」と「くに」はどこが違うのか。
::*「むら」や「くに」はなぜ大きくなっていかなければならなかったのか。-->
:[[#むら|こうして「むら(村)」ができると]]、村同士のあらそいがしばしば起こりました。その原因は、村と村の間に水源がある時にどちらが使うかというものであったり、不作などで食糧が足りなくなったのでとなりの村をおそって食糧をうばったりしたものだったのでしょう。相手の村に対抗するため、別の村と共同してあらそうことがあったかもしれません。
:強い村が弱い村をしたがえたり、村同士で共同したりして、村はだんだん大きなものとなっていきます。村が大きくなってくると、人の行き来もふえ、道を作ったりしなければならなくなります。<span id="市"/>また、人が集まると、人々は同じ農耕(稲作)ばかりではなく、野菜や果物を作ったり、魚をとったり、カゴなど竹細工や木工品を作ったりと別々のことをやって、それぞれ作った農作物や、とった魚や動物、作ったカゴなど工作品とを交換して生活を豊かにすることができるようになります。こうしたものの交換の場として、'''{{ruby|市|いち}}'''ができます。
:田を耕したり、物を収穫したりする能力は人それぞれです。村の中にも豊かな人とそうでない人の差はできました。さらに、たとえば、広い田を持つ豊かな人は、田を持たない人に収穫の一部を与える代わりに自分の田をたがやさせたり、貧しい人の子どもをもらってきて育て、やはり、自分の農地で使ったりもしたでしょう。村のあらそいで負けた人々が、このような立場になることもあったとも考えられます。このころには、こうした豊かな人たちと、その人たちに支配される人々の差がでてきました。
:村が大きくなるにつれ、ばらばらの人をまとめるリーダーが必要になってきます。リーダーは、ため池・水路や道をつくったり、整備することの指示をしたり、市を開いたり、市でのもめごとをおさめたり(仲裁)、また、他の村とのあらそいでは武器を持って戦ったり、それを指揮したりしたでしょう。このリーダーには、上でのべた豊かな人たちがなったり<ref name="鉄"/>、そのような人の中で能力が高いために人々が押し上げたりしたのでしょう。知識をたくわえ、{{ruby|神|かみ}}の声として伝えて、そのようなリーダーになった人もいたかもしれません。
:さらに、時間がたつと、村はますます大きくなっていきます。だんだん、このリーダーたちは、自分で田を耕さず、日々の指示や仲裁や戦うことだけを仕事とするようになり、リーダーたちの生活は村の人々が収穫の一部をわけることで成り立つようになります。すなわち、「'''税'''」です。税の仕組みができた村を「'''くに'''」と言います<ref>「くに」ということばは、「むら」ほど明確な関係は、わかっていませんが、「{{ruby|組|く}}む」「{{ruby|組|くみ}}」と関係があるとも言われています。</ref>。そして、のちに「くに」のリーダーの、さらに長を「'''王'''」、女性の場合は「'''女王'''」と言ったりします<ref name="王">「くに」の長については、当時の言葉が残っていないので、中国語の考え方(漢字)を当てています。少し後の時代に、「主人」という意味で「きみ(君)」と呼ばれていたらしいとも考えられています。「くに・くむ・くみ」と少し似ていますね。「きみ」を支配するものが「おおきみ」です。</ref>。
:「くに」は、「むら」と同様に、となりの「くに」とあらそうなどして、大きくなっていきます<ref name="人口">弥生時代の日本の全人口は60万人くらいだったのではないかといわれています。次の古墳時代の終わりころになって、ようやくその10倍くらいになります。紀元前1世紀頃は100数カ国あったとされる(これは、九州北部から近畿地方までと考えられていますから、おそらく200以上はあったでしょう)ので、「くに」といっても、人口数千人から数万人の規模であったと考えられます。</ref>。このころになると、朝鮮半島をはじめとする大陸としばしば行き来するようになります<ref>稲作や金属器製法の伝来は大陸からなので、それ以前も行き来はあったでしょうが紀元前1世紀くらいから特にふえます。</ref>。「王」の中には大陸から渡ってきたものもいるかもしれませんし、大陸にわたって王になったものもいるかもしれません。
;中国との交流<span id="中国との交流"/>
:中国には、約5000年前から青銅器を作り、約3500年前には文字(漢字)を使っていた古い文明をもった人々が住んでいました。紀元前3世紀には、大きな国となって、それを{{ruby|皇帝|こうてい}}が治めていました。
:日本の「くに」の王は、皇帝に{{ruby|貢|みつ}}ぎ物をおくり、関係をもちました。これは、皇帝に貢ぎ物をおくると、そのお返しに数倍の価値の品物を与えられ<span id="朝貢"/>、また、皇帝によって「くに」の王としての地位が認められたからです。
:中国の歴史書には、日本の「くに」が貢ぎ物をおくったことが記録されています。
[[File:King of Na gold seal.jpg|200px|thumb|right|金印。「漢委奴国王」印]]
:#最初の記録は、紀元前1世紀に、当時の'''{{ruby|漢|かん}}'''{{ruby|王朝|おうちょう}}<ref>同じ家系の皇帝によって治められた時代を王朝と言います。</ref>(前漢<ref name="漢">漢は一度ほろぼされましたが、一族がまた王朝を開きました。滅ぼされる前の王朝を「{{ruby|前漢|ぜんかん}}」、新しくできた王朝を「{{ruby|後漢|ごかん}}」と言います。</ref>)の朝鮮半島にある役所に貢ぎ物がなされたこと記録されています。当時の日本は「'''{{ruby|倭|わ}}'''<ref>なよなよした人、背が低い人(矮)などの意味で、あまり良い意味ではありません。</ref>」と呼ばれ、百数国に分かれていたと書かれています。これが、日本のことが文書に書かれた最初の例です。
:#57年、倭の{{ruby|奴|な}}国が貢ぎ物をし、漢(後漢<ref name="漢"/>)の皇帝は、'''金印'''をさずけました。金印は江戸時代になって、現在の福岡県で発見されました。金印には「漢委奴国王」と書いてあります。これは、一般に「{{ruby|漢|かん}}の{{ruby|委|わ}}(=倭)の{{ruby|奴|な}}の国王」と読んでいます。「漢が支配する倭(=日本)の奴の国の王」という意味です。
:#107年、倭国王が来て、奴隷160人を貢ぎ物として、皇帝に会うことをねがった。文明の進歩していない日本からの貢ぎ物は、おもに人(奴隷)だったことがわかります。
:#147年から189年にかけて、倭国の中で大きな戦争があって、国々が互いに争ったことが記録されています。その当時になると、中国も日本に興味を持っていたことがわかります。
:#<span id="邪馬台国"/>235年、'''{{ruby|魏|ぎ}}'''<ref>このころ、中国では後漢はほろぼされ、「魏」が最も有力な王朝となっていました。</ref>の皇帝に、使いをおくりました。おくった国は、'''{{ruby|邪馬台国|やまたいこく}}'''といい、その王は女性で'''{{ruby|[[小学校社会/6学年/歴史編/人物事典#卑弥呼(ひみこ)|卑弥呼]]|ひみこ}}'''といいました。
:#*この卑弥呼が魏におくった使者については、くわしく記録されており<ref>この歴史書を、『{{ruby|魏志|ぎし}}{{ruby|倭人|わじん}}{{ruby|伝|でん}}』と言います。</ref>、当時の社会をよく知ることができます。以下にいくつか例をあげます。
:#**百数国あった国は、このころ、中国と行き来のある国は、約30国になった。
:#**邪馬台国は30国をしたがえているが、{{ruby|狗奴国|くなこく}}と対立している。
:#**卑弥呼はうらないやまじないで国をまとめていて、その姿を人前にあらわすことはない。
:#**人々は、顔や体に{{ruby|入|い}}れ{{ruby|墨|ずみ}}を入れ、貫頭衣と言われる単純な服を着ている。
:#**養蚕をして糸をえている。牛や馬は飼っていない。
:#**邪馬台国からの貢物は男女の奴隷10人とわずかな布に対して、皇帝は、金印に加えて、大量の錦などの高価な織物や金、刀、銅鏡100枚などを与えた。
:#*邪馬台国の場所は分かっておらず、古くから多くの人が色々な説を出して論争をしています。奈良県と北部九州が有力ですが、結論は出ていません。
== 「くに」の統一 ==
=== 古墳時代 ===
[[画像:NintokuTomb Aerial photograph 2007.jpg|thumb|{{ruby|仁徳天皇陵|にんとくてんのうりょう}}<ref>「{{ruby|陵|りょう}}」とは天皇や皇后といった皇族のお墓の呼び名です。「仁徳天皇陵」とは仁徳天皇のお墓という意味です。</ref>と伝えられている大山古墳。前方後円墳、大阪府堺市]]
:3世紀から4世紀ごろになると、各地で'''{{ruby|古墳|こふん}}'''といわれる、大きな墓が作られるようになります。古墳には「くに」の王や有力者('''{{ruby|豪族|ごうぞく}}''')が{{ruby|埋葬|まいそう}}されたと考えられています。この、3世紀ごろから7世紀ごろの時代を '''古墳時代''' と言います。
:古墳は全国に分布しますが、特に九州地方から中国地方をへて、近畿地方にかけて多く見られます。古墳は朝鮮半島南部にも見られ、この地域との関係が深かったことがわかります。
:古墳には、いろいろな形のものがあります。円形に{{ruby|盛|も}}り上がった古墳を{{ruby|円墳|えんふん}}と言います。四角く盛り上がった古墳を{{ruby|方墳|ほうふん}} と言います。円墳と方墳があわさったような、かぎ{{ruby|穴|あな}}のような形の古墳を {{ruby|前方後円墳|ぜんぽうこうえんふん}} と言います。大阪府{{ruby|堺|さかい}}市にある {{ruby|大仙|だいせん}}(大山)古墳 は、日本で最大の面積の古墳です。
:弥生時代に比べて古墳時代は、古墳作りのような大規模な事業ができるほど人口が増えます<ref name="人口"/>。これは、大陸から、牛や馬がもちこまれたり<ref name="牛馬">『魏志倭人伝』には、「倭には、馬や牛はいない」と書かれていますので、この時代(古墳時代)に伝わったことがわかります。馬は、漢字の音(昔の中国語の音)で「マ」と発音しますが、それがなまって「うま」となったとされています。</ref>、鉄を製造する技術が普及したためであると考えられています。
:なお、このころ、中国は国内が乱れたため、邪馬台国を書いたような歴史書がとだえ、4世紀の様子はあまり伝わっていません。ただ一方で、<span id="好太王の碑"/>4世紀末から5世紀にかけて朝鮮半島の北部に倭の軍隊がせめいって北部の国({{ruby|高句麗|こうくり}})と戦ったことが、朝鮮半島の石碑<ref>「{{ruby|好太王|こうたいおう}}の碑」といいます。</ref>に残っています。このように、この当時も朝鮮半島とは盛んに行き来がありました。
{{-}}
;古墳の{{ruby|副葬|ふくそう}}品
:古墳からは、鏡や玉・{{ruby|勾玉|まがたま}}、{{ruby|剣|つるぎ}}などが副葬<ref>遺体とともに埋葬されることを言います。</ref>されています。ほかにも、'''{{ruby|埴輪|はにわ}}''' という、土を焼いて作られた筒状のもの<ref>「はに」-土で作ったもの、「わ」-円形のもの、で、「はにわ」と言います。</ref>が発見されています。これは、時代がくだると、人や牛馬<ref name="牛馬"/>、家や船などをかたどったものが見られるようになります。埴輪から、当時の人々がどのような姿をし、どのような家に住み、どのような船に乗ったのかなど、当時の生活の様子を知ることができます。これら、古墳の副葬品からわかる古墳時代の文化のことを'''古墳文化'''と言います。
<gallery widths="200px" heights="200px">
File:Large domestic mirror, Kofun period, 300s-400s AD, bronze - Tokyo National Museum - Ueno Park, Tokyo, Japan - DSC09133.jpg|副葬品の銅鏡(奈良県・{{ruby|柳本大塚|やなぎもとおおつか}}古墳出土 )
File:Koujindani Remains 03.JPG|銅矛とともに出土した銅鐸(島根県・{{ruby|出雲|いづも}}市の{{ruby|荒神谷|こうじんだに}}遺跡)。古墳時代の遺跡。
Magatamas.JPG|古墳時代の勾玉(東京国立博物館所蔵)
塚廻り古墳 - panoramio.jpg|埴輪出土の様子
ファイル:メスリ山古墳出土 大型円筒埴輪.JPG|大型円筒埴輪
File:KofunSoldier.jpg|thumb|left|140px|埴輪。武装男子立像(群馬県{{ruby|太田|おおた}}市出土)
画像:HaniwaHorse.JPG|thumb|190px|馬形埴輪
ファイル:西都原古墳群出土 埴輪 子持家.JPG|家の埴輪
ファイル:西都原古墳群出土 埴輪 船.JPG|船の埴輪
</gallery>
{{-}}
=== 大和政権 ===
[[File:Inariyama sword.JPG|thumb|250px|right|真ん中の、{{ruby|縦|たて}}に長いものが、発掘された{{ruby|鉄剣|てっけん}}。]]
:現在の奈良県奈良市周辺、{{ruby|大和|やまと}}川上流部の奈良{{ruby|盆地|ぼんち}}は、「'''やまと'''(後に「'''大和'''」の字を当てます)」と呼ばれる稲作に適した豊かな土地<ref>現代の考え方では、多くは川の下流の海に近い広い低湿地の方が稲作に適していると考えられていますが、そのような土地は水害に弱く、江戸時代くらいになるまでは、このような盆地や台地で水の豊富な土地が稲作の中心でした。</ref>で、大和川を下って、現在の大阪府中部周辺も一体となった、この地域における「くに」の王や豪族は、大変有力なものとなりました。それは、この地方に、大きな古墳が数多く発見されていることからもわかります。
:この地方の豪族たちは、自分たちのリーダーとして'''{{ruby|大王|おおきみ}}'''<ref name="王"/>をおしたて、それに従うことになります。この{{ruby|大王|おおきみ}}が、現在の天皇の祖先とされ、{{ruby|大王|おおきみ}}の政府を大和{{ruby|朝廷|ちょうてい}}<ref>天皇を中心とした政治の仕組みを{{ruby|朝廷|ちょうてい}}といいます。</ref>と言い、この大和地方の勢力を'''{{ruby|大和政権|やまとせいけん}}''' と言います。
:大和政権は、東西に兵を出して、日本の「くに」を一つにまとめようとします
:5世紀後半に作られたと見られる埼玉県の{{ruby|稲荷山|いなりやま}}古墳から見つかった{{ruby|鉄剣|てっけん}}には、「ワカタケル大王」という名がきざまれた文が発見されました。この文から、この地方の王は、ワカタケル大王に使えていたことがわかります。また、熊本県の {{ruby|江田船山|えだふなやま}}古墳 にも、一部が読めなくなっていましたが、「ワ□□□ル大王(□は読むことができない文字です、文字数は数えることができます)」という、「ワカタケル大王」と考えられる名前が刻まれた鉄刀があり、ワカタケル大王の支配する領域が、関東地方から九州までの広い範囲におよんでいたことがわかります。このことから、大和政権は、5世紀後半から6世紀前半にかけて、日本を統一したのではないかと考えられています。
:<span id="南北"/>5世紀に入ると中国はやや安定し、南北に王朝ができ、より安定した南の王朝に日本が使者を何度も送ったことが記録されており、これを送ったのは大和政権の{{ruby|大王|おおきみ}}(天皇)であろうとされています。
;「くにづくり」についての日本神話
:<span id="漢字伝来"/>日本に、文字(漢字)が伝えられたのは、4世紀後半から5世紀前半にかけてであろうとされています。伝説では、朝鮮半島から渡ってきた{{ruby|王仁|わに}}が伝えたとされていますが、その前から、ある程度の読み書きはできていたと考えられますし、1人の伝えたもので、文字が伝わるものでもありません。おそらく、朝鮮半島から、漢字を読み書きできる集団が移住してきて大和朝廷につかえたことの、{{ruby|象徴|しょうちょう}}だと考えられます<ref>実際に、王仁の子孫とされる{{ruby|西文|かわちのふみ}}氏は、朝廷に{{ruby|史|ふひと}}という書記の役職で朝廷につかえます。</ref>。
:したがって、文字が伝わるまで日本で何があったのかはよくわかりません。また、文字が伝わった後も、しばらくは書かれたものも少なかったため、記録はほとんど残っておらず、やはり詳しいところはわかっていません。
:この時代のことを知るには、出土品などから考古学の方法によるか、中国などに残る歴史書にたよるしかありません。
:<span id="神話"/>しかし、文字のない時代にあっても、人々は、いろいろなできごとを、物語にして語り伝えてきました。これを、「{{ruby|口伝|くでん}}」といいます。人が記憶によって伝えるのですから、語り伝えている間に、正しく伝わらなかったり、伝える人に都合よくかえられたり、また、よくわからないことについては、神秘的なできごと、つまり、{{ruby|神|かみ}}さまのやったことにしてしまうなど、正確なものとはいえませんが、元々のできごとを想像させたり、それを語りついだ人々の考えを知ったりすることができます。このようにして、語り伝えられた物語を{{ruby|神話|しんわ}}といいます。
:日本においても、神話は語りつがれていました。8世紀になって、日本人が漢字を自由に使いこなし、紙なども大量に入手できるようになると、日本の歴史をまとめることをはじめます<ref>[[小学校社会/6学年/歴史編/天皇中心の国づくり-飛鳥時代から奈良時代#奈良時代|次の章の「奈良時代」]]で詳しく説明します。</ref>。この時に、日本神話を多く書き残しました。[[小学校社会/6学年/歴史編/天皇中心の国づくり-飛鳥時代から奈良時代#記紀|特に、大和朝廷の成立に関係する神話については『{{ruby|古事記|こじき}}』・『{{ruby|日本書紀|にほんしょき}}』という書物にまとめます]]。この二つの書物の名をとって、これらの神話を、{{ruby|記紀|きき}}神話と言います。以下に簡単に紹介します。すでにいくつか知っている話もあるかもしれません。'''[[/「くにづくり」についての日本神話|別のページ]]'''では、もう少し詳しく解説します。
:ただし、神話はあくまでも物語です。これを読む時に歴史的事実とごちゃごちゃにならないよう注意しましょう<ref>たとえば、ここに紹介する神武天皇の話は『古事記』によると、約2700年前の話になるのですが、そのころに、鉄などの高度な文明があったことは、考古学上発見されていません。</ref>。
:;[[/「くにづくり」についての日本神話#1|国産み・神産み神話]]
::男神イザナギと女神イザナミは結婚して、日本の国土の島々を産み、また、さまざまな物事に関するたくさんの神々を産みました。
:;[[/「くにづくり」についての日本神話#2|{{ruby|高天原|たかまがはら}}神話]]
::イザナギの子である太陽の女神アマテラスは、神々の土地である{{ruby|高天原|たかまがはら}}をおさめますが、弟の男神スサノオが暴れるので、{{ruby|天岩戸|あまのいわと}}と言われるほらあなにかくれてしまいます。太陽の神がかくれたので、世の中は真っ暗やみになります。困った神々は策略をめぐらしアマテラスを天岩戸からひっぱりだして、元の平穏な世界にもどります(天岩戸伝説)。スサノオは高天原を追放されます。
:;[[/「くにづくり」についての日本神話#3|{{ruby|出雲|いずも}}神話]]
::高天原を追放されたスサノオは、出雲(現在の島根県)に向かいます。出雲で、人々を困らせる大蛇の化物ヤマタノオロチの話を聞き、これを退治し出雲に住んでここを治めます(ヤマタノオロチ伝説)
::出雲の神さまであるオオクニヌシは、兄弟の神々からいじめられていましたが、海岸でひどい目にあっているシロウサギを助けるなど優しい心の持ち主であったので({{ruby|因幡|いなば}}の白兎伝説)、多くの人々に受け入れられ、やがて、スサノオをついで出雲を治め、日本全国をおさめることになります。オオクニヌシの国は、オオクニヌシを厚くまつることを条件にアマテラスからの使者にアマテラスの子孫にゆずることを約束させられます(国譲り神話、出雲大社由来)。
:;[[/「くにづくり」についての日本神話#4|{{ruby|天孫降臨|てんそんこうりん}}神話・{{ruby|日向|ひゅうが}}神話・{{ruby|神武東遷|じんむとうせん}}神話]]
::アマテラスは孫のニニギに日本を治めさせることとし、ニニギは天上の高天原から日向(現在の宮崎県)の{{ruby|高千穂|たかちほ}}におります({{ruby|天孫降臨|てんそんこうりん}}神話)。
::ニニギの子のホオリ({{ruby|山幸彦|やまさちひこ}})は、兄のホスセリ({{ruby|海幸彦|うみさちひこ}})と対立しましたが、ホオリがホスセリをしたがえました(海幸山幸伝説)。
::ホオリの孫であるイワレヒコは、日向から船出し瀬戸内海沿岸の国々をしたがえ、大和を征服し、初代天皇である「神武天皇」となりました({{ruby|神武東遷|じんむとうせん}})。
:;[[/「くにづくり」についての日本神話#5|ヤマトタケル神話]]
::景行天皇の皇子であるヤマトタケルは、西に九州の{{ruby|熊襲|くまそ}}を平定したのち、東国に向かい、各地を平定しました。
== 脚注 ==
以下は学習の参考ですので覚える必要はありません。<small>
<references/></small>
----
{{前後
|type=章
|[[小学校社会/6学年/歴史編]]
|[[小学校社会/6学年/歴史編/歴史の流れをつかもう|日本の歴史の流れ]]
|[[小学校社会/6学年/歴史編/歴史の流れをつかもう|歴史の流れをつかもう]]
|[[小学校社会/6学年/歴史編/天皇中心の国づくり-飛鳥時代から奈良時代|天皇中心の国づくり-飛鳥時代から奈良時代]]
}}
[[Category:社会|しようかつこうしやかい6]]
[[Category:小学校社会|6ねん]]
[[Category:小学校社会 歴史|#03]]
9pssqxw4xresw8y9ojvbw8r5wg9j1r9
Wikibooks:GUS2Wiki
4
35248
304857
304574
2026-10-18T13:24:31Z
Alexis Jazz
56315
Updating gadget usage statistics from [[Special:GadgetUsage]] ([[phab:T121049]])
304857
wikitext
text/x-wiki
{{#ifexist:Project:GUS2Wiki/top|{{/top}}|This page provides a historical record of [[Special:GadgetUsage]] through its page history. To get the data in CSV format, see wikitext. To customize this message or add categories, create [[/top]].}}
以下のデータは 2026-10-16T07:13:43Z に最終更新されたキャッシュです。
{| class="sortable wikitable"
! ガジェット !! data-sort-type="number" | 利用者の数 !! data-sort-type="number" | 活動中の利用者
|-
|Blackskin || 10 || 0
|-
|Navigation popups || 93 || 1
|-
|UTCLiveClock || 51 || 0
|-
|edittop || 62 || 2
|-
|exlinks || 58 || 1
|-
|removeAccessKeys || 10 || 0
|-
|wikEd || 51 || 0
|}
* [[特別:GadgetUsage]]
* [[m:Meta:GUS2Wiki/Script|GUS2Wiki]]
<!-- data in CSV format:
Blackskin,10,0
Navigation popups,93,1
UTCLiveClock,51,0
edittop,62,2
exlinks,58,1
removeAccessKeys,10,0
wikEd,51,0
-->
dews8y86wojgcai0vabk9kr13un3v5p
解析学基礎/ベクトル解析
0
45683
304876
304836
2026-10-19T05:54:49Z
~2026-55692-88
92812
/* 積分定理 */
304876
wikitext
text/x-wiki
{{Pathnav|数学|解析学|解析学基礎|frame=1}}
{{wikipedia|ベクトル解析}}
ここでは、ベクトル解析について解説する。[[物理数学I ベクトル解析]]も参照。
==前提知識==
ここでは、実数のみで考える。
===ベクトル===
[[高等学校数学C/ベクトル]]、[[線型代数学/ベクトル]]、[[解析学基礎/ベクトル]]などを参照。本項では、矢印を付した表記(<math>\vec{a}</math>など)と太字斜体による表記(<math>\boldsymbol{x}</math>など)を混用する。
===行列===
[[高等学校数学C/数学的な表現の工夫]]及び[[線形代数学]]・[[線型代数学続論]]の各ページを参照。本項では大文字の太字立体(<math>\mathbf{A}</math>など)で表記する。
===多変数解析===
[[解析学基礎/多変数関数の微積分]]を参照。
===領域===
<math>D\subset\mathbb{R}^n</math>と点<math>\boldsymbol{a}\in D</math>(位置ベクトル表記なので太文字斜体)に対し、集合<math>B_\varepsilon(\boldsymbol{a}) := \{ \boldsymbol{x} \in D \mid \| \boldsymbol{x} - \boldsymbol{a} \|<\varepsilon \}</math>を点<math>\boldsymbol{a}</math>の'''<math>\varepsilon</math>-開球'''という。不等号を<math>\leqq</math>に変えたときは開区間↔閉区間と同様に'''閉球'''と呼ぶ。このとき、<math>D</math>のように<math>\mathbb{R}^n</math>の部分集合であって<math>\varepsilon</math>-開球を含むものを点<math>\boldsymbol{a}</math>の'''<math>\varepsilon</math>-開近傍'''と呼ぶ。閉球を含むときは同様に'''閉近傍'''と呼ぶ。
<math>\forall \boldsymbol{a} \in U, \exist \varepsilon>0, B_\varepsilon(\boldsymbol{a})\subset U</math>を満たす<math>U\subset\mathbb{R}^n</math>を'''開集合'''と呼び、<math>V=\mathbb{R}^n\setminus U</math>を'''閉集合'''と呼ぶ。
注意点として、開集合と閉集合は排反ではない。則ち「開集合且つ閉集合」である集合が存在し(例えば<math>\mathbb{R}, \varnothing</math>)、「開集合でも閉集合でもない」集合も存在する(例えば<math>[0, 1)</math>)。
<math>M\subset\mathbb{R}^n</math>を含む最小の閉集合を<math>M</math>の'''閉包'''と呼び、<math>M^-, \bar{M}, \mathrm{Cl}(M)</math>などと表す。例えば有理数の稠密性より<math>\mathbb{Q}^-=\mathbb{R}</math>である。
閉包の性質として「閉包=集合の内部と境界の和集合(<math>M^- = \mathrm{Int}(M) \cup \partial{M}</math>)」がある。
集合<math>S\subset\mathbb{R}^n</math>に対して以下を満たす<math>\mathbb{R}^n</math>上開集合の組<math>(G_1, G_2)</math>が'''とれない'''とき、
#<math>G_1 \cap S = \varnothing \land G_2 \cap S = \varnothing</math>
#<math>S = (G_1 \cap S) \sqcup (G_2 \cap S)</math>
「<math>S</math>は'''連結'''である」または「<math>S</math>は'''連結集合'''」という(但し、<math>\sqcup</math>は[[w:非交和|非交和]])。
空でない開連結集合を'''領域'''という。
実は、高校数学や1年次の解析学で扱ってきた「領域」はこの定義を満たしていないことが多かった。これは、「領域」の歴史的な用法では「条件の解集合」という意味であって開性や連結性を要求しなかったためである。しかし、本項を含めた以降に登場する数学ではこの定義を満たしていることが前提条件となる。なお、ややこしいことに「積分領域」は従来通り「その上で積分を行う集合」という緩い意味で使われることが多いので、区別が必要である。
===右手系===
三次元空間の正規直交基底を<math>(\boldsymbol{e}_1, \boldsymbol{e}_2, \boldsymbol{e}_3)</math>と置く。螺子を<math>\boldsymbol{e}_1\to\boldsymbol{e}_2</math>の向きに回すと<math>\boldsymbol{e}_3</math>の正方向に進むように3つの軸をとった系を'''右手系'''という。負方向に進むようにとったものを'''左手系'''という。数学・物理に限らず理数系の約束事として、'''三次元空間は必ず右手系で考える'''という暗黙の了解が存在するので覚えておこう。
右手系・左手系は基底の一部または全ての符号を反転することで変換することができる。一つだけを反転する場合は'''鏡像変換'''、二つだけを反転する場合は'''半回転'''、全てを反転する場合は'''空間反転'''と呼ぶ。
外積の結果として得るベクトルは右手系・左手系のどちらを考えるかで向きが変わる。このように、右手系↔左手系の変換で向きが変わるベクトルを'''軸性ベクトル'''という。
系の取り方で向きが変わるということは基底の係数である'''成分は不変量'''である。つまり、観測者の動きにベクトルが追従し、このベクトルは「物理的な実体を有しているのではなく計算の都合上向きが定められた便宜的な(=観測者が勝手に決めた)ベクトル」ということである。そのため、軸性ベクトルは'''擬ベクトル'''(シュードベクトル)とも呼ばれる。
位置や速度、加速度のような右手系・左手系のどちらを考えても同じ向きを向くベクトルを'''極性ベクトル'''という。座標系を取り換えても向きが維持されるため'''成分は座標変換に応じて変化する'''。これは、「観測の仕方によって起こる現象は変わらない」ということである。つまり擬ベクトルに対し、極性ベクトルは'''物理的実体を有するベクトル'''である。
偶奇と同じように軸性・極性にも外積を通じた相互関係が存在する。
:(軸性)×(軸性)=(軸性)
:(軸性)×(極性)=(極性)
:(極性)×(極性)=(軸性)
==基礎事項==
===ベクトル関数===
関数<math>\boldsymbol{f} (x) = \sum_{i} f_i(x) \boldsymbol{e}_i</math>を'''ベクトル(値)関数'''(vector-valued function, vector function)という。
ただし、各<math>\boldsymbol{e}_i</math>は各座標軸方向の単位ベクトルであり、<math>\boldsymbol{f}(x)</math>の定義域は各<math>f_i(x)</math>の定義域の積集合である。
ベクトルの演算が成分ごとの演算結果を並べたベクトルで定義されたように、ベクトル関数の演算は(結果となる値が存在するならば)各成分の演算結果を並べたベクトルに等しい。これはベクトルの線型性による。
例えば、<math>\boldsymbol{f}(x) = \begin{pmatrix} \cos x \\ \sin x \end{pmatrix}</math>の<math>x\to0</math>の極限は、
:<math>\lim_{x\to0} \boldsymbol{f}(x) = \begin{pmatrix} \lim_{x\to0} \cos x \\ \lim_{x\to0} \sin x \end{pmatrix}</math> (<math>\because</math>線型性)
:<math>=\begin{pmatrix} 1 \\ 0 \end{pmatrix}</math>
:<math>=\boldsymbol{e}_x</math>
と求まる。
このとき、<math>\boldsymbol{e}_x</math>を<math>\begin{pmatrix} \cos x \\ \sin x \end{pmatrix}</math>の<math>x\to0</math>に於ける'''極限ベクトル'''という。
<math>\boldsymbol{f}(x)</math>が<math>x=\alpha</math>で連続であるとは<math>\lim_{x\to\alpha}\boldsymbol{f}(x)=\boldsymbol{f}(\alpha)</math>が成立することであり、区間<math>I</math>で連続であるとは<math>\forall \alpha \in I</math>で連続であることである。
また、ベクトル関数の導関数<math>\boldsymbol{f}'(x)</math>は
:<math>\frac{d}{dx} \boldsymbol{f} (x) = \frac{d}{dx} \left( \sum_i f_i(x) \boldsymbol{e}_i \right)</math>
:<math>= \sum_i \left( \frac{d}{dx} f_i (x) \boldsymbol{e}_i \right)</math>(<math>\because</math>線型性)
:<math>= \begin{pmatrix} f'_1(x) \\ f'_2(x) \\ \vdots \\ f'_i(x) \\ \vdots \end{pmatrix}</math>
である。
この結果は、ベクトル関数に於ける導関数の正式な定義 <math>\lim_{h\to0} \frac{\boldsymbol{f}(x+h) - \boldsymbol{f}(x)}{h}</math>からも導かれる。
<math>\boldsymbol{f}(x)</math>が<math>x=\alpha</math>で微分可能であるとは極限値<math>\boldsymbol{f}'(\alpha)=\lim_{x\to\alpha}\frac{\boldsymbol{f}(x)-\boldsymbol{f}(\alpha)}{x-\alpha}</math>が存在することであり、区間<math>I</math>で微分可能であるとは<math>\forall \alpha \in I</math>で微分可能であることである。
高階導関数・高階微分可能も同様にして定義される。
<math>\boldsymbol{f}(x)</math>が区間<math>I</math>で連続ならば<math>\boldsymbol{f}(x)</math>は<math>I</math>上で<math>C^0</math>級であるといい、<math>\boldsymbol{f}\in C^0(I)</math>と書く。<math>\boldsymbol{f}(x)</math>が<math>I</math>で微分可能で<math>\boldsymbol{f}'(x)\in C^0(I)</math>ならば<math>\boldsymbol{f}(x)</math>は<math>I</math>上で<math>C^1</math>級である(一階連続微分可能)といい、<math>\boldsymbol{f}\in C^1(I)</math>と書く。<math>\boldsymbol{f}(x)</math>が<math>I</math>で二階微分可能で<math>\boldsymbol{f}'\in C^1(I)</math>ならば<math>\boldsymbol{f}(x)</math>は<math>I</math>上で<math>C^2</math>級である(二階連続微分可能)といい、<math>\boldsymbol{f}\in C^2(I)</math>と書く。同様にして順々に<math>C^k</math>級が定義され、<math>\forall k \in \mathbb{N}, \boldsymbol{f}\in C^k(I)</math>ならば<math>\boldsymbol{f}(x)</math>は<math>I</math>で<math>C^\infty</math>級(無限階連続微分可能)であるといい、<math>\boldsymbol{f}\in C^\infty(I)</math>と書く。<math>C^\infty</math>級である関数を'''滑らかな'''関数ともいう。
高校数学や高校物理で扱った平面(<math>\mathbb{R}^2</math>)上の運動は、実は2項ベクトル関数の理論に他ならない。
例えば、平面上の運動に於ける加速度・速度・変位の関係は<math>\boldsymbol{x}(t)= \begin{pmatrix} f(t) \\ g(t) \end{pmatrix}</math>として<math>\boldsymbol{a}(t) = \frac{d}{dt}\boldsymbol{v}(t) = \frac{d^2}{dt^2} \boldsymbol{x}(t)</math>と表すことができる。
曲線の媒介変数表示は、パラメータを変数とするベクトル関数とみることができる。
例えば、円の媒介変数表示<math>\begin{cases} x=r\cos\theta \\ y=r\sin\theta \end{cases}</math>は、<math>\boldsymbol{r}(\theta) = r\begin{pmatrix} \cos\theta \\ \sin\theta \end{pmatrix}</math>という2次元ベクトル関数とみることができる。更に<math>\theta=\omega t</math>とすると、これは等速円運動の式である。
1変数ベクトル関数の微分に関して、以下の公式が成り立つ。
#定数倍の導関数:<math>\{k\boldsymbol{a}(x)\}'=k\boldsymbol{a}'(x)</math>
#和・差の導関数:<math>\{ \boldsymbol{a}(x)\pm\boldsymbol{b}(x) \}' = \boldsymbol{a}'(x)\pm\boldsymbol{b}'(x)</math>
#積の導関数:<math>\{ f(x)\boldsymbol{a}(x) \}' = f'(x)\boldsymbol{a}(x)+f(x)\boldsymbol{a}'(x)</math>
#商の導関数:<math>\left\{ \frac{\boldsymbol{a}(x)}{f(x)} \right\}' = \frac{f(x)\boldsymbol{a}'(x)-f'(x)\boldsymbol{a}(x)}{\{f(x)\}^2} \quad (f(x)\neq0)</math>
#内積の導関数:<math>\{\boldsymbol{a}(x)\cdot\boldsymbol{b}(x)\}' = \boldsymbol{a}'(x)\cdot\boldsymbol{b}(x)+\boldsymbol{a}(x)\cdot\boldsymbol{b}'(x)</math>
#外積の導関数:<math>\{\boldsymbol{a}(x)\times\boldsymbol{b}(x)\}' = \boldsymbol{a}'(x)\times\boldsymbol{b}(x)+\boldsymbol{a}(x)\times\boldsymbol{b}'(x)</math>
#スカラー三重積の導関数:<math>[\boldsymbol{a}(x)\cdot\{\boldsymbol{b}(x)\times\boldsymbol{c}(x)\}]' = \boldsymbol{a}'(x)\cdot\{\boldsymbol{b}(x)\times\boldsymbol{c}(x)\}+\boldsymbol{a}(x)\cdot\{\boldsymbol{b}'(x)\times\boldsymbol{c}(x)\}+\boldsymbol{a}(x)\cdot\{\boldsymbol{b}(x)\times\boldsymbol{c}'(x)\}</math>
#ベクトル三重積の導関数:<math>[\boldsymbol{a}(x)\times\{\boldsymbol{b}(x)\times\boldsymbol{c}(x)\}]' = \boldsymbol{a}'(x)\times\{\boldsymbol{b}(x)\times\boldsymbol{c}(x)\}+\boldsymbol{a}(x)\times\{\boldsymbol{b}'(x)\times\boldsymbol{c}(x)\}+\boldsymbol{a}(x)\times\{\boldsymbol{b}(x)\times\boldsymbol{c}'(x)\}</math>
#連鎖律(チェイン・ルール):<math>[\boldsymbol{a}\{f(x)\}]'=\boldsymbol{a}'\{f(x)\}f'(x)</math>
ベクトル関数の'''ノルム'''(大きさ、長さ)は、通常のベクトルと同様に
:<math>\| \boldsymbol{f}(x) \| = \sqrt{\boldsymbol{f}(x)\cdot\boldsymbol{f}(x)} = \sqrt{\sum_{i} \{f_i (x)\}^2}</math>
で与えられる。
つまり、ノルムは元のベクトル関数と同一変数のスカラー関数である。
ここで、このスカラー関数が定数関数である条件に就て見てみよう。
:<math>\| \boldsymbol{f}(x) \|= c \quad (c\in\mathbb{R}_{>0})</math>の両辺を2乗して
:<math>\| \boldsymbol{f}(x) \|^2 = \boldsymbol{f}(x)\cdot\boldsymbol{f}(x) = c^2</math>
:両辺微分すると内積の微分より
:<math>\{\boldsymbol{f}(x)\cdot\boldsymbol{f}(x)\}'=\boldsymbol{f}'(x)\cdot\boldsymbol{f}(x)+\boldsymbol{f}(x)\cdot\boldsymbol{f}'(x)=2\boldsymbol{f}(x)\cdot\boldsymbol{f}'(x)=0</math>
:<math>\therefore \boldsymbol{f}(x)\cdot\boldsymbol{f}'(x)=0</math>
:逆に、
:<math>\boldsymbol{f}(x)\cdot\boldsymbol{f}'(x)=0 \iff 2\boldsymbol{f}(x)\cdot\boldsymbol{f}'(x)=\boldsymbol{f}'(x)\cdot\boldsymbol{f}(x)+\boldsymbol{f}(x)\cdot\boldsymbol{f}'(x)=\{\boldsymbol{f}(x)\cdot\boldsymbol{f}(x)\}'=0</math>
:<math>\int \{\boldsymbol{f}(x)\cdot\boldsymbol{f}(x)\}'dx= \int 0 dx</math>
:<math>\boldsymbol{f}(x)\cdot\boldsymbol{f}(x)=C_1</math>(<math>C_1\geq0</math>は積分定数)
:<math>\| \boldsymbol{f}(x) \|^2=C_1</math>より
:<math>\| \boldsymbol{f}(x) \| = \sqrt{C_1} = \mathrm{const}.</math>
よって、以下が成り立つ。
{{定理|(直交条件の定理)}}
:<math>\| \boldsymbol{f}(x) \|= \mathrm{const}. \iff \boldsymbol{f}(x) \cdot \boldsymbol{f}'(x) = 0</math>
{{定理終わり}}
これは、物理的には「位置ベクトルと速度ベクトルが直交する」ことを表す。則ち、<math>\boldsymbol{f}(x)</math>の終点が始点を中心とする円運動(球面運動)をするということである。
また、ベクトル関数が変数に依らず常に同一方向を向く条件も見てみよう(但し<math>\boldsymbol{f}(x)\neq\boldsymbol{0}</math>)。
:所与の条件は零ベクトルでない定ベクトル<math>\boldsymbol{c}</math>を用いて<math>\boldsymbol{f}(x) = f(x)\boldsymbol{c}</math>と表される。
:両辺微分して<math>\boldsymbol{f}'(x)=\{f(x)\boldsymbol{c}\}=f'(x)\boldsymbol{c}</math>
:ここで元のベクトル関数との外積をとると
:<math>\boldsymbol{f}(x)\times\boldsymbol{f}'(x)=\{f(x)\boldsymbol{c}\}\times\{f'(x)\boldsymbol{c}\}=f(x)f'(x) (\boldsymbol{c}\times\boldsymbol{c})=f(x)f'(x)\boldsymbol{0}=\boldsymbol{0}</math>
:逆に、
:<math>\boldsymbol{f}(x)\times\boldsymbol{f}'(x)=\boldsymbol{0}</math>とすると一次従属なので
:<math>\boldsymbol{f}'(x)=g(x)\boldsymbol{f}(x)</math>という微分方程式が成り立つ。
:各成分ごとに微分方程式を解くと、
::これは変数分離型微分方程式なので第i成分は
::<math>\frac{df_i}{dx}=g(x)f_i(x)</math>
::<math>\int \frac{df_i}{f_i(x)}=\int g(x)dx</math>
::<math>G'(x)=g(x), C_i</math>を積分定数として<math>\log|f_i(x)|=G(x)+C_i</math>
::<math>C_i=\pm e^{C_i}</math>と改めておくと<math>f_i(x)=C_i e^{G(x)}</math>
:よって
:<math>\boldsymbol{f}(x)=\sum_i f_i(x) \boldsymbol{e}_i = \sum_i C_i e^{G(x)} \boldsymbol{e}_i = e^{G(x)} \sum_i C_i \boldsymbol{e}_i</math>
:ここで<math>f(x)=e^{G(x)}, \boldsymbol{c}=\sum_i C_i \boldsymbol{e}_i</math>と置くと
:<math>\boldsymbol{f}(x) = f(x) \boldsymbol{c}</math>となり、方向は変数に依らず一定であることが判る//
よって、以下が成り立つ。
{{定理|(平行条件の定理)}}
<math>\boldsymbol{c},\boldsymbol{f}(x)\neq\boldsymbol{0}</math>として
:<math>\boldsymbol{f}(x)=f(x)\boldsymbol{c} \iff \boldsymbol{f}(x) \times \boldsymbol{f}'(x) = \boldsymbol{0}</math>
{{定理終わり}}
ベクトル解析では三次元空間の場合を考えることが多いため上では外積を用いて証明したが、外積は3項ベクトル(または7項ベクトル)にしか定義されないのであった。
一般次元では外積に代わって次の関係式を用いる。
:<math>|\boldsymbol{f}(x)\cdot\boldsymbol{f}'(x)|=\|\boldsymbol{f}(x)\|\|\boldsymbol{f}'(x)\|</math>
これはCS不等式の等号成立の場合である。
実際、<math>\boldsymbol{f}(x)\cdot\boldsymbol{f}'(x)=\|\boldsymbol{f}(x)\|\|\boldsymbol{f}'(x)\|\cos\{\theta(x)\}</math>より等号成立の必要十分条件は
:<math>\cos\{\theta(x)\}=\pm1\iff\theta(x) \equiv 0 \,(\mathrm{mod}\pi)</math>
であり、2ベクトル<math>\boldsymbol{f}(x), \boldsymbol{f}'(x)</math>は平行とわかる。<br/>
平行ということは一次従属ということなので先程のように変数分離形微分方程式を解くことで3次元と同じ結果を得る。//
補足として、力学への応用を考える。
:速さの二乗<math>\|\boldsymbol{v}(t)\|^2</math>を時間微分すると
:<math>\frac{d}{dt}\|\boldsymbol{v}(t)\|^2=\frac{d}{dt}(\boldsymbol{v}(t)\cdot\boldsymbol{v}(t))=\frac{d\boldsymbol{v}(t)}{dt}\cdot\boldsymbol{v}(t)+\boldsymbol{v}(t)\cdot\frac{d\boldsymbol{v}(t)}{dt}=2(\boldsymbol{v}(t)\cdot\boldsymbol{a}(t))</math>
:よって等速運動の条件<math>\|\boldsymbol{v}(t)\|=\mathrm{const}.</math>は直交条件の定理から<math>\boldsymbol{v}(t)\perp\boldsymbol{a}(t)</math>に同値である。
:これを力学的に解釈すると、「加速度ベクトルは速度ベクトル方向に仕事をしないから速度ベクトルの大きさを変えずに向きだけを変える」となる。
:平面上で等速円運動を考えると円運動条件から<math>\boldsymbol{r}(t)\perp\boldsymbol{v}(t)</math>、等速条件から<math>\boldsymbol{v}(t)\perp\boldsymbol{a}(t)</math>なので<math>\boldsymbol{r}(t) /\!/ \boldsymbol{a}(t)</math>が出てくる。
:円運動条件<math>\|\boldsymbol{r}(t)\|^2=r^2</math>を一階微分すると
::<math>2\boldsymbol{r}(t)\cdot\boldsymbol{r}'(t)=0</math>
:もう一度微分して
::<math>2(\boldsymbol{r}(t)\cdot\boldsymbol{r}''(t)+\boldsymbol{r}'(t)\cdot\boldsymbol{r}'(t))=0</math>
:則ち
::<math>\boldsymbol{r}(t)\cdot\boldsymbol{a}(t)+\boldsymbol{v}(t)\cdot\boldsymbol{v}(t)=0</math>
:位置ベクトルと加速度ベクトルが一次従属なので<math>\boldsymbol{a}(t)=\lambda\boldsymbol{r}(t)</math>であり、等速条件より<math>\|\boldsymbol{v}(t)\|=v</math>なので
::<math>\lambda r^2 + v^2 = 0</math>
::<math>\therefore \lambda = -\frac{v^2}{r^2}<0</math>
:則ち<math>\boldsymbol{r}(t)</math>と<math>\boldsymbol{a}(t)</math>は逆向きであり、円運動の中心は<math>\boldsymbol{r}(t)</math>の始点なので<math>\boldsymbol{a}(t)</math>は常に円運動の中心を向く'''向心加速度'''であることが証明された。//
なお、3次元以上では「<math>\boldsymbol{a}\perp\boldsymbol{b}\land\boldsymbol{b}\perp\boldsymbol{c}\implies\boldsymbol{a}/\!/\boldsymbol{c}</math>」が一般には成り立たないのでこの議論を成立させるには追加の条件が必要である。
<math>\boldsymbol{f}(x)</math>の不定積分は、各<math>f_i(x)</math>の原始関数を並べたベクトルを<math>\boldsymbol{F}(x)</math>として
:<math>\int \boldsymbol{f}(x) dx = \boldsymbol{F}(x)+\boldsymbol{C}</math>(<math>\boldsymbol{C}</math>は各積分定数を並べたベクトル)
と表される。
また、定積分は
:<math>\int^b_a \boldsymbol{f}(x) dx=\boldsymbol{F}(b)-\boldsymbol{F}(a)</math>
と表される。
1変数ベクトル関数の積分について、以下が成り立つ(不定積分表記だが定積分に就ても同様)。
#定数倍の原始関数:<math>\int \{k\boldsymbol{a}(x)\} dx = k\int\boldsymbol{a}(x)dx</math>
#和・差の原始関数:<math>\int \{\boldsymbol{a}(x)\pm\boldsymbol{b}(x)\}dx=\int\boldsymbol{a}(x)dx\pm\int\boldsymbol{b}(x)dx</math>
#内積の原始関数<math>\int \{\boldsymbol{k}\cdot\boldsymbol{a}(x)\}dx=\boldsymbol{k} \cdot \left( \int \boldsymbol{a}(x) dx \right)</math>
#外積の原始関数<math>\int \{\boldsymbol{k}\times\boldsymbol{a}(x)\}dx=\boldsymbol{k} \times \left( \int \boldsymbol{a}(x) dx \right)</math>
#スカラー倍の部分積分:<math>\int f(x)\boldsymbol{a}'(x)dx= f(x)\boldsymbol{a}(x)-\int f'(x)\boldsymbol{a}(x) dx \iff \int f'(x)\boldsymbol{a}(x)dx= f(x)\boldsymbol{a}(x)-\int f(x)\boldsymbol{a}'(x) dx</math>
#内積の部分積分:<math>\int \{ \boldsymbol{a}(x)\cdot\boldsymbol{b}'(x) \}dx = \boldsymbol{a}(x)\cdot\boldsymbol{b}(x) - \int \{\boldsymbol{a}'(x)\cdot\boldsymbol{b}(x)\}dx</math>
#外積の部分積分:<math>\int \{ \boldsymbol{a}(x)\times\boldsymbol{b}'(x) \}dx = \boldsymbol{a}(x)\times\boldsymbol{b}(x) - \int \{\boldsymbol{a}'(x)\times\boldsymbol{b}(x)\}dx</math>
#置換積分:<math>u=f(x)</math>として<math>\int \boldsymbol{a}'\{f(x)\}f'(x) dx = \int \boldsymbol{a}(u)du</math>
平行条件の定理の証明でベクトル関数の微分方程式を解いたように、成分毎に考えることで解空間ベクトルを求められる。
:1階線型常微分方程式<math>\boldsymbol{f}'(x)+a(x)\boldsymbol{f}(x)=\boldsymbol{b}(x)</math>の解に就て考える。
:第<math>i</math>成分を考えると<math>f'_i(x)+a(x)f_i(x)=b_i(x)</math>という1階線型常微分方程式を得るので、
:両辺に積分因子<math>\mu(x)=\exp\left(\int a(x) dx\right)</math>を掛けることで
:<math>f_i(x)=\frac{1}{\mu(x)} \left\{ \int \mu(x) b_i(x) dx + C_i \right\}</math>を得る。
:よって一般解は
:<math>\boldsymbol{f}(x) = \sum_i \frac{1}{\mu(x)} \left\{ \int \mu(x) b_i(x) dx + C_i \right\} \boldsymbol{e}_i=\frac{1}{\mu(x)}\left\{ \int \mu(x) \boldsymbol{b}(x) dx + \boldsymbol{C} \right\}</math>
ベクトル関数は必ずしもここで扱った<math>\boldsymbol{f}: \mathbb{R}\to\mathbb{R}^n</math>のみを指さない。
例えば、ベクトル変数 <math>\boldsymbol{x}= \sum_i g_i (x) \boldsymbol{e}_i</math>に対して
:<math>\boldsymbol{h}(\boldsymbol{x})=\sum_i (h_i \circ g_i) (x) \boldsymbol{e}_i</math>
と定義されるような関数<math>\boldsymbol{h}:\mathbb{R}^m \to \mathbb{R}^m</math>もベクトル関数である。
また、始域と終域の次元が異なる<math>\boldsymbol{i}: \mathbb{R}^m \to \mathbb{R}^n \, (m, n\neq1)</math>のようなベクトル関数も考えられる。
一般に、始域が<math>\mathbb{R}^n (n\neq1)</math>であっても終域が<math>\mathbb{R}</math>である関数はベクトル関数に対して'''スカラー関数'''(scalar function)と呼ばれる。スカラー関数は入力ベクトルを「変数の組」と見れば通常の多変数関数に一致する。
この節で述べた理論は、多くは一般のベクトル関数に対しても成り立つ。但し、後述のヤコビ行列のような拡張を必要とするものもある。
また、多変数ベクトル関数<math>\boldsymbol{f}(x_1, x_2,\cdots,x_n)</math>を考えたとき、多変数微積分の理論は一変数微積分と同様にしてベクトル関数にもそのまま拡張される。
===ベクトル場・スカラー場===
写像<math>\boldsymbol{a}: \mathbb{R}^m \to \mathbb{R}^n</math>を'''ベクトル場'''(vector field)という。
実際には<math>m=n</math>の場合を考えることが多い。
写像<math>\varphi: \mathbb{R}^n \to \mathbb{R}</math>を'''スカラー場'''(scalar field)という。
それぞれ上で述べたベクトル関数・スカラー関数に対応する。
もう少し具体的に述べると、空間の領域<math>V</math>が与えられたときその各点にスカラーまたはベクトルを割り当てたものが場である。要するに、<math>p\in V</math>とすると
:スカラー場:<math>\varphi=\varphi(p)</math>
:ベクトル場:<math>\boldsymbol{a}=\boldsymbol{a}(p)</math>
のように場は「点を入力とする<sup>※</sup>関数」である。
<small>※なお、ベクトル場を図示するときは「出力されたベクトルの'''始点は原点でなく入力された点'''」であることに注意が必要である。出力ベクトルの成分表示は「入力点を基準に据えたときの位置ベクトル」なので原点から目盛を数えることに意味はない。</small>
ここで<math>V</math>に何かしらの座標が設定されていれば、その座標系の変数の組をベクトルと見做すことで場を「通常のスカラー関数・ベクトル関数」として扱えるのである。
則ち、「滑らかな場」という概念は「滑らかな関数」として定義することができる。より具体的に言うと、スカラー場・ベクトル場が'''滑らか'''であるとは対応するスカラー関数・ベクトル関数が<math>C^\infty</math>級であることである。但し、滑らかさは任意の座標変換で保たれるわけではないことに注意が必要である(後述の座標変換テンソル及びその逆行列の全ての成分関数が滑らかである必要がある)。
ここで、二変数関数の極値を思い返してみる。
<math>z=f(x, y)</math>が<math>(a, b)</math>で極大であるとは<math>\begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix}\neq\begin{pmatrix} a \\ b \end{pmatrix}</math>として
:<math>\exist \delta>0, \forall {\scriptstyle\left(\begin{array}{c} x \\[-6pt] y \end{array}\right)} \in \mathbb{R}^2, {\scriptstyle\left\| \left(\begin{array}{c} x \\[-6pt] y \end{array}\right) - \left(\begin{array}{c} a \\[-6pt] b \end{array}\right) \right\|} < \delta \implies f(x, y) \leq f(a, b)</math>
という定義だった。
<math>z=f(x, y)</math>は曲面を表すが、これを<math>z</math>軸正方向から<math>xy</math>平面に射影するとその陰が<math>(x, y)</math>の動く範囲となるのであった。
ここで<math>\boldsymbol{x}:=\begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix}, \boldsymbol{\alpha}:=\begin{pmatrix} a \\ b \end{pmatrix}</math>とすると<math>z=f(x, y)</math>はスカラー場<math>z=\phi(\boldsymbol{x})</math>と解釈することができ、更に条件法の前件は<math>\boldsymbol{\alpha}</math>の<math>\delta</math>-開球(二次元なので開円板)である。
なので、極大値の定義式をベクトル解析的に解釈すると「<math>xy</math>平面の各点に<math>z</math>の値を割り当てた数分布に於いて、開円板<math>B_\delta(\boldsymbol{\alpha})</math>内部に於ける<math>z</math>の最大値が<math>\phi(\boldsymbol{\alpha})</math>となるような正数<math>\delta</math>が存在する」ということである。
ベクトル場の例としては、電場・磁場・重力場などが挙げられる。
スカラー場の例としては、電位分布・温度分布・圧力分布などが挙げられる。
例えば、ベクトル場<math>\boldsymbol{f}=(x, 0, 0)</math>は、<math>\mathbb{R}^3</math>内の平面<math>x=k</math>上の任意点に、その点を始点とするベクトル<math>\begin{pmatrix} k \\ 0 \\ 0 \end{pmatrix}</math>が存在する状態を表す。
ベクトル場の和は、出力ベクトルの型が同じならばベクトル場の成分の和をとったものに等しい。
例えば、<math>\boldsymbol{f}(x, y, z)=(y, z, x), \boldsymbol{g}(x, y, z)=(z, x, y)</math>について
:<math>(\boldsymbol{f}+\boldsymbol{g})(x, y, z)=(y, z, x)+(z, x, y)=(y+z, z+x, x+y)</math>である。
これは、ベクトル場の加法の定義が
:<math>\forall p \in V, (\boldsymbol{f}+\boldsymbol{g})(p):=\boldsymbol{f}(p)+\boldsymbol{g}(p)</math>
となっていて且つ<math>V</math>に座標を入れればベクトル関数の加法則をそのまま適用できるためである(入力点が異なるとき、場同士は足すことができない)。
曲線<math>\{\boldsymbol{x}\in\mathbb{R}^2 \mid \varphi(\boldsymbol{x})=\mathrm{const}.\}</math>を'''等高線'''(等高曲線)、曲面<math>\{\boldsymbol{x}\in\mathbb{R}^3 \mid \varphi(\boldsymbol{x})=\mathrm{const}.\}</math>を'''等位面'''(等位曲面)という。これらの詳細は後述する。
==曲線論・曲面論==
===曲線===
<math>xy</math>平面上の曲線は<math>y=f(x) (x\in[a, b])</math>という陽関数表示で扱うことが多かった。しかし、これだと自分自身と交わる('''自己交叉'''する)曲線や<math>x=x_0</math>に対して<math>f(x_0)</math>の値が複数存在する(<math>f</math>が'''多価関数''')場合に不都合が生じる。
例えば円を陽関数表示しようとすると
:<math>x^2+y^2=r^2</math>を<math>y</math>に就いて解いて
:<math>y=\pm\sqrt{r^2-x^2}</math>
則ち
:<math>y=\begin{cases} \sqrt{r^2-x^2} & (y\geq0) \\ -\sqrt{r^2-x^2} & (y<0) \end{cases}</math>
という多価関数が必要になる。
これだと端点の振舞を一々調べる必要があって曲線の連続性や接線の議論が煩雑になってしまう。
しかし、先程も述べたように曲線の媒介変数表示はベクトル関数として見れるのであった。
:<math>\boldsymbol{r}(\theta) = r\begin{pmatrix} \cos\theta \\ \sin\theta \end{pmatrix}</math>(再掲)
こうすると一変数連続ベクトル関数によって曲線を表すことが可能である。物理的に捉えると「質点の運動の軌跡を原点からの位置ベクトルの時間変化で表す」ということである。
一般に、<math>\boldsymbol{r}\in\mathbb{R}^n, t \in I</math>としてベクトル方程式<math>\boldsymbol{r}=\boldsymbol{r}(t)</math>の解集合<math>\{\boldsymbol{r}(t) \mid t \in I \}</math>は<math>n</math>次元空間内の曲線<math>C</math>を表す。これを<math>C</math>の'''ベクトル表示'''という。
ベクトル表示は成分表示に直せば<math>\boldsymbol{r}(t)=\sum_i r_i(t)\boldsymbol{e}_i</math>となる。これは媒介変数表示<math>\begin{cases} x_1&=&r_1(t) \\ x_2&=&r_2(t) \\ &\,\,\vdots& \\ x_n&=&r_n(t) \end{cases}</math>をベクトル表記したものに一致する。
例えば、<math>\boldsymbol{r}(t)=\begin{pmatrix} a\cos t \\ a\sin t \\ bt \end{pmatrix}</math>は'''常螺旋'''(弦巻線)のベクトル表示である。
パラメータが増加するときの点の移動方向を曲線の'''正の向き'''と定める。曲線の'''負の向き'''はパラメータが減少するときの点の移動方向である。このとき、パラメータで'''向き付け'''された曲線という表現もなされる。曲線<math>C</math>に対し、同じパラメータを用いた逆向きの曲線を<math>-C</math>と表す。ベクトル表示では<math>C:\boldsymbol{r}=\boldsymbol{r}(t)</math>に対して<math>-C:\boldsymbol{r}=\boldsymbol{r}(-t)</math>ということである。
パラメータに関する変数変換<math>u=\phi(t)</math>を考える。但し、<math>\phi</math>は広義単調関数とする<sup>※</sup>。このとき、<math>\frac{du}{dt}</math>が非負ならば曲線の向き付けが保たれ、非正ならば向き付けが反転する。<math>\frac{du}{dt}=0</math>となる領域では点の運動が停止する。
<small>※<math>\phi</math>が非単調関数のときは曲線上の点が行ったり来たりすることになるため曲線のパラメータ表示としては扱いづらい。</small>
<math>\boldsymbol{r}(t) \in C^1</math>且つ<math>\boldsymbol{r}'(t)\neq\boldsymbol{0}</math>であるとき、曲線<math>C</math>は'''滑らか'''であるという。
滑らかな曲線<math>C:\boldsymbol{r}=\boldsymbol{r}(t)</math>に対して<math>\boldsymbol{r}'(t)</math>を<math>C</math>の'''速度ベクトル'''という。
<math>\overrightarrow{\mathrm{OP}}=\boldsymbol{r}</math>として点<math>\mathrm{P}(t)</math>に於ける速度ベクトルは<math>\lim_{\Delta t\to0}\frac{\boldsymbol{r}(t+\Delta t)-\boldsymbol{r}(t)}{\Delta t}</math>の極限ベクトルであるが、<math>\boldsymbol{r}(t+\Delta t)-\boldsymbol{r}(t)</math>を図示することで速度ベクトルが曲線<math>C</math>の点<math>\mathrm{P}(t)</math>に於ける接線の方向ベクトルになっていることがわかる。よって、速度ベクトルを'''接線ベクトル'''(接ベクトル)ともいう。
速度ベクトルが非零である曲線を'''正則'''な曲線と呼ぶ。滑らかな曲線は正則曲線である。
なお、一般には陽関数表示が区分的であることとベクトル表示の成分関数が区分的であることに対応はないほか、パラメータの取り方で速度ベクトルが変わるので「曲線の幾何学的滑らかさ」と「ベクトル表示した関数の解析学的滑らかさ」は一致するとは限らない。
正則な曲線に対して曲線長('''弧長''')を考える。
二次元曲線の場合は数学Ⅲで既に扱った。
:<math>L=\int_a^b \sqrt{\left(\frac{dx}{dt}\right)^2+\left(\frac{dy}{dt}\right)^2}dt</math>
実は、これを一般の<math>n</math>次元にそのまま拡張することができる。
{{定理|(弧長公式)}}
曲線<math>C:\boldsymbol{r}=\boldsymbol{r}(t)</math>の点<math>\mathrm{P}(a)</math>から点<math>\mathrm{P}(b)</math>までの長さ(<math>a<b</math>)は
:<math>L=\int_a^b \left\| \frac{d\boldsymbol{r}}{dt} \right\|dt</math>
で与えられる。
{{定理終わり}}
*証明
:<math>a=t_0, b=t_m</math>として閉区間<math>[a, b]</math>を各<math>t_i</math>で等分割する。このとき小区間<math>[t_{k-1}, t_k]</math>の長さは<math>\Delta t=\frac{b-a}{m}</math>。
:<math>C</math>の点<math>\mathrm{P}(a)</math>から点<math>\mathrm{P}(b)</math>までの長さ<math>L</math>は折れ線の長さ<math>\overline{\mathrm{P}(t_{k-1})\mathrm{P}(t_k)}</math>の総和で近似される。
:ここで<math>\overrightarrow{\mathrm{OP}}=\boldsymbol{r}(t)</math>より
::<math>L_m=\sum_{k=1}^m \| \boldsymbol{r}(t_k)-\boldsymbol{r}(t_{k-1}) \| = \sum_{k=1}^m \left\| \frac{\boldsymbol{r}(t_{k-1}+\Delta t)-\boldsymbol{r}(t_{k-1})}{\Delta t-0} \right\|(\Delta t-0)</math>
:分割を限りなく細かくする極限をとると<math>m\to\infty</math>より<math>\Delta t\to0</math>なので
::<math>\lim_{m\to\infty} L_m = \sum_{k=1}^\infty \left\| \frac{d\boldsymbol{r}}{dt}(t_{k-1}) \right\|dt</math>
:区分求積法より最後の無限級数は収束して
:<math>L=\int_a^b \left\| \frac{d\boldsymbol{r}}{dt} \right\|dt</math>//
ここで、<math>dl:=\left\| \frac{d\boldsymbol{r}}{dt} \right\|dt</math>という微小量を'''線素'''と呼ぶ。
1を線素に関して積分したパラメータ<math>s:=\int_0^t dl</math>を'''弧長パラメータ'''(標準パラメータ)という。弧長パラメータは曲線上で「基準点からの符号付き距離」を表す。
曲線の弧長パラメータによるベクトル表示('''弧長パラメータ表示''')を考える。<math>s=\int_0^t \left\| \frac{d\boldsymbol{r}}{dt} \right\|dt</math>で正則よりノルムは正。則ち<math>\frac{ds}{dt}>0</math>より<math>s=\phi(t)</math>は狭義単調増加なので、逆関数<math>t=\phi^{-1}(s)</math>を考えることができる。よって、<math>\boldsymbol{r}=\boldsymbol{r}(t)</math>に<math>t=\phi^{-1}(s)</math>を代入した<math>\boldsymbol{r}=\boldsymbol{r}(\phi^{-1}(s))</math>が弧長パラメータ表示である。これを<math>\boldsymbol{r}=\boldsymbol{r}(s)</math>と略記してしまうことも多いが、'''一般には元の<math>\boldsymbol{r}(t)</math>と成分関数が異なる'''ことに注意。
通常の媒介変数によるベクトル表示は「座標系が予め与えられた状況」での表示であるが、弧長パラメータは座標系を取り替えたとしても表す曲線そのものが変わらなければ不変である。よって、「座標系に依存しない表記」として弧長パラメータ表示は多く利用されている。
また、弧長パラメータ表示で連鎖律を適用すると
:<math>\frac{d\boldsymbol{r}(s)}{ds}=\frac{d\boldsymbol{r}(t)}{dt}\cdot\frac{dt}{ds}=\frac{d\boldsymbol{r}(t)}{dt}\cdot\frac{1}{\frac{ds}{dt}}</math>
ここで微分積分学の基本定理より
:<math>\frac{ds}{dt}=\frac{d}{dt} \int_0^t \left\| \frac{d\boldsymbol{r}}{dt} \right\|dt = \left\| \frac{d\boldsymbol{r}}{dt} \right\|</math>
なので
:<math>\frac{d\boldsymbol{r}(s)}{ds}=\frac{\frac{d\boldsymbol{r}(t)}{dt}}{\left\| \frac{d\boldsymbol{r}}{dt} \right\|}</math>
であり、自身のノルムで割ってるので恒等的に<math>\left\| \frac{d\boldsymbol{r}}{ds} \right\|=1</math>である。
よって、弧長パラメータ表示された曲線の接ベクトルは常に単位ベクトルである。
弧長パラメータ表示された曲線で線素を考えると<math>s=\int_0^s \left\| \frac{d\boldsymbol{r}(s)}{ds} \right\| ds = \int_0^s dl</math>だが、常に<math>\left\| \frac{d\boldsymbol{r}}{ds} \right\|=1</math>なので<math>ds=dl</math>であり、弧長パラメータの微小量は線素に等しい(弧長パラメータそのものが1の線素に関する積分なので当たり前ではある)。
<math>\boldsymbol{e}_\dagger(s)=\frac{d\boldsymbol{r}}{ds}</math>と置くと、点<math>\mathrm{P}(s_0)</math>に於ける接線の方程式は
:<math>\boldsymbol{p}-\boldsymbol{r}(s_0)=\boldsymbol{e}_\dagger(s_0) (s-s_0)</math>
と表される。
ここで<math>\boldsymbol{r}(s)</math>の中心<math>s_0</math>に於けるテイラー展開は
:<math>\boldsymbol{r}(s)=\sum_{i=0}^\infty \frac{(s-s_0)^i}{i!} \frac{d^i}{ds^i}\boldsymbol{r}(s_0) </math>
であり、「接線が一次近似に対応する」という構造はベクトル関数でも維持されることが判った。
領域<math>\boldsymbol{D}</math>上の滑らかなベクトル場<math>\boldsymbol{a}</math>について、微分方程式<math>\frac{d\boldsymbol{r}}{dt}=\boldsymbol{a}(\boldsymbol{r}(t)) (\boldsymbol{r} \in \boldsymbol{D})</math>で与えられる曲線<math>\boldsymbol{r}=\boldsymbol{r}(t)</math>を<math>\boldsymbol{a}</math>の'''流線'''(streamline)という(入力点を位置ベクトルと同一視していることに注意)。流線の接線ベクトルは元のベクトル場そのものになるので、ベクトルの相等から得る方程式<math>\frac{dx_1}{a_1}=\frac{dx_2}{a_2}=\cdots=\frac{dx_n}{a_n}</math>を'''流線方程式'''という。
例えば、<math>\boldsymbol{f}(x, y)=(y, x)</math>の流線は、
:定義から<math>\frac{dx}{dt}=y, \frac{dy}{dt}=x</math>
:合成関数の微分公式から<math>\frac{dy}{dx}=\frac{\frac{dy}{dt}}{\frac{dx}{dt}}=\frac{x}{y}</math>
:<math>\int y dy=\int xdx</math>
:<math>\frac{1}{2}y^2=\frac{1}{2}x^2+C</math>
:よって双曲線<math>y^2-x^2=2C</math>//
この場合、<math>t</math>に関する2つの微分方程式を組み合わせることで
:<math>\frac{d^2x}{dt^2}=x, \frac{d^2y}{dt^2}=y</math>という二階線型常微分方程式となり、一般解が双曲線関数を用いて<math>\begin{cases} x=C_1\cosh t+C_2\sinh t \\ y=C_1\sinh t+C_2\cosh t \end{cases}</math>であることが容易に判る。<br>なお、流線方程式を用いても<math>\frac{dx}{y}=\frac{dy}{x}</math>から<math>\frac{dy}{dx}=\frac{x}{y}</math>が出てくる。
「流線の接線ベクトルが元のベクトル場になる」とはつまり、「接線が常にベクトル場と平行になるような曲線」を考えているということである。滑らかなベクトル場を考えているためそのような曲線は常に存在する。流線は「ベクトル場の流れを繋げていった曲線」と考えることができるので、「流れを簡潔に図示」するのにちょうどよい。
有名な例として、電気力線・磁力線はそれぞれ電場<math>\boldsymbol{E}</math>・磁束密度<math>\boldsymbol{B}</math>の流線である。
流線の微分方程式を弧長パラメータ表示を用いて変形する。
:<math>\frac{d\boldsymbol{r}}{dt}=\boldsymbol{a}(\boldsymbol{r}(t))</math>の左辺に就いて
:<math>\frac{d\boldsymbol{r}}{ds}\cdot\frac{ds}{dt}=\frac{d\boldsymbol{r}}{ds}\cdot \|\boldsymbol{r}'(\phi^{-1}(s))\|</math>
元の方程式の両辺でノルムをとると
:<math>\left\|\frac{d\boldsymbol{r}}{dt}\right\|=\|\boldsymbol{a}(\boldsymbol{r}(t))\|</math>
代入して
:<math>\frac{d\boldsymbol{r}}{ds}\cdot\|\boldsymbol{r}'(\phi^{-1}(s))\|=\frac{d\boldsymbol{r}}{ds}\cdot\|\boldsymbol{a}(\boldsymbol{r}(t))\|</math>
:<math>\therefore \frac{d\boldsymbol{r}}{ds} = \boldsymbol{e}_{\boldsymbol{a}(\boldsymbol{r}(\phi^{-1}(s)))}</math>
ここから、流線の形状はノルムには関係なく方向場のみで決まることがわかる。
===フレネ標搆===
ここでは、三次元空間に於ける正則曲線について考える。
<math>C:\boldsymbol{r}=\boldsymbol{r}(s)</math>上の点<math>\mathrm{P}(s)</math>に於ける単位接線ベクトルを<math>\boldsymbol{t}</math>とおく。
先程の議論より<math>\boldsymbol{t}(s)=\frac{d\boldsymbol{r}(s)}{ds}</math>であり、<math>\left\| \frac{d\boldsymbol{r}(s)}{ds} \right\|=1 (=\mathrm{const}.)</math>なので直交条件の定理から<math>\boldsymbol{t}\cdot\frac{d\boldsymbol{t}}{ds}=0</math>、則ち<math>\boldsymbol{t} \perp \frac{d\boldsymbol{t}(s)}{ds}</math>である。この<math>\frac{d\boldsymbol{t}(s)}{ds}</math>を'''主法線ベクトル'''という。
主法線ベクトルを<math>\boldsymbol{n}</math>とおくとき、<math>\boldsymbol{b}=\boldsymbol{t}\times\boldsymbol{n}</math>を'''従法線ベクトル'''(陪法線ベクトル)という。ここで先程の結果より<math>\boldsymbol{t}\perp\boldsymbol{n}</math>であって<math>\boldsymbol{b}</math>の定義より<math>\boldsymbol{t}\perp\boldsymbol{b}, \boldsymbol{n}\perp\boldsymbol{b}</math>なので、この3ベクトルの組を正規化した<math>\{\boldsymbol{e}_t, \boldsymbol{e}_n, \boldsymbol{e}_b \}</math>は<math>\mathbb{R}^3</math>の正規直交基底である。これを<math>\mathbb{R}^3</math>の'''フレネ標搆'''という。外積の結果よりフレネ標搆は<math>\boldsymbol{e}_t, \boldsymbol{e}_n, \boldsymbol{e}_b</math>の順に右手系をなす。なお、接線ベクトル・主法線ベクトル・従法線ベクトルは全て曲線の位置ベクトル<math>\boldsymbol{r}(s)</math>を入力したベクトル場として捉えることができる。
<math>\{\boldsymbol{e}_n, \boldsymbol{e}_b \}</math>の張る平面を'''法平面'''、<math>\{\boldsymbol{e}_t, \boldsymbol{e}_b \}</math>の張る平面を'''展直平面'''、<math>\{\boldsymbol{e}_t, \boldsymbol{e}_n \}</math>の張る平面を'''接触平面'''という。
即ち、法平面・展直平面・接触平面は<math>tnb</math>空間の点<math>\mathrm{P}(s)</math>を原点とした基準面である。
平面の方程式の法線ベクトルに接ベクトル・主法線ベクトル・従法線ベクトルをそれぞれ代入することで
:法平面の方程式:<math>(\boldsymbol{p}-\boldsymbol{r}(s))\cdot\boldsymbol{t}(s)=0</math>
:展直平面の方程式:<math>(\boldsymbol{p}-\boldsymbol{r}(s))\cdot\boldsymbol{n}(s)=0</math>
:接触平面の方程式:<math>(\boldsymbol{p}-\boldsymbol{r}(s))\cdot\boldsymbol{b}(s)=0</math>
とわかる。
<math>\|\boldsymbol{t}\|=1</math>は常に成り立つが<math>\|\boldsymbol{n}\|, \|\boldsymbol{b}\|</math>は<math>1</math>とは限らない。そこで、主法線ベクトルの大きさ<math>\kappa(s)=\|\boldsymbol{n}(s)\|</math>を曲線<math>C</math>の'''曲率'''と呼ぶことにする。なお、<math>\|\boldsymbol{b}\|=\| \boldsymbol{t} \| \|\boldsymbol{n}\|\sin\frac{\pi}{2}</math>より<math>\|\boldsymbol{b}\|=\|\boldsymbol{n}\|=\kappa</math>が成り立つ。
主法線ベクトルの定義に立ち戻ると<math>\boldsymbol{n}(s)=\frac{d\boldsymbol{t}(s)}{ds}</math>であった。つまり、主法線ベクトルは接ベクトルの速度ベクトルなので「弧長パラメータを変化させたときに接ベクトルがどのくらい変化するか」という指標である。接ベクトルの変化の大小と<math>\kappa</math>の大小は対応し、接ベクトルの大小はカーブの緩急に対応することから<math>\kappa</math>の大小とカーブの緩急も対応する。これが「曲率」という名前の由来である。
なお、<math>\kappa(s)=0</math>の場合は<math>\boldsymbol{n}(s)=\boldsymbol{0}</math>なので<math>\boldsymbol{t}(s)=\boldsymbol{k}</math>(定ベクトル)であり、<math>\boldsymbol{r}(s)=s\boldsymbol{k}</math>という直線の場合に対応することがわかる。
単位接ベクトルの<math>s</math>を微分変数とする導関数(<math>s</math>-導関数)は主法線ベクトルだったが、単位主法線ベクトル・単位従法線ベクトルの<math>s</math>-導関数がどのように表されるか見ていく。
ここで、フレネ標搆が<math>\mathbb{R}^3</math>の正規直交基底であることから、<math>\frac{d\boldsymbol{e}_n}{ds}, \frac{d\boldsymbol{e}_b}{ds}</math>ともにフレネ標搆の一次結合で表現できると予想される。
単位従法線ベクトルに就いて
:<math>\frac{d\boldsymbol{e}_b}{ds}=\frac{d}{ds}(\boldsymbol{e}_t\times\boldsymbol{e}_n)=\frac{d\boldsymbol{e}_t}{ds}\times\boldsymbol{e}_n+\boldsymbol{e}_t\times\frac{d\boldsymbol{e}_n}{ds}</math>
<math>\boldsymbol{t}=\boldsymbol{e}_t</math>より<math>\frac{d\boldsymbol{e}_t}{ds}=\boldsymbol{n}=\kappa\boldsymbol{e}_n</math>則ち<math>\frac{d\boldsymbol{e}_t}{ds}\times\boldsymbol{e}_n=\kappa\boldsymbol{e}_n\times\boldsymbol{e}_n=\boldsymbol{0}</math>なので
:<math>\frac{d\boldsymbol{e}_b}{ds}=\boldsymbol{e}_t\times\frac{d\boldsymbol{e}_n}{ds}</math>
<math>\|\boldsymbol{e}_n\|=1</math>から直交条件の定理より<math>\boldsymbol{e}_n\perp\frac{d\boldsymbol{e}_n}{ds}</math>なので
:<math>\boldsymbol{e}_n\times\frac{d\boldsymbol{e}_b}{ds}=\boldsymbol{e}_n\times(\boldsymbol{e}_t\times\frac{d\boldsymbol{e}_n}{ds})=\left(\boldsymbol{e}_n\cdot\frac{d\boldsymbol{e}_n}{ds}\right)-(\boldsymbol{e}_n\cdot\boldsymbol{e}_t)\frac{d\boldsymbol{e}_n}{ds}=\boldsymbol{0}</math>
外積が零ベクトルなので<math>\frac{d\boldsymbol{e}_b}{ds} /\!\!/ \boldsymbol{e}_n</math>であり、一次従属より
:<math>\frac{d\boldsymbol{e}_b}{ds}=-\tau\boldsymbol{e}_n</math>
となるスカラー関数<math>\tau(s)</math>が存在する。
この<math>\tau(s)</math>を曲線<math>C</math>の'''捩率'''と呼ぶ。捩率は接触平面の回転(捩れ)の率を表す。
<math>\tau=0</math>ならば<math>\frac{d\boldsymbol{e}_b}{ds}=0</math>より<math>\boldsymbol{e}_b</math>方向は変化しないので曲線は接触平面と平行な平面上に拘束される。即ち、<math>C</math>は平面曲線である。
単位主法線ベクトルに就いて
:<math>\frac{d\boldsymbol{e}_n}{ds}=\frac{d}{ds}(\boldsymbol{e}_b\times\boldsymbol{e}_t)=\frac{d\boldsymbol{e}_b}{ds}\times\boldsymbol{e}_t+\boldsymbol{e}_b\times\frac{d\boldsymbol{e}_t}{ds}</math>
ここで<math>\frac{d\boldsymbol{e}_t}{ds}=\kappa\boldsymbol{e}_n, \frac{d\boldsymbol{e}_b}{ds}=-\tau\boldsymbol{e}_n</math>を代入して
:<math>\frac{d\boldsymbol{e}_n}{ds}=-\tau\boldsymbol{e}_n\times\boldsymbol{e}_t+\boldsymbol{e}_b\times\kappa\boldsymbol{e}_n=\tau\boldsymbol{e}_b-\kappa\boldsymbol{e}_t</math>
よって、フレネ標搆の弧長パラメータを微分変数とする導関数を以下のようにフレネ標搆の一次結合で表すことができた。
:<math>\begin{cases} \frac{d\boldsymbol{e}_t}{ds}=\kappa\boldsymbol{e}_n \\ \frac{d\boldsymbol{e}_n}{ds} = \tau\boldsymbol{e}_b-\kappa\boldsymbol{e}_t \\ \frac{d\boldsymbol{e}_b}{ds}=-\tau\boldsymbol{e}_n \end{cases}</math>
これを一次変換で表記すると以下のようになる。但し、厳密にはベクトルを成分としている部分は列ではなく行に配置するのが正しいことに注意。
{{定理|(フレネ=セレーの公式)}}
:<math>\frac{d}{ds}\begin{pmatrix} \boldsymbol{e}_t \\ \boldsymbol{e}_n \\ \boldsymbol{e}_b \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 0 & \kappa & 0 \\ -\kappa & 0 & \tau \\ 0 & -\tau & 0 \end{pmatrix} \begin{pmatrix} \boldsymbol{e}_t \\ \boldsymbol{e}_n \\ \boldsymbol{e}_b \end{pmatrix}</math>
{{定理終わり}}
表現行列が反対称行列(歪対称行列)になっているが、これは「直交変換を一次近似すると反対称変換になる」という無限小回転の理論に対応する。
捩率を求めるときは「基底分解の係数は対応する基底ベクトルとの内積に等しい」という性質を利用すれば<math>\boldsymbol{e}_b\cdot\frac{d\boldsymbol{e}_n}{ds}=\tau</math>となるので左辺を計算すればよい。
例えば、円<math>\begin{cases} x^2+y^2=a^2 \\ z=b \end{cases}</math>の曲率と捩率は以下のように求まる。
:媒介変数表示して<math>\boldsymbol{r}(t)=\begin{pmatrix} a\cos t \\ a\sin t \\ b \end{pmatrix}</math>
:接線ベクトルは<math>\frac{d\boldsymbol{r}(t)}{dt}=\begin{pmatrix} -a\sin t \\ a\cos t \\ 0 \end{pmatrix}</math>
:弧長パラメータ<math>s</math>は<math>s=\int^t_0 \left\|\frac{d\boldsymbol{r}(t)}{dt}\right\|dt = \int_0^t a dt = at</math>
:<math>\therefore t=\frac{s}{a}</math>
:<math>\boldsymbol{r}(s)=\begin{pmatrix} a\cos\frac{s}{a} \\ a\sin\frac{s}{a} \\ b \end{pmatrix}</math>
:<math>\boldsymbol{t}=\frac{d\boldsymbol{r}(s)}{ds}=\begin{pmatrix} -\sin\frac{s}{a} \\ \cos\frac{s}{a} \\ 0 \end{pmatrix}</math>
:<math>\boldsymbol{n}=\frac{d\boldsymbol{t}(s)}{ds}=\frac{1}{a}\begin{pmatrix} -\cos\frac{s}{a} \\ -\sin\frac{s}{a} \\ 0 \end{pmatrix}</math>
:<math>\kappa=\|\boldsymbol{n}\|=\frac{1}{a}</math>
:<math>\boldsymbol{b}=\boldsymbol{t}\times\boldsymbol{n} = \begin{pmatrix} 0 \\ 0 \\ \frac{1}{a} \end{pmatrix}</math>
:<math>\boldsymbol{e}_n=\begin{pmatrix} -\cos\frac{s}{a} \\ -\sin\frac{s}{a} \\ 0 \end{pmatrix}</math>
:<math>\frac{d\boldsymbol{e}_n}{ds}=\frac{1}{a}\begin{pmatrix} \sin\frac{s}{a} \\ -\cos\frac{s}{a} \\ 0 \end{pmatrix}</math>
:<math>\boldsymbol{e}_b = \begin{pmatrix} 0 \\ 0 \\ 1 \end{pmatrix}</math>
:<math>\tau = \begin{pmatrix} 0 \\ 0 \\ 1 \end{pmatrix}\cdot\frac{1}{a}\begin{pmatrix} \sin\frac{s}{a} \\ -\cos\frac{s}{a} \\ 0 \end{pmatrix}=0</math>//
フレネ・セレーの公式は[[線型代数学続論/行列値関数|行列関数]]に関する一階常微分方程式である。そのため、微分方程式の基本定理(ピカール=リンデレーエフの定理)により初期条件(<math>s=0</math>に於けるフレネ標搆)を与えれば、滑らかな曲率関数・捩率関数の組<math>(\kappa, \tau)</math>を定めることで微分方程式の解として一般の<math>s</math>に対するフレネ標搆を一意に得る。このとき、曲線<math>C:\boldsymbol{r}=\boldsymbol{r}(s)</math>は接ベクトルを出発点を選んで積分することで決定される。
従って、次の定理が成り立つ<!-- 厳密証明はhttps://sshmathgeom.private.coocan.jp/diffgeom/curvetheorem.htmlを参照 -->。
{{定理|(曲線の基本定理)}}
開区間<math>(a,b)</math>上の実数<math>s</math>を変数とする2つの滑らかな関数<math>\kappa(s),\tau(s)</math>を与える。但し、<math>\kappa(s)</math>は正とする。<br/>
このとき、<math>\kappa(s)</math>を曲率、<math>\tau(s)</math>を捩率、<math>s</math>を弧長パラメータとする三次元空間上の曲線<math>C</math>が剛体運動を除いて一意に定まる。
{{定理終わり}}
剛体運動とは「曲線の形を変えない」運動のことである(平行移動・回転など)。
<math>\kappa(s), \tau(s)</math>の定める曲線族を一般に<math>\mathcal{C}[\kappa, \tau]</math>と書く。
例えば、円を含む螺旋は<math>c_1, c_2=\mathrm{const}.</math>として<math>\mathcal{C}[c_1, c_2]</math>と書ける。
<math>R=\frac{1}{\kappa}</math>を'''曲率半径'''という。曲率半径は曲線の特定のカーブにおける曲がり具合の急さを表す指標であり、カーブを近似する真円('''密着円''')の半径でもある。高速道路の標識で<math>R=\circ\circ \mathrm{m}</math>は、そのカーブの曲率半径を示している。道路設計では、快適なドライブの為曲率半径がなるべく大きくなるように工夫を凝らしている。
ここで<math>\boldsymbol{r}(s)</math>の中心<math>s_0</math>に於けるテイラー展開は
:<math>\boldsymbol{r}(s)=\sum_{i=0}^\infty \frac{(s-s_0)^i}{i!} \frac{d^i}{ds^i}\boldsymbol{r}(s_0) </math>(再掲)
だったが、二次近似式(三次以降を切り捨てた式)を考えると
:<math>\boldsymbol{r}(s) \fallingdotseq \boldsymbol{r}(s_0)+\frac{d\boldsymbol{r}(s_0)}{ds}(s-s_0) + \frac{1}{2}\frac{d^2\boldsymbol{r}(s_0)}{ds^2}(s-s_0)^2 </math>
フレネ標搆を用いて書き直すと
:<math>\boldsymbol{r}(s) \fallingdotseq \boldsymbol{r}(s_0)+\boldsymbol{e}_t(s-s_0) + \frac{1}{2}\kappa(s_0)\boldsymbol{e}_n(s-s_0)^2 </math>
二次近似とは「曲線を円弧で近似する」ことだったので曲率<math>\kappa(s_0)</math>が近似に用いる円弧と関係ある量であることが予想される。<br/>
接触平面で密着円<math> \| \boldsymbol{r} - (\boldsymbol{r}(s_0)+R\boldsymbol{e}_n) \| = R </math>を考える。接触平面を<math>xy</math>平面と考えると円の方程式は
:<math>x^2+(y-R)^2=R^2</math>
:<math>y=R-\sqrt{R^2-x^2}</math>
テイラー展開して
:<math>y=\frac{x^2}{2R}+O(x^4)</math>
二次の項を比較すると
:<math>\frac{x^2}{2R}=\frac{(s-s_0)^2}{2}\kappa</math>
よって
:<math>R=\frac{1}{\kappa}</math>
と定義するのは妥当である。
なお、先ほど求めた円の曲率から、真円に関して「曲率半径=半径」であることが判る。
フレネ・セレーの公式で最初の二行二列のみを考えると<math>\mathbb{R}^2</math>内の曲線に対するフレネ・セレーの公式を得る。一般に<math>\mathbb{R}^n</math>上の曲線に対し、今回の議論と同様にして接ベクトル・主法線ベクトル・曲率を定義することができる。但し、三次元空間と異なって同じ曲率に対して異なる曲線を与えることができる(主法線ベクトルが接触平面内で接ベクトルに対して左右どちらを向くかがそのままでは定まらないため)。なお、4次元以上であっても平面拘束曲線ならば捩率は0であって従法線ベクトルは零ベクトルに定まる。
===単純閉曲線===
パラメータ区間を<math>I=[a, b]</math>とする。
このとき、曲線の端点はそれぞれ<math>\mathrm{P}(a), \mathrm{P}(b)</math>である。
端点が一致する、つまり<math>\mathrm{P}(a)=\mathrm{P}(b)</math>である連続曲線を'''閉曲線'''という。
自己交叉しない、つまり<math>\forall t_1, t_2 \in (a, b), t_1 \neq t_2 \iff \mathrm{P}(t_1)\neq\mathrm{P}(t_2)</math>となる閉曲線を'''単純閉曲線'''(ジョルダン曲線)という。閉曲線でない曲線に就いて「自己交叉しない」という条件は「曲線を表すベクトル関数が単射」と同値であるので、端点のみ単射性を外してやれば単純閉曲線の定義を得る。
幾何学的直観から、平面に拘束された単純閉曲線はその平面を単純閉曲線で囲まれた'''内部'''とそうでない'''外部'''の二つの領域に分割することが予想できる。
このことは以下の定理によって保証される。
{{定理|(ジョルダンの曲線定理)}}
平面<math>\Pi\subset\mathbb{R}^n</math>内の任意の単純閉曲線<math>\gamma</math>に対し、有界領域<math>I</math>・非有界領域<math>O</math>の組であって<math>\Pi\setminus\gamma=I \sqcup O</math>且つ<math>\partial{I}=\partial{O}=\gamma</math>であるものが唯一つに定まる。
{{定理終わり}}
この<math>I, O</math>をそれぞれ内部・外部と定義する。証明は[[位相幾何学]]で行う。なお、「<math>\partial{I}=\partial{O}=\gamma</math>」を態々明示しているのは、滑らかでない単純閉曲線に対しては「<math>\Pi\setminus\gamma=I \sqcup O \implies \partial{I}=\partial{O}=\gamma</math>」が自明でないためである。
正則単純閉曲線に対して「曲線の向き」の幾何学的意味を考える。
ジョルダンの曲線定理より単純閉曲線<math>\gamma:\boldsymbol{r}=\boldsymbol{r}(s) \quad(\boldsymbol{r}\in \Pi)</math>は平面<math>\Pi</math>を内部<math>I</math>と外部<math>O</math>に分割する。平面拘束曲線なので<math>\forall{s}, \tau(s)=0</math>であり、従法線ベクトルは零ベクトル且つ接触平面が常に<math>\Pi</math>に一致する。
主法線ベクトル<math>\boldsymbol{n}(s)</math>が接ベクトル<math>\boldsymbol{t}(s)</math>に対して左側を向いているとすると、<math>\boldsymbol{r}(s_0)+\varepsilon\boldsymbol{n}(s_0) \quad(\varepsilon>0)</math>が点<math>\mathrm{P}(s_0)</math>に於ける<math>\gamma</math>の進行方向左側にある点である。
ここで、<math>\mathrm{P}(s_0)</math>に於ける<math>\varepsilon</math>-開球<math>B_\varepsilon(s_0)</math>を考えると、平面<math>\Pi</math>上では<math>\boldsymbol{r}(s_0)+\varepsilon\boldsymbol{n}(s_0)</math>が左側の領域、<math>\boldsymbol{r}(s_0)+\varepsilon\boldsymbol{n}(s_0)</math>が右側の領域に入る。
<math>s=s_0</math>を動かすと各点で進行方向左は<math>I, O</math>のいずれかであり、<math>\gamma</math>の正則性と<math>I, O</math>の連結性から「<math>I, O</math>のどちらが左側であるかは曲線全体で変わらない」ことが言える。
ここで円の場合を考える。<math>\Pi</math>に直交座標<math>u, v</math>を入れると向心加速度の議論から「加速度ベクトル=主法線ベクトルは円の中心を向く」ので、「円の正の向きは円の内部を左手に見る進行方向」である。
任意の正則単純閉曲線<math>\gamma</math>に対して自己交叉を起こさないまま円へ連続変形する可逆写像が存在し、その変形に於いて「左側」と「<math>I, O</math>」の対応は変化しない。則ち、円で確認された「正の向きは囲まれた内部を左手に見る向き」は任意の正則単純閉曲線で成り立つ。
つまり、単純閉曲線の正の向きは点を動かしたときに'''自身の囲む領域の内部を左手に見る向き'''である。負の向きは左手に外部を見る向きである。
集合<math>A</math>に含まれる任意の2点に対してそれらを端点とする滑らかな曲線<math>C</math>をとれるとき、<math>A</math>は'''弧状連結'''であるという。
弧状連結集合<math>S</math>内の任意の閉曲線<math>\gamma</math>に対して1点に退化するような連続変形が可能なとき、<math>S</math>は'''単連結'''であるという。単連結でない集合は'''多重連結'''であるという。
平面<math>\Pi\subset\mathbb{R}^n</math>に含まれる単連結集合<math>S</math>に対し、<math>\hat{\Pi}:=\Pi\cup\{\infty\}</math>とすると集合<math>\hat{\Pi}\setminus{S}</math>は連結である。逆も成り立つ。
なお、「<math>A</math>が連結集合である」ことは「補集合<math>\overline{A}</math>が非連結集合である」ことを意味しない。そのため「単連結な連結集合」も考えられ、特に「単連結な領域」はこの先頻繁に登場する。
集合<math>A</math>に含まれる任意の2点を結んだ線分が<math>A</math>に包含されるとき、<math>A</math>は'''凸型'''であるという。凸型集合でない集合は'''凹型'''であるという。
集合<math>A</math>内の1点を固定してそこから<math>A</math>内任意点へ引いた線分が<math>A</math>に包含されるとき、<math>A</math>は'''星状'''(星型)であるという。このとき固定した点を'''星の中心'''という。凸型集合は全て星状集合である。
単純閉曲線<math>\gamma</math>を境界とする内部<math>I</math>に関して<math>I\cup\gamma</math>が凸型集合であるとき、<math>\gamma</math>を'''卵形線'''(凸単純閉曲線・オーヴァル)という。
曲線<math>C</math>の曲率関数<math>\kappa(s)</math>が<math>C^3</math>級であるとき、<math>\kappa'(s_0)=0</math>を満たす点<math>\mathrm{P}(s_0)</math>を<math>C</math>の'''頂点'''という。
例えば、標準楕円<math>\frac{x^2}{a^2}+\frac{y^2}{b^2}=1</math>の頂点は4点<math>(\pm{a},0),(0,\pm{b})</math>である。このことは、<math>\mathbb{R}^2</math>上曲線<math>C:\boldsymbol{r}=x(t)\boldsymbol{e}_x(t)+y(t)\boldsymbol{e}_y(t)</math>に対する曲率の公式<math>\kappa(t)=\frac{\left|\frac{dx}{dt}\frac{d^2y}{dt^2}-\frac{dy}{dt}\frac{d^2x}{dt^2}\right|}{\left\{\left(\frac{dx}{dt}\right)^2+\left(\frac{dy}{dt}\right)^2\right\}^\frac{3}{2}}</math>と<math>\frac{ds}{dt}>0</math>を用いて確かめられる。
実は、この事実は楕円に限らないことが以下の定理で示される。
{{定理|(ムコパディヤーヤの定理・四頂点定理)}}
<math>\mathbb{R}^2</math>上の滑らかな卵形線は少なくとも4つの頂点を持つ。
{{定理終わり}}
*証明
:滑らかな卵形線<math>C:\boldsymbol{r}=\boldsymbol{r}(s)\quad(s\in[a, b])</math>に対して曲率関数<math>\kappa(s)</math>は滑らかであり、<math>\kappa\in C^3</math>を満たす。
:卵形線は単純閉曲線なので<math>\mathrm{P}(a)=\mathrm{P(b)}</math>であり、<math>\kappa(a)=\kappa(b)</math>。
:曲率関数が定数関数のときは<math>\kappa\in C^\infty</math>且つ常に<math>\kappa'(s)=0</math>なので曲線を構成するすべての点が頂点であり、明らかに定理を満たす。
:曲率関数が定数関数でないとする。
:ワイエルシュトラスの極値定理より<math>\kappa(s)</math>は<math>s\in[a, b]</math>のどこかで最大値・最小値をとり、その点で<math>\kappa'(s)=0</math>を満たす。
:従って少なくとも2つの頂点を持つ。
:ここで、頂点がこの2つのみと仮定する。
:曲率が最大値・最小値をとる点をそれぞれ<math>\mathrm{M, N}</math>と置く。
:線分<math>\mathrm{MN}</math>を含む直線を<math>x</math>軸とし、その垂直方向に<math>y</math>軸をとる。
:<math>s</math>が増加すると曲線上の点が<math>\mathrm{N}\to\mathrm{M}</math>のように動くとき、
:<math>\kappa(s)</math>は最小値から最大値に向かって増大し、他に頂点がないので狭義単調増加である。
:同様に、<math>\mathrm{M}\to\mathrm{N}</math>の向きでは<math>\kappa(s)</math>は狭義単調減少である。
:従って、<math>\kappa'(s)y(s)\neq0</math>の正の側だけ考えれば良い。
:<math>y(a)=y(b)=0</math>に注意すると部分積分して
:<math>0<\int_a^b \kappa'(s)y(s)ds=-\int_a^b \kappa(s)y'(s)ds</math>
:主法線ベクトル<math>\boldsymbol{n}(s)= \begin{pmatrix} \xi_1(s) \\ \xi_2(s) \end{pmatrix}</math>を考えると二次元版フレネ=セレーの公式から<math>\frac{d\boldsymbol{n}}{ds}=-\kappa\frac{d\boldsymbol{r}}{ds}</math>なので
:<math>\xi'_2(s)=-\kappa(s)y'(s)</math>
:よって
:<math>-\int_a^b \kappa(s)y'(s)ds=\int_a^b \xi_2(s)ds = \left[\xi_2(s)\right]_a^b=0</math>
:なので矛盾した不等式<math>0<0</math>を得る。
:則ち、<math>\mathrm{M, N}</math>と異なる点で<math>\kappa'(s)=0</math>を満たす点が少なくとも一つ存在する。
:そのような点を<math>\mathrm{L}</math>と置く。
:<math>\mathrm{L}</math>が<math>\mathrm{N}\to\mathrm{M}</math>という経路の途中にあるとする。
:このとき、<math>\mathrm{L}</math>以外に<math>\kappa'(s)=0</math>を満たす点が存在すると「<math>\mathrm{M}\to\mathrm{N}</math>という経路の途中にそのような点が無い」という最初の仮定に反するので
:<math>\mathrm{M, N, L}</math>以外では<math>\kappa'(s)y(s)>0</math>である。
:同様に部分積分を行うことで矛盾した不等式を得、<math>\mathrm{M, N, L}</math>と異なる点で<math>\kappa'(s)=0</math>を満たす点が少なくとも一つ存在することが判る。
:この時点で「<math>\mathrm{M, N}</math>間の二つの経路のいずれにも<math>\kappa'(s)=0</math>を満たす点が存在しない」という仮定が否定されたのでこれ以上背理法を適用することはできない。
:よって、頂点個数の最小値は<math>4</math>である。//
最小値4をとる卵形線が実際に存在することは楕円の例で確かめた。
この定理は「卵形線」を「(正則)単純閉曲線」に取り換えてもそのまま成り立つことが知られている。一般の閉曲線でこの定理を成り立たせるには追加の条件が必要となる。
先程も述べたように、接ベクトルと単位主法線ベクトルは2次元以上の空間内部にある曲線ならば定義することができる。そして、<math>\boldsymbol{t}\cdot\boldsymbol{n}=0</math>も必ず成り立つ。よって、<math>\boldsymbol{e}_t\cdot\boldsymbol{e}_n=0</math>の両辺を<math>s</math>で微分して
:<math>\frac{d\boldsymbol{e}_t}{ds}\cdot\boldsymbol{e}_n+\boldsymbol{e}_t\cdot\frac{d\boldsymbol{e}_n}{ds}=0</math>
:<math>\therefore \boldsymbol{e}_t\cdot\frac{d\boldsymbol{e}_n}{ds}=-\boldsymbol{n}\cdot\boldsymbol{e}_n=-\kappa</math>
ここで「基底分解に於ける成分はその基底との内積に等しい」という性質から、<br/>
一般次元に於いても「<math>\frac{d\boldsymbol{e}_n}{ds}</math>の接線方向成分は<math>-\kappa(s)</math>」であることが判る。
ここで<math>C^2</math>級曲線の位置ベクトル<math>\boldsymbol{r}(s)</math>に対して単位主法線<math>\boldsymbol{e}_n(s)</math>を対応させることを考える。この対応を'''ガウス表示'''という。
<math>\boldsymbol{e}_n(s)</math>を二次までテイラー展開すると<math>\Delta s>0</math>を微小量として
:<math>\boldsymbol{e}_n(s+\Delta s)=\boldsymbol{e}_n(s)+\frac{d\boldsymbol{e}_n(s)}{ds}\Delta s + O(\Delta s^2)</math>
ここで<math>\boldsymbol{e}_t\cdot\frac{d\boldsymbol{e}_n}{ds}=-\kappa</math>より、<math>s</math>を<math>\Delta s</math>だけ動かしたときの接線方向の速さは<math>|\kappa(s)|\Delta s</math>である(<math>\kappa(s)</math>が正で正の向き、負で負の向きに動くとする)。
閉曲線に対してはガウス表示によって法線方向の変化を完全に捉えられるので、<math>\kappa(s)</math>を微小量<math>\Delta s</math>に関して積分した<math>\int_a^b \kappa(s)ds</math>を考えてみる。
ガウス表示では曲線を単位主法線ベクトルの描く単位円として考えることができる。閉曲線では<math>\mathrm{P}(a)=\mathrm{P}(b)</math>より明らかに<math>\boldsymbol{e}_n(a)=\boldsymbol{e}_n(b)</math>であり、閉曲線が一周する間にベクトル<math>\boldsymbol{e}_n(s)</math>はこの単位円を<math>m(\in\mathbb{Z})</math>周する<sup>※</sup>。
<small>※物理的には「円そのものが動いても円周上の質点は『この円をどっちの方向に何周したか』という情報しか持たない」ので、単位円が動くことは議論にあまり関係ない</small>
弧度法より単位円を<math>m</math>周する符号付き道のりは<math>2\pi{m}</math>であり、ガウス表示より<math>\int_a^b \kappa(s)ds=2\pi{m}</math>。
従って、<math>m=\frac{1}{2\pi}\int_a^b \kappa(s)ds</math>
この<math>m</math>を閉曲線の'''回転数'''と呼ぶことにする。
曲率が負の場合には積分値が途中で相殺されてしまうので、絶対値を付けて積分した
:<math>\mu:=\int_a^b |\kappa(s)|ds</math>
という量を考えることにする。
これを閉曲線の'''全曲率'''と呼ぶ。
全曲率に対して以下の定理が成り立つ。
{{定理|(フェンヒェルの定理)}}
滑らかな閉曲線の全曲率は<math>\mu\geq2\pi</math>を満たす。等号成立の場合は卵形線である。
{{定理終わり}}
証明は省略する。
===曲面===
多変数解析で既に扱った、三次元空間に於ける曲面の陽関数表示<math>z=f(x, y)</math>を'''モンジュ表示'''という。<math>f(x, y, z)=\mathrm{const}.</math>と陰関数表示された曲面は陰関数定理が成り立つ範囲でモンジュ表示に直すことができる。
一次式で陰関数表示される曲面を'''一次曲面'''という。平面の方程式より、一次曲面は全て平面である。
二次式で陰関数表示される曲面を'''二次曲面'''という。
以下、三次元空間に於ける二次曲面の例を挙げる。各係数は非退化条件を満たすとする。なお、「直線に平行な平面」は「直線を法線とする平面に垂直な平面」を意味することに注意。
*'''球面'''(sphere)
:高校数学で扱ったように、点<math>(a, b, c)</math>を中心とする半径<math>r</math>の球面の方程式は<math>(x-a)^2+(y-b)^2+(z-c)^2=r^2</math>である。この球面上の点の位置ベクトルは<math>\boldsymbol{r}=\begin{pmatrix} x \\ y \\ z \end{pmatrix}</math>なので、球面が満たすベクトル方程式は一般に<math>\|\boldsymbol{r}-\boldsymbol{a}\|=\mathrm{const}.</math>である。これは円のベクトル方程式の次元を上げたものである。
*'''楕円面'''(ellipsoid)
:楕円の方程式を拡張した方程式<math>\frac{x^2}{a^2}+\frac{y^2}{b^2}+\frac{z^2}{c^2}=1</math>が表す曲面である。<math>xyz</math>空間の基本面で切った断面は全て楕円となる。
*'''楕円拋物面'''(elliptic paraboloid)
:楕円の平面拘束条件を外した方程式<math>z=\frac{x^2}{a^2}+\frac{y^2}{b^2}</math>が表す曲面である。<math>z</math>軸に垂直な平面で切った断面は楕円、平行な平面で切った断面は拋物線となる。
*'''双曲拋物面'''(hyperbolic paraboloid)
:双曲線の平面拘束条件を外した方程式<math>z=\frac{x^2}{a^2}-\frac{y^2}{b^2}</math>が表す曲面である。<math>z</math>軸に垂直な平面で切った断面は双曲線、平行な平面で切った断面は拋物線となる。また、原点は鞍点である。
*'''一葉双曲面'''(hyperboloid of one sheet)
:楕円面の方程式の一つの項の符号を変えた<math>\frac{x^2}{a^2}+\frac{y^2}{b^2}-\frac{z^2}{c^2}=1</math>の表す曲面。<math>z</math>軸に垂直な平面で切った断面は楕円、平行な平面で切った断面は双曲線となる。
*'''二葉双曲面'''(hyperboloid of two sheet)
:楕円面の方程式の二つの項の符号を変えた<math>\frac{x^2}{a^2}-\frac{y^2}{b^2}-\frac{z^2}{c^2}=1</math>の表す曲面。断面の分類は一葉双曲面と同じだが、<math>m^2<c^2</math>のときは平面<math>z=m</math>と交わらないため「二葉」と名付けられている。
*'''錐面'''(conical surface)
:方程式<math>\frac{z^2}{c^2}=\frac{x^2}{a^2}+\frac{y^2}{b^2}</math>の表す曲面。<math>xy</math>平面との交点は原点のみであり、<math>yz</math>平面・<math>zx</math>平面で切った断面は直線である。
閉区間<math>I\subset\mathbb{R}</math>上の一変数ベクトル関数<math>\boldsymbol{r}(t)</math>を用いたベクトル方程式<math>\boldsymbol{r}=\boldsymbol{r}(t) \quad(t\in I)</math>の解集合は次元に依らず曲線を表した。
同様に、領域<sup>※</sup><math>D\subset\mathbb{R}^2</math>上の二変数ベクトル関数<math>\boldsymbol{r}(t, u)</math>を用いたベクトル方程式<math>\boldsymbol{r}=\boldsymbol{r}(t, u) \quad({\scriptstyle\left(\begin{array}{c} t \\[-6pt] u \end{array}\right)}\in D)</math>の解集合は次元に依らず曲面を表すと考えられる。
厳密には[[線型代数学/基底と次元|階数・退化次数の定理]]<!-- 次元定理・線型写像の基本定理 -->などを用いてこのことを確かめられる。
<small>※ここでいう「領域」は冒頭で厳密に定義した「領域」であることに注意。</small>
曲線と同様に、曲面の'''パラメータ表示'''と'''ベクトル表示'''は次のように定義される。
:パラメータ表示:<math>\begin{cases} x_1&=&r_1(t, u) \\ x_2&=&r_2(t, u) \\ &\,\,\vdots& \\ x_n&=&r_n(t, u) \end{cases}</math>
:ベクトル表示:<math>\left\{\boldsymbol{r}(t, u) \,\bigg|\, {\scriptstyle\left(\begin{array}{c} t \\[-6pt] u \end{array}\right)} \in D \right\}</math>
また、<math>S:\boldsymbol{r}=\boldsymbol{r}(t, u)</math>のようにも表す。
例えば、<math>k>l>0</math>として<math>\boldsymbol{r}(t, u)=\begin{pmatrix} (k+l\cos u)\cos t \\ (k+l\cos u)\sin t \\ l\sin u \end{pmatrix} \quad(D=\left\{ \begin{pmatrix} t \\ u \end{pmatrix} \bigg| \begin{array}{c} 0 \leq t \leq 2\pi \\ 0 \leq u \leq 2\pi \end{array} \right\})</math>は'''トーラス'''のベクトル表示である。
<math>\mathbb{R}^3</math>上の平面の方程式は高校数学に於いて<math>\begin{pmatrix} a \\ b \\ c \end{pmatrix}\neq\boldsymbol{0}</math>として一次式<math>ax+by+cz+d=0</math>と表せることを学んだ。
これのベクトル方程式を求めてみよう。
:①<math>c=0</math>のとき
::平面の方程式は<math>\begin{cases} ax+by+d=0 \\ z=\mathrm{const}. \end{cases}</math>
::[1]<math>b=0</math>のとき
:::平面の方程式は<math>\begin{cases} ax+d=0 \\ y=\mathrm{const}. \\ z=\mathrm{const}. \end{cases}</math>
:::<math>\begin{pmatrix} a \\ b \\ c \end{pmatrix}\neq\boldsymbol{0}</math>より<math>a\neq0</math>
:::<math>y=t, z=u</math>と置換すると
:::<math>\begin{pmatrix} x \\ y \\ z \end{pmatrix}=\begin{pmatrix} -\frac{d}{a} \\ t \\ u \end{pmatrix}</math>
:::<math>\boldsymbol{r} = t\begin{pmatrix} 0 \\ 1 \\ 0 \end{pmatrix}+u\begin{pmatrix} 0 \\ 0 \\ 1 \end{pmatrix}+\begin{pmatrix} -\frac{d}{a} \\ 0 \\ 0 \end{pmatrix}</math>
::[2]<math>b\neq0</math>のとき
:::<math>x=t, z=u</math>と置換すると
:::<math>\begin{pmatrix} x \\ y \\ z \end{pmatrix}=\begin{pmatrix} t \\ -\frac{a}{b}t-\frac{d}{b} \\ u \end{pmatrix}</math>
:::<math>\boldsymbol{r} = t\begin{pmatrix} 1 \\ -\frac{a}{b} \\ 0 \end{pmatrix}+u\begin{pmatrix} 0 \\ 0 \\ 1 \end{pmatrix}+\begin{pmatrix} 0 \\ -\frac{d}{b} \\ 0 \end{pmatrix}</math>
:②<math>c\neq0</math>のとき
::<math>x=t, y=u</math>と置換すると
::<math>\begin{pmatrix} x \\ y \\ z \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} t \\ u \\ -\frac{a}{c}t-\frac{b}{c}u-\frac{d}{c} \end{pmatrix}</math>
::<math>\boldsymbol{r}=t\begin{pmatrix} 1 \\ 0 \\ -\frac{a}{c} \end{pmatrix}+u\begin{pmatrix} 0 \\ 1 \\ -\frac{b}{c} \end{pmatrix} + \begin{pmatrix} 0 \\ 0 \\ -\frac{d}{c} \end{pmatrix}</math>
なお、ここから平面のベクトル方程式が一般に<math>\boldsymbol{r}=\boldsymbol{a}+t\boldsymbol{b}+u\boldsymbol{c}</math>という「直線のベクトル方程式を拡張した形」であることがわかる。
<math>\boldsymbol{r}(t, u)\in C^1</math>且つ<math>\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}, \frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}\neq\boldsymbol{0}</math>である曲面を'''滑らか'''な曲面という。
曲面<math>S:\boldsymbol{r}=\boldsymbol{r}(t, u)</math>とその上の点<math>\mathrm{P}_0=(a, b)</math>に対し、曲線<math>\boldsymbol{r}=\boldsymbol{r}(a, u), \boldsymbol{r}=\boldsymbol{r}(t, b)</math>をそれぞれ点<math>\mathrm{P}_0</math>に於ける'''<math>t</math>曲線'''・'''<math>u</math>曲線'''という。
<math>\boldsymbol{r}(t, u)\in C^1</math>であるとき、偏導関数の定義から
:<math>\frac{\partial}{\partial{u}}\boldsymbol{r}(a, u)=\frac{d}{du}\boldsymbol{r}(a, u)</math>
:<math>\frac{\partial}{\partial{t}}\boldsymbol{r}(t, b)=\frac{d}{dt}\boldsymbol{r}(t, b)</math>
ここで<math>a, b</math>をそれぞれ<math>t</math>軸・<math>u</math>軸上で動かすことで<math>t</math>曲線・<math>u</math>曲線の接ベクトルがそれぞれ<math>\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}, \frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}</math>であると判る。これらを曲面のパラメータ方向の'''接ベクトル'''という。
これらの接ベクトルが平行でないとき、曲面<math>S</math>上の任意の点<math>\mathrm{P}</math>に対して<math>\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}, \frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}</math>の張る平面が定まる。これを曲面<math>S</math>の点<math>\mathrm{P}</math>に於ける'''接平面'''という。曲線の接線は一次元ベクトル空間<math>\left\{ \xi\frac{d\boldsymbol{r}}{dt} \bigg| \xi \in\mathbb{R} \right\}</math>で表されたが、曲面の接平面は二次元ベクトル空間<math>\left\{ \xi\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}+\eta\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}} \bigg| \xi, \eta \in \mathbb{R} \right\}</math>で表される。このような接ベクトル全体が張るベクトル空間を一般に'''接空間'''と呼ぶ。
接ベクトルの組が一次独立である曲面を'''正則'''な曲面という。滑らかな曲面は正則曲面である。
曲面<math>S</math>の接平面に垂直なベクトルを<math>S</math>の'''法線ベクトル'''という。
三次元空間ならば接平面を張る2ベクトルの外積<math>\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}} \times \frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}</math>で求められる。
モンジュ表示された曲面<math>S:z=f(x, y)</math>に対して接平面の存在性(つまり曲面の正則性)は「二変数関数<math>f</math>の全微分可能」に対応した。ベクトル表示された曲面<math>S:\boldsymbol{r}=\boldsymbol{r}(t, u)</math>に対しては「ベクトル関数<math>\boldsymbol{r}</math>の全微分可能性」だけでは足りず、「ヤコビ行列<math>\frac{\partial{(\boldsymbol{r})}}{\partial{(t, u)}}</math>の階数が2」も要求される。
以下、正則曲面のみ扱う。
<math>\boldsymbol{r}(t, u)</math>の微小変化は全微分で与えられる。
:<math>d\boldsymbol{r}=\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}dt+ \frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}du</math>
則ち、各パラメータを同時に<math>\begin{pmatrix} t \\ u \end{pmatrix}\to\begin{pmatrix} t+dt \\ u+du \end{pmatrix}</math>と単調に動かしたとき、対応する曲面上の点が描く領域は2ベクトル<math>\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}dt, \frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}du</math>の張る微小平行四辺形として近似できる。その微小面積は線型代数の内容から
:<math>\sqrt{ \left\| \frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}dt \right\|^2 \left\| \frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}du \right\|^2 - \left\{ \left(\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}dt\right)\cdot\left(\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}du\right) \right\}^2 }=\sqrt{\left\| \frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}} \right\|^2\left\|\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}\right\|^2 - \left( \frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}\cdot\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}} \right)^2 } dtdu</math>
である。
これを領域<math>D=\mathrm{dom}\,S</math>で重積分してやれば曲面の表面積('''曲面積''')が求まると考えられる。
{{定理|(曲面積)}}
<math>E := \left\| \frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}} \right\|^2,\quad F := \frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}\cdot\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}},\quad G := \left\|\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}\right\|^2</math>とすると、<br>
曲面<math>S:\boldsymbol{r}=\boldsymbol{r}(t, u)</math>の領域<math>D</math>に於ける曲面積は
:<math>S=\iint_D \sqrt{EG-F^2}dtdu</math>
{{定理終わり}}
この<math>E, F, G</math>を<math>S</math>の'''第一基本量'''と呼ぶ。また、<math>dS:=\sqrt{EG-F^2}dtdu</math>を'''面素'''(面積素・面積要素)と呼ぶ。
<math>t, u</math>が共通のパラメータ<math>\theta</math>で媒介変数表示されるとき、曲面は曲線に退化するので線素を考えられる。
具体的には、
:<math>dl=\left\|\frac{d\boldsymbol{r}}{d\theta}\right\|d\theta</math>
より
:<math>\left\|\frac{d\boldsymbol{r}}{d\theta}\right\|^2=\frac{d\boldsymbol{r}}{d\theta}\cdot\frac{d\boldsymbol{r}}{d\theta}</math>
ここで合成関数の常微分公式より
:<math>\frac{d\boldsymbol{r}}{d\theta}=\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}\frac{dt}{d\theta}+ \frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}\frac{du}{d\theta}</math>
なので
:<math>\frac{d\boldsymbol{r}}{d\theta}\cdot\frac{d\boldsymbol{r}}{d\theta}=\left\|\frac{d\boldsymbol{r}}{dt}\right\|^2\left(\frac{dt}{d\theta}\right)^2+2\left(\frac{d\boldsymbol{r}}{dt}\cdot\frac{d\boldsymbol{r}}{du}\right)\frac{dt}{d\theta}\frac{du}{d\theta}+\left\|\frac{d\boldsymbol{r}}{du}\right\|^2\left(\frac{du}{d\theta}\right)^2</math>
:<math>=E\left(\frac{dt}{d\theta}\right)^2+2F\frac{dt}{d\theta}\frac{du}{d\theta}+G\left(\frac{du}{d\theta}\right)^2</math>
よって
:<math>dl=\sqrt{E\left(\frac{dt}{d\theta}\right)^2+2F\frac{dt}{d\theta}\frac{du}{d\theta}+G\left(\frac{du}{d\theta}\right)^2}d\theta=\sqrt{E(dt)^2+2Fdtdu+G(du)^2}</math>
このように、線素は<math>\theta</math>のとり方に依存しない。
そこで、最後の式で右辺を二乗した
:<math>I:=E(dt)^2+2Fdtdu+G(du)^2</math>
を<math>S</math>の'''第一基本形式'''と定める。
第一基本形式は二次形式になっていることが見て取れるので、<math>\boldsymbol{v}:=\begin{pmatrix} dt \\ du \end{pmatrix}, \mathbf{K}:=\begin{pmatrix} E & F \\ F & G \end{pmatrix}</math>とおくと
:<math>I={}^t\!\boldsymbol{v} \mathbf{K} \boldsymbol{v}</math>
と行列表示できる。この<math>\mathbf{K}</math>を'''第一基本行列'''という。
ここで<math>I=dl^2>0</math>なので<math>\mathbf{K}</math>は正定値行列である。
また、<math>\boldsymbol{x}_i=\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}, \boldsymbol{x}_j=\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}</math>と置いて第一基本量の定義を思い返してみると<math>\mathbf{K}_{ij}=\boldsymbol{x}_i \cdot \boldsymbol{x}_j</math>なのでこの行列は接ベクトルに関するグラム行列である。この意味でも、<math>\mathbf{K}</math>は正定値行列である。
また、面素の式で根号の中身が<math>\det\mathbf{K}</math>に等しいことも判る。
則ち、第一基本量が曲面の本質であると予想される。
<math>F=0 \land E=G=\lambda</math>であるとき、<math>\mathbf{K}=\lambda\mathbf{E}_2</math>である。このときのパラメータの組<math>(u, v)</math>を曲面の'''等温座標系'''という。
等温座標系で表示された曲面<math>S</math>に対し、第一基本形式は<math>I=\lambda(dt^2+du^2)</math>と二次形式の標準形となっている。則ち、等温座標系へのパラメータ変換は主軸変換である。
面素を考えると<math>dS=\lambda^2dtdu</math>と非常に単純な形となるほか、曲面上の角度計算が平面の場合と全く同じ式で与えられることも等温座標系の利点である。
曲面<math>S</math>上の各点<math>\mathrm{P}</math>に対して単位法線ベクトル<math>\boldsymbol{n}(\mathrm{P})</math>を考える。ベクトル表示の定義域<math>D</math>でベクトル場<math>\boldsymbol{n}(\mathrm{P})</math>が連続であるとき、<math>S</math>は'''向き付け可能'''であるという。
向き付け不能な曲面の例として<math>\boldsymbol{r}(t, u)=\begin{pmatrix} (u\cos t+2)\sin 2t \\ (u\cos t+2)\cos 2t \\ u\sin t \end{pmatrix} \quad(D=\left\{ \begin{pmatrix} t \\ u \end{pmatrix} \bigg| \begin{array}{c} 0 \leq t \leq \pi \\ -1 \leq u \leq 1 \end{array} \right\})</math>と表される'''メビウスの帯'''が挙げられる。
メビウスの帯が向き付け不能である証明を概説する。
:接ベクトルをそれぞれ求める。簡単のため<math>u=0</math>として考える。単位法線ベクトルは外積を正規化して得るが、向きの取り方で正負の符号が付く。どちらの符号を採用するにしろ<math>\boldsymbol{n}(\boldsymbol{r}(0, 0))\neq\boldsymbol{n}(\boldsymbol{r}(\pi, 0))</math>を得、<math>\boldsymbol{r}(0, 0)=\boldsymbol{r}(\pi, 0)</math>より同じ点に対して異なる法線ベクトルを出力するので<math>\boldsymbol{n}(\mathrm{P})</math>はwell-definedではなく、向き付け可能性の定義を満たさない。//
四次元以上の空間では法線ベクトルの方向を複数とれるため法線ベクトル場は扱いにくい。そこで、法線ベクトルに依らない定義を考えたい。
2つの滑らかな曲面<math>S_1, S_2</math>が以下を満たすとき、
#パラメータ<math>(t_1, u_1), (t_2, u_2)</math>の間に滑らかな全単射<math>\begin{cases}t_2 =\phi(t_1, u_1) \\ u_2=\psi(t_1, u_1) \end{cases}</math>が存在する。
#この変数変換のヤコビ行列<math>\frac{\partial{(\phi, \psi)}}{\partial{(t_1, u_1)}}</math>が正則。
#<math>\boldsymbol{r}_1(t_1, u_1)=\boldsymbol{r}_2(t_2, u_2)</math>
この2つは'''パラメータ変換で同値'''という。
このとき、ヤコビアンが正であるパラメータの組は'''同じ向き'''、負であるパラメータの組は'''逆向き'''であるという。
任意の<math>(t_1, u_1)</math>に対して開近傍<math>U \subset \mathrm{dom}\,S_1</math>をとったとき、どの<math>U</math>上でも<math>\det\frac{\partial{(\phi, \psi)}}{\partial{(t_1, u_1)}}>0</math>を満足するならば<math>S_1</math>は'''向き付け可能'''という。
向き付け可能な曲面の接空間に対して右手系を成すような向きの法線ベクトルを'''外向き法線ベクトル'''と呼ぶ。
外向き法線の向く側を曲面の'''表'''、その反対側を曲面の'''裏'''と定義する。
<math>\partial{S}=\varnothing</math>を満たす正則曲面<math>S</math>を'''閉曲面'''という。ジョルダンの曲線定理を拡張した定理('''ジョルダン・ブラウワーの分離定理''')によって閉曲面が空間を内部・外部に分割することが保証される。内部に面する向きを閉曲面の裏、外部に面する向きを閉曲面の表と定義する。
パラメータ空間の座標軸の向きの組み合わせが<math>xy</math>平面と同じとき、外向き法線で定義される閉曲面の表裏は内部・外部から定義される表裏に一致する。
===回転面===
ここでは三次元空間内の曲面について考える。
高校数学で回転体を扱ったが、領域の回転体の表面である曲面は元の領域の疆界である単純閉曲線を軸に関して回転したものである。そこで、平面上の任意の曲線を回転すると曲面('''回転面''')を得ると考えられる。
簡単な場合として、<math>x\geq0</math>で定義された<math>zx</math>平面上の曲線<math>z=f(x)</math>を<math>y</math>軸に関して回転させた回転面を考える。
:任意の<math>k\in[0,\infty)</math>に関して曲線上の点は<math>\begin{pmatrix} x \\ z \end{pmatrix}=\begin{pmatrix} k \\ f(k)\end{pmatrix}</math>と与えられる。
:領域<math>\left\{ {\scriptstyle\left(\begin{array}{c} x \\[-6pt] z \end{array}\right)} \big| x \leq k \right\}</math>を<math>y</math>軸に関して回転した回転体を平面<math>z=f(k)</math>で切った断面は半径<math>k</math>の閉円盤であり、疆界円周上の点を<math>\begin{pmatrix} x \\ y \\ f(k) \end{pmatrix}</math>とすると<math>k=\sqrt{x^2+y^2}</math>である。
:則ち回転体の疆界である回転面上の点<math>\begin{pmatrix} x \\ y \\ z \end{pmatrix}</math>は方程式<math>z=f(\sqrt{x^2+y^2})</math>を満たし、逆にこの方程式を満たす<math>\begin{pmatrix} x \\ y \\ z \end{pmatrix}</math>は回転面上にある。
纏めると以下のようになる。
{{定理|(回転面の方程式)}}
<math>zx</math>平面上の曲線<math>z=f(x)\quad(x\geq0)</math>を<math>y</math>軸に関して回転させた回転面の方程式は
:<math>z=f(\sqrt{x^2+y^2})</math>
{{定理終わり}}
<math>z</math>軸・<math>x</math>軸に関する回転面の方程式は変数を輪環の順に入れ替えることで得られる。
回転面に対し、元の曲線を'''母線'''という。
母線が直線である回転面は'''円錐'''である。
:<math>z=mx+n\quad(m\neq0,x\geq0)</math>とすれば<math>y</math>軸に関して回転した曲面の方程式は
:<math>z=m\sqrt{x^2+y^2}+n</math>
:<math>z-n = m\sqrt{x^2+y^2}</math>
これを両辺二乗すると
:<math>(z-n)^2=m^2x^2+m^2y^2</math>
であり、錐面の方程式<math>\frac{z^2}{c^2}=\frac{x^2}{a^2}+\frac{y^2}{b^2}</math>を満たしていることがわかる。
回転軸が傾いている場合、<math>xyz</math>空間の回転行列<math>\mathbf{R}</math>を利用することで各軸に関する回転に帰着することもできるが、ここでは曲面のベクトル表示を扱ったのでベクトル方程式で回転を記述することを考えたい。
点<math>\mathrm{O}</math>から<math>\boldsymbol{r}</math>とそれに平行でない単位ベクトル<math>\boldsymbol{e}</math>が伸びており、そのなす角が<math>\theta</math>であるとする。<math>\boldsymbol{r}</math>の終点<math>\mathrm{P}</math>を含み<math>\boldsymbol{e}</math>を法線とする平面を<math>\Pi</math>、<math>\Pi</math>と直線<math>\{k\boldsymbol{e} \mid k>0\}</math>の交点を<math>\mathrm{N}</math>、<math>\mathrm{P}</math>を<math>\Pi</math>内で<math>\mathrm{N}</math>を中心として<math>\phi</math>回転した点を<math>\mathrm{Q}</math>、<math>\mathrm{NQ}</math>から<math>\mathrm{NP}</math>へ降ろした垂足を<math>\mathrm{R}</math>と置く。但し、回転角<math>\phi</math>の正の向きは<math>\boldsymbol{e}</math>を右螺子の進む向きとする方向に定める。
このとき、<math>\boldsymbol{r}</math>を<math>\boldsymbol{e}</math>に関して<math>\phi</math>だけ回転させたベクトル<math>\boldsymbol{r}'</math>は以下のように表される。
{{定理|(ロドリゲスの公式)}}
:<math>\boldsymbol{r}'=\boldsymbol{r}\cos\phi+(\boldsymbol{r}\cdot\boldsymbol{e})\,\mathrm{versin}\,\phi\,\boldsymbol{e}-(\boldsymbol{r}\times\boldsymbol{e})\sin\phi</math>
{{定理終わり}}
*証明
:<math>\boldsymbol{r}'=\overrightarrow{\mathrm{OQ}}=\overrightarrow{\mathrm{ON}}+\overrightarrow{\mathrm{NR}}+\overrightarrow{\mathrm{RQ}}</math>
:<math>\overrightarrow{\mathrm{ON}}</math>は<math>\boldsymbol{r}</math>の<math>\boldsymbol{e}</math>への正射影ベクトルなので
::<math>\overrightarrow{\mathrm{ON}}=\frac{\boldsymbol{r}\cdot\boldsymbol{e}}{\boldsymbol{e}\cdot\boldsymbol{e}}\boldsymbol{e}=(\boldsymbol{r}\cdot\boldsymbol{e})\boldsymbol{e}</math>
:<math>\triangle\mathrm{NQR}</math>を考えると<math>\|\overrightarrow{\mathrm{NQ}}\|=\|\overrightarrow{\mathrm{NP}}\|</math>と<math>\|\overrightarrow{\mathrm{NR}}\|=\|\overrightarrow{\mathrm{NQ}}\|\cos\phi</math>及び<math>\overrightarrow{\mathrm{NR}}/\!\!/\overrightarrow{\mathrm{NP}}</math>より
::<math>\overrightarrow{\mathrm{NR}}=\overrightarrow{\mathrm{NP}}\cos\phi=(\overrightarrow{\mathrm{OP}}-\overrightarrow{\mathrm{ON}})\cos\phi=\{\boldsymbol{r}-(\boldsymbol{r}\cdot\boldsymbol{e})\boldsymbol{e}\}\cos\phi</math>
:<math>\boldsymbol{r}\times\boldsymbol{e}</math>は外積の定義から<math>\overrightarrow{\mathrm{NP}}</math>を<math>\Pi</math>上で<math>-\phi</math>方向に<math>\frac{\pi}{2}</math>だけ回転させたベクトルになるので、
:<math>\boldsymbol{r}\times\boldsymbol{e}/\!\!/\overrightarrow{\mathrm{RQ}}</math>と<math>\|\overrightarrow{\mathrm{RQ}}\|=\|\overrightarrow{\mathrm{NQ}}\|\sin\phi</math>及び<math>\|\overrightarrow{\mathrm{NQ}}\|=\|\overrightarrow{\mathrm{NP}}\|</math>から
::<math>\overrightarrow{\mathrm{RQ}}=-(\boldsymbol{r}\times\boldsymbol{e})\sin\phi</math>
:これらを足して
::<math>\boldsymbol{r}'=(\boldsymbol{r}\cdot\boldsymbol{e})\boldsymbol{e}+\{\boldsymbol{r}-(\boldsymbol{r}\cdot\boldsymbol{e})\boldsymbol{e}\}\cos\phi-(\boldsymbol{r}\times\boldsymbol{e})\sin\phi</math>
::<math>=\boldsymbol{r}\cos\phi+(\boldsymbol{r}\cdot\boldsymbol{e})(1-\cos\phi)\boldsymbol{e}-(\boldsymbol{r}\times\boldsymbol{e})\sin\phi</math>
::<math>=\boldsymbol{r}\cos\phi+(\boldsymbol{r}\cdot\boldsymbol{e})\,\mathrm{versin}\,\phi\,\boldsymbol{e}-(\boldsymbol{r}\times\boldsymbol{e})\sin\phi</math>//
この証明ではベクトルの平行移動を用いているのでアフィン空間を前提とするが、この式そのものはアフィン構造に依存してないので一般のベクトル空間で成り立つ。
また、回転後のベクトルは母線のパラメータ<math>t</math>に加えて回転角<math>\phi</math>もパラメータとして有するので、<math>\boldsymbol{r}'(t, \phi)</math>という二変数ベクトル関数となって曲面を表すことになる。則ち、「曲線を回転すれば曲面を得る」という直感は正しい。
ロドリゲスの公式の応用として、例えば円錐のベクトル方程式が<math>\frac{(\boldsymbol{r}-\boldsymbol{p})\cdot\boldsymbol{a}}{\|\boldsymbol{r}-\boldsymbol{p}\|}=\mathrm{const}.</math>であることが導ける。
:円錐頂点の位置ベクトルを<math>\boldsymbol{p}</math>、軸ベクトルを<math>\boldsymbol{a}</math>、<math>\boldsymbol{a}</math>と角度<math>\alpha</math>をなす単位ベクトルを<math>\boldsymbol{v}</math>とする。このとき直線<math>\{k\boldsymbol{v}\mid k>0\}</math>が円錐の母線であり、母線と交わる向きである軸の法線ベクトルを<math>\boldsymbol{b}</math>とおく。
:ロドリゲスの公式より<math>\boldsymbol{v}</math>を<math>\boldsymbol{a}</math>の周りに<math>\theta</math>だけ回転させたベクトル<math>\boldsymbol{v}'</math>は
::<math>\boldsymbol{v}'=\boldsymbol{v}\cos\theta+(\boldsymbol{v}\cdot\boldsymbol{e}_a)\,\mathrm{versin}\,\theta\,\boldsymbol{e}_a-(\boldsymbol{v}\times\boldsymbol{e}_a)\sin\theta</math>
:ここで<math>\boldsymbol{v}</math>を<math>\boldsymbol{a}, \boldsymbol{b}</math>方向に基底分解すると
::<math>\boldsymbol{v}=\cos\alpha\,\boldsymbol{e}_a+\sin\alpha\,\boldsymbol{e}_b</math>
:なので、
::<math>\boldsymbol{v}'=\cos\alpha\boldsymbol{e}_a+\sin\alpha\{\boldsymbol{e}_b\cos\theta+(\boldsymbol{e}_a\times\boldsymbol{e}_b)\sin\theta\}</math>
:円錐上の点<math>\boldsymbol{r}</math>の位置ベクトルは頂点から母線方向に<math>\rho</math>だけ進むので
::<math>\boldsymbol{r}=\boldsymbol{p}+\rho\boldsymbol{v}'</math>
:であり、
::<math>\boldsymbol{r}-\boldsymbol{p}=\rho\boldsymbol{v}'</math>
:ここで<math>\|\boldsymbol{v}'\|=\|\boldsymbol{v}\|=1</math>より
::<math>\rho=\|\boldsymbol{r}-\boldsymbol{p}\|</math>
:このベクトルと軸ベクトルの内積をとると
::<math>(\boldsymbol{r}-\boldsymbol{p})\cdot\boldsymbol{a}=\rho\boldsymbol{v}'\cdot\boldsymbol{a}</math>
::<math>=\rho\{\cos\alpha(\boldsymbol{e}_a\cdot\boldsymbol{a})+\sin\alpha\cos\theta(\boldsymbol{e}_b\cdot\boldsymbol{a})+\sin\alpha\sin\theta(\boldsymbol{e}_a\times\boldsymbol{e}_b)\cdot\boldsymbol{a}\}</math>
:<math>\boldsymbol{e}_b, \boldsymbol{e}_a\times\boldsymbol{e}_b</math>とも<math>\boldsymbol{a}</math>に直交するので後ろの二項は消えて
::<math>(\boldsymbol{r}-\boldsymbol{p})\cdot\boldsymbol{a}=\rho\cos\alpha(\boldsymbol{e}_a\cdot\boldsymbol{a})=\|\boldsymbol{r}-\boldsymbol{p}\|\|\boldsymbol{a}\|\cos\alpha</math>
:則ち
::<math>\frac{(\boldsymbol{r}-\boldsymbol{p})\cdot\boldsymbol{a}}{\|\boldsymbol{r}-\boldsymbol{p}\|}=\|\boldsymbol{a}\|\cos\alpha=\mathrm{const}.</math>//
円錐が先に与えられている場合は「<math>\boldsymbol{r}-\boldsymbol{p}</math>が母線の方向ベクトルなのは図より自明」とできるが、ここでは「母線が先に与えられて回転によって円錐が構成される」という立場を採ったのでロドリゲスの公式が効くのである。
ロドリゲスの公式で微小回転<math>d\phi</math>の場合を考える。
正弦関数・余弦関数の部分を1項目までテイラー展開して<math>\cos(d\phi)=1+O(d\phi^2), \sin(d\phi)= d\phi+O(d\phi^3)</math>なので<math>\mathrm{versin}(d\phi)=O(d\phi^2)</math>であり、
:<math>\boldsymbol{r}' = \boldsymbol{r}-(\boldsymbol{r}\times\boldsymbol{e})d\phi+O(d\phi^2)</math>
ここで<math>d\boldsymbol{r}=\boldsymbol{r}'-\boldsymbol{r}</math>なので
:<math>d\boldsymbol{r}=-(\boldsymbol{r}\times\boldsymbol{e})d\phi+O(d\phi^2)</math>
則ち、ベクトル関数の全微分は微小回転で近似される。
オーダー記法の項を無視して<math>\boldsymbol{\omega}=\frac{d\phi}{dt}\boldsymbol{e}</math>と置くと
:<math>d\boldsymbol{r}=(d\phi\boldsymbol{e})\times\boldsymbol{r}</math>
これの両辺を<math>dt</math>で割って
:<math>\frac{d\boldsymbol{r}}{dt}=\boldsymbol{\omega}\times\boldsymbol{r}</math>
これは剛体の速度公式である。
ロドリゲスの公式の一次変換表記を考える。
<math>\boldsymbol{r}=\begin{pmatrix} r_1 \\ r_2 \\ r_3 \end{pmatrix}, \boldsymbol{r}'=\begin{pmatrix} r'_1 \\ r'_2 \\ r'_3 \end{pmatrix}, \boldsymbol{e}=\begin{pmatrix} a \\ b \\ c \end{pmatrix}</math>とすると、
:<math>\begin{pmatrix} r'_1 \\ r'_2 \\ r'_3 \end{pmatrix}=\cos\phi\begin{pmatrix} r_1 \\ r_2 \\ r_3 \end{pmatrix}+(ar_1+br_2+cr_3)\mathrm{versin}\,\phi\begin{pmatrix} a \\ b \\ c \end{pmatrix} - \sin\phi \begin{pmatrix} cr_2-br_3 \\ ar_3-cr_1 \\ br_1-ar_2 \end{pmatrix}</math>
:<math>=\begin{pmatrix} (\cos\phi + a^2\,\mathrm{versin}\,\phi) r_1 + (ab\,\mathrm{versin}\,\phi -c\sin\phi) r_2 + (ca\,\mathrm{versin}\,\phi + b\sin\phi) r_3 \\ (ab\,\mathrm{versin}\,\phi + c\sin\phi) r_1 + (\cos\phi + b^2\,\mathrm{versin}\,\phi) r_2 + (bc\,\mathrm{versin}\,\phi -a\sin\phi) r_3 \\ (ca\,\mathrm{versin}\,\phi - b\sin\phi) r_1 + (bc\,\mathrm{versin}\,\phi+ a\sin\phi) r_2 + (\cos\phi + c^2\,\mathrm{versin}\,\phi) r_3 \end{pmatrix}</math>
:<math>=\begin{pmatrix} \cos\phi + a^2\,\mathrm{versin}\,\phi & ab\,\mathrm{versin}\,\phi -c\sin\phi & ca\,\mathrm{versin}\,\phi + b\sin\phi \\ ab\,\mathrm{versin}\,\phi + c\sin\phi & \cos\phi + b^2\,\mathrm{versin}\,\phi & bc\,\mathrm{versin}\,\phi -a\sin\phi \\ ca\,\mathrm{versin}\,\phi - b\sin\phi & bc\,\mathrm{versin}\,\phi+ a\sin\phi & \cos\phi + c^2\,\mathrm{versin}\,\phi \end{pmatrix} \begin{pmatrix} r_1 \\ r_2 \\ r_3 \end{pmatrix}</math>
ここで<math>\mathrm{versin}\,\phi</math>を<math>1-\cos\phi</math>に戻して係数行列を<math>1, \cos\phi, \sin\phi</math>の項に分解してみると
:<math>=\begin{pmatrix} a^2+(1-a^2)\cos\phi & ab-ab\cos\phi -c\sin\phi & ca-ca\cos\phi + b\sin\phi \\ ab-ab\cos\phi + c\sin\phi & b^2+(1-b^2)\cos\phi & bc-bc\cos\phi -a\sin\phi \\ ca-ca\cos\phi - b\sin\phi & bc-bc\cos\phi+ a\sin\phi & c^2+(1-c^2)\cos\phi \end{pmatrix} \begin{pmatrix} r_1 \\ r_2 \\ r_3 \end{pmatrix}</math>
:<math>=\left\{ \begin{pmatrix} a^2 & ab & ca \\ ab & b^2 & bc \\ ca & bc & c^2 \end{pmatrix} + \cos\phi\begin{pmatrix} 1-a^2 & -ab & -ca \\ -ab & 1-b^2 & -bc \\ -ca & -bc & 1-c^2 \end{pmatrix} +\sin\phi\begin{pmatrix} 0 & -c & b \\ c & 0 & -a \\ -b & a & 0 \end{pmatrix} \right\} \begin{pmatrix} r_1 \\ r_2 \\ r_3 \end{pmatrix}</math>
:<math>=\left[ \begin{pmatrix} a^2 & ab & ca \\ ab & b^2 & bc \\ ca & bc & c^2 \end{pmatrix} + \cos\phi \left\{ \begin{pmatrix} 1 & 0 & 0 \\ 0 & 1 & 0 \\ 0 & 0 & 1 \end{pmatrix}-\begin{pmatrix} a^2 & ab & ca \\ ab & b^2 & bc \\ ca & bc & c^2 \end{pmatrix} \right\} +\sin\phi\begin{pmatrix} 0 & -c & b \\ c & 0 & -a \\ -b & a & 0 \end{pmatrix} \right] \begin{pmatrix} r_1 \\ r_2 \\ r_3 \end{pmatrix}</math>
ここで<math>\begin{pmatrix} a^2 & ab & ca \\ ab & b^2 & bc \\ ca & bc & c^2 \end{pmatrix}</math>は<math>\boldsymbol{e}</math>の第<math>i</math>成分と第<math>j</math>成分を掛けたものが<math>(i, j)</math>成分となる行列になっていることがわかる。これを<math>\boldsymbol{e}\otimes\boldsymbol{e}</math>と書くことにする。<math>\sin\phi</math>に係る行列を<math>\mathbf{N}</math>と置くと、
:<math>\boldsymbol{r}'=\{\boldsymbol{e}\otimes\boldsymbol{e}+\cos\phi(\mathbf{E}_3-\boldsymbol{e}\otimes\boldsymbol{e})+\sin\phi\mathbf{N}\}\boldsymbol{r}</math>
という表示を得る。
更に、<math>\mathbf{N}^2=\begin{pmatrix} -b^2-c^2 & ab & ca \\ ab & -c^2-a^2 & bc \\ ca & bc & -a^2-b^2 \end{pmatrix}</math>と<math>\|\boldsymbol{e}\|=\sqrt{a^2+b^2+c^2}=1</math>より
:<math>\boldsymbol{e}\otimes\boldsymbol{e}=\mathbf{N}^2+(a^2+b^2+c^2)\mathbf{E}_3=\mathbf{N}^2+\mathbf{E}_3</math>
が成り立つので、最終的に
:<math>\boldsymbol{r}'=(\mathbf{E}_3+\sin\phi\mathbf{N}+\mathrm{versin}\,\phi\mathbf{N}^2)\boldsymbol{r}</math>
と二次の行列多項式で表示される。
なお、<math>\otimes</math>は発展節で紹介する'''テンソル積'''を表している。
ここで、行列<math>\mathbf{N}</math>についてより具体的に考えてみる。
先ず、<math>{}^t\!\mathbf{N}=-\mathbf{N}</math>が成り立つので<math>\mathbf{N}</math>は反対称行列(歪対称行列・交代行列)である。
<math>\mathbf{N}\boldsymbol{r}</math>を計算すると
:<math>\mathbf{N}\boldsymbol{r}=\begin{pmatrix} 0 & -c & b \\ c & 0 & -a \\ -b & a & 0 \end{pmatrix} \begin{pmatrix} r_1 \\ r_2 \\ r_3 \end{pmatrix}=\begin{pmatrix} br_3-cr_2 \\ cr_1-ar_3 \\ ar_2-br_1 \end{pmatrix}=\boldsymbol{e}\times\boldsymbol{r}</math>
則ち、<math>\mathbf{N}</math>は<math>\boldsymbol{e}</math>に関する外積(形式的には<math>\boldsymbol{e}\times</math>という左演算)を一次変換とみて表現行列に直したものである。
更に、成分計算により<math>\mathbf{N}^3=-\mathbf{N}</math>という性質が成り立つことも判る。外積を「ベクトルを90°回転させる演算」とみると、二回の演算によって180°回転するということなのでこの結果は妥当である。
ここで行列自然指数関数<math>\exp(\phi\mathbf{N})=\sum_{i=0}^\infty \frac{(\phi\mathbf{N})^i}{i!}</math>を考えてみると上の性質より三次以上の項は<math>\mathbf{N}^4=-\mathbf{N}^2, \mathbf{N}^5=\mathbf{N},\cdots</math>のように全て二次以下に帰着できる。<br>
また、自然指数関数のテイラー展開は絶対収束級数なので各項は可換であり、<math>\mathbf{N}</math>の二次式として纏め直すと
:<math>\exp(\phi\mathbf{N})=\mathbf{E}_3 + (\phi-\frac{\phi^3}{3!}+\frac{\phi^5}{5!}-\frac{\phi^7}{7!}+\cdots) \mathbf{N}+(\frac{\phi^2}{2!}-\frac{\phi^4}{4!}+\frac{\phi^6}{6!}-\frac{\phi^8}{8!}+\cdots)\mathbf{N}^2</math>
ここで一次・二次の係数はそれぞれ正弦関数・正矢関数のテイラー展開になっているので結局は
:<math>\exp(\phi\mathbf{N})=\mathbf{E}_3+\sin\phi\mathbf{N}+\mathrm{versin}\,\phi\mathbf{N}^2</math>
ここから、<math>\exp(\phi\mathbf{N})</math>は角度<math>\phi</math>に関する有限回転に対応することが判った。
このことは以下の考え方でも求まる。<br>
<math>\mathbf{N}</math>の最小方程式は<math>\mathbf{N}^3+\mathbf{N}=\mathbf{O}_3</math>より<math>x(x^2+1)=0</math>であり固有値は<math>0, \pm{i}</math>と求まるので、<math>\exp(\phi\mathbf{N})</math>の対角化行列は
:<math>\begin{pmatrix} e^{0\phi} & 0 & 0 \\ 0 & e^{i\phi} & 0 \\ 0 & 0 & e^{-i\phi} \end{pmatrix}</math>
ここで任意の解析関数<math>f</math>について<math>f(\mathbf{N})</math>のテイラー展開は二次以下の多項式になるので
:<math>\exp(\phi\mathbf{N})=\alpha\mathbf{E}_3+\beta\mathbf{N}+\gamma\mathbf{N}^2</math>
これを実多項式に戻した<math>\alpha+\beta{x}+\gamma{x^2}</math>が<math>e^{\phi{x}}</math>と任意の固有値で一致すればよい(二次補間)ので、
:<math>\begin{cases} e^0 = \alpha \\ e^{i\phi} = i\beta -\gamma \\ e^{-i\phi} = -i\beta-\gamma \end{cases}</math>
:<math>\iff \begin{cases} 1 = \alpha \\ \cos\phi+i\sin\phi = (\alpha -\gamma) + i\beta \end{cases}</math>
:<math>\therefore \begin{cases} \alpha=1 \\ \beta=\sin\phi \\ \gamma=1-\cos\phi=\mathrm{versin}\,\phi \end{cases}</math>
則ち、<math>\mathbf{N}^3=-\mathbf{N}</math>という構造は<math>\Psi_\mathbf{N}(x)=x(x^2+1)</math>という最小多項式に起因するということである。
更に[[表現論]]の観点から見ると、三次直交行列全体である回転群<math>SO(3)</math>に対し、<math>\mathbf{N}</math>は<math>SO(3)</math>の単位元に於ける接空間(三次反対称行列全体・則ちリー代数<math>\mathfrak{so}(3)</math>)の元であり、<math>\exp(\phi\mathbf{N})</math>はリー群<math>SO(3)</math>の元である。ここで行列自然指数関数は「リー代数からリー群へ引き戻す写像」なので'''指数写像'''と呼ばれる。
これが[[#フレネ標搆]]で述べた「直交変換の一次近似が反対称変換」という事実のより正確な表現である。
補足だが、力学で扱う[[w:オイラー角]]というものを導入するとロドリゲスの公式を各座標軸に関する回転の合成で表すこともできる。
===種々の曲率===
ここでは三次元空間内の正則曲面について考える。
曲面<math>S:\boldsymbol{r}=\boldsymbol{r}(t, u)</math>上で定義され弧長パラメータ表示された正則曲線<math>C:\boldsymbol{r}=\boldsymbol{r}(t(s), u(s))</math>を考える。
<math>C</math>の接ベクトルは合成関数微分公式より
:<math>\boldsymbol{t}=\frac{d\boldsymbol{r}}{ds}=\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}\frac{dt}{ds}+\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}\frac{du}{ds}</math>
と表示される。
ここで両辺の<math>ds</math>を形式的に払うと
:<math>\boldsymbol{t}ds=\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}dt+\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}du</math>
これの自分自身との内積をとると
:<math>\|\boldsymbol{t}\|^2(ds)^2=\left\|\frac{d\boldsymbol{r}}{\partial{t}}\right\|^2(dt)^2+2\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}\cdot\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}dtdu+\left\|\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}\right\|^2(du)^2</math>
弧長パラメトライズされた接ベクトルは単位ベクトルであり、右辺のベクトル演算の部分を第一基本量で置き換えると
:<math>ds^2=E(dt)^2+2Fdtdu+G(du)^2</math>
と、第一基本形式を別の方法で得られた。
<math>C</math>の主法線ベクトルは合成関数微分を繰り返し適用することで
:<math>\boldsymbol{n}_C=\frac{d\boldsymbol{t}}{ds}=\frac{d}{ds}\left(\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}\frac{dt}{ds}+\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}\frac{du}{ds}\right)</math>
:<math>=\frac{d}{ds}\left(\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}\frac{dt}{ds}\right)+\frac{d}{ds}\left(\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}\frac{du}{ds}\right)</math>
:<math>=\frac{d}{ds}\left(\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}\right)\frac{dt}{ds}+\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}\frac{d}{ds}\left(\frac{dt}{ds}\right)+\frac{d}{ds}\left(\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}\right)\frac{du}{ds}+\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}\frac{d}{ds}\left(\frac{du}{ds}\right)</math>
:<math>=\left(\frac{\partial^2{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}^2}\frac{dt}{ds}+\frac{\partial^2{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}\partial{t}}\frac{du}{ds}\right)\frac{dt}{ds}+\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}\frac{d^2t}{ds^2}+\left(\frac{\partial^2{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}\partial{u}}\frac{dt}{ds}+\frac{\partial^2{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}^2}\frac{du}{ds}\right)\frac{du}{ds}+\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}\frac{d^2u}{ds^2}</math>
:<math>=\frac{\partial^2{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}^2}\left(\frac{dt}{ds}\right)^2+\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}\frac{d^2t}{ds^2}+2\frac{\partial^2{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}\partial{u}}\frac{dt}{ds}\frac{du}{ds}+\frac{\partial^2{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}^2}\left(\frac{du}{ds}\right)^2+\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}\frac{d^2u}{ds^2}</math>
ここで、<math>S</math>の法線ベクトル<math>\boldsymbol{n}_S=\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}\times\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}</math>は一般に<math>\boldsymbol{n}_C</math>と一次従属とは限らない。
後の話を単純にするため<math>\boldsymbol{n}_S</math>を正規化したベクトルを<math>\boldsymbol{e}_S</math>と置いて<math>\boldsymbol{n}_C\cdot\boldsymbol{e}_S</math>を計算してみる。
:<math>\boldsymbol{e}_S\perp\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}, \boldsymbol{e}_S\perp\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}</math>より
:<math>\boldsymbol{n}_C\cdot\boldsymbol{e}_S=\left(\frac{\partial^2{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}^2}\cdot\boldsymbol{e}_S\right)\left(\frac{dt}{ds}\right)^2+2\left(\frac{\partial^2{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}\partial{u}}\cdot\boldsymbol{e}_S\right)\frac{dt}{ds}\frac{du}{ds}+\left(\frac{\partial^2{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}^2}\cdot\boldsymbol{e}_S\right)\left(\frac{du}{ds}\right)^2</math>
ここで各内積<math>L=\frac{\partial^2{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}^2}\cdot\boldsymbol{e}_S,\quad M=\frac{\partial^2{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}\partial{u}}\cdot\boldsymbol{e}_S,\quad N=\frac{\partial^2{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}^2}\cdot\boldsymbol{e}_S</math>を<math>S</math>の'''第二基本量'''と呼ぶ。
<math>\boldsymbol{n}_C, \boldsymbol{e}_S</math>のなす角を<math>\psi</math>とすると<math>C</math>の曲率を<math>\kappa_C</math>として
:<math>\boldsymbol{n}_C\cdot\boldsymbol{e}_S=\kappa_C \cos\psi</math>
なので<math>ds</math>に関して形式的に通分して
:<math>\kappa_C\cos\psi=\frac{L(dt)^2+2Mdtdu+N(du)^2}{ds^2}</math>
右辺の分子<math>I\!I:=L(dt)^2+2Mdtdu+N(du)^2</math>を<math>S</math>の'''第二基本形式'''という。
<math>\begin{cases}\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}\cdot\boldsymbol{e}_S=0 \\ \frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}\cdot\boldsymbol{e}_S=0 \end{cases}</math>を<math>t</math>で偏微分すると
:<math>\begin{cases} \frac{\partial^2{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}^2}\cdot\boldsymbol{e}_S+\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}\cdot\frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{t}}=0 \\ \frac{\partial^2{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}\partial{u}}\cdot\boldsymbol{e}_S+\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}\cdot\frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{t}}=0 \end{cases}</math>
また、<math>u</math>で偏微分すると
:<math>\begin{cases} \frac{\partial^2{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}\partial{t}}\cdot\boldsymbol{e}_S+\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}\cdot\frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{u}}=0 \\ \frac{\partial^2{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}^2}\cdot\boldsymbol{e}_S+\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}\cdot\frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{u}}=0 \end{cases}</math>
ここから第二基本量は
:<math>L=-\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}\cdot\frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{t}},\quad M=-\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}\cdot\frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{t}}=-\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}\cdot\frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{u}},\quad N=-\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}\cdot\frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{u}}</math>
とも表示され、第二基本形式の別表示
:<math>I\!I=-\left(\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}dt+\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}du\right)\cdot\left(\frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{t}}dt+\frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{u}}du\right)</math>
を得る。
これは更に全微分から微小ベクトル同士の内積として
:<math>I\!I=-d\boldsymbol{r}\cdot{d}\boldsymbol{e}_S</math>
とも書ける。
第一基本形式は曲面上の微小変位の自身との内積だったが、第二基本形式は曲面上の微小変位と法線方向の微小変位の内積である。則ち、第一基本形式は曲面の内在的な量、第二基本形式は曲面の外在的な量である。
第一基本形式と同様に第二基本形式は二次形式なので、<math>\boldsymbol{v}:=\begin{pmatrix} dt \\ du \end{pmatrix}, \mathbf{H}=\begin{pmatrix} L & M \\ M & N \end{pmatrix}</math>と置くと
:<math>I\!I={}^t\!\boldsymbol{v}\mathbf{H}\boldsymbol{v}</math>
と行列表示できる。この<math>\mathbf{H}</math>を'''第二基本行列'''という。
ここで、モンジュ表示された曲面<math>z=f(x, y)</math>に対して第二基本行列を考えてみる。
:<math>\boldsymbol{r}(t, u)=\begin{pmatrix} t \\ u \\ f(t, u)\end{pmatrix}</math>なので[[解析学基礎/多変数関数の微積分#全微分]]の結果を参照すると直ちに
:<math>L=\frac{\frac{\partial^2{f}}{\partial{t}^2}}{\sqrt{1+\left(\frac{\partial{f}}{\partial{t}}\right)^2+\left(\frac{\partial{f}}{\partial{u}}\right)}^2},\quad M=\frac{\frac{\partial^2{f}}{\partial{t}\partial{u}}}{\sqrt{1+\left(\frac{\partial{f}}{\partial{t}}\right)^2+\left(\frac{\partial{f}}{\partial{u}}\right)}^2},\quad N=\frac{\frac{\partial^2{f}}{\partial{u}^2}}{\sqrt{1+\left(\frac{\partial{f}}{\partial{t}}\right)^2+\left(\frac{\partial{f}}{\partial{u}}\right)}^2}</math>
:が判るので、
:<math>\mathbf{H}=\frac{1}{\sqrt{1+\left(\frac{\partial{f}}{\partial{t}}\right)^2+\left(\frac{\partial{f}}{\partial{u}}\right)}^2}\begin{pmatrix} \frac{\partial^2{f}}{\partial{t}^2} & \frac{\partial^2{f}}{\partial{tu}} \\ \frac{\partial^2{f}}{\partial{tu}} & \frac{\partial^2{f}}{\partial{u^2}} \end{pmatrix}</math>
これはヘッシアンを法線の長さで割った行列である。
則ち、任意の正則曲面に対して第二基本行列はヘッセ行列と同じ役割をすると考えられる。
実際、点<math>\mathrm{P}</math>の開近傍で<math>\det\mathbf{H}</math>が正である曲面は<math>\mathrm{P}</math>の開近傍で上下どちらかに凸であり、負である曲面は<math>\mathrm{P}</math>で鞍点となることが知られている。
このように第二基本形式は曲面の「曲がり方」を表す量と考えられるので、曲面に対する曲率も考えられる。
ここで第二基本形式を定義した式
:<math>\kappa_C\cos\psi=\frac{L(dt)^2+2Mdtdu+N(du)^2}{ds^2}</math>
に立ち戻ると、右辺の分母は<math>s</math>に依存しない第一基本形式なので第一基本量を用いて
:<math>\kappa_C\cos\psi=\frac{L(dt)^2+2Mdtdu+N(du)^2}{E(dt)^2+2Fdtdu+G(du)^2}</math>
右辺を形式的に<math>dt^2</math>で割ると
:<math>\kappa_C\cos\psi=\frac{L+2M\frac{du}{dt}+N\left(\frac{du}{dt}\right)^2}{E+2F\frac{du}{dt}+G\left(\frac{du}{dt}\right)^2}</math>
この右辺は<math>\boldsymbol{n}_C</math>に依存しない量なので<math>\boldsymbol{n}_S, \boldsymbol{n}_C</math>のなす角度である<math>\psi</math>にも依存しない。
そこで、この値を曲面<math>S</math>の'''法曲率'''と定義する。
:<math>\varkappa:=\frac{L+2M\frac{du}{dt}+N\left(\frac{du}{dt}\right)^2}{E+2F\frac{du}{dt}+G\left(\frac{du}{dt}\right)^2}</math>
法曲率の幾何学的意味を考える。
<math>\varkappa=\kappa_C\cos\psi</math>より、<math>\cos\psi=1</math>のとき<math>S</math>の法曲率と<math>C</math>の曲率が一致する。このとき<math>\boldsymbol{n}_S /\!\!/ \boldsymbol{n}_C</math>であり、<math>C</math>は曲面上の点<math>\mathrm{P}</math>とそこでの曲面の法線<math>\boldsymbol{n}_S(\mathrm{P})</math>を含む平面で曲面を切断した切り口('''法切り口''')に対応する曲線('''法曲線''')である。
則ち、法曲率は法曲線の曲率に対応する。
なお、法曲線<math>C</math>は切断に用いる平面に拘束されるので接ベクトル<math>\boldsymbol{t}_C</math>も平面に拘束される。則ち、拘束平面は<math>\{\boldsymbol{t}_C, \boldsymbol{n}_C\}</math>の張る接触平面である。
法切り口を齎す平面は法線を軸にして回転することができ、その回転角によって法曲率の値が異なることになる。この回転は具体的にはロドリゲスの公式によって記述されるが、法曲率の極大値・極小値は<math>\varkappa</math>を<math>k=\frac{du}{dt}</math>の関数とみることで以下のように考えることができる。
:法曲率の定義式より
::<math>\varkappa(E+2Fk+Gk^2)=L+2Mk+Nk^2</math>・・・(*)
:これが<math>k</math>の恒等式なので微分しても等号が成り立ち、
::<math>\frac{d\varkappa}{dk}(E+2Fk+Gk^2)+\varkappa(2F+2Gk)=2M+2Nk</math>
:フェルマーの定理より<math>\frac{d\varkappa}{dk}=0</math>を満たす<math>(k, \varkappa)</math>が極値点の候補なので
::<math>\varkappa(2F+2Gk)=2M+2Nk</math>・・・(@)
:が成り立つ必要がある。
:これを<math>k</math>倍して(*)を引くと
::<math>\varkappa(E+Fk)=L+Mk</math>・・・(#)
:これと(@)を連立して
::<math>k=-\frac{\varkappa{F}-M}{\varkappa{G}-N}</math>
:これを(#)に代入して
::<math>(EG-F^2)\varkappa^2-(GL+EN-2FM)\varkappa+(LN-M^2)=0</math>・・・($)
:という二次方程式を得る。
:($)が相異なる二つの実根<math>\kappa_1, \kappa_2</math>を持てばそれらは極小値・極大値である。
:逆に、極小値・極大値を持てばフェルマーの定理より($)を満たす。//
この<math>\kappa_1, \kappa_2</math>を<math>S</math>の'''主曲率'''という。
($)の左辺を変形してみると、
:<math>(EG-F^2)\varkappa^2-(GL+EN-2FM)\varkappa+(LN-M^2)</math>
:<math>=\{EG\varkappa^2-(GL+EN)\varkappa+LN\}-\{F^2\varkappa^2-2FM\varkappa+M^2\}</math>
:<math>=(L-\varkappa{E})(N-\varkappa{G})-(M-\varkappa{F})^2</math>
:<math>=\det\begin{pmatrix} L-\varkappa E & M - \varkappa F \\ M - \varkappa F & N - \varkappa G \end{pmatrix}</math>
:<math>=\det(\mathbf{H}-\varkappa\mathbf{K})</math>
という、第一基本行列と第二基本行列を用いた形が出てきた。
ここで<math>\varkappa=\frac{L(dt)^2+2Mdtdu+N(du)^2}{E(dt)^2+2Fdtdu+G(du)^2}</math>を変形して
:<math>(L-\varkappa{E})dt^2+2(M-\varkappa{F})dtdu+(N-\varkappa{G})du^2=0</math>
これを二次形式表示すると
:<math>\begin{pmatrix} dt & du \end{pmatrix}\begin{pmatrix} L-\varkappa E & M - \varkappa F \\ M - \varkappa F & N - \varkappa G \end{pmatrix}\begin{pmatrix} dt \\ du \end{pmatrix}=0</math>
と、同じ<math>\mathbf{H}-\varkappa\mathbf{K}</math>がここでも登場する。
この行列は法曲率を持つ方向を二次形式で判定しているが、主曲率を持つ場合はラグランジュの未定乗数法より<math>(\mathbf{H}-\varkappa\mathbf{K})\begin{pmatrix} dt \\ du \end{pmatrix}=\boldsymbol{0}</math>が成り立ち、これが<math>\det(\mathbf{H}-\varkappa\mathbf{K})=0</math>という式の正体である。更に言うと、<math>\mathbf{H}\boldsymbol{x}=\varkappa\mathbf{K}\boldsymbol{x}</math>という一般化固有値問題の解が主曲率<math>\kappa_1, \kappa_2</math>に対応している。このときの一般化固有ベクトル<math>\boldsymbol{x}_1, \boldsymbol{x}_2</math>を主曲率に対する'''主方向'''という。
二つの主方向の関係を調べる。
:主方向の定義より
::<math>\begin{cases} (\mathbf{H}-\kappa_1\mathbf{K}) \boldsymbol{x}_1=\boldsymbol{0} \\ (\mathbf{H}-\kappa_2\mathbf{K}) \boldsymbol{x}_2=\boldsymbol{0} \end{cases}</math>
:なので
::<math>\begin{cases} {}^t\!\boldsymbol{x}_2(\mathbf{H}-\kappa_1\mathbf{K})\boldsymbol{x}_1=\boldsymbol{0} \\ {}^t\!\boldsymbol{x}_1(\mathbf{H}-\kappa_2\mathbf{K})\boldsymbol{x}_2=\boldsymbol{0} \end{cases}</math>
::<math>\begin{cases} {}^t\!\boldsymbol{x}_2\mathbf{H}\boldsymbol{x}_1=\kappa_1{}^t\!\boldsymbol{x}_2\mathbf{K}\boldsymbol{x}_1 \\ {}^t\!\boldsymbol{x}_1\mathbf{H}\boldsymbol{x}_2=\kappa_2{}^t\!\boldsymbol{x}_1 \mathbf{K}\boldsymbol{x}_2 \end{cases}</math>
::<math>\begin{cases} {}^t\!\boldsymbol{x}_2\mathbf{H}\boldsymbol{x}_1=\kappa_1{}^t\!\boldsymbol{x}_2\mathbf{K}\boldsymbol{x}_1 \\ {}^t\!\boldsymbol{x}_1\mathbf{H}\boldsymbol{x}_2=\kappa_2{}^t\!\boldsymbol{x}_1 \mathbf{K}\boldsymbol{x}_2 \end{cases}</math>
:第一基本行列・第二基本行列とも対称行列なので第二式の転置をとって
::<math>\begin{cases} {}^t\!\boldsymbol{x}_2\mathbf{H}\boldsymbol{x}_1=\kappa_1{}^t\!\boldsymbol{x}_2\mathbf{K}\boldsymbol{x}_1 \\ {}^t\!\boldsymbol{x}_2\mathbf{H}\boldsymbol{x}_1=\kappa_2{}^t\!\boldsymbol{x}_2 \mathbf{K}\boldsymbol{x}_1 \end{cases}</math>
:上下の式の差をとって
::<math>(\kappa_1-\kappa_2){}^t\!\boldsymbol{x}_2\mathbf{K}\boldsymbol{x}_1=\boldsymbol{0}</math>
:<math>\kappa_1=\kappa_2</math>のときは<math>\boldsymbol{x}_1, \boldsymbol{x}_2</math>に関する恒等式であるので、<math>\kappa_1\neq\kappa_2</math>のときを考える。
::<math>{}^t\!\boldsymbol{x}_2\mathbf{K}\boldsymbol{x}_1=\left(\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}t_2+\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}u_2\right)\cdot\left(\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}t_1+\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}u_1\right)=0</math>
:この二つのベクトルは主方向を向くので2つの主方向は直交する。
<math>\kappa_1=\kappa_2</math>(法曲率<math>\varkappa(t, u)=\mathrm{const}.</math>)の場合、<math>S</math>の接平面内の任意の方向が主方向となるので「どの方向にも一様な曲がり方をする」と考えられる。このような主曲率を与える点を'''臍点'''という。任意の点が臍点である曲面は球面である。
上の結果から、'''臍点でない各点で2つの主方向は直交する'''。
主曲率に対して解と係数の関係から得る値
:<math>H=\frac{\kappa_1+\kappa_2}{2}=\frac{GL+ENN-2FM}{2EG-F^2},\quad K=\kappa_1\kappa_2=\frac{LN-M^2}{EG-F^2}</math>
をそれぞれ<math>S</math>の'''平均曲率'''・'''全曲率'''('''ガウス曲率''')という。
全曲率の式を見ると<math>K=\frac{LN-M^2}{EG-F^2}=\frac{\det\mathbf{H}}{\det\mathbf{K}}=\det(\mathbf{K}^{-1}\mathbf{H})</math>である。
そこで、<math>\mathbf{S}=\mathbf{K}^{-1}\mathbf{H}</math>と定義してみると行列式の性質より<math>K</math>は<math>\mathbf{S}</math>の固有値の積である。
ここで<math>\mathbf{S}</math>の固有方程式は
:<math>\det(\mathbf{S}-\lambda\mathbf{E})=\det(\mathbf{K}^{-1}\mathbf{H}-\lambda\mathbf{E})=\det\mathbf{K}^{-1}\det(\mathbf{H}-\lambda\mathbf{K})=0</math>
<math>\det\mathbf{K}^{-1}\neq0</math>より
:<math>\det(\mathbf{H}-\lambda\mathbf{K})=0</math>
これは主曲率を定義した二次方程式($)のことだったので、この方程式の解である固有値は<math>\lambda=\kappa_1, \kappa_2</math>である。
則ち、<math>K=\det\mathbf{S},\quad H=\frac{1}{2}\mathrm{tr}\,\mathbf{S}</math>が成り立つ。
更に、第一基本行列から第二基本行列への一次変換を考えると以下が成り立つことも判る。但し、こちらもフレネ=セレーと同様に厳密にはベクトルを列ではなく行に並べるのが正しいことに注意。
{{定理|(ヴァインガルテンの式)}}
:<math>\begin{pmatrix} \frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{t}} \\ \frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{u}} \end{pmatrix}=-\mathbf{S}\begin{pmatrix} \frac{\partial\boldsymbol{r}}{\partial{t}} \\ \frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}} \end{pmatrix}</math>
{{定理終わり}}
*証明
:<math>\begin{pmatrix} \frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{t}} \\ \frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{u}} \end{pmatrix}=\mathbf{A}\begin{pmatrix} \frac{\partial\boldsymbol{r}}{\partial{t}} \\ \frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}} \end{pmatrix}</math>と置く。
:両辺に<math>{}^t\!\begin{pmatrix} \frac{\partial\boldsymbol{r}}{\partial{t}} \\ \frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}} \end{pmatrix}</math>を右から掛けると行列積であることに注意して
:<math>\begin{pmatrix} \frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{t}}\cdot\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}} & \frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{t}}\cdot\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}} \\ \frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{u}}\cdot\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}} & \frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{u}}\cdot\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}} \end{pmatrix}=\mathbf{A}\begin{pmatrix} \frac{\partial\boldsymbol{r}}{\partial{t}}\cdot\frac{\partial\boldsymbol{r}}{\partial{t}} & \frac{\partial\boldsymbol{r}}{\partial{t}}\cdot\frac{\partial\boldsymbol{r}}{\partial{u}} \\ \frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}\cdot\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}} & \frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}\cdot\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}} \end{pmatrix}</math>
:<math>\therefore -\mathbf{H}=\mathbf{A}\mathbf{K}</math>
:<math>\therefore \mathbf{A}=-\mathbf{H}\mathbf{K}^{-1}=-\mathbf{K}^{-1}\mathbf{H}=-\mathbf{S}</math>//
臍点で行列<math>\mathbf{H}-\varkappa\mathbf{K}</math>を考えると<math>\varkappa=\kappa_1=\kappa_2</math>及び「主方向が任意」から
:<math>\mathbf{H}-\varkappa\mathbf{K}=\mathbf{O}</math>
であり、これを成分で書き下せばヴァインガルテンの式より法曲率に関して
:<math>\begin{cases} \varkappa=\frac{L}{E}=\frac{M}{F}=\frac{N}{G} \\ \frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{t}} = \varkappa \frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}} \\ \frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{u}} = \varkappa \frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}} \end{cases}</math>
を得る。
<math>\mathbf{S}=\mathbf{K}^{-1}\mathbf{H}</math>に於いて<math>\mathbf{K}</math>は正定値対称行列なので正則対称な主平方根<math>\mathbf{K}^{1/2}</math>が存在して
:<math>\mathbf{S}=\mathbf{K}^{-1/2}\mathbf{K}^{-1/2}\mathbf{H}</math>
ここで<math>\mathbf{T}=\mathbf{K}^{-1/2}\mathbf{H}\mathbf{K}^{-1/2}</math>という相似変換で表された行列を考えてみると
:<math>\mathbf{K}^{1/2}\mathbf{S}\mathbf{K}^{-1/2}</math>
:<math>=\mathbf{K}^{1/2}\mathbf{K}^{-1}\mathbf{H}\mathbf{K}^{-1/2}</math>
:<math>=\mathbf{K}^{-1/2}\mathbf{H}\mathbf{K}^{-1/2}</math>
:<math>=\mathbf{T}</math>
であり、<math>\mathbf{S}\sim\mathbf{T}</math>なのでこれらの2つの固有値の組は一致する。
:<math>\mathbf{H}={}^t\!\mathbf{H}</math>
より
:<math>{}^t\!\mathbf{T}=\mathbf{T}</math>
が成り立つので、<math>\mathbf{T}</math>は対称行列であり2つの固有値は実数である。
よって<math>\mathbf{S}</math>の二つの固有値はともに実数であるが、この固有値は($)の解<math>\kappa_1, \kappa_2</math>のことだったので($)は虚根を持たず、'''主曲率は必ず実数'''である。
モンジュ表示された曲面では先程求めた第二基本量の表式から直ちに
:<math>H=\frac{\left\{1+\left(\frac{\partial{f}}{\partial{y}}\right)^2\right\}\frac{\partial^2{f}}{\partial{x}^2}+\left\{1+\left(\frac{\partial{f}}{\partial{x}}\right)^2\right\}\frac{\partial^2{f}}{\partial{y}^2}-2\frac{\partial{f}}{\partial{x}}\frac{\partial{f}}{\partial{y}}\frac{\partial^2{f}}{\partial{x}\partial{y}}}{{2\left\{1+\left(\frac{\partial{f}}{\partial{x}}\right)^2+\left(\frac{\partial{f}}{\partial{y}}\right)^2\right\}^\frac{3}{2}}},\quad K=\frac{\frac{\partial{f}}{\partial{x}}\frac{\partial{f}}{\partial{y}}-\left(\frac{\partial^2{f}}{\partial{x}\partial{y}}\right)^2}{\left\{1+\left(\frac{\partial{f}}{\partial{x}}\right)^2+\left(\frac{\partial{f}}{\partial{y}}\right)^2\right\}^2}</math>
を得る。
等温座標系では<math>\mathbf{K}^{-1}=\frac{1}{\lambda^2}\mathbf{E}_3</math>より<math>\mathbf{S}=\frac{1}{\lambda^2}\begin{pmatrix} L & M \\ M & N \end{pmatrix}</math>なので、平均曲率・ガウス曲率はそれぞれ<math>H=\frac{L+N}{2\lambda^2},\quad K=\frac{LN-M^2}{\lambda^4}</math>と簡単に求まる。
ある点に於ける2つの主曲率はそれぞれその点に於ける極大方向・極小方向の曲がり方を与えるので、<math>\kappa_1, \kappa_2</math>の符号の組み合わせがその点近傍に於ける曲面の曲がり方を与えることになる。
具体的には、両方とも正なら上に凸、負なら下に凸、異符号なら鞍点となる。主曲率が0ならばその主方向に対して曲がっていないということである。
主曲率の積である全曲率の符号を見ても良い。全曲率が正ならば上下どちらかに凸、負ならば鞍点である。第一基本行列が正定値行列であることから主曲率の符号は第二基本行列の行列式と一致するので先程の「第二基本行列がヘッセ行列の一般化」という話に繫がる。
任意点で<math>H=0</math>を満たす曲面を'''極小曲面'''という。極小曲面は曲面を連続変形させたときに曲面積の最小値を与える曲面であることが知られている。
平面は自明な極小曲面である。他にも<math>z=\ln\left(\frac{\cos y}{\cos x}\right)(-\frac{\pi}{2}<x, y<\frac{\pi}{2})</math>(シェルクの第一曲面)などが知られている。
極小曲面は表面張力の理論に応用されている。
例えば石鹼膜のつくる曲面について、膜上点での表裏の圧力差<math>P</math>・その点での表面張力<math>T</math>及び平均曲率<math>H</math>に対し<math>P=2TH</math>が成立する(ヤング=ラプラスの公式)ことが知られているが、閉曲線である枠に張った膜が割れずに安定して存在する条件は全ての点で<math>P=H=0</math>、則ち極小曲面のときである。
曲面<math>S</math>上の微小変位<math>d\boldsymbol{r}</math>、法線方向の微小変位<math>d\boldsymbol{e}_S</math>に対して第一基本形式は<math>I=d\boldsymbol{r}\cdot d\boldsymbol{r}</math>、第二基本形式は<math>I\!I=-d\boldsymbol{r}\cdot d\boldsymbol{e}_S</math>であった。
最後の組み合わせである<math>d\boldsymbol{e}_S\cdot d\boldsymbol{e}_S</math>を<math>S</math>の'''第三基本形式'''と定義する。
:<math>I\!I\!I:=\left(\frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{t}}dt+\frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{u}}du\right)\cdot\left(\frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{t}}dt+\frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{u}}du\right)</math>
:<math>=\left\|\frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{t}}\right\|^2(dt)^2+2\frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{t}}\cdot\frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{u}}dtdu+\left\|\frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{u}}\right\|^2(du)^2</math>
これを同様に二次形式の行列表示に直すと<math>\mathbf{W}:=\begin{pmatrix} \left\|\frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{t}}\right\|^2 & \frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{t}}\cdot\frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{u}} \\ \frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{t}}\cdot\frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{u}} & \left\|\frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{u}}\right\|^2 \end{pmatrix}</math>として
:<math>I\!I\!I={}^t\!\boldsymbol{v}\mathbf{W}\boldsymbol{v}</math>
この<math>\mathbf{W}</math>を'''第三基本行列'''という。
見て判る通り、'''第三基本量'''は<math>P=\left\|\frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{t}}\right\|^2,\quad Q=\frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{t}}\cdot\frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{u}},\quad R=\left\|\frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{u}}\right\|^2</math>である。
臍点でないとき2つの主方向は直交するので、臍点を持たない曲面に対して主方向を直交基底としたパラメータ表示<math>\boldsymbol{r}=\boldsymbol{r}(p, q)</math>を考えられる。
このとき、各基本形式は
:<math>I=dp^2+dq^2</math>
:<math>I\!I=\kappa_1dp^2+\kappa_2dq^2</math>
:<math>I\!I\!I=\kappa^2_1dp^2+\kappa^2_2dq^2</math>
と表示されることが知られている。
第三基本形式は第一基本形式と第二基本形式の線型結合で表示される。
:<math>I\!I\!I=2HI\!I-KI</math>
このことはヴァインガルテンの式と平均曲率・全曲率の定義を用いて確かめられる。
これに関連し、第二基本量で定義された全曲率は第一基本量のみで表されることが知られている。つまり、曲率という外在的な量を第一基本形式という内在的な量のみで記述でき、言い換えると「曲面を考えるときに'''曲面の外側の空間を考える必要が無い'''」ということである。
この定理は発見者自身も驚愕したことから'''ガウスの驚異の定理'''と呼ばれている。詳しくは発展節で扱う。
なお、平均曲率を考えるときは外側の空間の情報が必要である。
==直交曲線座標系==
{{節stub}}
===円筒座標系===
平面の座標系として直交座標の他に斜交座標、極座標(円座標)、重心座標などがあったように、空間の座標系も複数通り考えられる。
空間座標を3つの実数の組<math>(r, \theta, z)</math>で表した座標系を'''円筒座標系'''('''円柱座標系'''、cylindrical coordinate system)という。ただし、<math>r</math>は原点からの(符号付き)距離、<math>\theta</math>は基準面に於ける始線からの正の回転角、<math>z</math>は基準面からの高さである。
円筒座標系は、円座標系の<math>r\theta</math>平面に<math>z</math>軸方向の次元を加えた3次元空間の座標と考えられる。
そのため、円筒座標系と直交座標系の対応は以下のようになる。
:<math>\begin{cases} x=r\cos\theta \\ y=r\sin\theta \\ z=z \end{cases} \iff \begin{cases} r=\sqrt{x^2+y^2} \\ \theta = \arctan\frac{y}{x} \\ z=z \end{cases}</math>
但し、<math>r</math>は基準面の裏側では負とする。
直交座標の<math>z</math>軸を基に円筒座標系の座標軸を決定する。一般に座標軸は直線とは限らないので、「軸」ではなく「曲線」と呼ぶことにする('''座標線''')。なお、「曲線」という語は一般に「直線」を包含する。
:<math>r</math>曲線:<math>z</math>軸上の点を通り<math>z</math>軸に垂直な半直線。
:<math>\theta</math>曲線:<math>z</math>軸を法線とする平面内にあり、中心が<math>z</math>軸上にある円周。
:<math>z</math>曲線:<math>z</math>軸に平行な直線。
ここで、各曲線に沿った微小変化がどのように表されるか見ていく。
<math>\boldsymbol{f}: (r,\theta,z)\to(x,y,z)</math>とする。
<math>\boldsymbol{f}</math>全体の微小変化は全微分<math>d\boldsymbol{f}=\frac{\partial{(x,y,z)}}{\partial{(r,\theta,z)}} \begin{pmatrix} dr \\ d\theta \\ dz \end{pmatrix}</math>で表される。
上で求めた関係式より
:<math>\boldsymbol{f}\begin{pmatrix} r \\ \theta \\ z\end{pmatrix}=\begin{pmatrix} x \\ y \\ z \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} r\cos\theta \\ r\sin\theta \\ z \end{pmatrix}</math>
なので、
:<math>\frac{\partial{(x,y,z)}}{\partial{(r,\theta,z)}} = \begin{pmatrix} \frac{\partial}{\partial{r}}r\cos\theta & \frac{\partial}{\partial{\theta}}r\cos\theta & \frac{\partial}{\partial{z}}r\cos\theta \\ \frac{\partial}{\partial{r}}r\sin\theta & \frac{\partial}{\partial{\theta}}r\sin\theta & \frac{\partial}{\partial{z}}r\sin\theta \\ \frac{\partial}{\partial{r}}z & \frac{\partial}{\partial{\theta}}z & \frac{\partial}{\partial{z}}z \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} \cos\theta & -r\sin\theta & 0 \\ \sin\theta & r\cos\theta & 0 \\ 0 & 0 & 1 \end{pmatrix}</math>
よって
:<math>d\boldsymbol{f}=\begin{pmatrix} \cos\theta & -r\sin\theta & 0 \\ \sin\theta & r\cos\theta & 0 \\ 0 & 0 & 1 \end{pmatrix} \begin{pmatrix} dr \\ d\theta \\ dz \end{pmatrix}=\begin{pmatrix} \cos\theta \\ \sin \theta \\ 0 \end{pmatrix}dr + \begin{pmatrix} -\sin\theta \\ \cos\theta \\ 0 \end{pmatrix}rd\theta + \begin{pmatrix} 0 \\ 0 \\ 1 \end{pmatrix}dz </math>
再右辺の各項を<math>d\vec{r}, d\vec{\theta}, d\vec{z}</math>と書くことにすると、<math>|d\vec{r}|, |d\vec{\theta}|, |d\vec{z}|</math>はそれぞれ<math>dr, rd\theta, dz</math>とわかる。<math>r, \theta, z</math>を物理量として捉えたとき<math>d\theta</math>の単位はラジアン(無次元量)であり、<math>rd\theta</math>の単位はメートル(長さの次元1)なので、次元の整合性が取れる。
纏めると以下のようになる。
{| class="wikitable"
| ||style="text-align:center;"| <math>\boldsymbol{e}_x</math>成分 ||style="text-align:center;"| <math>\boldsymbol{e}_y</math>成分 ||style="text-align:center;"| <math>\boldsymbol{e}_z</math>成分 ||style="text-align:center;"| ノルム
|-
|style="text-align:center;"| <math>d\vec{r}</math> ||style="text-align:center;"| <math>\cos\theta dr</math> ||style="text-align:center;"| <math>\sin\theta dr</math> ||style="text-align:center;"| <math>0</math> ||style="text-align:center;"| <math>dr</math>
|-
|style="text-align:center;"| <math>d\vec{\theta}</math> ||style="text-align:center;"| <math>-r\sin\theta d\theta</math> ||style="text-align:center;"| <math>r\cos\theta d\theta</math> ||style="text-align:center;"| <math>0</math> ||style="text-align:center;"| <math>rd\theta</math>
|-
|style="text-align:center;"| <math>d\vec{z}</math> ||style="text-align:center;"| <math>0</math> ||style="text-align:center;"| <math>0</math> ||style="text-align:center;"| <math>1</math> ||style="text-align:center;"| <math>dz</math>
|}
ここで<math>d\vec{r}, d\vec{\theta}, d\vec{z}</math>は内積を取ればどの組も互いに直交することが容易にわかるので、この3つのベクトルは3次元ユークリッド空間の直交基底である。
そこで、それぞれのベクトルを正規化することで各軸曲線方向の基本ベクトルを得る。
:<math>\boldsymbol{e}_r = \frac{d\vec{r}}{dr} = \cos\theta \boldsymbol{e}_x + \sin\theta \boldsymbol{e}_y</math>
:<math>\boldsymbol{e}_\theta = \frac{d\vec{\theta}}{rd\theta} = -\sin\theta\boldsymbol{e}_x+\cos\theta\boldsymbol{e}_y</math>
:<math>\boldsymbol{e}_z=\frac{d\vec{z}}{dz}=\boldsymbol{e}_z</math>
これを一次変換の形式で表すと
:<math>\begin{pmatrix} \boldsymbol{e}_r \\ \boldsymbol{e}_\theta \\ \boldsymbol{e}_z \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} \cos\theta & \sin\theta & 0 \\ -\sin\theta & \cos\theta & 0 \\ 0 & 0 & 1 \end{pmatrix} \begin{pmatrix} \boldsymbol{e}_x \\ \boldsymbol{e}_y \\ \boldsymbol{e}_z \end{pmatrix}</math>
となる。
このときの表現行列を、座標系または基底ベクトルを変換することから'''座標変換行列'''又は'''基底変換行列'''という。場合によっては'''変換テンソル'''とも呼ぶ。
なお、この直交座標⇒円筒座標の座標変換行列は、<math>xyz</math>空間に於ける<math>z</math>軸まわりの回転行列に等しい。
逆基底変換はこの座標変換行列の逆行列を求めれば定式化できる。
回転行列は直交行列なので
:<math>\begin{pmatrix} \cos\theta & \sin\theta & 0 \\ -\sin\theta & \cos\theta & 0 \\ 0 & 0 & 1 \end{pmatrix} ^{-1}= {}^t \! \begin{pmatrix} \cos\theta & \sin\theta & 0 \\ -\sin\theta & \cos\theta & 0 \\ 0 & 0 & 1 \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} \cos\theta & -\sin\theta & 0 \\ \sin\theta & \cos\theta & 0 \\ 0 & 0 & 1 \end{pmatrix} </math>
であり、
:<math>\begin{pmatrix} \boldsymbol{e}_x \\ \boldsymbol{e}_y \\ \boldsymbol{e}_z \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} \cos\theta & -\sin\theta & 0 \\ \sin\theta & \cos\theta & 0 \\ 0 & 0 & 1 \end{pmatrix} \begin{pmatrix} \boldsymbol{e}_r \\ \boldsymbol{e}_\theta \\ \boldsymbol{e}_z \end{pmatrix}</math>
円筒座標系は、[[電磁気学]]の解析でよく使用される。
例えば、高校物理の公式<math>B(r)=\frac{\mu_0I}{\tau r}</math>は、円筒座標系を知っていれば「電流が<math>z</math>軸に平行であることから磁場は<math>z</math>方向に一葉且つ<math>\theta</math>方向に回転対称なので、<math>r</math>方向の項のみが寄与する」と理解される。
===極座標系===
高等学校までの地理で習ったように、球面上の位置は緯度<math>\theta</math>と経度<math>\phi</math>で定めることができる。
一般に三次元空間で球面上のある点の座標を定めるには、更に球の中心からの距離<math>r</math>が必要である。
このようにして定められる座標系を'''三次元極座標系'''(polar coordinate system in 3D)または'''球(面)座標系'''(spherical coordinate system)という。
xyz座標空間の点<math>\mathrm{P}(x, y, z)</math>の極座標表示を考える。
<math>r=|\overrightarrow{\mathrm{OP}}|=\sqrt{x^2+y^2+z^2}</math>は容易にわかる。
<math>\theta</math>は<math>z</math>軸からの'''天頂角'''(zenith angle)であり、<math>\overrightarrow{\mathrm{OP}}</math>の<math>z</math>軸への正射影ベクトルを<math>\overrightarrow{\mathrm{OH}}=\vec{h}</math>とすると<math>\tan\theta = \frac{|\vec{h}|}{z}</math>が成り立つ。<math>|\vec{h}|=\sqrt{x^2+y^2}</math>より、<math>\theta=\arctan \frac{\sqrt{x^2+y^2}}{z}</math>である。
<math>\phi</math>は<math>x</math>軸からの'''方位角'''(azimuth angle)であり、<math>\mathrm{P}</math>から<math>xy</math>平面に降ろした垂足<math>\mathrm{Q}</math>を考えると<math>\tan\phi=\frac{y}{x}</math>とわかる。よって、<math>\phi=\arctan\frac{y}{x}</math>である。
逆に、これを<math>\mathrm{P}(x, y, z)</math>に復元することを考える。
<math>\triangle\mathrm{OHP}</math>について<math>\angle\mathrm{HOP}=\theta</math>なので、<math>z=\overline{\mathrm{OH}}=r\cos\theta</math>。
また、<math>\triangle\mathrm{OPQ}</math>について<math>\angle\mathrm{OPQ}=\theta</math>なので、<math>\overline{\mathrm{OQ}}=r\sin\theta</math>。
よって<math>x=\overline{\mathrm{OQ}}\cos\phi=r\sin\theta\cos\phi, y=\overline{\mathrm{OQ}}\sin\phi=r\sin\theta\sin\phi</math>。
以上を纏めると、直交座標と球面座標の対応関係は
:<math>\begin{cases} x=r\sin\theta\cos\phi \\ y=r\sin\theta\sin\phi \\ z=r\cos\theta \end{cases} \iff \begin{cases} r=\sqrt{x^2+y^2+z^2} \\ \theta=\arctan\frac{\sqrt{x^2+y^2}}{z} \\ \phi=\arctan\frac{y}{x} \end{cases}</math>
一般に緯度は<math>-90^\circ \leqq \theta \leqq 90^\circ</math>、経度は<math>-180^\circ \leqq \phi \leqq 180^\circ</math>の範囲で表される(但し、符号の違いは東⇔西、南⇔北の違いである)。同様に、球面座標の天頂角<math>\theta</math>、方位角<math>\phi</math>は<math>\theta \in [-\frac{\pi}{4}, \frac{\tau}{4}], \phi \in [-\frac{\tau}{2}, \frac{\tau}{2}]</math>で考える。赤道面より下側(すなわち南半球)では<math>\theta<0</math>とする。
直交座標の<math>z</math>軸を基に極座標系の座標線を決定する。
:<math>r</math>曲線:原点を通る半直線。
:<math>\theta</math>曲線:原点中心で<math>z</math>軸上の一点から出る半円弧。
:<math>\phi</math>曲線:<math>z</math>軸を法線とする平面内で<math>z</math>軸上に中心を持つ円周。
各曲線に沿った微小変化は円柱座標系の場合と同様、ベクトル場の全微分を用いて
:<math>\begin{cases} d\vec{r}= \begin{pmatrix} \sin\theta\cos\phi \\ \sin\theta\sin\phi \\ \cos\theta \end{pmatrix} dr \\ d\vec{\theta}= \begin{pmatrix} \cos\theta\cos\phi \\ \cos\theta\sin\phi \\ -\sin\theta \end{pmatrix}rd\theta \\ d\vec{\phi} = \begin{pmatrix} -\sin\phi \\ \cos\phi \\ 0 \end{pmatrix} r\sin\theta d\phi \end{cases}</math>
と求まる。
これらは(内積の結果から)互いに直交するので、円柱座標の場合と同様の議論により
:<math>\begin{pmatrix} \sin\theta\cos\phi & \sin\theta\sin\phi & \cos\theta \\ \cos\theta\cos\phi & \cos\theta\sin\phi & -\sin\theta \\ -\sin\phi & \cos\phi & 0 \end{pmatrix}</math>
と変換テンソルが求まる。
これも直交行列であるので、逆変換テンソルは
:<math>\begin{pmatrix} \sin\theta\cos\phi & \cos\theta\cos\phi & \cos\phi \\ \sin\theta\sin\phi & \cos\theta\sin\phi & -\sin\phi \\ -\sin\theta & \cos\theta & 0 \end{pmatrix}</math>
と求まる。
球面座標系は、[[古典力学]]の解析でよく使用される。
例えば、赤道平面における角運動量保存則は<math>mr^2\frac{d\phi}{dt}=\mathrm{const}.</math>と表示されるが、これは<math>z</math>軸方向の角運動量を球面座標系の演算により取り出したものである。
球面座標系は特に機械制御に応用されている。
円柱座標系・球面座標系ともに各基底ベクトルが互いに直交しているので、そのことを明示して(且つ通常の直交座標系と区別して)'''直交曲線座標系'''(orthogonal curvilinear coordinate system)と呼ぶ場合がある。以下で扱う座標系たちも直交曲線座標系である。
===円環座標系===
===双極座標系===
===回転放物面座標系===
===放物柱座標系===
===回転楕円面座標系===
===楕円柱座標系===
===楕円体座標系===
==空間微分==
ここでは三次元ユークリッド空間で考える。
===勾配===
スカラー場<math>\varphi=\varphi(\boldsymbol{x})</math>が<math>x, y, z</math>の三変数関数であって<math>\varphi\in C^1</math>のとき、
:<math>\mathrm{grad}\,\varphi := \begin{pmatrix} \frac{\partial{\varphi}}{\partial{x}} \\ \frac{\partial{\varphi}}{\partial{y}} \\ \frac{\partial{\varphi}}{\partial{z}} \end{pmatrix}</math>
を<math>\varphi</math>の'''勾配'''(gradient)と定義する。
勾配の結果として得るベクトルを<math>\varphi</math>の'''勾配ベクトル'''ともいう。
勾配で定義される概念としては、電場が有名である。
:電位<math>\phi</math>に対する電場<math>\boldsymbol{E}</math>は
:<math>\boldsymbol{E}:=-\mathrm{grad}\,\phi</math>
勾配はベクトル量であるため、そのことを明示するため新たな演算子を導入する。
'''空間偏微分演算子'''(ハミルトン演算子)を
<math>\nabla:=\begin{pmatrix} \frac{\partial}{\partial{x}} \\ \frac{\partial}{\partial{y}} \\ \frac{\partial}{\partial{z}} \end{pmatrix}</math>
と定義する。
この演算子自体は偏微分作用素の対象を後接しないと意味を成さない。しかし、便宜的にベクトル量と考えてベクトルと同様の演算則が成り立つと見做す。そのため、この演算子に関する演算は[[w:記号の濫用]](symbol abuse)であることを註しておく。
<math>\nabla</math>の正式な読み方は'''ナブラ'''(nabla)であるが、<math>\Delta</math>(delta)を反転した形であることから'''エイトレッド'''(atled)とも読まれる。なお、ナブラの由来は「竪琴」を意味する古代ギリシャ語「νάβλα」である。
この演算子を用いれば勾配の表式は
:<math>\mathrm{grad}\,\varphi=\nabla\varphi</math>
となる。
<math>\varphi</math>はスカラー場なのでスカラー量であり、<math>\nabla</math>は便宜的にベクトル量と考えることから、その積<math>\nabla\varphi</math>はベクトル量のスカラー倍、すなわちベクトル量であることが見て取れる。
勾配はスカラー場に対する偏微分の結果を並べたベクトルであるため、偏微分の性質とベクトルの性質を組み合わせて以下が成り立つと判る。
#<math>\nabla(k\varphi+l\psi)=k\nabla\varphi+l\nabla\psi</math>(線型性)
#<math>\nabla(\varphi\psi)=(\nabla\varphi)\psi+\varphi(\nabla\psi)</math>(積の微分・ライプニッツ則)
#<math>\nabla\left(\frac{\varphi}{\psi}\right)=\frac{(\nabla\varphi)\psi-\varphi(\nabla\psi)}{\psi^2}</math>(商の微分)
#<math>\nabla(\varphi(\psi))=\frac{d\varphi(\psi)}{d\psi}\nabla\psi</math>(合成関数微分)
任意点に対して勾配ベクトルが非零であるスカラー場を'''正則'''なスカラー場という。
以下、正則なスカラー場に限って扱う。
等位面<math>\varphi(x, y, z)=k(\mathrm{const}.)</math>上の点<math>\mathrm{P}(x_0, y_0, z_0)</math>を考える。
:<math>\mathrm{P}</math>を通り等位面に拘束される曲線のベクトル表示を<math>\boldsymbol{r}=\boldsymbol{r}(t)</math>とする。
:等位面の方程式を<math>t</math>で両辺微分して
::<math>\frac{\partial{\varphi}}{\partial{x}}\frac{dx}{dt}+\frac{\partial{\varphi}}{\partial{y}}\frac{dy}{dt}+\frac{\partial{\varphi}}{\partial{z}}\frac{dz}{dt}=0</math>
:<math>t=t_0</math>のとき
::<math>\frac{\partial{\varphi}}{\partial{x}}x'(t_0)+\frac{\partial{\varphi}}{\partial{y}}y'(t_0)+\frac{\partial{\varphi}}{\partial{z}}z'(t_0)=0</math>
::<math>\nabla\varphi(\mathrm{P})\cdot\boldsymbol{r}'(t_0)=0</math>
::<math>\nabla\varphi(\mathrm{P})\perp\boldsymbol{r}'(t_0)</math>
ここで<math>\mathrm{P}</math>に於ける等位面の接平面は接ベクトル<math>\boldsymbol{r}'(t_0)</math>を含むため、<math>\nabla\varphi(\mathrm{P})</math>は点<math>\mathrm{P}</math>に於ける等位面の法線ベクトルである。
よって等位面の接平面の方程式は
:<math>\nabla\varphi(\mathrm{P})\cdot(\boldsymbol{x}-\overrightarrow{\mathrm{OP}})=0</math>
である。
スカラー場<math>\varphi=\varphi(\boldsymbol{x})</math>の全微分は
:<math>d\varphi=\frac{\partial{\varphi}}{\partial{x}}dx+\frac{\partial{\varphi}}{\partial{y}}dy+\frac{\partial{\varphi}}{\partial{z}}dz</math>
これをベクトルの内積とみると
:<math>=\begin{pmatrix} \frac{\partial{\varphi}}{\partial{x}} \\ \frac{\partial{\varphi}}{\partial{y}} \\ \frac{\partial{\varphi}}{\partial{z}} \end{pmatrix}\cdot\begin{pmatrix} dx \\ dy \\ dz \end{pmatrix}</math>
:<math>=\nabla\varphi\cdot d\boldsymbol{x}</math>
ここで変位ベクトル<math>d\boldsymbol{x}</math>を任意の方向を向いた単位ベクトル<math>\boldsymbol{e}</math>に拡張することを考えたい。
<math>\varphi(\mathrm{P})</math>に対して<math>\mathrm{P}</math>を始点とする<math>\boldsymbol{e}</math>方向の直線を考え、その上の点を<math>\mathrm{Q}</math>とする。
このとき、ベクトル変数<math>\boldsymbol{e}</math>による微分係数
:<math>\frac{\partial{\varphi}(\mathrm{P})}{\partial{\boldsymbol{e}}}=\lim_{\mathrm{Q\to P}}\frac{\varphi(\mathrm{Q})-\varphi(\mathrm{P})}{\overline{\mathrm{QP}}}</math>
を、<math>\varphi</math>の<math>\mathrm{P}</math>に於ける<math>\boldsymbol{e}</math>方向の'''方向微分係数'''と定義する。
方向微分係数はスカラー場に対し<math>\boldsymbol{e}</math>方向の変化率を与えるものと考えられる。そこで、方向微分係数が最大となる方向を考える。
:<math>\overrightarrow{\mathrm{PQ}}=t\boldsymbol{e}</math>と置く。
::<math>\overrightarrow{\mathrm{OQ}}=\begin{pmatrix} x_0+te_1 \\ y_0+te_2 \\ z_0+te_3 \end{pmatrix}</math>
::<math>\frac{\partial{\varphi}(\mathrm{P})}{\partial{\boldsymbol{e}}}=\lim_{t\to0}\frac{\varphi(x_0+te_1, y_0+te_2, z_0+te_3)-\varphi(x_0, y_0, z_0)}{t}</math>
:ここで<math>\Phi(t):=\varphi(x_0+te_1, y_0+te_2, z_0+te_3)</math>とすれば
::<math>=\lim_{t\to0}\frac{\Phi(t)-\Phi(0)}{t}</math>
::<math>=\frac{d\Phi(t)}{dt}</math>
::<math>=\frac{\partial{\varphi}(x_0, y_0, z_0)}{\partial{x}}\frac{d(x_0+te_1)}{dt}+\frac{\partial{\varphi}(x_0, y_0, z_0)}{\partial{y}}\frac{d(y_0+te_2)}{dt}+\frac{\partial{\varphi}(x_0, y_0, z_0)}{\partial{z}}\frac{d(z_0+te_3)}{dt}</math>
::<math>=\frac{\partial{\varphi}(\mathrm{P})}{\partial{x}}e_1+\frac{\partial{\varphi}(\mathrm{P})}{\partial{y}}e_2+\frac{\partial{\varphi}(\mathrm{P})}{\partial{z}}e_3</math>
::<math>=\nabla\varphi(\mathrm{P})\cdot\boldsymbol{e}</math>
よって、全微分の式の<math>d\boldsymbol{x}</math>をそのまま<math>\boldsymbol{e}</math>に取り替えたものが方向微分係数の表式である。
内積を書き下すと<math>\|\boldsymbol{e}\|=1</math>より
:<math>\frac{\partial{\varphi}(\mathrm{P})}{\partial{\boldsymbol{e}}}=\|\nabla\varphi(\mathrm{P})\|\cos\theta</math>
よって最大値をとるのは<math>\cos\theta=1</math>則ち'''<math>\boldsymbol{e}</math>が勾配方向のとき'''である。また、方向微分係数の最大値は'''勾配のノルム'''である。
このように、勾配はスカラー場の各点に於ける傾きを表す。これは最右辺の式が「各軸方向の傾きを表すベクトルの和」になっていることからも直観的にわかる。ここから、「gradient」の和訳として「勾配」が充当されたのは妥当である。
方向微分係数を'''方向導関数'''に拡張することを考える。
形式的には方向微分係数の定点<math>\mathrm{P}</math>を変数<math>\boldsymbol{x}</math>に置き換えればいいだけである。
:<math>\frac{\partial{\varphi}(\boldsymbol{x})}{\partial{\boldsymbol{e}}}:=\nabla\varphi(\boldsymbol{x})\cdot\boldsymbol{e}</math>
正式には極限を用いて
:<math>\frac{\partial{\varphi}(\boldsymbol{x})}{\partial{\boldsymbol{e}}}:=\lim_{t\to0}\frac{\varphi(\boldsymbol{x}+t\boldsymbol{e})-\varphi(\boldsymbol{x})}{t}</math>
と定義する。
内積を書き下すと
:<math>\frac{\partial{\varphi}(\boldsymbol{x})}{\partial{x}}e_1+\frac{\partial{\varphi}(\boldsymbol{x})}{\partial{y}}e_2+\frac{\partial{\varphi}(\boldsymbol{x})}{\partial{z}}e_3</math>
これを[[解析学基礎/多変数関数の微積分#極値]]で扱った方向偏微分作用素として書き直すと
:<math>\left(e_1\frac{\partial}{\partial{x}}+e_2\frac{\partial}{\partial{y}}+e_3\frac{\partial}{\partial{z}}\right)\varphi(\boldsymbol{x})</math>
:<math>=(\boldsymbol{e}\cdot\nabla)\varphi(\boldsymbol{x})</math>
となる。
則ち、形式的には空間偏微分演算子の微分方向ベクトルとの右内積が方向偏微分作用素である。
更に、多変数関数のテイラー二次近似は
:<math>f(\boldsymbol{x})\fallingdotseq f(\boldsymbol{a})+\nabla{f}(\boldsymbol{a})\cdot(\boldsymbol{x}-\boldsymbol{a})+\frac{1}{2}{}^t\!(\boldsymbol{x}-\boldsymbol{a})\mathbf{D}(\boldsymbol{x}-\boldsymbol{a})</math>
と書けることが判る。但し、<math>\mathbf{D}</math>はヘッセ行列である。
多変数解析で扱った停留点(臨界点)は<math>\nabla\varphi(\mathrm{P})=\boldsymbol{0}</math>なる点<math>\mathrm{P}</math>として正式に定義される。また、ラグランジュの未定乗数法に於ける連立方程式も勾配を用いれば<math>\nabla\varphi(\mathrm{P})=\lambda\nabla\psi(\mathrm{P})</math>と書き表される。
スカラー場の全微分は勾配で表せたが、同様にベクトル場の全微分をナブラを用いて表すことを考える。
ベクトル場の全微分は
:<math>d\boldsymbol{a}=\frac{\partial{(a_x,a_y,a_z)}}{\partial{(x,y,z)}} d\boldsymbol{x}</math>
で定義された。
ここで<math>n</math>次行列 <math>\mathbf{A}</math>と<math>n</math>項列ベクトル <math>\boldsymbol{a}</math>に対し、<math>(\mathbf{A} \circledast \boldsymbol{a})_{ij} = (\mathbf{A}_{ij}) a_i</math>となるような可換二項演算子 <math>\circledast</math>を定義する。これは本項独自の記法である。但し、<math>(\mathbf{P})_{ij}</math>は行列 <math>\mathbf{P}</math>の第ij成分を表す。
この記法を用いると、ヤコビ行列<math>\frac{\partial{(a_x,a_y,a_z)}}{\partial{(x,y,z)}}</math>は<math>\nabla \circledast \boldsymbol{a}</math>と表すことができる。
則ち、ベクトル場の全微分は
:<math>d\boldsymbol{a} = (\nabla \circledast \boldsymbol{a}) d\boldsymbol{x}</math>
と表される。
これを形式的に
:<math>\frac{\partial{\boldsymbol{a}}}{\partial{\boldsymbol{x}}}=\nabla \circledast \boldsymbol{a}</math>
と書き表すことができる。
則ち、ヤコビ行列はベクトル場のベクトル変数による導関数と見做せる。
ヤコビ行列はベクトル場の成分スカラー場に対する勾配ベクトルを行に並べたものという解釈もできるので、この考え方は自然である。
ここでベクトル場に対してスカラー場と同様に方向微分係数・方向導関数を考えると、
:<math>\frac{\partial{\boldsymbol{a}}}{\partial{\boldsymbol{v}}}=\frac{\partial{\boldsymbol{a}}}{\partial{\boldsymbol{x}}}\boldsymbol{v}</math>
が成り立つことが判る。
これもベクトル場の成分スカラー場に対する方向微分係数・方向導関数を列に並べたベクトルと解釈できる。
則ち、
:<math>\frac{\partial{\boldsymbol{a}}}{\partial{\boldsymbol{v}}}=(\nabla\circledast\boldsymbol{a})\boldsymbol{v}=(\boldsymbol{v}\cdot\nabla)\boldsymbol{a}</math>
である。
===発散===
ベクトル場<math>\boldsymbol{a}=\boldsymbol{a}(\boldsymbol{x})</math>が<math>x, y, z</math>の三変数関数であって<math>\boldsymbol{a}\in C^1</math>のとき、
:<math>\mathrm{div}\,\boldsymbol{a} := \frac{\partial{a_x}}{\partial{x}} + \frac{\partial{a_y}}{\partial{y}} + \frac{\partial{a_z}}{\partial{z}}</math>
を<math>\boldsymbol{a}</math>の'''発散'''(divergence)と定義する。
発散が用いられる概念としては、'''ガウスの法則'''が有名である。
:電荷密度<math>\rho</math>、電場<math>\boldsymbol{E}</math>、真空の誘電率<math>\varepsilon_0</math>として
:<math>\mathrm{div}\,\boldsymbol{E}=\frac{\rho}{\varepsilon_0}</math>
球面座標で考えることにより、この式の重要な性質「荷電粒子の座標を原点にとると原点以外では
<math>\mathrm{div}\,\boldsymbol{E}=0</math>」を証明することができる。
勾配と同様に発散をナブラで表すことを考えると、
:<math>\mathrm{div}\,\boldsymbol{a}=\nabla\cdot\boldsymbol{a}</math>
という表式を得る。
<math>\boldsymbol{a}</math>はベクトル場なのでベクトル量であり、<math>\nabla</math>は便宜的にベクトル量と考えることから、その内積<math>\nabla\cdot\boldsymbol{a}</math>はスカラー量であることが見て取れる。
発散に対しては以下が成り立つ。
#<math>\nabla\cdot(k\boldsymbol{a}+l\boldsymbol{b})=k\nabla\cdot\boldsymbol{a}+l\nabla\cdot\boldsymbol{b}</math>(線型性)
#<math>\nabla\cdot(\varphi\boldsymbol{a})=(\nabla\varphi)\cdot\boldsymbol{a}+\varphi\nabla\cdot\boldsymbol{a}</math>(積の微分・ライプニッツ則)
前者は内積の線型性より、後者は成分演算と勾配の定義より示される。
ヤコビ行列<math>\nabla\circledast\boldsymbol{a}</math>との関係を考える。
:<math>\nabla\circledast\boldsymbol{a}=\begin{pmatrix} \frac{\partial{\boldsymbol{a}}}{\partial{x}} & \frac{\partial{\boldsymbol{a}}}{\partial{y}} & \frac{\partial{\boldsymbol{a}}}{\partial{z}} \end{pmatrix}=\begin{pmatrix} \frac{\partial{a}_x}{\partial{x}} & \frac{\partial{a}_x}{\partial{y}} & \frac{\partial{a}_x}{\partial{z}} \\ \frac{\partial{a}_y}{\partial{x}} & \frac{\partial{a}_y}{\partial{y}} & \frac{\partial{a}_y}{\partial{z}} \\ \frac{\partial{a}_z}{\partial{x}} & \frac{\partial{a}_z}{\partial{y}} & \frac{\partial{a}_z}{\partial{z}} \end{pmatrix}</math>
ここで跡が発散そのものになっているので
:<math>\nabla\cdot\boldsymbol{a}=\mathrm{tr}(\nabla\circledast\boldsymbol{a})</math>
が成り立つ。
発散の物理的意味を考える。
:密度<math>\rho</math>が一定である流体の速度場<math>\boldsymbol{v}\in\mathbb{R}^3</math>に対し、微小直方体に出入りする流体の質量収支を考える。
:点<math>(x,y,z)</math>に於ける流速<math>\boldsymbol{v}(x,y,z)=(v_x,v_y,v_z)</math>、直方体の各辺の長さを<math>\delta x, \delta y, \delta z</math>とする。
:単位時間あたりに<math>yz</math>平面に平行な面を通過する流体の質量収支は流出量<math>-\rho v_x(x,y,z)\delta y\delta z</math>、流入量<math>\rho v_x(x+\delta x,y,z)\delta y\delta z</math>より
::<math>\rho(v_x(x+\delta x,y,z)-v_x(x,y,z))\delta y\delta z=\rho\frac{v_x(x+\delta x,y,z)-v_x(x,y,z)}{\delta x}\delta x\delta y\delta z</math>
:<math>\delta x\to0</math>の極限で
::<math>=\rho\frac{\partial{v_x}}{\partial{x}}dxdydz</math>
:他の面で考えると対称性から輪環の順に入れ替えた結果を得るので直方体全体では
::<math>\rho\left(\frac{\partial{v_x}}{\partial{x}}+\frac{\partial{v_y}}{\partial{y}}+\frac{\partial{v_z}}{\partial{z}}\right)dxdydz</math>
:よって単位体積当たりでは
::<math>\rho\nabla\cdot\boldsymbol{v}</math>
:を得る。
ここで質量を密度で割ると体積なので、<math>\nabla\cdot\boldsymbol{v}</math>は単位時間あたりの流体の体積の正味の流出率を表す。
この微小直方体の単位体積あたりで観測すると、発散が正であれば流体は膨脹して密度が下がり、負であれば圧縮されて密度が上がる。0であれば流体は膨脹も圧縮もしない。
発散が零であるベクトル場を'''非圧縮/湧出無し/管状/ソレノイダル ベクトル場'''(incompressible/solenoidal vector field)などと呼ぶ。
また、ベクトル場の発散を'''湧き出し'''(「沸き出し」とも書く)と呼ぶ場合もある。
ベクトル場の流線に沿う流れが流体の体積を保存する条件はベクトル場が非圧縮であることである。これを'''リウヴィルの定理'''という。これは多くの場合、[[解析力学]]のハミルトン形式で表示される。
位置ベクトル場<math>\boldsymbol{r}=\begin{pmatrix} x \\ y \\ z \end{pmatrix}</math>に対して<math>\nabla\cdot\frac{\boldsymbol{r}}{\|\boldsymbol{r}\|^n}</math>を考える。
:<math>\frac{\partial}{\partial{x}}\frac{1}{\|\boldsymbol{r}\|^n}=\frac{\partial{\left(\frac{1}{\|\boldsymbol{r}\|^n}\right)}}{\partial{\|\boldsymbol{r}\|}}\frac{\partial{\|\boldsymbol{r}\|}}{\partial{x}}=-\frac{n}{\|\boldsymbol{r}\|^n+1}\frac{x}{\sqrt{x^2+y^2+z^2}}=-\frac{nx}{\|\boldsymbol{r}\|^{n+2}}</math>
<math>y, z</math>も同様なので
:<math>\nabla\frac{1}{\|\boldsymbol{r}\|^n}=-\frac{n\boldsymbol{r}}{\|\boldsymbol{r}\|^{n+1}}</math>
よって発散のライプニッツ則から
:<math>\nabla\cdot\frac{\boldsymbol{r}}{\|\boldsymbol{r}\|^n}=\left(\nabla\frac{1}{\|\boldsymbol{r}\|^n}\right)\cdot\boldsymbol{r}+\frac{1}{\|\boldsymbol{r}\|^n}\nabla\cdot\boldsymbol{r}=-\frac{n\boldsymbol{r}\cdot\boldsymbol{r}}{\|\boldsymbol{r}\|^{n+2}}+\frac{1+1+1}{\|\boldsymbol{r}\|^n}=\frac{3-n}{\|\boldsymbol{r}\|^n}</math>
この結果から、<math>\boldsymbol{a}/\!\!/\boldsymbol{r}\land\|\boldsymbol{a}\|\propto \frac{1}{\|\boldsymbol{r}\|^2}\implies\nabla\cdot\boldsymbol{a}=0</math>(逆二乗則に従う場は非圧縮ベクトル場)が成り立つ。
ベクトル解析の黎明期では発散の逆符号で表される
:<math>\mathrm{conv}\,\boldsymbol{a}:=-\frac{\partial{a_x}}{\partial{x}} - \frac{\partial{a_y}}{\partial{y}} - \frac{\partial{a_z}}{\partial{z}}</math>
という量が用いられていた。これは'''吸い込み'''(convergence)と呼ばれる量である。
ベクトルが発明される以前、ベクトル演算に相当するものは[[多元数/四元数|四元数]]で記述されていた。純虚四元数同士の積をとると実部が現在で言う内積の-1倍、虚部が現在で言う外積に対応する。このことから、内積そのものである湧き出しではなく内積の-1倍である吸い込みが自然に出現する量として頻繁に扱われていたのである。
===回転===
回転運動は、以下の3つにより一意に定まる。
*回転軸の方向
*回転の速さ
*回転方向(軸に対して右回転か左回転か)
「回転方向」は暗黙の諒解として右手系の正の回転角で考える。すると、回転運動を表すのに必要な情報は「方向」と「速さ(=スカラー量)」のみとなる。
従って、'''任意の回転運動はベクトルで表示される'''(ベクトルの大きさは「回転の速さ」で定める)。このようなベクトルを'''角速度ベクトル'''という。
ベクトル場の'''回転'''(curl/rotation/rotor)を以下のように定義する。
:<math>\mathrm{curl} \, \boldsymbol{a} = \mathrm{rot} \, \boldsymbol{a} = \begin{pmatrix} \frac{\partial{a_z}}{\partial{y}}-\frac{\partial{a_y}}{\partial{z}} \\ \frac{\partial{a_x}}{\partial{z}}-\frac{\partial{a_z}}{\partial{x}} \\ \frac{\partial{a_y}}{\partial{x}}-\frac{\partial{a_x}}{\partial{y}} \end{pmatrix}</math>
<math>\mathrm{curl}</math>は理学系、<math>\mathrm{rot}</math>は工学系が好んで使用する。
<math>z</math>軸方向の成分について考える。
<math>z</math>軸方向の回転はフレミングの左手の法則から<math>xy</math>平面内の成分のみが寄与すると考えられる。<math>z</math>軸の正方向の回転を生むには、<math>x</math>軸方向の変化率を大きくして<math>y</math>軸方向の変化率を小さくすればよい。
ある軸方向の変化率とはその軸の変数に関する偏導関数のことであったので、回転のz成分を<math>\frac{\partial{X_y}}{\partial{x}}-\frac{\partial{X_x}}{\partial{y}}</math>とすれば満足する。
対称性より輪環の順で入れ替えても同様であるので、回転は上の式で表されるとわかる。
これはより厳密には後述の線積分を用いて説明することになるので、ここでは定性的な説明に留めた。
回転を用いた概念として、ファラデーの電磁誘導の法則が有名である。
:電場<math>\boldsymbol{E}</math>、磁束密度<math>\boldsymbol{B}</math>として
:<math>\mathrm{rot} \, \boldsymbol{E} = -\frac{\partial{\boldsymbol{B}}}{\partial{t}}</math>
流体の渦の記述にも応用されており、回転を'''渦度ベクトル'''とも呼ぶ。流体力学的な渦の定義は「速度場の回転」である。
回転が零ベクトルであるベクトル場を'''非回転的/渦無し/層状/ラメラー ベクトル場'''(irrotational/lamella vector field)などと呼ぶ。
勾配・発散と同様に空間偏微分演算子による表記を考える。
成分に着目すると外積の形式なので、
:<math>\mathrm{curl} \, \boldsymbol{a}= \nabla \times \boldsymbol{a}</math>
と表されることが判る。
ベクトル場はベクトル量であり、ナブラは便宜的にベクトル量と見做すことから、その外積である回転はベクトル量であることが見て取れる。
外積の性質から、回転は行列式
:<math>\det \begin{pmatrix} \boldsymbol{e}_x & \boldsymbol{e}_y & \boldsymbol{e}_z \\ \frac{\partial}{\partial{x}} & \frac{\partial}{\partial{y}} & \frac{\partial}{\partial{z}} \\ a_x & a_y & a_z \end{pmatrix}</math>
でも表示される。
回転に対しては以下が成り立つ。
#<math>\nabla\times(k\boldsymbol{a}+l\boldsymbol{b})=k\nabla\times\boldsymbol{a}+l\nabla\times\boldsymbol{b}</math>(線型性)
#<math>\nabla\times(\varphi\boldsymbol{a})=(\nabla\varphi)\times\boldsymbol{a}+\varphi\nabla\times\boldsymbol{a}</math>(積の微分・ライプニッツ則)
前者は外積の線型性より、後者は成分演算と勾配の定義より示される。
回転は常に角速度ベクトルと一致するとは限らない。そのため、必ずしも回転運動そのものを記述しない。
回転は、ヤコビ行列を用いると以下のように表される。
:<math>\mathrm{rot} \, \boldsymbol{a} = 2 \,\mathrm{axl} \left( \frac{\nabla \circledast \boldsymbol{a} - {}^t \! (\nabla \circledast \boldsymbol{a})}{2} \right)</math>
:ここで<math>\nabla \circledast \boldsymbol{a} - {}^t \! (\nabla \circledast \boldsymbol{a})</math>は反対称行列であり、<math>\mathrm{axl}</math>は反対称行列を軸ベクトルに移す写像である。
===ラプラシアン===
上で見てきた勾配・発散・回転はいずれも一階の偏微分作用素であった。
二階偏微分作用素のうち最もよく使われているのがスカラー場に対して勾配の発散をとる演算である。
:<math>\nabla\cdot(\nabla\varphi) = \mathrm{div}(\mathrm{grad}\,\varphi)</math>
ここで<math>(\nabla\cdot\nabla)\varphi</math>を計算してみると成分計算から上の<math>\nabla\cdot(\nabla\varphi)</math>に等しいことが容易に判る。則ち、発散作用素<math>\nabla\cdot\,\,</math>、勾配作用素<math>\nabla</math>、スカラー場<math>\varphi</math>の間に結合法則が成り立ってると見做せる。
そこで、<math>\nabla\cdot\nabla</math>を独立した演算子として考えることにする。
以下のように定義される演算子を'''ラプラス演算子'''(ラプラス作用素)という。
:<math>\text{∆}:=\nabla\cdot\nabla=\frac{\partial^2}{\partial{x}^2}+\frac{\partial^2}{\partial{y}^2}+\frac{\partial^2}{\partial{z}^2}</math>
二項目は[[w:記号の濫用]]により<math>\nabla^2</math>と書かれることもある。
但し、<math>\text{∆}</math>は通常のデルタ(Unicode文字名: GREEK CAPITAL LETTER DELTA, U+394)ではなく'''増分記号'''(Unicode文字名:INCREMENT, U+2206)である(が通常のデルタで書かれることが多い)。
ラプラス演算子を<math>C^2</math>級スカラー場に作用させる操作(及びその結果として得るスカラー場)を'''ラプラシアン'''(Laplacian)という。
:<math>\text{∆}\varphi=\frac{\partial^2{\varphi}}{\partial{x}^2}+\frac{\partial^2{\varphi}}{\partial{y}^2}+\frac{\partial^2{\varphi}}{\partial{z}^2}</math>
スカラー場のラプラシアンは各成分方向の曲率の和、すなわちスカラー場の各点に於ける突出・沈み込みの度合いを表す。
勾配・発散・回転・ラプラシアンを総称して'''空間微分'''と呼ぶ。
ラプラシアンは[[解析学基礎/偏微分方程式|偏微分方程式]]の記述に用いられている。
:'''ラプラス方程式'''・'''ポテンシャル方程式''':<math>\text{∆}\varphi=0</math>
:'''ポアソン方程式''':<math>\text{∆}\varphi=f</math>
:'''熱伝導方程式'''・'''拡散方程式''':<math>\text{∆}\psi=k\frac{\partial{\psi}}{\partial{t}}+g</math>
:'''波動方程式''':<math>\text{∆}\psi=\frac{1}{\nu^2}\frac{\partial^2{\psi}}{\partial{t}^2}</math>
:'''ヘルツホルム方程式''':<math>\text{∆}\varphi=-l^2\varphi</math>
ここで<math>\varphi=\varphi(x,y,z),\,f=f(x,y,z),\,\psi=\psi(x,y,z,t),\,k>0,\,g=g(x,y,z,t),\,\nu>0,\,l\in\mathbb{R}</math>である。
なお、ラプラス方程式の解を'''調和関数'''という。
<math>C^2</math>級ベクトル場のラプラシアンは以下のように定義される。
:<math>\text{∆}\boldsymbol{a}=\begin{pmatrix} \text{∆}a_x \\ \text{∆}a_y \\ \text{∆}a_z \end{pmatrix}</math>
ここでスカラー場と同様に考えて<math>\text{∆}\boldsymbol{a}=\nabla(\nabla\cdot\boldsymbol{a})</math>としたいところではあるが、これは一般には成り立たない。
実際には以下のように表示される。
:<math>\text{∆}\boldsymbol{a}=\nabla(\nabla\cdot\boldsymbol{a})-\nabla\times(\nabla\times\boldsymbol{a})=\mathrm{grad}(\mathrm{div}\,\varphi)-\mathrm{rot}(\mathrm{rot}\,\varphi)</math>
*証明
:対称性より<math>x</math>成分のみ考えても輪環の順に入れ替えれば他の成分を得る。
::<math>\nabla\cdot\boldsymbol{a}=\frac{\partial{a_x}}{\partial{x}}+\frac{\partial{a_y}}{\partial{y}}+\frac{\partial{a_z}}{\partial{z}}</math>
:より
::<math>\{\nabla(\nabla\cdot\boldsymbol{a})\}_x=\frac{\partial^2{a_x}}{\partial{x}^2}+\frac{\partial^2{a_y}}{\partial{x}\partial{y}}+\frac{\partial^2{a_z}}{\partial{x}\partial{z}}</math>
:また、
::<math>\nabla\times\boldsymbol{a}=\begin{pmatrix} \frac{\partial{a_z}}{\partial{y}}-\frac{\partial{a_y}}{\partial{z}} \\ \frac{\partial{a_x}}{\partial{z}}-\frac{\partial{a_z}}{\partial{x}} \\ \frac{\partial{a_y}}{\partial{x}}-\frac{\partial{a_x}}{\partial{y}} \end{pmatrix}</math>
:より
::<math>\{\nabla\times(\nabla\times\boldsymbol{a})\}_x=\frac{\partial}{\partial{y}}\left(\frac{\partial{a_y}}{\partial{x}}-\frac{\partial{a_x}}{\partial{y}}\right)-\frac{\partial}{\partial{z}}\left(\frac{\partial{a_x}}{\partial{z}}-\frac{\partial{a_z}}{\partial{x}}\right)</math>
::<math>=\frac{\partial^2{a_y}}{\partial{y}\partial{x}}-\frac{\partial^2{a_x}}{\partial{y}^2}+\frac{\partial^2{a_z}}{\partial{z}\partial{x}}-\frac{\partial^2{a_x}}{\partial{z}^2}</math>
:<math>\boldsymbol{a}\in{C^2}</math>より偏微分は可換(シュワルツの定理)なので、<math>\{\nabla(\nabla\cdot\boldsymbol{a})-\nabla\times(\nabla\times\boldsymbol{a})\}_x</math>を計算すると
::<math>\left(\frac{\partial^2{a_x}}{\partial{x}^2}+\frac{\partial^2{a_y}}{\partial{x}\partial{y}}+\frac{\partial^2{a_z}}{\partial{x}\partial{z}}\right)-\left(\frac{\partial^2{a_y}}{\partial{x}\partial{y}}-\frac{\partial^2{a_x}}{\partial{y}^2}+\frac{\partial^2{a_z}}{\partial{x}\partial{z}}-\frac{\partial^2{a_x}}{\partial{z}^2}\right)</math>
::<math>=\frac{\partial^2{a_x}}{\partial{x}^2}+\frac{\partial^2{a_x}}{\partial
{y}^2}+\frac{\partial^2{a_x}}{\partial{z}^2}</math>
::<math>=\text{∆}a_x</math>//
ここから判るように、ベクトル場<math>\boldsymbol{a}</math>に対して<math>\text{∆}=\nabla(\nabla\cdot)</math>が成り立つ条件は<math>\nabla\times(\nabla\times\boldsymbol{a})=\boldsymbol{0}</math>である。<math>\boldsymbol{a}</math>が非回転ベクトル場であれば回転が零ベクトルなのでこの形を必ず満足する。但し、この形を満たすベクトル場が全て非回転的ベクトル場であるとは限らない。
則ち、外積の反復と同様に回転演算子<math>\nabla\times\,\,</math>の反復に対して結合法則は不成立である。
歴史的な四元数表記では発散の代わりに吸い込みが用いられていたことからラプラシアンも現在とは反対の符号で計算されていた。ラプラシアンはユークリッド空間に限らず定義可能であるが、その中でも特に重要なのは[[特殊相対論#マクスウェルの方程式|相対性理論]]で用いられる'''ダランベール演算子'''(ダランベルシアン、クアブラ、波動演算子)である。
:<math>\text{⧠}:=\frac{1}{\nu^2}\frac{\partial^2}{\partial{t^2}}-\text{∆}</math>
これは標準座標系で表されるミンコフスキー空間上のラプラシアンに相当する。<math>\text{∆}</math>は上で扱ってきた通常のラプラシアンのことである。
これを用いると波動方程式は<math>\text{⧠}\psi=0</math>というミンコフスキー空間上のラプラス方程式と解釈される。つまり、波動関数はミンコフスキー空間で見れば調和関数なのである。
また、[[w:クライン=ゴルドン方程式]]と呼ばれる偏微分方程式は
:<math>\text{⧠}\psi=-\mu^2\psi</math>
というミンコフスキー空間上のヘルツホルム方程式と解釈される。
===微分定理===
ここでは、ナブラに関する公式を見ていく。以下、シュワルツの定理が成り立っているものとする。また、成分計算をすればいいだけなので証明は省略する。
既に紹介したものを以下に並べる。
#勾配
#:<math>\nabla(k\varphi+l\psi)=k\nabla\varphi+l\nabla\psi</math>
#:<math>\nabla(\varphi\psi)=(\nabla\varphi)\psi+\varphi(\nabla\psi)</math>(
#:<math>\nabla\left(\frac{\varphi}{\psi}\right)=\frac{(\nabla\varphi)\psi-\varphi(\nabla\psi)}{\psi^2}</math>
#:<math>\nabla(\varphi(\psi))=\frac{d\varphi(\psi)}{d\psi}\nabla\psi</math>
#:<math>\frac{\partial{\varphi}}{\partial{\boldsymbol{e}}}=(\boldsymbol{e}\cdot\nabla)\varphi</math>
#:<math>\frac{\partial{\boldsymbol{a}}}{\partial{\boldsymbol{v}}}=(\nabla\circledast\boldsymbol{a})\boldsymbol{v}=(\boldsymbol{v}\cdot\nabla)\boldsymbol{a}</math>
#発散
#:<math>\nabla\cdot(k\boldsymbol{a}+l\boldsymbol{b})=k\nabla\cdot\boldsymbol{a}+l\nabla\cdot\boldsymbol{b}</math>
#:<math>\nabla\cdot(\varphi\boldsymbol{a})=(\nabla\varphi)\cdot\boldsymbol{a}+\varphi\nabla\cdot\boldsymbol{a}</math>
#:<math>\nabla\cdot\boldsymbol{a}=\mathrm{tr}(\nabla\circledast\boldsymbol{a})</math>
#回転
#:<math>\nabla\times(k\boldsymbol{a}+l\boldsymbol{b})=k\nabla\times\boldsymbol{a}+l\nabla\times\boldsymbol{b}</math>
#:<math>\nabla\times(\varphi\boldsymbol{a})=(\nabla\varphi)\times\boldsymbol{a}+\varphi\nabla\times\boldsymbol{a}</math>
#:<math>\nabla\times\boldsymbol{a} = 2 \,\mathrm{axl} \left( \frac{\nabla \circledast \boldsymbol{a} - {}^t \! (\nabla \circledast \boldsymbol{a})}{2} \right)</math>
#ラプラシアン
#:<math>\text{∆}\varphi=\nabla\cdot(\nabla\varphi)</math>
#:<math>\text{∆}\boldsymbol{a}=\nabla(\nabla\cdot\boldsymbol{a})-\nabla\times(\nabla\times\boldsymbol{a})</math>
二つのベクトル場<math>\boldsymbol{a}, \boldsymbol{b}</math>の内積・外積に対してそれぞれ一階の空間微分を考えてみる。
<math>\boldsymbol{a}\cdot\boldsymbol{b}</math>はスカラー量なので勾配のみ考えられる。
:<math>\nabla(\boldsymbol{a}\cdot\boldsymbol{b})=(\nabla\circledast\boldsymbol{a})\boldsymbol{b}+(\nabla\circledast\boldsymbol{b})\boldsymbol{a}+\boldsymbol{a}\times(\nabla\times\boldsymbol{b})+\boldsymbol{b}\times(\nabla\times\boldsymbol{a})</math>
<math>\boldsymbol{a}\times\boldsymbol{b}</math>はベクトル量なので発散・回転のみ考えられる。
:<math>\nabla\cdot(\boldsymbol{a}\times\boldsymbol{b})=\boldsymbol{b}\cdot(\nabla\times\boldsymbol{a})-\boldsymbol{a}\cdot(\nabla\times\boldsymbol{b})</math>
:<math>\nabla\times(\boldsymbol{a}\times\boldsymbol{b})=(\nabla\circledast\boldsymbol{a})\boldsymbol{b}-(\nabla\circledast\boldsymbol{b})\boldsymbol{a}+\boldsymbol{a}(\nabla\cdot\boldsymbol{b})-\boldsymbol{b}(\nabla\cdot\boldsymbol{a})</math>
次に、一階の空間微分の結果に対して更なる一階の空間微分を考えてみる。
スカラー場の勾配はベクトル量なので発散・回転のみ考えられる。
:<math>\nabla\cdot(\nabla\varphi)=\text{∆}\varphi</math>
:<math>\nabla\times(\nabla\varphi)=\boldsymbol{0}</math>
ベクトル場の発散はスカラー量なので勾配のみ考えられる。
:<math>\nabla(\nabla\cdot\boldsymbol{a})=\text{∆}\boldsymbol{a}+\nabla\times(\nabla\times\boldsymbol{a})</math>
ベクトル場の回転はベクトル量なので発散・回転のみ考えられる。
:<math>\nabla\cdot(\nabla\times\boldsymbol{a})=0</math>
:<math>\nabla\times(\nabla\times\boldsymbol{a})=\nabla(\nabla\cdot\boldsymbol{a})-\text{∆}\boldsymbol{a}</math>
則ち、勾配・発散・回転はどの組み合わせでも交換法則が成り立たない。
一階の空間微分の結果に対してラプラシアンを考えてみる。
:<math>\text{∆}(\nabla\varphi)=\nabla(\text{∆}\varphi)</math>
:<math>\text{∆}(\nabla\cdot\boldsymbol{a})=\nabla\cdot(\text{∆}\boldsymbol{a})</math>
:<math>\text{∆}(\nabla\times\boldsymbol{a})=\nabla\times(\text{∆}\boldsymbol{a})</math>
ラプラシアンはスカラー性・ベクトル性を保存するので、演算が破綻する箇所はない。
則ち、ラプラシアンは勾配・発散・回転との組み合わせに対して交換法則が成り立つ。
:<math>\text{∆}\nabla=\nabla\text{∆},\quad\text{∆}(\nabla\cdot)=(\nabla\cdot)\text{∆},\quad\text{∆}(\nabla\times)=(\nabla\times)\text{∆}</math>
<math>\boldsymbol{a}\times\boldsymbol{b}</math>及び<math>\nabla\times\boldsymbol{a}</math>の発散・回転は三重積の形であった。
スカラー三重積・ベクトル三重積にナブラを様々な組み合わせで入れてその結果がどうなるか見ていく。
:<math>\boldsymbol{a}\cdot(\nabla\times\boldsymbol{b})</math>
:<math>\boldsymbol{a}\times(\nabla\times\boldsymbol{b})</math>
はそのまま計算すればいいので公式化する必要が無い。
:<math>\boldsymbol{a}\cdot(\boldsymbol{b}\times\nabla)</math>
:<math>\boldsymbol{a}\times(\boldsymbol{b}\times\nabla)</math>
:<math>\nabla\cdot(\boldsymbol{a}\times\nabla)</math>
:<math>\nabla\times(\boldsymbol{a}\times\nabla)</math>
は偏微分作用素の対象を後接してないので通常の演算としては扱えない。
:<math>\boldsymbol{a}\cdot(\nabla\times\nabla)</math>
:<math>\boldsymbol{a}\times(\nabla\times\nabla)</math>
:<math>\nabla\cdot(\nabla\times\nabla)</math>
:<math>\nabla\times(\nabla\times\nabla)</math>
は同じものの外積をとってるので当然<math>0, \boldsymbol{0}</math>である。<br>
また、三重積の公式はナブラを代入した時点で破綻する。
次に、スカラー四重積・ベクトル四重積に対しても同様のことを考える。
:<math>(\nabla\times\boldsymbol{a})\cdot(\boldsymbol{b}\times\boldsymbol{c})</math>
:<math>(\nabla\times\boldsymbol{a})\cdot(\boldsymbol{b}\times\boldsymbol{c})</math>
:<math>(\boldsymbol{a}\times\boldsymbol{b})\cdot(\nabla\times\boldsymbol{c})</math>
:<math>(\boldsymbol{a}\times\boldsymbol{b})\times(\nabla\times\boldsymbol{c})</math>
:<math>(\nabla\times\boldsymbol{a})\cdot(\nabla\times\boldsymbol{b})</math>
:<math>(\nabla\times\boldsymbol{a})\times(\nabla\times\boldsymbol{b})</math>
はそのまま計算すれば良いので公式化する必要が無い。
:<math>(\boldsymbol{a}\times\boldsymbol{b})\cdot(\boldsymbol{c}\times\nabla)</math>
:<math>(\boldsymbol{a}\times\boldsymbol{b})\times(\boldsymbol{c}\times\nabla)</math>
:<math>(\nabla\times\boldsymbol{a})\cdot(\boldsymbol{b}\times\nabla)</math>
:<math>(\nabla\times\boldsymbol{a})\times(\boldsymbol{b}\times\nabla)</math>
:<math>(\boldsymbol{a}\times\nabla)\cdot(\boldsymbol{b}\times\nabla)</math>
:<math>(\boldsymbol{a}\times\nabla)\times(\boldsymbol{b}\times\nabla)</math>
は偏微分作用素の対象を後接してないので通常の演算としては扱えない。
:<math>(\nabla\times\nabla)\cdot(\boldsymbol{a}\times\boldsymbol{b})</math>
:<math>(\nabla\times\nabla)\times(\boldsymbol{a}\times\boldsymbol{b})</math>
:<math>(\boldsymbol{a}\times\boldsymbol{b})\cdot(\nabla\times\nabla)</math>
:<math>(\boldsymbol{a}\times\boldsymbol{b})\times(\nabla\times\nabla)</math>
及びナブラを三個以上含むものは同じものの外積をとってるので当然<math>0, \boldsymbol{0}</math>である。
故に、ここで問題になるのは
:<math>(\boldsymbol{a}\times\nabla)\cdot(\boldsymbol{b}\times\boldsymbol{c})</math>
:<math>(\boldsymbol{a}\times\nabla)\times(\boldsymbol{b}\times\boldsymbol{c})</math>
:<math>(\boldsymbol{a}\times\nabla)\cdot(\nabla\times\boldsymbol{b})</math>
:<math>(\boldsymbol{a}\times\nabla)\times(\nabla\times\boldsymbol{b})</math>
の扱いである。
これらには以下の公式が成り立つ。
:<math>(\boldsymbol{a}\times\nabla)\cdot(\boldsymbol{b}\times\boldsymbol{c})=\boldsymbol{a}\cdot\{\nabla\times(\boldsymbol{b}\times\boldsymbol{c})\}</math>
:<math>(\boldsymbol{a}\times\nabla)\times(\boldsymbol{b}\times\boldsymbol{c})=[\{\boldsymbol{b}\cdot(\nabla\times\boldsymbol{c})\}-\{\boldsymbol{c}\cdot(\nabla\times\boldsymbol{b})\}]\boldsymbol{a}+{}^t\!\{\nabla\circledast(\boldsymbol{b}\times\boldsymbol{c})\}\boldsymbol{a}</math>
:<math>(\boldsymbol{a}\times\nabla)\cdot(\nabla\times\boldsymbol{b})=\boldsymbol{a}\cdot\{\nabla\times(\nabla\times\boldsymbol{b})\}</math>
:<math>(\boldsymbol{a}\times\nabla)\times(\nabla\times\boldsymbol{b})={}^t\!\{\nabla\circledast(\nabla\times\boldsymbol{b})\}\boldsymbol{a}</math>
===ポテンシャル論===
ベクトル場<math>\boldsymbol{a}\in C^1</math>に対して<math>\boldsymbol{a}=\mathrm{grad}\,\varphi</math>を満たすスカラー場<math>\varphi\in C^2</math>が存在するならば、上で扱った公式より<math>\mathrm{rot}(\mathrm{grad}\,\varphi)=\boldsymbol{0}</math>である。
逆に、ベクトル場<math>\boldsymbol{a}\in C^1</math>が<math>\mathrm{rot}\,\boldsymbol{a}=\boldsymbol{0}</math>を満たすならば<math>\boldsymbol{a}=\mathrm{grad}\,\varphi</math>となるスカラー場<math>\varphi\in C^2</math>はどのようなときに存在するのであろうか?
ここで<math>\mathrm{rot}\,\boldsymbol{a}=\boldsymbol{0}</math>は成分表示すれば
:<math>\begin{cases} \frac{\partial{a}_z}{\partial{y}}-\frac{\partial{a_y}}{\partial{z}}=0 \\ \frac{\partial{a}_x}{\partial{z}}-\frac{\partial{a_z}}{\partial{x}}=0 \\ \frac{\partial{a_y}}{\partial{x}}-\frac{\partial{a_x}}{\partial{y}}=0 \end{cases}</math>
という一階線型連立偏微分方程式となる。
この連立偏微分方程式は領域<math>D=\mathrm{dom}\,\boldsymbol{a}</math>上で解くことになるので、解が<math>\boldsymbol{a}=\mathrm{grad}\,\varphi</math>を満たすかは領域<math>D</math>がどのような形状をしているかに依存する。
そして、その形状を具体的に与えるのが次の定理である。
{{定理|(ポアンカレの補題1)}}
領域<math>D\subset\mathbb{R}^3</math>とベクトル場<math>\boldsymbol{a}\in C^1(D)</math>に対して
:<math>\mathrm{rot}\,\boldsymbol{a}=\boldsymbol{0} \iff \exist \varphi\in C^2(D),\quad \mathrm{grad}\,\varphi=\boldsymbol{a} </math>
となるための十分条件は<math>D</math>が単連結であることである。
{{定理終わり}}
証明は後述する。
この<math>\varphi</math>を<math>\boldsymbol{a}</math>の'''スカラーポテンシャル'''(scalar potential)といい、スカラーポテンシャルを有するベクトル場を'''保存的ベクトル場'''(保存場、conservative vector field)という。
保存的ベクトル場に対して実際にスカラーポテンシャルを構成することを考える。簡単の為に、定義域は直方体領域(あるいは三次元ユークリッド空間全体)とする。
:<math>\mathrm{grad}\,\varphi=\boldsymbol{a},\quad\mathrm{rot}\,\boldsymbol{a}=\boldsymbol{0}</math>を連立偏微分方程式に書き下して
::<math>\begin{cases} \frac{\partial{\varphi}}{\partial{x}}=a_x \\ \frac{\partial{\varphi}}{\partial{y}}=a_y \\ \frac{\partial{\varphi}}{\partial{z}}=a_z \end{cases},\quad\begin{cases} \frac{\partial{a}_z}{\partial{y}}=\frac{\partial{a_y}}{\partial{z}} \\ \frac{\partial{a}_x}{\partial{z}}=\frac{\partial{a_z}}{\partial{x}} \\ \frac{\partial{a_y}}{\partial{x}}=\frac{\partial{a_x}}{\partial{y}} \end{cases}</math>
:<math>\frac{\partial{\varphi}}{\partial{x}}=a_x(x,y,z)</math>は直接積分形偏微分方程式なので両辺を<math>x</math>で偏積分して
::<math>\varphi(x,y,z)=\int_m^x a_x(x,y,z) dx+g(y,z)</math>・・・(1)
:これを<math>y</math>で偏微分すると
::<math>\frac{\partial{\varphi}}{\partial{y}}=\frac{\partial}{\partial{y}}\int_m^x a_x(x,y,z)dx+\frac{\partial{g}}{\partial{y}}</math>
:ここでライプニッツの積分法則を適用して
::<math>=\int_m^x \frac{\partial{a_x}}{\partial{y}}dx+\frac{\partial{g}}{\partial{y}}</math>
:更に回転の条件から
::<math>=\int_m^x \frac{\partial{a_y}}{\partial{x}}dx+\frac{\partial{g}}{\partial{y}}</math>
:よって偏微分に関する微分積分学の基本定理より
::<math>=a_y(x,y,z)-a_y(m,y,z)+\frac{\partial{g}}{\partial{y}}</math>
:これが<math>a_y(x,y,z)</math>に等しいので
::<math>\frac{\partial{g}}{\partial{y}}=a_y(m,y,z)</math>
:これは<math>g(y, z)</math>が<math>x</math>の関数でないことに適する。
:両辺を<math>y</math>で偏積分して
::<math>g(y, z)=\int_n^y a_y(m,y,z)dy+h(z)</math>
:これを(1)に代入して
::<math>\varphi(x,y,z)=\int_m^x a_x(x,y,z)dx+\int_n^y a_y(m,y,z)dy+h(z)</math>・・・(2)
:これを<math>z</math>で偏微分すると
::<math>\frac{\partial{\varphi}}{\partial{z}}=\frac{\partial}{\partial{z}}\left(\int_m^x a_x(x,y,z)dx+\int_n^y a_y(m,y,z)dy\right)+\frac{\partial{h}}{\partial{z}}</math>
:ここでライプニッツの積分法則を適用して
::<math>=\left(\int_m^x\frac{\partial{a_x(x,y,z)}}{\partial{z}}dx+\int_n^y\frac{\partial{a_y(m,y,z)}}{\partial{z}}dy\right)+\frac{dh}{dz}</math>
:更に回転の条件から
::<math>=\left(\int_m^x\frac{\partial{a_z(x,y,z)}}{\partial{x}}dx+\int_n^y\frac{\partial{a_z(m,y,z)}}{\partial{y}}dy\right)+\frac{dh}{dz}</math>
:よって偏微分に関する微分積分学の基本定理より
::<math>=a_z(x,y,z)-a_z(m,y,z)+a_z(m,y,z)-a_z(m,n,z)+\frac{dh}{dz}</math>
::<math>=a_z(x,y,z)-a_z(m,n,z)+\frac{dh}{dz}</math>
:これが<math>a_z(x,y,z)</math>に等しいので
::<math>\frac{dh}{dz}=a_z(m,n,z)</math>
:これは<math>h(z)</math>が<math>x, y</math>の関数でないことに適する。
:両辺を<math>z</math>で常積分して
::<math>h(z)=\int_l^z a_z(m,n,z)dz+C</math>
:これを(2)に代入して
::<math>\varphi(x,y,z)=\int_m^x a_x(x,y,z)dx+\int_n^y a_y(m,y,z)dy+\int_l^z a_z(m,n,z)dz+C</math>//
ここで最後の積分定数<math>C</math>は勾配をとるときに消える。更に言うと、単連結領域では偏微分方程式の解の一意性よりスカラーポテンシャルは積分定数の違いを除いて一意に定まる。よって、スカラーポテンシャルは平行移動を同一視する同値類として与えられることになる。
ベクトル場<math>\boldsymbol{a}\in C^1</math>に対して<math>\boldsymbol{a}=\mathrm{rot}\,\boldsymbol{A}</math>を満たすベクトル場<math>\boldsymbol{A}\in C^2</math>が存在するならば、上で扱った公式より<math>\mathrm{div}(\mathrm{rot}\,\boldsymbol{A})=0</math>である。
逆に、ベクトル場<math>\boldsymbol{a}\in C^1</math>が<math>\mathrm{div}\,\boldsymbol{a}=0</math>を満たすならば<math>\boldsymbol{a}=\mathrm{rot}\,\boldsymbol{A}</math>となるスカラー場<math>\boldsymbol{A}\in C^2</math>はどのようなときに存在するのであろうか?
これも同様に以下の定理で与えられる。
{{定理|(ポアンカレの補題2)}}
領域<math>D\subset\mathbb{R}^3</math>とベクトル場<math>\boldsymbol{a}\in C^1(D)</math>に対して
:<math>\mathrm{div}\,\boldsymbol{a}=0 \iff \exist \boldsymbol{A}\in C^2(D),\quad \mathrm{rot}\,\boldsymbol{A}=\boldsymbol{a} </math>
となるための十分条件は<math>D</math>が'''可縮'''であることである。
{{定理終わり}}
証明は後述する。
ここで、集合が可縮とは「全体を1点に退化するような連続変形が可能である」ことを言う。可縮な集合は単連結である。可縮条件はより弱めることができるが、ホモトピーやコホモロジーの概念が必要である
この<math>\varphi</math>を<math>\boldsymbol{a}</math>の'''ベクトルポテンシャル'''(vector potential)という。スカラーポテンシャルと異なり、「ベクトルポテンシャルを有するベクトル場」を指す特別な呼称は(数学界一般に認知されたものとしては)存在しない。「ソレノイダル場」などを用いる派閥もあるが、単に「発散が0であるベクトル場」を指す用法が強いのであまり広まっていない。
ベクトルポテンシャルを有するベクトル場に対して実際にベクトルポテンシャルを構成することを考える。簡単の為に、定義域は直方体領域(あるいは三次元ユークリッド空間全体)とする。
:<math>\mathrm{rot}\,\boldsymbol{A}=\boldsymbol{a},\quad\mathrm{div}\,\boldsymbol{a}=0</math>を連立偏微分方程式に書き下して
::<math>\begin{cases} \frac{\partial{A}_z}{\partial{y}}-\frac{\partial{A_y}}{\partial{z}}=a_x \\ \frac{\partial{A}_x}{\partial{z}}-\frac{\partial{A_z}}{\partial{x}}=a_y \\ \frac{\partial{A_y}}{\partial{x}}-\frac{\partial{A_x}}{\partial{y}}=a_z \end{cases},\quad \frac{\partial{a_x}}{\partial{x}}+\frac{\partial{a_y}}{\partial{y}}+\frac{\partial{a_z}}{\partial{z}} =0</math>
:第一式より
::<math>\frac{\partial{A_z}}{\partial{y}}=a_x+\frac{\partial{A_y}}{\partial{z}}</math>
:<math>y</math>で偏積分して
::<math>A_z = \int_n^y \left(a_x+\frac{\partial{A_y}}{\partial{z}}\right)dy+f(x,z)</math>
:ライプニッツの積分法則より
::<math>=\int_n^y a_xdy + \frac{\partial}{\partial{z}}\int_n^y A_y dy+f(x,z)</math>・・・(3)
:第三式より
::<math>\frac{\partial{A_x}}{\partial{y}}=\frac{\partial{A_y}}{\partial{x}}-a_z</math>
:<math>y</math>で偏積分して
::<math>A_x=\int_n^y \left(\frac{\partial{A_y}}{\partial{x}}-a_z\right)dy+g(x, z)</math>
:ライプニッツの積分法則より
::<math>=\frac{\partial{}}{\partial{x}}\int_n^y A_y dy - \int_n^y a_zdy+g(x,z)</math>
:これと(3)を第二式に代入して
::<math>a_y=\frac{\partial}{\partial{z}}\left(\frac{\partial{}}{\partial{x}}\int_n^y A_y dy - \int_n^y a_zdy+g(x,z)\right)-\frac{\partial}{\partial{x}}\left(\int_n^y a_xdy + \frac{\partial}{\partial{z}}\int_n^y A_y dy+f(x,z)\right)</math>
::<math>=\frac{\partial^2}{\partial{z}\partial{x}}\int_n^yA_ydy-\frac{\partial}{\partial{z}}\int_n^y a_z dy+\frac{\partial{g}}{\partial{z}}-\frac{\partial}{\partial{x}}\int_n^y a_x dy-\frac{\partial^2}{\partial{x}\partial{z}}\int_n^y A_y dy-\frac{\partial{f}}{\partial{x}}</math>
::<math>=\frac{\partial{g}}{\partial{z}}-\frac{\partial{f}}{\partial{x}}-\int_n^y \left(\frac{\partial{a_z}}{\partial{z}}+\frac{\partial{a_x}}{\partial{x}}\right)dy</math>
:よって
::<math>\frac{\partial{g}}{\partial{z}}-\frac{\partial{f}}{\partial{x}}=a_y+\int_n^y \left(\frac{\partial{a_x}}{\partial{x}}+\frac{\partial{a_z}}{\partial{z}}\right) dy</math>・・・(4)
:この右辺を<math>h(x, y, z)</math>とおくと
::<math>\frac{\partial{h}}{\partial{y}}=\frac{\partial{a_x}}{\partial{x}}+\frac{\partial{a_y}}{\partial{y}}+\frac{\partial{a_z}}{\partial{z}}=0</math>
:なので<math>h(x,y,z)</math>は<math>y</math>に依存しない<math>h(x,z)</math>である。
:これは(4)の左辺が<math>y</math>に依存しないことと整合する。
:故に(4)は
::<math>\frac{\partial{g}}{\partial{z}}-\frac{\partial{f}}{\partial{x}}=h(x,z)</math>
:という二変数の偏微分方程式に落ちる。
:この偏微分方程式は例えば<math>f(x,z)=0, g(x,z)=\int_l^z h(x,z)dz</math>のような特殊解を持つ。
:このような特殊解によって構成された元の方程式の解を<math>\boldsymbol{A}_0</math>とする。
:一般解<math>\boldsymbol{A}</math>と特殊解との差を<math>\boldsymbol{B}</math>と置くとその回転は回転の線型性より<math>\boldsymbol{0}</math>なので
::<math>\begin{cases} \frac{\partial{B}_z}{\partial{y}}=\frac{\partial{B_y}}{\partial{z}} \\ \frac{\partial{B}_x}{\partial{z}}=\frac{\partial{B_z}}{\partial{x}} \\ \frac{\partial{B_y}}{\partial{x}}=\frac{\partial{B_x}}{\partial{y}} \end{cases}</math>
:同様にして第一式・第三式を<math>y</math>で偏積分して第二式に代入すると積分定数に関して
::<math>\frac{\partial{F(x,z)}}{\partial{x}}=\frac{\partial{G(x,z)}}{\partial{z}}</math>
:を得る。
:これは全微分方程式が完全微分方程式である条件なので、
::<math>\mathrm{grad}\,\Phi=\begin{pmatrix} F(x,z) \\ G(x,z) \end{pmatrix}</math>
:なるスカラー場<math>\Phi</math>が存在する。
:則ち、求めるベクトルポテンシャルは<math>\boldsymbol{A}=\boldsymbol{A}_0+\nabla\Phi</math>//
ここで勾配の項は回転をとるときに<math>\mathrm{rot}(\mathrm{grad}\,\Phi)=\boldsymbol{0}</math>より消える。スカラーポテンシャルと同様に自由度が残るので、ベクトルポテンシャルはその自由度を無視した同値類で与えられる。
ポアンカレの補題1, 2に於ける領域<math>D</math>は互いに素ではない複数の領域の和集合<math>\bigcup_i D_i</math>であっても良い。但しポテンシャル場<math>\mathrm{p}</math>は各領域<math>D_i</math>に対して区分的に定義され、このとき互いに重なった領域<math>D_i\cap D_j</math>では任意の点<math>\boldsymbol{x}\in D_i\cap D_j</math>に対して<math>\mathrm{p}_i(\boldsymbol{x})=\mathrm{p}_j(\boldsymbol{x})</math>であることが導かれる。
ポアンカレの補題が成り立たない状況を考えると、この「重なった領域での単射性」が崩れる。則ち、ポテンシャル場は多価関数として振舞うのである。
ポテンシャルに関連した定理として、以下が成り立つ。
{{定理|(ヘルツホルムの定理)}}
ポアンカレの補題が成り立つ状況下に於いて、<math>C^1</math>級ベクトル場<math>\boldsymbol{a}</math>は<math>C^2</math>級スカラー場の勾配と<math>C^2</math>級ベクトル場の回転に[[w:直和分解]]('''ヘルツホルム分解''')できる。
則ち、任意の<math>\boldsymbol{a}\in C^1(D)</math>に対して
:<math>\boldsymbol{a}=\mathrm{grad}\,\varphi-\mathrm{rot}\,\boldsymbol{A}</math>
を満たす<math>\varphi, \boldsymbol{A}\in C^2(D)</math>が存在する。
{{定理終わり}}
*証明
:ポアソン方程式<math>\text{∆}\varphi=f</math>に対してラプラシアンの定義から
::<math>\mathrm{div}(\mathrm{grad}\,\varphi)=f</math>
:ここで右辺のスカラー関数<math>f</math>が<math>\boldsymbol{a}</math>の発散で与えられている場合を考えると
::<math>\mathrm{div}(\mathrm{grad}\,\varphi)=\mathrm{div}\,\boldsymbol{a}</math>
:発散の線型性より
::<math>\mathrm{div}(\mathrm{grad}\,\varphi-\boldsymbol{a})=0</math>
:ここでポアンカレの補題2を用いて
::<math>\mathrm{grad}\,\varphi-\boldsymbol{a}=\mathrm{rot}\,\boldsymbol{A}</math>//
この<math>\varphi, \boldsymbol{A}</math>をそれぞれ広義のスカラーポテンシャル・ベクトルポテンシャルと呼ぶ場合がある。
広義ポテンシャルに対して
:<math>\begin{cases} \mathrm{rot}(\mathrm{grad}\,\varphi)=\boldsymbol{0} \\ \mathrm{div}(\mathrm{rot}\,\boldsymbol{A})=0 \\ \mathrm{div}\,\boldsymbol{a}=\text{∆}\varphi \\ \mathrm{rot}\,\boldsymbol{a}=\mathrm{grad}(\mathrm{div}\,\boldsymbol{A})-\text{∆}\boldsymbol{A} \end{cases}</math>
が成立する。
広義ポテンシャルの組み合わせは一つには定まらない。成分毎で考えるとヘルツホルムの定理は三元連立偏微分方程式を与えるが、勾配で消える定数項と回転で消える勾配項を補正すると右辺の自由度は広義ポテンシャル2つ+補正項2つで4である。そこで、応用上は<math>\mathrm{div}\,\boldsymbol{A}=0</math>という条件('''クーロンゲージ条件''')を追加で課して一意に定めることが多い(これにより<math>\mathrm{rot}\,\boldsymbol{a}=-\text{∆}\boldsymbol{A}</math>が成り立つので)。
例えば、[[連続体力学]]に於ける弾性体の運動方程式(ナビエ-コーシー方程式)
:<math>\rho\frac{\partial^2{\boldsymbol{u}}}{\partial{t}^2}=(\lambda+\mu)\mathrm{grad}(\mathrm{div}\,\boldsymbol{u})+\mu\text{∆}\boldsymbol{u}</math>
をヘルツホルム分解とクーロンゲージ条件により解析すると
:<math>\begin{cases} \rho\frac{\partial^2}{\partial{t}^2}\text{∆}\varphi=(\lambda+2\mu)\text{∆}^2\varphi \\ \rho\frac{\partial^2}{\partial{t}^2}\text{∆}\boldsymbol{A}=\mu\text{∆}^2\boldsymbol{A} \end{cases}</math>
を得る。
更に<math>e=\text{∆}\varphi,\quad\boldsymbol{\omega}=-\text{∆}\boldsymbol{A}</math>と置くとこの2つの式は波動方程式である。ここから導かれる波は前者が縦波で後者が横波であるが、<math>\lambda+2\mu>\mu</math>より前者の方が伝播速度が大きい。則ち、中学理科のP波・S波の性質を導くことができた。
ナビエ-コーシー方程式に於いて定常状態を考えると<math>t</math>-微分の項が0になるので、<math>\text{∆}^2\boldsymbol{u}=0</math>を得る。このような形の偏微分方程式を'''重調和偏微分方程式'''という。
*応用問題
*:真空のマクスウェル方程式<math> \begin{cases}
\nabla\times\boldsymbol{E}&=-\frac{\partial{\boldsymbol{B}}}{\partial{t}}\\
\nabla\times\boldsymbol{H}&=\frac{\partial{\boldsymbol{D}}}{\partial{t}}\\
\nabla\cdot\boldsymbol{D}&=0\\
\nabla\cdot\boldsymbol{B}&=0\\
\end{cases}</math>と構成方程式<math>\begin{cases} \boldsymbol{D}=\varepsilon_0\boldsymbol{E} \\ \boldsymbol{B}=\mu_0\boldsymbol{H}\end{cases}</math>から電磁波の波動方程式<math>\begin{cases} \text{∆}\boldsymbol{E}=\frac{1}{c^2}\frac{\partial^2{\boldsymbol{E}}}{\partial{t}^2} \\ \text{∆}\boldsymbol{H}=\frac{1}{c^2}\frac{\partial^2{\boldsymbol{H}}}{\partial{t}^2} \end{cases}</math>及び光速<math>c=\frac{1}{\sqrt{\varepsilon_0\mu_0}}</math>を導け。
==空間積分==
ここでは三次元ユークリッド空間で考える。
===線積分===
偏積分
:<math>\int_a^b f(x,y) dx := \lim_{n \to \infty} \sum_{k=1}^{n} f(x_k,y) \Delta x</math>(<math>\Delta x = \frac{b-a}{n}, x_k = a + k\Delta x</math>)
は<math>xyz</math>空間を<math>y</math>を固定した平面で切った断面に於ける曲線<math>z=f(x, y)</math>と<math>x</math>軸、直線<math>x=a, x=b</math>の囲む符号付き面積であった。
このとき積分変数を各点で見ると<math>x</math>軸という直線上を<math>a\to b</math>と単調に進むことになるが、これを<math>xyz</math>空間の任意の曲線<math>C</math>に拡張することを考える。
三次元空間の曲線をベクトル表示すると
:<math>\boldsymbol{r}(t)=\begin{pmatrix} x(t) \\ y(t) \\ z(t) \end{pmatrix}\quad t\in [\alpha, \beta]</math>
であり、被積分関数はこの曲線上の点を入力とするスカラー場と考えられるので
:<math>\varphi=\varphi(\boldsymbol{r})</math>
偏積分の<math>dx</math>は「<math>x</math>軸上の微小変位」であったが、<math>t</math>が単調なとき曲線に沿った微小変位は曲線上の移動距離、則ち弧長の微小量と考えられるので線素を用いて
:<math>dl=\left\| \frac{d\boldsymbol{r}}{dt} \right\|dt</math>
これらを総合すると、<math>C</math>に沿った積分というものは曲線のパラメータを用いて
:<math>\int_\alpha^\beta \varphi(\boldsymbol{r}(t))\left\| \frac{d\boldsymbol{r}}{dt} \right\|dt</math>
と表示されることになる。
これをスカラー場<math>\varphi</math>の<math>C</math>に沿った'''線積分'''<sup>※</sup>(line integral)という。また、<math>C</math>を'''積分経路'''(積分路、path)という。
<small>※量子力学の[[量子力学#経路積分法|経路積分]](path integral)とは異なる概念である。</small>
スカラー場の線積分は
:<math>\int_C \varphi dl</math>
のように略記される。
特に積分経路が閉曲線('''閉経路''')である場合は
:<math>\oint_C \varphi dl</math>
のように書き、これを<math>C</math>に沿った'''周回/閉路 積分'''(closed line integral)という。
1の線積分<math>\int_C dl</math>は弧長に等しい。
<math>\varphi(\boldsymbol{r})</math>の<math>C</math>の端点に於ける値の差を考える。
<math>t\in[\alpha,\beta]</math>を各<math>t_i</math>に等分割したとき、スカラー関数のテイラー展開より
:<math>\varphi(\boldsymbol{r}(t_i))-\varphi(\boldsymbol{r}(t_{i-1}))=\nabla\varphi(\boldsymbol{r}_{t_i-1})\cdot d\boldsymbol{r}\big|_{t=t_i}+O\left(\left\|d\boldsymbol{r}\big|_{t=t_i}\right\|\right)</math>
なので
:<math>\varphi(\boldsymbol{r}(\beta))-\varphi(\boldsymbol{r}(\alpha))\fallingdotseq \sum_{i=1}^n \nabla\varphi(\boldsymbol{r}(t_{i-1}))\cdot d\boldsymbol{r}\big|_{t=t_i}</math>
右辺で分割数<math>n</math>を無限大に飛ばした極限は区分求積法より
:<math>\int_{\boldsymbol{r}(\alpha)}^{\boldsymbol{r}(\beta)}\nabla\varphi(\boldsymbol{r})\cdot d\boldsymbol{r}</math>
則ち、曲線<math>C</math>に沿った微分積分学の基本定理
:<math>\int_{\boldsymbol{r}(\alpha)}^{\boldsymbol{r}(\beta)}\nabla\varphi(\boldsymbol{r})\cdot d\boldsymbol{r} = \varphi(\boldsymbol{r}(\beta))-\varphi(\boldsymbol{r}(\alpha))</math>
を得る。
これは一変数積分の<math>\int_a^b \frac{df}{dx}dx=f(b)-f(a)</math>に対応し、これは常積分に関する微分積分学の基本定理の別表現である。
左辺をスカラー場の線積分と同様に<math>\int_C \nabla\varphi\cdot d\boldsymbol{r}</math>と書くことにする。
ここで<math>\nabla\varphi</math>を一般のベクトル場<math>\boldsymbol{a}</math>に拡張して同様に
:<math>\int_C \boldsymbol{a}\cdot d\boldsymbol{r}</math>
を考えてみたい。
ここで<math>d\boldsymbol{r}</math>は<math>\boldsymbol{r}</math>の全微分と解釈され、一変数関数なので
:<math>d\boldsymbol{r}=\frac{d\boldsymbol{r}}{dt}dt</math>
則ち、
:<math>\int_C \boldsymbol{a}\cdot d\boldsymbol{r}=\int_\alpha^\beta \boldsymbol{a}(\boldsymbol{r}(t))\cdot\frac{d\boldsymbol{r}}{dt}dt</math>
という曲線のパラメータに関する積分に帰着された。
これをベクトル場<math>\boldsymbol{a}</math>の<math>C</math>に沿った'''線積分'''という。
<math>\frac{d\boldsymbol{r}}{dt}</math>は<math>C</math>の接線なので<math>\boldsymbol{a}(\boldsymbol{r})\cdot\frac{d\boldsymbol{r}}{dt}</math>は<math>\boldsymbol{a}</math>から<math>C</math>の接線に沿う沿流成分を取り出していることになる。
このことから、ベクトル場の線積分を特に'''接線積分'''(integral of tangential component)ということがある。
また、<math>d\boldsymbol{r}</math>のノルムを考えてみると
:<math>\|d\boldsymbol{r}\|=\left\|\frac{d\boldsymbol{r}}{dt}\right\|dt=dl</math>
より線素に一致する。
このことから、<math>d\boldsymbol{r}</math>を'''線素ベクトル'''と呼び、<math>d\boldsymbol{l}</math>とも書く。
線素ベクトルは曲線上の微小変位を表すので座標軸上の微小変位の重ね合わせと考えれば
:<math>d\boldsymbol{l}=\begin{pmatrix} dx \\ dy \\ dz \end{pmatrix}</math>
よって接線積分は形式的に
:<math>\int_C (a_xdx+a_ydy+a_zdz)</math>
とも書かれる。
更に、弧長パラメトライズされている場合は接ベクトルを用いて
:<math>d\boldsymbol{l}=\boldsymbol{t}ds</math>
とも表せる。
接線積分で定義される概念としては、仕事が有名である。
:物体を経路<math>C</math>に沿って力<math>\boldsymbol{F}</math>で運んだときの仕事は摩擦や空気抵抗を無視すると
::<math>W=\int_C \boldsymbol{F}\cdot d\boldsymbol{r}</math>
また、アンペールの法則も線積分で示される。
:閉経路<math>C</math>で囲まれた領域を貫く電流の大きさ<math>I</math>とその電流が生む磁場<math>\boldsymbol{H}</math>に対して
::<math>\oint_C \boldsymbol{H}\cdot d\boldsymbol{l}=I</math>
更に、以下のような概念も定義されている。
:流体の速度場<math>\boldsymbol{v}</math>の循環は
::<math>\Gamma(C)=\oint_C \boldsymbol{v}\cdot d\boldsymbol{l}</math>
*応用問題
**運ばれる物体の質量を<math>m</math>としたとき、仕事の定義とニュートンの運動方程式<math>m\frac{d^2\boldsymbol{r}}{dt^2}=\boldsymbol{F}</math>を用いて運動エネルギーに関するエネルギーの原理<math>W=\frac{1}{2}mv^2-\frac{1}{2}mv_0^2</math>を証明せよ。
<math>C</math>が正の向きにパラメトライズされたとき、負の向きにパラメトライズされた曲線を<math>-C</math>と表した。
2つの閉曲線<math>C_1</math>の終点と<math>C_2</math>の始点が一致するとき、これを一つの曲線と見做して曲線の和
:<math>C_1+C_2</math>
が定義される。
これを'''区分的に定義された曲線'''という。
2つの閉曲線<math>C_1</math>の終点と<math>C_2</math>の終点が一致するとき、<math>C_1</math>を始点とすると曲線の差は
:<math>C_1-C_2=C_1+(-C_2)</math>
で定義される。
<math>C</math>が'''区分的に滑らか'''であるとは、<math>C</math>が有限個の滑らかな曲線の和であることである。
これらを踏まえると、線積分には以下の性質が成り立つ。
#スカラー場
#:<math>\int_C (k\varphi+l\psi) dl=k\int_C \varphi dl + l \int_C \psi dl</math>
#:<math>\int_{-C}\varphi dl = \int_C \varphi dl</math>
#:<math>\int_{C_1+C_2}\varphi dl = \int_{C_1}\varphi dl + \int_{C_2}\varphi dl</math>
#ベクトル場
#:<math>\int_C (k\boldsymbol{a}+l\boldsymbol{b})\cdot d\boldsymbol{l}=k\int_C \boldsymbol{a}\cdot d\boldsymbol{l}+l\int_C \boldsymbol{b}\cdot d\boldsymbol{l}</math>
#:<math>\int_{-C}\boldsymbol{a}\cdot d\boldsymbol{l} = -\int_C \boldsymbol{a}\cdot d\boldsymbol{l}</math>
#:<math>\int_{C_1+C_2}\boldsymbol{a}\cdot d\boldsymbol{l} = \int_{C_1}\boldsymbol{a}\cdot d\boldsymbol{l} + \int_{C_2}\boldsymbol{a}\cdot d\boldsymbol{l}</math>
1番目の性質は線型性である。2番目の性質から、スカラー場の線積分に関しては任意の'''再パラメトライズ'''(パラメータの可逆な変数変換)、ベクトル場の線積分に関しては向き付けを保つ再パラメトライズに対して線積分の値が保存されることが判る。
保存的ベクトル場に対する線積分<math>\int_C \boldsymbol{a}\cdot d\boldsymbol{l}</math>はスカラーポテンシャル<math>\varphi</math>を用いて<math>\int_C \nabla\varphi\cdot d\boldsymbol{l}</math>と書けるので微分積分学の基本定理より<math>\varphi(\boldsymbol{r}(\beta))-\varphi(\boldsymbol{r}(\alpha))</math>に等しい。
ここで<math>\varphi(\boldsymbol{r}(\beta))-\varphi(\boldsymbol{r}(\alpha))</math>は曲線の端点にのみ依存し形状には依存しない。
そのため、'''線積分の値が積分経路に依存しない必要十分条件はベクトル場が保存的であること'''である。
ここで閉曲線である場合を考えると
:<math>\boldsymbol{r}(\alpha)=\boldsymbol{r}(\beta)</math>
より
:<math>\varphi(\boldsymbol{r}(\alpha))=\varphi(\boldsymbol{r}(\beta))</math>
なので
:<math>\oint_C \nabla\varphi\cdot d\boldsymbol{l}=0</math>
である。
逆に言うと、'''周回積分が0でない閉経路をとれるとき<math>\varphi</math>は<math>\boldsymbol{a}</math>のスカラーポテンシャルではない'''。
この事実は偏微分方程式を解いて求めたスカラーポテンシャルが実際にポテンシャルであるかどうかの確認に用いられる。
なお、先程求めたスカラーポテンシャルの一般式
:<math>\varphi(x,y,z)=\int_m^x a_x(x,y,z)dx+\int_n^y a_y(m,y,z)dy+\int_l^z a_z(m,n,z)dz+C</math>
は線積分で表される。
具体的には、積分経路を<math>\gamma:(m,n,l)\to(m,n,z)\to(m,y,z)\to(x,y,z)</math>という3つの線分の和としてとれば
:<math>\varphi=\int_\gamma \boldsymbol{a}\cdot d\boldsymbol{l}+C</math>
である。
ここでスカラーポテンシャルとは勾配方程式
:<math>\nabla\varphi=\boldsymbol{a}</math>
の解だったので、'''線積分と勾配は逆演算'''である。
<math>\nabla\varphi\cdot d\boldsymbol{l}=d\varphi</math>より、スカラーポテンシャルの存在と完全微分方程式の対応がここからも得られる。また、完全微分方程式<math>d\varphi=0</math>の解は曲線を与えることも容易に判る。
仕事が線積分で定義されるという話をしたが、エネルギーの原理より力場がスカラーポテンシャルを有する(保存場)場合はエネルギー変化が移動経路に依存しないので力学的エネルギー保存法則が成り立つ。これが高校物理で扱った「保存力なら力学エネルギーが保存する」ことの正式な表現である。
ベクトル場の線積分はベクトル場と線素ベクトルの内積をとって積分していたが、外積をとって積分することもできる。
具体的には、
:<math>\boldsymbol{a}\times d\boldsymbol{l}=\begin{pmatrix} a_ydz-a_zdy \\ a_zdx-a_xdz \\ a_xdy-a_ydx \end{pmatrix}</math>
より
:<math>\int_C \boldsymbol{a}\times d\boldsymbol{l}=\begin{pmatrix} \int_C (a_ydz-a_zdy) \\ \int_C (a_zdx-a_xdz) \\ \int_C (a_xdy-a_ydx) \end{pmatrix}</math>
:<math>=\begin{pmatrix} \int_\alpha^\beta \left\{ a_y(\boldsymbol{r}(t))\frac{dz}{dt}-a_z(\boldsymbol{r}(t))\frac{dy}{dt} \right\}dt \\ \int_\alpha^\beta \left\{ a_z(\boldsymbol{r}(t))\frac{dx}{dt}-a_x(\boldsymbol{r}(t))\frac{dz}{dt} \right\}dt \\ \int_\alpha^\beta \left\{ a_x(\boldsymbol{r}(t))\frac{dy}{dt}-a_y(\boldsymbol{r}(t))\frac{dx}{dt} \right\}dt \end{pmatrix}</math>
これは物理学的にはビオ・サヴァールの法則の記述に用いられている。
:真空中で経路<math>C</math>を正の向きに流れる強さ<math>I</math>の定常電流・<math>C</math>上にない点<math>\mathrm{P}</math>・<math>C</math>上の点<math>\mathrm{Q}</math>に対し、<math>C</math>全体で生じる磁束密度<math>\boldsymbol{B}</math>の<math>\mathrm{P}</math>での値は真空の透磁率<math>\mu_0</math>として
::<math>\boldsymbol{B}(\mathrm{P})=\frac{\mu_0 I}{4\pi}\int_C \frac{\overrightarrow{\mathrm{PQ}}\times d\boldsymbol{l}}{\|\overrightarrow{\mathrm{PQ}}\|^3}</math>
応用例は乏しいが、スカラー場の線素ベクトルに関する積分、ベクトル場の線素に関する積分も同様に定義される。
:<math>\int_C \varphi d\boldsymbol{l} = \int_\alpha^\beta \varphi(\boldsymbol{r}(t))\frac{d\boldsymbol{r}}{dt}dt</math>
:<math>\int_C \boldsymbol{a} dl = \int_\alpha^\beta \boldsymbol{a}(\boldsymbol{r}(t))\left\|\frac{d\boldsymbol{r}}{dt}\right\|dt</math>
これらはベクトル値である。
積分経路を流線上にとると、流線の定義から<math>d\boldsymbol{r}/\!\!/\boldsymbol{a}(\boldsymbol{r})</math>則ち一次従属なので、<math>d\boldsymbol{r}=k\boldsymbol{a}(\boldsymbol{r})</math>と書ける。
よって線積分の被積分関数は<math>\boldsymbol{a} \cdot d\boldsymbol{r} = k\|\boldsymbol{a}\|^2</math>となり、積分値が最大化される他、ベクトル場の沿流方向成分を抽出できる。実際に計算する際は、<math>\int_{\mathrm{streamline}} k\|\boldsymbol{a}\|^2</math>とは書かず、<math>\int_{\mathrm{streamline}} \boldsymbol{a} \cdot \frac{d\boldsymbol{r}}{dt}dt</math>と書くのが望ましい(積分記号と積分微小要素はセットのため)。
流線が閉曲線である場合を考えると、<math>\oint_{\mathrm{streamline}} \boldsymbol{a} \cdot \frac{d\boldsymbol{r}}{dt}dt</math>は閉曲線の正の向きで正、負の向きで負となるので0にはならない。そのため、流線が閉曲線であるベクトル場はスカラーポテンシャルを持たない。
===面積分===
線積分は常積分に於ける積分経路を任意の正則な<math>C^1</math>級曲線に拡張したものであった。同様に、二重積分に於ける積分領域を'''向き付けされた'''任意の<math>C^1</math>級曲面に拡張することを考える。
曲線に沿った微小量が線素で与えられたように、曲面に沿った微小量は面素で与えられる。故に、直観的には「面素に関して積分」すれば良いことが分かる。
三次元空間の曲面をベクトル表示すると
:<math>\boldsymbol{r}(t, u)=\begin{pmatrix} x(t, u) \\ y(t, u) \\ z(t, u) \end{pmatrix}\quad {\scriptstyle\left(\begin{array}{c} t \\[-6pt] u \end{array}\right)} \in D</math>
であり、被積分関数はこの曲面上の点を入力とするスカラー場と考えられるので
:<math>\varphi=\varphi(\boldsymbol{r})</math>
面素は
:<math>dS=\sqrt{EG-F^2}dtdu=\sqrt{\left\| \frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}} \right\|^2\left\|\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}\right\|^2 - \left( \frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}\cdot\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}} \right)^2 } dtdu</math>
総合すると、<math>S</math>に沿った積分というものは曲面のパラメータを用いて
:<math>\iint_D \varphi(\boldsymbol{r}(t,u))\sqrt{\left\| \frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}} \right\|^2\left\|\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}\right\|^2 - \left( \frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}\cdot\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}} \right)^2 } dtdu</math>
と表示されることになる。
これをスカラー場<math>\varphi</math>の<math>S</math>に沿った'''面積分'''(曲面積分、surface integral)という。
今は三次元空間の場合を考えているので、外積を用いて
:<math>\iint_D \varphi(\boldsymbol{r}(t,u))\left\|\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}\times\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}\right\| dtdu</math>
と表示しても良い。
スカラー場の面積分は
:<math>\iint_S \varphi dS</math>
のように略記される。
特に積分領域が閉曲面である場合は
:<math>\oiint_S \varphi dS</math>
のように書く。
1の面積分<math>\iint_S dS</math>は曲面積に等しい。
ベクトル場の線積分と同様にしてベクトル場の面積分
:<math>\iint_S \boldsymbol{a}\cdot d\boldsymbol{S}</math>
を考えたい。
線素ベクトルが「位置ベクトルの接線方向」で「ノルムが通常の線素と一致する」ように定義されたことを鑑みると、面素ベクトルは「位置ベクトルの法線方向」で「ノルムが通常の面素に一致する」ように定義するのが良いと考えられる。要するに、
:<math>d\boldsymbol{S}:=\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}\times\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}</math>
としてみる。
ここで単位法線ベクトルを<math>\boldsymbol{n}</math>と置くと面素ベクトルは<math>\boldsymbol{n}dS</math>と表され、
:<math>\iint_S \boldsymbol{a}\cdot d\boldsymbol{S}=\iint_S (\boldsymbol{a}\cdot\boldsymbol{n})dS</math>
のようにスカラー場の面積分に帰着されることが判る。
これをベクトル場<math>\boldsymbol{a}</math>の<math>S</math>に沿った'''面積分'''という。
<math>\boldsymbol{a}\cdot\boldsymbol{n}</math>は<math>\boldsymbol{a}</math>から<math>S</math>の法線を横切る沿流成分を取り出していることになる。
このことから、ベクトル場の面積分を特に'''法線面積分'''(surface integral of the normal component)ということがある。
単位法線ベクトル<math>\boldsymbol{n}</math>は有向曲面に対して右手系を成し、各座標軸となす角度をそれぞれ<math>\alpha, \beta, \gamma</math>とすると通常の余弦関数で表されるベクトル<math>\begin{pmatrix} \cos \alpha \\ \cos \beta \\ \cos \gamma \end{pmatrix}</math>に等しい。これを'''方向余弦'''という。
方向余弦に関して、正射影を用いると以下が成り立つと判る。
:<math>\begin{cases} \cos\alpha dS = dydz \\ \cos\beta dS = dzdx \\ \cos\gamma dS = dxdy \end{cases}</math>
これを用いることで、面素ベクトルは
:<math>d\boldsymbol{S} = \boldsymbol{e}_x dydz + \boldsymbol{e}_y dzdx + \boldsymbol{e}_z dxdy = \begin{pmatrix} dydz \\ dzdx \\ dxdy \end{pmatrix}</math>
とも表される。
故に、法線面積分は形式的に
:<math>\iint_S(a_xdydz+a_ydzdx+a_zdxdy)</math>
とも書ける。
線積分と同様にベクトル場と面素ベクトルの外積、面素ベクトルのスカラー場倍、ベクトル場の面素倍をとって積分することも考えられるが、応用例に乏しい。
:<math>\iint_S \boldsymbol{a}\times d\boldsymbol{S}</math>
:<math>\iint_S \varphi d\boldsymbol{S}</math>
:<math>\iint_S \boldsymbol{a} dS</math>
これらはベクトル値である。
面素ベクトルは以下のように考えることもできる。
:平面<math>\Pi</math>上面積<math>A</math>の有界領域と<math>\Pi</math>の表向き法線<math>\boldsymbol{n}_\Pi</math>に対し、<math>\boldsymbol{A}=A\boldsymbol{n}_\Pi</math>を'''面積ベクトル'''と定義する。
:曲面<math>S</math>上の微小領域をとると曲面をその接平面で近似できるので平面上と同様にして面積ベクトルを定義できる。
:このとき、<math>A=dS</math>となるように定義した面積ベクトルが面素ベクトルである。
この考え方を用いると、
:<math>\oint_C d\boldsymbol{l}=\boldsymbol{0}</math>
及び
:<math>\oiint_S d\boldsymbol{S}=\boldsymbol{0}</math>
が示される。
面積分で定義される概念としては'''束'''<sup>※</sup>(flux)が有名である。
:流体の速度場<math>\boldsymbol{v}</math>に対し、<math>\iint_S \boldsymbol{v}\cdot d\boldsymbol{S}</math>は流束(単位時間当たりに<math>S</math>を通過する流体の流出量)である。
:磁束密度<math>\boldsymbol{B}</math>に対し、<math>\Phi_B=\iint_S \boldsymbol{B}\cdot d\boldsymbol{S}</math>は磁束である。
また、ガウスの法則も面積分で示される。
:ガウス面<math>S</math>が囲む電荷の総量を<math>q_\mathrm{inc}</math>とすると電束密度<math>\boldsymbol{D}</math>に対して
::<math>\oiint_S \boldsymbol{D}\cdot d\boldsymbol{S}=q_\mathrm{inc}</math>
<small>※数学界・物理界で「束」と呼ばれる対象は複数存在する。和訳されるときに「束」が充当されたものはここで扱う「flux」の他に「bundle(ファイバー束など)」「lattice([[束論]]の束)」「pencil(円束など)」「packet(波束など)」がある。</small>
<math>S</math>が表向きにパラメトライズされたとき、裏向きにパラメトライズされた曲面を<math>-S</math>と表した。
同じ向きを向く2つの曲面<math>S_1</math>と<math>S_2</math>の境界が一致するとき、これを一つの曲面と見做して曲面の和
:<math>S_1+S_2</math>
が定義される。
これを'''区分的に定義された曲面'''という。
<math>S</math>が'''区分的に滑らか'''であるとは、<math>S</math>が有限個の滑らかな曲面の和であることである。
これらを踏まえると、面積分には以下の性質が成り立つ。
#スカラー場
#:<math>\iint_S (k\varphi+l\psi) dS=k\iint_S \varphi dS + l \iint_S \psi dS</math>
#:<math>\iint_{-S}\varphi dS = \iint_S \varphi dS</math>
#:<math>\iint_{S_1+S_2}\varphi dS = \iint_{S_1}\varphi dS + \iint_{S_2}\varphi dS</math>
#ベクトル場
#:<math>\iint_S (k\boldsymbol{a}+l\boldsymbol{b})\cdot d\boldsymbol{S}=k\iint_S \boldsymbol{a}\cdot d\boldsymbol{S}+l\iint_S \boldsymbol{b}\cdot d\boldsymbol{S}</math>
#:<math>\iint_{-S}\boldsymbol{a}\cdot d\boldsymbol{S} = -\iint_S \boldsymbol{a}\cdot d\boldsymbol{S}</math>
#:<math>\iint_{S_1+S_2}\boldsymbol{a}\cdot d\boldsymbol{S} = \iint_{S_1}\boldsymbol{a}\cdot d\boldsymbol{S} + \iint_{S_2}\boldsymbol{a}\cdot d\boldsymbol{S}</math>
1番目の性質は線型性である。2番目の性質から、スカラー場の面積分に関しては任意の再パラメトライズ、ベクトル場の面積分に関しては向き付けを保つ再パラメトライズに対して面積分の値が保存されることが判る。
等位面に対する面積分を考える。曲面<math>S</math>がスカラー場<math>\omega</math>の等位面であるとき、その単位法線ベクトルは勾配を用いて
:<math>\boldsymbol{n}=\pm\frac{\nabla\omega}{\|\nabla\omega\|}</math>
と表される。右手系で考えるので正符号を採る。
等位面の方程式<math>\omega(x,y,z)=c</math>に対して陰関数定理が成り立つとすると陰関数<math>z=\psi(x,y)</math>を用いて<math>S:\boldsymbol{r}(x,y)=\begin{pmatrix} x \\ y \\ \psi(x,y) \end{pmatrix}\quad {\scriptstyle\left(\begin{array}{c} x \\[-6pt] y \end{array}\right)} \in D</math>というモンジュ表示に落ちる。
よって
:<math>dS=\sqrt{1+\left(\frac{\partial{\psi}}{\partial{x}}\right)^2+\left(\frac{\partial{\psi}}{\partial{y}}\right)^2}dxdy</math>
と
:<math>\boldsymbol{n}=\frac{\nabla\omega}{\|\nabla\omega\|}</math>
を用いて
:<math>\int_S \varphi dS = \int_D \varphi(x,y,\psi(x,y))\sqrt{1+\left(\frac{\partial{\psi}}{\partial{x}}\right)^2+\left(\frac{\partial{\psi}}{\partial{y}}\right)^2}dxdy</math>
:<math>\int_S \boldsymbol{a}\cdot d\boldsymbol{S} = \int_D \boldsymbol{a}(x,y,\psi(x,y))\cdot\frac{\nabla\omega(x,y,\psi(x,y))}{\|\nabla\omega(x,y,\psi(x,y))\|}\sqrt{1+\left(\frac{\partial{\psi}}{\partial{x}}\right)^2+\left(\frac{\partial{\psi}}{\partial{y}}\right)^2}dxdy</math>
を得る。
===体積分===
三次元空間の中では曲がった三次元空間を考えることはできない。そのため、以下の議論は平坦な三次元空間での話になる。
曲線長の微小量であった線素・曲面積の微小量であった面素と同様にして立体積の微小量について考えてみる。
立体<math>V</math>を微小立体に分割した体積を<math>\Delta V_i</math>としたとき、線積分・面積分が正式には区分求積法で定義されたようにリーマン和の極限
:<math>\lim_{\Delta V_i\to0}\sum_i \varphi(x_i, y_i, z_i)\Delta V_i</math>
で与えられる積分を考えたい。
これは多変数解析で行った議論と同様にして三変数関数の三重極限へと帰着されるが、三重極限は飛ばす順番を入れ替えられるとは限らないためこの極限値を求めることは困難である。
そこで、以下のように考える。
微小立体はどのような分割の仕方であっても直方体で近似できる(曲面上微小領域を平面上平行四辺形で近似したことからの類推)。このとき、微小体積<math>dV</math>は各辺の長さが<math>dx, dy, dz</math>であると考えることができる。故に、直方体の体積公式を用いて
:<math>dV=dxdydz</math>
これを'''体素'''(体積素・体積要素)という。
故に、求める積分は
:<math>\lim_{\Delta V_i\to0}\sum_i \varphi(x_i, y_i, z_i)\Delta V_i=\iiint_V \varphi(x,y,z) dxdydz</math>
という三重積分に帰着される。
これをスカラー場の<math>V</math>に沿った'''体積分'''(volume integral)という。
スカラー場の体積分は
:<math>\iiint_V \varphi dV</math>
のように略記される。
特に、積分領域が閉集合('''閉立体''')である場合は
:<math>\oiiint_V \varphi dV</math>
のように書く。
1の体積分<math>\iiint_V dV</math>は立体積に等しい。
<math>V</math>のベクトル表示が<math>\boldsymbol{r}(s,t,u)=\begin{pmatrix} x(s,t,u) \\ y(s,t,u) \\ z(s,t,u) \end{pmatrix} \quad {\scriptstyle\left(\begin{array}{c} s \\[-6pt] t \\[-6pt] u\end{array}\right)} \in D</math>である場合は、多変数解析の議論により
:<math>\iiint_V \varphi dV = \iiint_D \varphi(\boldsymbol{r}(s,t,u)) \left|\det \frac{\partial{(x,y,z)}}{\partial{(s,t,u)}}\right| dsdtdu</math>
であると容易に判る。
立体に対しては曲線に於ける接線、曲面に於ける法線のような「ベクトル表示から求められる、積分領域の向きを指定するための方向」が一意には存在しない。そのため、体素ベクトルというものは考えない。
故に、ベクトル場の体積分は
:<math>\iiint_V \boldsymbol{a}dV</math>
の一種類のみである。
体積分を用いて表される概念としては、電荷が有名である。
:電荷密度<math>\rho(x,y,z)</math>に対し、領域<math>V</math>内にある電荷の総量は
::<math>q=\iiint_V \rho(x,y,z)dV</math>
また、電荷分布に於ける電気双極子モーメントは
::<math>\boldsymbol{p}=\iiint_V \rho\boldsymbol{r} dV</math>
というベクトル場の体積分で定義される。
更に、以下のような概念も定義されている。
:物体の質量<math>m</math>、密度<math>\rho</math>とすると質量中心ベクトルは
::<math>\boldsymbol{r}_G=\frac{1}{m}\iiint_V \rho\boldsymbol{r}dV</math>
:電磁場の真空での運動量は
::<math>\boldsymbol{P}=\frac{1}{c^2}\iiint_V \boldsymbol{E}\times\boldsymbol{H}dV</math>
2つの立体<math>V_1</math>と<math>V_2</math>の境界が一致するとき、これを一つの立体と見做して立体の和
:<math>V_1+V_2</math>
が定義される。
これを'''区分的に定義された立体'''という。
<math>V</math>が'''区分的に滑らか'''であるとは、<math>V</math>が有限個の滑らかな立体の和であることである。
これらを踏まえると、体積分には以下の性質が成り立つ。
#スカラー場
#:<math>\iiint_V (k\varphi+l\psi) dV=k\iiint_V \varphi dV + l \iiint_S \psi dV</math>
#:<math>\iiint_{V_1+V_2}\varphi dV = \iiint_{V_1}\varphi dV + \iiint_{V_2}\varphi dV</math>
#ベクトル場
#:<math>\iint_V (k\boldsymbol{a}+l\boldsymbol{b})dV=k\iiint_V \boldsymbol{a}dV+l\iiint_V \boldsymbol{b}dV</math>
#:<math>\iiint_{V_1+V_2}\boldsymbol{a}dV = \iiint_{V_1}\boldsymbol{a} dV + \iiint_{V_2}\boldsymbol{a}dV</math>
===積分定理===
ここでは、空間積分に関する種々の定理を紹介する。
体積分
:<math>\int_V \varphi dV=\int_V \varphi dxdydz</math>
に於いて、スカラー場<math>\varphi</math>がスカラー場<math>f</math>のある積分変数に関する偏導関数になっている場合を考える。
例えば<math>\varphi=\frac{\partial{f}}{\partial{x}}</math>の場合を考えると
:<math>\int_V \varphi dV = \int_V \frac{\partial{f}}{\partial{x}}dxdydz</math>
であり、
:<math>V=\left\{ \begin{pmatrix} x \\ y \\ z \end{pmatrix} \Bigg| \begin{array}{c} \vartheta(y,z) \leq x \leq \eta(y,z) \\ {\scriptstyle\left(\begin{array}{c} y \\[-6pt] z \end{array}\right)} \in D \end{array} \right\}</math>
とすると
:<math>=\iint_D \left( \int_{\vartheta(y,z)}^{\eta(y,z)} \frac{\partial{f}}{\partial{x}} dx \right) dydz</math>
偏微分に関する微分積分学の基本定理より
:<math>=\iint_D \{ f(\eta(y,z),y,z)-f(\vartheta(y,z),y,z) \} dydz</math>
ここで、曲面<math>S_\eta:x=\eta(y,z), S_\vartheta:x=\vartheta(y,z)</math>の面素ベクトルについて考えてみる。<br/>
<math>S_\eta</math>の接ベクトルは
:<math>\frac{\partial{\eta}}{\partial{y}}\boldsymbol{e}_x+\boldsymbol{e}_y, \frac{\partial{\eta}}{\partial{z}}\boldsymbol{e}_x+\boldsymbol{e}_z</math>
の2つなので、面素ベクトルは<math>x</math>軸正方向にとると
:<math>d\boldsymbol{S}_\eta=\left(\frac{\partial{\eta}}{\partial{y}}\boldsymbol{e}_x+\boldsymbol{e}_y\right)\times\left( \frac{\partial{\eta}}{\partial{z}}\boldsymbol{e}_x+\boldsymbol{e}_z\right)=\left( \boldsymbol{e}_x - \frac{\partial{\eta}}{\partial{y}}\boldsymbol{e}_y - \frac{\partial{\eta}}{\partial{z}}\boldsymbol{e}_z \right)dydz</math>
:<math>\therefore \boldsymbol{e}_x\cdot d\boldsymbol{S}_\eta=dydz</math>
:<math>\therefore \iint_{S_\eta} f\boldsymbol{e}_x \cdot d\boldsymbol{S}_\eta=\iint_D f(\eta(y,z),y,z)dydz </math>
<math>S_\vartheta</math>の接ベクトルは
:<math>\frac{\partial{\vartheta}}{\partial{y}}\boldsymbol{e}_x+\boldsymbol{e}_y, \frac{\partial{\vartheta}}{\partial{z}}\boldsymbol{e}_x+\boldsymbol{e}_z</math>
の2つなので、面素ベクトルは<math>x</math>軸負方向にとると
:<math>d\boldsymbol{S}_\vartheta=\left( \frac{\partial{\vartheta}}{\partial{z}}\boldsymbol{e}_x+\boldsymbol{e}_z\right)\times\left(\frac{\partial{\vartheta}}{\partial{y}}\boldsymbol{e}_x+\boldsymbol{e}_y\right)=\left(-\boldsymbol{e}_x + \frac{\partial{\vartheta}}{\partial{y}}\boldsymbol{e}_y + \frac{\partial{\vartheta}}{\partial{z}}\boldsymbol{e}_z \right)dydz</math>
:<math>\therefore \boldsymbol{e}_x\cdot d\boldsymbol{S}_\vartheta=-dydz</math>
:<math>\therefore \iint_{S_\vartheta} f\boldsymbol{e}_x \cdot d\boldsymbol{S}_\vartheta=-\iint_D f(\vartheta(y,z),y,z)dydz </math>
また、<math>S_\vartheta, S_\eta</math>を<math>V</math>の底面とみたときの側面<math>S_\mathrm{side}</math>は接平面に<math>\boldsymbol{e}_x</math>を含むので法線は<math>x</math>軸に垂直であり、
:<math>\boldsymbol{e}_x\cdot d\boldsymbol{S}_\mathrm{side}=0</math>
:<math>\therefore \iint_{S_\mathrm{side}}f\boldsymbol{e}_x\cdot d\boldsymbol{S}_\mathrm{side}=0</math>
よって
:<math>\iint_D \{f(\eta(y,z),y,z) - f(\vartheta(y,z),y,z) \}dydz=\iint_{S_\eta} f \boldsymbol{e}_x\cdot d\boldsymbol{S}_\eta + \iint_{S_\mathrm{side}} f \boldsymbol{e}_x\cdot d\boldsymbol{S}_\mathrm{side} + \iint_{S_\vartheta} f \boldsymbol{e}_x\cdot d\boldsymbol{S}_\vartheta</math>
:<math>=\oiint_{\partial{V}}f\boldsymbol{e}_x \cdot d\boldsymbol{S}</math>
ここで<math>\varphi=\frac{\partial{g}}{\partial{y}},\quad \varphi=\frac{\partial{h}}{\partial{z}}</math>の場合も同様の議論により
:<math>\iiint_V \frac{\partial{g}}{\partial{y}} dV = \oiint_{\partial{V}} g\boldsymbol{e}_y \cdot d\boldsymbol{S}</math>
:<math>\iiint_V \frac{\partial{h}}{\partial{z}}dV = \oiint_{\partial{V}} h\boldsymbol{e}_z\cdot d\boldsymbol{S}</math>
と判るので、3式を足し合わせて
:<math>\iiint_V \left(\frac{\partial{f}}{\partial{x}}+\frac{\partial{g}}{\partial{y}}+\frac{\partial{h}}{\partial{z}}\right)dV=\oiint_{\partial{V}} (f\boldsymbol{e}_x+g\boldsymbol{e}_y+h\boldsymbol{e}_z)\cdot d\boldsymbol{S}</math>
ここで曲面<math>\partial{V}</math>の外向き法線の方向余弦を<math>\begin{pmatrix} m \\ n \\ l \end{pmatrix}</math>と置くと最終的に
:<math>\iiint_V \left(\frac{\partial{f}}{\partial{x}}+\frac{\partial{g}}{\partial{y}}+\frac{\partial{h}}{\partial{z}}\right)dV=\oiint_{\partial{V}} (fm+gn+hl)dS</math>となる。
これを'''ガウス=グリーンの定理'''という。
更に、<math>\boldsymbol{a}(x,y,z)=\begin{pmatrix} f(x,y,z) \\ g(x,y,z) \\ h(x,y,z) \end{pmatrix}</math>と定義すると
:<math>\iiint_V\left( \frac{\partial{a_x}}{\partial{x}}+\frac{\partial{a_y}}{\partial{y}}+\frac{\partial{a_z}}{\partial{z}} \right)dV=\oiint_{\partial{V}} ( a_x\boldsymbol{e}_x+a_y\boldsymbol{e}_y+a_z\boldsymbol{e}_z )\cdot d\boldsymbol{S}</math>
則ち
:<math>\iiint_V \nabla\cdot\boldsymbol{a} dV = \oiint_{\partial{V}}\boldsymbol{a}\cdot d\boldsymbol{S}</math>
を得る。
これを'''ガウスの発散定理'''という。
{{定理|(ガウスの発散定理)}}
有界領域<math>V\subset\mathbb{R}^3</math>の境界<math>\partial{V}</math>が区分的に滑らかな閉曲面をなすとき、開集合<math>U \supset V^-</math>上で定義される<math>C^1</math>級ベクトル場<math>\boldsymbol{a}</math>に対して
:<math>\iiint_V \nabla\cdot\boldsymbol{a}dV = \oiint_{\partial{V}} \boldsymbol{a}\cdot d\boldsymbol{S}</math>
{{定理終わり}}
ステラジアン
grad・divの積分形
平面のグリーンの定理(二次元のガウスの定理との同値性)
ストークスの定理
グリーンの第一定理
グリーンの第二定理
グリーンの定理
ポアソンの公式
ポホザエフの恒等式
ポアンカレの補題再考
パップス=ギュルダンの定理
ラプラス場の解析(「調和関数の法線方向微分の面積分は0」「グリーンの第二定理の右辺=0」「調和関数の点mでの値は半径に依らずmを中心とした球内に於ける調和関数の平均値」「定数関数でない調和関数は最大値も最小値も持たない」「閉曲面上で定数関数である調和関数は閉曲面が囲む領域の至る所で定数関数」「ラプラス方程式のディリクレ問題の解は一意」「調和関数の境界に於ける法線方向微分が0なら立体内で至る所で定数関数」「ラプラス方程式の2解の境界上法線方向微分が一致するならその差は定数」)
==発展事項==
{{節stub}}
{{Advanced|多様体論}}
{{Advanced|微分幾何学}}
{{Advanced|積分幾何学}}
ここではベクトル解析の発展編及び微分幾何学の基礎編として、「ユークリッド空間の部分多様体上の微分幾何学」を扱う。言うなれば「<math>n</math>次元版のベクトル解析学」である。
===体積分再考===
体積分は先程「<math>\mathbb{R}^3</math>上の閉立体<math>V</math>」上で考えたが、実はここには線積分・面積分との大きな非対称性がある。
線積分は「曲線」、面積分は「曲面」を積分領域としたが、先程定義した体積分の積分領域は「平坦な立体」なのである(二次元で例えば楕円領域<math>\frac{x^2}{a^2}+\frac{y^2}{b^2}\leq1</math>は境界こそ"曲線"だが空間そのものは<math>\mathbb{R}^2</math>という"平面"であることと同じ)。
1次元の曲がった空間である曲線<math>M^1:\boldsymbol{r}=\boldsymbol{r}(s)</math>が<math>\mathbb{R}^2</math>内、2次元の曲がった空間である曲面<math>M^2:\boldsymbol{r}=\boldsymbol{r}(s, t)</math>が<math>\mathbb{R}^3</math>内に存在するように、3次元の曲がった空間である曲立体<math>M^3:\boldsymbol{r}=\boldsymbol{r}(s, t, u)</math>は<math>\mathbb{R}^4</math>内に存在すると考えるのが自然である。ここで一般に<math>M^n\subset\mathbb{R}^{n+1}</math>が成り立つと予想され、この関係を「<math>M^n</math>の<math>\mathbb{R}^{n+1}</math>への'''埋め込み'''」と呼ぶことにする。
線積分を<math>C=M^1</math>、面積分を<math>S=M^2</math>で定義したように、体積分を<math>M^3</math>で定義することを考える。
媒介変数空間<math>\begin{pmatrix} s \\ t \\ u \end{pmatrix} \in V \subset\mathbb{R^3}</math>上の微小変化を考えると全微分を用いて
:<math>d\boldsymbol{r}=\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{s}}ds+\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}dt+\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}du</math>
よって<math>V</math>上の微小立方体<math>dsdtdu</math>は3ベクトル<math>\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{s}}ds,\quad\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}dt,\quad\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}du</math>の張る微小平行六面体へ移される。
体素はこの微小平行六面体の体積と考えられるが、<math>\boldsymbol{r}\in\mathbb{R}^4</math>より当然この3ベクトルは4項ベクトルなので、'''外積を含んでいるスカラー三重積は使えない'''。
全微分を一次変換表記すると
:<math>d\boldsymbol{r}=\begin{pmatrix} \frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{s}} & \frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}} & \frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}} \end{pmatrix} \begin{pmatrix} ds \\ dt \\ du \end{pmatrix}</math>
:<math>=\begin{pmatrix} \frac{\partial{x}}{\partial{s}} & \frac{\partial{x}}{\partial{t}} & \frac{\partial{x}}{\partial{u}} \\ \frac{\partial{y}}{\partial{s}} & \frac{\partial{y}}{\partial{t}} & \frac{\partial{y}}{\partial{u}} \\ \frac{\partial{z}}{\partial{s}} & \frac{\partial{z}}{\partial{t}} & \frac{\partial{z}}{\partial{u}} \\ \frac{\partial{w}}{\partial{s}} & \frac{\partial{w}}{\partial{t}} & \frac{\partial{w}}{\partial{u}} \end{pmatrix} \begin{pmatrix} ds \\ dt \\ du \end{pmatrix}</math>
:<math>=\frac{\partial{(x, y, z, w)}}{\partial{(s, t, u)}}\begin{pmatrix} ds \\ dt \\ du \end{pmatrix}</math>
ここでヤコビ行列は<math>\frac{\partial{(x, y, z, w)}}{\partial{(s, t, u)}}\in\mathbb{R}^{4\times3}</math>であって'''正方行列でないので行列式も求まらない'''。
そこで、[[線型代数学続論/種々の行列#随伴行列|グラム行列]]を利用することを考える。
'''グラム行列は必ず半正定値行列'''なので行列式は非負であり、平方根をとれる。
そのため、<math>\mathbf{G}:=\left(\frac{\partial{(x, y, z, w)}}{\partial{(s, t, u)}}\right)^*\frac{\partial{(x, y, z, w)}}{\partial{(s, t, u)}}</math>として<math>\sqrt{\det\mathbf{G}}</math>を体積拡大率とする。
これは正方行列ならヤコビアンの絶対値に一致する。
{{NavTop|title=補足:体積拡大率に一致する証明}}
:<math>\frac{\partial{(x, y, z, w)}}{\partial{(s, t, u)}}</math>の列ベクトルにグラム=シュミットの直交化法を適用すると[[線型代数学続論/行列分解|QR分解]]によって
:<math>\frac{\partial{(x, y, z, w)}}{\partial{(s, t, u)}}=\mathbf{QR}\quad (\mathbf{Q}\in\mathbb{R}^{4\times3}, \mathbf{R}\in\mathbb{R}^{3\times3})</math>
よって
:<math>\mathbf{G}=(\mathbf{QR})^*\mathbf{QR}</math>
:<math>=\mathbf{R}^*\mathbf{Q}^*\mathbf{Q}\mathbf{R}</math>
:<math>=\mathbf{R}^*\mathbf{E}_3\mathbf{R}</math>(<math>\because\mathbf{Q}</math>は列ユニタリ行列)
:<math>=\mathbf{R}^*\mathbf{R}</math>
:<math>\therefore \sqrt{\det\mathbf{G}}=\sqrt{\det\left( \mathbf{R}^*\mathbf{R} \right)}=\sqrt{\left(\det\mathbf{R}\right)^2}=|\det\mathbf{R}|</math>
<math>\mathbf{Q}</math>は列ユニタリ行列なのでその一次変換は等長変換であり、全微分による拡大率は<math>\mathbf{R}</math>による拡大率と一致する。<br/>
則ち、<math>\sqrt{\det\mathbf{G}}</math>を拡大率としてとれる。//
{{NavBottom}}
よって体積分は
:<math>\iiint_{M^3} f(\boldsymbol{r})dM^3 = \iiint_{V} f(\boldsymbol{r}(s, t, u))\sqrt{\det\mathbf{G}}\,dsdtdu</math>
ここから、適切な媒介変数表示が存在するならば<math>M^n</math>上での体積分の計算に<math>\mathbb{R}^{n+1}\setminus M^n</math>の情報は入ってこず、<math>M^n</math>の情報のみで計算されると予想される。
実際、<math>M^n</math>に適切な媒介変数表示<math>\boldsymbol{r}=\boldsymbol{r}(\boldsymbol{p})\quad(\boldsymbol{p}\in\mathbb{R}^n)</math>が存在するとき、全微分による一次変換の拡大率は同様にグラム行列式の平方根で与えられるので体積素は<math>dM^n = \sqrt{\det\mathbf{G}} \prod_{k=1}^{n}d\boldsymbol{p}_k</math>と書け、これは正しい。
なお、二次元の場合を考えると<math>\mathbf{G}=\mathbf{K}</math>より<math>dM^2=dS</math>であり、面素に一致する。一次元の場合を考えると<math>\mathbf{G}=\|d\boldsymbol{r}\|^2</math>より<math>dM^1=dl</math>であり、線素に一致する。
実は、体素だけでなく一般に角度や長さといった幾何学的な量は埋め込み先である<math>\mathbb{R}^{n+1}</math>の情報を全く必要とせず、<math>M^n</math>の情報だけで構成できることが知られている。このことは微分幾何学のうち[[w:リーマン幾何学|リーマン幾何学]]と呼ばれる分野で詳しく扱われる。
ここまで<math>M^n</math>を適切な媒介変数<math>\boldsymbol{p}\in\mathbb{R}^n</math>で表すことを強調してきたが、媒介変数表示を考えるということは<math>M^n</math>から媒介変数空間<math>U\subset\mathbb{R}^n</math>への射影<math>\pi:M^n\to U</math>を考えるということである。
ここで、この<math>\pi</math>が全単射ならば逆向きの射影<math>\pi^{-1}:U\to M^n</math>が存在してそれが媒介変数表示<math>\boldsymbol{r}=\boldsymbol{r}(\boldsymbol{p})</math>となるわけであるが、これは以下のようにも捉えられる。
:<math>\pi</math>によって射影した平坦な空間で座標を設定すると、'''適切な逆変換<sup>※</sup>によって曲がった空間<math>M^n</math>上に(局所)座標系を与えることができる'''。
つまり、体積分を媒介変数空間に置換積分するということは、逆に体積分の元の表示が「<math>M^n</math>上の局所座標系に於ける積分」であることを示している。
※この適切な逆変換が存在する条件は'''陰関数定理そのもの'''である。
ここで、適切な媒介変数表示が存在するよう<math>M^n</math>に制限を課したものが、以下で扱う'''多様体'''である。
===多様体===
===微分形式===
[[線型代数学続論/外積代数]]も参照。
===リーマン計量===
===テンソル解析===
[[線型代数学続論/テンソル代数]]も参照。
===複素ベクトル解析===
[[複素解析学]]も参照。
{{DEFAULTSORT:へくとるかいせき}}
[[Category:解析学]]
[[Category:微分積分学]]
[[Category:ベクトル解析|かいせきかくきそ]]
8jopwkyspcn5o195dlcjfe0w1tdjg4r
304877
304876
2026-10-19T05:56:41Z
~2026-55692-88
92812
/* 積分定理 */
304877
wikitext
text/x-wiki
{{Pathnav|数学|解析学|解析学基礎|frame=1}}
{{wikipedia|ベクトル解析}}
ここでは、ベクトル解析について解説する。[[物理数学I ベクトル解析]]も参照。
==前提知識==
ここでは、実数のみで考える。
===ベクトル===
[[高等学校数学C/ベクトル]]、[[線型代数学/ベクトル]]、[[解析学基礎/ベクトル]]などを参照。本項では、矢印を付した表記(<math>\vec{a}</math>など)と太字斜体による表記(<math>\boldsymbol{x}</math>など)を混用する。
===行列===
[[高等学校数学C/数学的な表現の工夫]]及び[[線形代数学]]・[[線型代数学続論]]の各ページを参照。本項では大文字の太字立体(<math>\mathbf{A}</math>など)で表記する。
===多変数解析===
[[解析学基礎/多変数関数の微積分]]を参照。
===領域===
<math>D\subset\mathbb{R}^n</math>と点<math>\boldsymbol{a}\in D</math>(位置ベクトル表記なので太文字斜体)に対し、集合<math>B_\varepsilon(\boldsymbol{a}) := \{ \boldsymbol{x} \in D \mid \| \boldsymbol{x} - \boldsymbol{a} \|<\varepsilon \}</math>を点<math>\boldsymbol{a}</math>の'''<math>\varepsilon</math>-開球'''という。不等号を<math>\leqq</math>に変えたときは開区間↔閉区間と同様に'''閉球'''と呼ぶ。このとき、<math>D</math>のように<math>\mathbb{R}^n</math>の部分集合であって<math>\varepsilon</math>-開球を含むものを点<math>\boldsymbol{a}</math>の'''<math>\varepsilon</math>-開近傍'''と呼ぶ。閉球を含むときは同様に'''閉近傍'''と呼ぶ。
<math>\forall \boldsymbol{a} \in U, \exist \varepsilon>0, B_\varepsilon(\boldsymbol{a})\subset U</math>を満たす<math>U\subset\mathbb{R}^n</math>を'''開集合'''と呼び、<math>V=\mathbb{R}^n\setminus U</math>を'''閉集合'''と呼ぶ。
注意点として、開集合と閉集合は排反ではない。則ち「開集合且つ閉集合」である集合が存在し(例えば<math>\mathbb{R}, \varnothing</math>)、「開集合でも閉集合でもない」集合も存在する(例えば<math>[0, 1)</math>)。
<math>M\subset\mathbb{R}^n</math>を含む最小の閉集合を<math>M</math>の'''閉包'''と呼び、<math>M^-, \bar{M}, \mathrm{Cl}(M)</math>などと表す。例えば有理数の稠密性より<math>\mathbb{Q}^-=\mathbb{R}</math>である。
閉包の性質として「閉包=集合の内部と境界の和集合(<math>M^- = \mathrm{Int}(M) \cup \partial{M}</math>)」がある。
集合<math>S\subset\mathbb{R}^n</math>に対して以下を満たす<math>\mathbb{R}^n</math>上開集合の組<math>(G_1, G_2)</math>が'''とれない'''とき、
#<math>G_1 \cap S = \varnothing \land G_2 \cap S = \varnothing</math>
#<math>S = (G_1 \cap S) \sqcup (G_2 \cap S)</math>
「<math>S</math>は'''連結'''である」または「<math>S</math>は'''連結集合'''」という(但し、<math>\sqcup</math>は[[w:非交和|非交和]])。
空でない開連結集合を'''領域'''という。
実は、高校数学や1年次の解析学で扱ってきた「領域」はこの定義を満たしていないことが多かった。これは、「領域」の歴史的な用法では「条件の解集合」という意味であって開性や連結性を要求しなかったためである。しかし、本項を含めた以降に登場する数学ではこの定義を満たしていることが前提条件となる。なお、ややこしいことに「積分領域」は従来通り「その上で積分を行う集合」という緩い意味で使われることが多いので、区別が必要である。
===右手系===
三次元空間の正規直交基底を<math>(\boldsymbol{e}_1, \boldsymbol{e}_2, \boldsymbol{e}_3)</math>と置く。螺子を<math>\boldsymbol{e}_1\to\boldsymbol{e}_2</math>の向きに回すと<math>\boldsymbol{e}_3</math>の正方向に進むように3つの軸をとった系を'''右手系'''という。負方向に進むようにとったものを'''左手系'''という。数学・物理に限らず理数系の約束事として、'''三次元空間は必ず右手系で考える'''という暗黙の了解が存在するので覚えておこう。
右手系・左手系は基底の一部または全ての符号を反転することで変換することができる。一つだけを反転する場合は'''鏡像変換'''、二つだけを反転する場合は'''半回転'''、全てを反転する場合は'''空間反転'''と呼ぶ。
外積の結果として得るベクトルは右手系・左手系のどちらを考えるかで向きが変わる。このように、右手系↔左手系の変換で向きが変わるベクトルを'''軸性ベクトル'''という。
系の取り方で向きが変わるということは基底の係数である'''成分は不変量'''である。つまり、観測者の動きにベクトルが追従し、このベクトルは「物理的な実体を有しているのではなく計算の都合上向きが定められた便宜的な(=観測者が勝手に決めた)ベクトル」ということである。そのため、軸性ベクトルは'''擬ベクトル'''(シュードベクトル)とも呼ばれる。
位置や速度、加速度のような右手系・左手系のどちらを考えても同じ向きを向くベクトルを'''極性ベクトル'''という。座標系を取り換えても向きが維持されるため'''成分は座標変換に応じて変化する'''。これは、「観測の仕方によって起こる現象は変わらない」ということである。つまり擬ベクトルに対し、極性ベクトルは'''物理的実体を有するベクトル'''である。
偶奇と同じように軸性・極性にも外積を通じた相互関係が存在する。
:(軸性)×(軸性)=(軸性)
:(軸性)×(極性)=(極性)
:(極性)×(極性)=(軸性)
==基礎事項==
===ベクトル関数===
関数<math>\boldsymbol{f} (x) = \sum_{i} f_i(x) \boldsymbol{e}_i</math>を'''ベクトル(値)関数'''(vector-valued function, vector function)という。
ただし、各<math>\boldsymbol{e}_i</math>は各座標軸方向の単位ベクトルであり、<math>\boldsymbol{f}(x)</math>の定義域は各<math>f_i(x)</math>の定義域の積集合である。
ベクトルの演算が成分ごとの演算結果を並べたベクトルで定義されたように、ベクトル関数の演算は(結果となる値が存在するならば)各成分の演算結果を並べたベクトルに等しい。これはベクトルの線型性による。
例えば、<math>\boldsymbol{f}(x) = \begin{pmatrix} \cos x \\ \sin x \end{pmatrix}</math>の<math>x\to0</math>の極限は、
:<math>\lim_{x\to0} \boldsymbol{f}(x) = \begin{pmatrix} \lim_{x\to0} \cos x \\ \lim_{x\to0} \sin x \end{pmatrix}</math> (<math>\because</math>線型性)
:<math>=\begin{pmatrix} 1 \\ 0 \end{pmatrix}</math>
:<math>=\boldsymbol{e}_x</math>
と求まる。
このとき、<math>\boldsymbol{e}_x</math>を<math>\begin{pmatrix} \cos x \\ \sin x \end{pmatrix}</math>の<math>x\to0</math>に於ける'''極限ベクトル'''という。
<math>\boldsymbol{f}(x)</math>が<math>x=\alpha</math>で連続であるとは<math>\lim_{x\to\alpha}\boldsymbol{f}(x)=\boldsymbol{f}(\alpha)</math>が成立することであり、区間<math>I</math>で連続であるとは<math>\forall \alpha \in I</math>で連続であることである。
また、ベクトル関数の導関数<math>\boldsymbol{f}'(x)</math>は
:<math>\frac{d}{dx} \boldsymbol{f} (x) = \frac{d}{dx} \left( \sum_i f_i(x) \boldsymbol{e}_i \right)</math>
:<math>= \sum_i \left( \frac{d}{dx} f_i (x) \boldsymbol{e}_i \right)</math>(<math>\because</math>線型性)
:<math>= \begin{pmatrix} f'_1(x) \\ f'_2(x) \\ \vdots \\ f'_i(x) \\ \vdots \end{pmatrix}</math>
である。
この結果は、ベクトル関数に於ける導関数の正式な定義 <math>\lim_{h\to0} \frac{\boldsymbol{f}(x+h) - \boldsymbol{f}(x)}{h}</math>からも導かれる。
<math>\boldsymbol{f}(x)</math>が<math>x=\alpha</math>で微分可能であるとは極限値<math>\boldsymbol{f}'(\alpha)=\lim_{x\to\alpha}\frac{\boldsymbol{f}(x)-\boldsymbol{f}(\alpha)}{x-\alpha}</math>が存在することであり、区間<math>I</math>で微分可能であるとは<math>\forall \alpha \in I</math>で微分可能であることである。
高階導関数・高階微分可能も同様にして定義される。
<math>\boldsymbol{f}(x)</math>が区間<math>I</math>で連続ならば<math>\boldsymbol{f}(x)</math>は<math>I</math>上で<math>C^0</math>級であるといい、<math>\boldsymbol{f}\in C^0(I)</math>と書く。<math>\boldsymbol{f}(x)</math>が<math>I</math>で微分可能で<math>\boldsymbol{f}'(x)\in C^0(I)</math>ならば<math>\boldsymbol{f}(x)</math>は<math>I</math>上で<math>C^1</math>級である(一階連続微分可能)といい、<math>\boldsymbol{f}\in C^1(I)</math>と書く。<math>\boldsymbol{f}(x)</math>が<math>I</math>で二階微分可能で<math>\boldsymbol{f}'\in C^1(I)</math>ならば<math>\boldsymbol{f}(x)</math>は<math>I</math>上で<math>C^2</math>級である(二階連続微分可能)といい、<math>\boldsymbol{f}\in C^2(I)</math>と書く。同様にして順々に<math>C^k</math>級が定義され、<math>\forall k \in \mathbb{N}, \boldsymbol{f}\in C^k(I)</math>ならば<math>\boldsymbol{f}(x)</math>は<math>I</math>で<math>C^\infty</math>級(無限階連続微分可能)であるといい、<math>\boldsymbol{f}\in C^\infty(I)</math>と書く。<math>C^\infty</math>級である関数を'''滑らかな'''関数ともいう。
高校数学や高校物理で扱った平面(<math>\mathbb{R}^2</math>)上の運動は、実は2項ベクトル関数の理論に他ならない。
例えば、平面上の運動に於ける加速度・速度・変位の関係は<math>\boldsymbol{x}(t)= \begin{pmatrix} f(t) \\ g(t) \end{pmatrix}</math>として<math>\boldsymbol{a}(t) = \frac{d}{dt}\boldsymbol{v}(t) = \frac{d^2}{dt^2} \boldsymbol{x}(t)</math>と表すことができる。
曲線の媒介変数表示は、パラメータを変数とするベクトル関数とみることができる。
例えば、円の媒介変数表示<math>\begin{cases} x=r\cos\theta \\ y=r\sin\theta \end{cases}</math>は、<math>\boldsymbol{r}(\theta) = r\begin{pmatrix} \cos\theta \\ \sin\theta \end{pmatrix}</math>という2次元ベクトル関数とみることができる。更に<math>\theta=\omega t</math>とすると、これは等速円運動の式である。
1変数ベクトル関数の微分に関して、以下の公式が成り立つ。
#定数倍の導関数:<math>\{k\boldsymbol{a}(x)\}'=k\boldsymbol{a}'(x)</math>
#和・差の導関数:<math>\{ \boldsymbol{a}(x)\pm\boldsymbol{b}(x) \}' = \boldsymbol{a}'(x)\pm\boldsymbol{b}'(x)</math>
#積の導関数:<math>\{ f(x)\boldsymbol{a}(x) \}' = f'(x)\boldsymbol{a}(x)+f(x)\boldsymbol{a}'(x)</math>
#商の導関数:<math>\left\{ \frac{\boldsymbol{a}(x)}{f(x)} \right\}' = \frac{f(x)\boldsymbol{a}'(x)-f'(x)\boldsymbol{a}(x)}{\{f(x)\}^2} \quad (f(x)\neq0)</math>
#内積の導関数:<math>\{\boldsymbol{a}(x)\cdot\boldsymbol{b}(x)\}' = \boldsymbol{a}'(x)\cdot\boldsymbol{b}(x)+\boldsymbol{a}(x)\cdot\boldsymbol{b}'(x)</math>
#外積の導関数:<math>\{\boldsymbol{a}(x)\times\boldsymbol{b}(x)\}' = \boldsymbol{a}'(x)\times\boldsymbol{b}(x)+\boldsymbol{a}(x)\times\boldsymbol{b}'(x)</math>
#スカラー三重積の導関数:<math>[\boldsymbol{a}(x)\cdot\{\boldsymbol{b}(x)\times\boldsymbol{c}(x)\}]' = \boldsymbol{a}'(x)\cdot\{\boldsymbol{b}(x)\times\boldsymbol{c}(x)\}+\boldsymbol{a}(x)\cdot\{\boldsymbol{b}'(x)\times\boldsymbol{c}(x)\}+\boldsymbol{a}(x)\cdot\{\boldsymbol{b}(x)\times\boldsymbol{c}'(x)\}</math>
#ベクトル三重積の導関数:<math>[\boldsymbol{a}(x)\times\{\boldsymbol{b}(x)\times\boldsymbol{c}(x)\}]' = \boldsymbol{a}'(x)\times\{\boldsymbol{b}(x)\times\boldsymbol{c}(x)\}+\boldsymbol{a}(x)\times\{\boldsymbol{b}'(x)\times\boldsymbol{c}(x)\}+\boldsymbol{a}(x)\times\{\boldsymbol{b}(x)\times\boldsymbol{c}'(x)\}</math>
#連鎖律(チェイン・ルール):<math>[\boldsymbol{a}\{f(x)\}]'=\boldsymbol{a}'\{f(x)\}f'(x)</math>
ベクトル関数の'''ノルム'''(大きさ、長さ)は、通常のベクトルと同様に
:<math>\| \boldsymbol{f}(x) \| = \sqrt{\boldsymbol{f}(x)\cdot\boldsymbol{f}(x)} = \sqrt{\sum_{i} \{f_i (x)\}^2}</math>
で与えられる。
つまり、ノルムは元のベクトル関数と同一変数のスカラー関数である。
ここで、このスカラー関数が定数関数である条件に就て見てみよう。
:<math>\| \boldsymbol{f}(x) \|= c \quad (c\in\mathbb{R}_{>0})</math>の両辺を2乗して
:<math>\| \boldsymbol{f}(x) \|^2 = \boldsymbol{f}(x)\cdot\boldsymbol{f}(x) = c^2</math>
:両辺微分すると内積の微分より
:<math>\{\boldsymbol{f}(x)\cdot\boldsymbol{f}(x)\}'=\boldsymbol{f}'(x)\cdot\boldsymbol{f}(x)+\boldsymbol{f}(x)\cdot\boldsymbol{f}'(x)=2\boldsymbol{f}(x)\cdot\boldsymbol{f}'(x)=0</math>
:<math>\therefore \boldsymbol{f}(x)\cdot\boldsymbol{f}'(x)=0</math>
:逆に、
:<math>\boldsymbol{f}(x)\cdot\boldsymbol{f}'(x)=0 \iff 2\boldsymbol{f}(x)\cdot\boldsymbol{f}'(x)=\boldsymbol{f}'(x)\cdot\boldsymbol{f}(x)+\boldsymbol{f}(x)\cdot\boldsymbol{f}'(x)=\{\boldsymbol{f}(x)\cdot\boldsymbol{f}(x)\}'=0</math>
:<math>\int \{\boldsymbol{f}(x)\cdot\boldsymbol{f}(x)\}'dx= \int 0 dx</math>
:<math>\boldsymbol{f}(x)\cdot\boldsymbol{f}(x)=C_1</math>(<math>C_1\geq0</math>は積分定数)
:<math>\| \boldsymbol{f}(x) \|^2=C_1</math>より
:<math>\| \boldsymbol{f}(x) \| = \sqrt{C_1} = \mathrm{const}.</math>
よって、以下が成り立つ。
{{定理|(直交条件の定理)}}
:<math>\| \boldsymbol{f}(x) \|= \mathrm{const}. \iff \boldsymbol{f}(x) \cdot \boldsymbol{f}'(x) = 0</math>
{{定理終わり}}
これは、物理的には「位置ベクトルと速度ベクトルが直交する」ことを表す。則ち、<math>\boldsymbol{f}(x)</math>の終点が始点を中心とする円運動(球面運動)をするということである。
また、ベクトル関数が変数に依らず常に同一方向を向く条件も見てみよう(但し<math>\boldsymbol{f}(x)\neq\boldsymbol{0}</math>)。
:所与の条件は零ベクトルでない定ベクトル<math>\boldsymbol{c}</math>を用いて<math>\boldsymbol{f}(x) = f(x)\boldsymbol{c}</math>と表される。
:両辺微分して<math>\boldsymbol{f}'(x)=\{f(x)\boldsymbol{c}\}=f'(x)\boldsymbol{c}</math>
:ここで元のベクトル関数との外積をとると
:<math>\boldsymbol{f}(x)\times\boldsymbol{f}'(x)=\{f(x)\boldsymbol{c}\}\times\{f'(x)\boldsymbol{c}\}=f(x)f'(x) (\boldsymbol{c}\times\boldsymbol{c})=f(x)f'(x)\boldsymbol{0}=\boldsymbol{0}</math>
:逆に、
:<math>\boldsymbol{f}(x)\times\boldsymbol{f}'(x)=\boldsymbol{0}</math>とすると一次従属なので
:<math>\boldsymbol{f}'(x)=g(x)\boldsymbol{f}(x)</math>という微分方程式が成り立つ。
:各成分ごとに微分方程式を解くと、
::これは変数分離型微分方程式なので第i成分は
::<math>\frac{df_i}{dx}=g(x)f_i(x)</math>
::<math>\int \frac{df_i}{f_i(x)}=\int g(x)dx</math>
::<math>G'(x)=g(x), C_i</math>を積分定数として<math>\log|f_i(x)|=G(x)+C_i</math>
::<math>C_i=\pm e^{C_i}</math>と改めておくと<math>f_i(x)=C_i e^{G(x)}</math>
:よって
:<math>\boldsymbol{f}(x)=\sum_i f_i(x) \boldsymbol{e}_i = \sum_i C_i e^{G(x)} \boldsymbol{e}_i = e^{G(x)} \sum_i C_i \boldsymbol{e}_i</math>
:ここで<math>f(x)=e^{G(x)}, \boldsymbol{c}=\sum_i C_i \boldsymbol{e}_i</math>と置くと
:<math>\boldsymbol{f}(x) = f(x) \boldsymbol{c}</math>となり、方向は変数に依らず一定であることが判る//
よって、以下が成り立つ。
{{定理|(平行条件の定理)}}
<math>\boldsymbol{c},\boldsymbol{f}(x)\neq\boldsymbol{0}</math>として
:<math>\boldsymbol{f}(x)=f(x)\boldsymbol{c} \iff \boldsymbol{f}(x) \times \boldsymbol{f}'(x) = \boldsymbol{0}</math>
{{定理終わり}}
ベクトル解析では三次元空間の場合を考えることが多いため上では外積を用いて証明したが、外積は3項ベクトル(または7項ベクトル)にしか定義されないのであった。
一般次元では外積に代わって次の関係式を用いる。
:<math>|\boldsymbol{f}(x)\cdot\boldsymbol{f}'(x)|=\|\boldsymbol{f}(x)\|\|\boldsymbol{f}'(x)\|</math>
これはCS不等式の等号成立の場合である。
実際、<math>\boldsymbol{f}(x)\cdot\boldsymbol{f}'(x)=\|\boldsymbol{f}(x)\|\|\boldsymbol{f}'(x)\|\cos\{\theta(x)\}</math>より等号成立の必要十分条件は
:<math>\cos\{\theta(x)\}=\pm1\iff\theta(x) \equiv 0 \,(\mathrm{mod}\pi)</math>
であり、2ベクトル<math>\boldsymbol{f}(x), \boldsymbol{f}'(x)</math>は平行とわかる。<br/>
平行ということは一次従属ということなので先程のように変数分離形微分方程式を解くことで3次元と同じ結果を得る。//
補足として、力学への応用を考える。
:速さの二乗<math>\|\boldsymbol{v}(t)\|^2</math>を時間微分すると
:<math>\frac{d}{dt}\|\boldsymbol{v}(t)\|^2=\frac{d}{dt}(\boldsymbol{v}(t)\cdot\boldsymbol{v}(t))=\frac{d\boldsymbol{v}(t)}{dt}\cdot\boldsymbol{v}(t)+\boldsymbol{v}(t)\cdot\frac{d\boldsymbol{v}(t)}{dt}=2(\boldsymbol{v}(t)\cdot\boldsymbol{a}(t))</math>
:よって等速運動の条件<math>\|\boldsymbol{v}(t)\|=\mathrm{const}.</math>は直交条件の定理から<math>\boldsymbol{v}(t)\perp\boldsymbol{a}(t)</math>に同値である。
:これを力学的に解釈すると、「加速度ベクトルは速度ベクトル方向に仕事をしないから速度ベクトルの大きさを変えずに向きだけを変える」となる。
:平面上で等速円運動を考えると円運動条件から<math>\boldsymbol{r}(t)\perp\boldsymbol{v}(t)</math>、等速条件から<math>\boldsymbol{v}(t)\perp\boldsymbol{a}(t)</math>なので<math>\boldsymbol{r}(t) /\!/ \boldsymbol{a}(t)</math>が出てくる。
:円運動条件<math>\|\boldsymbol{r}(t)\|^2=r^2</math>を一階微分すると
::<math>2\boldsymbol{r}(t)\cdot\boldsymbol{r}'(t)=0</math>
:もう一度微分して
::<math>2(\boldsymbol{r}(t)\cdot\boldsymbol{r}''(t)+\boldsymbol{r}'(t)\cdot\boldsymbol{r}'(t))=0</math>
:則ち
::<math>\boldsymbol{r}(t)\cdot\boldsymbol{a}(t)+\boldsymbol{v}(t)\cdot\boldsymbol{v}(t)=0</math>
:位置ベクトルと加速度ベクトルが一次従属なので<math>\boldsymbol{a}(t)=\lambda\boldsymbol{r}(t)</math>であり、等速条件より<math>\|\boldsymbol{v}(t)\|=v</math>なので
::<math>\lambda r^2 + v^2 = 0</math>
::<math>\therefore \lambda = -\frac{v^2}{r^2}<0</math>
:則ち<math>\boldsymbol{r}(t)</math>と<math>\boldsymbol{a}(t)</math>は逆向きであり、円運動の中心は<math>\boldsymbol{r}(t)</math>の始点なので<math>\boldsymbol{a}(t)</math>は常に円運動の中心を向く'''向心加速度'''であることが証明された。//
なお、3次元以上では「<math>\boldsymbol{a}\perp\boldsymbol{b}\land\boldsymbol{b}\perp\boldsymbol{c}\implies\boldsymbol{a}/\!/\boldsymbol{c}</math>」が一般には成り立たないのでこの議論を成立させるには追加の条件が必要である。
<math>\boldsymbol{f}(x)</math>の不定積分は、各<math>f_i(x)</math>の原始関数を並べたベクトルを<math>\boldsymbol{F}(x)</math>として
:<math>\int \boldsymbol{f}(x) dx = \boldsymbol{F}(x)+\boldsymbol{C}</math>(<math>\boldsymbol{C}</math>は各積分定数を並べたベクトル)
と表される。
また、定積分は
:<math>\int^b_a \boldsymbol{f}(x) dx=\boldsymbol{F}(b)-\boldsymbol{F}(a)</math>
と表される。
1変数ベクトル関数の積分について、以下が成り立つ(不定積分表記だが定積分に就ても同様)。
#定数倍の原始関数:<math>\int \{k\boldsymbol{a}(x)\} dx = k\int\boldsymbol{a}(x)dx</math>
#和・差の原始関数:<math>\int \{\boldsymbol{a}(x)\pm\boldsymbol{b}(x)\}dx=\int\boldsymbol{a}(x)dx\pm\int\boldsymbol{b}(x)dx</math>
#内積の原始関数<math>\int \{\boldsymbol{k}\cdot\boldsymbol{a}(x)\}dx=\boldsymbol{k} \cdot \left( \int \boldsymbol{a}(x) dx \right)</math>
#外積の原始関数<math>\int \{\boldsymbol{k}\times\boldsymbol{a}(x)\}dx=\boldsymbol{k} \times \left( \int \boldsymbol{a}(x) dx \right)</math>
#スカラー倍の部分積分:<math>\int f(x)\boldsymbol{a}'(x)dx= f(x)\boldsymbol{a}(x)-\int f'(x)\boldsymbol{a}(x) dx \iff \int f'(x)\boldsymbol{a}(x)dx= f(x)\boldsymbol{a}(x)-\int f(x)\boldsymbol{a}'(x) dx</math>
#内積の部分積分:<math>\int \{ \boldsymbol{a}(x)\cdot\boldsymbol{b}'(x) \}dx = \boldsymbol{a}(x)\cdot\boldsymbol{b}(x) - \int \{\boldsymbol{a}'(x)\cdot\boldsymbol{b}(x)\}dx</math>
#外積の部分積分:<math>\int \{ \boldsymbol{a}(x)\times\boldsymbol{b}'(x) \}dx = \boldsymbol{a}(x)\times\boldsymbol{b}(x) - \int \{\boldsymbol{a}'(x)\times\boldsymbol{b}(x)\}dx</math>
#置換積分:<math>u=f(x)</math>として<math>\int \boldsymbol{a}'\{f(x)\}f'(x) dx = \int \boldsymbol{a}(u)du</math>
平行条件の定理の証明でベクトル関数の微分方程式を解いたように、成分毎に考えることで解空間ベクトルを求められる。
:1階線型常微分方程式<math>\boldsymbol{f}'(x)+a(x)\boldsymbol{f}(x)=\boldsymbol{b}(x)</math>の解に就て考える。
:第<math>i</math>成分を考えると<math>f'_i(x)+a(x)f_i(x)=b_i(x)</math>という1階線型常微分方程式を得るので、
:両辺に積分因子<math>\mu(x)=\exp\left(\int a(x) dx\right)</math>を掛けることで
:<math>f_i(x)=\frac{1}{\mu(x)} \left\{ \int \mu(x) b_i(x) dx + C_i \right\}</math>を得る。
:よって一般解は
:<math>\boldsymbol{f}(x) = \sum_i \frac{1}{\mu(x)} \left\{ \int \mu(x) b_i(x) dx + C_i \right\} \boldsymbol{e}_i=\frac{1}{\mu(x)}\left\{ \int \mu(x) \boldsymbol{b}(x) dx + \boldsymbol{C} \right\}</math>
ベクトル関数は必ずしもここで扱った<math>\boldsymbol{f}: \mathbb{R}\to\mathbb{R}^n</math>のみを指さない。
例えば、ベクトル変数 <math>\boldsymbol{x}= \sum_i g_i (x) \boldsymbol{e}_i</math>に対して
:<math>\boldsymbol{h}(\boldsymbol{x})=\sum_i (h_i \circ g_i) (x) \boldsymbol{e}_i</math>
と定義されるような関数<math>\boldsymbol{h}:\mathbb{R}^m \to \mathbb{R}^m</math>もベクトル関数である。
また、始域と終域の次元が異なる<math>\boldsymbol{i}: \mathbb{R}^m \to \mathbb{R}^n \, (m, n\neq1)</math>のようなベクトル関数も考えられる。
一般に、始域が<math>\mathbb{R}^n (n\neq1)</math>であっても終域が<math>\mathbb{R}</math>である関数はベクトル関数に対して'''スカラー関数'''(scalar function)と呼ばれる。スカラー関数は入力ベクトルを「変数の組」と見れば通常の多変数関数に一致する。
この節で述べた理論は、多くは一般のベクトル関数に対しても成り立つ。但し、後述のヤコビ行列のような拡張を必要とするものもある。
また、多変数ベクトル関数<math>\boldsymbol{f}(x_1, x_2,\cdots,x_n)</math>を考えたとき、多変数微積分の理論は一変数微積分と同様にしてベクトル関数にもそのまま拡張される。
===ベクトル場・スカラー場===
写像<math>\boldsymbol{a}: \mathbb{R}^m \to \mathbb{R}^n</math>を'''ベクトル場'''(vector field)という。
実際には<math>m=n</math>の場合を考えることが多い。
写像<math>\varphi: \mathbb{R}^n \to \mathbb{R}</math>を'''スカラー場'''(scalar field)という。
それぞれ上で述べたベクトル関数・スカラー関数に対応する。
もう少し具体的に述べると、空間の領域<math>V</math>が与えられたときその各点にスカラーまたはベクトルを割り当てたものが場である。要するに、<math>p\in V</math>とすると
:スカラー場:<math>\varphi=\varphi(p)</math>
:ベクトル場:<math>\boldsymbol{a}=\boldsymbol{a}(p)</math>
のように場は「点を入力とする<sup>※</sup>関数」である。
<small>※なお、ベクトル場を図示するときは「出力されたベクトルの'''始点は原点でなく入力された点'''」であることに注意が必要である。出力ベクトルの成分表示は「入力点を基準に据えたときの位置ベクトル」なので原点から目盛を数えることに意味はない。</small>
ここで<math>V</math>に何かしらの座標が設定されていれば、その座標系の変数の組をベクトルと見做すことで場を「通常のスカラー関数・ベクトル関数」として扱えるのである。
則ち、「滑らかな場」という概念は「滑らかな関数」として定義することができる。より具体的に言うと、スカラー場・ベクトル場が'''滑らか'''であるとは対応するスカラー関数・ベクトル関数が<math>C^\infty</math>級であることである。但し、滑らかさは任意の座標変換で保たれるわけではないことに注意が必要である(後述の座標変換テンソル及びその逆行列の全ての成分関数が滑らかである必要がある)。
ここで、二変数関数の極値を思い返してみる。
<math>z=f(x, y)</math>が<math>(a, b)</math>で極大であるとは<math>\begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix}\neq\begin{pmatrix} a \\ b \end{pmatrix}</math>として
:<math>\exist \delta>0, \forall {\scriptstyle\left(\begin{array}{c} x \\[-6pt] y \end{array}\right)} \in \mathbb{R}^2, {\scriptstyle\left\| \left(\begin{array}{c} x \\[-6pt] y \end{array}\right) - \left(\begin{array}{c} a \\[-6pt] b \end{array}\right) \right\|} < \delta \implies f(x, y) \leq f(a, b)</math>
という定義だった。
<math>z=f(x, y)</math>は曲面を表すが、これを<math>z</math>軸正方向から<math>xy</math>平面に射影するとその陰が<math>(x, y)</math>の動く範囲となるのであった。
ここで<math>\boldsymbol{x}:=\begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix}, \boldsymbol{\alpha}:=\begin{pmatrix} a \\ b \end{pmatrix}</math>とすると<math>z=f(x, y)</math>はスカラー場<math>z=\phi(\boldsymbol{x})</math>と解釈することができ、更に条件法の前件は<math>\boldsymbol{\alpha}</math>の<math>\delta</math>-開球(二次元なので開円板)である。
なので、極大値の定義式をベクトル解析的に解釈すると「<math>xy</math>平面の各点に<math>z</math>の値を割り当てた数分布に於いて、開円板<math>B_\delta(\boldsymbol{\alpha})</math>内部に於ける<math>z</math>の最大値が<math>\phi(\boldsymbol{\alpha})</math>となるような正数<math>\delta</math>が存在する」ということである。
ベクトル場の例としては、電場・磁場・重力場などが挙げられる。
スカラー場の例としては、電位分布・温度分布・圧力分布などが挙げられる。
例えば、ベクトル場<math>\boldsymbol{f}=(x, 0, 0)</math>は、<math>\mathbb{R}^3</math>内の平面<math>x=k</math>上の任意点に、その点を始点とするベクトル<math>\begin{pmatrix} k \\ 0 \\ 0 \end{pmatrix}</math>が存在する状態を表す。
ベクトル場の和は、出力ベクトルの型が同じならばベクトル場の成分の和をとったものに等しい。
例えば、<math>\boldsymbol{f}(x, y, z)=(y, z, x), \boldsymbol{g}(x, y, z)=(z, x, y)</math>について
:<math>(\boldsymbol{f}+\boldsymbol{g})(x, y, z)=(y, z, x)+(z, x, y)=(y+z, z+x, x+y)</math>である。
これは、ベクトル場の加法の定義が
:<math>\forall p \in V, (\boldsymbol{f}+\boldsymbol{g})(p):=\boldsymbol{f}(p)+\boldsymbol{g}(p)</math>
となっていて且つ<math>V</math>に座標を入れればベクトル関数の加法則をそのまま適用できるためである(入力点が異なるとき、場同士は足すことができない)。
曲線<math>\{\boldsymbol{x}\in\mathbb{R}^2 \mid \varphi(\boldsymbol{x})=\mathrm{const}.\}</math>を'''等高線'''(等高曲線)、曲面<math>\{\boldsymbol{x}\in\mathbb{R}^3 \mid \varphi(\boldsymbol{x})=\mathrm{const}.\}</math>を'''等位面'''(等位曲面)という。これらの詳細は後述する。
==曲線論・曲面論==
===曲線===
<math>xy</math>平面上の曲線は<math>y=f(x) (x\in[a, b])</math>という陽関数表示で扱うことが多かった。しかし、これだと自分自身と交わる('''自己交叉'''する)曲線や<math>x=x_0</math>に対して<math>f(x_0)</math>の値が複数存在する(<math>f</math>が'''多価関数''')場合に不都合が生じる。
例えば円を陽関数表示しようとすると
:<math>x^2+y^2=r^2</math>を<math>y</math>に就いて解いて
:<math>y=\pm\sqrt{r^2-x^2}</math>
則ち
:<math>y=\begin{cases} \sqrt{r^2-x^2} & (y\geq0) \\ -\sqrt{r^2-x^2} & (y<0) \end{cases}</math>
という多価関数が必要になる。
これだと端点の振舞を一々調べる必要があって曲線の連続性や接線の議論が煩雑になってしまう。
しかし、先程も述べたように曲線の媒介変数表示はベクトル関数として見れるのであった。
:<math>\boldsymbol{r}(\theta) = r\begin{pmatrix} \cos\theta \\ \sin\theta \end{pmatrix}</math>(再掲)
こうすると一変数連続ベクトル関数によって曲線を表すことが可能である。物理的に捉えると「質点の運動の軌跡を原点からの位置ベクトルの時間変化で表す」ということである。
一般に、<math>\boldsymbol{r}\in\mathbb{R}^n, t \in I</math>としてベクトル方程式<math>\boldsymbol{r}=\boldsymbol{r}(t)</math>の解集合<math>\{\boldsymbol{r}(t) \mid t \in I \}</math>は<math>n</math>次元空間内の曲線<math>C</math>を表す。これを<math>C</math>の'''ベクトル表示'''という。
ベクトル表示は成分表示に直せば<math>\boldsymbol{r}(t)=\sum_i r_i(t)\boldsymbol{e}_i</math>となる。これは媒介変数表示<math>\begin{cases} x_1&=&r_1(t) \\ x_2&=&r_2(t) \\ &\,\,\vdots& \\ x_n&=&r_n(t) \end{cases}</math>をベクトル表記したものに一致する。
例えば、<math>\boldsymbol{r}(t)=\begin{pmatrix} a\cos t \\ a\sin t \\ bt \end{pmatrix}</math>は'''常螺旋'''(弦巻線)のベクトル表示である。
パラメータが増加するときの点の移動方向を曲線の'''正の向き'''と定める。曲線の'''負の向き'''はパラメータが減少するときの点の移動方向である。このとき、パラメータで'''向き付け'''された曲線という表現もなされる。曲線<math>C</math>に対し、同じパラメータを用いた逆向きの曲線を<math>-C</math>と表す。ベクトル表示では<math>C:\boldsymbol{r}=\boldsymbol{r}(t)</math>に対して<math>-C:\boldsymbol{r}=\boldsymbol{r}(-t)</math>ということである。
パラメータに関する変数変換<math>u=\phi(t)</math>を考える。但し、<math>\phi</math>は広義単調関数とする<sup>※</sup>。このとき、<math>\frac{du}{dt}</math>が非負ならば曲線の向き付けが保たれ、非正ならば向き付けが反転する。<math>\frac{du}{dt}=0</math>となる領域では点の運動が停止する。
<small>※<math>\phi</math>が非単調関数のときは曲線上の点が行ったり来たりすることになるため曲線のパラメータ表示としては扱いづらい。</small>
<math>\boldsymbol{r}(t) \in C^1</math>且つ<math>\boldsymbol{r}'(t)\neq\boldsymbol{0}</math>であるとき、曲線<math>C</math>は'''滑らか'''であるという。
滑らかな曲線<math>C:\boldsymbol{r}=\boldsymbol{r}(t)</math>に対して<math>\boldsymbol{r}'(t)</math>を<math>C</math>の'''速度ベクトル'''という。
<math>\overrightarrow{\mathrm{OP}}=\boldsymbol{r}</math>として点<math>\mathrm{P}(t)</math>に於ける速度ベクトルは<math>\lim_{\Delta t\to0}\frac{\boldsymbol{r}(t+\Delta t)-\boldsymbol{r}(t)}{\Delta t}</math>の極限ベクトルであるが、<math>\boldsymbol{r}(t+\Delta t)-\boldsymbol{r}(t)</math>を図示することで速度ベクトルが曲線<math>C</math>の点<math>\mathrm{P}(t)</math>に於ける接線の方向ベクトルになっていることがわかる。よって、速度ベクトルを'''接線ベクトル'''(接ベクトル)ともいう。
速度ベクトルが非零である曲線を'''正則'''な曲線と呼ぶ。滑らかな曲線は正則曲線である。
なお、一般には陽関数表示が区分的であることとベクトル表示の成分関数が区分的であることに対応はないほか、パラメータの取り方で速度ベクトルが変わるので「曲線の幾何学的滑らかさ」と「ベクトル表示した関数の解析学的滑らかさ」は一致するとは限らない。
正則な曲線に対して曲線長('''弧長''')を考える。
二次元曲線の場合は数学Ⅲで既に扱った。
:<math>L=\int_a^b \sqrt{\left(\frac{dx}{dt}\right)^2+\left(\frac{dy}{dt}\right)^2}dt</math>
実は、これを一般の<math>n</math>次元にそのまま拡張することができる。
{{定理|(弧長公式)}}
曲線<math>C:\boldsymbol{r}=\boldsymbol{r}(t)</math>の点<math>\mathrm{P}(a)</math>から点<math>\mathrm{P}(b)</math>までの長さ(<math>a<b</math>)は
:<math>L=\int_a^b \left\| \frac{d\boldsymbol{r}}{dt} \right\|dt</math>
で与えられる。
{{定理終わり}}
*証明
:<math>a=t_0, b=t_m</math>として閉区間<math>[a, b]</math>を各<math>t_i</math>で等分割する。このとき小区間<math>[t_{k-1}, t_k]</math>の長さは<math>\Delta t=\frac{b-a}{m}</math>。
:<math>C</math>の点<math>\mathrm{P}(a)</math>から点<math>\mathrm{P}(b)</math>までの長さ<math>L</math>は折れ線の長さ<math>\overline{\mathrm{P}(t_{k-1})\mathrm{P}(t_k)}</math>の総和で近似される。
:ここで<math>\overrightarrow{\mathrm{OP}}=\boldsymbol{r}(t)</math>より
::<math>L_m=\sum_{k=1}^m \| \boldsymbol{r}(t_k)-\boldsymbol{r}(t_{k-1}) \| = \sum_{k=1}^m \left\| \frac{\boldsymbol{r}(t_{k-1}+\Delta t)-\boldsymbol{r}(t_{k-1})}{\Delta t-0} \right\|(\Delta t-0)</math>
:分割を限りなく細かくする極限をとると<math>m\to\infty</math>より<math>\Delta t\to0</math>なので
::<math>\lim_{m\to\infty} L_m = \sum_{k=1}^\infty \left\| \frac{d\boldsymbol{r}}{dt}(t_{k-1}) \right\|dt</math>
:区分求積法より最後の無限級数は収束して
:<math>L=\int_a^b \left\| \frac{d\boldsymbol{r}}{dt} \right\|dt</math>//
ここで、<math>dl:=\left\| \frac{d\boldsymbol{r}}{dt} \right\|dt</math>という微小量を'''線素'''と呼ぶ。
1を線素に関して積分したパラメータ<math>s:=\int_0^t dl</math>を'''弧長パラメータ'''(標準パラメータ)という。弧長パラメータは曲線上で「基準点からの符号付き距離」を表す。
曲線の弧長パラメータによるベクトル表示('''弧長パラメータ表示''')を考える。<math>s=\int_0^t \left\| \frac{d\boldsymbol{r}}{dt} \right\|dt</math>で正則よりノルムは正。則ち<math>\frac{ds}{dt}>0</math>より<math>s=\phi(t)</math>は狭義単調増加なので、逆関数<math>t=\phi^{-1}(s)</math>を考えることができる。よって、<math>\boldsymbol{r}=\boldsymbol{r}(t)</math>に<math>t=\phi^{-1}(s)</math>を代入した<math>\boldsymbol{r}=\boldsymbol{r}(\phi^{-1}(s))</math>が弧長パラメータ表示である。これを<math>\boldsymbol{r}=\boldsymbol{r}(s)</math>と略記してしまうことも多いが、'''一般には元の<math>\boldsymbol{r}(t)</math>と成分関数が異なる'''ことに注意。
通常の媒介変数によるベクトル表示は「座標系が予め与えられた状況」での表示であるが、弧長パラメータは座標系を取り替えたとしても表す曲線そのものが変わらなければ不変である。よって、「座標系に依存しない表記」として弧長パラメータ表示は多く利用されている。
また、弧長パラメータ表示で連鎖律を適用すると
:<math>\frac{d\boldsymbol{r}(s)}{ds}=\frac{d\boldsymbol{r}(t)}{dt}\cdot\frac{dt}{ds}=\frac{d\boldsymbol{r}(t)}{dt}\cdot\frac{1}{\frac{ds}{dt}}</math>
ここで微分積分学の基本定理より
:<math>\frac{ds}{dt}=\frac{d}{dt} \int_0^t \left\| \frac{d\boldsymbol{r}}{dt} \right\|dt = \left\| \frac{d\boldsymbol{r}}{dt} \right\|</math>
なので
:<math>\frac{d\boldsymbol{r}(s)}{ds}=\frac{\frac{d\boldsymbol{r}(t)}{dt}}{\left\| \frac{d\boldsymbol{r}}{dt} \right\|}</math>
であり、自身のノルムで割ってるので恒等的に<math>\left\| \frac{d\boldsymbol{r}}{ds} \right\|=1</math>である。
よって、弧長パラメータ表示された曲線の接ベクトルは常に単位ベクトルである。
弧長パラメータ表示された曲線で線素を考えると<math>s=\int_0^s \left\| \frac{d\boldsymbol{r}(s)}{ds} \right\| ds = \int_0^s dl</math>だが、常に<math>\left\| \frac{d\boldsymbol{r}}{ds} \right\|=1</math>なので<math>ds=dl</math>であり、弧長パラメータの微小量は線素に等しい(弧長パラメータそのものが1の線素に関する積分なので当たり前ではある)。
<math>\boldsymbol{e}_\dagger(s)=\frac{d\boldsymbol{r}}{ds}</math>と置くと、点<math>\mathrm{P}(s_0)</math>に於ける接線の方程式は
:<math>\boldsymbol{p}-\boldsymbol{r}(s_0)=\boldsymbol{e}_\dagger(s_0) (s-s_0)</math>
と表される。
ここで<math>\boldsymbol{r}(s)</math>の中心<math>s_0</math>に於けるテイラー展開は
:<math>\boldsymbol{r}(s)=\sum_{i=0}^\infty \frac{(s-s_0)^i}{i!} \frac{d^i}{ds^i}\boldsymbol{r}(s_0) </math>
であり、「接線が一次近似に対応する」という構造はベクトル関数でも維持されることが判った。
領域<math>\boldsymbol{D}</math>上の滑らかなベクトル場<math>\boldsymbol{a}</math>について、微分方程式<math>\frac{d\boldsymbol{r}}{dt}=\boldsymbol{a}(\boldsymbol{r}(t)) (\boldsymbol{r} \in \boldsymbol{D})</math>で与えられる曲線<math>\boldsymbol{r}=\boldsymbol{r}(t)</math>を<math>\boldsymbol{a}</math>の'''流線'''(streamline)という(入力点を位置ベクトルと同一視していることに注意)。流線の接線ベクトルは元のベクトル場そのものになるので、ベクトルの相等から得る方程式<math>\frac{dx_1}{a_1}=\frac{dx_2}{a_2}=\cdots=\frac{dx_n}{a_n}</math>を'''流線方程式'''という。
例えば、<math>\boldsymbol{f}(x, y)=(y, x)</math>の流線は、
:定義から<math>\frac{dx}{dt}=y, \frac{dy}{dt}=x</math>
:合成関数の微分公式から<math>\frac{dy}{dx}=\frac{\frac{dy}{dt}}{\frac{dx}{dt}}=\frac{x}{y}</math>
:<math>\int y dy=\int xdx</math>
:<math>\frac{1}{2}y^2=\frac{1}{2}x^2+C</math>
:よって双曲線<math>y^2-x^2=2C</math>//
この場合、<math>t</math>に関する2つの微分方程式を組み合わせることで
:<math>\frac{d^2x}{dt^2}=x, \frac{d^2y}{dt^2}=y</math>という二階線型常微分方程式となり、一般解が双曲線関数を用いて<math>\begin{cases} x=C_1\cosh t+C_2\sinh t \\ y=C_1\sinh t+C_2\cosh t \end{cases}</math>であることが容易に判る。<br>なお、流線方程式を用いても<math>\frac{dx}{y}=\frac{dy}{x}</math>から<math>\frac{dy}{dx}=\frac{x}{y}</math>が出てくる。
「流線の接線ベクトルが元のベクトル場になる」とはつまり、「接線が常にベクトル場と平行になるような曲線」を考えているということである。滑らかなベクトル場を考えているためそのような曲線は常に存在する。流線は「ベクトル場の流れを繋げていった曲線」と考えることができるので、「流れを簡潔に図示」するのにちょうどよい。
有名な例として、電気力線・磁力線はそれぞれ電場<math>\boldsymbol{E}</math>・磁束密度<math>\boldsymbol{B}</math>の流線である。
流線の微分方程式を弧長パラメータ表示を用いて変形する。
:<math>\frac{d\boldsymbol{r}}{dt}=\boldsymbol{a}(\boldsymbol{r}(t))</math>の左辺に就いて
:<math>\frac{d\boldsymbol{r}}{ds}\cdot\frac{ds}{dt}=\frac{d\boldsymbol{r}}{ds}\cdot \|\boldsymbol{r}'(\phi^{-1}(s))\|</math>
元の方程式の両辺でノルムをとると
:<math>\left\|\frac{d\boldsymbol{r}}{dt}\right\|=\|\boldsymbol{a}(\boldsymbol{r}(t))\|</math>
代入して
:<math>\frac{d\boldsymbol{r}}{ds}\cdot\|\boldsymbol{r}'(\phi^{-1}(s))\|=\frac{d\boldsymbol{r}}{ds}\cdot\|\boldsymbol{a}(\boldsymbol{r}(t))\|</math>
:<math>\therefore \frac{d\boldsymbol{r}}{ds} = \boldsymbol{e}_{\boldsymbol{a}(\boldsymbol{r}(\phi^{-1}(s)))}</math>
ここから、流線の形状はノルムには関係なく方向場のみで決まることがわかる。
===フレネ標搆===
ここでは、三次元空間に於ける正則曲線について考える。
<math>C:\boldsymbol{r}=\boldsymbol{r}(s)</math>上の点<math>\mathrm{P}(s)</math>に於ける単位接線ベクトルを<math>\boldsymbol{t}</math>とおく。
先程の議論より<math>\boldsymbol{t}(s)=\frac{d\boldsymbol{r}(s)}{ds}</math>であり、<math>\left\| \frac{d\boldsymbol{r}(s)}{ds} \right\|=1 (=\mathrm{const}.)</math>なので直交条件の定理から<math>\boldsymbol{t}\cdot\frac{d\boldsymbol{t}}{ds}=0</math>、則ち<math>\boldsymbol{t} \perp \frac{d\boldsymbol{t}(s)}{ds}</math>である。この<math>\frac{d\boldsymbol{t}(s)}{ds}</math>を'''主法線ベクトル'''という。
主法線ベクトルを<math>\boldsymbol{n}</math>とおくとき、<math>\boldsymbol{b}=\boldsymbol{t}\times\boldsymbol{n}</math>を'''従法線ベクトル'''(陪法線ベクトル)という。ここで先程の結果より<math>\boldsymbol{t}\perp\boldsymbol{n}</math>であって<math>\boldsymbol{b}</math>の定義より<math>\boldsymbol{t}\perp\boldsymbol{b}, \boldsymbol{n}\perp\boldsymbol{b}</math>なので、この3ベクトルの組を正規化した<math>\{\boldsymbol{e}_t, \boldsymbol{e}_n, \boldsymbol{e}_b \}</math>は<math>\mathbb{R}^3</math>の正規直交基底である。これを<math>\mathbb{R}^3</math>の'''フレネ標搆'''という。外積の結果よりフレネ標搆は<math>\boldsymbol{e}_t, \boldsymbol{e}_n, \boldsymbol{e}_b</math>の順に右手系をなす。なお、接線ベクトル・主法線ベクトル・従法線ベクトルは全て曲線の位置ベクトル<math>\boldsymbol{r}(s)</math>を入力したベクトル場として捉えることができる。
<math>\{\boldsymbol{e}_n, \boldsymbol{e}_b \}</math>の張る平面を'''法平面'''、<math>\{\boldsymbol{e}_t, \boldsymbol{e}_b \}</math>の張る平面を'''展直平面'''、<math>\{\boldsymbol{e}_t, \boldsymbol{e}_n \}</math>の張る平面を'''接触平面'''という。
即ち、法平面・展直平面・接触平面は<math>tnb</math>空間の点<math>\mathrm{P}(s)</math>を原点とした基準面である。
平面の方程式の法線ベクトルに接ベクトル・主法線ベクトル・従法線ベクトルをそれぞれ代入することで
:法平面の方程式:<math>(\boldsymbol{p}-\boldsymbol{r}(s))\cdot\boldsymbol{t}(s)=0</math>
:展直平面の方程式:<math>(\boldsymbol{p}-\boldsymbol{r}(s))\cdot\boldsymbol{n}(s)=0</math>
:接触平面の方程式:<math>(\boldsymbol{p}-\boldsymbol{r}(s))\cdot\boldsymbol{b}(s)=0</math>
とわかる。
<math>\|\boldsymbol{t}\|=1</math>は常に成り立つが<math>\|\boldsymbol{n}\|, \|\boldsymbol{b}\|</math>は<math>1</math>とは限らない。そこで、主法線ベクトルの大きさ<math>\kappa(s)=\|\boldsymbol{n}(s)\|</math>を曲線<math>C</math>の'''曲率'''と呼ぶことにする。なお、<math>\|\boldsymbol{b}\|=\| \boldsymbol{t} \| \|\boldsymbol{n}\|\sin\frac{\pi}{2}</math>より<math>\|\boldsymbol{b}\|=\|\boldsymbol{n}\|=\kappa</math>が成り立つ。
主法線ベクトルの定義に立ち戻ると<math>\boldsymbol{n}(s)=\frac{d\boldsymbol{t}(s)}{ds}</math>であった。つまり、主法線ベクトルは接ベクトルの速度ベクトルなので「弧長パラメータを変化させたときに接ベクトルがどのくらい変化するか」という指標である。接ベクトルの変化の大小と<math>\kappa</math>の大小は対応し、接ベクトルの大小はカーブの緩急に対応することから<math>\kappa</math>の大小とカーブの緩急も対応する。これが「曲率」という名前の由来である。
なお、<math>\kappa(s)=0</math>の場合は<math>\boldsymbol{n}(s)=\boldsymbol{0}</math>なので<math>\boldsymbol{t}(s)=\boldsymbol{k}</math>(定ベクトル)であり、<math>\boldsymbol{r}(s)=s\boldsymbol{k}</math>という直線の場合に対応することがわかる。
単位接ベクトルの<math>s</math>を微分変数とする導関数(<math>s</math>-導関数)は主法線ベクトルだったが、単位主法線ベクトル・単位従法線ベクトルの<math>s</math>-導関数がどのように表されるか見ていく。
ここで、フレネ標搆が<math>\mathbb{R}^3</math>の正規直交基底であることから、<math>\frac{d\boldsymbol{e}_n}{ds}, \frac{d\boldsymbol{e}_b}{ds}</math>ともにフレネ標搆の一次結合で表現できると予想される。
単位従法線ベクトルに就いて
:<math>\frac{d\boldsymbol{e}_b}{ds}=\frac{d}{ds}(\boldsymbol{e}_t\times\boldsymbol{e}_n)=\frac{d\boldsymbol{e}_t}{ds}\times\boldsymbol{e}_n+\boldsymbol{e}_t\times\frac{d\boldsymbol{e}_n}{ds}</math>
<math>\boldsymbol{t}=\boldsymbol{e}_t</math>より<math>\frac{d\boldsymbol{e}_t}{ds}=\boldsymbol{n}=\kappa\boldsymbol{e}_n</math>則ち<math>\frac{d\boldsymbol{e}_t}{ds}\times\boldsymbol{e}_n=\kappa\boldsymbol{e}_n\times\boldsymbol{e}_n=\boldsymbol{0}</math>なので
:<math>\frac{d\boldsymbol{e}_b}{ds}=\boldsymbol{e}_t\times\frac{d\boldsymbol{e}_n}{ds}</math>
<math>\|\boldsymbol{e}_n\|=1</math>から直交条件の定理より<math>\boldsymbol{e}_n\perp\frac{d\boldsymbol{e}_n}{ds}</math>なので
:<math>\boldsymbol{e}_n\times\frac{d\boldsymbol{e}_b}{ds}=\boldsymbol{e}_n\times(\boldsymbol{e}_t\times\frac{d\boldsymbol{e}_n}{ds})=\left(\boldsymbol{e}_n\cdot\frac{d\boldsymbol{e}_n}{ds}\right)-(\boldsymbol{e}_n\cdot\boldsymbol{e}_t)\frac{d\boldsymbol{e}_n}{ds}=\boldsymbol{0}</math>
外積が零ベクトルなので<math>\frac{d\boldsymbol{e}_b}{ds} /\!\!/ \boldsymbol{e}_n</math>であり、一次従属より
:<math>\frac{d\boldsymbol{e}_b}{ds}=-\tau\boldsymbol{e}_n</math>
となるスカラー関数<math>\tau(s)</math>が存在する。
この<math>\tau(s)</math>を曲線<math>C</math>の'''捩率'''と呼ぶ。捩率は接触平面の回転(捩れ)の率を表す。
<math>\tau=0</math>ならば<math>\frac{d\boldsymbol{e}_b}{ds}=0</math>より<math>\boldsymbol{e}_b</math>方向は変化しないので曲線は接触平面と平行な平面上に拘束される。即ち、<math>C</math>は平面曲線である。
単位主法線ベクトルに就いて
:<math>\frac{d\boldsymbol{e}_n}{ds}=\frac{d}{ds}(\boldsymbol{e}_b\times\boldsymbol{e}_t)=\frac{d\boldsymbol{e}_b}{ds}\times\boldsymbol{e}_t+\boldsymbol{e}_b\times\frac{d\boldsymbol{e}_t}{ds}</math>
ここで<math>\frac{d\boldsymbol{e}_t}{ds}=\kappa\boldsymbol{e}_n, \frac{d\boldsymbol{e}_b}{ds}=-\tau\boldsymbol{e}_n</math>を代入して
:<math>\frac{d\boldsymbol{e}_n}{ds}=-\tau\boldsymbol{e}_n\times\boldsymbol{e}_t+\boldsymbol{e}_b\times\kappa\boldsymbol{e}_n=\tau\boldsymbol{e}_b-\kappa\boldsymbol{e}_t</math>
よって、フレネ標搆の弧長パラメータを微分変数とする導関数を以下のようにフレネ標搆の一次結合で表すことができた。
:<math>\begin{cases} \frac{d\boldsymbol{e}_t}{ds}=\kappa\boldsymbol{e}_n \\ \frac{d\boldsymbol{e}_n}{ds} = \tau\boldsymbol{e}_b-\kappa\boldsymbol{e}_t \\ \frac{d\boldsymbol{e}_b}{ds}=-\tau\boldsymbol{e}_n \end{cases}</math>
これを一次変換で表記すると以下のようになる。但し、厳密にはベクトルを成分としている部分は列ではなく行に配置するのが正しいことに注意。
{{定理|(フレネ=セレーの公式)}}
:<math>\frac{d}{ds}\begin{pmatrix} \boldsymbol{e}_t \\ \boldsymbol{e}_n \\ \boldsymbol{e}_b \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 0 & \kappa & 0 \\ -\kappa & 0 & \tau \\ 0 & -\tau & 0 \end{pmatrix} \begin{pmatrix} \boldsymbol{e}_t \\ \boldsymbol{e}_n \\ \boldsymbol{e}_b \end{pmatrix}</math>
{{定理終わり}}
表現行列が反対称行列(歪対称行列)になっているが、これは「直交変換を一次近似すると反対称変換になる」という無限小回転の理論に対応する。
捩率を求めるときは「基底分解の係数は対応する基底ベクトルとの内積に等しい」という性質を利用すれば<math>\boldsymbol{e}_b\cdot\frac{d\boldsymbol{e}_n}{ds}=\tau</math>となるので左辺を計算すればよい。
例えば、円<math>\begin{cases} x^2+y^2=a^2 \\ z=b \end{cases}</math>の曲率と捩率は以下のように求まる。
:媒介変数表示して<math>\boldsymbol{r}(t)=\begin{pmatrix} a\cos t \\ a\sin t \\ b \end{pmatrix}</math>
:接線ベクトルは<math>\frac{d\boldsymbol{r}(t)}{dt}=\begin{pmatrix} -a\sin t \\ a\cos t \\ 0 \end{pmatrix}</math>
:弧長パラメータ<math>s</math>は<math>s=\int^t_0 \left\|\frac{d\boldsymbol{r}(t)}{dt}\right\|dt = \int_0^t a dt = at</math>
:<math>\therefore t=\frac{s}{a}</math>
:<math>\boldsymbol{r}(s)=\begin{pmatrix} a\cos\frac{s}{a} \\ a\sin\frac{s}{a} \\ b \end{pmatrix}</math>
:<math>\boldsymbol{t}=\frac{d\boldsymbol{r}(s)}{ds}=\begin{pmatrix} -\sin\frac{s}{a} \\ \cos\frac{s}{a} \\ 0 \end{pmatrix}</math>
:<math>\boldsymbol{n}=\frac{d\boldsymbol{t}(s)}{ds}=\frac{1}{a}\begin{pmatrix} -\cos\frac{s}{a} \\ -\sin\frac{s}{a} \\ 0 \end{pmatrix}</math>
:<math>\kappa=\|\boldsymbol{n}\|=\frac{1}{a}</math>
:<math>\boldsymbol{b}=\boldsymbol{t}\times\boldsymbol{n} = \begin{pmatrix} 0 \\ 0 \\ \frac{1}{a} \end{pmatrix}</math>
:<math>\boldsymbol{e}_n=\begin{pmatrix} -\cos\frac{s}{a} \\ -\sin\frac{s}{a} \\ 0 \end{pmatrix}</math>
:<math>\frac{d\boldsymbol{e}_n}{ds}=\frac{1}{a}\begin{pmatrix} \sin\frac{s}{a} \\ -\cos\frac{s}{a} \\ 0 \end{pmatrix}</math>
:<math>\boldsymbol{e}_b = \begin{pmatrix} 0 \\ 0 \\ 1 \end{pmatrix}</math>
:<math>\tau = \begin{pmatrix} 0 \\ 0 \\ 1 \end{pmatrix}\cdot\frac{1}{a}\begin{pmatrix} \sin\frac{s}{a} \\ -\cos\frac{s}{a} \\ 0 \end{pmatrix}=0</math>//
フレネ・セレーの公式は[[線型代数学続論/行列値関数|行列関数]]に関する一階常微分方程式である。そのため、微分方程式の基本定理(ピカール=リンデレーエフの定理)により初期条件(<math>s=0</math>に於けるフレネ標搆)を与えれば、滑らかな曲率関数・捩率関数の組<math>(\kappa, \tau)</math>を定めることで微分方程式の解として一般の<math>s</math>に対するフレネ標搆を一意に得る。このとき、曲線<math>C:\boldsymbol{r}=\boldsymbol{r}(s)</math>は接ベクトルを出発点を選んで積分することで決定される。
従って、次の定理が成り立つ<!-- 厳密証明はhttps://sshmathgeom.private.coocan.jp/diffgeom/curvetheorem.htmlを参照 -->。
{{定理|(曲線の基本定理)}}
開区間<math>(a,b)</math>上の実数<math>s</math>を変数とする2つの滑らかな関数<math>\kappa(s),\tau(s)</math>を与える。但し、<math>\kappa(s)</math>は正とする。<br/>
このとき、<math>\kappa(s)</math>を曲率、<math>\tau(s)</math>を捩率、<math>s</math>を弧長パラメータとする三次元空間上の曲線<math>C</math>が剛体運動を除いて一意に定まる。
{{定理終わり}}
剛体運動とは「曲線の形を変えない」運動のことである(平行移動・回転など)。
<math>\kappa(s), \tau(s)</math>の定める曲線族を一般に<math>\mathcal{C}[\kappa, \tau]</math>と書く。
例えば、円を含む螺旋は<math>c_1, c_2=\mathrm{const}.</math>として<math>\mathcal{C}[c_1, c_2]</math>と書ける。
<math>R=\frac{1}{\kappa}</math>を'''曲率半径'''という。曲率半径は曲線の特定のカーブにおける曲がり具合の急さを表す指標であり、カーブを近似する真円('''密着円''')の半径でもある。高速道路の標識で<math>R=\circ\circ \mathrm{m}</math>は、そのカーブの曲率半径を示している。道路設計では、快適なドライブの為曲率半径がなるべく大きくなるように工夫を凝らしている。
ここで<math>\boldsymbol{r}(s)</math>の中心<math>s_0</math>に於けるテイラー展開は
:<math>\boldsymbol{r}(s)=\sum_{i=0}^\infty \frac{(s-s_0)^i}{i!} \frac{d^i}{ds^i}\boldsymbol{r}(s_0) </math>(再掲)
だったが、二次近似式(三次以降を切り捨てた式)を考えると
:<math>\boldsymbol{r}(s) \fallingdotseq \boldsymbol{r}(s_0)+\frac{d\boldsymbol{r}(s_0)}{ds}(s-s_0) + \frac{1}{2}\frac{d^2\boldsymbol{r}(s_0)}{ds^2}(s-s_0)^2 </math>
フレネ標搆を用いて書き直すと
:<math>\boldsymbol{r}(s) \fallingdotseq \boldsymbol{r}(s_0)+\boldsymbol{e}_t(s-s_0) + \frac{1}{2}\kappa(s_0)\boldsymbol{e}_n(s-s_0)^2 </math>
二次近似とは「曲線を円弧で近似する」ことだったので曲率<math>\kappa(s_0)</math>が近似に用いる円弧と関係ある量であることが予想される。<br/>
接触平面で密着円<math> \| \boldsymbol{r} - (\boldsymbol{r}(s_0)+R\boldsymbol{e}_n) \| = R </math>を考える。接触平面を<math>xy</math>平面と考えると円の方程式は
:<math>x^2+(y-R)^2=R^2</math>
:<math>y=R-\sqrt{R^2-x^2}</math>
テイラー展開して
:<math>y=\frac{x^2}{2R}+O(x^4)</math>
二次の項を比較すると
:<math>\frac{x^2}{2R}=\frac{(s-s_0)^2}{2}\kappa</math>
よって
:<math>R=\frac{1}{\kappa}</math>
と定義するのは妥当である。
なお、先ほど求めた円の曲率から、真円に関して「曲率半径=半径」であることが判る。
フレネ・セレーの公式で最初の二行二列のみを考えると<math>\mathbb{R}^2</math>内の曲線に対するフレネ・セレーの公式を得る。一般に<math>\mathbb{R}^n</math>上の曲線に対し、今回の議論と同様にして接ベクトル・主法線ベクトル・曲率を定義することができる。但し、三次元空間と異なって同じ曲率に対して異なる曲線を与えることができる(主法線ベクトルが接触平面内で接ベクトルに対して左右どちらを向くかがそのままでは定まらないため)。なお、4次元以上であっても平面拘束曲線ならば捩率は0であって従法線ベクトルは零ベクトルに定まる。
===単純閉曲線===
パラメータ区間を<math>I=[a, b]</math>とする。
このとき、曲線の端点はそれぞれ<math>\mathrm{P}(a), \mathrm{P}(b)</math>である。
端点が一致する、つまり<math>\mathrm{P}(a)=\mathrm{P}(b)</math>である連続曲線を'''閉曲線'''という。
自己交叉しない、つまり<math>\forall t_1, t_2 \in (a, b), t_1 \neq t_2 \iff \mathrm{P}(t_1)\neq\mathrm{P}(t_2)</math>となる閉曲線を'''単純閉曲線'''(ジョルダン曲線)という。閉曲線でない曲線に就いて「自己交叉しない」という条件は「曲線を表すベクトル関数が単射」と同値であるので、端点のみ単射性を外してやれば単純閉曲線の定義を得る。
幾何学的直観から、平面に拘束された単純閉曲線はその平面を単純閉曲線で囲まれた'''内部'''とそうでない'''外部'''の二つの領域に分割することが予想できる。
このことは以下の定理によって保証される。
{{定理|(ジョルダンの曲線定理)}}
平面<math>\Pi\subset\mathbb{R}^n</math>内の任意の単純閉曲線<math>\gamma</math>に対し、有界領域<math>I</math>・非有界領域<math>O</math>の組であって<math>\Pi\setminus\gamma=I \sqcup O</math>且つ<math>\partial{I}=\partial{O}=\gamma</math>であるものが唯一つに定まる。
{{定理終わり}}
この<math>I, O</math>をそれぞれ内部・外部と定義する。証明は[[位相幾何学]]で行う。なお、「<math>\partial{I}=\partial{O}=\gamma</math>」を態々明示しているのは、滑らかでない単純閉曲線に対しては「<math>\Pi\setminus\gamma=I \sqcup O \implies \partial{I}=\partial{O}=\gamma</math>」が自明でないためである。
正則単純閉曲線に対して「曲線の向き」の幾何学的意味を考える。
ジョルダンの曲線定理より単純閉曲線<math>\gamma:\boldsymbol{r}=\boldsymbol{r}(s) \quad(\boldsymbol{r}\in \Pi)</math>は平面<math>\Pi</math>を内部<math>I</math>と外部<math>O</math>に分割する。平面拘束曲線なので<math>\forall{s}, \tau(s)=0</math>であり、従法線ベクトルは零ベクトル且つ接触平面が常に<math>\Pi</math>に一致する。
主法線ベクトル<math>\boldsymbol{n}(s)</math>が接ベクトル<math>\boldsymbol{t}(s)</math>に対して左側を向いているとすると、<math>\boldsymbol{r}(s_0)+\varepsilon\boldsymbol{n}(s_0) \quad(\varepsilon>0)</math>が点<math>\mathrm{P}(s_0)</math>に於ける<math>\gamma</math>の進行方向左側にある点である。
ここで、<math>\mathrm{P}(s_0)</math>に於ける<math>\varepsilon</math>-開球<math>B_\varepsilon(s_0)</math>を考えると、平面<math>\Pi</math>上では<math>\boldsymbol{r}(s_0)+\varepsilon\boldsymbol{n}(s_0)</math>が左側の領域、<math>\boldsymbol{r}(s_0)+\varepsilon\boldsymbol{n}(s_0)</math>が右側の領域に入る。
<math>s=s_0</math>を動かすと各点で進行方向左は<math>I, O</math>のいずれかであり、<math>\gamma</math>の正則性と<math>I, O</math>の連結性から「<math>I, O</math>のどちらが左側であるかは曲線全体で変わらない」ことが言える。
ここで円の場合を考える。<math>\Pi</math>に直交座標<math>u, v</math>を入れると向心加速度の議論から「加速度ベクトル=主法線ベクトルは円の中心を向く」ので、「円の正の向きは円の内部を左手に見る進行方向」である。
任意の正則単純閉曲線<math>\gamma</math>に対して自己交叉を起こさないまま円へ連続変形する可逆写像が存在し、その変形に於いて「左側」と「<math>I, O</math>」の対応は変化しない。則ち、円で確認された「正の向きは囲まれた内部を左手に見る向き」は任意の正則単純閉曲線で成り立つ。
つまり、単純閉曲線の正の向きは点を動かしたときに'''自身の囲む領域の内部を左手に見る向き'''である。負の向きは左手に外部を見る向きである。
集合<math>A</math>に含まれる任意の2点に対してそれらを端点とする滑らかな曲線<math>C</math>をとれるとき、<math>A</math>は'''弧状連結'''であるという。
弧状連結集合<math>S</math>内の任意の閉曲線<math>\gamma</math>に対して1点に退化するような連続変形が可能なとき、<math>S</math>は'''単連結'''であるという。単連結でない集合は'''多重連結'''であるという。
平面<math>\Pi\subset\mathbb{R}^n</math>に含まれる単連結集合<math>S</math>に対し、<math>\hat{\Pi}:=\Pi\cup\{\infty\}</math>とすると集合<math>\hat{\Pi}\setminus{S}</math>は連結である。逆も成り立つ。
なお、「<math>A</math>が連結集合である」ことは「補集合<math>\overline{A}</math>が非連結集合である」ことを意味しない。そのため「単連結な連結集合」も考えられ、特に「単連結な領域」はこの先頻繁に登場する。
集合<math>A</math>に含まれる任意の2点を結んだ線分が<math>A</math>に包含されるとき、<math>A</math>は'''凸型'''であるという。凸型集合でない集合は'''凹型'''であるという。
集合<math>A</math>内の1点を固定してそこから<math>A</math>内任意点へ引いた線分が<math>A</math>に包含されるとき、<math>A</math>は'''星状'''(星型)であるという。このとき固定した点を'''星の中心'''という。凸型集合は全て星状集合である。
単純閉曲線<math>\gamma</math>を境界とする内部<math>I</math>に関して<math>I\cup\gamma</math>が凸型集合であるとき、<math>\gamma</math>を'''卵形線'''(凸単純閉曲線・オーヴァル)という。
曲線<math>C</math>の曲率関数<math>\kappa(s)</math>が<math>C^3</math>級であるとき、<math>\kappa'(s_0)=0</math>を満たす点<math>\mathrm{P}(s_0)</math>を<math>C</math>の'''頂点'''という。
例えば、標準楕円<math>\frac{x^2}{a^2}+\frac{y^2}{b^2}=1</math>の頂点は4点<math>(\pm{a},0),(0,\pm{b})</math>である。このことは、<math>\mathbb{R}^2</math>上曲線<math>C:\boldsymbol{r}=x(t)\boldsymbol{e}_x(t)+y(t)\boldsymbol{e}_y(t)</math>に対する曲率の公式<math>\kappa(t)=\frac{\left|\frac{dx}{dt}\frac{d^2y}{dt^2}-\frac{dy}{dt}\frac{d^2x}{dt^2}\right|}{\left\{\left(\frac{dx}{dt}\right)^2+\left(\frac{dy}{dt}\right)^2\right\}^\frac{3}{2}}</math>と<math>\frac{ds}{dt}>0</math>を用いて確かめられる。
実は、この事実は楕円に限らないことが以下の定理で示される。
{{定理|(ムコパディヤーヤの定理・四頂点定理)}}
<math>\mathbb{R}^2</math>上の滑らかな卵形線は少なくとも4つの頂点を持つ。
{{定理終わり}}
*証明
:滑らかな卵形線<math>C:\boldsymbol{r}=\boldsymbol{r}(s)\quad(s\in[a, b])</math>に対して曲率関数<math>\kappa(s)</math>は滑らかであり、<math>\kappa\in C^3</math>を満たす。
:卵形線は単純閉曲線なので<math>\mathrm{P}(a)=\mathrm{P(b)}</math>であり、<math>\kappa(a)=\kappa(b)</math>。
:曲率関数が定数関数のときは<math>\kappa\in C^\infty</math>且つ常に<math>\kappa'(s)=0</math>なので曲線を構成するすべての点が頂点であり、明らかに定理を満たす。
:曲率関数が定数関数でないとする。
:ワイエルシュトラスの極値定理より<math>\kappa(s)</math>は<math>s\in[a, b]</math>のどこかで最大値・最小値をとり、その点で<math>\kappa'(s)=0</math>を満たす。
:従って少なくとも2つの頂点を持つ。
:ここで、頂点がこの2つのみと仮定する。
:曲率が最大値・最小値をとる点をそれぞれ<math>\mathrm{M, N}</math>と置く。
:線分<math>\mathrm{MN}</math>を含む直線を<math>x</math>軸とし、その垂直方向に<math>y</math>軸をとる。
:<math>s</math>が増加すると曲線上の点が<math>\mathrm{N}\to\mathrm{M}</math>のように動くとき、
:<math>\kappa(s)</math>は最小値から最大値に向かって増大し、他に頂点がないので狭義単調増加である。
:同様に、<math>\mathrm{M}\to\mathrm{N}</math>の向きでは<math>\kappa(s)</math>は狭義単調減少である。
:従って、<math>\kappa'(s)y(s)\neq0</math>の正の側だけ考えれば良い。
:<math>y(a)=y(b)=0</math>に注意すると部分積分して
:<math>0<\int_a^b \kappa'(s)y(s)ds=-\int_a^b \kappa(s)y'(s)ds</math>
:主法線ベクトル<math>\boldsymbol{n}(s)= \begin{pmatrix} \xi_1(s) \\ \xi_2(s) \end{pmatrix}</math>を考えると二次元版フレネ=セレーの公式から<math>\frac{d\boldsymbol{n}}{ds}=-\kappa\frac{d\boldsymbol{r}}{ds}</math>なので
:<math>\xi'_2(s)=-\kappa(s)y'(s)</math>
:よって
:<math>-\int_a^b \kappa(s)y'(s)ds=\int_a^b \xi_2(s)ds = \left[\xi_2(s)\right]_a^b=0</math>
:なので矛盾した不等式<math>0<0</math>を得る。
:則ち、<math>\mathrm{M, N}</math>と異なる点で<math>\kappa'(s)=0</math>を満たす点が少なくとも一つ存在する。
:そのような点を<math>\mathrm{L}</math>と置く。
:<math>\mathrm{L}</math>が<math>\mathrm{N}\to\mathrm{M}</math>という経路の途中にあるとする。
:このとき、<math>\mathrm{L}</math>以外に<math>\kappa'(s)=0</math>を満たす点が存在すると「<math>\mathrm{M}\to\mathrm{N}</math>という経路の途中にそのような点が無い」という最初の仮定に反するので
:<math>\mathrm{M, N, L}</math>以外では<math>\kappa'(s)y(s)>0</math>である。
:同様に部分積分を行うことで矛盾した不等式を得、<math>\mathrm{M, N, L}</math>と異なる点で<math>\kappa'(s)=0</math>を満たす点が少なくとも一つ存在することが判る。
:この時点で「<math>\mathrm{M, N}</math>間の二つの経路のいずれにも<math>\kappa'(s)=0</math>を満たす点が存在しない」という仮定が否定されたのでこれ以上背理法を適用することはできない。
:よって、頂点個数の最小値は<math>4</math>である。//
最小値4をとる卵形線が実際に存在することは楕円の例で確かめた。
この定理は「卵形線」を「(正則)単純閉曲線」に取り換えてもそのまま成り立つことが知られている。一般の閉曲線でこの定理を成り立たせるには追加の条件が必要となる。
先程も述べたように、接ベクトルと単位主法線ベクトルは2次元以上の空間内部にある曲線ならば定義することができる。そして、<math>\boldsymbol{t}\cdot\boldsymbol{n}=0</math>も必ず成り立つ。よって、<math>\boldsymbol{e}_t\cdot\boldsymbol{e}_n=0</math>の両辺を<math>s</math>で微分して
:<math>\frac{d\boldsymbol{e}_t}{ds}\cdot\boldsymbol{e}_n+\boldsymbol{e}_t\cdot\frac{d\boldsymbol{e}_n}{ds}=0</math>
:<math>\therefore \boldsymbol{e}_t\cdot\frac{d\boldsymbol{e}_n}{ds}=-\boldsymbol{n}\cdot\boldsymbol{e}_n=-\kappa</math>
ここで「基底分解に於ける成分はその基底との内積に等しい」という性質から、<br/>
一般次元に於いても「<math>\frac{d\boldsymbol{e}_n}{ds}</math>の接線方向成分は<math>-\kappa(s)</math>」であることが判る。
ここで<math>C^2</math>級曲線の位置ベクトル<math>\boldsymbol{r}(s)</math>に対して単位主法線<math>\boldsymbol{e}_n(s)</math>を対応させることを考える。この対応を'''ガウス表示'''という。
<math>\boldsymbol{e}_n(s)</math>を二次までテイラー展開すると<math>\Delta s>0</math>を微小量として
:<math>\boldsymbol{e}_n(s+\Delta s)=\boldsymbol{e}_n(s)+\frac{d\boldsymbol{e}_n(s)}{ds}\Delta s + O(\Delta s^2)</math>
ここで<math>\boldsymbol{e}_t\cdot\frac{d\boldsymbol{e}_n}{ds}=-\kappa</math>より、<math>s</math>を<math>\Delta s</math>だけ動かしたときの接線方向の速さは<math>|\kappa(s)|\Delta s</math>である(<math>\kappa(s)</math>が正で正の向き、負で負の向きに動くとする)。
閉曲線に対してはガウス表示によって法線方向の変化を完全に捉えられるので、<math>\kappa(s)</math>を微小量<math>\Delta s</math>に関して積分した<math>\int_a^b \kappa(s)ds</math>を考えてみる。
ガウス表示では曲線を単位主法線ベクトルの描く単位円として考えることができる。閉曲線では<math>\mathrm{P}(a)=\mathrm{P}(b)</math>より明らかに<math>\boldsymbol{e}_n(a)=\boldsymbol{e}_n(b)</math>であり、閉曲線が一周する間にベクトル<math>\boldsymbol{e}_n(s)</math>はこの単位円を<math>m(\in\mathbb{Z})</math>周する<sup>※</sup>。
<small>※物理的には「円そのものが動いても円周上の質点は『この円をどっちの方向に何周したか』という情報しか持たない」ので、単位円が動くことは議論にあまり関係ない</small>
弧度法より単位円を<math>m</math>周する符号付き道のりは<math>2\pi{m}</math>であり、ガウス表示より<math>\int_a^b \kappa(s)ds=2\pi{m}</math>。
従って、<math>m=\frac{1}{2\pi}\int_a^b \kappa(s)ds</math>
この<math>m</math>を閉曲線の'''回転数'''と呼ぶことにする。
曲率が負の場合には積分値が途中で相殺されてしまうので、絶対値を付けて積分した
:<math>\mu:=\int_a^b |\kappa(s)|ds</math>
という量を考えることにする。
これを閉曲線の'''全曲率'''と呼ぶ。
全曲率に対して以下の定理が成り立つ。
{{定理|(フェンヒェルの定理)}}
滑らかな閉曲線の全曲率は<math>\mu\geq2\pi</math>を満たす。等号成立の場合は卵形線である。
{{定理終わり}}
証明は省略する。
===曲面===
多変数解析で既に扱った、三次元空間に於ける曲面の陽関数表示<math>z=f(x, y)</math>を'''モンジュ表示'''という。<math>f(x, y, z)=\mathrm{const}.</math>と陰関数表示された曲面は陰関数定理が成り立つ範囲でモンジュ表示に直すことができる。
一次式で陰関数表示される曲面を'''一次曲面'''という。平面の方程式より、一次曲面は全て平面である。
二次式で陰関数表示される曲面を'''二次曲面'''という。
以下、三次元空間に於ける二次曲面の例を挙げる。各係数は非退化条件を満たすとする。なお、「直線に平行な平面」は「直線を法線とする平面に垂直な平面」を意味することに注意。
*'''球面'''(sphere)
:高校数学で扱ったように、点<math>(a, b, c)</math>を中心とする半径<math>r</math>の球面の方程式は<math>(x-a)^2+(y-b)^2+(z-c)^2=r^2</math>である。この球面上の点の位置ベクトルは<math>\boldsymbol{r}=\begin{pmatrix} x \\ y \\ z \end{pmatrix}</math>なので、球面が満たすベクトル方程式は一般に<math>\|\boldsymbol{r}-\boldsymbol{a}\|=\mathrm{const}.</math>である。これは円のベクトル方程式の次元を上げたものである。
*'''楕円面'''(ellipsoid)
:楕円の方程式を拡張した方程式<math>\frac{x^2}{a^2}+\frac{y^2}{b^2}+\frac{z^2}{c^2}=1</math>が表す曲面である。<math>xyz</math>空間の基本面で切った断面は全て楕円となる。
*'''楕円拋物面'''(elliptic paraboloid)
:楕円の平面拘束条件を外した方程式<math>z=\frac{x^2}{a^2}+\frac{y^2}{b^2}</math>が表す曲面である。<math>z</math>軸に垂直な平面で切った断面は楕円、平行な平面で切った断面は拋物線となる。
*'''双曲拋物面'''(hyperbolic paraboloid)
:双曲線の平面拘束条件を外した方程式<math>z=\frac{x^2}{a^2}-\frac{y^2}{b^2}</math>が表す曲面である。<math>z</math>軸に垂直な平面で切った断面は双曲線、平行な平面で切った断面は拋物線となる。また、原点は鞍点である。
*'''一葉双曲面'''(hyperboloid of one sheet)
:楕円面の方程式の一つの項の符号を変えた<math>\frac{x^2}{a^2}+\frac{y^2}{b^2}-\frac{z^2}{c^2}=1</math>の表す曲面。<math>z</math>軸に垂直な平面で切った断面は楕円、平行な平面で切った断面は双曲線となる。
*'''二葉双曲面'''(hyperboloid of two sheet)
:楕円面の方程式の二つの項の符号を変えた<math>\frac{x^2}{a^2}-\frac{y^2}{b^2}-\frac{z^2}{c^2}=1</math>の表す曲面。断面の分類は一葉双曲面と同じだが、<math>m^2<c^2</math>のときは平面<math>z=m</math>と交わらないため「二葉」と名付けられている。
*'''錐面'''(conical surface)
:方程式<math>\frac{z^2}{c^2}=\frac{x^2}{a^2}+\frac{y^2}{b^2}</math>の表す曲面。<math>xy</math>平面との交点は原点のみであり、<math>yz</math>平面・<math>zx</math>平面で切った断面は直線である。
閉区間<math>I\subset\mathbb{R}</math>上の一変数ベクトル関数<math>\boldsymbol{r}(t)</math>を用いたベクトル方程式<math>\boldsymbol{r}=\boldsymbol{r}(t) \quad(t\in I)</math>の解集合は次元に依らず曲線を表した。
同様に、領域<sup>※</sup><math>D\subset\mathbb{R}^2</math>上の二変数ベクトル関数<math>\boldsymbol{r}(t, u)</math>を用いたベクトル方程式<math>\boldsymbol{r}=\boldsymbol{r}(t, u) \quad({\scriptstyle\left(\begin{array}{c} t \\[-6pt] u \end{array}\right)}\in D)</math>の解集合は次元に依らず曲面を表すと考えられる。
厳密には[[線型代数学/基底と次元|階数・退化次数の定理]]<!-- 次元定理・線型写像の基本定理 -->などを用いてこのことを確かめられる。
<small>※ここでいう「領域」は冒頭で厳密に定義した「領域」であることに注意。</small>
曲線と同様に、曲面の'''パラメータ表示'''と'''ベクトル表示'''は次のように定義される。
:パラメータ表示:<math>\begin{cases} x_1&=&r_1(t, u) \\ x_2&=&r_2(t, u) \\ &\,\,\vdots& \\ x_n&=&r_n(t, u) \end{cases}</math>
:ベクトル表示:<math>\left\{\boldsymbol{r}(t, u) \,\bigg|\, {\scriptstyle\left(\begin{array}{c} t \\[-6pt] u \end{array}\right)} \in D \right\}</math>
また、<math>S:\boldsymbol{r}=\boldsymbol{r}(t, u)</math>のようにも表す。
例えば、<math>k>l>0</math>として<math>\boldsymbol{r}(t, u)=\begin{pmatrix} (k+l\cos u)\cos t \\ (k+l\cos u)\sin t \\ l\sin u \end{pmatrix} \quad(D=\left\{ \begin{pmatrix} t \\ u \end{pmatrix} \bigg| \begin{array}{c} 0 \leq t \leq 2\pi \\ 0 \leq u \leq 2\pi \end{array} \right\})</math>は'''トーラス'''のベクトル表示である。
<math>\mathbb{R}^3</math>上の平面の方程式は高校数学に於いて<math>\begin{pmatrix} a \\ b \\ c \end{pmatrix}\neq\boldsymbol{0}</math>として一次式<math>ax+by+cz+d=0</math>と表せることを学んだ。
これのベクトル方程式を求めてみよう。
:①<math>c=0</math>のとき
::平面の方程式は<math>\begin{cases} ax+by+d=0 \\ z=\mathrm{const}. \end{cases}</math>
::[1]<math>b=0</math>のとき
:::平面の方程式は<math>\begin{cases} ax+d=0 \\ y=\mathrm{const}. \\ z=\mathrm{const}. \end{cases}</math>
:::<math>\begin{pmatrix} a \\ b \\ c \end{pmatrix}\neq\boldsymbol{0}</math>より<math>a\neq0</math>
:::<math>y=t, z=u</math>と置換すると
:::<math>\begin{pmatrix} x \\ y \\ z \end{pmatrix}=\begin{pmatrix} -\frac{d}{a} \\ t \\ u \end{pmatrix}</math>
:::<math>\boldsymbol{r} = t\begin{pmatrix} 0 \\ 1 \\ 0 \end{pmatrix}+u\begin{pmatrix} 0 \\ 0 \\ 1 \end{pmatrix}+\begin{pmatrix} -\frac{d}{a} \\ 0 \\ 0 \end{pmatrix}</math>
::[2]<math>b\neq0</math>のとき
:::<math>x=t, z=u</math>と置換すると
:::<math>\begin{pmatrix} x \\ y \\ z \end{pmatrix}=\begin{pmatrix} t \\ -\frac{a}{b}t-\frac{d}{b} \\ u \end{pmatrix}</math>
:::<math>\boldsymbol{r} = t\begin{pmatrix} 1 \\ -\frac{a}{b} \\ 0 \end{pmatrix}+u\begin{pmatrix} 0 \\ 0 \\ 1 \end{pmatrix}+\begin{pmatrix} 0 \\ -\frac{d}{b} \\ 0 \end{pmatrix}</math>
:②<math>c\neq0</math>のとき
::<math>x=t, y=u</math>と置換すると
::<math>\begin{pmatrix} x \\ y \\ z \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} t \\ u \\ -\frac{a}{c}t-\frac{b}{c}u-\frac{d}{c} \end{pmatrix}</math>
::<math>\boldsymbol{r}=t\begin{pmatrix} 1 \\ 0 \\ -\frac{a}{c} \end{pmatrix}+u\begin{pmatrix} 0 \\ 1 \\ -\frac{b}{c} \end{pmatrix} + \begin{pmatrix} 0 \\ 0 \\ -\frac{d}{c} \end{pmatrix}</math>
なお、ここから平面のベクトル方程式が一般に<math>\boldsymbol{r}=\boldsymbol{a}+t\boldsymbol{b}+u\boldsymbol{c}</math>という「直線のベクトル方程式を拡張した形」であることがわかる。
<math>\boldsymbol{r}(t, u)\in C^1</math>且つ<math>\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}, \frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}\neq\boldsymbol{0}</math>である曲面を'''滑らか'''な曲面という。
曲面<math>S:\boldsymbol{r}=\boldsymbol{r}(t, u)</math>とその上の点<math>\mathrm{P}_0=(a, b)</math>に対し、曲線<math>\boldsymbol{r}=\boldsymbol{r}(a, u), \boldsymbol{r}=\boldsymbol{r}(t, b)</math>をそれぞれ点<math>\mathrm{P}_0</math>に於ける'''<math>t</math>曲線'''・'''<math>u</math>曲線'''という。
<math>\boldsymbol{r}(t, u)\in C^1</math>であるとき、偏導関数の定義から
:<math>\frac{\partial}{\partial{u}}\boldsymbol{r}(a, u)=\frac{d}{du}\boldsymbol{r}(a, u)</math>
:<math>\frac{\partial}{\partial{t}}\boldsymbol{r}(t, b)=\frac{d}{dt}\boldsymbol{r}(t, b)</math>
ここで<math>a, b</math>をそれぞれ<math>t</math>軸・<math>u</math>軸上で動かすことで<math>t</math>曲線・<math>u</math>曲線の接ベクトルがそれぞれ<math>\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}, \frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}</math>であると判る。これらを曲面のパラメータ方向の'''接ベクトル'''という。
これらの接ベクトルが平行でないとき、曲面<math>S</math>上の任意の点<math>\mathrm{P}</math>に対して<math>\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}, \frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}</math>の張る平面が定まる。これを曲面<math>S</math>の点<math>\mathrm{P}</math>に於ける'''接平面'''という。曲線の接線は一次元ベクトル空間<math>\left\{ \xi\frac{d\boldsymbol{r}}{dt} \bigg| \xi \in\mathbb{R} \right\}</math>で表されたが、曲面の接平面は二次元ベクトル空間<math>\left\{ \xi\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}+\eta\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}} \bigg| \xi, \eta \in \mathbb{R} \right\}</math>で表される。このような接ベクトル全体が張るベクトル空間を一般に'''接空間'''と呼ぶ。
接ベクトルの組が一次独立である曲面を'''正則'''な曲面という。滑らかな曲面は正則曲面である。
曲面<math>S</math>の接平面に垂直なベクトルを<math>S</math>の'''法線ベクトル'''という。
三次元空間ならば接平面を張る2ベクトルの外積<math>\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}} \times \frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}</math>で求められる。
モンジュ表示された曲面<math>S:z=f(x, y)</math>に対して接平面の存在性(つまり曲面の正則性)は「二変数関数<math>f</math>の全微分可能」に対応した。ベクトル表示された曲面<math>S:\boldsymbol{r}=\boldsymbol{r}(t, u)</math>に対しては「ベクトル関数<math>\boldsymbol{r}</math>の全微分可能性」だけでは足りず、「ヤコビ行列<math>\frac{\partial{(\boldsymbol{r})}}{\partial{(t, u)}}</math>の階数が2」も要求される。
以下、正則曲面のみ扱う。
<math>\boldsymbol{r}(t, u)</math>の微小変化は全微分で与えられる。
:<math>d\boldsymbol{r}=\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}dt+ \frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}du</math>
則ち、各パラメータを同時に<math>\begin{pmatrix} t \\ u \end{pmatrix}\to\begin{pmatrix} t+dt \\ u+du \end{pmatrix}</math>と単調に動かしたとき、対応する曲面上の点が描く領域は2ベクトル<math>\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}dt, \frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}du</math>の張る微小平行四辺形として近似できる。その微小面積は線型代数の内容から
:<math>\sqrt{ \left\| \frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}dt \right\|^2 \left\| \frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}du \right\|^2 - \left\{ \left(\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}dt\right)\cdot\left(\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}du\right) \right\}^2 }=\sqrt{\left\| \frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}} \right\|^2\left\|\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}\right\|^2 - \left( \frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}\cdot\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}} \right)^2 } dtdu</math>
である。
これを領域<math>D=\mathrm{dom}\,S</math>で重積分してやれば曲面の表面積('''曲面積''')が求まると考えられる。
{{定理|(曲面積)}}
<math>E := \left\| \frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}} \right\|^2,\quad F := \frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}\cdot\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}},\quad G := \left\|\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}\right\|^2</math>とすると、<br>
曲面<math>S:\boldsymbol{r}=\boldsymbol{r}(t, u)</math>の領域<math>D</math>に於ける曲面積は
:<math>S=\iint_D \sqrt{EG-F^2}dtdu</math>
{{定理終わり}}
この<math>E, F, G</math>を<math>S</math>の'''第一基本量'''と呼ぶ。また、<math>dS:=\sqrt{EG-F^2}dtdu</math>を'''面素'''(面積素・面積要素)と呼ぶ。
<math>t, u</math>が共通のパラメータ<math>\theta</math>で媒介変数表示されるとき、曲面は曲線に退化するので線素を考えられる。
具体的には、
:<math>dl=\left\|\frac{d\boldsymbol{r}}{d\theta}\right\|d\theta</math>
より
:<math>\left\|\frac{d\boldsymbol{r}}{d\theta}\right\|^2=\frac{d\boldsymbol{r}}{d\theta}\cdot\frac{d\boldsymbol{r}}{d\theta}</math>
ここで合成関数の常微分公式より
:<math>\frac{d\boldsymbol{r}}{d\theta}=\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}\frac{dt}{d\theta}+ \frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}\frac{du}{d\theta}</math>
なので
:<math>\frac{d\boldsymbol{r}}{d\theta}\cdot\frac{d\boldsymbol{r}}{d\theta}=\left\|\frac{d\boldsymbol{r}}{dt}\right\|^2\left(\frac{dt}{d\theta}\right)^2+2\left(\frac{d\boldsymbol{r}}{dt}\cdot\frac{d\boldsymbol{r}}{du}\right)\frac{dt}{d\theta}\frac{du}{d\theta}+\left\|\frac{d\boldsymbol{r}}{du}\right\|^2\left(\frac{du}{d\theta}\right)^2</math>
:<math>=E\left(\frac{dt}{d\theta}\right)^2+2F\frac{dt}{d\theta}\frac{du}{d\theta}+G\left(\frac{du}{d\theta}\right)^2</math>
よって
:<math>dl=\sqrt{E\left(\frac{dt}{d\theta}\right)^2+2F\frac{dt}{d\theta}\frac{du}{d\theta}+G\left(\frac{du}{d\theta}\right)^2}d\theta=\sqrt{E(dt)^2+2Fdtdu+G(du)^2}</math>
このように、線素は<math>\theta</math>のとり方に依存しない。
そこで、最後の式で右辺を二乗した
:<math>I:=E(dt)^2+2Fdtdu+G(du)^2</math>
を<math>S</math>の'''第一基本形式'''と定める。
第一基本形式は二次形式になっていることが見て取れるので、<math>\boldsymbol{v}:=\begin{pmatrix} dt \\ du \end{pmatrix}, \mathbf{K}:=\begin{pmatrix} E & F \\ F & G \end{pmatrix}</math>とおくと
:<math>I={}^t\!\boldsymbol{v} \mathbf{K} \boldsymbol{v}</math>
と行列表示できる。この<math>\mathbf{K}</math>を'''第一基本行列'''という。
ここで<math>I=dl^2>0</math>なので<math>\mathbf{K}</math>は正定値行列である。
また、<math>\boldsymbol{x}_i=\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}, \boldsymbol{x}_j=\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}</math>と置いて第一基本量の定義を思い返してみると<math>\mathbf{K}_{ij}=\boldsymbol{x}_i \cdot \boldsymbol{x}_j</math>なのでこの行列は接ベクトルに関するグラム行列である。この意味でも、<math>\mathbf{K}</math>は正定値行列である。
また、面素の式で根号の中身が<math>\det\mathbf{K}</math>に等しいことも判る。
則ち、第一基本量が曲面の本質であると予想される。
<math>F=0 \land E=G=\lambda</math>であるとき、<math>\mathbf{K}=\lambda\mathbf{E}_2</math>である。このときのパラメータの組<math>(u, v)</math>を曲面の'''等温座標系'''という。
等温座標系で表示された曲面<math>S</math>に対し、第一基本形式は<math>I=\lambda(dt^2+du^2)</math>と二次形式の標準形となっている。則ち、等温座標系へのパラメータ変換は主軸変換である。
面素を考えると<math>dS=\lambda^2dtdu</math>と非常に単純な形となるほか、曲面上の角度計算が平面の場合と全く同じ式で与えられることも等温座標系の利点である。
曲面<math>S</math>上の各点<math>\mathrm{P}</math>に対して単位法線ベクトル<math>\boldsymbol{n}(\mathrm{P})</math>を考える。ベクトル表示の定義域<math>D</math>でベクトル場<math>\boldsymbol{n}(\mathrm{P})</math>が連続であるとき、<math>S</math>は'''向き付け可能'''であるという。
向き付け不能な曲面の例として<math>\boldsymbol{r}(t, u)=\begin{pmatrix} (u\cos t+2)\sin 2t \\ (u\cos t+2)\cos 2t \\ u\sin t \end{pmatrix} \quad(D=\left\{ \begin{pmatrix} t \\ u \end{pmatrix} \bigg| \begin{array}{c} 0 \leq t \leq \pi \\ -1 \leq u \leq 1 \end{array} \right\})</math>と表される'''メビウスの帯'''が挙げられる。
メビウスの帯が向き付け不能である証明を概説する。
:接ベクトルをそれぞれ求める。簡単のため<math>u=0</math>として考える。単位法線ベクトルは外積を正規化して得るが、向きの取り方で正負の符号が付く。どちらの符号を採用するにしろ<math>\boldsymbol{n}(\boldsymbol{r}(0, 0))\neq\boldsymbol{n}(\boldsymbol{r}(\pi, 0))</math>を得、<math>\boldsymbol{r}(0, 0)=\boldsymbol{r}(\pi, 0)</math>より同じ点に対して異なる法線ベクトルを出力するので<math>\boldsymbol{n}(\mathrm{P})</math>はwell-definedではなく、向き付け可能性の定義を満たさない。//
四次元以上の空間では法線ベクトルの方向を複数とれるため法線ベクトル場は扱いにくい。そこで、法線ベクトルに依らない定義を考えたい。
2つの滑らかな曲面<math>S_1, S_2</math>が以下を満たすとき、
#パラメータ<math>(t_1, u_1), (t_2, u_2)</math>の間に滑らかな全単射<math>\begin{cases}t_2 =\phi(t_1, u_1) \\ u_2=\psi(t_1, u_1) \end{cases}</math>が存在する。
#この変数変換のヤコビ行列<math>\frac{\partial{(\phi, \psi)}}{\partial{(t_1, u_1)}}</math>が正則。
#<math>\boldsymbol{r}_1(t_1, u_1)=\boldsymbol{r}_2(t_2, u_2)</math>
この2つは'''パラメータ変換で同値'''という。
このとき、ヤコビアンが正であるパラメータの組は'''同じ向き'''、負であるパラメータの組は'''逆向き'''であるという。
任意の<math>(t_1, u_1)</math>に対して開近傍<math>U \subset \mathrm{dom}\,S_1</math>をとったとき、どの<math>U</math>上でも<math>\det\frac{\partial{(\phi, \psi)}}{\partial{(t_1, u_1)}}>0</math>を満足するならば<math>S_1</math>は'''向き付け可能'''という。
向き付け可能な曲面の接空間に対して右手系を成すような向きの法線ベクトルを'''外向き法線ベクトル'''と呼ぶ。
外向き法線の向く側を曲面の'''表'''、その反対側を曲面の'''裏'''と定義する。
<math>\partial{S}=\varnothing</math>を満たす正則曲面<math>S</math>を'''閉曲面'''という。ジョルダンの曲線定理を拡張した定理('''ジョルダン・ブラウワーの分離定理''')によって閉曲面が空間を内部・外部に分割することが保証される。内部に面する向きを閉曲面の裏、外部に面する向きを閉曲面の表と定義する。
パラメータ空間の座標軸の向きの組み合わせが<math>xy</math>平面と同じとき、外向き法線で定義される閉曲面の表裏は内部・外部から定義される表裏に一致する。
===回転面===
ここでは三次元空間内の曲面について考える。
高校数学で回転体を扱ったが、領域の回転体の表面である曲面は元の領域の疆界である単純閉曲線を軸に関して回転したものである。そこで、平面上の任意の曲線を回転すると曲面('''回転面''')を得ると考えられる。
簡単な場合として、<math>x\geq0</math>で定義された<math>zx</math>平面上の曲線<math>z=f(x)</math>を<math>y</math>軸に関して回転させた回転面を考える。
:任意の<math>k\in[0,\infty)</math>に関して曲線上の点は<math>\begin{pmatrix} x \\ z \end{pmatrix}=\begin{pmatrix} k \\ f(k)\end{pmatrix}</math>と与えられる。
:領域<math>\left\{ {\scriptstyle\left(\begin{array}{c} x \\[-6pt] z \end{array}\right)} \big| x \leq k \right\}</math>を<math>y</math>軸に関して回転した回転体を平面<math>z=f(k)</math>で切った断面は半径<math>k</math>の閉円盤であり、疆界円周上の点を<math>\begin{pmatrix} x \\ y \\ f(k) \end{pmatrix}</math>とすると<math>k=\sqrt{x^2+y^2}</math>である。
:則ち回転体の疆界である回転面上の点<math>\begin{pmatrix} x \\ y \\ z \end{pmatrix}</math>は方程式<math>z=f(\sqrt{x^2+y^2})</math>を満たし、逆にこの方程式を満たす<math>\begin{pmatrix} x \\ y \\ z \end{pmatrix}</math>は回転面上にある。
纏めると以下のようになる。
{{定理|(回転面の方程式)}}
<math>zx</math>平面上の曲線<math>z=f(x)\quad(x\geq0)</math>を<math>y</math>軸に関して回転させた回転面の方程式は
:<math>z=f(\sqrt{x^2+y^2})</math>
{{定理終わり}}
<math>z</math>軸・<math>x</math>軸に関する回転面の方程式は変数を輪環の順に入れ替えることで得られる。
回転面に対し、元の曲線を'''母線'''という。
母線が直線である回転面は'''円錐'''である。
:<math>z=mx+n\quad(m\neq0,x\geq0)</math>とすれば<math>y</math>軸に関して回転した曲面の方程式は
:<math>z=m\sqrt{x^2+y^2}+n</math>
:<math>z-n = m\sqrt{x^2+y^2}</math>
これを両辺二乗すると
:<math>(z-n)^2=m^2x^2+m^2y^2</math>
であり、錐面の方程式<math>\frac{z^2}{c^2}=\frac{x^2}{a^2}+\frac{y^2}{b^2}</math>を満たしていることがわかる。
回転軸が傾いている場合、<math>xyz</math>空間の回転行列<math>\mathbf{R}</math>を利用することで各軸に関する回転に帰着することもできるが、ここでは曲面のベクトル表示を扱ったのでベクトル方程式で回転を記述することを考えたい。
点<math>\mathrm{O}</math>から<math>\boldsymbol{r}</math>とそれに平行でない単位ベクトル<math>\boldsymbol{e}</math>が伸びており、そのなす角が<math>\theta</math>であるとする。<math>\boldsymbol{r}</math>の終点<math>\mathrm{P}</math>を含み<math>\boldsymbol{e}</math>を法線とする平面を<math>\Pi</math>、<math>\Pi</math>と直線<math>\{k\boldsymbol{e} \mid k>0\}</math>の交点を<math>\mathrm{N}</math>、<math>\mathrm{P}</math>を<math>\Pi</math>内で<math>\mathrm{N}</math>を中心として<math>\phi</math>回転した点を<math>\mathrm{Q}</math>、<math>\mathrm{NQ}</math>から<math>\mathrm{NP}</math>へ降ろした垂足を<math>\mathrm{R}</math>と置く。但し、回転角<math>\phi</math>の正の向きは<math>\boldsymbol{e}</math>を右螺子の進む向きとする方向に定める。
このとき、<math>\boldsymbol{r}</math>を<math>\boldsymbol{e}</math>に関して<math>\phi</math>だけ回転させたベクトル<math>\boldsymbol{r}'</math>は以下のように表される。
{{定理|(ロドリゲスの公式)}}
:<math>\boldsymbol{r}'=\boldsymbol{r}\cos\phi+(\boldsymbol{r}\cdot\boldsymbol{e})\,\mathrm{versin}\,\phi\,\boldsymbol{e}-(\boldsymbol{r}\times\boldsymbol{e})\sin\phi</math>
{{定理終わり}}
*証明
:<math>\boldsymbol{r}'=\overrightarrow{\mathrm{OQ}}=\overrightarrow{\mathrm{ON}}+\overrightarrow{\mathrm{NR}}+\overrightarrow{\mathrm{RQ}}</math>
:<math>\overrightarrow{\mathrm{ON}}</math>は<math>\boldsymbol{r}</math>の<math>\boldsymbol{e}</math>への正射影ベクトルなので
::<math>\overrightarrow{\mathrm{ON}}=\frac{\boldsymbol{r}\cdot\boldsymbol{e}}{\boldsymbol{e}\cdot\boldsymbol{e}}\boldsymbol{e}=(\boldsymbol{r}\cdot\boldsymbol{e})\boldsymbol{e}</math>
:<math>\triangle\mathrm{NQR}</math>を考えると<math>\|\overrightarrow{\mathrm{NQ}}\|=\|\overrightarrow{\mathrm{NP}}\|</math>と<math>\|\overrightarrow{\mathrm{NR}}\|=\|\overrightarrow{\mathrm{NQ}}\|\cos\phi</math>及び<math>\overrightarrow{\mathrm{NR}}/\!\!/\overrightarrow{\mathrm{NP}}</math>より
::<math>\overrightarrow{\mathrm{NR}}=\overrightarrow{\mathrm{NP}}\cos\phi=(\overrightarrow{\mathrm{OP}}-\overrightarrow{\mathrm{ON}})\cos\phi=\{\boldsymbol{r}-(\boldsymbol{r}\cdot\boldsymbol{e})\boldsymbol{e}\}\cos\phi</math>
:<math>\boldsymbol{r}\times\boldsymbol{e}</math>は外積の定義から<math>\overrightarrow{\mathrm{NP}}</math>を<math>\Pi</math>上で<math>-\phi</math>方向に<math>\frac{\pi}{2}</math>だけ回転させたベクトルになるので、
:<math>\boldsymbol{r}\times\boldsymbol{e}/\!\!/\overrightarrow{\mathrm{RQ}}</math>と<math>\|\overrightarrow{\mathrm{RQ}}\|=\|\overrightarrow{\mathrm{NQ}}\|\sin\phi</math>及び<math>\|\overrightarrow{\mathrm{NQ}}\|=\|\overrightarrow{\mathrm{NP}}\|</math>から
::<math>\overrightarrow{\mathrm{RQ}}=-(\boldsymbol{r}\times\boldsymbol{e})\sin\phi</math>
:これらを足して
::<math>\boldsymbol{r}'=(\boldsymbol{r}\cdot\boldsymbol{e})\boldsymbol{e}+\{\boldsymbol{r}-(\boldsymbol{r}\cdot\boldsymbol{e})\boldsymbol{e}\}\cos\phi-(\boldsymbol{r}\times\boldsymbol{e})\sin\phi</math>
::<math>=\boldsymbol{r}\cos\phi+(\boldsymbol{r}\cdot\boldsymbol{e})(1-\cos\phi)\boldsymbol{e}-(\boldsymbol{r}\times\boldsymbol{e})\sin\phi</math>
::<math>=\boldsymbol{r}\cos\phi+(\boldsymbol{r}\cdot\boldsymbol{e})\,\mathrm{versin}\,\phi\,\boldsymbol{e}-(\boldsymbol{r}\times\boldsymbol{e})\sin\phi</math>//
この証明ではベクトルの平行移動を用いているのでアフィン空間を前提とするが、この式そのものはアフィン構造に依存してないので一般のベクトル空間で成り立つ。
また、回転後のベクトルは母線のパラメータ<math>t</math>に加えて回転角<math>\phi</math>もパラメータとして有するので、<math>\boldsymbol{r}'(t, \phi)</math>という二変数ベクトル関数となって曲面を表すことになる。則ち、「曲線を回転すれば曲面を得る」という直感は正しい。
ロドリゲスの公式の応用として、例えば円錐のベクトル方程式が<math>\frac{(\boldsymbol{r}-\boldsymbol{p})\cdot\boldsymbol{a}}{\|\boldsymbol{r}-\boldsymbol{p}\|}=\mathrm{const}.</math>であることが導ける。
:円錐頂点の位置ベクトルを<math>\boldsymbol{p}</math>、軸ベクトルを<math>\boldsymbol{a}</math>、<math>\boldsymbol{a}</math>と角度<math>\alpha</math>をなす単位ベクトルを<math>\boldsymbol{v}</math>とする。このとき直線<math>\{k\boldsymbol{v}\mid k>0\}</math>が円錐の母線であり、母線と交わる向きである軸の法線ベクトルを<math>\boldsymbol{b}</math>とおく。
:ロドリゲスの公式より<math>\boldsymbol{v}</math>を<math>\boldsymbol{a}</math>の周りに<math>\theta</math>だけ回転させたベクトル<math>\boldsymbol{v}'</math>は
::<math>\boldsymbol{v}'=\boldsymbol{v}\cos\theta+(\boldsymbol{v}\cdot\boldsymbol{e}_a)\,\mathrm{versin}\,\theta\,\boldsymbol{e}_a-(\boldsymbol{v}\times\boldsymbol{e}_a)\sin\theta</math>
:ここで<math>\boldsymbol{v}</math>を<math>\boldsymbol{a}, \boldsymbol{b}</math>方向に基底分解すると
::<math>\boldsymbol{v}=\cos\alpha\,\boldsymbol{e}_a+\sin\alpha\,\boldsymbol{e}_b</math>
:なので、
::<math>\boldsymbol{v}'=\cos\alpha\boldsymbol{e}_a+\sin\alpha\{\boldsymbol{e}_b\cos\theta+(\boldsymbol{e}_a\times\boldsymbol{e}_b)\sin\theta\}</math>
:円錐上の点<math>\boldsymbol{r}</math>の位置ベクトルは頂点から母線方向に<math>\rho</math>だけ進むので
::<math>\boldsymbol{r}=\boldsymbol{p}+\rho\boldsymbol{v}'</math>
:であり、
::<math>\boldsymbol{r}-\boldsymbol{p}=\rho\boldsymbol{v}'</math>
:ここで<math>\|\boldsymbol{v}'\|=\|\boldsymbol{v}\|=1</math>より
::<math>\rho=\|\boldsymbol{r}-\boldsymbol{p}\|</math>
:このベクトルと軸ベクトルの内積をとると
::<math>(\boldsymbol{r}-\boldsymbol{p})\cdot\boldsymbol{a}=\rho\boldsymbol{v}'\cdot\boldsymbol{a}</math>
::<math>=\rho\{\cos\alpha(\boldsymbol{e}_a\cdot\boldsymbol{a})+\sin\alpha\cos\theta(\boldsymbol{e}_b\cdot\boldsymbol{a})+\sin\alpha\sin\theta(\boldsymbol{e}_a\times\boldsymbol{e}_b)\cdot\boldsymbol{a}\}</math>
:<math>\boldsymbol{e}_b, \boldsymbol{e}_a\times\boldsymbol{e}_b</math>とも<math>\boldsymbol{a}</math>に直交するので後ろの二項は消えて
::<math>(\boldsymbol{r}-\boldsymbol{p})\cdot\boldsymbol{a}=\rho\cos\alpha(\boldsymbol{e}_a\cdot\boldsymbol{a})=\|\boldsymbol{r}-\boldsymbol{p}\|\|\boldsymbol{a}\|\cos\alpha</math>
:則ち
::<math>\frac{(\boldsymbol{r}-\boldsymbol{p})\cdot\boldsymbol{a}}{\|\boldsymbol{r}-\boldsymbol{p}\|}=\|\boldsymbol{a}\|\cos\alpha=\mathrm{const}.</math>//
円錐が先に与えられている場合は「<math>\boldsymbol{r}-\boldsymbol{p}</math>が母線の方向ベクトルなのは図より自明」とできるが、ここでは「母線が先に与えられて回転によって円錐が構成される」という立場を採ったのでロドリゲスの公式が効くのである。
ロドリゲスの公式で微小回転<math>d\phi</math>の場合を考える。
正弦関数・余弦関数の部分を1項目までテイラー展開して<math>\cos(d\phi)=1+O(d\phi^2), \sin(d\phi)= d\phi+O(d\phi^3)</math>なので<math>\mathrm{versin}(d\phi)=O(d\phi^2)</math>であり、
:<math>\boldsymbol{r}' = \boldsymbol{r}-(\boldsymbol{r}\times\boldsymbol{e})d\phi+O(d\phi^2)</math>
ここで<math>d\boldsymbol{r}=\boldsymbol{r}'-\boldsymbol{r}</math>なので
:<math>d\boldsymbol{r}=-(\boldsymbol{r}\times\boldsymbol{e})d\phi+O(d\phi^2)</math>
則ち、ベクトル関数の全微分は微小回転で近似される。
オーダー記法の項を無視して<math>\boldsymbol{\omega}=\frac{d\phi}{dt}\boldsymbol{e}</math>と置くと
:<math>d\boldsymbol{r}=(d\phi\boldsymbol{e})\times\boldsymbol{r}</math>
これの両辺を<math>dt</math>で割って
:<math>\frac{d\boldsymbol{r}}{dt}=\boldsymbol{\omega}\times\boldsymbol{r}</math>
これは剛体の速度公式である。
ロドリゲスの公式の一次変換表記を考える。
<math>\boldsymbol{r}=\begin{pmatrix} r_1 \\ r_2 \\ r_3 \end{pmatrix}, \boldsymbol{r}'=\begin{pmatrix} r'_1 \\ r'_2 \\ r'_3 \end{pmatrix}, \boldsymbol{e}=\begin{pmatrix} a \\ b \\ c \end{pmatrix}</math>とすると、
:<math>\begin{pmatrix} r'_1 \\ r'_2 \\ r'_3 \end{pmatrix}=\cos\phi\begin{pmatrix} r_1 \\ r_2 \\ r_3 \end{pmatrix}+(ar_1+br_2+cr_3)\mathrm{versin}\,\phi\begin{pmatrix} a \\ b \\ c \end{pmatrix} - \sin\phi \begin{pmatrix} cr_2-br_3 \\ ar_3-cr_1 \\ br_1-ar_2 \end{pmatrix}</math>
:<math>=\begin{pmatrix} (\cos\phi + a^2\,\mathrm{versin}\,\phi) r_1 + (ab\,\mathrm{versin}\,\phi -c\sin\phi) r_2 + (ca\,\mathrm{versin}\,\phi + b\sin\phi) r_3 \\ (ab\,\mathrm{versin}\,\phi + c\sin\phi) r_1 + (\cos\phi + b^2\,\mathrm{versin}\,\phi) r_2 + (bc\,\mathrm{versin}\,\phi -a\sin\phi) r_3 \\ (ca\,\mathrm{versin}\,\phi - b\sin\phi) r_1 + (bc\,\mathrm{versin}\,\phi+ a\sin\phi) r_2 + (\cos\phi + c^2\,\mathrm{versin}\,\phi) r_3 \end{pmatrix}</math>
:<math>=\begin{pmatrix} \cos\phi + a^2\,\mathrm{versin}\,\phi & ab\,\mathrm{versin}\,\phi -c\sin\phi & ca\,\mathrm{versin}\,\phi + b\sin\phi \\ ab\,\mathrm{versin}\,\phi + c\sin\phi & \cos\phi + b^2\,\mathrm{versin}\,\phi & bc\,\mathrm{versin}\,\phi -a\sin\phi \\ ca\,\mathrm{versin}\,\phi - b\sin\phi & bc\,\mathrm{versin}\,\phi+ a\sin\phi & \cos\phi + c^2\,\mathrm{versin}\,\phi \end{pmatrix} \begin{pmatrix} r_1 \\ r_2 \\ r_3 \end{pmatrix}</math>
ここで<math>\mathrm{versin}\,\phi</math>を<math>1-\cos\phi</math>に戻して係数行列を<math>1, \cos\phi, \sin\phi</math>の項に分解してみると
:<math>=\begin{pmatrix} a^2+(1-a^2)\cos\phi & ab-ab\cos\phi -c\sin\phi & ca-ca\cos\phi + b\sin\phi \\ ab-ab\cos\phi + c\sin\phi & b^2+(1-b^2)\cos\phi & bc-bc\cos\phi -a\sin\phi \\ ca-ca\cos\phi - b\sin\phi & bc-bc\cos\phi+ a\sin\phi & c^2+(1-c^2)\cos\phi \end{pmatrix} \begin{pmatrix} r_1 \\ r_2 \\ r_3 \end{pmatrix}</math>
:<math>=\left\{ \begin{pmatrix} a^2 & ab & ca \\ ab & b^2 & bc \\ ca & bc & c^2 \end{pmatrix} + \cos\phi\begin{pmatrix} 1-a^2 & -ab & -ca \\ -ab & 1-b^2 & -bc \\ -ca & -bc & 1-c^2 \end{pmatrix} +\sin\phi\begin{pmatrix} 0 & -c & b \\ c & 0 & -a \\ -b & a & 0 \end{pmatrix} \right\} \begin{pmatrix} r_1 \\ r_2 \\ r_3 \end{pmatrix}</math>
:<math>=\left[ \begin{pmatrix} a^2 & ab & ca \\ ab & b^2 & bc \\ ca & bc & c^2 \end{pmatrix} + \cos\phi \left\{ \begin{pmatrix} 1 & 0 & 0 \\ 0 & 1 & 0 \\ 0 & 0 & 1 \end{pmatrix}-\begin{pmatrix} a^2 & ab & ca \\ ab & b^2 & bc \\ ca & bc & c^2 \end{pmatrix} \right\} +\sin\phi\begin{pmatrix} 0 & -c & b \\ c & 0 & -a \\ -b & a & 0 \end{pmatrix} \right] \begin{pmatrix} r_1 \\ r_2 \\ r_3 \end{pmatrix}</math>
ここで<math>\begin{pmatrix} a^2 & ab & ca \\ ab & b^2 & bc \\ ca & bc & c^2 \end{pmatrix}</math>は<math>\boldsymbol{e}</math>の第<math>i</math>成分と第<math>j</math>成分を掛けたものが<math>(i, j)</math>成分となる行列になっていることがわかる。これを<math>\boldsymbol{e}\otimes\boldsymbol{e}</math>と書くことにする。<math>\sin\phi</math>に係る行列を<math>\mathbf{N}</math>と置くと、
:<math>\boldsymbol{r}'=\{\boldsymbol{e}\otimes\boldsymbol{e}+\cos\phi(\mathbf{E}_3-\boldsymbol{e}\otimes\boldsymbol{e})+\sin\phi\mathbf{N}\}\boldsymbol{r}</math>
という表示を得る。
更に、<math>\mathbf{N}^2=\begin{pmatrix} -b^2-c^2 & ab & ca \\ ab & -c^2-a^2 & bc \\ ca & bc & -a^2-b^2 \end{pmatrix}</math>と<math>\|\boldsymbol{e}\|=\sqrt{a^2+b^2+c^2}=1</math>より
:<math>\boldsymbol{e}\otimes\boldsymbol{e}=\mathbf{N}^2+(a^2+b^2+c^2)\mathbf{E}_3=\mathbf{N}^2+\mathbf{E}_3</math>
が成り立つので、最終的に
:<math>\boldsymbol{r}'=(\mathbf{E}_3+\sin\phi\mathbf{N}+\mathrm{versin}\,\phi\mathbf{N}^2)\boldsymbol{r}</math>
と二次の行列多項式で表示される。
なお、<math>\otimes</math>は発展節で紹介する'''テンソル積'''を表している。
ここで、行列<math>\mathbf{N}</math>についてより具体的に考えてみる。
先ず、<math>{}^t\!\mathbf{N}=-\mathbf{N}</math>が成り立つので<math>\mathbf{N}</math>は反対称行列(歪対称行列・交代行列)である。
<math>\mathbf{N}\boldsymbol{r}</math>を計算すると
:<math>\mathbf{N}\boldsymbol{r}=\begin{pmatrix} 0 & -c & b \\ c & 0 & -a \\ -b & a & 0 \end{pmatrix} \begin{pmatrix} r_1 \\ r_2 \\ r_3 \end{pmatrix}=\begin{pmatrix} br_3-cr_2 \\ cr_1-ar_3 \\ ar_2-br_1 \end{pmatrix}=\boldsymbol{e}\times\boldsymbol{r}</math>
則ち、<math>\mathbf{N}</math>は<math>\boldsymbol{e}</math>に関する外積(形式的には<math>\boldsymbol{e}\times</math>という左演算)を一次変換とみて表現行列に直したものである。
更に、成分計算により<math>\mathbf{N}^3=-\mathbf{N}</math>という性質が成り立つことも判る。外積を「ベクトルを90°回転させる演算」とみると、二回の演算によって180°回転するということなのでこの結果は妥当である。
ここで行列自然指数関数<math>\exp(\phi\mathbf{N})=\sum_{i=0}^\infty \frac{(\phi\mathbf{N})^i}{i!}</math>を考えてみると上の性質より三次以上の項は<math>\mathbf{N}^4=-\mathbf{N}^2, \mathbf{N}^5=\mathbf{N},\cdots</math>のように全て二次以下に帰着できる。<br>
また、自然指数関数のテイラー展開は絶対収束級数なので各項は可換であり、<math>\mathbf{N}</math>の二次式として纏め直すと
:<math>\exp(\phi\mathbf{N})=\mathbf{E}_3 + (\phi-\frac{\phi^3}{3!}+\frac{\phi^5}{5!}-\frac{\phi^7}{7!}+\cdots) \mathbf{N}+(\frac{\phi^2}{2!}-\frac{\phi^4}{4!}+\frac{\phi^6}{6!}-\frac{\phi^8}{8!}+\cdots)\mathbf{N}^2</math>
ここで一次・二次の係数はそれぞれ正弦関数・正矢関数のテイラー展開になっているので結局は
:<math>\exp(\phi\mathbf{N})=\mathbf{E}_3+\sin\phi\mathbf{N}+\mathrm{versin}\,\phi\mathbf{N}^2</math>
ここから、<math>\exp(\phi\mathbf{N})</math>は角度<math>\phi</math>に関する有限回転に対応することが判った。
このことは以下の考え方でも求まる。<br>
<math>\mathbf{N}</math>の最小方程式は<math>\mathbf{N}^3+\mathbf{N}=\mathbf{O}_3</math>より<math>x(x^2+1)=0</math>であり固有値は<math>0, \pm{i}</math>と求まるので、<math>\exp(\phi\mathbf{N})</math>の対角化行列は
:<math>\begin{pmatrix} e^{0\phi} & 0 & 0 \\ 0 & e^{i\phi} & 0 \\ 0 & 0 & e^{-i\phi} \end{pmatrix}</math>
ここで任意の解析関数<math>f</math>について<math>f(\mathbf{N})</math>のテイラー展開は二次以下の多項式になるので
:<math>\exp(\phi\mathbf{N})=\alpha\mathbf{E}_3+\beta\mathbf{N}+\gamma\mathbf{N}^2</math>
これを実多項式に戻した<math>\alpha+\beta{x}+\gamma{x^2}</math>が<math>e^{\phi{x}}</math>と任意の固有値で一致すればよい(二次補間)ので、
:<math>\begin{cases} e^0 = \alpha \\ e^{i\phi} = i\beta -\gamma \\ e^{-i\phi} = -i\beta-\gamma \end{cases}</math>
:<math>\iff \begin{cases} 1 = \alpha \\ \cos\phi+i\sin\phi = (\alpha -\gamma) + i\beta \end{cases}</math>
:<math>\therefore \begin{cases} \alpha=1 \\ \beta=\sin\phi \\ \gamma=1-\cos\phi=\mathrm{versin}\,\phi \end{cases}</math>
則ち、<math>\mathbf{N}^3=-\mathbf{N}</math>という構造は<math>\Psi_\mathbf{N}(x)=x(x^2+1)</math>という最小多項式に起因するということである。
更に[[表現論]]の観点から見ると、三次直交行列全体である回転群<math>SO(3)</math>に対し、<math>\mathbf{N}</math>は<math>SO(3)</math>の単位元に於ける接空間(三次反対称行列全体・則ちリー代数<math>\mathfrak{so}(3)</math>)の元であり、<math>\exp(\phi\mathbf{N})</math>はリー群<math>SO(3)</math>の元である。ここで行列自然指数関数は「リー代数からリー群へ引き戻す写像」なので'''指数写像'''と呼ばれる。
これが[[#フレネ標搆]]で述べた「直交変換の一次近似が反対称変換」という事実のより正確な表現である。
補足だが、力学で扱う[[w:オイラー角]]というものを導入するとロドリゲスの公式を各座標軸に関する回転の合成で表すこともできる。
===種々の曲率===
ここでは三次元空間内の正則曲面について考える。
曲面<math>S:\boldsymbol{r}=\boldsymbol{r}(t, u)</math>上で定義され弧長パラメータ表示された正則曲線<math>C:\boldsymbol{r}=\boldsymbol{r}(t(s), u(s))</math>を考える。
<math>C</math>の接ベクトルは合成関数微分公式より
:<math>\boldsymbol{t}=\frac{d\boldsymbol{r}}{ds}=\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}\frac{dt}{ds}+\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}\frac{du}{ds}</math>
と表示される。
ここで両辺の<math>ds</math>を形式的に払うと
:<math>\boldsymbol{t}ds=\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}dt+\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}du</math>
これの自分自身との内積をとると
:<math>\|\boldsymbol{t}\|^2(ds)^2=\left\|\frac{d\boldsymbol{r}}{\partial{t}}\right\|^2(dt)^2+2\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}\cdot\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}dtdu+\left\|\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}\right\|^2(du)^2</math>
弧長パラメトライズされた接ベクトルは単位ベクトルであり、右辺のベクトル演算の部分を第一基本量で置き換えると
:<math>ds^2=E(dt)^2+2Fdtdu+G(du)^2</math>
と、第一基本形式を別の方法で得られた。
<math>C</math>の主法線ベクトルは合成関数微分を繰り返し適用することで
:<math>\boldsymbol{n}_C=\frac{d\boldsymbol{t}}{ds}=\frac{d}{ds}\left(\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}\frac{dt}{ds}+\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}\frac{du}{ds}\right)</math>
:<math>=\frac{d}{ds}\left(\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}\frac{dt}{ds}\right)+\frac{d}{ds}\left(\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}\frac{du}{ds}\right)</math>
:<math>=\frac{d}{ds}\left(\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}\right)\frac{dt}{ds}+\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}\frac{d}{ds}\left(\frac{dt}{ds}\right)+\frac{d}{ds}\left(\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}\right)\frac{du}{ds}+\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}\frac{d}{ds}\left(\frac{du}{ds}\right)</math>
:<math>=\left(\frac{\partial^2{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}^2}\frac{dt}{ds}+\frac{\partial^2{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}\partial{t}}\frac{du}{ds}\right)\frac{dt}{ds}+\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}\frac{d^2t}{ds^2}+\left(\frac{\partial^2{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}\partial{u}}\frac{dt}{ds}+\frac{\partial^2{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}^2}\frac{du}{ds}\right)\frac{du}{ds}+\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}\frac{d^2u}{ds^2}</math>
:<math>=\frac{\partial^2{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}^2}\left(\frac{dt}{ds}\right)^2+\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}\frac{d^2t}{ds^2}+2\frac{\partial^2{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}\partial{u}}\frac{dt}{ds}\frac{du}{ds}+\frac{\partial^2{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}^2}\left(\frac{du}{ds}\right)^2+\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}\frac{d^2u}{ds^2}</math>
ここで、<math>S</math>の法線ベクトル<math>\boldsymbol{n}_S=\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}\times\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}</math>は一般に<math>\boldsymbol{n}_C</math>と一次従属とは限らない。
後の話を単純にするため<math>\boldsymbol{n}_S</math>を正規化したベクトルを<math>\boldsymbol{e}_S</math>と置いて<math>\boldsymbol{n}_C\cdot\boldsymbol{e}_S</math>を計算してみる。
:<math>\boldsymbol{e}_S\perp\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}, \boldsymbol{e}_S\perp\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}</math>より
:<math>\boldsymbol{n}_C\cdot\boldsymbol{e}_S=\left(\frac{\partial^2{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}^2}\cdot\boldsymbol{e}_S\right)\left(\frac{dt}{ds}\right)^2+2\left(\frac{\partial^2{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}\partial{u}}\cdot\boldsymbol{e}_S\right)\frac{dt}{ds}\frac{du}{ds}+\left(\frac{\partial^2{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}^2}\cdot\boldsymbol{e}_S\right)\left(\frac{du}{ds}\right)^2</math>
ここで各内積<math>L=\frac{\partial^2{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}^2}\cdot\boldsymbol{e}_S,\quad M=\frac{\partial^2{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}\partial{u}}\cdot\boldsymbol{e}_S,\quad N=\frac{\partial^2{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}^2}\cdot\boldsymbol{e}_S</math>を<math>S</math>の'''第二基本量'''と呼ぶ。
<math>\boldsymbol{n}_C, \boldsymbol{e}_S</math>のなす角を<math>\psi</math>とすると<math>C</math>の曲率を<math>\kappa_C</math>として
:<math>\boldsymbol{n}_C\cdot\boldsymbol{e}_S=\kappa_C \cos\psi</math>
なので<math>ds</math>に関して形式的に通分して
:<math>\kappa_C\cos\psi=\frac{L(dt)^2+2Mdtdu+N(du)^2}{ds^2}</math>
右辺の分子<math>I\!I:=L(dt)^2+2Mdtdu+N(du)^2</math>を<math>S</math>の'''第二基本形式'''という。
<math>\begin{cases}\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}\cdot\boldsymbol{e}_S=0 \\ \frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}\cdot\boldsymbol{e}_S=0 \end{cases}</math>を<math>t</math>で偏微分すると
:<math>\begin{cases} \frac{\partial^2{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}^2}\cdot\boldsymbol{e}_S+\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}\cdot\frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{t}}=0 \\ \frac{\partial^2{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}\partial{u}}\cdot\boldsymbol{e}_S+\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}\cdot\frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{t}}=0 \end{cases}</math>
また、<math>u</math>で偏微分すると
:<math>\begin{cases} \frac{\partial^2{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}\partial{t}}\cdot\boldsymbol{e}_S+\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}\cdot\frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{u}}=0 \\ \frac{\partial^2{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}^2}\cdot\boldsymbol{e}_S+\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}\cdot\frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{u}}=0 \end{cases}</math>
ここから第二基本量は
:<math>L=-\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}\cdot\frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{t}},\quad M=-\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}\cdot\frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{t}}=-\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}\cdot\frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{u}},\quad N=-\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}\cdot\frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{u}}</math>
とも表示され、第二基本形式の別表示
:<math>I\!I=-\left(\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}dt+\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}du\right)\cdot\left(\frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{t}}dt+\frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{u}}du\right)</math>
を得る。
これは更に全微分から微小ベクトル同士の内積として
:<math>I\!I=-d\boldsymbol{r}\cdot{d}\boldsymbol{e}_S</math>
とも書ける。
第一基本形式は曲面上の微小変位の自身との内積だったが、第二基本形式は曲面上の微小変位と法線方向の微小変位の内積である。則ち、第一基本形式は曲面の内在的な量、第二基本形式は曲面の外在的な量である。
第一基本形式と同様に第二基本形式は二次形式なので、<math>\boldsymbol{v}:=\begin{pmatrix} dt \\ du \end{pmatrix}, \mathbf{H}=\begin{pmatrix} L & M \\ M & N \end{pmatrix}</math>と置くと
:<math>I\!I={}^t\!\boldsymbol{v}\mathbf{H}\boldsymbol{v}</math>
と行列表示できる。この<math>\mathbf{H}</math>を'''第二基本行列'''という。
ここで、モンジュ表示された曲面<math>z=f(x, y)</math>に対して第二基本行列を考えてみる。
:<math>\boldsymbol{r}(t, u)=\begin{pmatrix} t \\ u \\ f(t, u)\end{pmatrix}</math>なので[[解析学基礎/多変数関数の微積分#全微分]]の結果を参照すると直ちに
:<math>L=\frac{\frac{\partial^2{f}}{\partial{t}^2}}{\sqrt{1+\left(\frac{\partial{f}}{\partial{t}}\right)^2+\left(\frac{\partial{f}}{\partial{u}}\right)}^2},\quad M=\frac{\frac{\partial^2{f}}{\partial{t}\partial{u}}}{\sqrt{1+\left(\frac{\partial{f}}{\partial{t}}\right)^2+\left(\frac{\partial{f}}{\partial{u}}\right)}^2},\quad N=\frac{\frac{\partial^2{f}}{\partial{u}^2}}{\sqrt{1+\left(\frac{\partial{f}}{\partial{t}}\right)^2+\left(\frac{\partial{f}}{\partial{u}}\right)}^2}</math>
:が判るので、
:<math>\mathbf{H}=\frac{1}{\sqrt{1+\left(\frac{\partial{f}}{\partial{t}}\right)^2+\left(\frac{\partial{f}}{\partial{u}}\right)}^2}\begin{pmatrix} \frac{\partial^2{f}}{\partial{t}^2} & \frac{\partial^2{f}}{\partial{tu}} \\ \frac{\partial^2{f}}{\partial{tu}} & \frac{\partial^2{f}}{\partial{u^2}} \end{pmatrix}</math>
これはヘッシアンを法線の長さで割った行列である。
則ち、任意の正則曲面に対して第二基本行列はヘッセ行列と同じ役割をすると考えられる。
実際、点<math>\mathrm{P}</math>の開近傍で<math>\det\mathbf{H}</math>が正である曲面は<math>\mathrm{P}</math>の開近傍で上下どちらかに凸であり、負である曲面は<math>\mathrm{P}</math>で鞍点となることが知られている。
このように第二基本形式は曲面の「曲がり方」を表す量と考えられるので、曲面に対する曲率も考えられる。
ここで第二基本形式を定義した式
:<math>\kappa_C\cos\psi=\frac{L(dt)^2+2Mdtdu+N(du)^2}{ds^2}</math>
に立ち戻ると、右辺の分母は<math>s</math>に依存しない第一基本形式なので第一基本量を用いて
:<math>\kappa_C\cos\psi=\frac{L(dt)^2+2Mdtdu+N(du)^2}{E(dt)^2+2Fdtdu+G(du)^2}</math>
右辺を形式的に<math>dt^2</math>で割ると
:<math>\kappa_C\cos\psi=\frac{L+2M\frac{du}{dt}+N\left(\frac{du}{dt}\right)^2}{E+2F\frac{du}{dt}+G\left(\frac{du}{dt}\right)^2}</math>
この右辺は<math>\boldsymbol{n}_C</math>に依存しない量なので<math>\boldsymbol{n}_S, \boldsymbol{n}_C</math>のなす角度である<math>\psi</math>にも依存しない。
そこで、この値を曲面<math>S</math>の'''法曲率'''と定義する。
:<math>\varkappa:=\frac{L+2M\frac{du}{dt}+N\left(\frac{du}{dt}\right)^2}{E+2F\frac{du}{dt}+G\left(\frac{du}{dt}\right)^2}</math>
法曲率の幾何学的意味を考える。
<math>\varkappa=\kappa_C\cos\psi</math>より、<math>\cos\psi=1</math>のとき<math>S</math>の法曲率と<math>C</math>の曲率が一致する。このとき<math>\boldsymbol{n}_S /\!\!/ \boldsymbol{n}_C</math>であり、<math>C</math>は曲面上の点<math>\mathrm{P}</math>とそこでの曲面の法線<math>\boldsymbol{n}_S(\mathrm{P})</math>を含む平面で曲面を切断した切り口('''法切り口''')に対応する曲線('''法曲線''')である。
則ち、法曲率は法曲線の曲率に対応する。
なお、法曲線<math>C</math>は切断に用いる平面に拘束されるので接ベクトル<math>\boldsymbol{t}_C</math>も平面に拘束される。則ち、拘束平面は<math>\{\boldsymbol{t}_C, \boldsymbol{n}_C\}</math>の張る接触平面である。
法切り口を齎す平面は法線を軸にして回転することができ、その回転角によって法曲率の値が異なることになる。この回転は具体的にはロドリゲスの公式によって記述されるが、法曲率の極大値・極小値は<math>\varkappa</math>を<math>k=\frac{du}{dt}</math>の関数とみることで以下のように考えることができる。
:法曲率の定義式より
::<math>\varkappa(E+2Fk+Gk^2)=L+2Mk+Nk^2</math>・・・(*)
:これが<math>k</math>の恒等式なので微分しても等号が成り立ち、
::<math>\frac{d\varkappa}{dk}(E+2Fk+Gk^2)+\varkappa(2F+2Gk)=2M+2Nk</math>
:フェルマーの定理より<math>\frac{d\varkappa}{dk}=0</math>を満たす<math>(k, \varkappa)</math>が極値点の候補なので
::<math>\varkappa(2F+2Gk)=2M+2Nk</math>・・・(@)
:が成り立つ必要がある。
:これを<math>k</math>倍して(*)を引くと
::<math>\varkappa(E+Fk)=L+Mk</math>・・・(#)
:これと(@)を連立して
::<math>k=-\frac{\varkappa{F}-M}{\varkappa{G}-N}</math>
:これを(#)に代入して
::<math>(EG-F^2)\varkappa^2-(GL+EN-2FM)\varkappa+(LN-M^2)=0</math>・・・($)
:という二次方程式を得る。
:($)が相異なる二つの実根<math>\kappa_1, \kappa_2</math>を持てばそれらは極小値・極大値である。
:逆に、極小値・極大値を持てばフェルマーの定理より($)を満たす。//
この<math>\kappa_1, \kappa_2</math>を<math>S</math>の'''主曲率'''という。
($)の左辺を変形してみると、
:<math>(EG-F^2)\varkappa^2-(GL+EN-2FM)\varkappa+(LN-M^2)</math>
:<math>=\{EG\varkappa^2-(GL+EN)\varkappa+LN\}-\{F^2\varkappa^2-2FM\varkappa+M^2\}</math>
:<math>=(L-\varkappa{E})(N-\varkappa{G})-(M-\varkappa{F})^2</math>
:<math>=\det\begin{pmatrix} L-\varkappa E & M - \varkappa F \\ M - \varkappa F & N - \varkappa G \end{pmatrix}</math>
:<math>=\det(\mathbf{H}-\varkappa\mathbf{K})</math>
という、第一基本行列と第二基本行列を用いた形が出てきた。
ここで<math>\varkappa=\frac{L(dt)^2+2Mdtdu+N(du)^2}{E(dt)^2+2Fdtdu+G(du)^2}</math>を変形して
:<math>(L-\varkappa{E})dt^2+2(M-\varkappa{F})dtdu+(N-\varkappa{G})du^2=0</math>
これを二次形式表示すると
:<math>\begin{pmatrix} dt & du \end{pmatrix}\begin{pmatrix} L-\varkappa E & M - \varkappa F \\ M - \varkappa F & N - \varkappa G \end{pmatrix}\begin{pmatrix} dt \\ du \end{pmatrix}=0</math>
と、同じ<math>\mathbf{H}-\varkappa\mathbf{K}</math>がここでも登場する。
この行列は法曲率を持つ方向を二次形式で判定しているが、主曲率を持つ場合はラグランジュの未定乗数法より<math>(\mathbf{H}-\varkappa\mathbf{K})\begin{pmatrix} dt \\ du \end{pmatrix}=\boldsymbol{0}</math>が成り立ち、これが<math>\det(\mathbf{H}-\varkappa\mathbf{K})=0</math>という式の正体である。更に言うと、<math>\mathbf{H}\boldsymbol{x}=\varkappa\mathbf{K}\boldsymbol{x}</math>という一般化固有値問題の解が主曲率<math>\kappa_1, \kappa_2</math>に対応している。このときの一般化固有ベクトル<math>\boldsymbol{x}_1, \boldsymbol{x}_2</math>を主曲率に対する'''主方向'''という。
二つの主方向の関係を調べる。
:主方向の定義より
::<math>\begin{cases} (\mathbf{H}-\kappa_1\mathbf{K}) \boldsymbol{x}_1=\boldsymbol{0} \\ (\mathbf{H}-\kappa_2\mathbf{K}) \boldsymbol{x}_2=\boldsymbol{0} \end{cases}</math>
:なので
::<math>\begin{cases} {}^t\!\boldsymbol{x}_2(\mathbf{H}-\kappa_1\mathbf{K})\boldsymbol{x}_1=\boldsymbol{0} \\ {}^t\!\boldsymbol{x}_1(\mathbf{H}-\kappa_2\mathbf{K})\boldsymbol{x}_2=\boldsymbol{0} \end{cases}</math>
::<math>\begin{cases} {}^t\!\boldsymbol{x}_2\mathbf{H}\boldsymbol{x}_1=\kappa_1{}^t\!\boldsymbol{x}_2\mathbf{K}\boldsymbol{x}_1 \\ {}^t\!\boldsymbol{x}_1\mathbf{H}\boldsymbol{x}_2=\kappa_2{}^t\!\boldsymbol{x}_1 \mathbf{K}\boldsymbol{x}_2 \end{cases}</math>
::<math>\begin{cases} {}^t\!\boldsymbol{x}_2\mathbf{H}\boldsymbol{x}_1=\kappa_1{}^t\!\boldsymbol{x}_2\mathbf{K}\boldsymbol{x}_1 \\ {}^t\!\boldsymbol{x}_1\mathbf{H}\boldsymbol{x}_2=\kappa_2{}^t\!\boldsymbol{x}_1 \mathbf{K}\boldsymbol{x}_2 \end{cases}</math>
:第一基本行列・第二基本行列とも対称行列なので第二式の転置をとって
::<math>\begin{cases} {}^t\!\boldsymbol{x}_2\mathbf{H}\boldsymbol{x}_1=\kappa_1{}^t\!\boldsymbol{x}_2\mathbf{K}\boldsymbol{x}_1 \\ {}^t\!\boldsymbol{x}_2\mathbf{H}\boldsymbol{x}_1=\kappa_2{}^t\!\boldsymbol{x}_2 \mathbf{K}\boldsymbol{x}_1 \end{cases}</math>
:上下の式の差をとって
::<math>(\kappa_1-\kappa_2){}^t\!\boldsymbol{x}_2\mathbf{K}\boldsymbol{x}_1=\boldsymbol{0}</math>
:<math>\kappa_1=\kappa_2</math>のときは<math>\boldsymbol{x}_1, \boldsymbol{x}_2</math>に関する恒等式であるので、<math>\kappa_1\neq\kappa_2</math>のときを考える。
::<math>{}^t\!\boldsymbol{x}_2\mathbf{K}\boldsymbol{x}_1=\left(\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}t_2+\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}u_2\right)\cdot\left(\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}t_1+\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}u_1\right)=0</math>
:この二つのベクトルは主方向を向くので2つの主方向は直交する。
<math>\kappa_1=\kappa_2</math>(法曲率<math>\varkappa(t, u)=\mathrm{const}.</math>)の場合、<math>S</math>の接平面内の任意の方向が主方向となるので「どの方向にも一様な曲がり方をする」と考えられる。このような主曲率を与える点を'''臍点'''という。任意の点が臍点である曲面は球面である。
上の結果から、'''臍点でない各点で2つの主方向は直交する'''。
主曲率に対して解と係数の関係から得る値
:<math>H=\frac{\kappa_1+\kappa_2}{2}=\frac{GL+ENN-2FM}{2EG-F^2},\quad K=\kappa_1\kappa_2=\frac{LN-M^2}{EG-F^2}</math>
をそれぞれ<math>S</math>の'''平均曲率'''・'''全曲率'''('''ガウス曲率''')という。
全曲率の式を見ると<math>K=\frac{LN-M^2}{EG-F^2}=\frac{\det\mathbf{H}}{\det\mathbf{K}}=\det(\mathbf{K}^{-1}\mathbf{H})</math>である。
そこで、<math>\mathbf{S}=\mathbf{K}^{-1}\mathbf{H}</math>と定義してみると行列式の性質より<math>K</math>は<math>\mathbf{S}</math>の固有値の積である。
ここで<math>\mathbf{S}</math>の固有方程式は
:<math>\det(\mathbf{S}-\lambda\mathbf{E})=\det(\mathbf{K}^{-1}\mathbf{H}-\lambda\mathbf{E})=\det\mathbf{K}^{-1}\det(\mathbf{H}-\lambda\mathbf{K})=0</math>
<math>\det\mathbf{K}^{-1}\neq0</math>より
:<math>\det(\mathbf{H}-\lambda\mathbf{K})=0</math>
これは主曲率を定義した二次方程式($)のことだったので、この方程式の解である固有値は<math>\lambda=\kappa_1, \kappa_2</math>である。
則ち、<math>K=\det\mathbf{S},\quad H=\frac{1}{2}\mathrm{tr}\,\mathbf{S}</math>が成り立つ。
更に、第一基本行列から第二基本行列への一次変換を考えると以下が成り立つことも判る。但し、こちらもフレネ=セレーと同様に厳密にはベクトルを列ではなく行に並べるのが正しいことに注意。
{{定理|(ヴァインガルテンの式)}}
:<math>\begin{pmatrix} \frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{t}} \\ \frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{u}} \end{pmatrix}=-\mathbf{S}\begin{pmatrix} \frac{\partial\boldsymbol{r}}{\partial{t}} \\ \frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}} \end{pmatrix}</math>
{{定理終わり}}
*証明
:<math>\begin{pmatrix} \frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{t}} \\ \frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{u}} \end{pmatrix}=\mathbf{A}\begin{pmatrix} \frac{\partial\boldsymbol{r}}{\partial{t}} \\ \frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}} \end{pmatrix}</math>と置く。
:両辺に<math>{}^t\!\begin{pmatrix} \frac{\partial\boldsymbol{r}}{\partial{t}} \\ \frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}} \end{pmatrix}</math>を右から掛けると行列積であることに注意して
:<math>\begin{pmatrix} \frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{t}}\cdot\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}} & \frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{t}}\cdot\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}} \\ \frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{u}}\cdot\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}} & \frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{u}}\cdot\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}} \end{pmatrix}=\mathbf{A}\begin{pmatrix} \frac{\partial\boldsymbol{r}}{\partial{t}}\cdot\frac{\partial\boldsymbol{r}}{\partial{t}} & \frac{\partial\boldsymbol{r}}{\partial{t}}\cdot\frac{\partial\boldsymbol{r}}{\partial{u}} \\ \frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}\cdot\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}} & \frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}\cdot\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}} \end{pmatrix}</math>
:<math>\therefore -\mathbf{H}=\mathbf{A}\mathbf{K}</math>
:<math>\therefore \mathbf{A}=-\mathbf{H}\mathbf{K}^{-1}=-\mathbf{K}^{-1}\mathbf{H}=-\mathbf{S}</math>//
臍点で行列<math>\mathbf{H}-\varkappa\mathbf{K}</math>を考えると<math>\varkappa=\kappa_1=\kappa_2</math>及び「主方向が任意」から
:<math>\mathbf{H}-\varkappa\mathbf{K}=\mathbf{O}</math>
であり、これを成分で書き下せばヴァインガルテンの式より法曲率に関して
:<math>\begin{cases} \varkappa=\frac{L}{E}=\frac{M}{F}=\frac{N}{G} \\ \frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{t}} = \varkappa \frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}} \\ \frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{u}} = \varkappa \frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}} \end{cases}</math>
を得る。
<math>\mathbf{S}=\mathbf{K}^{-1}\mathbf{H}</math>に於いて<math>\mathbf{K}</math>は正定値対称行列なので正則対称な主平方根<math>\mathbf{K}^{1/2}</math>が存在して
:<math>\mathbf{S}=\mathbf{K}^{-1/2}\mathbf{K}^{-1/2}\mathbf{H}</math>
ここで<math>\mathbf{T}=\mathbf{K}^{-1/2}\mathbf{H}\mathbf{K}^{-1/2}</math>という相似変換で表された行列を考えてみると
:<math>\mathbf{K}^{1/2}\mathbf{S}\mathbf{K}^{-1/2}</math>
:<math>=\mathbf{K}^{1/2}\mathbf{K}^{-1}\mathbf{H}\mathbf{K}^{-1/2}</math>
:<math>=\mathbf{K}^{-1/2}\mathbf{H}\mathbf{K}^{-1/2}</math>
:<math>=\mathbf{T}</math>
であり、<math>\mathbf{S}\sim\mathbf{T}</math>なのでこれらの2つの固有値の組は一致する。
:<math>\mathbf{H}={}^t\!\mathbf{H}</math>
より
:<math>{}^t\!\mathbf{T}=\mathbf{T}</math>
が成り立つので、<math>\mathbf{T}</math>は対称行列であり2つの固有値は実数である。
よって<math>\mathbf{S}</math>の二つの固有値はともに実数であるが、この固有値は($)の解<math>\kappa_1, \kappa_2</math>のことだったので($)は虚根を持たず、'''主曲率は必ず実数'''である。
モンジュ表示された曲面では先程求めた第二基本量の表式から直ちに
:<math>H=\frac{\left\{1+\left(\frac{\partial{f}}{\partial{y}}\right)^2\right\}\frac{\partial^2{f}}{\partial{x}^2}+\left\{1+\left(\frac{\partial{f}}{\partial{x}}\right)^2\right\}\frac{\partial^2{f}}{\partial{y}^2}-2\frac{\partial{f}}{\partial{x}}\frac{\partial{f}}{\partial{y}}\frac{\partial^2{f}}{\partial{x}\partial{y}}}{{2\left\{1+\left(\frac{\partial{f}}{\partial{x}}\right)^2+\left(\frac{\partial{f}}{\partial{y}}\right)^2\right\}^\frac{3}{2}}},\quad K=\frac{\frac{\partial{f}}{\partial{x}}\frac{\partial{f}}{\partial{y}}-\left(\frac{\partial^2{f}}{\partial{x}\partial{y}}\right)^2}{\left\{1+\left(\frac{\partial{f}}{\partial{x}}\right)^2+\left(\frac{\partial{f}}{\partial{y}}\right)^2\right\}^2}</math>
を得る。
等温座標系では<math>\mathbf{K}^{-1}=\frac{1}{\lambda^2}\mathbf{E}_3</math>より<math>\mathbf{S}=\frac{1}{\lambda^2}\begin{pmatrix} L & M \\ M & N \end{pmatrix}</math>なので、平均曲率・ガウス曲率はそれぞれ<math>H=\frac{L+N}{2\lambda^2},\quad K=\frac{LN-M^2}{\lambda^4}</math>と簡単に求まる。
ある点に於ける2つの主曲率はそれぞれその点に於ける極大方向・極小方向の曲がり方を与えるので、<math>\kappa_1, \kappa_2</math>の符号の組み合わせがその点近傍に於ける曲面の曲がり方を与えることになる。
具体的には、両方とも正なら上に凸、負なら下に凸、異符号なら鞍点となる。主曲率が0ならばその主方向に対して曲がっていないということである。
主曲率の積である全曲率の符号を見ても良い。全曲率が正ならば上下どちらかに凸、負ならば鞍点である。第一基本行列が正定値行列であることから主曲率の符号は第二基本行列の行列式と一致するので先程の「第二基本行列がヘッセ行列の一般化」という話に繫がる。
任意点で<math>H=0</math>を満たす曲面を'''極小曲面'''という。極小曲面は曲面を連続変形させたときに曲面積の最小値を与える曲面であることが知られている。
平面は自明な極小曲面である。他にも<math>z=\ln\left(\frac{\cos y}{\cos x}\right)(-\frac{\pi}{2}<x, y<\frac{\pi}{2})</math>(シェルクの第一曲面)などが知られている。
極小曲面は表面張力の理論に応用されている。
例えば石鹼膜のつくる曲面について、膜上点での表裏の圧力差<math>P</math>・その点での表面張力<math>T</math>及び平均曲率<math>H</math>に対し<math>P=2TH</math>が成立する(ヤング=ラプラスの公式)ことが知られているが、閉曲線である枠に張った膜が割れずに安定して存在する条件は全ての点で<math>P=H=0</math>、則ち極小曲面のときである。
曲面<math>S</math>上の微小変位<math>d\boldsymbol{r}</math>、法線方向の微小変位<math>d\boldsymbol{e}_S</math>に対して第一基本形式は<math>I=d\boldsymbol{r}\cdot d\boldsymbol{r}</math>、第二基本形式は<math>I\!I=-d\boldsymbol{r}\cdot d\boldsymbol{e}_S</math>であった。
最後の組み合わせである<math>d\boldsymbol{e}_S\cdot d\boldsymbol{e}_S</math>を<math>S</math>の'''第三基本形式'''と定義する。
:<math>I\!I\!I:=\left(\frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{t}}dt+\frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{u}}du\right)\cdot\left(\frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{t}}dt+\frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{u}}du\right)</math>
:<math>=\left\|\frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{t}}\right\|^2(dt)^2+2\frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{t}}\cdot\frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{u}}dtdu+\left\|\frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{u}}\right\|^2(du)^2</math>
これを同様に二次形式の行列表示に直すと<math>\mathbf{W}:=\begin{pmatrix} \left\|\frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{t}}\right\|^2 & \frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{t}}\cdot\frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{u}} \\ \frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{t}}\cdot\frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{u}} & \left\|\frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{u}}\right\|^2 \end{pmatrix}</math>として
:<math>I\!I\!I={}^t\!\boldsymbol{v}\mathbf{W}\boldsymbol{v}</math>
この<math>\mathbf{W}</math>を'''第三基本行列'''という。
見て判る通り、'''第三基本量'''は<math>P=\left\|\frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{t}}\right\|^2,\quad Q=\frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{t}}\cdot\frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{u}},\quad R=\left\|\frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{u}}\right\|^2</math>である。
臍点でないとき2つの主方向は直交するので、臍点を持たない曲面に対して主方向を直交基底としたパラメータ表示<math>\boldsymbol{r}=\boldsymbol{r}(p, q)</math>を考えられる。
このとき、各基本形式は
:<math>I=dp^2+dq^2</math>
:<math>I\!I=\kappa_1dp^2+\kappa_2dq^2</math>
:<math>I\!I\!I=\kappa^2_1dp^2+\kappa^2_2dq^2</math>
と表示されることが知られている。
第三基本形式は第一基本形式と第二基本形式の線型結合で表示される。
:<math>I\!I\!I=2HI\!I-KI</math>
このことはヴァインガルテンの式と平均曲率・全曲率の定義を用いて確かめられる。
これに関連し、第二基本量で定義された全曲率は第一基本量のみで表されることが知られている。つまり、曲率という外在的な量を第一基本形式という内在的な量のみで記述でき、言い換えると「曲面を考えるときに'''曲面の外側の空間を考える必要が無い'''」ということである。
この定理は発見者自身も驚愕したことから'''ガウスの驚異の定理'''と呼ばれている。詳しくは発展節で扱う。
なお、平均曲率を考えるときは外側の空間の情報が必要である。
==直交曲線座標系==
{{節stub}}
===円筒座標系===
平面の座標系として直交座標の他に斜交座標、極座標(円座標)、重心座標などがあったように、空間の座標系も複数通り考えられる。
空間座標を3つの実数の組<math>(r, \theta, z)</math>で表した座標系を'''円筒座標系'''('''円柱座標系'''、cylindrical coordinate system)という。ただし、<math>r</math>は原点からの(符号付き)距離、<math>\theta</math>は基準面に於ける始線からの正の回転角、<math>z</math>は基準面からの高さである。
円筒座標系は、円座標系の<math>r\theta</math>平面に<math>z</math>軸方向の次元を加えた3次元空間の座標と考えられる。
そのため、円筒座標系と直交座標系の対応は以下のようになる。
:<math>\begin{cases} x=r\cos\theta \\ y=r\sin\theta \\ z=z \end{cases} \iff \begin{cases} r=\sqrt{x^2+y^2} \\ \theta = \arctan\frac{y}{x} \\ z=z \end{cases}</math>
但し、<math>r</math>は基準面の裏側では負とする。
直交座標の<math>z</math>軸を基に円筒座標系の座標軸を決定する。一般に座標軸は直線とは限らないので、「軸」ではなく「曲線」と呼ぶことにする('''座標線''')。なお、「曲線」という語は一般に「直線」を包含する。
:<math>r</math>曲線:<math>z</math>軸上の点を通り<math>z</math>軸に垂直な半直線。
:<math>\theta</math>曲線:<math>z</math>軸を法線とする平面内にあり、中心が<math>z</math>軸上にある円周。
:<math>z</math>曲線:<math>z</math>軸に平行な直線。
ここで、各曲線に沿った微小変化がどのように表されるか見ていく。
<math>\boldsymbol{f}: (r,\theta,z)\to(x,y,z)</math>とする。
<math>\boldsymbol{f}</math>全体の微小変化は全微分<math>d\boldsymbol{f}=\frac{\partial{(x,y,z)}}{\partial{(r,\theta,z)}} \begin{pmatrix} dr \\ d\theta \\ dz \end{pmatrix}</math>で表される。
上で求めた関係式より
:<math>\boldsymbol{f}\begin{pmatrix} r \\ \theta \\ z\end{pmatrix}=\begin{pmatrix} x \\ y \\ z \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} r\cos\theta \\ r\sin\theta \\ z \end{pmatrix}</math>
なので、
:<math>\frac{\partial{(x,y,z)}}{\partial{(r,\theta,z)}} = \begin{pmatrix} \frac{\partial}{\partial{r}}r\cos\theta & \frac{\partial}{\partial{\theta}}r\cos\theta & \frac{\partial}{\partial{z}}r\cos\theta \\ \frac{\partial}{\partial{r}}r\sin\theta & \frac{\partial}{\partial{\theta}}r\sin\theta & \frac{\partial}{\partial{z}}r\sin\theta \\ \frac{\partial}{\partial{r}}z & \frac{\partial}{\partial{\theta}}z & \frac{\partial}{\partial{z}}z \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} \cos\theta & -r\sin\theta & 0 \\ \sin\theta & r\cos\theta & 0 \\ 0 & 0 & 1 \end{pmatrix}</math>
よって
:<math>d\boldsymbol{f}=\begin{pmatrix} \cos\theta & -r\sin\theta & 0 \\ \sin\theta & r\cos\theta & 0 \\ 0 & 0 & 1 \end{pmatrix} \begin{pmatrix} dr \\ d\theta \\ dz \end{pmatrix}=\begin{pmatrix} \cos\theta \\ \sin \theta \\ 0 \end{pmatrix}dr + \begin{pmatrix} -\sin\theta \\ \cos\theta \\ 0 \end{pmatrix}rd\theta + \begin{pmatrix} 0 \\ 0 \\ 1 \end{pmatrix}dz </math>
再右辺の各項を<math>d\vec{r}, d\vec{\theta}, d\vec{z}</math>と書くことにすると、<math>|d\vec{r}|, |d\vec{\theta}|, |d\vec{z}|</math>はそれぞれ<math>dr, rd\theta, dz</math>とわかる。<math>r, \theta, z</math>を物理量として捉えたとき<math>d\theta</math>の単位はラジアン(無次元量)であり、<math>rd\theta</math>の単位はメートル(長さの次元1)なので、次元の整合性が取れる。
纏めると以下のようになる。
{| class="wikitable"
| ||style="text-align:center;"| <math>\boldsymbol{e}_x</math>成分 ||style="text-align:center;"| <math>\boldsymbol{e}_y</math>成分 ||style="text-align:center;"| <math>\boldsymbol{e}_z</math>成分 ||style="text-align:center;"| ノルム
|-
|style="text-align:center;"| <math>d\vec{r}</math> ||style="text-align:center;"| <math>\cos\theta dr</math> ||style="text-align:center;"| <math>\sin\theta dr</math> ||style="text-align:center;"| <math>0</math> ||style="text-align:center;"| <math>dr</math>
|-
|style="text-align:center;"| <math>d\vec{\theta}</math> ||style="text-align:center;"| <math>-r\sin\theta d\theta</math> ||style="text-align:center;"| <math>r\cos\theta d\theta</math> ||style="text-align:center;"| <math>0</math> ||style="text-align:center;"| <math>rd\theta</math>
|-
|style="text-align:center;"| <math>d\vec{z}</math> ||style="text-align:center;"| <math>0</math> ||style="text-align:center;"| <math>0</math> ||style="text-align:center;"| <math>1</math> ||style="text-align:center;"| <math>dz</math>
|}
ここで<math>d\vec{r}, d\vec{\theta}, d\vec{z}</math>は内積を取ればどの組も互いに直交することが容易にわかるので、この3つのベクトルは3次元ユークリッド空間の直交基底である。
そこで、それぞれのベクトルを正規化することで各軸曲線方向の基本ベクトルを得る。
:<math>\boldsymbol{e}_r = \frac{d\vec{r}}{dr} = \cos\theta \boldsymbol{e}_x + \sin\theta \boldsymbol{e}_y</math>
:<math>\boldsymbol{e}_\theta = \frac{d\vec{\theta}}{rd\theta} = -\sin\theta\boldsymbol{e}_x+\cos\theta\boldsymbol{e}_y</math>
:<math>\boldsymbol{e}_z=\frac{d\vec{z}}{dz}=\boldsymbol{e}_z</math>
これを一次変換の形式で表すと
:<math>\begin{pmatrix} \boldsymbol{e}_r \\ \boldsymbol{e}_\theta \\ \boldsymbol{e}_z \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} \cos\theta & \sin\theta & 0 \\ -\sin\theta & \cos\theta & 0 \\ 0 & 0 & 1 \end{pmatrix} \begin{pmatrix} \boldsymbol{e}_x \\ \boldsymbol{e}_y \\ \boldsymbol{e}_z \end{pmatrix}</math>
となる。
このときの表現行列を、座標系または基底ベクトルを変換することから'''座標変換行列'''又は'''基底変換行列'''という。場合によっては'''変換テンソル'''とも呼ぶ。
なお、この直交座標⇒円筒座標の座標変換行列は、<math>xyz</math>空間に於ける<math>z</math>軸まわりの回転行列に等しい。
逆基底変換はこの座標変換行列の逆行列を求めれば定式化できる。
回転行列は直交行列なので
:<math>\begin{pmatrix} \cos\theta & \sin\theta & 0 \\ -\sin\theta & \cos\theta & 0 \\ 0 & 0 & 1 \end{pmatrix} ^{-1}= {}^t \! \begin{pmatrix} \cos\theta & \sin\theta & 0 \\ -\sin\theta & \cos\theta & 0 \\ 0 & 0 & 1 \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} \cos\theta & -\sin\theta & 0 \\ \sin\theta & \cos\theta & 0 \\ 0 & 0 & 1 \end{pmatrix} </math>
であり、
:<math>\begin{pmatrix} \boldsymbol{e}_x \\ \boldsymbol{e}_y \\ \boldsymbol{e}_z \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} \cos\theta & -\sin\theta & 0 \\ \sin\theta & \cos\theta & 0 \\ 0 & 0 & 1 \end{pmatrix} \begin{pmatrix} \boldsymbol{e}_r \\ \boldsymbol{e}_\theta \\ \boldsymbol{e}_z \end{pmatrix}</math>
円筒座標系は、[[電磁気学]]の解析でよく使用される。
例えば、高校物理の公式<math>B(r)=\frac{\mu_0I}{\tau r}</math>は、円筒座標系を知っていれば「電流が<math>z</math>軸に平行であることから磁場は<math>z</math>方向に一葉且つ<math>\theta</math>方向に回転対称なので、<math>r</math>方向の項のみが寄与する」と理解される。
===極座標系===
高等学校までの地理で習ったように、球面上の位置は緯度<math>\theta</math>と経度<math>\phi</math>で定めることができる。
一般に三次元空間で球面上のある点の座標を定めるには、更に球の中心からの距離<math>r</math>が必要である。
このようにして定められる座標系を'''三次元極座標系'''(polar coordinate system in 3D)または'''球(面)座標系'''(spherical coordinate system)という。
xyz座標空間の点<math>\mathrm{P}(x, y, z)</math>の極座標表示を考える。
<math>r=|\overrightarrow{\mathrm{OP}}|=\sqrt{x^2+y^2+z^2}</math>は容易にわかる。
<math>\theta</math>は<math>z</math>軸からの'''天頂角'''(zenith angle)であり、<math>\overrightarrow{\mathrm{OP}}</math>の<math>z</math>軸への正射影ベクトルを<math>\overrightarrow{\mathrm{OH}}=\vec{h}</math>とすると<math>\tan\theta = \frac{|\vec{h}|}{z}</math>が成り立つ。<math>|\vec{h}|=\sqrt{x^2+y^2}</math>より、<math>\theta=\arctan \frac{\sqrt{x^2+y^2}}{z}</math>である。
<math>\phi</math>は<math>x</math>軸からの'''方位角'''(azimuth angle)であり、<math>\mathrm{P}</math>から<math>xy</math>平面に降ろした垂足<math>\mathrm{Q}</math>を考えると<math>\tan\phi=\frac{y}{x}</math>とわかる。よって、<math>\phi=\arctan\frac{y}{x}</math>である。
逆に、これを<math>\mathrm{P}(x, y, z)</math>に復元することを考える。
<math>\triangle\mathrm{OHP}</math>について<math>\angle\mathrm{HOP}=\theta</math>なので、<math>z=\overline{\mathrm{OH}}=r\cos\theta</math>。
また、<math>\triangle\mathrm{OPQ}</math>について<math>\angle\mathrm{OPQ}=\theta</math>なので、<math>\overline{\mathrm{OQ}}=r\sin\theta</math>。
よって<math>x=\overline{\mathrm{OQ}}\cos\phi=r\sin\theta\cos\phi, y=\overline{\mathrm{OQ}}\sin\phi=r\sin\theta\sin\phi</math>。
以上を纏めると、直交座標と球面座標の対応関係は
:<math>\begin{cases} x=r\sin\theta\cos\phi \\ y=r\sin\theta\sin\phi \\ z=r\cos\theta \end{cases} \iff \begin{cases} r=\sqrt{x^2+y^2+z^2} \\ \theta=\arctan\frac{\sqrt{x^2+y^2}}{z} \\ \phi=\arctan\frac{y}{x} \end{cases}</math>
一般に緯度は<math>-90^\circ \leqq \theta \leqq 90^\circ</math>、経度は<math>-180^\circ \leqq \phi \leqq 180^\circ</math>の範囲で表される(但し、符号の違いは東⇔西、南⇔北の違いである)。同様に、球面座標の天頂角<math>\theta</math>、方位角<math>\phi</math>は<math>\theta \in [-\frac{\pi}{4}, \frac{\tau}{4}], \phi \in [-\frac{\tau}{2}, \frac{\tau}{2}]</math>で考える。赤道面より下側(すなわち南半球)では<math>\theta<0</math>とする。
直交座標の<math>z</math>軸を基に極座標系の座標線を決定する。
:<math>r</math>曲線:原点を通る半直線。
:<math>\theta</math>曲線:原点中心で<math>z</math>軸上の一点から出る半円弧。
:<math>\phi</math>曲線:<math>z</math>軸を法線とする平面内で<math>z</math>軸上に中心を持つ円周。
各曲線に沿った微小変化は円柱座標系の場合と同様、ベクトル場の全微分を用いて
:<math>\begin{cases} d\vec{r}= \begin{pmatrix} \sin\theta\cos\phi \\ \sin\theta\sin\phi \\ \cos\theta \end{pmatrix} dr \\ d\vec{\theta}= \begin{pmatrix} \cos\theta\cos\phi \\ \cos\theta\sin\phi \\ -\sin\theta \end{pmatrix}rd\theta \\ d\vec{\phi} = \begin{pmatrix} -\sin\phi \\ \cos\phi \\ 0 \end{pmatrix} r\sin\theta d\phi \end{cases}</math>
と求まる。
これらは(内積の結果から)互いに直交するので、円柱座標の場合と同様の議論により
:<math>\begin{pmatrix} \sin\theta\cos\phi & \sin\theta\sin\phi & \cos\theta \\ \cos\theta\cos\phi & \cos\theta\sin\phi & -\sin\theta \\ -\sin\phi & \cos\phi & 0 \end{pmatrix}</math>
と変換テンソルが求まる。
これも直交行列であるので、逆変換テンソルは
:<math>\begin{pmatrix} \sin\theta\cos\phi & \cos\theta\cos\phi & \cos\phi \\ \sin\theta\sin\phi & \cos\theta\sin\phi & -\sin\phi \\ -\sin\theta & \cos\theta & 0 \end{pmatrix}</math>
と求まる。
球面座標系は、[[古典力学]]の解析でよく使用される。
例えば、赤道平面における角運動量保存則は<math>mr^2\frac{d\phi}{dt}=\mathrm{const}.</math>と表示されるが、これは<math>z</math>軸方向の角運動量を球面座標系の演算により取り出したものである。
球面座標系は特に機械制御に応用されている。
円柱座標系・球面座標系ともに各基底ベクトルが互いに直交しているので、そのことを明示して(且つ通常の直交座標系と区別して)'''直交曲線座標系'''(orthogonal curvilinear coordinate system)と呼ぶ場合がある。以下で扱う座標系たちも直交曲線座標系である。
===円環座標系===
===双極座標系===
===回転放物面座標系===
===放物柱座標系===
===回転楕円面座標系===
===楕円柱座標系===
===楕円体座標系===
==空間微分==
ここでは三次元ユークリッド空間で考える。
===勾配===
スカラー場<math>\varphi=\varphi(\boldsymbol{x})</math>が<math>x, y, z</math>の三変数関数であって<math>\varphi\in C^1</math>のとき、
:<math>\mathrm{grad}\,\varphi := \begin{pmatrix} \frac{\partial{\varphi}}{\partial{x}} \\ \frac{\partial{\varphi}}{\partial{y}} \\ \frac{\partial{\varphi}}{\partial{z}} \end{pmatrix}</math>
を<math>\varphi</math>の'''勾配'''(gradient)と定義する。
勾配の結果として得るベクトルを<math>\varphi</math>の'''勾配ベクトル'''ともいう。
勾配で定義される概念としては、電場が有名である。
:電位<math>\phi</math>に対する電場<math>\boldsymbol{E}</math>は
:<math>\boldsymbol{E}:=-\mathrm{grad}\,\phi</math>
勾配はベクトル量であるため、そのことを明示するため新たな演算子を導入する。
'''空間偏微分演算子'''(ハミルトン演算子)を
<math>\nabla:=\begin{pmatrix} \frac{\partial}{\partial{x}} \\ \frac{\partial}{\partial{y}} \\ \frac{\partial}{\partial{z}} \end{pmatrix}</math>
と定義する。
この演算子自体は偏微分作用素の対象を後接しないと意味を成さない。しかし、便宜的にベクトル量と考えてベクトルと同様の演算則が成り立つと見做す。そのため、この演算子に関する演算は[[w:記号の濫用]](symbol abuse)であることを註しておく。
<math>\nabla</math>の正式な読み方は'''ナブラ'''(nabla)であるが、<math>\Delta</math>(delta)を反転した形であることから'''エイトレッド'''(atled)とも読まれる。なお、ナブラの由来は「竪琴」を意味する古代ギリシャ語「νάβλα」である。
この演算子を用いれば勾配の表式は
:<math>\mathrm{grad}\,\varphi=\nabla\varphi</math>
となる。
<math>\varphi</math>はスカラー場なのでスカラー量であり、<math>\nabla</math>は便宜的にベクトル量と考えることから、その積<math>\nabla\varphi</math>はベクトル量のスカラー倍、すなわちベクトル量であることが見て取れる。
勾配はスカラー場に対する偏微分の結果を並べたベクトルであるため、偏微分の性質とベクトルの性質を組み合わせて以下が成り立つと判る。
#<math>\nabla(k\varphi+l\psi)=k\nabla\varphi+l\nabla\psi</math>(線型性)
#<math>\nabla(\varphi\psi)=(\nabla\varphi)\psi+\varphi(\nabla\psi)</math>(積の微分・ライプニッツ則)
#<math>\nabla\left(\frac{\varphi}{\psi}\right)=\frac{(\nabla\varphi)\psi-\varphi(\nabla\psi)}{\psi^2}</math>(商の微分)
#<math>\nabla(\varphi(\psi))=\frac{d\varphi(\psi)}{d\psi}\nabla\psi</math>(合成関数微分)
任意点に対して勾配ベクトルが非零であるスカラー場を'''正則'''なスカラー場という。
以下、正則なスカラー場に限って扱う。
等位面<math>\varphi(x, y, z)=k(\mathrm{const}.)</math>上の点<math>\mathrm{P}(x_0, y_0, z_0)</math>を考える。
:<math>\mathrm{P}</math>を通り等位面に拘束される曲線のベクトル表示を<math>\boldsymbol{r}=\boldsymbol{r}(t)</math>とする。
:等位面の方程式を<math>t</math>で両辺微分して
::<math>\frac{\partial{\varphi}}{\partial{x}}\frac{dx}{dt}+\frac{\partial{\varphi}}{\partial{y}}\frac{dy}{dt}+\frac{\partial{\varphi}}{\partial{z}}\frac{dz}{dt}=0</math>
:<math>t=t_0</math>のとき
::<math>\frac{\partial{\varphi}}{\partial{x}}x'(t_0)+\frac{\partial{\varphi}}{\partial{y}}y'(t_0)+\frac{\partial{\varphi}}{\partial{z}}z'(t_0)=0</math>
::<math>\nabla\varphi(\mathrm{P})\cdot\boldsymbol{r}'(t_0)=0</math>
::<math>\nabla\varphi(\mathrm{P})\perp\boldsymbol{r}'(t_0)</math>
ここで<math>\mathrm{P}</math>に於ける等位面の接平面は接ベクトル<math>\boldsymbol{r}'(t_0)</math>を含むため、<math>\nabla\varphi(\mathrm{P})</math>は点<math>\mathrm{P}</math>に於ける等位面の法線ベクトルである。
よって等位面の接平面の方程式は
:<math>\nabla\varphi(\mathrm{P})\cdot(\boldsymbol{x}-\overrightarrow{\mathrm{OP}})=0</math>
である。
スカラー場<math>\varphi=\varphi(\boldsymbol{x})</math>の全微分は
:<math>d\varphi=\frac{\partial{\varphi}}{\partial{x}}dx+\frac{\partial{\varphi}}{\partial{y}}dy+\frac{\partial{\varphi}}{\partial{z}}dz</math>
これをベクトルの内積とみると
:<math>=\begin{pmatrix} \frac{\partial{\varphi}}{\partial{x}} \\ \frac{\partial{\varphi}}{\partial{y}} \\ \frac{\partial{\varphi}}{\partial{z}} \end{pmatrix}\cdot\begin{pmatrix} dx \\ dy \\ dz \end{pmatrix}</math>
:<math>=\nabla\varphi\cdot d\boldsymbol{x}</math>
ここで変位ベクトル<math>d\boldsymbol{x}</math>を任意の方向を向いた単位ベクトル<math>\boldsymbol{e}</math>に拡張することを考えたい。
<math>\varphi(\mathrm{P})</math>に対して<math>\mathrm{P}</math>を始点とする<math>\boldsymbol{e}</math>方向の直線を考え、その上の点を<math>\mathrm{Q}</math>とする。
このとき、ベクトル変数<math>\boldsymbol{e}</math>による微分係数
:<math>\frac{\partial{\varphi}(\mathrm{P})}{\partial{\boldsymbol{e}}}=\lim_{\mathrm{Q\to P}}\frac{\varphi(\mathrm{Q})-\varphi(\mathrm{P})}{\overline{\mathrm{QP}}}</math>
を、<math>\varphi</math>の<math>\mathrm{P}</math>に於ける<math>\boldsymbol{e}</math>方向の'''方向微分係数'''と定義する。
方向微分係数はスカラー場に対し<math>\boldsymbol{e}</math>方向の変化率を与えるものと考えられる。そこで、方向微分係数が最大となる方向を考える。
:<math>\overrightarrow{\mathrm{PQ}}=t\boldsymbol{e}</math>と置く。
::<math>\overrightarrow{\mathrm{OQ}}=\begin{pmatrix} x_0+te_1 \\ y_0+te_2 \\ z_0+te_3 \end{pmatrix}</math>
::<math>\frac{\partial{\varphi}(\mathrm{P})}{\partial{\boldsymbol{e}}}=\lim_{t\to0}\frac{\varphi(x_0+te_1, y_0+te_2, z_0+te_3)-\varphi(x_0, y_0, z_0)}{t}</math>
:ここで<math>\Phi(t):=\varphi(x_0+te_1, y_0+te_2, z_0+te_3)</math>とすれば
::<math>=\lim_{t\to0}\frac{\Phi(t)-\Phi(0)}{t}</math>
::<math>=\frac{d\Phi(t)}{dt}</math>
::<math>=\frac{\partial{\varphi}(x_0, y_0, z_0)}{\partial{x}}\frac{d(x_0+te_1)}{dt}+\frac{\partial{\varphi}(x_0, y_0, z_0)}{\partial{y}}\frac{d(y_0+te_2)}{dt}+\frac{\partial{\varphi}(x_0, y_0, z_0)}{\partial{z}}\frac{d(z_0+te_3)}{dt}</math>
::<math>=\frac{\partial{\varphi}(\mathrm{P})}{\partial{x}}e_1+\frac{\partial{\varphi}(\mathrm{P})}{\partial{y}}e_2+\frac{\partial{\varphi}(\mathrm{P})}{\partial{z}}e_3</math>
::<math>=\nabla\varphi(\mathrm{P})\cdot\boldsymbol{e}</math>
よって、全微分の式の<math>d\boldsymbol{x}</math>をそのまま<math>\boldsymbol{e}</math>に取り替えたものが方向微分係数の表式である。
内積を書き下すと<math>\|\boldsymbol{e}\|=1</math>より
:<math>\frac{\partial{\varphi}(\mathrm{P})}{\partial{\boldsymbol{e}}}=\|\nabla\varphi(\mathrm{P})\|\cos\theta</math>
よって最大値をとるのは<math>\cos\theta=1</math>則ち'''<math>\boldsymbol{e}</math>が勾配方向のとき'''である。また、方向微分係数の最大値は'''勾配のノルム'''である。
このように、勾配はスカラー場の各点に於ける傾きを表す。これは最右辺の式が「各軸方向の傾きを表すベクトルの和」になっていることからも直観的にわかる。ここから、「gradient」の和訳として「勾配」が充当されたのは妥当である。
方向微分係数を'''方向導関数'''に拡張することを考える。
形式的には方向微分係数の定点<math>\mathrm{P}</math>を変数<math>\boldsymbol{x}</math>に置き換えればいいだけである。
:<math>\frac{\partial{\varphi}(\boldsymbol{x})}{\partial{\boldsymbol{e}}}:=\nabla\varphi(\boldsymbol{x})\cdot\boldsymbol{e}</math>
正式には極限を用いて
:<math>\frac{\partial{\varphi}(\boldsymbol{x})}{\partial{\boldsymbol{e}}}:=\lim_{t\to0}\frac{\varphi(\boldsymbol{x}+t\boldsymbol{e})-\varphi(\boldsymbol{x})}{t}</math>
と定義する。
内積を書き下すと
:<math>\frac{\partial{\varphi}(\boldsymbol{x})}{\partial{x}}e_1+\frac{\partial{\varphi}(\boldsymbol{x})}{\partial{y}}e_2+\frac{\partial{\varphi}(\boldsymbol{x})}{\partial{z}}e_3</math>
これを[[解析学基礎/多変数関数の微積分#極値]]で扱った方向偏微分作用素として書き直すと
:<math>\left(e_1\frac{\partial}{\partial{x}}+e_2\frac{\partial}{\partial{y}}+e_3\frac{\partial}{\partial{z}}\right)\varphi(\boldsymbol{x})</math>
:<math>=(\boldsymbol{e}\cdot\nabla)\varphi(\boldsymbol{x})</math>
となる。
則ち、形式的には空間偏微分演算子の微分方向ベクトルとの右内積が方向偏微分作用素である。
更に、多変数関数のテイラー二次近似は
:<math>f(\boldsymbol{x})\fallingdotseq f(\boldsymbol{a})+\nabla{f}(\boldsymbol{a})\cdot(\boldsymbol{x}-\boldsymbol{a})+\frac{1}{2}{}^t\!(\boldsymbol{x}-\boldsymbol{a})\mathbf{D}(\boldsymbol{x}-\boldsymbol{a})</math>
と書けることが判る。但し、<math>\mathbf{D}</math>はヘッセ行列である。
多変数解析で扱った停留点(臨界点)は<math>\nabla\varphi(\mathrm{P})=\boldsymbol{0}</math>なる点<math>\mathrm{P}</math>として正式に定義される。また、ラグランジュの未定乗数法に於ける連立方程式も勾配を用いれば<math>\nabla\varphi(\mathrm{P})=\lambda\nabla\psi(\mathrm{P})</math>と書き表される。
スカラー場の全微分は勾配で表せたが、同様にベクトル場の全微分をナブラを用いて表すことを考える。
ベクトル場の全微分は
:<math>d\boldsymbol{a}=\frac{\partial{(a_x,a_y,a_z)}}{\partial{(x,y,z)}} d\boldsymbol{x}</math>
で定義された。
ここで<math>n</math>次行列 <math>\mathbf{A}</math>と<math>n</math>項列ベクトル <math>\boldsymbol{a}</math>に対し、<math>(\mathbf{A} \circledast \boldsymbol{a})_{ij} = (\mathbf{A}_{ij}) a_i</math>となるような可換二項演算子 <math>\circledast</math>を定義する。これは本項独自の記法である。但し、<math>(\mathbf{P})_{ij}</math>は行列 <math>\mathbf{P}</math>の第ij成分を表す。
この記法を用いると、ヤコビ行列<math>\frac{\partial{(a_x,a_y,a_z)}}{\partial{(x,y,z)}}</math>は<math>\nabla \circledast \boldsymbol{a}</math>と表すことができる。
則ち、ベクトル場の全微分は
:<math>d\boldsymbol{a} = (\nabla \circledast \boldsymbol{a}) d\boldsymbol{x}</math>
と表される。
これを形式的に
:<math>\frac{\partial{\boldsymbol{a}}}{\partial{\boldsymbol{x}}}=\nabla \circledast \boldsymbol{a}</math>
と書き表すことができる。
則ち、ヤコビ行列はベクトル場のベクトル変数による導関数と見做せる。
ヤコビ行列はベクトル場の成分スカラー場に対する勾配ベクトルを行に並べたものという解釈もできるので、この考え方は自然である。
ここでベクトル場に対してスカラー場と同様に方向微分係数・方向導関数を考えると、
:<math>\frac{\partial{\boldsymbol{a}}}{\partial{\boldsymbol{v}}}=\frac{\partial{\boldsymbol{a}}}{\partial{\boldsymbol{x}}}\boldsymbol{v}</math>
が成り立つことが判る。
これもベクトル場の成分スカラー場に対する方向微分係数・方向導関数を列に並べたベクトルと解釈できる。
則ち、
:<math>\frac{\partial{\boldsymbol{a}}}{\partial{\boldsymbol{v}}}=(\nabla\circledast\boldsymbol{a})\boldsymbol{v}=(\boldsymbol{v}\cdot\nabla)\boldsymbol{a}</math>
である。
===発散===
ベクトル場<math>\boldsymbol{a}=\boldsymbol{a}(\boldsymbol{x})</math>が<math>x, y, z</math>の三変数関数であって<math>\boldsymbol{a}\in C^1</math>のとき、
:<math>\mathrm{div}\,\boldsymbol{a} := \frac{\partial{a_x}}{\partial{x}} + \frac{\partial{a_y}}{\partial{y}} + \frac{\partial{a_z}}{\partial{z}}</math>
を<math>\boldsymbol{a}</math>の'''発散'''(divergence)と定義する。
発散が用いられる概念としては、'''ガウスの法則'''が有名である。
:電荷密度<math>\rho</math>、電場<math>\boldsymbol{E}</math>、真空の誘電率<math>\varepsilon_0</math>として
:<math>\mathrm{div}\,\boldsymbol{E}=\frac{\rho}{\varepsilon_0}</math>
球面座標で考えることにより、この式の重要な性質「荷電粒子の座標を原点にとると原点以外では
<math>\mathrm{div}\,\boldsymbol{E}=0</math>」を証明することができる。
勾配と同様に発散をナブラで表すことを考えると、
:<math>\mathrm{div}\,\boldsymbol{a}=\nabla\cdot\boldsymbol{a}</math>
という表式を得る。
<math>\boldsymbol{a}</math>はベクトル場なのでベクトル量であり、<math>\nabla</math>は便宜的にベクトル量と考えることから、その内積<math>\nabla\cdot\boldsymbol{a}</math>はスカラー量であることが見て取れる。
発散に対しては以下が成り立つ。
#<math>\nabla\cdot(k\boldsymbol{a}+l\boldsymbol{b})=k\nabla\cdot\boldsymbol{a}+l\nabla\cdot\boldsymbol{b}</math>(線型性)
#<math>\nabla\cdot(\varphi\boldsymbol{a})=(\nabla\varphi)\cdot\boldsymbol{a}+\varphi\nabla\cdot\boldsymbol{a}</math>(積の微分・ライプニッツ則)
前者は内積の線型性より、後者は成分演算と勾配の定義より示される。
ヤコビ行列<math>\nabla\circledast\boldsymbol{a}</math>との関係を考える。
:<math>\nabla\circledast\boldsymbol{a}=\begin{pmatrix} \frac{\partial{\boldsymbol{a}}}{\partial{x}} & \frac{\partial{\boldsymbol{a}}}{\partial{y}} & \frac{\partial{\boldsymbol{a}}}{\partial{z}} \end{pmatrix}=\begin{pmatrix} \frac{\partial{a}_x}{\partial{x}} & \frac{\partial{a}_x}{\partial{y}} & \frac{\partial{a}_x}{\partial{z}} \\ \frac{\partial{a}_y}{\partial{x}} & \frac{\partial{a}_y}{\partial{y}} & \frac{\partial{a}_y}{\partial{z}} \\ \frac{\partial{a}_z}{\partial{x}} & \frac{\partial{a}_z}{\partial{y}} & \frac{\partial{a}_z}{\partial{z}} \end{pmatrix}</math>
ここで跡が発散そのものになっているので
:<math>\nabla\cdot\boldsymbol{a}=\mathrm{tr}(\nabla\circledast\boldsymbol{a})</math>
が成り立つ。
発散の物理的意味を考える。
:密度<math>\rho</math>が一定である流体の速度場<math>\boldsymbol{v}\in\mathbb{R}^3</math>に対し、微小直方体に出入りする流体の質量収支を考える。
:点<math>(x,y,z)</math>に於ける流速<math>\boldsymbol{v}(x,y,z)=(v_x,v_y,v_z)</math>、直方体の各辺の長さを<math>\delta x, \delta y, \delta z</math>とする。
:単位時間あたりに<math>yz</math>平面に平行な面を通過する流体の質量収支は流出量<math>-\rho v_x(x,y,z)\delta y\delta z</math>、流入量<math>\rho v_x(x+\delta x,y,z)\delta y\delta z</math>より
::<math>\rho(v_x(x+\delta x,y,z)-v_x(x,y,z))\delta y\delta z=\rho\frac{v_x(x+\delta x,y,z)-v_x(x,y,z)}{\delta x}\delta x\delta y\delta z</math>
:<math>\delta x\to0</math>の極限で
::<math>=\rho\frac{\partial{v_x}}{\partial{x}}dxdydz</math>
:他の面で考えると対称性から輪環の順に入れ替えた結果を得るので直方体全体では
::<math>\rho\left(\frac{\partial{v_x}}{\partial{x}}+\frac{\partial{v_y}}{\partial{y}}+\frac{\partial{v_z}}{\partial{z}}\right)dxdydz</math>
:よって単位体積当たりでは
::<math>\rho\nabla\cdot\boldsymbol{v}</math>
:を得る。
ここで質量を密度で割ると体積なので、<math>\nabla\cdot\boldsymbol{v}</math>は単位時間あたりの流体の体積の正味の流出率を表す。
この微小直方体の単位体積あたりで観測すると、発散が正であれば流体は膨脹して密度が下がり、負であれば圧縮されて密度が上がる。0であれば流体は膨脹も圧縮もしない。
発散が零であるベクトル場を'''非圧縮/湧出無し/管状/ソレノイダル ベクトル場'''(incompressible/solenoidal vector field)などと呼ぶ。
また、ベクトル場の発散を'''湧き出し'''(「沸き出し」とも書く)と呼ぶ場合もある。
ベクトル場の流線に沿う流れが流体の体積を保存する条件はベクトル場が非圧縮であることである。これを'''リウヴィルの定理'''という。これは多くの場合、[[解析力学]]のハミルトン形式で表示される。
位置ベクトル場<math>\boldsymbol{r}=\begin{pmatrix} x \\ y \\ z \end{pmatrix}</math>に対して<math>\nabla\cdot\frac{\boldsymbol{r}}{\|\boldsymbol{r}\|^n}</math>を考える。
:<math>\frac{\partial}{\partial{x}}\frac{1}{\|\boldsymbol{r}\|^n}=\frac{\partial{\left(\frac{1}{\|\boldsymbol{r}\|^n}\right)}}{\partial{\|\boldsymbol{r}\|}}\frac{\partial{\|\boldsymbol{r}\|}}{\partial{x}}=-\frac{n}{\|\boldsymbol{r}\|^n+1}\frac{x}{\sqrt{x^2+y^2+z^2}}=-\frac{nx}{\|\boldsymbol{r}\|^{n+2}}</math>
<math>y, z</math>も同様なので
:<math>\nabla\frac{1}{\|\boldsymbol{r}\|^n}=-\frac{n\boldsymbol{r}}{\|\boldsymbol{r}\|^{n+1}}</math>
よって発散のライプニッツ則から
:<math>\nabla\cdot\frac{\boldsymbol{r}}{\|\boldsymbol{r}\|^n}=\left(\nabla\frac{1}{\|\boldsymbol{r}\|^n}\right)\cdot\boldsymbol{r}+\frac{1}{\|\boldsymbol{r}\|^n}\nabla\cdot\boldsymbol{r}=-\frac{n\boldsymbol{r}\cdot\boldsymbol{r}}{\|\boldsymbol{r}\|^{n+2}}+\frac{1+1+1}{\|\boldsymbol{r}\|^n}=\frac{3-n}{\|\boldsymbol{r}\|^n}</math>
この結果から、<math>\boldsymbol{a}/\!\!/\boldsymbol{r}\land\|\boldsymbol{a}\|\propto \frac{1}{\|\boldsymbol{r}\|^2}\implies\nabla\cdot\boldsymbol{a}=0</math>(逆二乗則に従う場は非圧縮ベクトル場)が成り立つ。
ベクトル解析の黎明期では発散の逆符号で表される
:<math>\mathrm{conv}\,\boldsymbol{a}:=-\frac{\partial{a_x}}{\partial{x}} - \frac{\partial{a_y}}{\partial{y}} - \frac{\partial{a_z}}{\partial{z}}</math>
という量が用いられていた。これは'''吸い込み'''(convergence)と呼ばれる量である。
ベクトルが発明される以前、ベクトル演算に相当するものは[[多元数/四元数|四元数]]で記述されていた。純虚四元数同士の積をとると実部が現在で言う内積の-1倍、虚部が現在で言う外積に対応する。このことから、内積そのものである湧き出しではなく内積の-1倍である吸い込みが自然に出現する量として頻繁に扱われていたのである。
===回転===
回転運動は、以下の3つにより一意に定まる。
*回転軸の方向
*回転の速さ
*回転方向(軸に対して右回転か左回転か)
「回転方向」は暗黙の諒解として右手系の正の回転角で考える。すると、回転運動を表すのに必要な情報は「方向」と「速さ(=スカラー量)」のみとなる。
従って、'''任意の回転運動はベクトルで表示される'''(ベクトルの大きさは「回転の速さ」で定める)。このようなベクトルを'''角速度ベクトル'''という。
ベクトル場の'''回転'''(curl/rotation/rotor)を以下のように定義する。
:<math>\mathrm{curl} \, \boldsymbol{a} = \mathrm{rot} \, \boldsymbol{a} = \begin{pmatrix} \frac{\partial{a_z}}{\partial{y}}-\frac{\partial{a_y}}{\partial{z}} \\ \frac{\partial{a_x}}{\partial{z}}-\frac{\partial{a_z}}{\partial{x}} \\ \frac{\partial{a_y}}{\partial{x}}-\frac{\partial{a_x}}{\partial{y}} \end{pmatrix}</math>
<math>\mathrm{curl}</math>は理学系、<math>\mathrm{rot}</math>は工学系が好んで使用する。
<math>z</math>軸方向の成分について考える。
<math>z</math>軸方向の回転はフレミングの左手の法則から<math>xy</math>平面内の成分のみが寄与すると考えられる。<math>z</math>軸の正方向の回転を生むには、<math>x</math>軸方向の変化率を大きくして<math>y</math>軸方向の変化率を小さくすればよい。
ある軸方向の変化率とはその軸の変数に関する偏導関数のことであったので、回転のz成分を<math>\frac{\partial{X_y}}{\partial{x}}-\frac{\partial{X_x}}{\partial{y}}</math>とすれば満足する。
対称性より輪環の順で入れ替えても同様であるので、回転は上の式で表されるとわかる。
これはより厳密には後述の線積分を用いて説明することになるので、ここでは定性的な説明に留めた。
回転を用いた概念として、ファラデーの電磁誘導の法則が有名である。
:電場<math>\boldsymbol{E}</math>、磁束密度<math>\boldsymbol{B}</math>として
:<math>\mathrm{rot} \, \boldsymbol{E} = -\frac{\partial{\boldsymbol{B}}}{\partial{t}}</math>
流体の渦の記述にも応用されており、回転を'''渦度ベクトル'''とも呼ぶ。流体力学的な渦の定義は「速度場の回転」である。
回転が零ベクトルであるベクトル場を'''非回転的/渦無し/層状/ラメラー ベクトル場'''(irrotational/lamella vector field)などと呼ぶ。
勾配・発散と同様に空間偏微分演算子による表記を考える。
成分に着目すると外積の形式なので、
:<math>\mathrm{curl} \, \boldsymbol{a}= \nabla \times \boldsymbol{a}</math>
と表されることが判る。
ベクトル場はベクトル量であり、ナブラは便宜的にベクトル量と見做すことから、その外積である回転はベクトル量であることが見て取れる。
外積の性質から、回転は行列式
:<math>\det \begin{pmatrix} \boldsymbol{e}_x & \boldsymbol{e}_y & \boldsymbol{e}_z \\ \frac{\partial}{\partial{x}} & \frac{\partial}{\partial{y}} & \frac{\partial}{\partial{z}} \\ a_x & a_y & a_z \end{pmatrix}</math>
でも表示される。
回転に対しては以下が成り立つ。
#<math>\nabla\times(k\boldsymbol{a}+l\boldsymbol{b})=k\nabla\times\boldsymbol{a}+l\nabla\times\boldsymbol{b}</math>(線型性)
#<math>\nabla\times(\varphi\boldsymbol{a})=(\nabla\varphi)\times\boldsymbol{a}+\varphi\nabla\times\boldsymbol{a}</math>(積の微分・ライプニッツ則)
前者は外積の線型性より、後者は成分演算と勾配の定義より示される。
回転は常に角速度ベクトルと一致するとは限らない。そのため、必ずしも回転運動そのものを記述しない。
回転は、ヤコビ行列を用いると以下のように表される。
:<math>\mathrm{rot} \, \boldsymbol{a} = 2 \,\mathrm{axl} \left( \frac{\nabla \circledast \boldsymbol{a} - {}^t \! (\nabla \circledast \boldsymbol{a})}{2} \right)</math>
:ここで<math>\nabla \circledast \boldsymbol{a} - {}^t \! (\nabla \circledast \boldsymbol{a})</math>は反対称行列であり、<math>\mathrm{axl}</math>は反対称行列を軸ベクトルに移す写像である。
===ラプラシアン===
上で見てきた勾配・発散・回転はいずれも一階の偏微分作用素であった。
二階偏微分作用素のうち最もよく使われているのがスカラー場に対して勾配の発散をとる演算である。
:<math>\nabla\cdot(\nabla\varphi) = \mathrm{div}(\mathrm{grad}\,\varphi)</math>
ここで<math>(\nabla\cdot\nabla)\varphi</math>を計算してみると成分計算から上の<math>\nabla\cdot(\nabla\varphi)</math>に等しいことが容易に判る。則ち、発散作用素<math>\nabla\cdot\,\,</math>、勾配作用素<math>\nabla</math>、スカラー場<math>\varphi</math>の間に結合法則が成り立ってると見做せる。
そこで、<math>\nabla\cdot\nabla</math>を独立した演算子として考えることにする。
以下のように定義される演算子を'''ラプラス演算子'''(ラプラス作用素)という。
:<math>\text{∆}:=\nabla\cdot\nabla=\frac{\partial^2}{\partial{x}^2}+\frac{\partial^2}{\partial{y}^2}+\frac{\partial^2}{\partial{z}^2}</math>
二項目は[[w:記号の濫用]]により<math>\nabla^2</math>と書かれることもある。
但し、<math>\text{∆}</math>は通常のデルタ(Unicode文字名: GREEK CAPITAL LETTER DELTA, U+394)ではなく'''増分記号'''(Unicode文字名:INCREMENT, U+2206)である(が通常のデルタで書かれることが多い)。
ラプラス演算子を<math>C^2</math>級スカラー場に作用させる操作(及びその結果として得るスカラー場)を'''ラプラシアン'''(Laplacian)という。
:<math>\text{∆}\varphi=\frac{\partial^2{\varphi}}{\partial{x}^2}+\frac{\partial^2{\varphi}}{\partial{y}^2}+\frac{\partial^2{\varphi}}{\partial{z}^2}</math>
スカラー場のラプラシアンは各成分方向の曲率の和、すなわちスカラー場の各点に於ける突出・沈み込みの度合いを表す。
勾配・発散・回転・ラプラシアンを総称して'''空間微分'''と呼ぶ。
ラプラシアンは[[解析学基礎/偏微分方程式|偏微分方程式]]の記述に用いられている。
:'''ラプラス方程式'''・'''ポテンシャル方程式''':<math>\text{∆}\varphi=0</math>
:'''ポアソン方程式''':<math>\text{∆}\varphi=f</math>
:'''熱伝導方程式'''・'''拡散方程式''':<math>\text{∆}\psi=k\frac{\partial{\psi}}{\partial{t}}+g</math>
:'''波動方程式''':<math>\text{∆}\psi=\frac{1}{\nu^2}\frac{\partial^2{\psi}}{\partial{t}^2}</math>
:'''ヘルツホルム方程式''':<math>\text{∆}\varphi=-l^2\varphi</math>
ここで<math>\varphi=\varphi(x,y,z),\,f=f(x,y,z),\,\psi=\psi(x,y,z,t),\,k>0,\,g=g(x,y,z,t),\,\nu>0,\,l\in\mathbb{R}</math>である。
なお、ラプラス方程式の解を'''調和関数'''という。
<math>C^2</math>級ベクトル場のラプラシアンは以下のように定義される。
:<math>\text{∆}\boldsymbol{a}=\begin{pmatrix} \text{∆}a_x \\ \text{∆}a_y \\ \text{∆}a_z \end{pmatrix}</math>
ここでスカラー場と同様に考えて<math>\text{∆}\boldsymbol{a}=\nabla(\nabla\cdot\boldsymbol{a})</math>としたいところではあるが、これは一般には成り立たない。
実際には以下のように表示される。
:<math>\text{∆}\boldsymbol{a}=\nabla(\nabla\cdot\boldsymbol{a})-\nabla\times(\nabla\times\boldsymbol{a})=\mathrm{grad}(\mathrm{div}\,\varphi)-\mathrm{rot}(\mathrm{rot}\,\varphi)</math>
*証明
:対称性より<math>x</math>成分のみ考えても輪環の順に入れ替えれば他の成分を得る。
::<math>\nabla\cdot\boldsymbol{a}=\frac{\partial{a_x}}{\partial{x}}+\frac{\partial{a_y}}{\partial{y}}+\frac{\partial{a_z}}{\partial{z}}</math>
:より
::<math>\{\nabla(\nabla\cdot\boldsymbol{a})\}_x=\frac{\partial^2{a_x}}{\partial{x}^2}+\frac{\partial^2{a_y}}{\partial{x}\partial{y}}+\frac{\partial^2{a_z}}{\partial{x}\partial{z}}</math>
:また、
::<math>\nabla\times\boldsymbol{a}=\begin{pmatrix} \frac{\partial{a_z}}{\partial{y}}-\frac{\partial{a_y}}{\partial{z}} \\ \frac{\partial{a_x}}{\partial{z}}-\frac{\partial{a_z}}{\partial{x}} \\ \frac{\partial{a_y}}{\partial{x}}-\frac{\partial{a_x}}{\partial{y}} \end{pmatrix}</math>
:より
::<math>\{\nabla\times(\nabla\times\boldsymbol{a})\}_x=\frac{\partial}{\partial{y}}\left(\frac{\partial{a_y}}{\partial{x}}-\frac{\partial{a_x}}{\partial{y}}\right)-\frac{\partial}{\partial{z}}\left(\frac{\partial{a_x}}{\partial{z}}-\frac{\partial{a_z}}{\partial{x}}\right)</math>
::<math>=\frac{\partial^2{a_y}}{\partial{y}\partial{x}}-\frac{\partial^2{a_x}}{\partial{y}^2}+\frac{\partial^2{a_z}}{\partial{z}\partial{x}}-\frac{\partial^2{a_x}}{\partial{z}^2}</math>
:<math>\boldsymbol{a}\in{C^2}</math>より偏微分は可換(シュワルツの定理)なので、<math>\{\nabla(\nabla\cdot\boldsymbol{a})-\nabla\times(\nabla\times\boldsymbol{a})\}_x</math>を計算すると
::<math>\left(\frac{\partial^2{a_x}}{\partial{x}^2}+\frac{\partial^2{a_y}}{\partial{x}\partial{y}}+\frac{\partial^2{a_z}}{\partial{x}\partial{z}}\right)-\left(\frac{\partial^2{a_y}}{\partial{x}\partial{y}}-\frac{\partial^2{a_x}}{\partial{y}^2}+\frac{\partial^2{a_z}}{\partial{x}\partial{z}}-\frac{\partial^2{a_x}}{\partial{z}^2}\right)</math>
::<math>=\frac{\partial^2{a_x}}{\partial{x}^2}+\frac{\partial^2{a_x}}{\partial
{y}^2}+\frac{\partial^2{a_x}}{\partial{z}^2}</math>
::<math>=\text{∆}a_x</math>//
ここから判るように、ベクトル場<math>\boldsymbol{a}</math>に対して<math>\text{∆}=\nabla(\nabla\cdot)</math>が成り立つ条件は<math>\nabla\times(\nabla\times\boldsymbol{a})=\boldsymbol{0}</math>である。<math>\boldsymbol{a}</math>が非回転ベクトル場であれば回転が零ベクトルなのでこの形を必ず満足する。但し、この形を満たすベクトル場が全て非回転的ベクトル場であるとは限らない。
則ち、外積の反復と同様に回転演算子<math>\nabla\times\,\,</math>の反復に対して結合法則は不成立である。
歴史的な四元数表記では発散の代わりに吸い込みが用いられていたことからラプラシアンも現在とは反対の符号で計算されていた。ラプラシアンはユークリッド空間に限らず定義可能であるが、その中でも特に重要なのは[[特殊相対論#マクスウェルの方程式|相対性理論]]で用いられる'''ダランベール演算子'''(ダランベルシアン、クアブラ、波動演算子)である。
:<math>\text{⧠}:=\frac{1}{\nu^2}\frac{\partial^2}{\partial{t^2}}-\text{∆}</math>
これは標準座標系で表されるミンコフスキー空間上のラプラシアンに相当する。<math>\text{∆}</math>は上で扱ってきた通常のラプラシアンのことである。
これを用いると波動方程式は<math>\text{⧠}\psi=0</math>というミンコフスキー空間上のラプラス方程式と解釈される。つまり、波動関数はミンコフスキー空間で見れば調和関数なのである。
また、[[w:クライン=ゴルドン方程式]]と呼ばれる偏微分方程式は
:<math>\text{⧠}\psi=-\mu^2\psi</math>
というミンコフスキー空間上のヘルツホルム方程式と解釈される。
===微分定理===
ここでは、ナブラに関する公式を見ていく。以下、シュワルツの定理が成り立っているものとする。また、成分計算をすればいいだけなので証明は省略する。
既に紹介したものを以下に並べる。
#勾配
#:<math>\nabla(k\varphi+l\psi)=k\nabla\varphi+l\nabla\psi</math>
#:<math>\nabla(\varphi\psi)=(\nabla\varphi)\psi+\varphi(\nabla\psi)</math>(
#:<math>\nabla\left(\frac{\varphi}{\psi}\right)=\frac{(\nabla\varphi)\psi-\varphi(\nabla\psi)}{\psi^2}</math>
#:<math>\nabla(\varphi(\psi))=\frac{d\varphi(\psi)}{d\psi}\nabla\psi</math>
#:<math>\frac{\partial{\varphi}}{\partial{\boldsymbol{e}}}=(\boldsymbol{e}\cdot\nabla)\varphi</math>
#:<math>\frac{\partial{\boldsymbol{a}}}{\partial{\boldsymbol{v}}}=(\nabla\circledast\boldsymbol{a})\boldsymbol{v}=(\boldsymbol{v}\cdot\nabla)\boldsymbol{a}</math>
#発散
#:<math>\nabla\cdot(k\boldsymbol{a}+l\boldsymbol{b})=k\nabla\cdot\boldsymbol{a}+l\nabla\cdot\boldsymbol{b}</math>
#:<math>\nabla\cdot(\varphi\boldsymbol{a})=(\nabla\varphi)\cdot\boldsymbol{a}+\varphi\nabla\cdot\boldsymbol{a}</math>
#:<math>\nabla\cdot\boldsymbol{a}=\mathrm{tr}(\nabla\circledast\boldsymbol{a})</math>
#回転
#:<math>\nabla\times(k\boldsymbol{a}+l\boldsymbol{b})=k\nabla\times\boldsymbol{a}+l\nabla\times\boldsymbol{b}</math>
#:<math>\nabla\times(\varphi\boldsymbol{a})=(\nabla\varphi)\times\boldsymbol{a}+\varphi\nabla\times\boldsymbol{a}</math>
#:<math>\nabla\times\boldsymbol{a} = 2 \,\mathrm{axl} \left( \frac{\nabla \circledast \boldsymbol{a} - {}^t \! (\nabla \circledast \boldsymbol{a})}{2} \right)</math>
#ラプラシアン
#:<math>\text{∆}\varphi=\nabla\cdot(\nabla\varphi)</math>
#:<math>\text{∆}\boldsymbol{a}=\nabla(\nabla\cdot\boldsymbol{a})-\nabla\times(\nabla\times\boldsymbol{a})</math>
二つのベクトル場<math>\boldsymbol{a}, \boldsymbol{b}</math>の内積・外積に対してそれぞれ一階の空間微分を考えてみる。
<math>\boldsymbol{a}\cdot\boldsymbol{b}</math>はスカラー量なので勾配のみ考えられる。
:<math>\nabla(\boldsymbol{a}\cdot\boldsymbol{b})=(\nabla\circledast\boldsymbol{a})\boldsymbol{b}+(\nabla\circledast\boldsymbol{b})\boldsymbol{a}+\boldsymbol{a}\times(\nabla\times\boldsymbol{b})+\boldsymbol{b}\times(\nabla\times\boldsymbol{a})</math>
<math>\boldsymbol{a}\times\boldsymbol{b}</math>はベクトル量なので発散・回転のみ考えられる。
:<math>\nabla\cdot(\boldsymbol{a}\times\boldsymbol{b})=\boldsymbol{b}\cdot(\nabla\times\boldsymbol{a})-\boldsymbol{a}\cdot(\nabla\times\boldsymbol{b})</math>
:<math>\nabla\times(\boldsymbol{a}\times\boldsymbol{b})=(\nabla\circledast\boldsymbol{a})\boldsymbol{b}-(\nabla\circledast\boldsymbol{b})\boldsymbol{a}+\boldsymbol{a}(\nabla\cdot\boldsymbol{b})-\boldsymbol{b}(\nabla\cdot\boldsymbol{a})</math>
次に、一階の空間微分の結果に対して更なる一階の空間微分を考えてみる。
スカラー場の勾配はベクトル量なので発散・回転のみ考えられる。
:<math>\nabla\cdot(\nabla\varphi)=\text{∆}\varphi</math>
:<math>\nabla\times(\nabla\varphi)=\boldsymbol{0}</math>
ベクトル場の発散はスカラー量なので勾配のみ考えられる。
:<math>\nabla(\nabla\cdot\boldsymbol{a})=\text{∆}\boldsymbol{a}+\nabla\times(\nabla\times\boldsymbol{a})</math>
ベクトル場の回転はベクトル量なので発散・回転のみ考えられる。
:<math>\nabla\cdot(\nabla\times\boldsymbol{a})=0</math>
:<math>\nabla\times(\nabla\times\boldsymbol{a})=\nabla(\nabla\cdot\boldsymbol{a})-\text{∆}\boldsymbol{a}</math>
則ち、勾配・発散・回転はどの組み合わせでも交換法則が成り立たない。
一階の空間微分の結果に対してラプラシアンを考えてみる。
:<math>\text{∆}(\nabla\varphi)=\nabla(\text{∆}\varphi)</math>
:<math>\text{∆}(\nabla\cdot\boldsymbol{a})=\nabla\cdot(\text{∆}\boldsymbol{a})</math>
:<math>\text{∆}(\nabla\times\boldsymbol{a})=\nabla\times(\text{∆}\boldsymbol{a})</math>
ラプラシアンはスカラー性・ベクトル性を保存するので、演算が破綻する箇所はない。
則ち、ラプラシアンは勾配・発散・回転との組み合わせに対して交換法則が成り立つ。
:<math>\text{∆}\nabla=\nabla\text{∆},\quad\text{∆}(\nabla\cdot)=(\nabla\cdot)\text{∆},\quad\text{∆}(\nabla\times)=(\nabla\times)\text{∆}</math>
<math>\boldsymbol{a}\times\boldsymbol{b}</math>及び<math>\nabla\times\boldsymbol{a}</math>の発散・回転は三重積の形であった。
スカラー三重積・ベクトル三重積にナブラを様々な組み合わせで入れてその結果がどうなるか見ていく。
:<math>\boldsymbol{a}\cdot(\nabla\times\boldsymbol{b})</math>
:<math>\boldsymbol{a}\times(\nabla\times\boldsymbol{b})</math>
はそのまま計算すればいいので公式化する必要が無い。
:<math>\boldsymbol{a}\cdot(\boldsymbol{b}\times\nabla)</math>
:<math>\boldsymbol{a}\times(\boldsymbol{b}\times\nabla)</math>
:<math>\nabla\cdot(\boldsymbol{a}\times\nabla)</math>
:<math>\nabla\times(\boldsymbol{a}\times\nabla)</math>
は偏微分作用素の対象を後接してないので通常の演算としては扱えない。
:<math>\boldsymbol{a}\cdot(\nabla\times\nabla)</math>
:<math>\boldsymbol{a}\times(\nabla\times\nabla)</math>
:<math>\nabla\cdot(\nabla\times\nabla)</math>
:<math>\nabla\times(\nabla\times\nabla)</math>
は同じものの外積をとってるので当然<math>0, \boldsymbol{0}</math>である。<br>
また、三重積の公式はナブラを代入した時点で破綻する。
次に、スカラー四重積・ベクトル四重積に対しても同様のことを考える。
:<math>(\nabla\times\boldsymbol{a})\cdot(\boldsymbol{b}\times\boldsymbol{c})</math>
:<math>(\nabla\times\boldsymbol{a})\cdot(\boldsymbol{b}\times\boldsymbol{c})</math>
:<math>(\boldsymbol{a}\times\boldsymbol{b})\cdot(\nabla\times\boldsymbol{c})</math>
:<math>(\boldsymbol{a}\times\boldsymbol{b})\times(\nabla\times\boldsymbol{c})</math>
:<math>(\nabla\times\boldsymbol{a})\cdot(\nabla\times\boldsymbol{b})</math>
:<math>(\nabla\times\boldsymbol{a})\times(\nabla\times\boldsymbol{b})</math>
はそのまま計算すれば良いので公式化する必要が無い。
:<math>(\boldsymbol{a}\times\boldsymbol{b})\cdot(\boldsymbol{c}\times\nabla)</math>
:<math>(\boldsymbol{a}\times\boldsymbol{b})\times(\boldsymbol{c}\times\nabla)</math>
:<math>(\nabla\times\boldsymbol{a})\cdot(\boldsymbol{b}\times\nabla)</math>
:<math>(\nabla\times\boldsymbol{a})\times(\boldsymbol{b}\times\nabla)</math>
:<math>(\boldsymbol{a}\times\nabla)\cdot(\boldsymbol{b}\times\nabla)</math>
:<math>(\boldsymbol{a}\times\nabla)\times(\boldsymbol{b}\times\nabla)</math>
は偏微分作用素の対象を後接してないので通常の演算としては扱えない。
:<math>(\nabla\times\nabla)\cdot(\boldsymbol{a}\times\boldsymbol{b})</math>
:<math>(\nabla\times\nabla)\times(\boldsymbol{a}\times\boldsymbol{b})</math>
:<math>(\boldsymbol{a}\times\boldsymbol{b})\cdot(\nabla\times\nabla)</math>
:<math>(\boldsymbol{a}\times\boldsymbol{b})\times(\nabla\times\nabla)</math>
及びナブラを三個以上含むものは同じものの外積をとってるので当然<math>0, \boldsymbol{0}</math>である。
故に、ここで問題になるのは
:<math>(\boldsymbol{a}\times\nabla)\cdot(\boldsymbol{b}\times\boldsymbol{c})</math>
:<math>(\boldsymbol{a}\times\nabla)\times(\boldsymbol{b}\times\boldsymbol{c})</math>
:<math>(\boldsymbol{a}\times\nabla)\cdot(\nabla\times\boldsymbol{b})</math>
:<math>(\boldsymbol{a}\times\nabla)\times(\nabla\times\boldsymbol{b})</math>
の扱いである。
これらには以下の公式が成り立つ。
:<math>(\boldsymbol{a}\times\nabla)\cdot(\boldsymbol{b}\times\boldsymbol{c})=\boldsymbol{a}\cdot\{\nabla\times(\boldsymbol{b}\times\boldsymbol{c})\}</math>
:<math>(\boldsymbol{a}\times\nabla)\times(\boldsymbol{b}\times\boldsymbol{c})=[\{\boldsymbol{b}\cdot(\nabla\times\boldsymbol{c})\}-\{\boldsymbol{c}\cdot(\nabla\times\boldsymbol{b})\}]\boldsymbol{a}+{}^t\!\{\nabla\circledast(\boldsymbol{b}\times\boldsymbol{c})\}\boldsymbol{a}</math>
:<math>(\boldsymbol{a}\times\nabla)\cdot(\nabla\times\boldsymbol{b})=\boldsymbol{a}\cdot\{\nabla\times(\nabla\times\boldsymbol{b})\}</math>
:<math>(\boldsymbol{a}\times\nabla)\times(\nabla\times\boldsymbol{b})={}^t\!\{\nabla\circledast(\nabla\times\boldsymbol{b})\}\boldsymbol{a}</math>
===ポテンシャル論===
ベクトル場<math>\boldsymbol{a}\in C^1</math>に対して<math>\boldsymbol{a}=\mathrm{grad}\,\varphi</math>を満たすスカラー場<math>\varphi\in C^2</math>が存在するならば、上で扱った公式より<math>\mathrm{rot}(\mathrm{grad}\,\varphi)=\boldsymbol{0}</math>である。
逆に、ベクトル場<math>\boldsymbol{a}\in C^1</math>が<math>\mathrm{rot}\,\boldsymbol{a}=\boldsymbol{0}</math>を満たすならば<math>\boldsymbol{a}=\mathrm{grad}\,\varphi</math>となるスカラー場<math>\varphi\in C^2</math>はどのようなときに存在するのであろうか?
ここで<math>\mathrm{rot}\,\boldsymbol{a}=\boldsymbol{0}</math>は成分表示すれば
:<math>\begin{cases} \frac{\partial{a}_z}{\partial{y}}-\frac{\partial{a_y}}{\partial{z}}=0 \\ \frac{\partial{a}_x}{\partial{z}}-\frac{\partial{a_z}}{\partial{x}}=0 \\ \frac{\partial{a_y}}{\partial{x}}-\frac{\partial{a_x}}{\partial{y}}=0 \end{cases}</math>
という一階線型連立偏微分方程式となる。
この連立偏微分方程式は領域<math>D=\mathrm{dom}\,\boldsymbol{a}</math>上で解くことになるので、解が<math>\boldsymbol{a}=\mathrm{grad}\,\varphi</math>を満たすかは領域<math>D</math>がどのような形状をしているかに依存する。
そして、その形状を具体的に与えるのが次の定理である。
{{定理|(ポアンカレの補題1)}}
領域<math>D\subset\mathbb{R}^3</math>とベクトル場<math>\boldsymbol{a}\in C^1(D)</math>に対して
:<math>\mathrm{rot}\,\boldsymbol{a}=\boldsymbol{0} \iff \exist \varphi\in C^2(D),\quad \mathrm{grad}\,\varphi=\boldsymbol{a} </math>
となるための十分条件は<math>D</math>が単連結であることである。
{{定理終わり}}
証明は後述する。
この<math>\varphi</math>を<math>\boldsymbol{a}</math>の'''スカラーポテンシャル'''(scalar potential)といい、スカラーポテンシャルを有するベクトル場を'''保存的ベクトル場'''(保存場、conservative vector field)という。
保存的ベクトル場に対して実際にスカラーポテンシャルを構成することを考える。簡単の為に、定義域は直方体領域(あるいは三次元ユークリッド空間全体)とする。
:<math>\mathrm{grad}\,\varphi=\boldsymbol{a},\quad\mathrm{rot}\,\boldsymbol{a}=\boldsymbol{0}</math>を連立偏微分方程式に書き下して
::<math>\begin{cases} \frac{\partial{\varphi}}{\partial{x}}=a_x \\ \frac{\partial{\varphi}}{\partial{y}}=a_y \\ \frac{\partial{\varphi}}{\partial{z}}=a_z \end{cases},\quad\begin{cases} \frac{\partial{a}_z}{\partial{y}}=\frac{\partial{a_y}}{\partial{z}} \\ \frac{\partial{a}_x}{\partial{z}}=\frac{\partial{a_z}}{\partial{x}} \\ \frac{\partial{a_y}}{\partial{x}}=\frac{\partial{a_x}}{\partial{y}} \end{cases}</math>
:<math>\frac{\partial{\varphi}}{\partial{x}}=a_x(x,y,z)</math>は直接積分形偏微分方程式なので両辺を<math>x</math>で偏積分して
::<math>\varphi(x,y,z)=\int_m^x a_x(x,y,z) dx+g(y,z)</math>・・・(1)
:これを<math>y</math>で偏微分すると
::<math>\frac{\partial{\varphi}}{\partial{y}}=\frac{\partial}{\partial{y}}\int_m^x a_x(x,y,z)dx+\frac{\partial{g}}{\partial{y}}</math>
:ここでライプニッツの積分法則を適用して
::<math>=\int_m^x \frac{\partial{a_x}}{\partial{y}}dx+\frac{\partial{g}}{\partial{y}}</math>
:更に回転の条件から
::<math>=\int_m^x \frac{\partial{a_y}}{\partial{x}}dx+\frac{\partial{g}}{\partial{y}}</math>
:よって偏微分に関する微分積分学の基本定理より
::<math>=a_y(x,y,z)-a_y(m,y,z)+\frac{\partial{g}}{\partial{y}}</math>
:これが<math>a_y(x,y,z)</math>に等しいので
::<math>\frac{\partial{g}}{\partial{y}}=a_y(m,y,z)</math>
:これは<math>g(y, z)</math>が<math>x</math>の関数でないことに適する。
:両辺を<math>y</math>で偏積分して
::<math>g(y, z)=\int_n^y a_y(m,y,z)dy+h(z)</math>
:これを(1)に代入して
::<math>\varphi(x,y,z)=\int_m^x a_x(x,y,z)dx+\int_n^y a_y(m,y,z)dy+h(z)</math>・・・(2)
:これを<math>z</math>で偏微分すると
::<math>\frac{\partial{\varphi}}{\partial{z}}=\frac{\partial}{\partial{z}}\left(\int_m^x a_x(x,y,z)dx+\int_n^y a_y(m,y,z)dy\right)+\frac{\partial{h}}{\partial{z}}</math>
:ここでライプニッツの積分法則を適用して
::<math>=\left(\int_m^x\frac{\partial{a_x(x,y,z)}}{\partial{z}}dx+\int_n^y\frac{\partial{a_y(m,y,z)}}{\partial{z}}dy\right)+\frac{dh}{dz}</math>
:更に回転の条件から
::<math>=\left(\int_m^x\frac{\partial{a_z(x,y,z)}}{\partial{x}}dx+\int_n^y\frac{\partial{a_z(m,y,z)}}{\partial{y}}dy\right)+\frac{dh}{dz}</math>
:よって偏微分に関する微分積分学の基本定理より
::<math>=a_z(x,y,z)-a_z(m,y,z)+a_z(m,y,z)-a_z(m,n,z)+\frac{dh}{dz}</math>
::<math>=a_z(x,y,z)-a_z(m,n,z)+\frac{dh}{dz}</math>
:これが<math>a_z(x,y,z)</math>に等しいので
::<math>\frac{dh}{dz}=a_z(m,n,z)</math>
:これは<math>h(z)</math>が<math>x, y</math>の関数でないことに適する。
:両辺を<math>z</math>で常積分して
::<math>h(z)=\int_l^z a_z(m,n,z)dz+C</math>
:これを(2)に代入して
::<math>\varphi(x,y,z)=\int_m^x a_x(x,y,z)dx+\int_n^y a_y(m,y,z)dy+\int_l^z a_z(m,n,z)dz+C</math>//
ここで最後の積分定数<math>C</math>は勾配をとるときに消える。更に言うと、単連結領域では偏微分方程式の解の一意性よりスカラーポテンシャルは積分定数の違いを除いて一意に定まる。よって、スカラーポテンシャルは平行移動を同一視する同値類として与えられることになる。
ベクトル場<math>\boldsymbol{a}\in C^1</math>に対して<math>\boldsymbol{a}=\mathrm{rot}\,\boldsymbol{A}</math>を満たすベクトル場<math>\boldsymbol{A}\in C^2</math>が存在するならば、上で扱った公式より<math>\mathrm{div}(\mathrm{rot}\,\boldsymbol{A})=0</math>である。
逆に、ベクトル場<math>\boldsymbol{a}\in C^1</math>が<math>\mathrm{div}\,\boldsymbol{a}=0</math>を満たすならば<math>\boldsymbol{a}=\mathrm{rot}\,\boldsymbol{A}</math>となるスカラー場<math>\boldsymbol{A}\in C^2</math>はどのようなときに存在するのであろうか?
これも同様に以下の定理で与えられる。
{{定理|(ポアンカレの補題2)}}
領域<math>D\subset\mathbb{R}^3</math>とベクトル場<math>\boldsymbol{a}\in C^1(D)</math>に対して
:<math>\mathrm{div}\,\boldsymbol{a}=0 \iff \exist \boldsymbol{A}\in C^2(D),\quad \mathrm{rot}\,\boldsymbol{A}=\boldsymbol{a} </math>
となるための十分条件は<math>D</math>が'''可縮'''であることである。
{{定理終わり}}
証明は後述する。
ここで、集合が可縮とは「全体を1点に退化するような連続変形が可能である」ことを言う。可縮な集合は単連結である。可縮条件はより弱めることができるが、ホモトピーやコホモロジーの概念が必要である
この<math>\varphi</math>を<math>\boldsymbol{a}</math>の'''ベクトルポテンシャル'''(vector potential)という。スカラーポテンシャルと異なり、「ベクトルポテンシャルを有するベクトル場」を指す特別な呼称は(数学界一般に認知されたものとしては)存在しない。「ソレノイダル場」などを用いる派閥もあるが、単に「発散が0であるベクトル場」を指す用法が強いのであまり広まっていない。
ベクトルポテンシャルを有するベクトル場に対して実際にベクトルポテンシャルを構成することを考える。簡単の為に、定義域は直方体領域(あるいは三次元ユークリッド空間全体)とする。
:<math>\mathrm{rot}\,\boldsymbol{A}=\boldsymbol{a},\quad\mathrm{div}\,\boldsymbol{a}=0</math>を連立偏微分方程式に書き下して
::<math>\begin{cases} \frac{\partial{A}_z}{\partial{y}}-\frac{\partial{A_y}}{\partial{z}}=a_x \\ \frac{\partial{A}_x}{\partial{z}}-\frac{\partial{A_z}}{\partial{x}}=a_y \\ \frac{\partial{A_y}}{\partial{x}}-\frac{\partial{A_x}}{\partial{y}}=a_z \end{cases},\quad \frac{\partial{a_x}}{\partial{x}}+\frac{\partial{a_y}}{\partial{y}}+\frac{\partial{a_z}}{\partial{z}} =0</math>
:第一式より
::<math>\frac{\partial{A_z}}{\partial{y}}=a_x+\frac{\partial{A_y}}{\partial{z}}</math>
:<math>y</math>で偏積分して
::<math>A_z = \int_n^y \left(a_x+\frac{\partial{A_y}}{\partial{z}}\right)dy+f(x,z)</math>
:ライプニッツの積分法則より
::<math>=\int_n^y a_xdy + \frac{\partial}{\partial{z}}\int_n^y A_y dy+f(x,z)</math>・・・(3)
:第三式より
::<math>\frac{\partial{A_x}}{\partial{y}}=\frac{\partial{A_y}}{\partial{x}}-a_z</math>
:<math>y</math>で偏積分して
::<math>A_x=\int_n^y \left(\frac{\partial{A_y}}{\partial{x}}-a_z\right)dy+g(x, z)</math>
:ライプニッツの積分法則より
::<math>=\frac{\partial{}}{\partial{x}}\int_n^y A_y dy - \int_n^y a_zdy+g(x,z)</math>
:これと(3)を第二式に代入して
::<math>a_y=\frac{\partial}{\partial{z}}\left(\frac{\partial{}}{\partial{x}}\int_n^y A_y dy - \int_n^y a_zdy+g(x,z)\right)-\frac{\partial}{\partial{x}}\left(\int_n^y a_xdy + \frac{\partial}{\partial{z}}\int_n^y A_y dy+f(x,z)\right)</math>
::<math>=\frac{\partial^2}{\partial{z}\partial{x}}\int_n^yA_ydy-\frac{\partial}{\partial{z}}\int_n^y a_z dy+\frac{\partial{g}}{\partial{z}}-\frac{\partial}{\partial{x}}\int_n^y a_x dy-\frac{\partial^2}{\partial{x}\partial{z}}\int_n^y A_y dy-\frac{\partial{f}}{\partial{x}}</math>
::<math>=\frac{\partial{g}}{\partial{z}}-\frac{\partial{f}}{\partial{x}}-\int_n^y \left(\frac{\partial{a_z}}{\partial{z}}+\frac{\partial{a_x}}{\partial{x}}\right)dy</math>
:よって
::<math>\frac{\partial{g}}{\partial{z}}-\frac{\partial{f}}{\partial{x}}=a_y+\int_n^y \left(\frac{\partial{a_x}}{\partial{x}}+\frac{\partial{a_z}}{\partial{z}}\right) dy</math>・・・(4)
:この右辺を<math>h(x, y, z)</math>とおくと
::<math>\frac{\partial{h}}{\partial{y}}=\frac{\partial{a_x}}{\partial{x}}+\frac{\partial{a_y}}{\partial{y}}+\frac{\partial{a_z}}{\partial{z}}=0</math>
:なので<math>h(x,y,z)</math>は<math>y</math>に依存しない<math>h(x,z)</math>である。
:これは(4)の左辺が<math>y</math>に依存しないことと整合する。
:故に(4)は
::<math>\frac{\partial{g}}{\partial{z}}-\frac{\partial{f}}{\partial{x}}=h(x,z)</math>
:という二変数の偏微分方程式に落ちる。
:この偏微分方程式は例えば<math>f(x,z)=0, g(x,z)=\int_l^z h(x,z)dz</math>のような特殊解を持つ。
:このような特殊解によって構成された元の方程式の解を<math>\boldsymbol{A}_0</math>とする。
:一般解<math>\boldsymbol{A}</math>と特殊解との差を<math>\boldsymbol{B}</math>と置くとその回転は回転の線型性より<math>\boldsymbol{0}</math>なので
::<math>\begin{cases} \frac{\partial{B}_z}{\partial{y}}=\frac{\partial{B_y}}{\partial{z}} \\ \frac{\partial{B}_x}{\partial{z}}=\frac{\partial{B_z}}{\partial{x}} \\ \frac{\partial{B_y}}{\partial{x}}=\frac{\partial{B_x}}{\partial{y}} \end{cases}</math>
:同様にして第一式・第三式を<math>y</math>で偏積分して第二式に代入すると積分定数に関して
::<math>\frac{\partial{F(x,z)}}{\partial{x}}=\frac{\partial{G(x,z)}}{\partial{z}}</math>
:を得る。
:これは全微分方程式が完全微分方程式である条件なので、
::<math>\mathrm{grad}\,\Phi=\begin{pmatrix} F(x,z) \\ G(x,z) \end{pmatrix}</math>
:なるスカラー場<math>\Phi</math>が存在する。
:則ち、求めるベクトルポテンシャルは<math>\boldsymbol{A}=\boldsymbol{A}_0+\nabla\Phi</math>//
ここで勾配の項は回転をとるときに<math>\mathrm{rot}(\mathrm{grad}\,\Phi)=\boldsymbol{0}</math>より消える。スカラーポテンシャルと同様に自由度が残るので、ベクトルポテンシャルはその自由度を無視した同値類で与えられる。
ポアンカレの補題1, 2に於ける領域<math>D</math>は互いに素ではない複数の領域の和集合<math>\bigcup_i D_i</math>であっても良い。但しポテンシャル場<math>\mathrm{p}</math>は各領域<math>D_i</math>に対して区分的に定義され、このとき互いに重なった領域<math>D_i\cap D_j</math>では任意の点<math>\boldsymbol{x}\in D_i\cap D_j</math>に対して<math>\mathrm{p}_i(\boldsymbol{x})=\mathrm{p}_j(\boldsymbol{x})</math>であることが導かれる。
ポアンカレの補題が成り立たない状況を考えると、この「重なった領域での単射性」が崩れる。則ち、ポテンシャル場は多価関数として振舞うのである。
ポテンシャルに関連した定理として、以下が成り立つ。
{{定理|(ヘルツホルムの定理)}}
ポアンカレの補題が成り立つ状況下に於いて、<math>C^1</math>級ベクトル場<math>\boldsymbol{a}</math>は<math>C^2</math>級スカラー場の勾配と<math>C^2</math>級ベクトル場の回転に[[w:直和分解]]('''ヘルツホルム分解''')できる。
則ち、任意の<math>\boldsymbol{a}\in C^1(D)</math>に対して
:<math>\boldsymbol{a}=\mathrm{grad}\,\varphi-\mathrm{rot}\,\boldsymbol{A}</math>
を満たす<math>\varphi, \boldsymbol{A}\in C^2(D)</math>が存在する。
{{定理終わり}}
*証明
:ポアソン方程式<math>\text{∆}\varphi=f</math>に対してラプラシアンの定義から
::<math>\mathrm{div}(\mathrm{grad}\,\varphi)=f</math>
:ここで右辺のスカラー関数<math>f</math>が<math>\boldsymbol{a}</math>の発散で与えられている場合を考えると
::<math>\mathrm{div}(\mathrm{grad}\,\varphi)=\mathrm{div}\,\boldsymbol{a}</math>
:発散の線型性より
::<math>\mathrm{div}(\mathrm{grad}\,\varphi-\boldsymbol{a})=0</math>
:ここでポアンカレの補題2を用いて
::<math>\mathrm{grad}\,\varphi-\boldsymbol{a}=\mathrm{rot}\,\boldsymbol{A}</math>//
この<math>\varphi, \boldsymbol{A}</math>をそれぞれ広義のスカラーポテンシャル・ベクトルポテンシャルと呼ぶ場合がある。
広義ポテンシャルに対して
:<math>\begin{cases} \mathrm{rot}(\mathrm{grad}\,\varphi)=\boldsymbol{0} \\ \mathrm{div}(\mathrm{rot}\,\boldsymbol{A})=0 \\ \mathrm{div}\,\boldsymbol{a}=\text{∆}\varphi \\ \mathrm{rot}\,\boldsymbol{a}=\mathrm{grad}(\mathrm{div}\,\boldsymbol{A})-\text{∆}\boldsymbol{A} \end{cases}</math>
が成立する。
広義ポテンシャルの組み合わせは一つには定まらない。成分毎で考えるとヘルツホルムの定理は三元連立偏微分方程式を与えるが、勾配で消える定数項と回転で消える勾配項を補正すると右辺の自由度は広義ポテンシャル2つ+補正項2つで4である。そこで、応用上は<math>\mathrm{div}\,\boldsymbol{A}=0</math>という条件('''クーロンゲージ条件''')を追加で課して一意に定めることが多い(これにより<math>\mathrm{rot}\,\boldsymbol{a}=-\text{∆}\boldsymbol{A}</math>が成り立つので)。
例えば、[[連続体力学]]に於ける弾性体の運動方程式(ナビエ-コーシー方程式)
:<math>\rho\frac{\partial^2{\boldsymbol{u}}}{\partial{t}^2}=(\lambda+\mu)\mathrm{grad}(\mathrm{div}\,\boldsymbol{u})+\mu\text{∆}\boldsymbol{u}</math>
をヘルツホルム分解とクーロンゲージ条件により解析すると
:<math>\begin{cases} \rho\frac{\partial^2}{\partial{t}^2}\text{∆}\varphi=(\lambda+2\mu)\text{∆}^2\varphi \\ \rho\frac{\partial^2}{\partial{t}^2}\text{∆}\boldsymbol{A}=\mu\text{∆}^2\boldsymbol{A} \end{cases}</math>
を得る。
更に<math>e=\text{∆}\varphi,\quad\boldsymbol{\omega}=-\text{∆}\boldsymbol{A}</math>と置くとこの2つの式は波動方程式である。ここから導かれる波は前者が縦波で後者が横波であるが、<math>\lambda+2\mu>\mu</math>より前者の方が伝播速度が大きい。則ち、中学理科のP波・S波の性質を導くことができた。
ナビエ-コーシー方程式に於いて定常状態を考えると<math>t</math>-微分の項が0になるので、<math>\text{∆}^2\boldsymbol{u}=0</math>を得る。このような形の偏微分方程式を'''重調和偏微分方程式'''という。
*応用問題
*:真空のマクスウェル方程式<math> \begin{cases}
\nabla\times\boldsymbol{E}&=-\frac{\partial{\boldsymbol{B}}}{\partial{t}}\\
\nabla\times\boldsymbol{H}&=\frac{\partial{\boldsymbol{D}}}{\partial{t}}\\
\nabla\cdot\boldsymbol{D}&=0\\
\nabla\cdot\boldsymbol{B}&=0\\
\end{cases}</math>と構成方程式<math>\begin{cases} \boldsymbol{D}=\varepsilon_0\boldsymbol{E} \\ \boldsymbol{B}=\mu_0\boldsymbol{H}\end{cases}</math>から電磁波の波動方程式<math>\begin{cases} \text{∆}\boldsymbol{E}=\frac{1}{c^2}\frac{\partial^2{\boldsymbol{E}}}{\partial{t}^2} \\ \text{∆}\boldsymbol{H}=\frac{1}{c^2}\frac{\partial^2{\boldsymbol{H}}}{\partial{t}^2} \end{cases}</math>及び光速<math>c=\frac{1}{\sqrt{\varepsilon_0\mu_0}}</math>を導け。
==空間積分==
ここでは三次元ユークリッド空間で考える。
===線積分===
偏積分
:<math>\int_a^b f(x,y) dx := \lim_{n \to \infty} \sum_{k=1}^{n} f(x_k,y) \Delta x</math>(<math>\Delta x = \frac{b-a}{n}, x_k = a + k\Delta x</math>)
は<math>xyz</math>空間を<math>y</math>を固定した平面で切った断面に於ける曲線<math>z=f(x, y)</math>と<math>x</math>軸、直線<math>x=a, x=b</math>の囲む符号付き面積であった。
このとき積分変数を各点で見ると<math>x</math>軸という直線上を<math>a\to b</math>と単調に進むことになるが、これを<math>xyz</math>空間の任意の曲線<math>C</math>に拡張することを考える。
三次元空間の曲線をベクトル表示すると
:<math>\boldsymbol{r}(t)=\begin{pmatrix} x(t) \\ y(t) \\ z(t) \end{pmatrix}\quad t\in [\alpha, \beta]</math>
であり、被積分関数はこの曲線上の点を入力とするスカラー場と考えられるので
:<math>\varphi=\varphi(\boldsymbol{r})</math>
偏積分の<math>dx</math>は「<math>x</math>軸上の微小変位」であったが、<math>t</math>が単調なとき曲線に沿った微小変位は曲線上の移動距離、則ち弧長の微小量と考えられるので線素を用いて
:<math>dl=\left\| \frac{d\boldsymbol{r}}{dt} \right\|dt</math>
これらを総合すると、<math>C</math>に沿った積分というものは曲線のパラメータを用いて
:<math>\int_\alpha^\beta \varphi(\boldsymbol{r}(t))\left\| \frac{d\boldsymbol{r}}{dt} \right\|dt</math>
と表示されることになる。
これをスカラー場<math>\varphi</math>の<math>C</math>に沿った'''線積分'''<sup>※</sup>(line integral)という。また、<math>C</math>を'''積分経路'''(積分路、path)という。
<small>※量子力学の[[量子力学#経路積分法|経路積分]](path integral)とは異なる概念である。</small>
スカラー場の線積分は
:<math>\int_C \varphi dl</math>
のように略記される。
特に積分経路が閉曲線('''閉経路''')である場合は
:<math>\oint_C \varphi dl</math>
のように書き、これを<math>C</math>に沿った'''周回/閉路 積分'''(closed line integral)という。
1の線積分<math>\int_C dl</math>は弧長に等しい。
<math>\varphi(\boldsymbol{r})</math>の<math>C</math>の端点に於ける値の差を考える。
<math>t\in[\alpha,\beta]</math>を各<math>t_i</math>に等分割したとき、スカラー関数のテイラー展開より
:<math>\varphi(\boldsymbol{r}(t_i))-\varphi(\boldsymbol{r}(t_{i-1}))=\nabla\varphi(\boldsymbol{r}_{t_i-1})\cdot d\boldsymbol{r}\big|_{t=t_i}+O\left(\left\|d\boldsymbol{r}\big|_{t=t_i}\right\|\right)</math>
なので
:<math>\varphi(\boldsymbol{r}(\beta))-\varphi(\boldsymbol{r}(\alpha))\fallingdotseq \sum_{i=1}^n \nabla\varphi(\boldsymbol{r}(t_{i-1}))\cdot d\boldsymbol{r}\big|_{t=t_i}</math>
右辺で分割数<math>n</math>を無限大に飛ばした極限は区分求積法より
:<math>\int_{\boldsymbol{r}(\alpha)}^{\boldsymbol{r}(\beta)}\nabla\varphi(\boldsymbol{r})\cdot d\boldsymbol{r}</math>
則ち、曲線<math>C</math>に沿った微分積分学の基本定理
:<math>\int_{\boldsymbol{r}(\alpha)}^{\boldsymbol{r}(\beta)}\nabla\varphi(\boldsymbol{r})\cdot d\boldsymbol{r} = \varphi(\boldsymbol{r}(\beta))-\varphi(\boldsymbol{r}(\alpha))</math>
を得る。
これは一変数積分の<math>\int_a^b \frac{df}{dx}dx=f(b)-f(a)</math>に対応し、これは常積分に関する微分積分学の基本定理の別表現である。
左辺をスカラー場の線積分と同様に<math>\int_C \nabla\varphi\cdot d\boldsymbol{r}</math>と書くことにする。
ここで<math>\nabla\varphi</math>を一般のベクトル場<math>\boldsymbol{a}</math>に拡張して同様に
:<math>\int_C \boldsymbol{a}\cdot d\boldsymbol{r}</math>
を考えてみたい。
ここで<math>d\boldsymbol{r}</math>は<math>\boldsymbol{r}</math>の全微分と解釈され、一変数関数なので
:<math>d\boldsymbol{r}=\frac{d\boldsymbol{r}}{dt}dt</math>
則ち、
:<math>\int_C \boldsymbol{a}\cdot d\boldsymbol{r}=\int_\alpha^\beta \boldsymbol{a}(\boldsymbol{r}(t))\cdot\frac{d\boldsymbol{r}}{dt}dt</math>
という曲線のパラメータに関する積分に帰着された。
これをベクトル場<math>\boldsymbol{a}</math>の<math>C</math>に沿った'''線積分'''という。
<math>\frac{d\boldsymbol{r}}{dt}</math>は<math>C</math>の接線なので<math>\boldsymbol{a}(\boldsymbol{r})\cdot\frac{d\boldsymbol{r}}{dt}</math>は<math>\boldsymbol{a}</math>から<math>C</math>の接線に沿う沿流成分を取り出していることになる。
このことから、ベクトル場の線積分を特に'''接線積分'''(integral of tangential component)ということがある。
また、<math>d\boldsymbol{r}</math>のノルムを考えてみると
:<math>\|d\boldsymbol{r}\|=\left\|\frac{d\boldsymbol{r}}{dt}\right\|dt=dl</math>
より線素に一致する。
このことから、<math>d\boldsymbol{r}</math>を'''線素ベクトル'''と呼び、<math>d\boldsymbol{l}</math>とも書く。
線素ベクトルは曲線上の微小変位を表すので座標軸上の微小変位の重ね合わせと考えれば
:<math>d\boldsymbol{l}=\begin{pmatrix} dx \\ dy \\ dz \end{pmatrix}</math>
よって接線積分は形式的に
:<math>\int_C (a_xdx+a_ydy+a_zdz)</math>
とも書かれる。
更に、弧長パラメトライズされている場合は接ベクトルを用いて
:<math>d\boldsymbol{l}=\boldsymbol{t}ds</math>
とも表せる。
接線積分で定義される概念としては、仕事が有名である。
:物体を経路<math>C</math>に沿って力<math>\boldsymbol{F}</math>で運んだときの仕事は摩擦や空気抵抗を無視すると
::<math>W=\int_C \boldsymbol{F}\cdot d\boldsymbol{r}</math>
また、アンペールの法則も線積分で示される。
:閉経路<math>C</math>で囲まれた領域を貫く電流の大きさ<math>I</math>とその電流が生む磁場<math>\boldsymbol{H}</math>に対して
::<math>\oint_C \boldsymbol{H}\cdot d\boldsymbol{l}=I</math>
更に、以下のような概念も定義されている。
:流体の速度場<math>\boldsymbol{v}</math>の循環は
::<math>\Gamma(C)=\oint_C \boldsymbol{v}\cdot d\boldsymbol{l}</math>
*応用問題
**運ばれる物体の質量を<math>m</math>としたとき、仕事の定義とニュートンの運動方程式<math>m\frac{d^2\boldsymbol{r}}{dt^2}=\boldsymbol{F}</math>を用いて運動エネルギーに関するエネルギーの原理<math>W=\frac{1}{2}mv^2-\frac{1}{2}mv_0^2</math>を証明せよ。
<math>C</math>が正の向きにパラメトライズされたとき、負の向きにパラメトライズされた曲線を<math>-C</math>と表した。
2つの閉曲線<math>C_1</math>の終点と<math>C_2</math>の始点が一致するとき、これを一つの曲線と見做して曲線の和
:<math>C_1+C_2</math>
が定義される。
これを'''区分的に定義された曲線'''という。
2つの閉曲線<math>C_1</math>の終点と<math>C_2</math>の終点が一致するとき、<math>C_1</math>を始点とすると曲線の差は
:<math>C_1-C_2=C_1+(-C_2)</math>
で定義される。
<math>C</math>が'''区分的に滑らか'''であるとは、<math>C</math>が有限個の滑らかな曲線の和であることである。
これらを踏まえると、線積分には以下の性質が成り立つ。
#スカラー場
#:<math>\int_C (k\varphi+l\psi) dl=k\int_C \varphi dl + l \int_C \psi dl</math>
#:<math>\int_{-C}\varphi dl = \int_C \varphi dl</math>
#:<math>\int_{C_1+C_2}\varphi dl = \int_{C_1}\varphi dl + \int_{C_2}\varphi dl</math>
#ベクトル場
#:<math>\int_C (k\boldsymbol{a}+l\boldsymbol{b})\cdot d\boldsymbol{l}=k\int_C \boldsymbol{a}\cdot d\boldsymbol{l}+l\int_C \boldsymbol{b}\cdot d\boldsymbol{l}</math>
#:<math>\int_{-C}\boldsymbol{a}\cdot d\boldsymbol{l} = -\int_C \boldsymbol{a}\cdot d\boldsymbol{l}</math>
#:<math>\int_{C_1+C_2}\boldsymbol{a}\cdot d\boldsymbol{l} = \int_{C_1}\boldsymbol{a}\cdot d\boldsymbol{l} + \int_{C_2}\boldsymbol{a}\cdot d\boldsymbol{l}</math>
1番目の性質は線型性である。2番目の性質から、スカラー場の線積分に関しては任意の'''再パラメトライズ'''(パラメータの可逆な変数変換)、ベクトル場の線積分に関しては向き付けを保つ再パラメトライズに対して線積分の値が保存されることが判る。
保存的ベクトル場に対する線積分<math>\int_C \boldsymbol{a}\cdot d\boldsymbol{l}</math>はスカラーポテンシャル<math>\varphi</math>を用いて<math>\int_C \nabla\varphi\cdot d\boldsymbol{l}</math>と書けるので微分積分学の基本定理より<math>\varphi(\boldsymbol{r}(\beta))-\varphi(\boldsymbol{r}(\alpha))</math>に等しい。
ここで<math>\varphi(\boldsymbol{r}(\beta))-\varphi(\boldsymbol{r}(\alpha))</math>は曲線の端点にのみ依存し形状には依存しない。
そのため、'''線積分の値が積分経路に依存しない必要十分条件はベクトル場が保存的であること'''である。
ここで閉曲線である場合を考えると
:<math>\boldsymbol{r}(\alpha)=\boldsymbol{r}(\beta)</math>
より
:<math>\varphi(\boldsymbol{r}(\alpha))=\varphi(\boldsymbol{r}(\beta))</math>
なので
:<math>\oint_C \nabla\varphi\cdot d\boldsymbol{l}=0</math>
である。
逆に言うと、'''周回積分が0でない閉経路をとれるとき<math>\varphi</math>は<math>\boldsymbol{a}</math>のスカラーポテンシャルではない'''。
この事実は偏微分方程式を解いて求めたスカラーポテンシャルが実際にポテンシャルであるかどうかの確認に用いられる。
なお、先程求めたスカラーポテンシャルの一般式
:<math>\varphi(x,y,z)=\int_m^x a_x(x,y,z)dx+\int_n^y a_y(m,y,z)dy+\int_l^z a_z(m,n,z)dz+C</math>
は線積分で表される。
具体的には、積分経路を<math>\gamma:(m,n,l)\to(m,n,z)\to(m,y,z)\to(x,y,z)</math>という3つの線分の和としてとれば
:<math>\varphi=\int_\gamma \boldsymbol{a}\cdot d\boldsymbol{l}+C</math>
である。
ここでスカラーポテンシャルとは勾配方程式
:<math>\nabla\varphi=\boldsymbol{a}</math>
の解だったので、'''線積分と勾配は逆演算'''である。
<math>\nabla\varphi\cdot d\boldsymbol{l}=d\varphi</math>より、スカラーポテンシャルの存在と完全微分方程式の対応がここからも得られる。また、完全微分方程式<math>d\varphi=0</math>の解は曲線を与えることも容易に判る。
仕事が線積分で定義されるという話をしたが、エネルギーの原理より力場がスカラーポテンシャルを有する(保存場)場合はエネルギー変化が移動経路に依存しないので力学的エネルギー保存法則が成り立つ。これが高校物理で扱った「保存力なら力学エネルギーが保存する」ことの正式な表現である。
ベクトル場の線積分はベクトル場と線素ベクトルの内積をとって積分していたが、外積をとって積分することもできる。
具体的には、
:<math>\boldsymbol{a}\times d\boldsymbol{l}=\begin{pmatrix} a_ydz-a_zdy \\ a_zdx-a_xdz \\ a_xdy-a_ydx \end{pmatrix}</math>
より
:<math>\int_C \boldsymbol{a}\times d\boldsymbol{l}=\begin{pmatrix} \int_C (a_ydz-a_zdy) \\ \int_C (a_zdx-a_xdz) \\ \int_C (a_xdy-a_ydx) \end{pmatrix}</math>
:<math>=\begin{pmatrix} \int_\alpha^\beta \left\{ a_y(\boldsymbol{r}(t))\frac{dz}{dt}-a_z(\boldsymbol{r}(t))\frac{dy}{dt} \right\}dt \\ \int_\alpha^\beta \left\{ a_z(\boldsymbol{r}(t))\frac{dx}{dt}-a_x(\boldsymbol{r}(t))\frac{dz}{dt} \right\}dt \\ \int_\alpha^\beta \left\{ a_x(\boldsymbol{r}(t))\frac{dy}{dt}-a_y(\boldsymbol{r}(t))\frac{dx}{dt} \right\}dt \end{pmatrix}</math>
これは物理学的にはビオ・サヴァールの法則の記述に用いられている。
:真空中で経路<math>C</math>を正の向きに流れる強さ<math>I</math>の定常電流・<math>C</math>上にない点<math>\mathrm{P}</math>・<math>C</math>上の点<math>\mathrm{Q}</math>に対し、<math>C</math>全体で生じる磁束密度<math>\boldsymbol{B}</math>の<math>\mathrm{P}</math>での値は真空の透磁率<math>\mu_0</math>として
::<math>\boldsymbol{B}(\mathrm{P})=\frac{\mu_0 I}{4\pi}\int_C \frac{\overrightarrow{\mathrm{PQ}}\times d\boldsymbol{l}}{\|\overrightarrow{\mathrm{PQ}}\|^3}</math>
応用例は乏しいが、スカラー場の線素ベクトルに関する積分、ベクトル場の線素に関する積分も同様に定義される。
:<math>\int_C \varphi d\boldsymbol{l} = \int_\alpha^\beta \varphi(\boldsymbol{r}(t))\frac{d\boldsymbol{r}}{dt}dt</math>
:<math>\int_C \boldsymbol{a} dl = \int_\alpha^\beta \boldsymbol{a}(\boldsymbol{r}(t))\left\|\frac{d\boldsymbol{r}}{dt}\right\|dt</math>
これらはベクトル値である。
積分経路を流線上にとると、流線の定義から<math>d\boldsymbol{r}/\!\!/\boldsymbol{a}(\boldsymbol{r})</math>則ち一次従属なので、<math>d\boldsymbol{r}=k\boldsymbol{a}(\boldsymbol{r})</math>と書ける。
よって線積分の被積分関数は<math>\boldsymbol{a} \cdot d\boldsymbol{r} = k\|\boldsymbol{a}\|^2</math>となり、積分値が最大化される他、ベクトル場の沿流方向成分を抽出できる。実際に計算する際は、<math>\int_{\mathrm{streamline}} k\|\boldsymbol{a}\|^2</math>とは書かず、<math>\int_{\mathrm{streamline}} \boldsymbol{a} \cdot \frac{d\boldsymbol{r}}{dt}dt</math>と書くのが望ましい(積分記号と積分微小要素はセットのため)。
流線が閉曲線である場合を考えると、<math>\oint_{\mathrm{streamline}} \boldsymbol{a} \cdot \frac{d\boldsymbol{r}}{dt}dt</math>は閉曲線の正の向きで正、負の向きで負となるので0にはならない。そのため、流線が閉曲線であるベクトル場はスカラーポテンシャルを持たない。
===面積分===
線積分は常積分に於ける積分経路を任意の正則な<math>C^1</math>級曲線に拡張したものであった。同様に、二重積分に於ける積分領域を'''向き付けされた'''任意の<math>C^1</math>級曲面に拡張することを考える。
曲線に沿った微小量が線素で与えられたように、曲面に沿った微小量は面素で与えられる。故に、直観的には「面素に関して積分」すれば良いことが分かる。
三次元空間の曲面をベクトル表示すると
:<math>\boldsymbol{r}(t, u)=\begin{pmatrix} x(t, u) \\ y(t, u) \\ z(t, u) \end{pmatrix}\quad {\scriptstyle\left(\begin{array}{c} t \\[-6pt] u \end{array}\right)} \in D</math>
であり、被積分関数はこの曲面上の点を入力とするスカラー場と考えられるので
:<math>\varphi=\varphi(\boldsymbol{r})</math>
面素は
:<math>dS=\sqrt{EG-F^2}dtdu=\sqrt{\left\| \frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}} \right\|^2\left\|\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}\right\|^2 - \left( \frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}\cdot\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}} \right)^2 } dtdu</math>
総合すると、<math>S</math>に沿った積分というものは曲面のパラメータを用いて
:<math>\iint_D \varphi(\boldsymbol{r}(t,u))\sqrt{\left\| \frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}} \right\|^2\left\|\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}\right\|^2 - \left( \frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}\cdot\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}} \right)^2 } dtdu</math>
と表示されることになる。
これをスカラー場<math>\varphi</math>の<math>S</math>に沿った'''面積分'''(曲面積分、surface integral)という。
今は三次元空間の場合を考えているので、外積を用いて
:<math>\iint_D \varphi(\boldsymbol{r}(t,u))\left\|\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}\times\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}\right\| dtdu</math>
と表示しても良い。
スカラー場の面積分は
:<math>\iint_S \varphi dS</math>
のように略記される。
特に積分領域が閉曲面である場合は
:<math>\oiint_S \varphi dS</math>
のように書く。
1の面積分<math>\iint_S dS</math>は曲面積に等しい。
ベクトル場の線積分と同様にしてベクトル場の面積分
:<math>\iint_S \boldsymbol{a}\cdot d\boldsymbol{S}</math>
を考えたい。
線素ベクトルが「位置ベクトルの接線方向」で「ノルムが通常の線素と一致する」ように定義されたことを鑑みると、面素ベクトルは「位置ベクトルの法線方向」で「ノルムが通常の面素に一致する」ように定義するのが良いと考えられる。要するに、
:<math>d\boldsymbol{S}:=\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}\times\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}</math>
としてみる。
ここで単位法線ベクトルを<math>\boldsymbol{n}</math>と置くと面素ベクトルは<math>\boldsymbol{n}dS</math>と表され、
:<math>\iint_S \boldsymbol{a}\cdot d\boldsymbol{S}=\iint_S (\boldsymbol{a}\cdot\boldsymbol{n})dS</math>
のようにスカラー場の面積分に帰着されることが判る。
これをベクトル場<math>\boldsymbol{a}</math>の<math>S</math>に沿った'''面積分'''という。
<math>\boldsymbol{a}\cdot\boldsymbol{n}</math>は<math>\boldsymbol{a}</math>から<math>S</math>の法線を横切る沿流成分を取り出していることになる。
このことから、ベクトル場の面積分を特に'''法線面積分'''(surface integral of the normal component)ということがある。
単位法線ベクトル<math>\boldsymbol{n}</math>は有向曲面に対して右手系を成し、各座標軸となす角度をそれぞれ<math>\alpha, \beta, \gamma</math>とすると通常の余弦関数で表されるベクトル<math>\begin{pmatrix} \cos \alpha \\ \cos \beta \\ \cos \gamma \end{pmatrix}</math>に等しい。これを'''方向余弦'''という。
方向余弦に関して、正射影を用いると以下が成り立つと判る。
:<math>\begin{cases} \cos\alpha dS = dydz \\ \cos\beta dS = dzdx \\ \cos\gamma dS = dxdy \end{cases}</math>
これを用いることで、面素ベクトルは
:<math>d\boldsymbol{S} = \boldsymbol{e}_x dydz + \boldsymbol{e}_y dzdx + \boldsymbol{e}_z dxdy = \begin{pmatrix} dydz \\ dzdx \\ dxdy \end{pmatrix}</math>
とも表される。
故に、法線面積分は形式的に
:<math>\iint_S(a_xdydz+a_ydzdx+a_zdxdy)</math>
とも書ける。
線積分と同様にベクトル場と面素ベクトルの外積、面素ベクトルのスカラー場倍、ベクトル場の面素倍をとって積分することも考えられるが、応用例に乏しい。
:<math>\iint_S \boldsymbol{a}\times d\boldsymbol{S}</math>
:<math>\iint_S \varphi d\boldsymbol{S}</math>
:<math>\iint_S \boldsymbol{a} dS</math>
これらはベクトル値である。
面素ベクトルは以下のように考えることもできる。
:平面<math>\Pi</math>上面積<math>A</math>の有界領域と<math>\Pi</math>の表向き法線<math>\boldsymbol{n}_\Pi</math>に対し、<math>\boldsymbol{A}=A\boldsymbol{n}_\Pi</math>を'''面積ベクトル'''と定義する。
:曲面<math>S</math>上の微小領域をとると曲面をその接平面で近似できるので平面上と同様にして面積ベクトルを定義できる。
:このとき、<math>A=dS</math>となるように定義した面積ベクトルが面素ベクトルである。
この考え方を用いると、
:<math>\oint_C d\boldsymbol{l}=\boldsymbol{0}</math>
及び
:<math>\oiint_S d\boldsymbol{S}=\boldsymbol{0}</math>
が示される。
面積分で定義される概念としては'''束'''<sup>※</sup>(flux)が有名である。
:流体の速度場<math>\boldsymbol{v}</math>に対し、<math>\iint_S \boldsymbol{v}\cdot d\boldsymbol{S}</math>は流束(単位時間当たりに<math>S</math>を通過する流体の流出量)である。
:磁束密度<math>\boldsymbol{B}</math>に対し、<math>\Phi_B=\iint_S \boldsymbol{B}\cdot d\boldsymbol{S}</math>は磁束である。
また、ガウスの法則も面積分で示される。
:ガウス面<math>S</math>が囲む電荷の総量を<math>q_\mathrm{inc}</math>とすると電束密度<math>\boldsymbol{D}</math>に対して
::<math>\oiint_S \boldsymbol{D}\cdot d\boldsymbol{S}=q_\mathrm{inc}</math>
<small>※数学界・物理界で「束」と呼ばれる対象は複数存在する。和訳されるときに「束」が充当されたものはここで扱う「flux」の他に「bundle(ファイバー束など)」「lattice([[束論]]の束)」「pencil(円束など)」「packet(波束など)」がある。</small>
<math>S</math>が表向きにパラメトライズされたとき、裏向きにパラメトライズされた曲面を<math>-S</math>と表した。
同じ向きを向く2つの曲面<math>S_1</math>と<math>S_2</math>の境界が一致するとき、これを一つの曲面と見做して曲面の和
:<math>S_1+S_2</math>
が定義される。
これを'''区分的に定義された曲面'''という。
<math>S</math>が'''区分的に滑らか'''であるとは、<math>S</math>が有限個の滑らかな曲面の和であることである。
これらを踏まえると、面積分には以下の性質が成り立つ。
#スカラー場
#:<math>\iint_S (k\varphi+l\psi) dS=k\iint_S \varphi dS + l \iint_S \psi dS</math>
#:<math>\iint_{-S}\varphi dS = \iint_S \varphi dS</math>
#:<math>\iint_{S_1+S_2}\varphi dS = \iint_{S_1}\varphi dS + \iint_{S_2}\varphi dS</math>
#ベクトル場
#:<math>\iint_S (k\boldsymbol{a}+l\boldsymbol{b})\cdot d\boldsymbol{S}=k\iint_S \boldsymbol{a}\cdot d\boldsymbol{S}+l\iint_S \boldsymbol{b}\cdot d\boldsymbol{S}</math>
#:<math>\iint_{-S}\boldsymbol{a}\cdot d\boldsymbol{S} = -\iint_S \boldsymbol{a}\cdot d\boldsymbol{S}</math>
#:<math>\iint_{S_1+S_2}\boldsymbol{a}\cdot d\boldsymbol{S} = \iint_{S_1}\boldsymbol{a}\cdot d\boldsymbol{S} + \iint_{S_2}\boldsymbol{a}\cdot d\boldsymbol{S}</math>
1番目の性質は線型性である。2番目の性質から、スカラー場の面積分に関しては任意の再パラメトライズ、ベクトル場の面積分に関しては向き付けを保つ再パラメトライズに対して面積分の値が保存されることが判る。
等位面に対する面積分を考える。曲面<math>S</math>がスカラー場<math>\omega</math>の等位面であるとき、その単位法線ベクトルは勾配を用いて
:<math>\boldsymbol{n}=\pm\frac{\nabla\omega}{\|\nabla\omega\|}</math>
と表される。右手系で考えるので正符号を採る。
等位面の方程式<math>\omega(x,y,z)=c</math>に対して陰関数定理が成り立つとすると陰関数<math>z=\psi(x,y)</math>を用いて<math>S:\boldsymbol{r}(x,y)=\begin{pmatrix} x \\ y \\ \psi(x,y) \end{pmatrix}\quad {\scriptstyle\left(\begin{array}{c} x \\[-6pt] y \end{array}\right)} \in D</math>というモンジュ表示に落ちる。
よって
:<math>dS=\sqrt{1+\left(\frac{\partial{\psi}}{\partial{x}}\right)^2+\left(\frac{\partial{\psi}}{\partial{y}}\right)^2}dxdy</math>
と
:<math>\boldsymbol{n}=\frac{\nabla\omega}{\|\nabla\omega\|}</math>
を用いて
:<math>\int_S \varphi dS = \int_D \varphi(x,y,\psi(x,y))\sqrt{1+\left(\frac{\partial{\psi}}{\partial{x}}\right)^2+\left(\frac{\partial{\psi}}{\partial{y}}\right)^2}dxdy</math>
:<math>\int_S \boldsymbol{a}\cdot d\boldsymbol{S} = \int_D \boldsymbol{a}(x,y,\psi(x,y))\cdot\frac{\nabla\omega(x,y,\psi(x,y))}{\|\nabla\omega(x,y,\psi(x,y))\|}\sqrt{1+\left(\frac{\partial{\psi}}{\partial{x}}\right)^2+\left(\frac{\partial{\psi}}{\partial{y}}\right)^2}dxdy</math>
を得る。
===体積分===
三次元空間の中では曲がった三次元空間を考えることはできない。そのため、以下の議論は平坦な三次元空間での話になる。
曲線長の微小量であった線素・曲面積の微小量であった面素と同様にして立体積の微小量について考えてみる。
立体<math>V</math>を微小立体に分割した体積を<math>\Delta V_i</math>としたとき、線積分・面積分が正式には区分求積法で定義されたようにリーマン和の極限
:<math>\lim_{\Delta V_i\to0}\sum_i \varphi(x_i, y_i, z_i)\Delta V_i</math>
で与えられる積分を考えたい。
これは多変数解析で行った議論と同様にして三変数関数の三重極限へと帰着されるが、三重極限は飛ばす順番を入れ替えられるとは限らないためこの極限値を求めることは困難である。
そこで、以下のように考える。
微小立体はどのような分割の仕方であっても直方体で近似できる(曲面上微小領域を平面上平行四辺形で近似したことからの類推)。このとき、微小体積<math>dV</math>は各辺の長さが<math>dx, dy, dz</math>であると考えることができる。故に、直方体の体積公式を用いて
:<math>dV=dxdydz</math>
これを'''体素'''(体積素・体積要素)という。
故に、求める積分は
:<math>\lim_{\Delta V_i\to0}\sum_i \varphi(x_i, y_i, z_i)\Delta V_i=\iiint_V \varphi(x,y,z) dxdydz</math>
という三重積分に帰着される。
これをスカラー場の<math>V</math>に沿った'''体積分'''(volume integral)という。
スカラー場の体積分は
:<math>\iiint_V \varphi dV</math>
のように略記される。
特に、積分領域が閉集合('''閉立体''')である場合は
:<math>\oiiint_V \varphi dV</math>
のように書く。
1の体積分<math>\iiint_V dV</math>は立体積に等しい。
<math>V</math>のベクトル表示が<math>\boldsymbol{r}(s,t,u)=\begin{pmatrix} x(s,t,u) \\ y(s,t,u) \\ z(s,t,u) \end{pmatrix} \quad {\scriptstyle\left(\begin{array}{c} s \\[-6pt] t \\[-6pt] u\end{array}\right)} \in D</math>である場合は、多変数解析の議論により
:<math>\iiint_V \varphi dV = \iiint_D \varphi(\boldsymbol{r}(s,t,u)) \left|\det \frac{\partial{(x,y,z)}}{\partial{(s,t,u)}}\right| dsdtdu</math>
であると容易に判る。
立体に対しては曲線に於ける接線、曲面に於ける法線のような「ベクトル表示から求められる、積分領域の向きを指定するための方向」が一意には存在しない。そのため、体素ベクトルというものは考えない。
故に、ベクトル場の体積分は
:<math>\iiint_V \boldsymbol{a}dV</math>
の一種類のみである。
体積分を用いて表される概念としては、電荷が有名である。
:電荷密度<math>\rho(x,y,z)</math>に対し、領域<math>V</math>内にある電荷の総量は
::<math>q=\iiint_V \rho(x,y,z)dV</math>
また、電荷分布に於ける電気双極子モーメントは
::<math>\boldsymbol{p}=\iiint_V \rho\boldsymbol{r} dV</math>
というベクトル場の体積分で定義される。
更に、以下のような概念も定義されている。
:物体の質量<math>m</math>、密度<math>\rho</math>とすると質量中心ベクトルは
::<math>\boldsymbol{r}_G=\frac{1}{m}\iiint_V \rho\boldsymbol{r}dV</math>
:電磁場の真空での運動量は
::<math>\boldsymbol{P}=\frac{1}{c^2}\iiint_V \boldsymbol{E}\times\boldsymbol{H}dV</math>
2つの立体<math>V_1</math>と<math>V_2</math>の境界が一致するとき、これを一つの立体と見做して立体の和
:<math>V_1+V_2</math>
が定義される。
これを'''区分的に定義された立体'''という。
<math>V</math>が'''区分的に滑らか'''であるとは、<math>V</math>が有限個の滑らかな立体の和であることである。
これらを踏まえると、体積分には以下の性質が成り立つ。
#スカラー場
#:<math>\iiint_V (k\varphi+l\psi) dV=k\iiint_V \varphi dV + l \iiint_S \psi dV</math>
#:<math>\iiint_{V_1+V_2}\varphi dV = \iiint_{V_1}\varphi dV + \iiint_{V_2}\varphi dV</math>
#ベクトル場
#:<math>\iint_V (k\boldsymbol{a}+l\boldsymbol{b})dV=k\iiint_V \boldsymbol{a}dV+l\iiint_V \boldsymbol{b}dV</math>
#:<math>\iiint_{V_1+V_2}\boldsymbol{a}dV = \iiint_{V_1}\boldsymbol{a} dV + \iiint_{V_2}\boldsymbol{a}dV</math>
===積分定理===
ここでは、空間積分に関する種々の定理を紹介する。
体積分
:<math>\int_V \varphi dV=\int_V \varphi dxdydz</math>
に於いて、スカラー場<math>\varphi</math>がスカラー場<math>f</math>のある積分変数に関する偏導関数になっている場合を考える。
例えば<math>\varphi=\frac{\partial{f}}{\partial{x}}</math>の場合を考えると
:<math>\int_V \varphi dV = \int_V \frac{\partial{f}}{\partial{x}}dxdydz</math>
であり、
:<math>V=\left\{ \begin{pmatrix} x \\ y \\ z \end{pmatrix} \Bigg| \begin{array}{c} \vartheta(y,z) \leq x \leq \eta(y,z) \\ {\scriptstyle\left(\begin{array}{c} y \\[-6pt] z \end{array}\right)} \in D \end{array} \right\}</math>
とすると
:<math>=\iint_D \left( \int_{\vartheta(y,z)}^{\eta(y,z)} \frac{\partial{f}}{\partial{x}} dx \right) dydz</math>
偏微分に関する微分積分学の基本定理より
:<math>=\iint_D \{ f(\eta(y,z),y,z)-f(\vartheta(y,z),y,z) \} dydz</math>
ここで、曲面<math>S_\eta:x=\eta(y,z), S_\vartheta:x=\vartheta(y,z)</math>の面素ベクトルについて考えてみる。<br/>
<math>S_\eta</math>の接ベクトルは
:<math>\frac{\partial{\eta}}{\partial{y}}\boldsymbol{e}_x+\boldsymbol{e}_y, \frac{\partial{\eta}}{\partial{z}}\boldsymbol{e}_x+\boldsymbol{e}_z</math>
の2つなので、面素ベクトルは<math>x</math>軸正方向にとると
:<math>d\boldsymbol{S}_\eta=\left(\frac{\partial{\eta}}{\partial{y}}\boldsymbol{e}_x+\boldsymbol{e}_y\right)\times\left( \frac{\partial{\eta}}{\partial{z}}\boldsymbol{e}_x+\boldsymbol{e}_z\right)=\left( \boldsymbol{e}_x - \frac{\partial{\eta}}{\partial{y}}\boldsymbol{e}_y - \frac{\partial{\eta}}{\partial{z}}\boldsymbol{e}_z \right)dydz</math>
:<math>\therefore \boldsymbol{e}_x\cdot d\boldsymbol{S}_\eta=dydz</math>
:<math>\therefore \iint_{S_\eta} f\boldsymbol{e}_x \cdot d\boldsymbol{S}_\eta=\iint_D f(\eta(y,z),y,z)dydz </math>
<math>S_\vartheta</math>の接ベクトルは
:<math>\frac{\partial{\vartheta}}{\partial{y}}\boldsymbol{e}_x+\boldsymbol{e}_y, \frac{\partial{\vartheta}}{\partial{z}}\boldsymbol{e}_x+\boldsymbol{e}_z</math>
の2つなので、面素ベクトルは<math>x</math>軸負方向にとると
:<math>d\boldsymbol{S}_\vartheta=\left( \frac{\partial{\vartheta}}{\partial{z}}\boldsymbol{e}_x+\boldsymbol{e}_z\right)\times\left(\frac{\partial{\vartheta}}{\partial{y}}\boldsymbol{e}_x+\boldsymbol{e}_y\right)=\left(-\boldsymbol{e}_x + \frac{\partial{\vartheta}}{\partial{y}}\boldsymbol{e}_y + \frac{\partial{\vartheta}}{\partial{z}}\boldsymbol{e}_z \right)dydz</math>
:<math>\therefore \boldsymbol{e}_x\cdot d\boldsymbol{S}_\vartheta=-dydz</math>
:<math>\therefore \iint_{S_\vartheta} f\boldsymbol{e}_x \cdot d\boldsymbol{S}_\vartheta=-\iint_D f(\vartheta(y,z),y,z)dydz </math>
また、<math>S_\vartheta, S_\eta</math>を<math>V</math>の底面とみたときの側面<math>S_\mathrm{side}</math>は接平面に<math>\boldsymbol{e}_x</math>を含むので法線は<math>x</math>軸に垂直であり、
:<math>\boldsymbol{e}_x\cdot d\boldsymbol{S}_\mathrm{side}=0</math>
:<math>\therefore \iint_{S_\mathrm{side}}f\boldsymbol{e}_x\cdot d\boldsymbol{S}_\mathrm{side}=0</math>
よって
:<math>\iint_D \{f(\eta(y,z),y,z) - f(\vartheta(y,z),y,z) \}dydz=\iint_{S_\eta} f \boldsymbol{e}_x\cdot d\boldsymbol{S}_\eta + \iint_{S_\mathrm{side}} f \boldsymbol{e}_x\cdot d\boldsymbol{S}_\mathrm{side} + \iint_{S_\vartheta} f \boldsymbol{e}_x\cdot d\boldsymbol{S}_\vartheta</math>
:<math>=\oiint_{\partial{V}}f\boldsymbol{e}_x \cdot d\boldsymbol{S}</math>
ここで<math>\varphi=\frac{\partial{g}}{\partial{y}},\quad \varphi=\frac{\partial{h}}{\partial{z}}</math>の場合も同様の議論により
:<math>\iiint_V \frac{\partial{g}}{\partial{y}} dV = \oiint_{\partial{V}} g\boldsymbol{e}_y \cdot d\boldsymbol{S}</math>
:<math>\iiint_V \frac{\partial{h}}{\partial{z}}dV = \oiint_{\partial{V}} h\boldsymbol{e}_z\cdot d\boldsymbol{S}</math>
と判るので、3式を足し合わせて
:<math>\iiint_V \left(\frac{\partial{f}}{\partial{x}}+\frac{\partial{g}}{\partial{y}}+\frac{\partial{h}}{\partial{z}}\right)dV=\oiint_{\partial{V}} (f\boldsymbol{e}_x+g\boldsymbol{e}_y+h\boldsymbol{e}_z)\cdot d\boldsymbol{S}</math>
ここで曲面<math>\partial{V}</math>の外向き法線の方向余弦を<math>\begin{pmatrix} l \\ m \\ n \end{pmatrix}</math>と置くと最終的に
:<math>\iiint_V \left(\frac{\partial{f}}{\partial{x}}+\frac{\partial{g}}{\partial{y}}+\frac{\partial{h}}{\partial{z}}\right)dV=\oiint_{\partial{V}} (fl+gm+hn)dS</math>となる。
これを'''ガウス=グリーンの定理'''という。
更に、<math>\boldsymbol{a}(x,y,z)=\begin{pmatrix} f(x,y,z) \\ g(x,y,z) \\ h(x,y,z) \end{pmatrix}</math>と定義すると
:<math>\iiint_V\left( \frac{\partial{a_x}}{\partial{x}}+\frac{\partial{a_y}}{\partial{y}}+\frac{\partial{a_z}}{\partial{z}} \right)dV=\oiint_{\partial{V}} ( a_x\boldsymbol{e}_x+a_y\boldsymbol{e}_y+a_z\boldsymbol{e}_z )\cdot d\boldsymbol{S}</math>
則ち
:<math>\iiint_V \nabla\cdot\boldsymbol{a} dV = \oiint_{\partial{V}}\boldsymbol{a}\cdot d\boldsymbol{S}</math>
を得る。
これを'''ガウスの発散定理'''という。
{{定理|(ガウスの発散定理)}}
有界領域<math>V\subset\mathbb{R}^3</math>の境界<math>\partial{V}</math>が区分的に滑らかな閉曲面をなすとき、開集合<math>U \supset V^-</math>上で定義される<math>C^1</math>級ベクトル場<math>\boldsymbol{a}</math>に対して
:<math>\iiint_V \nabla\cdot\boldsymbol{a}dV = \oiint_{\partial{V}} \boldsymbol{a}\cdot d\boldsymbol{S}</math>
{{定理終わり}}
ステラジアン
grad・divの積分形
平面のグリーンの定理(二次元のガウスの定理との同値性)
ストークスの定理
グリーンの第一定理
グリーンの第二定理
グリーンの定理
ポアソンの公式
ポホザエフの恒等式
ポアンカレの補題再考
パップス=ギュルダンの定理
ラプラス場の解析(「調和関数の法線方向微分の面積分は0」「グリーンの第二定理の右辺=0」「調和関数の点mでの値は半径に依らずmを中心とした球内に於ける調和関数の平均値」「定数関数でない調和関数は最大値も最小値も持たない」「閉曲面上で定数関数である調和関数は閉曲面が囲む領域の至る所で定数関数」「ラプラス方程式のディリクレ問題の解は一意」「調和関数の境界に於ける法線方向微分が0なら立体内で至る所で定数関数」「ラプラス方程式の2解の境界上法線方向微分が一致するならその差は定数」)
==発展事項==
{{節stub}}
{{Advanced|多様体論}}
{{Advanced|微分幾何学}}
{{Advanced|積分幾何学}}
ここではベクトル解析の発展編及び微分幾何学の基礎編として、「ユークリッド空間の部分多様体上の微分幾何学」を扱う。言うなれば「<math>n</math>次元版のベクトル解析学」である。
===体積分再考===
体積分は先程「<math>\mathbb{R}^3</math>上の閉立体<math>V</math>」上で考えたが、実はここには線積分・面積分との大きな非対称性がある。
線積分は「曲線」、面積分は「曲面」を積分領域としたが、先程定義した体積分の積分領域は「平坦な立体」なのである(二次元で例えば楕円領域<math>\frac{x^2}{a^2}+\frac{y^2}{b^2}\leq1</math>は境界こそ"曲線"だが空間そのものは<math>\mathbb{R}^2</math>という"平面"であることと同じ)。
1次元の曲がった空間である曲線<math>M^1:\boldsymbol{r}=\boldsymbol{r}(s)</math>が<math>\mathbb{R}^2</math>内、2次元の曲がった空間である曲面<math>M^2:\boldsymbol{r}=\boldsymbol{r}(s, t)</math>が<math>\mathbb{R}^3</math>内に存在するように、3次元の曲がった空間である曲立体<math>M^3:\boldsymbol{r}=\boldsymbol{r}(s, t, u)</math>は<math>\mathbb{R}^4</math>内に存在すると考えるのが自然である。ここで一般に<math>M^n\subset\mathbb{R}^{n+1}</math>が成り立つと予想され、この関係を「<math>M^n</math>の<math>\mathbb{R}^{n+1}</math>への'''埋め込み'''」と呼ぶことにする。
線積分を<math>C=M^1</math>、面積分を<math>S=M^2</math>で定義したように、体積分を<math>M^3</math>で定義することを考える。
媒介変数空間<math>\begin{pmatrix} s \\ t \\ u \end{pmatrix} \in V \subset\mathbb{R^3}</math>上の微小変化を考えると全微分を用いて
:<math>d\boldsymbol{r}=\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{s}}ds+\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}dt+\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}du</math>
よって<math>V</math>上の微小立方体<math>dsdtdu</math>は3ベクトル<math>\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{s}}ds,\quad\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}dt,\quad\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}du</math>の張る微小平行六面体へ移される。
体素はこの微小平行六面体の体積と考えられるが、<math>\boldsymbol{r}\in\mathbb{R}^4</math>より当然この3ベクトルは4項ベクトルなので、'''外積を含んでいるスカラー三重積は使えない'''。
全微分を一次変換表記すると
:<math>d\boldsymbol{r}=\begin{pmatrix} \frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{s}} & \frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}} & \frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}} \end{pmatrix} \begin{pmatrix} ds \\ dt \\ du \end{pmatrix}</math>
:<math>=\begin{pmatrix} \frac{\partial{x}}{\partial{s}} & \frac{\partial{x}}{\partial{t}} & \frac{\partial{x}}{\partial{u}} \\ \frac{\partial{y}}{\partial{s}} & \frac{\partial{y}}{\partial{t}} & \frac{\partial{y}}{\partial{u}} \\ \frac{\partial{z}}{\partial{s}} & \frac{\partial{z}}{\partial{t}} & \frac{\partial{z}}{\partial{u}} \\ \frac{\partial{w}}{\partial{s}} & \frac{\partial{w}}{\partial{t}} & \frac{\partial{w}}{\partial{u}} \end{pmatrix} \begin{pmatrix} ds \\ dt \\ du \end{pmatrix}</math>
:<math>=\frac{\partial{(x, y, z, w)}}{\partial{(s, t, u)}}\begin{pmatrix} ds \\ dt \\ du \end{pmatrix}</math>
ここでヤコビ行列は<math>\frac{\partial{(x, y, z, w)}}{\partial{(s, t, u)}}\in\mathbb{R}^{4\times3}</math>であって'''正方行列でないので行列式も求まらない'''。
そこで、[[線型代数学続論/種々の行列#随伴行列|グラム行列]]を利用することを考える。
'''グラム行列は必ず半正定値行列'''なので行列式は非負であり、平方根をとれる。
そのため、<math>\mathbf{G}:=\left(\frac{\partial{(x, y, z, w)}}{\partial{(s, t, u)}}\right)^*\frac{\partial{(x, y, z, w)}}{\partial{(s, t, u)}}</math>として<math>\sqrt{\det\mathbf{G}}</math>を体積拡大率とする。
これは正方行列ならヤコビアンの絶対値に一致する。
{{NavTop|title=補足:体積拡大率に一致する証明}}
:<math>\frac{\partial{(x, y, z, w)}}{\partial{(s, t, u)}}</math>の列ベクトルにグラム=シュミットの直交化法を適用すると[[線型代数学続論/行列分解|QR分解]]によって
:<math>\frac{\partial{(x, y, z, w)}}{\partial{(s, t, u)}}=\mathbf{QR}\quad (\mathbf{Q}\in\mathbb{R}^{4\times3}, \mathbf{R}\in\mathbb{R}^{3\times3})</math>
よって
:<math>\mathbf{G}=(\mathbf{QR})^*\mathbf{QR}</math>
:<math>=\mathbf{R}^*\mathbf{Q}^*\mathbf{Q}\mathbf{R}</math>
:<math>=\mathbf{R}^*\mathbf{E}_3\mathbf{R}</math>(<math>\because\mathbf{Q}</math>は列ユニタリ行列)
:<math>=\mathbf{R}^*\mathbf{R}</math>
:<math>\therefore \sqrt{\det\mathbf{G}}=\sqrt{\det\left( \mathbf{R}^*\mathbf{R} \right)}=\sqrt{\left(\det\mathbf{R}\right)^2}=|\det\mathbf{R}|</math>
<math>\mathbf{Q}</math>は列ユニタリ行列なのでその一次変換は等長変換であり、全微分による拡大率は<math>\mathbf{R}</math>による拡大率と一致する。<br/>
則ち、<math>\sqrt{\det\mathbf{G}}</math>を拡大率としてとれる。//
{{NavBottom}}
よって体積分は
:<math>\iiint_{M^3} f(\boldsymbol{r})dM^3 = \iiint_{V} f(\boldsymbol{r}(s, t, u))\sqrt{\det\mathbf{G}}\,dsdtdu</math>
ここから、適切な媒介変数表示が存在するならば<math>M^n</math>上での体積分の計算に<math>\mathbb{R}^{n+1}\setminus M^n</math>の情報は入ってこず、<math>M^n</math>の情報のみで計算されると予想される。
実際、<math>M^n</math>に適切な媒介変数表示<math>\boldsymbol{r}=\boldsymbol{r}(\boldsymbol{p})\quad(\boldsymbol{p}\in\mathbb{R}^n)</math>が存在するとき、全微分による一次変換の拡大率は同様にグラム行列式の平方根で与えられるので体積素は<math>dM^n = \sqrt{\det\mathbf{G}} \prod_{k=1}^{n}d\boldsymbol{p}_k</math>と書け、これは正しい。
なお、二次元の場合を考えると<math>\mathbf{G}=\mathbf{K}</math>より<math>dM^2=dS</math>であり、面素に一致する。一次元の場合を考えると<math>\mathbf{G}=\|d\boldsymbol{r}\|^2</math>より<math>dM^1=dl</math>であり、線素に一致する。
実は、体素だけでなく一般に角度や長さといった幾何学的な量は埋め込み先である<math>\mathbb{R}^{n+1}</math>の情報を全く必要とせず、<math>M^n</math>の情報だけで構成できることが知られている。このことは微分幾何学のうち[[w:リーマン幾何学|リーマン幾何学]]と呼ばれる分野で詳しく扱われる。
ここまで<math>M^n</math>を適切な媒介変数<math>\boldsymbol{p}\in\mathbb{R}^n</math>で表すことを強調してきたが、媒介変数表示を考えるということは<math>M^n</math>から媒介変数空間<math>U\subset\mathbb{R}^n</math>への射影<math>\pi:M^n\to U</math>を考えるということである。
ここで、この<math>\pi</math>が全単射ならば逆向きの射影<math>\pi^{-1}:U\to M^n</math>が存在してそれが媒介変数表示<math>\boldsymbol{r}=\boldsymbol{r}(\boldsymbol{p})</math>となるわけであるが、これは以下のようにも捉えられる。
:<math>\pi</math>によって射影した平坦な空間で座標を設定すると、'''適切な逆変換<sup>※</sup>によって曲がった空間<math>M^n</math>上に(局所)座標系を与えることができる'''。
つまり、体積分を媒介変数空間に置換積分するということは、逆に体積分の元の表示が「<math>M^n</math>上の局所座標系に於ける積分」であることを示している。
※この適切な逆変換が存在する条件は'''陰関数定理そのもの'''である。
ここで、適切な媒介変数表示が存在するよう<math>M^n</math>に制限を課したものが、以下で扱う'''多様体'''である。
===多様体===
===微分形式===
[[線型代数学続論/外積代数]]も参照。
===リーマン計量===
===テンソル解析===
[[線型代数学続論/テンソル代数]]も参照。
===複素ベクトル解析===
[[複素解析学]]も参照。
{{DEFAULTSORT:へくとるかいせき}}
[[Category:解析学]]
[[Category:微分積分学]]
[[Category:ベクトル解析|かいせきかくきそ]]
9zy5lihk3liiizg1xtpzwwsnucdsc25
304878
304877
2026-10-19T06:09:54Z
~2026-55692-88
92812
/* 積分定理 */
304878
wikitext
text/x-wiki
{{Pathnav|数学|解析学|解析学基礎|frame=1}}
{{wikipedia|ベクトル解析}}
ここでは、ベクトル解析について解説する。[[物理数学I ベクトル解析]]も参照。
==前提知識==
ここでは、実数のみで考える。
===ベクトル===
[[高等学校数学C/ベクトル]]、[[線型代数学/ベクトル]]、[[解析学基礎/ベクトル]]などを参照。本項では、矢印を付した表記(<math>\vec{a}</math>など)と太字斜体による表記(<math>\boldsymbol{x}</math>など)を混用する。
===行列===
[[高等学校数学C/数学的な表現の工夫]]及び[[線形代数学]]・[[線型代数学続論]]の各ページを参照。本項では大文字の太字立体(<math>\mathbf{A}</math>など)で表記する。
===多変数解析===
[[解析学基礎/多変数関数の微積分]]を参照。
===領域===
<math>D\subset\mathbb{R}^n</math>と点<math>\boldsymbol{a}\in D</math>(位置ベクトル表記なので太文字斜体)に対し、集合<math>B_\varepsilon(\boldsymbol{a}) := \{ \boldsymbol{x} \in D \mid \| \boldsymbol{x} - \boldsymbol{a} \|<\varepsilon \}</math>を点<math>\boldsymbol{a}</math>の'''<math>\varepsilon</math>-開球'''という。不等号を<math>\leqq</math>に変えたときは開区間↔閉区間と同様に'''閉球'''と呼ぶ。このとき、<math>D</math>のように<math>\mathbb{R}^n</math>の部分集合であって<math>\varepsilon</math>-開球を含むものを点<math>\boldsymbol{a}</math>の'''<math>\varepsilon</math>-開近傍'''と呼ぶ。閉球を含むときは同様に'''閉近傍'''と呼ぶ。
<math>\forall \boldsymbol{a} \in U, \exist \varepsilon>0, B_\varepsilon(\boldsymbol{a})\subset U</math>を満たす<math>U\subset\mathbb{R}^n</math>を'''開集合'''と呼び、<math>V=\mathbb{R}^n\setminus U</math>を'''閉集合'''と呼ぶ。
注意点として、開集合と閉集合は排反ではない。則ち「開集合且つ閉集合」である集合が存在し(例えば<math>\mathbb{R}, \varnothing</math>)、「開集合でも閉集合でもない」集合も存在する(例えば<math>[0, 1)</math>)。
<math>M\subset\mathbb{R}^n</math>を含む最小の閉集合を<math>M</math>の'''閉包'''と呼び、<math>M^-, \bar{M}, \mathrm{Cl}(M)</math>などと表す。例えば有理数の稠密性より<math>\mathbb{Q}^-=\mathbb{R}</math>である。
閉包の性質として「閉包=集合の内部と境界の和集合(<math>M^- = \mathrm{Int}(M) \cup \partial{M}</math>)」がある。
集合<math>S\subset\mathbb{R}^n</math>に対して以下を満たす<math>\mathbb{R}^n</math>上開集合の組<math>(G_1, G_2)</math>が'''とれない'''とき、
#<math>G_1 \cap S = \varnothing \land G_2 \cap S = \varnothing</math>
#<math>S = (G_1 \cap S) \sqcup (G_2 \cap S)</math>
「<math>S</math>は'''連結'''である」または「<math>S</math>は'''連結集合'''」という(但し、<math>\sqcup</math>は[[w:非交和|非交和]])。
空でない開連結集合を'''領域'''という。
実は、高校数学や1年次の解析学で扱ってきた「領域」はこの定義を満たしていないことが多かった。これは、「領域」の歴史的な用法では「条件の解集合」という意味であって開性や連結性を要求しなかったためである。しかし、本項を含めた以降に登場する数学ではこの定義を満たしていることが前提条件となる。なお、ややこしいことに「積分領域」は従来通り「その上で積分を行う集合」という緩い意味で使われることが多いので、区別が必要である。
===右手系===
三次元空間の正規直交基底を<math>(\boldsymbol{e}_1, \boldsymbol{e}_2, \boldsymbol{e}_3)</math>と置く。螺子を<math>\boldsymbol{e}_1\to\boldsymbol{e}_2</math>の向きに回すと<math>\boldsymbol{e}_3</math>の正方向に進むように3つの軸をとった系を'''右手系'''という。負方向に進むようにとったものを'''左手系'''という。数学・物理に限らず理数系の約束事として、'''三次元空間は必ず右手系で考える'''という暗黙の了解が存在するので覚えておこう。
右手系・左手系は基底の一部または全ての符号を反転することで変換することができる。一つだけを反転する場合は'''鏡像変換'''、二つだけを反転する場合は'''半回転'''、全てを反転する場合は'''空間反転'''と呼ぶ。
外積の結果として得るベクトルは右手系・左手系のどちらを考えるかで向きが変わる。このように、右手系↔左手系の変換で向きが変わるベクトルを'''軸性ベクトル'''という。
系の取り方で向きが変わるということは基底の係数である'''成分は不変量'''である。つまり、観測者の動きにベクトルが追従し、このベクトルは「物理的な実体を有しているのではなく計算の都合上向きが定められた便宜的な(=観測者が勝手に決めた)ベクトル」ということである。そのため、軸性ベクトルは'''擬ベクトル'''(シュードベクトル)とも呼ばれる。
位置や速度、加速度のような右手系・左手系のどちらを考えても同じ向きを向くベクトルを'''極性ベクトル'''という。座標系を取り換えても向きが維持されるため'''成分は座標変換に応じて変化する'''。これは、「観測の仕方によって起こる現象は変わらない」ということである。つまり擬ベクトルに対し、極性ベクトルは'''物理的実体を有するベクトル'''である。
偶奇と同じように軸性・極性にも外積を通じた相互関係が存在する。
:(軸性)×(軸性)=(軸性)
:(軸性)×(極性)=(極性)
:(極性)×(極性)=(軸性)
==基礎事項==
===ベクトル関数===
関数<math>\boldsymbol{f} (x) = \sum_{i} f_i(x) \boldsymbol{e}_i</math>を'''ベクトル(値)関数'''(vector-valued function, vector function)という。
ただし、各<math>\boldsymbol{e}_i</math>は各座標軸方向の単位ベクトルであり、<math>\boldsymbol{f}(x)</math>の定義域は各<math>f_i(x)</math>の定義域の積集合である。
ベクトルの演算が成分ごとの演算結果を並べたベクトルで定義されたように、ベクトル関数の演算は(結果となる値が存在するならば)各成分の演算結果を並べたベクトルに等しい。これはベクトルの線型性による。
例えば、<math>\boldsymbol{f}(x) = \begin{pmatrix} \cos x \\ \sin x \end{pmatrix}</math>の<math>x\to0</math>の極限は、
:<math>\lim_{x\to0} \boldsymbol{f}(x) = \begin{pmatrix} \lim_{x\to0} \cos x \\ \lim_{x\to0} \sin x \end{pmatrix}</math> (<math>\because</math>線型性)
:<math>=\begin{pmatrix} 1 \\ 0 \end{pmatrix}</math>
:<math>=\boldsymbol{e}_x</math>
と求まる。
このとき、<math>\boldsymbol{e}_x</math>を<math>\begin{pmatrix} \cos x \\ \sin x \end{pmatrix}</math>の<math>x\to0</math>に於ける'''極限ベクトル'''という。
<math>\boldsymbol{f}(x)</math>が<math>x=\alpha</math>で連続であるとは<math>\lim_{x\to\alpha}\boldsymbol{f}(x)=\boldsymbol{f}(\alpha)</math>が成立することであり、区間<math>I</math>で連続であるとは<math>\forall \alpha \in I</math>で連続であることである。
また、ベクトル関数の導関数<math>\boldsymbol{f}'(x)</math>は
:<math>\frac{d}{dx} \boldsymbol{f} (x) = \frac{d}{dx} \left( \sum_i f_i(x) \boldsymbol{e}_i \right)</math>
:<math>= \sum_i \left( \frac{d}{dx} f_i (x) \boldsymbol{e}_i \right)</math>(<math>\because</math>線型性)
:<math>= \begin{pmatrix} f'_1(x) \\ f'_2(x) \\ \vdots \\ f'_i(x) \\ \vdots \end{pmatrix}</math>
である。
この結果は、ベクトル関数に於ける導関数の正式な定義 <math>\lim_{h\to0} \frac{\boldsymbol{f}(x+h) - \boldsymbol{f}(x)}{h}</math>からも導かれる。
<math>\boldsymbol{f}(x)</math>が<math>x=\alpha</math>で微分可能であるとは極限値<math>\boldsymbol{f}'(\alpha)=\lim_{x\to\alpha}\frac{\boldsymbol{f}(x)-\boldsymbol{f}(\alpha)}{x-\alpha}</math>が存在することであり、区間<math>I</math>で微分可能であるとは<math>\forall \alpha \in I</math>で微分可能であることである。
高階導関数・高階微分可能も同様にして定義される。
<math>\boldsymbol{f}(x)</math>が区間<math>I</math>で連続ならば<math>\boldsymbol{f}(x)</math>は<math>I</math>上で<math>C^0</math>級であるといい、<math>\boldsymbol{f}\in C^0(I)</math>と書く。<math>\boldsymbol{f}(x)</math>が<math>I</math>で微分可能で<math>\boldsymbol{f}'(x)\in C^0(I)</math>ならば<math>\boldsymbol{f}(x)</math>は<math>I</math>上で<math>C^1</math>級である(一階連続微分可能)といい、<math>\boldsymbol{f}\in C^1(I)</math>と書く。<math>\boldsymbol{f}(x)</math>が<math>I</math>で二階微分可能で<math>\boldsymbol{f}'\in C^1(I)</math>ならば<math>\boldsymbol{f}(x)</math>は<math>I</math>上で<math>C^2</math>級である(二階連続微分可能)といい、<math>\boldsymbol{f}\in C^2(I)</math>と書く。同様にして順々に<math>C^k</math>級が定義され、<math>\forall k \in \mathbb{N}, \boldsymbol{f}\in C^k(I)</math>ならば<math>\boldsymbol{f}(x)</math>は<math>I</math>で<math>C^\infty</math>級(無限階連続微分可能)であるといい、<math>\boldsymbol{f}\in C^\infty(I)</math>と書く。<math>C^\infty</math>級である関数を'''滑らかな'''関数ともいう。
高校数学や高校物理で扱った平面(<math>\mathbb{R}^2</math>)上の運動は、実は2項ベクトル関数の理論に他ならない。
例えば、平面上の運動に於ける加速度・速度・変位の関係は<math>\boldsymbol{x}(t)= \begin{pmatrix} f(t) \\ g(t) \end{pmatrix}</math>として<math>\boldsymbol{a}(t) = \frac{d}{dt}\boldsymbol{v}(t) = \frac{d^2}{dt^2} \boldsymbol{x}(t)</math>と表すことができる。
曲線の媒介変数表示は、パラメータを変数とするベクトル関数とみることができる。
例えば、円の媒介変数表示<math>\begin{cases} x=r\cos\theta \\ y=r\sin\theta \end{cases}</math>は、<math>\boldsymbol{r}(\theta) = r\begin{pmatrix} \cos\theta \\ \sin\theta \end{pmatrix}</math>という2次元ベクトル関数とみることができる。更に<math>\theta=\omega t</math>とすると、これは等速円運動の式である。
1変数ベクトル関数の微分に関して、以下の公式が成り立つ。
#定数倍の導関数:<math>\{k\boldsymbol{a}(x)\}'=k\boldsymbol{a}'(x)</math>
#和・差の導関数:<math>\{ \boldsymbol{a}(x)\pm\boldsymbol{b}(x) \}' = \boldsymbol{a}'(x)\pm\boldsymbol{b}'(x)</math>
#積の導関数:<math>\{ f(x)\boldsymbol{a}(x) \}' = f'(x)\boldsymbol{a}(x)+f(x)\boldsymbol{a}'(x)</math>
#商の導関数:<math>\left\{ \frac{\boldsymbol{a}(x)}{f(x)} \right\}' = \frac{f(x)\boldsymbol{a}'(x)-f'(x)\boldsymbol{a}(x)}{\{f(x)\}^2} \quad (f(x)\neq0)</math>
#内積の導関数:<math>\{\boldsymbol{a}(x)\cdot\boldsymbol{b}(x)\}' = \boldsymbol{a}'(x)\cdot\boldsymbol{b}(x)+\boldsymbol{a}(x)\cdot\boldsymbol{b}'(x)</math>
#外積の導関数:<math>\{\boldsymbol{a}(x)\times\boldsymbol{b}(x)\}' = \boldsymbol{a}'(x)\times\boldsymbol{b}(x)+\boldsymbol{a}(x)\times\boldsymbol{b}'(x)</math>
#スカラー三重積の導関数:<math>[\boldsymbol{a}(x)\cdot\{\boldsymbol{b}(x)\times\boldsymbol{c}(x)\}]' = \boldsymbol{a}'(x)\cdot\{\boldsymbol{b}(x)\times\boldsymbol{c}(x)\}+\boldsymbol{a}(x)\cdot\{\boldsymbol{b}'(x)\times\boldsymbol{c}(x)\}+\boldsymbol{a}(x)\cdot\{\boldsymbol{b}(x)\times\boldsymbol{c}'(x)\}</math>
#ベクトル三重積の導関数:<math>[\boldsymbol{a}(x)\times\{\boldsymbol{b}(x)\times\boldsymbol{c}(x)\}]' = \boldsymbol{a}'(x)\times\{\boldsymbol{b}(x)\times\boldsymbol{c}(x)\}+\boldsymbol{a}(x)\times\{\boldsymbol{b}'(x)\times\boldsymbol{c}(x)\}+\boldsymbol{a}(x)\times\{\boldsymbol{b}(x)\times\boldsymbol{c}'(x)\}</math>
#連鎖律(チェイン・ルール):<math>[\boldsymbol{a}\{f(x)\}]'=\boldsymbol{a}'\{f(x)\}f'(x)</math>
ベクトル関数の'''ノルム'''(大きさ、長さ)は、通常のベクトルと同様に
:<math>\| \boldsymbol{f}(x) \| = \sqrt{\boldsymbol{f}(x)\cdot\boldsymbol{f}(x)} = \sqrt{\sum_{i} \{f_i (x)\}^2}</math>
で与えられる。
つまり、ノルムは元のベクトル関数と同一変数のスカラー関数である。
ここで、このスカラー関数が定数関数である条件に就て見てみよう。
:<math>\| \boldsymbol{f}(x) \|= c \quad (c\in\mathbb{R}_{>0})</math>の両辺を2乗して
:<math>\| \boldsymbol{f}(x) \|^2 = \boldsymbol{f}(x)\cdot\boldsymbol{f}(x) = c^2</math>
:両辺微分すると内積の微分より
:<math>\{\boldsymbol{f}(x)\cdot\boldsymbol{f}(x)\}'=\boldsymbol{f}'(x)\cdot\boldsymbol{f}(x)+\boldsymbol{f}(x)\cdot\boldsymbol{f}'(x)=2\boldsymbol{f}(x)\cdot\boldsymbol{f}'(x)=0</math>
:<math>\therefore \boldsymbol{f}(x)\cdot\boldsymbol{f}'(x)=0</math>
:逆に、
:<math>\boldsymbol{f}(x)\cdot\boldsymbol{f}'(x)=0 \iff 2\boldsymbol{f}(x)\cdot\boldsymbol{f}'(x)=\boldsymbol{f}'(x)\cdot\boldsymbol{f}(x)+\boldsymbol{f}(x)\cdot\boldsymbol{f}'(x)=\{\boldsymbol{f}(x)\cdot\boldsymbol{f}(x)\}'=0</math>
:<math>\int \{\boldsymbol{f}(x)\cdot\boldsymbol{f}(x)\}'dx= \int 0 dx</math>
:<math>\boldsymbol{f}(x)\cdot\boldsymbol{f}(x)=C_1</math>(<math>C_1\geq0</math>は積分定数)
:<math>\| \boldsymbol{f}(x) \|^2=C_1</math>より
:<math>\| \boldsymbol{f}(x) \| = \sqrt{C_1} = \mathrm{const}.</math>
よって、以下が成り立つ。
{{定理|(直交条件の定理)}}
:<math>\| \boldsymbol{f}(x) \|= \mathrm{const}. \iff \boldsymbol{f}(x) \cdot \boldsymbol{f}'(x) = 0</math>
{{定理終わり}}
これは、物理的には「位置ベクトルと速度ベクトルが直交する」ことを表す。則ち、<math>\boldsymbol{f}(x)</math>の終点が始点を中心とする円運動(球面運動)をするということである。
また、ベクトル関数が変数に依らず常に同一方向を向く条件も見てみよう(但し<math>\boldsymbol{f}(x)\neq\boldsymbol{0}</math>)。
:所与の条件は零ベクトルでない定ベクトル<math>\boldsymbol{c}</math>を用いて<math>\boldsymbol{f}(x) = f(x)\boldsymbol{c}</math>と表される。
:両辺微分して<math>\boldsymbol{f}'(x)=\{f(x)\boldsymbol{c}\}=f'(x)\boldsymbol{c}</math>
:ここで元のベクトル関数との外積をとると
:<math>\boldsymbol{f}(x)\times\boldsymbol{f}'(x)=\{f(x)\boldsymbol{c}\}\times\{f'(x)\boldsymbol{c}\}=f(x)f'(x) (\boldsymbol{c}\times\boldsymbol{c})=f(x)f'(x)\boldsymbol{0}=\boldsymbol{0}</math>
:逆に、
:<math>\boldsymbol{f}(x)\times\boldsymbol{f}'(x)=\boldsymbol{0}</math>とすると一次従属なので
:<math>\boldsymbol{f}'(x)=g(x)\boldsymbol{f}(x)</math>という微分方程式が成り立つ。
:各成分ごとに微分方程式を解くと、
::これは変数分離型微分方程式なので第i成分は
::<math>\frac{df_i}{dx}=g(x)f_i(x)</math>
::<math>\int \frac{df_i}{f_i(x)}=\int g(x)dx</math>
::<math>G'(x)=g(x), C_i</math>を積分定数として<math>\log|f_i(x)|=G(x)+C_i</math>
::<math>C_i=\pm e^{C_i}</math>と改めておくと<math>f_i(x)=C_i e^{G(x)}</math>
:よって
:<math>\boldsymbol{f}(x)=\sum_i f_i(x) \boldsymbol{e}_i = \sum_i C_i e^{G(x)} \boldsymbol{e}_i = e^{G(x)} \sum_i C_i \boldsymbol{e}_i</math>
:ここで<math>f(x)=e^{G(x)}, \boldsymbol{c}=\sum_i C_i \boldsymbol{e}_i</math>と置くと
:<math>\boldsymbol{f}(x) = f(x) \boldsymbol{c}</math>となり、方向は変数に依らず一定であることが判る//
よって、以下が成り立つ。
{{定理|(平行条件の定理)}}
<math>\boldsymbol{c},\boldsymbol{f}(x)\neq\boldsymbol{0}</math>として
:<math>\boldsymbol{f}(x)=f(x)\boldsymbol{c} \iff \boldsymbol{f}(x) \times \boldsymbol{f}'(x) = \boldsymbol{0}</math>
{{定理終わり}}
ベクトル解析では三次元空間の場合を考えることが多いため上では外積を用いて証明したが、外積は3項ベクトル(または7項ベクトル)にしか定義されないのであった。
一般次元では外積に代わって次の関係式を用いる。
:<math>|\boldsymbol{f}(x)\cdot\boldsymbol{f}'(x)|=\|\boldsymbol{f}(x)\|\|\boldsymbol{f}'(x)\|</math>
これはCS不等式の等号成立の場合である。
実際、<math>\boldsymbol{f}(x)\cdot\boldsymbol{f}'(x)=\|\boldsymbol{f}(x)\|\|\boldsymbol{f}'(x)\|\cos\{\theta(x)\}</math>より等号成立の必要十分条件は
:<math>\cos\{\theta(x)\}=\pm1\iff\theta(x) \equiv 0 \,(\mathrm{mod}\pi)</math>
であり、2ベクトル<math>\boldsymbol{f}(x), \boldsymbol{f}'(x)</math>は平行とわかる。<br/>
平行ということは一次従属ということなので先程のように変数分離形微分方程式を解くことで3次元と同じ結果を得る。//
補足として、力学への応用を考える。
:速さの二乗<math>\|\boldsymbol{v}(t)\|^2</math>を時間微分すると
:<math>\frac{d}{dt}\|\boldsymbol{v}(t)\|^2=\frac{d}{dt}(\boldsymbol{v}(t)\cdot\boldsymbol{v}(t))=\frac{d\boldsymbol{v}(t)}{dt}\cdot\boldsymbol{v}(t)+\boldsymbol{v}(t)\cdot\frac{d\boldsymbol{v}(t)}{dt}=2(\boldsymbol{v}(t)\cdot\boldsymbol{a}(t))</math>
:よって等速運動の条件<math>\|\boldsymbol{v}(t)\|=\mathrm{const}.</math>は直交条件の定理から<math>\boldsymbol{v}(t)\perp\boldsymbol{a}(t)</math>に同値である。
:これを力学的に解釈すると、「加速度ベクトルは速度ベクトル方向に仕事をしないから速度ベクトルの大きさを変えずに向きだけを変える」となる。
:平面上で等速円運動を考えると円運動条件から<math>\boldsymbol{r}(t)\perp\boldsymbol{v}(t)</math>、等速条件から<math>\boldsymbol{v}(t)\perp\boldsymbol{a}(t)</math>なので<math>\boldsymbol{r}(t) /\!/ \boldsymbol{a}(t)</math>が出てくる。
:円運動条件<math>\|\boldsymbol{r}(t)\|^2=r^2</math>を一階微分すると
::<math>2\boldsymbol{r}(t)\cdot\boldsymbol{r}'(t)=0</math>
:もう一度微分して
::<math>2(\boldsymbol{r}(t)\cdot\boldsymbol{r}''(t)+\boldsymbol{r}'(t)\cdot\boldsymbol{r}'(t))=0</math>
:則ち
::<math>\boldsymbol{r}(t)\cdot\boldsymbol{a}(t)+\boldsymbol{v}(t)\cdot\boldsymbol{v}(t)=0</math>
:位置ベクトルと加速度ベクトルが一次従属なので<math>\boldsymbol{a}(t)=\lambda\boldsymbol{r}(t)</math>であり、等速条件より<math>\|\boldsymbol{v}(t)\|=v</math>なので
::<math>\lambda r^2 + v^2 = 0</math>
::<math>\therefore \lambda = -\frac{v^2}{r^2}<0</math>
:則ち<math>\boldsymbol{r}(t)</math>と<math>\boldsymbol{a}(t)</math>は逆向きであり、円運動の中心は<math>\boldsymbol{r}(t)</math>の始点なので<math>\boldsymbol{a}(t)</math>は常に円運動の中心を向く'''向心加速度'''であることが証明された。//
なお、3次元以上では「<math>\boldsymbol{a}\perp\boldsymbol{b}\land\boldsymbol{b}\perp\boldsymbol{c}\implies\boldsymbol{a}/\!/\boldsymbol{c}</math>」が一般には成り立たないのでこの議論を成立させるには追加の条件が必要である。
<math>\boldsymbol{f}(x)</math>の不定積分は、各<math>f_i(x)</math>の原始関数を並べたベクトルを<math>\boldsymbol{F}(x)</math>として
:<math>\int \boldsymbol{f}(x) dx = \boldsymbol{F}(x)+\boldsymbol{C}</math>(<math>\boldsymbol{C}</math>は各積分定数を並べたベクトル)
と表される。
また、定積分は
:<math>\int^b_a \boldsymbol{f}(x) dx=\boldsymbol{F}(b)-\boldsymbol{F}(a)</math>
と表される。
1変数ベクトル関数の積分について、以下が成り立つ(不定積分表記だが定積分に就ても同様)。
#定数倍の原始関数:<math>\int \{k\boldsymbol{a}(x)\} dx = k\int\boldsymbol{a}(x)dx</math>
#和・差の原始関数:<math>\int \{\boldsymbol{a}(x)\pm\boldsymbol{b}(x)\}dx=\int\boldsymbol{a}(x)dx\pm\int\boldsymbol{b}(x)dx</math>
#内積の原始関数<math>\int \{\boldsymbol{k}\cdot\boldsymbol{a}(x)\}dx=\boldsymbol{k} \cdot \left( \int \boldsymbol{a}(x) dx \right)</math>
#外積の原始関数<math>\int \{\boldsymbol{k}\times\boldsymbol{a}(x)\}dx=\boldsymbol{k} \times \left( \int \boldsymbol{a}(x) dx \right)</math>
#スカラー倍の部分積分:<math>\int f(x)\boldsymbol{a}'(x)dx= f(x)\boldsymbol{a}(x)-\int f'(x)\boldsymbol{a}(x) dx \iff \int f'(x)\boldsymbol{a}(x)dx= f(x)\boldsymbol{a}(x)-\int f(x)\boldsymbol{a}'(x) dx</math>
#内積の部分積分:<math>\int \{ \boldsymbol{a}(x)\cdot\boldsymbol{b}'(x) \}dx = \boldsymbol{a}(x)\cdot\boldsymbol{b}(x) - \int \{\boldsymbol{a}'(x)\cdot\boldsymbol{b}(x)\}dx</math>
#外積の部分積分:<math>\int \{ \boldsymbol{a}(x)\times\boldsymbol{b}'(x) \}dx = \boldsymbol{a}(x)\times\boldsymbol{b}(x) - \int \{\boldsymbol{a}'(x)\times\boldsymbol{b}(x)\}dx</math>
#置換積分:<math>u=f(x)</math>として<math>\int \boldsymbol{a}'\{f(x)\}f'(x) dx = \int \boldsymbol{a}(u)du</math>
平行条件の定理の証明でベクトル関数の微分方程式を解いたように、成分毎に考えることで解空間ベクトルを求められる。
:1階線型常微分方程式<math>\boldsymbol{f}'(x)+a(x)\boldsymbol{f}(x)=\boldsymbol{b}(x)</math>の解に就て考える。
:第<math>i</math>成分を考えると<math>f'_i(x)+a(x)f_i(x)=b_i(x)</math>という1階線型常微分方程式を得るので、
:両辺に積分因子<math>\mu(x)=\exp\left(\int a(x) dx\right)</math>を掛けることで
:<math>f_i(x)=\frac{1}{\mu(x)} \left\{ \int \mu(x) b_i(x) dx + C_i \right\}</math>を得る。
:よって一般解は
:<math>\boldsymbol{f}(x) = \sum_i \frac{1}{\mu(x)} \left\{ \int \mu(x) b_i(x) dx + C_i \right\} \boldsymbol{e}_i=\frac{1}{\mu(x)}\left\{ \int \mu(x) \boldsymbol{b}(x) dx + \boldsymbol{C} \right\}</math>
ベクトル関数は必ずしもここで扱った<math>\boldsymbol{f}: \mathbb{R}\to\mathbb{R}^n</math>のみを指さない。
例えば、ベクトル変数 <math>\boldsymbol{x}= \sum_i g_i (x) \boldsymbol{e}_i</math>に対して
:<math>\boldsymbol{h}(\boldsymbol{x})=\sum_i (h_i \circ g_i) (x) \boldsymbol{e}_i</math>
と定義されるような関数<math>\boldsymbol{h}:\mathbb{R}^m \to \mathbb{R}^m</math>もベクトル関数である。
また、始域と終域の次元が異なる<math>\boldsymbol{i}: \mathbb{R}^m \to \mathbb{R}^n \, (m, n\neq1)</math>のようなベクトル関数も考えられる。
一般に、始域が<math>\mathbb{R}^n (n\neq1)</math>であっても終域が<math>\mathbb{R}</math>である関数はベクトル関数に対して'''スカラー関数'''(scalar function)と呼ばれる。スカラー関数は入力ベクトルを「変数の組」と見れば通常の多変数関数に一致する。
この節で述べた理論は、多くは一般のベクトル関数に対しても成り立つ。但し、後述のヤコビ行列のような拡張を必要とするものもある。
また、多変数ベクトル関数<math>\boldsymbol{f}(x_1, x_2,\cdots,x_n)</math>を考えたとき、多変数微積分の理論は一変数微積分と同様にしてベクトル関数にもそのまま拡張される。
===ベクトル場・スカラー場===
写像<math>\boldsymbol{a}: \mathbb{R}^m \to \mathbb{R}^n</math>を'''ベクトル場'''(vector field)という。
実際には<math>m=n</math>の場合を考えることが多い。
写像<math>\varphi: \mathbb{R}^n \to \mathbb{R}</math>を'''スカラー場'''(scalar field)という。
それぞれ上で述べたベクトル関数・スカラー関数に対応する。
もう少し具体的に述べると、空間の領域<math>V</math>が与えられたときその各点にスカラーまたはベクトルを割り当てたものが場である。要するに、<math>p\in V</math>とすると
:スカラー場:<math>\varphi=\varphi(p)</math>
:ベクトル場:<math>\boldsymbol{a}=\boldsymbol{a}(p)</math>
のように場は「点を入力とする<sup>※</sup>関数」である。
<small>※なお、ベクトル場を図示するときは「出力されたベクトルの'''始点は原点でなく入力された点'''」であることに注意が必要である。出力ベクトルの成分表示は「入力点を基準に据えたときの位置ベクトル」なので原点から目盛を数えることに意味はない。</small>
ここで<math>V</math>に何かしらの座標が設定されていれば、その座標系の変数の組をベクトルと見做すことで場を「通常のスカラー関数・ベクトル関数」として扱えるのである。
則ち、「滑らかな場」という概念は「滑らかな関数」として定義することができる。より具体的に言うと、スカラー場・ベクトル場が'''滑らか'''であるとは対応するスカラー関数・ベクトル関数が<math>C^\infty</math>級であることである。但し、滑らかさは任意の座標変換で保たれるわけではないことに注意が必要である(後述の座標変換テンソル及びその逆行列の全ての成分関数が滑らかである必要がある)。
ここで、二変数関数の極値を思い返してみる。
<math>z=f(x, y)</math>が<math>(a, b)</math>で極大であるとは<math>\begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix}\neq\begin{pmatrix} a \\ b \end{pmatrix}</math>として
:<math>\exist \delta>0, \forall {\scriptstyle\left(\begin{array}{c} x \\[-6pt] y \end{array}\right)} \in \mathbb{R}^2, {\scriptstyle\left\| \left(\begin{array}{c} x \\[-6pt] y \end{array}\right) - \left(\begin{array}{c} a \\[-6pt] b \end{array}\right) \right\|} < \delta \implies f(x, y) \leq f(a, b)</math>
という定義だった。
<math>z=f(x, y)</math>は曲面を表すが、これを<math>z</math>軸正方向から<math>xy</math>平面に射影するとその陰が<math>(x, y)</math>の動く範囲となるのであった。
ここで<math>\boldsymbol{x}:=\begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix}, \boldsymbol{\alpha}:=\begin{pmatrix} a \\ b \end{pmatrix}</math>とすると<math>z=f(x, y)</math>はスカラー場<math>z=\phi(\boldsymbol{x})</math>と解釈することができ、更に条件法の前件は<math>\boldsymbol{\alpha}</math>の<math>\delta</math>-開球(二次元なので開円板)である。
なので、極大値の定義式をベクトル解析的に解釈すると「<math>xy</math>平面の各点に<math>z</math>の値を割り当てた数分布に於いて、開円板<math>B_\delta(\boldsymbol{\alpha})</math>内部に於ける<math>z</math>の最大値が<math>\phi(\boldsymbol{\alpha})</math>となるような正数<math>\delta</math>が存在する」ということである。
ベクトル場の例としては、電場・磁場・重力場などが挙げられる。
スカラー場の例としては、電位分布・温度分布・圧力分布などが挙げられる。
例えば、ベクトル場<math>\boldsymbol{f}=(x, 0, 0)</math>は、<math>\mathbb{R}^3</math>内の平面<math>x=k</math>上の任意点に、その点を始点とするベクトル<math>\begin{pmatrix} k \\ 0 \\ 0 \end{pmatrix}</math>が存在する状態を表す。
ベクトル場の和は、出力ベクトルの型が同じならばベクトル場の成分の和をとったものに等しい。
例えば、<math>\boldsymbol{f}(x, y, z)=(y, z, x), \boldsymbol{g}(x, y, z)=(z, x, y)</math>について
:<math>(\boldsymbol{f}+\boldsymbol{g})(x, y, z)=(y, z, x)+(z, x, y)=(y+z, z+x, x+y)</math>である。
これは、ベクトル場の加法の定義が
:<math>\forall p \in V, (\boldsymbol{f}+\boldsymbol{g})(p):=\boldsymbol{f}(p)+\boldsymbol{g}(p)</math>
となっていて且つ<math>V</math>に座標を入れればベクトル関数の加法則をそのまま適用できるためである(入力点が異なるとき、場同士は足すことができない)。
曲線<math>\{\boldsymbol{x}\in\mathbb{R}^2 \mid \varphi(\boldsymbol{x})=\mathrm{const}.\}</math>を'''等高線'''(等高曲線)、曲面<math>\{\boldsymbol{x}\in\mathbb{R}^3 \mid \varphi(\boldsymbol{x})=\mathrm{const}.\}</math>を'''等位面'''(等位曲面)という。これらの詳細は後述する。
==曲線論・曲面論==
===曲線===
<math>xy</math>平面上の曲線は<math>y=f(x) (x\in[a, b])</math>という陽関数表示で扱うことが多かった。しかし、これだと自分自身と交わる('''自己交叉'''する)曲線や<math>x=x_0</math>に対して<math>f(x_0)</math>の値が複数存在する(<math>f</math>が'''多価関数''')場合に不都合が生じる。
例えば円を陽関数表示しようとすると
:<math>x^2+y^2=r^2</math>を<math>y</math>に就いて解いて
:<math>y=\pm\sqrt{r^2-x^2}</math>
則ち
:<math>y=\begin{cases} \sqrt{r^2-x^2} & (y\geq0) \\ -\sqrt{r^2-x^2} & (y<0) \end{cases}</math>
という多価関数が必要になる。
これだと端点の振舞を一々調べる必要があって曲線の連続性や接線の議論が煩雑になってしまう。
しかし、先程も述べたように曲線の媒介変数表示はベクトル関数として見れるのであった。
:<math>\boldsymbol{r}(\theta) = r\begin{pmatrix} \cos\theta \\ \sin\theta \end{pmatrix}</math>(再掲)
こうすると一変数連続ベクトル関数によって曲線を表すことが可能である。物理的に捉えると「質点の運動の軌跡を原点からの位置ベクトルの時間変化で表す」ということである。
一般に、<math>\boldsymbol{r}\in\mathbb{R}^n, t \in I</math>としてベクトル方程式<math>\boldsymbol{r}=\boldsymbol{r}(t)</math>の解集合<math>\{\boldsymbol{r}(t) \mid t \in I \}</math>は<math>n</math>次元空間内の曲線<math>C</math>を表す。これを<math>C</math>の'''ベクトル表示'''という。
ベクトル表示は成分表示に直せば<math>\boldsymbol{r}(t)=\sum_i r_i(t)\boldsymbol{e}_i</math>となる。これは媒介変数表示<math>\begin{cases} x_1&=&r_1(t) \\ x_2&=&r_2(t) \\ &\,\,\vdots& \\ x_n&=&r_n(t) \end{cases}</math>をベクトル表記したものに一致する。
例えば、<math>\boldsymbol{r}(t)=\begin{pmatrix} a\cos t \\ a\sin t \\ bt \end{pmatrix}</math>は'''常螺旋'''(弦巻線)のベクトル表示である。
パラメータが増加するときの点の移動方向を曲線の'''正の向き'''と定める。曲線の'''負の向き'''はパラメータが減少するときの点の移動方向である。このとき、パラメータで'''向き付け'''された曲線という表現もなされる。曲線<math>C</math>に対し、同じパラメータを用いた逆向きの曲線を<math>-C</math>と表す。ベクトル表示では<math>C:\boldsymbol{r}=\boldsymbol{r}(t)</math>に対して<math>-C:\boldsymbol{r}=\boldsymbol{r}(-t)</math>ということである。
パラメータに関する変数変換<math>u=\phi(t)</math>を考える。但し、<math>\phi</math>は広義単調関数とする<sup>※</sup>。このとき、<math>\frac{du}{dt}</math>が非負ならば曲線の向き付けが保たれ、非正ならば向き付けが反転する。<math>\frac{du}{dt}=0</math>となる領域では点の運動が停止する。
<small>※<math>\phi</math>が非単調関数のときは曲線上の点が行ったり来たりすることになるため曲線のパラメータ表示としては扱いづらい。</small>
<math>\boldsymbol{r}(t) \in C^1</math>且つ<math>\boldsymbol{r}'(t)\neq\boldsymbol{0}</math>であるとき、曲線<math>C</math>は'''滑らか'''であるという。
滑らかな曲線<math>C:\boldsymbol{r}=\boldsymbol{r}(t)</math>に対して<math>\boldsymbol{r}'(t)</math>を<math>C</math>の'''速度ベクトル'''という。
<math>\overrightarrow{\mathrm{OP}}=\boldsymbol{r}</math>として点<math>\mathrm{P}(t)</math>に於ける速度ベクトルは<math>\lim_{\Delta t\to0}\frac{\boldsymbol{r}(t+\Delta t)-\boldsymbol{r}(t)}{\Delta t}</math>の極限ベクトルであるが、<math>\boldsymbol{r}(t+\Delta t)-\boldsymbol{r}(t)</math>を図示することで速度ベクトルが曲線<math>C</math>の点<math>\mathrm{P}(t)</math>に於ける接線の方向ベクトルになっていることがわかる。よって、速度ベクトルを'''接線ベクトル'''(接ベクトル)ともいう。
速度ベクトルが非零である曲線を'''正則'''な曲線と呼ぶ。滑らかな曲線は正則曲線である。
なお、一般には陽関数表示が区分的であることとベクトル表示の成分関数が区分的であることに対応はないほか、パラメータの取り方で速度ベクトルが変わるので「曲線の幾何学的滑らかさ」と「ベクトル表示した関数の解析学的滑らかさ」は一致するとは限らない。
正則な曲線に対して曲線長('''弧長''')を考える。
二次元曲線の場合は数学Ⅲで既に扱った。
:<math>L=\int_a^b \sqrt{\left(\frac{dx}{dt}\right)^2+\left(\frac{dy}{dt}\right)^2}dt</math>
実は、これを一般の<math>n</math>次元にそのまま拡張することができる。
{{定理|(弧長公式)}}
曲線<math>C:\boldsymbol{r}=\boldsymbol{r}(t)</math>の点<math>\mathrm{P}(a)</math>から点<math>\mathrm{P}(b)</math>までの長さ(<math>a<b</math>)は
:<math>L=\int_a^b \left\| \frac{d\boldsymbol{r}}{dt} \right\|dt</math>
で与えられる。
{{定理終わり}}
*証明
:<math>a=t_0, b=t_m</math>として閉区間<math>[a, b]</math>を各<math>t_i</math>で等分割する。このとき小区間<math>[t_{k-1}, t_k]</math>の長さは<math>\Delta t=\frac{b-a}{m}</math>。
:<math>C</math>の点<math>\mathrm{P}(a)</math>から点<math>\mathrm{P}(b)</math>までの長さ<math>L</math>は折れ線の長さ<math>\overline{\mathrm{P}(t_{k-1})\mathrm{P}(t_k)}</math>の総和で近似される。
:ここで<math>\overrightarrow{\mathrm{OP}}=\boldsymbol{r}(t)</math>より
::<math>L_m=\sum_{k=1}^m \| \boldsymbol{r}(t_k)-\boldsymbol{r}(t_{k-1}) \| = \sum_{k=1}^m \left\| \frac{\boldsymbol{r}(t_{k-1}+\Delta t)-\boldsymbol{r}(t_{k-1})}{\Delta t-0} \right\|(\Delta t-0)</math>
:分割を限りなく細かくする極限をとると<math>m\to\infty</math>より<math>\Delta t\to0</math>なので
::<math>\lim_{m\to\infty} L_m = \sum_{k=1}^\infty \left\| \frac{d\boldsymbol{r}}{dt}(t_{k-1}) \right\|dt</math>
:区分求積法より最後の無限級数は収束して
:<math>L=\int_a^b \left\| \frac{d\boldsymbol{r}}{dt} \right\|dt</math>//
ここで、<math>dl:=\left\| \frac{d\boldsymbol{r}}{dt} \right\|dt</math>という微小量を'''線素'''と呼ぶ。
1を線素に関して積分したパラメータ<math>s:=\int_0^t dl</math>を'''弧長パラメータ'''(標準パラメータ)という。弧長パラメータは曲線上で「基準点からの符号付き距離」を表す。
曲線の弧長パラメータによるベクトル表示('''弧長パラメータ表示''')を考える。<math>s=\int_0^t \left\| \frac{d\boldsymbol{r}}{dt} \right\|dt</math>で正則よりノルムは正。則ち<math>\frac{ds}{dt}>0</math>より<math>s=\phi(t)</math>は狭義単調増加なので、逆関数<math>t=\phi^{-1}(s)</math>を考えることができる。よって、<math>\boldsymbol{r}=\boldsymbol{r}(t)</math>に<math>t=\phi^{-1}(s)</math>を代入した<math>\boldsymbol{r}=\boldsymbol{r}(\phi^{-1}(s))</math>が弧長パラメータ表示である。これを<math>\boldsymbol{r}=\boldsymbol{r}(s)</math>と略記してしまうことも多いが、'''一般には元の<math>\boldsymbol{r}(t)</math>と成分関数が異なる'''ことに注意。
通常の媒介変数によるベクトル表示は「座標系が予め与えられた状況」での表示であるが、弧長パラメータは座標系を取り替えたとしても表す曲線そのものが変わらなければ不変である。よって、「座標系に依存しない表記」として弧長パラメータ表示は多く利用されている。
また、弧長パラメータ表示で連鎖律を適用すると
:<math>\frac{d\boldsymbol{r}(s)}{ds}=\frac{d\boldsymbol{r}(t)}{dt}\cdot\frac{dt}{ds}=\frac{d\boldsymbol{r}(t)}{dt}\cdot\frac{1}{\frac{ds}{dt}}</math>
ここで微分積分学の基本定理より
:<math>\frac{ds}{dt}=\frac{d}{dt} \int_0^t \left\| \frac{d\boldsymbol{r}}{dt} \right\|dt = \left\| \frac{d\boldsymbol{r}}{dt} \right\|</math>
なので
:<math>\frac{d\boldsymbol{r}(s)}{ds}=\frac{\frac{d\boldsymbol{r}(t)}{dt}}{\left\| \frac{d\boldsymbol{r}}{dt} \right\|}</math>
であり、自身のノルムで割ってるので恒等的に<math>\left\| \frac{d\boldsymbol{r}}{ds} \right\|=1</math>である。
よって、弧長パラメータ表示された曲線の接ベクトルは常に単位ベクトルである。
弧長パラメータ表示された曲線で線素を考えると<math>s=\int_0^s \left\| \frac{d\boldsymbol{r}(s)}{ds} \right\| ds = \int_0^s dl</math>だが、常に<math>\left\| \frac{d\boldsymbol{r}}{ds} \right\|=1</math>なので<math>ds=dl</math>であり、弧長パラメータの微小量は線素に等しい(弧長パラメータそのものが1の線素に関する積分なので当たり前ではある)。
<math>\boldsymbol{e}_\dagger(s)=\frac{d\boldsymbol{r}}{ds}</math>と置くと、点<math>\mathrm{P}(s_0)</math>に於ける接線の方程式は
:<math>\boldsymbol{p}-\boldsymbol{r}(s_0)=\boldsymbol{e}_\dagger(s_0) (s-s_0)</math>
と表される。
ここで<math>\boldsymbol{r}(s)</math>の中心<math>s_0</math>に於けるテイラー展開は
:<math>\boldsymbol{r}(s)=\sum_{i=0}^\infty \frac{(s-s_0)^i}{i!} \frac{d^i}{ds^i}\boldsymbol{r}(s_0) </math>
であり、「接線が一次近似に対応する」という構造はベクトル関数でも維持されることが判った。
領域<math>\boldsymbol{D}</math>上の滑らかなベクトル場<math>\boldsymbol{a}</math>について、微分方程式<math>\frac{d\boldsymbol{r}}{dt}=\boldsymbol{a}(\boldsymbol{r}(t)) (\boldsymbol{r} \in \boldsymbol{D})</math>で与えられる曲線<math>\boldsymbol{r}=\boldsymbol{r}(t)</math>を<math>\boldsymbol{a}</math>の'''流線'''(streamline)という(入力点を位置ベクトルと同一視していることに注意)。流線の接線ベクトルは元のベクトル場そのものになるので、ベクトルの相等から得る方程式<math>\frac{dx_1}{a_1}=\frac{dx_2}{a_2}=\cdots=\frac{dx_n}{a_n}</math>を'''流線方程式'''という。
例えば、<math>\boldsymbol{f}(x, y)=(y, x)</math>の流線は、
:定義から<math>\frac{dx}{dt}=y, \frac{dy}{dt}=x</math>
:合成関数の微分公式から<math>\frac{dy}{dx}=\frac{\frac{dy}{dt}}{\frac{dx}{dt}}=\frac{x}{y}</math>
:<math>\int y dy=\int xdx</math>
:<math>\frac{1}{2}y^2=\frac{1}{2}x^2+C</math>
:よって双曲線<math>y^2-x^2=2C</math>//
この場合、<math>t</math>に関する2つの微分方程式を組み合わせることで
:<math>\frac{d^2x}{dt^2}=x, \frac{d^2y}{dt^2}=y</math>という二階線型常微分方程式となり、一般解が双曲線関数を用いて<math>\begin{cases} x=C_1\cosh t+C_2\sinh t \\ y=C_1\sinh t+C_2\cosh t \end{cases}</math>であることが容易に判る。<br>なお、流線方程式を用いても<math>\frac{dx}{y}=\frac{dy}{x}</math>から<math>\frac{dy}{dx}=\frac{x}{y}</math>が出てくる。
「流線の接線ベクトルが元のベクトル場になる」とはつまり、「接線が常にベクトル場と平行になるような曲線」を考えているということである。滑らかなベクトル場を考えているためそのような曲線は常に存在する。流線は「ベクトル場の流れを繋げていった曲線」と考えることができるので、「流れを簡潔に図示」するのにちょうどよい。
有名な例として、電気力線・磁力線はそれぞれ電場<math>\boldsymbol{E}</math>・磁束密度<math>\boldsymbol{B}</math>の流線である。
流線の微分方程式を弧長パラメータ表示を用いて変形する。
:<math>\frac{d\boldsymbol{r}}{dt}=\boldsymbol{a}(\boldsymbol{r}(t))</math>の左辺に就いて
:<math>\frac{d\boldsymbol{r}}{ds}\cdot\frac{ds}{dt}=\frac{d\boldsymbol{r}}{ds}\cdot \|\boldsymbol{r}'(\phi^{-1}(s))\|</math>
元の方程式の両辺でノルムをとると
:<math>\left\|\frac{d\boldsymbol{r}}{dt}\right\|=\|\boldsymbol{a}(\boldsymbol{r}(t))\|</math>
代入して
:<math>\frac{d\boldsymbol{r}}{ds}\cdot\|\boldsymbol{r}'(\phi^{-1}(s))\|=\frac{d\boldsymbol{r}}{ds}\cdot\|\boldsymbol{a}(\boldsymbol{r}(t))\|</math>
:<math>\therefore \frac{d\boldsymbol{r}}{ds} = \boldsymbol{e}_{\boldsymbol{a}(\boldsymbol{r}(\phi^{-1}(s)))}</math>
ここから、流線の形状はノルムには関係なく方向場のみで決まることがわかる。
===フレネ標搆===
ここでは、三次元空間に於ける正則曲線について考える。
<math>C:\boldsymbol{r}=\boldsymbol{r}(s)</math>上の点<math>\mathrm{P}(s)</math>に於ける単位接線ベクトルを<math>\boldsymbol{t}</math>とおく。
先程の議論より<math>\boldsymbol{t}(s)=\frac{d\boldsymbol{r}(s)}{ds}</math>であり、<math>\left\| \frac{d\boldsymbol{r}(s)}{ds} \right\|=1 (=\mathrm{const}.)</math>なので直交条件の定理から<math>\boldsymbol{t}\cdot\frac{d\boldsymbol{t}}{ds}=0</math>、則ち<math>\boldsymbol{t} \perp \frac{d\boldsymbol{t}(s)}{ds}</math>である。この<math>\frac{d\boldsymbol{t}(s)}{ds}</math>を'''主法線ベクトル'''という。
主法線ベクトルを<math>\boldsymbol{n}</math>とおくとき、<math>\boldsymbol{b}=\boldsymbol{t}\times\boldsymbol{n}</math>を'''従法線ベクトル'''(陪法線ベクトル)という。ここで先程の結果より<math>\boldsymbol{t}\perp\boldsymbol{n}</math>であって<math>\boldsymbol{b}</math>の定義より<math>\boldsymbol{t}\perp\boldsymbol{b}, \boldsymbol{n}\perp\boldsymbol{b}</math>なので、この3ベクトルの組を正規化した<math>\{\boldsymbol{e}_t, \boldsymbol{e}_n, \boldsymbol{e}_b \}</math>は<math>\mathbb{R}^3</math>の正規直交基底である。これを<math>\mathbb{R}^3</math>の'''フレネ標搆'''という。外積の結果よりフレネ標搆は<math>\boldsymbol{e}_t, \boldsymbol{e}_n, \boldsymbol{e}_b</math>の順に右手系をなす。なお、接線ベクトル・主法線ベクトル・従法線ベクトルは全て曲線の位置ベクトル<math>\boldsymbol{r}(s)</math>を入力したベクトル場として捉えることができる。
<math>\{\boldsymbol{e}_n, \boldsymbol{e}_b \}</math>の張る平面を'''法平面'''、<math>\{\boldsymbol{e}_t, \boldsymbol{e}_b \}</math>の張る平面を'''展直平面'''、<math>\{\boldsymbol{e}_t, \boldsymbol{e}_n \}</math>の張る平面を'''接触平面'''という。
即ち、法平面・展直平面・接触平面は<math>tnb</math>空間の点<math>\mathrm{P}(s)</math>を原点とした基準面である。
平面の方程式の法線ベクトルに接ベクトル・主法線ベクトル・従法線ベクトルをそれぞれ代入することで
:法平面の方程式:<math>(\boldsymbol{p}-\boldsymbol{r}(s))\cdot\boldsymbol{t}(s)=0</math>
:展直平面の方程式:<math>(\boldsymbol{p}-\boldsymbol{r}(s))\cdot\boldsymbol{n}(s)=0</math>
:接触平面の方程式:<math>(\boldsymbol{p}-\boldsymbol{r}(s))\cdot\boldsymbol{b}(s)=0</math>
とわかる。
<math>\|\boldsymbol{t}\|=1</math>は常に成り立つが<math>\|\boldsymbol{n}\|, \|\boldsymbol{b}\|</math>は<math>1</math>とは限らない。そこで、主法線ベクトルの大きさ<math>\kappa(s)=\|\boldsymbol{n}(s)\|</math>を曲線<math>C</math>の'''曲率'''と呼ぶことにする。なお、<math>\|\boldsymbol{b}\|=\| \boldsymbol{t} \| \|\boldsymbol{n}\|\sin\frac{\pi}{2}</math>より<math>\|\boldsymbol{b}\|=\|\boldsymbol{n}\|=\kappa</math>が成り立つ。
主法線ベクトルの定義に立ち戻ると<math>\boldsymbol{n}(s)=\frac{d\boldsymbol{t}(s)}{ds}</math>であった。つまり、主法線ベクトルは接ベクトルの速度ベクトルなので「弧長パラメータを変化させたときに接ベクトルがどのくらい変化するか」という指標である。接ベクトルの変化の大小と<math>\kappa</math>の大小は対応し、接ベクトルの大小はカーブの緩急に対応することから<math>\kappa</math>の大小とカーブの緩急も対応する。これが「曲率」という名前の由来である。
なお、<math>\kappa(s)=0</math>の場合は<math>\boldsymbol{n}(s)=\boldsymbol{0}</math>なので<math>\boldsymbol{t}(s)=\boldsymbol{k}</math>(定ベクトル)であり、<math>\boldsymbol{r}(s)=s\boldsymbol{k}</math>という直線の場合に対応することがわかる。
単位接ベクトルの<math>s</math>を微分変数とする導関数(<math>s</math>-導関数)は主法線ベクトルだったが、単位主法線ベクトル・単位従法線ベクトルの<math>s</math>-導関数がどのように表されるか見ていく。
ここで、フレネ標搆が<math>\mathbb{R}^3</math>の正規直交基底であることから、<math>\frac{d\boldsymbol{e}_n}{ds}, \frac{d\boldsymbol{e}_b}{ds}</math>ともにフレネ標搆の一次結合で表現できると予想される。
単位従法線ベクトルに就いて
:<math>\frac{d\boldsymbol{e}_b}{ds}=\frac{d}{ds}(\boldsymbol{e}_t\times\boldsymbol{e}_n)=\frac{d\boldsymbol{e}_t}{ds}\times\boldsymbol{e}_n+\boldsymbol{e}_t\times\frac{d\boldsymbol{e}_n}{ds}</math>
<math>\boldsymbol{t}=\boldsymbol{e}_t</math>より<math>\frac{d\boldsymbol{e}_t}{ds}=\boldsymbol{n}=\kappa\boldsymbol{e}_n</math>則ち<math>\frac{d\boldsymbol{e}_t}{ds}\times\boldsymbol{e}_n=\kappa\boldsymbol{e}_n\times\boldsymbol{e}_n=\boldsymbol{0}</math>なので
:<math>\frac{d\boldsymbol{e}_b}{ds}=\boldsymbol{e}_t\times\frac{d\boldsymbol{e}_n}{ds}</math>
<math>\|\boldsymbol{e}_n\|=1</math>から直交条件の定理より<math>\boldsymbol{e}_n\perp\frac{d\boldsymbol{e}_n}{ds}</math>なので
:<math>\boldsymbol{e}_n\times\frac{d\boldsymbol{e}_b}{ds}=\boldsymbol{e}_n\times(\boldsymbol{e}_t\times\frac{d\boldsymbol{e}_n}{ds})=\left(\boldsymbol{e}_n\cdot\frac{d\boldsymbol{e}_n}{ds}\right)-(\boldsymbol{e}_n\cdot\boldsymbol{e}_t)\frac{d\boldsymbol{e}_n}{ds}=\boldsymbol{0}</math>
外積が零ベクトルなので<math>\frac{d\boldsymbol{e}_b}{ds} /\!\!/ \boldsymbol{e}_n</math>であり、一次従属より
:<math>\frac{d\boldsymbol{e}_b}{ds}=-\tau\boldsymbol{e}_n</math>
となるスカラー関数<math>\tau(s)</math>が存在する。
この<math>\tau(s)</math>を曲線<math>C</math>の'''捩率'''と呼ぶ。捩率は接触平面の回転(捩れ)の率を表す。
<math>\tau=0</math>ならば<math>\frac{d\boldsymbol{e}_b}{ds}=0</math>より<math>\boldsymbol{e}_b</math>方向は変化しないので曲線は接触平面と平行な平面上に拘束される。即ち、<math>C</math>は平面曲線である。
単位主法線ベクトルに就いて
:<math>\frac{d\boldsymbol{e}_n}{ds}=\frac{d}{ds}(\boldsymbol{e}_b\times\boldsymbol{e}_t)=\frac{d\boldsymbol{e}_b}{ds}\times\boldsymbol{e}_t+\boldsymbol{e}_b\times\frac{d\boldsymbol{e}_t}{ds}</math>
ここで<math>\frac{d\boldsymbol{e}_t}{ds}=\kappa\boldsymbol{e}_n, \frac{d\boldsymbol{e}_b}{ds}=-\tau\boldsymbol{e}_n</math>を代入して
:<math>\frac{d\boldsymbol{e}_n}{ds}=-\tau\boldsymbol{e}_n\times\boldsymbol{e}_t+\boldsymbol{e}_b\times\kappa\boldsymbol{e}_n=\tau\boldsymbol{e}_b-\kappa\boldsymbol{e}_t</math>
よって、フレネ標搆の弧長パラメータを微分変数とする導関数を以下のようにフレネ標搆の一次結合で表すことができた。
:<math>\begin{cases} \frac{d\boldsymbol{e}_t}{ds}=\kappa\boldsymbol{e}_n \\ \frac{d\boldsymbol{e}_n}{ds} = \tau\boldsymbol{e}_b-\kappa\boldsymbol{e}_t \\ \frac{d\boldsymbol{e}_b}{ds}=-\tau\boldsymbol{e}_n \end{cases}</math>
これを一次変換で表記すると以下のようになる。但し、厳密にはベクトルを成分としている部分は列ではなく行に配置するのが正しいことに注意。
{{定理|(フレネ=セレーの公式)}}
:<math>\frac{d}{ds}\begin{pmatrix} \boldsymbol{e}_t \\ \boldsymbol{e}_n \\ \boldsymbol{e}_b \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 0 & \kappa & 0 \\ -\kappa & 0 & \tau \\ 0 & -\tau & 0 \end{pmatrix} \begin{pmatrix} \boldsymbol{e}_t \\ \boldsymbol{e}_n \\ \boldsymbol{e}_b \end{pmatrix}</math>
{{定理終わり}}
表現行列が反対称行列(歪対称行列)になっているが、これは「直交変換を一次近似すると反対称変換になる」という無限小回転の理論に対応する。
捩率を求めるときは「基底分解の係数は対応する基底ベクトルとの内積に等しい」という性質を利用すれば<math>\boldsymbol{e}_b\cdot\frac{d\boldsymbol{e}_n}{ds}=\tau</math>となるので左辺を計算すればよい。
例えば、円<math>\begin{cases} x^2+y^2=a^2 \\ z=b \end{cases}</math>の曲率と捩率は以下のように求まる。
:媒介変数表示して<math>\boldsymbol{r}(t)=\begin{pmatrix} a\cos t \\ a\sin t \\ b \end{pmatrix}</math>
:接線ベクトルは<math>\frac{d\boldsymbol{r}(t)}{dt}=\begin{pmatrix} -a\sin t \\ a\cos t \\ 0 \end{pmatrix}</math>
:弧長パラメータ<math>s</math>は<math>s=\int^t_0 \left\|\frac{d\boldsymbol{r}(t)}{dt}\right\|dt = \int_0^t a dt = at</math>
:<math>\therefore t=\frac{s}{a}</math>
:<math>\boldsymbol{r}(s)=\begin{pmatrix} a\cos\frac{s}{a} \\ a\sin\frac{s}{a} \\ b \end{pmatrix}</math>
:<math>\boldsymbol{t}=\frac{d\boldsymbol{r}(s)}{ds}=\begin{pmatrix} -\sin\frac{s}{a} \\ \cos\frac{s}{a} \\ 0 \end{pmatrix}</math>
:<math>\boldsymbol{n}=\frac{d\boldsymbol{t}(s)}{ds}=\frac{1}{a}\begin{pmatrix} -\cos\frac{s}{a} \\ -\sin\frac{s}{a} \\ 0 \end{pmatrix}</math>
:<math>\kappa=\|\boldsymbol{n}\|=\frac{1}{a}</math>
:<math>\boldsymbol{b}=\boldsymbol{t}\times\boldsymbol{n} = \begin{pmatrix} 0 \\ 0 \\ \frac{1}{a} \end{pmatrix}</math>
:<math>\boldsymbol{e}_n=\begin{pmatrix} -\cos\frac{s}{a} \\ -\sin\frac{s}{a} \\ 0 \end{pmatrix}</math>
:<math>\frac{d\boldsymbol{e}_n}{ds}=\frac{1}{a}\begin{pmatrix} \sin\frac{s}{a} \\ -\cos\frac{s}{a} \\ 0 \end{pmatrix}</math>
:<math>\boldsymbol{e}_b = \begin{pmatrix} 0 \\ 0 \\ 1 \end{pmatrix}</math>
:<math>\tau = \begin{pmatrix} 0 \\ 0 \\ 1 \end{pmatrix}\cdot\frac{1}{a}\begin{pmatrix} \sin\frac{s}{a} \\ -\cos\frac{s}{a} \\ 0 \end{pmatrix}=0</math>//
フレネ・セレーの公式は[[線型代数学続論/行列値関数|行列関数]]に関する一階常微分方程式である。そのため、微分方程式の基本定理(ピカール=リンデレーエフの定理)により初期条件(<math>s=0</math>に於けるフレネ標搆)を与えれば、滑らかな曲率関数・捩率関数の組<math>(\kappa, \tau)</math>を定めることで微分方程式の解として一般の<math>s</math>に対するフレネ標搆を一意に得る。このとき、曲線<math>C:\boldsymbol{r}=\boldsymbol{r}(s)</math>は接ベクトルを出発点を選んで積分することで決定される。
従って、次の定理が成り立つ<!-- 厳密証明はhttps://sshmathgeom.private.coocan.jp/diffgeom/curvetheorem.htmlを参照 -->。
{{定理|(曲線の基本定理)}}
開区間<math>(a,b)</math>上の実数<math>s</math>を変数とする2つの滑らかな関数<math>\kappa(s),\tau(s)</math>を与える。但し、<math>\kappa(s)</math>は正とする。<br/>
このとき、<math>\kappa(s)</math>を曲率、<math>\tau(s)</math>を捩率、<math>s</math>を弧長パラメータとする三次元空間上の曲線<math>C</math>が剛体運動を除いて一意に定まる。
{{定理終わり}}
剛体運動とは「曲線の形を変えない」運動のことである(平行移動・回転など)。
<math>\kappa(s), \tau(s)</math>の定める曲線族を一般に<math>\mathcal{C}[\kappa, \tau]</math>と書く。
例えば、円を含む螺旋は<math>c_1, c_2=\mathrm{const}.</math>として<math>\mathcal{C}[c_1, c_2]</math>と書ける。
<math>R=\frac{1}{\kappa}</math>を'''曲率半径'''という。曲率半径は曲線の特定のカーブにおける曲がり具合の急さを表す指標であり、カーブを近似する真円('''密着円''')の半径でもある。高速道路の標識で<math>R=\circ\circ \mathrm{m}</math>は、そのカーブの曲率半径を示している。道路設計では、快適なドライブの為曲率半径がなるべく大きくなるように工夫を凝らしている。
ここで<math>\boldsymbol{r}(s)</math>の中心<math>s_0</math>に於けるテイラー展開は
:<math>\boldsymbol{r}(s)=\sum_{i=0}^\infty \frac{(s-s_0)^i}{i!} \frac{d^i}{ds^i}\boldsymbol{r}(s_0) </math>(再掲)
だったが、二次近似式(三次以降を切り捨てた式)を考えると
:<math>\boldsymbol{r}(s) \fallingdotseq \boldsymbol{r}(s_0)+\frac{d\boldsymbol{r}(s_0)}{ds}(s-s_0) + \frac{1}{2}\frac{d^2\boldsymbol{r}(s_0)}{ds^2}(s-s_0)^2 </math>
フレネ標搆を用いて書き直すと
:<math>\boldsymbol{r}(s) \fallingdotseq \boldsymbol{r}(s_0)+\boldsymbol{e}_t(s-s_0) + \frac{1}{2}\kappa(s_0)\boldsymbol{e}_n(s-s_0)^2 </math>
二次近似とは「曲線を円弧で近似する」ことだったので曲率<math>\kappa(s_0)</math>が近似に用いる円弧と関係ある量であることが予想される。<br/>
接触平面で密着円<math> \| \boldsymbol{r} - (\boldsymbol{r}(s_0)+R\boldsymbol{e}_n) \| = R </math>を考える。接触平面を<math>xy</math>平面と考えると円の方程式は
:<math>x^2+(y-R)^2=R^2</math>
:<math>y=R-\sqrt{R^2-x^2}</math>
テイラー展開して
:<math>y=\frac{x^2}{2R}+O(x^4)</math>
二次の項を比較すると
:<math>\frac{x^2}{2R}=\frac{(s-s_0)^2}{2}\kappa</math>
よって
:<math>R=\frac{1}{\kappa}</math>
と定義するのは妥当である。
なお、先ほど求めた円の曲率から、真円に関して「曲率半径=半径」であることが判る。
フレネ・セレーの公式で最初の二行二列のみを考えると<math>\mathbb{R}^2</math>内の曲線に対するフレネ・セレーの公式を得る。一般に<math>\mathbb{R}^n</math>上の曲線に対し、今回の議論と同様にして接ベクトル・主法線ベクトル・曲率を定義することができる。但し、三次元空間と異なって同じ曲率に対して異なる曲線を与えることができる(主法線ベクトルが接触平面内で接ベクトルに対して左右どちらを向くかがそのままでは定まらないため)。なお、4次元以上であっても平面拘束曲線ならば捩率は0であって従法線ベクトルは零ベクトルに定まる。
===単純閉曲線===
パラメータ区間を<math>I=[a, b]</math>とする。
このとき、曲線の端点はそれぞれ<math>\mathrm{P}(a), \mathrm{P}(b)</math>である。
端点が一致する、つまり<math>\mathrm{P}(a)=\mathrm{P}(b)</math>である連続曲線を'''閉曲線'''という。
自己交叉しない、つまり<math>\forall t_1, t_2 \in (a, b), t_1 \neq t_2 \iff \mathrm{P}(t_1)\neq\mathrm{P}(t_2)</math>となる閉曲線を'''単純閉曲線'''(ジョルダン曲線)という。閉曲線でない曲線に就いて「自己交叉しない」という条件は「曲線を表すベクトル関数が単射」と同値であるので、端点のみ単射性を外してやれば単純閉曲線の定義を得る。
幾何学的直観から、平面に拘束された単純閉曲線はその平面を単純閉曲線で囲まれた'''内部'''とそうでない'''外部'''の二つの領域に分割することが予想できる。
このことは以下の定理によって保証される。
{{定理|(ジョルダンの曲線定理)}}
平面<math>\Pi\subset\mathbb{R}^n</math>内の任意の単純閉曲線<math>\gamma</math>に対し、有界領域<math>I</math>・非有界領域<math>O</math>の組であって<math>\Pi\setminus\gamma=I \sqcup O</math>且つ<math>\partial{I}=\partial{O}=\gamma</math>であるものが唯一つに定まる。
{{定理終わり}}
この<math>I, O</math>をそれぞれ内部・外部と定義する。証明は[[位相幾何学]]で行う。なお、「<math>\partial{I}=\partial{O}=\gamma</math>」を態々明示しているのは、滑らかでない単純閉曲線に対しては「<math>\Pi\setminus\gamma=I \sqcup O \implies \partial{I}=\partial{O}=\gamma</math>」が自明でないためである。
正則単純閉曲線に対して「曲線の向き」の幾何学的意味を考える。
ジョルダンの曲線定理より単純閉曲線<math>\gamma:\boldsymbol{r}=\boldsymbol{r}(s) \quad(\boldsymbol{r}\in \Pi)</math>は平面<math>\Pi</math>を内部<math>I</math>と外部<math>O</math>に分割する。平面拘束曲線なので<math>\forall{s}, \tau(s)=0</math>であり、従法線ベクトルは零ベクトル且つ接触平面が常に<math>\Pi</math>に一致する。
主法線ベクトル<math>\boldsymbol{n}(s)</math>が接ベクトル<math>\boldsymbol{t}(s)</math>に対して左側を向いているとすると、<math>\boldsymbol{r}(s_0)+\varepsilon\boldsymbol{n}(s_0) \quad(\varepsilon>0)</math>が点<math>\mathrm{P}(s_0)</math>に於ける<math>\gamma</math>の進行方向左側にある点である。
ここで、<math>\mathrm{P}(s_0)</math>に於ける<math>\varepsilon</math>-開球<math>B_\varepsilon(s_0)</math>を考えると、平面<math>\Pi</math>上では<math>\boldsymbol{r}(s_0)+\varepsilon\boldsymbol{n}(s_0)</math>が左側の領域、<math>\boldsymbol{r}(s_0)+\varepsilon\boldsymbol{n}(s_0)</math>が右側の領域に入る。
<math>s=s_0</math>を動かすと各点で進行方向左は<math>I, O</math>のいずれかであり、<math>\gamma</math>の正則性と<math>I, O</math>の連結性から「<math>I, O</math>のどちらが左側であるかは曲線全体で変わらない」ことが言える。
ここで円の場合を考える。<math>\Pi</math>に直交座標<math>u, v</math>を入れると向心加速度の議論から「加速度ベクトル=主法線ベクトルは円の中心を向く」ので、「円の正の向きは円の内部を左手に見る進行方向」である。
任意の正則単純閉曲線<math>\gamma</math>に対して自己交叉を起こさないまま円へ連続変形する可逆写像が存在し、その変形に於いて「左側」と「<math>I, O</math>」の対応は変化しない。則ち、円で確認された「正の向きは囲まれた内部を左手に見る向き」は任意の正則単純閉曲線で成り立つ。
つまり、単純閉曲線の正の向きは点を動かしたときに'''自身の囲む領域の内部を左手に見る向き'''である。負の向きは左手に外部を見る向きである。
集合<math>A</math>に含まれる任意の2点に対してそれらを端点とする滑らかな曲線<math>C</math>をとれるとき、<math>A</math>は'''弧状連結'''であるという。
弧状連結集合<math>S</math>内の任意の閉曲線<math>\gamma</math>に対して1点に退化するような連続変形が可能なとき、<math>S</math>は'''単連結'''であるという。単連結でない集合は'''多重連結'''であるという。
平面<math>\Pi\subset\mathbb{R}^n</math>に含まれる単連結集合<math>S</math>に対し、<math>\hat{\Pi}:=\Pi\cup\{\infty\}</math>とすると集合<math>\hat{\Pi}\setminus{S}</math>は連結である。逆も成り立つ。
なお、「<math>A</math>が連結集合である」ことは「補集合<math>\overline{A}</math>が非連結集合である」ことを意味しない。そのため「単連結な連結集合」も考えられ、特に「単連結な領域」はこの先頻繁に登場する。
集合<math>A</math>に含まれる任意の2点を結んだ線分が<math>A</math>に包含されるとき、<math>A</math>は'''凸型'''であるという。凸型集合でない集合は'''凹型'''であるという。
集合<math>A</math>内の1点を固定してそこから<math>A</math>内任意点へ引いた線分が<math>A</math>に包含されるとき、<math>A</math>は'''星状'''(星型)であるという。このとき固定した点を'''星の中心'''という。凸型集合は全て星状集合である。
単純閉曲線<math>\gamma</math>を境界とする内部<math>I</math>に関して<math>I\cup\gamma</math>が凸型集合であるとき、<math>\gamma</math>を'''卵形線'''(凸単純閉曲線・オーヴァル)という。
曲線<math>C</math>の曲率関数<math>\kappa(s)</math>が<math>C^3</math>級であるとき、<math>\kappa'(s_0)=0</math>を満たす点<math>\mathrm{P}(s_0)</math>を<math>C</math>の'''頂点'''という。
例えば、標準楕円<math>\frac{x^2}{a^2}+\frac{y^2}{b^2}=1</math>の頂点は4点<math>(\pm{a},0),(0,\pm{b})</math>である。このことは、<math>\mathbb{R}^2</math>上曲線<math>C:\boldsymbol{r}=x(t)\boldsymbol{e}_x(t)+y(t)\boldsymbol{e}_y(t)</math>に対する曲率の公式<math>\kappa(t)=\frac{\left|\frac{dx}{dt}\frac{d^2y}{dt^2}-\frac{dy}{dt}\frac{d^2x}{dt^2}\right|}{\left\{\left(\frac{dx}{dt}\right)^2+\left(\frac{dy}{dt}\right)^2\right\}^\frac{3}{2}}</math>と<math>\frac{ds}{dt}>0</math>を用いて確かめられる。
実は、この事実は楕円に限らないことが以下の定理で示される。
{{定理|(ムコパディヤーヤの定理・四頂点定理)}}
<math>\mathbb{R}^2</math>上の滑らかな卵形線は少なくとも4つの頂点を持つ。
{{定理終わり}}
*証明
:滑らかな卵形線<math>C:\boldsymbol{r}=\boldsymbol{r}(s)\quad(s\in[a, b])</math>に対して曲率関数<math>\kappa(s)</math>は滑らかであり、<math>\kappa\in C^3</math>を満たす。
:卵形線は単純閉曲線なので<math>\mathrm{P}(a)=\mathrm{P(b)}</math>であり、<math>\kappa(a)=\kappa(b)</math>。
:曲率関数が定数関数のときは<math>\kappa\in C^\infty</math>且つ常に<math>\kappa'(s)=0</math>なので曲線を構成するすべての点が頂点であり、明らかに定理を満たす。
:曲率関数が定数関数でないとする。
:ワイエルシュトラスの極値定理より<math>\kappa(s)</math>は<math>s\in[a, b]</math>のどこかで最大値・最小値をとり、その点で<math>\kappa'(s)=0</math>を満たす。
:従って少なくとも2つの頂点を持つ。
:ここで、頂点がこの2つのみと仮定する。
:曲率が最大値・最小値をとる点をそれぞれ<math>\mathrm{M, N}</math>と置く。
:線分<math>\mathrm{MN}</math>を含む直線を<math>x</math>軸とし、その垂直方向に<math>y</math>軸をとる。
:<math>s</math>が増加すると曲線上の点が<math>\mathrm{N}\to\mathrm{M}</math>のように動くとき、
:<math>\kappa(s)</math>は最小値から最大値に向かって増大し、他に頂点がないので狭義単調増加である。
:同様に、<math>\mathrm{M}\to\mathrm{N}</math>の向きでは<math>\kappa(s)</math>は狭義単調減少である。
:従って、<math>\kappa'(s)y(s)\neq0</math>の正の側だけ考えれば良い。
:<math>y(a)=y(b)=0</math>に注意すると部分積分して
:<math>0<\int_a^b \kappa'(s)y(s)ds=-\int_a^b \kappa(s)y'(s)ds</math>
:主法線ベクトル<math>\boldsymbol{n}(s)= \begin{pmatrix} \xi_1(s) \\ \xi_2(s) \end{pmatrix}</math>を考えると二次元版フレネ=セレーの公式から<math>\frac{d\boldsymbol{n}}{ds}=-\kappa\frac{d\boldsymbol{r}}{ds}</math>なので
:<math>\xi'_2(s)=-\kappa(s)y'(s)</math>
:よって
:<math>-\int_a^b \kappa(s)y'(s)ds=\int_a^b \xi_2(s)ds = \left[\xi_2(s)\right]_a^b=0</math>
:なので矛盾した不等式<math>0<0</math>を得る。
:則ち、<math>\mathrm{M, N}</math>と異なる点で<math>\kappa'(s)=0</math>を満たす点が少なくとも一つ存在する。
:そのような点を<math>\mathrm{L}</math>と置く。
:<math>\mathrm{L}</math>が<math>\mathrm{N}\to\mathrm{M}</math>という経路の途中にあるとする。
:このとき、<math>\mathrm{L}</math>以外に<math>\kappa'(s)=0</math>を満たす点が存在すると「<math>\mathrm{M}\to\mathrm{N}</math>という経路の途中にそのような点が無い」という最初の仮定に反するので
:<math>\mathrm{M, N, L}</math>以外では<math>\kappa'(s)y(s)>0</math>である。
:同様に部分積分を行うことで矛盾した不等式を得、<math>\mathrm{M, N, L}</math>と異なる点で<math>\kappa'(s)=0</math>を満たす点が少なくとも一つ存在することが判る。
:この時点で「<math>\mathrm{M, N}</math>間の二つの経路のいずれにも<math>\kappa'(s)=0</math>を満たす点が存在しない」という仮定が否定されたのでこれ以上背理法を適用することはできない。
:よって、頂点個数の最小値は<math>4</math>である。//
最小値4をとる卵形線が実際に存在することは楕円の例で確かめた。
この定理は「卵形線」を「(正則)単純閉曲線」に取り換えてもそのまま成り立つことが知られている。一般の閉曲線でこの定理を成り立たせるには追加の条件が必要となる。
先程も述べたように、接ベクトルと単位主法線ベクトルは2次元以上の空間内部にある曲線ならば定義することができる。そして、<math>\boldsymbol{t}\cdot\boldsymbol{n}=0</math>も必ず成り立つ。よって、<math>\boldsymbol{e}_t\cdot\boldsymbol{e}_n=0</math>の両辺を<math>s</math>で微分して
:<math>\frac{d\boldsymbol{e}_t}{ds}\cdot\boldsymbol{e}_n+\boldsymbol{e}_t\cdot\frac{d\boldsymbol{e}_n}{ds}=0</math>
:<math>\therefore \boldsymbol{e}_t\cdot\frac{d\boldsymbol{e}_n}{ds}=-\boldsymbol{n}\cdot\boldsymbol{e}_n=-\kappa</math>
ここで「基底分解に於ける成分はその基底との内積に等しい」という性質から、<br/>
一般次元に於いても「<math>\frac{d\boldsymbol{e}_n}{ds}</math>の接線方向成分は<math>-\kappa(s)</math>」であることが判る。
ここで<math>C^2</math>級曲線の位置ベクトル<math>\boldsymbol{r}(s)</math>に対して単位主法線<math>\boldsymbol{e}_n(s)</math>を対応させることを考える。この対応を'''ガウス表示'''という。
<math>\boldsymbol{e}_n(s)</math>を二次までテイラー展開すると<math>\Delta s>0</math>を微小量として
:<math>\boldsymbol{e}_n(s+\Delta s)=\boldsymbol{e}_n(s)+\frac{d\boldsymbol{e}_n(s)}{ds}\Delta s + O(\Delta s^2)</math>
ここで<math>\boldsymbol{e}_t\cdot\frac{d\boldsymbol{e}_n}{ds}=-\kappa</math>より、<math>s</math>を<math>\Delta s</math>だけ動かしたときの接線方向の速さは<math>|\kappa(s)|\Delta s</math>である(<math>\kappa(s)</math>が正で正の向き、負で負の向きに動くとする)。
閉曲線に対してはガウス表示によって法線方向の変化を完全に捉えられるので、<math>\kappa(s)</math>を微小量<math>\Delta s</math>に関して積分した<math>\int_a^b \kappa(s)ds</math>を考えてみる。
ガウス表示では曲線を単位主法線ベクトルの描く単位円として考えることができる。閉曲線では<math>\mathrm{P}(a)=\mathrm{P}(b)</math>より明らかに<math>\boldsymbol{e}_n(a)=\boldsymbol{e}_n(b)</math>であり、閉曲線が一周する間にベクトル<math>\boldsymbol{e}_n(s)</math>はこの単位円を<math>m(\in\mathbb{Z})</math>周する<sup>※</sup>。
<small>※物理的には「円そのものが動いても円周上の質点は『この円をどっちの方向に何周したか』という情報しか持たない」ので、単位円が動くことは議論にあまり関係ない</small>
弧度法より単位円を<math>m</math>周する符号付き道のりは<math>2\pi{m}</math>であり、ガウス表示より<math>\int_a^b \kappa(s)ds=2\pi{m}</math>。
従って、<math>m=\frac{1}{2\pi}\int_a^b \kappa(s)ds</math>
この<math>m</math>を閉曲線の'''回転数'''と呼ぶことにする。
曲率が負の場合には積分値が途中で相殺されてしまうので、絶対値を付けて積分した
:<math>\mu:=\int_a^b |\kappa(s)|ds</math>
という量を考えることにする。
これを閉曲線の'''全曲率'''と呼ぶ。
全曲率に対して以下の定理が成り立つ。
{{定理|(フェンヒェルの定理)}}
滑らかな閉曲線の全曲率は<math>\mu\geq2\pi</math>を満たす。等号成立の場合は卵形線である。
{{定理終わり}}
証明は省略する。
===曲面===
多変数解析で既に扱った、三次元空間に於ける曲面の陽関数表示<math>z=f(x, y)</math>を'''モンジュ表示'''という。<math>f(x, y, z)=\mathrm{const}.</math>と陰関数表示された曲面は陰関数定理が成り立つ範囲でモンジュ表示に直すことができる。
一次式で陰関数表示される曲面を'''一次曲面'''という。平面の方程式より、一次曲面は全て平面である。
二次式で陰関数表示される曲面を'''二次曲面'''という。
以下、三次元空間に於ける二次曲面の例を挙げる。各係数は非退化条件を満たすとする。なお、「直線に平行な平面」は「直線を法線とする平面に垂直な平面」を意味することに注意。
*'''球面'''(sphere)
:高校数学で扱ったように、点<math>(a, b, c)</math>を中心とする半径<math>r</math>の球面の方程式は<math>(x-a)^2+(y-b)^2+(z-c)^2=r^2</math>である。この球面上の点の位置ベクトルは<math>\boldsymbol{r}=\begin{pmatrix} x \\ y \\ z \end{pmatrix}</math>なので、球面が満たすベクトル方程式は一般に<math>\|\boldsymbol{r}-\boldsymbol{a}\|=\mathrm{const}.</math>である。これは円のベクトル方程式の次元を上げたものである。
*'''楕円面'''(ellipsoid)
:楕円の方程式を拡張した方程式<math>\frac{x^2}{a^2}+\frac{y^2}{b^2}+\frac{z^2}{c^2}=1</math>が表す曲面である。<math>xyz</math>空間の基本面で切った断面は全て楕円となる。
*'''楕円拋物面'''(elliptic paraboloid)
:楕円の平面拘束条件を外した方程式<math>z=\frac{x^2}{a^2}+\frac{y^2}{b^2}</math>が表す曲面である。<math>z</math>軸に垂直な平面で切った断面は楕円、平行な平面で切った断面は拋物線となる。
*'''双曲拋物面'''(hyperbolic paraboloid)
:双曲線の平面拘束条件を外した方程式<math>z=\frac{x^2}{a^2}-\frac{y^2}{b^2}</math>が表す曲面である。<math>z</math>軸に垂直な平面で切った断面は双曲線、平行な平面で切った断面は拋物線となる。また、原点は鞍点である。
*'''一葉双曲面'''(hyperboloid of one sheet)
:楕円面の方程式の一つの項の符号を変えた<math>\frac{x^2}{a^2}+\frac{y^2}{b^2}-\frac{z^2}{c^2}=1</math>の表す曲面。<math>z</math>軸に垂直な平面で切った断面は楕円、平行な平面で切った断面は双曲線となる。
*'''二葉双曲面'''(hyperboloid of two sheet)
:楕円面の方程式の二つの項の符号を変えた<math>\frac{x^2}{a^2}-\frac{y^2}{b^2}-\frac{z^2}{c^2}=1</math>の表す曲面。断面の分類は一葉双曲面と同じだが、<math>m^2<c^2</math>のときは平面<math>z=m</math>と交わらないため「二葉」と名付けられている。
*'''錐面'''(conical surface)
:方程式<math>\frac{z^2}{c^2}=\frac{x^2}{a^2}+\frac{y^2}{b^2}</math>の表す曲面。<math>xy</math>平面との交点は原点のみであり、<math>yz</math>平面・<math>zx</math>平面で切った断面は直線である。
閉区間<math>I\subset\mathbb{R}</math>上の一変数ベクトル関数<math>\boldsymbol{r}(t)</math>を用いたベクトル方程式<math>\boldsymbol{r}=\boldsymbol{r}(t) \quad(t\in I)</math>の解集合は次元に依らず曲線を表した。
同様に、領域<sup>※</sup><math>D\subset\mathbb{R}^2</math>上の二変数ベクトル関数<math>\boldsymbol{r}(t, u)</math>を用いたベクトル方程式<math>\boldsymbol{r}=\boldsymbol{r}(t, u) \quad({\scriptstyle\left(\begin{array}{c} t \\[-6pt] u \end{array}\right)}\in D)</math>の解集合は次元に依らず曲面を表すと考えられる。
厳密には[[線型代数学/基底と次元|階数・退化次数の定理]]<!-- 次元定理・線型写像の基本定理 -->などを用いてこのことを確かめられる。
<small>※ここでいう「領域」は冒頭で厳密に定義した「領域」であることに注意。</small>
曲線と同様に、曲面の'''パラメータ表示'''と'''ベクトル表示'''は次のように定義される。
:パラメータ表示:<math>\begin{cases} x_1&=&r_1(t, u) \\ x_2&=&r_2(t, u) \\ &\,\,\vdots& \\ x_n&=&r_n(t, u) \end{cases}</math>
:ベクトル表示:<math>\left\{\boldsymbol{r}(t, u) \,\bigg|\, {\scriptstyle\left(\begin{array}{c} t \\[-6pt] u \end{array}\right)} \in D \right\}</math>
また、<math>S:\boldsymbol{r}=\boldsymbol{r}(t, u)</math>のようにも表す。
例えば、<math>k>l>0</math>として<math>\boldsymbol{r}(t, u)=\begin{pmatrix} (k+l\cos u)\cos t \\ (k+l\cos u)\sin t \\ l\sin u \end{pmatrix} \quad(D=\left\{ \begin{pmatrix} t \\ u \end{pmatrix} \bigg| \begin{array}{c} 0 \leq t \leq 2\pi \\ 0 \leq u \leq 2\pi \end{array} \right\})</math>は'''トーラス'''のベクトル表示である。
<math>\mathbb{R}^3</math>上の平面の方程式は高校数学に於いて<math>\begin{pmatrix} a \\ b \\ c \end{pmatrix}\neq\boldsymbol{0}</math>として一次式<math>ax+by+cz+d=0</math>と表せることを学んだ。
これのベクトル方程式を求めてみよう。
:①<math>c=0</math>のとき
::平面の方程式は<math>\begin{cases} ax+by+d=0 \\ z=\mathrm{const}. \end{cases}</math>
::[1]<math>b=0</math>のとき
:::平面の方程式は<math>\begin{cases} ax+d=0 \\ y=\mathrm{const}. \\ z=\mathrm{const}. \end{cases}</math>
:::<math>\begin{pmatrix} a \\ b \\ c \end{pmatrix}\neq\boldsymbol{0}</math>より<math>a\neq0</math>
:::<math>y=t, z=u</math>と置換すると
:::<math>\begin{pmatrix} x \\ y \\ z \end{pmatrix}=\begin{pmatrix} -\frac{d}{a} \\ t \\ u \end{pmatrix}</math>
:::<math>\boldsymbol{r} = t\begin{pmatrix} 0 \\ 1 \\ 0 \end{pmatrix}+u\begin{pmatrix} 0 \\ 0 \\ 1 \end{pmatrix}+\begin{pmatrix} -\frac{d}{a} \\ 0 \\ 0 \end{pmatrix}</math>
::[2]<math>b\neq0</math>のとき
:::<math>x=t, z=u</math>と置換すると
:::<math>\begin{pmatrix} x \\ y \\ z \end{pmatrix}=\begin{pmatrix} t \\ -\frac{a}{b}t-\frac{d}{b} \\ u \end{pmatrix}</math>
:::<math>\boldsymbol{r} = t\begin{pmatrix} 1 \\ -\frac{a}{b} \\ 0 \end{pmatrix}+u\begin{pmatrix} 0 \\ 0 \\ 1 \end{pmatrix}+\begin{pmatrix} 0 \\ -\frac{d}{b} \\ 0 \end{pmatrix}</math>
:②<math>c\neq0</math>のとき
::<math>x=t, y=u</math>と置換すると
::<math>\begin{pmatrix} x \\ y \\ z \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} t \\ u \\ -\frac{a}{c}t-\frac{b}{c}u-\frac{d}{c} \end{pmatrix}</math>
::<math>\boldsymbol{r}=t\begin{pmatrix} 1 \\ 0 \\ -\frac{a}{c} \end{pmatrix}+u\begin{pmatrix} 0 \\ 1 \\ -\frac{b}{c} \end{pmatrix} + \begin{pmatrix} 0 \\ 0 \\ -\frac{d}{c} \end{pmatrix}</math>
なお、ここから平面のベクトル方程式が一般に<math>\boldsymbol{r}=\boldsymbol{a}+t\boldsymbol{b}+u\boldsymbol{c}</math>という「直線のベクトル方程式を拡張した形」であることがわかる。
<math>\boldsymbol{r}(t, u)\in C^1</math>且つ<math>\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}, \frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}\neq\boldsymbol{0}</math>である曲面を'''滑らか'''な曲面という。
曲面<math>S:\boldsymbol{r}=\boldsymbol{r}(t, u)</math>とその上の点<math>\mathrm{P}_0=(a, b)</math>に対し、曲線<math>\boldsymbol{r}=\boldsymbol{r}(a, u), \boldsymbol{r}=\boldsymbol{r}(t, b)</math>をそれぞれ点<math>\mathrm{P}_0</math>に於ける'''<math>t</math>曲線'''・'''<math>u</math>曲線'''という。
<math>\boldsymbol{r}(t, u)\in C^1</math>であるとき、偏導関数の定義から
:<math>\frac{\partial}{\partial{u}}\boldsymbol{r}(a, u)=\frac{d}{du}\boldsymbol{r}(a, u)</math>
:<math>\frac{\partial}{\partial{t}}\boldsymbol{r}(t, b)=\frac{d}{dt}\boldsymbol{r}(t, b)</math>
ここで<math>a, b</math>をそれぞれ<math>t</math>軸・<math>u</math>軸上で動かすことで<math>t</math>曲線・<math>u</math>曲線の接ベクトルがそれぞれ<math>\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}, \frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}</math>であると判る。これらを曲面のパラメータ方向の'''接ベクトル'''という。
これらの接ベクトルが平行でないとき、曲面<math>S</math>上の任意の点<math>\mathrm{P}</math>に対して<math>\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}, \frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}</math>の張る平面が定まる。これを曲面<math>S</math>の点<math>\mathrm{P}</math>に於ける'''接平面'''という。曲線の接線は一次元ベクトル空間<math>\left\{ \xi\frac{d\boldsymbol{r}}{dt} \bigg| \xi \in\mathbb{R} \right\}</math>で表されたが、曲面の接平面は二次元ベクトル空間<math>\left\{ \xi\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}+\eta\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}} \bigg| \xi, \eta \in \mathbb{R} \right\}</math>で表される。このような接ベクトル全体が張るベクトル空間を一般に'''接空間'''と呼ぶ。
接ベクトルの組が一次独立である曲面を'''正則'''な曲面という。滑らかな曲面は正則曲面である。
曲面<math>S</math>の接平面に垂直なベクトルを<math>S</math>の'''法線ベクトル'''という。
三次元空間ならば接平面を張る2ベクトルの外積<math>\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}} \times \frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}</math>で求められる。
モンジュ表示された曲面<math>S:z=f(x, y)</math>に対して接平面の存在性(つまり曲面の正則性)は「二変数関数<math>f</math>の全微分可能」に対応した。ベクトル表示された曲面<math>S:\boldsymbol{r}=\boldsymbol{r}(t, u)</math>に対しては「ベクトル関数<math>\boldsymbol{r}</math>の全微分可能性」だけでは足りず、「ヤコビ行列<math>\frac{\partial{(\boldsymbol{r})}}{\partial{(t, u)}}</math>の階数が2」も要求される。
以下、正則曲面のみ扱う。
<math>\boldsymbol{r}(t, u)</math>の微小変化は全微分で与えられる。
:<math>d\boldsymbol{r}=\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}dt+ \frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}du</math>
則ち、各パラメータを同時に<math>\begin{pmatrix} t \\ u \end{pmatrix}\to\begin{pmatrix} t+dt \\ u+du \end{pmatrix}</math>と単調に動かしたとき、対応する曲面上の点が描く領域は2ベクトル<math>\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}dt, \frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}du</math>の張る微小平行四辺形として近似できる。その微小面積は線型代数の内容から
:<math>\sqrt{ \left\| \frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}dt \right\|^2 \left\| \frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}du \right\|^2 - \left\{ \left(\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}dt\right)\cdot\left(\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}du\right) \right\}^2 }=\sqrt{\left\| \frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}} \right\|^2\left\|\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}\right\|^2 - \left( \frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}\cdot\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}} \right)^2 } dtdu</math>
である。
これを領域<math>D=\mathrm{dom}\,S</math>で重積分してやれば曲面の表面積('''曲面積''')が求まると考えられる。
{{定理|(曲面積)}}
<math>E := \left\| \frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}} \right\|^2,\quad F := \frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}\cdot\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}},\quad G := \left\|\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}\right\|^2</math>とすると、<br>
曲面<math>S:\boldsymbol{r}=\boldsymbol{r}(t, u)</math>の領域<math>D</math>に於ける曲面積は
:<math>S=\iint_D \sqrt{EG-F^2}dtdu</math>
{{定理終わり}}
この<math>E, F, G</math>を<math>S</math>の'''第一基本量'''と呼ぶ。また、<math>dS:=\sqrt{EG-F^2}dtdu</math>を'''面素'''(面積素・面積要素)と呼ぶ。
<math>t, u</math>が共通のパラメータ<math>\theta</math>で媒介変数表示されるとき、曲面は曲線に退化するので線素を考えられる。
具体的には、
:<math>dl=\left\|\frac{d\boldsymbol{r}}{d\theta}\right\|d\theta</math>
より
:<math>\left\|\frac{d\boldsymbol{r}}{d\theta}\right\|^2=\frac{d\boldsymbol{r}}{d\theta}\cdot\frac{d\boldsymbol{r}}{d\theta}</math>
ここで合成関数の常微分公式より
:<math>\frac{d\boldsymbol{r}}{d\theta}=\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}\frac{dt}{d\theta}+ \frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}\frac{du}{d\theta}</math>
なので
:<math>\frac{d\boldsymbol{r}}{d\theta}\cdot\frac{d\boldsymbol{r}}{d\theta}=\left\|\frac{d\boldsymbol{r}}{dt}\right\|^2\left(\frac{dt}{d\theta}\right)^2+2\left(\frac{d\boldsymbol{r}}{dt}\cdot\frac{d\boldsymbol{r}}{du}\right)\frac{dt}{d\theta}\frac{du}{d\theta}+\left\|\frac{d\boldsymbol{r}}{du}\right\|^2\left(\frac{du}{d\theta}\right)^2</math>
:<math>=E\left(\frac{dt}{d\theta}\right)^2+2F\frac{dt}{d\theta}\frac{du}{d\theta}+G\left(\frac{du}{d\theta}\right)^2</math>
よって
:<math>dl=\sqrt{E\left(\frac{dt}{d\theta}\right)^2+2F\frac{dt}{d\theta}\frac{du}{d\theta}+G\left(\frac{du}{d\theta}\right)^2}d\theta=\sqrt{E(dt)^2+2Fdtdu+G(du)^2}</math>
このように、線素は<math>\theta</math>のとり方に依存しない。
そこで、最後の式で右辺を二乗した
:<math>I:=E(dt)^2+2Fdtdu+G(du)^2</math>
を<math>S</math>の'''第一基本形式'''と定める。
第一基本形式は二次形式になっていることが見て取れるので、<math>\boldsymbol{v}:=\begin{pmatrix} dt \\ du \end{pmatrix}, \mathbf{K}:=\begin{pmatrix} E & F \\ F & G \end{pmatrix}</math>とおくと
:<math>I={}^t\!\boldsymbol{v} \mathbf{K} \boldsymbol{v}</math>
と行列表示できる。この<math>\mathbf{K}</math>を'''第一基本行列'''という。
ここで<math>I=dl^2>0</math>なので<math>\mathbf{K}</math>は正定値行列である。
また、<math>\boldsymbol{x}_i=\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}, \boldsymbol{x}_j=\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}</math>と置いて第一基本量の定義を思い返してみると<math>\mathbf{K}_{ij}=\boldsymbol{x}_i \cdot \boldsymbol{x}_j</math>なのでこの行列は接ベクトルに関するグラム行列である。この意味でも、<math>\mathbf{K}</math>は正定値行列である。
また、面素の式で根号の中身が<math>\det\mathbf{K}</math>に等しいことも判る。
則ち、第一基本量が曲面の本質であると予想される。
<math>F=0 \land E=G=\lambda</math>であるとき、<math>\mathbf{K}=\lambda\mathbf{E}_2</math>である。このときのパラメータの組<math>(u, v)</math>を曲面の'''等温座標系'''という。
等温座標系で表示された曲面<math>S</math>に対し、第一基本形式は<math>I=\lambda(dt^2+du^2)</math>と二次形式の標準形となっている。則ち、等温座標系へのパラメータ変換は主軸変換である。
面素を考えると<math>dS=\lambda^2dtdu</math>と非常に単純な形となるほか、曲面上の角度計算が平面の場合と全く同じ式で与えられることも等温座標系の利点である。
曲面<math>S</math>上の各点<math>\mathrm{P}</math>に対して単位法線ベクトル<math>\boldsymbol{n}(\mathrm{P})</math>を考える。ベクトル表示の定義域<math>D</math>でベクトル場<math>\boldsymbol{n}(\mathrm{P})</math>が連続であるとき、<math>S</math>は'''向き付け可能'''であるという。
向き付け不能な曲面の例として<math>\boldsymbol{r}(t, u)=\begin{pmatrix} (u\cos t+2)\sin 2t \\ (u\cos t+2)\cos 2t \\ u\sin t \end{pmatrix} \quad(D=\left\{ \begin{pmatrix} t \\ u \end{pmatrix} \bigg| \begin{array}{c} 0 \leq t \leq \pi \\ -1 \leq u \leq 1 \end{array} \right\})</math>と表される'''メビウスの帯'''が挙げられる。
メビウスの帯が向き付け不能である証明を概説する。
:接ベクトルをそれぞれ求める。簡単のため<math>u=0</math>として考える。単位法線ベクトルは外積を正規化して得るが、向きの取り方で正負の符号が付く。どちらの符号を採用するにしろ<math>\boldsymbol{n}(\boldsymbol{r}(0, 0))\neq\boldsymbol{n}(\boldsymbol{r}(\pi, 0))</math>を得、<math>\boldsymbol{r}(0, 0)=\boldsymbol{r}(\pi, 0)</math>より同じ点に対して異なる法線ベクトルを出力するので<math>\boldsymbol{n}(\mathrm{P})</math>はwell-definedではなく、向き付け可能性の定義を満たさない。//
四次元以上の空間では法線ベクトルの方向を複数とれるため法線ベクトル場は扱いにくい。そこで、法線ベクトルに依らない定義を考えたい。
2つの滑らかな曲面<math>S_1, S_2</math>が以下を満たすとき、
#パラメータ<math>(t_1, u_1), (t_2, u_2)</math>の間に滑らかな全単射<math>\begin{cases}t_2 =\phi(t_1, u_1) \\ u_2=\psi(t_1, u_1) \end{cases}</math>が存在する。
#この変数変換のヤコビ行列<math>\frac{\partial{(\phi, \psi)}}{\partial{(t_1, u_1)}}</math>が正則。
#<math>\boldsymbol{r}_1(t_1, u_1)=\boldsymbol{r}_2(t_2, u_2)</math>
この2つは'''パラメータ変換で同値'''という。
このとき、ヤコビアンが正であるパラメータの組は'''同じ向き'''、負であるパラメータの組は'''逆向き'''であるという。
任意の<math>(t_1, u_1)</math>に対して開近傍<math>U \subset \mathrm{dom}\,S_1</math>をとったとき、どの<math>U</math>上でも<math>\det\frac{\partial{(\phi, \psi)}}{\partial{(t_1, u_1)}}>0</math>を満足するならば<math>S_1</math>は'''向き付け可能'''という。
向き付け可能な曲面の接空間に対して右手系を成すような向きの法線ベクトルを'''外向き法線ベクトル'''と呼ぶ。
外向き法線の向く側を曲面の'''表'''、その反対側を曲面の'''裏'''と定義する。
<math>\partial{S}=\varnothing</math>を満たす正則曲面<math>S</math>を'''閉曲面'''という。ジョルダンの曲線定理を拡張した定理('''ジョルダン・ブラウワーの分離定理''')によって閉曲面が空間を内部・外部に分割することが保証される。内部に面する向きを閉曲面の裏、外部に面する向きを閉曲面の表と定義する。
パラメータ空間の座標軸の向きの組み合わせが<math>xy</math>平面と同じとき、外向き法線で定義される閉曲面の表裏は内部・外部から定義される表裏に一致する。
===回転面===
ここでは三次元空間内の曲面について考える。
高校数学で回転体を扱ったが、領域の回転体の表面である曲面は元の領域の疆界である単純閉曲線を軸に関して回転したものである。そこで、平面上の任意の曲線を回転すると曲面('''回転面''')を得ると考えられる。
簡単な場合として、<math>x\geq0</math>で定義された<math>zx</math>平面上の曲線<math>z=f(x)</math>を<math>y</math>軸に関して回転させた回転面を考える。
:任意の<math>k\in[0,\infty)</math>に関して曲線上の点は<math>\begin{pmatrix} x \\ z \end{pmatrix}=\begin{pmatrix} k \\ f(k)\end{pmatrix}</math>と与えられる。
:領域<math>\left\{ {\scriptstyle\left(\begin{array}{c} x \\[-6pt] z \end{array}\right)} \big| x \leq k \right\}</math>を<math>y</math>軸に関して回転した回転体を平面<math>z=f(k)</math>で切った断面は半径<math>k</math>の閉円盤であり、疆界円周上の点を<math>\begin{pmatrix} x \\ y \\ f(k) \end{pmatrix}</math>とすると<math>k=\sqrt{x^2+y^2}</math>である。
:則ち回転体の疆界である回転面上の点<math>\begin{pmatrix} x \\ y \\ z \end{pmatrix}</math>は方程式<math>z=f(\sqrt{x^2+y^2})</math>を満たし、逆にこの方程式を満たす<math>\begin{pmatrix} x \\ y \\ z \end{pmatrix}</math>は回転面上にある。
纏めると以下のようになる。
{{定理|(回転面の方程式)}}
<math>zx</math>平面上の曲線<math>z=f(x)\quad(x\geq0)</math>を<math>y</math>軸に関して回転させた回転面の方程式は
:<math>z=f(\sqrt{x^2+y^2})</math>
{{定理終わり}}
<math>z</math>軸・<math>x</math>軸に関する回転面の方程式は変数を輪環の順に入れ替えることで得られる。
回転面に対し、元の曲線を'''母線'''という。
母線が直線である回転面は'''円錐'''である。
:<math>z=mx+n\quad(m\neq0,x\geq0)</math>とすれば<math>y</math>軸に関して回転した曲面の方程式は
:<math>z=m\sqrt{x^2+y^2}+n</math>
:<math>z-n = m\sqrt{x^2+y^2}</math>
これを両辺二乗すると
:<math>(z-n)^2=m^2x^2+m^2y^2</math>
であり、錐面の方程式<math>\frac{z^2}{c^2}=\frac{x^2}{a^2}+\frac{y^2}{b^2}</math>を満たしていることがわかる。
回転軸が傾いている場合、<math>xyz</math>空間の回転行列<math>\mathbf{R}</math>を利用することで各軸に関する回転に帰着することもできるが、ここでは曲面のベクトル表示を扱ったのでベクトル方程式で回転を記述することを考えたい。
点<math>\mathrm{O}</math>から<math>\boldsymbol{r}</math>とそれに平行でない単位ベクトル<math>\boldsymbol{e}</math>が伸びており、そのなす角が<math>\theta</math>であるとする。<math>\boldsymbol{r}</math>の終点<math>\mathrm{P}</math>を含み<math>\boldsymbol{e}</math>を法線とする平面を<math>\Pi</math>、<math>\Pi</math>と直線<math>\{k\boldsymbol{e} \mid k>0\}</math>の交点を<math>\mathrm{N}</math>、<math>\mathrm{P}</math>を<math>\Pi</math>内で<math>\mathrm{N}</math>を中心として<math>\phi</math>回転した点を<math>\mathrm{Q}</math>、<math>\mathrm{NQ}</math>から<math>\mathrm{NP}</math>へ降ろした垂足を<math>\mathrm{R}</math>と置く。但し、回転角<math>\phi</math>の正の向きは<math>\boldsymbol{e}</math>を右螺子の進む向きとする方向に定める。
このとき、<math>\boldsymbol{r}</math>を<math>\boldsymbol{e}</math>に関して<math>\phi</math>だけ回転させたベクトル<math>\boldsymbol{r}'</math>は以下のように表される。
{{定理|(ロドリゲスの公式)}}
:<math>\boldsymbol{r}'=\boldsymbol{r}\cos\phi+(\boldsymbol{r}\cdot\boldsymbol{e})\,\mathrm{versin}\,\phi\,\boldsymbol{e}-(\boldsymbol{r}\times\boldsymbol{e})\sin\phi</math>
{{定理終わり}}
*証明
:<math>\boldsymbol{r}'=\overrightarrow{\mathrm{OQ}}=\overrightarrow{\mathrm{ON}}+\overrightarrow{\mathrm{NR}}+\overrightarrow{\mathrm{RQ}}</math>
:<math>\overrightarrow{\mathrm{ON}}</math>は<math>\boldsymbol{r}</math>の<math>\boldsymbol{e}</math>への正射影ベクトルなので
::<math>\overrightarrow{\mathrm{ON}}=\frac{\boldsymbol{r}\cdot\boldsymbol{e}}{\boldsymbol{e}\cdot\boldsymbol{e}}\boldsymbol{e}=(\boldsymbol{r}\cdot\boldsymbol{e})\boldsymbol{e}</math>
:<math>\triangle\mathrm{NQR}</math>を考えると<math>\|\overrightarrow{\mathrm{NQ}}\|=\|\overrightarrow{\mathrm{NP}}\|</math>と<math>\|\overrightarrow{\mathrm{NR}}\|=\|\overrightarrow{\mathrm{NQ}}\|\cos\phi</math>及び<math>\overrightarrow{\mathrm{NR}}/\!\!/\overrightarrow{\mathrm{NP}}</math>より
::<math>\overrightarrow{\mathrm{NR}}=\overrightarrow{\mathrm{NP}}\cos\phi=(\overrightarrow{\mathrm{OP}}-\overrightarrow{\mathrm{ON}})\cos\phi=\{\boldsymbol{r}-(\boldsymbol{r}\cdot\boldsymbol{e})\boldsymbol{e}\}\cos\phi</math>
:<math>\boldsymbol{r}\times\boldsymbol{e}</math>は外積の定義から<math>\overrightarrow{\mathrm{NP}}</math>を<math>\Pi</math>上で<math>-\phi</math>方向に<math>\frac{\pi}{2}</math>だけ回転させたベクトルになるので、
:<math>\boldsymbol{r}\times\boldsymbol{e}/\!\!/\overrightarrow{\mathrm{RQ}}</math>と<math>\|\overrightarrow{\mathrm{RQ}}\|=\|\overrightarrow{\mathrm{NQ}}\|\sin\phi</math>及び<math>\|\overrightarrow{\mathrm{NQ}}\|=\|\overrightarrow{\mathrm{NP}}\|</math>から
::<math>\overrightarrow{\mathrm{RQ}}=-(\boldsymbol{r}\times\boldsymbol{e})\sin\phi</math>
:これらを足して
::<math>\boldsymbol{r}'=(\boldsymbol{r}\cdot\boldsymbol{e})\boldsymbol{e}+\{\boldsymbol{r}-(\boldsymbol{r}\cdot\boldsymbol{e})\boldsymbol{e}\}\cos\phi-(\boldsymbol{r}\times\boldsymbol{e})\sin\phi</math>
::<math>=\boldsymbol{r}\cos\phi+(\boldsymbol{r}\cdot\boldsymbol{e})(1-\cos\phi)\boldsymbol{e}-(\boldsymbol{r}\times\boldsymbol{e})\sin\phi</math>
::<math>=\boldsymbol{r}\cos\phi+(\boldsymbol{r}\cdot\boldsymbol{e})\,\mathrm{versin}\,\phi\,\boldsymbol{e}-(\boldsymbol{r}\times\boldsymbol{e})\sin\phi</math>//
この証明ではベクトルの平行移動を用いているのでアフィン空間を前提とするが、この式そのものはアフィン構造に依存してないので一般のベクトル空間で成り立つ。
また、回転後のベクトルは母線のパラメータ<math>t</math>に加えて回転角<math>\phi</math>もパラメータとして有するので、<math>\boldsymbol{r}'(t, \phi)</math>という二変数ベクトル関数となって曲面を表すことになる。則ち、「曲線を回転すれば曲面を得る」という直感は正しい。
ロドリゲスの公式の応用として、例えば円錐のベクトル方程式が<math>\frac{(\boldsymbol{r}-\boldsymbol{p})\cdot\boldsymbol{a}}{\|\boldsymbol{r}-\boldsymbol{p}\|}=\mathrm{const}.</math>であることが導ける。
:円錐頂点の位置ベクトルを<math>\boldsymbol{p}</math>、軸ベクトルを<math>\boldsymbol{a}</math>、<math>\boldsymbol{a}</math>と角度<math>\alpha</math>をなす単位ベクトルを<math>\boldsymbol{v}</math>とする。このとき直線<math>\{k\boldsymbol{v}\mid k>0\}</math>が円錐の母線であり、母線と交わる向きである軸の法線ベクトルを<math>\boldsymbol{b}</math>とおく。
:ロドリゲスの公式より<math>\boldsymbol{v}</math>を<math>\boldsymbol{a}</math>の周りに<math>\theta</math>だけ回転させたベクトル<math>\boldsymbol{v}'</math>は
::<math>\boldsymbol{v}'=\boldsymbol{v}\cos\theta+(\boldsymbol{v}\cdot\boldsymbol{e}_a)\,\mathrm{versin}\,\theta\,\boldsymbol{e}_a-(\boldsymbol{v}\times\boldsymbol{e}_a)\sin\theta</math>
:ここで<math>\boldsymbol{v}</math>を<math>\boldsymbol{a}, \boldsymbol{b}</math>方向に基底分解すると
::<math>\boldsymbol{v}=\cos\alpha\,\boldsymbol{e}_a+\sin\alpha\,\boldsymbol{e}_b</math>
:なので、
::<math>\boldsymbol{v}'=\cos\alpha\boldsymbol{e}_a+\sin\alpha\{\boldsymbol{e}_b\cos\theta+(\boldsymbol{e}_a\times\boldsymbol{e}_b)\sin\theta\}</math>
:円錐上の点<math>\boldsymbol{r}</math>の位置ベクトルは頂点から母線方向に<math>\rho</math>だけ進むので
::<math>\boldsymbol{r}=\boldsymbol{p}+\rho\boldsymbol{v}'</math>
:であり、
::<math>\boldsymbol{r}-\boldsymbol{p}=\rho\boldsymbol{v}'</math>
:ここで<math>\|\boldsymbol{v}'\|=\|\boldsymbol{v}\|=1</math>より
::<math>\rho=\|\boldsymbol{r}-\boldsymbol{p}\|</math>
:このベクトルと軸ベクトルの内積をとると
::<math>(\boldsymbol{r}-\boldsymbol{p})\cdot\boldsymbol{a}=\rho\boldsymbol{v}'\cdot\boldsymbol{a}</math>
::<math>=\rho\{\cos\alpha(\boldsymbol{e}_a\cdot\boldsymbol{a})+\sin\alpha\cos\theta(\boldsymbol{e}_b\cdot\boldsymbol{a})+\sin\alpha\sin\theta(\boldsymbol{e}_a\times\boldsymbol{e}_b)\cdot\boldsymbol{a}\}</math>
:<math>\boldsymbol{e}_b, \boldsymbol{e}_a\times\boldsymbol{e}_b</math>とも<math>\boldsymbol{a}</math>に直交するので後ろの二項は消えて
::<math>(\boldsymbol{r}-\boldsymbol{p})\cdot\boldsymbol{a}=\rho\cos\alpha(\boldsymbol{e}_a\cdot\boldsymbol{a})=\|\boldsymbol{r}-\boldsymbol{p}\|\|\boldsymbol{a}\|\cos\alpha</math>
:則ち
::<math>\frac{(\boldsymbol{r}-\boldsymbol{p})\cdot\boldsymbol{a}}{\|\boldsymbol{r}-\boldsymbol{p}\|}=\|\boldsymbol{a}\|\cos\alpha=\mathrm{const}.</math>//
円錐が先に与えられている場合は「<math>\boldsymbol{r}-\boldsymbol{p}</math>が母線の方向ベクトルなのは図より自明」とできるが、ここでは「母線が先に与えられて回転によって円錐が構成される」という立場を採ったのでロドリゲスの公式が効くのである。
ロドリゲスの公式で微小回転<math>d\phi</math>の場合を考える。
正弦関数・余弦関数の部分を1項目までテイラー展開して<math>\cos(d\phi)=1+O(d\phi^2), \sin(d\phi)= d\phi+O(d\phi^3)</math>なので<math>\mathrm{versin}(d\phi)=O(d\phi^2)</math>であり、
:<math>\boldsymbol{r}' = \boldsymbol{r}-(\boldsymbol{r}\times\boldsymbol{e})d\phi+O(d\phi^2)</math>
ここで<math>d\boldsymbol{r}=\boldsymbol{r}'-\boldsymbol{r}</math>なので
:<math>d\boldsymbol{r}=-(\boldsymbol{r}\times\boldsymbol{e})d\phi+O(d\phi^2)</math>
則ち、ベクトル関数の全微分は微小回転で近似される。
オーダー記法の項を無視して<math>\boldsymbol{\omega}=\frac{d\phi}{dt}\boldsymbol{e}</math>と置くと
:<math>d\boldsymbol{r}=(d\phi\boldsymbol{e})\times\boldsymbol{r}</math>
これの両辺を<math>dt</math>で割って
:<math>\frac{d\boldsymbol{r}}{dt}=\boldsymbol{\omega}\times\boldsymbol{r}</math>
これは剛体の速度公式である。
ロドリゲスの公式の一次変換表記を考える。
<math>\boldsymbol{r}=\begin{pmatrix} r_1 \\ r_2 \\ r_3 \end{pmatrix}, \boldsymbol{r}'=\begin{pmatrix} r'_1 \\ r'_2 \\ r'_3 \end{pmatrix}, \boldsymbol{e}=\begin{pmatrix} a \\ b \\ c \end{pmatrix}</math>とすると、
:<math>\begin{pmatrix} r'_1 \\ r'_2 \\ r'_3 \end{pmatrix}=\cos\phi\begin{pmatrix} r_1 \\ r_2 \\ r_3 \end{pmatrix}+(ar_1+br_2+cr_3)\mathrm{versin}\,\phi\begin{pmatrix} a \\ b \\ c \end{pmatrix} - \sin\phi \begin{pmatrix} cr_2-br_3 \\ ar_3-cr_1 \\ br_1-ar_2 \end{pmatrix}</math>
:<math>=\begin{pmatrix} (\cos\phi + a^2\,\mathrm{versin}\,\phi) r_1 + (ab\,\mathrm{versin}\,\phi -c\sin\phi) r_2 + (ca\,\mathrm{versin}\,\phi + b\sin\phi) r_3 \\ (ab\,\mathrm{versin}\,\phi + c\sin\phi) r_1 + (\cos\phi + b^2\,\mathrm{versin}\,\phi) r_2 + (bc\,\mathrm{versin}\,\phi -a\sin\phi) r_3 \\ (ca\,\mathrm{versin}\,\phi - b\sin\phi) r_1 + (bc\,\mathrm{versin}\,\phi+ a\sin\phi) r_2 + (\cos\phi + c^2\,\mathrm{versin}\,\phi) r_3 \end{pmatrix}</math>
:<math>=\begin{pmatrix} \cos\phi + a^2\,\mathrm{versin}\,\phi & ab\,\mathrm{versin}\,\phi -c\sin\phi & ca\,\mathrm{versin}\,\phi + b\sin\phi \\ ab\,\mathrm{versin}\,\phi + c\sin\phi & \cos\phi + b^2\,\mathrm{versin}\,\phi & bc\,\mathrm{versin}\,\phi -a\sin\phi \\ ca\,\mathrm{versin}\,\phi - b\sin\phi & bc\,\mathrm{versin}\,\phi+ a\sin\phi & \cos\phi + c^2\,\mathrm{versin}\,\phi \end{pmatrix} \begin{pmatrix} r_1 \\ r_2 \\ r_3 \end{pmatrix}</math>
ここで<math>\mathrm{versin}\,\phi</math>を<math>1-\cos\phi</math>に戻して係数行列を<math>1, \cos\phi, \sin\phi</math>の項に分解してみると
:<math>=\begin{pmatrix} a^2+(1-a^2)\cos\phi & ab-ab\cos\phi -c\sin\phi & ca-ca\cos\phi + b\sin\phi \\ ab-ab\cos\phi + c\sin\phi & b^2+(1-b^2)\cos\phi & bc-bc\cos\phi -a\sin\phi \\ ca-ca\cos\phi - b\sin\phi & bc-bc\cos\phi+ a\sin\phi & c^2+(1-c^2)\cos\phi \end{pmatrix} \begin{pmatrix} r_1 \\ r_2 \\ r_3 \end{pmatrix}</math>
:<math>=\left\{ \begin{pmatrix} a^2 & ab & ca \\ ab & b^2 & bc \\ ca & bc & c^2 \end{pmatrix} + \cos\phi\begin{pmatrix} 1-a^2 & -ab & -ca \\ -ab & 1-b^2 & -bc \\ -ca & -bc & 1-c^2 \end{pmatrix} +\sin\phi\begin{pmatrix} 0 & -c & b \\ c & 0 & -a \\ -b & a & 0 \end{pmatrix} \right\} \begin{pmatrix} r_1 \\ r_2 \\ r_3 \end{pmatrix}</math>
:<math>=\left[ \begin{pmatrix} a^2 & ab & ca \\ ab & b^2 & bc \\ ca & bc & c^2 \end{pmatrix} + \cos\phi \left\{ \begin{pmatrix} 1 & 0 & 0 \\ 0 & 1 & 0 \\ 0 & 0 & 1 \end{pmatrix}-\begin{pmatrix} a^2 & ab & ca \\ ab & b^2 & bc \\ ca & bc & c^2 \end{pmatrix} \right\} +\sin\phi\begin{pmatrix} 0 & -c & b \\ c & 0 & -a \\ -b & a & 0 \end{pmatrix} \right] \begin{pmatrix} r_1 \\ r_2 \\ r_3 \end{pmatrix}</math>
ここで<math>\begin{pmatrix} a^2 & ab & ca \\ ab & b^2 & bc \\ ca & bc & c^2 \end{pmatrix}</math>は<math>\boldsymbol{e}</math>の第<math>i</math>成分と第<math>j</math>成分を掛けたものが<math>(i, j)</math>成分となる行列になっていることがわかる。これを<math>\boldsymbol{e}\otimes\boldsymbol{e}</math>と書くことにする。<math>\sin\phi</math>に係る行列を<math>\mathbf{N}</math>と置くと、
:<math>\boldsymbol{r}'=\{\boldsymbol{e}\otimes\boldsymbol{e}+\cos\phi(\mathbf{E}_3-\boldsymbol{e}\otimes\boldsymbol{e})+\sin\phi\mathbf{N}\}\boldsymbol{r}</math>
という表示を得る。
更に、<math>\mathbf{N}^2=\begin{pmatrix} -b^2-c^2 & ab & ca \\ ab & -c^2-a^2 & bc \\ ca & bc & -a^2-b^2 \end{pmatrix}</math>と<math>\|\boldsymbol{e}\|=\sqrt{a^2+b^2+c^2}=1</math>より
:<math>\boldsymbol{e}\otimes\boldsymbol{e}=\mathbf{N}^2+(a^2+b^2+c^2)\mathbf{E}_3=\mathbf{N}^2+\mathbf{E}_3</math>
が成り立つので、最終的に
:<math>\boldsymbol{r}'=(\mathbf{E}_3+\sin\phi\mathbf{N}+\mathrm{versin}\,\phi\mathbf{N}^2)\boldsymbol{r}</math>
と二次の行列多項式で表示される。
なお、<math>\otimes</math>は発展節で紹介する'''テンソル積'''を表している。
ここで、行列<math>\mathbf{N}</math>についてより具体的に考えてみる。
先ず、<math>{}^t\!\mathbf{N}=-\mathbf{N}</math>が成り立つので<math>\mathbf{N}</math>は反対称行列(歪対称行列・交代行列)である。
<math>\mathbf{N}\boldsymbol{r}</math>を計算すると
:<math>\mathbf{N}\boldsymbol{r}=\begin{pmatrix} 0 & -c & b \\ c & 0 & -a \\ -b & a & 0 \end{pmatrix} \begin{pmatrix} r_1 \\ r_2 \\ r_3 \end{pmatrix}=\begin{pmatrix} br_3-cr_2 \\ cr_1-ar_3 \\ ar_2-br_1 \end{pmatrix}=\boldsymbol{e}\times\boldsymbol{r}</math>
則ち、<math>\mathbf{N}</math>は<math>\boldsymbol{e}</math>に関する外積(形式的には<math>\boldsymbol{e}\times</math>という左演算)を一次変換とみて表現行列に直したものである。
更に、成分計算により<math>\mathbf{N}^3=-\mathbf{N}</math>という性質が成り立つことも判る。外積を「ベクトルを90°回転させる演算」とみると、二回の演算によって180°回転するということなのでこの結果は妥当である。
ここで行列自然指数関数<math>\exp(\phi\mathbf{N})=\sum_{i=0}^\infty \frac{(\phi\mathbf{N})^i}{i!}</math>を考えてみると上の性質より三次以上の項は<math>\mathbf{N}^4=-\mathbf{N}^2, \mathbf{N}^5=\mathbf{N},\cdots</math>のように全て二次以下に帰着できる。<br>
また、自然指数関数のテイラー展開は絶対収束級数なので各項は可換であり、<math>\mathbf{N}</math>の二次式として纏め直すと
:<math>\exp(\phi\mathbf{N})=\mathbf{E}_3 + (\phi-\frac{\phi^3}{3!}+\frac{\phi^5}{5!}-\frac{\phi^7}{7!}+\cdots) \mathbf{N}+(\frac{\phi^2}{2!}-\frac{\phi^4}{4!}+\frac{\phi^6}{6!}-\frac{\phi^8}{8!}+\cdots)\mathbf{N}^2</math>
ここで一次・二次の係数はそれぞれ正弦関数・正矢関数のテイラー展開になっているので結局は
:<math>\exp(\phi\mathbf{N})=\mathbf{E}_3+\sin\phi\mathbf{N}+\mathrm{versin}\,\phi\mathbf{N}^2</math>
ここから、<math>\exp(\phi\mathbf{N})</math>は角度<math>\phi</math>に関する有限回転に対応することが判った。
このことは以下の考え方でも求まる。<br>
<math>\mathbf{N}</math>の最小方程式は<math>\mathbf{N}^3+\mathbf{N}=\mathbf{O}_3</math>より<math>x(x^2+1)=0</math>であり固有値は<math>0, \pm{i}</math>と求まるので、<math>\exp(\phi\mathbf{N})</math>の対角化行列は
:<math>\begin{pmatrix} e^{0\phi} & 0 & 0 \\ 0 & e^{i\phi} & 0 \\ 0 & 0 & e^{-i\phi} \end{pmatrix}</math>
ここで任意の解析関数<math>f</math>について<math>f(\mathbf{N})</math>のテイラー展開は二次以下の多項式になるので
:<math>\exp(\phi\mathbf{N})=\alpha\mathbf{E}_3+\beta\mathbf{N}+\gamma\mathbf{N}^2</math>
これを実多項式に戻した<math>\alpha+\beta{x}+\gamma{x^2}</math>が<math>e^{\phi{x}}</math>と任意の固有値で一致すればよい(二次補間)ので、
:<math>\begin{cases} e^0 = \alpha \\ e^{i\phi} = i\beta -\gamma \\ e^{-i\phi} = -i\beta-\gamma \end{cases}</math>
:<math>\iff \begin{cases} 1 = \alpha \\ \cos\phi+i\sin\phi = (\alpha -\gamma) + i\beta \end{cases}</math>
:<math>\therefore \begin{cases} \alpha=1 \\ \beta=\sin\phi \\ \gamma=1-\cos\phi=\mathrm{versin}\,\phi \end{cases}</math>
則ち、<math>\mathbf{N}^3=-\mathbf{N}</math>という構造は<math>\Psi_\mathbf{N}(x)=x(x^2+1)</math>という最小多項式に起因するということである。
更に[[表現論]]の観点から見ると、三次直交行列全体である回転群<math>SO(3)</math>に対し、<math>\mathbf{N}</math>は<math>SO(3)</math>の単位元に於ける接空間(三次反対称行列全体・則ちリー代数<math>\mathfrak{so}(3)</math>)の元であり、<math>\exp(\phi\mathbf{N})</math>はリー群<math>SO(3)</math>の元である。ここで行列自然指数関数は「リー代数からリー群へ引き戻す写像」なので'''指数写像'''と呼ばれる。
これが[[#フレネ標搆]]で述べた「直交変換の一次近似が反対称変換」という事実のより正確な表現である。
補足だが、力学で扱う[[w:オイラー角]]というものを導入するとロドリゲスの公式を各座標軸に関する回転の合成で表すこともできる。
===種々の曲率===
ここでは三次元空間内の正則曲面について考える。
曲面<math>S:\boldsymbol{r}=\boldsymbol{r}(t, u)</math>上で定義され弧長パラメータ表示された正則曲線<math>C:\boldsymbol{r}=\boldsymbol{r}(t(s), u(s))</math>を考える。
<math>C</math>の接ベクトルは合成関数微分公式より
:<math>\boldsymbol{t}=\frac{d\boldsymbol{r}}{ds}=\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}\frac{dt}{ds}+\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}\frac{du}{ds}</math>
と表示される。
ここで両辺の<math>ds</math>を形式的に払うと
:<math>\boldsymbol{t}ds=\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}dt+\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}du</math>
これの自分自身との内積をとると
:<math>\|\boldsymbol{t}\|^2(ds)^2=\left\|\frac{d\boldsymbol{r}}{\partial{t}}\right\|^2(dt)^2+2\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}\cdot\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}dtdu+\left\|\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}\right\|^2(du)^2</math>
弧長パラメトライズされた接ベクトルは単位ベクトルであり、右辺のベクトル演算の部分を第一基本量で置き換えると
:<math>ds^2=E(dt)^2+2Fdtdu+G(du)^2</math>
と、第一基本形式を別の方法で得られた。
<math>C</math>の主法線ベクトルは合成関数微分を繰り返し適用することで
:<math>\boldsymbol{n}_C=\frac{d\boldsymbol{t}}{ds}=\frac{d}{ds}\left(\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}\frac{dt}{ds}+\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}\frac{du}{ds}\right)</math>
:<math>=\frac{d}{ds}\left(\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}\frac{dt}{ds}\right)+\frac{d}{ds}\left(\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}\frac{du}{ds}\right)</math>
:<math>=\frac{d}{ds}\left(\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}\right)\frac{dt}{ds}+\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}\frac{d}{ds}\left(\frac{dt}{ds}\right)+\frac{d}{ds}\left(\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}\right)\frac{du}{ds}+\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}\frac{d}{ds}\left(\frac{du}{ds}\right)</math>
:<math>=\left(\frac{\partial^2{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}^2}\frac{dt}{ds}+\frac{\partial^2{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}\partial{t}}\frac{du}{ds}\right)\frac{dt}{ds}+\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}\frac{d^2t}{ds^2}+\left(\frac{\partial^2{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}\partial{u}}\frac{dt}{ds}+\frac{\partial^2{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}^2}\frac{du}{ds}\right)\frac{du}{ds}+\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}\frac{d^2u}{ds^2}</math>
:<math>=\frac{\partial^2{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}^2}\left(\frac{dt}{ds}\right)^2+\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}\frac{d^2t}{ds^2}+2\frac{\partial^2{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}\partial{u}}\frac{dt}{ds}\frac{du}{ds}+\frac{\partial^2{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}^2}\left(\frac{du}{ds}\right)^2+\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}\frac{d^2u}{ds^2}</math>
ここで、<math>S</math>の法線ベクトル<math>\boldsymbol{n}_S=\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}\times\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}</math>は一般に<math>\boldsymbol{n}_C</math>と一次従属とは限らない。
後の話を単純にするため<math>\boldsymbol{n}_S</math>を正規化したベクトルを<math>\boldsymbol{e}_S</math>と置いて<math>\boldsymbol{n}_C\cdot\boldsymbol{e}_S</math>を計算してみる。
:<math>\boldsymbol{e}_S\perp\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}, \boldsymbol{e}_S\perp\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}</math>より
:<math>\boldsymbol{n}_C\cdot\boldsymbol{e}_S=\left(\frac{\partial^2{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}^2}\cdot\boldsymbol{e}_S\right)\left(\frac{dt}{ds}\right)^2+2\left(\frac{\partial^2{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}\partial{u}}\cdot\boldsymbol{e}_S\right)\frac{dt}{ds}\frac{du}{ds}+\left(\frac{\partial^2{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}^2}\cdot\boldsymbol{e}_S\right)\left(\frac{du}{ds}\right)^2</math>
ここで各内積<math>L=\frac{\partial^2{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}^2}\cdot\boldsymbol{e}_S,\quad M=\frac{\partial^2{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}\partial{u}}\cdot\boldsymbol{e}_S,\quad N=\frac{\partial^2{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}^2}\cdot\boldsymbol{e}_S</math>を<math>S</math>の'''第二基本量'''と呼ぶ。
<math>\boldsymbol{n}_C, \boldsymbol{e}_S</math>のなす角を<math>\psi</math>とすると<math>C</math>の曲率を<math>\kappa_C</math>として
:<math>\boldsymbol{n}_C\cdot\boldsymbol{e}_S=\kappa_C \cos\psi</math>
なので<math>ds</math>に関して形式的に通分して
:<math>\kappa_C\cos\psi=\frac{L(dt)^2+2Mdtdu+N(du)^2}{ds^2}</math>
右辺の分子<math>I\!I:=L(dt)^2+2Mdtdu+N(du)^2</math>を<math>S</math>の'''第二基本形式'''という。
<math>\begin{cases}\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}\cdot\boldsymbol{e}_S=0 \\ \frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}\cdot\boldsymbol{e}_S=0 \end{cases}</math>を<math>t</math>で偏微分すると
:<math>\begin{cases} \frac{\partial^2{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}^2}\cdot\boldsymbol{e}_S+\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}\cdot\frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{t}}=0 \\ \frac{\partial^2{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}\partial{u}}\cdot\boldsymbol{e}_S+\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}\cdot\frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{t}}=0 \end{cases}</math>
また、<math>u</math>で偏微分すると
:<math>\begin{cases} \frac{\partial^2{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}\partial{t}}\cdot\boldsymbol{e}_S+\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}\cdot\frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{u}}=0 \\ \frac{\partial^2{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}^2}\cdot\boldsymbol{e}_S+\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}\cdot\frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{u}}=0 \end{cases}</math>
ここから第二基本量は
:<math>L=-\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}\cdot\frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{t}},\quad M=-\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}\cdot\frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{t}}=-\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}\cdot\frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{u}},\quad N=-\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}\cdot\frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{u}}</math>
とも表示され、第二基本形式の別表示
:<math>I\!I=-\left(\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}dt+\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}du\right)\cdot\left(\frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{t}}dt+\frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{u}}du\right)</math>
を得る。
これは更に全微分から微小ベクトル同士の内積として
:<math>I\!I=-d\boldsymbol{r}\cdot{d}\boldsymbol{e}_S</math>
とも書ける。
第一基本形式は曲面上の微小変位の自身との内積だったが、第二基本形式は曲面上の微小変位と法線方向の微小変位の内積である。則ち、第一基本形式は曲面の内在的な量、第二基本形式は曲面の外在的な量である。
第一基本形式と同様に第二基本形式は二次形式なので、<math>\boldsymbol{v}:=\begin{pmatrix} dt \\ du \end{pmatrix}, \mathbf{H}=\begin{pmatrix} L & M \\ M & N \end{pmatrix}</math>と置くと
:<math>I\!I={}^t\!\boldsymbol{v}\mathbf{H}\boldsymbol{v}</math>
と行列表示できる。この<math>\mathbf{H}</math>を'''第二基本行列'''という。
ここで、モンジュ表示された曲面<math>z=f(x, y)</math>に対して第二基本行列を考えてみる。
:<math>\boldsymbol{r}(t, u)=\begin{pmatrix} t \\ u \\ f(t, u)\end{pmatrix}</math>なので[[解析学基礎/多変数関数の微積分#全微分]]の結果を参照すると直ちに
:<math>L=\frac{\frac{\partial^2{f}}{\partial{t}^2}}{\sqrt{1+\left(\frac{\partial{f}}{\partial{t}}\right)^2+\left(\frac{\partial{f}}{\partial{u}}\right)}^2},\quad M=\frac{\frac{\partial^2{f}}{\partial{t}\partial{u}}}{\sqrt{1+\left(\frac{\partial{f}}{\partial{t}}\right)^2+\left(\frac{\partial{f}}{\partial{u}}\right)}^2},\quad N=\frac{\frac{\partial^2{f}}{\partial{u}^2}}{\sqrt{1+\left(\frac{\partial{f}}{\partial{t}}\right)^2+\left(\frac{\partial{f}}{\partial{u}}\right)}^2}</math>
:が判るので、
:<math>\mathbf{H}=\frac{1}{\sqrt{1+\left(\frac{\partial{f}}{\partial{t}}\right)^2+\left(\frac{\partial{f}}{\partial{u}}\right)}^2}\begin{pmatrix} \frac{\partial^2{f}}{\partial{t}^2} & \frac{\partial^2{f}}{\partial{tu}} \\ \frac{\partial^2{f}}{\partial{tu}} & \frac{\partial^2{f}}{\partial{u^2}} \end{pmatrix}</math>
これはヘッシアンを法線の長さで割った行列である。
則ち、任意の正則曲面に対して第二基本行列はヘッセ行列と同じ役割をすると考えられる。
実際、点<math>\mathrm{P}</math>の開近傍で<math>\det\mathbf{H}</math>が正である曲面は<math>\mathrm{P}</math>の開近傍で上下どちらかに凸であり、負である曲面は<math>\mathrm{P}</math>で鞍点となることが知られている。
このように第二基本形式は曲面の「曲がり方」を表す量と考えられるので、曲面に対する曲率も考えられる。
ここで第二基本形式を定義した式
:<math>\kappa_C\cos\psi=\frac{L(dt)^2+2Mdtdu+N(du)^2}{ds^2}</math>
に立ち戻ると、右辺の分母は<math>s</math>に依存しない第一基本形式なので第一基本量を用いて
:<math>\kappa_C\cos\psi=\frac{L(dt)^2+2Mdtdu+N(du)^2}{E(dt)^2+2Fdtdu+G(du)^2}</math>
右辺を形式的に<math>dt^2</math>で割ると
:<math>\kappa_C\cos\psi=\frac{L+2M\frac{du}{dt}+N\left(\frac{du}{dt}\right)^2}{E+2F\frac{du}{dt}+G\left(\frac{du}{dt}\right)^2}</math>
この右辺は<math>\boldsymbol{n}_C</math>に依存しない量なので<math>\boldsymbol{n}_S, \boldsymbol{n}_C</math>のなす角度である<math>\psi</math>にも依存しない。
そこで、この値を曲面<math>S</math>の'''法曲率'''と定義する。
:<math>\varkappa:=\frac{L+2M\frac{du}{dt}+N\left(\frac{du}{dt}\right)^2}{E+2F\frac{du}{dt}+G\left(\frac{du}{dt}\right)^2}</math>
法曲率の幾何学的意味を考える。
<math>\varkappa=\kappa_C\cos\psi</math>より、<math>\cos\psi=1</math>のとき<math>S</math>の法曲率と<math>C</math>の曲率が一致する。このとき<math>\boldsymbol{n}_S /\!\!/ \boldsymbol{n}_C</math>であり、<math>C</math>は曲面上の点<math>\mathrm{P}</math>とそこでの曲面の法線<math>\boldsymbol{n}_S(\mathrm{P})</math>を含む平面で曲面を切断した切り口('''法切り口''')に対応する曲線('''法曲線''')である。
則ち、法曲率は法曲線の曲率に対応する。
なお、法曲線<math>C</math>は切断に用いる平面に拘束されるので接ベクトル<math>\boldsymbol{t}_C</math>も平面に拘束される。則ち、拘束平面は<math>\{\boldsymbol{t}_C, \boldsymbol{n}_C\}</math>の張る接触平面である。
法切り口を齎す平面は法線を軸にして回転することができ、その回転角によって法曲率の値が異なることになる。この回転は具体的にはロドリゲスの公式によって記述されるが、法曲率の極大値・極小値は<math>\varkappa</math>を<math>k=\frac{du}{dt}</math>の関数とみることで以下のように考えることができる。
:法曲率の定義式より
::<math>\varkappa(E+2Fk+Gk^2)=L+2Mk+Nk^2</math>・・・(*)
:これが<math>k</math>の恒等式なので微分しても等号が成り立ち、
::<math>\frac{d\varkappa}{dk}(E+2Fk+Gk^2)+\varkappa(2F+2Gk)=2M+2Nk</math>
:フェルマーの定理より<math>\frac{d\varkappa}{dk}=0</math>を満たす<math>(k, \varkappa)</math>が極値点の候補なので
::<math>\varkappa(2F+2Gk)=2M+2Nk</math>・・・(@)
:が成り立つ必要がある。
:これを<math>k</math>倍して(*)を引くと
::<math>\varkappa(E+Fk)=L+Mk</math>・・・(#)
:これと(@)を連立して
::<math>k=-\frac{\varkappa{F}-M}{\varkappa{G}-N}</math>
:これを(#)に代入して
::<math>(EG-F^2)\varkappa^2-(GL+EN-2FM)\varkappa+(LN-M^2)=0</math>・・・($)
:という二次方程式を得る。
:($)が相異なる二つの実根<math>\kappa_1, \kappa_2</math>を持てばそれらは極小値・極大値である。
:逆に、極小値・極大値を持てばフェルマーの定理より($)を満たす。//
この<math>\kappa_1, \kappa_2</math>を<math>S</math>の'''主曲率'''という。
($)の左辺を変形してみると、
:<math>(EG-F^2)\varkappa^2-(GL+EN-2FM)\varkappa+(LN-M^2)</math>
:<math>=\{EG\varkappa^2-(GL+EN)\varkappa+LN\}-\{F^2\varkappa^2-2FM\varkappa+M^2\}</math>
:<math>=(L-\varkappa{E})(N-\varkappa{G})-(M-\varkappa{F})^2</math>
:<math>=\det\begin{pmatrix} L-\varkappa E & M - \varkappa F \\ M - \varkappa F & N - \varkappa G \end{pmatrix}</math>
:<math>=\det(\mathbf{H}-\varkappa\mathbf{K})</math>
という、第一基本行列と第二基本行列を用いた形が出てきた。
ここで<math>\varkappa=\frac{L(dt)^2+2Mdtdu+N(du)^2}{E(dt)^2+2Fdtdu+G(du)^2}</math>を変形して
:<math>(L-\varkappa{E})dt^2+2(M-\varkappa{F})dtdu+(N-\varkappa{G})du^2=0</math>
これを二次形式表示すると
:<math>\begin{pmatrix} dt & du \end{pmatrix}\begin{pmatrix} L-\varkappa E & M - \varkappa F \\ M - \varkappa F & N - \varkappa G \end{pmatrix}\begin{pmatrix} dt \\ du \end{pmatrix}=0</math>
と、同じ<math>\mathbf{H}-\varkappa\mathbf{K}</math>がここでも登場する。
この行列は法曲率を持つ方向を二次形式で判定しているが、主曲率を持つ場合はラグランジュの未定乗数法より<math>(\mathbf{H}-\varkappa\mathbf{K})\begin{pmatrix} dt \\ du \end{pmatrix}=\boldsymbol{0}</math>が成り立ち、これが<math>\det(\mathbf{H}-\varkappa\mathbf{K})=0</math>という式の正体である。更に言うと、<math>\mathbf{H}\boldsymbol{x}=\varkappa\mathbf{K}\boldsymbol{x}</math>という一般化固有値問題の解が主曲率<math>\kappa_1, \kappa_2</math>に対応している。このときの一般化固有ベクトル<math>\boldsymbol{x}_1, \boldsymbol{x}_2</math>を主曲率に対する'''主方向'''という。
二つの主方向の関係を調べる。
:主方向の定義より
::<math>\begin{cases} (\mathbf{H}-\kappa_1\mathbf{K}) \boldsymbol{x}_1=\boldsymbol{0} \\ (\mathbf{H}-\kappa_2\mathbf{K}) \boldsymbol{x}_2=\boldsymbol{0} \end{cases}</math>
:なので
::<math>\begin{cases} {}^t\!\boldsymbol{x}_2(\mathbf{H}-\kappa_1\mathbf{K})\boldsymbol{x}_1=\boldsymbol{0} \\ {}^t\!\boldsymbol{x}_1(\mathbf{H}-\kappa_2\mathbf{K})\boldsymbol{x}_2=\boldsymbol{0} \end{cases}</math>
::<math>\begin{cases} {}^t\!\boldsymbol{x}_2\mathbf{H}\boldsymbol{x}_1=\kappa_1{}^t\!\boldsymbol{x}_2\mathbf{K}\boldsymbol{x}_1 \\ {}^t\!\boldsymbol{x}_1\mathbf{H}\boldsymbol{x}_2=\kappa_2{}^t\!\boldsymbol{x}_1 \mathbf{K}\boldsymbol{x}_2 \end{cases}</math>
::<math>\begin{cases} {}^t\!\boldsymbol{x}_2\mathbf{H}\boldsymbol{x}_1=\kappa_1{}^t\!\boldsymbol{x}_2\mathbf{K}\boldsymbol{x}_1 \\ {}^t\!\boldsymbol{x}_1\mathbf{H}\boldsymbol{x}_2=\kappa_2{}^t\!\boldsymbol{x}_1 \mathbf{K}\boldsymbol{x}_2 \end{cases}</math>
:第一基本行列・第二基本行列とも対称行列なので第二式の転置をとって
::<math>\begin{cases} {}^t\!\boldsymbol{x}_2\mathbf{H}\boldsymbol{x}_1=\kappa_1{}^t\!\boldsymbol{x}_2\mathbf{K}\boldsymbol{x}_1 \\ {}^t\!\boldsymbol{x}_2\mathbf{H}\boldsymbol{x}_1=\kappa_2{}^t\!\boldsymbol{x}_2 \mathbf{K}\boldsymbol{x}_1 \end{cases}</math>
:上下の式の差をとって
::<math>(\kappa_1-\kappa_2){}^t\!\boldsymbol{x}_2\mathbf{K}\boldsymbol{x}_1=\boldsymbol{0}</math>
:<math>\kappa_1=\kappa_2</math>のときは<math>\boldsymbol{x}_1, \boldsymbol{x}_2</math>に関する恒等式であるので、<math>\kappa_1\neq\kappa_2</math>のときを考える。
::<math>{}^t\!\boldsymbol{x}_2\mathbf{K}\boldsymbol{x}_1=\left(\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}t_2+\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}u_2\right)\cdot\left(\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}t_1+\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}u_1\right)=0</math>
:この二つのベクトルは主方向を向くので2つの主方向は直交する。
<math>\kappa_1=\kappa_2</math>(法曲率<math>\varkappa(t, u)=\mathrm{const}.</math>)の場合、<math>S</math>の接平面内の任意の方向が主方向となるので「どの方向にも一様な曲がり方をする」と考えられる。このような主曲率を与える点を'''臍点'''という。任意の点が臍点である曲面は球面である。
上の結果から、'''臍点でない各点で2つの主方向は直交する'''。
主曲率に対して解と係数の関係から得る値
:<math>H=\frac{\kappa_1+\kappa_2}{2}=\frac{GL+ENN-2FM}{2EG-F^2},\quad K=\kappa_1\kappa_2=\frac{LN-M^2}{EG-F^2}</math>
をそれぞれ<math>S</math>の'''平均曲率'''・'''全曲率'''('''ガウス曲率''')という。
全曲率の式を見ると<math>K=\frac{LN-M^2}{EG-F^2}=\frac{\det\mathbf{H}}{\det\mathbf{K}}=\det(\mathbf{K}^{-1}\mathbf{H})</math>である。
そこで、<math>\mathbf{S}=\mathbf{K}^{-1}\mathbf{H}</math>と定義してみると行列式の性質より<math>K</math>は<math>\mathbf{S}</math>の固有値の積である。
ここで<math>\mathbf{S}</math>の固有方程式は
:<math>\det(\mathbf{S}-\lambda\mathbf{E})=\det(\mathbf{K}^{-1}\mathbf{H}-\lambda\mathbf{E})=\det\mathbf{K}^{-1}\det(\mathbf{H}-\lambda\mathbf{K})=0</math>
<math>\det\mathbf{K}^{-1}\neq0</math>より
:<math>\det(\mathbf{H}-\lambda\mathbf{K})=0</math>
これは主曲率を定義した二次方程式($)のことだったので、この方程式の解である固有値は<math>\lambda=\kappa_1, \kappa_2</math>である。
則ち、<math>K=\det\mathbf{S},\quad H=\frac{1}{2}\mathrm{tr}\,\mathbf{S}</math>が成り立つ。
更に、第一基本行列から第二基本行列への一次変換を考えると以下が成り立つことも判る。但し、こちらもフレネ=セレーと同様に厳密にはベクトルを列ではなく行に並べるのが正しいことに注意。
{{定理|(ヴァインガルテンの式)}}
:<math>\begin{pmatrix} \frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{t}} \\ \frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{u}} \end{pmatrix}=-\mathbf{S}\begin{pmatrix} \frac{\partial\boldsymbol{r}}{\partial{t}} \\ \frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}} \end{pmatrix}</math>
{{定理終わり}}
*証明
:<math>\begin{pmatrix} \frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{t}} \\ \frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{u}} \end{pmatrix}=\mathbf{A}\begin{pmatrix} \frac{\partial\boldsymbol{r}}{\partial{t}} \\ \frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}} \end{pmatrix}</math>と置く。
:両辺に<math>{}^t\!\begin{pmatrix} \frac{\partial\boldsymbol{r}}{\partial{t}} \\ \frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}} \end{pmatrix}</math>を右から掛けると行列積であることに注意して
:<math>\begin{pmatrix} \frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{t}}\cdot\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}} & \frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{t}}\cdot\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}} \\ \frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{u}}\cdot\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}} & \frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{u}}\cdot\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}} \end{pmatrix}=\mathbf{A}\begin{pmatrix} \frac{\partial\boldsymbol{r}}{\partial{t}}\cdot\frac{\partial\boldsymbol{r}}{\partial{t}} & \frac{\partial\boldsymbol{r}}{\partial{t}}\cdot\frac{\partial\boldsymbol{r}}{\partial{u}} \\ \frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}\cdot\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}} & \frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}\cdot\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}} \end{pmatrix}</math>
:<math>\therefore -\mathbf{H}=\mathbf{A}\mathbf{K}</math>
:<math>\therefore \mathbf{A}=-\mathbf{H}\mathbf{K}^{-1}=-\mathbf{K}^{-1}\mathbf{H}=-\mathbf{S}</math>//
臍点で行列<math>\mathbf{H}-\varkappa\mathbf{K}</math>を考えると<math>\varkappa=\kappa_1=\kappa_2</math>及び「主方向が任意」から
:<math>\mathbf{H}-\varkappa\mathbf{K}=\mathbf{O}</math>
であり、これを成分で書き下せばヴァインガルテンの式より法曲率に関して
:<math>\begin{cases} \varkappa=\frac{L}{E}=\frac{M}{F}=\frac{N}{G} \\ \frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{t}} = \varkappa \frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}} \\ \frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{u}} = \varkappa \frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}} \end{cases}</math>
を得る。
<math>\mathbf{S}=\mathbf{K}^{-1}\mathbf{H}</math>に於いて<math>\mathbf{K}</math>は正定値対称行列なので正則対称な主平方根<math>\mathbf{K}^{1/2}</math>が存在して
:<math>\mathbf{S}=\mathbf{K}^{-1/2}\mathbf{K}^{-1/2}\mathbf{H}</math>
ここで<math>\mathbf{T}=\mathbf{K}^{-1/2}\mathbf{H}\mathbf{K}^{-1/2}</math>という相似変換で表された行列を考えてみると
:<math>\mathbf{K}^{1/2}\mathbf{S}\mathbf{K}^{-1/2}</math>
:<math>=\mathbf{K}^{1/2}\mathbf{K}^{-1}\mathbf{H}\mathbf{K}^{-1/2}</math>
:<math>=\mathbf{K}^{-1/2}\mathbf{H}\mathbf{K}^{-1/2}</math>
:<math>=\mathbf{T}</math>
であり、<math>\mathbf{S}\sim\mathbf{T}</math>なのでこれらの2つの固有値の組は一致する。
:<math>\mathbf{H}={}^t\!\mathbf{H}</math>
より
:<math>{}^t\!\mathbf{T}=\mathbf{T}</math>
が成り立つので、<math>\mathbf{T}</math>は対称行列であり2つの固有値は実数である。
よって<math>\mathbf{S}</math>の二つの固有値はともに実数であるが、この固有値は($)の解<math>\kappa_1, \kappa_2</math>のことだったので($)は虚根を持たず、'''主曲率は必ず実数'''である。
モンジュ表示された曲面では先程求めた第二基本量の表式から直ちに
:<math>H=\frac{\left\{1+\left(\frac{\partial{f}}{\partial{y}}\right)^2\right\}\frac{\partial^2{f}}{\partial{x}^2}+\left\{1+\left(\frac{\partial{f}}{\partial{x}}\right)^2\right\}\frac{\partial^2{f}}{\partial{y}^2}-2\frac{\partial{f}}{\partial{x}}\frac{\partial{f}}{\partial{y}}\frac{\partial^2{f}}{\partial{x}\partial{y}}}{{2\left\{1+\left(\frac{\partial{f}}{\partial{x}}\right)^2+\left(\frac{\partial{f}}{\partial{y}}\right)^2\right\}^\frac{3}{2}}},\quad K=\frac{\frac{\partial{f}}{\partial{x}}\frac{\partial{f}}{\partial{y}}-\left(\frac{\partial^2{f}}{\partial{x}\partial{y}}\right)^2}{\left\{1+\left(\frac{\partial{f}}{\partial{x}}\right)^2+\left(\frac{\partial{f}}{\partial{y}}\right)^2\right\}^2}</math>
を得る。
等温座標系では<math>\mathbf{K}^{-1}=\frac{1}{\lambda^2}\mathbf{E}_3</math>より<math>\mathbf{S}=\frac{1}{\lambda^2}\begin{pmatrix} L & M \\ M & N \end{pmatrix}</math>なので、平均曲率・ガウス曲率はそれぞれ<math>H=\frac{L+N}{2\lambda^2},\quad K=\frac{LN-M^2}{\lambda^4}</math>と簡単に求まる。
ある点に於ける2つの主曲率はそれぞれその点に於ける極大方向・極小方向の曲がり方を与えるので、<math>\kappa_1, \kappa_2</math>の符号の組み合わせがその点近傍に於ける曲面の曲がり方を与えることになる。
具体的には、両方とも正なら上に凸、負なら下に凸、異符号なら鞍点となる。主曲率が0ならばその主方向に対して曲がっていないということである。
主曲率の積である全曲率の符号を見ても良い。全曲率が正ならば上下どちらかに凸、負ならば鞍点である。第一基本行列が正定値行列であることから主曲率の符号は第二基本行列の行列式と一致するので先程の「第二基本行列がヘッセ行列の一般化」という話に繫がる。
任意点で<math>H=0</math>を満たす曲面を'''極小曲面'''という。極小曲面は曲面を連続変形させたときに曲面積の最小値を与える曲面であることが知られている。
平面は自明な極小曲面である。他にも<math>z=\ln\left(\frac{\cos y}{\cos x}\right)(-\frac{\pi}{2}<x, y<\frac{\pi}{2})</math>(シェルクの第一曲面)などが知られている。
極小曲面は表面張力の理論に応用されている。
例えば石鹼膜のつくる曲面について、膜上点での表裏の圧力差<math>P</math>・その点での表面張力<math>T</math>及び平均曲率<math>H</math>に対し<math>P=2TH</math>が成立する(ヤング=ラプラスの公式)ことが知られているが、閉曲線である枠に張った膜が割れずに安定して存在する条件は全ての点で<math>P=H=0</math>、則ち極小曲面のときである。
曲面<math>S</math>上の微小変位<math>d\boldsymbol{r}</math>、法線方向の微小変位<math>d\boldsymbol{e}_S</math>に対して第一基本形式は<math>I=d\boldsymbol{r}\cdot d\boldsymbol{r}</math>、第二基本形式は<math>I\!I=-d\boldsymbol{r}\cdot d\boldsymbol{e}_S</math>であった。
最後の組み合わせである<math>d\boldsymbol{e}_S\cdot d\boldsymbol{e}_S</math>を<math>S</math>の'''第三基本形式'''と定義する。
:<math>I\!I\!I:=\left(\frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{t}}dt+\frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{u}}du\right)\cdot\left(\frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{t}}dt+\frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{u}}du\right)</math>
:<math>=\left\|\frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{t}}\right\|^2(dt)^2+2\frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{t}}\cdot\frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{u}}dtdu+\left\|\frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{u}}\right\|^2(du)^2</math>
これを同様に二次形式の行列表示に直すと<math>\mathbf{W}:=\begin{pmatrix} \left\|\frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{t}}\right\|^2 & \frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{t}}\cdot\frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{u}} \\ \frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{t}}\cdot\frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{u}} & \left\|\frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{u}}\right\|^2 \end{pmatrix}</math>として
:<math>I\!I\!I={}^t\!\boldsymbol{v}\mathbf{W}\boldsymbol{v}</math>
この<math>\mathbf{W}</math>を'''第三基本行列'''という。
見て判る通り、'''第三基本量'''は<math>P=\left\|\frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{t}}\right\|^2,\quad Q=\frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{t}}\cdot\frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{u}},\quad R=\left\|\frac{\partial{\boldsymbol{e}_S}}{\partial{u}}\right\|^2</math>である。
臍点でないとき2つの主方向は直交するので、臍点を持たない曲面に対して主方向を直交基底としたパラメータ表示<math>\boldsymbol{r}=\boldsymbol{r}(p, q)</math>を考えられる。
このとき、各基本形式は
:<math>I=dp^2+dq^2</math>
:<math>I\!I=\kappa_1dp^2+\kappa_2dq^2</math>
:<math>I\!I\!I=\kappa^2_1dp^2+\kappa^2_2dq^2</math>
と表示されることが知られている。
第三基本形式は第一基本形式と第二基本形式の線型結合で表示される。
:<math>I\!I\!I=2HI\!I-KI</math>
このことはヴァインガルテンの式と平均曲率・全曲率の定義を用いて確かめられる。
これに関連し、第二基本量で定義された全曲率は第一基本量のみで表されることが知られている。つまり、曲率という外在的な量を第一基本形式という内在的な量のみで記述でき、言い換えると「曲面を考えるときに'''曲面の外側の空間を考える必要が無い'''」ということである。
この定理は発見者自身も驚愕したことから'''ガウスの驚異の定理'''と呼ばれている。詳しくは発展節で扱う。
なお、平均曲率を考えるときは外側の空間の情報が必要である。
==直交曲線座標系==
{{節stub}}
===円筒座標系===
平面の座標系として直交座標の他に斜交座標、極座標(円座標)、重心座標などがあったように、空間の座標系も複数通り考えられる。
空間座標を3つの実数の組<math>(r, \theta, z)</math>で表した座標系を'''円筒座標系'''('''円柱座標系'''、cylindrical coordinate system)という。ただし、<math>r</math>は原点からの(符号付き)距離、<math>\theta</math>は基準面に於ける始線からの正の回転角、<math>z</math>は基準面からの高さである。
円筒座標系は、円座標系の<math>r\theta</math>平面に<math>z</math>軸方向の次元を加えた3次元空間の座標と考えられる。
そのため、円筒座標系と直交座標系の対応は以下のようになる。
:<math>\begin{cases} x=r\cos\theta \\ y=r\sin\theta \\ z=z \end{cases} \iff \begin{cases} r=\sqrt{x^2+y^2} \\ \theta = \arctan\frac{y}{x} \\ z=z \end{cases}</math>
但し、<math>r</math>は基準面の裏側では負とする。
直交座標の<math>z</math>軸を基に円筒座標系の座標軸を決定する。一般に座標軸は直線とは限らないので、「軸」ではなく「曲線」と呼ぶことにする('''座標線''')。なお、「曲線」という語は一般に「直線」を包含する。
:<math>r</math>曲線:<math>z</math>軸上の点を通り<math>z</math>軸に垂直な半直線。
:<math>\theta</math>曲線:<math>z</math>軸を法線とする平面内にあり、中心が<math>z</math>軸上にある円周。
:<math>z</math>曲線:<math>z</math>軸に平行な直線。
ここで、各曲線に沿った微小変化がどのように表されるか見ていく。
<math>\boldsymbol{f}: (r,\theta,z)\to(x,y,z)</math>とする。
<math>\boldsymbol{f}</math>全体の微小変化は全微分<math>d\boldsymbol{f}=\frac{\partial{(x,y,z)}}{\partial{(r,\theta,z)}} \begin{pmatrix} dr \\ d\theta \\ dz \end{pmatrix}</math>で表される。
上で求めた関係式より
:<math>\boldsymbol{f}\begin{pmatrix} r \\ \theta \\ z\end{pmatrix}=\begin{pmatrix} x \\ y \\ z \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} r\cos\theta \\ r\sin\theta \\ z \end{pmatrix}</math>
なので、
:<math>\frac{\partial{(x,y,z)}}{\partial{(r,\theta,z)}} = \begin{pmatrix} \frac{\partial}{\partial{r}}r\cos\theta & \frac{\partial}{\partial{\theta}}r\cos\theta & \frac{\partial}{\partial{z}}r\cos\theta \\ \frac{\partial}{\partial{r}}r\sin\theta & \frac{\partial}{\partial{\theta}}r\sin\theta & \frac{\partial}{\partial{z}}r\sin\theta \\ \frac{\partial}{\partial{r}}z & \frac{\partial}{\partial{\theta}}z & \frac{\partial}{\partial{z}}z \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} \cos\theta & -r\sin\theta & 0 \\ \sin\theta & r\cos\theta & 0 \\ 0 & 0 & 1 \end{pmatrix}</math>
よって
:<math>d\boldsymbol{f}=\begin{pmatrix} \cos\theta & -r\sin\theta & 0 \\ \sin\theta & r\cos\theta & 0 \\ 0 & 0 & 1 \end{pmatrix} \begin{pmatrix} dr \\ d\theta \\ dz \end{pmatrix}=\begin{pmatrix} \cos\theta \\ \sin \theta \\ 0 \end{pmatrix}dr + \begin{pmatrix} -\sin\theta \\ \cos\theta \\ 0 \end{pmatrix}rd\theta + \begin{pmatrix} 0 \\ 0 \\ 1 \end{pmatrix}dz </math>
再右辺の各項を<math>d\vec{r}, d\vec{\theta}, d\vec{z}</math>と書くことにすると、<math>|d\vec{r}|, |d\vec{\theta}|, |d\vec{z}|</math>はそれぞれ<math>dr, rd\theta, dz</math>とわかる。<math>r, \theta, z</math>を物理量として捉えたとき<math>d\theta</math>の単位はラジアン(無次元量)であり、<math>rd\theta</math>の単位はメートル(長さの次元1)なので、次元の整合性が取れる。
纏めると以下のようになる。
{| class="wikitable"
| ||style="text-align:center;"| <math>\boldsymbol{e}_x</math>成分 ||style="text-align:center;"| <math>\boldsymbol{e}_y</math>成分 ||style="text-align:center;"| <math>\boldsymbol{e}_z</math>成分 ||style="text-align:center;"| ノルム
|-
|style="text-align:center;"| <math>d\vec{r}</math> ||style="text-align:center;"| <math>\cos\theta dr</math> ||style="text-align:center;"| <math>\sin\theta dr</math> ||style="text-align:center;"| <math>0</math> ||style="text-align:center;"| <math>dr</math>
|-
|style="text-align:center;"| <math>d\vec{\theta}</math> ||style="text-align:center;"| <math>-r\sin\theta d\theta</math> ||style="text-align:center;"| <math>r\cos\theta d\theta</math> ||style="text-align:center;"| <math>0</math> ||style="text-align:center;"| <math>rd\theta</math>
|-
|style="text-align:center;"| <math>d\vec{z}</math> ||style="text-align:center;"| <math>0</math> ||style="text-align:center;"| <math>0</math> ||style="text-align:center;"| <math>1</math> ||style="text-align:center;"| <math>dz</math>
|}
ここで<math>d\vec{r}, d\vec{\theta}, d\vec{z}</math>は内積を取ればどの組も互いに直交することが容易にわかるので、この3つのベクトルは3次元ユークリッド空間の直交基底である。
そこで、それぞれのベクトルを正規化することで各軸曲線方向の基本ベクトルを得る。
:<math>\boldsymbol{e}_r = \frac{d\vec{r}}{dr} = \cos\theta \boldsymbol{e}_x + \sin\theta \boldsymbol{e}_y</math>
:<math>\boldsymbol{e}_\theta = \frac{d\vec{\theta}}{rd\theta} = -\sin\theta\boldsymbol{e}_x+\cos\theta\boldsymbol{e}_y</math>
:<math>\boldsymbol{e}_z=\frac{d\vec{z}}{dz}=\boldsymbol{e}_z</math>
これを一次変換の形式で表すと
:<math>\begin{pmatrix} \boldsymbol{e}_r \\ \boldsymbol{e}_\theta \\ \boldsymbol{e}_z \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} \cos\theta & \sin\theta & 0 \\ -\sin\theta & \cos\theta & 0 \\ 0 & 0 & 1 \end{pmatrix} \begin{pmatrix} \boldsymbol{e}_x \\ \boldsymbol{e}_y \\ \boldsymbol{e}_z \end{pmatrix}</math>
となる。
このときの表現行列を、座標系または基底ベクトルを変換することから'''座標変換行列'''又は'''基底変換行列'''という。場合によっては'''変換テンソル'''とも呼ぶ。
なお、この直交座標⇒円筒座標の座標変換行列は、<math>xyz</math>空間に於ける<math>z</math>軸まわりの回転行列に等しい。
逆基底変換はこの座標変換行列の逆行列を求めれば定式化できる。
回転行列は直交行列なので
:<math>\begin{pmatrix} \cos\theta & \sin\theta & 0 \\ -\sin\theta & \cos\theta & 0 \\ 0 & 0 & 1 \end{pmatrix} ^{-1}= {}^t \! \begin{pmatrix} \cos\theta & \sin\theta & 0 \\ -\sin\theta & \cos\theta & 0 \\ 0 & 0 & 1 \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} \cos\theta & -\sin\theta & 0 \\ \sin\theta & \cos\theta & 0 \\ 0 & 0 & 1 \end{pmatrix} </math>
であり、
:<math>\begin{pmatrix} \boldsymbol{e}_x \\ \boldsymbol{e}_y \\ \boldsymbol{e}_z \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} \cos\theta & -\sin\theta & 0 \\ \sin\theta & \cos\theta & 0 \\ 0 & 0 & 1 \end{pmatrix} \begin{pmatrix} \boldsymbol{e}_r \\ \boldsymbol{e}_\theta \\ \boldsymbol{e}_z \end{pmatrix}</math>
円筒座標系は、[[電磁気学]]の解析でよく使用される。
例えば、高校物理の公式<math>B(r)=\frac{\mu_0I}{\tau r}</math>は、円筒座標系を知っていれば「電流が<math>z</math>軸に平行であることから磁場は<math>z</math>方向に一葉且つ<math>\theta</math>方向に回転対称なので、<math>r</math>方向の項のみが寄与する」と理解される。
===極座標系===
高等学校までの地理で習ったように、球面上の位置は緯度<math>\theta</math>と経度<math>\phi</math>で定めることができる。
一般に三次元空間で球面上のある点の座標を定めるには、更に球の中心からの距離<math>r</math>が必要である。
このようにして定められる座標系を'''三次元極座標系'''(polar coordinate system in 3D)または'''球(面)座標系'''(spherical coordinate system)という。
xyz座標空間の点<math>\mathrm{P}(x, y, z)</math>の極座標表示を考える。
<math>r=|\overrightarrow{\mathrm{OP}}|=\sqrt{x^2+y^2+z^2}</math>は容易にわかる。
<math>\theta</math>は<math>z</math>軸からの'''天頂角'''(zenith angle)であり、<math>\overrightarrow{\mathrm{OP}}</math>の<math>z</math>軸への正射影ベクトルを<math>\overrightarrow{\mathrm{OH}}=\vec{h}</math>とすると<math>\tan\theta = \frac{|\vec{h}|}{z}</math>が成り立つ。<math>|\vec{h}|=\sqrt{x^2+y^2}</math>より、<math>\theta=\arctan \frac{\sqrt{x^2+y^2}}{z}</math>である。
<math>\phi</math>は<math>x</math>軸からの'''方位角'''(azimuth angle)であり、<math>\mathrm{P}</math>から<math>xy</math>平面に降ろした垂足<math>\mathrm{Q}</math>を考えると<math>\tan\phi=\frac{y}{x}</math>とわかる。よって、<math>\phi=\arctan\frac{y}{x}</math>である。
逆に、これを<math>\mathrm{P}(x, y, z)</math>に復元することを考える。
<math>\triangle\mathrm{OHP}</math>について<math>\angle\mathrm{HOP}=\theta</math>なので、<math>z=\overline{\mathrm{OH}}=r\cos\theta</math>。
また、<math>\triangle\mathrm{OPQ}</math>について<math>\angle\mathrm{OPQ}=\theta</math>なので、<math>\overline{\mathrm{OQ}}=r\sin\theta</math>。
よって<math>x=\overline{\mathrm{OQ}}\cos\phi=r\sin\theta\cos\phi, y=\overline{\mathrm{OQ}}\sin\phi=r\sin\theta\sin\phi</math>。
以上を纏めると、直交座標と球面座標の対応関係は
:<math>\begin{cases} x=r\sin\theta\cos\phi \\ y=r\sin\theta\sin\phi \\ z=r\cos\theta \end{cases} \iff \begin{cases} r=\sqrt{x^2+y^2+z^2} \\ \theta=\arctan\frac{\sqrt{x^2+y^2}}{z} \\ \phi=\arctan\frac{y}{x} \end{cases}</math>
一般に緯度は<math>-90^\circ \leqq \theta \leqq 90^\circ</math>、経度は<math>-180^\circ \leqq \phi \leqq 180^\circ</math>の範囲で表される(但し、符号の違いは東⇔西、南⇔北の違いである)。同様に、球面座標の天頂角<math>\theta</math>、方位角<math>\phi</math>は<math>\theta \in [-\frac{\pi}{4}, \frac{\tau}{4}], \phi \in [-\frac{\tau}{2}, \frac{\tau}{2}]</math>で考える。赤道面より下側(すなわち南半球)では<math>\theta<0</math>とする。
直交座標の<math>z</math>軸を基に極座標系の座標線を決定する。
:<math>r</math>曲線:原点を通る半直線。
:<math>\theta</math>曲線:原点中心で<math>z</math>軸上の一点から出る半円弧。
:<math>\phi</math>曲線:<math>z</math>軸を法線とする平面内で<math>z</math>軸上に中心を持つ円周。
各曲線に沿った微小変化は円柱座標系の場合と同様、ベクトル場の全微分を用いて
:<math>\begin{cases} d\vec{r}= \begin{pmatrix} \sin\theta\cos\phi \\ \sin\theta\sin\phi \\ \cos\theta \end{pmatrix} dr \\ d\vec{\theta}= \begin{pmatrix} \cos\theta\cos\phi \\ \cos\theta\sin\phi \\ -\sin\theta \end{pmatrix}rd\theta \\ d\vec{\phi} = \begin{pmatrix} -\sin\phi \\ \cos\phi \\ 0 \end{pmatrix} r\sin\theta d\phi \end{cases}</math>
と求まる。
これらは(内積の結果から)互いに直交するので、円柱座標の場合と同様の議論により
:<math>\begin{pmatrix} \sin\theta\cos\phi & \sin\theta\sin\phi & \cos\theta \\ \cos\theta\cos\phi & \cos\theta\sin\phi & -\sin\theta \\ -\sin\phi & \cos\phi & 0 \end{pmatrix}</math>
と変換テンソルが求まる。
これも直交行列であるので、逆変換テンソルは
:<math>\begin{pmatrix} \sin\theta\cos\phi & \cos\theta\cos\phi & \cos\phi \\ \sin\theta\sin\phi & \cos\theta\sin\phi & -\sin\phi \\ -\sin\theta & \cos\theta & 0 \end{pmatrix}</math>
と求まる。
球面座標系は、[[古典力学]]の解析でよく使用される。
例えば、赤道平面における角運動量保存則は<math>mr^2\frac{d\phi}{dt}=\mathrm{const}.</math>と表示されるが、これは<math>z</math>軸方向の角運動量を球面座標系の演算により取り出したものである。
球面座標系は特に機械制御に応用されている。
円柱座標系・球面座標系ともに各基底ベクトルが互いに直交しているので、そのことを明示して(且つ通常の直交座標系と区別して)'''直交曲線座標系'''(orthogonal curvilinear coordinate system)と呼ぶ場合がある。以下で扱う座標系たちも直交曲線座標系である。
===円環座標系===
===双極座標系===
===回転放物面座標系===
===放物柱座標系===
===回転楕円面座標系===
===楕円柱座標系===
===楕円体座標系===
==空間微分==
ここでは三次元ユークリッド空間で考える。
===勾配===
スカラー場<math>\varphi=\varphi(\boldsymbol{x})</math>が<math>x, y, z</math>の三変数関数であって<math>\varphi\in C^1</math>のとき、
:<math>\mathrm{grad}\,\varphi := \begin{pmatrix} \frac{\partial{\varphi}}{\partial{x}} \\ \frac{\partial{\varphi}}{\partial{y}} \\ \frac{\partial{\varphi}}{\partial{z}} \end{pmatrix}</math>
を<math>\varphi</math>の'''勾配'''(gradient)と定義する。
勾配の結果として得るベクトルを<math>\varphi</math>の'''勾配ベクトル'''ともいう。
勾配で定義される概念としては、電場が有名である。
:電位<math>\phi</math>に対する電場<math>\boldsymbol{E}</math>は
:<math>\boldsymbol{E}:=-\mathrm{grad}\,\phi</math>
勾配はベクトル量であるため、そのことを明示するため新たな演算子を導入する。
'''空間偏微分演算子'''(ハミルトン演算子)を
<math>\nabla:=\begin{pmatrix} \frac{\partial}{\partial{x}} \\ \frac{\partial}{\partial{y}} \\ \frac{\partial}{\partial{z}} \end{pmatrix}</math>
と定義する。
この演算子自体は偏微分作用素の対象を後接しないと意味を成さない。しかし、便宜的にベクトル量と考えてベクトルと同様の演算則が成り立つと見做す。そのため、この演算子に関する演算は[[w:記号の濫用]](symbol abuse)であることを註しておく。
<math>\nabla</math>の正式な読み方は'''ナブラ'''(nabla)であるが、<math>\Delta</math>(delta)を反転した形であることから'''エイトレッド'''(atled)とも読まれる。なお、ナブラの由来は「竪琴」を意味する古代ギリシャ語「νάβλα」である。
この演算子を用いれば勾配の表式は
:<math>\mathrm{grad}\,\varphi=\nabla\varphi</math>
となる。
<math>\varphi</math>はスカラー場なのでスカラー量であり、<math>\nabla</math>は便宜的にベクトル量と考えることから、その積<math>\nabla\varphi</math>はベクトル量のスカラー倍、すなわちベクトル量であることが見て取れる。
勾配はスカラー場に対する偏微分の結果を並べたベクトルであるため、偏微分の性質とベクトルの性質を組み合わせて以下が成り立つと判る。
#<math>\nabla(k\varphi+l\psi)=k\nabla\varphi+l\nabla\psi</math>(線型性)
#<math>\nabla(\varphi\psi)=(\nabla\varphi)\psi+\varphi(\nabla\psi)</math>(積の微分・ライプニッツ則)
#<math>\nabla\left(\frac{\varphi}{\psi}\right)=\frac{(\nabla\varphi)\psi-\varphi(\nabla\psi)}{\psi^2}</math>(商の微分)
#<math>\nabla(\varphi(\psi))=\frac{d\varphi(\psi)}{d\psi}\nabla\psi</math>(合成関数微分)
任意点に対して勾配ベクトルが非零であるスカラー場を'''正則'''なスカラー場という。
以下、正則なスカラー場に限って扱う。
等位面<math>\varphi(x, y, z)=k(\mathrm{const}.)</math>上の点<math>\mathrm{P}(x_0, y_0, z_0)</math>を考える。
:<math>\mathrm{P}</math>を通り等位面に拘束される曲線のベクトル表示を<math>\boldsymbol{r}=\boldsymbol{r}(t)</math>とする。
:等位面の方程式を<math>t</math>で両辺微分して
::<math>\frac{\partial{\varphi}}{\partial{x}}\frac{dx}{dt}+\frac{\partial{\varphi}}{\partial{y}}\frac{dy}{dt}+\frac{\partial{\varphi}}{\partial{z}}\frac{dz}{dt}=0</math>
:<math>t=t_0</math>のとき
::<math>\frac{\partial{\varphi}}{\partial{x}}x'(t_0)+\frac{\partial{\varphi}}{\partial{y}}y'(t_0)+\frac{\partial{\varphi}}{\partial{z}}z'(t_0)=0</math>
::<math>\nabla\varphi(\mathrm{P})\cdot\boldsymbol{r}'(t_0)=0</math>
::<math>\nabla\varphi(\mathrm{P})\perp\boldsymbol{r}'(t_0)</math>
ここで<math>\mathrm{P}</math>に於ける等位面の接平面は接ベクトル<math>\boldsymbol{r}'(t_0)</math>を含むため、<math>\nabla\varphi(\mathrm{P})</math>は点<math>\mathrm{P}</math>に於ける等位面の法線ベクトルである。
よって等位面の接平面の方程式は
:<math>\nabla\varphi(\mathrm{P})\cdot(\boldsymbol{x}-\overrightarrow{\mathrm{OP}})=0</math>
である。
スカラー場<math>\varphi=\varphi(\boldsymbol{x})</math>の全微分は
:<math>d\varphi=\frac{\partial{\varphi}}{\partial{x}}dx+\frac{\partial{\varphi}}{\partial{y}}dy+\frac{\partial{\varphi}}{\partial{z}}dz</math>
これをベクトルの内積とみると
:<math>=\begin{pmatrix} \frac{\partial{\varphi}}{\partial{x}} \\ \frac{\partial{\varphi}}{\partial{y}} \\ \frac{\partial{\varphi}}{\partial{z}} \end{pmatrix}\cdot\begin{pmatrix} dx \\ dy \\ dz \end{pmatrix}</math>
:<math>=\nabla\varphi\cdot d\boldsymbol{x}</math>
ここで変位ベクトル<math>d\boldsymbol{x}</math>を任意の方向を向いた単位ベクトル<math>\boldsymbol{e}</math>に拡張することを考えたい。
<math>\varphi(\mathrm{P})</math>に対して<math>\mathrm{P}</math>を始点とする<math>\boldsymbol{e}</math>方向の直線を考え、その上の点を<math>\mathrm{Q}</math>とする。
このとき、ベクトル変数<math>\boldsymbol{e}</math>による微分係数
:<math>\frac{\partial{\varphi}(\mathrm{P})}{\partial{\boldsymbol{e}}}=\lim_{\mathrm{Q\to P}}\frac{\varphi(\mathrm{Q})-\varphi(\mathrm{P})}{\overline{\mathrm{QP}}}</math>
を、<math>\varphi</math>の<math>\mathrm{P}</math>に於ける<math>\boldsymbol{e}</math>方向の'''方向微分係数'''と定義する。
方向微分係数はスカラー場に対し<math>\boldsymbol{e}</math>方向の変化率を与えるものと考えられる。そこで、方向微分係数が最大となる方向を考える。
:<math>\overrightarrow{\mathrm{PQ}}=t\boldsymbol{e}</math>と置く。
::<math>\overrightarrow{\mathrm{OQ}}=\begin{pmatrix} x_0+te_1 \\ y_0+te_2 \\ z_0+te_3 \end{pmatrix}</math>
::<math>\frac{\partial{\varphi}(\mathrm{P})}{\partial{\boldsymbol{e}}}=\lim_{t\to0}\frac{\varphi(x_0+te_1, y_0+te_2, z_0+te_3)-\varphi(x_0, y_0, z_0)}{t}</math>
:ここで<math>\Phi(t):=\varphi(x_0+te_1, y_0+te_2, z_0+te_3)</math>とすれば
::<math>=\lim_{t\to0}\frac{\Phi(t)-\Phi(0)}{t}</math>
::<math>=\frac{d\Phi(t)}{dt}</math>
::<math>=\frac{\partial{\varphi}(x_0, y_0, z_0)}{\partial{x}}\frac{d(x_0+te_1)}{dt}+\frac{\partial{\varphi}(x_0, y_0, z_0)}{\partial{y}}\frac{d(y_0+te_2)}{dt}+\frac{\partial{\varphi}(x_0, y_0, z_0)}{\partial{z}}\frac{d(z_0+te_3)}{dt}</math>
::<math>=\frac{\partial{\varphi}(\mathrm{P})}{\partial{x}}e_1+\frac{\partial{\varphi}(\mathrm{P})}{\partial{y}}e_2+\frac{\partial{\varphi}(\mathrm{P})}{\partial{z}}e_3</math>
::<math>=\nabla\varphi(\mathrm{P})\cdot\boldsymbol{e}</math>
よって、全微分の式の<math>d\boldsymbol{x}</math>をそのまま<math>\boldsymbol{e}</math>に取り替えたものが方向微分係数の表式である。
内積を書き下すと<math>\|\boldsymbol{e}\|=1</math>より
:<math>\frac{\partial{\varphi}(\mathrm{P})}{\partial{\boldsymbol{e}}}=\|\nabla\varphi(\mathrm{P})\|\cos\theta</math>
よって最大値をとるのは<math>\cos\theta=1</math>則ち'''<math>\boldsymbol{e}</math>が勾配方向のとき'''である。また、方向微分係数の最大値は'''勾配のノルム'''である。
このように、勾配はスカラー場の各点に於ける傾きを表す。これは最右辺の式が「各軸方向の傾きを表すベクトルの和」になっていることからも直観的にわかる。ここから、「gradient」の和訳として「勾配」が充当されたのは妥当である。
方向微分係数を'''方向導関数'''に拡張することを考える。
形式的には方向微分係数の定点<math>\mathrm{P}</math>を変数<math>\boldsymbol{x}</math>に置き換えればいいだけである。
:<math>\frac{\partial{\varphi}(\boldsymbol{x})}{\partial{\boldsymbol{e}}}:=\nabla\varphi(\boldsymbol{x})\cdot\boldsymbol{e}</math>
正式には極限を用いて
:<math>\frac{\partial{\varphi}(\boldsymbol{x})}{\partial{\boldsymbol{e}}}:=\lim_{t\to0}\frac{\varphi(\boldsymbol{x}+t\boldsymbol{e})-\varphi(\boldsymbol{x})}{t}</math>
と定義する。
内積を書き下すと
:<math>\frac{\partial{\varphi}(\boldsymbol{x})}{\partial{x}}e_1+\frac{\partial{\varphi}(\boldsymbol{x})}{\partial{y}}e_2+\frac{\partial{\varphi}(\boldsymbol{x})}{\partial{z}}e_3</math>
これを[[解析学基礎/多変数関数の微積分#極値]]で扱った方向偏微分作用素として書き直すと
:<math>\left(e_1\frac{\partial}{\partial{x}}+e_2\frac{\partial}{\partial{y}}+e_3\frac{\partial}{\partial{z}}\right)\varphi(\boldsymbol{x})</math>
:<math>=(\boldsymbol{e}\cdot\nabla)\varphi(\boldsymbol{x})</math>
となる。
則ち、形式的には空間偏微分演算子の微分方向ベクトルとの右内積が方向偏微分作用素である。
更に、多変数関数のテイラー二次近似は
:<math>f(\boldsymbol{x})\fallingdotseq f(\boldsymbol{a})+\nabla{f}(\boldsymbol{a})\cdot(\boldsymbol{x}-\boldsymbol{a})+\frac{1}{2}{}^t\!(\boldsymbol{x}-\boldsymbol{a})\mathbf{D}(\boldsymbol{x}-\boldsymbol{a})</math>
と書けることが判る。但し、<math>\mathbf{D}</math>はヘッセ行列である。
多変数解析で扱った停留点(臨界点)は<math>\nabla\varphi(\mathrm{P})=\boldsymbol{0}</math>なる点<math>\mathrm{P}</math>として正式に定義される。また、ラグランジュの未定乗数法に於ける連立方程式も勾配を用いれば<math>\nabla\varphi(\mathrm{P})=\lambda\nabla\psi(\mathrm{P})</math>と書き表される。
スカラー場の全微分は勾配で表せたが、同様にベクトル場の全微分をナブラを用いて表すことを考える。
ベクトル場の全微分は
:<math>d\boldsymbol{a}=\frac{\partial{(a_x,a_y,a_z)}}{\partial{(x,y,z)}} d\boldsymbol{x}</math>
で定義された。
ここで<math>n</math>次行列 <math>\mathbf{A}</math>と<math>n</math>項列ベクトル <math>\boldsymbol{a}</math>に対し、<math>(\mathbf{A} \circledast \boldsymbol{a})_{ij} = (\mathbf{A}_{ij}) a_i</math>となるような可換二項演算子 <math>\circledast</math>を定義する。これは本項独自の記法である。但し、<math>(\mathbf{P})_{ij}</math>は行列 <math>\mathbf{P}</math>の第ij成分を表す。
この記法を用いると、ヤコビ行列<math>\frac{\partial{(a_x,a_y,a_z)}}{\partial{(x,y,z)}}</math>は<math>\nabla \circledast \boldsymbol{a}</math>と表すことができる。
則ち、ベクトル場の全微分は
:<math>d\boldsymbol{a} = (\nabla \circledast \boldsymbol{a}) d\boldsymbol{x}</math>
と表される。
これを形式的に
:<math>\frac{\partial{\boldsymbol{a}}}{\partial{\boldsymbol{x}}}=\nabla \circledast \boldsymbol{a}</math>
と書き表すことができる。
則ち、ヤコビ行列はベクトル場のベクトル変数による導関数と見做せる。
ヤコビ行列はベクトル場の成分スカラー場に対する勾配ベクトルを行に並べたものという解釈もできるので、この考え方は自然である。
ここでベクトル場に対してスカラー場と同様に方向微分係数・方向導関数を考えると、
:<math>\frac{\partial{\boldsymbol{a}}}{\partial{\boldsymbol{v}}}=\frac{\partial{\boldsymbol{a}}}{\partial{\boldsymbol{x}}}\boldsymbol{v}</math>
が成り立つことが判る。
これもベクトル場の成分スカラー場に対する方向微分係数・方向導関数を列に並べたベクトルと解釈できる。
則ち、
:<math>\frac{\partial{\boldsymbol{a}}}{\partial{\boldsymbol{v}}}=(\nabla\circledast\boldsymbol{a})\boldsymbol{v}=(\boldsymbol{v}\cdot\nabla)\boldsymbol{a}</math>
である。
===発散===
ベクトル場<math>\boldsymbol{a}=\boldsymbol{a}(\boldsymbol{x})</math>が<math>x, y, z</math>の三変数関数であって<math>\boldsymbol{a}\in C^1</math>のとき、
:<math>\mathrm{div}\,\boldsymbol{a} := \frac{\partial{a_x}}{\partial{x}} + \frac{\partial{a_y}}{\partial{y}} + \frac{\partial{a_z}}{\partial{z}}</math>
を<math>\boldsymbol{a}</math>の'''発散'''(divergence)と定義する。
発散が用いられる概念としては、'''ガウスの法則'''が有名である。
:電荷密度<math>\rho</math>、電場<math>\boldsymbol{E}</math>、真空の誘電率<math>\varepsilon_0</math>として
:<math>\mathrm{div}\,\boldsymbol{E}=\frac{\rho}{\varepsilon_0}</math>
球面座標で考えることにより、この式の重要な性質「荷電粒子の座標を原点にとると原点以外では
<math>\mathrm{div}\,\boldsymbol{E}=0</math>」を証明することができる。
勾配と同様に発散をナブラで表すことを考えると、
:<math>\mathrm{div}\,\boldsymbol{a}=\nabla\cdot\boldsymbol{a}</math>
という表式を得る。
<math>\boldsymbol{a}</math>はベクトル場なのでベクトル量であり、<math>\nabla</math>は便宜的にベクトル量と考えることから、その内積<math>\nabla\cdot\boldsymbol{a}</math>はスカラー量であることが見て取れる。
発散に対しては以下が成り立つ。
#<math>\nabla\cdot(k\boldsymbol{a}+l\boldsymbol{b})=k\nabla\cdot\boldsymbol{a}+l\nabla\cdot\boldsymbol{b}</math>(線型性)
#<math>\nabla\cdot(\varphi\boldsymbol{a})=(\nabla\varphi)\cdot\boldsymbol{a}+\varphi\nabla\cdot\boldsymbol{a}</math>(積の微分・ライプニッツ則)
前者は内積の線型性より、後者は成分演算と勾配の定義より示される。
ヤコビ行列<math>\nabla\circledast\boldsymbol{a}</math>との関係を考える。
:<math>\nabla\circledast\boldsymbol{a}=\begin{pmatrix} \frac{\partial{\boldsymbol{a}}}{\partial{x}} & \frac{\partial{\boldsymbol{a}}}{\partial{y}} & \frac{\partial{\boldsymbol{a}}}{\partial{z}} \end{pmatrix}=\begin{pmatrix} \frac{\partial{a}_x}{\partial{x}} & \frac{\partial{a}_x}{\partial{y}} & \frac{\partial{a}_x}{\partial{z}} \\ \frac{\partial{a}_y}{\partial{x}} & \frac{\partial{a}_y}{\partial{y}} & \frac{\partial{a}_y}{\partial{z}} \\ \frac{\partial{a}_z}{\partial{x}} & \frac{\partial{a}_z}{\partial{y}} & \frac{\partial{a}_z}{\partial{z}} \end{pmatrix}</math>
ここで跡が発散そのものになっているので
:<math>\nabla\cdot\boldsymbol{a}=\mathrm{tr}(\nabla\circledast\boldsymbol{a})</math>
が成り立つ。
発散の物理的意味を考える。
:密度<math>\rho</math>が一定である流体の速度場<math>\boldsymbol{v}\in\mathbb{R}^3</math>に対し、微小直方体に出入りする流体の質量収支を考える。
:点<math>(x,y,z)</math>に於ける流速<math>\boldsymbol{v}(x,y,z)=(v_x,v_y,v_z)</math>、直方体の各辺の長さを<math>\delta x, \delta y, \delta z</math>とする。
:単位時間あたりに<math>yz</math>平面に平行な面を通過する流体の質量収支は流出量<math>-\rho v_x(x,y,z)\delta y\delta z</math>、流入量<math>\rho v_x(x+\delta x,y,z)\delta y\delta z</math>より
::<math>\rho(v_x(x+\delta x,y,z)-v_x(x,y,z))\delta y\delta z=\rho\frac{v_x(x+\delta x,y,z)-v_x(x,y,z)}{\delta x}\delta x\delta y\delta z</math>
:<math>\delta x\to0</math>の極限で
::<math>=\rho\frac{\partial{v_x}}{\partial{x}}dxdydz</math>
:他の面で考えると対称性から輪環の順に入れ替えた結果を得るので直方体全体では
::<math>\rho\left(\frac{\partial{v_x}}{\partial{x}}+\frac{\partial{v_y}}{\partial{y}}+\frac{\partial{v_z}}{\partial{z}}\right)dxdydz</math>
:よって単位体積当たりでは
::<math>\rho\nabla\cdot\boldsymbol{v}</math>
:を得る。
ここで質量を密度で割ると体積なので、<math>\nabla\cdot\boldsymbol{v}</math>は単位時間あたりの流体の体積の正味の流出率を表す。
この微小直方体の単位体積あたりで観測すると、発散が正であれば流体は膨脹して密度が下がり、負であれば圧縮されて密度が上がる。0であれば流体は膨脹も圧縮もしない。
発散が零であるベクトル場を'''非圧縮/湧出無し/管状/ソレノイダル ベクトル場'''(incompressible/solenoidal vector field)などと呼ぶ。
また、ベクトル場の発散を'''湧き出し'''(「沸き出し」とも書く)と呼ぶ場合もある。
ベクトル場の流線に沿う流れが流体の体積を保存する条件はベクトル場が非圧縮であることである。これを'''リウヴィルの定理'''という。これは多くの場合、[[解析力学]]のハミルトン形式で表示される。
位置ベクトル場<math>\boldsymbol{r}=\begin{pmatrix} x \\ y \\ z \end{pmatrix}</math>に対して<math>\nabla\cdot\frac{\boldsymbol{r}}{\|\boldsymbol{r}\|^n}</math>を考える。
:<math>\frac{\partial}{\partial{x}}\frac{1}{\|\boldsymbol{r}\|^n}=\frac{\partial{\left(\frac{1}{\|\boldsymbol{r}\|^n}\right)}}{\partial{\|\boldsymbol{r}\|}}\frac{\partial{\|\boldsymbol{r}\|}}{\partial{x}}=-\frac{n}{\|\boldsymbol{r}\|^n+1}\frac{x}{\sqrt{x^2+y^2+z^2}}=-\frac{nx}{\|\boldsymbol{r}\|^{n+2}}</math>
<math>y, z</math>も同様なので
:<math>\nabla\frac{1}{\|\boldsymbol{r}\|^n}=-\frac{n\boldsymbol{r}}{\|\boldsymbol{r}\|^{n+1}}</math>
よって発散のライプニッツ則から
:<math>\nabla\cdot\frac{\boldsymbol{r}}{\|\boldsymbol{r}\|^n}=\left(\nabla\frac{1}{\|\boldsymbol{r}\|^n}\right)\cdot\boldsymbol{r}+\frac{1}{\|\boldsymbol{r}\|^n}\nabla\cdot\boldsymbol{r}=-\frac{n\boldsymbol{r}\cdot\boldsymbol{r}}{\|\boldsymbol{r}\|^{n+2}}+\frac{1+1+1}{\|\boldsymbol{r}\|^n}=\frac{3-n}{\|\boldsymbol{r}\|^n}</math>
この結果から、<math>\boldsymbol{a}/\!\!/\boldsymbol{r}\land\|\boldsymbol{a}\|\propto \frac{1}{\|\boldsymbol{r}\|^2}\implies\nabla\cdot\boldsymbol{a}=0</math>(逆二乗則に従う場は非圧縮ベクトル場)が成り立つ。
ベクトル解析の黎明期では発散の逆符号で表される
:<math>\mathrm{conv}\,\boldsymbol{a}:=-\frac{\partial{a_x}}{\partial{x}} - \frac{\partial{a_y}}{\partial{y}} - \frac{\partial{a_z}}{\partial{z}}</math>
という量が用いられていた。これは'''吸い込み'''(convergence)と呼ばれる量である。
ベクトルが発明される以前、ベクトル演算に相当するものは[[多元数/四元数|四元数]]で記述されていた。純虚四元数同士の積をとると実部が現在で言う内積の-1倍、虚部が現在で言う外積に対応する。このことから、内積そのものである湧き出しではなく内積の-1倍である吸い込みが自然に出現する量として頻繁に扱われていたのである。
===回転===
回転運動は、以下の3つにより一意に定まる。
*回転軸の方向
*回転の速さ
*回転方向(軸に対して右回転か左回転か)
「回転方向」は暗黙の諒解として右手系の正の回転角で考える。すると、回転運動を表すのに必要な情報は「方向」と「速さ(=スカラー量)」のみとなる。
従って、'''任意の回転運動はベクトルで表示される'''(ベクトルの大きさは「回転の速さ」で定める)。このようなベクトルを'''角速度ベクトル'''という。
ベクトル場の'''回転'''(curl/rotation/rotor)を以下のように定義する。
:<math>\mathrm{curl} \, \boldsymbol{a} = \mathrm{rot} \, \boldsymbol{a} = \begin{pmatrix} \frac{\partial{a_z}}{\partial{y}}-\frac{\partial{a_y}}{\partial{z}} \\ \frac{\partial{a_x}}{\partial{z}}-\frac{\partial{a_z}}{\partial{x}} \\ \frac{\partial{a_y}}{\partial{x}}-\frac{\partial{a_x}}{\partial{y}} \end{pmatrix}</math>
<math>\mathrm{curl}</math>は理学系、<math>\mathrm{rot}</math>は工学系が好んで使用する。
<math>z</math>軸方向の成分について考える。
<math>z</math>軸方向の回転はフレミングの左手の法則から<math>xy</math>平面内の成分のみが寄与すると考えられる。<math>z</math>軸の正方向の回転を生むには、<math>x</math>軸方向の変化率を大きくして<math>y</math>軸方向の変化率を小さくすればよい。
ある軸方向の変化率とはその軸の変数に関する偏導関数のことであったので、回転のz成分を<math>\frac{\partial{X_y}}{\partial{x}}-\frac{\partial{X_x}}{\partial{y}}</math>とすれば満足する。
対称性より輪環の順で入れ替えても同様であるので、回転は上の式で表されるとわかる。
これはより厳密には後述の線積分を用いて説明することになるので、ここでは定性的な説明に留めた。
回転を用いた概念として、ファラデーの電磁誘導の法則が有名である。
:電場<math>\boldsymbol{E}</math>、磁束密度<math>\boldsymbol{B}</math>として
:<math>\mathrm{rot} \, \boldsymbol{E} = -\frac{\partial{\boldsymbol{B}}}{\partial{t}}</math>
流体の渦の記述にも応用されており、回転を'''渦度ベクトル'''とも呼ぶ。流体力学的な渦の定義は「速度場の回転」である。
回転が零ベクトルであるベクトル場を'''非回転的/渦無し/層状/ラメラー ベクトル場'''(irrotational/lamella vector field)などと呼ぶ。
勾配・発散と同様に空間偏微分演算子による表記を考える。
成分に着目すると外積の形式なので、
:<math>\mathrm{curl} \, \boldsymbol{a}= \nabla \times \boldsymbol{a}</math>
と表されることが判る。
ベクトル場はベクトル量であり、ナブラは便宜的にベクトル量と見做すことから、その外積である回転はベクトル量であることが見て取れる。
外積の性質から、回転は行列式
:<math>\det \begin{pmatrix} \boldsymbol{e}_x & \boldsymbol{e}_y & \boldsymbol{e}_z \\ \frac{\partial}{\partial{x}} & \frac{\partial}{\partial{y}} & \frac{\partial}{\partial{z}} \\ a_x & a_y & a_z \end{pmatrix}</math>
でも表示される。
回転に対しては以下が成り立つ。
#<math>\nabla\times(k\boldsymbol{a}+l\boldsymbol{b})=k\nabla\times\boldsymbol{a}+l\nabla\times\boldsymbol{b}</math>(線型性)
#<math>\nabla\times(\varphi\boldsymbol{a})=(\nabla\varphi)\times\boldsymbol{a}+\varphi\nabla\times\boldsymbol{a}</math>(積の微分・ライプニッツ則)
前者は外積の線型性より、後者は成分演算と勾配の定義より示される。
回転は常に角速度ベクトルと一致するとは限らない。そのため、必ずしも回転運動そのものを記述しない。
回転は、ヤコビ行列を用いると以下のように表される。
:<math>\mathrm{rot} \, \boldsymbol{a} = 2 \,\mathrm{axl} \left( \frac{\nabla \circledast \boldsymbol{a} - {}^t \! (\nabla \circledast \boldsymbol{a})}{2} \right)</math>
:ここで<math>\nabla \circledast \boldsymbol{a} - {}^t \! (\nabla \circledast \boldsymbol{a})</math>は反対称行列であり、<math>\mathrm{axl}</math>は反対称行列を軸ベクトルに移す写像である。
===ラプラシアン===
上で見てきた勾配・発散・回転はいずれも一階の偏微分作用素であった。
二階偏微分作用素のうち最もよく使われているのがスカラー場に対して勾配の発散をとる演算である。
:<math>\nabla\cdot(\nabla\varphi) = \mathrm{div}(\mathrm{grad}\,\varphi)</math>
ここで<math>(\nabla\cdot\nabla)\varphi</math>を計算してみると成分計算から上の<math>\nabla\cdot(\nabla\varphi)</math>に等しいことが容易に判る。則ち、発散作用素<math>\nabla\cdot\,\,</math>、勾配作用素<math>\nabla</math>、スカラー場<math>\varphi</math>の間に結合法則が成り立ってると見做せる。
そこで、<math>\nabla\cdot\nabla</math>を独立した演算子として考えることにする。
以下のように定義される演算子を'''ラプラス演算子'''(ラプラス作用素)という。
:<math>\text{∆}:=\nabla\cdot\nabla=\frac{\partial^2}{\partial{x}^2}+\frac{\partial^2}{\partial{y}^2}+\frac{\partial^2}{\partial{z}^2}</math>
二項目は[[w:記号の濫用]]により<math>\nabla^2</math>と書かれることもある。
但し、<math>\text{∆}</math>は通常のデルタ(Unicode文字名: GREEK CAPITAL LETTER DELTA, U+394)ではなく'''増分記号'''(Unicode文字名:INCREMENT, U+2206)である(が通常のデルタで書かれることが多い)。
ラプラス演算子を<math>C^2</math>級スカラー場に作用させる操作(及びその結果として得るスカラー場)を'''ラプラシアン'''(Laplacian)という。
:<math>\text{∆}\varphi=\frac{\partial^2{\varphi}}{\partial{x}^2}+\frac{\partial^2{\varphi}}{\partial{y}^2}+\frac{\partial^2{\varphi}}{\partial{z}^2}</math>
スカラー場のラプラシアンは各成分方向の曲率の和、すなわちスカラー場の各点に於ける突出・沈み込みの度合いを表す。
勾配・発散・回転・ラプラシアンを総称して'''空間微分'''と呼ぶ。
ラプラシアンは[[解析学基礎/偏微分方程式|偏微分方程式]]の記述に用いられている。
:'''ラプラス方程式'''・'''ポテンシャル方程式''':<math>\text{∆}\varphi=0</math>
:'''ポアソン方程式''':<math>\text{∆}\varphi=f</math>
:'''熱伝導方程式'''・'''拡散方程式''':<math>\text{∆}\psi=k\frac{\partial{\psi}}{\partial{t}}+g</math>
:'''波動方程式''':<math>\text{∆}\psi=\frac{1}{\nu^2}\frac{\partial^2{\psi}}{\partial{t}^2}</math>
:'''ヘルツホルム方程式''':<math>\text{∆}\varphi=-l^2\varphi</math>
ここで<math>\varphi=\varphi(x,y,z),\,f=f(x,y,z),\,\psi=\psi(x,y,z,t),\,k>0,\,g=g(x,y,z,t),\,\nu>0,\,l\in\mathbb{R}</math>である。
なお、ラプラス方程式の解を'''調和関数'''という。
<math>C^2</math>級ベクトル場のラプラシアンは以下のように定義される。
:<math>\text{∆}\boldsymbol{a}=\begin{pmatrix} \text{∆}a_x \\ \text{∆}a_y \\ \text{∆}a_z \end{pmatrix}</math>
ここでスカラー場と同様に考えて<math>\text{∆}\boldsymbol{a}=\nabla(\nabla\cdot\boldsymbol{a})</math>としたいところではあるが、これは一般には成り立たない。
実際には以下のように表示される。
:<math>\text{∆}\boldsymbol{a}=\nabla(\nabla\cdot\boldsymbol{a})-\nabla\times(\nabla\times\boldsymbol{a})=\mathrm{grad}(\mathrm{div}\,\varphi)-\mathrm{rot}(\mathrm{rot}\,\varphi)</math>
*証明
:対称性より<math>x</math>成分のみ考えても輪環の順に入れ替えれば他の成分を得る。
::<math>\nabla\cdot\boldsymbol{a}=\frac{\partial{a_x}}{\partial{x}}+\frac{\partial{a_y}}{\partial{y}}+\frac{\partial{a_z}}{\partial{z}}</math>
:より
::<math>\{\nabla(\nabla\cdot\boldsymbol{a})\}_x=\frac{\partial^2{a_x}}{\partial{x}^2}+\frac{\partial^2{a_y}}{\partial{x}\partial{y}}+\frac{\partial^2{a_z}}{\partial{x}\partial{z}}</math>
:また、
::<math>\nabla\times\boldsymbol{a}=\begin{pmatrix} \frac{\partial{a_z}}{\partial{y}}-\frac{\partial{a_y}}{\partial{z}} \\ \frac{\partial{a_x}}{\partial{z}}-\frac{\partial{a_z}}{\partial{x}} \\ \frac{\partial{a_y}}{\partial{x}}-\frac{\partial{a_x}}{\partial{y}} \end{pmatrix}</math>
:より
::<math>\{\nabla\times(\nabla\times\boldsymbol{a})\}_x=\frac{\partial}{\partial{y}}\left(\frac{\partial{a_y}}{\partial{x}}-\frac{\partial{a_x}}{\partial{y}}\right)-\frac{\partial}{\partial{z}}\left(\frac{\partial{a_x}}{\partial{z}}-\frac{\partial{a_z}}{\partial{x}}\right)</math>
::<math>=\frac{\partial^2{a_y}}{\partial{y}\partial{x}}-\frac{\partial^2{a_x}}{\partial{y}^2}+\frac{\partial^2{a_z}}{\partial{z}\partial{x}}-\frac{\partial^2{a_x}}{\partial{z}^2}</math>
:<math>\boldsymbol{a}\in{C^2}</math>より偏微分は可換(シュワルツの定理)なので、<math>\{\nabla(\nabla\cdot\boldsymbol{a})-\nabla\times(\nabla\times\boldsymbol{a})\}_x</math>を計算すると
::<math>\left(\frac{\partial^2{a_x}}{\partial{x}^2}+\frac{\partial^2{a_y}}{\partial{x}\partial{y}}+\frac{\partial^2{a_z}}{\partial{x}\partial{z}}\right)-\left(\frac{\partial^2{a_y}}{\partial{x}\partial{y}}-\frac{\partial^2{a_x}}{\partial{y}^2}+\frac{\partial^2{a_z}}{\partial{x}\partial{z}}-\frac{\partial^2{a_x}}{\partial{z}^2}\right)</math>
::<math>=\frac{\partial^2{a_x}}{\partial{x}^2}+\frac{\partial^2{a_x}}{\partial
{y}^2}+\frac{\partial^2{a_x}}{\partial{z}^2}</math>
::<math>=\text{∆}a_x</math>//
ここから判るように、ベクトル場<math>\boldsymbol{a}</math>に対して<math>\text{∆}=\nabla(\nabla\cdot)</math>が成り立つ条件は<math>\nabla\times(\nabla\times\boldsymbol{a})=\boldsymbol{0}</math>である。<math>\boldsymbol{a}</math>が非回転ベクトル場であれば回転が零ベクトルなのでこの形を必ず満足する。但し、この形を満たすベクトル場が全て非回転的ベクトル場であるとは限らない。
則ち、外積の反復と同様に回転演算子<math>\nabla\times\,\,</math>の反復に対して結合法則は不成立である。
歴史的な四元数表記では発散の代わりに吸い込みが用いられていたことからラプラシアンも現在とは反対の符号で計算されていた。ラプラシアンはユークリッド空間に限らず定義可能であるが、その中でも特に重要なのは[[特殊相対論#マクスウェルの方程式|相対性理論]]で用いられる'''ダランベール演算子'''(ダランベルシアン、クアブラ、波動演算子)である。
:<math>\text{⧠}:=\frac{1}{\nu^2}\frac{\partial^2}{\partial{t^2}}-\text{∆}</math>
これは標準座標系で表されるミンコフスキー空間上のラプラシアンに相当する。<math>\text{∆}</math>は上で扱ってきた通常のラプラシアンのことである。
これを用いると波動方程式は<math>\text{⧠}\psi=0</math>というミンコフスキー空間上のラプラス方程式と解釈される。つまり、波動関数はミンコフスキー空間で見れば調和関数なのである。
また、[[w:クライン=ゴルドン方程式]]と呼ばれる偏微分方程式は
:<math>\text{⧠}\psi=-\mu^2\psi</math>
というミンコフスキー空間上のヘルツホルム方程式と解釈される。
===微分定理===
ここでは、ナブラに関する公式を見ていく。以下、シュワルツの定理が成り立っているものとする。また、成分計算をすればいいだけなので証明は省略する。
既に紹介したものを以下に並べる。
#勾配
#:<math>\nabla(k\varphi+l\psi)=k\nabla\varphi+l\nabla\psi</math>
#:<math>\nabla(\varphi\psi)=(\nabla\varphi)\psi+\varphi(\nabla\psi)</math>(
#:<math>\nabla\left(\frac{\varphi}{\psi}\right)=\frac{(\nabla\varphi)\psi-\varphi(\nabla\psi)}{\psi^2}</math>
#:<math>\nabla(\varphi(\psi))=\frac{d\varphi(\psi)}{d\psi}\nabla\psi</math>
#:<math>\frac{\partial{\varphi}}{\partial{\boldsymbol{e}}}=(\boldsymbol{e}\cdot\nabla)\varphi</math>
#:<math>\frac{\partial{\boldsymbol{a}}}{\partial{\boldsymbol{v}}}=(\nabla\circledast\boldsymbol{a})\boldsymbol{v}=(\boldsymbol{v}\cdot\nabla)\boldsymbol{a}</math>
#発散
#:<math>\nabla\cdot(k\boldsymbol{a}+l\boldsymbol{b})=k\nabla\cdot\boldsymbol{a}+l\nabla\cdot\boldsymbol{b}</math>
#:<math>\nabla\cdot(\varphi\boldsymbol{a})=(\nabla\varphi)\cdot\boldsymbol{a}+\varphi\nabla\cdot\boldsymbol{a}</math>
#:<math>\nabla\cdot\boldsymbol{a}=\mathrm{tr}(\nabla\circledast\boldsymbol{a})</math>
#回転
#:<math>\nabla\times(k\boldsymbol{a}+l\boldsymbol{b})=k\nabla\times\boldsymbol{a}+l\nabla\times\boldsymbol{b}</math>
#:<math>\nabla\times(\varphi\boldsymbol{a})=(\nabla\varphi)\times\boldsymbol{a}+\varphi\nabla\times\boldsymbol{a}</math>
#:<math>\nabla\times\boldsymbol{a} = 2 \,\mathrm{axl} \left( \frac{\nabla \circledast \boldsymbol{a} - {}^t \! (\nabla \circledast \boldsymbol{a})}{2} \right)</math>
#ラプラシアン
#:<math>\text{∆}\varphi=\nabla\cdot(\nabla\varphi)</math>
#:<math>\text{∆}\boldsymbol{a}=\nabla(\nabla\cdot\boldsymbol{a})-\nabla\times(\nabla\times\boldsymbol{a})</math>
二つのベクトル場<math>\boldsymbol{a}, \boldsymbol{b}</math>の内積・外積に対してそれぞれ一階の空間微分を考えてみる。
<math>\boldsymbol{a}\cdot\boldsymbol{b}</math>はスカラー量なので勾配のみ考えられる。
:<math>\nabla(\boldsymbol{a}\cdot\boldsymbol{b})=(\nabla\circledast\boldsymbol{a})\boldsymbol{b}+(\nabla\circledast\boldsymbol{b})\boldsymbol{a}+\boldsymbol{a}\times(\nabla\times\boldsymbol{b})+\boldsymbol{b}\times(\nabla\times\boldsymbol{a})</math>
<math>\boldsymbol{a}\times\boldsymbol{b}</math>はベクトル量なので発散・回転のみ考えられる。
:<math>\nabla\cdot(\boldsymbol{a}\times\boldsymbol{b})=\boldsymbol{b}\cdot(\nabla\times\boldsymbol{a})-\boldsymbol{a}\cdot(\nabla\times\boldsymbol{b})</math>
:<math>\nabla\times(\boldsymbol{a}\times\boldsymbol{b})=(\nabla\circledast\boldsymbol{a})\boldsymbol{b}-(\nabla\circledast\boldsymbol{b})\boldsymbol{a}+\boldsymbol{a}(\nabla\cdot\boldsymbol{b})-\boldsymbol{b}(\nabla\cdot\boldsymbol{a})</math>
次に、一階の空間微分の結果に対して更なる一階の空間微分を考えてみる。
スカラー場の勾配はベクトル量なので発散・回転のみ考えられる。
:<math>\nabla\cdot(\nabla\varphi)=\text{∆}\varphi</math>
:<math>\nabla\times(\nabla\varphi)=\boldsymbol{0}</math>
ベクトル場の発散はスカラー量なので勾配のみ考えられる。
:<math>\nabla(\nabla\cdot\boldsymbol{a})=\text{∆}\boldsymbol{a}+\nabla\times(\nabla\times\boldsymbol{a})</math>
ベクトル場の回転はベクトル量なので発散・回転のみ考えられる。
:<math>\nabla\cdot(\nabla\times\boldsymbol{a})=0</math>
:<math>\nabla\times(\nabla\times\boldsymbol{a})=\nabla(\nabla\cdot\boldsymbol{a})-\text{∆}\boldsymbol{a}</math>
則ち、勾配・発散・回転はどの組み合わせでも交換法則が成り立たない。
一階の空間微分の結果に対してラプラシアンを考えてみる。
:<math>\text{∆}(\nabla\varphi)=\nabla(\text{∆}\varphi)</math>
:<math>\text{∆}(\nabla\cdot\boldsymbol{a})=\nabla\cdot(\text{∆}\boldsymbol{a})</math>
:<math>\text{∆}(\nabla\times\boldsymbol{a})=\nabla\times(\text{∆}\boldsymbol{a})</math>
ラプラシアンはスカラー性・ベクトル性を保存するので、演算が破綻する箇所はない。
則ち、ラプラシアンは勾配・発散・回転との組み合わせに対して交換法則が成り立つ。
:<math>\text{∆}\nabla=\nabla\text{∆},\quad\text{∆}(\nabla\cdot)=(\nabla\cdot)\text{∆},\quad\text{∆}(\nabla\times)=(\nabla\times)\text{∆}</math>
<math>\boldsymbol{a}\times\boldsymbol{b}</math>及び<math>\nabla\times\boldsymbol{a}</math>の発散・回転は三重積の形であった。
スカラー三重積・ベクトル三重積にナブラを様々な組み合わせで入れてその結果がどうなるか見ていく。
:<math>\boldsymbol{a}\cdot(\nabla\times\boldsymbol{b})</math>
:<math>\boldsymbol{a}\times(\nabla\times\boldsymbol{b})</math>
はそのまま計算すればいいので公式化する必要が無い。
:<math>\boldsymbol{a}\cdot(\boldsymbol{b}\times\nabla)</math>
:<math>\boldsymbol{a}\times(\boldsymbol{b}\times\nabla)</math>
:<math>\nabla\cdot(\boldsymbol{a}\times\nabla)</math>
:<math>\nabla\times(\boldsymbol{a}\times\nabla)</math>
は偏微分作用素の対象を後接してないので通常の演算としては扱えない。
:<math>\boldsymbol{a}\cdot(\nabla\times\nabla)</math>
:<math>\boldsymbol{a}\times(\nabla\times\nabla)</math>
:<math>\nabla\cdot(\nabla\times\nabla)</math>
:<math>\nabla\times(\nabla\times\nabla)</math>
は同じものの外積をとってるので当然<math>0, \boldsymbol{0}</math>である。<br>
また、三重積の公式はナブラを代入した時点で破綻する。
次に、スカラー四重積・ベクトル四重積に対しても同様のことを考える。
:<math>(\nabla\times\boldsymbol{a})\cdot(\boldsymbol{b}\times\boldsymbol{c})</math>
:<math>(\nabla\times\boldsymbol{a})\cdot(\boldsymbol{b}\times\boldsymbol{c})</math>
:<math>(\boldsymbol{a}\times\boldsymbol{b})\cdot(\nabla\times\boldsymbol{c})</math>
:<math>(\boldsymbol{a}\times\boldsymbol{b})\times(\nabla\times\boldsymbol{c})</math>
:<math>(\nabla\times\boldsymbol{a})\cdot(\nabla\times\boldsymbol{b})</math>
:<math>(\nabla\times\boldsymbol{a})\times(\nabla\times\boldsymbol{b})</math>
はそのまま計算すれば良いので公式化する必要が無い。
:<math>(\boldsymbol{a}\times\boldsymbol{b})\cdot(\boldsymbol{c}\times\nabla)</math>
:<math>(\boldsymbol{a}\times\boldsymbol{b})\times(\boldsymbol{c}\times\nabla)</math>
:<math>(\nabla\times\boldsymbol{a})\cdot(\boldsymbol{b}\times\nabla)</math>
:<math>(\nabla\times\boldsymbol{a})\times(\boldsymbol{b}\times\nabla)</math>
:<math>(\boldsymbol{a}\times\nabla)\cdot(\boldsymbol{b}\times\nabla)</math>
:<math>(\boldsymbol{a}\times\nabla)\times(\boldsymbol{b}\times\nabla)</math>
は偏微分作用素の対象を後接してないので通常の演算としては扱えない。
:<math>(\nabla\times\nabla)\cdot(\boldsymbol{a}\times\boldsymbol{b})</math>
:<math>(\nabla\times\nabla)\times(\boldsymbol{a}\times\boldsymbol{b})</math>
:<math>(\boldsymbol{a}\times\boldsymbol{b})\cdot(\nabla\times\nabla)</math>
:<math>(\boldsymbol{a}\times\boldsymbol{b})\times(\nabla\times\nabla)</math>
及びナブラを三個以上含むものは同じものの外積をとってるので当然<math>0, \boldsymbol{0}</math>である。
故に、ここで問題になるのは
:<math>(\boldsymbol{a}\times\nabla)\cdot(\boldsymbol{b}\times\boldsymbol{c})</math>
:<math>(\boldsymbol{a}\times\nabla)\times(\boldsymbol{b}\times\boldsymbol{c})</math>
:<math>(\boldsymbol{a}\times\nabla)\cdot(\nabla\times\boldsymbol{b})</math>
:<math>(\boldsymbol{a}\times\nabla)\times(\nabla\times\boldsymbol{b})</math>
の扱いである。
これらには以下の公式が成り立つ。
:<math>(\boldsymbol{a}\times\nabla)\cdot(\boldsymbol{b}\times\boldsymbol{c})=\boldsymbol{a}\cdot\{\nabla\times(\boldsymbol{b}\times\boldsymbol{c})\}</math>
:<math>(\boldsymbol{a}\times\nabla)\times(\boldsymbol{b}\times\boldsymbol{c})=[\{\boldsymbol{b}\cdot(\nabla\times\boldsymbol{c})\}-\{\boldsymbol{c}\cdot(\nabla\times\boldsymbol{b})\}]\boldsymbol{a}+{}^t\!\{\nabla\circledast(\boldsymbol{b}\times\boldsymbol{c})\}\boldsymbol{a}</math>
:<math>(\boldsymbol{a}\times\nabla)\cdot(\nabla\times\boldsymbol{b})=\boldsymbol{a}\cdot\{\nabla\times(\nabla\times\boldsymbol{b})\}</math>
:<math>(\boldsymbol{a}\times\nabla)\times(\nabla\times\boldsymbol{b})={}^t\!\{\nabla\circledast(\nabla\times\boldsymbol{b})\}\boldsymbol{a}</math>
===ポテンシャル論===
ベクトル場<math>\boldsymbol{a}\in C^1</math>に対して<math>\boldsymbol{a}=\mathrm{grad}\,\varphi</math>を満たすスカラー場<math>\varphi\in C^2</math>が存在するならば、上で扱った公式より<math>\mathrm{rot}(\mathrm{grad}\,\varphi)=\boldsymbol{0}</math>である。
逆に、ベクトル場<math>\boldsymbol{a}\in C^1</math>が<math>\mathrm{rot}\,\boldsymbol{a}=\boldsymbol{0}</math>を満たすならば<math>\boldsymbol{a}=\mathrm{grad}\,\varphi</math>となるスカラー場<math>\varphi\in C^2</math>はどのようなときに存在するのであろうか?
ここで<math>\mathrm{rot}\,\boldsymbol{a}=\boldsymbol{0}</math>は成分表示すれば
:<math>\begin{cases} \frac{\partial{a}_z}{\partial{y}}-\frac{\partial{a_y}}{\partial{z}}=0 \\ \frac{\partial{a}_x}{\partial{z}}-\frac{\partial{a_z}}{\partial{x}}=0 \\ \frac{\partial{a_y}}{\partial{x}}-\frac{\partial{a_x}}{\partial{y}}=0 \end{cases}</math>
という一階線型連立偏微分方程式となる。
この連立偏微分方程式は領域<math>D=\mathrm{dom}\,\boldsymbol{a}</math>上で解くことになるので、解が<math>\boldsymbol{a}=\mathrm{grad}\,\varphi</math>を満たすかは領域<math>D</math>がどのような形状をしているかに依存する。
そして、その形状を具体的に与えるのが次の定理である。
{{定理|(ポアンカレの補題1)}}
領域<math>D\subset\mathbb{R}^3</math>とベクトル場<math>\boldsymbol{a}\in C^1(D)</math>に対して
:<math>\mathrm{rot}\,\boldsymbol{a}=\boldsymbol{0} \iff \exist \varphi\in C^2(D),\quad \mathrm{grad}\,\varphi=\boldsymbol{a} </math>
となるための十分条件は<math>D</math>が単連結であることである。
{{定理終わり}}
証明は後述する。
この<math>\varphi</math>を<math>\boldsymbol{a}</math>の'''スカラーポテンシャル'''(scalar potential)といい、スカラーポテンシャルを有するベクトル場を'''保存的ベクトル場'''(保存場、conservative vector field)という。
保存的ベクトル場に対して実際にスカラーポテンシャルを構成することを考える。簡単の為に、定義域は直方体領域(あるいは三次元ユークリッド空間全体)とする。
:<math>\mathrm{grad}\,\varphi=\boldsymbol{a},\quad\mathrm{rot}\,\boldsymbol{a}=\boldsymbol{0}</math>を連立偏微分方程式に書き下して
::<math>\begin{cases} \frac{\partial{\varphi}}{\partial{x}}=a_x \\ \frac{\partial{\varphi}}{\partial{y}}=a_y \\ \frac{\partial{\varphi}}{\partial{z}}=a_z \end{cases},\quad\begin{cases} \frac{\partial{a}_z}{\partial{y}}=\frac{\partial{a_y}}{\partial{z}} \\ \frac{\partial{a}_x}{\partial{z}}=\frac{\partial{a_z}}{\partial{x}} \\ \frac{\partial{a_y}}{\partial{x}}=\frac{\partial{a_x}}{\partial{y}} \end{cases}</math>
:<math>\frac{\partial{\varphi}}{\partial{x}}=a_x(x,y,z)</math>は直接積分形偏微分方程式なので両辺を<math>x</math>で偏積分して
::<math>\varphi(x,y,z)=\int_m^x a_x(x,y,z) dx+g(y,z)</math>・・・(1)
:これを<math>y</math>で偏微分すると
::<math>\frac{\partial{\varphi}}{\partial{y}}=\frac{\partial}{\partial{y}}\int_m^x a_x(x,y,z)dx+\frac{\partial{g}}{\partial{y}}</math>
:ここでライプニッツの積分法則を適用して
::<math>=\int_m^x \frac{\partial{a_x}}{\partial{y}}dx+\frac{\partial{g}}{\partial{y}}</math>
:更に回転の条件から
::<math>=\int_m^x \frac{\partial{a_y}}{\partial{x}}dx+\frac{\partial{g}}{\partial{y}}</math>
:よって偏微分に関する微分積分学の基本定理より
::<math>=a_y(x,y,z)-a_y(m,y,z)+\frac{\partial{g}}{\partial{y}}</math>
:これが<math>a_y(x,y,z)</math>に等しいので
::<math>\frac{\partial{g}}{\partial{y}}=a_y(m,y,z)</math>
:これは<math>g(y, z)</math>が<math>x</math>の関数でないことに適する。
:両辺を<math>y</math>で偏積分して
::<math>g(y, z)=\int_n^y a_y(m,y,z)dy+h(z)</math>
:これを(1)に代入して
::<math>\varphi(x,y,z)=\int_m^x a_x(x,y,z)dx+\int_n^y a_y(m,y,z)dy+h(z)</math>・・・(2)
:これを<math>z</math>で偏微分すると
::<math>\frac{\partial{\varphi}}{\partial{z}}=\frac{\partial}{\partial{z}}\left(\int_m^x a_x(x,y,z)dx+\int_n^y a_y(m,y,z)dy\right)+\frac{\partial{h}}{\partial{z}}</math>
:ここでライプニッツの積分法則を適用して
::<math>=\left(\int_m^x\frac{\partial{a_x(x,y,z)}}{\partial{z}}dx+\int_n^y\frac{\partial{a_y(m,y,z)}}{\partial{z}}dy\right)+\frac{dh}{dz}</math>
:更に回転の条件から
::<math>=\left(\int_m^x\frac{\partial{a_z(x,y,z)}}{\partial{x}}dx+\int_n^y\frac{\partial{a_z(m,y,z)}}{\partial{y}}dy\right)+\frac{dh}{dz}</math>
:よって偏微分に関する微分積分学の基本定理より
::<math>=a_z(x,y,z)-a_z(m,y,z)+a_z(m,y,z)-a_z(m,n,z)+\frac{dh}{dz}</math>
::<math>=a_z(x,y,z)-a_z(m,n,z)+\frac{dh}{dz}</math>
:これが<math>a_z(x,y,z)</math>に等しいので
::<math>\frac{dh}{dz}=a_z(m,n,z)</math>
:これは<math>h(z)</math>が<math>x, y</math>の関数でないことに適する。
:両辺を<math>z</math>で常積分して
::<math>h(z)=\int_l^z a_z(m,n,z)dz+C</math>
:これを(2)に代入して
::<math>\varphi(x,y,z)=\int_m^x a_x(x,y,z)dx+\int_n^y a_y(m,y,z)dy+\int_l^z a_z(m,n,z)dz+C</math>//
ここで最後の積分定数<math>C</math>は勾配をとるときに消える。更に言うと、単連結領域では偏微分方程式の解の一意性よりスカラーポテンシャルは積分定数の違いを除いて一意に定まる。よって、スカラーポテンシャルは平行移動を同一視する同値類として与えられることになる。
ベクトル場<math>\boldsymbol{a}\in C^1</math>に対して<math>\boldsymbol{a}=\mathrm{rot}\,\boldsymbol{A}</math>を満たすベクトル場<math>\boldsymbol{A}\in C^2</math>が存在するならば、上で扱った公式より<math>\mathrm{div}(\mathrm{rot}\,\boldsymbol{A})=0</math>である。
逆に、ベクトル場<math>\boldsymbol{a}\in C^1</math>が<math>\mathrm{div}\,\boldsymbol{a}=0</math>を満たすならば<math>\boldsymbol{a}=\mathrm{rot}\,\boldsymbol{A}</math>となるスカラー場<math>\boldsymbol{A}\in C^2</math>はどのようなときに存在するのであろうか?
これも同様に以下の定理で与えられる。
{{定理|(ポアンカレの補題2)}}
領域<math>D\subset\mathbb{R}^3</math>とベクトル場<math>\boldsymbol{a}\in C^1(D)</math>に対して
:<math>\mathrm{div}\,\boldsymbol{a}=0 \iff \exist \boldsymbol{A}\in C^2(D),\quad \mathrm{rot}\,\boldsymbol{A}=\boldsymbol{a} </math>
となるための十分条件は<math>D</math>が'''可縮'''であることである。
{{定理終わり}}
証明は後述する。
ここで、集合が可縮とは「全体を1点に退化するような連続変形が可能である」ことを言う。可縮な集合は単連結である。可縮条件はより弱めることができるが、ホモトピーやコホモロジーの概念が必要である
この<math>\varphi</math>を<math>\boldsymbol{a}</math>の'''ベクトルポテンシャル'''(vector potential)という。スカラーポテンシャルと異なり、「ベクトルポテンシャルを有するベクトル場」を指す特別な呼称は(数学界一般に認知されたものとしては)存在しない。「ソレノイダル場」などを用いる派閥もあるが、単に「発散が0であるベクトル場」を指す用法が強いのであまり広まっていない。
ベクトルポテンシャルを有するベクトル場に対して実際にベクトルポテンシャルを構成することを考える。簡単の為に、定義域は直方体領域(あるいは三次元ユークリッド空間全体)とする。
:<math>\mathrm{rot}\,\boldsymbol{A}=\boldsymbol{a},\quad\mathrm{div}\,\boldsymbol{a}=0</math>を連立偏微分方程式に書き下して
::<math>\begin{cases} \frac{\partial{A}_z}{\partial{y}}-\frac{\partial{A_y}}{\partial{z}}=a_x \\ \frac{\partial{A}_x}{\partial{z}}-\frac{\partial{A_z}}{\partial{x}}=a_y \\ \frac{\partial{A_y}}{\partial{x}}-\frac{\partial{A_x}}{\partial{y}}=a_z \end{cases},\quad \frac{\partial{a_x}}{\partial{x}}+\frac{\partial{a_y}}{\partial{y}}+\frac{\partial{a_z}}{\partial{z}} =0</math>
:第一式より
::<math>\frac{\partial{A_z}}{\partial{y}}=a_x+\frac{\partial{A_y}}{\partial{z}}</math>
:<math>y</math>で偏積分して
::<math>A_z = \int_n^y \left(a_x+\frac{\partial{A_y}}{\partial{z}}\right)dy+f(x,z)</math>
:ライプニッツの積分法則より
::<math>=\int_n^y a_xdy + \frac{\partial}{\partial{z}}\int_n^y A_y dy+f(x,z)</math>・・・(3)
:第三式より
::<math>\frac{\partial{A_x}}{\partial{y}}=\frac{\partial{A_y}}{\partial{x}}-a_z</math>
:<math>y</math>で偏積分して
::<math>A_x=\int_n^y \left(\frac{\partial{A_y}}{\partial{x}}-a_z\right)dy+g(x, z)</math>
:ライプニッツの積分法則より
::<math>=\frac{\partial{}}{\partial{x}}\int_n^y A_y dy - \int_n^y a_zdy+g(x,z)</math>
:これと(3)を第二式に代入して
::<math>a_y=\frac{\partial}{\partial{z}}\left(\frac{\partial{}}{\partial{x}}\int_n^y A_y dy - \int_n^y a_zdy+g(x,z)\right)-\frac{\partial}{\partial{x}}\left(\int_n^y a_xdy + \frac{\partial}{\partial{z}}\int_n^y A_y dy+f(x,z)\right)</math>
::<math>=\frac{\partial^2}{\partial{z}\partial{x}}\int_n^yA_ydy-\frac{\partial}{\partial{z}}\int_n^y a_z dy+\frac{\partial{g}}{\partial{z}}-\frac{\partial}{\partial{x}}\int_n^y a_x dy-\frac{\partial^2}{\partial{x}\partial{z}}\int_n^y A_y dy-\frac{\partial{f}}{\partial{x}}</math>
::<math>=\frac{\partial{g}}{\partial{z}}-\frac{\partial{f}}{\partial{x}}-\int_n^y \left(\frac{\partial{a_z}}{\partial{z}}+\frac{\partial{a_x}}{\partial{x}}\right)dy</math>
:よって
::<math>\frac{\partial{g}}{\partial{z}}-\frac{\partial{f}}{\partial{x}}=a_y+\int_n^y \left(\frac{\partial{a_x}}{\partial{x}}+\frac{\partial{a_z}}{\partial{z}}\right) dy</math>・・・(4)
:この右辺を<math>h(x, y, z)</math>とおくと
::<math>\frac{\partial{h}}{\partial{y}}=\frac{\partial{a_x}}{\partial{x}}+\frac{\partial{a_y}}{\partial{y}}+\frac{\partial{a_z}}{\partial{z}}=0</math>
:なので<math>h(x,y,z)</math>は<math>y</math>に依存しない<math>h(x,z)</math>である。
:これは(4)の左辺が<math>y</math>に依存しないことと整合する。
:故に(4)は
::<math>\frac{\partial{g}}{\partial{z}}-\frac{\partial{f}}{\partial{x}}=h(x,z)</math>
:という二変数の偏微分方程式に落ちる。
:この偏微分方程式は例えば<math>f(x,z)=0, g(x,z)=\int_l^z h(x,z)dz</math>のような特殊解を持つ。
:このような特殊解によって構成された元の方程式の解を<math>\boldsymbol{A}_0</math>とする。
:一般解<math>\boldsymbol{A}</math>と特殊解との差を<math>\boldsymbol{B}</math>と置くとその回転は回転の線型性より<math>\boldsymbol{0}</math>なので
::<math>\begin{cases} \frac{\partial{B}_z}{\partial{y}}=\frac{\partial{B_y}}{\partial{z}} \\ \frac{\partial{B}_x}{\partial{z}}=\frac{\partial{B_z}}{\partial{x}} \\ \frac{\partial{B_y}}{\partial{x}}=\frac{\partial{B_x}}{\partial{y}} \end{cases}</math>
:同様にして第一式・第三式を<math>y</math>で偏積分して第二式に代入すると積分定数に関して
::<math>\frac{\partial{F(x,z)}}{\partial{x}}=\frac{\partial{G(x,z)}}{\partial{z}}</math>
:を得る。
:これは全微分方程式が完全微分方程式である条件なので、
::<math>\mathrm{grad}\,\Phi=\begin{pmatrix} F(x,z) \\ G(x,z) \end{pmatrix}</math>
:なるスカラー場<math>\Phi</math>が存在する。
:則ち、求めるベクトルポテンシャルは<math>\boldsymbol{A}=\boldsymbol{A}_0+\nabla\Phi</math>//
ここで勾配の項は回転をとるときに<math>\mathrm{rot}(\mathrm{grad}\,\Phi)=\boldsymbol{0}</math>より消える。スカラーポテンシャルと同様に自由度が残るので、ベクトルポテンシャルはその自由度を無視した同値類で与えられる。
ポアンカレの補題1, 2に於ける領域<math>D</math>は互いに素ではない複数の領域の和集合<math>\bigcup_i D_i</math>であっても良い。但しポテンシャル場<math>\mathrm{p}</math>は各領域<math>D_i</math>に対して区分的に定義され、このとき互いに重なった領域<math>D_i\cap D_j</math>では任意の点<math>\boldsymbol{x}\in D_i\cap D_j</math>に対して<math>\mathrm{p}_i(\boldsymbol{x})=\mathrm{p}_j(\boldsymbol{x})</math>であることが導かれる。
ポアンカレの補題が成り立たない状況を考えると、この「重なった領域での単射性」が崩れる。則ち、ポテンシャル場は多価関数として振舞うのである。
ポテンシャルに関連した定理として、以下が成り立つ。
{{定理|(ヘルツホルムの定理)}}
ポアンカレの補題が成り立つ状況下に於いて、<math>C^1</math>級ベクトル場<math>\boldsymbol{a}</math>は<math>C^2</math>級スカラー場の勾配と<math>C^2</math>級ベクトル場の回転に[[w:直和分解]]('''ヘルツホルム分解''')できる。
則ち、任意の<math>\boldsymbol{a}\in C^1(D)</math>に対して
:<math>\boldsymbol{a}=\mathrm{grad}\,\varphi-\mathrm{rot}\,\boldsymbol{A}</math>
を満たす<math>\varphi, \boldsymbol{A}\in C^2(D)</math>が存在する。
{{定理終わり}}
*証明
:ポアソン方程式<math>\text{∆}\varphi=f</math>に対してラプラシアンの定義から
::<math>\mathrm{div}(\mathrm{grad}\,\varphi)=f</math>
:ここで右辺のスカラー関数<math>f</math>が<math>\boldsymbol{a}</math>の発散で与えられている場合を考えると
::<math>\mathrm{div}(\mathrm{grad}\,\varphi)=\mathrm{div}\,\boldsymbol{a}</math>
:発散の線型性より
::<math>\mathrm{div}(\mathrm{grad}\,\varphi-\boldsymbol{a})=0</math>
:ここでポアンカレの補題2を用いて
::<math>\mathrm{grad}\,\varphi-\boldsymbol{a}=\mathrm{rot}\,\boldsymbol{A}</math>//
この<math>\varphi, \boldsymbol{A}</math>をそれぞれ広義のスカラーポテンシャル・ベクトルポテンシャルと呼ぶ場合がある。
広義ポテンシャルに対して
:<math>\begin{cases} \mathrm{rot}(\mathrm{grad}\,\varphi)=\boldsymbol{0} \\ \mathrm{div}(\mathrm{rot}\,\boldsymbol{A})=0 \\ \mathrm{div}\,\boldsymbol{a}=\text{∆}\varphi \\ \mathrm{rot}\,\boldsymbol{a}=\mathrm{grad}(\mathrm{div}\,\boldsymbol{A})-\text{∆}\boldsymbol{A} \end{cases}</math>
が成立する。
広義ポテンシャルの組み合わせは一つには定まらない。成分毎で考えるとヘルツホルムの定理は三元連立偏微分方程式を与えるが、勾配で消える定数項と回転で消える勾配項を補正すると右辺の自由度は広義ポテンシャル2つ+補正項2つで4である。そこで、応用上は<math>\mathrm{div}\,\boldsymbol{A}=0</math>という条件('''クーロンゲージ条件''')を追加で課して一意に定めることが多い(これにより<math>\mathrm{rot}\,\boldsymbol{a}=-\text{∆}\boldsymbol{A}</math>が成り立つので)。
例えば、[[連続体力学]]に於ける弾性体の運動方程式(ナビエ-コーシー方程式)
:<math>\rho\frac{\partial^2{\boldsymbol{u}}}{\partial{t}^2}=(\lambda+\mu)\mathrm{grad}(\mathrm{div}\,\boldsymbol{u})+\mu\text{∆}\boldsymbol{u}</math>
をヘルツホルム分解とクーロンゲージ条件により解析すると
:<math>\begin{cases} \rho\frac{\partial^2}{\partial{t}^2}\text{∆}\varphi=(\lambda+2\mu)\text{∆}^2\varphi \\ \rho\frac{\partial^2}{\partial{t}^2}\text{∆}\boldsymbol{A}=\mu\text{∆}^2\boldsymbol{A} \end{cases}</math>
を得る。
更に<math>e=\text{∆}\varphi,\quad\boldsymbol{\omega}=-\text{∆}\boldsymbol{A}</math>と置くとこの2つの式は波動方程式である。ここから導かれる波は前者が縦波で後者が横波であるが、<math>\lambda+2\mu>\mu</math>より前者の方が伝播速度が大きい。則ち、中学理科のP波・S波の性質を導くことができた。
ナビエ-コーシー方程式に於いて定常状態を考えると<math>t</math>-微分の項が0になるので、<math>\text{∆}^2\boldsymbol{u}=0</math>を得る。このような形の偏微分方程式を'''重調和偏微分方程式'''という。
*応用問題
*:真空のマクスウェル方程式<math> \begin{cases}
\nabla\times\boldsymbol{E}&=-\frac{\partial{\boldsymbol{B}}}{\partial{t}}\\
\nabla\times\boldsymbol{H}&=\frac{\partial{\boldsymbol{D}}}{\partial{t}}\\
\nabla\cdot\boldsymbol{D}&=0\\
\nabla\cdot\boldsymbol{B}&=0\\
\end{cases}</math>と構成方程式<math>\begin{cases} \boldsymbol{D}=\varepsilon_0\boldsymbol{E} \\ \boldsymbol{B}=\mu_0\boldsymbol{H}\end{cases}</math>から電磁波の波動方程式<math>\begin{cases} \text{∆}\boldsymbol{E}=\frac{1}{c^2}\frac{\partial^2{\boldsymbol{E}}}{\partial{t}^2} \\ \text{∆}\boldsymbol{H}=\frac{1}{c^2}\frac{\partial^2{\boldsymbol{H}}}{\partial{t}^2} \end{cases}</math>及び光速<math>c=\frac{1}{\sqrt{\varepsilon_0\mu_0}}</math>を導け。
==空間積分==
ここでは三次元ユークリッド空間で考える。
===線積分===
偏積分
:<math>\int_a^b f(x,y) dx := \lim_{n \to \infty} \sum_{k=1}^{n} f(x_k,y) \Delta x</math>(<math>\Delta x = \frac{b-a}{n}, x_k = a + k\Delta x</math>)
は<math>xyz</math>空間を<math>y</math>を固定した平面で切った断面に於ける曲線<math>z=f(x, y)</math>と<math>x</math>軸、直線<math>x=a, x=b</math>の囲む符号付き面積であった。
このとき積分変数を各点で見ると<math>x</math>軸という直線上を<math>a\to b</math>と単調に進むことになるが、これを<math>xyz</math>空間の任意の曲線<math>C</math>に拡張することを考える。
三次元空間の曲線をベクトル表示すると
:<math>\boldsymbol{r}(t)=\begin{pmatrix} x(t) \\ y(t) \\ z(t) \end{pmatrix}\quad t\in [\alpha, \beta]</math>
であり、被積分関数はこの曲線上の点を入力とするスカラー場と考えられるので
:<math>\varphi=\varphi(\boldsymbol{r})</math>
偏積分の<math>dx</math>は「<math>x</math>軸上の微小変位」であったが、<math>t</math>が単調なとき曲線に沿った微小変位は曲線上の移動距離、則ち弧長の微小量と考えられるので線素を用いて
:<math>dl=\left\| \frac{d\boldsymbol{r}}{dt} \right\|dt</math>
これらを総合すると、<math>C</math>に沿った積分というものは曲線のパラメータを用いて
:<math>\int_\alpha^\beta \varphi(\boldsymbol{r}(t))\left\| \frac{d\boldsymbol{r}}{dt} \right\|dt</math>
と表示されることになる。
これをスカラー場<math>\varphi</math>の<math>C</math>に沿った'''線積分'''<sup>※</sup>(line integral)という。また、<math>C</math>を'''積分経路'''(積分路、path)という。
<small>※量子力学の[[量子力学#経路積分法|経路積分]](path integral)とは異なる概念である。</small>
スカラー場の線積分は
:<math>\int_C \varphi dl</math>
のように略記される。
特に積分経路が閉曲線('''閉経路''')である場合は
:<math>\oint_C \varphi dl</math>
のように書き、これを<math>C</math>に沿った'''周回/閉路 積分'''(closed line integral)という。
1の線積分<math>\int_C dl</math>は弧長に等しい。
<math>\varphi(\boldsymbol{r})</math>の<math>C</math>の端点に於ける値の差を考える。
<math>t\in[\alpha,\beta]</math>を各<math>t_i</math>に等分割したとき、スカラー関数のテイラー展開より
:<math>\varphi(\boldsymbol{r}(t_i))-\varphi(\boldsymbol{r}(t_{i-1}))=\nabla\varphi(\boldsymbol{r}_{t_i-1})\cdot d\boldsymbol{r}\big|_{t=t_i}+O\left(\left\|d\boldsymbol{r}\big|_{t=t_i}\right\|\right)</math>
なので
:<math>\varphi(\boldsymbol{r}(\beta))-\varphi(\boldsymbol{r}(\alpha))\fallingdotseq \sum_{i=1}^n \nabla\varphi(\boldsymbol{r}(t_{i-1}))\cdot d\boldsymbol{r}\big|_{t=t_i}</math>
右辺で分割数<math>n</math>を無限大に飛ばした極限は区分求積法より
:<math>\int_{\boldsymbol{r}(\alpha)}^{\boldsymbol{r}(\beta)}\nabla\varphi(\boldsymbol{r})\cdot d\boldsymbol{r}</math>
則ち、曲線<math>C</math>に沿った微分積分学の基本定理
:<math>\int_{\boldsymbol{r}(\alpha)}^{\boldsymbol{r}(\beta)}\nabla\varphi(\boldsymbol{r})\cdot d\boldsymbol{r} = \varphi(\boldsymbol{r}(\beta))-\varphi(\boldsymbol{r}(\alpha))</math>
を得る。
これは一変数積分の<math>\int_a^b \frac{df}{dx}dx=f(b)-f(a)</math>に対応し、これは常積分に関する微分積分学の基本定理の別表現である。
左辺をスカラー場の線積分と同様に<math>\int_C \nabla\varphi\cdot d\boldsymbol{r}</math>と書くことにする。
ここで<math>\nabla\varphi</math>を一般のベクトル場<math>\boldsymbol{a}</math>に拡張して同様に
:<math>\int_C \boldsymbol{a}\cdot d\boldsymbol{r}</math>
を考えてみたい。
ここで<math>d\boldsymbol{r}</math>は<math>\boldsymbol{r}</math>の全微分と解釈され、一変数関数なので
:<math>d\boldsymbol{r}=\frac{d\boldsymbol{r}}{dt}dt</math>
則ち、
:<math>\int_C \boldsymbol{a}\cdot d\boldsymbol{r}=\int_\alpha^\beta \boldsymbol{a}(\boldsymbol{r}(t))\cdot\frac{d\boldsymbol{r}}{dt}dt</math>
という曲線のパラメータに関する積分に帰着された。
これをベクトル場<math>\boldsymbol{a}</math>の<math>C</math>に沿った'''線積分'''という。
<math>\frac{d\boldsymbol{r}}{dt}</math>は<math>C</math>の接線なので<math>\boldsymbol{a}(\boldsymbol{r})\cdot\frac{d\boldsymbol{r}}{dt}</math>は<math>\boldsymbol{a}</math>から<math>C</math>の接線に沿う沿流成分を取り出していることになる。
このことから、ベクトル場の線積分を特に'''接線積分'''(integral of tangential component)ということがある。
また、<math>d\boldsymbol{r}</math>のノルムを考えてみると
:<math>\|d\boldsymbol{r}\|=\left\|\frac{d\boldsymbol{r}}{dt}\right\|dt=dl</math>
より線素に一致する。
このことから、<math>d\boldsymbol{r}</math>を'''線素ベクトル'''と呼び、<math>d\boldsymbol{l}</math>とも書く。
線素ベクトルは曲線上の微小変位を表すので座標軸上の微小変位の重ね合わせと考えれば
:<math>d\boldsymbol{l}=\begin{pmatrix} dx \\ dy \\ dz \end{pmatrix}</math>
よって接線積分は形式的に
:<math>\int_C (a_xdx+a_ydy+a_zdz)</math>
とも書かれる。
更に、弧長パラメトライズされている場合は接ベクトルを用いて
:<math>d\boldsymbol{l}=\boldsymbol{t}ds</math>
とも表せる。
接線積分で定義される概念としては、仕事が有名である。
:物体を経路<math>C</math>に沿って力<math>\boldsymbol{F}</math>で運んだときの仕事は摩擦や空気抵抗を無視すると
::<math>W=\int_C \boldsymbol{F}\cdot d\boldsymbol{r}</math>
また、アンペールの法則も線積分で示される。
:閉経路<math>C</math>で囲まれた領域を貫く電流の大きさ<math>I</math>とその電流が生む磁場<math>\boldsymbol{H}</math>に対して
::<math>\oint_C \boldsymbol{H}\cdot d\boldsymbol{l}=I</math>
更に、以下のような概念も定義されている。
:流体の速度場<math>\boldsymbol{v}</math>の循環は
::<math>\Gamma(C)=\oint_C \boldsymbol{v}\cdot d\boldsymbol{l}</math>
*応用問題
**運ばれる物体の質量を<math>m</math>としたとき、仕事の定義とニュートンの運動方程式<math>m\frac{d^2\boldsymbol{r}}{dt^2}=\boldsymbol{F}</math>を用いて運動エネルギーに関するエネルギーの原理<math>W=\frac{1}{2}mv^2-\frac{1}{2}mv_0^2</math>を証明せよ。
<math>C</math>が正の向きにパラメトライズされたとき、負の向きにパラメトライズされた曲線を<math>-C</math>と表した。
2つの閉曲線<math>C_1</math>の終点と<math>C_2</math>の始点が一致するとき、これを一つの曲線と見做して曲線の和
:<math>C_1+C_2</math>
が定義される。
これを'''区分的に定義された曲線'''という。
2つの閉曲線<math>C_1</math>の終点と<math>C_2</math>の終点が一致するとき、<math>C_1</math>を始点とすると曲線の差は
:<math>C_1-C_2=C_1+(-C_2)</math>
で定義される。
<math>C</math>が'''区分的に滑らか'''であるとは、<math>C</math>が有限個の滑らかな曲線の和であることである。
これらを踏まえると、線積分には以下の性質が成り立つ。
#スカラー場
#:<math>\int_C (k\varphi+l\psi) dl=k\int_C \varphi dl + l \int_C \psi dl</math>
#:<math>\int_{-C}\varphi dl = \int_C \varphi dl</math>
#:<math>\int_{C_1+C_2}\varphi dl = \int_{C_1}\varphi dl + \int_{C_2}\varphi dl</math>
#ベクトル場
#:<math>\int_C (k\boldsymbol{a}+l\boldsymbol{b})\cdot d\boldsymbol{l}=k\int_C \boldsymbol{a}\cdot d\boldsymbol{l}+l\int_C \boldsymbol{b}\cdot d\boldsymbol{l}</math>
#:<math>\int_{-C}\boldsymbol{a}\cdot d\boldsymbol{l} = -\int_C \boldsymbol{a}\cdot d\boldsymbol{l}</math>
#:<math>\int_{C_1+C_2}\boldsymbol{a}\cdot d\boldsymbol{l} = \int_{C_1}\boldsymbol{a}\cdot d\boldsymbol{l} + \int_{C_2}\boldsymbol{a}\cdot d\boldsymbol{l}</math>
1番目の性質は線型性である。2番目の性質から、スカラー場の線積分に関しては任意の'''再パラメトライズ'''(パラメータの可逆な変数変換)、ベクトル場の線積分に関しては向き付けを保つ再パラメトライズに対して線積分の値が保存されることが判る。
保存的ベクトル場に対する線積分<math>\int_C \boldsymbol{a}\cdot d\boldsymbol{l}</math>はスカラーポテンシャル<math>\varphi</math>を用いて<math>\int_C \nabla\varphi\cdot d\boldsymbol{l}</math>と書けるので微分積分学の基本定理より<math>\varphi(\boldsymbol{r}(\beta))-\varphi(\boldsymbol{r}(\alpha))</math>に等しい。
ここで<math>\varphi(\boldsymbol{r}(\beta))-\varphi(\boldsymbol{r}(\alpha))</math>は曲線の端点にのみ依存し形状には依存しない。
そのため、'''線積分の値が積分経路に依存しない必要十分条件はベクトル場が保存的であること'''である。
ここで閉曲線である場合を考えると
:<math>\boldsymbol{r}(\alpha)=\boldsymbol{r}(\beta)</math>
より
:<math>\varphi(\boldsymbol{r}(\alpha))=\varphi(\boldsymbol{r}(\beta))</math>
なので
:<math>\oint_C \nabla\varphi\cdot d\boldsymbol{l}=0</math>
である。
逆に言うと、'''周回積分が0でない閉経路をとれるとき<math>\varphi</math>は<math>\boldsymbol{a}</math>のスカラーポテンシャルではない'''。
この事実は偏微分方程式を解いて求めたスカラーポテンシャルが実際にポテンシャルであるかどうかの確認に用いられる。
なお、先程求めたスカラーポテンシャルの一般式
:<math>\varphi(x,y,z)=\int_m^x a_x(x,y,z)dx+\int_n^y a_y(m,y,z)dy+\int_l^z a_z(m,n,z)dz+C</math>
は線積分で表される。
具体的には、積分経路を<math>\gamma:(m,n,l)\to(m,n,z)\to(m,y,z)\to(x,y,z)</math>という3つの線分の和としてとれば
:<math>\varphi=\int_\gamma \boldsymbol{a}\cdot d\boldsymbol{l}+C</math>
である。
ここでスカラーポテンシャルとは勾配方程式
:<math>\nabla\varphi=\boldsymbol{a}</math>
の解だったので、'''線積分と勾配は逆演算'''である。
<math>\nabla\varphi\cdot d\boldsymbol{l}=d\varphi</math>より、スカラーポテンシャルの存在と完全微分方程式の対応がここからも得られる。また、完全微分方程式<math>d\varphi=0</math>の解は曲線を与えることも容易に判る。
仕事が線積分で定義されるという話をしたが、エネルギーの原理より力場がスカラーポテンシャルを有する(保存場)場合はエネルギー変化が移動経路に依存しないので力学的エネルギー保存法則が成り立つ。これが高校物理で扱った「保存力なら力学エネルギーが保存する」ことの正式な表現である。
ベクトル場の線積分はベクトル場と線素ベクトルの内積をとって積分していたが、外積をとって積分することもできる。
具体的には、
:<math>\boldsymbol{a}\times d\boldsymbol{l}=\begin{pmatrix} a_ydz-a_zdy \\ a_zdx-a_xdz \\ a_xdy-a_ydx \end{pmatrix}</math>
より
:<math>\int_C \boldsymbol{a}\times d\boldsymbol{l}=\begin{pmatrix} \int_C (a_ydz-a_zdy) \\ \int_C (a_zdx-a_xdz) \\ \int_C (a_xdy-a_ydx) \end{pmatrix}</math>
:<math>=\begin{pmatrix} \int_\alpha^\beta \left\{ a_y(\boldsymbol{r}(t))\frac{dz}{dt}-a_z(\boldsymbol{r}(t))\frac{dy}{dt} \right\}dt \\ \int_\alpha^\beta \left\{ a_z(\boldsymbol{r}(t))\frac{dx}{dt}-a_x(\boldsymbol{r}(t))\frac{dz}{dt} \right\}dt \\ \int_\alpha^\beta \left\{ a_x(\boldsymbol{r}(t))\frac{dy}{dt}-a_y(\boldsymbol{r}(t))\frac{dx}{dt} \right\}dt \end{pmatrix}</math>
これは物理学的にはビオ・サヴァールの法則の記述に用いられている。
:真空中で経路<math>C</math>を正の向きに流れる強さ<math>I</math>の定常電流・<math>C</math>上にない点<math>\mathrm{P}</math>・<math>C</math>上の点<math>\mathrm{Q}</math>に対し、<math>C</math>全体で生じる磁束密度<math>\boldsymbol{B}</math>の<math>\mathrm{P}</math>での値は真空の透磁率<math>\mu_0</math>として
::<math>\boldsymbol{B}(\mathrm{P})=\frac{\mu_0 I}{4\pi}\int_C \frac{\overrightarrow{\mathrm{PQ}}\times d\boldsymbol{l}}{\|\overrightarrow{\mathrm{PQ}}\|^3}</math>
応用例は乏しいが、スカラー場の線素ベクトルに関する積分、ベクトル場の線素に関する積分も同様に定義される。
:<math>\int_C \varphi d\boldsymbol{l} = \int_\alpha^\beta \varphi(\boldsymbol{r}(t))\frac{d\boldsymbol{r}}{dt}dt</math>
:<math>\int_C \boldsymbol{a} dl = \int_\alpha^\beta \boldsymbol{a}(\boldsymbol{r}(t))\left\|\frac{d\boldsymbol{r}}{dt}\right\|dt</math>
これらはベクトル値である。
積分経路を流線上にとると、流線の定義から<math>d\boldsymbol{r}/\!\!/\boldsymbol{a}(\boldsymbol{r})</math>則ち一次従属なので、<math>d\boldsymbol{r}=k\boldsymbol{a}(\boldsymbol{r})</math>と書ける。
よって線積分の被積分関数は<math>\boldsymbol{a} \cdot d\boldsymbol{r} = k\|\boldsymbol{a}\|^2</math>となり、積分値が最大化される他、ベクトル場の沿流方向成分を抽出できる。実際に計算する際は、<math>\int_{\mathrm{streamline}} k\|\boldsymbol{a}\|^2</math>とは書かず、<math>\int_{\mathrm{streamline}} \boldsymbol{a} \cdot \frac{d\boldsymbol{r}}{dt}dt</math>と書くのが望ましい(積分記号と積分微小要素はセットのため)。
流線が閉曲線である場合を考えると、<math>\oint_{\mathrm{streamline}} \boldsymbol{a} \cdot \frac{d\boldsymbol{r}}{dt}dt</math>は閉曲線の正の向きで正、負の向きで負となるので0にはならない。そのため、流線が閉曲線であるベクトル場はスカラーポテンシャルを持たない。
===面積分===
線積分は常積分に於ける積分経路を任意の正則な<math>C^1</math>級曲線に拡張したものであった。同様に、二重積分に於ける積分領域を'''向き付けされた'''任意の<math>C^1</math>級曲面に拡張することを考える。
曲線に沿った微小量が線素で与えられたように、曲面に沿った微小量は面素で与えられる。故に、直観的には「面素に関して積分」すれば良いことが分かる。
三次元空間の曲面をベクトル表示すると
:<math>\boldsymbol{r}(t, u)=\begin{pmatrix} x(t, u) \\ y(t, u) \\ z(t, u) \end{pmatrix}\quad {\scriptstyle\left(\begin{array}{c} t \\[-6pt] u \end{array}\right)} \in D</math>
であり、被積分関数はこの曲面上の点を入力とするスカラー場と考えられるので
:<math>\varphi=\varphi(\boldsymbol{r})</math>
面素は
:<math>dS=\sqrt{EG-F^2}dtdu=\sqrt{\left\| \frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}} \right\|^2\left\|\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}\right\|^2 - \left( \frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}\cdot\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}} \right)^2 } dtdu</math>
総合すると、<math>S</math>に沿った積分というものは曲面のパラメータを用いて
:<math>\iint_D \varphi(\boldsymbol{r}(t,u))\sqrt{\left\| \frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}} \right\|^2\left\|\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}\right\|^2 - \left( \frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}\cdot\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}} \right)^2 } dtdu</math>
と表示されることになる。
これをスカラー場<math>\varphi</math>の<math>S</math>に沿った'''面積分'''(曲面積分、surface integral)という。
今は三次元空間の場合を考えているので、外積を用いて
:<math>\iint_D \varphi(\boldsymbol{r}(t,u))\left\|\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}\times\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}\right\| dtdu</math>
と表示しても良い。
スカラー場の面積分は
:<math>\iint_S \varphi dS</math>
のように略記される。
特に積分領域が閉曲面である場合は
:<math>\oiint_S \varphi dS</math>
のように書く。
1の面積分<math>\iint_S dS</math>は曲面積に等しい。
ベクトル場の線積分と同様にしてベクトル場の面積分
:<math>\iint_S \boldsymbol{a}\cdot d\boldsymbol{S}</math>
を考えたい。
線素ベクトルが「位置ベクトルの接線方向」で「ノルムが通常の線素と一致する」ように定義されたことを鑑みると、面素ベクトルは「位置ベクトルの法線方向」で「ノルムが通常の面素に一致する」ように定義するのが良いと考えられる。要するに、
:<math>d\boldsymbol{S}:=\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}\times\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}</math>
としてみる。
ここで単位法線ベクトルを<math>\boldsymbol{n}</math>と置くと面素ベクトルは<math>\boldsymbol{n}dS</math>と表され、
:<math>\iint_S \boldsymbol{a}\cdot d\boldsymbol{S}=\iint_S (\boldsymbol{a}\cdot\boldsymbol{n})dS</math>
のようにスカラー場の面積分に帰着されることが判る。
これをベクトル場<math>\boldsymbol{a}</math>の<math>S</math>に沿った'''面積分'''という。
<math>\boldsymbol{a}\cdot\boldsymbol{n}</math>は<math>\boldsymbol{a}</math>から<math>S</math>の法線を横切る沿流成分を取り出していることになる。
このことから、ベクトル場の面積分を特に'''法線面積分'''(surface integral of the normal component)ということがある。
単位法線ベクトル<math>\boldsymbol{n}</math>は有向曲面に対して右手系を成し、各座標軸となす角度をそれぞれ<math>\alpha, \beta, \gamma</math>とすると通常の余弦関数で表されるベクトル<math>\begin{pmatrix} \cos \alpha \\ \cos \beta \\ \cos \gamma \end{pmatrix}</math>に等しい。これを'''方向余弦'''という。
方向余弦に関して、正射影を用いると以下が成り立つと判る。
:<math>\begin{cases} \cos\alpha dS = dydz \\ \cos\beta dS = dzdx \\ \cos\gamma dS = dxdy \end{cases}</math>
これを用いることで、面素ベクトルは
:<math>d\boldsymbol{S} = \boldsymbol{e}_x dydz + \boldsymbol{e}_y dzdx + \boldsymbol{e}_z dxdy = \begin{pmatrix} dydz \\ dzdx \\ dxdy \end{pmatrix}</math>
とも表される。
故に、法線面積分は形式的に
:<math>\iint_S(a_xdydz+a_ydzdx+a_zdxdy)</math>
とも書ける。
線積分と同様にベクトル場と面素ベクトルの外積、面素ベクトルのスカラー場倍、ベクトル場の面素倍をとって積分することも考えられるが、応用例に乏しい。
:<math>\iint_S \boldsymbol{a}\times d\boldsymbol{S}</math>
:<math>\iint_S \varphi d\boldsymbol{S}</math>
:<math>\iint_S \boldsymbol{a} dS</math>
これらはベクトル値である。
面素ベクトルは以下のように考えることもできる。
:平面<math>\Pi</math>上面積<math>A</math>の有界領域と<math>\Pi</math>の表向き法線<math>\boldsymbol{n}_\Pi</math>に対し、<math>\boldsymbol{A}=A\boldsymbol{n}_\Pi</math>を'''面積ベクトル'''と定義する。
:曲面<math>S</math>上の微小領域をとると曲面をその接平面で近似できるので平面上と同様にして面積ベクトルを定義できる。
:このとき、<math>A=dS</math>となるように定義した面積ベクトルが面素ベクトルである。
この考え方を用いると、
:<math>\oint_C d\boldsymbol{l}=\boldsymbol{0}</math>
及び
:<math>\oiint_S d\boldsymbol{S}=\boldsymbol{0}</math>
が示される。
面積分で定義される概念としては'''束'''<sup>※</sup>(flux)が有名である。
:流体の速度場<math>\boldsymbol{v}</math>に対し、<math>\iint_S \boldsymbol{v}\cdot d\boldsymbol{S}</math>は流束(単位時間当たりに<math>S</math>を通過する流体の流出量)である。
:磁束密度<math>\boldsymbol{B}</math>に対し、<math>\Phi_B=\iint_S \boldsymbol{B}\cdot d\boldsymbol{S}</math>は磁束である。
また、ガウスの法則も面積分で示される。
:ガウス面<math>S</math>が囲む電荷の総量を<math>q_\mathrm{inc}</math>とすると電束密度<math>\boldsymbol{D}</math>に対して
::<math>\oiint_S \boldsymbol{D}\cdot d\boldsymbol{S}=q_\mathrm{inc}</math>
<small>※数学界・物理界で「束」と呼ばれる対象は複数存在する。和訳されるときに「束」が充当されたものはここで扱う「flux」の他に「bundle(ファイバー束など)」「lattice([[束論]]の束)」「pencil(円束など)」「packet(波束など)」がある。</small>
<math>S</math>が表向きにパラメトライズされたとき、裏向きにパラメトライズされた曲面を<math>-S</math>と表した。
同じ向きを向く2つの曲面<math>S_1</math>と<math>S_2</math>の境界が一致するとき、これを一つの曲面と見做して曲面の和
:<math>S_1+S_2</math>
が定義される。
これを'''区分的に定義された曲面'''という。
<math>S</math>が'''区分的に滑らか'''であるとは、<math>S</math>が有限個の滑らかな曲面の和であることである。
これらを踏まえると、面積分には以下の性質が成り立つ。
#スカラー場
#:<math>\iint_S (k\varphi+l\psi) dS=k\iint_S \varphi dS + l \iint_S \psi dS</math>
#:<math>\iint_{-S}\varphi dS = \iint_S \varphi dS</math>
#:<math>\iint_{S_1+S_2}\varphi dS = \iint_{S_1}\varphi dS + \iint_{S_2}\varphi dS</math>
#ベクトル場
#:<math>\iint_S (k\boldsymbol{a}+l\boldsymbol{b})\cdot d\boldsymbol{S}=k\iint_S \boldsymbol{a}\cdot d\boldsymbol{S}+l\iint_S \boldsymbol{b}\cdot d\boldsymbol{S}</math>
#:<math>\iint_{-S}\boldsymbol{a}\cdot d\boldsymbol{S} = -\iint_S \boldsymbol{a}\cdot d\boldsymbol{S}</math>
#:<math>\iint_{S_1+S_2}\boldsymbol{a}\cdot d\boldsymbol{S} = \iint_{S_1}\boldsymbol{a}\cdot d\boldsymbol{S} + \iint_{S_2}\boldsymbol{a}\cdot d\boldsymbol{S}</math>
1番目の性質は線型性である。2番目の性質から、スカラー場の面積分に関しては任意の再パラメトライズ、ベクトル場の面積分に関しては向き付けを保つ再パラメトライズに対して面積分の値が保存されることが判る。
等位面に対する面積分を考える。曲面<math>S</math>がスカラー場<math>\omega</math>の等位面であるとき、その単位法線ベクトルは勾配を用いて
:<math>\boldsymbol{n}=\pm\frac{\nabla\omega}{\|\nabla\omega\|}</math>
と表される。右手系で考えるので正符号を採る。
等位面の方程式<math>\omega(x,y,z)=c</math>に対して陰関数定理が成り立つとすると陰関数<math>z=\psi(x,y)</math>を用いて<math>S:\boldsymbol{r}(x,y)=\begin{pmatrix} x \\ y \\ \psi(x,y) \end{pmatrix}\quad {\scriptstyle\left(\begin{array}{c} x \\[-6pt] y \end{array}\right)} \in D</math>というモンジュ表示に落ちる。
よって
:<math>dS=\sqrt{1+\left(\frac{\partial{\psi}}{\partial{x}}\right)^2+\left(\frac{\partial{\psi}}{\partial{y}}\right)^2}dxdy</math>
と
:<math>\boldsymbol{n}=\frac{\nabla\omega}{\|\nabla\omega\|}</math>
を用いて
:<math>\int_S \varphi dS = \int_D \varphi(x,y,\psi(x,y))\sqrt{1+\left(\frac{\partial{\psi}}{\partial{x}}\right)^2+\left(\frac{\partial{\psi}}{\partial{y}}\right)^2}dxdy</math>
:<math>\int_S \boldsymbol{a}\cdot d\boldsymbol{S} = \int_D \boldsymbol{a}(x,y,\psi(x,y))\cdot\frac{\nabla\omega(x,y,\psi(x,y))}{\|\nabla\omega(x,y,\psi(x,y))\|}\sqrt{1+\left(\frac{\partial{\psi}}{\partial{x}}\right)^2+\left(\frac{\partial{\psi}}{\partial{y}}\right)^2}dxdy</math>
を得る。
===体積分===
三次元空間の中では曲がった三次元空間を考えることはできない。そのため、以下の議論は平坦な三次元空間での話になる。
曲線長の微小量であった線素・曲面積の微小量であった面素と同様にして立体積の微小量について考えてみる。
立体<math>V</math>を微小立体に分割した体積を<math>\Delta V_i</math>としたとき、線積分・面積分が正式には区分求積法で定義されたようにリーマン和の極限
:<math>\lim_{\Delta V_i\to0}\sum_i \varphi(x_i, y_i, z_i)\Delta V_i</math>
で与えられる積分を考えたい。
これは多変数解析で行った議論と同様にして三変数関数の三重極限へと帰着されるが、三重極限は飛ばす順番を入れ替えられるとは限らないためこの極限値を求めることは困難である。
そこで、以下のように考える。
微小立体はどのような分割の仕方であっても直方体で近似できる(曲面上微小領域を平面上平行四辺形で近似したことからの類推)。このとき、微小体積<math>dV</math>は各辺の長さが<math>dx, dy, dz</math>であると考えることができる。故に、直方体の体積公式を用いて
:<math>dV=dxdydz</math>
これを'''体素'''(体積素・体積要素)という。
故に、求める積分は
:<math>\lim_{\Delta V_i\to0}\sum_i \varphi(x_i, y_i, z_i)\Delta V_i=\iiint_V \varphi(x,y,z) dxdydz</math>
という三重積分に帰着される。
これをスカラー場の<math>V</math>に沿った'''体積分'''(volume integral)という。
スカラー場の体積分は
:<math>\iiint_V \varphi dV</math>
のように略記される。
特に、積分領域が閉集合('''閉立体''')である場合は
:<math>\oiiint_V \varphi dV</math>
のように書く。
1の体積分<math>\iiint_V dV</math>は立体積に等しい。
<math>V</math>のベクトル表示が<math>\boldsymbol{r}(s,t,u)=\begin{pmatrix} x(s,t,u) \\ y(s,t,u) \\ z(s,t,u) \end{pmatrix} \quad {\scriptstyle\left(\begin{array}{c} s \\[-6pt] t \\[-6pt] u\end{array}\right)} \in D</math>である場合は、多変数解析の議論により
:<math>\iiint_V \varphi dV = \iiint_D \varphi(\boldsymbol{r}(s,t,u)) \left|\det \frac{\partial{(x,y,z)}}{\partial{(s,t,u)}}\right| dsdtdu</math>
であると容易に判る。
立体に対しては曲線に於ける接線、曲面に於ける法線のような「ベクトル表示から求められる、積分領域の向きを指定するための方向」が一意には存在しない。そのため、体素ベクトルというものは考えない。
故に、ベクトル場の体積分は
:<math>\iiint_V \boldsymbol{a}dV</math>
の一種類のみである。
体積分を用いて表される概念としては、電荷が有名である。
:電荷密度<math>\rho(x,y,z)</math>に対し、領域<math>V</math>内にある電荷の総量は
::<math>q=\iiint_V \rho(x,y,z)dV</math>
また、電荷分布に於ける電気双極子モーメントは
::<math>\boldsymbol{p}=\iiint_V \rho\boldsymbol{r} dV</math>
というベクトル場の体積分で定義される。
更に、以下のような概念も定義されている。
:物体の質量<math>m</math>、密度<math>\rho</math>とすると質量中心ベクトルは
::<math>\boldsymbol{r}_G=\frac{1}{m}\iiint_V \rho\boldsymbol{r}dV</math>
:電磁場の真空での運動量は
::<math>\boldsymbol{P}=\frac{1}{c^2}\iiint_V \boldsymbol{E}\times\boldsymbol{H}dV</math>
2つの立体<math>V_1</math>と<math>V_2</math>の境界が一致するとき、これを一つの立体と見做して立体の和
:<math>V_1+V_2</math>
が定義される。
これを'''区分的に定義された立体'''という。
<math>V</math>が'''区分的に滑らか'''であるとは、<math>V</math>が有限個の滑らかな立体の和であることである。
これらを踏まえると、体積分には以下の性質が成り立つ。
#スカラー場
#:<math>\iiint_V (k\varphi+l\psi) dV=k\iiint_V \varphi dV + l \iiint_S \psi dV</math>
#:<math>\iiint_{V_1+V_2}\varphi dV = \iiint_{V_1}\varphi dV + \iiint_{V_2}\varphi dV</math>
#ベクトル場
#:<math>\iint_V (k\boldsymbol{a}+l\boldsymbol{b})dV=k\iiint_V \boldsymbol{a}dV+l\iiint_V \boldsymbol{b}dV</math>
#:<math>\iiint_{V_1+V_2}\boldsymbol{a}dV = \iiint_{V_1}\boldsymbol{a} dV + \iiint_{V_2}\boldsymbol{a}dV</math>
===積分定理===
ここでは、空間積分に関する種々の定理を紹介する。
体積分
:<math>\iiint_V \varphi dV=\iiint_V \varphi dxdydz</math>
に於いて、スカラー場<math>\varphi</math>がスカラー場<math>f</math>のある積分変数に関する偏導関数になっている場合を考える。
例えば<math>\varphi=\frac{\partial{f}}{\partial{x}}</math>の場合を考えると
:<math>\iiint_V \varphi dV = \iiint_V \frac{\partial{f}}{\partial{x}}dxdydz</math>
であり、
:<math>V=\left\{ \begin{pmatrix} x \\ y \\ z \end{pmatrix} \Bigg| \begin{array}{c} \vartheta(y,z) \leq x \leq \eta(y,z) \\ {\scriptstyle\left(\begin{array}{c} y \\[-6pt] z \end{array}\right)} \in D \end{array} \right\}</math>
とすると
:<math>=\iint_D \left( \int_{\vartheta(y,z)}^{\eta(y,z)} \frac{\partial{f}}{\partial{x}} dx \right) dydz</math>
偏微分に関する微分積分学の基本定理より
:<math>=\iint_D \{ f(\eta(y,z),y,z)-f(\vartheta(y,z),y,z) \} dydz</math>
ここで、曲面<math>S_\eta:x=\eta(y,z), S_\vartheta:x=\vartheta(y,z)</math>の面素ベクトルについて考えてみる。<br/>
<math>S_\eta</math>の接ベクトルは
:<math>\frac{\partial{\eta}}{\partial{y}}\boldsymbol{e}_x+\boldsymbol{e}_y, \frac{\partial{\eta}}{\partial{z}}\boldsymbol{e}_x+\boldsymbol{e}_z</math>
の2つなので、面素ベクトルは<math>x</math>軸正方向にとると
:<math>d\boldsymbol{S}_\eta=\left(\frac{\partial{\eta}}{\partial{y}}\boldsymbol{e}_x+\boldsymbol{e}_y\right)\times\left( \frac{\partial{\eta}}{\partial{z}}\boldsymbol{e}_x+\boldsymbol{e}_z\right)=\left( \boldsymbol{e}_x - \frac{\partial{\eta}}{\partial{y}}\boldsymbol{e}_y - \frac{\partial{\eta}}{\partial{z}}\boldsymbol{e}_z \right)dydz</math>
:<math>\therefore \boldsymbol{e}_x\cdot d\boldsymbol{S}_\eta=dydz</math>
:<math>\therefore \iint_{S_\eta} f\boldsymbol{e}_x \cdot d\boldsymbol{S}_\eta=\iint_D f(\eta(y,z),y,z)dydz </math>
<math>S_\vartheta</math>の接ベクトルは
:<math>\frac{\partial{\vartheta}}{\partial{y}}\boldsymbol{e}_x+\boldsymbol{e}_y, \frac{\partial{\vartheta}}{\partial{z}}\boldsymbol{e}_x+\boldsymbol{e}_z</math>
の2つなので、面素ベクトルは<math>x</math>軸負方向にとると
:<math>d\boldsymbol{S}_\vartheta=\left( \frac{\partial{\vartheta}}{\partial{z}}\boldsymbol{e}_x+\boldsymbol{e}_z\right)\times\left(\frac{\partial{\vartheta}}{\partial{y}}\boldsymbol{e}_x+\boldsymbol{e}_y\right)=\left(-\boldsymbol{e}_x + \frac{\partial{\vartheta}}{\partial{y}}\boldsymbol{e}_y + \frac{\partial{\vartheta}}{\partial{z}}\boldsymbol{e}_z \right)dydz</math>
:<math>\therefore \boldsymbol{e}_x\cdot d\boldsymbol{S}_\vartheta=-dydz</math>
:<math>\therefore \iint_{S_\vartheta} f\boldsymbol{e}_x \cdot d\boldsymbol{S}_\vartheta=-\iint_D f(\vartheta(y,z),y,z)dydz </math>
また、<math>S_\vartheta, S_\eta</math>を<math>V</math>の底面とみたときの側面<math>S_\mathrm{side}</math>は接平面に<math>\boldsymbol{e}_x</math>を含むので法線は<math>x</math>軸に垂直であり、
:<math>\boldsymbol{e}_x\cdot d\boldsymbol{S}_\mathrm{side}=0</math>
:<math>\therefore \iint_{S_\mathrm{side}}f\boldsymbol{e}_x\cdot d\boldsymbol{S}_\mathrm{side}=0</math>
よって
:<math>\iint_D \{f(\eta(y,z),y,z) - f(\vartheta(y,z),y,z) \}dydz=\iint_{S_\eta} f \boldsymbol{e}_x\cdot d\boldsymbol{S}_\eta + \iint_{S_\mathrm{side}} f \boldsymbol{e}_x\cdot d\boldsymbol{S}_\mathrm{side} + \iint_{S_\vartheta} f \boldsymbol{e}_x\cdot d\boldsymbol{S}_\vartheta</math>
:<math>=\oiint_{\partial{V}}f\boldsymbol{e}_x \cdot d\boldsymbol{S}</math>
ここで<math>\varphi=\frac{\partial{g}}{\partial{y}},\quad \varphi=\frac{\partial{h}}{\partial{z}}</math>の場合も同様の議論により
:<math>\iiint_V \frac{\partial{g}}{\partial{y}} dV = \oiint_{\partial{V}} g\boldsymbol{e}_y \cdot d\boldsymbol{S}</math>
:<math>\iiint_V \frac{\partial{h}}{\partial{z}}dV = \oiint_{\partial{V}} h\boldsymbol{e}_z\cdot d\boldsymbol{S}</math>
と判るので、3式を足し合わせて
:<math>\iiint_V \left(\frac{\partial{f}}{\partial{x}}+\frac{\partial{g}}{\partial{y}}+\frac{\partial{h}}{\partial{z}}\right)dV=\oiint_{\partial{V}} (f\boldsymbol{e}_x+g\boldsymbol{e}_y+h\boldsymbol{e}_z)\cdot d\boldsymbol{S}</math>
ここで曲面<math>\partial{V}</math>の外向き法線の方向余弦を<math>\begin{pmatrix} l \\ m \\ n \end{pmatrix}</math>と置くと最終的に
:<math>\iiint_V \left(\frac{\partial{f}}{\partial{x}}+\frac{\partial{g}}{\partial{y}}+\frac{\partial{h}}{\partial{z}}\right)dV=\oiint_{\partial{V}} (fl+gm+hn)dS</math>となる。
これを'''ガウス=グリーンの定理'''という。
更に、<math>\boldsymbol{a}(x,y,z)=\begin{pmatrix} f(x,y,z) \\ g(x,y,z) \\ h(x,y,z) \end{pmatrix}</math>と定義すると
:<math>\iiint_V\left( \frac{\partial{a_x}}{\partial{x}}+\frac{\partial{a_y}}{\partial{y}}+\frac{\partial{a_z}}{\partial{z}} \right)dV=\oiint_{\partial{V}} ( a_x\boldsymbol{e}_x+a_y\boldsymbol{e}_y+a_z\boldsymbol{e}_z )\cdot d\boldsymbol{S}</math>
則ち
:<math>\iiint_V \nabla\cdot\boldsymbol{a} dV = \oiint_{\partial{V}}\boldsymbol{a}\cdot d\boldsymbol{S}</math>
を得る。
これを'''ガウスの発散定理'''という。
{{定理|(ガウスの発散定理)}}
有界領域<math>V\subset\mathbb{R}^3</math>の境界<math>\partial{V}</math>が区分的に滑らかな閉曲面をなすとき、開集合<math>U \supset V^-</math>上で定義される<math>C^1</math>級ベクトル場<math>\boldsymbol{a}</math>に対して
:<math>\iiint_V \nabla\cdot\boldsymbol{a}dV = \oiint_{\partial{V}} \boldsymbol{a}\cdot d\boldsymbol{S}</math>
{{定理終わり}}
ステラジアン
grad・divの積分形
平面のグリーンの定理(二次元のガウスの定理との同値性)
ストークスの定理
グリーンの第一定理
グリーンの第二定理
グリーンの定理
ポアソンの公式
ポホザエフの恒等式
ポアンカレの補題再考
パップス=ギュルダンの定理
ラプラス場の解析(「調和関数の法線方向微分の面積分は0」「グリーンの第二定理の右辺=0」「調和関数の点mでの値は半径に依らずmを中心とした球内に於ける調和関数の平均値」「定数関数でない調和関数は最大値も最小値も持たない」「閉曲面上で定数関数である調和関数は閉曲面が囲む領域の至る所で定数関数」「ラプラス方程式のディリクレ問題の解は一意」「調和関数の境界に於ける法線方向微分が0なら立体内で至る所で定数関数」「ラプラス方程式の2解の境界上法線方向微分が一致するならその差は定数」)
==発展事項==
{{節stub}}
{{Advanced|多様体論}}
{{Advanced|微分幾何学}}
{{Advanced|積分幾何学}}
ここではベクトル解析の発展編及び微分幾何学の基礎編として、「ユークリッド空間の部分多様体上の微分幾何学」を扱う。言うなれば「<math>n</math>次元版のベクトル解析学」である。
===体積分再考===
体積分は先程「<math>\mathbb{R}^3</math>上の閉立体<math>V</math>」上で考えたが、実はここには線積分・面積分との大きな非対称性がある。
線積分は「曲線」、面積分は「曲面」を積分領域としたが、先程定義した体積分の積分領域は「平坦な立体」なのである(二次元で例えば楕円領域<math>\frac{x^2}{a^2}+\frac{y^2}{b^2}\leq1</math>は境界こそ"曲線"だが空間そのものは<math>\mathbb{R}^2</math>という"平面"であることと同じ)。
1次元の曲がった空間である曲線<math>M^1:\boldsymbol{r}=\boldsymbol{r}(s)</math>が<math>\mathbb{R}^2</math>内、2次元の曲がった空間である曲面<math>M^2:\boldsymbol{r}=\boldsymbol{r}(s, t)</math>が<math>\mathbb{R}^3</math>内に存在するように、3次元の曲がった空間である曲立体<math>M^3:\boldsymbol{r}=\boldsymbol{r}(s, t, u)</math>は<math>\mathbb{R}^4</math>内に存在すると考えるのが自然である。ここで一般に<math>M^n\subset\mathbb{R}^{n+1}</math>が成り立つと予想され、この関係を「<math>M^n</math>の<math>\mathbb{R}^{n+1}</math>への'''埋め込み'''」と呼ぶことにする。
線積分を<math>C=M^1</math>、面積分を<math>S=M^2</math>で定義したように、体積分を<math>M^3</math>で定義することを考える。
媒介変数空間<math>\begin{pmatrix} s \\ t \\ u \end{pmatrix} \in V \subset\mathbb{R^3}</math>上の微小変化を考えると全微分を用いて
:<math>d\boldsymbol{r}=\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{s}}ds+\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}dt+\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}du</math>
よって<math>V</math>上の微小立方体<math>dsdtdu</math>は3ベクトル<math>\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{s}}ds,\quad\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}}dt,\quad\frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}}du</math>の張る微小平行六面体へ移される。
体素はこの微小平行六面体の体積と考えられるが、<math>\boldsymbol{r}\in\mathbb{R}^4</math>より当然この3ベクトルは4項ベクトルなので、'''外積を含んでいるスカラー三重積は使えない'''。
全微分を一次変換表記すると
:<math>d\boldsymbol{r}=\begin{pmatrix} \frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{s}} & \frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{t}} & \frac{\partial{\boldsymbol{r}}}{\partial{u}} \end{pmatrix} \begin{pmatrix} ds \\ dt \\ du \end{pmatrix}</math>
:<math>=\begin{pmatrix} \frac{\partial{x}}{\partial{s}} & \frac{\partial{x}}{\partial{t}} & \frac{\partial{x}}{\partial{u}} \\ \frac{\partial{y}}{\partial{s}} & \frac{\partial{y}}{\partial{t}} & \frac{\partial{y}}{\partial{u}} \\ \frac{\partial{z}}{\partial{s}} & \frac{\partial{z}}{\partial{t}} & \frac{\partial{z}}{\partial{u}} \\ \frac{\partial{w}}{\partial{s}} & \frac{\partial{w}}{\partial{t}} & \frac{\partial{w}}{\partial{u}} \end{pmatrix} \begin{pmatrix} ds \\ dt \\ du \end{pmatrix}</math>
:<math>=\frac{\partial{(x, y, z, w)}}{\partial{(s, t, u)}}\begin{pmatrix} ds \\ dt \\ du \end{pmatrix}</math>
ここでヤコビ行列は<math>\frac{\partial{(x, y, z, w)}}{\partial{(s, t, u)}}\in\mathbb{R}^{4\times3}</math>であって'''正方行列でないので行列式も求まらない'''。
そこで、[[線型代数学続論/種々の行列#随伴行列|グラム行列]]を利用することを考える。
'''グラム行列は必ず半正定値行列'''なので行列式は非負であり、平方根をとれる。
そのため、<math>\mathbf{G}:=\left(\frac{\partial{(x, y, z, w)}}{\partial{(s, t, u)}}\right)^*\frac{\partial{(x, y, z, w)}}{\partial{(s, t, u)}}</math>として<math>\sqrt{\det\mathbf{G}}</math>を体積拡大率とする。
これは正方行列ならヤコビアンの絶対値に一致する。
{{NavTop|title=補足:体積拡大率に一致する証明}}
:<math>\frac{\partial{(x, y, z, w)}}{\partial{(s, t, u)}}</math>の列ベクトルにグラム=シュミットの直交化法を適用すると[[線型代数学続論/行列分解|QR分解]]によって
:<math>\frac{\partial{(x, y, z, w)}}{\partial{(s, t, u)}}=\mathbf{QR}\quad (\mathbf{Q}\in\mathbb{R}^{4\times3}, \mathbf{R}\in\mathbb{R}^{3\times3})</math>
よって
:<math>\mathbf{G}=(\mathbf{QR})^*\mathbf{QR}</math>
:<math>=\mathbf{R}^*\mathbf{Q}^*\mathbf{Q}\mathbf{R}</math>
:<math>=\mathbf{R}^*\mathbf{E}_3\mathbf{R}</math>(<math>\because\mathbf{Q}</math>は列ユニタリ行列)
:<math>=\mathbf{R}^*\mathbf{R}</math>
:<math>\therefore \sqrt{\det\mathbf{G}}=\sqrt{\det\left( \mathbf{R}^*\mathbf{R} \right)}=\sqrt{\left(\det\mathbf{R}\right)^2}=|\det\mathbf{R}|</math>
<math>\mathbf{Q}</math>は列ユニタリ行列なのでその一次変換は等長変換であり、全微分による拡大率は<math>\mathbf{R}</math>による拡大率と一致する。<br/>
則ち、<math>\sqrt{\det\mathbf{G}}</math>を拡大率としてとれる。//
{{NavBottom}}
よって体積分は
:<math>\iiint_{M^3} f(\boldsymbol{r})dM^3 = \iiint_{V} f(\boldsymbol{r}(s, t, u))\sqrt{\det\mathbf{G}}\,dsdtdu</math>
ここから、適切な媒介変数表示が存在するならば<math>M^n</math>上での体積分の計算に<math>\mathbb{R}^{n+1}\setminus M^n</math>の情報は入ってこず、<math>M^n</math>の情報のみで計算されると予想される。
実際、<math>M^n</math>に適切な媒介変数表示<math>\boldsymbol{r}=\boldsymbol{r}(\boldsymbol{p})\quad(\boldsymbol{p}\in\mathbb{R}^n)</math>が存在するとき、全微分による一次変換の拡大率は同様にグラム行列式の平方根で与えられるので体積素は<math>dM^n = \sqrt{\det\mathbf{G}} \prod_{k=1}^{n}d\boldsymbol{p}_k</math>と書け、これは正しい。
なお、二次元の場合を考えると<math>\mathbf{G}=\mathbf{K}</math>より<math>dM^2=dS</math>であり、面素に一致する。一次元の場合を考えると<math>\mathbf{G}=\|d\boldsymbol{r}\|^2</math>より<math>dM^1=dl</math>であり、線素に一致する。
実は、体素だけでなく一般に角度や長さといった幾何学的な量は埋め込み先である<math>\mathbb{R}^{n+1}</math>の情報を全く必要とせず、<math>M^n</math>の情報だけで構成できることが知られている。このことは微分幾何学のうち[[w:リーマン幾何学|リーマン幾何学]]と呼ばれる分野で詳しく扱われる。
ここまで<math>M^n</math>を適切な媒介変数<math>\boldsymbol{p}\in\mathbb{R}^n</math>で表すことを強調してきたが、媒介変数表示を考えるということは<math>M^n</math>から媒介変数空間<math>U\subset\mathbb{R}^n</math>への射影<math>\pi:M^n\to U</math>を考えるということである。
ここで、この<math>\pi</math>が全単射ならば逆向きの射影<math>\pi^{-1}:U\to M^n</math>が存在してそれが媒介変数表示<math>\boldsymbol{r}=\boldsymbol{r}(\boldsymbol{p})</math>となるわけであるが、これは以下のようにも捉えられる。
:<math>\pi</math>によって射影した平坦な空間で座標を設定すると、'''適切な逆変換<sup>※</sup>によって曲がった空間<math>M^n</math>上に(局所)座標系を与えることができる'''。
つまり、体積分を媒介変数空間に置換積分するということは、逆に体積分の元の表示が「<math>M^n</math>上の局所座標系に於ける積分」であることを示している。
※この適切な逆変換が存在する条件は'''陰関数定理そのもの'''である。
ここで、適切な媒介変数表示が存在するよう<math>M^n</math>に制限を課したものが、以下で扱う'''多様体'''である。
===多様体===
===微分形式===
[[線型代数学続論/外積代数]]も参照。
===リーマン計量===
===テンソル解析===
[[線型代数学続論/テンソル代数]]も参照。
===複素ベクトル解析===
[[複素解析学]]も参照。
{{DEFAULTSORT:へくとるかいせき}}
[[Category:解析学]]
[[Category:微分積分学]]
[[Category:ベクトル解析|かいせきかくきそ]]
16aeethsk71phk6p4l7yjnbul52msvs
ガリア戦記 第7巻/注解
0
46580
304862
304852
2026-10-18T14:28:10Z
Linguae
449
/* 各節注解 */ 進捗
304862
wikitext
text/x-wiki
<div style="font-family:Arial Black;font-style:normal;font-size:15pt;color:#990033;text-align:center;background-color:#fff0ff;">C · IVLII · CAESARIS · COMMENTARIORVM · BELLI · GALLICI</div>
<div style="font-family:Arial Black;font-style:normal;font-size:30pt;color:#990033;text-align:center;background-color:#fff0ff;">LIBER · SEPTIMVS</div>
<span style="font-size:13pt;">『<span style="background-color:#ffc;">[[ガリア戦記 第7巻]]</span>』の単語や構文を詳しく読み解く <span style="background-color:#fc8;font-size:15pt;">'''[[ガリア戦記/注解編|注解編]]'''</span> の目次。</span>
{| id="toc" style="border:0px #ddf; align:left;clear:all;" align="center" cellpadding="5"
|-
! style="background:#ccf; text-align:center;" colspan="10"| ガリア戦記 第7巻 注解
|- style="background:#f8f8ff; text-align:right; font-size: 0.85em;"
|[[/1節|1節]]
|[[/2節|2節]]
|[[/3節|3節]]
|[[/4節|4節]]
|[[/5節|5節]]
|[[/6節|6節]]
|[[/7節|7節]]
|[[/8節|8節]]
|[[/9節|9節]]
|[[/10節|10節]]
|- style="background:#f8f8ff; text-align:right; font-size: 0.85em;"
|[[/11節|11節]]
|[[/12節|12節]]
|[[/13節|13節]]
|[[/14節|14節]]
|[[/15節|15節]]
|[[/16節|16節]]
|[[/17節|17節]]
|[[/18節|18節]]
|[[/19節|19節]]
|[[/20節|20節]]
|- style="background:#f8f8ff; text-align:right; font-size: 0.85em;"
|[[/21節|21節]]
|[[/22節|22節]]
|[[/23節|23節]]
|[[/24節|24節]]
|[[/25節|25節]]
|[[/26節|26節]]
|[[/27節|27節]]
|[[/28節|28節]]
|[[/29節|29節]]
|[[/30節|30節]]
|- style="background:#f8f8ff; text-align:right; font-size: 0.85em;"
|[[/31節|31節]]
|[[/32節|32節]]
|[[/33節|33節]]
|[[/34節|34節]]
|[[/35節|35節]]
|[[/36節|36節]]
|[[/37節|37節]]
|[[/38節|38節]]
|[[/39節|39節]]
|[[/40節|40節]]<!--
|- style="background:#f8f8ff; text-align:right; font-size: 0.85em;"
|[[/41節|41節]]
|[[/42節|42節]]
|[[/43節|43節]]
|[[/44節|44節]]
|[[/45節|45節]]
|[[/46節|46節]]
|[[/47節|47節]]
|[[/48節|48節]]
|[[/49節|49節]]
|[[/50節|50節]]
|- style="background:#f8f8ff; text-align:right; font-size: 0.85em;"
|[[/51節|51節]]
|[[/52節|52節]]
|[[/53節|53節]]
|[[/54節|54節]]
|[[/55節|55節]]
|[[/56節|56節]]
|[[/57節|57節]]
|[[/58節|58節]]
|[[/59節|59節]]
|[[/60節|60節]]
|- style="background:#f8f8ff; text-align:right; font-size: 0.85em;"
|[[/61節|61節]]
|[[/62節|62節]]
|[[/63節|63節]]
|[[/64節|64節]]
|[[/65節|65節]]
|[[/66節|66節]]
|[[/67節|67節]]
|[[/68節|68節]]
|[[/69節|69節]]
|[[/70節|70節]]
|- style="background:#f8f8ff; text-align:right; font-size: 0.85em;"
|[[/71節|71節]]
|[[/72節|72節]]
|[[/73節|73節]]
|[[/74節|74節]]
|[[/75節|75節]]
|[[/76節|76節]]
|[[/77節|77節]]
|[[/78節|78節]]
|[[/79節|79節]]
|[[/80節|80節]]
|- style="background:#f8f8ff; text-align:right; font-size: 0.85em;"
|[[/81節|81節]]
|[[/82節|82節]]
|[[/83節|83節]]
|[[/84節|84節]]
|[[/85節|85節]]
|[[/86節|86節]]
|[[/87節|87節]]
|[[/88節|88節]]
|[[/89節|89節]]
|[[/90節|90節]]
| colspan="6" |
|- style="background:#f8f8ff; text-align:right; font-size: 0.85em;"
|[[/1節|1節]]
|[[/2節|2節]]
|[[/3節|3節]]
|[[/4節|4節]]
|[[/5節|5節]]
|[[/6節|6節]]
|[[/7節|7節]]
|[[/8節|8節]]
|[[/9節|9節]]
|[[/0節|0節]]
-->
|-
| style="background:#f5fefe; text-align:left; font-size: 0.8em;" colspan="10"|
[[ガリア戦記 第1巻/注解|'''注解''' 第1巻]] |
[[ガリア戦記 第2巻/注解|第2巻]] |
[[ガリア戦記 第3巻/注解|第3巻]] |
[[ガリア戦記 第4巻/注解|第4巻]] |
[[ガリア戦記 第5巻/注解|第5巻]] |
[[ガリア戦記 第6巻/注解|第6巻]] |
[[ガリア戦記 第7巻/注解|第7巻]] |<!--
[[ガリア戦記 第8巻/注解|第8巻]]-->
|}
<br style="clear:both;" />
__notoc__
== 各節注解 ==
[[画像:Gaule_-52.png|thumb|right|150px|ガリア戦記 第7巻の情勢図(BC52年)。<br>黄色の領域がローマ領。桃色が同盟部族領。]]
===カルヌーテース族の蜂起===
*<span style="background-color:#fff;">[[/1節]] {{進捗|25%|2025-11-03}}</span> (175語)
*<span style="background-color:#fff;">[[/2節]] {{進捗|25%|2025-11-05}}</span> (71語) 短い節
*<span style="background-color:#fff;">[[/3節]] {{進捗|25%|2025-11-17}}</span> (93語) 短い節
===ウェルキンゲトリークスとガッリア同盟軍の蜂起===
*<span style="background-color:#fff;">[[/4節]] {{進捗|25%|2025-12-05}}</span> (202語) 長い節
*<span style="background-color:#fff;">[[/5節]] {{進捗|25%|2025-12-14}}</span> (128語)
*<span style="background-color:#fff;">[[/6節]] {{進捗|25%|2025-12-15}}</span> (67語) 短い節
*<span style="background-color:#fff;">[[/7節]] {{進捗|25%|2025-12-16}}</span> (78語) 短い節
*<span style="background-color:#fff;">[[/8節]] {{進捗|25%|2026-01-03}}</span> (126語)
*<span style="background-color:#fff;">[[/9節]] {{進捗|25%|2026-01-15}}</span> (143語)
*<span style="background-color:#fff;">[[/10節]] {{進捗|25%|2026-01-16}}</span> (96語) 短い節
*<span style="background-color:#fff;">[[/11節]] {{進捗|25%|2026-02-02}}</span> (181語)
*<span style="background-color:#fff;">[[/12節]] {{進捗|25%|2026-02-25}}</span> (118語)
*<span style="background-color:#fff;">[[/13節]] {{進捗|25%|2026-02-25}}</span> (88語) 短い節
===アウァーリクム攻略戦===
*<span style="background-color:#fff;">[[/14節]] {{進捗|25%|2026-03-08}}</span> (177語)
*<span style="background-color:#fff;">[[/15節]] {{進捗|25%|2026-03-08}}</span> (114語)
*<span style="background-color:#fff;">[[/16節]] {{進捗|25%|2026-03-26}}</span> (64語) 短い節
*<span style="background-color:#fff;">[[/17節]] {{進捗|25%|2026-03-29}}</span> (183語)
*<span style="background-color:#fff;">[[/18節]] {{進捗|25%|2026-04-21}}</span> (81語) 短い節
*<span style="background-color:#fff;">[[/19節]] {{進捗|25%|2026-04-21}}</span> (145-147語)
*<span style="background-color:#fff;">[[/20節]] {{進捗|25%|2026-05-05}}</span> (307-310語) かなり長い節
*<span style="background-color:#fff;">[[/21節]] {{進捗|25%|2026-05-17}}</span> (61語) 短い節
*<span style="background-color:#fff;">[[/22節]] {{進捗|25%|2026-06-08}}</span> (115語)
*<span style="background-color:#fff;">[[/23節]] {{進捗|25%|2026-06-21}}</span> (129語)
*<span style="background-color:#fff;">[[/24節]] {{進捗|25%|2026-06-21}}</span> (147語)
*<span style="background-color:#fff;">[[/25節]] {{進捗|25%|2026-07-08}}</span> (121語)
*<span style="background-color:#fff;">[[/26節]] {{進捗|25%|2026-07-19}}</span> (119語)
*<span style="background-color:#fff;">[[/27節]] {{進捗|25%|2026-08-01}}</span> (79語) 短い節
*<span style="background-color:#fff;">[[/28節]] {{進捗|25%|2026-08-12}}</span> (162語)
*<span style="background-color:#fff;">[[/29節]] {{進捗|25%|2026-08-12}}</span> (122語)
*<span style="background-color:#fff;">[[/30節]] {{進捗|25%|2026-08-29}}</span> (90語) 短い節
*<span style="background-color:#fff;">[[/31節]] {{進捗|25%|2026-08-29}}</span> (107語)
===ゲルゴウィア攻略戦、ハエドゥイー族の離反===
*<span style="background-color:#fff;">[[/32節]] {{進捗|25%|2026-09-23}}</span> (150語)
*<span style="background-color:#fff;">[[/33節]] {{進捗|25%|2026-10-04}}</span> (150語)
*<span style="background-color:#fff;">[[/34節]] {{進捗|25%|2026-10-18}}</span> (90語) 短い節
*<span style="background-color:#fff;">[[/35節]] {{進捗|00%|2026-10-18}}</span>
== 関連項目 ==
*<span style="background-color:#ffd;">[[ガリア戦記]]</span><!--【2006年4月23日起稿】-->
**<span style="background-color:#ffd;">[[ガリア戦記/注解編]]</span><!--(2020-03-27)-->
***<span style="background-color:#ffd;">[[ガリア戦記/注解編/写本と校訂版]] {{進捗|00%|2020-04-17}}</span><!--(2020-04-17)-->
***<span style="background-color:#ffd;">[[ガリア戦記/注解編/表記のゆれ]] {{進捗|00%|2026-03-29}}</span><!--(2026-03-29)-->
**<span style="background-color:#ffd;">[[ガリア戦記/用例集]] {{進捗|00%|2020-03-29}}</span><!--(2020-03-29)-->
**[[ガリア戦記/内容目次]]:巻・章・節の内容を記した目次 {{進捗|75%|2011-04-02}}
**[[ガリア戦記/参照画像一覧]]:本文で参照した画像一覧 {{進捗|75%|2011-04-16}}
*<span style="background-color:#ffd;font-size:15px;">[[古典ラテン語]] {{進捗|00%|2018-04-18}} </span>
<br><div style="font-size:30pt;">ĀĒĪŌŪ _āēīōū_āēīōū_ Ă Ĕ Ĭ Ŏ Ŭ ă ĕ ĭ ŏ ŭ </div>
<div style="font-size:13pt;">
<math>\overline{\mbox{VIIII}} </math>
</div><!-- [[w:Help:数式の表示]] -->
<!--▲三点-->⋯ <!--◀左括弧-->‘ <!--▶右括弧-->’
<span style="font-family:Times New Roman;font-size:15pt;background-color:#fff;"></span>
<span style="font-family:Times New Roman;font-size:15pt;"></span>
<span style="font-family:Times New Roman;"></span>
<!--
*<span style="font-family:Times New Roman;font-style:normal;font-size:15pt;">† : </span>校訂者が、テクストが壊れていると判断した部分をこの記号で囲んでいる。
-->
<!--
<ruby><rb>●漢字●</rb><rp>(</rp><rt>●ルビ●</rt><rp>)</rp></ruby>
-->
<!--
*<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/1節]] {{進捗|00%|2026-10-18}}</span>
-->
<!--
: <!-- [[wikt:en:| -->
-->
<!--
<span style="color:#009900;"></span>
<small></small>
**:<span style="color:#009900;">(訳注:
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:
-->
<!--❶--><!--❷--><!--❸--><!--❹--><!--❺--><!--❻--><!--❼--><!--❽--><!--❾--><!--❿--><!--⓫--><!--⓬--><!----><!----><!----><!---->
<!--<sup>()</sup> -->
<!--❶❷❸❹❺❻❼❽❾❿⓫⓬--><!---->
== 関連記事 ==
{{Wikisource|la:Commentarii de bello Gallico/Liber VII|ガリア戦記 第7巻(ラテン語)}}
*ウィキソース
**<span style="font-family:Times New Roman;">[[s:la:Commentarii de bello Gallico/Liber VII]] (第7巻 ラテン語)</span>
**<span style="font-family:Times New Roman;background-color:#ffffcc;">[https://scaife.perseus.org/reader/urn:cts:latinLit:phi0448.phi001.perseus-lat2:7 Scaife Viewer | De Bello Gallico] (第7巻 ラテン語)</span>
**<span style="font-family:Times New Roman;background-color:#ffffcc;">[https://scaife.perseus.org/reader/urn:cts:latinLit:phi0448.phi001.perseus-eng2:7/ Scaife Viewer | Gallic War] (第7巻 英訳)</span>
**<span style="font-family:Times New Roman;">[[s:fr:La Guerre des Gaules/Livre VII]] (第7巻 仏訳)</span>
----
{{Commons|Category:Battles of Caesar's Gallic Wars|Battles of Caesar's Gallic Warsのカテゴリ}}
{{Commons|Category:Murus gallicus|Category:Murus gallicus ガリア壁のカテゴリ}}
*<span style="font-family:Times New Roman;font-size:13pt;">[[wikt:fr:Catégorie:Mots en latin issus d’un mot en gaulois]]</span>
----
*[[wikt:en:Vercingetorix#Latin|Vercingetorīx]] ウェルキンゲトリークス
*[[wikt:en:Arverni#Latin|Arvernī]] アルウェルニー族
:
*[[wikt:en:agri_cultura#Latin|agrī cultūra]]
*[[wikt:en:bellum#Latin|bellum]]
*[[wikt:en:hiberna#Noun|hīberna]]
:
===地名===
*[[wikt:en:Gallia#Latin|Gallia]]
**Gallia [[wikt:en:cisalpinus#Latin|cisalpīna]] ガッリア・キサルピーナ
**[[wikt:en:Gallia_transalpina#Latin|Gallia trānsalpīna]] ガッリア・トラーンサルピーナ < [[wikt:en:transalpinus#Latin|trānsalpīna]]
**Gallia [[wikt:en:comatus#Latin|comāta]]
*[[wikt:en:Germania#Latin|Germānia]]
:
*[[wikt:en:Aquitania#Latin|Aquītānia]] ア
*[[wikt:en:Avaricum#Latin|Avāricum]] アウ
*[[wikt:en:Gergovia#Latin|Gergovia]]
*[[wikt:en:Arduenna#Latin|Arduenna]]
*[[wikt:en:Genabum#Latin|Genabum]]
*[[wikt:en:Hercynia|Hercynia]]
*[[wikt:en:Narbo#Latin|Narbō]] ナルボー
*[[wikt:en:Noviodunum#Latin|Noviodūnum]] ノウィオ
*[[wikt:en:Vellaunodunum#Latin|Vellaunodūnum]] ウェッラ
===部族名===
*[[wikt:en:Galli#Latin|Gallī]]
*[[wikt:en:Aedui#Latin|(H)aeduī]] ➡ [[wikt:en:Haedui#Latin|Haeduī]]
*[[wikt:en:Arverni#Latin|Arvernī]] アルウェルニー族
*[[wikt:en:Bituriges#Latin|Biturigēs]] ビトゥリゲース族
*[[wikt:en:Boii#Latin|Boiī]] ボ
*[[wikt:en:Cadurci#Latin|Cadurcī]] カドゥルキー族 > [[wikt:en:Cadurcus#Latin|Cadurcus]]
**[[wikt:en:Lucterius#Latin|Lucterius]] ルクテリウス
*[[wikt:en:Carnutes#Latin|Carnūtēs]] カルヌーテース族
*[[wikt:en:Cherusci#Latin|Chēruscī]]
*[[wikt:en:Condrusi#Latin|Condrūsī]]
*
*[[wikt:en:Eburones#Latin|Eburōnēs]] (エブローネース)
*[[wikt:en:Gabali#Latin|Gabalī]] ガバリー族
*[[wikt:en:Germani#Latin|Germānī]]
*[[wikt:en:Graecus#Noun|Graecī]]
*[[wikt:en:Haedui#Latin|Haeduī]] ハエドゥイー族
*[[wikt:en:Helvetii#Latin|Helvētiī]] ヘルウェーティイー族
*[[wikt:en:Helvii#Latin|Helviī]] ヘルウィイー族
*[[wikt:en:Menapii#Latin|Menapiī]]
*[[wikt:en:Nervii#Latin|Nerviī]]
*[[wikt:en:Nitiobriges#Latin|Nitiobrigēs]] ニティオブリゲース族
*[[wikt:en:Rauraci#Latin|Rauracī]]
*[[wikt:en:Remi#Latin|Rēmī]] レーミー族
*[[wikt:en:Romani#Latin|Rōmānī]]
*[[wikt:en:Ruteni#Latin|Rutēnī]] ルテーニー族
*[[wikt:en:Segni#Latin|Segnī]] (セグニー)
*[[wikt:en:Senones#Latin|Senonēs]] セノネース族
*[[wikt:en:Sequani#Latin|Sēquanī]] (セークァニー)
*[[wikt:en:Suebi#Latin|Suēbī]]
*[[wikt:en:Sugambri#Latin|Sugambrī]]
*[[wikt:en:Tectosages#Latin|Tectosagēs]] (テクトサゲース)
*[[wikt:en:Tencteri#Latin|Tenctērī]]
*[[wikt:en:Tolosates#Latin|Tolōsātēs]] トローサーテース族
*[[wikt:en:Treveri#Latin|Trēverī]]
*[[wikt:en:Ubii#Latin|Ubiī]]
*[[wikt:en:Usipetes#Latin|Usipetēs]]
*[[wikt:en:Volcae#Latin|Volcae]] ウォルカエ族
**[[wikt:en:Arecomici#Latin|Arecomicī]] ア
:[[wikt:fr:Nemetes]] (ネメテース)
===登場人物===
*[[wikt:en:Caesar#Latin|Caesar]]
:
[[w:fr:Catégorie:Personnalité de la guerre des Gaules]]
:
*[[wikt:en:Commius|Commius]]
**[[w:コンミウス]]
**[[w:la:Commius]]
**[[w:en:Commius]]
**[[w:fr:Commios]]
*[[wikt:en:Cicero#Latin|Cicerō]]
**[[w:クィントゥス・トゥッリウス・キケロ|クイーントゥス・トゥッリウス・キケロー]]
**[[w:la:Quintus Tullius Cicero]]
**[[w:en:Quintus Tullius Cicero]]
**[[w:fr:Quintus Tullius Cicero]]
*[[wikt:en:Crassus#Latin|Crassus]]
*[[wikt:en:Labienus#Latin|Labiēnus]]
**[[w:ティトゥス・ラビエヌス|ティトゥス・ラビエーヌス]]
<!--
*?
**Crassus
***[[w:プブリウス・リキニウス・クラッスス]]
***[[w:la:Publius Licinius Crassus]]
***[[w:en:Publius Licinius Crassus (son of triumvir)]]
***[[w:fr:Publius Crassus]]
**Labienus (副官)
***[[w:la:Titus Labienus]]
***[[w:en:Titus Labienus]]
***[[w:fr:Titus Labienus]]
**Brutus
***[[w:デキムス・ユニウス・ブルトゥス・アルビヌス]]
***[[w:la:Decimus Iunius Brutus Albinus]]
***[[w:en:Decimus Junius Brutus Albinus]]
***[[w:fr:Decimus Junius Brutus Albinus]]
-->
<br>
===第7巻の関連記事===
<div style="font-family:Times New Roman;font-size:13pt;">
</span>
<span style="font-family:Times New Roman;font-size:13pt;"></span>
== 外部リンク ==
*[[ガリア戦記/注解編#外部リンク]] を参照。
*[[ガリア戦記/注解編/写本と校訂版#オンライン注釈書等]] 等を参照。
===オンライン注釈書===
<div style="background-color:#eeeeee;">
====Caesar's Gallic war : notes by F. W. Kelsey (1897)====
:C. Iuli Caesaris De bello gallico libri VII :
::Caesar's Gallic war : with an introduction, notes, and vocabulary
::: by [[w:en:Francis Kelsey|Francis Willey Kelsey (1858-1927)]], Fifteenth Edition (1897)
:::: (HathiTrust Digital Library [[w:ハーティトラスト|ハーティトラスト・デジタルライブラリ]]で電子化)
:: [https://babel.hathitrust.org/cgi/pt?id=hvd.hn1tp9&seq=19 Contents] (#19)
;:─TEXT─
:: '''Book 7''' : [https://babel.hathitrust.org/cgi/pt?id=hvd.hn1tp9&seq=243 Commentarius Septimus] (#243)
;:─NOTES─
:: '''Book 7'''
# [https://babel.hathitrust.org/cgi/pt?id=hvd.hn1tp9&seq=460 BOOK VII., I.-II.] (#460), [https://babel.hathitrust.org/cgi/pt?id=hvd.hn1tp9&seq=461 III.-V.] (#461), [https://babel.hathitrust.org/cgi/pt?id=hvd.hn1tp9&seq=462 VI.-IX.] (#462),
# [https://babel.hathitrust.org/cgi/pt?id=hvd.hn1tp9&seq=463 X.-XII.] (#463), [https://babel.hathitrust.org/cgi/pt?id=hvd.hn1tp9&seq=464 XIII.-XV.] (#464), [https://babel.hathitrust.org/cgi/pt?id=hvd.hn1tp9&seq=465 XVI.-XVIII.] (#465), [https://babel.hathitrust.org/cgi/pt?id=hvd.hn1tp9&seq=466 XIX.-XXI.] (#466),
# [https://babel.hathitrust.org/cgi/pt?id=hvd.hn1tp9&seq=467 XXII.-XXIII.] (#467), [https://babel.hathitrust.org/cgi/pt?id=hvd.hn1tp9&seq=468 XXIV.- ] (#468), [https://babel.hathitrust.org/cgi/pt?id=hvd.hn1tp9&seq=469 XXV.-XXVIII.] (#469),
# [https://babel.hathitrust.org/cgi/pt?id=hvd.hn1tp9&seq=470 XXIX.-XXXII.] (#470),
:: '''Book 6'''
# [https://babel.hathitrust.org/cgi/pt?id=hvd.hn1tp9&seq=441 I.] (#441), [https://babel.hathitrust.org/cgi/pt?id=hvd.hn1tp9&seq=442 II.-III.] (#442), [https://babel.hathitrust.org/cgi/pt?id=hvd.hn1tp9&seq=443 IV.-VII.] (#443), [https://babel.hathitrust.org/cgi/pt?id=hvd.hn1tp9&seq=444 VIII.-IX.] (#444),
</div>
====English translation by W. A. McDevitte & W. S. Bohn (1869)====
# [http://www.forumromanum.org/literature/caesar/gallic.html (www.forumromanum.org)]
# (www.perseus.tufts.edu)
## [https://www.perseus.tufts.edu/hopper/text?doc=Caes.+Gal.+7.1 C. Julius Caesar, Gallic War, Book 7, chapter 1]
<!--
====Eastman, Frederick Carlos., D'Ooge, Benjamin L. 1860-1940.(1917)====
<span style="font-family:Times New Roman;font-style:normal;font-size:13pt;">
*[https://catalog.hathitrust.org/Record/001058370 Catalog Record: Caesar in Gaul and selections from the third... | HathiTrust Digital Library] (catalog.hathitrust.org)
:[https://babel.hathitrust.org/cgi/pt?id=hvd.hn5cnb&view=1up&seq=7&skin=2021 #7 - Caesar in Gaul and selections from the third book of the Civil ... - Full View | HathiTrust Digital Library] (babel.hathitrust.org)
:BOOK IV. [https://babel.hathitrust.org/cgi/pt?id=hvd.hn5cnb&view=1up&seq=393&skin=2021 #393 ]
:IV.34,-38. [https://babel.hathitrust.org/cgi/pt?id=hvd.hn5cnb&view=1up&seq=403&skin=2021 #403 ]
</span>
-->
====Harkness, Albert (1889)====
<span style="font-family:Times New Roman;font-style:normal;"><span style="font-size:15pt;">Caesar's Commentaries on the Gallic War, </span><span style="font-size:13pt;">with notes, dictionary, and a map of Gaul.</span><br> <span style="font-size:15pt;">
edited by <u>[[w:en:Albert Harkness|Albert Harkness (1822-1907)]]</u> <ref>[http://onlinebooks.library.upenn.edu/webbin/book/lookupname?key=Harkness%2C%20Albert%2C%201822%2D1907 Harkness, Albert, 1822-1907 | The Online Books Page]</ref>, New York, [[w:en:D. Appleton & Company|D. Appleton and Company]], 1889 (Rivised Edition)</span></span>
::Caesar's commentaries on the Gallic war; with notes, dictionary, ... (Full View | HathiTrust Digital Library)
; BOOK SEVENTH
# [https://babel.hathitrust.org/cgi/pt?id=hvd.hn3hve&view=1up&seq=373 #373]
; DICTIONARY
# [https://babel.hathitrust.org/cgi/pt?id=hvd.hn3hve&view=1up&seq=387 #387]
===Humanitext Reader===
<div style="background-color:#ffffdd;">
* Humanitext Reader|ギリシア語・ラテン語古典の原文と日本語訳 - https://reader.humanitext.ai/
* Humanitext Reader — Greek & Latin Classics with English Translation - https://reader.humanitext.ai/en
*:※日本語・英語・中国語・韓国語の4言語により、ギリシア語・ラテン語作品との対訳テキストを読むことができる。
** [https://reader.humanitext.ai/library/phi0448.phi001.humanitext-lat2 ガリア戦記(ユリウス・カエサル)原文・日本語訳・あらすじ — Gallic War · Humanitext Reader]
*** [https://reader.humanitext.ai/read/urn:cts:latinLit:phi0448.phi001.humanitext-lat2:1.1.1-1.1.7 ガリアの三分とそこに住む諸部族|『ガリア戦記』§1.1.1-1.1.7(ユリウス・カエサル)ラテン語原文・日本語訳 · Humanitext Reader]
** [https://reader.humanitext.ai/en/library/phi0448.phi001.humanitext-lat2 Gallic War (Julius Caesar) — Original Latin Text, English Translation & Summary · Humanitext Reader]
*** [https://reader.humanitext.ai/en/read/urn:cts:latinLit:phi0448.phi001.humanitext-lat2:1.1.1-1.1.7 The Three Divisions of Gaul and Their Inhabitants — Gallic War §1.1.1-1.1.7 (Julius Caesar) | Latin text & English translation · Humanitext Reader]
</div>
===IntraText CT===
* <span style="background-color:#ffffcc;">[https://www.intratext.com/IXT/LAT0044/_INDEX.HTM De bello Gallico - Table of Contents - IntraText CT]</span>
*: (ハイパーテキスト化されたテキストと、単語リストおよびコンコーダンスを組み合わせたもの)
** [https://www.intratext.com/IXT/LAT0044/_STAT.HTM De bello Gallico - Statistics - IntraText CT] (頻度ごと単語リストのデータ集)
====Incerti auctoris(編者不詳)====
; [https://books.google.co.jp/books?id=uLA8AAAAIAAJ&lpg=PA98&dq=Caesar+to+Cicero.+Be+of+good+courage.+Expect+aid&pg=PP1&redir_esc=y#v=onepage&q&f=false Caesar Gallic War V with vocabulary](第5巻)-Google ブックス(プレビュー)
;[https://www.latein.me/ Latein-Wörterbuch - Latein.me]
# [https://www.latein.me/text/3/Caesar/37/De+Bello+Gallico+%28V%29/p/0 De Bello Gallico (V) - Caesar - Latein.me]
<span style="font-family:Times New Roman;font-style:normal;font-size:13pt;"></span>
;nodictionaries.com
<!-- :[https://nodictionaries.com/caesar/de-bello-gallico-1/1 '''Caesar De Bello Gallico 1''' 1 in Latin, with adjustable running vocabulary]
:[https://nodictionaries.com/caesar/de-bello-gallico-2/1 '''Caesar De Bello Gallico 2''' 1 in Latin, with adjustable running vocabulary]
:[https://nodictionaries.com/caesar/de-bello-gallico-3/1 '''Caesar De Bello Gallico 3''' 1 in Latin, with adjustable running vocabulary]
:[https://nodictionaries.com/caesar/de-bello-gallico-4/1 '''Caesar De Bello Gallico 4''' 1 in Latin, with adjustable running vocabulary] -->
:[https://nodictionaries.com/caesar/de-bello-gallico-5/1 Caesar De Bello Gallico 5 1 in Latin, with adjustable running vocabulary]
==脚注==
<references />
[[Category:ガリア戦記 第7巻|*#]]
cg8s3h0rp545opptnjbtxyqesoekhnz
論語/巻第六 先進第十一/第一
0
48939
304858
303950
2026-10-18T13:54:47Z
Tomzo
248
/* 解説 */
304858
wikitext
text/x-wiki
==本文==
<div style="text-align: center;">
<div style="display: inline-block; text-align: left;">
<small>
{{#invoke:Kanbun|kanbun|
子曰{いはク}、\\
先進於[二]{おケルハ}禮樂[一]{ニ}、 野人也{なり}、 \\
後進於[二]{おケルハ}禮樂[一]{ニ}、 君子也{なり}。 \\
如{もシ}用[レ]{もちヒバ}之{ヲ}、 則{すなはチ}吾從[二]{したがハン}先進[一]{ニ}。
}}
</small>
</div>
</div>
== 訓読文と語釈等 ==
<div>
{| class="wikitable" style="width:100%;"
|+
! style="width:35%;" | 訓読文
! style="width:65%;" | 語釈等
|-
|style="vertical-align:top"|<big>
{{ruby|子|し}}{{ruby|曰|いは}}く、
:先進<ref group="†" name="先進">「[[#礼楽|礼楽]]」の新旧。「先進」はある分野で先んじていることであり、先んじた礼楽、即ち、周建国時の礼楽と、孔子が生きている時代の礼楽を「後進」として比較したもの。又は、殷以前と周以後との説もある。なお、「先進・後進」は本来「先輩・後輩」の同義語であり、「先進篇」は、多く講師の弟子に関する逸話を含む篇であるため、「先進・後進」は孔子の弟子の分類を示すとの解釈([[w:木村英一|木村英一]]など、[[#解説2|解説参照]])もある。<br/></ref>の禮樂<ref group="†" name="礼楽">{{anchors|礼楽}}礼楽 - 礼(立ち居振る舞い)と音楽(日本で雅楽として知られるもののルーツ)</ref>に於けるは野人なり。
:後進<ref group="†" name="先進"/>の禮樂<ref group="†" name="礼楽"/>に於けるは君子なり<ref group="†">朱熹の註(新註)では、孔子による評ではなく、世間における浅はかな印象としている。</ref>。
:<u>{{ruby|如|も}}し<ref group="†">もし…であったら。文頭・文中に置いて仮定条件を表す(=若)。</ref></u>之を<u>用ひ<ref group="†">「礼楽」の様式に従う。又は、部下として用いる([[#解説2|解説参照]])。</ref></u>ば、則ち吾は先進に從はん。
:::::</big><small>([[s:論語 (漢文叢書)/先進第十一|ウィキソースより]])</small>
|style="vertical-align:top"|<small><references group="†"/></small>
|}
</div>
== 現代語和訳 ==
[[w:下村湖人|下村湖人]][https://www.aozora.gr.jp/cards/001097/files/43785_58836.html 『現代訳論語』(青空文庫)より]
:先師がいわれた。――
::礼楽の道において、昔の人は土くさい野人、今の人は磨きのかかった上流人、と、そう世間で考えるのも一応尤もだ。
::しかし、もし私がそのいずれか一つを選ぶとすると、私は昔の人の歩んだ道を選びたい。
:(形式美のみあつて内容の空虚なのを排したのである。)
== 解説 ==
礼楽 ー宮殿などでの立ち居振る舞いの作法と音楽ー は、昔のものはぎこちなく野暮ったい一方で、最近のものは洗練されているとの評があるが、自分は、野暮ったくても、昔の礼楽を用いるのだという、孔子の宣言である。孔子は、いくら外見が洗練されていようとも、その振る舞いをする人、音楽を奏でる人に[[論語/巻第二 里仁第四/第十五|心底からの真心(忠恕)]]がなければ意味がないと言っている。孔子は、物事の内なる本質('''質''')とそれを外にアピールすること('''文''')はともに大切であると説くが、質に文が足りていない状態を「野」と言った([[論語/巻第三 雍也第六/第十八|巻第三 雍也第六/第十八]])。逆にいうと「野」であることは、本質は足りているということを言う。
{{anchors|解説2}}さて、ここまでは伝統的解釈であるが、「先進・後進」は本来「先輩・後輩」の意味であり、本篇『先進篇』は弟子たちの人物と志を論じ、個性に応じた教育と仁の実践を記述するという性質のものであれば、この「先進・後進」は孔子の弟子たちを、その入門時期で分けたものであると解釈する立場がある。「先進」の代表としては、子路、閔子騫、顔回、子貢が挙げられ、「後進」の代表には、子張、子夏、子游、曾子らが挙げられる。概ね、入門時期を「[[論語/巻第六 先進第十一/第二|陳蔡の間(次章参照)]]」前後で分け、その前から弟子のものを「先進」、その後に弟子になったものを「後進」とするものである。先進篇は、弟子の中でも先進にあたる弟子に関する逸話を多く含む。先進は、孔子が一家を成す前からの弟子であって出自や能力も様々、また、孔子自身も学問を高めつつあった頃の弟子であるので、先進の教え学ぶ礼楽はまだ粗野なものを残していた(例として、[[論語/巻第六 先進第十一/第十五|本篇第十五]]など)。一方、後進は孔子が有名になり多くの弟子をもって、その中から選抜された者であるので洗練された礼楽を身につけていた([[論語/巻第五 子罕第九/第二十三|巻第五 子罕第九/第二十三]]参照)。しかし、上記のように、孔子は、心根に見合わず外面を飾ることを嫌うので([[論語/巻第一 学而第一/第三|巻第一 学而第一/第三]]等参照)、先進を立てることで、後進を戒めたものである。
== 関連 ==
== 脚注 ==
<small><references /></small>
[[Category:高等学校教育_国語_漢文|せんしん]]
[[category:論語|せんしん01]]
fpetiakr8gul68y9790dvncl3vduvzr
ガリア戦記 第7巻/注解/34節
0
48945
304861
304849
2026-10-18T14:27:28Z
Linguae
449
/* 整形テキスト */
304861
wikitext
text/x-wiki
<div style="font-family:Arial Black;font-style:normal;font-size:15pt;color:#990033;text-align:center;">C · IVLII · CAESARIS · COMMENTARIORVM · BELLI · GALLICI</div>
<div style="font-family:Arial Black;font-style:normal;font-size:30pt;color:#990033;text-align:center;">LIBER · SEPTIMVS</div>
<br>
{| id="toc" style="align:center;clear:all;" align="center" cellpadding="5"
|-
! style="background:#bbf; text-align:center;" | [[ガリア戦記/注解編|ガリア戦記 注解編]]
| style="background:#ccf; text-align:center;" | [[ガリア戦記 第7巻/注解|第7巻]]
| style="background:#eef; text-align:center;"|
[[ガリア戦記 第7巻/注解/33節|33節]] |
[[ガリア戦記 第7巻/注解/34節|34節]] |
[[ガリア戦記 第7巻/注解/35節|35節]]
|}
__notoc__
== 原文テキスト ==
<div style="font-family:Times New Roman;font-style:normal;font-size:15pt;color:#333;text-align:left;"><ref>原文テキストについては[[ガリア戦記/注解編#原文テキスト]]を参照。</ref> 34.
<!--❶--><sup>1</sup>Hoc decreto interposito, cohortatus Aeduos<!--Haeduos--><!--,--> ut controversiarum ac dissensionis obliviscerentur atque omnibus omissis his rebus huic bello servirent, eaque<!--,--> quae meruissent<!--,--> praemia ab se devicta Gallia exspectarent<!--,--> equitatumque omnem et peditum milia <span style="background-color:#ffc;">X</span><!--decem--> sibi celeriter mitterent<!--,--> quae in praesidiis rei frumentariae causa disponeret, exercitum in duas partis<!--partes--> divisit: <!--◆--> <!--❷--><sup>2</sup>quattuor legiones in Senones Parisiosque Labieno ducendas dedit, sex ipse in Arvernos ad oppidum Gergoviam secundum flumen Elaver duxit<!--:-->; <!--◆--> equitatus partem illi <span style="background-color:#ffc;">attribuit</span><!--adtribuit-->, partem sibi reliquit. <!--◆--> <!--❸--><sup>3</sup>Qua re cognita Vercingetorix omnibus interruptis eius fluminis pontibus ab altera fluminis parte iter facere coepit. </div>
<span style="background-color:#ffc;"></span>
----
;テキスト引用についての注記
*<span style="font-family:Times New Roman;font-style:normal;font-size:15pt;">[[wikt:en:X#Latin|X]] : [[wikt:en:decem#Latin|decem]]</span> と表記する校訂版もある。
*<span style="font-family:Times New Roman;font-style:normal;font-size:15pt;">[[wikt:en:attribuit#Latin|attribuit]] : [[wikt:en:adtribuit#Latin|adtribuit]]</span> と表記している校訂版もある。
<span style="font-family:Times New Roman;font-style:normal;font-size:15pt;"></span>
<span style="font-family:Times New Roman;font-style:oblique;font-size:15pt;"></span>
<span style="font-family:Times New Roman;font-style:bold;font-size:15pt;"></span>
== 整形テキスト ==
<div style="font-family:Times New Roman;font-style:normal;font-size:15pt;color:#333;text-align:left;"><ref>整形テキストについては[[ガリア戦記/注解編#凡例]]を参照。</ref> XXXIV
<!--❶--><sup>①</sup>Hōc dēcrētō interpositō, cohortātus <span style="color:#800;">Haeduōs</span><!--Aeduōs--><!--,--><span style="color:#800;">,</span> ut contrōversiārum ac dissēnsiōnis oblīvīscerentur atque<!--,--><span style="color:#800;">,</span> omnibus omissīs hīs rēbus<!--,--><span style="color:#800;">,</span> huic bellō servīrent, eaque<!--,--><span style="color:#800;">,</span> quae meruissent<!--,--><span style="color:#800;">,</span> praemia ab sē<!--,--><span style="color:#800;">,</span> dēvictā Galliā<!--,--><span style="color:#800;">,</span> exspectārent<!--,--><span style="color:#800;">,</span> equitātumque omnem et peditum mīlia X<!--decem--> sibi celeriter mitterent<!--,--><span style="color:#800;">,</span> quae in praesidiīs reī frūmentāriae causā dispōneret, exercitum in duās <span style="color:#800;">partēs</span><!--partīs--> dīvīsit<!--;-->: <!--◆--> <!--❷--><sup>②</sup>quattuor legiōnēs in Senonēs Parīsiōsque Labiēnō dūcendās dedit, sex ipse in Arvernōs ad oppidum Gergoviam secundum flūmen Elaver dūxit<!--:-->; <!--◆--> equitātūs partem illī <span style="color:#800;">adtribuit</span><!--attribuit-->, partem sibi relīquit. <!--◆--> <!--❸--><sup>③</sup>Quā rē cognitā Vercingetorīx omnibus interruptīs eius flūminis pontibus<!--,--><span style="color:#800;">,</span> ab alterā flūminis parte iter facere coepit. </div>
----
;注記
*原文の <span style="font-family:Times New Roman;font-style:normal;font-size:15pt;">[[wikt:en:Aeduos|Aeduōs]], [[wikt:en:attribuit|attribuit]], [[wikt:en:partis#Latin|partīs]] <!--[[wikt:en:acclivis#Latin|acclīvis]], [[wikt:en:accommodatae|accommodātae]], [[wikt:en:allatis|allātīs]], [[wikt:en:Aduatuca#Latin|Aduātucam]], [[wikt:en:Aduatuci|Aduatucī]], [[wikt:en:Aduatucis|Aduatucīs]], [[wikt:en:Aduatucos|Aduatucōs]], [[wikt:en:Aeduae|Aeduae]], [[wikt:en:Aedui#Latin|Aeduī]], [[wikt:en:Aeduis|Aeduīs]], [[wikt:en:Aeduorum|Aeduōrum]], [[wikt:en:Aeduus#Latin|Aeduus]], [[wikt:en:aequinocti|aequinoctī]], [[wikt:en:affecti|affectī]], [[wikt:en:affectus#Participle|affectus]], [[wikt:en:afferat|afferat]], [[wikt:en:afferebat|afferēbat]], [[wikt:en:afferret|afferret]], [[wikt:en:afferretur|afferrētur]], [[wikt:en:afflictae|afflīctae]], [[wikt:en:affligunt|afflīgunt]], [[wikt:en:aggregabat|aggregābat]], [[wikt:en:aggregaverant|aggregāverant]] ([[wikt:en:aggregarant|aggregārant]]), [[wikt:en:allato|allātō]], [[wikt:en:alliciebat#Latin|alliciēbat]], [[wikt:en:Alpis#Latin|Alpīs]], [[wikt:en:appelluntur|appelluntur]], [[wikt:en:appetebat|appetēbat]], [[wikt:en:apportari|apportārī]], [[wikt:en:applicant#Latin|applicant]], [[wikt:en:approbant#Latin|approbant]], [[wikt:en:appropinquabat|appropinquābat]], [[wikt:en:appropinquare#Latin|appropinquāre]], [[wikt:en:appropinquarent|appropinquārent]], [[wikt:en:appropinquassent|appropinquāssent]], [[wikt:en:appropinquaverunt|appropinquāvērunt]] ([[wikt:en:appropinquarunt|appropinquārunt]]), [[wikt:en:appropinquavit|appropinquāvit]], [[wikt:en:appulso#Latin|appulsō]], [[wikt:en:arripere|arripere]], [[wikt:en:articlis|articlīs]], [[wikt:en:ascendissent#Latin|ascendissent]], [[wikt:en:ascensu#Noun|ascēnsū]], [[wikt:en:assidua#Latin|assiduā]], [[wikt:en:assiduis#Latin|assiduīs]], [[wikt:en:assuefacti|assuēfactī]], [[wikt:en:assuescere#Latin|assuēscere]], [[wikt:en:attingit|attingit]], [[wikt:en:attingunt|attingunt]], [[wikt:en:attribuerat#Latin|attribuerat]], [[wikt:en:attribuunt|attribuunt]], [[wikt:en:auris#Latin|aurīs]], [[wikt:en:auxili#Latin|auxilī]], [[wikt:en:cedentis|cēdentīs]], [[wikt:en:civis#Latin|cīvīs]], [[wikt:en:clientis|clientīs]], [[wikt:en:cohortis|cohortīs]], [[wikt:en:coicere|coicere]], [[wikt:en:coicerent|coicerent]], [[wikt:en:coici|coicī]], [[wikt:en:coiciant|coiciant]], [[wikt:en:coiciebant|coiciēbant]], [[wikt:en:coiciunt|coiciunt]], [[wikt:en:coiecerant|coiēcerant]], [[wikt:en:coiecerunt|coiēcērunt]], [[wikt:en:coiecisse|coiēcisse]], [[wikt:en:coiecta|coiecta]], [[wikt:en:coiecti|coiectī]], [[wikt:en:coiectis|coiectīs]], [[wikt:en:collatis|collātīs]], [[wikt:en:collaudantur|collaudantur]], [[wikt:en:collaudat|collaudat]], [[wikt:en:collaudatis#Participle|collaudātīs]], [[wikt:en:collis#Latin|collīs]], [[wikt:en:collocabant|collocābant]], [[wikt:en:collocabat|collocābat]], [[wikt:en:collocandis|collocandīs]], [[wikt:en:collocant#Latin|collocant]], [[wikt:en:collocantur#Latin|collocantur]], [[wikt:en:collocarat|collocārat]], [[wikt:en:collocare#Latin|collocāre]], [[wikt:en:collocaret|collocāret]], [[wikt:en:collocari|collocārī]], [[wikt:en:collocatas|collocātās]], [[wikt:en:collocati#Latin|collocātī]], [[wikt:en:collocatis#Participle|collocātīs]], [[wikt:en:collocaverat#Latin|collocāverat]], [[wikt:en:collocavit|collocāvit]], [[wikt:en:collocuti|collocūtī]], [[wikt:en:colloquantur|colloquantur]], [[wikt:en:colloquendi|colloquendī]], [[wikt:en:colloqui#Latin|colloquī]], [[wikt:en:colloquium#Latin|colloquium]], [[wikt:en:communis#Latin|commūnīs]], [[wikt:en:compluribus|complūribus]], [[wikt:en:compluris|complūrīs]], [[wikt:en:comprehensis|comprehēnsīs]], [[wikt:en:comprehensos|comprehēnsōs]], [[wikt:en:conantis|cōnantīs]], [[wikt:en:consili|cōnsilī]], [[wikt:en:directus#Latin|dīrēctus]], [[wikt:en:dubitantis#Participle_2|dubitantīs]], [[wikt:en:effarciuntur#Latin|effarciuntur]], [[wikt:en:egredientis#Etymology_2|ēgredientīs]], [[wikt:en:ei#Latin|eī]], [[wikt:en:eis#Latin|eīs]], [[wikt:en:existit#Latin|existit]], [[wikt:en:expectent#Latin|expectent]], [[wikt:en:exposcentis#Participle_2|exposcentīs]], [[wikt:en:exstruxerunt#Latin|exstruxerunt]], [[wikt:en:ferventis#Latin|ferventīs]], [[wikt:en:finis#Latin|fīnīs]], [[wikt:en:glandis#Latin|glandīs]], [[wikt:en:haesitantis#Participle_2|haesitantīs]], [[wikt:en:hostis#Latin|hostīs]], [[wikt:en:ignis#Latin|ignīs]], [[wikt:en:illatas|illātās]], [[wikt:en:illustrem#Latin:_adjective|illūstrem]], [[wikt:en:immittit|immittit]], [[wikt:en:immittunt|immittunt]], [[wikt:en:imparatum|imparātum]], [[wikt:en:impedita#Latin|impedīta]], [[wikt:en:imperi#Latin|imperī]], [[wikt:en:imprudentia#Noun|imprūdentia]], [[wikt:en:incolumis#Latin|incolumīs]], [[wikt:en:indignantis#Participle_2|indignantīs]], [[wikt:en:inopinantis#Adjective_2|inopīnantīs]], [[wikt:en:irridere#Latin|irrīdēre]], [[wikt:en:irrumpere|irrumpere]], [[wikt:en:irrumpit|irrumpit]], [[wikt:en:irruperunt|irrūpērunt]], [[wikt:en:laborantis#Etymology_2|labōrantīs]], [[wikt:en:montis|montīs]], [[wikt:en:natalis#Latin|nātālīs]], [[wikt:en:navis#Latin|nāvīs]], [[wikt:en:negoti|negōtī]], nōn nūllae, nōn nūllōs, [[wikt:en:offici#Noun_2|officī]], [[wikt:en:omnis#Latin|omnīs]], [[wikt:en:periclum#Latin|perīclum]], plūrīs, [[wikt:en:praesidi|praesidī]], [[wikt:en:proeli|proelī]], proficīscentīs, [[wikt:en:resistentis|resistentīs]], [[wikt:en:singularis#Latin|singulārīs]], [[wikt:en:solaci|sōlācī]], [[wikt:en:spati#Latin|spatī]], [[wikt:en:subeuntis|subeuntīs]], [[wikt:en:suffossis|suffossīs]], [[wikt:en:sumministrata|sumministrāta]], [[wikt:en:summissis|summissīs]], [[wikt:en:summittantur#Latin|summittantur]], [[wikt:en:summittebat|summittēbat]], [[wikt:en:summittit|summittit]], [[wikt:en:summotis|summōtīs]], [[wikt:en:summoveri|summovērī]], [[wikt:en:supplici#Noun|supplicī]], [[wikt:en:testis#Latin|testīs]], [[wikt:en:timentis#Participle_2|timentīs]], [[wikt:en:Tituri|Titūrī]], [[wikt:en:Trinobantes#Latin|Trinobantēs]], trīs, [[wikt:en:turris#Latin|turrīs]], [[wikt:en:utilis#Latin|ūtilīs]], [[wikt:en:vectigalis#Latin|vectīgālīs]] --></span> などは、<br>それぞれ <span style="font-family:Times New Roman;font-style:normal;font-size:15pt;">[[wikt:en:Haeduos|Haeduōs]], [[wikt:en:adtribuit|adtribuit]], [[wikt:en:partes#Latin|partēs]] <!--[[wikt:en:adclivis#Latin|adclīvis]], [[wikt:en:adcommodatae|adcommodātae]], [[wikt:en:adlatis|adlātīs]], Atuātucam, [[wikt:de:Atuatuci|Atuatucī]], Atuatucīs, Atuatucōs, Haeduae, [[wikt:en:Haedui|Haeduī]], [[wikt:en:Haeduis|Haeduīs]], [[wikt:en:Haeduorum|Haeduōrum]], Haeduus, [[wikt:en:aequinoctii|aequinoctiī]], [[wikt:en:adfecti|adfectī]], [[wikt:en:adfectus#Adjective|adfectus]], [[wikt:en:adferat|adferat]], [[wikt:en:adferebat|adferēbat]], [[wikt:en:adferret|adferret]], [[wikt:en:adferretur|adferrētur]], [[wikt:en:adflictae|adflīctae]], [[wikt:en:adfligunt|adflīgunt]], [[wikt:en:adgregabat|adgregābat]], [[wikt:en:adgregaverant|adgregāverant]] ([[wikt:en:adgregarant|adgregārant]]), [[wikt:en:adlato|adlātō]], [[wikt:en:adliciebat#Latin|adliciēbat]], [[wikt:en:Alpes#Latin|Alpēs]], [[wikt:en:adpelluntur|adpelluntur]], [[wikt:en:adpetebat|adpetēbat]], [[wikt:en:adportari|adportārī]], [[wikt:en:adplicant|adplicant]], [[wikt:en:adprobant#Latin|adprobant]], [[wikt:en:adpropinquabat|adpropinquābat]], [[wikt:en:adpropinquare|adpropinquāre]], [[wikt:en:adpropinquarent|adpropinquārent]], [[wikt:en:adpropinquassent|adpropinquāssent]], [[wikt:en:adpropinquaverunt|adpropinquāvērunt]] ([[wikt:en:adpropinquarunt|adpropinquārunt]]), [[wikt:en:adpropinquavit|adpropinquāvit]], [[wikt:en:adpulso|adpulsō]], [[wikt:en:adripere|adripere]], [[wikt:en:articulis|articulīs]], [[wikt:en:adscendissent|adscendissent]], [[wikt:en:adscensu#Noun|adscēnsū]], [[wikt:en:adsidua|adsiduā]], [[wikt:en:adsiduis#Latin|adsiduīs]], [[wikt:en:adsuefacti|adsuēfactī]], [[wikt:en:adsuescere#Latin|adsuēscere]], [[wikt:en:adtingit|adtingit]], [[wikt:en:adtingunt|adtingunt]], [[wikt:en:adtribuerat#Latin|adtribuerat]], [[wikt:en:adtribuunt|adtribuunt]], [[wikt:en:aures#Noun|aurēs]], [[wikt:en:auxilii|auxiliī]], [[wikt:en:cedentes#Latin|cēdentēs]], [[wikt:en:cives#Latin|cīvēs]], [[wikt:en:clientes#Latin|clientēs]], [[wikt:en:cohortes#Latin|cohortēs]], [[wikt:en:conicere|conicere]], [[wikt:en:conicerent|conicerent]], [[wikt:en:conici#Latin|conicī]], [[wikt:en:coniciant|coniciant]], [[wikt:en:coniciebant|coniciēbant]], [[wikt:en:coniciunt|coniciunt]], [[wikt:en:coniecerant|coniēcerant]], [[wikt:en:coniecerunt|coniēcērunt]], [[wikt:en:coniecisse|coniēcisse]], [[wikt:en:coniecta|coniecta]], [[wikt:en:coniecti|coniectī]], [[wikt:en:coniectis|coniectīs]], [[wikt:en:conlatis|conlātīs]], [[wikt:en:conlaudantur|conlaudantur]], [[wikt:en:conlaudat|conlaudat]], [[wikt:en:conlaudatis#Participle|conlaudātīs]], [[wikt:en:colles#Latin|collēs]], [[wikt:en:conlocabant|conlocābant]], [[wikt:en:conlocabat|conlocābat]], [[wikt:en:conlocandis|conlocandīs]], [[wikt:en:conlocant|conlocant]], [[wikt:en:conlocantur#Latin|conlocantur]], [[wikt:en:conlocarat|conlocārat]], [[wikt:en:conlocare|conlocāre]], [[wikt:en:conlocaret|conlocāret]], [[wikt:en:conlocari|conlocārī]], [[wikt:en:conlocatas|conlocātās]], [[wikt:en:conlocati|conlocātī]], [[wikt:en:conlocatis#Participle|conlocātīs]], [[wikt:en:conlocaverat#Latin|conlocāverat]], [[wikt:en:conlocavit|conlocāvit]], [[wikt:en:conlocuti|conlocūtī]], [[wikt:en:conloquantur|conloquantur]], [[wikt:en:conloquendi|conloquendī]], [[wikt:en:conloqui#Latin|conloquī]], [[wikt:en:conloquium#Latin|conloquium]], [[wikt:en:communes#Latin|commūnēs]], [[wikt:en:conpluribus|conplūribus]], [[wikt:en:complures#Latin|complūrēs]], [[wikt:en:conprehensis|conprehēnsīs]], [[wikt:en:conprehensos|conprehēnsōs]], [[wikt:en:conantes|cōnantēs]], [[wikt:en:consilii|cōnsiliī]], [[wikt:en:derectus#Latin|dērēctus]], [[wikt:en:dubitantes|dubitantēs]], [[wikt:en:efferciuntur#Latin|efferciuntur]], [[wikt:en:egredientes|ēgredientēs]], [[wikt:en:ii#Latin|iī]], [[wikt:en:iis#Latin|iīs]], [[wikt:en:exsistit|exsistit]], [[wikt:en:exspectent#Latin|exspectent]], [[wikt:en:exposcentes#Latin|exposcentēs]], [[wikt:en:extruxerunt#Latin|extruxerunt]], [[wikt:en:ferventes#Latin|ferventēs]], [[wikt:en:fines#Latin|fīnēs]], [[wikt:en:glandes#Latin|glandēs]], [[wikt:en:haesitantes#Latin|haesitantēs]], [[wikt:en:hostes#Latin|hostēs]], [[wikt:en:ignes|ignēs]], [[wikt:en:inlatas|inlātās]], [[wikt:en:inlustrem#Latin:_adjective|inlūstrem]], [[wikt:en:inmittit|inmittit]], [[wikt:en:inmittunt|inmittunt]], [[wikt:en:inparatum|inparātum]], [[wikt:en:inpedita#Latin|inpedīta]], [[wikt:en:imperii#Latin|imperiī]], [[wikt:en:inprudentia#Noun|inprūdentia]], [[wikt:en:incolumes|incolumēs]], [[wikt:en:indignantes#Latin|indignantēs]], [[wikt:en:inopinantes|inopīnantēs]], [[wikt:en:inridere|inrīdēre]], [[wikt:en:inrumpere|inrumpere]], [[wikt:en:inrumpit|inrumpit]], [[wikt:en:inruperunt|inrūpērunt]], [[wikt:en:laborantes#Latin|labōrantēs]], [[wikt:en:montes#Latin|montēs]], [[wikt:en:natales#Latin|nātālēs]], [[wikt:en:naves#Latin|nāvēs]], [[wikt:en:negotii|negōtiī]], [[wikt:en:nonnullae|nōnnūllae]], [[wikt:en:nonnullos|nōnnūllōs]], [[wikt:en:officii#Latin|officiī]], [[wikt:en:omnes#Latin|omnēs]], [[wikt:en:periculum#Latin|perīculum]], [[wikt:en:plures|plūrēs]], [[wikt:en:praesidii|praesidiī]], [[wikt:en:proelii|proeliī]], [[wikt:en:proficiscentes|proficīscentēs]], [[wikt:en:resistentes#Latin|resistentēs]], [[wikt:en:singulares#Latin|singulārēs]], [[wikt:en:solacii|sōlāciī]], [[wikt:en:spatii#Latin|spatiī]], [[wikt:en:subeuntes|subeuntēs]], [[wikt:en:subfossis|subfossīs]], [[wikt:en:subministrata|subministrāta]], [[wikt:en:submissis|submissīs]], [[wikt:en:submittantur#Latin|submittantur]], [[wikt:en:submittebat|submittēbat]], [[wikt:en:submittit|submittit]], [[wikt:en:submotis|submōtīs]], [[wikt:en:submoveri|submovērī]], [[wikt:en:supplicii|suppliciī]], [[wikt:en:testes#Latin|testēs]], [[wikt:en:timentes|timentēs]], [[wikt:en:Titurii|Titūriī]], [[wikt:en:Trinovantes#Latin|Trinovantēs]], [[wikt:en:tres#Latin|trēs]], [[wikt:en:turres#Latin|turrēs]], [[wikt:en:utiles#Latin|ūtilēs]], [[wikt:en:vectigales|vectīgālēs]] --></span> などとした。
<span style="font-family:Times New Roman;font-style:normal;font-size:15pt;"></span>
<span style="font-family:Times New Roman;font-style:oblique;font-size:15pt;"></span>
<span style="color:#b00;"></span>
<span style="color:#800;"></span>
<span style="font-size:10pt;"></span>
<span style="background-color:#ff0;"></span>
== 注解 ==
=== 1項 ===
<span style="font-family:Times New Roman;font-size:20pt;"></span>
;語釈
<span style="font-family:Times New Roman;font-size:15pt;background-color:#fff;"></span>
<span style="font-family:Times New Roman;font-size:15pt;"></span>
<span style="font-family:Times New Roman;font-size:15pt;"></span>
<span style="background-color:#ccffcc;"></span>
<!--
;対訳
《 》 内は、訳者が説明のために補った語。<span style="font-family:Times New Roman;font-size:30pt;">{</span> <span style="font-family:Times New Roman;font-size:30pt;">}</span> 内は関係文。
<span style="font-family:Times New Roman;font-size:15pt;"></span>
-->
== 訳文 ==
*<span style="background-color:#dff;">訳文は、[[ガリア戦記_第7巻#34節]]</span>
== 脚注 ==
{{Reflist}}
== 解説 ==
<!--
{| class="wikitable" style="text-align:center"
|- style="height:23em;"
|
|
|}
-->
== 関連項目 ==
*[[ガリア戦記]]
**[[ガリア戦記/注解編]]
***[[ガリア戦記 第7巻/注解]]
**[[ガリア戦記/用例集]]
== 関連記事 ==
== 外部リンク ==
* [https://babel.hathitrust.org/cgi/pt?id=hvd.hn1tp9&seq=263 #263 - C. Iuli Caesaris De bello gallico libri VII : Caesar's Gallic ... - Full View | HathiTrust Digital Library]
* [https://scaife.perseus.org/reader/urn:cts:latinLit:phi0448.phi001.perseus-lat2:7.34 Scaife Viewer | De Bello Gallico]
* [https://reader.humanitext.ai/en/read/urn:cts:latinLit:phi0448.phi001.humanitext-lat2:7.34.1-7.34.3 Division of the Army and the March on Gergovia — Julius Caesar, Gallic War Book 7 (7.34.1–7.34.3), Latin & English · Humanitext Reader]
* [https://reader.humanitext.ai/read/urn:cts:latinLit:phi0448.phi001.humanitext-lat2:7.34.1-7.34.3 カエサルによる軍の分割とゲルゴウィア進軍|『ガリア戦記』§7.34.1-7.34.3(ユリウス・カエサル)ラテン語原文・日本語訳 · Humanitext Reader]
[[Category:ガリア戦記 第7巻|34節]]
aqs4z6d3pa4i3uvyyiuy1rsypgl87w8
コンピュータセキュリティ
0
48948
304859
304854
2026-10-18T14:03:12Z
~2026-54076-02
92740
/* 設定データベースを検証する */
304859
wikitext
text/x-wiki
'''コンピュータセキュリティ'''はコンピュータの安全のことです。ここではコンピュータの安全を確保することを学びます。
== コンピュータセキュリティの基本 ==
コンピュータは弱いところから狙われるため、弱いところを無くすのがセキュリティの基本となります。
具体例を挙げましょう。一般的な光回線に繋がれてるホームネットワークを考えます。ここには光回線の先に繋がる上位ネットワークと家内のホームネットワーク (家庭におけるLAN) とを区切るエッジルーター(一般的にはハードウェア・ゲートウェイがこれに該当)が存在します。このホームネットワークに数台の新しいWindows PCと一台の古い機器が繋がっていると仮定します。
新しいWindows PC同士ではホームネットワーク経由でファイルをやり取りするためにファイルの共有 (SMB{{efn|Server Message Block}}) を有効にしているとします。一方、古い機器の方を脆弱性のある古いテレビとしましょう。このテレビはインターネットから繋いで地上デジタル放送を見るための DCTP+ {{efn|Digital Transmission Content Protection +}}が搭載されており、UPnP{{efn|Universal Plug and Play}}で自動的にエッジルーター搭載のファイアーウォールに穴あけてインターネット側から DCTP+ に繋がるようになっているものとします。
この仮定によってハッカーは DCTP+ の脆弱性を使って古いテレビに悪意のあるプログラムを実行させてファイルの共有サーバーを立て{{efn|Windows 11時点でもゲスト認証による接続は許可されている<ref>[https://learn.microsoft.com/en-us/windows-server/storage/file-server/smb-interception-defense?tabs=group-policy Protect SMB traffic from interception] Microsoft</ref>。}}、そこからファイルの共有を通じて新しいWindows PCにマルウェア (例えば<code>PHOTO-<ランダムな数字>.png.lnk</code><ref>[https://www.microsoft.com/en-us/security/blog/2026/06/25/photo-zip-campaign-targeting-hospitality-industry-delivers-node-js-implant-persistent-access/ Photo ZIP campaign targeting hospitality industry delivers Node.js implant for persistent access] Microsoft 2026年6月25日</ref>) を送り込むことが可能となりました。
== 安全にパスワードを使う ==
=== 流出したパスワードと被ってないかをチェックする ===
あちこちのサイトで流出したパスワードは集められてデータベース化されダークネットに流通しています。この代表的なものには2019年に登場した [[:w:en:Collection No. 1|Collection #1]] が挙げられます。この Collection #1 などの流出パスワードデータベースは辞書攻撃に利用されており、これは「Credential Stuffing攻撃」と呼ばれています。
使うパスワードが流出パスワードデータベースに載っていないかを確認するためには上記のデータベースを手に入れるか、上記のデータベースからk-匿名性で検索を行うオンラインサービスを使うと良いでしょう。
このオンラインサービスの代表的なものにはWebサイト「Have I Been Pwned」の提供する「Pwned Passwords」サービスが存在しますが、このAPIではパスワードのSHA-1ハッシュ先頭5文字を渡すと、流出したパスワードのSHA1ハッシュ6文字以降と流出データベースに載っていた回数が返答されます。
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ # License: CC0 / Public Domain
$ # パスワードを入力してSHA-1ハッシュへと変換する(ここでは'test'と入力)
$ sha1=$(read -sp "Password: " pass && echo -n $pass | sha1sum | cut -d' ' -f1)
Password:
$ # 変換後のハッシュを表示
$ echo $sha1
a94a8fe5ccb19ba61c4c0873d391e987982fbbd3
$ # ハッシュの先頭5文字を渡して6文字目以降を検索(':'の後ろは見つかった数)
$ curl -s https://api.pwnedpasswords.com/range/$(echo $sha1 | cut -c 1-5) | grep -i $(echo $sha1 | cut -c 6-)
FE5CCB19BA61C4C0873D391E987982FBBD3:1579235
</syntaxhighlight>
ハッシュの先頭5文字も渡したくない場合や、自社サービスでチェックを行いたい場合は上記のサービスが公式で提供するツール「haveibeenpwned-downloader」[https://github.com/HaveIBeenPwned/PwnedPasswordsDownloader]で全てのハッシュデータをダウンロードして自前で照合しましょう。
=== 解析耐性のある鍵導出関数を使う ===
パスワードでは計算負荷の低い SHA-256 や SHA-512 などの通常のハッシュ関数、メモリ負荷の低い [[:w:PBKDF2|PBKDF2]] や bcrypt などの古い[[:w:鍵導出関数|鍵導出関数]](パスワードハッシュ関数)を使わないようにしましょう。これらの弱いハッシュ関数は GPU や ASIC で高速に解かれてしまいます。
より強いパスワードハッシュ関数としては yescrypt や Argon2id が存在します。パスワードにはこちらを使いましょう。現代の Linux ではアカウントのパスワードハッシュ関数として yescrypt が標準となっています。
使っている Linux の新規アカウントで使われるパスワードハッシュ関数は以下で確認可能です:
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ grep -n 'pam_unix.so' /etc/pam.d/common-password
26:password [success=2 default=ignore] pam_unix.so obscure use_authtok try_first_pass yescrypt
</syntaxhighlight>
Linuxの現在のアカウントがどのハッシュ関数を使用しているかは以下で確認可能です:
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ sudo cat /etc/shadow | grep $USER # $(1|5|6|b)$=弱い、$y$=強い
user:$y$j9T$ST7oYwlQjFy7/8vnL/Ugt0$po4vW4qgGu8lpUNRtH0B3hDHGZACzcRhzIKhqlx.2Z5:20743:0:99999:7:::
</syntaxhighlight>
弱いハッシュ関数を使用している場合は<code>passwd $USER</code>でパスワードを再設定して使用するハッシュ関数を更新してください。
一方、Windows 10 以前のローカルアカウントではパスワードハッシュがレジストリの<code>HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>SAM\<wbr>SAM\<wbr>Domains\<wbr>Account\<wbr>Users\<wbr>(ユーザーID)\<wbr>V</code>{{efn|name="sam"}}のバイナリに存在します:
* [[:w:LMハッシュ|LMハッシュ]]: 0xCC + (0x9C に指定されたオフセット)<ref name="sam-ghost"/>
* NTLMハッシュ: 0xCC + (0xA8 に指定されたオフセット)<ref name="sam-ghost"/>
LMハッシュは [[:w:LAN Manager|LAN Manager]] に使われていた [[:w:Data Encryption Standard|DES]] ベースの古いハッシュ、NTLMハッシュは [[:w:NT LAN Manager|NT LAN Manager]] に使われている [[:w:MD4|MD4]] ベースの古いハッシュであり、どちらも非常に弱いものとなっていました。
また Windows の Active Directory ドメインアカウントのオフライン認証向けキャッシュ済みドメイン資格情報はレジストリの<code>HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>SECURITY\<wbr>Cache</code>に存在します:
* DCC1 ハッシュ (MSCache v1): 弱い MD4 ベース。Windows XP以前。
* DCC2 ハッシュ (MSCache v2) : 弱めの PBKDF2-HMAC-SHA1 ベース。Windows Vista以後<ref>[https://attack.mitre.org/techniques/T1003/005/ OS Credential Dumping: Cached Domain Credentials] MITRE 2025年10月24日</ref>。
2021年にリリースされた Windows 11 以降は Microsoft アカウントが必須となっています。
<!--TODO:
Windows Hello、LSA Secrets
=== パスワードの複雑性をチェックする ===
=== TPMで鍵を隔離する ===
-->
== 既製製品の脆弱性を塞ぐ ==
まずは弱いところを無くしましょう。
=== ソフトウェアアップデートをする ===
セキュリティの基本はソフトウェアアップデートです。
==== PCおよびモバイル ====
PC{{efn|PCサーバを含む}}やモバイルでは基本的に自動で通知が来るので忘れずにアップデートを選択しましょう。手動では以下のように行います:
; Windows
: システムのアップデートは基本的に [[:w:Microsoft Update|Microsoft Update]] (Windows Update) で、アプリケーションのアップデートは基本的に<code>winget upgrade --all</code>コマンドで行います。
: また Windows 11 Enterprise では再起動が不要なホットパッチにも対応しています。
; macOS / iOS
: 「ソフトウェアアップデート」
; Ubuntu / Debian
: [[:w:APT|APT]]パッケージ管理システムでは<code>apt upgrade</code>コマンドで更新を行います。
: Ubuntu では GUI による更新用として[[:w:Software Updater|Software Updater]] (<code>update-manager</code>コマンド)、[[:w:Snap (ソフトウェア)|Snap]]パッケージの更新コマンドとして<code>snap refresh</code>、メジャーバージョンの更新コマンドとして<code>do-release-upgrade</code>も存在します。
: また Ubuntu では Ubuntu Pro に登録することで再起動が不要なカーネル修正の「Livepatch」も可能となります(個人では5台まで無料)。SUSEではユーザー空間ライブパッチングまで提供されています(glibc と openssl のみ)<ref>[https://documentation.suse.com/ja-jp/sles/15-SP6/html/SLES-all/cha-ulp.html ユーザ空間ライブパッチ - 管理ガイド - SLES 15 SP6] SUSE</ref>。
; RedHat / Fedora
: <code>yum update</code>コマンド
; Android
: 「設定」アプリ→「システム」→「システムアップデート」または「ソフトウェアアップデート」
また個々のハードウェアのファームウェアアップデートは以下で行います:
; Linux
: Linuxにおけるファームウェアの更新は基本的に<code>fwupdmgr update</code>コマンドで行います。
: NVMe SSDのファームウェアの更新は<code>nvme fw-download</code>コマンドおよび<code>nvme fw-commit</code>コマンドで行うことができます。
一方、Windows ではファームウェアのアップデートも Windows Update 経由で<ref>[https://learn.microsoft.com/ja-jp/windows-hardware/drivers/bringup/firmware-update ファームウェアの更新] Microsoft</ref>、macOS ではファームウェアのアップデートもmacOSアップデートで行うことができます<ref>[https://support.apple.com/ja-jp/guide/mac-help/mchlp2609/mac Macのファームウェアアップデートの入手方法] Apple</ref>。
<!--
また開発環境では以下も存在します:
; Python
: <code>pip -U install</code>
-->
==== ルーター ====
ルーターでは以下の設定を有効のままにしておきましょう:
; AirStationシリーズ(Buffalo 製ルーター)
: 「ファームウェア自動更新機能」
; Atermシリーズ(NEC 製ルーター)
: 「メンテナンスバージョンアップ機能」「時刻指定バージョンアップ機能」
==== テレビ ====
テレビでは放送波アップデートが行われるため、「放送波による自動更新」<!--TODO: メーカー別名-->を有効にしましょう。
=== 高速に再起動する ===
パッケージは更新しただけでは反映されません(一部デーモンの更新を除く)。Linuxでは高速に再起動する方法が存在し、これによってダウンタイムを減らすことができます。
; 更新で影響を受けるデーモンのみ再起動する
:* Ubuntu Server: 標準で <code>needrestart</code> が導入されており自動で影響を受けるデーモンの再起動が行われます{{efn|自動的なデーモン再起動を止めるには /etc/apt/apt.conf.d/99needrestart より<code>-m u</code>を削除する必要があります<ref>[https://discourse.ubuntu.com/t/needrestart-changes-in-ubuntu-24-04-service-restarts/44671 `needrestart` changes in Ubuntu 24.04: service restarts] Canonical 2024年</ref>。}}(Ubuntu Desktopでは別途導入が必要)。
:* RedHat / Fedora: <code>dnf needs-restarting</code>が導入されており、それによって再起動するべきデーモンを確認できます。
; ユーザー空間のみ再起動する(カーネルの更新がない、またはカーネルでlive patchingを行ってる場合)
: <code>sudo systemctl soft-reboot</code>
; 高速にカーネルを更新する(ファームウェアの更新がない場合)
: <code>sudo systemctl kexec</code>
また一部のソフトウェアではホットアップグレード(無停止アップグレード{{efn|Zero-Downtime Upgrade}})にも対応しています (nginx の USR2 シグナル<ref>[https://nginx.org/en/docs/control.html Controlling nginx] nginx</ref>など)。
=== 代替ソフトウェアを探す ===
更新が停止された古いソフトウェアの多くはそれ自身に脆弱性が存在したり、脆弱性のある古いライブラリに依存していたりします。そのため古いソフトウェアは速やかに代替ソフトウェアへと移行しましょう。
==== 開発終了したソフトウェアから現役のソフトウェアへ ====
古いソフトウェアには例えば以下があります:
* オフィススイート(代替候補: LibreOffice)
** [[:w:OpenOffice.org|OpenOffice.org]](〜2011年)
* 画像ビューア
** [[:w:Susie|Susie]] (〜2013年)
* メディアプレイヤー
** [[:w:QuickTime|QuickTime]] for Windows(〜2016年) - リモートコード実行の脆弱性 ([https://www.zerodayinitiative.com/advisories/ZDI-16-241/ ZDI-16-241]、[https://www.zerodayinitiative.com/advisories/ZDI-16-242/ ZDI-16-242]) を残したままサポート終了しました<ref>[https://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/753400.html Apple、「QuickTime for Windows」のサポートを終了、アンインストールを推奨] Impress 2016年4月15日</ref>。
* メディアフィルター(代替候補: LAV Filters)
** [[:w:ffdshow|ffdshow]](〜2014年)
** [[:w:Haali Media Splitter|Haali Media Splitter]](〜2013年)
* メディアセンター(代替候補: Kodi)
** [[:w:en:Boxee|Boxee]](〜2011年)
** [[:w:Kodi|XBMC]](〜2014年) - Kodiの前身
* 圧縮ソフトウェア
** [[:w:+Lhaca|+Lhaca]](〜2007年)
** [[:w:Lhaplus|Lhaplus]](〜2017年)
またハードウェアに由来する古いソフトウェアには例えば以下があります:
* [[w:ウォークマン|ウォークマン]]関連(代替候補: [[:w:Music Center for PC|Music Center for PC]])
** [[:w:CONNECT Player|CONNECT Player]](〜2007年、Sony)
** [[:w:SonicStage|SonicStage]](〜2009年、Sony)
** [[:w:x-アプリ|x-アプリ]](〜2016年、Sony)
* DTCP-IP関連
** SmartVision/PLAYER powered by DiXiM(〜2019年、NEC)<ref>[https://support.nec-lavie.jp/navigate/support/info/2019/announce/svp/ SmartVision/PLAYER保守サービス終了のお知らせ] NECパーソナルコンピュータ 2019年1月28日</ref><ref>[https://apps.microsoft.com/detail/9wzdncrdkb4c?hl=ja-JP&gl=JP SmartVision/PLAYER powered by DiXiM] Microsoft</ref>
** DiXiM Digital TV plus for I-O DATA(〜2022年、I-O DATA)<ref>[https://www.iodata.jp/lib/product/d/3533.htm DiXiM Digital TV plus for I-O DATA] I-O DATA</ref>
なお仮想マシンを使って隔離しながら古いソフトウェアを動かすこともできますが、仮想マシンでも「VMエスケープ」の脆弱性を使用することでホスト環境への侵害が可能なため、仮想マシンの上で弱い環境や弱いソフトウェアを使うこともなるべく避けましょう。<!--TODO: Windows Sandbox-->
==== 古いバージョンのライブラリを避ける ====
多くのソフトウェアに使用されているライブラリとその過去の危険な脆弱性には例えば以下があります:<!--危険を認識させる。例はライブラリ内のメイン処理に存在し、任意コード実行であり、脆弱性の存在期間が長く、新しいものが好ましい。-->
* 画像ライブラリ
** libpng - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2010-1205 CVE-2010-1205](PNG画像で任意コード実行の可能性)
** libjpeg-turbo - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2012-2806 CVE-2012-2806](JPEG画像で任意コード実行の可能性)
** OpenJPEG - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2025-54874 CVE-2025-54874](JPEG2000画像で任意コード実行の可能性)
** libtiff - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2026-12912 CVE-2026-12912](PixarLog圧縮TIFF画像で任意コード実行の可能性)
** libwebp - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2023-4863 CVE-2023-4863](WebP画像で任意コード実行の可能性)
* 動画ライブラリ
** FFmpeg - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2024-22860 CVE-2024-22860](JPEG XLアニメーションで任意コード実行の可能性)
* 圧縮ライブラリ
** libarchive - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2026-15028 CVE-2026-15028](tarアーカイブ形式で任意コード実行の可能性)
** zlib - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2002-0059 CVE-2002-0059](Deflate圧縮形式で任意コード実行の可能性)
** bzip2 - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2010-0405 CVE-2010-0405](BZ2圧縮形式で任意コード実行の可能性)
これらのライブラリはABI(アプリケーションバイナリインターフェイス)が変更されて新しいバージョンの共有ライブラリにドロップイン置換できないものも多くなっています。
また国内で使われている古いソフトウェアでは開発中止になった以下のライブラリも問題となっています:
* UNLHA32.DLL<ref>[https://forest.watch.impress.co.jp/docs/news/372729.html 圧縮・解凍用DLL「UNLHA32.DLL」が開発中止、作者はLZHの利用中止を呼びかけ] Impress 2010年6月7日</ref>
Webフレームワークでは開発中止となった以下のフレームワークが問題となっています:
* [[:w:Model View Controller|Model View Controller]]フレームワーク(代替候補: [[:w:Apache Struts|Apache Struts]] 2、[[:w:Spring Framework#Model-View-Controller フレームワーク|Spring MVC]])
** [[:w:en:Apache Struts 1|Apache Struts 1]](〜2008年) - Java言語
* [[:w:アスペクト指向プログラミング|アスペクト指向フレームワーク]](代替候補: [[:w:Spring Framework|Spring Framework]]、[[:w:en:Micronaut (framework)|Micronaut]])
** [[:w:Seasar|Seasar]](〜2016年) - Java言語
* [[:w:シングルページアプリケーション|シングルページアプリケーション]]フレームワーク(代替候補: [[:w:Angular|Angular]]、[[:w:Vue.js|Vue.js]])
** [[:w:AngularJS|AngularJS]](〜2022年) - JavaScript
=== 古いハードウェアに対処する ===
サポート切れの OS を搭載したハードウェアはどうすれば良いでしょうか。これには使い続けるいくつかの方法がありますが、基本的にオススメしません。古い OS を搭載していたハードウェアはハードウェア仕様も古いからです。
==== スタンドアロン運用 ====
古いハードウェアはインターネットに繋がずに使用すること(スタンドアロン運用)も可能です。
しかしながらUSBメモリでデータをやり取りする場合はUSBメモリ経由での感染などのリスクは残ります。
==== 新しめのLinuxを導入 ====
新しめのLinuxを導入するという方法もあります。
これに適したものでは例えばWindows 11非対応のPC (Intel 第7世代以前、AMD Ryzen 1000シリーズ以前) が挙げられます。
またスマートフォンやタブレットであればカスタムROMが、ルーターであればDD-WRTやOpenWRTが存在します。
==== 手放す ====
手に負えなければデータだけバックアップして手放しましょう。情報が漏れないよう初期化も忘れずに。
== 潜在的な脆弱性を減らす ==
現代のプログラムでは以下のような保護が行われています。
=== メモリアドレスの推測困難化 ===
攻撃に必要なコード片(ガジェット)のメモリアドレスを推測しにくくするために、カーネル空間、ユーザー空間の両方で[[:w:アドレス空間配置のランダム化|アドレス空間配置のランダム化]](ASLR)が行われています。カーネル空間の ASLR は KASLR (Kernel ASLR) とも呼ばれています。
ユーザー空間のプログラムで ASLR を有効にするためには[[:w:位置独立コード|位置独立コード]] (PIC) / 位置独立実行形式 (PIE) である必要があります。Unix で使われる実行形式の ELF では位置独立実行形式が ET_DYN、非位置独立実行形式 (non-PIE) が ET_EXEC となります。
Linuxでは ASLR が無効となる非位置独立実行形式のファイルを以下で検索することができます:
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ # License: CC0 / Public Domain
$ # 非位置独立実行形式 (non-PIE) のバイナリを検索
$ find / -type f -executable 2>/dev/null | xargs -I {} sh -c 'LANG=C readelf -h {} 2>/dev/null | grep -E "Type:.*EXEC" >/dev/null && echo {}'
/usr/lib/default.sfx
/usr/lib/klibc/bin/mkfifo
/usr/lib/klibc/bin/zcat
/usr/lib/klibc/bin/poweroff
[...]
$ # 非位置独立実行形式 (non-PIE) のバイナリを含むDebianパッケージを検索
$ find / -type f -executable 2>/dev/null | xargs -I {} sh -c 'LANG=C readelf -h {} 2>/dev/null | grep -E "Type:.*EXEC" >/dev/null && echo {}' | xargs -r -d '\n' -n1 dpkg-query -S | sed 's/: .*//' | sort -u
aidl
busybox-static
code
cpp-15-x86-64-linux-gnu
cuda-gdb-13-4
cuda-nvcc-13-4
cuda-sanitizer-13-4
cuda-tileiras-13-4
debugedit
g++-15-x86-64-linux-gnu
gcc-15-x86-64-linux-gnu
gcc-mingw-w64-i686-posix
gdc-15-x86-64-linux-gnu
gds-tools-13-4
gfortran-15-x86-64-linux-gnu
gh
git-lfs
gobjc-15-x86-64-linux-gnu
gocryptfs
golang-1.26-go
go-md2man
go-mtpfs
[...]
</syntaxhighlight>
現在のLinuxカーネルがユーザー空間 ASLR を有効にしているかは以下で確認できます (出力例はUbuntu 26.04):
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ sysctl kernel.randomize_va_space # 0=無し、1=部分的、2=完全
kernel.randomize_va_space = 2
</syntaxhighlight>
また現在のLinuxカーネルがカーネル ASLR (KASLR) を有効にしているかは以下で確認できます (出力例はUbuntu 26.04):
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ grep 'CONFIG_RANDOMIZE_BASE' /boot/config-$(uname -r) # y=Yes, n=No
CONFIG_RANDOMIZE_BASE=y
</syntaxhighlight>
なお ASLR は間接的な関数呼び出し( C++ の vtable を含む)があると、そのアドレスから ASLR のオフセットがバレてしまい突破されてしまいます。
また CPU の[[:w:投機的実行|投機的実行]]での情報漏れ (Spectre) による[[:w:キャッシュ攻撃|キャッシュサイドチャネル攻撃]](後述)の一つである「投機的探査」 (BlindSide) によってもコードの位置情報の取得がされ ASLR が突破されてしまいます。
=== 投機的実行の情報漏れ防止 ===
前述のとおり、投機的実行による情報漏れ (Spectre) は攻撃に繋がります。Spectre には境界チェックを迂回する Spectre V1 と間接分岐の分岐先アドレスのキャッシュ{{efn|分岐先バッファ (Branch Target Buffer、BTB)や分岐先アドレスキャッシュ (Branch Target Address Cache、BTAC) と呼ばれる。}}を汚染する Spectre V2 が存在します。<!--TODO: Spectre v3/v4、Zenbleed-->
Spectre V1 を防ぐ方法としては投機的実行を阻害するための命令(x86ではLFENCE)の挿入{{efn|Linuxカーネルでの投機的実行の防止は<code>barrier_nospec()</code>。}}やアクセスできるアドレス範囲を狭めることが行われています{{efn|GCCでの投機的実行での範囲外アクセス防止は<code>__builtin_speculation_safe_value(...)</code>、Linuxカーネルでの投機的実行での範囲外アクセス防止は<code>array_index_nospec(...)</code><ref>[https://lwn.net/Articles/759423/ Spectre V1 defense in GCC] LWN 2018年7月10日</ref>。}}。
また Spectre V2 では攻撃を防ぎながらも速度を落とさない方法として脆弱な分岐先アドレスキャッシュに依存する間接分岐の代わりにリターンアドレスのキャッシュ{{efn|リターンスタックバッファ (RSB) と呼ばれる。}}に依存するリターン命令を使う retpoline が登場しました。しかしながらこの retpoline でも速度の低下は起こるため、既知の間接呼び出しを条件分岐 + 直接呼び出しに変換して高速化する手法が模索されました。LLVM では retpoline を有効にする <code>-mretpoline</code>フラグの処理内に既知の仮想関数呼び出しを[[:w:二分木|二分木]]の直接分岐に置き換える「分岐ファネル」(Branch funnel) が導入されています<ref>[https://reviews.llvm.org/D42453 Use branch funnels for virtual calls when retpoline mitigation is enabled.] LLVM project</ref>。また Linux カーネルでも既知の間接呼び出しを条件分岐 + 直接呼び出しに変換する INDIRECT_CALL_* マクロが搭載されています<ref>[https://lwn.net/Articles/774743/ Relief for retpoline pain] LWN 2018年12月14日</ref>。<!--TODO: Intel CETのSHSTKとretpolineの衝突-->
一方、リターン命令の投機的実行も「Retbleed」や AMD CPU における「投機的リターンスタックオーバーフロー」 (SRSO){{efn|Speculative Return Stack Overflow。}}のような脆弱性が見つかっています。
なお低権限コードから高権限コードへの権限境界をまたいだ Spectre および Retbleed は Intel の「間接分岐制限付き投機」(IBRS){{efn|Indirect Branch Restricted Speculation。}}およびそれを高速化した「拡張IBRS」(eIBRS) などハードウェア側によって塞がれました<ref>[https://www.intel.com/content/www/us/en/developer/articles/technical/software-security-guidance/technical-documentation/hardware-behavior-related-to-speculative-execution.html Hardware Features and Behavior Related to Speculative Execution] Intel 2026年10月14日</ref>が、権限境界をまたがないものは今も可能となっています。
=== メモリにおける書き込みと実行の排他化 (W^X) ===
メモリでは書き込み可能領域の実行不可化 ([[:w:NXビット|NXビット]]) と実行可能領域の書き込み不可化による書き込みと実行の排他化([[:w:en:W^X|W^X]])が一般的となっています。NXビットは x86 では NXビットは AMD64 と共に搭載された古い機能であるため、今時の CPU と OS は基本的にこれに対応しています。
現在の CPU がNXビットを有効にしているかはLinuxでは以下で確認できます:
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ grep '^flags' /proc/cpuinfo | grep -o nx
nx
nx
[...]
</syntaxhighlight>
現在のLinuxカーネルが厳格な W^X を有効にしているかは以下で確認できます (出力例はUbuntu 26.04):
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ grep '_RWX' /boot/config-$(uname -r) # y=Yes, n=No
CONFIG_ARCH_HAS_STRICT_KERNEL_RWX=y
CONFIG_STRICT_KERNEL_RWX=y
CONFIG_ARCH_HAS_STRICT_MODULE_RWX=y
CONFIG_STRICT_MODULE_RWX=y
</syntaxhighlight>
しかしながら書き込みと実行の排他の原則を破ってそれらを同時に行える場所というものも存在しています。読み込み・書き込み・実行が可能なことから「RWXセクション」と呼ばれています。Windows ではメモリページの PAGE_EXECUTE_READWRITE フラグがこれに相当します<ref>[https://learn.microsoft.com/ja-jp/windows/win32/memory/memory-protection-constants メモリ保護定数] メモリ保護定数 (WinNT.h) - Win32 apps | Microsoft Learn</ref>。
Windows のカーネルドライバでは NX フラグの使用が義務付けられています<ref>[https://learn.microsoft.com/en-us/windows-hardware/test/hlk/testref/driver-compatibility-with-device-guard メモリ整合性と VBS とのドライバ互換性] Microsoft</ref>が、その Windows カーネルにおいても PatchGuard の領域がコード難読化のためにこの原則を破っています。<!--TODO: ホットパッチ-->
また Linux でも実行可能領域を書き込み可能ページとして割り当てて書き込む text_poke 関数が用意されています。
=== 制御フローの操作を防ぐ (CET) ===
現代では「[[:w:Return-oriented programming|リターン指向プログラミング]]」(ROP)、「呼び出し指向プログラミング」 (COP)、「ジャンプ指向プログラミング」(JOP) 、「[[:en:Sigreturn-oriented programming|Sigreturn指向プログラミング]]」(SROP) などの制御フロー操作による攻撃が一般化していますが、これを防ぐ技術として「[[:w:en:Control-flow integrity#Intel Control-flow Enforcement Technology|制御フロー強制テクノロジー]]」(CET) の「[[:w:en:Indirect branch tracking|間接分岐追跡]]」(IBT) と「[[:w:en:Shadow stack|シャドウスタック]]」(SHSTK) が存在します。
制御フロー強制は比較的新しい技術であるため、対応する CPU は以下に限られます:
* Intel Core (Tiger Lake) 第11世代以降
* AMD Zen 3 以降(シャドウスタックのみ)
現在の CPU が間接分岐追跡 (IBT) およびシャドウスタックに対応しているかはLinuxでは以下で確認できます:
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ grep '^flags' /proc/cpuinfo | grep -oE '(ibt|shstk)'
shstk
ibt
shstk
ibt
[...]
</syntaxhighlight>
またユーザーランドのシャドウスタックの使用にはユーザーランドだけでなくカーネルの対応も必要となります。Linux カーネル では 6.6 以降対応でこれに対応しています(sigreturnにも対応<ref>[https://github.com/torvalds/linux/commit/05e36022c0543ba55a3de55af455b00cb3eb4fcc x86/shstk: Handle signals for shadow stack · torvalds/linux@05e3602] GitHub 2023年8月3日</ref>)。 Linuxディストリビューションでは Ubuntu 24.04以降、 Red Hat Enterprise Linux 9.7 以降<ref>[https://docs.redhat.com/ja/documentation/red_hat_enterprise_linux/9/html/9.7_release_notes/new-features-kernel 4.8. カーネル - 9.7 リリースノート - Red Hat Enterprise Linux - 9 - Red Hat Documentation] Red Hat</ref>が標準でシャドウスタックを有効としています。
現在のLinuxカーネルが間接分岐追跡およびシャドウスタックを有効にしているかは以下で確認できます (出力例はUbuntu 26.04):
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ grep -E '_(IBT|SHADOW_STACK)' /boot/config-$(uname -r) # y=Yes, n=No
CONFIG_CC_HAS_IBT=y
# CONFIG_X86_KERNEL_IBT is not set
CONFIG_X86_USER_SHADOW_STACK=y
CONFIG_X86_DISABLED_FEATURE_IBT=y
CONFIG_ARCH_HAS_USER_SHADOW_STACK=y
</syntaxhighlight>
現在のユーザーランドプログラムの中で間接分岐追跡またはシャドウスタックが無効化されているものはLinuxでは以下で確認できます:
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ # License: CC0 / Public Domain
$ # 間接分岐追跡またはシャドウスタックが無効化されているバイナリを検索
$ find / -type f 2>/dev/null | xargs -I {} sh -c 'readelf -h "{}" >/dev/null 2>&1 && (readelf -n "{}" 2>/dev/null | grep -E IBT,.*SHSTK > /dev/null || echo "{}")'
/usr/lib/lv2/carla.lv2/carla.so
/usr/lib/7zip/7z
/usr/lib/7zip/7zCon.sfx
/usr/lib/7zip/7zr
/usr/lib/7zip/7z.so
/usr/lib/7zip/7za
/usr/lib/klibc/bin/ipconfig
/usr/lib/klibc/bin/umount
/usr/lib/klibc/bin/halt
[...]
$ # 間接分岐追跡またはシャドウスタックが無効化されているバイナリを含むDebianパッケージを検索
$ find / -type f 2>/dev/null | xargs -I {} sh -c 'readelf -h "{}" >/dev/null 2>&1 && (readelf -n "{}" 2>/dev/null | grep -E IBT,.*SHSTK > /dev/null || echo "{}")' | xargs -r -d '\n' -n1 dpkg-query -S | sed 's/: .*//' | sort -u
7zip
aidl
ardour
avr-libc
cargo-1.93
carla
carla-bridge-wine32:i386
carla-bridge-wine64
carla-lv2
carla-vst
cuda-ctadvisor-13-4
cuda-cudart-13-4
[...]
</syntaxhighlight>
なお、制御フロー強制テクノロジーの間接分岐追跡とシャドウスタックが有効であっても異なる関数の通常呼び出しは防げません。分かりやすい例では関数の間接呼び出しにおいて関数ポインタを<code>sigaction</code>へと変更して独自のシグナルハンドラを登録し、その後クラッシュさせてそのシグナルハンドラを呼び出すという「セグメンテーション違反指向プログラミング」(SFOP) が挙げられます。また攻撃に使える関数 (dop gadgets) {{efn|dop gadgetsの検索の公式実装は「DOP-StaticAssist」[https://github.com/melynx/DOP-StaticAssist]だが長らく更新されておらず古いLLVM 3.5に依存している状態となっている。}}の通常呼び出しだけで攻撃する「Data-Oriented Programming」(DOP) <ref>Hong Hu et al. [https://ieeexplore.ieee.org/stamp/stamp.jsp?tp=&arnumber=7546545 Data-Oriented Programming: On the Expressiveness of Non-Control Data Attacks] IEEE 2016年</ref>{{efn|セキュリティ以外の文脈におけるデータ指向プログラミング、データ指向設計、データ駆動型設計とは異なる。}}という手法も存在します。
C++向けでは仮想関数テーブル (vtable) を改ざんして攻撃に使える仮想関数(仮想関数ガジェット、vfgadget)を呼び出す「偽造オブジェクト指向プログラミング」(COOP) という攻撃手法も登場しています。
=== メモリ安全性の高いソフトウェアへ ===
既存のソフトウェアの脆弱性は7割がメモリ安全性の問題に起因すると言われています<ref>[https://www.cisa.gov/sites/default/files/2023-12/CSAC_TAC_Recommendations-Memory-Safety_Final_20231205_508.pdf REPORT TO THE CISA DIRECTOR Technical Advisory Council Memory Safety] サイバーセキュリティ諮問委員会 (CSAC) 2023年12月5日</ref>。しかしながら[[C言語]]や[[C++]]はメモリ安全性が低いため、メモリ安全性の確保できる[[Rust]]などで書かれた代替プログラムが登場しています:
{| class="wikitable"
|+ コマンドのRust版
|-
! コマンドの概要 !! 従来版 !! Rust版
|-
| Unix系の基本コマンド群 || GNU Core Utilities || '''uutils coreutils'''
|-
| ファイル検索コマンド群{{efn|<code>find</code>、<code>locate</code>、<code>updatedb</code>、<code>xargs</code>の4コマンド}} || GNU Findutils || '''uutils findutils'''
|-
| ファイル差分コマンド群{{efn|<code>diff</code>、<code>cmp</code>、<code>diff3</code>、<code>sdiff</code>の4コマンド}} || GNU Diffutils || '''uutils diffutils'''
|-
| ストリームエディタ (sed) || GNU sed / FreeBSD sed || '''uutils sed'''
|-
| AWKスクリプト || GNU AWK || '''uutils AWK'''
|-
| 文字列検索 || GNU Grep || '''uutils Grep'''
|-
| tarアーカイブ || GNU Tar || '''uutils tar'''
|-
| アカウント管理コマンド群 || shadow-utils || '''uutils shadow-utils'''
|-
| アクセス制御コマンド群{{efn|<code>chacl</code>、<code>getfacl</code>、<code>setfacl</code>の3コマンド}} || acl || '''uutils acl'''
|-
| procfs{{efn|プロセスファイルシステム}}表示コマンド群 || procps / procps-ng || '''uutils procps'''
|-
| ホスト名管理コマンド群{{efn|<code>hostname</code>、<code>dnsdomainname</code>、<code>domainname</code>、<code>nisdomainname</code>、<code>ypdomainname</code>の5コマンド。}} || hostname || '''uutils hostname'''
|-
| Linuxユーティリティ || util-linux || '''uutils util-linux'''
|-
| 権限昇格 || sudo || '''sudo-rs'''
|-
| 暗号・署名システム || GnuPG || '''Sequoia PGP'''
|-
| 時刻同期 || ntpd || '''ntpd-rs'''
|-
| セキュアシェル (SSH) || OpenSSH || '''russh'''
|}
これらのRustで書かれたコマンドのうちuutils coreutilsとsudo-rsはUbuntuに採用されています。
またライブラリでもRustだけ (Pure Rust) で実装されたものが登場しています:
* 画像ライブラリ - これらは例えばGNOMEデスクトップ環境の画像ローダーGlycinから使われています<ref>[https://gitlab.gnome.org/GNOME/glycin GNOME / glycin · GitLab] GNOME Project</ref>。
** libpng → pngクレート - PNG画像向け。
** libgif → gifクレート - GIF画像向け。
** libjpeg / libjpeg-turbo → zune-jpeg / libjpeg-turbo-rs - JPEG画像向け。
** OpenJPEG → hayro-jpeg2000 - JPEG 2000画像向け。
** libtiff → tiffクレート - Tiff画像向け
** libwebp → image-webpクレート - WebP画像向け。
** libraw → libopenraw - RAW画像向け。
** librsvg - SVG画像向け。C言語からRustに書き直しされました。
* 圧縮ライブラリ
** zlib / zlib-ng → zlib-rs - Deflate圧縮向け
** libbzip2 → bzip2-rs - BZ2圧縮向け
* 暗号化ライブラリ
** OpenSSL / GnuTLS → [[:w:en:Rustls|Rustls]]
* Unicode処理ライブラリ
** ICU4C → ICU4X
* テキスト整形ライブラリ
** HarfBuzz → HarfRust
* ブラウザエンジン
** Blink/Gecko → Servo
<!--
=== 整合性チェック ===
PatchGuard / HyperGuard
-->
== 不審な改変が行われていないかを調べる ==
{| class="wikitable"
|+ Windows における代表的なユーザースクリプト又はコマンド起動が可能な設定ファイル
|-
! 規格/アプリケーション !! ユーザー !! システム
|-
| Windows || %APPDATA%\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows\<wbr>Start Menu\<wbr>Programs\<wbr>Startup\<wbr>* || C:\<wbr>ProgramData\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows\<wbr>Start Menu\<wbr>Programs\<wbr>Startup\<wbr>*
|-
| [[:w:PowerShell|PowerShell]] プロファイル<ref>[https://learn.microsoft.com/ja-jp/powershell/module/microsoft.powershell.core/about/about_profiles?view=powershell-7.6 about_Profiles - PowerShell - Microsoft Learn] Microsoft</ref> || %USERPROFILE%\<wbr>Documents\<wbr>PowerShell\<wbr>Profile.ps1<br>%USERPROFILE%\<wbr>Documents\<wbr>PowerShell\<wbr>Microsoft.PowerShell_profile.ps1 || C:\<wbr>Windows\<wbr>System32\<wbr>WindowsPowerShell\<wbr>*\<wbr>Profile.ps1<br>C:\<wbr>Windows\<wbr>System32\<wbr>WindowsPowerShell\<wbr>*\<wbr>Microsoft.PowerShell_profile.ps1
|}
{| class="wikitable"
|+ Linux における代表的なユーザースクリプト又はコマンド起動が可能な設定ファイル
|-
! 規格/アプリケーション !! ユーザー !! システム
|-
| POSIX標準 || ~/.profile || /etc/profile
|-
| XDG Base Directory<wbr>標準 || ~/.local/bin/* ||
|-
| FHS{{efn|Filesystem Hierarchy Standard}}<wbr>標準[https://refspecs.linuxfoundation.org/fhs.shtml] || || /bin/* /sbin/* /usr/bin/* /usr/local/bin/* /etc/inittab
|-
| LSB{{efn|Linux Standard Base}}<wbr>標準[https://refspecs.linuxfoundation.org/lsb.shtml] || || /etc/profile.d/* /etc/init.d/* /etc/cron.d/*
|-
| Desktop Application Autostart Specification<wbr>標準[https://specifications.freedesktop.org/autostart/latest/] || ~/.config/autostart/* /media/*/*/.autorun /media/*/*/autorun /media/*/*/autorun.sh /run/media/*/*/.autorun /run/media/*/*/autorun /run/media/*/*/autorun.sh || /etc/xdg/autostart/*
|-
| Bash || ~/.bash_profile ~/.bashrc || /etc/bash_profile /etc/bash.bashrc /etc/bash.bash_logout
|-
| Z shell (Zsh) || ~/.zshenv ~/.zprofile ~/.zshrc ~/.zlogin ~/.zlogout || /etc/zshenv /etc/zprofile /etc/zshrc /etc/zlogin /etc/zlogout<br/>(または /etc/zsh/zshenv /etc/zsh/zprofile /etc/zsh/zshrc /etc/zsh/zlogin /etc/zsh/zlogout)
|-
| Systemd || ~/.config/systemd/user/* || /etc/systemd/system/* /etc/systemd/user/*
|-
| Xorg || ~/.xinitrc ~/.xserverrc ~/.xsession || /etc/X11/xinit/xinitrc /etc/X11/xinit/xserverrc /etc/X11/Xsession /usr/share/xsessions/*
|-
| Wayland || || /usr/share/wayland-sessions/*
|-
| Python || ~/.local/lib/python*/site-packages/*/**{{efn|絶対パスは<code>python3 -c 'import site; print(site.getusersitepackages())'</code>で確認可能。}} || /usr/lib/python*/dist-packages/*/** /usr/local/lib/python*/dist-packages/*/**{{efn|絶対パスは<code>python3 -c 'import site; print(site.getsitepackages())'</code>で確認可能。}}
|-
| Perl{{efn|Debian/UbuntuではDebianパッケージ設定システム (debconf) のためにPerlを使用している。}} || || /usr/share/perl*/** /usr/local/share/perl*/** /usr/lib/*/perl*/** /usr/local/lib/*/perl*/**{{efn|絶対パスは<code>perl -V:installsitearch -V:installsitelib -V:installvendorarch -V:installvendorlib -V:archlib -V:privlib -V:installarchlib -V:installprivlib</code>で確認可能。}}
|}
=== パッケージ管理ファイルを検証する ===
パッケージ管理システムが管理しているファイルではファイルハッシュが保存されているため簡単にその検証を行うことが可能です:
* Windows: <code>sfc /scannow</code>
* Debian/Ububntu(Debパッケージ): <code>debsums -s</code>
* RedHat/Fedora(RPMパッケージ): <code>rpm -Va</code>
ただしローカルハッシュが改ざんされている可能性もあるため過信はできません。<!--TODO: ローカルハッシュの検証法-->
自動的にシステムの検証を行うシステムも存在します:
* Android - ブロックデバイスレベルでのハッシュ検証 (dm-verityベース)<ref>[https://source.android.com/docs/security/features/verifiedboot/dm-verity?hl=ja dm-verity の実装] Google</ref>
<!--
またUbuntuのSnapパッケージでもdm-verityの導入が進められています。
また特定言語のパッケージの検証は以下で可能です:
* PIP (Python): なし
-->
=== システム領域に不審なファイルが追加されていないかを調べる ===
システムの追加ファイルの検知にはパッケージシステムで管理されていないファイルの一覧を返す以下のようなツールが存在します:
* Debian / Ubuntu(Debパッケージ)向け: cruft-ngパッケージ(<code>cruft</code>コマンド)
上記の<code>cruft</code>コマンドでは設定ファイルだけ残っているパッケージのファイルも出てきてしまいます。そのため、これが邪魔な時は設定ファイルだけ残っているパッケージを<code>sudo apt purge '~c'</code>で削除しましょう。
=== ユーザー領域に不審なファイルが追加されていないかを調べる ===
ユーザースクリプトの書き換えや追加は検知が難しいです。<!--TODO: 良い方法を書く-->
共有ライブラリやスクリプトによるプラグイン追加も可能となっているため、こちらにも気をつけなければいけません。これには例えば以下があります:
{| class="wikitable"
|+ 代表的なユーザースクリプトや拡張機能のディレクトリパス
|-
! 種類 !! Windowsのパス !! macOSのパス !! Linuxのパス
|-
| Google Chrome 拡張機能 || %LOCALAPPDATA%\Google\Chrome\User Data\*\Extensions\ || ~/Library/Application Support/Google/Chrome/*/Extensions/ || ~/.config/google-chrome/*/Extensions/
|-
| GIMPプラグイン<ref>[https://gimp.cc/faq/add-gimp-plugins.html How to Install GIMP Plugins - Detailed Guide with Troubleshooting] GIMP.cc</ref> || %APPDATA%\GIMP\*\plug-ins\ || ~/Library/Application Support/GIMP/*/plug-ins/ || ~/.config/GIMP/*/plug-ins/
|-
| Blenderスクリプト{{efn|起動スクリプト、アドオンを含む。}}<ref>[https://docs.blender.org/manual/ja/dev/advanced/blender_directory_layout.html Blender's Directory Layout] Blender Foundation</ref> || %APPDATA%\Blender Foundation\Blender\*\scripts\ || ~/Library/Application Support/Blender/*/scripts/ || ~/.config/blender/*/scripts/
|-
| Ardourスクリプト<ref>[https://manual.ardour.org/lua-scripting/ The Ardour Manual - Lua Scripting] Ardour</ref> || %LOCALAPPDATA%\ardour*\scripts\ || ~/Library/Preferences/Ardour*/scripts/ || ~/.config/ardour*/scripts/
|-
| LibreOfficeスクリプト || %APPDATA%\LibreOffice\*\user\Scripts\ || ~/Library/Application Support/LibreOffice/*/user/Scripts/ || ~/.config/libreoffice/*/user/Scripts/
|-
| Visual Studio Code 拡張機能<ref>[https://code.visualstudio.com/docs/configure/extensions/extension-marketplace Extension Marketplace] Microsoft</ref> || %USERPROFILE%\.vscode\extensions\ || ~/.vscode/extensions/ || ~/.vscode/extensions/
|}
=== 改変・追加されたファイルが危険かを調べる ===
実行ファイルやスクリプトはLinuxでは以下で検出できます:
<syntaxhighlight lang="shell-session">
# cat filelist.txt | xargs file | grep -i -E ':.*(executable|shared object|relocatable|script)'
/etc/init.d/binfmt-support.dpkg-new: POSIX shell script, ASCII text executable
/etc/update-motd.d/99-livepatch-kernel-upgrade-required: POSIX shell script, ASCII text executable
/usr/lib/chromium-browser/plugins/libpepflashplayer.so: ELF 64-bit LSB shared object, x86-64, version 1 (SYSV), dynamically linked, BuildID[sha1]=5c421e89a5c062a2106a5a4381dc38e779a22795, stripped
</syntaxhighlight>
またClamAVを導入していれば以下でマルウェアデータベースとの照合を行うことができます:
<syntaxhighlight lang="shell-session">
# cat filelist.txt | xargs clamscan
Loading: 3s, ETA: 0s [========================>] 3.63M/3.63M sigs
Compiling: 1s, ETA: 0s [========================>] 41/41 tasks
/etc/apt/apt.conf.d/00trustcdrom: OK
/etc/apt/auth.conf.d/90ubuntu-advantage: OK
/etc/apt/keyrings/google.asc: OK
[...]
----------- SCAN SUMMARY -----------
Known viruses: 3628164
Engine version: 1.5.4
Scanned directories: 125
Scanned files: 1919
Infected files: 0
Total errors: 10
Data scanned: 247.72 MiB
Data read: 281.17 MiB (ratio 0.88:1)
Time: 17.939 sec (0 m 17 s)
Start Date: 2026:10:11 05:41:30
End Date: 2026:10:11 05:41:48
</syntaxhighlight>
=== 設定データベースを検証する ===
設定データベースは Windows ではレジストリ、Linuxでは GNOME / MATEの 使う [[:en:dconf|dconf]] が存在します。
Windows の設定データベースはレジストリと呼び「レジストリエディタ」 (<code>regedit</code>) で表示できます。
{| class="wikitable"
|+ Windows における代表的なユーザースクリプト、コマンド起動、DLL呼び出しが可能なレジストリ
|-
! 規格/アプリケーション !! 各ユーザー !! 全ユーザー
|-
| Windows || HKEY_USERS\<wbr>*\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows\<wbr>CurrentVersion\<wbr>Run\<wbr>*<wbr>CurrentVersion\<wbr>Run\<wbr>*<br>HKEY_USERS\<wbr>*\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows\<wbr>CurrentVersion\<wbr>RunOnce\<wbr>*{{efn|name="runonce"|RunOnceは一度のみ実行だが再登録することで何回でも実行可能。}} || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows\<wbr>CurrentVersion\<wbr>Run\<wbr>*<br>HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows\<wbr>CurrentVersion\<wbr>RunOnce\<wbr>*{{efn|name="runonce"}}
|-
| [[:w:en:Security Account Manager|Security Account Manager]] || || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>SAM\<wbr>SAM\<wbr>Domains\<wbr>Account\<wbr>Users\<wbr>*\<wbr>V{{efn|name="sam"|'HKEY_LOCAL_MACHINE\SAM\SAM\' 以下はレジストリエディタの右クリックの「アクセス許可」で Administrators にアクセス許可を与えないと読めない。なおファイルパスは「C:\Windows\System32\config\SAM」。}}{{efn|Vはバイナリであり、0xCC + (0x60 に指定されたオフセット) からユーザーログオンスクリプトパスを指定する<ref name="sam-ghost">Sebastián R. Castro et al. [https://dl.acm.org/doi/pdf/10.1145/3689934.3690839 Ghost in the SAM: Stealthy, Robust, and Privileged Persistence through Invisible Accounts] ACM 2024年</ref>。}}
|-
| [[:w:en:Local Security Authority Subsystem Service|Local Security Authority Subsystem Service]] || || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>System\<wbr>CurrentControlSet\<wbr>Control\<wbr>LSA\<wbr>Notification Packages<br>HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>SYSTEM\<wbr>CurrentControlSet\<wbr>Control\<wbr>LSA\<wbr>Authentication Packages<ref>[https://attack.mitre.org/detectionstrategies/DET0207/ Detect LSA Authentication Package Persistence via Registry and LSASS DLL Load] MITRE Corporation</ref>
|-
| [[:w:en:Active Setup|Active Setup]]<ref>[https://www.advancedinstaller.com/application-packaging-training/msi/ebook/active-setup.html Active-Setup Mechanism] Advanced Installer</ref> || HKEY_USERS\<wbr>*\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Active Setup\<wbr>Installed Components\<wbr>*\<wbr>StubPath || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Active Setup\<wbr>Installed Components\<wbr>*\<wbr>StubPath<ref>[https://attack.mitre.org/techniques/T1547/014/ Boot or Logon Autostart Execution: Active Setup] MITRE Corporation</ref>
|-
| [[:w:Windowsサービス|Windowsサービス]]<ref>[https://learn.microsoft.com/ja-jp/windows-hardware/drivers/install/hklm-system-currentcontrolset-services-registry-tree HKLM\SYSTEM\CurrentControlSet\Services レジストリ ツリー - Windows drivers - Microsoft Learn] Microsoft</ref> || || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>SYSTEM\<wbr>CurrentControlSet\<wbr>services\<wbr>*
|-
| [[:w:Winlogon|Winlogon]] || || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows NT\<wbr>CurrentVersion\<wbr>Winlogon\<wbr>Shell<br>HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows NT\<wbr>CurrentVersion\<wbr>Winlogon\<wbr>Userinit<br>HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows NT\<wbr>CurrentVersion\<wbr>Winlogon\<wbr>Notify<ref>[https://attack.mitre.org/techniques/T1547/004/ Boot or Logon Autostart Execution: Winlogon Helper DLL] MITRE Corporation</ref>
|-
| [[:w:cmd.exe|cmd.exe]]<ref>[https://learn.microsoft.com/en-us/windows-server/administration/windows-commands/cmd cmd - Microsoft Learn] Microsoft</ref> || HKEY_USERS\<wbr>*\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Command Processor\<wbr>AutoRun\REG_EXPAND_SZ || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Command Processor\<wbr>AutoRun\<wbr>REG_SZ
|-
| [[Microsoft Edge]] || || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>SOFTWARE\<wbr>Policies\<wbr>Microsoft\<wbr>Edge\<wbr>ExtensionInstallForcelist<ref>[https://learn.microsoft.com/ja-jp/deployedge/microsoft-edge-policies/extensioninstallforcelist Microsoft Edge ブラウザー ポリシードキュメント ExtensionInstallForcelist - Microsoft Learn] Microsoft</ref>{{efn|name="silent-install"|自動的にサイレントインストールする}}
|-
| [[Google Chrome]] || || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>SOFTWARE\<wbr>Policies\<wbr>Google\<wbr>Chrome\<wbr>ExtensionInstallForcelist<ref>[https://chromeenterprise.google/intl/ja_jp/policies/extension-install-forcelist/ ExtensionInstallForcelist: 自動インストールするアプリと拡張機能のリストの設定 - Chrome Enterprise] Google</ref>{{efn|name="silent-install"}}
|}
Linux の GNOME / MATE 環境には「[[:w:en:Dconf#dconf database|dconf データベース]]」が存在し、それは<code>dconf dump</code>('/'区切り)で表示できます。また dconf データベースにスキーマ(規定値と解説)を被せた gsettings も存在し、こちらは<code>gsettings list-recursively</code>(dconfと異なり'.'区切り)で表示できます。
{| class="wikitable"
|+ Linux における代表的なユーザースクリプト又はコマンド起動が可能なdconf設定
|-
! 規格/アプリケーション !! ユーザー
|-
| GNOME Settings Daemon || /org/gnome/settings-daemon/plugins/media-keys/custom-keybindings/custom*/command
|-
| Marco ([[w:MATE (デスクトップ環境)|MATE]]) || /org/mate/Marco/keybinding-commands/command-*{{efn|変更した設定は<code>dconf dump /org/mate/Marco/keybinding-commands/</code>で、デフォルトも含めた設定は<code>gsettings list-recursively org.mate.Marco.keybinding-commands</code>で表示可能。}}
|-
| MATE Screensaver || /org/mate/screensaver/embedded-keyboard-command<br>/org/mate/screensaver/logout-command{{efn|変更した設定は<code>dconf dump /org/mate/screensaver/</code>、デフォルトも含めた設定は<code>gsettings list-recursively org.mate.screensaver</code> で表示可能}}
|-
| mate-applets || /org/mate/panel/objects/object-*/prefs/command
|-
| mate-sensors-applet || /org/mate/panel/objects/object-*/prefs/*/high-alarm-command<br>/org/mate/panel/objects/object-*/prefs/*/low-alarm-command
|}
なお MATE Screensaver と同源の GNOME Screensaver にも /org/gnome/desktop/screensaver/embedded-keyboard-command と /org/gnome/desktop/screensaver/logout-command{{efn|変更した設定は<code>dconf dump /org/gnome/desktop/screensaver/</code>、デフォルトも含めた設定は<code>gsettings list-recursively org.gnome.desktop.screensaver</code> で表示可能。}} が存在しますが、こちらは既に廃止されており指定しても無視されます<ref>[https://github.com/GNOME/gsettings-desktop-schemas/blob/main/schemas/org.gnome.desktop.screensaver.gschema.xml.in gsettings-desktop-schemas/schemas/org.gnome.desktop.screensaver.gschema.xml.in at main · GNOME/gsettings-desktop-schemas] GNOME Project</ref>。
== 改変を防ぐ ==
改変を探すのは大変です。なので最初から改変をできないようにすれば管理はとても楽になります。
改ざんを防ぐには「[[:w:en:Chain of trust|信頼の連鎖]]」 (chain of trust) が重要となります。例えばカーネルだけで改ざんを防いでも、ハードウェアのファームウェアが不正であれば不正なカーネルを起動できてしまいます。
=== ファームウェア改ざんを防ぐ ===
ファームウェア改ざんによる「ファームウェアルートキット」を防ぐにはIntel Management Engine (Intel ME)で実装されているIntel BIOS Guardを使う必要があります。<!--TODO: マザーボードによってはBIOSで有効にする必要があります。→最近のマザーボード事情-->
なお2017年の第8世代Intel Coreプロセッサ (Coffee Lake) 以前はme_cleanerによってIntel Management Engineの無効化が可能<ref>[https://github.com/corna/me_cleaner/wiki/me_cleaner-status me_cleaner status] Nicola Corna 2018年</ref>なため非推奨です。
また2023年のIntel ME 16.1.30.2307未満では悪意あるロゴ画像を設定することによってroot権限からUEFI設定の変更が可能です([[:w:en:LogoFAIL|LogoFAIL]]の脆弱性)。そのため、古いIntel Management Engineが動作している場合はそのファームウェアをアップデートしましょう。Windowsでは MEUpdateTool.exe / FWUpdLcl.exe を使うことでこのアップデートが可能となっています。一方、Linuxでは一部機種が fwupdmgr 経由での Intel ME ファームウェアアップデートに対応しています。
Intel MEのバージョンはLinuxでは以下のような感じに調べることができます:
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ cat /sys/class/mei/mei0/fw_ver
0:16.1.32.2473
0:16.1.32.2473
0:16.1.27.2181
</syntaxhighlight>
=== ブートローダー改ざんを防ぐ ===
ブートローダーは起動に使われるファームウェア (BIOS) から呼ばれ、カーネルを読み込んで起動するために使われるプログラムです。古い BIOS (レガシーBIOS) には起動するブートローダーを検証する仕組みが存在しませんでしたが、新しい UEFI (統一拡張ファームウェアインターフェース) には署名されたブートローダーのみを起動する UEFI Secure Boot が追加され、安全なブートローダーの起動を許可するための「承認済み署名データベース」 (Authorized Signature Database、UEFI db) と、脆弱なブートローダーの起動を防ぐための「禁止署名データベース」 (Forbidden Signature Database、UEFI dbx) が用意されています。
UEFI Secure Boot が有効かどうかは以下で確認できます:
* Windows PowerShell: <code>Confirm-SecureBootUEFI</code>
* Linux: <code>mokutil --sb-state</code>
UEFI db と UEFI dbx の内容は以下で確認できます:
* Windows PowerShell: <code>Get-SecureBootUEFI -Name db -Decoded</code> / <code>Get-SecureBootUEFI -Name dbx -Decoded</code>
* Linux:
** mokutil{{efn|Ubuntu Desktop に標準で含まれている。}}: <code>mokutil --db</code> / <code>mokutil --dbx</code>
** efitools: <code>efi-readvar -v db</code> / <code>efi-readvar -v dbx</code>
ブートローダーの署名情報は以下で確認できます:
* Windows PowerShell: <code>Get-PfxCertificate</code>{{efn|<code>Get-AuthenticodeSignature</code>はカタログ署名が使われる場合があるため非推奨: https://github.com/PowerShell/PowerShell/issues/23820 。}}
* Linux: <code>sbverify --list</code>
例えば Windows PowerShell では以下のような感じです:
<syntaxhighlight lang="powershell">
PS C:\WINDOWS\system32> mountvol S: /S; if ($?) { Get-PfxCertificate 'S:\EFI\Microsoft\Boot\bootmgfw.efi'; mountvol S: /D }
Thumbprint Subject
---------- -------
FACDE3D80E99AFCC15E08AC5A69BD22785287F79 CN=Microsoft Windows, O=Microsoft Corporation, L=Redmond, S=Washington, C=US
</syntaxhighlight>
また Ubuntu や Debian では署名されたブートローダー (grub-efi-*-signedパッケージ) と非署名のブートローダー (grub-efi-*-unsignedパッケージ) の両方が用意されており、ブートローダーの正体がどれか、また署名されたブートローダーの署名内容を確認するのは以下のような感じとなります:
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ dpkg -L grub-efi-amd64-signed | grep -i '\.efi' | xargs md5sum # インストールされている署名されたブートローダーのハッシュを表示(grub*は通常版、gcd*は光学ブートメディア向け、grubnet*はネットブート向け)
2bd267fb12bd3b0fe26a9dfb4290868d /usr/lib/grub/x86_64-efi-signed/gcdx64.efi.signed
f689e93336a015fa6eb93e1913b13482 /usr/lib/grub/x86_64-efi-signed/grubnetx64.efi.signed
b63c7618fb96d52520b42b8cc7b124f0 /usr/lib/grub/x86_64-efi-signed/grubx64.efi.signed
$ sudo sh -c "md5sum /boot/efi/EFI/BOOT/*" # 現在のbootloaderがどれを使っているかを確認(署名されたgrubを使用)
b63c7618fb96d52520b42b8cc7b124f0 /boot/efi/EFI/BOOT/BOOTX64.EFI
$ sudo sbverify --list /boot/efi/EFI/BOOT/BOOTX64.EFI
signature 1
image signature issuers:
- /C=GB/ST=Isle of Man/L=Douglas/O=Canonical Ltd./CN=Canonical Ltd. Master Certificate Authority
image signature certificates:
- subject: /C=GB/ST=Isle of Man/O=Canonical Ltd./OU=Secure Boot/CN=Canonical Ltd. Secure Boot Signing (2022 v1)
issuer: /C=GB/ST=Isle of Man/L=Douglas/O=Canonical Ltd./CN=Canonical Ltd. Master Certificate Authority
$ sudo sbverify --cert /usr/share/grub/canonical-uefi-ca.crt /boot/efi/EFI/BOOT/BOOTX64.EFI
Signature verification OK
</syntaxhighlight>
なお Linux では grub の代わりに使えるブートローダーとして systemd-boot もあります。systemd-boot の署名版は Debian が systemd-boot-efi-*-signed パッケージとして用意しているようです(Ubuntu未搭載)。
<!--TODO:
TPM (Trusted Platform Module) チップ
-->
=== カーネル本体の改ざんを防ぐ ===
カーネルはオペレーティングシステム (OS) の下層で動き続けるプログラムです。カーネル本体の実行ファイルもブートローダーと同様に署名が行われており、UEFI Secure Boot が有効であればその検証をブートローダーが行います。Linux では GRUB の UEFI Secure Boot と shim_lock の連携がそれに相当します<ref>[https://www.gnu.org/software/grub/manual/grub/grub.html#UEFI-secure-boot-and-shim GNU GRUB Manual 2.14 - 19.4 UEFI secure boot and shim support] フリーソフトウェア財団</ref>。
なお Ubuntu には署名されたカーネル (linux-image-*パッケージ) と非署名のカーネル (linux-image-unsigned-*パッケージ) の両方が用意されており、署名されているカーネルは以下のような感じでその署名が確認できます:
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ sudo sbverify --list /boot/vmlinuz-$(uname -r) # Linuxカーネル本体の署名を確認する
signature 1
image signature issuers:
- /C=GB/ST=Isle of Man/L=Douglas/O=Canonical Ltd./CN=Canonical Ltd. Master Certificate Authority
image signature certificates:
- subject: /C=GB/ST=Isle of Man/O=Canonical Ltd./OU=Secure Boot/CN=Canonical Ltd. Secure Boot Signing (2022 v1)
issuer: /C=GB/ST=Isle of Man/L=Douglas/O=Canonical Ltd./CN=Canonical Ltd. Master Certificate Authority
$ sudo sbverify --cert /usr/share/grub/canonical-uefi-ca.crt /boot/vmlinuz-$(uname -r) # Linuxカーネル本体の署名を検証する
Signature verification OK
</syntaxhighlight>
=== カーネルモジュールの改ざんを防ぐ ===
カーネルモジュールも署名されており、その検証をカーネルが行っています。Windowsカーネルでは ci.dll (Code Integrityモジュール)が、Linuxカーネルでは CONFIG_MODULE_SIG コンパイルオプションがその検証を行っています。
カーネルによるカーネルモジュールの検証が有効かどうかは以下で確認することができます:
* Linux: <code>grep 'CONFIG_MODULE_SIG=' /boot/config-$(uname -r)</code>
カーネルによるカーネルモジュールの検証で読み込みを弾くかどうかは以下で確認することができます:
* Windows: 強制モードか評価モード (監査モード) かを確認する PowerShell スクリプトが Microsoft のサイトに存在します: https://support.microsoft.com/en-us/windows/hardware/drivers/the-windows-driver-policy#is-my-device-in-evaluation-mode-or-enforcement-mode
* Linux: <code>cat /sys/module/module/parameters/sig_enforce</code>
また Linux では検証で読み込みを弾かない場合でも検証外カーネルモジュールを読み込んだ場合はdmesgに警告が出て '''Tainted kernel''' 扱いとなります<ref>[https://docs.kernel.org/admin-guide/tainted-kernels.html Tainted kernels] Linux Foundation</ref>。以下はその例です:
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ grep 'CONFIG_MODULE_SIG=' /boot/config-$(uname -r) # y=Yes, n=No
CONFIG_MODULE_SIG=y
$ cat /sys/module/module/parameters/sig_enforce # Y=Yes, N=No
N
$ sudo dmesg | grep 'module verification'
[ 8.928361] nvidia: module verification failed: signature and/or required key missing - tainting kernel
$ wget http://git.kernel.org/pub/scm/linux/kernel/git/torvalds/linux.git/plain/tools/debugging/kernel-chktaint
[...]
$ sudo sh ./kernel-chktaint
Kernel is "tainted" for the following reasons:
* externally-built ('out-of-tree') module was loaded (#12)
* unsigned module was loaded (#13)
Raw taint value as int/string: 12288/'G OE '
Tainted modules:
* nvidia (OE)
* nvidia_drm (OE)
* nvidia_modeset (OE)
* nvidia_uvm (OE)
For a more detailed explanation of the various taint flags see
Documentation/admin-guide/tainted-kernels.rst in the Linux kernel sources
or https://kernel.org/doc/html/latest/admin-guide/tainted-kernels.html
</syntaxhighlight>
また Linux では以下のような感じで個々のモジュールの署名が確認できます:
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ modinfo /lib/modules/$(uname -r)/kernel/arch/x86/kernel/msr.ko.zst
filename: /lib/modules/7.0.0-38-generic/kernel/arch/x86/kernel/msr.ko.zst
license: GPL
description: x86 generic MSR driver
author: H. Peter Anvin <hpa@zytor.com>
srcversion: 639B995855A3528050FD532
depends:
intree: Y
name: msr
retpoline: Y
vermagic: 7.0.0-38-generic SMP preempt mod_unload modversions
sig_id: PKCS#7
signer: Build time autogenerated kernel key
sig_key: 3B:E7:D3:BF:D3:2E:D9:CA:9C:17:D2:E9:5F:1A:1C:AE:67:D5:82:2F
sig_hashalgo: sha512
signature: 96:BC:2A:18:6E:4D:D8:E5:28:69:9D:E6:65:89:95:D4:BE:4C:5B:7C:
4A:23:11:75:F6:FE:63:79:FC:29:9B:F7:EA:24:B6:F1:EF:F3:80:17:
0B:C0:1E:46:61:29:BB:F9:E0:AC:81:69:85:73:7D:D4:77:82:A8:DB:
[...]
</syntaxhighlight>
=== システムファイル改ざんを防ぐ ===
システムファイル改ざんを防ぐ良い方法はシステム領域を読み取り専用にすることですが、仮にファイルシステムを読み取り専用のファイルシステム(SquashFSやEROFS)にしたとしても記録する場所がSSDであればブロック単位での上書きが可能となります。
1回だけ書き込めて上書きが不可能な媒体としてはCD-R、DVD-R、DVD+R、BD-Rなどの一部の光学メディアが存在しますが、これらをブートメディアとして使用するのは頻繁なアップデートが難しくなります。
そのほかの手法としては別のコンピュータからシステムファイルを取得する「ネットワークブート」を行うという手法もありますが、これはネットワーク経由でシステムファイルが盗まれる可能性と隣り合わせです。しかしながらプロトコルにUEFI HTTPSを、認証に相互認証のmTLSを用いて、その秘密鍵をTPMで管理してOSから読めなくすることでネットワークブートの安全性は何とか確保できるかもしれません(対応マザーボードは不明)。
一方、Android や ChromeOS ではブロックデバイス単位での改ざん検知 (dm-verify) によってシステムイメージの改ざんを防止しています<ref>[https://source.android.com/docs/security/features/verifiedboot/dm-verity?hl=ja dm-verity の実装] Google</ref><ref>[https://research.google/pubs/verified-boot-on-chrome-os-and-how-to-do-it-yourself/ Verified Boot on Chrome OS and How to do it yourself] Google</ref>。
=== カーネルメモリ改ざんを防ぐ ===
カーネルメモリのコード部分は MMU の書き込み禁止によって保護されています。iOS / macOS では Kernel Integrity Protection が<ref>[https://support.apple.com/ja-jp/guide/security/sec8b776536b/web オペレーティングシステムの整合性] Apple</ref> 、Linux では Kernel Strict RWX がこれに相当します<ref>[https://docs.kernel.org/security/self-protection.html Kernel Self-Protection] Linux Foundation</ref>。Windows でもカーネルモードに読み込み専用メモリセグメントが存在し、これに書き込もうとするとブルースクリーンで ATTEMPTED_WRITE_TO_READONLY_MEMORY (0xBE) が発行されます<ref>[https://learn.microsoft.com/ja-jp/windows-hardware/drivers/debugger/bug-check-0xbe--attempted-write-to-readonly-memory バグ チェック 0xBE: ATTEMPTED_WRITE_TO_READONLY_MEMORY] Microsoft</ref>。しかしながら Linux Kernel では kprobes、Static Keys、Static calls などで自己書き換えが多用されているため、一時的にコード部分を書き込み可能なページに割り当てて書き換える text_poke(...) という抜け道が存在します。
また定期的に改ざんが行われていないかをチェックする仕組みも存在します。Windows では[[:w:Kernel Patch Protection|Kernel Patch Protection]] (PatchGuard) / HyperGuard が、Linux では Linux Kernel Runtime Guard(外部パッチ)がこれに該当します。Windows の PatchGuard では改ざんが検出されたらブルースクリーンで CRITICAL_STRUCTURE_CORRUPTION が発行されます。
<!--TODO: Windows の HVCI、macOS の Secure Page Table Monitor / Trusted Execution Monitor-->
<!--
=== アプリケーション改ざんを防ぐ ===
SELinux / AppArmor
-->
== 攻撃用AIを対策する ==
攻撃用AIでは基本的に賢いかつ制限の緩い大規模言語モデル (LLM) が使われています。この代表的な例として GLM 5.3 や Qwen3.8-27B-ABLITERATED が存在します。
=== コンテキスト爆弾を設置する ===
攻撃用AIの対策では相手のLLMを止めることが重要となります。そこで使えるのが'''コンテキスト爆弾''' (context bombs) という手法です<ref>[https://arstechnica.com/security/2026/07/now-defenders-are-embracing-the-prompt-injection-too/ Now, defenders are embracing the prompt injection, too] Ars Technica 2026年7月14日</ref>。
このコンテキスト爆弾は「相手のLLMに対し応答やツール呼び出しで禁止されていることを行わせようとする」というプロンプトインジェクションの一種であり、それによって相手のガードレールがLLMを止めることで相手からの攻撃を防ぎます。この手法は相手の読みそうなテキストにただプロンプトを書いておけば良いだけなので、お手軽に使えます。
コンテキスト爆弾のテキスト例は以下のリポジトリに存在します:
* https://github.com/tracebit-com/context-bombs
=== ハニーポット ===
ハニーポットは攻撃者を引きつける役目を担います。ハニーポットの評価フレームワークには「UHBS」(Universal Honeypot Benchmarking Standard) が、その品質基準には「UHQS」(Universal Honeypot Quality Score) が存在しますが、2026年現在多くのハニーポットがFランク〜Dランクと残念な状況になっています<ref>[https://uhbs.github.io/uhbs-standard/mkdocs/conformance/ Overview - UHBS — Honeypot Evaluation Framework]</ref>。
<!--
== 自作コードの脆弱性を塞ぐ ==
書きかけ
-->
== 脚注 ==
<references group="注釈"/>
== 参考文献 ==
<references/>
{{DEFAULTSORT:こんひゆうたせきゆりてい}}
[[Category:計算機科学]]
[[Category:情報技術]]
6o0fq7rnss1fhunzoartdc0dps22wm8
304864
304859
2026-10-18T15:24:06Z
~2026-54076-02
92740
/* 不審な改変が行われていないかを調べる */
304864
wikitext
text/x-wiki
'''コンピュータセキュリティ'''はコンピュータの安全のことです。ここではコンピュータの安全を確保することを学びます。
== コンピュータセキュリティの基本 ==
コンピュータは弱いところから狙われるため、弱いところを無くすのがセキュリティの基本となります。
具体例を挙げましょう。一般的な光回線に繋がれてるホームネットワークを考えます。ここには光回線の先に繋がる上位ネットワークと家内のホームネットワーク (家庭におけるLAN) とを区切るエッジルーター(一般的にはハードウェア・ゲートウェイがこれに該当)が存在します。このホームネットワークに数台の新しいWindows PCと一台の古い機器が繋がっていると仮定します。
新しいWindows PC同士ではホームネットワーク経由でファイルをやり取りするためにファイルの共有 (SMB{{efn|Server Message Block}}) を有効にしているとします。一方、古い機器の方を脆弱性のある古いテレビとしましょう。このテレビはインターネットから繋いで地上デジタル放送を見るための DCTP+ {{efn|Digital Transmission Content Protection +}}が搭載されており、UPnP{{efn|Universal Plug and Play}}で自動的にエッジルーター搭載のファイアーウォールに穴あけてインターネット側から DCTP+ に繋がるようになっているものとします。
この仮定によってハッカーは DCTP+ の脆弱性を使って古いテレビに悪意のあるプログラムを実行させてファイルの共有サーバーを立て{{efn|Windows 11時点でもゲスト認証による接続は許可されている<ref>[https://learn.microsoft.com/en-us/windows-server/storage/file-server/smb-interception-defense?tabs=group-policy Protect SMB traffic from interception] Microsoft</ref>。}}、そこからファイルの共有を通じて新しいWindows PCにマルウェア (例えば<code>PHOTO-<ランダムな数字>.png.lnk</code><ref>[https://www.microsoft.com/en-us/security/blog/2026/06/25/photo-zip-campaign-targeting-hospitality-industry-delivers-node-js-implant-persistent-access/ Photo ZIP campaign targeting hospitality industry delivers Node.js implant for persistent access] Microsoft 2026年6月25日</ref>) を送り込むことが可能となりました。
== 安全にパスワードを使う ==
=== 流出したパスワードと被ってないかをチェックする ===
あちこちのサイトで流出したパスワードは集められてデータベース化されダークネットに流通しています。この代表的なものには2019年に登場した [[:w:en:Collection No. 1|Collection #1]] が挙げられます。この Collection #1 などの流出パスワードデータベースは辞書攻撃に利用されており、これは「Credential Stuffing攻撃」と呼ばれています。
使うパスワードが流出パスワードデータベースに載っていないかを確認するためには上記のデータベースを手に入れるか、上記のデータベースからk-匿名性で検索を行うオンラインサービスを使うと良いでしょう。
このオンラインサービスの代表的なものにはWebサイト「Have I Been Pwned」の提供する「Pwned Passwords」サービスが存在しますが、このAPIではパスワードのSHA-1ハッシュ先頭5文字を渡すと、流出したパスワードのSHA1ハッシュ6文字以降と流出データベースに載っていた回数が返答されます。
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ # License: CC0 / Public Domain
$ # パスワードを入力してSHA-1ハッシュへと変換する(ここでは'test'と入力)
$ sha1=$(read -sp "Password: " pass && echo -n $pass | sha1sum | cut -d' ' -f1)
Password:
$ # 変換後のハッシュを表示
$ echo $sha1
a94a8fe5ccb19ba61c4c0873d391e987982fbbd3
$ # ハッシュの先頭5文字を渡して6文字目以降を検索(':'の後ろは見つかった数)
$ curl -s https://api.pwnedpasswords.com/range/$(echo $sha1 | cut -c 1-5) | grep -i $(echo $sha1 | cut -c 6-)
FE5CCB19BA61C4C0873D391E987982FBBD3:1579235
</syntaxhighlight>
ハッシュの先頭5文字も渡したくない場合や、自社サービスでチェックを行いたい場合は上記のサービスが公式で提供するツール「haveibeenpwned-downloader」[https://github.com/HaveIBeenPwned/PwnedPasswordsDownloader]で全てのハッシュデータをダウンロードして自前で照合しましょう。
=== 解析耐性のある鍵導出関数を使う ===
パスワードでは計算負荷の低い SHA-256 や SHA-512 などの通常のハッシュ関数、メモリ負荷の低い [[:w:PBKDF2|PBKDF2]] や bcrypt などの古い[[:w:鍵導出関数|鍵導出関数]](パスワードハッシュ関数)を使わないようにしましょう。これらの弱いハッシュ関数は GPU や ASIC で高速に解かれてしまいます。
より強いパスワードハッシュ関数としては yescrypt や Argon2id が存在します。パスワードにはこちらを使いましょう。現代の Linux ではアカウントのパスワードハッシュ関数として yescrypt が標準となっています。
使っている Linux の新規アカウントで使われるパスワードハッシュ関数は以下で確認可能です:
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ grep -n 'pam_unix.so' /etc/pam.d/common-password
26:password [success=2 default=ignore] pam_unix.so obscure use_authtok try_first_pass yescrypt
</syntaxhighlight>
Linuxの現在のアカウントがどのハッシュ関数を使用しているかは以下で確認可能です:
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ sudo cat /etc/shadow | grep $USER # $(1|5|6|b)$=弱い、$y$=強い
user:$y$j9T$ST7oYwlQjFy7/8vnL/Ugt0$po4vW4qgGu8lpUNRtH0B3hDHGZACzcRhzIKhqlx.2Z5:20743:0:99999:7:::
</syntaxhighlight>
弱いハッシュ関数を使用している場合は<code>passwd $USER</code>でパスワードを再設定して使用するハッシュ関数を更新してください。
一方、Windows 10 以前のローカルアカウントではパスワードハッシュがレジストリの<code>HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>SAM\<wbr>SAM\<wbr>Domains\<wbr>Account\<wbr>Users\<wbr>(ユーザーID)\<wbr>V</code>{{efn|name="sam"}}のバイナリに存在します:
* [[:w:LMハッシュ|LMハッシュ]]: 0xCC + (0x9C に指定されたオフセット)<ref name="sam-ghost"/>
* NTLMハッシュ: 0xCC + (0xA8 に指定されたオフセット)<ref name="sam-ghost"/>
LMハッシュは [[:w:LAN Manager|LAN Manager]] に使われていた [[:w:Data Encryption Standard|DES]] ベースの古いハッシュ、NTLMハッシュは [[:w:NT LAN Manager|NT LAN Manager]] に使われている [[:w:MD4|MD4]] ベースの古いハッシュであり、どちらも非常に弱いものとなっていました。
また Windows の Active Directory ドメインアカウントのオフライン認証向けキャッシュ済みドメイン資格情報はレジストリの<code>HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>SECURITY\<wbr>Cache</code>に存在します:
* DCC1 ハッシュ (MSCache v1): 弱い MD4 ベース。Windows XP以前。
* DCC2 ハッシュ (MSCache v2) : 弱めの PBKDF2-HMAC-SHA1 ベース。Windows Vista以後<ref>[https://attack.mitre.org/techniques/T1003/005/ OS Credential Dumping: Cached Domain Credentials] MITRE 2025年10月24日</ref>。
2021年にリリースされた Windows 11 以降は Microsoft アカウントが必須となっています。
<!--TODO:
Windows Hello、LSA Secrets
=== パスワードの複雑性をチェックする ===
=== TPMで鍵を隔離する ===
-->
== 既製製品の脆弱性を塞ぐ ==
まずは弱いところを無くしましょう。
=== ソフトウェアアップデートをする ===
セキュリティの基本はソフトウェアアップデートです。
==== PCおよびモバイル ====
PC{{efn|PCサーバを含む}}やモバイルでは基本的に自動で通知が来るので忘れずにアップデートを選択しましょう。手動では以下のように行います:
; Windows
: システムのアップデートは基本的に [[:w:Microsoft Update|Microsoft Update]] (Windows Update) で、アプリケーションのアップデートは基本的に<code>winget upgrade --all</code>コマンドで行います。
: また Windows 11 Enterprise では再起動が不要なホットパッチにも対応しています。
; macOS / iOS
: 「ソフトウェアアップデート」
; Ubuntu / Debian
: [[:w:APT|APT]]パッケージ管理システムでは<code>apt upgrade</code>コマンドで更新を行います。
: Ubuntu では GUI による更新用として[[:w:Software Updater|Software Updater]] (<code>update-manager</code>コマンド)、[[:w:Snap (ソフトウェア)|Snap]]パッケージの更新コマンドとして<code>snap refresh</code>、メジャーバージョンの更新コマンドとして<code>do-release-upgrade</code>も存在します。
: また Ubuntu では Ubuntu Pro に登録することで再起動が不要なカーネル修正の「Livepatch」も可能となります(個人では5台まで無料)。SUSEではユーザー空間ライブパッチングまで提供されています(glibc と openssl のみ)<ref>[https://documentation.suse.com/ja-jp/sles/15-SP6/html/SLES-all/cha-ulp.html ユーザ空間ライブパッチ - 管理ガイド - SLES 15 SP6] SUSE</ref>。
; RedHat / Fedora
: <code>yum update</code>コマンド
; Android
: 「設定」アプリ→「システム」→「システムアップデート」または「ソフトウェアアップデート」
また個々のハードウェアのファームウェアアップデートは以下で行います:
; Linux
: Linuxにおけるファームウェアの更新は基本的に<code>fwupdmgr update</code>コマンドで行います。
: NVMe SSDのファームウェアの更新は<code>nvme fw-download</code>コマンドおよび<code>nvme fw-commit</code>コマンドで行うことができます。
一方、Windows ではファームウェアのアップデートも Windows Update 経由で<ref>[https://learn.microsoft.com/ja-jp/windows-hardware/drivers/bringup/firmware-update ファームウェアの更新] Microsoft</ref>、macOS ではファームウェアのアップデートもmacOSアップデートで行うことができます<ref>[https://support.apple.com/ja-jp/guide/mac-help/mchlp2609/mac Macのファームウェアアップデートの入手方法] Apple</ref>。
<!--
また開発環境では以下も存在します:
; Python
: <code>pip -U install</code>
-->
==== ルーター ====
ルーターでは以下の設定を有効のままにしておきましょう:
; AirStationシリーズ(Buffalo 製ルーター)
: 「ファームウェア自動更新機能」
; Atermシリーズ(NEC 製ルーター)
: 「メンテナンスバージョンアップ機能」「時刻指定バージョンアップ機能」
==== テレビ ====
テレビでは放送波アップデートが行われるため、「放送波による自動更新」<!--TODO: メーカー別名-->を有効にしましょう。
=== 高速に再起動する ===
パッケージは更新しただけでは反映されません(一部デーモンの更新を除く)。Linuxでは高速に再起動する方法が存在し、これによってダウンタイムを減らすことができます。
; 更新で影響を受けるデーモンのみ再起動する
:* Ubuntu Server: 標準で <code>needrestart</code> が導入されており自動で影響を受けるデーモンの再起動が行われます{{efn|自動的なデーモン再起動を止めるには /etc/apt/apt.conf.d/99needrestart より<code>-m u</code>を削除する必要があります<ref>[https://discourse.ubuntu.com/t/needrestart-changes-in-ubuntu-24-04-service-restarts/44671 `needrestart` changes in Ubuntu 24.04: service restarts] Canonical 2024年</ref>。}}(Ubuntu Desktopでは別途導入が必要)。
:* RedHat / Fedora: <code>dnf needs-restarting</code>が導入されており、それによって再起動するべきデーモンを確認できます。
; ユーザー空間のみ再起動する(カーネルの更新がない、またはカーネルでlive patchingを行ってる場合)
: <code>sudo systemctl soft-reboot</code>
; 高速にカーネルを更新する(ファームウェアの更新がない場合)
: <code>sudo systemctl kexec</code>
また一部のソフトウェアではホットアップグレード(無停止アップグレード{{efn|Zero-Downtime Upgrade}})にも対応しています (nginx の USR2 シグナル<ref>[https://nginx.org/en/docs/control.html Controlling nginx] nginx</ref>など)。
=== 代替ソフトウェアを探す ===
更新が停止された古いソフトウェアの多くはそれ自身に脆弱性が存在したり、脆弱性のある古いライブラリに依存していたりします。そのため古いソフトウェアは速やかに代替ソフトウェアへと移行しましょう。
==== 開発終了したソフトウェアから現役のソフトウェアへ ====
古いソフトウェアには例えば以下があります:
* オフィススイート(代替候補: LibreOffice)
** [[:w:OpenOffice.org|OpenOffice.org]](〜2011年)
* 画像ビューア
** [[:w:Susie|Susie]] (〜2013年)
* メディアプレイヤー
** [[:w:QuickTime|QuickTime]] for Windows(〜2016年) - リモートコード実行の脆弱性 ([https://www.zerodayinitiative.com/advisories/ZDI-16-241/ ZDI-16-241]、[https://www.zerodayinitiative.com/advisories/ZDI-16-242/ ZDI-16-242]) を残したままサポート終了しました<ref>[https://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/753400.html Apple、「QuickTime for Windows」のサポートを終了、アンインストールを推奨] Impress 2016年4月15日</ref>。
* メディアフィルター(代替候補: LAV Filters)
** [[:w:ffdshow|ffdshow]](〜2014年)
** [[:w:Haali Media Splitter|Haali Media Splitter]](〜2013年)
* メディアセンター(代替候補: Kodi)
** [[:w:en:Boxee|Boxee]](〜2011年)
** [[:w:Kodi|XBMC]](〜2014年) - Kodiの前身
* 圧縮ソフトウェア
** [[:w:+Lhaca|+Lhaca]](〜2007年)
** [[:w:Lhaplus|Lhaplus]](〜2017年)
またハードウェアに由来する古いソフトウェアには例えば以下があります:
* [[w:ウォークマン|ウォークマン]]関連(代替候補: [[:w:Music Center for PC|Music Center for PC]])
** [[:w:CONNECT Player|CONNECT Player]](〜2007年、Sony)
** [[:w:SonicStage|SonicStage]](〜2009年、Sony)
** [[:w:x-アプリ|x-アプリ]](〜2016年、Sony)
* DTCP-IP関連
** SmartVision/PLAYER powered by DiXiM(〜2019年、NEC)<ref>[https://support.nec-lavie.jp/navigate/support/info/2019/announce/svp/ SmartVision/PLAYER保守サービス終了のお知らせ] NECパーソナルコンピュータ 2019年1月28日</ref><ref>[https://apps.microsoft.com/detail/9wzdncrdkb4c?hl=ja-JP&gl=JP SmartVision/PLAYER powered by DiXiM] Microsoft</ref>
** DiXiM Digital TV plus for I-O DATA(〜2022年、I-O DATA)<ref>[https://www.iodata.jp/lib/product/d/3533.htm DiXiM Digital TV plus for I-O DATA] I-O DATA</ref>
なお仮想マシンを使って隔離しながら古いソフトウェアを動かすこともできますが、仮想マシンでも「VMエスケープ」の脆弱性を使用することでホスト環境への侵害が可能なため、仮想マシンの上で弱い環境や弱いソフトウェアを使うこともなるべく避けましょう。<!--TODO: Windows Sandbox-->
==== 古いバージョンのライブラリを避ける ====
多くのソフトウェアに使用されているライブラリとその過去の危険な脆弱性には例えば以下があります:<!--危険を認識させる。例はライブラリ内のメイン処理に存在し、任意コード実行であり、脆弱性の存在期間が長く、新しいものが好ましい。-->
* 画像ライブラリ
** libpng - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2010-1205 CVE-2010-1205](PNG画像で任意コード実行の可能性)
** libjpeg-turbo - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2012-2806 CVE-2012-2806](JPEG画像で任意コード実行の可能性)
** OpenJPEG - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2025-54874 CVE-2025-54874](JPEG2000画像で任意コード実行の可能性)
** libtiff - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2026-12912 CVE-2026-12912](PixarLog圧縮TIFF画像で任意コード実行の可能性)
** libwebp - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2023-4863 CVE-2023-4863](WebP画像で任意コード実行の可能性)
* 動画ライブラリ
** FFmpeg - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2024-22860 CVE-2024-22860](JPEG XLアニメーションで任意コード実行の可能性)
* 圧縮ライブラリ
** libarchive - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2026-15028 CVE-2026-15028](tarアーカイブ形式で任意コード実行の可能性)
** zlib - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2002-0059 CVE-2002-0059](Deflate圧縮形式で任意コード実行の可能性)
** bzip2 - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2010-0405 CVE-2010-0405](BZ2圧縮形式で任意コード実行の可能性)
これらのライブラリはABI(アプリケーションバイナリインターフェイス)が変更されて新しいバージョンの共有ライブラリにドロップイン置換できないものも多くなっています。
また国内で使われている古いソフトウェアでは開発中止になった以下のライブラリも問題となっています:
* UNLHA32.DLL<ref>[https://forest.watch.impress.co.jp/docs/news/372729.html 圧縮・解凍用DLL「UNLHA32.DLL」が開発中止、作者はLZHの利用中止を呼びかけ] Impress 2010年6月7日</ref>
Webフレームワークでは開発中止となった以下のフレームワークが問題となっています:
* [[:w:Model View Controller|Model View Controller]]フレームワーク(代替候補: [[:w:Apache Struts|Apache Struts]] 2、[[:w:Spring Framework#Model-View-Controller フレームワーク|Spring MVC]])
** [[:w:en:Apache Struts 1|Apache Struts 1]](〜2008年) - Java言語
* [[:w:アスペクト指向プログラミング|アスペクト指向フレームワーク]](代替候補: [[:w:Spring Framework|Spring Framework]]、[[:w:en:Micronaut (framework)|Micronaut]])
** [[:w:Seasar|Seasar]](〜2016年) - Java言語
* [[:w:シングルページアプリケーション|シングルページアプリケーション]]フレームワーク(代替候補: [[:w:Angular|Angular]]、[[:w:Vue.js|Vue.js]])
** [[:w:AngularJS|AngularJS]](〜2022年) - JavaScript
=== 古いハードウェアに対処する ===
サポート切れの OS を搭載したハードウェアはどうすれば良いでしょうか。これには使い続けるいくつかの方法がありますが、基本的にオススメしません。古い OS を搭載していたハードウェアはハードウェア仕様も古いからです。
==== スタンドアロン運用 ====
古いハードウェアはインターネットに繋がずに使用すること(スタンドアロン運用)も可能です。
しかしながらUSBメモリでデータをやり取りする場合はUSBメモリ経由での感染などのリスクは残ります。
==== 新しめのLinuxを導入 ====
新しめのLinuxを導入するという方法もあります。
これに適したものでは例えばWindows 11非対応のPC (Intel 第7世代以前、AMD Ryzen 1000シリーズ以前) が挙げられます。
またスマートフォンやタブレットであればカスタムROMが、ルーターであればDD-WRTやOpenWRTが存在します。
==== 手放す ====
手に負えなければデータだけバックアップして手放しましょう。情報が漏れないよう初期化も忘れずに。
== 潜在的な脆弱性を減らす ==
現代のプログラムでは以下のような保護が行われています。
=== メモリアドレスの推測困難化 ===
攻撃に必要なコード片(ガジェット)のメモリアドレスを推測しにくくするために、カーネル空間、ユーザー空間の両方で[[:w:アドレス空間配置のランダム化|アドレス空間配置のランダム化]](ASLR)が行われています。カーネル空間の ASLR は KASLR (Kernel ASLR) とも呼ばれています。
ユーザー空間のプログラムで ASLR を有効にするためには[[:w:位置独立コード|位置独立コード]] (PIC) / 位置独立実行形式 (PIE) である必要があります。Unix で使われる実行形式の ELF では位置独立実行形式が ET_DYN、非位置独立実行形式 (non-PIE) が ET_EXEC となります。
Linuxでは ASLR が無効となる非位置独立実行形式のファイルを以下で検索することができます:
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ # License: CC0 / Public Domain
$ # 非位置独立実行形式 (non-PIE) のバイナリを検索
$ find / -type f -executable 2>/dev/null | xargs -I {} sh -c 'LANG=C readelf -h {} 2>/dev/null | grep -E "Type:.*EXEC" >/dev/null && echo {}'
/usr/lib/default.sfx
/usr/lib/klibc/bin/mkfifo
/usr/lib/klibc/bin/zcat
/usr/lib/klibc/bin/poweroff
[...]
$ # 非位置独立実行形式 (non-PIE) のバイナリを含むDebianパッケージを検索
$ find / -type f -executable 2>/dev/null | xargs -I {} sh -c 'LANG=C readelf -h {} 2>/dev/null | grep -E "Type:.*EXEC" >/dev/null && echo {}' | xargs -r -d '\n' -n1 dpkg-query -S | sed 's/: .*//' | sort -u
aidl
busybox-static
code
cpp-15-x86-64-linux-gnu
cuda-gdb-13-4
cuda-nvcc-13-4
cuda-sanitizer-13-4
cuda-tileiras-13-4
debugedit
g++-15-x86-64-linux-gnu
gcc-15-x86-64-linux-gnu
gcc-mingw-w64-i686-posix
gdc-15-x86-64-linux-gnu
gds-tools-13-4
gfortran-15-x86-64-linux-gnu
gh
git-lfs
gobjc-15-x86-64-linux-gnu
gocryptfs
golang-1.26-go
go-md2man
go-mtpfs
[...]
</syntaxhighlight>
現在のLinuxカーネルがユーザー空間 ASLR を有効にしているかは以下で確認できます (出力例はUbuntu 26.04):
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ sysctl kernel.randomize_va_space # 0=無し、1=部分的、2=完全
kernel.randomize_va_space = 2
</syntaxhighlight>
また現在のLinuxカーネルがカーネル ASLR (KASLR) を有効にしているかは以下で確認できます (出力例はUbuntu 26.04):
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ grep 'CONFIG_RANDOMIZE_BASE' /boot/config-$(uname -r) # y=Yes, n=No
CONFIG_RANDOMIZE_BASE=y
</syntaxhighlight>
なお ASLR は間接的な関数呼び出し( C++ の vtable を含む)があると、そのアドレスから ASLR のオフセットがバレてしまい突破されてしまいます。
また CPU の[[:w:投機的実行|投機的実行]]での情報漏れ (Spectre) による[[:w:キャッシュ攻撃|キャッシュサイドチャネル攻撃]](後述)の一つである「投機的探査」 (BlindSide) によってもコードの位置情報の取得がされ ASLR が突破されてしまいます。
=== 投機的実行の情報漏れ防止 ===
前述のとおり、投機的実行による情報漏れ (Spectre) は攻撃に繋がります。Spectre には境界チェックを迂回する Spectre V1 と間接分岐の分岐先アドレスのキャッシュ{{efn|分岐先バッファ (Branch Target Buffer、BTB)や分岐先アドレスキャッシュ (Branch Target Address Cache、BTAC) と呼ばれる。}}を汚染する Spectre V2 が存在します。<!--TODO: Spectre v3/v4、Zenbleed-->
Spectre V1 を防ぐ方法としては投機的実行を阻害するための命令(x86ではLFENCE)の挿入{{efn|Linuxカーネルでの投機的実行の防止は<code>barrier_nospec()</code>。}}やアクセスできるアドレス範囲を狭めることが行われています{{efn|GCCでの投機的実行での範囲外アクセス防止は<code>__builtin_speculation_safe_value(...)</code>、Linuxカーネルでの投機的実行での範囲外アクセス防止は<code>array_index_nospec(...)</code><ref>[https://lwn.net/Articles/759423/ Spectre V1 defense in GCC] LWN 2018年7月10日</ref>。}}。
また Spectre V2 では攻撃を防ぎながらも速度を落とさない方法として脆弱な分岐先アドレスキャッシュに依存する間接分岐の代わりにリターンアドレスのキャッシュ{{efn|リターンスタックバッファ (RSB) と呼ばれる。}}に依存するリターン命令を使う retpoline が登場しました。しかしながらこの retpoline でも速度の低下は起こるため、既知の間接呼び出しを条件分岐 + 直接呼び出しに変換して高速化する手法が模索されました。LLVM では retpoline を有効にする <code>-mretpoline</code>フラグの処理内に既知の仮想関数呼び出しを[[:w:二分木|二分木]]の直接分岐に置き換える「分岐ファネル」(Branch funnel) が導入されています<ref>[https://reviews.llvm.org/D42453 Use branch funnels for virtual calls when retpoline mitigation is enabled.] LLVM project</ref>。また Linux カーネルでも既知の間接呼び出しを条件分岐 + 直接呼び出しに変換する INDIRECT_CALL_* マクロが搭載されています<ref>[https://lwn.net/Articles/774743/ Relief for retpoline pain] LWN 2018年12月14日</ref>。<!--TODO: Intel CETのSHSTKとretpolineの衝突-->
一方、リターン命令の投機的実行も「Retbleed」や AMD CPU における「投機的リターンスタックオーバーフロー」 (SRSO){{efn|Speculative Return Stack Overflow。}}のような脆弱性が見つかっています。
なお低権限コードから高権限コードへの権限境界をまたいだ Spectre および Retbleed は Intel の「間接分岐制限付き投機」(IBRS){{efn|Indirect Branch Restricted Speculation。}}およびそれを高速化した「拡張IBRS」(eIBRS) などハードウェア側によって塞がれました<ref>[https://www.intel.com/content/www/us/en/developer/articles/technical/software-security-guidance/technical-documentation/hardware-behavior-related-to-speculative-execution.html Hardware Features and Behavior Related to Speculative Execution] Intel 2026年10月14日</ref>が、権限境界をまたがないものは今も可能となっています。
=== メモリにおける書き込みと実行の排他化 (W^X) ===
メモリでは書き込み可能領域の実行不可化 ([[:w:NXビット|NXビット]]) と実行可能領域の書き込み不可化による書き込みと実行の排他化([[:w:en:W^X|W^X]])が一般的となっています。NXビットは x86 では NXビットは AMD64 と共に搭載された古い機能であるため、今時の CPU と OS は基本的にこれに対応しています。
現在の CPU がNXビットを有効にしているかはLinuxでは以下で確認できます:
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ grep '^flags' /proc/cpuinfo | grep -o nx
nx
nx
[...]
</syntaxhighlight>
現在のLinuxカーネルが厳格な W^X を有効にしているかは以下で確認できます (出力例はUbuntu 26.04):
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ grep '_RWX' /boot/config-$(uname -r) # y=Yes, n=No
CONFIG_ARCH_HAS_STRICT_KERNEL_RWX=y
CONFIG_STRICT_KERNEL_RWX=y
CONFIG_ARCH_HAS_STRICT_MODULE_RWX=y
CONFIG_STRICT_MODULE_RWX=y
</syntaxhighlight>
しかしながら書き込みと実行の排他の原則を破ってそれらを同時に行える場所というものも存在しています。読み込み・書き込み・実行が可能なことから「RWXセクション」と呼ばれています。Windows ではメモリページの PAGE_EXECUTE_READWRITE フラグがこれに相当します<ref>[https://learn.microsoft.com/ja-jp/windows/win32/memory/memory-protection-constants メモリ保護定数] メモリ保護定数 (WinNT.h) - Win32 apps | Microsoft Learn</ref>。
Windows のカーネルドライバでは NX フラグの使用が義務付けられています<ref>[https://learn.microsoft.com/en-us/windows-hardware/test/hlk/testref/driver-compatibility-with-device-guard メモリ整合性と VBS とのドライバ互換性] Microsoft</ref>が、その Windows カーネルにおいても PatchGuard の領域がコード難読化のためにこの原則を破っています。<!--TODO: ホットパッチ-->
また Linux でも実行可能領域を書き込み可能ページとして割り当てて書き込む text_poke 関数が用意されています。
=== 制御フローの操作を防ぐ (CET) ===
現代では「[[:w:Return-oriented programming|リターン指向プログラミング]]」(ROP)、「呼び出し指向プログラミング」 (COP)、「ジャンプ指向プログラミング」(JOP) 、「[[:en:Sigreturn-oriented programming|Sigreturn指向プログラミング]]」(SROP) などの制御フロー操作による攻撃が一般化していますが、これを防ぐ技術として「[[:w:en:Control-flow integrity#Intel Control-flow Enforcement Technology|制御フロー強制テクノロジー]]」(CET) の「[[:w:en:Indirect branch tracking|間接分岐追跡]]」(IBT) と「[[:w:en:Shadow stack|シャドウスタック]]」(SHSTK) が存在します。
制御フロー強制は比較的新しい技術であるため、対応する CPU は以下に限られます:
* Intel Core (Tiger Lake) 第11世代以降
* AMD Zen 3 以降(シャドウスタックのみ)
現在の CPU が間接分岐追跡 (IBT) およびシャドウスタックに対応しているかはLinuxでは以下で確認できます:
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ grep '^flags' /proc/cpuinfo | grep -oE '(ibt|shstk)'
shstk
ibt
shstk
ibt
[...]
</syntaxhighlight>
またユーザーランドのシャドウスタックの使用にはユーザーランドだけでなくカーネルの対応も必要となります。Linux カーネル では 6.6 以降対応でこれに対応しています(sigreturnにも対応<ref>[https://github.com/torvalds/linux/commit/05e36022c0543ba55a3de55af455b00cb3eb4fcc x86/shstk: Handle signals for shadow stack · torvalds/linux@05e3602] GitHub 2023年8月3日</ref>)。 Linuxディストリビューションでは Ubuntu 24.04以降、 Red Hat Enterprise Linux 9.7 以降<ref>[https://docs.redhat.com/ja/documentation/red_hat_enterprise_linux/9/html/9.7_release_notes/new-features-kernel 4.8. カーネル - 9.7 リリースノート - Red Hat Enterprise Linux - 9 - Red Hat Documentation] Red Hat</ref>が標準でシャドウスタックを有効としています。
現在のLinuxカーネルが間接分岐追跡およびシャドウスタックを有効にしているかは以下で確認できます (出力例はUbuntu 26.04):
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ grep -E '_(IBT|SHADOW_STACK)' /boot/config-$(uname -r) # y=Yes, n=No
CONFIG_CC_HAS_IBT=y
# CONFIG_X86_KERNEL_IBT is not set
CONFIG_X86_USER_SHADOW_STACK=y
CONFIG_X86_DISABLED_FEATURE_IBT=y
CONFIG_ARCH_HAS_USER_SHADOW_STACK=y
</syntaxhighlight>
現在のユーザーランドプログラムの中で間接分岐追跡またはシャドウスタックが無効化されているものはLinuxでは以下で確認できます:
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ # License: CC0 / Public Domain
$ # 間接分岐追跡またはシャドウスタックが無効化されているバイナリを検索
$ find / -type f 2>/dev/null | xargs -I {} sh -c 'readelf -h "{}" >/dev/null 2>&1 && (readelf -n "{}" 2>/dev/null | grep -E IBT,.*SHSTK > /dev/null || echo "{}")'
/usr/lib/lv2/carla.lv2/carla.so
/usr/lib/7zip/7z
/usr/lib/7zip/7zCon.sfx
/usr/lib/7zip/7zr
/usr/lib/7zip/7z.so
/usr/lib/7zip/7za
/usr/lib/klibc/bin/ipconfig
/usr/lib/klibc/bin/umount
/usr/lib/klibc/bin/halt
[...]
$ # 間接分岐追跡またはシャドウスタックが無効化されているバイナリを含むDebianパッケージを検索
$ find / -type f 2>/dev/null | xargs -I {} sh -c 'readelf -h "{}" >/dev/null 2>&1 && (readelf -n "{}" 2>/dev/null | grep -E IBT,.*SHSTK > /dev/null || echo "{}")' | xargs -r -d '\n' -n1 dpkg-query -S | sed 's/: .*//' | sort -u
7zip
aidl
ardour
avr-libc
cargo-1.93
carla
carla-bridge-wine32:i386
carla-bridge-wine64
carla-lv2
carla-vst
cuda-ctadvisor-13-4
cuda-cudart-13-4
[...]
</syntaxhighlight>
なお、制御フロー強制テクノロジーの間接分岐追跡とシャドウスタックが有効であっても異なる関数の通常呼び出しは防げません。分かりやすい例では関数の間接呼び出しにおいて関数ポインタを<code>sigaction</code>へと変更して独自のシグナルハンドラを登録し、その後クラッシュさせてそのシグナルハンドラを呼び出すという「セグメンテーション違反指向プログラミング」(SFOP) が挙げられます。また攻撃に使える関数 (dop gadgets) {{efn|dop gadgetsの検索の公式実装は「DOP-StaticAssist」[https://github.com/melynx/DOP-StaticAssist]だが長らく更新されておらず古いLLVM 3.5に依存している状態となっている。}}の通常呼び出しだけで攻撃する「Data-Oriented Programming」(DOP) <ref>Hong Hu et al. [https://ieeexplore.ieee.org/stamp/stamp.jsp?tp=&arnumber=7546545 Data-Oriented Programming: On the Expressiveness of Non-Control Data Attacks] IEEE 2016年</ref>{{efn|セキュリティ以外の文脈におけるデータ指向プログラミング、データ指向設計、データ駆動型設計とは異なる。}}という手法も存在します。
C++向けでは仮想関数テーブル (vtable) を改ざんして攻撃に使える仮想関数(仮想関数ガジェット、vfgadget)を呼び出す「偽造オブジェクト指向プログラミング」(COOP) という攻撃手法も登場しています。
=== メモリ安全性の高いソフトウェアへ ===
既存のソフトウェアの脆弱性は7割がメモリ安全性の問題に起因すると言われています<ref>[https://www.cisa.gov/sites/default/files/2023-12/CSAC_TAC_Recommendations-Memory-Safety_Final_20231205_508.pdf REPORT TO THE CISA DIRECTOR Technical Advisory Council Memory Safety] サイバーセキュリティ諮問委員会 (CSAC) 2023年12月5日</ref>。しかしながら[[C言語]]や[[C++]]はメモリ安全性が低いため、メモリ安全性の確保できる[[Rust]]などで書かれた代替プログラムが登場しています:
{| class="wikitable"
|+ コマンドのRust版
|-
! コマンドの概要 !! 従来版 !! Rust版
|-
| Unix系の基本コマンド群 || GNU Core Utilities || '''uutils coreutils'''
|-
| ファイル検索コマンド群{{efn|<code>find</code>、<code>locate</code>、<code>updatedb</code>、<code>xargs</code>の4コマンド}} || GNU Findutils || '''uutils findutils'''
|-
| ファイル差分コマンド群{{efn|<code>diff</code>、<code>cmp</code>、<code>diff3</code>、<code>sdiff</code>の4コマンド}} || GNU Diffutils || '''uutils diffutils'''
|-
| ストリームエディタ (sed) || GNU sed / FreeBSD sed || '''uutils sed'''
|-
| AWKスクリプト || GNU AWK || '''uutils AWK'''
|-
| 文字列検索 || GNU Grep || '''uutils Grep'''
|-
| tarアーカイブ || GNU Tar || '''uutils tar'''
|-
| アカウント管理コマンド群 || shadow-utils || '''uutils shadow-utils'''
|-
| アクセス制御コマンド群{{efn|<code>chacl</code>、<code>getfacl</code>、<code>setfacl</code>の3コマンド}} || acl || '''uutils acl'''
|-
| procfs{{efn|プロセスファイルシステム}}表示コマンド群 || procps / procps-ng || '''uutils procps'''
|-
| ホスト名管理コマンド群{{efn|<code>hostname</code>、<code>dnsdomainname</code>、<code>domainname</code>、<code>nisdomainname</code>、<code>ypdomainname</code>の5コマンド。}} || hostname || '''uutils hostname'''
|-
| Linuxユーティリティ || util-linux || '''uutils util-linux'''
|-
| 権限昇格 || sudo || '''sudo-rs'''
|-
| 暗号・署名システム || GnuPG || '''Sequoia PGP'''
|-
| 時刻同期 || ntpd || '''ntpd-rs'''
|-
| セキュアシェル (SSH) || OpenSSH || '''russh'''
|}
これらのRustで書かれたコマンドのうちuutils coreutilsとsudo-rsはUbuntuに採用されています。
またライブラリでもRustだけ (Pure Rust) で実装されたものが登場しています:
* 画像ライブラリ - これらは例えばGNOMEデスクトップ環境の画像ローダーGlycinから使われています<ref>[https://gitlab.gnome.org/GNOME/glycin GNOME / glycin · GitLab] GNOME Project</ref>。
** libpng → pngクレート - PNG画像向け。
** libgif → gifクレート - GIF画像向け。
** libjpeg / libjpeg-turbo → zune-jpeg / libjpeg-turbo-rs - JPEG画像向け。
** OpenJPEG → hayro-jpeg2000 - JPEG 2000画像向け。
** libtiff → tiffクレート - Tiff画像向け
** libwebp → image-webpクレート - WebP画像向け。
** libraw → libopenraw - RAW画像向け。
** librsvg - SVG画像向け。C言語からRustに書き直しされました。
* 圧縮ライブラリ
** zlib / zlib-ng → zlib-rs - Deflate圧縮向け
** libbzip2 → bzip2-rs - BZ2圧縮向け
* 暗号化ライブラリ
** OpenSSL / GnuTLS → [[:w:en:Rustls|Rustls]]
* Unicode処理ライブラリ
** ICU4C → ICU4X
* テキスト整形ライブラリ
** HarfBuzz → HarfRust
* ブラウザエンジン
** Blink/Gecko → Servo
<!--
=== 整合性チェック ===
PatchGuard / HyperGuard
-->
== 不審な改変が行われていないかを調べる ==
例えばOSの起動には一連のシーケンスがありますが、ここの途中に入り込まれるとマルウェアが永続化します。
{| class="wikitable"
|+ 起動シーケンス
|-
! 種類 || Windows 11以降 !! Linux (Gnome) !! Linux (KDE)
|-
| 1. BIOS || UEFI || colspan=2 | レガシーBIOS / UEFI
|-
| 2. ブートローダー || Windows Boot Manager (bootmgfw.efi)<br> → Windows OS Loader (winload.efi) || colspan=2 | GRUB{{efn|Ubuntuの標準。}} / systemd-boot / Unified Kernel Image{{efn|Linuxカーネルとブートイメージを単一バイナリにする仕組み}} / EFI boot stub{{efn|LinuxカーネルをEFIから直接ブートする仕組み}}
|-
| 3. カーネル || ntoskrnl.exe || colspan=2 | Linuxカーネル (vmlinuz)
|-
| 4. 初期化プロセス || smss.exe<br> → wininit.exe<br> || rowspan=2 colspan=2 | systemd{{efn|以前は代替initもよく使われていたが、今はsystemdが標準となっている。}}
|-
| 5. サービスコントロールマネージャ || colspan=2 | services.exe
|-
| rowspan=2 | 6. ログインマネージャ || rowspan=2 | winlogon.exe || colspan=2 | systemd-logind<br>sd-pam
|-
| [[:w:GNOME ディスプレイマネージャー|GDM]] || [[:w:Simple Desktop Display Manager|SDDM]]
|-
| rowspan=2 | 7. ユーザー初期化プロセス || rowspan=2 | userinit.exe || colspan=2 | systemd
|-
| gnome-session || kcminit<br> → plasma_session
|-
| 8. シェル || explorer.exe || gnome-shell || plasmashell
|-
| 9. コンポジタ || dwm.exe || mutter || kwin
|}
{| class="wikitable"
|+ Windows における代表的なユーザースクリプト又はコマンド起動が可能な設定ファイル
|-
! 規格/アプリケーション !! ユーザー !! システム
|-
| Windows || %APPDATA%\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows\<wbr>Start Menu\<wbr>Programs\<wbr>Startup\<wbr>* || C:\<wbr>ProgramData\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows\<wbr>Start Menu\<wbr>Programs\<wbr>Startup\<wbr>*
|-
| [[:w:PowerShell|PowerShell]] プロファイル<ref>[https://learn.microsoft.com/ja-jp/powershell/module/microsoft.powershell.core/about/about_profiles?view=powershell-7.6 about_Profiles - PowerShell - Microsoft Learn] Microsoft</ref> || %USERPROFILE%\<wbr>Documents\<wbr>PowerShell\<wbr>Profile.ps1<br>%USERPROFILE%\<wbr>Documents\<wbr>PowerShell\<wbr>Microsoft.PowerShell_profile.ps1 || C:\<wbr>Windows\<wbr>System32\<wbr>WindowsPowerShell\<wbr>*\<wbr>Profile.ps1<br>C:\<wbr>Windows\<wbr>System32\<wbr>WindowsPowerShell\<wbr>*\<wbr>Microsoft.PowerShell_profile.ps1
|}
{| class="wikitable"
|+ Linux における代表的なユーザースクリプト又はコマンド起動が可能な設定ファイル
|-
! 規格/アプリケーション !! ユーザー !! システム
|-
| POSIX標準 || ~/.profile || /etc/profile
|-
| XDG Base Directory<wbr>標準 || ~/.local/bin/* ||
|-
| FHS{{efn|Filesystem Hierarchy Standard}}<wbr>標準[https://refspecs.linuxfoundation.org/fhs.shtml] || || /bin/* /sbin/* /usr/bin/* /usr/local/bin/* /etc/inittab
|-
| LSB{{efn|Linux Standard Base}}<wbr>標準[https://refspecs.linuxfoundation.org/lsb.shtml] || || /etc/profile.d/* /etc/init.d/* /etc/cron.d/*
|-
| Desktop Application Autostart Specification<wbr>標準[https://specifications.freedesktop.org/autostart/latest/] || ~/.config/autostart/* /media/*/*/.autorun /media/*/*/autorun /media/*/*/autorun.sh /run/media/*/*/.autorun /run/media/*/*/autorun /run/media/*/*/autorun.sh || /etc/xdg/autostart/*
|-
| Bash || ~/.bash_profile ~/.bashrc || /etc/bash_profile /etc/bash.bashrc /etc/bash.bash_logout
|-
| Z shell (Zsh) || ~/.zshenv ~/.zprofile ~/.zshrc ~/.zlogin ~/.zlogout || /etc/zshenv /etc/zprofile /etc/zshrc /etc/zlogin /etc/zlogout<br/>(または /etc/zsh/zshenv /etc/zsh/zprofile /etc/zsh/zshrc /etc/zsh/zlogin /etc/zsh/zlogout)
|-
| Systemd || ~/.config/systemd/user/* || /etc/systemd/system/* /etc/systemd/user/*
|-
| Xorg || ~/.xinitrc ~/.xserverrc ~/.xsession || /etc/X11/xinit/xinitrc /etc/X11/xinit/xserverrc /etc/X11/Xsession /usr/share/xsessions/*
|-
| Wayland || || /usr/share/wayland-sessions/*
|-
| Python || ~/.local/lib/python*/site-packages/*/**{{efn|絶対パスは<code>python3 -c 'import site; print(site.getusersitepackages())'</code>で確認可能。}} || /usr/lib/python*/dist-packages/*/** /usr/local/lib/python*/dist-packages/*/**{{efn|絶対パスは<code>python3 -c 'import site; print(site.getsitepackages())'</code>で確認可能。}}
|-
| Perl{{efn|Debian/UbuntuではDebianパッケージ設定システム (debconf) のためにPerlを使用している。}} || || /usr/share/perl*/** /usr/local/share/perl*/** /usr/lib/*/perl*/** /usr/local/lib/*/perl*/**{{efn|絶対パスは<code>perl -V:installsitearch -V:installsitelib -V:installvendorarch -V:installvendorlib -V:archlib -V:privlib -V:installarchlib -V:installprivlib</code>で確認可能。}}
|}
=== パッケージ管理ファイルを検証する ===
パッケージ管理システムが管理しているファイルではファイルハッシュが保存されているため簡単にその検証を行うことが可能です:
* Windows: <code>sfc /scannow</code>
* Debian/Ububntu(Debパッケージ): <code>debsums -s</code>
* RedHat/Fedora(RPMパッケージ): <code>rpm -Va</code>
ただしローカルハッシュが改ざんされている可能性もあるため過信はできません。<!--TODO: ローカルハッシュの検証法-->
自動的にシステムの検証を行うシステムも存在します:
* Android - ブロックデバイスレベルでのハッシュ検証 (dm-verityベース)<ref>[https://source.android.com/docs/security/features/verifiedboot/dm-verity?hl=ja dm-verity の実装] Google</ref>
<!--
またUbuntuのSnapパッケージでもdm-verityの導入が進められています。
また特定言語のパッケージの検証は以下で可能です:
* PIP (Python): なし
-->
=== システム領域に不審なファイルが追加されていないかを調べる ===
システムの追加ファイルの検知にはパッケージシステムで管理されていないファイルの一覧を返す以下のようなツールが存在します:
* Debian / Ubuntu(Debパッケージ)向け: cruft-ngパッケージ(<code>cruft</code>コマンド)
上記の<code>cruft</code>コマンドでは設定ファイルだけ残っているパッケージのファイルも出てきてしまいます。そのため、これが邪魔な時は設定ファイルだけ残っているパッケージを<code>sudo apt purge '~c'</code>で削除しましょう。
=== ユーザー領域に不審なファイルが追加されていないかを調べる ===
ユーザースクリプトの書き換えや追加は検知が難しいです。<!--TODO: 良い方法を書く-->
共有ライブラリやスクリプトによるプラグイン追加も可能となっているため、こちらにも気をつけなければいけません。これには例えば以下があります:
{| class="wikitable"
|+ 代表的なユーザースクリプトや拡張機能のディレクトリパス
|-
! 種類 !! Windowsのパス !! macOSのパス !! Linuxのパス
|-
| Google Chrome 拡張機能 || %LOCALAPPDATA%\Google\Chrome\User Data\*\Extensions\ || ~/Library/Application Support/Google/Chrome/*/Extensions/ || ~/.config/google-chrome/*/Extensions/
|-
| GIMPプラグイン<ref>[https://gimp.cc/faq/add-gimp-plugins.html How to Install GIMP Plugins - Detailed Guide with Troubleshooting] GIMP.cc</ref> || %APPDATA%\GIMP\*\plug-ins\ || ~/Library/Application Support/GIMP/*/plug-ins/ || ~/.config/GIMP/*/plug-ins/
|-
| Blenderスクリプト{{efn|起動スクリプト、アドオンを含む。}}<ref>[https://docs.blender.org/manual/ja/dev/advanced/blender_directory_layout.html Blender's Directory Layout] Blender Foundation</ref> || %APPDATA%\Blender Foundation\Blender\*\scripts\ || ~/Library/Application Support/Blender/*/scripts/ || ~/.config/blender/*/scripts/
|-
| Ardourスクリプト<ref>[https://manual.ardour.org/lua-scripting/ The Ardour Manual - Lua Scripting] Ardour</ref> || %LOCALAPPDATA%\ardour*\scripts\ || ~/Library/Preferences/Ardour*/scripts/ || ~/.config/ardour*/scripts/
|-
| LibreOfficeスクリプト || %APPDATA%\LibreOffice\*\user\Scripts\ || ~/Library/Application Support/LibreOffice/*/user/Scripts/ || ~/.config/libreoffice/*/user/Scripts/
|-
| Visual Studio Code 拡張機能<ref>[https://code.visualstudio.com/docs/configure/extensions/extension-marketplace Extension Marketplace] Microsoft</ref> || %USERPROFILE%\.vscode\extensions\ || ~/.vscode/extensions/ || ~/.vscode/extensions/
|}
=== 改変・追加されたファイルが危険かを調べる ===
実行ファイルやスクリプトはLinuxでは以下で検出できます:
<syntaxhighlight lang="shell-session">
# cat filelist.txt | xargs file | grep -i -E ':.*(executable|shared object|relocatable|script)'
/etc/init.d/binfmt-support.dpkg-new: POSIX shell script, ASCII text executable
/etc/update-motd.d/99-livepatch-kernel-upgrade-required: POSIX shell script, ASCII text executable
/usr/lib/chromium-browser/plugins/libpepflashplayer.so: ELF 64-bit LSB shared object, x86-64, version 1 (SYSV), dynamically linked, BuildID[sha1]=5c421e89a5c062a2106a5a4381dc38e779a22795, stripped
</syntaxhighlight>
またClamAVを導入していれば以下でマルウェアデータベースとの照合を行うことができます:
<syntaxhighlight lang="shell-session">
# cat filelist.txt | xargs clamscan
Loading: 3s, ETA: 0s [========================>] 3.63M/3.63M sigs
Compiling: 1s, ETA: 0s [========================>] 41/41 tasks
/etc/apt/apt.conf.d/00trustcdrom: OK
/etc/apt/auth.conf.d/90ubuntu-advantage: OK
/etc/apt/keyrings/google.asc: OK
[...]
----------- SCAN SUMMARY -----------
Known viruses: 3628164
Engine version: 1.5.4
Scanned directories: 125
Scanned files: 1919
Infected files: 0
Total errors: 10
Data scanned: 247.72 MiB
Data read: 281.17 MiB (ratio 0.88:1)
Time: 17.939 sec (0 m 17 s)
Start Date: 2026:10:11 05:41:30
End Date: 2026:10:11 05:41:48
</syntaxhighlight>
=== 設定データベースを検証する ===
設定データベースは Windows ではレジストリ、Linuxでは GNOME / MATEの 使う [[:en:dconf|dconf]] が存在します。
Windows の設定データベースはレジストリと呼び「レジストリエディタ」 (<code>regedit</code>) で表示できます。
{| class="wikitable"
|+ Windows における代表的なユーザースクリプト、コマンド起動、DLL呼び出しが可能なレジストリ
|-
! 規格/アプリケーション !! 各ユーザー !! 全ユーザー
|-
| Windows || HKEY_USERS\<wbr>*\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows\<wbr>CurrentVersion\<wbr>Run\<wbr>*<wbr>CurrentVersion\<wbr>Run\<wbr>*<br>HKEY_USERS\<wbr>*\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows\<wbr>CurrentVersion\<wbr>RunOnce\<wbr>*{{efn|name="runonce"|RunOnceは一度のみ実行だが再登録することで何回でも実行可能。}} || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows\<wbr>CurrentVersion\<wbr>Run\<wbr>*<br>HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows\<wbr>CurrentVersion\<wbr>RunOnce\<wbr>*{{efn|name="runonce"}}
|-
| [[:w:en:Security Account Manager|Security Account Manager]] || || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>SAM\<wbr>SAM\<wbr>Domains\<wbr>Account\<wbr>Users\<wbr>*\<wbr>V{{efn|name="sam"|'HKEY_LOCAL_MACHINE\SAM\SAM\' 以下はレジストリエディタの右クリックの「アクセス許可」で Administrators にアクセス許可を与えないと読めない。なおファイルパスは「C:\Windows\System32\config\SAM」。}}{{efn|Vはバイナリであり、0xCC + (0x60 に指定されたオフセット) からユーザーログオンスクリプトパスを指定する<ref name="sam-ghost">Sebastián R. Castro et al. [https://dl.acm.org/doi/pdf/10.1145/3689934.3690839 Ghost in the SAM: Stealthy, Robust, and Privileged Persistence through Invisible Accounts] ACM 2024年</ref>。}}
|-
| [[:w:en:Local Security Authority Subsystem Service|Local Security Authority Subsystem Service]] || || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>System\<wbr>CurrentControlSet\<wbr>Control\<wbr>LSA\<wbr>Notification Packages<br>HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>SYSTEM\<wbr>CurrentControlSet\<wbr>Control\<wbr>LSA\<wbr>Authentication Packages<ref>[https://attack.mitre.org/detectionstrategies/DET0207/ Detect LSA Authentication Package Persistence via Registry and LSASS DLL Load] MITRE Corporation</ref>
|-
| [[:w:en:Active Setup|Active Setup]]<ref>[https://www.advancedinstaller.com/application-packaging-training/msi/ebook/active-setup.html Active-Setup Mechanism] Advanced Installer</ref> || HKEY_USERS\<wbr>*\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Active Setup\<wbr>Installed Components\<wbr>*\<wbr>StubPath || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Active Setup\<wbr>Installed Components\<wbr>*\<wbr>StubPath<ref>[https://attack.mitre.org/techniques/T1547/014/ Boot or Logon Autostart Execution: Active Setup] MITRE Corporation</ref>
|-
| [[:w:Windowsサービス|Windowsサービス]]<ref>[https://learn.microsoft.com/ja-jp/windows-hardware/drivers/install/hklm-system-currentcontrolset-services-registry-tree HKLM\SYSTEM\CurrentControlSet\Services レジストリ ツリー - Windows drivers - Microsoft Learn] Microsoft</ref> || || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>SYSTEM\<wbr>CurrentControlSet\<wbr>services\<wbr>*
|-
| [[:w:Winlogon|Winlogon]] || || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows NT\<wbr>CurrentVersion\<wbr>Winlogon\<wbr>Shell<br>HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows NT\<wbr>CurrentVersion\<wbr>Winlogon\<wbr>Userinit<br>HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows NT\<wbr>CurrentVersion\<wbr>Winlogon\<wbr>Notify<ref>[https://attack.mitre.org/techniques/T1547/004/ Boot or Logon Autostart Execution: Winlogon Helper DLL] MITRE Corporation</ref>
|-
| [[:w:cmd.exe|cmd.exe]]<ref>[https://learn.microsoft.com/en-us/windows-server/administration/windows-commands/cmd cmd - Microsoft Learn] Microsoft</ref> || HKEY_USERS\<wbr>*\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Command Processor\<wbr>AutoRun\REG_EXPAND_SZ || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Command Processor\<wbr>AutoRun\<wbr>REG_SZ
|-
| [[Microsoft Edge]] || || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>SOFTWARE\<wbr>Policies\<wbr>Microsoft\<wbr>Edge\<wbr>ExtensionInstallForcelist<ref>[https://learn.microsoft.com/ja-jp/deployedge/microsoft-edge-policies/extensioninstallforcelist Microsoft Edge ブラウザー ポリシードキュメント ExtensionInstallForcelist - Microsoft Learn] Microsoft</ref>{{efn|name="silent-install"|自動的にサイレントインストールする}}
|-
| [[Google Chrome]] || || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>SOFTWARE\<wbr>Policies\<wbr>Google\<wbr>Chrome\<wbr>ExtensionInstallForcelist<ref>[https://chromeenterprise.google/intl/ja_jp/policies/extension-install-forcelist/ ExtensionInstallForcelist: 自動インストールするアプリと拡張機能のリストの設定 - Chrome Enterprise] Google</ref>{{efn|name="silent-install"}}
|}
Linux の GNOME / MATE 環境には「[[:w:en:Dconf#dconf database|dconf データベース]]」が存在し、それは<code>dconf dump</code>('/'区切り)で表示できます。また dconf データベースにスキーマ(規定値と解説)を被せた gsettings も存在し、こちらは<code>gsettings list-recursively</code>(dconfと異なり'.'区切り)で表示できます。
{| class="wikitable"
|+ Linux における代表的なユーザースクリプト又はコマンド起動が可能なdconf設定
|-
! 規格/アプリケーション !! ユーザー
|-
| GNOME Settings Daemon || /org/gnome/settings-daemon/plugins/media-keys/custom-keybindings/custom*/command
|-
| Marco ([[w:MATE (デスクトップ環境)|MATE]]) || /org/mate/Marco/keybinding-commands/command-*{{efn|変更した設定は<code>dconf dump /org/mate/Marco/keybinding-commands/</code>で、デフォルトも含めた設定は<code>gsettings list-recursively org.mate.Marco.keybinding-commands</code>で表示可能。}}
|-
| MATE Screensaver || /org/mate/screensaver/embedded-keyboard-command<br>/org/mate/screensaver/logout-command{{efn|変更した設定は<code>dconf dump /org/mate/screensaver/</code>、デフォルトも含めた設定は<code>gsettings list-recursively org.mate.screensaver</code> で表示可能}}
|-
| mate-applets || /org/mate/panel/objects/object-*/prefs/command
|-
| mate-sensors-applet || /org/mate/panel/objects/object-*/prefs/*/high-alarm-command<br>/org/mate/panel/objects/object-*/prefs/*/low-alarm-command
|}
なお MATE Screensaver と同源の GNOME Screensaver にも /org/gnome/desktop/screensaver/embedded-keyboard-command と /org/gnome/desktop/screensaver/logout-command{{efn|変更した設定は<code>dconf dump /org/gnome/desktop/screensaver/</code>、デフォルトも含めた設定は<code>gsettings list-recursively org.gnome.desktop.screensaver</code> で表示可能。}} が存在しますが、こちらは既に廃止されており指定しても無視されます<ref>[https://github.com/GNOME/gsettings-desktop-schemas/blob/main/schemas/org.gnome.desktop.screensaver.gschema.xml.in gsettings-desktop-schemas/schemas/org.gnome.desktop.screensaver.gschema.xml.in at main · GNOME/gsettings-desktop-schemas] GNOME Project</ref>。
== 改変を防ぐ ==
改変を探すのは大変です。なので最初から改変をできないようにすれば管理はとても楽になります。
改ざんを防ぐには「[[:w:en:Chain of trust|信頼の連鎖]]」 (chain of trust) が重要となります。例えばカーネルだけで改ざんを防いでも、ハードウェアのファームウェアが不正であれば不正なカーネルを起動できてしまいます。
=== ファームウェア改ざんを防ぐ ===
ファームウェア改ざんによる「ファームウェアルートキット」を防ぐにはIntel Management Engine (Intel ME)で実装されているIntel BIOS Guardを使う必要があります。<!--TODO: マザーボードによってはBIOSで有効にする必要があります。→最近のマザーボード事情-->
なお2017年の第8世代Intel Coreプロセッサ (Coffee Lake) 以前はme_cleanerによってIntel Management Engineの無効化が可能<ref>[https://github.com/corna/me_cleaner/wiki/me_cleaner-status me_cleaner status] Nicola Corna 2018年</ref>なため非推奨です。
また2023年のIntel ME 16.1.30.2307未満では悪意あるロゴ画像を設定することによってroot権限からUEFI設定の変更が可能です([[:w:en:LogoFAIL|LogoFAIL]]の脆弱性)。そのため、古いIntel Management Engineが動作している場合はそのファームウェアをアップデートしましょう。Windowsでは MEUpdateTool.exe / FWUpdLcl.exe を使うことでこのアップデートが可能となっています。一方、Linuxでは一部機種が fwupdmgr 経由での Intel ME ファームウェアアップデートに対応しています。
Intel MEのバージョンはLinuxでは以下のような感じに調べることができます:
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ cat /sys/class/mei/mei0/fw_ver
0:16.1.32.2473
0:16.1.32.2473
0:16.1.27.2181
</syntaxhighlight>
=== ブートローダー改ざんを防ぐ ===
ブートローダーは起動に使われるファームウェア (BIOS) から呼ばれ、カーネルを読み込んで起動するために使われるプログラムです。古い BIOS (レガシーBIOS) には起動するブートローダーを検証する仕組みが存在しませんでしたが、新しい UEFI (統一拡張ファームウェアインターフェース) には署名されたブートローダーのみを起動する UEFI Secure Boot が追加され、安全なブートローダーの起動を許可するための「承認済み署名データベース」 (Authorized Signature Database、UEFI db) と、脆弱なブートローダーの起動を防ぐための「禁止署名データベース」 (Forbidden Signature Database、UEFI dbx) が用意されています。
UEFI Secure Boot が有効かどうかは以下で確認できます:
* Windows PowerShell: <code>Confirm-SecureBootUEFI</code>
* Linux: <code>mokutil --sb-state</code>
UEFI db と UEFI dbx の内容は以下で確認できます:
* Windows PowerShell: <code>Get-SecureBootUEFI -Name db -Decoded</code> / <code>Get-SecureBootUEFI -Name dbx -Decoded</code>
* Linux:
** mokutil{{efn|Ubuntu Desktop に標準で含まれている。}}: <code>mokutil --db</code> / <code>mokutil --dbx</code>
** efitools: <code>efi-readvar -v db</code> / <code>efi-readvar -v dbx</code>
ブートローダーの署名情報は以下で確認できます:
* Windows PowerShell: <code>Get-PfxCertificate</code>{{efn|<code>Get-AuthenticodeSignature</code>はカタログ署名が使われる場合があるため非推奨: https://github.com/PowerShell/PowerShell/issues/23820 。}}
* Linux: <code>sbverify --list</code>
例えば Windows PowerShell では以下のような感じです:
<syntaxhighlight lang="powershell">
PS C:\WINDOWS\system32> mountvol S: /S; if ($?) { Get-PfxCertificate 'S:\EFI\Microsoft\Boot\bootmgfw.efi'; mountvol S: /D }
Thumbprint Subject
---------- -------
FACDE3D80E99AFCC15E08AC5A69BD22785287F79 CN=Microsoft Windows, O=Microsoft Corporation, L=Redmond, S=Washington, C=US
</syntaxhighlight>
また Ubuntu や Debian では署名されたブートローダー (grub-efi-*-signedパッケージ) と非署名のブートローダー (grub-efi-*-unsignedパッケージ) の両方が用意されており、ブートローダーの正体がどれか、また署名されたブートローダーの署名内容を確認するのは以下のような感じとなります:
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ dpkg -L grub-efi-amd64-signed | grep -i '\.efi' | xargs md5sum # インストールされている署名されたブートローダーのハッシュを表示(grub*は通常版、gcd*は光学ブートメディア向け、grubnet*はネットブート向け)
2bd267fb12bd3b0fe26a9dfb4290868d /usr/lib/grub/x86_64-efi-signed/gcdx64.efi.signed
f689e93336a015fa6eb93e1913b13482 /usr/lib/grub/x86_64-efi-signed/grubnetx64.efi.signed
b63c7618fb96d52520b42b8cc7b124f0 /usr/lib/grub/x86_64-efi-signed/grubx64.efi.signed
$ sudo sh -c "md5sum /boot/efi/EFI/BOOT/*" # 現在のbootloaderがどれを使っているかを確認(署名されたgrubを使用)
b63c7618fb96d52520b42b8cc7b124f0 /boot/efi/EFI/BOOT/BOOTX64.EFI
$ sudo sbverify --list /boot/efi/EFI/BOOT/BOOTX64.EFI
signature 1
image signature issuers:
- /C=GB/ST=Isle of Man/L=Douglas/O=Canonical Ltd./CN=Canonical Ltd. Master Certificate Authority
image signature certificates:
- subject: /C=GB/ST=Isle of Man/O=Canonical Ltd./OU=Secure Boot/CN=Canonical Ltd. Secure Boot Signing (2022 v1)
issuer: /C=GB/ST=Isle of Man/L=Douglas/O=Canonical Ltd./CN=Canonical Ltd. Master Certificate Authority
$ sudo sbverify --cert /usr/share/grub/canonical-uefi-ca.crt /boot/efi/EFI/BOOT/BOOTX64.EFI
Signature verification OK
</syntaxhighlight>
なお Linux では grub の代わりに使えるブートローダーとして systemd-boot もあります。systemd-boot の署名版は Debian が systemd-boot-efi-*-signed パッケージとして用意しているようです(Ubuntu未搭載)。
<!--TODO:
TPM (Trusted Platform Module) チップ
-->
=== カーネル本体の改ざんを防ぐ ===
カーネルはオペレーティングシステム (OS) の下層で動き続けるプログラムです。カーネル本体の実行ファイルもブートローダーと同様に署名が行われており、UEFI Secure Boot が有効であればその検証をブートローダーが行います。Linux では GRUB の UEFI Secure Boot と shim_lock の連携がそれに相当します<ref>[https://www.gnu.org/software/grub/manual/grub/grub.html#UEFI-secure-boot-and-shim GNU GRUB Manual 2.14 - 19.4 UEFI secure boot and shim support] フリーソフトウェア財団</ref>。
なお Ubuntu には署名されたカーネル (linux-image-*パッケージ) と非署名のカーネル (linux-image-unsigned-*パッケージ) の両方が用意されており、署名されているカーネルは以下のような感じでその署名が確認できます:
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ sudo sbverify --list /boot/vmlinuz-$(uname -r) # Linuxカーネル本体の署名を確認する
signature 1
image signature issuers:
- /C=GB/ST=Isle of Man/L=Douglas/O=Canonical Ltd./CN=Canonical Ltd. Master Certificate Authority
image signature certificates:
- subject: /C=GB/ST=Isle of Man/O=Canonical Ltd./OU=Secure Boot/CN=Canonical Ltd. Secure Boot Signing (2022 v1)
issuer: /C=GB/ST=Isle of Man/L=Douglas/O=Canonical Ltd./CN=Canonical Ltd. Master Certificate Authority
$ sudo sbverify --cert /usr/share/grub/canonical-uefi-ca.crt /boot/vmlinuz-$(uname -r) # Linuxカーネル本体の署名を検証する
Signature verification OK
</syntaxhighlight>
=== カーネルモジュールの改ざんを防ぐ ===
カーネルモジュールも署名されており、その検証をカーネルが行っています。Windowsカーネルでは ci.dll (Code Integrityモジュール)が、Linuxカーネルでは CONFIG_MODULE_SIG コンパイルオプションがその検証を行っています。
カーネルによるカーネルモジュールの検証が有効かどうかは以下で確認することができます:
* Linux: <code>grep 'CONFIG_MODULE_SIG=' /boot/config-$(uname -r)</code>
カーネルによるカーネルモジュールの検証で読み込みを弾くかどうかは以下で確認することができます:
* Windows: 強制モードか評価モード (監査モード) かを確認する PowerShell スクリプトが Microsoft のサイトに存在します: https://support.microsoft.com/en-us/windows/hardware/drivers/the-windows-driver-policy#is-my-device-in-evaluation-mode-or-enforcement-mode
* Linux: <code>cat /sys/module/module/parameters/sig_enforce</code>
また Linux では検証で読み込みを弾かない場合でも検証外カーネルモジュールを読み込んだ場合はdmesgに警告が出て '''Tainted kernel''' 扱いとなります<ref>[https://docs.kernel.org/admin-guide/tainted-kernels.html Tainted kernels] Linux Foundation</ref>。以下はその例です:
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ grep 'CONFIG_MODULE_SIG=' /boot/config-$(uname -r) # y=Yes, n=No
CONFIG_MODULE_SIG=y
$ cat /sys/module/module/parameters/sig_enforce # Y=Yes, N=No
N
$ sudo dmesg | grep 'module verification'
[ 8.928361] nvidia: module verification failed: signature and/or required key missing - tainting kernel
$ wget http://git.kernel.org/pub/scm/linux/kernel/git/torvalds/linux.git/plain/tools/debugging/kernel-chktaint
[...]
$ sudo sh ./kernel-chktaint
Kernel is "tainted" for the following reasons:
* externally-built ('out-of-tree') module was loaded (#12)
* unsigned module was loaded (#13)
Raw taint value as int/string: 12288/'G OE '
Tainted modules:
* nvidia (OE)
* nvidia_drm (OE)
* nvidia_modeset (OE)
* nvidia_uvm (OE)
For a more detailed explanation of the various taint flags see
Documentation/admin-guide/tainted-kernels.rst in the Linux kernel sources
or https://kernel.org/doc/html/latest/admin-guide/tainted-kernels.html
</syntaxhighlight>
また Linux では以下のような感じで個々のモジュールの署名が確認できます:
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ modinfo /lib/modules/$(uname -r)/kernel/arch/x86/kernel/msr.ko.zst
filename: /lib/modules/7.0.0-38-generic/kernel/arch/x86/kernel/msr.ko.zst
license: GPL
description: x86 generic MSR driver
author: H. Peter Anvin <hpa@zytor.com>
srcversion: 639B995855A3528050FD532
depends:
intree: Y
name: msr
retpoline: Y
vermagic: 7.0.0-38-generic SMP preempt mod_unload modversions
sig_id: PKCS#7
signer: Build time autogenerated kernel key
sig_key: 3B:E7:D3:BF:D3:2E:D9:CA:9C:17:D2:E9:5F:1A:1C:AE:67:D5:82:2F
sig_hashalgo: sha512
signature: 96:BC:2A:18:6E:4D:D8:E5:28:69:9D:E6:65:89:95:D4:BE:4C:5B:7C:
4A:23:11:75:F6:FE:63:79:FC:29:9B:F7:EA:24:B6:F1:EF:F3:80:17:
0B:C0:1E:46:61:29:BB:F9:E0:AC:81:69:85:73:7D:D4:77:82:A8:DB:
[...]
</syntaxhighlight>
=== システムファイル改ざんを防ぐ ===
システムファイル改ざんを防ぐ良い方法はシステム領域を読み取り専用にすることですが、仮にファイルシステムを読み取り専用のファイルシステム(SquashFSやEROFS)にしたとしても記録する場所がSSDであればブロック単位での上書きが可能となります。
1回だけ書き込めて上書きが不可能な媒体としてはCD-R、DVD-R、DVD+R、BD-Rなどの一部の光学メディアが存在しますが、これらをブートメディアとして使用するのは頻繁なアップデートが難しくなります。
そのほかの手法としては別のコンピュータからシステムファイルを取得する「ネットワークブート」を行うという手法もありますが、これはネットワーク経由でシステムファイルが盗まれる可能性と隣り合わせです。しかしながらプロトコルにUEFI HTTPSを、認証に相互認証のmTLSを用いて、その秘密鍵をTPMで管理してOSから読めなくすることでネットワークブートの安全性は何とか確保できるかもしれません(対応マザーボードは不明)。
一方、Android や ChromeOS ではブロックデバイス単位での改ざん検知 (dm-verify) によってシステムイメージの改ざんを防止しています<ref>[https://source.android.com/docs/security/features/verifiedboot/dm-verity?hl=ja dm-verity の実装] Google</ref><ref>[https://research.google/pubs/verified-boot-on-chrome-os-and-how-to-do-it-yourself/ Verified Boot on Chrome OS and How to do it yourself] Google</ref>。
=== カーネルメモリ改ざんを防ぐ ===
カーネルメモリのコード部分は MMU の書き込み禁止によって保護されています。iOS / macOS では Kernel Integrity Protection が<ref>[https://support.apple.com/ja-jp/guide/security/sec8b776536b/web オペレーティングシステムの整合性] Apple</ref> 、Linux では Kernel Strict RWX がこれに相当します<ref>[https://docs.kernel.org/security/self-protection.html Kernel Self-Protection] Linux Foundation</ref>。Windows でもカーネルモードに読み込み専用メモリセグメントが存在し、これに書き込もうとするとブルースクリーンで ATTEMPTED_WRITE_TO_READONLY_MEMORY (0xBE) が発行されます<ref>[https://learn.microsoft.com/ja-jp/windows-hardware/drivers/debugger/bug-check-0xbe--attempted-write-to-readonly-memory バグ チェック 0xBE: ATTEMPTED_WRITE_TO_READONLY_MEMORY] Microsoft</ref>。しかしながら Linux Kernel では kprobes、Static Keys、Static calls などで自己書き換えが多用されているため、一時的にコード部分を書き込み可能なページに割り当てて書き換える text_poke(...) という抜け道が存在します。
また定期的に改ざんが行われていないかをチェックする仕組みも存在します。Windows では[[:w:Kernel Patch Protection|Kernel Patch Protection]] (PatchGuard) / HyperGuard が、Linux では Linux Kernel Runtime Guard(外部パッチ)がこれに該当します。Windows の PatchGuard では改ざんが検出されたらブルースクリーンで CRITICAL_STRUCTURE_CORRUPTION が発行されます。
<!--TODO: Windows の HVCI、macOS の Secure Page Table Monitor / Trusted Execution Monitor-->
<!--
=== アプリケーション改ざんを防ぐ ===
SELinux / AppArmor
-->
== 攻撃用AIを対策する ==
攻撃用AIでは基本的に賢いかつ制限の緩い大規模言語モデル (LLM) が使われています。この代表的な例として GLM 5.3 や Qwen3.8-27B-ABLITERATED が存在します。
=== コンテキスト爆弾を設置する ===
攻撃用AIの対策では相手のLLMを止めることが重要となります。そこで使えるのが'''コンテキスト爆弾''' (context bombs) という手法です<ref>[https://arstechnica.com/security/2026/07/now-defenders-are-embracing-the-prompt-injection-too/ Now, defenders are embracing the prompt injection, too] Ars Technica 2026年7月14日</ref>。
このコンテキスト爆弾は「相手のLLMに対し応答やツール呼び出しで禁止されていることを行わせようとする」というプロンプトインジェクションの一種であり、それによって相手のガードレールがLLMを止めることで相手からの攻撃を防ぎます。この手法は相手の読みそうなテキストにただプロンプトを書いておけば良いだけなので、お手軽に使えます。
コンテキスト爆弾のテキスト例は以下のリポジトリに存在します:
* https://github.com/tracebit-com/context-bombs
=== ハニーポット ===
ハニーポットは攻撃者を引きつける役目を担います。ハニーポットの評価フレームワークには「UHBS」(Universal Honeypot Benchmarking Standard) が、その品質基準には「UHQS」(Universal Honeypot Quality Score) が存在しますが、2026年現在多くのハニーポットがFランク〜Dランクと残念な状況になっています<ref>[https://uhbs.github.io/uhbs-standard/mkdocs/conformance/ Overview - UHBS — Honeypot Evaluation Framework]</ref>。
<!--
== 自作コードの脆弱性を塞ぐ ==
書きかけ
-->
== 脚注 ==
<references group="注釈"/>
== 参考文献 ==
<references/>
{{DEFAULTSORT:こんひゆうたせきゆりてい}}
[[Category:計算機科学]]
[[Category:情報技術]]
fi25bu3e9hkrb9p8671kaa2sinchugt
304865
304864
2026-10-18T15:38:51Z
~2026-54076-02
92740
/* 不審な改変が行われていないかを調べる */
304865
wikitext
text/x-wiki
'''コンピュータセキュリティ'''はコンピュータの安全のことです。ここではコンピュータの安全を確保することを学びます。
== コンピュータセキュリティの基本 ==
コンピュータは弱いところから狙われるため、弱いところを無くすのがセキュリティの基本となります。
具体例を挙げましょう。一般的な光回線に繋がれてるホームネットワークを考えます。ここには光回線の先に繋がる上位ネットワークと家内のホームネットワーク (家庭におけるLAN) とを区切るエッジルーター(一般的にはハードウェア・ゲートウェイがこれに該当)が存在します。このホームネットワークに数台の新しいWindows PCと一台の古い機器が繋がっていると仮定します。
新しいWindows PC同士ではホームネットワーク経由でファイルをやり取りするためにファイルの共有 (SMB{{efn|Server Message Block}}) を有効にしているとします。一方、古い機器の方を脆弱性のある古いテレビとしましょう。このテレビはインターネットから繋いで地上デジタル放送を見るための DCTP+ {{efn|Digital Transmission Content Protection +}}が搭載されており、UPnP{{efn|Universal Plug and Play}}で自動的にエッジルーター搭載のファイアーウォールに穴あけてインターネット側から DCTP+ に繋がるようになっているものとします。
この仮定によってハッカーは DCTP+ の脆弱性を使って古いテレビに悪意のあるプログラムを実行させてファイルの共有サーバーを立て{{efn|Windows 11時点でもゲスト認証による接続は許可されている<ref>[https://learn.microsoft.com/en-us/windows-server/storage/file-server/smb-interception-defense?tabs=group-policy Protect SMB traffic from interception] Microsoft</ref>。}}、そこからファイルの共有を通じて新しいWindows PCにマルウェア (例えば<code>PHOTO-<ランダムな数字>.png.lnk</code><ref>[https://www.microsoft.com/en-us/security/blog/2026/06/25/photo-zip-campaign-targeting-hospitality-industry-delivers-node-js-implant-persistent-access/ Photo ZIP campaign targeting hospitality industry delivers Node.js implant for persistent access] Microsoft 2026年6月25日</ref>) を送り込むことが可能となりました。
== 安全にパスワードを使う ==
=== 流出したパスワードと被ってないかをチェックする ===
あちこちのサイトで流出したパスワードは集められてデータベース化されダークネットに流通しています。この代表的なものには2019年に登場した [[:w:en:Collection No. 1|Collection #1]] が挙げられます。この Collection #1 などの流出パスワードデータベースは辞書攻撃に利用されており、これは「Credential Stuffing攻撃」と呼ばれています。
使うパスワードが流出パスワードデータベースに載っていないかを確認するためには上記のデータベースを手に入れるか、上記のデータベースからk-匿名性で検索を行うオンラインサービスを使うと良いでしょう。
このオンラインサービスの代表的なものにはWebサイト「Have I Been Pwned」の提供する「Pwned Passwords」サービスが存在しますが、このAPIではパスワードのSHA-1ハッシュ先頭5文字を渡すと、流出したパスワードのSHA1ハッシュ6文字以降と流出データベースに載っていた回数が返答されます。
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ # License: CC0 / Public Domain
$ # パスワードを入力してSHA-1ハッシュへと変換する(ここでは'test'と入力)
$ sha1=$(read -sp "Password: " pass && echo -n $pass | sha1sum | cut -d' ' -f1)
Password:
$ # 変換後のハッシュを表示
$ echo $sha1
a94a8fe5ccb19ba61c4c0873d391e987982fbbd3
$ # ハッシュの先頭5文字を渡して6文字目以降を検索(':'の後ろは見つかった数)
$ curl -s https://api.pwnedpasswords.com/range/$(echo $sha1 | cut -c 1-5) | grep -i $(echo $sha1 | cut -c 6-)
FE5CCB19BA61C4C0873D391E987982FBBD3:1579235
</syntaxhighlight>
ハッシュの先頭5文字も渡したくない場合や、自社サービスでチェックを行いたい場合は上記のサービスが公式で提供するツール「haveibeenpwned-downloader」[https://github.com/HaveIBeenPwned/PwnedPasswordsDownloader]で全てのハッシュデータをダウンロードして自前で照合しましょう。
=== 解析耐性のある鍵導出関数を使う ===
パスワードでは計算負荷の低い SHA-256 や SHA-512 などの通常のハッシュ関数、メモリ負荷の低い [[:w:PBKDF2|PBKDF2]] や bcrypt などの古い[[:w:鍵導出関数|鍵導出関数]](パスワードハッシュ関数)を使わないようにしましょう。これらの弱いハッシュ関数は GPU や ASIC で高速に解かれてしまいます。
より強いパスワードハッシュ関数としては yescrypt や Argon2id が存在します。パスワードにはこちらを使いましょう。現代の Linux ではアカウントのパスワードハッシュ関数として yescrypt が標準となっています。
使っている Linux の新規アカウントで使われるパスワードハッシュ関数は以下で確認可能です:
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ grep -n 'pam_unix.so' /etc/pam.d/common-password
26:password [success=2 default=ignore] pam_unix.so obscure use_authtok try_first_pass yescrypt
</syntaxhighlight>
Linuxの現在のアカウントがどのハッシュ関数を使用しているかは以下で確認可能です:
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ sudo cat /etc/shadow | grep $USER # $(1|5|6|b)$=弱い、$y$=強い
user:$y$j9T$ST7oYwlQjFy7/8vnL/Ugt0$po4vW4qgGu8lpUNRtH0B3hDHGZACzcRhzIKhqlx.2Z5:20743:0:99999:7:::
</syntaxhighlight>
弱いハッシュ関数を使用している場合は<code>passwd $USER</code>でパスワードを再設定して使用するハッシュ関数を更新してください。
一方、Windows 10 以前のローカルアカウントではパスワードハッシュがレジストリの<code>HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>SAM\<wbr>SAM\<wbr>Domains\<wbr>Account\<wbr>Users\<wbr>(ユーザーID)\<wbr>V</code>{{efn|name="sam"}}のバイナリに存在します:
* [[:w:LMハッシュ|LMハッシュ]]: 0xCC + (0x9C に指定されたオフセット)<ref name="sam-ghost"/>
* NTLMハッシュ: 0xCC + (0xA8 に指定されたオフセット)<ref name="sam-ghost"/>
LMハッシュは [[:w:LAN Manager|LAN Manager]] に使われていた [[:w:Data Encryption Standard|DES]] ベースの古いハッシュ、NTLMハッシュは [[:w:NT LAN Manager|NT LAN Manager]] に使われている [[:w:MD4|MD4]] ベースの古いハッシュであり、どちらも非常に弱いものとなっていました。
また Windows の Active Directory ドメインアカウントのオフライン認証向けキャッシュ済みドメイン資格情報はレジストリの<code>HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>SECURITY\<wbr>Cache</code>に存在します:
* DCC1 ハッシュ (MSCache v1): 弱い MD4 ベース。Windows XP以前。
* DCC2 ハッシュ (MSCache v2) : 弱めの PBKDF2-HMAC-SHA1 ベース。Windows Vista以後<ref>[https://attack.mitre.org/techniques/T1003/005/ OS Credential Dumping: Cached Domain Credentials] MITRE 2025年10月24日</ref>。
2021年にリリースされた Windows 11 以降は Microsoft アカウントが必須となっています。
<!--TODO:
Windows Hello、LSA Secrets
=== パスワードの複雑性をチェックする ===
=== TPMで鍵を隔離する ===
-->
== 既製製品の脆弱性を塞ぐ ==
まずは弱いところを無くしましょう。
=== ソフトウェアアップデートをする ===
セキュリティの基本はソフトウェアアップデートです。
==== PCおよびモバイル ====
PC{{efn|PCサーバを含む}}やモバイルでは基本的に自動で通知が来るので忘れずにアップデートを選択しましょう。手動では以下のように行います:
; Windows
: システムのアップデートは基本的に [[:w:Microsoft Update|Microsoft Update]] (Windows Update) で、アプリケーションのアップデートは基本的に<code>winget upgrade --all</code>コマンドで行います。
: また Windows 11 Enterprise では再起動が不要なホットパッチにも対応しています。
; macOS / iOS
: 「ソフトウェアアップデート」
; Ubuntu / Debian
: [[:w:APT|APT]]パッケージ管理システムでは<code>apt upgrade</code>コマンドで更新を行います。
: Ubuntu では GUI による更新用として[[:w:Software Updater|Software Updater]] (<code>update-manager</code>コマンド)、[[:w:Snap (ソフトウェア)|Snap]]パッケージの更新コマンドとして<code>snap refresh</code>、メジャーバージョンの更新コマンドとして<code>do-release-upgrade</code>も存在します。
: また Ubuntu では Ubuntu Pro に登録することで再起動が不要なカーネル修正の「Livepatch」も可能となります(個人では5台まで無料)。SUSEではユーザー空間ライブパッチングまで提供されています(glibc と openssl のみ)<ref>[https://documentation.suse.com/ja-jp/sles/15-SP6/html/SLES-all/cha-ulp.html ユーザ空間ライブパッチ - 管理ガイド - SLES 15 SP6] SUSE</ref>。
; RedHat / Fedora
: <code>yum update</code>コマンド
; Android
: 「設定」アプリ→「システム」→「システムアップデート」または「ソフトウェアアップデート」
また個々のハードウェアのファームウェアアップデートは以下で行います:
; Linux
: Linuxにおけるファームウェアの更新は基本的に<code>fwupdmgr update</code>コマンドで行います。
: NVMe SSDのファームウェアの更新は<code>nvme fw-download</code>コマンドおよび<code>nvme fw-commit</code>コマンドで行うことができます。
一方、Windows ではファームウェアのアップデートも Windows Update 経由で<ref>[https://learn.microsoft.com/ja-jp/windows-hardware/drivers/bringup/firmware-update ファームウェアの更新] Microsoft</ref>、macOS ではファームウェアのアップデートもmacOSアップデートで行うことができます<ref>[https://support.apple.com/ja-jp/guide/mac-help/mchlp2609/mac Macのファームウェアアップデートの入手方法] Apple</ref>。
<!--
また開発環境では以下も存在します:
; Python
: <code>pip -U install</code>
-->
==== ルーター ====
ルーターでは以下の設定を有効のままにしておきましょう:
; AirStationシリーズ(Buffalo 製ルーター)
: 「ファームウェア自動更新機能」
; Atermシリーズ(NEC 製ルーター)
: 「メンテナンスバージョンアップ機能」「時刻指定バージョンアップ機能」
==== テレビ ====
テレビでは放送波アップデートが行われるため、「放送波による自動更新」<!--TODO: メーカー別名-->を有効にしましょう。
=== 高速に再起動する ===
パッケージは更新しただけでは反映されません(一部デーモンの更新を除く)。Linuxでは高速に再起動する方法が存在し、これによってダウンタイムを減らすことができます。
; 更新で影響を受けるデーモンのみ再起動する
:* Ubuntu Server: 標準で <code>needrestart</code> が導入されており自動で影響を受けるデーモンの再起動が行われます{{efn|自動的なデーモン再起動を止めるには /etc/apt/apt.conf.d/99needrestart より<code>-m u</code>を削除する必要があります<ref>[https://discourse.ubuntu.com/t/needrestart-changes-in-ubuntu-24-04-service-restarts/44671 `needrestart` changes in Ubuntu 24.04: service restarts] Canonical 2024年</ref>。}}(Ubuntu Desktopでは別途導入が必要)。
:* RedHat / Fedora: <code>dnf needs-restarting</code>が導入されており、それによって再起動するべきデーモンを確認できます。
; ユーザー空間のみ再起動する(カーネルの更新がない、またはカーネルでlive patchingを行ってる場合)
: <code>sudo systemctl soft-reboot</code>
; 高速にカーネルを更新する(ファームウェアの更新がない場合)
: <code>sudo systemctl kexec</code>
また一部のソフトウェアではホットアップグレード(無停止アップグレード{{efn|Zero-Downtime Upgrade}})にも対応しています (nginx の USR2 シグナル<ref>[https://nginx.org/en/docs/control.html Controlling nginx] nginx</ref>など)。
=== 代替ソフトウェアを探す ===
更新が停止された古いソフトウェアの多くはそれ自身に脆弱性が存在したり、脆弱性のある古いライブラリに依存していたりします。そのため古いソフトウェアは速やかに代替ソフトウェアへと移行しましょう。
==== 開発終了したソフトウェアから現役のソフトウェアへ ====
古いソフトウェアには例えば以下があります:
* オフィススイート(代替候補: LibreOffice)
** [[:w:OpenOffice.org|OpenOffice.org]](〜2011年)
* 画像ビューア
** [[:w:Susie|Susie]] (〜2013年)
* メディアプレイヤー
** [[:w:QuickTime|QuickTime]] for Windows(〜2016年) - リモートコード実行の脆弱性 ([https://www.zerodayinitiative.com/advisories/ZDI-16-241/ ZDI-16-241]、[https://www.zerodayinitiative.com/advisories/ZDI-16-242/ ZDI-16-242]) を残したままサポート終了しました<ref>[https://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/753400.html Apple、「QuickTime for Windows」のサポートを終了、アンインストールを推奨] Impress 2016年4月15日</ref>。
* メディアフィルター(代替候補: LAV Filters)
** [[:w:ffdshow|ffdshow]](〜2014年)
** [[:w:Haali Media Splitter|Haali Media Splitter]](〜2013年)
* メディアセンター(代替候補: Kodi)
** [[:w:en:Boxee|Boxee]](〜2011年)
** [[:w:Kodi|XBMC]](〜2014年) - Kodiの前身
* 圧縮ソフトウェア
** [[:w:+Lhaca|+Lhaca]](〜2007年)
** [[:w:Lhaplus|Lhaplus]](〜2017年)
またハードウェアに由来する古いソフトウェアには例えば以下があります:
* [[w:ウォークマン|ウォークマン]]関連(代替候補: [[:w:Music Center for PC|Music Center for PC]])
** [[:w:CONNECT Player|CONNECT Player]](〜2007年、Sony)
** [[:w:SonicStage|SonicStage]](〜2009年、Sony)
** [[:w:x-アプリ|x-アプリ]](〜2016年、Sony)
* DTCP-IP関連
** SmartVision/PLAYER powered by DiXiM(〜2019年、NEC)<ref>[https://support.nec-lavie.jp/navigate/support/info/2019/announce/svp/ SmartVision/PLAYER保守サービス終了のお知らせ] NECパーソナルコンピュータ 2019年1月28日</ref><ref>[https://apps.microsoft.com/detail/9wzdncrdkb4c?hl=ja-JP&gl=JP SmartVision/PLAYER powered by DiXiM] Microsoft</ref>
** DiXiM Digital TV plus for I-O DATA(〜2022年、I-O DATA)<ref>[https://www.iodata.jp/lib/product/d/3533.htm DiXiM Digital TV plus for I-O DATA] I-O DATA</ref>
なお仮想マシンを使って隔離しながら古いソフトウェアを動かすこともできますが、仮想マシンでも「VMエスケープ」の脆弱性を使用することでホスト環境への侵害が可能なため、仮想マシンの上で弱い環境や弱いソフトウェアを使うこともなるべく避けましょう。<!--TODO: Windows Sandbox-->
==== 古いバージョンのライブラリを避ける ====
多くのソフトウェアに使用されているライブラリとその過去の危険な脆弱性には例えば以下があります:<!--危険を認識させる。例はライブラリ内のメイン処理に存在し、任意コード実行であり、脆弱性の存在期間が長く、新しいものが好ましい。-->
* 画像ライブラリ
** libpng - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2010-1205 CVE-2010-1205](PNG画像で任意コード実行の可能性)
** libjpeg-turbo - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2012-2806 CVE-2012-2806](JPEG画像で任意コード実行の可能性)
** OpenJPEG - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2025-54874 CVE-2025-54874](JPEG2000画像で任意コード実行の可能性)
** libtiff - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2026-12912 CVE-2026-12912](PixarLog圧縮TIFF画像で任意コード実行の可能性)
** libwebp - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2023-4863 CVE-2023-4863](WebP画像で任意コード実行の可能性)
* 動画ライブラリ
** FFmpeg - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2024-22860 CVE-2024-22860](JPEG XLアニメーションで任意コード実行の可能性)
* 圧縮ライブラリ
** libarchive - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2026-15028 CVE-2026-15028](tarアーカイブ形式で任意コード実行の可能性)
** zlib - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2002-0059 CVE-2002-0059](Deflate圧縮形式で任意コード実行の可能性)
** bzip2 - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2010-0405 CVE-2010-0405](BZ2圧縮形式で任意コード実行の可能性)
これらのライブラリはABI(アプリケーションバイナリインターフェイス)が変更されて新しいバージョンの共有ライブラリにドロップイン置換できないものも多くなっています。
また国内で使われている古いソフトウェアでは開発中止になった以下のライブラリも問題となっています:
* UNLHA32.DLL<ref>[https://forest.watch.impress.co.jp/docs/news/372729.html 圧縮・解凍用DLL「UNLHA32.DLL」が開発中止、作者はLZHの利用中止を呼びかけ] Impress 2010年6月7日</ref>
Webフレームワークでは開発中止となった以下のフレームワークが問題となっています:
* [[:w:Model View Controller|Model View Controller]]フレームワーク(代替候補: [[:w:Apache Struts|Apache Struts]] 2、[[:w:Spring Framework#Model-View-Controller フレームワーク|Spring MVC]])
** [[:w:en:Apache Struts 1|Apache Struts 1]](〜2008年) - Java言語
* [[:w:アスペクト指向プログラミング|アスペクト指向フレームワーク]](代替候補: [[:w:Spring Framework|Spring Framework]]、[[:w:en:Micronaut (framework)|Micronaut]])
** [[:w:Seasar|Seasar]](〜2016年) - Java言語
* [[:w:シングルページアプリケーション|シングルページアプリケーション]]フレームワーク(代替候補: [[:w:Angular|Angular]]、[[:w:Vue.js|Vue.js]])
** [[:w:AngularJS|AngularJS]](〜2022年) - JavaScript
=== 古いハードウェアに対処する ===
サポート切れの OS を搭載したハードウェアはどうすれば良いでしょうか。これには使い続けるいくつかの方法がありますが、基本的にオススメしません。古い OS を搭載していたハードウェアはハードウェア仕様も古いからです。
==== スタンドアロン運用 ====
古いハードウェアはインターネットに繋がずに使用すること(スタンドアロン運用)も可能です。
しかしながらUSBメモリでデータをやり取りする場合はUSBメモリ経由での感染などのリスクは残ります。
==== 新しめのLinuxを導入 ====
新しめのLinuxを導入するという方法もあります。
これに適したものでは例えばWindows 11非対応のPC (Intel 第7世代以前、AMD Ryzen 1000シリーズ以前) が挙げられます。
またスマートフォンやタブレットであればカスタムROMが、ルーターであればDD-WRTやOpenWRTが存在します。
==== 手放す ====
手に負えなければデータだけバックアップして手放しましょう。情報が漏れないよう初期化も忘れずに。
== 潜在的な脆弱性を減らす ==
現代のプログラムでは以下のような保護が行われています。
=== メモリアドレスの推測困難化 ===
攻撃に必要なコード片(ガジェット)のメモリアドレスを推測しにくくするために、カーネル空間、ユーザー空間の両方で[[:w:アドレス空間配置のランダム化|アドレス空間配置のランダム化]](ASLR)が行われています。カーネル空間の ASLR は KASLR (Kernel ASLR) とも呼ばれています。
ユーザー空間のプログラムで ASLR を有効にするためには[[:w:位置独立コード|位置独立コード]] (PIC) / 位置独立実行形式 (PIE) である必要があります。Unix で使われる実行形式の ELF では位置独立実行形式が ET_DYN、非位置独立実行形式 (non-PIE) が ET_EXEC となります。
Linuxでは ASLR が無効となる非位置独立実行形式のファイルを以下で検索することができます:
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ # License: CC0 / Public Domain
$ # 非位置独立実行形式 (non-PIE) のバイナリを検索
$ find / -type f -executable 2>/dev/null | xargs -I {} sh -c 'LANG=C readelf -h {} 2>/dev/null | grep -E "Type:.*EXEC" >/dev/null && echo {}'
/usr/lib/default.sfx
/usr/lib/klibc/bin/mkfifo
/usr/lib/klibc/bin/zcat
/usr/lib/klibc/bin/poweroff
[...]
$ # 非位置独立実行形式 (non-PIE) のバイナリを含むDebianパッケージを検索
$ find / -type f -executable 2>/dev/null | xargs -I {} sh -c 'LANG=C readelf -h {} 2>/dev/null | grep -E "Type:.*EXEC" >/dev/null && echo {}' | xargs -r -d '\n' -n1 dpkg-query -S | sed 's/: .*//' | sort -u
aidl
busybox-static
code
cpp-15-x86-64-linux-gnu
cuda-gdb-13-4
cuda-nvcc-13-4
cuda-sanitizer-13-4
cuda-tileiras-13-4
debugedit
g++-15-x86-64-linux-gnu
gcc-15-x86-64-linux-gnu
gcc-mingw-w64-i686-posix
gdc-15-x86-64-linux-gnu
gds-tools-13-4
gfortran-15-x86-64-linux-gnu
gh
git-lfs
gobjc-15-x86-64-linux-gnu
gocryptfs
golang-1.26-go
go-md2man
go-mtpfs
[...]
</syntaxhighlight>
現在のLinuxカーネルがユーザー空間 ASLR を有効にしているかは以下で確認できます (出力例はUbuntu 26.04):
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ sysctl kernel.randomize_va_space # 0=無し、1=部分的、2=完全
kernel.randomize_va_space = 2
</syntaxhighlight>
また現在のLinuxカーネルがカーネル ASLR (KASLR) を有効にしているかは以下で確認できます (出力例はUbuntu 26.04):
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ grep 'CONFIG_RANDOMIZE_BASE' /boot/config-$(uname -r) # y=Yes, n=No
CONFIG_RANDOMIZE_BASE=y
</syntaxhighlight>
なお ASLR は間接的な関数呼び出し( C++ の vtable を含む)があると、そのアドレスから ASLR のオフセットがバレてしまい突破されてしまいます。
また CPU の[[:w:投機的実行|投機的実行]]での情報漏れ (Spectre) による[[:w:キャッシュ攻撃|キャッシュサイドチャネル攻撃]](後述)の一つである「投機的探査」 (BlindSide) によってもコードの位置情報の取得がされ ASLR が突破されてしまいます。
=== 投機的実行の情報漏れ防止 ===
前述のとおり、投機的実行による情報漏れ (Spectre) は攻撃に繋がります。Spectre には境界チェックを迂回する Spectre V1 と間接分岐の分岐先アドレスのキャッシュ{{efn|分岐先バッファ (Branch Target Buffer、BTB)や分岐先アドレスキャッシュ (Branch Target Address Cache、BTAC) と呼ばれる。}}を汚染する Spectre V2 が存在します。<!--TODO: Spectre v3/v4、Zenbleed-->
Spectre V1 を防ぐ方法としては投機的実行を阻害するための命令(x86ではLFENCE)の挿入{{efn|Linuxカーネルでの投機的実行の防止は<code>barrier_nospec()</code>。}}やアクセスできるアドレス範囲を狭めることが行われています{{efn|GCCでの投機的実行での範囲外アクセス防止は<code>__builtin_speculation_safe_value(...)</code>、Linuxカーネルでの投機的実行での範囲外アクセス防止は<code>array_index_nospec(...)</code><ref>[https://lwn.net/Articles/759423/ Spectre V1 defense in GCC] LWN 2018年7月10日</ref>。}}。
また Spectre V2 では攻撃を防ぎながらも速度を落とさない方法として脆弱な分岐先アドレスキャッシュに依存する間接分岐の代わりにリターンアドレスのキャッシュ{{efn|リターンスタックバッファ (RSB) と呼ばれる。}}に依存するリターン命令を使う retpoline が登場しました。しかしながらこの retpoline でも速度の低下は起こるため、既知の間接呼び出しを条件分岐 + 直接呼び出しに変換して高速化する手法が模索されました。LLVM では retpoline を有効にする <code>-mretpoline</code>フラグの処理内に既知の仮想関数呼び出しを[[:w:二分木|二分木]]の直接分岐に置き換える「分岐ファネル」(Branch funnel) が導入されています<ref>[https://reviews.llvm.org/D42453 Use branch funnels for virtual calls when retpoline mitigation is enabled.] LLVM project</ref>。また Linux カーネルでも既知の間接呼び出しを条件分岐 + 直接呼び出しに変換する INDIRECT_CALL_* マクロが搭載されています<ref>[https://lwn.net/Articles/774743/ Relief for retpoline pain] LWN 2018年12月14日</ref>。<!--TODO: Intel CETのSHSTKとretpolineの衝突-->
一方、リターン命令の投機的実行も「Retbleed」や AMD CPU における「投機的リターンスタックオーバーフロー」 (SRSO){{efn|Speculative Return Stack Overflow。}}のような脆弱性が見つかっています。
なお低権限コードから高権限コードへの権限境界をまたいだ Spectre および Retbleed は Intel の「間接分岐制限付き投機」(IBRS){{efn|Indirect Branch Restricted Speculation。}}およびそれを高速化した「拡張IBRS」(eIBRS) などハードウェア側によって塞がれました<ref>[https://www.intel.com/content/www/us/en/developer/articles/technical/software-security-guidance/technical-documentation/hardware-behavior-related-to-speculative-execution.html Hardware Features and Behavior Related to Speculative Execution] Intel 2026年10月14日</ref>が、権限境界をまたがないものは今も可能となっています。
=== メモリにおける書き込みと実行の排他化 (W^X) ===
メモリでは書き込み可能領域の実行不可化 ([[:w:NXビット|NXビット]]) と実行可能領域の書き込み不可化による書き込みと実行の排他化([[:w:en:W^X|W^X]])が一般的となっています。NXビットは x86 では NXビットは AMD64 と共に搭載された古い機能であるため、今時の CPU と OS は基本的にこれに対応しています。
現在の CPU がNXビットを有効にしているかはLinuxでは以下で確認できます:
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ grep '^flags' /proc/cpuinfo | grep -o nx
nx
nx
[...]
</syntaxhighlight>
現在のLinuxカーネルが厳格な W^X を有効にしているかは以下で確認できます (出力例はUbuntu 26.04):
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ grep '_RWX' /boot/config-$(uname -r) # y=Yes, n=No
CONFIG_ARCH_HAS_STRICT_KERNEL_RWX=y
CONFIG_STRICT_KERNEL_RWX=y
CONFIG_ARCH_HAS_STRICT_MODULE_RWX=y
CONFIG_STRICT_MODULE_RWX=y
</syntaxhighlight>
しかしながら書き込みと実行の排他の原則を破ってそれらを同時に行える場所というものも存在しています。読み込み・書き込み・実行が可能なことから「RWXセクション」と呼ばれています。Windows ではメモリページの PAGE_EXECUTE_READWRITE フラグがこれに相当します<ref>[https://learn.microsoft.com/ja-jp/windows/win32/memory/memory-protection-constants メモリ保護定数] メモリ保護定数 (WinNT.h) - Win32 apps | Microsoft Learn</ref>。
Windows のカーネルドライバでは NX フラグの使用が義務付けられています<ref>[https://learn.microsoft.com/en-us/windows-hardware/test/hlk/testref/driver-compatibility-with-device-guard メモリ整合性と VBS とのドライバ互換性] Microsoft</ref>が、その Windows カーネルにおいても PatchGuard の領域がコード難読化のためにこの原則を破っています。<!--TODO: ホットパッチ-->
また Linux でも実行可能領域を書き込み可能ページとして割り当てて書き込む text_poke 関数が用意されています。
=== 制御フローの操作を防ぐ (CET) ===
現代では「[[:w:Return-oriented programming|リターン指向プログラミング]]」(ROP)、「呼び出し指向プログラミング」 (COP)、「ジャンプ指向プログラミング」(JOP) 、「[[:en:Sigreturn-oriented programming|Sigreturn指向プログラミング]]」(SROP) などの制御フロー操作による攻撃が一般化していますが、これを防ぐ技術として「[[:w:en:Control-flow integrity#Intel Control-flow Enforcement Technology|制御フロー強制テクノロジー]]」(CET) の「[[:w:en:Indirect branch tracking|間接分岐追跡]]」(IBT) と「[[:w:en:Shadow stack|シャドウスタック]]」(SHSTK) が存在します。
制御フロー強制は比較的新しい技術であるため、対応する CPU は以下に限られます:
* Intel Core (Tiger Lake) 第11世代以降
* AMD Zen 3 以降(シャドウスタックのみ)
現在の CPU が間接分岐追跡 (IBT) およびシャドウスタックに対応しているかはLinuxでは以下で確認できます:
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ grep '^flags' /proc/cpuinfo | grep -oE '(ibt|shstk)'
shstk
ibt
shstk
ibt
[...]
</syntaxhighlight>
またユーザーランドのシャドウスタックの使用にはユーザーランドだけでなくカーネルの対応も必要となります。Linux カーネル では 6.6 以降対応でこれに対応しています(sigreturnにも対応<ref>[https://github.com/torvalds/linux/commit/05e36022c0543ba55a3de55af455b00cb3eb4fcc x86/shstk: Handle signals for shadow stack · torvalds/linux@05e3602] GitHub 2023年8月3日</ref>)。 Linuxディストリビューションでは Ubuntu 24.04以降、 Red Hat Enterprise Linux 9.7 以降<ref>[https://docs.redhat.com/ja/documentation/red_hat_enterprise_linux/9/html/9.7_release_notes/new-features-kernel 4.8. カーネル - 9.7 リリースノート - Red Hat Enterprise Linux - 9 - Red Hat Documentation] Red Hat</ref>が標準でシャドウスタックを有効としています。
現在のLinuxカーネルが間接分岐追跡およびシャドウスタックを有効にしているかは以下で確認できます (出力例はUbuntu 26.04):
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ grep -E '_(IBT|SHADOW_STACK)' /boot/config-$(uname -r) # y=Yes, n=No
CONFIG_CC_HAS_IBT=y
# CONFIG_X86_KERNEL_IBT is not set
CONFIG_X86_USER_SHADOW_STACK=y
CONFIG_X86_DISABLED_FEATURE_IBT=y
CONFIG_ARCH_HAS_USER_SHADOW_STACK=y
</syntaxhighlight>
現在のユーザーランドプログラムの中で間接分岐追跡またはシャドウスタックが無効化されているものはLinuxでは以下で確認できます:
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ # License: CC0 / Public Domain
$ # 間接分岐追跡またはシャドウスタックが無効化されているバイナリを検索
$ find / -type f 2>/dev/null | xargs -I {} sh -c 'readelf -h "{}" >/dev/null 2>&1 && (readelf -n "{}" 2>/dev/null | grep -E IBT,.*SHSTK > /dev/null || echo "{}")'
/usr/lib/lv2/carla.lv2/carla.so
/usr/lib/7zip/7z
/usr/lib/7zip/7zCon.sfx
/usr/lib/7zip/7zr
/usr/lib/7zip/7z.so
/usr/lib/7zip/7za
/usr/lib/klibc/bin/ipconfig
/usr/lib/klibc/bin/umount
/usr/lib/klibc/bin/halt
[...]
$ # 間接分岐追跡またはシャドウスタックが無効化されているバイナリを含むDebianパッケージを検索
$ find / -type f 2>/dev/null | xargs -I {} sh -c 'readelf -h "{}" >/dev/null 2>&1 && (readelf -n "{}" 2>/dev/null | grep -E IBT,.*SHSTK > /dev/null || echo "{}")' | xargs -r -d '\n' -n1 dpkg-query -S | sed 's/: .*//' | sort -u
7zip
aidl
ardour
avr-libc
cargo-1.93
carla
carla-bridge-wine32:i386
carla-bridge-wine64
carla-lv2
carla-vst
cuda-ctadvisor-13-4
cuda-cudart-13-4
[...]
</syntaxhighlight>
なお、制御フロー強制テクノロジーの間接分岐追跡とシャドウスタックが有効であっても異なる関数の通常呼び出しは防げません。分かりやすい例では関数の間接呼び出しにおいて関数ポインタを<code>sigaction</code>へと変更して独自のシグナルハンドラを登録し、その後クラッシュさせてそのシグナルハンドラを呼び出すという「セグメンテーション違反指向プログラミング」(SFOP) が挙げられます。また攻撃に使える関数 (dop gadgets) {{efn|dop gadgetsの検索の公式実装は「DOP-StaticAssist」[https://github.com/melynx/DOP-StaticAssist]だが長らく更新されておらず古いLLVM 3.5に依存している状態となっている。}}の通常呼び出しだけで攻撃する「Data-Oriented Programming」(DOP) <ref>Hong Hu et al. [https://ieeexplore.ieee.org/stamp/stamp.jsp?tp=&arnumber=7546545 Data-Oriented Programming: On the Expressiveness of Non-Control Data Attacks] IEEE 2016年</ref>{{efn|セキュリティ以外の文脈におけるデータ指向プログラミング、データ指向設計、データ駆動型設計とは異なる。}}という手法も存在します。
C++向けでは仮想関数テーブル (vtable) を改ざんして攻撃に使える仮想関数(仮想関数ガジェット、vfgadget)を呼び出す「偽造オブジェクト指向プログラミング」(COOP) という攻撃手法も登場しています。
=== メモリ安全性の高いソフトウェアへ ===
既存のソフトウェアの脆弱性は7割がメモリ安全性の問題に起因すると言われています<ref>[https://www.cisa.gov/sites/default/files/2023-12/CSAC_TAC_Recommendations-Memory-Safety_Final_20231205_508.pdf REPORT TO THE CISA DIRECTOR Technical Advisory Council Memory Safety] サイバーセキュリティ諮問委員会 (CSAC) 2023年12月5日</ref>。しかしながら[[C言語]]や[[C++]]はメモリ安全性が低いため、メモリ安全性の確保できる[[Rust]]などで書かれた代替プログラムが登場しています:
{| class="wikitable"
|+ コマンドのRust版
|-
! コマンドの概要 !! 従来版 !! Rust版
|-
| Unix系の基本コマンド群 || GNU Core Utilities || '''uutils coreutils'''
|-
| ファイル検索コマンド群{{efn|<code>find</code>、<code>locate</code>、<code>updatedb</code>、<code>xargs</code>の4コマンド}} || GNU Findutils || '''uutils findutils'''
|-
| ファイル差分コマンド群{{efn|<code>diff</code>、<code>cmp</code>、<code>diff3</code>、<code>sdiff</code>の4コマンド}} || GNU Diffutils || '''uutils diffutils'''
|-
| ストリームエディタ (sed) || GNU sed / FreeBSD sed || '''uutils sed'''
|-
| AWKスクリプト || GNU AWK || '''uutils AWK'''
|-
| 文字列検索 || GNU Grep || '''uutils Grep'''
|-
| tarアーカイブ || GNU Tar || '''uutils tar'''
|-
| アカウント管理コマンド群 || shadow-utils || '''uutils shadow-utils'''
|-
| アクセス制御コマンド群{{efn|<code>chacl</code>、<code>getfacl</code>、<code>setfacl</code>の3コマンド}} || acl || '''uutils acl'''
|-
| procfs{{efn|プロセスファイルシステム}}表示コマンド群 || procps / procps-ng || '''uutils procps'''
|-
| ホスト名管理コマンド群{{efn|<code>hostname</code>、<code>dnsdomainname</code>、<code>domainname</code>、<code>nisdomainname</code>、<code>ypdomainname</code>の5コマンド。}} || hostname || '''uutils hostname'''
|-
| Linuxユーティリティ || util-linux || '''uutils util-linux'''
|-
| 権限昇格 || sudo || '''sudo-rs'''
|-
| 暗号・署名システム || GnuPG || '''Sequoia PGP'''
|-
| 時刻同期 || ntpd || '''ntpd-rs'''
|-
| セキュアシェル (SSH) || OpenSSH || '''russh'''
|}
これらのRustで書かれたコマンドのうちuutils coreutilsとsudo-rsはUbuntuに採用されています。
またライブラリでもRustだけ (Pure Rust) で実装されたものが登場しています:
* 画像ライブラリ - これらは例えばGNOMEデスクトップ環境の画像ローダーGlycinから使われています<ref>[https://gitlab.gnome.org/GNOME/glycin GNOME / glycin · GitLab] GNOME Project</ref>。
** libpng → pngクレート - PNG画像向け。
** libgif → gifクレート - GIF画像向け。
** libjpeg / libjpeg-turbo → zune-jpeg / libjpeg-turbo-rs - JPEG画像向け。
** OpenJPEG → hayro-jpeg2000 - JPEG 2000画像向け。
** libtiff → tiffクレート - Tiff画像向け
** libwebp → image-webpクレート - WebP画像向け。
** libraw → libopenraw - RAW画像向け。
** librsvg - SVG画像向け。C言語からRustに書き直しされました。
* 圧縮ライブラリ
** zlib / zlib-ng → zlib-rs - Deflate圧縮向け
** libbzip2 → bzip2-rs - BZ2圧縮向け
* 暗号化ライブラリ
** OpenSSL / GnuTLS → [[:w:en:Rustls|Rustls]]
* Unicode処理ライブラリ
** ICU4C → ICU4X
* テキスト整形ライブラリ
** HarfBuzz → HarfRust
* ブラウザエンジン
** Blink/Gecko → Servo
<!--
=== 整合性チェック ===
PatchGuard / HyperGuard
-->
== 不審な改変が行われていないかを調べる ==
例えばOSの起動には一連のシーケンスがありますが、マルウェアは基本的にここの途中に入り込んで永続化します。
{| class="wikitable"
|+ 起動シーケンス
|-
! 種類 || Windows 11以降 !! Linux (Gnome) !! Linux (KDE)
|-
| 1. 起動ファームウェア || [[:w:Unified Extensible Firmware Interface|UEFI]] || colspan=2 | [[:w:Basic Input/Output System|レガシーBIOS]] / UEFI
|-
| 2. ブートローダー || [[:w:Windows Boot Manager|Windows Boot Manager]] (bootmgfw.efi)<br> → [[:w:Windows Boot Manager#winload.exe/winload.efi|Windows OS Loader]] (winload.efi) || colspan=2 | GRUB{{efn|Ubuntuの標準。}} / systemd-boot / Unified Kernel Image{{efn|Linuxカーネルとブートイメージを単一バイナリにする仕組み}} / EFI boot stub{{efn|LinuxカーネルをEFIから直接ブートする仕組み}}
|-
| 3. カーネル || [[:w:ntoskrnl.exe|ntoskrnl.exe]] || colspan=2 | Linuxカーネル ([[:w:vmlinux|vmlinux]]{{efn|圧縮後はvmlinuzとなる。}})
|-
| 4. 初期化プロセス || [[:w:en:Session Manager Subsystem|smss.exe]]<br> → wininit.exe<br> || rowspan=2 colspan=2 | [[:w:systemd|systemd]]{{efn|以前は代替initもよく使われていたが、今はsystemdが標準となっている。}}
|-
| 5. サービスコントロールマネージャ || colspan=2 | [[:w:en:Service Control Manager|services.exe]]
|-
| rowspan=2 | 6. ログインマネージャ || rowspan=2 | [[:w:Winlogon|winlogon.exe]] || colspan=2 | systemd-logind<br>sd-pam
|-
| [[:w:GNOME ディスプレイマネージャー|GDM]] || [[:w:Simple Desktop Display Manager|SDDM]]
|-
| rowspan=2 | 7. ユーザー初期化プロセス || rowspan=2 | userinit.exe || colspan=2 | systemd
|-
| gnome-session || kcminit<br> → plasma_session
|-
| 8. シェル || [[:w:Windows Explorer|explorer.exe]] || gnome-shell || plasmashell
|-
| 9. コンポジタ || [[:w:Desktop Window Manager|dwm.exe]] || mutter || kwin
|}
また起動シーケンス以外にもアップデートシーケンスへの感染やシェル感染、ブラウザ感染もあります。
{| class="wikitable"
|+ Windows における代表的なユーザースクリプト又はコマンド起動が可能な設定ファイル
|-
! 規格/アプリケーション !! ユーザー !! システム
|-
| Windows || %APPDATA%\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows\<wbr>Start Menu\<wbr>Programs\<wbr>Startup\<wbr>* || C:\<wbr>ProgramData\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows\<wbr>Start Menu\<wbr>Programs\<wbr>Startup\<wbr>*
|-
| [[:w:PowerShell|PowerShell]] プロファイル<ref>[https://learn.microsoft.com/ja-jp/powershell/module/microsoft.powershell.core/about/about_profiles?view=powershell-7.6 about_Profiles - PowerShell - Microsoft Learn] Microsoft</ref> || %USERPROFILE%\<wbr>Documents\<wbr>PowerShell\<wbr>Profile.ps1<br>%USERPROFILE%\<wbr>Documents\<wbr>PowerShell\<wbr>Microsoft.PowerShell_profile.ps1 || C:\<wbr>Windows\<wbr>System32\<wbr>WindowsPowerShell\<wbr>*\<wbr>Profile.ps1<br>C:\<wbr>Windows\<wbr>System32\<wbr>WindowsPowerShell\<wbr>*\<wbr>Microsoft.PowerShell_profile.ps1
|}
{| class="wikitable"
|+ Linux における代表的なユーザースクリプト又はコマンド起動が可能な設定ファイル
|-
! 規格/アプリケーション !! ユーザー !! システム
|-
| POSIX標準 || ~/.profile || /etc/profile
|-
| XDG Base Directory<wbr>標準 || ~/.local/bin/* ||
|-
| FHS{{efn|Filesystem Hierarchy Standard}}<wbr>標準[https://refspecs.linuxfoundation.org/fhs.shtml] || || /bin/* /sbin/* /usr/bin/* /usr/local/bin/* /etc/inittab
|-
| LSB{{efn|Linux Standard Base}}<wbr>標準[https://refspecs.linuxfoundation.org/lsb.shtml] || || /etc/profile.d/* /etc/init.d/* /etc/cron.d/*
|-
| Desktop Application Autostart Specification<wbr>標準[https://specifications.freedesktop.org/autostart/latest/] || ~/.config/autostart/* /media/*/*/.autorun /media/*/*/autorun /media/*/*/autorun.sh /run/media/*/*/.autorun /run/media/*/*/autorun /run/media/*/*/autorun.sh || /etc/xdg/autostart/*
|-
| Bash || ~/.bash_profile ~/.bashrc || /etc/bash_profile /etc/bash.bashrc /etc/bash.bash_logout
|-
| Z shell (Zsh) || ~/.zshenv ~/.zprofile ~/.zshrc ~/.zlogin ~/.zlogout || /etc/zshenv /etc/zprofile /etc/zshrc /etc/zlogin /etc/zlogout<br/>(または /etc/zsh/zshenv /etc/zsh/zprofile /etc/zsh/zshrc /etc/zsh/zlogin /etc/zsh/zlogout)
|-
| Systemd || ~/.config/systemd/user/* || /etc/systemd/system/* /etc/systemd/user/*
|-
| Xorg || ~/.xinitrc ~/.xserverrc ~/.xsession || /etc/X11/xinit/xinitrc /etc/X11/xinit/xserverrc /etc/X11/Xsession /usr/share/xsessions/*
|-
| Wayland || || /usr/share/wayland-sessions/*
|-
| Python || ~/.local/lib/python*/site-packages/*/**{{efn|絶対パスは<code>python3 -c 'import site; print(site.getusersitepackages())'</code>で確認可能。}} || /usr/lib/python*/dist-packages/*/** /usr/local/lib/python*/dist-packages/*/**{{efn|絶対パスは<code>python3 -c 'import site; print(site.getsitepackages())'</code>で確認可能。}}
|-
| Perl{{efn|Debian/UbuntuではDebianパッケージ設定システム (debconf) のためにPerlを使用している。}} || || /usr/share/perl*/** /usr/local/share/perl*/** /usr/lib/*/perl*/** /usr/local/lib/*/perl*/**{{efn|絶対パスは<code>perl -V:installsitearch -V:installsitelib -V:installvendorarch -V:installvendorlib -V:archlib -V:privlib -V:installarchlib -V:installprivlib</code>で確認可能。}}
|}
=== パッケージ管理ファイルを検証する ===
パッケージ管理システムが管理しているファイルではファイルハッシュが保存されているため簡単にその検証を行うことが可能です:
* Windows: <code>sfc /scannow</code>
* Debian/Ububntu(Debパッケージ): <code>debsums -s</code>
* RedHat/Fedora(RPMパッケージ): <code>rpm -Va</code>
ただしローカルハッシュが改ざんされている可能性もあるため過信はできません。<!--TODO: ローカルハッシュの検証法-->
自動的にシステムの検証を行うシステムも存在します:
* Android - ブロックデバイスレベルでのハッシュ検証 (dm-verityベース)<ref>[https://source.android.com/docs/security/features/verifiedboot/dm-verity?hl=ja dm-verity の実装] Google</ref>
<!--
またUbuntuのSnapパッケージでもdm-verityの導入が進められています。
また特定言語のパッケージの検証は以下で可能です:
* PIP (Python): なし
-->
=== システム領域に不審なファイルが追加されていないかを調べる ===
システムの追加ファイルの検知にはパッケージシステムで管理されていないファイルの一覧を返す以下のようなツールが存在します:
* Debian / Ubuntu(Debパッケージ)向け: cruft-ngパッケージ(<code>cruft</code>コマンド)
上記の<code>cruft</code>コマンドでは設定ファイルだけ残っているパッケージのファイルも出てきてしまいます。そのため、これが邪魔な時は設定ファイルだけ残っているパッケージを<code>sudo apt purge '~c'</code>で削除しましょう。
=== ユーザー領域に不審なファイルが追加されていないかを調べる ===
ユーザースクリプトの書き換えや追加は検知が難しいです。<!--TODO: 良い方法を書く-->
共有ライブラリやスクリプトによるプラグイン追加も可能となっているため、こちらにも気をつけなければいけません。これには例えば以下があります:
{| class="wikitable"
|+ 代表的なユーザースクリプトや拡張機能のディレクトリパス
|-
! 種類 !! Windowsのパス !! macOSのパス !! Linuxのパス
|-
| Google Chrome 拡張機能 || %LOCALAPPDATA%\Google\Chrome\User Data\*\Extensions\ || ~/Library/Application Support/Google/Chrome/*/Extensions/ || ~/.config/google-chrome/*/Extensions/
|-
| GIMPプラグイン<ref>[https://gimp.cc/faq/add-gimp-plugins.html How to Install GIMP Plugins - Detailed Guide with Troubleshooting] GIMP.cc</ref> || %APPDATA%\GIMP\*\plug-ins\ || ~/Library/Application Support/GIMP/*/plug-ins/ || ~/.config/GIMP/*/plug-ins/
|-
| Blenderスクリプト{{efn|起動スクリプト、アドオンを含む。}}<ref>[https://docs.blender.org/manual/ja/dev/advanced/blender_directory_layout.html Blender's Directory Layout] Blender Foundation</ref> || %APPDATA%\Blender Foundation\Blender\*\scripts\ || ~/Library/Application Support/Blender/*/scripts/ || ~/.config/blender/*/scripts/
|-
| Ardourスクリプト<ref>[https://manual.ardour.org/lua-scripting/ The Ardour Manual - Lua Scripting] Ardour</ref> || %LOCALAPPDATA%\ardour*\scripts\ || ~/Library/Preferences/Ardour*/scripts/ || ~/.config/ardour*/scripts/
|-
| LibreOfficeスクリプト || %APPDATA%\LibreOffice\*\user\Scripts\ || ~/Library/Application Support/LibreOffice/*/user/Scripts/ || ~/.config/libreoffice/*/user/Scripts/
|-
| Visual Studio Code 拡張機能<ref>[https://code.visualstudio.com/docs/configure/extensions/extension-marketplace Extension Marketplace] Microsoft</ref> || %USERPROFILE%\.vscode\extensions\ || ~/.vscode/extensions/ || ~/.vscode/extensions/
|}
=== 改変・追加されたファイルが危険かを調べる ===
実行ファイルやスクリプトはLinuxでは以下で検出できます:
<syntaxhighlight lang="shell-session">
# cat filelist.txt | xargs file | grep -i -E ':.*(executable|shared object|relocatable|script)'
/etc/init.d/binfmt-support.dpkg-new: POSIX shell script, ASCII text executable
/etc/update-motd.d/99-livepatch-kernel-upgrade-required: POSIX shell script, ASCII text executable
/usr/lib/chromium-browser/plugins/libpepflashplayer.so: ELF 64-bit LSB shared object, x86-64, version 1 (SYSV), dynamically linked, BuildID[sha1]=5c421e89a5c062a2106a5a4381dc38e779a22795, stripped
</syntaxhighlight>
またClamAVを導入していれば以下でマルウェアデータベースとの照合を行うことができます:
<syntaxhighlight lang="shell-session">
# cat filelist.txt | xargs clamscan
Loading: 3s, ETA: 0s [========================>] 3.63M/3.63M sigs
Compiling: 1s, ETA: 0s [========================>] 41/41 tasks
/etc/apt/apt.conf.d/00trustcdrom: OK
/etc/apt/auth.conf.d/90ubuntu-advantage: OK
/etc/apt/keyrings/google.asc: OK
[...]
----------- SCAN SUMMARY -----------
Known viruses: 3628164
Engine version: 1.5.4
Scanned directories: 125
Scanned files: 1919
Infected files: 0
Total errors: 10
Data scanned: 247.72 MiB
Data read: 281.17 MiB (ratio 0.88:1)
Time: 17.939 sec (0 m 17 s)
Start Date: 2026:10:11 05:41:30
End Date: 2026:10:11 05:41:48
</syntaxhighlight>
=== 設定データベースを検証する ===
設定データベースは Windows ではレジストリ、Linuxでは GNOME / MATEの 使う [[:en:dconf|dconf]] が存在します。
Windows の設定データベースはレジストリと呼び「レジストリエディタ」 (<code>regedit</code>) で表示できます。
{| class="wikitable"
|+ Windows における代表的なユーザースクリプト、コマンド起動、DLL呼び出しが可能なレジストリ
|-
! 規格/アプリケーション !! 各ユーザー !! 全ユーザー
|-
| Windows || HKEY_USERS\<wbr>*\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows\<wbr>CurrentVersion\<wbr>Run\<wbr>*<wbr>CurrentVersion\<wbr>Run\<wbr>*<br>HKEY_USERS\<wbr>*\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows\<wbr>CurrentVersion\<wbr>RunOnce\<wbr>*{{efn|name="runonce"|RunOnceは一度のみ実行だが再登録することで何回でも実行可能。}} || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows\<wbr>CurrentVersion\<wbr>Run\<wbr>*<br>HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows\<wbr>CurrentVersion\<wbr>RunOnce\<wbr>*{{efn|name="runonce"}}
|-
| [[:w:en:Security Account Manager|Security Account Manager]] || || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>SAM\<wbr>SAM\<wbr>Domains\<wbr>Account\<wbr>Users\<wbr>*\<wbr>V{{efn|name="sam"|'HKEY_LOCAL_MACHINE\SAM\SAM\' 以下はレジストリエディタの右クリックの「アクセス許可」で Administrators にアクセス許可を与えないと読めない。なおファイルパスは「C:\Windows\System32\config\SAM」。}}{{efn|Vはバイナリであり、0xCC + (0x60 に指定されたオフセット) からユーザーログオンスクリプトパスを指定する<ref name="sam-ghost">Sebastián R. Castro et al. [https://dl.acm.org/doi/pdf/10.1145/3689934.3690839 Ghost in the SAM: Stealthy, Robust, and Privileged Persistence through Invisible Accounts] ACM 2024年</ref>。}}
|-
| [[:w:en:Local Security Authority Subsystem Service|Local Security Authority Subsystem Service]] || || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>System\<wbr>CurrentControlSet\<wbr>Control\<wbr>LSA\<wbr>Notification Packages<br>HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>SYSTEM\<wbr>CurrentControlSet\<wbr>Control\<wbr>LSA\<wbr>Authentication Packages<ref>[https://attack.mitre.org/detectionstrategies/DET0207/ Detect LSA Authentication Package Persistence via Registry and LSASS DLL Load] MITRE Corporation</ref>
|-
| [[:w:en:Active Setup|Active Setup]]<ref>[https://www.advancedinstaller.com/application-packaging-training/msi/ebook/active-setup.html Active-Setup Mechanism] Advanced Installer</ref> || HKEY_USERS\<wbr>*\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Active Setup\<wbr>Installed Components\<wbr>*\<wbr>StubPath || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Active Setup\<wbr>Installed Components\<wbr>*\<wbr>StubPath<ref>[https://attack.mitre.org/techniques/T1547/014/ Boot or Logon Autostart Execution: Active Setup] MITRE Corporation</ref>
|-
| [[:w:Windowsサービス|Windowsサービス]]<ref>[https://learn.microsoft.com/ja-jp/windows-hardware/drivers/install/hklm-system-currentcontrolset-services-registry-tree HKLM\SYSTEM\CurrentControlSet\Services レジストリ ツリー - Windows drivers - Microsoft Learn] Microsoft</ref> || || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>SYSTEM\<wbr>CurrentControlSet\<wbr>services\<wbr>*
|-
| [[:w:Winlogon|Winlogon]] || || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows NT\<wbr>CurrentVersion\<wbr>Winlogon\<wbr>Shell<br>HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows NT\<wbr>CurrentVersion\<wbr>Winlogon\<wbr>Userinit<br>HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows NT\<wbr>CurrentVersion\<wbr>Winlogon\<wbr>Notify<ref>[https://attack.mitre.org/techniques/T1547/004/ Boot or Logon Autostart Execution: Winlogon Helper DLL] MITRE Corporation</ref>
|-
| [[:w:cmd.exe|cmd.exe]]<ref>[https://learn.microsoft.com/en-us/windows-server/administration/windows-commands/cmd cmd - Microsoft Learn] Microsoft</ref> || HKEY_USERS\<wbr>*\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Command Processor\<wbr>AutoRun\REG_EXPAND_SZ || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Command Processor\<wbr>AutoRun\<wbr>REG_SZ
|-
| [[Microsoft Edge]] || || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>SOFTWARE\<wbr>Policies\<wbr>Microsoft\<wbr>Edge\<wbr>ExtensionInstallForcelist<ref>[https://learn.microsoft.com/ja-jp/deployedge/microsoft-edge-policies/extensioninstallforcelist Microsoft Edge ブラウザー ポリシードキュメント ExtensionInstallForcelist - Microsoft Learn] Microsoft</ref>{{efn|name="silent-install"|自動的にサイレントインストールする}}
|-
| [[Google Chrome]] || || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>SOFTWARE\<wbr>Policies\<wbr>Google\<wbr>Chrome\<wbr>ExtensionInstallForcelist<ref>[https://chromeenterprise.google/intl/ja_jp/policies/extension-install-forcelist/ ExtensionInstallForcelist: 自動インストールするアプリと拡張機能のリストの設定 - Chrome Enterprise] Google</ref>{{efn|name="silent-install"}}
|}
Linux の GNOME / MATE 環境には「[[:w:en:Dconf#dconf database|dconf データベース]]」が存在し、それは<code>dconf dump</code>('/'区切り)で表示できます。また dconf データベースにスキーマ(規定値と解説)を被せた gsettings も存在し、こちらは<code>gsettings list-recursively</code>(dconfと異なり'.'区切り)で表示できます。
{| class="wikitable"
|+ Linux における代表的なユーザースクリプト又はコマンド起動が可能なdconf設定
|-
! 規格/アプリケーション !! ユーザー
|-
| GNOME Settings Daemon || /org/gnome/settings-daemon/plugins/media-keys/custom-keybindings/custom*/command
|-
| Marco ([[w:MATE (デスクトップ環境)|MATE]]) || /org/mate/Marco/keybinding-commands/command-*{{efn|変更した設定は<code>dconf dump /org/mate/Marco/keybinding-commands/</code>で、デフォルトも含めた設定は<code>gsettings list-recursively org.mate.Marco.keybinding-commands</code>で表示可能。}}
|-
| MATE Screensaver || /org/mate/screensaver/embedded-keyboard-command<br>/org/mate/screensaver/logout-command{{efn|変更した設定は<code>dconf dump /org/mate/screensaver/</code>、デフォルトも含めた設定は<code>gsettings list-recursively org.mate.screensaver</code> で表示可能}}
|-
| mate-applets || /org/mate/panel/objects/object-*/prefs/command
|-
| mate-sensors-applet || /org/mate/panel/objects/object-*/prefs/*/high-alarm-command<br>/org/mate/panel/objects/object-*/prefs/*/low-alarm-command
|}
なお MATE Screensaver と同源の GNOME Screensaver にも /org/gnome/desktop/screensaver/embedded-keyboard-command と /org/gnome/desktop/screensaver/logout-command{{efn|変更した設定は<code>dconf dump /org/gnome/desktop/screensaver/</code>、デフォルトも含めた設定は<code>gsettings list-recursively org.gnome.desktop.screensaver</code> で表示可能。}} が存在しますが、こちらは既に廃止されており指定しても無視されます<ref>[https://github.com/GNOME/gsettings-desktop-schemas/blob/main/schemas/org.gnome.desktop.screensaver.gschema.xml.in gsettings-desktop-schemas/schemas/org.gnome.desktop.screensaver.gschema.xml.in at main · GNOME/gsettings-desktop-schemas] GNOME Project</ref>。
== 改変を防ぐ ==
改変を探すのは大変です。なので最初から改変をできないようにすれば管理はとても楽になります。
改ざんを防ぐには「[[:w:en:Chain of trust|信頼の連鎖]]」 (chain of trust) が重要となります。例えばカーネルだけで改ざんを防いでも、ハードウェアのファームウェアが不正であれば不正なカーネルを起動できてしまいます。
=== ファームウェア改ざんを防ぐ ===
ファームウェア改ざんによる「ファームウェアルートキット」を防ぐにはIntel Management Engine (Intel ME)で実装されているIntel BIOS Guardを使う必要があります。<!--TODO: マザーボードによってはBIOSで有効にする必要があります。→最近のマザーボード事情-->
なお2017年の第8世代Intel Coreプロセッサ (Coffee Lake) 以前はme_cleanerによってIntel Management Engineの無効化が可能<ref>[https://github.com/corna/me_cleaner/wiki/me_cleaner-status me_cleaner status] Nicola Corna 2018年</ref>なため非推奨です。
また2023年のIntel ME 16.1.30.2307未満では悪意あるロゴ画像を設定することによってroot権限からUEFI設定の変更が可能です([[:w:en:LogoFAIL|LogoFAIL]]の脆弱性)。そのため、古いIntel Management Engineが動作している場合はそのファームウェアをアップデートしましょう。Windowsでは MEUpdateTool.exe / FWUpdLcl.exe を使うことでこのアップデートが可能となっています。一方、Linuxでは一部機種が fwupdmgr 経由での Intel ME ファームウェアアップデートに対応しています。
Intel MEのバージョンはLinuxでは以下のような感じに調べることができます:
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ cat /sys/class/mei/mei0/fw_ver
0:16.1.32.2473
0:16.1.32.2473
0:16.1.27.2181
</syntaxhighlight>
=== ブートローダー改ざんを防ぐ ===
ブートローダーは起動に使われるファームウェア (BIOS) から呼ばれ、カーネルを読み込んで起動するために使われるプログラムです。古い BIOS (レガシーBIOS) には起動するブートローダーを検証する仕組みが存在しませんでしたが、新しい UEFI (統一拡張ファームウェアインターフェース) には署名されたブートローダーのみを起動する UEFI Secure Boot が追加され、安全なブートローダーの起動を許可するための「承認済み署名データベース」 (Authorized Signature Database、UEFI db) と、脆弱なブートローダーの起動を防ぐための「禁止署名データベース」 (Forbidden Signature Database、UEFI dbx) が用意されています。
UEFI Secure Boot が有効かどうかは以下で確認できます:
* Windows PowerShell: <code>Confirm-SecureBootUEFI</code>
* Linux: <code>mokutil --sb-state</code>
UEFI db と UEFI dbx の内容は以下で確認できます:
* Windows PowerShell: <code>Get-SecureBootUEFI -Name db -Decoded</code> / <code>Get-SecureBootUEFI -Name dbx -Decoded</code>
* Linux:
** mokutil{{efn|Ubuntu Desktop に標準で含まれている。}}: <code>mokutil --db</code> / <code>mokutil --dbx</code>
** efitools: <code>efi-readvar -v db</code> / <code>efi-readvar -v dbx</code>
ブートローダーの署名情報は以下で確認できます:
* Windows PowerShell: <code>Get-PfxCertificate</code>{{efn|<code>Get-AuthenticodeSignature</code>はカタログ署名が使われる場合があるため非推奨: https://github.com/PowerShell/PowerShell/issues/23820 。}}
* Linux: <code>sbverify --list</code>
例えば Windows PowerShell では以下のような感じです:
<syntaxhighlight lang="powershell">
PS C:\WINDOWS\system32> mountvol S: /S; if ($?) { Get-PfxCertificate 'S:\EFI\Microsoft\Boot\bootmgfw.efi'; mountvol S: /D }
Thumbprint Subject
---------- -------
FACDE3D80E99AFCC15E08AC5A69BD22785287F79 CN=Microsoft Windows, O=Microsoft Corporation, L=Redmond, S=Washington, C=US
</syntaxhighlight>
また Ubuntu や Debian では署名されたブートローダー (grub-efi-*-signedパッケージ) と非署名のブートローダー (grub-efi-*-unsignedパッケージ) の両方が用意されており、ブートローダーの正体がどれか、また署名されたブートローダーの署名内容を確認するのは以下のような感じとなります:
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ dpkg -L grub-efi-amd64-signed | grep -i '\.efi' | xargs md5sum # インストールされている署名されたブートローダーのハッシュを表示(grub*は通常版、gcd*は光学ブートメディア向け、grubnet*はネットブート向け)
2bd267fb12bd3b0fe26a9dfb4290868d /usr/lib/grub/x86_64-efi-signed/gcdx64.efi.signed
f689e93336a015fa6eb93e1913b13482 /usr/lib/grub/x86_64-efi-signed/grubnetx64.efi.signed
b63c7618fb96d52520b42b8cc7b124f0 /usr/lib/grub/x86_64-efi-signed/grubx64.efi.signed
$ sudo sh -c "md5sum /boot/efi/EFI/BOOT/*" # 現在のbootloaderがどれを使っているかを確認(署名されたgrubを使用)
b63c7618fb96d52520b42b8cc7b124f0 /boot/efi/EFI/BOOT/BOOTX64.EFI
$ sudo sbverify --list /boot/efi/EFI/BOOT/BOOTX64.EFI
signature 1
image signature issuers:
- /C=GB/ST=Isle of Man/L=Douglas/O=Canonical Ltd./CN=Canonical Ltd. Master Certificate Authority
image signature certificates:
- subject: /C=GB/ST=Isle of Man/O=Canonical Ltd./OU=Secure Boot/CN=Canonical Ltd. Secure Boot Signing (2022 v1)
issuer: /C=GB/ST=Isle of Man/L=Douglas/O=Canonical Ltd./CN=Canonical Ltd. Master Certificate Authority
$ sudo sbverify --cert /usr/share/grub/canonical-uefi-ca.crt /boot/efi/EFI/BOOT/BOOTX64.EFI
Signature verification OK
</syntaxhighlight>
なお Linux では grub の代わりに使えるブートローダーとして systemd-boot もあります。systemd-boot の署名版は Debian が systemd-boot-efi-*-signed パッケージとして用意しているようです(Ubuntu未搭載)。
<!--TODO:
TPM (Trusted Platform Module) チップ
-->
=== カーネル本体の改ざんを防ぐ ===
カーネルはオペレーティングシステム (OS) の下層で動き続けるプログラムです。カーネル本体の実行ファイルもブートローダーと同様に署名が行われており、UEFI Secure Boot が有効であればその検証をブートローダーが行います。Linux では GRUB の UEFI Secure Boot と shim_lock の連携がそれに相当します<ref>[https://www.gnu.org/software/grub/manual/grub/grub.html#UEFI-secure-boot-and-shim GNU GRUB Manual 2.14 - 19.4 UEFI secure boot and shim support] フリーソフトウェア財団</ref>。
なお Ubuntu には署名されたカーネル (linux-image-*パッケージ) と非署名のカーネル (linux-image-unsigned-*パッケージ) の両方が用意されており、署名されているカーネルは以下のような感じでその署名が確認できます:
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ sudo sbverify --list /boot/vmlinuz-$(uname -r) # Linuxカーネル本体の署名を確認する
signature 1
image signature issuers:
- /C=GB/ST=Isle of Man/L=Douglas/O=Canonical Ltd./CN=Canonical Ltd. Master Certificate Authority
image signature certificates:
- subject: /C=GB/ST=Isle of Man/O=Canonical Ltd./OU=Secure Boot/CN=Canonical Ltd. Secure Boot Signing (2022 v1)
issuer: /C=GB/ST=Isle of Man/L=Douglas/O=Canonical Ltd./CN=Canonical Ltd. Master Certificate Authority
$ sudo sbverify --cert /usr/share/grub/canonical-uefi-ca.crt /boot/vmlinuz-$(uname -r) # Linuxカーネル本体の署名を検証する
Signature verification OK
</syntaxhighlight>
=== カーネルモジュールの改ざんを防ぐ ===
カーネルモジュールも署名されており、その検証をカーネルが行っています。Windowsカーネルでは ci.dll (Code Integrityモジュール)が、Linuxカーネルでは CONFIG_MODULE_SIG コンパイルオプションがその検証を行っています。
カーネルによるカーネルモジュールの検証が有効かどうかは以下で確認することができます:
* Linux: <code>grep 'CONFIG_MODULE_SIG=' /boot/config-$(uname -r)</code>
カーネルによるカーネルモジュールの検証で読み込みを弾くかどうかは以下で確認することができます:
* Windows: 強制モードか評価モード (監査モード) かを確認する PowerShell スクリプトが Microsoft のサイトに存在します: https://support.microsoft.com/en-us/windows/hardware/drivers/the-windows-driver-policy#is-my-device-in-evaluation-mode-or-enforcement-mode
* Linux: <code>cat /sys/module/module/parameters/sig_enforce</code>
また Linux では検証で読み込みを弾かない場合でも検証外カーネルモジュールを読み込んだ場合はdmesgに警告が出て '''Tainted kernel''' 扱いとなります<ref>[https://docs.kernel.org/admin-guide/tainted-kernels.html Tainted kernels] Linux Foundation</ref>。以下はその例です:
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ grep 'CONFIG_MODULE_SIG=' /boot/config-$(uname -r) # y=Yes, n=No
CONFIG_MODULE_SIG=y
$ cat /sys/module/module/parameters/sig_enforce # Y=Yes, N=No
N
$ sudo dmesg | grep 'module verification'
[ 8.928361] nvidia: module verification failed: signature and/or required key missing - tainting kernel
$ wget http://git.kernel.org/pub/scm/linux/kernel/git/torvalds/linux.git/plain/tools/debugging/kernel-chktaint
[...]
$ sudo sh ./kernel-chktaint
Kernel is "tainted" for the following reasons:
* externally-built ('out-of-tree') module was loaded (#12)
* unsigned module was loaded (#13)
Raw taint value as int/string: 12288/'G OE '
Tainted modules:
* nvidia (OE)
* nvidia_drm (OE)
* nvidia_modeset (OE)
* nvidia_uvm (OE)
For a more detailed explanation of the various taint flags see
Documentation/admin-guide/tainted-kernels.rst in the Linux kernel sources
or https://kernel.org/doc/html/latest/admin-guide/tainted-kernels.html
</syntaxhighlight>
また Linux では以下のような感じで個々のモジュールの署名が確認できます:
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ modinfo /lib/modules/$(uname -r)/kernel/arch/x86/kernel/msr.ko.zst
filename: /lib/modules/7.0.0-38-generic/kernel/arch/x86/kernel/msr.ko.zst
license: GPL
description: x86 generic MSR driver
author: H. Peter Anvin <hpa@zytor.com>
srcversion: 639B995855A3528050FD532
depends:
intree: Y
name: msr
retpoline: Y
vermagic: 7.0.0-38-generic SMP preempt mod_unload modversions
sig_id: PKCS#7
signer: Build time autogenerated kernel key
sig_key: 3B:E7:D3:BF:D3:2E:D9:CA:9C:17:D2:E9:5F:1A:1C:AE:67:D5:82:2F
sig_hashalgo: sha512
signature: 96:BC:2A:18:6E:4D:D8:E5:28:69:9D:E6:65:89:95:D4:BE:4C:5B:7C:
4A:23:11:75:F6:FE:63:79:FC:29:9B:F7:EA:24:B6:F1:EF:F3:80:17:
0B:C0:1E:46:61:29:BB:F9:E0:AC:81:69:85:73:7D:D4:77:82:A8:DB:
[...]
</syntaxhighlight>
=== システムファイル改ざんを防ぐ ===
システムファイル改ざんを防ぐ良い方法はシステム領域を読み取り専用にすることですが、仮にファイルシステムを読み取り専用のファイルシステム(SquashFSやEROFS)にしたとしても記録する場所がSSDであればブロック単位での上書きが可能となります。
1回だけ書き込めて上書きが不可能な媒体としてはCD-R、DVD-R、DVD+R、BD-Rなどの一部の光学メディアが存在しますが、これらをブートメディアとして使用するのは頻繁なアップデートが難しくなります。
そのほかの手法としては別のコンピュータからシステムファイルを取得する「ネットワークブート」を行うという手法もありますが、これはネットワーク経由でシステムファイルが盗まれる可能性と隣り合わせです。しかしながらプロトコルにUEFI HTTPSを、認証に相互認証のmTLSを用いて、その秘密鍵をTPMで管理してOSから読めなくすることでネットワークブートの安全性は何とか確保できるかもしれません(対応マザーボードは不明)。
一方、Android や ChromeOS ではブロックデバイス単位での改ざん検知 (dm-verify) によってシステムイメージの改ざんを防止しています<ref>[https://source.android.com/docs/security/features/verifiedboot/dm-verity?hl=ja dm-verity の実装] Google</ref><ref>[https://research.google/pubs/verified-boot-on-chrome-os-and-how-to-do-it-yourself/ Verified Boot on Chrome OS and How to do it yourself] Google</ref>。
=== カーネルメモリ改ざんを防ぐ ===
カーネルメモリのコード部分は MMU の書き込み禁止によって保護されています。iOS / macOS では Kernel Integrity Protection が<ref>[https://support.apple.com/ja-jp/guide/security/sec8b776536b/web オペレーティングシステムの整合性] Apple</ref> 、Linux では Kernel Strict RWX がこれに相当します<ref>[https://docs.kernel.org/security/self-protection.html Kernel Self-Protection] Linux Foundation</ref>。Windows でもカーネルモードに読み込み専用メモリセグメントが存在し、これに書き込もうとするとブルースクリーンで ATTEMPTED_WRITE_TO_READONLY_MEMORY (0xBE) が発行されます<ref>[https://learn.microsoft.com/ja-jp/windows-hardware/drivers/debugger/bug-check-0xbe--attempted-write-to-readonly-memory バグ チェック 0xBE: ATTEMPTED_WRITE_TO_READONLY_MEMORY] Microsoft</ref>。しかしながら Linux Kernel では kprobes、Static Keys、Static calls などで自己書き換えが多用されているため、一時的にコード部分を書き込み可能なページに割り当てて書き換える text_poke(...) という抜け道が存在します。
また定期的に改ざんが行われていないかをチェックする仕組みも存在します。Windows では[[:w:Kernel Patch Protection|Kernel Patch Protection]] (PatchGuard) / HyperGuard が、Linux では Linux Kernel Runtime Guard(外部パッチ)がこれに該当します。Windows の PatchGuard では改ざんが検出されたらブルースクリーンで CRITICAL_STRUCTURE_CORRUPTION が発行されます。
<!--TODO: Windows の HVCI、macOS の Secure Page Table Monitor / Trusted Execution Monitor-->
<!--
=== アプリケーション改ざんを防ぐ ===
SELinux / AppArmor
-->
== 攻撃用AIを対策する ==
攻撃用AIでは基本的に賢いかつ制限の緩い大規模言語モデル (LLM) が使われています。この代表的な例として GLM 5.3 や Qwen3.8-27B-ABLITERATED が存在します。
=== コンテキスト爆弾を設置する ===
攻撃用AIの対策では相手のLLMを止めることが重要となります。そこで使えるのが'''コンテキスト爆弾''' (context bombs) という手法です<ref>[https://arstechnica.com/security/2026/07/now-defenders-are-embracing-the-prompt-injection-too/ Now, defenders are embracing the prompt injection, too] Ars Technica 2026年7月14日</ref>。
このコンテキスト爆弾は「相手のLLMに対し応答やツール呼び出しで禁止されていることを行わせようとする」というプロンプトインジェクションの一種であり、それによって相手のガードレールがLLMを止めることで相手からの攻撃を防ぎます。この手法は相手の読みそうなテキストにただプロンプトを書いておけば良いだけなので、お手軽に使えます。
コンテキスト爆弾のテキスト例は以下のリポジトリに存在します:
* https://github.com/tracebit-com/context-bombs
=== ハニーポット ===
ハニーポットは攻撃者を引きつける役目を担います。ハニーポットの評価フレームワークには「UHBS」(Universal Honeypot Benchmarking Standard) が、その品質基準には「UHQS」(Universal Honeypot Quality Score) が存在しますが、2026年現在多くのハニーポットがFランク〜Dランクと残念な状況になっています<ref>[https://uhbs.github.io/uhbs-standard/mkdocs/conformance/ Overview - UHBS — Honeypot Evaluation Framework]</ref>。
<!--
== 自作コードの脆弱性を塞ぐ ==
書きかけ
-->
== 脚注 ==
<references group="注釈"/>
== 参考文献 ==
<references/>
{{DEFAULTSORT:こんひゆうたせきゆりてい}}
[[Category:計算機科学]]
[[Category:情報技術]]
ekz7j4j2tz2t9m8c9gegisl6vnsnmvt
304867
304865
2026-10-18T16:09:16Z
~2026-54076-02
92740
304867
wikitext
text/x-wiki
'''コンピュータセキュリティ'''はコンピュータの安全のことです。ここではコンピュータの安全を確保することを学びます。
== コンピュータセキュリティの基本 ==
コンピュータは弱いところから狙われるため、弱いところを無くすのがセキュリティの基本となります。
具体例を挙げましょう。一般的な光回線に繋がれてるホームネットワークを考えます。ここには光回線の先に繋がる上位ネットワークと家内のホームネットワーク (家庭におけるLAN) とを区切るエッジルーター(一般的にはハードウェア・ゲートウェイがこれに該当)が存在します。このホームネットワークに数台の新しいWindows PCと一台の古い機器が繋がっていると仮定します。
新しいWindows PC同士ではホームネットワーク経由でファイルをやり取りするためにファイルの共有 (SMB{{efn|Server Message Block}}) を有効にしているとします。一方、古い機器の方を脆弱性のある古いテレビとしましょう。このテレビはインターネットから繋いで地上デジタル放送を見るための DCTP+ {{efn|Digital Transmission Content Protection +}}が搭載されており、UPnP{{efn|Universal Plug and Play}}で自動的にエッジルーター搭載のファイアーウォールに穴あけてインターネット側から DCTP+ に繋がるようになっているものとします。
この仮定によってハッカーは DCTP+ の脆弱性を使って古いテレビに悪意のあるプログラムを実行させてファイルの共有サーバーを立て{{efn|Windows 11時点でもゲスト認証による接続は許可されている<ref>[https://learn.microsoft.com/en-us/windows-server/storage/file-server/smb-interception-defense?tabs=group-policy Protect SMB traffic from interception] Microsoft</ref>。}}、そこからファイルの共有を通じて新しいWindows PCにマルウェア (例えば<code>PHOTO-<ランダムな数字>.png.lnk</code><ref>[https://www.microsoft.com/en-us/security/blog/2026/06/25/photo-zip-campaign-targeting-hospitality-industry-delivers-node-js-implant-persistent-access/ Photo ZIP campaign targeting hospitality industry delivers Node.js implant for persistent access] Microsoft 2026年6月25日</ref>) を送り込むことが可能となりました。
== 安全にパスワードを使う ==
=== 流出したパスワードと被ってないかをチェックする ===
あちこちのサイトで流出したパスワードは集められてデータベース化されダークネットに流通しています。この代表的なものには2019年に登場した [[:w:en:Collection No. 1|Collection #1]] が挙げられます。この Collection #1 などの流出パスワードデータベースは辞書攻撃に利用されており、これは「Credential Stuffing攻撃」と呼ばれています。
使うパスワードが流出パスワードデータベースに載っていないかを確認するためには上記のデータベースを手に入れるか、上記のデータベースからk-匿名性で検索を行うオンラインサービスを使うと良いでしょう。
このオンラインサービスの代表的なものにはWebサイト「Have I Been Pwned」の提供する「Pwned Passwords」サービスが存在しますが、このAPIではパスワードのSHA-1ハッシュ先頭5文字を渡すと、流出したパスワードのSHA1ハッシュ6文字以降と流出データベースに載っていた回数が返答されます。
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ # License: CC0 / Public Domain
$ # パスワードを入力してSHA-1ハッシュへと変換する(ここでは'test'と入力)
$ sha1=$(read -sp "Password: " pass && echo -n $pass | sha1sum | cut -d' ' -f1)
Password:
$ # 変換後のハッシュを表示
$ echo $sha1
a94a8fe5ccb19ba61c4c0873d391e987982fbbd3
$ # ハッシュの先頭5文字を渡して6文字目以降を検索(':'の後ろは見つかった数)
$ curl -s https://api.pwnedpasswords.com/range/$(echo $sha1 | cut -c 1-5) | grep -i $(echo $sha1 | cut -c 6-)
FE5CCB19BA61C4C0873D391E987982FBBD3:1579235
</syntaxhighlight>
ハッシュの先頭5文字も渡したくない場合や、自社サービスでチェックを行いたい場合は上記のサービスが公式で提供するツール「haveibeenpwned-downloader」[https://github.com/HaveIBeenPwned/PwnedPasswordsDownloader]で全てのハッシュデータをダウンロードして自前で照合しましょう。
=== 解析耐性のある鍵導出関数を使う ===
パスワードでは計算負荷の低い SHA-256 や SHA-512 などの通常のハッシュ関数、メモリ負荷の低い [[:w:PBKDF2|PBKDF2]] や bcrypt などの古い[[:w:鍵導出関数|鍵導出関数]](パスワードハッシュ関数)を使わないようにしましょう。これらの弱いハッシュ関数は GPU や ASIC で高速に解かれてしまいます。
より強いパスワードハッシュ関数としては yescrypt や Argon2id が存在します。パスワードにはこちらを使いましょう。現代の Linux ではアカウントのパスワードハッシュ関数として yescrypt が標準となっています。
使っている Linux の新規アカウントで使われるパスワードハッシュ関数は以下で確認可能です:
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ grep -n 'pam_unix.so' /etc/pam.d/common-password
26:password [success=2 default=ignore] pam_unix.so obscure use_authtok try_first_pass yescrypt
</syntaxhighlight>
Linuxの現在のアカウントがどのハッシュ関数を使用しているかは以下で確認可能です:
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ sudo cat /etc/shadow | grep $USER # $(1|5|6|b)$=弱い、$y$=強い
user:$y$j9T$ST7oYwlQjFy7/8vnL/Ugt0$po4vW4qgGu8lpUNRtH0B3hDHGZACzcRhzIKhqlx.2Z5:20743:0:99999:7:::
</syntaxhighlight>
弱いハッシュ関数を使用している場合は<code>passwd $USER</code>でパスワードを再設定して使用するハッシュ関数を更新してください。
一方、Windows 10 以前のローカルアカウントではパスワードハッシュがレジストリの<code>HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>SAM\<wbr>SAM\<wbr>Domains\<wbr>Account\<wbr>Users\<wbr>(ユーザーID)\<wbr>V</code>{{efn|name="sam"}}のバイナリに存在します:
* [[:w:LMハッシュ|LMハッシュ]]: 0xCC + (0x9C に指定されたオフセット)<ref name="sam-ghost"/>
* NTLMハッシュ: 0xCC + (0xA8 に指定されたオフセット)<ref name="sam-ghost"/>
LMハッシュは [[:w:LAN Manager|LAN Manager]] に使われていた [[:w:Data Encryption Standard|DES]] ベースの古いハッシュ、NTLMハッシュは [[:w:NT LAN Manager|NT LAN Manager]] に使われている [[:w:MD4|MD4]] ベースの古いハッシュであり、どちらも非常に弱いものとなっていました。
また Windows の Active Directory ドメインアカウントのオフライン認証向けキャッシュ済みドメイン資格情報はレジストリの<code>HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>SECURITY\<wbr>Cache</code>に存在します:
* DCC1 ハッシュ (MSCache v1): 弱い MD4 ベース。Windows XP以前。
* DCC2 ハッシュ (MSCache v2) : 弱めの PBKDF2-HMAC-SHA1 ベース。Windows Vista以後<ref>[https://attack.mitre.org/techniques/T1003/005/ OS Credential Dumping: Cached Domain Credentials] MITRE 2025年10月24日</ref>。
2021年にリリースされた Windows 11 以降は Microsoft アカウントが必須となっています。
<!--TODO:
Windows Hello、LSA Secrets
=== パスワードの複雑性をチェックする ===
=== TPMで鍵を隔離する ===
-->
== 既製製品の脆弱性を塞ぐ ==
まずは弱いところを無くしましょう。
=== ソフトウェアアップデートをする ===
セキュリティの基本はソフトウェアアップデートです。
==== PCおよびモバイル ====
PC{{efn|PCサーバを含む}}やモバイルでは基本的に自動で通知が来るので忘れずにアップデートを選択しましょう。手動では以下のように行います:
; Windows
: システムのアップデートは基本的に [[:w:Microsoft Update|Microsoft Update]] (Windows Update) で、アプリケーションのアップデートは基本的に<code>winget upgrade --all</code>コマンドで行います。
: また Windows 11 Enterprise では再起動が不要なホットパッチにも対応しています。
; macOS / iOS
: 「ソフトウェアアップデート」
; Ubuntu / Debian
: [[:w:APT|APT]]パッケージ管理システムでは<code>apt upgrade</code>コマンドで更新を行います。
: Ubuntu では GUI による更新用として[[:w:Software Updater|Software Updater]] (<code>update-manager</code>コマンド)、[[:w:Snap (ソフトウェア)|Snap]]パッケージの更新コマンドとして<code>snap refresh</code>、メジャーバージョンの更新コマンドとして<code>do-release-upgrade</code>も存在します。
: また Ubuntu では Ubuntu Pro に登録することで再起動が不要なカーネル修正の「Livepatch」も可能となります(個人では5台まで無料)。SUSEではユーザー空間ライブパッチングまで提供されています(glibc と openssl のみ)<ref>[https://documentation.suse.com/ja-jp/sles/15-SP6/html/SLES-all/cha-ulp.html ユーザ空間ライブパッチ - 管理ガイド - SLES 15 SP6] SUSE</ref>。
; RedHat / Fedora
: <code>yum update</code>コマンド
; Android
: 「設定」アプリ→「システム」→「システムアップデート」または「ソフトウェアアップデート」
また個々のハードウェアのファームウェアアップデートは以下で行います:
; Linux
: Linuxにおけるファームウェアの更新は基本的に<code>fwupdmgr update</code>コマンドで行います。
: NVMe SSDのファームウェアの更新は<code>nvme fw-download</code>コマンドおよび<code>nvme fw-commit</code>コマンドで行うことができます。
一方、Windows ではファームウェアのアップデートも Windows Update 経由で<ref>[https://learn.microsoft.com/ja-jp/windows-hardware/drivers/bringup/firmware-update ファームウェアの更新] Microsoft</ref>、macOS ではファームウェアのアップデートもmacOSアップデートで行うことができます<ref>[https://support.apple.com/ja-jp/guide/mac-help/mchlp2609/mac Macのファームウェアアップデートの入手方法] Apple</ref>。
<!--
また開発環境では以下も存在します:
; Python
: <code>pip -U install</code>
-->
==== ルーター ====
ルーターでは以下の設定を有効のままにしておきましょう:
; AirStationシリーズ(Buffalo 製ルーター)
: 「ファームウェア自動更新機能」
; Atermシリーズ(NEC 製ルーター)
: 「メンテナンスバージョンアップ機能」「時刻指定バージョンアップ機能」
==== テレビ ====
テレビでは放送波アップデートが行われるため、「放送波による自動更新」<!--TODO: メーカー別名-->を有効にしましょう。
=== 高速に再起動する ===
パッケージは更新しただけでは反映されません(一部デーモンの更新を除く)。Linuxでは高速に再起動する方法が存在し、これによってダウンタイムを減らすことができます。
; 更新で影響を受けるデーモンのみ再起動する
:* Ubuntu Server: 標準で <code>needrestart</code> が導入されており自動で影響を受けるデーモンの再起動が行われます{{efn|自動的なデーモン再起動を止めるには /etc/apt/apt.conf.d/99needrestart より<code>-m u</code>を削除する必要があります<ref>[https://discourse.ubuntu.com/t/needrestart-changes-in-ubuntu-24-04-service-restarts/44671 `needrestart` changes in Ubuntu 24.04: service restarts] Canonical 2024年</ref>。}}(Ubuntu Desktopでは別途導入が必要)。
:* RedHat / Fedora: <code>dnf needs-restarting</code>が導入されており、それによって再起動するべきデーモンを確認できます。
; ユーザー空間のみ再起動する(カーネルの更新がない、またはカーネルでlive patchingを行ってる場合)
: <code>sudo systemctl soft-reboot</code>
; 高速にカーネルを更新する(ファームウェアの更新がない場合)
: <code>sudo systemctl kexec</code>
また一部のソフトウェアではホットアップグレード(無停止アップグレード{{efn|Zero-Downtime Upgrade}})にも対応しています (nginx の USR2 シグナル<ref>[https://nginx.org/en/docs/control.html Controlling nginx] nginx</ref>など)。
=== 代替ソフトウェアを探す ===
更新が停止された古いソフトウェアの多くはそれ自身に脆弱性が存在したり、脆弱性のある古いライブラリに依存していたりします。そのため古いソフトウェアは速やかに代替ソフトウェアへと移行しましょう。
==== 開発終了したソフトウェアから現役のソフトウェアへ ====
古いソフトウェアには例えば以下があります:
* オフィススイート(代替候補: LibreOffice)
** [[:w:OpenOffice.org|OpenOffice.org]](〜2011年)
* 画像ビューア
** [[:w:Susie|Susie]] (〜2013年)
* メディアプレイヤー
** [[:w:QuickTime|QuickTime]] for Windows(〜2016年) - リモートコード実行の脆弱性 ([https://www.zerodayinitiative.com/advisories/ZDI-16-241/ ZDI-16-241]、[https://www.zerodayinitiative.com/advisories/ZDI-16-242/ ZDI-16-242]) を残したままサポート終了しました<ref>[https://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/753400.html Apple、「QuickTime for Windows」のサポートを終了、アンインストールを推奨] Impress 2016年4月15日</ref>。
* メディアフィルター(代替候補: LAV Filters)
** [[:w:ffdshow|ffdshow]](〜2014年)
** [[:w:Haali Media Splitter|Haali Media Splitter]](〜2013年)
* メディアセンター(代替候補: Kodi)
** [[:w:en:Boxee|Boxee]](〜2011年)
** [[:w:Kodi|XBMC]](〜2014年) - Kodiの前身
* 圧縮ソフトウェア
** [[:w:+Lhaca|+Lhaca]](〜2007年)
** [[:w:Lhaplus|Lhaplus]](〜2017年)
またハードウェアに由来する古いソフトウェアには例えば以下があります:
* [[w:ウォークマン|ウォークマン]]関連(代替候補: [[:w:Music Center for PC|Music Center for PC]])
** [[:w:CONNECT Player|CONNECT Player]](〜2007年、Sony)
** [[:w:SonicStage|SonicStage]](〜2009年、Sony)
** [[:w:x-アプリ|x-アプリ]](〜2016年、Sony)
* DTCP-IP関連
** SmartVision/PLAYER powered by DiXiM(〜2019年、NEC)<ref>[https://support.nec-lavie.jp/navigate/support/info/2019/announce/svp/ SmartVision/PLAYER保守サービス終了のお知らせ] NECパーソナルコンピュータ 2019年1月28日</ref><ref>[https://apps.microsoft.com/detail/9wzdncrdkb4c?hl=ja-JP&gl=JP SmartVision/PLAYER powered by DiXiM] Microsoft</ref>
** DiXiM Digital TV plus for I-O DATA(〜2022年、I-O DATA)<ref>[https://www.iodata.jp/lib/product/d/3533.htm DiXiM Digital TV plus for I-O DATA] I-O DATA</ref>
なお仮想マシンを使って隔離しながら古いソフトウェアを動かすこともできますが、仮想マシンでも「VMエスケープ」の脆弱性を使用することでホスト環境への侵害が可能なため、仮想マシンの上で弱い環境や弱いソフトウェアを使うこともなるべく避けましょう。<!--TODO: Windows Sandbox-->
==== 古いバージョンのライブラリを避ける ====
多くのソフトウェアに使用されているライブラリとその過去の危険な脆弱性には例えば以下があります:<!--危険を認識させる。例はライブラリ内のメイン処理に存在し、任意コード実行であり、脆弱性の存在期間が長く、新しいものが好ましい。-->
* 画像ライブラリ
** libpng - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2010-1205 CVE-2010-1205](PNG画像で任意コード実行の可能性)
** libjpeg-turbo - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2012-2806 CVE-2012-2806](JPEG画像で任意コード実行の可能性)
** OpenJPEG - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2025-54874 CVE-2025-54874](JPEG2000画像で任意コード実行の可能性)
** libtiff - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2026-12912 CVE-2026-12912](PixarLog圧縮TIFF画像で任意コード実行の可能性)
** libwebp - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2023-4863 CVE-2023-4863](WebP画像で任意コード実行の可能性)
* 動画ライブラリ
** FFmpeg - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2024-22860 CVE-2024-22860](JPEG XLアニメーションで任意コード実行の可能性)
* 圧縮ライブラリ
** libarchive - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2026-15028 CVE-2026-15028](tarアーカイブ形式で任意コード実行の可能性)
** zlib - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2002-0059 CVE-2002-0059](Deflate圧縮形式で任意コード実行の可能性)
** bzip2 - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2010-0405 CVE-2010-0405](BZ2圧縮形式で任意コード実行の可能性)
これらのライブラリはABI(アプリケーションバイナリインターフェイス)が変更されて新しいバージョンの共有ライブラリにドロップイン置換できないものも多くなっています。
また国内で使われている古いソフトウェアでは開発中止になった以下のライブラリも問題となっています:
* UNLHA32.DLL<ref>[https://forest.watch.impress.co.jp/docs/news/372729.html 圧縮・解凍用DLL「UNLHA32.DLL」が開発中止、作者はLZHの利用中止を呼びかけ] Impress 2010年6月7日</ref>
Webフレームワークでは開発中止となった以下のフレームワークが問題となっています:
* [[:w:Model View Controller|Model View Controller]]フレームワーク(代替候補: [[:w:Apache Struts|Apache Struts]] 2、[[:w:Spring Framework#Model-View-Controller フレームワーク|Spring MVC]])
** [[:w:en:Apache Struts 1|Apache Struts 1]](〜2008年) - Java言語
* [[:w:アスペクト指向プログラミング|アスペクト指向フレームワーク]](代替候補: [[:w:Spring Framework|Spring Framework]]、[[:w:en:Micronaut (framework)|Micronaut]])
** [[:w:Seasar|Seasar]](〜2016年) - Java言語
* [[:w:シングルページアプリケーション|シングルページアプリケーション]]フレームワーク(代替候補: [[:w:Angular|Angular]]、[[:w:Vue.js|Vue.js]])
** [[:w:AngularJS|AngularJS]](〜2022年) - JavaScript
=== 古いハードウェアに対処する ===
サポート切れの OS を搭載したハードウェアはどうすれば良いでしょうか。これには使い続けるいくつかの方法がありますが、基本的にオススメしません。古い OS を搭載していたハードウェアはハードウェア仕様も古いからです。
==== スタンドアロン運用 ====
古いハードウェアはインターネットに繋がずに使用すること(スタンドアロン運用)も可能です。
しかしながらUSBメモリでデータをやり取りする場合はUSBメモリ経由での感染などのリスクは残ります。
==== 新しめのLinuxを導入 ====
新しめのLinuxを導入するという方法もあります。
これに適したものでは例えばWindows 11非対応のPC (Intel 第7世代以前、AMD Ryzen 1000シリーズ以前) が挙げられます。
またスマートフォンやタブレットであればカスタムROMが、ルーターであればDD-WRTやOpenWRTが存在します。
==== 手放す ====
手に負えなければデータだけバックアップして手放しましょう。情報が漏れないよう初期化も忘れずに。
== 潜在的な脆弱性を減らす ==
現代のプログラムでは以下のような保護が行われています。
=== メモリアドレスの推測困難化 ===
攻撃に必要なコード片(ガジェット)のメモリアドレスを推測しにくくするために、カーネル空間、ユーザー空間の両方で[[:w:アドレス空間配置のランダム化|アドレス空間配置のランダム化]](ASLR)が行われています。カーネル空間の ASLR は KASLR (Kernel ASLR) とも呼ばれています。
ユーザー空間のプログラムで ASLR を有効にするためには[[:w:位置独立コード|位置独立コード]] (PIC) / 位置独立実行形式 (PIE) である必要があります。Unix で使われる実行形式の ELF では位置独立実行形式が ET_DYN、非位置独立実行形式 (non-PIE) が ET_EXEC となります。
Linuxでは ASLR が無効となる非位置独立実行形式のファイルを以下で検索することができます:
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ # License: CC0 / Public Domain
$ # 非位置独立実行形式 (non-PIE) のバイナリを検索
$ find / -type f -executable 2>/dev/null | xargs -I {} sh -c 'LANG=C readelf -h {} 2>/dev/null | grep -E "Type:.*EXEC" >/dev/null && echo {}'
/usr/lib/default.sfx
/usr/lib/klibc/bin/mkfifo
/usr/lib/klibc/bin/zcat
/usr/lib/klibc/bin/poweroff
[...]
$ # 非位置独立実行形式 (non-PIE) のバイナリを含むDebianパッケージを検索
$ find / -type f -executable 2>/dev/null | xargs -I {} sh -c 'LANG=C readelf -h {} 2>/dev/null | grep -E "Type:.*EXEC" >/dev/null && echo {}' | xargs -r -d '\n' -n1 dpkg-query -S | sed 's/: .*//' | sort -u
aidl
busybox-static
code
cpp-15-x86-64-linux-gnu
cuda-gdb-13-4
cuda-nvcc-13-4
cuda-sanitizer-13-4
cuda-tileiras-13-4
debugedit
g++-15-x86-64-linux-gnu
gcc-15-x86-64-linux-gnu
gcc-mingw-w64-i686-posix
gdc-15-x86-64-linux-gnu
gds-tools-13-4
gfortran-15-x86-64-linux-gnu
gh
git-lfs
gobjc-15-x86-64-linux-gnu
gocryptfs
golang-1.26-go
go-md2man
go-mtpfs
[...]
</syntaxhighlight>
現在のLinuxカーネルがユーザー空間 ASLR を有効にしているかは以下で確認できます (出力例はUbuntu 26.04):
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ sysctl kernel.randomize_va_space # 0=無し、1=部分的、2=完全
kernel.randomize_va_space = 2
</syntaxhighlight>
また現在のLinuxカーネルがカーネル ASLR (KASLR) を有効にしているかは以下で確認できます (出力例はUbuntu 26.04):
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ grep 'CONFIG_RANDOMIZE_BASE' /boot/config-$(uname -r) # y=Yes, n=No
CONFIG_RANDOMIZE_BASE=y
</syntaxhighlight>
なお ASLR は間接的な関数呼び出し( C++ の vtable を含む)があると、そのアドレスから ASLR のオフセットがバレてしまい突破されてしまいます。
また CPU の[[:w:投機的実行|投機的実行]]での情報漏れ (Spectre) による[[:w:キャッシュ攻撃|キャッシュサイドチャネル攻撃]](後述)の一つである「投機的探査」 (BlindSide) によってもコードの位置情報の取得がされ ASLR が突破されてしまいます。
=== 投機的実行の情報漏れ防止 ===
前述のとおり、投機的実行による情報漏れ (Spectre) は攻撃に繋がります。Spectre には境界チェックを迂回する Spectre V1 と間接分岐の分岐先アドレスのキャッシュ{{efn|分岐先バッファ (Branch Target Buffer、BTB)や分岐先アドレスキャッシュ (Branch Target Address Cache、BTAC) と呼ばれる。}}を汚染する Spectre V2 が存在します。<!--TODO: Spectre v3/v4、Zenbleed-->
Spectre V1 を防ぐ方法としては投機的実行を阻害するための命令(x86ではLFENCE)の挿入{{efn|Linuxカーネルでの投機的実行の防止は<code>barrier_nospec()</code>。}}やアクセスできるアドレス範囲を狭めることが行われています{{efn|GCCでの投機的実行での範囲外アクセス防止は<code>__builtin_speculation_safe_value(...)</code>、Linuxカーネルでの投機的実行での範囲外アクセス防止は<code>array_index_nospec(...)</code><ref>[https://lwn.net/Articles/759423/ Spectre V1 defense in GCC] LWN 2018年7月10日</ref>。}}。
また Spectre V2 では攻撃を防ぎながらも速度を落とさない方法として脆弱な分岐先アドレスキャッシュに依存する間接分岐の代わりにリターンアドレスのキャッシュ{{efn|リターンスタックバッファ (RSB) と呼ばれる。}}に依存するリターン命令を使う retpoline が登場しました。しかしながらこの retpoline でも速度の低下は起こるため、既知の間接呼び出しを条件分岐 + 直接呼び出しに変換して高速化する手法が模索されました。LLVM では retpoline を有効にする <code>-mretpoline</code>フラグの処理内に既知の仮想関数呼び出しを[[:w:二分木|二分木]]の直接分岐に置き換える「分岐ファネル」(Branch funnel) が導入されています<ref>[https://reviews.llvm.org/D42453 Use branch funnels for virtual calls when retpoline mitigation is enabled.] LLVM project</ref>。また Linux カーネルでも既知の間接呼び出しを条件分岐 + 直接呼び出しに変換する INDIRECT_CALL_* マクロが搭載されています<ref>[https://lwn.net/Articles/774743/ Relief for retpoline pain] LWN 2018年12月14日</ref>。<!--TODO: Intel CETのSHSTKとretpolineの衝突-->
一方、リターン命令の投機的実行も「Retbleed」や AMD CPU における「投機的リターンスタックオーバーフロー」 (SRSO){{efn|Speculative Return Stack Overflow。}}のような脆弱性が見つかっています。
なお低権限コードから高権限コードへの権限境界をまたいだ Spectre および Retbleed は Intel の「間接分岐制限付き投機」(IBRS){{efn|Indirect Branch Restricted Speculation。}}およびそれを高速化した「拡張IBRS」(eIBRS) などハードウェア側によって塞がれました<ref>[https://www.intel.com/content/www/us/en/developer/articles/technical/software-security-guidance/technical-documentation/hardware-behavior-related-to-speculative-execution.html Hardware Features and Behavior Related to Speculative Execution] Intel 2026年10月14日</ref>が、権限境界をまたがないものは今も可能となっています。
=== メモリにおける書き込みと実行の排他化 (W^X) ===
メモリでは書き込み可能領域の実行不可化 ([[:w:NXビット|NXビット]]) と実行可能領域の書き込み不可化による書き込みと実行の排他化([[:w:en:W^X|W^X]])が一般的となっています。NXビットは x86 では NXビットは AMD64 と共に搭載された古い機能であるため、今時の CPU と OS は基本的にこれに対応しています。
現在の CPU がNXビットを有効にしているかはLinuxでは以下で確認できます:
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ grep '^flags' /proc/cpuinfo | grep -o nx
nx
nx
[...]
</syntaxhighlight>
現在のLinuxカーネルが厳格な W^X を有効にしているかは以下で確認できます (出力例はUbuntu 26.04):
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ grep '_RWX' /boot/config-$(uname -r) # y=Yes, n=No
CONFIG_ARCH_HAS_STRICT_KERNEL_RWX=y
CONFIG_STRICT_KERNEL_RWX=y
CONFIG_ARCH_HAS_STRICT_MODULE_RWX=y
CONFIG_STRICT_MODULE_RWX=y
</syntaxhighlight>
しかしながら書き込みと実行の排他の原則を破ってそれらを同時に行える場所というものも存在しています。読み込み・書き込み・実行が可能なことから「RWXセクション」と呼ばれています。Windows ではメモリページの PAGE_EXECUTE_READWRITE フラグがこれに相当します<ref>[https://learn.microsoft.com/ja-jp/windows/win32/memory/memory-protection-constants メモリ保護定数] メモリ保護定数 (WinNT.h) - Win32 apps | Microsoft Learn</ref>。
Windows のカーネルドライバでは NX フラグの使用が義務付けられています<ref>[https://learn.microsoft.com/en-us/windows-hardware/test/hlk/testref/driver-compatibility-with-device-guard メモリ整合性と VBS とのドライバ互換性] Microsoft</ref>が、その Windows カーネルにおいても PatchGuard の領域がコード難読化のためにこの原則を破っています。<!--TODO: ホットパッチ-->
また Linux でも実行可能領域を書き込み可能ページとして割り当てて書き込む text_poke 関数が用意されています。
=== 制御フローの操作を防ぐ (CET) ===
現代では「[[:w:Return-oriented programming|リターン指向プログラミング]]」(ROP)、「呼び出し指向プログラミング」 (COP)、「ジャンプ指向プログラミング」(JOP) 、「[[:en:Sigreturn-oriented programming|Sigreturn指向プログラミング]]」(SROP) などの制御フロー操作による攻撃が一般化していますが、これを防ぐ技術として「[[:w:en:Control-flow integrity#Intel Control-flow Enforcement Technology|制御フロー強制テクノロジー]]」(CET) の「[[:w:en:Indirect branch tracking|間接分岐追跡]]」(IBT) と「[[:w:en:Shadow stack|シャドウスタック]]」(SHSTK) が存在します。
制御フロー強制は比較的新しい技術であるため、対応する CPU は以下に限られます:
* Intel Core (Tiger Lake) 第11世代以降
* AMD Zen 3 以降(シャドウスタックのみ)
現在の CPU が間接分岐追跡 (IBT) およびシャドウスタックに対応しているかはLinuxでは以下で確認できます:
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ grep '^flags' /proc/cpuinfo | grep -oE '(ibt|shstk)'
shstk
ibt
shstk
ibt
[...]
</syntaxhighlight>
またユーザーランドのシャドウスタックの使用にはユーザーランドだけでなくカーネルの対応も必要となります。Linux カーネル では 6.6 以降対応でこれに対応しています(sigreturnにも対応<ref>[https://github.com/torvalds/linux/commit/05e36022c0543ba55a3de55af455b00cb3eb4fcc x86/shstk: Handle signals for shadow stack · torvalds/linux@05e3602] GitHub 2023年8月3日</ref>)。 Linuxディストリビューションでは Ubuntu 24.04以降、 Red Hat Enterprise Linux 9.7 以降<ref>[https://docs.redhat.com/ja/documentation/red_hat_enterprise_linux/9/html/9.7_release_notes/new-features-kernel 4.8. カーネル - 9.7 リリースノート - Red Hat Enterprise Linux - 9 - Red Hat Documentation] Red Hat</ref>が標準でシャドウスタックを有効としています。
現在のLinuxカーネルが間接分岐追跡およびシャドウスタックを有効にしているかは以下で確認できます (出力例はUbuntu 26.04):
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ grep -E '_(IBT|SHADOW_STACK)' /boot/config-$(uname -r) # y=Yes, n=No
CONFIG_CC_HAS_IBT=y
# CONFIG_X86_KERNEL_IBT is not set
CONFIG_X86_USER_SHADOW_STACK=y
CONFIG_X86_DISABLED_FEATURE_IBT=y
CONFIG_ARCH_HAS_USER_SHADOW_STACK=y
</syntaxhighlight>
現在のユーザーランドプログラムの中で間接分岐追跡またはシャドウスタックが無効化されているものはLinuxでは以下で確認できます:
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ # License: CC0 / Public Domain
$ # 間接分岐追跡またはシャドウスタックが無効化されているバイナリを検索
$ find / -type f 2>/dev/null | xargs -I {} sh -c 'readelf -h "{}" >/dev/null 2>&1 && (readelf -n "{}" 2>/dev/null | grep -E IBT,.*SHSTK > /dev/null || echo "{}")'
/usr/lib/lv2/carla.lv2/carla.so
/usr/lib/7zip/7z
/usr/lib/7zip/7zCon.sfx
/usr/lib/7zip/7zr
/usr/lib/7zip/7z.so
/usr/lib/7zip/7za
/usr/lib/klibc/bin/ipconfig
/usr/lib/klibc/bin/umount
/usr/lib/klibc/bin/halt
[...]
$ # 間接分岐追跡またはシャドウスタックが無効化されているバイナリを含むDebianパッケージを検索
$ find / -type f 2>/dev/null | xargs -I {} sh -c 'readelf -h "{}" >/dev/null 2>&1 && (readelf -n "{}" 2>/dev/null | grep -E IBT,.*SHSTK > /dev/null || echo "{}")' | xargs -r -d '\n' -n1 dpkg-query -S | sed 's/: .*//' | sort -u
7zip
aidl
ardour
avr-libc
cargo-1.93
carla
carla-bridge-wine32:i386
carla-bridge-wine64
carla-lv2
carla-vst
cuda-ctadvisor-13-4
cuda-cudart-13-4
[...]
</syntaxhighlight>
なお、制御フロー強制テクノロジーの間接分岐追跡とシャドウスタックが有効であっても異なる関数の通常呼び出しは防げません。分かりやすい例では関数の間接呼び出しにおいて関数ポインタを<code>sigaction</code>へと変更して独自のシグナルハンドラを登録し、その後クラッシュさせてそのシグナルハンドラを呼び出すという「セグメンテーション違反指向プログラミング」(SFOP) が挙げられます。また攻撃に使える関数 (dop gadgets) {{efn|dop gadgetsの検索の公式実装は「DOP-StaticAssist」[https://github.com/melynx/DOP-StaticAssist]だが長らく更新されておらず古いLLVM 3.5に依存している状態となっている。}}の通常呼び出しだけで攻撃する「Data-Oriented Programming」(DOP) <ref>Hong Hu et al. [https://ieeexplore.ieee.org/stamp/stamp.jsp?tp=&arnumber=7546545 Data-Oriented Programming: On the Expressiveness of Non-Control Data Attacks] IEEE 2016年</ref>{{efn|セキュリティ以外の文脈におけるデータ指向プログラミング、データ指向設計、データ駆動型設計とは異なる。}}という手法も存在します。
C++向けでは仮想関数テーブル (vtable) を改ざんして攻撃に使える仮想関数(仮想関数ガジェット、vfgadget)を呼び出す「偽造オブジェクト指向プログラミング」(COOP) という攻撃手法も登場しています。
=== メモリ安全性の高いソフトウェアへ ===
既存のソフトウェアの脆弱性は7割がメモリ安全性の問題に起因すると言われています<ref>[https://www.cisa.gov/sites/default/files/2023-12/CSAC_TAC_Recommendations-Memory-Safety_Final_20231205_508.pdf REPORT TO THE CISA DIRECTOR Technical Advisory Council Memory Safety] サイバーセキュリティ諮問委員会 (CSAC) 2023年12月5日</ref>。しかしながら[[C言語]]や[[C++]]はメモリ安全性が低いため、メモリ安全性の確保できる[[Rust]]などで書かれた代替プログラムが登場しています:
{| class="wikitable"
|+ コマンドのRust版
|-
! コマンドの概要 !! 従来版 !! Rust版
|-
| Unix系の基本コマンド群 || GNU Core Utilities || '''uutils coreutils'''
|-
| ファイル検索コマンド群{{efn|<code>find</code>、<code>locate</code>、<code>updatedb</code>、<code>xargs</code>の4コマンド}} || GNU Findutils || '''uutils findutils'''
|-
| ファイル差分コマンド群{{efn|<code>diff</code>、<code>cmp</code>、<code>diff3</code>、<code>sdiff</code>の4コマンド}} || GNU Diffutils || '''uutils diffutils'''
|-
| ストリームエディタ (sed) || GNU sed / FreeBSD sed || '''uutils sed'''
|-
| AWKスクリプト || GNU AWK || '''uutils AWK'''
|-
| 文字列検索 || GNU Grep || '''uutils Grep'''
|-
| tarアーカイブ || GNU Tar || '''uutils tar'''
|-
| アカウント管理コマンド群 || shadow-utils || '''uutils shadow-utils'''
|-
| アクセス制御コマンド群{{efn|<code>chacl</code>、<code>getfacl</code>、<code>setfacl</code>の3コマンド}} || acl || '''uutils acl'''
|-
| procfs{{efn|プロセスファイルシステム}}表示コマンド群 || procps / procps-ng || '''uutils procps'''
|-
| ホスト名管理コマンド群{{efn|<code>hostname</code>、<code>dnsdomainname</code>、<code>domainname</code>、<code>nisdomainname</code>、<code>ypdomainname</code>の5コマンド。}} || hostname || '''uutils hostname'''
|-
| Linuxユーティリティ || util-linux || '''uutils util-linux'''
|-
| 権限昇格 || sudo || '''sudo-rs'''
|-
| 暗号・署名システム || GnuPG || '''Sequoia PGP'''
|-
| 時刻同期 || ntpd || '''ntpd-rs'''
|-
| セキュアシェル (SSH) || OpenSSH || '''russh'''
|}
これらのRustで書かれたコマンドのうちuutils coreutilsとsudo-rsはUbuntuに採用されています。
またライブラリでもRustだけ (Pure Rust) で実装されたものが登場しています:
* 画像ライブラリ - これらは例えばGNOMEデスクトップ環境の画像ローダーGlycinから使われています<ref>[https://gitlab.gnome.org/GNOME/glycin GNOME / glycin · GitLab] GNOME Project</ref>。
** libpng → pngクレート - PNG画像向け。
** libgif → gifクレート - GIF画像向け。
** libjpeg / libjpeg-turbo → zune-jpeg / libjpeg-turbo-rs - JPEG画像向け。
** OpenJPEG → hayro-jpeg2000 - JPEG 2000画像向け。
** libtiff → tiffクレート - Tiff画像向け
** libwebp → image-webpクレート - WebP画像向け。
** libraw → libopenraw - RAW画像向け。
** librsvg - SVG画像向け。C言語からRustに書き直しされました。
* 圧縮ライブラリ
** zlib / zlib-ng → zlib-rs - Deflate圧縮向け
** libbzip2 → bzip2-rs - BZ2圧縮向け
* 暗号化ライブラリ
** OpenSSL / GnuTLS → [[:w:en:Rustls|Rustls]]
* Unicode処理ライブラリ
** ICU4C → ICU4X
* テキスト整形ライブラリ
** HarfBuzz → HarfRust
* ブラウザエンジン
** Blink/Gecko → Servo
<!--
=== 整合性チェック ===
PatchGuard / HyperGuard
-->
== 不審な改変が行われていないかを調べる ==
例えばOSの起動には一連のシーケンスがありますが、マルウェアは基本的にここの途中に入り込んで永続化します。
{| class="wikitable"
|+ 起動シーケンス
|-
! 種類 || Windows 11以降 !! Linux (Gnome) !! Linux (KDE)
|-
| 1. 起動ファームウェア || [[:w:Unified Extensible Firmware Interface|UEFI]] || colspan=2 | [[:w:Basic Input/Output System|レガシーBIOS]] / UEFI
|-
| 2. ブートローダー || [[:w:Windows Boot Manager|Windows Boot Manager]] (bootmgfw.efi)<br> → [[:w:Windows Boot Manager#winload.exe/winload.efi|Windows OS Loader]] (winload.efi) || colspan=2 | GRUB{{efn|Ubuntuの標準。}} / systemd-boot / Unified Kernel Image{{efn|Linuxカーネルとブートイメージを単一バイナリにする仕組み。}} / EFI boot stub{{efn|LinuxカーネルをEFIから直接ブートできるようにする仕組み。}}
|-
| 3. カーネル || [[:w:ntoskrnl.exe|ntoskrnl.exe]] || colspan=2 | Linuxカーネル ([[:w:vmlinux|vmlinux]]{{efn|圧縮後はvmlinuzとなる。}})
|-
| 4. 初期化プロセス || [[:w:en:Session Manager Subsystem|smss.exe]]<br> → wininit.exe<br> || rowspan=2 colspan=2 | [[:w:systemd|systemd]]{{efn|以前は代替initもよく使われていたが、今はsystemdが標準となっている。}}
|-
| 5. サービスコントロールマネージャ || colspan=2 | [[:w:en:Service Control Manager|services.exe]]
|-
| rowspan=2 | 6. ログインマネージャ || rowspan=2 | [[:w:Winlogon|winlogon.exe]] || colspan=2 | systemd-logind<br>sd-pam
|-
| [[:w:GNOME ディスプレイマネージャー|GDM]] || [[:w:Simple Desktop Display Manager|SDDM]]
|-
| rowspan=2 | 7. ユーザー初期化プロセス || rowspan=2 | userinit.exe || colspan=2 | systemd
|-
| gnome-session || kcminit<br> → plasma_session
|-
| 8. シェル || [[:w:Windows Explorer|explorer.exe]] || gnome-shell || plasmashell
|-
| 9. コンポジタ || [[:w:Desktop Window Manager|dwm.exe]] || mutter || kwin
|}
また起動シーケンス以外にもアップデートシーケンスへの感染やシェル感染、ブラウザ感染もあります。
{| class="wikitable"
|+ Windows における代表的なユーザースクリプト又はコマンド起動が可能な設定ファイル
|-
! 規格/アプリケーション !! ユーザー !! システム
|-
| Windows || %APPDATA%\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows\<wbr>Start Menu\<wbr>Programs\<wbr>Startup\<wbr>* || C:\<wbr>ProgramData\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows\<wbr>Start Menu\<wbr>Programs\<wbr>Startup\<wbr>*
|-
| [[:w:PowerShell|PowerShell]] プロファイル<ref>[https://learn.microsoft.com/ja-jp/powershell/module/microsoft.powershell.core/about/about_profiles?view=powershell-7.6 about_Profiles - PowerShell - Microsoft Learn] Microsoft</ref> || %USERPROFILE%\<wbr>Documents\<wbr>PowerShell\<wbr>Profile.ps1<br>%USERPROFILE%\<wbr>Documents\<wbr>PowerShell\<wbr>Microsoft.PowerShell_profile.ps1 || C:\<wbr>Windows\<wbr>System32\<wbr>WindowsPowerShell\<wbr>*\<wbr>Profile.ps1<br>C:\<wbr>Windows\<wbr>System32\<wbr>WindowsPowerShell\<wbr>*\<wbr>Microsoft.PowerShell_profile.ps1
|}
{| class="wikitable"
|+ Linux における代表的なユーザースクリプト又はコマンド起動が可能な設定ファイル
|-
! 規格/アプリケーション !! ユーザー !! システム
|-
| POSIX標準 || ~/.profile || /etc/profile
|-
| XDG Base Directory<wbr>標準 || ~/.local/bin/* ||
|-
| FHS{{efn|Filesystem Hierarchy Standard}}<wbr>標準[https://refspecs.linuxfoundation.org/fhs.shtml] || || /bin/* /sbin/* /usr/bin/* /usr/local/bin/* /etc/inittab
|-
| LSB{{efn|Linux Standard Base}}<wbr>標準[https://refspecs.linuxfoundation.org/lsb.shtml] || || /etc/profile.d/* /etc/init.d/* /etc/cron.d/*
|-
| Desktop Application Autostart Specification<wbr>標準[https://specifications.freedesktop.org/autostart/latest/] || ~/.config/autostart/* || /etc/xdg/autostart/*
|-
| Bash || ~/.bash_profile ~/.bashrc || /etc/bash_profile /etc/bash.bashrc /etc/bash.bash_logout
|-
| Z shell (Zsh) || ~/.zshenv ~/.zprofile ~/.zshrc ~/.zlogin ~/.zlogout || /etc/zshenv /etc/zprofile /etc/zshrc /etc/zlogin /etc/zlogout<br/>(または /etc/zsh/zshenv /etc/zsh/zprofile /etc/zsh/zshrc /etc/zsh/zlogin /etc/zsh/zlogout)
|-
| Systemd || ~/.config/systemd/user/* || /etc/systemd/system/* /etc/systemd/user/*
|-
| Xorg || ~/.xinitrc ~/.xserverrc ~/.xsession || /etc/X11/xinit/xinitrc /etc/X11/xinit/xserverrc /etc/X11/Xsession /usr/share/xsessions/*
|-
| Wayland || || /usr/share/wayland-sessions/*
|-
| Python || ~/.local/lib/python*/site-packages/*/**{{efn|絶対パスは<code>python3 -c 'import site; print(site.getusersitepackages())'</code>で確認可能。}} || /usr/lib/python*/dist-packages/*/** /usr/local/lib/python*/dist-packages/*/**{{efn|絶対パスは<code>python3 -c 'import site; print(site.getsitepackages())'</code>で確認可能。}}
|-
| Perl{{efn|Debian/UbuntuではDebianパッケージ設定システム (debconf) のためにPerlを使用している。}} || || /usr/share/perl*/** /usr/local/share/perl*/** /usr/lib/*/perl*/** /usr/local/lib/*/perl*/**{{efn|絶対パスは<code>perl -V:installsitearch -V:installsitelib -V:installvendorarch -V:installvendorlib -V:archlib -V:privlib -V:installarchlib -V:installprivlib</code>で確認可能。}}
|}
=== パッケージ管理ファイルを検証する ===
パッケージ管理システムが管理しているファイルではファイルハッシュが保存されているため簡単にその検証を行うことが可能です:
* Windows: <code>sfc /scannow</code>
* Debian/Ububntu(Debパッケージ): <code>debsums -s</code>
* RedHat/Fedora(RPMパッケージ): <code>rpm -Va</code>
ただしローカルハッシュが改ざんされている可能性もあるため過信はできません。<!--TODO: ローカルハッシュの検証法-->
自動的にシステムの検証を行うシステムも存在します:
* Android - ブロックデバイスレベルでのハッシュ検証 (dm-verityベース)<ref>[https://source.android.com/docs/security/features/verifiedboot/dm-verity?hl=ja dm-verity の実装] Google</ref>
<!--
またUbuntuのSnapパッケージでもdm-verityの導入が進められています。
また特定言語のパッケージの検証は以下で可能です:
* PIP (Python): なし
-->
=== システム領域に不審なファイルが追加されていないかを調べる ===
システムの追加ファイルの検知にはパッケージシステムで管理されていないファイルの一覧を返す以下のようなツールが存在します:
* Debian / Ubuntu(Debパッケージ)向け: cruft-ngパッケージ(<code>cruft</code>コマンド)
上記の<code>cruft</code>コマンドでは設定ファイルだけ残っているパッケージのファイルも出てきてしまいます。そのため、これが邪魔な時は設定ファイルだけ残っているパッケージを<code>sudo apt purge '~c'</code>で削除しましょう。
=== ユーザー領域に不審なファイルが追加されていないかを調べる ===
ユーザースクリプトの書き換えや追加は検知が難しいです。<!--TODO: 良い方法を書く-->
共有ライブラリやスクリプトによるプラグイン追加も可能となっているため、こちらにも気をつけなければいけません。これには例えば以下があります:
{| class="wikitable"
|+ 代表的なユーザースクリプトや拡張機能のディレクトリパス
|-
! 種類 !! Windowsのパス !! macOSのパス !! Linuxのパス
|-
| Google Chrome 拡張機能 || %LOCALAPPDATA%\Google\Chrome\User Data\*\Extensions\ || ~/Library/Application Support/Google/Chrome/*/Extensions/ || ~/.config/google-chrome/*/Extensions/
|-
| GIMPプラグイン<ref>[https://gimp.cc/faq/add-gimp-plugins.html How to Install GIMP Plugins - Detailed Guide with Troubleshooting] GIMP.cc</ref> || %APPDATA%\GIMP\*\plug-ins\ || ~/Library/Application Support/GIMP/*/plug-ins/ || ~/.config/GIMP/*/plug-ins/
|-
| Blenderスクリプト{{efn|起動スクリプト、アドオンを含む。}}<ref>[https://docs.blender.org/manual/ja/dev/advanced/blender_directory_layout.html Blender's Directory Layout] Blender Foundation</ref> || %APPDATA%\Blender Foundation\Blender\*\scripts\ || ~/Library/Application Support/Blender/*/scripts/ || ~/.config/blender/*/scripts/
|-
| Ardourスクリプト<ref>[https://manual.ardour.org/lua-scripting/ The Ardour Manual - Lua Scripting] Ardour</ref> || %LOCALAPPDATA%\ardour*\scripts\ || ~/Library/Preferences/Ardour*/scripts/ || ~/.config/ardour*/scripts/
|-
| LibreOfficeスクリプト || %APPDATA%\LibreOffice\*\user\Scripts\ || ~/Library/Application Support/LibreOffice/*/user/Scripts/ || ~/.config/libreoffice/*/user/Scripts/
|-
| Visual Studio Code 拡張機能<ref>[https://code.visualstudio.com/docs/configure/extensions/extension-marketplace Extension Marketplace] Microsoft</ref> || %USERPROFILE%\.vscode\extensions\ || ~/.vscode/extensions/ || ~/.vscode/extensions/
|}
=== 改変・追加されたファイルが危険かを調べる ===
実行ファイルやスクリプトはLinuxでは以下で検出できます:
<syntaxhighlight lang="shell-session">
# cat filelist.txt | xargs file | grep -i -E ':.*(executable|shared object|relocatable|script)'
/etc/init.d/binfmt-support.dpkg-new: POSIX shell script, ASCII text executable
/etc/update-motd.d/99-livepatch-kernel-upgrade-required: POSIX shell script, ASCII text executable
/usr/lib/chromium-browser/plugins/libpepflashplayer.so: ELF 64-bit LSB shared object, x86-64, version 1 (SYSV), dynamically linked, BuildID[sha1]=5c421e89a5c062a2106a5a4381dc38e779a22795, stripped
</syntaxhighlight>
またClamAVを導入していれば以下でマルウェアデータベースとの照合を行うことができます:
<syntaxhighlight lang="shell-session">
# cat filelist.txt | xargs clamscan
Loading: 3s, ETA: 0s [========================>] 3.63M/3.63M sigs
Compiling: 1s, ETA: 0s [========================>] 41/41 tasks
/etc/apt/apt.conf.d/00trustcdrom: OK
/etc/apt/auth.conf.d/90ubuntu-advantage: OK
/etc/apt/keyrings/google.asc: OK
[...]
----------- SCAN SUMMARY -----------
Known viruses: 3628164
Engine version: 1.5.4
Scanned directories: 125
Scanned files: 1919
Infected files: 0
Total errors: 10
Data scanned: 247.72 MiB
Data read: 281.17 MiB (ratio 0.88:1)
Time: 17.939 sec (0 m 17 s)
Start Date: 2026:10:11 05:41:30
End Date: 2026:10:11 05:41:48
</syntaxhighlight>
=== 設定データベースを検証する ===
設定データベースは Windows ではレジストリ、Linuxでは GNOME / MATEの 使う [[:en:dconf|dconf]] が存在します。
Windows の設定データベースはレジストリと呼び「レジストリエディタ」 (<code>regedit</code>) で表示できます。
{| class="wikitable"
|+ Windows における代表的なユーザースクリプト、コマンド起動、DLL呼び出しが可能なレジストリ
|-
! 規格/アプリケーション !! 各ユーザー !! 全ユーザー
|-
| Windows || HKEY_USERS\<wbr>*\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows\<wbr>CurrentVersion\<wbr>Run\<wbr>*<wbr>CurrentVersion\<wbr>Run\<wbr>*<br>HKEY_USERS\<wbr>*\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows\<wbr>CurrentVersion\<wbr>RunOnce\<wbr>*{{efn|name="runonce"|RunOnceは一度のみ実行だが再登録することで何回でも実行可能。}} || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows\<wbr>CurrentVersion\<wbr>Run\<wbr>*<br>HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows\<wbr>CurrentVersion\<wbr>RunOnce\<wbr>*{{efn|name="runonce"}}
|-
| [[:w:en:Security Account Manager|Security Account Manager]] || || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>SAM\<wbr>SAM\<wbr>Domains\<wbr>Account\<wbr>Users\<wbr>*\<wbr>V{{efn|name="sam"|'HKEY_LOCAL_MACHINE\SAM\SAM\' 以下はレジストリエディタの右クリックの「アクセス許可」で Administrators にアクセス許可を与えないと読めない。なおファイルパスは「C:\Windows\System32\config\SAM」。}}{{efn|Vはバイナリであり、0xCC + (0x60 に指定されたオフセット) からユーザーログオンスクリプトパスを指定する<ref name="sam-ghost">Sebastián R. Castro et al. [https://dl.acm.org/doi/pdf/10.1145/3689934.3690839 Ghost in the SAM: Stealthy, Robust, and Privileged Persistence through Invisible Accounts] ACM 2024年</ref>。}}
|-
| [[:w:en:Local Security Authority Subsystem Service|Local Security Authority Subsystem Service]] || || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>System\<wbr>CurrentControlSet\<wbr>Control\<wbr>LSA\<wbr>Notification Packages<br>HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>SYSTEM\<wbr>CurrentControlSet\<wbr>Control\<wbr>LSA\<wbr>Authentication Packages<ref>[https://attack.mitre.org/detectionstrategies/DET0207/ Detect LSA Authentication Package Persistence via Registry and LSASS DLL Load] MITRE Corporation</ref>
|-
| [[:w:en:Active Setup|Active Setup]]<ref>[https://www.advancedinstaller.com/application-packaging-training/msi/ebook/active-setup.html Active-Setup Mechanism] Advanced Installer</ref> || HKEY_USERS\<wbr>*\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Active Setup\<wbr>Installed Components\<wbr>*\<wbr>StubPath || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Active Setup\<wbr>Installed Components\<wbr>*\<wbr>StubPath<ref>[https://attack.mitre.org/techniques/T1547/014/ Boot or Logon Autostart Execution: Active Setup] MITRE Corporation</ref>
|-
| [[:w:Windowsサービス|Windowsサービス]]<ref>[https://learn.microsoft.com/ja-jp/windows-hardware/drivers/install/hklm-system-currentcontrolset-services-registry-tree HKLM\SYSTEM\CurrentControlSet\Services レジストリ ツリー - Windows drivers - Microsoft Learn] Microsoft</ref> || || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>SYSTEM\<wbr>CurrentControlSet\<wbr>services\<wbr>*
|-
| [[:w:Winlogon|Winlogon]] || || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows NT\<wbr>CurrentVersion\<wbr>Winlogon\<wbr>Shell<br>HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows NT\<wbr>CurrentVersion\<wbr>Winlogon\<wbr>Userinit<br>HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows NT\<wbr>CurrentVersion\<wbr>Winlogon\<wbr>Notify<ref>[https://attack.mitre.org/techniques/T1547/004/ Boot or Logon Autostart Execution: Winlogon Helper DLL] MITRE Corporation</ref>
|-
| [[:w:cmd.exe|cmd.exe]]<ref>[https://learn.microsoft.com/en-us/windows-server/administration/windows-commands/cmd cmd - Microsoft Learn] Microsoft</ref> || HKEY_USERS\<wbr>*\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Command Processor\<wbr>AutoRun\REG_EXPAND_SZ || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Command Processor\<wbr>AutoRun\<wbr>REG_SZ
|-
| [[Microsoft Edge]] || || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>SOFTWARE\<wbr>Policies\<wbr>Microsoft\<wbr>Edge\<wbr>ExtensionInstallForcelist<ref>[https://learn.microsoft.com/ja-jp/deployedge/microsoft-edge-policies/extensioninstallforcelist Microsoft Edge ブラウザー ポリシードキュメント ExtensionInstallForcelist - Microsoft Learn] Microsoft</ref>{{efn|name="silent-install"|自動的にサイレントインストールする}}
|-
| [[Google Chrome]] || || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>SOFTWARE\<wbr>Policies\<wbr>Google\<wbr>Chrome\<wbr>ExtensionInstallForcelist<ref>[https://chromeenterprise.google/intl/ja_jp/policies/extension-install-forcelist/ ExtensionInstallForcelist: 自動インストールするアプリと拡張機能のリストの設定 - Chrome Enterprise] Google</ref>{{efn|name="silent-install"}}
|}
Linux の GNOME / MATE 環境には「[[:w:en:Dconf#dconf database|dconf データベース]]」が存在し、それは<code>dconf dump</code>('/'区切り)で表示できます。また dconf データベースにスキーマ(規定値と解説)を被せた gsettings も存在し、こちらは<code>gsettings list-recursively</code>(dconfと異なり'.'区切り)で表示できます。
{| class="wikitable"
|+ Linux における代表的なユーザースクリプト又はコマンド起動が可能なdconf設定
|-
! 規格/アプリケーション !! ユーザー
|-
| GNOME Settings Daemon || /org/gnome/settings-daemon/plugins/media-keys/custom-keybindings/custom*/command
|-
| Marco ([[w:MATE (デスクトップ環境)|MATE]]) || /org/mate/Marco/keybinding-commands/command-*{{efn|変更した設定は<code>dconf dump /org/mate/Marco/keybinding-commands/</code>で、デフォルトも含めた設定は<code>gsettings list-recursively org.mate.Marco.keybinding-commands</code>で表示可能。}}
|-
| MATE Screensaver || /org/mate/screensaver/embedded-keyboard-command<br>/org/mate/screensaver/logout-command{{efn|変更した設定は<code>dconf dump /org/mate/screensaver/</code>、デフォルトも含めた設定は<code>gsettings list-recursively org.mate.screensaver</code> で表示可能}}
|-
| mate-applets || /org/mate/panel/objects/object-*/prefs/command
|-
| mate-sensors-applet || /org/mate/panel/objects/object-*/prefs/*/high-alarm-command<br>/org/mate/panel/objects/object-*/prefs/*/low-alarm-command
|}
なお MATE Screensaver と同源の GNOME Screensaver にも /org/gnome/desktop/screensaver/embedded-keyboard-command と /org/gnome/desktop/screensaver/logout-command{{efn|変更した設定は<code>dconf dump /org/gnome/desktop/screensaver/</code>、デフォルトも含めた設定は<code>gsettings list-recursively org.gnome.desktop.screensaver</code> で表示可能。}} が存在しますが、こちらは既に廃止されており指定しても無視されます<ref>[https://github.com/GNOME/gsettings-desktop-schemas/blob/main/schemas/org.gnome.desktop.screensaver.gschema.xml.in gsettings-desktop-schemas/schemas/org.gnome.desktop.screensaver.gschema.xml.in at main · GNOME/gsettings-desktop-schemas] GNOME Project</ref>。
=== メディアに不審なファイルが追加されていないかを調べる ===
メディアの自動実行 ([[:w:en:AutoRun|AutoRun]]) ファイルにもマルウェアが紛れてることがあります。
{| class="wikitable"
|+ メディアの自動実行ファイル
|-
! Windows !! Linux<br>(Desktop Application Autostart Specification<wbr>標準[https://specifications.freedesktop.org/autostart/latest/])
|-
| *:\[[:w:autorun.inf|autorun.inf]] || /media/*/*/.autorun<br>/media/*/*/autorun<br>/media/*/*/autorun.sh<br>/run/media/*/*/.autorun<br>/run/media/*/*/autorun<br>/run/media/*/*/autorun.sh
|}
== 改変を防ぐ ==
改変を探すのは大変です。なので最初から改変をできないようにすれば管理はとても楽になります。
改ざんを防ぐには「[[:w:en:Chain of trust|信頼の連鎖]]」 (chain of trust) が重要となります。例えばカーネルだけで改ざんを防いでも、ハードウェアのファームウェアが不正であれば不正なカーネルを起動できてしまいます。
=== ファームウェア改ざんを防ぐ ===
ファームウェア改ざんによる「ファームウェアルートキット」を防ぐにはIntel Management Engine (Intel ME)で実装されているIntel BIOS Guardを使う必要があります。<!--TODO: マザーボードによってはBIOSで有効にする必要があります。→最近のマザーボード事情-->
なお2017年の第8世代Intel Coreプロセッサ (Coffee Lake) 以前はme_cleanerによってIntel Management Engineの無効化が可能<ref>[https://github.com/corna/me_cleaner/wiki/me_cleaner-status me_cleaner status] Nicola Corna 2018年</ref>なため非推奨です。
また2023年のIntel ME 16.1.30.2307未満では悪意あるロゴ画像を設定することによってroot権限からUEFI設定の変更が可能です([[:w:en:LogoFAIL|LogoFAIL]]の脆弱性)。そのため、古いIntel Management Engineが動作している場合はそのファームウェアをアップデートしましょう。Windowsでは MEUpdateTool.exe / FWUpdLcl.exe を使うことでこのアップデートが可能となっています。一方、Linuxでは一部機種が fwupdmgr 経由での Intel ME ファームウェアアップデートに対応しています。
Intel MEのバージョンはLinuxでは以下のような感じに調べることができます:
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ cat /sys/class/mei/mei0/fw_ver
0:16.1.32.2473
0:16.1.32.2473
0:16.1.27.2181
</syntaxhighlight>
=== ブートローダー改ざんを防ぐ ===
ブートローダーは起動に使われるファームウェア (BIOS) から呼ばれ、カーネルを読み込んで起動するために使われるプログラムです。古い BIOS (レガシーBIOS) には起動するブートローダーを検証する仕組みが存在しませんでしたが、新しい UEFI (統一拡張ファームウェアインターフェース) には署名されたブートローダーのみを起動する UEFI Secure Boot が追加され、安全なブートローダーの起動を許可するための「承認済み署名データベース」 (Authorized Signature Database、UEFI db) と、脆弱なブートローダーの起動を防ぐための「禁止署名データベース」 (Forbidden Signature Database、UEFI dbx) が用意されています。
UEFI Secure Boot が有効かどうかは以下で確認できます:
* Windows PowerShell: <code>Confirm-SecureBootUEFI</code>
* Linux: <code>mokutil --sb-state</code>
UEFI db と UEFI dbx の内容は以下で確認できます:
* Windows PowerShell: <code>Get-SecureBootUEFI -Name db -Decoded</code> / <code>Get-SecureBootUEFI -Name dbx -Decoded</code>
* Linux:
** mokutil{{efn|Ubuntu Desktop に標準で含まれている。}}: <code>mokutil --db</code> / <code>mokutil --dbx</code>
** efitools: <code>efi-readvar -v db</code> / <code>efi-readvar -v dbx</code>
ブートローダーの署名情報は以下で確認できます:
* Windows PowerShell: <code>Get-PfxCertificate</code>{{efn|<code>Get-AuthenticodeSignature</code>はカタログ署名が使われる場合があるため非推奨: https://github.com/PowerShell/PowerShell/issues/23820 。}}
* Linux: <code>sbverify --list</code>
例えば Windows PowerShell では以下のような感じです:
<syntaxhighlight lang="powershell">
PS C:\WINDOWS\system32> mountvol S: /S; if ($?) { Get-PfxCertificate 'S:\EFI\Microsoft\Boot\bootmgfw.efi'; mountvol S: /D }
Thumbprint Subject
---------- -------
FACDE3D80E99AFCC15E08AC5A69BD22785287F79 CN=Microsoft Windows, O=Microsoft Corporation, L=Redmond, S=Washington, C=US
</syntaxhighlight>
また Ubuntu や Debian では署名されたブートローダー (grub-efi-*-signedパッケージ) と非署名のブートローダー (grub-efi-*-unsignedパッケージ) の両方が用意されており、ブートローダーの正体がどれか、また署名されたブートローダーの署名内容を確認するのは以下のような感じとなります:
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ dpkg -L grub-efi-amd64-signed | grep -i '\.efi' | xargs md5sum # インストールされている署名されたブートローダーのハッシュを表示(grub*は通常版、gcd*は光学ブートメディア向け、grubnet*はネットブート向け)
2bd267fb12bd3b0fe26a9dfb4290868d /usr/lib/grub/x86_64-efi-signed/gcdx64.efi.signed
f689e93336a015fa6eb93e1913b13482 /usr/lib/grub/x86_64-efi-signed/grubnetx64.efi.signed
b63c7618fb96d52520b42b8cc7b124f0 /usr/lib/grub/x86_64-efi-signed/grubx64.efi.signed
$ sudo sh -c "md5sum /boot/efi/EFI/BOOT/*" # 現在のbootloaderがどれを使っているかを確認(署名されたgrubを使用)
b63c7618fb96d52520b42b8cc7b124f0 /boot/efi/EFI/BOOT/BOOTX64.EFI
$ sudo sbverify --list /boot/efi/EFI/BOOT/BOOTX64.EFI
signature 1
image signature issuers:
- /C=GB/ST=Isle of Man/L=Douglas/O=Canonical Ltd./CN=Canonical Ltd. Master Certificate Authority
image signature certificates:
- subject: /C=GB/ST=Isle of Man/O=Canonical Ltd./OU=Secure Boot/CN=Canonical Ltd. Secure Boot Signing (2022 v1)
issuer: /C=GB/ST=Isle of Man/L=Douglas/O=Canonical Ltd./CN=Canonical Ltd. Master Certificate Authority
$ sudo sbverify --cert /usr/share/grub/canonical-uefi-ca.crt /boot/efi/EFI/BOOT/BOOTX64.EFI
Signature verification OK
</syntaxhighlight>
なお Linux では grub の代わりに使えるブートローダーとして systemd-boot もあります。systemd-boot の署名版は Debian が systemd-boot-efi-*-signed パッケージとして用意しているようです(Ubuntu未搭載)。
<!--TODO:
TPM (Trusted Platform Module) チップ
-->
=== カーネル本体の改ざんを防ぐ ===
カーネルはオペレーティングシステム (OS) の下層で動き続けるプログラムです。カーネル本体の実行ファイルもブートローダーと同様に署名が行われており、UEFI Secure Boot が有効であればその検証をブートローダーが行います。Linux では GRUB の UEFI Secure Boot と shim_lock の連携がそれに相当します<ref>[https://www.gnu.org/software/grub/manual/grub/grub.html#UEFI-secure-boot-and-shim GNU GRUB Manual 2.14 - 19.4 UEFI secure boot and shim support] フリーソフトウェア財団</ref>。
なお Ubuntu には署名されたカーネル (linux-image-*パッケージ) と非署名のカーネル (linux-image-unsigned-*パッケージ) の両方が用意されており、署名されているカーネルは以下のような感じでその署名が確認できます:
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ sudo sbverify --list /boot/vmlinuz-$(uname -r) # Linuxカーネル本体の署名を確認する
signature 1
image signature issuers:
- /C=GB/ST=Isle of Man/L=Douglas/O=Canonical Ltd./CN=Canonical Ltd. Master Certificate Authority
image signature certificates:
- subject: /C=GB/ST=Isle of Man/O=Canonical Ltd./OU=Secure Boot/CN=Canonical Ltd. Secure Boot Signing (2022 v1)
issuer: /C=GB/ST=Isle of Man/L=Douglas/O=Canonical Ltd./CN=Canonical Ltd. Master Certificate Authority
$ sudo sbverify --cert /usr/share/grub/canonical-uefi-ca.crt /boot/vmlinuz-$(uname -r) # Linuxカーネル本体の署名を検証する
Signature verification OK
</syntaxhighlight>
=== カーネルモジュールの改ざんを防ぐ ===
カーネルモジュールも署名されており、その検証をカーネルが行っています。Windowsカーネルでは ci.dll (Code Integrityモジュール)が、Linuxカーネルでは CONFIG_MODULE_SIG コンパイルオプションがその検証を行っています。
カーネルによるカーネルモジュールの検証が有効かどうかは以下で確認することができます:
* Linux: <code>grep 'CONFIG_MODULE_SIG=' /boot/config-$(uname -r)</code>
カーネルによるカーネルモジュールの検証で読み込みを弾くかどうかは以下で確認することができます:
* Windows: 強制モードか評価モード (監査モード) かを確認する PowerShell スクリプトが Microsoft のサイトに存在します: https://support.microsoft.com/en-us/windows/hardware/drivers/the-windows-driver-policy#is-my-device-in-evaluation-mode-or-enforcement-mode
* Linux: <code>cat /sys/module/module/parameters/sig_enforce</code>
また Linux では検証で読み込みを弾かない場合でも検証外カーネルモジュールを読み込んだ場合はdmesgに警告が出て '''Tainted kernel''' 扱いとなります<ref>[https://docs.kernel.org/admin-guide/tainted-kernels.html Tainted kernels] Linux Foundation</ref>。以下はその例です:
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ grep 'CONFIG_MODULE_SIG=' /boot/config-$(uname -r) # y=Yes, n=No
CONFIG_MODULE_SIG=y
$ cat /sys/module/module/parameters/sig_enforce # Y=Yes, N=No
N
$ sudo dmesg | grep 'module verification'
[ 8.928361] nvidia: module verification failed: signature and/or required key missing - tainting kernel
$ wget http://git.kernel.org/pub/scm/linux/kernel/git/torvalds/linux.git/plain/tools/debugging/kernel-chktaint
[...]
$ sudo sh ./kernel-chktaint
Kernel is "tainted" for the following reasons:
* externally-built ('out-of-tree') module was loaded (#12)
* unsigned module was loaded (#13)
Raw taint value as int/string: 12288/'G OE '
Tainted modules:
* nvidia (OE)
* nvidia_drm (OE)
* nvidia_modeset (OE)
* nvidia_uvm (OE)
For a more detailed explanation of the various taint flags see
Documentation/admin-guide/tainted-kernels.rst in the Linux kernel sources
or https://kernel.org/doc/html/latest/admin-guide/tainted-kernels.html
</syntaxhighlight>
また Linux では以下のような感じで個々のモジュールの署名が確認できます:
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ modinfo /lib/modules/$(uname -r)/kernel/arch/x86/kernel/msr.ko.zst
filename: /lib/modules/7.0.0-38-generic/kernel/arch/x86/kernel/msr.ko.zst
license: GPL
description: x86 generic MSR driver
author: H. Peter Anvin <hpa@zytor.com>
srcversion: 639B995855A3528050FD532
depends:
intree: Y
name: msr
retpoline: Y
vermagic: 7.0.0-38-generic SMP preempt mod_unload modversions
sig_id: PKCS#7
signer: Build time autogenerated kernel key
sig_key: 3B:E7:D3:BF:D3:2E:D9:CA:9C:17:D2:E9:5F:1A:1C:AE:67:D5:82:2F
sig_hashalgo: sha512
signature: 96:BC:2A:18:6E:4D:D8:E5:28:69:9D:E6:65:89:95:D4:BE:4C:5B:7C:
4A:23:11:75:F6:FE:63:79:FC:29:9B:F7:EA:24:B6:F1:EF:F3:80:17:
0B:C0:1E:46:61:29:BB:F9:E0:AC:81:69:85:73:7D:D4:77:82:A8:DB:
[...]
</syntaxhighlight>
=== システムファイル改ざんを防ぐ ===
システムファイル改ざんを防ぐ良い方法はシステム領域を読み取り専用にすることですが、仮にファイルシステムを読み取り専用のファイルシステム(SquashFSやEROFS)にしたとしても記録する場所がSSDであればブロック単位での上書きが可能となります。
1回だけ書き込めて上書きが不可能な媒体としてはCD-R、DVD-R、DVD+R、BD-Rなどの一部の光学メディアが存在しますが、これらをブートメディアとして使用するのは頻繁なアップデートが難しくなります。
そのほかの手法としては別のコンピュータからシステムファイルを取得する「ネットワークブート」を行うという手法もありますが、これはネットワーク経由でシステムファイルが盗まれる可能性と隣り合わせです。しかしながらプロトコルにUEFI HTTPSを、認証に相互認証のmTLSを用いて、その秘密鍵をTPMで管理してOSから読めなくすることでネットワークブートの安全性は何とか確保できるかもしれません(対応マザーボードは不明)。
一方、Android や ChromeOS ではブロックデバイス単位での改ざん検知 (dm-verify) によってシステムイメージの改ざんを防止しています<ref>[https://source.android.com/docs/security/features/verifiedboot/dm-verity?hl=ja dm-verity の実装] Google</ref><ref>[https://research.google/pubs/verified-boot-on-chrome-os-and-how-to-do-it-yourself/ Verified Boot on Chrome OS and How to do it yourself] Google</ref>。
=== カーネルメモリ改ざんを防ぐ ===
カーネルメモリのコード部分は MMU の書き込み禁止によって保護されています。iOS / macOS では Kernel Integrity Protection が<ref>[https://support.apple.com/ja-jp/guide/security/sec8b776536b/web オペレーティングシステムの整合性] Apple</ref> 、Linux では Kernel Strict RWX がこれに相当します<ref>[https://docs.kernel.org/security/self-protection.html Kernel Self-Protection] Linux Foundation</ref>。Windows でもカーネルモードに読み込み専用メモリセグメントが存在し、これに書き込もうとするとブルースクリーンで ATTEMPTED_WRITE_TO_READONLY_MEMORY (0xBE) が発行されます<ref>[https://learn.microsoft.com/ja-jp/windows-hardware/drivers/debugger/bug-check-0xbe--attempted-write-to-readonly-memory バグ チェック 0xBE: ATTEMPTED_WRITE_TO_READONLY_MEMORY] Microsoft</ref>。しかしながら Linux Kernel では kprobes、Static Keys、Static calls などで自己書き換えが多用されているため、一時的にコード部分を書き込み可能なページに割り当てて書き換える text_poke(...) という抜け道が存在します。
また定期的に改ざんが行われていないかをチェックする仕組みも存在します。Windows では[[:w:Kernel Patch Protection|Kernel Patch Protection]] (PatchGuard) / HyperGuard が、Linux では Linux Kernel Runtime Guard(外部パッチ)がこれに該当します。Windows の PatchGuard では改ざんが検出されたらブルースクリーンで CRITICAL_STRUCTURE_CORRUPTION が発行されます。
<!--TODO: Windows の HVCI、macOS の Secure Page Table Monitor / Trusted Execution Monitor-->
<!--
=== アプリケーション改ざんを防ぐ ===
SELinux / AppArmor
-->
== 攻撃用AIを対策する ==
攻撃用AIでは基本的に賢いかつ制限の緩い大規模言語モデル (LLM) が使われています。この代表的な例として GLM 5.3 や Qwen3.8-27B-ABLITERATED が存在します。
=== コンテキスト爆弾を設置する ===
攻撃用AIの対策では相手のLLMを止めることが重要となります。そこで使えるのが'''コンテキスト爆弾''' (context bombs) という手法です<ref>[https://arstechnica.com/security/2026/07/now-defenders-are-embracing-the-prompt-injection-too/ Now, defenders are embracing the prompt injection, too] Ars Technica 2026年7月14日</ref>。
このコンテキスト爆弾は「相手のLLMに対し応答やツール呼び出しで禁止されていることを行わせようとする」というプロンプトインジェクションの一種であり、それによって相手のガードレールがLLMを止めることで相手からの攻撃を防ぎます。この手法は相手の読みそうなテキストにただプロンプトを書いておけば良いだけなので、お手軽に使えます。
コンテキスト爆弾のテキスト例は以下のリポジトリに存在します:
* https://github.com/tracebit-com/context-bombs
=== ハニーポット ===
ハニーポットは攻撃者を引きつける役目を担います。ハニーポットの評価フレームワークには「UHBS」(Universal Honeypot Benchmarking Standard) が、その品質基準には「UHQS」(Universal Honeypot Quality Score) が存在しますが、2026年現在多くのハニーポットがFランク〜Dランクと残念な状況になっています<ref>[https://uhbs.github.io/uhbs-standard/mkdocs/conformance/ Overview - UHBS — Honeypot Evaluation Framework]</ref>。
<!--
== 自作コードの脆弱性を塞ぐ ==
書きかけ
-->
== 脚注 ==
<references group="注釈"/>
== 参考文献 ==
<references/>
{{DEFAULTSORT:こんひゆうたせきゆりてい}}
[[Category:計算機科学]]
[[Category:情報技術]]
ki4ppo7e1kwj0nnr5kzifzek3yd0ugu
304868
304867
2026-10-18T16:14:41Z
~2026-54076-02
92740
/* 不審な改変が行われていないかを調べる */
304868
wikitext
text/x-wiki
'''コンピュータセキュリティ'''はコンピュータの安全のことです。ここではコンピュータの安全を確保することを学びます。
== コンピュータセキュリティの基本 ==
コンピュータは弱いところから狙われるため、弱いところを無くすのがセキュリティの基本となります。
具体例を挙げましょう。一般的な光回線に繋がれてるホームネットワークを考えます。ここには光回線の先に繋がる上位ネットワークと家内のホームネットワーク (家庭におけるLAN) とを区切るエッジルーター(一般的にはハードウェア・ゲートウェイがこれに該当)が存在します。このホームネットワークに数台の新しいWindows PCと一台の古い機器が繋がっていると仮定します。
新しいWindows PC同士ではホームネットワーク経由でファイルをやり取りするためにファイルの共有 (SMB{{efn|Server Message Block}}) を有効にしているとします。一方、古い機器の方を脆弱性のある古いテレビとしましょう。このテレビはインターネットから繋いで地上デジタル放送を見るための DCTP+ {{efn|Digital Transmission Content Protection +}}が搭載されており、UPnP{{efn|Universal Plug and Play}}で自動的にエッジルーター搭載のファイアーウォールに穴あけてインターネット側から DCTP+ に繋がるようになっているものとします。
この仮定によってハッカーは DCTP+ の脆弱性を使って古いテレビに悪意のあるプログラムを実行させてファイルの共有サーバーを立て{{efn|Windows 11時点でもゲスト認証による接続は許可されている<ref>[https://learn.microsoft.com/en-us/windows-server/storage/file-server/smb-interception-defense?tabs=group-policy Protect SMB traffic from interception] Microsoft</ref>。}}、そこからファイルの共有を通じて新しいWindows PCにマルウェア (例えば<code>PHOTO-<ランダムな数字>.png.lnk</code><ref>[https://www.microsoft.com/en-us/security/blog/2026/06/25/photo-zip-campaign-targeting-hospitality-industry-delivers-node-js-implant-persistent-access/ Photo ZIP campaign targeting hospitality industry delivers Node.js implant for persistent access] Microsoft 2026年6月25日</ref>) を送り込むことが可能となりました。
== 安全にパスワードを使う ==
=== 流出したパスワードと被ってないかをチェックする ===
あちこちのサイトで流出したパスワードは集められてデータベース化されダークネットに流通しています。この代表的なものには2019年に登場した [[:w:en:Collection No. 1|Collection #1]] が挙げられます。この Collection #1 などの流出パスワードデータベースは辞書攻撃に利用されており、これは「Credential Stuffing攻撃」と呼ばれています。
使うパスワードが流出パスワードデータベースに載っていないかを確認するためには上記のデータベースを手に入れるか、上記のデータベースからk-匿名性で検索を行うオンラインサービスを使うと良いでしょう。
このオンラインサービスの代表的なものにはWebサイト「Have I Been Pwned」の提供する「Pwned Passwords」サービスが存在しますが、このAPIではパスワードのSHA-1ハッシュ先頭5文字を渡すと、流出したパスワードのSHA1ハッシュ6文字以降と流出データベースに載っていた回数が返答されます。
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ # License: CC0 / Public Domain
$ # パスワードを入力してSHA-1ハッシュへと変換する(ここでは'test'と入力)
$ sha1=$(read -sp "Password: " pass && echo -n $pass | sha1sum | cut -d' ' -f1)
Password:
$ # 変換後のハッシュを表示
$ echo $sha1
a94a8fe5ccb19ba61c4c0873d391e987982fbbd3
$ # ハッシュの先頭5文字を渡して6文字目以降を検索(':'の後ろは見つかった数)
$ curl -s https://api.pwnedpasswords.com/range/$(echo $sha1 | cut -c 1-5) | grep -i $(echo $sha1 | cut -c 6-)
FE5CCB19BA61C4C0873D391E987982FBBD3:1579235
</syntaxhighlight>
ハッシュの先頭5文字も渡したくない場合や、自社サービスでチェックを行いたい場合は上記のサービスが公式で提供するツール「haveibeenpwned-downloader」[https://github.com/HaveIBeenPwned/PwnedPasswordsDownloader]で全てのハッシュデータをダウンロードして自前で照合しましょう。
=== 解析耐性のある鍵導出関数を使う ===
パスワードでは計算負荷の低い SHA-256 や SHA-512 などの通常のハッシュ関数、メモリ負荷の低い [[:w:PBKDF2|PBKDF2]] や bcrypt などの古い[[:w:鍵導出関数|鍵導出関数]](パスワードハッシュ関数)を使わないようにしましょう。これらの弱いハッシュ関数は GPU や ASIC で高速に解かれてしまいます。
より強いパスワードハッシュ関数としては yescrypt や Argon2id が存在します。パスワードにはこちらを使いましょう。現代の Linux ではアカウントのパスワードハッシュ関数として yescrypt が標準となっています。
使っている Linux の新規アカウントで使われるパスワードハッシュ関数は以下で確認可能です:
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ grep -n 'pam_unix.so' /etc/pam.d/common-password
26:password [success=2 default=ignore] pam_unix.so obscure use_authtok try_first_pass yescrypt
</syntaxhighlight>
Linuxの現在のアカウントがどのハッシュ関数を使用しているかは以下で確認可能です:
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ sudo cat /etc/shadow | grep $USER # $(1|5|6|b)$=弱い、$y$=強い
user:$y$j9T$ST7oYwlQjFy7/8vnL/Ugt0$po4vW4qgGu8lpUNRtH0B3hDHGZACzcRhzIKhqlx.2Z5:20743:0:99999:7:::
</syntaxhighlight>
弱いハッシュ関数を使用している場合は<code>passwd $USER</code>でパスワードを再設定して使用するハッシュ関数を更新してください。
一方、Windows 10 以前のローカルアカウントではパスワードハッシュがレジストリの<code>HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>SAM\<wbr>SAM\<wbr>Domains\<wbr>Account\<wbr>Users\<wbr>(ユーザーID)\<wbr>V</code>{{efn|name="sam"}}のバイナリに存在します:
* [[:w:LMハッシュ|LMハッシュ]]: 0xCC + (0x9C に指定されたオフセット)<ref name="sam-ghost"/>
* NTLMハッシュ: 0xCC + (0xA8 に指定されたオフセット)<ref name="sam-ghost"/>
LMハッシュは [[:w:LAN Manager|LAN Manager]] に使われていた [[:w:Data Encryption Standard|DES]] ベースの古いハッシュ、NTLMハッシュは [[:w:NT LAN Manager|NT LAN Manager]] に使われている [[:w:MD4|MD4]] ベースの古いハッシュであり、どちらも非常に弱いものとなっていました。
また Windows の Active Directory ドメインアカウントのオフライン認証向けキャッシュ済みドメイン資格情報はレジストリの<code>HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>SECURITY\<wbr>Cache</code>に存在します:
* DCC1 ハッシュ (MSCache v1): 弱い MD4 ベース。Windows XP以前。
* DCC2 ハッシュ (MSCache v2) : 弱めの PBKDF2-HMAC-SHA1 ベース。Windows Vista以後<ref>[https://attack.mitre.org/techniques/T1003/005/ OS Credential Dumping: Cached Domain Credentials] MITRE 2025年10月24日</ref>。
2021年にリリースされた Windows 11 以降は Microsoft アカウントが必須となっています。
<!--TODO:
Windows Hello、LSA Secrets
=== パスワードの複雑性をチェックする ===
=== TPMで鍵を隔離する ===
-->
== 既製製品の脆弱性を塞ぐ ==
まずは弱いところを無くしましょう。
=== ソフトウェアアップデートをする ===
セキュリティの基本はソフトウェアアップデートです。
==== PCおよびモバイル ====
PC{{efn|PCサーバを含む}}やモバイルでは基本的に自動で通知が来るので忘れずにアップデートを選択しましょう。手動では以下のように行います:
; Windows
: システムのアップデートは基本的に [[:w:Microsoft Update|Microsoft Update]] (Windows Update) で、アプリケーションのアップデートは基本的に<code>winget upgrade --all</code>コマンドで行います。
: また Windows 11 Enterprise では再起動が不要なホットパッチにも対応しています。
; macOS / iOS
: 「ソフトウェアアップデート」
; Ubuntu / Debian
: [[:w:APT|APT]]パッケージ管理システムでは<code>apt upgrade</code>コマンドで更新を行います。
: Ubuntu では GUI による更新用として[[:w:Software Updater|Software Updater]] (<code>update-manager</code>コマンド)、[[:w:Snap (ソフトウェア)|Snap]]パッケージの更新コマンドとして<code>snap refresh</code>、メジャーバージョンの更新コマンドとして<code>do-release-upgrade</code>も存在します。
: また Ubuntu では Ubuntu Pro に登録することで再起動が不要なカーネル修正の「Livepatch」も可能となります(個人では5台まで無料)。SUSEではユーザー空間ライブパッチングまで提供されています(glibc と openssl のみ)<ref>[https://documentation.suse.com/ja-jp/sles/15-SP6/html/SLES-all/cha-ulp.html ユーザ空間ライブパッチ - 管理ガイド - SLES 15 SP6] SUSE</ref>。
; RedHat / Fedora
: <code>yum update</code>コマンド
; Android
: 「設定」アプリ→「システム」→「システムアップデート」または「ソフトウェアアップデート」
また個々のハードウェアのファームウェアアップデートは以下で行います:
; Linux
: Linuxにおけるファームウェアの更新は基本的に<code>fwupdmgr update</code>コマンドで行います。
: NVMe SSDのファームウェアの更新は<code>nvme fw-download</code>コマンドおよび<code>nvme fw-commit</code>コマンドで行うことができます。
一方、Windows ではファームウェアのアップデートも Windows Update 経由で<ref>[https://learn.microsoft.com/ja-jp/windows-hardware/drivers/bringup/firmware-update ファームウェアの更新] Microsoft</ref>、macOS ではファームウェアのアップデートもmacOSアップデートで行うことができます<ref>[https://support.apple.com/ja-jp/guide/mac-help/mchlp2609/mac Macのファームウェアアップデートの入手方法] Apple</ref>。
<!--
また開発環境では以下も存在します:
; Python
: <code>pip -U install</code>
-->
==== ルーター ====
ルーターでは以下の設定を有効のままにしておきましょう:
; AirStationシリーズ(Buffalo 製ルーター)
: 「ファームウェア自動更新機能」
; Atermシリーズ(NEC 製ルーター)
: 「メンテナンスバージョンアップ機能」「時刻指定バージョンアップ機能」
==== テレビ ====
テレビでは放送波アップデートが行われるため、「放送波による自動更新」<!--TODO: メーカー別名-->を有効にしましょう。
=== 高速に再起動する ===
パッケージは更新しただけでは反映されません(一部デーモンの更新を除く)。Linuxでは高速に再起動する方法が存在し、これによってダウンタイムを減らすことができます。
; 更新で影響を受けるデーモンのみ再起動する
:* Ubuntu Server: 標準で <code>needrestart</code> が導入されており自動で影響を受けるデーモンの再起動が行われます{{efn|自動的なデーモン再起動を止めるには /etc/apt/apt.conf.d/99needrestart より<code>-m u</code>を削除する必要があります<ref>[https://discourse.ubuntu.com/t/needrestart-changes-in-ubuntu-24-04-service-restarts/44671 `needrestart` changes in Ubuntu 24.04: service restarts] Canonical 2024年</ref>。}}(Ubuntu Desktopでは別途導入が必要)。
:* RedHat / Fedora: <code>dnf needs-restarting</code>が導入されており、それによって再起動するべきデーモンを確認できます。
; ユーザー空間のみ再起動する(カーネルの更新がない、またはカーネルでlive patchingを行ってる場合)
: <code>sudo systemctl soft-reboot</code>
; 高速にカーネルを更新する(ファームウェアの更新がない場合)
: <code>sudo systemctl kexec</code>
また一部のソフトウェアではホットアップグレード(無停止アップグレード{{efn|Zero-Downtime Upgrade}})にも対応しています (nginx の USR2 シグナル<ref>[https://nginx.org/en/docs/control.html Controlling nginx] nginx</ref>など)。
=== 代替ソフトウェアを探す ===
更新が停止された古いソフトウェアの多くはそれ自身に脆弱性が存在したり、脆弱性のある古いライブラリに依存していたりします。そのため古いソフトウェアは速やかに代替ソフトウェアへと移行しましょう。
==== 開発終了したソフトウェアから現役のソフトウェアへ ====
古いソフトウェアには例えば以下があります:
* オフィススイート(代替候補: LibreOffice)
** [[:w:OpenOffice.org|OpenOffice.org]](〜2011年)
* 画像ビューア
** [[:w:Susie|Susie]] (〜2013年)
* メディアプレイヤー
** [[:w:QuickTime|QuickTime]] for Windows(〜2016年) - リモートコード実行の脆弱性 ([https://www.zerodayinitiative.com/advisories/ZDI-16-241/ ZDI-16-241]、[https://www.zerodayinitiative.com/advisories/ZDI-16-242/ ZDI-16-242]) を残したままサポート終了しました<ref>[https://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/753400.html Apple、「QuickTime for Windows」のサポートを終了、アンインストールを推奨] Impress 2016年4月15日</ref>。
* メディアフィルター(代替候補: LAV Filters)
** [[:w:ffdshow|ffdshow]](〜2014年)
** [[:w:Haali Media Splitter|Haali Media Splitter]](〜2013年)
* メディアセンター(代替候補: Kodi)
** [[:w:en:Boxee|Boxee]](〜2011年)
** [[:w:Kodi|XBMC]](〜2014年) - Kodiの前身
* 圧縮ソフトウェア
** [[:w:+Lhaca|+Lhaca]](〜2007年)
** [[:w:Lhaplus|Lhaplus]](〜2017年)
またハードウェアに由来する古いソフトウェアには例えば以下があります:
* [[w:ウォークマン|ウォークマン]]関連(代替候補: [[:w:Music Center for PC|Music Center for PC]])
** [[:w:CONNECT Player|CONNECT Player]](〜2007年、Sony)
** [[:w:SonicStage|SonicStage]](〜2009年、Sony)
** [[:w:x-アプリ|x-アプリ]](〜2016年、Sony)
* DTCP-IP関連
** SmartVision/PLAYER powered by DiXiM(〜2019年、NEC)<ref>[https://support.nec-lavie.jp/navigate/support/info/2019/announce/svp/ SmartVision/PLAYER保守サービス終了のお知らせ] NECパーソナルコンピュータ 2019年1月28日</ref><ref>[https://apps.microsoft.com/detail/9wzdncrdkb4c?hl=ja-JP&gl=JP SmartVision/PLAYER powered by DiXiM] Microsoft</ref>
** DiXiM Digital TV plus for I-O DATA(〜2022年、I-O DATA)<ref>[https://www.iodata.jp/lib/product/d/3533.htm DiXiM Digital TV plus for I-O DATA] I-O DATA</ref>
なお仮想マシンを使って隔離しながら古いソフトウェアを動かすこともできますが、仮想マシンでも「VMエスケープ」の脆弱性を使用することでホスト環境への侵害が可能なため、仮想マシンの上で弱い環境や弱いソフトウェアを使うこともなるべく避けましょう。<!--TODO: Windows Sandbox-->
==== 古いバージョンのライブラリを避ける ====
多くのソフトウェアに使用されているライブラリとその過去の危険な脆弱性には例えば以下があります:<!--危険を認識させる。例はライブラリ内のメイン処理に存在し、任意コード実行であり、脆弱性の存在期間が長く、新しいものが好ましい。-->
* 画像ライブラリ
** libpng - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2010-1205 CVE-2010-1205](PNG画像で任意コード実行の可能性)
** libjpeg-turbo - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2012-2806 CVE-2012-2806](JPEG画像で任意コード実行の可能性)
** OpenJPEG - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2025-54874 CVE-2025-54874](JPEG2000画像で任意コード実行の可能性)
** libtiff - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2026-12912 CVE-2026-12912](PixarLog圧縮TIFF画像で任意コード実行の可能性)
** libwebp - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2023-4863 CVE-2023-4863](WebP画像で任意コード実行の可能性)
* 動画ライブラリ
** FFmpeg - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2024-22860 CVE-2024-22860](JPEG XLアニメーションで任意コード実行の可能性)
* 圧縮ライブラリ
** libarchive - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2026-15028 CVE-2026-15028](tarアーカイブ形式で任意コード実行の可能性)
** zlib - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2002-0059 CVE-2002-0059](Deflate圧縮形式で任意コード実行の可能性)
** bzip2 - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2010-0405 CVE-2010-0405](BZ2圧縮形式で任意コード実行の可能性)
これらのライブラリはABI(アプリケーションバイナリインターフェイス)が変更されて新しいバージョンの共有ライブラリにドロップイン置換できないものも多くなっています。
また国内で使われている古いソフトウェアでは開発中止になった以下のライブラリも問題となっています:
* UNLHA32.DLL<ref>[https://forest.watch.impress.co.jp/docs/news/372729.html 圧縮・解凍用DLL「UNLHA32.DLL」が開発中止、作者はLZHの利用中止を呼びかけ] Impress 2010年6月7日</ref>
Webフレームワークでは開発中止となった以下のフレームワークが問題となっています:
* [[:w:Model View Controller|Model View Controller]]フレームワーク(代替候補: [[:w:Apache Struts|Apache Struts]] 2、[[:w:Spring Framework#Model-View-Controller フレームワーク|Spring MVC]])
** [[:w:en:Apache Struts 1|Apache Struts 1]](〜2008年) - Java言語
* [[:w:アスペクト指向プログラミング|アスペクト指向フレームワーク]](代替候補: [[:w:Spring Framework|Spring Framework]]、[[:w:en:Micronaut (framework)|Micronaut]])
** [[:w:Seasar|Seasar]](〜2016年) - Java言語
* [[:w:シングルページアプリケーション|シングルページアプリケーション]]フレームワーク(代替候補: [[:w:Angular|Angular]]、[[:w:Vue.js|Vue.js]])
** [[:w:AngularJS|AngularJS]](〜2022年) - JavaScript
=== 古いハードウェアに対処する ===
サポート切れの OS を搭載したハードウェアはどうすれば良いでしょうか。これには使い続けるいくつかの方法がありますが、基本的にオススメしません。古い OS を搭載していたハードウェアはハードウェア仕様も古いからです。
==== スタンドアロン運用 ====
古いハードウェアはインターネットに繋がずに使用すること(スタンドアロン運用)も可能です。
しかしながらUSBメモリでデータをやり取りする場合はUSBメモリ経由での感染などのリスクは残ります。
==== 新しめのLinuxを導入 ====
新しめのLinuxを導入するという方法もあります。
これに適したものでは例えばWindows 11非対応のPC (Intel 第7世代以前、AMD Ryzen 1000シリーズ以前) が挙げられます。
またスマートフォンやタブレットであればカスタムROMが、ルーターであればDD-WRTやOpenWRTが存在します。
==== 手放す ====
手に負えなければデータだけバックアップして手放しましょう。情報が漏れないよう初期化も忘れずに。
== 潜在的な脆弱性を減らす ==
現代のプログラムでは以下のような保護が行われています。
=== メモリアドレスの推測困難化 ===
攻撃に必要なコード片(ガジェット)のメモリアドレスを推測しにくくするために、カーネル空間、ユーザー空間の両方で[[:w:アドレス空間配置のランダム化|アドレス空間配置のランダム化]](ASLR)が行われています。カーネル空間の ASLR は KASLR (Kernel ASLR) とも呼ばれています。
ユーザー空間のプログラムで ASLR を有効にするためには[[:w:位置独立コード|位置独立コード]] (PIC) / 位置独立実行形式 (PIE) である必要があります。Unix で使われる実行形式の ELF では位置独立実行形式が ET_DYN、非位置独立実行形式 (non-PIE) が ET_EXEC となります。
Linuxでは ASLR が無効となる非位置独立実行形式のファイルを以下で検索することができます:
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ # License: CC0 / Public Domain
$ # 非位置独立実行形式 (non-PIE) のバイナリを検索
$ find / -type f -executable 2>/dev/null | xargs -I {} sh -c 'LANG=C readelf -h {} 2>/dev/null | grep -E "Type:.*EXEC" >/dev/null && echo {}'
/usr/lib/default.sfx
/usr/lib/klibc/bin/mkfifo
/usr/lib/klibc/bin/zcat
/usr/lib/klibc/bin/poweroff
[...]
$ # 非位置独立実行形式 (non-PIE) のバイナリを含むDebianパッケージを検索
$ find / -type f -executable 2>/dev/null | xargs -I {} sh -c 'LANG=C readelf -h {} 2>/dev/null | grep -E "Type:.*EXEC" >/dev/null && echo {}' | xargs -r -d '\n' -n1 dpkg-query -S | sed 's/: .*//' | sort -u
aidl
busybox-static
code
cpp-15-x86-64-linux-gnu
cuda-gdb-13-4
cuda-nvcc-13-4
cuda-sanitizer-13-4
cuda-tileiras-13-4
debugedit
g++-15-x86-64-linux-gnu
gcc-15-x86-64-linux-gnu
gcc-mingw-w64-i686-posix
gdc-15-x86-64-linux-gnu
gds-tools-13-4
gfortran-15-x86-64-linux-gnu
gh
git-lfs
gobjc-15-x86-64-linux-gnu
gocryptfs
golang-1.26-go
go-md2man
go-mtpfs
[...]
</syntaxhighlight>
現在のLinuxカーネルがユーザー空間 ASLR を有効にしているかは以下で確認できます (出力例はUbuntu 26.04):
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ sysctl kernel.randomize_va_space # 0=無し、1=部分的、2=完全
kernel.randomize_va_space = 2
</syntaxhighlight>
また現在のLinuxカーネルがカーネル ASLR (KASLR) を有効にしているかは以下で確認できます (出力例はUbuntu 26.04):
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ grep 'CONFIG_RANDOMIZE_BASE' /boot/config-$(uname -r) # y=Yes, n=No
CONFIG_RANDOMIZE_BASE=y
</syntaxhighlight>
なお ASLR は間接的な関数呼び出し( C++ の vtable を含む)があると、そのアドレスから ASLR のオフセットがバレてしまい突破されてしまいます。
また CPU の[[:w:投機的実行|投機的実行]]での情報漏れ (Spectre) による[[:w:キャッシュ攻撃|キャッシュサイドチャネル攻撃]](後述)の一つである「投機的探査」 (BlindSide) によってもコードの位置情報の取得がされ ASLR が突破されてしまいます。
=== 投機的実行の情報漏れ防止 ===
前述のとおり、投機的実行による情報漏れ (Spectre) は攻撃に繋がります。Spectre には境界チェックを迂回する Spectre V1 と間接分岐の分岐先アドレスのキャッシュ{{efn|分岐先バッファ (Branch Target Buffer、BTB)や分岐先アドレスキャッシュ (Branch Target Address Cache、BTAC) と呼ばれる。}}を汚染する Spectre V2 が存在します。<!--TODO: Spectre v3/v4、Zenbleed-->
Spectre V1 を防ぐ方法としては投機的実行を阻害するための命令(x86ではLFENCE)の挿入{{efn|Linuxカーネルでの投機的実行の防止は<code>barrier_nospec()</code>。}}やアクセスできるアドレス範囲を狭めることが行われています{{efn|GCCでの投機的実行での範囲外アクセス防止は<code>__builtin_speculation_safe_value(...)</code>、Linuxカーネルでの投機的実行での範囲外アクセス防止は<code>array_index_nospec(...)</code><ref>[https://lwn.net/Articles/759423/ Spectre V1 defense in GCC] LWN 2018年7月10日</ref>。}}。
また Spectre V2 では攻撃を防ぎながらも速度を落とさない方法として脆弱な分岐先アドレスキャッシュに依存する間接分岐の代わりにリターンアドレスのキャッシュ{{efn|リターンスタックバッファ (RSB) と呼ばれる。}}に依存するリターン命令を使う retpoline が登場しました。しかしながらこの retpoline でも速度の低下は起こるため、既知の間接呼び出しを条件分岐 + 直接呼び出しに変換して高速化する手法が模索されました。LLVM では retpoline を有効にする <code>-mretpoline</code>フラグの処理内に既知の仮想関数呼び出しを[[:w:二分木|二分木]]の直接分岐に置き換える「分岐ファネル」(Branch funnel) が導入されています<ref>[https://reviews.llvm.org/D42453 Use branch funnels for virtual calls when retpoline mitigation is enabled.] LLVM project</ref>。また Linux カーネルでも既知の間接呼び出しを条件分岐 + 直接呼び出しに変換する INDIRECT_CALL_* マクロが搭載されています<ref>[https://lwn.net/Articles/774743/ Relief for retpoline pain] LWN 2018年12月14日</ref>。<!--TODO: Intel CETのSHSTKとretpolineの衝突-->
一方、リターン命令の投機的実行も「Retbleed」や AMD CPU における「投機的リターンスタックオーバーフロー」 (SRSO){{efn|Speculative Return Stack Overflow。}}のような脆弱性が見つかっています。
なお低権限コードから高権限コードへの権限境界をまたいだ Spectre および Retbleed は Intel の「間接分岐制限付き投機」(IBRS){{efn|Indirect Branch Restricted Speculation。}}およびそれを高速化した「拡張IBRS」(eIBRS) などハードウェア側によって塞がれました<ref>[https://www.intel.com/content/www/us/en/developer/articles/technical/software-security-guidance/technical-documentation/hardware-behavior-related-to-speculative-execution.html Hardware Features and Behavior Related to Speculative Execution] Intel 2026年10月14日</ref>が、権限境界をまたがないものは今も可能となっています。
=== メモリにおける書き込みと実行の排他化 (W^X) ===
メモリでは書き込み可能領域の実行不可化 ([[:w:NXビット|NXビット]]) と実行可能領域の書き込み不可化による書き込みと実行の排他化([[:w:en:W^X|W^X]])が一般的となっています。NXビットは x86 では NXビットは AMD64 と共に搭載された古い機能であるため、今時の CPU と OS は基本的にこれに対応しています。
現在の CPU がNXビットを有効にしているかはLinuxでは以下で確認できます:
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ grep '^flags' /proc/cpuinfo | grep -o nx
nx
nx
[...]
</syntaxhighlight>
現在のLinuxカーネルが厳格な W^X を有効にしているかは以下で確認できます (出力例はUbuntu 26.04):
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ grep '_RWX' /boot/config-$(uname -r) # y=Yes, n=No
CONFIG_ARCH_HAS_STRICT_KERNEL_RWX=y
CONFIG_STRICT_KERNEL_RWX=y
CONFIG_ARCH_HAS_STRICT_MODULE_RWX=y
CONFIG_STRICT_MODULE_RWX=y
</syntaxhighlight>
しかしながら書き込みと実行の排他の原則を破ってそれらを同時に行える場所というものも存在しています。読み込み・書き込み・実行が可能なことから「RWXセクション」と呼ばれています。Windows ではメモリページの PAGE_EXECUTE_READWRITE フラグがこれに相当します<ref>[https://learn.microsoft.com/ja-jp/windows/win32/memory/memory-protection-constants メモリ保護定数] メモリ保護定数 (WinNT.h) - Win32 apps | Microsoft Learn</ref>。
Windows のカーネルドライバでは NX フラグの使用が義務付けられています<ref>[https://learn.microsoft.com/en-us/windows-hardware/test/hlk/testref/driver-compatibility-with-device-guard メモリ整合性と VBS とのドライバ互換性] Microsoft</ref>が、その Windows カーネルにおいても PatchGuard の領域がコード難読化のためにこの原則を破っています。<!--TODO: ホットパッチ-->
また Linux でも実行可能領域を書き込み可能ページとして割り当てて書き込む text_poke 関数が用意されています。
=== 制御フローの操作を防ぐ (CET) ===
現代では「[[:w:Return-oriented programming|リターン指向プログラミング]]」(ROP)、「呼び出し指向プログラミング」 (COP)、「ジャンプ指向プログラミング」(JOP) 、「[[:en:Sigreturn-oriented programming|Sigreturn指向プログラミング]]」(SROP) などの制御フロー操作による攻撃が一般化していますが、これを防ぐ技術として「[[:w:en:Control-flow integrity#Intel Control-flow Enforcement Technology|制御フロー強制テクノロジー]]」(CET) の「[[:w:en:Indirect branch tracking|間接分岐追跡]]」(IBT) と「[[:w:en:Shadow stack|シャドウスタック]]」(SHSTK) が存在します。
制御フロー強制は比較的新しい技術であるため、対応する CPU は以下に限られます:
* Intel Core (Tiger Lake) 第11世代以降
* AMD Zen 3 以降(シャドウスタックのみ)
現在の CPU が間接分岐追跡 (IBT) およびシャドウスタックに対応しているかはLinuxでは以下で確認できます:
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ grep '^flags' /proc/cpuinfo | grep -oE '(ibt|shstk)'
shstk
ibt
shstk
ibt
[...]
</syntaxhighlight>
またユーザーランドのシャドウスタックの使用にはユーザーランドだけでなくカーネルの対応も必要となります。Linux カーネル では 6.6 以降対応でこれに対応しています(sigreturnにも対応<ref>[https://github.com/torvalds/linux/commit/05e36022c0543ba55a3de55af455b00cb3eb4fcc x86/shstk: Handle signals for shadow stack · torvalds/linux@05e3602] GitHub 2023年8月3日</ref>)。 Linuxディストリビューションでは Ubuntu 24.04以降、 Red Hat Enterprise Linux 9.7 以降<ref>[https://docs.redhat.com/ja/documentation/red_hat_enterprise_linux/9/html/9.7_release_notes/new-features-kernel 4.8. カーネル - 9.7 リリースノート - Red Hat Enterprise Linux - 9 - Red Hat Documentation] Red Hat</ref>が標準でシャドウスタックを有効としています。
現在のLinuxカーネルが間接分岐追跡およびシャドウスタックを有効にしているかは以下で確認できます (出力例はUbuntu 26.04):
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ grep -E '_(IBT|SHADOW_STACK)' /boot/config-$(uname -r) # y=Yes, n=No
CONFIG_CC_HAS_IBT=y
# CONFIG_X86_KERNEL_IBT is not set
CONFIG_X86_USER_SHADOW_STACK=y
CONFIG_X86_DISABLED_FEATURE_IBT=y
CONFIG_ARCH_HAS_USER_SHADOW_STACK=y
</syntaxhighlight>
現在のユーザーランドプログラムの中で間接分岐追跡またはシャドウスタックが無効化されているものはLinuxでは以下で確認できます:
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ # License: CC0 / Public Domain
$ # 間接分岐追跡またはシャドウスタックが無効化されているバイナリを検索
$ find / -type f 2>/dev/null | xargs -I {} sh -c 'readelf -h "{}" >/dev/null 2>&1 && (readelf -n "{}" 2>/dev/null | grep -E IBT,.*SHSTK > /dev/null || echo "{}")'
/usr/lib/lv2/carla.lv2/carla.so
/usr/lib/7zip/7z
/usr/lib/7zip/7zCon.sfx
/usr/lib/7zip/7zr
/usr/lib/7zip/7z.so
/usr/lib/7zip/7za
/usr/lib/klibc/bin/ipconfig
/usr/lib/klibc/bin/umount
/usr/lib/klibc/bin/halt
[...]
$ # 間接分岐追跡またはシャドウスタックが無効化されているバイナリを含むDebianパッケージを検索
$ find / -type f 2>/dev/null | xargs -I {} sh -c 'readelf -h "{}" >/dev/null 2>&1 && (readelf -n "{}" 2>/dev/null | grep -E IBT,.*SHSTK > /dev/null || echo "{}")' | xargs -r -d '\n' -n1 dpkg-query -S | sed 's/: .*//' | sort -u
7zip
aidl
ardour
avr-libc
cargo-1.93
carla
carla-bridge-wine32:i386
carla-bridge-wine64
carla-lv2
carla-vst
cuda-ctadvisor-13-4
cuda-cudart-13-4
[...]
</syntaxhighlight>
なお、制御フロー強制テクノロジーの間接分岐追跡とシャドウスタックが有効であっても異なる関数の通常呼び出しは防げません。分かりやすい例では関数の間接呼び出しにおいて関数ポインタを<code>sigaction</code>へと変更して独自のシグナルハンドラを登録し、その後クラッシュさせてそのシグナルハンドラを呼び出すという「セグメンテーション違反指向プログラミング」(SFOP) が挙げられます。また攻撃に使える関数 (dop gadgets) {{efn|dop gadgetsの検索の公式実装は「DOP-StaticAssist」[https://github.com/melynx/DOP-StaticAssist]だが長らく更新されておらず古いLLVM 3.5に依存している状態となっている。}}の通常呼び出しだけで攻撃する「Data-Oriented Programming」(DOP) <ref>Hong Hu et al. [https://ieeexplore.ieee.org/stamp/stamp.jsp?tp=&arnumber=7546545 Data-Oriented Programming: On the Expressiveness of Non-Control Data Attacks] IEEE 2016年</ref>{{efn|セキュリティ以外の文脈におけるデータ指向プログラミング、データ指向設計、データ駆動型設計とは異なる。}}という手法も存在します。
C++向けでは仮想関数テーブル (vtable) を改ざんして攻撃に使える仮想関数(仮想関数ガジェット、vfgadget)を呼び出す「偽造オブジェクト指向プログラミング」(COOP) という攻撃手法も登場しています。
=== メモリ安全性の高いソフトウェアへ ===
既存のソフトウェアの脆弱性は7割がメモリ安全性の問題に起因すると言われています<ref>[https://www.cisa.gov/sites/default/files/2023-12/CSAC_TAC_Recommendations-Memory-Safety_Final_20231205_508.pdf REPORT TO THE CISA DIRECTOR Technical Advisory Council Memory Safety] サイバーセキュリティ諮問委員会 (CSAC) 2023年12月5日</ref>。しかしながら[[C言語]]や[[C++]]はメモリ安全性が低いため、メモリ安全性の確保できる[[Rust]]などで書かれた代替プログラムが登場しています:
{| class="wikitable"
|+ コマンドのRust版
|-
! コマンドの概要 !! 従来版 !! Rust版
|-
| Unix系の基本コマンド群 || GNU Core Utilities || '''uutils coreutils'''
|-
| ファイル検索コマンド群{{efn|<code>find</code>、<code>locate</code>、<code>updatedb</code>、<code>xargs</code>の4コマンド}} || GNU Findutils || '''uutils findutils'''
|-
| ファイル差分コマンド群{{efn|<code>diff</code>、<code>cmp</code>、<code>diff3</code>、<code>sdiff</code>の4コマンド}} || GNU Diffutils || '''uutils diffutils'''
|-
| ストリームエディタ (sed) || GNU sed / FreeBSD sed || '''uutils sed'''
|-
| AWKスクリプト || GNU AWK || '''uutils AWK'''
|-
| 文字列検索 || GNU Grep || '''uutils Grep'''
|-
| tarアーカイブ || GNU Tar || '''uutils tar'''
|-
| アカウント管理コマンド群 || shadow-utils || '''uutils shadow-utils'''
|-
| アクセス制御コマンド群{{efn|<code>chacl</code>、<code>getfacl</code>、<code>setfacl</code>の3コマンド}} || acl || '''uutils acl'''
|-
| procfs{{efn|プロセスファイルシステム}}表示コマンド群 || procps / procps-ng || '''uutils procps'''
|-
| ホスト名管理コマンド群{{efn|<code>hostname</code>、<code>dnsdomainname</code>、<code>domainname</code>、<code>nisdomainname</code>、<code>ypdomainname</code>の5コマンド。}} || hostname || '''uutils hostname'''
|-
| Linuxユーティリティ || util-linux || '''uutils util-linux'''
|-
| 権限昇格 || sudo || '''sudo-rs'''
|-
| 暗号・署名システム || GnuPG || '''Sequoia PGP'''
|-
| 時刻同期 || ntpd || '''ntpd-rs'''
|-
| セキュアシェル (SSH) || OpenSSH || '''russh'''
|}
これらのRustで書かれたコマンドのうちuutils coreutilsとsudo-rsはUbuntuに採用されています。
またライブラリでもRustだけ (Pure Rust) で実装されたものが登場しています:
* 画像ライブラリ - これらは例えばGNOMEデスクトップ環境の画像ローダーGlycinから使われています<ref>[https://gitlab.gnome.org/GNOME/glycin GNOME / glycin · GitLab] GNOME Project</ref>。
** libpng → pngクレート - PNG画像向け。
** libgif → gifクレート - GIF画像向け。
** libjpeg / libjpeg-turbo → zune-jpeg / libjpeg-turbo-rs - JPEG画像向け。
** OpenJPEG → hayro-jpeg2000 - JPEG 2000画像向け。
** libtiff → tiffクレート - Tiff画像向け
** libwebp → image-webpクレート - WebP画像向け。
** libraw → libopenraw - RAW画像向け。
** librsvg - SVG画像向け。C言語からRustに書き直しされました。
* 圧縮ライブラリ
** zlib / zlib-ng → zlib-rs - Deflate圧縮向け
** libbzip2 → bzip2-rs - BZ2圧縮向け
* 暗号化ライブラリ
** OpenSSL / GnuTLS → [[:w:en:Rustls|Rustls]]
* Unicode処理ライブラリ
** ICU4C → ICU4X
* テキスト整形ライブラリ
** HarfBuzz → HarfRust
* ブラウザエンジン
** Blink/Gecko → Servo
<!--
=== 整合性チェック ===
PatchGuard / HyperGuard
-->
== 不審な改変が行われていないかを調べる ==
例えばOSの起動には一連のシーケンスがありますが、マルウェアは基本的にここの途中に入り込んで永続化します。
{| class="wikitable"
|+ 起動シーケンス
|-
! 種類 || Windows 11以降 !! Linux (Gnome) !! Linux (KDE)
|-
| 1. 起動ファームウェア || [[:w:Unified Extensible Firmware Interface|UEFI]] || colspan=2 | [[:w:Basic Input/Output System|レガシーBIOS]] / UEFI
|-
| 2. ブートローダー || [[:w:Windows Boot Manager|Windows Boot Manager]] (bootmgfw.efi)<br> → [[:w:Windows Boot Manager#winload.exe/winload.efi|Windows OS Loader]] (winload.efi) || colspan=2 | GRUB{{efn|Ubuntuの標準。}} / systemd-boot / Unified Kernel Image{{efn|Linuxカーネルとブートイメージを単一バイナリにする仕組み。}} / EFI boot stub{{efn|LinuxカーネルをEFIから直接ブートできるようにする仕組み。}}
|-
| 3. カーネル || [[:w:ntoskrnl.exe|ntoskrnl.exe]] || colspan=2 | Linuxカーネル ([[:w:vmlinux|vmlinux]]{{efn|圧縮後はvmlinuzとなる。}})
|-
| 4. 初期化プロセス || [[:w:en:Session Manager Subsystem|smss.exe]]<br> → wininit.exe<br> || rowspan=2 colspan=2 | [[:w:systemd|systemd]]{{efn|以前は代替initもよく使われていたが、今はsystemdが標準となっている。}}
|-
| 5. サービスコントロールマネージャ || colspan=2 | [[:w:en:Service Control Manager|services.exe]]
|-
| rowspan=2 | 6. ログインマネージャ || rowspan=2 | [[:w:Winlogon|winlogon.exe]] || colspan=2 | systemd-logind<br>sd-pam
|-
| [[:w:GNOME ディスプレイマネージャー|GDM]] || [[:w:Simple Desktop Display Manager|SDDM]]
|-
| rowspan=2 | 7. ユーザー初期化プロセス || rowspan=2 | userinit.exe || colspan=2 | systemd
|-
| gnome-session || kcminit<br> → plasma_session
|-
| 8. シェル || [[:w:Windows Explorer|explorer.exe]] || gnome-shell || plasmashell
|-
| 9. コンポジタ || [[:w:Desktop Window Manager|dwm.exe]] || mutter || kwin
|}
また起動シーケンス以外にもアップデートシーケンスへの感染やシェル感染、ブラウザ感染もあります。
{| class="wikitable"
|+ Windows における代表的なユーザースクリプト又はコマンド起動が可能な設定ファイル
|-
! 規格/アプリケーション !! ユーザー !! システム
|-
| Windows || %APPDATA%\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows\<wbr>Start Menu\<wbr>Programs\<wbr>Startup\<wbr>* || C:\<wbr>ProgramData\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows\<wbr>Start Menu\<wbr>Programs\<wbr>Startup\<wbr>*
|-
| [[:w:PowerShell|PowerShell]] プロファイル<ref>[https://learn.microsoft.com/ja-jp/powershell/module/microsoft.powershell.core/about/about_profiles?view=powershell-7.6 about_Profiles - PowerShell - Microsoft Learn] Microsoft</ref> || %USERPROFILE%\<wbr>Documents\<wbr>PowerShell\<wbr>Profile.ps1<br>%USERPROFILE%\<wbr>Documents\<wbr>PowerShell\<wbr>Microsoft.PowerShell_profile.ps1 || C:\<wbr>Windows\<wbr>System32\<wbr>WindowsPowerShell\<wbr>*\<wbr>Profile.ps1<br>C:\<wbr>Windows\<wbr>System32\<wbr>WindowsPowerShell\<wbr>*\<wbr>Microsoft.PowerShell_profile.ps1
|}
{| class="wikitable"
|+ Linux における代表的なユーザースクリプト又はコマンド起動が可能な設定ファイル
|-
! 規格/アプリケーション !! ユーザー !! システム
|-
| POSIX標準 || ~/.profile || /etc/profile
|-
| XDG Base Directory<wbr>標準 || ~/.local/bin/* ||
|-
| FHS{{efn|Filesystem Hierarchy Standard}}<wbr>標準[https://refspecs.linuxfoundation.org/fhs.shtml] || || /bin/* /sbin/* /usr/bin/* /usr/local/bin/* /etc/inittab
|-
| LSB{{efn|Linux Standard Base}}<wbr>標準[https://refspecs.linuxfoundation.org/lsb.shtml] || || /etc/profile.d/* /etc/init.d/* /etc/cron.d/*
|-
| Desktop Application Autostart Specification<wbr>標準[https://specifications.freedesktop.org/autostart/latest/]{{efn|systemd-xdg-autostart-generator が導入されているシステムではこれらがsystemd設定に自動変換される。}} || ~/.config/autostart/* || /etc/xdg/autostart/*
|-
| Bash || ~/.bash_profile ~/.bashrc || /etc/bash_profile /etc/bash.bashrc /etc/bash.bash_logout
|-
| Z shell (Zsh) || ~/.zshenv ~/.zprofile ~/.zshrc ~/.zlogin ~/.zlogout || /etc/zshenv /etc/zprofile /etc/zshrc /etc/zlogin /etc/zlogout<br/>(または /etc/zsh/zshenv /etc/zsh/zprofile /etc/zsh/zshrc /etc/zsh/zlogin /etc/zsh/zlogout)
|-
| Systemd || ~/.config/systemd/user/* || /etc/systemd/system/* /etc/systemd/user/*
|-
| Xorg || ~/.xinitrc ~/.xserverrc ~/.xsession || /etc/X11/xinit/xinitrc /etc/X11/xinit/xserverrc /etc/X11/Xsession /usr/share/xsessions/*
|-
| Wayland || || /usr/share/wayland-sessions/*
|-
| Python || ~/.local/lib/python*/site-packages/*/**{{efn|絶対パスは<code>python3 -c 'import site; print(site.getusersitepackages())'</code>で確認可能。}} || /usr/lib/python*/dist-packages/*/** /usr/local/lib/python*/dist-packages/*/**{{efn|絶対パスは<code>python3 -c 'import site; print(site.getsitepackages())'</code>で確認可能。}}
|-
| Perl{{efn|Debian/UbuntuではDebianパッケージ設定システム (debconf) のためにPerlを使用している。}} || || /usr/share/perl*/** /usr/local/share/perl*/** /usr/lib/*/perl*/** /usr/local/lib/*/perl*/**{{efn|絶対パスは<code>perl -V:installsitearch -V:installsitelib -V:installvendorarch -V:installvendorlib -V:archlib -V:privlib -V:installarchlib -V:installprivlib</code>で確認可能。}}
|}
=== パッケージ管理ファイルを検証する ===
パッケージ管理システムが管理しているファイルではファイルハッシュが保存されているため簡単にその検証を行うことが可能です:
* Windows: <code>sfc /scannow</code>
* Debian/Ububntu(Debパッケージ): <code>debsums -s</code>
* RedHat/Fedora(RPMパッケージ): <code>rpm -Va</code>
ただしローカルハッシュが改ざんされている可能性もあるため過信はできません。<!--TODO: ローカルハッシュの検証法-->
自動的にシステムの検証を行うシステムも存在します:
* Android - ブロックデバイスレベルでのハッシュ検証 (dm-verityベース)<ref>[https://source.android.com/docs/security/features/verifiedboot/dm-verity?hl=ja dm-verity の実装] Google</ref>
<!--
またUbuntuのSnapパッケージでもdm-verityの導入が進められています。
また特定言語のパッケージの検証は以下で可能です:
* PIP (Python): なし
-->
=== システム領域に不審なファイルが追加されていないかを調べる ===
システムの追加ファイルの検知にはパッケージシステムで管理されていないファイルの一覧を返す以下のようなツールが存在します:
* Debian / Ubuntu(Debパッケージ)向け: cruft-ngパッケージ(<code>cruft</code>コマンド)
上記の<code>cruft</code>コマンドでは設定ファイルだけ残っているパッケージのファイルも出てきてしまいます。そのため、これが邪魔な時は設定ファイルだけ残っているパッケージを<code>sudo apt purge '~c'</code>で削除しましょう。
=== ユーザー領域に不審なファイルが追加されていないかを調べる ===
ユーザースクリプトの書き換えや追加は検知が難しいです。<!--TODO: 良い方法を書く-->
共有ライブラリやスクリプトによるプラグイン追加も可能となっているため、こちらにも気をつけなければいけません。これには例えば以下があります:
{| class="wikitable"
|+ 代表的なユーザースクリプトや拡張機能のディレクトリパス
|-
! 種類 !! Windowsのパス !! macOSのパス !! Linuxのパス
|-
| Google Chrome 拡張機能 || %LOCALAPPDATA%\Google\Chrome\User Data\*\Extensions\ || ~/Library/Application Support/Google/Chrome/*/Extensions/ || ~/.config/google-chrome/*/Extensions/
|-
| GIMPプラグイン<ref>[https://gimp.cc/faq/add-gimp-plugins.html How to Install GIMP Plugins - Detailed Guide with Troubleshooting] GIMP.cc</ref> || %APPDATA%\GIMP\*\plug-ins\ || ~/Library/Application Support/GIMP/*/plug-ins/ || ~/.config/GIMP/*/plug-ins/
|-
| Blenderスクリプト{{efn|起動スクリプト、アドオンを含む。}}<ref>[https://docs.blender.org/manual/ja/dev/advanced/blender_directory_layout.html Blender's Directory Layout] Blender Foundation</ref> || %APPDATA%\Blender Foundation\Blender\*\scripts\ || ~/Library/Application Support/Blender/*/scripts/ || ~/.config/blender/*/scripts/
|-
| Ardourスクリプト<ref>[https://manual.ardour.org/lua-scripting/ The Ardour Manual - Lua Scripting] Ardour</ref> || %LOCALAPPDATA%\ardour*\scripts\ || ~/Library/Preferences/Ardour*/scripts/ || ~/.config/ardour*/scripts/
|-
| LibreOfficeスクリプト || %APPDATA%\LibreOffice\*\user\Scripts\ || ~/Library/Application Support/LibreOffice/*/user/Scripts/ || ~/.config/libreoffice/*/user/Scripts/
|-
| Visual Studio Code 拡張機能<ref>[https://code.visualstudio.com/docs/configure/extensions/extension-marketplace Extension Marketplace] Microsoft</ref> || %USERPROFILE%\.vscode\extensions\ || ~/.vscode/extensions/ || ~/.vscode/extensions/
|}
=== 改変・追加されたファイルが危険かを調べる ===
実行ファイルやスクリプトはLinuxでは以下で検出できます:
<syntaxhighlight lang="shell-session">
# cat filelist.txt | xargs file | grep -i -E ':.*(executable|shared object|relocatable|script)'
/etc/init.d/binfmt-support.dpkg-new: POSIX shell script, ASCII text executable
/etc/update-motd.d/99-livepatch-kernel-upgrade-required: POSIX shell script, ASCII text executable
/usr/lib/chromium-browser/plugins/libpepflashplayer.so: ELF 64-bit LSB shared object, x86-64, version 1 (SYSV), dynamically linked, BuildID[sha1]=5c421e89a5c062a2106a5a4381dc38e779a22795, stripped
</syntaxhighlight>
またClamAVを導入していれば以下でマルウェアデータベースとの照合を行うことができます:
<syntaxhighlight lang="shell-session">
# cat filelist.txt | xargs clamscan
Loading: 3s, ETA: 0s [========================>] 3.63M/3.63M sigs
Compiling: 1s, ETA: 0s [========================>] 41/41 tasks
/etc/apt/apt.conf.d/00trustcdrom: OK
/etc/apt/auth.conf.d/90ubuntu-advantage: OK
/etc/apt/keyrings/google.asc: OK
[...]
----------- SCAN SUMMARY -----------
Known viruses: 3628164
Engine version: 1.5.4
Scanned directories: 125
Scanned files: 1919
Infected files: 0
Total errors: 10
Data scanned: 247.72 MiB
Data read: 281.17 MiB (ratio 0.88:1)
Time: 17.939 sec (0 m 17 s)
Start Date: 2026:10:11 05:41:30
End Date: 2026:10:11 05:41:48
</syntaxhighlight>
=== 設定データベースを検証する ===
設定データベースは Windows ではレジストリ、Linuxでは GNOME / MATEの 使う [[:en:dconf|dconf]] が存在します。
Windows の設定データベースはレジストリと呼び「レジストリエディタ」 (<code>regedit</code>) で表示できます。
{| class="wikitable"
|+ Windows における代表的なユーザースクリプト、コマンド起動、DLL呼び出しが可能なレジストリ
|-
! 規格/アプリケーション !! 各ユーザー !! 全ユーザー
|-
| Windows || HKEY_USERS\<wbr>*\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows\<wbr>CurrentVersion\<wbr>Run\<wbr>*<wbr>CurrentVersion\<wbr>Run\<wbr>*<br>HKEY_USERS\<wbr>*\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows\<wbr>CurrentVersion\<wbr>RunOnce\<wbr>*{{efn|name="runonce"|RunOnceは一度のみ実行だが再登録することで何回でも実行可能。}} || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows\<wbr>CurrentVersion\<wbr>Run\<wbr>*<br>HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows\<wbr>CurrentVersion\<wbr>RunOnce\<wbr>*{{efn|name="runonce"}}
|-
| [[:w:en:Security Account Manager|Security Account Manager]] || || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>SAM\<wbr>SAM\<wbr>Domains\<wbr>Account\<wbr>Users\<wbr>*\<wbr>V{{efn|name="sam"|'HKEY_LOCAL_MACHINE\SAM\SAM\' 以下はレジストリエディタの右クリックの「アクセス許可」で Administrators にアクセス許可を与えないと読めない。なおファイルパスは「C:\Windows\System32\config\SAM」。}}{{efn|Vはバイナリであり、0xCC + (0x60 に指定されたオフセット) からユーザーログオンスクリプトパスを指定する<ref name="sam-ghost">Sebastián R. Castro et al. [https://dl.acm.org/doi/pdf/10.1145/3689934.3690839 Ghost in the SAM: Stealthy, Robust, and Privileged Persistence through Invisible Accounts] ACM 2024年</ref>。}}
|-
| [[:w:en:Local Security Authority Subsystem Service|Local Security Authority Subsystem Service]] || || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>System\<wbr>CurrentControlSet\<wbr>Control\<wbr>LSA\<wbr>Notification Packages<br>HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>SYSTEM\<wbr>CurrentControlSet\<wbr>Control\<wbr>LSA\<wbr>Authentication Packages<ref>[https://attack.mitre.org/detectionstrategies/DET0207/ Detect LSA Authentication Package Persistence via Registry and LSASS DLL Load] MITRE Corporation</ref>
|-
| [[:w:en:Active Setup|Active Setup]]<ref>[https://www.advancedinstaller.com/application-packaging-training/msi/ebook/active-setup.html Active-Setup Mechanism] Advanced Installer</ref> || HKEY_USERS\<wbr>*\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Active Setup\<wbr>Installed Components\<wbr>*\<wbr>StubPath || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Active Setup\<wbr>Installed Components\<wbr>*\<wbr>StubPath<ref>[https://attack.mitre.org/techniques/T1547/014/ Boot or Logon Autostart Execution: Active Setup] MITRE Corporation</ref>
|-
| [[:w:Windowsサービス|Windowsサービス]]<ref>[https://learn.microsoft.com/ja-jp/windows-hardware/drivers/install/hklm-system-currentcontrolset-services-registry-tree HKLM\SYSTEM\CurrentControlSet\Services レジストリ ツリー - Windows drivers - Microsoft Learn] Microsoft</ref> || || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>SYSTEM\<wbr>CurrentControlSet\<wbr>services\<wbr>*
|-
| [[:w:Winlogon|Winlogon]] || || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows NT\<wbr>CurrentVersion\<wbr>Winlogon\<wbr>Shell<br>HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows NT\<wbr>CurrentVersion\<wbr>Winlogon\<wbr>Userinit<br>HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows NT\<wbr>CurrentVersion\<wbr>Winlogon\<wbr>Notify<ref>[https://attack.mitre.org/techniques/T1547/004/ Boot or Logon Autostart Execution: Winlogon Helper DLL] MITRE Corporation</ref>
|-
| [[:w:cmd.exe|cmd.exe]]<ref>[https://learn.microsoft.com/en-us/windows-server/administration/windows-commands/cmd cmd - Microsoft Learn] Microsoft</ref> || HKEY_USERS\<wbr>*\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Command Processor\<wbr>AutoRun\REG_EXPAND_SZ || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Command Processor\<wbr>AutoRun\<wbr>REG_SZ
|-
| [[Microsoft Edge]] || || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>SOFTWARE\<wbr>Policies\<wbr>Microsoft\<wbr>Edge\<wbr>ExtensionInstallForcelist<ref>[https://learn.microsoft.com/ja-jp/deployedge/microsoft-edge-policies/extensioninstallforcelist Microsoft Edge ブラウザー ポリシードキュメント ExtensionInstallForcelist - Microsoft Learn] Microsoft</ref>{{efn|name="silent-install"|自動的にサイレントインストールする}}
|-
| [[Google Chrome]] || || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>SOFTWARE\<wbr>Policies\<wbr>Google\<wbr>Chrome\<wbr>ExtensionInstallForcelist<ref>[https://chromeenterprise.google/intl/ja_jp/policies/extension-install-forcelist/ ExtensionInstallForcelist: 自動インストールするアプリと拡張機能のリストの設定 - Chrome Enterprise] Google</ref>{{efn|name="silent-install"}}
|}
Linux の GNOME / MATE 環境には「[[:w:en:Dconf#dconf database|dconf データベース]]」が存在し、それは<code>dconf dump</code>('/'区切り)で表示できます。また dconf データベースにスキーマ(規定値と解説)を被せた gsettings も存在し、こちらは<code>gsettings list-recursively</code>(dconfと異なり'.'区切り)で表示できます。
{| class="wikitable"
|+ Linux における代表的なユーザースクリプト又はコマンド起動が可能なdconf設定
|-
! 規格/アプリケーション !! ユーザー
|-
| GNOME Settings Daemon || /org/gnome/settings-daemon/plugins/media-keys/custom-keybindings/custom*/command
|-
| Marco ([[w:MATE (デスクトップ環境)|MATE]]) || /org/mate/Marco/keybinding-commands/command-*{{efn|変更した設定は<code>dconf dump /org/mate/Marco/keybinding-commands/</code>で、デフォルトも含めた設定は<code>gsettings list-recursively org.mate.Marco.keybinding-commands</code>で表示可能。}}
|-
| MATE Screensaver || /org/mate/screensaver/embedded-keyboard-command<br>/org/mate/screensaver/logout-command{{efn|変更した設定は<code>dconf dump /org/mate/screensaver/</code>、デフォルトも含めた設定は<code>gsettings list-recursively org.mate.screensaver</code> で表示可能}}
|-
| mate-applets || /org/mate/panel/objects/object-*/prefs/command
|-
| mate-sensors-applet || /org/mate/panel/objects/object-*/prefs/*/high-alarm-command<br>/org/mate/panel/objects/object-*/prefs/*/low-alarm-command
|}
なお MATE Screensaver と同源の GNOME Screensaver にも /org/gnome/desktop/screensaver/embedded-keyboard-command と /org/gnome/desktop/screensaver/logout-command{{efn|変更した設定は<code>dconf dump /org/gnome/desktop/screensaver/</code>、デフォルトも含めた設定は<code>gsettings list-recursively org.gnome.desktop.screensaver</code> で表示可能。}} が存在しますが、こちらは既に廃止されており指定しても無視されます<ref>[https://github.com/GNOME/gsettings-desktop-schemas/blob/main/schemas/org.gnome.desktop.screensaver.gschema.xml.in gsettings-desktop-schemas/schemas/org.gnome.desktop.screensaver.gschema.xml.in at main · GNOME/gsettings-desktop-schemas] GNOME Project</ref>。
=== メディアに不審なファイルが追加されていないかを調べる ===
メディアの自動実行 ([[:w:en:AutoRun|AutoRun]]) ファイルにもマルウェアが紛れてることがあります。
{| class="wikitable"
|+ メディアの自動実行ファイル
|-
! Windows !! Linux<br>(Desktop Application Autostart Specification<wbr>標準[https://specifications.freedesktop.org/autostart/latest/])
|-
| *:\[[:w:autorun.inf|autorun.inf]] || /media/*/*/.autorun<br>/media/*/*/autorun<br>/media/*/*/autorun.sh<br>/run/media/*/*/.autorun<br>/run/media/*/*/autorun<br>/run/media/*/*/autorun.sh
|}
== 改変を防ぐ ==
改変を探すのは大変です。なので最初から改変をできないようにすれば管理はとても楽になります。
改ざんを防ぐには「[[:w:en:Chain of trust|信頼の連鎖]]」 (chain of trust) が重要となります。例えばカーネルだけで改ざんを防いでも、ハードウェアのファームウェアが不正であれば不正なカーネルを起動できてしまいます。
=== ファームウェア改ざんを防ぐ ===
ファームウェア改ざんによる「ファームウェアルートキット」を防ぐにはIntel Management Engine (Intel ME)で実装されているIntel BIOS Guardを使う必要があります。<!--TODO: マザーボードによってはBIOSで有効にする必要があります。→最近のマザーボード事情-->
なお2017年の第8世代Intel Coreプロセッサ (Coffee Lake) 以前はme_cleanerによってIntel Management Engineの無効化が可能<ref>[https://github.com/corna/me_cleaner/wiki/me_cleaner-status me_cleaner status] Nicola Corna 2018年</ref>なため非推奨です。
また2023年のIntel ME 16.1.30.2307未満では悪意あるロゴ画像を設定することによってroot権限からUEFI設定の変更が可能です([[:w:en:LogoFAIL|LogoFAIL]]の脆弱性)。そのため、古いIntel Management Engineが動作している場合はそのファームウェアをアップデートしましょう。Windowsでは MEUpdateTool.exe / FWUpdLcl.exe を使うことでこのアップデートが可能となっています。一方、Linuxでは一部機種が fwupdmgr 経由での Intel ME ファームウェアアップデートに対応しています。
Intel MEのバージョンはLinuxでは以下のような感じに調べることができます:
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ cat /sys/class/mei/mei0/fw_ver
0:16.1.32.2473
0:16.1.32.2473
0:16.1.27.2181
</syntaxhighlight>
=== ブートローダー改ざんを防ぐ ===
ブートローダーは起動に使われるファームウェア (BIOS) から呼ばれ、カーネルを読み込んで起動するために使われるプログラムです。古い BIOS (レガシーBIOS) には起動するブートローダーを検証する仕組みが存在しませんでしたが、新しい UEFI (統一拡張ファームウェアインターフェース) には署名されたブートローダーのみを起動する UEFI Secure Boot が追加され、安全なブートローダーの起動を許可するための「承認済み署名データベース」 (Authorized Signature Database、UEFI db) と、脆弱なブートローダーの起動を防ぐための「禁止署名データベース」 (Forbidden Signature Database、UEFI dbx) が用意されています。
UEFI Secure Boot が有効かどうかは以下で確認できます:
* Windows PowerShell: <code>Confirm-SecureBootUEFI</code>
* Linux: <code>mokutil --sb-state</code>
UEFI db と UEFI dbx の内容は以下で確認できます:
* Windows PowerShell: <code>Get-SecureBootUEFI -Name db -Decoded</code> / <code>Get-SecureBootUEFI -Name dbx -Decoded</code>
* Linux:
** mokutil{{efn|Ubuntu Desktop に標準で含まれている。}}: <code>mokutil --db</code> / <code>mokutil --dbx</code>
** efitools: <code>efi-readvar -v db</code> / <code>efi-readvar -v dbx</code>
ブートローダーの署名情報は以下で確認できます:
* Windows PowerShell: <code>Get-PfxCertificate</code>{{efn|<code>Get-AuthenticodeSignature</code>はカタログ署名が使われる場合があるため非推奨: https://github.com/PowerShell/PowerShell/issues/23820 。}}
* Linux: <code>sbverify --list</code>
例えば Windows PowerShell では以下のような感じです:
<syntaxhighlight lang="powershell">
PS C:\WINDOWS\system32> mountvol S: /S; if ($?) { Get-PfxCertificate 'S:\EFI\Microsoft\Boot\bootmgfw.efi'; mountvol S: /D }
Thumbprint Subject
---------- -------
FACDE3D80E99AFCC15E08AC5A69BD22785287F79 CN=Microsoft Windows, O=Microsoft Corporation, L=Redmond, S=Washington, C=US
</syntaxhighlight>
また Ubuntu や Debian では署名されたブートローダー (grub-efi-*-signedパッケージ) と非署名のブートローダー (grub-efi-*-unsignedパッケージ) の両方が用意されており、ブートローダーの正体がどれか、また署名されたブートローダーの署名内容を確認するのは以下のような感じとなります:
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ dpkg -L grub-efi-amd64-signed | grep -i '\.efi' | xargs md5sum # インストールされている署名されたブートローダーのハッシュを表示(grub*は通常版、gcd*は光学ブートメディア向け、grubnet*はネットブート向け)
2bd267fb12bd3b0fe26a9dfb4290868d /usr/lib/grub/x86_64-efi-signed/gcdx64.efi.signed
f689e93336a015fa6eb93e1913b13482 /usr/lib/grub/x86_64-efi-signed/grubnetx64.efi.signed
b63c7618fb96d52520b42b8cc7b124f0 /usr/lib/grub/x86_64-efi-signed/grubx64.efi.signed
$ sudo sh -c "md5sum /boot/efi/EFI/BOOT/*" # 現在のbootloaderがどれを使っているかを確認(署名されたgrubを使用)
b63c7618fb96d52520b42b8cc7b124f0 /boot/efi/EFI/BOOT/BOOTX64.EFI
$ sudo sbverify --list /boot/efi/EFI/BOOT/BOOTX64.EFI
signature 1
image signature issuers:
- /C=GB/ST=Isle of Man/L=Douglas/O=Canonical Ltd./CN=Canonical Ltd. Master Certificate Authority
image signature certificates:
- subject: /C=GB/ST=Isle of Man/O=Canonical Ltd./OU=Secure Boot/CN=Canonical Ltd. Secure Boot Signing (2022 v1)
issuer: /C=GB/ST=Isle of Man/L=Douglas/O=Canonical Ltd./CN=Canonical Ltd. Master Certificate Authority
$ sudo sbverify --cert /usr/share/grub/canonical-uefi-ca.crt /boot/efi/EFI/BOOT/BOOTX64.EFI
Signature verification OK
</syntaxhighlight>
なお Linux では grub の代わりに使えるブートローダーとして systemd-boot もあります。systemd-boot の署名版は Debian が systemd-boot-efi-*-signed パッケージとして用意しているようです(Ubuntu未搭載)。
<!--TODO:
TPM (Trusted Platform Module) チップ
-->
=== カーネル本体の改ざんを防ぐ ===
カーネルはオペレーティングシステム (OS) の下層で動き続けるプログラムです。カーネル本体の実行ファイルもブートローダーと同様に署名が行われており、UEFI Secure Boot が有効であればその検証をブートローダーが行います。Linux では GRUB の UEFI Secure Boot と shim_lock の連携がそれに相当します<ref>[https://www.gnu.org/software/grub/manual/grub/grub.html#UEFI-secure-boot-and-shim GNU GRUB Manual 2.14 - 19.4 UEFI secure boot and shim support] フリーソフトウェア財団</ref>。
なお Ubuntu には署名されたカーネル (linux-image-*パッケージ) と非署名のカーネル (linux-image-unsigned-*パッケージ) の両方が用意されており、署名されているカーネルは以下のような感じでその署名が確認できます:
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ sudo sbverify --list /boot/vmlinuz-$(uname -r) # Linuxカーネル本体の署名を確認する
signature 1
image signature issuers:
- /C=GB/ST=Isle of Man/L=Douglas/O=Canonical Ltd./CN=Canonical Ltd. Master Certificate Authority
image signature certificates:
- subject: /C=GB/ST=Isle of Man/O=Canonical Ltd./OU=Secure Boot/CN=Canonical Ltd. Secure Boot Signing (2022 v1)
issuer: /C=GB/ST=Isle of Man/L=Douglas/O=Canonical Ltd./CN=Canonical Ltd. Master Certificate Authority
$ sudo sbverify --cert /usr/share/grub/canonical-uefi-ca.crt /boot/vmlinuz-$(uname -r) # Linuxカーネル本体の署名を検証する
Signature verification OK
</syntaxhighlight>
=== カーネルモジュールの改ざんを防ぐ ===
カーネルモジュールも署名されており、その検証をカーネルが行っています。Windowsカーネルでは ci.dll (Code Integrityモジュール)が、Linuxカーネルでは CONFIG_MODULE_SIG コンパイルオプションがその検証を行っています。
カーネルによるカーネルモジュールの検証が有効かどうかは以下で確認することができます:
* Linux: <code>grep 'CONFIG_MODULE_SIG=' /boot/config-$(uname -r)</code>
カーネルによるカーネルモジュールの検証で読み込みを弾くかどうかは以下で確認することができます:
* Windows: 強制モードか評価モード (監査モード) かを確認する PowerShell スクリプトが Microsoft のサイトに存在します: https://support.microsoft.com/en-us/windows/hardware/drivers/the-windows-driver-policy#is-my-device-in-evaluation-mode-or-enforcement-mode
* Linux: <code>cat /sys/module/module/parameters/sig_enforce</code>
また Linux では検証で読み込みを弾かない場合でも検証外カーネルモジュールを読み込んだ場合はdmesgに警告が出て '''Tainted kernel''' 扱いとなります<ref>[https://docs.kernel.org/admin-guide/tainted-kernels.html Tainted kernels] Linux Foundation</ref>。以下はその例です:
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ grep 'CONFIG_MODULE_SIG=' /boot/config-$(uname -r) # y=Yes, n=No
CONFIG_MODULE_SIG=y
$ cat /sys/module/module/parameters/sig_enforce # Y=Yes, N=No
N
$ sudo dmesg | grep 'module verification'
[ 8.928361] nvidia: module verification failed: signature and/or required key missing - tainting kernel
$ wget http://git.kernel.org/pub/scm/linux/kernel/git/torvalds/linux.git/plain/tools/debugging/kernel-chktaint
[...]
$ sudo sh ./kernel-chktaint
Kernel is "tainted" for the following reasons:
* externally-built ('out-of-tree') module was loaded (#12)
* unsigned module was loaded (#13)
Raw taint value as int/string: 12288/'G OE '
Tainted modules:
* nvidia (OE)
* nvidia_drm (OE)
* nvidia_modeset (OE)
* nvidia_uvm (OE)
For a more detailed explanation of the various taint flags see
Documentation/admin-guide/tainted-kernels.rst in the Linux kernel sources
or https://kernel.org/doc/html/latest/admin-guide/tainted-kernels.html
</syntaxhighlight>
また Linux では以下のような感じで個々のモジュールの署名が確認できます:
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ modinfo /lib/modules/$(uname -r)/kernel/arch/x86/kernel/msr.ko.zst
filename: /lib/modules/7.0.0-38-generic/kernel/arch/x86/kernel/msr.ko.zst
license: GPL
description: x86 generic MSR driver
author: H. Peter Anvin <hpa@zytor.com>
srcversion: 639B995855A3528050FD532
depends:
intree: Y
name: msr
retpoline: Y
vermagic: 7.0.0-38-generic SMP preempt mod_unload modversions
sig_id: PKCS#7
signer: Build time autogenerated kernel key
sig_key: 3B:E7:D3:BF:D3:2E:D9:CA:9C:17:D2:E9:5F:1A:1C:AE:67:D5:82:2F
sig_hashalgo: sha512
signature: 96:BC:2A:18:6E:4D:D8:E5:28:69:9D:E6:65:89:95:D4:BE:4C:5B:7C:
4A:23:11:75:F6:FE:63:79:FC:29:9B:F7:EA:24:B6:F1:EF:F3:80:17:
0B:C0:1E:46:61:29:BB:F9:E0:AC:81:69:85:73:7D:D4:77:82:A8:DB:
[...]
</syntaxhighlight>
=== システムファイル改ざんを防ぐ ===
システムファイル改ざんを防ぐ良い方法はシステム領域を読み取り専用にすることですが、仮にファイルシステムを読み取り専用のファイルシステム(SquashFSやEROFS)にしたとしても記録する場所がSSDであればブロック単位での上書きが可能となります。
1回だけ書き込めて上書きが不可能な媒体としてはCD-R、DVD-R、DVD+R、BD-Rなどの一部の光学メディアが存在しますが、これらをブートメディアとして使用するのは頻繁なアップデートが難しくなります。
そのほかの手法としては別のコンピュータからシステムファイルを取得する「ネットワークブート」を行うという手法もありますが、これはネットワーク経由でシステムファイルが盗まれる可能性と隣り合わせです。しかしながらプロトコルにUEFI HTTPSを、認証に相互認証のmTLSを用いて、その秘密鍵をTPMで管理してOSから読めなくすることでネットワークブートの安全性は何とか確保できるかもしれません(対応マザーボードは不明)。
一方、Android や ChromeOS ではブロックデバイス単位での改ざん検知 (dm-verify) によってシステムイメージの改ざんを防止しています<ref>[https://source.android.com/docs/security/features/verifiedboot/dm-verity?hl=ja dm-verity の実装] Google</ref><ref>[https://research.google/pubs/verified-boot-on-chrome-os-and-how-to-do-it-yourself/ Verified Boot on Chrome OS and How to do it yourself] Google</ref>。
=== カーネルメモリ改ざんを防ぐ ===
カーネルメモリのコード部分は MMU の書き込み禁止によって保護されています。iOS / macOS では Kernel Integrity Protection が<ref>[https://support.apple.com/ja-jp/guide/security/sec8b776536b/web オペレーティングシステムの整合性] Apple</ref> 、Linux では Kernel Strict RWX がこれに相当します<ref>[https://docs.kernel.org/security/self-protection.html Kernel Self-Protection] Linux Foundation</ref>。Windows でもカーネルモードに読み込み専用メモリセグメントが存在し、これに書き込もうとするとブルースクリーンで ATTEMPTED_WRITE_TO_READONLY_MEMORY (0xBE) が発行されます<ref>[https://learn.microsoft.com/ja-jp/windows-hardware/drivers/debugger/bug-check-0xbe--attempted-write-to-readonly-memory バグ チェック 0xBE: ATTEMPTED_WRITE_TO_READONLY_MEMORY] Microsoft</ref>。しかしながら Linux Kernel では kprobes、Static Keys、Static calls などで自己書き換えが多用されているため、一時的にコード部分を書き込み可能なページに割り当てて書き換える text_poke(...) という抜け道が存在します。
また定期的に改ざんが行われていないかをチェックする仕組みも存在します。Windows では[[:w:Kernel Patch Protection|Kernel Patch Protection]] (PatchGuard) / HyperGuard が、Linux では Linux Kernel Runtime Guard(外部パッチ)がこれに該当します。Windows の PatchGuard では改ざんが検出されたらブルースクリーンで CRITICAL_STRUCTURE_CORRUPTION が発行されます。
<!--TODO: Windows の HVCI、macOS の Secure Page Table Monitor / Trusted Execution Monitor-->
<!--
=== アプリケーション改ざんを防ぐ ===
SELinux / AppArmor
-->
== 攻撃用AIを対策する ==
攻撃用AIでは基本的に賢いかつ制限の緩い大規模言語モデル (LLM) が使われています。この代表的な例として GLM 5.3 や Qwen3.8-27B-ABLITERATED が存在します。
=== コンテキスト爆弾を設置する ===
攻撃用AIの対策では相手のLLMを止めることが重要となります。そこで使えるのが'''コンテキスト爆弾''' (context bombs) という手法です<ref>[https://arstechnica.com/security/2026/07/now-defenders-are-embracing-the-prompt-injection-too/ Now, defenders are embracing the prompt injection, too] Ars Technica 2026年7月14日</ref>。
このコンテキスト爆弾は「相手のLLMに対し応答やツール呼び出しで禁止されていることを行わせようとする」というプロンプトインジェクションの一種であり、それによって相手のガードレールがLLMを止めることで相手からの攻撃を防ぎます。この手法は相手の読みそうなテキストにただプロンプトを書いておけば良いだけなので、お手軽に使えます。
コンテキスト爆弾のテキスト例は以下のリポジトリに存在します:
* https://github.com/tracebit-com/context-bombs
=== ハニーポット ===
ハニーポットは攻撃者を引きつける役目を担います。ハニーポットの評価フレームワークには「UHBS」(Universal Honeypot Benchmarking Standard) が、その品質基準には「UHQS」(Universal Honeypot Quality Score) が存在しますが、2026年現在多くのハニーポットがFランク〜Dランクと残念な状況になっています<ref>[https://uhbs.github.io/uhbs-standard/mkdocs/conformance/ Overview - UHBS — Honeypot Evaluation Framework]</ref>。
<!--
== 自作コードの脆弱性を塞ぐ ==
書きかけ
-->
== 脚注 ==
<references group="注釈"/>
== 参考文献 ==
<references/>
{{DEFAULTSORT:こんひゆうたせきゆりてい}}
[[Category:計算機科学]]
[[Category:情報技術]]
42wua9p52cy70gpbqkv9ho8244lshft
304869
304868
2026-10-18T16:30:35Z
~2026-54076-02
92740
/* メディアに不審なファイルが追加されていないかを調べる */
304869
wikitext
text/x-wiki
'''コンピュータセキュリティ'''はコンピュータの安全のことです。ここではコンピュータの安全を確保することを学びます。
== コンピュータセキュリティの基本 ==
コンピュータは弱いところから狙われるため、弱いところを無くすのがセキュリティの基本となります。
具体例を挙げましょう。一般的な光回線に繋がれてるホームネットワークを考えます。ここには光回線の先に繋がる上位ネットワークと家内のホームネットワーク (家庭におけるLAN) とを区切るエッジルーター(一般的にはハードウェア・ゲートウェイがこれに該当)が存在します。このホームネットワークに数台の新しいWindows PCと一台の古い機器が繋がっていると仮定します。
新しいWindows PC同士ではホームネットワーク経由でファイルをやり取りするためにファイルの共有 (SMB{{efn|Server Message Block}}) を有効にしているとします。一方、古い機器の方を脆弱性のある古いテレビとしましょう。このテレビはインターネットから繋いで地上デジタル放送を見るための DCTP+ {{efn|Digital Transmission Content Protection +}}が搭載されており、UPnP{{efn|Universal Plug and Play}}で自動的にエッジルーター搭載のファイアーウォールに穴あけてインターネット側から DCTP+ に繋がるようになっているものとします。
この仮定によってハッカーは DCTP+ の脆弱性を使って古いテレビに悪意のあるプログラムを実行させてファイルの共有サーバーを立て{{efn|Windows 11時点でもゲスト認証による接続は許可されている<ref>[https://learn.microsoft.com/en-us/windows-server/storage/file-server/smb-interception-defense?tabs=group-policy Protect SMB traffic from interception] Microsoft</ref>。}}、そこからファイルの共有を通じて新しいWindows PCにマルウェア (例えば<code>PHOTO-<ランダムな数字>.png.lnk</code><ref>[https://www.microsoft.com/en-us/security/blog/2026/06/25/photo-zip-campaign-targeting-hospitality-industry-delivers-node-js-implant-persistent-access/ Photo ZIP campaign targeting hospitality industry delivers Node.js implant for persistent access] Microsoft 2026年6月25日</ref>) を送り込むことが可能となりました。
== 安全にパスワードを使う ==
=== 流出したパスワードと被ってないかをチェックする ===
あちこちのサイトで流出したパスワードは集められてデータベース化されダークネットに流通しています。この代表的なものには2019年に登場した [[:w:en:Collection No. 1|Collection #1]] が挙げられます。この Collection #1 などの流出パスワードデータベースは辞書攻撃に利用されており、これは「Credential Stuffing攻撃」と呼ばれています。
使うパスワードが流出パスワードデータベースに載っていないかを確認するためには上記のデータベースを手に入れるか、上記のデータベースからk-匿名性で検索を行うオンラインサービスを使うと良いでしょう。
このオンラインサービスの代表的なものにはWebサイト「Have I Been Pwned」の提供する「Pwned Passwords」サービスが存在しますが、このAPIではパスワードのSHA-1ハッシュ先頭5文字を渡すと、流出したパスワードのSHA1ハッシュ6文字以降と流出データベースに載っていた回数が返答されます。
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ # License: CC0 / Public Domain
$ # パスワードを入力してSHA-1ハッシュへと変換する(ここでは'test'と入力)
$ sha1=$(read -sp "Password: " pass && echo -n $pass | sha1sum | cut -d' ' -f1)
Password:
$ # 変換後のハッシュを表示
$ echo $sha1
a94a8fe5ccb19ba61c4c0873d391e987982fbbd3
$ # ハッシュの先頭5文字を渡して6文字目以降を検索(':'の後ろは見つかった数)
$ curl -s https://api.pwnedpasswords.com/range/$(echo $sha1 | cut -c 1-5) | grep -i $(echo $sha1 | cut -c 6-)
FE5CCB19BA61C4C0873D391E987982FBBD3:1579235
</syntaxhighlight>
ハッシュの先頭5文字も渡したくない場合や、自社サービスでチェックを行いたい場合は上記のサービスが公式で提供するツール「haveibeenpwned-downloader」[https://github.com/HaveIBeenPwned/PwnedPasswordsDownloader]で全てのハッシュデータをダウンロードして自前で照合しましょう。
=== 解析耐性のある鍵導出関数を使う ===
パスワードでは計算負荷の低い SHA-256 や SHA-512 などの通常のハッシュ関数、メモリ負荷の低い [[:w:PBKDF2|PBKDF2]] や bcrypt などの古い[[:w:鍵導出関数|鍵導出関数]](パスワードハッシュ関数)を使わないようにしましょう。これらの弱いハッシュ関数は GPU や ASIC で高速に解かれてしまいます。
より強いパスワードハッシュ関数としては yescrypt や Argon2id が存在します。パスワードにはこちらを使いましょう。現代の Linux ではアカウントのパスワードハッシュ関数として yescrypt が標準となっています。
使っている Linux の新規アカウントで使われるパスワードハッシュ関数は以下で確認可能です:
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ grep -n 'pam_unix.so' /etc/pam.d/common-password
26:password [success=2 default=ignore] pam_unix.so obscure use_authtok try_first_pass yescrypt
</syntaxhighlight>
Linuxの現在のアカウントがどのハッシュ関数を使用しているかは以下で確認可能です:
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ sudo cat /etc/shadow | grep $USER # $(1|5|6|b)$=弱い、$y$=強い
user:$y$j9T$ST7oYwlQjFy7/8vnL/Ugt0$po4vW4qgGu8lpUNRtH0B3hDHGZACzcRhzIKhqlx.2Z5:20743:0:99999:7:::
</syntaxhighlight>
弱いハッシュ関数を使用している場合は<code>passwd $USER</code>でパスワードを再設定して使用するハッシュ関数を更新してください。
一方、Windows 10 以前のローカルアカウントではパスワードハッシュがレジストリの<code>HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>SAM\<wbr>SAM\<wbr>Domains\<wbr>Account\<wbr>Users\<wbr>(ユーザーID)\<wbr>V</code>{{efn|name="sam"}}のバイナリに存在します:
* [[:w:LMハッシュ|LMハッシュ]]: 0xCC + (0x9C に指定されたオフセット)<ref name="sam-ghost"/>
* NTLMハッシュ: 0xCC + (0xA8 に指定されたオフセット)<ref name="sam-ghost"/>
LMハッシュは [[:w:LAN Manager|LAN Manager]] に使われていた [[:w:Data Encryption Standard|DES]] ベースの古いハッシュ、NTLMハッシュは [[:w:NT LAN Manager|NT LAN Manager]] に使われている [[:w:MD4|MD4]] ベースの古いハッシュであり、どちらも非常に弱いものとなっていました。
また Windows の Active Directory ドメインアカウントのオフライン認証向けキャッシュ済みドメイン資格情報はレジストリの<code>HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>SECURITY\<wbr>Cache</code>に存在します:
* DCC1 ハッシュ (MSCache v1): 弱い MD4 ベース。Windows XP以前。
* DCC2 ハッシュ (MSCache v2) : 弱めの PBKDF2-HMAC-SHA1 ベース。Windows Vista以後<ref>[https://attack.mitre.org/techniques/T1003/005/ OS Credential Dumping: Cached Domain Credentials] MITRE 2025年10月24日</ref>。
2021年にリリースされた Windows 11 以降は Microsoft アカウントが必須となっています。
<!--TODO:
Windows Hello、LSA Secrets
=== パスワードの複雑性をチェックする ===
=== TPMで鍵を隔離する ===
-->
== 既製製品の脆弱性を塞ぐ ==
まずは弱いところを無くしましょう。
=== ソフトウェアアップデートをする ===
セキュリティの基本はソフトウェアアップデートです。
==== PCおよびモバイル ====
PC{{efn|PCサーバを含む}}やモバイルでは基本的に自動で通知が来るので忘れずにアップデートを選択しましょう。手動では以下のように行います:
; Windows
: システムのアップデートは基本的に [[:w:Microsoft Update|Microsoft Update]] (Windows Update) で、アプリケーションのアップデートは基本的に<code>winget upgrade --all</code>コマンドで行います。
: また Windows 11 Enterprise では再起動が不要なホットパッチにも対応しています。
; macOS / iOS
: 「ソフトウェアアップデート」
; Ubuntu / Debian
: [[:w:APT|APT]]パッケージ管理システムでは<code>apt upgrade</code>コマンドで更新を行います。
: Ubuntu では GUI による更新用として[[:w:Software Updater|Software Updater]] (<code>update-manager</code>コマンド)、[[:w:Snap (ソフトウェア)|Snap]]パッケージの更新コマンドとして<code>snap refresh</code>、メジャーバージョンの更新コマンドとして<code>do-release-upgrade</code>も存在します。
: また Ubuntu では Ubuntu Pro に登録することで再起動が不要なカーネル修正の「Livepatch」も可能となります(個人では5台まで無料)。SUSEではユーザー空間ライブパッチングまで提供されています(glibc と openssl のみ)<ref>[https://documentation.suse.com/ja-jp/sles/15-SP6/html/SLES-all/cha-ulp.html ユーザ空間ライブパッチ - 管理ガイド - SLES 15 SP6] SUSE</ref>。
; RedHat / Fedora
: <code>yum update</code>コマンド
; Android
: 「設定」アプリ→「システム」→「システムアップデート」または「ソフトウェアアップデート」
また個々のハードウェアのファームウェアアップデートは以下で行います:
; Linux
: Linuxにおけるファームウェアの更新は基本的に<code>fwupdmgr update</code>コマンドで行います。
: NVMe SSDのファームウェアの更新は<code>nvme fw-download</code>コマンドおよび<code>nvme fw-commit</code>コマンドで行うことができます。
一方、Windows ではファームウェアのアップデートも Windows Update 経由で<ref>[https://learn.microsoft.com/ja-jp/windows-hardware/drivers/bringup/firmware-update ファームウェアの更新] Microsoft</ref>、macOS ではファームウェアのアップデートもmacOSアップデートで行うことができます<ref>[https://support.apple.com/ja-jp/guide/mac-help/mchlp2609/mac Macのファームウェアアップデートの入手方法] Apple</ref>。
<!--
また開発環境では以下も存在します:
; Python
: <code>pip -U install</code>
-->
==== ルーター ====
ルーターでは以下の設定を有効のままにしておきましょう:
; AirStationシリーズ(Buffalo 製ルーター)
: 「ファームウェア自動更新機能」
; Atermシリーズ(NEC 製ルーター)
: 「メンテナンスバージョンアップ機能」「時刻指定バージョンアップ機能」
==== テレビ ====
テレビでは放送波アップデートが行われるため、「放送波による自動更新」<!--TODO: メーカー別名-->を有効にしましょう。
=== 高速に再起動する ===
パッケージは更新しただけでは反映されません(一部デーモンの更新を除く)。Linuxでは高速に再起動する方法が存在し、これによってダウンタイムを減らすことができます。
; 更新で影響を受けるデーモンのみ再起動する
:* Ubuntu Server: 標準で <code>needrestart</code> が導入されており自動で影響を受けるデーモンの再起動が行われます{{efn|自動的なデーモン再起動を止めるには /etc/apt/apt.conf.d/99needrestart より<code>-m u</code>を削除する必要があります<ref>[https://discourse.ubuntu.com/t/needrestart-changes-in-ubuntu-24-04-service-restarts/44671 `needrestart` changes in Ubuntu 24.04: service restarts] Canonical 2024年</ref>。}}(Ubuntu Desktopでは別途導入が必要)。
:* RedHat / Fedora: <code>dnf needs-restarting</code>が導入されており、それによって再起動するべきデーモンを確認できます。
; ユーザー空間のみ再起動する(カーネルの更新がない、またはカーネルでlive patchingを行ってる場合)
: <code>sudo systemctl soft-reboot</code>
; 高速にカーネルを更新する(ファームウェアの更新がない場合)
: <code>sudo systemctl kexec</code>
また一部のソフトウェアではホットアップグレード(無停止アップグレード{{efn|Zero-Downtime Upgrade}})にも対応しています (nginx の USR2 シグナル<ref>[https://nginx.org/en/docs/control.html Controlling nginx] nginx</ref>など)。
=== 代替ソフトウェアを探す ===
更新が停止された古いソフトウェアの多くはそれ自身に脆弱性が存在したり、脆弱性のある古いライブラリに依存していたりします。そのため古いソフトウェアは速やかに代替ソフトウェアへと移行しましょう。
==== 開発終了したソフトウェアから現役のソフトウェアへ ====
古いソフトウェアには例えば以下があります:
* オフィススイート(代替候補: LibreOffice)
** [[:w:OpenOffice.org|OpenOffice.org]](〜2011年)
* 画像ビューア
** [[:w:Susie|Susie]] (〜2013年)
* メディアプレイヤー
** [[:w:QuickTime|QuickTime]] for Windows(〜2016年) - リモートコード実行の脆弱性 ([https://www.zerodayinitiative.com/advisories/ZDI-16-241/ ZDI-16-241]、[https://www.zerodayinitiative.com/advisories/ZDI-16-242/ ZDI-16-242]) を残したままサポート終了しました<ref>[https://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/753400.html Apple、「QuickTime for Windows」のサポートを終了、アンインストールを推奨] Impress 2016年4月15日</ref>。
* メディアフィルター(代替候補: LAV Filters)
** [[:w:ffdshow|ffdshow]](〜2014年)
** [[:w:Haali Media Splitter|Haali Media Splitter]](〜2013年)
* メディアセンター(代替候補: Kodi)
** [[:w:en:Boxee|Boxee]](〜2011年)
** [[:w:Kodi|XBMC]](〜2014年) - Kodiの前身
* 圧縮ソフトウェア
** [[:w:+Lhaca|+Lhaca]](〜2007年)
** [[:w:Lhaplus|Lhaplus]](〜2017年)
またハードウェアに由来する古いソフトウェアには例えば以下があります:
* [[w:ウォークマン|ウォークマン]]関連(代替候補: [[:w:Music Center for PC|Music Center for PC]])
** [[:w:CONNECT Player|CONNECT Player]](〜2007年、Sony)
** [[:w:SonicStage|SonicStage]](〜2009年、Sony)
** [[:w:x-アプリ|x-アプリ]](〜2016年、Sony)
* DTCP-IP関連
** SmartVision/PLAYER powered by DiXiM(〜2019年、NEC)<ref>[https://support.nec-lavie.jp/navigate/support/info/2019/announce/svp/ SmartVision/PLAYER保守サービス終了のお知らせ] NECパーソナルコンピュータ 2019年1月28日</ref><ref>[https://apps.microsoft.com/detail/9wzdncrdkb4c?hl=ja-JP&gl=JP SmartVision/PLAYER powered by DiXiM] Microsoft</ref>
** DiXiM Digital TV plus for I-O DATA(〜2022年、I-O DATA)<ref>[https://www.iodata.jp/lib/product/d/3533.htm DiXiM Digital TV plus for I-O DATA] I-O DATA</ref>
なお仮想マシンを使って隔離しながら古いソフトウェアを動かすこともできますが、仮想マシンでも「VMエスケープ」の脆弱性を使用することでホスト環境への侵害が可能なため、仮想マシンの上で弱い環境や弱いソフトウェアを使うこともなるべく避けましょう。<!--TODO: Windows Sandbox-->
==== 古いバージョンのライブラリを避ける ====
多くのソフトウェアに使用されているライブラリとその過去の危険な脆弱性には例えば以下があります:<!--危険を認識させる。例はライブラリ内のメイン処理に存在し、任意コード実行であり、脆弱性の存在期間が長く、新しいものが好ましい。-->
* 画像ライブラリ
** libpng - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2010-1205 CVE-2010-1205](PNG画像で任意コード実行の可能性)
** libjpeg-turbo - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2012-2806 CVE-2012-2806](JPEG画像で任意コード実行の可能性)
** OpenJPEG - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2025-54874 CVE-2025-54874](JPEG2000画像で任意コード実行の可能性)
** libtiff - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2026-12912 CVE-2026-12912](PixarLog圧縮TIFF画像で任意コード実行の可能性)
** libwebp - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2023-4863 CVE-2023-4863](WebP画像で任意コード実行の可能性)
* 動画ライブラリ
** FFmpeg - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2024-22860 CVE-2024-22860](JPEG XLアニメーションで任意コード実行の可能性)
* 圧縮ライブラリ
** libarchive - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2026-15028 CVE-2026-15028](tarアーカイブ形式で任意コード実行の可能性)
** zlib - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2002-0059 CVE-2002-0059](Deflate圧縮形式で任意コード実行の可能性)
** bzip2 - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2010-0405 CVE-2010-0405](BZ2圧縮形式で任意コード実行の可能性)
これらのライブラリはABI(アプリケーションバイナリインターフェイス)が変更されて新しいバージョンの共有ライブラリにドロップイン置換できないものも多くなっています。
また国内で使われている古いソフトウェアでは開発中止になった以下のライブラリも問題となっています:
* UNLHA32.DLL<ref>[https://forest.watch.impress.co.jp/docs/news/372729.html 圧縮・解凍用DLL「UNLHA32.DLL」が開発中止、作者はLZHの利用中止を呼びかけ] Impress 2010年6月7日</ref>
Webフレームワークでは開発中止となった以下のフレームワークが問題となっています:
* [[:w:Model View Controller|Model View Controller]]フレームワーク(代替候補: [[:w:Apache Struts|Apache Struts]] 2、[[:w:Spring Framework#Model-View-Controller フレームワーク|Spring MVC]])
** [[:w:en:Apache Struts 1|Apache Struts 1]](〜2008年) - Java言語
* [[:w:アスペクト指向プログラミング|アスペクト指向フレームワーク]](代替候補: [[:w:Spring Framework|Spring Framework]]、[[:w:en:Micronaut (framework)|Micronaut]])
** [[:w:Seasar|Seasar]](〜2016年) - Java言語
* [[:w:シングルページアプリケーション|シングルページアプリケーション]]フレームワーク(代替候補: [[:w:Angular|Angular]]、[[:w:Vue.js|Vue.js]])
** [[:w:AngularJS|AngularJS]](〜2022年) - JavaScript
=== 古いハードウェアに対処する ===
サポート切れの OS を搭載したハードウェアはどうすれば良いでしょうか。これには使い続けるいくつかの方法がありますが、基本的にオススメしません。古い OS を搭載していたハードウェアはハードウェア仕様も古いからです。
==== スタンドアロン運用 ====
古いハードウェアはインターネットに繋がずに使用すること(スタンドアロン運用)も可能です。
しかしながらUSBメモリでデータをやり取りする場合はUSBメモリ経由での感染などのリスクは残ります。
==== 新しめのLinuxを導入 ====
新しめのLinuxを導入するという方法もあります。
これに適したものでは例えばWindows 11非対応のPC (Intel 第7世代以前、AMD Ryzen 1000シリーズ以前) が挙げられます。
またスマートフォンやタブレットであればカスタムROMが、ルーターであればDD-WRTやOpenWRTが存在します。
==== 手放す ====
手に負えなければデータだけバックアップして手放しましょう。情報が漏れないよう初期化も忘れずに。
== 潜在的な脆弱性を減らす ==
現代のプログラムでは以下のような保護が行われています。
=== メモリアドレスの推測困難化 ===
攻撃に必要なコード片(ガジェット)のメモリアドレスを推測しにくくするために、カーネル空間、ユーザー空間の両方で[[:w:アドレス空間配置のランダム化|アドレス空間配置のランダム化]](ASLR)が行われています。カーネル空間の ASLR は KASLR (Kernel ASLR) とも呼ばれています。
ユーザー空間のプログラムで ASLR を有効にするためには[[:w:位置独立コード|位置独立コード]] (PIC) / 位置独立実行形式 (PIE) である必要があります。Unix で使われる実行形式の ELF では位置独立実行形式が ET_DYN、非位置独立実行形式 (non-PIE) が ET_EXEC となります。
Linuxでは ASLR が無効となる非位置独立実行形式のファイルを以下で検索することができます:
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ # License: CC0 / Public Domain
$ # 非位置独立実行形式 (non-PIE) のバイナリを検索
$ find / -type f -executable 2>/dev/null | xargs -I {} sh -c 'LANG=C readelf -h {} 2>/dev/null | grep -E "Type:.*EXEC" >/dev/null && echo {}'
/usr/lib/default.sfx
/usr/lib/klibc/bin/mkfifo
/usr/lib/klibc/bin/zcat
/usr/lib/klibc/bin/poweroff
[...]
$ # 非位置独立実行形式 (non-PIE) のバイナリを含むDebianパッケージを検索
$ find / -type f -executable 2>/dev/null | xargs -I {} sh -c 'LANG=C readelf -h {} 2>/dev/null | grep -E "Type:.*EXEC" >/dev/null && echo {}' | xargs -r -d '\n' -n1 dpkg-query -S | sed 's/: .*//' | sort -u
aidl
busybox-static
code
cpp-15-x86-64-linux-gnu
cuda-gdb-13-4
cuda-nvcc-13-4
cuda-sanitizer-13-4
cuda-tileiras-13-4
debugedit
g++-15-x86-64-linux-gnu
gcc-15-x86-64-linux-gnu
gcc-mingw-w64-i686-posix
gdc-15-x86-64-linux-gnu
gds-tools-13-4
gfortran-15-x86-64-linux-gnu
gh
git-lfs
gobjc-15-x86-64-linux-gnu
gocryptfs
golang-1.26-go
go-md2man
go-mtpfs
[...]
</syntaxhighlight>
現在のLinuxカーネルがユーザー空間 ASLR を有効にしているかは以下で確認できます (出力例はUbuntu 26.04):
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ sysctl kernel.randomize_va_space # 0=無し、1=部分的、2=完全
kernel.randomize_va_space = 2
</syntaxhighlight>
また現在のLinuxカーネルがカーネル ASLR (KASLR) を有効にしているかは以下で確認できます (出力例はUbuntu 26.04):
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ grep 'CONFIG_RANDOMIZE_BASE' /boot/config-$(uname -r) # y=Yes, n=No
CONFIG_RANDOMIZE_BASE=y
</syntaxhighlight>
なお ASLR は間接的な関数呼び出し( C++ の vtable を含む)があると、そのアドレスから ASLR のオフセットがバレてしまい突破されてしまいます。
また CPU の[[:w:投機的実行|投機的実行]]での情報漏れ (Spectre) による[[:w:キャッシュ攻撃|キャッシュサイドチャネル攻撃]](後述)の一つである「投機的探査」 (BlindSide) によってもコードの位置情報の取得がされ ASLR が突破されてしまいます。
=== 投機的実行の情報漏れ防止 ===
前述のとおり、投機的実行による情報漏れ (Spectre) は攻撃に繋がります。Spectre には境界チェックを迂回する Spectre V1 と間接分岐の分岐先アドレスのキャッシュ{{efn|分岐先バッファ (Branch Target Buffer、BTB)や分岐先アドレスキャッシュ (Branch Target Address Cache、BTAC) と呼ばれる。}}を汚染する Spectre V2 が存在します。<!--TODO: Spectre v3/v4、Zenbleed-->
Spectre V1 を防ぐ方法としては投機的実行を阻害するための命令(x86ではLFENCE)の挿入{{efn|Linuxカーネルでの投機的実行の防止は<code>barrier_nospec()</code>。}}やアクセスできるアドレス範囲を狭めることが行われています{{efn|GCCでの投機的実行での範囲外アクセス防止は<code>__builtin_speculation_safe_value(...)</code>、Linuxカーネルでの投機的実行での範囲外アクセス防止は<code>array_index_nospec(...)</code><ref>[https://lwn.net/Articles/759423/ Spectre V1 defense in GCC] LWN 2018年7月10日</ref>。}}。
また Spectre V2 では攻撃を防ぎながらも速度を落とさない方法として脆弱な分岐先アドレスキャッシュに依存する間接分岐の代わりにリターンアドレスのキャッシュ{{efn|リターンスタックバッファ (RSB) と呼ばれる。}}に依存するリターン命令を使う retpoline が登場しました。しかしながらこの retpoline でも速度の低下は起こるため、既知の間接呼び出しを条件分岐 + 直接呼び出しに変換して高速化する手法が模索されました。LLVM では retpoline を有効にする <code>-mretpoline</code>フラグの処理内に既知の仮想関数呼び出しを[[:w:二分木|二分木]]の直接分岐に置き換える「分岐ファネル」(Branch funnel) が導入されています<ref>[https://reviews.llvm.org/D42453 Use branch funnels for virtual calls when retpoline mitigation is enabled.] LLVM project</ref>。また Linux カーネルでも既知の間接呼び出しを条件分岐 + 直接呼び出しに変換する INDIRECT_CALL_* マクロが搭載されています<ref>[https://lwn.net/Articles/774743/ Relief for retpoline pain] LWN 2018年12月14日</ref>。<!--TODO: Intel CETのSHSTKとretpolineの衝突-->
一方、リターン命令の投機的実行も「Retbleed」や AMD CPU における「投機的リターンスタックオーバーフロー」 (SRSO){{efn|Speculative Return Stack Overflow。}}のような脆弱性が見つかっています。
なお低権限コードから高権限コードへの権限境界をまたいだ Spectre および Retbleed は Intel の「間接分岐制限付き投機」(IBRS){{efn|Indirect Branch Restricted Speculation。}}およびそれを高速化した「拡張IBRS」(eIBRS) などハードウェア側によって塞がれました<ref>[https://www.intel.com/content/www/us/en/developer/articles/technical/software-security-guidance/technical-documentation/hardware-behavior-related-to-speculative-execution.html Hardware Features and Behavior Related to Speculative Execution] Intel 2026年10月14日</ref>が、権限境界をまたがないものは今も可能となっています。
=== メモリにおける書き込みと実行の排他化 (W^X) ===
メモリでは書き込み可能領域の実行不可化 ([[:w:NXビット|NXビット]]) と実行可能領域の書き込み不可化による書き込みと実行の排他化([[:w:en:W^X|W^X]])が一般的となっています。NXビットは x86 では NXビットは AMD64 と共に搭載された古い機能であるため、今時の CPU と OS は基本的にこれに対応しています。
現在の CPU がNXビットを有効にしているかはLinuxでは以下で確認できます:
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ grep '^flags' /proc/cpuinfo | grep -o nx
nx
nx
[...]
</syntaxhighlight>
現在のLinuxカーネルが厳格な W^X を有効にしているかは以下で確認できます (出力例はUbuntu 26.04):
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ grep '_RWX' /boot/config-$(uname -r) # y=Yes, n=No
CONFIG_ARCH_HAS_STRICT_KERNEL_RWX=y
CONFIG_STRICT_KERNEL_RWX=y
CONFIG_ARCH_HAS_STRICT_MODULE_RWX=y
CONFIG_STRICT_MODULE_RWX=y
</syntaxhighlight>
しかしながら書き込みと実行の排他の原則を破ってそれらを同時に行える場所というものも存在しています。読み込み・書き込み・実行が可能なことから「RWXセクション」と呼ばれています。Windows ではメモリページの PAGE_EXECUTE_READWRITE フラグがこれに相当します<ref>[https://learn.microsoft.com/ja-jp/windows/win32/memory/memory-protection-constants メモリ保護定数] メモリ保護定数 (WinNT.h) - Win32 apps | Microsoft Learn</ref>。
Windows のカーネルドライバでは NX フラグの使用が義務付けられています<ref>[https://learn.microsoft.com/en-us/windows-hardware/test/hlk/testref/driver-compatibility-with-device-guard メモリ整合性と VBS とのドライバ互換性] Microsoft</ref>が、その Windows カーネルにおいても PatchGuard の領域がコード難読化のためにこの原則を破っています。<!--TODO: ホットパッチ-->
また Linux でも実行可能領域を書き込み可能ページとして割り当てて書き込む text_poke 関数が用意されています。
=== 制御フローの操作を防ぐ (CET) ===
現代では「[[:w:Return-oriented programming|リターン指向プログラミング]]」(ROP)、「呼び出し指向プログラミング」 (COP)、「ジャンプ指向プログラミング」(JOP) 、「[[:en:Sigreturn-oriented programming|Sigreturn指向プログラミング]]」(SROP) などの制御フロー操作による攻撃が一般化していますが、これを防ぐ技術として「[[:w:en:Control-flow integrity#Intel Control-flow Enforcement Technology|制御フロー強制テクノロジー]]」(CET) の「[[:w:en:Indirect branch tracking|間接分岐追跡]]」(IBT) と「[[:w:en:Shadow stack|シャドウスタック]]」(SHSTK) が存在します。
制御フロー強制は比較的新しい技術であるため、対応する CPU は以下に限られます:
* Intel Core (Tiger Lake) 第11世代以降
* AMD Zen 3 以降(シャドウスタックのみ)
現在の CPU が間接分岐追跡 (IBT) およびシャドウスタックに対応しているかはLinuxでは以下で確認できます:
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ grep '^flags' /proc/cpuinfo | grep -oE '(ibt|shstk)'
shstk
ibt
shstk
ibt
[...]
</syntaxhighlight>
またユーザーランドのシャドウスタックの使用にはユーザーランドだけでなくカーネルの対応も必要となります。Linux カーネル では 6.6 以降対応でこれに対応しています(sigreturnにも対応<ref>[https://github.com/torvalds/linux/commit/05e36022c0543ba55a3de55af455b00cb3eb4fcc x86/shstk: Handle signals for shadow stack · torvalds/linux@05e3602] GitHub 2023年8月3日</ref>)。 Linuxディストリビューションでは Ubuntu 24.04以降、 Red Hat Enterprise Linux 9.7 以降<ref>[https://docs.redhat.com/ja/documentation/red_hat_enterprise_linux/9/html/9.7_release_notes/new-features-kernel 4.8. カーネル - 9.7 リリースノート - Red Hat Enterprise Linux - 9 - Red Hat Documentation] Red Hat</ref>が標準でシャドウスタックを有効としています。
現在のLinuxカーネルが間接分岐追跡およびシャドウスタックを有効にしているかは以下で確認できます (出力例はUbuntu 26.04):
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ grep -E '_(IBT|SHADOW_STACK)' /boot/config-$(uname -r) # y=Yes, n=No
CONFIG_CC_HAS_IBT=y
# CONFIG_X86_KERNEL_IBT is not set
CONFIG_X86_USER_SHADOW_STACK=y
CONFIG_X86_DISABLED_FEATURE_IBT=y
CONFIG_ARCH_HAS_USER_SHADOW_STACK=y
</syntaxhighlight>
現在のユーザーランドプログラムの中で間接分岐追跡またはシャドウスタックが無効化されているものはLinuxでは以下で確認できます:
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ # License: CC0 / Public Domain
$ # 間接分岐追跡またはシャドウスタックが無効化されているバイナリを検索
$ find / -type f 2>/dev/null | xargs -I {} sh -c 'readelf -h "{}" >/dev/null 2>&1 && (readelf -n "{}" 2>/dev/null | grep -E IBT,.*SHSTK > /dev/null || echo "{}")'
/usr/lib/lv2/carla.lv2/carla.so
/usr/lib/7zip/7z
/usr/lib/7zip/7zCon.sfx
/usr/lib/7zip/7zr
/usr/lib/7zip/7z.so
/usr/lib/7zip/7za
/usr/lib/klibc/bin/ipconfig
/usr/lib/klibc/bin/umount
/usr/lib/klibc/bin/halt
[...]
$ # 間接分岐追跡またはシャドウスタックが無効化されているバイナリを含むDebianパッケージを検索
$ find / -type f 2>/dev/null | xargs -I {} sh -c 'readelf -h "{}" >/dev/null 2>&1 && (readelf -n "{}" 2>/dev/null | grep -E IBT,.*SHSTK > /dev/null || echo "{}")' | xargs -r -d '\n' -n1 dpkg-query -S | sed 's/: .*//' | sort -u
7zip
aidl
ardour
avr-libc
cargo-1.93
carla
carla-bridge-wine32:i386
carla-bridge-wine64
carla-lv2
carla-vst
cuda-ctadvisor-13-4
cuda-cudart-13-4
[...]
</syntaxhighlight>
なお、制御フロー強制テクノロジーの間接分岐追跡とシャドウスタックが有効であっても異なる関数の通常呼び出しは防げません。分かりやすい例では関数の間接呼び出しにおいて関数ポインタを<code>sigaction</code>へと変更して独自のシグナルハンドラを登録し、その後クラッシュさせてそのシグナルハンドラを呼び出すという「セグメンテーション違反指向プログラミング」(SFOP) が挙げられます。また攻撃に使える関数 (dop gadgets) {{efn|dop gadgetsの検索の公式実装は「DOP-StaticAssist」[https://github.com/melynx/DOP-StaticAssist]だが長らく更新されておらず古いLLVM 3.5に依存している状態となっている。}}の通常呼び出しだけで攻撃する「Data-Oriented Programming」(DOP) <ref>Hong Hu et al. [https://ieeexplore.ieee.org/stamp/stamp.jsp?tp=&arnumber=7546545 Data-Oriented Programming: On the Expressiveness of Non-Control Data Attacks] IEEE 2016年</ref>{{efn|セキュリティ以外の文脈におけるデータ指向プログラミング、データ指向設計、データ駆動型設計とは異なる。}}という手法も存在します。
C++向けでは仮想関数テーブル (vtable) を改ざんして攻撃に使える仮想関数(仮想関数ガジェット、vfgadget)を呼び出す「偽造オブジェクト指向プログラミング」(COOP) という攻撃手法も登場しています。
=== メモリ安全性の高いソフトウェアへ ===
既存のソフトウェアの脆弱性は7割がメモリ安全性の問題に起因すると言われています<ref>[https://www.cisa.gov/sites/default/files/2023-12/CSAC_TAC_Recommendations-Memory-Safety_Final_20231205_508.pdf REPORT TO THE CISA DIRECTOR Technical Advisory Council Memory Safety] サイバーセキュリティ諮問委員会 (CSAC) 2023年12月5日</ref>。しかしながら[[C言語]]や[[C++]]はメモリ安全性が低いため、メモリ安全性の確保できる[[Rust]]などで書かれた代替プログラムが登場しています:
{| class="wikitable"
|+ コマンドのRust版
|-
! コマンドの概要 !! 従来版 !! Rust版
|-
| Unix系の基本コマンド群 || GNU Core Utilities || '''uutils coreutils'''
|-
| ファイル検索コマンド群{{efn|<code>find</code>、<code>locate</code>、<code>updatedb</code>、<code>xargs</code>の4コマンド}} || GNU Findutils || '''uutils findutils'''
|-
| ファイル差分コマンド群{{efn|<code>diff</code>、<code>cmp</code>、<code>diff3</code>、<code>sdiff</code>の4コマンド}} || GNU Diffutils || '''uutils diffutils'''
|-
| ストリームエディタ (sed) || GNU sed / FreeBSD sed || '''uutils sed'''
|-
| AWKスクリプト || GNU AWK || '''uutils AWK'''
|-
| 文字列検索 || GNU Grep || '''uutils Grep'''
|-
| tarアーカイブ || GNU Tar || '''uutils tar'''
|-
| アカウント管理コマンド群 || shadow-utils || '''uutils shadow-utils'''
|-
| アクセス制御コマンド群{{efn|<code>chacl</code>、<code>getfacl</code>、<code>setfacl</code>の3コマンド}} || acl || '''uutils acl'''
|-
| procfs{{efn|プロセスファイルシステム}}表示コマンド群 || procps / procps-ng || '''uutils procps'''
|-
| ホスト名管理コマンド群{{efn|<code>hostname</code>、<code>dnsdomainname</code>、<code>domainname</code>、<code>nisdomainname</code>、<code>ypdomainname</code>の5コマンド。}} || hostname || '''uutils hostname'''
|-
| Linuxユーティリティ || util-linux || '''uutils util-linux'''
|-
| 権限昇格 || sudo || '''sudo-rs'''
|-
| 暗号・署名システム || GnuPG || '''Sequoia PGP'''
|-
| 時刻同期 || ntpd || '''ntpd-rs'''
|-
| セキュアシェル (SSH) || OpenSSH || '''russh'''
|}
これらのRustで書かれたコマンドのうちuutils coreutilsとsudo-rsはUbuntuに採用されています。
またライブラリでもRustだけ (Pure Rust) で実装されたものが登場しています:
* 画像ライブラリ - これらは例えばGNOMEデスクトップ環境の画像ローダーGlycinから使われています<ref>[https://gitlab.gnome.org/GNOME/glycin GNOME / glycin · GitLab] GNOME Project</ref>。
** libpng → pngクレート - PNG画像向け。
** libgif → gifクレート - GIF画像向け。
** libjpeg / libjpeg-turbo → zune-jpeg / libjpeg-turbo-rs - JPEG画像向け。
** OpenJPEG → hayro-jpeg2000 - JPEG 2000画像向け。
** libtiff → tiffクレート - Tiff画像向け
** libwebp → image-webpクレート - WebP画像向け。
** libraw → libopenraw - RAW画像向け。
** librsvg - SVG画像向け。C言語からRustに書き直しされました。
* 圧縮ライブラリ
** zlib / zlib-ng → zlib-rs - Deflate圧縮向け
** libbzip2 → bzip2-rs - BZ2圧縮向け
* 暗号化ライブラリ
** OpenSSL / GnuTLS → [[:w:en:Rustls|Rustls]]
* Unicode処理ライブラリ
** ICU4C → ICU4X
* テキスト整形ライブラリ
** HarfBuzz → HarfRust
* ブラウザエンジン
** Blink/Gecko → Servo
<!--
=== 整合性チェック ===
PatchGuard / HyperGuard
-->
== 不審な改変が行われていないかを調べる ==
例えばOSの起動には一連のシーケンスがありますが、マルウェアは基本的にここの途中に入り込んで永続化します。
{| class="wikitable"
|+ 起動シーケンス
|-
! 種類 || Windows 11以降 !! Linux (Gnome) !! Linux (KDE)
|-
| 1. 起動ファームウェア || [[:w:Unified Extensible Firmware Interface|UEFI]] || colspan=2 | [[:w:Basic Input/Output System|レガシーBIOS]] / UEFI
|-
| 2. ブートローダー || [[:w:Windows Boot Manager|Windows Boot Manager]] (bootmgfw.efi)<br> → [[:w:Windows Boot Manager#winload.exe/winload.efi|Windows OS Loader]] (winload.efi) || colspan=2 | GRUB{{efn|Ubuntuの標準。}} / systemd-boot / Unified Kernel Image{{efn|Linuxカーネルとブートイメージを単一バイナリにする仕組み。}} / EFI boot stub{{efn|LinuxカーネルをEFIから直接ブートできるようにする仕組み。}}
|-
| 3. カーネル || [[:w:ntoskrnl.exe|ntoskrnl.exe]] || colspan=2 | Linuxカーネル ([[:w:vmlinux|vmlinux]]{{efn|圧縮後はvmlinuzとなる。}})
|-
| 4. 初期化プロセス || [[:w:en:Session Manager Subsystem|smss.exe]]<br> → wininit.exe<br> || rowspan=2 colspan=2 | [[:w:systemd|systemd]]{{efn|以前は代替initもよく使われていたが、今はsystemdが標準となっている。}}
|-
| 5. サービスコントロールマネージャ || colspan=2 | [[:w:en:Service Control Manager|services.exe]]
|-
| rowspan=2 | 6. ログインマネージャ || rowspan=2 | [[:w:Winlogon|winlogon.exe]] || colspan=2 | systemd-logind<br>sd-pam
|-
| [[:w:GNOME ディスプレイマネージャー|GDM]] || [[:w:Simple Desktop Display Manager|SDDM]]
|-
| rowspan=2 | 7. ユーザー初期化プロセス || rowspan=2 | userinit.exe || colspan=2 | systemd
|-
| gnome-session || kcminit<br> → plasma_session
|-
| 8. シェル || [[:w:Windows Explorer|explorer.exe]] || gnome-shell || plasmashell
|-
| 9. コンポジタ || [[:w:Desktop Window Manager|dwm.exe]] || mutter || kwin
|}
また起動シーケンス以外にもアップデートシーケンスへの感染やシェル感染、ブラウザ感染もあります。
{| class="wikitable"
|+ Windows における代表的なユーザースクリプト又はコマンド起動が可能な設定ファイル
|-
! 規格/アプリケーション !! ユーザー !! システム
|-
| Windows || %APPDATA%\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows\<wbr>Start Menu\<wbr>Programs\<wbr>Startup\<wbr>* || C:\<wbr>ProgramData\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows\<wbr>Start Menu\<wbr>Programs\<wbr>Startup\<wbr>*
|-
| [[:w:PowerShell|PowerShell]] プロファイル<ref>[https://learn.microsoft.com/ja-jp/powershell/module/microsoft.powershell.core/about/about_profiles?view=powershell-7.6 about_Profiles - PowerShell - Microsoft Learn] Microsoft</ref> || %USERPROFILE%\<wbr>Documents\<wbr>PowerShell\<wbr>Profile.ps1<br>%USERPROFILE%\<wbr>Documents\<wbr>PowerShell\<wbr>Microsoft.PowerShell_profile.ps1 || C:\<wbr>Windows\<wbr>System32\<wbr>WindowsPowerShell\<wbr>*\<wbr>Profile.ps1<br>C:\<wbr>Windows\<wbr>System32\<wbr>WindowsPowerShell\<wbr>*\<wbr>Microsoft.PowerShell_profile.ps1
|}
{| class="wikitable"
|+ Linux における代表的なユーザースクリプト又はコマンド起動が可能な設定ファイル
|-
! 規格/アプリケーション !! ユーザー !! システム
|-
| POSIX標準 || ~/.profile || /etc/profile
|-
| XDG Base Directory<wbr>標準 || ~/.local/bin/* ||
|-
| FHS{{efn|Filesystem Hierarchy Standard}}<wbr>標準[https://refspecs.linuxfoundation.org/fhs.shtml] || || /bin/* /sbin/* /usr/bin/* /usr/local/bin/* /etc/inittab
|-
| LSB{{efn|Linux Standard Base}}<wbr>標準[https://refspecs.linuxfoundation.org/lsb.shtml] || || /etc/profile.d/* /etc/init.d/* /etc/cron.d/*
|-
| Desktop Application Autostart Specification<wbr>標準[https://specifications.freedesktop.org/autostart/latest/]{{efn|systemd-xdg-autostart-generator が導入されているシステムではこれらがsystemd設定に自動変換される。}} || ~/.config/autostart/* || /etc/xdg/autostart/*
|-
| Bash || ~/.bash_profile ~/.bashrc || /etc/bash_profile /etc/bash.bashrc /etc/bash.bash_logout
|-
| Z shell (Zsh) || ~/.zshenv ~/.zprofile ~/.zshrc ~/.zlogin ~/.zlogout || /etc/zshenv /etc/zprofile /etc/zshrc /etc/zlogin /etc/zlogout<br/>(または /etc/zsh/zshenv /etc/zsh/zprofile /etc/zsh/zshrc /etc/zsh/zlogin /etc/zsh/zlogout)
|-
| Systemd || ~/.config/systemd/user/* || /etc/systemd/system/* /etc/systemd/user/*
|-
| Xorg || ~/.xinitrc ~/.xserverrc ~/.xsession || /etc/X11/xinit/xinitrc /etc/X11/xinit/xserverrc /etc/X11/Xsession /usr/share/xsessions/*
|-
| Wayland || || /usr/share/wayland-sessions/*
|-
| Python || ~/.local/lib/python*/site-packages/*/**{{efn|絶対パスは<code>python3 -c 'import site; print(site.getusersitepackages())'</code>で確認可能。}} || /usr/lib/python*/dist-packages/*/** /usr/local/lib/python*/dist-packages/*/**{{efn|絶対パスは<code>python3 -c 'import site; print(site.getsitepackages())'</code>で確認可能。}}
|-
| Perl{{efn|Debian/UbuntuではDebianパッケージ設定システム (debconf) のためにPerlを使用している。}} || || /usr/share/perl*/** /usr/local/share/perl*/** /usr/lib/*/perl*/** /usr/local/lib/*/perl*/**{{efn|絶対パスは<code>perl -V:installsitearch -V:installsitelib -V:installvendorarch -V:installvendorlib -V:archlib -V:privlib -V:installarchlib -V:installprivlib</code>で確認可能。}}
|}
=== パッケージ管理ファイルを検証する ===
パッケージ管理システムが管理しているファイルではファイルハッシュが保存されているため簡単にその検証を行うことが可能です:
* Windows: <code>sfc /scannow</code>
* Debian/Ububntu(Debパッケージ): <code>debsums -s</code>
* RedHat/Fedora(RPMパッケージ): <code>rpm -Va</code>
ただしローカルハッシュが改ざんされている可能性もあるため過信はできません。<!--TODO: ローカルハッシュの検証法-->
自動的にシステムの検証を行うシステムも存在します:
* Android - ブロックデバイスレベルでのハッシュ検証 (dm-verityベース)<ref>[https://source.android.com/docs/security/features/verifiedboot/dm-verity?hl=ja dm-verity の実装] Google</ref>
<!--
またUbuntuのSnapパッケージでもdm-verityの導入が進められています。
また特定言語のパッケージの検証は以下で可能です:
* PIP (Python): なし
-->
=== システム領域に不審なファイルが追加されていないかを調べる ===
システムの追加ファイルの検知にはパッケージシステムで管理されていないファイルの一覧を返す以下のようなツールが存在します:
* Debian / Ubuntu(Debパッケージ)向け: cruft-ngパッケージ(<code>cruft</code>コマンド)
上記の<code>cruft</code>コマンドでは設定ファイルだけ残っているパッケージのファイルも出てきてしまいます。そのため、これが邪魔な時は設定ファイルだけ残っているパッケージを<code>sudo apt purge '~c'</code>で削除しましょう。
=== ユーザー領域に不審なファイルが追加されていないかを調べる ===
ユーザースクリプトの書き換えや追加は検知が難しいです。<!--TODO: 良い方法を書く-->
共有ライブラリやスクリプトによるプラグイン追加も可能となっているため、こちらにも気をつけなければいけません。これには例えば以下があります:
{| class="wikitable"
|+ 代表的なユーザースクリプトや拡張機能のディレクトリパス
|-
! 種類 !! Windowsのパス !! macOSのパス !! Linuxのパス
|-
| Google Chrome 拡張機能 || %LOCALAPPDATA%\Google\Chrome\User Data\*\Extensions\ || ~/Library/Application Support/Google/Chrome/*/Extensions/ || ~/.config/google-chrome/*/Extensions/
|-
| GIMPプラグイン<ref>[https://gimp.cc/faq/add-gimp-plugins.html How to Install GIMP Plugins - Detailed Guide with Troubleshooting] GIMP.cc</ref> || %APPDATA%\GIMP\*\plug-ins\ || ~/Library/Application Support/GIMP/*/plug-ins/ || ~/.config/GIMP/*/plug-ins/
|-
| Blenderスクリプト{{efn|起動スクリプト、アドオンを含む。}}<ref>[https://docs.blender.org/manual/ja/dev/advanced/blender_directory_layout.html Blender's Directory Layout] Blender Foundation</ref> || %APPDATA%\Blender Foundation\Blender\*\scripts\ || ~/Library/Application Support/Blender/*/scripts/ || ~/.config/blender/*/scripts/
|-
| Ardourスクリプト<ref>[https://manual.ardour.org/lua-scripting/ The Ardour Manual - Lua Scripting] Ardour</ref> || %LOCALAPPDATA%\ardour*\scripts\ || ~/Library/Preferences/Ardour*/scripts/ || ~/.config/ardour*/scripts/
|-
| LibreOfficeスクリプト || %APPDATA%\LibreOffice\*\user\Scripts\ || ~/Library/Application Support/LibreOffice/*/user/Scripts/ || ~/.config/libreoffice/*/user/Scripts/
|-
| Visual Studio Code 拡張機能<ref>[https://code.visualstudio.com/docs/configure/extensions/extension-marketplace Extension Marketplace] Microsoft</ref> || %USERPROFILE%\.vscode\extensions\ || ~/.vscode/extensions/ || ~/.vscode/extensions/
|}
=== 改変・追加されたファイルが危険かを調べる ===
実行ファイルやスクリプトはLinuxでは以下で検出できます:
<syntaxhighlight lang="shell-session">
# cat filelist.txt | xargs file | grep -i -E ':.*(executable|shared object|relocatable|script)'
/etc/init.d/binfmt-support.dpkg-new: POSIX shell script, ASCII text executable
/etc/update-motd.d/99-livepatch-kernel-upgrade-required: POSIX shell script, ASCII text executable
/usr/lib/chromium-browser/plugins/libpepflashplayer.so: ELF 64-bit LSB shared object, x86-64, version 1 (SYSV), dynamically linked, BuildID[sha1]=5c421e89a5c062a2106a5a4381dc38e779a22795, stripped
</syntaxhighlight>
またClamAVを導入していれば以下でマルウェアデータベースとの照合を行うことができます:
<syntaxhighlight lang="shell-session">
# cat filelist.txt | xargs clamscan
Loading: 3s, ETA: 0s [========================>] 3.63M/3.63M sigs
Compiling: 1s, ETA: 0s [========================>] 41/41 tasks
/etc/apt/apt.conf.d/00trustcdrom: OK
/etc/apt/auth.conf.d/90ubuntu-advantage: OK
/etc/apt/keyrings/google.asc: OK
[...]
----------- SCAN SUMMARY -----------
Known viruses: 3628164
Engine version: 1.5.4
Scanned directories: 125
Scanned files: 1919
Infected files: 0
Total errors: 10
Data scanned: 247.72 MiB
Data read: 281.17 MiB (ratio 0.88:1)
Time: 17.939 sec (0 m 17 s)
Start Date: 2026:10:11 05:41:30
End Date: 2026:10:11 05:41:48
</syntaxhighlight>
=== 設定データベースを検証する ===
設定データベースは Windows ではレジストリ、Linuxでは GNOME / MATEの 使う [[:en:dconf|dconf]] が存在します。
Windows の設定データベースはレジストリと呼び「レジストリエディタ」 (<code>regedit</code>) で表示できます。
{| class="wikitable"
|+ Windows における代表的なユーザースクリプト、コマンド起動、DLL呼び出しが可能なレジストリ
|-
! 規格/アプリケーション !! 各ユーザー !! 全ユーザー
|-
| Windows || HKEY_USERS\<wbr>*\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows\<wbr>CurrentVersion\<wbr>Run\<wbr>*<wbr>CurrentVersion\<wbr>Run\<wbr>*<br>HKEY_USERS\<wbr>*\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows\<wbr>CurrentVersion\<wbr>RunOnce\<wbr>*{{efn|name="runonce"|RunOnceは一度のみ実行だが再登録することで何回でも実行可能。}} || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows\<wbr>CurrentVersion\<wbr>Run\<wbr>*<br>HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows\<wbr>CurrentVersion\<wbr>RunOnce\<wbr>*{{efn|name="runonce"}}
|-
| [[:w:en:Security Account Manager|Security Account Manager]] || || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>SAM\<wbr>SAM\<wbr>Domains\<wbr>Account\<wbr>Users\<wbr>*\<wbr>V{{efn|name="sam"|'HKEY_LOCAL_MACHINE\SAM\SAM\' 以下はレジストリエディタの右クリックの「アクセス許可」で Administrators にアクセス許可を与えないと読めない。なおファイルパスは「C:\Windows\System32\config\SAM」。}}{{efn|Vはバイナリであり、0xCC + (0x60 に指定されたオフセット) からユーザーログオンスクリプトパスを指定する<ref name="sam-ghost">Sebastián R. Castro et al. [https://dl.acm.org/doi/pdf/10.1145/3689934.3690839 Ghost in the SAM: Stealthy, Robust, and Privileged Persistence through Invisible Accounts] ACM 2024年</ref>。}}
|-
| [[:w:en:Local Security Authority Subsystem Service|Local Security Authority Subsystem Service]] || || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>System\<wbr>CurrentControlSet\<wbr>Control\<wbr>LSA\<wbr>Notification Packages<br>HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>SYSTEM\<wbr>CurrentControlSet\<wbr>Control\<wbr>LSA\<wbr>Authentication Packages<ref>[https://attack.mitre.org/detectionstrategies/DET0207/ Detect LSA Authentication Package Persistence via Registry and LSASS DLL Load] MITRE Corporation</ref>
|-
| [[:w:en:Active Setup|Active Setup]]<ref>[https://www.advancedinstaller.com/application-packaging-training/msi/ebook/active-setup.html Active-Setup Mechanism] Advanced Installer</ref> || HKEY_USERS\<wbr>*\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Active Setup\<wbr>Installed Components\<wbr>*\<wbr>StubPath || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Active Setup\<wbr>Installed Components\<wbr>*\<wbr>StubPath<ref>[https://attack.mitre.org/techniques/T1547/014/ Boot or Logon Autostart Execution: Active Setup] MITRE Corporation</ref>
|-
| [[:w:Windowsサービス|Windowsサービス]]<ref>[https://learn.microsoft.com/ja-jp/windows-hardware/drivers/install/hklm-system-currentcontrolset-services-registry-tree HKLM\SYSTEM\CurrentControlSet\Services レジストリ ツリー - Windows drivers - Microsoft Learn] Microsoft</ref> || || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>SYSTEM\<wbr>CurrentControlSet\<wbr>services\<wbr>*
|-
| [[:w:Winlogon|Winlogon]] || || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows NT\<wbr>CurrentVersion\<wbr>Winlogon\<wbr>Shell<br>HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows NT\<wbr>CurrentVersion\<wbr>Winlogon\<wbr>Userinit<br>HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows NT\<wbr>CurrentVersion\<wbr>Winlogon\<wbr>Notify<ref>[https://attack.mitre.org/techniques/T1547/004/ Boot or Logon Autostart Execution: Winlogon Helper DLL] MITRE Corporation</ref>
|-
| [[:w:cmd.exe|cmd.exe]]<ref>[https://learn.microsoft.com/en-us/windows-server/administration/windows-commands/cmd cmd - Microsoft Learn] Microsoft</ref> || HKEY_USERS\<wbr>*\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Command Processor\<wbr>AutoRun\REG_EXPAND_SZ || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Command Processor\<wbr>AutoRun\<wbr>REG_SZ
|-
| [[Microsoft Edge]] || || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>SOFTWARE\<wbr>Policies\<wbr>Microsoft\<wbr>Edge\<wbr>ExtensionInstallForcelist<ref>[https://learn.microsoft.com/ja-jp/deployedge/microsoft-edge-policies/extensioninstallforcelist Microsoft Edge ブラウザー ポリシードキュメント ExtensionInstallForcelist - Microsoft Learn] Microsoft</ref>{{efn|name="silent-install"|自動的にサイレントインストールする}}
|-
| [[Google Chrome]] || || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>SOFTWARE\<wbr>Policies\<wbr>Google\<wbr>Chrome\<wbr>ExtensionInstallForcelist<ref>[https://chromeenterprise.google/intl/ja_jp/policies/extension-install-forcelist/ ExtensionInstallForcelist: 自動インストールするアプリと拡張機能のリストの設定 - Chrome Enterprise] Google</ref>{{efn|name="silent-install"}}
|}
Linux の GNOME / MATE 環境には「[[:w:en:Dconf#dconf database|dconf データベース]]」が存在し、それは<code>dconf dump</code>('/'区切り)で表示できます。また dconf データベースにスキーマ(規定値と解説)を被せた gsettings も存在し、こちらは<code>gsettings list-recursively</code>(dconfと異なり'.'区切り)で表示できます。
{| class="wikitable"
|+ Linux における代表的なユーザースクリプト又はコマンド起動が可能なdconf設定
|-
! 規格/アプリケーション !! ユーザー
|-
| GNOME Settings Daemon || /org/gnome/settings-daemon/plugins/media-keys/custom-keybindings/custom*/command
|-
| Marco ([[w:MATE (デスクトップ環境)|MATE]]) || /org/mate/Marco/keybinding-commands/command-*{{efn|変更した設定は<code>dconf dump /org/mate/Marco/keybinding-commands/</code>で、デフォルトも含めた設定は<code>gsettings list-recursively org.mate.Marco.keybinding-commands</code>で表示可能。}}
|-
| MATE Screensaver || /org/mate/screensaver/embedded-keyboard-command<br>/org/mate/screensaver/logout-command{{efn|変更した設定は<code>dconf dump /org/mate/screensaver/</code>、デフォルトも含めた設定は<code>gsettings list-recursively org.mate.screensaver</code> で表示可能}}
|-
| mate-applets || /org/mate/panel/objects/object-*/prefs/command
|-
| mate-sensors-applet || /org/mate/panel/objects/object-*/prefs/*/high-alarm-command<br>/org/mate/panel/objects/object-*/prefs/*/low-alarm-command
|}
なお MATE Screensaver と同源の GNOME Screensaver にも /org/gnome/desktop/screensaver/embedded-keyboard-command と /org/gnome/desktop/screensaver/logout-command{{efn|変更した設定は<code>dconf dump /org/gnome/desktop/screensaver/</code>、デフォルトも含めた設定は<code>gsettings list-recursively org.gnome.desktop.screensaver</code> で表示可能。}} が存在しますが、こちらは既に廃止されており指定しても無視されます<ref>[https://github.com/GNOME/gsettings-desktop-schemas/blob/main/schemas/org.gnome.desktop.screensaver.gschema.xml.in gsettings-desktop-schemas/schemas/org.gnome.desktop.screensaver.gschema.xml.in at main · GNOME/gsettings-desktop-schemas] GNOME Project</ref>。
=== メディアに不審なファイルが追加されていないかを調べる ===
メディアの自動実行 ([[:w:en:AutoRun|AutoRun]]) ファイルにもマルウェアが紛れてないか注意しましょう。
{| class="wikitable"
|+ メディアの自動実行ファイル
|-
! Windows !! Linux<br>(Desktop Application Autostart Specification<wbr>標準[https://specifications.freedesktop.org/autostart/latest/])
|-
| *:\[[:w:autorun.inf|autorun.inf]] || /media/*/*/.autorun<br>/media/*/*/autorun<br>/media/*/*/autorun.sh<br>/run/media/*/*/.autorun<br>/run/media/*/*/autorun<br>/run/media/*/*/autorun.sh
|}
== 改変を防ぐ ==
改変を探すのは大変です。なので最初から改変をできないようにすれば管理はとても楽になります。
改ざんを防ぐには「[[:w:en:Chain of trust|信頼の連鎖]]」 (chain of trust) が重要となります。例えばカーネルだけで改ざんを防いでも、ハードウェアのファームウェアが不正であれば不正なカーネルを起動できてしまいます。
=== ファームウェア改ざんを防ぐ ===
ファームウェア改ざんによる「ファームウェアルートキット」を防ぐにはIntel Management Engine (Intel ME)で実装されているIntel BIOS Guardを使う必要があります。<!--TODO: マザーボードによってはBIOSで有効にする必要があります。→最近のマザーボード事情-->
なお2017年の第8世代Intel Coreプロセッサ (Coffee Lake) 以前はme_cleanerによってIntel Management Engineの無効化が可能<ref>[https://github.com/corna/me_cleaner/wiki/me_cleaner-status me_cleaner status] Nicola Corna 2018年</ref>なため非推奨です。
また2023年のIntel ME 16.1.30.2307未満では悪意あるロゴ画像を設定することによってroot権限からUEFI設定の変更が可能です([[:w:en:LogoFAIL|LogoFAIL]]の脆弱性)。そのため、古いIntel Management Engineが動作している場合はそのファームウェアをアップデートしましょう。Windowsでは MEUpdateTool.exe / FWUpdLcl.exe を使うことでこのアップデートが可能となっています。一方、Linuxでは一部機種が fwupdmgr 経由での Intel ME ファームウェアアップデートに対応しています。
Intel MEのバージョンはLinuxでは以下のような感じに調べることができます:
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ cat /sys/class/mei/mei0/fw_ver
0:16.1.32.2473
0:16.1.32.2473
0:16.1.27.2181
</syntaxhighlight>
=== ブートローダー改ざんを防ぐ ===
ブートローダーは起動に使われるファームウェア (BIOS) から呼ばれ、カーネルを読み込んで起動するために使われるプログラムです。古い BIOS (レガシーBIOS) には起動するブートローダーを検証する仕組みが存在しませんでしたが、新しい UEFI (統一拡張ファームウェアインターフェース) には署名されたブートローダーのみを起動する UEFI Secure Boot が追加され、安全なブートローダーの起動を許可するための「承認済み署名データベース」 (Authorized Signature Database、UEFI db) と、脆弱なブートローダーの起動を防ぐための「禁止署名データベース」 (Forbidden Signature Database、UEFI dbx) が用意されています。
UEFI Secure Boot が有効かどうかは以下で確認できます:
* Windows PowerShell: <code>Confirm-SecureBootUEFI</code>
* Linux: <code>mokutil --sb-state</code>
UEFI db と UEFI dbx の内容は以下で確認できます:
* Windows PowerShell: <code>Get-SecureBootUEFI -Name db -Decoded</code> / <code>Get-SecureBootUEFI -Name dbx -Decoded</code>
* Linux:
** mokutil{{efn|Ubuntu Desktop に標準で含まれている。}}: <code>mokutil --db</code> / <code>mokutil --dbx</code>
** efitools: <code>efi-readvar -v db</code> / <code>efi-readvar -v dbx</code>
ブートローダーの署名情報は以下で確認できます:
* Windows PowerShell: <code>Get-PfxCertificate</code>{{efn|<code>Get-AuthenticodeSignature</code>はカタログ署名が使われる場合があるため非推奨: https://github.com/PowerShell/PowerShell/issues/23820 。}}
* Linux: <code>sbverify --list</code>
例えば Windows PowerShell では以下のような感じです:
<syntaxhighlight lang="powershell">
PS C:\WINDOWS\system32> mountvol S: /S; if ($?) { Get-PfxCertificate 'S:\EFI\Microsoft\Boot\bootmgfw.efi'; mountvol S: /D }
Thumbprint Subject
---------- -------
FACDE3D80E99AFCC15E08AC5A69BD22785287F79 CN=Microsoft Windows, O=Microsoft Corporation, L=Redmond, S=Washington, C=US
</syntaxhighlight>
また Ubuntu や Debian では署名されたブートローダー (grub-efi-*-signedパッケージ) と非署名のブートローダー (grub-efi-*-unsignedパッケージ) の両方が用意されており、ブートローダーの正体がどれか、また署名されたブートローダーの署名内容を確認するのは以下のような感じとなります:
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ dpkg -L grub-efi-amd64-signed | grep -i '\.efi' | xargs md5sum # インストールされている署名されたブートローダーのハッシュを表示(grub*は通常版、gcd*は光学ブートメディア向け、grubnet*はネットブート向け)
2bd267fb12bd3b0fe26a9dfb4290868d /usr/lib/grub/x86_64-efi-signed/gcdx64.efi.signed
f689e93336a015fa6eb93e1913b13482 /usr/lib/grub/x86_64-efi-signed/grubnetx64.efi.signed
b63c7618fb96d52520b42b8cc7b124f0 /usr/lib/grub/x86_64-efi-signed/grubx64.efi.signed
$ sudo sh -c "md5sum /boot/efi/EFI/BOOT/*" # 現在のbootloaderがどれを使っているかを確認(署名されたgrubを使用)
b63c7618fb96d52520b42b8cc7b124f0 /boot/efi/EFI/BOOT/BOOTX64.EFI
$ sudo sbverify --list /boot/efi/EFI/BOOT/BOOTX64.EFI
signature 1
image signature issuers:
- /C=GB/ST=Isle of Man/L=Douglas/O=Canonical Ltd./CN=Canonical Ltd. Master Certificate Authority
image signature certificates:
- subject: /C=GB/ST=Isle of Man/O=Canonical Ltd./OU=Secure Boot/CN=Canonical Ltd. Secure Boot Signing (2022 v1)
issuer: /C=GB/ST=Isle of Man/L=Douglas/O=Canonical Ltd./CN=Canonical Ltd. Master Certificate Authority
$ sudo sbverify --cert /usr/share/grub/canonical-uefi-ca.crt /boot/efi/EFI/BOOT/BOOTX64.EFI
Signature verification OK
</syntaxhighlight>
なお Linux では grub の代わりに使えるブートローダーとして systemd-boot もあります。systemd-boot の署名版は Debian が systemd-boot-efi-*-signed パッケージとして用意しているようです(Ubuntu未搭載)。
<!--TODO:
TPM (Trusted Platform Module) チップ
-->
=== カーネル本体の改ざんを防ぐ ===
カーネルはオペレーティングシステム (OS) の下層で動き続けるプログラムです。カーネル本体の実行ファイルもブートローダーと同様に署名が行われており、UEFI Secure Boot が有効であればその検証をブートローダーが行います。Linux では GRUB の UEFI Secure Boot と shim_lock の連携がそれに相当します<ref>[https://www.gnu.org/software/grub/manual/grub/grub.html#UEFI-secure-boot-and-shim GNU GRUB Manual 2.14 - 19.4 UEFI secure boot and shim support] フリーソフトウェア財団</ref>。
なお Ubuntu には署名されたカーネル (linux-image-*パッケージ) と非署名のカーネル (linux-image-unsigned-*パッケージ) の両方が用意されており、署名されているカーネルは以下のような感じでその署名が確認できます:
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ sudo sbverify --list /boot/vmlinuz-$(uname -r) # Linuxカーネル本体の署名を確認する
signature 1
image signature issuers:
- /C=GB/ST=Isle of Man/L=Douglas/O=Canonical Ltd./CN=Canonical Ltd. Master Certificate Authority
image signature certificates:
- subject: /C=GB/ST=Isle of Man/O=Canonical Ltd./OU=Secure Boot/CN=Canonical Ltd. Secure Boot Signing (2022 v1)
issuer: /C=GB/ST=Isle of Man/L=Douglas/O=Canonical Ltd./CN=Canonical Ltd. Master Certificate Authority
$ sudo sbverify --cert /usr/share/grub/canonical-uefi-ca.crt /boot/vmlinuz-$(uname -r) # Linuxカーネル本体の署名を検証する
Signature verification OK
</syntaxhighlight>
=== カーネルモジュールの改ざんを防ぐ ===
カーネルモジュールも署名されており、その検証をカーネルが行っています。Windowsカーネルでは ci.dll (Code Integrityモジュール)が、Linuxカーネルでは CONFIG_MODULE_SIG コンパイルオプションがその検証を行っています。
カーネルによるカーネルモジュールの検証が有効かどうかは以下で確認することができます:
* Linux: <code>grep 'CONFIG_MODULE_SIG=' /boot/config-$(uname -r)</code>
カーネルによるカーネルモジュールの検証で読み込みを弾くかどうかは以下で確認することができます:
* Windows: 強制モードか評価モード (監査モード) かを確認する PowerShell スクリプトが Microsoft のサイトに存在します: https://support.microsoft.com/en-us/windows/hardware/drivers/the-windows-driver-policy#is-my-device-in-evaluation-mode-or-enforcement-mode
* Linux: <code>cat /sys/module/module/parameters/sig_enforce</code>
また Linux では検証で読み込みを弾かない場合でも検証外カーネルモジュールを読み込んだ場合はdmesgに警告が出て '''Tainted kernel''' 扱いとなります<ref>[https://docs.kernel.org/admin-guide/tainted-kernels.html Tainted kernels] Linux Foundation</ref>。以下はその例です:
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ grep 'CONFIG_MODULE_SIG=' /boot/config-$(uname -r) # y=Yes, n=No
CONFIG_MODULE_SIG=y
$ cat /sys/module/module/parameters/sig_enforce # Y=Yes, N=No
N
$ sudo dmesg | grep 'module verification'
[ 8.928361] nvidia: module verification failed: signature and/or required key missing - tainting kernel
$ wget http://git.kernel.org/pub/scm/linux/kernel/git/torvalds/linux.git/plain/tools/debugging/kernel-chktaint
[...]
$ sudo sh ./kernel-chktaint
Kernel is "tainted" for the following reasons:
* externally-built ('out-of-tree') module was loaded (#12)
* unsigned module was loaded (#13)
Raw taint value as int/string: 12288/'G OE '
Tainted modules:
* nvidia (OE)
* nvidia_drm (OE)
* nvidia_modeset (OE)
* nvidia_uvm (OE)
For a more detailed explanation of the various taint flags see
Documentation/admin-guide/tainted-kernels.rst in the Linux kernel sources
or https://kernel.org/doc/html/latest/admin-guide/tainted-kernels.html
</syntaxhighlight>
また Linux では以下のような感じで個々のモジュールの署名が確認できます:
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ modinfo /lib/modules/$(uname -r)/kernel/arch/x86/kernel/msr.ko.zst
filename: /lib/modules/7.0.0-38-generic/kernel/arch/x86/kernel/msr.ko.zst
license: GPL
description: x86 generic MSR driver
author: H. Peter Anvin <hpa@zytor.com>
srcversion: 639B995855A3528050FD532
depends:
intree: Y
name: msr
retpoline: Y
vermagic: 7.0.0-38-generic SMP preempt mod_unload modversions
sig_id: PKCS#7
signer: Build time autogenerated kernel key
sig_key: 3B:E7:D3:BF:D3:2E:D9:CA:9C:17:D2:E9:5F:1A:1C:AE:67:D5:82:2F
sig_hashalgo: sha512
signature: 96:BC:2A:18:6E:4D:D8:E5:28:69:9D:E6:65:89:95:D4:BE:4C:5B:7C:
4A:23:11:75:F6:FE:63:79:FC:29:9B:F7:EA:24:B6:F1:EF:F3:80:17:
0B:C0:1E:46:61:29:BB:F9:E0:AC:81:69:85:73:7D:D4:77:82:A8:DB:
[...]
</syntaxhighlight>
=== システムファイル改ざんを防ぐ ===
システムファイル改ざんを防ぐ良い方法はシステム領域を読み取り専用にすることですが、仮にファイルシステムを読み取り専用のファイルシステム(SquashFSやEROFS)にしたとしても記録する場所がSSDであればブロック単位での上書きが可能となります。
1回だけ書き込めて上書きが不可能な媒体としてはCD-R、DVD-R、DVD+R、BD-Rなどの一部の光学メディアが存在しますが、これらをブートメディアとして使用するのは頻繁なアップデートが難しくなります。
そのほかの手法としては別のコンピュータからシステムファイルを取得する「ネットワークブート」を行うという手法もありますが、これはネットワーク経由でシステムファイルが盗まれる可能性と隣り合わせです。しかしながらプロトコルにUEFI HTTPSを、認証に相互認証のmTLSを用いて、その秘密鍵をTPMで管理してOSから読めなくすることでネットワークブートの安全性は何とか確保できるかもしれません(対応マザーボードは不明)。
一方、Android や ChromeOS ではブロックデバイス単位での改ざん検知 (dm-verify) によってシステムイメージの改ざんを防止しています<ref>[https://source.android.com/docs/security/features/verifiedboot/dm-verity?hl=ja dm-verity の実装] Google</ref><ref>[https://research.google/pubs/verified-boot-on-chrome-os-and-how-to-do-it-yourself/ Verified Boot on Chrome OS and How to do it yourself] Google</ref>。
=== カーネルメモリ改ざんを防ぐ ===
カーネルメモリのコード部分は MMU の書き込み禁止によって保護されています。iOS / macOS では Kernel Integrity Protection が<ref>[https://support.apple.com/ja-jp/guide/security/sec8b776536b/web オペレーティングシステムの整合性] Apple</ref> 、Linux では Kernel Strict RWX がこれに相当します<ref>[https://docs.kernel.org/security/self-protection.html Kernel Self-Protection] Linux Foundation</ref>。Windows でもカーネルモードに読み込み専用メモリセグメントが存在し、これに書き込もうとするとブルースクリーンで ATTEMPTED_WRITE_TO_READONLY_MEMORY (0xBE) が発行されます<ref>[https://learn.microsoft.com/ja-jp/windows-hardware/drivers/debugger/bug-check-0xbe--attempted-write-to-readonly-memory バグ チェック 0xBE: ATTEMPTED_WRITE_TO_READONLY_MEMORY] Microsoft</ref>。しかしながら Linux Kernel では kprobes、Static Keys、Static calls などで自己書き換えが多用されているため、一時的にコード部分を書き込み可能なページに割り当てて書き換える text_poke(...) という抜け道が存在します。
また定期的に改ざんが行われていないかをチェックする仕組みも存在します。Windows では[[:w:Kernel Patch Protection|Kernel Patch Protection]] (PatchGuard) / HyperGuard が、Linux では Linux Kernel Runtime Guard(外部パッチ)がこれに該当します。Windows の PatchGuard では改ざんが検出されたらブルースクリーンで CRITICAL_STRUCTURE_CORRUPTION が発行されます。
<!--TODO: Windows の HVCI、macOS の Secure Page Table Monitor / Trusted Execution Monitor-->
<!--
=== アプリケーション改ざんを防ぐ ===
SELinux / AppArmor
-->
== 攻撃用AIを対策する ==
攻撃用AIでは基本的に賢いかつ制限の緩い大規模言語モデル (LLM) が使われています。この代表的な例として GLM 5.3 や Qwen3.8-27B-ABLITERATED が存在します。
=== コンテキスト爆弾を設置する ===
攻撃用AIの対策では相手のLLMを止めることが重要となります。そこで使えるのが'''コンテキスト爆弾''' (context bombs) という手法です<ref>[https://arstechnica.com/security/2026/07/now-defenders-are-embracing-the-prompt-injection-too/ Now, defenders are embracing the prompt injection, too] Ars Technica 2026年7月14日</ref>。
このコンテキスト爆弾は「相手のLLMに対し応答やツール呼び出しで禁止されていることを行わせようとする」というプロンプトインジェクションの一種であり、それによって相手のガードレールがLLMを止めることで相手からの攻撃を防ぎます。この手法は相手の読みそうなテキストにただプロンプトを書いておけば良いだけなので、お手軽に使えます。
コンテキスト爆弾のテキスト例は以下のリポジトリに存在します:
* https://github.com/tracebit-com/context-bombs
=== ハニーポット ===
ハニーポットは攻撃者を引きつける役目を担います。ハニーポットの評価フレームワークには「UHBS」(Universal Honeypot Benchmarking Standard) が、その品質基準には「UHQS」(Universal Honeypot Quality Score) が存在しますが、2026年現在多くのハニーポットがFランク〜Dランクと残念な状況になっています<ref>[https://uhbs.github.io/uhbs-standard/mkdocs/conformance/ Overview - UHBS — Honeypot Evaluation Framework]</ref>。
<!--
== 自作コードの脆弱性を塞ぐ ==
書きかけ
-->
== 脚注 ==
<references group="注釈"/>
== 参考文献 ==
<references/>
{{DEFAULTSORT:こんひゆうたせきゆりてい}}
[[Category:計算機科学]]
[[Category:情報技術]]
ahs5n8dsto5zmcdosft902gfavl31kj
304870
304869
2026-10-18T18:00:18Z
~2026-54076-02
92740
/* パッケージ管理ファイルを検証する */
304870
wikitext
text/x-wiki
'''コンピュータセキュリティ'''はコンピュータの安全のことです。ここではコンピュータの安全を確保することを学びます。
== コンピュータセキュリティの基本 ==
コンピュータは弱いところから狙われるため、弱いところを無くすのがセキュリティの基本となります。
具体例を挙げましょう。一般的な光回線に繋がれてるホームネットワークを考えます。ここには光回線の先に繋がる上位ネットワークと家内のホームネットワーク (家庭におけるLAN) とを区切るエッジルーター(一般的にはハードウェア・ゲートウェイがこれに該当)が存在します。このホームネットワークに数台の新しいWindows PCと一台の古い機器が繋がっていると仮定します。
新しいWindows PC同士ではホームネットワーク経由でファイルをやり取りするためにファイルの共有 (SMB{{efn|Server Message Block}}) を有効にしているとします。一方、古い機器の方を脆弱性のある古いテレビとしましょう。このテレビはインターネットから繋いで地上デジタル放送を見るための DCTP+ {{efn|Digital Transmission Content Protection +}}が搭載されており、UPnP{{efn|Universal Plug and Play}}で自動的にエッジルーター搭載のファイアーウォールに穴あけてインターネット側から DCTP+ に繋がるようになっているものとします。
この仮定によってハッカーは DCTP+ の脆弱性を使って古いテレビに悪意のあるプログラムを実行させてファイルの共有サーバーを立て{{efn|Windows 11時点でもゲスト認証による接続は許可されている<ref>[https://learn.microsoft.com/en-us/windows-server/storage/file-server/smb-interception-defense?tabs=group-policy Protect SMB traffic from interception] Microsoft</ref>。}}、そこからファイルの共有を通じて新しいWindows PCにマルウェア (例えば<code>PHOTO-<ランダムな数字>.png.lnk</code><ref>[https://www.microsoft.com/en-us/security/blog/2026/06/25/photo-zip-campaign-targeting-hospitality-industry-delivers-node-js-implant-persistent-access/ Photo ZIP campaign targeting hospitality industry delivers Node.js implant for persistent access] Microsoft 2026年6月25日</ref>) を送り込むことが可能となりました。
== 安全にパスワードを使う ==
=== 流出したパスワードと被ってないかをチェックする ===
あちこちのサイトで流出したパスワードは集められてデータベース化されダークネットに流通しています。この代表的なものには2019年に登場した [[:w:en:Collection No. 1|Collection #1]] が挙げられます。この Collection #1 などの流出パスワードデータベースは辞書攻撃に利用されており、これは「Credential Stuffing攻撃」と呼ばれています。
使うパスワードが流出パスワードデータベースに載っていないかを確認するためには上記のデータベースを手に入れるか、上記のデータベースからk-匿名性で検索を行うオンラインサービスを使うと良いでしょう。
このオンラインサービスの代表的なものにはWebサイト「Have I Been Pwned」の提供する「Pwned Passwords」サービスが存在しますが、このAPIではパスワードのSHA-1ハッシュ先頭5文字を渡すと、流出したパスワードのSHA1ハッシュ6文字以降と流出データベースに載っていた回数が返答されます。
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ # License: CC0 / Public Domain
$ # パスワードを入力してSHA-1ハッシュへと変換する(ここでは'test'と入力)
$ sha1=$(read -sp "Password: " pass && echo -n $pass | sha1sum | cut -d' ' -f1)
Password:
$ # 変換後のハッシュを表示
$ echo $sha1
a94a8fe5ccb19ba61c4c0873d391e987982fbbd3
$ # ハッシュの先頭5文字を渡して6文字目以降を検索(':'の後ろは見つかった数)
$ curl -s https://api.pwnedpasswords.com/range/$(echo $sha1 | cut -c 1-5) | grep -i $(echo $sha1 | cut -c 6-)
FE5CCB19BA61C4C0873D391E987982FBBD3:1579235
</syntaxhighlight>
ハッシュの先頭5文字も渡したくない場合や、自社サービスでチェックを行いたい場合は上記のサービスが公式で提供するツール「haveibeenpwned-downloader」[https://github.com/HaveIBeenPwned/PwnedPasswordsDownloader]で全てのハッシュデータをダウンロードして自前で照合しましょう。
=== 解析耐性のある鍵導出関数を使う ===
パスワードでは計算負荷の低い SHA-256 や SHA-512 などの通常のハッシュ関数、メモリ負荷の低い [[:w:PBKDF2|PBKDF2]] や bcrypt などの古い[[:w:鍵導出関数|鍵導出関数]](パスワードハッシュ関数)を使わないようにしましょう。これらの弱いハッシュ関数は GPU や ASIC で高速に解かれてしまいます。
より強いパスワードハッシュ関数としては yescrypt や Argon2id が存在します。パスワードにはこちらを使いましょう。現代の Linux ではアカウントのパスワードハッシュ関数として yescrypt が標準となっています。
使っている Linux の新規アカウントで使われるパスワードハッシュ関数は以下で確認可能です:
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ grep -n 'pam_unix.so' /etc/pam.d/common-password
26:password [success=2 default=ignore] pam_unix.so obscure use_authtok try_first_pass yescrypt
</syntaxhighlight>
Linuxの現在のアカウントがどのハッシュ関数を使用しているかは以下で確認可能です:
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ sudo cat /etc/shadow | grep $USER # $(1|5|6|b)$=弱い、$y$=強い
user:$y$j9T$ST7oYwlQjFy7/8vnL/Ugt0$po4vW4qgGu8lpUNRtH0B3hDHGZACzcRhzIKhqlx.2Z5:20743:0:99999:7:::
</syntaxhighlight>
弱いハッシュ関数を使用している場合は<code>passwd $USER</code>でパスワードを再設定して使用するハッシュ関数を更新してください。
一方、Windows 10 以前のローカルアカウントではパスワードハッシュがレジストリの<code>HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>SAM\<wbr>SAM\<wbr>Domains\<wbr>Account\<wbr>Users\<wbr>(ユーザーID)\<wbr>V</code>{{efn|name="sam"}}のバイナリに存在します:
* [[:w:LMハッシュ|LMハッシュ]]: 0xCC + (0x9C に指定されたオフセット)<ref name="sam-ghost"/>
* NTLMハッシュ: 0xCC + (0xA8 に指定されたオフセット)<ref name="sam-ghost"/>
LMハッシュは [[:w:LAN Manager|LAN Manager]] に使われていた [[:w:Data Encryption Standard|DES]] ベースの古いハッシュ、NTLMハッシュは [[:w:NT LAN Manager|NT LAN Manager]] に使われている [[:w:MD4|MD4]] ベースの古いハッシュであり、どちらも非常に弱いものとなっていました。
また Windows の Active Directory ドメインアカウントのオフライン認証向けキャッシュ済みドメイン資格情報はレジストリの<code>HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>SECURITY\<wbr>Cache</code>に存在します:
* DCC1 ハッシュ (MSCache v1): 弱い MD4 ベース。Windows XP以前。
* DCC2 ハッシュ (MSCache v2) : 弱めの PBKDF2-HMAC-SHA1 ベース。Windows Vista以後<ref>[https://attack.mitre.org/techniques/T1003/005/ OS Credential Dumping: Cached Domain Credentials] MITRE 2025年10月24日</ref>。
2021年にリリースされた Windows 11 以降は Microsoft アカウントが必須となっています。
<!--TODO:
Windows Hello、LSA Secrets
=== パスワードの複雑性をチェックする ===
=== TPMで鍵を隔離する ===
-->
== 既製製品の脆弱性を塞ぐ ==
まずは弱いところを無くしましょう。
=== ソフトウェアアップデートをする ===
セキュリティの基本はソフトウェアアップデートです。
==== PCおよびモバイル ====
PC{{efn|PCサーバを含む}}やモバイルでは基本的に自動で通知が来るので忘れずにアップデートを選択しましょう。手動では以下のように行います:
; Windows
: システムのアップデートは基本的に [[:w:Microsoft Update|Microsoft Update]] (Windows Update) で、アプリケーションのアップデートは基本的に<code>winget upgrade --all</code>コマンドで行います。
: また Windows 11 Enterprise では再起動が不要なホットパッチにも対応しています。
; macOS / iOS
: 「ソフトウェアアップデート」
; Ubuntu / Debian
: [[:w:APT|APT]]パッケージ管理システムでは<code>apt upgrade</code>コマンドで更新を行います。
: Ubuntu では GUI による更新用として[[:w:Software Updater|Software Updater]] (<code>update-manager</code>コマンド)、[[:w:Snap (ソフトウェア)|Snap]]パッケージの更新コマンドとして<code>snap refresh</code>、メジャーバージョンの更新コマンドとして<code>do-release-upgrade</code>も存在します。
: また Ubuntu では Ubuntu Pro に登録することで再起動が不要なカーネル修正の「Livepatch」も可能となります(個人では5台まで無料)。SUSEではユーザー空間ライブパッチングまで提供されています(glibc と openssl のみ)<ref>[https://documentation.suse.com/ja-jp/sles/15-SP6/html/SLES-all/cha-ulp.html ユーザ空間ライブパッチ - 管理ガイド - SLES 15 SP6] SUSE</ref>。
; RedHat / Fedora
: <code>yum update</code>コマンド
; Android
: 「設定」アプリ→「システム」→「システムアップデート」または「ソフトウェアアップデート」
また個々のハードウェアのファームウェアアップデートは以下で行います:
; Linux
: Linuxにおけるファームウェアの更新は基本的に<code>fwupdmgr update</code>コマンドで行います。
: NVMe SSDのファームウェアの更新は<code>nvme fw-download</code>コマンドおよび<code>nvme fw-commit</code>コマンドで行うことができます。
一方、Windows ではファームウェアのアップデートも Windows Update 経由で<ref>[https://learn.microsoft.com/ja-jp/windows-hardware/drivers/bringup/firmware-update ファームウェアの更新] Microsoft</ref>、macOS ではファームウェアのアップデートもmacOSアップデートで行うことができます<ref>[https://support.apple.com/ja-jp/guide/mac-help/mchlp2609/mac Macのファームウェアアップデートの入手方法] Apple</ref>。
<!--
また開発環境では以下も存在します:
; Python
: <code>pip -U install</code>
-->
==== ルーター ====
ルーターでは以下の設定を有効のままにしておきましょう:
; AirStationシリーズ(Buffalo 製ルーター)
: 「ファームウェア自動更新機能」
; Atermシリーズ(NEC 製ルーター)
: 「メンテナンスバージョンアップ機能」「時刻指定バージョンアップ機能」
==== テレビ ====
テレビでは放送波アップデートが行われるため、「放送波による自動更新」<!--TODO: メーカー別名-->を有効にしましょう。
=== 高速に再起動する ===
パッケージは更新しただけでは反映されません(一部デーモンの更新を除く)。Linuxでは高速に再起動する方法が存在し、これによってダウンタイムを減らすことができます。
; 更新で影響を受けるデーモンのみ再起動する
:* Ubuntu Server: 標準で <code>needrestart</code> が導入されており自動で影響を受けるデーモンの再起動が行われます{{efn|自動的なデーモン再起動を止めるには /etc/apt/apt.conf.d/99needrestart より<code>-m u</code>を削除する必要があります<ref>[https://discourse.ubuntu.com/t/needrestart-changes-in-ubuntu-24-04-service-restarts/44671 `needrestart` changes in Ubuntu 24.04: service restarts] Canonical 2024年</ref>。}}(Ubuntu Desktopでは別途導入が必要)。
:* RedHat / Fedora: <code>dnf needs-restarting</code>が導入されており、それによって再起動するべきデーモンを確認できます。
; ユーザー空間のみ再起動する(カーネルの更新がない、またはカーネルでlive patchingを行ってる場合)
: <code>sudo systemctl soft-reboot</code>
; 高速にカーネルを更新する(ファームウェアの更新がない場合)
: <code>sudo systemctl kexec</code>
また一部のソフトウェアではホットアップグレード(無停止アップグレード{{efn|Zero-Downtime Upgrade}})にも対応しています (nginx の USR2 シグナル<ref>[https://nginx.org/en/docs/control.html Controlling nginx] nginx</ref>など)。
=== 代替ソフトウェアを探す ===
更新が停止された古いソフトウェアの多くはそれ自身に脆弱性が存在したり、脆弱性のある古いライブラリに依存していたりします。そのため古いソフトウェアは速やかに代替ソフトウェアへと移行しましょう。
==== 開発終了したソフトウェアから現役のソフトウェアへ ====
古いソフトウェアには例えば以下があります:
* オフィススイート(代替候補: LibreOffice)
** [[:w:OpenOffice.org|OpenOffice.org]](〜2011年)
* 画像ビューア
** [[:w:Susie|Susie]] (〜2013年)
* メディアプレイヤー
** [[:w:QuickTime|QuickTime]] for Windows(〜2016年) - リモートコード実行の脆弱性 ([https://www.zerodayinitiative.com/advisories/ZDI-16-241/ ZDI-16-241]、[https://www.zerodayinitiative.com/advisories/ZDI-16-242/ ZDI-16-242]) を残したままサポート終了しました<ref>[https://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/753400.html Apple、「QuickTime for Windows」のサポートを終了、アンインストールを推奨] Impress 2016年4月15日</ref>。
* メディアフィルター(代替候補: LAV Filters)
** [[:w:ffdshow|ffdshow]](〜2014年)
** [[:w:Haali Media Splitter|Haali Media Splitter]](〜2013年)
* メディアセンター(代替候補: Kodi)
** [[:w:en:Boxee|Boxee]](〜2011年)
** [[:w:Kodi|XBMC]](〜2014年) - Kodiの前身
* 圧縮ソフトウェア
** [[:w:+Lhaca|+Lhaca]](〜2007年)
** [[:w:Lhaplus|Lhaplus]](〜2017年)
またハードウェアに由来する古いソフトウェアには例えば以下があります:
* [[w:ウォークマン|ウォークマン]]関連(代替候補: [[:w:Music Center for PC|Music Center for PC]])
** [[:w:CONNECT Player|CONNECT Player]](〜2007年、Sony)
** [[:w:SonicStage|SonicStage]](〜2009年、Sony)
** [[:w:x-アプリ|x-アプリ]](〜2016年、Sony)
* DTCP-IP関連
** SmartVision/PLAYER powered by DiXiM(〜2019年、NEC)<ref>[https://support.nec-lavie.jp/navigate/support/info/2019/announce/svp/ SmartVision/PLAYER保守サービス終了のお知らせ] NECパーソナルコンピュータ 2019年1月28日</ref><ref>[https://apps.microsoft.com/detail/9wzdncrdkb4c?hl=ja-JP&gl=JP SmartVision/PLAYER powered by DiXiM] Microsoft</ref>
** DiXiM Digital TV plus for I-O DATA(〜2022年、I-O DATA)<ref>[https://www.iodata.jp/lib/product/d/3533.htm DiXiM Digital TV plus for I-O DATA] I-O DATA</ref>
なお仮想マシンを使って隔離しながら古いソフトウェアを動かすこともできますが、仮想マシンでも「VMエスケープ」の脆弱性を使用することでホスト環境への侵害が可能なため、仮想マシンの上で弱い環境や弱いソフトウェアを使うこともなるべく避けましょう。<!--TODO: Windows Sandbox-->
==== 古いバージョンのライブラリを避ける ====
多くのソフトウェアに使用されているライブラリとその過去の危険な脆弱性には例えば以下があります:<!--危険を認識させる。例はライブラリ内のメイン処理に存在し、任意コード実行であり、脆弱性の存在期間が長く、新しいものが好ましい。-->
* 画像ライブラリ
** libpng - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2010-1205 CVE-2010-1205](PNG画像で任意コード実行の可能性)
** libjpeg-turbo - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2012-2806 CVE-2012-2806](JPEG画像で任意コード実行の可能性)
** OpenJPEG - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2025-54874 CVE-2025-54874](JPEG2000画像で任意コード実行の可能性)
** libtiff - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2026-12912 CVE-2026-12912](PixarLog圧縮TIFF画像で任意コード実行の可能性)
** libwebp - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2023-4863 CVE-2023-4863](WebP画像で任意コード実行の可能性)
* 動画ライブラリ
** FFmpeg - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2024-22860 CVE-2024-22860](JPEG XLアニメーションで任意コード実行の可能性)
* 圧縮ライブラリ
** libarchive - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2026-15028 CVE-2026-15028](tarアーカイブ形式で任意コード実行の可能性)
** zlib - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2002-0059 CVE-2002-0059](Deflate圧縮形式で任意コード実行の可能性)
** bzip2 - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2010-0405 CVE-2010-0405](BZ2圧縮形式で任意コード実行の可能性)
これらのライブラリはABI(アプリケーションバイナリインターフェイス)が変更されて新しいバージョンの共有ライブラリにドロップイン置換できないものも多くなっています。
また国内で使われている古いソフトウェアでは開発中止になった以下のライブラリも問題となっています:
* UNLHA32.DLL<ref>[https://forest.watch.impress.co.jp/docs/news/372729.html 圧縮・解凍用DLL「UNLHA32.DLL」が開発中止、作者はLZHの利用中止を呼びかけ] Impress 2010年6月7日</ref>
Webフレームワークでは開発中止となった以下のフレームワークが問題となっています:
* [[:w:Model View Controller|Model View Controller]]フレームワーク(代替候補: [[:w:Apache Struts|Apache Struts]] 2、[[:w:Spring Framework#Model-View-Controller フレームワーク|Spring MVC]])
** [[:w:en:Apache Struts 1|Apache Struts 1]](〜2008年) - Java言語
* [[:w:アスペクト指向プログラミング|アスペクト指向フレームワーク]](代替候補: [[:w:Spring Framework|Spring Framework]]、[[:w:en:Micronaut (framework)|Micronaut]])
** [[:w:Seasar|Seasar]](〜2016年) - Java言語
* [[:w:シングルページアプリケーション|シングルページアプリケーション]]フレームワーク(代替候補: [[:w:Angular|Angular]]、[[:w:Vue.js|Vue.js]])
** [[:w:AngularJS|AngularJS]](〜2022年) - JavaScript
=== 古いハードウェアに対処する ===
サポート切れの OS を搭載したハードウェアはどうすれば良いでしょうか。これには使い続けるいくつかの方法がありますが、基本的にオススメしません。古い OS を搭載していたハードウェアはハードウェア仕様も古いからです。
==== スタンドアロン運用 ====
古いハードウェアはインターネットに繋がずに使用すること(スタンドアロン運用)も可能です。
しかしながらUSBメモリでデータをやり取りする場合はUSBメモリ経由での感染などのリスクは残ります。
==== 新しめのLinuxを導入 ====
新しめのLinuxを導入するという方法もあります。
これに適したものでは例えばWindows 11非対応のPC (Intel 第7世代以前、AMD Ryzen 1000シリーズ以前) が挙げられます。
またスマートフォンやタブレットであればカスタムROMが、ルーターであればDD-WRTやOpenWRTが存在します。
==== 手放す ====
手に負えなければデータだけバックアップして手放しましょう。情報が漏れないよう初期化も忘れずに。
== 潜在的な脆弱性を減らす ==
現代のプログラムでは以下のような保護が行われています。
=== メモリアドレスの推測困難化 ===
攻撃に必要なコード片(ガジェット)のメモリアドレスを推測しにくくするために、カーネル空間、ユーザー空間の両方で[[:w:アドレス空間配置のランダム化|アドレス空間配置のランダム化]](ASLR)が行われています。カーネル空間の ASLR は KASLR (Kernel ASLR) とも呼ばれています。
ユーザー空間のプログラムで ASLR を有効にするためには[[:w:位置独立コード|位置独立コード]] (PIC) / 位置独立実行形式 (PIE) である必要があります。Unix で使われる実行形式の ELF では位置独立実行形式が ET_DYN、非位置独立実行形式 (non-PIE) が ET_EXEC となります。
Linuxでは ASLR が無効となる非位置独立実行形式のファイルを以下で検索することができます:
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ # License: CC0 / Public Domain
$ # 非位置独立実行形式 (non-PIE) のバイナリを検索
$ find / -type f -executable 2>/dev/null | xargs -I {} sh -c 'LANG=C readelf -h {} 2>/dev/null | grep -E "Type:.*EXEC" >/dev/null && echo {}'
/usr/lib/default.sfx
/usr/lib/klibc/bin/mkfifo
/usr/lib/klibc/bin/zcat
/usr/lib/klibc/bin/poweroff
[...]
$ # 非位置独立実行形式 (non-PIE) のバイナリを含むDebianパッケージを検索
$ find / -type f -executable 2>/dev/null | xargs -I {} sh -c 'LANG=C readelf -h {} 2>/dev/null | grep -E "Type:.*EXEC" >/dev/null && echo {}' | xargs -r -d '\n' -n1 dpkg-query -S | sed 's/: .*//' | sort -u
aidl
busybox-static
code
cpp-15-x86-64-linux-gnu
cuda-gdb-13-4
cuda-nvcc-13-4
cuda-sanitizer-13-4
cuda-tileiras-13-4
debugedit
g++-15-x86-64-linux-gnu
gcc-15-x86-64-linux-gnu
gcc-mingw-w64-i686-posix
gdc-15-x86-64-linux-gnu
gds-tools-13-4
gfortran-15-x86-64-linux-gnu
gh
git-lfs
gobjc-15-x86-64-linux-gnu
gocryptfs
golang-1.26-go
go-md2man
go-mtpfs
[...]
</syntaxhighlight>
現在のLinuxカーネルがユーザー空間 ASLR を有効にしているかは以下で確認できます (出力例はUbuntu 26.04):
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ sysctl kernel.randomize_va_space # 0=無し、1=部分的、2=完全
kernel.randomize_va_space = 2
</syntaxhighlight>
また現在のLinuxカーネルがカーネル ASLR (KASLR) を有効にしているかは以下で確認できます (出力例はUbuntu 26.04):
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ grep 'CONFIG_RANDOMIZE_BASE' /boot/config-$(uname -r) # y=Yes, n=No
CONFIG_RANDOMIZE_BASE=y
</syntaxhighlight>
なお ASLR は間接的な関数呼び出し( C++ の vtable を含む)があると、そのアドレスから ASLR のオフセットがバレてしまい突破されてしまいます。
また CPU の[[:w:投機的実行|投機的実行]]での情報漏れ (Spectre) による[[:w:キャッシュ攻撃|キャッシュサイドチャネル攻撃]](後述)の一つである「投機的探査」 (BlindSide) によってもコードの位置情報の取得がされ ASLR が突破されてしまいます。
=== 投機的実行の情報漏れ防止 ===
前述のとおり、投機的実行による情報漏れ (Spectre) は攻撃に繋がります。Spectre には境界チェックを迂回する Spectre V1 と間接分岐の分岐先アドレスのキャッシュ{{efn|分岐先バッファ (Branch Target Buffer、BTB)や分岐先アドレスキャッシュ (Branch Target Address Cache、BTAC) と呼ばれる。}}を汚染する Spectre V2 が存在します。<!--TODO: Spectre v3/v4、Zenbleed-->
Spectre V1 を防ぐ方法としては投機的実行を阻害するための命令(x86ではLFENCE)の挿入{{efn|Linuxカーネルでの投機的実行の防止は<code>barrier_nospec()</code>。}}やアクセスできるアドレス範囲を狭めることが行われています{{efn|GCCでの投機的実行での範囲外アクセス防止は<code>__builtin_speculation_safe_value(...)</code>、Linuxカーネルでの投機的実行での範囲外アクセス防止は<code>array_index_nospec(...)</code><ref>[https://lwn.net/Articles/759423/ Spectre V1 defense in GCC] LWN 2018年7月10日</ref>。}}。
また Spectre V2 では攻撃を防ぎながらも速度を落とさない方法として脆弱な分岐先アドレスキャッシュに依存する間接分岐の代わりにリターンアドレスのキャッシュ{{efn|リターンスタックバッファ (RSB) と呼ばれる。}}に依存するリターン命令を使う retpoline が登場しました。しかしながらこの retpoline でも速度の低下は起こるため、既知の間接呼び出しを条件分岐 + 直接呼び出しに変換して高速化する手法が模索されました。LLVM では retpoline を有効にする <code>-mretpoline</code>フラグの処理内に既知の仮想関数呼び出しを[[:w:二分木|二分木]]の直接分岐に置き換える「分岐ファネル」(Branch funnel) が導入されています<ref>[https://reviews.llvm.org/D42453 Use branch funnels for virtual calls when retpoline mitigation is enabled.] LLVM project</ref>。また Linux カーネルでも既知の間接呼び出しを条件分岐 + 直接呼び出しに変換する INDIRECT_CALL_* マクロが搭載されています<ref>[https://lwn.net/Articles/774743/ Relief for retpoline pain] LWN 2018年12月14日</ref>。<!--TODO: Intel CETのSHSTKとretpolineの衝突-->
一方、リターン命令の投機的実行も「Retbleed」や AMD CPU における「投機的リターンスタックオーバーフロー」 (SRSO){{efn|Speculative Return Stack Overflow。}}のような脆弱性が見つかっています。
なお低権限コードから高権限コードへの権限境界をまたいだ Spectre および Retbleed は Intel の「間接分岐制限付き投機」(IBRS){{efn|Indirect Branch Restricted Speculation。}}およびそれを高速化した「拡張IBRS」(eIBRS) などハードウェア側によって塞がれました<ref>[https://www.intel.com/content/www/us/en/developer/articles/technical/software-security-guidance/technical-documentation/hardware-behavior-related-to-speculative-execution.html Hardware Features and Behavior Related to Speculative Execution] Intel 2026年10月14日</ref>が、権限境界をまたがないものは今も可能となっています。
=== メモリにおける書き込みと実行の排他化 (W^X) ===
メモリでは書き込み可能領域の実行不可化 ([[:w:NXビット|NXビット]]) と実行可能領域の書き込み不可化による書き込みと実行の排他化([[:w:en:W^X|W^X]])が一般的となっています。NXビットは x86 では NXビットは AMD64 と共に搭載された古い機能であるため、今時の CPU と OS は基本的にこれに対応しています。
現在の CPU がNXビットを有効にしているかはLinuxでは以下で確認できます:
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ grep '^flags' /proc/cpuinfo | grep -o nx
nx
nx
[...]
</syntaxhighlight>
現在のLinuxカーネルが厳格な W^X を有効にしているかは以下で確認できます (出力例はUbuntu 26.04):
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ grep '_RWX' /boot/config-$(uname -r) # y=Yes, n=No
CONFIG_ARCH_HAS_STRICT_KERNEL_RWX=y
CONFIG_STRICT_KERNEL_RWX=y
CONFIG_ARCH_HAS_STRICT_MODULE_RWX=y
CONFIG_STRICT_MODULE_RWX=y
</syntaxhighlight>
しかしながら書き込みと実行の排他の原則を破ってそれらを同時に行える場所というものも存在しています。読み込み・書き込み・実行が可能なことから「RWXセクション」と呼ばれています。Windows ではメモリページの PAGE_EXECUTE_READWRITE フラグがこれに相当します<ref>[https://learn.microsoft.com/ja-jp/windows/win32/memory/memory-protection-constants メモリ保護定数] メモリ保護定数 (WinNT.h) - Win32 apps | Microsoft Learn</ref>。
Windows のカーネルドライバでは NX フラグの使用が義務付けられています<ref>[https://learn.microsoft.com/en-us/windows-hardware/test/hlk/testref/driver-compatibility-with-device-guard メモリ整合性と VBS とのドライバ互換性] Microsoft</ref>が、その Windows カーネルにおいても PatchGuard の領域がコード難読化のためにこの原則を破っています。<!--TODO: ホットパッチ-->
また Linux でも実行可能領域を書き込み可能ページとして割り当てて書き込む text_poke 関数が用意されています。
=== 制御フローの操作を防ぐ (CET) ===
現代では「[[:w:Return-oriented programming|リターン指向プログラミング]]」(ROP)、「呼び出し指向プログラミング」 (COP)、「ジャンプ指向プログラミング」(JOP) 、「[[:en:Sigreturn-oriented programming|Sigreturn指向プログラミング]]」(SROP) などの制御フロー操作による攻撃が一般化していますが、これを防ぐ技術として「[[:w:en:Control-flow integrity#Intel Control-flow Enforcement Technology|制御フロー強制テクノロジー]]」(CET) の「[[:w:en:Indirect branch tracking|間接分岐追跡]]」(IBT) と「[[:w:en:Shadow stack|シャドウスタック]]」(SHSTK) が存在します。
制御フロー強制は比較的新しい技術であるため、対応する CPU は以下に限られます:
* Intel Core (Tiger Lake) 第11世代以降
* AMD Zen 3 以降(シャドウスタックのみ)
現在の CPU が間接分岐追跡 (IBT) およびシャドウスタックに対応しているかはLinuxでは以下で確認できます:
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ grep '^flags' /proc/cpuinfo | grep -oE '(ibt|shstk)'
shstk
ibt
shstk
ibt
[...]
</syntaxhighlight>
またユーザーランドのシャドウスタックの使用にはユーザーランドだけでなくカーネルの対応も必要となります。Linux カーネル では 6.6 以降対応でこれに対応しています(sigreturnにも対応<ref>[https://github.com/torvalds/linux/commit/05e36022c0543ba55a3de55af455b00cb3eb4fcc x86/shstk: Handle signals for shadow stack · torvalds/linux@05e3602] GitHub 2023年8月3日</ref>)。 Linuxディストリビューションでは Ubuntu 24.04以降、 Red Hat Enterprise Linux 9.7 以降<ref>[https://docs.redhat.com/ja/documentation/red_hat_enterprise_linux/9/html/9.7_release_notes/new-features-kernel 4.8. カーネル - 9.7 リリースノート - Red Hat Enterprise Linux - 9 - Red Hat Documentation] Red Hat</ref>が標準でシャドウスタックを有効としています。
現在のLinuxカーネルが間接分岐追跡およびシャドウスタックを有効にしているかは以下で確認できます (出力例はUbuntu 26.04):
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ grep -E '_(IBT|SHADOW_STACK)' /boot/config-$(uname -r) # y=Yes, n=No
CONFIG_CC_HAS_IBT=y
# CONFIG_X86_KERNEL_IBT is not set
CONFIG_X86_USER_SHADOW_STACK=y
CONFIG_X86_DISABLED_FEATURE_IBT=y
CONFIG_ARCH_HAS_USER_SHADOW_STACK=y
</syntaxhighlight>
現在のユーザーランドプログラムの中で間接分岐追跡またはシャドウスタックが無効化されているものはLinuxでは以下で確認できます:
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ # License: CC0 / Public Domain
$ # 間接分岐追跡またはシャドウスタックが無効化されているバイナリを検索
$ find / -type f 2>/dev/null | xargs -I {} sh -c 'readelf -h "{}" >/dev/null 2>&1 && (readelf -n "{}" 2>/dev/null | grep -E IBT,.*SHSTK > /dev/null || echo "{}")'
/usr/lib/lv2/carla.lv2/carla.so
/usr/lib/7zip/7z
/usr/lib/7zip/7zCon.sfx
/usr/lib/7zip/7zr
/usr/lib/7zip/7z.so
/usr/lib/7zip/7za
/usr/lib/klibc/bin/ipconfig
/usr/lib/klibc/bin/umount
/usr/lib/klibc/bin/halt
[...]
$ # 間接分岐追跡またはシャドウスタックが無効化されているバイナリを含むDebianパッケージを検索
$ find / -type f 2>/dev/null | xargs -I {} sh -c 'readelf -h "{}" >/dev/null 2>&1 && (readelf -n "{}" 2>/dev/null | grep -E IBT,.*SHSTK > /dev/null || echo "{}")' | xargs -r -d '\n' -n1 dpkg-query -S | sed 's/: .*//' | sort -u
7zip
aidl
ardour
avr-libc
cargo-1.93
carla
carla-bridge-wine32:i386
carla-bridge-wine64
carla-lv2
carla-vst
cuda-ctadvisor-13-4
cuda-cudart-13-4
[...]
</syntaxhighlight>
なお、制御フロー強制テクノロジーの間接分岐追跡とシャドウスタックが有効であっても異なる関数の通常呼び出しは防げません。分かりやすい例では関数の間接呼び出しにおいて関数ポインタを<code>sigaction</code>へと変更して独自のシグナルハンドラを登録し、その後クラッシュさせてそのシグナルハンドラを呼び出すという「セグメンテーション違反指向プログラミング」(SFOP) が挙げられます。また攻撃に使える関数 (dop gadgets) {{efn|dop gadgetsの検索の公式実装は「DOP-StaticAssist」[https://github.com/melynx/DOP-StaticAssist]だが長らく更新されておらず古いLLVM 3.5に依存している状態となっている。}}の通常呼び出しだけで攻撃する「Data-Oriented Programming」(DOP) <ref>Hong Hu et al. [https://ieeexplore.ieee.org/stamp/stamp.jsp?tp=&arnumber=7546545 Data-Oriented Programming: On the Expressiveness of Non-Control Data Attacks] IEEE 2016年</ref>{{efn|セキュリティ以外の文脈におけるデータ指向プログラミング、データ指向設計、データ駆動型設計とは異なる。}}という手法も存在します。
C++向けでは仮想関数テーブル (vtable) を改ざんして攻撃に使える仮想関数(仮想関数ガジェット、vfgadget)を呼び出す「偽造オブジェクト指向プログラミング」(COOP) という攻撃手法も登場しています。
=== メモリ安全性の高いソフトウェアへ ===
既存のソフトウェアの脆弱性は7割がメモリ安全性の問題に起因すると言われています<ref>[https://www.cisa.gov/sites/default/files/2023-12/CSAC_TAC_Recommendations-Memory-Safety_Final_20231205_508.pdf REPORT TO THE CISA DIRECTOR Technical Advisory Council Memory Safety] サイバーセキュリティ諮問委員会 (CSAC) 2023年12月5日</ref>。しかしながら[[C言語]]や[[C++]]はメモリ安全性が低いため、メモリ安全性の確保できる[[Rust]]などで書かれた代替プログラムが登場しています:
{| class="wikitable"
|+ コマンドのRust版
|-
! コマンドの概要 !! 従来版 !! Rust版
|-
| Unix系の基本コマンド群 || GNU Core Utilities || '''uutils coreutils'''
|-
| ファイル検索コマンド群{{efn|<code>find</code>、<code>locate</code>、<code>updatedb</code>、<code>xargs</code>の4コマンド}} || GNU Findutils || '''uutils findutils'''
|-
| ファイル差分コマンド群{{efn|<code>diff</code>、<code>cmp</code>、<code>diff3</code>、<code>sdiff</code>の4コマンド}} || GNU Diffutils || '''uutils diffutils'''
|-
| ストリームエディタ (sed) || GNU sed / FreeBSD sed || '''uutils sed'''
|-
| AWKスクリプト || GNU AWK || '''uutils AWK'''
|-
| 文字列検索 || GNU Grep || '''uutils Grep'''
|-
| tarアーカイブ || GNU Tar || '''uutils tar'''
|-
| アカウント管理コマンド群 || shadow-utils || '''uutils shadow-utils'''
|-
| アクセス制御コマンド群{{efn|<code>chacl</code>、<code>getfacl</code>、<code>setfacl</code>の3コマンド}} || acl || '''uutils acl'''
|-
| procfs{{efn|プロセスファイルシステム}}表示コマンド群 || procps / procps-ng || '''uutils procps'''
|-
| ホスト名管理コマンド群{{efn|<code>hostname</code>、<code>dnsdomainname</code>、<code>domainname</code>、<code>nisdomainname</code>、<code>ypdomainname</code>の5コマンド。}} || hostname || '''uutils hostname'''
|-
| Linuxユーティリティ || util-linux || '''uutils util-linux'''
|-
| 権限昇格 || sudo || '''sudo-rs'''
|-
| 暗号・署名システム || GnuPG || '''Sequoia PGP'''
|-
| 時刻同期 || ntpd || '''ntpd-rs'''
|-
| セキュアシェル (SSH) || OpenSSH || '''russh'''
|}
これらのRustで書かれたコマンドのうちuutils coreutilsとsudo-rsはUbuntuに採用されています。
またライブラリでもRustだけ (Pure Rust) で実装されたものが登場しています:
* 画像ライブラリ - これらは例えばGNOMEデスクトップ環境の画像ローダーGlycinから使われています<ref>[https://gitlab.gnome.org/GNOME/glycin GNOME / glycin · GitLab] GNOME Project</ref>。
** libpng → pngクレート - PNG画像向け。
** libgif → gifクレート - GIF画像向け。
** libjpeg / libjpeg-turbo → zune-jpeg / libjpeg-turbo-rs - JPEG画像向け。
** OpenJPEG → hayro-jpeg2000 - JPEG 2000画像向け。
** libtiff → tiffクレート - Tiff画像向け
** libwebp → image-webpクレート - WebP画像向け。
** libraw → libopenraw - RAW画像向け。
** librsvg - SVG画像向け。C言語からRustに書き直しされました。
* 圧縮ライブラリ
** zlib / zlib-ng → zlib-rs - Deflate圧縮向け
** libbzip2 → bzip2-rs - BZ2圧縮向け
* 暗号化ライブラリ
** OpenSSL / GnuTLS → [[:w:en:Rustls|Rustls]]
* Unicode処理ライブラリ
** ICU4C → ICU4X
* テキスト整形ライブラリ
** HarfBuzz → HarfRust
* ブラウザエンジン
** Blink/Gecko → Servo
<!--
=== 整合性チェック ===
PatchGuard / HyperGuard
-->
== 不審な改変が行われていないかを調べる ==
例えばOSの起動には一連のシーケンスがありますが、マルウェアは基本的にここの途中に入り込んで永続化します。
{| class="wikitable"
|+ 起動シーケンス
|-
! 種類 || Windows 11以降 !! Linux (Gnome) !! Linux (KDE)
|-
| 1. 起動ファームウェア || [[:w:Unified Extensible Firmware Interface|UEFI]] || colspan=2 | [[:w:Basic Input/Output System|レガシーBIOS]] / UEFI
|-
| 2. ブートローダー || [[:w:Windows Boot Manager|Windows Boot Manager]] (bootmgfw.efi)<br> → [[:w:Windows Boot Manager#winload.exe/winload.efi|Windows OS Loader]] (winload.efi) || colspan=2 | GRUB{{efn|Ubuntuの標準。}} / systemd-boot / Unified Kernel Image{{efn|Linuxカーネルとブートイメージを単一バイナリにする仕組み。}} / EFI boot stub{{efn|LinuxカーネルをEFIから直接ブートできるようにする仕組み。}}
|-
| 3. カーネル || [[:w:ntoskrnl.exe|ntoskrnl.exe]] || colspan=2 | Linuxカーネル ([[:w:vmlinux|vmlinux]]{{efn|圧縮後はvmlinuzとなる。}})
|-
| 4. 初期化プロセス || [[:w:en:Session Manager Subsystem|smss.exe]]<br> → wininit.exe<br> || rowspan=2 colspan=2 | [[:w:systemd|systemd]]{{efn|以前は代替initもよく使われていたが、今はsystemdが標準となっている。}}
|-
| 5. サービスコントロールマネージャ || colspan=2 | [[:w:en:Service Control Manager|services.exe]]
|-
| rowspan=2 | 6. ログインマネージャ || rowspan=2 | [[:w:Winlogon|winlogon.exe]] || colspan=2 | systemd-logind<br>sd-pam
|-
| [[:w:GNOME ディスプレイマネージャー|GDM]] || [[:w:Simple Desktop Display Manager|SDDM]]
|-
| rowspan=2 | 7. ユーザー初期化プロセス || rowspan=2 | userinit.exe || colspan=2 | systemd
|-
| gnome-session || kcminit<br> → plasma_session
|-
| 8. シェル || [[:w:Windows Explorer|explorer.exe]] || gnome-shell || plasmashell
|-
| 9. コンポジタ || [[:w:Desktop Window Manager|dwm.exe]] || mutter || kwin
|}
また起動シーケンス以外にもアップデートシーケンスへの感染やシェル感染、ブラウザ感染もあります。
{| class="wikitable"
|+ Windows における代表的なユーザースクリプト又はコマンド起動が可能な設定ファイル
|-
! 規格/アプリケーション !! ユーザー !! システム
|-
| Windows || %APPDATA%\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows\<wbr>Start Menu\<wbr>Programs\<wbr>Startup\<wbr>* || C:\<wbr>ProgramData\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows\<wbr>Start Menu\<wbr>Programs\<wbr>Startup\<wbr>*
|-
| [[:w:PowerShell|PowerShell]] プロファイル<ref>[https://learn.microsoft.com/ja-jp/powershell/module/microsoft.powershell.core/about/about_profiles?view=powershell-7.6 about_Profiles - PowerShell - Microsoft Learn] Microsoft</ref> || %USERPROFILE%\<wbr>Documents\<wbr>PowerShell\<wbr>Profile.ps1<br>%USERPROFILE%\<wbr>Documents\<wbr>PowerShell\<wbr>Microsoft.PowerShell_profile.ps1 || C:\<wbr>Windows\<wbr>System32\<wbr>WindowsPowerShell\<wbr>*\<wbr>Profile.ps1<br>C:\<wbr>Windows\<wbr>System32\<wbr>WindowsPowerShell\<wbr>*\<wbr>Microsoft.PowerShell_profile.ps1
|}
{| class="wikitable"
|+ Linux における代表的なユーザースクリプト又はコマンド起動が可能な設定ファイル
|-
! 規格/アプリケーション !! ユーザー !! システム
|-
| POSIX標準 || ~/.profile || /etc/profile
|-
| XDG Base Directory<wbr>標準 || ~/.local/bin/* ||
|-
| FHS{{efn|Filesystem Hierarchy Standard}}<wbr>標準[https://refspecs.linuxfoundation.org/fhs.shtml] || || /bin/* /sbin/* /usr/bin/* /usr/local/bin/* /etc/inittab
|-
| LSB{{efn|Linux Standard Base}}<wbr>標準[https://refspecs.linuxfoundation.org/lsb.shtml] || || /etc/profile.d/* /etc/init.d/* /etc/cron.d/*
|-
| Desktop Application Autostart Specification<wbr>標準[https://specifications.freedesktop.org/autostart/latest/]{{efn|systemd-xdg-autostart-generator が導入されているシステムではこれらがsystemd設定に自動変換される。}} || ~/.config/autostart/* || /etc/xdg/autostart/*
|-
| Bash || ~/.bash_profile ~/.bashrc || /etc/bash_profile /etc/bash.bashrc /etc/bash.bash_logout
|-
| Z shell (Zsh) || ~/.zshenv ~/.zprofile ~/.zshrc ~/.zlogin ~/.zlogout || /etc/zshenv /etc/zprofile /etc/zshrc /etc/zlogin /etc/zlogout<br/>(または /etc/zsh/zshenv /etc/zsh/zprofile /etc/zsh/zshrc /etc/zsh/zlogin /etc/zsh/zlogout)
|-
| Systemd || ~/.config/systemd/user/* || /etc/systemd/system/* /etc/systemd/user/*
|-
| Xorg || ~/.xinitrc ~/.xserverrc ~/.xsession || /etc/X11/xinit/xinitrc /etc/X11/xinit/xserverrc /etc/X11/Xsession /usr/share/xsessions/*
|-
| Wayland || || /usr/share/wayland-sessions/*
|-
| Python || ~/.local/lib/python*/site-packages/*/**{{efn|絶対パスは<code>python3 -c 'import site; print(site.getusersitepackages())'</code>で確認可能。}} || /usr/lib/python*/dist-packages/*/** /usr/local/lib/python*/dist-packages/*/**{{efn|絶対パスは<code>python3 -c 'import site; print(site.getsitepackages())'</code>で確認可能。}}
|-
| Perl{{efn|Debian/UbuntuではDebianパッケージ設定システム (debconf) のためにPerlを使用している。}} || || /usr/share/perl*/** /usr/local/share/perl*/** /usr/lib/*/perl*/** /usr/local/lib/*/perl*/**{{efn|絶対パスは<code>perl -V:installsitearch -V:installsitelib -V:installvendorarch -V:installvendorlib -V:archlib -V:privlib -V:installarchlib -V:installprivlib</code>で確認可能。}}
|}
=== パッケージ管理ファイルを検証する ===
パッケージ管理システムが管理しているファイルではファイルハッシュが保存されているため簡単にその検証を行うことが可能です:
{| class="wikitable"
|-
! OS / パッケージシステム !! 検証のみ !! 修復
|-
| Windows || <code>sfc /verifyonly</code> || <code>sfc /scannow</code>
|-
| Debパッケージ (Debian / Ubuntu) || <code>debsums -s</code> || <code>apt install --reinstall $(debsums -cs | xargs -r dpkg-query -S | cut -d: -f1 | sort -u)</code>
|-
| RPMパッケージ (RedHat / Fedora) || <code>rpm -Va</code> ||
|}
ただしローカルハッシュが改ざんされている可能性もあるため過信はできません。<!--TODO: ローカルハッシュの検証法-->
自動的にシステムの検証を行うシステムも存在します:
* Android - ブロックデバイスレベルでのハッシュ検証 (dm-verityベース)<ref>[https://source.android.com/docs/security/features/verifiedboot/dm-verity?hl=ja dm-verity の実装] Google</ref>
<!--
またUbuntuのSnapパッケージでもdm-verityの導入が進められています。
また特定言語のパッケージの検証は以下で可能です:
* PIP (Python): なし
-->
=== システム領域に不審なファイルが追加されていないかを調べる ===
システムの追加ファイルの検知にはパッケージシステムで管理されていないファイルの一覧を返す以下のようなツールが存在します:
* Debian / Ubuntu(Debパッケージ)向け: cruft-ngパッケージ(<code>cruft</code>コマンド)
上記の<code>cruft</code>コマンドでは設定ファイルだけ残っているパッケージのファイルも出てきてしまいます。そのため、これが邪魔な時は設定ファイルだけ残っているパッケージを<code>sudo apt purge '~c'</code>で削除しましょう。
=== ユーザー領域に不審なファイルが追加されていないかを調べる ===
ユーザースクリプトの書き換えや追加は検知が難しいです。<!--TODO: 良い方法を書く-->
共有ライブラリやスクリプトによるプラグイン追加も可能となっているため、こちらにも気をつけなければいけません。これには例えば以下があります:
{| class="wikitable"
|+ 代表的なユーザースクリプトや拡張機能のディレクトリパス
|-
! 種類 !! Windowsのパス !! macOSのパス !! Linuxのパス
|-
| Google Chrome 拡張機能 || %LOCALAPPDATA%\Google\Chrome\User Data\*\Extensions\ || ~/Library/Application Support/Google/Chrome/*/Extensions/ || ~/.config/google-chrome/*/Extensions/
|-
| GIMPプラグイン<ref>[https://gimp.cc/faq/add-gimp-plugins.html How to Install GIMP Plugins - Detailed Guide with Troubleshooting] GIMP.cc</ref> || %APPDATA%\GIMP\*\plug-ins\ || ~/Library/Application Support/GIMP/*/plug-ins/ || ~/.config/GIMP/*/plug-ins/
|-
| Blenderスクリプト{{efn|起動スクリプト、アドオンを含む。}}<ref>[https://docs.blender.org/manual/ja/dev/advanced/blender_directory_layout.html Blender's Directory Layout] Blender Foundation</ref> || %APPDATA%\Blender Foundation\Blender\*\scripts\ || ~/Library/Application Support/Blender/*/scripts/ || ~/.config/blender/*/scripts/
|-
| Ardourスクリプト<ref>[https://manual.ardour.org/lua-scripting/ The Ardour Manual - Lua Scripting] Ardour</ref> || %LOCALAPPDATA%\ardour*\scripts\ || ~/Library/Preferences/Ardour*/scripts/ || ~/.config/ardour*/scripts/
|-
| LibreOfficeスクリプト || %APPDATA%\LibreOffice\*\user\Scripts\ || ~/Library/Application Support/LibreOffice/*/user/Scripts/ || ~/.config/libreoffice/*/user/Scripts/
|-
| Visual Studio Code 拡張機能<ref>[https://code.visualstudio.com/docs/configure/extensions/extension-marketplace Extension Marketplace] Microsoft</ref> || %USERPROFILE%\.vscode\extensions\ || ~/.vscode/extensions/ || ~/.vscode/extensions/
|}
=== 改変・追加されたファイルが危険かを調べる ===
実行ファイルやスクリプトはLinuxでは以下で検出できます:
<syntaxhighlight lang="shell-session">
# cat filelist.txt | xargs file | grep -i -E ':.*(executable|shared object|relocatable|script)'
/etc/init.d/binfmt-support.dpkg-new: POSIX shell script, ASCII text executable
/etc/update-motd.d/99-livepatch-kernel-upgrade-required: POSIX shell script, ASCII text executable
/usr/lib/chromium-browser/plugins/libpepflashplayer.so: ELF 64-bit LSB shared object, x86-64, version 1 (SYSV), dynamically linked, BuildID[sha1]=5c421e89a5c062a2106a5a4381dc38e779a22795, stripped
</syntaxhighlight>
またClamAVを導入していれば以下でマルウェアデータベースとの照合を行うことができます:
<syntaxhighlight lang="shell-session">
# cat filelist.txt | xargs clamscan
Loading: 3s, ETA: 0s [========================>] 3.63M/3.63M sigs
Compiling: 1s, ETA: 0s [========================>] 41/41 tasks
/etc/apt/apt.conf.d/00trustcdrom: OK
/etc/apt/auth.conf.d/90ubuntu-advantage: OK
/etc/apt/keyrings/google.asc: OK
[...]
----------- SCAN SUMMARY -----------
Known viruses: 3628164
Engine version: 1.5.4
Scanned directories: 125
Scanned files: 1919
Infected files: 0
Total errors: 10
Data scanned: 247.72 MiB
Data read: 281.17 MiB (ratio 0.88:1)
Time: 17.939 sec (0 m 17 s)
Start Date: 2026:10:11 05:41:30
End Date: 2026:10:11 05:41:48
</syntaxhighlight>
=== 設定データベースを検証する ===
設定データベースは Windows ではレジストリ、Linuxでは GNOME / MATEの 使う [[:en:dconf|dconf]] が存在します。
Windows の設定データベースはレジストリと呼び「レジストリエディタ」 (<code>regedit</code>) で表示できます。
{| class="wikitable"
|+ Windows における代表的なユーザースクリプト、コマンド起動、DLL呼び出しが可能なレジストリ
|-
! 規格/アプリケーション !! 各ユーザー !! 全ユーザー
|-
| Windows || HKEY_USERS\<wbr>*\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows\<wbr>CurrentVersion\<wbr>Run\<wbr>*<wbr>CurrentVersion\<wbr>Run\<wbr>*<br>HKEY_USERS\<wbr>*\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows\<wbr>CurrentVersion\<wbr>RunOnce\<wbr>*{{efn|name="runonce"|RunOnceは一度のみ実行だが再登録することで何回でも実行可能。}} || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows\<wbr>CurrentVersion\<wbr>Run\<wbr>*<br>HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows\<wbr>CurrentVersion\<wbr>RunOnce\<wbr>*{{efn|name="runonce"}}
|-
| [[:w:en:Security Account Manager|Security Account Manager]] || || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>SAM\<wbr>SAM\<wbr>Domains\<wbr>Account\<wbr>Users\<wbr>*\<wbr>V{{efn|name="sam"|'HKEY_LOCAL_MACHINE\SAM\SAM\' 以下はレジストリエディタの右クリックの「アクセス許可」で Administrators にアクセス許可を与えないと読めない。なおファイルパスは「C:\Windows\System32\config\SAM」。}}{{efn|Vはバイナリであり、0xCC + (0x60 に指定されたオフセット) からユーザーログオンスクリプトパスを指定する<ref name="sam-ghost">Sebastián R. Castro et al. [https://dl.acm.org/doi/pdf/10.1145/3689934.3690839 Ghost in the SAM: Stealthy, Robust, and Privileged Persistence through Invisible Accounts] ACM 2024年</ref>。}}
|-
| [[:w:en:Local Security Authority Subsystem Service|Local Security Authority Subsystem Service]] || || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>System\<wbr>CurrentControlSet\<wbr>Control\<wbr>LSA\<wbr>Notification Packages<br>HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>SYSTEM\<wbr>CurrentControlSet\<wbr>Control\<wbr>LSA\<wbr>Authentication Packages<ref>[https://attack.mitre.org/detectionstrategies/DET0207/ Detect LSA Authentication Package Persistence via Registry and LSASS DLL Load] MITRE Corporation</ref>
|-
| [[:w:en:Active Setup|Active Setup]]<ref>[https://www.advancedinstaller.com/application-packaging-training/msi/ebook/active-setup.html Active-Setup Mechanism] Advanced Installer</ref> || HKEY_USERS\<wbr>*\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Active Setup\<wbr>Installed Components\<wbr>*\<wbr>StubPath || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Active Setup\<wbr>Installed Components\<wbr>*\<wbr>StubPath<ref>[https://attack.mitre.org/techniques/T1547/014/ Boot or Logon Autostart Execution: Active Setup] MITRE Corporation</ref>
|-
| [[:w:Windowsサービス|Windowsサービス]]<ref>[https://learn.microsoft.com/ja-jp/windows-hardware/drivers/install/hklm-system-currentcontrolset-services-registry-tree HKLM\SYSTEM\CurrentControlSet\Services レジストリ ツリー - Windows drivers - Microsoft Learn] Microsoft</ref> || || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>SYSTEM\<wbr>CurrentControlSet\<wbr>services\<wbr>*
|-
| [[:w:Winlogon|Winlogon]] || || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows NT\<wbr>CurrentVersion\<wbr>Winlogon\<wbr>Shell<br>HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows NT\<wbr>CurrentVersion\<wbr>Winlogon\<wbr>Userinit<br>HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows NT\<wbr>CurrentVersion\<wbr>Winlogon\<wbr>Notify<ref>[https://attack.mitre.org/techniques/T1547/004/ Boot or Logon Autostart Execution: Winlogon Helper DLL] MITRE Corporation</ref>
|-
| [[:w:cmd.exe|cmd.exe]]<ref>[https://learn.microsoft.com/en-us/windows-server/administration/windows-commands/cmd cmd - Microsoft Learn] Microsoft</ref> || HKEY_USERS\<wbr>*\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Command Processor\<wbr>AutoRun\REG_EXPAND_SZ || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Command Processor\<wbr>AutoRun\<wbr>REG_SZ
|-
| [[Microsoft Edge]] || || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>SOFTWARE\<wbr>Policies\<wbr>Microsoft\<wbr>Edge\<wbr>ExtensionInstallForcelist<ref>[https://learn.microsoft.com/ja-jp/deployedge/microsoft-edge-policies/extensioninstallforcelist Microsoft Edge ブラウザー ポリシードキュメント ExtensionInstallForcelist - Microsoft Learn] Microsoft</ref>{{efn|name="silent-install"|自動的にサイレントインストールする}}
|-
| [[Google Chrome]] || || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>SOFTWARE\<wbr>Policies\<wbr>Google\<wbr>Chrome\<wbr>ExtensionInstallForcelist<ref>[https://chromeenterprise.google/intl/ja_jp/policies/extension-install-forcelist/ ExtensionInstallForcelist: 自動インストールするアプリと拡張機能のリストの設定 - Chrome Enterprise] Google</ref>{{efn|name="silent-install"}}
|}
Linux の GNOME / MATE 環境には「[[:w:en:Dconf#dconf database|dconf データベース]]」が存在し、それは<code>dconf dump</code>('/'区切り)で表示できます。また dconf データベースにスキーマ(規定値と解説)を被せた gsettings も存在し、こちらは<code>gsettings list-recursively</code>(dconfと異なり'.'区切り)で表示できます。
{| class="wikitable"
|+ Linux における代表的なユーザースクリプト又はコマンド起動が可能なdconf設定
|-
! 規格/アプリケーション !! ユーザー
|-
| GNOME Settings Daemon || /org/gnome/settings-daemon/plugins/media-keys/custom-keybindings/custom*/command
|-
| Marco ([[w:MATE (デスクトップ環境)|MATE]]) || /org/mate/Marco/keybinding-commands/command-*{{efn|変更した設定は<code>dconf dump /org/mate/Marco/keybinding-commands/</code>で、デフォルトも含めた設定は<code>gsettings list-recursively org.mate.Marco.keybinding-commands</code>で表示可能。}}
|-
| MATE Screensaver || /org/mate/screensaver/embedded-keyboard-command<br>/org/mate/screensaver/logout-command{{efn|変更した設定は<code>dconf dump /org/mate/screensaver/</code>、デフォルトも含めた設定は<code>gsettings list-recursively org.mate.screensaver</code> で表示可能}}
|-
| mate-applets || /org/mate/panel/objects/object-*/prefs/command
|-
| mate-sensors-applet || /org/mate/panel/objects/object-*/prefs/*/high-alarm-command<br>/org/mate/panel/objects/object-*/prefs/*/low-alarm-command
|}
なお MATE Screensaver と同源の GNOME Screensaver にも /org/gnome/desktop/screensaver/embedded-keyboard-command と /org/gnome/desktop/screensaver/logout-command{{efn|変更した設定は<code>dconf dump /org/gnome/desktop/screensaver/</code>、デフォルトも含めた設定は<code>gsettings list-recursively org.gnome.desktop.screensaver</code> で表示可能。}} が存在しますが、こちらは既に廃止されており指定しても無視されます<ref>[https://github.com/GNOME/gsettings-desktop-schemas/blob/main/schemas/org.gnome.desktop.screensaver.gschema.xml.in gsettings-desktop-schemas/schemas/org.gnome.desktop.screensaver.gschema.xml.in at main · GNOME/gsettings-desktop-schemas] GNOME Project</ref>。
=== メディアに不審なファイルが追加されていないかを調べる ===
メディアの自動実行 ([[:w:en:AutoRun|AutoRun]]) ファイルにもマルウェアが紛れてないか注意しましょう。
{| class="wikitable"
|+ メディアの自動実行ファイル
|-
! Windows !! Linux<br>(Desktop Application Autostart Specification<wbr>標準[https://specifications.freedesktop.org/autostart/latest/])
|-
| *:\[[:w:autorun.inf|autorun.inf]] || /media/*/*/.autorun<br>/media/*/*/autorun<br>/media/*/*/autorun.sh<br>/run/media/*/*/.autorun<br>/run/media/*/*/autorun<br>/run/media/*/*/autorun.sh
|}
== 改変を防ぐ ==
改変を探すのは大変です。なので最初から改変をできないようにすれば管理はとても楽になります。
改ざんを防ぐには「[[:w:en:Chain of trust|信頼の連鎖]]」 (chain of trust) が重要となります。例えばカーネルだけで改ざんを防いでも、ハードウェアのファームウェアが不正であれば不正なカーネルを起動できてしまいます。
=== ファームウェア改ざんを防ぐ ===
ファームウェア改ざんによる「ファームウェアルートキット」を防ぐにはIntel Management Engine (Intel ME)で実装されているIntel BIOS Guardを使う必要があります。<!--TODO: マザーボードによってはBIOSで有効にする必要があります。→最近のマザーボード事情-->
なお2017年の第8世代Intel Coreプロセッサ (Coffee Lake) 以前はme_cleanerによってIntel Management Engineの無効化が可能<ref>[https://github.com/corna/me_cleaner/wiki/me_cleaner-status me_cleaner status] Nicola Corna 2018年</ref>なため非推奨です。
また2023年のIntel ME 16.1.30.2307未満では悪意あるロゴ画像を設定することによってroot権限からUEFI設定の変更が可能です([[:w:en:LogoFAIL|LogoFAIL]]の脆弱性)。そのため、古いIntel Management Engineが動作している場合はそのファームウェアをアップデートしましょう。Windowsでは MEUpdateTool.exe / FWUpdLcl.exe を使うことでこのアップデートが可能となっています。一方、Linuxでは一部機種が fwupdmgr 経由での Intel ME ファームウェアアップデートに対応しています。
Intel MEのバージョンはLinuxでは以下のような感じに調べることができます:
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ cat /sys/class/mei/mei0/fw_ver
0:16.1.32.2473
0:16.1.32.2473
0:16.1.27.2181
</syntaxhighlight>
=== ブートローダー改ざんを防ぐ ===
ブートローダーは起動に使われるファームウェア (BIOS) から呼ばれ、カーネルを読み込んで起動するために使われるプログラムです。古い BIOS (レガシーBIOS) には起動するブートローダーを検証する仕組みが存在しませんでしたが、新しい UEFI (統一拡張ファームウェアインターフェース) には署名されたブートローダーのみを起動する UEFI Secure Boot が追加され、安全なブートローダーの起動を許可するための「承認済み署名データベース」 (Authorized Signature Database、UEFI db) と、脆弱なブートローダーの起動を防ぐための「禁止署名データベース」 (Forbidden Signature Database、UEFI dbx) が用意されています。
UEFI Secure Boot が有効かどうかは以下で確認できます:
* Windows PowerShell: <code>Confirm-SecureBootUEFI</code>
* Linux: <code>mokutil --sb-state</code>
UEFI db と UEFI dbx の内容は以下で確認できます:
* Windows PowerShell: <code>Get-SecureBootUEFI -Name db -Decoded</code> / <code>Get-SecureBootUEFI -Name dbx -Decoded</code>
* Linux:
** mokutil{{efn|Ubuntu Desktop に標準で含まれている。}}: <code>mokutil --db</code> / <code>mokutil --dbx</code>
** efitools: <code>efi-readvar -v db</code> / <code>efi-readvar -v dbx</code>
ブートローダーの署名情報は以下で確認できます:
* Windows PowerShell: <code>Get-PfxCertificate</code>{{efn|<code>Get-AuthenticodeSignature</code>はカタログ署名が使われる場合があるため非推奨: https://github.com/PowerShell/PowerShell/issues/23820 。}}
* Linux: <code>sbverify --list</code>
例えば Windows PowerShell では以下のような感じです:
<syntaxhighlight lang="powershell">
PS C:\WINDOWS\system32> mountvol S: /S; if ($?) { Get-PfxCertificate 'S:\EFI\Microsoft\Boot\bootmgfw.efi'; mountvol S: /D }
Thumbprint Subject
---------- -------
FACDE3D80E99AFCC15E08AC5A69BD22785287F79 CN=Microsoft Windows, O=Microsoft Corporation, L=Redmond, S=Washington, C=US
</syntaxhighlight>
また Ubuntu や Debian では署名されたブートローダー (grub-efi-*-signedパッケージ) と非署名のブートローダー (grub-efi-*-unsignedパッケージ) の両方が用意されており、ブートローダーの正体がどれか、また署名されたブートローダーの署名内容を確認するのは以下のような感じとなります:
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ dpkg -L grub-efi-amd64-signed | grep -i '\.efi' | xargs md5sum # インストールされている署名されたブートローダーのハッシュを表示(grub*は通常版、gcd*は光学ブートメディア向け、grubnet*はネットブート向け)
2bd267fb12bd3b0fe26a9dfb4290868d /usr/lib/grub/x86_64-efi-signed/gcdx64.efi.signed
f689e93336a015fa6eb93e1913b13482 /usr/lib/grub/x86_64-efi-signed/grubnetx64.efi.signed
b63c7618fb96d52520b42b8cc7b124f0 /usr/lib/grub/x86_64-efi-signed/grubx64.efi.signed
$ sudo sh -c "md5sum /boot/efi/EFI/BOOT/*" # 現在のbootloaderがどれを使っているかを確認(署名されたgrubを使用)
b63c7618fb96d52520b42b8cc7b124f0 /boot/efi/EFI/BOOT/BOOTX64.EFI
$ sudo sbverify --list /boot/efi/EFI/BOOT/BOOTX64.EFI
signature 1
image signature issuers:
- /C=GB/ST=Isle of Man/L=Douglas/O=Canonical Ltd./CN=Canonical Ltd. Master Certificate Authority
image signature certificates:
- subject: /C=GB/ST=Isle of Man/O=Canonical Ltd./OU=Secure Boot/CN=Canonical Ltd. Secure Boot Signing (2022 v1)
issuer: /C=GB/ST=Isle of Man/L=Douglas/O=Canonical Ltd./CN=Canonical Ltd. Master Certificate Authority
$ sudo sbverify --cert /usr/share/grub/canonical-uefi-ca.crt /boot/efi/EFI/BOOT/BOOTX64.EFI
Signature verification OK
</syntaxhighlight>
なお Linux では grub の代わりに使えるブートローダーとして systemd-boot もあります。systemd-boot の署名版は Debian が systemd-boot-efi-*-signed パッケージとして用意しているようです(Ubuntu未搭載)。
<!--TODO:
TPM (Trusted Platform Module) チップ
-->
=== カーネル本体の改ざんを防ぐ ===
カーネルはオペレーティングシステム (OS) の下層で動き続けるプログラムです。カーネル本体の実行ファイルもブートローダーと同様に署名が行われており、UEFI Secure Boot が有効であればその検証をブートローダーが行います。Linux では GRUB の UEFI Secure Boot と shim_lock の連携がそれに相当します<ref>[https://www.gnu.org/software/grub/manual/grub/grub.html#UEFI-secure-boot-and-shim GNU GRUB Manual 2.14 - 19.4 UEFI secure boot and shim support] フリーソフトウェア財団</ref>。
なお Ubuntu には署名されたカーネル (linux-image-*パッケージ) と非署名のカーネル (linux-image-unsigned-*パッケージ) の両方が用意されており、署名されているカーネルは以下のような感じでその署名が確認できます:
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ sudo sbverify --list /boot/vmlinuz-$(uname -r) # Linuxカーネル本体の署名を確認する
signature 1
image signature issuers:
- /C=GB/ST=Isle of Man/L=Douglas/O=Canonical Ltd./CN=Canonical Ltd. Master Certificate Authority
image signature certificates:
- subject: /C=GB/ST=Isle of Man/O=Canonical Ltd./OU=Secure Boot/CN=Canonical Ltd. Secure Boot Signing (2022 v1)
issuer: /C=GB/ST=Isle of Man/L=Douglas/O=Canonical Ltd./CN=Canonical Ltd. Master Certificate Authority
$ sudo sbverify --cert /usr/share/grub/canonical-uefi-ca.crt /boot/vmlinuz-$(uname -r) # Linuxカーネル本体の署名を検証する
Signature verification OK
</syntaxhighlight>
=== カーネルモジュールの改ざんを防ぐ ===
カーネルモジュールも署名されており、その検証をカーネルが行っています。Windowsカーネルでは ci.dll (Code Integrityモジュール)が、Linuxカーネルでは CONFIG_MODULE_SIG コンパイルオプションがその検証を行っています。
カーネルによるカーネルモジュールの検証が有効かどうかは以下で確認することができます:
* Linux: <code>grep 'CONFIG_MODULE_SIG=' /boot/config-$(uname -r)</code>
カーネルによるカーネルモジュールの検証で読み込みを弾くかどうかは以下で確認することができます:
* Windows: 強制モードか評価モード (監査モード) かを確認する PowerShell スクリプトが Microsoft のサイトに存在します: https://support.microsoft.com/en-us/windows/hardware/drivers/the-windows-driver-policy#is-my-device-in-evaluation-mode-or-enforcement-mode
* Linux: <code>cat /sys/module/module/parameters/sig_enforce</code>
また Linux では検証で読み込みを弾かない場合でも検証外カーネルモジュールを読み込んだ場合はdmesgに警告が出て '''Tainted kernel''' 扱いとなります<ref>[https://docs.kernel.org/admin-guide/tainted-kernels.html Tainted kernels] Linux Foundation</ref>。以下はその例です:
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ grep 'CONFIG_MODULE_SIG=' /boot/config-$(uname -r) # y=Yes, n=No
CONFIG_MODULE_SIG=y
$ cat /sys/module/module/parameters/sig_enforce # Y=Yes, N=No
N
$ sudo dmesg | grep 'module verification'
[ 8.928361] nvidia: module verification failed: signature and/or required key missing - tainting kernel
$ wget http://git.kernel.org/pub/scm/linux/kernel/git/torvalds/linux.git/plain/tools/debugging/kernel-chktaint
[...]
$ sudo sh ./kernel-chktaint
Kernel is "tainted" for the following reasons:
* externally-built ('out-of-tree') module was loaded (#12)
* unsigned module was loaded (#13)
Raw taint value as int/string: 12288/'G OE '
Tainted modules:
* nvidia (OE)
* nvidia_drm (OE)
* nvidia_modeset (OE)
* nvidia_uvm (OE)
For a more detailed explanation of the various taint flags see
Documentation/admin-guide/tainted-kernels.rst in the Linux kernel sources
or https://kernel.org/doc/html/latest/admin-guide/tainted-kernels.html
</syntaxhighlight>
また Linux では以下のような感じで個々のモジュールの署名が確認できます:
<syntaxhighlight lang="shell-session">
$ modinfo /lib/modules/$(uname -r)/kernel/arch/x86/kernel/msr.ko.zst
filename: /lib/modules/7.0.0-38-generic/kernel/arch/x86/kernel/msr.ko.zst
license: GPL
description: x86 generic MSR driver
author: H. Peter Anvin <hpa@zytor.com>
srcversion: 639B995855A3528050FD532
depends:
intree: Y
name: msr
retpoline: Y
vermagic: 7.0.0-38-generic SMP preempt mod_unload modversions
sig_id: PKCS#7
signer: Build time autogenerated kernel key
sig_key: 3B:E7:D3:BF:D3:2E:D9:CA:9C:17:D2:E9:5F:1A:1C:AE:67:D5:82:2F
sig_hashalgo: sha512
signature: 96:BC:2A:18:6E:4D:D8:E5:28:69:9D:E6:65:89:95:D4:BE:4C:5B:7C:
4A:23:11:75:F6:FE:63:79:FC:29:9B:F7:EA:24:B6:F1:EF:F3:80:17:
0B:C0:1E:46:61:29:BB:F9:E0:AC:81:69:85:73:7D:D4:77:82:A8:DB:
[...]
</syntaxhighlight>
=== システムファイル改ざんを防ぐ ===
システムファイル改ざんを防ぐ良い方法はシステム領域を読み取り専用にすることですが、仮にファイルシステムを読み取り専用のファイルシステム(SquashFSやEROFS)にしたとしても記録する場所がSSDであればブロック単位での上書きが可能となります。
1回だけ書き込めて上書きが不可能な媒体としてはCD-R、DVD-R、DVD+R、BD-Rなどの一部の光学メディアが存在しますが、これらをブートメディアとして使用するのは頻繁なアップデートが難しくなります。
そのほかの手法としては別のコンピュータからシステムファイルを取得する「ネットワークブート」を行うという手法もありますが、これはネットワーク経由でシステムファイルが盗まれる可能性と隣り合わせです。しかしながらプロトコルにUEFI HTTPSを、認証に相互認証のmTLSを用いて、その秘密鍵をTPMで管理してOSから読めなくすることでネットワークブートの安全性は何とか確保できるかもしれません(対応マザーボードは不明)。
一方、Android や ChromeOS ではブロックデバイス単位での改ざん検知 (dm-verify) によってシステムイメージの改ざんを防止しています<ref>[https://source.android.com/docs/security/features/verifiedboot/dm-verity?hl=ja dm-verity の実装] Google</ref><ref>[https://research.google/pubs/verified-boot-on-chrome-os-and-how-to-do-it-yourself/ Verified Boot on Chrome OS and How to do it yourself] Google</ref>。
=== カーネルメモリ改ざんを防ぐ ===
カーネルメモリのコード部分は MMU の書き込み禁止によって保護されています。iOS / macOS では Kernel Integrity Protection が<ref>[https://support.apple.com/ja-jp/guide/security/sec8b776536b/web オペレーティングシステムの整合性] Apple</ref> 、Linux では Kernel Strict RWX がこれに相当します<ref>[https://docs.kernel.org/security/self-protection.html Kernel Self-Protection] Linux Foundation</ref>。Windows でもカーネルモードに読み込み専用メモリセグメントが存在し、これに書き込もうとするとブルースクリーンで ATTEMPTED_WRITE_TO_READONLY_MEMORY (0xBE) が発行されます<ref>[https://learn.microsoft.com/ja-jp/windows-hardware/drivers/debugger/bug-check-0xbe--attempted-write-to-readonly-memory バグ チェック 0xBE: ATTEMPTED_WRITE_TO_READONLY_MEMORY] Microsoft</ref>。しかしながら Linux Kernel では kprobes、Static Keys、Static calls などで自己書き換えが多用されているため、一時的にコード部分を書き込み可能なページに割り当てて書き換える text_poke(...) という抜け道が存在します。
また定期的に改ざんが行われていないかをチェックする仕組みも存在します。Windows では[[:w:Kernel Patch Protection|Kernel Patch Protection]] (PatchGuard) / HyperGuard が、Linux では Linux Kernel Runtime Guard(外部パッチ)がこれに該当します。Windows の PatchGuard では改ざんが検出されたらブルースクリーンで CRITICAL_STRUCTURE_CORRUPTION が発行されます。
<!--TODO: Windows の HVCI、macOS の Secure Page Table Monitor / Trusted Execution Monitor-->
<!--
=== アプリケーション改ざんを防ぐ ===
SELinux / AppArmor
-->
== 攻撃用AIを対策する ==
攻撃用AIでは基本的に賢いかつ制限の緩い大規模言語モデル (LLM) が使われています。この代表的な例として GLM 5.3 や Qwen3.8-27B-ABLITERATED が存在します。
=== コンテキスト爆弾を設置する ===
攻撃用AIの対策では相手のLLMを止めることが重要となります。そこで使えるのが'''コンテキスト爆弾''' (context bombs) という手法です<ref>[https://arstechnica.com/security/2026/07/now-defenders-are-embracing-the-prompt-injection-too/ Now, defenders are embracing the prompt injection, too] Ars Technica 2026年7月14日</ref>。
このコンテキスト爆弾は「相手のLLMに対し応答やツール呼び出しで禁止されていることを行わせようとする」というプロンプトインジェクションの一種であり、それによって相手のガードレールがLLMを止めることで相手からの攻撃を防ぎます。この手法は相手の読みそうなテキストにただプロンプトを書いておけば良いだけなので、お手軽に使えます。
コンテキスト爆弾のテキスト例は以下のリポジトリに存在します:
* https://github.com/tracebit-com/context-bombs
=== ハニーポット ===
ハニーポットは攻撃者を引きつける役目を担います。ハニーポットの評価フレームワークには「UHBS」(Universal Honeypot Benchmarking Standard) が、その品質基準には「UHQS」(Universal Honeypot Quality Score) が存在しますが、2026年現在多くのハニーポットがFランク〜Dランクと残念な状況になっています<ref>[https://uhbs.github.io/uhbs-standard/mkdocs/conformance/ Overview - UHBS — Honeypot Evaluation Framework]</ref>。
<!--
== 自作コードの脆弱性を塞ぐ ==
書きかけ
-->
== 脚注 ==
<references group="注釈"/>
== 参考文献 ==
<references/>
{{DEFAULTSORT:こんひゆうたせきゆりてい}}
[[Category:計算機科学]]
[[Category:情報技術]]
8ea53wzp9mxobj5sdybaf5h9f7vy4wt