Wikibooks jawikibooks https://ja.wikibooks.org/wiki/%E3%83%A1%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%82%B8 MediaWiki 1.47.0-wmf.24 first-letter メディア 特別 トーク 利用者 利用者・トーク Wikibooks Wikibooks・トーク ファイル ファイル・トーク MediaWiki MediaWiki・トーク テンプレート テンプレート・トーク ヘルプ ヘルプ・トーク カテゴリ カテゴリ・トーク Transwiki Transwiki‐ノート TimedText TimedText talk モジュール モジュール・トーク Event Event talk 民法 0 566 305070 301020 2026-10-22T11:31:52Z Jcb 92857 305070 wikitext text/x-wiki {{Pathnav|法学|民事法|frame=1}} {{wikipedia}} == 序論 ==  明治期に近代化という大仕事を背負わされた日本では、近代法をいち早く制定しなければならなかった。家族制度・市民の取引を規律するのが目的である以上、各地の慣習を調べて、日本の現状に密着し、かつ列強諸国からも近代法と認められるようなものを作り上げなければならなかったのであるが、慣習調査はお粗末なものであった。  当初、[[w:御雇外国人|御雇外国人]]として招聘されていた[[w:ギュスターヴ・エミール・ボアソナード|ボアソナード]]がフランス民法典の強い影響の下に民法典の草案を起草し、[[w:公布|公布]]にまで至ったけれども、日本の「家制度」と馴染まなかったため「民法出でて忠孝滅ぶ」という有名な「民法論争」に発展、制定されたものの施行されることなく終わった。これを一般に「旧民法」と呼ぶ。  これに対し、現在の民法典は立憲君主制をとるプロイセンの民法に範をとったもので、共和制の基に制定されたフランス民法と比べると当時の日本には馴染みやすいものであった。このため、多くの民法学者にはドイツ民法の法理を研究していたが、近年、旧民法にも多大な影響を受けているとして、見直す動きがある。  日本民法は英米法、ドイツ法、フランス法を少しずつ集めて構成されているゆえ、文言上の整合性にかける。先にも述べられているように、一時代前まではドイツ民法の法理を土台にした法解釈が行われていた。しかし近年はフランス民法を土台にした法解釈の方が有力となり始めている。 ==目次== *[[民法総則|総則]] **権利の主体 **権利の客体 **意思表示 ***[[無効]]、[[取消]]([[無効と取消]]) **[[代理]] **[[条件 (民法)|条件]] **[[時効 (民法)|時効]] *[[物権]] **[[物権総論]] **[[物権の効力]] **[[物権変動]] ***序論 ***公示 ****[[不動産登記]] **[[共有]] **[[占有権]] **[[所有権]] **[[地上権]] **[[永小作権]] **[[地役権]] **[[入会権]] *[[担保物権]] **[[留置権]] **[[先取特権]] **[[質権]] **[[抵当権]] **[[非典型担保]] ***[[譲渡担保]] ***[[所有権留保]] *[[債権総論]] **債権の目的 **債権の効力 **多数当事者の債権関係 **債権譲渡および債務引受 **債権の消滅 *[[債権各論]] **[[契約]] ***[[契約総論]] ***[[契約各論]] ****[[売買契約]] ****[[貸借契約]] *****[[賃貸借]] *****[[消費貸借]] *****[[使用貸借]] ****その他の典型契約 *****[[雇用|雇用契約]] *****[[請負|請負契約]] *****[[委任|委任契約]] *****[[贈与|贈与契約]] *****[[寄託|寄託契約]] *****[[和解|和解契約]] *****[[組合|組合契約]] *****[[交換契約]] *****[[終身定期金契約]] **[[事務管理]] **[[不当利得]] **[[不法行為]] *[[親族法]] **[[親等]] **[[婚姻]] **[[養子]] **[[親権]] **[[後見]] **[[扶養]] *[[相続法]] **[[相続]] **[[遺産分割]] **[[遺言]] **[[遺留分]] == コンメンタール == *[[コンメンタール民法]] == 判例集 == *明治・大正時代の判例 *昭和時代の判例 *平成時代の判例 == 参考文献 == *[[w:民法|民法(Wikipedia)]] *[[s:民法|民法]] *大久保泰甫「ボワソナアド―日本近代法の父」(岩波新書){{ISBN|978-4004200338}} {{stub|law}} [[category:法学|みんほう]] [[category:民法|*]] 8d2p6tvlfohcwx1qda5o104f7m0k07r DOS入門 0 579 305012 298939 2026-10-22T08:58:20Z Jcb 92857 305012 wikitext text/x-wiki MS-DOS/PC DOS入門は、マイクロソフト社製のMS-DOS、IBM社製のPC DOSおよびそのほかのDOSに関する解説である。 {{Wikipedia|MS-DOS}} <!-- DOS --> == MS-DOS、PC DOSとは? == MS-DOS、PC DOSは、パーソナルコンピュータ(PC)において、グラフィカルユーザインターフェイス([[w:GUI|GUI]])が普及するまで用いられたIntel 8086(x86)アーキテクチャ用キャラクタインターフェイス([[w:CUI]])オペレーティングシステムである。詳しくは、姉妹プロジェクトのウィキペディアの[[w:MS-DOS|MS-DOS]]を参照。 == MS-DOS、PC DOSの歴史 == IBMが初代IBM PC用のOSの開発を米国マイクロソフト本社に委託し、PC DOSが開発された。その後、PC DOSをベースにマイクロソフトが他社にOEM供給したものは、MS-DOSとされた。 また、Microsoftに許諾を取った上でIBM PC(後のPC/ATアーキテクチャ)以外の多くのアーキテクチャ向けに他社が移植を行っている。(PC-9800シリーズなど) === DOSの変遷 === ; MS-DOS : バージョン1からバージョン6(Windows 95/98のDOS部分はバージョン7とされる) ; PC DOS : バージョン1からバージョン7(バージョン7に若干の改修を加えたPC DOS 2000も存在する) ; [[w:DR-DOS|DR DOS]] : バージョン3.31からバージョン7.03 (バージョン8.1は[[w:GNU General Public License|GPL]]違反により消滅) '''MS-DOS 3.xの頃より'''、次世代の'''マルチタスクOS'''としてMS OS/2およびIBM OS/2が共同開発されたが、後に両社は決別。Windows 3.1やWindows 95が市場を席巻したことで、OS/2が主流になることはなかった。 === 現代のDOS === MS-DOS、PC DOSは、オペレーティングシステムとしてはほとんど使われなくなったが、Microsoft Windowsのコマンドプロンプトとして、また、[[w:Microsoft Windows Vista|WindowsVista]]から([[w:Windows XP|WindowsXP]]からインストール可能)は、[[コマンドプロンプト]]の他に[[Windows PowerShell]]が標準に追加され、そのコマンド体系は残っている。なお、Windows11でいう「ターミナル」アプリで実行されるアプリは規定ではPowerShellである(なお、ターミナルのvボタンで出てくるプルダウンメニューを使えばコマンドプロンプトなど別アプリにも変えられる)。 その他、有志によってFreeDOSやDOSBOX等、MS-DOSの互換OSが生まれた。 == DOSの概念 == DOSは、'''D'''isk '''O'''perating '''S'''ystemの略称であることからもわかるように、基本的にフロッピーディスク・ハードディスク上で運用しその記憶媒体上のデータを操作することにより使用する。 === ディスク・ファイル === ; ディスクドライブ (A, B, C, D, ... Z) : ディスクドライブには「ドライブレター」というアルファベットのドライブ文字が割り当てられ、「Aドライブ」などと呼ぶ。[[w:PC/AT|PC/AT]]アーキテクチャではフロッピーディスクドライブにはAまたはBの文字が、ハードディスクドライブやCD-ROMドライブにはC以降の文字が割り当てられる。[[w:PC-9800シリーズ|PC-98]]アーキテクチャでは、フロッピーディスク、ハードディスクを問わず起動ドライブがAドライブとなり、その後B、C、Dと順番に割り当てられていく。CONFIG.SYSのLASTDRIVEで上限を設定できる。<br> なお、現代のパソコンで内蔵ドライブの多くがCドライブになるのは、このMS-DOSの設定で、A・Bドライブが[[w:フロッピーディスクドライブ|フロッピーディスクドライブ]]、更に詳しく書くと、AドライブがMS-DOSのフロッピーディスク用のドライブ、Bドライブがその他のフロッピーディスク用のドライブ用で、Cドライブが[[w:ハードディスク|ハードディスクドライブ]]用と割り振られているからである。決してCドライブの"C"は「computer」の"C"ではない。コンピューターの記憶装置として普及したフロッピーディスクから順番に割り振っていったらハードディスクのドライブレターが"C"になったということにすぎない。なお、フロッピーディスクドライブがA・Bと二つ割り振られているのは、当時、AドライブでMS-DOSを読み込みながらBドライブのフロッピーディスクの作業をしていたからである。<br> また、[[w:ソリッドステートドライブ|SSD]]は[[w:ハードディスク|ハードディスクドライブ]]の代替であるから、ハードディスクドライブと同じCドライブである。 ; カレントドライブ : カレントドライブとは、対象となっているドライブのことである。カレントディレクトリとともに操作対象のディレクトリを指定する。「C:」や「D:」などのコマンドで変更できる。 ; ディレクトリ : ファイルを階層化して管理する概念としてディレクトリと呼ばれるものがある。バージョン1には、ディレクトリの概念がない。なお[[w:Windows|Windows]]ではフォルダと呼ぶ。 ; カレントディレクトリ : カレントディレクトリとは、対象となっているディレクトリのことである。各ドライブごとに存在し、それぞれを内部コマンドのCDで変更できる。 ; [[w:ファイルシステム|ファイルシステム]] : FAT ([[w:File Allocation Table|File Allocation Table]]) を用いる。FATは[[w:Microsoft Windows 95|Windows 95]]でファイル名の長さ制限を256バイトにした[[w:File Allocation Table#VFAT|VFAT]]に拡張された。なお、VFATをDOS/Vフォーマット、IBMフォーマットなどと呼ぶこともある。<sup><span title="要出典">''<nowiki>[</nowiki>[[w:Wikipedia:「要出典」をクリックされた方へ|<span title="要出典">要出典</span>]]<nowiki>]</nowiki>''</span></sup><!-- VFATはDOS/Vでは正しく扱えないためDOS/Vフォーマットと呼ばれるには疑問が残る.またPC-DOSではVFATはサポートされたことがないためIBMフォーマットと呼ばれるのも疑問. --> : また[[w:NTFS|NTFS]]などのパーティションにアクセスするためのドライバも販売されていた。 <!-- 「ディスクフォーマット」と言いながらフロッピーディスクの種類に言及しているため一旦オミット. フォーマットの違いだけでなく磁性体の違いなどもあるため不適当. ; ディスクフォーマット : ディスクフォーマットは、ファイルシステムを含むディスク上のデータを記録する形式のことである。 :* 2DD - 640KB, 720KB :* 2HD - 1.21MB, 1.25MB, 1.44MB :* 2ED - 2.88MB (2EDはほとんど普及しなかった) : 現在、普及しているフロッピーディスクのフォーマットは、DOS/V 1.44MB 2HDが主であり、1995年以前の日本ではPC-9800シリーズ用の1.25MB 2HDが使われたが、Windowsの登場以降では1.44MB 2HDに移行した。 --> === 起動プロセス === 次の順にファイルを読み込む。 * <code>IO.SYS</code> (必須) * <code>MSDOS.SYS</code> (必須) * <code>CONFIG.SYS</code> * <code>COMMAND.COM</code> (変更可) * <code>AUTOEXEC.BAT</code> {|class='wikitable'| |style='text-align: center;'|<code>IO.SYS</code> |style='text-align: center;'|&rarr; |style='text-align: center;'|<code>MSDOS.SYS</code> |style='text-align: center;'|&rarr; |rowspan='2' style='text-align: center;'|<code>CONFIG.SYS</code><br/>(省略可) |rowspan='2' style='text-align: center;'|&rarr; |rowspan='2' style='text-align: center;'|シェル<br/>(省略時<code>COMMAND.COM</code>) |rowspan='2' style='text-align: center;'|&rarr; |rowspan='2' style='text-align: center;'|<code>AUTOEXEC.BAT</code><br/>(省略可) |- |style='text-align: center;'|<code>IBMBIO.COM</code> |style='text-align: center;'|&rarr; |style='text-align: center;'|<code>IBMDOS.COM</code> |style='text-align: center;'|&rarr; |} なお、PC DOSまたはDR DOSの場合には<code>IO.SYS</code>は<code>IBMBIO.COM</code>に,<code>MSDOS.SYS</code>は<code>IBMDOS.COM</code> となる。また、<code>AUTOEXEC.BAT</code>は<code>COMMAND.COM</code>から呼び出されるため、<code>CONFIG.SYS</code>において<code>SHELL</code>変数を<code>COMMAND.COM</code>以外を指定した場合には読み込まれない。 == 環境設定 == <code>CONFIG.SYS</code>と<code>AUTOEXEC.BAT</code>を書き換えることで行う。 MS-DOSバージョン7では、<code>MSDOS.SYS</code>も用いる。 === <code>CONFIG.SYS</code> === ==== デバイスドライバ ==== <code>DEVICE</code>、<code>DEVICEHIGH</code>文によって組み込む。 主なデバイスドライバには次のものがある。 *メモリ管理ドライバ ** [[Wikipedia:XMS|XMS]]ドライバ (<code>HIMEM.SYS</code>) ** [[Wikipedia:Expanded_Memory_Specification|EMS]]ドライバ (<code>EMM386.EXE</code>) *** 互換ドライバとして[[Wikipedia:QEMM|QEMM]]などが開発・販売された * マウスドライバ (<code>MOUSE.SYS</code>) ** NEC PC-98シリーズ版MS-DOSでのみ提供されている ** PC/AT互換機用のDOSでは常駐プログラムとして<code>MOUSE.COM</code>が提供されている * 日本語フロントエンドプロセッサ (FEP) 具体的には : <code>DEVICE=C:\DOS\HIMEM.SYS</code> などのように記述する。 なお、<code>DEVICEHIGH</code>文を用いる場合には、Upper Memory Blocksを使用するため、<code>HIMEM.SYS</code>またはそれに準ずるドライバを<code>DEVICE</code>文で読み込んだ後に使用しなければならない。 ==== 常駐プログラムの読み込み ==== 日本語FEPやマウスドライバなどの常駐プログラムを<code>CONFIG.SYS</code>から読み込む場合には、 <code>INSTALL</code>文または<code>INSTALLHIGH</code>文を使う 。 <code>INSTALL</code>文を使うことで、 <code>AUTOEXEC.BAT</code>を使わずに設定ファイルを構成することもできるが、 歴史的経緯から<code>INSTALL</code>文はあまり使われない。 なお、 <code>DEVICE</code>文における<code>DEVICEHIGH</code>文と同じく、 Upper Memory Blocksを使う関係上<code>HIMEM.SYS</code>の読み込みよりも後に<code>INSTALLHIGH</code>を使わなければならない。 ; 例 : <code>INSTALL=C:\DOS\MOUSE.COM</code> ==== シェル設定 ==== <code>SHELL</code>文によって設定する。 通常は標準シェルである<code>COMMAND.COM</code>を使用する。 具体的には : <code>SHELL=C:\COMMAND.COM /P</code> などのように記述する。 なお、末尾の<code>/P</code>は必須。 ==== その他 ==== * <code>DOS</code>文<br/>システムの一部をHigh Memory AreaやUpper Memory Blocksに読み込む際に使用する。 ** <code>HIGH</code> ... High Memory Areaに読み込む ** <code>UMB</code> ... Upper Memory Blocksに読み込む ; 例 : <code>DOS=HIGH,UMB</code> * <code>DOSDATA</code>文<br/>PC DOS 7.0以降のみ使用可能。 ; 例 : <code>DOSDATA=UMB</code> === <code>AUTOEXEC.BAT</code> === <code>AUTOEXEC.BAT</code>は<code>COMMAND.COM</code>が起動時に必ず読み込むファイルである。 実体は通常のバッチファイルになっている。 このファイルには常駐プログラムやDOSの起動時に自動的に実行させたいアプリケーションを書きこむ。 主に使われる用途としては次のようなものがある。 * ディスクキャッシュ * CD-ROMドライブ名の割り当て ** DOSでCD-ROMドライブを使うためには、デバイスドライバの読み込みだけではなく、<code>MSCDEX.EXE</code>などの常駐ソフトウェアが必要になる * Windowsを起動させる (Windows 3.xまで) 記述方法は絶対パスもしくは相対パスで行う。 具体的には : A:\WINDOWS\WIN.COM : .\WINDOWS\WIN.COM などのように記述する。 なお、常駐ソフトウェアを読み込む際には<code>CONFIG.SYS</code>の<code>DEVICE</code>文に対する<code>DEVICEHIGH</code>文のように、 High Memory Areaに常駐させるための<code>LOADHIGH</code>文 (省略記法: <code>LH</code>) が用意されている。 === MSDOS.SYS === MSDOS.SYSはCONFIG.SYS、AUTOEXEC.BATと違い、編集できる場所が限られている。もし、編集してはならない場所を編集した場合、MS-DOSが起動できなくなるケースが多い。 主に以下の用途で使われる。 :*デフォルトシェル :*起動ドライブ :*インストールディレクトリ :*Windows起動中のロゴを表示させる。(Windows9x) = コマンド = DOSのコマンドは、 '''内部コマンド'''と'''外部コマンド''' に大別される。 内部コマンドとは標準シェル<code>COMMAND.COM</code>の内蔵コマンドである。 外部コマンドとは<code>COMMAND.COM</code>に内蔵されていない、 <code>.COM</code>形式あるいは<code>.EXE</code>形式で提供されているコマンドである。 <code>.BAT</code>形式を使うと、一度に複数のコマンドを実行できる。 == 基本コマンド == 下記のコマンドは基本的に「コマンドプロンプト」で用いることができる。 ただし Power Shell では使えないコマンドもあるので、都度、確認のこと。 === <code>DIR</code>について === ディレクトリの内容を表示するための内部コマンド (UNIXの<code>ls</code>に相当)。 ディレクトリの中身を知りたい場合によく使われる。 (詳しく知りたい場合は、<code>DIR /?</code>とコマンドの後に<code>/?</code>) サンプル出力 (全てBochs上のFreeDOSより) ==== <code>DIR</code> ==== :<syntaxhighlight lang=doscon> C:\>dir Volume in drive C is FREEDOS Volume Serial Number is 4228-11FA Directory of C:\ KERNEL SYS 41,293 08-04-02 11:32a COMMAND COM 86,413 07-30-02 12:17a DOS <DIR> 11-14-02 10:43a FDCONFIG SYS 263 11-14-02 11:05a EDIT EXE 62,277 08-11-04 7:38p EDIT HLP 29,452 04-28-04 1:22a 5 file(s) 219,698 bytes 1 dir(s) 5,402,624 bytes free C:\> </syntaxhighlight> Powershellでも問題なく使える。(ただし表示は上記とは異なる。) :<syntaxhighlight lang=ps1> PS C:\Users\ユーザー名> dir ディレクトリ: C:\Users\ユーザー名 Mode LastWriteTime Length Name ---- ------------- ------ ---- d----- 2023/07/17 月曜日 20: .thumbnails 01 d-r--- 2023/07/17 月曜日 18: Contacts 20 d----- 2023/07/17 月曜日 18: Documents 41 dar--- 2023/07/24 月曜日 16: Downloads 21 d-r--- 2023/07/17 月曜日 18: Favorites 20 d-r--- 2023/07/17 月曜日 18: Links 20 d-r--- 2023/07/17 月曜日 21: Music 02 dar--l 2023/07/23 日曜日 14: OneDrive 35 d-r--- 2023/07/17 月曜日 18: Saved Games 20 d-r--- 2023/07/17 月曜日 18: Searches 37 d-r--- 2023/07/22 土曜日 11: Videos 57 </syntaxhighlight> ===== <code>DIR /W</code> ===== 例1: :<syntaxhighlight lang=doscon> C:\>dir /w Volume in drive C is FREEDOS Volume Serial Number is 4228-11FA Directory of C:\ KERNEL.SYS COMMAND.COM [DOS] FDCONFIG.SYS EDIT.EXE EDIT.HLP 5 file(s) 219,698 bytes 1 dir(s) 5,402,624 bytes free C:\> </syntaxhighlight> 例2: :<syntaxhighlight lang=doscon> Directory of C:\DOS\BIN [.] [..] RIPCORD.COM ASSIGN.COM ATTRIB.COM CHOICE.EXE CMDXSWP.COM COMMAND.COM KSSF.COM PTCHSIZE.EXE VSPAWN.COM COMP.COM DEBUG.COM DISKCOMP.EXE DISKCOPY.EXE DISKCOPY.INI DELTREE.COM DELTREE2.COM EDIT.EXE EDIT.HLP EMM386.EXE HIMEM.EXE EXE2BIN.COM FC.EXE FDISK.EXE FDISK.INI FDISKPT.INI FDISKB.EXE FDXMS.SYS FDXMST.SYS FDXXMS.SYS FDXXMST.SYS XMSTEST.EXE FDXM286T.SYS FDXMS286.SYS XMS2TEST.EXE FIND.EXE FORMAT.EXE FASTHELP.BAT FDHELP.EXE [FILES] HELP.EXE HELP.HTM LABEL.EXE MEM.EXE [MKEYB] MIRROR.EXE MODE.COM MORE.EXE MOVE.EXE NANSI.SYS PRINT.COM PRINTQ.EXE 28MON.COM 2CMON.COM API28.COM API28I16.COM REPLACE.EXE SCANDISK.EXE SHARE.EXE CDCACHER.EXE CDHDREAD.EXE KLUDGE0.EXE NBSTAT.EXE SHSUCDHD.EXE SHSUCDN.EXE SHSUCDX.EXE SHSUDRVX.EXE SHSUSERV.EXE SORT.EXE JOIN.EXE SUBST.EXE SWSUBST.EXE SYS.COM BITDISK.EXE TDSK.EXE TREE.COM UNDELETE.EXE UNFORMAT.EXE XCOPY.EXE [KEY] KEYB.BAT KEYMAN.EXE LISTXDEF.EXE SCANKBD.EXE XKEYB.EXE XKEYBRES.EXE 82 file(s) 1,872,278 bytes 5 dir(s) 5,402,624 bytes free C:\DOS\BIN> </syntaxhighlight> 場合によっては、<code>DIR</code>コマンドを入力しても、長すぎて全てを見られないときがある。 例: :<syntaxhighlight lang=doscon> SHSUCDX EXE 15,726 10-20-00 3:34p SHSUDRVX EXE 12,849 10-20-00 3:19p SHSUSERV EXE 113,520 05-09-96 8:12p SORT EXE 14,816 01-24-95 3:20p JOIN EXE 54,096 08-05-00 4:07p SUBST EXE 54,096 08-05-00 4:07p SWSUBST EXE 54,096 01-26-97 11:35p SYS COM 10,687 08-16-02 11:29p BITDISK EXE 10,311 06-22-95 1:10a TDSK EXE 18,183 12-12-95 2:30a TREE COM 9,893 07-07-01 12:33p UNDELETE EXE 9,103 08-30-02 11:30p UNFORMAT EXE 36,231 03-24-99 8:31p XCOPY EXE 15,102 09-07-01 12:10a KEY <DIR> 11-14-02 11:03a KEYB BAT 23 08-17-01 4:55a KEYMAN EXE 6,202 04-14-02 2:09p LISTXDEF EXE 3,366 04-14-02 2:09p SCANKBD EXE 6,627 04-14-02 2:09p XKEYB EXE 12,657 07-27-02 6:57p XKEYBRES EXE 5,986 07-27-02 6:57p 82 file(s) 1,872,278 bytes 5 dir(s) 5,402,624 bytes free C:\DOS\BIN> </syntaxhighlight> そのような場合は、 ===== <code>DIR /P</code> ===== コマンドを使用する。 このコマンドを使用すると『次の頁を見るためには、何かキーを押してください』と表示されるので、次の頁を見たい場合は、何かキー(Enter等)を押す。 :<syntaxhighlight lang=doscon> Volume in drive C is FREEDOS Volume Serial Number is 4228-11FA Directory of C:\DOS\BIN . <DIR> 11-14-02 10:44a .. <DIR> 11-14-02 10:44a RIPCORD COM 5,805 09-04-02 7:20a ASSIGN COM 13,867 01-27-97 12:46a ATTRIB COM 7,136 08-01-02 2:00a CHOICE EXE 12,032 08-31-02 4:20p CMDXSWP COM 88,043 07-29-02 10:38p COMMAND COM 86,413 07-29-02 10:42p KSSF COM 828 07-29-02 10:42p PTCHSIZE EXE 13,104 07-29-02 10:42p VSPAWN COM 953 07-29-02 10:42p COMP COM 1,285 11-27-94 3:48p DEBUG COM 19,606 11-24-01 7:55p DISKCOMP EXE 18,688 05-01-01 9:48p DISKCOPY EXE 46,176 07-15-01 2:17p DISKCOPY INI 512 07-15-01 2:05p DELTREE COM 4,210 04-24-00 1:02a DELTREE2 COM 3,858 04-24-00 1:02a EDIT EXE 336,449 06-23-01 2:03p Press any key to continue . . . </syntaxhighlight> === <code>CD</code> (<code>CHDIR</code>) について === '''カレントディレクトリ'''を変更する際に使用するコマンドである。Powwershellでも問題なく使える。 ==== <code>CD</code> ==== ディスクA:\BINからの一つ上のフォルダに移動したい時には、 :<syntaxhighlight lang=doscon> A:\BIN>cd .. A:\> </syntaxhighlight> .(ピリオド)は'''カレントディレクトリ'''を表す。 上記の場合、連続してピリオドを記述しているが、これは'''1階層上のディレクトリ'''を指定した事になる。 なお、たとえばGドライブに移動したい場合、<code>cd /d g:</code> になる。<code>/d</code>オプションが必要。 Powershellの場合、オプション無しでも <code>cd g:</code> というコマンドだけで移動できる。 ※ 最近のwindowsの場合、ホームフォルダやその周辺のディレクトリがクラウド用に処理されている等の理由もあって、従来とは実験結果が異なる場合もある。もしその場合、外付けHDDなどを追加してGドライブやHドライブなどといった外部ドライブなどに移動して実験すれば、簡単であろう。 == コマンドリファレンス == MS-DOSのコマンドには、'''内部コマンド'''と'''外部コマンド'''が存在することは前述の通りである。 そのため、以下で外部コマンドとしたものについては、.COM/.EXE のファイルが無ければ使用できないので注意されたし。 以下内部コマンドにはnとつける。 === 機種共通 === * ATTRIB *:ファイル属性の変更。+R/-R(読みとり専用属性)、+H/-H(隠しファイル属性)、+S/-S(システムファイル属性)、+A/-A(アーカイブ属性)の内操作したい物を記述し、その後に対象のファイル名を指定する。 * CLS *:画面に表示されている情報を消去する。 n * COLOR *:文字色・背景色を設定できる。 * COMMAND *:COMMAND.COMを起動する。プロンプトから呼び出しても、意味がない。 n * COPY *:ファイルをコピーする。コピー元のファイルと、コピー先(別ドライブや別ディレクトリを指定したり、別の名前でコピーを作ったりできる)を指定する。2つ以上のファイルを結合しながらコピーすることもできる。 n * DEL *:ファイルの削除。削除対象のファイル名を指定する。 n * DELTREE *:指定のディレクトリ以下を全て削除する。 * EXIT *:COMMAND.COMを終了する(要するにコマンドプロンプトの終了)。ほかのソフトウェアから呼び出された場合、そのソフトウェアに戻るが、それ以外の場合は何も起こらない。 n<br>Powershellの終了も同様にexitコマンドで可能である。 NEC PC-9800シリーズの場合はハードディスクのアクセスアームを元に戻す機能を備えているため、 実行(CTRL+C または STOP キー)して電源を落とさないとハードディスクのデータが破壊される可能性がある。 * FC *:ファイル比較 * FDISK *:パーティーションの管理を行う。下手に操作すると、データを失うので、慣れるまでパーティーションの編集はしない。Windows 95(MS-DOS 7)以降。 * FORMAT *:ディスクのフォーマットを行う。 * INTERLINK *:DOSレベルで2台のPCをP2P接続するためのソフトウエア。接続にはRS-232Cかパラレルプリンターポートを使う。ホストとなるマシンのHDがゲストとなるPCで操作できるようになる。 * LABEL *:ドライブのボリュームラベルを変更する。ドライブを指定しその後に新しいボリュームラベルを指定するか、もしくはドライブ名だけ指定してコマンドが出すプロンプトで新しいボリュームラベルを指定する。 * MD(MKDIR) *:ディレクトリを作成する。作成するディレクトリを指定する。 n * MEM *:メモリーの使用状況などを確認できる。 * MODE *:デバイスの設定を行う。画面のサイズも変更できる。 * MORE *:1画面毎にキー入力を待つ表示。"<"の後に表示するファイルを指定するか、もしくは他のコマンドの後に"| MORE"を付ける。Windowsでは、ファイル名をパラメーターにすることができる。 * MOVE *:ファイルの移動。RENと異なり、ディレクトリやドライブを超えた移動ができる。 * PROMPT *:プロンプト( '''C:\>''' など)を変更する。 * RD(RMDIR) *:ディレクトリの削除。削除するディレクトリを指定するが、そのディレクトリは空でなければならない。 n * REN *:ファイル名の変更。変更したいファイルの場所と、新しい名前を指定する。 n * SCANDISK *:ディスクのエラーを検査する。バージョン6以降。それ以前ではCHKDSKを使用することで簡易に情報を見ることが出来る。 * SET *:環境変数の設定。例えばSET TEMP=C:\TEMPなどとして設定し、その後COPY ''FILENAME'' %TEMP%と実行するとあたかもCOPY ''FILENAME'' C:\TEMPと実行したかのように振舞われる。 n * SYS *:DOSシステムの転送。IO.SYS, MSDOS.SYS, COMMAND.COMなどを指定ドライブへコピーするが、バージョンによって転送するファイルに若干の違いがある。 * TIME/DATE *:マシンの日付及び時刻を設定する。 n * TREE *:ディレクトリ構造を表示する。 * TYPE *:テキストファイルの中身を表示する。 n * VER *:DOSのバージョン番号を表示する。l <br>なおPowershellでは使えない。Powershellのバージョン確認コマンドは<code>$PSVersionTable</code>である。 * XCOPY *:拡張されたCOPYコマンド。ファイルだけではなく、ディレクトリのコピーを行うことができる。 === NEC PC-9800シリーズ用 === 以下は、NEC PC-9800シリーズ用MS-DOSに付属する外部コマンドである。特定バージョンにのみ付属するもの、同名でもバージョンにより大きく異なる動作をするものについてはその旨併記している。 スイッチ等をつけずに起動すると独自のウィザード・操作メニューが表示される事が多い。(以下mで表記) * AVGDRV *:拡張グラフィックドライバを組み込む。PC-9821シリーズの256色グラフィック機能に対応。そのままでは意味を持たない。 * AVSDRV *:PC-9801-86相当のPCM・FM音源の拡張サウンドドライバを組み込む。そのままでは意味を持たない。 * BATKEY *:バッチファイル用。メッセージを表示してキー入力を要求する。 * COPY2 *:ハードディスクとフロッピーディスクとの間でファイルをコピーする。 * COPYA *: 補助入出力装置との間でデータファイルをコピーする。 m * CUSTOM *:CONFIG.SYS(環境設定ファイル)を作成・編集する。 m * DICM *:NECかな漢字変換の辞書ファイルのユーザー登録単語を登録・編集する。 m * DISKCOPY *:フロッピー・ハードディスクをコピー・照合する。 m * DUMP *:ファイルの内容を16進数と文字で表示する。 * FILECONV *:N88-日本語BASIC(86)とMS-DOSとの間でファイルを交換する。 m * FDNCOPY *:フロッピーディスクを高速で全体コピーする。DISKCOPYより空きメモリが必要。m * FORMAT *:操作メニューに沿ってディスクのフォーマット・情報閲覧を行う。スイッチをつけると通常と同じように動作する。 m * HDUTL *:ハードディスクを診断、スキップセクタの代替処理、全体コピーを行う。 m * INSTAP *:アプリケーションをMS-DOS Shellに登録する。MS-DOS Shellを搭載したバージョン以降のみ。 m * KEY *:ファンクションキーや移動キーに機能を割り当てる。 m * MAOIX *:iスクリプトを使ってアプリケーションを登録する。 m * MENU *:メニュー選択方式でコマンドを実行できるコマンドメニューを起動する。 MS-DOS Shellが搭載されていないバージョンでは初期状態で起動時に表示される。 m * MENUCONV *:上記MENUコマンド用メニューファイル(*.MNU)に登録されているアプリケーションをMS-DOS Shellに登録する。 m * MENUED *:上記MENUコマンド用メニューファイル(*.MNU)を作成・編集する。 m * NECAIKEY *:日本語入力キーの割り当てを変更する。 m * PATCH *:ファイルの内容の一部を変更する。 * RENDIR *:既存のディレクトリ名を変更する。 * SEDIT *:スクリーンエディタ(メモ帳のようなソフト)を起動する。 * SETUP *:SETUP.INIというアプリケーション登録用定義ファイルを使ってアプリケーションプログラムを登録する。 m * SPEED *:RS-232Cインターフェースのパラメータを設定する。 m * SWITCH *:メモリスイッチの設定を変更する。 m * USKCGM *:ユーザー定義文字を作成・編集する。 m * VFDDRV *:仮想FDドライブドライバ。CONFIG.SYSに組み込んで使用。 * VRAMD *:仮想FDドライブ起動ディスクを作成する。仮想ディスクからの起動はPC-9821An/Ap2/As2/Bf/Bp/Bs/Be/Cs2/Ce2/Xn/Xp/Xs/Xe/Cb/Cx/Cf/Ap3/As3のみ使用可能。 m <!-- == MS-DOS API == --> == 参考文献・出典 == * 「MS-DOSってなんどすか?」 粟野邦夫著 (1987/01) {{ISBN|4-89369-014-0}} * PC98固有のDOSコマンドについて https://radioc.web.fc2.com/column/pc98bas/pc98doscmd.htm 2022年7月25日15時09分(JST)取得 * NECパーソナルコンピュータ PC-9800シリーズ Software Library MS-DOS(R) 5.0A ステップアップマニュアル 日本電気株式会社(非売品、同社製 MS-DOS(R) 5.0A 標準機能セット(PS98-1003-32/UF1003-X1)付属品) {{stub|it}} {{DEFAULTSORT:DOSにゆうもん}} [[Category:ソフトウェア]] {{NDC|007.63}} 1icgcgyxzp618jhmjlwqbh3wp3ikisk 教育勅語 0 603 305067 292369 2026-10-22T11:30:16Z Jcb 92857 305067 wikitext text/x-wiki {{Pathnav|教育学|frame=1}} 本テキスト「教育勅語」は、教育勅語全般に関する教科書である。本wikibooksは教科書なので、教育的に重要度の高いと考えられる事を重点的に紹介する。 == 教育勅語とは == 教育勅語(きょういく ちょくご)とは、正式には「教育ニ関スル勅語」といい、1890年(明治23年)に発表された、第2次世界大戦前の日本の道徳教育の根幹となった勅語(ちょくご)である。(経緯について詳しくは、ウィキペディア『[[w:教育ニ関スル勅語|教育勅語]]』を参照)教育勅語の中身は、大まかに言うと、道徳教育の主張である。いわゆる「親孝行」などの「道徳」を尊重するような意見を、天皇が国民に語りかけるという形式である。 「勅語」(ちょくご)とは、一般的な用法での意味は、[[w:天皇|天皇]]が政治・行政などについての意思表示として伝える、天皇のいわゆる「[[w:おことば|お言葉]]」を、文書などとして正式化し公表した物である。 === 現代における、教育勅語への評価 === 教育勅語について、現代日本では、たびたび論争になる。また教育問題を扱っている政治家や学者などが、たびたび教育勅語についての議論を行う。政治やニュースや雑誌などで、解釈や意義の有無が取り上げられることもある。 そして、それらの論争で、教育勅語への批判的な評価といっぽう肯定的な評価も出てくる。 その論争での、主な意見は、おおむね次のとおり。 現状では教育勅語を廃止していることから、本wikibooksでは、まず批判的な意見から紹介する。 ==== 批判的な評価 ==== :* 公開直後から組織的な命令によって過剰な神聖化がなされた経緯もあり、思想や良心の自由を否定している、という意見もある。 :* [[w:モーセの十戒|モーセの十戒]]・仏教の[[w:五戒|五戒]]と異なり、人倫を全く説いていない内容。 :* 軍人の規律を説く軍人勅諭と同列のものであり、軍事教育や軍国主義につながる、という意見もある。 :::連合国軍最高司令官総司令部による占領統治時代に連合国軍によって教育勅語が廃止されたのは、この理由(軍国主義につながる)から :* 根本的理念が「主権在君並びに神話的国体観に基いている事実は、明かに基本的人権を損い、且つ國際信義に対して疑点を残すもととなる。」 :::1948年に衆議院によって決議された『[[w:「教育勅語等排除に関する決議」と「教育勅語等の失効確認に関する決議」|教育勅語等排除に関する決議]]』より :* 教育の根本に天皇中心の[[w:国体|国体]]思想を据えたこと自体が問題である、という意見もある。 :::教育学者で元国立教育研究所所員・日本大学文理学部教授の[[w:佐藤秀夫|佐藤秀夫]]は「教育勅語の基本的趣旨は、その冒頭における、天照大神に起源する(皇祖)歴代皇統(皇宗)の徳治と臣民全体のそれへの終始変わらぬ忠誠の関係、つまり皇国史観により捉えられる君臣関係を軸とする国家構成原理、すなわち『国体』にこそ、日本の教育の淵源が存すると規定したところにある。」と述べている<ref>佐藤秀夫『教育の文化史4 現代の視座』阿吽社、2005年、65頁。{{ISBN|4-900590-83-5}}</ref>。また、教育勅語に示されている徳目は「歴史的にこの国の民衆の間に形成されてきた通俗道徳項目に過ぎない」として、重要なのはそれらの徳目が「以テ天壌無窮ノ皇運ヲ扶翼スヘシ」に構造づけられていたこと、すなわち、「日本における道徳は、すべて[[w:天皇制|天皇制]]の発展に寄与してこそ、はじめて意味を持つということになっていた」ことであると指摘している<ref>佐藤『教育の文化史4 現代の視座』阿吽社、2005年、66頁。{{ISBN|4-900590-83-5}}</ref>。 ==== 肯定的な評価 ==== :* 現代語訳での12の徳目は、日本の伝統的道徳観が込められており、一種の模範となるものがあってもいいのではないかという意見もある。 :* 多くの国や宗教で古くから普遍的にある道徳を、明治当時の日本の国情に合わせて記述したものにすぎない、という意見もある。 :::[[w:桐蔭横浜大学|桐蔭横浜大学]]学長鵜川昇によれば「『カトリックの倫理綱領と同じ』であり、『日本人としての根本倫理』を表したものとして講義を続けた[[w:栄光学園|栄光学園]]のグスタフ・フォス校長(神父)」のような教育者も過去には存在したという。また、三重県伊勢市の[[w:皇學館高等学校|皇學館高等学校]]は教育勅語を教材の中に取り入れており、現代の社会において欠けているものが教育勅語にあるからこそ、生徒が暗唱をしている == 原文 == 朕惟フニ我カ皇祖皇宗國ヲ肇ムルコト宏遠ニ德ヲ樹ツルコト深厚ナリ我カ臣民克ク忠ニ克ク孝ニ億兆心ヲ一ニシテ世世厥ノ美ヲ濟セルハ此レ我カ國體ノ精華ニシテ敎育ノ淵源亦實ニ此ニ存ス爾臣民父母ニ孝ニ兄弟ニ友ニ夫婦相和シ朋友相信シ恭儉己レヲ持シ博愛衆ニ及ホシ學ヲ修メ業ヲ習ヒ以テ智能ヲ啓發シ德器ヲ成就シ進テ公益ヲ廣メ世務ヲ開キ常ニ國憲ヲ重シ國法ニ遵ヒ一旦緩急アレハ義勇公ニ奉シ以テ天壤無窮ノ皇運ヲ扶翼スヘシ是ノ如キハ獨リ朕カ忠良ノ臣民タルノミナラス又以テ爾祖先ノ遺風ヲ顯彰スルニ足ラン<br> 斯ノ道ハ實ニ我カ皇祖皇宗ノ遺訓ニシテ子孫臣民ノ倶ニ遵守スヘキ所之ヲ古今ニ通シテ謬ラス之ヲ中外ニ施シテ悖ラス朕爾臣民ト倶ニ拳々服膺シテ咸其德ヲ一ニセンコトヲ庶幾フ 明治二十三年十月三十日<br> 御名御璽 ==ふりがな付き== <!-- <ruby>朕<rt>ちん</rt></ruby><ruby>惟<rt>おも</rt></ruby>ふに<ruby>我<rt>わ</rt></ruby>が --> 朕(ちん)惟フニ(おもうに)我カ(わが)皇祖皇宗(こうそ こうそう)國ヲ(くにを)肇ムルコト(はじむること)宏遠ニ(こうえんに)德ヲ樹ツルコト(たつること)深厚ナリ(しんこうなり)<br> 我カ(わが)臣民(しんみん)克ク(よく)忠ニ(ちゅうに)克ク(よく)孝ニ(こうに)億兆(おくちょう)心ヲ一ニシテ(こころをいつにして)世世(よよ)厥ノ(その)美ヲ(びを)濟セルハ(なせるは)此レ(これ)我カ國體(こくたい)ノ精華ニシテ敎育ノ淵源(えんげん)亦(また)實ニ(じつに)此ニ(ここに)存ス(ぞんす)<br> 爾(なんじ)臣民(しんみん)父母ニ孝ニ(ふぼに こうに)兄弟ニ友ニ(けいていに ゆうに)夫婦相和シ(ふうふ あいわし)朋友相信シ(ほうゆう あいしんじ)恭儉(きょうけん)己(おの)レヲ持(じ)シ博愛(はくあい)衆(しゅう)ニ及(およ)ホシ學(がく)ヲ修(おさ)メ業(ぎょう)ヲ習(なら)ヒ以(もっ)テ智能(ちのう)ヲ啓發(けいはつ)シ德器(とっき)ヲ成就(じょうじゅ)シ進(すすん)テ公益(こうえき)ヲ廣(ひろ)メ世務(せむ/せいむ)ヲ開(ひら)キ 常(つね)ニ國憲(こっけん)ヲ重(おもん)シ國法(こくほう)ニ遵(したが)ヒ一旦緩急(いったんかんきゅう)アレハ義勇公(ぎゆうこう)ニ奉(ほう)シ以(もっ)テ天壤無窮(てんじょうむきゅう)ノ皇運(こううん)ヲ扶翼(ふよく)スヘシ<br> 是ノ如キハ(かくのごときは)獨リ(ひとり)朕(ちん)カ忠良(ちゅうりょう)ノ臣民(しんみん)タルノミナラス又(また)以テ(もって)爾(なんじ)祖先(そせん)ノ遺風(いふう)ヲ顯彰(けんしょう)スルニ足ラン<br><br> 斯ノ(この)道(みち)ハ實ニ(じつに)我カ皇祖皇宗ノ遺訓(いくん)ニシテ子孫臣民ノ倶ニ(ともに)遵守スヘキ(じゅんしゅすべき)所(ところ)<br> 之ヲ古今ニ通シテ謬(あやま)ラス之ヲ中外ニ施シテ悖ラス(もとらず)朕爾臣民ト倶ニ拳々服膺(けんけんふくよう)シテ咸(みな)其德ヲ(そのとくを)一ニセンコトヲ庶幾フ(こいねがう) 明治二十三年十月三十日<br> 御名御璽(ぎょめい ぎょじ) == 現代語訳 == === 文部省訳 === :(文部省図書局『聖訓ノ述義ニ関スル協議会報告書』(1940年)より。明治天皇から勅語を賜った文部大臣が管轄する文部省自身による、「正式な現代語訳」とされる文章) 朕が思うに、我が御祖先の方々が国をお肇めになったことは極めて広遠であり、徳をお立てになったことは極めて深く厚くあらせられ、又、我が臣民はよく忠にはげみよく孝をつくし、国中のすべての者が皆心を一にして代々美風をつくりあげて来た。これは我が国柄の精髄であって、教育の基づくところもまた実にここにある。 汝臣民は、父母に孝行をつくし、兄弟姉妹仲よくし、夫婦互に睦び合い、朋友互に信義を以って交わり、へりくだって気随気儘の振舞いをせず、人々に対して慈愛を及すようにし、学問を修め業務を習って知識才能を養い、善良有為の人物となり、進んで公共の利益を広め世のためになる仕事をおこし、常に皇室典範並びに憲法を始め諸々の法令を尊重遵守し、万一危急の大事が起ったならば、大義に基づいて勇気をふるい一身を捧げて皇室国家の為につくせ。かくして神勅のまにまに天地と共に窮りなき宝祚(あまつひつぎ)の御栄をたすけ奉れ。かようにすることは、ただ朕に対して忠良な臣民であるばかりでなく、それがとりもなおさず、汝らの祖先ののこした美風をはっきりあらわすことになる。 ここに示した道は、実に我が御祖先のおのこしになった御訓であって、皇祖皇宗の子孫たる者及び臣民たる者が共々にしたがい守るべきところである。この道は古今を貫いて永久に間違いがなく、又我が国はもとより外国でとり用いても正しい道である。朕は汝臣民と一緒にこの道を大切に守って、皆この道を体得実践することを切に望む。 明治23年10月30日 明治天皇自署、御璽捺印 == 語釈など == 明治時代での単語の意味と、現代の意味では違うが、この節では主に現代での意味を記述する。 :*朕(ちん) - 皇帝の自称。ここでは明治天皇の自称。 :*皇祖(こうそ) - 皇室の先祖。または、それから派生して、天照大御神(あまてらす おおみかみ)や、神武天皇のこと。あるいは、天照大御神から神武天皇までの一連の神々・人物のこと。 :*精華(せいか) - 真髄。優れた点。真価。 :*恭倹(きょうけん) - つつしみ深く、控えめに振る舞うこと :*「徳器」(とっき) - 「徳器」の意味は「徳と器量」などと、国語辞典などでは解説されることが多い。 :*天壌無窮(てんじょう むきゅう) - 天地が永遠に続く。「天壌」とは天と土壌のこと、つまり天地のこと。「無窮」とは、極まりない事。「窮」(きゅう)とは「究める」(きわめる)などの意味。 :*悖る(もとる) - 現代では「もとる」とは、道理にそむく、道理に反する、などの意味。(なお、古語では「もとる」とは、「ゆがむ」「ねじまがる」の意味で、法華経や霊異記(りょういき)などに見られる表現。古語では、「戻る」も「悖る」も同じ意味で、古語での意味は「ゆがむ」「ねじまがる」の意味。) :*拳々服膺(けんけんふくよう) - 強く心に刻み込んで、忘れないようにする。漢文『中庸』由来の表現であり、「拳拳」とは、両手をつきだして、大事そうに、ささげ持つ様子のこと。「服膺」とは、身に付けること、胸につけること。つまり、現代風に言えば、「服膺」とは「胸中に刻む」的な意味。 :*扶翼(ふよく) - 「扶」とは古語では「たすく」と読み、「助ける」と同じ意味であるが、古語での「たすく」の意味は「救出する」(徒然草・89段)(たすけよや、猫また、よやよや)のほか、協力的な意味としての「支える」「補佐する」(源氏物語・帚木)(上は下に助けられ、下は上になびきて)、物理的に倒れたりしないように支える(源氏物語・蓬生(よもぎう))(男ども、たすけてとかく開け騒ぐ。)の意味もある。 == 文章解釈 == 文章解釈については、各人・各時代により異なり、定訳は存在していない。日本では、「国定教科書」の解釈が有名で、修身の第2期国定教科書が発行される1910年から、修身の第5期国定教科書がGHQの指示で墨塗りされる1945年までの間、日本の全ての小学生がこの教育勅語の解釈を学んだ。 第二次大戦後の日本では、特に「一旦緩急アレハ義勇公ニ奉シ以テ天壤無窮ノ皇運ヲ扶翼スヘシ」の部分の解釈が問題となっている。まず、「戦争になったら天皇の国のために命を捧げる」ということを意味するのか、あるいはしないのか、という点に関して解釈が分かれており、また、仮に「戦争になったら天皇の国のために命を捧げる」ということを意味するとして、これは拒絶すべきことなのか、あるいは当然の務めなのか、というのも解釈が分かれている。 このほか、教育勅語の内容は儒教道徳だという意見もある。 === 国定教科書 === これは文部省が編纂した修身の国定教科書に記載された、文部省による公式解釈である。 「初等科修身 4」では、「一旦緩急アレハ義勇公ニ奉シ以テ天壤無窮ノ皇運ヲ扶翼スヘシ」の部分が、「いったん國に事ある場合には、勇氣をふるひおこして、命をささげ、君國(きみくに)のためにつくさなければなりません」<ref>文部省 編『初等科修身 4』文部省、1941年、5頁</ref>と解釈されており、これが「私たち臣民のつとめである」としている。 === 12の徳目 === 以下のように、教育勅語から12個の項目を抜き出して列挙したものが、第二次世界大戦後の日本において、『12の徳目』と呼ばれている。 # 父母ニ孝ニ # 兄弟ニ友ニ # 夫婦相和シ # 朋友相信シ # 恭儉己レヲ持シ # 博愛衆ニ及ホシ # 學ヲ修メ業ヲ習ヒ # 以テ智能ヲ啓發シ # 德器ヲ成就シ # 進テ公益ヲ廣メ世務ヲ開キ # 常ニ國憲ヲ重シ國法ニ遵ヒ # 一旦緩急アレハ義勇公ニ奉シ 以テ天壤無窮ノ皇運ヲ扶翼スヘシ 『12の徳目』などと呼ばれているが、文部省の公式名称ではなく、命名者は不明である。 また第二次世界大戦後の日本においては、自由民主党同志会専務理事・佐々木盛雄の作った「国民道徳協会」という団体の現代語訳が比較的有名であるが、当時の世相があまり反映されていないという指摘もある。(国民道徳協会による現代語訳については、著作権の問題があるため、外部サイトを参照のこと。) * [http://www.meijijingu.or.jp/about/3-4.html 国民道徳協会の口語訳] (明治神宮公式サイト内) 『12の徳目』への批判的意見として、教育学者で日本大学文理学部教授の佐藤秀夫は、国民道徳協会などによるこれらの現代語訳を「歪曲と誤訳の典型」と批判している<ref>佐藤秀夫『教育の文化史4 現代の視座』阿吽社、2005年、68頁。ISBN 4-900590-83-5</ref>。 == 教育勅語をめぐる歴史 == === 年表 === * 1890年(明治23年) 10月30日に発布。 * 1891年(明治24年) 小学校祝日大祭日儀式規定制定。学校などで式典がある場合に朗読。 * 1900年(明治33年) 小学校令施行規則制定。 * 1946年(昭和21年) 連合国軍最高司令官総司令部 (GHQ) が朗読と神聖的な取りあつかいを禁止。 * 1948年(昭和23年) 6月19日に衆議院が「教育勅語等排除に関する決議」を参議院が「教育勅語等の失効確認に関する決議」を決議。 === 教育勅語の起案 === 井上毅と元田永孚によって起案されたが、井上毅は教育勅語が思想や宗教の自由を侵さないようにすることを重視し、対して元田永孚は国家神道的な教典とすることを重視していたとされている。このような対立や帝国議会の神道に対する配慮などにより、大日本帝国憲法第55条第2項で「凡(すべ)テ法律勅令其ノ他国務ニ関ル詔勅ハ国務大臣ノ副署ヲ要ス」と定められていたが、この国務に関する詔勅に該当しないものとしてされた。そのため御名御璽のみで、国務大臣の副署がないまま、各学校へは文部省によって一斉に下賜(上から下に与えること)された。 === 奉安所 === 天皇皇后の真影(写真)や教育勅語を保管するために、学校に奉安庫若しくは[[W:奉安殿|奉安殿]]と呼ばれる保管庫が設けられた。学校の校舎内に設けられた保管所を奉安庫、学校の校舎とは独立して設けられたものを奉安殿という。奉安殿は、学校正門と校舎の間に設置された。 第2次世界大戦激化時には、登下校時において奉安殿への敬礼が命じられた。 === 奉読 === 文部省令などにより学校で行われる式典においては、教育勅語が奉読(朗読)されることになっていたが、後期は神聖化の影響もあってか、式典中の校長の動きは一挙一動までが明文で規定され、読み間違いなどを行えば校長の進退にも影響したともいわれる。 === 排除・失効確認 === 1948年6月19日に教育勅語について、衆議院では排除、参議院では失効確認がされた。決議文については、以下を参照。 * [[s:教育勅語等排除に関する決議|教育勅語等排除に関する決議]](ウィキソース) * [[s:教育勅語等の失効確認に関する決議|教育勅語等の失効確認に関する決議]](ウィキソース) 決議文の内容を見ると両議院で微妙に見解が異なり、法学的な観点からは次のような議論がされることがある。 衆議院では「教育勅語等排除に関する決議」を決議し、「この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。(第98条第1項)」という日本国憲法の本旨に従い、教育勅語等を排除することを宣言した。この決議については、教育勅語に国務大臣の副署がなく国務に関しない詔勅であったため、このようなものも排除できるのかという点で疑問とされる場合もあるが、日本国憲法が排除する詔勅を国務に関するものに限定する規定もまた存在していない。 参議院では「教育勅語等の失効確認に関する決議」を決議し、その決議文の中で、日本国憲法の人類普遍の原理に則って教育基本法を制定して、教育の誤りを徹底的に払拭して民主主義的教育理念をおごそかに宣明した結果として、教育勅語は、既に廃止せられその効力を失っているとした。ただし、日本国憲法にも教育基本法にも教育勅語を「廃止」する旨の規定が明文で定められていないことから疑問とされる場合もある一方、実質的に教育勅語が大日本帝国憲法と一対のものであったということから新憲法の制定によって実質的に廃止されたとされる場合もある。 なお、法学的な細部の観点はともかくとして、一般的に現代の教育において教育勅語を教育理念とされることはない。 == 教育基本法との関係 == 初期の連合国軍最高司令官総司令部 (GHQ) の教育勅語改訂構想もあり、教育勅語の廃止は元々決定されていたものではなかったが、その後GHQは、廃止の方針を決めた。また、教育基本法の起案者の一人で後に最高裁判所長官を務める田中耕太郎も、教育基本法では教育精神的な規定を設けずに、教育勅語を初めとする文書類との棲み分けを図ろうとしていた時期もあるが、後に田中は、自己の著書の中で、教育基本法が教育勅語の代わりとなったことを記した。 なお、教育勅語は、神聖的なとりあつかいや朗読が既に止められていたが、1948年6月19日に衆議院では排除、参議院では失効確認がされた。 == 脚注 == <references /> == 関連項目 == * [[w:教育ニ関スル勅語|教育ニ関スル勅語]](ウィキペディア) * [[s:教育ニ関スル勅語|教育ニ関スル勅語(原文)]](ウィキソース) * [[s:教育勅語等排除に関する決議|教育勅語等排除に関する決議]](ウィキソース) * [[s:教育勅語等の失効確認に関する決議|教育勅語等の失効確認に関する決議]](ウィキソース) ---- {{stub}} 4nlpwdapast3hfqwwfpou1om7ncd4iu 305068 305067 2026-10-22T11:30:31Z Jcb 92857 305068 wikitext text/x-wiki {{Pathnav|教育学|frame=1}} 本テキスト「教育勅語」は、教育勅語全般に関する教科書である。本wikibooksは教科書なので、教育的に重要度の高いと考えられる事を重点的に紹介する。 == 教育勅語とは == 教育勅語(きょういく ちょくご)とは、正式には「教育ニ関スル勅語」といい、1890年(明治23年)に発表された、第2次世界大戦前の日本の道徳教育の根幹となった勅語(ちょくご)である。(経緯について詳しくは、ウィキペディア『[[w:教育ニ関スル勅語|教育勅語]]』を参照)教育勅語の中身は、大まかに言うと、道徳教育の主張である。いわゆる「親孝行」などの「道徳」を尊重するような意見を、天皇が国民に語りかけるという形式である。 「勅語」(ちょくご)とは、一般的な用法での意味は、[[w:天皇|天皇]]が政治・行政などについての意思表示として伝える、天皇のいわゆる「[[w:おことば|お言葉]]」を、文書などとして正式化し公表した物である。 === 現代における、教育勅語への評価 === 教育勅語について、現代日本では、たびたび論争になる。また教育問題を扱っている政治家や学者などが、たびたび教育勅語についての議論を行う。政治やニュースや雑誌などで、解釈や意義の有無が取り上げられることもある。 そして、それらの論争で、教育勅語への批判的な評価といっぽう肯定的な評価も出てくる。 その論争での、主な意見は、おおむね次のとおり。 現状では教育勅語を廃止していることから、本wikibooksでは、まず批判的な意見から紹介する。 ==== 批判的な評価 ==== :* 公開直後から組織的な命令によって過剰な神聖化がなされた経緯もあり、思想や良心の自由を否定している、という意見もある。 :* [[w:モーセの十戒|モーセの十戒]]・仏教の[[w:五戒|五戒]]と異なり、人倫を全く説いていない内容。 :* 軍人の規律を説く軍人勅諭と同列のものであり、軍事教育や軍国主義につながる、という意見もある。 :::連合国軍最高司令官総司令部による占領統治時代に連合国軍によって教育勅語が廃止されたのは、この理由(軍国主義につながる)から :* 根本的理念が「主権在君並びに神話的国体観に基いている事実は、明かに基本的人権を損い、且つ國際信義に対して疑点を残すもととなる。」 :::1948年に衆議院によって決議された『[[w:「教育勅語等排除に関する決議」と「教育勅語等の失効確認に関する決議」|教育勅語等排除に関する決議]]』より :* 教育の根本に天皇中心の[[w:国体|国体]]思想を据えたこと自体が問題である、という意見もある。 :::教育学者で元国立教育研究所所員・日本大学文理学部教授の[[w:佐藤秀夫|佐藤秀夫]]は「教育勅語の基本的趣旨は、その冒頭における、天照大神に起源する(皇祖)歴代皇統(皇宗)の徳治と臣民全体のそれへの終始変わらぬ忠誠の関係、つまり皇国史観により捉えられる君臣関係を軸とする国家構成原理、すなわち『国体』にこそ、日本の教育の淵源が存すると規定したところにある。」と述べている<ref>佐藤秀夫『教育の文化史4 現代の視座』阿吽社、2005年、65頁。{{ISBN|4-900590-83-5}}</ref>。また、教育勅語に示されている徳目は「歴史的にこの国の民衆の間に形成されてきた通俗道徳項目に過ぎない」として、重要なのはそれらの徳目が「以テ天壌無窮ノ皇運ヲ扶翼スヘシ」に構造づけられていたこと、すなわち、「日本における道徳は、すべて[[w:天皇制|天皇制]]の発展に寄与してこそ、はじめて意味を持つということになっていた」ことであると指摘している<ref>佐藤『教育の文化史4 現代の視座』阿吽社、2005年、66頁。{{ISBN|4-900590-83-5}}</ref>。 ==== 肯定的な評価 ==== :* 現代語訳での12の徳目は、日本の伝統的道徳観が込められており、一種の模範となるものがあってもいいのではないかという意見もある。 :* 多くの国や宗教で古くから普遍的にある道徳を、明治当時の日本の国情に合わせて記述したものにすぎない、という意見もある。 :::[[w:桐蔭横浜大学|桐蔭横浜大学]]学長鵜川昇によれば「『カトリックの倫理綱領と同じ』であり、『日本人としての根本倫理』を表したものとして講義を続けた[[w:栄光学園|栄光学園]]のグスタフ・フォス校長(神父)」のような教育者も過去には存在したという。また、三重県伊勢市の[[w:皇學館高等学校|皇學館高等学校]]は教育勅語を教材の中に取り入れており、現代の社会において欠けているものが教育勅語にあるからこそ、生徒が暗唱をしている == 原文 == 朕惟フニ我カ皇祖皇宗國ヲ肇ムルコト宏遠ニ德ヲ樹ツルコト深厚ナリ我カ臣民克ク忠ニ克ク孝ニ億兆心ヲ一ニシテ世世厥ノ美ヲ濟セルハ此レ我カ國體ノ精華ニシテ敎育ノ淵源亦實ニ此ニ存ス爾臣民父母ニ孝ニ兄弟ニ友ニ夫婦相和シ朋友相信シ恭儉己レヲ持シ博愛衆ニ及ホシ學ヲ修メ業ヲ習ヒ以テ智能ヲ啓發シ德器ヲ成就シ進テ公益ヲ廣メ世務ヲ開キ常ニ國憲ヲ重シ國法ニ遵ヒ一旦緩急アレハ義勇公ニ奉シ以テ天壤無窮ノ皇運ヲ扶翼スヘシ是ノ如キハ獨リ朕カ忠良ノ臣民タルノミナラス又以テ爾祖先ノ遺風ヲ顯彰スルニ足ラン<br> 斯ノ道ハ實ニ我カ皇祖皇宗ノ遺訓ニシテ子孫臣民ノ倶ニ遵守スヘキ所之ヲ古今ニ通シテ謬ラス之ヲ中外ニ施シテ悖ラス朕爾臣民ト倶ニ拳々服膺シテ咸其德ヲ一ニセンコトヲ庶幾フ 明治二十三年十月三十日<br> 御名御璽 ==ふりがな付き== <!-- <ruby>朕<rt>ちん</rt></ruby><ruby>惟<rt>おも</rt></ruby>ふに<ruby>我<rt>わ</rt></ruby>が --> 朕(ちん)惟フニ(おもうに)我カ(わが)皇祖皇宗(こうそ こうそう)國ヲ(くにを)肇ムルコト(はじむること)宏遠ニ(こうえんに)德ヲ樹ツルコト(たつること)深厚ナリ(しんこうなり)<br> 我カ(わが)臣民(しんみん)克ク(よく)忠ニ(ちゅうに)克ク(よく)孝ニ(こうに)億兆(おくちょう)心ヲ一ニシテ(こころをいつにして)世世(よよ)厥ノ(その)美ヲ(びを)濟セルハ(なせるは)此レ(これ)我カ國體(こくたい)ノ精華ニシテ敎育ノ淵源(えんげん)亦(また)實ニ(じつに)此ニ(ここに)存ス(ぞんす)<br> 爾(なんじ)臣民(しんみん)父母ニ孝ニ(ふぼに こうに)兄弟ニ友ニ(けいていに ゆうに)夫婦相和シ(ふうふ あいわし)朋友相信シ(ほうゆう あいしんじ)恭儉(きょうけん)己(おの)レヲ持(じ)シ博愛(はくあい)衆(しゅう)ニ及(およ)ホシ學(がく)ヲ修(おさ)メ業(ぎょう)ヲ習(なら)ヒ以(もっ)テ智能(ちのう)ヲ啓發(けいはつ)シ德器(とっき)ヲ成就(じょうじゅ)シ進(すすん)テ公益(こうえき)ヲ廣(ひろ)メ世務(せむ/せいむ)ヲ開(ひら)キ 常(つね)ニ國憲(こっけん)ヲ重(おもん)シ國法(こくほう)ニ遵(したが)ヒ一旦緩急(いったんかんきゅう)アレハ義勇公(ぎゆうこう)ニ奉(ほう)シ以(もっ)テ天壤無窮(てんじょうむきゅう)ノ皇運(こううん)ヲ扶翼(ふよく)スヘシ<br> 是ノ如キハ(かくのごときは)獨リ(ひとり)朕(ちん)カ忠良(ちゅうりょう)ノ臣民(しんみん)タルノミナラス又(また)以テ(もって)爾(なんじ)祖先(そせん)ノ遺風(いふう)ヲ顯彰(けんしょう)スルニ足ラン<br><br> 斯ノ(この)道(みち)ハ實ニ(じつに)我カ皇祖皇宗ノ遺訓(いくん)ニシテ子孫臣民ノ倶ニ(ともに)遵守スヘキ(じゅんしゅすべき)所(ところ)<br> 之ヲ古今ニ通シテ謬(あやま)ラス之ヲ中外ニ施シテ悖ラス(もとらず)朕爾臣民ト倶ニ拳々服膺(けんけんふくよう)シテ咸(みな)其德ヲ(そのとくを)一ニセンコトヲ庶幾フ(こいねがう) 明治二十三年十月三十日<br> 御名御璽(ぎょめい ぎょじ) == 現代語訳 == === 文部省訳 === :(文部省図書局『聖訓ノ述義ニ関スル協議会報告書』(1940年)より。明治天皇から勅語を賜った文部大臣が管轄する文部省自身による、「正式な現代語訳」とされる文章) 朕が思うに、我が御祖先の方々が国をお肇めになったことは極めて広遠であり、徳をお立てになったことは極めて深く厚くあらせられ、又、我が臣民はよく忠にはげみよく孝をつくし、国中のすべての者が皆心を一にして代々美風をつくりあげて来た。これは我が国柄の精髄であって、教育の基づくところもまた実にここにある。 汝臣民は、父母に孝行をつくし、兄弟姉妹仲よくし、夫婦互に睦び合い、朋友互に信義を以って交わり、へりくだって気随気儘の振舞いをせず、人々に対して慈愛を及すようにし、学問を修め業務を習って知識才能を養い、善良有為の人物となり、進んで公共の利益を広め世のためになる仕事をおこし、常に皇室典範並びに憲法を始め諸々の法令を尊重遵守し、万一危急の大事が起ったならば、大義に基づいて勇気をふるい一身を捧げて皇室国家の為につくせ。かくして神勅のまにまに天地と共に窮りなき宝祚(あまつひつぎ)の御栄をたすけ奉れ。かようにすることは、ただ朕に対して忠良な臣民であるばかりでなく、それがとりもなおさず、汝らの祖先ののこした美風をはっきりあらわすことになる。 ここに示した道は、実に我が御祖先のおのこしになった御訓であって、皇祖皇宗の子孫たる者及び臣民たる者が共々にしたがい守るべきところである。この道は古今を貫いて永久に間違いがなく、又我が国はもとより外国でとり用いても正しい道である。朕は汝臣民と一緒にこの道を大切に守って、皆この道を体得実践することを切に望む。 明治23年10月30日 明治天皇自署、御璽捺印 == 語釈など == 明治時代での単語の意味と、現代の意味では違うが、この節では主に現代での意味を記述する。 :*朕(ちん) - 皇帝の自称。ここでは明治天皇の自称。 :*皇祖(こうそ) - 皇室の先祖。または、それから派生して、天照大御神(あまてらす おおみかみ)や、神武天皇のこと。あるいは、天照大御神から神武天皇までの一連の神々・人物のこと。 :*精華(せいか) - 真髄。優れた点。真価。 :*恭倹(きょうけん) - つつしみ深く、控えめに振る舞うこと :*「徳器」(とっき) - 「徳器」の意味は「徳と器量」などと、国語辞典などでは解説されることが多い。 :*天壌無窮(てんじょう むきゅう) - 天地が永遠に続く。「天壌」とは天と土壌のこと、つまり天地のこと。「無窮」とは、極まりない事。「窮」(きゅう)とは「究める」(きわめる)などの意味。 :*悖る(もとる) - 現代では「もとる」とは、道理にそむく、道理に反する、などの意味。(なお、古語では「もとる」とは、「ゆがむ」「ねじまがる」の意味で、法華経や霊異記(りょういき)などに見られる表現。古語では、「戻る」も「悖る」も同じ意味で、古語での意味は「ゆがむ」「ねじまがる」の意味。) :*拳々服膺(けんけんふくよう) - 強く心に刻み込んで、忘れないようにする。漢文『中庸』由来の表現であり、「拳拳」とは、両手をつきだして、大事そうに、ささげ持つ様子のこと。「服膺」とは、身に付けること、胸につけること。つまり、現代風に言えば、「服膺」とは「胸中に刻む」的な意味。 :*扶翼(ふよく) - 「扶」とは古語では「たすく」と読み、「助ける」と同じ意味であるが、古語での「たすく」の意味は「救出する」(徒然草・89段)(たすけよや、猫また、よやよや)のほか、協力的な意味としての「支える」「補佐する」(源氏物語・帚木)(上は下に助けられ、下は上になびきて)、物理的に倒れたりしないように支える(源氏物語・蓬生(よもぎう))(男ども、たすけてとかく開け騒ぐ。)の意味もある。 == 文章解釈 == 文章解釈については、各人・各時代により異なり、定訳は存在していない。日本では、「国定教科書」の解釈が有名で、修身の第2期国定教科書が発行される1910年から、修身の第5期国定教科書がGHQの指示で墨塗りされる1945年までの間、日本の全ての小学生がこの教育勅語の解釈を学んだ。 第二次大戦後の日本では、特に「一旦緩急アレハ義勇公ニ奉シ以テ天壤無窮ノ皇運ヲ扶翼スヘシ」の部分の解釈が問題となっている。まず、「戦争になったら天皇の国のために命を捧げる」ということを意味するのか、あるいはしないのか、という点に関して解釈が分かれており、また、仮に「戦争になったら天皇の国のために命を捧げる」ということを意味するとして、これは拒絶すべきことなのか、あるいは当然の務めなのか、というのも解釈が分かれている。 このほか、教育勅語の内容は儒教道徳だという意見もある。 === 国定教科書 === これは文部省が編纂した修身の国定教科書に記載された、文部省による公式解釈である。 「初等科修身 4」では、「一旦緩急アレハ義勇公ニ奉シ以テ天壤無窮ノ皇運ヲ扶翼スヘシ」の部分が、「いったん國に事ある場合には、勇氣をふるひおこして、命をささげ、君國(きみくに)のためにつくさなければなりません」<ref>文部省 編『初等科修身 4』文部省、1941年、5頁</ref>と解釈されており、これが「私たち臣民のつとめである」としている。 === 12の徳目 === 以下のように、教育勅語から12個の項目を抜き出して列挙したものが、第二次世界大戦後の日本において、『12の徳目』と呼ばれている。 # 父母ニ孝ニ # 兄弟ニ友ニ # 夫婦相和シ # 朋友相信シ # 恭儉己レヲ持シ # 博愛衆ニ及ホシ # 學ヲ修メ業ヲ習ヒ # 以テ智能ヲ啓發シ # 德器ヲ成就シ # 進テ公益ヲ廣メ世務ヲ開キ # 常ニ國憲ヲ重シ國法ニ遵ヒ # 一旦緩急アレハ義勇公ニ奉シ 以テ天壤無窮ノ皇運ヲ扶翼スヘシ 『12の徳目』などと呼ばれているが、文部省の公式名称ではなく、命名者は不明である。 また第二次世界大戦後の日本においては、自由民主党同志会専務理事・佐々木盛雄の作った「国民道徳協会」という団体の現代語訳が比較的有名であるが、当時の世相があまり反映されていないという指摘もある。(国民道徳協会による現代語訳については、著作権の問題があるため、外部サイトを参照のこと。) * [http://www.meijijingu.or.jp/about/3-4.html 国民道徳協会の口語訳] (明治神宮公式サイト内) 『12の徳目』への批判的意見として、教育学者で日本大学文理学部教授の佐藤秀夫は、国民道徳協会などによるこれらの現代語訳を「歪曲と誤訳の典型」と批判している<ref>佐藤秀夫『教育の文化史4 現代の視座』阿吽社、2005年、68頁。{{ISBN|4-900590-83-5}}</ref>。 == 教育勅語をめぐる歴史 == === 年表 === * 1890年(明治23年) 10月30日に発布。 * 1891年(明治24年) 小学校祝日大祭日儀式規定制定。学校などで式典がある場合に朗読。 * 1900年(明治33年) 小学校令施行規則制定。 * 1946年(昭和21年) 連合国軍最高司令官総司令部 (GHQ) が朗読と神聖的な取りあつかいを禁止。 * 1948年(昭和23年) 6月19日に衆議院が「教育勅語等排除に関する決議」を参議院が「教育勅語等の失効確認に関する決議」を決議。 === 教育勅語の起案 === 井上毅と元田永孚によって起案されたが、井上毅は教育勅語が思想や宗教の自由を侵さないようにすることを重視し、対して元田永孚は国家神道的な教典とすることを重視していたとされている。このような対立や帝国議会の神道に対する配慮などにより、大日本帝国憲法第55条第2項で「凡(すべ)テ法律勅令其ノ他国務ニ関ル詔勅ハ国務大臣ノ副署ヲ要ス」と定められていたが、この国務に関する詔勅に該当しないものとしてされた。そのため御名御璽のみで、国務大臣の副署がないまま、各学校へは文部省によって一斉に下賜(上から下に与えること)された。 === 奉安所 === 天皇皇后の真影(写真)や教育勅語を保管するために、学校に奉安庫若しくは[[W:奉安殿|奉安殿]]と呼ばれる保管庫が設けられた。学校の校舎内に設けられた保管所を奉安庫、学校の校舎とは独立して設けられたものを奉安殿という。奉安殿は、学校正門と校舎の間に設置された。 第2次世界大戦激化時には、登下校時において奉安殿への敬礼が命じられた。 === 奉読 === 文部省令などにより学校で行われる式典においては、教育勅語が奉読(朗読)されることになっていたが、後期は神聖化の影響もあってか、式典中の校長の動きは一挙一動までが明文で規定され、読み間違いなどを行えば校長の進退にも影響したともいわれる。 === 排除・失効確認 === 1948年6月19日に教育勅語について、衆議院では排除、参議院では失効確認がされた。決議文については、以下を参照。 * [[s:教育勅語等排除に関する決議|教育勅語等排除に関する決議]](ウィキソース) * [[s:教育勅語等の失効確認に関する決議|教育勅語等の失効確認に関する決議]](ウィキソース) 決議文の内容を見ると両議院で微妙に見解が異なり、法学的な観点からは次のような議論がされることがある。 衆議院では「教育勅語等排除に関する決議」を決議し、「この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。(第98条第1項)」という日本国憲法の本旨に従い、教育勅語等を排除することを宣言した。この決議については、教育勅語に国務大臣の副署がなく国務に関しない詔勅であったため、このようなものも排除できるのかという点で疑問とされる場合もあるが、日本国憲法が排除する詔勅を国務に関するものに限定する規定もまた存在していない。 参議院では「教育勅語等の失効確認に関する決議」を決議し、その決議文の中で、日本国憲法の人類普遍の原理に則って教育基本法を制定して、教育の誤りを徹底的に払拭して民主主義的教育理念をおごそかに宣明した結果として、教育勅語は、既に廃止せられその効力を失っているとした。ただし、日本国憲法にも教育基本法にも教育勅語を「廃止」する旨の規定が明文で定められていないことから疑問とされる場合もある一方、実質的に教育勅語が大日本帝国憲法と一対のものであったということから新憲法の制定によって実質的に廃止されたとされる場合もある。 なお、法学的な細部の観点はともかくとして、一般的に現代の教育において教育勅語を教育理念とされることはない。 == 教育基本法との関係 == 初期の連合国軍最高司令官総司令部 (GHQ) の教育勅語改訂構想もあり、教育勅語の廃止は元々決定されていたものではなかったが、その後GHQは、廃止の方針を決めた。また、教育基本法の起案者の一人で後に最高裁判所長官を務める田中耕太郎も、教育基本法では教育精神的な規定を設けずに、教育勅語を初めとする文書類との棲み分けを図ろうとしていた時期もあるが、後に田中は、自己の著書の中で、教育基本法が教育勅語の代わりとなったことを記した。 なお、教育勅語は、神聖的なとりあつかいや朗読が既に止められていたが、1948年6月19日に衆議院では排除、参議院では失効確認がされた。 == 脚注 == <references /> == 関連項目 == * [[w:教育ニ関スル勅語|教育ニ関スル勅語]](ウィキペディア) * [[s:教育ニ関スル勅語|教育ニ関スル勅語(原文)]](ウィキソース) * [[s:教育勅語等排除に関する決議|教育勅語等排除に関する決議]](ウィキソース) * [[s:教育勅語等の失効確認に関する決議|教育勅語等の失効確認に関する決議]](ウィキソース) ---- {{stub}} 78i90yu0f6j5vqm0zqu6xjdr7f7ofm9 Wikibooks:スタイルマニュアル 4 705 305042 300926 2026-10-22T09:46:29Z Jcb 92857 305042 wikitext text/x-wiki {{Proposed|すたいるまにゆある|[[WB:MOS]]}} :''以下は暫定的に[[w:Wikipedia:スタイルマニュアル]]から必要な部分をコピーしただけのもので、詳細は決定していません。足りない、あるいは細部が合わないなどの不都合がある場合があります。'' '''スタイルマニュアル'''は、ウィキブックスの本の全てのページが同様な見かけでなければならないというもっとも重要な目的を達成するために必要な様式の指針です。<!--以下のルールは最後の言葉まで抗議を受け付けません。もちろん、本様式より優れている様式もあるでしょう。しかし全ての記事が同じ様式で書かれるからこそ、[[w:ウィキブックス]]は、記述しやすく、編集しやすくなるのはもちろん、読みやすく、使いやすいものになるのです。新しく寄稿される方は、はっきり意味のわかる記述が見栄えや形式より重要である事を心に留めておいて下さい。ウィキブックスがうまく成長すると、記事を執筆する方々がルールに外れた書き方をしても問題なくなります。フォーマットやスタイルのルールや修正方法に通じた編集者系ウィキブッキアン達が育ってくるからです。こうした人たちの作業は、(必ずしもよい名前ではないと抗議を受けつつも)ウィキブックスでは[[w:Wikipedia:雑草とり|Wikipedia:雑草とり]]と呼ばれたり、ウィキ化 (Wikification) と呼ばれたりしています。--> 様式の例文にはいつもマークアップが併記されていますが、本記事の目的は'''どのように'''マークアップを記述するかではなく、'''いつ'''これらを使わなければならないかです。'''ボールド体''' や''イタリック体'' 以外のマークアップに関しては、[[{{SITENAME}}:編集の仕方]]を見てください。 <!-- 記事のレイアウトは、[[{{SITENAME}}:レイアウトの指針|レイアウトの指針]]を見本にして下さい。イベントに記事を書く方は、[[w:Wikipedia:ニューススタイル|ニューススタイル]]に記事を適切なものにするための取り決めがあるので読むと良い記事が書けるでしょう。 以下で説明される形式を記事に用いる際は、[[{{SITENAME}}:決まり文句集]]にある雛型を、記事へコピー&ペーストして用いると便利です。 --> ''注釈 この記事に寄稿する方へ。 この「マニュアル」は簡潔で判りやすい事が望まれているので、例えば複雑な表のようなものはリンクへと追いやられるでしょう。'' == 記事の導入 == 現在のところ詳細は決まっていません。何も書かないか、あるいは簡単な前書きや概要が書かれるのが必要かもしれません。 === ナビゲーションをつける === 記事の冒頭にはその記事が、どの本のどの位置に属するのかはっきりさせるために、ナビゲーションをつけましょう。形式は以下の様なもの考えられますが、 # <syntaxhighlight lang=wikitext inline>{{[[テンプレート:Pathnav|Pathnav]]|メインページ|親項目|子項目}}</syntaxhighlight> # <syntaxhighlight lang=wikitext inline>[[親項目]] > [[子項目]] > 孫項目</syntaxhighlight> # <syntaxhighlight lang=wikitext inline>top:[[本のタイトル]] / previous:[[前のページ]] - up:[[章タイトル]] - next:[[次のページ]]</syntaxhighlight> このうち、1番([[テンプレート:Pathnav]])を使用して下さい。 '''使い方:''' # 繋がりを明確にするため、最上位項目を必ず[[メインページ]]にする。 # 本文との境界を明確にするため、引数frameに「1」を指定する。 '''正しい使い方(例):''' * 例(出力): {{Pathnav|[[メインページ]]|基本方針とガイドライン|frame=1}} * 例(入力):<syntaxhighlight lang=wikitext inline>{{Pathnav|メインページ|Wikibooks:基本方針とガイドライン|frame=1}}</syntaxhighlight> == 見出しの様式 == {{Anchors|見出し}} 見出しのマークアップには <syntaxhighlight lang=wikitext inline>'''</syntaxhighlight> でなく、<code>==</code> もしくは <code>===</code> を使ってください。マークアップの結果、フォントが大きすぎるように見える(多くの人がこう感じるようですが)かもしれませんが、それは個々の記事の問題ではなくウィキブックスの採用している広域スタイルシートの問題です。記事の見出しをこのように書く利点としては、機械的に記事の見出しかどうか判断することができるため、検索した時に上位にランクされたり、ユーザーの設定によっては自動的に項目番号がつけられたりします。 見出しからはリンクを張らないでください。ページを見る環境によって見出しが正しく読めないことがあります。見出しの語にリンクを張りたいときには見出しのすぐ後に記事と同様に簡単な説明をもうけ、そこからリンクを張るようにしてください。 == 敬称は使用しない == 原則として文章中の人名に関して陛下、殿下、閣下、猊下、氏、様、さんなどの敬称は使用しないでください。 ただし、「ある特定の集団からは○○と敬称をつけて呼ばれる」のように中立的観点に立って、一つの事実として記述することは構いません。 == 図の注釈の様式 == 写真や画像には、必ず注釈を付けてください。ただし、画像自身にその画像を説明する注釈が含まれていればその限りではありません(例えば、本のカバーなどが画像自身に表題が含まれる良い例です)。 注釈は記事文の様式に従って下さい。例えば、記事文でイタリック体として扱われるもののみイタリック体で記述してください * Al Jolson in ''The Jazz Singer'' ** <syntaxhighlight lang=wikitext inline>Al Jolson in ''The Jazz Singer''</syntaxhighlight> 図の注釈はその直下につけるのが一般的です。 == 作品タイトルの様式 == 書籍、映画、雑誌、有名な音楽作品などの日本語のタイトルは『 』で括ってください。また、欧文表記の場合には「イタリック体」を使用してください(日本語作品の場合は『 』で構いません)。姉妹プロジェクトには、ある作品を解説した記事が用意されているかもしれません。もしタイトルをリンクしたい時は、ブラケット (<syntaxhighlight lang=wikitext inline>[[ ]]</syntaxhighlight>) の外に『 』やイタリック体のマークアップを付けてください。 *『[[w:坊っちゃん|坊っちゃん]]』 **<syntaxhighlight lang=wikitext inline>『[[w:坊っちゃん|]]』</syntaxhighlight> *[[w:交響曲|交響曲]] 第9番 作品95 『新世界より』(一般名部分は装飾しない) :以下のような記述はありうる。 :(前略)当日の演奏曲目は「オペラ『フィガロの結婚』序曲」と「交響曲第41番ハ長調K.551『ジュピター』」であった。(後略) [[w:Wikipedia:Filmographies and Discographies]]も見てください。 == 言葉の語源に関する様式 == イタリック体で表される言葉の語源は、さらにイタリック体で表してください。 * ''panning''という用語は[[w:1787年|1787年]]に初めて造り出された''panorama''という用語を語源とする。 ** <syntaxhighlight lang=wikitext inline>''panning''という用語は[[w:1787年|]]に初めて造り出された''panorama''という用語を語源とする。</syntaxhighlight> == 日本語の様式 == 日本語については[[w:Wikipedia:日本語環境]]、[[w:Wikipedia:外来語表記法]]、[[w:Wikipedia:日本語表記法]]で様々な議論がされています。 == つづりの様式 == 英語表記では、米国つづり、英国つづりのどちらを使っても構いません。 これは従うべきルールといったものではありませんが、アメリカにまつわる主題についてはアメリカ式の綴りを使い、イギリスにまつわる主題についてはイギリス式の綴りを使うとよいと思われます。また、ひとつの記事内ではどちらかに統一するのがいいでしょう。もしも記事名に英語を用いている場合には、アメリカ英語とイギリス英語の両方の綴りのファイルが存在し、一方が他方へのリダイレクトになるようにして下さい。 == 数字、重量、長さの様式 == ピンボールの得点のようなとても大きな数字は、全て3桁ずつのコンマで区切らなければなりません。ただし、科学的な文脈では[[w:科学的な表現|科学的な表現]]が好まれます。以下を見てください。 *このピンボールゲームの最高得点は 11,933,750 点です。 *156,234,000,000,000,000,000,000,000,000 等、大きな数値を書く時には 1.56234 &times; 10<sup>29</sup> と表記して下さい。また、0.0000000000234 は 2.34 &times; 10<sup>-11</sup> と書くことができます。 **<syntaxhighlight lang=wikitext inline>156,234,000,000,000,000,000,000,000,000 などのような大きな数値を書く時には 1.56234 &times; 10<sup>29</sup> と表記して下さい。また、0.0000000000234 は 2.34 &times; 10<sup>-11</sup> と書くことができます。 </syntaxhighlight> 単位はできるだけ[[w:国際単位系|国際単位系(SI)]]で記述して下さい。それ以外の単位系であるヤード・ポンド法、尺貫法等を用いる時には、[[W:SI単位|SI単位]]を添えてください。 もし同じ単位が何度も出てくるなら、いつもSI単位に言い換える必要はありません。単位の変換をするのに[https://www.onlineconversion.com/ online conversions]は、有用な良いサイトです. SI単位には標準的な記号、例えばメートルには m、キログラムには kg などを使用して下さい(記号のリストは[[w:国際単位系]]を参照)。 単位の前には半角スペースを入れてください。正確な量が分からないときなどは「およそ」等と付記した記述で結構です。 == 数式の様式 == <!--[[w:Wikipedia:ウィキプロジェクト 数学|ウィキプロジェクト 数学]]と[[w:Wikipedia:TeX記述法|Wikipedia:TeX記述法]]を参考にしてください。--> *<syntaxhighlight lang=wikitext inline><math></syntaxhighlight>タグについて **できるだけ使わないように心がけてください。利用者の設定によって表示のされ方が異なり、また、多用するとページの表示を遅くする原因になるからです。複雑な数式の場合に用いるようにしてください。 ** <del>利用する際は、[[w:Wikipedia:TeX記述法|TeX記述法]]を参照してください</del>。 (当該ページは削除されています) *数字、文字 **全て半角英数字を用いてください。 **文字は<syntaxhighlight lang=wikitext inline>''a''</syntaxhighlight>のようにシングルクォーテーション2つずつでくくり、イタリック体で表示させてください。 <!-- *記号 **実体参照を用いるようにしてください。 (この辺はどうしたらいいのでしょうか…) --> == 科学的な様式 == [[w:化学物質|化学物質]]および[[w:薬品|薬品]]に関する記事において: * [[w:IUPAC|IUPAC]] の勧告に従った慣用名をもつ場合の記事を除いて、可能な限り物質の[[w:IUPAC|IUPAC]] 名を使ってください。 * 周期表における「最新の」IUPAC 名を使ってください(最新のものでは [[w:ローマ数字|ローマ数字]]を使わずに[[w:アラビア数字|アラビア数字]]で表記します)。 == 引用形式 == 引用のスタイルついての一覧は https://bailiwick.lib.uiowa.edu/journalism/cite.html を見て下さい。現在きちんとした {{SITENAME}} の引用形式はなく、引用はとても少なくなっています。[https://www.bungeika.or.jp/text/statements/19780130.htm 日本文藝家協会の声明]日本語版ではGFDL上の懸念から引用は2004年9月現在停止中です。 :''Proposal: {{SITENAME}} should adopt the recommendations of'' https://www.columbia.edu/cu/cup/cgos/idx_basic.html [[w:ISBN|ISBN]] はリンクに自動的に変換されます。購入しようとオンラインストアで探す読者にとって、とても便利です。しかし、ISBNは、ある本の特定の版を示していますので、絶版の場合には便利ではないでしょう。 The {{SITENAME}} software recognizes inline ISBNs; for example: <code><syntaxhighlight lang=wikitext inline>{{ISBN|0-12-345678-9}}</syntaxhighlight></code> becomes {{ISBN|0-12-345678-9}}. This creates an external link to a special booksource page, with links to sites where one may search for the best price for the book or access information about the book such as reviews and reader reactions. It is important when making a link to not put a colon after "ISBN". Please ''do not'' use ISBN numbers alone to identify books: please add a proper citation as well as the ISBN. == リンクの様式 == <syntaxhighlight lang=wikitext inline>[[w:ジョージ・W・ブッシュ]]</syntaxhighlight>のような、他のトピックへの「リンク」を推奨します。記事を読む助けになるなら、出てくる言葉を外部にリンクしてください。でもやりすぎには注意。言葉が出てくるたびにリンクする必要はありません。最初に単語が出てきたときに一度リンクすれば十分です。 リンク指定された言葉はウィキブックスによって自動的に、存在する記事へリンクされます([[{{SITENAME}}:記事名の付け方]]参照)。もしも言葉が登録されていない場合でも、後で誰かが記事を書くときにリンクしやすくなります。 <syntaxhighlight lang=wikitext inline> [[English language|English]] </syntaxhighlight>のようにすることで、リンク先と完全に同一でない言葉でもリンクすることができます。リンクをたどらなくてもそれが何を指しているのかわかるようにしましょう。 なるべく正確なリンクを心がけてください。リンクしたい言葉が登録されていない場合、本当にないのかクイックサーチで検索してみましょう。もしかしたらほんの少し違った形で登録されているかもしれません。 == 参照先および関連記事の様式 == 記事本文中からはリンクされていない関連する記事に、あまり形式ばらない形でリンクする場合には、「''...も参照せよ''」というやり方で行うのが最適です。 == 年月日の様式 == 混乱を避けるために、年代にはつねに世紀を加えてください。すなわち<syntaxhighlight lang=wikitext inline>[[w:60年代|]]</syntaxhighlight>とはせずに、<syntaxhighlight lang=wikitext inline>[[w:1960年代|]]</syntaxhighlight>としてください。 年代の数字部分については半角数字を用いて下さい。 日本史にまつわる記事では、できるだけ和暦と西暦を併用し、世界史にまつわる記事では、できるだけ西暦を用いてください。また、西暦を使用している地域に関わる記事では、できれば西暦を用いて下さい。 * 西暦、和暦いずれでもない暦を用いる場合には、それが西暦または和暦にどう対応するのかがわかりやすいように表記して下さい。 姉妹プロジェクトウィキペディアに各年毎に1つ、その年に起こった出来事などを紹介するページが設けられます(月日、年代、世紀、千年期に関するページも存在します)。文中で年に言及する時にはそちらへリンクを張ると便利でしょう。これらの記事名の付け方は[[w:年表]]や[[w:365日]]からいくつかリンクをたどるとすぐに理解できるでしょう。 リンクを張るならば以下のような様式で書きます。 * [[w:474年|474年]](年代) ** <syntaxhighlight lang=wikitext inline>[[w:474年|]]</syntaxhighlight> * [[w:紀元前474年|紀元前474年]](紀元前のもの) ** <syntaxhighlight lang=wikitext inline>[[w:紀元前474年|]]</syntaxhighlight> * [[w:2月11日|2月11日]](日付) ** <syntaxhighlight lang=wikitext inline>[[w:2月11日|]]</syntaxhighlight> * [[w:1958年|1958年]][[w:2月11日|2月11日]](年代と日付けは分けてリンクを張って下さい) ** <syntaxhighlight lang=wikitext inline>[[w:1958年|]][[w:2月11日|]]</syntaxhighlight> *[[w:平成12年|平成12年]][[w:3月4日|3月4日]](和暦) **<syntaxhighlight lang=wikitext inline>[[w:平成12年|]][[w:3月4日|]]</syntaxhighlight> * [[w:紀元前10世紀|紀元前10世紀]] ** <syntaxhighlight lang=wikitext inline>[[w:紀元前10世紀|]]</syntaxhighlight> * [[w:1830年代|1830年代]](年代) ** <syntaxhighlight lang=wikitext inline>[[w:1830年代|]]</syntaxhighlight> == 人名の様式 == 文中で学者や歴史上の偉人の説明がほしい場合があるでしょう。姉妹プロジェクトのウィキペディアにその説明があるかもしれません。従って基本的に人名の様式は、ウィキペディアの[[w:記事名のつけ方|記事名のつけ方]]にある人名に関する記事名の様式に準じます。 1 日本人 *姓・名の順に、間にスペースなどを入れずに記す。原則として敬称・肩書はなし。 **例:「[[w:伊藤博文|伊藤博文]]」 *日本人の名前にはペンネームなどに特殊記号やアルファベットなどを用いているものがあるが、これらはそのまま表記し、カタカナ化などはしない。 **例:「藤子・F・不二雄」は「藤子エフ不二雄」とする必要はない。 * JIS X 0208にない漢字は記事名として用いず、読み方に即したひらがな、またはカタカナを使用する(言い換えれば、一般に機種依存文字に区分される漢字は用いない。Windowsで表示可能でも、他のOS、一部のブラウザで表示できない場合があるため)。 2 中国人、韓国人などで名前の表記が通常漢字である場合 *原則として漢字名を使用する。日本人の名前と同様に扱う。機種依存文字に区分される漢字の扱いも日本人に準ずる。 **例:「魯迅」 **例:「トウ小平」 *中国語の簡略体などで、日本で用いられている漢字と対応するものがある場合には、それを用いる。 見当たらない場合にはカタカナ表記を用いてもよい。 *用いられている漢字が見当たらない場合には、読み方に則したカタカナを使用する。 3 その他の外国人 * 名(ファーストネーム)・姓(ファミリーネーム)の順。姓名間の区切りは「・(全角)」で示し、ミドルネームは原則として省略する。 **例:「ジェラール・フィリップ」。 *ハイフンで結ばれた2つの語が名前に含まれている場合は、ハイフンの代わりにイコール記号(全角)を使う。(注:半角のイコールは、「記事名に使えない特殊記号」(上記)に含まれる) **例:「ジャン=ポール・サルトル」 (アラブ・イスラム系の人名については[[w:ノート:ムハンマド#アラブおよびその他のイスラム系の人名についての記事名ルール案|ノート:ムハンマド]]にルール案が提示されています) 4 日系外国人、海外在住者などで、カタカナ表記が通例になっている場合 *広く流布していると思われる名前を記事名として用いる。語順も流布しているものに従う。 **例:「カズオ・イシグロ」「オノ・ヨーコ」 == URL および World Wide Web の様式 == ウィキブックスはリンクの集まりではありませんし、ある項目を見てリンクだけというのは見る人を失望させるものです。しかし、その項目について [[w:World Wide Web|World Wide Web]] 上に詳細の情報がある時には、リンクが適切なこともあります。特に、あるページの重要な情報をもとに記事を書いた時にはリンクは適切と言えます。 URLの形式を簡単に示すと以下のようになります。 :[URL 表記テキスト] URL は ''<syntaxhighlight lang=wikitext inline>https://</syntaxhighlight>'' や ''<syntaxhighlight lang=wikitext inline>ftp://</syntaxhighlight>'', ''<syntaxhighlight lang=wikitext inline>news://</syntaxhighlight>'' 等ではじめて下さい。これらは Wikiwiki のなかで外部リンクとして扱われます。 === URLのタイトル === URL に続けて、半角スペースとテキストを書いた時には、見た目上テキストだけが表示されます。 * [https://ja.wikibooks.org/ オープンソース教科書] ** <syntaxhighlight lang=wikitext inline>[https://ja.wikibooks.org/ オープンソース教科書]</syntaxhighlight> テキストを書かずに URL だけを書くと参照番号として表示されます。 * [https://ja.wikibooks.org/] ** <syntaxhighlight lang=wikitext inline>[https://ja.wikibooks.org/]</syntaxhighlight> === 記事内での書き方 === 外部 URL へのリンクは、記事の文章内からも張ることができます。 * オンラインでの共同作業の良い例の一つを[https://ja.wikibooks.org ウィキブックス、オープンソース教科書]で見ることができます。 ** <syntaxhighlight lang=wikitext inline>* オンラインでの共同作業の良い例の一つを[https://ja.wikibooks.org ウィキブックス、オープンソース教科書]で見ることができます。</syntaxhighlight> '''Note:''' URL にカッコをつない形式のリンクも存在しています。 * https://ja.wikibooks.org/ **<syntaxhighlight lang=wikitext inline>https://ja.wikibooks.org/</syntaxhighlight> しかし、この機能は将来なくなる予定です。URL自体を表記することがどうしても有用と思える場合には、簡略した形でURLをテキストで表示するといいでしょう。 * [https://ja.{{SITENAME}}.org/ ja.{{SITENAME}}.org] ** <syntaxhighlight lang=wikitext inline>[https://ja.wikibooks.org/ ja.wikibooks.org]</syntaxhighlight> == 簡単な表の作成 == 半角のスペースで始まる行は、フォントの幅が固定されて、簡単な表に使えます。多くの例が、[https://en.wikipedia.org/Wiki/English plural English plural] から見られます。 foo bar baz alpha beta gamma しかしこれはブラウザの設定によってはうまく動作しません。例えば Mozilla, Netscape などではデフォルトで日本語の等幅表示に等幅フォントが指定されていないのでそのままではずれて見えます。等幅に指定してあれば上記がきちんとそろって見ます。 記事の中にスペースだけの行があると、複数行改行したようなおかしな表示になります。 Or maybe not. ↑ここでは半角スペースだけの行と、Or maybe not. とだけ書いてありますが、通常の改行とも段落替えとも異なる空行ができているはずです。 == このページに解説されていない点について == もしもこのページでカバーされていない点に関して、どのようなスタイルを採用するのがよいか迷った場合には、既存の出版物を参考にしつつ、ノートのページや談話室などで提案や質問をしてみて下さい。 シンプルに書かれている記事を見かけたらぜひ「このページを編集」をクリックして、その記事の編集者たちがどうやってマークアップしているかを観察してみてください。そのまま変更せずに閉じてしまっても良いですが、できれば他の記事などを参考にマークアップに改良を加えてみてください。どんなによく書けている記事でも、より良いスタイルに持っていけたり、読みやすくしたりすることができるはずです。 == 凝ってもしょうがない Don't get fancy == マークアップにそれほど凝らないほうが、あなたやあなたの後の人には書きやすいものです。ここで説明されているものであっても、入力したものがちゃんと表示される保証があるとは考えないでください。 情報を、実用的で包括的な方法で表示するために必要な分以上のマークアップをしないことが、ウィキブックスを表示しやすく、編集したり記事を加えたりしやすくします。使いやすい百科事典というのが第一の目標ですが、楽に編集できたり手入れできたりすることはそれに次ぐ重要な目標です。 特にここで言いたいのは、HTMLマークアップを控えめに、理由のある時だけ使ってもらいたいということです。 == その他のご案内 == 投稿また編集する前に、これらの記事を読み、理解しておくことをお奨めします。 ''すでに記事の編集に慣れた方でも、これらの記事は常に更新されていますので、いつも参照するようにしてください。'' * [[{{SITENAME}}:ウィキブックスへようこそ]]は{{SITENAME}}の世界への簡単なイントロダクションです。 * [[{{SITENAME}}:基本方針とガイドライン]]には記事の書き方ではなく、{{SITENAME}}の方針がリストアップされています。 * [[w:Wikipedia:ページの編集は大胆に]] には記事を更新する時の規則が明示されています。 * [[{{SITENAME}}:記事名の付け方]]には、新しく記事を作成する際にどのような記事名にするかが記されています。 * [[{{SITENAME}}:編集の仕方]] は編集のする際の基本的なマニュアルです。どのようなマークアップで強調表記をしたり、リンクをしたりするのか、といったことが解説されています。 5d4ztvi0pvmnlx57no75rru897thnzy ウィキペディアの書き方/入門編/書いてみよう/加筆編 0 1852 305034 301883 2026-10-22T09:41:00Z Jcb 92857 305034 wikitext text/x-wiki {{書き方入門編Nav}} さて、ウィキペディアがどういうサイトなのかは、大体わかっていただけたでしょうか?  では、さっそく記事を書いてみましょう。 ……といっても、いきなり新しい記事を書くのは、緊張するものです。まずは、他の記事に加筆してみましょう。新しい記事を書く方法は、次の章でご紹介しますので、ご安心を。 [[Image:Bleistift1.jpg|250px|right]] == 項目の選び方 == ウィキペディアに相応しい項目とはどんなものであるか?これには様々な意見があります。[[w:百科事典|百科事典]]とは、森羅万象の物事を説明するものだからです。 [[w:ブリタニカ百科事典|ブリタニカ百科事典]]などのような、紙の百科事典にあるような項目から書かれるべきだという人もいれば、むしろ紙の事典には書かれないようなこと([[w:サブカルチャー|サブカルチャー]]や特定分野の専門用語など)こそしっかり書くべきだという人もいます。ただ、今の日本語版では、メインカルチャーの記事を執筆する人は大変不足しています。その分野で活動する人はほぼ間違いなく、歓迎されるでしょう。 とはいっても、そんなに難しく考えなくても構いません。最初ですから趣味などで得た知識など、まずは自分に身近な分野から手を出してみましょう。ウィキペディアには、数学や科学、哲学、文学、文化などに関わる一見難しそうな記事はもちろん、国や市町村、観光地、食べ物、人物、スポーツ、音楽、パソコンや家電などの電気製品、鉄道、アニメ・ゲームに至るまで、沢山の項目があります。この本では、(どんな項目であれ)「百科事典的な内容」として文章を書くための道しるべを示します。 == 草取り == '''草取り'''とは、本を作るときでいう[[w:校正|校正]]の作業です。具体的には、 * 文章の内容や表記を整える作業  * ウィキペディア特有のリンク貼りやカテゴリ分類などのメンテナンス作業 の二つに分かれます。地味な作業ですが、Wikiのシステムに慣れるには打ってつけですし、誰でも気軽にできる編集でもあります。 文章の内容や表記を整える作業は、とくにウィキペディアに限ったことではなく、一般の文章の校正と特に変わりません。具体的には、 * 固有名詞の表記(漢字や読み仮名の間違い)、年代などのミスの訂正 * 文章をなめらかに読めるように直す:てにをはなどの訂正や重複のある文章の再編集 * 表記法の統一:[[w:Wikipedia:スタイルマニュアル|スタイルマニュアル]]に沿った表記に項目全体を修正します。 ** これには文体の統一・使用する漢字の統一・かっこなどの[[w:約物|約物]]の統一などがあります。 ウィキペディア特有のリンク貼りやカテゴリ分類などのメンテナンス作業には次のようなものがあります。これは造語で「ウィキ化」(Wikify) とも呼ばれます。ウィキ化はとくに他のページへのリンクをおくことを指す用語ですが、マークアップ全般について使われる場合もあるようです。 * ウィキマークアップの体裁を整える。強調の付加や除去、マークアップ時のミスの修正 * ウィキマークアップを追加し、適切な項目へとリンクする * <!--[[w:Wikipedia:言語間リンク|言語間リンク]]の付加--><!--ウィキデータ移行のため--> * 適切な[[w:Wikipedia:カテゴリ|カテゴリ]]をつける、カテゴリの読み([[ソートキー]])をつける などがあります。今は意味の分からない言葉も沢山出てきたかもしれませんが、あまり気にすることはありません。とりあえず、草取り作業はすべての原点であり、大切な作業であることは頭に置いておいて下さい。 == プチ加筆 == 知っていることを足してみましょう。生没年月日が抜けている人物記事や、歴史や背景、その後の時代への影響がまだ書かれていない記事も多いです。また、説明が尻切れトンボになってしまっている記事などもあるでしょう。作品リストなどが付いているときには、重要な作品が抜け落ちていることもあります。<!--市町村記事など、テンプレートを使っている記事の空欄を埋めることも立派な加筆です。地元の項目などで、空欄があればぜひ挑戦してみてください--> そういう記事を探す一番簡単な方法は、[[w:Category:サブスタブ|サブスタブにカテゴライズされている記事]]を見ることです。このカテゴリには、他のウィキペディアンたちが「定義しか書かれていない」と思った項目が集められています。学生時代にかじった項目や、興味を持っている項目があればぜひ、開いてみてください。その項目の初学者が概念を理解するために、必要なのに不足している情報にきっと気付くことでしょう。もしかすると、定義そのものが正確でなかったり、上手く説明できていないこともあるかもしれません。'''[[w:WP:BB|編集は大胆に!]]'''どんどん記述を足していってください。自信があるなら、元の記事の原形を留めておく必要すらありません。<!--「大きく削ったときには、ノートで理由説明しよう」ってのは、「コミュニティーとしてのウィキペディア」で書く方がいいのかなぁ?-->(ただ、著作権をはじめとする権利にだけは注意してくださいね。ウィキペディアに限らず、ウィキプロジェクトは権利侵害には大変慎重な姿勢を取っています。どこかのウェブページのコピーなんてのはダメです) ここで重要な事は、[[w:Wikipedia:出典を明記する|出典を明記する]]ことです。その事柄が本当に正しいのか検証する人にとって、出典が明記されているという事は非常に助かることです。ウィキペディアでは書籍・ウェブサイトなどの外部の情報をもとに記事にしていくことをとても重要視しています。なぜなら、ウィキペディアの記事には、'''中立性'''・'''客観性'''を保ち、「一番最初に記事を書き始めた編集者の主観的な考えを書く百科サイトではない」という目的のもとで毎日世界中の記事が立ち上げられ編集を重ねています。ですから、もしもプチ加筆をしたいなと思った方は、ご自身の詳しい分野の中で出典の明記が無い・少ない記事には付け足してみてください。詳しくは、[[#出典を付けてみる]]をご覧ください。 == 出典を付けてみる == 出典を明記する事はウィキペディアにおいてとても重要な事です。もちろん道を示してくれた先人へ敬意を示すという意味もありますが、記事の信ぴょう性を確保するという意味合いもあります。ウィキペディアはそれ自体が信用性を持っているわけではありません。そのため、書き込まれている内容が事実であることを確認するためにも出典が必要なのです。 出典の示し方は学術分野や学会、厳密には個人によっても違いますが、「'''参考文献を列挙する方法'''」(ジェネラル・リファレンス)と「'''本文の中に注釈を入れる方法'''」(インライン・サイテーション)など様々な方法があり、それぞれに利点があります。両者を折衷した「'''個別参照法'''」というものもあり、「ハーバード方式」「バンクーバー方式」などが有名です。専門家の方はそれぞれのスタイルで行われればよいと思いますが、ここではウィキペディアでよく使われる個別参照法について説明します。 ウィキペディアでよく使われる個別参照法では、本文中に引用順に文献番号を振り、最後に「脚注」「参考文献」節を設けます。「脚注」節には引用順に参照箇所が表示され、「参考文献」節には書誌情報を箇条書きで列挙します。 出典の明記にはHTMLタグやテンプレートを多く使います。本節ではこれらについても説明します。慣れればそれほど難しいものではありません。焦らずに気長に取り組みましょう。 === 書誌情報 === 参考文献に関する情報です。書籍であれば'''著者・書名・発行所・刊行年'''(あればISBNコード)を明記します。雑誌や紀要の場合は巻・号数なども明記します。 例えば、このように明記します。 ; 書籍 : 著者 『題名』 X社、20XX年。 {{ISBN|978-4123456789}} ; 雑誌 : 著者 「記事」『雑誌の名前』X号、XX社、20XX年。 多くの場合「参考文献」節には書籍や雑誌に関する情報を置き、新聞やウェブサイトに関する情報は脚注に入れ込んでしまいます。 [[w:WP:CITEHOW|こちら]]に詳しい書式が紹介されていますので、必ず事前に参照しておきましょう。 === 脚注と文献番号 === 本文に文献番号をふるためには、引用箇所を明記したHTMLタグ(Refタグ)を番号を振りたい箇所に貼り付けていきます。「脚注」節には「<nowiki><references/></nowiki>」または「<nowiki>{{Reflist}}</nowiki>」というタグを置いておきます。 ==== Refタグの説明と使い方 ==== 「<nowiki><ref></nowiki>」と「<nowiki></ref></nowiki>」で囲まれた部分に引用箇所に関する情報を詰め込みます。 「Ref name」というタグもあります。一つの箇所を数か所で引用するためのタグです。実際にはこちらの方がよく使われます。 こちらは最初の箇所を「<nowiki><ref name="XX">と</ref></nowiki>」というようにします。「XX」の所には適当なタイトルをつけます。それ以降の箇所には「<nowiki><ref name="XX"/></nowiki>」を挿入していきます。 ==== 引用箇所の明記 ==== Refタグが「皮」だとすると、こちらは「中身」にあたります。大抵はまず「中身」を作り、貼り付ける前にRefタグで「包む」のが普通です。 ; 書籍・雑誌 どの資料のどこから引用したのかを明記します。 例えば、以下のように表記します。 : 著書 『題名』 X社、20XX年、XXX頁。 : 著者 「記事」『雑誌の名前』X号、XX社、20XX年、XXX-XXX頁。 : 著者(20XX)、p.XX ; 新聞・ウェブ 新聞なら'''見出し・発行所・記事の日付・閲覧日'''(あれば著者、URLも)、ウェブサイトなら'''URL・タイトル・発行所・(掲載日)・閲覧日'''(あれば著者)を明記します。「[[Template:Cite news|Cite news]]」「[[Template:Cite web|Cite web]]」というテンプレートを使うと便利です。 2つのテンプレートは似ていて、どちらを使うのが最適なのか分からない場合は、「Cite news」は政治・経済・事件・事故など国内外の出来事を指し示す内容の時、「Cite web」は芸能・スポーツ・文化(例えば、ゲームやアニメなど一般的に身近なカルチャー)などでこのテンプレートを使うことが多いです。 テンプレートの中身の基本は、「|」(パイプ ※)「引数」(示したい内容の文字列)「=」の後に情報を入力していきます。(※「|」は、一般的にバーティカルバーなどと呼ばれるが、ウィキペディアではパイプと呼ぶ。) * 「Cite news」の使用例: <nowiki>{{Cite news |url=〇〇.jp |title=ウィキ花子さんが〇△賞を受賞しました |newspaper=ウィキウィキ新聞 |date=2021-11-15 |author=ウィキ太郎 |accessdate=2021-11-22}}</nowiki> * 「Cite web」の使用例: <nowiki>{{Cite web |url=〇〇.jp |title=ウィキ子選手が〇△大会で優勝しました |publisher=✕✕✕スポーツ |date=2021-05-15 |accessdate=2021-05-20 }}</nowiki> ※日付は「20XX-01-11」のように記入する。 入力すると、このように表示されます。 :ウィキ太郎 (2021年11月15日). “ウィキ花子さんが〇△賞を受賞しました”. ウィキウィキ新聞 2021年11月22日閲覧。 :“ウィキ子選手が〇△大会で優勝しました”. ✕✕✕スポーツ (2021年5月15日). 2021年5月20日閲覧。 出典の「|~~=」は順序が曖昧にしか決まっていないので、様々な記事を閲覧しているとよくバラバラな出典の記載順序に出会います。 もしも出典のタイトルやURLなどがバラバラな記事を校正したい場合は、「これは細部の編集です」にチェックを入れ、出来るだけ「変更を公開」を押す回数を減らせるように、「プレビューを実行」をして、何度か出来上がりを確認してから、最終的に変更を公開しましょう。 === 出典の付け方の例 === 以下は出典の使い方の例です。段落分けや表示の仕方などが実際のウィキペディアのページとは異なる部分もありますが、おおむねこういった感じです。出典は慣れが大事なので、繰り返して慣れていくことが重要です。 ――― 以下は例文 ――― '''ジョン・ホゲホゲ・スミス'''(英:John hogehoge Smith、19XX年1月1日 - )は、アメリカ合衆国出身のウィキペディア研究者。JAWP研究所所長<ref>ジョン・ホゲホゲ・スミス 『君にもわかるウィキペディア』 JAWP社、2003年、12頁。</ref>。 ; 出生 19XX年にカリフォルニア州サンフランシスコに生まれる<ref name="Smith25">ジョン・ホゲホゲ・スミス 『君にもわかるウィキペディア』 JAWP社、2003年、25頁。</ref>。19XX年に飛び級で<ref name="Tanaka">田中太郎 「スミス新所長に聞く-これからのJAWP研究所」『ウィキペディア・ジャーナル』3号、ウィキと日本社、2002年、32頁。</ref>カリフォルニア大学バークレー校に入学<ref name="Smith25"/>。卒業後はスタンフォード大学においてウィキペディアについて研究<ref name="Smith25"/>。2000年からは東京のJAWP研究所に招かれて来日。拠点を日本に移した<ref name="Smith25"/>。 ; 人物 * 日系3世である<ref name="Tanaka"/>。「ホゲホゲ」は日本語のメタ構文変数に由来する<ref>“スミス所長、日本への思いを語る”. 毎朝新聞社. (2003年2月16日) 2003年2月17日閲覧。</ref>。 * イーグルスの大ファンである<ref name="Tanaka"/>。 ; 脚注 <references/> ; 参考文献 * ジョン・ホゲホゲ・スミス 『君にもわかるウィキペディア』 JAWP社、2003年 {{ISBN|978-4123456789}}。 * 田中太郎 「スミス新所長に聞く-これからのJAWP研究所」『ウィキペディア・ジャーナル』3号、ウィキと日本社、2002年。 ――― 例文ここまで ――― === 関連文書 === * [[w:Wikipedia:出典を明記する|Wikipedia:出典を明記する]] * [[w:Help:脚注|Help:脚注]] == 画像を貼ってみる == また、関連する画像を貼ることも、記事の充実のための大切な加筆になります。基本的には<nowiki>[[画像:貼りたいファイル名|thumb|画像の説明]]</nowiki>という文面で、画像を表示させることができます。この文面(タグ)について、詳しい説明は、[[w:Wikipedia:画像の表示]]を見てください。 注意点をいくつか挙げますと、 * 出典と、著作権・肖像権やライセンスに注意 - 出典やライセンスが不明な画像は削除されます。日本語版ウィキペディアでは、GFDLまたはCC BY-SA並びにこれらに準ずるフリーライセンスもしくはPD(著作権放棄・著作権保護期間満了)の画像しかアップロードできません(後述)<!--← commonsにあるのは全部いい,という話が井戸端にありましたので変更--> * ウィキペディアでは、画像を表示するのにHTMLタグは使えません。他のサイトにある画像をそのまま表示させるということはできませんので、注意してください。 * 必ず、プレビュー機能を使って、どのように表示されるか確認してください。寸法の大きな画像でサイズ指定やサムネイル指定を忘れると、巨大な画像が表示されることになります。 === コモンズにある画像を表示する === [[Image:BritNatural History Museum2.jpg|thumb|コモンズから呼び出したファイルです]] 表示できるのは、日本語版にある画像だけではありません。「[[w:ウィキメディアコモンズ|ウィキメディアコモンズ]](WikimediaCommons, 通称コモンズ)」にある画像も、ウィキペディア内にあるのと同じ感覚でそのまま表示させることができます。 掲載の仕方はウィキペディア内に画像があるのと同じく、'''<nowiki>[[画像:貼りたいファイル名|thumb|画像の説明]]</nowiki>'''といったタグを書くことになります。HTMLを使ってホームページを作ったことのある方は、「え~と、ディレクトリを指定しないといけないから」と思うかもしれませんが、ウィキペディアの中では画像名だけで大丈夫です。だまされたと思ってやってみてください。<!--コモンズ内の著作権テンプレの解説が欲しい・・・別ページの方がいいかもしれないけど--><!--よくわかりませんが,コモンズですべき説明では?そういうことではなく?--> === 画像をアップロードする === ウィキペディアやコモンズに欲しい画像がない場合には、自分の描いた絵や自分で撮った写真、あるいは外部サイトから持ってきた[[w:Wikipedia:パブリックドメインの資源|パブリックドメインなファイル]]をアップロードすることもできます。まずは、ロゴの近くにある「アップロード」という文字をクリックしてください(表示されていない場合には、[[w:特別:Upload]]を利用してください)。 アップロード用の画面が表示されたら、まずはそこに書いてある注意を一読してください。著作権やファイルの種類についての注意など、大切なことが書かれています。同意できるようなら、"Browse" あるいは "参照" というボタンを押して、アップロードしたい画像を選択してください。 アップロードしたい画像のファイル名を変えたい場合には「掲載するファイル名」欄に新しいファイル名を記入してください。アップロード後にファイル名を変更することはできないので[[w:Wikipedia:画像利用の方針#画像のファイル名]]を参考にして慎重に決めてください。 次に、「ファイルの概要」欄に必要事項を記入してください。まず次の2点は必ず記述する必要があります: ; 画像の出典 : その画像の出所を記しましょう。自分が撮影した写真や作成した画像なら「<nowiki>~~~</nowiki>が撮影(作成)。」など、外部のサイトにあった画像ならURLを書きましょう。ただし、外部のサイトから持ち込む場合はそのファイルがGFDLかPDで利用できるものでなければなりません。"All rights reserved." とあるサイトから、勝手に画像を持ってきてはいけません。 ; 画像のライセンス : 「<nowiki>{{</nowiki>[[w:Template:GFDL|GFDL]]}}」などと[[w:Wikipedia:画像の著作権表示タグ|コピーライト・タグ]]を記入します。日本語版で使えるライセンスは[[w:GFDL]]と[[w:パブリックドメイン]] (PD) の2種類がありますが、日本法では著作権の一部([[w:著作者人格権|著作者人格権]])を手放すことができないという議論があり、自分で作った画像を投稿するときは、GFDLとするウィキペディアンがほとんどです。一方、たとえばNASAやアメリカ軍のサイトにある画像([[w:アメリカ合衆国政府の著作物]])などで、パブリックドメインなファイルをアップロードする場合は、「<nowiki>{{</nowiki>[[w:Template:PD|PD]]}}(コモンズの場合は「<nowiki>{{</nowiki>[[commons:Template:PD-USGov-NASA|PD-USGov-NASA]]}}など)」と書くことになります。 以上の出典かライセンスかのいずれかでも'''欠けている場合'''、その画像は基本的には'''削除される'''こととなりますのでどうか注意して下さい。 このほか、画像についての簡単な説明もあるとなおいいでしょう。たとえば、自分で撮った写真であれば、撮影場所や日時、撮影対象についての簡単な説明(「○○県○○市にある○○の写真」など)があると、表示するときのキャプションが付けやすくなるなどの利点が生まれます。 :&#x266f; 店舗の内部の画像や、個人や博物館の収蔵物を撮る場合には、トラブルを避けるために必ず許可を取ってから撮影し、「○○の許可を取って撮影」と明記してください。 なお、現在は日本語版に画像をアップロードするやり方から、ウィキメディアコモンズに画像をアップロードするという方向に変わりつつあります。コモンズに画像をアップロードすることにより、他言語版や他のウィキメディアプロジェクトとも画像を共有することができます。日本語でのファイル名が非推奨だったり<!--、カテゴリを必ずつけないといけなかったり-->という決まりがあるので、今回はウィキペディア本体へのアップロードを説明しましたが、慣れてきたらぜひコモンズへのアップロードも検討してみてください。[[w:Wikipedia:コモンズキャンペーン|ウィキペディアにある説明ページ]]が参考になるでしょう。 以下は、コモンズに画像をアップロードするときの模範例ですが、ウィキペディアでも同じ形で書けば必要な情報が書きやすいでしょう。 <div style="border:1px solid #aaa; padding:0.5em"> : '''<tt><nowiki>{{Information|</nowiki></tt>''' : '''<tt>|Description=</tt>''' 画像についての簡単な説明を記してください。 : '''<tt>|Source=</tt>''' 出典元を書いてください。ネット上で有ればURLやそのウェブサイトのURLを明らかにしましょう。古い刊行物などで著作権の切れた画像をスキャンした場合はその刊行物の名前を記してください。自分が著作権保有者である場合は、'''<tt><nowiki>~~~</nowiki>'s file</tt>'''と書いておくと良いでしょう。<!-- hoge's file って英語的にはなんとなく変な気がする…….意味は通じるだろうけど,洗練されてないというか--> : '''<tt>|Date=</tt>''' ファイルの作成および発表日を記入しましょう。 : '''<tt>|Author=</tt>''' 制作者の名前を書きましょう。あなたが制作者である場合は'''<tt><nowiki>~~~</nowiki></tt>'''と書いてください。 : '''<tt>|Permission=</tt>''' あなたが著作権保有者である場合はあなたが選択したライセンスを書いてください(テンプレートでは有りません)。外部のファイルである場合は利用条件を書いてください(ただし、外部の条件が長文に渡る場合は簡単な説明文とリンクでかまいません)。 : '''<tt>|other_versions =</tt>''' コモンズ上にこのファイルから派生したファイルがあるなら書きましょう(例: この画像の○○の部分を拡大した画像)。 : '''<tt>}}</tt>''' '''<tt><nowiki>{{<コピーライト・タグ>}}</nowiki></tt>''' [[w:Wikipedia:画像の著作権表示タグ|コピーライト・タグ]]を貼ってください。日本語版であれば、<nowiki>{{PD}} か {{GFDL}}</nowiki> のいずれかです。 </div> <!--他言語版の全く同一の画像をja:にもってくるのは非推奨では……それはcommonsのがいいでしょう.というわけでいったんコメントアウトします. === 他言語版の画像を移入する === --> <!--他の言語版では、フェアユースとかCCもあるから気をつけてね~という説明あたりを書く。あと、移入の時には、相互リンクを張るってことと、出典元を明記するという注意も--> <!-- ウィキペディアは、多言語で展開するプロジェクトです。日本語版にもコモンズにもない画像が欲しい場合には、他国語版のウィキペディアなどから画像を持ってくることもできます。 # 画像が欲しい項目の右端にある他の言語の項目に飛んでみる。(このときに別のウインドウで開けると便利です) # 気に入った画像があれば、その画像をクリック # 画像の上で右クリック。自分のPCにいったん保存する。 # 今度は日本語版にアップロード。 # 「ファイルの概要」欄には、「<nowiki>[[:en:Image:ファイル名]]より。{{GFDL}}</nowiki>」などと書き、同時に元の画像とこの画像ページの間で[[w:Wikipedia:言語間リンク|言語間リンク]]を貼る。(こうしておけば、元の画像が著作権違反などの理由で削除になったときに、情報をもらいやすくなります) :: また、同時に元の言語版の情報(作成者や撮影場所の情報、編集した人がいればその情報など)もコピーしておきましょう。 --> 日本語版では、PDとGFDL、CC BY-SA、あるいはそれらに準ずるフリーライセンスの<!--ライセンスの ← PDはライセンスじゃない,というツッコミ回避のためにいちおうコメントアウト-->画像しか使えませんが、や[[w:フェアユース|フェアユース]] (Fairuse) など、他のライセンスの画像を使える言語版/姉妹プロジェクトもあります。日本語版ウィキペディアに適合しないライセンスのものを日本語版にアップロードしてしまうと削除されますので、注意しましょう。ウィキメディアコモンズでは、CCはOK, Fairuseは不可となっています。つまり、英語版で Fairuse となっている画像を日本語版で表示することは、現在は残念ながらできません。 === ファイル名を変えたくなったら === 通常の記事と違い、画像ページは移動機能を使った移動ができません。そのため、画像のファイル名を変えるためには、保存して別名で再びアップロードしなくてはなりません。単純な綴りの間違いだけでなく、ファイル名から内容を類推できないものについてもファイル名を変更したほうがよいでしょう。ファイル名変更により重複した画像は、その画像ページに投稿者自身で <nowiki>{{即時削除|全般8|[[ファイル名.jpg]]と重複}}</nowiki> などと書いておけば、管理者により削除されます。 === 画像以外は? === 以上では画像について説明してきましたが、音声ファイルやGIFアニメ、動画など他のメディアファイルについても、基本的には同様です(出典とライセンスを忘れないで下さい)。詳しくは、ウィキペディアの[[w:Wikipedia:マルチメディアFAQ]]などを見てみて下さい。 == 翻訳 == もう一つ、加筆の方法としては他言語版から情報を持って来るという方法もあります。ウィキペディアロゴマークの下の方に、次のようなボックスに入った文字列があればクリックしてみましょう。 {| style="border:1px solid #777; padding:.5em; font-size:smaller; color:#000; background:#fff" | *Deutsch *English *Français |} Englishなら英語版の、Françaisならフランス語版の該当ページに行くことができます。ウィキペディアは、GFDLとCC BY-SAに従って書かれているので、要約欄にさえ注意すれば、他言語版のページをコピーしたり、翻訳しても構いません。ただし、'''要約欄への記載を怠る'''と、せっかくの翻訳がGFDLとCC BY-SAの要件を満たしていないとして'''削除される'''こともありえますので、他言語版のページを翻訳しようと思った場合は、まずは一度'''[[w:Wikipedia:翻訳FAQ]]'''に目を通して下さい。 <!-- すみませんが具体例についてはコメントアウトします.翻訳FAQ必読ってことで…….正直,翻訳は安易におすすめできるものではないと思います.要約欄記入ミスという些細な理由で削除されてしまったときのダメージは,特に初心者には非常に大きいと思いますので,ある程度しっかりと理解した上でないと,やらない方がいいと思います. その際には要約欄に、 英語版のHarley-Davidson 21:18, 30 May 2005 UTCを翻訳。著者:…… というように、書いてください。この場合は、「英語版のハーレーダビッドソンの記事([[w:en:Harley-Davidson]])の21:18, 30 May 2005 (UTC) の版を元に翻訳した。主要な著者は……」という意味になります。項目名は向こうの記事名を、いつの版かというのは、英語版なら「history」、他の言語版であればその言語でhistoryに対応する言葉が書かれているタブをクリックして、翻訳する版の日付を確認して下さい。タイムゾーンは、オプションで設定していなければ[[w:協定世界時|UTC]]なのでそのように、JSTなどに変えていればそれを書いて下さい。 --> {{stub}} [[Category:ウィキペディアの書き方|にゅうもん02]] 46nzwzsih8oahelpsdurxocetm3jrsd ウィキペディアの書き方/入門編/資料の探し方 0 2060 305035 296957 2026-10-22T09:41:18Z Jcb 92857 305035 wikitext text/x-wiki [[Image:Libri books2.jpg|right|500px]] {{書き方入門編Nav}} ==検索エンジンを利用する== インターネット上での情報収集は、ウィキペディアンたちにとってはもっとも身近な手段の一つといえるでしょう。検索窓に単語を入れるだけで欲しい情報が手に入るインターネットは、とても便利なツールです。 ただ、便利な反面、気をつけなければいけないこともあります。 *よい面:オンラインには沢山のサイトがあります。本屋で選んだ書籍を読むよりもよほど面白い知識が詰まったサイトも多いでしょう。あまりメジャーではないものや最新情報を探すのには、格好のツールであるともいえます。 *悪い面:オンラインでは誰もが情報の発信者となれることが魅力です。けれども、これは裏を返せば、校正や査読を経ていない、いわば正確性の怪しい情報が飛び交っていると言うことにもなります。 ===ディレクトリ型とロボット型エンジン=== [[w:検索エンジン|検索エンジン]]には、ディレクトリ型とロボット型の2種類の検索エンジンがあります。ディレクトリ型は人の手でサイト情報を入力する検索エンジンで、ロボット型は、クローラーといわれるプログラムが自動的にサイト情報を分類するものです。それぞれに長所・短所があるのでうまく使い分ける必要がありますが、現在では大手の検索エンジンはどちらも併用しているものが多くなっています。 *ディレクトリ型 *:人の手で更新するので、情報量の少なさはありますが、公式サイトなど確実な情報にたどり着ける確率は高くなります。大手の検索エンジンではなく、特定のジャンルについて調べごとをするときに使う機会が多いかもしれません。たとえば、歴史であったりファッションであったりといった特定のジャンルに特化した検索エンジンがあります。 *ロボット型 *:検索数の多さが、なんといってもロボット型エンジンの長所です。ただ、その反面で、ロボットが情報を収集するために、あまり情報のないサイトや、全く関係ないサイトが多く引っかかるという短所もあります。 ====Google==== インターネット上で何かを質問する。「ググる」(Googleで検索することの造語)と一言で返事が返ってくる。Googleはインターネット上で検索をするときに非常に強力なツールになります。 基本の使い方は、[https://www.google.com https://www.google.com]にアクセスして、そこにある検索窓に調べたい単語を入れるだけですが、ここではそれより少し便利なテクニックを覚えていってください。 ====引用符==== 「夏の思い出」など、本のタイトルや決まり文句、固有名詞などを検索したいときに活用できるテクニックです。普通の検索では、「夏」「思い出」という二つの単語が両方出てくるページを探してくれますが、'''"夏の思い出"'''とすれば、夏の思い出 と続けて出て来る場合のみを検索することができます。 ===JWORD=== 上に書いたような検索エンジンは、一つ一つの検索エンジンで順番に調べて行かなくてはなりません。しかしながら、それを一発で検索してしまうサイトもあります。例えば、[https://www.jword.jp/ JWord]を使って検索をしてみましょう。JWordは、いろいろな検索サイト(Yahoo・Excite・BIGLOBE・Fresheye・MSN・Infoseek・goo)を比較しながら検索することができます。JWordプラグインを使うと、インターネットエクスプローラーから、アドレスバーに検索したい文字列を入力して、エンターキーを押すと、比較検索ができます。また、登録されている企業・サイトは、サイト名を入力すると、自動的にそのサイトへジャンプします。 *[http://search.jword.jp/cns.dll?type=sb&fm=11&agent=&partner=AP&lang=euc&name=%A5%A6%A5%A3%A5%AD%A5%E1%A5%C7%A5%A3%A5%A2%BA%E2%C3%C4&sbox11_5=%B8%A1%BA%F7 JWord検索結果 「ウィキメディア財団」] *[http://search.jword.jp/cns.dll?type=sb&fm=2&agent=&partner=AP&lang=euc&name=%A5%A6%A5%A3%A5%AD%A5%DA%A5%C7%A5%A3%A5%A2&bypass=&selsecategory=&service=jwd&style=1 JWord検索結果 「ウィキペディア」] ==図書館を利用する== 図書館には、本を貸し出すのとは別に、''資料や情報を収集する''という重要な役割があります。地域の歴史や文化、特定の企業や学校の歴史、あるいはリクエストの少ない古典文学全集などは、閉架書庫や調査研究室など、一般の利用者からは少し手の届きにくいところにおいてあるのが普通です。 図書館はもちろん、皆にオープンにしてある資料を読むだけでも沢山の情報を集めることができますが、閉架書庫や調査研究室を利用すれば、百科事典を書くのに相応しい沢山の情報を得ることができます。初めは少し、敷居が高いと感じるかもしれませんが、ぜひもうワンランク上の図書館活用法を覚えましょう。 ===閉架書庫にある本の探し方=== 貴重な本の損傷を防ぐために、本棚ではなく奥の本棚に置いてある事があります。こういった本を閉架図書といいます。 閉架図書は本棚を見てもわからないので、インターネットや、図書館の中において、図書蔵書検索などの調べる端末等がある場合、それを使って調べてみるのも良いでしょう。「ジャンル別」「出版年検索」も利用してみると良いでしょう。 ===調査研究室=== 中央図書館や大学図書館など、大きな図書館に行けば、オープンにしてある空間とは別に、百科事典や専門辞書、年鑑などが固めておいてある空間があります。一般に、そこには専任の「司書」と呼ばれる職員がいて、資料を探す手助けをしてもらうことができます。 入りにくい雰囲気のところが多く、最初は緊張するかもしれませんが、勇気を出して入ってみましょう。 ===リファレンスサービスの上手な使い方=== 図書館司書は、資料を探す専門家ではありますが、ありとあらゆる分野に精通しているわけではありません。ですので、調べたい事柄についていかにうまくヒントを出すかが重要となります。調べたいことを明確にするのはもちろんですが *何のために *何のジャンルについて などを明白にしておく必要があります。外国の人名や地名などについては、カタカナでの音だけではなくアルファベットや原語での綴りも調べておくと調査が楽になります。 === その場にない本を読む === 大抵の図書館では、資料のリクエストという制度があります。どういうサービスかというと、その図書館にはない資料を近隣の市の図書館などから取り寄せてくれたり、新しく購入してくれたりするサービスです。少し時間はかかりますが、貴重な資料も読むことができますので、ぜひ利用してみましょう。 ==組み合わせ== ある本がこの世に存在するのかどうか、あるいはまだ流通している本なのかどうかなどをネット上で調べる方法があるのでご紹介しておきます。 *[https://www.books.or.jp/ Books.or.jp] - 日本国内で出版され、かつ流通している本かどうかを調べるためのサービスです。つまり、絶版本を本屋で探すという時間の無駄を省くことが出来ます。 *<!--[http://webcat.nii.ac.jp/ NACSIS Webcat] - 大学図書館の所蔵資料のデータベースを横断的に検索できるシステム。--><!--リンク切れのため--> == データベースを利用する == ネット上には書籍や雑誌、学術論文などの情報をまとめたデータベースが存在します。中には有料のものもありますが、使用するだけなら無料のものもあります。ネット上で参照できる資料も多く、こうした資料を用いれば手軽に記事のグレードを上げる事ができます。様々なものがありますが、ここでは知名度もあり、無料で利用できるCiNiiと国立国会図書館のサービスを紹介します。 === CiNii === 国立情報学研究所が運営する学術情報データベースです。「'''CiNii Articles'''」、「'''CiNii Books'''」、「'''CiNii Dissertations'''」の3つのデータベースがあり、それぞれ学術論文、大学図書館の書籍、博士論文を検索できます。一部閲覧が有料の論文もありますが、利用自体は無料です。 * [http://ci.nii.ac.jp/ CiNii Articles - 日本の論文をさがす] * [https://ci.nii.ac.jp/books/ CiNii Books - 大学図書館の本をさがす] * [http://ci.nii.ac.jp/d/ CiNii Dissertations - 日本の博士論文をさがす] === 国立国会図書館 === 国立国会図書館のサイト([http://www.ndl.go.jp/index.html こちら])では、同図書館に収蔵されている様々な資料を検索できます。多くのサービスがありますが、以下によく使われる機能を挙げておきます。また、国立図書館にいけばいくつかの有料データベースが無料で利用可能です。こちらも覚えておきましょう。 *国立国会図書館サーチ メインページから利用できる検索機能です。キーワードに関係する書籍や記事・論文などを検索できます。 *国立国会図書館デジタルコレクション 古典籍や古い新聞、政府刊行物、科学映像などのデジタル資料を検索できるサービスです。<!--それらの中からインターネットで閲覧可能な近代の資料を集めた「近代デジタルライブラリー」というサービスもあります。--><!--統合のため--> ==参考文献== *前島重方 他監修『図書館概論』(樹村房){{ISBN|4-88367-001-5}} *長澤雅男 著『情報と文献の探索第3版』(丸善){{ISBN|4-621-03943}} == 外部リンク == *[http://www.ndl.go.jp/jp/data/theme.html 国立国会図書館テーマ別調べ方案内] [[Category:ウィキペディアの書き方|にゅうもん04]] 57s8r1n1yx9eclujpqd6o3ua7oinl4l 解析力学 0 2074 305021 301890 2026-10-22T09:28:09Z Jcb 92857 305021 wikitext text/x-wiki {{Pathnav|メインページ|自然科学|物理学|frame=1|small=1}} 本書を読むための前提知識は、基本的な解析学の知識で十分である。 * [[解析力学 はじめに|はじめに]] == 質点系の力学 == === ニュートンの運動の法則 === ;第一法則 :ある座標系が存在し、その座標系では、すべての力が働いていない質点は、静止するか直線上を一定の速度で運動をする(これを慣性系という)。 ;第二法則 :慣性系において、質点に加わる力は質点の質量と加速度の積に等しい。 ;第三法則 :二つの質点1,2が互いに力を及ぼし合うとき、質点1が質点2に作用する力と、質点2が質点1に作用する力とは、大きさが等しく逆向きである。 <math>N</math> 個の質点の系を考える。この系の自由度は <math>3N</math> だから、その座標を <math>x_1,\dots, x_{3N}</math> と書く事が出来る。各 <math>i</math> について、第二法則は、 <math>m_i \ddot x_i = F_i </math> となる。ここで、関数 <math>U(x_1,\dots, x_{3N})</math> が存在して、 <math>F_i = -\frac{\partial U(x_1,\dots, x_{3N})}{\partial x_i}</math> と書く事が出来るとき、これを保存力という。質点系に保存力のみが働く場合、ラグランジアンを <math>L = \sum_i \frac{1}{2}m_i \dot {x_i}^2 - U </math> と定義すると、運動方程式は、 <math>\frac{d}{dt} \frac{\partial L}{\partial \dot x_i} - \frac{\partial L}{\partial x_i} = 0</math> と変形することが出来る。これをオイラー・ラグランジュ方程式という。この方程式の重要なことは、これが座標変換によって形を変えないということである。 実際に、<math>q_i = q_i(x,t)</math> のように座標変換するとき、 <math>\frac{dx_i}{dt} = \frac{dq_k}{dt}\frac{\partial x_i}{\partial q_k} + \frac{\partial x_i}{\partial t}</math> から、 <math>\frac{\partial \dot x_i}{\partial \dot q_k} = \frac{\partial x_i}{\partial q_k}</math> となる。また、 <math>\frac{d}{dt}\frac{\partial q_k}{\partial x_i} = \frac{\partial x_l}{dt}\frac{\partial}{\partial x_l}\left(\frac{\partial q_k}{\partial x_i}\right) = \frac{\partial}{\partial x_l}\left( \frac{dx_l}{dt} \frac{\partial q_k}{\partial x_l} \right) = \frac{\partial \dot q_k}{\partial x_l}</math> となる。従って、 <math>\begin{align} \frac{d}{dt} \frac{\partial L}{\partial \dot x_i} - \frac{\partial L}{\partial x_i} &= \frac{d}{dt}\left(\frac{\partial \dot q_k}{\partial \dot x_i}\frac{\partial L}{\partial \dot q_k}\right) - \frac{\partial L}{\partial x_i} \\ &= \frac{\partial \dot q_k}{\partial \dot x_i}\frac{d}{dt}\left(\frac{\partial L}{\partial \dot q_k}\right) + \frac{d}{dt}\left(\frac{\partial \dot q_k}{\partial \dot x_i}\right)\frac{\partial L}{\partial \dot q_k} - \frac{\partial q_k}{\partial x_i} \frac{\partial L}{\partial q_k} - \frac{\partial \dot q_k}{\partial x_i}\frac{\partial L}{\partial \dot q_k} \\ &= \frac{\partial q_k}{\partial x_i}\left[\frac{d}{dt} \frac{\partial L}{\partial \dot q_i} - \frac{\partial L}{\partial q_i}\right] \end{align}</math> ここで、<math>\det \left(\frac{\partial q_k}{\partial x_i}\right) \neq 0</math> ならば、線形方程式 <math>\frac{\partial q_k}{\partial x_i}\left[\frac{d}{dt} \frac{\partial L}{\partial \dot q_i} - \frac{\partial L}{\partial q_i}\right] = 0</math> を解いて、 <math>\frac{d}{dt} \frac{\partial L}{\partial \dot q_i} - \frac{\partial L}{\partial q_i} = 0</math> を得る。 == 変分原理 == オイラー・ラグランジュ方程式は変分原理からも導出することができる。 変分原理の簡単な例として、関数 <math>f(x) </math> を最小にする <math>x </math> について考えよう。<math>f(x) </math> が最小値を取るとき、<math>f'(x) = 0 </math> となるのだった。<math>f'(x) = 0 </math> となることは、<math>x </math> を微小量 <math>\delta x </math> だけ変化させたとき、<math>f(x) </math> の変化量 <math>\delta f := f(x+\delta x) - f(x) </math> は <math>\delta f = 0 </math> になるということである。これを一般化する。 汎函数<math>I[\boldsymbol{y}]</math>に対して始点<math>(a, \boldsymbol{y}_a)</math>と終点<math>(b, \boldsymbol{y}_b)</math>を固定したときに関数<math>f:x \to\boldsymbol{y}</math>を変化させたときの極値を考える。<math>\boldsymbol{y}</math>の微小変化に対する<math>I</math>の微小変化を'''変分'''という。 ここでは、簡単のため汎函数として1変数積分<math>I[\boldsymbol{y}]=\int_{a}^b F\left(x, \boldsymbol{y}, \frac{d\boldsymbol{y}}{dx}\right)dx</math>のみを考える。 各<math>y_i</math>の全微分を考えると変分は :<math>\delta{I}=\int_{a}^b \sum_{i} \left( \frac{\partial{F}}{\partial{y_i}} \delta y_i + \frac{\partial{y}}{\partial\left(\frac{dy_i}{dx}\right)}\delta\left(\frac{dy_i}{dx}\right) \right)dx=\left[ \sum_i \frac{\partial{F}}{\partial\left(\frac{dy_i}{dx}\right)} \delta y_i \right]_{x=a}^{x=b}+\int_a^b \sum_i \left( \frac{\partial{F}}{\partial{y_i}} - \frac{d}{dx}\left( \frac{\partial{F}}{\partial\left(\frac{dy_i}{dx}\right)} \right) \right)\delta y_i dx</math> と表される。 ここで1項目は境界条件で0となるので、<math>\delta I=0</math>となるためには :<math>\forall{i}, \frac{d}{dx}\left(\frac{\partial{F}}{\partial{y_i}}\right)-\frac{\partial{F}}{\partial\left(\frac{dy_i}{dx}\right)}=0</math> である。これを(数学的に)'''オイラーの方程式'''という。 オイラーの方程式の利用例を2つほど紹介しよう。 ①最短曲線 :<math>\mathbb{R}^3</math>中の定点<math>\mathrm{P, Q}</math>を結ぶ曲線のうち、距離が最小になるものを求める。但し、空間は歪んでいないものとする。 :<math>\mathrm{P}(a, y(a), z(a)), \mathrm{Q}(b, y(b), z(b))</math>とおく。 :曲線の長さは<math>I=\int_a^b \sqrt{1+\left(\frac{dy}{dx}\right)^2+\left(\frac{dz}{dx}\right)^2}dx</math> :これが極値をとるとき<math>F(x, y, z, \frac{dy}{dx}, \frac{dz}{dx})=\sqrt{1+\left(\frac{dy}{dx}\right)^2+\left(\frac{dz}{dx}\right)^2}</math>に対するオイラー方程式を満たすので :<math>\begin{cases} \frac{d}{dx}\left(\frac{\frac{dy}{dx}}{\sqrt{1+\left(\frac{dy}{dx}\right)^2+\left(\frac{dz}{dx}\right)^2}}\right)=0 \\ \frac{d}{dx}\left(\frac{\frac{dz}{dx}}{\sqrt{1+\left(\frac{dy}{dx}\right)^2+\left(\frac{dz}{dx}\right)^2}}\right)=0 \end{cases}</math> :これは直接積分形常微分方程式なので :<math>\begin{cases} \frac{\frac{dy}{dx}}{\sqrt{1+\left(\frac{dy}{dx}\right)^2+\left(\frac{dz}{dx}\right)^2}}=\mathrm{const}. \\ \frac{\frac{dz}{dx}}{\sqrt{1+\left(\frac{dy}{dx}\right)^2+\left(\frac{dz}{dx}\right)^2}}=\mathrm{const}. \end{cases}</math> :さらに整理すると :<math>\begin{cases} \frac{dy}{dx}=\mathrm{const}. \\ \frac{dz}{dx}=\mathrm{const}. \end{cases}</math> :よって解は :<math>y(x)=ax+b, z(x)=cx+d</math> :となる。 :これは空間の直線の方程式の一般形に直せるので直線である。 :(<math>\frac{x-0}{1}=\frac{y-b}{a}=\frac{z-d}{c}</math>) ②最速降下曲線(ブラキストクローン) :<math>\mathbb{R}^2</math>中のy座標が異なる2点を結ぶ連続曲線上を滑り落ちる質点を考えるとき、滑り落ちる時間が最小となるような曲線を求める。 :y軸を鉛直下向きにとる。 :曲線の微小距離は<math>ds=\sqrt{1+\left(\frac{dy}{dx}\right)^2}</math> :<math>x</math>での質点の速さは<math>v=\sqrt{2gx}</math>なので :<math>ds</math>だけ進む時間は :<math>dt=\frac{ds}{\sqrt{2gx}}=\sqrt{\frac{1+\left(\frac{dy}{dx}\right)^2}{2gx}}dx</math> :<math>0<x<b</math>で単調増加するときの時間は :<math>I=\frac{b}{0}\sqrt{\frac{1+\left(\frac{dy}{dx}\right)^2}{2gx}}dx</math> :極値をとる場合は<math>F(x, y, \frac{dy}{dx})=\sqrt{\frac{1+\left(\frac{dy}{dx}\right)^2}{2gx}}</math>に対するオイラー方程式を考えれば良い。 :オイラー方程式は<math>\frac{d}{dx}\left( \frac{1}{\sqrt{2gx}}\frac{\frac{dy}{dx}}{\sqrt{1+\left(\frac{dy}{dx}\right)^2}} \right)=0</math> :直接積分して :<math>\frac{1}{\sqrt{2gx}}\frac{\frac{dy}{dx}}{\sqrt{1+\left(\frac{dy}{dx}\right)^2}}=\mathrm{const}.</math> :この定数を<math>\frac{1}{2\sqrt{ga}}</math>と置いて両辺二乗すると :<math>\frac{\left(\frac{dy}{dx}\right)^2}{x\left\{ 1+\left(\frac{dy}{dx}\right)^2 \right\}}=\frac{1}{2a}</math> :変形して :<math>\frac{dy}{dx}=\sqrt{\frac{x}{2a-x}}</math> :<math>x=a\mathrm{versin}\,\theta</math>と置換して :<math>\begin{array}{l} \frac{dy}{d\theta} &=\frac{dy}{dx}\frac{dx}{d\theta} \\ &=\sqrt{\frac{\mathrm{versin}\,\theta}{\mathrm{vercos}\,\theta}}\cdot{a\sin\theta} \\ &=2a\sin^2\frac{\theta}{2} \\ &=a\mathrm{versin}\,\theta \end{array}</math> :よって :<math>\begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix}=a\begin{pmatrix} \mathrm{versin}\,\theta \\ \theta-\sin\theta \end{pmatrix}</math> :これはサイクロイド曲線である。 ラグランジアン <math>L(q_1,q_2,\cdots,q_K,\dot q_1,\dot q_2,\cdots,\dot q_K)</math> の運動に沿った積分 :<math>S = \int_{t_0}^{t_1} dt \, L(q(t),\dot q(t),t) </math> の値を'''作用'''(作用積分)と言う。 変分原理により、<math>S(q,\dot q) </math> を最小にする <math>q(t) </math> について、<math>q(t) </math> を少しだけ変化させて <math>q(t) + \delta q(t) </math> (ただし、境界条件 <math>\delta q_i(t_0) = \delta q_i(t_1) = 0 </math> を課す)としたときの <math>S </math> の変化量 <math>\delta S = S(q(t) + \delta q(t),\dot q(t) + \delta \dot q(t) ) - S(q,\dot q) </math> は <math>\delta S = 0 </math> となると考えることが出来る。 <math>\begin{align} \delta S &= S(q(t) + \delta q(t),\dot q(t) + \delta \dot q(t) ) - S(q,\dot q)\\ &= \int_{t_0}^{t_1} dt \, L(q(t) + \delta q(t),\dot q(t) + \delta \dot q(t)\}) - \int_{t_0}^{t_1} dt \, L(q(t),\dot q(t)) \\ &= \int_{t_0}^{t_1} dt \, [L(q(t) + \delta q(t) ,\dot q(t) + \delta \dot q(t)\}) - L(q(t),\dot q(t))] \\ &= \int_{t_0}^{t_1} dt \sum_{k=1}^{K} \left(\frac{\partial L}{\partial q_k}\delta q_k + \frac{\partial L}{\partial \dot q_k}\delta \dot q_k(t)\right) \\ &= \sum_{k=1}^{K} \int_{t_0}^{t_1} dt \left(\frac{\partial L}{\partial q_k}\delta q_k + \frac{\partial L}{\partial \dot q_k}\delta \dot q_k(t)\right) \\ &= \sum_{k=1}^{K}\left[ \frac{\partial L}{\partial \dot q_k} q_k(t)|_{t_0}^{t_1} + \int_{t_0}^{t_1} dt \delta q_k(t)\left(\frac{\partial L}{\partial q_k}- \frac{d}{dt}\frac{\partial L}{\partial \dot q_k}\right)\right] \\ &= \sum_{k=1}^{K}\int_{t_0}^{t_1} dt \delta q_k(t)\left(\frac{\partial L}{\partial q_k}- \frac{d}{dt}\frac{\partial L}{\partial \dot q_k}\right) \\ &= 0 \end{align} </math> ここで、 <math>\delta q_k(t) </math> は任意であるので、オイラー=ラグランジュ方程式 :<math>\frac{d}{dt}\frac{\partial L}{\partial \dot q_k} - \frac{\partial L}{\partial q_k} = 0 </math> を得る。 変分原理のうち、「運動方程式の解が作用の極値で与えられる」という原理を特に'''ハミルトンの原理'''('''最小作用の原理''')という。 ==一般化運動量== 一般化運動量 <math>p_i</math> を :<math> p_i = \frac {\partial L}{\partial {\dot q_i} } </math> で定義する。デカルト座標を使った場合、質量 <math>m</math> の粒子のラグランジアンは、 <math>L = \frac{1}{2} m (\dot x^2 + \dot y^2 + \dot z^2) -U(x,y,z)</math> であるから、 <math>p_x = \frac{\partial L}{\partial \dot x} = m\dot x</math> となって、通常の運動量に一致する。また、極座標では、<math>L = \frac{1}{2} m (\dot r^2 + r^2\dot \theta^2 ) -U(r,\theta)</math> より、 <math>p_r = \frac{\partial L}{\partial \dot r} = m\dot r,\, p_\theta = \frac{\partial L}{\partial \dot \theta} = mr^2 \dot \theta </math> となる。<math>\theta</math> に共役な運動量は角運動量に一致する。 == 保存則 == ラグランジアン <math>L</math> が陽に <math>t</math> に依存しないならば、 <math>\begin{align} \frac{dL}{dt} &= \frac{dq_i}{dt} \frac{\partial L}{\partial q_i} + \frac{d\dot q_i}{dt}\frac{\partial L}{\partial \dot q_i}\\ &= \dot q_i \frac{d}{dt}\frac{\partial L}{\partial \dot q_i} + \ddot q_i \frac{\partial L}{\partial \dot q_i} \\ &= \frac{d}{dt}\left(\dot q_i \frac{\partial L}{\partial \dot q_i}\right) \end{align}</math> となる。変形すると、 <math>\frac{d}{dt}\left(\dot q_i \frac{\partial L}{\partial \dot q_i} - L\right) = 0</math> となる。従って、 <math>E = \dot q_i \frac{\partial L}{\partial \dot q_i} - L</math> は保存する。この量 <math>E</math> はエネルギーと呼ばれる。 ラグランジアンに <math>\dot x_i = \dot q_k \frac{\partial x_i}{\partial q_k}</math> を代入して一般座標で書くと、 <math>\begin{align} L &= \frac 1 2 m_i \dot x_i^2 - U(x) \\ &= \frac 1 2 m_i \frac{\partial x_i}{\partial q_k}\frac{\partial x_i}{\partial q_l} \dot q_k \dot q_l - U(q) \\ &= \frac 1 2 a_{kl}(q) \dot q_k \dot q_l - U(q) \end{align}</math> となる。ここで、<math>a_{kl}(q) = m_i\frac{\partial x_i}{\partial q_k}\frac{\partial x_i}{\partial q_l} </math> とした。 運動エネルギーの部分を <math>T(q,\dot q) = \frac 1 2 a_{kl}(q) \dot q_k \dot q_l </math> と置くと、同次関数に対するオイラーの定理より、 <math>\dot q_i \frac{\partial T} {\partial \dot q_i} = 2T</math> となるから、 <math>\begin{align} E &= \dot q_i \frac{\partial L}{\partial \dot q_i} - L\\ &= \dot q_i \frac{\partial T}{\partial \dot q_i} - L\\ & = 2T -(T-U)\\ &= T+U \end{align}</math> を得る。エネルギーとは、運動エネルギーとポテンシャルエネルギーの和であるということが分かる。 == 重力二体問題 == 質量 <math>m_1,m_2</math> の質点が重力を及ぼし合うときの運動を考える。質点の座標をそれぞれ <math>\boldsymbol r_1, \boldsymbol r_2</math> とすればラグランジアンは、 <math>L = \frac 1 2 m_1 \dot\boldsymbol r_1^2 + \frac 1 2 m_2 \dot\boldsymbol r_2^2 + \frac{Gm_1m_2}{|\boldsymbol r_1 - \boldsymbol r_2|}</math> となる。ここで、重心 <math>\boldsymbol r_c = \frac{m_1\boldsymbol r_1 + m_2 \boldsymbol r_2}{m_1+m_2}</math> と相対位置ベクトル <math>\boldsymbol r = \boldsymbol r_2 - \boldsymbol r_1</math> を使って、 <math>L = \frac 1 2 M \dot\boldsymbol r_c^2 + \frac 1 2 m \dot\boldsymbol r^2 + \frac{Gm M}{r}</math> と書き直すことができる。ここで、<math>M = m_1 + m_2</math> は全質量、<math>m = \frac{m_1m_2}{m_1+m_2}</math> は換算質量である。<math>\boldsymbol r_c</math> は循環座標だから、<math>M \dot\boldsymbol r_c</math> は保存する。すなわち、ラグランジアンの <math>\frac 1 2 M \dot\boldsymbol r_c^2</math> の部分は定数だから取り除いて、 <math>L = \frac 1 2 m \dot\boldsymbol r^2 + \frac{Gm M}{r}</math> とすることができる。すなわち、質量 <math>m</math> を持った質点の距離に反比例するポテシャルでの運動に帰着される。このように中心対称の場での運動では、角運動量は保存されるから、質点の運動は中心を通るある面に限られる。この面で極座標を導入し、<math>\alpha = Gm M</math> とすると、 <math>L = \frac 1 2 m (\dot r^2 + r^2 \dot \varphi^2) + \frac{\alpha}{r}</math> となる。エネルギーは、 <math>\begin{align}E &= \dot r \frac{\partial L}{\partial \dot r} + \dot \varphi \frac{\partial L}{\partial \dot \varphi} -L \\&= \frac 1 2 m (\dot r^2 + r^2 \dot \varphi^2) - \frac{\alpha}{r}\\ &=\frac 1 2 m \dot r^2 + \frac{J^2}{2m r^2} - \frac \alpha r \end{align}</math><ref><math>U_{\rm eff}(r) = -\frac{\alpha}{r} + \frac{J^2}{2m r^2} </math> と定義すると、<math>E = \frac 1 2 m \dot r^2 + U_{\rm eff}(r)</math> と書くことができる。すなわち、運動は有効ポテンシャル <math>U_{\rm eff}(r) </math> の中で移動する一次元運動と見なすことができる。</ref> ただし、<math>\varphi</math> が循環座標であるから、角運動量 <math>J = m r^2 \dot \varphi </math> が保存されることを使った。この式を <math> dt </math> について解くと、 <math>dt = \frac{dr}{\sqrt{\frac{2}{m}(E+\frac{\alpha}{r})-\frac{J^2}{m^2 r^2}}}</math><ref>平方根を取るときに、正負の符号が付くが、これは運動が右回りになるか左回りになるかの違いしかないから、正の方を選ぶことにする。</ref> となる。運動量保存から <math>d\varphi = \frac{J}{m r^2} dt </math> を使うと、 <math>d\varphi = \frac{\frac{J}{r^2}dr}{\sqrt{2m(E + \frac{\alpha}{r})-\frac{J^2}{r^2}}} = \frac{\frac{1}{r^2}dr}{\sqrt{\frac{2m}{J^2}(E + \frac{\alpha}{r})-\frac{1}{r^2}}} </math> となる。<math>u = \frac 1 r</math> と変数変換して、積分すると、 <math>\begin{align} \varphi &= \int \frac{-du}{\sqrt{\frac{2m}{J^2}(E + \alpha u)-u^2}}\\ &= \int \frac{-du}{\sqrt{-\left(u-\frac{m\alpha}{J^2}\right)^2 + \frac{2m E}{J^2} + \frac{m^2 \alpha^2}{J^4} }}\\ &= \arccos\frac{u-\frac{m\alpha}{J^2}} {\sqrt{\frac{2m E}{J^2} + \frac{m^2 \alpha^2}{J^4}}} + C \end{align}</math> となる<ref>積分 <math>\varphi = \int \frac{\frac{1}{r^2}dr}{\sqrt{\frac{2m}{J^2}(E + \frac{\alpha}{r})-\frac{1}{r^2}}} </math> で、<math>\frac{2m}{J^2}(E + \frac{\alpha}{r})-\frac{1}{r^2} = \left(c_1 - \frac{1}{r} \right)\left(\frac 1 r - c_2 \right) </math> と置き、<math>\frac 1 r = \frac{c_1 + c_2}{2} + \frac{c_1 - c_2}{2}\cos\theta</math> と変数変換することで、 <math>\varphi = \int \frac{\frac{c_1 - c_2}{2}\sin \theta d\theta}{\sqrt{\left(\frac{c_1 - c_2}{2}\right)^2(1-\cos^2 \theta )}} = \theta = \arccos \frac{\frac{1}{r} - \frac{c_1+c_2}{2}}{\frac{c_1-c_2}{2}} = \arccos \frac{\frac{1}{r}-\frac{m \alpha}{J^2}}{\sqrt{\frac{2m E}{J^2} + \frac{m^2 \alpha^2}{J^4}}} </math>と計算することもできる。</ref>。ここで、積分定数はこれが0になるように選ぶ。さらに、 <math>p = \frac{J^2}{m\alpha},\, e= \sqrt{1+\frac{2EJ^2}{m\alpha^2}}</math> とすると、 <math>\varphi = \arccos \frac{\frac p r - 1}{e} </math> あるいは、 <math>r = \frac{p}{1+e\cos\varphi}</math> を得る。従って惑星の軌道は離心率 <math>e</math> の二次曲線になる。<math>p</math> は半直弦という量で、<math>\varphi = \frac \pi 2</math> の点の焦点からの距離である。 <math>E < 0</math> のときは、<math>e<1</math> となるから、惑星の軌道は楕円になる。また、<math>E\ge 0</math> のときは、<math>e\ge 1</math> となるから、惑星の軌道は放物線あるいは双曲線となる。放物線になる場合は無限遠に於いて速度が0となる。 軌道長半径 <math> a </math> を <math>a = \frac{r(\varphi=0)+r(\varphi=\pi)}{2} = \frac{p}{1-e^2} = -\frac{\alpha}{2E} </math> で定義する。軌道が楕円の場合は軌道長半径は長軸の半分の長さである。双曲線の場合は軌道長半径は負の値となり、絶対値は双曲線の半軸に等しい。 放物線の場合は軌道長半径は無限大になる。惑星の軌道要素には半直弦よりも軌道長半径と離心率を使うことが多い。惑星の軌道は <math>r = \frac{a(1-e^2)}{1+e\cos\varphi}</math> となる。また、エネルギーと角運動量を <math>a,e</math> を使って表すと <math>E = -\frac{\alpha}{2a},J=\sqrt{m\alpha a(1-e^2)}</math> となる。 === 惑星の運動 === ここでは、天体の軌道が楕円となる場合、すなわち <math>E < 0</math> の場合を扱う。 時刻 <math>t</math> と軌道上の惑星の位置の関係を求める。エネルギー保存の式まで立ち返って、それを <math>\dot r</math> について解くと、 <math>\dot{r} = \sqrt{\frac{2}{m}\left(E+\frac{\alpha}{r}\right)-\frac{J^2}{m^2 r^2}}</math> となる。ここで、 <math>E = -\frac{\alpha}{2a},\, J = \sqrt{m \alpha a(1-e^2)}</math> を代入すると、 <math>\dot{r} = \frac 1 r \sqrt{\frac{\alpha}{m a}} \sqrt{-r^2 + 2ar - a^2(1-e^2)} = \frac 1 r \sqrt{\frac{\alpha}{m a}} \sqrt{-(r-a)^2 + a^2e^2}</math> となる。さて、今までは楕円の焦点を原点とした座標で計算を進めていたが、これを楕円の中心を原点とした座標に移行するほうが便利である。この座標では楕円の方程式は <math>\frac{x^2}{a^2} + \frac{y^2}{b^2} = 1</math> となる。極座標で書くと、 <math>x = a\cos u,\, y = b\sin u</math> [[ファイル:Eccentric_and_True_Anomaly.svg|サムネイル|Pは惑星の位置。P'はPをy軸と平行にその外接円(青)に射影した位置である。fは真近点角、Eが離心近点角である。]] となる。ここで導入した <math>u</math> は楕円の中心から測った角度で、離心近点角という。対して、<math>\varphi</math> は楕円の焦点から測った角度で真近点角という。右図より、 <math>r \cos \varphi = a\cos u - ae</math> となる。これに、軌道の極方程式 <math>r = \frac{a(1-e^2)}{1+e\cos\varphi}</math> すなわち <math>r + re\cos\varphi = a(1-e^2)</math> を代入すると、 <math>r = a(1-e\cos u)</math> また、 <math>\dot r = ae\sin u \dot u</math> [[ファイル:Аномалии.gif|サムネイル|Bは惑星。Cは惑星の軌道の外接円にy軸に平行にBを射影した仮想上の天体。Dは外接円を一定速度(平均運動)で動く仮想上の天体。直線SBと直線SOのなす角が真近点角。角SOCが離心近点角。角SODが平均近点角である。また、右上のMは平均近点角、Eは離心近点角である。]] を得る。この式を <math>\dot r</math> の式に代入すると、 <math>\dot u = \sqrt{\frac{\alpha}{m a^3}} \frac{1}{1 - e \cos u} </math> となる。 平均運動を<math>n = \sqrt{\frac{\alpha}{m a^3}}</math> で定義すると、 <math>ndt = (1 - e \cos u)du </math> となる。積分すると、 <math>n(t-t_0) = u - e \sin u</math> を得る。<math>t_0</math> は積分定数で、<math>t = t_0</math> のとき、<math>u = 0</math> となるから近点通過時刻に対応する。 平均近点角 <math>l</math> を <math>l = n(t-t_0)</math> で定義する<ref>平均近点角は時間変数を1周が <math> 2\pi </math> となるように調整したものである。</ref>と、 <math>l = u - e\sin u</math> を得る。この方程式はケプラー方程式と呼ばれる。この方程式を <math>u</math> について解けば、惑星の運動が分かる。惑星が近日点を通過してから次に近日点を通過する時刻を <math>t_1</math> とする。このとき、<math>u = 2\pi</math> となる。惑星の周期は <math>T = t_1 - t_0</math>だから、ケプラー方程式より、 <math>T = \frac{2\pi}{n}</math> を得る。また、平均運動とは惑星の周期に対応する角振動数であったことも分かる。平均運動の定義より、 <math> n^2 a^3 = \frac{\alpha}{m} = GM</math> となる。周期で表すと <math>\frac{a^3}{T^2} = \frac{GM}{4\pi^2}</math> を得る。これはケプラー第三法則である。 ケプラー方程式で、 <math>u - l = e\sin u</math> とすると、<math>u-l</math> は周期 <math>2\pi </math> の周期関数で奇関数である。従って、 <math>e\sin u = \sum_{k=1}^{\infty} b_k \sin kl</math> とフーリエ展開できる。フーリエ係数は、 <math>b_k = \frac 2 \pi \int_{0}^\pi e\sin u \sin kl dl </math> となる。部分積分して、 <math>\begin{align} \int_{0}^\pi e\sin u \sin kl \, dl &= \left[-\frac{1}{k} e \sin u \cos kl\right]_0^\pi + \frac{1}{k}\int_0^\pi\cos kl \frac{d(e\sin u)}{dl} \, dl \\ &= \frac{1}{k}\int_0^\pi\cos kl \frac{d(u-l)}{dl} \, dl \\ &= \frac{1}{k}\int_0^\pi\cos kl \, du - \frac{1}{k}\int_0^\pi\cos kl \, dl \\ &= \frac{1}{k}\int_0^\pi\cos kl \, du \\ &= \frac{1}{k}\int_0^\pi\cos k(u - e \sin u) \, du \\ \end{align}</math> となる。最後の積分は、ベッセル関数 <math>J_n(x) = \frac 1 \pi \int_0^\pi \cos(n\theta-x\sin\theta)d\theta </math> で表せるから、 <math>b_k = \frac 2 k J_k(ke) </math> となる。従って、 <math>\begin{align} u &= l + e \sin u \\ &= l + \sum_{k=1}^\infty \frac 2 k J_k(ke) \sin kl \end{align} </math> を得る。 === ケプラーの法則 === <math>m_1</math> を太陽、<math>m_2</math> を惑星とする場合、<math>m_1</math> が <math>m_2</math> よりも十分に大きいと近似することができる。このとき、重心は太陽の位置に近似できる。また、<math>m_1 + m_2 \approx m_1</math> となる。このとき、次のケプラーの法則が成り立つ<ref>太陽と惑星以外にも、地球と月、地球と人工衛星のように、片方の質量が一方に比べて無視できるほど小さいならばケプラーの法則が成り立つ。</ref>。 ;第一法則 :惑星の軌道は、太陽を焦点の一つとする楕円である。 ;第二法則 :太陽と惑星を結ぶ線分が単位時間に掃く面積は一定である。 ;第三法則 :公転周期の2乗と軌道長半径の3乗の比は惑星によらず一定である。 :[[ファイル:Eccentric_and_True_Anomaly.svg|サムネイル|再掲]] 第二法則はケプラー方程式を幾何学的に表現したものである。簡単のために時間の原点を <math>t_0 </math> に取る。ケプラー方程式 <math>nt = u - e\sin u</math> を、 <math>\frac t T = \frac{u - e \sin u}{2 \pi}</math> と変形する。 ここで、扇形 <math>\rm AFP' </math> <math>=</math> 扇形 <math>\rm ACP' </math> <math>-</math> 三角形 <math>\rm FCP' </math> <math>= \frac 1 2 a^2 u - \frac 1 2 ae \times a\sin u</math> より、 <math>\frac 1 2 (u - e\sin u)</math> は、扇形 <math>\rm AFP' </math> の面積を <math>a^2</math> で割ったものに等しい。点 <math>\rm P </math> の <math>x </math> 座標を <math>\xi </math> とすると、 扇形 <math>\rm AFP</math> の面積について、 扇形 <math>\rm AFP</math> <math>= \int_\xi^a \frac b a \sqrt{a^2 - x^2} dx - \frac 1 2 (ae-\xi) \frac b a \sqrt{a^2 - \xi^2} = \frac b a </math> 扇形 <math>\rm AFP' </math> となる。 よって、ケプラー方程式より、 <math>t \propto \frac 1 2 (u - e \sin u) \propto \rm{AFP}</math> を得る。 扇形 <math>\rm AFP </math> は太陽と惑星を結ぶ線分が掃く面積であるから、これが時間 <math>t </math> に比例することはケプラー第二法則に他ならない。 ケプラーの第三法則は太陽を公転するすべての惑星について述べたものである。惑星の公転周期の2乗と軌道長半径の3乗の比は<math>\frac{a^3}{T^2} = \frac{G(m_1+m_2)}{4\pi^2}</math> であるから惑星の質量にも依存するが、<math>m_1 + m_2 \approx m_1</math> と近似できる場合は、すべての惑星についてこの比が一定となる。 === ケプラー軌道要素 === [[Image:Eulerangles.svg|thumb|300px|オイラー角の図。中心が太陽で、青のxy平面が黄道面でx軸は春分点の方向。赤のXY平面が軌道面でX軸の方向が近日点。緑のN軸は昇交点に対応する。]] 三次元空間中の惑星の軌道を決定するために、6つのパラメータが必要になる。軌道の形状は軌道長半径 <math>a</math> と離心率 <math>e</math> で決定される。 軌道の方向を決定するには、太陽系に基準となる基準面と方向を設定しなくてはいけない。基準面には黄道面を使うことが多い。黄道面は地球の公転する軌道面である。太陽と地球の中心を結んだ線分が地球表面と交わる点が赤道を南から北に交差する瞬間を春分という。このときの地球の方向を基準方向にする。[[File:Euler2a.gif|thumb|上図のオイラー角 α, β, γ の順に動かしたアニメーション。]] 基準面には、太陽系の全角運動量ベクトルに垂直な平面である不変面や、赤道面を使うこともある。 この基準面と方向から、惑星の軌道面と近点の方向へのオイラー角によって軌道の方向を決定できる。オイラー角 <math>\alpha, \beta, \gamma</math> に対応して、それぞれ昇交点黄経 <math>\Omega</math> 、軌道傾斜角 <math>i</math> 、近点引数 <math>\omega</math> と呼ばれる。 最後に、惑星の軌道上の位置を特定するために、近点通過時刻が必要になる。 === ケプラー運動の時間平均 === いろいろな物理量のケプラー運動に渡る時間平均を計算する。いくつかは離心近点角で計算するほうが簡単である。ケプラー方程式を微分して、 <math>ndt = a(1-e\cos u)du</math> <math>dt = \frac{T}{2\pi a}rdu</math> となる。これを使って計算すると、 <math>\begin{align}\langle r \rangle &= \frac 1 T \int_0^T rdt\\ &= \frac{1}{2\pi a} \int_0^{2\pi} r^2 du\\ &= \frac{a}{2\pi} \int_0^{2\pi} (1-e\cos u)^2 du\\ &= a\left(1+ \frac 1 2 e^2 \right) \end{align}</math> <math>\begin{align}\left\langle \frac 1 r \right\rangle &= \frac 1 T \int_0^T \frac 1 r dt\\ &= \frac{1}{2\pi a} \int_0^{2\pi} du\\ &= \frac{1}{a} \end{align}</math> を得る。また、エネルギー保存の式 <math>E = -\frac{\alpha}{2a} = \frac 1 2 m v^2 - \frac{\alpha}{r}</math> より、 <math>\begin{align}\left\langle \frac 1 2 m v^2 \right\rangle &= \left\langle \frac \alpha r - \frac{\alpha}{2a} \right\rangle \\&= \alpha\left\langle \frac 1 r \right\rangle - \frac{\alpha}{2a} \\&= \frac{\alpha}{2a}\end{align}</math> であるから、 <math>\left\langle v^2 \right\rangle = \frac{\alpha}{ma}</math> を得る。 次に軌道平均速度を計算する。長半径 <math>a</math>、離心率 <math>e</math> の楕円の周の長さは <math>L = 4aE(e)</math> であることが知られている。ここで、<math>E(k) = \int_0^{\frac{\pi}{2}} \sqrt{1-k^2\sin^2 \theta} \, d\theta = \frac \pi 2 F\left(\frac 1 2, -\frac 1 2; 1; k^2 \right)</math> は第二種完全楕円積分である。 これを使うと平均速度は <math>\langle v \rangle = \frac{L}{T}= \frac{2}{\pi} \sqrt{\frac{\alpha}{ma}} E(e)</math> と求まる。あるいは、 <math>v = \sqrt{\frac{\alpha}{m}\left(\frac{2}{r} - \frac 1 a\right)}</math> より、 <math>\begin{align}\left\langle v \right\rangle &= \frac{1}{2\pi a} \int_0^{2\pi} \sqrt{\frac{\alpha}{m}\left(\frac{2}{r} - \frac 1 a\right)} \, rdu\\ &= \frac{1}{2\pi} \sqrt{\frac{\alpha}{ma}} \int_0^{2\pi} \sqrt{1-e^2\cos^2 u} \, du\\ &= \frac{2}{\pi} \sqrt{\frac{\alpha}{ma}} \int_0^{\frac{\pi}{2}} \sqrt{1-e^2\sin^2 u} \, du\\ &= \frac{2}{\pi} \sqrt{\frac{\alpha}{ma}} E(e) \end{align}</math> と求めることもできる。 == ラザフォード散乱 == 原点に固定された正の電荷 <math>Z_1 e</math> を持つ原子核と正の電荷 <math>Z_2 e</math> と質量 <math>m</math> を持つ荷電粒子のラグランジアンは、 <math>L = \frac 1 2 m (\dot r^2 + r^2 \dot \varphi^2) - \frac{\alpha}{r} </math><ref>重力場中の運動では引力が働くが、ラザフォード散乱では斥力が働くから、ポテンシャルの符号が逆になっている。我々は係数 <math>\alpha</math> が正となるように設定している。</ref> となる。原子核は十分重いため移動しないと考えていい。また、<math>\alpha = \frac{Z_1 Z_2 e^2}{4\pi \varepsilon_0}</math> である。 ラグランジアンはケプラー問題と同じ形だから、その軌道は <math>\varphi = \arccos\frac{\frac 1 r +\frac{m \alpha}{J^2}} {\sqrt{\frac{2 m E}{J^2} + \frac{m^2 \alpha^2}{J^4}}}</math> となる。<math>\varphi_0</math> を粒子が無限遠に飛んでいった方向と、粒子が原子核に最接近する点と原子核を結んだ線分が為す角とすると、 [[ファイル:Rutherford scattering geometry 2.svg|中央|サムネイル|350x350ピクセル|図の <math>\Phi</math> が <math>\varphi_0</math> で、<math>\theta</math> は散乱角である。]] <math>\varphi_0 = \varphi(\infty) - \varphi(r_{\rm min}) = \arccos\frac{\frac{m \alpha}{J^2}} {\sqrt{\frac{2m E}{J^2} + \frac{m^2 \alpha^2}{J^4}}} </math><ref><math>r_{\rm min}</math> では <math>\dot r = 0</math> となるから、有効ポテンシャルを <math>U_{\rm eff}(r) = \frac{\alpha}{r} + \frac{J^2}{2m r^2}</math> とすると、<math>E = U_{\rm eff}(r_{\rm min})</math> となる。この式を変形すると、<math>\left(\frac{1}{r_{\rm min}} + \frac{m \alpha}{J^2} \right)^2 = \frac{2mE}{J^2} + \frac{m^2 \alpha^2}{J^4}</math> となる。従って、<math>\varphi(r_{\rm min}) = 0.</math></ref> となる。ここで、無限遠での速度を <math>v_\infty</math> 衝突径数を <math>b</math> とすると、<math>J = mv_\infty b,\, E = \frac 1 2 m v_\infty^2</math> となるから、<math>J^2=2mb^2E</math> である。これを代入すると <math>\varphi_0 = \arccos\frac{\frac{\alpha}{2Eb}}{\sqrt{1 + \left(\frac{\alpha}{2Eb}\right)^2}} </math> となる。散乱角を <math>\theta</math> とすると、<math>\varphi_0 = \pi - 2\theta</math> となる。これを使って書き換えると、 <math>b = \frac{\alpha}{2E} {\tan\varphi_0} = \frac{\alpha}{2E} \frac{1}{\tan^2 \frac {\theta}{2}}</math> [[ファイル:ScatteringDiagram.svg|サムネイル]] を得る。 ポテンシャルによる散乱のされやすさを見るために散乱断面積を定義する。一定の速度と密度を持った粒子束を散乱中心に向かって射出する。ここで、射出された粒子束の、単位面積単位時間あたりの粒子の個数を <math>N</math> とする。 <math>dn</math> を単位時間あたりに散乱角 <math>\theta</math> から <math>\theta + d\theta</math> の間に散乱される粒子の個数とする。直感的にもわかるように <math>dn</math> が大きいほど散乱されやすいことを意味する。散乱断面積を <math>d\sigma = \frac{dn}{N}</math> と定義する。これは面積の次元を持つ(<math>dn</math> は単位時間あたりの量で、<math>N</math> は単位時間単位面積あたりの量だから)。また、散乱角<math>\theta \sim \theta + d\theta</math> に対応する衝突径数を <math>b \sim b + db</math> とすると、入射粒子が <math>b \sim b + db</math> の円環の中にある確率、つまり <math>b \sim b + db</math> の円環の面積が散乱断面積を与える。 <math>d\sigma = 2\pi b db</math> 立体角 <math>d\Omega</math> についての関係式 <math>d\Omega = 2\pi \sin \theta d\theta</math> で割れば、 <math>\frac{d\sigma}{d\Omega} = \frac{b}{\sin\theta} \left|\frac{db}{d\theta}\right|</math> を得る。これを微分散乱断面積という。絶対値を付けたのは <math>\frac{db}{d\theta}</math> が負になることもあるからである。これにラザフォード散乱の衝突径数の式を代入すると、 <math>\frac{d\sigma}{d\Omega} = \left(\frac{\alpha}{4E}\right)^2 \frac{1}{\sin^4\frac \theta 2}</math> となる。 == 振動 == ==正準方程式== ハミルトニアン <math>H</math> を <math>H = \sum_i \dot q_i p_i - L</math> で定義する。ハミルトニアンの全微分は、 <math>\begin{align} dH &= \sum \dot q_i dp_i + \sum p_i d\dot q_i - dL\\ &= \sum \dot q_i dp_i + \sum p_i d\dot q_i - (\sum\dot p_i dq_i + \sum p_i d\dot q_i)\\ &= \sum \dot q_i dp_i - \sum \dot p_i d q_i \end{align} </math> となる。従って、ハミルトニアンは、<math>p,q</math> の関数 <math>H(q,p)</math> である。また、 <math>dH = \sum \frac{\partial H}{\partial p_i}dp_i + \sum \frac{\partial H}{\partial q_i}dq_i</math> と比較すれば、 :<math> \dot{q}_i=\frac{\partial{}H}{\partial{}p_i} </math> :<math> \dot{p}_i=-\frac{\partial{}H}{\partial{}q_i} </math> が成り立つ。これを'''正準方程式'''という。 == 正準変換 == 変数変換 <math>Q_i = Q_i(q,p,t),\, P_i = P_i(q,p,t)</math> についてある関数 <math>H'(Q,P)</math> が存在し、 <math> \dot{Q}_i=\frac{\partial{}H'}{\partial{}P_i} ,\, \dot{P}_i=-\frac{\partial{}H'}{\partial{}Q_i} </math> が成立するとき、この変換を正準変換という。新旧変数の間の関係を求めよう。変分原理からは、 <math>\delta \int (p_i dq_i - Hdt) = 0</math> となる。同様に新変数に対しても、 <math>\delta \int (P_i dQ_i - H'dt) = 0</math> が成り立つ。すなわち、この被積分関数の差はある関数 <math>F</math> の全微分でなくてはならない。すなわち、 <math>p_i dq_i - Hdt = P_i dQ_i - H'dt + dF </math> となる。整理すると、 <math>dF = p_i dq_i - P_i dQ_i + (H' - H) dt </math> となる。<math>F</math> は <math>q,Q,t</math> の関数ということも分かる。また、 <math>p_i = \frac{\partial F}{\partial q_i},\, P_i = -\frac{\partial F}{\partial Q_i},\, H' = H + \frac{\partial F}{\partial t} </math> を得る。関数 <math>F</math> を正準変換の母関数という。一般に母関数は新旧変数の関数 <math>F(q,p,Q,P,t)</math> である。母関数の変数が <math>q,P</math> で表される場合について、正準変換の公式を求めておこう。 <math>d(F+P_iQ_i) = p_i dq_i + Q_i dP_i + (H' - H) dt </math> と書き換える。母関数 <math>\Phi = F + P_i Q_i</math> を定義すると、 <math>p_i = \frac{\partial \Phi}{\partial q_i},\, Q_i = \frac{\partial \Phi}{\partial P_i},\, H' = H + \frac{\partial \Phi}{\partial t} </math> を得る。 ==ポアソン括弧== 関数 <math>f(q,p,t)</math> の時間微分は、 <math>\frac{df}{dt} = \frac{\partial f}{\partial t} + \frac{dq_i}{dt}\frac{\partial f}{\partial q_i} + \frac{dp_i}{dt}\frac{\partial f}{\partial p_i}</math> となる。正準方程式より、 <math>\frac{df}{dt} = \frac{\partial f}{\partial t} + \frac{\partial H}{\partial p_i}\frac{\partial f}{\partial q_i} - \frac{\partial H}{\partial q_i}\frac{\partial f}{\partial p_i}</math> となるから、ポアソン括弧を、 <math>\{f,H\} = \frac{\partial f}{\partial q_i}\frac{\partial H}{\partial p_i} - \frac{\partial f}{\partial p_i}\frac{\partial H}{\partial q_i}</math> で定義すると、 <math>\frac{df}{dt} = \frac{\partial f}{\partial t} + \{f,H\} </math> と書くことができる。一般の関数 <math>f,g</math> に対しては、 <math>\{f,g\} = \frac{\partial f}{\partial q_i}\frac{\partial g}{\partial p_i} - \frac{\partial f}{\partial p_i}\frac{\partial g}{\partial q_i}</math> と定義する。関数 <math>f</math> が時間に陽に依存しない場合は <math>\frac{df}{dt} = \{f,H\} </math> となる。特に、 <math>\dot p_i = \{p_i,H\},\dot q_i = \{q_i,H\}</math> となるが、これは正準方程式である。 次のポアソン括弧の一般的な性質は簡単に示すことができる。<math>f,g,h</math> は関数、<math>c</math> は定数である。 <math>\{f,g\} = -\{g,f\}</math> <math>\{f,c\} = 0</math> <math>\{f+g,h\} = \{f,h\} + \{g,h\}</math> <math>\{fg,h\} = f\{g,h\} + g\{f,h\}</math> また、ヤコビ恒等式と呼ばれる次の恒等式が成り立つ。 <math>\{f,\{g,h\}\} + \{g,\{h,f\}\} + \{h,\{f,g\}\} = 0</math> 例えば、<math>\{f,\{g,h\}\}</math> を展開して出てくる項は、 <math>\frac{\partial f}{\partial p_j}\frac{\partial^2 g}{\partial q_j \partial p_i} \frac{\partial h}{\partial q_i}</math> のように <math>g</math> あるいは <math>h</math> の二階偏導関数とその他の2関数の一階偏導関数の積である。そこで、左辺の内 <math>f</math> の二階偏導関数が登場する項だけを集めて計算しよう。<math>\{f,\{g,h\}\}</math> に <math>f</math> の二階偏導関数は登場しないから、それが登場するのは、 <math>\{g,\{h,f\}\} + \{h,\{f,g\}\}</math> である。ここで、ポアソン括弧を線形微分演算子として <math>\begin{align} D_g(\varphi) &= \{g,\varphi \} \\&= \left(\frac{\partial g}{\partial q_i} \frac{\partial}{\partial p_i} - \frac{\partial g}{\partial p_i} \frac{\partial}{\partial q_i}\right)\varphi\\ &=\xi_i\frac{\partial \varphi}{\partial x_i} \end{align}</math> と書く。簡単のために <math>x_i = q_i,\, x_{K+i} = p_i \quad (i = 1,\dots, K)</math>と定義し <math>q,p</math> をひとまとめに扱った。<math>K</math> は系の自由度である。また、<math>\xi_i =- \frac{\partial g}{\partial q_i} ,\, \xi_{K+i} = \frac{\partial g}{\partial p_i} </math> は <math>q_i,p_i</math> の関数である。同様に、 <math>D_h = \eta_i\frac{\partial}{\partial x_i}</math> と置く。そうすると、<math>f</math> の二階偏導関数が登場する部分について、 <math>\begin{align} \{g,\{h,f\}\} + \{h,\{f,g\}\} &= \{g,\{h,f\}\} - \{h,\{g,f\}\}\\ &= D_gD_hf - D_h D_gf \\ &= \xi_i\frac{\partial}{\partial x_i} \left(\eta_j\frac{\partial f}{\partial x_j} \right) - \eta_i\frac{\partial}{\partial x_i}\left(\xi_j \frac{\partial f}{\partial x_j}\right) \\ &= \xi_i\frac{\partial \eta_j}{\partial x_i} \frac{\partial f}{\partial x_j} - \eta_i \frac{\partial \xi_j}{\partial x_i} \frac{\partial f}{\partial x_j} \end{align}</math> となる<ref>数学的に言うと、ポアソン括弧は多様体上のベクトル場として考えることができ、ベクトル場の括弧積はまたベクトル場になるということである。</ref>。<math>f</math> の二階偏導関数は打ち消し合って、残っているのは <math>g,h</math> についての二階偏導関数である。 <math>g,h</math> についてもその二階偏導関数を持つ項は打ち消し合うから、結局、表式は0となる。 == ハミルトン–ヤコビ方程式 == 正準変換によって、新ハミルトニアンが恒等的に0となる変換を求めてみよう。新しい運動量を <math>\alpha_i</math>、新しい座標を <math>\beta_i</math> とすると、正準方程式は、 <math> \dot{\beta}_i=0 ,\, \dot{\alpha}_i=0 </math> となるから、<math>\alpha_i, \beta_i</math> は定数となる。この変換の母関数を <math>S(q,\alpha,t)</math> とすると、正準変換の公式より、 <math>H + \frac{\partial S}{\partial t} = H' = 0</math> となる。旧ハミルトニアンの中の運動量を <math>p_i = \frac{\partial S}{\partial q_i}</math> によって書き換えると、 <math>\frac{\partial S}{\partial t} + H\left(q,\frac{\partial S}{\partial q},t\right) = 0 </math> を得る。この偏微分方程式をハミルトン–ヤコビ方程式という。 ハミルトン–ヤコビ方程式の解 <math>S</math> が求まったら、代数方程式 <math>\beta_i = \frac{\partial S(q,\alpha,t)}{\partial \alpha_i} </math> を <math>q_i</math> について解くことによって、座標 <math>q_i</math> を定数 <math>\alpha_i, \beta_i</math> 及び時間の関数によって表すことができる。運動量は <math>p_i = \frac{\partial S}{\partial q_i} </math> によって求まる。 == 参考文献 == * エリ・デ・ランダウ、イェ・エム・リフシッツ著、広重徹、水戸巌訳『力学(増訂第3版)』東京図書(1974){{ISBN|978-4489011603}} (2022年の新装版は{{ISBN|978-4489023866}}) * 須藤靖『解析力学・量子論 第2版』東京大学出版会(2019){{ISBN|978-4130626187}} ==脚注== <references group="注" /> {{DEFAULTSORT:かいせきりきかく}} [[Category:解析力学|*]] {{NDC|423|かいせきりきかく}} <references /> da34dbqxv7zdpbktiu72vajx8szp2bz 行刑にかかる争点 0 2747 305082 299897 2026-10-22T11:35:43Z Jcb 92857 305082 wikitext text/x-wiki [[法学]]>[[刑事法]]>[[刑法]]>[[刑法概論]]>[[関係諸法等 (刑事法)]]>[[行刑法]]>[[行刑にかかる争点]] ここでは行刑にかかる争点を解説する。 == 死刑廃止論 == ;広義 :死刑を廃止する主張すべて。 ;狭義 :(刑事学の領域)立法論的主張としての死刑廃止論 :(実体的デュープロセス)死刑を規定する法に対する違憲論 === 論拠 === 死刑廃止論の論拠としては、大きくわけて、「人道的見地」からのものと、刑事政策的見地からのものがある。 ====人道的見地==== 死刑は非人道的・非文化的で野蛮な刑罰との見解である。死刑廃止論の根幹の思想ではあるが、巷間の死刑存続論と表裏一体であり、感情論の域を出ないため、水掛け論になるきらいがある。 ====刑事政策的見地==== 死刑が犯罪抑止の観点から、払われる代償に対して効果が少ないとの観点から判断して死刑廃止を論ずるものであり、おおむね以下の論拠による。 ;誤判時に回復救済の途がない :これは死刑廃止論最強の論拠といえ、存続論はこれを論破できておらず(論破とは、すなわち、誤審とわかったときに原状回復できる、つまり、人を生き返らせることができるということである)、そのリスクを負ってでも死刑が必要であると論ずるしかない。 ;被害者救済のためにも逆効果である :死刑があるために犯罪者が自暴自棄となり、かえって犯罪の度合いを増し、被害が拡大するとの言説。 ;犯罪者に対する威嚇力はない :死刑に犯罪を抑止する威嚇力があるというのであれば、死刑に相当する犯罪は発生しないはずであり、それが発生するのは死刑に威嚇力がないからだという言説。 ;国際刑事共助の観点 :犯罪者引渡し条約に関して、死刑廃止国は死刑存置国との間に条約を締結することに抵抗を示す傾向があり、国外逃亡犯の捕捉が困難になる。 === 存続論 === 一方、死刑存続論も同様の見地から以下の反論を加えている。 ====感情的見地==== 人道的見地からの廃止論同様、最終的には水掛け論になるが、廃止に踏み切ろうとするには感情論を無視しておこなうことはできず、国民的なレベルで意識に変化がみられることが必須となる。 ====遺族の感情の尊重==== もっとも感情論に訴える言説。最近では、「現行法は被害者の心情を無視している」との論調も強くなりつつあり、その立場からも一見首肯できる言説にみえるが、逆に、遺族がない場合にはこの遺族感情を想定し得ない。すなわち、親しい家族がいない人が殺された場合、その人の死を悲しむ遺族はおらず、尊重すべき遺族感情は存在しないこととなり、そのような事案については、量刑において、遺族がいる場合との差を生じさせることとなり、このことは、同一の犯罪の態様について被害者の立場が異なるゆえに刑罰が異なることを正面から認めたこととなり、これは憲法第14条に定める法の下の平等にもとる嫌いがある(被害者の身分のみによって刑罰が異なることが憲法の趣旨に反しうるとする判断については[[w:尊属殺法定刑違憲事件|尊属殺法定刑違憲事件]]を参照)。そのため、論理的には一般化できる根拠といいがたい。 ====一般国民の感情の尊重==== 現時点において世論調査をおこなうとおおむね存続論が多数派となる。しかしながら、これは死刑制度の得失について真摯な議論としていないことが原因のひとつと考えられる。なぜならば、一般の国民にとって、たとえば、被害者の遺族であるとか、加害者の知己といった、当事者の問題として死刑を評価する立場となり、死刑制度について主体的な立場で考察することはごくまれであり、また、学校教育などにおいても生命倫理をきちんと取り上げることは少ないという事情からは多数の支持のみをもって存続すべきであるとする根拠に足りない。ただし、今後は裁判員制度の導入により、「裁く者」としての当事者意識が浸透するにつれ、死刑の存否について熟慮する機会は増加することは予想される。 ====刑事政策的見地==== ;一般予防効果の大きさ :極刑は重大犯罪の拡大に寄与しているとの考え方。感覚的には理解でき、また、少年犯罪においては、「少年は死刑にならない(だから、凶悪犯罪を行っても恐れることはない)」ということが実行時に意識されることもあることから予防効果の存在を推定することもできるが、実証的なものであるかは国際比較も含めさらに議論が必要であろう。 == 自由刑統一論 == 日本法において自由刑は大きく[[懲役]]と[[禁錮]]にわかれていたが、その違いは労役が強制か否かの違いである。受刑の基準として、懲役は道徳的に非難すべき罪いわゆる'''破廉恥罪'''に対するであり、禁錮はそうでない罪('''非破廉恥罪''')に対するものというのが基本的理念であった。 しかしながら、破廉恥罪かそうでないかの線引きは明確とはいえず、一般に「懲役又は禁錮」とともに定められており([[内乱罪]]には懲役はない)、いずれを選択するかは裁判官に委ねられていた。傾向として、[[過失犯]]の初犯は禁錮刑を言い渡されることが多いが、この場合であっても[[執行猶予]]がつくのが通例であり、ことさらに禁錮刑である必然性は不明であった。 このように、非破廉恥罪といった概念が曖昧である(犯罪であれば、非道徳的であり破廉恥であるとするのが理解しやすい)ことと、労役を課すことがあたかも不名誉なことであるとの考え方は労働を軽視するものであり、これらを分ける実益はなく、禁錮刑を廃止し懲役刑のみにしようというのが'''自由刑統一論'''である。 「統一論」の登場から長期間放置されてきたきらいがあるが、2022年における刑法改正により、懲役刑と禁錮刑を廃止して一本化(実際は禁固刑の廃止)した「拘禁刑」が創設された。 == 短期自由刑廃止論 == *短期自由刑廃止論の目的 *週末拘禁制度 *社会奉仕制度 ==刑事施設廃止論== 刑務所などの刑事施設は再犯者をふやすだけで更生に役だっていない、企業が労役を安価な労働力とみなして厳罰化をもとめている、刑事施設の存在が社会問題を安易に刑罰で解決しようという風潮を蔓延させているといった理由から究極的に刑事施設の廃止をめざす主張。アンジェラ・デイヴィスの『監獄ビジネス』など。 == 保安処分 == *定義と目的 *刑罰との相違点 **一元主義と二元主義 *日本法における保安処分 == ディクリミナリゼーション(非犯罪化) == *目的 **刑法の謙抑性 **ラベリング理論 *代替措置 ==参考文献== *アンジェラ・デイヴィス 『監獄ビジネス…グローバリズムと産獄複合体』 岩波書店、2008年9月。{{ISBN|9784000224871}} == 関連項目 == *[[w:死刑の廃止|死刑の廃止]] {{stub|law}} [[Category:刑法|きようけいにかかるそうてん]] [[Category:行刑法|そうてん]] qpwnh0z6in7q9e0gpss7b2metaz8kgi TeX/LaTeX入門 0 2813 305020 303872 2026-10-22T09:26:47Z Jcb 92857 305020 wikitext text/x-wiki {{Pathnav|メインページ|frame=1|small=1}} {{DISPLAYTITLE:{{TeX}}/{{LaTeX}}入門}} == はじめに == [[w:TeX|{{TeX}}]]とは[[w:ドナルド・クヌース|ドナルド・クヌース]]が開発した[[w:電子|電子]][[w:組版|組版]]ソフトウェアである。[[w:Microsoft Windows|Microsoft Windows]]、[[w:macOS|macOS]]、[[w:UNIX|UNIX]]など様々なプラットフォームで利用可能であり、商業印刷並みの品質で印刷を行うことができる。[[w:LaTeX|{{LaTeX}}]]は[[w:レスリー・ランポート|レスリー・ランポート]]が{{TeX}}の上にマクロパッケージを組み込んで構築した文書処理システム(テキストベースの組版処理システム)である。ごく基本的な機能を有している{{TeX}}と組み合わせて用いることで、より手軽に組版を行うことができる。 {{LaTeX}}は、数式を綺麗に出力できるため、理工系の文章で広く使われている。このような事情があるから、{{LaTeX}}を理工系専用の論文・レポート作成ツールだと思っている人も多いかもしれないが、{{LaTeX}}はそれだけでなく、幅広い文書の組版をすることができる。例えば、技術書や専門書には{{LaTeX}}で組まれたものが多く存在する。他にも、縦組みの小説、プレゼンテーション資料、漢文訓読文、楽譜の組版なども他の商用DTPと遜色ない程度で可能である。 === 長所と短所 === ==== 長所 ==== * 組版の元となるデータ(ソースファイル)はテキストファイルであり、特定の環境やアプリケーションに依存しない * 商用DTPに勝るとも劣らない、高精度な出力 * 章や節などの論理構造で記述することができる * ページ番号や章番号、図番号などを自動で割り振る * 目次や索引、参考文献目録なども自動で作成可能 * 相互参照が可能 * 数式の優れた印刷 ==== 短所 ==== * ソースファイルは出力形式で記述できないため、表などを作る際には多少の慣れが必要 * コンパイルではコマンドライン操作が必要となるため、[[w:GUI|GUI]]に慣れたユーザには取っ付きづらい。 == {{TeX}}/{{LaTeX}}環境の導入 == === Linux === Debian/Ubuntuに {{TeX}} Live をインストールするにはターミナルを開いて以下のコマンドを入力します。 <syntaxhighlight lang="bash" copy> sudo apt update sudo apt install texlive-full </syntaxhighlight> パッケージ数が多いため、環境やネットワーク回線によっては1時間近くかかります。 Fedoraの場合は次のコマンドを入力します。 <syntaxhighlight lang="bash" copy> sudo dnf install texlive-scheme-full </syntaxhighlight> その他のLinuxの場合は次のコマンドを入力します。 <syntaxhighlight lang="bash" copy> curl -Lo install-tl-unx.tar.gz https://mirror.ctan.org/systems/texlive/tlnet/install-tl-unx.tar.gz tar xzf install-tl-unx.tar.gz cd install-tl-20* sudo ./install-tl --no-interaction </syntaxhighlight>最後のコマンドの実行には数時間かかります。インストールが完了したら、ターミナルで <syntaxhighlight lang="bash" copy>echo 'export PATH="/usr/local/texlive/2026/bin/x86_64-linux:$PATH"' >> ~/.bashrc source ~/.bashrc</syntaxhighlight> を実行します。 ARM系の場合は <syntaxhighlight lang="bash" copy>echo 'export PATH="/usr/local/texlive/2026/bin/aarch64-linux:$PATH"' >> ~/.bashrc source ~/.bashrc</syntaxhighlight> とします。 インストール後、以下のコマンドでバージョンが表示されれば導入は成功しています。 <syntaxhighlight lang="bash" copy> tex --version </syntaxhighlight> === Windows === [[w:TeX Live|{{TeX}} Live]]にWindows用のインストーラ(install-tl-windows.exeまたはinstall-tl.zip)が作成されており、これらを用いることで比較的容易に環境を構築することができます。 # [https://www.tug.org/texlive/acquire-netinstall.html 公式サイト]から[https://mirror.ctan.org/systems/texlive/tlnet/install-tl-windows.exe install-tl-windows.exe]をダウンロードします。 # install-tl-windows.exe を実行し、画面の指示に従ってインストールします。インストール項目に<code>collection-langjapanese</code>が含まれていることを確認してください。 インストールに数時間ほど掛かります。 === macOS === macOSに {{TeX}} Live をインストールするにはターミナルを開いて以下のコマンドを入力します。 <syntaxhighlight lang="bash" copy> curl -Lo install-tl-unx.tar.gz https://mirror.ctan.org/systems/texlive/tlnet/install-tl-unx.tar.gz tar xzf install-tl-unx.tar.gz cd install-tl-20* sudo ./install-tl --no-interaction </syntaxhighlight>最後のコマンドの実行には数時間かかります。インストールが完了したら、ターミナルで <syntaxhighlight lang="bash" copy>echo 'export PATH="/usr/local/texlive/2026/bin/universal-darwin:$PATH"' >> ~/.zshrc source ~/.zshrc</syntaxhighlight> を実行します。 インストール後、以下のコマンドでバージョンが表示されれば導入は成功しています。 <syntaxhighlight lang="bash" copy> tex --version </syntaxhighlight> macOS には TeX Live の代わりに、MacTeXをインストールすることができます。[https://www.tug.org/mactex/ MacTeX]はTeXのほか、TeXShopやBibDeskなど、関連ツールがインストールされます。[[w:MacTeX|MacTeX]]は、[https://brew.sh/ Homebrew]によって導入することもできます。 === MathLibre === MathLibreは[[w:Knoppix|Knoppix]] を原型に開発されたLinux ディストリビューションであり、{{TeX}}など様々な数学ソフトウェアが初期搭載されています。 === Cloud LaTeX === [https://cloudlatex.io/ Cloud LaTeX] は[[w:アカリク|株式会社アカリク]]が開発した日本語対応済みオンライン{{LaTeX}}コンパイルサービスです。利用にはアカウント登録が必要になります。論文誌等のテンプレート各種も用意されています。 === Overleaf === [https://www.overleaf.com/ Overleaf]はオンラインで使用できる{{LaTeX}}エディタで、リアルタイムの共同制作が可能です。 == LaTeXを始める == この章では最初にlualatexコマンドを用いた文書作成、続いてuplatexコマンドを用いた文書作成の順に解説します。入力するコマンドが''command''である場合、以下の様に示します。 <syntaxhighlight lang=bash> $ command output, output output, output </syntaxhighlight> $は[[w:シェル|シェル]]の出力(プロンプト)であり、ユーザが入力する必要はありません。コマンドを実行(commandを入力しEnterキー等を入力)すると、上の例では“output, output”が二行出力されていることを示します。コマンド入力に関しては[[UNIX/Linux入門]]や[[MS-DOS/PC DOS入門]]を参照して下さい。 === 初めての TeX 文書を作ろう === ==== 準備 ==== テキストエディタを用いてtest.texというファイルを作成します。ファイルの内容は以下のようにします。 * 以下の内容に含まれる\は、環境によっては¥([[w:¥記号|円記号]])、あるいは\([[w:バックスラッシュ|バックスラッシュ]])に見えます。 <syntaxhighlight lang=latex line> \documentclass{jlreq} \begin{document} おはよう、\TeX \\ おはよう、\LaTeX \\ \end{document} </syntaxhighlight> 大文字と小文字は区別されます。大文字は小文字にしないで入力してください。 ==== コンパイル ==== これを保存した上で、以下のようにコマンド<code>lualatex test</code>で{{LaTeX}}を実行します。引数には作成した{{LaTeX}}ファイルの拡張子(.texサフィックス)を除いた名前を指定します。すると下記のような出力画面になります。 <syntaxhighlight lang=bash> $ lualatex test Output written on test.pdf (1 page, 8697 bytes). Transcript written on test.log. </syntaxhighlight> 問題なくコンパイルされると最後の二行が上のようになります。環境によっては出力されるサイズが異なるかもしれません。 lualatex の代わりに uplatex が使われることもあるので、同じ文書を uplatex でコンパイルしてみましょう。 <syntaxhighlight lang="bash"> $ uplatex test Output written on test.dvi (1 page, 500 bytes). Transcript written on test.log. </syntaxhighlight> text.dviという''[[w:DVI (ファイルフォーマット)|DVIファイル]]''が作成されます。続いて <syntaxhighlight lang="bash"> $ dvipdfmx test </syntaxhighlight> と実行することで、pdfファイルが生成されます。[[w:dvipdfmx|dvipdfmx]]はDVIファイルを[[w:PDF|PDF]]に変換するソフトです。 TeX が誕生した時点では PDF というファイル形式は存在しなかったため、DVIという独自のファイル形式で出力されます。dviout や xdvi などのソフトでDVI ファイルを閲覧することもできますが、基本的には pdf に変換してから閲覧します。lualatex は比較的最近の TeX エンジンなので直接 pdf ファイルを出力します。 ==== 解説 ==== test.texファイルと照らし合わせて解説をします。 <syntaxhighlight lang="latex" start="2" line="">\documentclass{jlreq} </syntaxhighlight> 全てのLaTeXドキュメントは'''\documentclass{...}'''コマンドより始まります。この波括弧内に''クラスファイル''と呼ばれる、文書のレイアウトなどを定義しているファイルを指定します。今回の場合、クラスファイルは'''jlreq'''です。これは短いドキュメントの書式で、論文の記事に類似しています。 <syntaxhighlight lang=latex start=3 line>\begin{document} </syntaxhighlight> '''\begin{...}'''は'''\end{...}'''と対応して使い、''環境''と呼ばれる区切りをあらわします。今回の場合、環境は'''document'''です。これは文書の本文を示す重要な環境で、この中にあるものが出力されます。\begin{document}より前の行を''プリアンブル''と呼びます。 <syntaxhighlight lang=latex start=4 line>おはよう、\TeX \\ </syntaxhighlight> 最初の段落で、\に続く'''\TeX'''は''コマンド''と呼ばれ、様々な表現を可能にします。このコマンドは {{TeX}} のロゴを表示します。'''\\'''は強制改行をするコマンドです。 <syntaxhighlight lang=latex start=5 line>おはよう、\LaTeX \\ </syntaxhighlight> 前の段落で強制改行されているので、行頭は字下げされずに出力されます。'''\LaTeX'''は {{LaTeX}} のロゴを出力するコマンドです。行末に強制改行のコマンドがあります。 <syntaxhighlight lang=latex start=6 line>\end{document} </syntaxhighlight> 本文の終わりを示します。これ以降は出力されません。 今回は日本語を含んでいるソースファイルをコンパイルしました。日本語を含む文書作成の際、クラスファイルには'''jlreq'''などを指定します。 日本語に対応したクラスファイルには uplatex の場合 '''ujarticle'''や'''ujreport'''など、lualatex にはこれに対応した '''ltjsarticle''', '''ltjsreport''' が存在します。'''jlreq''' はuplatex とlualatex の両方に対応したクラスファイルです。 TeXでは一行以上空けない改行は全て無視されます。テキストエディタで編集している際、一行が長くなると場合によっては横スクロールが必要となり、見やすさが損なわれるので適度に改行することがあります。 では段落を作りたいときはどうすれば良いのでしょうか。一つは英語だけの文書を作成した際に利用した、'''\\'''コマンドです。しかし先ほど説明したとおり、強制改行の命令なので行頭の字下げは行われません。そこで今回のように、一行空けた改行を行います。こうすることで新たな段落を作ることができるのです。 === コメント === test.tex に次のような行を付け足してみましょう。 <syntaxhighlight lang=latex line> % File name: test.tex \documentclass{article} \begin{document} おはよう、\TeX \\ おはよう、\LaTeX \\ %この行は出力されません。 \end{document} </syntaxhighlight> '''%'''以降はその行の終わりまで''コメント''とみなされ、出力されません。今回はファイル名を明確にするために書いてみました。 コンパイル結果は先ほどの test.tex と同様です。 == 文書構造 == この章ではレポートなどの文書を作成する際に必要となる、表紙や章立ての作成を行います。論文の作成を例に話を進めますが、レポートでも同様に作業を行なうことができます。 === クラスファイルオプション === TeX文書の最初に使用する'''\documentclass{}コマンド'''は、大括弧([と])を用いてオプションを渡すことが出来ます。オプションを指定することで、細かい指定をすることが出来ます。 ==== jlreq の場合 ==== <code>documentclass</code> の部分を次のように書き換えるとフォントサイズを変更することができます。 <syntaxhighlight lang=latex> \documentclass[fontsize=20pt,jafontsize=30pt]{jlreq} </syntaxhighlight> 他にも、jlreqでは次のようなオプションを指定することができます。 ; fontsize=12pt : フォントサイズを設定します。 ; jafontsize=12pt : 和文フォントサイズを fontsize とは独立に設定します。 ; paper=a4 : 用紙サイズを設定します。a0, a1, ... , a10, b0, b1, ..., b10 などが指定できます。<code>{106mm,173mm}</code> のように横×縦の寸法を指定することもできます。 ; book, report : 本あるいは報告書の形式になります。 ; tate : 縦書きで組版します。 ; oneside, twoside :片面印刷・両面印刷に適した組版を行うように設定します。 ; onecolumn, twocolumn :本文を二段組にするかのオプションです。 ; titlepage, notitlepage :\maketitleコマンドの出力に1ページ確保するかの設定です。 ; openright, openany :chapterを右ページから行うか、或いは任意であるかのオプションです。 ; leqno, fleqn :leqnoオプションは数式番号を左側へ、fleqnオプションは数式番号を右側へ出力するように設定します。 さらに詳しいクラスファイルオプションについて知りたい場合は、 <syntaxhighlight lang="bash"> $ texdoc jlreq </syntaxhighlight> と入力するとマニュアルを閲覧することができます。 ==== ujarcticleの 場合 ==== 以下の内容をclassoption.texなどとし、保存してください。 <syntaxhighlight lang=latex> % File name: classoption.tex \documentclass[12pt]{ujarticle} \begin{document} こんにちは、世界! \end{document} </syntaxhighlight> 続いて、以下のコマンドでコンパイルします。 <syntaxhighlight lang=bash> $ uplatex classoption </syntaxhighlight> ==== 解説 ==== \documentclassコマンドの中括弧の前に、大括弧でオプションを指定することが出来ます。省略された場合はデフォルトのオプションが実行されることになります。 以下に ujarticle, ltjsarticleで指定できる殆どのオプションを掲載します。カンマで区切っているものは、そのいずれかしか選択できないものです(a4paperとa4jの項目も同時指定不可)。 ; a4paper, a5paper, b4paper, b5paper : それぞれの用紙に設定します。 ; a4j, a5j, b4j, b5j, a4p, a5p, b4p, b5p : より日本語組版の通例にマッチした、本文領域が広めの体裁になるようにマージンを確保します。 ; 10pt, 11pt, 12pt : 基準となるフォントサイズを指定します。 ; landscape : 用紙を横置き(横の長さが長い)に設定します。<ref>ターミナルからdvipdfmxコマンドでPDFを出力した場合、本文記事中で\documentclassコマンドにlandscapeオプションを指定しただけでは横長の用紙設定でPDFが出力されないことがあります。これには2種類の対処方法があります。 * ターミナルからdvipdfmxコマンドを入力する際、-lオプションを指定 * プリアンブルに\AtBeginDvi{\special{landscape}}の一行を追加 なお、本文記事中にlandscapeオプションを指定しないと、用紙は横長だが本文レイアウトが縦長のまま出力されてしまうことに注意してください。 </ref> ; tombow, tombo :用紙サイズに合わせたトンボを出力します。tomboオプションは作成日時を出力しません。 ; tate :縦書きで組版します。<ref>documentclassにujarticleを指定した場合、不具合が出る場合があります。 : 例)タイトルページを組み込んでも、\authorに縦書き設定が反映されない。 その場合はdocumentclassにutarticleを指定してください。</ref> ; oneside, twoside :片面印刷・両面印刷に適した組版を行うように設定します。 ; onecolumn, twocolumn :本文を二段組にするかのオプションです。 ; titlepage, notitlepage :\maketitleコマンドの出力に1ページ確保するかの設定です。 ; openright, openany :chapterを右ページから行うか、或いは任意であるかのオプションです。 ; leqno, fleqn :leqnoオプションは数式番号を左側へ、fleqnオプションは数式番号を右側へ出力するように設定します。 ; openbib :参考文献リストを各項目ごとに改行する、オープンスタイル書式で出力します。 ; draft, final :draftオプションは、オーバーフルボックスが発生した箇所へ5ptの罫線を引きます。 === プリアンブル === ''プリアンブル''とは、パッケージや独自のマクロを定義する際に用いる場所です。 ''パッケージ''とは、別のTeX文書をプリアンブルへ読み込むことで、初期状態では用意されていないような便利な機能(正確には'''マクロ'''と呼ばれます)を追加することが出来ます。 ''マクロ''とは、今までに紹介した'''\TeXコマンド'''など、一度呼び出すと一連の処理を行うものです。 ==== 準備 ==== まずは以下の内容をpreamble.texなどとし、保存してください。 <syntaxhighlight lang="latex"> % File name: preamble.tex \documentclass{jlreq} % urlパッケージを使う \usepackage{url} % Wikiプロジェクトの名前と、日本語版プロジェクトへのURLを作る \newcommand{\wikiproj}[1]{% Wiki#1 (http://ja.wiki#1.org/)} \begin{document} 日本語版ウィキブックスは\url{http://ja.wikibooks.org/}にあります。 % 出力結果↓ \wikiproj{pedia}, % Wikipedia (http://ja.wikipedia.org/), \wikiproj{books}. % Wikibooks (http://ja.wikibooks.org/). \end{document} </syntaxhighlight> 今まで通りにコンパイルしますが、urlパッケージが無い場合は以下のようなエラーが表示されます。エラーが表示されたら、xを入力してEnterキーを押して終了します。 <syntaxhighlight lang=bash> $ uplatex preamble ! LaTeX Error: File `url.sty' not found. Type X to quit or <RETURN> to proceed, or enter new name. (Default extension: sty) Enter file name: </syntaxhighlight> ==== 解説 ==== '''\usepackage{}コマンド'''は、中括弧に指定されたファイル名に、拡張子が.styのファイルを読み込むコマンドです。'''\newcommandコマンド'''は新たにマクロを定義するコマンドです。 ここではプリアンブルへ\usepackage{}コマンドの書き方を覚えるだけで十分です。\newcommandコマンドに関してはここで理解する必要はありませんので、詳しくは[[#応用]]で説明します。 === 表紙 === 論文では最初のページに、表題や著作者などを記すことが多いと思います。LaTeXでは比較的簡単に作成することが出来ます。 ==== 準備 ==== 下の内容をmaketitle.texなどとし、保存してください。 <syntaxhighlight lang="latex"> % File name: maketitle.tex \documentclass{jlreq} \begin{document} \title{文書のタイトル} \author{名無しの権兵衛} \date{2001年1月15日} \maketitle 本文。 \end{document} </syntaxhighlight> 続いて、コンパイルします。 ==== 解説 ==== では、この例に出てくる主要なコマンドの解説をします。コマンド名が太字のものは\maketitleを使用する際に必須のコマンドで、省略することはできません。 ; \title{} : 表題を定義するコマンドです。\LARGEサイズ(サイズに関しては後述します)で印刷されます。 ; \author{} : 著者を定義するコマンドです。\Largeサイズで印刷されます。 ; \date{} : 日付を定義するコマンドです。\largeサイズで印刷されます。このコマンドを指定しないと、ujarticleクラスでは“平成13年1月15日”の形で印刷され、日付を出力したくない場合は引数を空にします。例では英語版Wikipediaのプロジェクトが始まった日を西暦で表示します。 ; \maketitle : このコマンドを記述することで、上のコマンドで定義した表紙の要素を印刷します。つまりこのコマンドよりも前に、上のコマンドを記述する必要があります。 \titleと\author、そして\dateコマンドは引数を取るコマンドです。引数は例の通り、''{''と''}''の中括弧で囲みます。例では本文の開始と同じページに表紙を印刷しましたが、1ページ使って表紙を印刷したい場合はクラスファイルオプションにtitlepageを指定します。つまり、\documentclass[titlepage]{ujarticle}と書けばそれだけでいいのです。 === 概要 === ==== 準備 ==== 以下の内容を、abstract.texと保存しましょう。 <syntaxhighlight lang="latex"> % File name: abstract.tex \documentclass{jlreq} \begin{document} \title{概要を表示する} \author{ウィキブックス} \date{\today} \maketitle \begin{abstract} ここに概要を書きます。 \end{abstract} 本文。 \end{document} </syntaxhighlight> ==== 解説 ==== 概要は'''abstract環境'''を用います。環境は、\begin{}コマンドと\end{}コマンドで囲うものですね。abstract環境では“概要”という文字を太字で印刷し、概要の文章の左右に空白を空けて印刷します。jsarticleクラスでは\smallサイズで印刷します。 “概要”という文字を“要約”などに変更したい場合は、[[#応用]]で詳しく説明します。 === 目次 === ==== 準備 ==== 以下の内容を、toc.texと保存しましょう。 <syntaxhighlight lang="latex"> % File name: toc.tex \documentclass{jlreq} \begin{document} \tableofcontents % 以下の \section{}, \subsection{}コマンドについては後述します。 \section{はじめに} \subsection{時代背景} \subsection{著者について} \section{人生について} \subsection{人生とは} \end{document} </syntaxhighlight> '''\tableofcontentsコマンド'''を使用するときは、3回程度はコンパイルします。 <syntaxhighlight lang=bash> $ uplatex toc $ uplatex toc </syntaxhighlight> ==== 解説 ==== \tableofcontentsコマンドでは、コンパイル時に生成される'''.tocファイル'''を基に目次を生成します。この.tocファイルは後述の\sectionコマンドなどの情報を書き出してあるファイルで、初めてのコンパイル作業では.tocファイルがないため、目次は生成されません。 また2回目のコンパイルで目次が挿入されると目次以降の本文がずれてしまい、2回だけでは目次と本文のページ番号が合わない場合がありますので、コンパイルは少なくとも3回程度行なってください。 === 章立て === 論文では複数の“章”や“節”という固まりを作ることになると思います。ここでは、章立ての仕方について解説します。 ==== 準備 ==== 以下の内容を、section.texなどで保存しましょう。 <syntaxhighlight lang="latex"> % File name: section.tex \documentclass{jlreq} \begin{document} \section{はじめに} 第一章です。 \subsection{時代背景} 第一章、第一節です。 \subsection{著者について} 第一章、第二節です。 \section{人生について} \subsection{人生とは} 第二章、第一節です。 \end{document} </syntaxhighlight> 今までと同様にコンパイルしてみましょう。 ==== 解説 ==== 上の例では'''\section'''コマンドと'''\subsection'''コマンドのみを使いましたが、同様のコマンドは以下の表の通りです。 {| class="wikitable" |+ '''章立てコマンドの一覧''' |- ! コマンド !! 章節 !! レベル |- | \part{} || 部 || -1 |- | \chapter{} || 章 || 0 |- | \section{} || 節 || 1 |- | \subsection{} || 小節 || 2 |- | \subsubsection{} || 小々節 || 3 |- | \paragraph{} || 段落 || 4 |- | \subparagraph{} || 小段落 || 5 |} ※\chapter{}コマンドはarticle, ujarticleクラスでは使用できません。 章立てコマンドは自動的に章番号をつけ、上位レベルのコマンドを記述すると番号は再び1から始まります。これらのコマンドは、\sectionに続けて\subsubsectionを記述することができますが、文書の論理構造的に正しくないので、\sectionの次は\subsection以上のものを記述するようにしましょう。 章番号を付けずに、目次へ出力しない章を作りたいときはどうすればよいのでしょうか。これは簡単で、それぞれのコマンド名のあとに[[w:アスタリスク|アスタリスク]](半角の*)を付けるだけです。 <syntaxhighlight lang=latex> \section*{前に番号がつかず、目次にも現れない章} </syntaxhighlight> 番号を出力するとともに“章”という文字を出力したりする場合は、[[#応用]]を参照してください。 == 書式 == この章では文字列の見た目を変更するコマンドを紹介します。 === サイズ === ==== 例 ==== <syntaxhighlight lang="latex">% File name: fontsize.tex \documentclass{jlreq} \begin{document} ここは普通の大きさです。 {\small ここは小さい文字になります。} 普通の大きさです。 {\large ここは大きい文字になります。} 普通の大きさです。 {\small 小さい文字の中に、{\large 大きい文字を入れて、}再び小さい文字になります。} \end{document}</syntaxhighlight> ==== 解説 ==== フォントサイズは、サイズを変更したい文字列を中括弧で囲い、最初に変更するコマンドを記述します。中括弧で囲んでいる中に、別の中括弧を含めた場合は最も内側が優先されます。 上記以外のサイズ変更コマンドは以下の表の通りです(ujarticleクラス)。各コマンドにおける実際のフォントサイズは、\documentclassコマンドのオプション等で指定された基準のフォントサイズ(\normalsize)によって異なります。 {| class="wikitable" |+ '''サイズ変更コマンド一覧''' |- ! コマンド ! colspan="3" | ポイント |- | \tiny || 5 || 6 || 6 |- | \scriptsize || 7 || 8 || 8 |- | \footnotesize || 8 || 9 || 10 |- | \small || 9 || 10 || 11 |- | bgcolor="#CCCCCC" | \normalsize | bgcolor="#CCCCCC" | 10 | bgcolor="#CCCCCC" | 11 | bgcolor="#CCCCCC" | 12 |- | \large || 12 || 12 || 14 |- | \Large || 14 || 14 | 17 |- | \LARGE || 17 || 17 || 20 |- | \huge || 20 || 20 || 25 |- | \Huge || 25 || 25 || 25 |} === 書体 === {{LaTeX}}で書体を扱う際、以下の種類に分けることが出来ます。 ; ファミリー(Family) : デザインで分類したもの。いわゆるフォントにほぼ同じです。 ; シリーズ(Series) : 文字の太さを分類したもの。{{TeX}}以外ではウェイトと呼ばれています。 ; シェイプ(Shape) : 見た目の形で分類したもの。斜体やスモールキャップ体などです。 更に記述の方法は、以下の2種類あります。 * 宣言型(Declaration) * コマンド型 宣言型の記述では、中括弧を用いて範囲を指定しない限り最後まで変更されます。 ==== ファミリー ==== <syntaxhighlight lang="latex">% File name: fontfamily.tex \documentclass{jlreq} \begin{document} Normal. % 宣言型 {\gtfamily Gothic.} {\rmfamily Roman.} % コマンド型 \texttt{Typewriter.} \end{document}</syntaxhighlight> {| class="wikitable" |- ! !! 宣言型 !! コマンド型 |- | 明朝体 || \mcfamily || \textmc |- | ゴシック体 || \gtfamily || \textgt |- | ローマン体 || \rmfamily || \textrm |- | サンセリフ体 || \sffamily || \textsf |- | タイプライタ体 || \ttfamily || \texttt |} ==== シリーズ ==== <syntaxhighlight lang=latex> % File name: fontseries.tex \documentclass{jlreq} \begin{document} Normal. {\bfseries Bold.} \end{document} </syntaxhighlight> {| class="wikitable" |- ! !! 宣言型 !! コマンド型 |- | ミディアム || \mdseries || \textmd |- | ボールド || \bfseries || \textbf |} ==== シェイプ ==== <syntaxhighlight lang=latex> % File name: fontshape.tex \documentclass{jlreq} \begin{document} Normal. {\itshape Italic.} {\slshape Slanted.} \end{document} </syntaxhighlight> {| class="wikitable" |- ! !! 宣言型 !! コマンド型 |- | 通常体(Upright) || \upshape || \textup |- | イタリック体(Italic) || \itshape || \textit |- | スモールキャップ体(Small caps) || \scshape || \textsc |- | 斜体(Slanted) || \slshape || \textsl |} イタリック体と斜体の違いですが、イタリック体は通常体を傾けた形でデザインされたものを使用するのに対し、斜体は通常体を無理矢理傾けて使用します。 ==== その他 ==== 宣言型では'''\normalfontコマンド'''、コマンド型では'''\textnormal{}コマンド'''は通常の書体設定(大抵は宣言型記述で、\rmfamily\mdseries\upshape)に戻します。また宣言型記述方法で、タイプライタ体を\ttコマンドで記述できるシステムがありますが、互換性維持のためのコマンドなので上で示したコマンドを使いましょう。 ファミリーとシリーズ、シェイプは以下のように、それぞれを組み合わせることが可能です。同じ種類のコマンドを記述すると最後のものが優先されます。 <syntaxhighlight lang=latex> % File name: fontother.tex \documentclass{ujarticle} \begin{document} Normal. {\ttfamily\bfseries\itshape Typewriter, Bold and Italic.} {\ttfamily\scshape\rmfamily Roman and Small caps.} \end{document} </syntaxhighlight> == 環境 == この章では文書作成の上で有用な環境である、箇条書きを幾つか紹介します。 === 箇条書き === 箇条書きには幾つか種類があります。 * HTMLでは <syntaxhighlight lang=html inline><ul></syntaxhighlight> のような記号に続くリスト('''itemize環境''')。 * HTMLでは <syntaxhighlight lang=html inline><ol></syntaxhighlight> のような数字に続くリスト('''enumerate環境''')。 * HTMLでは <syntaxhighlight lang=html inline><dl></syntaxhighlight> のような任意の言葉に続くリスト('''description環境''')。 箇条書きの構造は、'''\begin{}コマンド'''で見た目を決定する環境を開始し、'''\itemコマンド'''で要素を記述します。 ==== itemize環境 ==== <syntaxhighlight lang="latex"> % File name: itemize.tex \documentclass{jlreq} \begin{document} 以下はWikibooksの姉妹プロジェクトのリストです。 \begin{itemize} \item Wikipedia \item Wiktionary \item Wikiquote \end{itemize} \end{document} </syntaxhighlight> このソースファイルをコンパイルすると、中黒で順序のない箇条書きを作ることが出来ます。またソースファイルでは、LaTeXの構造を分かりやすくするために\itemコマンドの前に半角スペースを2個入れていますが、出力には影響ありません。 ==== enumerate環境 ==== <syntaxhighlight lang="latex"> % File name: enumerate.tex \documentclass{jlreq} \begin{document} Wikiを使うメリットは以下の3点です。 \begin{enumerate} \item インターネット上のどこからでも更新できる。 \item ブラウザだけで作業が出来る。 \item Wikiの文法は覚えやすく、Wiki内のリンクは簡単。 \end{enumerate} \end{document} </syntaxhighlight> このソースファイルをコンパイルすると、算用数字で順序のある箇条書きを作ることが出来ます。 ==== description環境 ==== <syntaxhighlight lang="latex"> % File name: description.tex \documentclass{jlreq} \begin{document} 以下の期日で新年会を行います。 \begin{description} \item[日時] 20xx年1月1日 xx時より \item[場所] 日本語版ウィキブックス、談話室にて \item[会費] ψ0 \end{description} \end{document} </syntaxhighlight> このソースファイルをコンパイルすると、\itemコマンドの直後に[と]で囲んだ文字列が太字で印刷され、定義リストを作ることが出来ます。 === 引用 === 他の文献などから引用する場合に用いるのが'''quote環境'''と'''quotation環境'''です。 <syntaxhighlight lang="latex">% File name: quote.tex \documentclass{jlreq} \begin{document} 先ずはquote環境を使います。 \begin{quote} 吾輩は猫である。名前はまだ無い。 どこで生れたかとんと見当がつかぬ。 何でも薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いていた事だけは記憶している。 \end{quote} 続いてquotation環境を使います。 \begin{quotation} 吾輩は猫である。名前はまだ無い。 どこで生れたかとんと見当がつかぬ。 何でも薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いていた事だけは記憶している。 \end{quotation} 夏目漱石『吾輩は猫である』より。 \end{document}</syntaxhighlight> ==== quote環境 ==== 引用文中の段落の字下げを行わない引用環境です。短い引用に用いられます。 ==== quotation環境 ==== 引用文中の段落の字下げを行う引用環境です。比較的長い文章を引用する際に用いられます。 === 整形済みテキスト === ==== verbatim環境 ==== begin〜end間のテキストをそのまま出力する環境です。プログラムのソースファイルなどをそのまま載せたいとき、LaTeXの制御文字を連続して使用する場合などに用います。ただし、行頭のタブは無視され、行の途中のタブは半角スペースに置き換えられるので注意してください。 <syntaxhighlight lang="latex"> % File name: verbatim.tex \documentclass{jlreq} \begin{document} \begin{verbatim} !"#$%&'()+*<>?_|~= \end{verbatim} \end{document} </syntaxhighlight> ==== verbatim*環境 ==== verbatim環境とほとんど同じですが、半角スペースがあるところにアキの印が出力されます。 ==== \verbと\verb* ==== verbatim環境は使用すると、整形済みテキストの前に必ず改行されます。これは、文中にちょっとしたものを書きたいときには不便です。\verbを使うことで、文中に整形済みテキストを挿入することができます。使い方は、\verbの後に任意の記号を置き、その後に整形済みテキストを置き、\verbの後に置いた記号をもう一度置きます。\verbの後に置く記号は、整形済みテキストに含まれていないものなら、何でもかまいません。 <syntaxhighlight lang="latex"> % File name: verbatim.tex \documentclass{jlreq} \begin{document} 今日はとても楽しかった\verb+(^_^)+ですね。 \end{document} </syntaxhighlight> == 数式 == TeXは数式の組版に強いと言われます。なぜなら開発者の[[w:ドナルド・クヌース|クヌース]]が自身の著書である[[w:en:The Art of Computer Programming|The Art of Computer Programming]]を書くときに、当時コンピュータで作った組版状態が綺麗ではなく、自ら満足するソフトを作ったからです。この作ったものこそ、{{TeX}}なのです。 === 数式を使うには === 数式を扱うには大きく分けて二つあります。 * 数式を文中へ埋め込む場合で、'''$'''で挟む方法(textstyle) * 別の段落として数式を印刷する場合で、'''\['''と'''\]'''で囲んだり、'''数式環境'''に入れる方法(displaystyle) 後者はページの中心に数式が印刷されます。また、どちらも専用のフォントで表示されます。 LaTeX 標準の機能だけでも数式を入力することはできますが、amsmath というパッケージを使うと、数式環境などが強化されます。ここでは amsmath を前提に記述します。 <syntaxhighlight lang="latex"> \documentclass{jlreq} \usepackage{amsmath} \begin{document} 積分は一般に以下の形で記される。 \[ \int^{b}_{a} f(x) dx \] \end{document} </syntaxhighlight> === 数式モードの基礎 === * 式に含まれる空白は自動的に調節されます * textstyleでは行内に収めるため、圧縮されたような表示になります ** textstyle表示をdisplaystyle表示にしたいときは、'''\displaystyleコマンド'''を用います ==== 数式環境 ==== 文中に数式を挿入する場合は次のいずれかのコマンドで囲みます(インライン数式)。 * '''$''' と '''$''' * '''\(''' と '''\)''' 例: <syntaxhighlight lang=latex> \( 数式 \) </syntaxhighlight> 文中に入れるのではなく、数式として独立させたい場合(別行立ての数式)は、'''align環境'''を用います。 <syntaxhighlight lang="latex"> \begin{align} 数式 \\ 数式 \\ 数式 \end{align} </syntaxhighlight> align環境では1行ごとに番号が付加されます。必要ない場合は'''align*環境'''を用います。 ==== 四則演算と分数 ==== 足し算(+)と引き算(-)は何も考えずに表示できます。掛け算(<math>\times</math>)と割り算(<math>\div</math>)は、それぞれ '''\times コマンド'''、'''\div コマンド'''を用います。分数には '''\frac コマンド'''を用います。最初の引数で分子を指定し、次の引数で分母を指定します。 <syntaxhighlight lang="latex">$ 2 + 3 - 4 \times 5 \div 6 = \frac{5}{3} $</syntaxhighlight> <math>2 + 3 - 4 \times 5 \div 6 = \frac{5}{3}</math> ==== 複数行の数式 ==== 複数行に渡る数式を書く場合は、align環境かalign*環境を使います。<syntaxhighlight lang="latex"> \begin{align*} \frac{1}{2} + \frac{1}{3} &= \frac{3}{6} + \frac{2}{6} \\ &= \frac{3 + 2}{6} \\ &= \frac{5}{6} \end{align*} </syntaxhighlight> この例では見やすくするため半角スペースを用いて = の位置を揃えていますが、実際の処理では & を用いた位置で揃えられます。 ==== 平方根 ==== '''\sqrtコマンド'''を用います。n乗根を表現したいときは、コマンド名の直後に角括弧 [] で数字を囲みます。 <syntaxhighlight lang="latex">\sqrt{4} = 2,\sqrt[3]{8} = 2</syntaxhighlight> <math>\sqrt{4} = 2,\sqrt[3]{8} = 2</math> ==== 冪乗、添字 ==== 冪乗など上付きの文字には ^ を用います。数列など下付きの文字には '''_''' を用います。^ や _ の後が一文字だけであれば{}で囲む必要はありませんが、複数文字で表現したいときに忘れることがあるので、出来る限り{}で囲むようにしましょう。 <syntaxhighlight lang="latex">\begin{align*} &2^3 = 8\\ &a_{n + 1} = a_{n}^{2} + 4\\ &{}^{197}_{\; 79}\mathrm{Au} \end{align*}</syntaxhighlight><math>\begin{align} &2^3 = 8\\ &a_{n + 1} = a_{n}^{2} + 4\\ &{}^{197}_{\; 79}\mathrm{Au} \end{align}</math> === 和(シグマ)、極限、積分=== 和は'''\sumコマンド'''、極限は'''\limコマンド'''、積分は'''\intコマンド'''を用います。 <syntaxhighlight lang="latex"> \begin{align*} \sum_{k = 0}^{10} k \\ \lim_{x \to \infty} f(x) \\ \int^{b}_{a} f(x) dx \end{align*} </syntaxhighlight> それぞれ記号の上下に範囲を印刷しますが、べき乗と数列で扱った'''^'''と'''_'''を用いて表現します。 ==== 関数名 ==== 数学にはsinやcosなど、名前のついた関数がありますが、これらをそのまま<code>sin x</code>のように書いてしまうと、<math>sin x</math> となってしまうため文字が斜体となりきれいに表示されません。有名な関数は'''<code>\sin</code>'''のように、コマンドになっています。 <syntaxhighlight lang=latex> \sin^2 x + \cos^2 x = 1 </syntaxhighlight> また、modについては、二項演算子として使う'''<code>\bmod</code>'''と、カッコつきの'''<code>\pmod</code>'''があります。 <syntaxhighlight lang="latex"> \begin{align*} a \bmod b = 2 \\ a \equiv b \pmod{3} \end{align*} </syntaxhighlight> ただし一部の関数はコマンドになっておらず、そう言った場合は<code>\mathrm</code>を用いて斜体を解除する必要があります。[[w:sinc関数|sinc関数]]を例にすると<code>\mathrm{sinc}(n \pi)</code>とすると、<math>\mathrm{sinc}(n \pi)</math>のように表示されます。ちなみに、<code>\mathrm</code>は、数式環境用の<code>\textrm</code>です。 これを応用して、数式環境で単位を表示させたいときにも<code>$f_{s}=4\mathrm{kHz}$</code>(textstyleの書き方)のように書くことができます。 ==== 特殊記号 ==== 数式にはいろんな記号が登場します。これらは、専用の命令で呼び出せます。日本語のフォントにあるからと言って、それを直接数式モードで使わないようにしましょう。環境によってはエラーになりますし、スペースの配分がうまくいかなくなる原因にもなります。 {| class="wikitable" |+ 特殊記号 ! 記法 !! 結果 |- | <code>\alpha \beta \gamma \delta</code> || <math>\alpha \beta \gamma \delta</math> |- | <code>\Delta \Lambda \Psi \Omega</code> || <math>\Delta \Lambda \Psi \Omega</math> |- | <code>= \neq &lt; &gt; \leq \geq \equiv</code> || <math>= \neq < > \leq \geq \equiv</math> |- | <code>\cap \cup \in \ni \forall \exists</code> || <math>\cap \cup \in \ni \forall \exists</math> |- | <code>\nabla \partial \infty</code> || <math>\nabla \partial \infty</math> |} == BibTeX == BibTeXは、{{LaTeX}}での文献管理のためのツールで、論文やレポートの参考文献を適切なフォーマットで引用することができるものです。まずは、[https://ndlsearch.ndl.go.jp/ 国立国会図書館サーチ]や[https://www.jstage.jst.go.jp/browse/-char/ja J-STAGE]、[https://cir.nii.ac.jp/ CiNii]、大学図書館の蔵書検索システムなどで参考文献を検索すると、書誌情報をBibTeX形式で出力というところがあるはずです。これを押すと、次のようなファイルが出力されるので <code>references.bib</code>などと名前をつけて保存します。 <syntaxhighlight lang="bibtex">@article{Einstein1905, author = {Einstein, A.}, title = {Zur Elektrodynamik bewegter Körper}, journal = {Annalen der Physik}, volume = {322}, number = {10}, pages = {891-921}, year = {1905} }</syntaxhighlight><code>Einstein1905</code>という部分は文献の参照のためのキーです。わかりやすいように適当な名前に変更することができますが、ファイル内で重複したキーを名付けることはできません。 文献を引用する場合は、{{LaTeX}} の本文中に次のように書きます。 <syntaxhighlight lang="latex"> Einsteinが1905年に発表した論文 \cite{Einstein1905} では、電磁気学と力学の統一的な理論としての特殊相対性理論が提唱された。 </syntaxhighlight> また、本文の最後に次のように書きます。<syntaxhighlight lang="latex">\bibliographystyle{jplain} %参考文献の引用形式 \bibliography{references} %references.bib を参照する</syntaxhighlight>コンパイルする際には、{{LaTeX}}, BibTeX, {{LaTeX}}, {{LaTeX}} の順番にコンパイルします。BibTeXの実行は、{{LaTeX}}ファイルが<code>main.tex</code>ならば、コマンドラインで<syntaxhighlight lang="bash"> $ bibtexu main </syntaxhighlight> と入力します。 == latexmk == latexmk は latex のコンパイルを自動で適切に実行してくれるツールです。例えば、BibTeXを使用する場合4回のコマンドを実行する必要がありますが、latexmkを使用すると1回の実行で済みます。 lualatexを使用する場合、<code>.latexmkrc</code> というファイルを作成し、<syntaxhighlight lang="bash"> $pdf_mode = 4; $bibtex = 'bibtexu'; </syntaxhighlight>と書き込みます。 uplatex を使用する場合は、<syntaxhighlight lang="bash"> $latex = 'uplatex'; $dvipdf = 'dvipdfmx %O -o %D %S'; $pdf_mode = 3; $bibtex = 'bibtexu'; </syntaxhighlight>と書き込みます。このように設定が完了したら、<syntaxhighlight lang="bash"> $ latexmk ファイル名.tex </syntaxhighlight>と実行すると、相互参照や参考文献が適切に表示されたpdfファイルが生成されます。 == Beamer == [[w:Beamer|Beamer]](ビーマー)は LaTeX に基づくプレゼンテーションソフトウェアであり、組み込みの各種スタイルや各種色使いが用意されています。documentclassは<code>\documentclass[dvipdfmx,10pt]{beamer}</code>のようになります。CTAN上で配布されている'''beamerposter.sty'''と組み合わせることでポスターの作成にも使えます。印刷に適した「配布資料」作成機能も持ちます。例えば、Beamerで作成したpresentation.pdfの配布資料(縦2枚、横2枚)を作りたい場合は、 <syntaxhighlight lang=latex> \documentclass[a4paper,landscape]{article} \usepackage{pdfpages} \begin{document} \includepdf[pages=1-last,nup=2x2]{presentation.pdf} \end{document} </syntaxhighlight> とします。コンパイルオプションはpdflatexにします。 == 小説の組版 == {{LaTeX}}エンジンは<span style="font-family:serif">Lua</span>{{LaTeX}} を使います。文庫本サイズの小説を書く場合、次のように書きます。 <syntaxhighlight lang="latex">\documentclass[book, paper=a6,%A6判(文庫本) tate,%縦組み jafontsize=12Q,%文字サイズ number_of_lines=17,%一ページあたりの行数 line_length=40zw,%一行あたりの文字数 hanging_punctuation,%ぶら下げ組み open_bracket_pos=nibu_tentsuki,%段落初めの初め括弧を二分アキ、折り返し行頭での初め括弧を天付きとする。 ]{jlreq} \usepackage{luatexja-ruby} \usepackage{titling} \NewPageStyle{mybook}{ running_head_position=top-left, running_head_font=\footnotesize, nombre_position=top-left, odd_running_head=\thetitle } \pagestyle{mybook} \newcommand{\bouten}[1]{\kenten[kenten=﹅,size=0.4]{#1}} \def\――{―\kern-.5\zw―\kern-.5\zw―} \begin{document} \title{蟹工船} \author{小林多喜二} \section*{一} 「おい地獄さ\ruby{行}{え}ぐんだで!」 二人はデッキの手すりに寄りかかって、\ruby{蝸牛}{かたつむり}が背のびをしたように延びて、海を\ruby{抱}{かか}え込んでいる\ruby{函館}{はこだて}の街を見ていた。\――漁夫は指元まで吸いつくした\ruby{煙草}{たばこ}を\ruby{唾}{つば}と一緒に捨てた。巻煙草はおどけたように、色々にひっくりかえって、高い\ruby{船腹}{サイド}をすれずれに落ちて行った。彼は\ruby{身体}{からだ}一杯酒臭かった。 \end{document}</syntaxhighlight>2段組みにする場合は、jlreqのオプションに<code>twocolumn</code>を追加します。判型はa0~a10、b0~b10等を指定できます。B列にはISOとJISの二種類がありますが、jlreqでは日本で主流のJIS B列<ref>A列は、A0を面積が 1 m<sup>2</sup> で縦横比が <math>\sqrt{2}</math> の大きさのものとして、A0の半分の面積のものをA1というように順次定めたものである(長辺を半分にするように切れば短辺:長辺=<math>1:\sqrt{2} = \frac{\sqrt{2}}{2}:1</math> となるから縦横比は変わらない)。B列でも縦横比は <math>\sqrt{2}</math> である。ISO B列では、B0の面積は <math>\sqrt{2} \, \rm{m^2}</math> と定められているから、A列の間をちょうど補完する大きさになっている。対して、JIS B列では、B0 の面積が 1.5 m<sup>2</sup> となっているから、ISO B列よりも6%大きいものになる。</ref>となります。 ルビは、<code>\ruby{蝸牛}{かたつむり}</code> というように書きます。 圏点は、 <code>\kenten{へさき}</code> で指定します。デフォルトでは圏点が黒点となります。圏点として黒ゴマを使うには、<code>\kenten[kenten=﹅,size=0.4]{へさき}</code> と書きます。上の例ではプリアンブルで黒ゴマ圏点用に、<code>\bouten</code> を定義しました。 また、原稿が {{LaTeX}} を前提に書かれていない場合、原稿をそのまま{{LaTeX}}でコンパイルしても正しく出力されないことがあります。例えば、{{LaTeX}}では改段落には空行が必要ですが、原稿でそのように書かれていない場合、改行を意図して入れた改行でも出力では改行されないことになります。このような場合は、Vimなどで<syntaxhighlight lang="vim"> :%s/$/\r/ </syntaxhighlight>のコマンドを実行します。正規表現が利用できるテキストエディタなら同様の置換をすることができます。 == 応用 == === 他のファイルを読み込む === 例えば大きな文書を作成しているときや、共通する部分を持つ文書を作成するとき、一つのLaTeX文書を複数に分割することで編集作業や再利用が容易になります。 <syntaxhighlight lang=latex> % --- article.tex --- \documentclass{ujarticle} \begin{document} \include{title} \include{body} \end{document} % --- title.tex --- \title{文書のタイトル} \author{名無しの権兵衛} \maketitle % --- body.tex --- \section{はじめに} ファイルを分割してみました! </syntaxhighlight> '''include{}コマンド'''を利用することで、指定したファイルをその位置に読み込みます。従って、読み込まれるファイルでは\documentclassコマンドなどを記述する必要はありません。 コンパイルするときは大元の文書ファイルを指定します。他のファイルは自動的に読み込まれます。 <syntaxhighlight lang=bash> $ uplatex article </syntaxhighlight> === ラベルの変更 === ==== 準備 ==== この本は入門なので、簡単に変更できるような方法を紹介します。そのためにjsarticleドキュメントクラスを導入しましょう。 jsarticleドキュメントクラスは[[w:奥村晴彦|奥村晴彦]]が作成した新ドキュメントクラスで、フォントサイズがujarticleに比べて多く用意されていたり、\sectionコマンドのラベルを容易に変更できるようになっています。 jsarticleドキュメントクラスの導入は[https://oku.edu.mie-u.ac.jp/~okumura/jsclasses/ jsarticleのサポートサイト]に載っているので、そちらを参照してください。 ==== 解説 ==== 例えば\sectionの出力を“第1章 はじめに”のようにしたい場合は、[[#プリアンブル]]へ以下の記述をします。 <syntaxhighlight lang=latex> \documentclass[uplatex]{jsarticle} % 以下2行が章のラベルを書き換える \renewcommand{\presectionname}{第} \renewcommand{\postsectionname}{章} \begin{document} \section{はじめに} \end{document} </syntaxhighlight> ujarticleでも以下で紹介する殆どを変更できますが、jsarticleを用いれば\sectionコマンドの出力も変更できます。 {| class="wikitable" |+ '''変更可能ラベル一覧 |- ! 変数 !! コマンド !! 初期値 |- | \prepartname | rowspan="2" | \part || 第 |- | \postpartname || 部 |- | \prechaptername | rowspan="2" | \chapter(book系のみ) | 第 |- | \postchaptername || 章 |- | \presectionname | rowspan="2" | \section | |- | \postsectionname | |- | \contentsname | \tableofcontents || 目次 |- | \listfigurename || \listoffigures || 図目次 |- | \listtablename || \listoftables || 表目次 |- | \refname || \thebibliography(book系以外) || 参考文献 |- | \bibname || \thebibliography(book系) || 参考文献 |- | \indexname || \theindex環境 || 索引 |- | \figurename || \label || 図 |- | \tablename || \label || 表 |- | \appendixname || \appendix || 付録 |- | \abstractname || abstract環境(book系以外) || 概要 |} === マクロ === '''\newcommandコマンド'''は[[w:マクロ_(コンピュータ用語)|マクロ]]を定義するコマンドで、以下のような形式を取ります。 \newcommand{\定義したいコマンド名}{コマンドなど} マクロは定義した名前を呼ぶことで、一連の手続きを手軽に扱うことができます。これにより、煩雑なコマンドも独自のマクロで容易に扱えるようになります。 ==== 簡単なマクロ ==== [[#プリアンブル]]に例があります。 == 脚注 == <references /> == 外部リンク == *[https://texwiki.texjp.org/ TeX Wiki] *[https://www.math.sci.hokudai.ac.jp/~abenori/tex/ TeXの話] *[https://ctan.org/?lang=en CTAN Comprehensive TeX Archive Network] *[https://www.slideshare.net/ssuser4ebddd/cloudlatex Cloudlatex講習] *[https://doratex.hatenablog.jp/entry/20131203/1386068127 TeXによる化学組版] *[https://www.math.sci.hokudai.ac.jp/~abenori/soft/abtexinst.html TeXインストーラ3] === Beamer関連 === *[http://sites.google.com/view/ytadokoro/LaTeX/beamer LaTeX Beamer 入門] *[http://sites.google.com/view/ytadokoro/LaTeX/beamer_poster Beamer ポスター入門] *[https://termoshtt.hatenablog.com/entry/2014/02/17/235005 Beamerによる発表小技集] *[http://math.shinshu-u.ac.jp/~hanaki/beamer/beamer.html Beamerの基本的な使い方サンプル] == 参考文献 == * [[w:奥村晴彦|奥村晴彦]]、[[w:黒木裕介|黒木裕介]]『[改訂第7版]LATEX2ε美文書作成入門』技術評論社、2017年1月、{{ISBN|978-4-7741-8705-1}} {{stub|it}} {{DEFAULTSORT:TeX/LaTeXにゆうもん}} [[category:TeX|にゆうもん]] [[Category:ソフトウェアのマニュアル]] [[Category:マークアップ言語]] {{NDC|007.63}} 8c30cpr3zlnq0kxkqgldrxjy8x4xxpd 人権 (日本国憲法) 0 2864 305057 299969 2026-10-22T11:26:01Z Jcb 92857 305057 wikitext text/x-wiki {{Pathnav|法学|憲法|日本国憲法|frame=1}} {{Wikiversity|Topic:憲法_(人権)|人権 (日本国憲法)}} == 人権総論 == *人権とは何か **人権の歴史 **人権の性質 **人権の根拠 **人権の内容(人権カタログ) **[[人権の享有主体]] *人権と制度的保障の問題 *人権と公共の福祉(人権の限界の問題) **人権の制約根拠 *人権と特別権力関係の問題 *[[私人間効力|人権と私人間適用の問題]] == 包括的基本権 == *幸福追求権 *人権の不可侵 *人格権 *プライバシー権 == [[法の下の平等]] == *平等原則 *男女の平等 *投票価値の平等 == 精神的自由権 == *[[思想・良心の自由]] *[[信教の自由]] **政教分離 *[[表現の自由]] **根拠・機能 **違憲審査基準 ***[[検閲と事前抑制の禁止]] ***二重の基準 ***明確性の原則 ***内容規制とそれ以外の規制 **知る権利 **通信の秘密 **[[報道の自由]] ***取材の自由 **[[名誉毀損と表現の自由]] **性表現と表現の自由 **教科書検定と表現の自由 **公安条例と表現の自由 *[[学問の自由]] **大学の自治 *[[集会・結社の自由]] *通信の秘密 == 経済的自由権 == *意義・機能 *[[居住・移転の自由]] **出国の自由 **国籍離脱の自由 *[[職業選択の自由]] **営業の自由 *[[財産権の保障]] == 人身の自由 == *奴隷的拘束からの自由 == 刑事手続上の権利 == *適正手続の保障 *令状主義 *被疑者・被告人の権利 **証人尋問権 **弁護人依頼権 **黙秘権 **自己負罪拒否特権 **自白 *二重の危険の禁止 *残虐刑の禁止 == 社会権 == *[[生存権]] **平和的生存権 *[[教育を受ける権利]] *勤労の権利 *[[労働基本権]] **団結権 **団体交渉権 **団体行動権 == 参政権 == *選挙権 *被選挙権 *政治活動の自由 **公務員の場合 **外国人の場合 *憲法改正権 == 国務請求権 == *請願権・陳情 *裁判を受ける権利 *国家賠償・補償請求権 *直接請求権 == 国民の義務 == 憲法とは、国家に対する制約を定めた法体系であり、国民を制約するものではない。そもそも、国家の存立を前提とする限り、憲法の特別の規定を待つまでもなく、国民は国家の支配に復すべき義務を負う。しかし、立憲主義の立場からは、国民は国家に無限定に服するのではなく、個人の基本的人権を確保することを目的としていると言う前提があり、したがって、国民の義務とは基本的人権の保障を可能ならしめるための「公共の福祉の維持」を個人の側から捉えた観念と言うことができる。立憲主義の立場からは、また、具体的義務を課す方法については、憲法に定めることが要請される(この点、日本国憲法は「立法」によらなければならないとする)。右に述べたように、国民の義務の種類、内容については憲法で特に定めなければならないと言う事はないが、比較憲法的な視点から見ても、憲法にその種の規定を置く場合が少なくない。日本国憲法も、次のような諸義務について規定する<ref>[[w:佐藤幸治|佐藤幸治]]『[[w:憲法 (佐藤幸治)|憲法〔初版〕]]』 (青林書院,1981年){{ISBN|978-4417004882}}</ref>。 === 一般的な義務 === *[[日本国憲法第13条]]における「公共の福祉に反しない限り」の制約 === 個別に定められる義務 === *教育を受けさせる義務 *勤労の義務 *納税の義務 == 脚注 == <references/> {{stub|law}} [[Category:憲法|しんけん]] [[カテゴリ:人権]] m0tu370njo9qu91oo7qsdrz0w91tu3s 利用者:Kzhr/OOo Writerできれいな組版を作る 2 2959 305016 11401 2026-10-22T09:19:40Z Jcb 92857 305016 wikitext text/x-wiki OOoでも、少し努力をすれば、綺麗な印刷物を作ることが出来ます。一般的な組版への智識に加えて、OOoで大きな役割を果たすスタイル機能を理解すると、2,3ページに止まるものは兎も角として、特に長い構造的な文書において、綺麗な版面の実現が容易になります。 == 組版概論 == 参考文献: {{ISBN|4888883122}}, {{ISBN|4888883149}}, {{ISBN|4888883386}} 文章を読むためには文字がわれわれに読める形で並べられていなければなりません。[[w:タイポグラフィ|タイポグラフィ]]とは、そのときに、活字(決まった字形を何回でも使うことの出来るもの)を使っていかに文字を規則的に並べるか、ということを問題にします。タイポグラフィは内容と時期によって大きく影響されます。かの[[w:グーテンベルク|グーテンバーグ]]が活字を製作したとき、彼がその42行聖書を印刷するのにそれまでの写本の伝統に則った造本を行ったのは、至極当たり前のことであるのです。日本語にも、日本で培われてきた組版の伝統があります。それらは、内容ごとに規則も住み分けをし、むしろ、その規則に従って内容があったのです。 === 組版の設計と本文 === ハウス・ルールというものがあります。ハウス、というのはそれぞれの印刷所という意味に取っておけばいまはいいのですが、その印刷所における組版の仕方の決まり、たとえば本の表紙を開けるとタイトルページがきて、白紙のページがあって、というのもだいたいがハウス・ルールで定められてそこの印刷物がほぼそのようになっているものです。 英語圏には有名な Hart's Rule と Chicago Rule というのがあって、其々Oxford大学出版局、Chicago大学出版局のハウス・ルールです。たとえば同じ原稿を別々の印刷会社、或は製作会社に回したとして、文字数・行数を指定して出しても、全く同じものが返ってくることはまずありません。これは活版印刷をしていた時代に顕著でありましたが、CTSであれば今尚、電算写植・DTPでもよくよく見れば各社異なっているのがわかります。 == OOoの組版機能 == OOoの組版機能を知ることはきれいな組版を実現するために重要なことです。OOoにおいて標準の文字の単位は pt (DTP Point) であり、そのほかの単位はcm です。OOoにおいて 72pt = 6pi = 1in = 2.54cm ですが、OOoにおいては小数点第一位までしか取らないため正確にポイントとあわせようとしてもずれてしまいます。そのため、OOo Writerの全般設定から使う単位をポイントにしておきましょう。 === スタイル機能について === スタイル機能は、たとえば本文や章題などの、文字の大きさ・行の左右の空間などが一定のスタイルに沿う「部分」に対して適用するもので、そのスタイルが適用された部分の文字の大きさなどを、一括管理が出来るようになります。 (中略) こうして作ったスタイルを使いまわすにはテンプレートとして保存するのが便利です。 == ベースを作る == ここでは実際に制作するときのベースとなるスタイルの作り方を考えていきます。 === 用紙と書字方向 === ==== A4、横書き、縦置き ==== ==== A4、縦書き、縦置き ==== ==== A4、縦書き、横おき ==== ==== B5、横書き、縦置き ==== ==== B5、縦書き、縦置き ==== === 本文の設定 === ==== 振り仮名 ==== == 実際に作ってみる == === 小説を組んでみよう === 文芸作品を組む機会、というのはある人にしかないのですが、著作権などの独占権が消滅した素材でインターネット上で入手が容易なものはほとんど文芸作品ばかりであり、ここでは青空文庫から頂戴したテキストデータ(zip圧縮で提供されているものです)をもとに組んでまいりましょう。 ==== 釈迢空「死者の書」『初稿・死者の書』国書刊行会、2004.6 ==== なぜ釈迢空か、という理由はありませんがなぜ初稿かといえばこれが角川版よりいろいろな組版上の技術が必要であるためです。組版従事者、すなわちタイポグラファは内容を読めずともかまいません。美しい版面をつくりあげられれば組版従事者としてほかのことは余事です。字のことは校正係に、内容は著者に、そして組版はあなたに責任があります。そういう意味で読みやすいとは到底いえないこの素材は実習に適しているといえましょう。 (この文書はOpenOffice 2.0.1日本語版(オフィシャルビルド)に基づいて製作されています) kmlo7ngod0317l93z0owz5d8jy7oixf TeX 0 3368 305019 267682 2026-10-22T09:26:33Z Jcb 92857 305019 wikitext text/x-wiki <!-- TeXハンドブックの構成案 # はじめに #* TeXとは何か #* TeXの歴史 #* TeXとLaTeXの違い #* TeXのメリット・デメリット # TeXのインストールと環境設定 #* TeX Liveのインストール #* 日本語環境の設定 #* エディタの選択と設定 #* 必要なパッケージのインストール # 基本的な文書作成 #* 文書クラスの選択 #* プリアンブルの書き方 #* 本文の書き方 #* コンパイル方法 #* エラー対処の基本 # 文書要素の扱い方 #* 章立てと見出し #* 段落と改行 #* 箇条書きとナンバリング #* 脚注と参考文献 #* 索引の作成 # 数式の入力 #* 基本的な数式の書き方 #* インライン数式と独立数式 #* 数式環境の使い方 #* 複雑な数式の組み方 #* 数式の番号付け # 図表の挿入 #* 図の挿入と配置 #* 表の作成と編集 #* キャプションの付け方 #* 図表番号の管理 #* グラフの描画 # ページレイアウト #* マージンの設定 #* ヘッダー・フッター #* 段組みの設定 #* ページ番号の制御 #* 改ページの制御 # スタイルのカスタマイズ #* フォントの設定 #* 色の使用 #* 独自コマンドの定義 #* スタイルファイルの作成 #* テンプレートの活用 # 特殊な文書の作成 #* プレゼンテーション(Beamer) #* 論文 #* 書籍 #* 履歴書 #* ポスター # 高度なテクニック #* マクロの作成 #* パッケージの使い方 #* 相互参照の活用 #* バージョン管理との連携 #* 自動化スクリプト # トラブルシューティング #* 一般的なエラーと解決法 #* デバッグ方法 #* コンパイルエラーの対処 #* 文字化けの解決 #* パッケージの競合解決 # 附録 #* TeXコマンド一覧 #* 便利なパッケージ集 #* オンラインリソース #* TeXコミュニティの活用 #* 参考文献 --> == 第1章 はじめに == === 1.1 TeXとは何か === '''TeX'''は、スタンフォード大学のドナルド・クヌース教授によって開発された組版システムです。TeXは特に数式や技術文書の美しい組版を実現することを目的として設計されており、学術論文や技術書の執筆に広く使用されています。 TeXの最も重要な特徴は、文書の論理構造と視覚的な体裁を分離して扱うことができる点です。執筆者は文書の論理構造に集中し、体裁の詳細はTeXシステムに任せることができます。 以下は最も単純なTeX文書の例です: :<syntaxhighlight lang=tex copy> \documentclass{article} \begin{document} これはTeXで書かれた最も単純な文書です。 \end{document} </syntaxhighlight> === 1.2 TeXの歴史 === TeXの開発は1977年に始まりました。クヌース教授は自著「The Art of Computer Programming」の組版品質に不満を持ち、高品質な数式組版システムの開発を決意しました。 1982年にはTeX82として知られる安定版がリリースされ、現在使用されているTeXの基礎となりました。バージョン番号はπに漸近する数列として選ばれており、現在は3.141592...となっています。 === 1.3 TeXとLaTeXの違い === TeXは基本的な組版エンジンですが、[[/LaTeX|LaTeX]]はTeXの上に構築されたマクロパッケージです。LaTeXは以下のような特徴を持っています: :<syntaxhighlight lang=latex copy> \documentclass{article} \usepackage[utf8]{inputenc} \usepackage[T1]{fontenc} \usepackage{amsmath} \begin{document} \title{LaTeXの例} \author{著者名} \date{\today} \maketitle \section{はじめに} これはLaTeXによる文書の例です。 \subsection{数式の例} Einstein の有名な方程式: \[ E = mc^2 \] \end{document} </syntaxhighlight> LaTeXを使用することで、文書の論理構造をより明確に表現できます。セクションの階層構造、相互参照、目次生成などの機能が標準で提供されています。 === 1.4 TeXのメリット・デメリット === ==== メリット ==== TeXシステムには以下のような利点があります: * 高品質な組版出力 * プラットフォーム非依存 * 数式の美しい表現 * バージョン管理との親和性 * 長期的な文書の保守性 ; 以下は数式組版の例です: :<syntaxhighlight lang=tex copy> \begin{equation} \int_{-\infty}^{\infty} e^{-x^2} dx = \sqrt{\pi} \end{equation} </syntaxhighlight> ==== デメリット ==== 一方で、以下のような課題もあります: * 学習曲線が急 * エラーメッセージが分かりにくい * 画像処理が比較的複雑 * WYSIWYGでない === 1.5 現代のTeX環境 === 現代のTeX環境は、統合開発環境(IDE)やオンラインエディタの発展により、より使いやすいものになっています。 TeXのソースコードと出力結果を即座に確認できるオンラインサービスも登場しています: :<syntaxhighlight lang=tex copy> % オンラインTeXエディタでよく使用される最小構成 \documentclass{article} \usepackage{preview} \begin{document} \[ \sum_{n=1}^{\infty} \frac{1}{n^2} = \frac{\pi^2}{6} \] \end{document} </syntaxhighlight> == 第2章 TeXのインストールと環境設定 == === 2.1 TeX Liveのインストール === TeX Liveは、最も広く使用されているTeXディストリビューションです。クロスプラットフォームで利用でき、包括的なパッケージ群を提供しています。 ==== Linuxでのインストール ==== Debian/Ubuntuベースのシステムでは、以下のコマンドでインストールできます: :<syntaxhighlight lang=sh copy> $ sudo apt-get update $ sudo apt-get install texlive-full $ sudo apt-get install texmaker # TeXエディタ </syntaxhighlight> より詳細な制御が必要な場合は、公式インストーラを使用します: :<syntaxhighlight lang=sh copy> $ wget https://mirror.ctan.org/systems/texlive/tlnet/install-tl-unx.tar.gz $ tar -xzf install-tl-unx.tar.gz $ cd install-tl-* $ sudo ./install-tl </syntaxhighlight> ==== Windowsでのインストール ==== Windows用のTeX Liveは、インストーラをダウンロードして実行します。インストール後、以下のような環境変数の設定が必要です: :<syntaxhighlight lang=sh copy> PATH=%PATH%;C:\texlive\2024\bin\win32 TEXMFHOME=%USERPROFILE%\texmf </syntaxhighlight> === 2.2 日本語環境の設定 === 日本語TeXでは、pLaTeX、upLaTeX、LuaLaTeXなどのエンジンが利用可能です。以下は標準的な日本語文書の設定例です: :<syntaxhighlight lang=tex copy> % pLaTeXを使用する場合 \documentclass[a4paper,dvipdfmx]{jsarticle} \usepackage{graphicx} % LuaLaTeXを使用する場合 \documentclass[a4paper,luatex,ja=standard]{ltjsarticle} \usepackage{luatexja} </syntaxhighlight> TeXのフォント設定は以下のように行います: :<syntaxhighlight lang=tex copy> % フォント設定の例 \usepackage[deluxe]{otf} \usepackage{txfonts} \usepackage{type1cm} </syntaxhighlight> === 2.3 エディタの選択と設定 === TeXの編集には専用のエディタを使用すると効率的です。主なエディタとその設定例を示します。 ==== TeXworks の設定 ==== TeXworksは標準的なTeXエディタです。タイプセットの設定は以下のように行います: :<syntaxhighlight lang=text copy> # タイプセット設定例 pLaTeX -> dvipdfmx Command: platex Arguments: -synctex=1 -interaction=nonstopmode $filename </syntaxhighlight> ==== VSCode での設定 ==== [[Visual Studio Code|VSCode]]でTeXを使用する場合、settings.jsonに以下のような設定を追加します: ; settings.json :<syntaxhighlight lang=json copy> { "latex-workshop.latex.tools": [ { "name": "platex", "command": "platex", "args": [ "-synctex=1", "-interaction=nonstopmode", "-file-line-error", "%DOC%" ] } ], "latex-workshop.latex.recipes": [ { "name": "pLaTeX", "tools": [ "platex", "dvipdfmx" ] } ] } </syntaxhighlight> === 2.4 必要なパッケージのインストール === TeXパッケージの管理には、tlmgrコマンドを使用します: :<syntaxhighlight lang=sh copy> # パッケージのインストール $ tlmgr update --self $ tlmgr install package-name # 特定のパッケージの更新 $ tlmgr update package-name # 全パッケージの更新 $ tlmgr update --all </syntaxhighlight> よく使用されるパッケージの設定例: :<syntaxhighlight lang=tex copy> \usepackage[dvipdfmx]{graphicx} % 画像表示 \usepackage{amsmath,amssymb} % 数式拡張 \usepackage{subfigure} % 図の並列配置 \usepackage{url} % URL表示 \usepackage{listings} % ソースコード表示 :<syntaxhighlight lang= copy> :<syntaxhighlight lang=tex copy> % listings パッケージの設定例 \lstset{ language=Python, basicstyle=\ttfamily\small, frame=single, breaklines=true, numbers=left, numberstyle=\tiny, showstringspaces=false } </syntaxhighlight> === 2.5 動作確認 === 環境構築後は、以下のようなテスト文書でシステムの動作を確認します: :<syntaxhighlight lang=tex copy> \documentclass{jsarticle} \usepackage[dvipdfmx]{graphicx} \usepackage{amsmath} \begin{document} \title{動作確認文書} \author{テストユーザー} \date{\today} \maketitle \section{日本語テスト} これは日本語のテストです。 \section{数式テスト} \[ e^{i\pi} + 1 = 0 \] \end{document} </syntaxhighlight> == 第3章 基本的な文書作成 == === 3.1 文書クラスの選択 === TeXでの文書作成は、文書クラスの選択から始まります。文書クラスは文書の基本的なレイアウトと機能を定義します。 ==== 標準的な文書クラス ==== 主要な文書クラスとその用途を以下のコード例で説明します: :<syntaxhighlight lang=tex copy> % 標準的な論文形式 \documentclass[a4paper,11pt]{article} % 長めの報告書や本 \documentclass[a4paper,11pt]{book} % レポートや長い論文 \documentclass[a4paper,11pt]{report} % 日本語論文 \documentclass[a4paper,11pt]{jsarticle} % 日本語の本 \documentclass[a4paper,11pt]{jsbook} </syntaxhighlight> === 3.2 プリアンブルの書き方 === プリアンブルは、文書の開始前に必要なパッケージの読み込みや設定を行う部分です。以下は包括的なプリアンブルの例です: :<syntaxhighlight lang=tex copy> \documentclass[a4paper,11pt]{jsarticle} % 文字コードとフォント \usepackage[utf8]{inputenc} \usepackage[T1]{fontenc} \usepackage{lmodern} % 日本語関連 \usepackage{otf} \usepackage[dvipdfmx]{graphicx} % 数式関連 \usepackage{amsmath} \usepackage{amssymb} \usepackage{mathtools} % その他の機能 \usepackage{url} \usepackage{hyperref} \usepackage{color} % 文書情報の設定 \title{文書タイトル} \author{著者名} \date{\today} </syntaxhighlight> === 3.3 本文の書き方 === 本文は \begin{document} と \end{document} の間に記述します。以下は基本的な文書構造の例です: :<syntaxhighlight lang=tex copy> \begin{document} \maketitle % タイトルの出力 \begin{abstract} これは論文の要旨です。研究の概要を簡潔に説明します。 \end{abstract} \section{はじめに} これは節の始まりです。 \subsection{背景} これは小節です。 % 段落は空行で区切ります これは新しい段落の始まりです。 TeXは自動的に適切な段落間隔を設定します。 \section{本論} % 箇条書きの例 \begin{itemize} \item 第一の要点 \item 第二の要点 \end{itemize} % 番号付きリストの例 \begin{enumerate} \item 最初のステップ \item 次のステップ \end{enumerate} \end{document} </syntaxhighlight> === 3.4 コンパイル方法 === TeXファイルのコンパイルには複数の方法があります。以下は代表的なコンパイルコマンドです: :<syntaxhighlight lang=sh copy> # pLaTeXを使用する場合 $ platex document.tex $ dvipdfmx document.dvi # LuaLaTeXを使用する場合 $ lualatex document.tex # コンパイルを自動化するLatexmkの例 $ latexmk -pdfdvi document.tex latexmkの設定ファイル(.latexmkrc)の例: ; .latexmkrc :<syntaxhighlight lang=text copy> $latex = 'platex -synctex=1 -halt-on-error'; $bibtex = 'pbibtex'; $dvipdf = 'dvipdfmx %O -o %D %S'; $makeindex = 'mendex %O -o %D %S'; $pdf_mode = 3; </syntaxhighlight> === 3.5 エラー対処の基本 === TeXのエラーメッセージを理解し、対処する方法を説明します。 ; よくあるエラーとその解決: :<syntaxhighlight lang=tex copy> % Undefined control sequence \textbf{太字} % \usepackage{textbf}が必要 % Missing $ inserted x^2 % 数式モードで書く必要あり:$x^2$ % Missing \begin{document} \documentclass{article} 本文 % \begin{document}が必要 % File not found \includegraphics{image.png} % パスの確認が必要 </syntaxhighlight> ; エラーログの読み方: :<syntaxhighlight lang=tex copy> ! LaTeX Error: File `unknown.sty' not found. Type X to quit or <RETURN> to proceed, or enter new name. (Default extension: sty) Enter file name: </syntaxhighlight> このような場合、必要なパッケージのインストールを行います: :<syntaxhighlight lang=sh copy> $ tlmgr install package-name </syntaxhighlight> ---- == 第4章 文書要素の扱い方 == === 4.1 章立てと見出し === TeXでは、文書の論理構造を明確に表現するために、複数レベルの見出しを提供しています。 ==== 標準的な見出しレベル ==== 文書クラスに応じて利用可能な見出しレベルが異なります: :<syntaxhighlight lang=tex copy> % book、reportクラスでの章立て \chapter{最上位の章} \section{節} \subsection{小節} \subsubsection{小々節} \paragraph{段落見出し} \subparagraph{小段落見出し} % articleクラスでの章立て(\chapterは使用不可) \section{節} \subsection{小節} \subsection*{番号なしの節} % 番号を付けない場合 </syntaxhighlight> 見出し番号のカスタマイズ: :<syntaxhighlight lang=tex copy> % 見出し番号の書式設定 \renewcommand{\thesection}{\Roman{section}} % ローマ数字 \renewcommand{\thesubsection}{\thesection-\arabic{subsection}} % I-1形式 % 見出しの深さの設定 \setcounter{secnumdepth}{3} % 見出し番号を表示する深さ \setcounter{tocdepth}{2} % 目次に表示する深さ </syntaxhighlight> === 4.2 段落と改行 === TeXでは、段落は空行で区切り、改行は特別なコマンドで制御します: :<syntaxhighlight lang=tex copy> 第1段落の本文です。 この行は同じ段落の続きとして組版されます。 第2段落の本文です。空行で区切られているため、 新しい段落として扱われます。 % 強制改行の例 一行目\\ 二行目 % 段落間隔の調整 \setlength{\parskip}{1em} % 段落間の間隔 \setlength{\parindent}{1zw} % 段落先頭の字下げ % 行間の調整 \linespread{1.5} % 1.5倍の行間 </syntaxhighlight> === 4.3 箇条書きとナンバリング === 複数の箇条書き環境と、そのカスタマイズ方法を説明します: :<syntaxhighlight lang=tex copy> % 基本的な箇条書き \begin{itemize} \item 第1項目 \item 第2項目 \begin{itemize} \item 入れ子の項目1 \item 入れ子の項目2 \end{itemize} \item 第3項目 \end{itemize} % 番号付きリスト \begin{enumerate} \item 手順1 \item 手順2 \begin{enumerate} \item 副手順2.1 \item 副手順2.2 \end{enumerate} \item 手順3 \end{enumerate} % 説明リスト \begin{description} \item[用語1] 用語1の説明 \item[用語2] 用語2の説明 \end{description} </syntaxhighlight> カスタマイズ例: :<syntaxhighlight lang=tex copy> % enumitemパッケージを使用した高度なカスタマイズ \usepackage{enumitem} \begin{enumerate}[label=\arabic*., align=left, leftmargin=2em] \item カスタマイズされた番号付きリスト \item 左揃えで余白を調整 \end{enumerate} </syntaxhighlight> === 4.4 脚註と参考文献 === 文書に補足情報を追加する方法を説明します: :<syntaxhighlight lang=tex copy> 本文中に脚註を入れることができます\footnote{これは脚註の内容です}。 % 脚註番号のリセット \setcounter{footnote}{0} % 参考文献の記述(手動の場合) \begin{thebibliography}{99} \bibitem{key1} 著者名,『書籍名』,出版社,年号 \bibitem{key2} Author, "Title", Journal, Year \end{thebibliography} % BibTeXを使用した参考文献管理 \bibliographystyle{junsrt} % 参考文献スタイル \bibliography{mybib} % 参考文献データベース </syntaxhighlight> 参考文献データベース(mybib.bib)の例: ; mybib.bib :<syntaxhighlight lang=bib copy> @book{knuth1984, author = {Donald E. Knuth}, title = {The {\TeX}book}, publisher = {Addison-Wesley}, year = 1984 } </syntaxhighlight> === 4.5 索引の作成 === makeindexを使用した索引の作成方法: :<syntaxhighlight lang=tex copy> \usepackage{makeidx} \makeindex % 本文中で索引項目を指定 \index{キーワード} \index{キーワード!サブ項目} \index{キーワード!サブ項目!サブサブ項目} % 文書末尾で索引を出力 \printindex </syntaxhighlight> ; 索引スタイルファイル(.ist)の例: :<syntaxhighlight lang=tex copy> headings_flag 1 heading_prefix "\\indexsection{" heading_suffix "}" delim_0 "\\dotfill " delim_1 "\\dotfill " delim_2 "\\dotfill " </syntaxhighlight> == 第5章 数式の入力 == TeXにおける数式の入力は、その美しい組版結果で広く知られています。本章では、基本的な数式の入力方法から複雑な数式の組み方まで、実践的な例を交えながら解説します。 === 5.1 基本的な数式表現 === 数式を入力する際、最も基本となるのは演算記号と変数の表現です。TeXでは数式モードにおいて、アルファベットは自動的にイタリック体で表示されます。また、演算記号には専用のコマンドが用意されています。 :<syntaxhighlight lang=tex copy> \documentclass{article} \begin{document} $x + y = z$ % 基本的な足し算 $a \times b$ % 掛け算 $p \div q$ % 割り算 $\alpha \beta \gamma$ % ギリシャ文字 \end{document} </syntaxhighlight> 上記のように、演算記号はバックスラッシュで始まるコマンドとして記述します。特に頻出する数学記号について、以下に実例を示します: :<syntaxhighlight lang=tex copy> % よく使う数学記号の例 $\pm$ % プラスマイナス $\leq$ % 以下 $\geq$ % 以上 $\neq$ % 不等号 $\approx$ % 近似 $\infty$ % 無限大 </syntaxhighlight> === 5.2 分数と指数 === 分数は\frac{分子}{分母}という形式で入力します。指数は^、添え字は_を使用します。複雑な式でも、これらの組み合わせで表現できます。 :<syntaxhighlight lang=tex copy> \documentclass{article} \begin{document} % 複雑な分数式の例 \[ \frac{x^2 + 2x + 1}{(1-x)(1+x)} = \frac{(x+1)^2}{1-x^2} \] % 二項係数の例 \[ \binom{n}{k} = \frac{n!}{k!(n-k)!} \] \end{document} </syntaxhighlight> === 5.3 数式環境の活用 === 長い式や複数行にわたる数式は、equation環境やalign環境を使用します。これらの環境では自動的に式番号が付与され、後から参照することも可能です。 :<syntaxhighlight lang=tex copy> \documentclass{article} \usepackage{amsmath} \begin{document} % 単一の数式 \begin{equation} E = mc^2 \label{eq:einstein} \end{equation} % 複数行の数式(整列あり) \begin{align} (x+1)^3 &= (x+1)(x+1)(x+1) \\ &= (x+1)(x^2 + 2x + 1) \\ &= x^3 + 3x^2 + 3x + 1 \end{align} \end{document} </syntaxhighlight> 式\eqref{eq:einstein}のように、\labelと\refを使用することで式番号への参照が可能です。 === 5.4 行列の表現 === 行列はmatrix環境群を使用して表現します。bmatrix(角括弧)、pmatrix(丸括弧)、vmatrix(縦線)など、様々な括弧付きの行列環境が用意されています。 :<syntaxhighlight lang=tex copy> \begin{bmatrix} a_{11} & a_{12} & a_{13} \\ a_{21} & a_{22} & a_{23} \\ a_{31} & a_{32} & a_{33} \end{bmatrix} </syntaxhighlight> === 5.5 数式の装飾 === 数式に対して様々な装飾を施すことができます。上付き線、下線、矢印などの装飾は数式の意味を明確に伝えるのに役立ちます。 :<syntaxhighlight lang=tex copy> \documentclass{article} \usepackage{amsmath} \begin{document} % ベクトルの表現 \[ \vec{a} = \overrightarrow{AB} = \begin{pmatrix} x \\ y \\ z \end{pmatrix} \] % 平均値の表現 \[ \overline{x} = \frac{1}{n}\sum_{i=1}^n x_i \] % 極限値の表現 \[ \lim_{x \to \infty} \frac{1}{x} = 0 \] \end{document} </syntaxhighlight> === 5.6 数式の空白調整 === TeXは数式中の空白を自動的に調整しますが、場合によっては手動で調整が必要です。\,(小さな空き)、\:(中くらいの空き)、\;(大きな空き)、\!(負の空き)などのコマンドを使用します。 :<syntaxhighlight lang=tex copy> % 積分での空白調整例 \[ \int_0^1 f(x)\,dx % dxの前に小さな空きを入れる \] % 関数の定義での空白調整例 \[ f\colon X \to Y % 写像の矢印の前後に適切な空白 \] </syntaxhighlight> === 5.7 数式番号の制御 === 数式番号は自動的に付与されますが、時には制御が必要な場合があります。\tag{}による手動番号付け、\nonumberによる番号の抑制などが可能です。 :<syntaxhighlight lang=tex copy> \documentclass{article} \usepackage{amsmath} \begin{document} % カスタム番号の使用 \begin{equation} \tag{A.1} f(x) = ax^2 + bx + c \end{equation} % 番号なしの数式 \begin{equation*} y = mx + b \end{equation*} % 選択的な番号付け \begin{align} E &= mc^2 \label{eq:mass-energy} \\ F &= ma \nonumber \\ P &= \frac{F}{A} \label{eq:pressure} \end{align} \end{document} </syntaxhighlight> === 5.8 多段数式の処理 === cases環境や gathered環境を使用することで、場合分けや複雑な数式の整理が可能です。 :<syntaxhighlight lang=tex copy> % 場合分けの例 \[ f(x) = \begin{cases} x^2 & \text{if } x \geq 0 \\ -x^2 & \text{if } x < 0 \end{cases} \] % 連立方程式の例 \begin{gather} 3x + 2y = 8 \\ x - y = 1 \end{gather} </syntaxhighlight> == 第6章 図表の挿入 == 文書中への図表の挿入は、論文や技術文書作成において重要な要素です。本章では、TeXにおける図表の扱い方について、実践的な例を交えながら解説します。 === 6.1 図の挿入 === 図の挿入には、graphicxパッケージを使用します。このパッケージは様々な画像形式(PDF、PNG、JPEG等)に対応しています。 :<syntaxhighlight lang=tex copy> \documentclass{article} \usepackage[dvipdfmx]{graphicx} \begin{document} \begin{figure}[htbp] \centering \includegraphics[width=0.8\linewidth]{sample-graph.pdf} \caption{サンプルグラフ} \label{fig:sample} \end{figure} 本研究の結果を図\ref{fig:sample}に示します。 \end{document} </syntaxhighlight> \includegraphicsコマンドには様々なオプションがあります: :<syntaxhighlight lang=tex copy> % 画像サイズの指定 \includegraphics[width=8cm]{image.pdf} \includegraphics[height=5cm]{image.pdf} \includegraphics[scale=0.5]{image.pdf} % 回転と反転 \includegraphics[angle=45]{image.pdf} \includegraphics[reflect]{image.pdf} % トリミング \includegraphics[clip, trim=1cm 2cm 1cm 2cm]{image.pdf} </syntaxhighlight> === 6.2 表の作成 === 表の作成にはtabular環境を使用します。複雑な表の場合は、booktabsパッケージを併用することで、より美しい表組みが可能になります。 :<syntaxhighlight lang=tex copy> \documentclass{article} \usepackage{booktabs} \begin{document} \begin{table}[htbp] \centering \caption{実験結果のまとめ} \label{tab:results} \begin{tabular}{lrrr} \toprule 実験条件 & 試行1 & 試行2 & 試行3 \\ \midrule 条件A & 15.2 & 15.4 & 15.1 \\ 条件B & 18.7 & 18.5 & 18.9 \\ 条件C & 21.3 & 21.5 & 21.2 \\ \bottomrule \end{tabular} \end{table} \end{document} </syntaxhighlight> 長い表や複数ページにわたる表の場合は、longtableパッケージが便利です: :<syntaxhighlight lang=tex copy> \usepackage{longtable} \begin{longtable}{lrr} \caption{長い表の例} \\ \toprule 項目 & 値1 & 値2 \\ \midrule \endfirsthead \multicolumn{3}{c}{(前ページからの続き)} \\ \toprule 項目 & 値1 & 値2 \\ \midrule \endhead \bottomrule \multicolumn{3}{r}{(次ページに続く)} \\ \endfoot \bottomrule \endlastfoot データ1 & 100 & 200 \\ データ2 & 150 & 250 \\ % ... 以下データ続く \end{longtable} </syntaxhighlight> === 6.3 図表の配置制御 === 図表の配置位置は、環境のオプション引数で制御します: * h: here(その位置) * t: top(ページ上部) * b: bottom(ページ下部) * p: page(独立したフロートページ) より細かい制御が必要な場合は、float パッケージを使用します: :<syntaxhighlight lang=tex copy> \usepackage{float} \begin{figure}[H] % 強制的にその位置に配置 \centering \includegraphics{image.pdf} \caption{強制配置された図} \end{figure} </syntaxhighlight> === 6.4 グラフの描画 === TeXでグラフを描画する場合、tikzパッケージが強力なツールとなります: :<syntaxhighlight lang=tex copy> \usepackage{tikz} \begin{document} \begin{tikzpicture} \begin{axis}[ xlabel=x軸, ylabel=y軸, grid=major ] \addplot[smooth] {x^2}; \addplot[smooth] {x^3}; \end{axis} \end{tikzpicture} \end{document} </syntaxhighlight> データ点からグラフを描画する場合: :<syntaxhighlight lang=tex copy> \begin{tikzpicture} \begin{axis} \addplot[scatter] table { x y 1 2.3 2 4.5 3 6.7 }; \end{axis} \end{tikzpicture} </syntaxhighlight> === 6.5 図表番号の管理 === 図表番号の書式は、\renewcommandを使用してカスタマイズできます: :<syntaxhighlight lang=tex copy> % 図番号を「図1.1」形式に変更 \renewcommand{\thefigure}{\thechapter.\arabic{figure}} \renewcommand{\thetable}{\thechapter.\arabic{table}} % 図のキャプション前の文字列を変更 \renewcommand{\figurename}{図} \renewcommand{\tablename}{表} </syntaxhighlight> これらの基本的な要素を組み合わせることで、読みやすく美しい図表を文書に取り入れることができます。次章では、より高度なページレイアウトの制御方法について解説します。 == 第7章 ページレイアウト == 文書の見た目を決定するページレイアウトの設定は、プロフェッショナルな文書作成において重要な要素です。本章では、TeXにおけるページレイアウトの設定方法について解説します。 === 7.1 基本的なページ設定 === ページの基本設定は、文書クラスのオプションまたはgeometryパッケージを使用して行います。 :<syntaxhighlight lang=tex copy> \documentclass[a4paper,dvipdfmx]{article} \usepackage[margin=2cm]{geometry} % 全マージンを2cmに設定 % より詳細な設定 \usepackage[ top=25mm, bottom=30mm, left=25mm, right=25mm, includeheadfoot % ヘッダー・フッターをマージンに含める ]{geometry} </syntaxhighlight> 用紙サイズの変更例: :<syntaxhighlight lang=tex copy> \usepackage[b5paper]{geometry} % B5サイズ \usepackage[a5paper]{geometry} % A5サイズ \usepackage[letterpaper]{geometry} % レターサイズ </syntaxhighlight> === 7.2 ヘッダーとフッター === ヘッダーとフッターの設定には、fancyhdrパッケージを使用します。 :<syntaxhighlight lang=tex copy> \documentclass{article} \usepackage{fancyhdr} \pagestyle{fancy} % ヘッダーの設定 \fancyhead{} % 既存のヘッダーをクリア \fancyhead[L]{左側ヘッダー} \fancyhead[C]{中央ヘッダー} \fancyhead[R]{右側ヘッダー} % フッターの設定 \fancyfoot{} % 既存のフッターをクリア \fancyfoot[C]{\thepage} % ページ番号を中央に配置 % ヘッダー区切り線の設定 \renewcommand{\headrulewidth}{0.4pt} % 線の太さ \renewcommand{\footrulewidth}{0pt} % フッターの線を非表示 </syntaxhighlight> === 7.3 段組み設定 === 段組みの設定には、multicols環境またはtwocolumnオプションを使用します。 :<syntaxhighlight lang=tex copy> % 文書全体を2段組みにする場合 \documentclass[twocolumn]{article} % 部分的に段組みを使用する場合 \usepackage{multicol} \begin{document} \begin{multicols}{2} ここに2段組みにしたい文章を書きます。 段の間隔や区切り線なども設定可能です。 \end{multicols} % 段間に縦線を入れる \begin{multicols}{2} \columnseprule=0.4pt % 縦線の太さ 本文... \end{multicols} </syntaxhighlight> === 7.4 ページ番号の制御 === ページ番号の形式や位置は柔軟に制御できます。 :<syntaxhighlight lang=tex copy> % ページ番号のリセット \setcounter{page}{1} % ページ番号の形式変更 \pagenumbering{roman} % ローマ数字 (i, ii, iii, ...) \pagenumbering{Roman} % 大文字ローマ数字 (I, II, III, ...) \pagenumbering{arabic} % アラビア数字 (1, 2, 3, ...) \pagenumbering{alph} % アルファベット (a, b, c, ...) \pagenumbering{Alph} % 大文字アルファベット (A, B, C, ...) % 特定のページでページ番号を非表示 \thispagestyle{empty} </syntaxhighlight> === 7.5 改ページの制御 === TeXの改ページ制御には様々なコマンドが用意されています。 :<syntaxhighlight lang=tex copy> \newpage % 強制改ページ \clearpage % 浮動体を出力して改ページ \cleardoublepage % 奇数ページまで改ページ % 改ページを抑制 \nopagebreak[4] % 優先度4(最大)で改ページを抑制 % 段落間の改ページを禁止 {\samepage 段落1の内容... 段落2の内容... } </syntaxhighlight> === 7.6 余白の調整 === 特定の場所での余白調整には、様々なコマンドを使用できます。 :<syntaxhighlight lang=tex copy> % 垂直方向の空白 \vspace{2cm} % 絶対値指定 \vspace*{2cm} % ページ先頭でも有効 \vfill % 可変幅の垂直空白 % 水平方向の空白 \hspace{1cm} % 絶対値指定 \hspace*{1cm} % 行頭でも有効 \hfill % 可変幅の水平空白 % 段落間の空白設定 \setlength{\parskip}{1em} % 段落間の間隔 \setlength{\parindent}{0pt} % 段落先頭のインデント </syntaxhighlight> これらの設定を適切に組み合わせることで、プロフェッショナルな体裁の文書を作成することができます。次章では、文書スタイルのカスタマイズについて、より詳しく解説します。 == 第8章 スタイルのカスタマイズ == LaTeXの大きな特徴の一つは、文書の見た目を細かくカスタマイズできることです。本章では、フォント設定から独自コマンドの定義まで、スタイルカスタマイズの方法を解説します。 === 8.1 フォントの設定 === 日本語文書では、主にjpfontパッケージを使用してフォントを設定します。 :<syntaxhighlight lang=tex copy> \documentclass[dvipdfmx]{article} \usepackage{fontspec} \usepackage[haranoaji]{jpfont} % 明朝体とゴシック体の切り替え \renewcommand{\rmdefault}{udminr} % 明朝体をデフォルトに \renewcommand{\sfdefault}{udgos} % ゴシック体をサンセリフに % 個別の文字列でフォント指定 {\gtfamily ゴシック体の文字列} {\mcfamily 明朝体の文字列} % フォントサイズの変更 {\small 小さい文字} {\large 大きい文字} {\huge とても大きい文字} </syntaxhighlight> === 8.2 色の使用 === xcolorパッケージを使用することで、文書内で色を扱うことができます。 :<syntaxhighlight lang=tex copy> \usepackage[dvipsnames]{xcolor} % 基本的な色指定 {\color{red}赤い文字} {\color{blue}青い文字} % RGB指定による色定義 \definecolor{lightblue}{RGB}{100,149,237} \definecolor{customgreen}{rgb}{0.0,0.8,0.2} % 色の濃度指定 {\color{red!50}50%の赤色} {\color{blue!30}30%の青色} % 背景色の指定 \colorbox{yellow}{黄色い背景の文字列} \fcolorbox{red}{white}{赤い枠で囲まれた文字列} </syntaxhighlight> === 8.3 独自コマンドの定義 === \newcommandを使用して、よく使う表現を独自コマンドとして定義できます。 :<syntaxhighlight lang=tex copy> % 引数なしのコマンド \newcommand{\myname}{山田太郎} % 引数を取るコマンド \newcommand{\highlight}[1]{{\color{red}#1}} % オプション引数を持つコマンド \newcommand{\keyword}[2][blue]{{\color{#1}#2}} % 複数の引数を取るコマンド \newcommand{\fullname}[2]{#1\hspace{1em}#2} % 使用例 \myname % 「山田太郎」と出力 \highlight{重要な文章} % 赤字で出力 \keyword{キーワード} % 青字で出力 \keyword[red]{キーワード} % 赤字で出力 \fullname{山田}{太郎} % 姓名を適切な間隔で出力 </syntaxhighlight> === 8.4 独自環境の定義 === \newenvironmentを使用して、新しい環境を定義できます。 :<syntaxhighlight lang=tex copy> % シンプルな環境 \newenvironment{注意}{% \begin{quote}\textbf{注意:} }{% \end{quote} } % 引数を取る環境 \newenvironment{コラム}[1]{% \begin{quotation} \textbf{コラム:#1} \hrule }{% \hrule \end{quotation} } % 使用例 \begin{注意} これは注意書きです。 \end{注意} \begin{コラム}{発展的な話題} これはコラムの内容です。 \end{コラム} </syntaxhighlight> === 8.5 スタイルファイルの作成 === 頻繁に使用する設定は、スタイルファイル(.sty)にまとめることができます。 :<syntaxhighlight lang=tex copy> % mystyle.sty \ProvidesPackage{mystyle}[2024/01/16 My custom style] \RequirePackage{graphicx} \RequirePackage{color} % パッケージオプションの処理 \DeclareOption{draft}{\setlength{\overfullrule}{5pt}} \DeclareOption*{\PassOptionsToClass{\CurrentOption}{article}} \ProcessOptions\relax % スタイル定義 \newcommand{\mysection}[1]{% \section{#1} \hrule } % 使用例(本文ファイル) \documentclass{article} \usepackage{mystyle} </syntaxhighlight> === 8.6 定理環境のカスタマイズ === amsthmパッケージを使用して、定理環境をカスタマイズできます。 :<syntaxhighlight lang=tex copy> \usepackage{amsthm} % 定理スタイルの定義 \newtheoremstyle{mystyle} {3pt} % 上部スペース {3pt} % 下部スペース {\normalfont} % 本文フォント {} % インデント量 {\bfseries} % 見出しフォント {.} % 見出し後の記号 {.5em} % 見出し後のスペース {} % 見出しの定義 % 定理環境の定義 \theoremstyle{mystyle} \newtheorem{theorem}{定理}[section] \newtheorem{definition}[theorem]{定義} \newtheorem{example}[theorem]{例} % 使用例 \begin{theorem} これは定理の内容です。 \end{theorem} \begin{definition} これは定義の内容です。 \end{definition} </syntaxhighlight> これらのカスタマイズ機能を活用することで、一貫性のある、美しい文書を作成することができます。次章では、特殊な文書タイプの作成について解説します。 == 第9章 特殊な文書の作成 == TeXは様々な種類の文書作成に対応しています。本章では、代表的な特殊文書の作成方法について解説します。 === 9.1 プレゼンテーション(Beamer)=== Beamerクラスを使用することで、プレゼンテーションスライドを作成できます。 :<syntaxhighlight lang=tex copy> \documentclass[dvipdfmx]{beamer} \usetheme{Madrid} \usecolortheme{dove} \usepackage{pxjahyper} \title{サンプルプレゼンテーション} \author{山田太郎} \date{\today} \begin{document} \begin{frame} \titlepage \end{frame} \begin{frame}{目次} \tableofcontents \end{frame} \section{はじめに} \begin{frame}{はじめに} \begin{itemize} \item<1-> 最初の項目 \item<2-> 二番目の項目 \item<3-> 三番目の項目 \end{itemize} \pause % アニメーション効果 \begin{block}{重要な注意} これは強調したい内容です。 \end{block} \end{frame} </syntaxhighlight> === 9.2 学術論文 === 学術論文では、abstractやbibliographyなど特有の要素が必要です。 :<syntaxhighlight lang=tex copy> \documentclass[a4paper,twocolumn]{jarticle} \usepackage{graphicx} \usepackage{cite} \title{サンプル論文タイトル} \author{山田太郎\thanks{○○大学工学部}} \date{\today} \begin{document} \maketitle \begin{abstract} 本研究では...(要旨) \end{abstract} \section{はじめに} 研究の背景と目的について述べる... \section{実験方法} 実験の手順について説明... % 参考文献 \bibliographystyle{junsrt} \bibliography{references} </syntaxhighlight> === 9.3 書籍 === 書籍作成では、bookクラスを使用し、章立てを行います。 :<syntaxhighlight lang=tex copy> \documentclass[dvipdfmx,a5paper]{book} \usepackage{graphicx} \usepackage{tocloft} % 目次のカスタマイズ \renewcommand{\cftsecleader}{\cftdotfill{\cftdotsep}} \begin{document} \frontmatter \title{サンプル書籍} \author{山田太郎} \date{\today} \maketitle \tableofcontents \mainmatter \chapter{はじめに} 本書の目的について... \chapter{本論} 本題の説明... \appendix \chapter{付録A} 補足資料... \backmatter % 索引や参考文献 \end{document} </syntaxhighlight> === 9.4 履歴書 === 履歴書は、精密なレイアウト制御が必要です。 :<syntaxhighlight lang=tex copy> \documentclass[12pt]{jarticle} \usepackage[top=20mm,bottom=20mm,left=20mm,right=20mm]{geometry} \begin{document} \begin{center} {\Large 履 歴 書} \vspace{1cm} {\large 令和○年○月○日現在} \end{center} \begin{tabular}{|p{4cm}|p{12cm}|} \hline 氏名 & 山田 太郎 \\ \hline 生年月日 & 平成○年○月○日生(満○歳) \\ \hline 現住所 & 〒xxx-xxxx \\ & ○○県○○市○○町1-2-3 \\ \hline \end{tabular} % 学歴・職歴 \section*{学歴} \noindent 平成○年○月 ○○高等学校 卒業 \\ 平成○年○月 ○○大学○○学部 入学 \\ 平成○年○月 同上 卒業 \end{document} </syntaxhighlight> === 9.5 ポスター === 学会ポスターなどは、beamerposterパッケージを使用します。 :<syntaxhighlight lang=tex copy> \documentclass[final,dvipdfmx]{beamer} \usepackage[size=a0,scale=1.4]{beamerposter} \usetheme{confposter} \title{研究発表ポスター} \author{山田太郎} \institute{○○大学} \begin{document} \begin{frame}{} \begin{block}{研究目的} 本研究では... \end{block} \begin{block}{実験方法} \begin{itemize} \item 手順1 \item 手順2 \end{itemize} \end{block} \begin{block}{結果と考察} 実験結果を図1に示す... \end{block} \end{frame} \end{document} </syntaxhighlight> これらのテンプレートを基礎として、目的に応じたカスタマイズを行うことで、様々な種類の文書を作成できます。次章では、より高度なTeXの使用方法について解説します。 == 第10章 高度なテクニック == TeXの高度な機能を活用することで、より柔軟で効率的な文書作成が可能になります。本章では、マクロやパッケージの活用など、上級者向けのテクニックを解説します。 === 10.1 マクロの作成 === 複雑な処理を行うマクロを作成することで、文書作成を効率化できます。 :<syntaxhighlight lang=tex copy> % 条件分岐を含むマクロ \newcommand{\checknumber}[1]{% \ifnum#1>0 正の数です \else \ifnum#1<0 負の数です \else ゼロです \fi \fi } % カウンタを使用するマクロ \newcounter{problemno} \newcommand{\problem}{% \stepcounter{problemno}% \paragraph{問題\theproblemno}% } % 可変個の引数を取るマクロ \usepackage{xparse} \NewDocumentCommand{\citations}{>{\SplitList{,}}m}{% \cite{\ProcessList{#1}{\SplitArgument{1}{:}}}% } </syntaxhighlight> === 10.2 パッケージの高度な使用法 === 多機能なパッケージを使いこなすことで、文書の質を向上させることができます。 :<syntaxhighlight lang=tex copy> % hyperrefパッケージの高度な設定 \usepackage[dvipdfmx, bookmarks=true, bookmarksnumbered=true, hidelinks, pdftitle={文書タイトル}, pdfauthor={著者名}, pdfsubject={文書の主題}, pdfkeywords={キーワード1, キーワード2} ]{hyperref} % tikzパッケージによる複雑な図の作成 \usepackage{tikz} \usetikzlibrary{shapes,arrows,positioning} \begin{tikzpicture}[node distance=2cm] \node[draw,circle] (A) {開始}; \node[draw,rectangle] (B) [below of=A] {処理1}; \node[draw,diamond] (C) [below of=B] {判定}; \draw[->] (A) -- (B); \draw[->] (B) -- (C); \draw[->] (C) -- node[right] {Yes} ++(2,0) -- ++(0,4) -- (A); \draw[->] (C) -- node[left] {No} ++(0,-2); \end{tikzpicture} </syntaxhighlight> === 10.3 相互参照の活用 === 複雑な文書での相互参照を効率的に管理します。 :<syntaxhighlight lang=tex copy> \usepackage{hyperref} \usepackage{cleveref} % 相互参照の設定 \crefname{equation}{式}{式} \crefname{figure}{図}{図} \crefname{table}{表}{表} \begin{document} \begin{equation} E = mc^2 \label{eq:einstein} \end{equation} % 複数の参照 \begin{figure}[htbp] \centering \includegraphics{graph1.pdf} \caption{グラフ1} \label{fig:graph1} \end{figure} \begin{figure}[htbp] \centering \includegraphics{graph2.pdf} \caption{グラフ2} \label{fig:graph2} \end{figure} \cref{eq:einstein}に示すように... \cref{fig:graph1,fig:graph2}に示すように... </syntaxhighlight> === 10.4 バージョン管理との連携 === GitなどのバージョンI管理システムとTeXを効果的に連携させる方法について説明します。 ; .gitignore :<syntaxhighlight lang=text copy> # .gitignore の例 *.aux *.log *.out *.toc *.bbl *.blg *.dvi *.pdf !figures/*.pdf # 図表のPDFは管理対象に含める </syntaxhighlight> :<syntaxhighlight lang=tex copy> % バージョン情報の埋め込み \usepackage{gitinfo2} \begin{document} \title{文書タイトル\\ \texttt{git: \gitDescribe}} \date{\today} </syntaxhighlight> === 10.5 自動化スクリプト === 文書のビルドプロセスを自動化するスクリプトの例を示します。 ; build.sh :<syntaxhighlight lang=bash copy> #!/bin/bash # LaTeXの実行 platex main.tex pbibtex main platex main.tex platex main.tex dvipdfmx main.dvi # 中間ファイルの削除 rm -f main.aux main.log main.out main.toc \ main.bbl main.blg main.dvi # 必要に応じてPDFを移動 mv main.pdf output/ </syntaxhighlight> Makefileを使用する場合: ; Makefile :<syntaxhighlight lang=makefile copy> # Makefile TARGET = main TEXSRC = $(TARGET).tex PDFTARGET = $(TARGET).pdf .PHONY: all clean all: $(PDFTARGET) $(PDFTARGET): $(TEXSRC) platex $(TEXSRC) pbibtex $(TARGET) platex $(TEXSRC) platex $(TEXSRC) dvipdfmx $(TARGET).dvi clean: rm -f *.aux *.log *.out *.toc *.bbl *.blg *.dvi </syntaxhighlight> これらの高度なテクニックを使いこなすことで、より効率的で質の高い文書作成が可能になります。次章では、一般的なトラブルシューティングについて解説します。 == 第11章 トラブルシューティング == TeXでの文書作成中に遭遇する可能性のある問題とその解決方法について解説します。エラーメッセージの解釈から一般的な問題の解決まで、実践的な対処法を紹介します。 === 11.1 一般的なエラーと解決法 === TeXで頻繁に遭遇するエラーとその対処方法を説明します。 :<syntaxhighlight lang=tex copy> % Missing $ inserted \begin{document} x^2 % 数式モードでない場所で数式を使用 % 正しい書き方 $x^2$ % Undefined control sequence \textcolour{red}{テキスト} % スペルミス % 正しい書き方 \textcolor{red}{テキスト} % Missing \begin{document} \title{タイトル} % プリアンブルでの誤った配置 \begin{document} % documentコマンドが必要 \title{タイトル} % Extra }, or forgotten $ {text}}} % 余分な閉じ括弧 % 正しい書き方 {text} </syntaxhighlight> === 11.2 デバッグ方法 === エラーの原因を特定するための効果的なデバッグ方法を紹介します。 :<syntaxhighlight lang=tex copy> % デバッグ用パッケージの活用 \usepackage{trace} % マクロの展開過程を追跡 \usepackage{showkeys} % ラベルを表示 % エラー位置の特定 \errorcontextlines=10 % エラー表示行数の増加 % 詳細なログ出力 \tracingmacros=1 \tracingcommands=1 </syntaxhighlight> === 11.3 コンパイルエラーへの対処 === コンパイル時に発生する様々なエラーとその解決方法を解説します。 :<syntaxhighlight lang=tex copy> % メモリ不足エラーの解決 \usepackage{etex} % より多くのカウンタを利用可能に % 循環参照の解決 \usepackage{xr} % 外部参照用パッケージ \externaldocument{other-doc} % 外部文書の参照 % パッケージの読み込み順序の調整 \usepackage{hyperref} % 最後に読み込むべきパッケージ </syntaxhighlight> === 11.4 文字化けの解決 === 日本語環境で発生しやすい文字化けの問題と解決方法です。 :<syntaxhighlight lang=tex copy> % 文字コードの指定 \documentclass[dvipdfmx,utf8]{jsarticle} % フォントの明示的指定 \usepackage[haranoaji]{pxchfon} % 特殊文字の対処 \DeclareUnicodeCharacter{2015}{―} % ダッシュ \DeclareUnicodeCharacter{301C}{~} % 全角チルダ </syntaxhighlight> === 11.5 パッケージの競合解決 === 複数のパッケージを使用する際に発生する競合の解決方法です。 :<syntaxhighlight lang=tex copy> % パッケージの読み込み順序の例 \usepackage{amsmath} \usepackage{mathtools} % amsmath に依存 \usepackage[dvipdfmx]{graphicx} \usepackage{hyperref} % 最後に読み込む % オプションの統一 \usepackage[dvipdfmx]{hyperref} \usepackage[dvipdfmx]{color} % 競合するパッケージの対処 \usepackage{subcaption} % subfigure と競合 % \usepackage{subfigure} % 使用しない </syntaxhighlight> === 11.6 一般的な警告への対処 === 警告メッセージの意味と適切な対処方法について説明します。 :<syntaxhighlight lang=tex copy> % Overfull \hbox の解決 \sloppy % 行末の余白を緩める \hyphenation{長い-単語} % ハイフネーションの指定 % Underfull \vbox の解決 \enlargethispage{\baselineskip} % ページの高さを調整 % Citation undefined の解決 \nocite{*} % すべての文献を参考文献に含める \bibliography{references} </syntaxhighlight> === 11.7 PDFファイルの問題解決 === PDF出力時に発生する問題とその解決方法を説明します。 :<syntaxhighlight lang=tex copy> % フォント埋め込みの確認 \usepackage[no-math]{fontspec} \setmainfont{TeX Gyre Termes} % しおりの文字化け解決 \usepackage{pxjahyper} \usepackage[dvipdfmx, bookmarks=true, bookmarksnumbered=true, hidelinks ]{hyperref} </syntaxhighlight> これらの問題解決方法を知っておくことで、TeXでの文書作成をより円滑に進めることができます。次章では、附録として役立つ情報をまとめます。 == 第12章 附録 == === 12.1 TeXコマンド一覧 === よく使用されるTeXコマンドを、カテゴリー別にまとめて解説します。 ==== 12.1.1 文書構造 ==== :<syntaxhighlight lang=tex copy> % 文書クラス \documentclass[オプション]{クラス名} \begin{document} \end{document} % セクション \part{パート名} \chapter{章名} \section{節名} \subsection{小節名} \subsubsection{小々節名} \paragraph{段落名} \subparagraph{小段落名} % 目次関連 \tableofcontents % 目次 \listoffigures % 図目次 \listoftables % 表目次 </syntaxhighlight> ==== 12.1.2 文字装飾 ==== :<syntaxhighlight lang=tex copy> % フォントサイズ \tiny % 極小 \scriptsize % より小さい \footnotesize % 脚註サイズ \small % 小さい \normalsize % 標準 \large % 大きい \Large % より大きい \LARGE % さらに大きい \huge % 巨大 \Huge % より巨大 % フォントスタイル \textbf{太字} \textit{イタリック} \texttt{タイプライター} \textsf{サンセリフ} \textsc{スモールキャップス} \emph{強調} </syntaxhighlight> === 12.2 便利なパッケージ集 === 頻繁に使用される便利なパッケージとその主な機能を紹介します。 :<syntaxhighlight lang=tex copy> % 基本的なパッケージ \usepackage{graphicx} % 画像挿入 \usepackage{amsmath} % 数式拡張 \usepackage{hyperref} % ハイパーリンク \usepackage{color} % 色指定 \usepackage{listings} % ソースコード表示 \usepackage{booktabs} % 表組み \usepackage{multicol} % 段組み \usepackage{url} % URL表示 \usepackage{geometry} % ページ設定 \usepackage{fancyhdr} % ヘッダー・フッター </syntaxhighlight> === 12.3 オンラインリソース === TeXに関する有用なオンラインリソースを紹介します。 # 公式ドキュメント #* [https://tug.org/ TeXユーザーグループ] #* [https://ctan.org/ CTAN (The Comprehensive TeX Archive Network)] # コミュニティサイト #* [https://tex.stackexchange.com/ TeX Stack Exchange] #* [https://texwiki.texjp.org/ TeXでの日本語利用に関する情報] # オンラインエディタ #* [https://www.overleaf.com/ Overleaf] #* [https://latexeditor.lagrida.com/ Online LaTeX Equation Editor] === 12.4 TeXコミュニティの活用 === TeXコミュニティに参加し、情報交換を行う方法について説明します。 # メーリングリスト #* tex-jp-win(日本語Windows環境) #* tex-users-jp(一般的な質問) # SNSグループ #* TeXユーザーグループ(Facebook) #* #LaTeX(Twitter) # 地域ユーザーグループ #* 日本TeXユーザーグループ #* 各地域のTeXユーザーグループ === 12.5 参考文献 === TeXに関する参考となる書籍や論文を紹介します。 :<syntaxhighlight lang=tex copy> \begin{thebibliography}{99} \bibitem{knuth1984} Donald E. Knuth, ``The \TeX book'', Addison-Wesley, 1984. \bibitem{lamport1994} Leslie Lamport, ``\LaTeX: A Document Preparation System'', Addison-Wesley, 1994. \bibitem{mittlebach2004} Frank Mittelbach et al., ``The \LaTeX Companion'', Addison-Wesley, 2004. \end{thebibliography} </syntaxhighlight> このハンドブックが、皆様のTeX文書作成の助けとなれば幸いです。TeXは学習曲線が急な面もありますが、一度習得すれば非常に強力な文書作成ツールとなります。継続的な学習と実践を通じて、より美しい文書作成を目指してください。 == 関連項目 == * [[/Donald Knuth|ドナルド・クヌース]] * [[/TeX Live|TeX Live]] * [[/LaTeX入門|LaTeX]] * [[/BibTeX|BibTeX]] * [[Visual Studio Code]] * [[パッケージマネージャ]] * [[/文書作成|文書作成]] * [[/組版|組版]] * [[/文書構造化|文書構造化]] * [[/デジタル印刷|デジタル印刷]] == 参考文献 == * Knuth, Donald E. "The TeXbook", Addison-Wesley Professional, 1984 * Lamport, Leslie. "LaTeX: A Document Preparation System", Addison-Wesley Professional, 1994 * TeX Live Guide 2024 * Helmut Kopka, Patrick W. Daly "Guide to LaTeX", Addison-Wesley Professional * 奥村晴彦『改訂第9版 LaTeX美文書作成入門』技術評論社 {{ISBN|978-4-297-13889-9}} {{DEFAULTSORT:TEX}} [[Category:TeX]] [[Category:文書作成]] q732vlsmj7kugjdfdiq6k25rrgzaxpu ガリア戦記 0 3514 305039 304910 2026-10-22T09:45:01Z Jcb 92857 305039 wikitext text/x-wiki __notoc__ <!--【2006年4月23日起稿】--> {{NDC|992|かりあせんき}} {{NDC|232|かりあせんき}} *[[古典ラテン語]]>'''ガリア戦記''' *[[ラテン文学]]>'''ガリア戦記''' <div style="font-family:Arial Black;font-style:normal;font-size:18pt;color:#990033;text-align:center;background-color:#fee;">C &middot; IVLII &middot; CAESARIS &middot; COMMENTARII &middot; DE &middot; BELLO &middot; GALLICO</div> :  [[画像:Commentarii_de_Bello_Gallico.jpg|thumb|right|240px|1783年刊行の『ガリア戦記』と『内乱記』]] [[画像:Lionel Royer - Vercingetorix Throwing down His Weapons at the feet of Julius Caesar.jpg|thumb|right|280px|カエサル(右)と対面する[[w:ウェルキンゲトリクス|ウェルキンゲトリークス]](左)(リオネル=ノエル・ロワイエ [[w:fr:Lionel Royer|(fr)]] 画、1899年)]] <div style="background-color:#fff; width:70%;">[[w:古代ローマ|古代ローマ]]の政治家・武将・著述家である[[w:ガイウス・ユリウス・カエサル|ガイウス・ユリウス・カエサル4世]]([[w:la:Gaius_Iulius_Caesar|Gaius Iulius Caesar IV]])が[[w:ガリア戦争|ガリア戦争]]([[w:la:Bellum_Gallicum|Bellum Gallicum]])の経過を[[w:古典ラテン語|古典ラテン語]]で著述した[[w:ラテン文学|ラテン文学]]の古典的名著『ガリア戦記』([[wikt:la:Commentarii_de_bello_Gallico|Commentarii de bello Gallico]])の[[ラテン語]]・[[日本語]]対訳。第8巻のみ[[w:アウルス・ヒルティウス|アウルス・ヒルティウス]]([[w:la:Aulus_Hirtius|Aulus Hirtius]])による著作。  刊行当時の書名は、『ガイウス・ユリウス・カエサルの業績(戦績)に関する覚え書』(C. Iulii Caesaris Commentarii Rerum Gestarum)であったと推定され、『'''[[内乱記]]'''』と併せたものであった。 ルネサンス期以降は『ガイウス・ユリウス・カエサルのガリア戦争および内戦に関する覚え書』(C. Iulii Caesaris Commentarii de Bello Gallico et Civili)と題して刊行されていた(右の画像)。</div> <div style="background-color:#dfd; width:70%;"> 『ガリア戦記』は、ガリア戦争の当事者であるカエサルが、簡潔明晰かつ客観的に描写することにより自らの戦争の正当性を示し<ref name="ガリア戦記">[https://kotobank.jp/word/%E3%82%AC%E3%83%AA%E3%82%A2%E6%88%A6%E8%A8%98-47339 ガリア戦記(がりあせんき)とは? 意味や使い方 - コトバンク]</ref>、自らに対する種々の非難に対する弁明を意図したものである<ref name="ガリア戦記"/>。簡潔雄渾な名文として名高く<ref name="ガリア戦記"/>、第一級の歴史書であるとともにラテン文学の傑作とされている<ref name="ガリア戦記"/>。</div> <br><br> <div style="border:solid #999 1px;background:#F8F8F8;max-width:60%;padding:0.5em 1em;margin:0.5em auto;align:left;overflow:auto;text-align:justify;"> 『ガリア戦記』冒頭部分の英語圏の人による朗読を聴いてみよう。 Gallia est omnis<!--omnes--> dīvīsa in partēs trēs; quārum ūnam incolunt Belgae, aliam Aquītānī, tertiam quī<!--qui--> ipsōrum linguā Celtae, nostrā Gallī appellantur. Hī omnēs linguā, īnstitūtīs, lēgibus inter sē differunt. Gallōs ab Aquītānīs Garumna flūmen, ā Belgīs Mātrona et Sēquana dīvidit. ::::: [[File:La-cls-de-bello-gallico.ogg]] ::::::([[w:Vorbis|Ogg Vorbis]] 音声ファイル、<strong>長さ 54秒</strong>、155 kbps) </div> == 各巻対訳 == *[[ガリア戦記 第1巻]](54節){{進捗|25%|2009-07-28}}<u>(作成途上)</u>:[[w:ヘルウェティイ族|ヘルウェティイー族]]との戦役。[[w:アリオウィストゥス|アリオウィストゥス]]との戦役。 *[[ガリア戦記 第2巻]](35節){{進捗|75%|2022-04-25}}:[[w:ベルガエ人|ベルガエ人]]同盟軍との戦役、大西洋岸の征服。     *[[ガリア戦記 第3巻]](29節){{進捗|75%|2022-10-31}}:アルプスの戦い、[[w:アレモリカ|大西洋岸]]および[[w:アクィタニア|アクィータニア]]の平定。 <!--【2007年4月30日から】--> *[[ガリア戦記 第4巻]](38節){{進捗|75%|2023-07-24}}:[[w:ゲルマニア|ゲルマーニア]]人との戦役。[[w:ブリタンニア|ブリタンニア]]への初めての遠征。 *[[ガリア戦記 第5巻]](58節){{進捗|75%|2024-09-23}}:ブリタンニアへの再遠征。[[w:エブロネス族|エブローネース族]]ら諸部族の蜂起。 *[[ガリア戦記 第6巻]](44節){{進捗|75%|2025-10-26}}:ガッリアと[[w:ゲルマニア|ゲルマーニア]]の社会と風習。エブローネース族らの平定。 *[[ガリア戦記 第7巻]](90節){{進捗|50%|2026-10-20}}:[[w:ウェルキンゲトリクス|ウェルキンゲトリークス]]らが率いるガッリア同盟軍との戦役。 *ガリア戦記 第8巻(55節):<u>(掲載未定)</u> == 注解編と用例集 == [[画像:Vercingétorix se rend à César 1886 HPMotte.jpg|thumb|right|280px|カエサルのもとへ向かう[[w:ウェルキンゲトリクス|ウェルキンゲトリークス]](アンリ=ポール・モット [[w:fr:Henri-Paul Motte|(fr)]] 画、1886年)]] ;注解編 *<span style="background-color:#ffd;">[[/注解編]] {{進捗|25%|2024-09-23}}</span>   <small>(2020年3月27日から)</small> **<span style="background-color:#ffd;">[[/注解編/写本と校訂版|/写本と校訂版]] {{進捗|25%|2025-07-27}}</span><!-- 2020-04-17 -->   <small>(2020年4月17日から)</small> **<span style="background-color:#ffd;">[[/注解編/表記のゆれ|/表記のゆれ]]  {{進捗|00%|2026-03-29}}</span><!--(2026-03-29)-->   <small>(2026年3月29日から)</small> *各巻の注解 **<span style="background-color:#ffd;">[[ガリア戦記 第1巻/注解|/第1巻注解]] {{進捗|25%|2020-06-01}}</span>   <small>(2020年3月27日から)</small> **<span style="background-color:#ffd;">[[ガリア戦記 第2巻/注解|/第2巻注解]] {{進捗|25%|2022-05-05}}</span>   <small>(2021年8月26日から)</small> **<span style="background-color:#ffd;">[[ガリア戦記 第3巻/注解|/第3巻注解]] {{進捗|25%|2022-10-27}}</span>   <small>(2022年3月27日から)</small> **<span style="background-color:#ffd;">[[ガリア戦記 第4巻/注解|/第4巻注解]] {{進捗|25%|2023-07-10}}</span>   <small>(2022年10月20日から)</small> **<span style="background-color:#ffd;">[[ガリア戦記 第5巻/注解|/第5巻注解]] {{進捗|25%|2024-09-23}}</span>   <small>(2023年07月20日から)</small> **<span style="background-color:#ffd;">[[ガリア戦記 第6巻/注解|/第6巻注解]] {{進捗|25%|2025-11-05}}</span>   <small>(2024年09月09日から)</small> **<span style="background-color:#ffd;">[[ガリア戦記 第7巻/注解|/第7巻注解]] {{進捗|00%|2026-08-12}}</span>   <small>(2025年10月20日から)</small> ;用例集 *<span style="background-colo:#ffd;">[[/用例集]] {{進捗|25%|2020-03-29}}</span><!-- 2020-03-29 --> ;ガリア語 *<span style="background-colo:#ffd;">[[/ガリア語の名前]] {{進捗|00%|2025-12-07}}</span><!-- 2021-09-25 --> == 付録1 == {{Wikipedia|ガリア戦記|ガリア戦記}} {{Wiktionary|la:Commentarii_de_bello_Gallico|ガリア戦記}} {{Commons|Category:Gallic_War|ガリア戦争}} <!-- *[[/あらすじ]]:各巻のあらすじ --> *[[/内容目次]]:巻・章・節の内容を記した目次 {{進捗|75%|2011-04-02}} *[[/参照画像一覧]]:本文で参照した画像一覧  {{進捗|75%|2026-06-14}} *[[/ガリアの河川]]:本書で言及される河川  {{進捗|00%|2023-01-07}}<!--【2021年11月22日より】--> *[[/関連年表]] *[[/対訳語彙集 (羅和)]] - [[/対訳語彙集 (羅英)]] **[[/人物一覧 (羅和)]] **[[/部族一覧 (羅和)]] **[[/地名一覧 (羅和)]] {{進捗|25%|2010-04-07}} == 付録2 == *<span style="background-color:#ffa;">'''[[古代ローマの不定時法]]'''   {{進捗|50%|2020-08-24}}</span> <!-- 2016-12-31 --> *<span style="background-color:#ffb;">[[ガイウス・ユリウス・カエサルの著作/ラテン語の紀年法|/ラテン語の紀年法]]   {{進捗|75%|2009-01-12}}</span> *<span style="background-color:#ffb;">[[ガイウス・ユリウス・カエサルの著作/古代ローマの攻城兵器|/古代ローマの攻城兵器]] {{進捗|00%|2019-08-06}}</span> *<span style="background-color:#ffffcc;">[[ガイウス・ユリウス・カエサルの著作/古代ローマの軍旗類|/古代ローマの軍旗類]]  {{進捗|00%|2022-01-22}}</span><!--【2022年1月22日より】--> *[[ガイウス・ユリウス・カエサルの著作/通貨・計量単位|/通貨・計量単位]]    {{進捗|25%|2020-12-27}}</span> == 原文出典 == {{Wikisource|la:Commentarii de bello Gallico|ガリア戦記}} {{進捗状況}} *ラテン語版ウィキソース:[[s:la:Commentarii_de_bello_Gallico|Commentarii de bello Gallico]](ただし、校訂本の出典記載なし! しかも誤植が多いので注意! α系写本の影響が強いと思われる。) :以下の校訂本を参照しながら、できるだけα系写本の影響を尊重しつつ、原文を修整した。 *トイプナー古典叢書(<small>[[w:la:Bibliotheca_scriptorum_Graecorum_et_Romanorum_Teubneriana|Bibliotheca scriptorum Graecorum et Romanorum Teubneriana]]</small>) **C. Iulii Caesaris Commentarii Rerum Gestarum, edidit [[w:de:Otto_Seel|Otto Seel]], vol.I. Bellum Gallicum, [[w:la:Lipsia|Lipsiae]], Teubner, 1961. *:(オットー・ゼール(1907-1975)編。現代の代表的な校訂本。β系写本の影響がやや強い。絶版。) **C. Iulii Caesaris Commentarii Rerum Gestarum, edidit [[w:de:Wolfgang_Hering|Wolfgang Hering]], vol.I. Bellum Gallicum, Lipsiae, Teubner, 1987. *: {{ISBN|978-3-322-00351-5}} ({{ISBN|3-322-00351-5}}) *:(ヴォルフガング・ヘーリンク編。最近の校訂本。写本の異同などの情報量、文の完成度はゼール版より劣ると思われる。) == 参考文献 == *ラテン語・英語対訳 **CAESAR: The Gallic War (with an English translation), by H. J. Edwards, [[w:en:Loeb_Classical_Library|Loeb Classical Library]](#72), [[w:en:Harvard_University_Press|Harvard University Press]], {{ISBN|979-0-674-99080-7}} **:(1917年の初版以来、[[w:ローブ・クラシカルライブラリー|ローブ古典叢書]]の一冊として刊行され続けている読み物としての普及版) *ラテン語・日本語対訳 **『カエサル『ガリア戦記』第I巻』遠山一郎 訳注、大学書林、2009年、{{ISBN|978-4-475-02446-4}} *日本語訳 **『ガリア戦記』 カエサル著、近山金次訳、岩波文庫(岩波書店)、1964年、{{ISBN|978-4-00-334071-4}} **『ガリア戦記』 カエサル著、國原吉之助訳、講談社学術文庫、1994年、{{ISBN|978-4-06-159127-1}} *英語訳 **CAESAR: The Gallic War (A new English translation) by Carolyn Hammond, [[w:en:Oxford World's Classics|Oxford World's Classics(OWC)]], [[w:en:Oxford University Press|Oxford University Press]], First published 1996 ; Reissued 2008、{{ISBN|978-0-19-954026-6}}(近年の新訳) *注釈書 **Gould, H.E. & J.L. Whiteley. C. Iuli Caesaris Commentariorum De Bello Gallico. Liber Quartus. (London: Macmillan & Co Ltd., 1968).;初級者向けの英文注釈がある。 **Caesar: De Bello Gallico V, Edited by R.C.Carrington (再版Bristol Classical Press, 1984), {{ISBN|0-86292-136-8}} etc. == 関連項目 == *<span style="background-color:#ffea;">[[古典ラテン語]] {{進捗|00%|2018-04-18}} </span><!-- 2018-04-18 -->   <small>(2018年4月18日から)</small> *<span style="background-color:#ffe;">[[羅馬史略]]   {{進捗|00%|2022-08-18}}</span><!-- 2022-08-18 -->   <small>(2022年8月18日から)</small> == 関連記事 == *英語版ウィキソース:[[s:en:Commentaries_on_the_Gallic_War|Commentaries on the Gallic War]](英語訳) *フランス語版ウィキソース:[[s:fr:La_Guerre_des_Gaules|La Guerre des Gaules]](仏語訳) :  *ラテン語版ウィクショナリー:[[wikt:la:Commentarii_de_bello_Gallico|wikt:la:Commentarii de bello Gallico]] == 脚注 == <references /> == 外部リンク == ** [https://scaife.perseus.org/library/ Scaife Viewer | Library] *** [https://scaife.perseus.org/library/urn:cts:latinLit:phi0448/ Scaife Viewer | Julius Caesar] **** '''[https://scaife.perseus.org/reader/urn:cts:latinLit:phi0448.phi001.perseus-lat2:1.1.1-1.1.5/ Scaife Viewer | De Bello Gallico]''' ****: [https://scaife.perseus.org/reader/urn:cts:latinLit:phi0448.phi001.perseus-eng2:1.1/ Scaife Viewer | Gallic War] === Latein.me === *[https://www.latein.me/ Latein-Wörterbuch - Latein.me] (ラテン語-ドイツ語オンラインリソース) **[https://www.latein.me/text/3/Caesar Caesar - Übersetzungen] (カエサルの著作) ***[https://www.latein.me/text/3/Caesar/33/De+Bello+Gallico+%28I%29/p/0 De Bello Gallico (I)] (第1巻) ***[https://www.latein.me/text/3/Caesar/34/De+Bello+Gallico+%28II%29/p/0 De Bello Gallico (II)] (第2巻) ***[https://www.latein.me/text/3/Caesar/35/De+Bello+Gallico+%28III%29/p/0 De Bello Gallico (III)] (第3巻) ***[https://www.latein.me/text/3/Caesar/36/De+Bello+Gallico+%28IV%29/p/0 De Bello Gallico (IV)] (第4巻) ***[https://www.latein.me/text/3/Caesar/37/De+Bello+Gallico+%28V%29/p/0 De Bello Gallico (V)] (第5巻) ***[https://www.latein.me/text/3/Caesar/38/De+Bello+Gallico+%28VI%29/p/0 De Bello Gallico (VI)] (第6巻) ***[https://www.latein.me/text/3/Caesar/39/De+Bello+Gallico+%28VII%29/p/0 De Bello Gallico (VII)] (第7巻) ***[https://www.latein.me/text/3/Caesar/40/De+Bello+Gallico+%28VIII%29/p/0 De Bello Gallico (VIII)] (第8巻) <!--[http://www.forumromanum.org/literature/caesar/gallic.html Commentaries on the Gallic War]("corpus scriptorum latinorum" ラテン文学のデジタルライブラリー;英仏訳と地図付) [http://www.debellogallico.org/index.cgi/bgtext Commentarii de Bello Gallico](ガリア戦記の日本語対訳サイト) [http://itunes.apple.com/jp/podcast/classics-texts-caesar-de-bello/id183722640 Classics Texts :: Caesar, De Bello Gallico 2 (Study Speed)](『[[ガリア戦記 第2巻]]』の各節を[[w:ITunes|iTunes]]向けに読み上げた音声ファイルのダウンロードサイト) --> [[Category:ガリア戦記|*]] [[Category:ラテン語|かりあせんき]] [[Category:古典ラテン文学|かりあせんき]] [[Category:ガイウス・ユリウス・カエサルの著作|かりあせんき]] qj3kuwkl5460va3ijd3mumsjmzuzpz8 神経解剖学 0 4417 305076 281455 2026-10-22T11:33:46Z Jcb 92857 305076 wikitext text/x-wiki '''神経解剖学(Neuroanatomy)'''とは、特に複雑な中枢神経系(脳と脊髄)の形態・構造を理解するための肉眼解剖学、組織学をあわせ、更に機能面にも焦点を当てる学問である。その内容は[[解剖学#神経系|解剖学 神経系]]を発展させたものであり、[[組織学#神経系・感覚器]]と一部重複する。脳の構造は複雑であるがその機能は同一の機能が一部に局在する事が分かってきており、肉眼的な脳の構造を学ぶことは脳の機能を理解する事とリンクする。 == 神経解剖学で扱う項目 == === 構造と機能 === [[解剖学#神経系|解剖学 神経系]]   脊髄   小脳   脳幹と脳神経核   大脳基底核   視床   脳室系と脳脊髄液 === 主要な伝導路 === == 付録 == *[[w:ブロードマンの脳地図|大脳皮質 ブロードマンの脳地図(ブロードマン領域)]] *[[w:脳神経|脳神経]] *[[w:ヒトの神経の名称一覧|ヒトの神経の名称一覧]] == 参考文献 == *{{ISBN|4-260118-70-6}} 神経解剖カラーテキスト {{substub|061107}} [[Category:医学|しんけいかいほうかく]] k5hdveesguydnxs0kphl9z3jz8o4dpn 内科学 呼吸器 0 4423 305058 122792 2026-10-22T11:26:18Z Jcb 92857 305058 wikitext text/x-wiki == 呼吸器総論で扱う項目 == === 解剖学 === [[ファイル:Illu conducting passages日本語.jpg|250px|thumb|呼吸器の構成のシェーマ。]] 呼吸器は、ガス交換器と気道に分けることができる。ガス交換器は、[[w:体|体]]内に[[w:酸素|酸素]]を取り入れ、体内から[[w:二酸化炭素|二酸化炭素]]を[[w:排出|排出]]するための器官である。気道は、体外とガス交換器との間に空気を交通させるための器官である。 ==== 気道 ==== 気道は、[[w:喉頭|喉頭]]を境として、[[w:上気道|上気道]]と[[w:下気道|下気道]]に分けることができる。喉頭はおおむね第4〜6頚椎の高さに位置しており、[[w:喉頭蓋|喉頭蓋]]によって、物理的に気道を境することができる。 ; 上気道 : [[w:鼻|鼻]]から[[w:鼻腔|鼻腔]]、[[w:鼻咽腔|鼻咽腔]]、[[w:咽頭|咽頭]]、[[w:喉頭|喉頭]]までを指す。外界の空気を取り入れるのに伴い、空気とともに異物や細菌が流入することから、生体防御機構が高度に発達しているという特徴がある。またこの部位は、呼吸器だけでなく、[[w:発声|発声器]]としての役割も兼ねている。 ; 下気道 : [[w:気管|気管]]から[[w:気管支|気管支]]、[[w:細気管支|細気管支]]から[[w:肺胞|肺胞]]の直前までを指す。喉頭蓋によって上気道と境されており、健常時には無菌状態となっている。 ==== ガス交換器 ==== ガス交換は肺胞において行なわれる。 === 生理学 === === 症状 === === 身体所見 === === 検査内容 === == 呼吸器各論で扱う項目 == === 慢性閉塞性肺疾患 === *慢性閉塞性肺疾患とは '''慢性閉塞性肺疾患(COPD:Chronic Obstructive Pulmonary Disease)'''とは、肺でのガス交換が徐々に制限される疾患であるが、これはあくまで障害される機能による分類であり、更に肺気腫や慢性気管支炎などに分けられる。なお、正確には気管支喘息も慢性閉塞性疾患に分類することが可能である。症状により可逆性の程度は異なり、[[wikipedia:労作性|労作性]]に呼吸困難を生じる。大気汚染やタバコが主要要因となり、中高年に多い。 上記の要因により、COPDでは、以下の3種類の病変が起こる。 #肺胞壁の障害 #末梢気道(小気管支、細気管支)の障害 #中枢気道(気管、気管支)の粘液腺肥大 このうち、ガス交換の制限に関与する主要要因は末梢気道の障害である。肺胞の障害が主として見られる病変を気腫優位型、中枢気道の病変が主として見られるものが気道病変優位型と言う。しかし、実際にはCOPDはこれら3種類の病変すべてを包括した呼称である。COPDは根本的な治療法がなく、肺の生活習慣病とも呼ばれる。生活指導などを通して予防と症状の進行を抑える事が肝要である。 COPDを診断するにあたって、臨床症状(喀痰・労作性呼吸困難)と危険因子(喫煙、他に職業性の粉塵暴露)の有無に気をつける。日本人のCOPD患者の90%は喫煙者であることから、喫煙歴のある中高年の診断は常にCOPDの可能性を疑うべきである。これらを踏まえて、COPDの診断基準は'''スパイロメトリーで一秒率が70%未満であること'''で確定する。 *肺気腫 *慢性気管支炎 *びまん性汎細気管支炎 *過誤腫性肺リンパ脈管筋腫症 === 間質性肺炎(拘束性肺疾患) === *間質性肺炎とは 主に肺の間質に炎症が起きる。肺間質とは、狭義には肺胞隔壁(肺胞壁細胞を含まない)のことであり、広義には隔壁も含む肺胞と肺胞の間のスペースのことである。肺実質の定義(肺胞上皮細胞と肺胞腔)を考えると、それ以外の部分が広義の肺間質と言ってよい。但し、肺内毛細血管は実質、間質どちらにもあてはまらない。 間質性肺炎には以下のような分類がなされる。 <table border="1"> <tr><td rowspan="6">特発性間質性肺炎(Idiopathic Interstitial Pneumonia)</td><td>[[#1|特発性肺線維症(IPF)]]</td></tr> <tr><td>急性間質性肺炎(AIP)</td></tr> <tr><td>非特発性間質性肺炎(NSIP)</td></tr> <tr><td>剥離性肺炎(DIP)</td></tr> <tr><td>呼吸細気管支関連間質性肺疾患(RB-ILD)</td></tr> <tr><td>COP、BOOP(閉塞性細気管支炎・器質化肺炎)</td></tr> <tr><td rowspan="6">原因の特定されている間質性肺炎</td><td>[[#2|塵肺症]]</td></tr> <tr><td>肉芽腫性肺疾患</td></tr> <tr><td>[[#3|膠原病に伴う間質性肺炎]]</td></tr> <tr><td>[[#4|薬剤性肺炎]]</td></tr> <tr><td>放射線性肺炎</td></tr> <tr><td>感染症</td></tr></table> *病理所見 特発性間質性肺炎の病理学的分類:Liebow(1968)の分類:1.通常型間質性肺炎(UIP: usual interstitial pneumoniae)、2.閉塞性細気管支炎を合併したびまん性肺胞障害(BIP: bronchiolitis obliterans and diffuse alveolar damage)、3.剥離型間質性肺炎(DIP: desquamative interstitial pneumoniae)、4.巨細胞性間質性肺炎(GIP: giant cell interstitial pneumoniae)、5.リンパ性間質性肺炎(LIP: lymphoid inerstitial pnumoniae)の5つに分類。 その後検討され、現在の分類では、1.UIP、2.NSIP、3.OP、4.DIP、5.RP、6.DAD(diffuse alveolar damage)、7.LIP、の7つに分類される。 COPは以前ではBOOP(bronchiolitis obliterans with organizing pneumoniae:器質化肺炎を伴う閉塞性細気管支炎)と言われていたもの。AIPは病理学的にはDADの形態をとる。 *診断 *<div class="1">特発性肺線維症</div> *<div class="3">膠原病肺</div> *<div class="2">塵肺症</div> *<div class="4">薬剤耐性肺障害</div> {{stub}} == 参考文献 == == 外部リンク == *[[w:閉塞性肺疾患|閉塞性肺疾患]](ウィキペディア日本語版) *{{ISBN|4907704364}} STEP内科(4)腎・呼吸器 2p6fxkiqglqpn9ri3kzpg5v2yw25m6n 生理学/心臓 0 4452 305074 141942 2026-10-22T11:33:01Z Jcb 92857 305074 wikitext text/x-wiki {{medical stub}} == 概要 == == 心臓の生理 == === 心臓の解剖学 === <div id="1">[[Image:Ssakzastawki.png|thumb|200px|right|図1:各弁の位置関係]]</div> <div id="1">[[Image:Heart_diastole.png|thumb|200px|right|図2:心臓の概観(心房から心室への血流が示されている)]]</div> 心臓は胸腔に位置する、血液を全身に送り出すポンプの役割を持つ器官である。心臓には左右の心房・心室があり、ヒトではそれぞれが心房中隔、心室中隔で区切られているため健常人において左心房、右心房、左心室、右心室の血液が混ざる事はない。また、心臓には血液の逆流を防ぐ弁がある。弁はリング状の線維輪に収められている。[[#1|図1]]は心臓を横断し、4つある弁の位置関係を示したものである。血液の順路どおりに解説するなら(d)三尖弁、(c)肺動脈弁、(a)僧帽弁、(b)大動脈弁となる(上が腹側)。以下に血液の大まかな走路を示す。 大静脈→右心房―(三尖弁)→右心室―(肺動脈弁)→肺→左心房→(僧帽弁)→左心室―(大動脈弁)→大動脈から全身へ つまり *房室間(心房、心室の間)にある弁:三尖弁と僧帽弁(房室弁という) *心室と大血管の間にある弁:肺動脈弁と大動脈弁(その形態から半月弁という) ということになる。 ==== 支配神経 ==== 心臓は交感神経、副交感神経両方から支配を受けているが心臓の活動自体は自律的に行われている。それは後に述べる興奮伝導系により洞房結節(sinoatrial node)からの興奮が心臓全体に伝えられるためである。これにより、心臓移植などで心臓神経(交感、副交感神経の総称)を切断しても心臓は活動できるのである。 ==== 心筋 ==== 心房は心臓において血液を貯蔵しておく役割が大きい。血液を実際に肺や全身に送るのは心筋層の厚い心室の役割である。肺へ送り出す右心室よりも全身へ送り出す左心室の方が筋層が厚くなっているのも当然といえる。心筋は組織学的に特殊心筋と固有心筋に分けられる。 *特殊心筋:心臓の収縮にはほとんど働かず、興奮刺激を心筋に伝える役目を持つ *固有心筋:特殊心筋からの刺激を受け実際に心臓の収縮に働く 特殊心筋は興奮伝導系の構成要素であり、心臓が自律的に収縮するための仕組みである。この興奮伝導系には洞房結節(キース-フラック結節)、房室結節(田原結節)、ヒス束、右脚・左脚(プルキンエ線維)を含む(後述)。 === 心臓の電気的活動 === <!-- 要点: *心筋全体が素早く同調できる構造をもつ *興奮伝導系が自律的拍動をつかさどる *房室結節の房室伝導遅延が心房と心室の協調的拍動を起こす *心筋は **0相:最大立ち上がり相(Naの急速な流入(Ina)) **1相:オーバーシュート~初期再分極相(Naの急速な流入、それに続いてCaも、結節にはない) **2相:プラトー相(不応期、電位差がなくなる、Ca主体のIsiによる) **3相:再分極相(主にKの流出) **4相:緩徐脱分極層(洞房、房室結節のみに見られる、Kの流出減少・Caの流入による) *※Na,K,Caは外向き電流(流出)か内向き電流(流入)かをよく確認 *ゆっくりとした強縮のない拍動はプラトー相による *Ca流入は特殊心筋の興奮だけでなく、固有心筋の収縮にも働く *ムスカリン性Ach受容体刺激は緩徐脱分極をなくして徐脈~心停止 * * * --> === 心電図の読み方 === 心電図は手首や胸部など複数箇所に電極をつけ、その電位差を測定した結果である。主に心筋(固有筋が多い)の興奮により生じる電位を誘導する。心電図には一般的に3種類、12箇所の電位があり、これらについて詳述していく。まずは3種類の誘導法と用いる電極を見てもらいたい。 *標準肢誘導 **第Ⅰ誘導:左手-右手の電位差をみる **第Ⅱ誘導:左足-右手の電位差をみる **第Ⅲ誘導:左足-左手の電位差をみる *単極肢誘導:本来はWilsonの結合電極を不関電極(基準となる単位)とするが、以下を代用すると効率的である(証明は後に譲る) **aV<small>R</small>:Rは右手の事。右手の電位変動を左手-左足結合電極を基準としてみる **aV<small>L</small>:Lは左手の事。左手の電位変動を右手-左足結合電極を基準としてみる **aV<small>F</small>:Fは左足(Foot)の事。左足の電位変動を右手-左手結合電極を基準としてみる *単極胸部誘導:やはりWilsonの結合電極を不関電極とする。ちなみにこの結合電極の抵抗値は0で近似できる(後述) **V1誘導:第四肋間胸骨左縁 **V2誘導:第四肋間胸骨右縁 **V3誘導:V2とV4の間 **V4誘導:鎖骨中線上、第五肋間(心尖部) **V5誘導:左前腋窩線上、V4の高さ **V6誘導:左中腋窩線上、V4の高さ === 心臓の運動 === == 画像一覧 == <gallery> Image:P Zelle.GIF|洞房・房室結節の電位 Image:Potenziale.svg|心室筋の電位 Image:ECG Principle fast.gif|興奮伝導系 Image:QRS normal.svg|心電図 Image:ECG 002 a.jpg|標準肢誘導・単極肢誘導での心電図 Image:ECG 002 b.jpg|胸部肢誘導での心電図 </gallery> == 関連項目 == == 外部リンク == [http://www.maxanim.com/physiology/index.htm Max Animations]海外の生理学動画サイト(英語音声解説付) == 参考文献 == *{{ISBN|4524239529}} シンプル生理学 *{{ISBN|4260101374}} 標準生理学 oso9qvbplq8zqqs9fkalodbahf0fwvn 民法第195条 0 5398 305071 300151 2026-10-22T11:32:05Z Jcb 92857 305071 wikitext text/x-wiki [[法学]]>[[民事法]]>[[コンメンタール民法]]>[[第2編 物権 (コンメンタール民法)]] ==条文== (動物の[[占有]]による権利の取得) ;第195条 :家畜以外の動物で他人が飼育していたものを占有する者は、その占有の開始の時に善意であり、かつ、その動物が飼主の占有を離れた時から1箇月以内に飼主から回復の請求を受けなかったときは、その動物について行使する権利を取得する。 ==解説== :家畜は動産であり<ref>動物ト雖モ家畜ノモノハ毫モ他ノ動產ニ異ナルコトナシ何トナレハ他ノ動產ト違ヒ自ラ動移スル物ナルニ相違ナキモ人ヲ離レテ生活スヘキモノニ非ス且一旦逸走スルモ之ヲ捕フルコト極メテ容易ナルヲ常トスレハナリ([[w:梅謙次郎|梅謙次郎]]『民法要義』)</ref>、盗難にあった場合は盗品、逸走(逃亡)した場合は遺失物(正確には準遺失物([[遺失物法第2条]]))として扱われ、[[民法第193条|第193条]]及び[[民法第194条|第194条]]が適用される。一方、野生動物など家畜ではない動物は、無主物であれば捕獲により捕獲者の所有物となる([[民法第239条|第239条]]。ただし、捕獲・狩猟を禁じられたものを除く)。本条は、その中間にあたる、通常は家畜ではない動物が飼育されていた時、飼育者の手を離れて占有した場合の取り扱いを定める。 :なお、家畜とは「その地方では飼育されることが普通で、野生でないもの<ref>[[w:水本浩|水本浩]]『注釈民法(1) 総則・物件 第2版』p.211 [[w:有斐閣|有斐閣]] {{ISBN|4-641-08725-3}}</ref>」をいい、農業用に飼育されているもののみではなく、犬や猫といった愛玩動物もこれに含まれる<ref>家畜外ノ動物トハ例ヘハ狐、狸、虎、熊、鶯、金絲雀、鯉、鮒、鯛等ノ如キ物ヲ謂フ之ニ反シテ牛、馬、犬、猫、家鴿、鷄、家鴨、金魚等ノ如キハ皆家畜ノ動物ナリ(梅謙次郎『民法要義』)</ref>。判例では、飼育された九官鳥は「家畜外ノ動物ニ非ラズ(=家畜)」と判定されている<sup>[[#九官鳥事件|(判例)]]</sup>。 ==参照条文== ==判例== #<span id="九官鳥事件"/>大審院判決昭和7年2月16日大審院民事判例集11巻138頁(九官鳥事件) #:「本条ニ所謂家畜外ノ動物ノ意義ハ即野生ニシテ通常ノ観念上無主物ト認メラルルモノヲ指スモノ」であり、「人ノ支配ニ服セスシテ生活スルヲ通常ノ状態トスル動物ヲ指称スルモノ」 ==脚注== <references/> ---- {{前後 |[[コンメンタール民法|民法]] |[[第2編 物権 (コンメンタール民法)|第2編 物権]]<br> [[第2編 物権 (コンメンタール民法)#2|第2章 占有権]]<br> [[第2編 物権 (コンメンタール民法)#2-2|第2節 占有権の効力]] |[[民法第194条]]<br>(盗品又は遺失物の回復) |[[民法第196条]]<br>(占有者による費用の償還請求) }} {{stub|law}} [[category:民法|195]] bqdtdnv406ve6vthj66h1jidcdut16h ホンセイインコ類の飼育 0 5602 305044 283315 2026-10-22T09:46:55Z Jcb 92857 305044 wikitext text/x-wiki '''ホンセイインコ類'''とは、[[w:ワカケホンセイインコ|ワカケホンセイインコ]]、オオホンセイインコ、ダルマインコ、コセイインコなど東南アジア・インド・西アジア・アフリカに生息する[[w:オウム目|インコ]]のことをさします。 ==籠== ホンセイインコ類は尾がながいので、できるだけおおきな籠もしくは禽舎で飼育します。 ==飼料== 主食として[[w:アサ|アサ]]、[[w:アワ|アワ]]、[[w:ヒエ|ヒエ]]、[[w:ヒマワリ|ヒマワリ]]などの種子が配合された中型インコ用のシード、もしくは[[w:バードフード|バードフード]](俗にペレットとよばれている)をあたえます。健康管理からいうと、さまざまな微量要素が配合されたバードフードの方が楽です。 副食として果物、青菜、ボレー、カトルボーン、塩土をあたえます。ただし、バードフードをあたえている場合はボレー、カトルボーン、塩土をあたえてはいけません。 ==注意点== ホンセイインコ類は嘴の力がつよくてするどいので、かまれないよう気をつけます。 ==参考文献== *『鳥種特集「ホンセイインコ類」』『手乗り鳥の本』7号、ペット新聞社、1999年11月30日、12-30頁。{{ISBN|4921069131}} {{stub}} [[Category:飼育法|ほんせきせいいんこ]] [[category:畜産業|ほんせいいんこるいのしいく]] qy0rrlxpncythf60ox323ijy47aqqvx 法学入門 0 5850 305072 304731 2026-10-22T11:32:17Z Jcb 92857 305072 wikitext text/x-wiki *[[法学]] > [[法学入門]] 「法学入門」とは、大学法学部、他学部や短大の一般教育科目として、また専修学校や高校の一般知識教科として設けられているもの。科目名または教科名は、「法学入門」とは限らず、教科名では、「理工系学生のための法学概論」、文科省検定済商業科高校教科書などで「経済活動と法」というものもある。いずれにしても、大学法学部以外では、現行法の解説が主な内容となっている。 {{Wikiversity|法学入門|Topic:法学入門|トピック}} === 法学一般 === 大正時代から第二次世界大戦後にかけて活躍した学者による書物 *『法学入門』([[w:末弘嚴太郎|末弘嚴太郎]] 日本評論社) 主に昭和期にかけて活躍した学者による書物 *『法学の基礎』([[w:団藤重光|団藤重光]] 有斐閣) *『法学入門』([[w:三ヶ月章|三ヶ月章]] 弘文堂) *『実定法学入門』([[w:田中英夫 (法学者)|田中英夫]] 東京大学出版会) *『法学入門』([[w:星野英一|星野英一]] 有斐閣) *『現代法学入門』([[w:伊藤正己|伊藤正己]]・[[w:加藤一郎 (法学者)|加藤一郎]] 有斐閣) 現代の学者による書物 *『法学の誕生』([[w:内田貴|内田貴]] 筑摩書房) === 基本七法 === 主に昭和期にかけて活躍した学者による書物で昭和40年代頃の議論を知る参考になるもの。 ==== 憲法 ==== *『憲法要論』([[w:清宮四郎|清宮四郎]] 法文社) ==== 民法 ==== *『民法大意 上・中・下』([[w:我妻栄|我妻栄]] 岩波書店) *『民法大要(身分法)』([[w:中川善之助|中川善之助]] 勁草書房) *『民法概論I - IV』([[w:星野英一|星野英一]] 良書普及会) ==== 刑法 ==== *『刑法総論』・『(同)各論』([[w:佐伯千仭|佐伯千仭]] 有信堂) *『刑法』([[w:団藤重光|団藤重光]] 弘文堂) ==== 商法 ==== *『概説商法』([[w:石井照久|石井照久]] 勁草書房) ==== 民事訴訟法 ==== *『民事訴訟法(一)』([[w:兼子一|兼子一]] 有斐閣) *『民事訴訟法』([[w:三ヶ月章|三ヶ月章]] 有斐閣) ==== 刑事訴訟法 ==== *『刑事訴訟法概論』([[w:小野清一郎|小野清一郎]] 法文社) *『刑事訴訟法』([[w:平野龍一|平野龍一]] 有斐閣) ==== 行政法 ==== *『行政法』([[w:田中二郎|田中二郎]] 弘文堂) *『行政法講義』([[w:柳瀬良幹|柳瀬良幹]] 良書普及会) === 論文集・その他理論書 === *『法律学における学説』([[w:宮沢俊義|宮沢俊義]] 有斐閣) *『岩波講座 基本法学(全8巻)』(岩波書店) *『比較不能な価値の迷路』([[w:長谷部恭男|長谷部恭男]] 東京大学出版会) *『民法総論』([[w:大村敦志|大村敦志]] 岩波書店) *『生活民法入門』(大村敦志 東京大学出版会) 2000年以降の本 === 生活法学一般 === 『大学生が知っておきたい生活のなかの法律』が慶應義塾大学出版会より2016年4月に刊行されている。 {{ISBN|978-4766423204}} == 脚注 == <references/> {{stub|law}} [[Category:法学|にゆうもん]] g6hyo5m8mus3os5sr64zujdn39toz4z D言語 0 6728 305013 297129 2026-10-22T08:59:08Z Jcb 92857 305013 wikitext text/x-wiki {{Pathnav|情報技術|プログラミング}} ---- {{Wikipedia|D言語|D言語}} D言語は、2001年にウォルター・ブライト(Walter Bright)によって設計されたプログラミング言語です。D言語は、C言語やC++言語から多くのアイデアを借用しており、それらを現代的な言語機能で拡張しています。D言語は、コンパイル時に静的に型付けされる静的型付き言語であり、メモリ管理は手動でも自動でも行うことが可能です。 D言語の最も重要な特徴の1つは、高速であることです。D言語は、C言語と同じように、ネイティブコードを生成することができます。D言語のコンパイラは、C言語と同じくらい高速であり、実行速度が非常に速いプログラムを生成することができます。 また、D言語は、C++言語よりもシンプルな文法を持っています。これにより、開発者はより素早く開発することができます。D言語には、オブジェクト指向プログラミング、ジェネリックプログラミング、関数型プログラミングなどの多くのプログラミングパラダイムが含まれています。 D言語は、Linux、Windows、macOS、FreeBSDなどの多くのプラットフォームでサポートされています。D言語は、Webアプリケーション、ゲーム、システムプログラミング、データベースアプリケーションなど、さまざまな用途に使用されています。 この教科書では、D言語の基礎から始めて、より高度なトピックに進んでいきます。D言語を学ぶことで、より高速かつ効率的なプログラミングができるようになります。 == 目次 == :※ 現状ではサブページのリンク集です。 * [[D言語/インストールおよび実行方法]] * [[D言語/関数]] * [[D言語/オブジェクト指向]] * [[D言語/ジェネリックス]] == D言語の特徴 == D言語はC++とは違い、C言語とのソースの互換性はありません(C言語のライブラリとは互換性あり)。もし互換してしまうと古い時代遅れのノウハウ(バッドノウハウ)を引きずりかねない、と考えていたためです。 D言語はシステムプログラミング言語を目指しています。システムプログラミング言語とは、オペレーティングシステムそのものの開発もでき、高速で動く言語のことです。(たとえばC言語はシステムプログラミング言語です。LinuxはC言語で書かれています。) 実際にD言語で開発されたOSが市販や公開されているかはともかく、D言語がOS開発言語も目指していることは、利用上、とても重要です。なぜなら、ユーザーにとって手間が掛かるかもしれないが、とりあえず、今までC言語で出来たハードウェア制御は、D言語でもひととおり出来るようになる予定・目標だからです。 D言語の特徴をいくつか上げておきましょう。 * ネイティブな形式にコンパイルされるため動作が速い - JavaやRubyなどのインタプリタや仮想機械上で動作する言語に比べて非常に高速です。 * C言語・Javaと似ているため、学習コストが低い * 自動メモリ管理 - [[w:ガベージコレクション|ガベージコレクタ]]を搭載しているため、メモリの取得・開放に関してプログラマが気にする必要はありません。もちろん手動でメモリを管理する方法も用意されています。 * 保守性 - assert、[[w:単体テスト|unittest]]、invariant、debug, version による条件コンパイルなど、プログラムの保守性を高めるための機能があります。また、関数に定められる@safeなどのセキュリティレベルも保守性に貢献するかもしれません。 * 可読性の高いテンプレート - C++と比べてテンプレートの構文がすっきりしていて仕様を把握するのも簡単です。 * 強力なCTFE(コンパイル時関数実行) - D言語はかなりの範囲の関数の結果等をコンパイル時に実行することができます。 * 豊富な表現力 - [[プログラミング言語/関数型言語|関数型言語]]や[[プログラミング言語/オブジェクト指向言語|オブジェクト指向言語]]といったパラダイムを非常にうまい具合に言語に組み込み、高い水準で両立させています。今後、借用(@live)に関連する機能も充実化される予定です。 * コンパイルの速さ、コンパイラの開発しやすさ - D言語はそのコンパイラの開発が簡単になるように設計されており、特にパースはC++とは比べ物にならない速さです。 上記のうち、C++ との共通点は、ネイティブコンパイルされることくらいでしょう。文法からもわかりますが、D言語はC言語とのメモリ構造が同じになるように設計されており、C言語のライブラリを使えるようになっています。一方で、C言語の <code>printf</code> のような古い関数は D言語では <code>writef</code> を使ったり、ファイル入出力のためのクラス <code>File</code> があったりなど、D言語のより型安全で抽象的にラップされた機能があります。 C++ と違って <code>cout</code> の後ろの<nowiki> << </nowiki> の方向が <nowiki> >> </nowiki> だったかそれとも <nowiki> << </nowiki> だったかで悩む必要もD言語では無く、直感的にD言語は扱いやすく設計されています。 C++ や他言語との重要な違いはテンプレートです。テンプレート引数を <nowiki> < > </nowiki> で表すと、構文解析の際にそれがテンプレートの引数なのかそれとも比較式なのかを、記号表をいちいちチェックしなければならず、パースの時間が非常に長くなってしまいます。D言語は <code>!</code> が二項演算子として使われていないことに着目して、これをきれいに解決しました。 == Hello World! == まずは環境がちゃんと動くか試してみましょう。例として、[[w:ハローワールド|"Hello World!"という文字列を表示させる]]プログラムを作ってみることにします。テキストファイルを新しく作り、hello.dという名前にしたらテキストエディターで以下のように編集します。 ;[https://paiza.io/projects/_o3x1t3sxSWATer0QsDecA?language=c hello.d]:<syntaxhighlight lang="D" line> import std.stdio; void main() { writeln("Hello World!"); } </syntaxhighlight> さぁ、これを動かしてみましょう。 <syntaxhighlight lang="bash"> $ rdmd hello.d Hello World! </syntaxhighlight> 動きましたか? 正常に動いた場合、上にも示してある通り、コンソール画面に Hello World! と文字列が表示されます。 動かなかったら、環境変数などをもう一度確認してみてください。 === ソースコードの解説 === C言語を知っている読者には馴染みの深い見た目ではあると思うが、初心者向けにコードを一行ずつ解説していくことにしましょう。 :<syntaxhighlight lang="D" start=1 line> import std.stdio; </syntaxhighlight> :C言語のコード冒頭によくある<code>#include <stdio.h></code>に相当する部分ですが、しかしD言語では仕様の細部が違い、D言語にはプリプロセッサーはありません。このコードの意味は「<code>std</code>というパッケージにある<code>stdio</code>というモジュールをインポートする」という意味です<ref>std.stdio は、core.stdc.stdioを拡張した標準的なI/O関数です。core.stdc.stdioはstd.stdioをインポートする際にパブリッシュされます。</ref>。 :さらに意味のわからない単語が出てきましたね。一つずつ解説していきましょう。 :std というディレクトリーや stdio.d というファイルを作った覚えはないと思います。これらはphobos<ref>⇒ [https://dlang.org/phobos/ Phobos Runtime Library]</ref>という'''標準ライブラリ'''と呼ばれるもので、コンパイラーのインストール時に一緒にインストールされたものです。おそらく探せば phobos/ というディレクトリーが見つかるのではないでしょうか。 :stdio.d にどのような内容が書かれているのか気になる方は、直接覗いてみるのも良いでしょうが、[https://dlang.org/phobos/std_stdio.html ここ]に定義の一覧が載っていますので、こちらを見るほうが良いでしょう。 :「モジュール」という言葉について。D言語では「ソースコードが書かれた一つのファイル」のことを指します。 :「インポート」とは、そのモジュール(この場合は<code>std.stdio</code>)に書かれているシンボルの定義全て(シンボル表)を今のモジュール(この場合は<code>hello.d</code>)から使えるようにする、という意味です。5行目に "writeln" というのがありますね。"writeln" は <code>std.stdio</code> で定義されているのです。 :<syntaxhighlight lang="D" start=3 line> void main() </syntaxhighlight> :関数 main を定義するぞ、という宣言です。詳しくは [[D言語/関数]] を参照してください。関数というのは手続きをまとめたもので、値を返したり返さなかったりするもの、という理解で良いでしょう。<code>void</code> は「何も返さない」という意味です。--- <small>細かいことを言えば、main 関数だけは若干違っており、void main は、int main に内部的に書き換えられ、最後に必ず return 0; をするような仕様になっています。</small> --- :D言語のプログラムのエントリーポイントは必ず main 関数です。D言語ではC言語と同じように、地の文に直接処理を書き込むことはできません。しかしそうするとプログラムの実行を指定できないため、プログラムが起動されるときは main 関数を呼ぶ、と決まっているのです。 :<syntaxhighlight lang="D" start=4 line> { </syntaxhighlight> :D言語では、<code>{ }</code> で囲まれた文のことを「ブロック」と呼び、そこには文を書き並べることができます。「ブロック」は「スコープ」をもちます。このブロックは関数<code>main</code>に属し、この関数の処理を表しています。 :<syntaxhighlight lang="D" start=5 line> writeln("Hello World!"); </syntaxhighlight> : "Hello World!" については説明の必要がないでしょう。ここにある内容が表示されているのです。D言語では文字列を表す方法はたくさんありますが、とりあえずダブルクオーテーション <code>" ... "</code> で囲むことを覚えておけば良いでしょう。 : writeln は関数です。<code>std.stdio</code> というモジュールに定義されているのでしたね。不正確になることを恐れずに言えば、これはターミナルに文字を表示するための関数です。 : 関数を呼び出すには、関数名の後にカッコで引数をくくる必要があります。この一文は、<code>writeln</code> という関数に引数として <code>"Hello World!"</code> という文字列を与えて、関数を呼び出しているのです。 : <code>;</code> は、必ず文末につけなければなりません。 :<syntaxhighlight lang="D" start=6 line> } </syntaxhighlight> :4行目の <code>{</code> に対応する閉じカッコです。 == D言語の基礎 == この節では、D言語のプログラムがどういう見た目をしているか、その全体像をまとめたものが書かれています。それぞれについてもう少し詳しく書かれたものはもっと下の節にありますので、そちらを参照してください。 {{See also|[https://tour.dlang.org/tour/ja D言語ツアー]}} === 概観 === D言語の構文はC言語やJavaに似ており、テキストに書かれたプログラムを1行ずつ処理していく[[プログラミング言語/プロシージャ型言語|手続き型言語]]の側面を持ち合わせています。基本的な流れや、一つ一つの文、コメント、演算子などもC言語を元にしています。詳しくは[[C言語]]の該当項目を参照してください。 ここでは、D言語の文法について事細かに説明することはしません。ただしC言語と異なる部分もあるため、その部分については必ず明記しています。 === 文字列の表示の関数 === write, writef, writeln, writefln などの関数で、文字列の表示が可能です。 ln がついた関数は、「自動的に末尾に改行を付ける」という意味であり、f がついた関数はC言語のprintf関数と同じように、書式に従って表示します。 例を見てみましょう。 ;[https://paiza.io/projects/VrcPDI3KdHPeuR2LW8ZTrg?language=d write および writeln の例]:<syntaxhighlight lang="D"> import std.stdio; int a = 7; int b = 4; void main() { write("ABC"); writeln(" a = ", a); // a を表示 writeln(" b = ", b); // b を表示 } </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang="text"> ABC a = 7 b = 4 </syntaxhighlight> <code>write, writeln</code> は任意の型を任意の個数取ることができるので、いろいろなものを表示してみるのも面白いでしょう。 ;[https://paiza.io/projects/xiXgv5w-W3do2E2kZxUtsA?language=d writeflnの例]:<syntaxhighlight lang="D"> import std.stdio; int a = 7; void main() { writefln("変数は%03d", a); } </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang="text"> 変数は007 </syntaxhighlight> === コメント === D言語のコメントは3種類あります。 ;コメントの例:<syntaxhighlight lang=d> // 一行コメント /* 複数行コメント */ /+ ネスト /+ コメント +/ +/ </syntaxhighlight> コメントとは、プログラムの中に残しておくメモのようなものです。コメントに何を書いてもコンパイラには影響を及ぼしません。このページにあるプログラムにもコメントが書かれていますね。 === shebang === 特別なコメントとしては、行頭に <code>#!</code> で始まる特殊な一行コメント「[[Shebang]]」を書くことができます。 これはUnix系のOSで、インタプリタ言語のソースコードを直接実行するためのコメントとして有名です。 D言語も <code>#!/usr/bin/rdmd</code> と書くことでインタプリタ言語のように使うことができます<ref>OSが、shebangに対応している必要があります。</ref>。 === 埋込みドキュメント === コメントをドキュメント化することもできます。 ;埋込みドキュメントの例:<syntaxhighlight lang=d> /// 一行コ埋込みドキュメント /** 複数行埋込みドキュメント */ /++ ネスト /+ 埋込みドキュメント +/ +/ </syntaxhighlight> {{See also|D言語/DDoc}} === 変数 === 変数とは、値を格納するものです。 ;[https://paiza.io/projects/PkBfTEbP7QSybAzuA7NNgA?language=d コード例]:<syntaxhighlight lang=d> import std.stdio; void main() { auto a = 2460; // 変数 a を宣言し初期値2460で初期化 auto b = 48; // 変数 b を宣言し初期値48で初期化 writeln("a: ", a, " b: ", b); // 変数 a と 変数 b の値を参照 auto c = a - b; // 変数 c を宣言し初期値 a - b で初期化 writeln("c: ", c); // 変数 c を参照 b = c - 12; // 変数 b に c - 12 を代入する writeln("b: ", b); // 変数 b を参照 a = a - b; // 変数 a に a - b を代入する writeln("a: ", a); // 変数 a を参照 } </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang="text"> a: 2460 b: 48 c: 2412 b: 2400 a: 60 </syntaxhighlight> : 変数を使うには宣言が必要で、宣言と同時に初期値を与えることができます。 : auto で型宣言した場合は、初期値が必要で初期値の型が変数の型になります(型推論) : 変数に値を「代入する」という操作によって、変数が格納する値が変化します。 ::代入という操作は、等号記号 "=" を用いて表します。これは数学の等号とは意味が異なるので注意が必要です。 :変数の値は、変数名を使って参照します。 === 関数 === プログラミングをする際に、決まった同じ処理をしたくなる場合があるはずです。その際にコードを再利用することができるよう、関数というものが備わっています。これも数学の意味での関数とは違って、副作用を持つことができるので、「手続き」としばしば呼ばれます。 ;[https://paiza.io/projects/-hL_jz7aiYz4qclUY97_Dg?language=d コード例]:<syntaxhighlight lang=d> import std.stdio; /// 関数呼び出しと型推論 void main() { show_next(twice(8)); int m = 20; // int 型の変数 m を宣言し 20 で初期化 show_next(twice(m)); writeln(m); writeln(add(m, 32)); writeln(m); } /// int 型の値を2つ受け取り、int 型の値を返す関数 'add' を宣言する int add(int n, int m) { auto result = n + m; return result; } /// int 型の値を受け取る、関数 'twice' を宣言。戻値の型は型推論により int となる auto twice(int n) { return 2 * n; } /// グローバル変数 counter は、関数 'show_next' によって参照されます int counter = 0; /// int 型の値を受け取り、何も返さない関数 'show_next' を宣言する void show_next(int n) { counter = counter + 1; writeln(counter, " : ", n + 1); } </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang="text"> 1 : 17 2 : 41 20 52 20 </syntaxhighlight> 関数の宣言方法は、上にある通りです。型をまだ説明していませんが、D言語では、値には常に「型」がついて回るのです。そのため、<code>int</code> (32bitの符号付き整数型) といったものが必要になってきます。変数宣言のときには単に "auto" と書くだけで良かったのは、コンパイラが初期値から型を推論して自動で型をつけてくれたからなのです。実際、関数 <code>twice</code> の宣言は <code>auto</code> と書くことができます。 宣言した関数を呼び出すには、<code>f(a, b, c)</code> のように書きます。このとき、カッコの中にある <code>a, b, c</code> といったものを「実引数(''argument'')」と呼びます。上のコード例で定義した関数は、<code>main</code> が引数なし、<code>twice, show_next</code> が引数一個、<code>add</code> が引数二個、となっていますね。 ところで、<code>writeln(m); // 20</code> とありますね。なぜ、これが "20" と表示されるか疑問に思いましたか? 関数に値を渡すとき、特に指定しなければそれは'''値渡し'''になります。値渡しとは、「変数の指す値」を渡し、変数自体の情報は渡さないということです。したがって、上のコード例では、<code>m</code> の値は、<code>twice, add</code> に渡されても変わらなかったのです。 では逆に、変数の値を書き換えるようにするためには、どうすれば良いのでしょうか。そのような関数の引数への渡し方を'''参照渡し'''と言います。D言語で参照渡しをする方法は簡単です。例を見てみましょう。 ;[https://paiza.io/projects/Sn9-AxP-__yMRmqP1puBoQ?language=d コード例]:<syntaxhighlight lang=d> import std.stdio; void main() { int m = 2; writeln(successor(m)); // 3 writeln(m); // 3 } // int 型の参照渡し int successor(ref int n) { n = n + 1; return n; }</syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang="text"> 3 3 </syntaxhighlight> これを実行すると、m の値が変わっていることがわかります。しかし、同じコードでも <syntaxhighlight lang="D"> successor(successor(m)); </syntaxhighlight> はエラーになってしまいます。それは、<code>successor</code> の返値が参照渡しできないからです。このコードを意図したように動かすには、 <syntaxhighlight lang="D"> ref int successor(ref int n) </syntaxhighlight> と、返値の型にも <code>ref</code> をつければ解決します。 ==== UFCS ==== 関数呼び出しがいくつも重なると、読みにくくなることがあります。例えば、 <code>writeln(twice(add(add(n, 10), 20)));</code> というコードは非常に読みにくいです。そこで活躍のするのが統一関数呼び出し構文(UFCS; Unified Function Call Syntax)です。これはおおざっぱに言ってしまえば、<code>a.f(b, c, ...)</code> を <code>f(a, b, c, ...)</code> と(コンパイラが内部的に)書き換えることです。[[D言語/オブジェクト指向|オブジェクト指向]]がわかる方は、メソッドの呼び出しのように書くことができるものだと理解できるでしょう。これを使うと先程のコードは以下のようになります。 <code>n.add(10).add(20).twice().writeln();</code> これでだいぶスッキリしましたが、今度は <code>twice writeln</code> のあとにつくカッコすらも煩わしく感じてしまいます。これを省略するには、関数定義の際に <code>@property</code> 属性をつければよいです。つまり、 <syntaxhighlight lang="D"> auto twice(int n) @property { ... } </syntaxhighlight> と定義すれば良いです。なお、<code>writeln</code> についても同様に省略可能です。 ;[https://paiza.io/projects/NhGlTBeBORgfc__rqD91Nw?language=d UFCS版successor]:<syntaxhighlight lang=d> import std.stdio; void main() { int m = 2; writeln(m.successor); writeln(m.successor); writeln(m.successor.successor.successor); writeln(m); } ref int successor(ref int n) @property { n = n + 1; return n; }</syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang="text"> 3 4 7 7 </syntaxhighlight> === 制御文 === プログラムを書く際には条件分岐やループといった機能が活躍します。[[w:フィボナッチ数列|フィボナッチ数列]]を計算する関数を定義してみましょう。 ; [https://paiza.io/projects/ZktMv2CCpPJ0QE2LLc7MFg?language=d コード例 (再帰を使った例)]:<syntaxhighlight lang=d> import std.stdio; auto fibonacci(ulong n) { if (n <= 0) { return 0; } else if (n == 1) { return 1; } else { return fibonacci(n - 1) + fibonacci(n - 2); } } void main() { writeln(fibonacci(10)); } </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang="text"> 55 </syntaxhighlight> 早速出てきました。if-else 文です。 :<syntaxhighlight lang="text"> if (条件式) { 条件式が真だったときに実行される文 } else { 条件式が偽だったときに実行される文 } </syntaxhighlight> 上のコードでは、引数が 0 以下であるときは 0 を返し、そうではないときは、1 ならば 1 を返し、そうでないときはフィボナッチ数列の漸化式にしたがった値を返しています。なお、else 節は省略できます。そのときは、条件が偽であるとき何もしません。 このフィボナッチ数の計算は一見シンプルで完璧であるように見えますが、問題があります。それは計算量です。<code>fibonacci(10)</code> はすぐに計算できますが、<code>fibonacci(45)</code> はなかなか計算が終わりません。なぜなら、この関数が呼び出しは自身を2度呼び出すので、2の累乗のオーダーの計算量になってしまうからです。<br /> しかし、実際にフィボナッチ数列を手計算するときは線形時間のはずです。一つ前と今のフィボナッチ数がわかれば次のフィボナッチ数がわかるからです。この考えをコードに起こすには、同じ処理を繰り返さなければならないことがわかると思います。 ;[https://paiza.io/projects/dFoNKdxfMQ4H8cLITAdfqA?language=d コード例 (反復を使った例)]:<syntaxhighlight lang="D"> import std.stdio; long fibonacci(long n) { long previous = 0; // F_0 long current = 1; // F_1 long counter = 1; // いま current は F_{counter} while (counter < n) { long new_f = previous + current; // F_{n+1} = F_n + F_{n-1} // 更新 counter++; // counter を 1 増やす previous = current; // 次のフィボナッチ数に進める current = new_f; // 次のフィボナッチ数に進める } return current; } void main() { writeln(fibonacci(10)); } </syntaxhighlight> ;実行結果:<syntaxhighlight lang="text"> 55 </syntaxhighlight> while 文です。 :<syntaxhighlight lang="text"> while (条件式) { 条件式が真だったときに実行される文 } </syntaxhighlight> while 文は、「条件式が真であるなら文を実行し、偽であるならば実行しない」を繰り返す制御文です。 == 型 == D言語は強い静的型付け言語です。型とはデータの種類を表すものであり、典型的なものとして、int型, float型、string型、配列型、ポインタ型、関数型、といったものがあります。D言語は静的型付け、つまりコンパイル時に変数の型が必ず決まるのです。このように聞くとなんだか難しい気もしますが、D言語には強力な型推論の機能があり、厳格に気にしなければならないわけではないことは、変数宣言のセクションを見ればわかるでしょう。 C言語を知っている人へ : C言語での型のコードがD言語でエラーなくコンパイルされるなら、双方で同じ解釈をされます。 === プリミティブな型 === プリミティブな型、つまりそれ以上分解できない型を以下に挙げます。 ;整数型 *<code>byte</code> 符号付き8bit整数 *<code>ubyte</code> 符号無し8bit整数 *<code>short</code> 符号付き16bit整数 *<code>ushort</code> 符号無し16bit整数 *<code>int</code> 符号付き32bit整数 *<code>uint</code> 符号無し32bit整数 *<code>long</code> 符号付き64bit整数 *<code>ulong</code> 符号無し64bit整数 *<code>cent</code> 符号付き128bit整数 (現在は使用不可) *<code>ucent</code> 符号無し128bit整数 (現在は使用不可) ;浮動小数点数型 *<code>float</code> 32bit *<code>double</code> 64bit *<code>real</code> x86 CPUでは80bit、それ外は <code>double</code> と同じ ;文字型 *<code>char</code> 符号無し8bit UTF-8 コードユニット *<code>wchar</code> 符号無し16bit UTF-16 コードユニット *<code>dchar</code> 符号無し32bit UTF-32 コードユニット ;その他の型 *<code>void</code> 「値が無い」ことを示す型。 *<code>bool</code> 真理値 <code>true</code> <code>false</code> を表す型。 *<code>size_t</code> 符号付き整数型。最大値まででプログラムのあらゆるメモリにアクセスできるように保証されている。通常は <code>ulong</code> を指す。 *<code>ptrdiff_t</code> 符号無しの <code>size_t</code>。 === 型を表示するには === <code>typeid</code> を使って型を表示することができます。以下の例1を見てください。 === 例1 === <syntaxhighlight lang="D"> import std.stdio; void main() { int a = 42; float b = 32.5f; writeln(a, " ", b); // 42 32.5 long c = 16; ulong d = 26; bool e = a == c+d; writeln(e); // true writeln(typeid(a-c-d)); // ulong } </syntaxhighlight> 異なる型の間の演算、型キャスト等については[[D言語/型]]を参照してください。 === 配列型・ポインタ型 === 型 <code>T</code> に対して <code>T[]</code> という型が存在します。これは「<code>T</code>の動的配列型」であり、参照型です。配列型の変数は、内部的にはヒープ領域にあるデータの先頭を指すポインタと配列の長さを持っています。これはC言語の配列のバッファオーバランを実行時エラーとするという改善です。 配列の長さは、<code>length</code> というプロパティで取得することができ、<code>length</code> プロパティに<code>size_t</code>の値代入するとその長さの配列をメモリに確保してくれます。なお、確保されたメモリの各要素は、その型の初期値で初期化されます。 C言語経験者向けの注意 : Cスタイルの宣言 <code>int array[];</code> は許可されていません。 === 例2 === <syntaxhighlight lang="D"> import std.stdio; void main() { int[] a = [2, 3, 5, 7, 11, 13]; writeln(a, " ", a.length); // [2, 3, 5, 7, 11, 13] 6 auto b = a[0 .. $-2]; // $ は [ ] 内で使われると、その配列の長さ length を指す b[0] = 20; writeln(b, " ", b.length); // [20, 3, 5, 7] 4 writeln(a); // [20, 3, 5, 7, 11, 13] (a, b は同じメモリ領域を指すため、b の要素を書き換えると a も変化する auto c = a ~ [17, 19]; // 連結 ~ によってヒープ領域に新しい動的配列が確保され、c はそれを指すようになる wirteln(c); // [20, 3, 5, 7, 11, 13, 17, 19] c[1] = 30; writeln(c); // [20, 30, 5, 7, 11, 13, 17, 19] writeln(a); // [20, 3, 5, 7, 11, 13] (c は a のコピーを連結したので、a と同じ場所は指さない } </syntaxhighlight> === 例3 === <syntaxhighlight lang="D"> import std.stdio; void main() { int[] a; a.length = 10; writeln(a); // [0, 0, 0, 0, 0, 0, 0, 0, 0, 0] auto b = new int[10]; // これでも長さ10の配列を確保できる } </syntaxhighlight> === 連想配列型 === === function / delegate 型 === == 制御文 == === if 文 === === while 文 === === do-while 文 === === for 文 === === goto 文 === === switch 文 === === foreach / foreach_reverse 文 === == その他の文 == == ブロック文 == === with 文 === === asm 文 === === mixin 文 === === assert 文 === == 式 == == ユーザー定義型 == === enum === === struct === === class === [[D言語/オブジェクト指向]]を参照。 === union === == 例外処理 == == 契約 == 単元『[[D言語/関数]]』で説明済みなので参照のこと。 == 参考文献 == *プログラミング言語D Andrei Alexandrescu著 長尾高弘訳 株式会社翔泳社出版 {{ISBN|978-4-7981-3110-8}} *Programming in D Ali Çehreli著 {{ISBN|978-0-692-59943-3}} {{ISBN|978-0-692-52957-7}} {{ISBN|978-1-515-07460-1}} {{ISBN|978-1-515-07460-1}} == 脚註 == <references /> == 外部リンク == *[https://dlang.org/ 公式サイト] *[https://ddili.org/ders/d.en/index.html Programming in D] 参考文献の本 Programming in D の全ての内容が著者によって公開されている。 == 下位階層のページ == <div style="max-height: 24rem; overflow-y: scroll;"> {{特別:前方一致ページ一覧/{{PAGENAME}}/|hideredirects=yes|stripprefix=yes}} </div> {{stub|it}} [[Category:プログラミング言語]] [[カテゴリ:D言語|*]] 2e8fz1qwurzaj1p84379n7vqlmrblyr 料理本/滋賀県の郷土料理 0 6883 305025 276675 2026-10-22T09:30:32Z Jcb 92857 305025 wikitext text/x-wiki {{Pathnav|Main Page|その他の本|料理本|料理本/日本料理}} {{SUBPAGENAME}}では、滋賀県およびその周辺の地域でよく食されている料理とその調理方法を紹介します。 == 参考文献 == * 「つくってみよう滋賀の味」滋賀の食事文化研究会、サンライズ出版、2001年10月26日発行、{{ISBN|4883250911}} * 「つくってみよう滋賀の味 Ⅱ」滋賀の食事文化研究会、サンライズ出版、2003年02月2日発行、{{ISBN|4883252256}} == カテゴリツリー == {{#Categorytree:{{SUBPAGENAME}}|hideroot=on|mode=pages|depth=9}} {{Substub|240716}} {{デフォルトソート:しかけん の きようとりようり}} [[Category:{{SUBPAGENAME}}|*]] 5fdk7f89s9poe9uug12pjp6im3iul6e 料理本/長野県の郷土料理 0 6884 305027 276715 2026-10-22T09:30:52Z Jcb 92857 305027 wikitext text/x-wiki '''{{SUBPAGENAME}}'''では、長野県およびその周辺の地域でよく食されている料理とその調理方法を紹介します。 == 参考文献 == * 「おやき名人」石坂里子監修、柏企画、2001年8月23日発行、{{ISBN|4907788053}} == カテゴリツリー == {{Wikipedia|{{SUBPAGENAME}}}} {{#Categorytree:{{SUBPAGENAME}}|hideroot=on|mode=pages|depth=9}} {{Substub|240716}} {{DEFAULTSORT:なかのけん の きょうとりようり}} [[Category:{{SUBPAGENAME}}|*]] op9vhaa7r0uxvrh1aqhtfozj7kstpqg 料理本/京都府の郷土料理 0 6886 305022 276668 2026-10-22T09:28:22Z Jcb 92857 305022 wikitext text/x-wiki {{Pathnav|Main Page|その他の本|料理本|料理本/日本料理}} [[{{PAGENAME}}]]では、京都府およびその周辺の地域でよく食されている料理とその調理方法を紹介します。 == 参考文献 == * 「京都の郷土料理」飯塚久子・滋野幸子・堀浪子共著、同文書院、1987年7月25日発行、{{ISBN|4810350347}} == カテゴリツリー == {{#Categorytree:{{SUBPAGENAME}}|hideroot=on|mode=pages|depth=9}} {{デフォルトソート:きようとふ の きようとりようり}} {{Substub|240716}} [[Category:{{SUBPAGENAME}}|*]] r0pycmmm90agw03l68005qpw4gw8351 料理本/兵庫県の郷土料理 0 6887 305028 276717 2026-10-22T09:31:03Z Jcb 92857 305028 wikitext text/x-wiki '''{{SUBPAGENAME}}'''では、兵庫県およびその周辺の地域でよく食されている料理とその調理方法を紹介します。 == 参考文献 == * 「兵庫県の郷土料理」浅野晶子・橋本幸子・平野豊子・西栄子・大江隆子・安藤紀子・正井千代子連著、同文書院、1987年7月25日発行、{{ISBN|4810350320}} == カテゴリツリー == {{#Categorytree:{{SUBPAGENAME}}|hideroot=on|mode=pages|depth=9}} {{デフォルトソート:ひようこけん の きようとりようり}} {{Substub|240716}} [[Category:{{SUBPAGENAME}}|*]] 7bo03vt50kqo4cot68o6m6a6763p5cl エスペラント/はじめに 0 7717 305036 164740 2026-10-22T09:41:32Z Jcb 92857 305036 wikitext text/x-wiki '''エスペラント'''(言語であることを明確にするために「'''エスペラント語'''」ともいう)は、ユダヤ系ロシア人の[[:w:ルドヴィコ・ザメンホフ|ルドヴィーコ・ラザーロ・ザメンホフ]](1859-1917)が考案して1887年に発表した計画言語です<ref name="adachi-2008-9">安達(2008: 9)</ref>。人工語・人造語といわれることもありますが、コンピューター言語などの人工言語と区別するため、言語学用語では、このような構築された言語を「計画言語」(英語: {{lang|en|planned language}}, エスペラント: {{lang|eo|planlingvo}})と呼びます。 考案者のL.L.ザメンホフは、現在ポーランド東部に位置するビアウィストクの町で生まれ<ref name="adachi-2008-9"/>ワルシャワで亡くなったため、「ポーランドの眼科医・言語学者」として言及されることがありますが、当時ポーランドという国は存在せず、ザメンホフの国籍はロシア、民族籍はユダヤ人でした。また、ザメンホフは語学に堪能でしたが、職業・専門は眼科医で、言語学者ではありません。 エスペラントの言語としての特徴は、文法が簡単で不規則動詞などが一切ないこと<ref name="adachi-2008-8">安達(2008: 8)</ref>、単語の派生が規則的に行えるために、単語を覚える苦労が英語と比べて5分の1程度ですむこと、文字と発音の関係が一対一で書いてあるとおり発音すればよく、複雑な綴りを覚える必要がないことなどです。 発表後まもなくエスペラントは社会に根付いた生きた言語となり、一世紀にわたるさまざまな分野での実用をへて、コンピューター用語を初めとする種々の分野の新しい単語が作られて、専門語彙を含む語幹の総数は発表当初の10倍以上に増えましたが、文法の簡単さや単語派生の規則性などのエスペラントの言語特徴は、そのまま変わることなく現在も保たれています。 現在、世界のエスペラント使用者の数は、少なくいう人(上級者だけを使用者とみなす)で10万人、多くいう人(少しでも学習した人を使用者とみなす)で600万人~800万人、あいだを取って100万人というのが妥当な数字だと思われます。 ==脚注== <references/> ==参考文献== *安達信明 『ニューエクスプレス エスペラント語』 白水社、2008年 {{ISBN|978-4-560-06793-2}} ---- [[エスペラント/文字と発音|次へ]] [[Category:エスペラント]] 7afp0dpp0bunhp05b6dx1h70bg9qa35 エスペラント/文字と発音 0 7721 305037 151624 2026-10-22T09:41:44Z Jcb 92857 305037 wikitext text/x-wiki ==アルファベット== {| class="wikitable" |+ エスペラントのアルファベット ! A a !! B b !! C c !! Ĉ ĉ !! D d !! E e !! F f !! G g !! Ĝ ĝ !! H h !! Ĥ ĥ !! I i !! J j !! Ĵ ĵ |- | アー || ボー || ツォー || チョー || ドー || エー || フォー || ゴー || ヂョー || ホー || ホー || イー || ヨー || ジョー |- ! K k !! L l !! M m !! N n !! O o !! P p !! R r !! S s !! Ŝ ŝ !! T t !! U u !! Ŭ ŭ !! V v !! Z z |- | コー || ロー || モー || ノー || オー || ポー || ロー || ソー || ショー || トー || ウー || ウォー || ヴォー || ゾー |} エスペラントのアルファベットは、上の表の28文字です。Qq, Ww, Xx, Yy は、エスペラント本来の単語の表記には用いませんが、エスペラント化していない人名や地名など固有名詞の表記に使われることがあります。 ĉ, ĝ, ĥ, ĵ, ŝ の五つの文字は、c, g, h, j, s の上に山形( ˆ )をつけたものです( ĵ は、j の上の点をとってから山形をつける)。 ŭ は、u の上に小さな弧( ˘ )をつけます。 それぞれの文字の名称は、母音字はその発音がそのままその文字の名称になり、子音字はその発音に o を添えたものがその文字の名称になります。 : a [a], b [bo], c [co], ĉ [ĉo], d [do], e [e], f [fo], g [go], ĝ [ĝo], h [ho], ĥ [ĥo], i [i], j [jo], ĵ [ĵo], k [ko], l [lo], m [mo], n [no], o [o], p [po], r [ro], s [so], ŝ [ŝo], t [to], u [u], ŭ [ŭo], v [vo], z [zo] 文字の名称の正確な発音は、以下の発音の説明を参照してください。 ==文字の発音== エスペラントでは、一つの文字はつねに同じように発音され、同じ発音はつねに同じ文字で記されます。したがって、単語の発音は、書いてあるとおりに発音すればよく、発音を覚えれば、書くときはそのとおりに書けばよいので、英語のように複雑な綴りを覚える必要はありません[1]。 ===母音=== エスペラントの母音は、a「ア」、e「エ」、i「イ」、o「オ」、u「ウ」の五つです[2]。それぞれの母音字の発音は、日本語と同じでかまいません[2]。アクセントの有無によってあいまい母音になったりすることはありません。つねにはっきり明瞭に「アイウエオ」を発音します。 io のように母音が並んだときは、i と o のどちらもはっきりと発音します。母音の長短の区別はありませんが、アクセント(つねに後ろから二番目の母音にある。詳しくは[[エスペラント/文字と発音#アクセント|後述]])のある母音は、少し長めに発音されるのが普通です。 io「イーオ」(何か)、ie「イーエ」(どこか)、iea「イエーア」(どこかの) ===子音=== b, d, f, g, h, k, l, m, n, p, r, s, t, v, z は、おおむね日本語のローマ字や英語の子音と同じです。 l と r の区別は重要です。ただし、r は、英語のような舌をそらした r よりも巻き舌の r が標準で、日本語のラ行のほうが英語式よりも標準に近いです。r はつねに発音されますから、parto「パルト」は、英語のように「パート」とならないように、きっちり発音してください。l は、舌先を上前歯の裏にしっかり押しつけて発音すると、r との区別がしやすいです。 t は、英語のような「チャ」と聞こえる t ではなく、普通の日本語のタ行のほうが標準音です。 * bona「ボーナ」 (よい)、biero「ビエーロ」 (ビール)、sub「スブ」 (~の下) * dio「ディーオ」 (神)、donas「ドーナス」 (与える)、sed「セド」 (しかし) * familio「ファミリーオ」 (家族)、filmo「フィルモ」 (映画)、Afriko「アフリーコ」 (アフリカ) * gaso「ガーソ」 (ガス)、getao「ゲターオ」 (下駄)、aglo「アグロ」 (鷲) * havas「ハーヴァス」 (もっている)、homo「ホーモ」 (人)、historio「ヒストリーオ」 (歴史) * kaso「カーソ」 (会計)、haki「ハーキ」 (断ち割る)、akra「アークラ」 (鋭い) * lano「ラーノ」 (ウール)、libro「リーブロ」 (本)、al「アル」 (~へ) * mono「モーノ」 (お金)、amas「アーマス」 (愛する)、mem「メム」 (自身) * nomo「ノーモ」 (名前)、ni「ニ」 (私たち)、ondo「オンド」 (波) * pano「パーノ」 (パン)、pura「プーラ」 (清潔な)、sep「セプ」 (7) * rano「ラーノ」 (カエル)、parto「パルト」 (部分)、per「ペル」 (~で) : lano (舌先を上の歯の後ろに押しつけて l を発音)と rano (巻き舌で r を発音、ただし巻くのは1回でよい)の区別に注意。 * sano「サーノ」 (健康)、silko「スィルコ」 (絹)、disko「ディスコ」 (円盤) * teamo「テアーモ」 (チーム)、Esperanto「エスペラント」 (エスペラント)、tio「ティーオ」 (それ) * venis「ヴェーニス」 (来た)、varma「ヴァルマ」 (暖かい)、ugviso「ウグヴィーソ」 (うぐいす) * zono「ゾーノ」 (帯)、zeno「ゼーノ」 (禅)、Azio「アズィーオ」 (アジア) c は「ツァ、ツェ、ツィ、ツォ、ツ」と発音します。 * ceremonio「ツェレモニーオ」 (セレモニー)、cunamo「ツナーモ」 (津波)、dancu「ダンツゥ」 (踊れ) j は、半母音[j]を表し、「ヤ、イェ、イ、ヨ、ユ」と発音します。英語の y の音です。母音の後ろに j がついた aj, oj, uj, ej は「アイ」「オイ」「ウイ」「エイ」という二重母音のように発音されます。しかし、音韻論的にはエスペラントには二重母音は存在せず、aj, oj, uj, ej はあくまで母音 + 子音 j と解釈されます。 * japano「ヤパーノ」 (日本人)、majo「マーヨ」 (五月)、hajko「ハィコ」 (俳句)、plej「プレィ」 (最も) ĉ は「チャ、チェ、チ、チョ、チュ」と発音します。 * ĉeno「チェーノ」 (鎖)、ĉokolado「チョコラード」 (チョコレート)、eĉ「エチ」 (~さえ) ĝ は「ヂャ、ヂェ、ヂ、ヂョ、ヂュ」と発音します。※チャ行を濁らせた音です。 * ĝena「ヂェーナ」 (じゃまな)、ĝangalo「ヂャンガーロ」 (ジャングル)、mesaĝo「メサーヂョ」 (メッセージ) ĥ は、のどの奥をこすって出す口蓋垂摩擦音[χ]で、ドイツ語の ch, スペイン語の j, ロシア語の х の音です。この音は h との区別が難しいため他の音に置き換えられる傾向があり、現在ではこの音を含む単語は、固有名詞を中心に、ごく少数しかありません。 * jaĥto「ヤフト」 (ヨット)、Ĉeĥio「チェヒーオ」 (チェコ) ĵ は「ジャ、ジェ、ジ、ジョ、ジュ」と発音します。※シャ行を濁らせた音です。 * ĵaluza「ジャルーザ」 (嫉妬深い)、ĵudo「ジュード」 (柔道)、ĵurnalo「ジュルナーロ」 (新聞、日記) ŝ は「シャ、シェ、シ、ショ、シュ」と発音します。 * ŝafo「シャーフォ」 (羊)、ŝi「シ」 (彼女)、poŝto「ボシュト」 (郵便) ŭ は、半母音[w]を表し、主に aŭ, eŭ (非常にまれに oŭ)の形で、「アゥ」「エゥ」 (「オゥ」)という二重母音のように発音されます。しかし、音韻論的にはエスペラントには二重母音は存在せず、aŭ, eŭ はあくまで母音 a/e + 子音 ŭ と解釈されます。 * aŭto「アゥト」 (自動車)、eŭro「エゥロ」 (ユーロ)、saŭco「サゥツォ」「ソース」 ※ĝ, ĵ の違いは、ĝ [dƷ] が ĉ [tʃ] の[[:w:有声音]]で[[:w:破擦音]]、ĵ [Ʒ] が ŝ [ʃ]の有声音で[[:w:摩擦音]]であることです。ĵ は ŝ の濁った音なので ĵĵĵĵĵĵĵĵ...と継続して発声できますが、ĉ が濁った音である ĝ ではそれができません。 ==アクセント== エスペラントのアクセントは、強弱アクセントで、つねに後ろから二番目の母音にあります[3]。例外はありません。アクセントのある母音のあとに子音が1つしかないばあいは少し長めに発音されるのが普通です[3]。しかし、ほかの音節の母音と同じ長さで発音しても間違いではありません。 アクセント母音を大文字で表すと、例えば : ano [Ano], strato [strAto], tiea [tiEa], historio [historIo], historiisto [historiIsto] のようになります。 半母音の ŭ, j は、あくまで子音なので、アクセントの位置決定には関係しません。 * balau [balAu], baldaŭ [bAldaŭ], eŭro [Eŭro], Seulo [SeUlo], homo [hOmo], homoj [hOmoj] ==脚注== #安達(2008: 12-13) #安達(2008: 14) #安達(2008: 13) ==参考文献== *安達信明 『ニューエクスプレス エスペラント語』 白水社、2008年 {{ISBN|978-4-560-06793-2}} ---- [[エスペラント/はじめに|前へ]]-[[エスペラント/入門/第1課|次へ]] [[Category:エスペラント]] n3ts2gzqq8gp722thdxahvrt1o4z1y3 不動産登記法第10条 0 8134 305050 271771 2026-10-22T10:47:49Z Jcb 92857 305050 wikitext text/x-wiki [[法学]]>[[民事法]]>[[不動産登記法]]>[[コンメンタール不動産登記法]] ==条文== (登記官の除斥) ;第10条 :登記官又はその配偶者若しくは四親等内の親族(配偶者又は四親等内の親族であった者を含む。以下この条において同じ。)が登記の申請人であるときは、当該登記官は、当該登記をすることができない。登記官又はその配偶者若しくは四親等内の親族が申請人を代表して申請するときも、同様とする。 ==解説== 本条は、登記官が登記をすることができない場合について定めた条文である。 本条にいう「配偶者」に内縁の夫又は妻が含まれるか否かについては、法令上の規定も先例も存在しないが、含まれるとする見解がある(登記研究717-5頁)。 本条が登記官の職権による登記([[不動産登記法第28条]]など)の場合にも適用されるか否かについては、法令上の規定も先例も存在しないが、適用されるとする見解がある(登記研究717-2・3頁)。 本条に違背した登記については、法令上の規定も先例も存在しないが、無効ではないとする見解がある(登記研究717-5頁、小池Q&A-79頁)。 ==参照条文== ==参考文献== *香川保一 「新不動産登記法逐条解説(89)」『登記研究』717号、テイハン、2007年、2頁・3頁・5頁 *小池信行・藤谷定勝監修 不動産登記実務研究会編著 『Q&A権利に関する登記の実務I 第1編総論(上)』 [[w:日本加除出版|日本加除出版]]、2006年、79頁、{{ISBN|4-8178-3746-2}} ---- {{前後 |[[コンメンタール不動産登記法|不動産登記法]] |[[コンメンタール不動産登記法#s2|第2章 登記所及び登記官]] |[[不動産登記法第9条]]<br>(登記官) |[[不動産登記法第11条]]<br>(登記)}} {{stub|law}} [[category:不動産登記法|010]] fyb18cbvpdae6mnlfns1vk0v6iub7jv 不動産登記法第12条 0 8238 305051 271773 2026-10-22T10:48:01Z Jcb 92857 305051 wikitext text/x-wiki [[法学]]>[[民事法]]>[[不動産登記法]]>[[コンメンタール不動産登記法]] ==条文== (登記記録の作成) ;第12条 :登記記録は、表題部及び権利部に区分して作成する。 ==解説== ===本条の趣旨=== 本条は、登記記録の意義について定めたものである。 表題部には表示に関する登記が記録され([[不動産登記法第2条|不動産登記法第2条第7号]])、権利部には権利に関する登記が記録される(同法第2条第8号)。 ===登記記録の編成=== ====土地の表題部==== 土地の登記記録の表題部が区分される欄及び各々の欄に記録される事項は以下のとおりである([[不動産登記規則第4条]]第1項・[http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H17/H17F12001000018.html#3000000001000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000 同規則別表1]) {| class="wikitable" style="text-align:left" |- | colspan="2" | '''欄''' | '''記録される事項''' |- | colspan="2" | 地図番号欄 | 地図の番号並びに筆界特定の年月日及び手続番号 |- | rowspan="10" | 土地の表示欄 | 不動産番号欄 | 不動産番号 |- | 所在欄 | 所在 |- | 地番欄 | 地番 |- | 地目欄 | 地目 |- | 地積欄 | 地積 |- | rowspan="3" | 原因及びその日付欄 | 登記原因及びその日付 |- | 河川区域内又は高規格堤防特別区域内、樹林帯区域内、特定樹林帯区域内若しくは河川立体区域内の土地である旨 |- | 閉鎖の事由 |- | rowspan="2" | 登記の日付欄 | 登記の年月日 |- | 閉鎖の年月日 |- | colspan="2" | 所有者欄 | 所有者及びその持分 |} ====区分建物でない建物の表題部==== 区分建物でない建物の登記記録の表題部が区分される欄及び各々の欄に記録される事項は以下のとおりである([http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H17/H17F12001000018.html#1000000000000000000000000000000000000000000000000400000000002000000000000000000 不動産登記規則第4条第2項]・[http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H17/H17F12001000018.html#3000000002000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000 同規則別表2]) {| class="wikitable" style="text-align:left" |- | colspan="2" | '''欄''' | '''記録される事項''' |- | colspan="2" | 所在図番号欄 | 建物所在図の番号 |- | rowspan="12" | 主たる建物の表示欄 | 不動産番号欄 | 不動産番号 |- | rowspan="2" | 所在欄 | 所在(附属建物の所在を含む。) |- | 建物の名称があるときは、その名称 |- | 家屋番号欄 | 家屋番号 |- | 種類欄 | 種類 |- | 構造欄 | 構造 |- | 床面積欄 | 床面積 |- | rowspan="3" | 原因及びその日付欄 | 登記原因及びその日付 |- | 建物を新築する場合の不動産工事の先取特権の保存の登記における建物の種類、構造及び床面積が設計書による旨 |- | 閉鎖の事由 |- | rowspan="2" | 登記の日付欄 | 登記の年月日 |- | 閉鎖の年月日 |- | rowspan="9" | 附属建物の表示欄 | 符号欄 | 附属建物の符号 |- | 種類欄 | 附属建物の種類 |- | rowspan="3" | 構造欄 | 附属建物の構造 |- | 附属建物が区分建物である場合における当該附属建物が属する一棟の建物の所在、構造、床面積及び名称 |- | 附属建物が区分建物である場合における敷地権の内容 |- | 床面積欄 | 附属建物の床面積 |- | rowspan="2" | 原因及びその日付欄 | 附属建物に係る登記の登記原因及びその日付 |- | 附属建物を新築する場合の不動産工事の先取特権の保存の登記における建物の種類、構造及び床面積が設計書による旨 |- | 登記の日付欄 | 附属建物に係る登記の年月日 |- | colspan="2" | 所有者欄 | 所有者及びその持分 |} ====区分建物である建物の表題部==== 区分建物である建物の登記記録の表題部が区分される欄及び各々の欄に記録される事項は以下のとおりである([http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H17/H17F12001000018.html#1000000000000000000000000000000000000000000000000400000000003000000000000000000 不動産登記規則第4条第3項]・[http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H17/H17F12001000018.html#3000000003000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000 同規則別表3]) {| class="wikitable" style="text-align:left" |- | colspan="2" | '''欄''' | '''記録される事項''' |- | colspan="3" | 一棟の建物の表題部 |- | colspan="2" | 専有部分の家屋番号欄 | 一棟の建物に属する区分建物の家屋番号 |- | rowspan="10" | 一棟の建物の表示欄 | 所在欄 | 一棟の建物の所在 |- | 所在図番号欄 | 建物所在図の番号 |- | 建物の名称欄 | 一棟の建物の名称 |- | 構造欄 | 一棟の建物の構造 |- | 床面積欄 | 一棟の建物の床面積 |- | rowspan="3" | 原因及びその日付欄 | 一棟の建物に係る登記の登記原因及びその日付 |- | 建物を新築する場合の不動産工事の先取特権の保存の登記における建物の種類、構造及び床面積が設計書による旨 |- | 閉鎖の事由 |- | rowspan="2" | 登記の日付欄 | 一棟の建物に係る登記の年月日 |- | 閉鎖の年月日 |- | rowspan="6" | 敷地権の目的たる土地の表示欄 | 土地の符号欄 | 敷地権の目的である土地の符号 |- | 所在及び地番欄 | 敷地権の目的である土地の所在及び地番 |- | 地目欄 | 敷地権の目的である土地の地目 |- | 地積欄 | 敷地権の目的である土地の地積 |- | rowspan="2" | 登記の日付欄 | 敷地権に係る登記の年月日 |- | 敷地権の目的である土地の表題部の登記事項に変更又は錯誤若しくは遺漏があることによる建物の表題部の変更の登記又は更正の登記の登記原因及びその日付 |- | colspan="3" | 区分建物の表題部 |- | rowspan="11" | 専有部分の建物の表示欄 | 不動産番号欄 | 不動産番号 |- | 家屋番号欄 | 区分建物の家屋番号 |- | 建物の名称欄 | 区分建物の名称 |- | 種類欄 | 区分建物の種類 |- | 構造欄 | 区分建物の構造 |- | 床面積欄 | 区分建物の床面積 |- | rowspan="4" | 原因及びその日付欄 | 区分建物に係る登記の登記原因及びその日付 |- | 共用部分である旨 |- | 団地共用部分である旨 |- | 建物を新築する場合の不動産工事の先取特権の保存の登記における建物の種類、構造及び床面積が設計書による旨 |- | 登記の日付欄 | 区分建物に係る登記の年月日 |- | rowspan="9" | 附属建物の表示欄 | 符号欄 | 附属建物の符号 |- | 種類欄 | 附属建物の種類 |- | rowspan="3" | 構造欄 | 附属建物の構造 |- | 附属建物が区分建物である場合におけるその一棟の建物の所在、構造、床面積及び名称 |- | 附属建物が区分建物である場合における敷地権の内容 |- | 床面積欄 | 附属建物の床面積 |- | rowspan="2" | 原因及びその日付欄 | 附属建物に係る登記の登記原因及びその日付 |- | 附属建物を新築する場合の不動産工事の先取特権の保存の登記における建物の種類、構造及び床面積が設計書による旨 |- | 登記の日付欄 | 附属建物に係る登記の年月日 |- | rowspan="6" | 敷地権の表示欄 | 土地の符号欄 | 敷地権の目的である土地の符号 |- | 敷地権の種類欄 | 敷地権の種類 |- | 敷地権の割合欄 | 敷地権の割合 |- | rowspan="2" | 原因及びその日付欄 | 敷地権に係る登記の登記原因及びその日付 |- | 附属建物に係る敷地権である旨 |- | 登記の日付欄 | 敷地権に係る登記の年月日 |- | colspan="2" | 所有者欄 | 所有者及びその持分 |} ====権利部==== 権利部は甲区及び乙区に区分され、甲区には所有権に関する登記の登記事項を記録することとされ、乙区には所有権以外の権利に関する登記の登記事項を記録することとされている([http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H17/H17F12001000018.html#1000000000000000000000000000000000000000000000000400000000004000000000000000000 不動産登記規則第4条第4項])。 ===移記又は転写=== 登記官は、登記を移記し又は転写するときは、法令に別段の定めがある場合を除き、現に効力を有する登記のみを移記し、又は転写しなければならない([http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H17/H17F12001000018.html#1000000000000000000000000000000000000000000000000500000000000000000000000000000 不動産登記規則第5条第1項])。 そして、登記官は、登記を移記し又は転写したときは、その年月日を新たに記録した登記の末尾に記録しなければならず([http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H17/H17F12001000018.html#1000000000000000000000000000000000000000000000000500000000002000000000000000000 不動産登記規則第5条第2項])、登記を移記したときは、移記前の登記記録を閉鎖しなければならない([http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H17/H17F12001000018.html#1000000000000000000000000000000000000000000000000500000000003000000000000000000 同規則第5条第3項])。 例えば、登記簿のコンピュータ化による移記については、以下のように記録される。 :昭和63年法務省令第37号附則第2条第2項の規定により移記 :平成何年何月何日 また、登記官は、登記記録に記録されている事項が過多となったことその他の事由により取扱いが不便となったときは、登記を移記することができ、この場合、表示に関する登記及び所有権の登記であって現に効力を有しないものも移記することができるとされている([http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H17/H17F12001000018.html#1000000000000000000000000000000000000000000000000600000000000000000000000000000 不動産登記規則第6条])。 なお、登記官は、登記を移記し又は転写するときは、登記官の識別番号を記録しなければならない([http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H17/H17F12001000018.html#1000000000000000000000000000000000000000000000000700000000000000000000000000000 不動産登記規則第7条前段])。 ===登記記録のバックアップ=== 登記記録のバックアップデータについては、法務大臣及び登記官を監督する法務局又は地方法務局の長は、副登記記録を調整することとされている([http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H17/H17F12001000018.html#10000000000000000000000000000000000000000000000009000000000000000000000000000000 不動産登記規則第9条])。 この副登記記録は、登記記録が滅失した場合の回復手続([[不動産登記法第13条|不動産登記法第13条]])に使用されるほか、一時的なシステム障害の場合においても使用される。具体的には、登記事項証明書又は登記事項要約書の作成の場合について、規定がある([http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H17/H17F12001000018.html#10000000000000000000000000000000000000000000000199000000000000000000000000000000 不動産登記規則第199条]) ===登記記録の閉鎖=== 登記官は、登記記録を閉鎖するときは、閉鎖の事由及びその年月日を記録するほか、登記官の識別番号を記録しなければならず、登記記録の全部を閉鎖するときは、閉鎖する登記記録の不動産の表示([[不動産登記法第27条|不動産登記法第27条第1号]]に掲げる登記事項を除く)を抹消する記号を記録しなければならない([http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H17/H17F12001000018.html#1000000000000000000000000000000000000000000000000800000000000000000000000000000 不動産登記規則第8条])。ただし、区分建物である建物の登記記録を閉鎖する場合で、当該登記記録の閉鎖後においても当該閉鎖建物が属する一棟の建物に他の建物(附属建物として登記されているものを除く)が存することとなるときは、閉鎖建物の登記記録に記録された、以下掲げる事項を抹消する記号を記録することを要しないとされている([http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H17/H17F12001000018.html#1000000000000000000000000000000000000000000000011700000000000000000000000000000 不動産登記規則第117条第1項柱書]及び各号)。 *一棟の建物の所在する市・区・郡・町・村・字及び土地の地番 *一棟の建物の構造及び床面積 *一棟の建物の名称があるときは、その名称 *[http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H17/H17F12001000018.html#1000000000000000000000000000000000000000000000011600000000000000000000000000000 不動産登記規則第116条第1項]の規定により記録されている当該他の建物の家屋番号 上記の場合には、登記官は、閉鎖建物が属する一棟の建物に属する他の建物の登記記録に記録されている当該閉鎖建物の家屋番号を抹消する記号を記録しなければならない([http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H17/H17F12001000018.html#1000000000000000000000000000000000000000000000011700000000002000000000000000000 不動産登記規則第117条第2項])。上記以外の場合において、区分建物である建物の登記記録を閉鎖するときは、登記官は、閉鎖建物の登記記録及び当該閉鎖建物が属する一棟の建物に属する他の建物の登記記録(閉鎖されたものも含む)の、上記に掲げる事項を抹消する記号を記録しなければならない([http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H17/H17F12001000018.html#1000000000000000000000000000000000000000000000011700000000003000000000000000000 同規則第117条第3項])。 登記記録が閉鎖される場合及びその登記記録で、[http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H17/H17F12001000018.html 不動産登記規則]に規定があるもの及び関連するものについては、上記の登記を移記した場合のほか、以下の場合である。 *甲登記所から乙登記所へ、管轄転属による登記記録を移送した場合の、甲登記所の登記記録([http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H17/H17F12001000018.html#10000000000000000000000000000000000000000000000032000000000000000000000000000000 不動産登記規則第32条第2項]・第1項) *甲土地を乙土地に合筆する合筆の登記をする場合における、甲土地の登記記録([http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H17/H17F12001000018.html#1000000000000000000000000000000000000000000000010600000000000000000000000000000 不動産登記規則第106条第2項]・第1項) *土地の滅失の登記をする場合における、当該土地の登記記録([http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H17/H17F12001000018.html#1000000000000000000000000000000000000000000000010900000000000000000000000000000 同規則第109条]) *建物の合体の登記をする場合における、合体前の建物の登記記録([http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H17/H17F12001000018.html#1000000000000000000000000000000000000000000000012000000000009000000000000000000 同規則第120条第9項]、[http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H17/H17F12001000018.html#1000000000000000000000000000000000000000000000014400000000000000000000000000000 同規則第144条第1項]) *敷地権付き区分建物について、敷地権であった権利が消滅したことによる建物の表題部に関する変更の登記をするとき又は敷地権付き区分建物の滅失の登記をするときで、当該敷地権の目的であった土地の登記記録の権利部の相当区に[http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H17/H17F12001000018.html#1000000000000000000000000000000000000000000000012400000000003000000000000000000 同規則第124条第3項]の規定により転写すべき登記に後れる登記がある場合における、当該敷地権の目的であった土地の登記記録の権利部の相当区([http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H17/H17F12001000018.html#1000000000000000000000000000000000000000000000012400000000000000000000000000000 同規則第124条第4項]・第3項・第2項・第1項後段、[http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H17/H17F12001000018.html#1000000000000000000000000000000000000000000000014500000000000000000000000000000 同規則第145条第1項]) *敷地権付き区分建物について、敷地権の不存在を原因とする建物の表題部に関する更正の登記をしたときで、[[不動産登記法第73条|不動産登記法第73条第1項本文]]の規定により敷地権の移転の登記としての効力を有する登記がある場合における、当該敷地権の目的であった土地の登記記録の権利部の相当区([http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H17/H17F12001000018.html#1000000000000000000000000000000000000000000000012600000000000000000000000000000 同規則第126条第3項]・第2項・第1項、[http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H17/H17F12001000018.html#1000000000000000000000000000000000000000000000012400000000004000000000000000000 同規則第124条第4項]) *区分建物でない甲建物を区分して甲建物と乙建物とする建物の区分の登記をする場合における、区分前の甲建物の登記記録([http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H17/H17F12001000018.html#1000000000000000000000000000000000000000000000012900000000000000000000000000000 同規則第129条第2項]・第1項) *甲建物を乙建物の附属建物とする建物の合併の登記をする場合における、甲建物の登記記録([http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H17/H17F12001000018.html#1000000000000000000000000000000000000000000000013200000000000000000000000000000 同規則第132条第3項]・第1項) *区分建物である甲建物を、乙建物又は乙建物の附属建物に合併する建物の合併(乙建物又は乙建物の附属建物が甲建物と接続する区分建物である場合に限る。以下「区分合併」という。)に係る建物の合併の登記をする場合における、甲建物の登記記録([http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H17/H17F12001000018.html#1000000000000000000000000000000000000000000000013300000000000000000000000000000 同規則第133条第2項]・第1項) *区分合併(甲建物を乙建物の附属建物に合併する場合を除く)に係る建物の合併の登記をするときに、区分合併後の建物が区分建物でない場合における、区分合併前の乙建物の登記記録([http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H17/H17F12001000018.html#1000000000000000000000000000000000000000000000013300000000000000000000000000000 同規則第133条第4項]・第3項) *区分建物でない甲建物を区分してその一部を乙建物の附属建物とする登記をする場合における、区分前の甲建物の登記記録([http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H17/H17F12001000018.html#1000000000000000000000000000000000000000000000013700000000000000000000000000000 同規則第137条第2項]・第1項) *区分建物でない建物が区分建物となった旨の変更の登記([[不動産登記法第52条|不動産登記法第52条第1項]]・第3項)をする場合における、変更前の建物の登記記録([http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H17/H17F12001000018.html#1000000000000000000000000000000000000000000000014000000000000000000000000000000 同規則第140条第3項]・第1項) *区分合併以外の原因により、区分建物である建物が区分建物でない建物となった旨の変更の登記をする場合における、変更前の区分建物の登記記録([http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H17/H17F12001000018.html#1000000000000000000000000000000000000000000000014000000000000000000000000000000 同規則第140条第4項]・第3項) *建物の滅失の登記をする場合における、当該建物の登記記録([http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H17/H17F12001000018.html#1000000000000000000000000000000000000000000000014400000000000000000000000000000 同規則第144条第1項]) *所有権の保存の登記を抹消する場合で、[[不動産登記法第74条|不動産登記法第74条第1項第1号後段]]の規定により相続人が申請したもの及び同法第74条第2項の規定により申請されたもの'''以外'''の登記を抹消する場合における、当該登記記録(1961年(昭和36年)9月2日民甲2163号回答・1984年(昭和59年)2月25日民三1085号通達) なお、土地に関する閉鎖登記記録の保存期間は、閉鎖した日から50年間であり([http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H17/H17F12001000018.html#1000000000000000000000000000000000000000000000002800000000001000000004000000000 不動産登記規則第28条第4号])、建物に関する閉鎖登記記録の保存期間は、閉鎖した日から30年間である([http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H17/H17F12001000018.html#1000000000000000000000000000000000000000000000002800000000001000000005000000000 同規則第28条第5号])。 ===登記記録の廃棄=== 登記所において閉鎖登記記録を廃棄するときは、法務局又は地方法務局の長の認可を受けなければならない([http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H17/H17F12001000018.html#1000000000000000000000000000000000000000000000002900000000000000000000000000000 不動産登記規則第29条])。そして、登記官は、この認可を受けようとするときは、[[s:不動産登記事務取扱手続準則|不動産登記事務取扱手続準則]](2005年(平成17年)2月25日民二第456号通達。以下「同準則」という。)別記第31号様式による認可申請書を提出しなければならない([[s:不動産登記事務取扱手続準則#23|同準則第23条第1号]])。この申請書の様式は以下のとおりである。 [[画像:帳簿等廃棄認可申請書.PNG|none|frame|帳簿等廃棄認可申請書]] ==参照条文== [[不動産登記法第2条]] ==参考文献== *小池信行・藤谷定勝監修 不動産登記実務研究会編著 『Q&A権利に関する登記の実務I 第1編総論(上)』 [[w:日本加除出版|日本加除出版]]、2006年、219・220頁、{{ISBN|4-8178-3746-2}} *小宮山秀史 「逐条解説不動産登記規則(3)」『登記研究』693号、テイハン、2005年、175-178頁 ---- {{前後 |[[コンメンタール不動産登記法|不動産登記法]] |[[コンメンタール不動産登記法#s3|第3章 登記記録等]]<br> |[[不動産登記法第11条]]<br>(登記) |[[不動産登記法第13条]]<br>(登記記録の滅失と回復) }} {{stub|law}} [[category:不動産登記法|012]] f4598srskmccu7zcjw0ifh5ltqfucc1 不動産登記法第24条 0 8260 305053 288325 2026-10-22T10:48:25Z Jcb 92857 305053 wikitext text/x-wiki [[法学]]>[[民事法]]>[[不動産登記法]] ==条文== (登記官による本人確認) ;第24条 #登記官は、登記の申請があった場合において、申請人となるべき者以外の者が申請していると疑うに足りる相当な理由があると認めるときは、次条の規定により当該申請を却下すべき場合を除き、申請人又はその代表者若しくは代理人に対し、出頭を求め、質問をし、又は文書の提示その他必要な情報の提供を求める方法により、当該申請人の申請の権限の有無を調査しなければならない。 #登記官は、前項に規定する申請人又はその代表者若しくは代理人が遠隔の地に居住しているとき、その他相当と認めるときは、他の登記所の登記官に同項の調査を嘱託することができる。 ==解説== ===本条の趣旨=== 本条は、登記の申請につき、「なりすまし」が疑われる場合について、登記官が執るべき手続について定めたものである 本条第1項の、申請人となるべき者以外の者が申請していると疑うに足りる相当な理由があると認めるときとは、以下のとおりである([[s:不動産登記事務取扱手続準則#33|不動産登記事務取扱手続準則(2005年(平成17年)2月25日民二第456号通達)第33条第1項]]。以下「同準則」という。)。 #捜査機関その他の官公署から、不正事件が発生するおそれがある旨の通報があったとき #申請人となるべき者本人からの、申請人となるべき者になりすました者が申請をしている旨又はそのおそれがある旨の申出(以下「不正登記防止申出」という)に基づき、[[s:不動産登記事務取扱手続準則#35|同準則第35条第7項]]の措置を執った場合において、当該不正登記防止申出に係る登記の申請があったとき(当該不正登記防止申出の日から3か月以内に申請があった場合に限る) #同一の申請人に係る他の不正事件が発覚しているとき #前の住所地への通知([[不動産登記法第23条|不動産登記法第23条第2項]])をした場合において、登記の完了前に、当該通知に係る登記の申請について異議の申出があったとき #登記官が、登記識別情報の誤りを原因とする補正又は取下げもしくは却下が複数回されていたことを知ったとき #登記官が、申請情報の内容となった登記識別情報を提供することができない理由が事実と異なることを知ったとき #上記に掲げる場合のほか、登記官が職務上知り得た事実により、申請人となるべき者になりすました者が申請していることを疑うに足りる客観的かつ合理的な理由があると認められるとき 上記5の複数回とは、具体的には5回程度であるとする見解がある(一発即答104・105頁)。 ===本人確認の手続き=== 登記官は、本条第1項の規定により申請人の申請の権限の有無を調査したときは、その調査の結果を記録した調書(以下「本人確認調書」という)を作成しなければならない([[不動産登記規則第59条|不動産登記規則第59条第1項前段]])。この本人確認調書は、[[不動産登記事務取扱手続準則別記第51号様式|同準則別記第51号様式]]又はこれに準ずる様式によることとされており([[不動産登記事務取扱手続準則第33条|同準則第33条第3項]])、申請書(電子申請の場合は電子申請管理用紙)と共に保管することとされている([[不動産登記事務取扱手続準則第33条|同準則第33条第4項]])。この別記第51号様式は以下のとおりである。 [[画像:本人確認調書.PNG|none|frame|本人確認調書]] 登記官は、本条第1項の規定により文書等の提示を求めた場合は、提示をした者の了解を得て当該文書の写しを作成し、本人確認調書に添付することとされている。ただし、了解を得ることができない場合は、文書の種類や証明書番号その他文書を特定することができる番号等の文書の主要な内容を本人確認調書に記録すれば足りるとされている([[s:不動産登記事務取扱手続準則#33|同準則第33条第5項]])。 登記官は、登記の申請が資格者代理人([[不動産登記規則第63条|不動産登記規則第63条第5項]]参照)によってされている場合において、本人確認の調査をすべきときは、原則として、当該資格者代理人に対し必要な情報の提供を求めることとされている([[不動産登記事務取扱手続準則第33条|同準則第33条第2項]])。そして、この資格者代理人に対する調査により、申請人となるべき者からの申請であると認められたときは、本人に対して調査をする必要はない(2005年(平成17年)2月25日民二第457号通達第1-1(3)。以下「同通達」という。)。ただし、本人確認調書は作成される(一発即答102・103頁)。 本人確認調査は電話による事情を聴取する方法でもよく、必ずしも出頭を求める必要はない(同通達第1-1(5)後段)。また、登記の申請人となるべき者が、出頭できない正当な理由(入院や服役等)がある場合でも、電話で確認する等すればよく、登記官が調査をしに行く必要はないとする見解がある(一問一答104・105頁)。 なお、本人確認調査は、当該申請人の申請権限の有無について調査するものであって、申請人の申請意思を調査するものではない(同通達第1-1(6))。 本人確認調査の結果、申請人となるべき者以外の者が登記の申請をしたと判断されれば、[[不動産登記法第25条|不動産登記法第25条第4号]]の規定により、当該登記の申請は却下される(一問一答106・107頁参照)。 ===手続きの嘱託=== 登記官が本人確認の調査のため申請人等の出頭を求めた場合において、申請人等から遠隔の地に居住していること又は申請人の勤務の都合等を理由に他の登記所に出頭したい旨の申出があり、その理由が相当と認められるとき(例えば、申請人の長期出張や病気による入院等。同通達第1-1(8)かっこ書)は、当該他の登記所の登記官に本人確認の調査を嘱託することとされている([[s:不動産登記事務取扱手続準則#34|同準則第34条第1項]])。申請人となるべき者が日本国外に居住している場合でも、在外公館に調査を依頼することはできない(一問一答108・109頁)。 この嘱託は、同準則別記第52号様式による嘱託書を作成し、これに[[w:登記事項証明書|登記事項証明書]]及び申請書の写しのほか、委任状・印鑑証明書等の本人確認の調査に必要な添付書面の写しを添付して、当該他の登記所に送付する方法によって行うこととされている([[s:不動産登記事務取扱手続準則#34|同準則第34条第2項]])。この嘱託書の様式は、以下のとおりである。 [[画像:本人確認調査嘱託書.PNG|none|frame|本人確認調査嘱託書]] 本条第2項の嘱託を受けて本人確認調査をした登記所の登記官は、本人確認調書を作成しなければならない([[不動産登記規則第59条|不動産登記規則第59条第1項後段]])。そして、嘱託を受けて調査をした登記所の登記官は、調査終了後、本人確認調書を嘱託書と共に嘱託をした登記所の登記官に送付しなければならないとされている([[不動産登記規則第59条|同規則第59条第2項]]・[[不動産登記事務取扱手続準則第34条|同準則第34条第3項]])。 なお、嘱託を受けた登記所が送付を受けた登記事項証明書・申請書及び添付書面の写しは、適宜廃棄してよい(同通達第1-1(8)) ==参照条文== [[不動産登記法第25条|不動産登記法第25条第4号]] ==参考文献== *藤谷定勝監修 山田一雄編 『新不動産登記法一発即答800問』 [[w:日本加除出版|日本加除出版]]、2007年、102頁-109頁、{{ISBN|978-4-8178-3758-5}} ---- {{前後 |[[コンメンタール不動産登記法|不動産登記法]] |[[コンメンタール不動産登記法#s4|第4章 登記手続]]<br> [[コンメンタール不動産登記法#s4-1|第1節 総則]]<br> |[[不動産登記法第23条]]<br>(事前通知等) |[[不動産登記法第25条]]<br>(申請の却下) }} {{stub|law}} [[category:不動産登記法|024]] t1w99ebqy5zuogemci9x5xnqu4fsr2w 不動産登記法第25条 0 8336 305054 271554 2026-10-22T10:48:45Z Jcb 92857 305054 wikitext text/x-wiki [[法学]]>[[民事法]]>[[不動産登記法]]>[[コンメンタール不動産登記法]] == 条文 == (申請の却下) ; 第25条 : 登記官は、次に掲げる場合には、理由を付した決定で、登記の申請を却下しなければならない。ただし、当該申請の不備が補正することができるものである場合において、登記官が定めた相当の期間内に、申請人がこれを補正したときは、この限りでない。 :# 申請に係る不動産の所在地が当該申請を受けた[[登記所]]の管轄に属しないとき。 :# 申請が登記事項(他の法令の規定により登記記録として登記すべき事項を含む)以外の事項の登記を目的とするとき。 :# 申請に係る登記が既に登記されているとき。 :# 申請の権限を有しない者の申請によるとき。 :# 申請情報又はその提供の方法がこの法律に基づく命令又はその他の法令の規定により定められた方式に適合しないとき。 :# 申請情報の内容である不動産又は登記の目的である権利が登記記録と合致しないとき。 :# 申請情報の内容である登記義務者([[不動産登記法第65条|第65条]]、[[不動産登記法第76条の5|第76条の5]]、[[不動産登記法第77条|第77条]]、[[不動産登記法第89条|第89条]]第1項(同条第2項([[不動産登記法第95条|第95条]]第2項において準用する場合を含む)及び第95条第2項において準用する場合を含む)、[[不動産登記法第93条|第93条]](第95条第2項において準用する場合を含む)又は[[不動産登記法第110条|第110条]]前段の場合にあっては、登記名義人)の氏名若しくは名称又は住所が登記記録と合致しないとき。 :# 申請情報の内容が[[不動産登記法第61条|第61条]]に規定する登記原因を証する情報の内容と合致しないとき。 :# [[不動産登記法第22条|第22条]]本文若しくは[[不動産登記法第61条|第61条]]の規定又はこの法律に基づく命令若しくはその他の法令の規定により申請情報と併せて提供しなければならないものとされている情報が提供されないとき。 :# [[不動産登記法第23条|第23条]]第1項に規定する期間内に同項の申出がないとき。 :# 表示に関する登記の申請に係る不動産の表示が[[不動産登記法第29条|第29条]]の規定による登記官の調査の結果と合致しないとき。 :# [[w:不動産登記#登録免許税|登録免許税]]を納付しないとき。 # 前各号に掲げる場合のほか、登記すべきものでないときとして政令で定めるとき。 ===改正経緯=== 2021年民法改正に伴う改正により、第7号を以下のとおり改正。 :(改正前)[[不動産登記法第65条|第65条]]、[[不動産登記法第77条|第77条]] :(改正後)[[不動産登記法第65条|第65条]]、[[不動産登記法第76条の5|第76条の5]]、[[不動産登記法第77条|第77条]] == 解説 == === 本条の趣旨等 === 本条は、申請の却下事由及び補正について定めたものである。本条第13号の政令で定めるときについては、[[不動産登記令第20条]]に規定があり、以下のとおりである。 # 申請が不動産以外のものについての登記を目的とするとき # 申請に係る登記をすることによって表題部所有者又は登記名義人となる者([[s:不動産登記令#l12|別表の12の項]]申請情報欄ロに規定する被承継人及び[[不動産登記令第3条|第3条第11号ハ]]に規定する[[w:登記権利者|登記権利者]]を除く)が権利能力を有しないとき # 申請が[[不動産登記法第32条]]・[[不動産登記法第41条|第41条]]・[[不動産登記法第56条|第56条]]・[[不動産登記法第73条|第73条第2項]]又は第3項・[[不動産登記法第80条|第80条第3項]]・[[不動産登記法第92条|第92条]]の規定により登記することができないとき # 申請が1個の不動産の一部についての登記(承役地についてする[[w:地役権|地役権]]の登記を除く)を目的とするとき # 申請に係る登記の目的である権利が他の権利の全部又は一部を目的とする場合において、当該他の権利の全部又は一部が登記されていないとき # 同一の不動産に関し同時に2以上の申請がされた場合([[不動産登記法第19条|不動産登記法第19条第2項]]の規定により同時にされたものとみなされるときを含む)において、申請に係る登記の目的である権利が相互に矛盾するとき # 申請に係る登記の目的である権利が同一の不動産について既にされた登記の目的である権利と矛盾するとき # 上記に掲げるもののほか、申請に係る登記が民法その他の法令の規定により無効とされることが申請情報もしくは添付情報又は登記記録から明らかであるとき === 却下事由に該当するものの例 === 本条の規定に基づくものについては例えば「第1号関係」と、[[不動産登記令第20条]]の規定に基づくものについては、「令第1号関係」のように表示し、具体例を以下に示す。 * 第1号関係 ** 公有水面埋立地につき、所属するべき市区町村が定まっていないもの(1955年(昭和30年)5月17日民甲930号回答・通達) * 第2号関係 ** 入会権の登記(1901年(明治34年)4月15日民刑434号回答) ** 違約金の定めを登記事項とする抵当権の設定の登記(1969年(昭和34年)7月25日民甲1567号回答・通達) * 第3号関係 ** 重複した表題登記(1962年(昭和37年)10月4日民甲2820号回答・通達) * 第5号関係 ** 登記原因を「仮登記仮処分命令」とした所有権移転請求権の仮登記(1962年(昭和37)年5月12日民甲1321回答) ** 電子申請([[不動産登記規則第1条]]第3号参照。以下同じ)による申請情報で、電子署名が行われていないもの(2005年(平成17年)2月25日民二457号通達第2-2(5)エ) * 第6号関係 ** 競売申立記入(現差押)登記後床面積の更正又は分割の登記がなされた後の、申立記入当時の不動産の表示での競落(現売却決定)による所有権の移転の登記(1954年(昭和29)年7月27日民甲1568電報回答) * 第7号関係 ** 被相続人名義の不動産につき、相続人を登記義務者とする処分の禁止の登記(1964年(昭和39年)5月14日民甲1759号回答) * 第8号関係 ** 登記原因証明情報に記載のある利息を、登記申請情報に記載しない抵当権設定登記(1967年(昭和42年)2月24日民三301号回答) * 第9号関係 ** 親権者と、その親権に服する数人の子全員のために選任された1人の特別代理人との間でされた遺産分割協議による相続の登記(1955年(昭和30年)6月18日民甲1264号電報回答・通達) ** 仮登記後に登記をした第三者の承諾証明情報を添付しないでする仮登記の本登記(1965年(昭和40年)12月25日民甲3711号回答) * 第11号関係 ** 地積の更正の登記につき、実地調査の結果、境界を確認することができないもの(1963年(昭和38年)1月21日民甲129号回答) * 令第1号関係 ** 橋梁の登記(1899年(明治32年)10月23日民刑1895号回答) * 令第2号関係 ** 権利能力なき社団を登記名義人とする登記(1948年(昭和23年)6月21日民甲1897号回答) * 令第3号関係 ** 仮登記のされている不動産の合併の登記(1960年(昭和35年)7月4日民甲1594号回答・通達) * 令第4号関係 ** 一筆の土地の一部を目的とする処分の制限の登記(1952年(昭和27年)9月19日民甲308号民事回答) * 令第5号関係 ** 所有権の一部を目的とする抵当権の設定の登記(1960年(昭和35年)6月1日民甲1340号回答・通達) * 令第6号関係 ** 同一不動産につき同時に申請された、仮登記権利者を異にする2件の所有権移転請求権の仮登記(1955年(昭和30年)4月11日民甲693号電報回答・通達) * 令第7号関係 ** 既に地上権が設定されている不動産に対する地上権の設定の登記(大判明治39年10月31日民録12輯1366頁) * 令第8号関係 ** 利息制限法に違反する利息を登記事項とする抵当権の設定の登記(1954年(昭和29年)6月28日民甲1357号通達) ** 共同相続人の一部の者のみの相続の登記(1955年(昭和30年)10月15日民甲2216号電報回答) === 却下の手続き === 登記官は、申請を却下するときは、決定書を作成して申請人ごとに交付することとされているが、代理人によって申請がされた場合は、当該代理人に交付すればよいとされている([[不動産登記規則第38条]]第1項)。この申請の却下の決定書は、申請人に交付するもののほか、登記所に保存すべきものを1通作成しなければならない([[不動産登記事務取扱手続準則第28条|不動産登記事務取扱手続準則(2005年(平成17年)2月25日民二456号通達)第28条]]第1項。以下「同準則」という)。また、却下の決定書の交付は、送付の方法によりすることができるとされている(不動産登記規則第38条第2項)。この場合において、申請人に送付した決定書の原本が所在不明等を理由として返送されたときでも、何らの措置を要せず、当該返送された決定書の原本は、当該登記の申請書(電子申請の場合は[[不動産登記事務取扱手続準則第32条|同準則第32条]]第3項に規定する電子申請管理用紙。以下単に「電子申請管理用紙」という)と共に申請書類つづり込み帳につづり込むこととされている(同準則第28条第5項)。 登記官は、申請を却下するときは、登記所に保存すべき決定書の原本の欄外に決定告知の年月日及びその方法を記載して登記官印を押印し、これを日記番号の順序に従って決定原本つづり込み帳につづり込むこととされている([[不動産登記事務取扱手続準則第28条|同準則第28条]]第2項)。そして、受付帳に「却下」と記録し、書面申請([[不動産登記規則第1条]]第4号参照。以下同じ)の場合は申請書に却下した旨を記載し、これを申請書類つづり込み帳につづり込むこととされており(同準則第28条第3項)、電子申請の場合は電子申請管理用紙に却下した旨を記載し、登記官印を押印することとされている(2005年(平成17年)2月25日民二457号通達第2-4(2)前段)。 登記官は、[[不動産登記令第4条]]ただし書の規定により1の申請情報によって2以上の申請がされた場合において、その一部を却下するときは、受付帳に「一部却下」と記録した上、書面申請の場合は申請書に以下に掲げる却下の区分に応じて、それぞれに定める記録をしなければならない([[不動産登記事務取扱手続準則第28条|同準則第28条]]第4項)。 * 2以上の登記の目的に係る申請のうち1の登記の目的に係る申請についての却下の場合、却下に係る登記の目的についての記載の上部に、別記第43号様式による印版(縦約0.8cm・横約3.5cmの枠内に、一部却下と記載したもの)を押印し、当該登記の目的を記録すること * 2以上の不動産のうち一部についての却下の場合、却下に係る不動産の所在の記載の上部に、別記第43号様式による印版を押印すること 登記官は、書面申請がされた場合において、申請を却下したときは、添付書面を還付することとされているが、偽造された書面その他の不正な登記の申請のために用いられた疑いがある書面については、還付しないとされている([[不動産登記規則第38条]]第3項)。還付しなかった場合は、登記官は、申請書の適宜の余白にその理由を記載し、還付しなかった添付書面は、当該登記の申請書と共に申請書類つづり込み帳につづり込むこととされている([[不動産登記事務取扱手続準則第28条|同準則第28条]]第6項)。また、捜査機関が申請書又は還付しなかった添付書面の押収をしようとするときは、これに応じることとされており、この場合には押収に係る書面の写しを作成し、当該写しに当該捜査機関の名称及び押収の年月日を記載した上、当該書面が捜査機関から返還されるまでの間、申請書類つづり込み帳につづり込むべき箇所に当該写しをつづり込むこととされている(同準則第28条第7項)。 書面申請が却下となった場合において、申請人から申請書に添付した登記識別情報通知書を還付してほしい旨の申し出があったときは、当該登記識別情報通知書を封筒に入れて封をし、とじ代に登記官の職印を契印して還付することとされており([[不動産登記事務取扱手続準則第41条|同準則第41条]]第4項)、更に、申請書には登記識別情報通知書を還付した旨を記載することとされている(2005年(平成17年)2月25日民二457号通達第2-7)。 本条第10号の規定により却下する場合又は、[[不動産登記法第23条]]第1項の通知を受けるべき者から申請の内容が真実でない旨の申出があったとき又は通知を受けるべき者の所在不明若しくは受取拒絶を理由に当該通知書が返戻されたときには、期間満了日の翌日の日付をもって却下することとされている([[不動産登記事務取扱手続準則第28条|同準則第28条]]第8項)。 登記申請が却下された場合、納付した登録免許税は還付される。この場合、申請人に対して還付通知がされ([[不動産登記事務取扱手続準則第128条|同準則第128条]]第1項)、書面申請の場合には申請書又は登録免許税納付用紙に、電子申請の場合は電子申請管理用紙に、別記第92号様式による印版(縦約1cm・横約5cmの枠内に、還付通知済と記載されたもの)を押印し、登記官印を押印することとされている(同準則第128条第2項・2005年(平成17年)2月25日民二457号通達第2-8(2)後段)。なお、還付の通知の解説については、[[w:不動産登記#還付]]を参照。 === 補正 === 登記官は、申請の補正をすることができる期間を定めたときは、当該期間内は、当該補正すべき事項に係る不備を理由に当該申請を却下することができない([[不動産登記規則第60条]]第1項)。 登記官は、電子申請についての不備が補正することができるものである場合において、登記官が定めた補正を認める相当期間を当該申請の申請人に告知するときは、補正を要する事項・補正期限の年月日・補正期限内に補正がされなければ申請を却下する旨・補正の方法・管轄登記所の電話番号を記録した補正コメントを作成して、法務省オンライン申請システムに掲示してすることとされている([[不動産登記事務取扱手続準則第36条|同準則第36条]]第1項)。この場合において、申請人が法務省オンライン申請システムのユーザー登録において電子メールのアドレスを登録していたときは、当該アドレスにあてて、申請内容に不備があるため補正の手続を促す旨及び当該補正コメントの参照を促す電子メールが送信される(2005年(平成17年)2月25日民二457号通達第2-4(1)なお書)。 登記官は、書面申請についての不備が補正することができるものである場合において、登記官が定めた補正を認める相当期間を当該申請の申請人に告知するときは、電話その他の適宜の方法により、上記電子申請の場合と同じ事項を連絡してすることとされている([[不動産登記事務取扱手続準則第36条|同準則第36条]]第2項)。 申請の補正は、電子申請の場合は、法務大臣の定めるところにより電子情報処理組織を使用して申請の補正をし、書面申請の場合は、登記所に提出した書面を補正し又は補正に係る書面を登記所に提出する方法によりしなければならない([[不動産登記規則第60条]]第2項)。ただし、電子申請の場合でも、登録免許税の不足額の納付は、登録免許税納付用紙([http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S42/S42HO035.html#1000000000000000000000000000000000000000000000002400200000000000000000000000000 登録免許税法第24条の2第3項]及び[http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S42/S42HO035.html#1000000000000000000000000000000000000000000000003500000000000000000000000000000 第35条4項]・[http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S42/S42HO035.html#1000000000000000000000000000000000000000000000002100000000000000000000000000000 同法第21条]及び[http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S42/S42HO035.html#1000000000000000000000000000000000000000000000002200000000000000000000000000000 第22条])を用いてすることができる(2005年(平成17年)2月25日民二457号通達第2-4(2)ただし書)。 書面申請の場合において、申請書又は添付書面の不備を補正させるときは、登記官の面前でさせることとされており、当該書面が資格者代理人の作成によるものであるときは、当該資格者代理人本人に補正させることとされている([[不動産登記事務取扱手続準則第36条|同準則第36条]]第3項)。 なお、申請の不備の内容が[[不動産登記規則第34条]]第1項各号に掲げる事項に関するものであるとき又は本条の却下事項に該当しないときもしくは申請情報の内容に不備があるが添付情報(公務員が職務上作成したものに限る)により補正すべき内容が明らかなとき、補正の対象とならない([[不動産登記事務取扱手続準則第36条|同準則第36条]]第4項)。 補正期限内に補正されず、又は取り下げられなかった申請は、当該期限の経過後に却下することとされている([[不動産登記事務取扱手続準則第36条|同準則第36条]]第5項)。 == 参照条文 == * [[不動産登記令第20条]](登記すべきものでないとき) * [[不動産登記規則第38条]](申請の却下) * [[不動産登記規則第60条]](補正) * [[不動産登記事務取扱手続準則第28条]](申請の却下) * [[不動産登記事務取扱手続準則第36条]](補正期限の連絡等) == 参考文献 == * 河合芳光 『逐条不動産登記令』 [[w:金融財政事情研究会|金融財政事情研究会]]、2005年、119頁・120頁・122頁・383頁・397頁、{{ISBN|4-322-10712-5}} * 小池信行・藤谷定勝監修 不動産登記実務研究会編著 『Q&A権利に関する登記の実務II 第1編総論(下)』 [[w:日本加除出版|日本加除出版]]、2006年、353頁-355頁、{{ISBN|4-8178-3764-6}} ---- {{前後|[[コンメンタール不動産登記法|不動産登記法]]|[[コンメンタール不動産登記法#s4|第4章 登記手続]]<br>[[コンメンタール不動産登記法#s4-1|第1節 総則]]|[[不動産登記法第24条]]<br>(登記官による本人確認)|[[不動産登記法第26条]]<br>(政令への委任)}} {{stub|law}} [[category:不動産登記法|025]] [[category:民法 2021年改正|不登025]] slytt3pvl4jvr087k116qqm2u0m5zmq More C++ Idioms/リソース獲得は初期化である(Resource Acquisition Is Initialization) 0 8342 305017 296936 2026-10-22T09:25:05Z Jcb 92857 305017 wikitext text/x-wiki =<center>リソース獲得は初期化である(Resource Acquisition Is Initialization)</center>= === 意図 === * スコープの最後でリソースが解放されることを保証する。 * 基本例外保証を提供する。 === 別名 === * オブジェクト生存期間前後での実行(Execute-Around Object) * リソース解放は最終化である(Resource Release Is Finalization) === 動機 === 関数スコープで獲得したリソースは、その所有権が別のスコープやオブジェクトに移動していない限り、そのスコープから離脱する前に解放されるべきである。 ほとんどの場合、これはリソースを獲得する関数とリソースを解放する関数を対にして使うことを意味する。例えば、new/delete, malloc/free, acquire/release, file-open/file-close, nested_count++/nested_count-- (ネスト回数)などである。 リソース管理の「規約」のうち「解放(release)」する部分は非常に容易く書き忘れてしまう。 特に、例外の発生やreturn文によって制御の流れがスコープから離脱することで、リソース解放関数が決して呼び出されないことがある。 現在および未来における全ての可能な場合に対して、プログラマがリソース解放操作を呼び出すと信頼することは非常に危険である。 以下にいくつかの例を示す。 <source lang="cpp"> void foo () { char * ch = new char [100]; if (...) if (...) return; else if (...) if (...) else throw "ERROR"; delete [] ch; // 呼び出されないかもしれない……メモリリーク(解放漏れ)! } void bar () { lock.acquire(); if (...) if (...) return; else throw "ERROR"; lock.release(); // 呼び出されないかもしれない……デッドロック! } </source> これは一般的には制御の流れの抽象化の問題である。 リソース獲得は初期化である(Resource Acquisition is Initialization(RAII))イディオムは、C++ では非常に一般的なイディオムであり、賢い方法で「リソース解放」操作の呼び出しの責任を緩和する。 === 解法とサンプルコード === 発想はリソースの解放操作をそのスコープ中のオブジェクトのデストラクタ中にラップするというものである。 C++規格によって、return 文による場合でも例外による場合でも、制御のフローがスコープを離脱する際に、生成に成功したスタック上のリソース管理オブジェクトのデストラクタが必ず呼び出されることが保証されている。 <source lang="cpp"> // プライベートコピーコンストラクタと代入演算子でNonCopyable派生クラスのコピーを禁止する class NonCopyable { NonCopyable (NonCopyable const &); NonCopyable & operator = (NonCopyable const &); }; class AutoDelete { public: AutoDelete (T * p) : ptr_(p) {} ~AutoDelete () throw() { delete ptr_; } private: T *ptr_; }; class ScopedLock // スコープ内ロック(Scoped Lock)イディオム { public: ScopedLock (Lock & l) : lock_(l) { lock_.acquire(); } ~ScopedLock () throw () { lock_.release(); } private: Lock lock_; }; void foo () { X * p = new X; AutoDelete safe_del(p); // メモリはリーク(解放漏れ)しない if (...) if (...) return; // ここでは delete を呼ぶ必要はない。 // safe_del のデストラクタがメモリを delete する。 } void X::bar() { ScopedLock safe_lock(l); // ロックは確実に解放される if (...) if (...) throw "ERROR"; // ここで release を呼び出す必要はない。 // safe_lock のデストラクタがロックを解放する。 } </source> RAII イディオムでは、コンストラクタでのリソース獲得は必須ではないが、デストラクタでのリソース解放が鍵である。 そのため、(稀ではあるが)リソース解放は最終化である(Resource Release is Finalization)イディオムとしても知られている。 このイディオムでは、デストラクタが例外を送出しないことが重要である。 そのため、デストラクタは例外無送出指定(no-throw specification)を持つことがある(必須ではない)。 std::auto_ptr と boost::scoped_ptr によりメモリリソースに対して RAII を素早く使うことができる。 RAII は例外安全性を保証することにも使われる。 RAII は多数の try/catch ブロックの使用なしに、リソースリーク(解放漏れ)を避けることができ、ソフトウェア業界で広く使われている。 RAIIによってリソース管理をしているクラスの中には、正しく必要なコピーをすることのできないものが多い。 (例えばネットワークコネクションやデータベースのカーソル、排他制御)。この''NonCopyable''クラスはRAIIを実装したオブジェクトのコピーを禁止している。この場合は、単純にコピーコンストラクタとコピー代入をプライベート関数にすることでコピーを妨げている。たとえば、libboostの''boost::scoped_ptr''はリソースを持っている間はコピーができない。この''NonCopyable'' クラスはこの意図を明示したもので、正しくない場合コンパイルできない。 このようなクラスはSTLコンテナに用いられるべきではない。 しかしながら、RAIIを採用したすべてのリソース管理クラスがコピー不可である必要はない。もし実際にコピーを必要とするのならば、 ''boost::shared_ptr'' をメモリリソースの管理に用いることができる。一般的には、コピーの管理には [[More C++ Idioms/計数ボディ(Counted Body)|参照回数計測(Reference Counting)]] がRAIIと同じように使われる。 === 帰結 === RAII に制限がないわけではない。 メモリではなく、確定的に解放されなければならず、例外が送出されるかもしれないリソースは、C++ のデストラクタでは大抵うまく扱えない。 C++ のデストラクタでは、(どうやってもそこは終末であり)エラーを外側のスコープに伝えることができないからである。 戻り値はなく、例外を外部に伝播させてはならない。 例外の可能性があるならば、デストラクタはそれ自身の内部でどうにかして例外的な場合を処理しなければならない。 それでもなお、RAII は C++ で最も広く使われているリソース管理イディオムの地位にとどまっている。 === 既知の利用 === * ほとんどすべての C++ ソフトウェア * std::auto_ptr * boost::scoped_ptr * boost::mutex::scoped_lock === 関連するイディオム === * [[More C++ Idioms/スコープ防壁(Scope Guard)|スコープ防壁(Scope Guard)]] * [[More C++ Idioms/計数ボディ(Counted Body)|参照回数計測(Reference Counting)]] * [http://www.cs.wustl.edu/~schmidt/PDF/ScopedLocking.pdf スコープ内ロック(Scoped Locking)]イディオムは、RAII をミューテックス(mutex)やセマフォ(semaphore)のようなオペレーティングシステムの同期プリミティブに対して適用した特別な場合である。 === References === * [http://en.wikipedia.org/wiki/Resource_Acquisition_Is_Initialization Wikipedia 上の Resource Acquisition Is Initialization on Wikipedia] * [http://ja.wikipedia.org/wiki/RAII Wikipedia 日本語版上の RAII] * [https://web.archive.org/web/20070108232738/http://www.research.att.com/~bs/except.pdf Exception Safety: Concepts and Techniques], Bjarne Stroustrup * [http://www.hackcraft.net/raii The RAII Programming Idiom] * Sutter, Herb (1999). Exceptional C++. Addison-Wesley. {{ISBN|0-201-61562-2}}. * [http://www.two-sdg.demon.co.uk/curbralan/papers/europlop/ExecutingAroundSequences.pdf C++ Patterns: Execute Around Sequences], Kevlin Henney <noinclude> [[en:More C++ Idioms/Resource Acquisition Is Initialization]] </noinclude> [[Category:{{BASEPAGENAME}}|りそーすかくとくはしよきかてある]] fcfm8vnt8fnj3cpajpi1n0msx30lhk7 不動産登記法第60条 0 8352 305055 271389 2026-10-22T10:48:57Z Jcb 92857 305055 wikitext text/x-wiki [[法学]]>[[民事法]]>[[不動産登記法]]>[[コンメンタール不動産登記法]] ==条文== (共同申請) ;第60条 :権利に関する登記の申請は、法令に別段の定めがある場合を除き、登記権利者及び登記義務者が共同してしなければならない。 ==解説== ===本条の趣旨=== 本条は、共同申請の原則について定めたものである。 登記権利者の定義は[[不動産登記法第2条|不動産登記法第2条第12号]]に、登記義務者の定義は同法第2条第13号に規定がある。 更に詳しい解説は、[[w:不動産登記#登記権利者と登記義務者]]を参照。 ===例外としての単独申請=== ====登記権利者・登記義務者という構造が存在しないもの==== 登記義務者が存在しない場合、登記権利者は「登記申請人」として、単独で権利に関する登記を申請できる。その場合で、主なものは以下のとおりである。 *相続又は法人の合併による権利の移転の登記([[不動産登記法第63条|不動産登記法63条第2項]]) *登記名義人の氏名・名称・住所の変更登記・更正登記([[不動産登記法第64条|同法第64条第1項]]) *抵当証券が発行されている抵当権についての債務者氏名・名称・住所の表示変更・更正登記([[不動産登記法第64条|同法第64条第2項]]) *所有権の保存の登記([[不動産登記法第74条|同法第74条]]) *所有権の保存の登記の抹消の登記([[不動産登記法第77条|同法第77条]]) ====登記権利者又は登記義務者の意思を擬制するもの==== 登記権利者又は登記義務者の登記申請意思を、何らかの方法で擬制できる場合、一方のみからの申請により、事実上の単独申請が可能である。その場合で、主なものは以下のとおりである。 *登記手続きを命ずる確定判決による登記([[不動産登記法第63条|不動産登記法63条第1項]]) *人の死亡又は法人の解散による権利の抹消の登記[[不動産登記法第69条|同法第69条]]) *登記義務者の所在が知れない場合で、除権決定を得てする権利の抹消の登記([[不動産登記法第70条|同法第70条第2項]]) *休眠担保権の抹消の登記([[不動産登記法第70条|同法第70条第3項]]) *根抵当権又は根質権の元本の確定の登記で一定の場合([[不動産登記法第93条|同法第93条]]・[[不動産登記法第95条|同法第95条第2項]]) *信託に関する登記の一部([[不動産登記法第98条|同法第98条第2項]]・第3項、[[不動産登記法第99条|同法第99条]]、[[不動産登記法第100条|同法第100条]]、[[不動産登記法第103条|同法第103条第2項]]、[[不動産登記法第93条|同法第104条]]) *処分禁止の登記に遅れる登記の抹消の登記([[不動産登記法第111条|同法第111条第1項]]・第2項、[[不動産登記法第113条|同法第113条]]) *嘱託による登記([[不動産登記法第116条|同法第116条第1項]]・第2項) *不動産の収用による所有権の移転の登記([[不動産登記法第118条|同法第118条第1項]]) *不動産に関する所有権以外の権利の収用による権利の抹消の登記([[不動産登記法第118条|同法第118条第3項]]。なお、[http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S26/S26HO219.html#1000000000000000000000000000000000000000000000000500000000000000000000000000000 土地収用法第5条第1項第1号]も参照。) *[http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S25/S25HO291.html#1000000000000000000000000000000000000000000000001200000000000000000000000000000 採石法第12条]又は[http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S25/S25HO291.html#1000000000000000000000000000000000000000000000001500000000000000000000000000000 同法15条第1項]もしくは[http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S25/S25HO291.html#1000000000000000000000000000000000000000000000002800000000000000000000000000000 同法第28条]の決定に基づく採石権等に関する登記([http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S25/S25HO291.html#1000000000000000000000000000000000000000000000003100000000000000000000000000000 採石法第31条]) *特別縁故者([[民法第958条の3]])への移転の登記で、審判書正本を提供してする場合(1962年(昭和37年)6月15日民甲1606号通達第5-1) ====仮登記の特則==== 仮登記については、共同申請の原則は大幅に緩和されている。仮登記に関する登記で、単独申請が認められているものは、以下のとおりである。 *仮登記の登記義務者の承諾があるとき又は仮登記を命ずる処分があるときの、登記権利者から申請する仮登記([[不動産登記法第107条]]) *仮登記の登記名義人から申請する、当該仮登記の抹消の登記([[不動産登記法第110条|同法第110条前段]]) *仮登記の登記名義人の承諾があるときの、当該仮登記の登記上の利害関係人から申請する仮登記の抹消の登記([[不動産登記法第110条|同法第110条後段]]) *仮登記の登記義務者の承諾があるとき又は仮登記を命ずる処分があるときの、登記権利者から申請する仮登記の変更登記・更正登記(1967年(昭和42年)8月23日民甲2437号回答) ===登記義務者・登記権利者という区別が存在しないもの=== 登記義務者と登記権利者の厳然たる区別が存在せず、関係する登記名義人が共同して申請するもの(いわゆる合同申請)は、以下のとおりである。 *共有物分割禁止の定めに係る権利の変更の登記([[不動産登記法第65条]]) *担保物権の順位の変更の登記([[不動産登記法第89条|同法第89条]]第1項) *[[民法第398条の14|民法第398条の14第1項ただし書]]の定め(以下「優先弁済の定め」という)の登記([[不動産登記法第89条|同法第89条]]第2項) *順位変更の登記を更正する登記(書式解説2-510頁) *順位変更の登記を抹消する登記(1971年(昭和46年)10月4日民甲3230号通達第1-5) *優先弁済の定めの登記を変更する登記(書式解説2-937頁) *優先弁済の定めの登記を更正する登記及び抹消する登記 なお、順位の変更の登記については、[[不動産登記法第89条|不動産登記法第89条]]第1項の文言からは、抵当権しかできないように読めるが、[[不動産登記令第8条]]第1項第6号の文言には質権が含まれており、更に、[[不動産登記規則第164条]]においては「担保権」とあることから、登記できる担保物権はすべて順位の変更の登記が可能である。 ===その他=== 登記権利者と登記義務者が同一人である場合(混同による権利の抹消の登記が典型例である)や、登記権利者が登記義務者から登記申請の代理権限を得た場合(登記権利者兼登記義務者代理人となる)及びその逆の場合は、事実上の単独申請が可能である。 ==参照条文== *[[不動産登記法第93条]](根抵当権の元本の確定の登記) ==参考文献== *香川保一編著 『新不動産登記書式解説(二)』 テイハン、2006年、510頁・937頁、{{ISBN|978-4860960315}} ---- {{前後 |[[コンメンタール不動産登記法|不動産登記法]] |[[コンメンタール不動産登記法#s4|第4章 登記手続]]<br> [[コンメンタール不動産登記法#s4-3|第3節 権利に関する登記]]<br> [[コンメンタール不動産登記法#s4-3-1|第1款 通則]] |[[不動産登記法第59条]]<br>(権利に関する登記の登記事項) |[[不動産登記法第61条]]<br>(登記原因証明情報の提供) }} {{stub|law}} [[category:不動産登記法|060]] efet46r15nx5shgjipub4l2xri9h3nx 不動産登記法第13条 0 8435 305052 271774 2026-10-22T10:48:13Z Jcb 92857 305052 wikitext text/x-wiki [[法学]]>[[民事法]]>[[不動産登記法]]>[[コンメンタール不動産登記法]] ==条文== (登記記録の滅失と回復) ;第13条 :法務大臣は、登記記録の全部又は一部が滅失したときは、登記官に対し、一定の期間を定めて、当該登記記録の回復に必要な処分を命ずることができる。 ==解説== ===本条の趣旨=== 本条は、登記記録が滅失したときの手続きについて定めたものである。 2005年の改正前の[http://law.e-gov.go.jp/haishi/M32HO024.html 旧不動産登記法]第24条に存在した、登記記録が滅失するおそれがあるときについての規定は、不動産登記規則に移された。 ===登記記録が滅失したとき=== 登記記録が滅失したときは、登記官は速やかにその状況を調査し、当該登記官を監督する法務局又は地方法務局の長に報告しなければならない([http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H17/H17F12001000018.html#1000000000000000000000000000000000000000000000003000000000000000000000000000000 不動産登記規則第30条第1項])。この報告は[[s:不動産登記事務取扱手続準則|不動産登記事務取扱手続準則]](2005年(平成17年)2月25日民二第456号通達。以下「同準則」という。)別記第32号様式による報告書によりすることとされている([[s:不動産登記事務取扱手続準則#24|同準則第24条第1項第1号]])。この報告書の様式は以下のとおりである。 [[画像:登記記録滅失報告書.PNG|none]] 上記の報告を受けた法務局又は地方法務局の長は、相当の調査をし、法務大臣に対して意見を述べなければならない([http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H17/H17F12001000018.html#1000000000000000000000000000000000000000000000003000000000002000000000000000000 不動産登記規則第30条第2項])。この意見は[[s:不動産登記事務取扱手続準則|同準則]]別記第37号様式による意見書によりすることとされている([[s:不動産登記事務取扱手続準則#24|同準則第24条第1項第3号]])。この意見書の様式は以下のとおりである。 [[画像:登記記録滅失意見書.PNG|none]] 以上の報告書及び意見書には、滅失の事由を詳細かつ具体的に記載しなければならない([[s:不動産登記事務取扱手続準則#24|同準則第24条第2項]])。 ===登記記録が滅失するおそれがあるとき=== 登記記録が滅失するおそれがあるとき、登記官は速やかにその状況を調査し、当該登記官を監督する法務局又は地方法務局の長に報告しなければならない([http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H17/H17F12001000018.html#1000000000000000000000000000000000000000000000003000000000000000000000000000000 不動産登記規則第30条第3項]・第1項)。この報告は[[s:不動産登記事務取扱手続準則|同準則]]別記第34号様式による報告書によりすることとされている([[s:不動産登記事務取扱手続準則#24|同準則第24条第1項第2号]])。この報告書の様式は以下のとおりである。 [[画像:虞滅失登記記録報告書.PNG|none]] 上記の報告を受けた法務局又は地方法務局の長は、相当の調査をし、法務大臣に対して意見を述べなければならない([http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H17/H17F12001000018.html#1000000000000000000000000000000000000000000000003000000000000000000000000000000 不動産登記規則第30条第3項]・第2項)。この意見は[[s:不動産登記事務取扱手続準則|同準則]]別記第39号様式による意見書によりすることとされている([[s:不動産登記事務取扱手続準則#24|同準則第24条第1項第4号]])。この意見書の様式は以下のとおりである。 [[画像:虞滅失登記記録意見書.PNG|none]] 以上の報告書及び意見書には、滅失のおそれがあると考える事由を詳細かつ具体的に記載しなければならない([[s:不動産登記事務取扱手続準則#24|同準則第24条第2項]])。 ===滅失回復の手続き=== [http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H16/H16HO123.html#5000000001000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000 不動産登記法附則]第3条第1項による指定を受けていない事務に係る旧登記簿が滅失したときは、2005年の改正前の[http://law.e-gov.go.jp/haishi/M32HO024.html 旧不動産登記法]第19条・第23条・第69条ないし第75条までに規定する手続により回復することとされており、この場合、当該事務について本登記済証交付帳を備えることとされている([http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H17/H17F12001000018.html#5000000001000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000 不動産登記規則附則]第6条第1項)。 上記の場合以外の場合における、登記記録の回復について具体的に定めた条文は存在しない。 ==参照条文== ==参考文献== *小池信行・藤谷定勝監修 不動産登記実務研究会編著 『Q&A権利に関する登記の実務I 第1編総論(上)』 [[w:日本加除出版|日本加除出版]]、2006年、216頁、{{ISBN|4-8178-3746-2}} ---- {{前後 |[[コンメンタール不動産登記法|不動産登記法]] |[[コンメンタール不動産登記法#s3|第3章 登記記録等]]<br> |[[不動産登記法第12条]]<br>(登記記録の作成) |[[不動産登記法第14条]]<br>(地図等) }} {{stub|law}} [[category:不動産登記法|013]] kmaj1j920knpr8pzzweb7bgg2fty5mv ソクラテス 0 8879 305043 282443 2026-10-22T09:46:44Z Jcb 92857 305043 wikitext text/x-wiki {{substub|080907}} [[画像:Socrates_Louvre.jpg|right|200px]] '''ソクラテス'''は古代ギリシアの哲学者です。 彼は生涯著作をおこわなかったために、彼の思想は弟子の[[プラトン]]や歴史家の[[w:クセノポン|クセノポン]]、[[アリストテレス]]などの著作をつうじて紹介されているのみです。 ==脱獄しなかったソクラテス== [[Image:David - The Death of Socrates.jpg|thumb|300px|ソクラテスの最期が描かれている「ソクラテスの死」[[w:ジャック=ルイ・ダヴィッド|ジャック=ルイ・ダヴィッド]]作(1787)]] 『クリトン』によると、監獄で死刑をまつソクラテスにふるくからの友人であるクリトンがたずねてきて、ソクラテスに脱獄をすすめます。しかし、「善いこと」を追求していたソクラテスは脱獄することは法律をやぶることになってよくないと考え、クリトンのすすめをことわり、毒ニンジンをのまされて生涯をとじました。 ==参考文献== *プラトン 『クリトン』 [[w:田中美知太郎|田中美知太郎]]訳、[[w:筑摩書房|筑摩書房]]〈世界古典文学全集〉、1964年8月30日、35-50頁。{{ISBN|4480203141}} {{wikipedia|ソクラテス}} {{Wikiquote|ソクラテス}} {{Commons|Socrates}} [[category:古代ギリシア哲学|そくらてす]] q32kjchvq2d0dzavoeq83buifqfbebp ガリア戦記 第5巻 0 9028 305040 274797 2026-10-22T09:45:36Z Jcb 92857 305040 wikitext text/x-wiki [[Category:ガリア戦記|5]] [[ガリア戦記]]>&nbsp;'''第5巻'''&nbsp;>[[ガリア戦記 第5巻/注解|注解]] <div style="text-align:center"> <span style="font-size:20px; font-weight:bold; font-variant-caps: petite-caps; color:white; background: rgb(47,94,255);background: linear-gradient(180deg, rgba(47,94,255,1) 0%, rgba(24,56,255,1) 50%, rgba(0,8,255,1) 100%);">&nbsp;C&nbsp;IVLII&nbsp;CAESARIS&nbsp;COMMENTARIORVM&nbsp;BELLI&nbsp;GALLICI&nbsp;</span> <span style="font-size:40px; font-weight:bold; color:white; background: rgb(47,94,255);background: linear-gradient(180deg, rgba(47,94,255,1) 0%, rgba(24,56,255,1) 50%, rgba(0,8,255,1) 100%);">&nbsp;LIBER QVINTVS&nbsp;</span> </div> [[画像:Gaule -54.png|thumb|right|150px|ガリア戦記 第5巻の情勢図(BC54年)。<br>黄色の領域がローマ領。桃色が同盟部族領。]] {| id="toc" style="align:left;clear:all;" align="left" cellpadding="5" ! style="background:#ccccff; text-align:left;" colspan="2" | ガリア戦記 第5巻 目次 |- | style="text-align:right; font-size: 0.86em;"| '''[[#ブリタンニア再遠征の準備|ブリタンニア再遠征の準備]]''':<br /> '''[[#第二次ブリタンニア遠征|第二次ブリタンニア遠征]]''':<br /> <br /> <br /> '''[[#アンビオリークスとエブローネース族の蜂起|アンビオリークスとエブローネース族の蜂起]]''':<br /> <br /> '''[[#ネルウィイー族らベルガエ人同盟の蜂起|ネルウィイー族らベルガエ人同盟の蜂起]]''':<br /> <br /> <br /> '''[[#インドゥーティオマールスとトレーウェリー族の蜂起|インドゥーティオマールスとトレーウェリー族の蜂起]]''':<br /> <br /> <br /> <br /> <br /> <br /> | style="text-align:left; font-size: 0.86em;"| [[#1節|01節]] | [[#2節|02節]] | [[#3節|03節]] | [[#4節|04節]] | [[#5節|05節]] | [[#6節|06節]] | [[#7節|07節]] | <br > [[#8節|08節]] | [[#9節|09節]] | [[#10節|10節]] <br /> [[#11節|11節]] | [[#12節|12節]] | [[#13節|13節]] | [[#14節|14節]] | [[#15節|15節]] | [[#16節|16節]] | [[#17節|17節]] | [[#18節|18節]] | [[#19節|19節]] | [[#20節|20節]] <br /> [[#21節|21節]] | [[#22節|22節]] | [[#23節|23節]] <br /> [[#24節|24節]] | [[#25節|25節]] | [[#26節|26節]] | [[#27節|27節]] | [[#28節|28節]] | [[#29節|29節]] | [[#30節|30節]] <br /> [[#31節|31節]] | [[#32節|32節]] | [[#33節|33節]] | [[#34節|34節]] | [[#35節|35節]] | [[#36節|36節]] | [[#37節|37節]] <br /> [[#38節|38節]] | [[#39節|39節]] | [[#40節|40節]] <br /> [[#41節|41節]] | [[#42節|42節]] | [[#43節|43節]] | [[#44節|44節]] | [[#45節|45節]] | [[#46節|46節]] | [[#47節|47節]] | [[#48節|48節]] | [[#49節|49節]] | [[#50節|50節]] <br /> [[#51節|51節]] | [[#52節|52節]] <br /> [[#53節|53節]] | [[#54節|54節]] | [[#55節|55節]] | [[#56節|56節]] | [[#57節|57節]] | [[#58節|58節]] | <br /> <hr> [[#37節%20訳注:アドゥアトゥカの戦いについて|37節 訳注:アドゥアトゥカの戦いについて]]<br /> [[#38節%20訳注:ネルウィイー族とアトゥアトゥキー族について|38節 訳注:ネルウィイー族とアトゥアトゥキー族について]]<br /> [[#40節%20訳注:キケロー兄弟とカエサル|40節 訳注:キケロー兄弟とカエサル]]<br /> [[#参考リンク|参考リンク]]<br /> |} <br style="clear:both;" /> __notoc__ ==はじめに== ===鉄器時代のブリテン島について=== {| class="wikitable" |- | style="width:25em;" |[[画像:South.Britain.Late.Iron.Age.jpg|thumb|left|400px|鉄器時代後期のブリテン島南部の部族の配置。]] |} <div style="background-color:#efefff;"> *<span style="color:#009900;"></span> </div> <!-- <span style="color:#009900;"></span> **:<span style="color:#009900;">(訳注: **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注: --> ==ブリタンニア再遠征の準備== ===1節=== *<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/1節]] {{進捗|00%|2023-07-20}}</span> '''造船計画、ピールスタエ族の問題''' *[[wikt:en:Lucius#Latin|Lucio]] [[wikt:en:Domitius#Latin|Domitio]] [[wikt:en:Appius#Latin|Appio]] [[wikt:en:Claudius#Latin|Claudio]] consulibus, **[[w:ルキウス・ドミティウス・アヘノバルブス (紀元前54年の執政官)|ルーキウス・ドミティウス]]と[[w:アッピウス・クラウディウス・プルケル (紀元前54年の執政官)|アッピウス・クラウディウス]]が[[w:執政官|執政官]]のとき、 **:<span style="color:#009900;">(訳注:[[w:紀元前54年|BC54年]]のこと。「[[ガイウス・ユリウス・カエサルの著作/ラテン語の紀年法|ラテン語の紀年法]]」参照。<br>     ドミティウス [[w:la:Lucius Domitius Ahenobarbus (consul 54 a.C.n.)|L. Domitius (Ahenobarbus)]] は、カエサルより前のガッリア総督。<br>     カエサルの政敵の一人で、『[[内乱記_第1巻#ドミティウスのコルフィニウム籠城|内乱記]]』で対戦する。)</span> *[[wikt:en:discedens#Latin|discedens]] ab [[wikt:en:hibernum#Latin|hibernis]] Caesar in [[wikt:en:Italia#Latin|Italiam]], ut [[wikt:en:quotannis#Latin|quotannis]] facere [[wikt:en:consueverat|consuerat]], **カエサルは、毎年行なうことが常であったように、冬営から<u>イタリア方面</u>に出発するときに、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:カエサルは[[w:イタリア本土 (古代ローマ)|本土イタリア]]に兵を連れては入れないので、<br>    担当属州[[w:ガリア・キサルピナ|ガッリア・キサルピーナ]]で首都ローマへの政界工作をするため。)</span> *legatis imperat quos legionibus [[wikt:en:praeficio#Latin|praefecerat]], **軍団を指揮していた[[w:レガトゥス|副官]]たちに命令する。 *[[wikt:en:uti#Etymology_1|uti]], [[wikt:en:quam#Etymology_1|quam]] plurimas possent, [[wikt:en:hiems#Latin|hieme]] naves [[wikt:en:aedificandus#Latin|aedificandas]] veteresque [[wikt:en:reficiendus#Latin|reficiendas]] [[wikt:en:curo#Latin|curarent]]. **できるかぎり多く、冬季に船団を建造することと、古いものを修理することを、させるようにと。 <br> ;   カエサルが副官たちに造船の詳細を指示する *Earum [[wikt:en:modus#Latin|modum]] [[wikt:en:forma#Latin|formam]]que [[wikt:en:demonstro#Latin|demonstrat]]. **<span style="color:#009900;">(カエサルは)</span>それら<span style="color:#009900;">〔船団〕</span>の仕様と外形を示す。 *Ad celeritatem [[wikt:en:onerandi|onerandi]] [[wikt:en:subductio#Latin|subductiones]]que **荷積みすることの迅速さと<span style="color:#009900;">(船を)</span>陸揚げすることのために、 *paulo facit humiliores, quam quibus in <u>nostro mari</u> [[wikt:en:uti#Etymology_2|uti]] consuevimus, **<u>我らの海</u>において用いるのが常であったものよりも、<span style="color:#009900;">(船体を)</span>少しより低くする。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:ローマ人は、[[w:地中海|地中海]]のことを <big>''[[w:en:Mare Nostrum|Mare Nostrum]]''</big> 「[[w:我らが海|我らの海]]」などと呼んでいた。)</span> *atque id [[wikt:en:eo#Etymology_3_2|eo]] magis, quod propter crebras [[wikt:en:commutatio#Latin|commutationes]] [[wikt:en:aestus#Latin|aestuum]] minus magnos ibi [[wikt:en:fluctus#Latin|fluctus]] fieri cognoverat; **[[w:潮汐|潮]]の頻繁な変動のゆえに、そこでは[[w:波#波浪(風浪とうねり)|波浪]]があまり大きくならないことを知っていたので、なおさらである。 *ad [[wikt:en:onus#Latin|onera]], ad multitudinem [[wikt:en:iumentum#Latin|iumentorum]] [[wikt:en:transportandus#Latin|transportandam]] **積荷と役畜の多数を運搬するために、 *paulo [[wikt:en:latior|latiores]], quam quibus in reliquis [[wikt:en:utimur|utimur]] maribus. **ほかの海で我々が用いているものよりも、<span style="color:#009900;">(船体を)</span>ややより幅広く。 {{Wikipedia|en:Actuaria|''Actuaria'' (英語)}} *Has omnes <u>actuarias</u> imperat fieri, **これら<span style="color:#009900;">〔船団〕</span>すべてが<u>快速船</u>となるように命令した。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:actuaria は [[w:la:Navis actuaria|navis actuaria]](快速船)の短縮形。<br>    [[内乱記_第1巻#34節|『内乱記』第1巻34節]]参照。)</span> *quam ad rem multum [[wikt:en:humilitas#Latin|humilitas]] [[wikt:en:adiuvo#Latin|adiuvat]]. **それらの事情において、<span style="color:#009900;">(船体の)</span>低さが大いに役立つ。 <br> *Ea, quae sunt [[wikt:en:usus#Etymology_1|usui]] ad [[wikt:en:armandus#Latin|armandas]] naves, **船団を武装するために役立つものを、 *ex [[wikt:en:Hispania#Latin|Hispania]] [[wikt:en:adporto|adportari]] iubet. **[[w:ヒスパニア|ヒスパーニア]]から運んで来ることを、命じる。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:ヒスパーニアは、ほぼ現在の[[w:イベリア半島|イベリア半島]]。<br>    この年(BC54年)は盟友[[w:グナエウス・ポンペイウス|ポンペーイウス]]が前執政官として<br>    ヒスパーニア総督だったので、便宜が図られたと考えられる。)</span> <br> {| class="wikitable" |- | style="vertical-align:top; text-align:left; width:25em;" |[[画像:Illyrians in the 1st-2nd centuries CE.png|right|thumb|600px|ローマ期(BC2~1世紀)の[[w:イリュリクム|イッリュリクム]]や[[w:パンノニア|パンノニア]]における部族の分布図。<br>図の右側中央に、PIRUSTAE(ピールスタエ族)の名が見える。]] |} ;   ピールスタエ族の問題 {{Wikipedia|de:Conventus|''Conventus'' (独語)}} *Ipse [[wikt:en:conventus#Etymology_2|conventibus]] <u>Galliae [[wikt:en:citerior#Latin|citerioris]]</u> [[wikt:en:peractus#Latin|peractis]] **<span style="color:#009900;"></span>(カエサル)自身は、[[w:ガリア・キサルピナ|ガッリア・キテリオル]]での法廷を完了してから、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:Gallia citerior は [[w:la:Gallia Cisalpina|Gallia Cisalpina]] と同じ。)</span> **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:一部の属州では、総督が巡回して裁判を行うことがあった。)</span> *in [[wikt:en:Illyricum#Latin|Illyricum]] proficiscitur, **[[w:イリュリクム|イッリュリクム]]に出発する。 *quod a [[wikt:en:Pirustae#Latin|Pirustis]] finitimam partem provinciae **というのは、ピールスタエ族により、属州<span style="color:#009900;"></span>(イッリュリクム)に隣接する地方が、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:ピールースタエ&nbsp; Pīrūstae <ref>[https://de.pons.com/%C3%BCbersetzung/latein-deutsch/Pirustae Pirustae - Latein-Deutsch Übersetzung (PONS)]</ref>(ギリシア語では Πιροῦσται&nbsp;)とも<br>    ペールースタエ&nbsp; Pērūstae (ギリシア語では Πειροῦσται&nbsp;)<ref>[https://lsj.gr/wiki/Pirustae Pirustae - Ancient Greek (LSJ)]</ref> とも呼ばれる。)</span> *[[wikt:en:incursio#Latin|incursionibus]] [[wikt:en:vasto#Verb_2|vastari]] audiebat. **襲撃され荒らされていると聞いていたからだ。 *Eo cum venisset, **<span style="color:#009900;">(カエサルは)</span>そこにやって来ると、 *civitatibus milites imperat **諸部族に兵士<span style="color:#009900;">(の供出)</span>を命令して、 *certumque in locum convenire iubet. **定められた場所に集結することを命じた。 *Qua re [[wikt:en:nuntiatus#Latin|nuntiata]] **この事が報じられると、 *[[wikt:en:Pirustae#Latin|Pirustae]] legatos ad eum mittunt, **ピールスタエ族は使節たちを彼<span style="color:#009900;">(カエサル)</span>のもとへ遣わした。 *qui doceant nihil earum [[wikt:la:res_publica|rerum publico]] factum consilio, **この者ら<span style="color:#009900;">〔使節たち〕</span>は、彼らの公けの事には何ら謀議をなしていない、と説いた。 *seseque paratos esse demonstrant omnibus rationibus de iniuriis satisfacere. **自分たちは、あらゆる方法で無法について償う用意があると言明した。 *Accepta oratione eorum **彼らの弁明を受け入れて、 *Caesar obsides imperat eosque ad certam diem adduci iubet; **カエサルは人質<span style="color:#009900;">(の供出)</span>を命令して、彼ら<span style="color:#009900;">〔人質〕</span>を確定した日に連れて来ることを命じた。 *nisi ita fecerint, sese bello civitatem [[wikt:en:persecuturus#Latin|persecuturum]] demonstrat. **もしそのように行なわなければ、戦争によって部族を懲罰するであろうと、言明した。 *Iis ad diem [[wikt:en:adductus#Latin|adductis]], ut imperaverat, **彼ら<span style="color:#009900;">〔人質〕</span>が、命令されたように、期日までに連れて来られて、 *[[wikt:en:arbiter#Latin|arbitros]] inter civitates dat, **部族国家間に仲裁人たちを立てて、 *qui [[wikt:en:lis#Latin|litem]] [[wikt:en:aestimo#Latin|aestiment]] [[wikt:en:poena#Latin|poenam]]<nowiki>que</nowiki> constituant. **訴訟(の罰金)を見積もって、罰を決定させるようにした。 <!-- <span style="color:#009900;"></span> **:<span style="color:#009900;">(訳注: **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注: --> ===2節=== *<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/2節]] {{進捗|00%|2023-08-02}}</span> '''造船の進捗状況、トレーウェリー族の問題''' *His confectis rebus [[wikt:en:conventus#Etymology_2|conventibus]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:peractus#Latin|peractis]], **<span style="color:#009900;">(カエサルは)</span>これらの事柄を成し遂げ、<span style="color:#009900;">(イッリュリクムの各地で)</span>法廷を完了して、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:属州イッリュリクムでも巡回裁判が行われていた。)</span> *in citeriorem Galliam revertitur atque inde ad exercitum proficiscitur. **[[w:ガリア・キサルピナ|ガッリア・キテリオル]]に戻り、そこから軍隊のもとへ出発する。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:軍隊は、ガッリア北部で冬営していた。<br>    カエサルが出発したのは、古代ローマの暦で5月末頃のこと。)</span> *Eo cum venisset, <u>circuitis</u> omnibus [[wikt:en:hibernum#Latin|hibernis]], **<span style="color:#009900;">(カエサルは)</span>そこにやって来ると、すべての冬営地を巡察して、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:&alpha;系写本の記述は [[wikt:en:circuitis#Participle|circuitis]] だが、<br>    &beta;系写本の記述は [[wikt:en:circumitis#Participle|circumitis]] となっているが、意味は同じ。)</span> *singulari militum studio in summa omnium rerum inopia **あらゆる物資のこのうえない欠乏において、兵士たちの格別の熱意により、 *circiter DC([[wikt:en:sescenti#Latin|sescentas]]) eius generis, cuius supra demonstravimus, naves **前に説明した種類の約600隻の船 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[#1節|1節]]で述べられた快速船のこと。)</span> *et longas XXVIII([[wikt:en:duodetriginta#Latin|duodetriginta]]) invenit [[wikt:en:instructus#Latin|instructas]] **および長船<span style="color:#009900;">〔軍船〕</span>28隻が建造されているのを見出して、 *neque multum abesse ab eo [[wikt:en:quin#Conjunction|quin]] paucis diebus [[wikt:en:deduco#Latin|deduci]] possint. **わずかの日々で出帆させられ得ることからあまり遠からずであることを<span style="color:#009900;">(も見出した)</span>。 <br> *[[wikt:en:conlaudatus#Latin|Conlaudatis]] militibus atque iis, qui [[wikt:en:negotium#Latin|negotio]] [[wikt:en:praesum#Latin|praefuerant]], **<span style="color:#009900;">(カエサルは)</span>兵士たちと職務を指揮していた者たちを誉めそやし、 *[[wikt:en:quis#Latin|quid]] fieri velit, [[wikt:en:ostendo#Latin|ostendit]] **<span style="color:#009900;">(彼らにより)</span>何が行なわれることを<span style="color:#009900;">(カエサルが)</span>欲しているかを示し、 {{Wikipedia|en:Itius Portus|&nbsp;Itius Portus (英語)}} {{Wikisource|en:1911_Encyclopædia_Britannica/Itius_Portus|1911年ブリタニカ百科事典の「Itius_Portus」英語記事}} *atque omnes ad portum [[wikt:en:Itius#Latin|Itium]] convenire iubet, **かつすべて<span style="color:#009900;">(の船団)</span>がイティウス港へ集結することを命じた。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:「イティウス港」について述べているカエサル以外の古代の著述家は、<br>    地理学者[[w:ストラボン|ストラボーン]]がギリシア語で引用しているのみ。<br>    [[w:ブローニュ=シュル=メール|ブーローニュ]]などが有力とされてきたが、正確な場所は不明。<br>    北仏[[w:カレー (フランス)|カレー]]に近い[[w:フランドル|フランドル]]海岸のどこかと考えられているようだ。)</span> *quo ex portu commodissimum in Britanniam [[wikt:en:traiectus#Noun|traiectum]] esse cognoverat, **かの港から[[w:ブリタンニア|ブリタンニア]]に渡らせることが非常に好都合であることを知っていたのだ。 *circiter [[ガイウス・ユリウス・カエサルの著作/通貨・計量単位#ミーッレ・パッスーム、ミーリア(ローママイル)|milium passuum]] XXX([[wikt:en:triginta#Latin|triginta]]) [[wikt:en:transmissus#Noun|transmissum]] a continenti: **大陸から渡航するには、約30ローママイルである。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:1[[ガイウス・ユリウス・カエサルの著作/通貨・計量単位#ミーッレ・パッスーム、ミーリア(ローママイル)|ローママイル]]は約1.48 kmで、30マイルは約44 km)</span> *huic rei, quod satis esse visum est, militum relinquit. **この事<span style="color:#009900;">〔船団の集結〕</span>に十分であると思われるだけの兵士を残留させた。 <br> ;   トレーウェリー族の問題 *Ipse cum legionibus expeditis IIII(quattuor) et equitibus DCCC([[wikt:en:octingenti#Latin|octingentis]]) **<span style="color:#009900;">(カエサル)</span>自身は、軽武装の4個[[w:ローマ軍団|軍団]]と[[w:騎兵|騎兵]]800騎とともに *in fines [[wikt:en:Treveri#Latin|Treverorum]] proficiscitur, **トレーウェリー族の領土に出発した。 *quod hi neque ad [[wikt:en:concilium#Latin|concilia]] veniebant **というのは、彼らは<span style="color:#009900;">(ガッリアの首長)</span>会合に来たこともなかったし *neque imperio parebant **<span style="color:#009900;">(ローマの)</span>威令にも服従しなかったし、 *[[wikt:en:Germanus#Latin|Germanos]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:Transrhenanus#Latin|Transrhenanos]] [[wikt:en:sollicito#Latin|sollicitare]] dicebantur. **レーヌス川<span style="color:#009900;"></span>([[w:ライン川|ライン川]])の向こう側の[[w:ゲルマン人|ゲルマーニア人]]をそそのかしていると言われていたためであった。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:''Germani Transrhenani'' 「レーヌスの向こう側のゲルマーニア人」は、ライン川東岸の諸部族の総称。<br>    ''[[w:en:Germani cisrhenani|Germani Cisrhenani]]''「レーヌスのこちら側のゲルマーニア人」(西岸の諸部族) の対義語で、<br>     西岸の諸部族が東岸の諸部族を招き寄せているというのが『ガリア戦記』の主張である。)</span> **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[ガリア戦記_第2巻#24節|第2巻24節]]では、トレーウェリー族は、カエサルの同盟部族として参戦していたが、<br>    戦況に絶望して、故国へ急いで帰ってしまった、と述べられた。)</span> <!-- <span style="color:#009900;"></span> **:<span style="color:#009900;">(訳注: **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注: --> ===3節=== [[画像:Bund-ro-altburg.jpg|thumb|right|250px|トレーウェリー族の再現された住居(Altburg)]] *<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/3節]] {{進捗|00%|2023-08-09}}</span> '''トレーウェリー族の動向、インドゥーティオマールスとキンゲトリークス''' *Haec civitas longe plurimum totius Galliae equitatu valet **この部族<span style="color:#009900;">〔トレーウェリー族〕</span>は、ガッリア全体でも非常に有力な[[w:騎兵|騎兵隊]] *magnasque habet copias peditum **と[[w:歩兵|歩兵]]の大軍勢を保有し、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[ガリア戦記_第2巻#24節|第2巻24節]]では、カエサルの援軍として来ていたが、<br>    「彼らの武勇の評判は、ガッリア人の間では比類なきものである」<br>    と述べられていた。) *[[wikt:en:Rhenus#Latin|Rhenum]]<nowiki>que</nowiki>, ut supra demonstravimus, [[wikt:en:tango#Latin|tangit]]. **前述したように、レーヌス川<span style="color:#009900;">〔[[w:ライン川|ライン川]]〕</span>に接していた。 *In ea civitate duo de [[wikt:en:principatus#Latin|principatu]] inter se [[wikt:en:contendo#Latin|contendebant]], [[wikt:en:Indutiomarus#Latin|Indutiomarus]] et [[wikt:en:Cingetorix#Latin|Cingetorix]]; **その部族において、インドゥーティオマールスとキンゲトリークスの二人が覇権をめぐり争っていた。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:''[[w:en:Cingetorix (Gaul)|Cingetorix]]'' は ''[[w:en:Indutiomarus|Indutiomarus]]'' の義理の息子([[wikt:en:gener#Latin|gener]])である。[[#56節|56節]]参照。)</span> <br> ;   キンゲトリークスがカエサルに恭順の意を示す *e quibus alter, [[wikt:en:simulatque|simul atque]] de Caesaris legionumque adventu cognitum est, **後者<span style="color:#009900;">〔キンゲトリークス〕</span>は、カエサルと諸[[w:ローマ軍団|軍団]]の到着について知られるや否や、 *ad eum venit, **彼<span style="color:#009900;">〔カエサル〕</span>のもとへ来て、 *se suosque omnes in [[wikt:en:officium#Latin|officio]] [[wikt:en:futurus#Latin|futuros]] **自分と配下の皆が<span style="color:#009900;">(カエサルに)</span>忠節であるだろうし、 *neque ab amicitia populi Romani [[wikt:en:defecturus#Latin|defecturos]] confirmavit **ローマ人民との盟約から離脱することはないだろう、と断言して、 *quaeque in [[wikt:en:Treveri#Latin|Treveris]] gererentur, ostendit. **トレーウェリー族でなされていることを、知らせた。 <br> [[画像:Botassart - Le Tombeau du Géant 1.jpg|thumb|right|300px|アルドゥエンナ(アルデンヌ)の森林地帯]] [[画像:Titelberg_01.jpg|thumb|right|300px|トレーウェリー族の城砦跡([[w:ルクセンブルク|ルクセンブルク]]の[[w:en:Titelberg|Titelberg]])]] ;   インドゥーティオマールスの動き *At [[wikt:en:Indutiomarus#Latin|Indutiomarus]] equitatum peditatumque [[wikt:en:cogo#Latin|cogere]], **一方、インドゥーティオマールスは、騎兵隊と歩兵隊を徴集すること(を決め)、 *iisque, qui per [[wikt:en:aetas#Latin|aetatem]] in armis esse non poterant, **年齢のゆえに武装することができなかった者たちを *in silvam [[wikt:en:Arduenna#Latin|Arduennam]] [[wikt:en:abditus#Latin|abditis]], **[[w:アルデンヌ|アルドゥエンナ]]の森に隠して、 *quae ingenti magnitudine **──それ<span style="color:#009900;">〔森〕</span>はたいへん広大で、 *per medios fines [[wikt:en:Treveri#Latin|Treverorum]] **トレーウェリー族領の中央を介し、 *a flumine [[wikt:en:Rhenus#Latin|Rheno]] ad initium [[wikt:en:Remi#Etymology_1_2|Remorum]] pertinet, **レーヌス川からレーミー族領の始まりまで及んでいるが、── **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:レーミー族は、[[ガリア戦記_第2巻#3節|第2巻3節]]から言及されている、<br>    カエサルの有力な同盟部族。) *bellum parare instituit. **戦争を準備することを、決断した。 :  *Sed [[wikt:en:posteaquam|postea quam]] [[wikt:en:nonnulli#Latin|non nulli]] principes ex ea civitate **けれども、その部族国家のうちの幾人かの領袖たちが<span style="color:#009900;">(以下の行動を)</span>した後で、 *et <u>familiaritate</u> [[wikt:en:Cingetorix#Latin|Cingetorigis]] adducti **<span style="color:#009900;">(すなわち)</span>キンゲトリークスの懇意によっても動かされて、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、&alpha;系写本では [[wikt:en:familiaritas#Latin|familiaritate]] 「懇意、親交」だが、<br>         &beta;系写本では [[wikt:en:auctoritas#Latin|auctoritate]] 「名声、影響力」となっている。)</span> *et adventu nostri exercitus [[wikt:en:perterritus#Latin|perterriti]], **我らの軍隊<span style="color:#009900;">〔ローマ軍〕</span>の到来によっても脅かされて、 *ad Caesarem venerunt **<span style="color:#009900;">(領袖たちが)</span>カエサルのもとへやって来て、 *et de suis [[wikt:en:privatim#Latin|privatim]] rebus ab eo [[wikt:en:peto#Latin|petere]] coeperunt, **自分らの事情について、個人的に彼<span style="color:#009900;">〔カエサル〕</span>に嘆願し始めた後で、 *[[wikt:en:quoniam#Latin|quoniam]] civitati [[wikt:en:consulo#Latin|consulere]] non posse&lt;n&gt;t, **部族国家の世話をすることができないので、 *[[wikt:en:veritus#Latin|veritus]] ne ab omnibus [[wikt:en:desero#Latin|desereretur]] [[wikt:en:Indutiomarus#Latin|Indutiomarus]] **インドゥーティオマールスは皆から見捨てられないかと恐れて、 *legatos ad Caesarem mittit: **使節たちをカエサルのもとへ派遣する。<span style="color:#009900;">(使節は以下のように告げた。)</span> <br> ;   インドゥーティオマールスの弁明 *sese [[wikt:en:idcirco#Latin|idcirco]] ab suis [[wikt:en:discedo#Latin|discedere]] atque ad eum venire [[wikt:en:nolo#Latin|noluisse]], **<span style="color:#009900;">『 </span>自分<span style="color:#009900;">〔インドゥーティオマールス〕</span>が同胞から離れて彼<span style="color:#009900;">〔カエサル〕</span>のもとへ来ることを欲しなかった理由は、 *quo facilius civitatem in officio [[wikt:en:contineo#Latin|contineret]], **そのことによってより容易に部族国家を忠節に保つためであり、 *ne omnis [[wikt:en:nobilitas#Latin|nobilitatis]] [[wikt:en:discessus#Noun|discessu]] [[wikt:en:plebs#Latin|plebs]] propter [[wikt:en:imprudentia#Latin|imprudentiam]] [[wikt:en:labor#Etymology_2_2|laberetur]]. **すべての貴族が離れることにより、民衆が無分別のゆえにつまづくことがないようにである。 *Itaque esse civitatem in sua [[wikt:en:potestas#Latin|potestate]], **このように、部族国家を自分の支配下においているから、 *seque, si Caesar [[wikt:en:permitto#Latin|permitteret]], ad eum in castra venturum, **もしカエサルが許すならば、自分は陣営にいる彼<span style="color:#009900;">〔カエサル〕</span>のもとへ来るだろうし、 *suas [[wikt:en:civitas#Latin|civitatis]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:fortuna#Latin|fortunas]] eius [[wikt:en:fides#Latin|fidei]] [[wikt:en:permitto#Latin|permissurum]]. **自らと部族国家の命運を彼<span style="color:#009900;">〔カエサル〕</span>の庇護に委ねるだろう。<span style="color:#009900;">』</span> <!-- <span style="color:#009900;"></span> **:<span style="color:#009900;">(訳注: **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注: --> ===4節=== *<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/4節]] {{進捗|00%|2023-08-10}}</span> '''カエサルとインドゥーティオマールス''' *Caesar, **カエサルは、 *<u>etsi</u> intellegebat, qua de causa ea dicerentur quaeque eum res ab [[wikt:en:institutus#Latin|instituto]] consilio [[wikt:en:deterreo#Latin|deterreret]], **(インドゥーティオマールスにより)いかなる理由でそのことが語られたのか、<br> いかなる事情が彼を策定した計画から遠ざけたのかを、理解していたけれども、 *<u>tamen</u>, ne [[wikt:en:aestas#Latin|aestatem]] in [[wikt:en:Treveri#Latin|Treveris]] [[wikt:en:consumo#Latin|consumere]] [[wikt:en:cogo#Latin|cogeretur]] **それでもなお、夏季をトレーウェリー族のところで費やすことを強いられないように、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:etsi#Latin|etsi]] ~, [[wikt:en:tamen#Latin|tamen]] ・・・「~としても、それでもなお・・・」)</span> *omnibus <u>ad [[wikt:en:britannicus#Latin|Britannicum]] bellum rebus</u> [[wikt:en:comparatus#Latin|comparatis]], **<span style="color:#009900;"></span>(その理由は)万事を[[w:ブリトン|ブリタンニア人]]との戦争のために準備していたからであるが、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:&alpha;系写本では、下線部が ad Britannicum bellum <u>rebus</u> となっているが、<br>    &beta;系写本では、語順が <u>rebus</u> ad Britannicum bellum となっている。)</span> *[[wikt:en:Indutiomarus#Latin|Indutiomarum]] ad se cum CC([[wikt:en:ducenti#Etymology_1|ducentis]]) obsidibus venire iussit. **インドゥーティオマールスに、自分<span style="color:#009900;"></span>〔カエサル〕のもとへ200人の人質とともに来ることを命じた。 :  *His [[wikt:en:adductus#Latin|adductis]], **これらの者たち<span style="color:#009900;"></span>〔人質〕が連れて来られ、 *in iis filio [[wikt:en:propinquus#Latin|propinquis]]<nowiki>que</nowiki> eius omnibus, quos nominatim [[wikt:en:evoco#Latin|evocaverat]], **その中には<span style="color:#009900;"></span>(カエサルが)指名して呼び出していたところの<br>彼<span style="color:#009900;"></span>〔インドゥーティオマールス〕の息子やすべての近親者たちがいたのだが、 *[[wikt:en:consolatus#Latin|consolatus]] [[wikt:en:Indutiomarus#Latin|Indutiomarum]] hortatusque est, uti in officio [[wikt:en:maneo#Latin|maneret]]; **(カエサルは)インドゥーティオマールスをなだめて、務め〔忠節〕に留まるように励ました。 *<u>nihilo tamen setius</u> principibus [[wikt:en:Treveri#Latin|Treverorum]] ad se [[wikt:en:convocatus#Latin|convocatis]] **それでもやはり、トレーウェリー族の領袖たちを自分<span style="color:#009900;"></span>〔カエサル〕のもとへ召し出して、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:nihilo#Etymology_2|nihilo]] ([[wikt:en:tamen#Latin|tamen]]) [[wikt:en:setius#Latin|setius]]「それでもなお、それでもやはり」)</span> *hos [[wikt:en:singillatim#Latin|singillatim]] [[wikt:en:Cingetorix#Latin|Cingetorigi]] [[wikt:en:concilio#Latin|conciliavit]], **彼らを個別にキンゲトリークスと和解するように取り持った。 *quod <u>cum</u> [[wikt:en:meritum#Latin|merito]] eius a se fieri intellegebat, **──というのは、彼〔キンゲトリークス〕の功績に自分<span style="color:#009900;"></span>〔カエサル〕によって報いられることがふさわしいと考えていたとともに、 *<u>tum</u> magni [[wikt:en:intersum#Latin|interesse]] [[wikt:en:arbitror#Latin|arbitrabatur]] eius [[wikt:en:auctoritas#Latin|auctoritatem]] inter suos quam plurimum valere, **彼の声望が同胞の間でできるだけ大きな力を持つことが、大いに重要であると<span style="color:#009900;"></span>(カエサルは)思っていたし、 *cuius tam [[wikt:en:egregius#Latin|egregiam]] in se [[wikt:en:voluntas#Latin|voluntatem]] [[wikt:en:perspicio#Latin|perspexisset]]. **かの者〔キンゲトリークス〕の自分へのそれほど抜群の好意を(カエサルは)見通していたのだ。── :  *Id <u>tulit factum graviter</u> [[wikt:en:Indutiomarus#Latin|Indutiomarus]], **その行為に激しく立腹したインドゥーティオマールスは、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:&alpha;系写本では、下線部が tulit factum graviter となっているが、<br>    &beta;系写本では、語順が factum graviter tulit となっている。)</span> *suam [[wikt:en:gratia#Latin|gratiam]] inter suos [[wikt:en:minuo#Latin|minui]], **自らの影響力が同胞の間で弱められて、 *et, qui iam ante [[wikt:en:inimicus#Adjective|inimico]] in nos animo fuisset, **すでに以前から我ら〔ローマ人〕に<ruby><rb>敵愾</rb><rp>(</rp><rt>てきがい</rt><rp>)</rp></ruby>心を抱いていたが、 *multo gravius hoc [[wikt:en:dolor#Latin|dolore]] [[wikt:en:exarsit|exarsit]]. **このことに対する憤りから、さらに激しく<ruby><rb>激昂</rb><rp>(</rp><rt>げきこう</rt><rp>)</rp></ruby>した。 <!-- <span style="color:#009900;"></span> **:<span style="color:#009900;">(訳注: **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注: --> ===5節=== *<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/5節]] {{進捗|00%|2023-08-13}}</span> '''イティウス港へ到着、ガッリア領袖たちの召集''' *His rebus [[wikt:en:constitutus#Participle|constitutis]] **これらの事柄が片付くと、 *Caesar ad portum [[wikt:en:Itius#Latin|Itium]] cum legionibus pervenit. **カエサルは諸軍団とともにイティウス港へ到着する。 {| class="wikitable" |- | style="vertical-align:top; text-align:left; width:25em;" |[[画像:Panorama Wissant.jpg|thumb|right|600px|イティウス港の所在地として、ブーローニュとともに有力な候補であるウィサント([[w:en:Wissant|Wissant]])]] |} *Ibi cognoscit **そこで(カエサルが)知ったのは、 *LX([[wikt:en:sexaginta#Latin|sexaginta]]) naves, quae in [[wikt:en:Meldi#Latin|Meldis]] factae erant, **メルディー族のところで造られていた60隻の船団が、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:メルディー族とは、現在の北仏[[w:マルヌ川 (フランス)|マルヌ川]]沿岸の[[w:モー (フランス)|モー]]周辺に居たとされる部族。<br>    大西洋岸に出るには、マルヌ川から[[w:セーヌ川|セーヌ川]]を下る必要がある。)</span> *tempestate [[wikt:en:reiectus#Latin|reiectas]] [[wikt:en:cursus#Noun_4|cursum]] tenere non potuisse **嵐で押し戻されて、航路を保つことができなくて、 *atque [[wikt:en:eodem#Adverb|eodem]], [[wikt:en:unde#Latin|unde]] erant profectae, [[wikt:en:reverto#Latin|revertisse]]; **そこから出発していたのと同じところに戻ったということであった。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:イティウス港にたどり着けず、上流へ帰って行ったということ。)</span> *reliquas [[wikt:en:paratus#Participle|paratas]] ad navigandum atque omnibus rebus [[wikt:en:instructus#Latin|instructas]] invenit. **残り(の船)は、航行するための用意ができていて、準備万端を整えていたのを見出した。 :  *Eodem equitatus totius Galliae [[wikt:en:convenio#Latin|convenit]], numero milium quattuor, **同じところに、全[[w:ガリア|ガッリア]]の総数4000の[[w:騎兵|騎兵隊]]が集まって来て、 *principesque ex omnibus civitatibus; **すべての部族の領袖たちも(集まって来た)。 *ex quibus [[wikt:en:perpaucus#Latin|perpaucos]], quorum in se [[wikt:en:fides#Latin|fidem]] [[wikt:en:perspicio#Latin|perspexerat]], relinquere in Gallia, **それらのうち、自分〔カエサル〕への忠節を見通していた非常にわずかな者たちをガッリアに残すこと、 *reliquos obsidum loco secum ducere [[wikt:en:decerno#Latin|decreverat]], **ほかの者たちを人質の立場として、自分とともに(ブリタンニアに)連れて行くこと、を決定した。 *quod, cum ipse [[wikt:en:absum#Latin|abesset]], [[wikt:en:motus#Noun_2|motum]] Galliae [[wikt:en:vereor#Latin|verebatur]]. **というのは、自身〔カエサル〕が(大陸を)離れたときの、ガッリアの動乱を恐れていたからである。 <!-- <span style="color:#009900;"></span> **:<span style="color:#009900;">(訳注: **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注: --> ===6節=== *<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/6節]] {{進捗|00%|2023-08-14}}</span> '''ハエドゥイー族のドゥムノリークス''' *Erat una cum [[wikt:en:ceterus#Latin|ceteris]] [[wikt:en:Dumnorix#Latin|Dumnorix]] [[wikt:en:Aeduus#Latin|Haeduus]], **他の者<span style="color:#009900;">〔ガッリアの領袖〕</span>たちと一緒に、[[w:ハエドゥイ族|ハエドゥイー族]]のドゥムノリークスがいた。 *de quo ante ab nobis dictum est. **この者〔ドゥムノリークス〕については以前に述べた。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[ガリア戦記_第1巻#3節|第1巻3節]]以下で述べられた。<br>    ドゥムノリークス [[w:la:Dumnorix|Dumnorix]] は反ローマ派の人物だったが、<br>    カエサルの盟友である兄ディーウィキアークス [[w:la:Diviciacus|Diviciacus]] に<ruby><rb>庇</rb><rp>(</rp><rt>かば</rt><rp>)</rp></ruby>われていた。<br>    だが、その後の言及がないことからこの兄は亡くなったと考えられている。)</span> *Hunc [[wikt:en:secum#Latin|secum]] habere [[wikt:en:in_primis#Latin|in primis]] [[wikt:en:constituo#Latin|constituerat]], **(カエサルは)とりわけ彼を自分と一緒に留めておくことを決めていた。 *quod eum [[wikt:en:cupidus#Latin|cupidum]] rerum novarum, **──というのは、彼〔ドゥムノリークス〕は新奇な事<span style="color:#009900;"></span>〔政変〕を熱望し、 *cupidum [[wikt:en:imperium#Latin|imperii]], magni animi, **覇権を熱望しており、高慢な心で、 *magnae inter [[wikt:en:Gallus#Noun|Gallos]] [[wikt:en:auctoritas#Latin|auctoritatis]] cognoverat. **ガッリア人の間で人望が大きいことを、<span style="color:#009900;"></span>(カエサルは)知っていたからだ──。 :  *[[wikt:en:accedo#Latin|Accedebat]] [[wikt:en:huc#Latin|huc]], **それに付け加えて、 *quod in [[wikt:en:concilium#Latin|concilio]] Haeduorum Dumnorix dixerat sibi a Caesare [[wikt:en:regnum#Latin|regnum]] civitatis deferri; **ハエドゥイー族の会合において、ドゥムノリークスは、カエサルにより自分に部族国家の支配権を譲られていると言っていた。 *quod [[wikt:en:dictum#Latin|dictum]] Haedui graviter [[wikt:en:fero#Latin|ferebant]], **かかる発言に、ハエドゥイー族の者たちは激しく立腹していたが、 *neque [[wikt:en:recuso#Latin|recusandi]] aut [[wikt:en:deprecor#Latin|deprecandi]] causa legatos ad Caesarem mittere [[wikt:en:audeo#Latin|audebant]]. **(そのことを)拒絶するため、または哀願するために、<br> 使節たちをカエサルのもとへ派遣することをあえてしなかった。 :  *Id [[wikt:en:factum#Latin|factum]] ex suis [[wikt:en:hospes#Latin|hospitibus]] Caesar [[wikt:en:cognosco#Latin|cognoverat]]. **その事実を、賓客たちからカエサルは知った。 :  ;   ドゥムノリークスが、大陸に残留させてくれるように、カエサルに嘆願する *Ille omnibus primo [[wikt:en:prex#Latin|precibus]] **彼<span style="color:#009900;"></span>〔ドゥムノリークス〕は、当初はあらゆる嘆願により *petere [[wikt:en:contendo#Latin|contendit]], [[wikt:en:ut#Conjunction|ut]] in Gallia [[wikt:en:relinquo#Latin|relinqueretur]], **ガッリアに残してくれるよう求めることに努めた。 *<u>partim</u> quod [[wikt:en:insuetus#Latin|insuetus]] [[wikt:en:navigo#Latin|navigandi]] [[wikt:en:mare#Latin|mare]] timeret, **(その嘆願の中には)航行することに慣れていないので海を恐れる、というものもあれば、 *<u>partim</u> quod [[wikt:en:religio#Latin|religionibus]] [[wikt:en:impedio#Latin|impediri]] sese diceret. **自分は信仰的義務により(航海を)妨げられていると述べている、というものもあった。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:partim#Latin|partim]] ~ partim ・・・ 「~もあれば、・・・もある(''some ~ others'')」)</span> :  ;   ドゥムノリークスが、カエサルの計略を示して、領袖たちを鼓舞する *[[wikt:en:posteaquam|Postea quam]] id [[wikt:en:obstinate#Etymology_1|obstinate]] sibi [[wikt:en:nego#Latin|negari]] vidit, omni spe [[wikt:en:impetrandi|impetrandi]] [[wikt:en:ademptus#Latin|adempta]], **それ<span style="color:#009900;">〔残留することの嘆願〕</span>が自分に対して断固として拒否されるの見て、<br>達成することのすべての期待を否認された後で、 *principes Galliae [[wikt:en:sollicito#Latin|sollicitare]], **(ドゥムノリークスは)ガッリアの領袖たちをそそのかし、 *[[wikt:en:sevoco#Latin|sevocare]] singulos **一人ずつを別々に呼び出し、 *[[wikt:en:hortor#Latin|hortari]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:coepi#Latin|coepit]], [[wikt:en:uti#Etymology_1|uti]] in [[wikt:en:continens#Noun|continenti]] [[wikt:en:remaneo#Latin|remanerent]]; **大陸に残留するように鼓舞し始めて、 *[[wikt:en:metus#Latin|metu]] [[wikt:en:territo#Latin|territare]]: **<span style="color:#009900;">(以下に挙げられる)</span>恐れによって戦慄させ(始め)た。 :  *non sine causa fieri, ut Gallia omni [[wikt:en:nobilitas#Latin|nobilitate]] [[wikt:en:spolio#Latin|spoliaretur]]; **理由もなしに、ガッリアがすべての高貴な者たちを奪われるようにはなされない。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:カエサルがガッリアの全貴族を渡海させようとすることには、明確な理由があるのだ。)</span> *id esse [[wikt:en:consilium#Latin|consilium]] Caesaris, **以下のことが、カエサルの計略である。 *ut, quos in [[wikt:en:conspectus#Noun_2|conspectu]] Galliae [[wikt:en:interficio#Latin|interficere]] [[wikt:en:vereor#Latin|vereretur]], hos omnes in [[wikt:en:Britannia#Latin|Britanniam]] [[wikt:en:traductus#Latin|traductos]] [[wikt:en:neco#Latin|necaret]]; **ガッリア(の群衆)の視ている中で殺害することがはばかられる者たちを、<br>彼ら皆を[[w:ブリタンニア|ブリタンニア]]に渡らせてから(カエサルが秘かに)殺すのである。 *[[wikt:en:fides#Latin|fidem]] reliquis [[wikt:en:interpono#Latin|interponere]], [[wikt:en:ius_iurandum#Latin|ius iurandum]] [[wikt:en:posco#Latin|poscere]], **ほかの者たちに信義を誓い、(以下のことを)誓約することを要求する。 *ut, quod esse ex [[wikt:en:usus#Latin|usu]] Galliae [[wikt:en:intellego#Latin|intellexissent]], communi [[wikt:en:consilium#Latin|consilio]] [[wikt:en:administro#Latin|administrarent]]. **ガッリアに有益であると理解したことを、共通の考えによって処置するように(と誓約するように)。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:カエサルの命令ではなく、ガッリアのために領袖たちが共同して対処するように。)</span> :  *Haec a compluribus ad Caesarem [[wikt:en:defero#Latin|deferebantur]]. **このことは、多くの者たちによって、カエサルのもとへ報知されていた。 <!-- <span style="color:#009900;"></span> **:<span style="color:#009900;">(訳注: **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注: --> ===7節=== *<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/7節]] {{進捗|00%|2023-08-15}}</span> '''ドゥムノリークスの最期''' *Qua re [[wikt:en:cognitus#Latin|cognita]] Caesar, **かかる事態を知ると、カエサルは、 *quod tantum civitati [[w:la:Haedui|Haeduae]] [[wikt:en:dignitas#Latin|dignitatis]] [[wikt:en:tribuo#Latin|tribuerat]], **──これほどにも[[w:ハエドゥイ族|ハエドゥイー族]]の部族国家に敬意を払っていたので、── *[[wikt:en:coercendus#Latin|coercendum]] atque [[wikt:en:deterrendus#Latin|deterrendum]], [[wikt:en:quicumque#Latin|quibuscumque]] rebus posset, [[wikt:en:Dumnorix#Latin|Dumnorigem]] [[wikt:en:statuo#Latin|statuebat]]; **できるかぎりのあらゆる事でドゥムノリークスを抑止するべきであり、制止するべきであると決意していた。 *quod longius eius [[wikt:en:amentia#Latin|amentiam]] [[wikt:en:progredior#Latin|progredi]] videbat, **──というのは、彼の軽挙妄動がはるかに進行していると見ていたので、── **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:領袖たちとともにカエサルの隷属下から出奔しようという企てのことか。)</span> *[[wikt:en:prospiciendus#Latin|prospiciendum]], ne [[wikt:en:aliquis#Latin|quid]] sibi ac [[wikt:la:res_publica|rei publicae]] [[wikt:en:noceo#Latin|nocere]] posset. **(カエサル)自身と公儀<span style="color:#009900;">〔ローマ国家〕</span>にとって害に成り得ないように、用心するべきである(と見ていた)。 :  *Itaque dies circiter XXV([[wikt:la:viginti quinque|viginti quinque]]) in eo loco [[wikt:en:commoratus#Latin|commoratus]], **そのようにして、およそ25日にわたってその地に滞留して、 *quod <u>c[h]orus</u> [[wikt:en:ventus#Etymology_1|ventus]] [[wikt:en:navigatio#Latin|navigationem]] [[wikt:en:impedio#Latin|impediebat]], **──というのは、<u>北西風</u>が航海を妨げており、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、写本では [[wikt:en:chorus#Latin|chorus]] であるが、<br>    [[wikt:en:corus#Latin|cōrus]] または [[wikt:en:caurus#Latin|caurus]] と修正提案され、「北西風」と解釈される。)</span> *qui magnam partem omnis temporis in iis locis [[wikt:en:flo#Latin|flare]] [[wikt:en:consuesco#Latin|consuevit]], **それ<span style="color:#009900;">〔北西風〕</span>はあらゆる時季の大半にわたってこの地に吹くのが常であるからであるが、── *dabat [[wikt:en:opera#Latin|operam]], ut in [[wikt:en:officium#Latin|officio]] Dumnorigem [[wikt:en:contineo#Latin|contineret]], **(カエサルは)ドゥムノリークスを義務<span style="color:#009900;">〔忠義〕</span>に留めるように尽力していた。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:カエサルは、ローマ人でない者がローマ人に隷属するのは当然と考えていた。)</span> *nihilo tamen [[wikt:en:setius#Latin|setius]] omnia eius [[wikt:en:consilium#Latin|consilia]] cognosceret; **それでもやはり、彼<span style="color:#009900;">〔ドゥムノリークス〕</span>のあらゆる策略を知ろうとした。 *[[wikt:en:tandem#Latin|tandem]] [[wikt:en:idoneus#Latin|idoneam]] [[wikt:en:nactus#Latin|nactus]] [[wikt:en:tempestas#Latin|tempestatem]] milites equitesque [[wikt:en:conscendo#Latin|conscendere]] in naves iubet. **ついに、適切な天候を手に入れて、兵士<span style="color:#009900;">〔歩兵〕</span>たちと騎兵たちに船に乗船することを命じた。 :  ;   ドゥムノリークスが騎兵隊とともに逐電 *At omnium [[wikt:en:impeditus#Latin|impeditis]] animis **一方、皆が(乗船に)忙殺されているので、 *[[wikt:en:Dumnorix#Latin|Dumnorix]] cum equitibus Haeduorum a castris [[wikt:en:insciens#Latin|insciente]] Caesare domum [[wikt:en:discedo#Latin|discedere]] [[wikt:en:coepi#Latin|coepit]]. **ドゥムノリークスはハエドゥイー族の騎兵たちとともに、カエサルが知らぬうちに、陣営から郷里に立ち去り始めた。 :  ;   カエサルがドゥムノリークスを追捕、殺害させる *Qua re [[wikt:en:nuntiatus#Latin|nuntiata]] **かかる事態が報告されると、 *Caesar, [[wikt:en:intermissus#Latin|intermissa]] [[wikt:en:profectio#Latin|profectione]] atque omnibus rebus [[wikt:en:postpositus#Latin|postpositis]], **カエサルは<span style="color:#009900;">(ブリタンニアへの)</span>出発を中断し、かつ<span style="color:#009900;">(遠征の)</span>すべての事を後回しにして、 *magnam partem equitatus ad eum [[wikt:en:insequendus#Latin|insequendum]] mittit [[wikt:en:retraho#Latin|retrahi]]<nowiki>que</nowiki> imperat; **騎兵隊の大部分を、彼<span style="color:#009900;">〔ドゥムノリークス〕</span>を追捕するために派遣して、連れ戻すことを命令する。 *si [[wikt:en:vis#Latin|vim]] faciat neque [[wikt:en:pareo#Latin|pareat]], [[wikt:en:interficio#Latin|interfici]] iubet, **もし、力ずくでも服従しないのであれば、殺害するように命じる。 *nihil hunc se [[wikt:en:absens#Latin|absente]] pro [[wikt:en:sanus#Latin|sano]] [[wikt:en:facturus#Latin|facturum]] [[wikt:en:arbitratus#Participle|arbitratus]], qui [[wikt:en:praesens#Latin|praesentis]] imperium [[wikt:en:neglego#Latin|neglexisset]]. **(カエサル自身が)居合わせても、その命令をないがしろにしていたほどの者であるから、<br>彼<span style="color:#009900;">〔ドゥムノリークス〕</span>は自分<span style="color:#009900;">〔カエサル〕</span>が不在なら、何ら健全な者としてふるまわないだろうと思ったのだ。 :  *Ille enim [[wikt:en:revocatus#Latin|revocatus]] [[wikt:en:resisto#Latin|resistere]] **まさしく、<ruby><rb>彼奴</rb><rp>(</rp><rt>きゃつ</rt><rp>)</rp></ruby><span style="color:#009900;">〔ドゥムノリークス〕</span>は、呼び戻されても抵抗し(始め)、 *ac se [[wikt:en:manus#Latin|manu]] [[wikt:en:defendo#Latin|defendere]] suorumque fidem [[wikt:en:imploro#Latin|implorare]] coepit, **手ずから身を守り、同胞の者たちの信義に懇願し始めた。 *saepe [[wikt:en:clamitans#Latin|clamitans]] [[wikt:en:liber#Adjective|liberum]] se liberaeque esse [[wikt:en:civitas#Latin|civitatis]]. **たびたび「'''我は自由であり、自由な部族に属する者である'''」と叫びながら。 :  *Illi, ut [[wikt:en:impero#Latin|erat imperatum]], [[wikt:en:circumsisto#Latin|circumsistunt]] hominem atque [[wikt:en:interficio#Latin|interficiunt]]: **あの者ら<span style="color:#009900;">〔ガッリア人の騎兵たち〕</span>は、命令されていたように、その男を取り囲んで、殺害した。 *at equites Haedui ad Caesarem omnes [[wikt:en:revertor#Latin|revertuntur]]. **他方で、ハエドゥイー族の騎兵たちは、カエサルのもとへ全員が帰還した。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:だが結局、ハエドゥイー族もカエサルから離反することになる。)</span> **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:カエサルは、この節ではふれていないが、<br>    有力部族ハエドゥイーの大立者ドゥムノリークスが叫んだ事と無惨な最期は、<br>    ガッリア全土に知れ渡ったことであろう。<br>    彼と誓約を交わした部族の領袖たちがブリタンニアから帰還すると、<br>    カエサル自身が危惧していたように、ガッリア各地で暴動や大反乱が多発し、<br>    これは2年後のウェルキンゲトリークスの大反乱につながったと考えられる。)</span> <!-- <span style="color:#009900;"></span> **:<span style="color:#009900;">(訳注: **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注: --> ==第二次ブリタンニア遠征== {| class="wikitable" |- | style="width:15em;" |[[画像:South.Britain.Late.Iron.Age.jpg|thumb|left|350px|鉄器時代後期のブリテン島南部の部族の配置。]] | style="width:15em;" |[[画像:Campagne Bretagne -54.png|thumb|left|300px|カエサルの第二次ブリタンニア遠征の経路。]] |} {{Commons|Category:Caesar's invasions of Britain|Caesar's invasions of Britain}} :'''関連記事:''' ''[[w:en:Julius Caesar's invasions of Britain|Julius Caesar's invasions of Britain]]''(ユリウス・カエサルのブリタンニア侵攻、英語) <div style="background-color:#dcdcdc;"> :<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;"> [[w:ローマによるブリタンニア侵攻 (紀元前55年-紀元前54年)#紀元前54年(第二次のブリタンニア侵攻)|カエサルの第二次ブリタンニア侵攻]]は、[[w:紀元前54年|紀元前54年]]の、当時のローマの暦で8~9月頃に遂行された。<br>カエサルや幕僚たちは、遠征先のブリタンニアからローマの知人などに手紙を出しており、なかでも<br>カエサルの副官[[w:クィントゥス・トゥッリウス・キケロ|クィーントゥス・キケロー]]が雄弁家の兄[[w:マルクス・トゥッリウス・キケロ|マールクス・キケロー]]と交わした往復書簡<ref>兄[[w:マルクス・トゥッリウス・キケロ|マールクス・キケロー]]から弟[[w:クィントゥス・トゥッリウス・キケロ|クィーントゥス・キケロー]]への手紙の記事は、ラテン語版 [[s:la:Epistulae (Marcus Tullius Cicero)/Epistulae ad Quintum Fratrem|Epistulae ad Quintum Fratrem]](誤植あり)、英語訳は ''[[w:en:Epistulae ad Quintum Fratrem|Epistulae ad Quintum Fratrem]]''(ウィキペディア英語版)''[[s:en:Letters to his brother Quintus]]''(ウィキソース英語版)などがある。</ref>が<br>伝存するため、9月下旬にはローマ軍が大陸へ向けて帰還しつつあったことが明確になっている。<br>キケロー兄は、ブリタンニアで金・銀などの豊富な鉱物資源が見つかることを当てにしていたが、<br>奴隷(捕虜)ぐらいしか目ぼしい戦利品がないことに失望を表明している。 </div> ===8節=== *<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/8節]] {{進捗|00%|2023-08-16}}</span> '''ブリタンニアへ再び渡海''' [[画像:Dover AST 2001073 lrg.jpg|thumb|right|200px|[[w:ドーバー海峡|ドーバー海峡]]の衛星写真。右がガッリア(フランス)、左がカエサルらが上陸した[[w:ドーバー (イギリス)|ドーバー]]付近の海岸。]] [[画像:France manche vue dover.JPG|thumb|300px|大陸側から見えるブリタンニアの海岸]] *His rebus gestis, **これらの事が遂げられると、 *[[wikt:en:Labienus#Latin|Labieno]] in [[wikt:en:continens#Noun|continenti]] cum tribus(III) legionibus et [[wikt:en:eques#Latin|equitum]] milibus duobus [[wikt:en:relictus#Latin|relicto]], **<span style="color:#009900;"></span>(カエサルは)[[w:ティトゥス・ラビエヌス|ラビエーヌス]]を、3個[[w:ローマ軍団|軍団]]および[[w:騎兵|騎兵]]2000騎とともに、大陸に残して、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:当時、カエサルは8個軍団(そのうち軍団兵は約4万)を保有しており、<br>    前年の遠征では2個(約1万)を渡海させ、6個(約3万)を大陸に残したが、<br>    今回は5個(約2万5千)を渡海させ、3個(約1万5千)を大陸に残す。<br>    大陸側におけるローマの兵力はかなり手薄なものになり、<br>    本巻の後半でガッリアの大動乱を引き起こすことになる。) *ut [[wikt:en:portus#Latin|portus]] [[wikt:en:tueor#Latin|tueretur]] et re frumentaria [[wikt:en:provideo#Latin|provideret]], **<span style="color:#009900;"></span>(イティウス)港を守って、糧食を調達するように、 *quaeque in Gallia [[wikt:en:gero#Latin|gererentur]] cognosceret, **かつ、[[w:ガリア|ガッリア]]で行なわれていることを認識して、 *consiliumque pro tempore et pro re caperet, **時機と状況に応じて協議するようにと<span style="color:#009900;"></span>(命じた)。 *ipse cum quinque(V) legionibus **<span style="color:#009900;"></span>(カエサル)自身は5個軍団、 *et pari numero equitum, quem in continenti [[wikt:en:relinquo#Latin|reliquerat]], **および大陸に残していたものと同数の騎兵とともに、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[#5節|5節]]では、全ガッリアから4000騎が集まったと述べられた。<br>    上述のように2000騎を大陸に残し、同数の2000騎を島に随行させた。)</span> *ad [[wikt:en:sol#Latin|solis]] [[wikt:en:occasus#Latin|occasum]] naves [[wikt:en:solvo#Latin|solvit]] **日没頃に船団を出帆させる。 *et [[wikt:en:lenis#Latin|leni]] [[wikt:la:Africus|Africo]] [[wikt:en:provectus#Latin|provectus]], **おだやかなアフリカ風<span style="color:#009900;">〔西南風〕</span>で前進したが、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:西南風は [[wikt:la:Africus|Africus, ī]] と呼ばれたが、<br>    これは[[w:カルタゴ|カルタゴ]]の故地である[[w:アフリカ属州|アフリカ地方]]が<br>    イタリアから見て西南方向にあるためだと思われる。)</span> *media circiter nocte [[wikt:en:ventus#Etymology_1|vento]] [[wikt:en:intermissus#Latin|intermisso]], **真夜中あたりに風がやむと、 *[[wikt:en:cursus#Noun_4|cursum]] non [[wikt:en:teneo#Latin|tenuit]], **航路を保てず、 *et longius [[wikt:en:delatus#Latin|delatus]] [[wikt:en:aestus#Latin|aestu]] **より遠くへ[[w:潮汐|潮]]により運ばれて、 *[[wikt:en:ortus#Participle|orta]] [[wikt:en:lux#Latin|luce]] sub [[wikt:en:sinistra#Noun_3|sinistra]] Britanniam [[wikt:en:relictus#Latin|relictam]] [[wikt:en:conspicio#Latin|conspexit]]. **(日の)光が昇ると、左の方へ[[w:ブリタンニア|ブリタンニア]]を置き去りにしているのに気付いた。 :  *Tum rursus [[wikt:en:aestus#Latin|aestus]] [[wikt:en:commutatio#Latin|commutationem]] [[wikt:en:secutus#Latin|secutus]] [[wikt:en:remus#Latin|remis]] contendit, **それから再び潮の変動に従って、櫂によって(ブリタンニア島を)目指す。 *ut eam partem [[wikt:en:insula#Latin|insulae]] caperet, qua [[wikt:en:optimus|optimum]] esse [[wikt:en:egressus#Latin|egressum]] superiore [[wikt:en:aestas#Latin|aestate]] cognoverat. **その島のうち、下船するのに最も良いと前の夏に知っていた、ところの方面を捉えるように。 :  *Qua in re [[wikt:en:admodum|admodum]] fuit militum [[wikt:en:virtus#Latin|virtus]] [[wikt:en:laudandus#Latin|laudanda]], **その事において、兵士たちの果敢さは大いに賞賛されるべきものであった。 *qui [[wikt:en:vectorius#Latin|vectoriis]] gravibusque [[wikt:en:navigium#Latin|navigiis]] **その者ら<span style="color:#009900;">〔兵士たち〕</span>は、輸送用かつ重い船舶で、 *non [[wikt:en:intermissus#Latin|intermisso]] [[wikt:en:remigandi#Verb|remigandi]] labore **<span style="color:#009900;"></span>(櫂を)漕ぐことの労苦を中断せずに、 *longarum navium [[wikt:en:cursus#Noun_4|cursum]] [[wikt:en:adaequo#Latin|adaequarunt]]. **長船<span style="color:#009900;">〔軍船〕</span>の航行速度に匹敵したのだ。 :  ;   ローマ大艦隊の到着を見て、ブリタンニア勢が姿を隠す *Accessum est ad Britanniam omnibus navibus [[wikt:en:meridianus#Latin|meridiano]] fere tempore, **ブリタンニアへは、すべての船がほぼ正午の時に到着したが、 *neque in eo loco hostis est visus; **その場所に敵<span style="color:#009900;"></span>(の姿)は見られなかった。 *sed, ut postea Caesar ex [[wikt:en:captivus#Noun|captivis]] cognovit, **けれども、後にカエサルが捕虜から知ったように、 *cum magnae [[wikt:en:manus#Noun_4|manus]] [[wikt:en:eo#Adverb|eo]] [[wikt:en:convenio#Latin|convenissent]], **(ブリタンニア人の)かなりの手勢がそこに集結していたけれども、 *multitudine navium [[wikt:en:perterritus#Latin|perterritae]], **<span style="color:#009900;"></span>(ローマ軍の)船団の多さに畏怖させられており、 *quae cum [[wikt:en:annotinus#Latin|annotinis]] [[wikt:en:privatus#Adjective|privatis]]<nowiki>que</nowiki>, quas sui [[wikt:en:quisque#Latin|quisque]] [[wikt:en:commodum#Noun|commodi]] (causa) fecerat, **それら<span style="color:#009900;">〔船団〕</span>は、前年の(遠征の)ものや<br>おのおのが自分に利便性のために造らせていた私用のものを伴っていたが、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:causa#Postposition|causā]] は &beta;系写本の記述で、&alpha;系写本にはない。)</span> *amplius [[wikt:en:octingenti#Latin|octingentae]](DCCC) uno erant visae tempore, **800隻より多いものが、一時に眺められていたので、 *a [[wikt:en:litus#Latin|litore]] [[wikt:en:discedo#Latin|discesserant]] **(ブリタンニア勢は)海岸から立ち去って、 *ac se in superiora loca [[wikt:en:abdo#Latin|abdiderant]]. **より高い場所に身を隠していたのだった。 {| class="wikitable" |- | style="width:20em;" |[[画像:Albion's shore covered with men ready for battle.png|thumb|left|550px|ローマ人の大艦隊を見て断崖絶壁の上に身を隠したブリタンニア人たちの想像画<br>(A.S. Forrest画、1905年。H.E. Marshall: "Our Island Story" の挿絵)。]] |} <!-- <span style="color:#009900;"></span> **:<span style="color:#009900;">(訳注: **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注: --> ===9節=== *<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/9節]] {{進捗|00%|2023-08-17}}</span> '''ブリタンニア再上陸、敵の砦を夜襲''' :  ;   カエサルが、アートリウス率いる10個歩兵大隊と騎兵300騎に船団の守備を任せて、夜襲に出発 *Caesar, [[wikt:en:expositus#Latin|exposito]] exercitu et loco [[wikt:en:castra#Latin|castris]] [[wikt:en:idoneus#Latin|idoneo]] [[wikt:en:captus#Latin|capto]], **カエサルは、軍隊を(船から)上陸させて、[[w:カストラ|陣営]]に適切な場所を占領したが、 *ubi ex [[wikt:en:captivus#Noun|captivis]] [[wikt:en:cognosco#Latin|cognovit]], quo in loco hostium copiae [[wikt:en:consido#Latin|consedissent]], **敵<span style="color:#009900;">〔ブリタンニア人〕</span>の軍勢が陣取っている場所を捕虜たちから知るや否や、 *[[wikt:en:cohors#Latin|cohortibus]] [[wikt:en:decem#Latin|decem]] ad [[wikt:en:mare#Etymology_1_4|mare]] [[wikt:en:relictus#Latin|relictis]] et [[wikt:en:eques#Latin|equitibus]] [[wikt:en:trecenti#Latin|trecentis]], **[[w:コホルス|歩兵大隊]]10個と[[w:騎兵|騎兵]]300騎を海辺に残し、 *qui [[wikt:en:praesidium#Latin|praesidio]] navibus essent, **その者らが船団の守備隊となるようにして、 *de [[wikt:en:tertius#Latin|tertia]] [[wikt:en:vigilia#Latin|vigilia]] ad hostes [[wikt:en:contendo#Latin|contendit]], **(カエサル自らは)<u>第三夜警時</u>の頃に、敵の方へと急いだ。 **:<span style="color:#009900;">(訳注:第三夜警時は、真夜中を過ぎた頃「未明」。[[古代ローマの不定時法#夜警時|#夜警時]] を参照。)</span> *<u>eo</u> minus [[wikt:en:veritus#Latin|veritus]] navibus, **船団についてはあまり心配していなかったが、それは **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:eo#Etymology_3_2|eō]] ~ [[wikt:en:quod#Conjunction|quod]] ・・・「・・・であるので、それだけ~」)</span> *<u>quod</u> in [[wikt:en:litus#Latin|litore]] [[wikt:en:mollis#Latin|molli]] atque [[wikt:en:apertus#Latin|aperto]] [[wikt:en:deligatus#Latin|deligatas]] ad <u>ancoram</u> [[wikt:en:relinquo#Latin|relinquebat]], **軟らかく開けた海岸において[[w:錨|錨]]に固定して残しておいたためであり、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:&alpha;系写本では [[wikt:en:ancoram#Latin|ancoram]] (単数) だが、<br>    &beta;系写本では [[wikt:en:ancoras#Latin|ancorās]] (複数) となっている。)</span> {{Wikipedia|en:Quintus Atrius|''Quintus Atrius''(英語)}} *<u>et praesidio navibus</u> [[wikt:en:Quintus#Latin|Quintum]] [[wikt:en:Atrius#Latin|Atrium]] [[wikt:en:praeficio#Latin|praefecit]]. **かつ、船団の守備隊をクィーントゥス・アートリウスが指揮したからだ。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:&alpha;系写本では et praesidio navibus だが、<br>    &beta;系写本では et praesidio navibus<u>que</u> となっており、<br>    これにより&nbsp;&nbsp; <u>ei</u> praesidio navibus<u>que</u> とする修正提案がある。)</span> :  *Ipse [[wikt:en:noctu#Latin|noctu]] [[wikt:en:progressus#Participle|progressus]] milia passuum circiter XII([[wikt:en:duodecim#Latin|duodecim]]) **(カエサル)自身は夜間に約12ローママイル前進して、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:1[[ガイウス・ユリウス・カエサルの著作/通貨・計量単位#ミーッレ・パッスーム、ミーリア(ローママイル)|ローママイル]]は約1.48 kmで、12マイルは約18km)</span> *hostium copias conspicatus est. **敵の軍勢を見つけた。 :  ;   ブリタンニア勢が騎兵と戦車でローマ勢と交戦を開始する [[画像:Canterbury_-_Kloster_der_Blackfriars_und_Stour.jpg|thumb|right|200px|ストゥール川の支流の一つ]] *Illi [[wikt:en:equitatus#Etymology_1|equitatu]] atque [[wikt:en:essedum#Latin|essedis]] ad flumen [[wikt:en:progressus#Participle|progressi]] **あの者たちは、騎兵隊と[[w:チャリオット|戦車隊]]を擁して<u>川</u>のほとりへ進んで来て、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:この川は、現在の[[w:ケント (イングランド)|ケント州]]を流れるストゥール川 ''[[w:en:River_Stour,_Kent|Stour]]'' の<br>    支流の一つと推定されている。)</span> *ex loco superiore nostros [[wikt:en:prohibeo#Latin|prohibere]] et [[wikt:en:proelium#Latin|proelium]] [[wikt:en:committo#Latin|committere]] [[wikt:en:coepi#Latin|coeperunt]]. **より高い地点から我が方<span style="color:#009900;">〔ローマ勢〕</span>を阻んで、交戦し始めた。 :  ;   ブリタンニア勢が、森の中の堡塁に籠城して防戦する *[[wikt:en:repulsus#Latin|Repulsi]] ab equitatu **(ブリタンニア勢はローマ方の)騎兵隊により撃退されて、 *se in [[wikt:en:silva#Latin|silvas]] [[wikt:en:abdo#Latin|abdiderunt]], **森の中に身を隠して、 *locum [[wikt:en:nactus#Latin|nacti]] [[wikt:en:egregie#Latin|egregie]] et natura et [[wikt:en:opus#Latin|opere]] [[wikt:en:munitus#Latin|munitum]], **天然によっても、工事によっても見事に要害化された場所を手に入れた。 *quem [[wikt:en:domesticus#Latin|domestici]] belli, ut <u>videbantur</u>, causa iam ante [[wikt:en:praeparo#Latin|praeparaverant]]: **それは、内輪の戦争のために、すでに以前に準備していたと思われる。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、写本B・M・Sでは [[wikt:en:videbantur|videbantur]] だが、<br>      &nbsp;&nbsp;χ系・L・N・β系写本では [[wikt:en:videbatur|videbatur]] となっている。)</span> *nam [[wikt:en:creber#Latin|crebris]] [[wikt:en:arbor#Latin|arboribus]] [[wikt:en:succisus#Latin|succisis]] omnes [[wikt:en:introitus#Latin|introitus]] [[wikt:en:praecludo#Latin|erant praeclusi]]. **なぜなら、濃密な木々が伐採されて、進入路が塞がれていたためである。 *Ipsi ex silvis [[wikt:en:rarus#Latin|rari]] [[wikt:en:propugno#Latin|propugnabant]] **(ブリタンニア勢)自身は森からまれに抗戦して、 *nostrosque [[wikt:en:intra#Preposition|intra]] [[wikt:en:munitio#Latin|munitiones]] [[wikt:en:ingredior#Latin|ingredi]] [[wikt:en:prohibeo#Latin|prohibebant]]. **我が方がその防塁の内部に侵入することを阻止していた。 :  ;   ローマ第7軍団の亀甲隊形がブリタンニア勢を駆逐する *At milites legionis [[wikt:en:septimus#Latin|septimae]], **だが、第7軍団の兵士たちは、 *[[wikt:en:testudo#Latin|testudine]] facta et [[wikt:en:agger#Latin|aggere]] ad munitiones [[wikt:en:adiectus#Latin|adiecto]], **[[w:テストゥド|亀甲隊形]]を編成して、土塁(を築くこと)によって防塁に突入して、 *locum ceperunt eosque ex silvis [[wikt:en:expello#Latin|expulerunt]] **その場所を占領して、彼ら<span style="color:#009900;">〔ブリタンニア勢〕</span>を森から駆逐したが、 *paucis [[wikt:en:vulnus#Latin|vulneribus]] [[wikt:en:acceptus#Latin|acceptis]]. **(ローマ勢は)わずかな者が傷を受けただけであった。 {| class="wikitable" |- | style="width:15em;" |[[画像:Testudo lg.jpg|thumb|250px|left|ローマ軍の亀甲隊形([[w:テストゥド|テストゥド]])]] | style="width:15em;" |[[画像:Caesar's Gallic war; (Allen and Greenough's ed.) (1898) (14781415375).jpg|thumb|left|300px|防壁(図中の左端)を攻略するために築かれた<ruby><rb>土塁</rb><rp>(</rp><rt>アッゲル</rt><rp>)</rp></ruby> の復元画(再掲)。]] |} :  ;   カエサルが深追いを禁ずる *Sed eos [[wikt:en:fugiens#Latin|fugientes]] longius Caesar [[wikt:en:prosequor#Latin|prosequi]] [[wikt:en:veto#Latin|vetuit]], **けれども、逃亡する彼らを、カエサルはより遠くへ追撃することを禁じた。 *et quod loci naturam [[wikt:en:ignoro#Latin|ignorabat]], **地勢を知らなかったためでもあり、 *et quod magna parte diei [[wikt:en:consumptus#Latin|consumpta]] **日中の大部分が(戦闘に)費やされたためもあって、 *munitioni castrorum tempus [[wikt:en:relinquo#Latin|relinqui]] volebat. **野営の防備の時間を残しておくことを欲していたのだ。 <!-- <span style="color:#009900;"></span> **:<span style="color:#009900;">(訳注: **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注: --> ===10節=== *<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/10節]] {{進捗|00%|2023-08-18}}</span> '''再び嵐が船団を破損''' *[[wikt:en:postridie#Latin|Postridie]] eius diei [[wikt:en:mane#Adverb_2|mane]] **<span style="color:#009900;"></span>(カエサルは)その日の翌日の早朝に、 *[[wikt:en:tripertito|tripertito]] <u>milites</u> equitesque in [[wikt:en:expeditio#Latin|expeditionem]] misit, **<u>兵士たち</u>と騎兵たちを三つ(の分遣隊)に分けて、遠征に派遣した。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:''[[w:en:Milites|milites]]'' (兵士)という語は、''[[w:en:Equites|equites]]'' (騎兵)に対して歩兵、<br>    特に軍団の正規構成員である[[w:重装歩兵|重装歩兵]]を指す。)</span> *ut eos, qui [[wikt:en:fugio#Latin|fugerant]], [[wikt:en:persequor#Latin|persequerentur]]. **逃亡していた者たち<span style="color:#009900;">〔ブリタンニア勢〕</span>を追撃するようにと。 :  *His [[wikt:en:aliquantum#Etymology_2|aliquantum]] [[wikt:en:iter#Latin|itineris]] [[wikt:en:progressus#Participle|progressis]], **この者ら<span style="color:#009900;">〔遠征部隊〕</span>がかなりの道程を前進して、 *cum iam [[wikt:en:extremus#Noun|extremi]] essent in [[wikt:en:prospectus#Noun_3|prospectu]], **すでにその<u>末尾</u>が視野に入っていたときに、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:末尾とは、敗走する敵の後衛とも考えられるが、<br>    ローマ方の遠征部隊の後衛と見る解釈もある。)</span> *equites a [[wikt:en:Quintus#Latin|Quinto]] [[wikt:en:Atrius#Latin|Atrio]] ad Caesarem [[wikt:en:venio#Latin|venerunt]], **クィーントゥス・アートリウスにより(派遣されて)騎兵たちがカエサルのもとへやって来た。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:アートリウスは、[[#9節|前節]]で、船団の守備の指揮を任された、とある。)</span> *qui [[wikt:en:nuntio#Latin|nuntiarent]] superiore [[wikt:en:nox#Latin|nocte]] maxima [[wikt:en:coortus#Latin|coorta]] [[wikt:en:tempestas#Latin|tempestate]] **その者たちが報告したのは、前の夜に大きな嵐が突発して、 *[[wikt:en:prope#Latin|prope]] omnes naves [[wikt:en:adflictus#Participle|adflictas]] atque in <u>litore</u> [[wikt:en:eiectus#Latin|eiectas]] esse, **ほぼすべての船が転覆して、海岸に座礁したことであった。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、&alpha;系写本では [[wikt:en:litore|litore]] だが、&beta;系写本では [[wikt:en:litus#Latin|litus]] となっている。)</span> *quod <u>neque</u> [[wikt:en:ancora#Latin|ancorae]] [[wikt:en:funis#Latin|funes]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:subsisto#Latin|subsisterent]], **というのは、[[w:錨|錨]]も<ruby><rb>[[w:ロープ|縄 索]]</rb><rp>(</rp><rt>フーニス</rt><rp>)</rp></ruby>も持ちこたえられず、 *<u>neque</u> [[wikt:en:nauta#Latin|nautae]] [[wikt:en:gubernator#Latin|gubernatores]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:vis#Latin|vim]] tempestatis [[wikt:en:patior#Latin|pati]] possent; **船員や操舵手が嵐の勢いに耐えることもできなかったからだ。 *itaque ex eo [[wikt:en:concursus#Noun|concursu]] navium magnum esse [[wikt:en:incommodum#Noun|incommodum]] acceptum. **こうして、その船団の混乱から、大きな災害を受けたのである。 <!-- <span style="color:#009900;"></span> **:<span style="color:#009900;">(訳注: **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注: --> ===11節=== *<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/11節]] {{進捗|00%|2023-10-11}}</span> '''船団の修理と陣営の防備の手配。最高司令官カッスィウェッラウヌス登場''' :  ;   船団の修理、陣営の防備および大陸からの支援を手配する *His rebus [[wikt:en:cognitus#Participle|cognitis]] **これらの事態<span style="color:#009900;">〔嵐による災害〕</span>を知ると、 *Caesar legiones [[wikt:en:equitatus#Latin|equitatum]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:revoco#Latin|revocari]] atque in itinere [[wikt:en:resisto#Latin|resistere]] [[wikt:en:iubeo#Latin|iubet]], **カエサルは<span style="color:#009900;">(遠征に派遣した)</span>諸軍団と騎兵隊を呼び止めて、行軍を留まることを命じて、 *ipse ad naves [[wikt:en:revertor#Latin|revertitur]]; **(カエサル)自身は船団のところへ戻る。 *[[wikt:en:idem#Latin|eadem]] fere, quae ex [[wikt:en:nuntius#Latin|nuntiis]] [[wikt:en:littera#Latin|litteris]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:cognosco#Latin|cognoverat]], [[wikt:en:coram#Etymology_1|coram]] [[wikt:en:perspicio#Latin|perspicit]], **(カエサルは)伝令たちと書状から知っていたのとほぼ同じものを、はっきりと視る。 *sic ut [[wikt:en:amissus#Latin|amissis]] circiter XL([[wikt:en:quadraginta#Latin|quadraginta]]) navibus **およそ40隻の船を喪失したけれども、 *reliquae tamen [[wikt:en:refici|refici]] posse magno [[wikt:en:negotium#Latin|negotio]] viderentur. **残りは大きな労力によって修理できると見られた。 :  *Itaque ex legionibus [[wikt:en:faber#Noun|fabros]] [[wikt:en:deligo#Latin|deligit]] **こうして、諸軍団の内から<u>工兵</u>を選別して **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:ローマ軍には元来は専任の武具職人としての工兵がいたが、<br>    カエサルの時代には軍団兵から選任していたことが判る記述である。<br>    [[ガイウス・ユリウス・カエサルの著作/古代ローマの攻城兵器#古代ローマの工兵|#古代ローマの工兵]] 参照。)</span> *et ex [[wikt:en:continens#Noun|continenti]] alios [[wikt:en:arcesso#Latin|arcessi]] iubet; **大陸からほかの者たちを呼び寄せることを命じた。 *[[wikt:en:Labienus#Latin|Labieno]] [[wikt:en:scribo#Latin|scribit]], **[[w:ティトゥス・ラビエヌス|ラビエーヌス]]に(書状を)書いた。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[#8節|8節]]で、ラビエーヌスは港湾の守備や糧食の調達などのために大陸に残された。)</span> *ut quam plurimas posset iis legionibus, quae sunt apud eum, naves instituat. **彼<span style="color:#009900;">〔ラビエーヌス〕</span>のもとにいる軍団により、できるかぎり多くの船を建造するように、と。 :  *Ipse, <u>etsi</u> res erat multae operae ac laboris, **(カエサル)自身は、たとえ事が多くの作業や労苦であろうとも、 *<u>tamen</u> [[wikt:en:commodissimus|commodissimum]] esse [[wikt:en:statuo#Latin|statuit]] omnes naves [[wikt:en:subduco#Latin|subduci]] et cum castris una [[wikt:en:munitio#Latin|munitione]] [[wikt:en:coniungo#Latin|coniungi]]. **けれども、すべての船を引き揚げて陣営と一緒に防壁に結びつけることが、最も都合良いと判断した。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:etsi#Latin|etsi]] ~, [[wikt:en:tamen#Latin|tamen]] ・・・「~としても、それでもなお・・・」)</span> :  *In his rebus circiter dies X([[wikt:en:decem#Latin|decem]]) [[wikt:en:consumo#Latin|consumit]], **これらの事に約10日を費やし、 *<u>ne</u> [[wikt:en:nocturnus#Latin|nocturnis]] <u>quidem</u> temporibus ad laborem militum [[wikt:en:intermissus#Latin|intermissis]]. **夜の時間<u>でさえも</u>、兵士の労役が中断されることは<u>なかった</u>。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:ne_quidem#Latin|nē ~ quidem]]「~でさえない」)</span> :  ;   船団と陣営の防備を遂げ、カエサルが遠征に再出発 *[[wikt:en:subductus#Latin|Subductis]] navibus castrisque [[wikt:en:egregie#Latin|egregie]] [[wikt:en:munitus#Latin|munitis]] **船団を引き揚げて、陣営に見事な防備をし、 *[[wikt:en:idem#Latin|easdem]] copias, quas ante, [[wikt:en:praesidium#Latin|praesidio]] navibus [[wikt:en:relinquo#Latin|reliquit]]: **以前のと同じ軍勢を、船団のための守備隊として残すと、 *ipse [[wikt:en:eodem#Adverb|eodem]], [[wikt:en:unde#Latin|unde]] [[wikt:en:redeo#Latin|redierat]], [[wikt:en:proficiscor#Latin|proficiscitur]]. **(カエサル)自身は、<u>そこから</u>戻って来ていたのと、<u>同じところへ</u>出発する。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:カエサル自身は、そこから船団のところへ戻って来ていた出発点、本節冒頭の場所へ向かった。)</span> :  ;   カッスィウェッラウヌスに、ブリタンニア諸部族の最高指揮権が委ねられる [[画像:Cassivellaunus, New York Public Library, version2.jpg|thumb|right|300px|[[w:カッシウェラウヌス|カッスィウェッラウヌス]]([[w:en:Cassivellaunus|Cassivellaunus]])の近代の想像画。]] *[[wikt:en:eo#Adverb|Eo]] cum [[wikt:en:venio#Latin|venisset]], **(カエサルが)そこに来たときに、 *[[wikt:en:maior#Adjective_2|maiores]] iam [[wikt:en:undique#Latin|undique]] in eum locum copiae [[wikt:en:britannus#Noun|Britannorum]] [[wikt:en:convenio#Latin|convenerant]] **すでに至る所からその場所に、より多くの[[w:ブリトン|ブリタンニア人]]の軍勢が集結していた。 *[[wikt:en:summa#Noun_6|summa]] [[wikt:en:imperium#Latin|imperii]] [[wikt:en:bellum#Latin|belli]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:administrandus#Latin|administrandi]] **戦争を遂行するための最高司令権が、 *[[wikt:en:communis#Latin|communi]] [[wikt:en:consilium#Latin|consilio]] [[wikt:en:permissus#Latin|permissa]] [[wikt:en:Cassivellaunus#Latin|Cassivellauno]], **(諸部族の)共通の合意により[[w:カッシウェラウヌス|カッスィウェッラウヌス]]に認められた。 *cuius fines a [[wikt:en:maritimus#Latin|maritimis]] civitatibus **その者の領土を、沿海の諸部族(の領土)からは、 *flumen [[wikt:en:divido#Latin|dividit]], quod [[wikt:en:appello#Latin|appellatur]] <u>[[wikt:en:Tamesis#Latin|Tamesis]]</u>, **'''タメスィス'''と呼ばれる川が分け隔てていて、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:タメスィス川 [[w:la:Tamesis (fluvius)|Tamesis]] は、現在の[[w:テムズ川|テムズ川]]。)</span> *a [[wikt:en:mare#Latin|mari]] circiter [[wikt:en:mille_passuum#Latin|milia passuum]] LXXX([[wikt:en:octoginta#Latin|octoginta]]). **海からは約80<u>ローママイル</u>である。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:1[[ガイウス・ユリウス・カエサルの著作/通貨・計量単位#ミーッレ・パッスーム、ミーリア(ローママイル)|ローママイル]]は約1.48 kmで、80マイルは約120km)</span> {| class="wikitable" |- | style="vertical-align:top; text-align:left; width:20em;" |[[画像:River Thames_at_Pangbourne_-_The Meadow_-_National_Trust.JPG|thumb|left|450px|'''タメスィス川'''('''[[w:la:Tamesis (fluvius)|Tamesis]]''')、すなわち現在の'''[[w:テムズ川|テムズ川]]'''(''[[w:en:River Thames|Thames]]'')。<br>現在の[[w:バークシャー|バークシャー州]]のパンボーン(''[[w:en:Pangbourne|Pangbourne]])付近。]] |} :  *Huic superiore tempore cum reliquis civitatibus [[wikt:en:continens#Adjective|continentia]] [[wikt:en:bellum#Latin|bella]] [[wikt:en:intercedo#Latin|intercesserant]]; **この者にとって、往時は、ほかの部族たちとの絶え間のない戦争が介在していたが、 *sed nostro [[wikt:en:adventus#Latin|adventu]] [[wikt:en:permotus#Latin|permoti]] **しかし我が方<span style="color:#009900;"></span>〔ローマ軍〕の到来に脅かされて、 *Britanni hunc [[wikt:en:totus#Latin|toti]] bello imperioque [[wikt:en:praeficio#Latin|praefeceraut]]. **ブリタンニア人はこの者を戦争全体の司令権の長に任じたのだ。 <!-- <span style="color:#009900;"></span> **:<span style="color:#009900;">(訳注: **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注: --> ===12節=== *<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/12節]] {{進捗|00%|2023-10-12}}</span> '''ブリタンニアの地理(1)──部族と風土''' ::<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:この12節から[[#14節|14節]]までは、唐突に地理的説明が続くため、<br>    後世の人による注釈の書き込みとする見方もあるが、<br>    『ガリア戦記』ではたびたび見られる類いのものである。<br>    カエサルが間違いを記すはずがないと思う人たちもいたが、<br>    ブリタンニアに関して当時のローマ人はかなり無知であったらしい。)</span> :  ;   内陸地方の住民 *[[wikt:en:Britannia#Latin|Britanniae]] pars [[wikt:en:interior#Latin|interior]] **[[w:ブリタンニア|ブリタンニア]]の内陸部には、 *ab iis [[wikt:en:incolo#Latin|incolitur]], quos [[wikt:en:natus#Participle|natos]] in [[wikt:en:insula#Latin|insula]] ipsi [[wikt:en:memoria#Noun_7|memoria]] [[wikt:en:proditus#Latin|proditum]] dicunt, **彼ら自身が、島の土着であるということが伝承により伝えられている、と言っている者たちが住む。 :  ;   沿海地方の住民 *[[wikt:en:maritimus#Latin|maritima]] pars ab iis, qui [[wikt:en:praeda#Latin|praedae]] ac belli [[wikt:en:inferendus#Latin|inferendi]] causa ex <u>[[wikt:en:Belgium#Latin|Belgio]]</u> [[wikt:en:transeo#Latin|transierant]], **海岸部には、略奪と戦争をしかけるために<u>ベルギウム</u>から渡来していた者たちが(住む)。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:カエサルはこのように記すが、ローマ人の征服によって追われた<br>    ケルト系難民がベルガエの地から流入して来たという現代の見方がある <ref>[[w:en:Prehistoric_Britain#Late_pre-Roman_Iron_Age_(LPRIA)]] などを参照。</ref>。)</span> **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:ベルギウム ''[[wikt:en:Belgium#Latin|Belgium]]'' という地名は「[[w:ベルギー|ベルギー]]([[w:la:Belgica|Belgium]])」の語源で、<br>    カエサルはこの箇所でしか用いていないが、<br>    これまでベルガエ &nbsp;[[w:la:Belgae|Belgae]]&nbsp; と呼んで来た諸部族が居住していた地域で、<br>    ガッリア・ベルギカ ''[[wikt:en:Gallia_Belgica#Latin|Gallia Belgica]] に同じ。)</span> *qui omnes fere iis nominibus civitatum [[wikt:en:appello#Latin|appellantur]], quibus [[wikt:en:ortus#Participle|orti]] ex civitatibus [[wikt:en:eo#Etymology_3_2|eo]] [[wikt:en:pervenio#Latin|pervenerunt]], **その者らほぼすべては、そこに到来した(大陸の)出身部族に由来する部族の名前で呼ばれている。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:カエサルのこのような記述から、島の諸部族はケルト系とされ、<br>    近代になって、「島のケルト」と「大陸のケルト」というケルト観が形成されたが、<br>    このような見方には、近年のイギリスの考古学界から異論が出ている<ref>[[w:南川高志|南川高志]]著『海のかなたのローマ帝国 古代ローマとブリテン島』(増補版2015年、岩波書店)を参照。</ref>。)</span> *et bello [[wikt:en:inlatus#Latin|inlato]] ibi <u>permanserunt</u> atque [[wikt:en:ager#Latin|agros]] [[wikt:en:colo#Latin|colere]] [[wikt:en:coepi#Latin|coeperunt]]. **(彼らは)戦争をしかけて、そこに留まり続け、土地を耕し始めた。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:permaneo#Latin|permānsērunt]] は &alpha;系写本の記述で、&beta;系写本では [[wikt:en:remaneo#Latin|remānsērunt]] となっている。)</span> {| class="wikitable" |- | style="vertical-align:top; text-align:left; width:15em;" |[[画像:England_Celtic_tribes_-_South.png|thumb|left|300px|古代ブリタンニア南部の部族分布。大陸と同じ部族名が見られる。]] |} :  *Hominum est [[wikt:en:infinitus#Latin|infinita]] multitudo **人々は限りなき多数であり、 *[[wikt:en:creberrimus|creberrima]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:aedificium#Latin|aedificia]] fere Gallicis [[wikt:en:consimilis#Latin|consimilia]], **建物は密集してほぼ[[w:ガリア|ガッリア]]のものによく似ており、 *<u>pecorum</u> <u>magnus numerus</u>. **家畜の数も多い。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:pecorum|pecorum]] (複数) は &alpha;系写本の記述で、&beta;系写本では [[wikt:en:pecoris|pecoris]] (単数) となっている。)</span> **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:magnus numerus は &alpha;系写本の記述で、&beta;系写本では numerus [[wikt:en:ingens#Latin|ingens]] となっている。)</span> {| class="wikitable" |- | style="vertical-align:top; text-align:left; width:15em;" |[[画像:Recreated Celtic Village, Museum of Welsh Life. - geograph.org.uk - 138611.jpg|thumb|left|300px|再現されたケルト系部族の住居(英[[w:ウェールズ|ウェールズ]]の[https://museum.wales/stfagans/japanese/ セント・ファガンズ国立歴史博物館]内)。]] | style="vertical-align:top; text-align:left; width:15em;" |[[画像:Celtic village - Museum of Welsh Life - geograph.org.uk - 2022629.jpg|thumb|left|300px|再現されたケルト系部族の集落(英[[w:ウェールズ|ウェールズ]]の[https://museum.wales/stfagans/japanese/ セント・ファガンズ国立歴史博物館]内)。]] |} :  ;   鉱物の使用 *[[wikt:en:utor#Latin|Utuntur]] aut <u>[[wikt:en:aes#Latin|aere]]</u> aut <u>[[wikt:en:nummus#Latin|nummo]]</u> [[wikt:en:aureus#Latin|aureo]] **(彼らが売買に)用いているのは、[[w:青銅|青銅]]あるいは[[w:金貨|金の硬貨]]、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:<span style="font-size:16pt;">[[w:la:Aes (discretiva)|aes]]</span> は、[[w:銅|銅]]・[[w:青銅|青銅]] または [[w:黄銅|黄銅 (真鍮)]] などを意味するが、<br>    ''[[wikt:en:brass#English|brass]]''(真鍮)と訳されたり<ref>[https://www.perseus.tufts.edu/hopper/text?doc=Caes.+Gal.+5.12 C. Julius Caesar, Gallic War, Book 5, chapter 12](英訳)等を参照せよ。</ref><ref><ruby><rb>[[w:黄銅|真鍮]]</rb><rp>(</rp><rt>しんちゅう</rt><rp>)</rp></ruby>は、は紀元前のブリテン島にも普及していたらしい。[[w:en:Brass#Roman_world]] 等を参照せよ。</ref>、''[[wikt:en:bronze#English|bronze]]''(青銅)と訳されている。)</span> **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[w:la:Pecunia|pecunia]] が[[w:貨幣|貨幣]]すなわち金銭(お金)全般を指すのに対して、<br>    [[w:la:Nummus|nummus]] は鋳造された[[w:貨幣|貨幣]]を指す。)</span> *aut [[wikt:en:talea#Latin|taleis]] [[wikt:en:ferreus#Latin|ferreis]] ad [[wikt:en:certus#Latin|certum]] [[wikt:en:pondus#Latin|pondus]] [[wikt:en:examinatus#Latin|examinatis]] pro nummo. **あるいは[[w:硬貨|硬貨]]の代わりにある一定の[[w:重さ|重さ]]に秤量された[[w:鉄|鉄製]]の棒である。 {| class="wikitable" |- | style="vertical-align:top; text-align:left; width:15em;" |[[画像:An Iron Age Bronze unit from ESSEX of Andoco Trinovantes Celtic Coin Index reference, 90.0832 (FindID 303648).jpg|thumb|left|200px|[[w:トリノヴァンテス族|トリノウァンテース族]](後出)の青銅の貨幣。 ]] | style="vertical-align:top; text-align:left; width:15em;" |[[画像:Iron Age Coin, Quarter Stater Gallic import (obverse) (FindID 658457).jpg|thumb|left|150px|ガッリアから輸入された鉄器時代の金貨([[w:大英博物館|大英博物館]] Room 50所蔵)。 ]] | style="vertical-align:top; text-align:left; width:15em;" |[[画像:British celtic Iron bar currency.JPG|thumb|left|300px|ケルト系部族が貨幣として用いていた鉄製の棒(英[[w:ドーセット|ドーセット州]]の[[w:en:Dorset County Museum|ドーセット州博物館]]蔵)。]] |} :  [[画像:Cassiterite-d06-92a.jpg|thumb|right|200px|ブリテン島の南西に突き出た半島部[[w:コーンウォール|コーンウォール]]地方から産出した名産の[[w:錫石|錫石]]。<br>[[w:世界遺産|世界遺産]]「[[w:コーンウォールと西デヴォンの鉱山景観|コーンウォールと西デヴォンの鉱山景観]]」として登録されるほど世界的に有名。]] *[[wikt:en:nascor#Latin|Nascitur]] ibi <u>plumbum album</u> in [[wikt:en:mediterraneus#Latin|mediterraneis]] regionibus, **そこでは、内陸地方において<u>[[w:スズ|スズ(錫)]]</u> が産出するし、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:plumbum|plumbum]] は通常「鉛(Pb)」と訳されるが、古くは<br>    plumbum nigrum(黒い鉛)が「鉛」<br>    plumbum [[wikt:en:albus#Latin|album]] (白い鉛)が「錫」を意味した。)</span> **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[w:スズ|スズ(錫)]] の産地は[[w:コーンウォール|コーンウォール]]半島で、<br>    太古の昔から[[w:フェニキア|フェニキア]]人によって採掘されていたが、<br>    当時のローマ人が正確な知識を持たなくても不思議ではない。)</span> *in [[wikt:en:maritimus#Latin|maritimis]] [[wikt:en:ferrum#Latin|ferrum]], sed eius [[wikt:en:exiguus#Latin|exigua]] est copia; **沿海部においては鉄(が産出するの)だが、その量は微少である。 *aere utuntur [[wikt:en:importatus#Latin|importato]]. **(ブリタンニア人は)輸入された[[w:青銅|青銅]]を用いている。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:銅や青銅は出土しているが、<br>    カエサルの時代に採掘されていたかは不詳で、<br>    議論のあるところ。)</span> :  *[[wikt:en:materia#Latin|Materia]] [[wikt:en:quisque#Latin|cuiusque]] generis, ut in [[wikt:en:Gallia#Latin|Gallia]] est, **ガッリアにあるような、どのような種類の木材もある。 *[[wikt:en:praeter#Latin|praeter]] [[wikt:en:fagus#Latin|fagum]] atque [[wikt:en:abies#Latin|abietem]]. **[[w:ブナ属|ブナ (橅)]]や[[w:モミ|モミ (樅)]]を除いては。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:少なくとも[[w:モミ属|モミ属]]の樹木はブリテン島には自生していないようだ。)</span> {| class="wikitable" |- | style="vertical-align:top; text-align:left; width:15em;" |[[画像:Fagus sylvatica range.svg|thumb|300px|[[w:ヨーロッパブナ (植物)|ヨーロッパブナ]]の分布図。<br>[[w:ブナ属|ブナ属]]([[w:la:Fagus|Fagus]])の樹木で、ブリテン島南部を含むヨーロッパに広く自生する。]] | style="vertical-align:top; text-align:left; width:15em;" |[[画像:Abies alba range.svg|thumb|200px|[[w:ヨーロッパモミ|ヨーロッパモミ]]の自生分布(緑)と外来種としての分布(橙)。[[w:モミ属|モミ属]]([[w:la:Abies|Abies]])の樹木でヨーロッパ中・東部に広く自生するが、ブリテン島には自生しない。]] |} ;   家畜を飼う *[[wikt:en:lepus#Latin|Leporem]] et [[wikt:en:gallina#Latin|gallinam]] et [[wikt:en:anser#Latin|anserem]] [[wikt:en:gusto#Latin|gustare]] [[wikt:en:fas#Latin|fas]] non [[wikt:en:puto#Latin|putant]]; **[[w:ノウサギ属|ノウサギ (野兎)]] と[[w:ニワトリ|メンドリ (雌鶏)]] と[[w:ガチョウ|ガチョウ (鵞鳥)]] を味わうのは、神意に背くと考えている。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:神々への生贄<ref>[[w:en:Ancient_Celtic_religion#Animal_sacrifice]] などを参照。</ref> にしていたからともいわれる。)</span> *haec tamen alunt [[wikt:en:animus#Latin|animi]] [[wikt:en:voluptas#Latin|voluptatis]]<nowiki>que</nowiki> causa. **しかしながら、これらを楽しみや歓びのために飼育している。 {| class="wikitable" |- | style="vertical-align:top; text-align:left; width:10em;" |[[画像:Brown Hare (17685984294).jpg|thumb|left|150px|[[w:ヤブノウサギ|ヨーロッパノウサギ]](英ケント州)。ヨーロッパに広く生息するが、ブリテン島では外来種とされている。]] | style="vertical-align:top; text-align:left; width:10em;" |[[画像:Male and female chicken sitting together.jpg|thumb|left|150px|雌鶏(右)と雄鶏(左)。]] | style="vertical-align:top; text-align:left; width:10em;" |[[画像:Anser anser 2 (Piotr Kuczynski).jpg|thumb|left|150px|[[w:ハイイロガン|ハイイロガン]](学名 [[w:la:Anser anser|Anser anser]])。ニワトリと並ぶ古くからの[[w:家禽|家禽]]である[[w:ガチョウ|ガチョウ]]はこの種などを家畜化したものとされている。]] |} :  *Loca sunt [[wikt:en:temperatus#Adjective|temperatiora]] quam in Gallia, **ガッリアにおけるよりも気候がよりおだやかな土地で、 *[[wikt:en:remissus#Latin|remissioribus]]<ref>[https://www.latin-is-simple.com/en/vocabulary/adjective/7390/ remissus/remissa/remissum, AO - Latin is Simple Online Dictionary]</ref> [[wikt:en:frigus#Latin|frigoribus]]. **(冬季の)寒さはあまり激しくない。 <!-- <span style="color:#009900;"></span> **:<span style="color:#009900;">(訳注: **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注: --> ===13節=== *<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/13節]] {{進捗|00%|2023-10-18}}</span> '''ブリタンニアの地理(2)──島々と地形''' *[[wikt:en:insula#Latin|Insula]] natura [[wikt:en:triquetrus#Latin|triquetra]], **([[w:ブリタンニア|ブリタンニア]])島は、自然(な形状)において[[w:三角形|三角形]]である。 *cuius unum [[wikt:en:latus#Etymology_3|latus]] est contra [[wikt:en:Gallia#Latin|Galliam]]. **その(三角形の)一つの辺は、[[w:ガリア|ガッリア]]に対して向かい合っている。 {| class="wikitable" |- | style="vertical-align:top; text-align:left; width:30em;" |[[画像:Britain as triangular island described by Caesar.svg|thumb|left|600px|カエサルが三角形の島として描写した[[w:ブリタンニア|ブリタンニア]]島([[w:グレートブリテン島|ブリテン島]])の概略図。]] |} :  ; (イ)ガッリアを向く第一の辺:500マイル *Huius lateris alter [[wikt:en:angulus#Latin|angulus]], qui est ad [[wikt:en:Cantium#Latin|Cantium]], **この辺の一方の角は、<u>カンティウム</u>の辺りにあり、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:カンティウム [[w:la:Cantium|Cantium]] は、現在の[[w:ケント (イングランド)|ケント州]]にほぼ相当する。)</span> *[[wikt:en:quo#Etymology_1_2|quo]] fere omnes ex Gallia naves [[wikt:en:appelluntur|appelluntur]], **そこへはガッリアからのほぼすべての船が接岸し、 *ad [[wikt:en:oriens#Participle|orientem]] [[wikt:en:sol#Latin|solem]], **昇る日の方向〔東方〕へ向いている。 *[[wikt:en:inferior#Latin|inferior]] <span style="color:#009900;">(angulus)</span> ad [[wikt:en:meridies#Latin|meridiem]] [[wikt:en:specto#Latin|spectat]]. **下方の(角)は、南方に面している。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:inferus#Latin|inferus]]「下方の」あるいは「南方の」。)</span> :  *Hoc (<u>latus</u>) [[wikt:en:pertineo#Latin|pertinet]] circiter milia passuum [[wikt:en:quingenti#Latin|quingenta]](D). **この辺は、約500<u>ローママイル</u>に及ぶ。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:1[[ガイウス・ユリウス・カエサルの著作/通貨・計量単位#ミーッレ・パッスーム、ミーリア(ローママイル)|ローママイル]]は約1.48 kmで、500マイルは約740 km)</span> **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:latus#Etymology_3|latus]] は&beta;系写本の記述で、&alpha;系写本にはない。)</span> :  ; (ロ)ヒスパーニアやヒベルニアを向く第二の辺:700マイル *Alterum <span style="color:#009900;">(latus)</span> [[wikt:en:vergo#Latin|vergit]] ad [[wikt:en:Hispania#Latin|Hispaniam]] atque [[wikt:en:occidens#Etymology_1|occidentem]] [[wikt:en:sol#Latin|solem]]; **第二の(辺)は、[[w:ヒスパニア|ヒスパーニア]]や没する日の方向〔西方〕を向いている。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:ヒスパーニア [[w:la:Hispania Romana|Hispania]] は、現在の[[w:スペイン|スペイン]]を含む<br>    [[w:イベリア半島|イベリア半島]] [[w:la:Hiberia|Hiberia]]。)</span> :  ;   ヒベルニア島(アイルランド) *qua ex parte est [[wikt:en:Hibernia#Latin|Hibernia]] (<u>insula</u>), **その方角には、ヒベルニア(島)があり、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:ヒベルニア [[w:la:Hibernia|Hibernia]] は、現在の[[w:アイルランド島|アイルランド島]])</span> **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:insula#Latin|insula]] は&beta;系写本の記述で、&alpha;系写本にはない。)</span> *[[wikt:en:dimidium#Latin|dimidio]] minor, ut [[wikt:en:existimo#Latin|existimatur]], quam Britannia, **見積もられているように、ブリタンニアよりも半分ぐらい小さい。 *sed [[wikt:en:par#Latin|pari]] [[wikt:en:spatium#Latin|spatio]] [[wikt:en:transmissus#Noun|transmissus]] atque ex Gallia est in Britanniam. **けれども(ヒベルニアから)ブリタンニアへの渡航の距離は、ガッリアからのそれと等しい。 :  {| class="wikitable" |- | style="vertical-align:top; text-align:left; width:10em;" |[[画像:British Isles Isle of Man.svg|thumb|left|150px|モナ島(マン島)は、ブリタンニア島(右)とヒベルニア島(左)の間に位置する。]] | style="vertical-align:top; text-align:left; width:15em;" |[[画像:Earth-lighting-winter-solstice LA.jpg|thumb|left|500px|[[w:冬至|冬至]]のラテン語による図解。]] |} *In hoc <span style="color:#009900;">(latere)</span> [[wikt:en:medius#Latin|medio]] [[wikt:en:cursus#Etymology_1|cursu]] est insula, quae [[wikt:en:appello#Etymology_2_2|appellatur]] Mona: **こちら側には、航路の中間に<u>モナと呼ばれている島</u>がある。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:モナは、現在の[[w:マン島|マン島]] [[w:la:Monapia|Monapia / Mannia]] か。<br>    [[w:la:Mona|Mona]] は[[w:ウェールズ|ウェールズ地方]]北西部に接する[[w:アングルシー島|アングルシー島 (モーン島)]]との説が有力だが、<br>    それでは上記の「航路の真ん中にある」という位置の説明と合致しない。)</span> *[[wikt:en:complures#Adjective|complures]] praeterea [[wikt:en:minor#Adjective_6|minores]] <u>subiectae</u> insulae [[wikt:en:existimo#Latin|existimantur]], **さらに、かなりの小さい島々が近くにあると考えられている。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[w:スコットランド|スコットランド]]周辺の島々を指しているのであろうか。)</span> **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、&alpha;系写本では [[wikt:en:subiectus#Participle|subiectae]] だが、<br>         &beta;系写本では [[wikt:en:obiectus#Participle|obiectae]] となっている。)</span> ;   極夜の島々? *de quibus insulis non nulli [[wikt:en:scribo#Latin|scripserunt]] **それらの島々について、幾人かが著述しているのは、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:カエサルは、[[w:マルセイユ|マッシリア]]の航海者[[w:ピュテアス|ピュテアス]]、<br>    あるいは[[w:ポセイドニオス|ポセイドニオス]]などギリシア人たちが著した地理書の影響を受けていたと考えられる。)</span> *dies [[wikt:en:continuus#Latin|continuos]] [[wikt:en:triginta#Latin|triginta]](XXX) [[wikt:en:sub#Latin|sub]] [[wikt:en:bruma#Latin|bruma]] esse [[wikt:en:nox#Latin|noctem]]. **[[w:冬至|冬至]]の頃には、連続30日間も夜になる、ということである。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:冬至の頃に夜が続く[[w:極夜|極夜]]は、北緯66度以北の[[w:北極圏|北極圏]]でしか起こらない。<br>    [[w:アイスランド|アイスランド]]や[[w:ノルウェー|ノルウェー]]など北極圏にかかる島々と混同しているのであろうか。)</span> *Nos nihil de eo [[wikt:en:percontatio#Latin|percontationibus]] [[wikt:en:reperio#Latin|reperiebamus]], **我々は、そのことについて(島民に)尋ねたが、何も見い出せなかった。 *<u>[[wikt:en:nisi#Etymology_1|nisi]]</u> [[wikt:en:certus#Latin|certis]] ex [[wikt:en:aqua#Latin|aqua]] [[wikt:en:mensura#Noun|mensuris]] breviores esse quam in continenti noctes [[wikt:en:video#Latin|videbamus]]. **水による正確な計測によって、大陸で我々が思っていたよりも夜がより短い(ことが判った)<u>ということを除いては</u>。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:ローマ軍の陣営には、[[古代ローマの不定時法#夜警時|夜警時]]を計るための[[w:水時計|水時計]]が備えられていた、ということらしい。)</span> *Huius est [[wikt:en:longitudo#Latin|longitudo]] lateris, ut [[wikt:en:fero#Latin|fert]] illorum [[wikt:en:opinio#Latin|opinio]], **この(第二の)辺の長さは、あの者たちの見解が説くように、 *[[wikt:en:septingenti#Latin|septingentorum]](DCC) milium. **700<u>ローママイル</u>である。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:1[[ガイウス・ユリウス・カエサルの著作/通貨・計量単位#ミーッレ・パッスーム、ミーリア(ローママイル)|ローママイル]]は約1.48 kmで、700マイルは約1000 km)</span> {| class="wikitable" |- | style="vertical-align:top; text-align:left; width:10em;" |[[画像:Clepsydra.jpg|thumb|left|150px|水時計の例。]] | style="vertical-align:top; text-align:left; width:15em;" |[[画像:ISS-65 English Channel and North Sea sunglint.jpg|thumb|left|380px|[[w:グレートブリテン島|ブリテン島]](画像中央)と欧州大陸(手前)を上空から見下ろした衛星写真。<br>[[w:北海|北海]](右)が本節の第三の辺の側で、陸地はない。[[w:北海油田|北海油田]]に130億[[w:バレル|バレル]]もの原油が埋蔵されていると推定されている。]] |} :  ; (ハ)北海を向く第三の辺:800マイル *Tertium <span style="color:#009900;">(latus)</span> est contra [[wikt:en:septentrio#Latin|septentriones]]; **第三(の辺)は、北方を向いている。 *cui parti [[wikt:en:nullus#Adjective|nulla]] est obiecta [[wikt:en:terra#Latin|terra]], **その方角には、陸地は何ら位置していない。 *sed eius angulus lateris maxime ad [[wikt:en:Germania#Latin|Germaniam]] [[wikt:en:specto#Latin|spectat]]. **けれども、その辺の一角は、とりわけ[[w:ゲルマニア|ゲルマーニア]]の方に面している。 *Hoc milia passuum [[wikt:en:octingenti#Latin|octingenta]](DCCC) in [[wikt:en:longitudo#Latin|longitudinem]] esse [[wikt:en:existimo#Latin|existimatur]]. **これ<small>〔第三の辺〕</small>は、長さにおいて、800<u>ローママイル</u>であると見積もられている。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:1[[ガイウス・ユリウス・カエサルの著作/通貨・計量単位#ミーッレ・パッスーム、ミーリア(ローママイル)|ローママイル]]は約1.48 kmで、800マイルは約1200 km)</span> :  *Ita omnis insula est in [[wikt:en:circuitus#Etymology_2|circuitu]] [[wikt:en:vicies#Latin|vicies]] [[wikt:en:centum#Latin|centum]] milium passuum. **このように、島のすべての周囲は2000<u>ローママイル</u>である。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:1[[ガイウス・ユリウス・カエサルの著作/通貨・計量単位#ミーッレ・パッスーム、ミーリア(ローママイル)|ローママイル]]は約1.48 kmで、2000マイルは約3000 km)</span> {| class="wikitable" |- | style="vertical-align:top; text-align:left; width:25em;" |[[画像:Map of Britain as conceived by Caesar (Kelsey 1918).png|thumb|left|600px|本節の記述に基づくヨーロッパの地図(出典:ケルシーの注釈書)。<br>[[w:ブリタンニア|ブリタンニア]]島([[w:グレートブリテン島|ブリテン島]])から見て、[[w:ヒスパニア|ヒスパーニア]]([[w:イベリア半島|イベリア半島]])とヒベルニア([[w:アイルランド島|アイルランド島]])が同じ方角にあると書かれているため、イベリア半島が肥大化して見える。]] | style="vertical-align:top; text-align:left; width:25em;" |[[画像:Map_of_Europe_according_to_Strabo.jpg|thumb|left|550px|ほぼ同時代のギリシア人地理学者[[w:ストラボン|ストラボーン]]の記述に基づくヨーロッパの地図。中央に三角形のブリタンニア島(Brettania)が見える。ヒベルニア島=イエルネ(Ierne)の位置が北方へずれていることなどを除けば、本節の記述とおおむね合致する。]] |} <!-- <span style="color:#009900;"></span> **:<span style="color:#009900;">(訳注: **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注: --> ===14節=== *<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/14節]] {{進捗|00%|2023-11-02}}</span> '''ブリタンニアの地理(3)──生活習慣''' *Ex iis omnibus longe sunt <u>[[wikt:en:humanissimi|humanissimi]]</u>, **彼らすべて(の諸部族)のうちで、はるかに<u>人間的</u>であるのは、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:humanus#Latin|humanus]] (人間的) とは、[[w:ヒト属|ヒト属]] [[w:la:Homo (genus)|Homo]] [[w:ヒト|ヒト (種)]] [[w:la:Gens humana|Gens humana]] の生き物であるだけでなく、<br>    文化・文明 [[w:la:Cultus humanus|Cultus humanus]] によって洗練され、教養のある者などを指す。<ref>[https://latin-dictionary.net/definition/22379/humanus-humana Latin Definition for: humanus, humana (ID: 22379) - Latin Dictionary and Grammar Resources - Latdict] 等</ref>)</span> [[画像:KentBrit5.PNG|thumb|right|200px|現在のケント州の位置]] *qui [[wikt:en:Cantium#Latin|Cantium]] [[wikt:en:incolo#Latin|incolunt]], **<u>カンティウム</u>に住む者たちで、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:カンティウム [[w:la:Cantium|Cantium]] は、現在の[[w:ケント (イングランド)|ケント州]]にほぼ相当する。)</span> *quae [[wikt:en:regio#Latin|regio]] est [[wikt:en:maritimus#Latin|maritima]] omnis, **その地方はすべて沿海部であり、 *neque multum a [[wikt:en:Gallicus#Latin|Gallica]] [[wikt:en:differo#Latin|differunt]] [[wikt:en:consuetudo#Latin|consuetudine]]. **風習においては[[w:ガリア|ガッリア]](のそれ)から大して違わない。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:そのガッリアの風習については[[ガリア戦記_第6巻#ガッリア人の社会と風習について|第6巻]]で長大な説明が挿入される。)</span> :  ;   牧畜を営む内陸の住民の風習 *[[wikt:en:interior#Latin|Interiores]] [[wikt:en:plerique#Latin|plerique]] frumenta non [[wikt:en:sero#Etymology_1|serunt]], **内陸の多くの者たちは、[[w:穀物|穀物]]の種を播かない。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[ガリア戦記_第4巻#32節|第4巻32節]]には穀物の耕地をめぐる攻防について述べられているが、<br>    カンティウム以外の内陸の部族はこれに関与していないということか。)</span> *sed [[wikt:en:lac#Latin|lacte]] et [[wikt:en:caro#Latin|carne]] [[wikt:en:vivo#Latin|vivunt]] **けれども[[w:乳|乳]]と[[w:肉|肉]](を摂取すること)によって暮らしており、 *[[wikt:en:pellis#Latin|pellibus]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:vestio#Latin|sunt vestiti]]. **[[w:毛皮|獣皮]]を着ている。 :  {| class="wikitable" |- | style="vertical-align:top; text-align:left; width:15em;" |[[画像:Isatis tinctoria 2c.JPG|thumb|left|200px|[[w:ホソバタイセイ|ホソバタイセイ]](学名 [[w:la:Isatis tinctoria|Isatis tinctoria]])の黄色い花。]] | style="vertical-align:top; text-align:left; width:15em;" |[[画像:Isatis tinctoria 003.JPG|thumb|left|200px|ホソバタイセイから作られた藍色の染料。]] |} [[画像:Ancient Britons - Description of Great Britain and Ireland (c.1574), f.8v - BL Add MS 28330.jpg|thumb|right|200px|古代[[w:ブリトン|ブリタンニア人]]の武人の想像画(16世紀)。<br>右の男は藍色の染料で身を染めているが、左の男は[[w:入れ墨|入れ墨]]をしている。]] *Omnes vero se Britanni <u>vitro</u> [[wikt:en:inficio#Latin|inficiunt]], **実に[[w:ブリトン|ブリタンニア人]]は皆、<ruby><rb>[[w:ホソバタイセイ|大青]]</rb><rp>(</rp><rt>たいせい</rt><rp>)</rp></ruby> で身を染めていて、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:vitrum#Latin|vitrum]] は、「[[w:ガラス|ガラス]]」の意味で用いられることが多いが([[w:la:Vitrum|vitrum]])、<br>    <ruby><rb>[[w:ホソバタイセイ|細葉大青]]</rb><rp>(</rp><rt>ほそばたいせい</rt><rp>)</rp></ruby>という植物(学名 [[w:la:Isatis tinctoria|Isatis tinctoria]])<br>    またはそれから作られた青い染料を意味する。) *quod [[wikt:en:caeruleus#Latin|caeruleum]] [[wikt:en:efficio#Latin|efficit]] [[wikt:en:color#Latin|colorem]], **それは青みがかった色を生じるので、 *atque hoc <u>horridiores</u> sunt in pugna [[wikt:en:aspectus#Latin|a(d)spectu]]; **これによって、戦いにおいては見かけが非常に恐ろしいのである。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、&alpha;系写本では [[wikt:en:horridus#Latin|horridiores]] だが、<br>         &beta;系写本では [[wikt:en:horribilis#Latin|horribiliores]] となっている。)</span> *[[wikt:en:capillus#Latin|capillo]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:promitto#Latin|sunt promisso]] **髪の毛は伸びるにまかせていて、 *atque omni parte [[wikt:en:corpus#Latin|corporis]] [[wikt:en:rado#Latin|rasa]], praeter [[wikt:en:caput#Latin|caput]] et <u>labrum superius</u>. **頭部と<u>上唇</u>のあたりを除いて、体のすべての部位(の毛)を剃り落としている。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:labrum#Etymology_1|labrum]] [[wikt:en:superior#Latin|superius]]「上唇」。なお「下唇」は labrum [[wikt:en:inferior#Latin|īnferius]]。)</span> :  ;   [[w:一妻多夫制|一妻多夫制 (ポリアンドリー)]]?<ref>[[w:en:Polyandry#Europe]] を参照。</ref> *[[wikt:en:uxor#Latin|Uxores]] habent [[wikt:en:deni#Latin|deni]] [[wikt:en:duodeni#Latin|duodeni]]<nowiki>que</nowiki> inter se [[wikt:en:communis#Latin|communes]], **(ブリタンニアの男たちは)妻たちを互いに10人ずつや12人ずつが共有で<ruby><rb>娶</rb><rp>(</rp><rt>めと</rt><rp>)</rp></ruby>っており、 *et maxime [[wikt:en:frater#Latin|fratres]] cum fratribus [[wikt:en:parens#Latin|parentes]]<nowiki>que</nowiki> cum [[wikt:en:liber#Noun_5|liberis]]; **たいていは兄弟どうしや親子どうしが(妻を共有しているので)ある。 *sed qui sunt ex iis [[wikt:en:natus#Latin|nati]], **けれども、彼女たちから生まれた者〔こども〕たちは、 *eorum habentur [[wikt:en:liberi#Noun_2|liberi]], quo primum [[wikt:en:virgo#Latin|virgo]] [[wikt:en:quisque#Latin|quaeque]] [[wikt:en:deduco#Latin|deducta est]]. **処女めいめいが初めに娶られた者〔最初の夫〕の子どもたちと見なされているのである。 <!-- <span style="color:#009900;"></span> **:<span style="color:#009900;">(訳注: **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注: --> ===15節=== *<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/15節]] {{進捗|00%|2023-11-09}}</span> ;ブリタンニア勢がローマ陣営を襲撃 :  ;   ブリタンニア勢が、ローマ方の騎兵隊の行軍を襲うが、撃退されて山林に逃げ込む *[[wikt:en:eques#Latin|Equites]] hostium [[wikt:en:essedarius#Latin|essedarii]]<nowiki>que</nowiki> **敵方〔ブリタンニア勢〕の[[w:騎兵|騎兵]]たちと[[w:チャリオット|戦車兵]]たちは、 *acriter [[wikt:en:proelium#Latin|proelio]] cum [[wikt:en:equitatus#Latin|equitatu]] nostro in itinere [[wikt:en:confligo#Latin|conflixerunt]], **行軍中の我が方〔ローマ勢〕の騎兵隊と戦闘で激しく衝突した。 *(ita) tamen ut nostri omnibus partibus superiores fuerint **それでも結果として、我が方があらゆる面で上回り、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:ita は&beta;系写本の記述で、&alpha;系写本にはない。<br>    ita ... ut ~「(結果として)~ほどであった」。)</span> *atque eos in [[wikt:en:silva#Latin|silvas]] [[wikt:en:collis#Latin|colles]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:compello#Latin|compulerint]]; **彼ら〔ブリタンニア勢〕を山林に追い込んだ(ほどであった)。 :  *sed [[wikt:en:complures#Noun|compluribus]] [[wikt:en:interfectus#Latin|interfectis]] **だが(ブリタンニア勢の)多数の者たちを殺戮したが、 *[[wikt:en:cupide#Latin|cupidius]] [[wikt:en:insecutus#Latin|insecuti]] **より熱心に追撃して、 *[[wikt:en:nonnullus#Latin|non nullos]] ex suis [[wikt:en:amitto#Latin|amiserunt]]. **(ローマ勢は)味方のうちから若干の者を失った。 :  {| class="wikitable" |- | style="vertical-align:top; text-align:left;" |[[画像:Legionisci 2.jpg|thumb|left|400px|陣営の近くで歩哨に立つローマ軍団兵たち。]] |} ;   しばらく後でブリタンニア勢が、ローマ方が構築中の陣営に殺到 *At illi [[wikt:en:intermissus#Latin|intermisso]] [[wikt:en:spatium#Latin|spatio]], **だが、あの者ら〔ブリタンニア勢〕は時間を置いて、 *[[wikt:en:imprudens#Latin|imprudentibus]] nostris atque [[wikt:en:occupatus#Latin|occupatis]] in [[wikt:en:munitio#Latin|munitione]] castrorum, **我が方〔ローマ勢〕が予期せずに、[[w:カストラ|陣営]]の防備に従事しているときに、 *subito se ex [[wikt:en:silva#Latin|silvis]] [[wikt:en:eicio#Latin|eiecerunt]] **突如として森林から突進してきて、 *[[wikt:en:impetus#Latin|impetu]]<nowiki>que</nowiki> in eos [[wikt:en:factus#Latin|facto]], qui erant in [[wikt:en:statio#Latin|statione]] pro castris [[wikt:en:conlocatus#Latin|conlocati]], acriter [[wikt:en:pugno#Latin|pugnaverunt]], **陣営の前に[[w:歩哨|歩哨]]として配置されていた者たちに襲撃をしかけて、激しく戦った。 :  ;    カエサルが精鋭2個大隊を増援に繰り出す *[[wikt:en:duo#Latin|duabus]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:missus#Latin|missis]] [[wikt:en:subsidium#Latin|subsidio]] cohortibus a Caesare, **カエサルによって2個[[w:コホルス|歩兵大隊]]が増援として派遣され、 *atque iis primis [[wikt:en:legio#Latin|legionum]] [[wikt:en:duo#Latin|duarum]], **しかも彼らは(それぞれ)2個の軍団の第一(大隊)であり、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:各軍団の 第一<ruby><rb>[[w:コホルス|歩兵大隊]]</rb><rp>(</rp><rt>コホルス</rt><rp>)</rp></ruby>([[w:la:Cohors (pars legionis)|cohors]] primus)は、<br>    <ruby><rb>[[w:プリムス・ピルス|首位百人隊長]]</rb><rp>(</rp><rt>プリームスピールス</rt><rp>)</rp></ruby>(''[[w:en:Primus pilus|Primus pilus]]'')に率いられる最精鋭部隊であったと考えられている。)</span> *cum eae [[wikt:en:perexiguus#Latin|perexiguo]] [[wikt:en:intermissus#Latin|intermisso]] loci spatio inter se [[wikt:en:consto#Latin|constitissent]], **それら(の2個大隊)は非常に狭い場所の間隔を互いに置いて留まっていたが、 *[[wikt:en:novus#Latin|novo]] [[wikt:en:genus#Latin|genere]] pugnae [[wikt:en:perterritus#Latin|perterritis]] nostris **(ブリタンニア勢の)新奇な類いの戦いに我が方〔ローマ勢〕が動揺していたので、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:そのブリタンニア勢の戦い方については、次節([[#16節|16節]])で述べられる。)</span> *per [[wikt:en:medius#Latin|medios]] [[wikt:en:audacter#Latin|audacissime]] [[wikt:en:perrumpo#Latin|perruperunt]] **(敵勢は)非常に果敢にも(ローマ勢を)中央突破して、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:ローマ勢の2個大隊の間に突破可能な間隙があったということか。)</span> *seque [[wikt:en:inde#Latin|inde]] [[wikt:en:incolumis#Latin|incolumes]] [[wikt:en:recipio#Latin|receperunt]]. **そこから、無傷のままで引き返した。 :  *Eo die [[wikt:en:Quintus#Latin|Quintus]] [[wikt:en:Laberius#Latin|Laberius]] [[wikt:en:Durus#Latin|Durus]], [[wikt:en:tribunus#Latin|tribunus]] [[wikt:en:miles#Latin|militum]], [[wikt:en:interficio#Latin|interficitur]]. **その日に、<ruby><rb>[[w:トリブヌス・ミリトゥム|兵士長官]]</rb><rp>(</rp><rt>トリブーヌス・ミリトゥム</rt><rp>)</rp></ruby>であるクィーントゥス・ラベリウス・ドゥールスが討ち死にする。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:この ''[[w:en:Quintus Laberius Durus|Quintus Laberius Durus]]'' という人物はここで名が挙げられているだけだが、<br>    5世紀の史家 [[w:オロシウス|オロシウス]]([[w:la:Orosius|Orosius]])が「ラビエーヌス」と誤って伝え、<br>    「ラビエーヌス」と混同されたままで永く後世に語り継がれた。)</span> *Illi [[wikt:en:plus#Latin|pluribus]] [[wikt:en:submissus#Latin|submissis]] cohortibus [[wikt:en:repello#Latin|repelluntur]]. **あの者ら〔ブリタンニア勢〕は、増派された(ローマの)より多くの歩兵大隊によって撃退される。 <!-- <span style="color:#009900;"></span> **:<span style="color:#009900;">(訳注: **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注: --> ===16節=== *<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/16節]] {{進捗|00%|2023-11-16}}</span> ;ブリタンニア勢との戦術の優劣をカエサルが分析 *[[wikt:en:totus#Etymology_1|Toto]] hoc in [[wikt:en:genus#Latin|genere]] pugnae, **(ブリタンニア勢の)この戦いのやり方の全体について、 *cum sub [[wikt:en:oculus#Latin|oculis]] omnium ac pro castris [[wikt:en:dimico#Latin|dimicaretur]], **(ローマ勢の)皆の眼下でしかも[[w:カストラ|陣営]]の前で闘われたので、 *[[wikt:en:intellego#Latin|intellectum est]] **(以下のことが)理解された。 :  ;   ブリタンニア勢VSローマ重装歩兵 *nostros propter [[wikt:en:gravitas#Latin|gravitatem]] [[wikt:en:arma#Latin|armorum]], **我が方〔ローマ軍団兵〕は武具が重いことのゆえに、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:軍団の主力は[[w:重装歩兵|重装歩兵]]で、重い甲冑を装着して、重い盾などを持っていたので、<br>    甲冑のないブリタンニア兵より敏捷性に劣っていたであろう。)</span> *quod <u>neque</u> [[wikt:en:insequor#Latin|insequi]] [[wikt:en:cedens#Latin|cedentes]] possent <u>neque</u> ab [[wikt:en:signum#Latin|signis]] [[wikt:en:discedo#Latin|discedere]] [[wikt:en:audeo#Latin|auderent]], **退却する者たちを追撃すること<u>も</u>でき<u>なかったし</u>、軍旗のもとからあえて離れること<u>もしなかった</u>ので、 *minus [[wikt:en:aptus#Latin|aptos]] esse ad huius [[wikt:en:genus#Latin|generis]] hostem, **この類いの敵には、あまり相応しくないこと(が理解された)。 :  ;   ブリタンニア戦車兵VSローマ騎兵 *[[wikt:en:eques#Latin|equites]] autem magno cum [[wikt:en:periculum#Latin|periculo]] [[wikt:en:proelium#Latin|proelio]] [[wikt:en:dimico#Latin|dimicare]], **一方で(ローマ方の)[[w:騎兵|騎兵]]たちも、大きな危険とともに戦闘を闘っている。 *<u>propterea quod</u> illi etiam [[wikt:en:consulto#Adverb|consulto]] [[wikt:en:plerumque#Adverb|plerumque]] [[wikt:en:cedo#Latin|cederent]] **というのは、あの者ら〔ブリタンニア勢〕は、たいていは意図的にさえも退却して、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:<span style="font-size:15pt;"><u>[[ガリア戦記/用例集/変化しない副詞/propterea#proptereā_quod|proptereā quod]] ~</u></span>「というのは、~であるから」。)</span> *et, cum [[wikt:en:paulum#Etymology_1|paulum]] ab legionibus nostros [[wikt:en:removeo#Latin|removissent]], **我が方(の騎兵)を[[w:ローマ軍団|軍団]]からほんのわずかでも遠ざけるや、 *ex [[wikt:en:essedum#Latin|essedis]] [[wikt:en:desilio#Latin|desilirent]] et [[wikt:en:pes#Latin|pedibus]] [[wikt:en:dispar#Latin|dispari]] proelio [[wikt:en:contendo#Latin|contenderent]]. **[[w:チャリオット|戦車]]から跳び下りて、徒歩で非対称の格闘戦を闘っていたためである。 :  ;   ブリタンニア騎兵VSローマ騎兵 *[[wikt:en:equester#Adjective|Equestris]] autem [[wikt:en:proelium#Latin|proelii]] [[wikt:en:ratio#Latin|ratio]] **他方で、騎兵戦の戦法も、 *et [[wikt:en:cedens#Latin|cedentibus]] et [[wikt:en:insequens#Latin|insequentibus]] [[wikt:en:par#Adjective_2|par]] atque [[wikt:en:idem#Latin|idem]] [[wikt:en:periculum#Latin|periculum]] [[wikt:en:infero#Latin|inferebat]]. **(ローマ勢の)退却する者たちにも追撃する者たちにも等しく同様の危険をもたらしていた。 :  ;     ブリタンニア勢の兵力散開戦術 *[[wikt:en:accedo#Latin|Accedebat]] [[wikt:en:huc#Latin|huc]], **これに加えて、 *ut [[wikt:en:numquam#Latin|numquam]] [[wikt:en:confertus#Latin|conferti]], sed [[wikt:en:rarus#Latin|rari]] magnisque [[wikt:en:intervallum#Latin|intervallis]] [[wikt:en:proelior#Latin|proeliarentur]] **(ブリタンニア勢は)決して密集せずに、散らばって大きな間隔をとって戦っていた。 *[[wikt:en:statio#Latin|stationes]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:dispositus#Latin|dispositas]] haberent, **(彼らはいくつもの小さな)分遣隊を配置させており、 *atque alios alii [[wikt:en:deinceps#Adverb|deinceps]] [[wikt:en:excipio#Latin|exciperent]], **(散らばっていた分遣隊の)一方の者たちを他方の者たちが、次から次へと引き継いで、 *[[wikt:en:integer#Latin|integri]]<nowiki>que</nowiki> et [[wikt:en:recens#Latin|recentes]] [[wikt:en:defatigatus#Latin|defatigatis]] [[wikt:en:succedo#Latin|succederent]]. **無傷かつ<ruby><rb>潑剌</rb><rp>(</rp><rt>はつらつ</rt><rp>)</rp></ruby>とした者たちが(戦闘で)疲弊した者たちと交代していたのだ。 <!-- <span style="color:#009900;"></span> **:<span style="color:#009900;">(訳注: **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注: --> ===17節=== *<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/17節]] {{進捗|00%|2023-11-17}}</span> '''副官トレボーニウスが敵の奇襲を撃退''' *[[wikt:en:posterus#Latin|Postero]] die [[wikt:en:procul#Latin|procul]] a castris hostes in collibus [[wikt:en:constiterunt|constiterunt]] **翌日に、敵勢は(ローマ方の)[[w:カストラ|陣営]]から遠くに、丘に留まって、 *[[wikt:en:rarus#Latin|rari]]<nowiki>que</nowiki> se [[wikt:en:ostendo#Latin|ostendere]] **まばらに自らの姿を見せ(始め)、 *et [[wikt:en:lene#Adverb|lenius]] quam [[wikt:en:pridie#Latin|pridie]] **前日よりも穏やかに *nostros equites proelio [[wikt:en:lacesso#Latin|lacessere]] [[wikt:en:coepi#Latin|coeperunt]]. **我が方〔ローマ方〕の騎兵たちに戦闘を挑み始めた。 :  *Sed [[wikt:en:meridie|meridie]], **けれども、正午頃に、 *cum Caesar [[wikt:en:pabulor#Latin|pabulandi]] causa tres legiones atque omnem [[wikt:en:equitatus#Latin|equitatum]] cum [[wikt:en:Gaius#Latin|Gaio]] [[wikt:en:Trebonius#Latin|Trebonio]] legato [[wikt:en:mitto#Latin|misisset]], **カエサルが糧秣徴発のために3個[[w:ローマ軍団|軍団]]と全騎兵隊を[[w:レガトゥス|副官]]の[[w:ガイウス・トレボニウス|ガーイウス・トレボーニウス]]とともに派遣したときに、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:ガーイウス・トレボーニウス ( ''[[w:en:Gaius Trebonius|Gaius Trebonius]]'' ) は、前年([[w:紀元前55年|前55年]])の[[w:護民官|護民官]]で、<br>    執政官[[w:グナエウス・ポンペイウス|ポンペイウス]]と[[w:マルクス・リキニウス・クラッスス|クラッスス]]にカエサルと同様の5年間にわたる属州総督の地位を認める<br>    トレボーニウス法 ( ''[[w:en:Lex Trebonia (55 BC)|Lex Trebonia]]'' ) を[[w:トリブス民会|民会]]で可決させた。<br>    この年([[w:紀元前54年|前54年]])からカエサルの副官として、ブリタンニアやガッリアを転戦する。)</span> *[[wikt:en:repente#Latin|repente]] ex omnibus partibus ad [[wikt:en:pabulator#Latin|pabulatores]] [[wikt:en:advolo#Latin|advolaverunt]], **(敵勢は)突如としてあらゆる方向から糧秣徴発の者たちの方へ突進して来たので、 *[[wikt:en:sic#Latin|sic]] uti ab [[wikt:en:signum#Latin|signis]] legionibusque non [[wikt:en:absisto#Latin|absisterent]]. **(その結果として)軍旗や軍団から付き離れなかったほどであった。 :  *Nostri [[wikt:en:acriter#Latin|acriter]] in eos [[wikt:en:impetus#Latin|impetu]] [[wikt:en:factus#Latin|facto]] [[wikt:en:repello#Latin|reppulerunt]] **我が方〔ローマ勢〕は彼ら〔ブリタンニア勢〕の中に激しく突撃をして撃退し、 *neque finem [[wikt:en:sequor#Latin|sequendi]] [[wikt:en:facio#Latin|fecerunt]], **際限なく追撃を実行して、 *[[wikt:en:quoad#Latin|quo&lt;a&gt;d]] [[wikt:en:subsidium#Latin|subsidio]] [[wikt:en:confisus#Latin|confisi]] equites, cum post se legiones [[wikt:en:video#Latin|viderent]], **[[w:騎兵|騎兵]]たちは、己が後方に諸軍団を見ていたので、増援を信頼しており、 *[[wikt:en:praeceps#Latin|praecipites]] hostes [[wikt:en:ago#Latin|egerunt]] **とんぼ返りした<ref>英訳''head over heels''[https://babel.hathitrust.org/cgi/pt?id=hvd.hn1tp9&seq=424]、もんどり打った。</ref>敵勢を追って、 *magnoque eorum numero [[wikt:en:interfectus#Latin|interfecto]] **彼ら〔ブリタンニア勢〕の多数を殺戮して、 *neque sui [[wikt:en:colligendi|colligendi]] **(敵が)味方を集めることの(機会)も、 *neque [[wikt:en:consistendi|consistendi]] aut ex [[wikt:en:essedum#Latin|essedis]] [[wikt:en:desiliendi|desiliendi]] facultatem [[wikt:en:do#Latin|dederunt]]. **踏み止まることの、あるいは[[w:チャリオット|戦車]]から跳び下りることの機会も与えなかった。 :  *Ex hac fuga [[wikt:en:protinus#Latin|protinus]], **この敗走から直ちに、 *quae [[wikt:en:undique#Latin|undique]] [[wikt:en:convenio#Latin|convenerant]], auxilia [[wikt:en:discedo#Latin|discesserunt]], **至る所から集結していた(ブリタンニア勢の)援軍は退散した。 *neque post id [[wikt:en:tempus#Latin|tempus]] [[wikt:en:umquam#Latin|umquam]] summis [[wikt:en:nobiscum#Latin|nobiscum]] copiis hostes [[wikt:en:contendo#Latin|contenderunt]]. **その時以後、敵勢は決して我が方〔ローマ勢〕と総勢をあげて闘うことはなかった。 <!-- <span style="color:#009900;"></span> **:<span style="color:#009900;">(訳注: **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注: --> ===18節=== *<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/18節]] {{進捗|00%|2023-11-26}}</span> [[画像:Map of the Territory of the Catuvellauni.svg|thumb|right|後にカトゥウェッラウニー族([[w:la:Catuvellauni|Catuvellauni]])として知られることになる部族の推定される版図<br>(地図の<span style="color:red;">赤い部分</span>)。<hr>イングランド[[w:サウス・イースト・イングランド|南東部]]などのうち、[[w:グレーター・ロンドン|大ロンドン]]の北に隣接していた旧[[w:ミドルセックス|ミドルセックス州]](現在の[[w:ハートフォードシャー|ハートフォードシャー州]]辺り)、北西に広がる[[w:バッキンガムシャー|バッキンガムシャー州]]などを含む。<hr>カエサルは[[w:カッシウェラウヌス|カッスィウェッラウヌス]]の出身部族についても、上の部族名にも言及していないが、やがてローマ帝国軍と戦うことになる、その部族が該当すると考えられている。]] '''タメスィス川を渡河''' *Caesar, [[wikt:en:cognitus#Latin|cognito]] consilio eorum, **カエサルは、彼らの方策を知ると、 *ad flumen [[wikt:en:Tamesim|Tamesim]] in fines [[wikt:en:Cassivellaunus#Latin|Cassivellauni]] **[[w:カッシウェラウヌス|カッスィウェッラウヌス]]の領土にあるタメスィス川のたもとへ **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:タメスィス川 [[w:la:Tamesis (fluvius)|Tamesis]] は、現在の[[w:テムズ川|テムズ川]]。)</span> *exercitum [[wikt:en:duco#Latin|duxit]]; **軍隊を率いて行った。 *quod flumen uno [[wikt:en:omnino#Latin|omnino]] loco [[wikt:en:pes#Latin|pedibus]], atque [[wikt:en:hoc#Etymology_3|hoc]] [[wikt:en:aegre#Latin|aegre]], [[wikt:en:transeo#Latin|transiri]] potest. **その川は、たった一か所、徒歩で、しかもこの所で辛うじて渡ることができる。 {| class="wikitable" |- | style="vertical-align:top; text-align:left;" |[[画像:River_Thames_at_Kingston.JPG|thumb|left|400px|現在の[[w:グレーター・ロンドン|大ロンドン]]の南西部、キングストン([[w:en:Kingston_upon_Thames|Kingston]])を流れるテムズ川。カエサルとローマ軍が渡河したのはここか、やや上流のハリフォード([[w:en:Upper_Halliford|Halliford]])辺りと推定されている。]] |} :  *[[wikt:en:eo#Etymology_3_2|Eo]] cum [[wikt:en:venio#Latin|venisset]], **(カエサルが)そこにやって来たときに、 *animum [[wikt:en:adverto#Latin|advertit]] ad [[wikt:en:alter#Latin|alteram]] fluminis [[wikt:en:ripa#Latin|ripam]] magnas esse copias hostium [[wikt:en:instructus#Latin|instructas]]. **川のもう一方の岸のところへ敵の大軍勢が布陣していることに気が付いた。 :  *[[wikt:en:ripa#Latin|Ripa]] [[wikt:en:autem#Latin|autem]] erat [[wikt:en:acutus#Latin|acutis]] [[wikt:en:sudis#Latin|sudibus]] [[wikt:en:praefixus#Latin|praefixis]] munita, **川岸はさらに、鋭利かつ前に打ち付けられた杭で(すでに)防備されていて、 *[[wikt:en:idem#Latin|eiusdem]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:genus#Latin|generis]] sub [[wikt:en:aqua#Latin|aqua]] [[wikt:en:defixus#Latin|defixae]] [[wikt:en:sudis#Latin|sudes]] flumine [[wikt:en:tego#Latin|tegebantur]]. **同じ種類の杭が水の下に打ち込まれて、川面で覆われていた。 :  *His rebus [[wikt:en:cognitus#Participle|cognitis]] a [[wikt:en:captivus#Noun|captivis]] [[wikt:en:perfuga#Latin|perfugis]]<nowiki>que</nowiki> **これらの事情を捕虜たちや脱走兵たちから知ると、 *Caesar [[wikt:en:praemissus#Latin|praemisso]] [[wikt:en:equitatus#Latin|equitatu]] **カエサルは[[w:騎兵|騎兵隊]]を先遣して、 *[[wikt:en:confestim#Latin|confestim]] legiones [[wikt:en:subsequor#Latin|subsequi]] [[wikt:en:iubeo#Latin|iussit]]. **直ちに[[w:ローマ軍団|軍団]]に追随することを命じた。 :  *Sed ea [[wikt:en:celeritas#Latin|celeritate]] atque eo [[wikt:en:impetus#Latin|impetu]] milites [[wikt:en:eo#Latin|ierunt]], **けれども、(軍団の)兵士たちは速やかに突進して行ったので、 *cum [[wikt:en:caput#Latin|capite]] [[wikt:en:solus#Latin|solo]] ex aqua [[wikt:en:exstarent|ex(s)tarent]], **水から頭だけしか突き出ていなかったのに、 *ut hostes [[wikt:en:impetus#Latin|impetum]] legionum atque [[wikt:en:eques#Latin|equitum]] [[wikt:en:sustineo#Latin|sustinere]] non possent **結果として、敵勢は(ローマ勢の)軍団と騎兵の突撃を持ちこたえることができずに、 *[[wikt:en:ripa#Latin|ripas]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:dimitto#Latin|dimitterent]] ac se [[wikt:en:fuga#Latin|fugae]] [[wikt:en:mando#Latin|mandarent]]. **川岸を放棄して逃亡に身を委ねたのだ。 {| class="wikitable" |- | style="vertical-align:top; text-align:left;" |[[画像:Brentford Monument.04112011129.jpg|thumb|right|400px|ロンドン西部の[[w:ブレントフォード|ブレントフォード]]にある記念碑。<br>"''B.C. 54 at this ancient fortified ford, the British tribesmen under Cassivellaunus bravely opposed Julius Caesar on his march to Verulamium.''"<br>([[w:紀元前54年|紀元前54年]]、この古代の要塞化された浅瀬で、[[w:カッシウェラウヌス|カッスィウェッラウヌス]]麾下の[[w:ブリトン人|ブリテン部族民]]が、ウェルラミウム<ref>ウェルラミウム(''[[w:en:Verulamium|Verulamium]]'')は、[[w:カッシウェラウヌス|カッスィウェッラウヌス]]の部族の城塞都市。</ref>へ行軍する途上のユーリウス・カエサルに勇敢に立ち向かった。)<br>と刻まれている。]] |} <!-- <span style="color:#009900;"></span> **:<span style="color:#009900;">(訳注: **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注: --> ===19節=== *<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/19節]] {{進捗|00%|2023-11-27}}</span> [[画像:Boxhill_surrey_viewfromtop.jpg|thumb|right|200px|テムズ川上流地域に広がる森林と平原]] [[画像:North_downs_way_seen_from_puttenham.jpg|thumb|right|200px|同じくテムズ川上流地域の森林から平原を眺める]] '''カッスィウェッラウヌスの戦車隊とローマ騎兵の交戦''' *[[wikt:en:Cassivellaunus#Latin|Cassivellaunus]], ut supra [[wikt:en:demonstro#Latin|demonstravimus]], **[[w:カッシウェラウヌス|カッスィウェッラウヌス]]は、前に説明したように、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[#17節|17節]]末で、総勢をあげて戦うことはなかったとある。)</span> *omni [[wikt:en:depositus#Latin|deposita]] spe [[wikt:en:contentio#Latin|contentionis]], **格闘戦のすべての望みを放棄して、 *[[wikt:en:dimissus#Latin|dimissis]] [[wikt:en:amplus#Latin|amplioribus]] copiis, **軍勢の大半を解散させて、 *milibus circiter quattuor(IV) [[wikt:en:essedarius#Latin|essedariorum]] [[wikt:en:relictus#Latin|relictis]], **[[w:チャリオット|戦車]]兵の約4000名(だけ)を(手勢として)残した。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:馬二頭立ての[[w:チャリオット|戦車]]4000両を動員するには、<br>    当時のブリテン島で[[w:ポニー|ポニー]]8000頭を必要とするが、<br>    それほどの馬匹を準備できたのか疑問視する見解もある<ref>[[ガリア戦記/注解編#Goldsworthy_(2006)|エイドリアン・ゴールズワーシー著『カエサル(下)』]]を参照。</ref>。<br>     さらに、戦車の御者も4000名ほど必要だったので、<br>    かなりの兵員数になる。)</span> *itinera nostra [[wikt:en:servo#Latin|servabat]] **我が方〔ローマ勢〕の行軍を監視して、 *[[wikt:en:paulum#Adverb|paulum]]<nowiki>que</nowiki> ex via [[wikt:en:excedo#Latin|excedebat]] **道からわずかに離れて行き、 *locisque [[wikt:en:impeditus#Latin|impeditis]] ac [[wikt:en:silvestris#Latin|silvestribus]] sese [[wikt:en:occulto#Latin|occultabat]], **通りにくい森林地帯に身を隠していた。 *atque iis regionibus, quibus nos iter [[wikt:en:facturus#Latin|facturos]] [[wikt:en:cognosco#Latin|cognoverat]], **さらに、我が方〔ローマ勢〕が行軍しようとしていることを知っていた地域に *[[wikt:en:pecus#Latin|pecora]] atque homines ex agris in [[wikt:en:silva#Latin|silvas]] [[wikt:en:compello#Latin|compellebat]] **家畜や人々を平原から森の中に追い込んだ。 *et, cum [[wikt:en:equitatus#Etymology_1|equitatus]] noster [[wikt:en:libere#Adverb_2|liberius]] [[wikt:en:praedor#Latin|praedandi]] [[wikt:en:vasto#Latin|vastandi]]<nowiki>que</nowiki> causa se in agros <u>eiecerat</u><!--effunderet-->, **我が方〔ローマ勢〕の騎兵隊が、節度なく略奪することや荒らすことのために耕地の中に殺到していたときに、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、&alpha;系写本では [[wikt:en:eicio#Latin|eiecerat]] だが、<br>         &beta;系写本では [[wikt:en:effundo#Latin|effunderet]] となっている。)</span> *omnibus viis ([[wikt:en:notus#Latin|notis]]) [[wikt:en:semita#Latin|semitis]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:essedarius#Latin|essedarios]] ex silvis [[wikt:en:emitto#Latin|emittebat]] **森から、すべての(知られている)道や小道により戦車兵を送り出しており、 *et magno cum periculo nostrorum [[wikt:en:eques#Latin|equitum]] cum iis [[wikt:en:confligo#Latin|confligebat]] **大きな危険を伴って我が方〔ローマ勢〕の[[w:騎兵|騎兵]]と激突していた。 *atque hoc [[wikt:en:metus#Latin|metu]] [[wikt:en:late#Latin|latius]] [[wikt:en:vagor#Latin|vagari]] [[wikt:en:prohibeo#Latin|prohibebat]]. **さらに、この恐怖感によって(ローマ勢が)より広範囲に彷徨することを妨げていた。 :  *[[wikt:en:relinquo#Latin|Relinquebatur]] ut **その結果、(ローマ勢に)残されていたのは、 *neque [[wikt:en:longe#Latin|longius]] ab [[wikt:en:agmen#Latin|agmine]] legionum [[wikt:en:discedo#Latin|discedi]] Caesar pateretur, **(騎兵が)[[w:ローマ軍団|軍団]]の行軍隊列からより遠くに離れることをカエサルが許容していなかったこと、 *et <u>tantum</u> [in] agris [[wikt:en:vastandus#Latin|vastandis]] [[wikt:en:incendium#Latin|incendiis]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:faciendus|faciendis]] hostibus [[wikt:en:noceo#Latin|noceretur]], <br><u>quantum</u> &lt;in&gt; labore atque [[wikt:en:iter#Latin|itinere]] [[wikt:en:legionarius#Latin|legionarii]] milites [[wikt:en:efficio#Latin|efficere]] poterant. **軍団の兵士たちが作業や行軍によって達成できる限りの程度で、<br>耕地を荒らしたり焼き討ちしたりすることによって敵に害をなすこと、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:tantum#Adverb|tantum]] ~ [[wikt:en:quantum#Latin|quantum]] ・・・「・・・限り~」(英訳 ''so much as'')。)</span> <!-- <span style="color:#009900;"></span> **:<span style="color:#009900;">(訳注: **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注: --> ===20節=== *<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/20節]] {{進捗|00%|2023-11-28}}</span> '''トリノウァンテース族とマンドゥブラキウス青年がカエサルに降る''' {{Wikipedia|la:Trinovantes}} *Interim <u>Trinovantes</u>, prope [[wikt:en:firmissimus|firmissima]] earum regionum civitas, **その間に、その地方のほぼ最強の部族である[[w:トリノヴァンテス族|トリノウァンテース族]]といえば、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:部族名は、&alpha;系写本では [[wikt:en:Trinobantes#Latin|Trinobantēs]] トリノバンテース、<br>         &beta;系写本では [[wikt:en:Trinovantes#Latin|Trinovantēs]] トリノウァンテース、となっている。)</span> *ex qua [[wikt:en:Mandubracius#Latin|Mandubracius]] adulescens Caesaris [[wikt:en:fides#Latin|fidem]] [[wikt:en:secutus#Latin|secutus]] ad eum in continentem [Galliam] venerat, **その内のマンドゥブラキウス青年がカエサルの保護を得ようとして大陸[ガッリア]の彼のところへ来ていた。 *── cuius pater [Inianuvetitius] in ea civitate [[wikt:en:regnum#Latin|regnum]] [[wikt:en:obtineo#Latin|obtinuerat]] **──その者の父[イニアヌウェティティウス]はその部族で王位に就いていたが、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:父王の名は、&beta;系写本の一部 (&rho;&middot;V) に Inianuvetitius, Inianuvetutus などとあり、<br>    <big>''[[w:en:Imanuentius|Imanuentius]]''</big> (イマヌエンティウス)、''*Mannuētios'' (マンヌエーティオス) などと<br>    推定されているが、近代の校訂者の多くは、後世の加筆として省いている。)</span> *interfectusque erat a [[wikt:en:Cassivellaunus#Latin|Cassivellauno]], **[[w:カッシウェラウヌス|カッスィウェッラウヌス]]によって殺害されており、 *ipse fuga mortem [[wikt:en:vito#Latin|vitaverat]], ── **(マンドゥブラキウス)自身は逃亡により死をまぬがれていた。── [[画像:Map of the Territory of the Trinovantes.svg|thumb|right|200px|'''[[w:トリノヴァンテス族|トリノウァンテース族]]'''の版図と推定されている領域。<hr>&nbsp;現在の[[w:イースト・オブ・イングランド|イングランド東部地方]]のうち、[[w:エセックス|エセックス州]]東部から[[w:サフォーク|サフォーク州]]南部、[[w:ハートフォードシャー|ハートフォードシャー州]]や[[w:グレーター・ロンドン|大ロンドン]]の一部に及んだと考えられている。]] *legatos ad Caesarem [[wikt:en:mitto#Latin|mittunt]] **(そこでトリノウァンテース族は)使節たちをカエサルのところへ派遣して、 *[[wikt:en:polliceor#Latin|pollicentur]]<nowiki>que</nowiki> sese ei [[wikt:en:dediturus#Latin|dedituros]] atque [[wikt:en:imperatum#Noun|imperata]] [[wikt:en:facturus#Latin|facturos]]; **彼〔カエサル〕に投降するであろう、かつ命令されたことを行なうであろう、と約束して、 *[[wikt:en:peto#Latin|petunt]], ut Mandubracium ab [[wikt:en:iniuria#Latin|iniuria]] [[wikt:en:Cassivellaunus#Latin|Cassivellauni]] [[wikt:en:defendo#Latin|defendat]] **マンドゥブラキウスをカッスィウェッラウヌスの無法から守るように請願し、 *atque in civitatem [[wikt:en:mitto#Latin|mittat]], qui [[wikt:en:praesum#Latin|praesit]] imperiumque [[wikt:en:obtineo#Latin|obtineat]]. **さらに、指揮しかつ統治を司らせるために部族国家へ送還するように(請願する)。 :  *His Caesar [[wikt:en:impero#Latin|imperat]] obsides XL([[wikt:en:quadraginta#Latin|quadraginta]]) frumentumque exercitui, **彼らに、カエサルは、人質40名および軍隊のための糧食(の供出)を命令して、 *Mandubraciumque ad eos [[wikt:en:mitto#Latin|mittit]]. **マンドゥブラキウスを彼らのところへ送った。 :  *Illi imperata celeriter fecerunt, **あの者らは、命令されたことを速やかに行なって、 *obsides ad numerum frumentumque [[wikt:en:mitto#Latin|miserunt]]. **(指示された)数どおりの人質と糧食を(カエサルのところへ)送った。 <!-- <span style="color:#009900;"></span> **:<span style="color:#009900;">(訳注: **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注: --> ===21節=== *<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/21節]] {{進捗|00%|2023-12-06}}</span> '''諸部族の投降、城塞都市の陥落''' *[[wikt:en:Trinovantes#Latin|Trinovantibus]] [[wikt:en:defensus#Latin|defensis]] **[[w:トリノヴァンテス族|トリノウァンテース族]]が(カエサルにより)守られて、 *atque ab omni militum [[wikt:en:iniuria#Latin|iniuria]] [[wikt:en:prohibitus#Latin|prohibitis]] **兵士によるあらゆる<ruby><rb>狼藉</rb><rp>(</rp><rt>ろうぜき</rt><rp>)</rp></ruby>が禁じられたので、 *Cenimagni, [[wikt:en:Segontiaci#Latin|Segontiaci]], [[wikt:en:Ancalites#Latin|Ancalites]], [[wikt:en:Bibroci#Latin|Bibroci]], [[wikt:en:Cassi#Latin|Cassi]] **ケニマグニー族、セゴンティアキー族、アンカリテース族、ビブロキー族、カッスィー族が、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:ケニマグニー ''[[wikt:en:Cenimagni#Latin|Cenimagni]]'' は、[[w:イケニ族|イケーニー族]] [[w:la:Iceni|Iceni]] の支族で、<br>    ケノマーニー ''[[wikt:en:Cenomani#Latin|Cenomānī]]'' という名ではないかとも考えられている。) *legationibus [[wikt:en:missus#Latin|missis]] sese Caesari [[wikt:en:dedo#Latin|dedunt]]. **使節たちを派遣して、カエサルに投降した。 :  *Ab his [[wikt:en:cognosco#Latin|cognoscit]] **(カエサルが)彼らから知ったことには、 *non longe ex eo loco oppidum Cassivellauni [[wikt:en:absum#Latin|abesse]] **[[w:カッシウェラウヌス|カッスィウェッラウヌス]]の<ruby><rb>[[w:オッピドゥム|城塞都市]]</rb><rp>(</rp><rt>オッピドゥム</rt><rp>)</rp></ruby>は、その場からあまり遠くに離れてはおらず、 *silvis [[wikt:en:palus#Latin|paludibus]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:munitus#Latin|munitum]], **森林と沼地によって守られており、 *quo satis magnus hominum pecorisque numerus [[wikt:en:convenio#Latin|convenerit]]. **そこへは、人々と家畜の十分に多くの数が集まっていた(ということである)。 :  *Oppidum autem Britanni [[wikt:en:voco#Latin|vocant]], **また、[[w:ブリトン|ブリタンニア人]]が<ruby><rb>[[w:オッピドゥム|城塞都市]]</rb><rp>(</rp><rt>オッピドゥム</rt><rp>)</rp></ruby>と呼んでいるのは、 *cum silvas [[wikt:en:impeditus#Latin|impeditas]] [[wikt:en:vallum#Latin|vallo]] atque fossa [[wikt:en:munio#Latin|munierunt]], **通りにくい森を防柵と[[w:堀|堀]]で防備したゆえであり、 *quo [[wikt:en:incursio#Latin|incursionis]] hostium [[wikt:en:vitandus#Latin|vitandae]] causa [[wikt:en:convenio#Latin|convenire]] [[wikt:en:consuesco#Latin|consuerunt]]. **そこへは、(彼らの)敵による突撃を避けることのために集まるのが常であった。 :  *Eo [[wikt:en:proficiscor#Latin|proficiscitur]] cum legionibus: *(カエサルは)そこに[[w:ローマ軍団|軍団]]とともに出発して、 *locum [[wikt:en:reperio#Latin|reperit]] [[wikt:en:egregie#Latin|egregie]] natura atque [[wikt:en:opus#Latin|opere]] [[wikt:en:munitus#Latin|munitum]]; **見事に自然と堡塁によって防備されていた場所を見出した。 *tamen hunc duabus ex partibus [[wikt:en:oppugno#Latin|oppugnare]] [[wikt:en:contendo#Latin|contendit]]. **それでも、これを2つの方面から攻囲することに努めた。 :  *Hostes [[wikt:en:paulisper#Latin|paulisper]] [[wikt:en:moratus#Participle|morati]] **敵は、しばらく留まったが、 *militum nostrorum [[wikt:en:impetus#Latin|impetum]] non [[wikt:en:fero#Latin|tulerunt]] **我が方〔ローマ勢〕の兵士の突撃に耐えられず、 *seseque alia ex parte oppidi [[wikt:en:eicio#Latin|eiecerunt]]. **城塞都市の他の方面から急ぎ出て行った。 :  *Magnus ibi numerus [[wikt:en:pecus#Latin|pecoris]] [[wikt:en:repertus#Latin|repertus]], **そこでは、多数の家畜が見出された。 *multique in fuga sunt [[wikt:en:comprehensus#Latin|comprehensi]] atque [[wikt:en:interfectus#Latin|interfecti]]. **(敵の)多くは逃亡中に捕捉されて、殺戮された。 {| class="wikitable" |- ! colspan="2" | Devil's Dyke(魔物の堤防) |- | style="vertical-align:top; text-align:left;" |[[画像:Devil's_Dyke_Hertfordshire_sign.jpg|thumb|left|300px|カエサルがカッスィウェッラウヌスを破ったと推定される城砦跡の記念碑。 ]] | style="vertical-align:top; text-align:left;" |[[画像:Devil's_Dyke_Hertfordshire_(2).jpg|thumb|left|400px|左と同じカッスィウェッラウヌス城砦跡の一部分]] |- | colspan="2" | '''デヴィルス・ダイク'''([[w:en:Devil's Dyke, Hertfordshire|Devil's Dyke]])は、カエサルが[[w:カッシウェラウヌス|カッスィウェッラウヌス]]を打ち負かした鉄器時代の城砦の遺構と考えられている。<br> [[w:イースト・オブ・イングランド|イングランド東部]]の[[w:ハートフォードシャー|ハートフォードシャー州]]の[[w:シティ・オブ・セント・オールバンズ|シティ・オブ・セント・オールバンズ]]地区のホイートハムステッド([[w:en:Wheathampstead|Wheathampstead]])という集落の東の端にある。 |} <!-- <span style="color:#009900;"></span> **:<span style="color:#009900;">(訳注: **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注: --> ===22節=== *<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/22節]] {{進捗|00%|2023-12-14}}</span> '''カンティウム勢による急襲、カッスィウェッラウヌスの降伏''' *Dum haec in his locis [[wikt:en:gero#Latin|geruntur]], **これらのこと<small>〔カエサルとの戦闘〕</small>がこの地で行なわれている間に、 *[[wikt:en:Cassivellaunus#Latin|Cassivellaunus]] ad [[wikt:en:Cantium#Latin|Cantium]], **[[w:カッシウェラウヌス|カッスィウェッラウヌス]]は<u>カンティウム</u>へ、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:カンティウム [[w:la:Cantium|Cantium]] は、現在の[[w:ケント (イングランド)|ケント州]]にほぼ相当する。)</span> *quod esse ad mare supra [[wikt:en:demonstro#Latin|demonstravimus]], **──それ〔カンティウム地方〕が海辺にあることは、前述した通りであるが、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:地理的説明の[[#14節|14節]]で、沿海部であることが述べられた。)</span> *quibus regionibus [[wikt:en:quattuor#Latin|quattuor]] [[wikt:en:rex#Latin|reges]] [[wikt:en:praesum#Latin|praeerant]], <u>[[wikt:en:Cingetorix#Latin|Cingetorix]]</u>, [[wikt:en:Carvilius#Etymology_2|Carvilius]], [[wikt:en:Taximagulus#Latin|Taximagulus]], [[wikt:en:Segovax#Latin|Segovax]], **その地方は4人の王、<u>キンゲトリークス</u>、カルウィリウス、タクスィマグルス、セゴウァクスが支配していたが、── **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:''[[w:en:Cingetorix (Briton)|Cingetorix]]'' という名は、[[#3節|3節]]~[[#4節|4節]]で述べられたトレーウェリー族の ''[[w:en:Cingetorix (Gaul)|Cingetorix]]'' と同名であり、<br>    ケルト語系の名前であるから、両者がケルト系であることを示唆している。<br>    同様に、カッスィウェッラウヌスにも、類似の名の武将が後出する。)</span> *nuntios [[wikt:en:mitto#Latin|mittit]] atque iis [[wikt:en:impero#Latin|imperat]], **(カッスィウェッラウヌスは彼らに)伝令たちを派遣して、彼らに(次のように)命令した。 *uti [[wikt:en:coactus#Latin|coactis]] omnibus copiis castra [[wikt:en:navalis#Latin|navalia]] <u>de improviso</u> [[wikt:en:adorior#Latin|adoriantur]] atque [[wikt:en:oppugno#Latin|oppugnent]]. **すべての軍勢を徴集して、(ローマ軍の)船舶用の陣営を不意に襲撃して攻囲するようにと。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:dē [[wikt:en:improvisum#Noun|imprōvīsō]]「不意に、思いがけずに」[[ガリア戦記_第2巻#3節|第2巻3節]]で既出。)</span> [[画像:Campagne Bretagne -54.png|thumb|right|250px|カエサルの第二次ブリタンニア遠征の経路(再掲)。左上の赤い×印の地でカエサルと戦っている間に、カンティウム勢が右下の赤い■印の地を急襲した。]] :  *Ii cum ad castra venissent, **彼ら〔カンティウム勢〕が陣営のそばへ来ていたときに、 *nostri [[wikt:en:eruptio#Latin|eruptione]] [[wikt:en:factus#Latin|facta]] **我が方〔ローマ勢〕は、突撃をして、 *multis eorum [[wikt:en:interfectus#Latin|interfectis]], **彼ら〔カンティウム勢〕の多くが殺戮されて、 *[[wikt:en:captus#Participle|capto]] etiam [[wikt:en:nobilis#Latin|nobili]] [[wikt:en:dux#Latin|duce]] [[wikt:en:Lugotorix#Latin|Lugotorige]] **高名な将帥であるルグトリークスさえも捕らえられると、 *suos [[wikt:en:incolumis#Latin|incolumes]] [[wikt:en:reduco#Latin|reduxerunt]]. **配下の者たちを無傷のままで撤収させた。 :  '''カッスィウェッラウヌスの降伏''' *Cassivellaunus, hoc [[wikt:en:proelium#Latin|proelio]] [[wikt:en:nuntiatus#Latin|nuntiato]], **カッスィウェッラウヌスはこの戦闘を報告されると、 *[[wikt:en:tot#Latin|tot]] [[wikt:en:detrimentum#Latin|detrimentis]] [[wikt:en:acceptus#Latin|acceptis]], **これほど多くの損害を受け、 *[[wikt:en:vastatus#Latin|vastatis]] finibus, **領土が荒廃させられて、 *maxime etiam [[wikt:en:permotus#Latin|permotus]] [[wikt:en:defectio#Latin|defectione]] civitatum, **とりわけ諸部族の離反<small>〔カエサルへの投降〕</small>にさえも動揺させられて、 *legatos per [[wikt:en:Atrebas#Latin|Atrebatem]] [[wikt:en:Commius#Latin|Commium]] de [[wikt:en:deditio#Latin|deditione]] ad Caesarem mittit. **アトレバーテース族の[[w:コンミウス|コンミウス]]を介して、降伏についての使節たちをカエサルのところへ派遣した。 :  *Caesar, **カエサルは、 *cum [[wikt:en:constituo#Latin|constituisset]] [[wikt:en:hiemo#Latin|hiemare]] in continenti propter [[wikt:en:repentinus#Latin|repentinos]] Galliae [[wikt:en:motus#Noun_2|motus]], **──[[w:ガリア|ガッリア]]での予期せぬ動乱のゆえに、大陸において越冬することを決めていたので、 *neque multum [[wikt:en:aestas#Latin|aestatis]] [[wikt:en:supersum#Latin|superesset]], **夏季の多くは残っていなかったし、 *atque id facile [[wikt:en:extraho#Latin|extrahi]] posse [[wikt:en:intellego#Latin|intellegeret]], **それは容易に長引かせられると認識していたので、── *[[wikt:en:obses#Latin|obsides]] [[wikt:en:impero#Latin|imperat]], **人質(の供出)を命令して、 *et quid in annos singulos [[wikt:en:vectigal#Latin|vectigalis]] populo Romano Britannia [[wikt:en:pendo#Latin|penderet]] [[wikt:en:constituo#Latin|constituit]]; **各年にどれほどの貢納をローマ人民に対して[[w:ブリタンニア|ブリタンニア]]が支払うかを決めて、 *[[wikt:en:interdico#Latin|interdicit]] atque [[wikt:en:impero#Latin|imperat]] Cassivellauno, ne [[wikt:en:Mandubracius#Latin|Mandubracio]] neu [[wikt:en:Trinobantes#Latin|Trinovantibus]] [[wikt:en:noceo#Latin|noceat]]. **カッスィウェッラウヌスに、マンドゥブラキウスをも[[w:トリノヴァンテス族|トリノウァンテース族]]をも害さないように禁止命令を出した。 <!-- <span style="color:#009900;"></span> **:<span style="color:#009900;">(訳注: **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注: --> ===23節=== *<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/23節]] {{進捗|00%|2023-12-25}}</span> '''カエサルとローマ軍が大陸へ帰着する''' *Obsidibus [[wikt:en:acceptus#Latin|acceptis]] **(カエサルは)人質たちを受け取ると、 *exercitum [[wikt:en:reduco#Latin|reducit]] ad mare, **軍隊を海の辺りへ連れ戻して、 *naves [[wikt:en:invenio#Latin|invenit]] [[wikt:en:refectus#Latin|refectas]]. **船団が修理されたのを見出す。 :  ;   船の数が減っていたので、2回に分けて輸送することを決める *His [[wikt:en:deductus#Latin|deductis]], **これら(の船)を(海へ)降ろすと、 *quod et captivorum magnum numerum habebat, **多数の捕虜をかかえていたので、 *et [[wikt:en:nonnullus#Latin|non nullae]] tempestate [[wikt:en:depereo#Latin|deperierant]] naves, **および、少なからぬ船が嵐によって(すでに)壊滅していたので、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[#10節|10節]]を参照。)</span> *duobus [[wikt:en:commeatus#Latin|commeatibus]] exercitum [[wikt:en:reporto#Latin|reportare]] [[wikt:en:instituo#Latin|instituit]]. **二度の輸送により軍隊を連れ帰ることを決心した。 :  ;   2回目の輸送船の多くが潮で流されてしまう *Ac [[wikt:en:sic#Latin|sic]] [[wikt:en:accido#Etymology_1|accidit]], [[wikt:en:uti#Etymology_1|uti]] **にもかかわらず、以下のようなことが起こったのだ。 *ex [[wikt:en:tantus#Latin|tanto]] navium numero [[wikt:en:tot#Latin|tot]] [[wikt:en:navigatio#Latin|navigationibus]] **これほど多くの船の数でこれほど多くの航海をしながらも、 *neque hoc neque superiore anno [[wikt:en:ullus#Latin|ulla]] omnino navis, quae milites [[wikt:en:porto#Latin|portaret]], [[wikt:en:desidero#Latin|desideraretur]]; **<u>この年</u>にも、<u>前の年</u>にも、兵士たちを運搬した船をまったく1つも喪失したことがなかった。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:この年は、第二次遠征の[[w:紀元前54年|紀元前54年]]。<br>    前の年は、第一次遠征の[[w:紀元前55年|紀元前55年]]。)</span> *at ex iis, quae [[wikt:en:inanis#Latin|inanes]] ex continenti ad eum [[wikt:en:remitto#Latin|remitterentur]] **ところが、空っぽのまま大陸から彼〔カエサル〕のところへ送り返されていたもののうちで、 *[et] [[wikt:en:prior#Latin|prioris]] [[wikt:en:commeatus#Latin|commeatus]] [[wikt:en:expositus#Latin|expositis]] militibus **(それらは)第一の航海の兵士たちを(船からガッリアの陸地に)下船させていたのだが、 *et quas postea [[wikt:en:Labienus#Latin|Labienus]] [[wikt:en:faciendus#Latin|faciendas]] [[wikt:en:curo#Latin|curaverat]] numero LX([[wikt:en:sexaginta#Latin|sexaginta]]), **および、(嵐の)後で[[w:ティトゥス・ラビエヌス|ラビエーヌス]]が造ることを手配していた数60隻のもののうちで、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[#11節|11節]]を参照。)</span> *[[wikt:en:perpaucus#Latin|perpaucae]] locum caperent, **非常にわずか(の船のみ)が当地に到達したが、 *reliquae fere omnes [[wikt:en:reicio#Latin|reicerentur]]. **残り(の船)はほぼすべてが押し流されてしまったのだ。 :  ;   凪(なぎ)を待って出帆し、大陸に帰着する *Quas cum [[wikt:en:aliquamdiu#Latin|aliquamdiu]] Caesar frustra [[wikt:en:exspectasset|ex&lt;s&gt;pectasset]], **それら(の船団)をカエサルはしばらくの間むなしく待っていたのだけれども、 *ne anni tempore a [[wikt:en:navigatio#Latin|navigatione]] [[wikt:en:excludo#Latin|excluderetur]], **年間のその時季において(荒天により)航海が妨げられないように、 {{Wikipedia|la:Aequinoctium|Aequinoctium}} *quod [[wikt:en:aequinoctium#Latin|aequinoctium]] [[wikt:en:subsum#Latin|suberat]], **<u>[[w:分点|昼夜平分時]]</u>が近づいていたので、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[w:秋分|秋分]]のこと。)</span> *necessario [[wikt:en:anguste#Latin|angustius]] milites [[wikt:en:conloco#Latin|conlocavit]] **やむを得ずに非常に窮屈に兵士たちを(船内に)配して、 [[画像:Seascape_Calm_Weather.jpg|thumb|right|200px|凪の海に浮かぶ船の光景<br>([[w:エドゥアール・マネ|エドゥアール・マネ]]画)]] *ac [[wikt:en:summus#Latin|summa]] [[wikt:en:tranquillitas#Latin|tranquillitate]] [[wikt:en:consecutus#Latin|consecuta]], **このうえない静けさ〔<ruby><rb>[[w:凪|凪]]</rb><rp>(</rp><rt>なぎ</rt><rp>)</rp></ruby>〕が続いていたときに、 *<u>secunda</u> [[wikt:en:initus#Participle|inita]] cum [[wikt:en:solvo#Latin|solvisset]] <u>[[wikt:en:vigilia#Latin|vigilia]]</u>, **第二夜警時が始まると、(船団で)出帆して、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:第二夜警時 secunda vigilia は、真夜中に近い「夜遅く」。<br>    [[古代ローマの不定時法#夜警時|#夜警時]] を参照。)</span> *prima [[wikt:en:lux#Latin|luce]] terram [[wikt:en:attingo#Latin|attigit]] **夜明けに陸地に達して、 *omnesque incolumes naves [[wikt:en:perduco#Latin|perduxit]]. **すべての船を無傷のままで連れ戻し終えた。 :  ::<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:カエサルは、[[w:ガリア|ガッリア]]の情勢に不安を感じていたため、侵攻した[[w:ブリタンニア|ブリタンニア]]南部を支配圏とせずに、人質を連れただけで大陸に帰還した。引き続くガッリアの反乱やポンペイウスとの[[w:ローマ内戦 (紀元前49年-紀元前45年)|ローマ内戦]]により、ローマの威令が及ばなくなったブリタンニアは独立を回復した。しかしながら、カエサルの侵攻は、ほんの前兆に過ぎなかった。ローマがブリタンニアに対する本格的な侵略・支配を始めるのは、カエサルが去った年(BC54年)から98年後(AD43年)、[[w:ローマ帝国|帝政ローマ]]第4代の[[w:クラウディウス|クラウディウス帝]]による遠征からである。)</span> <!-- <span style="color:#009900;"></span> **:<span style="color:#009900;">(訳注: **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注: --> ==アンビオリークスとエブローネース族の蜂起== ===24節=== [[画像:Amiens dot.png|thumb|right|180px|サマロブリーウァ(Samarobriva)すなわち現在の[[w:アミアン|アミアン市]]の位置。]] *<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/24節]] {{進捗|00%|2023-12-26}}</span> '''ローマ軍団8個半がガッリア北部で冬営する''' *[[wikt:en:subductus#Latin|Subductis]] navibus **(カエサルは陸に)船団を引き上げて、 *[[wikt:en:concilium#Latin|concilio]]<nowiki>que</nowiki> Gallorum [[wikt:en:Samarobriva#Latin|Samarobrivae]] [[wikt:en:peractus#Latin|peracto]], **[[w:ガリア|ガッリア]]人(領袖)たちの会合をサマロブリーウァにて済ませると、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:サマロブリーウァ ''[[w:fr:Samarobriva|Samarobriva]]'' は、<br>    ガリア語の地名で「川の上の橋」を意味する。<br>    アンビアーニー族 [[w:la:Ambiani|Ambiani]] の首邑で、現在の[[w:アミアン|アミアン (Amiens)]]。)</span> *quod eo anno frumentum in Gallia propter [[wikt:en:siccitas#Latin|siccitates]] [[wikt:en:anguste#Latin|angustius]] [[wikt:en:provenio#Latin|provenerat]], **その年のガッリアにおける穀物が、<ruby><rb>[[w:旱魃|旱魃]]</rb><rp>(</rp><rt>かんばつ</rt><rp>)</rp></ruby>のために非常に乏しく収穫されたので、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[ガリア戦記_第4巻#37節|第4巻37節]]で、この地域が旱魃であるとの話が述べられた。)</span> *[[wikt:en:cogo#Latin|coactus est]] [[wikt:en:aliter#Latin|aliter]] ac superioribus annis **(カエサルが)強いられたことは、前の年と異なり、 *exercitum in [[wikt:en:hibernum#Etymology_1|hibernis]] [[wikt:en:conloco#Latin|conlocare]] legionesque in plures civitates [[wikt:en:distribuo#Latin|distribuere]]. **軍隊を冬営地に配置して、諸[[w:ローマ軍団|軍団]]をより多くの部族のところに分屯させることであった。 :  ;   4個軍団と副官たちをモリニー族、ネルウィイー族、エルウィイー族、レーミー族の領土に駐屯させる [[画像:Plancus-Statue.jpg|thumb|right|150px|スイスの[[w:バーゼル|バーゼル市]]にあるプランクスの像]] *Ex quibus **それら〔諸軍団〕のうち、 *unam in [[wikt:en:Morini#Latin|Morinos]] [[wikt:en:ducendus#Latin|ducendam]] [[wikt:en:Gaius#Latin|Gaio]] [[wikt:en:Fabius#Latin|Fabio]] legato [[wikt:en:do#Latin|dedit]], **1個は、モリニー族に率いて行くために[[w:レガトゥス|副官]]であるガーイウス・ファビウスに委ねた。 *alteram in [[wikt:en:Nervii#Latin|Nervios]] [[wikt:en:Quintus#Latin|Quinto]] [[wikt:en:Cicero#Latin|Ciceroni]], **2個目は、[[w:ネルウィイ族|ネルウィイー族]]に(率いて行くために)[[w:クィントゥス・トゥッリウス・キケロ|クィーントゥス・キケロー]]に(委ねた)。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[w:la:Quintus Tullius Cicero|Quintus Tullius Cicero]] は著名な雄弁家の弟で、<br>    ブリタンニア遠征にも従軍していた。)</span> *tertiam in Essu&lt;vi&gt;os [[wikt:en:Lucius#Latin|Lucio]] [[wikt:en:Roscius#Latin|Roscio]]; **3個目は、エスウィイー族に(率いて行くために)ルーキウス・ロスキウスに(委ねた)。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:部族名は ''[[wikt:en:Esubii#Latin|Esubii]]'' または ''[[w:en:Esuvii|Esuvii]]'' などとも表記される。)</span> **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:ロスキウスの役職については、[[#53節|53節]]を参照。)</span> *quartam in [[wikt:en:Remi#Etymology_1_2|Remis]] cum [[wikt:en:Titus#Latin|Tito]] [[wikt:en:Labienus#Latin|Labieno]] in [[wikt:en:confinium#Latin|confinio]] [[wikt:en:Treveri#Latin|Treverorum]] [[wikt:en:hiemo#Latin|hiemare]] [[wikt:en:iubeo#Latin|iussit]]. **4個目は、レーミー族に[[w:ティトゥス・ラビエヌス|ティトゥス・ラビエーヌス]]とともにトレーウェリー族との境界で越冬することを命じた。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:レーミー族は、現在の北仏[[w:ランス (マルヌ県)|ランス市]]に名を遺す親ローマの同盟部族。<br>    トレーウェリー族は、現在の西独[[w:トリーア|トリーア]]に名を遺す同盟部族だが、<br>    [[#2節|2節]]~[[#3節|3節]]で内紛が述べられ、不穏な情勢にある。)</span> :  ;   3個軍団をベルガエ人の領土に駐屯させる *Tres in [[wikt:en:Belgae#Latin|Belgis]] [[wikt:en:conloco#Latin|conlocavit]]: **3個(の軍団)を[[w:ベルガエ|ベルガエ人たち]]のところに配置した。 *iis [[wikt:en:Marcus#Latin|Marcum]] [[wikt:en:Crassus#Latin|Crassum]] [[wikt:en:quaestor#Latin|quaestorem]] **それらを<ruby><rb>[[w:クァエストル|財務官]]</rb><rp>(</rp><rt>クァエストル</rt><rp>)</rp></ruby>である[[w:マルクス・リキニウス・クラッスス (紀元前54年の財務官)|マールクス・クラッスス]] **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:カエサルの盟友・三頭政治家[[w:マルクス・リキニウス・クラッスス|クラッスス]]の同名の次男。<br>    『ガリア戦記』では長男[[w:プブリウス・リキニウス・クラッスス|プーブリウス]]が[[ガリア戦記_第3巻#クラッススのアクィーターニア遠征|第3巻の遠征]]などで活躍していたが、<br>    父とともに[[w:カルラエの戦い|対パルティア遠征]]のために東方へ行ってしまい、<br>    代わりに次男が財務官としてカエサルのもとで戦った。)</span> *et [[wikt:en:Lucius#Latin|Lucium]] [[wikt:en:Munatius#Latin|Munatium]] [[wikt:en:Plancus#Latin|Plancum]] et [[wikt:en:Gaius#Latin|Gaium]] [[wikt:en:Trebonius#Latin|Trebonium]] legatos [[wikt:en:praeficio#Latin|praefecit]]. **およびルーキウス・ムナーティウス・プランクスと[[w:ガイウス・トレボニウス|ガーイウス・トレボーニウス]]の両[[w:レガトゥス|副官]]に指揮させた。 :  ;   1個軍団と5個歩兵大隊をエブローネース族の領土に駐屯させる *Unam legionem, quam proxime trans [[wikt:en:Padus#Latin|Padum]] [[wikt:en:conscribo#Latin|conscripserat]], **パドゥスの彼方で最近に徴集していた1個[[w:ローマ軍団|軍団]]、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:パドゥス [[w:la:Padus|Padus]] は、現在の北イタリアの[[w:ポー川|ポー川]]。つまり、ポー川の北岸での話で、<br>    [[内乱記_第3巻_(下)#87節|『内乱記』第3巻87節]]では、トラーンスパダーナ ''[[wikt:en:Transpadana#Latin|Trānspadāna]]'' として言及される。<br>    ガッリア・トラーンスパダーナ ''[[wikt:en:Gallia_Transpadana#Latin|Gallia Trānspadāna]]'' とも呼ばれる。)</span> [[画像:LocationPoRiver.PNG|thumb|right|150px|パドゥス川(現在のポー川)]] *et cohortes V([[wikt:en:quinque#Latin|quinque]]) in [[wikt:en:Eburones#Latin|Eburones]], **および5個[[w:コホルス|歩兵大隊]]を、[[w:エブロネス族|エブローネース族]]に、 *quorum pars maxima est inter [[wikt:en:Mosa#Latin|Mosam]] ac [[wikt:en:Rhenus#Latin|Rhenum]], **かの者らの大部分はモサ川とレーヌス川の間におり、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:モサ川 [[w:la:Mosa|Mosa]] は、現在の[[w:マース川|マース川]]。<br>    レーヌス [[w:la:Rhenus|Rhenus]] は、現在の[[w:ライン川|ライン川]]。)</span> {{Wikipedia|la:Ambiorix|la:Ambiorix}} *qui sub imperio [[wikt:en:Ambiorix#Latin|Ambiorigis]] et Catu<v>olci erant, **[[w:アンビオリクス|アンビオリークス]]と[[w:カタウウォルクス|カトゥウォルクス]]の支配下にあったが、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:後者の名は、写本では Catuolci (Catuolcus) となっているが、<br>    ''[[w:en:Cativolcus|Cativolcus]]''<ref>[https://www.perseus.tufts.edu/hopper/text?doc=Perseus:text:1999.04.0059:entry=Cativolcus Charlton T. Lewis, Charles Short, A Latin Dictionary, Cativolcus] などを参照。</ref> あるいは ''[[w:de:Catuvolcus|Catuvolcus]]'' などと表記される。)</span> **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:''[[w:en:Ambiorix|Ambiorix]]'' と ''[[w:en:Cativolcus|Catuvolcus (Cativolcus)]]'' の共同統治。<br>    このころのガッリア北部には二重王政の慣習があったらしい。)</span> *[[wikt:en:mitto#Latin|misit]]. **(この部族のもとに)派遣した。 :  *Iis militibus **それらの兵士たち(1個軍団と5個大隊)には、 *[[wikt:en:Quintus#Latin|Quintum]] [[wikt:en:Titurius#Latin|Titurium]] [[wikt:en:Sabinus#Proper_noun|Sabinum]] et [[wikt:en:Lucius#Latin|Lucium]] [[wikt:en:Aurunculeius#Latin|Aurunculeium]] [[wikt:en:Cotta#Latin|Cottam]] legatos [[wikt:en:praesum#Latin|praeesse]] iussit. **[[w:クィントゥス・ティトゥリウス・サビヌス|クィーントゥス・ティトゥーリウス・サビーヌス]]とルーキウス・アウルンクレーイウス・コッタの両[[w:レガトゥス|副官]]に指揮を命じた。 :  *Ad hunc modum [[wikt:en:distributus#Latin|distributis]] legionibus **このやり方で諸軍団を分屯すれば、 *[[wikt:en:facillime|facillime]] [[wikt:en:inopia#Latin|inopiae]] [[wikt:en:frumentarius#Latin|frumentariae]] sese [[wikt:en:medeor#Latin|mederi]] posse [[wikt:en:existimo#Latin|existimavit]]. **糧食の欠乏を容易に救うことができると考えたのだ。 :  *Atque harum tamen omnium legionum hiberna **それにもかかわらず、これらすべての軍団の冬営地は、 *praeter eam, quam [[wikt:en:Lucius#Latin|Lucio]] [[wikt:en:Roscius#Latin|Roscio]] in [[wikt:en:pacatus#Latin|pacatissimam]] et [[wikt:en:quietus#Latin|quietissimam]] partem [[wikt:en:ducendus#Latin|ducendam]] dederat, **ルーキウス・ロスキウスに指揮権を委ねていた非常に平和かつ平穏な地方を除けば、 *milibus passuum centum [[wikt:en:contineo#Latin|continebantur]]. **100ローママイルと離さずに配置されていた。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:1[[ガイウス・ユリウス・カエサルの著作/通貨・計量単位#ミーッレ・パッスーム、ミーリア(ローママイル)|ローママイル]]は約1.48 kmで、100マイルは約150km)</span> :  *Ipse [[wikt:en:interea|interea]], **(カエサル)自身はその間、 *[[wikt:en:quoad#Latin|quoad]] legiones [[wikt:en:conlocatus#Latin|conlocatas]] [[wikt:en:munitus#Latin|munita]]<nowiki>que</nowiki> hiberna [[wikt:en:cognosco#Latin|cognovisset]], **諸軍団が配置され、冬営地が防備されたのを認知するまでは、 *in Gallia [[wikt:en:moror#Latin|morari]] [[wikt:en:constituo#Latin|constituit]]. **ガッリアに留まることを決めた。 :  :<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[#8節|8節]]より、この夏にカエサルが保持していた兵力はローマ人8個軍団とガッリア人騎兵4000騎であった。<br>ブリタンニアへ侵攻した5個軍団のうちから、どのくらいの兵力を失ったのかは不明であるが、<br>パドゥス川北岸で新たに徴集した1個軍団を併せても、カエサル率いる軍団兵は全部で8個軍団と5個大隊である。<br>サビーヌスとコッタに付けた5個大隊は、最前線を補強するために他の軍団から引き抜かれたのかも知れない。)</span> <!-- <span style="color:#009900;"></span> **:<span style="color:#009900;">(訳注: **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注: --> ===25節=== *<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/25節]] {{進捗|00%|2023-12-27}}</span> [[画像:Chartres_1987.jpg|thumb|right|250px|カルヌーテース族(Carnutes)の名を残す仏[[w:シャルトル|シャルトル]](Chartres)市街の原野からの眺望]] '''カルヌーテース族の王タスゲティウスが殺される''' *Erat in [[wikt:en:Carnutes#Latin|Carnutibus]] summo loco [[wikt:en:natus#Participle|natus]] [[wikt:en:Tasgetius#Latin|Tasgetius]], **カルヌーテース族に、最高の地位の生まれであるタスゲティウスがいた。 *cuius [[wikt:en:maior#Noun|maiores]] in sua civitate regnum [[wikt:en:obtineo#Latin|obtinuerant]]. **その者の先祖たちは、自らの部族で王位に就いていた。 :  *Huic Caesar pro eius [[wikt:en:virtus#Latin|virtute]] atque in se [[wikt:en:benevolentia#Latin|benevolentia]], **この者に、カエサルは、彼の武勇と自分〔カエサル〕への好意に報いて、 *quod in omnibus bellis [[wikt:en:singularis#Latin|singulari]] eius opera fuerat [[wikt:en:usus#Latin|usus]], **──というのは(ガッリアの)全戦役において彼の格別の働きを役立てていたので、── *[[wikt:en:maior#Noun|maiorum]] locum [[wikt:en:restituo#Latin|restituerat]]. **(タスゲティウスを)先祖たちの地位に復位させてやっていた。 :  *Tertium iam hunc annum [[wikt:en:regnans#Latin|regnantem]] **この者〔タスゲティウス〕が統治してすでに3年目のときに、 *<u>inimicis</u> <u>iam multis palam</u> ex civitate <u>et iis</u> [[wikt:en:auctor#Latin|auctoribus]], <u>eum</u> [[wikt:en:interficio#Latin|interfecerunt]]. **<ruby><rb>部族国家</rb><rp>(</rp><rt>キーウィタース</rt><rp>)</rp></ruby>と彼の<ruby><rb>支持者</rb><rp>(</rp><rt>アウクトル</rt><rp>)</rp></ruby>たちの内からもはや公然と多くの者たちが敵対して、彼を殺害した。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:上記は &alpha;系写本の記述で、&beta;系写本では 下線部が異なり、<br>    inimici palam multis ex civitate auctoribus interfecerunt となっている。)</span> *[[wikt:en:defero#Latin|Defertur]] ea res ad Caesarem. **その事態がカエサルのもとへ報告される。 :  *Ille [[wikt:en:veritus#Latin|veritus]], **あの者〔カエサル〕は恐れて、 *quod ad plures [[wikt:en:pertineo#Latin|pertinebat]], **(その殺害事件が)非常に多くの者に関係していたので、 *ne civitas eorum [[wikt:en:impulsus#Noun|impulsu]] [[wikt:en:deficio#Latin|deficeret]], **彼らの部族が扇動によって(カエサルに)背かないように、 [[画像:Rathaus_Basel_2008_(18).jpg|thumb|right|250px|プランクスの像。前掲と同じもの。]] *[[wikt:en:Lucius#Latin|Lucium]] [[wikt:en:Plancus#Latin|Plancum]] cum legione **[[w:ルキウス・ムナティウス・プランクス|ルーキウス・プランクス]]に(1個)軍団とともに **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[#24節|24節]]でプランクスは[[w:ベルガエ|ベルガエ (ベルギウム)]]に派遣されたと述べられた。)</span> *ex [[wikt:en:Belgium#Latin|Belgio]] celeriter in [[wikt:en:Carnutes#Latin|Carnutes]] [[wikt:en:proficiscor#Latin|proficisci]] [[wikt:en:iubeo#Latin|iubet]] **[[w:ベルガエ|ベルギウム]]から速やかにカルヌーテース族のところに出発することを命じて、 *[[wikt:en:ibi#Adverb_2|ibi]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:hiemo#Latin|hiemare]], **そこにて冬営すること、 *quorumque opera [[wikt:en:cognosco#Latin|cognoverat]] [[wikt:en:Tasgetius#Latin|Tasgetium]] [[wikt:en:interfectus#Latin|interfectum]], **タスゲティウスが何者の仕業によって殺害されたのかを調べて、 *hos [[wikt:en:comprehensus#Latin|conprehensos]] ad se [[wikt:en:mitto#Latin|mittere]]. **この者たちを拘束して自分〔カエサル〕のところへ送ることを(命じた)。 :  *Interim ab omnibus legatis [[wikt:en:quaestor#Latin|quaestoribus]]<nowiki>que</nowiki>, quibus legiones [[wikt:en:trado#Latin|tradiderat]], **その間に、諸軍団を委ねていたすべての[[w:レガトゥス|副官]]たちと[[w:クァエストル|財務官]]たちから、 *certior factus est in hiberna perventum locumque hibernis esse munitum. **冬営に到着して、かつ冬営の地が防備されたことが報告された。 <!-- <span style="color:#009900;"></span> **:<span style="color:#009900;">(訳注: **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注: --> ===26節=== [[画像:Tongeren_Antiekmarkt_wallen_2.jpg|thumb|right|220px|サビーヌスとコッタの冬営があったと推定される古代のアドゥアトゥカ、すなわち現在の[[w:ベルギー|ベルギー]]の[[w:トンゲレン|トンゲレン]]市内に残る古代の城壁跡]] *<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/26節]] {{進捗|00%|2024-01-10}}</span> '''サビーヌスとコッタの冬営にエブローネース族が襲来''' *Diebus circiter XV([[wikt:en:quindecim#Latin|quindecim]]), quibus in hiberna ventum est, **(サビーヌスとコッタの軍団が)冬営に来てからおよそ15日目に、 *[[wikt:en:initium#Latin|initium]] [[wikt:en:repentinus#Latin|repentini]] [[wikt:en:tumultus#Latin|tumultus]] ac [[wikt:en:defectio#Latin|defectionis]] **予期せぬ動乱や謀反の発端が、 *ortum est ab [[wikt:en:Ambiorix#Latin|Ambiorige]] et [[wikt:en:Catuvolcus#Latin|Catuvolco]]; **[[w:アンビオリクス|アンビオリークス]]と[[w:カタウウォルクス|カトゥオルクス]]によって勃発した。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[#24節|24節]]で両者が[[w:エブロネス族|エブローネース族]]を統治していることが述べられた。)<span> *qui, cum ad fines regni sui [[wikt:en:Sabinus#Proper_noun|Sabino]] [[wikt:en:Cotta#Latin|Cottae]]<nowiki>que</nowiki> praesto fuissent **かの者らは、己の王国の領土の辺りで、[[w:クィントゥス・ティトゥリウス・サビヌス|サビーヌス]]とコッタに役立っていたのに、 *frumentumque in hiberna [[wikt:en:comporto#Latin|comportavissent]], **糧食を冬営に運んで来ていたのに、 *[[wikt:en:Indutiomarus#Latin|Indutiomari]] <u>Treveri</u> [[wikt:en:nuntius#Latin|nuntiis]] [[wikt:en:impulsus#Latin|impulsi]] **トレーウェリー族のインドゥーティオマールスの伝令たちによって駆り立てられ、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部 Trēverī は、単数名詞 [[wikt:en:Trevir#Latin|Trēvir]] の属格 Trēvirī の別形「トレーウェリーの者の」。)</span> *suos [[wikt:en:concito#Latin|concitaverunt]] **配下の者たちを扇動して、 *[[wikt:en:subito#Adverb_8|subito]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:oppressus#Latin|oppressis]] [[wikt:en:lignator#Latin|lignatoribus]] **突然に(ローマ側の)材木伐採者たちを急襲して、 *magna manu ad castra <u>oppugnatum</u> venerunt. **多くの手勢で(サビーヌスとコッタの)陣営のそばへ攻囲するために到来した。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、&alpha;系写本では [[wikt:en:oppugnatum|oppugnātum]] ([[w:スピーヌム|目的分詞]]) だが、<br>         &beta;系写本では [[wikt:en:oppugnandus#Latin|oppugnanda]] ([[w:動形容詞|動形容詞]]) となっている。)</span> **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[w:ガリア戦記 第6巻#32節|第6巻32節]]で後述されるように、<br>    この陣営はアドゥアトゥカ Aduatuca またはアトゥアトゥカ [[w:la:Atuatuca_Tungrorum|Atuatuca]]<br>    と呼ばれ、ここで勃発する戦闘は後世に[[w:アドゥアトゥカの戦い|アドゥアトゥカの戦い]]と呼ばれる。)</span> :  ;   陣営のローマ勢がヒスパーニア人騎兵を繰り出してエブローネース族を撃退する *Cum celeriter nostri arma [[wikt:en:capio#Latin|cepissent]] [[wikt:en:vallum#Latin|vallum]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:ascendo#Latin|a(d)scendissent]] **我が方〔ローマ勢〕が速やかに武器を取って、防壁に登り、 *atque una ex parte [[wikt:en:Hispanus#Adjective|Hispanis]] [[wikt:en:eques#Latin|equitibus]] [[wikt:en:emissus#Latin|emissis]] **(陣営の)ある一方面から[[w:ヒスパニア|ヒスパーニア人]]の[[w:騎兵|騎兵]]たちを放って、 *[[wikt:en:equester#Latin|equestri]] proelio superiores fuissent, **騎兵の戦闘で優勢になるや、 *[[wikt:en:desperatus#Latin|desperata]] re hostes suos ab [[wikt:en:oppugnatio#Latin|oppugnatione]] [[wikt:en:reduco#Latin|reduxerunt]]. **敵勢〔エブローネース族〕は戦況に絶望して、味方を攻囲から撤収させた。 :  ;   エブローネース族が、和議の話し合いを呼びかける *Tum suo more [[wikt:en:conclamo#Latin|conclamaverunt]], **それから、(エブローネース族は)自分たちの習慣に従って(以下の内容を)大声で呼びかけた。 *uti aliqui ex nostris ad [[wikt:en:colloquium#Latin|conloquium]] [[wikt:en:prodeo#Latin|prodiret]]: **我が方〔ローマ勢〕の内から誰かが話し合いをするために(陣営から)進み出て来るように: *habere sese, quae de re [[wikt:en:communis#Latin|communi]] dicere vellent, **自分たち〔エブローネース族〕は、(ローマ人と)共通の状況について申し述べたいと思っている事がある。 *quibus rebus [[wikt:en:controversia#Latin|controversias]] [[wikt:en:minuo#Latin|minui]] posse [[wikt:en:spero#Latin|sperarent]]. **それらの事によって、争いごとを軽減することができると期待している、と。 <!-- <span style="color:#009900;"></span> **:<span style="color:#009900;">(訳注: **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注: --> ===27節=== *<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/27節]] {{進捗|00%|2024-01-21}}</span> '''アンビオリークスの弁明と通告''' *[[wikt:en:mitto#Latin|Mittitur]] ad eos [[wikt:en:conloquor#Latin|conloquendi]] causa **彼ら〔[[w:エブロネス族|エブローネース族]]〕のもとへ話し合うために派遣されたのは、 *[[wikt:en:Gaius#Latin|Gaius]] [[wikt:en:Arpineius#Latin|Arpineius]], eques Romanus, familiaris [[wikt:en:Quintus#Latin|Quinti]] [[wikt:en:Titurius#Latin|Titurii]], **[[w:クィントゥス・ティトゥリウス・サビヌス|クィーントゥス・ティトゥーリウス (・サビーヌス) ]]の親友でありローマ人騎士階級であるガーイウス・アルピネーイウス、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:アルピネーイウス Arpineius の綴りは、<br>    写本により、Arpinius, Arpineus, Carpineius などと異なるが、<br>    アルピネーイウス氏族 ''[[w:en:Arpineia gens|gens Arpineia]] に属すると考えられる。)</span> *et [[wikt:en:Quintus#Latin|Quintus]] [[wikt:en:Iunius#Latin|Iunius]] ex [[wikt:en:Hispania#Latin|Hispania]] [[wikt:en:quidam#Latin|quidam]], **および、[[w:ヒスパニア|ヒスパーニア]]出身のある者クィーントゥス・ユーニウスであり、 *qui iam ante [[wikt:en:missus#Latin|missu]] Caesaris ad [[wikt:en:Ambiorix#Latin|Ambiorigem]] [[wikt:en:ventito#Latin|ventitare]] [[wikt:en:consuesco#Latin|consuerat]]; **彼〔ユーニウス〕は、すでに以前からカエサルにより派遣されて、[[w:アンビオリクス|アンビオリークス]]のところへ行き来するのが常であった。 [[画像:Ambiorix.jpg|thumb|right|200px|アンビオリークスの銅像。[[w:ベルギー|ベルギー]]の[[w:トンゲレン|トンゲレン]](Tongeren)市街に建つ。ローマ軍の侵略と闘って撃破した郷土の英雄として、同市が彫刻家ジュール・ベルタン(Jules Bertin)に依頼し1866年に建立した。]] *apud quos [[wikt:en:Ambiorix#Latin|Ambiorix]] ad hunc modum [[wikt:en:loquor#Latin|locutus est]]: **その者らの前で、[[w:アンビオリクス|アンビオリークス]]は以下のように話した。 :  :  :<span style="color:#009900;">(訳注:ここから、アンビオリークスの話が、間接話法で記される。)</span> *<!--❷-->sese pro Caesaris in se [[wikt:en:beneficium#Latin|beneficiis]] **自分〔アンビオリークス〕は、カエサルの自分への恩恵に対して *plurimum ei [[wikt:en:confiteor#Latin|confiteri]] [[wikt:en:debeo#Latin|debere]], **彼に多大なる(恩義がある)ことを認めざるを得ない。 *quod eius opera [[wikt:en:stipendium#Latin|stipendio]] [[wikt:en:libero#Latin|liberatus esset]], **というのは、彼〔カエサル〕の尽力により貢物から解放されたのだから。 *quod [[wikt:en:Aduatuci#Latin|Atuatucis]] finitimis suis, [[wikt:en:pendo#Latin|pendere]] [[wikt:en:consuesco#Latin|consuesset]], **それ〔貢物〕は、自らの隣人であるアトゥアトゥキー族に貢ぐことが常であったのだ。 **:<span style="color:#009900;">(訳注:部族名は、&alpha;系写本では [[wikt:en:Aduatuci#Latin|Aduatucī]] アドゥアトゥキー、<br>         &beta;系写本では Atuatucī アトゥアトゥキー、<br>          などとなっている。)</span> *quodque ei et filius et fratris filius ab Caesare [[wikt:en:remitto#Latin|remissi essent]], **かつ、カエサルにより(自分の)息子も兄弟の息子〔甥〕も送り返されたのだから。 *quos [[wikt:en:Aduatuci#Latin|Atuatuci]] [[wikt:en:obses#Latin|obsidum]] numero [[wikt:en:missus#Participle|missos]] **アトゥアトゥキー族は、人質として(エブローネース族から)送られて来たその者たちを *apud se in [[wikt:en:servitus#Latin|servitute]] et [[wikt:en:catena#Latin|catenis]] [[wikt:en:teneo#Latin|tenuissent]]; **自分らのもとで奴隷状態にして鎖につないでいたのだ。 **:<span style="color:#009900;">(訳注:アトゥアトゥキー族は、[[ガリア戦記_第2巻#33節|第2巻33節]]でカエサルによってほぼ壊滅されたように記された。<br>    しかしながら、3年後の本巻では健在である。)</span> *<!--❸-->neque id, quod fecerit de [[wikt:en:oppugnatio#Latin|oppugnatione]] castrorum, aut [[wikt:en:iudicium#Latin|iudicio]] aut [[wikt:en:voluntas#Latin|voluntate]] sua fecisse, **(ローマ軍の)陣営を攻囲したことについては、自分の判断あるいは意思でしたものではなかったが、 *sed [[wikt:en:coactus#Noun|coactu]] civitatis, **だが、部族国家の強制によってのことである。 *suaque esse [[wikt:en:eiusmodi#Latin|eiusmodi]] [[wikt:en:imperium#Latin|imperia]], **自分の支配権は以下のようなものである。 *ut non minus haberet [[wikt:en:ius#Latin|iuris]] in se multitudo, quam ipse in multitudinem. **民衆が自分に対して持っている権限は、自身が民衆に持っているものよりも、少なくないのである。 :  *<!--❹-->Civitati [[wikt:en:porro#Latin|porro]] hanc fuisse belli causam, **さらに(エブローネースの)部族国家の戦争の理由は次のことであった。 *quod [[wikt:en:repentinus#Latin|repentinae]] Gallorum [[wikt:en:coniuratio#Latin|coniurationi]] [[wikt:en:resisto#Latin|resistere]] non potuerit. **予期せぬガッリア人の陰謀に抗し得なかったのである。 :  *Id se facile ex [[wikt:en:humilitas#Latin|humilitate]] sua [[wikt:en:probo#Latin|probare]] posse, **そのことを自分は、自らの微力さから容易に証明することができる。 *quod non <u>adeo</u> sit [[wikt:en:imperitus#Latin|imperitus]] rerum, <u>ut</u> suis copiis populum Romanum [[wikt:en:supero#Latin|superari]] posse [[wikt:en:confido#Latin|confidat]]. **というのは、自らの軍勢によってローマ国民を制圧できると信じるほど、事情に通じていなくはないからである。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:adeo#Adverb|adeō]] ~ ut ・・・「・・・ほど~」)</span> :  *<!--❺-->Sed esse Galliae commune consilium: **けれども、ガッリアの共同謀議は、 *omnibus [[wikt:en:hibernum#Latin|hibernis]] Caesaris [[wikt:en:oppugnandus#Latin|oppugnandis]] hunc esse [[wikt:en:dictus#Participle|dictum]] diem, **カエサルのすべての冬営を攻囲することのために、この日が決められていたのである。 *ne qua legio alterae legioni [[wikt:en:subsidium#Latin|subsidio]] venire posset. **(それはローマ軍の)ある軍団が他の軍団の援軍に来られないように、ということである。 :  *<!--❻-->Non facile Gallos Gallis [[wikt:en:nego#Latin|negare]] potuisse, **[[w:ガリア人|ガッリア人]](であるエブローネース族)が(他の)ガッリア人(の共同計画)を容易に拒絶することはできなかった。 *[[wikt:en:praesertim#Latin|praesertim]] cum de [[wikt:en:recuperandus#Latin|recuperanda]] communi [[wikt:en:libertas#Latin|libertate]] consilium [[wikt:en:initus#Participle|initum]] videretur. **とりわけ(ガッリア人)共通の自由を回復することについての計略が始まると思われたからである。 :  *<!--❼-->Quibus [[wikt:en:quoniam#Latin|quoniam]] pro [[wikt:en:pietas#Latin|pietate]] [[wikt:en:satisfacio#Latin|satisfecerit]], **同胞愛に応じて、彼らに満足していたし、 *habere nunc se [[wikt:en:ratio#Latin|rationem]] [[wikt:en:officium#Latin|officii]] pro beneficiis Caesaris: **今、自分はカエサルの恩義に対する義務という考えを持っている。 *[[wikt:en:moneo#Latin|monere]], [[wikt:en:oro#Latin|orare]] [[wikt:en:Titurius#Latin|Titurium]] pro [[wikt:en:hospitium#Latin|hospitio]], **ティトゥーリウス(・サビーヌス)に厚遇に応じて(以下を)求めることを忠告する。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:hospitio は、アルピネーイウスとサビーヌスの友情とする解釈、あるいはエブローネース族とサビーヌスの賓客待遇とする解釈に分かれる。)</span> *ut suae ac militum [[wikt:en:salus#Latin|saluti]] [[wikt:en:consulo#Latin|consulat]]. **(サビーヌスが)ご自分と兵士たちの身の安全に配慮するように、と。 :  *<!--❽-->Magnam manum [[wikt:en:Germanus#Noun|Germanorum]] [[wikt:en:conductus#Participle|conductam]] [[wikt:en:Rhenus#Latin|Rhenum]] [[wikt:en:transeo#Latin|transisse]]; **[[w:ゲルマニア|ゲルマーニア]]人の大部隊が雇われた者<span style="color:#009900;">〔傭兵〕</span>としてレーヌス〔[[w:ライン川|ライン川]]〕を渡河した。 *hanc [[wikt:en:adsum#Latin|adfore]] [[wikt:en:biduum#Latin|biduo]]. **これは2日以内には到着するであろう。 :  *<!--❾-->Ipsorum esse consilium, velint[[wikt:en:-ne#Latin|ne]] **(サビーヌスたちが)欲する、ご自身らの考えは、どうかね? *[[wikt:en:priusquam#Latin|prius, quam]] finitimi [[wikt:en:sentio#Latin|sentiant]], [[wikt:en:eductus#Latin|eductos]] ex [[wikt:en:hibernum#Latin|hibernis]] milites **近隣の(部族の)者たちが感づくより前に、兵士たちを冬営から連れ出して、 *aut ad [[wikt:en:Cicero#Latin|Ciceronem]] aut ad [[wikt:en:Labienus#Latin|Labienum]] [[wikt:en:deduco#Latin|deducere]], **あるいは[[w:クィントゥス・トゥッリウス・キケロ|キケロー]](の冬営)の方へ、あるいは[[w:ティトゥス・ラビエヌス|ラビエーヌス]](の冬営)の方へ連れ去るかね。 *quorum alter milia passuum circiter [[wikt:en:quinquaginta#Latin|quinquaginta]], alter paulo amplius ab iis [[wikt:en:absum#Latin|absit]]. **それらのうち前者は約50ローママイル、後者は彼ら〔サビーヌスの軍団〕から少しより遠くへ離れている。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:1[[ガイウス・ユリウス・カエサルの著作/通貨・計量単位#ミーッレ・パッスーム、ミーリア(ローママイル)|ローママイル]]は約1.48 kmで、50マイルは約74 km)</span> :  *<!--➓-->Illud se [[wikt:en:polliceor#Latin|polliceri]] et [[wikt:en:ius_iurandum#Latin|iure iurando]] [[wikt:en:confirmo#Latin|confirmare]], **彼〔アンビオリークス〕は、(以下のことを)約束し、誓約することを断言した。 *[[wikt:en:tutus#Latin|tutum]] <u>se</u> iter per suos fines [[wikt:en:daturus#Latin|daturum]]<!-- (esse)-->. **<u>自分は</u>、自らの領土を介する(ローマ勢の)安全な行軍を提供するであろう、と。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部の sē は &beta;系写本にあるが、&alpha;系写本にはない。)</span> :  *<!--⓫-->Quod cum faciat, **そのこと〔軍団の退去〕がなされたとき、 *et civitati sese [[wikt:en:consulo#Latin|consulere]], quod hibernis [[wikt:en:levo#Etymology_1|levetur]], **冬営にて(負担が)軽減されるので、自分は部族に配慮することになるし、 *et Caesari pro eius [[wikt:en:meritum#Latin|meritis]] [[wikt:en:gratia#Latin|gratiam]] [[wikt:en:refero#Latin|referre]]. **カエサルの、彼の功績に対して感謝で報いることにもなる。 :<span style="color:#009900;">(訳注:間接話法で記された、アンビオリークスの話が、ここで終わる。)</span> :  *Hac [[wikt:en:oratio#Latin|oratione]] [[wikt:en:habitus#Latin|habita]], [[wikt:en:discedo#Latin|discedit]] [[wikt:en:Ambiorix#Latin|Ambiorix]]. **このように弁舌をして、アンビオリークスは立ち去った。 <!-- <span style="color:#009900;"></span> **:<span style="color:#009900;">(訳注: **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注: --> ===28節=== *<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/28節]] {{進捗|00%|2024-01-24}}</span> '''ローマ陣営の大論争''' *[[wikt:en:Arpineius#Latin|Arpineius]] et [[wikt:en:Iunius#Latin|Iunius]], **アルピネーイウスとユーニウスは、 *quae <u>audierunt</u>, **([[w:アンビオリクス|アンビオリークス]]から)聴いたことを **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:&alpha;系写本では [[wikt:en:audierunt|audiērunt]] (完了) だが、<br>    &beta;系写本では [[wikt:en:audierant|audierant]] (過去完了) となっている。)</span> *ad legatos [[wikt:en:defero#Latin|deferunt]]. **[[w:レガトゥス|副官]]たち〔サビーヌスとコッタ〕へ伝えた。 :  *Illi repentina re [[wikt:en:perturbatus#Latin|perturbati]], **彼ら〔サビーヌスとコッタ〕は、予期せぬ事柄に狼狽させられて、 *<u>etsi</u> ab hoste ea dicebantur, **それらのことは敵によって言われていたのだとしても、 *<u>tamen</u> non [[wikt:en:neglegendus#Latin|neglegenda]] existimabant **しかしながら軽視されるべきではない、と考えていた。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:etsi#Latin|etsī]] ~ [[wikt:en:tamen#Latin|tamen]] ・・・「~としても、それでもなお・・・」)</span> [[画像:Centurion_2_Boulogne_Luc_Viatour.jpg|thumb|right|200px|百人隊長(ケントゥリオ)の再演。]] :  *maximeque hac re [[wikt:en:permoveo#Latin|permovebantur]], **とりわけ以下の事により動顛させられていた。 *quod civitatem [[wikt:en:ignobilis#Latin|ignobilem]] atque [[wikt:en:humilis#Latin|humilem]] [[wikt:en:Eburones#Latin|Eburonum]] **[[w:エブロネス族|エブローネース]]という無名かつ弱小な部族が、 *sua [[wikt:en:spons#Latin|sponte]] populo Romano bellum facere [[wikt:en:ausus#Participle|ausam]] [[wikt:en:vix#Latin|vix]] erat [[wikt:en:credendus#Latin|credendum]]. **自分らの意思でローマ国民とあえて戦争することがほとんど信じられなかったのだ。 :  *<!--❷-->Itaque ad consilium rem [[wikt:en:defero#Latin|deferunt]] **それゆえに、戦術会議へその事を報告すると、 *magnaque inter eos [[wikt:en:exsisto#Latin|exsistit]] [[wikt:en:controversia#Latin|controversia]]. **彼ら〔会議の出席者たち〕の間で大きな論争に成った。 :  *<!--❸-->[[wikt:en:Lucius#Latin|Lucius]] [[wikt:en:Aurunculeius#Latin|Aurunculeius]] **ルーキウス・アウルンクレーイウス(・コッタ) *compluresque [[wikt:en:tribunus#Latin|tribuni]] militum **と<ruby><rb>[[w:トリブヌス・ミリトゥム|兵士長官]]</rb><rp>(</rp><rt>トリブヌス・ミリトゥム</rt><rp>)</rp></ruby>の多くの者たち、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:1個軍団の定員は6名で、月ごとに2名ずつ3交替で軍団を運営した。)</span> *et [[wikt:en:primus#Latin|primorum]] [[wikt:en:ordo#Latin|ordinum]] [[wikt:en:centurio#Etymology_2|centuriones]] **および第一序列の<ruby><rb>[[w:ケントゥリオ|百人隊長]]</rb><rp>(</rp><rt>ケントゥリオー</rt><rp>)</rp></ruby>たち(の多くの者たち)が、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:第一<ruby><rb>[[w:コホルス|歩兵大隊]]</rb><rp>(</rp><rt>コホルス</rt><rp>)</rp></ruby>の百人隊長たちのこと。<br>    共和制末期においては、他の歩兵大隊の定員6名とは異なり、<br>    ① [[w:en:Primus pilus|Primus Pilus]], ② [[w:en:Principes|Princeps]] Prior, ③ Princeps Posterior, ④ [[w:en:Hastati|Hastatus]] Prior, ⑤ Hastatus Posterior <ref>英語版記事 [[w:en:Centurion#Seniority]] を参照。</ref><br>    の定員5名。軍団内における[[w:下士官|下士官]]のトップ5名であった。)</span> *nihil [[wikt:en:temere#Latin|temere]] [[wikt:en:agendus#Latin|agendum]] **何らやみくもに実行するべきではないし、 *neque ex [[wikt:en:hibernum#Latin|hibernis]] [[wikt:en:iniussu#Latin|iniussu]] Caesaris [[wikt:en:discedendus#Latin|discedendum]] existimabant; **カエサルの命令に反して、冬営から離脱するべきではない、と考えていた。 :  *<!--❹-->[[wikt:en:quantusvis#Latin|quantasvis]] magnas etiam copias [[wikt:en:Germanus#Latin|Germanorum]] **さらに[[w:ゲルマニア|ゲルマーニア]]人のどれほどの大軍勢であろうが、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:以下のような挿入提案もある。<br>    quantasvis &lt;Gallorum&gt; magnas etiam copias Germanorum<br>    「<ガッリア人が>どれほど多勢であろうが、[[w:ゲルマニア|ゲルマーニア]]人の軍勢でさえも」)</span> *[[wikt:en:sustineo#Latin|sustineri]] posse [[wikt:en:munitus#Latin|munitis]] [[wikt:en:hibernum#Latin|hibernis]] docebant: **防備された冬営で持ちこたえることができる、と説いた。 :  *<!--❺-->rem esse [[wikt:en:testimonium#Latin|testimonio]], quod **その証しとなる事とは、以下のことである。 *primum hostium impetum **最初の敵の襲撃を、 *multis [[wikt:en:ultro#Latin|ultro]] [[wikt:en:vulnus#Latin|vulneribus]] [[wikt:en:inlatus#Latin|inlatis]] **向こう側に多くの傷を負わせて、 *fortissime [[wikt:en:sustineo#Latin|sustinuerint]]; **とても勇敢に持ちこたえたのだ。 :  *<!--❻-->re frumentaria non [[wikt:en:premo#Latin|premi]]; **(ローマ勢は)糧食補給に迫られていない。 :  *[[wikt:en:interea#Latin|interea]] et ex proximis [[wikt:en:hibernum#Latin|hibernis]] et a Caesare [[wikt:en:conventurus#Latin|conventura]]<!--( esse)--> [[wikt:en:subsidium#Latin|subsidia]]; **そうしている間に、近隣の冬営からも、カエサルからも、増援が集結して来るであろう。 :  *<!--❼-->[[wikt:en:postremo#Latin|postremo]] quid esset [[wikt:en:leviter#Latin|levius]] aut [[wikt:en:turpiter#Latin|turpius]], quam [[wikt:en:auctor#Latin|auctore]] hoste de summis rebus capere consilium? **結局、敵の言い分によって最重要事態について策を立てるほど非常に軽率で不名誉なことがあるだろうか? <!-- <span style="color:#009900;"></span> **:<span style="color:#009900;">(訳注: **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注: --> ===29節=== *<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/29節]] {{進捗|00%|2024-02-01}}</span> ;サビーヌスが、コッタたちの籠城すべしという主張に反駁する *[[wikt:en:contra#Latin|Contra]] ea **それら(の考え)に対して、 *[[wikt:en:Titurius#Latin|Titurius]] [[wikt:en:sero#Adverb_3|sero]] [[wikt:en:facturus#Latin|facturos <span style="color:#009900;">(esse)</span>]] [[wikt:en:clamito#Latin|clamitabat]], **ティトゥーリウスは、(以下の状況では)実行するには遅すぎる、と大声を上げていた。 **:<span style="color:#009900;">(訳注:以下、[[w:クィントゥス・ティトゥリウス・サビヌス|ティトゥーリウス・サビーヌス]]の話が、間接話法で記される。)</span> *cum maiores manus hostium [[wikt:en:adiunctus#Participle|adiunctis]] [[wikt:en:Germanus#Latin|Germanis]] [[wikt:en:convenio#Latin|convenissent]], **敵の大部隊が、[[w:ゲルマニア|ゲルマーニア]]人と合流して、集結してしまっていたら、 *aut cum [[wikt:en:aliquis#Latin|aliquid]] [[wikt:en:calamitas#Latin|calamitatis]] in proximis hibernis [[wikt:en:accipio#Latin|esset acceptum]]. **または、近隣の冬営において、何らかの敗北をこうむってしまっていたら(実行するには遅すぎる)と。 :  *Brevem [[wikt:en:consulendi|consulendi]] esse [[wikt:en:occasio#Latin|occasionem]]. **策を講じるための機会は短い。 :  *<!--❷-->Caesarem <span style="color:#009900;">(se)</span> [[wikt:en:arbitror#Latin|arbitrari]] [[wikt:en:|profectum <span style="color:#009900;">(esse)</span>]] in [[wikt:en:Italia#Latin|Italiam]]; **カエサルはイタリアに出発したと(自分=サビーヌスは)思っている。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:ここでいうイタリアは、[[w:ガリア・キサルピナ|ガッリア・キサルピーナ]] [[w:la:Gallia Cisalpina|Gallia Cisalpina]] のこと。<br>    属州総督は、護衛の部隊を率いて[[w:イタリア本土 (古代ローマ)|本土イタリア]]に入ることは許されなかった。<br>    しかし、この年の属州総督だった[[w:グナエウス・ポンペイウス|ポンペイウス]]は属州に行かず、首都ローマ郊外に滞在し続けていた。)</span> *<u>neque</u> [[wikt:en:aliter#Latin|aliter]] [[wikt:en:Carnutes#Latin|Carnutes]] [[wikt:en:interficiendi|interficiendi]] [[wikt:en:Tasgetius#Latin|Tasgetii]] consilium fuisse [[wikt:en:capturus#Latin|capturos]], **そうでなければ、カルヌーテース族がタスゲティウスを殺害することの策略を立てなかったであろうし、 *<u>neque</u> [[wikt:en:Eburones#Latin|Eburones]], si ille [[wikt:en:adsum#Latin|adesset]], tanta [[wikt:en:contemptio#Latin|contemptione]] nostri ad castra <u>venturos [esse]</u>. **[[w:エブロネス族|エブローネース族]]は、もし彼〔カエサル〕がいたら、我が方〔ローマ勢〕をこれほど侮って、陣営へやって来ないだろう。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:neque ~ neque ・・・「~でもないし、・・・でもない」)</span> **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:文末から次の文頭の下線部は、[[ガリア戦記/注解編/写本と校訂版#写本の系図|主要写本&omega;]] では、<br>    ~ venturos esse non hostem ・・・ だが、<br>    ~ venturos<u>. sese</u> non hostem ・・・ とする修正提案がある。)</span> :  *<!--❸--><span style="color:#009900;">&lt;Sese&gt;</span> <u>non hostem</u> [[wikt:en:auctor#Latin|auctorem]], sed rem [[wikt:en:specto#Latin|spectare]]: **<span style="color:#009900;">&lt;自分(サビーヌス)は&gt;</span>敵を<ruby><rb>拠</rb><rp>(</rp><rt>よ</rt><rp>)</rp></ruby>りどころとするのではなく、事実を直視するのである。 *[[wikt:en:subsum#Latin|subesse]] [[wikt:en:Rhenus#Latin|Rhenum]]; **レーヌス〔[[w:ライン川|ライン川]]〕は近くにある。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:ライン川西岸の諸部族 ''[[w:en:Germani cisrhenani|Germani cisrhenani]]'' が<br>    ライン川東岸の諸部族 [[w:la:Germania Transrhenana|Germani Transrhenani]] を呼び寄せている<br>    というのが『ガリア戦記』の主張である。)</span> *magno esse Germanis [[wikt:en:dolor#Latin|dolori]] [[wikt:en:Ariovistus#Latin|Ariovisti]] mortem et superiores nostras victorias; **[[w:アリオウィストゥス|アリオウィストゥス]]の死も、先の我が方〔ローマ勢〕の勝利も、ゲルマーニア人にとっては大いなる悲嘆である。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[ガリア戦記 第1巻|第1巻]]53節ではアリオウィストゥスの敗走が語られたが、<br>    彼がいつどのように死去したかについては不明である。<br>    なお、アリオウィストゥス ''[[w:en:Ariovistus|Ariovistus]]'' という呼称は、ケルト系ガリア語であると考えられる。)</span> *<!--❹-->[[wikt:en:ardeo#Latin|ardere]] Galliam **ガッリアは(痛憤により)燃え上がっている。 *[[wikt:en:tot#Latin|tot]] [[wikt:en:contumelia#Latin|contumeliis]] [[wikt:en:acceptus#Latin|acceptis]], **これほどの恥辱を耐え忍び、 *sub [[wikt:en:res_publica#Latin|populi Romani]] imperium [[wikt:en:redactus#Latin|redactam]] **ローマ国民の支配下に置かれて、 *superiore gloria rei militaris [[wikt:en:exstinctus#Latin|ex(s)tincta]]. **以前の軍事的な栄誉も消え失せてしまったのだから。 :  *<!--❺-->[[wikt:en:postremo#Latin|Postremo]] quis hoc sibi [[wikt:en:persuadeo#Latin|persuaderet]], sine <u>certa re</u> [[wikt:en:Ambiorix#Latin|Ambiorigem]] ad [[wikt:en:eiusmodi|eius modi]] consilium [[wikt:en:descendo#Latin|descendisse]]? **つまり[[w:アンビオリクス|アンビオリークス]]が確かな事情もなしにあのような仕方で策略に進んだという点で、誰が私を納得させるかね? **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、&alpha;系写本では [[wikt:en:certus#Latin|certā]] [[wikt:en:res#Latin|rē]] <br>         &beta;系写本では certā [[wikt:en:spes#Latin|spē]] となっている。)</span> :  *<!--❻-->Suam sententiam in [[wikt:en:uterque#Latin|utramque]] partem esse [[wikt:en:tutus#Latin|tutam]]: **自分〔サビーヌス〕の意見は、(以下の)どちらの側においても安全なものである。 *si nihil <u>esset</u> [[wikt:en:dure#Latin|durius]], [[wikt:en:nullus#Adjective|nullo]] cum periculo ad proximam legionem [[wikt:en:perventurus#Latin|perventuros]]; **もし厄介なことが何もなかったならば、何らの危険を伴わずに、近隣の軍団のもとへ到着するであろう。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、&alpha;系写本では [[wikt:en:esset#Latin|esset]] (接続法・未完了過去)<br>         &beta;系写本では [[wikt:en:sit#Latin|sit]] (接続法・現在) となっている。)</span> *si Gallia omnis cum Germanis <u>consentiret</u>, **もし、全ガッリアがゲルマーニア人と結託しているならば、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、&alpha;系写本では [[wikt:en:consentiret|cōnsentīret]] (接続法・未完了過去)<br>         &beta;系写本では [[wikt:en:consentiat|cōnsentiat]] (接続法・現在) となっている。)</span> *unam esse in [[wikt:en:celeritas#Latin|celeritate]] [[wikt:en:positus#Latin|positam]] [[wikt:en:salus#Latin|salutem]]. **唯一の身の安全は、迅速(な行動)の中に置かれているのだ。 *<!--❼-->[[wikt:en:Cotta#Latin|Cottae]] quidem atque eorum, qui [[wikt:en:dissentio#Latin|dissentirent]], consilium [[wikt:en:quis#Latin|quem]] <u>habere</u> [[wikt:en:exitus#Latin|exitum]]? **実のところ、コッタおよび<small>(サビーヌスと意見が)</small>相違する者たちの考えは、いかなる結末を生ずるだろうか? **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、多くの写本では [[wikt:en:haberet|habēret]] (接続法・未完了過去) だが<br>         [[wikt:en:habere#Verb|habēre]] (現在・能動・不定法) という修正提案がある。)</span> :  *In quo si [[wikt:en:praesens#Latin|praesens]] periculum non, **その点において、もし当面の危険がないとしても、 *at [[wikt:en:certe#Latin|certe]] longinqua [[wikt:en:obsidio#Latin|obsidione]] [[wikt:en:fames#Latin|fames]] esset [[wikt:en:timendus#Latin|timenda]]. **だが確実に、長期の攻囲による飢えが恐れられるべきである。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:si non ~ at certe … の構文=「もし~でなくても、いずれにしろ…。」)</span> <!-- <span style="color:#009900;"></span> **:<span style="color:#009900;">(訳注: **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注: --> ===30節=== *<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/30節]] {{進捗|00%|2024-02-02}}</span> '''サビーヌスのさらなる説得''' *Hac in [[wikt:en:uterque#Latin|utramque]] partem [[wikt:en:disputatio#Latin|disputatione]] [[wikt:en:habitus#Latin|habita]], **(サビーヌスとコッタの)双方の側において、このような討議がなされて、 *cum a [[wikt:en:Cotta#Latin|Cotta]] <u>primis</u>que <u>ordinibus</u> acriter [[wikt:en:resisto#Latin|resisteretur]], **コッタと<u>第一序列(の百人隊長)たち</u>により激しく抵抗されていたときに、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は [[wikt:en:primorum|prīmōrum]] [[wikt:en:ordinum|ōrdinum]] [[wikt:en:centuriones#Latin|centuriōnēs]] のことで、<br>    [[#28節|28節]]の訳注でふれたように、第一<ruby><rb>[[w:コホルス|歩兵大隊]]</rb><rp>(</rp><rt>コホルス</rt><rp>)</rp></ruby>の<ruby><rb>[[w:ケントゥリオ|百人隊長]]</rb><rp>(</rp><rt>ケントゥリオ</rt><rp>)</rp></ruby>たち。1個軍団の定員は5名で、<br>    ① [[w:en:Primus pilus|Primus Pilus]], ② [[w:en:Principes|Princeps]] Prior, ③ Princeps Posterior, ④ [[w:en:Hastati|Hastatus]] Prior, ⑤ Hastatus Posterior <ref>英語版記事 [[w:en:Centurion#Seniority]] を参照。</ref>。<br>    今回の1個軍団と5個大隊の内に第一大隊が二つあれば、最大10名いた可能性もある。)</span> *<!--▲直接話法--><span style="background-color:#e8e8ff;"><span style="color:#009900;">«</span> [[wikt:en:vincite#Latin|Vincite]],<span style="color:#009900;">»</span></span> [[wikt:en:inquit|inquit]], <!--▲直接話法--><span style="background-color:#e8e8ff;"><span style="color:#009900;">«</span> si ita vultis,<span style="color:#009900;">»</span></span> [[wikt:en:Sabinus#Proper_noun|Sabinus]], **「もし、そのように君たちが望むのなら、勝ってみなさい」と[[w:クィントゥス・ティトゥリウス・サビヌス|サビーヌス]]は言い放った。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:以下、<!--▲直接話法--><span style="background-color:#e8e8ff;">&nbsp;<span style="color:#009900;">«</span> ~ <span style="color:#009900;">»</span>&nbsp;</span> の箇所は、直接話法で記されている。)</span> *et id [[wikt:en:clarior#Latin|clariore]] [[wikt:en:vox#Latin|voce]], ut magna pars militum [[wikt:en:exaudio#Latin|exaudiret]]: **それは、兵士たちの大部分が聴き取れるような、はっきりとした声であった。 *<!--❷--><!--▲直接話法--><span style="background-color:#e8e8ff;"><span style="color:#009900;">«</span> neque is sum,<span style="color:#009900;">»</span></span> inquit, <!--▲直接話法--><span style="background-color:#e8e8ff;"><span style="color:#009900;">«</span> qui gravissime ex vobis mortis periculo [[wikt:en:terreo#Latin|terrear]]: &nbsp;</span> **「私は、君たち<small>〔コッタら〕</small>のうちの死の危険に酷く脅えている者ではないぞ」とも言った。 *<span style="background-color:#e8e8ff;">&nbsp; hi [[wikt:en:sapio#Latin|sapient]]; &nbsp;</span> **「<u>この者たち</u>は(事態を)理解している。 **:<span style="color:#009900;">(訳注:サビーヌスの弁舌に耳を傾けている兵士たちのこと。)</span> *<!--▲直接話法--><span style="background-color:#e8e8ff;">&nbsp; si gravius [[wikt:en:aliquis#Latin|quid]] [[wikt:en:accido#Etymology_1|acciderit]], [[wikt:en:abs#Latin|abs]] te [[wikt:en:ratio#Latin|rationem]] [[wikt:en:reposco#Latin|reposcent]], &nbsp;</span> **もし非常に重大なことが起こってしまったならば、(兵士らが)君〔コッタ〕から(判断の)理由を求めることになるであろう。 *<!--❸--><!--▲直接話法--><span style="background-color:#e8e8ff;">&nbsp; qui, si per te [[wikt:en:licet#Latin|liceat]], &nbsp;</span> **彼らは、もし君によって許されるのならば、 *<!--▲直接話法--><span style="background-color:#e8e8ff;">&nbsp; [[wikt:en:perendinus#Latin|perendino]] die cum proximis [[wikt:en:hibernum#Latin|hibernis]] [[wikt:en:coniunctus#Participle|coniuncti]] &nbsp;</span> **明後日に近隣の冬営に合流して、 *<!--▲直接話法--><span style="background-color:#e8e8ff;">&nbsp; [[wikt:en:communis#Latin|communem]] cum reliquis belli [[wikt:en:casus#Latin|casum]] [[wikt:en:sustineo#Latin|sustineant]], &nbsp;</span> **別の(軍団の)者たちとともに、共通の戦争の行く末に耐えるであろう。 *<!--▲直接話法--><span style="background-color:#e8e8ff;">&nbsp; non [[wikt:en:reiectus#Latin|reiecti]] et [[wikt:en:relegatus#Latin|relegati]] longe ab [[wikt:en:ceterus#Latin|ceteris]] aut [[wikt:en:ferrum#Latin|ferro]] aut [[wikt:en:fames#Latin|fame]] [[wikt:en:intereo#Latin|intereant]].<span style="color:#009900;">»</span>&nbsp;</span> **撃退されて、他の者たちからまったく遠ざけられて<ruby><rb>鉄 剣</rb><rp>(</rp><rt>フェッルム</rt><rp>)</rp></ruby> あるいは <ruby><rb>飢 餓</rb><rp>(</rp><rt>ファエース</rt><rp>)</rp></ruby>によって死滅するようなことはない。」 :  :<span style="color:#009900;">(訳注:カエサルの『ガリア戦記』は、発言などのほとんどを徹底して間接話法で記していることが知られているが、<br>    [[ガリア戦記_第4巻#25節|第4巻25節]]と本節・[[#44節|44節]]では珍しく直接話法で記す手法を採っている。)</span> <!-- <span style="color:#009900;"></span> **:<span style="color:#009900;">(訳注: **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注: --> ===31節=== *<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/31節]] {{進捗|00%|2024-02-06}}</span> '''論争決し、ローマ勢が陣営を発つ''' *<!--❶-->[[wikt:en:consurgitur|Consurgitur]] ex consilio; **(出席者により)会議(の席)は立たれる。 **:<span style="color:#009900;">(訳注:出席者(たち)は会議の席から立ち上がった。)</span> *[[wikt:en:comprehendo#Latin|comprehendunt]] [[wikt:en:uterque#Latin|utrumque]] et [[wikt:en:oro#Latin|orant]], **(彼らは)両人<small>〔副官であるサビーヌスとコッタ〕</small>を取り囲んで(以下のことを)懇請する。 *ne sua [[wikt:en:dissensio#Latin|dissensione]] et [[wikt:en:pertinacia#Latin|pertinacia]] rem in summum periculum [[wikt:en:deduco#Latin|deducant]]: **自分ら<small>〔両副官〕</small>の<ruby><rb>意見の衝突</rb><rp>(</rp><rt>ディセンスィオー</rt><rp>)</rp></ruby>や強情さにより事態を極度の危険に陥らせないように、と。 :  :<span style="color:#009900;">(訳注:以下文末まで、会議の出席者たちが話した内容が間接話法の不定法で記されている。)</span> *<!--❷-->[[wikt:en:facilis#Latin|facilem]] esse rem, <u>[[wikt:en:seu#Latin|seu]]</u> [[wikt:en:maneo#Latin|maneant]], <u>seu</u> [[wikt:en:proficiscor#Latin|proficiscantur]], **<small>(彼らローマ勢が冬営に)</small> 留まろうが、あるいは出発しようが、事態は容易である。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:seu#Latin|seu]] ~, seu ・・・;[[wikt:en:sive#Latin|sīve]] ~, sīve ・・・「~か、あるいは・・・か」)</span> *si modo unum omnes [[wikt:en:sentio#Latin|sentiant]] ac [[wikt:en:probo#Latin|probent]]; **もし、皆の者がただ一つ(の方策)を考えて、承認するのならば、だが。 *[[wikt:en:contra#Latin|contra]] in dissensione nullam se salutem [[wikt:en:perspicio#Latin|perspicere]]. **それに対し、<ruby><rb>意見の衝突</rb><rp>(</rp><rt>ディセンスィオー</rt><rp>)</rp></ruby>においては、自分たちは何らの身の安全をも見出せないのである。 :  *<!--❸-->Res [[wikt:en:disputatio#Latin|disputatione]] ad mediam noctem [[wikt:en:perduco#Latin|perducitur]]. **事は討論によって真夜中まで引き延ばされる。 :  *[[wikt:en:tandem#Latin|Tandem]] dat [[wikt:en:Cotta#Latin|Cotta]] [[wikt:en:permotus#Latin|permotus]] manus: **とうとう、コッタが説き勧められて、両手を差し伸べて<small>〔屈服して〕</small>、 *[[wikt:en:supero#Latin|superat]] sententia [[wikt:en:Sabinus#Proper_noun|Sabini]]. **[[w:クィントゥス・ティトゥリウス・サビヌス|サビーヌス]]の意見が勝つ。 :  *<!--❹-->[[wikt:en:pronuntio#Latin|Pronuntiatur]] prima luce [[wikt:en:iturus#Latin|ituros]]<span style="color:#009900;"> (esse)</span>. **明け方に(冬営から)出て行くであろうことが、布告される。 :  *[[wikt:en:consumo#Latin|Consumitur]] [[wikt:en:vigilia#Latin|vigiliis]] reliqua pars noctis, **夜の残りの部分は、徹夜で過ごされる。 *cum sua [[wikt:en:quisque#Latin|quisque]] miles [[wikt:en:circumspicio#Latin|circumspiceret]], **なぜなら、めいめいの兵士たちは、自分たちのものを吟味していたからである。 *[[wikt:en:quid#Pronoun_2|quid]] [[wikt:en:secum#Latin|secum]] [[wikt:en:porto#Latin|portare]] posset, **何を、自分とともに持ち運んで行くことができるか? *quid ex [[wikt:en:instrumentum#Latin|instrumento]] hibernorum [[wikt:en:relinquo#Latin|relinquere]] [[wikt:en:cogo#Latin|cogeretur]]. **何を、冬営の装備類のうちから置き去りにせざるを得ないのか? :  *<!--❺-->Omnia [[wikt:en:excogito#Latin|excogitantur]], **あらゆることが、考え抜かれる。 *[[wikt:en:quare#Latin|quare]] nec sine periculo [[wikt:en:maneo#Latin|maneatur]], **なぜ(ローマ勢は)危険なしに(冬営に)留まれないのか、 *et [[wikt:en:languor#Latin|languore]] militum et vigiliis periculum [[wikt:en:augeo#Latin|augeatur]]. **かつ、兵士たちの疲弊や不眠によって危険が増されるのか。 :  *<!--❻-->Prima luce <u>sic</u> ex castris [[wikt:en:proficiscor#Latin|proficiscuntur]], **(ローマ勢は)明け方に、以下のようにして、陣営から出発する。 *<u>ut</u> quibus [[wikt:en:persuadeo#Latin|esset persuasum]] non ab hoste, **彼らが敵により説得されていたのではなく、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:sic#Latin|sic]] ~ ut …「…のように」)</span> *sed ab homine amicissimo [[wikt:en:Ambiorix#Latin|Ambiorige]] consilium [[wikt:en:datus#Latin|datum]], **けれどもとても友好的な人物である[[w:アンビオリクス|アンビオリークス]]により忠告されていたかのように。 *longissimo agmine maximisque impedimentis. **長たらしい<ruby><rb>行軍隊列</rb><rp>(</rp><rt>アグメン</rt><rp>)</rp></ruby>と並外れて大きな[[w:輜重|輜重]]を伴っていた。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:なお、[[ガリア戦記_第2巻#24節|第2巻24節]]でも記されたように、<br>    <ruby><rb>軍属奴隷</rb><rp>(</rp><rt>カーロー</rt><rp>)</rp></ruby> ''[[wikt:en:calo#Etymology_2_3|calo]]'' と呼ばれる奴隷が1個軍団当たり2000名ほどいたと推定され、<br>    輜重の運搬などのために使役されていたと考えられているが、<br>    第2巻以外では[[ガリア戦記_第6巻#36節|第6巻36節]]・[[ガリア戦記_第6巻#40節|40節]]で言及されるのみである。)</span> <!-- <span style="color:#009900;"></span> **:<span style="color:#009900;">(訳注: **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注: --> ===32節=== *<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/32節]] {{進捗|00%|2024-02-14}}</span> ;エブローネース族の伏兵が待ち伏せて、峡谷の隘路でローマ勢を挟撃する(アドゥアトゥカの戦い) *At hostes, **しかしながら、敵勢〔[[w:エブロネス族|エブローネース族]]〕は、 *[[wikt:en:posteaquam|postea quam]] ex nocturno [[wikt:en:fremitus#Latin|fremitu]] [[wikt:en:vigilia#Latin|vigiliis]]<nowiki>que</nowiki> de [[wikt:en:profectio#Latin|profectione]] eorum [[wikt:en:sentio#Latin|senserunt]], **夜間のざわめきと(ローマ人が)寝ずにいることにより、彼ら〔ローマ勢〕の出発に感付いた後で、 *[[wikt:en:conlocatus#Latin|conlocatis]] [[wikt:en:insidia#Latin|insidiis]] [[wikt:en:bipertito#Adverb|bipertito]] **[[w:伏兵|伏兵]]を二手に分配して *in silvis [[wikt:en:opportunus#Latin|opportuno]] atque [[wikt:en:occultus#Latin|occulto]] loco a milibus passuum circiter duobus **森の中の好都合で目立たず(ローマ陣営から)約2ローママイルの場所で、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:1[[ガイウス・ユリウス・カエサルの著作/通貨・計量単位#ミーッレ・パッスーム、ミーリア(ローママイル)|ローママイル]]は約1.48 kmで、2マイルは約3 km)</span> *Romanorum [[wikt:en:adventus#Latin|adventum]] [[wikt:en:exspecto#Latin|ex(s)pectabant]], **ローマ人たちの接近を待ち受けていたのだ。 [[画像:Jeker3.JPG|thumb|right|200px|[[w:トンゲレン|トンゲレン]]市街の南を流れる川(Jeker)。本節の峡谷に相当すると思われるもの。]] *et, cum se maior pars agminis in magnam [[wikt:en:convallis#Latin|convallem]] [[wikt:en:demitto#Latin|demisisset]], **そして(ローマ勢の)<ruby><rb>行軍隊列</rb><rp>(</rp><rt>アグメン</rt><rp>)</rp></ruby>の大半が大きな峡谷に降りて行ったときに、 *ex [[wikt:en:uterque#Latin|utraque]] parte eius [[wikt:en:vallis#Etymology_1|vallis]] subito se [[wikt:en:ostendo#Latin|ostenderunt]], **その谷の両側から忽然と姿を現わして、 *novissimosque [[wikt:en:premo#Latin|premere]] et primos [[wikt:en:prohibeo#Latin|prohibere]] [[wikt:en:adscensus#Noun|a(d)scensu]] **(ローマ勢の)最後尾を圧迫し、最前列が(谷を)登ることを妨害して、 *atque [[wikt:en:iniquus#Latin|iniquissimo]] nostris loco proelium [[wikt:en:committo#Latin|committere]] coeperunt. **我が方〔ローマ勢〕にとってとても不利な場所で、交戦を始めたのだ。 <!-- <span style="color:#009900;"></span> **:<span style="color:#009900;">(訳注: **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注: --> ===33節=== *<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/33節]] {{進捗|00%|2024-02-14}}</span> ;戦慄するローマ勢 :  ;   敵の伏兵を予期していなかったサビーヌスが周章狼狽する *[[wikt:en:tum#Latin|Tum]] [[wikt:en:demum#Adverb|demum]] [[wikt:en:Titurius#Latin|Titurius]], <u>ut</u> qui nihil ante [[wikt:en:provideo#Latin|providisset]], **するとついに、[[w:クィントゥス・ティトゥリウス・サビヌス|ティトゥーリウス(・サビーヌス)]]は、事前に何ら予見していなかった者にありがちなように、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:ut は&beta;系写本の記述で、&alpha;系写本にはない。)</span> *<u>[[wikt:en:trepido#Latin|trepidare]]</u> et <u>[[wikt:en:concurso#Verb|concursare]]</u> cohortesque <u>[[wikt:en:dispono#Latin|disponere]]</u>, **<ruby><rb>慌</rb><rp>(</rp><rt>あわ</rt><rp>)</rp></ruby>てふためいて、走り回り、諸<ruby><rb>[[w:コホルス|歩兵大隊]]</rb><rp>(</rp><rt>コホルス</rt><rp>)</rp></ruby>を配置した。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、歴史的不定法&nbsp; ''Historical Infinitive'' <ref>[https://dcc.dickinson.edu/grammar/latin/other-uses-infinitive Other Uses of the Infinitive | Dickinson College Commentaries] 等を参照。</ref>。)</span> *haec tamen ipsa [[wikt:en:timide#Adverb|timide]] **しかし、まさにこれらを(サビーヌスが)恐れてしたので、 *atque ut eum omnia [[wikt:en:deficio#Latin|deficere]] viderentur; **あらゆることが彼〔サビーヌス〕を見放したように思われていたほどだった。 *quod [[wikt:en:plerumque#Etymology_1|plerumque]] iis [[wikt:en:accido#Etymology_1|accidere]] [[wikt:en:consuesco#Latin|consuevit]], qui in ipso [[wikt:en:negotium#Latin|negotio]] consilium [[wikt:en:capio#Etymology_1|capere]] [[wikt:en:cogo#Latin|coguntur]]. **そういったことはたいてい、軍事行動の最中になって作戦を立てざるを得なかった者に起こるのが常である。 :  ;   コッタは指揮官としての任務に注力する *<!--❷-->At [[wikt:en:Cotta#Latin|Cotta]], qui [[wikt:en:cogito#Latin|cogitasset]] haec posse in itinere accidere **一方、コッタは、これらのことが行軍中に起こり得ると考えており、 *atque ob eam causam profectionis auctor non fuisset, **かつ、その理由のために、(冬営からの)出発の張本人ではなかったので、 *[[wikt:en:nullus#Latin|nulla]] in re communi [[wikt:en:salus#Latin|saluti]] deerat **(軍団全体に)共通する身の安全の配慮において、何ら欠けることがなかった。 *<u>et</u> in [[wikt:en:appellandus#Latin|appellandis]] [[wikt:en:cohortandus#Latin|cohortandis]]<nowiki>que</nowiki> militibus [[wikt:en:imperator#Latin|imperatoris]] **兵士たちに呼びかけて励ますことにおいて<u>も</u>、司令官としての(職責を果たし)、 *<u>et</u> in pugna militis [[wikt:en:officium#Latin|officia]] [[wikt:en:praesto#Verb|praestabat]]. **戦いにおいて<u>も</u>、兵士としての職責を果たしていた。 :  ;   コッタが、輜重を捨てて、円陣を組むように号令する *<!--❸-->Cum propter longitudinem agminis **<ruby><rb>行軍隊列</rb><rp>(</rp><rt>アグメン</rt><rp>)</rp></ruby>の長さのゆえに *minus facile omnia per se [[wikt:en:obeo#Latin|obire]] et quid [[wikt:en:quisque#Latin|quoque]] loco [[wikt:en:faciendus#Latin|faciendum]] esset, [[wikt:en:provideo#Latin|providere]] possent, **自らすべてに取り組むことも、各持ち場で何がなされるべきか予期することも、あまり<ruby><rb>容易</rb><rp>(</rp><rt>たやす</rt><rp>)</rp></ruby>くはできなかったので、 *[[wikt:en:iubeo#Latin|iusserunt]] [[wikt:en:pronuntio#Latin|pronuntiare]], ut [[wikt:en:impedimentum#Latin|impedimenta]] [[wikt:en:relinquo#Latin|relinquerent]] atque in [[wikt:en:orbis#Latin|orbem]] [[wikt:en:consisto#Latin|consisterent]]. **[[w:輜重|輜重]]を放置し、かつ円形に陣取るように、布告することを命じた。 :  *<!--❹-->Quod consilium **この方策は、 *<u>etsi</u> in [[wikt:en:eiusmodi|eiusmodi]] [[wikt:en:casus#Latin|casu]] [[wikt:en:reprehendendus#Latin|reprehendendum]] non est, **このような場合とはいえ、非難されるべきものではないが、 *<u>tamen</u> [[wikt:en:incommode#Adverb|incommode]] [[wikt:en:accido#Etymology_1|accidit]]: **それでも不利な結果となった。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:etsi#Latin|etsi]] ~, [[wikt:en:tamen#Latin|tamen]] ・・・「~としても、それでもなお・・・」)</span> *<!--❺-->[[wikt:en:nam#Latin|nam]] <u>et</u> nostris militibus [[wikt:en:spes#Latin|spem]] [[wikt:en:minuo#Latin|minuit]] **なぜなら、(この布告は)我が方<small>〔ローマ勢〕</small>の兵士たちにとって希望を弱めもしたし、 *<u>et</u> hostes ad pugnam [[wikt:en:alacer#Latin|alacriores]] [[wikt:en:efficio#Latin|effecit]], **敵勢を戦いへと活気付かせもしたためである。 *quod non sine summo [[wikt:en:timor#Latin|timore]] et [[wikt:en:desperatio#Latin|desperatione]] id [[wikt:en:factus#Latin|factum]] videbatur. **というのは、この上ない恐怖と絶望なしにそれがなされたとは思われなかったからである。 :  ;   不安に駆られたローマ兵たちが、戦いの持ち場を離れて、輜重の中の貴重品を確保しようと必死になる *<!--❻-->[[wikt:en:praeterea#Latin|Praeterea]] accidit, quod fieri [[wikt:en:necesse#Latin|necesse]] erat, **その上に、当然起こるべきことが生じる。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:accido#Etymology_1|accidere]], ut ~「~ということが生じる」)</span> *<u>ut</u> [[wikt:en:vulgo#Adverb_3|vulgo]] milites ab [[wikt:en:signum#Latin|signis]] [[wikt:en:discedo#Latin|discederent]], **兵士たちが公然と軍旗のもと〔戦列〕から離脱して、 *quaeque [[wikt:en:quisque#Latin|quisque]] eorum [[wikt:en:carus#Latin|carissima]] haberet, ab impedimentis [[wikt:en:peto#Latin|petere]] atque [[wikt:en:arripio#Latin|arripere]] [[wikt:en:propero#Latin|properaret]], **彼らのおのおのが最も価値あると思っていたものを、輜重に求めて、かき集めようと急いだのだ。 *[[wikt:en:clamor#Latin|clamore]] et [[wikt:en:fletus#Noun|fletu]] omnia [[wikt:en:compleo#Latin|complerentur]]. **すべてが叫び声と泣き言で満たされていた。 <!-- <span style="color:#009900;"></span> **:<span style="color:#009900;">(訳注: **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注: --> ===34節=== *<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/34節]] {{進捗|00%|2024-02-22}}</span> '''エブローネース族の作戦''' *At barbaris consilium non [[wikt:en:desum#Latin|defuit]]. **それに対して蛮族たち〔[[w:エブロネス族|エブローネース族]]〕の作戦は事欠かなかった。 *Nam duces eorum tota acie [[wikt:en:pronuntio#Latin|pronuntiare]] [[wikt:en:iubeo#Latin|iusserunt]], **なぜなら、彼らの将帥たち<small>〔アンビオリークスら〕</small>は全戦列に布告することを命じていた。 *[[wikt:en:nequis#Etymology_2|ne quis]] ab loco [[wikt:en:discedo#Latin|discederet]]; **誰も持ち場から離れるな、と。 *illorum esse [[wikt:en:praeda#Latin|praedam]] **戦利品は彼らのものであるし、 *atque illis [[wikt:en:reservo#Latin|reservari]], [[wikt:en:quicumque#Latin|quaecumque]] Romani [[wikt:en:relinquo#Latin|reliquissent]]: **ローマ人が置き去りにしたものは何であれ彼らに保持される。 *[[wikt:en:proinde#Latin|proinde]] omnia in victoria [[wikt:en:positus#Latin|posita]] existimarent. **それゆえに、すべては勝利にかかっていると思え、と。 :  *<span style="color:#009900;">[</span>Erant et [[wikt:en:virtus#Latin|virtute]] et numero [[wikt:en:pugno#Latin|pugnandi]] [[wikt:en:par#Latin|pares]].<span style="color:#009900;">]</span> **(両軍は)戦うことの武勇も兵力も同等であった。 **:<span style="color:#009900;">(訳注:この文 [ ~ ] は、壊れている箇所があると見なされ、削除する提案もある。)</span> *Nostri, <u>tametsi</u> ab duce et a [[wikt:en:fortuna#Latin|fortuna]] [[wikt:en:desero#Latin|deserebantur]], **我が方〔ローマ勢〕は、<u>たとえ</u>将帥〔サビーヌス〕からも幸運(の女神)からも見捨てられていた<u>としても</u>、 **:<span style="color:#009900;">(訳注:fortuna は、普通名詞「幸運」とも解されるが、<br>    幸運を神格化した女神 [[w:la:Fortuna (dea)|Fortuna]] 「[[w:フォルトゥーナ|フォルトゥーナ]]」と訳されているものもある。)</span> [[画像:Girolamo_da_Carpi_001.jpg|thumb|right|200px|[[W:ローマ神話|ローマ神話]]の女神[[w:フォルトゥーナ|フォルトゥーナ]](16世紀ルネサンス期のイタリア、[[w:ジローラモ・ダ・カルピ|ジローラモ・ダ・カルピ]]画)。気まぐれな運命の女神とも解釈される。]] *<u>tamen</u> omnem spem salutis in virtute [[wikt:en:pono#Latin|ponebant]], **しかしそれでも、身の安全のすべての希望を武勇にかけていて、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:tametsi#Latin|tametsi]] ~, [[wikt:en:tamen#Latin|tamen]] ・・・「たとえ~だとしても、しかしそれでも・・・」)</span> *et [[wikt:en:quotiens#Latin|quotiens]] [[wikt:en:quisque#Latin|quaeque]] [[wikt:en:cohors#Latin|cohors]] [[wikt:en:procurro#Latin|procurrerat]], **おのおのの<ruby><rb>[[w:コホルス|歩兵大隊]]</rb><rp>(</rp><rt>コホルス</rt><rp>)</rp></ruby>が前進するたびに、 *ab ea parte magnus numerus hostium [[wikt:en:cado#Latin|cadebat]]. **その方面で敵<small>〔エブローネース族〕</small>の多数が<ruby><rb>斃</rb><rp>(</rp><rt>たお</rt><rp>)</rp></ruby>れていた。 :  *Qua re [[wikt:en:animadversus#Participle|animadversa]] **かかる戦況を見て取ると、 *[[wikt:en:Ambiorix#Latin|Ambiorix]] pronuntiari [[wikt:en:iubeo#Latin|iubet]], **[[w:アンビオリクス|アンビオリークス]]は(以下のように)布告されることを命じた。 *ut [[wikt:en:procul#Latin|procul]] [[wikt:en:telum#Latin|tela]] [[wikt:en:conicio#Latin|coniciant]] **<small>(ローマ勢に対して)</small> 遠くから飛道具を投げよ。 *[[wikt:en:neve#Latin|neu]] [[wikt:en:propius#Latin|propius]] [[wikt:en:accedo#Latin|accedant]], **また、さらに近くへは近づくな。 *et quam in partem Romani impetum fecerint, [[wikt:en:cedo#Etymology_1|cedant]]; **ローマ人が突撃をしている方面では、退却せよ。 *<span style="color:#009900;">[</span>[[wikt:en:levitas#Latin|levitate]] armorum et cotidiana [[wikt:en:exercitatio#Latin|exercitatione]] nihil iis [[wikt:en:noceo#Latin|noceri]] posse;<span style="color:#009900;">]</span> **武具の軽さと日頃の訓練により、彼ら〔エブローネース兵〕は何ら害されることはない、と。 **:<span style="color:#009900;">(訳注:甲冑・盾と各種の剣や槍を装備したローマの重装歩兵に対して、<br>    ガッリア兵は着の身姿の軽装であった。)</span> **:<span style="color:#009900;">(訳注:[ ~ ] の箇所には削除提案されている。)</span> *[[wikt:en:rursus#Latin|rursus]] se ad signa [[wikt:en:recipiens#Latin|recipientes]] [[wikt:en:insequor#Latin|insequantur]]. **軍旗のもとへ退却する者たち〔ローマ兵〕を再び追撃せよ。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:『ガリア戦記』の続編に当たる[[内乱記_第2巻#41節|『内乱記』第2巻41節]]においても、<br>     [[w:ヌミディア|ヌミディア勢]]がカエサルの部下[[w:ガイウス・スクリボニウス・クリオ|クーリオー]]のローマ勢に同様の用兵を採用し、見事に勝っている。<br>     柔道の創始者 [[w:嘉納治五郎|嘉納治五郎]]は、柔道の極意を'''「押さば引け、引かば押せ」'''と言ったという。)</span> <!-- <span style="color:#009900;"></span> **:<span style="color:#009900;">(訳注: **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注: --> ===35節=== *<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/35節]] {{進捗|00%|2024-02-26}}</span> ;戦いが続き、ローマ勢が大苦戦に陥る *<!--❶-->Quo [[wikt:en:praeceptum#Noun|praecepto]] ab iis [[wikt:en:diligenter#Latin|diligentissime]] [[wikt:en:observatus#Latin|observato]], **(アンビオリークスの)その指図が彼ら〔エブローネース族〕により注意深く守られて、 *cum [[wikt:en:quispiam#Latin|quaepiam]] cohors ex [[wikt:en:orbis#Latin|orbe]] [[wikt:en:excedo#Latin|excesserat]] atque [[wikt:en:impetus#Latin|impetum]] fecerat, **どの(ローマの)[[w:コホルス|歩兵大隊]]が円形(の陣形)から離れて突撃をしたときにも、 *hostes [[wikt:en:velociter#Latin|velocissime]] [[wikt:en:refugio#Verb_2|refugiebant]]. **敵たちは並外れた速さで退避していた。 :  *<!--❷-->Interim eam partem [[wikt:en:nudo#Latin|nudari]] [[wikt:en:necesse#Latin|necesse]] erat **その間に(歩兵大隊が離れた)その部分が無防備にならざるを得ず、 *et ab [[wikt:en:latus#Noun_2|latere]] [[wikt:en:apertus#Latin|aperto]] [[wikt:en:telum#Latin|tela]] [[wikt:en:recipio#Latin|recipi]]. **<u>開けた側</u>から飛道具(による攻撃)を受けた。 **:<span style="color:#009900;">(訳注:軍団兵=重装歩兵は[[w:スクトゥム|長盾]]を持つ左手側は飛道具から守られていたが、<br>    剣を持つ右手側は「開けた側」で、飛道具などに弱かった。)</span> :  *<!--❸-->Rursus cum in eum locum, unde [[wikt:en:egredior#Latin|erant egressi]], [[wikt:en:revertor#Latin|reverti]] [[wikt:en:coepi#Latin|coeperant]], **(歩兵大隊が)出て行った当の場所<small>〔円形陣形〕</small>に再び戻り始めるや否や、 *et ab iis qui [[wikt:en:cedo#Latin|cesserant]], et ab iis qui [[wikt:en:proximus#Noun|proximi]] [[wikt:en:sto#Latin|steterant]], [[wikt:en:circumvenio#Latin|circumveniebantur]]; **(エブローネース勢のうち)後退していた者たちによっても、近隣に踏み止まっていた者たちによっても、攻め囲まれていた。 :  *<!--❹-->[[wikt:en:sin#Latin|Sin]] autem locum [[wikt:en:teneo#Latin|tenere]] vellent, **他方でもし(円形陣形の)場を保とうと欲すると、 *nec [[wikt:en:virtus#Latin|virtuti]] locus [[wikt:en:relinquo#Latin|relinquebatur]], **武勇を示す(白兵戦の)場が残されなかったし、 *neque ab tanta multitudine [[wikt:en:coniectus#Participle|coniecta]] tela [[wikt:en:confertus#Latin|conferti]] [[wikt:en:vito#Latin|vitare]] poterant. **これほどの大勢から投げられた飛道具を、密集した状態のままでは避けることができなかった。 :  *<!--❺-->Tamen tot incommodis [[wikt:en:conflictatus#Latin|conflictati]], **しかし(ローマ勢は)このような不利な状況で、攻撃されており、 *multis vulneribus [[wikt:en:acceptus#Latin|acceptis]] [[wikt:en:resisto#Latin|resistebant]] **多くの傷を受けながら、抵抗していたが、 *et magna parte diei [[wikt:en:consumptus#Latin|consumpta]], **日中の大部分が費やされ、 *cum a prima [[wikt:en:lux#Latin|luce]] ad horam octavam [[wikt:en:pugno#Latin|pugnaretur]], **明け方から第八時<small>〔昼過ぎ頃〕</small>まで戦われて、 *nihil quod ipsis esset [[wikt:en:indignus#Latin|indignum]], [[wikt:en:committo#Latin|committebant]]. **何ら(ローマ兵たち)自身にとって不名誉なことはやらかさなかった。 :  *<!--❻-->Tum [[wikt:en:Titus#Latin|Tito]] [[wikt:en:Balventius#Latin|Balventio]], qui superiore anno [[wikt:en:primus pilus|primum pilum]] duxerat, **そのときに、前年に[[w:プリムス・ピルス|首位百人隊長]]であったティトゥス・バルウェンティウスは、 *[[wikt:en:vir#Latin|viro]] [[wikt:en:fortis#Latin|forti]] et magnae [[wikt:en:auctoritas#Latin|auctoritatis]], **屈強な闘士で、名声も高かったが、 *[[wikt:en:uterque#Latin|utrumque]] [[wikt:en:femur#Latin|femur]] [[wikt:en:tragula#Latin|tragula]] [[wikt:en:traicio#Latin|traicitur]]; **両方の太ももが<small>(エブローネース族が放った)</small>投槍で刺し貫かれる。 :  *<!--❼-->[[wikt:en:Quintus#Latin|Quintus]] Lucanius, eiusdem [[wikt:en:ordo#Latin|ordinis]], [[wikt:en:fortiter#Latin|fortissime]] [[wikt:en:pugnans#Latin|pugnans]], **クィーントゥス・ルーカーニウスも<u>同じ序列</u>にあり、とても勇敢に戦っていたが、 **:<span style="color:#009900;">(訳注:第一序列、すなわち第一歩兵大隊の百人隊長のこと。[[#28節|28節]]の訳注を参照。)</span> *dum [[wikt:en:circumventus#Latin|circumvento]] filio [[wikt:en:subvenio#Latin|subvenit]], [[wikt:en:interficio#Latin|interficitur]]; **包囲された息子を救援に来ている間に、討ち取られる。 :  *<!--❽-->[[wikt:en:Lucius#Latin|Lucius]] [[wikt:en:Cotta#Latin|Cotta]] legatus omnes cohortes [[wikt:en:ordo#Latin|ordines]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:adhortans#Latin|adhortans]] **[[w:レガトゥス|副官]]であるルーキウス・コッタは、すべての歩兵大隊と隊長たちを激励していたが、 *in adversum [[wikt:en:os#Latin|os]] <u>[[wikt:en:funda#Latin|funda]]</u> [[wikt:en:vulnero#Latin|vulneratur]]. **顔が真っ向から<u>投石器</u>によって傷付けられる。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[w:la:Funda|funda]] はパチンコ([[w:スリングショット|スリングショット]])のような簡易な武器であろう。)</span> <!-- <span style="color:#009900;"></span> **:<span style="color:#009900;">(訳注: **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注: --> ===36節=== *<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/36節]] {{進捗|00%|2024-03-24}}</span> '''サビーヌスの命乞い''' *His rebus [[wikt:en:permotus#Latin|permotus]] [[wikt:en:Quintus#Latin|Quintus]] [[wikt:en:Titurius#Latin|Titurius]], **これらの事態に(心を)動かされた[[w:クィントゥス・ティトゥリウス・サビヌス|クィーントゥス・ティトゥーリウス(・サビーヌス)]]は、 *cum procul [[wikt:en:Ambiorix#Latin|Ambiorigem]] suos [[wikt:en:cohortans#Latin|cohortantem]] [[wikt:en:conspicio#Latin|conspexisset]], **配下を鼓舞していた[[w:アンビオリクス|アンビオリークス]]を遠くに望見していたので、 *[[wikt:en:interpres#Latin|interpretem]] suum [[wikt:en:Gnaeus#Latin|Gnaeum]] [[wikt:en:Pompeius#Proper_noun|Pompeium]] ad eum mittit **自らの通訳グナエウス・ポンペイウスを彼〔アンビオリークス〕のところに遣わして、 **:<span style="color:#009900;">(訳注:カエサルとともに三頭政治を行なったあの[[w:グナエウス・ポンペイウス|グナエウス・ポンペイウス]]と同姓同名の別人と思われる。<br>    当のポンペイウスは、この年はヒスパーニアの属州総督であったが、統治は副官に任せ切り、<br>    首都ローマ政界のことが気がかりであったため、ローマ近郊に滞在し続けていた。)</span> *[[wikt:en:rogatum|rogatum]], ut sibi militibusque [[wikt:en:parco#Latin|parcat]]. **自分たち〔両副官〕と兵士たちを助命してくれるように懇願した。 :  *Ille [[wikt:en:appellatus#Latin|appellatus]] [[wikt:en:respondeo#Latin|respondet]]: **あの者<small>〔アンビオリークス〕</small>は要求されて(以下のように)答えた。 *si velit secum [[wikt:en:conloqui|conloqui]], licere; **もし(サビーヌスが)自分<small>〔アンビオリークス〕</small>とともに話し合うことを望むのなら、許可しよう、と。 *sperare a multitudine [[wikt:en:impetro#Latin|impetrari]] posse, quod ad militum salutem [[wikt:en:pertineo#Latin|pertineat]]; **(ローマ人)兵士たちの安全に役立つことが(エブローネース族の)大勢によって達せられることを期待する、と。 *ipsi vero nihil [[wikt:en:nocitum|nocitum]] [[wikt:en:iri#Latin|iri]], **(サビーヌス)自身は確かに、何ら害されることはないだろうし、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:nocitum iri は、「目的分詞+[[wikt:la:eo|īrī]]」 で未来の受動態を表す。)</span> *inque eam rem se suam fidem [[wikt:en:interpono#Latin|interponere]]. **かつ、その事柄に(アンビオリークスは)自らの信義を置くものである、と。 :  *Ille cum [[wikt:en:Cotta#Latin|Cotta]] [[wikt:en:saucius#Latin|saucio]] [[wikt:en:communico#Latin|communicat]], **彼〔サビーヌス〕は、負傷しているコッタと協議する。 *si videatur, pugna ut [[wikt:en:excedo#Latin|excedant]] et cum [[wikt:en:Ambiorix#Latin|Ambiorige]] una [[wikt:en:conloquor|conloquantur]]; **もしよろしいと思われるなら、戦いから離れて、アンビオリークスと一緒に話し合おう、と。 *sperare se ab eo de sua ac militum salute [[wikt:en:impetro#Latin|impetrari]] posse. **彼〔アンビオリークス〕によって自分たちと兵士たちの安全が達せられることを期待する、と。 *[[wikt:en:Cotta#Latin|Cotta]] se ad [[wikt:en:armatus#Latin|armatum]] hostem [[wikt:en:iturus#Latin|iturum]] <span style="color:#009900;">(esse)</span> [[wikt:en:nego#Latin|negat]] atque in eo [[wikt:en:persevero#Latin|perseverat]]. **コッタは、武装している敵のところへ行くことを拒絶して、そのことに固執した。 <!-- <span style="color:#009900;"></span> **:<span style="color:#009900;">(訳注: **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注: --> ===37節=== *<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/37節]] {{進捗|00%|2024-03-26}}</span> ;サビーヌスとコッタの最期、ローマ軍団の壊滅 *[[wikt:en:Sabinus#Proper_noun|Sabinus]], **[[w:クィントゥス・ティトゥリウス・サビヌス|サビーヌス]]は、 *quos in [[wikt:en:praesentia#Latin|praesentia]] [[wikt:en:tribunus#Latin|tribunos]] militum circum se habebat, et <u>primorum ordinum centuriones</u> **目下、自らの周囲に居合わせていた<ruby><rb>[[w:トリブヌス・ミリトゥム|兵士長官]]</rb><rp>(</rp><rt>トリブヌス・ミリトゥム</rt><rp>)</rp></ruby>たち、および第一序列の[[w:ケントゥリオ|百人隊長]]たちに、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[#28節|28節]]などの訳注の繰り返しになるが、<br>    [[wikt:en:primus#Latin|primorum]] [[wikt:en:ordo#Latin|ordinum]] [[wikt:en:centurio#Etymology_2|centuriones]] とは、第一<ruby><rb>[[w:コホルス|歩兵大隊]]</rb><rp>(</rp><rt>コホルス</rt><rp>)</rp></ruby>の百人隊長たちのこと。<br>    共和制末期においては、他の歩兵大隊の定員6名とは異なり、<br>    ① [[w:en:Primus pilus|Primus Pilus]], ② [[w:en:Principes|Princeps]] Prior, ③ Princeps Posterior, ④ [[w:en:Hastati|Hastatus]] Prior, ⑤ Hastatus Posterior <ref>英語版記事 [[w:en:Centurion#Seniority]] を参照。</ref><br>    の定員5名。軍団内における[[w:下士官|下士官]]のトップ5名であった。)</span> *se [[wikt:en:sequor#Latin|sequi]] [[wikt:en:iubeo#Latin|iubet]] **自分に随行することを命じる。 [[画像:Basilika-tongeren-and-ambiorix.jpg|200px|right|thumb|[[w:トンゲレン|トンゲレン市]]の教会堂の前に立つアンビオリークス像(前掲と同じもの)。ヨーロッパ近代のナショナリズムの高揚とともに、彼はカエサルのローマ軍を一敗地にまみれさせた[[w:ケルト人|ケルト人]]の武将、「[[w:ベルギー|ベルギー]]の英雄」として大いに祀り上げられた。]] *et, cum [[wikt:en:propius#Latin|propius]] [[wikt:en:Ambiorix#Latin|Ambiorigem]] [[wikt:en:accedo#Latin|accessisset]], **[[w:アンビオリクス|アンビオリークス]]のより近くに近づいていたので、 *[[wikt:en:iussus#Participle|iussus]] arma [[wikt:en:abicio#Latin|abicere]] [[wikt:en:imperatum#Latin|imperatum]] facit **武器を投げ捨てることを促され、指示されたことをして、 *suisque, ut idem faciant, imperat. **配下の者たちにも、同じことをせよ、と命じる。 :  ;   サビーヌスと部下たちが殺害される *[[wikt:en:interim#Latin|Interim]], dum de [[wikt:en:condicio#Latin|condicionibus]] inter se [[wikt:en:ago#Latin|agunt]] **その間に、(降伏の)条件について互いに談判して、 *[[wikt:en:longior#Latin|longior]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:consulto#Adverb|consulto]] ab [[wikt:en:Ambiorix#Latin|Ambiorige]] [[wikt:en:instituo#Latin|instituitur]] [[wikt:en:sermo#Latin|sermo]], **アンビオリークスによって意図的により長い話し合いが始められている間に、 *paulatim [[wikt:en:circumventus#Latin|circumventus]] [[wikt:en:interficio#Latin|interficitur]]. **(サビーヌスと配下の者たちは)しだいに取り巻かれて、殺害される。 :  *Tum vero suo more victoriam [[wikt:en:conclamo#Latin|conclamant]] atque [[wikt:en:ululatus#Noun|ululatum]] [[wikt:en:tollo#Latin|tollunt]] **すると実に、(エブローネース勢は)自分たちの習慣で、勝利を叫んで、雄叫びを上げ、 *[[wikt:en:impetus#Latin|impetu]]<nowiki>que</nowiki> in nostros facto ordines [[wikt:en:perturbo#Latin|perturbant]]. **我が方<small>〔ローマ勢〕</small>に突撃して、隊列を混乱に陥れた。 :  ;   コッタも多くの兵とともに討ち死にする *Ibi [[wikt:ern:Lucius#Latin|Lucius]] [[wikt:en:Cotta#Latin|Cotta]] [[wikt:en:pugnans#Latin|pugnans]] [[wikt:en:interficio#Latin|interficitur]] cum maxima parte militum. **そこでルーキウス・コッタは戦っていたが、兵士たちの大半とともに殺戮される。 :  ;   ローマ方の敗残兵が冬営の陣営に引き返す *Reliqui se in castra recipiunt, unde [[wikt:en:egredior#Latin|erant egressi]]. **残りの者たち〔敗残兵〕は、そこから出発して来ていたところの陣営に退却する。 :  [[画像:Roman_soldiers_with_aquilifer_signifer_centurio_70_aC.jpg|300px|right|thumb|鷲の徽章の旗手([[w:アクィリフェル|アクィリフェル]])を先頭に行進するローマ兵たちの再演(帝政期のAD70年頃のもの)]] [[画像:Roman aquila.jpg|100px|right|thumb|ローマ軍団の鷲の徽章(再掲)]] *Ex quibus Lucius Petrosidius [[wikt:en:aquilifer#Latin|aquilifer]], **その者たちのうち、<ruby><rb>[[w:アクィリフェル|鷲の徽章の旗手]]</rb><rp>(</rp><rt>アクィリフェル</rt><rp>)</rp></ruby>ルーキウス・ペトロスィディウスは、 *cum magna multitudine hostium [[wikt:en:premo#Latin|premeretur]], **敵の大勢によって圧迫されたときに、 *[[wikt:en:aquila#Latin|aquilam]] intra vallum [[wikt:en:proicio#Latin|proiecit]], **<ruby><rb>鷲の徽章</rb><rp>(</rp><rt>アクィラ</rt><rp>)</rp></ruby> を防壁の内部に投げ込んで、 *ipse pro castris fortissime [[wikt:en:pugnans#Latin|pugnans]] [[wikt:en:occido#Etymology_2|occiditur]]. **自身は陣営の前でとても勇敢に戦って、斃される。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[ガリア戦記_第4巻#25節|第4巻25節]]の訳注で既述のように、<br>    アクィラ ''[[w:en:Aquila (Roman)|aquila]]''(鷲の徽章)は[[ガイウス・ユリウス・カエサルの著作/古代ローマの軍旗類|軍旗類]]の一種で、<br>    その運び手(旗手)は [[w:アクィリフェル|アクィリフェル]] ''[[w:en:Aquilifer|aquilifer]]'' と呼ばれる。<br>    アクィラは各軍団に一つしかない軍旗であったので、<br>    これを敵に奪われることはたいへんな恥辱とされていた。)</span> :  *Illi aegre ad noctem [[wikt:en:oppugnatio#Latin|oppugnationem]] [[wikt:en:sustineo#Latin|sustinent]]; **彼ら(敗残兵たち)は辛うじて夜まで攻囲を持ちこたえたが、 *noctu ad unum omnes [[wikt:en:desperatus#Latin|desperata]] salute se ipsi [[wikt:en:interficio#Latin|interficiunt]]. **夜に、一人残らず身の安全に絶望して、自刃して果てる。 **:<span style="color:#009900;">(訳注:結局、軍団の軍旗であるアクィラ(鷲の徽章)は奪われたと考えられている。)</span> :  *Pauci ex proelio [[wikt:en:elapsus#Latin|elapsi]] **若干の者たちは、戦闘から抜け出して、 *[[wikt:en:incertus#Latin|incertis]] itineribus per silvas **不確かな道筋を森を通って *ad [[wikt:en:Titus#Latin|Titum]] [[wikt:en:Labienus#Latin|Labienum]] legatum in hiberna [[wikt:en:pervenio#Latin|perveniunt]] **冬営にいる(総督副官)[[w:ティトゥス・ラビエヌス|ティトゥス・ラビエーヌス]]のところへ到着して、 *atque eum de rebus [[wikt:en:gestus#Etymology_1|gestis]] [[wikt:en:certior#Latin|certiorem]] faciunt. **彼に、行なわれた事の次第を報告する。 :  :<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:なお、カエサルは詳しく言及していないが、この軍団は<br>    第14軍団 ''[[w:en:Legio XIV Gemina|Legio XIV Gemina]]'' と呼ばれる軍団であったと考えられ、<br>    この壊滅後にカエサルによって再建されたと考えられている。<br>    残りの5個[[w:コホルス|歩兵大隊]]については、他の古参軍団から分遣されたという見方がある。)</span> <br> ---- <!-- <span style="color:#009900;"></span> **:<span style="color:#009900;">(訳注: **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注: --> <div style="background-color:#cfffcf;"> ====<span style="color:#009900;">37節 訳注:アドゥアトゥカの戦いについて</span>==== :このように、アンビオリークスはローマ1個[[w:ローマ軍団|軍団]]と5個[[w:コホルス|歩兵大隊]]をまんまと冬営地からおびき出して殲滅した。<br>著者カエサルはこの一部始終を、若干の敗残兵(本節参照)および敵の捕虜([[#54節|54節]]参照)から知ったと思われる。<br>しかしながら、サビーヌスらの戦術会議での発言内容から投降までの実に詳細な経緯をいかにして知りえたのか?<br>また、ウネッリ族との戦役([[ガリア戦記 第3巻#17節|第3巻17節]]~19節)などでは冷静沈着な智将として描かれていた有能なサビーヌスが、<br>この[[w:アドゥアトゥカの戦い|アドゥアトゥカの戦い]]([[#26節|26節]]~37節)では一転してコッタと対照的な愚将のように描かれているのはなぜか?<br>この敗戦は[[w:ガリア戦争|ガッリア戦争]]におけるローマ軍最大の敗北であり、当然ながら最高司令官であるカエサルの敗戦責任も<br>ローマ本国の政敵たち、とりわけ[[w:マルクス・ポルキウス・カトー・ウティケンシス|小カトー]]のような[[w:元老院|元老院]]派([[w:オプティマテス|オプティマテス]])によって厳しく糾弾された。<br>カエサルは、ガッリアにおける数々の戦闘での虐殺や捕虜売却、ドゥムノリークスの暗殺、および兵力配分の多寡など<br>この敗戦に結びつきうる自らの方策とは切り離して、この大きな敗戦責任を「愚将」サビーヌス一人に負わせるべく、<br>脚色して筆を走らせたのかも知れない。 ;<span style="color:#009900;">サイドボトム</span> : 古代西洋史研究者ハリー・サイドボトム([[w:en:Harry_Sidebottom|Harry Sidebottom]])は、カエサルが自己の行動の正当さを宣伝し、<br>責任逃れをしようとしたと、批評している<ref>Ancient Warfare: A Very Short Introduction, by Harry Sidebottom, Oxford University Press, 2005, {{ISBN|978-0192804709}}.日本語訳『ギリシャ・ローマの戦争』ハリー・サイドボトム著、吉村忠典・澤田典子訳、岩波書店、2006年、{{ISBN|978-4-00-026886-8}}.<br>の日本語訳p.131-140を参照。</ref>。 ;<span style="color:#009900;">ゴールズワーシー</span> : さらに、評伝『カエサル』<ref>邦訳『カエサル(下)』宮坂渉 訳、白水社、{{ISBN|978-4-560-08230-0}} (品切れ・重版未定)</ref>を著した軍事史家[[w:エイドリアン・ゴールズワーシー|エイドリアン・ゴールズワーシー]]([[w:en:Adrian Goldsworthy|Adrian Goldsworthy]])は、<br>「『戦記』でカエサルはこの惨事の責任をすべてサビヌスに押し付けている。<ref>原文では、In the Commentaries Caesar places all the blame for the disaster on Sabinus.</ref>」<br>「カエサルはこの責任を自分の総督代理になすりつけようとしたが、それを真に受けた同時代人は、<br>いたとしてもわずかで、現存する史料はいずれもこれはカエサルの敗北であると理解している。<ref>原文では、Caesar tried to shift the blame onto his legate, but few if any of his contemporaries were fooled and all our sources see this as his defeat.</ref>」<br> などと、この大敗北における最高司令官カエサルの責任に詳細に言及している。 </div> ==ネルウィイー族らベルガエ人同盟の蜂起== ===38節=== [[画像:Campagne Ambiorix_-54.png|thumb|right|250px|アンビオリークスがローマ軍に勝利した[[w:アドゥアトゥカの戦い|アドゥアトゥカの戦い]]直後の情勢図]] *<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/38節]] {{進捗|00%|2024-03-28}}</span> '''アンビオリークスがアトゥアトゥキー族とネルウィイー族を説得''' *Hac victoria [[wikt:en:sublatus#Adjective|sublatus]] **この勝利に高揚すると、 *[[wikt:en:Ambiorix#Latin|Ambiorix]] statim cum equitatu **[[w:アンビオリクス|アンビオリークス]]はただちに[[w:騎兵|騎兵隊]]とともに *in Atuatucos, qui erant eius regno [[wikt:en:finitimi#Latin|finitimi]], [[wikt:en:proficiscor#Latin|proficiscitur]]; **彼の支配圏に隣接していたアトゥアトゥキー族のところへ出発する。 **:<span style="color:#009900;">(訳注:この部族名は写本や巻によってかなり不統一で、<br>     &alpha;系写本では [[wikt:en:Aduatuci#Latin|Aduatucī]] アドゥアトゥキー、<br>     &beta;系写本では Atuatucī アトゥアトゥキー、<br>    などとなっている。)</span> *neque noctem neque diem <span style="color:#009900;">&lt;iter&gt;</span> [[wikt:en:intermitto#Latin|intermittit]] [[wikt:en:peditatus#Latin|peditatum]]<nowiki>que</nowiki> se [[wikt:en:subsequor#Latin|subsequi]] iubet. **夜も昼も<span style="color:#009900;"><行軍を></span>中断せずに、[[w:歩兵|歩兵隊]]に対し自らに随行することを命じる。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:写本にはないが &lt;iter&gt; <行軍を> の挿入提案がある。)</span> :  *Re [[wikt:en:demonstratus#Latin|demonstrata]] Atuatucisque [[wikt:en:concitatus#Latin|concitatis]] **状況が説明され、アトゥアトゥキー族が駆り立てられると、 *postero die in [[wikt:en:Nervii#Latin|Nervios]] [[wikt:en:pervenio#Latin|pervenit]] [[wikt:en:hortor#Latin|hortatur]]<nowiki>que</nowiki>, **(アンビオリークスは)翌日に[[w:ネルウィイ族|ネルウィイー族]]のところに到着して、(以下のように)鼓舞する。 *ne sui <u>in perpetuum</u> liberandi **自分たちを<u>永久に</u>(ローマ人の支配から)解放することの(機会)、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:in perpetuum = in [[wikt:en:perpetuus#Latin|perpetuum]] [[wikt:en:tempus#Latin|tempus]] = [[wikt:en:in perpetuo|in perpetuō]])</span> *atque [[wikt:en:ulciscendi|ulciscendi]] Romanos pro iis, quas [[wikt:en:accipio#Latin|acceperint]], [[wikt:en:iniuria#Latin|iniuriis]] occasionem [[wikt:en:dimitto#Latin|dimittant]]: **および彼らがこうむった侵害の報いとしてローマ人に報復することの機会、を無駄にするな、と。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:ne ~ dimittere の構文「~を無駄にするな」)</span> *[[wikt:en:interfectus#Latin|interfectos]] esse legatos [[wikt:en:duo#Latin|duo]] **2名の[[w:レガトゥス|副官]]が<ruby><rb>誅殺</rb><rp>(</rp><rt>ちゅうさつ</rt><rp>)</rp></ruby>されたこと、 *magnamque partem exercitus [[wikt:en:intereo#Latin|interisse]] [[wikt:en:demonstro#Latin|demonstrat]]; **(ローマ人の)軍隊の大部分が滅んだことを、説明する。 *nihil esse [[wikt:en:negotium#Latin|negotii]] subito [[wikt:en:oppressus#Latin|oppressam]] legionem, quae cum [[wikt:en:Cicero#Latin|Cicerone]] [[wikt:en:hiemo#Latin|hiemet]], [[wikt:en:interficio#Latin|interfici]]; **不意に攻撃すれば、[[w:クィントゥス・トゥッリウス・キケロ|キケロー]]とともに越冬している[[w:ローマ軍団|軍団]]が殺戮されることは、何ら面倒はない。 *se ad eam rem [[wikt:en:profiteor#Latin|profitetur]] [[wikt:en:adiutor#Latin|adiutorem]]. **自分〔アンビオリークス〕がその事について支援者となることを申し出る。 :  *Facile hac oratione [[wikt:en:Nervii#Latin|Nerviis]] [[wikt:en:persuadeo#Latin|persuadet]]. **(アンビオリークスは)この弁舌によって容易にネルウィイー族を説得する。 <!-- <span style="color:#009900;"></span> **:<span style="color:#009900;">(訳注: **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注: --> <br> <hr> <div style="background-color:#cfffcf;"> ====<span style="color:#009900;">38節 訳注:ネルウィイー族とアトゥアトゥキー族について</span>==== :[[ガリア戦記 第2巻|第2巻]]では、この両部族がカエサルの軍隊と戦って壊滅寸前まで追い込まれたことが記述された。<br>ネルウィイー族は、3年前の降伏では兵500名および非戦闘員を残してほぼ根絶された([[ガリア戦記 第2巻#28節|第2巻28節]]を参照)。<br>それからわずか3年間で(次節で述べられる)従属部族を従えてローマ人に対抗するまで勢力を回復できたのであろうか。<br>アトゥアトゥキー族(アドゥアトゥキー族)も3年前の降伏で、生き残りの捕虜5万名余が奴隷として売却され、<br>衰亡したはずである([[ガリア戦記 第2巻#33節|第2巻33節]]を参照)。これもわずか3年間で、ローマ人に背く力を復活できたのか。<br>あるいは、第2巻におけるカエサルの戦果報告がかなりの誇大な喧伝であったということだろうか。</div> ===39節=== *<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/39節]] {{進捗|00%|2024-04-04}}</span> ;ネルウィイー族がキケローの陣営に襲来 *Itaque [[wikt:en:confestim#Latin|confestim]] [[wikt:en:dimissus#Latin|dimissis]] nuntiis **こうして直ちに(ネルウィイー族の)伝令たちが送り出された。 *ad <u>Ceutrones</u>, [[wikt:en:Grudii#Latin|Grudios]], [[wikt:en:Levaci#Latin|Levacos]], [[wikt:en:Pleumoxii#Latin|Pleumoxios]], [[wikt:en:Geidumni#Latin|Geidumnos]], **ケウトロネース族、グルディイー族、レウァーキー族、プレウモクスィイー族、ゲイドゥムニー族のもとへ。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:Ceutrones は[[ガリア戦記_第1巻/注解/10節|第1巻10節]]で言及されたアルプス方面の部族 ''[[w:en:Ceutrones|Ceutrones]]'' とは同名の別の集団。)</span> *qui omnes sub eorum imperio sunt, **その者らは皆、彼ら〔ネルウィイー族〕の隷下にある者たちであった。 **:<span style="color:#009900;">(訳注:これらの集団は、第2巻でベルガエ諸部族として言及されておらず、<br>    ネルウィイー族の支族、あるいは傘下の庇護民と考えられる。)</span> *quam maximas manus possunt [[wikt:en:cogo#Latin|cogunt]] et de [[wikt:en:inproviso|inproviso]] ad [[wikt:en:Cicero#Latin|Ciceronis]] [[wikt:en:hibernum#Latin|hiberna]] [[wikt:en:advolo#Latin|advolant]], **できるかぎり多くの部隊を徴集して、不意に[[w:クィントゥス・トゥッリウス・キケロ|キケロー]]の冬営に突進させるためである。 *[[wikt:en:nondum#Latin|nondum]] ad eum [[wikt:en:fama#Latin|fama]] de [[wikt:en:Titurius#Latin|Titurii]] morte [[wikt:en:perlatus#Latin|perlata]]. **まだ、彼〔キケロー〕のもとへ [[w:クィントゥス・ティトゥリウス・サビヌス|ティトゥーリウス(・サビーヌス)]]の死についての風聞は報じられていなかったのだ。 :  *Huic quoque [[wikt:en:accido#Etymology_1|accidit]], quod fuit [[wikt:en:necesse#Latin|necesse]], **彼〔キケロー〕にもまた(以下のことが)生じるべくして起こる。 *ut non nulli milites, qui [[wikt:en:lignatio#Latin|lignationis]] [[wikt:en:munitio#Latin|munitionis]]<nowiki>que</nowiki> causa in silvas [[wikt:en:discedo#Latin|discessissent]], **材木伐採と防備のために(冬営から)森の中に離れていた、少なからぬ(ローマ方の)兵士たちが、 *[[wikt:en:repentinus#Latin|repentino]] equitum [[wikt:en:adventus#Latin|adventu]] [[wikt:en:intercipio#Latin|interciperentur]]. **(ネルウィイー方の)騎兵たちの予期せぬ到来によって(冬営と)遮断されてしまう。 :  *His [[wikt:en:circumventus#Latin|circumventis]] magna manu **(ローマ方の)これらの者たちが大部隊に包囲されてしまうと、 *[[wikt:en:Eburones#Latin|Eburones]], [[wikt:en:Nervii#Latin|Nervii]], Atuatuci atque horum omnium [[wikt:en:socius#Noun_2|socii]] et [[wikt:en:cliens#Latin|clientes]] **[[w:エブロネス族|エブローネース族]]、[[w:ネルウィイ族|ネルウィイー族]]、アトゥアトゥキー族、ならびにこれらのすべての同盟者たちと隷属者たちが *legionem [[wikt:en:oppugno#Latin|oppugnare]] [[wikt:en:incipio#Latin|incipiunt]]. **(キケローの)軍団を攻囲し始める。 :  *Nostri celeriter ad arma [[wikt:en:concurro#Latin|concurrunt]], [[wikt:en:vallum#Latin|vallum]] [[wikt:en:conscendo#Latin|conscendunt]]. **我が方〔ローマ勢〕は、速やかに武器のところへ急ぎ集まって、塁壁に登る。 :  *Aegre is dies [[wikt:en:sustento#Latin|sustentatur]], **その日は辛うじて持ちこたえられる。 *quod omnem spem hostes in celeritate [[wikt:en:pono#Latin|ponebant]] **というのは、敵勢はすべての望みを迅速さにかけており、 *atque hanc [[wikt:en:adeptus#Latin|adepti]] victoriam in perpetuum se fore [[wikt:en:victor#Noun_3|victores]] [[wikt:en:confido#Latin|confidebant]]. **この勝利を得れば、永久に勝利者になるであろうと信じて込んでいたのだ。 <!-- <span style="color:#009900;"></span> **:<span style="color:#009900;">(訳注: **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注: --> ===40節=== *<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/40節]] {{進捗|00%|2024-04-10}}</span> ;キケローの軍団が冬営に籠城して防備を固めるが、ネルウィイー族らによって攻囲される *[[wikt:en:mitto#Latin|Mittuntur]] ad Caesarem [[wikt:en:confestim#Latin|confestim]] ab [[wikt:en:Cicero#Latin|Cicerone]] litterae, **直ちに[[w:クィントゥス・トゥッリウス・キケロ|キケロー]]によってカエサルのもとへ(伝令たちを介して)書状が送られる。 *magnis [[wikt:en:propositus#Latin|propositis]] [[wikt:en:praemium#Latin|praemiis]], si [[wikt:en:perfero#Latin|pertulissent]], **<small>(伝令たちが書状をカエサルのもとへ)</small> 運び終えた場合には、多大な恩賞が呈示されていたが、 *[[wikt:en:obsessus#Latin|obsessis]] omnibus viis [[wikt:en:missus#Participle|missi]] [[wikt:en:intercipio#Latin|intercipiuntur]]. **あらゆる道が封鎖されていて、遣わされた者たち〔伝令たち〕は、遮断される。 :  ;   陣営の防備のために、120基の櫓が建てられる *[[wikt:en:noctu#Latin|Noctu]] ex [[wikt:en:materia#Latin|materia]], quam [[wikt:en:munitio#Latin|munitionis]] causa [[wikt:en:comporto#Latin|comportaverant]], **夜間に、(陣営の)防備のために運び込んでおいた材木から、 *[[wikt:en:turris#Latin|turres]] [[wikt:en:admodum|admodum]] centum viginti(CXX) [[wikt:en:excito#Latin|excitantur]] [[wikt:en:incredibilis#Latin|incredibili]] celeritate; **120基もの櫓が、信じられないほどの迅速さで建てられる。 *quae [[wikt:en:desum#Latin|deesse]] <u>[[wikt:en:opus#Latin|operi]]</u> videbantur, [[wikt:en:perficio#Latin|perficiuntur]]. **<u>防塁</u>に欠けていると思われていたものが、成し遂げられる。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:opus#Latin|opus]] 「作業」あるいは「堡塁」)</span> :  *Hostes [[wikt:en:posterus#Latin|postero]] die multo maioribus [[wikt:en:coactus#Latin|coactis]] copiis **翌日に、敵勢はさらに大軍勢を徴集して、 *castra [[wikt:en:oppugno#Latin|oppugnant]], fossam [[wikt:en:compleo#Latin|complent]]. **陣営を攻囲して、塹壕を埋め立てる。 :  *[[wikt:en:idem#Latin|Eadem]] [[wikt:en:ratio#Latin|ratione]], qua [[wikt:en:pridie#Latin|pridie]], ab nostris [[wikt:en:resisto#Latin|resistitur]]. **我が方〔ローマ勢〕により前日のと同じ方法で抗戦される。 *Hoc [[wikt:en:idem#Latin|idem]] reliquis [[wikt:en:deinceps#Latin|deinceps]] fit diebus. **これに続く残りの日々にも同じことが行なわれる。 :  *[[wikt:en:nullus#Latin|Nulla]] pars [[wikt:en:nocturnus#Latin|nocturni]] temporis ad laborem [[wikt:en:intermitto#Latin|intermittitur]]; **作業のために、夜の時間帯は何ら中断されることがない。 *non [[wikt:en:aeger#Noun_3|aegris]], non [[wikt:en:vulneratus#Latin|vulneratis]] facultas [[wikt:en:quies#Latin|quietis]] datur. **病気の者たちにも、負傷した者たちにも、休息の機会は与えられない。 :  *<u>[[wikt:en:quicumque#Latin|Quaecumque]]</u> ad [[wikt:en:proximus#Latin|proximi]] diei [[wikt:en:oppugnatio#Latin|oppugnationem]] <u>opus sunt</u>, noctu [[wikt:en:comparo#Latin|comparantur]]; **翌日の攻囲のために必要であるものは何であれ、夜のうちに準備される。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:quicumque#Latin|quaecumque (quīcumque)]] ~ [[wikt:en:opus#Latin|opus]] sunt「~必要であるものは何であれ」)</span> *multae [[wikt:en:praeustus#Latin|praeustae]] [[wikt:en:sudis#Latin|sudes]], **たくさんの先端を焼いた杭や *magnus [[wikt:en:muralium|muralium]] [[wikt:en:pilorum|pilorum]] numerus [[wikt:en:instituo#Latin|instituitur]]; **[[w:ピルム・ムーリアリス|ピールム・ムーラーリス(防壁槍)]]の多数が整えられる。 *turres [[wikt:en:contabulo#Latin|contabulantur]], **櫓は床板張りされて、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:contabulo#Latin|contabulō]]「厚板を張って床を作る」。<br>    [[内乱記_第2巻#9節|『内乱記』第2巻9節]] には [[wikt:en:contabulatio#Latin|contabulātiō]] 「床板張り」という派生語が出てくる。)</span> *<u>[[wikt:en:pinna#Latin|pinnae]] loricaeque</u> ex [[wikt:en:cratis#Latin|cratibus]] [[wikt:en:attexo#Latin|attexuntur]]. **柴からなる<u>鋸壁や胸壁</u>(=凸と凹の壁)が編み込まれる。 {| class="wikitable" |- | style="width:10em; text-align:left; vertical-align:top;" |[[画像:Pilum_murale_01.jpg|thumb|left|330px|ローマ軍が籠城戦に用いた'''ピールム・ムーラーリス'''([[wikt:en:pilum#Latin|pilum]] [[wikt:en:muralis#Latin|muralis]]: 防壁槍)の再現。]] | style="width:10em; text-align:left; vertical-align:top;" |[[画像:Archeodrome_Beaune_8.jpg|thumb|left|280px|ローマ軍の防備の再現。3基の櫓(turris)と、その間に凹凸形に編み込まれた柴の壁(pinnae loricaeque ex cratibus)が見える。]] |- | colspan="2" style="width:10em; text-align:left; vertical-align:top;" |[[画像:Pinnae loricaeque.svg|thumb|left|350px|'''pinnae loricaeque''':鋸壁や胸壁(凸と凹の壁)の構成<br> [[wikt:en:pinna#Latin|pinna]] は凹凸の凸部分で、攻め手の飛道具から身を守る。<br> [[wikt:en:lorica#Etymology_1|lōrīca]] は凹凸の凹部分で、攻め手に対して飛道具を投げる。]] |} :  *Ipse [[wikt:en:Cicero#Latin|Cicero]], cum [[wikt:en:tenuissimus#Latin|tenuissima]] [[wikt:en:valetudo#Latin|valetudine]] esset, **キケロー自身は、健康がとても虚弱であったが、 *<u>ne</u> nocturnum <u>quidem</u> sibi tempus ad [[wikt:en:quies#Latin|quietem]] [[wikt:en:relinquo#Latin|relinquebat]], **夜の時間でさえも、自らの休息のために残しておかなかった。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:ne_quidem|nē ~ quidem]]「~ですら・・・ない」)</span> *ut [[wikt:en:ultro#Latin|ultro]] militum [[wikt:en:concursus#Noun|concursu]] ac [[wikt:en:vox#Latin|vocibus]] **その結果、兵士たちが自発的に群がり集まって声をかけたので、 *sibi [[wikt:en:parco#Latin|parcere]] [[wikt:en:cogo#Latin|cogeretur]]. **自愛せざるを得なかった。 <!-- <span style="color:#009900;"></span> **:<span style="color:#009900;">(訳注: **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注: --> <hr> <div style="background-color:#cfffcf;"> ====<span style="color:#009900;"><!--40節 訳注:キケロー兄弟とカエサル--></span>==== : </div> ===41節=== *<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/41節]] {{進捗|00%|2024-04-17}}</span> ;キケローがネルウィイー族の詭弁をはねつける *<u>Tunc</u> [[wikt:en:dux#Latin|duces]] [[wikt:en:princeps#Noun_3|principes]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:Nervii#Latin|Nerviorum]], **そのとき、[[w:ネルウィイ族|ネルウィイー族]]の将帥たちや領袖たちのうち **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:tunc#Latin|tunc]] は&alpha;系写本の記述で、&beta;系写本では [[wikt:en:tum#Latin|tum]] となっている。)</span> *qui [[wikt:en:aliqui#Latin|aliquem]] [[wikt:en:sermo#Latin|sermonis]] [[wikt:en:aditus#Noun_2|aditum]] causamque amicitiae cum [[wikt:en:Cicero#Latin|Cicerone]] habebant, **[[w:クィントゥス・トゥッリウス・キケロ|(クィーントゥス・)キケロー]]と何らかの話し合いの手立てや親交の理由を持っていた者たちが、 *[[wikt:en:conloquor#Latin|conloqui]] sese velle dicunt. **自ら会談することを欲すると言い出す。 :  ;   キケローとネルウィイー族代表団の会談 *[[wikt:en:factus#Participle|Facta]] [[wikt:en:potestas#Latin|potestate]] **(話し合いの)機会がつくられると、 *eadem, quae [[wikt:en:Ambiorix#Latin|Ambiorix]] cum [[wikt:en:Titurius#Latin|Titurio]] [[wikt:en:ago#Latin|egerat]], [[wikt:en:commemoro#Latin|commemorant]]: **(彼らは)[[w:アンビオリクス|アンビオリークス]]が[[w:クィントゥス・ティトゥリウス・サビヌス|ティトゥーリウス(・サビーヌス)]]と談判していたのと、同じことに言及する。 *omnem esse in [[wikt:en:arma#Latin|armis]] [[wikt:en:Gallia#Latin|Galliam]]; **[[w:ガリア|ガッリア]]全体が武装しているのだ、 *[[wikt:en:Germanus#Noun|Germanos]] [[wikt:en:Rhenus#Latin|Rhenum]] [[wikt:en:transeo#Latin|transisse]]; **[[w:ゲルマニア|ゲルマーニア]]人たちがレーヌス<small>〔[[w:ライン川|ライン川]]〕</small>を渡河したのだ、 *Caesaris reliquorumque [[wikt:en:hibernum#Latin|hiberna]] [[wikt:en:oppugno#Latin|oppugnari]]. **カエサルやほかの者たちの冬営も攻撃されているのだ、と。 *[[wikt:en:addo#Latin|Addunt]] etiam de [[wikt:en:Sabinus#Proper_noun|Sabini]] morte: **さらに[[w:クィントゥス・ティトゥリウス・サビヌス|サビーヌス]]の死についても付け加える。 *[[wikt:en:Ambiorix#Latin|Ambiorigem]] [[wikt:en:ostento#Latin|ostentant]] [[wikt:en:fides#Latin|fidei]] [[wikt:en:faciendus#Latin|faciendae]] causa. **アンビオリークスを<span style="color:#009900;"><small>(サビーヌスが敗死したという、彼らの話の)</small></span>信頼を得るために示す。 :  *[[wikt:en:erro#Latin|Errare]] eos dicunt, si [[wikt:en:quisquam#Latin|quicquam]] ab his [[wikt:en:praesidium#Latin|praesidii]] [[wikt:en:spero#Latin|sperent]], qui suis rebus [[wikt:en:diffido#Latin|diffidant]]; **彼ら<span style="color:#009900;">〔キケローと部下たち〕</span>が、自らの状況に確信が持てない者たち<span style="color:#009900;">〔カエサルや副官たち〕</span>に何らかの救援を期待するのならば、<br>間違っている、と<small>(ネルウィイー族の代表団は)</small>言う。 *sese tamen <u>hoc</u> esse in [[wikt:en:Cicero#Latin|Ciceronem]] populumque Romanum <u>animo</u>, **それでも自分たちは、キケローとローマ国民に対して<u>以下の心積もりで</u>いる。 *ut nihil [[wikt:en:nisi#Etymology_1|nisi]] hiberna [[wikt:en:recuso#Latin|recusent]] **冬営のほかには、何ら拒絶することはないし、 *atque hanc [[wikt:en:inveterasco#Latin|inveterascere]] [[wikt:en:consuetudo#Latin|consuetudinem]] [[wikt:en:nolo#Latin|nolint]]: **(ローマ軍がガッリアに)常駐するというこの慣習を望まないということである。 :  *[[wikt:en:licet#Latin|licere]] illis [[wikt:en:incolumis#Latin|incolumibus]] per se ex hibernis [[wikt:en:discedo#Latin|discedere]] **自分たちは、かの者ら<span style="color:#009900;">〔キケローの軍勢〕</span>に、無傷のままで冬営から立ち去ることを許すし、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:licere ~ per se …「自分は~に…を許す」)</span> *et, [[wikt:en:quicumque#Latin|quascumque]] in partes [[wikt:en:volo#Latin|velint]], sine [[wikt:en:metus#Latin|metu]] [[wikt:en:proficiscor#Latin|proficisci]]. **どこへでも望む方面に怖れることなく出発すること(を許す)。 :  ;   キケローがネルウィイー族の説得に反駁する *[[wikt:en:Cicero#Latin|Cicero]] ad haec unum modo [[wikt:en:respondeo#Latin|respondit]]: **キケローは、これらに対して、一つのことだけを返答した。 *non esse consuetudinem populi Romani <u>ullam</u> [[wikt:en:accipio#Latin|accipere]] ab hoste [[wikt:en:armatus#Latin|armato]] [[wikt:en:condicio#Latin|condicionem]]: **武装した敵たちから何らかの条件を受け入れることは、ローマ国民の慣習ではない、と。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:ullus#Latin|ullam]] は&beta;系写本の記述で、&alpha;系写本にはない。)</span> : *si ab armis discedere [[wikt:en:volo#Latin|velint]], **もし、(汝らが)武器を捨てることを欲するならば、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:discedere ab ~「~を捨てる」)</span> *se [[wikt:en:adiutor#Latin|adiutore]] [[wikt:en:utor#Latin|utantur]] legatosque ad Caesarem [[wikt:en:mitto#Latin|mittant]]; **自分を介添人として役立てて、カエサルのもとへ使節たちを遣わすべし。 *[[wikt:en:spero#Latin|sperare]] pro eius [[wikt:en:iustitia#Latin|iustitia]], quae [[wikt:en:peto#Latin|petierint]], [[wikt:en:impetraturus#Latin|impetraturos]]<span style="color:#009900;"> (esse)</span>. **彼〔カエサル〕の公正さのおかげにより、(汝らが)求めることを達成するであろう、と期待する。 <!-- <span style="color:#009900;"></span> **:<span style="color:#009900;">(訳注: **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注: --> ===42節=== *<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/42節]] {{進捗|00%|2024-04-29}}</span> ;ネルウィイー族らがローマ人の包囲網と攻城術をまねる *Ab hac spe [[wikt:en:repulsus#Latin|repulsi]] **<small>(キケローの軍団を冬営から誘い出すという)</small>この望みから退けられると、 *[[wikt:en:Nervii#Latin|Nervii]] [[wikt:en:vallum#Latin|vallo]] <u>pedum IX<small></small></u> <span style="color:#009900;">&lt;''in altitudinem'' &gt;</span> **[[w:ネルウィイ族|ネルウィイー族]]は <span style="color:#009900;">&lt;高さ&gt;</span> <u>9ペース</u>の堡塁 *et fossa pedum XV<small>([[wikt:en:quindecim#Latin|quindecim]])</small> <span style="color:#009900;">&lt;''in latitudinem''&gt;</span> [[wikt:en:hibernum#Latin|hiberna]] [[wikt:en:cingo#Latin|cingunt]]. **および <span style="color:#009900;">&lt;幅&gt;</span> 15ペースの堀で(キケローの)冬営を取り巻く。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:堡塁の高さは、&alpha;系写本の一部では9ペース pedum IX ([[wikt:en:novem#Latin|novem]])、<br>           &beta;系写本では10ペース pedum X ([[wikt:en:decem#Latin|decem]]) などとなっている。<br>           なお、<span style="color:#009900;">&lt; &gt;</span> 部分を補った。)</span> **:<span style="font-family:Times New Roman;color:#009900;">(訳注:1[[ガイウス・ユリウス・カエサルの著作/通貨・計量単位#ペース|ペース]]は約29.6cmで、9ペースは約270cm、10ペースは約3m、15ペースは約4.4m。)</span> [[画像:AlesiaFortifications.JPG|thumb|right|200px|古代ローマの堡塁と堀の再現。[[w:アレシアの戦い|アレスィア攻囲戦]]のもの(フランスの[[w:ボーヌ|ボーヌ]]にあった考古博物館)]] :  *Haec **これら<small>〔冬営を取り巻く包囲網〕</small>は、 *et superiorum annorum consuetudine ab nobis [[wikt:en:cognosco#Latin|cognoverant]] **先年来の習慣により我が方〔ローマ勢〕から知っていたものでもあり、 *et, <u>quosdam</u> de exercitu <u>habebant</u> captivos, ab iis [[wikt:en:doceo#Latin|docebantur]]; **(ローマの)軍隊から捕虜にしていた何らかの者たち、彼らから教えられていたのでもある。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:quosdam|quosdam]] は写本の表記だが、[[wikt:en:quos#Latin|quos]] [[wikt:en:clam#Latin|clam]] などの修正提案がある。)</span> **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:habebant|habebant]] は&alpha;系写本の記述で、&beta;系写本では [[wikt:en:nactus#Latin|nacti]] となっている。)</span> *sed [[wikt:en:nullus#Adjective|nulla]] <u>ferramentorum</u> copia, quae esset ad hunc usum idonea, **しかし、これに用いる適切な<u>鉄製器具</u>が豊富になく、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:ferramentum#Latin|ferramentum]] は鉄製器具の、あるいは先端が鉄製で尖っている器具で、特に農具などを指す。)</span> *[[wikt:en:gladius#Latin|gladiis]] [[wikt:en:caespes#Latin|caespites]] [[wikt:en:circumcido#Latin|circumcidere]], **[[w:グラディウス (武器)|長剣]]で芝土を刈り込んで、 *manibus [[wikt:en:sagulum#Latin|sagulis]]<nowiki>que</nowiki> terram [[wikt:en:exhaurio#Latin|exhaurire]] <u>videbantur</u>. **手や小さな外套で土を運び出したと思われていた。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:videbantur|videbantur]] は&alpha;系写本の記述で、&beta;系写本では [[wikt:en:cogebantur|cogebantur]] 、<br>     [[ガリア戦記/注解編/写本と校訂版#Editio_princeps|最初の印刷本]] では [[wikt:en:nitebantur|nitebantur]] となっている。)</span> :  [[画像:Roman_siege_machines.gif|thumb|right|250px|ローマ軍の攻城機械。右上に攻城櫓(tower)、左上に亀甲車(testudo)が見える。]] [[画像:Falx_bgiu.png|thumb|right|250px|破城鎌([[w:en:Falx|falx]])の想像画]] *Qua quidem ex re hominum multitudo [[wikt:en:cognosco#Latin|cognosci]] potuit: **このような事情からさえも、人員の多さを知ることができた。 *nam minus horis [[wikt:en:tres#Latin|tribus]] **なぜなら、3時間足らずで *<u>milium pedum XV<small>([[wikt:en:quindecim#Latin|quindecim]])</small></u> in [[wikt:en:circuitus#Noun|circuitu]] [[wikt:en:munitio#Latin|munitionem]] [[wikt:en:perficio#Latin|perfecerunt]] **周囲15,000ペースもの<small>(キケローの冬営を囲む)</small>築城を成し遂げて、 **:<span style="font-family:Times New Roman;color:#009900;">(訳注:1[[ガイウス・ユリウス・カエサルの著作/通貨・計量単位#ペース|ペース]]は約29.6cmで、15,000ペースは約4.4 km。<br>    写本では「milium <math>\color{green}\overline{\mbox{p}}. \mbox{xv}</math>」 となっており、<br>    milium passsum quindecim「15マイル(約22km)」と読めるが、<br>    これは冬営を囲むものとしては長大過ぎるのではないかとして、<br>    さまざまな修正提案がある。)</span> *reliquisque diebus [[wikt:en:turris#Latin|turres]] ad altitudinem valli, [[wikt:en:falx#Latin|falces]] [[wikt:en:testudo#Latin|testudines]]<nowiki>que</nowiki>, **残りの日々で、(ローマ側の)堡塁の高さの[[w:攻城塔|攻城櫓]]や、破城鎌、亀甲車を、 *quas idem captivi [[wikt:en:doceo#Latin|docuerant]], **──それらは同じ(ローマ軍の)捕虜たちが教えていたものだが──、 *[[wikt:en:paro#Latin|parare]] ac facere [[wikt:en:coepi#Latin|coeperunt]]. **調達し、作り始めたのだ。 <!-- <span style="color:#009900;"></span> **:<span style="color:#009900;">(訳注: **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注: --> ===43節=== *<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/43節]] {{進捗|00%|2024-05-05}}</span> ;キケローの軍団が果敢に防戦して、ネルウィイー族らを撃退 :  ;   ネルウィイー勢が火攻めをしかける *Septimo [[wikt:en:oppugnatio#Latin|oppugnationis]] die **攻囲の7日目に、 *maximo [[wikt:en:coortus#Latin|coorto]] vento **猛烈な強風が生じたので、 *[[wikt:en:fervens#Latin|ferventes]] [[wikt:en:fusilis#Latin|fusili]] ex [[wikt:en:argilla#Latin|argilla]] [[wikt:en:glans#Latin|glandes]] [[wikt:en:funda#Latin|fundis]] **粘土を溶融させた熱い弾を投石器によって、 *et [[wikt:en:fervefactus#Latin|fervefacta]] [[wikt:en:iaculum#Latin|iacula]] **および熱せられた投槍を *in [[wikt:en:casa#Latin|casas]], quae more Gallico [[wikt:en:stramentum#Latin|stramentis]] [[wikt:en:tego#Latin|erant tectae]], [[wikt:en:iacio#Latin|iacere]] coeperunt. **[[w:ガリア人|ガッリア人]]の慣習により、藁で覆われた小屋に投げ付け始める。 :  *Hae celeriter ignem [[wikt:en:comprehendo#Latin|comprehenderunt]] **これら(の小屋)はすばやく着火して、 *et venti magnitudine in omnem locum castrorum [[wikt:en:differo#Latin|distulerunt]]. **風の激しさにより、陣営のすべての場所に(火を)拡げた。 :  *Hostes maximo clamore, sicuti [[wikt:en:partus#Participle|parta]] iam atque [[wikt:en:exploratus#Latin|explorata]] victoria, **敵たちは、もはや勝利が獲得されて確実になったかのように、とても大きな<ruby><rb>雄叫</rb><rp>(</rp><rt>おたけ</rt><rp>)</rp></ruby>びをあげ、 *turres [[wikt:en:testudo#Latin|testudines]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:ago#Latin|agere]] et [[wikt:en:scala#Latin|scalis]] vallum [[wikt:en:ascendo#Latin|ascendere]] coeperunt. **櫓と亀甲車を駆って、はしごで堡塁に登り始めた。 :  ;   ローマ勢が火攻めを怖れずに抗戦する *Ac <u>tanta</u> militum [[wikt:en:virtus#Latin|virtus]] atque ea praesentia animi fuit, **だが(ローマ勢の)兵士たちの武勇や冷静沈着さがこれほど素晴らしかったので、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:tantus#Latin|tantus]] ~ , [[wikt:en:ut#Conjunction|ut]] ・・・「これほどの~であるので、・・・ほどであった」)</span> *<u>ut</u>, cum <u>ubique</u><!--undique--> [[wikt:en:flamma#Latin|flamma]] [[wikt:en:torreo#Latin|torrerentur]] maximaque [[wikt:en:telum#Latin|telorum]] multitudine [[wikt:en:premo#Latin|premerentur]] **至る所で、火炎で焼き尽くされ、飛道具の大多数により苦しめられたのに、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:ubique#Latin|ubique]] は&alpha;系写本の記述で、&beta;系写本では [[wikt:en:undique#Latin|undique]] となっている。)</span> *suaque omnia [[wikt:en:impedimentum#Latin|impedimenta]] atque omnes [[wikt:en:fortuna#Latin|fortunas]] [[wikt:en:conflagro#Latin|conflagrare]] [[wikt:en:intellego#Latin|intellegerent]], **かつ、自分たちのすべての輜重とすべての所持品が焼失するのを認識していたのに、 *non modo [[wikt:en:demigro#Latin|demigrandi]] causa de vallo [[wikt:en:decedo#Latin|decederet]] [[wikt:en:nemo#Latin|nemo]], **誰も(持ち場から)撤収するために堡塁から離れようとしないのみならず、 *sed paene <u>[[wikt:en:ne_quidem#Latin|ne]]</u> [[wikt:en:respicio#Latin|respiceret]] <u>[[wikt:en:ne_quidem#Latin|quidem]]</u> [[wikt:en:quisquam#Pronoun|quisquam]], **けれども、ほぼ誰も<u>決して</u>後ろを振り返ること<u>さえせずに</u> *ac tum omnes acerrime fortissimeque [[wikt:en:pugno#Latin|pugnarent]]. **そのとき皆がきわめて猛烈にかつきわめて勇敢に戦ったほどであった。 :  *Hic dies nostris longe gravissimus fuit; **この日は、我が方〔ローマ勢〕にとってきわめて過酷なものであった。 *sed tamen hunc habuit [[wikt:en:eventus#Latin|eventum]], **にもかかわらず、以下の出来事が生じたのだ。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:sed tamen「にもかかわらず」)</span> *ut eo die maximus numerus hostium [[wikt:en:vulnero#Latin|vulneraretur]] atque [[wikt:en:interficio#Latin|interficeretur]], **その日は敵勢の多数が傷つけられたり、殺戮されたりした。 *ut se sub ipso vallo [[wikt:en:constipo#Latin|constipaverant]] [[wikt:en:recessus#Noun|recessum]]<nowiki>que</nowiki> primis [[wikt:en:ultimus#Latin|ultimi]] non dabant. **(敵勢は)堡塁の真下に密集していて、後列の者が前列の者の退却(の機会)を与えなかったがゆえである。 [[画像:Grose-Francis-Pavisors-and-Moveable-Tower-Assaulting-Castle-1812.jpg|thumb|right|200px|[[w:攻城塔|攻城櫓]](turris)の例。絵は中世イギリスの物だが、古代ローマの物とあまり違わないと思われる。]] :  ;   炎が弱まって、百人隊長たちがネルイィイー勢を挑発する *Paulum quidem [[wikt:en:intermissus#Latin|intermissa]] flamma **確かに火炎がいくらか止んで、 *et [[wikt:en:quidam#Pronoun|quodam]] loco turri [[wikt:en:adactus#Latin|adacta]] **とある場所で[[w:攻城塔|攻城櫓]]が駆動されて *et [[wikt:en:contingens#Latin|contingente]] vallum, **堡塁に接触すると、 *tertiae [[wikt:en:cohors#Latin|cohortis]] centuriones ex eo, quo [[wikt:en:sto#Latin|stabant]], loco [[wikt:en:recedo#Latin|recesserunt]] **第3[[w:コホルス|歩兵大隊]]の[[w:ケントゥリオ|百人隊長]]たちは、踏み止まっていた持ち場から退き下がって、 *suosque omnes [[wikt:en:removeo#Latin|removerunt]], **配下たち全員を遠ざけて、 *[[wikt:en:nutus#Latin|nutu]] vocibusque hostes, si [[wikt:en:introeo#Latin|introire]] vellent, vocare coeperunt; **敵勢に対して、突入することを欲するならば(来るがいい)、と首肯と大声で呼びかけ始めた。 *quorum [[wikt:en:progredior#Latin|progredi]] [[wikt:en:audeo#Latin|ausus est]] nemo. **彼ら〔敵勢〕のうちで誰もあえて前進して来ようとはしなかった。 :  ;   ローマ兵の投石によって、ネルウィイー勢が撃退される *Tum ex omni parte [[wikt:en:lapis#Latin|lapidibus]] [[wikt:en:coniectus#Participle|coniectis]] **そこで、すべての方面から(ローマ兵により)石が投げられて *[[wikt:en:deturbatus#Latin|deturbati]], **(敵勢は)駆逐されて、 *turrisque [[wikt:en:succendo#Latin|succensa est]]. **攻城櫓は燃やされた。 <!-- <span style="color:#009900;"></span> **:<span style="color:#009900;">(訳注: **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注: --> ===44節=== *<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/44節]] {{進捗|00%|2024-05-08}}</span> ;百人隊長プッローとウォレーヌスの奮戦 :<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:この節では、&alpha;系写本と&beta;系写本の間で語順や記述など異同が多く、<br>    校訂版の間でも相異している。)</span> :  ;   プッローとウォレーヌスの出世競争 *Erant in ea legione fortissimi [[wikt:en:vir#Latin|viri]], centuriones, **その(キケローの)[[w:ローマ軍団|軍団]]には、とても屈強な男たち、[[w:ケントゥリオ|百人隊長]]たちがいた。 *qui <span style="color:#009900;">(iam)</span> <u>primis [[wikt:en:ordo#Latin|ordinibus]]</u> [[wikt:en:adpropinquo#Latin|adpropinquarent]], Titus '''[[wikt:en:Pullo#Latin|Pullo]]''' et Lucius '''[[wikt:en:Vorenus#Latin|Vorenus]]'''. **その者らは<u>すでに</u> 第一序列(の百人隊長の地位)に近づきつつあった<br> '''[[w:ティトゥス・プッロ|ティトゥス・プッロー]]''' と '''[[w:ルキウス・ウォレヌス|ルーキウス・ウォレーヌス]]''' である。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:iam は&beta;系写本の記述で、&alpha;系写本にはない。)</span> **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:第一序列の百人隊長 primorum ordinum centuriones <br>    については、[[#28節|28節]]の訳注を参照。)</span> :  *<!--❷-->Hi [[wikt:en:perpetuus#Latin|perpetuas]] inter se [[wikt:en:controversia#Latin|controversias]] habebant, **彼らは互いに絶え間ない(昇進の)競争をしており、 *<u>quinam</u> [[wikt:en:antefero#Latin|anteferretur]], **一体誰がより重用されるのか **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、&alpha;系写本では [[wikt:en:quinam#Etymology_1|quinam]]「一体 誰が」<br>         &beta;系写本では [[wikt:en:uter#Etymology_1|uter]] [[wikt:en:alter#Latin|alteri]]「どちらが他方より」となっている。)</span> *omnibusque annis <u>de locis summis simultatibus</u> [[wikt:en:contendo#Latin|contendebant]]. **毎年のように、最高の地位について対抗意識をもって争っていた。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、&alpha;系写本では <u>de [[wikt:en:locis|locis]] [[wikt:en:summus#Latin|summis]]</u> simultatibus 「最高の地位について・・・」だが、<br>         &beta;系写本では de [[wikt:en:https://en.wiktionary.org/wiki/loco#Noun_6|loco]] <u>[[wikt:en:summus#Latin|summis]] [[wikt:en:simultas#Latin|simultatibus]]</u> 「最高の対抗意識をもって」となっている。)</span> :  [[画像:Pilum light - cropped.jpg|thumb|right|100px|ローマ軍の投槍([[w:ピルム|ピルム]])と長盾([[w:スクトゥム|スクトゥム]])]] *<!--❸-->Ex his Pullo, cum acerrime ad [[wikt:en:munitio#Latin|munitiones]] [[wikt:en:pugno#Latin|pugnaretur]], **彼らのうちプッローは、防塁のもとで激しく戦われていたときに、 *<!--▲直接話法--><span style="background-color:#e8e8ff;"><span style="color:#009900;">«</span> [[wikt:en:quis#Pronoun|Quid]] [[wikt:en:dubito#Latin|dubitas]],<span style="color:#009900;">»</span></span> [[wikt:en:inquam#Latin|inquit]], <!--▲直接話法--><span style="background-color:#e8e8ff;"><span style="color:#009900;">«</span> Vorene ?&nbsp;</span> **「何をためらっているのだ、ウォレーヌスよ?」と言った。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:以下、<!--▲直接話法--><span style="background-color:#e8e8ff;">&nbsp;<span style="color:#009900;">«</span> ~ <span style="color:#009900;">»</span>&nbsp;</span> の箇所は、直接話法で記されている。)</span> *<!--▲直接話法--><span style="background-color:#e8e8ff;">aut quem locum tuae <u>probandae</u> [[wikt:en:virtus#Latin|virtutis]] [[wikt:en:exspecto#Latin|exspectas]] ? </span> **「それとも、君の武勇が認められるべき場所を待望しているのか?」 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、&alpha;系写本では [[wikt:en:pro#Latin|pro]] [[wikt:en:laus#Latin|laude]] 「賞賛に見合う」<br>         &beta;系写本では [[wikt:en:probandus#Latin|probandae]] 「認められるべき」となっている。)</span> *<!--▲直接話法--><span style="background-color:#e8e8ff;">hic dies de nostris [[wikt:en:controversia#Latin|controversiis]] [[wikt:en:iudico#Latin|iudicabit]].<span style="color:#009900;">»</span></span> **「この日こそが、我々の競争について判定するだろう。」 :  ;   プッローが敵勢の中に突撃 *<!--❹-->Haec cum [[wikt:en:iudico#Latin|dixisset]], **(プッローは)これらのことを言うや否や *[[wikt:en:procedo#Latin|procedit]] extra munitiones, **防塁の外へ進み出て、 *quaeque <u>pars hostium</u> [[wikt:en:confertus#Latin|confertissima]] est visa, [[wikt:en:inrumpo#Latin|inrumpit]]. **敵勢が最も密集していると思われた方面へ、突入する。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、&alpha;系写本では parti hostium <br>         &beta;系写本では hostium [[wikt:en:pars#Latin|pars]] <br>         ''<big>[[ガリア戦記/注解編/写本と校訂版#Aldus|Aldus]]</big>'' による修正提案では pars hostium となっている。)</span> :  ;   ウォレーヌスも突撃するが、・・・ *<!--❺-->Ne [[wikt:en:Vorenus#Latin|Vorenus]] quidem sese <span style="color:#009900;">(tum)</span> vallo [[wikt:en:contineo#Latin|continet]], **ウォレーヌスは決して堡塁に留まっていなかっただけでなく、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:tum は&beta;系写本では sese と vallo の間にあるが、&alpha;系写本では下記の位置にある。)</span> *sed omnium [[wikt:en:veritus#Latin|veritus]] [[wikt:en:existimatio#Latin|existimationem]] [[wikt:en:subsequor#Latin|subsequitur]]. **皆の評価を恐れて(プッローに)追随するのだ。 :  *<!--❻--><u>Tum</u> [[wikt:en:mediocris#Latin|mediocri]] spatio [[wikt:en:relictus#Latin|relicto]] **そのとき(敵勢から)適度の距離を残したまま、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:tum は&alpha;系写本ではこの行にあるが、&beta;系写本では上記の位置にある。)</span> *[[wikt:en:Pullo#Latin|Pullo]] [[wikt:en:pilum#Etymology_1|pilum]] in hostes [[wikt:en:inmitto#Latin|inmittit]] **プッローは[[w:ピルム|投槍]]を敵勢の中に放り入れ、 *atque unum ex multitudine [[wikt:en:procurrens#Latin|procurrentem]] [[wikt:en:traicio#Latin|traicit]]; **(敵の)大勢から走り出て来る一人を<small>(プッローの投槍が)</small>射貫く。 *quo [[wikt:en:percussus#Latin|percusso]] et [[wikt:en:exanimatus#Latin|exanimato]] **かの者が(投槍で)刺し貫かれて息絶えると、 *hunc [[wikt:en:scutum#Latin|scutis]] [[wikt:en:protego#Latin|protegunt]] <u>in hostem</u> **(敵勢は)この敵を長盾で(覆って)護り、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、&alpha;系写本では in hostem<br>&nbsp;         &beta;系写本では hostes in illum となっている。)</span> *<u>tela [[wikt:en:universi#Latin|universi]]</u> [[wikt:en:conicio#Latin|coniciunt]] neque dant [[wikt:en:regrediendi|regrediendi]] facultatem. **総勢が飛道具を投げやって、(プッローに)退く機会を与えない。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、&chi;系・BMS写本では tela universi<br>&nbsp;         &beta;系・LN写本では universi tela となっている。)</span> :  [[画像:Gladius_2.jpg|thumb|right|180px|長剣([[w:グラディウス (武器)|グラディウス]])を右腰の鞘(ウァギナ)から引き抜いたローマ兵士の再演。左肩から右腰にかけて剣帯(バルテウス)が下げられ、鞘を固定している。バルテウス([[w:en:Balteus (sword belt)|balteus]])は[[w:ベルト (服飾)|ベルト]]([[w:en:Belt (clothing)|belt]])の語源。]] *<!--❼-->[[wikt:en:transfigo#Latin|Transfigitur]] [[wikt:en:scutum#Latin|scutum]] Pulloni **プッローにとっては[[w:スクトゥム|長盾]]が貫通され、 *et [[wikt:en:verutum#Latin|verutum]] in [[wikt:en:balteus#Latin|balteo]] [[wikt:en:defigo#Latin|defigitur]]. **(敵の)投槍が剣帯に打ち付けられてしまう。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:剣帯 [[w:en:Baldric#Roman_balteus|balteus]] は、右の画像のように、<br>    肩から腰に掛けて、剣の鞘をぶら下げるもの。)</span> :  *<!--❽-->[[wikt:en:averto#Latin|Avertit]] hic casus [[wikt:en:vagina#Latin|vaginam]] **この出来事が(剣の)<ruby><rb>鞘</rb><rp>(</rp><rt>さや</rt><rp>)</rp></ruby>をずらして、 *et gladium [[wikt:en:educo#Latin|educere]] [[wikt:en:conans#Latin|conanti]] dextram [[wikt:en:moror#Latin|moratur]] manum, **[[w:グラディウス (武器)|長剣]]を引き出そうと試みる者にとって、右手を束縛して、 *[[wikt:en:impeditus#Latin|impeditum]]<nowiki>que</nowiki> hostes [[wikt:en:circumsisto#Latin|circumsistunt]]. **妨げられている者〔プッロー〕を敵たちが取り囲む。 :  ;   ウォレーヌスがプッローを助けに来る *<!--❾-->[[wikt:en:succurro#Latin|Succurrit]] inimicus illi Vorenus **彼の競争相手ウォレーヌスが救援に駆けつけて、 *et [[wikt:en:laborans#Latin|laboranti]] [[wikt:en:subvenio#Latin|subvenit]]. **苦戦する者を援けに来る。 :  *<!--❿-->Ad hunc se confestim a Pullone omnis multitudo [[wikt:en:converto#Latin|convertit]]: **(敵の)大勢は皆、直ちにプッローから彼〔ウォレーヌス〕の方へ向きを変える。 *illum [[wikt:en:verutum#Latin|veruto]] [[wikt:en:transfixus#Latin|transfixum]] [[wikt:en:arbitror#Latin|arbitrantur]]. **あの者〔プッロー〕が投槍で突き通されたと思われたのだ。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:illum veruto arbitrantur [[wikt:en:occisus#Latin|occisum]] 「彼が投槍で殺されたと思われた」<br>    とする修正読みもある。)</span> *<!--⓫-->Gladio [[wikt:en:comminus#Latin|comminus]] rem [[wikt:en:gero#Latin|gerit]] Vorenus **ウォレーヌスは長剣をもって接近戦で闘い、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:上記は &alpha;系写本の語順で、<br>        &beta;系写本では Vorenus gladio rem comminus gerit となっている。)</span> *atque uno [[wikt:en:interfectus#Latin|interfecto]] **(敵の)1人を殺害して、 *reliquos paulum [[wikt:en:propello#Latin|propellit]]; **残りの者たちを少し追い払う。 *dum [[wikt:en:cupide#Adverb|cupidius]] [[wikt:en:insto#Latin|instat]], in locum [[wikt:en:deiectus#Etymology_2|deiectus]] inferiorem [[wikt:en:concido#Etymology_1|concidit]]. **(ウォレーヌスは)熱中して攻め立てる間に、より低い場所に投げ落とされて倒れ込む。 :  ;   今度はプッローがウォレーヌスを助けて、二人で陣営に帰還する *<!--⓬-->Huic rursus [[wikt:en:circumventus#Latin|circumvento]] <u>fert subsidium</u> Pullo, **再び(敵により)包囲された彼〔ウォレーヌス〕に、プッローが救援をもたらして、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、&alpha;系写本の語順で、<br>          &beta;系写本では subsidium fert となっている。)</span> *atque [[wikt:en:ambo#Etymology_1_4|ambo]] incolumes compluribus [[wikt:en:interfectus#Latin|interfectis]] **2人とも無傷で、かなり(の敵)を殺戮して *summa cum laude sese intra munitiones [[wikt:en:recipio#Latin|recipiunt]]. **最大級の賞賛を伴って、防塁の内部に退却する。 *<!--⓭-->Sic fortuna in [[wikt:en:contentio#Latin|contentione]] et [[wikt:en:certamen#Latin|certamine]] [[wikt:en:uterque#Latin|utrumque]] [[wikt:en:verso#Latin|versavit]], **このように運命(の女神)は、競争と闘争において両者をもてあそんだので、 *ut alter alteri inimicus auxilio [[wikt:en:salus#Latin|saluti]]<nowiki>que</nowiki> esset, **競争相手の一方が他方にとって救援・救助となり、 *neque [[wikt:en:diiudico#Latin|diiudicari]] posset, uter utri virtute [[wikt:en:anteferendus#Latin|anteferendus]] videretur. **2人の一方が他方に武勇でより重んじられるべきか判定できないように思われるのである。 :  :<span style="color:#009900;">(訳注:カエサルの『ガリア戦記』は、発言などのほとんどを徹底して間接話法で記していることが知られているが、<br>    [[ガリア戦記_第4巻#25節|第4巻25節]]・[[#30節|本巻30節]]と本節(44節)では珍しく直接話法で記す手法を採っている。)</span> <!-- <span style="color:#009900;"></span> **:<span style="color:#009900;">(訳注: **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注: --> ===45節=== *<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/45節]] {{進捗|00%|2024-05-15}}</span> ;ガッリア人伝令ウェルティコーがカエサルにキケローと軍団の危機を伝える *<u>Quanto</u> erat in dies gravior atque [[wikt:en:asper#Latin|asperior]] oppugnatio, **攻囲が日ごとにより激しくより苦しくなるほど、 *et maxime quod magna parte militum [[wikt:en:confectus#Latin|confecta]] vulneribus res ad [[wikt:en:paucitas#Latin|paucitatem]] [[wikt:en:defensor#Latin|defensorum]] [[wikt:en:pervenio#Latin|pervenerat]], **ことに、兵士の大部分が負傷により消耗し、戦況が防戦者の少なさに陥ったので、 *<u>tanto</u> [[wikt:en:crebrior|crebriores]] litterae nuntiique ad Caesarem [[wikt:en:mitto#Latin|mittebantur]]; **たびたび書状と伝令がカエサルのもとへ遣わされていた。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:quanto ~, tanto … 「~になるほど、…になる」) {{Wikipedia|la:Cruciatus|Cruciatus (拷問)}} *quorum pars [[wikt:en:deprehensus#Latin|deprehensa]] **その者たちの一部は、捕らえられて、 *in [[wikt:en:conspectus#Noun_2|conspectu]] nostrorum militum cum [[wikt:en:cruciatus#Latin|cruciatu]] [[wikt:en:neco#Latin|necabatur]]. **我が方〔ローマ勢〕の兵士たちの注視する中で <ruby><rb>拷 問</rb><rp>(</rp><rt>クルキアートゥス</rt><rp>)</rp></ruby> とともに殺されていた。 :  *Erat unus [[wikt:en:intus#Latin|intus]] [[wikt:en:Nervius#Latin|Nervius]] nomine [[wikt:en:Vertico#Latin|Vertico]], loco [[wikt:en:natus#Participle|natus]] [[wikt:en:honestus#Latin|honesto]], **(陣営)内にウェルティコーという名のネルウィイー族の者が1人おり、高貴な身分の生まれで、 *qui a prima [[wikt:en:obsidio#Latin|obsidione]] ad [[wikt:en:Cicero#Latin|Ciceronem]] [[wikt:en:perfugio#Latin|perfugerat]] suamque ei fidem [[wikt:en:praesto#Latin|praestiterat]]. **その者は包囲の始めからキケローのもとへ逃れて来て、彼<small>〔キケロー〕</small>に自らの忠節を示していた。 :  *Hic [[wikt:en:servus#Noun|servo]] spe libertatis magnisque [[wikt:en:persuadeo#Latin|persuadet]] praemiis, ut litteras ad Caesarem [[wikt:en:defero#Latin|deferat]]. **彼<small>〔キケロー〕</small>は奴隷1人に(身分を)解放する希望と大きな恩賞により、書状をカエサルのもとへ運ぶように、説得する。 :  *Has ille in [[wikt:en:iaculum#Latin|iaculo]] [[wikt:en:inligatus|inligatas]] [[wikt:en:effero#Etymology_1|effert]] **彼<small>〔ウェルティコー〕</small>はこれ<small>〔書状〕</small>を投槍に結び付けて運び出して、 *et [[wikt:en:gallus#Etymology_2|Gallus]] inter [[wikt:en:gallus#Etymology_2|Gallos]] sine [[wikt:en:ullus#Latin|ulla]] [[wikt:en:suspicio#Etymology_2|suspicione]] [[wikt:en:versatus#Latin|versatus]] ad Caesarem [[wikt:en:pervenio#Latin|pervenit]]. **ガッリア人なので、ガッリア人の間で何ら疑われることのなしに歩き回り、カエサルのもとへ到着する。 :  *Ab eo de periculis [[wikt:en:Cicero#Latin|Ciceronis]] legionisque [[wikt:en:cognosco#Latin|cognoscitur]]. **彼によって、キケローと軍団の危機が知られることになる。 <!-- <span style="color:#009900;"></span> **:<span style="color:#009900;">(訳注: **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注: --> ===46節=== *<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/46節]] {{進捗|00%|2024-05-23}}</span> ;カエサルが副官たちに伝令を派遣する *Caesar, [[wikt:en:acceptus#Latin|acceptis]] litteris hora circiter [[wikt:en:undecimus#Latin|undecima]](Xl) diei, **カエサルは、昼間のおおよそ第十一時<small>〔日没前〕</small> に書状を受け取るや、 *statim nuntium in [[wikt:en:Bellovaci#Latin|Bellovacos]] ad [[wikt:en:Marcus#Latin|Marcum]] [[wikt:en:Crassus#Latin|Crassum]] [[wikt:en:quaestor#Latin|quaestorem]] [[wikt:en:mitto#Latin|mittit]], **すぐに伝令をベッロウァキー族(の領土)にいた[[w:クァエストル|財務官]] <u>[[w:マルクス・リキニウス・クラッスス (紀元前54年の財務官)|マールクス・クラッスス]]</u>のもとへ遣わす。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:彼は[[w:三頭政治|三頭政治]]で著名な[[w:マルクス・リキニウス・クラッスス|クラッスス]]の次男で、[[ガリア戦記_第3巻#20節|第3巻]]でアクィータニアを平定した[[w:プブリウス・リキニウス・クラッスス|プーブリウス]]の弟。<br>    この年、父マールクスと兄プーブリウスは、[[w:パルティア|パルティア]]へ侵攻し、翌年に[[w:カルラエの戦い|カルラエ]]で敗死した。)</span> *cuius hiberna [[wikt:en:absum#Latin|aberant]] ab eo milia passuum XXV([[wikt:la:viginti quinque|viginti quinque]]); **彼の冬営は<u>そこ</u>から<u>25ローママイル</u>離れていたが、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注1:そこ、すなわち<u>カエサルの本営</u>は、[[#24節|24節]]および次の[[#47節|47節]]で言及されるように、<br>    サマロブリーウァ ''[[w:fr:Samarobriva|Samarobriva]]''。ガリア語の地名で「川の上の橋」を意味する。<br>    アンビアーニー族 [[w:la:Ambiani|Ambiani]] の首邑で、現在の[[w:アミアン|アミアン (Amiens)]]。)</span> **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注2:1[[ガイウス・ユリウス・カエサルの著作/通貨・計量単位#ミーッレ・パッスーム、ミーリア(ローママイル)|ローママイル]]は約1.48 kmで、25マイルは約37 km)</span> *<!--❷-->[[wikt:en:iubeo#Latin|iubet]] media nocte legionem [[wikt:en:proficiscor#Latin|proficisci]] celeriterque ad se venire. **真夜中に軍団が出発すること、および速やかに(クラッスス自身が)自分〔カエサル〕のもとへ来ることを命じる。 :  *<!--❸-->[[wikt:en:exeo#Latin|Exit]] cum nuntio [[wikt:en:Crassus#Latin|Crassus]]. **クラッススは(カエサルから遣わされた)伝令とともに(冬営から)出て行く。 :  *Alterum ad [[wikt:en:Gaius#Latin|Gaium]] [[wikt:en:Fabius#Proper_noun_2|Fabium]] legatum mittit, **もう1人(の伝令)は、[[w:レガトゥス|副官]] <u>ガーイウス・ファビウス</u>のもとへ遣わす。 **:<span style="color:#009900;">(訳注:このファビウスは前年([[w:紀元前55年|BC55年]])に[[w:護民官|護民官]]、<br>    この年([[w:紀元前54年|BC54年]])から49年までカエサルの副官を務めた。<ref>[[w:en:Fabia_gens#Others]]</ref>)</span> *ut in <u>[[wikt:en:Atrebates#Latin|Atrebatum]]</u> fines legionem [[wikt:en:adduco#Latin|adducat]], **アトレバテース族の領土に軍団を連れて来るようにと(命じる)。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、&alpha;系写本では [[wikt:en:Atrebatum|Atrebatum]]<br>         &beta;系写本では Atrebatium となっている。)</span> *[[wikt:en:qua#Adverb_2|qua]] sibi iter [[wikt:en:faciendus#Latin|faciendum]] [[wikt:en:scio#Latin|sciebat]]. **そのところにより、自ら〔カエサル〕によって行軍がなされることを知っていたのだ。 :  *<!--❹-->[[wikt:en:scribo#Latin|Scribit]] [[wikt:en:Labienus#Latin|Labieno]], **[[w:ティトゥス・ラビエヌス|ラビエーヌス]]には(以下のように書状を)書く。 *si [[wikt:la:res_publica|rei publicae]] commodo facere posset, cum legione ad fines [[wikt:en:Nervii#Latin|Nerviorum]] veniat. **もし、公儀<small>〔ローマ国家〕</small>の利益のために行なうことが可能なら、軍団とともに[[w:ネルウィイ族|ネルウィイー族]]の領土へ来るように、と。 :  *<!--❺-->Reliquam partem exercitus, quod paulo [[wikt:en:absum#Latin|aberat]] longius, non [[wikt:en:puto#Latin|putat]] [[wikt:en:exspectandus#Latin|exspectandam]]; **(カエサルは)軍隊の残りの部分は、少しより遠くに離れていたので、期待するべきではないと思った。 *equites circiter [[wikt:en:quadringenti#Latin|quadringentos]] ex proximis hibernis <u>colligit</u>. **[[w:騎兵|騎兵]]は、隣の冬営から約400騎を集めた。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、&alpha;系写本では [[wikt:en:colligit|colligit]]<br>         &beta;系写本では [[wikt:en:cogit|cogit]] となっている。)</span> <!-- <span style="color:#009900;"></span> **:<span style="color:#009900;">(訳注: **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注: --> ===47節=== *<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/47節]] {{進捗|00%|2024-05-27}}</span> ;カエサルと副官たちの動き *Hora circiter tertia **第三時の頃<small>〔朝方〕</small>に、 *ab [[wikt:en:antecursor#Latin|antecursoribus]] de [[wikt:en:Crassus#Latin|Crassi]] adventu certior factus, **クラッススの到着について(彼の)斥候たちから報告されて、 *eo die milia passuum XX([[wikt:en:viginti#Latin|viginti]]) <u>procedit</u>. **(カエサルは)その日に20ローママイル前進する。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:1[[ガイウス・ユリウス・カエサルの著作/通貨・計量単位#ミーッレ・パッスーム、ミーリア(ローママイル)|ローママイル]]は約1.48 kmで、20マイルは約30 km)</span> **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、&alpha;系写本では [[wikt:en:procedo#Latin|procedit]]<br>         &beta;系写本では [[wikt:en:progredior#Latin|progreditur]] となっている。)</span> **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:カエサル自身は、副官[[w:ガイウス・トレボニウス|トレボーニウス]]が率いる1個軍団を伴っていたと考えられる。)</span> {| class="wikitable" |- | style="width:20em;" |[[画像:Campagne_Gaule-54.PNG|thumb|left|500px|キケローを支援するカエサルと軍団の情勢図。カエサルは、本営サマロブリーウァ(Samarobriva)をクラッススに委ね、ファビウスとトレボニウスの軍団とともに東進。ラビエーヌスはトレーウェリー族を迎撃。]] |} :  ;クラッスス *<!--❷-->[[wikt:en:Crassus#Latin|Crassum]] [[wikt:en:Samarobriva#Latin|Samarobrivae]] [[wikt:en:praeficio#Latin|praeficit]] legionemque <u>ei</u> [[wikt:en:attribuo#Latin|attribuit]], **(財務官マールクス・)クラッススをサマロブリーウァの指揮官に任じて、1個[[w:ローマ軍団|軍団]]を割り当てる。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:ei は&beta;系写本の記述で、&alpha;系写本にはない。)</span> **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:サマロブリーウァは、アンビアーニー族の首邑で現在の[[w:アミアン|アミアン]]。カエサルの本営があったと思われる。)</span> *quod ibi impedimenta exercitus, obsides civitatum, litteras publicas, **というのは、そこに、軍隊の[[w:輜重|輜重]]、諸部族の人質たち、公けの文書、 *frumentumque omne, quod eo [[wikt:en:tolerandus#Latin|tolerandae]] [[wikt:en:hiems#Latin|hiemis]] causa [[wikt:en:deveho#Latin|devexerat]], [[wikt:en:relinquo#Latin|relinquebat]]. **および、そこで冬を持ちこたえるために運び込んであった糧食を、残しておいたからである。 :  ;ファビウス *<!--❸-->[[wikt:en:Fabius#Latin|Fabius]], ut imperatum erat, **(副官ガーイウス・)ファビウスは(カエサルから)命令されていたように、 *non ita multum [[wikt:en:moratus#Participle|moratus]], in itinere cum legione [[wikt:en:occurro#Latin|occurrit]]. **こうしてあまり遅れることなく、1個軍団とともに行軍中に(カエサルと)出会った。 :  ;ラビエーヌス *<!--❹-->[[wikt:en:Labienus#Latin|Labienus]], [[wikt:en:interitus#Latin|interitu]] [[wikt:en:Sabinus#Proper_noun|Sabini]] et [[wikt:en:caedes#Latin|caede]] cohortium [[wikt:en:cognitus#Latin|cognita]], **[[w:ティトゥス・ラビエヌス|ラビエーヌス]]は、[[w:クィントゥス・ティトゥリウス・サビヌス|サビーヌス]]の敗亡と(軍団の)歩兵たちが殺戮されたことを知って、 *cum omnes ad eum [[wikt:en:Treveri#Latin|Treverorum]] copiae venissent, **彼のところへトレーウェリー族の全軍勢が来襲してこようとしていたので、 *[[wikt:en:veritus#Latin|veritus]] <u>ne, si</u> ex hibernis fugae similem profectionem fecisset, hostium impetum sustinere non [[wikt:en:posset#Latin|posset]], **もし冬営から逃亡に似た出発をしたならば、敵たちの襲撃を持ちこたえられない、と恐れて、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部の ne si は、[[ガリア戦記/注解編/写本と校訂版#Oudendorp|Oudendorp]] による修正提案で、<br>        &alpha;系写本では ne のみ<br>        &beta;系写本では si のみとなっている。)</span> *<!--❺-->praesertim quos [[wikt:en:recens#Adjective|recenti]] victoria [[wikt:en:effero#Latin|efferri]] [[wikt:en:scio#Latin|sciret]], **とりわけ、かの者らが最近の(エブローネース族の)勝利で高ぶっていることを知っていたので、 *litteras Caesari [[wikt:en:remitto#Latin|remittit]]:<!--,--> **カエサルに書状を返信する。 *[[wikt:en:quantus#Latin|quanto]] cum periculo legionem ex hibernis [[wikt:en:educturus#Latin|educturus]] esset; **軍団を冬営から進発させることが、どれだけ大きな危険を伴うことになるか、 *rem [[wikt:en:gestus#Participle|gestam]] in [[wikt:en:Eburones#Latin|Eburonibus]] [[wikt:en:perscribo#Latin|perscribit]]; **[[w:エブロネス族|エブローネース族]]のところでなされた(戦われた)事態を記述し、 *[[wikt:en:doceo#Latin|docet]] omnes equitatus peditatusque copias [[wikt:en:Treveri#Latin|Treverorum]] tria milia passuum longe ab suis castris [[wikt:en:consido#Latin|consedisse]]. **トレーウェリー族の[[w:騎兵隊|騎兵隊]]と[[w:歩兵隊|歩兵隊]]のすべての軍勢が自分の陣営3ローママイル遠くに陣取っていると知らせる。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:1[[ガイウス・ユリウス・カエサルの著作/通貨・計量単位#ミーッレ・パッスーム、ミーリア(ローママイル)|ローママイル]]は約1.48 kmで、3マイルは約4.4 km)</span> <!-- <span style="color:#009900;"></span> **:<span style="color:#009900;">(訳注: **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注: --> ===48節=== *<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/48節]] {{進捗|00%|2024-05-30}}</span> ;カエサルがキケローに返信 *Caesar, consilio eius [[wikt:en:probatus#Latin|probato]], **カエサルは彼〔[[w:ティトゥス・ラビエヌス|ラビエーヌス]]〕の考えを承認して、 *<u>etsi</u> [[wikt:en:opinio#Latin|opinione]] trium legionum [[wikt:en:deiectus#Participle|deiectus]] ad duas [[wikt:en:redeo#Latin|redierat]], **たとえ3個[[w:ローマ軍団|軍団]]の期待から当てが外れて2個になったとしても、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:副官ファビウスとトレボニウスが率いる2個軍団であると思われる。)</span> *<u>tamen</u> unum [[wikt:en:communis#Latin|communis]] [[wikt:en:salus#Latin|salutis]] auxilium in celeritate ponebat. **それでもなお(全軍)共通の安全にとって唯一の支援策を迅速さにかけていた。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:etsi#Latin|etsi]] ~, [[wikt:en:tamen#Latin|tamen]] ・・・「~としても、それでもなお・・・」)</span> :  *<!--❷-->Venit magnis itineribus in [[wikt:en:Nervii#Latin|Nerviorum]] fines. **強行軍で[[w:ネルウィイ族|ネルウィイー族]]の領土にやって来たのだ。 :  *Ibi ex [[wikt:en:captivus#Noun|captivis]] [[wikt:en:cognosco#Latin|cognoscit]], **そこで捕虜たちから知った。 *quae apud [[wikt:en:Cicero#Latin|Ciceronem]] [[wikt:en:gero#Latin|gerantur]], **[[w:クィントゥス・トゥッリウス・キケロ|キケロー]]のもとでなされていること <small>〔攻囲戦〕</small> を、 *[[wikt:en:quantus#Latin|quanto]]<nowiki>que</nowiki> in periculo res sit. **および、状況がどれほど大きな危機にあるかということを。 :  *<!--❸-->Tum [[wikt:en:quidam#Latin|cuidam]] ex equitibus Gallis magnis praemiis [[wikt:en:persuadeo#Latin|persuadet]], uti ad [[wikt:en:Cicero#Latin|Ciceronem]] [[wikt:en:epistola#Latin|epistolam]] [[wikt:en:defero#Latin|deferat]]. **そこで、ガッリア人の[[w:騎兵|騎兵]]隊からある者を、キケローのところへ手紙を運ぶように、大きな恩賞で説得する。 :  [[画像:Dédicace_de_Segomaros_(inscription gallo-grecque).png|thumb|right|200px|ギリシア文字で刻まれたガッリアの碑文]] *<!--❹-->Hanc Graecis [[wikt:en:conscriptus#Participle|conscriptam]] litteris mittit, **これ〔書状〕を[[w:ギリシア文字|ギリシアの文字]]で書き上げて送る。 *ne [[wikt:en:interceptus#Latin|intercepta]] epistola nostra ab hostibus consilia [[wikt:en:cognosco#Latin|cognoscantur]]. **(仮に)書状が奪い取られても、我が方〔ローマ勢〕の考えが敵たちによって知られないように。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:カエサルは、ベルガエ勢にはギリシア文字を読める者がいないと判断したのであろう。<br>    ただし、カエサル自身も [[ガリア戦記_第6巻#14節|第6巻14節]] で伝えているように、<br>    ドルイド僧がギリシア文字を読み書きできることは知っていた。)</span> :  *<!--❺-->Si adire non possit, **もし(キケローの陣営に)近付くことができないならば、 *[[wikt:en:moneo#Latin|monet]], ut [[wikt:en:tragula#Latin|tragulam]] cum epistola ad [[wikt:en:ammentum#Latin|ammentum]] [[wikt:en:deligatus#Latin|deligata]] intra <u>munitionem</u> castrorum [[wikt:en:abicio#Latin|abiciat]]. **革ひもに結び付けられた手紙とともに投槍を(キケローの)陣営の防塁の内側に投げやるようにと、助言する。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、&alpha;系写本では [[wikt:en:munitionem|munitionem]] (単数)<br>         &beta;系写本では [[wikt:en:munitiones|munitiones]] (複数) となっている。)</span> :  *<!--❻-->In litteris [[wikt:en:scribo#Latin|scribit]] se cum legionibus [[wikt:en:profectus#Etymology_3|profectum]] celeriter [[wikt:en:adfore|adfore]]; **書状には、自分〔カエサル〕は(2個)軍団とともに出発して、速やかに到着するであろう、と書いて、 *[[wikt:en:hortor#Latin|hortatur]], ut [[wikt:en:pristinus#Latin|pristinam]] virtutem [[wikt:en:retineo#Latin|retineat]]. **かつての勇敢さを保持するように、と激励する。 :  [[画像:Gallo-Romeinse_cavalerist26-09-2008_16-07-55.JPG|thumb|right|200px|投槍(tragula)を持ったガッリア人騎兵を復元した人形]] *<!--❼-->Gallus periculum [[wikt:en:veritus#Latin|veritus]], **(伝令となった騎兵の)ガッリア人は(敵中での)危険を怖れて *ut [[wikt:en:praecipio#Latin|erat praeceptum]], tragulam mittit. **指図されたように、投槍を放つ。 :  *<!--❽-->Haec [[wikt:en:casu#Adverb|casu]] ad turrim [[wikt:en:adhaereo#Latin|adhaesit]] **これ〔投槍〕が、偶然に(キケローの陣営の)櫓に突き刺さって、 *neque ab nostris [[wikt:en:biduum#Latin|biduo]] [[wikt:en:animadversus#Participle|animadversa]] **我が方〔ローマ勢〕により2日間は気付かれなかったが、 *tertio die a [[wikt:en:quidam#Latin|quodam]] milite [[wikt:en:conspicio#Latin|conspicitur]], **3日目にある兵士により気付かれて、 *[[wikt:en:demptus#Latin|dempta]] ad [[wikt:en:Cicero#Latin|Ciceronem]] [[wikt:en:defero#Latin|defertur]]. **(櫓から)引き抜かれて、キケローのところへ運ばれる。 :  *<!--❾-->Ille [[wikt:en:perlectus#Latin|perlectam]] in conventu militum [[wikt:en:recito#Latin|recitat]], **彼〔キケロー〕は通読したもの〔手紙〕を兵士たちの集まりで読んで聞かせて、 *maximaque omnes laetitia [[wikt:en:adficit|adficit]]. **皆を大いなる歓喜(の状態)に置く。 :  *<!--❿-->Tum [[wikt:en:fumus#Latin|fumi]] [[wikt:en:incendium#Latin|incendiorum]] procul videbantur, **やがて火の煙が遠くから見られて、 *quae res omnem [[wikt:en:dubitatio#Latin|dubitationem]] adventus legionum [[wikt:en:expello#Latin|expulit]]. **その事が、諸軍団の到来についての疑念を一掃した。 <!-- <span style="color:#009900;"></span> **:<span style="color:#009900;">(訳注: **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注: --> ===49節=== *<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/49節]] {{進捗|00%|2024-06-06}}</span> ;ガッリア勢がキケローの包囲を解いて、カエサルと対峙する *Galli re [[wikt:en:cognitus#Latin|cognita]] per [[wikt:en:explorator#Latin|exploratores]] **ガッリア人たちは(カエサル到来という)状況を斥候たちを介して知ると、 *[[wikt:en:obsidio#Latin|obsidionem]] [[wikt:en:relinquo#Latin|relinquunt]], **(キケローの陣営の)包囲を放置して、 *ad Caesarem omnibus copiis [[wikt:en:contendo#Latin|contendunt]]. **カエサルの方へ全軍勢をあげて急ぐ。 :  *Hae erant armatae circiter milia LX([[wikt:en:sexaginta#Latin|sexaginta]]). **この軍勢は、およそ60,000名が武装していた。 :  *<!--❷-->[[wikt:en:Cicero#Latin|Cicero]] data [[wikt:en:facultas#Latin|facultate]] **[[w:クィントゥス・トゥッリウス・キケロ|キケロー]]は機会を与えられて、 *Gallum ab eodem [[wikt:en:Vertico#Latin|Verticone]], quem supra [[wikt:en:demonstro#Latin|demonstravimus]], [[wikt:en:repeto#Latin|repetit]], **前に説明した者と同じウェルティコーから(1人の)ガッリア人を再び得て、 **:<span style="color:#009900;">(訳注:ウェルティコーについては[[#45節|45節]]を参照)</span> *qui litteras ad Caesarem [[wikt:en:defero#Latin|deferat]]. **その者に書状をカエサルのところへ運ばせる。 :  *Hunc [[wikt:en:admoneo#Latin|admonet]], iter [[wikt:en:caute#Adverb|caute]] diligenterque faciat. **(キケローは)この者に、用心深く入念に旅をするようにと忠告する。 :  *<!--❸-->[[wikt:en:perscribo#Latin|Perscribit]] in litteris hostes ab se [[wikt:en:discedo#Latin|discessisse]] omnemque ad eum multitudinem [[wikt:en:converto#Latin|convertisse]]. **書状の中では、敵たちは自陣から立ち去って彼〔カエサル〕の方へ多勢のすべてで転進した、と記す。 :  *<!--❹-->Quibus litteris circiter media nocte Caesar [[wikt:en:adlatus#Latin|adlatis]] **その書状を真夜中の頃に届けられたカエサルは、 *suos facit certiores **配下の者たちに報知して *eosque ad [[wikt:en:dimicandum|dimicandum]] animo [[wikt:en:confirmo#Latin|confirmat]]. **彼らの闘争心を鼓舞する。 :  *<!--❺-->Postera die luce prima movet castra **(カエサルは)翌日の夜明けに陣営を引き払い、 *et circiter milia passuum quattuor [[wikt:en:progressus#Participle|progressus]] **約4ローママイル前進すると、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:1[[ガイウス・ユリウス・カエサルの著作/通貨・計量単位#ミーッレ・パッスーム、ミーリア(ローママイル)|ローママイル]]は約1.48 kmで、4マイルは約6 km)</span> *trans [[wikt:en:vallis#Latin|vallem]] et [[wikt:en:rivus#Latin|rivum]] multitudinem hostium [[wikt:en:conspicor#Latin|conspicatur]]. **峡谷と小川の向こう側に敵の大勢が視認する。 :  *<!--❻-->Erat magni periculi res [[wikt:en:tantulus#Latin|tantulis]] copiis iniquo loco [[wikt:en:dīmicō|dimicare]]; **これほどわずかな軍勢で不利な場所で争闘することは、大きな危険を伴う事であった。 *tum, [[wikt:en:quoniam#Latin|quoniam]] [[wikt:en:obsidio#Latin|obsidione]] [[wikt:en:liberatus#Latin|liberatum]] [[wikt:en:Cicero#Latin|Ciceronem]] [[wikt:en:scio#Latin|sciebat]], **そのうえ、キケローが <small>(敵勢の撤収により)</small> 包囲から解放されたのを知っていたので、 *aequo animo [[wikt:en:remittendus#Latin|remittendum]] de celeritate existimabat:<!--.--> **平静な心で(行軍の)速さをゆるめるべきだと考えていた。 *<!--❼-->[[wikt:en:consido#Latin|Consedit]] et, quam aequissimo loco potest, castra [[wikt:en:communio#Verb|communit]], **できるかぎり有利な場所に陣取って、陣営(の防備)を固めた。 *atque haec, <u>etsi</u> erant [[wikt:en:exiguus#Latin|exigua]] per se, vix hominum milium septem, praesertim nullis cum impedimentis, **そしてこれ〔陣営〕は、それ自体でやっと7000の人員、とりわけ何ら輜重を伴わない貧弱なものであったが、 **:<span style="color:#009900;">(訳注:[[#48節|48節]]の記述からカエサルは2個軍団を率いていたはずであるが、<br>    1個軍団の定員は約5000名であるから、その兵力が7000人とは非常に少ない。<br>    ブリタンニアで多くの兵士が死傷したためか、<br>    あるいはサビーヌスのもとに5個大隊を分遣したためであろうか。)</span> *<u>tamen</u> [[wikt:en:angustia#Latin|angustiis]] viarum quam maxime potest [[wikt:en:contraho#Latin|contrahit]], **それでもなお(陣営内部の)通路の狭さにより、できるかぎり(陣営の大きさを)縮めた。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:etsi#Latin|etsi]] ~, [[wikt:en:tamen#Latin|tamen]] ・・・「~としても、それでもなお・・・」)</span> *eo consilio, ut in summam [[wikt:en:contemptio#Latin|contemptionem]] hostibus veniat. **(これは)敵たちが(ローマ勢を)大いに軽蔑することになるように、との考えによってである。 :  *<!--❽-->Interim [[wikt:en:speculator#Latin|speculatoribus]] in omnes partes [[wikt:en:dimissus#Latin|dimissis]] **その間に斥候たちがあらゆる方面に送り出されて、 *[[wikt:en:exploro#Latin|explorat]], quo commodissime itinere <u>valles transire</u> possit. **(ローマ勢に)峡谷を渡らせることができる最も都合の良い道を探索した。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、&alpha;系写本では  valles transire<br>         &beta;系写本では  [[wikt:en:vallis#Latin|vallem]] transire<br>         [[ガリア戦記/注解編/写本と校訂版#Frigell|Frigell]] の校訂は valles [[wikt:en:transiri#Latin|transiri]] と修正している。)</span> <!-- <span style="color:#009900;"></span> **:<span style="color:#009900;">(訳注: **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注: --> ===50節=== *<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/50節]] {{進捗|00%|2024-06-20}}</span> ;カエサルが詭計により敵勢をおびき寄せる *Eo die [[wikt:en:parvulus#Latin|parvulis]] [[wikt:en:equester#Latin|equestribus]] proeliis ad aquam [[wikt:en:factus#Participle|factis]] **その日は、ごくわずかな騎兵戦が水辺で行なわれたが、 *[[wikt:en:uterque#Latin|utrique]] sese suo loco [[wikt:en:contineo#Latin|continent]]: **(ガッリア勢とローマ勢)双方が自らの陣地を保持する。 :  *<!--❷-->Galli, quod [[wikt:en:amplior#Adjective|ampliores]] copias, quae nondum [[wikt:en:convenio#Latin|convenerant]], [[wikt:en:exspecto#Latin|exspectabant]]; **というのは、ガッリア人は、まだ集結していなかった、より大きな軍勢を待っていたためである。 :  *<!--❸-->Caesar, si [[wikt:en:forte#Adverb_4|forte]] timoris [[wikt:en:simulatio#Latin|simulatione]] hostes in suum locum [[wikt:en:elicio#Latin|elicere]] posset, **カエサルは、おそらく、(ローマ勢が)怖れているという見せかけが敵たちを自陣に誘い出すことができたなら、 *ut citra vallem pro castris proelio [[wikt:en:contendo#Latin|contenderet]]; **峡谷のこちら側の陣営の前で交戦しようとしていた。 *si id [[wikt:en:efficio#Latin|efficere]] non posset, **もし、それがうまくできなかったならば、 *ut [[wikt:en:exploratus#Latin|exploratis]] itineribus minore cum periculo vallem [[wikt:en:rivus#Latin|rivum]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:transeo#Latin|transiret]]. **道を探索して、(軍勢に)小さい危険とともに峡谷と小川を渡らせようとしていたのである。 :  *<!--❹-->Prima luce hostium equitatus ad castra [[wikt:en:accedo#Latin|accedit]] **(翌日の)夜明けに、敵の騎兵隊が(峡谷と川を渡ってローマ側の)陣営の方へ接近して、 *proeliumque cum nostris equitibus [[wikt:en:committo#Latin|committit]]. **我が方〔ローマ勢〕の騎兵たちと戦闘を交える。 :  *<!--❺-->Caesar [[wikt:en:consulto#Adverb|consulto]] equites [[wikt:en:cedo#Latin|cedere]] seque in castra [[wikt:en:recipio#Latin|recipere]] [[wikt:en:iubeo#Latin|iubet]]; **カエサルは、故意に、騎兵たちに退くこと、および陣営に退却することを命じる。 *<u>simul</u> ex omnibus partibus castra [[wikt:en:altior#Latin|altiore]] vallo [[wikt:en:muniri|muniri]] portasque [[wikt:en:obstruo#Latin|obstrui]] **すべての方面から陣営がより高い堡塁で防備され、諸門が塞がれるや否や、 *<u>atque</u> in his [[wikt:en:administrandus#Latin|administrandis]] rebus quam maxime [[wikt:en:concurso#Latin|concursari]] et cum simulatione [[wikt:en:ago#Latin|agi]] timoris iubet. **これらの事に従事することにおいて、できるだけ走り回って畏怖の見せかけを伴って行なうように、と命じる。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:simul#Latin|simul]] ~ atque ・・・「~するや否や、・・・」)</span> <!-- <span style="color:#009900;"></span> **:<span style="color:#009900;">(訳注: **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注: --> ===51節=== *<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/51節]] {{進捗|00%|2024-06-24}}</span> ;カエサルがネルウィイー族らを撃退 *Quibus omnibus rebus hostes [[wikt:en:invitatus#Latin|invitati]] **このようなすべての事情に敵たちは誘惑されて、 *copias [[wikt:en:traduco#Latin|traducunt]] **軍勢に(川を)渡らせて、 *[[wikt:en:acies#Latin|aciem]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:iniquus#Latin|iniquo]] loco [[wikt:en:constituo#Latin|constituunt]], **戦列を不利な場所に配置する。 :  *nostris [[wikt:en:vero#Adverb|vero]] etiam de vallo [[wikt:en:deductus#Latin|deductis]] **だが我が方〔ローマ勢〕が堡塁からさえも引き下がったので、 *[[wikt:en:propius#Latin|propius]] [[wikt:en:accedo#Latin|accedunt]] **(ガッリア勢はローマ陣営の)より近くに接近して、 *et [[wikt:en:telum#Latin|tela]] intra [[wikt:en:munitio#Latin|munitionem]] ex omnibus partibus [[wikt:en:conicio#Latin|coniciunt]] **飛道具を防壁の内側にあらゆる方面から投げ込んで、 :  *<!--❷-->[[wikt:en:praeco#Latin|praeconibus]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:circummissus|circummissis]] [[wikt:en:pronuntio#Latin|pronuntiari]] [[wikt:en:iubeo#Latin|iubent]], **お触れ役をあちらこちらに遣わして(以下のことが)布告されることを命じる。 *<u>seu</u> [[wikt:en:aliquis#Latin|quis]] Gallus <u>seu</u> Romanus velit ante horam tertiam ad se [[wikt:en:transeo#Latin|transire]], sine periculo [[wikt:en:licet#Latin|licere]]: **ガッリア人あるいはローマ人でも、第三時〔朝方〕の前に当方へ渡って来ることを欲するなら誰でも、危険なく許される。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:seu#Latin|seu]] ~ seu …「あるいは~あるいは・・・」)</span> *post id tempus non [[wikt:en:fore#Etymology_2_2|fore]] [[wikt:en:potestas#Latin|potestatem]]; **その時の後では、機会はないであろう、と。 :  *<!--❸-->ac <u>sic</u> nostros [[wikt:en:contemno#Latin|contempserunt]], **(ガッリア勢は)我が方〔ローマ勢〕を以下のように侮っていた。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:sic#Latin|sīc]] ~ [[wikt:en:ut#Conjunction|ut]] ・・・「・・・ように、そのように~」)</span> *<u>ut</u>, [[wikt:en:obstructus#Latin|obstructis]] in [[wikt:en:species#Latin|speciem]] portis singulis [[wikt:en:ordo#Latin|ordinibus]] [[wikt:en:caespes#Latin|caespitum]], **(陣営の四方の)門が見せかけのために1列の芝土で塞がれるや、 *quod [[wikt:en:ea#Adverb|ea]] non posse [[wikt:en:introrumpo#Latin|introrumpere]] videbantur, **そこ〔門〕を通って突入することはできないと思われていたので、 *alii vallum manu [[wikt:en:scindo#Latin|scindere]], alii fossas [[wikt:en:compleo#Latin|complere]] [[wikt:en:incipio#Latin|inciperent]]. **ある者は堡塁を手で引き裂くことに、ある者は堀を埋めることに取りかかっていたのだ。 :  *<!--❹-->Tum Caesar omnibus portis [[wikt:en:eruptio#Latin|eruptione]] facta equitatuque [[wikt:en:emissus#Latin|emisso]] **すると、カエサルは(軍勢を)すべての門から出撃させて、騎兵隊を放って、 *celeriter hostes in fugam dat, **速やかに敵たちを逃亡に追いやった。 *sic uti omnino [[wikt:en:pugno#Latin|pugnandi]] causa [[wikt:en:resisto#Latin|resisteret]] nemo, **(敗走するガッリア勢の)誰もまったく戦うために抵抗をしないほどであったので、 *magnumque ex iis numerum [[wikt:en:occido#Etymology_2|occidit]] **彼らのうちの多数を<ruby><rb>斃</rb><rp>(</rp><rt>たお</rt><rp>)</rp></ruby>し、 *atque omnes armis [[wikt:en:exuo#Latin|exuit]]. **(戦死した敵の)全員から武器を奪い取る。 <!-- <span style="color:#009900;"></span> **:<span style="color:#009900;">(訳注: **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注: --> ===52節=== *<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/52節]] {{進捗|00%|2024-07-03}}</span> ;カエサルがキケローの軍団と合流 *Longius [[wikt:en:prosequor#Latin|prosequi]] [[wikt:en:veritus#Latin|veritus]], **(カエサルは)より遠くに追撃することを懸念して、 *quod silvae [[wikt:en:palus#Latin|paludes]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:intercedo#Latin|intercedebant]] **というのは、森林や沼地が妨げていたので、 *neque etiam [[wikt:en:parvulus#Latin|parvulo]] [[wikt:en:detrimentum#Latin|detrimento]] <u>illorum</u> locum [[wikt:en:relinquo#Latin|relinqui]] videbat, **あの者ら〔ガッリア勢〕にとても小さな損害(を与えること)の余地さえも残されているとは思っていなかったからだが、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、&alpha;系写本では [[wikt:en:illorum#Latin|illorum]] だが、<br>         &beta;系写本では [[wikt:en:illum#Latin|illum]] となっている。)</span> *omnibus suis incolumibus <u>copiis</u> **(こうしてカエサルは)配下の全<u>軍勢</u>を無傷のままで、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:&beta;系写本では [[wikt:en:copiis|copiis]] を欠く。)</span> *eodem die ad [[wikt:en:Cicero#Latin|Ciceronem]] [[wikt:en:pervenio#Latin|pervenit]]. **同日に[[w:クィントゥス・トゥッリウス・キケロ|キケロー]]のもとへ到着した。 :  *<!--❷-->[[wikt:en:institutus#Latin|Institutas]] turres, [[wikt:en:testudo#Latin|testudines]] [[wikt:en:munitio#Latin|munitiones]]<nowiki>que</nowiki> hostium [[wikt:en:admiror#Latin|admiratur]]; **敵たちが建造した[[w:攻城塔|攻城櫓]]、[[w:亀甲車|亀甲車]]、(陣営を包囲する)防壁に驚嘆する。 *legione [[wikt:en:productus#Latin|producta]], **(陣営の前に、キケローの)[[w:ローマ軍団|軍団]]が引き出されると、 *[[wikt:en:cognosco#Latin|cognoscit]] non decimum [[wikt:en:quisque#Latin|quemque]] esse reliquum militem sine [[wikt:en:vulnus#Latin|vulnere]].<!--:--> **生き残った兵士のおのおの(10人中)10人目も負傷なしではなかったこと、を知る。 **:<span style="color:#009900;">(訳注:軍団の生存者のうち、無傷の者は10分の1もいなかった。)</span> :  *<!--❸-->Ex his omnibus [[wikt:en:iudico#Latin|iudicat]] rebus, **これらすべての事情から(カエサルが)判断したのは、 *[[wikt:en:quantus#Latin|quanto]] cum periculo et [[wikt:en:quantus#Latin|quanta]] cum virtute res [[wikt:en:administro#Latin|sint administratae]]. **(キケローの軍団により)どれほどの危険とともに、どれほどの武勇とともに、事態が対処されたかである。 :  *<!--❹-->[[wikt:en:Cicero#Latin|Ciceronem]] pro eius [[wikt:en:meritum#Latin|merito]] legionemque [[wikt:en:conlaudo#Latin|conlaudat]]; **(カエサルは)キケローと軍団を、彼らの功績に対して、大いに賞賛する。 *[[wikt:en:centurio#Etymology_2|centuriones]] [[wikt:en:singillatim#Latin|singillatim]] [[wikt:en:tribunus#Latin|tribunos]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:miles#Latin|militum]] [[wikt:en:appello#Latin|appellat]], **[[w:ケントゥリオ|百人隊長]]たちと<ruby><rb>[[w:トリブヌス・ミリトゥム|兵士長官]]</rb><rp>(</rp><rt>トリブヌス・ミリトゥム</rt><rp>)</rp></ruby>たちに個々に呼びかける。 **:<span style="color:#009900;">(訳注:定員通り生存していれば、各軍団には全部で百人隊長59名と兵士長官6名がいた。)</span> *quorum [[wikt:en:egregius#Latin|egregiam]] fuisse virtutem [[wikt:en:testimonium#Latin|testimonio]] [[wikt:en:Cicero#Latin|Ciceronis]] cognoverat. **その者らの武勇が抜群であったことを、キケローの証言により(すでに)知っていたのだ。 :  *De [[wikt:en:casus#Latin|casu]] [[wikt:en:Sabinus#Proper_noun|Sabini]] et [[wikt:en:Cotta#Latin|Cottae]] [[wikt:en:certior#Latin|certius]] ex captivis cognoscit. **[[w:クィントゥス・ティトゥリウス・サビヌス|サビーヌス]]とコッタの不慮の死について、捕虜たちからより確実なことを知る。 :  *<!--❺-->Postero die [[wikt:en:contio#Latin|contione]] [[wikt:en:habitus#Participle|habita]] rem [[wikt:en:gestus#Participle|gestam]] [[wikt:en:propono#Latin|proponit]];<!--,--> **翌日に(将兵たちの)集会を催して、(サビーヌスらの)事変を公表して、 *milites [[wikt:en:consolor#Latin|consolatur]] et [[wikt:en:confirmo#Latin|confirmat]]: **兵士たちをなだめて、励ます。 *quod [[wikt:en:detrimentum#Latin|detrimentum]] [[wikt:en:culpa#Etymology_1_3|culpa]] et [[wikt:en:temeritas#Latin|temeritate]] [[wikt:en:legatus#Noun|legati]] [[wikt:en:accipio#Latin|sit acceptum]], **このような敗戦は、[[w:レガトゥス|副官]]<small>〔サビーヌス〕</small>の過失と軽率さにより蒙ったものであり、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:副官を意味するlegati が単数・属格であることから、<br>    サビーヌス1人に敗戦責任を負わせたと考えられる。[[#37節|37節]]の訳注を参照。)</span> *hoc [[wikt:en:aequior#Latin|aequiore]] animo [[wikt:en:ferendus#Latin|ferendum]] [[wikt:en:doceo#Latin|docet]], **これをより平静な心で耐えるべきである、と諭す。 :  *<!--❻-->quod beneficio deorum [[wikt:en:immortalis#Latin|immortalium]] et virtute eorum [[wikt:en:expiatus#Latin|expiato]] [[wikt:en:incommodum#Latin|incommodo]] **というのは、不死なる神々の恩寵により、および彼ら<small>〔兵士たち〕</small>の武勇により、災厄は除かれ、 *neque hostibus [[wikt:en:diutinus#Latin|diutina]] <u>laetatio</u> **敵たち<small>〔ガッリア勢〕</small>にとっての歓喜も永続的なものではないし、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、&alpha;系写本では [[wikt:en:laetatio#Latin|laetatio]] だが、<br>         &beta;系写本では [[wikt:en:laetitia#Latin|laetitia]] となっている。)</span> *neque ipsis longior [[wikt:en:dolor#Latin|dolor]] relinquatur. **自分たち<small>〔ローマ勢〕</small>にとっての悲嘆もこれ以上あとに残らないからである、と。 <!-- <span style="color:#009900;"></span> **:<span style="color:#009900;">(訳注: **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注: --> ==インドゥーティオマールスとトレーウェリー族の蜂起== ===53節=== *<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/53節]] {{進捗|00%|2024-07-11}}</span> ;サビーヌス敗死とカエサル勝利の影響 *Interim ad [[wikt:en:Labienus#Latin|Labienum]] per [[wikt:en:Remi#Etymology_1_2|Remos]] **その間に、[[w:ティトゥス・ラビエヌス|ラビエーヌス]]のもとへ、レーミー族を介して *[[wikt:en:incredibilis#Latin|incredibili]] celeritate de victoria Caesaris fama [[wikt:en:perfero#Latin|perfertur]], **(後述するような)信じられない迅速さで、カエサルの勝利についての話が報知されて、 *ut, cum ab hibernis [[wikt:en:Cicero#Latin|Ciceronis]] milia passuum [[wikt:en:absum#Latin|abesset]] circiter LX(sexaginta), **その結果、(ラビエーヌスの冬営は)[[w:クィントゥス・トゥッリウス・キケロ|キケロー]]の冬営から約60ローママイル離れていたのに、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:1[[ガイウス・ユリウス・カエサルの著作/通貨・計量単位#ミーッレ・パッスーム、ミーリア(ローママイル)|ローママイル]]は約1.48 kmで、60マイルは約90 km)</span> *eoque post horam nonam diei Caesar [[wikt:en:pervenio#Latin|pervenisset]], **そこ<small>〔キケローの冬営〕</small>には<u>昼間の第九時</u>の後にカエサルが到着したのに、 **:<span style="color:#009900;">(訳注:昼間の第九時は、夕方近く。)</span> *ante mediam noctem ad portas castrorum [[wikt:en:clamor#Latin|clamor]] <u>oreretur</u><!--oriretur-->, **真夜中の前には(ラビエーヌスの)陣営の門の辺りで雄叫びが起こり、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、一部の写本では [[wikt:en:oreretur|orerētur]] <br>          他の写本では [[wikt:en:oriretur|orīrētur]] となっているが、語形の相異。)</span> *quo clamore [[wikt:en:significatio#Latin|significatio]] victoriae [[wikt:en:gratulatio#Latin|gratulatio]]<nowiki>que</nowiki> ab [[wikt:en:Remi#Etymology_1_2|Remis]] [[wikt:en:Labienus#Latin|Labieno]] fieret. **その雄叫びにより、勝利の合図と祝意がレーミー族からラビエーヌスになされたほどであった。 :  ;   トレーウェリー族のインドゥーティオマールスが、ラビエーヌス攻めを一旦思いとどまる *<!--❷-->Hac fama ad [[wikt:en:Treveri#Latin|Treveros]] [[wikt:en:perlatus#Latin|perlata]], **この話はトレーウェリー族のもとへ報知されて、 *[[wikt:en:Indutiomarus#Latin|Indutiomarus]], qui postero die castra [[wikt:en:Labienus#Latin|Labieni]] [[wikt:en:oppugno#Latin|oppugnare]] [[wikt:en:decerno#Latin|decreverat]], **インドゥーティオマールスは、翌日にラビエーヌスの陣営を攻撃することを決意していたが、 *[[wikt:en:noctu#Latin|noctu]] [[wikt:en:profugio#Latin|profugit]] copiasque omnes in [[wikt:en:Treveri#Latin|Treveros]] [[wikt:en:reduco#Latin|reducit]]. **夜間に逃げ出して、全軍勢をトレーウェリー族(の領土)に連れ戻す。 :  ;   カエサルが越冬を決意 *<!--❸-->Caesar [[wikt:en:Fabius#Proper_noun_2|Fabium]] cum sua legione [[wikt:en:remitto#Latin|remittit]] in [[wikt:en:hibernum#Latin|hiberna]], **カエサルは、ファビウスを配下の軍団とともに冬営に送り返して、 *ipse cum tribus legionibus circum [[wikt:en:Samarobriva#Latin|Samarobrivam]] [[wikt:la:trini|trinis]] hibernis [[wikt:en:hiemare|hiemare]] [[wikt:en:constituo#Latin|constituit]], **(カエサル)自身は3個軍団とともにサマロブリーウァ周辺での3つの別々の冬営で越冬することを決める。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:サマロブリーウァは、アンビアーニー族の首邑で現在の[[w:アミアン|アミアン]]。<br>    カエサルの本営があったと思われる。)</span> *et quod [[wikt:en:tantus#Latin|tanti]] [[wikt:en:motus#Noun_2|motus]] Galliae [[wikt:en:exsisto#Latin|exstiterant]], **というのは、ガッリアでのこれほど大きな動乱が生じていたために、 *totam [[wikt:en:hiems#Latin|hiemem]] ipse ad exercitum [[wikt:en:maneo#Latin|manere]] [[wikt:en:decerno#Latin|decrevit]]. **冬季の全体を(カエサル)自身が軍隊のもとへ留まることを決意したからだ。 **:<span style="color:#009900;">(訳注:この年は、ブリタンニア遠征の頃に、[[w:三頭政治|三頭政治]]の盟友[[w:グナエウス・ポンペイウス|ポンペイウス]]に嫁していた<br>    カエサルの愛娘[[w:ユリア (ガイウス・ユリウス・カエサルの娘)|ユーリア]] [[w:la:Iulia (uxor Pompeii Magni)|Iulia]] が亡くなっていたので、カエサルは私人としては<br>    何としてもローマへ帰還したかったことであろう。)</span> :  ;   ガッリア諸部族が互いに使いを走らせ、情勢について密議を凝らす *<!--❹-->Nam illo [[wikt:en:incommodum#Latin|incommodo]] de [[wikt:en:Sabinus#Proper_noun|Sabini]] morte [[wikt:en:perlatus#Latin|perlato]] **なぜなら、[[w:クィントゥス・ティトゥリウス・サビヌス|サビーヌス]]の死についてあの敗北が報知されると、 *omnes fere Galliae civitates de bello [[wikt:en:consulto#Latin|consultabant]], **ガッリアのほぼすべての部族国家が戦争について協議していたし、 *nuntios [[wikt:en:legatio#Latin|legationes]]<nowiki>que</nowiki> in omnes partes [[wikt:en:dimitto#Latin|dimittebant]], **伝令たちや使節団を四方八方に送り出していたのだ。 *et quid reliqui consilii [[wikt:en:capio#Latin|caperent]] **(彼らは)ほかの(部族の)者たちがどのような計画を立て、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:consilium capere 「計画・作戦を立てる」)</span> *atque unde initium belli fieret, [[wikt:en:exploro#Latin|explorabant]] **どこから戦争の火ぶたが切られるのか、を探っていた。 *[[wikt:en:nocturnus#Latin|nocturna]]<nowiki>que</nowiki> in locis [[wikt:en:desertus#Latin|desertis]] [[wikt:en:concilium#Latin|concilia]] habebant. **(人里離れた)さびしい場所で夜通しの会合を催していた。 :  ;   カエサルが、ガッリア諸部族の動きに悩まされながら冬季を過ごす *<!--❺-->Neque [[wikt:en:ullus#Latin|ullum]] fere [[wikt:en:totus#Adjective|totius]] hiemis tempus sine [[wikt:en:sollicitudo#Latin|sollicitudine]] Caesaris [[wikt:en:intercedo#Latin|intercessit]], **冬のほぼ全期間は、カエサルの不安なしには、まったく経過しなかったし、 *quin [[wikt:en:aliqui#Latin|aliquem]] de consiliis ac [[wikt:en:motus#Noun_2|motu]] Gallorum [[wikt:en:nuntius#Latin|nuntium]] [[wikt:en:accipio#Latin|acciperet]]. **ガッリア人の謀議や動きについて何らかの報告を受け取ることなしには(経過しなかった)。 :  ;   アレモリカエ諸部族が攻撃の動きを見せるが、撤退する *<!--❻-->In his **これら(の報告)の中で、 *ab [[wikt:en:Lucius#Latin|Lucio]] [[wikt:en:Roscius#Latin|Roscio]] <u>[quaestore]</u>, quem legioni [[wikt:en:tertius_decimus#Latin|tertiae decimae]] [[wikt:en:praeficio#Latin|praefecerat]], [[wikt:en:certior#Latin|certior]] factus est **第13軍団を指揮させていた財務官 ルーキウス・ロスキウスにより(以下のことが)報告された。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、&alpha;系写本では [[wikt:en:quaestore|quaestore]] ([[w:クァエストル|財務官]])だが、<br>         &beta;系写本では [[wikt:en:legato#Noun_7|legato]]([[w:レガトゥス|副官]])となっており、<br>         [[ガリア戦記/注解編/写本と校訂版#Oudendorp|Oudendorp]] は削除提案している。)</span> [[画像:Map of Aremorican tribes (Latin).svg|thumb|right|400px|[[w:アルモリカ|アルモリカ]](<span style="font-family:Times New Roman;font-size:13pt;">''[[w:en:Armorica|Armorica]]''</span> )またはアレモリカ(Aremorica)と呼ばれる地域の部族分布図。これら大西洋岸地域の諸部族は2年前(BC56年)にカエサルやサビーヌスが率いるローマ軍と戦った。]] *magnas Gallorum copias earum civitatum, quae [[wikt:fr:Aremorica#Latin|Ar&lt;e&gt;moricae]] [[wikt:en:appello#Etymology_2_2|appellantur]], **アレモリカエと呼ばれるガッリア人諸部族の大軍勢が、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:大西洋岸の[[w:アルモリカ|アルモリカ]](アレモリカ) Ar(e)morica に居住し、<br>    [[ガリア戦記 第3巻|第3巻]]でローマ軍と戦った諸部族のことである。)</span> :  *<!--❼-->[[wikt:en:oppugnandi|oppugnandi]] sui causa [[wikt:en:convenio#Latin|convenisse]] **自分<small>〔ロスキウス〕</small>を攻撃するために集結して、 *neque longius <u>milia</u> passuum octo ab hibernis suis [[wikt:en:absum#Latin|afuisse]], **自分の冬営から8ローママイルより遠く離れていなかったが、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:1[[ガイウス・ユリウス・カエサルの著作/通貨・計量単位#ミーッレ・パッスーム、ミーリア(ローママイル)|ローママイル]]は約1.48 kmで、8マイルは約12 km)</span> **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、&alpha;系写本の一部では [[wikt:en:milia#Latin|milia]] だが、<br>         &alpha;系写本の残りでは [[wikt:en:milium#Etymology_2|milium]] <br>         &beta;系写本では mil だが、<br>         Beroald は [[wikt:en:milibus|milibus]] と修正提案している。)</span> *sed [[wikt:en:nuntius#Latin|nuntio]] [[wikt:en:adlatus#Latin|adlato]] de victoria Caesaris [[wikt:en:discedo#Latin|discessisse]], **けれどもカエサルの勝利について報告をもたらされると、撤退し、 *adeo ut fugae [[wikt:en:similis#Latin|similis]] [[wikt:en:discessus#Noun|discessus]] videretur. **まさに逃亡に似た退散のように見えていたほどであった。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:adeo#Adverb|adeō]] ~ ut ・・・「・・・ほど~」)</span> <!-- <span style="color:#009900;"></span> **:<span style="color:#009900;">(訳注: **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注: --> ===54節=== *<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/54節]] {{進捗|00%|2024-07-26}}</span> ;セノネース族の背反、ガッリア諸部族の不穏 :  ;   カエサルが、ガッリア諸部族の代表を召集して、恐れさせ、なだめすかして盟約を固める *At Caesar, principibus [[wikt:en:quisque#Latin|cuiusque]] civitatis ad se [[wikt:en:evocatus#Participle|evocatis]], **そこでカエサルは、各部族国家の領袖たちを自分のもとへ呼び付けて、 *alias [[wikt:en:territando|territando]], cum se [[wikt:en:scio#Latin|scire]], quae fierent, <u>denuntiaret</u>, **一方のある者たちには、自分は何が行なわれているか知っていることを示してひどく怖がらせることによって、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部の [[wikt:en:denuntiaret|denuntiaret]] は、[[ガリア戦記/注解編/写本と校訂版#Aldus|Aldus]] による修正で、<br>       &alpha;系写本では、次の cohortando と magnam の間にあり、<br>       &beta;系写本では省かれている。)</span> *alias [[wikt:en:cohortando|cohortando]] **他方のある者たちには激励することによって、 *magnam partem Galliae in officio [[wikt:en:teneo#Latin|tenuit]]. **ガッリアの大部分を<ruby><rb>義務への忠実さ</rb><rp>(</rp><rt>オッフィキウム</rt><rp>)</rp></ruby>に保った。 :  ;   セノネース族が、カエサルの<ruby><rb>傀儡</rb><rp>(</rp><rt>かいらい</rt><rp>)</rp></ruby>だった王カウァリーヌスを放逐する *<!--❷-->Tamen [[wikt:en:Senones#Latin|Senones]], **しかしながら、'''セノネース族'''は、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:セノネース族については、[[ガリア戦記_第2巻#2節|第2巻2節]] 以来の言及。<br>    <span style="font-family:Times New Roman;">セノネース族 [[w:la:Senones|Senonēs]](仏語名 [[w:fr:Sénons|Sénons]])は、現在の[[w:サンス|サーンス]]([[w:fr:Sens (Yonne)|Sens]])近辺にいた部族で、<br>    都市名サーンス Sens も、この部族名に由来する。同市のラテン語名は [[w:la:Agedincum Senonum|Agedincum]] だが、<br>    これは彼らの首邑のラテン語名であり、第7巻で言及される。<br>    部族名は「古参の者たち」[[ガリア戦記/ガリア語の名前#Senones|ガリア語の名前#Senones]] を参照。)</span> *quae est civitas [[wikt:en:inprimis#Adverb|in primis]] firma et magnae inter Gallos auctoritatis, **とりわけ強力で、ガッリア人の間で大きな勢威を持つ部族国家であったが、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:前4世紀、セノネース族は、族長[[w:ブレンヌス|ブレンヌス]]に率いられて[[w:アッリアの戦い|アッリアの戦い]]でローマ軍を大敗させ、<br>    首都ローマ市街を占領・略奪したと、史家[[w:ティトゥス・リウィウス|リーウィウス]]が伝える。)</span> *[[wikt:en:Cavarinus#Latin|Cavarinum]], quem Caesar apud eos regem [[wikt:en:constituo#Latin|constituerat]], **カエサルが彼らのもとで王として就けていた'''カウァリーヌス'''を、 *cuius frater [[wikt:en:Moritasgus#Latin|Moritasgus]] adventu in Galliam Caesaris cuiusque maiores regnum [[wikt:en:obtineo#Latin|obtinuerant]], **──彼の兄弟'''モリタスグス'''や彼の先祖たちは、カエサルがガッリアに到来したときには、王権を保持していたのだが、── **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:モリタスグス ''[[w:en:Moritasgus|Moritasgus]]'' は、ケルト神話において信仰されていた癒しの神の名でもある。)</span> *[[wikt:en:interficio#Latin|interficere]] publico consilio [[wikt:en:conatus#Participle|conati]], **(カウァリーヌスを)公けの決定により誅殺することを企てた。 *cum ille [[wikt:en:praesentio#Latin|praesensisset]] ac [[wikt:en:profugio#Latin|profugisset]], **彼〔カウァリーヌス〕は(自身の暗殺の企みを)予感していたし、さらに逃亡していたので、 *usque ad fines [[wikt:en:insecutus#Latin|insecuti]] regno domoque [[wikt:en:expello#Latin|expulerunt]] **(セノネース族は領土の)境界まで追跡して(カウァリーヌスを)王位と郷土から追い出して、 :  *<!--❸-->et, [[wikt:en:missus#Participle|missis]] ad Caesarem [[wikt:en:satisfaciendi|satisfaciendi]] causa legatis, **カエサルのもとへ申し開きをするために使節たちを遣わした。 *cum is omnem ad se senatum venire [[wikt:en:iubeo#Latin|iussisset]], **彼〔カエサル〕は(セノネース族の)<u>評議会</u>の全員に自分のもとへ来ることを命じていたけれども、 **:<span style="color:#009900;">(訳注:部族国家の合議制統治機関もローマの元老院に倣って [[wikt:en:senatus#Latin|senātus]] と呼ばれるが、ここでは「評議会」と訳す。)</span> *[[wikt:en:dictum#Noun_2|dicto]] [[wikt:en:audiens#Latin|audientes]] non fuerunt. **(カエサルからの)指図を聞き入れた者はいなかったのだ。 :  ;   セノネース族造反のガッリア諸部族への影響 *<!--❹-->[[wikt:en:tantum#Adverb|Tantum]] apud homines barbaros [[wikt:en:valeo#Latin|valuit]] esse [[wikt:en:aliquis#Latin|aliquos]] [[wikt:en:repertus#Latin|repertos]] principes [[wikt:en:inferendi|inferendi]] belli **戦争をしかけることのとある立役者たちが見出されたことは、野蛮な人間たちのもとで大層な効果があったので、 **:<span style="color:#009900;">(訳注:セノネース族がカエサルの意向に背いたので、挙兵が間近と見なされ、諸部族を煽ることになったのであろう。)</span> *[[wikt:en:tantus#Latin|tantam]]<nowiki>que</nowiki> omnibus <u>voluntatum</u> [[wikt:en:commutatio#Latin|commutationem]] [[wikt:en:affero#Latin|attulit]], **かつ(ガッリアの)すべての者たちにとっての意思のこれほど大きな変化を引き起こしたので、以下(の事態)になった。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、&alpha;系写本の一部(&chi;M<sup>c</sup>LN)では [[wikt:en:voluntatum|voluntatum]] (複数・属格)<br>         &beta;系写本では [[wikt:en:voluntatis|voluntatis]] (単数・属格) となっている。<br>         &alpha;系写本の残り(M<sup>1</sup>BS)では [[wikt:en:voluntatem|voluntatem]] (単数・対格) である。)</span> *ut praeter [[wikt:en:Aedui#Latin|Haeduos]] et [[wikt:en:Remi#Etymology_1_2|Remos]], quos [[wikt:en:praecipuus#Latin|praecipuo]] semper [[wikt:en:honor#Latin|honore]] Caesar habuit, **──(ただし)カエサルがいつも特別な敬意を払っていた[[w:ハエドゥイ族|ハエドゥイー族]]とレーミー族を除いての話で、 *alteros pro [[wikt:en:vetus#Latin|vetere]] ac [[wikt:en:perpetuus#Latin|perpetua]] [[wikt:en:erga#Latin|erga]] populum Romanum<!--p. R.--> [[wikt:en:fides#Latin|fide]], **前者〔ハエドゥイー族〕はローマ国民に対する昔からの絶えざる信義のため、 **:<span style="color:#009900;">(訳注:[[#6節|6節]]~[[#7節|7節]]で言及された、カエサルがドゥムノリークスを暗殺した事件については無視されている。)</span> *alteros pro recentibus Gallici belli [[wikt:en:officium#Latin|officiis]], **後者〔レーミー族〕は[[w:ガリア戦争|ガッリア人との戦争]]での最近の<ruby><rb>奉仕尽力</rb><rp>(</rp><rt>オッフィキウム</rt><rp>)</rp></ruby>のためであるが、── **:<span style="color:#009900;">(訳注:ガッリアの有力部族のうちで最後までカエサルに造反しなかったのは、レーミー族だけといってもいい。)</span> *[[wikt:en:nullus#Latin|nulla]] fere civitas fuerit non [[wikt:en:suspectus#Participle|suspecta]] nobis. **我が方〔ローマ人〕にとって疑わしくない部族は、(上記2部族を除いて)ほぼ存在しなかった、ほどであった。 :  ;   ローマ人の軍門に降ったガッリア人たちの悲憤 *<!--❺-->Idque adeo haud scio [[wikt:en:mirandus#Latin|mirandum]]<u>[[wikt:en:-ne#Latin|ne]]</u> sit, **そのこと〔ガッリア諸部族の不穏〕を、それほど驚くべきものであるとは、私はまったく理解していないのだ。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:scio#Latin|scio]] は『ガリア戦記』では珍しい動詞の一人称による表現である。)</span> *<u>cum</u> compluribus aliis de causis, **他のいくつかの理由についてと同様に、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:cum ~ tum … 「~であるのと同様に…である」)</span> *<u>tum</u> maxime, quod <u>ei,</u> qui virtute belli omnibus gentibus [[wikt:en:praefero#Latin|praeferebantur]], **とりわけ根拠として、戦争の武勇においてあらゆる種族に抜きん出ていた者たち〔ガッリア人たち〕が **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部の ei は、&beta;系写本にはない。)</span> *tantum se eius opinionis [[wikt:en:deperdo#Latin|deperdidisse]], ut a populo Romano<!--p. R.--> imperia perferrent, **ローマ国民の威令に耐え忍ばなければならないほどまでにも、彼ら自らの評判を台無しにしてしまい、 *gravissime [[wikt:en:doleo#Latin|dolebant]]. **とても激しく悲嘆に暮れていたというわけである。 <!-- <span style="color:#009900;"></span> **:<span style="color:#009900;">(訳注: **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注: --> ===55節=== *<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/55節]] {{進捗|00%|2024-08-19}}</span> ;トレーウェリー族のインドゥーティオマールスが兵を集める *[[wikt:en:Treveri#Latin|Treveri]] vero atque [[wikt:en:Indutiomarus#Latin|Indutiomarus]] **しかし、トレーウェリー族とインドゥーティオマールスは、 **:<span style="color:#009900;">(訳注:インドゥーティオマールスはトレーウェリー族の一方の領袖で、これまでに[[#3節|3節]]・[[#4節|4節]]・[[#53節|53節]]で言及されている。)</span> *totius hiemis <u>nullum tempus intermiserunt, quin</u> **冬の全体を通して、いつ何時も(以下のことに)従事した。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:nullus#Adjective|nūllum]] [[wikt:en:tempus#Latin|tempus]] [[wikt:en:intermitto#Latin|intermittere]], [[wikt:en:quin#Latin|quīn]] ~「いかなる時も~ことを中断せず(に従事する)」)</span> *trans [[wikt:en:Rhenus#Latin|Rhenum]] legatos mitterent, **レーヌス<small>〔[[w:ライン川|ライン川]]〕</small>の向こう側<small>〔東岸=ゲルマーニア〕</small>へ使節たちを遣わして、 *civitates [[wikt:en:sollicito#Latin|sollicitarent]], **諸部族をそそのかして、 *pecunias [[wikt:en:polliceor#Latin|pollicerentur]], **金銭(の報酬)を約束して、 *magna parte exercitus nostri [[wikt:en:interfectus#Latin|interfecta]] multo minorem [[wikt:en:supersum#Latin|superesse]] dicerent partem. **我が方の軍隊<small>〔ローマ軍〕</small>の大部分が殲滅されて、はるかに少ない一部が生き残ったのみである、と言い放った。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:トレーウェリー族が東岸諸部族を招き寄せているという主張は、[[#2節|2節]]でも言及されている。<br>      ''Germani Transrhenani'' 「レーヌスの向こう側のゲルマーニア人」は、ライン川東岸の諸部族の総称。<br>      ''[[w:en:Germani cisrhenani|Germani Cisrhenani]]''「レーヌスのこちら側のゲルマーニア人」(西岸の諸部族) の対義語で、<br>      西岸の諸部族が東岸の諸部族を招き寄せているというのが『ガリア戦記』の主張である。)</span> :  ;   ゲルマーニアの諸部族は、渡河に応じず *<!--❷-->Neque tamen [[wikt:en:ullus#Latin|ulli]] civitati Germanorum [[wikt:en:persuadeo#Latin|persuaderi]] [[wikt:en:possum#Latin|potuit]], ut Rhenum [[wikt:en:transeo#Latin|transiret]], **しかしながら、[[w:ゲルマニア|ゲルマーニア]]のいかなる部族をも、レーヌスを渡河するようには説得できなかったのだ。 *cum se [[wikt:en:bis#Latin|bis]] [[wikt:en:expertus#Latin|expertos]] dicerent, [[wikt:en:Ariovistus#Latin|Ariovisti]] bello et [[wikt:en:Tencteri#Latin|Tencterorum]] [[wikt:en:transitus#Latin|transitu]]: **自分たちは[[w:アリオウィストゥス|アリオウィストゥス]]の戦役およびテンクテーリー族の渡河と二度も(敗北を)体験したので、と彼らは言った。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:アリオウィストゥスの敗北は[[ガリア戦記 第1巻|第1巻]]、テンクテーリー族の敗北は[[ガリア戦記 第4巻|第4巻]]で述べられている。[[#29節|29節]]も参照。<br>    テンクテーリー族の綴りは Thincherorum, Tencherorum など写本によってかなり差異があり、表記が乱れている。)</span> *non esse amplius fortunam [[wikt:en:temptaturus|temptaturos]]. **もうこれ以上は武運を試すことはないであろう、と。 **:<span style="color:#009900;">(訳注:[[w:トイトブルク森の戦い|トイトブルク森の戦い]]の大勝利でゲルマーニア勢がローマ軍3個軍団を壊滅させるのは、<br>    これより62年後のことである。)</span> :  *<!--❸-->Hac spe [[wikt:en:lapsus#Etymology_2_2|lapsus]] [[wikt:en:Indutiomarus#Latin|Indutiomarus]] **インドゥーティオマールスは、(ゲルマーニア人に援軍を乞うという)この希望は頓挫したが、 *[[wikt:en:nihilominus|nihilo minus]] copias [[wikt:en:cogo#Latin|cogere]], [[wikt:en:exerceo#Latin|exercere]], **それにもかかわらず、軍勢を徴集すること、訓練すること、 *a [[wikt:en:finitimus#Latin|finitimis]] equos [[wikt:en:paro#Latin|parare]], **近隣から馬匹を調達すること、 *[[wikt:en:exsul#Latin|exsules]] [[wikt:en:damnatus#Latin|damnatos]]<nowiki>que</nowiki> tota Gallia magnis praemiis ad se [[wikt:en:adlicere|adlicere]] [[wikt:en:coepi#Latin|coepit]]. **追放された者たちや断罪された者たちを全ガッリアから大きな報酬で自分のもとへ誘い込むこと、を始めた。 :  *<!--❹-->Ac <u>[[wikt:en:tantam|tantam]]</u> sibi iam his rebus in Gallia [[wikt:en:auctoritas#Latin|auctoritatem]] [[wikt:en:comparo#Latin|comparaverat]], **そしてもはや、これらの事柄によって、ガッリアにおいて、自らにこれほどの大きな勢威を得ていたので、 *<u>ut</u> [[wikt:en:undique|undique]] ad eum legationes [[wikt:en:concurro#Latin|concurrerent]], **四方八方から彼のもとへ(諸部族の)使節団が群がり集まって来ていたほどであり、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:tantus#Latin|tantus]] ~ , [[wikt:en:ut#Conjunction|ut]] ・・・「これほどの~であるので、・・・ほどであった」)</span> *[[wikt:en:gratia#Latin|gratiam]] atque [[wikt:en:amicitia#Latin|amicitiam]] [[wikt:en:publice#Adverb|publice]] [[wikt:en:privatim#Latin|privatim]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:petō|peterent]]. **(使節たちが彼に)公的にも私的にも厚意や親交を求めたほどであった。 <!-- <span style="color:#009900;"></span> **:<span style="color:#009900;">(訳注: **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注: --> ===56節=== *<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/56節]] {{進捗|00%|2024-08-21}}</span> ;インドゥーティオマールスの挙兵 :  ;   インドゥーティオマールスが武装者たちの決起集会を宣言 *[[wikt:en:ubi#Latin|Ubi]] [[wikt:en:intellego#Latin|intellexit]], **<small>(インドゥーティオマールスは以下のことを)</small> 認識するや否や、 *[[wikt:en:ultro#Latin|ultro]] ad se [[wikt:en:veniri|veniri]], **<small>(すなわち、諸部族の使節たちが)</small> 自分のもとへ自発的に来ていること、 *altera ex parte [[wikt:en:Senones#Latin|Senones]] [[wikt:en:Carnutes#Latin|Carnutes]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:conscientia#Latin|conscientia]] [[wikt:en:facinus#Latin|facinoris]] [[wikt:en:instigo#Latin|instigari]], **一方では、セノネース族とカルヌーテース族が<small>(カエサルに背いた)</small>行状の意識に煽られていること、 **:<span style="color:#009900;">(訳注:セノネース族は、[[#54節|54節]]で、カエサルが王に据えたカウァリーヌスを放逐した。<br>    カルヌーテース族は、[[#25節|25節]]で、カエサルが王に復位させていたタスゲティウスを殺害した、と述べられた。)</span> *altera [[wikt:en:Nervii#Latin|Nervios]] [[wikt:en:Aduatuci#Latin|Aduatucos]]<nowiki>que</nowiki> bellum Romanis parare, **他方では、[[w:ネルウィイ族|ネルウィイー族]]とアトゥアトゥキー族がローマ人との戦争を準備していること、 *neque sibi [[wikt:en:voluntarius#Noun|voluntariorum]] copias [[wikt:en:desum#Latin|defore]], si ex finibus suis [[wikt:en:progredi#Latin|progredi]] [[wikt:en:coepi#Latin|coepisset]], **もし(彼が)自らの領土から進軍し始めたならば、彼自身に対して志願兵たちの軍勢に事欠かないであろうこと、 *[[wikt:en:armatus#Latin|armatum]] [[wikt:en:concilium#Latin|concilium]] [[wikt:en:indico#Etymology_2_2|indicit]]. **<small>(以上のことを認識するや否や、インドゥーティオマールスは)</small> 武装集会(を催すこと)を布告する。 :  *<!--❷-->Hoc [[wikt:en:mos#Latin|more]] Gallorum est initium belli, **[[w:ガリア人|ガッリア人]]のこの慣習による、戦争の始まりである。 *quo [[wikt:en:lex#Latin|lege]] [[wikt:en:communis#Latin|communi]] omnes [[wikt:en:pubes#Adjective|puberes]] [[wikt:en:armatus#Participle|armati]] [[wikt:en:convenio#Latin|convenire]] <u>consuerunt</u>; **そこでは、慣習法に従って(ガッリアの)すべての成人たちが、武装して集結することが<u>慣わしであった</u>。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、&alpha;系写本では [[wikt:en:consuerunt|consuerunt]] だが、<br>         &beta;系写本では [[wikt:en:coguntur|coguntur]]「強いられている」となっている。)</span> *qui ex iis novissimus convenit, **彼らのうちで最も後から集まって来る者は、 *in [[wikt:en:conspectus#Noun_2|conspectu]] [[wikt:en:multitudo#Latin|multitudinis]] omnibus [[wikt:en:cruciatus#Noun|cruciatibus]] [[wikt:en:affectus#Participle|adfectus]] [[wikt:en:neco#Latin|necatur]]. **群集が見ている中で、あらゆる拷問にかけられて殺されるのだ。 :  ;   インドゥーティオマールスが、政敵キンゲトリークスを敵と宣言 *<!--❸-->In eo concilio **その集会において(インドゥーティオマールスは)、 *[[wikt:en:Cingetorix#Latin|Cingetorigem]], alterius principem [[wikt:en:factio#Latin|factionis]], [[wikt:en:gener#Latin|generum]] suum, **(トレーウェリー族の)もう一方の派閥の領袖であり、自分の<ruby><rb>婿</rb><rp>(</rp><rt>むこ</rt><rp>)</rp></ruby>であるキンゲトリークスを、 *quem supra [[wikt:en:demonstro#Latin|demonstravimus]] Caesaris [[wikt:en:secutum|secutum]] fidem ab eo non [[wikt:en:discedo#Latin|discessisse]], **──その者は前に説明したようにカエサルへの忠義を追求するために彼のもとから離れていなかったのだが、── **:<span style="color:#009900;">(訳注:[[#3節|3節]]~[[#4節|4節]]を参照。)</span> *hostem [[wikt:en:iudico#Latin|iudicat]] [[wikt:en:bonum#Noun_2|bona]]<nowiki>que</nowiki> eius [[wikt:en:publico#Latin|publicat]]. **(自分の)敵と宣告して、彼<small>〔キンゲトリークス〕</small>の財産を没収する。 :  *<!--❹-->His rebus [[wikt:en:confectus#Latin|confectis]], **これらの事柄を成し遂げると、 *in concilio [[wikt:en:pronuntio#Latin|pronuntiat]] **集会において(インドゥーティオマールスは以下のことを)宣言する。 *[[wikt:en:arcessitus#Adjective|arcessitum]] se a [[wikt:en:Senones#Latin|Senonibus]] et [[wikt:en:Carnutes#Latin|Carnutibus]] aliisque [[wikt:en:conplures#Latin|conpluribus]] Galliae civitatibus; **自分はセノネース族とカルヌーテース族や他の多くのガッリアの諸部族から招かれている、と。 :  ;   インドゥーティオマールスが、ラビエーヌスの陣営へ攻め寄せることを下知 *<!--❺-->[[wikt:en:huc#Latin|huc]] [[wikt:en:iturus|iturum]] per fines [[wikt:en:Remi#Etymology_1_2|Remorum]] eorumque agros [[wikt:en:populaturus|populaturum]] **レーミー族の領土を通ってそちらへ進軍するであろうし、彼ら<small>〔レーミー族〕</small>の耕地を荒廃させるであろう。 *ac, [[wikt:en:priusquam|prius quam]] id faciat, castra [[wikt:en:Labienus#Latin|Labieni]] [[wikt:en:oppugnaturus|oppugnaturum]]. **さらに、それをなすより前に、[[w:ティトゥス・ラビエヌス|ラビエーヌス]]の陣営を攻囲するであろう。 *Quae fieri [[wikt:en:volo#Latin|velit]], [[wikt:en:praecipio#Latin|praecipit]]. **<small>(インドゥーティオマールスは自分が)</small>なされると欲したことを、指示した。 <!-- <span style="color:#009900;"></span> **:<span style="color:#009900;">(訳注: **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注: --> ===57節=== *<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/57節]] {{進捗|00%|2024-09-08}}</span> ;インドゥーティオマールスがラビエーヌスの陣営に殺到 *[[wikt:en:Labienus#Latin|Labienus]], cum et loci natura et manu [[wikt:en:munitissimus|munitissimis]] castris sese [[wikt:en:teneo#Latin|teneret]], **[[w:ティトゥス・ラビエヌス|ラビエーヌス]]は、地勢と人手により堅固に守られた[[w:カストラ|陣営]]に閉じこもっていたので、 *de suo ac legionis periculo nihil [[wikt:en:timeo#Latin|timebat]]; **自らと[[w:ローマ軍団|軍団]]の危険について、何ら恐れていなかった。 *ne [[wikt:en:aliqui#Latin|quam]] occasionem rei bene [[wikt:en:gerendus|gerendae]] [[wikt:en:dimitto#Latin|dimitteret]], [[wikt:en:cogito#Latin|cogitabat]]. **うまく戦功を立てるいかなる好機も無駄にしないようにと、考えていたのだ。 :  *<!--❷-->Itaque a [[wikt:en:Cingetorix#Latin|Cingetorige]] atque eius propinquis **それゆえに、キンゲトリークスおよび彼の縁者たちにより、 *oratione [[wikt:en:Indutiomarus#Latin|Indutiomari]] [[wikt:en:cognitus#Participle|cognita]], quam in concilio habuerat, **インドゥーティオマールスが(前述の)集会において述べた演説について知らされると、 *<u>nuntios mittit</u> ad finitimas civitates equitesque undique [[wikt:en:evoco#Latin|evocat]]; **(ラビエーヌスは)近隣の諸部族国家のもとへ<u>伝令たちを遣わして</u>、[[w:騎兵|騎兵]]を至る所で徴募して、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、&alpha;系写本では [[wikt:en:nuntios|nuntios]] [[wikt:en:mittit|mittit]] だが、<br>         &beta;系写本では [[wikt:en:circummittit|circummittit]] となっている。)</span> *his certum diem [[wikt:en:conveniendi|conveniendi]] dicit. **彼ら〔騎兵たち〕に期日に集結するように告げる。 :  *<!--❸-->Interim prope cotidie cum omni equitatu [[wikt:en:Indutiomarus#Latin|Indutiomarus]] sub castris eius [[wikt:en:vagor#Latin|vagabatur]], **その間にほぼ毎日、インドゥーティオマールスは全騎兵隊とともに彼〔ラビエーヌス〕の陣営のもとをうろついていた。 *alias ut [[wikt:en:situs#Noun_3|situm]] castrorum [[wikt:en:cognosco#Latin|cognosceret]], **あるときは、陣営の状況を知るために、 *alias [[wikt:en:conloquendi|conloquendi]] aut [[wikt:en:territandi|territandi]] causa; **あるときは、(ラビエーヌス側と)談判して、ひどく恐れさせるために。 *equites plerumque <u>omnes</u> tela intra vallum [[wikt:en:conicio#Latin|coniciebant]]. **騎兵たちは、たいてい皆で飛道具を防柵の内側に投げ込んでいた。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、主要系写本&omega;では [[wikt:en:omnes#Latin|omnes]] だが、<br>          [[wikt:en:eminus#Latin|eminus]]「遠くから」という修正提案がある。)</span> :  *<!--❹-->[[wikt:en:Labienus#Latin|Labienus]] suos intra <u>munitionem</u> [[wikt:en:contineo#Latin|continebat]] **ラビエーヌスは配下の者たちを防塁の内側に留めておき、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、&alpha;系写本では [[wikt:en:munitionem|munitionem]](単数・対格) だが、<br>         &beta;系写本では [[wikt:en:munitiones|munitiones]](複数・対格) となっている。)</span> *timorisque opinionem, [[wikt:en:quicumque#Latin|quibuscumque]] poterat rebus, [[wikt:en:augeo#Latin|augebat]]. **(ローマ人がトレーウェリー族を)恐れているという風評を、可能なあらゆる手段において、増大させていた。 <!-- <span style="color:#009900;"></span> **:<span style="color:#009900;">(訳注: **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注: --> ===58節=== *<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/58節]] {{進捗|00%|2024-09-09}}</span> ;インドゥーティオマールスの最期 *Cum maiore in dies [[wikt:en:contemptio#Latin|contemptione]] [[wikt:en:Indutiomarus#Latin|Indutiomarus]] ad castra [[wikt:en:accedo#Latin|accederet]], **インドゥーティオマールスは日ごとにより大きな侮りをもって<small>(ラビエーヌスの)</small>[[w:カストラ|陣営]]に近づいていたので、 *nocte una [[wikt:en:intromissus|intromissis]] equitibus omnium finitimarum civitatum, quos <u>accersendos</u> [[wikt:en:curo#Latin|curaverat]], **<small>(ラビエーヌスは)</small>呼び寄せることを手配していた近隣諸部族の全騎兵を一晩のうちに(陣営内に)入れてやり、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、&alpha;系写本では [[wikt:en:accersendos|accersendos]] <br>         &beta;系写本では [[wikt:en:arcessendos|arcessendos]] となっているが、語形のちがい。)</span> *tanta [[wikt:en:diligentia#Latin|diligentia]] omnes suos [[wikt:en:custodia#Latin|custodiis]] intra castra [[wikt:en:contineo#Latin|continuit]], **これほどにも注意深く、配下の全員を監視することによって陣営内部に留めておいたので、 *ut [[wikt:en:nullus#Adjective|nulla]] [[wikt:en:ratio#Latin|ratione]] ea res [[wikt:en:enuntio#Latin|enuntiari]] aut ad [[wikt:en:Treveri#Latin|Treveros]] [[wikt:en:perfero#Latin|perferri]] posset. **結果として、その事態は、いかなる手段によってもトレーウェリー族へ漏らされたり報知されたりできなかった。 :  *<!--❷-->Interim ex [[wikt:en:consuetudo#Latin|consuetudine]] [[wikt:en:cotidianus#Latin|cotidiana]] [[wikt:en:Indutiomarus#Latin|Indutiomarus]] ad castra [[wikt:en:accedo#Latin|accedit]] **その間に、毎日の習慣から、インドゥーティオマールスは<small>(ラビエーヌスの)</small>陣営の辺りへ近づいて、 *atque ibi magnam partem diei [[wikt:en:consumo#Latin|consumit]]; **日中の大部分をそこで過ごす。 *equites tela [[wikt:en:conicio#Latin|coniciunt]] **<small>(トレーウェリー族の)</small>[[w:騎兵|騎兵]]たちは<small>(ラビエーヌスの陣営に)</small>飛道具を投げ込んで、 *et magna cum [[wikt:en:contumelia#Latin|contumelia]] verborum nostros ad pugnam [[wikt:en:evoco#Latin|evocant]]. **激しい言葉の侮辱とともに、我が方<small>〔ローマ勢〕</small>を戦いへと呼びかける。 :  *<!--❸-->[[wikt:en:nullus#Adjective|Nullo]] ab nostris [[wikt:en:datus#Participle|dato]] [[wikt:en:responsum#Latin|responso]], **我が方からは何ら返答を与えなかったので、 *[[wikt:en:ubi#Latin|ubi]] visum est, sub [[wikt:en:vesper#Latin|vesperum]] [[wikt:en:dispersus#Latin|dispersi]] ac [[wikt:en:dissipatus#Latin|dissipati]] [[wikt:en:discedo#Latin|discedunt]]. **<small>(トレーウェリー族は)</small>良いと思われる頃、夕方頃に、分散して三々五々に撤収する。 :  *<!--❹-->Subito [[wikt:en:Labienus#Latin|Labienus]] duabus portis omnem [[wikt:en:equitatus#Latin|equitatum]] [[wikt:en:emitto#Latin|emittit]]; **突然に[[w:ティトゥス・ラビエヌス|ラビエーヌス]]は、2つの門からすべての騎兵隊を放つ。 *[[wikt:en:praecipio#Latin|praecipit]] atque [[wikt:en:interdico#Latin|interdicit]], **<small>(ラビエーヌスはその際に以下のように)</small>指示し、かつ禁じる。 *<u>proterritis</u> hostibus atque in fugam [[wikt:en:coniectus#Participle|coniectis]] **敵たちがひどく脅えて、逃亡に追いやられたときに、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、&alpha;系写本では [[wikt:en:proterritis|proterritis]] <br>         &beta;系写本では [[wikt:en:perterritis|perterritis]] となっているが、ほぼ同義語。)</span> *(quod [[wikt:en:fore#Etymology_2_2|fore]], [[wikt:en:sicut#Latin|sicut]] [[wikt:en:accido#Etymology_1|accidit]], videbat) **──そのことは起こるべくして成るであろうと<small>(ラビエーヌスは)</small>思っていたが、── *unum omnes <u>peterent</u> [[wikt:en:Indutiomarus#Latin|Indutiomarum]], **インドゥーティオマールス1人を<small>(騎兵隊の)</small>総勢で追い求めるように、と。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、&alpha;系写本では [[wikt:en:peterent|peterent]] ([[wikt:en:peto#Latin|petō]] の3人称複数・<u>未完了過去</u>・接続法)<br>         &beta;系写本では [[wikt:en:petant#Latin|petant]] (petō の3人称複数・<u>現在</u>・接続法)となっている。)</span> *[[wikt:en:neu#Latin|neu]] [[wikt:en:aliquis#Latin|quis]] quem (alium) <u>prius</u> [[wikt:en:vulnero#Latin|vulneret]], <u>quam</u> illum [[wikt:en:interfectus#Latin|interfectum]] viderit, **あの者が殺されるのを見届ける<u>より前には</u>、(他の) 誰をも傷つけないように、と。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:alius#Latin|alium]] は &beta;系写本の記述で、&alpha;系写本にはない。)</span> *quod mora reliquorum [[wikt:en:spatium#Latin|spatium]] [[wikt:en:nactus#Latin|nactum]] illum [[wikt:en:effugio#Latin|effugere]] [[wikt:en:nolo#Latin|nolebat]]; **というのは(敵の)ほかの者たちが滞ることで、彼が猶予を得て逃げることを望まなかったのだ。 :  *<!--❺-->magna [[wikt:en:propono#Latin|proponit]] iis, qui [[wikt:en:occido#Etymology_2|occiderint]], [[wikt:en:praemium#Latin|praemia]]; **<small>(インドゥーティオマールスを)</small>斃した者には、大きな恩賞を呈示する。 *[[wikt:en:submitto#Latin|submittit]] [[wikt:en:cohors#Latin|cohortes]] equitibus [[wikt:en:subsidium#Latin|subsidio]]. **騎兵たちにとっての支援として[[w:歩兵|歩兵]]たち<small>〔軍団兵〕</small>を派遣する。 :  *<!--❻-->[[wikt:en:comprobo#Latin|Comprobat]] hominis consilium fortuna, **運命<small>(の女神)</small>はその人<small>〔ラビエーヌス〕</small>の考えを是認して、 *et cum unum omnes [[wikt:en:peto#Latin|peterent]], **1人を総勢が追い求めたので、 *in ipso fluminis [[wikt:en:vadum#Latin|vado]] [[wikt:en:deprehensus#Latin|deprehensus]] [[wikt:en:Indutiomarus#Latin|Indutiomarus]] [[wikt:en:interficio#Latin|interficitur]], **ちょうど川の浅瀬において捕捉されたインドゥーティオマールスは殺害され、 *[[wikt:en:caput#Latin|caput]]<nowiki>que</nowiki> eius [[wikt:en:refero#Latin|refertur]] in castra; **彼の<small>(斬り取られた)</small>頭部は陣営に運ばれる。 *[[wikt:en:rediens#Latin|redeuntes]] equites, quos possunt, [[wikt:en:consector#Latin|consectantur]] atque [[wikt:en:occido#Latin|occidunt]]. **引き返して行く<small>(ローマ側の)</small>騎兵たちは、できるかぎり<small>(多くの敵)</small>の者たちを追捕して、<ruby><rb>斃</rb><rp>(</rp><rt>たお</rt><rp>)</rp></ruby>す。 :  *<!--❼-->Hac re [[wikt:en:cognitus#Participle|cognita]], **この事態を知ると、 *omnes [[wikt:en:Eburones#Latin|Eburonum]] et [[wikt:en:Nervii#Latin|Nerviorum]], quae [[wikt:en:convenio#Latin|convenerant]], copiae [[wikt:en:discedo#Latin|discedunt]], **集結していた[[w:エブロネス族|エブローネース族]]と[[w:ネルウィイ族|ネルウィイー族]]のすべての軍勢は退却して、 *pauloque habuit post id [[wikt:en:factus#Latin|factum]] Caesar [[wikt:en:quietior|quietiorem]] Galliam. **それがなされた後で、カエサルは[[w:ガリア|ガッリア]]をやや平穏なものとして保持した。 <!-- <span style="color:#009900;"></span> **:<span style="color:#009900;">(訳注: **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注: --> :  :  :  ---- *<span style="background-color:#99ff99;">「ガリア戦記 第5巻」了。「[[ガリア戦記 第6巻]]」へ続く。</span> ==脚注== <references /> ==参考リンク== *ウィキペディア英語版 **[[w:en:Category:Tribes of ancient Gaul|Category:Tribes of ancient Gaul]]('''[[w:Category:ガリアの部族|Category:ガリアの部族]]''') ***[[w:en:Lucius Domitius Ahenobarbus (consul 54 BC)|Lucius Domitius Ahenobarbus]]([[w:ルキウス・ドミティウス・アヘノバルブス (紀元前54年の執政官)|ルキウス・ドミティウス・アヘノバルブス]]) ***[[w:en:Appius Claudius Pulcher (consul 54 BC)|Appius Claudius Pulcher]]([[w:アッピウス・クラウディウス・プルケル|アッピウス・クラウディウス・プルケル]]) ***[[w:en:Illyricum (Roman province)|Illyricum (Roman province)]]([[w:イリュリクム|イッリュリクム]]) ***[[w:en:List of Illyrian tribes|List of Illyrian tribes]](イッリュリクムの部族の一覧) ***[[w:en:Treveri|Treveri]](トレーウェリー族) ****[[w:en:Indutiomarus|Indutiomarus]](インドゥーティオマールス) ****[[w:en:Cingetorix (Gaul)|Cingetorix (Gaul)]](キンゲトリークス) ***[[w:en:Aedui|Aedui]]([[w:ハエドゥイ族|ハエドゥイー族]]) ****[[w:en:Dumnorix|Dumnorix]](ドゥムノリークス) ***[[w:en:Titus Labienus|Titus Labienus]]([[w:ティトゥス・ラビエヌス|ティトゥス・ラビエーヌス]]) **[[w:en:Category:Caesar's invasions of Britain|Category:Caesar's invasions of Britain]]('''[[w:ローマによるブリタンニア侵攻 (紀元前55年-紀元前54年)|カエサルのブリタンニア侵攻]]''') ***[[w:en:Caesar's invasions of Britain|Caesar's invasions of Britain]](カエサルのブリタンニア侵攻) ***[[w:en:Itius Portus|Itius Portus]](イティウス港) ***[[w:en:Britons (historical)|Britons (historical)]]([[w:ブリトン|ブリトン]]=ブリタンニア人) ***[[w:en:Quintus Atrius|Quintus Atrius]](クィントゥス・アトリウス) ***[[w:en:Quintus Laberius Durus|Quintus Laberius Durus]](クィーントゥス・ラベリウス・ドゥルス) ***[[w:en:Trebonius|Trebonius]]([[w:ガイウス・トレボニウス|ガイウス・トレボニウス]]) ***[[w:en:River Thames|River Thames]](タメスィス川、現在の[[w:テムズ川|テムズ川]]) ***[[w:en:Cassivellaunus|Cassivellaunus]]('''[[w:カッシウェラウヌス|カッスィウェッラウヌス]]''') ***[[w:en:Trinovantes|Trinovantes]]([[w:トリノヴァンテス族|トリノウァンテース族]]) ****[[w:en:Mandubracius|Mandubracius]](マンドゥブラキウス) ***[[w:en:Iceni|Iceni]](イケニ族);ケニマグニ族はこの支族といわれている。 ***[[w:en:Segontiaci|Segontiaci]](セゴンティアキ族) ***[[w:en:Ancalites|Ancalites]](アンカリテス族) ***[[w:en:Bibroci|Bibroci]](ビブロキ族) ***[[w:en:Cassi|Cassi]](カッスィ族) ***[[w:en:Devil's Dyke, Hertfordshire|Devil's Dyke, Hertfordshire]](カッスィウェッラウヌスの城砦跡) ***[[w:en:Kent|Kent]](ケント州=カンティウム地方) ***[[w:en:Cingetorix (Briton)|Cingetorix (Briton)]](キンゲトリークス) ***[[w:en:Carvilius|Carvilius]](カルウィリウス) ***[[w:en:Taximagulus|Taximagulus]](タクスィマグルス) ***[[w:en:Segovax|Segovax]](セゴウァクス) ***[[w:en:Lugotorix|Lugotorix]](ルグトリクス) ***[[w:en:Atrebates|Atrebates]](アトレバテス族) ***[[w:en:Commius|Commius]](コンミウス) *[[w:en:Ambiorix's revolt|Ambiorix's revolt]]('''アンビオリークスの蜂起'''=[[w:アドゥアトゥカの戦い|アドゥアトゥカの戦い]]) **[[w:en:Eburones|Eburones]]([[w:エブロネス族|エブローネース族]]) ***[[w:en:Ambiorix|Ambiorix]](アンビオリークス) ***[[w:en:Quintus Titurius Sabinus|Quintus Titurius Sabinus]]([[w:クィントゥス・ティトゥリウス・サビヌス|クィントゥス・ティトゥリウス・サビーヌス]]) ***[[w:en:Lucius Aurunculeius Cotta|Lucius Aurunculeius Cotta]](ルキウス・アウルンクレイウス・コッタ) **[[w:en:Nervii|Nervii]]([[w:ネルウィイ族|ネルウィイー族]]) ***[[w:en:Quintus Tullius Cicero|Quintus Tullius Cicero]]([[w:クィントゥス・トゥッリウス・キケロ|クィントゥス・トゥッリウス・キケロー]]) **[[w:en:Senones|Senones]](セノネース族) *ウィキペディア・ラテン語版 **[[w:la:Gallia|Gallia]](ガッリア) **[[w:la:Thamesis|Thamesis]](タメスィス川、現在の[[w:テムズ川|テムズ川]]) **[[w:la:Ambiorix|Ambiorix]](アンビオリークス) **[[w:la:Titus_Labienus|Titus Labienus]]([[w:ティトゥス・ラビエヌス|ティトゥス・ラビエーヌス]]) **[[w:la:Quintus_Tullius_Cicero|Quintus Tullius Cicero]]([[w:クィントゥス・トゥッリウス・キケロ|クィントゥス・トゥッリウス・キケロー]]) [[Category:ガリア戦記 第5巻|*]] blzsdsh6wszjonk4huvw33eb391eqg3 不動産登記令第23条 0 9767 305049 284974 2026-10-22T10:47:37Z Jcb 92857 305049 wikitext text/x-wiki [[法学]]>[[民事法]]>[[不動産登記法]]>[[コンメンタール不動産登記法]]>[[不動産登記令]] ==条文== (登記の嘱託) ;第23条 :この政令([[不動産登記令第2条|第2条第7号]]を除く。)に規定する登記の申請に関する法の規定には当該規定を[[不動産登記法第16条|法第16条第2項]]において準用する場合を含むものとし、この政令中「申請」、「申請人」及び「申請情報」にはそれぞれ嘱託、嘱託者及び嘱託情報を含むものとする。 ==解説== [[不動産登記法第16条]]第2項においては、官公署の嘱託による登記について、申請による登記に関する多くの条文が準用されている。そこで、不動産登記令に登場する不動産登記法の条文についても、申請による登記に関する条文を、官公署の嘱託による登記の場合に準用できるべく設けられたのが本条である。 ただし、申請による登記に関するすべての条文が準用されるわけではなく、不動産登記法第16条第2項において準用される場合に限られている。 ==参照条文== *[[不動産登記法第16条]]第2項(当事者の申請又は嘱託による登記) *[[不動産登記規則第192条]](登記の嘱託) *[[不動産登記事務取扱手続準則第146条]](登記の嘱託) ==参考文献== *河合芳光 『逐条不動産登記令』 [[w:金融財政事情研究会|金融財政事情研究会]]、2005年、127頁、{{ISBN|4-322-10712-5}} ---- {{前後 |[[不動産登記令]] |[[不動産登記令#s5|第5章 雑則]] |[[不動産登記令第22条]]<br>(登記識別情報に関する証明) |[[不動産登記令第24条]]<br>(法務省令への委任) }} {{stub|law}} [[category:不動産登記令|23]] 9q2asspmdt5ep8qzr1ynn83yymxi8dy 数式処理システム 0 10177 305094 300961 2026-10-22T11:46:05Z Jcb 92857 305094 wikitext text/x-wiki <div class="pathnavbox"> * {{Pathnav|工学|情報技術|プログラミング}} </div> == Mathematical Software == {| class="wikitable sortable" !No!!Name!!http!!License!! |- |1||ActiveMath||https://www.activemath.org|| Free and open-source for public educational institution|| ActiveMath is a learning environment for mathematics. It is a web-server based on java servlets which presents semantic OMDoc content to contemporary web-browsers with good quality. ActiveMath supports the learning experience by modelling the learners’ competencies in a learner-model that is fed by tracking the reading and the interactive exercises. The interactive exercises can be rich and multiple-steps exercises and use computer-algebra-systems to evaluate a learner’s input. The content items of ActiveMath are annotated with pedagogical and mathematical knowledge which allows the learner to obtain courses prepared on demand on given learning goals. Finally, the semantic OMDoc representation allows copy-and-paste of formulae and search for content items by text, annotations, or formulae. |- |2||Aldor||https://www.aldor.org|| Other (BSD like)|| Aldor is a computer programming language, like Scheme, Java or C. |- |3||Algorithms in real algebraic geometry (interactive book)||http://perso.univ-rennes1.fr/marie-francoise.roy/bpr-posted1.html|| GPL, others|| Algorithms in real algebraic geometry, by S. Basu, R. Pollack and M.-F. Roy, is a preliminary test version of an extension of the first edition published by Springer in 2003. This interactive book is based on texmacs, and live examples can be computed within the book through the SARAG maxima library by F. Caruso. The final version is due to be published by Springer. |- |4||Arageli||http://www.unn.ru/cs/arageli|| Free for academic and noncommercial use|| Arageli is a C++ library for doing symbolic computations. It contains arbitrary precision integer and rational numbers, vectors, matrices, polynomials, modular arithmetic, algorithms for number factorization, linear and integer programming etc. Creating new mathematical structures from existing ones (also in other libraries) is easy. Arageli is used in Skeleton, Integizer, Prelinea projects. |- |5||The Atlas of Lie Groups and Representations||http://atlas.math.umd.edu/|||| This is a project to make available information about representations of semi-simple Lie groups over real and p-adic fields. The software is in an early stage of development. Given a general connected complex group G, the software will compute among other things: parameters for the irreducible representations of G with regular integral infinitesimal character, Kazhdan- Lusztig polynomials for representations with regular integral infinitesimal character, .... etc. ( Alfred G. Noel, University of Massachusetts Boston) |- |6||BESSELINT||https://www.cs.kuleuven.be/~nines/software/BESSELINT/|||| BESSELINT is a Matlab program to compute integrals of the form <math>\int ^{\infty}_0 x^m \prod ^k_{i=1} J_{\nu_i} (a_i x)dx</math> with <math>J_{\nu_i} (x)</math> the Bessel function of the first kind and (real) order <math>\nu_i</math>. The parameter m is a real number such that <math>\sum ^{}_i {\nu_i}+m > -1</math> and the coefficients <math>a_i</math> are strictly positive real numbers. In the near future this will be extended to compute the Laplace transform of a product of Bessel functions with possibly an additional factor of <math>1+dx^2</math> in the denominator (where d is a real number). (Joris Van Deun and Ronald Cools, K.U.Leuven) |- |7||CoCoA4||https://cocoa.dima.unige.it/|| The executables are free|| The interactive system CoCoA-4.6 offers facilities for COmputations in COmmutative Algebra: Gr¨obner bases and related operations on ideals and modules, Hilbert functions, factorization of polynomials, and some exact linear algebra. CoCoA-4.6 is well-suited to teaching with its simple and mathematically natural command language, and an extensive online help facility. It is free and runs on most common platforms. |- |8||CoCoALib||https://cocoa.dima.unige.it/|| GPL, others|| The C++ library CoCoALib offers data structures and operations for COmputations in COmmuative Algebra, most particularly Gr¨obner bases. Ease of use through a clean design is paramount (with some concessions to guarantee good performance). The library comes with full documentation and numerous example programs. A “beta” release is anticipated in late 2006. A server and interactive system are planned. |- |9||Computer Algebra Animation||https://www.math.kobe-u.ac.jp/caa|| GPL|| An experimental project for algorithm animations and graphical or interactive user interface in computer algebra with Java and OpenXM. |- |10||Coq||https://coq.inria.fr|| LGPL|| Coq is a proof assistant. |- |11||DEpthLAUNAY||http://www.dma.fi.upm.es/mabellanas/delonedepth/|| QPL|| DEpthLAUNAY is a C++ software developed with CGAL (http://www.CGAL.org) that computes the following geometric structures given a finite set of points in the plane: convex hull, convex layers, convex levels, Delaunay triangulation, Delaunay layers, Delaunay levels, and Voronoi diagram. Input points can be randomly generated, introduced interactively or simply aquired from image files. ( Manuel Abellanas, Universidad Politecnica de Madrid) |- |12||Epsilon||http://www-calfor.lip6.fr/~wang/epsilon|| Free for academic and noncommercial use|| Epsilon is a library of functions implemented in Maple and Java for polynomial elimination and triangular decomposition with (geometric) applications. It has 8 modules and contains more than 70 functions, with documentation, examples, and Maple worksheets. (Dongming Wang, Beihang University, China and UPMC-CNRS, France) |- |13||GAP||http://www.gap-system.org|| GPL|| GAP is a system for computational discrete algebra, with particular emphasis on Computational Group Theory. GAP provides a programming language, a library of thousands of functions implementing algebraic algorithms written in the GAP language as well as large data libraries of algebraic objects. |- |14||GAP package Alnuth||https://www.gap-system.org/Packages/alnuth.html|| GPL|| The Alnuth package provides various methods to compute with number fields which are given by a defining polynomial or by generators. Some of the methods provided in this package are written in GAP code. The other part of the methods is imported from the Computer Algebra System KANT. |- |15||GCLC/WinGCLC||http://www.matf.bg.ac.yu/~janicic/gclc/|| Free for academic and noncommercial use|| GCLC/WinGCLC is a tool for visualizing and teaching geometry (and not only geometry), and for producing mathematical illustrations. It has support for a range of geometrical constructions and transformations, for symbolic expressions, parametric curves, program loops, for automated proving of geometrical conjectures, for exporting figures into LaTeX and bitmap format etc. |- |16||GEX||http://www.mmrc.iss.ac.cn/gex/|||| Geometry Expert (GEX) is a software for dynamic geometric diagram drawing and automated geometry theorem proving and discovering. As a dynamic geometry software, GEX can be used to build dynamic visual models to assist manipulating and teaching various mathematical concepts. As an automated reasoning software, GEX can be used to prove and discover hundreds of non-trivial geometry theorems automatically Geometry Expert (GEX) is a software for dynamic geometric diagram drawing and automated geometry theorem proving and discovering. As a dynamic geometry software, GEX can be used to build dynamic visual models to assist manipulating and teaching various mathematical concepts. As an automated reasoning software, GEX can be used to prove and discover hundreds of non-trivial geometry theorems automatically |- |17||Gfan||http://home.imf.au.dk/ajensen/software/gfan/gfan.html|||| Gfan is a command line tool for enumerating the reduced Gr¨obner bases of a polynomial ideal in n variables. Hereby the Gr¨obner fan, an n-dimensional polyhedral complex, is computed. The tropical variety is a certain subcomplex which can also be computed by the software. Gfan uses Gmp and Cddlib for exact arithmetic and polyhedral computations, respectively. |- |18||GiNaC||https://www.ginac.de/|| GPL|| GiNaC looks like a computer algebra system and a library, but the name GiNac is an iterated and recurseive abbreviation for GiNaC is Not a Computer Algebra System. |- |19||GloptiPoly||https://www.laas.fr/~henrion/software/gloptipoly|| GPL, requires Matlab|| Matlab/SeDuMi add-on to build and solve convex LMI relaxations of the (generally non-convex) global optimization problem of minimizing a multivariable polynomial function subject to polynomial inequality, equality or integer constraints. (Didier Henrion and Jean-Bernard Lasserre, LAAS-CNRS, Toulouse, France) |- |20||GiANT: Graphical Algebraic Number Theory||https://giantsystem.sourceforge.net|| GPL|| GiANT is a graphical interface for working with number fields. GiANT offers interactive diagrams, drag-and-drop functionality, and typeset formulas. GiANT is written in Java, but uses KASH to perform its computations. |- |21||GMP: GNU Multiple Precision Arithmetic Library||http://www.swox.com/gmp|| LGPL|| GMP is a free library for arbitrary precision arithmetic, operating on signed integers, rational numbers, and floating point numbers. There is no practical limit to the precision except the ones implied by the available memory in the machine GMP runs on. GMP has a rich set of functions, and the functions have a regular interface. |- |22||HOL Light||https://www.cl.cam.ac.uk/users/jrh13/hol-light/index.html|| Custom BSD-like|| HOL Light is a theorem prover for classical higher-order logic. It is a rationalized re-implementation in Objective CAML (OCaml) of Mike Gordon’s original HOL system. HOL Light generates proofs using very low-level primitive inference steps, but has numerous higher-level automated rules and a good library of pre-proved mathematics. ( John Harrison.) |- |23||jReality||http://www.jreality.de|||| jReality is a library that allows for interactive manipulation of scientific data on a wide variety of platforms. It is written in Java. The output media include software only Java rendering, hardware accelerated OpenGL rendering stereo viewing, immersive virtual reality applications like in the PORTAL as well as file formats like PIXAR’s renderman and SVG. |- |24||jtem - Java Tools for Experimental Mathematics||http://www.jtem.de|| GPL|| jtem is a collection of mostly mathematical tools and algorithms implemented in Java. The libraries include a wide range from complex numbers to theta-functions, basic linear algebra and adaptive ODE solvers. |- |25||Kan/sm1||https://www.openxm.org|| GPL, LGPL|| Kan/sm1 is originally developed for a computer algebra system for the ring of differential operators D. It is designed to be a backend system with a postscript-like small language. It is now used for a controller of OpenXM communications behind as well as a system for the D. |- |26||KASH/KANT||https://www.math.tu-berlin.de/~kant/kash.html|| Other|| KASH/KANT is a computer algebra system specialized for algebraic number theory and its applications. It offers powerful functions for working with number fields, function fields, and local fields, as well as functions for solving Diophantine equations. The KANT shell KASH provides a programming language and an interactive help system. |- |27||KENZO||http://www-fourier.ujf-grenoble.fr/~sergerar/Kenzo|||| KENZO program is a Common Lisp Object System (CLOS) whose purpose is to compute various invariants in Algebraic Topology Framework (mainly homology groups). It implements and uses numerous algebraic structures as dg-algebras, simplicial groups, morphisms, reductions, chain complexes, etc. It allows to compute homology groups of sophisticated spaces. |- |28||KENZO package for A-infinity structures: ARAIA and CRAIC||http://www.ehu.es/aba/investigation.htm|||| The package component we add to KENZO allows us to compute A-infinity- (co)algebra structures induced on the small module of a reduction if the big dg-module is a (co)algebra. (Ainhoa Berciano Alcaraz) |- |29||KETpic||http://www.kisarazu.ac.jp/~masa/math/E.html|| Free for academic and noncomercial use|| KETpic is a macro package for Maple, which generates TEXsource codes for clear drawings. This supports users to draw every kind of complicated figure easily with the highest accuracy. The current version as well as the latest Maple runs on major OS: Windows, Mac and Linux. One can download the package, various samples, the command reference and a template of TEXsource from the indicated web site. (Masayoshi SEKIGUCHI) |- |30||KNOPPIX/math||http://www.knoppix-math.org|||| KNOPPIX/Math is a project to archive free mathematical software and free mathematical documents and provide them on KNOPPIX. |- |31||libMpIeee||http://www.mpieee.ua.ac.be|||| libMpIeee is a C++ software library for radix 2n or 10m mixed precision floating-point arithmetic, that is fully compliant with the IEEE 754/854 standards for floating-point arithmetic. This implies, among others, that the basic operations as well as the remainder and square root operations are exactly rounded, involving a relative error of at most 0.5 units in the last place (ULP) for round to nearest and 1 ULP for directed roundings. As required by the IEEE 754/854 standards, libMpIeee also provides denormal numbers, signed zeroes, signed infinities and NaN (Not-a-Number). Moreover, the conversions between decimal and binary are implemented to satisfy the same error bound as the basic operations. The elementary functions are computed with a relative error of at most 1 ULP for round to nearest and 2 ULP for directed roundings. More information on the implementation of these elementary functions can be found in the contribution ”Towards reliable software for the evaluation of a class of special functions” by Annie Cuyt and Stefan Becuwe. |- |32||Linbox||http://www.linalg.org|| LGPL|| LinBox is a C++ template library for exact, high-performance linear algebra computation. |- |33||LiveTeXmacs||ftp://math.cgu.edu.tw/pub/KNOPPIX|| GPL|| LiveTeXmacs is a knoppix-based live distribution for mathematical education. Many mathematical software systems (Axiom, Gnuplot, Maxima, Octave, R etc) are integrated in this distribution. In addition to this, it also includes free documentations for calculus, mathematical (2D/3D) visualization and stochastic processes etc, which are made by TeXmacs. Web applications, such as PHP, Python, Apache, SQL and Zope etc, are also supported. Especially, the Web Mathematics Interactive is pre-installed as the web application for Maxima, Gnuplot and more. Pre-installed development environment gives a scalability of the distribution even with very few knowledge about linux. |- |34||Logiweb||http://logiweb.eu/|| GPL|| Logiweb is an infrastructure for publication and archival of machine verified mathematics. It allows users to publish definitions, theories, lemmas, proofs, and computer programs. The system allows proofs to reference previously published material across the Internet so that users in different sites may build on top of the work of each other. (Klaus Grue, University of Copenhagen) |- |35||Macaulay2||http://www.math.uiuc.edu/Macaulay2|| GPL|| Macaulay2 is a software system to support researches in algebraic geometry and commutative algebra. |- |36||Magma||https://magma.maths.usyd.edu.au|| Commercial|| Magma is a large, well-supported software package designed to solve computationally hard problems in algebra, number theory, geometry and combinatorics. It provides a mathematically rigorous environment for computing with algebraic, number-theoretic, combinatoric and geometric objects. |- |37||Maple||http://www.maplesoft.com|| Commercial|| Maple is a tool for solving mathematical problems and creating interactive technical applications. |- |38||Mathematica||https://www.wolfram.com|| Commercial|| Mathematica is a system for doing mathematics. The cite also provides https://functions.wolfram.com (a data base for special functions) and https://library.wolfram.com (a collection of notebooks). |- |39||math-polyglot||https://www.math.kobe-u.ac.jp/math-polyglot|| GFL, BSD|| This project is started for editing icms2006 ― developer’s meeting DVD’s. It provides sample codes for mathematical software systems in our DVD’s. Samples are grouped with mathematical problems. This project also provides inputs for testing and checking if the installation is properly done to the knoppix-math. The project will be moved to a MediaWiki of knoppix-math after the icms2006. (Nobuki Takayama, Kobe University) |- |40||MATLAB||http://www.mathworks.com|| Commercial|| Matlab is a language for technical computing and an interactive environment. |- |41||Mizar||https://www.mizar.org|||| Mizar project provides a database for mathematics (7000 definitions, 40000 theorems) as well as the mizar system. |- |42||MPFR library for multiple precision floating point computation||https://www.mpfr.org|| LGPL|| The MPFR library is a C library for multiple-precision floating-point computations with exact rounding (also called correct rounding). It is based on the GMP multiple-precision library. The main goal of MPFR is to provide a library for multiple-precision floating-point computation which is both efficient and has a well-defined semantics. |- |43||Multi Parametric Toolbox||https://control.ee.ethz.ch/~mpt/|| GPL|| The Multi-Parametric Toolbox (MPT) is a free Matlab toolbox for design, analysis and deployment of optimal controllers for constrained linear, nonlinear and hybrid systems. Efficiency of the code is guaranteed by the extensive library of algorithms from the field of computational geometry and multiparametric optimization. The toolbox offers a broad spectrum of algorithms compiled in a user friendly and accessible format: starting from different performance objectives (linear, quadratic, minimum time) to the handling of systems with persistent additive and polytopic uncertainties. Users can add custom constraints, such as polytopic, contraction, or collision avoidance constraints, or create custom objective functions. Resulting optimal control laws can either be embedded into your applications in a form of a C code, or deployed to target platforms using Real Time Workshop. |- |44||MuPad||http://www.mupad.de|| Commercial|| MuPad is a mathematical expert system mainly symbolic/algebraic computation and numerical calculations with arbitrary accuracy. |- |45||MuPAD-Combinat||https://mupad-combinat.sourceforge.net|||| MuPAD-Combinat is an open-source algebraic combinatorics package for the computer algebra system MuPAD http://www.mupad.de. Its main purpose is to provide an extensible toolbox for computer exploration, and foster code sharing between researchers in this area. The core of the package is integrated in the official library of MuPAD since version 2.5.0. |- |46||NZMATH||https://nzmath.sourceforge.io/|| BSD|| NZMATH is a number theory oriented calculation system based on the scripting language Python. It is currently providing the Python library package named nzmath, which contains modules for primality testings, factorization, polynomial, matrix, elliptic curves, etc. ( MATSUI Tetsushi, Tokyo Metropolitan University) |- |47||Octave||https://www.octave.org|| GPL|| GNU Octave is a high-level language, primarily intended for numerical computations. |- |48||Oorange||https://www.oorange.de|| GPL|| Oorange is a development environment that was initially designed for experimental mathematics but has become a general Java programming tool. It’s main feature is its interactive programming, also known as rapid prototyping. It also fits into component oriented development. |- |49||OpenMath||https://www.openmath.org|||| OpenMath is an emerging standard for representing mathematical objects with their semantics, allowing them to be exchanged between computer programs, stored in databases, or published on the worldwide web. |- |50||OpenXM||https://www.openxm.org|| BSD, GPL, FFL|| OpenXM is an infrastructure for communications among mathematical software systems. The project has proposed protocols OpenXM {{RFC|100}}, {{RFC|101}}, 102, 103, 104. The OpenXM package is a collection of software systems supporting OpenXM protocols. The current distribution contains asir, sm1, Macaulay 2, PHCpack, gnuplot, polymake, cdd, ntl, pari, supports for Maple, Mathematica, OpenMath, and some small sized systems. |- |51||webOrigami||http://weborigami.score.cs.tsukuba.ac.jp/webOrigami/jsp/|||| Origami assistant on a web. |- |52||ORMS||https://orms.mfo.de|||| The Oberwolfach References on Mathematical Software (ORMS) project is a web-interfaced collection of information and links on mathematical software, see https://orms.mfo.de. It presents carefully selected software, including general purpose software systems, teaching software, and more specialized packages up to specific implementations on particular mathematical research problems. Each software package is presented by a short description of its mathematical features, information on basic properties like license type and distribution media are provided, and links to syntax examples, possible demo versions and manuals are given. The ORMS offers a choice of retrieval functions, for example, searching via browsing through a mathematical classification scheme, a structured key word search, and a full text search in the description of the software systems. The success of this project will rely on the co-operation of experienced users from different areas of mathematical software. We therefore encourage discussion (at orms@mfo.de) and we will be grateful to contributions (at contrib-orms@mfo.de). |- |53||Pari-GP||https://pari.math.u-bordeaux.fr|| GPL|| The PARI system is a package which is capable of doing formal computations on recursive types at high speed. It is primarily aimed at number theorists, but is useful to anyone whose primary need is speed. The functionality of PARI is available through a sophisticated programmable calculator, named GP, which also implements many features of high level languages. |- |54||PHCpack||https://www.math.uic.edu/~jan/download.html|| GPL, free software|| PHCpack is a package for Polynomial Homotopy Continuation. Version 1 was archived by ACM TOMS as Algorithm 795. Currently it is a platform for “numerical algebraic geometry” providing algorithms developed jointly with Andrew Sommese and Charles Wampler. Contributions made by Anton Leykin, YusongWang, Ailing Zhao, and Yan Zhuang. ( Jan Verschelde, UIC.) |- |55||PHCmaple||https://www.math.uic.edu/~leykin/PHCmaple|| GPL|| This Maple package provides a convenient interface to the functions of PHCpack, a collection of numerical algorithms for solving polynomial systems using polynomial homotopy continuation. |- |56||polymake||https://www.math.tu-berlin.de/polymake/|| GPL|| polymake is a modular, object-oriented tool for experimental discrete geometry. The main applications are dealing with polytopes and polyhedra, polyhedral surfaces, and finite simplicial complexes. It offers an unified interface to a wide variety of free software packages from the field, especially for visualisation. It can be used interactively as well as driven by perl scripts or C++ programs. (Ewgenij Gawrilow, Technische Universit¨at Berlin, and Michael Joswig, Technische Universit¨at Darmstadt) |- |57||ProofPower||https://www.lemma-one.com/ProofPower/index/index.html|| GPL|| ProofPower is a tool for specification and proof in Higher-Order Logic (HOL) and in the Z Notation, based on a re-engineering of Mike Gordon’s original HOL system. Like other systems in the LCF tradition, it uses a powerful strongly-typed functional programming language (Standard ML) to ensure logical correctness by reducing all proof steps to primitive inferences rules and to provide a rich and extensible repertoire of automated derived inference rules and decision procedures. Its is used commercially for the verification of safety-critical avionics control systems. Libraries of discrete and continuous mathematics have been and continue to be developed to support these applications and for their intrinsic interest. |- |58||QaoS - Querying Algebraic Objects System||https://www.math.tu-berlin.de/~kant/database.html|| BSD like|| QaoS (Querying Algebraic Objects System) is a stand-alone solution for access to the KANT databases of algebraic and transcendental field extensions. QaoS transfers information via the hypertext transport protocol (HTTP). It can be accessed through a web interface and various computer algebra systems (GAP 4, KASH 2.56, KASH 3, Maple, and SAGE). |- |59||R||https://www.r-project.org|| GPL|| R is a system for statistical computing and graphics. |- |60||Risa/Asir||https://www.math.kobe-u.ac.jp/Asir|| Other(FFL, BSD)|| Risa/Asir is a computer algebra system. Here is a list of some commands: fctr (factorization), gr, nd gr trace (Groebner basis), primadec (primary ideal decomposition), af (factorization over algebraic numbers), ifplot (plot of implicit functions), ox * (OpenXM communication functions), generic bfct (bfunction). |- |61||SAGE: Software for Algebra and Geometry Experimentation||http://sage.scipy.org/sage|| GPL|| The Python-based computer algebra system SAGE comes with the systems GAP, PARI, Singular. and provides interfaces KASH/KANT, Gnuplot, Octave, Magma, Mathematica, and Maple. It includes functions for basic algebraic geometry, elliptic curves over the rational numbers, modular forms, linear algebra and Z-modules, and noncommutative algebra. |- |62||SARAG||http://perso.univ-rennes1.fr/marie-francoise.roy/bpr-posted1.html|| GPL|| SARAG(Some Algorithms in Real Algebraic Geometry) is a software library that implements some algorithms in real algebraic geometry written in the free computer algebra system Maxima. SARAG has two main applications: extending the capabilities of Maxima and being part of the interactive version of the book “Algorithms in Real Algebraic Geometry” by S. Basu, R. Pollack, M.-F. Roy, which can be now freely downloaded. |- |63||sgpviz||https://www.gap-system.org/Packages/sgpviz.html|||| The GAP package sgpviz is a package designed to visualize finite semigroups through their D-classes or Cayley graphs, as well as to make friendlier the usage of GAP when dealing with finite semigroups. |- |64||Singular||https://www.singular.uni-kl.de|| GPL, others|| Singular is a Computer Algebra System for polynomial computations with emphasis on the special needs of commutative algebra, algebraic geometry, and singularity theory. Singular’s main computational objects are ideals and modules over a large variety of rings, including local rings and noncommutative G-algebras (in the subsystem Plural). Large variety of algorithms, including those based on Gr¨obner and standard bases, have powerful implementations in Singular. |- |65||Strong Noether Position||http://www-calfor.lip6.fr/~hashemi/Noether|||| We introduce the notion of a homogeneous ideal in Strong Noether Position (SNP); a new definition for the notion of generic coordinates for some problems. This definition is simple to check, because one can test it for the initial ideal of the ideal with respect to the degree reverse lexicographic ordering. It is explicit, because we can provide an algorithm to decide whether a monomial ideal is in SNP or not. We propose some methods to compute the Castelnuovo-Mumford regularity of an ideal which one of them is more efficient than that of [Bermejo-Gimenez, 2005]. ( Amir Hashemi) |- |66||Surface Evolver||http://www.susqu.edu/facstaff/b/brakke/evolver/|||| The Surface Evolver is an interactive program for the study of surfaces shaped by surface tension and other energies, and subject to various constraints. A surface is implemented as a simplicial complex (a union of triangles) and is evolved toward minimal energy by a gradient descent method. The Evolver can handle arbitrary topology. Graphical output is available in several file formats. |- |67||surfex||http://www.surfex.algebraicsurface.net|| Freeware|| surfex is a tool for interactive high quality real algebraic surface visualization. It is mainly an intuitive interface which combines the strenghts of several visualization tools; at the moment, these include surf, javaview, and convert. One of the main features of surfex is the interactive visualization of families of algebraic varieties: The user can introduce parameters into some implicit equations and then play with these parameters via sliders. E.g., this allows one to visualize deformations of surface singularities. All the pictures can easily be exported, either as an animation which shows the whole deformation process, or as a snapshot of a single variety. The user can specify the quality of the output which can range from very high quality for printed publications to lower quality for websites. We also implemented a library for the computer algebra system Singular, called surfex.lib, which enhances the quality of the visualization of surfex using pre-computation of the singular locus etc. |- |68||SYNAPS||http://www-sop.inria.fr/galaad/logiciels/synaps|| GPL|| SYNAPS (SYmbolic Numeric APplications) is a C++ library devoted to symbolic and numeric computations. It provides data-structures for the manipulation of basic algebraic objects, such as vectors, matrices (dense, sparse, structured), univariate and multivariate polynomials. It contains solvers for univariate and multivariate polynomials, including generalized normal form or subdivision solvers, tools for the manipulatiion of algebraic numbers, for the construction of resultants, ... |- |69||TC||ftp://tnt.math.metro-u.ac.jp/pub/math-packs/tc/|| GPL|| TC (Tiny C) is an interpreter of multi-precision C language suitable for floating-point calculations of several thousands digits which often appear in computational algebraic number theory. Furthermore TC ver.4, which is equipped with PARI library and turned TCP ver.1, provides frequently used PARI library functions by C-like functions which are easy to call from TC. (Takashi Fukuda) |- |70||TeXmacs||https://www.texmacs.org|| GPL|| GNU TeXmacs is a free wysiwyw editing platform for scientists. |- |71||Virtual Math Laboratories||http://www.jreality.de|| GPL|| Virtual Math Labs is a collection of educational and scientific java web start applications. The library of mathematical experiments shows topics from varies areas, e.g. dynamical systems, polyhedral surfaces, calculus, and curves and surfaces. |} edvennfh3z4z3zbbt8m13dltfmtmvi3 不動産登記令第12条 0 10623 305048 287133 2026-10-22T10:47:26Z Jcb 92857 305048 wikitext text/x-wiki [[法学]]>[[民事法]]>[[不動産登記法]]>[[不動産登記令]] ==条文== (電子署名) ;第12条 #[[電子情報処理組織]]を使用する方法により登記を申請するときは、申請人又はその代表者若しくは代理人は、申請情報に[[電子署名]]([[電子署名及び認証業務に関する法律第2条|電子署名及び認証業務に関する法律(平成12年法律第102号)第2条第1項]]に規定する電子署名をいう。以下同じ。)を行わなければならない。 #電子情報処理組織を使用する方法により登記を申請する場合における添付情報は、作成者による電子署名が行われているものでなければならない。 ==解説== [[電子情報処理組織]]を使用する方法により登記を申請する場合([[不動産登記規則第1条]]第3号において「電子申請」と定義されている)、署名または記名押印をすることはできないので、代わりに電子署名を行わなければならないことが本条により定められている。 本条第1項により申請情報([[不動産登記法第18条]]柱書の定義を参照)には申請人・代表者([[法人]]が申請をする場合)・代理人([[代理|代理人]]が申請を行う場合)が電子署名をするものと定められており、本条第2項により添付情報([[不動産登記令第1条]]第1号の定義を参照)にはその作成者(例えば、第三者の許可・同意・承諾を証する情報([[不動産登記令第7条]]第1項第5号ハ)を提供する場合には当該第三者)が電子署名をするものと定められている。 なお、電子署名が行われた情報を送信して電子申請を行う場合には、[[不動産登記令第14条]]により、[[電子証明書]]も併せて送信しなければならない。 ==参照条文== *[[不動産登記規則第42条]](電子署名) *[[不動産登記規則第51条]](申請情報を記録した磁気ディスク) ==参考文献== *河合芳光 『逐条不動産登記令』 [[w:金融財政事情研究会|金融財政事情研究会]]、2005年、{{ISBN|4-322-10712-5}} ---- {{前後 |[[不動産登記令]] |[[不動産登記令#s3|第3章 電子情報処理組織を使用する方法による登記申請の手続]] |[[不動産登記令第11条]]<br>(登記事項証明書に代わる情報の送信) |[[不動産登記令第13条]]<br>(表示に関する登記の添付情報の特則) }} {{stub|law}} [[category:不動産登記令|12]] lth9j2ynq6y3fk5zvlwh5tryfztvzpc メディア倫理 0 11039 305045 53334 2026-10-22T09:47:13Z Jcb 92857 305045 wikitext text/x-wiki ここではジャーナリストなどマスメディアの仕事に携わる人に必要なメディア倫理について解説します。 ==署名記事の必要性== :''[[w:実名報道]]も参照'' ジャーナリストは記事を発表する際、署名記事を原則にすることが望まれています。 フリージャーナリストの[[w:上杉隆|上杉隆]]は『[[w:ニューヨーク・タイムズ|ニューヨーク・タイムズ]]』記者時代、同紙の東京支局長から、「取材・執筆した記事には最終的に責任を負わなくてはならない。もし、責任を負えないならばその記事は書かれるべきではない。署名記事は絶対条件である」、「たとえ、厳しい論調の記事になろうと、取材相手への尊敬の念を忘れてはならない。だから、取材相手の名前を明らかにしながら、記者だけが匿名の世界に逃げるようなことはあってはならない。それは恥ずべき卑怯な新聞記者のやり方だ」といわれたといいます<ref>『ジャーナリズム崩壊』 133-138頁。</ref>。 アメリカの新聞では、例外的に、独裁国家や戦地におもむき、自らの正体を明かすことが生命の危険につながる恐れがある場合は匿名が許されますが、それでも匿名にしなければならない理由が書き込まれて読者への説明責任を果たそうとしているといいます<ref>『ジャーナリズム崩壊』 138-139頁。</ref>。 ==表現の自主規制== :''[[w:表現の自主規制]]も参照'' [[w:小学館|小学館]]で『[[w:週刊ポスト|週刊ポスト]]』編集長代理などを務めた堀田貢得は、漫画は「ユーモア」と「毒」が作品の味付けに不可欠といわれているが、差別表現で問題を起こした作品の「ユーモア」や「毒」は許されないもので、発行部数の膨大さからいっても社会的影響は大きく、責任も大きいものであると指摘しています<ref>『実例・差別表現』 34-35頁。</ref>。 堀田は、「したがって、表現者には才能やセンスも重要だが、21世紀の表現者には人権感覚が強く求められる」とも主張しています。人権感覚は運動団体の関係者すら差別のカテゴリーが異なる人の人権となると「自信がない」と述懐するほど難しい問題で、出版業界でも人権感覚を研鑽するために社内啓発に努力しているが中々理解されないのが実情だといいます。あえていえば、実際に直面しないと理解できないのではないかと堀田は本音を述べています<ref>『実例・差別表現』 35頁。</ref>。 ==脚注== <references/> ==参考文献== *上杉隆 『ジャーナリズム崩壊』 [[w:幻冬舎|幻冬舎]]〈[[w:幻冬舎新書|幻冬舎新書]]〉、2008年7月30日。{{ISBN|9784344980884}} *堀田貢得 『実例・差別表現…糾弾理由から後始末まで、情報発信者のためのケーススタディ』 大村書店、2003年7月7日。{{ISBN|4756330215}} [[Category:倫理学|めていありんり]] 2csmz61jbuklkty3otbpdmzmhjgtnwy 神道と人間/神道の信仰法 0 12075 305077 277448 2026-10-22T11:34:11Z Jcb 92857 305077 wikitext text/x-wiki ===神道の信仰法=== '''神道の信仰法'''(しんとうのしんこうほう)では神道を信仰する方法についてまなびます。 ====教典==== 神道には、イスラム教の『クルアーン』(『コーラン』)、キリスト教の『聖書』に相当する教典はありませんが<ref>[[w:井上順孝|井上順孝]] 『神道』 18・140頁。</ref>、『古事記』、『日本書紀』、『古語拾遺』、『宣命』といった「'''神典'''」とよばれる古典を規範としています。 ====神社への参拝==== =====参拝する前に===== 参拝をおこなう日は毎月1日と15日がよいとされます。ただし、身内に不幸があった人は、死穢の観念から50日間(仏式の49日)を経過するまで参拝はひかえる必要があります<ref name="shintou">井上順孝 『神道』 120頁。</ref>。 参拝する前に、本来は神の前にむかう前に心身をきよめる禊が必要です。これは神が「穢れ」をきらうとされることによりますが<ref name="shintou"/>、現代であれば、一般参拝では、入浴・シャワーなどで身体を清潔にしてから参拝する心がけがのぞましいです。神社に到着し、鳥居をくぐる際は「一揖(身体を45度おりまげる会釈)」するのがのぞましいです。このときには服装もきちんとととのえるようにします。 =====手口をあらう===== 次に、手水舎にて手水をつかい、手口をあらいます<ref name="shintou2">井上順孝 『神道』 121頁。</ref>。これは拍手と祝詞をおこなう手口(さらには心)をきよめる意味合いをもつ、一つの禊です。手水の作法としては、 #まず、柄杓を右手でもって水をすくい、その水を左手に3回かけてきよめる<ref name="shintou2"/>。 #同様に、柄杓を左手にもちかえ、右手を3回あらいきよめる<ref name="shintou2"/>。 #柄杓を、再度、右手にもちかえ、すくった水を左手にうけてため、この水で口をすすぐ<ref name="shintou2"/>。おわったら、再度、左手に水をかけてあらう。口をすすぐ際には口が直に柄杓にふれないようにする。 #これらがおわった後、つかった柄杓をあらいきよめるが、このときは水をいれた柄杓をたて、柄に水をながすようにしてあらう<ref name="shintou2"/>。柄杓をあらうのには次の人のための配慮という意味合いもある。 #あらいおわった柄杓は元の位置にふせておき、最後に口と手を拭紙やハンカチなどでぬぐう。 手水をつかいおわったら、拝礼をおこなうために参道をとおり、神前へとむかいますが、その際に、参道の中央は避けてあるくことがのぞましいです。これは、参道の中央が「正中」とよばれ、神のとおる道とされているからです。[[w:百度参り|百度参り]]やはだしまいりのように、[[w:裸足|裸足]]になって参拝することもあります。これは、脱帽のように、神に敬意をしめすためだとされます<ref> 嘉門安雄 (1972-04-25). “裸体”. ''世界大百科事典''. '''31''' (1972年版). 平凡社. pp. 301.</ref>。 =====拝礼===== 神前では、まず、神への供物として賽銭箱に賽銭を奉納します。次に、賽銭箱の近くにある鈴鐘をならしますが、これには、邪気をはらう<ref name="shintou"/>、音色で神をよびよせて儀式をはじめるための合図などの意味合いがあるとされます。 鈴鐘をならした後に拝礼をおこないます。拝礼の基本的な作法は「'''二拝二拍手一拝'''」です<ref name="shintou"/>。 #拝(直立姿勢から身体を90度おりまげる礼)を二度おこなう<ref name="shintou2"/>。 #拍手を二度うつ<ref name="shintou2"/> - より具体的には、両手を胸の高さでそろえてあわせ、右手を下方向に少し(指の第一関節ほど)ずらし、その状態で両手を二度うちあわせて音をだし、ずらした右手をふたたびそろえて祈念をこめ、最後に両手をおろす。 #再度一拝する<ref name="shintou2"/>(祝詞を奏上する場合は奏上した後におこなう)。 ====神棚==== =====設置場所===== 神棚は、できるだけあかるく清浄な場所の<ref name="shintou3">井上順孝 『神道』 202頁。</ref>、最上階(または上に上階の床のない箇所)の天井近くに南向きまたは東向きに設置するのがよいとされます。最上階の設置が困難な場合は、「天」または「雲」とかいた紙を天井にはり、その下に設置するのがよいとされます。神札をおさめる宮形には神札をいれる箇所が3ヶ所のものと1ヶ所のものがおおいですが、大型の神棚では5ヶ所あるいは7ヶ所以上のものもあります。通常、3ヶ所ある場合は、中央に伊勢神宮の神札(大麻)、むかって右に氏神の神札、左にその他の崇敬する神社の神札をおさめます。1ヶ所の場合は前から伊勢神宮・氏神・崇敬神社の神札の順にかさねておさめます<ref name="shintou3"/>。 =====神具===== 神棚の正面には神鏡、左右に榊、灯明を配し、神棚の前方に注連縄をかけます<ref name="shintou4">井上順孝 『神道』 203頁。</ref>。このほか、真榊(まさかき、ミニチュア)、雄蝶・雌蝶といった御酒口(ミキグチ)をあつらえた飾り徳利(多くは九谷焼風)、御幣(金幣)などが神具セットにふくまれている場合があり、ほかにも各家庭でさまざまな縁起物(破魔矢、熊手など)がかざられている例がめずらしくありません。 なお、神鏡をおく理由は諸説あり、神は鏡のようにあるがままをみとおすものであるとか、あるいは鏡のようにみる人によってちがってみえるものであるから、そのつもりで神の前にたてという意味であるという説や、自らのなかにある神性とむきあえという意味であるとする説、あるいは、鏡は太陽の光を反射するように神の光をうつすものであるとする説などがあります。 =====神饌(お供え)===== 神饌(お供え)としては、洗米(またはご飯)、塩、水、酒が基本ですが、そのほか、青果物、生魚、干物、菓子類などがそなえられます。米、塩、水は毎朝、酒および榊は月に2度(通常は1日と15日、ほかに、まつっている神札の祭神にゆかりの日)あたらしいものととりかえるのがよいとされています。ほかに、合格通知や祝物の熨斗紙などがささげられる場合もあります。 神饌の置き方は、米・塩・水の場合、むかって左から水・米・塩、もしくはむかって左から水・塩、2列目に米とします。米・塩・水・酒の場合、むかって左から水・酒・米・塩、もしくはむかって左から水・塩、2列目に酒・米、むかって左から水・塩、2列目に酒・酒、3列目に米とします<ref name="shintou4"/>。 神へそなえた食べ物は後で「お下がり」としていただくようにします<ref name="shintou3"/>。 =====拝礼===== 神饌をそなえたら家族そろって日ごろの神の加護を感謝し、これからの安全と幸福をいのるのがのぞましいですが、これができない場合は各自外出前にいのってもよいです。神社本庁が推奨する神棚への拝礼方法は神社と同様「二礼二拍手一礼」ですが<ref name="shintou3"/>、「二礼四拍手一礼」などさまざまな流儀があります。 ====参考文献==== *井上順孝 『神道』 ナツメ社〈図解雑学〉(原著2006-12-04)、初版。{{ISBN|9784816340628}}。 ====本節脚注==== <references /> [[Category:神道と人間|しんとうのしんこうほう]] 23vanoyp8sr04wiky6xedjcrnt1unv9 ガリア戦記 第7巻 0 12163 304968 304966 2026-10-21T12:51:48Z Linguae 449 /* 34節 */ 修整 304968 wikitext text/x-wiki [[Category:ガリア戦記|7]] [[Category:ガリア戦記 第7巻|*]] [[ガリア戦記]]>&nbsp;'''第7巻'''&nbsp;>[[ガリア戦記 第7巻/注解|注解]] <div style="text-align:center"> <span style="font-size:20px; font-weight:bold; font-variant-caps: petite-caps; color:white; background: rgb(47,94,255);background: linear-gradient(180deg, rgba(47,94,255,1) 0%, rgba(24,56,255,1) 50%, rgba(0,8,255,1) 100%);">&nbsp;C&nbsp;IVLII&nbsp;CAESARIS&nbsp;COMMENTARIORVM&nbsp;BELLI&nbsp;GALLICI&nbsp;</span> <span style="font-size:40px; font-weight:bold; color:white; background: rgb(47,94,255);background: linear-gradient(180deg, rgba(47,94,255,1) 0%, rgba(24,56,255,1) 50%, rgba(0,8,255,1) 100%);">&nbsp;LIBER SEPTIMVS&nbsp;</span> </div> [[画像:Gaule -52.png|thumb|right|150px|ガリア戦記 第7巻の情勢図(BC52年)。<br>黄色の領域がローマ領。桃色が同盟部族領。]] {| id="toc" style="align:left;clear:all;" align="left" cellpadding="5" ! style="background:#ccccff; text-align:left;" colspan="2" | ガリア戦記 第7巻 目次 |- | style="text-align:right; font-size: 0.86em;"| '''[[#カルヌーテース族の蜂起|カルヌーテース族の蜂起]]''':<br /> '''[[#ウェルキンゲトリークスとガッリア同盟軍の蜂起|ウェルキンゲトリークスとガッリア同盟軍の蜂起]]''':<br /> <br /> '''[[#アウァーリクム攻略戦|アウァーリクム攻略戦]]''':<br /> <br /> <br /> '''[[#ゲルゴウィア攻略戦、ハエドゥイー族の離反|ゲルゴウィア攻略戦、ハエドゥイー族の離反]]''':<br /> <br /> <br /> '''[[#ラビエーヌスのルテティア遠征|ラビエーヌスのルテティア遠征]]''':<br /> '''[[#ガッリア戦乱の拡大|ガッリア戦乱の拡大]]''':<br /> '''[[#アレスィア攻囲戦|アレスィア攻囲戦]]''':<br /> <br /> <br /> '''[[#ガッリア同盟軍主力の降伏|ガッリア同盟軍主力の降伏]]''':<br /> <br /> <br /> | style="text-align:left; font-size: 0.86em;"| [[#1節|01節]] | [[#2節|02節]] | [[#3節|03節]] <br /> [[#4節|04節]] | [[#5節|05節]] | [[#6節|06節]] | [[#7節|07節]] | [[#8節|08節]] | [[#9節|09節]] | [[#10節|10節]] <br /> [[#11節|11節]] | [[#12節|12節]] | [[#13節|13節]] <br /> [[#14節|14節]] | [[#15節|15節]] | [[#16節|16節]] | [[#17節|17節]] | [[#18節|18節]] | [[#19節|19節]] | [[#20節|20節]] <br /> [[#21節|21節]] | [[#22節|22節]] | [[#23節|23節]] | [[#24節|24節]] | [[#25節|25節]] | [[#26節|26節]] | [[#27節|27節]] | [[#28節|28節]] | [[#29節|29節]] | [[#30節|30節]] <br /> [[#31節|31節]] <br /> [[#32節|32節]] | [[#33節|33節]] | [[#34節|34節]] | [[#35節|35節]] | [[#36節|36節]] | [[#37節|37節]] | [[#38節|38節]] | [[#39節|39節]] | [[#40節|40節]] <br /> [[#41節|41節]] | [[#42節|42節]] | [[#43節|43節]] | [[#44節|44節]] | [[#45節|45節]] | [[#46節|46節]] | [[#47節|47節]] | [[#48節|48節]] | [[#49節|49節]] | [[#50節|50節]] <br /> [[#51節|51節]] | [[#52節|52節]] | [[#53節|53節]] | [[#54節|54節]] | [[#55節|55節]] | [[#56節|56節]] <br /> [[#57節|57節]] | [[#58節|58節]] | [[#59節|59節]] | [[#60節|60節]] | [[#61節|61節]] | [[#62節|62節]] <br /> [[#63節|63節]] | [[#64節|64節]] | [[#65節|65節]] | [[#66節|66節]] | [[#67節|67節]] <br /> [[#68節|68節]] | [[#69節|69節]] | [[#70節|70節]] <br /> [[#71節|71節]] | [[#72節|72節]] | [[#73節|73節]] | [[#74節|74節]] | [[#75節|75節]] | [[#76節|76節]] | [[#77節|77節]] | [[#78節|78節]] | [[#79節|79節]] | [[#80節|80節]] <br /> [[#81節|81節]] | [[#82節|82節]] | [[#83節|83節]] | [[#84節|84節]] | [[#85節|85節]] | [[#86節|86節]] | [[#87節|87節]] | [[#88節|88節]] <br /> [[#89節|89節]] | [[#90節|90節]] <br /> [[#脚注|脚注]]<br /> [[#参考リンク|参考リンク]]<br /> |} <br style="clear:both;" /> __notoc__ ==カルヌーテース族の蜂起== ===1節=== *<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/1節]] {{進捗|00%|2025-10-26}}</span> [[画像:Maccari-Cicero.jpg|thumb|right|250px|[[w:カティリナ弾劾演説|カティリーナ弾劾演説]]をする[[w:マルクス・トゥッリウス・キケロ|キケロー]](左中央)(チェザレ・マッカリによる19世紀のフレスコ画)。[[w:プブリウス・クロディウス・プルケル|クローディウス]]はこれを越権行為であるとして、カエサルの政敵となっていたキケローを一時的に亡命へ追い込み、ついにはキケローの友人ミローの配下によって殺害された。]] [[画像:Pompei_Magnus_Antiquarium.jpg|thumb|right|250px|[[w:グナエウス・ポンペイウス|グナエウス・ポンペイウス]]の胸像。クローディウス殺害に伴う騒乱を収拾するべく、[[w:元老院|元老院]]によりポンペイウスが単独の[[w:執政官|執政官]]に選出され、首都ローマと本土イタリアを制圧した。一方、カエサルも属州で新たに徴兵して兵力を増した。元老院派はカエサルの勢力が強大になることを恐れて、カエサル自身から将兵を取り上げて召還すべきと主張したが、ポンペイウスは不和を避けて宥和を図った。]] :  ;首都ローマの政情不安、ガッリア人領袖たちの謀計 *<!--❶--><sup>(1)</sup> [[wikt:en:quietus#Latin|Quieta]] [[wikt:en:Gallia#Latin|Gallia]], **[[w:ガリア|ガッリア]]が鎮定されると、 *Caesar, ut [[wikt:en:constituerat|constituerat]], **カエサルは、定めていたように、 *in [[wikt:en:Italia#Latin|Italiam]] ad [[wikt:en:conventus#Noun|conventus]] [[wikt:en:agendus#Latin|agendos]] [[wikt:en:proficiscitur|proficiscitur]]. **イタリアに、巡回裁判を行なうために出発する。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:ここでいうイタリアとは、カエサルの属州であった<br>    [[w:ガリア・キサルピナ|ガッリア・キサルピーナ]]を指す。<br>    カエサルは、巡回裁判を除けば、おもに[[w:ラヴェンナ|ラウェンナ]]に<br>    滞在していたと考えられる。[[内乱記_第1巻#5節|『内乱記』第1巻5節]]を参照。)</span> :  *[[wikt:en:ibi#Latin|Ibi]] [[wikt:en:cognoscit|cognoscit]] de &lt;P.&gt; [[wikt:en:Clodius#Latin|Clodii]] [[wikt:en:caedes#Latin|caede]], **そこで[[w:プブリウス・クロディウス・プルケル|プーブリウス・クローディウス]]の殺害について知って、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:クローディウスは護民官を務めた<ruby><rb>[[w:ポプラレス|民衆派]]</rb><rp>(</rp><rt>ポプラレス</rt><rp>)</rp></ruby> の政治家で、<br>    カエサルから恩義を受けていた。<br>     かの弁論家[[w:マルクス・トゥッリウス・キケロ|キケロー]]やその友人ティトゥス・ミロー [[w:la:Titus_Annius_Milo|Milo]] ら<br>    <ruby><rb>[[w:オプティマテス|元老院派]]</rb><rp>(</rp><rt>オプティマテス</rt><rp>)</rp></ruby> と激しく対立し、ミローの配下によって殺害された。)</span> **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:&lt;P.&gt; ([[wikt:en:Publius#Latin|Publii]]) 「プーブリウスの」は &rho;系写本にのみ記されている。)</span> *&lt;de&gt; <u>senatus</u>que <u>consulto</u> [[wikt:en:certior#Latin|certior]] [[wikt:en:factus#Participle|factus]], ut omnes [[wikt:en:iunior#Latin|iuniores]] Italiae [[wikt:en:coniurarent|coniurarent]], **イタリアの全青年に<small>(新兵として)</small>宣誓するようにとの元老院決議について知らされて、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:この事態を収拾すべく元老院派の[[w:グナエウス・ポンペイウス|ポンペイウス]]が単独の執政官<br>    (''[[w:de:Consul sine collega|consul sine collega]]'')に選任されて本土イタリアを掌握した。)</span> **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:&lt;de&gt; は現存する写本にはなく、近世以降に挿入提案されたもの。)</span> **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:&nbsp; [[wikt:en:senatus_consultum#Latin|senātūs cōnsultum]] ([[wikt:en:ultimus#Latin|ultimum]]) 「[[w:セナトゥス・コンスルトゥム・ウルティムム|元老院(の最終)決議]]」<br>   ; dē [[wikt:en:senatus_consulto#Latin|senātūs cōnsultō]] 「元老院決議について」)</span> *<u>dilectum</u> [[wikt:en:totus#Latin|tota]] [[wikt:en:provincia#Latin|provincia]] habere [[wikt:en:instituo#Latin|instituit]]. **<small>(カエサルは)</small>属州<small>〔ガッリア・キサルピーナ〕</small>全体での徴集をすることを決定する。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:dilectus#Noun|dilectum]] は、[[wikt:en:delectus#Noun_2|delectum]] と表記している校訂版もある。)</span> :  *<!--❷--><sup>(2)</sup> Eae res in Galliam [[wikt:en:transalpinus#Latin|Transalpinam]] celeriter [[wikt:en:perferuntur|perferuntur]]. **その状況は、[[w:ガリア・ナルボネンシス|ガッリア・トラーンサルピーナ]]<small>〔アルプスの向こう側のガッリア〕</small>に速やかに報知された。 :  *[[wikt:en:addunt|Addunt]] ipsi et [[wikt:en:adfingunt|adfingunt]] [[wikt:en:rumor#Latin|rumoribus]] [[wikt:en:Galli#Latin|Galli]], **[[w:ガリア人|ガッリア人]]たち自身が風評に想像して付け加えたのは、 *quod res [[wikt:en:poscere|poscere]] [[wikt:en:videbatur|videbatur]]: **事態が要求すると思われていたことで、 *[[wikt:en:retineri|retineri]] <u>urbano</u> [[wikt:en:motus#Noun_2|motu]] Caesarem **カエサルは、都<small>〔[[w:ローマ|ローマ市]]〕</small>の騒乱に束縛されて、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:urbanus#Adjective|urbānus]] は「都市の」「都会の」と訳されるが、<br>    とりわけ「首都[[w:ローマ|ローマ市]]の」を意味する。)</span> *neque in [[wikt:en:tantus#Latin|tantis]] [[wikt:en:dissensio#Latin|dissensionibus]] ad [[wikt:en:exercitus#Noun|exercitum]] venire posse. **これほどの対立においては、軍隊のもとへ来ることができない、<br>ということである。 :  *<!--❸--><sup>(3)</sup> Hac [[wikt:en:impulsus#Participle|impulsi]] [[wikt:en:occasio#Latin|occasione]], **このような好機に刺激されて、 *qui iam ante se [[wikt:en:populus#Noun|populi]] Romani [[wikt:en:imperium#Latin|imperio]] [[wikt:en:subiectus#Latin|subiectos]] [[wikt:en:dolerent|dolerent]], **すでに以前から自分たちがローマ国民の支配に服属させられているのを悲嘆している者たちは、 *[[wikt:en:libere#Adverb_2|liberius]] atque [[wikt:en:audacter#Latin|audacius]] de bello [[wikt:en:consilium#Latin|consilia]] [[wikt:en:inire|inire]] [[wikt:en:incipiunt|incipiunt]]. **より自由に、かつ、より向こう見ずに、戦争について謀議に取りかかり始める。 :  [[画像:Brennus_mg_9724.jpg|thumb|right|250px|[[w:ブレンヌス|ブレンヌス]]の胸像。BC4世紀([[w:紀元前387年|387年]])に、ローマ軍を破って、ローマ市を占領した。アッコーと同じセノネース族の族長だったとされている。]] *<!--❹--><sup>(4)</sup> [[wikt:en:indictus#Latin|Indictis]] inter se principes Galliae [[wikt:en:concilium#Latin|conciliis]] [[wikt:en:silvestris#Latin|silvestribus]] ac [[wikt:en:remotus#Latin|remotis]] locis **ガッリアの領袖たちは、森林や人里離れた場所での会合を互いに申し合わせて、 *[[wikt:en:queruntur|queruntur]] de [[wikt:en:Acco#Latin|Acconis]] [[wikt:en:mors#Latin|morte]]; **アッコーの死について嘆く。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[ガリア戦記 第6巻#44節|第6巻44節]]を参照。)</span> *<u>posse</u> hunc [[wikt:en:casus#Latin|casum]] ad ipsos [[wikt:en:recidere#Verb_4|recidere]] [[wikt:en:demonstrant#Latin|demonstrant]]; **彼<small>〔アッコー〕</small>の結末が彼ら自身へ降りかかりうることを説く。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:posse#Verb|posse]] の位置は、<br>    &alpha;系写本では hunc の前だが、<br>    &beta;系写本では hunc casum ad ipsos recidere <u>posse</u> demonstrant <br>    となっている。)</span> :  *<!--❺--><sup>(5)</sup> [[wikt:en:miserantur|miserantur]] [[wikt:en:communis#Latin|communem]] Galliae [[wikt:en:fortuna#Latin|fortunam]]; **ガッリア共通の境遇をあわれむ。 *omnibus [[wikt:en:pollicitatio#Latin|pollicitationibus]] ac [[wikt:en:praemium#Latin|praemiis]] [[wikt:en:deposcunt|deposcunt]] **<small>(以下の者たちを)</small>あらゆる約束と恩賞によって求める。 *qui [[wikt:en:bellum#Latin|belli]] <u>initia</u> [[wikt:en:faciant|faciant]] et sui [[wikt:en:caput#Latin|capitis]] [[wikt:en:periculum#Latin|periculo]] Galliam in [[wikt:en:libertas#Latin|libertatem]] [[wikt:en:vindicent|vindicent]]. **戦端を開いて、自らを危険にさらしても、ガッリアを解放する者たちを。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:~ in libertatem vindicare;~を解放する)</span> **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、&alpha;系写本では [[wikt:en:initia#Latin|initia]] (複数形) だが、<br>         &beta;系写本では [[wikt:en:initium#Latin|initium]] (単数形) となっている。)</span> :  *<!--❻--><sup>(6)</sup> In primis [[wikt:en:ratio#Latin|rationem]] esse [[wikt:en:habendus#Latin|habendam]] [[wikt:en:dicunt|dicunt]], **とりわけ、<small>(以下のような)</small>方策を採るべきであると述べる。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:in_primis#Latin|in primis]] は、[[wikt:en:inprimis#Adverb| inprimis]] と表記している校訂版もある。)</span> *[[wikt:en:priusquam#Latin|prius quam]] eorum [[wikt:en:clandestinus#Latin|clandestina]] consilia [[wikt:en:efferantur|efferantur]], **彼らの秘密の計画が漏らされるより前に、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:反ローマの挙兵のはかりごとが漏れる前に)</span> *ut Caesar ab [[wikt:en:exercitus#Noun|exercitu]] [[wikt:en:intercludatur|intercludatur]]. **カエサルが軍隊から切り離されるように、と。 :  *<!--❼--><sup>(7)</sup> Id esse [[wikt:en:facilis#Latin|facile]], **それは容易なことである。 *quod neque legiones [[wikt:en:audeant|audeant]] [[wikt:en:absens#Latin|absente]] [[wikt:en:imperator#Latin|imperatore]] ex [[wikt:en:hiberna#Noun|hibernis]] [[wikt:en:egredi|egredi]], **というのは、[[w:ローマ軍団|諸軍団]]は将軍<small>〔カエサル〕</small>が不在のときにあえて冬営から出て行こうとはしないし、 *neque [[wikt:en:imperator#Latin|imperator]] sine [[wikt:en:praesidium#Latin|praesidio]] ad legiones [[wikt:en:pervenire#Latin|pervenire]] [[wikt:en:possit|possit]]. **将軍は護衛なしに諸軍団のところへ到着することはできないのだから。 : <!-- [[wikt:en:| --> *<!--❽--><sup>(8)</sup> [[wikt:en:postremo#Adverb|Postremo]] in [[wikt:en:acies#Latin|acie]] <u>praestare</u> [[wikt:en:interfici|interfici]], **結局のところ、戦列において討ち死にする方がましである。 **:<span style="color:#009900;">(訳注:[[wikt:en:praestare|praestare]] ~ [[wikt:en:quam#Adverb|quam]] …「…よりも~がより優る」)</span> *<u>quam</u> non [[wikt:en:vetus#Latin|veterem]] belli [[wikt:en:gloria#Latin|gloriam]] [[wikt:en:libertas#Latin|libertatem]]<nowiki>que</nowiki> quam a [[wikt:en:maior#Noun|maioribus]] [[wikt:en:acceperint|acceperint]], [[wikt:en:recuperare#Latin|recuperare]]. **先祖から受け継いだかつての戦争の栄誉および自由を取り戻さないことよりは。 <!-- <span style="color:#009900;"></span> <small></small> **:<span style="color:#009900;">(訳注: **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注: --> ===2節=== [[画像:Chartres_1.jpg|thumb|right|320px|カルヌーテース族([[w:la:Carnutes|Carnutes]])の名を残す現在の[[w:シャルトル|シャルトル]]([[w:en:Chartres|Chartres]])の象徴である[[w:シャルトル大聖堂|シャルトル大聖堂]]([[w:世界遺産|世界遺産]])。[[ガリア戦記 第6巻#13節|第6巻13節]]⑩項で既述のように、カルヌーテース族の土地はガッリアの中心・聖地と見なされていた。ガッリアがキリスト教化されると、[[w:司教|司教座]]が置かれて、宗教的中心地となった。]] *<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/2節]] {{進捗|00%|2025-11-05}}</span> ;ガッリア諸部族の会合で、カルヌーテース族が開戦動議 :   *<!--❶--><sup>(1)</sup> His rebus [[wikt:en:agitatus#Latin|agitatis]], **これらの事柄が論議されて、 *[[wikt:en:profiteor#Latin|profitentur]] [[wikt:en:Carnutes#Latin|Carnutes]], **カルヌーテース族の者が公言したことには、 *se [[wikt:en:nullus#Determiner|nullum]] [[wikt:en:periculum#Latin|periculum]] [[wikt:en:communis#Latin|communis]] [[wikt:en:salus#Latin|salutis]] causa [[wikt:en:recusare#Latin|recusare]], **<small>(ガッリア)</small>共通の安全のためにはいかなる危険をも辞さない、 *[[wikt:en:princeps#Latin|principes]]<nowiki>que</nowiki> ex omnibus bellum [[wikt:en:facturus#Latin|facturos]] [[wikt:en:pollicentur|pollicentur]]; **かつ<small>(ガッリア方)</small>総勢の先鋒として戦争を遂行するであろうと約束する。 :   *<!--❷--><sup>(2)</sup> et, [[wikt:en:quoniam#Latin|quoniam]] in [[wikt:en:praesentia#Noun|praesentia]] [[wikt:en:obses#Latin|obsidibus]] [[wikt:en:cavere#Verb_2|cavere]] inter se non [[wikt:en:possint|possint]], **目下のところ、人質により互いに保証し合うことはできなかったので、 *ne res [[wikt:en:efferatur|efferatur]], **事が漏らされないように、 *<u>ut</u> [[wikt:en:ius_iurandum#Latin|iure iurando]] ac [[wikt:en:fides#Latin|fide]] [[wikt:en:sanciatur|sanciatur]], [[wikt:en:petunt|petunt]], **誓約と信義でもって批准するように求める。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、写本ST<sup>c</sup> では ut だが、<br>         写本 T<sup>1</sup>・&rho;系では at 、<br>         写本BMLNV・&chi;系では aut となっている。)</span> *[[wikt:en:conlatus#Latin|conlatis]] [[wikt:en:militaris#Adjective|militaribus]] [[wikt:en:signum#Latin|signis]], **軍旗が運び集められて、 *[[wikt:en:quo#Etymology_2_2|quo]] [[wikt:en:mos#Latin|more]] eorum [[wikt:en:gravissimus#Latin|gravissima]] [[wikt:en:caerimonia#Latin|caerimonia]] [[wikt:en:continetur|continetur]], **それは彼らの慣習で最も荘重な<ruby><rb>神聖儀式</rb><rp>(</rp><rt>カエリモーニア</rt><rp>)</rp></ruby>として保たれているのだが、 *ne [[wikt:en:factus#Latin|facto]] [[wikt:en:initium#Latin|initio]] belli ab reliquis [[wikt:en:deserantur|deserantur]]. **開戦したら、ほかの<small>(部族の)</small>者たちから見放されないように、ということである。 : <!-- [[wikt:en:| -->  *<!--❸--><sup>(3)</sup> Tum [[wikt:en:conlaudatus#Latin|conlaudatis]] [[wikt:en:Carnutes#Latin|Carnutibus]], **それから、カルヌーテース族が賞賛されて、 *[[wikt:en:datus#Participle|dato]] [[wikt:en:ius_iurandum#Latin|iure iurando]] ab omnibus, qui [[wikt:en:aderant|aderant]], **訪れていたすべての者たちによって誓約が交わされて、 *[[wikt:en:tempus#Latin|tempore]] eius rei [[wikt:en:constitutus#Participle|constituto]] **その事の時期を決定すると、 *ab [[wikt:en:concilium#Latin|concilio]] [[wikt:en:disceditur|disceditur]]. **<small>(ガッリアの領袖たちは)</small>会合から立ち去る。 <!-- <span style="color:#009900;"></span> <small></small> **:<span style="color:#009900;">(訳注: **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注: --> ===3節=== [[画像:Cathédrale_Sainte-Croix_d'Orléans_2008_PD_16.JPG|thumb|right|280px|ケナブム(Cenabum)すなわち現在の[[w:オルレアン|オルレアン]]の聖十字架大聖堂。ここもカルヌーテース族の[[w:オッピドゥム|城塞都市]]で、ガッリアの[[w:ドルイド|ドルイド]]たちが集まる聖地だったという。ローマの[[w:ルキウス・ドミティウス・アウレリアヌス|アウレリアヌス帝]](Aurelianus)によって再建されたのでアウレリアヌスの都市(アウレリアヌム [[w:la:Aurelianum|Aurelianum]])と改称され、オルレアン(Orléans)と転訛した。キリスト教化によってここにも[[w:司教|司教座]]が置かれて、布教の中心地になった。]] *<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/3節]] {{進捗|00%|2025-11-17}}</span> ;カルヌーテース族がケナブム進駐 :  *<!--❶--><sup>(1)</sup> [[wikt:en:ubi#Latin|Ubi]] ea dies venit, **その日が来ると、 *[[wikt:en:Carnutes#Latin|Carnutes]], **カルヌーテース族は、 *Cotuato et Conconnetodumno [[wikt:en:dux#Latin|ducibus]], [[wikt:en:desperatus#Latin|desperatis]] hominibus, **捨て身覚悟の連中であるコトゥアトゥスとコンコンネトドゥムヌスを指導者として、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:ガリア語では、<br>     コトゥアトス ''[[w:fr:Cotuatos|Cotuatos]]''、<br>     コンコンネトドゥムノス ''[[w:fr:Conconnetodumnos|Conconnetodumnos]]''。)</span> *<u>Cenabum</u> [[wikt:en:signum#Latin|signo]] [[wikt:en:datus#Participle|dato]] [[wikt:en:concurrunt|concurrunt]] **号令が発せられるとともに<u>ケナブム</u>に襲来する。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:ケナブムは、現在の[[w:オルレアン|オルレアン]]。)</span> **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:fr:Cenabum|Cenabum]] はケルト語風の読みで、''[[ガリア戦記/注解編/写本と校訂版#Vossius|Vossius]]'' による修正提案。<br>     写本では genabim, genebim, genebin などとなっている。<br>     ⇒ [[wikt:en:Genabum#Latin|Genabum]])</span> *[[wikt:en:civis#Latin|cives]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:Romanus#Adjective|Romanos]], qui [[wikt:en:negotiandi|negotiandi]] causa [[wikt:en:ibi#Latin|ibi]] [[wikt:en:constiterant|constiterant]], **そこには、商いを営むためにローマ市民たちが滞在していて、 *in his [[wikt:en:Gaius#Latin|Gaium]] [[wikt:en:Fufius#Latin|Fufium]] Citam, [[wikt:en:honestus#Latin|honestum]] [[wikt:en:eques#Latin|equitem]] [[wikt:en:Romanus#Adjective|Romanum]], **彼らの中には、気高いローマ人[[w:エクィテス|騎士]]ガーイウス・フーフィウス・キタがいて *qui rei [[wikt:en:frumentarius#Latin|frumentariae]] [[wikt:en:iussus#Noun|iussu]] Caesaris [[wikt:en:praeerat|praeerat]], **カエサルの指図により糧秣調達を統率していたが、 *[[wikt:en:interficiunt|interficiunt]] [[wikt:en:bonum#Noun_2|bona]]<nowiki>que</nowiki> eorum [[wikt:en:diripiunt|diripiunt]]. **<small>(カルヌーテース勢は彼らローマ市民たちを)</small>殺害して、彼らの財産を略奪する。 :  *<!--❷--><sup>(2)</sup> Celeriter ad omnes Galliae [[wikt:en:civitas#Latin|civitates]] [[wikt:en:fama#Latin|fama]] [[wikt:en:perfertur|perfertur]]. **速やかに全ガッリア部族のもとへ、評判が報知される。 *Nam, <u>ubique</u> [[wikt:en:maior#Latin|maior]] atque [[wikt:en:inlustrior|inlustrior]] [[wikt:en:incidit#Etymology_1|incidit]] res, **なぜなら、より重大でより目立った事態が起こればどこであろうが、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、主要写本&omega; の大半では [[wikt:en:ubique#Latin|ubique]] だが、写本STでは [[wikt:en:ubi#Latin|ubi]] 、<br>         さらに [[wikt:en:ubicumque#Latin|ubicumque]] という異読もあり、<br>         &nbsp;''[[ガリア戦記/注解編/写本と校訂版#Schneider,K.E.Chr.|Chr. Schneider]]'' は ubi quae と修正提案している。)</span> *[[wikt:en:clamor#Latin|clamore]] per [[wikt:en:ager#Latin|agros]] [[wikt:en:regio#Latin|regiones]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:significant#Latin|significant]]; **耕地や<small>(集落の)</small>区域を介して、大声で呼びかける。 *<u>hinc</u> [[wikt:en:alius#Latin|alii]] [[wikt:en:deinceps#Latin|deinceps]] [[wikt:en:excipiunt|excipiunt]] **ここから、別の者たちが続けて引き受けて、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、&alpha;系写本の大半では [[wikt:en:hanc#Latin|hanc]] だが、<br>         &beta;系写本では [[wikt:en:hinc#Latin|hinc]] 「ここから」、<br>         写本Sでは [[wikt:en:hunc|hunc]] となっている。)</span> *et [[wikt:en:proximus#Noun|proximis]] [[wikt:en:tradunt|tradunt]]; **近隣の者たちへ伝える。 *ut tum [[wikt:en:accidit#Etymology_1|accidit]]. **そのときにも<small>(同様のことが)</small>起こったのである。 : <!-- [[wikt:en:| --> *<!--❸--><sup>(3)</sup> Nam, quae <u>Cenabi</u> [[wikt:en:oriens#Latin|oriente]] [[wikt:en:sol#Latin|sole]] gesta essent, **ケナブムで日が昇るときになされていたこと<small>〔襲撃〕</small>が、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:Cenabi はケルト語風の読みで、''[[ガリア戦記/注解編/写本と校訂版#Vossius|Vossius]]'' による修正提案。<br>     主要写本&omega; では genabi となっている。 ⇒ [[wikt:en:Genabum#Latin|Genabum]])</span> **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:gestus#Latin|gesta]] [[wikt:en:essent#Etymology_1|essent]] は [[wikt:en:gero#Latin|gerō]] の3人称・複数・過去完了・受動・接続法。)</span> *ante [[wikt:en:primus#Latin|primam]] [[wikt:en:confectus#Latin|confectam]] [[wikt:en:vigilia#Latin|vigiliam]] **第一夜警時の終わる前頃には **:<span style="color:#009900;">(訳注:第一夜警時は、日の入から真夜中までの時間帯の前半「宵の口」。<br>     [[古代ローマの不定時法#夜警時|#夜警時]] を参照。)</span> *in finibus [[wikt:en:Arverni#Latin|Arvernorum]] audita sunt, **アルウェルニー族の領土において聞かれた。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:auditus#Latin|audita]] [[wikt:en:sunt#Latin|sunt]] は [[wikt:en:audio#Latin|audiō]] の3人称・複数・完了・受動・直説法)</span> *[[wikt:en:qui#Latin|quod]] [[wikt:en:spatium#Latin|spatium]] est [[wikt:en:mille#Latin|milium]] [[wikt:en:passus#Etymology_2|passuum]] circiter [[wikt:en:centum#Latin|centum]] [[wikt:en:sexaginta#Latin|sexaginta]](CLX). **約160ローママイルもの隔たりがあったのに。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:1[[ガイウス・ユリウス・カエサルの著作/通貨・計量単位#ミーッレ・パッスーム、ミーリア(ローママイル)|ローママイル]]は約1.48 kmで、160マイルは約240 km)</span> <!-- <span style="color:#009900;"></span> <small></small> **:<span style="color:#009900;">(訳注: **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注: --> ==ウェルキンゲトリークスとガッリア同盟軍の蜂起== ===4節=== [[画像:Vercingetorix stater CdM.jpg|thumb|right|200px|“<span style="font-family:Times New Roman;font-size:15pt;">(VERCIN)GETORIXS</span>”の名と横顔が刻まれた金貨。]] [[画像:Vercingétorix_par_Millet.jpg|thumb|right|250px|[[w:ウェルキンゲトリクス|ウェルキンゲトリークス]]の立像(フランスのアリーズ=サント=レーヌ <small>[[w:fr:Alise-Sainte-Reine|Alise-Sainte-Reine]]</small>)。<br>近代[[w:ナショナリズム|ナショナリズム]]の高揚とともに[[w:フランス|フランス]]国民が自らを古代[[w:ガリア人|ガッリア人]]の末裔と見なすようになると([[w:ガリア起源説|ガッリア起源説]])、ガッリア諸部族を率いて[[w:古代ローマ|古代ローマ]]と戦った彼は「'''フランス最初の英雄'''」として祀り上げられた。[[w:フランス第二帝政|第二帝政]]期に皇帝[[w:ナポレオン3世|ナポレオン3世]]の命により[[w:アレシアの戦い|アレスィア古戦場]]の発掘調査が実施され、[[w:1865年|1865年]]にはその地に彫刻家エメ・ミレ([[w:fr:Aimé Millet|Aimé Millet]])による高さ7メートルの銅像が建立された。<br>([[w:fr:Vercingétorix_(statue_d'Aimé_Millet)|fr:La statue de Vercingétorix]])]] [[画像:Statue-vercingetorix-jaude-clermont.jpg|thumb|right|250px|[[w:ウェルキンゲトリクス|ウェルキンゲトリークス]]の騎馬像([[w:fr:Statue équestre de Vercingétorix (Frédéric Auguste Bartholdi)|fr]])。彼の出身地ゲルゴウィアの近く、[[w:クレルモン=フェラン|クレルモン=フェラン市]]中央広場に建つ。[[w:1903年|1903年]]に、[[w:自由の女神像 (ニューヨーク)|自由の女神像]]の作者として著名な彫刻家[[w:フレデリク・バルトルディ|フレデリク・オーギュスト・バルトルディ]]によって建立された。[[w:フランス語|フランス語]]で「我は皆の自由のために武器を取った」« J’ai pris les armes pour la liberté de tous » と刻まれている。]] *<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/4節]] {{進捗|00%|2025-11-24}}</span> ;アルウェルニー族のウェルキンゲトリークスが挙兵、ガッリア諸部族同盟軍を指揮する :  *<!--❶--><sup>(1)</sup> [[wikt:en:similis#Latin|Simili]] [[wikt:en:ratio#Latin|ratione]] ibi **そこ<small>〔アルウェルニー族領〕</small>でも同様のやり方によって、 *[[wikt:en:Vercingetorix#Latin|Vercingetorix]], **[[w:ウェルキンゲトリクス|ウェルキンゲトリークス]]という、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:ガリア語 [[wikt:en:Reconstruction:Gaulish/Werkingetorix|*Werkingetorīx]] は「戦士たちの最高の王」という意味で、<br>     ガッリア同盟軍の最高司令官にふさわしい呼び名である。<br>     《[[ガリア戦記/ガリア語の名前#Vercingetorix|'''ガリア語の名前'''#Vercingetorix]]》 を参照せよ。)</span> *[[wikt:fr:Celtillus|Celtilli]] filius, [[wikt:en:Arvernus#Latin|Arvernus]], **ケルティッルスの息子で[[w:アルウェルニ族|アルウェルニー族]]の者で、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:''[[w:en:Celtillus|Celtillus]]'' はガリア語で「小さなケルト人」という意味だと解される。)</span> *[[wikt:en:summus#Adjective|summae]] [[wikt:en:potentia#Latin|potentiae]] [[wikt:en:adulescens#Noun|adulescens]], **最高の影響力のある青年が、 *cuius [[wikt:en:pater#Latin|pater]] [[wikt:en:principatus#Latin|principatum]] Galliae [[wikt:en:totus#Etymology_1|totius]] [[wikt:en:obtinuerat|obtinuerat]] **──その父<small>〔ケルティッルス〕</small>はガッリア全体の主導権を占めていたが、 *et ob eam causam, quod [[wikt:en:regnum#Latin|regnum]] [[wikt:en:adpetebat|adpetebat]], ab [[wikt:en:civitas#Latin|civitate]] erat [[wikt:en:interfectus#Latin|interfectus]], **王位を求めたという理由により、部族の者によって誅殺されていたのであるが、── *[[wikt:en:convocatus#Latin|convocatis]] suis [[wikt:en:cliens#Latin|clientibus]] **自らの庇護者たちを招集して、 *facile [[wikt:en:incendit|incendit]]. **容易に焚き付けた。 :  *<!--❷--><sup>(2)</sup> [[wikt:en:cognitus#Participle|Cognito]] eius [[wikt:en:consilium#Latin|consilio]] **彼の計画を知ると、 *ad [[wikt:en:arma#Latin|arma]] [[wikt:en:concurritur|concurritur]]. **<small>(人々は)</small>武器のもとへ群がり集まった。 *[[wikt:en:prohibetur|Prohibetur]] ab [[wikt:fr:Gobannitio|Gobannitione]], [[wikt:en:patruus#Latin|patruo]] suo, [[wikt:en:reliquus#Latin|reliquis]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:princeps#Noun_3|principibus]], **彼の<small>(父方の)</small>おじゴバンニティオやほかの領袖たちにより妨げられた。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:''[[w:fr:Gobannitio|Gobannitio]]'' は「鍛冶屋」か「鍛冶の神」に由来する名前と解される。)</span> *qui hanc [[wikt:en:temptandus#Latin|temptandam]] [[wikt:en:fortuna#Latin|fortunam]] non [[wikt:en:existimabant|existimabant]]; **その者たちは、このような運命を試すべきとは考えていなかったのだ。 *[[wikt:en:expellitur|expellitur]] ex [[wikt:en:oppidum#Latin|oppido]] [[wikt:en:Gergovia#Latin|Gergovia]]; **<small>(ウェルキンゲトリークスは)</small>城塞都市ゲルゴウィアから追放される。 :  *<!--❸--><sup>(3)</sup> non [[wikt:en:destitit|destitit]] tamen **しかしながら<small>(彼は計画を)</small>取り止めず、 *atque in agris habet [[wikt:en:dilectus#Noun|dilectum]] [[wikt:en:egens#Latin|egentium]] ac [[wikt:en:perditor#Noun|perditorum]]. **野に貧窮者たちやならず者たちを徴集する。 :  *Hac [[wikt:en:coactus#Latin|coacta]] [[wikt:en:manus#Latin|manu]], **こうした手勢が集められ、 *[[wikt:en:quoscumque|quoscumque]] [[wikt:en:adit#Latin|adit]] ex civitate, **部族のうちで<small>(彼が)</small>会った者は誰であれ、 *ad suam [[wikt:en:sententia#Latin|sententiam]] [[wikt:en:perducit|perducit]]; **自らの意図に引き込んだ。 :  *<!--❹--><sup>(4)</sup> [[wikt:en:hortatur|hortatur]] ut [[wikt:en:communis#Latin|communis]] [[wikt:en:libertas#Latin|libertatis]] causa [[wikt:en:arma#Latin|arma]] [[wikt:en:capiant|capiant]], **<small>(ガッリア)</small>共通の自由のために武器を取るように鼓舞した。 *[[wikt:en:magnus#Latin|magnis]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:coactus#Latin|coactis]] [[wikt:en:copia#Latin|copiis]] **大軍勢が集められて、 *[[wikt:en:adversarius#Latin|adversarios]] suos, a quibus paulo ante erat [[wikt:en:eiectus#Latin|eiectus]], **少し前に<small>(彼をゲルゴウィアから)</small>放逐したところの敵対者たちを、 *[[wikt:en:expellit|expellit]] ex civitate. **部族から追放する。 *[[wikt:en:rex#Latin|Rex]] ab suis [[wikt:en:appellatur|appellatur]]. **<small>(ウェルキンゲトリークスは)</small>配下の者たちから王と呼ばれている。 :  *<!--❺--><sup>(5)</sup> [[wikt:en:dimittit|Dimittit]] [[wikt:en:quoque#Latin|quoque]] [[wikt:en:versus#Adverb|versus]] [[wikt:en:legatio#Latin|legationes]]; **<small>(ウェルキンゲトリークスは)</small>あらゆる方向へ使節団を派遣して、 *[[wikt:en:obtestatur|obtestatur]] ut in [[wikt:en:fides#Latin|fide]] [[wikt:en:maneant|maneant]]. **誓約に留まるようにと、懇願する。 :  *<!--❻--><sup>(6)</sup> Celeriter sibi **速やかに、自分たち<small>〔アルウェルニー族〕</small>に対して *[[wikt:en:Senones#Latin|Senones]], [[wikt:en:Parisii#Latin|Parisios]], [[wikt:en:Pictones#Latin|Pictones]], [[wikt:en:Cadurci#Latin|Cadurcos]], <u>Turonos</u>, [[wikt:en:Aulerci#Latin|Aulercos]], [[wikt:en:Lemovices#Latin|Lemovices]], <u>Andes</u> **セノネース族、パリースィイー族、ピクトネース族、カドゥルキー族、<br><u>トゥロニイー族</u>、アウレルキー族、レモウィーケース族、アンデース族、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部のトゥロニイー族 ''[[w:Turoni|Turoni]]'' は、トゥロネース族 ''[[wikt:en:Turones#Latin|Turonēs]]'' ともいう。)</span> **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:二つ目の下線部は、&alpha;系写本では [[wikt:en:Andi#Latin|Andos]]「アンディー族」だが、<br>             ''[[ガリア戦記/注解編/写本と校訂版#Glareanus|Glareanus]]'' は、[[wikt:en:Andes#Latin|Andēs]]「アンデース族」と修正提案し、<br>             これは別名「アンデカーウィー族」''[[wikt:en:Andecavi#Latin|Andecāvī]]'' ともいう。)</span> *reliquosque omnes, qui [[wikt:en:Oceanus#Latin|Oceanum]] [[wikt:en:adtingunt|adtingunt]], [[wikt:en:adiungit|adiungit]]; **および<ruby><rb>大洋<span style="color:#009900;">〔[[w:大西洋|大西洋]]〕</span></rb><rp>(</rp><rt>オーケアヌス</rt><rp>)</rp></ruby>に接するほかの全部族を、加盟させる。 *omnium [[wikt:en:consensus#Latin|consensu]] **すべての者たちの同意により、 *ad eum [[wikt:en:defertur|defertur]] [[wikt:en:imperium#Latin|imperium]]. **彼<small>〔ウェルキンゲトリークス〕</small>に<small>(諸部族の)</small>軍勢指揮権が譲り渡される。 :  *<!--❼--><sup>(7)</sup> Qua [[wikt:en:oblatus#Latin|oblata]] [[wikt:en:potestas#Latin|potestate]] **<small>(ウェルキンゲトリークスは)</small>その権限が任されると、 *omnibus his civitatibus [[wikt:en:obses#Latin|obsides]] [[wikt:en:imperat|imperat]], **これらすべての部族に人質<small>(の供出)</small>を命令して、 *[[wikt:en:certus#Latin|certum]] numerum [[wikt:en:miles#Latin|militum]] ad se celeriter [[wikt:en:adduci#Latin|adduci]] [[wikt:en:iubet#Latin|iubet]], **兵の一定の数が自分のもとへ速やかに動員されることを命じる。 :  *<!--❽--><sup>(8)</sup> [[wikt:en:arma#Latin|armorum]] [[wikt:en:quantum#Latin|quantum]] [[wikt:en:quisque#Latin|quaeque]] civitas [[wikt:en:domi#Latin|domi]] [[wikt:en:quisque#Latin|quodque]] ante tempus [[wikt:en:efficiat|efficiat]], [[wikt:en:constituit#Latin|constituit]]; **おのおのの部族が本国で、武器のどれほどをその時期の前に生産するかを、決定した。 *in primis [[wikt:en:equitatus#Latin|equitatui]] [[wikt:en:studet|studet]]. **とりわけ、[[w:騎兵|騎兵隊]]を熱心に求めた。 : <!-- [[wikt:en:| --> *<!--❾--><sup>(9)</sup> Summae diligentiae summam [[wikt:en:imperium#Latin|imperii]] [[wikt:en:severitas#Latin|severitatem]] addit; **<small></small>(ウェルキンゲトリークスは)最高の入念さに、命令の最高の厳格さを付け加える。 *magnitudine [[wikt:en:supplicium#Latin|supplicii]] [[wikt:en:dubitans#Latin|dubitantes]] cogit. **重大な刑罰をふんぎりが付かぬ者たちへ強いる。 : <!-- [[wikt:en:| --> *<!--❿--><sup>(10)</sup> Nam maiore commisso delicto <u>igni</u> atque omnibus tormentis necat, **すなわち、より重大な違反を犯したら、火とあらゆる拷問によって誅殺した。 *leviore de causa auribus desectis aut singulis effossis oculis domum remittit, **より軽微な場合については、両耳を切り取り、あるいは眼を一つずつ繰り抜いて、郷里へ送還する。 *ut sint reliquis documento et magnitudine poenae perterreant alios. **ほかの者たちへの警告となり、懲罰の重大さが別の者たちを畏怖させるようにである。 <!-- <span style="color:#009900;"></span> <small></small> **:<span style="color:#009900;">(訳注: **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注: --> ===5節=== *<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/5節]] {{進捗|00%|2025-12-14}}</span> ;ビトゥリゲース族が、ガッリア同盟軍に寝返る :  *<!--❶--><sup>(1)</sup> His [[wikt:en:supplicium#Latin|suppliciis]] celeriter [[wikt:en:coactus#Latin|coacto]] [[wikt:en:exercitus#Noun|exercitu]], **<small>(ウェルキンゲトリークスは)</small>これらの刑罰により速やかに軍隊を徴集して、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:「軍隊」と訳される [[wikt:en:exercitus#Noun|exercitus]] には「鍛えられて規律がある」という意味合いがあり、<br>    これまでカエサルがガッリア人の軍勢をこのように表現したことはまれであった。)</span> *[[wikt:en:Lucterius#Latin|Lucterium]] [[wikt:en:Cadurcus#Latin|Cadurcum]], [[wikt:en:summus#Latin|summae]] hominem [[wikt:en:audacia#Latin|audaciae]], **この上なく豪胆な人物であるカドゥルキー族のルクテリウスを *cum parte [[wikt:en:copiarum#Noun_2|copiarum]] in [[wikt:en:Ruteni#Latin|Rutenos]] [[wikt:en:mittit|mittit]]; **軍勢の一部とともにルテーニー族のところに遣わす。 *ipse in [[wikt:en:Bituriges#Latin|Bituriges]] [[wikt:en:proficiscitur|proficiscitur]]. **<small>(ウェルキンゲトリークス)</small>自身はビトゥリゲース族のところに出発する。 :  ;   ビトゥリゲース族が、ハエドゥイー族に、対ウェルキンゲトリークスのための援兵を依頼 *<!--❷--><sup>(2)</sup> Eius [[wikt:en:adventus#Latin|adventu]] **彼<small>〔ウェルキンゲトリークス〕</small>の到来により、 *[[wikt:en:Bituriges#Latin|Bituriges]] ad [[wikt:en:Aeduos|Haeduos]], quorum erant in [[wikt:en:fides#Latin|fide]], **ビトゥリゲース族は、彼らが庇護下にあった[[w:ハエドゥイ族|ハエドゥイー族]]のもとへ、 *[[wikt:en:legatus#Latin|legatos]] [[wikt:en:mittunt|mittunt]] [[wikt:en:subsidium#Latin|subsidium]] [[wikt:en:rogatum#Verb|rogatum]], **使節たちを、<small>(ハエドゥイー族からの)</small>援兵を依頼するために派遣する。 *[[wikt:en:quo#Adverb|quo]] [[wikt:en:facile#Latin|facilius]] hostium copias [[wikt:en:sustinere|sustinere]] [[wikt:en:possint|possint]]. **それにより、敵の軍勢をより容易に持ちこたえることができるようにということであった。 :  ;   ハエドゥイー族が、ビトゥリゲース族に対して援兵を派兵 *<!--❸--><sup>(3)</sup> [[wikt:en:Aedui#Latin|Haedui]] de [[wikt:en:consilium#Latin|consilio]] [[wikt:en:legatus#Latin|legatorum]], quos Caesar ad [[wikt:en:exercitus#Noun|exercitum]] [[wikt:en:reliquerat|reliquerat]], **[[w:ハエドゥイ族|ハエドゥイー族]]は、カエサルが軍隊のもとへ残していた<ruby><rb>[[w:レガトゥス|総督副官]]</rb><rp>(</rp><rt>レーガートゥス</rt><rp>)</rp></ruby>たちの助言により、 *copias [[wikt:en:equitatus#Noun|equitatus]] [[wikt:en:peditatus#Latin|peditatus]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:subsidium#Latin|subsidio]] [[wikt:en:Bituriges#Latin|Biturigibus]] [[wikt:en:mittunt|mittunt]]. **[[w:騎兵|騎兵隊]]と[[w:歩兵|歩兵隊]]の軍勢をビトゥリゲース族に対する援兵として派遣する。 :  ;   ハエドゥイー族の援兵が、ビトゥリゲース族の寝返りを怖れて、途中で逃げ帰ってしまう *<!--❹--><sup>(4)</sup> Qui cum ad flumen [[wikt:en:Liger#Latin|Ligerim]] [[wikt:en:venissent|venissent]], quod [[wikt:en:Bituriges#Latin|Bituriges]] ab [[wikt:en:Aeduis|Haeduis]] [[wikt:en:dividit#Latin|dividit]], **その者たち<small>〔援兵〕</small>は、ビトゥリゲース族を[[w:ハエドゥイ族|ハエドゥイー族]]から分け隔てるリゲル川のたもとへやって来たときに、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:リゲル川 [[w:la:Liger|Liger]] は、現在の[[w:ロワール川|ロワール川]]。<br>    本書に登場するビトゥリゲース・クビ族 ''[[w:en:Bituriges Cubi|Bituriges Cubi]]'' は、<br>     ロワール川西岸の[[w:シェール県|シェール県]]の辺りに居住していた。<br>    対して、[[w:ハエドゥイ族|ハエドゥイー族]]は、<br>     ロワール川東岸の[[w:ニエーヴル県|ニエーヴル県]]の辺りに居住していた。)</span> [[画像:Map of Eduens people-fr.svg|thumb|right|250px|[[w:ハエドゥイ族|ハエドゥイー族]]を軸とするガッリアの合従連衡(<small>フランス語表記</small>)。赤い部分がハエドゥイー族(Eduens)、桃色・茶色の部分が同盟部族、灰色の部分が敵対する[[w:アルウェルニ族|アルウェルニー族]](Arvernes)とセクアニ族(Sequanes)の領域である。茶色のビトゥリゲース族(Bituriges)と赤いハエドゥイー族(Eduens)の境界に沿ってリゲル川([[w:ロワール川|ロワール川]])が流れていることが見て取れる。川の西岸はビトゥリゲース族とアルウェルニー族の勢力圏になっている。]] *paucos dies ibi [[wikt:en:moratus#Participle|morati]] **わずかな日々をそこでぐずぐずして、 *neque flumen [[wikt:en:transire#Latin|transire]] [[wikt:en:ausus#Participle|ausi]] [[wikt:en:domus#Latin|domum]] [[wikt:en:revertuntur|revertuntur]] **川をあえて渡らずに、故国に引き返す。 :  *<!--❺--><sup>(5)</sup> [[wikt:en:legatus#Latin|legatis]]<nowiki>que</nowiki> nostris [[wikt:en:renuntiant|renuntiant]] **<small>(ハエドゥイー族の援兵たちが)</small>我が方<small>〔ローマ方〕</small>の<ruby><rb>[[w:レガトゥス|総督副官]]</rb><rp>(</rp><rt>レーガートゥス</rt><rp>)</rp></ruby>たちに報告したことには、 *se [[wikt:en:Bituriges#Latin|Biturigum]] [[wikt:en:perfidia#Latin|perfidiam]] [[wikt:en:veritus#Latin|veritos]] [[wikt:en:revertisse|revertisse]], **自分たち<small>〔援兵〕</small>は、ビトゥリゲース族の寝返りを恐れて引き返した。 *quibus id [[wikt:en:consilium#Latin|consilii]] fuisse [[wikt:en:cognoverint|cognoverint]], **彼らには、以下のような謀計があったことを探知したのだ。 *ut, si flumen [[wikt:en:transissent#Latin|transissent]], una ex parte ipsi, altera [[wikt:en:Arverni#Latin|Arverni]] se [[wikt:en:circumsisterent|circumsisterent]]. **もし川を渡ったら、一方から<small>(ビトゥリゲース族)</small>自身が、他方から[[w:アルウェルニ族|アルウェルニー族]]が自分たちを包囲するというものだ、と。 :  *<!--❻--><sup>(6)</sup> Id ea<span style="background-color:#ffa;">[[wikt:la:-ne|ne]]</span> de causa, quam [[wikt:en:legatus#Latin|legatis]] <u>pronuntiarunt</u>, **そのことは<small>(援兵たちが)</small><ruby><rb>[[w:レガトゥス|総督副官]]</rb><rp>(</rp><rt>レーガートゥス</rt><rp>)</rp></ruby>たちに報告した理由によって<small>(なしたのか?)</small> **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:-ne#Latin|-ne]] ~ [[wikt:en:an#Latin|an]] …;~であるか、あるいは…であるか。)</span> **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部の [[wikt:en:pronuntiarunt|pronuntiarunt]]<sub>&nbsp;(直接法・完了形)</sub> は古い印刷本 ''[[ガリア戦記/注解編/写本と校訂版#クリティカル・アパラトゥスとその略号|edd.vett.]]'' の記述で、<br>        &alpha;系写本では [[wikt:en:pronuntiarint|pronuntiarint]]<sub>&nbsp;(接続法・完了形)</sub> だが、<br>        &beta;系写本では [[wikt:en:pronuntiaverint|pronuntia<u>ve</u>rint]]<sub>&nbsp;(接続法・完了形)</sub> となっている。)</span> *<span style="background-color:#ffa;">[[wikt:la:an|an]]</span> [[wikt:en:perfidia#Latin|perfidia]] [[wikt:en:adductus#Latin|adducti]] [[wikt:en:fecerint|fecerint]], **あるいは<small>(ビドゥリゲース族の)</small>寝返りに動かされて、なしたのか? *[[wikt:en:quod#Conjunction|quod]] [[wikt:en:nihil#Latin|nihil]] nobis [[wikt:en:constat#Latin|constat]], **我々<small>〔ローマ人〕</small>には何ら定かではないので、 *non [[wikt:en:videtur|videtur]] pro [[wikt:en:certus#Latin|certo]] esse <u>proponendum</u>. **確言するべきであるとは思われない。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:~ pro certo ponere;~を確かであると主張する)</span> **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、&alpha;系写本では [[wikt:en:proponendum|<u>pro</u>ponendum]] だが、<br>         &beta;系写本では [[wikt:en:ponendum|ponendum]] となっている。)</span> : <!-- [[wikt:en:| --> ;   ビトゥリゲース族が、ローマ人やハエドゥイー族から離反して、アルウェルニー族と同盟してしまう *<!--❼--><sup>(7)</sup> [[wikt:en:Bituriges#Latin|Bituriges]] eorum [[wikt:en:discessus#Noun|discessu]] **ビトゥリゲース族は、彼ら<small>〔援兵〕</small>の撤収により、 *[[wikt:en:statim#Latin|statim]] <u>se</u> cum [[wikt:en:Arverni#Latin|Arvernis]] <u>coniunguntur</u>. **ただちに[[w:アルウェルニ族|アルウェルニー族]]と<small>(同盟を)</small>結んだ。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、&alpha;系写本では [[wikt:en:iunguntur|iunguntur]] だが、<br>         &beta;系写本では se ~ [[wikt:en:coniungunt|coniungunt]] となっている。)</span> <!-- <span style="color:#009900;"></span> <small></small> **:<span style="color:#009900;">(訳注: **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注: --> ===6節=== *<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/6節]] {{進捗|00%|2025-12-15}}</span> [[画像:Warsaw Royal Castle GM (12).JPG|thumb|right|200px|[[w:グナエウス・ポンペイウス|グナエウス・ポンペイウス]]の立像([[w:ワルシャワ歴史地区|ワルシャワ王宮]])。彼は首都の騒乱を鎮めるために単独の[[w:執政官|執政官]]として大権を与えられ、イタリアの徴兵権を得た。[[w:三頭政治|三頭政治]]後のこの混乱期に、彼はカエサルの政敵たちからこぞって支持されたが、危機に瀕していたカエサルを打倒する絶好の機会を見送った。これは重大な逸機であり、数年後にポンペイウスにとって致命的な結果をもたらすことになる。]] ;諸軍団と分断されて苦慮するカエサル :  *<!--❶--><sup>(1)</sup> His rebus in Italiam Caesari [[wikt:en:nuntiatus#Latin|nuntiatis]], **これらの事情がイタリアにいるカエサルへ知らされると、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:ここでいうイタリアとは、<br>    カエサルの属州[[w:ガリア・キサルピナ|ガッリア・キサルピーナ]]のことである。)</span> *cum iam ille [[wikt:en:urbanus#Latin|urbanas]] res [[wikt:en:virtus#Latin|virtute]] [[wikt:en:Gnaei#Latin|Gnaei]]<sub>&nbsp;([[wikt:en:Cn.#Latin|Cn.]])</sub> [[wikt:en:Pompeius#Proper_noun|Pompei]] [[wikt:en:commodior#Latin|commodiorem]] in [[wikt:en:status#Noun_11|statum]] [[wikt:en:pervenisse#Latin|pervenisse]] [[wikt:en:intellegeret|intellegeret]], **彼は、もはや都<small>〔[[w:ローマ|ローマ市]]〕</small>の事態は[[w:グナエウス・ポンペイウス|グナエウス・ポンペイウス]]の果断さによってより相応な状態に至ったと認識したので、 *in [[wikt:en:Gallia_transalpina#Latin|Transalpinam Galliam]] [[wikt:en:profectus#Latin|profectus]] est. **ガッリア・トラーンサルピーナ<small>〔アルプスの向こう側のガッリア〕</small>に出発した。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[#1節|1節]]②項で言及された Galliam Transalpinam は<br>    アルプスの西側「長髪のガッリア」全般を指すと思われるが、<br>    ここではどちらかといえば<br>    ガッリア南部のローマ属州ガッリア・トラーンサルピーナ<br>    すなわち後の[[w:ガリア・ナルボネンシス|ガッリア・ナルボーネーンスィス]]を指す。)</span> :  *<!--❷--><sup>(2)</sup> [[wikt:en:eo#Adverb|Eo]] cum [[wikt:en:venisset|venisset]], **<small>(カエサルが)</small>そこに来たときに、 *magna [[wikt:en:difficultas#Latin|difficultate]] [[wikt:en:adficiebatur|adficiebatur]], qua [[wikt:en:ratio#Latin|ratione]] ad [[wikt:en:exercitus#Noun|exercitum]] [[wikt:en:pervenire#Latin|pervenire]] [[wikt:en:posset#Latin|posset]]. **どのような方策で軍隊のもとへ到達することができるか、という大きな困難に苦悩させられていた。 :  *<!--❸--><sup>(3)</sup> Nam, si [[wikt:en:legio#Latin|legiones]] in [[wikt:en:provincia#Latin|provinciam]] [[wikt:en:arcesseret|arcesseret]], **なぜなら、もし、諸[[w:ローマ軍団|軍団]]を属州<small>〔ガッリア・トラーンサルピーナ〕</small>に呼び寄せるのならば、 *se [[wikt:en:absens#Latin|absente]] in [[wikt:en:iter#Latin|itinere]] [[wikt:en:proelium#Latin|proelio]] [[wikt:en:dimicaturus#Latin|dimicaturas]] [[wikt:en:intellegebat|intellegebat]]; **自分<small>〔カエサル〕</small>が不在のままで、行軍中に戦闘を闘うことになるであろうと理解していた。 : <!-- [[wikt:en:| --> *<!--❹--><sup>(4)</sup> si ipse ad exercitum [[wikt:en:contenderet|contenderet]], **もし<small>(カエサル)</small>自身が<small>(大部隊の護衛なしで)</small>軍隊のもとへ急いで行くのならば、 *<u>ne</u> iis <u>quidem</u> eo tempore qui quieti [[wikt:en:viderentur|viderentur]], **そのときには、中立を保っていると見られる者たちでさえも、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:iis#Latin|iis]] は&beta;系写本の記述で、&alpha;系写本では [[wikt:en:his#Latin|his]] となっている。)</span> **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:ne quidem|ne ~ quidem]]「~でさえ…ない」)</span> **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:quietus#Latin|quietus, quieti]]「平和的な、中立的な」)</span> *suam [[wikt:en:salus#Latin|salutem]] [[wikt:en:recte#Latin|recte]] [[wikt:en:committi|committi]] [[wikt:en:videbat|videbat]]. **自分の身の安全を良く託されるとは思えなかったのだ。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:前年まで、すなわち第6巻までの戦争は主としてガッリア北部・中部などで闘われていたので、<br>    [[ガリア戦記 第6巻#44節|第6巻44節]]で既述のように、ローマ諸軍団はガッリア北部・中部周辺に冬営させられていた。<br>    今回は軍団が駐留していないガッリア中南部を中心に反乱が起こったので、<br>    カエサルと諸軍団は分断された。<br>    そのため、カエサルが大部隊の護衛なしで北上すれば、<br>    同盟部族にさえ寝首を掻かれる怖れがあったのである。) <!-- <span style="color:#009900;"></span> <small></small> **:<span style="color:#009900;">(訳注: **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注: --> ===7節=== *<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/7節]] {{進捗|00%|2025-12-19}}</span> ;ルクテリウスとカエサルのナルボーをめぐる駆け引き [[画像:Narbonne_panorama.jpg|thumb|right|300px|'''ナルボー'''(Narbo)すなわち現在の[[w:ナルボンヌ|ナルボンヌ市]](Narbonne)の街並み。ローマ人が[[w:ドミティア街道|ドミティア街道]]の拠点として植民市'''コロニア・ナルボー・マルティウス'''(Colonia Narbo Martius)を建設し、後には[[w:ローマ内戦 (紀元前49年-紀元前45年)|ローマ内乱]]のときにもカエサル派の根拠地となった。その重要性から帝政期には州都に昇格し、[[w:属州|属州]]名も[[w:ガリア・ナルボネンシス|ガッリア・ナルボネンスィス]]に改められたほどである。]] [[画像:Via_domitia_map600x600_(1).png|thumb|right|200px|[[w:ドミティア街道|ドミティア街道]](Via Domitia)の経路。ローマ人によってイタリアと[[w:ヒスパニア|ヒスパーニア]]を結ぶ重要な街道として整備された。本節でカエサル側の軍勢が往復したのもこの街道である。]] :  ;   カドゥルキー族のルクテリウスが、ルテーニー族を同盟に引き入れる *<!--❶--><sup>(1)</sup> [[wikt:en:interim#Latin|Interim]] [[wikt:en:Lucterius#Latin|Lucterius]] [[wikt:en:Cadurcus#Latin|Cadurcus]] **その間に、カドゥルキー族のルクテリウスが *in [[wikt:en:Ruteni#Latin|Rutenos]] [[wikt:en:missus#Participle|missus]] **ルテーニー族のところに遣わされて、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[#5節|5節]]の冒頭で述べられた。<br>    ルテーニー族 ''[[w:en:Ruteni|Ruteni]]'' は現在の[[w:アヴェロン県|アヴェロン県]]の<br>    [[w:ロデーズ|ロデーズ]]辺りにいたとされる。)</span> *eam [[wikt:en:civitas#Latin|civitatem]] [[wikt:en:Arverni#Latin|Arvernis]] [[wikt:en:conciliat|conciliat]]. **その部族に[[w:アルウェルニ族|アルウェルニー族]]との仲を取り持つ。 :  ;   ルクテリウスが、ローマ属州内の拠点都市ナルボーを目指す *<!--❷--><sup>(2)</sup> [[wikt:en:progressus#Participle|Progressus]] in [[wikt:en:Nitiobriges#Latin|Nitiobriges]] et [[wikt:en:Gabali#Latin|Gabalos]] **<small>(彼は)</small>ニティオブリゲース族とガバリー族のところに進んで行き、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:ニティオブリゲース族<br>     またはニティオブロゲース族 ''[[w:en:Nitiobroges|Nitiobroges]]'' は<br>     現在の[[w:ロット=エ=ガロンヌ県|ロット=エ=ガロンヌ県]][[w:アジャン|アジャン]]辺り、<br>    ガバリー族 ''[[w:en:Gabali|Gabali]]'' は現在の[[w:ロゼール県|ロゼール県]]辺りにいたらしい。)</span> *ab [[wikt:en:uterque#Latin|utrisque]] [[wikt:en:obses#Latin|obsides]] [[wikt:en:accipit|accipit]] **双方から人質たちを受け取って、 *et, magna [[wikt:en:coactus#Latin|coacta]] [[wikt:en:manus#Latin|manu]], **多くの手勢を徴集すると、 *in [[wikt:en:provincia#Latin|provinciam]] [[wikt:en:Narbo#Latin|Narbonem]] [[wikt:en:versus#Latin|versus]] [[wikt:en:eruptio#Latin|eruptionem]] facere [[wikt:en:contendit|contendit]]. **<small>(ローマ人の)</small>[[w:属州|属州]]内のナルボーに向かって出撃することを急ぐ。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:ナルボー [[w:la:Narbo|Narbo]] は、ローマ人が建設した地中海岸の植民市で、<br>    ヒスパーニアとイタリアを結ぶ拠点であった。<br>    現在の[[w:ナルボンヌ|ナルボンヌ]]。)</span> :  ;   カエサルもナルボーを目指す *<!--❸--><sup>(3)</sup> Qua re [[wikt:en:untiatus#Latin|nuntiata]] **その事を報告されると、 *Caesar omnibus [[wikt:en:consilium#Latin|consiliis]] [[wikt:en:antevertendus#Latin|antevertendum]] <span style="color:#009900;font-size:8pt;">(esse)</span> [[wikt:en:existimavit|existimavit]], ut [[wikt:en:Narbo#Latin|Narbonem]] [[wikt:en:proficisceretur|proficisceretur]]. **カエサルは、ナルボーに出発することを、あらゆる計画に先立ってするべきであると考えた。 :  *<!--❹--><sup>(4)</sup> [[wikt:en:eo#Adverb|Eo]] cum [[wikt:en:venisset|venisset]], **<small>(カエサルは)</small>そこへやって来ると、 *[[wikt:en:timens#Latin|timentes]] [[wikt:en:confirmat#Latin|confirmat]], **<ruby><rb>怖気</rb><rp>(</rp><rt>おじけ</rt><rp>)</rp></ruby>ている者たちを元気付けて、 *[[wikt:en:praesidium#Latin|praesidia]] **守備隊を *in [[wikt:en:Ruteni#Latin|Rutenis]] [[wikt:en:provincialis#Latin|provincialibus]], [[wikt:en:Volcae#Latin|Volcis]] [[wikt:en:Arecomici#Latin|Arecomicis]], [[wikt:en:Tolosates#Latin|Tolosatibus]] **属州側のルテーニー族、[[w:ウォルカエ族|ウォルカエ]]・アレコミキー族、トローサーテース族<small>(らの領内)</small>に、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:上述のように、属州外の<u>ルテーニー族</u>は[[w:アルウェルニ族|アルウェルニー族]]と結んでいる。)</span> **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[w:ウォルカエ族|ウォルカエ族]]は、西側に住むテクトサゲース族 ''[[w:en:Tectosages|Tectosages]]'' と<br>            東側に住むアレコミキー族 ''[[w:en:Arecomici|Arecomici]]'' の2支族に分かれていた。)</span> **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:トローサーテース族 ''[[w:fr:Tolosates|Tolosates]]'' は、ウォルカエ・テクトサゲース族の分派とされ、<br>     現在の[[w:トゥールーズ|トゥールーズ]]の近くにいたと考えられている。)</span> *[[wikt:en:circum#Preposition|circum]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:Narbo#Latin|Narbonem]], quae [[wikt:en:locum#Latin|loca]] hostibus erant [[wikt:en:finitimus#Latin|finitima]], **および敵方に隣接した地である[[w:ナルボンヌ|ナルボー]]周辺に *[[wikt:en:constituit#Latin|constituit]]; **駐留させる。 :  *<!--❺--><sup>(5)</sup> partem [[wikt:en:copiae#Noun_2|copiarum]] ex [[wikt:en:provincia#Latin|provincia]] **属州<small>〔ガッリア・トラーンサルピーナ〕</small>からの軍勢の一部、 *[[wikt:en:supplementum#Latin|supplementum]]<nowiki>que</nowiki>, quod ex Italia [[wikt:en:adduxerat|adduxerat]], **およびイタリアから率いて来た補充兵を **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:後者の補充兵 supplementum は、[[#1節|1節]]で既述のように、<br>    [[w:ガリア・キサルピナ|ガッリア・キサルピーナ]]で徴募された軍団兵であろう。)</span> *in [[wikt:en:Helvii#Latin|Helvios]], qui fines [[wikt:en:Arverni#Latin|Arvernorum]] [[wikt:en:contingunt|contingunt]], **[[w:アルウェルニ族|アルウェルニー族]]の領土に接しているヘルウィイー族のところに *[[wikt:en:convenire#Latin|convenire]] [[wikt:en:iubet#Latin|iubet]]. **集結することを命じる。 <!-- <span style="color:#009900;"></span> <small></small> **:<span style="color:#009900;">(訳注: **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注: --> ===8節=== *<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/8節]] {{進捗|00%|2026-01-03}}</span> [[画像:Carte-cevennes-france.png|thumb|right|200px|フランスにおける[[w:中央高地 (フランス)|中央高地]](Massif Central)とセヴェンヌ山地(Cévennes)の位置]] [[画像:Col_de_legal.jpeg|thumb|right|200px|[[w:雪|雪]]に覆われた[[w:オーヴェルニュ地域圏|オーヴェルニュ高地]]。オーヴェルニュ(Auvergne)の名は[[w:アルウェルニ族|アルウェルニー族]](Arverni)に由来する。]] [[画像:Causse_Mejean_Evening.jpg|thumb|right|200px|城壁のように続くケウェンナ(セヴェンヌ)山地の断崖]] [[画像:France_Massif_central.jpg|thumb|right|200px|[[w:アルウェルニ族|アルウェルニー族]]の勢力圏であった[[w:中央高地 (フランス)|中央高地]](Massif Central)の領域(着色部分)。平野の多いフランスにおいて山塊としてそびえ立つ。]] :  ;カエサルがケウェンナ山地を越えてアルウェルニー族の領内へ突入 *<!--❶--><sup>(1)</sup> His rebus [[wikt:en:comparatus#Latin|comparatis]], **これらの事が整えられて、 *[[wikt:en:repressus#Latin|represso]] iam [[wikt:en:Lucterius#Latin|Lucterio]] et [[wikt:en:remotus#Latin|remoto]], **<small>(カドゥルキー族の)</small>ルクテリウスはすでに押し留められ、遠ざけられた。 *quod [[wikt:en:intrare#Latin|intrare]] intra [[wikt:en:praesidium#Latin|praesidia]] [[wikt:en:periculosus#Latin|periculosum]] [[wikt:en:putabat|putabat]], **──というのは<small>(ローマ人の)</small>守備の範囲内に踏み込むことは危険なことであると<small>(ルクテリウスが)</small>見なしていたからであるが、── *in [[wikt:en:Helvii#Latin|Helvios]] [[wikt:en:proficiscitur|proficiscitur]]. **<small>(そこで、カエサルは)</small>ヘルウィイー族のところに出発する。 :  ;   カエサルが、アルウェルニー族の要害ケウェンナ山を越える *<!--❷--><sup>(2)</sup> <u>Etsi</u> mons <u>Cevenna</u>, qui [[wikt:en:Arverni#Latin|Arvernos]] ab [[wikt:en:Helvii#Latin|Helviis]] [[wikt:en:discludit|discludit]], **[[w:アルウェルニ族|アルウェルニー族]]をヘルウィイー族から隔てている<u>ケウェンナ山</u>は、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:山の名は写本によって Cebenna または Cevenna となっており、<br>     [[w:ガイウス・プリニウス・セクンドゥス|大プリーニウス]]が記した [[wikt:en:Cebenna#Latin|Cebenna]] がガリア語に近いようである。<br>    現在名はセヴェンヌ山地 Cévennes と呼ばれ、<br>     [[w:中央高地 (フランス)|フランス中央高地]](Massif Central)の南東部にそそり立っている。)</span> **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:etsi#Latin|etsi]] ~ [[wikt:en:tamen#Latin|tamen]] …「~としても、にもかかわらず…」)</span> **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:mons#Latin|mons]] は &beta;系写本の記述で、&alpha;系写本にはない。)</span> *[[wikt:en:durissimus#Latin|durissimo]] tempore anni **最も厳しい時季に *[[wikt:en:altissimus#Latin|altissima]] [[wikt:en:nix#Latin|nive]] iter [[wikt:en:impediebat|impediebat]], **豪[[w:雪|雪]]によって道を閉ざしていたのであるが、 *<u>tamen</u> [[wikt:en:discussus#Latin|discussa]] [[wikt:en:nix#Latin|nive]] sex in [[wikt:en:altitudo#Latin|altitudinem]] [[wikt:en:pes#Latin|pedum]] **にもかかわらず<small>(カエサル勢は)</small>深さ6<u>ペース</u>の雪を粉砕して、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:1[[ガイウス・ユリウス・カエサルの著作/通貨・計量単位#ペース|ペース]]は約29.6cmで、6ペースは約1.8メートル弱。)</span> *atque ita [[wikt:en:via#Latin|viis]] [[wikt:en:patefactus#Latin|patefactis]] [[wikt:en:summus#Latin|summo]] [[wikt:en:miles#Latin|militum]] <u>sudore</u> **このように兵士たちの最大の努力によって道が開かれて、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、&alpha;系写本では [[wikt:en:sudor#Latin|sudore]]「汗」だが、<br>         &beta;系写本では [[wikt:en:labor#Latin|labore]]「労苦」 となっている。)</span> *ad fines [[wikt:en:Arverni#Latin|Arvernorum]] [[wikt:en:pervenit#Latin|pervenit]]. **[[w:アルウェルニ族|アルウェルニー族]]の領土へ到達した。 :  ;   アルウェルニー族が、カエサルの奇襲に周章狼狽する *<!--❸--><sup>(3)</sup> Quibus [[wikt:en:oppressus#Latin|oppressis]] [[wikt:en:inopinans#Latin|inopinantibus]], **<small>(アルウェルニー族は)</small>彼らに対する<small>(カエサルの)</small>攻撃を予期していなかったが、 *quod se <u>Cevenna</u> ut [[wikt:en:murus#Latin|muro]] [[wikt:en:munitus#Latin|munitos]] [[wikt:en:existimabant|existimabant]], **──というのは、自分たちは<u>ケウェンナ</u>を壁として防御されていると考えていたからであり、 *ac <u>ne</u> [[wikt:en:singularis#Latin|singulari]] <u>quidem</u> [[wikt:en:umquam#Latin|umquam]] homini eo tempore anni [[wikt:en:semita#Latin|semitae]] [[wikt:en:patuerant|patuerant]], **かつ、その時季には、個人にとってさえも、小道はかつて開かれていなかったからであるが、── **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:ne quidem|ne ~ quidem]]「~でさえ…ない」)</span> *[[wikt:en:eques#Latin|equitibus]] [[wikt:en:imperat|imperat]], **<small>(カエサルは)</small>騎兵たちに命令する。 *ut, [[wikt:en:quam#Adverb|quam]] [[wikt:en:late#Latin|latissime]] [[wikt:en:possint|possint]], [[wikt:en:vagentur|vagentur]] **できるだけ広く動き回り、 *et [[wikt:en:quam#Adverb|quam]] maximum hostibus [[wikt:en:terror#Latin|terrorem]] [[wikt:en:inferant|inferant]]. **敵たちに最大限の恐怖を引き起こすように、と。 :  ;   ウェルキンゲトリークスが、ビトゥリゲース族のもとから軍勢を取って返す *<!--❹--><sup>(4)</sup> Celeriter haec [[wikt:en:fama#Latin|fama]] ac <u>nuntiis</u> **これらのことは速やかに風評や伝令たちによって、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、主要写本&omega; では [[wikt:en:nuntii#Latin|nuntii]] だが、<br>         ''[[ガリア戦記/注解編/写本と校訂版#Manutius|Manutius]]'' が [[wikt:en:nuntiis#Etymology_1|nuntiis]] と修正提案している。)</span> *ad [[wikt:en:Vercingetorix#Latin|Vercingetorigem]] [[wikt:en:perferuntur|perferuntur]]; **[[w:ウェルキンゲトリクス|ウェルキンゲトリークス]]のもとへ報知される。 *quem [[wikt:en:perterritus#Latin|perterriti]] omnes [[wikt:en:Arverni#Latin|Arverni]] [[wikt:en:circumsistunt|circumsistunt]] atque [[wikt:en:obsecrant|obsecrant]], **彼<small>〔ウェルキンゲトリークス〕</small>を、脅かされている[[w:アルウェルニ族|アルウェルニー族]]の皆が取り巻いて、嘆願する。 *ut suis [[wikt:en:fortuna#Latin|fortunis]] [[wikt:en:consulat#Latin|consulat]], **自分たち<small>〔アルウェルニー族〕</small>の境遇に配慮してくれるように、 *<u>neve</u> ab hostibus <u>diripiantur</u>, **自分たち<small>〔アルウェルニー族〕</small>が敵<small>〔ローマ人〕</small>によって略奪されることを許容しないように、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:この行は、&alpha;系写本では [[wikt:en:neve#Latin|neve]] ab hostibus [[wikt:en:diripiantur|diripiantur]] <br>         &beta;系写本では [[wikt:en:neu#Latin|neu]] se ab hostibus [[wikt:en:diripi|diripi]] [[wikt:en:patiatur|patiatur]] となっている。)</span> *[[wikt:en:praesertim#Latin|praesertim]] cum [[wikt:en:videat|videat]] [[wikt:en:omnis#Latin|omne]] ad se bellum [[wikt:en:translatus#Participle|translatum]]. **とりわけ、すべての戦争が自分たちへ向けられると<small>(彼が)</small>見なしているのであるから **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:praesertim cum ~;とりわけ~であるから)</span> : <!-- [[wikt:en:| --> *<!--❺--><sup>(5)</sup> Quorum ille [[wikt:en:prex#Latin|precibus]] [[wikt:en:permotus#Latin|permotus]] **彼<small>〔ウェルキンゲトリークス〕</small>は、その者たちの懇願に揺り動かされて、 *[[wikt:en:castra#Latin|castra]] ex [[wikt:en:Bituriges#Latin|Biturigibus]] [[wikt:en:movet|movet]] in [[wikt:en:Arverni#Latin|Arveruos]] [[wikt:en:versus#Latin|versus]]. **陣営をビトゥリゲース族のところから[[w:アルウェルニ族|アルウェルニー族]]のところに向けて行軍する。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:castra movet 「陣営を動かす」=「行軍する」)</span> **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:現在の[[w:ブールジュ|ブールジュ]]辺りから[[w:クレルモン=フェラン|クレルモン=フェラン]]辺りに南下したようである。)</span> <!-- <span style="color:#009900;"></span> <small></small> **:<span style="color:#009900;">(訳注: **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注: --> ===9節=== *<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/9節]] {{進捗|00%|2026-01-12}}</span> ;カエサルが北上して諸軍団と合流するが、同盟軍はゴルゴビナ攻略をめざす :  *<!--❶--><sup>(1)</sup> At Caesar, [[wikt:en:biduum#Latin|biduum]] in his locis [[wikt:en:moratus#Participle|moratus]], **それに対して、カエサルは2日間、この地に留まった。 *quod haec de [[wikt:en:Vercingetorix#Latin|Vercingetorige]] usu ventura [[wikt:en:opinio#Latin|opinione]] [[wikt:en:praeceperat|praeceperat]], **──というのは、[[w:ウェルキンゲトリクス|ウェルキンゲトリークス]]についてこれ<small>〔陣営の移動〕</small>が起こると予想をしていたからだが、── **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:usu venire 「起こる」→&nbsp; usu [[wikt:en:venturus#Latin|ventūra]] (esse) 「起こるであろう」)</span> *per causam [[wikt:en:supplementum#Latin|supplementi]] [[wikt:en:equitatus#Noun|equitatus]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:cogendus#Latin|cogendi]] **補充兵と騎兵隊を徴集するためという口実のもとに、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:per causam 「口実のもとに」)</span> *ab [[wikt:en:exercitus#Noun|exercitu]] [[wikt:en:discedit|discedit]]; **軍隊から離れる。 :  *<!--❷--><sup>(2)</sup> [[wikt:en:Brutus#Latin|Brutum]] [[wikt:en:adulescens#Noun|adulescentem]] his copiis [[wikt:en:praeficit|praeficit]]; **<small>(カエサルは)</small><u>青年ブルートゥス</u>にこの軍勢を指揮させる。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:青年ブルートゥスとは、<br>    [[w:デキムス・ユニウス・ブルトゥス・アルビヌス|デキムス・ブルートゥス]](<small>[[w:la:Decimus_Iunius_Brutus_Albinus|Decimus Iunius Brutus Albinus]]</small>)のことで、<br>    [[ガリア戦記 第3巻#14節|第3巻14節]]でカエサルの艦隊を指揮した。)</span> *hunc [[wikt:en:monet#Latin|monet]], ut in omnes partes [[wikt:en:eques#Latin|equites]] quam [[wikt:en:late#Latin|latissime]] [[wikt:en:pervagentur|pervagentur]]: **彼には、[[w:騎兵|騎兵]]たちがあらゆる方面にできるだけ広く駆け回るようにと、忠告する。 *<u>daturum</u> se <u>operam</u>, ne longius [[wikt:en:triduum#Latin|triduo]] ab [[wikt:en:castra#Latin|castris]] [[wikt:en:absit#Latin|absit]]. **自分<small>〔カエサル〕</small>は、3日間より長く陣営から離れないように、努力をするであろう、と。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:opera#Latin|operam]] dare 「努力をする」→&nbsp; operam [[wikt:en:daturus#Latin|datūrum]] (esse) 「努力をするであろう」)</span> [[画像:Image-Vienne-Cropped.jpg|thumb|right|300px|'''ウィエンナ'''(Vienna)すなわち現在のヴィエンヌ(Vienne)。ロダヌス川(現[[w:ローヌ川|ローヌ川]])のほとりにある当地は、南仏[[w:プロヴァンス|プロヴァンス地方]]と北仏[[w:ブルゴーニュ地域圏|ブルゴーニュ地方]]を結ぶ交通の要衝として、古代ローマ時代から栄え、今もローマ時代の遺跡が多く残る。]] :  ;   カエサルが、急いでウィエンナへ北進する *<!--❸--><sup>(3)</sup> His [[wikt:en:constitutus#Participle|constitutis]] rebus, **これらの事を決定すると、 *<u>omnibus</u> suis [[wikt:en:inopinans#Latin|inopinantibus]], **配下の皆が予期しないほど、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:omnibus は &beta;系写本の記述で、<br>         &alpha;系写本にはない。)</span> *quam [[wikt:en:maximus#Latin|maximis]] potest [[wikt:en:iter#Latin|itineribus]], **できるかぎりの強行軍で、 *[[wikt:en:Vienna#Etymology_1|Viennam]] [[wikt:en:pervenit#Latin|pervenit]]. **<u>ウィエンナ</u>に到着する。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:ウィエンナ [[w:la:Vienna|Vienna]] は、<br>     現在の[[w:ヴィエンヌ (イゼール県)|ヴィエンヌ]] ''[[w:en:Vienne, Isère|Vienne]]'')</span> :  ;   カエサルが、ハエドゥイー族領を抜けて、2個軍団が冬営するリンゴネース族領へ向けて北上する *<!--❹--><sup>(4)</sup> [[wikt:en:ibi#Latin|Ibi]] [[wikt:en:nactus#Latin|nactus]] [[wikt:en:recens#Latin|recentem]] [[wikt:en:equitatus#Latin|equitatum]], quem [[wikt:en:multus#Latin|multis]] ante diebus eo [[wikt:en:praemiserat|praemiserat]], **そこで、何日も前にそこに先遣していたまだ新兵の騎兵隊を得て、 [[画像:Langres_FR_(march_2008).jpg|thumb|right|300px|リンゴネース族(Lingones)の名を残す[[w:ラングル|ラングル]](Langres)の街の雪景色]] *neque [[wikt:en:diurnus#Latin|diurno]] neque [[wikt:en:nocturnus#Latin|nocturno]] itinere [[wikt:en:intermissus#Latin|intermisso]] **昼間も夜間も行軍を中断せずに、 *per fines [[wikt:en:Aedui#Latin|Haeduorum]] **[[w:ハエドゥイ族|ハエドゥイー族]]の領土を通って、 *in [[wikt:en:Lingones#Latin|Lingones]] [[wikt:en:contendit|contendit]], **<u>リンゴネース族のところ</u>に急いだ。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:リンゴネース族 [[w:la:Lingones|Lingones]] の首邑は<br>     現在の[[w:ラングル|ラングル]] ''[[w:en:Langres|Langres]]'' で、<br>     ローマ時代には [[w:la:Andematunnum|Andematunnum]] と呼ばれたが、<br>    ''[[wikt:fr:Lingones|Lingones]]'' の転訛が ''[[wikt:fr:Langres|Langres]]'' である。)</span> *[[wikt:en:ubi#Latin|ubi]] [[wikt:en:duo#Latin|duae]] [[wikt:en:legio#Latin|legiones]] [[wikt:en:hiemabant|hiemabant]], **そこには、2個[[w:ローマ軍団|軍団]]が冬営していた。 *ut, si [[wikt:en:aliquis#Latin|quid]] etiam de sua [[wikt:en:salus#Latin|salute]] ab [[wikt:en:Aedui#Latin|Haeduis]] [[wikt:en:iniretur|iniretur]] [[wikt:en:consilium#Latin|consilii]], [[wikt:en:celeritas#Latin|celeritate]] [[wikt:en:praecurreret|praecurreret]]. **もし<small>(カエサル)</small>自らの安全についてさえ、ハエドゥイー族により何らかの謀計が始められても、速やかに凌駕するように。 :  ;   カエサルが、リンゴネース族領の軍団冬営地へ到着して、諸軍団へ集結を指令する *<!--❺--><sup>(5)</sup> [[wikt:en:eo#Adverb|Eo]] cum [[wikt:en:pervenisset|pervenisset]], **<small>(カエサルは)</small>そこへ到着したときに、 *ad reliquas [[wikt:en:legio#Latin|legiones]] [[wikt:en:mittit|mittit]] **残りの軍団のもとへ<small>(伝令を)</small>遣わす。 *<u>prius</u>que omnes in unum locum [[wikt:en:cogit|cogit]], <u>quam</u> de eius [[wikt:en:adventus#Latin|adventu]] [[wikt:en:Arverni#Latin|Arvernis]] [[wikt:en:nuntiari|nuntiari]] [[wikt:en:posset#Latin|posset]]. **彼の到着について[[w:アルウェルニ族|アルウェルニー族]]に知らされ得るより早く、総勢が一か所に集結するように、と。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:priusquam#Latin|prius ~ quam]] …;…より早く~)</span> : <!-- [[wikt:en:| --> ;   ウェルキンゲトリークスが、ボイイー族がいるゴルゴビナの攻略を企図する *<!--❻--><sup>(6)</sup> Hac re [[wikt:en:cognitus#Participle|cognita]], **この事を知ると、 *[[wikt:en:Vercingetorix#Latin|Vercingetorix]] rursus in [[wikt:en:Bituriges#Latin|Bituriges]] [[wikt:en:exercitus#Noun|exercitum]] [[wikt:en:reducit|reducit]] **[[w:ウェルキンゲトリクス|ウェルキンゲトリークス]]は再びビトゥリゲース族のところに軍隊を連れ戻して、 *atque [[wikt:en:inde#Latin|inde]] [[wikt:en:profectus#Participle_2|profectus]] Gorgobinam, [[wikt:en:Boii#Latin|Boiorum]] [[wikt:en:oppidum#Latin|oppidum]], **そこから、[[w:ボイイ族|ボイイー族]]の城塞都市であるゴルゴビナへ出発した。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:ゴルゴビナ ''[[w:en:Gorgobina|Gorgobina]]'' は、現在の候補地としては、<br>     [[w:ニエーヴル県|ニエーヴル県]]のサン=パリズ=ル=シャテル<small>([[w:en:Saint-Parize-le-Châtel|Saint-Parize-le-Châtel]])</small><br>     [[w:アンドル=エ=ロワール県|アンドル=エ=ロワール県]]のラ・ゲルシュ([[w:en:La Guerche|La Guerche]])<br>    あるいは、[[w:シェール県|シェール県]]のサン=サテュル([[w:fr:Saint-Satur|Saint-Satur]])などが挙げられている。)</span> *quos ibi [[wikt:en:helvetico|Helvetico]] [[wikt:en:proelium#Latin|proelio]] [[wikt:en:victus#Participle|victos]] **──[[w:ヘルウェティイ族|ヘルウェーティイー族]]の戦闘で打ち負かされた彼らをそこに、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:ボイイー族はヘルウェーティイー族とともにガッリアに移動して、カエサルに敗れていた。第1巻28節~29節を参照。)</span> *Caesar [[wikt:en:conlocaverat#Latin|conlocaverat]] [[wikt:en:Aedui#Latin|Haeduis]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:adtribuerat#Latin|adtribuerat]], **カエサルは宿営させ、ハエドゥイー族<small>(の庇護)</small>に委ねていたのだが、── *[[wikt:en:oppugnare#Latin|oppugnare]] [[wikt:en:instituit#Latin|instituit]]. **<small>(ウェルキンゲトリークスはゴルゴビナの)</small>攻略を決意した。 <!-- <span style="color:#009900;"></span> <small></small> **:<span style="color:#009900;">(訳注: **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注: --> ===10節=== [[画像:Caesar's_campaign_to_Agedincum_in_52BC.png|thumb|right|250px|前節までのカエサルの[[w:ナルボンヌ|ナルボー]]からアゲディンクムへの進路(青線)および[[w:ウェルキンゲトリクス|ウェルキンゲトリークス]]の進路(赤線)。青字名は親ローマ部族、赤字名は反ローマ部族。カエサルは[[w:アルウェルニ族|アルウェルニー族]]の本拠ゲルゴウィアを突くと見せかけてウェルキンゲトリークスを引き寄せ、その間に[[w:ブルゴーニュ地域圏|ブルゴーニュ]]に冬営していた諸軍団と合流できた。これに対して、ウェルキンゲトリークスはボイイー族を攻めようとする。]] *<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/10節]] {{進捗|00%|2026-01-16}}</span> ;カエサルがアゲディンクムを発って、ボイイー族支援に向かう :  ;   カエサルが抱えることになった「大きな困難」とは? *<!--❶--><sup>(1)</sup> Magnam haec res Caesari [[wikt:en:difficultas#Latin|difficultatem]] ad [[wikt:en:consilium#Latin|consilium]] [[wikt:en:capiendus#Latin|capiendum]] [[wikt:en:adferebat|adferebat]]<!--:-->, **この事態は、カエサルが作戦を立てるためには、大きな困難を引き起こしていた。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:haec res 「この事態」とは、<br>     ウェルキンゲトリークスが<br>     ハエドゥイー族の庇護下にあったボイイー族を攻めること。)</span> **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:magnam ~ difficultatem 「大きな困難を」)</span> *si reliquam partem [[wikt:en:hiems#Latin|hiemis]] uno loco [[wikt:en:legio#Latin|legiones]] [[wikt:en:contineret|contineret]], **もし、冬の残りの期間に、諸[[w:ローマ軍団|軍団]]を1か所に留めておくならば、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:前節で述べられたように、<br>     カエサルはリンゴネース族の軍団冬営地に着いたときに、<br>     諸軍団に1か所に集結するべく伝令を遣わしていた。)</span> *ne, [[wikt:en:stipendiarius#Latin|stipendiariis]] [[wikt:en:Haedui#Latin|Haeduorum]] [[wikt:en:expugnatus#Latin|expugnatis]], [[wikt:en:cunctus#Latin|cuncta]] Gallia [[wikt:en:deficeret|deficeret]], **[[w:ハエドゥイ族|ハエドゥイー族]]の朝貢国が攻略されて、ガッリア全体が背くのではないか? **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:「ハエドゥイー族の朝貢国」とは、ボイイー族のこと。)</span> *quod [[wikt:en:nullus#Determiner|nullum]] amicis in eo [[wikt:en:praesidium#Latin|praesidium]] <u>videret positum esse</u>; **──というのは、彼<small>〔カエサル〕</small>においては、友邦に対するいかなる守備隊も置かれていないと<small>(ガッリアが)</small>見るからである──。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、<br>     [[ガリア戦記/注解編/写本と校訂版#写本の系図|&alpha;系写本]]のうち、&chi;系・M・B・S写本などでは [[wikt:en:videret|videret]] [[wikt:en:positus#Latin|positum]] esse 、<br>     &alpha;系写本のうち、写本M・L・Nなどでは [[wikt:en:videretur|videretur]] positum esse 、<br>     &beta;系写本では、positum videret となっている。)</span> *si [[wikt:en:mature#Adverb|maturius]] ex [[wikt:en:hiberna#Noun|hibernis]] [[wikt:en:educeret|educeret]], **もし、尚早に冬営地から<small>(諸軍団を)</small>進発させれば、 *ne ab re [[wikt:en:frumentarius#Latin|frumentaria]] [[wikt:en:durus#Latin|duris]] [[wikt:en:subvectio#Latin|subvectionibus]] [[wikt:en:laboraret|laboraret]]. **<small>(降雪時期の)</small>糧秣供給の厄介な輸送によって苦労するのではないか? :  *<!--❷--><sup>(2)</sup> <u>Praestare</u> [[wikt:en:visus#Participle|visum]] est tamen omnes [[wikt:en:difficultas#Latin|difficultates]] [[wikt:en:perpeti#Verb|perpeti]], **しかしながら、あらゆる困難に耐えることの方が<u>優っている</u>ように見える。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:praestare|praestare]] ~ [[wikt:en:quam#Adverb|quam]] …「…よりも~が優る」)</span> *<u>quam</u> [[wikt:en:tantus#Latin|tanta]] [[wikt:en:contumelia#Latin|contumelia]] [[wikt:en:acceptus#Latin|accepta]] omnium suorum [[wikt:en:voluntas#Latin|voluntates]] [[wikt:en:alienare#Latin|alienare]]. **これほどの恥辱を受けて、配下の皆の意欲を遠ざけてしまう<u>よりは</u>。 :  *<!--❸--><sup>(3)</sup> Itaque [[wikt:en:cohortatus#Latin|cohortatus]] [[wikt:en:Haedui#Latin|Haeduos]] de [[wikt:en:supportandus#Latin|supportando]] [[wikt:en:commeatus#Noun|commeatu]], **こうして、<small>(カエサルは)</small>ハエドゥイー族に軍需物資の輸送について、激励して、 *[[wikt:en:praemittit|praemittit]] ad [[wikt:en:Boii#Latin|Boios]], qui de suo [[wikt:en:adventus#Latin|adventu]] [[wikt:en:doceant|doceant]] **[[w:ボイイ族|ボイイー族]]のもとへ、<small>(カエサル)</small>自らの到着について知らせるための者たちを先遣して、 *[[wikt:en:hortentur|hortentur]]<nowiki>que</nowiki> ut in [[wikt:en:fides#Latin|fide]] [[wikt:en:maneant|maneant]] atque hostium [[wikt:en:impetus#Latin|impetum]] magno animo [[wikt:en:sustineant|sustineant]]. **<small>(カエサルへの)</small>信義に留まって、敵たちの襲撃に大いなる決意をもって持ちこたえるように、と激励させた。 [[画像:Aqueduc2.jpg|thumb|right|250px|アゲディンクム、すなわちセノネース族(Senones)の名を残す現在の[[w:サンス|サーンス]](Sens)に建てられたローマ時代の[[w:水道橋|水道橋]]遺跡。]] : <!-- [[wikt:en:| --> *<!--❹--><sup>(4)</sup> Duabus [[wikt:en:Agedincum#Latin|Agedinci]] legionibus atque [[wikt:en:impedimentum#Latin|impedimentis]] [[wikt:en:totus#Latin|totius]] [[wikt:en:exercitus#Noun|exercitus]] [[wikt:en:relictus#Latin|relictis]], **アゲディンクムに、2個軍団および軍隊全体の輜重を残すと、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:アゲディンクムは敵対するセノネース族の首邑だが、<br>     [[ガリア戦記 第6巻#44節|第6巻44節]]で6個軍団を冬営させていた。<br>     現在の[[w:サンス|サーンス]]。)</span> *ad [[wikt:en:Boii#Latin|Boios]] [[wikt:en:proficiscitur|proficiscitur]]. **[[w:ボイイ族|ボイイー族]]のもとへ出発した。 <!-- <span style="color:#009900;"></span> <small></small> **:<span style="color:#009900;">(訳注: **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注: --> ===11節=== [[画像:France_-_Loiret_-_Montargis_-_Passerelle_vers_l'écluse.JPG|thumb|right|250px|ウェッラウノドゥーヌムの候補地の一つであるモンタルジ(Montargis)の運河沿いの景観。セノネース族の城塞都市ウェッラウノドゥーヌム(Vellaunodunum)が現在のどの地点に当たるのか定説はない。アゲディンクム(現在の[[w:サンス|サーンス]])とケナブム(現在の[[w:オルレアン|オルレアン]])の中間地点であると考えられることから、モンタルジ([[w:en:Montargis|Montargis]])、ボーヌ=ラ=ロランド([[w:en:Beaune-la-Rolande|Beaune-la-Rolande]])やシャトー=ランドン([[w:en:Château-Landon|Château-Landon]])などが候補地に挙げられている。]] *<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/11節]] {{進捗|00%|2026-02-02}}</span> ;セノネース族のウェッラウノドゥーヌムを降し、カルヌーテース族のケナブムを攻略 :  *<!--❶--><sup>(1)</sup> [[wikt:en:alter#Latin|Altero]] die **<small>(カエサルは出発して)</small>翌日に、 *cum ad [[wikt:en:oppidum#Latin|oppidum]] [[wikt:en:Senones#Latin|Senonum]] [[wikt:en:Vellaunodunum#Latin|Vellaunodunum]] [[wikt:en:venisset|venisset]], **セノネース族の城塞都市ウェッラウノドゥーヌムへやって来たときに、 *ne [[wikt:en:aliquem|quem]] post se hostem [[wikt:en:relinqueret|relinqueret]], **自らの後方に何らかの敵を残しておかないように、 *[[wikt:en:quo#Latin|quo]] [[wikt:en:expeditior#Latin|expeditiore]] re [[wikt:en:frumentarius#Adjective|frumentaria]] [[wikt:en:uteretur|uteretur]], **そのことにより、妨げなく糧秣供給を享受するように、 *[[wikt:en:oppugnare#Latin|oppugnare]] [[wikt:en:instituit#Latin|instituit]] **<small>(同市の)</small>攻囲を決めて、 *<u>idque</u> [[wikt:en:biduum#Latin|biduo]] [[wikt:en:circumvallavit|circumvallavit]]; **それ<small>〔城塞都市〕</small>を2日間で<small>(塁壁で)</small>囲んだ。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、&alpha;系写本では [[wikt:en:id#Latin|id]]<nowiki>que</nowiki> だが、<br>         &beta;系写本では [[wikt:en:eo#Etymology_4|eo]]<nowiki>que</nowiki> となっている。)</span> :  ;   セノネース族の城塞都市ウェッラウノドゥーヌムが降伏する *<!--❷--><sup>(2)</sup> [[wikt:en:tertius#Latin|tertio]] die **3日目に、 *[[wikt:en:missus#Participle|missis]] ex [[wikt:en:oppidum#Latin|oppido]] [[wikt:en:legatus#Noun|legatis]] de [[wikt:en:deditio#Latin|deditione]], **城塞都市から降伏についての使節たちが遣わされて来て、 *[[wikt:en:arma#Latin|arma]] [[wikt:en:conferri|conferri]], **武器が運び集められること、 *[[wikt:en:iumentum#Latin|iumenta]] [[wikt:en:produci#Latin|produci]], **役畜が引き渡されること、 *[[wikt:en:sescenti#Latin|sescentos]] [[wikt:en:obses#Latin|obsides]] [[wikt:en:dari#Latin|dari]] [[wikt:en:iubet#Latin|iubet]]. **600名の人質が供出されることを<small>(カエサルが)</small>命じる。 :  ;   ウェッラウノドゥーヌムに副官トレボーニスと守備隊を残し、カエサル自身はケナブムへ向かう *<!--❸--><sup>(3)</sup> Ea qui [[wikt:en:conficeret|conficeret]], **それらのことを成就するための者として、 *[[wikt:en:Gaius#Latin|Gaium]] [[wikt:en:Trebonius#Latin|Trebonium]] [[wikt:en:legatus#Latin|legatum]] [[wikt:en:relinquit|relinquit]]. **<ruby><rb>[[w:レガトゥス|総督副官]]</rb><rp>(</rp><rt>レーガートゥス</rt><rp>)</rp></ruby> [[w:ガイウス・トレボニウス|ガーイウス・トレボーニウス]]を<small>(ウェッラウノドゥーヌムに)</small>残留させる。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[w:la:Gaius Trebonius|Gaius Trebonius]] は、カエサルの副官の一人。)</span> *Ipse, ut quam primum iter <u>faceret</u><ref>faceret はα系写本の表記で、β系写本では conficeret となっている。</ref>, **<small>(カエサル)</small>自身は、できるだけ素早く<small>(ゴルゴビナへの)</small>行軍を成就するように、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:quam#Adverb|quam]] [[wikt:en:primum#Latin|primum]] 〜「できるだけ素早く〜」)</span> **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、&alpha;系写本では [[wikt:en:faceret|faceret]] だが、<br>         &beta;系写本では [[wikt:en:conficeret|conficeret]] となっている。)</span> *[[wikt:en:Genabum#Latin|Cenabum]] [[wikt:en:Carnutes#Latin|Carnutum]] [[wikt:en:proficiscitur|proficiscitur]]; **カルヌーテース族のケナブムに出発する。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:ケナブム Cenabum はケルト語風の読みで、現在の[[w:オルレアン|オルレアン]]。)</span> :  *<!--❹--><sup>(4)</sup> qui tum primum [[wikt:en:adlatus#Latin|adlato]] [[wikt:en:nuntium#Latin|nuntio]] de [[wikt:en:oppugnatio#Latin|oppugnatione]] [[wikt:en:Vellaunodunum#Latin|Vellaunoduni]], **そのとき彼ら<small>〔カルヌーテース族〕</small>は、当初はウェッラウノドゥーヌムの攻囲についての報告をもたらされて、 *cum [[wikt:en:longe#Latin|longius]] eam rem <u>ductum</u> [[wikt:en:iri#Latin|iri]] [[wikt:en:existimarent|existimarent]], **その事・軍事作戦はより長く引き延ばされて行われると考えていたので、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:ductus#Noun_2|ductus]] は、軍事的な指揮・作戦などを表す。[[#62節]]も同様。)</span> *[[wikt:en:praesidium#Latin|praesidium]] [[wikt:en:Genabum#Latin|Cenabi]] [[wikt:en:tuendus#Latin|tuendi]] causa, quod eo [[wikt:en:mitterent|mitterent]], [[wikt:en:comparabant|comparabant]]. **ケナブムを固守するために、守備隊をそこへ派遣することを準備していた。 :  ;   カエサルが、カルヌーテース族の城塞都市ケナブムの攻囲を翌日に延期する *<!--❺--><sup>(5)</sup> [[wikt:en:huc#Latin|Huc]] [[wikt:en:biduum#Latin|biduo]] [[wikt:en:pervenit#Etymology_1|pervenit]]. **<small>(カエサルは)</small>ここ<small>〔ケナブム〕</small>へ2日間で到着する。 *[[wikt:en:castra#Latin|Castris]] ante oppidum [[wikt:en:positus#Participle|positis]], **城塞都市の前に陣営を設置したが、 *[[wikt:en:dies#Latin|diei]] [[wikt:en:tempus#Latin|tempore]] [[wikt:en:exclusus#Latin|exclusus]] **日の時刻<small>〔夕刻〕</small>によって妨げられたので、 *in posterum [[wikt:en:oppugnatio#Latin|oppugnationem]] [[wikt:en:differt|differt]], **翌日に攻囲を延期する。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:in posterum = in [[wikt:en:posterus#Latin|posterum]] [[wikt:en:diem#Latin|diem]]「翌日に」)</span> *[[wikt:en:quisque#Latin|quaeque]] ad eam rem [[wikt:en:usus#Latin|usui]] [[wikt:en:sint#Latin|sint]], **その事<small>〔攻囲〕</small>に有益になることは何であれ、 *[[wikt:en:miles#Latin|militibus]] [[wikt:en:imperat|imperat]]; **兵士たちに命令する。 [[画像:Orleans.jpg|thumb|right|400px|ケナブム(Cenabum)すなわち現在の[[w:オルレアン|オルレアン]](Orléans)を流れるリゲル川(現在の[[w:ロワール川|ロワール川]])の景観。左が北岸のオルレアン聖十字架大聖堂、右がジョージ5世橋と思われる。]] :  *<!--❻--><sup>(6)</sup> et, quod oppidum [[wikt:en:Genabum#Latin|Cenabum]] [[wikt:en:pons#Latin|pons]] [[wikt:en:flumen#Latin|fluminis]] [[wikt:en:Liger#Latin|Ligeris]] [[wikt:en:contingebat|contingebat]], **城塞都市ケナブムには、リゲル川の橋が接していたので、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:リゲル川は、現在の[[w:ロワール川|ロワール川]]。)</span> *[[wikt:en:veritus#Latin|veritus]] ne [[wikt:en:noctu#Adverb|noctu]] ex oppido [[wikt:en:profugerent|profugerent]], **夜間に城塞都市から<small>(敵勢が)</small>逃亡するのではないかと恐れて、 *[[wikt:en:duo#Latin|duas]] legiones in [[wikt:en:arma#Latin|armis]] [[wikt:en:excubare|excubare]] [[wikt:en:iubet#Latin|iubet]]. **<small>(カエサルは)</small>2個[[w:ローマ軍団|軍団]]に武装して寝ずの番をすることを命じる。 :  ;   ケナブムの住民たちが退避し始める *<!--❼--><sup>(7)</sup> [[wikt:en:Genabensis#Noun|Cenabenses]] paulo ante mediam noctem **ケナブムの人々は、真夜中の少し前に *[[wikt:en:silentium#Latin|silentio]] ex oppido [[wikt:en:egressus#Participle|egressi]] **沈黙のうちに城塞都市から出て、 *flumen [[wikt:en:transire#Latin|transire]] [[wikt:en:coeperunt|coeperunt]]. **川を渡り始めた。 :  ;   カエサルの諸軍団がケナブムを制圧する *<!--❽--><sup>(8)</sup> Qua re per [[wikt:en:explorator#Latin|exploratores]] [[wikt:en:nuntiatus#Latin|nuntiata]] **その事が偵察者たちによって報告されると、 *Caesar legiones, quas [[wikt:en:expeditus#Latin|expeditas]] esse [[wikt:en:iusserat|iusserat]] **カエサルは、戦備を整えることを命じていた諸軍団を、 *[[wikt:en:porta#Latin|portis]] [[wikt:en:incensus#Participle|incensis]] **<small>(ケナブムの)</small>城門を焼き打ちさせた後で、 *[[wikt:en:intromittit|intromittit]] atque oppido [[wikt:en:potitur|potitur]], **<small>(軍団を)</small>送り込み、城塞都市を占領させて、 *[[wikt:en:perpaucus#Latin|perpaucis]] ex hostium numero [[wikt:en:desideratus#Latin|desideratis]] [[wikt:en:quin#Latin|quin]] [[wikt:en:cunctus#Latin|cuncti]] [[wikt:en:caperentur#Etymology_1|caperentur]], **敵のうちからわずかな数を取り逃がしたが、むしろ皆がことごとく捕らえられた。 *quod [[wikt:en:pons#Latin|pontis]] atque [[wikt:en:iter#Latin|itinerum]] [[wikt:en:angustia#Latin|angustiae]] <u>multitudinis</u> fugam [[wikt:en:intercluserant|intercluserant]]. **──というのは、橋や道の狭さが、大勢の逃亡をさえぎったからである。── **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、&alpha;系写本では [[wikt:en:multitudinis|multitudinis]]<sub>&nbsp;(単数・属格)</sub> だが、<br>         &beta;系写本では [[wikt:en:multitudini|multitudini]]<sub>&nbsp;(単数・与格)</sub> となっている。)</span> : <!-- [[wikt:en:| --> ;   カエサル勢がケナブムを略奪・焼き討ち。リゲル川を渡ってビトゥリゲース族領へ達する *<!--❾--><sup>(9)</sup> Oppidum [[wikt:en:diripit|diripit]] atque [[wikt:en:incendit|incendit]], **<small>(カエサルは)</small>城塞都市を略奪し、焼き討ちして、 *[[wikt:en:praeda#Latin|praedam]] militibus [[wikt:en:donat#Latin|donat]], **略奪品を兵士たちに与える。 *[[wikt:en:exercitus#Noun|exercitum]] <u>Ligerem</u> [[wikt:en:traducit|traducit]] ***軍隊にリゲル川を渡らせて、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、&alpha;系写本では [[wikt:en:Ligerem|Ligerem]] だが、<br>         &beta;系写本では Ligerim となっている。)</span> *atque in [[wikt:en:Bituriges#Latin|Biturigum]] fines [[wikt:en:pervenit#Etymology_1|pervenit]]. *ビトゥリゲース族の領土に到達する。 <!-- <span style="color:#009900;"></span> <small></small> **:<span style="color:#009900;">(訳注: **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注: --> ===12節=== [[画像:Sancerre.jpg|thumb|right|250px|ビトゥリゲース族の城塞都市があったと考えられる[[w:サンセール|サンセール]]([[w:en:Sancerre|Sancerre]])の街並み。カエサルがケナブム(現[[w:オルレアン|オルレアン]])からリゲル川(現[[w:ロワール川|ロワール川]])沿いに当初の目的地であったゴルゴビナへ向かい、後にアウァーリクム(現[[w:ブールジュ|ブールジュ]])へ右折したと見なせば、この地がノウィオドゥーヌムであったとも考えられる。街の名 Sancerre の意味が「カエサルに捧げられた」であるという説もある。現在は[[w:ロワールワイン|ロワールワイン]]の産地として有名で、辛口の白ワインなどの銘柄「Sancerre」にもなっている。]] [[画像:Neung-sur-Beuvron_église_Saint-Denis_1.jpg|thumb|right|250px|城塞都市ノウィオドゥーヌム(Noviodunum)の所在地として現在有力視されている[[w:ロワール=エ=シェール県|ロワール=エ=シェール県]]のヌン=スュル=ブーヴロン([[w:en:Neung-sur-Beuvron|Neung-sur-Beuvron]])のサン=ドニ教会。カエサルは当初の目的地であったボイイー族のゴルゴビナへは真っ直ぐ向かわずに大きく迂回しており、ケナブム(現[[w:オルレアン|オルレアン]])の南方約45kmにあるこの地点(Beuvron川沿いのNeung)がノウィオドゥーヌムであると推定されている。上空からは、ガッリア時代の城塞都市跡の輪郭が見て取れるという。しかしながら、ボイイ族からは遠い位置にある。]] *<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/12節]] {{進捗|00%|2026-02-02}}</span> ;ビトゥリゲース族のノウィオドゥーヌムを降すが、敵の騎兵が来援 :  *<!--❶--><sup>(1)</sup> [[wikt:en:Vercingetorix#Latin|Vercingetorix]], ubi de Caesaris [[wikt:en:adventus#Latin|adventu]] [[wikt:en:cognovit#Latin|cognovit]], **[[w:ウェルキンゲトリクス|ウェルキンゲトリークス]]は、カエサルの到来について知るや否や、 *[[wikt:en:oppugnatio#Latin|oppugnatione]] <u>destitit</u> **<small>(ボイイー族の城塞都市ゴルゴビナの)</small>攻略を取り止めて、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、<br>     &alpha;系写本では [[wikt:en:destitit|destitit]]<sub>&nbsp;(完了形)</sub> だが、<br>     &beta;系写本や印刷本では [[wikt:en:desistit#Latin|desistit]]<sub>&nbsp;(現在形)</sub> となっている。)</span> *atque [[wikt:en:obviam#Adverb|obviam]] Caesari [[wikt:en:proficiscitur|proficiscitur]]. **カエサルの方に向かって進発する。 :  *<!--❷--><sup>(2)</sup> Ille oppidum [[wikt:en:Biturigēs|Biturigum]] [[wikt:en:positus#Latin|positum]] in via [[wikt:en:Noviodunum#Latin|Noviodunum]] [[wikt:en:oppugnare#Latin|oppugnare]] [[wikt:en:instituerat|instituerat]]. **彼<small>〔カエサル〕</small>は、途中に位置しているビトゥリゲース族の[[w:オッピドゥム|城塞都市]]ノウィオドゥーヌムの攻略を決めていた。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:どこへの途中なのか明記されていないため、その解釈により場所についての解釈が変わるようである。)</span> :  ;   カエサルの城塞都市ノウィオドゥーヌムへの降伏条件 *<!--❸--><sup>(3)</sup> [[wikt:en:qui#Determiner|Quo]] ex oppido **その城塞都市から *cum legati ad eum [[wikt:en:venissent|venissent]] [[wikt:en:oratum#Verb|oratum]] ut sibi [[wikt:en:ignosceret|ignosceret]] suaeque vitae [[wikt:en:consuleret|consuleret]], **使節たちが彼<small>〔カエサル〕</small>のもとへ、自分たちを容赦して生命を助けるように嘆願するために、やって来たときに、 *ut celeritate reliquas res [[wikt:en:conficeret|conficeret]], [[wikt:en:qui#Determiner|qua]] [[wikt:en:pleraque#Latin|pleraque]] erat [[wikt:en:consecutus#Latin|consecutus]], **<small>(カエサルは)</small>多くのことを実行してきた迅速さによって、ほかの事を成し遂げるために、 *arma [[wikt:en:conferri|conferri]], **武具が運び集められること、 *[[wikt:en:quus#Latin|equos]] [[wikt:en:produci#Verb_2|produci]], **馬匹が引き渡されること、 *obsides [[wikt:en:dari#Latin|dari]] [[wikt:en:iubet#Latin|iubet]]. **人質が供出されること、を命じる。 :  *<!--❹--><sup>(4)</sup> Parte iam obsidum [[wikt:en:traditus#Participle|tradita]], **すでに人質の一部が移送されて、 *cum [[wikt:en:reliqua#Latin|reliqua]] [[wikt:en:administrarentur|administrarentur]], **残り<small>(の人質たち)</small>が処置されていたときに、 *[[wikt:en:centurio#Latin|centurionibus]] et paucis [[wikt:en:miles#Latin|militibus]] [[wikt:en:intromissus#Latin|intromissis]], qui arma [[wikt:en:iumentum#Latin|iumenta]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:conquirerent|conquirerent]], **<ruby><rb>[[w:ケントゥリオ|百人隊長]]</rb><rp>(</rp><rt>ケントゥリオ</rt><rp>)</rp></ruby>たちや若干の兵士たちが、武器や[[w:使役動物|役畜]]を探し集めるべく<small>(城塞都市の中に)</small>送り込まれていたのだが、 *[[wikt:en:equitatus#Noun|equitatus]] hostium procul [[wikt:en:visus#Latin|visus]] est, qui [[wikt:en:agmen#Latin|agmen]] [[wikt:en:Vercingetorix#Latin|Vercingetorigis]] [[wikt:en:antecesserat|antecesserat]]. **ウェルキンゲトリークスの隊列に先行していた敵の[[w:騎兵|騎兵隊]]が遠くに望見された。 :  ;   ウェルキンゲトリークスの来援に気づいた城塞の者たちが、籠城に転じる *<!--❺--><sup>(5)</sup> Quem [[wikt:en:simulatque|simulatque]] [[wikt:en:oppidanus#Noun|oppidani]] [[wikt:en:conspexerunt|conspexerunt]] atque in [[wikt:en:spes#Latin|spem]] [[wikt:en:auxilium#Latin|auxilii]] [[wikt:en:venerunt|venerunt]], **それ<small></small>を城塞都市の者たちが視認して、救援の希望を抱くや否や、 *[[wikt:en:clamor#Latin|clamore]] [[wikt:en:sublatus#Etymology_1|sublato]] **雄叫びを上げて、 *arma capere, **武具を取ること、 *portas [[wikt:en:claudere#Etymology_1|claudere]], **城門を閉じること、 *[[wikt:en:murus#Latin|murum]] [[wikt:en:complere|complere]] [[wikt:en:coeperunt|coeperunt]]. **城壁を<small>(兵で)</small>満たすこと、を始めた。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:sublato は [[wikt:en:tollo|tollo]] の分詞)</span> : <!-- [[wikt:en:| --> ;   城塞民たちの心変わりに感づいたローマ人の将兵たちが城外に撤収する *<!--❻--><sup>(6)</sup> [[wikt:en:centurio#Latin|Centuriones]] in oppido, **城塞都市の中の<small>(カエサルの配下の)</small>百人隊長たちは、 *cum ex [[wikt:en:significatio#Latin|significatione]] Gallorum [[wikt:en:novus#Latin|novi]] [[wikt:en:aliquis#Latin|aliquid]] ab iis [[wikt:en:iniri#Latin|iniri]] consilii [[wikt:en:intellexissent|intellexissent]], **ガッリア人たちの兆候から、彼らによる何らかの新たな謀りごとが始められていると察知していたので、 *[[wikt:en:gladius#Latin|gladiis]] [[wikt:en:destrictus#Latin|destrictis]] **<ruby><rb>[[w:グラディウス (武器)|長剣]]</rb><rp>(</rp><rt>グラディウス</rt><rp>)</rp></ruby> を抜いて、 *portas [[wikt:en:occupaverunt|occupaverunt]] **城門を占拠して、 *suosque omnes [[wikt:en:incolumis#Latin|incolumes]] [[wikt:en:receperunt|receperunt]]. **配下たち皆を無傷なままで退却させた。 <!-- <span style="color:#009900;"></span> <small></small> **:<span style="color:#009900;">(訳注: **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注: --> ===13節=== *<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/13節]] {{進捗|00%|2026-02-15}}</span> [[画像:Caesar's_campaign_to_Noviodunum_in_52BC.png|thumb|right|250px|ノウィオドゥーヌムに至るカエサルの進路(青線)および[[w:ウェルキンゲトリクス|ウェルキンゲトリークス]]の進路(赤線)。青字名は親ローマ部族、赤字名は反ローマ部族。カエサルはアゲディンクムを発してからウェッラウノドゥーヌム、ケナブム、ノウィオドゥーヌムを続けて降し、ボイイー族のゴルゴビナ攻略を諦めたウェルキンゲトリークスもノウィオドゥーヌム来援に駆けつけて来た。ここに、初めて両軍が騎兵戦で激突することになった。]] ;同盟軍の騎兵を撃退、城塞都市を再び降して、アウァーリクム攻めに向かう :  ;   カエサルが、騎兵戦の切り札としてゲルマーニア騎兵を繰り出す *<!--❶--><sup>(1)</sup> Caesar ex castris [[wikt:en:equitatus#Latin|equitatum]] [[wikt:en:educi#Latin|educi]] [[wikt:en:iubet#Latin|iubet]], **カエサルは、陣営から[[w:騎兵|騎兵隊]]を進発させることを命じて、 *<u>[[wikt:en:proelium#Latin|proelium]]</u> [[wikt:en:equester#Latin|equestre]] [[wikt:en:committit|committit]]; **<small>(ウェルキンゲトリークス勢と)</small>騎兵戦を交える。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、<br>     &alpha;系写本では proelium だが、<br>     &beta;系写本では proelium<u>que</u> となっている。)</span> *[[wikt:en:laborans#Latin|laborantibus]] iam suis **配下の者たちがすでに苦戦していたときに、 *[[wikt:en:Germanus#Adjective|Germanos]] [[wikt:en:eques#Latin|equites]] circiter CCCC([[wikt:en:quadringentos|quadringentos]]) [[wikt:en:submittit|submittit]], **<small>(カエサルは)</small>[[w:ゲルマニア|ゲルマーニア]]人の騎兵たち約400騎を救援に派遣する。 *quos ab [[wikt:en:initium#Latin|initio]] <u>habere [[wikt:en:secum#Latin|secum]]</u> [[wikt:en:instituerat|instituerat]]. **その者らは<small>(戦いの)</small>当初から自分のそばに保持すると決めていたものであった。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、<br>     &chi;系・B・M・S写本では habere secum だが、<br>     &beta;系・L・N写本では secum habere となっている。)</span> :  ;   ゲルマーニア騎兵が、ウェルキンゲトリークス配下の騎兵を一蹴する *<!--❷--><sup>(2)</sup> Eorum [[wikt:en:impetus#Latin|impetum]] [[wikt:en:Galli#Latin|Galli]] [[wikt:en:sustineo#Latin|sustinere]] non [[wikt:en:potuerunt|potuerunt]] **彼ら<small>〔ゲルマーニア人騎兵〕</small>の突撃に<small>(敵側の)</small>ガッリア人たちは持ちこたえることができず、 *atque in fugam [[wikt:en:coniectus#Participle|coniecti]] **敗走に追いやられて、 *multis [[wikt:en:amissus#Latin|amissis]] **大勢の者を失い、 *se ad [[wikt:en:agmen#Latin|agmen]] [[wikt:en:receperunt|receperunt]]. **<small>(後方にいたウェルキンゲトリークスの)</small>隊列に退却した。 :  ;   城塞都市ノウィオドゥーヌムがカエサルの軍門に降る *Quibus [[wikt:en:profligatus#Latin|profligatis]], **彼ら<small>〔ウェルキンゲトリークスの騎兵隊〕</small>が制圧されると、 *rursus [[wikt:en:oppidanus#Noun|oppidani]] [[wikt:en:perterritus#Latin|perterriti]] **[[w:オッピドゥム|城塞都市]]<small>〔ノウィオドゥーヌム〕</small>の者たちは再び怖れをなして、 *[[wikt:en:comprehensus#Latin|comprehensos]] eos, quorum [[wikt:en:opera#Latin|opera]] [[wikt:en:plebs#Latin|plebem]] [[wikt:en:concitatus#Latin|concitatam]] [[wikt:en:existimabant|existimabant]], **その働きかけによって民衆を扇動したと<small>(城塞の民が)</small>考えていたところの者たちを拘束して、 *ad Caesarem [[wikt:en:perduxerunt|perduxerunt]] **カエサルのもとへ連行して、 *seseque ei [[wikt:en:dediderunt|dediderunt]]. **自分たちも彼<small>〔カエサル〕</small>に降伏した。 : <!-- [[wikt:en:| --> ;   カエサルが、ビトゥリゲース族の城塞都市アウァーリクムを目指す *<!--❸--><sup>(3)</sup> Quibus rebus [[wikt:en:confectus#Latin|confectis]], **それらの事が成し遂げられると、 *Caesar ad oppidum [[wikt:en:Avaricum#Latin|Avaricum]], **カエサルは、[[w:オッピドゥム|城塞都市]]アウァーリクムへ、 *quod erat [[wikt:en:maximus#Latin|maximum]] [[wikt:en:munitissimus#Latin|munitissimum]]<nowiki>que</nowiki> in finibus [[wikt:en:Bituriges#Latin|Biturigum]] atque [[wikt:en:ager#Latin|agri]] [[wikt:en:fertilissimus#Latin|fertilissima]] [[wikt:en:regio#Latin|regione]], **──それはビトゥリゲース族の領土で耕地の最も肥沃な地方にあり、最大かつ最も要塞化されていたが、── *[[wikt:en:profectus#Etymology_3|profectus]] est, **<small>(そこへ)</small>出発した。 *quod eo oppido [[wikt:en:receptus#Latin|recepto]] **──というのは、その城塞都市を獲得することで、 *[[wikt:en:civitas#Latin|civitatem]] [[wikt:en:Bituriges#Latin|Biturigum]] se in [[wikt:en:potestas#Latin|potestatem]] [[wikt:en:redacturus#Latin|redacturum]] [[wikt:en:confidebat|confidebat]]. **ビトゥリゲースの部族国家を<small>(カエサルの)</small>隷下に引き戻すであろうと、確信していたからである──。 <!-- <span style="color:#009900;"></span> <small></small> **:<span style="color:#009900;">(訳注: **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注: --> ==アウァーリクム攻略戦== ===14節=== *<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/14節]] {{進捗|00%|2026-03-08}}</span> ;ウェルキンゲトリークスが兵站妨害と焦土戦術を決断 :  *<!--❶--><sup>(1)</sup> [[wikt:en:Vercingetorix#Latin|Vercingetorix]] tot [[wikt:en:continuus#Latin|continuis]] [[wikt:en:incommodum#Latin|incommodis]] [[wikt:en:Vellaunodunum#Latin|Vellaunoduni]], [[wikt:en:Genabum#Latin|Cenabi]], [[wikt:en:Noviodunum#Latin|Novioduni]] [[wikt:en:acceptus#Latin|acceptis]] **[[w:ウェルキンゲトリクス|ウェルキンゲトリークス]]は、ウェッラウノドゥーヌム、ケナブム、ノウィオドゥーヌムと、このような多くの引き続く敗北をこうむると、 *suos ad [[wikt:en:concilium#Latin|concilium]] [[wikt:en:convocat#Latin|convocat]]. **麾下の者たちを会合へ召集する。 : <!-- [[wikt:en:| --> ;   ウェルキンゲトリークスが、ローマ勢の糧道を断つことを提言 *<!--❷--><sup>(2)</sup> [[wikt:en:docet|Docet]] longe alia ratione esse bellum [[wikt:en:gerendus#Latin|gerendum]] atque antea [[wikt:en:gestus#Participle|gestum]] sit. **以前に遂行されていたのとはまったく別の作戦で戦争が遂行されるべきである、と説く。 *Omnibus [[wikt:en:modus#Latin|modis]] huic rei studendum, ut [[wikt:en:pabulatio#Latin|pabulatione]] et [[wikt:en:commeatus#Noun|commeatu]] Romani [[wikt:en:prohibeantur|prohibeantur]]. **ローマ人たちが[[w:糧秣|糧秣]]徴発と物資輸送を妨げられるべく、この事をあらゆる方法で追求するべきだ。 :  *<!--❸--><sup>(3)</sup> Id esse facile, **そのことは、容易である。 *quod [[wikt:en:equitatus#Latin|equitatu]] ipsi [[wikt:en:abundent#Latin|abundent]] **というのは<small>(我々ガッリア勢)</small>自身は[[w:騎兵|騎兵隊]]がたくさんおり、 *et quod anni tempore [[wikt:en:subleventur|subleventur]]. **<small>(冬という)</small>時季に支えられているのだから。 :  ;   ローマ人が穀物倉に群がるところを騎兵で襲撃するべし *<!--❹--><sup>(4)</sup> [[wikt:en:pabulum#Latin|Pabulum]] [[wikt:en:secari|secari]] non posse; **<small>(この時季には)</small><ruby><rb>[[w:秣|秣]]</rb><rp>(</rp><rt>まぐさ</rt><rp>)</rp></ruby> は刈り取られることができない。 *[[wikt:en:necessario#Adverb|necessario]] [[wikt:en:dispersus#Latin|dispersos]] hostes ex [[wikt:en:aedificium#Latin|aedificiis]] [[wikt:en:petere|petere]]; **敵たち<small>〔ローマ勢〕</small>はやむなく分散して、家屋から<small>(糧秣を)</small>求める。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:ほとんどの会話が間接話法を採る本書で、<br>    ローマ勢が「敵」hostes と表現されることは極めてまれである。)</span> *hos omnes [[wikt:en:cotidie#Latin|cotidie]] ab [[wikt:en:eques#Latin|equitibus]] <u>deleri</u> posse. **これら皆を日々に<small>(ガッリア側の)</small>騎兵隊によって壊滅させることができる。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、&beta;系写本では [[wikt:en:deleri|deleri]]「滅ぼされる」だが、<br>         &alpha;系写本では [[wikt:en:diligi#Latin|diligi]]「分断される」となっている。)</span> :  ;   焦土戦術をもって、ローマ人と軍馬を飢えさせるべし *<!--❺--><sup>(5)</sup> Praeterea [[wikt:en:salus#Latin|salutis]] causa rei [[wikt:en:familiaris#Adjective|familiaris]] [[wikt:en:commodum#Latin|commoda]] [[wikt:en:neglegendus#Latin|neglegenda]]; **さらに<small>(同盟諸部族に共通の)</small>安全のために、私有資産の利益はなおざりにされるべきだ。 *[[wikt:en:vicus#Latin|vicos]] atque [[wikt:en:aedificium#Latin|aedificia]] [[wikt:en:incendi#Verb_2|incendi]] [[wikt:en:oportet#Latin|oportere]] **<small>(以下のような領域の)</small>村々や建物は焼かれるべきだ。 *hoc spatio ab Boia quoque versus, quo [[wikt:en:pabulandi#Verb|pabulandi]] causa [[wikt:en:adire#Latin|adire]] posse [[wikt:en:videantur|videantur]]. **[[w:ボイイ族|ボイイー族]]のところから四方八方へ糧秣徴発するために赴くことができると思われる領域では。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:主要写本&omega; にある ab Boia「ボイイー族のところから」は、<br>    現代では「街道から」ab via と修正読みされることが多い。)</span> **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:quoque#Latin|quōque]] [[wikt:en:versus#Adverb|versus]] = [[wikt:en:quisque#Latin|quōquō]] versus「あらゆる方向へ」)</span> [[画像:Eglise_saint_parize_le_chatel.jpg|thumb|right|250px|ボイイ族(Boii)の領内であったと思われる現在のサン=パリーズ=ル=シャテルの教会。ボイイー族の首邑ゴルゴビナは、[[w:ニエーヴル県|ニエーヴル県]]のサン=パリーズ=ル=シャテル([[w:en:Saint-Parize-le-Châtel|Saint-Parize-le-Châtel]])あるいは[[w:シェール県|シェール県]]のラ・ゲルシュ=スュル=ローボワ([[w:en:La Guerche-sur-l'Aubois|La Guerche-sur-l'Aubois]])の近辺にあったと推定されている。]] :  *<!--❻--><sup>(6)</sup> Harum ipsis rerum copiam [[wikt:en:suppeto#Latin|suppetere]], **<small>(ガッリア勢)</small>自身には、これらの物は、豊富に貯えてある。 *quod quorum in finibus bellum [[wikt:en:geratur|geratur]], eorum [[wikt:en:ops#Noun_4|opibus]] [[wikt:en:subleventur|subleventur]]; **──というのは、戦争が遂行される領土内の者たちの、彼らの助力に支えられているからだ。── :  *<!--❼--><sup>(7)</sup> Romanos <u>aut</u> [[wikt:en:inopia#Latin|inopiam]] non [[wikt:en:laturus#Latin|laturos]] <span style="color:#009900;">(esse)</span> **ローマ人たちは、あるいは<small>(糧食の)</small>欠乏に耐えられないであろうし、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:aut#Latin|aut]] ~ aut …「あるいは~あるいは…」)</span> *<u>aut</u> magno <u>cum</u> periculo longius <u>ab</u> castris [[wikt:en:processurus#Latin|processuros]] <span style="color:#009900;">(esse)</span>; **あるいは大きな危険とともに陣営からより遠くに進み出るであろう。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:cum は、&rho;系写本・写本Tの記述で、<br>        &alpha;系写本・写本Vにはない。)</span> **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:ab は、&alpha;系・&rho;系写本・写本Vの記述で、写本Tでは a となっている。)</span> :  *<!--❽--><sup>(8)</sup> neque [[wikt:en:interesse#Latin|interesse]], ipsos<u>ne</u> [[wikt:en:interficiant|interficiant]], [[wikt:en:impedimentum#Latin|impedimentis]]<u><nowiki>ne</nowiki></u> [[wikt:en:exuant|exuant]], **<small>(ローマ人の)</small>当人たちを殺戮するか、輜重を奪い取るか、<small>(どちらであろうが)</small>違いはない。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:-ne#Latin|-ne]] は疑問小辞。~ -ne, … -ne 「~か、…か」)</span> *quibus [[wikt:en:amissus#Latin|amissis]] bellum [[wikt:en:geri#Latin|geri]] non [[wikt:en:possit|possit]]. **それら<small>〔輜重〕</small>を失えば、戦争を遂行することができないのだから。 :  *<!--❾--><sup>(9)</sup> Praeterea oppida [[wikt:en:incendi#Verb_2|incendi]] [[wikt:en:oportet#Latin|oportere]], **さらに、<small>(以下のような)</small>[[w:オッピドゥム|城塞都市]]は焼かれなければならない。 *quae non [[wikt:en:munitio#Latin|munitione]] et loci natura <u>ab omni</u> sint <u>periculo</u> [[wikt:en:tutus#Latin|tuta]], **防塁や地勢によってあらゆる危険から守られていない<small>(城塞都市は)</small>。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:ab [[wikt:en:omni#Latin|omni]] [[wikt:en:periculum#Latin|periculo]] 「あらゆる危険から」)</span> *<u>neu</u> suis sint ad <u>detrectandam</u> [[wikt:en:militia#Latin|militiam]] [[wikt:en:receptaculum#Latin|receptacula]] **麾下の者たちにとっては<small>(城塞都市が)</small>[[w:兵役逃れ|兵役を忌避すること]]のための隠れ場所になることがないように、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:neu#Latin|neu]] は &alpha;系写本の記述で、&beta;系写本では [[wikt:en:ne#Latin|ne]] となっている。)</span> **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:detrectandam|detrectandam]] は &alpha;系・&rho;系写本の表記で、&pi;系写本では [[wikt:en:detractandam|detractandam]] となっている。)</span> *neu [[wikt:en:Romani#Latin|Romanis]] [[wikt:en:propositus#Latin|proposita]] ad [[wikt:en:copia#Latin|copiam]] [[wikt:en:commeatus#Noun|commeatus]] [[wikt:en:praeda#Latin|praedam]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:tollendus#Latin|tollendam]], **ローマ人たちにとって<small>(城塞都市が)</small>豊富な物資や戦利品を奪うための置き場所ともならないように。 :  *<!--❿--><sup>(10)</sup> Haec si [[wikt:en:gravis#Latin|gravia]] aut [[wikt:en:acerbus#Latin|acerba]] [[wikt:en:videantur|videantur]], **もし、これら<small>(の作戦)</small>が厳しい、または苦しいと見えるとしても、 *multo illa [[wikt:en:graviter#Latin|gravius]] <u>aestimare</u>, [[wikt:en:liber#Noun_6|liberos]], [[wikt:en:coniunx#Latin|coniuges]] in [[wikt:en:servitus#Latin|servitutem]] [[wikt:en:abstrahi|abstrahi]], ipsos [[wikt:en:interfici|interfici]]; **それより、子供や配偶者たちが奴隷状態で連れ去られ、自身が殺されることの方が、はるかに厳しいと判断されるべきだ。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、&alpha;系写本では [[wikt:en:aestimare|aestimare]] だが、 <br>         &beta;系写本では [[wikt:en:aestimari|aestimari]] [[wikt:en:debere|debere]] となっている。)</span> *quae sit [[wikt:en:necesse#Latin|necesse]] [[wikt:en:accido#Etymology_1|accidere]] [[wikt:en:victus#Participle|victis]]. **それらのことは、打ち負かされた者たちには、起こることが必然なのである。 <!-- <span style="color:#009900;"></span> <small></small> **:<span style="color:#009900;">(訳注: **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注: --> ===15節=== [[画像:Bourges_-_002_-_Low_Res.jpg|thumb|right|300px|'''アウァーリクム'''(Avaricum)すなわちビトゥリゲース族(Bituriges)の名を残すともいわれる現在の[[w:ブールジュ|ブールジュ]](Bourges)の[[w:サン=テチエンヌ大聖堂 (ブールジュ)|サン=テティエンヌ大聖堂]]([[w:世界遺産|世界遺産]])。この街はガッリア時代からこの地方の中心的な城塞都市であり、現代ではそれほど大都会ではないが、世界遺産の大聖堂や音楽祭などで広く知られている。]] [[画像:Bourges.JPG|thumb|right|300px|アウァーリクムすなわち[[w:ブールジュ|ブールジュ]]の大聖堂から眺めた街並み。'''ビトゥリゲース族'''はかつてはイタリア北部に移住したこともある強大な部族で、この当時はブルディガラ(Burdigala:現在の[[w:ボルドー|ボルドー]])周辺にいたビトゥリゲース・ウィウィスキ族(Bituriges Vivisci)およびアウァーリクム周辺にいた'''ビトゥリゲース・クビ族'''(Bituriges Cubi)の二派に分かれていた。『ガリア戦記』に登場するのはビトゥリゲース・クビ族の方である。]] *<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/15節]] {{進捗|00%|2026-03-08}}</span> ;焦土戦術開始、しかしアウァーリクムの防衛を決定 :  ;   焦土戦術として、ビトゥリゲース族の街々が焼かれる *<!--❶--><sup>(1)</sup> Omnium [[wikt:en:consensus#Latin|consensu]] **<small>(会合の参加者)</small>全員の合意により *hac [[wikt:en:sententia#Latin|sententia]] [[wikt:en:probatus#Latin|probata]], **<small>(ウェルキンゲトリークスの)</small>この意向が承認されると、 *uno die [[wikt:en:amplius|amplius]] [[wikt:en:viginti|viginti]]<sub> (XX)</sub> [[wikt:en:urbs#Latin|urbes]] [[wikt:en:Bituriges#Latin|Biturigum]] [[wikt:en:incenduntur|incenduntur]]. **一日で、20より多いビトゥリゲース族の街々が焼かれる。 :  ;   ほかの諸部族の街々も焼かれる *<!--❷--><sup>(2)</sup> Hoc idem fit in reliquis [[wikt:en:civitas#Latin|civitatibus]]: **これと同じことが、ほかの諸部族でも行なわれて、 *in omnibus partibus **あらゆる方面において、 *[[wikt:en:incendium#Latin|incendia]] [[wikt:en:conspiciuntur|conspiciuntur]]; **炎上が望見される。 *quae <u>etsi</u> magno cum [[wikt:en:dolor#Latin|dolore]] omnes [[wikt:en:ferebant|ferebant]], **それらの皆が大きな悲嘆とともに耐えていたとしても、 *<u>tamen</u> hoc sibi [[wikt:en:solacium#Latin|solacii]] [[wikt:en:proponebant|proponebant]], **しかし、自分らにとっての<small>(以下の)</small>慰めを抱いていた。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:etsi#Latin|etsi]] ~ [[wikt:en:tamen#Latin|tamen]] …<br>    「~としても、にもかかわらず…」)</span> *quod se prope [[wikt:en:exploratus#Latin|explorata]] [[wikt:en:victoria#Latin|victoria]] **勝利はほぼ確実なものとされて、 *celeriter [[wikt:en:amissus#Latin|amissa]] [[wikt:en:reciperaturus#Latin|reciperaturos]] <span style="color:#009900;">(esse)</span> **失ったものを速やかに回復するであろう、 *[[wikt:en:confidebant|confidebant]]. **と確信していたことである。 :  ;   アウァーリクムは、焦土戦術か、それとも防衛すべきか? *<!--❸--><sup>(3)</sup> [[wikt:en:deliberatur|Deliberatur]] de [[wikt:en:Avaricum#Latin|Avarico]] in [[wikt:en:communis#Latin|communi]] [[wikt:en:concilium#Latin|concilio]], [[wikt:en:incendi#Latin|incendi]] <u>placeret</u> an [[wikt:en:defendi#Latin|defendi]]. **合同の会合において、アウァーリクムについて (も) 焼き討ちが良いか、あるいは防衛か、が吟味される。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、&alpha;系写本では [[wikt:en:placeret|placeret]]<sub> (接続法・未完了過去)</sub> だが、<br>         &beta;系写本では [[wikt:en:placeat|placeat]]<sub> (接続法・現在)</sub> となっている。)</span> :  ;   ビトゥリゲース族が、要害であるアウァーリクムの防衛を懇願する *<!--❹--><sup>(4)</sup> [[wikt:en:procumbunt|Procumbunt]] omnibus Gallis ad pedes [[wikt:en:Bituriges#Latin|Bituriges]], **<small>(会合に参加していた)</small>すべてのガッリア人の足元へ、ビトゥリゲース族の者たちはひれ伏す。 *ne [[wikt:en:pulcherrimus#Latin|pulcherrimam]] prope <u>[[wikt:en:totus#Latin|totius]] Galliae</u> [[wikt:en:urbs#Latin|urbem]], quae <u>et</u> [[wikt:en:praesidium#Latin|praesidio]] et [[wikt:en:ornamentum#Latin|ornamento]] sit [[wikt:en:civitas#Latin|civitati]], **ほぼ全ガッリアの街々で最も美しいもの、部族にとっては要害でも誉れでもあるものを、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:totius Galliae は &alpha;系写本の語順で、&beta;系写本では Galliae totius となっている。)</span> **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:et は &beta;系写本にはあるが、&alpha;系写本にはない。)</span> *suis manibus [[wikt:en:succendo#Latin|succendere]] [[wikt:en:cogerentur|cogerentur]]; **自分たちの手で燃やすことを強いられないように、と(懇願した)。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:ne ~ cogerentur;~を強いられないように)</span> :  ;   アウァーリクムの地の利 *<!--❺--><sup>(5)</sup> facile se loci natura [[wikt:en:defensurus#Latin|defensuros]] [[wikt:en:dicunt|dicunt]], **自分たちは<small>(アウァーリクムを)</small>地勢によって容易に防衛するだろう、と述べる。 *quod prope ex omnibus partibus [[wikt:en:flumen#Latin|flumine]] et [[wikt:en:palus#Latin|palude]] [[wikt:en:circumdatus#Latin|circumdata]] **というのは<small>(アウァーリクムは)</small>ほぼあらゆる方向から川や沼地で囲まれており、 *unum habeat et [[wikt:en:perangustus#Latin|perangustum]] [[wikt:en:aditus#Latin|aditum]]. **一つだけ、非常に狭い進入路を持っているからだ。 [[画像:Bourges_2.JPG|thumb|right|300px|アウァーリクムすなわち[[w:ブールジュ|ブールジュ]]の大聖堂から眺めた沼地。イェーヴル川([[w:fr:Yèvre (Cher)|fr:Yèvre]])と沼地は、カエサルが書いたようにガッリア時代からこの街を囲んでいる。]] :  ;   アウァーリクムの防衛が認められる *<!--❻--><sup>(6)</sup> [[wikt:en:datur#Latin|Datur]] [[wikt:en:petens#Latin|petentibus]] [[wikt:en:venia#Latin|venia]] **<small>(アウァーリクムの防衛を)</small>求める者たちに許可が与えられる。 *[[wikt:en:dissuadens#Latin|dissuadente]] primo [[wikt:en:Vercingetorix#Latin|Vercingetorige]], **[[w:ウェルキンゲトリクス|ウェルキンゲトリークス]]は当初は思い止まらせていたが、 *post [[wikt:en:concedens#Latin|concedente]] et [[wikt:en:prex#Latin|precibus]] ipsorum et [[wikt:en:misericordia#Latin|misericordia]] [[wikt:en:vulgus#Latin|vulgi]]. **後には、彼ら当人の懇願にも、民衆への哀れみにも、譲歩した。 *[[wikt:en:defensor#Latin|Defensores]] [[wikt:en:oppidum#Latin|oppido]] [[wikt:en:idoneus#Latin|idonei]] [[wikt:en:deliguntur|deliguntur]]. **城塞都市の適切な防衛者たちが選ばれる。 <!-- <span style="color:#009900;"></span> <small></small> **:<span style="color:#009900;">(訳注: **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注: --> ===16節=== *<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/16節]] {{進捗|00%|2026-03-22}}</span> ;アウァーリクムをめぐる両軍の駆け引き :  ;   ウェルキンゲトリークスが、アウァーリクムから16マイル離れたところに宿営する *<!--❶--><sup>(1)</sup> [[wikt:en:Vercingetorix#Latin|Vercingetorix]] [[wikt:en:minor#Latin|minoribus]] Caesarem [[wikt:en:iter#Latin|itineribus]] [[wikt:en:subsequitur|subsequitur]] **[[w:ウェルキンゲトリクス|ウェルキンゲトリークス]]は、カエサルを緩やかな行軍で追尾して、 *et locum [[wikt:en:castra#Latin|castris]] [[wikt:en:eligit#Latin|deligit]] [[wikt:en:palus#Latin|paludibus]] [[wikt:en:silva#Latin|silvis]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:munitus#Latin|munitum]] **沼地や森林で防御された地点を陣営のために選んだ。 *ab [[wikt:en:Avaricum#Latin|Avarico]] longe milia passuum [[wikt:en:sedecim#Latin|sedecim]]<sub> (XVI)</sub>. **アウァーリクムから16<u>ローママイル</u>隔たっていた。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:1[[ガイウス・ユリウス・カエサルの著作/通貨・計量単位#ミーッレ・パッスーム、ミーリア(ローママイル)|ローママイル]]は約1.48 kmで、16マイルは約24 km)</span> :  ;   ウェルキンゲトリークスが、斥候を放ってアウァーリクムを探り、部下たちに指図する *<!--❷--><sup>(2)</sup> Ibi per [[wikt:en:certus#Latin|certos]] [[wikt:en:explorator#Latin|exploratores]] **そこで、一定の斥候たちを通して、 *in [[wikt:en:singulus#Latin|singula]] diei tempora, quae ad [[wikt:en:Avaricum#Latin|Avaricum]] <u>agerentur</u>, [[wikt:en:cognoscebat|cognoscebat]] **日中の毎時、アウァーリクム近傍で行なわれていることを探知して、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、&alpha;系写本では [[wikt:en:agerentur|agerentur]] だが、<br>         &beta;系写本では [[wikt:en:gererentur|gererentur]] となっている。)</span> *et, [[wikt:en:quis#Latin|quid]] [[wikt:en:fieri#Latin|fieri]] [[wikt:en:vellet#Latin|vellet]], [[wikt:en:imperabat|imperabat]]. **<small>(彼自身が)</small>なされることを欲していることを<small>(麾下の者たちに)</small>命令していた。 :  ;   ウェルキンゲトリークスとローマ勢の糧秣調達をめぐる攻防 *<!--❸--><sup>(3)</sup> Omnes nostras [[wikt:en:pabulatio#Latin|pabulationes]] [[wikt:en:frumentatio#Latin|frumentationes]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:observabat|observabat]] **我が方<small>〔ローマ勢〕</small>の[[w:糧秣|秣や糧食]]の徴発の一部始終を注視していて、 *[[wikt:en:dispersus#Latin|dispersos]]<nowiki>que</nowiki>, cum longius necessario [[wikt:en:procederent|procederent]], [[wikt:en:adoriebatur|adoriebatur]] **<small>(ローマ勢が)</small>分散して、やむを得ずにはるか遠くに進み出たときに、<small>(ガッリア勢が)</small>襲いかかって、 *[[wikt:en:magnus#Latin|magno]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:incommodum#Latin|incommodo]] [[wikt:en:adficiebat|adficiebat]], **<small>(ローマ勢に)</small>大きな損害を与えていた。 *[[wikt:en:etsi#Latin|etsi]], quantum [[wikt:en:ratio#Latin|ratione]] [[wikt:en:provideri|provideri]] [[wikt:en:poterat|poterat]], ab nostris [[wikt:en:occurrebatur|occurrebatur]], **とはいえ、できるかぎり用心する判断により<small>(敵の襲撃を)</small>我が方<small>〔ローマ勢〕</small>によって阻止していた。 *ut [[wikt:en:incertus#Latin|incertis]] temporibus [[wikt:en:diversus#Latin|diversis]]<nowiki>que</nowiki> itineribus [[wikt:en:iretur|iretur]]. **不確定な時間帯にまったく別々の道を行き来するというように。 <!-- <span style="color:#009900;"></span> <small></small> **:<span style="color:#009900;">(訳注: **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注: --> ===17節=== [[画像:Carte_du_Cher.svg|thumb|right|250px|アウァーリクム、すなわち現在の[[w:ブールジュ|ブールジュ市]](Bourges)のあるフランス・[[w:シェール県|シェール県]]の地図。中心にブールジュがあり、右下(南東)のラ・ゲルシュ=スュル=ローボワ([[w:en:La Guerche-sur-l'Aubois|La Guerche-sur-l'Aubois]])の近辺にボイイー族の首邑ゴルゴビナ(Gorgobina)があったと推定されている。右(東)隣の[[w:ニエーヴル県|ニエーヴル県]](Nièvre)が[[w:ハエドゥイ族|ハエドゥイー族]]の版図であった。]] *<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/17節]] {{進捗|00%|2026-03-28}}</span> ;アウァーリクム攻囲に取りかかるローマ軍の糧秣欠乏 :  ;   カエサルが、アウァーリクム攻囲のための堡塁工事に着手 *<!--❶--><sup>(1)</sup> [[wikt:en:castra#Latin|Castris]] ad eam partem [[wikt:en:oppidum#Latin|oppidi]] [[wikt:en:positus#Participle|positis]] Caesar, **カエサルは、[[w:オッピドゥム|城塞都市]]の<small>(以下に述べるような)</small>方面に陣営を設置して、 *quae [[wikt:en:intermissus#Latin|intermissa]] a flumine et a <u>paludibus</u> **──<small>(その方面は)</small>川や沼地により<small>(外部から)</small>遮断されて、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、&alpha;系写本では [[wikt:en:paludibus|paludibus]] だが、<br>         &beta;系写本では [[wikt:en:palude#Latin|palude]] となっている。)</span> *[[wikt:en:aditus#Noun_3|aditum]], ut supra [[wikt:en:diximus#Latin|diximus]], [[wikt:en:angustus#Latin|angustum]] [[wikt:en:habebat|habebat]], **<u>前に述べたように</u>、狭い進入路を持っているというものであるが、── **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[#15節|15節]]⑤項では、<br>    ほぼあらゆる方向から川や沼地で囲まれており、<br>    一つだけ、非常に狭い進入路を持っている、<br>    と言及された。)</span> *[[wikt:en:agger#Latin|aggerem]] [[wikt:en:apparare#Latin|apparare]], **<small>(さらに)</small><ruby><rb>[[w:土塁|土塁]]</rb><rp>(</rp><rt>アッゲル</rt><rp>)</rp></ruby> を装備すること、 *[[wikt:en:vinea#Latin|vineas]] [[wikt:en:ago#Latin|agere]], **<ruby><rb>[[w:ウィネア|工作小屋]]</rb><rp>(</rp><rt>ウィネア</rt><rp>)</rp></ruby> を駆動すること、 *[[wikt:en:turris#Latin|turres]] duas [[wikt:en:constituo#Latin|constituere]] [[wikt:en:coepit|coepit]]; **2つの<ruby><rb>[[w:攻城塔|攻城櫓]]</rb><rp>(</rp><rt>トゥッリス</rt><rp>)</rp></ruby> を建てること、を始めた。 *nam [[wikt:en:circumvallo#Latin|circumvallare]] loci natura [[wikt:en:prohibebat|prohibebat]]. **なぜなら<small>(城塞都市を)</small>堡塁で囲むことを地勢が妨げていたからだ。 <div style="text-align:center;"> {| |- |[[画像:Caesar's Gallic war; (Allen and Greenough's ed.) (1898) (14781415375).jpg|thumb|right|350px|城壁(図中の左端)を攻略するために築かれた<ruby><rb>土塁</rb><rp>(</rp><rt>アッゲル</rt><rp>)</rp></ruby> の復元画([[ガリア戦記_第2巻#12節|第2巻12節]]で既出)。左上には、両軍の<ruby><rb>[[w:攻城塔|攻城櫓]]</rb><rp>(</rp><rt>トゥッリス</rt><rp>)</rp></ruby>が描かれている。]] |[[画像:Bender - Vinea.JPG|thumb|right|350px|<ruby><rb>工作小屋</rb><rp>(</rp><rt>ウィネア</rt><rp>)</rp></ruby> [[wikt:en:vinea|vinea]] の復元画([[ガリア戦記_第2巻#12節|第2巻12節]]で既出)。敵の矢玉などから身を守りながら城壁に近づくために用いられたと考えられている。]] |} </div> :  ;   カエサルが、同盟者であるボイイー族やハエドゥイー族に、糧秣徴発を促す *<!--❷--><sup>(2)</sup> De re [[wikt:en:frumentarius#Adjective|frumentaria]] **<small>(カエサルは)</small>[[w:糧秣|糧秣]]調達について、 *[[wikt:en:Boii#Latin|Boios]] atque [[wikt:en:Haedui#Latin|Haeduos]] [[wikt:en:adhortari|adhortari]] non [[wikt:en:destitit|destitit]]; **[[w:ボイイ族|ボイイー族]]や[[w:ハエドゥイ族|ハエドゥイー族]]を鼓舞することを止めなかった。 *quorum [[wikt:en:alter#Latin|alteri]], quod [[wikt:en:nullus#Determiner|nullo]] [[wikt:en:studium#Latin|studio]] [[wikt:en:agebant|agebant]], non multum [[wikt:en:adiuvabant|adiuvabant]], **彼らのうち一方<small>〔ハエドゥイー族〕</small>は、何らの努力を行なわなかったので、あまり助けにならなかった。 *[[wikt:en:alter#Latin|alteri]] non magnis [[wikt:en:facultas#Latin|facultatibus]], quod [[wikt:en:civitas#Latin|civitas]] erat [[wikt:en:exiguus#Latin|exigua]] et [[wikt:en:infirmus#Latin|infirma]], **他方<small>〔ボイイー族〕</small>は、貧弱かつ無力な部族であったので、大した貯えもなく、 *celeriter quod [[wikt:en:habuerunt|habuerunt]] [[wikt:en:consumpserunt|consumpserunt]]. **早々と持っていたものを消費し切ってしまった。 :  ;   糧秣の欠乏が続くが、ローマの将兵たちが耐え抜く *<!--❸--><sup>(3)</sup> [[wikt:en:summus#Latin|Summa]] [[wikt:en:difficultas#Latin|difficultate]] rei [[wikt:en:frumentarius#Adjective|frumentariae]] [[wikt:en:adfectus#Latin|adfecto]] [[wikt:en:exercitus#Noun|exercitu]] **<small>(ローマ人の)</small>軍隊は糧秣調達の大いなる困難さに苦悩させられながらも、 *[[wikt:en:tenuitas#Latin|tenuitate]] [[wikt:en:Boii#Latin|Boiorum]], **──<small>(その困難は)</small>ボイイー族の微力さ、 *[[wikt:en:indiligentia#Latin|indiligentia]] [[wikt:en:Haedui#Latin|Haeduorum]], **ハエドゥイー族の怠慢、 *[[wikt:en:incendium#Latin|incendiis]] [[wikt:en:aedificium#Latin|aedificiorum]], **<small>(敵勢による)</small>家屋の焼き打ちによるものであったが、── *usque eo ut [[wikt:en:complures#Determiner|complures]] dies [[wikt:en:frumentum#Latin|frumento]] [[wikt:en:miles#Latin|milites]] [[wikt:en:caruerint|caruerint]] **かなりの日々にわたって兵士たちは糧食を欠くまでになり、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:usque#Latin|usque]] eo ut ~「~まで」)</span> *et [[wikt:en:pecus#Latin|pecore]] ex [[wikt:en:longinquior#Latin|longinquioribus]] [[wikt:en:vicus#Latin|vicis]] [[wikt:en:adactus#Latin|adacto]] **かなり遠方の村々から家畜を駆り立てたので *[[wikt:en:extremus#Latin|extremam]] [[wikt:en:fames#Latin|famem]] [[wikt:en:sustentarent|sustentarent]], **極限の飢えに耐え通すまでになったのであるが、 *[[wikt:en:nullus#Determiner|nulla]] tamen <u>vox est ab iis</u> [[wikt:en:auditus#Latin|audita]] populi Romani [[wikt:en:maiestas#Latin|maiestate]] et [[wikt:en:superior#Latin|superioribus]] [[wikt:en:victoria#Latin|victoriis]] [[wikt:en:indignus#Latin|indigna]]. **しかしながら、ローマ人民の威厳やかつての勝利にふさわしからぬ声は、彼らから何ら聞かれなかった。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、&alpha;系写本では [[wikt:en:vox#Latin|vox]] est <u>ab</u> iis だが、<br>         &beta;系写本では <u>ex</u> iis vox est となっている。)</span> :  ;   ローマ人将兵たちがカエサルに攻囲の継続を訴える *<!--❹--><sup>(4)</sup> [[wikt:en:quin#Latin|Quin]] etiam Caesar cum in [[wikt:en:opus#Latin|opere]] [[wikt:en:singulus#Latin|singulas]] [[wikt:en:legio#Latin|legiones]] [[wikt:en:appellaret|appellaret]], **いやそればかりか、カエサルが作業中のそれぞれの[[w:ローマ軍団|軍団]]に呼びかけたとき、 *et, si [[wikt:en:acerbe#Latin|acerbius]] [[wikt:en:inopia#Latin|inopiam]] [[wikt:en:ferrent#Latin|ferrent]], se [[wikt:en:dimissurus#Latin|dimissurum]] <span style="color:#009900;"><sub>(esse)</sub></span> [[wikt:en:oppugnatio#Latin|oppugnationem]] [[wikt:en:diceret|diceret]], **もし、とても過酷に欠乏に耐えているのならば、自分は攻囲を放棄するであろう、とカエサルが言っていたときに、 :  *<!--❺--><sup>(5)</sup> [[wikt:en:universi#Latin|universi]] ab eo, ne id [[wikt:en:faceret|faceret]], [[wikt:en:petebant|petebant]] : **<small>(各軍団の)</small>一同は、彼<small>〔カエサル〕</small>に、それ<small>〔攻囲の放棄〕</small>をしないように求めていた。 *sic se complures annos illo [[wikt:en:imperans#Latin|imperante]] [[wikt:en:meruisse|meruisse]], **自分たちは<small>(以下のように)</small>幾年にもわたって彼<small>〔カエサル〕</small>の麾下で努めてきた。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:sic ~ ut …「…のように~である」)</span> *ut [[wikt:en:nullus#Determiner|nullam]] [[wikt:en:ignominia#Latin|ignominiam]] [[wikt:en:acciperent|acciperent]], <u>nusquam incepta</u> re [[wikt:en:discederent|discederent]]: **何ら不名誉を蒙ってないし、事<small>〔戦役〕</small>が完遂されないまま<small>(戦列を)</small>離脱することは決してなかったのだ。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、&alpha;系写本では [[wikt:en:nusquam#Latin|nusquam]] [[wikt:en:inceptus#Latin|incepta]] だが、<br>         &beta;系写本では [[wikt:en:numquam#Latin|numquam]] [[wikt:en:infectus#Adjective|infecta]] となっている。)</span> :  *<!--❻--><sup>(6)</sup> hoc se [[wikt:en:ignominia#Latin|ignominiae]] <u>loco [[wikt:en:laturus#Latin|laturos]]</u> <span style="color:#009900;"><sub>(esse)</sub></span>, si [[wikt:en:inceptus#Latin|inceptam]] [[wikt:en:oppugnatio#Latin|oppugnationem]] [[wikt:en:reliquissent|reliquissent]]; **もし<small>(自分たちが)</small>着手した攻囲を放棄してしまったならば、自分たちはこの状態を不名誉と見なすであろう。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、&beta;系写本では loco laturos の語順だが、<br>         &alpha;系写本では laturos loco の語順となっている。)</span> :  *<!--❼--><sup>(7)</sup> <u>praestare</u> omnes [[wikt:en:perferre|perferre]] [[wikt:en:acerbitas#Latin|acerbitates]], **あらゆる厳しさに持ちこたえることは<small>(以下のこと)</small>よりましである。 **:<span style="color:#009900;">(訳注:[[wikt:en:praestare|praestare]] ~ [[wikt:en:quam#Adverb|quam]] …「…よりも~がより優る」)</span> *<u>quam</u> non [[wikt:en:civis#Latin|civibus]] Romanis, qui [[wikt:en:Genabum#Latin|Cenabi]] [[wikt:en:perfidia#Latin|perfidia]] Gallorum [[wikt:en:interissent|interissent]], [[wikt:en:parentarent|parentarent]]. **ケナブムでガッリア人たちの不義により滅びたローマ市民たちの仇討ちをしないよりも。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[#3節|3節]]①項を参照。仇討ちをしないのなら、苦しむ方がましである、の意)</span> :  *<!--❽--><sup>(8)</sup> Haec [[wikt:en:idem#Latin|eadem]] [[wikt:en:centurio#Latin|centurionibus]] [[wikt:en:tribunus#Latin|tribunis]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:miles#Latin|militum]] **これらと同じことを、<ruby><rb>[[w:ケントゥリオ|百人隊長]]</rb><rp>(</rp><rt>ケントゥリオ</rt><rp>)</rp></ruby>たちや<ruby><rb>[[w:トリブヌス・ミリトゥム|兵士長官]]</rb><rp>(</rp><rt>トリブヌス・ミリトゥム</rt><rp>)</rp></ruby>たちに、 *[[wikt:en:mandabant|mandabant]], ut per eos ad Caesarem [[wikt:en:deferrentur|deferrentur]]. **彼らを通じてカエサルに申し立てるように、依頼していた。 <!-- <span style="color:#009900;"></span> <small></small> **:<span style="color:#009900;">(訳注: **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注: --> ===18節=== *<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/18節]] {{進捗|00%|2026-04-13}}</span> ;カエサルがウェルキンゲトリークス不在の敵陣へ迫る :  ;   カエサルは、ウェルキンゲトリークスが糧秣の欠乏によりローマ勢の糧秣徴発隊を襲撃に向かったと知る *<!--❶--><sup>(1)</sup> Cum iam [[wikt:en:murus#Latin|muro]] [[wikt:en:turris#Latin|turres]] [[wikt:en:adpropinquassent#Latin|adpropinquassent]], **すでに<small>(アウァーリクムの)</small>城壁に<small>(ローマ勢の)</small>[[w:攻城塔|攻城櫓]]が近づいていた際に、 *ex [[wikt:en:captivus#Noun|captivis]] Caesar [[wikt:en:cognovit#Latin|cognovit]], **カエサルは、捕虜たちから<small>(以下のことを)</small>知った。 *[[wikt:en:Vercingetorix#Latin|Vercingetorigem]], [[wikt:en:consumptus#Latin|consumpto]] [[wikt:en:pabulum#Latin|pabulo]], **[[w:ウェルキンゲトリクス|ウェルキンゲトリークス]]は[[w:糧秣|糧秣]]を消費し切ると、 *castra [[wikt:en:movisse#Latin|movisse]] propius [[wikt:en:Avaricum#Latin|Avaricum]], **陣営をアウァーリクムのより近くに移動させて、 *atque ipsum cum [[wikt:en:equitatus#Latin|equitatu]] [[wikt:en:expeditus#Noun|expeditis]]<nowiki>que</nowiki>, qui inter [[wikt:en:eques#Latin|equites]] [[wikt:en:proeliari#Verb|proeliari]] [[wikt:en:consuessent#Latin|consuessent]], **彼自身は、[[w:騎兵|騎兵]]隊、および騎兵たちの間で争闘することに習熟していた[[w:軽装歩兵|軽装歩兵]]たちとともに、 *<u>insidiarum</u> causa eo [[wikt:en:profectus#Etymology_3|profectum]], quo nostros postero die [[wikt:en:pabulatum#Verb|pabulatum]] [[wikt:en:venturus#Latin|venturos]] [[wikt:en:arbitraretur#Latin|arbitraretur]]. **我が方<small>〔ローマ勢〕</small>が翌日に糧秣徴発にやって来るであろうと思われるところで待ち伏せするために、出発した、と。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、&alpha;系写本では [[wikt:en:insidiarum|insidiarum]] だが、<br>         &beta;系写本では [[wikt:en:insidiandi#Latin|insidiandi]] となっている。)</span> [[画像:AVARICUM Battaglia 52 aC.png|thumb|right|300px|アウァーリクム攻略戦の布陣図(<small>イタリア語</small>)。中央がアウァーリクム(AVARICUM)、右下の赤枠内がカエサルと8個軍団の陣営、赤い矢印の先端がローマ軍の土塁。左上の楕円形がウェルキンゲトリークスが移動させた陣営。]] [[画像:Funerary chariot in the archeological museum of Strasbourg.jpg|thumb|right|300px|[[w:ハルシュタット文化|ハルシュタット文化]]の墳墓の副葬品として発掘された '''四輪荷馬車''' のレプリカ(仏ストラスブール考古学博物館)。]] :  *<!--❷--><sup>(2)</sup> Quibus rebus [[wikt:en:cognitus#Participle|cognitis]] **<small>(カエサルは)</small>それらの事情を知るや、 *media nocte [[wikt:en:silentium#Latin|silentio]] [[wikt:en:profectus#Etymology_3|profectus]] **真夜中の静けさのうちに出発して、 *ad hostium castra [[wikt:en:mane#Adverb_2|mane]] [[wikt:en:pervenit#Etymology_2|pervenit]]. **敵の陣営の辺りへ朝方に到着した。 :  *<!--❸--><sup>(3)</sup> Illi, celeriter per [[wikt:en:explorator#Latin|exploratores]] [[wikt:en:adventus#Latin|adventu]] Caesaris [[wikt:en:cognitus#Participle|cognito]] **あの者たちは、速やかに斥候たちを通じてカエサルの到来を知るや、 *<u>carros</u> [[wikt:en:impedimentum#Latin|impedimenta]]<nowiki>que</nowiki> sua in [[wikt:en:artior#Latin|artiores]] [[wikt:en:silva#Latin|silvas]] [[wikt:en:abdiderunt#Latin|abdiderunt]], **自分たちの<u>四輪荷馬車</u>と[[w:輜重|輜重]]をとても深い森の中に隠して、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:四輪荷馬車 [[wikt:en:carrus#Latin|carrus]] は、例えば右の画像のものを参照。)</span> *copias omnes in loco [[wikt:en:editus#Latin|edito]] atque [[wikt:en:apertus#Latin|aperto]] [[wikt:en:instruxerunt#Latin|instruxerunt]]. **全軍勢を高くそびえて開けている場所に配置した。 :  *<!--❹--><sup>(4)</sup> Qua re [[wikt:en:nuntiatus#Latin|nuntiata]] **その事を報告されて、 *Caesar celeriter [[wikt:en:sarcina#Latin|sarcinas]] [[wikt:en:conferri#Latin|conferri]], **カエサルは速やかに<small>(兵士たちの)</small>[[w:背嚢|背嚢]]が運び集められること、 *[[wikt:en:arma#Latin|arma]] [[wikt:en:expediri#Latin|expediri]] [[wikt:en:iussit#Verb|iussit]]. **武具が<small>(すぐ使えるように)</small>整えられることを命じた。 <!-- <span style="color:#009900;"></span> <small></small> **:<span style="color:#009900;">(訳注: **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注: --> ===19節=== *<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/19節]] {{進捗|00%|2026-04-20}}</span> ;丘の上のガッリア勢と沼沢を挟んで対峙する :  ;   ガッリア勢の陣営の地勢 *<!--❶--><sup>(1)</sup> [[wikt:en:collis#Latin|Collis]] erat <u>leniter</u> ab [[wikt:en:infimus#Latin|infimo]] [[wikt:en:adclivis#Latin|adclivis]]. **<small>(ガッリア勢がいる)</small>丘陵はふもとから緩やかに、登り坂になっていた。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、&beta;系・&chi;系・B・M・S・N<sup>c</sup> 写本では [[wikt:en:leviter#Latin|leviter]] 、<br>         L・N写本では [[wikt:en:breviter#Latin|breviter]] だが、<br>         より劣った写本 ''[[ガリア戦記/注解編/写本と校訂版#クリティカル・アパラトゥスとその略号|codd.deter.]]'' では [[wikt:en:leniter#Latin|leniter]] となっている。 *Hunc ex omnibus fere partibus [[wikt:en:palus#Latin|palus]] [[wikt:en:difficilis#Latin|difficilis]] atque [[wikt:en:impeditus#Latin|impedita]] [[wikt:en:cingebat#Latin|cingebat]] **これ<small>〔丘陵〕</small>を、ほぼすべての方角から、不便で通りにくい沼地が取り巻いていて、 *non [[wikt:en:latior#Latin|latior]] [[wikt:en:pes#Latin|pedibus]] [[wikt:en:quinquaginta#Latin|quinquaginta]]. **<small>(その沼地は)</small>50<u>[[w:ペース (長さ)|ペース]]</u>より幅広くなかった。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:1[[ガイウス・ユリウス・カエサルの著作/通貨・計量単位#ペース|ペース]]は約29.6cmで、50ペースは約15メートル弱。)</span> :  ;   丘の周囲を部族ごとに分かれて守備している *<!--❷--><sup>(2)</sup> Hoc se [[wikt:en:collis#Latin|colle]] [[wikt:en:interruptus#Latin|interruptis]] [[wikt:en:pons#Latin|pontibus]] **この丘陵において、橋梁を破却すると、 *Galli [[wikt:en:fiducia#Latin|fiducia]] loci [[wikt:en:continebant#Latin|continebant]] **ガッリア人たちは、地勢を頼りに留まっていて、 *[[wikt:en:generatim#Latin|generatim]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:distributus#Latin|distributi]] in civitates **<small>(軍勢を)</small>諸部族の種族ごとに分けて配置させて、 *omnia [[wikt:en:vadum#Latin|vada]] ac [[wikt:en:saltus#Etymology_2|saltus]] eius [[wikt:en:palus#Latin|paludis]] <u>certis custodiis</u> [[wikt:en:obtinebant#Latin|obtinebant]], **その沼地の、すべての浅瀬や隘路を <u>一定の護衛兵たちによって</u> 占領していた。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部の [[wikt:en:certus#Latin|certis]] [[wikt:en:custodia#Latin|custodiis]] は &beta;系写本の記述で、&alpha;系写本にはない。)</span> *<u>sic</u> animo [[wikt:en:paratus#Latin|parati]] <u>ut</u>, si eam [[wikt:en:palus#Latin|paludem]] Romani [[wikt:en:perrumpo#Latin|perrumpere]] [[wikt:en:conarentur#Latin|conarentur]], [[wikt:en:haesitans#Latin|haesitantes]] [[wikt:en:premerent#Latin|premerent]] ex loco [[wikt:en:superior#Latin|superiore]]; **もしローマ勢がその沼地を強行突破せんと試みたならば、ぐずぐずしている者らを高地から圧倒する心積もりであった。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:sic#Latin|sīc]] ~, [[wikt:en:ut#Latin|ut]] ・・・「…であるように~である」)</span> :  ;   両軍は互角か? *<!--❸--><sup>(3)</sup> ut, qui [[wikt:en:propinquitas#Latin|propinquitatem]] loci [[wikt:en:videret#Latin|videret]], **<small>(両軍の)</small>陣地が近接していることを見た者は、 *[[wikt:en:paratus#Latin|paratos]] prope [[wikt:en:aequus#Latin|aequo]] <u>Marte</u> ad [[wikt:en:dimicandum#Latin|dimicandum]] [[wikt:en:existimaret#Latin|existimaret]], **<small>(ガッリア勢がローマ勢に対して)</small>ほぼ互角の戦い<small>(の条件)</small>で闘うつもりでいると考えただろう。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、[[wikt:en:Mars#Proper_noun_22|Mars]]「戦争の神マールス」ではなく、<br>         [[wikt:en:Mars#Noun_4|Mars]]「戦争、闘い」そのものを指す。)</span> ;   ガッリア勢は不利なのに虚勢を張っているのか? *qui [[wikt:en:iniquitas#Latin|iniquitatem]] [[wikt:en:condicio#Latin|condicionis]] [[wikt:en:perspiceret#Latin|perspiceret]], **<small>(ガッリア勢の)</small>条件の不利なことを見通した者は、 *[[wikt:en:inanis#Latin|inani]] [[wikt:en:simulatio#Latin|simulatione]] sese [[wikt:en:ostentare#Latin|ostentare]] [[wikt:en:cognosceret#Latin|cognosceret]]. **<small>(ガッリア勢が)</small>虚栄の見せかけで己を誇示していることを、理解しただろう。 :  ;   カエサルが、至近距離の敵への攻撃にいきり立つ将兵らを教え諭す *<!--❹--><sup>(4)</sup> [[wikt:en:indignans#Latin|Indignantes]] [[wikt:en:miles#Latin|milites]] Gaesar, **カエサルは<small>(ガッリア勢の誇示に)</small>憤慨している兵士たちに、 *quod [[wikt:en:conspectus#Noun_2|conspectum]] suum hostes <u>perferre</u> [[wikt:en:possent#Latin|possent]] [[wikt:en:tantulus#Latin|tantulo]] [[wikt:en:spatium#Latin|spatio]] [[wikt:en:interiectus#Latin|interiecto]], **──というのも、これほどのわずかな距離しか介在してないのに、敵勢が自分らを<small>(平然と)</small>見据えていられるためだが── **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、&alpha;系写本では [[wikt:en:perferre#Latin|perferre]] だが、&beta;系写本では [[wikt:en:ferre#Latin|ferre]] となっている。)</span> *et signum proelii [[wikt:en:exposcens#Latin|exposcentes]] [[wikt:en:edocet#Latin|edocet]], **および戦闘の合図を熱心に求めている者たちに対して<small>(以下のように)</small>説く。 *[[wikt:en:quantus#Latin|quanto]] [[wikt:en:detrimentum#Latin|detrimento]] et [[wikt:en:quot#Latin|quot]] [[wikt:en:vir#Latin|virorum]] [[wikt:en:fortis#Latin|fortium]] [[wikt:en:mors#Latin|morte]] [[wikt:en:necesse#Adverb|necesse]] sit [[wikt:en:constare#Latin|constare]] [[wikt:en:victoria#Latin|victoriam]]; **勝利を確実にすることが、どれほどの損害と、どれほど多くの勇敢な<ruby><rb>兵士</rb><rp>(</rp><rt>ウィル</rt><rp>)</rp></ruby>たちの死を必要とするか、を。 : <!-- [[wikt:en:| --> ;   多くのローマ兵が死に瀕すれば、カエサル自身が戦争犯罪で弾劾されるだろう *<!--❺--><sup>(5)</sup> quos cum <u>sic</u> [[wikt:en:animus#Latin|animo]] [[wikt:en:paratus#Latin|paratos]] [[wikt:en:videat#Latin|videat]], <u>ut</u> [[wikt:en:nullus#Determiner|nullum]] pro sua [[wikt:en:laus#Latin|laude]] [[wikt:en:periculum#Latin|periculum]] [[wikt:en:recusent#Latin|recusent]], **彼ら<small>〔兵士たち〕</small>が己の賞賛のためにいかなる危険をも辞さない心積もりであると<small>(カエサルは)</small>見て取ったので、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:sic#Latin|sīc]] ~, [[wikt:en:ut#Latin|ut]] ・・・「…であるように~である」)</span> **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:pro sua laude 「自らの賞賛のために」は、「カエサルの賞賛のために」と解することもできる。<br>    しかし、共和制国家に忠誠を誓っているはずの兵士らが、カエサル個人のために命を投げ出そうとする記述は、<br>    野心家カエサルが軍隊を私兵化しようとしている野望をさらけ出すことになり、政敵たちを利することになる。)</span> *[[wikt:en:summus#Latin|summae]] se [[wikt:en:iniquitas#Latin|iniquitatis]] [[wikt:en:condemnari#Latin|condemnari]] [[wikt:en:debere#Latin|debere]], [[wikt:en:nisi#Conjunction|nisi]] eorum [[wikt:en:vita#Latin|vitam]] sua [[wikt:en:salus#Latin|salute]] [[wikt:en:habeat#Latin|habeat]] [[wikt:en:carior#Latin|cariorem]]. **<small></small>彼ら<small>〔兵士〕</small>の生命を己<small>〔カエサル〕</small>の安全より貴重と思わない限り、自分<small>〔カエサル〕</small>は極度の不正のために告発されるに違いない。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:すでにサビーヌスら多くのローマ市民が戦死しており、ここでさらに多くのローマ市民を死なせることは、<br>    カエサルから軍隊を取り上げることを主張していた政敵たちから厳しく糾弾されることになったであろう。)</span> : <!-- [[wikt:en:| --> *<!--❻--><sup>(6)</sup> Sic [[wikt:en:miles#Latin|milites]] [[wikt:en:consolatus#Latin|consolatus]] **<small>(カエサルは)</small>このように兵士たちを<ruby><rb>宥</rb><rp>(</rp><rt>なだ</rt><rp>)</rp></ruby>めて、 *eodem die [[wikt:en:reducit#Latin|reducit]] in castra **同日に陣営の中に連れ戻して、 *[[wikt:en:reliquus#Latin|reliqua]]<nowiki>que</nowiki> quae ad [[wikt:en:oppugnatio#Latin|oppugnationem]] <u>[[wikt:en:pertinebant#Latin|pertinebant]] [[wikt:en:oppidum#Latin|oppidi]]</u> [[wikt:en:administrare#Latin|administrare]] [[wikt:en:instituit#Latin|instituit]]. **城塞都市<small>〔アウァーリクム〕</small>の攻略に関わっているほかのことに従事することを決めた。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、&chi;系・B・M・S写本では pertinebant oppidi の語順だが、<br>         L・N・β系写本では oppidi pertinebant の語順となっている。)</span> <!-- <span style="color:#009900;"></span> <small></small> **:<span style="color:#009900;">(訳注: **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注: --> ===20節=== *<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/20節]] {{進捗|00%|2026-05-04}}</span> ;ウェルキンゲトリークスが味方に弁明し、捕虜に問い質す :  *<!--❶--><sup>(1)</sup> [[wikt:en:Vercingetorix#Latin|Vercingetorix]], cum ad suos [[wikt:en:redisset#Latin|redisset]], [[wikt:en:proditio#Latin|proditionis]] [[wikt:en:insimulatus#Latin|insimulatus]], **[[w:ウェルキンゲトリクス|ウェルキンゲトリークス]]は、味方のもとに戻った際に、<small>(以下のことで)</small>裏切りだと非難されていた。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:以下、[[wikt:en:quod#Conjunction|quod]] ~ で箇条書き。)</span> *quod [[wikt:en:castra#Latin|castra]] [[wikt:en:propius#Latin|propius]] [[wikt:en:Romani#Latin|Romanos]] [[wikt:en:movisset#Latin|movisset]], **陣営をローマ人たちのより近くに移動させていたこと、 *quod cum omni [[wikt:en:equitatus#Noun|equitatu]] [[wikt:en:discessisset#Latin|discessisset]], **全[[w:騎兵|騎兵隊]]とともに<small>(陣営を)</small>離れていたこと、 *quod sine [[wikt:en:imperium#Latin|imperio]] [[wikt:en:tantus#Latin|tantas]] [[wikt:en:copiae#Latin|copias]] [[wikt:en:reliquisset#Latin|reliquisset]], **司令権<small>(を持つ者)</small>なしに、これほど多くの軍勢を置き去りにしていたこと、 *quod eius [[wikt:en:discessus#Noun|discessu]] [[wikt:en:Romani#Latin|Romani]] [[wikt:en:tantus#Latin|tanta]] [[wikt:en:opportunitas#Latin|opportunitate]] et [[wikt:en:celeritas#Latin|celeritate]] [[wikt:en:venissent#Latin|venissent]]; **彼<small>〔ウェルキンゲトリークス〕</small>の退去によりローマ人がこれほどの好機とこれほどの迅速さでやって来ていたこと、である。 :  *<!--❷--><sup>(2)</sup> non haec omnia [[wikt:en:fortuito#Latin|fortuito]] aut sine [[wikt:en:consilium#Latin|consilio]] [[wikt:en:accido#Etymology_1|accidere]] [[wikt:en:potuisse#Latin|potuisse]]; **──これらすべてが偶然に、あるいは謀りごとなしに起こることはあり得なかったのだ。 *[[wikt:en:regnum#Latin|regnum]] illum Galliae <u>malle</u> Caesaris [[wikt:en:concessus#Noun|concessu]] <u>quam</u> ipsorum habere [[wikt:en:beneficium#Latin|beneficio]] **彼<small>〔ウェルキンゲトリークス〕</small>は<small>(ガッリア人)</small>自身の厚遇を得ることよりもむしろカエサルの許しにより[[w:ガリア|ガッリア]]の王権<small>(を持つこと)</small>を好んでいるのだ。── **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:malle#Latin|malle]] ~ quam …「…よりも、むしろ~を好む(選ぶ)」)</span> **:<span style="color:#009900;">(訳注:ウェルキンゲトリークスが王権を望むあまり、同盟部族の生命をカエサルに売り渡したということである。)</span> [[画像:Vercingetorix_stater_n2_CdM_alternate.jpg|thumb|right|250px|[[w:ウェルキンゲトリクス|ウェルキンゲトリークス]]の横顔が刻まれたガッリアの金貨(パリの[[w:ビブリオテーク・ナショナル|仏国立図書館]]貨幣部蔵)]] :  ;   ━━ウェルキンゲトリークスの弁明が始まる━━ *<!--❸--><sup>(3)</sup> [[wikt:en:talis#Latin|tali]] [[wikt:en:modus#Latin|modo]] [[wikt:en:accusatus#Latin|accusatus]] **こんな風に非難されて、 *ad haec [[wikt:en:respondit#Latin|respondit]]: **<small>(ウェルキンゲトリークスは)</small>これらのことへ答えた。 *Quod [[wikt:en:castra#Latin|castra]] [[wikt:en:movisset#Latin|movisset]], **陣営を移動させていたことは、 *[[wikt:en:factus#Latin|factum]] [[wikt:en:inopia#Latin|inopia]] [[wikt:en:pabulum#Latin|pabuli]], **[[w:糧秣|糧秣]]の欠乏によりなされたのであり、 *etiam ipsis [[wikt:en:hortans#Latin|hortantibus]]; **<small>(ガッリア人たち)</small>自身が熱心に勧めることさえしているのだ。 *quod [[wikt:en:propius#Latin|propius]] [[wikt:en:Romani#Latin|Romanos]] [[wikt:en:accessisset#Latin|accessisset]], **ローマ人たちのより近くに近寄っていたことは、 *[[wikt:en:persuasus#Latin|persuasum]] loci [[wikt:en:opportunitas#Latin|opportunitate]], qui se <u>ipsum</u> [[wikt:en:munitio#Latin|munitione]] [[wikt:en:defenderet#Latin|defenderet]]; **<small>(移動先の丘陵が)</small>それ自体を<small>(沼地という天然の)</small>要害により守っているという地の利に納得させられたのだ。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:上記の se <u>ipsum</u> munitione defenderet 「そのものを防御物によって守る」は主要写本 &omega; の記述で、<br>''[[ガリア戦記/注解編/写本と校訂版#Bentley,_Thomas|Th. Bentley]]'' は se <u>ipse sine</u> munitione defenderet 「そのものが防御物なしで守る」と修正提案している。)</span> :  ;   騎兵は、湿地帯での任務に適していない *<!--❹--><sup>(4)</sup> [[wikt:en:eques#Latin|equitum]] vero [[wikt:en:opera#Latin|operam]] **騎兵たちの働きはまさに、 *neque in loco [[wikt:en:paluster#Latin|palustri]] [[wikt:en:desiderari#Latin|desiderari]] [[wikt:en:debuisse#Latin|debuisse]] **沼沢地において望まれるべきものではなかったし、 **:<span style="color:#009900;">(訳注:湿地・沼地では、ぬかるみに馬の足が取られるため、<br>    騎兵の長所である機動力が著しく低下し、<br>    速さを活かした偵察・突撃・迂回・追撃などがし難くなる。)</span> *et [[wikt:en:illic#Adverb|illic]] fuisse [[wikt:en:utilis#Latin|utilem]], quo sint [[wikt:en:profectus#Participle_2|profecti]]. **<small>(騎兵たちが)</small>発って行ったところにおいては有効だったのだ。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[#16節|16節]]冒頭の説明によれば、<br>    ウェルキンゲトリークスが最初に宿営した場所は、<br>    アウァーリクムから16マイル離れ、沼地や森林に守られていた。<br>    [[#19節|19節]]では、より近い、沼地に囲まれたゆるやかな丘陵に移動したという。<br>    この移動前後の地勢の優劣を、カエサルは必ずしも明瞭に説明していない。)</span> :  ;   兵は拙速を尊ぶ *<!--❺--><sup>(5)</sup> [[wikt:en:summa#Latin|Summam]] [[wikt:en:imperium#Latin|imperii]] **<small>(軍勢の)</small>最高司令権は、 *se [[wikt:en:consulto#Adverb|consulto]] [[wikt:en:nullus#Latin|nulli]] [[wikt:en:discedens#Latin|discedentem]] [[wikt:en:tradidisse#Latin|tradidisse]], **<small>(ウェルキンゲトリークス)</small>自らが意図的に、立ち去るに当たって、誰にも委託しなかった。 *[[wikt:en:ne#Latin|ne]] is [[wikt:en:multitudo#Latin|multitudinis]] [[wikt:en:studium#Latin|studio]] ad [[wikt:en:dimicandus#Latin|dimicandum]] [[wikt:en:impelleretur#Latin|impelleretur]]; **その者が大勢の熱意によって<small>(ローマ人と)</small>闘うことに駆り立てられないように、である。 *cui rei <u>propter animi [[wikt:en:mollities#Latin|mollitiem]]</u> [[wikt:en:studere#Latin|studere]] omnes [[wikt:en:videret#Latin|videret]], **その事<small>〔闘って決着を付けること〕</small>を、<u>心の柔弱さのゆえに</u>、皆が求めたがっている。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:「心の柔弱さのゆえに、闘いがしたくなる」というのは、<br>    一見すると奇妙に感じられるが、ここでの柔弱さ([[wikt:en:mollities#Latin|mollities]])とは、<br>    長期の攻囲戦の労苦や疲弊に持ちこたえる忍耐力のなさを指し、<br>    長い苦難から逃避するために早期決戦を志向する心理を意味すると考えられる。)</span> *quod [[wikt:en:diutius#Latin|diutius]] [[wikt:en:labor#Latin|laborem]] ferre non [[wikt:en:possent#Latin|possent]]. **──というのは、<small>(兵は)</small>より長く<small>(攻囲戦の)</small>労苦に耐えることができないからだ──。 **:<span style="color:#009900;"> (訳注:[[w:孫子 (書物)|孫子]]に曰く「兵は拙速を聞くも、未だ巧の久しきを<ruby><rb>睹</rb><rp>(</rp><rt>み</rt><rp>)</rp></ruby>ざるなり」<ref>[[wikt:en:故に兵は拙速を聞くも、未だ巧の久しきを睹ざるなり|故に兵は拙速を聞くも、未だ巧の久しきを睹ざるなり]] 「戦争というものは、拙劣に短期決戦を挑んだ事例は聞くが、巧妙に長期戦を続けた事例は聞かない」の意。長い戦争は人々を消耗させ、疲弊させてしまう。</ref>)</span> :  ;   ローマ人は、闘わずに退却したではないか *<!--❻--><sup>(6)</sup> Romani si [[wikt:en:casu#Latin|casu]] [[wikt:en:intervenerint#Latin|intervenerint]], [[wikt:en:fortuna#Latin|fortunae]], **もしローマ人たちが偶然に現われたのならば、命運に<small>(感謝するべきであり)</small>、 *si [[wikt:en:alicuius#Latin|alicuius]] [[wikt:en:indicium#Latin|indicio]] [[wikt:en:vocatus#Latin|vocati]], huic [[wikt:en:habendus#Latin|habendam]] [[wikt:en:gratia#Latin|gratiam]], **もし<small>(ローマ人たちが)</small>何者かの申し立てに呼ばれて来たのならば、その者に感謝するべきだ。 *quod <u>et</u> [[wikt:en:paucitas#Latin|paucitatem]] eorum ex loco [[wikt:en:superior#Latin|superiore]] [[wikt:en:cognosco#Latin|cognoscere]] **──というのは、より高い位置から彼ら<small>〔ローマ人〕</small>の少なさを知ることも、 *<u>et</u> [[wikt:en:virtus#Latin|virtutem]] [[wikt:en:despicio#Latin|despicere]] [[wikt:en:potuerint#Latin|potuerint]], **<small>(ローマ人の)</small>武勇とやらを見下すこともできたのだから。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:et ~ et …「~も…も」)</span> *qui [[wikt:en:dimico#Latin|dimicare]] non [[wikt:en:ausus#Participle|ausi]] **彼ら<small>〔ローマ人〕</small>は闘うことをあえてせずに、 *[[wikt:en:turpiter#Latin|turpiter]] se in castra [[wikt:en:receperint#Latin|receperint]]. **見苦しくも陣営に退却したのだ──。 :  ;   ガッリア人が勝つのだから、カエサルに寝返るはずがない *<!--❼--><sup>(7)</sup> [[wikt:en:imperium#Latin|Imperium]] se <u>ab</u> Caesare per [[wikt:en:proditio#Latin|proditionem]] [[wikt:en:nullus#Latin|nullum]] [[wikt:en:desidero#Latin|desiderare]], **自分<small>〔ウェルキンゲトリークス〕</small>は、カエサルから裏切りを通じて、どのような司令権も望んではいない。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:上の (2) 項では、味方のガッリア人たちは、ウェルキンゲトリークスが<br>    カエサルにより [[wikt:en:regnum#Latin|regnum]](王権、支配権)を得ようとしていると非難したのに対し、<br>    彼は [[wikt:en:imperium#Latin|imperium]](軍隊司令権、または支配権)という言葉を巧妙に引きずって答えている。<br>    もちろん、言葉を変えたのは、筆者カエサル自身であろう。)</span> **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:ab は&alpha;系写本の記述で、&beta;系写本では a となっている。)</span> *quod habere [[wikt:en:victoria#Latin|victoria]] [[wikt:en:posset#Latin|posset]], **<small>(支配権は、ローマ人に対する)</small>勝利によって得られるものであり、 *quae iam esset sibi atque omnibus [[wikt:en:Galli#Latin|Gallis]] [[wikt:en:exploratus#Latin|explorata]]; **<small>(勝利は)</small>もはや自分とすべてのガッリア人にとって確実なものとされているのだ。 *quin etiam ipsis <u>remittere</u>, **いやそればかりか<small>(以下の様であれば、ガッリア人たち)</small>自身に<small>(司令官職を)</small>返還しているだろう。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部の [[wikt:en:remitto#Latin|remittere]] は、写本Sの記述および&nbsp;''[[ガリア戦記/注解編/写本と校訂版#Stephanus_(Estienne)|Stephanus]]'' や ''[[ガリア戦記/注解編/写本と校訂版#Vascosanus|Vascosanus]]'' による修正提案で、<br>         &beta;系・&chi;系写本・写本B・M・L・N では [[wikt:en:remitteret#Latin|remitteret]] となっている。)</span> *si sibi <u>magis</u> [[wikt:en:honor#Latin|honorem]] [[wikt:en:tribuo#Latin|tribuere]], <u>quam</u> ab se [[wikt:en:salus#Latin|salutem]] [[wikt:en:accipio#Latin|accipere]] [[wikt:en:videantur#Latin|videantur]]. **もし<small>(ガッリア人が)</small>自分から安全を受け取っているよりも、むしろ顕職を自分に授けていると思っているのならば、だが。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:magis#Latin|magis]] ~, quam …「…というよりは、むしろ~」)</span> :  ;   捕虜のローマ人たちに訊いてみなさい *<!--❽--><sup>(8)</sup> <!--▲直接話法--><span style="background-color:#e8e8ff;">&nbsp;<span style="color:#009900;">«</span>&nbsp;Haec ut [[wikt:en:intellegatis#Latin|intellegatis]], <span style="color:#009900;">»</span>&nbsp;</span> [[wikt:en:inquit#Latin|inquit]], <!--▲直接話法--><span style="background-color:#e8e8ff;">&nbsp;<span style="color:#009900;">«</span>&nbsp;a me [[wikt:en:sincere#Latin|sincere]] [[wikt:en:pronuntiari#Latin|pronuntiari]], [[wikt:en:audite#Latin|audite]] [[wikt:en:Romanus#Adjective|Romanos]] [[wikt:en:miles#Latin|milites]]. <span style="color:#009900;">»</span>&nbsp;</span> **「これらは諸君が理解しているように、私により率直に示された。ローマ兵たちに聞いてみよ」と言った。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:<!--▲直接話法--><span style="background-color:#e8e8ff;">&nbsp;<span style="color:#009900;">«</span> ~ <span style="color:#009900;">»</span>&nbsp;</span> の箇所は、直接話法で記されている。)</span> :  *<!--❾--><sup>(9)</sup> [[wikt:en:producit#Latin|Producit]] [[wikt:en:servus#Latin|servos]], quos in [[wikt:en:pabulatio#Latin|pabulatione]] paucis ante diebus [[wikt:en:exceperat#Latin|exceperat]] et [[wikt:en:fames#Latin|fame]] [[wikt:en:vinculum#Latin|vinculis]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:excruciaverat#Latin|excruciaverat]]. **数日前に糧秣徴発しているのを<small>(彼が)</small>ひっ捕らえて、飢えと鎖で拷問していたところの奴隷たちを引き出す。 **:<span style="color:#009900;">(訳注:[[wikt:en:calo#Noun_5|cālō]] カーロー(軍属奴隷)と呼ばれる輜重や陣営を管理する奴隷たちのことであろう。)</span> :  *<!--❿--><sup>(10)</sup> Hi iam ante [[wikt:en:edoctus#Latin|edocti]], quae [[wikt:en:interrogatus#Latin|interrogati]] [[wikt:en:pronuntiarent#Latin|pronuntiarent]], **彼ら<small>〔奴隷〕</small>は、すでに前もって<small>(ガッリア勢から)</small>訊問された際に語ることを<small>(ローマ人から)</small>教え込まれており、 **:<span style="color:#009900;">(訳注:カエサルは奴隷たちが誰に教え込まれたのか明記していないため、<br>    ウェルキンゲトリークスに教え込まれたと訳している場合もある。)</span> *[[wikt:en:miles#Latin|milites]] se esse [[wikt:en:legionarius#Latin|legionarios]] [[wikt:en:dicunt#Latin|dicunt]]; **自分たちは[[w:軍団兵|軍団兵]]であると言った。 **:<span style="color:#009900;">(訳注:糧秣徴発に出かけていた者は、たとえ軍団兵でも軽装であったであろうが、<br>    奴隷たちは、もともと戦争で捕虜になったガッリア人たち等であったと考えられるので、<br>    地中海人種のローマ人とは容易に見分けが付きそうなものではある。)</span> *[[wikt:en:fames#Latin|fame]] <u>et</u> [[wikt:en:inopia#Noun_2|inopia]] [[wikt:en:adductus#Latin|adductos]] [[wikt:en:clam#Latin|clam]] ex castris [[wikt:en:exisse#Latin|exisse]], si [[wikt:en:aliquis#Latin|quid]] [[wikt:en:frumentum#Latin|frumenti]] aut [[wikt:en:pecus#Latin|pecoris]] in agris [[wikt:en:reperio#Latin|reperire]] [[wikt:en:possent#Latin|possent]]; **<small>(奴隷たち曰く)</small>飢えと欠乏に動かされて、何か穀物または家畜が野に見出せないかと、ひそかに陣営から抜け出した。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:et は&alpha;系写本の記述で、&beta;系写本では atque となっている。)</span> :  *<!--⓫--><sup>(11)</sup> [[wikt:en:similis#Latin|simili]] omnem [[wikt:en:exercitus#Noun|exercitum]] [[wikt:en:inopia#Noun_2|inopia]] [[wikt:en:premi#Latin|premi]], **<small>(ローマ人の)</small>全軍隊が同様の欠乏に悩まされて、 *<u>nec</u> iam [[wikt:en:vis#Latin|vires]] [[wikt:en:sufficio#Latin|sufficere]] [[wikt:en:quisquam#Latin|cuiusquam]] <u>nec</u> ferre [[wikt:en:opus#Latin|operis]] [[wikt:en:labor#Latin|laborem]] posse; **もはや<small>(兵士の)</small>誰もが十分な能力がなく、<small>(城攻めの)</small>作業の労苦に耐えることができない。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:nec ~ nec …「~でもなく、…でもない」)</span> *itaque [[wikt:en:statuisse#Latin|statuisse]] [[wikt:en:imperator#Latin|imperatorem]], si [[wikt:en:nihil#Latin|nihil]] in [[wikt:en:oppugnatio#Latin|oppugnatione]] oppidi <u>profecissent</u>, [[wikt:en:triduum#Latin|triduo]] [[wikt:en:exercitus#Noun|exercitum]] [[wikt:en:deduco#Latin|deducere]]. **こうして将軍<small>〔カエサル〕</small>は、もし城塞都市の攻略において何ら得られないならば、3日間で軍隊を連れ帰ると決めた。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、写本S・L・Nでは [[wikt:en:profecissent#Latin|profecissent]]<sub>&nbsp;(3人称・<u>複数</u>・過去完了・接続法)</sub> だが、<br>         &beta;系写本では [[wikt:en:profecisset#Latin|profecisset]]<sub>&nbsp;(3人称・<u>単数</u>・過去完了・接続法)</sub> となっており、<br>         &chi;系および写本B・Mでは proficissent という綴りになっている。)</span> : <!-- [[wikt:en:| --> *<!--⓬--><sup>(12)</sup> <!--▲直接話法--><span style="background-color:#e8e8ff;">&nbsp;<span style="color:#009900;">«</span>&nbsp;Haec, <span style="color:#009900;">»</span>&nbsp;</span> [[wikt:en:inquit#Latin|inquit]], <!--▲直接話法--><span style="background-color:#e8e8ff;">&nbsp;<span style="color:#009900;">«</span>&nbsp;a me, <span style="color:#009900;">»</span>&nbsp;</span> [[wikt:en:Vercingetorix#Latin|Vercingetorix]], **「これぞ」「私によって」とウェルキンゲトリークスは言った。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:以下、<!--▲直接話法--><span style="background-color:#e8e8ff;">&nbsp;<span style="color:#009900;">«</span> ~ <span style="color:#009900;">»</span>&nbsp;</span> の箇所は、直接話法で記されている。)</span> *<!--▲直接話法--><span style="background-color:#e8e8ff;">&nbsp;<span style="color:#009900;">«</span>&nbsp;[[wikt:en:beneficium#Latin|beneficia]] [[wikt:en:habetis#Latin|habetis]], quem [[wikt:en:proditio#Latin|proditionis]] [[wikt:en:insimulatis#Verb|insimulatis]]; &nbsp; **「裏切りだと諸君が糾弾している<small>(私という)</small>者のおかげで得ているのだ。 *<!--➡直接話法--><span style="background-color:#e8e8ff;">&nbsp; cuius [[wikt:en:opera#Latin|opera]] sine [[wikt:en:vester#Latin|vestro]] [[wikt:en:sanguis#Latin|sanguine]] &nbsp; **その<small>(私という)</small>者の尽力により、諸君らの流血なしに、 *<!--➡直接話法--><span style="background-color:#e8e8ff;">&nbsp; tantum [[wikt:en:exercitus#Noun|exercitum]] [[wikt:en:victor#Latin|victorem]] [[wikt:en:fames#Latin|fame]] <u>paene</u> [[wikt:en:consumptus#Latin|consumptum]] [[wikt:en:videtis#Latin|videtis]]; &nbsp; **これほどの軍隊の勝利者<small>〔ローマ人〕</small>を飢えにより、ほとんど滅ぼしたのを諸君は見ているのだ。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:paene は &beta;系写本の記述で、&alpha;系写本にはない。)</span> *<!--➡直接話法--><span style="background-color:#e8e8ff;">&nbsp; quem [[wikt:en:turpiter#Latin|turpiter]] se ex <u>hac</u> fuga [[wikt:en:recipiens#Latin|recipientem]] &nbsp; **彼ら<small>〔ローマ人〕</small>が見苦しくもこのような逃亡から退却したところを、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:hac は &beta;系写本の記述で、&alpha;系写本にはない。)</span> *<!--➡直接話法--><span style="background-color:#e8e8ff;">&nbsp; ne [[wikt:en:aliqua#Pronoun|qua]] [[wikt:en:civitas#Latin|civitas]] suis finibus [[wikt:en:recipiat#Latin|recipiat]], &nbsp; **<small>(それらの退却したローマ人を)</small>どの部族も自らの領土に受け入れないように、 *<!--➡直接話法--><span style="background-color:#e8e8ff;">&nbsp; a me [[wikt:en:provisus#Latin|provisum]] est. <span style="color:#009900;">»</span>&nbsp;</span> **私<small>〔ウェルキンゲトリークス〕</small>により、手配された。」 <!-- <span style="color:#009900;"></span> <small></small> **:<span style="color:#009900;">(訳注: **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注: --> ===21節=== *<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/21節]] {{進捗|00%|2026-05-10}}</span> ;ウェルキンゲトリークスの誠心とアウァーリクムの重要性を確認 :  *<!--❶--><sup>(1)</sup> [[wikt:en:conclamat#Latin|Conclamat]] omnis [[wikt:en:multitudo#Latin|multitudo]] **群集すべてが雄叫びを上げて、 *et suo [[wikt:en:mos#Latin|more]] [[wikt:en:arma#Latin|armis]] [[wikt:en:concrepat#Latin|concrepat]], **自分たちの慣習で武具を打ち鳴らす。 *quod facere in eo [[wikt:en:consuerunt#Verb_2|consuerunt]], cuius [[wikt:en:oratio#Latin|orationem]] [[wikt:en:adprobant#Latin|adprobant]]; **<small>(演説した)</small>その者の雄弁に賛同したら、その者に対してそれをすることが常であったのだ。 *summum esse [[wikt:en:Vercingetorix#Latin|Vercingetorigem]] [[wikt:en:dux#Latin|ducem]], **[[w:ウェルキンゲトリクス|ウェルキンゲトリークス]]は最高の将帥であり、 *<u>nec</u> de eius [[wikt:en:fides#Latin|fide]] [[wikt:en:dubitandus#Latin|dubitandum]], **彼の信義については疑念を抱くべきではなく、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:nec#Latin|nec]] ~, nec …「~でもないし、…でもない」)</span> *<u>nec</u> [[wikt:en:maior#Latin|maiore]] [[wikt:en:ratio#Latin|ratione]] bellum [[wikt:en:administrari#Latin|administrari]] posse. **これ以上の作戦で戦争を指導することはできない<small>(と、叫んで武具を打ち鳴らす)</small>。 :  *<!--❷--><sup>(2)</sup> [[wikt:en:statuunt#Latin|Statuunt]], ut decem<sub>&nbsp;(X)</sub> milia hominum [[wikt:en:delectus#Latin|delecta]] ex omnibus [[wikt:en:copiae#Latin|copiis]] in oppidum <u>mittantur</u>, **<small>(彼らは)</small>すべての軍勢から選り抜かれた兵員1万を<small>(アウァーリクムの)</small>[[w:オッピドゥム|城塞都市]]の中に派遣すると決定する。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、&alpha;系写本では [[wikt:en:mittantur#Latin|mittantur]] だが、<br>         &beta;系写本では [[wikt:en:submittantur#Latin|submittantur]] となっている。)</span> :  *<!--❸--><sup>(3)</sup> nec [[wikt:en:solus#Latin|solis]] [[wikt:en:Bituriges#Latin|Biturigibus]] [[wikt:en:communis#Latin|communem]] [[wikt:en:salus#Latin|salutem]] [[wikt:en:committendus#Latin|committendam]] [[wikt:en:censent#Latin|censent]], **<small>(ガッリア)</small>共通の安全をビトゥリゲース族だけに託すべきではないと考える。 *quod <u>penes eos</u>, si id oppidum [[wikt:en:retinuissent#Latin|retinuissent]], **というのは、<u>彼らのもとで</u>、その城塞都市を維持したか否かが、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、<br>    主要写本&omega; では [[wikt:en:penes#Latin|penes]] eos 「彼らのもとで」だが、<br>    オックスフォード写本 ''[[ガリア戦記/注解編/写本と校訂版#Codex_Oxoniensis_Andino|codd. Andino. Oxon.]]'' や ''[[ガリア戦記/注解編/写本と校訂版#Aldus|Aldus]]'' は paene in eo 「ほぼそのことにおいて」としている。)</span> *[[wikt:en:summa#Latin|summam]] victoriae [[wikt:en:consto#Latin|constare]] [[wikt:en:intellegebant#Latin|intellegebant]]. **勝利の天王山を確かなものにすること、を理解していたからである。 <!-- <span style="color:#009900;"></span> <small></small> **:<span style="color:#009900;">(訳注: **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注: --> ===22節=== *<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/22節]] {{進捗|00%|2026-06-01}}</span> ;アウァーリクムの籠城ガッリア勢が坑道戦で攻防に努める :  *<!--❶--><sup>(1)</sup> [[wikt:en:singularis#Latin|Singulari]] [[wikt:en:miles#Latin|militum]] nostrorum [[wikt:en:virtus#Latin|virtuti]] **我が方<small>〔ローマ勢〕</small>の兵士の卓越した武勇に、 *[[wikt:en:consilium#Latin|consilia]] [[wikt:en:quisque#Latin|cuiusque]] [[wikt:en:modus#Latin|modi]] [[wikt:en:Galli#Latin|Gallorum]] [[wikt:en:occurrebant#Latin|occurrebant]], **<small>(敵勢は)</small>ガッリア人のあらゆる流儀の方策で抗戦していた。 *ut est summae [[wikt:en:genus#Latin|genus]] [[wikt:en:sollertia#Latin|sollertiae]] **確かに<small>(ガッリア人は)</small>このうえなく器用な種族であり、 *atque ad [[wikt:en:omnia#Noun|omnia]] [[wikt:en:imitandus#Latin|imitanda]] et [[wikt:en:efficiendus#Latin|efficienda]], quae ab [[wikt:en:quisque#Latin|quoque]] [[wikt:en:traduntur#Latin|traduntur]], [[wikt:en:aptissimus#Latin|aptissimum]]. **誰かによって教えられることすべてを模倣すること、造り出すことにとても適しているのだ。 :  ;   鉄鉱山の土地柄で、坑道戦を展開する *<!--❷--><sup>(2)</sup> Nam <u>et</u> [[wikt:en:laqueus#Latin|laqueis]] [[wikt:en:falx#Latin|falces]] [[wikt:en:avertebant#Latin|avertebant]], **すなわち、輪縄で<small>(ローマ勢の)</small>破城鎌をそらし、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:et ~, et …「~でもあり、…でもある」)</span> **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:破城鎌([[w:en:Falx|falx]])については、右図や[[ガリア戦記 第5巻#42節|第5巻42節]]を参照)</span> [[画像:Falx_bgiu.png|thumb|right|250px|破城鎌([[w:en:Falx|falx]])の想像画(再掲)]] [[画像:Doura_Europos_tunnel.jpg|thumb|right|250px|ローマ支配下の城砦跡に残る[[w:坑道|坑道]]の例(シリアの[[w:ドゥラ・エウロポス|ドゥラ・エウロポス]]遺跡)。[[w:サーサーン朝|サーサーン朝]]軍が[[w:坑道戦|坑道戦]]のために掘削したと考えられている。]] *quas, cum [[wikt:en:destinaverant#Latin|destinaverant]], **それを縛り付けておいてから、 *[[wikt:en:tormentum#Latin|tormentis]] [[wikt:en:introrsus#Latin|introrsus]] [[wikt:en:reducebant#Latin|reducebant]], **巻揚げ機で<small>(城塞都市の)</small>内部に引き込んでいたし、 *<u>et</u> [[wikt:en:agger#Latin|aggerem]] [[wikt:en:cuniculus#Latin|cuniculis]] [[wikt:en:subtrahebant#Latin|subtrahebant]], **<small>(ローマ勢の)</small><ruby><rb>[[w:アッゲル|土塁]]</rb><rp>(</rp><rt>アッゲル</rt><rp>)</rp></ruby> を[[w:坑道|坑道]]によって陥没させたりもした。 *<u>eo</u> [[wikt:en:scienter#Latin|scientius]] **<small>(以下の理由により、彼らはそのことに)</small>より習熟しているのだ。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:eo#Pronoun_5|eō]] ~ [[wikt:en:quod#Conjunction|quod]] …「…という理由で~」)</span> *<u>quod</u> apud eos magnae sunt [[wikt:en:ferraria#Latin|ferrariae]] **──というのも、彼らのもとには多くの[[w:鉄鉱石|鉄鉱]]山があり、 *atque [[wikt:en:omnis#Latin|omne]] [[wikt:en:genus#Latin|genus]] [[wikt:en:cuniculus#Latin|cuniculorum]] [[wikt:en:notus#Latin|notum]] **坑道のあらゆる類いが知られていて *atque [[wikt:en:usitatus#Latin|usitatum]] est. **慣れていただけに<small>(習熟しているのだ)</small>。── :  ;   アウァーリクムの全周に防御のための櫓を建てる *<!--❸--><sup>(3)</sup> [[wikt:en:totus#Latin|Totum]] autem [[wikt:en:murus#Latin|murum]] ex omni parte **他方で、城壁の全体をあらゆる方向から、 *[[wikt:en:turris#Latin|turribus]] [[wikt:en:contabulaverant#Latin|contabulaverant]] **<ruby><rb>[[w:攻城塔|攻城櫓]]</rb><rp>(</rp><rt>トゥッリス</rt><rp>)</rp></ruby>を<small>(何層にも)</small>構築しておいて、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:動詞 [[wikt:en:contabulo#Latin|contabulare]] は「板張りする」。[[内乱記_第2巻#9節|『内乱記』第2巻9節]]には [[wikt:en:contabulatio#Latin|contabulatio]]「床板張り」という単語が出て来る。)</span> *atque has [[wikt:en:corium#Latin|coriis]] [[wikt:en:intexerant#Latin|intexerant]]. **これらを皮革で覆っていた。 :  *<!--❹--><sup>(4)</sup> Tum [[wikt:en:creber#Latin|crebris]] [[wikt:en:diurnus#Latin|diurnis]] [[wikt:en:nocturnus#Latin|nocturnis]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:eruptio#Latin|eruptionibus]] **それから、たびたび昼間も夜間も出撃して、 *aut [[wikt:en:agger#Latin|aggeri]] [[wikt:en:ignis#Latin|ignem]] [[wikt:en:inferebant#Latin|inferebant]] **あるいは土塁に火災を引き起こしたり、 *aut [[wikt:en:miles#Latin|milites]] [[wikt:en:occupatus#Latin|occupatos]] in [[wikt:en:opus#Latin|opere]] [[wikt:en:adoriebantur#Latin|adoriebantur]], **あるいは工事に従事している<small>(ローマ人)</small>兵士たちを襲撃したりした。 [[画像:University_of_Queensland_Pitch_drop_experiment-white_bg.jpg|thumb|right|200px|<ruby><rb>[[w:ピッチ (樹脂)|樹脂]]</rb><rp>(</rp><rt>ピッチ</rt><rp>)</rp></ruby>の滴下実験の様子(豪州[[w:クイーンズランド大学|クイーンズランド大学]])。[[w:木材|木材]]を密閉加熱すると[[w:木炭|木炭]]が得られるが、その残り物から[[w:乾留液#木タール|木タール]]を[[w:蒸留|蒸留]]させた残り<ruby><rb>滓</rb><rp>(</rp><rt>かす</rt><rp>)</rp></ruby>がピッチである。樹木から得られるピッチは、黒色で[[w:粘度|粘っこく]]、高温で燃焼する。中世ヨーロッパでは城砦の防衛に使用され、城壁に近づく敵の上から熱したピッチを注いで焼死させたりしたという([[w:fr:Poix (matière)|fr:poix]])。]] *et nostrarum [[wikt:en:turris#Latin|turrium]] [[wikt:en:altitudo#Latin|altitudinem]], **我が方<small>〔ローマ勢〕</small>の[[w:攻城塔|攻城櫓]]の高さを、 *[[wikt:en:quantum#Latin|quantum]] has [[wikt:en:cotidianus#Latin|cotidianus]] agger [[wikt:en:expresserat#Latin|expresserat]], **毎日のようにこれらを<small>(ローマ側の)</small>土塁が押し出した分だけ、 *[[wikt:en:commissus#Latin|commissis]] suarum [[wikt:en:turris#Latin|turrium]] [[wikt:en:malus#Noun_5|malis]] [[wikt:en:adaequabant#Latin|adaequabant]], **自分たち<small>〔ガッリア勢〕</small>の櫓を、柱を組み立てることにより、<small>(ローマ側の櫓の高さと)</small>等しくしようとした。 :  *<!--❺--><sup>(5)</sup> et [[wikt:en:apertus#Latin|apertos]] [[wikt:en:cuniculus#Latin|cuniculos]] **<small>(ローマ勢が掘削した)</small>坑道の露出したところを *[[wikt:en:praeustus#Latin|praeusta]] et [[wikt:en:praeacutus#Latin|praeacuta]] [[wikt:en:materia#Latin|materia]] **先端を焼いて尖らせた木材や、 *et [[wikt:en:pix#Latin|pice]] [[wikt:en:fervefactus#Latin|fervefacta]] **熱した<ruby><rb>[[w:ピッチ (樹脂)|樹脂]]</rb><rp>(</rp><rt>ピッチ</rt><rp>)</rp></ruby>や、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:pix は<ruby><rb>[[w:歴青|瀝青]]</rb><rp>(</rp><rt>れきせい</rt><rp>)</rp></ruby>と訳されることもあるが、とくに[[w:ピッチ (樹脂)|ピッチ]]を指す<ref>[https://kotobank.jp/word/%E6%9C%A8%E3%81%9F%E3%83%BC%E3%82%8B-3173189 木タール] などを蒸留したあとに残る黒色の物質。</ref>。<br>    [[w:歴青|瀝青]]は「ビチューメン」ともいい、ラテン語の [[wikt:en:bitumen#Latin|bitūmen]] に由来する。<br>    [[w:ピッチ (樹脂)|ピッチ]]([[w:en:Pitch (resin)|Pitch]])は、ラテン語の [[wikt:en:pix#Latin|pix]] に由来する。)</span> *et [[wikt:en:maximus#Latin|maximi]] [[wikt:en:pondus#Latin|ponderis]] [[wikt:en:saxum#Latin|saxis]] [[wikt:en:morabantur#Etymology_1|morabantur]] **たいへんな重さの岩石で、<small>(ローマ勢の掘削を)</small>滞らせたり、 *[[wikt:en:moenia#Latin|moenibus]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:adpropinquo#Latin|adpropinquare]] [[wikt:en:prohibebant#Latin|prohibebant]]. **<small>(ローマ勢が)</small>城壁に接近することを<small>(ガッリア勢が)</small>妨げたりしていた。 <!-- <span style="color:#009900;"></span> <small></small> **:<span style="color:#009900;">(訳注: **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注: --> ===23節=== {{Commons|Category:Murus gallicus|Murus gallicus}} *<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/23節]] {{進捗|00%|2026-06-14}}</span> ;ガッリア式城壁の構造 :  *<!--❶--><sup>(1)</sup> [[wikt:en:murus#Latin|Muri]] autem omnes [[wikt:en:Gallicus#Latin|Gallici]] hac fere [[wikt:en:forma#Latin|forma]] sunt. **ところで、ガッリアの<ruby><rb>城壁</rb><rp>(</rp><rt>ムルス</rt><rp>)</rp></ruby>のすべては、ほぼ以下のような形態である。 :  ;   木材を2ペースずつ等間隔で離して、ずっと並べていく *<u>Trabes</u> [[wikt:en:derectus#Latin|derectae]] [[wikt:en:perpetuus#Latin|perpetuae]] <u>in longitudinem</u> **<u><ruby><rb>木材</rb><rp>(</rp><rt>トラプス</rt><rp>)</rp></ruby></u>が<small>(城壁の)</small><u><ruby><rb>長手方向</rb><rp>(</rp><rt>ロンギトゥードー</rt><rp>)</rp></ruby></u>に、<small>(垂直に)</small>真っ直ぐに、ずっと続いて、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:trabs#Latin|trabes]] は、とくに梁のような水平材を指していると思われる。)</span> **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:in [[wikt:en:longitudo#Latin|longitudinem]] は、ここでは、城壁に沿った長手方向を指す。)</span> [[画像:Murus gallicus de Lyon Fourvière - Maquette de Nicolas Hirsch - Service Archéologique de la Ville de Lyon - Détail structure.jpg|thumb|right|300px|ガッリア式城壁の[[w:ジオラマ|ジオラマ]](仏[[w:リヨン|リヨン市]]考古学局)。木材を約60cmの間隔で並べる。]] *[[wikt:en:par#Latin|paribus]] [[wikt:en:intervallum#Latin|intervallis]], [[wikt:en:distans#Latin|distantes]] inter se [[wikt:en:binus#Latin|binos]] [[wikt:en:pes#Latin|pedes]], **等間隔で、互いに2<u>ペース</u>ずつ離れて、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:1[[ガイウス・ユリウス・カエサルの著作/通貨・計量単位#ペース|ペース]]は約29.6cmで、2ペースは約60 cm弱。)</span> *in [[wikt:en:solum#Latin|solo]] [[wikt:en:conlocantur#Latin|conlocantur]]. **<ruby><rb>地面</rb><rp>(</rp><rt>ソルム</rt><rp>)</rp></ruby>に配置される。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:右の画像を参照。)</span> :  ;   木材をつなぎ合わせ、土砂を埋めて、石材をかぶせる [[画像:2018 Rheinisches Landesmuseum Trier, Keltischer Wehrmauer.jpg|thumb|right|300px|同じく城壁のジオラマ(独[[w:トリーア|トリーア市]])。]] *<!--❷--><sup>(2)</sup> [[wikt:en:hae#Latin|Hae]] [[wikt:en:revinciuntur#Latin|revinciuntur]] [[wikt:en:introrsus#Latin|introrsus]] **これら<small>〔木材〕</small>は、内側で緊結されて、 **:<span style="color:#009900;">(訳注:明瞭な説明ではなく、肝心な記述が欠落している。<br>    上記の2ペースずつ等間隔で並べられた平行な木材は、<br>    節末で述べられるような40ペースの長い木材によって<br>    井桁状に組み合わされて、鉄の釘で固定されたようである。<br>    右上と右のジオラマの画像を参照。)</span> *et [[wikt:en:multus#Latin|multo]] [[wikt:en:agger#Latin|aggere]] [[wikt:en:vestiuntur#Latin|vestiuntur]]; **多くの<ruby><rb>土砂</rb><rp>(</rp><rt>アッゲル</rt><rp>)</rp></ruby>で覆われる。 *ea autem, quae [[wikt:en:diximus#Verb|diximus]], [[wikt:en:intervallum#Latin|intervalla]] **さらに、前述した<small>(2ペースの)</small>間隔には、 *[[wikt:en:grandis#Latin|grandibus]] in [[wikt:en:frons#Latin:_forehead|fronte]] [[wikt:en:saxum#Latin|saxis]] <u>efferciuntur</u>. **前面に大きな<ruby><rb>石塊</rb><rp>(</rp><rt>サクスム</rt><rp>)</rp></ruby>が詰め込まれる。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、&rho;系写本・写本V では [[wikt:en:efferciuntur#Latin|efferciuntur]] と表記され、<br>         &alpha;系写本・写本T では [[wikt:en:effarciuntur#Latin|effarciuntur]] と表記されるが、<br>         [[w:母音弱化|母音弱化]]の語形である前者の方が、共和制末期のカエサルが用いたと考えられる。)</span> [[画像:Keltenmauer.gif|thumb|right|280px|ガッリア式城壁の構成図(上が側面、中が上面、下が前面)。木材を水平な井桁状に並べて[[w:釘|釘]]で緊結し、土砂で覆って何層にも重ね、前面には石をはめ込む。井桁状の骨組によって[[w:破城槌|破城槌]]など横からの力(水平荷重)に耐えられるように工夫されている。]] :  *<!--❸--><sup>(3)</sup> His [[wikt:en:conlocatus#Latin|conlocatis]] et [[wikt:en:coagmentatus#Latin|coagmentatis]] **<u>これら</u>が配置されて結び合わされると、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:<u>これら</u> とは、上述の木材や石材のこと。)</span> *alius [[wikt:en:insuper#Latin|insuper]] [[wikt:en:ordo#Latin|ordo]] [[wikt:en:additur#Latin|additur]], **上に別の<ruby><rb>階層</rb><rp>(</rp><rt>オルドー</rt><rp>)</rp></ruby>が付け加えられる。 *ut idem illud [[wikt:en:intervallum#Latin|intervallum]] [[wikt:en:servetur#Latin|servetur]], **その同じ<small>(2ペースの)</small>間隔が保たれて、 *neque inter se [[wikt:en:contingant#Latin|contingant]] [[wikt:en:trabs#Latin|trabes]], **かつ<ruby><rb>木材</rb><rp>(</rp><rt>トラプス</rt><rp>)</rp></ruby>が互いに接触しないように、 **:<span style="color:#009900;">(訳注:上下の層の水平材どうしが接触しないように、<br>    互い違いに並べているようである。)</span> *sed [[wikt:en:par#Latin|paribus]] [[wikt:en:intermissus#Latin|intermissae]] [[wikt:en:spatium#Latin|spatiis]] [[wikt:en:singulus#Latin|singulae]] **けれども、等間隔で間をあけられたそれぞれ<small>(の木材)</small>は、 *[[wikt:en:singulus#Latin|singulis]] [[wikt:en:saxum#Latin|saxis]] [[wikt:en:interiectus#Latin|interiectis]] **それぞれの<ruby><rb>石塊</rb><rp>(</rp><rt>サクスム</rt><rp>)</rp></ruby>が間に挟まれることによって、 *[[wikt:en:arte#Adverb|arte]] [[wikt:en:contineantur#Latin|contineantur]]. **緊密に連結される。 :  *<!--❹--><sup>(4)</sup> Sic [[wikt:en:deinceps#Latin|deinceps]] omne [[wikt:en:opus#Latin|opus]] [[wikt:en:contexitur#Latin|contexitur]], [[wikt:en:dum#Latin|dum]] [[wikt:en:iustus#Latin|iusta]] [[wikt:en:murus#Latin|muri]] [[wikt:en:altitudo#Latin|altitudo]] [[wikt:en:expleatur#Latin|expleatur]]. **このように、<ruby><rb>城壁</rb><rp>(</rp><rt>ムルス</rt><rp>)</rp></ruby>の十分な高さが満たされるまで、すべての<ruby><rb>工作物</rb><rp>(</rp><rt>オプス</rt><rp>)</rp></ruby>が続けて組み立てられる。 [[画像:Bibracte_murus_gallicus1.jpg|thumb|right|300px|ガッリア式城壁の[[w:ジオラマ|ジオラマ]](仏[[w:ビブラクテ|ビブラクテ]]遺跡のケルト文明博物館)。この構造形式はカエサルの記述から「[[w:ムルス・ガリクス|ムルス・ガリクス]](ガッリア壁)」と呼ばれるが、ガッリアに限らず、[[w:鉄器時代|鉄器時代]]末期すなわちBC1世紀頃の後期[[w:ラ・テーヌ文化|ラ・テーヌ文化]]が及んだ各地に遺構として残る。木材どうしを緊結するために数百トンもの[[w:鉄|鉄]]の[[w:釘|釘]]を用いているのが大きな特徴で、[[w:鉄#製錬|製鉄]]・[[w:鋳造|鋳造]]技術の発達を示す。]] :  ;   ガッリア式城壁は、外観が見事で、城塞都市の防御にも有益 :<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:以下、cum ~ tum … の構文「~だけでなく、また…でもある」。)</span> *<!--❺--><sup>(5)</sup> Hoc <u>cum</u> in [[wikt:en:species#Latin|speciem]] [[wikt:en:varietas#Latin|varietatem]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:opus#Latin|opus]] [[wikt:en:deformis#Latin|deforme]] non est [[wikt:en:alternus#Latin|alternis]] [[wikt:en:trabs#Latin|trabibus]] ac [[wikt:en:saxum#Latin|saxis]], **<ruby><rb>この</rb><rp>(</rp><rt>ホク</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>工作物</rb><rp>(</rp><rt>オプス</rt><rp>)</rp></ruby>は、互い違いの<ruby><rb>木材</rb><rp>(</rp><rt>トラプス</rt><rp>)</rp></ruby>と<ruby><rb>石塊</rb><rp>(</rp><rt>サクスム</rt><rp>)</rp></ruby>により、変化に富む外観において不格好でなく、 *quae [[wikt:en:rectus#Latin|rectis]] [[wikt:en:linea#Latin|lineis]] suos [[wikt:en:ordo#Latin|ordines]] [[wikt:en:servant#Latin|servant]], **──それら<small>〔木材と石〕</small>は真っ直ぐな線により、その<ruby><rb>階層</rb><rp>(</rp><rt>オルドー</rt><rp>)</rp></ruby>を保っているのだが── *<u>tum</u> ad [[wikt:en:utilitas#Latin|utilitatem]] et [[wikt:en:defensio#Latin|defensionem]] [[wikt:en:urbs#Latin|urbium]] **同様に、都市の防御の有益性のためにも、 *summam [[wikt:en:habet#Latin|habet]] [[wikt:en:opportunitas#Latin|opportunitatem]], **きわめて好都合となっている。 *quod et ab [[wikt:en:incendio#Latin|incendio]] [[wikt:en:lapis#Latin|lapis]] et ab [[wikt:en:aries#Latin|ariete]] [[wikt:en:materia#Latin|materia]] [[wikt:en:defendit#Latin|defendit]], **──というのは、<ruby><rb>石材</rb><rp>(</rp><rt>ラピス</rt><rp>)</rp></ruby>が火災からも、<ruby><rb>材木</rb><rp>(</rp><rt>マーテリア</rt><rp>)</rp></ruby>が<ruby><rb>[[w:破城槌|破城槌]]</rb><rp>(</rp><rt>はじょうつい</rt><rp>)</rp></ruby>からも、防護しており、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:et ~ et …「~でもあり、…でもある」)</span> *quae [[wikt:en:perpetuus#Latin|perpetuis]] [[wikt:en:trabs#Latin|trabibus]] [[wikt:en:pes#Latin|pedes]] [[wikt:en:quadragenus#Latin|quadragenos]] [[wikt:en:plerumque#Adverb|plerumque]] [[wikt:en:introrsus#Latin|introrsus]] [[wikt:en:revinctus#Latin|revincta]] **それ<small>〔短手方向の材木〕</small>は、たいてい40<u>ペース</u>にわたって<small>(長手方向に)</small>続く<ruby><rb>木材</rb><rp>(</rp><rt>トラプス</rt><rp>)</rp></ruby>により内部で緊結されており、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:1[[ガイウス・ユリウス・カエサルの著作/通貨・計量単位#ペース|ペース]]は約29.6cmで、40ペースは約12メートル。)</span> *neque [[wikt:en:perrumpi#Latin|perrumpi]] neque [[wikt:en:distrahi#Latin|distrahi]] potest. **突破されることも、引きはがされることもできないからである。── <!-- <span style="color:#009900;"></span> <small></small> **:<span style="color:#009900;">(訳注: **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注: --> ===24節=== [[画像:Avaricum_westpoint_july_2006.jpg|thumb|right|350px|[[w:アウァリクム包囲戦|アウァーリクム攻略戦]]の[[w:ジオラマ|ジオラマ]]<small>([[w:陸軍士官学校 (アメリカ合衆国)|米国陸軍士官学校]]博物館)</small>。ローマ軍の<ruby><rb>[[w:アッゲル|土塁]]</rb><rp>(</rp><rt>アッゲル</rt><rp>)</rp></ruby>は、城壁(奥)の手前に材木と土砂を積み重ねた構築物が築き上げられ、左右の土手道をそれぞれ4層の[[w:攻城塔|攻城櫓]]が城壁に迫る。土塁の周辺には<ruby><rb>[[w:ウィネア|工作小屋]]</rb><rp>(</rp><rt>ウィネア</rt><rp>)</rp></ruby>(vinea)を多数つないだ通路(坑道)が延びている。手前には2台の<ruby><rb>投射機</rb><rp>(</rp><rt>スコルピオ</rt><rp>)</rp></ruby>が見える。]] *<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/24節]] {{進捗|00%|2026-06-15}}</span> ;ローマ勢が徹夜の土塁工事、籠城ガッリア勢の攻勢 :  ;   ローマ勢が、25日間で大がかりな攻城設備を構築する *<!--❶--><sup>(1)</sup> His [[wikt:en:tot#Latin|tot]] rebus [[wikt:en:impeditus#Latin|impedita]] [[wikt:en:oppugnatio#Latin|oppugnatione]] **これら多くの事情により攻囲が妨げられて、 *[[wikt:en:miles#Latin|milites]], **兵士たちは、 *cum [[wikt:en:totus#Etymology_1|toto]] tempore <u>luto</u> [[wikt:en:frigus#Latin|frigore]] et [[wikt:en:adsiduus#Latin|adsiduis]] [[wikt:en:imber#Latin|imbribus]] <u>tardarentur</u>, **常時、<ruby><rb><u>泥土</u></rb><rp>(</rp><rt>ルトゥム</rt><rp>)</rp></ruby>、寒さと絶え間ない<ruby><rb>雨嵐</rb><rp>(</rp><rt>イムベル</rt><rp>)</rp></ruby>によって遅らせられていたが、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部の [[wikt:en:lutum#Latin|luto]] は、&beta;系写本の記述で、<br>            &alpha;系写本にはない。)</span> **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部の二つ目は、<br>        &chi;系・&beta;系写本では [[wikt:en:tardarentur#Latin|tardarentur]] だが、<br>        写本B・M・Sでは traderentur、<br>        写本L・Nでは terrerentur などとなっている。)</span> *tamen [[wikt:en:continens#Adjective|continenti]] [[wikt:en:labor#Latin|labore]] omnia haec [[wikt:en:superaverunt#Latin|superaverunt]] **しかしながら、絶え間ない労働によってこれらすべてに打ち克って、 *et diebus XXV<small> ([[wikt:en:quinque#Latin|quinque]] et [[wikt:en:viginti#Latin|viginti]])</small> **25日間で、 *[[wikt:en:agger#Latin|aggerem]] [[wikt:en:latus#Latin:_wide|latum]] [[wikt:en:pes#Latin|pedes]] CCCXXX<small> ([[wikt:en:trecenti#Latin|trecenti]] [[wikt:en:triginta#Latin|triginta]])</small>, [[wikt:en:altus#Latin|altum]] pedes LXXX<small> ([[wikt:en:octoginta#Latin|octoginta]])</small> [[wikt:en:exstruxerunt#Latin|exstruxerunt]]. **幅330<u>ペース</u>、高さ80<u>ペース</u>の<ruby><rb>[[w:アッゲル|土塁]]</rb><rp>(</rp><rt>アッゲル</rt><rp>)</rp></ruby>を築き上げた。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:1[[ガイウス・ユリウス・カエサルの著作/通貨・計量単位#ペース|ペース]]は約29.6cmで、幅330ペースは約98メートル。高さ80ペースは約24メートル。)</span> :  ;   アウァーリクムに籠城するガッリア勢が、攻囲するローマ勢の土塁に夜襲をしかける *<!--❷--><sup>(2)</sup> Cum is [[wikt:en:murus#Latin|murum]] hostium paene [[wikt:en:contingeret#Latin|contingeret]], **それ<small>〔ローマ側の土塁〕</small>が敵の城壁にほとんど接しようとしていたとき、 *et Caesar ad [[wikt:en:opus#Latin|opus]] [[wikt:en:consuetudo#Latin|consuetudine]] [[wikt:en:excubaret#Latin|excubaret]] **かつ、カエサルが習慣により作業のそばで寝ずの番をしていて、 *[[wikt:en:miles#Latin|milites]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:hortaretur#Latin|hortaretur]], ne [[wikt:en:aliquod#Latin|quod]] [[wikt:en:omnino#Latin|omnino]] [[wikt:en:tempus#Latin|tempus]] ab [[wikt:en:opus#Latin|opere]] [[wikt:en:intermitteretur#Latin|intermitteretur]], **いかなる時も作業がまったく中断されないように、と兵士たちを励ましていたときに、 *paulo ante tertiam [[wikt:en:vigilia#Latin|vigiliam]] **第三夜警時の少し前に、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:第三夜警時は、真夜中から日の出までの時間帯の前半。「未明」<br>    [[古代ローマの不定時法#夜警時|#夜警時]] を参照。)</span> *est [[wikt:en:animadversus#Participle|animadversum]] [[wikt:en:fumo#Latin|fumare]] [[wikt:en:agger#Latin|aggerem]], **土塁に煙が上がっていることが気付かれた。 *quem [[wikt:en:cuniculus#Latin|cuniculo]] hostes [[wikt:en:succenderant#Latin|succenderant]]; **<small>(その土塁を)</small>[[w:坑道|坑道]]によって敵たちが焼き討ちしていたものである。 :  *<!--❸--><sup>(3)</sup> [[wikt:en:idem#Latin|eodem]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:tempus#Latin|tempore]] **そして同時に、 *[[wikt:en:totus#Latin|toto]] [[wikt:en:murus#Latin|muro]] [[wikt:en:clamor#Latin|clamore]] [[wikt:en:sublatus#Latin:_raised|sublato]], **<small>(アウァーリクムの)</small>城壁全体で雄叫びが上がって、 *duabus portis ab [[wikt:en:uterque#Latin|utroque]] [[wikt:en:latus#Latin:_side|latere]] [[wikt:en:turris#Latin|turrium]] **二つの城門より、<small>(ローマ勢の)</small>[[w:攻城塔|攻城櫓]]の両方の側面から *[[wikt:en:eruptio#Latin|eruptio]] [[wikt:en:fiebat#Latin|fiebat]]. **<small>(ガッリア勢による)</small>突撃がなされていた。 :  *<!--❹--><sup>(4)</sup> Alii [[wikt:en:fax#Latin|faces]] atque [[wikt:en:aridus#Latin|aridam]] <u>materiam</u> de [[wikt:en:murus#Latin|muro]] in [[wikt:en:agger#Latin|aggerem]] [[wikt:en:eminus#Latin|eminus]] [[wikt:en:iaciebant#Latin|iaciebant]], **<small>(ガッリア勢の)</small>他の者たちは、<ruby><rb>[[w:たいまつ|松明]]</rb><rp>(</rp><rt>たいまつ</rt><rp>)</rp></ruby>および乾いた材木を、城壁から<small>(ローマ側の)</small>土塁に、遠くから投げ込んで、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、&beta;系写本では [[wikt:en:materiam#Latin|materiam]] だが、<br>         &alpha;系写本では [[wikt:en:materiem#Latin|materiem]] となっている。<br>         文法学者[[w:カエサレアのプリスキアヌス|プリスキアーヌス]]は、カエサルの文法書 "De Analogia" について materiam と引用している。)</span> *[[wikt:en:pix#Latin|picem]] [[wikt:en:reliquus#Latin|reliquas]]<nowiki>que</nowiki> res, quibus [[wikt:en:ignis#Latin|ignis]] [[wikt:en:excitari#Latin|excitari]] potest, [[wikt:en:fundebant#Latin|fundebant]], **<ruby><rb>[[w:ピッチ (樹脂)|樹脂]]</rb><rp>(</rp><rt>ピッチ</rt><rp>)</rp></ruby>や、火を燃え立たせられるほかのもの<small>〔可燃物〕</small>を注ぎ込んだ。 *ut, [[wikt:en:quo#Latin:_where|quo]] primum <u>curreretur</u> aut cui rei [[wikt:en:ferretur#Latin|ferretur]] [[wikt:en:auxilium#Latin|auxilium]], **それで、まずどこに駆け付けるのか、あるいはどの事態に支援がなされるのか、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、&alpha;系写本では [[wikt:en:curreretur#Latin|curreretur]] だが、<br>         &beta;系写本では [[wikt:en:occurreretur#Latin|occurreretur]] となっている。)</span> *vix [[wikt:en:ratio#Latin|ratio]] [[wikt:en:iniri#Latin|iniri]] posset. **<small>(ローマ兵には)</small>ほとんど分別され得なかった。 :  *<!--❺--><sup>(5)</sup> Tamen, quod [[wikt:en:institutum#Latin|instituto]] Caesaris <u>semper duae</u> [[wikt:en:legio#Latin|legiones]] pro [[wikt:en:castra#Latin|castris]] [[wikt:en:excubabant#Latin|excubabant]] **しかしながら、カエサルの定めにより常に2個[[w:ローマ軍団|軍団]]が陣営の前に寝ずの番をしていたので、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、&alpha;系写本の語順では semper duae だが、<br>         &beta;系写本の語順では duae semper となっている。)</span> *[[wikt:en:plus#Latin|plures]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:partitus#Latin|partitis]] [[wikt:en:tempus#Latin|temporibus]] erant in [[wikt:en:opus#Latin|opere]], **かつ、より多くの者たちが時間を割り当てられて作業していたので、 *celeriter [[wikt:en:factus#Latin|factum]] est, **<small>(防戦は)</small>速やかになされた。 *ut <u>alii</u> [[wikt:en:eruptio#Latin|eruptionibus]] [[wikt:en:resisterent#Latin|resisterent]], **ある者たちは<small>(ガッリア勢の)</small>突撃に抵抗しており、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:alii ~ alii …「~する者もいれば、…する者もいる。」)</span> *<u>alii</u> [[wikt:en:turris#Latin|turres]] [[wikt:en:reducerent#Latin|reducerent]] **別のある者たちは[[w:攻城塔|攻城櫓]]を引き戻して、 *[[wikt:en:agger#Latin|aggerem]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:interscinderent#Latin|interscinderent]], **土塁を<small>(城壁側から)</small>切り離していた。 *omnis vero ex [[wikt:en:castra#Latin|castris]] [[wikt:en:multitudo#Latin|multitudo]] ad [[wikt:en:restinguendum#Verb|restinguendum]] [[wikt:en:concurreret#Latin|concurreret]]. **さらに陣営から大勢の皆が、消火するために急ぎ集まっていた。 <!-- <span style="color:#009900;"></span> <small></small> **:<span style="color:#009900;">(訳注: **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注: --> ===25節=== *<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/25節]] {{進捗|00%|2026-06-29}}</span> ;籠城ガッリア勢が必死の防戦 :  *<!--❶--><sup>(1)</sup> Cum in omnibus locis, <u>[[wikt:en:consumptus#Latin|consumpta]] iam reliqua parte noctis</u>, [[wikt:en:pugnaretur#Latin|pugnaretur]], **<u>すでに夜も明けて</u>、至る所で戦われていたときに、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部の直訳は「すでに夜の残りの部分も費やされて」。)</span> *[[wikt:en:semper#Latin|semper]]<nowiki>que</nowiki> hostibus [[wikt:en:spes#Latin|spes]] [[wikt:en:victoria#Latin|victoriae]] [[wikt:en:redintegraretur#Latin|redintegraretur]], **かつ、常に敵たちにとって勝利の希望が蘇っており、 *<u>eo magis, quod</u> [[wikt:en:deustus#Latin|deustos]] [[wikt:en:pluteus#Latin|pluteos]] [[wikt:en:turris#Latin|turrium]] [[wikt:en:videbant#Latin|videbant]] nec facile [[wikt:en:adire#Latin|adire]] [[wikt:en:apertus#Latin|apertos]] ad [[wikt:en:auxiliandum#Verb|auxiliandum]] [[wikt:en:animadvertebant#Latin|animadvertebant]], **<span style="font-family:Times New Roman;font-size:11pt;">[[w:攻城塔|攻城櫓]]の<ruby><rb>障壁</rb><rp>(</rp><rt>プルテウス</rt><rp>)</rp></ruby>が<ruby><rb>焼き落された</rb><rp>(</rp><rt>デウストゥス</rt><rp>)</rp></ruby>のを見ていて、<ruby><rb>身を曝した者</rb><rp>(</rp><rt>アペルトゥス</rt><rp>)</rp></ruby>たちが救援のために容易に近づけないのに気付いていた<u>のでなおさらだったが</u>、</span> **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:eo magis quod|eo magis quod]] ~ 「~なので、その分だけ、より一層」。[[ガリア戦記 第3巻#14節|第3巻14節]]も参照。)</span> *[[wikt:en:semper#Latin|semper]]<nowiki>que</nowiki> ipsi [[wikt:en:recens#Adjective|recentes]] [[wikt:en:defessus#Latin|defessis]] [[wikt:en:succederent#Latin|succederent]] **常に彼ら自身<small>〔籠城ガッリア勢〕</small>は新たな者たちが疲れ果てた者たちに交代しており、 *[[wikt:en:omnis#Latin|omnem]]<nowiki>que</nowiki> Galliae [[wikt:en:salus#Latin|salutem]] <u>in illo [[wikt:en:vestigium#Latin|vestigio]] temporis [[wikt:en:positus#Participle|positam]] <span style="color:#009900;"><small>(esse)</small></span></u> [[wikt:en:arbitrarentur#Latin|arbitrarentur]], **ガッリアのすべての安全が、<u>その瞬間にかかっている</u>と思われていたので、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部の直訳は「その時の足跡(瞬間)に置かれている」。)</span> **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:以上の cum ~ arbitrarentur, が状況や理由を説明する副文で、以下が主文となっている。)</span> *[[wikt:en:accidit#Etymology_1|accidit]] [[wikt:en:inspectans#Latin|inspectantibus]] nobis, **我が方<small>〔ローマ勢〕</small>が見ているなかで起こったのは、 *[[wikt:en:quod#Pronoun|quod]] [[wikt:en:dignus#Latin|dignum]] [[wikt:en:memoria#Latin|memoria]] [[wikt:en:visus#Participle|visum]] [[wikt:en:praetereundus#Latin|praetereundum]] non [[wikt:en:existimavimus#Latin|existimavimus]]. **記憶に値すると思われたことを<small>(我がローマ勢が)</small>見過ごすべきではないと考えていたことである。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:この主文の主語を省略せずに記せば、以下のようになる。<br>    [id], quod dignum memoria visum [esse] praetereundum [esse] non existimavimus.)</span> [[画像:048_Conrad_Cichorius,_Die_Reliefs_der_Traianssäule,_Tafel_XLVIII_(Ausschnitt 01).jpg|thumb|right|250px|<ruby><rb>[[w:スコルピオ|投射機]]</rb><rp>(</rp><rt>スコルピオー</rt><rp>)</rp></ruby>を操作する[[w:ダキア人|ダキア人]]の彫刻([[w:トラヤヌスの記念柱|トラヤヌス帝の記念柱]]に刻まれた[[w:レリーフ|レリーフ]])。]] [[画像:Balliste_fireing.jpg|thumb|right|250px|<ruby><rb>[[w:スコルピオ|投射機]]</rb><rp>(</rp><rt>スコルピオー</rt><rp>)</rp></ruby>([[w:en:Scorpio (dart-thrower)|Scorpio]])の現代における復元。]] :  *<!--❷--><sup>(2)</sup> [[wikt:en:quidam#Determiner|Quidam]] ante portam oppidi [[wikt:en:Gallus#Noun|Gallus]], <u>qui</u> **城塞都市の城門の前にいた、ある<small>(1人の)</small>ガッリア人が、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部の qui は、&beta;系写本の記述で、&alpha;系写本にはない。)</span> *per [[wikt:en:manus#Latin:_hand|manus]] [[wikt:en:sebum#Latin|sebi]] ac [[wikt:en:pix#Latin|picis]] [[wikt:en:traditus#Participle|traditas]] [[wikt:en:glaeba#Latin|glaebas]] **手から手へと渡された<ruby><rb>獣脂</rb><rp>(</rp><rt>セーブム</rt><rp>)</rp></ruby>や<ruby><rb>[[w:ピッチ (樹脂)|樹脂]]</rb><rp>(</rp><rt>ピッチ</rt><rp>)</rp></ruby>の塊を、 *in [[wikt:en:ignis#Latin|ignem]] <u>e regione</u> turris [[wikt:en:proiciebat#Latin|proiciebat]]: **攻城櫓の正面にある火炎の中に投げ込んでいたが、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:e_regione#Latin|ē regiōne]]「まっすぐに」「~の真向かいに」。)</span> *[[wikt:en:scorpio#Latin|scorpione]] ab [[wikt:en:latus#Latin:_side|latere]] [[wikt:en:dexter#Latin|dextro]] [[wikt:en:traiectus#Participle|traiectus]] **<ruby><rb>[[w:スコルピオ|投射機]]</rb><rp>(</rp><rt>スコルピオー</rt><rp>)</rp></ruby>で右の横腹を射られて、 *[[wikt:en:exanimatus#Latin|exanimatus]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:concidit#Verb|concidit]]. **息絶えて倒れた。 :  *<!--❸--><sup>(3)</sup> Hunc ex [[wikt:en:proximus#Noun|proximis]] unus [[wikt:en:iacens#Latin|iacentem]] [[wikt:en:transgressus#Latin|transgressus]] **彼が倒れているのを、すぐ近くの者たちのうちの1人が乗り越えて、 *[[wikt:en:idem#Latin|eodem]] illo [[wikt:en:munus#Latin|munere]] [[wikt:en:fungebatur#Latin|fungebatur]]; **その同じ<ruby><rb>任務</rb><rp>(</rp><rt>ムーヌス</rt><rp>)</rp></ruby>を果たしていた。 *[[wikt:en:idem#Latin|Eadem]] [[wikt:en:ratio#Latin|ratione]] [[wikt:en:ictus#Noun_4|ictu]] [[wikt:en:scorpio#Latin|scorpionis]] [[wikt:en:exanimatus#Latin|exanimato]] **<small>(その第2の者が)</small>同様に<ruby><rb>[[w:スコルピオ|投射機]]</rb><rp>(</rp><rt>スコルピオー</rt><rp>)</rp></ruby>の射撃で息絶えさせられると *alteri [[wikt:en:successit#Latin|successit]] tertius **<small>(息絶えた)</small>第2の者に第3の者が代わって、 *et tertio quartus, **<small>(さらに)</small>第3の者に第4の者が<small>(代わった)</small>。 : <!-- [[wikt:en:| --> *<!--❹--><sup>(4)</sup> <u>nec prius</u> ille est a [[wikt:en:propugnator#Latin|propugnatoribus]] [[wikt:en:vacuus#Latin|vacuus]] [[wikt:en:relictus#Participle|relictus]] locus **防戦者たちは、持ち場を放棄することがなかった。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:直訳は「その場(ille locus)は、防戦者たちによって空<small>〔無人〕</small>にして置かれることがなかった。」)</span> **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:nec [[wikt:en:prius#Adverb|prius]] ~ [[wikt:en:quam#Conjunction|quam]] …「…するまでは~しなかった」)</span> *<u>quam</u> [[wikt:en:restinctus#Latin|restincto]] [[wikt:en:agger#Latin|aggere]] atque <u>omni ex parte</u> [[wikt:en:submotus#Latin|submotis]] hostibus [[wikt:en:finis#Latin:_end|finis]] est [[wikt:en:pugnandi#Verb|pugnandi]] [[wikt:en:factus#Latin:_done|factus]]. **<ruby><rb>[[w:アッゲル|土塁]]</rb><rp>(</rp><rt>アッゲル</rt><rp>)</rp></ruby>が鎮火されて、そのすべての方面から敵たちが追い払われて、戦いに終止符が打たれる<u>までは</u>。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、omni <u>ex</u> parte は ''[[ガリア戦記/注解編/写本と校訂版#Ciacconius|Ciacconius]]'' による修正で、<br>    &alpha;系写本では omni <u>ea</u> parte <br>    &beta;系写本では omni parte となっている。)</span> <!-- <span style="color:#009900;"></span> <small></small> **:<span style="color:#009900;">(訳注: **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注: --> ===26節=== *<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/26節]] {{進捗|00%|2026-07-13}}</span> ;アウァーリクム脱出の企て、女たちの絶叫 :  ;   万策尽きたガッリア勢が、アウァーリクム脱出を企てる *<!--❶--><sup>(1)</sup> [[wikt:en:omnia#Noun|Omnia]] [[wikt:en:expertus#Participle|experti]] [[wikt:en:Galli#Latin|Galli]], **ガッリア人たちはあらゆることを試みたが、 *quod res [[wikt:en:nullus#Determiner|nulla]] [[wikt:en:successerat#Latin|successerat]], **何ら事が成功しなかったので、 *[[wikt:en:posterus#Latin|postero]] die [[wikt:en:consilium#Latin|consilium]] [[wikt:en:ceperunt#Latin|ceperunt]] ex [[wikt:en:oppidum#Latin|oppido]] [[wikt:en:profugio#Latin|profugere]], **<small>(戦いの夜が明けて)</small>翌日には、<small>(アウァーリクムの)</small><ruby><rb>城塞都市</rb><rp>(</rp><rt>オッピドゥム</rt><rp>)</rp></ruby>から退避する計画を立てた。 *[[wikt:en:hortans#Latin|hortante]] et [[wikt:en:iubens#Latin|iubente]] [[wikt:en:Vercingetorix#Latin|Vercingetorige]]. **[[w:ウェルキンゲトリクス|ウェルキンゲトリークス]]によって促され、命じられたものであった。 :  ;   脱出をはかるガッリア勢の期待とその理由 *<!--❷--><sup>(2)</sup> Id [[wikt:en:silentium#Latin|silentio]] noctis [[wikt:en:conatus#Participle|conati]] **そのこと<small>〔アウァーリクムからの退避〕</small>を夜の静けさのうちに試みても、 *non magna <u>iactura</u> suorum **味方の大きな<ruby><rb>犠牲</rb><rp>(</rp><rt>ヤクトゥーラ</rt><rp>)</rp></ruby>もなしに、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:iactura#Noun|iactura]] は「投げ捨てること」、比喩的に「損害、犠牲」。)</span> *sese [[wikt:en:effecturus#Latin|effecturos]] <span style="color:#009900;"><small>(esse)</small></span> [[wikt:en:sperabant#Latin|sperabant]], **自分たちは成し遂げるだろうと期待していた。 *<u>propterea quod</u> <u>neque</u> longe ab oppido [[wikt:en:castra#Latin|castra]] [[wikt:en:Vercingetorix#Latin|Vercingetorigis]] [[wikt:en:aberant#Latin|aberant]], **──というのも、ウェルキンゲトリークスの陣営は<small>(アウァーリクムの)</small></small><ruby><rb>城塞都市</rb><rp>(</rp><rt>オッピドゥム</rt><rp>)</rp></ruby>からあまり離れていなかったし、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:propterea_quod#Latin|propterea quod]] ~「なぜなら~からである」。)</span> **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:neque ~ et …「~ではなく、…である」)</span> *<u>et</u> [[wikt:en:palus#Latin|palus]], <u>quae [[wikt:en:perpetuus#Latin|perpetua]]</u> [[wikt:en:intercedebat#Latin|intercedebat]], [[wikt:en:Romani#Latin|Romanos]] ad [[wikt:en:insequendum#Verb|insequendum]] [[wikt:en:tardabat#Latin|tardabat]]. **沼地も絶え間なく介在していて、ローマ人たちの追跡を遅らせていたからだ。── **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:二つ目の下線部は、&alpha;系写本の語順は quae perpetua だが、<br>             &beta;系写本の語順は perpetua quae となっている。)</span> :  ;   母親たちが男たちに、女子供を置き去りにして敵のいけにえにするな、と哀願する *<!--❸--><sup>(3)</sup> [[wikt:en:iam#Latin|Iam]]<nowiki>que</nowiki> <u>hoc</u> facere [[wikt:en:noctu#Latin|noctu]] [[wikt:en:apparabant#Latin|apparabant]], **すでに、<u>このことを</u>実行することを夜間に準備していた。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、主要写本&omega; では [[wikt:en:haec#Latin|haec]]<sub>&nbsp;(中性・複数・対格)</sub> だが、<br>         最初の印刷本 [[ガリア戦記/注解編/写本と校訂版#Editio_princeps|ed.pr]] では [[wikt:en:hoc#Latin:_this|hoc]]<sub>&nbsp;(中性・単数・対格)</sub> としている。)</span> *<u>cum</u> [[wikt:en:mater#Latin|matres]] [[wikt:en:familia#Latin|familiae]] [[wikt:en:repente#Adverb_2|repente]] in [[wikt:en:publicum#Noun|publicum]] [[wikt:en:procurrerunt#Latin|procurrerunt]], **そのときに家族の母親たちが不意に公の場に走り出て来て、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部の cum は、「倒逆のcum」([[wikt:en:cum inversum|cum inversum]])と呼ばれ、<br>    cum 以下 ~ impediret までの副文が、上記の主文よりも重要な構文の中心になる。)</span> *[[wikt:en:flens#Latin|flentes]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:proiectus#Latin|proiectae]] ad [[wikt:en:pes#Latin|pedes]] suorum **泣きながら、味方<small>(の男たち)</small>の足元に<small>(身を)</small>投げ出して、 *omnibus [[wikt:en:prex#Latin|precibus]] [[wikt:en:petierunt#Latin|petierunt]], **あらゆる懇願でもって頼んだ。 *ne se et [[wikt:en:communis#Latin|communes]] [[wikt:en:liberi#Noun_2|liberos]] hostibus ad [[wikt:en:supplicium#Latin|supplicium]] [[wikt:en:dederent#Latin|dederent]], **自分たち<small>〔女たち〕</small>と<small>(男たちとの)</small>共通の子供たちを、処刑されることのために敵方に引き渡さないで、 *<u>quos</u> ad [[wikt:en:capiendus#Latin|capiendam]] [[wikt:en:fuga#Latin|fugam]] [[wikt:en:natura#Latin|naturae]] et [[wikt:en:vis#Latin|virium]] [[wikt:en:infirmitas#Latin|infirmitas]] [[wikt:en:impediret#Latin|impediret]]. **それらの者<small>〔女子供たち〕</small>が逃亡をとるためには、性質や体力の弱さが、妨げるのだ、と。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、&alpha;系写本では [[wikt:en:quos#Latin|quos]]<sub>&nbsp;(男性・複数・対格)</sub> だが、<br>         &beta;系写本では [[wikt:en:quas#Latin|quas]]<sub>&nbsp;(女性・複数・対格)</sub> となっている。)</span> :  ;   窮した母親たちが、男たちの脱出の兆候をローマ人に伝えようとする *<!--❹--><sup>(4)</sup> [[wikt:en:ubi#Latin|Ubi]] eos in [[wikt:en:sententia#Latin|sententia]] [[wikt:en:perstare#Latin|perstare]] [[wikt:en:viderunt#Latin|viderunt]], **彼ら<small>〔男たち〕</small>が<small>(女・子供を置き去りで脱出するという)</small>意思を固持していると<small>〔女たちが〕</small>見て取るや、 *[[wikt:en:quod#Conjunction|quod]] [[wikt:en:plerumque#Adverb|plerumque]] in [[wikt:en:summus#Latin|summo]] [[wikt:en:periculum#Latin|periculo]] [[wikt:en:timor#Latin|timor]] [[wikt:en:misericordia#Latin|misericordiam]] non [[wikt:en:recipit#Latin|recipit]], **──というのは、たいてい最大級の危険においては、恐怖が<ruby><rb>憐憫</rb><rp>(</rp><rt>れんびん</rt><rp>)</rp></ruby>の<ruby><rb>情</rb><rp>(</rp><rt>じょう</rt><rp>)</rp></ruby>を受け入れないものであるからだが、── *[[wikt:en:conclamo#Latin|conclamare]] et [[wikt:en:significo#Latin|significare]] de [[wikt:en:fuga#Latin|fuga]] [[wikt:en:Romani#Latin|Romanis]] [[wikt:en:coeperunt#Latin|coeperunt]]. **<small>(女たちは)</small>叫び声を上げて、ローマ人たちに<small>(男たちの)</small>逃亡について知らしめ始めた。 :  ;   ガッリア勢の男たちが、ローマ側の騎兵隊を恐れて、アウァーリクム脱出を断念する *<!--❺--><sup>(5)</sup> [[wikt:en:qui#Determiner|Quo]] [[wikt:en:timor#Latin|timore]] [[wikt:en:perterritus#Latin|perterriti]] [[wikt:en:Galli#Latin|Galli]], **<small>(女たちがローマ側へ男たちの脱出について報知したことで)</small>その恐怖によって脅かされたガッリア人<small>(の男)</small>たちは、 *[[wikt:en:ne#Latin:_no|ne]] ab [[wikt:en:equitatus#Latin|equitatu]] Romanorum [[wikt:en:via#Latin|viae]] [[wikt:en:praeoccuparentur#Latin|praeoccuparentur]], **ローマ方の[[w:騎兵|騎兵隊]]によって道があらかじめ占拠されないように、 *[[wikt:en:consilium#Latin|consilio]] [[wikt:en:destiterunt#Latin|destiterunt]]. **<small>(アウァーリクムからの脱出の)</small>計画を取り止めた。 <!-- <span style="color:#009900;"></span> <small></small> **:<span style="color:#009900;">(訳注: **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注: --> ===27節=== [[画像:Avaricum_westpoint_july_2006.jpg|thumb|right|300px|[[w:アウァリクム包囲戦|アウァーリクム攻略戦]]の[[w:ジオラマ|ジオラマ]](再掲;[[w:陸軍士官学校 (アメリカ合衆国)|米国陸軍士官学校]]博物館)。ローマ軍の<ruby><rb>[[w:アッゲル|土塁]]</rb><rp>(</rp><rt>アッゲル</rt><rp>)</rp></ruby>の周辺には、<ruby><rb>[[w:ウィネア|工作小屋]]</rb><rp>(</rp><rt>ウィネア</rt><rp>)</rp></ruby>(vinea)の両端を開いて多数つないだ廊下状の通路(坑道)が延びている。]] *<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/27節]] {{進捗|00%|2026-08-01}}</span> ;ローマ軍が大雨の中でアウァーリクムの城壁を占拠 :  *<!--❶--><sup>(1)</sup> Postero die Caesar, **翌日にカエサルは、 *[[wikt:en:promotus#Latin|promota]] [[wikt:en:turris#Latin|turri]] **<small>(後退していた)</small>[[w:攻城塔|攻城櫓]]<small>(の1基)</small>が前進させられて、 *<u>perfectis</u><nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:opus#Latin|operibus]], quae facere [[wikt:en:instituerat#Latin|instituerat]], **実施を定めていた作業が<u>成し遂げられると</u>、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、<br>     &pi;系写本では [[wikt:en:perfectis#Latin|perfectīs]] 「完成されると」だが、<br>     &alpha;系・&rho;系写本では [[wikt:en:derectis#Latin|dērēctīs]] 「整えられると」<br>    となっている。)</span> *magno [[wikt:en:coortus#Latin|coorto]] <u>imbre</u> **激しい嵐が起こったが、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、&alpha;系写本では [[wikt:en:imbre#Latin|imbre]] だが、&beta;系写本では [[wikt:en:imbri#Latin|imbri]] となっている。)</span> *non [[wikt:en:inutilis#Latin|inutilem]] hanc ad [[wikt:en:capiendus#Latin|capiendum]] [[wikt:en:consilium#Latin|consilium]] [[wikt:en:tempestas#Latin|tempestatem]] <u>arbitratus est</u>, **作戦計画を立てるために、この天候は不利ではないと思われた。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、&alpha;系写本では [[wikt:en:arbitratus#Participle|arbitratus]] est だが、&beta;系写本では単に arbitratus となっている。)</span> *[[wikt:en:quod#Conjunction|quod]] paulo [[wikt:en:incautius#Adverb|incautius]] [[wikt:en:custodia#Latin|custodias]] in [[wikt:en:murus#Latin|muro]] [[wikt:en:dispositus#Latin|dispositas]] [[wikt:en:videbat#Latin|videbat]], **──というのは、城壁に配置された番兵たちが少しより油断していると見ていたからだが、── *<u>suosque</u> [[wikt:en:languide#Adverb|languidius]] in [[wikt:en:opus#Latin|opere]] [[wikt:en:versor#Latin|versari]] [[wikt:en:iussit#Verb|iussit]] **配下の者たちには<small>(わざと)</small>より緩慢に作業に従事することを命じて、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、&alpha;系写本では [[wikt:en:suos#Latin|suōs]]<nowiki>que</nowiki> だが、&beta;系写本では [[wikt:en:suos#Latin|suōs]] [[wikt:en:quoque#Adverb|quoque]] となっている。)</span> *et, [[wikt:en:quid#Pronoun_2|quid]] [[wikt:en:fieri#Latin|fieri]] [[wikt:en:vellet#Latin|vellet]], [[wikt:en:ostendit#Latin|ostendit]]. **何がなされることを<small>(カエサルが)</small>欲しているか、を示した。 :  *<!--❷--><sup>(2)</sup> [[wikt:en:legio#Latin|Legionibus]]<nowiki>que</nowiki> <u>extra castra intra [[wikt:en:vinea#Latin|vineas]]</u> in occulto [[wikt:en:expeditus#Participle|expeditis]], **[[w:ローマ軍団|諸軍団]]が<u>陣営の外の<ruby><rb>[[w:ウィネア|工作小屋]]</rb><rp>(</rp><rt>ウィネア</rt><rp>)</rp></ruby>の内側で</u>ひそかに準備を整えており、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、写本や校訂版によって異同がある。[[ガリア戦記_第7巻/注解/27節#注記|注記]]を参照。)</span> **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:in_occulto#Latin|in occulto]]「ひそかに」「隠れた所で」)</span> *[[wikt:en:cohortatus#Latin|cohortatus]], ut [[wikt:en:aliquando#Latin|aliquando]] pro [[wikt:en:tantus#Latin|tantis]] [[wikt:en:labor#Latin|laboribus]] [[wikt:en:fructus#Latin:_noun|fructum]] victoriae [[wikt:en:perciperent#Latin|perciperent]], **<small>(カエサルは)</small>やっと、これほどの労苦の見合う勝利の報酬を我がものとするように激励し、 *iis, qui [[wikt:en:primus#Latin|primi]] [[wikt:en:murus#Latin|murum]] [[wikt:en:adscendissent#Latin|adscendissent]], [[wikt:en:praemium#Latin|praemia]] [[wikt:en:proposuit#Latin|proposuit]] **一番乗りとして城壁に登った者たちには、恩賞を約束して、 *[[wikt:en:miles#Latin|militibus]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:signum#Latin|signum]] [[wikt:en:dedit#Latin|dedit]]. **兵士たちに号令を発した。 :  *<!--❸--><sup>(3)</sup> Illi [[wikt:en:subito#Adverb_8|subito]] ex omnibus partibus [[wikt:en:evolaverunt#Latin|evolaverunt]] **彼ら<small>〔ローマ軍団兵〕</small>は不意にあらゆる方角から飛び出して、 *[[wikt:en:murus#Latin|murum]]<nowiki>que</nowiki> celeriter [[wikt:en:compleverunt#Latin|compleverunt]]. **速やかに<small>(アウァーリクムの)</small>城壁を埋め尽くしたのだ。 <!-- <span style="color:#009900;"></span> <small></small> **:<span style="color:#009900;">(訳注: **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注: --> ===28節=== *<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/28節]] {{進捗|00%|2026-08-11}}</span> ;ローマ軍がアウァーリクムの市民4万人を大虐殺 :  *<!--❶--><sup>(1)</sup> Hostes re nova [[wikt:en:perterritus#Latin|perterriti]], **敵たち<small>〔籠城するガッリア勢〕</small>は新たな事態に脅かされて、 *[[wikt:en:murus#Latin|muro]] [[wikt:en:turris#Latin|turribus]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:deiectus#Participle|deiecti]] **<small>(ローマ兵によって)</small>城壁や櫓から追い落とされて、 *in [[wikt:en:forum#Latin|foro]] ac locis [[wikt:en:patentior#Latin|patentioribus]] [[wikt:en:cuneatim#Latin|cuneatim]] [[wikt:en:constiterunt#Etymology_1|constiterunt]], **<ruby><rb>広場</rb><rp>(</rp><rt>フォルム</rt><rp>)</rp></ruby>や開けた場所に楔状に立ちふさがった。 *hoc animo, ut, si [[wikt:en:aliqui#Latin|qua]] ex parte [[wikt:en:obviam#Adverb|obviam]] <span style="color:#009900;">[</span>contra<span style="color:#009900;">]</span> [[wikt:en:veniretur#Latin|veniretur]], [[wikt:en:acies#Latin|acie]] [[wikt:en:instructus#Latin|instructa]] [[wikt:en:depugnarent#Latin|depugnarent]]. **もし、どの方向から相対して対抗して来られても、戦列を整えて決戦しようという心積もりでいたのだ。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:contra#Latin|contra]] は &alpha;系・&pi;系写本・写本Rにある記述だが、<br>        写本U にはなく、削除提案されている。)</span> :  *<!--❷--><sup>(2)</sup> Ubi [[wikt:en:nemo#Latin|neminem]] in aequum locum sese [[wikt:en:demitto#Latin|demittere]], sed [[wikt:en:totus#Latin:_whole|toto]] [[wikt:en:undique#Latin|undique]] [[wikt:en:murus#Latin|muro]] [[wikt:en:circumfundi#Latin|circumfundi]] [[wikt:en:viderunt#Latin|viderunt]], **<small>(ローマ兵が)</small>誰も平らな所に降りて来ず、しかし城壁全体の至る所で取り囲まれたことを見たときに、 *[[wikt:en:veritus#Latin|veriti]], ne [[wikt:en:omnino#Latin|omnino]] spes fugae [[wikt:en:tolleretur#Latin|tolleretur]], **<small>(籠城ガッリア勢は)</small>逃亡のあらゆる希望を奪われないかと怖れて、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:veriti, [[wikt:en:ne#Latin:_no|ne]] ~ 「~ではないかと恐れて」恐れの表現。)</span> *[[wikt:en:abiectus#Latin|abiectis]] [[wikt:en:arma#Latin|armis]] **武器を投げ捨てて、 *[[wikt:en:ultimus#Latin|ultimas]] oppidi partes **城塞都市の<small>(ローマ勢から)</small>最も遠くの方面を *[[wikt:en:continens#Latin|continenti]] [[wikt:en:impetus#Latin|impetu]] [[wikt:en:petiverunt#Latin|petiverunt]], **絶え間ない殺到によって求めた。 :  *<!--❸--><sup>(3)</sup> <u>pars</u><nowiki>que</nowiki> ibi, cum [[wikt:en:angustus#Latin|angusto]] [[wikt:en:exitus#Latin|exitu]] portarum se ipsi [[wikt:en:premerent#Latin|premerent]], a militibus, **ある者たちは、城門の狭い出口で自分らで互いに押し合っていたので、そこで<small>(ローマ人)</small>兵士たちによって<small>(殺され)</small>、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:pars#Latin|pars]] ~, pars …「ある者たちは~、別の者たちは…」。)</span> *<u>pars</u> iam [[wikt:en:egressus#Latin|egressa]] portis ab [[wikt:en:eques#Latin|equitibus]] est [[wikt:en:interfectus#Latin|interfecta]]. **別の者たちはすでに城門を出ていたが、<small>(ローマ側の)</small>[[w:騎兵|騎兵]]たちによって虐殺された。 :  *<!--❹--><sup>(4)</sup> [[wikt:en:nec#Latin|Nec]] fuit [[wikt:en:quisquam#Pronoun|quisquam]], qui [[wikt:en:praeda#Latin|praedae]] [[wikt:en:studeret#Latin|studeret]]. **<small>(ローマ勢には)</small>戦利品を熱心に求める何者もいなかった。 *[[wikt:en:sic#Latin|Sic]] et <u>Cenabi</u> [[wikt:en:caedes#Latin|caede]] et [[wikt:en:labor#Latin|labore]] [[wikt:en:opus#Latin|operis]] [[wikt:en:incitatus#Latin|incitati]] **このように、ケナブムの<small>(ローマ市民の)</small>殺害にも、(攻城)作業の労苦にも煽られて **:<span style="color:#009900;">(訳注:カルヌーテース族によるローマ市民の殺害については[[#3節|3節]]を参照。)</span> **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部の cenabi は、&alpha;系写本では [[wikt:en:Genabi#Latin|genabi]] <br>             &rho;系写本や写本Tでは [[wikt:en:Genabensi#Adjective|genabensi]]<br>             写本Uおよび写本Tの一部では cenabensi となっている。<br>             なお、cenabi, cenabensi はケルト語風の表記である。)</span> *non [[wikt:en:aetas#Latin|aetate]] [[wikt:en:confectus#Latin|confectis]], **<small>(ローマ勢は)</small>年老いた者たちも、 *non [[wikt:en:mulier#Latin|mulieribus]], **妻女たちも、 *non [[wikt:en:infans#Noun|infantibus]] [[wikt:en:pepercerunt#Latin|pepercerunt]]. **乳幼児たちも<small>(虐殺することを)</small>思いとどまらなかった。 **:<span style="color:#009900;">(訳注:ビトゥリゲース族はローマ市民の殺害には関与しておらず、報復される対象とするのは的外れである。</span> **:<span style="color:#009900;">ましてや非戦闘員である老人・女性・子供たちまで殺戮するのは、戦争の狂気というしかない。)</span> :  *<!--❺--><sup>(5)</sup> [[wikt:en:denique#Latin|Denique]] ex omni <u><span style="color:#009900;">eo</span></u> numero, qui fuit circiter milium XL<small>&nbsp;([[wikt:en:quadraginta#Latin|quadraginta]])</small>, **ついには、約40000名もいたすべての人員のうち、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部の [[wikt:en:eo#Latin:_there|eo]] は &beta;系写本の記述で、&alpha;系写本にはない。)</span> *vix DCCC<small>&nbsp;([[wikt:en:octingenti#Latin|octingenti]])</small>, qui primo [[wikt:en:clamor#Latin|clamore]] [[wikt:en:auditus#Latin|audito]] se ex oppido <u>eiecerunt</u>, **やっと800名が、はじめにどよめきを聞いて、城塞都市から急ぎ出て、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、&alpha;系写本では [[wikt:en:eiecerunt#Latin|eiecerunt]]<small>&nbsp;(直接法・完了)</small> だが、<br>         &beta;系写本では [[wikt:en:eiecerant#Latin|eiecerant]]<small>&nbsp;(直接法・過去完了)</small> となっている。)</span> *[[wikt:en:incolumis#Latin|incolumes]] ad [[wikt:en:Vercingetorix#Latin|Vercingetorigem]] [[wikt:en:pervenerunt#Latin|pervenerunt]]. **無傷のままで[[w:ウェルキンゲトリクス|ウェルキンゲトリークス]]のもとへ到着した。 :  *<!--❻--><sup>(6)</sup> Quos ille multa iam nocte <u>silentio</u> ex fuga [[wikt:en:excepit#Latin|excepit]], **彼<small>〔ウェルキンゲトリークス〕</small>は、逃亡して来たその者たちを、すでに夜も更けた<u>静寂のうちに</u>迎え入れた。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、&alpha;系写本では [[wikt:en:silentio#Latin|silentio]] だが、&beta;系写本にはない。<br>      他方、&beta;系写本では [[wikt:en:sic#Latin|sic]] とあるが、&alpha;系写本にはない。)</span> *[[wikt:en:veritus#Latin|veritus]], ne qua in castris ex eorum [[wikt:en:concursus#Latin:_convergence|concursu]] et [[wikt:en:misericordia#Latin|misericordia]] [[wikt:en:vulgus#Latin|vulgi]] seditio <u>oreretur</u>, **彼らの密集や一般兵士たちの同情から、陣営の中で何らかの暴動が生じないように怖れて、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:ne [[wikt:en:aliqui#Latin|qua (aliqua)]] ~ [[wikt:en:seditio#Latin|seditio]]「何らかの暴動が~ないように」 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、一部の写本は [[wikt:en:oreretur#Latin|oreretur]] だが、<br>         他の写本では [[wikt:en:oriretur#Latin|oriretur]] となっているが、語形の相違。)</span> *ut procul in via [[wikt:en:dispositus#Latin|dispositis]] [[wikt:en:familiaris#Noun|familiaribus]] suis [[wikt:en:princeps#Latin|principibus]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:civitas#Latin|civitatum]], **自らの郎党たちや部族の領袖たちを<small></small>(陣営の)遠くから道沿いに配置して、 *[[wikt:en:disparandus#Latin|disparandos]] [[wikt:en:deducendus#Latin|deducendos]]<nowiki>que</nowiki> ad suos [[wikt:en:curaret#Latin|curaret]], **<small>(敗走者たちを)</small>味方のもとへ、引き離して連れて行くように手配した。 *quae [[wikt:en:cuique#Latin|cuique]] civitati pars castrorum ab [[wikt:en:initium#Latin|initio]] [[wikt:en:obvenerat#Latin|obvenerat]]. **陣営の各部分は、おのおのの部族にはじめから与えられていたのだ。 <!-- <span style="color:#009900;"></span> <small></small> **:<span style="color:#009900;">(訳注: **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注: --> ===29節=== *<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/29節]] {{進捗|00%|2026-08-11}}</span> [[画像:Vercingetorix stater CdM.jpg|thumb|right|250px|[[w:ウェルキンゲトリクス|ウェルキンゲトリークス]]の横顔が刻まれたガリアの金貨(パリの[[w:ビブリオテーク・ナショナル|仏国立図書館]]貨幣部蔵)]] ;ウェルキンゲトリークスが演説で味方を鼓舞する :  *<!--❶--><sup>(1)</sup> Postero die [[wikt:en:concilium#Latin|concilio]] [[wikt:en:convocatus#Latin|convocato]], **翌日に、会合が召集されると、 *[[wikt:en:consolatus#Latin|consolatus]] [[wikt:en:cohortatus#Latin|cohortatus]]<nowiki>que</nowiki> est, **<small>(ウェルキンゲトリークスは、味方の者たちを)</small>慰めて、励ました: *<u>ne</u> se [[wikt:en:admodum#Latin|admodum]] animo [[wikt:en:demitterent#Latin|demitterent]], **あまり気を落とさないように、 *<u>ne</u> [[wikt:en:perturbarentur#Latin|perturbarentur]] [[wikt:en:incommodum#Latin|incommodo]]. **敗北により取り乱さないように、と。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:上の下線部は、&alpha;系写本では [[wikt:en:ne#Latin:_no|ne]] ~ ne だが、<br>           &beta;系写本では ne ~ [[wikt:en:neve#Latin|neve]] となっている。)</span> :  *<!--❷--><sup>(2)</sup> Non [[wikt:en:virtus#Latin|virtute]] neque in [[wikt:en:acies#Latin|acie]] [[wikt:en:vicisse#Latin|vicisse]] [[wikt:en:Romani#Latin|Romanos]], **ローマ人たちが勝ったのは、武勇においてでも、戦列<small>〔野外の合戦〕</small>においてでもなく、 *sed [[wikt:en:artificium#Noun|artificio]] [[wikt:en:quidam#Determiner|quodam]] et [[wikt:en:scientia#Latin:_knowledge|scientia]] [[wikt:en:oppugnatio#Latin|oppugnationis]], **ある種の技巧および攻城戦の知識によるものであって、 *cuius rei [[wikt:en:fuerint#Latin|fuerint]] ipsi [[wikt:en:imperitus#Latin|imperiti]]. **その事柄に<small>(ガッリア人)</small>自身が通じていなかったのだ。 **:<span style="color:#009900;">(訳注:[[ガリア戦記 第5巻#42節|第5巻42節]]では、ネルウィイー族らガッリア北部のベルガエ勢はローマ人の攻城術をまねていた。)</span> :  *<!--❸--><sup>(3)</sup> [[wikt:en:erro#Latin:_wander|Errare]], si [[wikt:en:aliqui#Latin|qui]] in [[wikt:en:bellum#Latin|bello]] omnes [[wikt:en:secundus#Adjective|secundos]] rerum [[wikt:en:proventus#Latin|proventus]] [[wikt:en:exspectent#Latin|exspectent]]. **誰であれ、戦争において、万事が順調な成功になることを期待するのならば、<small>(その者らは)</small>誤っている。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:語順が判りにくいが、<br>    物事のすべて(omnes rerum)が幸運な結果(secundos proventus)であることを期待するのならば~。)</span> **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:errare の意味上の主語([[wikt:en:eos#Latin|eos]])が省略されている。)</span> :  *<!--❹--><sup>(4)</sup> Sibi [[wikt:en:numquam#Latin|numquam]] [[wikt:en:placuisse#Latin|placuisse]] [[wikt:en:Avaricum#Latin|Avaricum]] [[wikt:en:defendi#Latin|defendi]], **自分<small>〔ウェルキンゲトリークス〕</small>にとって、アウァーリクムが防衛されることは決して好ましいものではなかった。 *cuius rei [[wikt:en:testis#Latin:_witness|testes]] ipsos [[wikt:en:haberet#Latin|haberet]]; **その事の証人は<small>(諸君ら)</small>自身である。 *sed <u>factum</u> [[wikt:en:inprudentia#Latin|inprudentia]] [[wikt:en:Bituriges#Latin|Biturigum]] et [[wikt:en:nimius#Latin|nimia]] [[wikt:en:obsequentia#Latin|obsequentia]] reliquorum, <u>uti</u> hoc [[wikt:en:incommodum#Latin|incommodum]] [[wikt:en:acciperetur#Latin|acciperetur]]. **だが、ビトゥリゲース族の軽率さと、ほかの者たちの過度な同調により、この敗北を蒙るようになったのだ。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:factus#Latin:_done|factum]] (esse) ~ [[wikt:en:uti#Latin:_how|uti]] …「…ようになった」)</span> :  *<!--❺--><sup>(5)</sup> Id tamen se celeriter [[wikt:en:maior#Adjective_2|maioribus]] [[wikt:en:commodum#Latin:noun|commodis]] [[wikt:en:sanaturus#Latin|sanaturum]] <span style="color:#009900;">(esse)</span>. **しかしながら、自分がそれ<small>〔敗北〕</small>を速やかに大いなる勝利によって埋め合わせるであろう。 :  *<!--❻--><sup>(6)</sup> Nam quae ab reliquis [[wikt:en:Galli#Latin:_Gauls|Gallis]] civitates [[wikt:en:dissentirent#Latin|dissentirent]], **一方、<small>(ウェルキンゲトリークスら)</small>ほかのガッリア人たちとは意見を相異する諸部族、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:先行詞 [[wikt:en:civitas#Latin|civitates]] が quae 以下の関係文中に入り込む倒置の語順。)</span> *has sua [[wikt:en:diligentia#Noun|diligentia]] [[wikt:en:adiuncturus#Latin|adiuncturum]] <span style="color:#009900;">(esse)</span> **彼ら<small>〔諸部族〕</small>を自分<small>〔ウェルキンゲトリークス〕</small>の入念さにより合流させるであろうし、 *atque unum [[wikt:en:consilium#Latin|consilium]] [[wikt:en:totus#Latin:_whole|totius]] [[wikt:en:Gallia#Latin|Galliae]] [[wikt:en:effecturus#Latin|effecturum]] <span style="color:#009900;">(esse)</span>, **全ガッリアの考えを一つにするであろう。 *cuius [[wikt:en:consensus#Latin|consensui]] ne orbis quidem terrarum [[wikt:en:possit#Latin|possit]] [[wikt:en:obsistere#Latin|obsistere]]; **その団結には、全世界でさえ邪魔することはできない。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:ne quidem|ne ~ quidem]]「~でさえ…ない」)</span> **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:orbis#Latin|orbis]] [[wikt:en:/terrarum#Latin|terrarum]]「全世界」)</span> *[[wikt:en:id#Latin|id]]<nowiki>que</nowiki> se [[wikt:en:prope#Adverb|prope]] iam [[wikt:en:effectus#Latin:_participle|effectum]] habere. **それを自分<small>〔ウェルキンゲトリークス〕</small>は、ほとんどすでに成し遂げたと思う。 :  *<!--❼--><sup>(7)</sup> [[wikt:en:interea#Latin|Interea]] [[wikt:en:aequus#Latin|aequum]] esse ab iis [[wikt:en:communis#Latin|communis]] [[wikt:en:salus#Latin|salutis]] causa [[wikt:en:impetrari#Latin|impetrari]], **その間に<small>(ガッリアの)</small>共通の安全のために、彼ら<small>〔ガッリア人〕</small>によって<small>(以下のように)</small>達成されることが好都合である。 *ut castra [[wikt:en:munio#Latin|munire]] [[wikt:en:instituerent#Latin|instituerent]], **陣営を防御することを実施するように、 *[[wikt:en:quo#Latin:_where|quo]] [[wikt:en:facilius#Latin|facilius]] [[wikt:en:repentinus#Latin|repentinos]] hostium [[wikt:en:impetus#Latin|impetus]] <u>sustinerent</u>. **それにより、敵たち<small>〔ローマ人〕</small>の予期せぬ襲撃に対して、より容易に持ちこたえられるように。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、&alpha;系写本では [[wikt:en:sustinerent#Latin|sustinerent]] だが、<br>         &beta;系写本では [[wikt:en:sustinere#Latin|sustinere]] [[wikt:en:possent#Latin|possent]] となっている。)</span> <!-- <span style="color:#009900;"></span> <small></small> **:<span style="color:#009900;">(訳注: **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注: --> ===30節=== *<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/30節]] {{進捗|00%|2026-08-29}}</span> ;ガッリア勢がウェルキンゲトリークスに心服し、希望を抱く :  *<!--❶--><sup>(1)</sup> Fuit haec [[wikt:en:oratio#Latin|oratio]] non [[wikt:en:ingratus#Latin|ingrata]] [[wikt:en:Galli#Latin:_Gauls|Gallis]], **この演説は、ガッリア人たちにとっては不快なものではなかった。 *et maxime, quod ipse animo non [[wikt:en:defecerat#Latin|defecerat]], [[wikt:en:tantus#Latin|tanto]] [[wikt:en:acceptus#Latin|accepto]] [[wikt:en:incommodum#Latin|incommodo]], **──というのは、とりわけ<small>(ウェルキンゲトリークス)</small>自身がこれほどの敗北を蒙っても意気消沈することなく、 *neque <u>se</u> [[wikt:en:in_occultum#Latin|in occultum]] [[wikt:en:abdiderat#Latin|abdiderat]] **秘密の場所に身を隠したり、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部の再帰代名詞 se は 最初の印刷本 [[ガリア戦記/注解編/写本と校訂版#Editio_princeps|''ed. pr.'']] で挿入されたもので、主要写本 &omega; にはない。)</span> *et [[wikt:en:conspectus#Latin:_noun|conspectum]] [[wikt:en:multitudo#Latin|multitudinis]] [[wikt:en:fugerat#Latin|fugerat]]<!--,-->; **大勢の見ているところを避けたりしなかったからである──。 :  *<!--❷--><sup>(2)</sup> [[wikt:en:plus#Latin:_adverb|plus]]<nowiki>que</nowiki> animo [[wikt:en:provideo#Latin|providere]] et [[wikt:en:praesentio#Latin|praesentire]] [[wikt:en:existimabatur#Latin|existimabatur]], **<small>(ウェルキンゲトリークスは他の者よりも)</small>より先見の明があり、予感していると考えられていた。 *quod re [[wikt:en:integer#Latin|integra]] **──というのは、事態が手つかずのままで、 *[[wikt:en:primo#Latin:_adverb|primo]] [[wikt:en:incendendus#Latin|incendendum]] <span style="color:#009900;">(esse)</span> [[wikt:en:Avaricum#Latin|Avaricum]], **当初はアウァーリクムが焼き払われるべきだと<small>(主張し)</small>、 *post [[wikt:en:deserendus#Latin|deserendum]] <span style="color:#009900;">(esse)</span>, [[wikt:en:censuerat#Latin|censuerat]]. **後には<small>(アウァーリクムは)</small>放棄されるべきだ、と主張していたからだ──。 :  *<!--❸--><sup>(3)</sup> [[wikt:en:itaque#Latin|Itaque]] <u>ut</u> [[wikt:en:reliquus#Latin|reliquorum]] [[wikt:en:imperator#Latin|imperatorum]] res adversae [[wikt:en:auctoritas#Latin|auctoritatem]] [[wikt:en:minuunt#Latin|minuunt]], **それゆえに、逆境がほかの将軍たちの影響力を減ずる一方で、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:ut#Conjunction|ut]] ~, [[wikt:en:sic#Latin|sic]] …「~であるように、同様に…」あるいは「~である一方で、…」。)</span> **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:res#Latin|res]] [[wikt:en:adversus#Participle|adversae]]「逆境、(戦争における)敗北」。)</span> *<u>sic</u> huius <u>ex contrario</u> [[wikt:en:dignitas#Latin|dignitas]] <u>incommodo</u> [[wikt:en:acceptus#Latin|accepto]] <u>in dies</u> [[wikt:en:augebatur#Latin|augebatur]]. **それどころか、彼の威厳は、災難を蒙っても、日ごとに高まっていたのだ。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:ex_contrario#Latin|ex contrario]]「それどころか」。)</span> **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:incommodum#Latin|incommodum]]「不運、災難、(戦争における)敗北」。)</span> **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:in_dies#Latin|in dies]]「日に日に」「日ごとに」。)</span> : <!-- [[wikt:en:| --> *<!--❹--><sup>(4)</sup> [[wikt:en:simul#Latin|Simul]] <u>in spem [[wikt:en:veniebant#Latin|veniebant]]</u> eius [[wikt:en:adfirmatio#Latin|adfirmatione]] de reliquis [[wikt:en:adiungendus#Latin|adiungendis]] [[wikt:en:civitas#Latin|civitatibus]]; **同時に、彼の断言によって<small>(ガッリア人たちは)</small>ほかの諸部族を合流させることについて希望を抱いていた。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:in [[wikt:en:spes#Latin|spem]] [[wikt:en:venio#Latin|venire]]「希望を抱くようになる」。)</span> *[[wikt:en:primum#Adverb|primum]]<nowiki>que</nowiki> eo tempore [[wikt:en:Galli#Latin:_Gauls|Galli]] [[wikt:en:castra#Latin|castra]] [[wikt:en:munio#Latin|munire]] [[wikt:en:instituerunt#Latin|instituerunt]], **そのときに初めて、ガッリア人たちは陣営の防備を固めることに着手した。 *et <u>sic</u> <u>sunt</u> animo <u>consternati</u>, homines [[wikt:en:insuetus#Latin|insueti]] [[wikt:en:labor#Latin|laboris]], **<small>(陣営の防備という)</small>労苦に慣れていない人々が、<u>気持ちが狼狽していたので、</u> **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:sic#Latin|sic]] ~, [[wikt:en:ut#Conjunction|ut]] …「~であるので、その結果…ほどだった」。)</span> **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部の sunt は主要写本 &omega; の記述だが、erant とする修正提案もある。<br>    sunt なら未完了過去 (sunt consternati)、erant なら過去完了 (erant consternati) になる。)</span> **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部の [[wikt:en:consternati#Latin|consternati]] は主要写本 &omega; の記述だが、<br>         ''[[ガリア戦記/注解編/写本と校訂版#Nipperdey|Nipperdey]]'' は [[wikt:en:confirmati#Latin|confirmati]] と修正提案している。)</span> **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:写本の読みは sunt [[wikt:en:consternati#Latin|consternati]] 「(彼らは)恐怖に陥っていた、混乱していた。」だが、<br>    修正読みでは sunt [[wikt:en:confirmati#Latin|confirmati]] 「(彼らは)励まされた」。)</span> *<u>ut</u> omnia, quae [[wikt:en:imperarentur#Latin|imperarentur]], sibi [[wikt:en:patiendus#Latin|patienda]] <span style="color:#009900;">(esse)</span> <u>et perferenda <span style="color:#009900;">(esse)</span></u> [[wikt:en:existimarent#Latin|existimarent]]. **自分たちにとって、命令されたことすべてを耐えるべきであり、<u>成就するべきである</u>と考えるに至ったほどであった。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部の et [[wikt:en:perferenda#Latin|perferenda]] (esseは省略されている) は&beta;系写本の記述で、<br>        &alpha;系写本にはない。)</span> <!-- <span style="color:#009900;"></span> <small></small> **:<span style="color:#009900;">(訳注: **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注: --> ===31節=== *<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/31節]] {{進捗|00%|2026-08-29}}</span> ;ウェルキンゲトリークスがほかの諸部族を勧誘し、兵力を補充する :  ;   ウェルキンゲトリークスが、さらに多くの部族に同盟を誘いかける *<!--❶--><sup>(1)</sup> Nec minus, quam est [[wikt:en:pollicitus#Latin|pollicitus]], **約束したことに劣らず、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:nec#Latin|nec]] [[wikt:en:minus#Adverb_4|minus]] [[wikt:en:quam#Latin|quam]] ~「~に劣らず」。)</span> *[[wikt:en:Vercingetorix#Latin|Vercingetorix]] animo [[wikt:en:laborabat#Latin|laborabat]], ut reliquas [[wikt:en:civitas#Latin|civitates]] [[wikt:en:adiungeret#Latin|adiungeret]], **[[w:ウェルキンゲトリクス|ウェルキンゲトリークス]]は、ほかの諸部族を加盟させるように、心から努力した。 *atque <u>earum principes donis pollicitationibusque</u> [[wikt:en:adliciebat#Latin|adliciebat]]. **それらの領袖たちに贈物を約束することによって、誘い込もうとしていた。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、&beta;系写本では earum [[wikt:en:princeps#Noun_3|principes]] [[wikt:en:donum#Latin|donis]] [[wikt:en:pollicitatio#Latin|pollicitationibus]]<nowiki>que</nowiki> だが、<br>         &alpha;系写本では eas donis pollicitationibus となっている。)</span> :  *<!--❷--><sup>(2)</sup> Huic rei [[wikt:en:idoneus#Latin|idoneos]] homines [[wikt:en:deligebat#Latin|deligebat]], **この事<small>〔同盟に誘うこと〕</small>に適切な人物たちを<small>(ウェルキンゲトリークスが)</small>選び出して、 *quorum [[wikt:en:quisque#Latin|quisque]] aut [[wikt:en:oratio#Latin|oratione]] [[wikt:en:subdolus#Latin|subdola]] aut [[wikt:en:amicitia#Latin|amicitia]] **その者たちのおのおのは、巧妙な演説により、あるいは友情により、 *[[wikt:en:facillime#Latin|facillime]] <u>capere</u> posset. **かなり容易に<small>(同盟者を)</small>得ることができた。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、&chi;系写本・写本Lでは [[wikt:en:capere#Latin|capere]] だが、<br>         &beta;系写本では [[wikt:en:capi#Latin|capi]] となっている。)</span> :  ;   アウァーリクムからの逃亡者たちに、武具と衣服を支給する *<!--❸--><sup>(3)</sup> <span style="color:#009900;">[eos]</span> qui [[wikt:en:Avaricum#Latin|Avarico]] [[wikt:en:expugnatus#Latin|expugnato]] [[wikt:en:refugerant#Latin|refugerant]], **<small>(ウェルキンゲトリークスは)</small>アウァーリクムが攻略されたので逃げて来ていた者たちに、 *[[wikt:en:armandus#Latin|armandos]] [[wikt:en:vestiendus#Latin|vestiendos]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:curat#Latin|curat]]; **武装させられ、服を着せられるように、手配する。 :  ;   同盟部族に徴集する兵員の数と集まる期日を指示する *<!--❹--><sup>(4)</sup> [[wikt:en:simul#Latin|simul]], ut [[wikt:en:deminutus#Latin|deminutae]] [[wikt:en:copiae#Latin|copiae]] [[wikt:en:redintegrarentur#Latin|redintegrarentur]], **同時に、減り衰えた軍勢が補充されるように、 *[[wikt:en:imperat#Latin|imperat]] [[wikt:en:certus#Latin|certum]] <u>numerum</u> militum civitatibus, <u>quem</u> et <u>quam ante diem</u> in castra [[wikt:en:adduci#Latin|adduci]] [[wikt:en:velit#Latin|velit]], **諸部族に、兵の一定の<u>数</u>を<u>どれほど</u>、かつ、<u>いつの日の前までに</u>陣営に連れて来ることを欲しているかを指図し、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:qui#Determiner|quem]] [[wikt:en:numerus#Latin|numerum]] 「どれほどの数を」。)</span> **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:qui#Determiner|quam]] ante [[wikt:en:dies#Latin|diem]] 「いつの日の前までに」。)</span> *[[wikt:en:sagittarius#Noun|sagittarios]]<u>que</u> omnes, quorum erat [[wikt:en:permagnus#Latin|permagnus]] <u>numerus in Gallia</u>, [[wikt:en:conquiri#Latin|conquiri]] et ad se [[wikt:en:mitti#Latin|mitti]] [[wikt:en:iubet#Latin|iubet]]. **ガッリアにかなり大勢がいた弓兵のすべてを、徴募して自分<small>〔ウェルキンゲトリークス〕</small>のもとへ派遣することを命じる。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、&alpha;系写本の語順は numerus in Gallia で、<br>         &beta;系写本の語順は in Gallia numerus となっている。)</span> *His rebus celeriter id, quod [[wikt:en:Avaricum#Latin|Avarici]] [[wikt:en:deperierat#Latin|deperierat]], [[wikt:en:expletur#Latin|expletur]]. **これらの事により、速やかに、アウァーリクムで壊滅していたそれら<small>(の軍勢)</small>が補充される。 :  ;   ニティオブロゲース族の王テウトマトゥスが、騎兵隊らとともにウェルキンゲトリークスに合流する *<!--❺--><sup>(5)</sup> [[wikt:en:interim#Latin|Interim]] [[wikt:en:Teutomatus#Latin|Teutomatus]], [[wikt:en:Ollovico#Latin|Olloviconis]] filius, rex <u>Nitiobrogum</u>, **その間に、オッロウィコーの息子で、ニティオブロゲース族の王であるテウトマトゥスが、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、主要写本&omega; では Nitiobrogum だが、<br>         写本Uの一部では [[wikt:en:Nitiobriges#Latin|Nitiobrigum]] となっている。)</span> *cuius pater ab [[wikt:en:senatus#Latin|senatu]] nostro amicus erat [[wikt:en:appellatus#Latin|appellatus]], **その父<small>〔オッロウィコー〕</small>は、我が方<small>〔ローマ人〕</small>の[[w:元老院 (ローマ)|元老院]]から友人と呼ばれていたのだが、 *cum magno [[wikt:en:eques#Latin|equitum]] suorum numero et quos ex [[wikt:en:Aquitania#Latin|Aquitania]] [[wikt:en:conduxerat#Latin|conduxerat]] ad eum [[wikt:en:pervenit#Etymology_2|pervenit]]. **自らの騎兵の多数およびアクィーターニアから募っていた者たちとともに、彼<small>〔ウェルキンゲトリークス〕</small>のもとへ到着した。 <!-- <span style="color:#009900;"></span> <small></small> **:<span style="color:#009900;">(訳注: **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注: --> ==ゲルゴウィア攻略戦、ハエドゥイー族の離反== ===32節=== *<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/32節]] {{進捗|00%|2026-09-23}}</span> ;ハエドゥイー族内紛の危機 :  *<!--❶--><sup>(1)</sup> Caesar [[wikt:en:Avarici#Latin|Avarici]] complures dies [[wikt:en:commoratus#Latin|commoratus]] **カエサルは、アウァーリクムに幾日も留まって、 *[[wikt:en:summus#Latin|summam]]<nowiki>que</nowiki> ibi [[wikt:en:copia#Latin|copiam]] [[wikt:en:frumentum#Latin|frumenti]] et reliqui [[wikt:en:commeatus#Latin:_noun|commeatus]] [[wikt:en:nactus#Latin|nactus]] **そこでかなり多量の糧食やほかの必需品を手に入れて、 *[[wikt:en:exercitus#Latin:_noun|exercitum]] ex [[wikt:en:labor#Latin:_work|labore]] atque [[wikt:en:inopia#Latin:_noun|inopia]] <u>reficit</u>. **軍隊を労苦や欠乏から回復させた。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、&chi;系・&beta;系写本では [[wikt:en:reficit#Latin|reficit]]<sub>&nbsp;(現在形)</sub> だが、<br>         &phi;系写本では [[wikt:en:refecit#Latin|refecit]]<sub>&nbsp;(完了形)</sub> となっている。)</span> :  *<!--❷--><sup>(2)</sup> Iam [[wikt:en:prope#Adverb|prope]] [[wikt:en:hiems#Latin|hieme]] [[wikt:en:confectus#Latin|confecta]], **すでに、ほぼ冬は過ぎ去り、 *cum ipso anni tempore ad [[wikt:en:gerendus#Latin|gerendum]] bellum [[wikt:en:vocaretur#Latin|vocaretur]] et ad hostem [[wikt:en:proficisci#Latin|proficisci]] [[wikt:en:constituisset#Latin|constituisset]], **<small>(カエサルが)</small>まさにその時季に戦争を遂行するために呼び寄せられて、敵の方へ発つことを決意していたときに、 *<u>sive</u> eum ex [[wikt:en:palus#Latin|paludibus]] [[wikt:en:silva#Latin|silvis]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:elicio#Latin|elicere]] <u>sive</u> [[wikt:en:obsidio#Latin|obsidione]] [[wikt:en:premo#Latin|premere]] [[wikt:en:posset#Latin|posset]], **<u>あるいは</u><small>(敵を)</small>沼地や森林から誘い出せるか、<u>あるいは</u>包囲により圧倒することができるか、というときに、 **:<span style="color:#009900;">(訳注:sive ~ sive …「あるいは~、あるいは…」)</span> *[[wikt:en:legatus#Latin:_noun|legati]] ad eum [[wikt:en:princeps#Latin:_noun|principes]] [[wikt:en:Haedui#Latin|Haeduorum]] [[wikt:en:veniunt#Latin|veniunt]] **[[w:ハエドゥイ族|ハエドゥイー族]]の領袖たちが使節として彼<small>〔カエサル〕</small>のもとへやって来る。 *[[wikt:en:oratum#Latin:_supine|oratum]], ut maxime [[wikt:en:necessarius#Latin:_unavoidable|necessario]] tempore [[wikt:en:civitas#Latin|civitati]] [[wikt:en:subveniat#Latin|subveniat]]<!--;-->: **きわめて緊急の時に、部族を助けてくれるように、と頼むために。 :  ;   ハエドゥイー族の救援要請(以下、間接話法) *<!--❸--><sup>(3)</sup> [[wikt:en:summus#Latin|summo]] esse in [[wikt:en:periculum#Latin|periculo]] rem, **事態は最大の危機にある。 *quod, cum [[wikt:en:singulus#Latin|singuli]] [[wikt:en:magistratus#Latin|magistratus]] [[wikt:en:antiquitus#Latin|antiquitus]] [[wikt:en:creari#Latin|creari]] atque [[wikt:en:regius#Latin|regiam]] [[wikt:en:potestas#Latin|potestatem]] <u>annum</u> [[wikt:en:obtineo#Latin|obtinere]] [[wikt:en:consuessent#Latin|consuessent]], **──というのは、昔から一人ずつの統領が選出されて、一年ごとに支配権力に就くことが常であったのに、 **:<span style="color:#009900;">(訳注:[[ガリア戦記 第1巻#16節|第1巻16節]]によれば、ウェルゴブレトゥス [[w:la:Vergobretus|Vergobretus]]という最高官職が毎年選ばれて大権を司る。)</span> **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、&alpha;系写本では [[wikt:en:annum#Latin|annum]] だが、<br>         &beta;系写本では [[wikt:en:annuam#Adjective|annuam]] となっている。)</span> *duo [[wikt:en:magistratus#Latin|magistratum]] [[wikt:en:gerant#Latin|gerant]] **2名が統領を司り、 *et se [[wikt:en:uterque#Latin|uterque]] eorum legibus <u>creatum esse</u> [[wikt:en:dicat#Latin:_speak|dicat]]. **彼らの双方ともに自分は法により<small>〔合法的に〕</small>選出されたのであると言っているのだから──。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、&alpha;系写本では [[wikt:en:creatus#Latin|creatum]] esse だが、<br>         &beta;系写本では esse は省かれている。)</span> : <!-- [[wikt:en:| --> {{wikipedia|en:Convictolitavis}} *<!--❹--><sup>(4)</sup> Horum esse alterum [[wikt:en:Convictolitavis#Latin|Convictolitavem]], [[wikt:en:florens#Latin|florentem]] et [[wikt:en:inlustris#Latin|inlustrem]] [[wikt:en:adulescens#Noun|adulescentem]]<!--,-->; **彼らの一方は、コンウィクトリタウィスで、声望があり、秀でた青年である。 *alterum [[wikt:en:Cotus#Latin|Cotum]], [[wikt:en:antiquissimus#Latin|antiquissima]] familia [[wikt:en:natus#Latin:_born|natum]] **他方は、コトゥスで、とても古くからの家系に生まれて、 *atque ipsum hominem summae [[wikt:en:potentia#Latin|potentiae]] et magnae [[wikt:en:cognatio#Latin|cognationis]], **自身も最大勢力と多くの縁戚関係をもつ人物であり、 *cuius frater Valetiacus proximo anno eundem [[wikt:en:magistratus#Latin|magistratum]] [[wikt:en:gesserit#Latin|gesserit]]. **その兄弟ウァレティアクスは前年に同じ統領を司っていたのである。 : <!-- [[wikt:en:| --> *<!--❺--><sup>(5)</sup> Civitatem esse omnem in [[wikt:en:arma#Latin|armis]]; **部族は皆が武装している。 *[[wikt:en:divisus#Latin|divisum]] [[wikt:en:senatus#Latin|senatum]], divisum [[wikt:en:populus#Latin:_people|populum]], <u>suas</u> [[wikt:en:cuiusque#Latin|cuiusque]] eorum [[wikt:en:clientela#Latin|clientelas]]. **評議会も分裂し、民衆も分裂し、彼ら<small>〔2名〕</small>の<small>(それぞれの)</small>庇護民となっている。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部の suas は主要写本&omega;の記述だが、より劣った写本では in suas となっている。)</span> *[[wikt:en:quodsi#Latin|Quodsi]] [[wikt:en:diutius#Latin|diutius]] [[wikt:en:alatur#Latin|alatur]] [[wikt:en:controversia#Latin|controversia]], **もしこれ以上、紛争が進められれば、 *fore uti pars cum parte civitatis [[wikt:en:confligat#Latin|confligat]]. **部族の派閥と派閥が激突することになるであろう。 *Id ne [[wikt:en:accidat#Etymology_1|accidat]], [[wikt:en:positus#Latin|positum]] in eius [[wikt:en:diligentia#Latin|diligentia]] atque [[wikt:en:auctoritas#Latin|auctoritate]]. **それが起こらないかは、彼(カエサル)の入念さと影響力にかかっている。 <!-- <span style="color:#009900;"></span> <small></small> **:<span style="color:#009900;">(訳注: **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注: --> ===33節=== *<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/33節]] {{進捗|00%|2026-10-04}}</span> ;カエサルがハエドゥイー族の権力をコンウィクトリタウィスに与える :  ;   カエサルが、ハエドゥイー族の内紛を危惧する *<!--❶--><sup>(1)</sup> Caesar, <u>etsi</u> a bello atque hoste [[wikt:en:discedo#Latin|discedere]] [[wikt:en:detrimentosus#Latin|detrimentosum]] esse [[wikt:en:existimabat#Latin|existimabat]], **カエサルは、戦争や敵から離れることは損害をもたらすものである、と考えていたのではあるが、 *<u>tamen</u> non [[wikt:en:ignorans#Latin|ignorans]], [[wikt:en:quantus#Latin|quanta]] ex [[wikt:en:dissensionibus#Latin|dissensionibus]] [[wikt:en:incommodum#Noun|incommoda]] [[wikt:en:oriri#Latin|oriri]] [[wikt:en:consuessent#Latin|consuessent]], **しかしながら、[[wikt:ja:内訌|内訌]]からどれほどの災厄が生じることが常であるか、知らないではなかったし、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:etsi#Latin|etsi]] ~, [[wikt:en:tamen#Latin|tamen]] …「~ではあるが、しかしながら…」)</span> *ne [[wikt:en:tantus#Latin|tanta]] et [[wikt:en:tam#Latin|tam]] [[wikt:en:coniunctus#Latin:_participle|coniuncta]] [[wikt:en:populus#Latin|populo]] [[wikt:en:Romanus#Adjective|Romano]] [[wikt:en:civitas#Latin|civitas]], **──これほど大きく、これほどローマ人民と協同している<small>(ハエドゥイーの)</small>{{ruby|部族国家|キーウィタース}}が、 *quam ipse semper [[wikt:en:aluisset#Latin|aluisset]] [[wikt:en:omnis#Latin|omnibus]]<nowiki>que</nowiki> rebus [[wikt:en:ornasset#Latin|ornasset]], **彼らのことを<small>(カエサル)</small>自身は常に助成して、かつあらゆる事柄で敬意を表していたのだが、 *ad [[wikt:en:vis#Latin|vim]] atque [[wikt:en:arma#Latin|arma]] [[wikt:en:descenderet#Latin|descenderet]], **<small>(彼らが内紛という)</small>暴力や戦乱に沈み込まないように、 *atque ea pars, quae [[wikt:en:minus#Latin:_adverb|minus]] sibi [[wikt:en:confideret#Latin|confideret]], [[wikt:en:auxilia#Latin|auxilia]] a [[wikt:en:Vercingetorix#Latin|Vercingetorige]] [[wikt:en:arcesseret#Latin|arcesseret]], **かつ、自分たちにとって劣勢だと確信している一派が[[w:ウェルキンゲトリクス|ウェルキンゲトリークス]]の支援を呼び寄せないように── **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:ne ~ civitas, ~ descenderet, ~ arcesseret「~部族が、~沈まないように、~招かないように」)</span> *huic rei [[wikt:en:praevertendus#Latin|praevertendum]] [[wikt:en:existimavit#Latin|existimavit]], **この事柄は<small>(戦争遂行よりも)</small>優先されるべき、と考えた。 :  ;   ハエドゥイー族の内紛を沙汰すべく、カエサル自らが赴く *<!--❷--><sup>(2)</sup> et, quod [[wikt:en:lex#Latin|legibus]] [[wikt:en:Haedui#Latin|Haeduorum]] iis, qui summum [[wikt:en:magistratus#Latin|magistratum]] [[wikt:en:obtinerent#Latin|obtinerent]], [[wikt:en:excedo#Latin|excedere]] ex finibus non [[wikt:en:liceret#Latin|liceret]], **──というのは、[[w:ハエドゥイ族|ハエドゥイー族]]の法により、最高官職に就いている者は領土から出ることを許されないので── *ne [[wikt:en:aliquid#Latin:_pronoun|quid]] de [[wikt:en:ius#Latin:_justice|iure]] aut de [[wikt:en:lex#Latin|legibus]] eorum [[wikt:en:deminuisse#Latin|deminuisse]] [[wikt:en:videretur#Latin|videretur]], **<small>(カエサルが)</small>彼らの法令あるいは法制について何ら軽視したとは思われないように、 [[画像:FR-58-Decize29.JPG|thumb|right|250px|デケティア([[w:la:Decetia|Decetia]])すなわち現在のドスィーズ([[w:fr:Decize|Decize]])の景観。[[w:ハエドゥイ族|ハエドゥイー族]]の版図であった[[w:ニエーヴル県|ニエーヴル県]]の南部にあり、リゲル川(現[[w:ロワール川|ロワール川]])のほとりに位置している。]] *ipse in [[wikt:en:Haedui#Latin|Haeduos]] [[wikt:en:proficisci#Latin|proficisci]] [[wikt:en:statuit#Latin|statuit]] **<small>(カエサル)</small>自身がハエドゥイー族のもとに出発することを決心した。 *[[wikt:en:senatus#Latin|senatum]]<nowiki>que</nowiki> omnem et <u>quos inter [[wikt:en:controversia#Latin|controversia]] [[wikt:en:esset#Latin:_be|esset]]</u> **かつ、<u>評議会</u>の全員、および紛争が介在しているところの者たちを **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:部族国家の合議制統治機関を、カエサルの『ガリア戦記』では<br>    ローマの元老院になぞらえて [[wikt:en:senatus#Latin|senatus]] と呼んでいるが、<br>    区別して「評議会」と訳す。)</span> **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:quos inter ~ は、関係節の関係代名詞 quos が<br>           前置詞 inter の前に出ている語順。)</span> *ad se [[wikt:en:Decetia#Latin|Decetiam]] [[wikt:en:evocavit#Latin|evocavit]]. **デケティアの自分<small>〔カエサル〕</small>のもとへ呼び出した。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:デケティア [[w:la:Decetia|Decetia]] は、現在の[[w:en:Decize|Decize]] ドシーズ(ドゥスィズ<ref>Decize の発音は [[wikt:fr:Decize|Decize]] を参照せよ。</ref>)であると考えられている。)</span> :  *<!--❸--><sup>(3)</sup> Cum prope omnis civitas eo [[wikt:en:convenisset#Latin|convenisset]], [[wikt:en:doceretur#Latin|doceretur]]<nowiki>que</nowiki> **部族のほぼすべての<small>(主だった)</small>者たちがそこに集まっていたときに、<small>(以下のことが)</small>報知された。 *[[wikt:en:paucus#Latin|paucis]] [[wikt:en:clam#Latin|clam]] [[wikt:en:convocatus#Latin|convocatis]] [[wikt:en:alius#Latin|alio]] loco, [[wikt:en:alius#Latin|alio]] tempore atque [[wikt:en:oportuerit#Latin|oportuerit]], **わずかな者たちが密かに、あるべきはずとは別の場所、別の時に呼び集められて、 *[[wikt:en:fratrem#Latin|fratrem]] a [[wikt:en:fratre#Latin|fratre]] [[wikt:en:renuntiatus#Latin|renuntiatum]] <span style="color:#009900;">[esse]</span>, **兄により弟<small>(の就位)</small>が告げられたというのだ。 **:<span style="color:#009900;">(訳注:前年に統領であった兄ウァレティアクスによって<br>    弟コトゥスの統領への就位が告げられたということであろう。)</span> *<span style="font-size:11pt;">cum leges <u>duo</u> ex una familia [[wikt:en:vivus#Latin|vivo]] [[wikt:en:utroque#Latin|utroque]] <u>non solum</u> [[wikt:en:magistratus#Latin|magistratus]] [[wikt:en:creari#Latin|creari]] [[wikt:en:vetarent#Latin|vetarent]], <u>sed etiam</u> in [[wikt:en:senatus#Latin|senatu]] esse [[wikt:en:prohiberent#Latin|prohiberent]],</span> **<span style="font-size:11pt;">──法が、一家族の2名が双方とも存命中に、統領に選出されるのを禁じるだけでなく、<u>評議会</u>にいることも禁じているのに──</span> **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:non [[wikt:en:solum#Latin:_adverb|solum]] ~ [[wikt:en:sed#Latin|sed]] [[wikt:en:etiam#Latin|etiam]] …「~のみならず、…もまた」)</span> **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、&chi;・&beta;系写本や写本B・M・Sでは [[wikt:en:duo#Latin|duo]] だが、<br>         写本L・Nでは [[wikt:en:duos#Latin|duos]] となっている。)</span> *[[wikt:en:Cotus#Latin|Cotum]] [[wikt:en:imperium#Latin|imperium]] [[wikt:en:depono#Latin|deponere]] [[wikt:en:coegit#Latin|coegit]]<!--,-->; **(カエサルは)コトゥスに支配権を放棄することを強要した。 : <!-- [[wikt:en:| --> *<!--❹--><sup>(4)</sup> [[wikt:en:Convictolitavis#Latin|Convictolitavem]], qui per [[wikt:en:sacerdos#Latin|sacerdotes]] [[wikt:en:mos#Latin|more]] [[wikt:en:civitas#Latin|civitatis]] [[wikt:en:intermissus#Latin|intermissis]] [[wikt:en:magistratus#Latin|magistratibus]] [[wikt:en:esset#Latin:_be|esset]] [[wikt:en:creatus#Latin|creatus]], **コンウィクトリタウィスは、統領が空位になったときに、部族の規則により、<u>祭司</u>を通じて選出されたので、 **:<span style="color:#009900;">(訳注:ここでいう祭司 sacerdos が[[ガリア戦記 第6巻#13節|第6巻13節]]以下で説明された[[w:ドルイド|ドルイド]]と同じか否かは不詳である。)</span> *[[wikt:en:potestas#Latin|potestatem]] [[wikt:en:obtineo#Latin|obtinere]] [[wikt:en:iussit#Latin|iussit]]. **<small>(カエサルは彼に)</small>権力の座に就くことを命じた。 <!-- <span style="color:#009900;"></span> <small></small> **:<span style="color:#009900;">(訳注: **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注: --> ===34節=== *<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/34節]] {{進捗|00%|2026-10-18}}</span> ;ハエドゥイー族を動員し、ローマ軍をカエサルとラビエーヌスの二隊に分散 :  *<!--❶--><sup>(1)</sup> Hoc [[wikt:en:decretum#Latin|decreto]] [[wikt:en:interpositus#Latin|interposito]], **この裁定を裁決すると、 *[[wikt:en:cohortatus#Latin|cohortatus]] [[wikt:en:Haedui#Latin|Haeduos]], **<small>(カエサルは)</small>[[w:ハエドゥイ族|ハエドゥイー族]]を<small>(以下のように)</small>激励して、 *ut [[wikt:en:controversia#Latin|controversiarum]] ac [[wikt:en:dissensio#Latin|dissensionis]] [[wikt:en:obliviscerentur#Latin|obliviscerentur]] **<span style="color:#009900;font-size:20pt;">【</span><small>(部族内部の)</small>論争や不和を忘れるように、 *atque, omnibus [[wikt:en:omissus#Latin|omissis]] his rebus **かつ、これらすべての事情を度外視して、 *huic bello [[wikt:en:servirent#Latin|servirent]], **<small>(ウェルキンゲトリークスとの)</small>この戦争に尽くすように、 *<u>[[wikt:en:ea#Latin:_things|ea]]<nowiki>que</nowiki>, quae</u> [[wikt:en:meruissent#Latin|meruissent]], [[wikt:en:praemium#Latin|praemia]] ab se [[wikt:en:devictus#Latin|devicta]] Gallia [[wikt:en:exspectarent#Latin|exspectarent]], **ガッリアが征服されたときには<small>(彼らが)</small>得るに値する自分<small>〔カエサル〕</small>からの恩賞を期待するように、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部の [[wikt:en:ea#Latin:_things|ea]]<nowiki>que</nowiki> quae は、最初の印刷本 [[ガリア戦記/注解編/写本と校訂版#Editio_princeps|ed. pr.]] による修正で、<br>        &alpha;系・&rho;系写本では [[wikt:en:ea#Latin:_things|ea]] quae <br>        &pi;系写本では atque quae となっている。)</span> *[[wikt:en:equitatus#Latin:_cavalry|equitatum]]<nowiki>que</nowiki> omnem et [[wikt:en:pedes#Latin|peditum]] [[wikt:en:mille#Latin|milia]] X([[wikt:en:decem#Latin|decem]]) sibi celeriter [[wikt:en:mitterent#Latin|mitterent]], **<small>(ハエドゥイー族の)</small>騎兵隊のすべてと歩兵1万名を自分<small>〔カエサル〕</small>に速やかに派遣するように、 *quae in [[wikt:en:praesidium#Latin|praesidiis]] rei [[wikt:en:frumentarius#Latin|frumentariae]] causa [[wikt:en:disponeret#Latin|disponeret]], **それらは糧食供給のために守備隊として分けて置くものである、と<span style="color:#009900;font-size:20pt;">】</span> *[[wikt:en:exercitus#Latin:_noun|exercitum]] in duas partes [[wikt:en:divisit#Latin|divisit]]: **<small>(カエサルは)</small>軍隊を二つの方面軍に分けた。 :  *<!--❷--><sup>(2)</sup> [[wikt:en:quattuor#Latin|quattuor]] [[wikt:en:legio#Latin|legiones]] in [[wikt:en:Senones#Latin|Senones]] [[wikt:en:Parisii#Latin|Parisios]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:Labienus#Latin|Labieno]] [[wikt:en:ducendus#Latin|ducendas]] [[wikt:en:dedit#Latin|dedit]], **4個[[w:ローマ軍団|軍団]]をセノネース族やパリスィイー族のところに率いて行くべく[[w:ティトゥス・ラビエヌス|ラビエーヌス]]に委ねた。 **:<span style="color:#009900;">(訳注:ラビエーヌス [[w:la:Titus Labienus|Labienus]] のこの遠征については<br>    [[#57節|57節]]~62節で述べられる。)</span> *[[wikt:en:sex#Latin|sex]] ipse in [[wikt:en:Arverni#Latin|Arvernos]] ad oppidum [[wikt:en:Gergovia#Latin|Gergoviam]] **6個<small>(軍団)</small>を自身<small>〔カエサル〕</small>がアルウェルニー族のところの城塞都市ゲルゴウィアへ [[画像:Brioude pont.JPEG|thumb|right|250px|エラウェル川([[w:la:Elaver|Elaver]])こと現在の[[w:アリエ川|アリエ川]](Allier)。ハエドゥイー族領の境辺りでリゲル川([[w:la:Liger|Liger]])こと現[[w:ロワール川|ロワール川]]([[w:fr:Loire (fleuve)|Loire]])に合流する。]] *[[wikt:en:secundum#Preposition_2|secundum]] flumen [[wikt:en:Elaver#Latin|Elaver]] [[wikt:en:duxit#Latin|duxit]]; **エラウェル川に沿って率いて行った。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:エラウェル川 [[w:la:Elaver|Elaver]] は現在の[[w:アリエ川|アリエ川]] Allier である。)</span> *[[wikt:en:equitatus#Latin:_cavalry|equitatus]] partem illi [[wikt:en:adtribuit#Latin|adtribuit]], **騎兵隊の一部を彼<small>〔ラビエーヌス〕</small>に割り当てて、 *partem sibi [[wikt:en:reliquit#Latin|reliquit]]. **<small>(別の)</small>一部を自分<small>〔カエサル〕</small>に残した。 : <!-- [[wikt:en:| --> *<!--❸--><sup>(3)</sup> Qua re [[wikt:en:cognitus#Participle|cognita]] **その事を知ると、 *[[wikt:en:Vercingetorix#Latin|Vercingetorix]] **[[w:ウェルキンゲトリクス|ウェルキンゲトリークス]]は *omnibus [[wikt:en:interruptus#Latin|interruptis]] eius fluminis [[wikt:en:pons#Latin|pontibus]] **その川のすべての橋を破却すると、 *ab [[wikt:en:alter#Latin|altera]] fluminis parte [[wikt:en:iter#Latin|iter]] facere [[wikt:en:coepit#Latin|coepit]]. **川の別の側を行軍し始めた。 <!-- <span style="color:#009900;"></span> <small></small> **:<span style="color:#009900;">(訳注: **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注: --> ===35節=== '''カエサルが陽動によってエラウェル川に架橋、渡河する''' *① Cum uterque utrimque exisset exercitus<ref>utrimque exisset exercitus はα系写本の記述で、β系写本では utrique esset exercitui となっている。</ref>, in conspectu, fereque e regione castris castra ponebant<ref>ponebant はα系写本の記述で、β系写本では poneret となっている。</ref>, **(ガッリア勢とローマ勢の)軍隊の双方が互いに視界にあって、ほぼ真向かいに互いの陣営を設置したときに、 *dispositis exploratoribus, necubi effecto ponte Romani copias traducerent, **(ウェルキンゲトリークスは)ローマ人の軍勢がどこにも橋を造って渡河しないように、偵察者たちを分けて置き、 *erat in magnis Caesaris<ref>Caesaris はα系写本などの記述で、π系写本などでは Caesari となっている。</ref> difficultatibus res, **カエサルにとって事態は大きな困難になっていた。 *ne maiorem aestatis partem flumine impediretur, **夏の大部分(の対岸の敵との交戦)が川により妨げられるのではないか、 *quod non fere ante autumnum [[w:la:Elaver|Elaver]] vado transiri solet. **というのは、[[w:アリエ川|エラウェル川]]は秋の前はほとんど浅瀬を渡らない習わしであったからだ。 *② Itaque, ne id accideret, silvestri loco castris positis **こうして、それが生じないように、森林地帯に陣営を設置した。 *e regione unius eorum pontium, quos [[w:la:Vercingetorix|Vercingetorix]] rescindendos curaverat, **[[w:ウェルキンゲトリクス|ウェルキンゲトリークス]]が切り裂かれるように手配していたところの橋の一つの真向かいに。 *postero die cum duabus legionibus in occulto restitit; **翌日に、2個[[w:ローマ軍団|軍団]]とともに密かなところに留まった。 *③ reliquas copias cum omnibus impedimentis, ut consueverat, misit, **残りの軍勢(=4個軍団)をすべての輜重とともに、通常のように、出発させた。 *captis<ref>写本(ω)では captis となっているが、Herald Fuchs の校訂版(1932年)では sic collocatis という記述が提案されている。etc.</ref> quibusdam cohortibus, uti numerus legionum constare videretur. **軍団の数を保っていると(敵から)見られるように、いくつかの<ruby><rb>[[w:コホルス|歩兵大隊]]</rb><rp>(</rp><rt>コホルス</rt><rp>)</rp></ruby>を含ませていた。 *④ His quam longissime possent egredi<ref>egredi はα系写本の記述で、β系写本では progredi となっている。</ref> iussis, **彼ら(4個軍団)には、できる限り遠くまで前進することを命じた。 *cum iam ex diei tempore coniecturam ceperat<ref>ceperat はα系写本の記述で、β系写本では caperet となっている。</ref> in castra perventum, **すでに、日の時刻から(彼らが)宿営地に到達したと(カエサルが)推測をしたときに、 *isdem sublicis, quarum pars inferior integra remanebat, pontem reficere coepit. **(前述の)同じ橋杭は、そのより下方の部分が損なわれないで残っていたので、橋を修復し始めた。 *⑤ Celeriter effecto opere **速やかに工事が成し遂げられて、 *legionibusque traductis et loco castris idoneo delecto **(2個)軍団が渡河させられて、陣営に適切な地点を選んで、 *reliquas copias revocavit. **残りの軍勢(=4個軍団)を呼び戻した。 *⑥ Vercingetorix re cognita, **ウェルキンゲトリークスは事態を知って、 *ne contra suam voluntatem dimicare cogeretur, **自らの意向に反して(ローマ勢と)争闘することを強いられないように、 *magnis itineribus antecessit. **強行軍で(ゲルゴウィアに向けて)先行した。 ===36節=== [[画像:FR-63-Gergovie.JPG|thumb|right|300px|[[w:ゲルゴウィア|ゲルゴウィア]]([[w:la:Gergovia|Gergovia]])すなわち現在のジェルゴヴィ高地([[w:fr:Plateau de Gergovie|Plateau de Gergovie]])の[[w:ピュイ=ド=ドーム県|ピュイ=ド=ドーム県]]県道978号(D978)からの眺望。19世紀の[[w:ウジェーヌ・ストッフェル|ウジェーヌ・ストッフェル]]大佐(colonel Eugène Stoffel)の発掘調査によって、城砦やローマ軍の溝の遺構などが発見され、当地がゲルゴウィアの古戦場だと確認された。]] [[画像:Siège_GergovieI_-52.png|thumb|right|300px|ゲルゴウィアにおける両軍の布陣図。山の頂にある城塞都市に隣接してガッリア諸部族の陣営(黄色部分)、右方にローマ軍の大きな陣営(赤色部分)と左下にローマ軍の小さな陣営(赤色部分)が見える。推定される位置関係は19世紀の[[w:ウジェーヌ・ストッフェル|ストッフェル]]大佐の発掘調査に依拠しており、小陣営があった地点は現在のラ・ロシュ=ブランシュ([[w:fr:La Roche-Blanche (Puy-de-Dôme)|La Roche-Blanche]])だと考えられている。]] '''両軍がゲルゴウィアの要衝に陣営を築く''' *① Caesar ex eo loco quintis castris [[w:la:Gergovia|Gergoviam]] pervenit **カエサルは(渡河した)その地点から5回目の宿営で[[w:ゲルゴウィア|ゲルゴウィア]]に到着した。 *equestrique eo die proelio levi facto, **(到着した)その日に(ガッリア勢と)軽微な[[w:騎兵|騎兵]]戦を闘って、 *perspecto urbis situ, quae posita in altissimo monte omnes aditus difficiles habebat, **山の非常に高いところに位置し、すべての接近路を困難なものとしている(ゲルゴウィアの)町の地勢を認識して、 *de expugnatione<ref>expugnatione はα系写本の記述で、β系写本では oppugnatione となっている。</ref> desperavit, **(拙速に突撃するような)攻略については断念して、 *de obsessione non prius agendum constituit, quam rem frumentariam expedisset. **糧食調達の整備をするより前には、攻囲について行なうべきでないと決心した。 *② At [[w:la:Vercingetorix|Vercingetorix]], castris prope oppidum in monte<ref>in monte はβ系写本の記述で、α系写本にはない。</ref> positis, **それに対して、[[w:ウェルキンゲトリクス|ウェルキンゲトリークス]]は、山中の城塞都市の近くに陣営を設置して、 *mediocribus circum se intervallis separatim singularum civitatium<ref>civitatium はB・M・L・N写本の記述で、χ・S・β系写本では civitatum となっている。</ref> copias conlocaverat **自陣の周りに、適切な間隔で個々の部族の軍勢を別々に駐屯させて、 *atque omnibus eius iugi collibus occupatis, qua despici poterat, **その尾根のうち(山麓を)見下ろすことができたすべての丘陵を占有して、 *horribilem speciem praebebat; **恐ろしげな姿を現わした。 *③ principesque earum civitatium<ref>civitatium はA・Q・B・M・L・N写本の記述で、Q・S・β系写本では civitatum となっている。</ref>, quos sibi ad consilium capiendum delegerat, **(ウェルキンゲトリークス)自らが作戦を立てるために選び出していた諸部族の領袖たちに *prima luce cotidie ad se convenire iubebat, **毎日、夜明けに自分のところへ集まることを命じた。 *seu quid communicandum, seu quid administrandum videretur, **何らかのことを伝達・協議するのか、あるいは何らかのことを指導するのだと思われる。 **:<span style="color:#009900;">(訳注:seu ~ seu …「あるいは~、あるいは…」)</span> *④ neque ullum fere diem intermittebat, quin equestri proelio interiectis sagittariis, **騎兵戦に弓兵を介在させることを、ほとんどどの日も中断せずに、 *quid in quoque esset animi ac virtutis suorum, perspiceretur<ref>perspiceretur はα系写本の記述で、T写本では perspiceret、β系写本では periclitaretur となっている。</ref>. **どのような心構えや武勇が、配下の者たちのおのおのにあるかを、吟味した。 *⑤ Erat e regione oppidi collis sub ipsis radicibus montis **山のその麓の下方に、城塞都市の真向かいに、丘陵があって、 *egregie munitus atque ex omni parte circumcisus; **あらゆる方面から周囲が険しくて、(その地形により)すばらしく護られていた。 *quem si tenerent nostri, et aquae magna parte et pabulatione libera prohibituri hostes videbantur. **もし、それを我が方(ローマ勢)が占めれば、水源の大半と自由な糧秣徴発から敵たちを妨げるであろうと思われた。 *⑥ Sed is locus praesidio ab his, non nimis firmo, tenebatur. **だが、その地点は、彼ら(ガッリア勢)により、大して強力ではない守備隊で占められていた。 *⑦ Tamen silentio noctis Caesar ex castris egressus, **にもかかわらず(昼間ではなく)夜の静けさのうちに、カエサルは陣営から出撃して、 *priusquam subsidio ex oppido veniri posset, **城塞都市(のそばの陣営)から援兵に来られるより前に、 *deiecto praesidio potitus loco duas ibi legiones conlocavit **守備隊を追い出して、地点を占拠して、そこに2個[[w:ローマ軍団|軍団]]を駐屯させた。 *fossamque duplicem duodenum pedum a maioribus castris ad minora perduxit, **12[[w:ペース (長さ)|ペース]](=約3.6mの幅)の二重の堀を、より大きな陣営から(この丘陵の)より小さな陣営へ至らしめた。 *ut tuto ab repentino hostium incursu singuli commeare possent. **敵たちの不意の襲撃から安全に、1人1人が往来することができるように。 ===37節=== '''ハエドゥイー族のコンウィクトリタウィスがガッリア同盟軍に内応する''' *① Dum haec ad [[w:la:Gergovia|Gergoviam]] geruntur, **これらがゲルゴウィアのところでなされている間に、 *Convictolitavis [[w:la:Haedui|Haeduus]], **[[w:ハエドゥイ族|ハエドゥイー族]]のコンウィクトリタウィスは、 *cui magistratum adiudicatum a Caesare demonstravimus, **その者はカエサルによって統領として承認されたと([[#33節|33節]]で)既述したが、 *sollicitatus ab Arvernis pecunia cum quibusdam adulescentibus conloquitur, **[[w:アルウェルニ族|アルウェルニー族]]により金銭でそそのかされて、ある若者たちと談判した。 *quorum erat princeps Litaviccus atque eius fratres, **その者たちの領袖は[[w:リタウィックス|リタウィックス]]とその兄弟たちであり、 *amplissima familia nati adulescentes. **とても強大な一族に生まれた若者たちだった。 *② Cum his praemium communicat **彼らとともに(アルウェルニー族からの)報酬を共有して、 *hortaturque, ut se liberos et imperio natos meminerint. **自分たちが自由民で支配層の生まれであるのを思い起こせ、と鼓舞した。 *③ Unam esse Haeduorum civitatem, quae certissimam Galliae victoriam distineat<ref>distineat はM・N・π・R写本などの記述で、Q・U写本などでは destineat 、A・B・S写本などでは dedistineat などとなっている。</ref>; **ハエドゥイーの部族国家は、ガッリアの至極確実な勝利を阻んでいる唯一のものであり、 *eius auctoritate reliquas contineri; **その声望により、ほかの(同盟部族の)ものたちが(ローマ側に)保持されているが、 *qua traducta locum consistendi Romanis in Gallia non fore. **それが(ガッリア勢に)引き入れられることによって、ガッリアにおいてローマ人が留まり続ける場はないであろう。 *④ Esse nonnullo se Caesaris beneficio adfectum, **自分はカエサルの少なからぬ恩義をかけられているが、 *sic tamen, ut iustissimam apud eum causam obtinuerit; **しかし、彼(カエサル)のもとで至極合法的な理由を手に入れたまでであり、 *sed plus communi libertati tribuere. **しかし、(ガッリアの)共通の自由に従うことの方がより大きい。 *⑤ Cur enim potius Haedui de suo iure et de legibus ad Caesarem disceptatorem quam Romani ad Haeduos veniant? **なぜ実際、ハエドゥイー族は自らの法令や法制について、ローマ人がハエドゥイー族へ来るよりむしろ、カエサルを仲裁者とするのか? *⑥ Celeriter adulescentibus et oratione magistratus et praemio deductis, **若者たちは速やかに、統領の演説と報酬によって導き入れられた。 *cum se vel principes eius consilii fore profiterentur, **自分たちがその謀計の首謀者にすらなろうと申し出たときに、 *ratio perficiendi quaerebatur, **(謀計を)成し遂げる方法が求められた。 *quod civitatem temere ad suscipiendum bellum adduci posse non confidebant. **というのは、部族がむやみに(ローマ人との)戦争実行へ動かされることができるとは確信していなかったからだ。 *⑦ Placuit, ut Litaviccus decem illis milibus, quae Caesari ad bellum mitterentur, praeficeretur atque ea ducenda curaret, **リタウィックスに、カエサルに戦争のために派遣されるあの(歩兵)1万名を指揮させ率いさせるのが良いとされた。 **:<span style="color:#009900;">(訳注:歩兵1万名については[[#34節|34節]]を参照。)</span> *fratresque eius ad Caesarem praecurrerent. **彼の兄弟たちは、カエサルのところへ先立って行った。 *Reliqua qua ratione agi placeat constituunt. **残りのことが、どのようなやり方で行なわれるのが良いかが決められた。 ===38節=== '''リタウィックスの鼓舞でハエドゥイー族の歩兵1万が挙兵する''' *① Litaviccus accepto exercitu **リタウィックスは(1万名の)歩兵隊を受け取って、 *cum milia passuum circiter XXX(triginta)<ref>XXX(triginta) はα系写本の記述で、β系写本では XL(quadraginta) となっている。</ref> ab<ref>ab は写本(ω)の記述であるが、モイゼル(Henricus Meusel)は a を提案している。</ref> [[w:la:Gergovia|Gergovia]] abesset, **[[w:ゲルゴウィア|ゲルゴウィア]]から約30[[w:ローママイル|ローママイル]](=45km弱)離れたところに来たときに、 *convocatis subito militibus lacrimans, **兵士たちを突然に呼び集めて、泣きながら、 *② "Quo proficiscimur," inquit, "milites? **「兵士らよ、どこへ我々は進むのか?」と言った。 *Omnis noster equitatus, omnis nobilitas interiit; **「我が方(ハエドゥイー族)のすべての[[w:騎兵|騎兵隊]]とすべての高貴な者たちは滅んだ。 *principes civitatis, [[w:la:Eporedorix|Eporedorix]] et Viridomarus, **部族の領袖たち、エポレドリクスとウィリドマルスは、 *insimulati proditionis ab Romanis indicta causa interfecti sunt. **裏切りの罪を着せられて、ローマ人たちによって、弁解の余地なく殺されてしまったのだ。 **:<span style="color:#009900;">(訳注:indicta causa「弁解の余地なく」)</span> *③ Haec ab ipsis<ref>ipsis はα系写本の記述で、β系写本では his となっている。</ref> cognoscite, qui ex ipsa caede fugerunt; **これは、その虐殺から逃げて来た当人たちから聞き知ってくれ。 *nam ego fratribus atque omnibus meis propinquis interfectis **なぜなら、私は、兄弟たちやすべての我が親族たちが殺されて *dolore prohibeor, quae gesta sunt, pronuntiare." **悲嘆により、なされたことを物語ることを妨げられているからだ。」 *④ Producuntur hi<ref>hi はφ・β系写本の記述で、A写本では ii 、Q写本では hii となっている。</ref>, quos ille edocuerat quae dici vellet, **彼(リタウィックス)が言って欲しいことを教え込んでいた者たちが連れ出されて来て、 *atque eadem, quae Litaviccus pronuntiaverat, multitudini exponunt: **リタウィックスが物語ったのと同じことを群衆に説明した。 *⑤ multos<ref>multos はα系写本の記述で、β系写本では omnes となっている。</ref> equites [[w:la:Haedui|Haeduorum]] interfectos, quod conlocuti cum Arvernis dicerentur; **ハエドゥイー族の多くの騎兵たちは、アルウェルニー族と談判したと言われたので、殺された、と。 *ipsos se inter multitudinem militum occultasse atque ex media caede fugisse. **(彼ら)自身は、兵士ら多数の間に身を隠して、虐殺の最中から逃げて来たのだ、と。 *⑥ Conclamant Haedui et Litaviccum obsecrant, ut sibi consulat. **ハエドゥイー族の者たちは叫び声を上げて、リタウィックスに、自分たちに(どうするべきか)助言するように懇願した。 *"Quasi vero" inquit ille "consilii sit res, ac non necesse sit **彼は言った「実にあたかも、事態が協議するべきというかのようだ。(協議する)必要はないのだ。 *nobis Gergoviam contendere et cum Arvernis nosmet coniungere. **我々にとって、ゲルゴウィアに急行して、アルウェルニー族と我々が合流することは。 *⑦ An dubitamus, quin nefario facinore admisso Romani iam ad nos interficiendos concurrant? **非道の悪行を犯したローマ人がもはや我々を殺戮するために襲いかかって来ることを疑うのかね? *⑧ Proinde, si quid in nobis animi est, **それゆえに、もし我々に何らかの心構えがあるならば、 *persequamur eorum mortem, qui indignissime interierunt, **とても不面目に滅びた者たちの死に仇討ちしようではないか。 *atque hos latrones interficiamus." **かの略奪者たち(ローマ人)を誅殺しようではないか。」 *Ostendit cives Romanos, qui eius praesidii fiducia una erant<ref>erant は写本(ω)の記述であるが、モムゼン(Mommsen)らは ierant を提案している。</ref>: **(リタウィックスは)彼の護衛を信頼して一緒にいたローマ市民たちを示した。 *⑨ Continuo<ref>Continuo はβ系写本の記述で、α系写本にはない。</ref> magnum numerum frumenti commeatusque diripit, **ただちに、(ローマ市民たちの)糧食や必需品の多数を略奪して、 *ipsos crudeliter excruciatos interficit. **当人たちを残酷に拷問して殺した。 *⑩ Nuntios tota civitate Haeduorum dimittit, **ハエドゥイー族の伝令たちを、部族全体にわたって遣わして、 *in<ref>in はβ系写本の記述だが、α系写本にはない。</ref> eodem mendacio de caede equitum et principum permovet<ref>permovet はL・N写本の記述だが、B写本では permanet 、χ・M・S・β系写本などでは permonet となっている。</ref>; **騎兵や領袖たちの虐殺について、同じ嘘によって扇動した。 *hortatur ut simili ratione atque ipse fecerit suas iniurias persequantur. **(リタウィックス)自身がしたのと同様のやり方で、自分たちの(受けた)無法に仇討ちするようにと鼓舞した。 ===39節=== '''エポレドリクスがハエドゥイー勢1万の寝返りをカエサルに知らせる''' *① [[w:la:Eporedorix|Eporedorix]] [[w:la:Haedui|Haeduus]], summo loco natus adulescens et summae domi potentiae, **[[w:ハエドゥイ族|ハエドゥイー族]]の[[w:エポレドリクス|エポレドリクス]]は、最高の身分に生まれた青年で、本国で最高の権勢にあった。 *et una Viridomarus, pari aetate et gratia, sed genere dispari, **とともに、[[w:ウィリドマルス|ウィリドマルス]]も、同じ年輩で、同様に敬意を受けていたが、異なる階級であった。 *quem Caesar ab Diviciaco sibi traditum ex humili loco ad summam dignitatem perduxerat, **カエサルは彼を[[w:ディウィキアクス|ディウィキアクス]]により託されて、低い身分から最高の地位へと引き立てていた。 **:<span style="color:#009900;">(訳注:ディウィキアクスはかつてローマに援助を求めた有力者で、カエサルに殺されたドゥムノリクスの兄弟。)</span> *in equitum numero convenerant nominatim ab eo evocati. **(その2人は)彼(カエサル)から名指しで呼び出されて、[[w:騎兵|騎兵]]として(ローマの陣中に)一緒に来ていた。 *② His erat inter se de principatu contentio **彼ら(2人)には、互いに指揮官の座についての競争があって、 *et in illa magistratuum controversia **あの統領をめぐる紛争においても **:<span style="color:#009900;">([[#32節|32節]]~33節を参照。)</span> *alter pro Convictolitavi, alter pro Coto summis opibus pugnaverant<ref>pugnaverant はα系写本の記述で、β系写本では pugnaverat となっている。</ref>. **一方は[[w:コンウィクトリタウィス|コンウィクトリタウィス]]のために、他方は[[w:コトゥス|コトゥス]]のために、最大限の助力で奮闘していた。 *③ Ex his Eporedorix cognito Litavicci consilio **彼らのうちエポレドリクスが[[w:リタウィックス|リタウィックス]]の謀計を知って、 *media fere nocte rem ad Caesarem defert; **ほぼ真夜中に、事情をカエサルのところへ報知した。 *orat ne patiatur civitatem pravis adulescentium consiliis ab amicitia populi Romani deficere; **(ハエドゥイーの)部族が青年たちのゆがんだ謀計によってローマ人民の友好から背くことを容認しないように懇願した。 *quod futurum provideat, si se tot hominum milia cum hostibus coniunxerint, **もし、このように多くの幾千もの同胞が敵たちと協同するならば、(上記の)ことが生じると用心するように、と。 *quorum salutem neque propinqui neglegere, **(寝返った1万の歩兵たちの)縁者たちは彼らの身の安全をなおざりにすることはないし、 *neque civitas levi momento aestimare posset. **部族が(寝返った歩兵たちの)影響力を軽く評価できない、と。 ===40節=== '''カエサルが4個軍団を率いてハエドゥイー勢1万を制止し、リタウィックスは逃亡''' *① Magna adfectus sollicitudine hoc nuntio Caesar, **この知らせにより、大きな不安を感じたカエサルは、 *quod semper [[w:la:Haedui|Haeduorum]] civitati praecipue indulserat, **常に[[w:ハエドゥイ族|ハエドゥイーの部族]]にとくに気遣っていたので、 *nulla interposita dubitatione legiones expeditas quattuor equitatumque omnem ex castris educit; **何らためらいを差しはさまずに、戦備を整えた4個[[w:ローマ軍団|軍団]]と[[w:騎兵|騎兵隊]]すべてを陣営から進発させた。 *② nec fuit spatium tali tempore ad contrahenda castra, **このような情勢で、陣営を縮小するための余地はなかった。 **:<span style="color:#009900;"> (訳注:[[#36節|36節]]で、カエサルはゲルゴウィアの大きな陣営および敵に近い小さな陣営を6個軍団で守っていた。)</span> *quod res posita in celeritate videbatur; **というのは、事態は迅速さにかかっていると思われたからだ。 *C.(Gaium) Fabium legatum cum legionibus duabus castris praesidio relinquit. **総督副官[[w:ガイウス・ファビウス|ガイウス・ファビウス]]を2個軍団とともに陣営の守備に残しておいた。 *③ Fratres Litavicci cum comprehendi iussisset, **(カエサルは)リタウィックスの兄弟たちを拘束することを命じていたのだが、 *paulo ante reperit ad hostes fugisse. **少し前に(ゲルゴウィアの)敵たちのところへ去ったことを探り出した。 *④ Adhortatus milites ne necessario tempore itineris labore permoveantur, **(カエサルは)緊急の時に、行軍の労苦により乱されないように、兵士たちを激励して、 *cupidissimis omnibus progressus milia passuum [[w:la:Viginti quinque|XXV]] agmen Haeduorum conspicatus<ref>conspicatus はα系写本の記述で、β系写本では conspicatur となっている。</ref> **皆がとても熱中していたので、25[[w:|ローママイル]](約37km)進んで、ハエドゥイー族の隊列を視認した。 *immisso equitatu iter eorum moratur atque impedit **騎兵隊を突進させて、彼ら(ハエドゥイー勢)の行軍を妨げて、停止させた。 *interdicitque omnibus ne quemquam interficiant. **(ハエドゥイー勢を)誰一人殺さないように(ローマ勢の)皆に禁じた。 *⑤ [[w:la:Eporedorix|Eporedorigem]] et Viridomarum, quos illi interfectos existimabant, **彼ら(ハエドゥイー勢)が、殺されたものと考えていた者たち、[[w:エポレドリクス|エポレドリクス]]と[[w:ウィリドマルス|ウィリドマルス]]に、 *inter equites versari suosque appellare iubet. **(ハエドゥイー勢の)騎兵たちの間を歩き回って、味方に呼びかけることを命じた。 *⑥ His cognitis et Litavicci fraude perspecta Haedui manus tendere, **彼ら(2人)に気付いて、リタウィックスのごまかしを見通して、ハエドゥイー族の者たちは手を差し出して、 *deditionem significare et proiectis armis mortem deprecari incipiunt. **降伏の意を表して、武器を投げ出して、死を赦免されることを求め始めた。 *⑦ Litaviccus cum suis clientibus, **[[w:リタウィックス|リタウィックス]]は、配下の子分たちとともに、 *quibus more Gallorum nefas est etiam in extrema fortuna deserere patronos, **ガッリア人の風習では、最悪の境遇にあってさえも(子分が自分の)親分を見捨てることは非道であったので、 *[[w:la:Gergovia|Gergoviam]] profugit. **(親分・子分ともども)[[w:ゲルゴウィア|ゲルゴウィア]]に逃れた。 ===41節=== '''副官ファビウスの報告:ゲルゴウィアの敵勢がローマ陣営に襲来''' *① Caesar nuntiis ad civitatem [[w:la:Haedui|Haeduorum]] missis, **カエサルは伝令たちを[[w:ハエドゥイ族|ハエドゥイー]]の部族(当局)に遣わして、 *qui suo beneficio conservatos docerent quos iure belli interficere potuisset, **彼ら(伝令)に、戦時の権限により殺せた者たち(歩兵1万)は(カエサル)自らの恩恵により許されたのだ、と説かせた。 *tribusque horis noctis exercitui ad quietem datis castra ad [[w:la:Gergovia|Gergoviam]] movit. **(カエサルは)夜の3時間を軍隊に休息のために与えて、陣営を引き払ってゲルゴウィアの方へ向かった。 **:<span style="color:#009900;">(訳注:古代ローマの不定時法では、夏季の夜の3時間は、現在の定時法の3時間よりかなり短い。)</span> *② Medio fere itinere equites a Fabio missi, **(ゲルゴウィアへの)道程のほぼ中間のところで、ファビウスから[[w:騎兵|騎兵]]たちが遣わされて来て、 *quanto res in periculo fuerit, exponunt. **事態がどれほどの危機にあるか、を打ち明けた。 *Summis copiis castra oppugnata demonstrant, **(ガッリア勢の)最大級の軍勢により(ローマ勢の)陣営が攻撃された、と説明した。 *cum crebro integri defessis succederent **そのときに(ガッリア勢は)たびたび新たな者たちが疲労した者たちに交代していたが、 *nostrosque adsiduo labore defatigarent, **我が方(ローマ勢)は絶え間ない労苦により疲れ果てていた。 *quibus propter magnitudinem castrorum perpetuo esset isdem in vallo permanendum. **彼ら(ローマ勢)にとり、陣営の大きさのために、同じ者たちが防柵の中に留まらざるを得なかった。 **:<span style="color:#009900;">(訳注:カエサルは[[#40節|40節]]②項で「陣営を縮小するための余地はなかった」とあらかじめ弁解している。)</span> *③ Multitudine sagittarum atque omnis generis<ref>omnis generis はα系写本の記述で、β系写本では omni genere となっている。</ref> telorum multos vulneratos; **(ガッリア勢からの)矢の多数と飛び道具のあらゆる類いによって(ローマ勢の)多くのものが傷つけられた。 *ad haec sustinenda magno usui fuisse tormenta. **これに持ちこたえるために、投石器が大いに役立った。 *④ Fabium discessu eorum duabus relictis portis obstruere ceteras **ファビウスは、彼ら(ガッリア勢)が退却すると、2つの門を残して、ほか(の門)を閉鎖した。 *pluteosque vallo addere et se in posterum diem similemque casum apparare<ref>similemque casum apparare はα系写本の記述で、β系写本では similem ad casum parare となっている。</ref>. **胸壁を防柵を付け加えて、翌日における似たような状況に備えた。 *⑤ His rebus cognitis Caesar **これらの事態を知って、カエサルは、 *summo studio militum ante ortum solis in castra pervenit. **兵士たちの最大級の努力によって、日の出の前に(ゲルゴウィアの)陣営に到着した。 ===42節=== '''ハエドゥイー族の者たちが反ローマ暴動を引き起こす''' *① Dum haec ad [[w:la:Gergovia|Gergoviam]] geruntur, **これらがゲルゴウィアの辺りでなされている間に、 *[[w:la:Haedui|Haedui]] primis nuntiis ab Litavicco acceptis **[[w:ハエドゥイ族|ハエドゥイー族]]の者たちは、[[w:リタウィックス|リタウィックス]]からの最初の知らせを受け取ったが、 *nullum sibi ad cognoscendum spatium relinquunt. **自分たちには(この知らせを)調べるための余地を何ら残さなかった。 *② Impellit alios avaritia, alios iracundia et temeritas **ある者たちを貪欲さが、ある者たちを激しやすさや無分別が駆り立てた。 *─ quae maxime illi hominum generi est innata ─ ut levem auditionem habeant pro re comperta. **あの種族の人々はとりわけ、軽率な風聞を確認された事として見なすように、生まれついているのだ。 *③ Bona civium Romanorum diripiunt, caedes faciunt, in servitutem abstrahunt. **(ハエドゥイー族の者たちは)ローマ市民たちの財産を略奪し、殺戮を行なって、隷属状態に引きずり込んだ。 *④ Adiuvat rem proclinatam Convictolitavis **(さらに)傾いた事態を[[w:コンウィクトリタウィス|コンウィクトリタウィス]]が助長して、 *plebemque ad furorem impellit, ut facinore admisso ad sanitatem reverti pudeat. **民衆を狂暴さへと、悪行を犯して冷静さへ引き返すことを恥と思うように、駆り立てた。 *⑤ M.(Marcum) Aristium tribunum militum iter ad legionem facientem **<ruby><rb>[[w:トリブヌス・ミリトゥム|兵士長官]]</rb><rp>(</rp><rt>トリブヌス・ミリトゥム</rt><rp>)</rp></ruby>であるマルクス・アリスティウスが[[w:ローマ軍団|軍団]]のところへ旅しているところを *fide data ex oppido [[w:la:Cabillonum|Cavillono]] educunt; **(安全の)保証を与えて、城塞都市カウィッロヌムから連れ出した。 **:<span style="color:#009900;">(訳注:カウィッロヌム Cavillonum はカビッロヌム Cabillonum とも綴り、現在の[[w:シャロン=スュル=ソーヌ|シャロン=スュル=ソーヌ]])</span> *idem facere cogunt eos, qui negotiandi causa ibi constiterant. **そこに商売をするために定住していた(ローマ人の)者たちにも同じことをするように強要した。 *⑥ Hos continuo <in><ref>in は写本にないが、近世の活字本から挿入されている。</ref> itinere adorti omnibus impedimentis exuunt; **直ちに彼らを途中で襲撃して、すべての手荷物を奪い取った。 *repugnantes diem noctemque obsident; **抵抗する者たちを昼夜にわたって包囲した。 *multis utrimque interfectis **(ハエドゥイー族とローマ人の)双方とも多くの者たちが殺されて、 *maiorem multitudinem armatorum<ref>armatorum はα系写本の記述で、β系写本では ad arma となっている。</ref> concitant. **(ハエドゥイー族の)より多くの群衆を武装へと扇動した。 ===43節=== '''ハエドゥイー族当局がカエサルに屈服。ガッリア大動乱の予感''' *① Interim nuntio adlato omnes eorum milites in potestate Caesaris teneri, **その間に、彼ら(ハエドゥイー族)の兵士すべてがカエサルの権力下で支配されているという知らせがもたらされて、 *concurrunt ad Aristium, **(ハエドゥイー族当局の者たちは)アリスティウスのところへ急ぎ集まって、 *nihil publico factum consilio demonstrant; **(ローマ市民に対する襲撃は)何ら公けに企てがなされたものではないと説明した。 *② quaestionem de bonis direptis decernunt, **(部族当局は、ローマ市民から)略奪された財産についての究明を決定して、 *Litavicci fratrumque bona publicant, **リタウィックスと兄弟たちの財産を没収し、 *legatos ad Caesarem sui purgandi gratia mittunt. **カエサルのところへ使節たちを、自分たちを赦免することのために遣わした。 *③ Haec faciunt reciperandorum<ref>reciperandorum はα系写本の記述で、β系写本では recuperandorum となっている。</ref> suorum causa; **これらを、配下の者たち(=歩兵1万名)を取り戻すために行なったのだ。 *sed contaminati facinore et capti compendio ex direptis bonis, **しかし(彼らは)悪行に汚染されていて、略奪した財産の利得にとらわれており、 *quod ea res ad multos pertinebat, timore<ref>timore はα系写本の記述で、β系写本では et timore となっている。</ref> poenae exterriti **その事に多くの者たちが関与していたので、懲罰の恐れに脅かされて、 *consilia clam de bello inire incipiunt **ひそかに戦争の謀計に取りかかり始めて、 *civitatesque reliquas legationibus sollicitant. **ほかの諸部族を使節派遣によって、そそのかした。 *④ Quae tametsi Caesar intellegebat, tamen quam mitissime potest legatos appellat; **カエサルはそのようなことを認識していたけれども、(ハエドゥイー族の)使節たちにできるだけ平静に話しかけた。 *nihil se propter inscientiam levitatemque vulgi gravius de civitate iudicare **自分は(ハエドゥイー族の)民衆の無知や軽率さのために、部族を何ら厳重に裁断することはない、と。 *neque de sua in [[w:la:Haedui|Haeduos]] benevolentia deminuere. **自分のハエドゥイー族に対する好意を減ずることはない、と。 *⑤ Ipse maiorem Galliae motum exspectans, **(カエサル)自身は、ガッリアのより大きな動乱を予期しており、 *ne ab omnibus civitatibus circumsisteretur, **すべての部族によって包囲されることがないように、 *consilia inibat, quemadmodum ab<ref>ab はχ系写本の記述で、φ系写本では a となっており、β系写本にはない。</ref> [[w:la:Gergovia|Gergovia]] discederet ac rursus omnem exercitum contraheret, **どのようにゲルゴウィアから撤退して再び軍隊全体を集結するか、策定に取りかかった。 *ne profectio nata ab<ref>ab はα系写本の記述で、β系写本では a となっている。</ref> timore defectionis similis<ref>similis はα系写本の記述で、β系写本では similisque となっている。</ref> fugae videretur. **(諸部族の)背反の恐れから生じた出発が、逃亡同然と見られないように。 ===44節=== '''ゲルゴウィアの急所の尾根''' [[画像:Plateau_of_Gergovia.jpg|thumb|center|900px|ゲルゴウィア([[w:la:Gergovia|Gergovia]])すなわち現在のジェルゴヴィ高地([[w:fr:Plateau de Gergovie|Plateau de Gergovie]])の全景(南方のル・クレスト [[w:fr:Le Crest|Le Crest]] から撮影)。<br>画像中央の右下に、ローマ勢が占領して小さい方の陣営を築いていたと推定されているラ・ロシュ=ブランシュ([[w:fr:La Roche-Blanche (Puy-de-Dôme)|La Roche-Blanche]])の丘陵が見える。<br>本節①項で言及されているのは画像の左端に写る丘陵と思われ、尾根伝いにほぼ平坦なゲルゴウィアの山頂(画像中央)に続いている。<br>これらの位置関係の推定は、19世紀の[[w:ウジェーヌ・ストッフェル|ウジェーヌ・ストッフェル]]大佐(colonel Eugène Stoffel)の発掘調査に依拠したものである。]] [[画像:La_Roche_Blanche.JPG|thumb|right|300px|ローマ勢が占領して小さい方の陣営を築いていたと推定されているラ・ロシュ=ブランシュ([[w:fr:La Roche-Blanche (Puy-de-Dôme)|La Roche-Blanche]])の丘陵]] *① Haec cogitanti accidere visa est facultas bene rei gerendae<ref>rei gerendae はα系写本の記述で、β系写本では gerendae rei となっている。</ref>. **(カエサルが)これらを考慮しているときに、事をうまく行なえる可能性が生じたと思われた。 *Nam cum in minora castra operis perspiciendi causa venisset, **すなわち、(ローマ勢の)小さい方の陣営に、作業を視察するためにやって来たときに、 *animadvertit collem qui ab hostibus tenebatur nudatum hominibus, **敵たちによって占められていた丘陵が、無人にされているのに気付いた。 *qui superioribus diebus vix prae multitudine cerni poterat. **それは、前日には、(ガッリア勢の)大勢の者たちのためにほとんど見分けが付けられないものだった。 *② Admiratus quaerit ex perfugis causam, **(カエサルは)驚いて、(ゲルゴウィアからの)[[w:脱走兵|脱走兵]]たちに理由を尋ねた。 *quorum magnus ad eum cotidie numerus confluebat. **その者たちの多数は、毎日、彼(カエサル)のところへ群がり集まっていたのだ。 **:<span style="color:#009900;">(訳注:[[#14節|14節]]⑨項で既述のように、ガッリア勢は[[w:兵役逃れ|兵役忌避]]の多さに悩まされていた。)</span> *③ Constabat inter omnes **(脱走兵たち)皆の間では同じ意見であった。 *─ quod iam ipse Caesar per exploratores cognoverat ─ **─ すでにカエサル自身が偵察者たちを通して知っていたことであったが ─ *dorsum esse eius iugi prope aequum, sed silvestre<ref>silvestre はβ系写本の記述で、α系写本では hunc silvestrem となっている。</ref> et angustum, **その尾根の背面はほぼ平地で、しかし森林におおわれて狭く、 *qua esset aditus ad alteram partem oppidi<ref>partem oppidi はα系写本の記述で、β系写本では oppidi partem となっている。</ref>; **それによって城塞都市の別の方面への出入口となっている、と。 *④ vehementer huic illos loco<ref>vehementer huic illos loco はα系写本の記述で、β系写本では huic loco vehementer illos となっている。</ref> timere nec iam aliter sentire, **この地帯を彼ら(ガッリア勢)が極度に恐れ、すでに感じていたことには、 *uno colle ab Romanis occupato, si alterum amisissent, **ローマ人によって一つの丘陵が占領されているので、もしもう一方をも失ったならば、 *quin paene circumvallati atque omni exitu et pabulatione interclusi viderentur; **(ゲルゴウィアが)ほとんど包囲されて、あらゆる出口と糧秣徴発を阻まれると思われたのである。 *ad hunc muniendum locum<ref>locum はβ系写本の記述で、α系写本にはない。</ref> omnes a [[w:la:Vercingetorix|Vercingetorige]] evocatos. **この地帯の辺りを防御するために、[[w:ウェルキンゲトリクス|ウェルキンゲトリークス]]により総勢が召集されていたのだ、と。 ===45節=== '''ローマ勢の陽動部隊が敵を引き付け、本隊が敵の本陣を目指す''' *① Hac re cognita Caesar mittit complures equitum turmas eodem<ref>eodem はβ系写本の記述で、α系写本では eisdem などとなっており、またモイゼル(Meusel)は eo de と解釈している。</ref> media nocte; **この事を知って、カエサルは多数の[[w:騎兵|騎兵]]<ruby><rb>小隊</rb><rp>(</rp><rt>トゥルマ</rt><rp>)</rp></ruby>を同じところに真夜中に派遣した。 **:<span style="color:#009900;"> (訳注:騎兵小隊 turma は、ローマの同盟部族などからなる騎兵の単位で、30騎ほどからなるとされている。)</span> *imperat his<ref>his はβ系写本の記述で、α系写本にはない。</ref> ut paulo tumultuosius omnibus locis vagarentur<ref>vagarentur はα系写本の記述で、β系写本では pervagentur となっている。</ref>. **彼らには、いくらか騒々しく、あらゆる場所を動き回るように命令した。 *② Prima luce magnum numerum impedimentorum ex castris mulorumque produci deque his stramenta detrahi **夜明けに、陣営から多数の荷馬や[[w:ラバ|ラバ]]を連れ出して、これらから[[w:鞍|荷鞍]]を取り去って、 *mulionesque cum cassidibus equitum specie ac simulatione collibus circumvehi iubet. **ラバ引きの者たちを鉄兜とともに、騎兵の外見と真似をさせて、丘々を乗り回すことを命じた。 *③ His paucos addit equites, qui latius ostentationis causa vagarentur<ref>vagarentur はα系写本の記述で、β系写本では vagentur となっている。</ref>. **彼らに少数の騎兵を付き添わせて、より広く見せびらかすために動き回らせた。 *Longo circuitu easdem omnes iubet petere regiones. **(ラバ引きと騎兵の)皆には、長く迂回して、同じ一帯を目指すことを命じた。 *④ Haec procul ex oppido videbantur, ut erat a Gergovia despectus in castra, **これらは<ruby><rb>[[w:オッピドゥム|城塞都市]]</rb><rp>(</rp><rt>オッピドゥム</rt><rp>)</rp></ruby>から遠くに望見され、ゲルゴウィアから(ローマ勢の)陣営が眺められたほどであったが、 *neque tanto spatio certi quid esset explorari poterat. **これほどの距離のために(ガッリア勢からは)何ごとか確かなことは探り出されなかった。 *⑤ Legionem unam eodem iugo mittit **(カエサルは)1個[[w:ローマ軍団|軍団]]を同じ尾根に派遣して、 *et paulum progressam inferiore constituit loco silvisque occultat. **いくらか前進させて低い場所に駐留させ、森林に隠した。 *⑥ Augetur Gallis suspicio **(これらを見た)ガッリア人には疑念が増されて、 *atque omnes illo ad munitionem copiae traducuntur. **軍勢のすべてがあそこ(=無人にしていた急所の丘陵)へ防御のために移動した。 *⑦ Vacua castra hostium Caesar conspicatus **カエサルは敵たちの(ゲルゴウィア山頂の)陣営が空であると気付いて、 *tectis insignibus suorum occultatisque signis militaribus **配下の者たちの標章を覆い隠し、軍旗を隠して、 *raros milites, ne ex oppido animadverterentur, ex maioribus castris in minora traducit **兵士たちをまばらに、城塞都市から気付かれないように、大きい方の陣営から小さい方に移動させた。 *legatisque, quos singulis legionibus praefecerat, quid fieri velit, ostendit; **個々の軍団を指揮させていた<ruby><rb>[[w:レガトゥス|副官]]</rb><rp>(</rp><rt>レガトゥス</rt><rp>)</rp></ruby>たちに、何がなされることを欲しているかを示した。 *⑧ in primis monet ut contineant milites, **第一に、兵士たちを抑え留めるように戒めた。 *ne studio pugnandi aut spe praedae longius progrediantur; **(兵士たちが)戦うことの熱意、あるいは略奪の希望により、より遠くまで進み出ないように、と。 *⑨ quid iniquitas loci habeat incommodi proponit; **地勢の不利がどれほど敗北を生じるかを示した。 *hoc una celeritate posse vitari<ref>vitari はβ系写本の記述で、α系写本では mutari となっている。</ref>; **迅速さのみがこれを避けることができる。 *occasionis esse rem, non proelii. **事の成否は、戦闘にではなく、好機にかかっている。 *⑩ His rebus expositis signum dat **これらの事柄を説明して、(副官たちに進軍の)号令を出した。 *et ab dextra parte alio ascensu eodem tempore Haeduos mittit. **右の方面からは、別の登り道を(ローマ軍本隊と)同時に[[w:ハエドゥイ族|ハエドゥイー族]](の騎兵)を派遣した。 ===46節=== '''ローマ軍の本隊が防壁を越えて、敵陣の一部を占拠''' *① Oppidi murus ab<ref>ab はB・M・L・N写本の記述で、β系写本では a となっている。</ref> planitie atque initio ascensus recta regione, **(ゲルゴウィアの)<ruby><rb>[[w:オッピドゥム|城塞都市]]</rb><rp>(</rp><rt>オッピドゥム</rt><rp>)</rp></ruby>の城壁は、平地や登り道の始まりから真っ直ぐに(=直線距離で)、 *si nullus amfractus<ref>amfractus はα系写本の記述で、β系写本では anfractus となっている。</ref> intercederet, mille CC(mille ducenti)<ref>mille CC(=1200) はα系写本の記述で、β系写本では CC(=200)となっている。</ref> passus aberat; **もし何らの湾曲が間になければ、1200[[w:パッスス|パッスス]](=約1.8km)離れていた。 *② quicquid huc circuitus ad molliendum clivum accesserat<ref>accesserat は写本(ω)の記述だが、オットー・ゼール [[w:de:Otto Seel|Otto Seel]] の校訂では accesserit としている。</ref>, **ここに(山の斜面の)傾斜を緩和するために、何らかの回り道が付け加わっていて、 *id spatium itineris augebat. **その道のりの距離を増していた。 *③ A medio fere colle in longitudinem, ut natura montis ferebat, **丘陵のほぼ真ん中から、山の地形が作り出したかのように、長きにわたって、 *ex grandibus saxis sex pedum murum qui nostrum<ref>nostrum は中世の写本(ω)の記述だが、近世の版では nostrorum となっている。</ref> impetum tardaret, **大きな石垣からなる6[[w:ペース (長さ)|ペース]](=約1.8m)もの、我が方(ローマ勢)の突進を遅らせる防壁を、 *praeduxerant Galli, **ガッリア人は引いて来ており、 *atque inferiore omni spatio vacuo relicto **(その石垣の防壁)より下方のすべての空間は人気なく残されていて、 *superiorem partem collis usque ad murum oppidi densissimis castris compleverant. **丘陵のより上方の部分を、城塞都市の城壁の方へ続けざまに、とても密集した(各部族ごとの)陣営で満たしていた。 *④ Milites dato signo celeriter ad munitionem perveniunt **(ローマ人の)兵士たちは号令を与えられて、速やかに(石垣の)防壁のところへ到達して、 *eamque transgressi trinis castris potiuntur; **それを越えて行って、3つの(部族ごとの)陣営を占拠した。 *⑤ ac tanta fuit in castris capiendis<ref>castris capiendis はα系写本の記述で、β系写本では capiendis castris となっている。</ref> celeritas, **(3つの)陣営を奪取することにおいて、これほどにも迅速さがあったので、 *ut Teutomatus, rex Nitiobrogum, subito in tabernaculo oppressus, **その結果、[[w:ニティオブロゲス族|ニティオブロゲス族]]の王[[w:テウトマトゥス|テウトマトゥス]]は、[[w:テント|天幕]]において突然に襲われて、 *ut meridie conquieverat, superiore corporis parte nudata<ref>nudata はα系写本の記述で、β系写本では nuda となっている。</ref> **昼寝をしていたが、上半身は裸のままで、 *vulnerato equo vix se ex manibus praedantium militum eriperet. **傷付けられた馬によって、略奪している(ローマ人)兵士の手から、やっと自らを救い出した。 ===47節=== '''血気にはやるローマ兵たちの猪突猛進、ガッリア女たちの命乞い''' *① Consecutus id quod animo proposuerat **心に決めていたことを達成したので、 *Caesar receptui cani iussit **カエサルは退却ラッパを吹くことを命じた。 *legionique decimae, quacum erat, contionatus signa constituit. **彼とともにいた[[w:第10軍団エクェストリス|第10軍団]]に呼びかけて、軍旗を停止した。 **:<span style="color:#009900;">(訳注:第10軍団はガッリア戦争初期からの最古参の軍団。軍旗を停止するとは、進軍を止めること。)</span> *② Ac<ref>ac はα系写本の記述で、β系写本では at となっている。</ref> reliquarum legionum milites non exaudito<ref>exaudito はα系写本の記述で、β系写本では audito となっている。</ref> sono tubae, **ほかの[[w:ローマ軍団|軍団]]の兵士たちは、ラッパの響きを聞き取れなかった。 *quod satis magna valles intercedebat, **というのは、十分に大きな峡谷が間にあったからである。 *tamen ab<ref>ab はα系写本の記述で、β系写本では a となっている。</ref> tribunis militum legatisque, ut erat a Caesare praeceptum, retinebantur; **しかしながら、<ruby><rb>[[w:トリブヌス・ミリトゥム|兵士長官]]</rb><rp>(</rp><rt>トリブヌス・ミリトゥム</rt><rp>)</rp></ruby>たちや<ruby><rb>[[w:レガトゥス|総督副官]]</rb><rp>(</rp><rt>レガトゥス</rt><rp>)</rp></ruby>たちにより、カエサルから指図されていたように、制止されていた。 *③ Sed elati spe celeris victoriae et hostium fuga et superiorum temporum secundis proeliis **だが(兵士たちは)迅速な勝利の希望や、敵たちの逃亡や、それ以前のときの順調な戦闘により、高慢になっていて、 *nihil adeo arduum sibi esse existimaverunt<ref>esse existimaverunt はα系写本の記述で、β系写本では existimabant となっている。</ref>, quod non virtute consequi possent, **自分たちにとって、武勇で達することができないほどの困難なものはまったく何もない、と考えており、 *neque finem prius sequendi fecerunt quam muro oppidi portisque adpropinquarunt. **(ゲルゴウィアの)城塞都市の城壁や城門に近付くまでは、追及を終結させなかった。 *④ Tum vero ex omnibus urbis partibus orto clamore, **すると、まさに(ゲルゴウィアの)町のあらゆる方面から叫び声が発せられて、 *qui longius aberant, repentino tumultu perterriti, **(城内の)遠い方に離れていた者たちは、予期せぬ騒ぎに脅えており、 *cum hostem intra portas esse existimarent, **敵(=ローマ人)が城門の内側にいると考えたので、 *sese ex oppido eiecerunt. **城塞都市から急ぎ出た。 *⑤ Matres familiae de muro vestem argentumque iactabant **家庭の母親たちは、城壁から衣類や貨幣をたびたび投げやった。 *et pectore nudo prominentes passis manibus obtestabantur Romanos, **そして胸を裸にして(城壁の上に)進み出て、手を伸ばしてローマ人たちに哀願した。 *ut sibi parcerent **自分たちを容赦するように、 *neu, sicut Avarici fecissent, ne a mulieribus quidem atque infantibus abstinerent; **(ローマ人が)アウァーリクムでしたように女たちや子供たちでさえも赦免しないことのないように、と。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:ne quidem|ne ~ quidem]]「~でさえ…ない」)</span> **:<span style="color:#009900;">(訳注:ローマ人がアウァーリクムでした行為については、[[#28節|28節]]④項を参照。)</span> *⑥ nonnullae de muris<ref>muris はα系写本の記述で、β系写本では mure となっている。</ref> per manus demissae sese militibus tradebant. **少なからぬ者たちは、城壁から手で降ろされて、(ローマ人)兵士たちに身を任せた。 [[画像:Gergovie_mur_pano2.jpg|thumb|center|700px|ゲルゴウィア([[w:la:Gergovia|Gergovia]])すなわち現在のジェルゴヴィ高地([[w:fr:Plateau de Gergovie|Plateau de Gergovie]])で発掘された城壁の遺構。]] *⑦ L.(Lucius) Fabius centurio legionis VIII(octavae), **[[w:第8軍団アウグスタ|第8軍団]]の<ruby><rb>[[w:ケントゥリオ|百人隊長]]</rb><rp>(</rp><rt>ケントゥリオ</rt><rp>)</rp></ruby>であるルキウス・ファビウスは、 *quem inter suos eo die dixisse constabat **配下の者たちの間で、その日、(以下のように)言ったことが知られていた。 *excitari se Avaricensibus praemiis neque commissurum, ut prius quisquam murum ascenderet, **自分はアウァーリクムの恩賞に奮い立たせられて、何者かが(自分)より早く城壁を登るようなことは生じさせない、と。 *tres suos nactus manipulares **(ファビウスは)同じ隊の兵士である3人の配下と遭遇して、 **:<span style="color:#009900;">(訳注:manipulares は「[[w:マニプルス|歩兵中隊]]の」とも解されるが、ここでは「同じ隊の兵士」という意味であろう。)</span> *atque ab his sublevatus murum ascendit, **彼らによって持ち上げられて城壁を登った。 *hos<ref>hos はα系写本の記述で、π系写本では eos 、ρ系写本では eo となっている。</ref> ipse rursus singulos exceptans in murum extulit. **彼らは(ファビウス)自身が再び1人ずつ引き出して、城壁に導き上げた。 ===48節=== '''ガッリア勢が城塞都市に引き返して、防戦に努める''' *① Interim hi<ref>hi はα系・π系・R写本の記述で、U写本では ii となっている。</ref> qui ad alteram partem oppidi, ut supra demonstravimus, munitionis causa convenerant, **その間に、前に述べたように、<ruby><rb>[[w:オッピドゥム|城塞都市]]</rb><rp>(</rp><rt>オッピドゥム</rt><rp>)</rp></ruby>の別の方面へ、防御のために集結していた(ガッリア勢の)者たちは、 **:<span style="color:#009900;">(訳注:[[#45節|45節]]⑥項で述べられている。)</span> *primo exaudito clamore, **初めに叫び声を聞き取り、 *inde etiam crebris nuntiis incitati oppidum ab Romanis teneri, **さらに、城塞都市がローマ人たちによって占領されたという頻繁な知らせにさえも駆り立てられて、 *praemissis equitibus magno concursu<ref>concursu はα系写本の記述で、β系写本では cursu となっている。</ref> eo contenderunt. **[[w:騎兵|騎兵]]たちを先遣して、(歩兵たちも)駆けに駆けて、そこ(=城塞都市)へ急いだ。 [[画像:Auvergne_Gaul_coin_CdM.jpg|thumb|right|300px|[[w:アルウェルニ族|アルウェルニー族]]の兵士が刻まれた貨幣([[w:ビブリオテーク・ナショナル|仏国立図書館]]貨幣部所蔵)]] *② Eorum ut quisque primus venerat, **彼らの(城塞都市に)到着した者から順々に **:<span style="color:#009900;">(訳注:quisque primus「最初の者ごとに;順々に」)</span> *sub muro consistebat suorumque pugnantium numerum augebat. **城壁の下に陣取って、味方の戦う者たちの数を増した。 *③ Quorum cum magna multitudo convenisset, **その者たちの大群集が集結したときに、 *matres familiae quae paulo ante Romanis de muro manus tendebant, **少し前にはローマ人たちに城壁から手を差し出していた家庭の母親たちが *suos obtestari **味方に哀願して、 *et more Gallico passum capillum ostentare liberosque in conspectum proferre coeperunt. **ガッリアの風習により、髪を広げて示し、子供たちを(男たちの)眼前に運び始めた。 *④ Erat Romanis nec loco nec numero aequa contentio; **ローマ人たちにとっては、地の利でも(兵の)数でも、対等な闘いはなかった。 *simul et cursu et spatio pugnae defatigati **と同時に、戦いの疾走や時間(の長さ)に疲弊させられていて、 *non facile recentes atque integros sustinebant. **(ガッリア勢の)新来かつ無傷の者たちに、容易に持ちこたえられなかった。 ===49節=== '''カエサルが劣勢の自軍に副官セクスティウスを増援する''' *① Caesar cum iniquo loco pugnari hostiumque augeri copias videret, **カエサルは(戦闘が自軍に)不利な場所で戦われていること、かつ敵方の軍勢が増やされていることを見たので、 *praemetuens suis **配下の者たちを気遣って、 *ad T.(Titum) Sextium legatum, quem minoribus castris praesidio reliquerat, misit, **小さい方の陣営に守備として残しておいた<ruby><rb>[[w:レガトゥス|総督副官]]</rb><rp>(</rp><rt>レガトゥス</rt><rp>)</rp></ruby>ティトゥス・セクスティウスのところへ(伝令を)遣わして、 **:<span style="color:#009900;">(訳注:セクスティウスについては、すでに副官として[[ガリア戦記 第6巻#1節|第6巻1節]]で言及されている。)</span> *ut cohortes ex castris celeriter educeret **陣営から(いくつかの)<ruby><rb>[[w:コホルス|歩兵大隊]]</rb><rp>(</rp><rt>コホルス</rt><rp>)</rp></ruby>を速やかに進発させるように、 *et sub infimo colle ab dextro latere hostium constitueret, **かつ丘陵のふもとの下方で、敵方の右の側面に布陣するように、と。 *② ut, si nostros loco depulsos vidisset, quominus libere hostes insequerentur terreret. **もし我が方が(戦闘の)場所から追いやられたのを見たら、敵方が自由に追撃することにならぬよう脅かすためである。 *③ Ipse paulum ex eo loco cum legione progressus, ubi constiterat, **(カエサル)自身は、停止していた場所から、軍団とともに少し前進して、 **:<span style="color:#009900;">([[#47節|47節]]①項で既述のように、カエサルとともに停止していたのは[[w:第10軍団エクェストリス|第10軍団]]である。)</span> *eventum pugnae exspectabat. **戦いの決着を待っていた。 ===50節=== '''激戦の末、敗勢に陥るローマ軍''' *① Cum acerrime comminus pugnaretur, hostes loco et numero, nostri virtute confiderent, **(両軍により)激烈に格闘して戦われていて、敵方は地の利と(兵の)数を、我が方(ローマ軍)が武勇を頼りとしていたときに、 *subito sunt Haedui visi ab latere nostris aperto, **突如として、我が方にとって開けた側面(=右側)から、[[w:ハエドゥイ族|ハエドゥイー族]]の者たち(の姿)が見られた。 **:<span style="color:#009900;">(訳注:「開けた側面から」ab latere aperto とは、兵士の[[w:スクトゥム|長盾]]で覆われていない右側を指す。)</span> *quos Caesar ab dextra parte alio ascensu manus distinendae causa miserat. **カエサルがその者たちを右の方面から別の登り道により(敵の)部隊を分散しておくために派遣していたのだ。 **:<span style="color:#009900;">(訳注:この事は、[[#45節|45節]]⑩項で述べられている。)</span> *② Hi similitudine armorum vehementer nostros perterruerunt, **彼らの武具が(ガッリア勢のものと)似ていることが、我が方(の兵士たち)を極度に怖れさせた。 *ac tametsi dextris humeris<ref>humeris が写本(ω)の記述であるが、umeris とするのも一般的となっている。</ref> exsertis animadvertebantur, quod insigne pactum<ref>pactum はHellerによる修正提案で、写本(ω)では pacatum となっており、研究者たちにより他の修正も提案されている。</ref> esse consuerat, **(ハエドゥイー勢は)右の肩を脱いでいるのが視認され、その印は(味方として)定められているのが常であったが、 *tamen id ipsum sui fallendi causa milites ab hostibus factum existimabant. **けれども(ローマ人の)兵士たちは、それ自体が自分たちを欺くために、敵方によりなされたと考えたのだ。 [[画像:Dorf_La_Roche_Blanche.JPG|thumb|right|300px|ゲルゴウィア([[w:la:Gergovia|Gergovia]])すなわち現在のジェルゴヴィ高地([[w:fr:Plateau_de_Gergovie|Plateau de Gergovie]])の遠景(南方のル・クレスト [[w:fr:Le_Crest|Le Crest]] から撮影)。画像中央がローマ軍が小さい方の陣営を設置していたと推定されているラ・ロシュ=ブランシュ([[w:fr:La_Roche-Blanche_(Puy-de-Dôme)|La Roche Blanche]])の丘陵で、山頂からこの丘陵の辺りが激戦地だったと思われる。現在は山麓にかけて住宅地が広がっている。]] *③ Eodem tempore L.(Lucius) Fabius centurio quique una murum ascenderant, **同じ時に、<ruby><rb>[[w:ケントゥリオ|百人隊長]]</rb><rp>(</rp><rt>ケントゥリオ</rt><rp>)</rp></ruby>ルキウス・ファビウスおよび一緒に城壁を登っていた者たちは、 **:<span style="color:#009900;">(訳注:ファビウスらについては、[[#47節|47節]]⑦項で述べられている。)</span> *circumventi atque interfecti de<ref>de はβ系写本の記述で、α系写本にはない。</ref> muro praecipitabantur. **(ガッリア勢に)取り囲まれ、殺害されて、城壁から突き落とされた。 *④ M.(Marcus) Petronius, eiusdem legionis centurio, **同じ[[w:ローマ軍団|軍団]]の百人隊長マルクス・ペトロニウスは、 **:<span style="color:#009900;">(訳注:ファビウスと同じ軍団とは、[[#47節|47節]]⑦項で述べられているように[[w:第8軍団アウグスタ|第8軍団]]である。)</span> *cum portas<ref>portas は写本(ω)の記述だが、portam と単数形にする修正も提案されている。</ref> excidere conatus esset, **城門を突き破って出ることを試みていたときに、 *a multitudine oppressus ac sibi desperans multis iam vulneribus acceptis, **(敵の)大勢によって圧倒されて、すでに多くの傷を受けて自分に絶望しており、 *manipularibus suis, qui illum secuti erant<ref>secuti erant はα系写本の記述で、β系写本では erant secuti となっている。</ref>, **彼に付き従っていた同じ隊の配下の者たちに、 *"quoniam" inquit "me una vobiscum servare non possum, **曰く「私と諸君を一緒に救うことはできないのだから、 *vestrae quidem certe vitae prospiciam, quos cupiditate gloriae adductus in periculum deduxi. **せめて、栄誉の欲に引き寄せられて危険に引きずり込んでしまった諸君の生命にはきっと見通しを与えるであろう。 *⑤ Vos data facultate vobis consulite." **諸君は(生き延びる)可能性が与えられているから、諸君(自身)を助けたまえ。」 *Simul in medios hostes inrupit duobusque interfectis reliquos a porta paulum submovit. **と同時に、敵方の真ん中に押し入って、2名を殺害して、ほかの者たちを城門からいくらか退けた。 *⑥ Conantibus auxiliari suis **(ペトロニウスは自分の)支援を試みる配下の者たちに、 *"frustra" inquit "meae vitae subvenire conamini, quem iam sanguis viresque deficiunt. **曰く「もはや血も活力も尽き果てた私の生命を助けることを試みているのは無益だ。 *Proinde abite, dum est facultas, vosque ad legionem recipite." **ゆえに(生き延びる)可能性がある間に立ち去れ。諸君は軍団のところへ退却せよ。」 *Ita pugnans post paulum<ref>paulum はα系・ρ系写本の記述で、π系写本では paululum となっており、paulo という修正提案もされている。</ref> concidit ac suis saluti fuit. **こうして(ペトロニウスは)戦って少し後で斃れ、配下の者たちにとっては救いとなった。 ===51節=== [[画像:Monument_gergovie_fr.jpg|thumb|right|290px|[[w:ゲルゴウィアの戦い|ゲルゴウィア戦勝]]記念碑。[[w:1903年|1903年]]に[[w:クレルモン=フェラン|クレルモン=フェラン市]]出身の建築家ジャン・テラール([[w:fr:Jean Teillard|Jean Teillard]])が、侵略者カエサルを撃退した郷土の英雄[[w:ウェルキンゲトリクス|ウェルキンゲトリークス]]に捧げるためにジェルゴヴィ高地([[w:fr:Plateau_de_Gergovie|Plateau de Gergovie]])に建立したものである。]] [[画像:Plaque_Napoléon_III_Gergovie.jpg|thumb|right|300px|[[w:ゲルゴウィアの戦い|ゲルゴウィア]]の地に残る銘板。フランス語で「[[w:ナポレオン3世|ナポレオン3世]]は、1862年のゲルゴウィアの[[w:オッピドゥム|城塞都市]](跡)訪問の結果、メルドーニュ(Merdogne)の住民たちの要求に対して、1865年1月11日の政令によって、彼らの村にジェルゴヴィ([[w:fr:Gergovie|Gergovie]])の名を与えることを決定した。」<!-- «A la suite de sa visite sur l'oppidum de Gergovia en 1862, Napoléon III, à la demande des habitants de Merdogne, décida d'attribuer à leur village le nom de Gergovie, par décret du 11 janvier 1865.»-->]] '''カエサルが一敗地に塗れる''' *① Nostri cum undique premerentur, **我が方(ローマ軍)は、至る所で圧倒されたので、 *XLVI(sex et quadraginta)<ref>XLVI はα系写本の記述で、β系写本では sex et XL となっている(どちらも46)。</ref> centurionibus amissis deiecti sunt loco. **46名の<ruby><rb>[[w:ケントゥリオ|百人隊長]]</rb><rp>(</rp><rt>ケントゥリオ</rt><rp>)</rp></ruby> を失い、(激戦の)場所から追いやられた。 *Sed intolerantius Gallos insequentes **けれども、容赦なく追撃して来るガッリア人たちを *legio decima tardavit, quae pro subsidio paulo aequiore loco constiterat. **予備部隊(もしくは要撃部隊)として、いくらか平らな所に陣取っていた[[w:第10軍団エクェストリス|第10軍団]]が妨げた。 **:<span style="color:#009900;">(訳注:[[#47節|47節]]①項で既述のように、第10軍団はカエサルとともに待機していた。)</span> *② Hanc rursus XIII(tertiae decimae) legionis cohortes exceperunt, **これ(=第10軍団)をさらに、第13軍団の諸<ruby><rb>[[w:コホルス|大隊]]</rb><rp>(</rp><rt>コホルス</rt><rp>)</rp></ruby>が支えた。 *quae ex castris minoribus eductae cum T.(Tito) Sextio legato ceperant locum<ref>ceperant locum はα系写本の記述で、β系写本では locum ceperant となっている。</ref> superiorem. **それらは<ruby><rb>[[w:レガトゥス|総督副官]]</rb><rp>(</rp><rt>レガトゥス</rt><rp>)</rp></ruby>ティトゥス・セクスティウスとともに小さい方の陣営から進発してより高い所を占めていたのだ。 **:<span style="color:#009900;">(訳注:[[#49節|49節]]を参照。)</span> *③ Legiones ubi primum planitiem attigerunt, **諸[[w:ローマ軍団|軍団]]は、平野に達するや否や、 *infestis contra hostes signis constiterunt. **敵方に抗して戦備を整えて陣取った。 *④ [[w:la:Vercingetorix|Vercingetorix]] ab radicibus collis suos intra munitiones reduxit. **[[w:ウェルキンゲトリクス|ウェルキンゲトリークス]]は、配下の者たちを丘陵の麓から(ゲルゴウィアの)防備の内側に連れ戻した。 *Eo die milites sunt paulo minus [[wikt:la:Septingenti|septingenti]] desiderati. **その日、(ローマ軍は)700名よりいくらか少ない兵士を失った。 <br> :<span style="color:#009900;">(訳注:カエサルとウェルキンゲトリークスは、たびたび交えた騎兵戦ではカエサルが勝っているが、</span> :<span style="color:#009900;">両軍の主力部隊である歩兵どうしが激突したこの戦闘は、地の利もあって、ウェルキンゲトリークスが完勝した。</span> :<span style="color:#009900;">カエサルは第8軍団など古参の部隊を投入しながら、歴戦の百人隊長と兵士たちを多く失った。)</span> ===52節=== '''敗軍の将カエサルが兵士たちを責める''' *① Postero die Caesar contione advocata **翌日にカエサルは(兵士たちの)集会を召集して、 *temeritatem cupiditatemque militum<ref>cupiditatemque militum はα系写本の記述で、β系写本では militum cupiditatemque となっている。</ref> reprehendit, **兵士たちの無思慮や功名心をとがめた。 *quod sibi ipsi iudicavissent, quo procedendum aut quid agendum videretur, **というのは、どこへ進み出るべきか、あるいは何がなされるべきと思われるのか、自分たちに対し自分たちで判断してしまったからだ。 *neque signo recipiendi dato constitissent **退却することの合図を与えられても留まりもせず、 *neque ab<ref>ab はα系写本の記述で、β系写本では a となっている。</ref> tribunis militum legatisque retineri potuissent. **<ruby><rb>[[w:トリブヌス・ミリトゥム|兵士長官]]</rb><rp>(</rp><rt>トリブヌス・ミリトゥム</rt><rp>)</rp></ruby>や<ruby><rb>[[w:レガトゥス|総督副官]]たち</rb><rp>(</rp><rt>レガトゥス</rt><rp>)</rp></ruby>により制止されることもできなかったからだ。 *② Exposuit quid iniquitas loci posset, quod<ref>quod は写本(ω)では quid となっているが、近世以降の校訂者たちは quod と修正提案している。</ref> ipse ad [[w:la:Avaricum Biturigum|Avaricum]] sensisset, **地の利のなさがどれほど影響するのか、(カエサル)自身がアウァーリクムで判断したことを説明した。 *cum sine duce et sine equitatu deprehensis hostibus **将帥もなく騎兵隊もない敵たちを探し当てたときに、 **:<span style="color:#009900;">(訳注:[[#18節|18節]]~[[#19節|19節]]を参照。そのときガッリア勢は、ウェルキンゲトリークスが騎兵隊を連れて出て不在であった。)</span> *exploratam victoriam dimisisset, **確実であった勝利を諦めたのだ。 *ne parvum modo detrimentum in contentione propter iniquitatem loci accideret. **地の利のなさのために、闘いにおいてほんのわずかな損害も生じないように(勝利を諦めたのだ)。 *③ Quanto opere<ref>Quanto opere はα系写本の記述で、β系写本では Quantopere となっている。</ref> eorum animi magnitudinem admiraretur, **彼ら(兵士たち)の大胆さに(カエサルが)驚嘆すればするほど、 **:<span style="color:#009900;">(訳注:quanto opere ~ tanto opere …/quantopere ~ tantopere …「~すればするほど、ますます…」)</span> *quos non castrorum munitiones, non altitudo montis, non murus oppidi tardare potuisset, **彼らのことを(ガッリア勢の)陣営の防備も、山の高さも、[[w:オッピドゥム|城塞都市]]の城壁も妨げることができなかったのではあるが、 *tanto opere<ref>tanto opere はα系・T・ρ系写本の記述で、V写本では tantopere となっている。</ref> licentiam arrogantiamque reprehendere, **それだけにますます(兵士たちの)勝手気ままさや高慢さを(カエサルは)非難する(と言った)。 *quod plus se quam imperatorem de victoria atque exitu rerum sentire existimarent; **というのは、自分たちが将軍(カエサル)よりも勝利と事の結末についてよく判断していると考えていたからだ。 *④ nec<ref>nec はα系写本の記述で、β系写本では non となっている。</ref> minus se ab<ref>ab はα系写本の記述で、β系写本では in となっている。</ref> milite modestiam et continentiam quam virtutem atque animi magnitudinem desiderare. **自分(カエサル)は兵士たちに、武勇や大胆さよりも、慎重さや自制心を望んでいるのだ。 *:<span style="color:#009900;">(訳注:カエサルは兵士たちを上のように責めたが、兵士たちを統制できなかった責任は最高司令官にある。)</span> ===53節=== '''カエサルとローマ軍がゲルゴウィアから撤退''' *① Hac habita contione et ad extremam orationem confirmatis militibus, **(カエサルは)このような熱弁を振るって、演説の最後に、兵士たちを元気付けた。 *ne ob hanc causam animo permoverentur **このような理由のために心をかき乱されないように、 *neu, quod iniquitas loci attulisset, id virtuti hostium tribuerent, **かつ、地の利のなさが引き起こしたことを、敵方の武勇に転嫁しないように、と。 *eadem de profectione cogitans, quae ante senserat, **(ゲルゴウィアからの)出発については、以前から判断していたのと同じことを考えていて、 **:<span style="color:#009900;">(訳注:[[#43節|43節]]⑤項を参照。ゲルゴウィアからの撤退が敗走同然に見られないようにと、考えていたのであろう。)</span> *legiones ex castris eduxit aciemque idoneo loco constituit. **諸[[w:ローマ軍団|軍団]]を陣営から進発させて、適切な場所に戦列を整えた。 *② Cum [[w:la:Vercingetorix|Vercingetorix]] nihilo minus &lt; intra munitiones remaneret neque &gt; in aequum locum descenderet, **[[w:ウェルキンゲトリクス|ウェルキンゲトリークス]]が、防備の内側に留まったばかりか、平らな場所に降りてこなかったので、 **:<span style="color:#009900;">(訳注:&lt; intra munitiones remaneret neque &gt; は、写本になく、近代に挿入提案された修正案の一つ。)</span> *levi facto equestri proelio, atque secundo, in castra exercitum reduxit. **軽微な騎兵戦を行なって、順調のうちに軍隊を陣営に連れ戻した。 *③ Cum hoc idem postero die fecisset, **翌日もこれと同じことを行なって、 *satis ad Gallicam ostentationem minuendam militumque animos confirmandos factum existimans **ガッリア人の誇示を弱めること、および(ローマ人)兵士の心を強固にすることが十分になされたと考えたので、 *in [[w:la:Haedui|Haeduos]] movit castra. **[[w:ハエドゥイ族|ハエドゥイー族]]のところに陣営を移(すために出発)した。 *④ Ne tum quidem insecutis hostibus **そのとき、敵方は決して追撃して来なかったので、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:ne quidem|ne ~ quidem]]「~でさえ…ない」)</span> *tertio die ad flumen [[w:la:Elaver|Elaver]] pontes<ref>pontes はα系写本の記述で、β系写本では pontem となっている。</ref> reficit<ref>reficit はχ系・B・M・L・N写本の記述で、S写本では refecit となっている。</ref> eoque exercitum<ref>eoque exercitum はα系写本の記述で、β系写本では exercitumque となっている。</ref> traducit<ref>traducit はα系写本の記述で、β系写本では traduxit となっている。</ref>. **3日目にはエラウェル川(=現在の[[w:アリエ川|アリエ川]])のところで橋を再建して、そこで軍隊を渡らせた。 ===54節=== '''ハエドゥイー族のエポレドリクスとウィリドマルスらがカエサルのもとから立ち去る''' *① Ibi a Viridomaro atque [[w:la:Eporedorix|Eporedorige]] [[w:la:Haedui|Haeduis]] appellatus discit **そこで(カエサルが)[[w:ハエドゥイ族|ハエドゥイー族]]の[[w:ウィリドマルス|ウィリドマルス]]と[[w:エポレドリクス|エポレドリクス]]から話しかけられて知ったことには、 **:<span style="color:#009900;">(訳注:[[#39節|39節]]~[[#40節|40節]]を参照。ウィリドマルスとエポレドリクスはカエサルの軍勢に従軍していたと思われる。)</span> *cum omni equitatu Litaviccum ad sollicitandos Haeduos profectum; **[[w:リタウィックス|リタウィックス]]がすべての騎兵隊とともに、ハエドゥイー族の者たちをそそのかすために出発したという。 **:<span style="color:#009900;">(訳注:[[#40節|40節]]を参照。リタウィックスは謀計が破れたので、ゲルゴウィアに逃れていた。)</span> *opus esse ipsos antecedere ad confirmandam civitatem. **部族の支持を固めるために、(彼ら)自身が(リタウィックスより)先行することが必須であるというのだ。 *② Etsi multis iam rebus perfidiam Haeduorum<ref>perfidiam Haeduorum はα系写本の記述で、β系写本では Haeduorum perfidiam となっている。</ref> Caesar<ref>Caesar はβ系写本の記述で、α系写本にはない。</ref> perspectam habebat **カエサルは、すでに多くの事により、ハエドゥイー族の背信行為を目にして来ており、 **:<span style="color:#009900;">(訳注:Etsi ~, tamen …「~としても、しかしながら…」)</span> *atque horum discessu admaturari defectionem civitatis existimabat, **この者たちが(カエサルのもとから)立ち去ることで、(ハエドゥイー)部族の背反が一層促進されると考えていたのだが、 *tamen eos retinendos non censuit<ref>censuit はπ系写本の記述で、α系・ρ系写本では constituit となっている。</ref>, **しかしながら、彼ら(2人)を束縛するべきではないと考慮した。 *ne aut inferre iniuriam videretur aut dare<ref>dare はα系写本の記述で、β系写本では daret となっている。</ref> timoris aliquam<ref>timoris aliquam はα系写本の記述で、β系写本では aliquam timoris となっている。</ref> suspicionem. **(カエサルが)無法行為を起こすと思われないように、あるいは(彼らを)怖れているという何らかの疑念を与えないように。 *③ Discedentibus his breviter sua in Haeduos merita exposuit, **(カエサルは)立ち去る彼らに、ハエドゥイー族における自分の功績を手短に説明した。 *quos et quam humiles accepisset, compulsos in oppida, multatos agris, **彼らが、どれほど無力であったのを引き受けたことか、[[w:オッピドゥム|城塞都市]]に押し込められ、耕地を台無しにされて、 **:<span style="color:#009900;">(訳注:et ~, et …「~でもあり、…でもある。」)</span> *omnibus ereptis sociis<ref>sociis「同盟者たち」 はβ系写本の記述で、α系写本では copiis「軍勢」となっている。</ref>, imposito stipendio, obsidibus summa cum contumelia extortis, **すべての同盟者たちを奪い取られ、貢物を課せられて、たいへんな侮辱とともに人質をもぎ取られていたことか。 *④ et quam in fortunam quamque in amplitudinem deduxisset, **かつ、どれほどの境遇に、どれほどの高位に(カエサルが)引き上げもしたことか。 *ut non solum in pristinum statum redissent, **その結果(ハエドゥイー族は)かつての地位に戻っただけでなく、 *sed omnium temporum dignitatem et gratiam antecessisse viderentur. **(以前の)あらゆる時期の品格や信望をも越えていると思われる。 *His datis mandatis eos ab se dimisit. **このような訓示を与えて、彼ら(2人)を自分のもとから送り出した。 ===55節=== '''エポレドリクスとウィリドマルスらがローマの拠点ノウィオドゥーヌムで寝返る''' [[画像:Nevers_-_Vue_depuis_la_rive_sud_de_la_Loire.jpg|thumb|center|700px|ノウィオドゥーヌム([[w:la:Nivernum|Noviodunum]])=現・[[w:ヌヴェール|ヌヴェール]]([[w:fr:Nevers|Nevers]])における、リゲル川([[w:la:Liger|Liger]])=現・[[w:ロワール川|ロワール川]]([[w:fr:Loire (fleuve)|Loire]])の岸辺の景観]] *① [[w:la:Nivernum|Noviodunum]] erat oppidum [[w:la:Haedui|Haeduorum]] ad ripas [[w:la:Liger|Ligeris]] opportuno loco positum. **ノウィオドゥーヌムは、[[w:ハエドゥイ族|ハエドゥイー族]]の[[w:オッピドゥム|城塞都市]]で、リゲル川(現[[w:ロワール川|ロワール川]])岸の好都合な所に位置していた。 **:<span style="color:#009900;">(訳注:『ガリア戦記』には同名の都市が計3か所載っているが、こちらは現在の[[w:ヌヴェール|ヌヴェール]] Nevers である。<br>    「[[ガリア戦記/ガリア語の名前#Nouio-dūnon|ガリア語の名前 #Nouio-dūnon]]」を参照せよ。)</span> *② Huc Caesar omnes obsides Galliae, frumentum, pecuniam publicam, **ここに、カエサルは、ガッリアのすべての人質たちや、糧食、公金、 *suorum atque exercitus impedimentorum magnam partem contulerat; **および自分と軍隊の[[w:輜重|輜重]]の大部分を運び集めていた。 *③ huc magnum numerum equorum huius belli causa in [[w:la:Italia|Italia]] atque [[w:la:Hispania|Hispania]] coemptum miserat. **ここに、この戦争のためにイタリアと[[w:ヒスパニア|ヒスパニア]]から買い集めた馬匹の多数を送っておいた。 *④ Eo cum [[w:la:Eporedorix|Eporedorix]] Viridomarusque venissent et de statu civitatis cognovissent, **そこに、[[w:エポレドリクス|エポレドリクス]]と[[w:ウィリドマルス|ウィリドマルス]]がやって来て、(以下のような)部族の情勢について察知したときに、 [[画像:Bibracte333_crop.JPG|thumb|right|400px|[[w:ビブラクテ|ビブラクテ]]の[[w:オッピドゥム|城塞都市]]跡に整備された城壁の遺構]] *Litaviccum [[w:la:Bibracte|Bibracti]] ab Haeduis receptum, **(すなわち)リタウィックスが、ハエドゥイー族の者たちによって[[w:ビブラクテ|ビブラクテ]]に迎え入れられ、 *─ quod est oppidum apud eos maximae auctoritatis ─, **それ(ビブラクテ)は彼ら(ハエドゥイー族)のもとで最大の影響力を持つ城塞都市であるが、 *Convictolitavem<ref>Convictolitavem はβ系・N写本の記述で、χ系・B・M・S・L写本では Convictolitabim となっている。</ref> magistratum magnamque partem senatus ad eum convenisse, **統領コンウィクトリタウィスと評議会の大半の者たちが彼(リタウィックス)のもとへ参集し、 *legatos ad [[w:la:Vercingetorix|Vercingetorigem]] de pace et<ref>et は α系・U写本の記述で、π系・R写本では et de となっている。</ref> amicitia concilianda publice missos, **[[w:ウェルキンゲトリクス|ウェルキンゲトリークス]]のところへ和平と友好を仲介するべく公けに使節たちが遣わされた(ことを知った)ので、 *non praetermittendum instans<ref>instans はβ系写本の記述で、α系写本にはない。</ref> tantum commodum existimaverunt. **(エポレドリクスとウィリドマルスは)眼前にあるこれほどの好機を放置するべきではないと考えたのだ。 *⑤ Itaque interfectis Novioduni custodibus quique eo negotiandi aut itineris<ref>aut itineris はβ系写本の記述で、α系写本にはない。</ref> causa convenerant, **こうして(2人は)ノウィオドゥーヌムの(ローマ側の)番兵たちや商用や旅行のために来訪していた者たちを殺害し、 *pecuniam atque equos inter se partiti sunt; **金銭および馬匹を互いに分け合った。 *⑥ obsides civitatum Bibracte ad magistratum deducendos curaverunt; **(ガッリアの)部族の人質たちをビブラクテの統領のところへ連れて行くように手配した。 *⑦ oppidum, quod a<ref>a はα系写本の記述で、β系写本では ab となっている。</ref> se teneri non posse iudicabant, **(ノウィオドゥーヌムの)城塞都市は、自分たちによって固守することはできないと判断したので、 *ne cui esset usui Romanis, incenderunt; **ローマ人たちの有益になることがないように、焼き打ちした。 *⑧ frumenti quod subito potuerunt navibus avexerunt, **糧食のうち、急いで(運ぶことが)できるものを船団で運び去って、 *reliquum flumine atque incendio corruperunt. **残りのものを川(に流すこと)により、および焼き打ちにより、役立たないようにした。 *⑨ Ipsi ex finitimis regionibus copias cogere, **(彼ら)自身は、近隣の地方から軍勢を徴集して、 *praesidia custodiasque ad ripas Ligeris disponere **リゲルの川岸のたもとへ守備隊や番兵を分配して、 *equitatumque omnibus locis iniciendi timoris causa ostentare coeperunt, **(ローマ人に)恐怖(の感情)を起こさせるために、[[w:騎兵|騎兵隊]]に誇示をさせ始めた。 *si ab re frumentaria Romanos excludere **もし、ローマ人たちが糧食調達することを阻止するなら、 *† aut adductos inopia in provincia<ref>in provincia は、α系写本では ex provincia「属州から」、β系写本では provincia となっているが、コンスタン Constans やクロッツ A.Klotz らにより in provincia「属州に」と修正提案されている。</ref> expellere<ref>expellere「駆逐する」 はα系写本の記述で、β系写本では excludere「阻止する、妨げる」 となっている。</ref> † possent. **あるいは(糧食などの)欠乏により、属州に駆逐することができるなら、と。 **:<span style="color:#009900;">(訳注:† ~ † は、写本の文章が崩れて校訂者を迷わせていることを表す記号。修正提案されている。)</span> *⑩ Quam ad spem multum eos adiuvabat, **そのような希望へ、彼らを大いに励まし助けたのは、 *quod Liger ex nivibus creverat, **リゲル川(の水位)が雪水により増したことで、 *ut omnino vado non posse transiri videretur. **すべての浅瀬が渡らせられることができないと思われたのである。 ===56節=== '''カエサルが属州へは戻らず、増水したリゲル川の渡河を敢行''' *① Quibus rebus cognitis Caesar maturandum sibi censuit, **それらの事態を知ると、カエサルは自らにとって(以下のことを)急ぐべきだと考慮した。 *si esset in perficiendis pontibus periclitandum, **もし、橋を造り上げる最中に(敵勢と闘うという)危険を冒すのであれば、 *ut prius, quam essent maiores eo coactae copiae, dimicaret. **そこに(敵方の)より多くの軍勢が集結するよりも早く闘うように(急ぐべきだと)。 *② Nam ut commutato consilio iter in provinciam converteret, **なぜなら、作戦を変更して、属州([[w:ガリア・ナルボネンシス|ガッリア・トラーンサルピーナ]])に進路を方向転換するようにと、 *ne metu quidem<ref>ne metu quidem はα系写本の記述で、β系写本では nemo tunc quidem 、そのほか近代の校訂者によって修正提案が行なわれている。</ref> necessario faciendum<ref>faciendum はβ系写本の記述で、α系写本では faciundum となっている。</ref> existimabat; **(ガッリア勢への)怖れによって行なうことは決して必要ではない、と考えたのだ。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:ne quidem|ne ~ quidem]]「~でさえ…ない」)</span> *cum infamia atque indignitas rei **(属州に撤退するという)事の不名誉や恥辱が、 **:<span style="color:#009900;">(訳注:cum ~ tum …「~であるのと同様に特に…である」)</span> *et oppositus mons Cevenna<ref>Cevenna はχ系・U写本の記述で、π系・R写本の記述では Cebenna、φ系写本では Cevennae となっている。</ref> viarumque difficultas impediebat, **およびケウェンナ山地が相対して道の(通行の)困難なことが、(属州への撤退を)妨げていたし、 **:<span style="color:#009900;">(訳注:ケウェンナ山地 mons Cevenna は現在のセヴェンヌ山地。[[#8節|8節]]を参照。)</span> *tum maxime quod abiuncto [[w:la:Titus_Labienus|Labieno]] atque iis legionibus, quas una miserat, vehementer timebat. **同様に、とりわけ[[w:ティトゥス・ラビエヌス|ラビエーヌス]]と一緒に派遣していた諸[[w:ローマ軍団|軍団]]から遠ざけられて、非常に心配してもいたのだ。 *③ Itaque admodum magnis diurnis nocturnisque itineribus confectis **こうして、昼間も夜間も非常な強行軍を成し遂げて、 *contra omnium opinionem ad [[w:la:Liger|Ligerem]]<ref>Ligerem はα系写本の記述で、β系写本では Ligerim となっている。</ref> venit **皆の予想に反して、リゲル川(=現[[w:ロワール川|ロワール川]])の辺りにやって来た。 *④ vadoque per equites invento pro rei necessitate opportuno, **事態の緊急性に見合う好都合な浅瀬を、[[w:騎兵|騎兵]]たちを通じて見出して、 *ut brachia modo atque humeri<ref>humeri はA・φ系・ρ系写本の記述で、Q写本では umeri となっている。</ref> ad sustinenda arma liberi ab aqua esse possent, **やっと腕と肩を、武器を差し上げるために、水から自由になることができた。 *disposito equitatu, qui vim fluminis refringeret, **川の流れの圧力を妨げるべく、騎兵隊を分けて置いて、 *atque hostibus primo aspectu perturbatis, **敵方は(ローマ勢を)初めに一見するや狼狽していたので、 *⑤ incolumem exercitum traduxit **(カエサルは)軍隊を無傷のまま渡河させた。 *frumentumque in agris et pecoris copiam nactus **耕地の穀物、および大量の家畜を獲得して、 *repleto his rebus exercitu **これらの物を軍隊に補充して、 *iter in Senones facere instituit. **セノネース族のところに行軍することを決めた。 **:<span style="color:#009900;">(訳注:セノネース族の方面には、副官ラビエーヌスと4個軍団を派遣していた。)</span> ==ラビエーヌスのルテティア遠征== ===57節=== '''副官ラビエーヌスがルテティア制圧に向かう''' *① Dum haec apud Caesarem geruntur, **これらがカエサルのもとで遂行されている間に、 *[[w:la:Titus Labienus|Labienus]] eo supplemento, quod nuper ex Italia venerat, **[[w:ティトゥス・ラビエヌス|ラビエーヌス]]は、最近イタリアから来ていた補充兵(予備兵)を **:<span style="color:#009900;">(訳注:[[#34節|34節]]で既述のようにラビエーヌスはカエサルから4個軍団とともにガッリア北部の制圧を委ねられていた。</span> **:<span style="color:#009900;">また、[[#1節|1節]]で既述のようにカエサルはイタリア(属州[[w:ガリア・キサルピナ|ガッリア・キサルピーナ]])で部隊を徴兵していた。)</span> *relicto [[w:la:Agedincum|Agedinci]], ut esset impedimentis praesidio, **アゲディンクムに、[[w:輜重|輜重]]にとっての守備隊となるように、残留させて、 **:<span style="color:#009900;">(訳注:[[#10節|10節]]で既述のように、カエサルはアゲディンクム(現在の[[w:サンス|サンス]])に全軍の輜重を残していた。)</span> *cum quattuor legionibus Luteciam<ref>Luteciam はα系写本の記述で、π系写本では Luceciam 、ρ系写本では Lucetiam となっている。[[ガリア戦記 第6巻#3節|第6巻3節]]では Lutetia(m) とも綴られている。</ref> proficiscitur. **4個軍団とともに[[w:ルテティア|ルテティア]]に出発した。 **:<span style="color:#009900;">(訳注:ルテティア Lutetia は写本ではルテキア Lutetia とも綴られる。[[ガリア戦記 第6巻#3節|第6巻3節]]を参照。)</span> *Id est oppidum Parisiorum, quod positum est<ref>quod positum est はα系写本の記述で、β系写本では単に positum となっている。</ref> in insula fluminis [[w:la:Sequana|Sequanae]]. **それ(ルテティア)は[[w:パリシイ族|パリスィイ族]]の<ruby><rb>[[w:オッピドゥム|城塞都市]]</rb><rp>(</rp><rt>オッピドゥム</rt><rp>)</rp></ruby>で、セクアナ川(=現[[w:セーヌ川|セーヌ川]])の中洲に位置している。 *② Cuius adventu ab hostibus cognito **彼(ラビエーヌス)の到来が敵方により知られると、 *magnae ex finitimis civitatibus copiae convenerunt. **近隣の諸部族から大軍勢が集結していた。 *③ Summa imperii traditur Camulogeno Aulerco, **(北部ガッリア勢の)最高司令権は、[[w:アウレルキ族|アウレルキ族]]の[[w:カムロゲヌス|カムロゲヌス]]に託された。 *qui prope confectus aetate **その者はかなり年老いていたが、 *tamen propter singularem scientiam rei militaris ad eum est honorem evocatus. **けれども、彼の卓越した軍事の知識のために、顕職に召集されたのだ。 *④ Is cum animadvertisset perpetuam esse paludem, **彼(カムロゲヌス)は、沼地が絶え間なくあることに気付いていたので、 *quae influeret in Sequanam atque illum omnem locum magnopere impediret, **それはセクアナ(川)に流れ込み、かの一帯すべてを大いに近付きにくくしていたので、 *hic consedit nostrosque transitu prohibere instituit. **ここに陣取って、我が方(ローマ勢)が渡河するのを妨げることに決めた。 ===58節=== '''ラビエーヌスがメトロセドゥムを陥落させ、ルテティアのガッリア勢と対峙''' *① [[w:la:Titus Labienus|Labienus]] primo vineas agere, cratibus atque aggere paludem explere **[[w:ティトゥス・ラビエヌス|ラビエーヌス]]は初めに、<ruby><rb>[[w:ウィネア|工作小屋]]</rb><rp>(</rp><rt>ウィネア</rt><rp>)</rp></ruby>を駆ること、柴や土砂で沼地を埋め立てること、 *atque iter munire conabatur. **および道を築くこと、を試みた。 *② Postquam id difficilius confieri<ref>confieri はχ系・β系写本の記述で、Q写本では confici となっている。</ref> animadvertit, **それが成し遂げられることが困難だと気付いた後で、 *silentio e castris tertia vigilia egressus **(敵に知られないように)静けさのうちに第三夜警時に陣営から進発して、 *eodem, quo venerat, itinere Metlosedum<ref>Metlosedum はコンスタン L.-A. Constans による修正で、π系・U写本では Metiosedum 、α系・ρ系写本では Mellodunum などとなっており、写本により表記がさまざまである。</ref> pervenit. **やって来たのと同じ道程により、メトロセドゥムに到達した。 **:<span style="color:#009900;">(訳注:メトロセドゥム Metlosedum は、写本によりメティオセドゥム Metiosedum とも綴られ、</span> **:<span style="color:#009900;">後にはメロドゥーヌム [[w:la:Melodunum|Melodunum]] として知られる。現在の[[w:ムラン|ムラン]] [[w:fr:Melun|Melun]] である。)</span> *③ Id est oppidum [[w:la:Senones|Senonum]] in insula [[w:la:Sequana|Sequanae]] positum, ut paulo ante de [[w:la:Lutetia|Lutecia]] diximus. **それはセノネース族の城塞都市で、少し前に[[w:ルテティア|ルテティア]]について述べたように、セクアナ川の[[w:中州|中州]]に位置している。 **:<span style="color:#009900;">(訳注:ルテティアすなわち現在の[[w:パリ|パリ]]の中心部に[[w:シテ島|シテ島]]や[[w:サン=ルイ島|サン=ルイ島]]という[[w:セーヌ川|セーヌ川]]の中州があるように、</span> **:<span style="color:#009900;">現在のムランの中心部にもサン=テティエンヌ島 [[w:fr:Île Saint-Étienne|Île Saint-Étienne]] というセーヌ川の中州がある。)</span> *④ Deprensis<ref>deprensis という語形はα系写本の記述で、β系写本では deprehensis となっている。</ref> navibus circiter quinquaginta celeriterque coniunctis **約50隻の船を探し出して、速やかに結び合わせて(舟橋として)、 *atque eo militibus iniectis **そこに兵士たちを投入して、 *et rei novitate perterritis oppidanis, **事の新奇さに<ruby><rb>[[w:オッピドゥム|城塞都市]]</rb><rp>(</rp><rt>オッピドゥム</rt><rp>)</rp></ruby>の者たちは脅えて、 *quorum magna pars erat ad bellum evocata, **彼ら(住民)の大部分は戦争へ徴集されていた(ため不在であった)ので、 *sine contentione oppido potitur. **(ラビエーヌスは)闘うことなしに(中州にあるメトロセドゥムの)城塞都市を掌握した。 *⑤ Refecto ponte, quem superioribus diebus hostes resciderant, exercitum traducit **それ以前の日々に敵方が破却していた橋を再建して、軍隊を(中州から対岸へ)渡らせて、 *et secundo flumine ad Luteciam iter facere coepit. **川に沿ってルテティアの方へ行軍を始めた。 *⑥ Hostes re cognita ab iis, qui Metlosedo<ref>Metlosedo はコンスタン L.-A. Constans による修正で、β系・S写本では Metiosedo 、χ系写本では Melloduno 、B・M・L・N写本では Ametlodone(あるいは Ametclodone)などとなっている。</ref> fugerant, **敵方は、メトロセドゥムから逃げて来た者たちから事態を知って、 *Luteciam incendi pontesque eius oppidi rescindi iubent; **ルテティアを焼打ちすること、その城塞都市の橋を破却すること、を命じた。 *ipsi profecti a palude ad ripas<ref>ad ripas はχ系・B・M・L・N写本の記述で、S・Vおよびρ系写本では in ripas 、T写本では in ripa となっている。</ref> Sequanae **彼ら自身は、沼地からセクアナの川岸へ出発して、 *e regione Luteciae contra Labieni castra considunt. **ルテティア(の対岸)に向かってラビエーヌスの陣営に対抗して陣取った。 ===59節=== '''ガッリア諸部族が迫り、ラビエーヌスが作戦変更を決断''' *① Iam Caesar a [[w:la:Gergovia|Gergovia]] discessisse audiebatur, **すでに、カエサルが[[w:ゲルゴウィア|ゲルゴウィア]]から撤退したことが聞かれていたし、 *iam de [[w:la:Haedui|Haeduorum]] defectione et secundo Galliae motu rumores adferebantur, **もはや、[[w:ハエドゥイ族|ハエドゥイー族]]の背反や、ガッリアの動乱の順調さについての噂がもたらされていた。 *Gallique in conloquiis **(当地の)ガッリア人たちは会話の中で、 *interclusum itinere et [[w:la:Liger|Ligeri]] Caesarem inopia frumenti coactum in provinciam contendisse confirmabant. **カエサルが行軍やリゲル(渡河)を遮られて、糧食の欠乏により属州([[w:ガリア・ナルボネンシス|ガッリア・トラーンサルピーナ]])に急ぐことを強いられた、と確言した。 *② Bellovaci autem defectione Haeduorum cognita, **一方で、ベッロウァキ族もハエドゥイー族の背反を知って、 **:<span style="color:#009900;">(訳注:ベッロウァキ族は、ハエドゥイー族の仲介によりカエサルに降伏していた。[[ガリア戦記 第2巻#14節|第2巻14節]]~15節を参照。)</span> *qui iam<ref>qui iam は古典学者 ニコラエス・ハインシウス1世 [[w:en:Nikolaes_Heinsius_the_Elder|Nikolaes Heinsius the Elder]] による修正提案で、χ系・S・β系写本では qui 、B・M・L・N写本では quia となっている。</ref> ante erant per se infideles, **彼ら自身もすでに以前から(カエサルやローマ人に)忠誠的でなかったが、 *manus cogere atque aperte bellum parare coeperunt. **手勢を徴集して、公けに戦争を準備することを始めた。 *③ Tum [[w:la:Titus Labienus|Labienus]] tanta rerum commutatione **そこで、[[w:ティトゥス・ラビエヌス|ラビエーヌス]]はこれほどの事態の変動により、 *longe aliud sibi capiendum consilium, atque antea senserat, intellegebat, **自分にとって、以前に判断していたのとはまったく別の作戦が立てられるべきだ、と考えた。 **:<span style="color:#009900;">(訳注:aliud ~ atque …「…とは別の~」)</span> *④ neque iam, ut aliquid adquireret proelioque hostes lacesseret, **もはや、何らかのものを獲得したり、敵方に戦闘を挑むようにではなく、 **:<span style="color:#009900;">(訳注:neque ut ~, sed ut …「~ようにではなく、…ように」)</span> *sed ut incolumem exercitum Agedincum reduceret, cogitabat. **軍隊を無傷のままでアゲディンクム(=現[[w:サンス|サンス]])に連れ戻すように、と考えた。 **:<span style="color:#009900;">(訳注:アゲディンクムには輜重と守備隊が残されていた。[[#10節|10節]]・[[#57節|57節]]を参照。)</span> *⑤ Namque altera ex parte Bellovaci, **実際、一方の側からはベッロウァキ族が、 *quae civitas in Gallia maximam habet opinionem virtutis, instabant, **ガッリアにおいて武勇に最大の評判を持つその部族が、迫りつつあった。 *alteram Camulogenus parato atque instructo exercitu tenebat: **他方からは、カムロゲヌスが軍隊を準備し、整列させて、進んでいた。 *tum legiones a praesidio atque impedimentis interclusas **そのとき、(ラビエーヌス麾下の)諸軍団は(アゲディンクムにいる)守備隊や輜重から遮られて、 *maximum flumen distinebat. **とても大きな(セクアナ)川が阻んでいた。 *⑥ Tantis subito difficultatibus obiectis **突然に、これほどの困難が投げ出されたので、 *ab animi virtute auxilium petendum videbat. **武勇の心構えに救いを求めるべきだと(ラビエーヌスは)思った。 ===60節=== '''ラビエーヌスが陽動戦術に努める''' *① Itaque<ref>Itaque はS・β系写本の記述で、α系写本にはない。</ref> sub vesperum consilio convocato **こうして([[w:ティトゥス・ラビエヌス|ラビエーヌス]]は)夕方に会議を召集して、 *cohortatus, ut ea, quae imperasset, diligenter industrieque administrarent, **(彼が)命令したことを入念かつ勤勉に従事するように鼓舞した。 *naves, quas [[w:la:Melodunum|Metlosedo]]<ref>Metlosedo はコンスタン L.-A. Constans による修正で、χ系・S・β系写本では Metiosedo 、B・M写本では ameclodone 、L・N写本では a mellodone 、<i>etc</i>. となっている。</ref> deduxerat, singulas equitibus Romanis attribuit, **[[w:ムラン|メトロセドゥム]]から引いて来ていた船団を、ローマ人騎士たち1人ずつに配分して、 *et prima confecta vigilia IIII(quattuor) milia passuum secundo flumine silentio progredi **第一夜警時が終わる頃に、4ローママイル(6km弱)下流に静けさのうちに進発すること、 *ibique se exspectari<ref>exspectari はα系・T・ρ系写本の記述で、S・V写本では exspectare などとなっている。</ref> iubet. **かつ、そこで自分(ラビエーヌス)を待つことを命じた。 *② Quinque cohortes, quas minime firmas ad dimicandum esse existimabat, **(白兵戦を)闘うためにはあまり強くないと(ラビエーヌスが)考えていた5個<ruby><rb>[[w:コホルス|歩兵大隊]]</rb><rp>(</rp><rt>コホルス</rt><rp>)</rp></ruby> *castris praesidio relinquit; **陣営にとっての守備隊として残留させた。 *quinque eiusdem legionis reliquas **同じ軍団の残りの5個(歩兵大隊)を *de media nocte cum omnibus impedimentis adverso flumine magno tumultu proficisci imperat. **真夜中から、すべての[[w:輜重|輜重]]とともに、上流の方に大きな喧騒でもって出発することを命令した。 *④ Conquirit etiam lintres; **小舟さえも探し集めて、 *has magno sonitu remorum incitatas in eandem partem mittit. **これらを大きな音とともに[[w:櫂|櫂]]を駆って、同じ方面に派遣した。 *Ipse post paulo silentio egressus cum tribus legionibus **(ラビエーヌス)自身は、少し後で静けさのうちに3個[[w:ローマ軍団|軍団]]とともに進発して、 *eum locum petit, quo naves appelli iusserat. **船団が停められることを命じていた地点へ行った。 ===61節=== '''ラビエーヌスの陽動により、敵将カムロゲヌスが兵力を分散''' *① Eo cum esset ventum, **(ラビエーヌスの軍勢が)そこにやって来たときに、 *exploratores hostium, ut omni fluminis parte erant dispositi, **敵方の偵察者たちが(セクアナ)川の至る所に分けて置かれていたが、 *inopinantes, quod magna subito erat coorta tempestas, **突然に大きな嵐が生じたので(ローマ勢の襲撃を)予期していなかった者たちは、 *ab<ref>ab はχ系・B・M・L・N写本の記述で、S・β系写本では a となっている。</ref> nostris opprimuntur; **我が方(ローマ勢)によって不意を襲われたのだ。 *② exercitus equitatusque equitibus Romanis administrantibus, quos ei negotio praefecerat, **歩兵隊と騎兵隊が、(ラビエーヌスが)任務を指揮させていたローマ人騎士たちの指導により、 *celeriter transmittitur. **速やかに(セクアナ川を)渡らせられた。 *③ Uno fere tempore sub lucem hostibus nuntiatur **夜明け前のほぼ一時に(以下のことが)敵方に報知された。 *in castris Romanorum praeter consuetudinem tumultuari **ローマ人の陣営において、通例に反して、騒がれていること、 *et magnum ire agmen adverso flumine **大きな隊列が上流の方へ行軍していること、 *sonitumque remorum in eadem parte exaudiri **(船を漕ぐ)櫂の音が同じ方面で聞き取られたこと、 *et paulo infra milites navibus transportari. **少し下流で兵士たちが船で(セクアナ川を)渡されたこと、である。 *④ Quibus rebus auditis, **それらの事態が聞かれて、 *quod existimabant tribus locis transire legiones atque omnes perturbatos defectione [[w:la:Haedui|Haeduorum]] fugam parare, **(ローマ勢の)諸軍団が3か所で渡河したこと、[[w:ハエドゥイ族|ハエドゥイー族]]の背反により総勢が取り乱して逃亡を準備していること、を考えたので、 *suas quoque copias in tres partes distribuerunt. **自分たちの軍勢をも3方面に分配した。 *⑤ Nam praesidio e regione castrorum relicto **すなわち(一隊がローマ勢の)陣営の真向かいに守備隊として残され、 *et parva manu Metlosedum<ref>Metlosedum はQ写本の記述で、χ系・β系写本では Metiosedum 、などとなっている。</ref> versus missa, **(別の)わずかな手勢が[[w:ムラン|メトロセドゥム]]の方面へ派遣され、 *quae tantum progrediatur<ref>progrediatur はα系写本の記述で、Q・S・β系写本では progrederetur となっている。</ref>, quantum naves processissent, **(ローマ勢の)船団が進み出るだけ、(ガッリア兵も)前進するようにした。 *reliquas copias contra Labienum duxerunt. **残りを軍勢をラビエーヌスに対して(カムロゲヌス自身が)率いて行った。 ===62節=== '''ラビエーヌスがカムロゲヌス麾下のガッリア勢を各個撃破して、カエサルと合流''' *① Prima luce et nostri omnes erant transportati **夜明けに、我が方(ローマ勢)は総勢が(セクアナ川の左岸に)渡されていたし、 *et hostium acies cernebatur. **敵方の戦列も見分けられた。 *② [[w:la:Titus Labienus|Labienus]] milites cohortatus, **[[w:ティトゥス・ラビエヌス|ラビエーヌス]]は兵士たちを(以下のように)鼓舞した。 *ut suae pristinae virtutis et tot<ref>tot はS・β系写本の記述で、α系写本にはない。</ref> secundissimorum proeliorum retinerent memoriam<ref>retinerent memoriam はχ系・B・M・L・N写本の記述で、S・β系写本では memoriam retinerent となっている。</ref> **自分たちのかつての武勇とこのようにとてもうまくいっている諸戦闘を記憶に留めるように、 *atque ipsum Caesarem, cuius ductu saepe numero hostes superassent, praesentem adesse existimarent, **かつ、その指揮によって何度もしばしば敵方を打ち破って来たカエサル当人が目下居合わせていると考えるように、と。 *dat signum proelii. **(それから)戦闘の号令を発した。 *③ Primo concursu ab dextro cornu, ubi septima legio constiterat, **最初の激突は、[[w:第7軍団クラウディア・ピア・フィデリス|第7軍団]]が布陣していた(ローマ軍の)右翼からで、 *hostes pelluntur atque in fugam coniciuntur; **敵方は撃退されて、逃亡に追いやられた。 *④ ab sinistro, quem locum duodecima legio tenebat, **第12軍団が場所を占めていた左翼からは、 *cum primi ordines hostium transfixi pilis<ref>pilis はβ系写本の記述で、α系写本では telis となっている。</ref> concidissent, **敵方の最前列(の兵たち)が投げ槍で突き通されて斃れたのだが、 *tamen acerrime reliqui resistebant **けれども残りの者たちがとても激烈に抵抗していて、 *nec dabat suspicionem fugae quisquam. **誰も逃亡の予兆を示さなかった。 *⑤ Ipse dux hostium Camulogenus suis aderat atque eos cohortabatur. **敵方の将帥カムロゲヌス自身は、麾下の者たちに居合わせて、彼らを激励していた。 *⑥ At<ref>cohortabatur. At はχ系写本などの記述で、別の写本では記述が異なる。</ref> incerto nunc etiam<ref>nunc etiam はB・M・L・N写本の記述で、χ系・S・β系写本では etiamnunc となっている。</ref> exitu victoriae, **勝敗の帰趨は今もなお不確実だったが、 *cum septimae legionis tribunis esset nuntiatum, quae in sinistro cornu gererentur, **第7軍団の<ruby><rb>[[w:トリブヌス・ミリトゥム|兵士長官]]</rb><rp>(</rp><rt>トリブヌス・ミリトゥム</rt><rp>)</rp></ruby>たちに、左翼で<ruby><rb>出来</rb><rp>(</rp><rt>しゅったい</rt><rp>)</rp></ruby>したことが報告されたときに、 *post tergum hostium legionem ostenderunt signaque intulerunt. **敵方の背後に(第7)軍団を差し向けて、軍旗を進めた(=進撃した)。 *⑦ Ne eo quidem tempore quisquam loco cessit, **その時でさえ、(ガッリア勢の)誰も(戦闘の)場から退却しなかった **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:ne quidem|ne ~ quidem]]「~でさえ…ない」)</span> *sed circumventi omnes interfectique sunt. **けれども、総勢が包囲されて(ローマ軍により)殺戮された。 *Eandem fortunam tulit Camulogenus. **同じ不幸をカムロゲヌスも蒙った。 *⑧ At ii<ref>ii はχ系写本の記述で、他の写本では記述が異なる。</ref>, qui praesidio contra castra Labieni erant relicti, **これに対して、ラビエーヌスの陣営に対して守備隊として残されていた(ガッリア勢の)者たちは、 *cum proelium commissum audissent, subsidio suis ierunt collemque ceperunt, **(両軍が)戦闘を交えているのを聞き付けたので、味方の援兵として出て行って、丘陵を占めていたが、 *neque nostrorum militum victorum impetum sustinere potuerunt. **勝勢の我が方(ローマ軍)の兵士たちの突撃を持ちこたえることができなかった。 *⑨ Sic cum suis fugientibus permixti, **このようにして、敗走している味方と混じり合ったときに、 *quos non silvae montesque texerunt, ab equitatu sunt interfecti. **森林や山岳が覆い隠すことのなかったその者たちは、(ローマ側の)騎兵隊によって殺戮された。 *⑩ Hoc negotio confecto Labienus revertitur Agedincum, **この戦役が成し遂げられると、ラビエーヌスは[[w:サンス|アゲディンクム]]に引き返した。 *ubi impedimenta totius exercitus relicta erant; **そこには軍隊全体の[[w:輜重|輜重]]が残されていたのだ。 *inde die Ⅲ.<ref>inde die Ⅲ. は近代の校訂者による修正提案で、Q・M・S・N・β系写本では単に inde 、他の写本では別の記述になっている。</ref> cum omnibus copiis ad Caesarem pervenit. **そこから3日目(=2日後)にすべての軍勢とともにカエサルのところへ到着した。 ==ガッリア戦乱の拡大== ===63節=== '''ハエドゥイー族がウェルキンゲトリークスに主導権争いを挑む''' *① Defectione [[w:la:Haedui|Haeduorum]] cognita bellum augetur. **[[w:ハエドゥイ族|ハエドゥイー族]]の背反が知られて、戦乱は拡大された。 *② Legationes in omnes partes circummittuntur; **(ハエドゥイー族らにより)使節たちがあらゆる方面に遣わされまくり、 *quantum gratia, auctoritate, pecunia valent, ad sollicitandas civitates nituntur; **信望、勢力や金銭によってできる限り、諸部族をそそのかすことに努めた。 **:<span style="color:#009900;">(訳注:quantum ~ valere「~によってできる限り」)</span> *③ nacti obsides, quos Caesar apud eos deposuerat, **カエサルが彼ら(ハエドゥイー族)のもとに預けて置いた人質たちを手に入れて、 *horum supplicio dubitantes territant. **彼ら(人質たち)の処刑(を示唆すること)によって、決心がつかぬ者たちを恐れさせた。 *④ Petunt a [[w:la:Vercingetorix|Vercingetorige]] Haedui, ut ad se veniat rationesque belli gerendi communicet; **ハエドゥイー族は、[[w:ウェルキンゲトリクス|ウェルキンゲトリークス]]に、自分たちのところへ来て戦争遂行の戦略を協議するように要求した。 *re impetrata contendunt, ut ipsis summa imperii tradatur. **その事が成し遂げられると、(ハエドゥイー族)自身に最高司令権が委ねられるように頑張った。 *Et re<ref>et re は近代の校訂者による修正提案で、β系写本では re 、α系写本では et rem となっている。</ref> in controversiam deducta totius Galliae concilium [[w:la:Bibracte|Bibracte]] indicitur. **その事が論争の状態に置かれて、[[w:ビブラクテ|ビブラクテ]]でのガッリア全体の会合が公示された。 *Eodem conveniunt<ref>Eodem conveniunt はα系写本の記述で、β系写本では単に conveniunt 、etc.となっている。</ref> undique frequentes. **同じところに至る所からたくさんの者たちが集まって来た。 *⑥ Multitudinis suffragiis res permittitur; **(最高司令権の)事は衆人の票決に任せられて、 *ad unum omnes Vercingetorigem probant imperatorem. **衆議一決により、ウェルキンゲトリークスを将軍(最高司令官)として承認した。 **:<span style="color:#009900;">(訳注:ad unum omnes「最後の一人に至るまですべて」)</span> *⑦ Ab hoc concilio Remi, Lingones, Treveri afuerunt, **この会合へは、[[w:レミ族|レーミー族]]、リンゴネス族、トレウェリ族が不在であった。 *illi quod amicitiam Romanorum sequebantur, **前者(レーミー族とリンゴネス族)は、ローマ人との友好を遵守したので(不在であった)。 *Treveri quod aberant longius et ab<ref>ab はα系写本の記述で、β系写本では a となっている。</ref> [[w:la:Germani|Germanis]] premebantur, **トレウェリ族は、はるか遠くに離れており、[[w:ゲルマニア|ゲルマニア]]人により圧迫されていた。 *quae fuit causa quare toto abessent bello **それが、何ゆえに(ウェルキンゲトリークスによる)戦争全体に関与しなかったかの理由であり、 *et neutris auxilia mitterent. **(ウェルキンゲトリークスとカエサルの)どちら側にも援軍を派遣しなかった。 *⑧ Magno dolore Haedui ferunt se deiectos principatu, **ハエドゥイー族は、自分たちが盟主の座から遠ざけられて、とても憤懣やるかたなかったし、 *queruntur fortunae commutationem **境遇の変わりようを嘆いて、 *et Caesaris indulgentiam in se<ref>indulgentiam in se はα系写本の記述で、β系写本では in se indulgentiam となっている。</ref> requirunt **カエサルの自分たちへの寛大さを惜しんだ。 *neque tamen suscepto bello suum consilium ab reliquis separare audent. **けれども戦争を引き受けてしまったので、あえて自分たちの作戦計画をほか(の諸部族)と異にしなかった。 *⑨ Inviti summae spei adulescentes Eporedorix et Viridomarus Vercingetorigi parent. **たいへんな野心を持つ青年たち[[w:エポレドリクス|エポレドリクス]]と[[w:ウィリドマルス|ウィリドマルス]]は、意に反してウェルキンゲトリークスに服従した。 ===64節=== '''ウェルキンゲトリークスがガッリア諸部族の誘降・服従を謀る''' *① Ipse<ref>ipse はα系写本の記述で、β系写本では ille となっている。</ref> imperat reliquis civitatibus obsides denique ei rei constituit diem; **(ウェルキンゲトリークス)自身は、ほかの諸部族に人質(の供出)を命令して、のみならずその事の期日を決めた。 *huc omnes equites, [[wikt:la:quindecim|XV(quindecim)]] milia numero, celeriter convenire iubet. **そこに、1万5000名の数のすべての[[w:騎兵|騎兵]]に、速やかに集結することを命じた。 *② Peditatu quem antea habuerit se fore contentum dicit **(歩兵については)自分は、以前から持っていた[[w:歩兵|歩兵隊]]で満足するであろうと言った。 *neque fortunam temptaturum aut in acie<ref>in acie はα系写本の記述で、β系写本では単に acie となっている。</ref> dimicaturum, **(歩兵で)武運を試すことはしないであろうし、あるいは野戦で(白兵戦を)闘うこともないであろう、と。 *sed quoniam abundet equitatu, **しかし、騎兵隊は豊富であるから、 *perfacile esse factu frumentationibus pabulationibusque Romanos prohibere; **ローマ人たちの糧食・糧秣徴発を妨げることは、とても容易である、と。 *③ aequo modo animo sua ipsi frumenta corrumpant aedificiaque incendant, **ただ平静な心で、自分たちの穀物を自身で傷めて、(穀物の)建屋を焼打ちするように。 *qua rei familiaris iactura perpetuum imperium libertatemque se consequi videant. **資産の犠牲により、永久の領有権と自由を自分たちが獲得することを思え、と。 *④ His constitutis rebus **これらの事が決定されると、 *[[w:la:Haedui|Haeduis]] Segusiavisque, qui sunt finitimi provinciae, decem milia peditum imperat; **[[w:ハエドゥイ族|ハエドゥイー族]]および(ローマ人の)属州に隣接するセグスィアウィ族には1万の歩兵(の供出)を命令していたが、 *huc addit equites [[wikt:la:octingenti|octingentos]]. **この中に、800騎の騎兵たち(の供出)を付け加えた。 *⑤ His praeficit fratrem Eporedorigis bellumque inferri<ref>inferri はα系写本の記述で、β系写本では inferre となっている。</ref> Allobrogibus iubet. **彼らをエポレドリクスの兄弟に指揮させて、アッロブロゲス族に戦争をしかけることを命じた。 *⑥ Altera ex parte Gabalos proximosque <u>[[wikt:en:pagus#Latin|pagos]]</u> Arvernorum in Helvios, **別の方面から、ガバリ族および近隣のアルウェルニー族の諸<u>郷</u>に、ヘルウィイ族のところに(攻め入るように)、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:''pagus'' (郷) はここでは、部族の領土の農村区画を指す行政用語<ref name="pagus">''[[w:en:Pagus]]'' 等を参照。</ref>。)</span> *item Rutenos Cadurcosque ad fines Volcarum Arecomicorum depopulandos mittit. **同様に、ルテーニー族およびカドゥルキー族に、ウォルカエ・アレコミキ族の領土を荒らしまわるべく派遣した。 *⑦ Nihilo minus clandestinis nuntiis legationibusque Allobrogas<ref>Allobrogas はα系写本の記述で、β系写本では Allobroges となっている。</ref> sollicitat, **それにもかかわらず、隠密に伝令たちや使節たちにより、アッロブロゲス族を(蜂起を)そそのかした。 *quorum mentes nondum ab<ref>ab はβ系写本の記述で、α系写本では ab となっている。</ref> superiore bello resedisse sperabat. **彼ら(アッロブロゲス族)の心がかつての戦争からまだ静まっていないことを期待したのだ。 **:<span style="color:#009900;">(訳注:アッロブロゲス族は、BC61年にローマに反旗を翻し、翌BC60年に鎮圧されていた。[[ガリア戦記 第1巻#6節|第1巻6節]]を参照。)</span> *⑧ Horum principibus pecunias, **彼らの領袖たちに金銭を(約束し)、 *civitati autem imperium totius provinciae pollicetur. **さらに部族には(カエサル統治下の)属州全体の支配権をも約束したのだ。 ===65節=== '''カエサルと同盟諸部族の防戦。ゲルマニア騎兵を呼び寄せる''' *① Ad hos omnes casus provisa erant praesidia cohortium duarum et viginti, **これらすべての出来事に対して、(カエサルは)22個<ruby><rb>[[w:コホルス|歩兵大隊]]</rb><rp>(</rp><rt>コホルス</rt><rp>)</rp></ruby>からなる守備隊を用意していた。 *quae ex ipsa coacta<ref>coacta はχ系・β系写本の記述で、φ系写本にはない。</ref> provincia ab L.(Lucio) Caesare legato **それらは、<ruby><rb>[[w:レガトゥス|総督副官]]</rb><rp>(</rp><rt>レガトゥス</rt><rp>)</rp></ruby>ルキウス・カエサルによって属州全体から徴集されたもので、 **:<span style="color:#009900;">(訳注:ここでいう属州とは、[[w:ガリア・ナルボネンシス|ガッリア・トラーンサルピーナ]]を指すと思われる。</span> **:<span style="color:#009900;">ルキウス・ユリウス・カエサル4世 [[w:en:Lucius Julius Caesar IV|Lucius Julius Caesar IV]] は本書の著者カエサルと4代前の高祖父を共有する元執政官。[[w:en:Julii Caesares|Julii Caesares]] を参照。)</span> *ad omnes partes opponebantur. **あらゆる方面に対して配置された。 *② Helvii sua sponte cum finitimis proelio congressi pelluntur **[[w:ヘルウィイ族|ヘルウィイ族]]は、自分たちの意思により、近隣(の諸部族)と戦闘で争って撃退され、 **:<span style="color:#009900;">(訳注:この部族については[[#7節|7節]]~8節を参照。)</span> *et C.(Gaio) Valerio Domnotauro<ref>Domnotauro はS・L・N写本の記述で、A・B・N写本では Donnotauro 、χ系・π系写本では Donotauro となっており、ρ系写本には記述がない。</ref>, Caburi filio, principe civitatis, **カブルスの息子で、部族の領袖であるガイウス・ウァレリウス・ドムノタウルス **:<span style="color:#009900;">(訳注:彼は、ローマとの友好により、ローマ人風の名前を与えられていたのであろう。)</span> *compluribusque aliis interfectis intra oppida ac muros<ref>ac muros はα系写本の記述で、β系写本では murosque となっている。</ref> compelluntur. **および他のかなりの者たちが殺戮されて、<ruby><rb>[[w:オッピドゥム|城塞都市]]</rb><rp>(</rp><rt>オッピドゥム</rt><rp>)</rp></ruby>と城壁の内側に追い込まれた。 *③ Allobroges crebris ad [[w:la:Rhodanus|Rhodanum]] dispositis praesidiis **[[w:アッロブロゲス族|アッロブロゲス族]]は、ロダヌス(=現[[w:ローヌ川|ローヌ川]])のところへ密に守備隊を分け置いて、 *magna cum cura et diligentia suos fines tuentur. **たいへんな注意と入念さにより、自分たちの領土を守った。 *④ Caesar quod hostes equitatu superiores esse intellegebat **カエサルは、敵方が[[w:騎兵|騎兵隊]]で(自軍より)優っていると認識していたので、 *et interclusis omnibus itineribus nulla re ex provincia atque Italia sublevari poterat, **かつ、すべての道が遮られて、属州やイタリアから何ら支援されることができなかったので、 **:<span style="color:#009900;">(訳注:属州 provincia とはガッリア・トラーンサルピーナ、イタリア Italia とは[[w:ガリア・キサルピナ|ガッリア・キサルピーナ]]のことであろう。)</span> *trans [[w:la:Rhenus|Rhenum]] in [[wikt:la:Germania|Germaniam]] mittit ad eas civitates, quas superioribus annis pacaverat, **レヌス(=現[[w:ライン川|ライン川]])の向こう側の[[w:ゲルマニア|ゲルマニア]]に、先年に平定していた諸部族のところへ(使節を)遣わした。 **:<span style="color:#009900;">(訳注:ゲルマニア遠征や平定については、[[ガリア戦記 第4巻#16節|第4巻16節]]~19節、[[ガリア戦記 第6巻#9節|第6巻9節]]~10節を参照。)</span> *equitesque ab his arcessit et levis armaturae pedites, **彼らから、騎兵たち、および[[w:ウェリテス|軽い武装の歩兵]]たちを呼び寄せた。 *qui inter eos proeliari consuerant. **その者ら(軽装歩兵)は、彼ら(騎兵)の間で戦闘することが常であったのだ。 *⑤ Eorum adventu, quod minus idoneis equis utebantur, **彼ら(ゲルマニア騎兵)が到着すると、(戦闘に)あまり適していない馬を使役していたので、 **:<span style="color:#009900;">(訳注:ゲルマニア人の馬の使用については、[[ガリア戦記 第4巻#2節|第4巻2節]]を参照。)</span> *a tribunis militum reliquisque equitibus Romanis atque evocatis equos sumit **<ruby><rb>[[w:トリブヌス・ミリトゥム|兵士長官]]</rb><rp>(</rp><rt>トリブヌス・ミリトゥム</rt><rp>)</rp></ruby>たちやほかのローマ人騎士たちや<ruby><rb>再徴集兵</rb><rp>(</rp><rt>エウォカティ</rt><rp>)</rp></ruby>たちから、馬匹を取り上げて、 *[[w:la:Germani|Germanis]]que distribuit. **ゲルマニア人たちに分配した。 ===66節=== '''属州へと南下するカエサル、迎え撃とうとするウェルキンゲトリークス''' *① Interea dum haec geruntur, **その間に、これらが出来している間に、 *hostium copiae ex Arvernis **敵方の(歩兵の)軍勢が(滞陣していたゲルゴウィアの)[[w:アルウェルニ族|アルウェルニー族]]のところから、 *equitesque qui toti Galliae erant imperati conveniunt. **および全ガッリアの命令されていた[[w:騎兵|騎兵]]たちが、(ウェルキンゲトリークスのところに)集結して来た。 *② Magno horum coacto numero, **これらの(ガッリア兵の)多数が徴集されて、 *cum Caesar in Sequanos per extremos Lingonum fines iter faceret, **カエサルが、[[w:セクアニ族|セクアニ族]]のところに(向かって)[[w:リンゴネス族|リンゴネス族]]の領土の外縁を通って行軍していたときに、 **:<span style="color:#009900;">(訳注:属州へは、リンゴネス族と後述のマンドゥビイ族の間を通ってセクアニ族領を通らねばならなかった。)</span> *quo facilius subsidium provinciae ferri<ref>ferri はα系写本の記述で、β系写本では ferre となっている。</ref> posset, **(それは)属州(ガッリア・トラーンサルピーナ)に援兵をより容易にもたらせるようにするためであったが、 *circiter milia passuum X(decem) ab Romanis trinis castris [[w:la:Vercingetorix|Vercingetorix]] consedit **[[w:ウェルキンゲトリクス|ウェルキンゲトリークス]]は、ローマ人たちから約10ローママイル(15km)のところに、3つの陣営にて陣取った。 *③ convocatisque ad concilium praefectis equitum **(ウェルキンゲトリークスは)騎兵の指揮官たちを会合へ召集して、 *venisse tempus victoriae demonstrat; **勝利の時が来たと、明言した。 *fugere in provinciam Romanos Galliaque excedere. **ローマ人たちは属州に逃亡して、ガッリアから立ち退きつつある、と。 *④ Id sibi ad praesentem obtinendam libertatem satis esse; **それは、自分たちにとって目下のところ、自由を維持するためには十分であるが、 *ad reliqui temporis pacem atque otium parum profici; **将来の平和と平穏は不充分にしか得られない。 *maioribus enim coactis copiis reversuros **なぜなら(ローマ人たちは)より大きな軍勢を徴集して(ガッリアに)戻って来るであろうし、 *neque finem bellandi facturos. **戦争することに結末をつけることはないであろう。 *Proinde agmine impeditos adorirentur<ref>adorirentur はA・β系写本の記述で、M・L・N写本では adoriantur 、S写本では adorantur 、Q・B・M写本ではadorientur となっている。</ref>. **それゆえに、(ローマ勢の)行軍によって重荷となっている(輜重隊の)者たちを襲撃するのだ。 *⑤ Si pedites suis auxilium ferant atque in eo morentur, iter facere<ref>facere はα系写本の記述で、β系写本では confici となっている。</ref> non posse; **もし(ローマ勢の)歩兵たちが味方を支援し、そのことで滞留するならば、(属州へ)行軍することはできない。 *si ─id quod magis futurum confidat─ **もし、─(我は)むしろそうなるであろうと期待することであるが─ *relictis impedimentis suae saluti consulant, **(ローマ歩兵たちが)[[w:輜重|輜重]]を残して、自分たちの身の安全に意を用いるならば、 *et usu rerum necessariarum et dignitate spoliatum iri. **必需品の使用や(ローマ人としての)品格をはぎ取られることになる。 *⑥ Nam de equitibus hostium, **なぜなら、敵方の騎兵については **<span style="color:#009900;">:(訳注:著者カエサルはここでは、間接話法でありながら、ローマ勢について hostium「敵方の」と表現している。)</span> *quin nemo eorum progredi modo extra agmen audeat, **彼ら(ローマ騎兵)のうち誰も、<ruby><rb>行軍縦隊</rb><rp>(</rp><rt>アグメン</rt><rp>)</rp></ruby>の外にすら、あえて進み出ようとしないこと、 *et ipsos quidem non<ref>et ipsos quidem non はα系写本の記述で、β系写本では ne ipsos quidem となっている。</ref> debere dubitare. **(そのことを、諸君ら)自身は決して疑念を持つことなかれ。 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:ne quidem|ne ~ quidem]]「~でさえ…ない」)</span> *Id quo maiore faciant animo, **それ(=輜重隊への襲撃)を、より大胆な心構えで実行してもらうために、 *copias se omnes pro castris habiturum et terrori hostibus futurum. **自分(ウェルキンゲトリークス)が軍勢すべてを陣営の前に保持しておくであろうし、敵方の心胆を寒からしめるであろう。 *⑦ Conclamant equites **(ガッリア勢の)騎兵たちは(以下のように)叫んだ。 *sanctissimo iure iurando confirmari oportere, **最も神聖な誓約によって確証されなければならぬ。 *ne tecto recipiatur, ne ad liberos, ne ad parentes, ad<ref>ne ad …, ne ad …, ad が写本(ω)の記述であるが、モイゼル Meusel は ne ad …, ad …, ad と修正提案をしている。</ref> uxorem aditum habeat, **(以下の者は)家に迎え入れられたり、子供たちや親たちや妻女たちのところへ近づくことがないように。 *qui non bis per agmen hostium perequitasset<ref>perequitasset はα系写本の記述で、β系写本では perequitarit となっている。</ref>. **敵方(ローマ勢)の隊列を越えて(往復の)2度、騎馬で駆け抜けることがなかった者は。 **:<span style="color:#009900;">(訳注:敵中突破と生還を成し遂げなかった騎兵は、復員してはならない、と誓約したのである。)</span> ===67節=== '''カエサル麾下のゲルマニア騎兵がウェルキンゲトリークスを一蹴''' *① Probata re atque omnibus iure iurando adactis **これが賛同されて、(ガッリア騎兵の)皆が誓約させられて、 *postero die in tres partes distributo equitatu **翌日に、[[w:騎兵|騎兵隊]]を3つの分隊に分配した。 *duae se acies ab duobus lateribus ostendunt, **2隊は(ローマ勢の左右)2つの側面から<ruby><rb>戦闘隊形</rb><rp>(</rp><rt>アキエス</rt><rp>)</rp></ruby>として現われた。 *una a<ref>a はβ系写本の記述で、α系写本にはない。</ref> primo agmine iter impedire coepit. **1隊は(ローマ勢の)前衛から行軍を妨げ始めた。 *② Qua re nuntiata **その事が報告されて、 *Caesar suum quoque equitatum tripertito divisum contra hostem ire iubet. **カエサルは麾下の騎兵隊おのおのを3つに配分して、敵に対して向かって行くことを命じた。 *Pugnatur una omnibus in partibus. **(騎兵戦が)同時にすべての方面で戦われた。 *③ Consistit agmen; **(ローマ勢の)<ruby><rb>行軍縦隊</rb><rp>(</rp><rt>アグメン</rt><rp>)</rp></ruby>は一歩も引かなかった。 *impedimenta intra legiones recipiuntur. **[[w:輜重|輜重]]は諸[[w:ローマ軍団|軍団]]の内側に後退した。 *④ Si qua in parte nostri laborare aut gravius premi videbantur, **もし、我が方(ローマ勢)のある部隊が苦戦したり、またはひどく押されぎみだと思われたならば、 *eo signa inferri Caesar aciemque constitui<ref>constitui はα系写本の記述で、β系写本では converti 、T写本では conferri となっている。</ref> iubebat; **カエサルはそこに進撃して戦列を組織することを命じた。 **:<span style="color:#009900;">(訳注:signa inferre「軍旗を進める、進撃する」)</span> *quae res et hostes ad insequendum tardabat et nostros spe auxilii confirmabat. **その事が、敵方が追撃して来るのを遅らせもしたし、我が方が支援の希望により元気付けられもした。 *⑤ Tandem Germani ab dextro latere summum iugum nacti hostes loco depellunt, **ついに、ゲルマニア人(騎兵)たちが右の側面から尾根の頂きを掌握して、敵方をその場から追いやった。 *fugientes usque ad flumen, **逃亡する(ガッリア騎兵の)者たちを川の辺りまで(追って)、 *ubi [[w:la:Vercingetorix|Vercingetorix]] cum pedestribus copiis consederat, **そこには[[w:ウェルキンゲトリクス|ウェルキンゲトリークス]]が[[w:歩兵|歩兵]]の軍勢とともに陣取っていたのだが、 *persecuntur<ref>persecuntur はα系写本の記述で、β系写本では persequuntur となっている。</ref> compluresque interficiunt. **(ゲルマニア騎兵が敵を川辺まで)追撃して、かなりの者たちを殺戮した。 *⑥ Qua re animadversa **その事が(敵方に)気付かれて、 *reliqui ne circumirentur<ref>circumirentur はA・φ系写本の記述で、Q・β系写本では circumvenirentur となっている。</ref> veriti se fugae mandant. **(ガッリア勢の)残りの者たちは、包囲されないようにと怖れて、逃亡に身を任せた。 *Omnibus locis fit caedes. **(こうしてローマ方により)あらゆる場所で虐殺が行なわれた。 *⑦ Tres nobilissimi [[w:la:Haedui|Haedui]] capti ad Caesarem perducuntur: **[[w:ハエドゥイ族|ハエドゥイー族]]の3人の高位の貴族が捕らえられて、カエサルのところへ連行されて来た。 *Cotus, praefectus equitum, qui controversiam cum Convictolitavi proximis comitiis habuerat, **コトゥスは騎兵指揮官で、最近の会議でコンウィクトリタウィスと(統領の座をめぐって)係争した。 **:<span style="color:#009900;">(訳注:[[#32節|32節]]~33節を参照。)</span> *et Cavarillus, qui post defectionem Litavicci pedestribus copiis praefuerat, **カウァリッルスは、リタウィックスの背反の後に、歩兵の軍勢を指揮していた。 *et Eporedorix, quo duce ante adventum Caesaris Haedui cum Sequanis bello contenderant. **エポレドリクスは、カエサルの到来以前にハエドゥイー族の将帥としてセクアニ族と戦争を闘っていた。 **:<span style="color:#009900;">(訳注:この人物は、ウィリドマルスとともにカエサルを裏切ったエポレドリクスとは同名異人である。)</span> ==アレスィア攻囲戦== ===68節=== [[画像:Alésia.jpg|thumb|right|300px|[[w:アレシアの戦い|アレスィア古戦場]]であるとほぼ確実視されている仏アリーズ=サント=レーヌ村([[w:fr:Alise-Sainte-Reine|Alise-Sainte-Reine]])近郊のオソワ山(Mont Auxois)という丘陵の西端にある[[w:ウェルキンゲトリクス|ウェルキンゲトリークス]]像(<small>[[w:fr:Vercingétorix_(statue d'Aimé Millet)|Statue de Vercingétorix]]</small>)。<small>[http://maps.google.co.jp/?ie=UTF8&ll=47.538579,4.490544&spn=0.001172,0.002401&t=h&z=19&brcurrent=3,0x0:0x0,1 Googleマップ]</small>の航空写真にもこの巨像が写っている。<br>当地はフランス東部[[w:ブルゴーニュ地域圏|ブルゴーニュ地方]][[w:コート=ドール県|コート=ドール県]](<small>[[w:fr:Côte-d'Or|Côte-d'Or]]</small>)のオソワ地域(<small>[[w:fr:Auxois (région)|L'Auxois]]</small>)にあり、県都[[w:ディジョン|ディジョン]]市街から西北西へ約4.5kmの地点に位置する。ディジョン方面から県道905号(D905)を北西に進んで行くと、ヴナレ=レ=ローム(<small>[[w:fr:Venarey-les-Laumes|Venarey-les-Laumes]]</small>)から東の郊外にかけて古戦場跡が広がる。<br>オソワ(Auxois)という地域名・山名は、ラテン語の Alesiensis pagus「アレスィア郷」が転訛し、アリーズ(Alise)の名もアレスィア(Alesia)に由来すると考えられている。サント=レーヌ([[w:fr:Sainte Reine|Sainte Reine]] 聖レグニア)とはこの地でAD252年に殉教したキリスト教徒ガッリア人女性で、カトリック教会から聖人に列せられている。]] '''ウェルキンゲトリークスがアレスィア入城、カエサルは攻囲を決断''' *① Fugato omni equitatu **すべての[[w:騎兵|騎兵隊]]が逃げてしまったので、 *[[w:la:Vercingetorix|Vercingetorix]] copias suas<ref>suas はβ系写本の記述で、α系写本にはない。</ref>, ut pro castris conlocaverat, reduxit **[[w:ウェルキンゲトリクス|ウェルキンゲトリークス]]は、陣営の前に配置するようにしていた麾下の(歩兵の)軍勢を呼び戻して、 *protinusque [[w:la:Alesia|Alesiam]], quod est oppidum Mandubiorum, iter facere coepit **すぐに、マンドゥビイ族の<ruby><rb>[[w:オッピドゥム|城塞都市]]</rb><rp>(</rp><rt>オッピドゥム</rt><rp>)</rp></ruby>である[[w:アレシア|アレスィア]]へ行軍し始めた。 *celeriterque impedimenta ex castris educi et se subsequi iussit. **かつ、速やかに陣営から[[w:輜重|輜重]]を進発させること、および自分に追随すること、を命じた。 *② Caesar impedimentis in proximum collem deductis, **カエサルは、輜重を近隣の丘陵に移させて、 *duabus legionibus praesidio relictis, **2個[[w:ローマ軍団|軍団]]を(輜重の)守備隊として(その丘陵に)残留させた。 *secutus quantum diei tempus est passum, **日中の時間が許される限り(ガッリア勢を)追跡して、 *circiter tribus milibus hostium ex novissimo agmine interfectis **敵方の後衛のうちから約3000人を殺戮して、 *altero die ad Alesiam castra fecit. **翌日には、アレスィアの辺りに陣営を張った。 *③ Perspecto urbis situ **(アレスィアの)都市の地勢を吟味して、 *perterritisque hostibus, quod equitatu, qua maxime parte exercitus confidebant, erant pulsi, **敵方は、部隊の大部分において頼りにしていた騎兵隊が撃退されていたので、怖れおののいていたから、 *adhortatus ad laborem milites circumvallare instituit. **(カエサルは)兵士たちを労役に駆り立てて、(敵陣を)[[w:堡塁|堡塁]]で囲むことを決断した。 ===69節=== [[画像:Alise2.jpg|thumb|right|300px|[[w:アレシア|アレスィア]]にあったローマ時代の[[w:フォルム|フォルム]](広場)や[[w:バシリカ|バシリカ]](教会堂)などと思われる遺跡([http://maps.google.co.jp/?ie=UTF8&t=h&brcurrent=3,0x0:0x0,1&ll=47.539477,4.5008&spn=0.002343,0.004801&z=18 Googleマップ]の航空写真を参照)。現在、オソワ山(Mont Auxois)と呼ばれているこの丘陵は、頂きが平坦な台地状になっており、その中央のさらに高い所に[[w:オッピドゥム|オッピドゥム]](城塞都市)があったと思われる。<br>上の画像からは、同等の高さの丘陵が周囲を取り巻いていることが見て取れる。<br>『ガリア戦記』に書かれたアレスィアの所在地については諸説があって永らく不明であったが、ゲルゴウィアと同様に19世紀のウジェーヌ・ストッフェル大佐(colonel Eugène Stoffel)の発掘調査によってローマ軍の遺構などが発見され、地勢もカエサルの記述にかなり合っていると見なされて、オソワ山とその中腹にあるアリーズ=サント=レーヌが有力視されることになった。]] '''アレスィアの地勢、ローマ軍の攻囲線''' *① Ipsum erat oppidum [[w:la:Alesia|Alesia]] in colle summo admodum edito loco, **[[w:アレシア|アレスィア]]の<ruby><rb>[[w:オッピドゥム|城塞都市]]</rb><rp>(</rp><rt>オッピドゥム</rt><rp>)</rp></ruby>そのものは、丘陵の頂きにおいて、ひときわ高い地点にあって、 *ut nisi obsidione expugnari non posse videretur. **攻囲(包囲)以外には攻略されることができないと思われた。 *② Cuius collis radices duo duabus ex partibus flumina subluebant. **その丘陵のふもとを2つの方面から、2つの川が流れていた。 *③ Ante id<ref>id はα系写本の記述で、β系写本にはない。</ref> oppidum planities circiter milia passuum Ⅲ(tria) in longitudinem patebat; **その城塞都市の前に、約3ローママイル(4.5km)の間隔で、平地が広がっていた。 *④ reliquis ex omnibus partibus colles mediocri interiecto spatio **ほかのすべての方面からは(いくつかの)丘陵が適度な空間を置いており、 *pari altitudinis fastigio oppidum cingebant. **同等の高さの頂上で(アレスィアの)城塞都市を取り巻いていた。 *⑤ Sub muro, quae pars collis ad orientem solem spectabat, **(アレスィアの)丘陵の日が昇る方(=東方)へ面していた部分の城壁の下には、 *hunc omnem locum copiae Gallorum compleverant **このすべての場所を、ガッリア人たちの軍勢が満たしていて、 *fossamque et maceriam sex in altitudinem pedum praeduxerant. **堀、および高さ6[[w:ペース (長さ)|ペース]](約1.8m)の防壁を前に引いていた。 **:<span style="color:#009900;">(訳注:[[wikt:en:maceria|maceria]] は、軍事用語としては、立てこもるための城壁<ref><i>muraille (pour se retrancher)</i>(ラルース社の羅仏辞典 <small>“Dictionnaire MaxiPoche Plus latin-français et français-latin”</small> を参照)</ref>を指す。)</span> *⑥ Eius munitionis quae ab Romanis instituebatur circuitus XI<ref>XI はα系写本の記述で、β系写本では X となっている。</ref> milia passuum tenebat. **ローマ人たちによって建てられようとしていた塁壁の周囲は、11ローママイル(約16km)を占めていた。 **:<span style="color:#009900;">(訳注:α系写本では 11マイル=約16km、β系写本では 10マイル=約15km となっている。)</span> *⑦ Castra opportunis locis erant posita **(ローマ勢の)陣営は(戦略上)都合良い地点に設置されていて、 **:<span style="color:#009900;">(訳注:歩兵・騎兵の陣営が計8か所に置かれていたようである。)</span> *ibique<ref>ibique はα系写本の記述で、β系写本では itemque となっている。</ref> castella XXIII(viginti tria) facta, **同じく23基の砦が造られた。 *quibus in castellis interdiu stationes ponebantur, **それらの砦には、昼間は、歩哨たちが置かれて、 *ne qua subito eruptio fieret; **不意に何らかの突撃がなされないようにした。 *haec eadem noctu excubitoribus ac firmis praesidiis tenebantur. **この同じところが、夜間は、寝ずの番兵および強力な守備隊により固守された。 ===70節=== '''カエサル麾下のゲルマニア騎兵が、再びガッリア騎兵を虐殺''' *① Opere instituto **(ローマ人により)[[w:堡塁|堡塁]]が建てられだして、 *fit equestre proelium in ea planitie, **かの平地において[[w:騎兵|騎兵]]戦がなされた。 *quam intermissam collibus tria milia passuum in longitudinem patere supra demonstravimus. **それ(平地)は(周囲の)丘陵から3ローママイル(約4.5km)の間隔を空けて広がっていることを、[[#69節|前]]に述べた。 *Summa vi ab utrisque contenditur. **(騎兵戦は)双方の主力によって闘われた。 *② Laborantibus nostris Caesar Germanos submittit **苦戦している我が方(ローマ騎兵)に対して、カエサルは[[w:ゲルマニア|ゲルマニア]]人(騎兵)を援けに派遣した。 *legionesque pro castris constituit, ne qua subito inruptio ab hostium peditatu fiat. **諸[[w:ローマ軍団|軍団]]を陣営の前に駐留させて、不意に何らかの突入が敵方の[[w:歩兵|歩兵隊]]によってなされないようにした。 *③ Praesidio legionum addito nostris animus augetur; **軍団の守備が加わって、我が方(ローマ勢の)勇気が増された。 *hostes in fugam coniecti se ipsi multitudine impediunt **敵方(の騎兵)は敗走に追いやられて、彼ら自身が自分たち(の敗走)を大勢であることにより妨げた。 *atque angustioribus portis relictis coacervantur<ref>coacervantur は近世の写本(ς)の記述で、α系写本では coacervati tum 、β系写本では coartantur となっている。</ref>. **さらに(ガッリア陣地の)諸門がとても狭いままにしておかれたので(騎兵たちが)積み重ねられた。 *④ Germani acrius usque ad munitiones sequuntur. **ゲルマニア人(騎兵)たちは(ガッリア騎兵たちを)苛烈に、防塁のところまで追撃した。 *⑤ Fit magna caedes. **(こうして)大虐殺が起こった。 *Nonnulli relictis equis fossam transire et maceriam transcendere conantur. **(ガッリア騎兵の)幾人かは、馬を置き去りにして、堀を越えること、および防壁を登り越えることを試みた。 *Paulum legiones Caesar quas pro vallo constituerat promoveri iubet. **カエサルは、防柵の前に駐留させていた諸軍団に、いくらか前進することを命じた。 *⑥ Non minus qui intra munitiones erant perturbantur Galli: **防塁の内側にいたガッリア人たちも(騎兵たちに)劣らず狼狽した。 *veniri ad se confestim existimantes ad arma conclamant; **(ローマ勢により)自分たちのところへ直ちにやって来られると考えた者たちは、防具を取れと叫んだ。 *nonnulli perterriti in oppidum inrumpunt. **(ガッリア勢の)幾人かは、怖れおののいて(丘陵の頂きにある)城塞都市の中に押し入った。 *⑦ [[w:la:Vercingetorix|Vercingetorix]] iubet portas claudi, ne castra nudentur. **[[w:ウェルキンゲトリクス|ウェルキンゲトリークス]]は、陣営が無防備にされないように、(防塁の)諸門が閉じられることを命じた。 *Multis interfectis, compluribus equis captis Germani sese recipiunt. **(ガッリア騎兵の)多くが殺戮され、おびただしい馬が捕獲されて、ゲルマニア人(騎兵)たちは退却した。 ===71節=== [[画像:Statue_Vercingetorix_st_germain_en_laye.JPG|thumb|right|250px|[[w:ウェルキンゲトリクス|ウェルキンゲトリークス]]の立像(<small>パリ郊外の[[w:サン=ジェルマン=アン=レー|サン=ジェルマン=アン=レー]] [[w:fr:Saint-Germain-en-Laye|Saint-Germain-en-Laye]]</small>)。[[w:アレシアの戦い|アレスィア古戦場]](<small>現在のアリーズ=サント=レーヌ</small>)にある巨大な銅像と同様に彫刻家エメ・ミレ([[w:fr:Aimé Millet|Aimé Millet]])によって建立された。]] [[画像:Napoleon3.PNG|thumb|right|250px|ウジェーヌ・ストッフェル大佐(colonel Eugène Stoffel)をして[[w:アレシア|アレスィア]]およびゲルゴウィアの発掘調査をさせた立役者・皇帝[[w:ナポレオン3世|ナポレオン3世]]の肖像。[[w:ガリア起源説|ガッリア起源説]]により、王政に反感を持つフランスの共和派や庶民は、旧[[w:ブルボン家|ブルボン王朝]]を[[w:クロヴィス1世|クロヴィス]]や[[w:ユーグ・カペー|カペー]]にさかのぼるゲルマン系の[[w:フランク人|フランク人]]と見なし、自分たちのルーツを[[w:ケルト人|ケルト系]]の古代[[w:ガリア人|ガッリア人]]に求めた。ナポレオン3世はこのような国民の意識を利用して、[[w:ナショナリズム|ナショナリズム]]の高揚および帝政の基盤強化を図ったのである。]] '''ウェルキンゲトリークスが援兵召集のため騎兵を放ち、籠城策を定める''' *① [[w:la:Vercingetorix|Vercingetorix]], priusquam munitiones ab Romanis perficiantur, **[[w:ウェルキンゲトリクス|ウェルキンゲトリークス]]は、ローマ人たちによって塁壁が完成されるより前に、 *consilium capit omnem ab se equitatum noctu dimittere. **自分のところから[[w:騎兵|騎兵隊]]のすべてを夜間に送り出すことを計画した。 *② Discedentibus mandat **(アレスィアから)退去する(騎兵の)者たちに(以下のように)指図した。 *ut suam quisque eorum civitatem adeat **彼ら(騎兵)のおのおのが自らの部族に行くように、 *omnesque qui per aetatem arma ferre possint ad bellum cogant. **かつ、年齢により武器を手に取ることができる者たちの皆を戦争へ徴集するように、と。 *③ Sua in illos merita proponit obtestaturque **(ウェルキンゲトリークスは)彼ら(ガッリア人たち)における自分の功績に言及して(以下のように)懇願した。 *ut suae salutis rationem habeant **自分の身の安全を顧慮してくれるように、 *neu se optime de communi libertate meritum in cruciatum hostibus<ref>in cruciatum hostibus はβ系写本の記述で、α系写本では hostibus in cruciatum となっている。</ref> dedant. **かつ(ガッリア)共通の自由について功績が最上である自分を、敵方の責め苦に渡すことがないように、と。 *Quod si indiligentiores fuerint, **ところが、もし(騎兵たちがウェルキンゲトリークスたちの安全に)無関心であったならば、 *milia hominum delecta octoginta una secum interitura demonstrat. **選りすぐりの兵員8万名が自分と一緒に滅びるであろう、と明言した。 *④ Ratione inita frumentum se exigue dierum XXX(triginta) habere<ref>frumentum ~ habere はβ系写本の記述で、χ系・φ系あるいはモイゼル H. Meusel の修正提案など、写本や校訂者により語順が異なっていたり、単語が欠けていたりする。</ref>, **見積もったところ、自分たちはわずかに30日分の穀物を保有しているが、 *sed paulo etiam longius tolerari posse parcendo. **しかし節約することにより、なおいくらか長く耐え忍ぶことができる、と。 *⑤ His datis mandatis, **これらの指図を与えてから、 *qua erat nostrum opus<ref>erat nostrum opus はβ系写本の記述で、α系写本では単に opus erat となっている。</ref> intermissum, secunda vigilia silentio equitatum mittit<ref>mittit はχ系・B・M・S写本の記述で、β系写本では dimittit となっている。</ref>. **我が方(ローマ勢)の構築物が中断しているところから、第二夜警時に静けさのうちに、騎兵隊を送り出した。 *⑥ Frumentum omne ad se referri iubet, **穀物をすべて自分のところへ運んで来ることを命じて、 *capitis poenam iis qui non paruerint constituit; **服従しなかった者たちを極刑に処すと決めた。 *⑦ pecus, cuius magna erat copia a Mandubiis<ref>a Mandubiis はβ系写本の記述で、α系写本では ab Manduviis となっている。</ref> compulsa, viritim distribuit; **家畜は、マンドゥビイ族によって大量に集められていたが、個々に分配した。 *frumentum parce et paulatim metiri instituit; **穀物を節約して少しずつ量り分けることを定めた。 *⑧ copias omnes quas pro oppido collocaverat in oppidum recepit. **<ruby><rb>[[w:オッピドゥム|城塞都市]]</rb><rp>(</rp><rt>オッピドゥム</rt><rp>)</rp></ruby>の前に駐留させていた(歩兵の)軍勢すべてを城塞都市の中に退却させた。 *⑨ His rationibus auxilia Galliae exspectare et bellum parat administrare<ref>parat administrare はα系写本の記述で、β系写本では administrare parat となっている。</ref>. **これらの手段により、ガッリア(諸部族)の援軍を待つこと、および戦争を指導しようとしたのである。 ===72節=== '''カエサルが、より大掛かりな攻囲陣地を構築する''' *① Quibus rebus cognitis<ref>cognitis がこの位置にあるのはα系写本の記述で、β系写本では captivis の後となっている。</ref> ex perfugis et captivis **それらの事情を脱走兵たちや捕虜たちから知って、 *Caesar haec genera munitionis instituit. **カエサルは以下の類いの塁壁工事に取りかかった。 <br> *'''前線の切り立った空堀''' *Fossam pedum XX(viginti) derectis lateribus duxit, **20[[w:ペース (長さ)|ペース]](約6m)の(幅の)垂直な側面の堀を引いた。 *ut eius fossae<ref>fossae がこの位置にあるのはβ系写本の記述で、α系写本では summa(e) の後になっている。</ref> solum tantundem pateret, quantum summa<ref>summa はβ系写本の記述で、α系写本では summae となっている。</ref> labra distarent<ref>distarent はα系写本の記述で、β系写本では distabant となっている。</ref>. **その堀(の底)は、頂きの縁が離れているのとちょうど同じ分だけ広がるようにした。 **:<span style="color:#009900;">(訳注:上辺と底の幅が等間隔になるような切り立った空堀にした。)</span> *② Reliquas omnes munitiones ab ea fossa pedes<ref>pedes はα系写本の記述で、β系写本では pedibus となっている。</ref> CCCC(quadringentos) reduxit. **ほかのすべての塁壁は、その堀から400ペース(約120m)後ろに引いた。 **:<span style="color:#009900;">(訳注:写本にあるこの数字は、19世紀のウジェーヌ・ストッフェル大佐(colonel Eugène Stoffel)の</span> **:<span style="color:#009900;">発掘調査によって400[[w:パッスス|パッスス]](約600m)と修正された。この堀は、アレスィアの西方に引かれたと思われる。)</span> *Id hoc consilio, **それは、以下の考えによる。 *quoniam tantum spatium necessario esset<ref>spatium necessario esset はβ系写本の記述で、α系写本では esset necessario spatio となっている。</ref> complexus **これほどの空間が包囲されなければならないのであるから、 *nec facile totum corpus<ref>corpus はα系写本の記述で、β系写本では opus となっており、ρ系写本にはない。</ref> corona militum cingeretur, **すべての包囲作業が兵士たちの<ruby><rb>哨兵線</rb><rp>(</rp><rt>コロナ</rt><rp>)</rp></ruby>で取り囲まれるのは容易ではない。 *ne de improviso aut noctu ad munitiones hostium multitudo<ref>hostium multitudo はα系写本の記述で、β系写本では multitudo hostium となっている。</ref> advolaret **不意に、あるいは夜間に、敵方の大勢が(ローマ側の)塁壁へ突進することがないように、 *aut interdiu tela in nostros operi destinatos conicere possent<ref>possent はα系写本の記述で、β系写本では posset となっている。</ref>. **あるいは日中に、工事中の我が方(ローマ勢)に飛道具が投げ付けられることができないように。 <br> [[画像:Fosse.Saint.Pierre.en.Chastres.png|thumb|right|300px|二重の堀およびその背後の堡塁(土塁と障壁・櫓)の模式図([[w:ウジェーヌ・エマニュエル・ヴィオレ・ル・デュク|ヴィオレ=ル=デュク]]著『中世フランス建築体系辞典』[[s:fr:Dictionnaire raisonné de l’architecture française du XIe au XVIe siècle - Tome 5, Fossé|(s)]]より)。]] [[画像:AlesiaFortifications.JPG|thumb|right|300px|[[w:アレシアの戦い|アレスィア古戦場]]跡に再現された、二重の堀およびその背後の堡塁(土塁と鹿柴、胸壁・鋸壁、櫓)。]] *'''二重の堀''' *③ Hoc intermisso spatio **この空間をあけて、 *duas fossas XV(quindecim) pedes latas eadem altitudine perduxit; **15ペース(約4.5m)の幅の2つの堀を、同じ深さ(15ペース)で張り巡らせた。 *quarum interiorem campestribus ac demissis locis **それらの内側(の堀)の平地で低く下がった所には、 **:<span style="color:#009900;">(訳注:内側の堀とは、アレスィアに近い東側の堀と考えられている。)</span> *aqua ex flumine derivata complevit. **川から導かれた水で満たした。 <br> *'''土塁と防柵、胸壁と鋸壁、鹿柴、櫓''' *④ Post eas aggerem ac vallum XII(duodecim) pedum exstruxit. **それらの後ろには、12ペース(約3.6mの高さ)の<ruby><rb>[[w:土塁|土塁]]</rb><rp>(</rp><rt>アッゲル</rt><rp>)</rp></ruby>と<ruby><rb>防柵</rb><rp>(</rp><rt>ウァッルム</rt><rp>)</rp></ruby>を築き上げた。 *Huic loricam pinnasque adiecit **これに<ruby><rb>胸壁</rb><rp>(</rp><rt>ロリカ</rt><rp>)</rp></ruby>と<ruby><rb>鋸壁</rb><rp>(</rp><rt>ピンナ</rt><rp>)</rp></ruby>を付け加えて、 **:<span style="color:#009900;">(訳注:胸壁と鋸壁とは、[[ガリア戦記 第5巻#40節|第5巻40節]]で既出のように、凹凸形に編み込まれた柴の壁)</span> *grandibus cervis eminentibus ad commissuras pluteorum atque aggeris, **障壁と土塁の接合部の辺りに大きな<ruby><rb>鹿柴</rb><rp>(</rp><rt>ケルウス</rt><rp>)</rp></ruby>を突き出させて、 **:<span style="color:#009900;">(訳注:<ruby><rb>鹿柴</rb><rp>(</rp><rt>ろくさい</rt><rp>)</rp></ruby>(鹿砦または<ruby><rb>逆茂木</rb><rp>(</rp><rt>さかもぎ</rt><rp>)</rp></ruby>)とは、鹿の角のように枝分かれした杭や枝を逆立てた杭囲い。</span> **:<span style="color:#009900;">障壁とは、防柵の前に取り付けられた胸壁と鋸壁の総称であろう。)</span> *qui ascensum hostium tardarent, **敵方が登って来るのを妨げようとした。 *et turres toto opere circumdedit, quae pedes LXXX(octoginta) inter se distarent. **構築物の全体を、互いに80ペース(約24m)離れて立つ櫓で取り巻いた。 ===73節=== '''カエサルは、攻囲陣地をさらに障害物で補強する''' *① Erat eodem tempore et materiari et frumentari et tantas munitiones fieri necesse **材木収集と糧食徴発、およびこれほどの塁壁工事がなされることが、同時に必要であった。 *deminutis nostris copiis, quae longius ab<ref>ab はα系写本の記述で、β系写本では a となっている。</ref> castris progrediebantur. **我が方の軍勢(ローマ勢)は減じており、陣営からはるか遠くに進み出ていた。 *Ac nonnumquam opera nostra Galli temptare **いくたびか、我が方の構築物に、ガッリア人が攻撃すること(を試み)、 *atque eruptionem ex oppido pluribus portis summa vi facere conabantur. **かつ、<ruby><rb>[[w:オッピドゥム|城塞都市]]</rb><rp>(</rp><rt>オッピドゥム</rt><rp>)</rp></ruby>の多くの門から、主力でもって出撃することを試みた。 *② Quare ad haec rursus opera addendum Caesar putavit, **そのゆえに、この構築物へさらに(以下の障害物が)付け加えられるべきだとカエサルは考えた。 *quo minore numero militum munitiones defendi possent. **それによって、より少ない数の兵士で塁壁が防衛されることができるように、と。 [[画像:Archeodrome_Beaune_8.jpg|thumb|right|300px|[[w:アレシアの戦い|アレスィア古戦場]]跡に再現された攻囲陣地(上の画像と同じ物)。堡塁(土塁と障壁と櫓)の前の平地に、樹枝が突き出た「尖り杭」(奥)と落とし穴を枝で覆った「百合」(手前)が見える。]] [[画像:Trous.de.loup.png|thumb|right|300px|サイコロの五つ目状に並べられた落とし穴「百合」(lilium)の模式図([[w:ウジェーヌ・エマニュエル・ヴィオレ・ル・デュク|ヴィオレ=ル=デュク]]著『中世フランス建築体系辞典』[[s:fr:Dictionnaire raisonné de l’architecture française du XIe au XVIe siècle - Tome 5, Fossé|(s)]]より)。図の上部が五つ目状の配列を、図の下部が落とし穴の断面図を示す。この断面図では、尖らされた樹幹の先端が、傾斜した穴の突き固められた底から4本指ほど突き出ていると解釈しているようである。カエサルの記述からは、地表から突き出ているとも解釈できる。]] [[画像:Aiguillon.png|thumb|right|200px|鉄の鉤が固定された杭「刺」の模式図([[w:ウジェーヌ・エマニュエル・ヴィオレ・ル・デュク|ヴィオレ=ル=デュク]]著『中世フランス建築体系辞典』[[s:fr:Dictionnaire raisonné de l’architecture française du XIe au XVIe siècle - Tome 5, Fossé|(s)]]より)。]] [[画像:Archeodrome_Beaune_2.jpg|thumb|right|300px|[[w:アレシアの戦い|アレスィア古戦場]]跡に再現された攻囲陣地(上の画像と同じ物)。いちばん手前に「刺」が再現されている。]] :  '''尖り杭''' *Itaque truncis arborum aut admodum firmis ramis abscisis **こうして、樹木の幹、あるいは非常に強固な枝が切り取られて、 *atque horum delibratis ac praeacutis cacuminibus **これらの皮がむかれて、<ruby><rb>梢</rb><rp>(</rp><rt>こずえ</rt><rp>)</rp></ruby>が<ruby><rb>尖</rb><rp>(</rp><rt>とが</rt><rp>)</rp></ruby>らされて、 *perpetuae fossae quinos pedes altae ducebantur. **5[[w:ペース (長さ)|ペース]](約1.5m)ずつの連続した堀が引かれた。 *③ Huc illi stipites demissi **ここに、あの樹幹が沈められて、 *et ab infimo revincti, ne revelli possent, ab ramis eminebant. **底から固くしばられて、はぎ取ることができないようにして、枝から(地上に)突き出るようにしていた。 *④ Quini erant ordines coniuncti inter se atque implicati; **5列ずつが、互いにつなげられて、結び合わされた。 *quo qui intraverant se ipsi acutissimis vallis induebant. **そこに踏み込んだ者は、自身が自らをきわめて鋭い杭に陥れた。 *Hos cippos appellabant. **(将兵たちは)これらを<ruby><rb>尖り杭</rb><rp>(</rp><rt>キップス</rt><rp>)</rp></ruby>と呼んだ。 **:<span style="color:#009900;">(訳注:[[wikt:en:cippus|cippus]]「尖り杭」は「墓標」とも訳されるが、後者は古典期以降のラテン語で長方形の墓碑を指す<ref><small>POSTCLASSIQUE</small> <i>[[w:fr:Cippe|cippe]] (colonne funéraire rectangulaire)</i>(ラルース社の羅仏辞典 <small>“Dictionnaire MaxiPoche Plus latin-français et français-latin”</small> を参照)</ref>。)</span> :  '''百合''' *⑤ Ante<ref>ante はβ系写本の記述で、α系写本にはない。</ref> quos<ref>quos はα系写本の記述で、β系写本では hos となっている。</ref> obliquis ordinibus in quincuncem dispositis **それらの前に、(サイコロの)<ruby><rb>五つ目状</rb><rp>(</rp><rt>クィンクンクス</rt><rp>)</rp></ruby>に斜めの列に配置されて、 *scrobes tres in altitudinem pedes fodiebantur **深さ3ペース(約90cm)の穴が掘られた。 *paulatim angustiore ad infimum fastigio. **しだいに、より狭く、底の方へ傾斜を付けて。 *⑥ Huc teretes stipites [[w:la:Femur|feminis]] crassitudine **ここに、太ももの厚さの丸みを帯びた樹幹が *ab summo praeacuti et praeusti demittebantur, **先端から尖らせられ、焦がされて(穴の底に)突き刺された。 *ita ut non amplius digitis quattuor ex terra<ref>ex terra はα系写本の記述で、V・ρ系写本では e terra 、T写本では contra となっている。</ref> eminerent; **4本の指より長くないほど地中から突き出るように。 *⑦ simul confirmandi et stabiliendi causa **同時に、強固にして固定するために、 *singuli ab infimo solo pedes terra exculcabantur; **それぞれ底から1ペース(約30cm)だけ土で突き固められた。 *reliqua pars scrobis ad occultandas insidias viminibus ac virgultis integebatur. **穴の残りの部分は、わなを隠すために、柳の細枝や若枝で覆われた。 *⑧ Huius generis octoni ordines ducti ternos inter se pedes distabant. **この類いを、8列ずつ、3ペース(約90cm)ずつ互いに離して、作った。 *Id ex similitudine floris lilium appellabant. **(将兵たちは)それを花との類似から、<ruby><rb>[[w:ユリ|百合]]</rb><rp>(</rp><rt>リリウム</rt><rp>)</rp></ruby>と呼んだ。 :  '''刺''' *⑨ Ante haec taleae pedem longae ferreis hamis infixis totae in terram infodiebantur **これらの前に、鉄製の鉤が打ち込まれた長さ1ペース(約30cm)の棒の全体が地中に埋め込まれた。 *mediocribusque intermissis spatiis omnibus locis disserebantur, **適度な空間を間にあけて、至る所に配置された。 *quos stimulos nominabant. **(将兵たちは)それらを刺と呼んだ。 {| class="wikitable" |- ! colspan="2" | [[w:la:Obsidio Alesiae|Obsidio Alesiae]] |- | style="vertical-align:top; text-align:left; width:35em;" |[[画像:Fortificazioni alesia png.png|thumb|left|500px|[[w:アレシアの戦い|アレシアの戦い]]における攻囲陣地の構成(図の説明はイタリア語)。]] |} ===74節=== '''ガッリア人の来援に備えて、外周にも同様の塁壁を張り巡らす''' *① His rebus perfectis **これらの物が造り上げられると、 *regiones secutus quam potuit aequissimas pro loci natura **地勢に応じて、できるかぎり好都合な地帯を探し求めて、 *XIIII(quattuordecim) milia passuum complexus **14ローママイル(約21km)を取り巻いて、 *pares eiusdem generis munitiones, **(内周の塁壁と規模が)匹敵する同じ類いの塁壁を *diversas ab his, contra exteriorem hostem perfecit, **これら(内周)に対置させて、外側の敵に対抗して造り上げた。 *ut ne magna quidem multitudine, si ita accidat equitatus<ref>equitatus はシェーラー(Schoeller)による修正提案で、写本(ω)では eius であるが、近代の校訂者たちにより修正提案がなされている。</ref> discessu, **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:ne quidem|ne ~ quidem]]「~でさえ…ない」)</span> **もし[[w:騎兵|騎兵隊]]の退去によりこのようなこと(外敵との遭遇)が生じても、決して大軍により *munitionum praesidia circumfundi possent; **塁壁の守備隊が包囲されることができないように。 *② <ne> autem<ref>ne autem は近代の校訂者による修正提案で、α系・π系写本では aut、ρ系写本では ut となっている。</ref> cum periculo ex castris egredi cogatur, **(ローマ勢が)危険を伴って陣営から進発することを強いられることもないように、 *dierum XXX(triginta) pabulum frumentumque habere omnes convectum iubet. **30日分の[[w:糧秣|秣(まぐさ)や穀物]]を運び集めて保持することを皆に命じた。 ===75節=== '''ガッリア同盟が各部族に動員を要請する''' *① Dum haec apud<ref>apud はα系写本の記述で、β系写本では ad となっている。</ref> [[w:la:Alesia|Alesiam]] geruntur, **これらが[[w:アレシア|アレスィア]]のもとで遂行されている間に、 *Galli concilio principum indicto **ガッリア人たちは、領袖たちの会合を課して、 *non omnes hos<ref>omnes hos はα系写本の記述で、β系写本では単に omnes となっている。</ref> qui arma ferre possent, ut censuit [[w:la:Vercingetorix|Vercingetorix]], convocandos statuunt, **[[w:ウェルキンゲトリクス|ウェルキンゲトリークス]]が見積もったように武器を扱える者たち皆を召集するべき、ではないと判断した。 *sed certum numerum cuique ex civitate<ref>ex civitate はα系写本の記述で、β系写本では civitati となっている。</ref> imperandum, **けれども、おのおのの部族から一定の兵数(の供出)を命令すること(を決めた)。 *ne tanta multitudine confusa nec moderari nec discernere suos nec frumentandi rationem<ref>frumentandi rationem はT・U・R写本などの記述で、V・U写本などでは frumenti rationem となっている。</ref> habere possent. **これほどの大軍で混乱したり、味方を指揮できなかったり判別できなかったり、ということがないように。 *② Imperant [[w:la:Haedui|Haeduis]] atque eorum clientibus, Segusiavis, Ambivaretis, Aulercis Brannovicibus, Blannoviis, milia XXXV(triginta quinque); **[[w:ハエドゥイ族|ハエドゥイー族]]とその庇護民であるセグスィアウィ族、アンビウァレティ族、アウレルキ・ブランノウィケス族、ブランノウィイ族に3万5千名を命令した。 *parem numerum Arvernis adiunctis Eleutetis, Cadurcis, Gabalis, Vellaviis, **[[w:アルウェルニ族|アルウェルニー族]]に隣接しているエレウテティ族、カドゥルキー族、ガバリ族、ウェッラウィイ族に同等の兵数。 *qui sub imperio Arvernorum esse consuerunt; **彼らはアルウェルニー族の支配下にいるのが常であった。 *③ Sequanis, Senonibus, Biturigibus, Santonis, Rutenis, Carnutibus duodena milia; **セクアニ族、セノネース族、ビトゥリゲース族、サントネス族、ルテーニー族、カルヌーテース族には1万2千ずつ。 *Bellovacis X(decem); totidem Lemovicibus; **ベッロウァキ族に1万。レモウィケス族に同じだけ多く(1万)。 *octona Pictonibus et Turonis et Parisiis et Helvetiis; **ピクトネス族とトゥロニ族とパリスィイ族と[[w:ヘルウェティイ族|ヘルウェティイ族]]に8(千)ずつ。 *Senonibus<ref>Senonibus は写本(ω)にある記述だが、sen<a Suessi>onibus「6(千)ずつをスエッスィオニス族…に」などさまざまな修正提案がなされている。</ref>, Ambianis, Mediomatricis, Petrocoriis, Nerviis, Morinis, Nitiobrogibus quina milia; **セノネース族、アンビアニ族、メディオマトリキ族、ペトロコリイ族、ネルウィイ族、モリニ族、ニティオブロゲス族に5千ずつ。 **:<span style="color:#009900;">(訳注:Senonibus「セノネース族」は既出のためスエッスィオネス族などに書き替える修正提案がなされ、以下は校訂版によっては兵数がずれる。</span> **:<span style="color:#009900;">しかし、スエッスィオネス族 Suessiones は[[ガリア戦記 第2巻#12節|第2巻12節]]でレーミー族を通じてカエサルに降伏しており、</span> **:<span style="color:#009900;">第8巻6節でも「レーミー族に委ねられていた」「同盟者」と記されているので、アレスィアには出兵していないであろう。)</span> *Aulercis Cenomanis totidem; Atrebatibus IIII; **アウレルキ・ケノマニ族に同じだけ多く(5千)。アトレバテス族に4(千)。 *Veliocassis, Lexoviis et Aulercis Eburovicibus terna; **ウェリオカッセス族、レクソウィイ族とアウレルキ・エブロウィケス族に3(千)ずつ。 *Rauracis et Boiis<ref>Boiis はα系写本の記述で、β系写本では Bois となっている。</ref> bina; **ラウラキ族とボイイ族に2(千)ずつ。 *XXX<ref>XXX はα系写本の記述で、さまざまな修正提案がなされている。</ref> milia universis civitatibus, quae Oceanum attingunt **<ruby><rb>大洋<span style="color:#009900;">〔[[w:大西洋|大西洋]]〕</span></rb><rp>(</rp><rt>オーケアヌス</rt><rp>)</rp></ruby>に接する諸部族全体に3万。 **:<span style="color:#009900;">(訳注:この数は写本により異なっており、混乱している。)</span> *quaeque eorum consuetudine Aremoricae appellantur, **それらは、彼ら(ガッリア人)の慣習でアレモリカエと呼ばれており、 *quo sunt in numero Coriosolites, Redones, Ambibarii, Caletes, Osismi, Veneti, Lemovices, Unelli. **コリオソリテス族、レドネス族、アンビバリイ族、カレテス族、オスィスミ族、ウェネティ族、レモウィケス族、ウネッリ族がそれらに数えられる。 *⑤ Ex his Bellovaci suum numerum non compleverunt<ref>compleverunt はα系写本の記述で、β系写本では contulerunt となっている。</ref>, **これらのうちで、ベッロウァキ族は、自分たちの(割り当てられた)数を満たさなかった。 *quod se suo nomine atque arbitrio cum Romanis bellum gesturos dicebant **というのは、彼らは自らの名と裁量でもってローマ人と交戦するであろうと言ったのだ。 *neque cuiusquam imperio obtemperaturos; **(自分たちは)何者の命令にも服従しないであろう、と。 *rogati tamen ab<ref>ab はα系写本の記述で、β系写本では a となっている。</ref> Commio pro eius hospitio duo milia una miserunt. **けれども、[[w:コンミウス|コンミウス]]の懇願により、彼を賓客としているために、2千名を一緒に送り出した。 **:<span style="color:#009900;">(訳注:ベッロウァキ族は要求された兵数の5分の1しか出さなかったが、第8巻22節ではこの出兵をも含めてカエサルから責められる。)</span> ===76節=== '''コンミウスもガッリア同盟軍に内応、約25万の大軍が集結''' *① Huius opera Commii, ut antea demonstravimus, fideli atque utili **前に述べたように、この[[w:コンミウス|コンミウス]]の信頼すべき有益な働きを **:<span style="color:#009900;">(訳注:[[ガリア戦記 第4巻#21節|第4巻21節]]・[[ガリア戦記 第4巻#27節|27節]]・[[ガリア戦記 第4巻#35節|35節]]、[[ガリア戦記 第5巻#22節|第5巻22節]]、[[ガリア戦記 第6巻#6節|第6巻6節]]を参照。)</span> *superioribus annis erat usus in [[w:la:Britannia Maior|Britannia]] Caesar; **カエサルは先年(BC55~54年)に[[w:ブリタンニア|ブリタンニア]]において役立てていた。 **:<span style="color:#009900;">(訳注:コンミウスは、[[w:ローマによるブリタンニア侵攻 (紀元前55年-紀元前54年)|カエサルのブリタンニア侵攻]]の先導役を務めていた。後にブリタンニアで王となる。)</span> *quibus ille pro meritis civitatem eius immunem esse iusserat, **彼(カエサル)はそれらの功績の見返りに、彼(コンミウス)の部族が免税となることを命じており、 *iura legesque reddiderat atque ipsi Morinos attribuerat. **権能や法度を元に戻してやり、(コンミウス)自身にモリニ族(の統治)をも委ねていた。 *② Tamen tanta<ref>tamen tanta はα系写本の記述で、β系写本では tanta tamen となっている。</ref> universae Galliae consensio fuit libertatis vindicandae et pristinae belli laudis recuperandae, **けれども、自主独立が求められるべきで、かつての戦争の誉れが取り戻されるべきだという、ガッリア全体の合意があった。 *ut neque beneficiis neque amicitiae memoria moverentur **その結果、(カエサルからの)厚遇にも友情の記憶にも揺り動かされず、 *omnesque et animo et opibus in id bellum incumberent. **(ガッリアの)皆が闘志によっても兵力によっても、その戦争に没頭していたのだ。 *③ Coactis equitum milibus VIII(octo) et peditum circiter CCL(ducenti quinquaginta)<ref>CCL はβ系写本の記述で、α系写本では CCXL または CCXXXX となっている。</ref> **[[w:騎兵|騎兵]]8千騎と[[w:歩兵|歩兵]]およそ250(千)名が徴集されて、 **:<span style="color:#009900;">(訳注:歩兵の数は、β系写本では25万、α系写本では24万と異なっている。)</span> *haec in Haeduorum finibus recensebantur, numerusque inibatur, praefecti constituebantur. **これら(の軍勢)が[[w:ハエドゥイ族|ハエドゥイー族]]の領土で閲兵されて、数が見積もられて、指揮官たちが決められた。 *④ Commio Atrebati, Viridomaro et [[w:la:Eporedorix|Eporedorigi]] [[w:la:Haedui|Haeduis]], **アトレバテス族の[[w:コンミウス|コンミウス]]、ハエドゥイー族のウィリドマルスとエポレドリクス、 *[[w:la:Vercassivellaunus|Vercassivellauno]] Arverno, consobrino Vercingetorigis, summa imperii traditur. **[[w:ウェルキンゲトリクス|ウェルキンゲトリークス]]の従兄弟である[[w:アルウェルニ族|アルウェルニー族]]のウェルカッスィウェッラウヌスに、最高司令権が託された。 *His delecti ex civitatibus attribuuntur, quorum consilio bellum administraretur. **彼らに、諸部族から選ばれた者たちが付与されて、その者たちの協議により戦争が指導された。 *⑤ Omnes alacres et fiduciae pleni ad [[w:la:Alesia|Alesiam]] proficiscuntur, **皆が、活気があって自身に満ち、[[w:アレシア|アレスィア]]へ向けて出発した。 *⑥ neque erat omnium quisquam qui adspectum modo tantae multitudinis sustineri posse arbitraretur, **これほどの大軍を一見しただけで持ちこたえられる者は、誰一人いないと思われた。 *praesertim ancipiti proelio, **とりわけ(内周と外周の)両面の戦闘で、 *cum ex oppido eruptione pugnaretur, foris tantae copiae equitatus peditatusque cernerentur. **城塞都市からは出撃により戦われ、外からは騎兵と歩兵のこれほどの軍勢が視認されるのであるから。 ===77節=== '''飢餓状態のアレスィアで、クリトグナトゥスが極論を唱える''' *① At ii qui [[w:la:Alesia|Alesiae]] obsidebantur **ところが、[[w:アレシア|アレスィア]]に包囲されていた者たちは、 *praeterita die qua auxilia suorum exspectaverant, **味方の援軍を待ち望んでいた日も経過して、 *consumpto omni frumento, **すべての糧食を消費し尽くして、 *inscii quid in [[w:la:Haedui|Haeduis]] gereretur, **[[w:ハエドゥイ族|ハエドゥイー族]]のところにおいて何がなされているのかを知らず、 *concilio coacto de exitu suarum fortunarum consultabant. **会合を召集して、自分たちの命運の結末について協議した。 *② Ac variis dictis sententiis **そして、さまざまな意見が述べられた。 *quarum pars deditionem, **それらの一部は降伏を、 *pars dum vires suppeterent eruptionem censebat, **別の一部は、活動力が十分にある間に突撃することを考慮していた。 *non praetereunda oratio [[w:la:Critognatus|Critognati]] videtur propter eius singularem et nefariam crudelitatem. **クリトグナトゥスの演説は、彼の特異で非道な残酷さのために、看過されるべきではないと思われる。 <br> '''クリトグナトゥスの演説が始まる''' *③ Hic summo in Arvernis ortus loco et magnae habitus auctoritatis, **彼は、[[w:アルウェルニ族|アルウェルニー族]]において最高の身分に生まれ、大きな影響力を持つとみなされていた。 <br> '''降伏論者は最低の輩だ''' *"Nihil" inquit "de eorum sententia dicturus sum, qui turpissimam servitutem deditionis nomine appellant, **「最も恥ずべき隷属を降伏という名で呼んでいる者たちの意見については、(私は)何も述べないであろう」と言った。 *neque hos habendos civium loco neque ad concilium adhibendos censeo. **「この者たちは市民の身分を持つべきではないし、会合へ招き入れられるべきでもない、と(私は)考える。 <br> '''突撃論者には辛抱が欠けている''' *④ Cum his mihi res sit, qui eruptionem probant; **突撃に賛同した者たちとともに、私の関わりはあるべきだ。 *quorum in consilio omnium vestrum consensu **その者たちの考えには、君たち皆の同意があるだろうし、 *pristinae residere virtutis memoria videtur. **かつての武勇の記憶が残っていることと思われる。 *⑤ Animi est ista mollitia, non virtus, paulisper inopiam ferre non posse. **しばらくの間も(糧食の)欠乏に耐えることができない(君らの)ことは、気の弱さであって、武勇ではない。 *Qui se ultro morti offerant facilius reperiuntur quam qui dolorem patienter ferant. **自発的に玉砕して逝った者たちは、苦痛に辛抱強く耐えた者たちよりも、より容易に見出されるのだ。 *⑥ Atque ego hanc sententiam probarem ─tantum apud me dignitas potest─, **しかし私は(突撃という)この意見に賛同したであろう。それほど、私にとっても価値がある。 *si nullam praeterquam vitae nostrae iacturam fieri viderem; **(ただし)もし、我々(ガッリア勢)の生命が投げ出されること以外に(方策が)何もないと思ったならばだ。 *⑦ sed in consilio capiendo omnem Galliam respiciamus, quam ad nostrum auxilium concitavimus. **けれども、作戦を立てるに当たっては、我々のために援軍を(我々が)呼び寄せた全ガッリアを顧慮しよう。 *⑧ Quid hominum milibus LXXX(octoginta) uno loco interfectis **(我々ガッリア勢)8万の人間が(アレスィア)1か所で殺戮されたら、 *propinquis consanguineisque nostris animi fore existimatis, **我々の親類縁者たちの士気はどうなると(君らは)判断しているのか。 *si paene in ipsis cadaveribus proelio decertare cogentur? **もし、ほとんど(我々)自身の亡骸の中で(味方が)決戦することを強いられたら? *⑨ Nolite hos vestro auxilio exspoliare qui vestrae salutis causa suum periculum neglexerunt, **君らの身の安全のために、己の危険を顧みなかった者たちのことを、君らが援助すること(の機会)を奪わないでくれ。 *nec stultitia ac temeritate vestra aut animi imbecillitate omnem Galliam prosternere et perpetuae servituti subicere. **君らの愚かさや無思慮、または心の弱さによって、全ガッリアを滅ぼすことや永久の隷属に委ねることがないように。 <br> '''ローマ人たちが恐れているのを見よ''' *⑩ An quod ad diem non venerunt, de eorum fide constantiaque dubitatis? **それとも(援軍が)期日までにやって来なかったので、彼らの誠実さや剛直さについて(君らは)疑っているのか? *Quid ergo? **それでは(あれは)何だ? *Romanos in illis ulterioribus munitionibus animine causa cotidie exerceri putatis? **ローマ人たちがあの向こう側の塁壁のところで、趣味のために毎日たえず働かされていると(君らは)思うのか? *⑪ Si illorum nuntiis confirmari non potestis omni aditu praesaepto, **もし、すべての出入口を(防柵で)遮られて、(援軍の到来を)彼らの伝令により(君らが)確証できないのならば、 *his utimini testibus adpropinquare eorum adventum, **こちらの者たち(ローマ人)を、彼ら(援軍)の到来が近づいている証人として示せ。 *cuius rei timore exterriti diem noctemque in opere versantur. **(援軍の到来という)その事態の恐れに戦慄して(ローマ人たちは)昼も夜も工事に従事しているのだ。 <br> '''クリトグナトゥスの意見は?''' *⑫ Quid ergo mei consilii est? **それでは、私の考えは何であるか? *Facere quod nostri maiores nequaquam pari bello Cimbrorum Teutonumque fecerunt: **我々の先祖たちが(今回とは)決して比べものにならない[[w:キンブリ・テウトニ戦争|キンブリ族・テウトニ族との戦争]]でしたことをするのだ。 *qui in oppida compulsi ac simili inopia subacti **彼ら(先祖たち)は、[[w:オッピドゥム|城塞都市]]に押し込められて、(今回と)似たような欠乏により衰弱させられて、 *eorum corporibus, qui aetate ad bellum inutiles videbantur, vitam toleraverunt **加齢により戦争に役立たないと思われた者たちの肉体(を食べること)によって、生命を持ちこたえて、 *neque se hostibus tradiderunt. **敵方に降伏しなかったのだ。 *⑬ Cuius rei si exemplum non haberemus, **もし、そういう事態の先例を我々が持たなかったとしても、 *tamen libertatis causa institui et posteris prodi pulcherrimum iudicarem. **けれども、自由のために、最も栄誉なことが決断され、子孫たちに伝えられることと、私は思いたい。 *⑭ Nam quid illi simile bello fuit? **実際、あの戦争に(今回と)似ている何があっただろうか? *Depopulata Gallia Cimbri magnaque inlata calamitate **キンブリ族はガッリアを荒らしまわって、大きな災禍をもたらしたが、 *finibus quidem nostris aliquando excesserunt atque alias terras petierunt; **あるとき我々の領土から立ち去って、他の土地を求めて行った。 *iura, leges, agros, libertatem nobis reliquerunt. **権限、法度、耕地、自由を我々(ガッリア人)に残して行ったのだ。 *⑮ Romani vero quid petunt aliud aut quid volunt **しかし、ローマ人たちは(以下に挙げることの)他に何を求め、何を欲しているのだろうか。 **:<span style="color:#009900;">(訳注:「しかし、ローマ人が求め、欲しているのは、以下のことである」の意。)</span> *nisi invidia adducti quos fama nobiles potentesque bello cognoverunt, **高貴で戦争に力強い(ガッリアの)者たちを名声で知って羨望に駆られた以外には、 *horum in agris civitatibusque considere atque his aeternam iniungere servitutem? **彼らの土地や部族共同体に居座って、彼らを永遠の隷属を課すること以外には。 *Neque enim ulla alia condicione bella gesserunt. **実際、(ローマ人は)他のいかなる条件でも決して戦争を遂行したことがなかった。 *⑯ Quodsi ea quae in longinquis nationibus geruntur ignoratis, **もし、遠方の種族のところでなされていることを(君らが)知らないのであれば、 *respicite finitimam Galliam, **ガッリアの隣人たちを見渡しなさい。 *quae in provinciam redacta, **(彼らはローマの)[[w:属州|属州]]になることを余儀なくされ、 *iure et legibus commutatis, **権限や法度を変えられて、 *securibus subiecta perpetua premitur servitute." **(ローマの)権力に服属させられて、永久の隷属に苦しめられているのだ。 ===78節=== '''マンドゥビイ族の投降をカエサルが拒む''' *① Sententiis dictis **(いくつかの)意見が述べられて、 *constituunt ut ii, qui valetudine aut aetate inutiles sunt<ref>sunt はα系写本の記述で、β系写本では sint となっている。</ref> bello, oppido excedant **(ガッリア人たちは)健康または年齢により戦争に役立たない者たちは[[w:オッピドゥム|城塞都市]]を退去するように決めた。 *atque omnia prius experiantur quam ad Critognati sententiam descendant; **さらに、クリトグナトゥスの意見に同意するよりも、まずあらゆることを試みるように(決めた)。 *② illo tamen potius utendum consilio, **けれども(以下の場合には)むしろ彼(クリトグナトゥス)の意見を実行するべきだ。 *si res cogat atque auxilia morentur, **もし、事態が強いて、援軍が遅滞させられるのならば、 *quam aut deditionis aut pacis subeundam condicionem. **降伏あるいは講和条件を受諾することよりも(クリトグナトゥスの意見を実行するべきだ)、と。 *③ Mandubii qui eos oppido receperant, **彼ら(ガッリア勢)を城塞都市に受け入れていたマンドゥビイ族は、 *cum liberis atque uxoribus exire coguntur. **子供たちや妻女たちとともに(城塞都市から)出て行くことを強いられた。 *④ Hi cum ad munitiones Romanorum accessissent, **彼らは、ローマ人たちの塁壁のところへ近づいたときに、 *flentes omnibus precibus orabant, ut se in servitutem receptos cibo iuvarent. **自分たちを奴隷として受け入れて食糧で助けてくれるように、泣きながらあらゆる懇願で頼んだ。 *⑤ At Caesar dispositis in vallo custodibus<ref>custodibus はα系写本の記述で、β系写本では custodiis となっている。</ref> recipi prohibebat. **だが、カエサルは、防柵の中に番兵を分けて置き、(マンドゥビイ族を)受け入れることを禁じた。 ===79節=== '''ガッリア同盟軍の来援、アレスィアの歓呼''' *① Interea Commius reliquique duces, quibus summa imperii permissa erat, **その間に、最高司令権を任されていた[[w:コンミウス|コンミウス]]とほかの将帥たちが、 *cum omnibus copiis ad Alesiam perveniunt **すべての軍勢とともに[[w:アレシア|アレスィア]]の辺りへ到着して、 *et colle exteriore occupato **より外側の丘陵を占拠して、 **:<span style="color:#009900;">(訳注:現在のミュスィ=ラ=フォス村 [[w:fr:Mussy-la-Fosse|Mussy-la-Fosse]]<ref>[http://maps.google.com/maps?q=47.521944,4.438611&hl=fr&ie=UTF8&ll=47.522012,4.438648&spn=0.01849,0.027423&t=h&z=15 Google map]を参照。</ref> のある丘陵であると思われる。)</span> *non longius mille passibus ab nostris munitionibus considunt. **我が方(ローマ勢)の塁壁から1ローママイル(約1.5km)ほども遠くないところに陣取った。 **:<span style="color:#009900;">(訳注:現在のヴナレ=レ=ローム [[w:fr:Venarey-les-Laumes|Venarey-les-Laumes]] 市街<ref>[http://maps.google.com/maps?q=47.542778,4.445833&hl=fr&ie=UTF8&ll=47.543106,4.458475&spn=0.036965,0.054846&t=h&z=14 Google map]を参照。</ref>の周辺であると思われる。)</span> *② Postero die equitatu ex castris educto **翌日に、[[w:騎兵|騎兵隊]]が陣営から進発させられて、 *omnem eam planitiem quam in longitudinem milia passuum III(tria)<ref>milia passuum III はβ系写本の記述で、α系写本では quattuor milia passuum などとなっている。</ref> patere demonstravimus, complent **3ローママイル(約4.5km)の長さにわたり広がっていることを既述した平地のすべてを、満たした。 **:<span style="color:#009900;">(訳注:[[#69節|69節]]を参照。現在のローム平原に当たると思われる。)</span> *pedestresque copias paulum ab eo loco abditas in locis superioribus constituunt. **[[w:歩兵|歩兵]]の軍勢を、その地からいくらか遠ざけて、より高いところに駐留させた。 **:<span style="color:#009900;">(訳注:上記の丘陵のより高い所であると思われる。)</span> *③ Erat ex oppido Alesia despectus in campum. **アレスィアの[[w:オッピドゥム|城塞都市]]からは(その)平地に眺望があった。 *Concurrunt<ref>concurrunt はα系写本の記述で、β系写本では concurritur となっている。</ref> his auxiliis visis; **これらの援軍が現われると(アレスィアのガッリア人たちは)群がり集まった。 *fit gratulatio inter eos **彼らの間で祝賀がなされて、 *atque omnium animi ad laetitiam excitantur. **皆の心が喜びへと鼓舞された。 *④ Itaque productis copiis ante oppidum considunt **こうして(アレスィアの)軍勢が出撃させられて、城塞都市の前に陣取って、 *et proximam fossam cratibus integunt atque aggere explent **最も近い堀を、柴で蔽って、土砂を充満させて、 *seque ad eruptionem atque omnes casus comparant. **突撃やあらゆる有事に戦備を整えた。 ===80節=== '''ゲルマニア騎兵らローマ勢が来援ガッリア騎兵をも打ち破る''' *① Caesar omni exercitu ad utramque partem munitionum<ref>munitionum はα系写本の記述で、β系写本では munitionis となっている。</ref> disposito, **カエサルは、すべての[[w:歩兵|歩兵隊]]を、塁壁の(内周と外周)両側に分けて置き、 *ut, si usus veniat, suum quisque locum teneat et noverit, **もし、必要が生じたら、おのおのが自らの部署を知って固守するようにした。 *equitatum ex castris educi et proelium committi iubet. **[[w:騎兵|騎兵隊]]を陣営から進発させて、交戦することを命じた。 *② Erat ex omnibus castris, quae summum undique iugum tenebant, despectus **至る所で尾根の頂きを占めていた(ローマ勢の)すべての陣営から(騎兵戦の)眺望があった。 *atque omnes milites intenti<ref>intenti はα系写本の記述で、β系写本では intenti animi、Fuchs は intentis animis と修正提案している。</ref> pugnae proventum<ref>pugnae proventum はα系写本の記述で、β系写本では proventum pugnae となっている。</ref> exspectabant. **すべての兵士たちは(観戦に)没頭して、戦いの結果を待っていた。 *③ Galli inter equites raros sagittarios expeditosque levis armaturae interiecerant, **ガッリア人たちは、弓兵たちと軽装歩兵たちをまばらに、騎兵たちの間に置いていて、 *qui suis cedentibus auxilio succurrerent **その者たち(弓兵と軽装歩兵)は、味方が後退するのを支援するために馳せ寄って、 *et nostrorum equitum impetus sustinerent. **我が方(ローマ勢)の騎兵の突撃に持ちこたえていた。 *Ab his complures de improviso vulnerati proelio excedebant. **彼らによって(ローマ側騎兵の)かなりの者たちが、思いがけず負傷させられて、戦闘から退いた。 *④ Cum suos pugna superiores esse Galli confiderent **ガッリア人たちが、味方が戦いで優勢であることを確信したとき、 *et nostros multitudine premi viderent, **かつ、我が方(ローマ勢)が多勢(のガッリア騎兵)により圧倒されているのを見て取ったときに、 *ex omnibus partibus et ii qui munitionibus continebantur **あらゆる方面から(ローマ勢の)塁壁によって囲まれていた者たちも、 *et hi<ref>hi はφ系・β系写本の記述で、χ系写本では ii となっている。</ref> qui ad auxilium convenerant **(アレスィア)救援のために集結して来ていた者たちも、 *clamore et ululatu suorum animos confirmabant. **大声やわめき声によって味方の闘志を強めた。 *⑤ Quod in conspectu omnium res gerebatur **(両軍の)皆の環視の中で合戦が遂行されたので、 *neque recte ac<ref>ac はα系・π系写本の記述で、ρ系写本では aut となっている。</ref> turpiter factum celari poterat, **立派な行為または見苦しい行為も隠されることができなかったので、 *utrosque et laudis cupiditas et timor ignominiae ad virtutem excitabant<ref>excitabant はB・M・L・N・R写本などの記述で、χ系・B・S・π系・U写本などでは excitabat となっている。</ref>. **賞賛への功名心も、不名誉への恐れも、双方を武勇へと駆り立てた。 *⑥ Cum a meridie prope ad solis occasum dubia victoria pugnaretur, **正午から、ほぼ日没の頃まで、勝利が不確実なまま戦われていたときに、 *Germani una in parte confertis turmis **ゲルマニア人たちが、騎兵部隊を一か所に密集させて、 *in hostes impetum fecerunt eosque propulerunt; **敵方に突撃を行ない、彼ら(ガッリア騎兵)を駆逐した。 *⑦ quibus in fugam coniectis **その者たち(ガッリア騎兵)は逃亡に追いやられて、 *sagittarii circumventi interfectique sunt. **弓兵たちは包囲されて殺戮された。 *⑧ Item ex reliquis partibus nostri cedentes usque ad castra insecuti **我が方(ローマ勢)の残りの部隊も、撤退する(ガッリア騎兵の)者たちを陣営のところまで追撃して、 *sui colligendi facultatem non dederunt. **立ち直る機会を与えなかった。 *⑨ At ii qui ab [[w:la:Alesia|Alesia]] processerant, **そして、[[w:アレシア|アレスィア]]から進み出ていた者たちは、 *maesti prope victoria desperata se in oppidum receperunt. **ほとんど絶望的な勝利に悲嘆して、城塞都市に退却した。 ===81節=== '''ガッリア来援軍と籠城軍がローマ陣地に夜襲をしかける''' *① Uno die intermisso Galli **ガッリア人たちは一日を間に置いて、 *atque hoc spatio magno cratium, scalarum, harpagonum numero effecto **この間に、多数の柴、[[w:梯子|梯子]]、鉤竿を調達して、 *media nocte silentio ex castris egressi **真夜中に静けさのうちに陣営から進発して、 *ad campestres munitiones accedunt. **平地の(ローマ勢の)塁壁の辺りへ近づいた。 *② Subito clamore sublato, qua significatione **突然に雄叫びを上げて、それを合図として、 *qui in oppido obsidebantur de suo adventu cognoscere possent, **[[w:オッピドゥム|城塞都市]]の中に包囲されている者たちが、自分たちの到来について認識できるようにした。 *crates proicere, fundis, sagittis, lapidibus nostros de vallo proturbare **柴を投げ込み、投石器で、矢で、石でもって我が方(ローマ勢)を防柵から追い出すこと、 *reliquaque quae ad oppugnationem pertinent parant administrare. **(塁壁の)攻略のために役立つほかのことに従事すること、を目論んだ。 *③ Eodem tempore clamore exaudito **同時に(来援軍の)雄叫びを聞き取って、 *dat tuba signum suis [[w:la:Vercingetorix|Vercingetorix]] atque ex oppido educit. **[[w:ウェルキンゲトリクス|ウェルキンゲトリークス]]は、麾下の者たちにラッパで指図を与えて、城塞都市から進発させた。 *④ Nostri, ut superioribus diebus, suus cuique<ref>suus cuique はβ系写本の記述で、χ系・B・M・S写本では ut cuique となっている。</ref> erat locus attributus, ad munitiones accedunt; **我が方(ローマ勢)は、以前の日々に、おのおのの部署が割り当てられており、塁壁のところへ近寄った。 *fundis librilibus sudibusque, quas in opere disposuerant, ac glandibus Gallos proterrent. **堡塁に分配されていたポンド投石器や杭、並びに玉によって、ガッリア人たちを追い払った。 **:<span style="color:#009900;">(訳注:librilis funda「ポンド投石器」;古代ローマの1ポンド [[w:la:Libra pondus|libra]] は約327グラム<ref>[[w:en:Ancient Roman units of measurement#Weight]]を参照。</ref>。)</span> *⑤ Prospectu tenebris adempto multa utrimque vulnera accipiuntur. **眺望が暗闇により奪われて、双方が多くの傷を蒙った。 *Complura tormentis tela coniciuntur. **かなり多くの飛び道具が(巻上式)投石機によって投じられた。 *⑥ At [[w:la:Marcus Antonius|M.(Marcus) Antonius]] et [[w:la:Gaius Trebonius|C.(Gaius) Trebonius]] legati, **[[w:マルクス・アントニウス|マルクス・アントニウス]]と[[w:ガイウス・トレボニウス|ガイウス・トレボニウス]] [[w:レガトゥス|両副官]]は、 *quibus hae partes ad defendendum obvenerant, **この方面を防衛するために割り当てられていたが、 *qua ex parte nostros premi intellexerant, **我が方(ローマ勢)が押されぎみであると見なした一帯のために、 *his auxilio ex ulterioribus castellis deductos submittebant. **この者たちを支援するために、向こう側の砦から引き出した者たちを(援兵として)派遣した。 ===82節=== '''アレスィア内外のガッリア勢が障害物に阻まれて退く''' *① Dum longius ab munitione aberant Galli, **ガッリア人たちは(ローマ勢の)塁壁から遠くに離れていた間は、 *plus multitudine telorum proficiebant; **飛び道具の多さによって、前進していた。 *posteaquam propius successerunt, **(塁壁の方へ)さらに近くに進入して来た後では、 *aut se ipsi<ref>ipsi はβ系写本の記述で、α系写本にはない。</ref> stimulis inopinantes induebant **あるいは、思いがけず自ら「刺」に陥り、 **:<span style="color:#009900;">(訳注:stimulus「刺」については、[[#73節|73節]]⑨項を参照。)</span> *aut in scrobes delati transfodiebantur **あるいは、穴に陥落して(「百合」で)突き刺されたり、 **:<span style="color:#009900;">(訳注:「穴」と「百合」については、[[#73節|73節]]⑤~⑧項を参照。)</span> *aut ex vallo ac turribus traiecti pilis muralibus interibant. **あるいは、防柵や櫓から[[w:ピルム・ムーリアリス|防壁槍]]で射抜かれて逝った。 **:<span style="color:#009900;">(訳注:防壁槍については、[[ガリア戦記 第5巻#40節|第5巻40節]]を参照。)</span> *② Multis undique vulneribus acceptis **(ガッリア勢は)至る所で多くの傷を負ったが、 *nulla munitione perrupta, **どの(ローマ側の)塁壁も突破されなかった。 *cum lux appeteret, **<ruby><rb>暁光</rb><rp>(</rp><rt>ぎょうこう</rt><rp>)</rp></ruby>が(空を)染めたとき、 *veriti ne ab latere aperto ex superioribus castris eruptione circumvenirentur, **開けた側面から、(ローマ勢の)高所の陣営からの突撃によって包囲されないようにと怖れて、 **:<span style="color:#009900;">(訳注:開けた側面とは、盾で守られていない右側のこと。)</span> *se ad suos receperunt. **味方のところへ退却した。 *③ At interiores **それに対して、(アレスィア攻囲の)内側の者たちは、 *dum ea quae a [[w:la:Vercingetorix|Vercingetorige]] ad eruptionem praeparata erant<ref>praeparata erant は、写本(ω)ではpraeparaverant だが、このように修正提案されている。あるいは、a Vercingetorige が削除提案されている。</ref> proferunt, **[[w:ウェルキンゲトリクス|ウェルキンゲトリークス]]により、突撃のために準備していたものを運び出して *priores fossas explent, **一番前の堀を埋めている間に、 *diutius in his rebus administrandis morati **これらの事に従事することに、より長く妨げられて、 *prius suos discessisse cognoverunt quam munitionibus adpropinquarent. **塁壁に近づくよりも前に味方(=来援軍)が退去したことを知ったのだ。 *Ita re infecta in oppidum reverterunt. **こうして、事は達成されていないものの、[[w:オッピドゥム|城塞都市]]に引き返した。 ===83節=== '''ウェルカッスィウェッラウヌスが兵6万を率いて急所の丘へ向かう''' *① Bis magno cum detrimento repulsi Galli **大きな損害とともに二度も撃退されたガッリア人たちは、 *quid agant consulunt; **何をなすべきかを協議した。 *locorum peritos adhibent; **(その)土地に熟知した者たちを招いた。 *ex his superiorum castrorum situs munitionesque cognoscunt. **この者たちから、(ローマ勢の)高いところの陣営の位置や塁壁を調べ上げた。 *② Erat a septentrionibus collis, **(アレスィアの)北方に丘陵があって、 **:<span style="color:#009900;">(訳注:これは現在のレア山 le Mont R&eacute;a であると思われ、山頂にはメネルー=ル=ピトワ村<ref>[[w:fr:Ménétreux-le-Pitois]]や[http://maps.google.fr/maps?f=q&hl=fr&geocode=&q=m%C3%A9n%C3%A9treux+le+pitois&sll=42.423457,8.789063&sspn=23.611541,40.957031&ie=UTF8&t=h&hq=&hnear=M%C3%A9n%C3%A9treux-le-Pitois,+C%C3%B4te-d'Or,+Bourgogne&ll=47.55475,4.460106&spn=0.018507,0.010042&z=15 Google map]などを参照。</ref>がある。)</span> *quem propter magnitudinem circuitus **その周囲の大きさのために、 *opere circumplecti non potuerant nostri, **我が方(ローマ勢)は、堡塁により囲い込むことができずにいた。 *necessarioque<ref>-que はβ系写本の記述で、α系写本にはない。</ref> paene iniquo loco et leniter<ref>leniter はπ系写本の記述で、α系・ρ系写本では leviter となっている。</ref> declivi castra fecerunt<ref>fecerunt はα系写本の記述で、β系写本では fecerant となっている。</ref>. **やむをえず、ほとんど不利でゆるやかに傾斜した地点に陣営を造った。 *③ Haec C.(Gaius) Antistius Reginus et C.(Gaius) Caninius Rebilus legati **これを、ガーイウス・アンティスティウス・レーギーヌスとガイウス・カニニウス・レビルス [[w:レガトゥス|両副官]]が **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:''[[w:fr:Caius Antistius Reginus|Gaius Antistius Reginus]]'' は[[ガリア戦記_第6巻#1節|第6巻1節]]で既出。[[#90節|90節]]で後出。)</span> *cum duabus legionibus obtinebant. **2個軍団とともに占めていた。 *④ Cognitis per exploratores regionibus duces hostium **敵方の将帥たちは、偵察者たちを通じて一帯を調べ上げて、 *LX(sexaginta) milia ex omni numero deligunt **総員のうちから6万名を選抜した。 *earum civitatum quae maximam virtutis opinionem habebant; **武勇において大きな評判を得ている部族のうち(から選抜した)。 *⑤ quid quoque pacto agi placeat, occulte inter se constituunt; **何が、どんな方法で行なわれるのがよいか、互いに密かに取り決めた。 *adeundi tempus definiunt, cum meridie<ref>meridie は中世の写本(ω)の記述であるが、近世の写本(ς)では meridies となっている。</ref> esse videatur. **正午であると思われる頃を突撃する時と定めた。 *⑥ His copiis Vercassivellaunum Arvernum, **この軍勢を、[[w:アルウェルニ族|アルウェルニー族]]のウェルカッスィウェッラウヌス、 *unum ex quattuor ducibus, propinquum [[w:la:Vercingetorix|Vercingetorigis]], praeficiunt. **(すなわち)4人の将帥たちの1人で、[[w:ウェルキンゲトリクス|ウェルキンゲトリークス]]の親族である者に、指揮させた。 *⑦ Ille ex castris prima vigilia egressus **彼(ウェルカッスィウェッラウヌス)は、陣営から第一夜警時に進発して、 *prope confecto sub lucem itinere **夜明け前にほぼ行軍が成し遂げられて、 *post montem se occultavit **山の後ろに身を隠して、 *militesque ex nocturno labore sese reficere iussit. **兵士たちに夜間の疲労を回復しておくことを命じた。 *⑧ Cum iam meridies adpropinquare videretur, **すでに正午に近付いていると思われたときに、 *ad ea castra, quae supra demonstravimus, contendit; **前に述べた陣営のところへ急いだ。 **:<span style="color:#009900;">(訳注:本節②項を参照。)</span> *eodemque tempore equitatus ad campestres munitiones accedere **同時に(ガッリア来援軍の)[[w:騎兵隊|騎兵隊]]が平地の(ローマ勢の)塁壁のところへ近付き、 *et reliquae copiae pro castris sese ostendere coeperunt. **残りの軍勢が陣営の前に姿を現わし始めた。 ===84節=== '''ウェルキンゲトリークスらアレスィア籠城軍も善戦する''' *① [[w:la:Vercingetorix|Vercingetorix]] ex arce [[w:la:Alesia|Alesiae]] suos conspicatus ex oppido egreditur; **[[w:ウェルキンゲトリクス|ウェルキンゲトリークス]]は、[[w:アレシア|アレスィア]]の高台から味方を望見して、[[w:オッピドゥム|城塞都市]]から進発した。 *a castris<ref>a castris はβ系写本の記述で、α系写本では単に castris となっている。</ref>, longurios, musculos, falces **陣営から、長い竿、小屋、破城鎌や、 **:<span style="color:#009900;">(訳注:falx「破城鎌」については、[[ガリア戦記 第5巻#42節|第5巻42節]]を参照。)</span> *reliquaque quae eruptionis causa paraverat profert. **(塁壁を)突破するために準備していたほかのものを運び出した。 *② Pugnatur uno tempore omnibus locis atque omnia temptantur; **一時にあらゆる場所で戦われて、あらゆることが試みられた。 *quae minime visa pars firma est, huc concurritur. **あまり堅固ではないと思われる部分、ここへ襲いかかった。 *③ Romanorum manus tantis munitionibus distinetur **ローマ人の手勢は、これほどの(長大な)塁壁により離して置かれていて、 *nec facile pluribus locis occurrit. **より多くの場所には容易に駆け付けられなかった。 *④ Multum ad terrendos nostros valet clamor qui post tergum pugnantibus exstitit, **戦っている者たちの背後で生じた雄叫びは、我が方(ローマ勢)を怖れさせるために大いに力があった。 *quod suum periculum in aliena vident virtute<ref>virtute「武勇」 はβ系写本の記述で、α系写本では salute「安全」 となっている。</ref> constare; **というのは、自分たち(ローマ勢)の危険が他人(ガッリア勢)の武勇に依拠していると思ったから。 *omnia enim plerumque, quae absunt, vehementius hominum mentes perturbant. **なぜなら(そこに)不在であるものすべてはたいてい、人間の心を激しく混乱させるものであったからである。 ===85節=== '''ウェルカッスィウェッラウヌスが急所の丘を攻める''' *① Caesar idoneum locum nactus **カエサルは適当な場所を得て, *quid quaque in<ref>quaque in はβ系写本の記述で、α系写本では qua ex となっている。</ref> parte geratur cognoscit; *何が各方面でなされているのかを認識した。 *laborantibus submittit. **苦戦している者たちに(援兵を)派遣した。 *② Utrisque ad animum occurrit unum esse illud tempus, quo maxime contendi conveniat: **双方にとって、最も雌雄を決するべきはこの時のみであるということが、心に生じた。 *③ Galli, nisi perfregerint munitiones, de omni salute desperant; **ガッリア人たちは、(ローマ人の)塁壁を突破しない限り、あらゆる身の安全に絶望することになる。 *Romani, si rem obtinuerint, finem laborum omnium exspectant. **ローマ人は、もし事を成就したら、すべての労苦の終わるということを期待した。 *④ Maxime ad superiores munitiones laboratur, quo [[w:la:Vercassivellaunus|Vercassivellaunum]] missum demonstravimus. **ウェルカッスィウェッラウヌスが派遣されたと既述した、より高い塁壁の辺りで(ローマ勢は)とりわけ苦戦した。 *Iniquum loci ad declivitatem fastigium magnum habet momentum. **けわしい地形の不利な傾斜が(ローマ勢にとって)大きな影響力を持った。 *⑤ Alii tela coniciunt, alii testudine facta subeunt; **(ガッリア勢の)ある者は飛び道具を投げやって、ある者は[[w:テストゥド|亀甲陣形]]を形成して突き進んだ。 *defatigatis invicem integri succedunt. **疲労させられた者たちに対しては、新手の者たちが交代した。 *⑥ Agger ab universis in munitionem coniectus **土が総勢により(ローマ人の)塁壁に投じられて、 *et ascensum dat Gallis **ガッリア人たちに登り道を与えもしたし、 *et ea, quae in terra occultaverant Romani, contegit; **ローマ人たちが地中に隠しておいたもの(障害物)を埋め込んでしまった。 *nec iam arma nostris nec vires suppetunt. **我が方(ローマ勢)には、もはや武器も活力も十分になかった。 ===86節=== '''危急存亡の秋、両軍の苦闘''' *① His rebus cognitis **これらの事態を知って、 *Caesar [[w:la:Titus Labienus|Labienum]] cum cohortibus sex subsidio laborantibus mittit; **カエサルは、[[w:ティトゥス・ラビエヌス|ラビエーヌス]]を6個<ruby><rb>[[w:コホルス|歩兵大隊]]</rb><rp>(</rp><rt>コホルス</rt><rp>)</rp></ruby>とともに援兵として苦戦している者たちへ派遣した。 *② imperat, si sustinere non possit<ref>possit はχ系・B・M・S・β系写本の記述で、L・N写本では posset となっている。</ref>, deductis cohortibus eruptione pugnaret<ref>pugnaret はα系写本の記述で、β系写本では pugnet となっている。</ref>; **もし(塁壁の防衛が)持ちこたえられなかったならば、諸大隊を引率して突撃によって戦うように、と命令していた。 *id nisi necessario ne faciat. **それは、やむをえないのでなければ行なわないように(と命じていた)。 *③ Ipse adit reliquos, cohortatur ne labori succumbant; **(カエサル)自身は、ほかの者たちを訪れて、労苦に屈服しないようにと鼓舞した。 *omnium superiorum dimicationum fructum in eo die atque hora docet consistere. **これまでのあらゆる奮闘の結実がこの日、この時にかかっていることを説いた。 *④ Interiores desperatis campestribus locis propter magnitudinem munitionum **(アレスィアに包囲されている)内側の者たちは、塁壁の大規模さのために、平坦な地点(での突破)を断念して、 *loca praerupta ex ascensu temptant; **けわしい場所を登り坂から攻撃してみた。 *huc ea quae paraverant conferunt. **ここに、準備していたものを運び集めた。 *⑤ Multitudine telorum ex turribus propugnantes deturbant, **たくさんの飛び道具によって、防戦している者たちを櫓から駆逐した。 *aggere et cratibus fossas explent, **土砂や柴で堀を埋めて、 *falcibus vallum ac loricam rescindunt. **破城鎌によって防柵や胸壁を切り裂いた。 **:<span style="color:#009900;">(訳注:falx「破城鎌」については、[[ガリア戦記 第5巻#42節|第5巻42節]]を参照。)</span> ===87節=== '''カエサルの救援、ラビエーヌスの作戦''' *① Mittit primo<ref>primo はφ系・ρ系写本の記述で、χ系・π系写本では primum となっている。</ref> [[w:la:Decimus Iunius Brutus Albinus|Brutum adulescentem]] cum cohortibus Caesar, **カエサルは、初めに[[w:デキムス・ユニウス・ブルトゥス・アルビヌス|青年ブルトゥス]]を諸<ruby><rb>[[w:コホルス|歩兵大隊]]</rb><rp>(</rp><rt>コホルス</rt><rp>)</rp></ruby>とともに派遣して、 **:<span style="color:#009900;">(訳注:デキムス・ブルトゥスには[[ガリア戦記 第3巻#14節|第3巻14節]]で艦隊を、本巻[[#9節|9節]]②項では騎兵隊を指揮させている。)</span> *post cum aliis C.(Gaium) Fabium legatum; **後に副官のガイウス・ファビウスをほかの隊とともに(派遣した)。 *postremo ipse, cum vehementius pugnaretur, **最後には(カエサル)自身が、激しく戦われていたので、 *integros subsidio adducit. **新手の者たちを援兵として率いて行った。 *② Restituto proelio ac repulsis hostibus **戦況が回復され、敵方が撃退されると、 *eo quo Labienum miserat contendit; **ラビエーヌスを派遣していたところに急いだ。 *cohortes IIII(quattuor) ex proximo castello deducit, **近隣の砦から4個歩兵大隊を引き出して、 *equitum partem se<ref>se はβ系写本の記述で、α系写本にはない。</ref> sequi, **[[w:騎兵|騎兵]]のある一部には、自らに随行することを、 *partem circumire exteriores munitiones et ab<ref>ab はα系写本の記述で、β系写本では a となっている。</ref> tergo hostes adoriri iubet. **別の一部には、外側の塁壁を取り囲んで、敵方を背後から襲撃することを命じた。 *③ Labienus, postquam neque aggeres neque fossae vim hostium sustinere poterant, **ラビエーヌスは、土塁も堀も敵方の武力に持ちこたえることができなかった後で、 *coactis una XL(quadraginta) cohortibus, quas ex proximis praesidiis deductas fors obtulit, **近隣の宿営地から、はからずも引き出しておいた40個歩兵大隊を集結させて、 **:<span style="color:#009900;">(訳注:この数は、写本によって異なり、モイゼルらは undecim「11個」と提案している。)</span> *Caesarem per nuntios facit certiorem, quid faciendum existimet. **何がなされるべきと考えたのかを、カエサルに伝令を通じて報告した。 *Accelerat Caesar, ut proelio intersit. **カエサルは、戦闘(の場)に居合わせるように急いで行った。 ===88節=== '''雌雄決し、ガッリア来援軍が敗走''' *① Eius adventu ex colore vestitus cognito, quo insigni in proeliis uti consuerat, **彼(カエサル)の到来が、(彼が)戦闘において目印として用いるのが常であった衣服の色から認識され、 **:<span style="color:#009900;">(訳注:カエサルは、真紅の外套を着用していたようである。)</span> *turmisque equitum et cohortibus visis quas se sequi iusserat, **(カエサルが)自らに随行することを命じていた諸<ruby><rb>[[w:騎兵|騎兵]]小隊</rb><rp>(</rp><rt>トゥルマ</rt><rp>)</rp></ruby>や諸<ruby><rb>[[w:コホルス|歩兵大隊]]</rb><rp>(</rp><rt>コホルス</rt><rp>)</rp></ruby>が望見されて、 *ut de locis superioribus haec declivia et devexa cernebantur, **(ウェルカッスィウェッラウヌスらが派遣された)高地から、これらの斜面や急坂が見分けられたので、 *hostes proelium committunt. **敵方(ガッリア勢)は戦端を開いた。 *② Utrimque clamore sublato **(ガッリア来援軍とアレスィア籠城軍の)双方から雄叫びが上げられて、 *excipit rursus ex vallo atque omnibus munitionibus clamor. **さらに、防柵やすべての塁壁から(ローマ勢の)雄叫びが続いた。 *Nostri omissis pilis gladiis rem gerunt. **我が方(ローマ勢)は<ruby><rb>[[w:ピルム|投槍]]</rb><rp>(</rp><rt>ピルム</rt><rp>)</rp></ruby>を放棄して、<ruby><rb>[[w:グラディウス (武器)|長剣]]</rb><rp>(</rp><rt>グラディウス</rt><rp>)</rp></ruby>で合戦した。 *③ Repente post tergum equitatus cernitur; **不意に(ガッリア勢の)背後に(ローマ勢の)騎兵隊が見分けられた。 **:<span style="color:#009900;">(訳注:87節②項で、カエサルは騎兵隊に外壁を迂回して敵を背後から襲撃するように命じていた。)</span> *cohortes aliae adpropinquant. **別の諸<ruby><rb>歩兵大隊</rb><rp>(</rp><rt>コホルス</rt><rp>)</rp></ruby>も接近して来た。 *Hostes terga vertunt; **敵方(ガッリア勢)は、(ローマ勢に)背を向けた。 *fugientibus equites occurrunt. **逃げる者たち(ガッリア勢)を(ローマ勢の)騎兵たちが追撃した。 *Fit magna caedes. **大虐殺が起こった。 *④ Sedullus, dux et princeps Lemovicum, occiditur; **レモウィケス族の将帥で領袖であるセドゥッルスが斃された。 *[[w:la:Vercassivellaunus|Vercassivellaunus]] Arvernus vivus in fuga comprehenditur; **[[w:アルウェルニ族|アルウェルニー族]]のウェルカッスィウェッラウヌスは逃亡中に生きたまま捕らえられた。 *signa militaria LXXIIII(septuaginta quattuor) ad Caesarem referuntur; **(ガッリア勢の)74本の軍旗がカエサルのところへ運んで来られた。 *pauci ex tanto numero se incolumes<ref>se incolumes はα系写本の記述で、β系写本では incolumes se となっている。</ref> in castra recipiunt. **これほどの兵数のうち、わずかな者たち(だけ)が無傷のまま陣営に退却した。 *⑤ Conspicati ex oppido caedem et fugam suorum **(アレスィアの)[[w:オッピドゥム|城塞都市]]から味方の虐殺や逃亡を視認した者たちは、 *desperata salute copias a munitionibus reducunt. **身の安全に絶望して、軍勢を塁壁から(城塞都市に)呼び戻した。 *⑥ Fit protinus hac re audita ex castris Gallorum fuga. **この事態が聞かれるとただちに、(来援に来ていた)ガッリア人たちの陣営から逃亡が生じた。 *Quodnisi crebris subsidiis ac totius diei labore milites essent defessi, **もし、たびたびの(味方への)支援や一日中の働きにより兵士たちが疲れ果てていなかったならば、 *omnes hostium copiae deleri potuissent. **敵方(ガッリア来援軍)の全軍勢が壊滅させられることが可能であっただろう。 *⑦ De media nocte missus equitatus novissimum agmen consequitur; **真夜中の頃に、派遣されていた(ローマ勢の)騎兵隊が(ガッリア勢の)後衛に追いついて、 *magnus numerus capitur atque interficitur; **(ガッリア勢の)大多数が捕らえられ、かつ殺戮された。 *reliqui ex fuga in civitates discedunt. **(ガッリア来援軍の)残りの者たちは、逃亡して諸部族のところに逃げのびた。 ==ガッリア同盟軍主力の降伏== ===89節=== [[画像:Vercingétorix se rend à César 1886 HPMotte.jpg|thumb|right|330px|「カエサルの陣営に投降するウェルキンゲトリークス」<br>“Vercingétorix se rendant au camp de César”、<br>アンリ=ポール・モット([[w:fr:Henri-Paul_Motte|Henri-Paul Motte]])画、1886年。<br>[[w:ル・ピュイ=アン=ヴレ|ル・ピュイ=アン=ヴレ]]のクロザティエ美術館([[w:fr:Musée Crozatier au Puy-en-Velay|Musée Crozatier]] au [[w:fr:Le Puy-en-Velay|Puy-en-Velay]])蔵。]] [[画像:Lionel Royer - Vercingetorix Throwing down His Weapons at the feet of Julius Caesar.jpg|thumb|right|330px|「ウェルキンゲトリークスが彼の武器をユリウス・カエサルの足元に投げ捨てる」“Vercingétorix jette ses armes aux pieds de Jules César”、リオネル=ノエル・ロワイエ([[w:fr:Lionel Royer|Lionel-Noël Royer]]) 画、1899年。[[w:ル・ピュイ=アン=ヴレ|ル・ピュイ=アン=ヴレ]]のクロザティエ美術館([[w:fr:Musée Crozatier au Puy-en-Velay|Musée Crozatier]] au [[w:fr:Le Puy-en-Velay|Puy-en-Velay]])蔵。]] [[画像:Coin_Vercingetorix.jpg|thumb|right|300px|ローマがBC48年に発行した[[w:デナリウス|デナリウス銀貨]]。ウェルキンゲトリークスの横顔が刻まれているとも言われ、[[w:マメルティヌスの牢獄|トゥッリアヌム牢獄]]に虜囚となっているかつてのガッリアの盟主を見せしめにしたものとも考えられる。彼はBC46年に処刑されたが、カエサルもBC44年に暗殺された。]] '''ウェルキンゲトリークスとアレスィア籠城軍の降伏''' *① Postero die [[w:la:Vercingetorix|Vercingetorix]] concilio convocato **(来援軍が敗走した)翌日に、[[w:ウェルキンゲトリクス|ウェルキンゲトリークス]]は会合を召集して、 *id bellum se suscepisse<ref>se suscepisse はα系写本の記述で、β系写本では suscepisse se となっている。</ref> **この戦争を引き受けたことは *non suarum necessitatum<ref>necessitatum はχ系・S・L・N・β系写本の記述で、B・M写本では necessitatium となっている。</ref>, sed communis libertatis causa demonstrat, **自らの(野心の)必要性からではなく、(ガッリア)共通の自由のためだ、と明言した。 *② et quoniam sit fortunae cedendum, **運命には従うべきものなのであるから、 *ad utramque rem se illis offerre, **(敗軍の将として、以下の)どちらの事にも、自ら(の処遇)を彼ら(ガッリア人たち)に委ねよう。 *seu morte sua Romanis satisfacere **あるいは(ウェルキンゲトリークス)自らの死によってローマ人たちに償うこと(を欲する)にせよ、 *seu vivum tradere velint. **あるいは生きたまま(ローマ人たちに)引き渡すことを欲するにせよ、と。 *③ Mittuntur de his rebus ad Caesarem legati. **これらの事柄について、カエサルのところへ使節たちが遣わされた。 *Iubet arma tradi, principes produci. **(カエサルは)武器が引き渡されること、領袖たちが連行されて来ることを命じた。 *④ Ipse in munitione pro castris consedit; **(カエサル)自身は、陣営の前の塁壁のところに腰掛けた。 *eo duces producuntur. **そこに(アレスィアに籠城していた)将帥たちが連行されて来た。 *Vercingetorix deditur, arma proiciuntur. **ウェルキンゲトリークスが引き渡されて、武器が投げ捨てられた。 *⑤ Reservatis [[w:la:Haedui|Haeduis]] atque Arvernis, **(カエサルは)[[w:ハエドゥイ族|ハエドゥイー族]]と[[w:アルウェルニ族|アルウェルニー族]](の将兵たち)を保持しておいた。 *si per eos civitates reciperare<ref>reciperare はχ系・B<sup>1</sup>・S・U写本の記述で、B<sup>c</sup>・M・L・N・π系・R写本では recuperare となっている。</ref> posset, **彼らによって両部族国家を(同盟国として)回復できないだろうかと(考えたのだ)。 *ex reliquis captivis toto exercitui capita singula praedae nomine distribuit. **残りの(諸部族の)捕虜たちから、全軍(のローマ人)に一名ずつを戦利品という名目で分配した。 ===90節=== [[画像:Autun_porte_Saint-André.JPG|thumb|right|300px|[[w:オータン|オータン市]]に遺されたローマ時代からの聖アンドレ門。[[w:ビブラクテ|ビブラクテ]]を首邑としていた[[w:ハエドゥイ族|ハエドゥイー族]]は、ローマ帝政初期に東方の平地に移り、「[[w:アウグストゥス|アウグストゥス]]の砦」を意味するアウグストドゥーヌム([[w:la:Augustodunum|Augustodunum]])を建設して首邑とした。これが現在のオータン(Autun)となっている。]] [[画像:Clermont_vu_de_Montjuzet.JPG|thumb|right|300px|[[w:クレルモン=フェラン|クレルモン=フェラン市]]の街並み。ローマに降伏した[[w:アルウェルニ族|アルウェルニー族]]は、後に首邑のゲルゴウィアを廃城とされ、北方の平野にあるネメトゥム(Nemetum)に移住させられた。帝政初期に[[w:アウグストゥス|アウグストゥス]]に由来するアウグストネメトゥム([[w:la:Augustonemetum|Augustonemetum]])に改称して、[[w:クレルモン教会会議|クレルモン教会会議]]が開かれるなど宗教的中心地として栄え、現在のクレルモン=フェランに至る。]] '''ハエドゥイー族とアルウェルニー族の降伏、諸軍団の冬営''' *① His rebus confectis in [[w:la:Haedui|Haeduos]] proficiscitur; **これらの事が成し遂げられて、(カエサルは)[[w:ハエドゥイ族|ハエドゥイー族]]のところに出発した。 *civitatem recipit. **同部族を(同盟国として)回復した。 *② Eo legati ab Arvernis missi: **そこに、[[w:アルウェルニ族|アルウェルニー族]]から使節たちが遣わされて来て、 *quae imperaret, se facturos pollicentur. **自分たちは(カエサルが)命令したことを行なうであろう、と約束した。 *Imperat magnum numerum obsidum. **(カエサルは)多数の人質(の供出)を命令した。 *③ Legiones in hiberna mittit. **(カエサルは)諸[[w:ローマ軍団|軍団]]を冬営地に派遣した。 *Captivorum circiter XX(viginti) milia Haeduis Arvernisque reddit. **捕虜たち約2万人をハエドゥイー族とアルウェルニー族に返還した。 *④ [[w:la:Titus Labienus|T.<small>(Titum)</small> Labienum]] duabus cum<ref>duabus cum はχ系・B・M・S写本の記述で、L・N・β系写本では cum duabus となっている。</ref> legionibus et equitatu in Sequanos proficisci iubet; **[[w:ティトゥス・ラビエヌス|ティトゥス・ラビエーヌス]]を2個軍団および[[w:騎兵|騎兵隊]]とともにセクアニ族のところに出発することを命じた。 *huic M.<small>(Marcum)</small> Sempronium Rutilum attribuit. **彼には、マルクス・[[w:センプロニウス氏族|センプロニウス]]・ルティルスを付属させた。 *⑤ C.<small>(Gaium)</small> Fabium legatum et L.<small>(Lucium)</small> Minucium Basilum cum legionibus duabus in Remis conlocat, **副官 ガーイウス・ファビウスとルキウス・ミヌキウス・バスィルスを2個軍団とともにレーミー族のところに配置した。 **:<span style="color:#009900;">(訳注:バスィルスは[[ガリア戦記 第6巻#29節|第6巻29節]]で騎兵隊を指揮した。)</span> *ne quam ab<ref>ab はφ系写本の記述で、χ系・β系写本では a となっている。</ref> finitimis Bellovacis calamitatem accipiant. **(レーミー族が)近隣のベッロウァキ族から何らかの災禍を蒙らないようにしたのである。 *⑥ C.<small>(Gaium)</small> Antistium Reginum in Ambivaretos, **ガーイウス・アンティスティウス・レーギーヌスをアンビウァレティ族のところに、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:''[[w:fr:Caius Antistius Reginus|Gaius Antistius Reginus]]'' は[[ガリア戦記_第6巻#1節|第6巻1節]]、[[#83節|本巻83節]]で既出。)</span> *T.<small>(Titum)</small> Sextium in Bituriges, **ティトゥス・セクスティウスをビトゥリゲース族のところに、 **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[w:en:Titus Sextius|Titus Sextius]] も[[ガリア戦記_第6巻#1節|第6巻1節]]で既出。第6巻の年からカエサルの副官、<br>     [[w:三頭政治#第二回三頭政治|第二回三頭政治]]では[[w:アフリカ属州|アフリカ属州]]の総督を務め、[[w:マルクス・アエミリウス・レピドゥス|レピドゥス]]に引き継ぐ。) *C.<small>(Gaium)</small> Caninium Rebilum in Rutenos cum singulis legionibus mittit. **ガーイウス・カニニウス・レビルスをルテーニー族のところに、それぞれ1個軍団とともに派遣した。 *⑦ [[w:la:Quintus Tullius Cicero|Q.<small>(Quintum)</small> Tullium Ciceronem]] et P.<small>(Publium)</small> Sulpicium **[[w:クィントゥス・トゥッリウス・キケロ|クィーントゥス・トゥッリウス・キケロー]]とプーブリウス・スルピキウス(・ルーフス)を **:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:カエサルの副官 ''[[w:en:Sulpicia_gens#Sulpicii_Rufi|Publius Sulpicius Rufus]] は、<br>    [[ガリア戦記_第4巻#22節|第4巻22節]]で既述。[[内乱記_第1巻#74節|『内乱記』第1巻74節]]でも言及される。<br>    [[w:紀元前48年|BC48年]]に[[w:プラエトル|法務官]]、[[w:紀元前42年|BC42年]]に[[w:ケンソル|監察官]]に任官する。)</span> *[[w:la:Cabillonum|Cavilloni]]<ref>Cavilloni はβ系写本の記述で、α系写本などでは Cabilloni となっている。</ref> et [[w:la:Matisco|Matiscone]] in Haeduis ad Ararim rei frumentariae causa conlocat. **ハエドゥイー族のところのアラル川沿いのカウィッロヌムとマティスコに、糧秣調達のために配置した。 **:<span style="color:#009900;">(訳注:カウィッロヌムは現在の[[w:シャロン=スュル=ソーヌ|シャロン=スュル=ソーヌ]]、マティスコは現在の[[w:マコン|マコン]]。)</span> *Ipse [[w:la:Bibracte|Bibracte]] hiemare constituit. **(カエサル)自身は、[[w:ビブラクテ|ビブラクテ]]で冬営することを決めた。 *⑧ His litteris<ref>his litteris「これらが書簡により(知られると)」はα系写本の記述で、β系写本では huius anni rebus「この年の事績が(知られると)」と異なっており、huius anni rebus <ex Caesaris> litteris「この年の事績が<カエサルの>書簡により(知られると)」 などと修正提案されている。」</ref> cognitis Romae dierum viginti supplicatio redditur. **これらが(カエサルの)書簡により知られると、ローマで20日間の感謝祭が許された。 **:<span style="color:#009900;">(訳注:[[ガリア戦記 第2巻#35節|第2巻35節]]では、かつてない15日間の感謝祭が決議されたが、今回はそれを超えるものであった。)</span> ---- *<span style="background-color:#99ff99;">「ガリア戦記 第7巻」了。「[[ガリア戦記 第8巻]]」へ続く。</span> ==脚注== <references /> ==参考リンク== '''ウィキペディア英語版など''' *'''[[w:en:Category:Tribes of ancient Gaul|Category:Tribes of ancient Gaul]]'''('''[[w:Category:ガリアの部族|Category:ガリアの部族]]''')- [[w:fr:Catégorie:Personnalité gauloise|fr:Catégorie:Personnalité gauloise]] **[[w:en:Allobroges|Allobroges]](アッロブロゲス族) **'''[[w:en:Arverni|Arverni]]'''('''[[w:アルウェルニ族|アルウェルニー族]]''') **:'''[[w:en:Vercingetorix|Vercingetorix]]'''('''[[w:ウェルキンゲトリクス|ウェルキンゲトリークス]]''')- '''<span style="background-color:#ffff00;">[[w:la:Vercingetorix|la:Vercingetorix]]</span>''' **:[[w:fr:Celtillos|fr:Celtillos]](ケルティッルス);ウェルキンゲトリークスの父 **:[[w:fr:Gobannitio|fr:Gobannitio]](ゴバンニティオ);ウェルキンゲトリークスのおじ **:[[w:en:Vercassivellaunos|Vercassivellaunos]](ウェルカッスィウェッラウヌス) - <span style="background-color:#ffff00;">[[w:la:Vercassivellaunus|la:Vercassivellaunus]]</span> **:Critognatus(クリトグナトゥス)- <span style="background-color:#ffff00;">[[w:la:Critognatus|la:Critognatus]]</span> **[[w:en:Atrebates|Atrebates]](アトレバテス族) **:[[w:en:Commius|Commius]]([[w:コンミウス|コンミウス]]):ガッリアとブリタンニアにおけるアトレバテス族の王 **[[w:en:Aedui|Aedui]]([[w:ハエドゥイ族|ハエドゥイー族]])- '''<span style="background-color:#ffff00;">[[w:la:Haedui|la:Haedui]]</span>''';ガッリア中部の有力部族 - [[w:fr:Éduens|fr:Éduens]] <[[w:fr:Catégorie:Éduens|fr:Catégorie:Éduens]] **:[[w:en:Convictolitavis|Convictolitavis]](コンウィクトリタウィス)- [[w:fr:Convictolitavis|fr:Convictolitavis]] **:[[w:fr:Cotos|fr:Cotos]](コトゥス) **:[[w:fr:Litaviccos|fr:Litaviccos]](リタウィックス) **:エポレドリクス - <span style="background-color:#ffff00;">[[w:la:Eporedorix|la:Eporedorix]]</span> **:ウィリドマルス **[[w:en:Andes (Andecavi)|Andes (Andecavi)]](アンデス族);現在の[[w:アンジェ|アンジェ]](Angers)周辺の部族 **[[w:en:Aulerci|Aulerci]](アウレルキ族);現在のフランス北西部に居住していた部族連合 **[[w:en:Bellovaci|Bellovaci]](ベッロウァキ族) **[[w:en:Bituriges|Bituriges]](ビトゥリゲース族);現在の[[w:ブールジュ|ブールジュ]](Bourges)周辺の部族。[[#5節|5節]]でガッリア同盟軍に寝返る。 **[[w:en:Boii|Boii]](ボイイ族)- <span style="background-color:#ffff00;">[[w:la:Boii|la:Boii]]</span>;[[w:ボヘミア|ボヘミア]]([[w:la:Bohemia|la:Bohemia]])から移住してきた部族 **Cadurci(カドゥルキー族);現在の[[w:カオール|カオール]](Cahors)周辺の部族 - [[w:fr:Cadurques|fr:Cadurques]] **:[[w:en:Lucterius|Lucterius]](ルクテリウス);カドゥルキー族の指導者、[[#5節|5節]]を参照。 **[[w:en:Carnutes|Carnutes]](カルヌーテース族);現在の[[w:シャルトル|シャルトル]](Chartres)周辺の部族 **[[w:en:Gabali|Gabali]](ガバリ族) **Haedui ⇒ Aedui **[[w:en:Helvii|Helvii]](ヘルウィイ族);ガッリア南部にいたローマの同盟部族 **[[w:en:Lemovices|Lemovices]](レモウィケス族);現在の[[w:リモージュ|リモージュ]](Limoges)周辺の部族 **:[[w:en:Sedullos|Sedullos]](セドゥッルス Sedullus);レモウィケス族の将帥・領袖 **[[w:en:Lingones|Lingones]](リンゴネス族)- [[w:fr:Lingons|fr:Lingons]];現在のラングル([[w:en:Langres|Langres]])周辺の部族 **[[w:en:Mandubii|Mandubii]](マンドゥビイ族);[[w:アレシア|アレスィア]]周辺にいた部族 **Nitiobroges(ニティオブロゲス族)- [[w:fr:Nitiobroges|fr:Nitiobroges]] **:[[w:fr:Ollovico|fr:Ollovico]](オッロウィコ);ローマ元老院から友人と呼ばれた王 **:[[w:fr:Teutomatos|fr:Teutomatos]](テウトマトゥス);王で、オッロウィコの子 **[[w:en:Parisii (Gaul)|Parisii (Gaul)]]([[w:パリシイ族|パリスィイ族]]);現在の[[w:パリ|パリ]]周辺の部族 **[[w:en:Pictones|Pictones]](ピクトネス族);現在の[[w:ポワチエ|ポワティエ]](Poitiers)周辺の部族 **[[w:en:Remi|Remi]](レーミー族) **[[w:en:Ruteni|Ruteni]](ルテーニー族) **[[w:en:Segusiavi|Segusiavi]](セグスィアウィ族) **[[w:en:Senones|Senones]](セノネース族)- <span style="background-color:#ffff00;">[[w:la:Senones|la:Senones]]</span>;現在の[[w:サン (ヨンヌ県)|サン]](Sens)周辺の部族 ***[[w:en:Acco|Acco]](アッコー) **[[w:en:Sequani|Sequani]](セクアニ族) **[[w:en:Treveri|Treveri]](トレウェリ族) **[[w:en:Turones|Turones]](トゥロニ族/トゥロネス族);現在の[[w:トゥール (アンドル=エ=ロワール県)|トゥール]](Tours)周辺の部族 **[[w:en:Volcae|Volcae]](ウォルカエ族) *<span style="background-color:#ffff00;">[[w:la:Germani|la:Germani]]</span>(ゲルマニア人) *'''ガッリアの地名''' - '''[[w:la:Categoria:Urbes Franciae|la:Categoria:Urbes Franciae]]'''(フランスの都市) **<span style="background-color:#ffff00;">[[w:la:Agedincum|la:Agedincum]]</span>(アゲディンクム);現在の[[w:サンス|サンス]]([[w:en:Sens|Sens]]) **[[w:en:Alesia_(city)|Alesia (city)]]([[w:アレシア|アレスィア]])- <span style="background-color:#ffff00;">[[w:la:Alesia|la:Alesia]]</span>:現在のアリーズ=サント=レーヌ([[w:fr:Alise-Sainte-Reine|fr:Alise-Sainte-Reine]]) **:'''[[w:en:Battle_of_Alesia|Battle of Alesia]]'''('''[[w:アレシアの戦い|アレスィアの戦い]]''')- '''<span style="background-color:#ffff00;">[[w:la:Alesiae_pugna|la:Alesiae pugna]]</span>''' **[[w:en:Avaricum|Avaricum]] ⇒ [[w:en:Bourges|Bourges]](アウァーリクム - 現在の[[w:ブールジュ|ブールジュ]])- <span style="background-color:#ffff00;">[[w:la:Avaricum_Biturigum|la:Avaricum Biturigum]]</span> **[[w:en:Bibracte|Bibracte]]([[w:ビブラクテ|ビブラクテ]]) - <span style="background-color:#ffff00;">[[w:la:Bibracte|la:Bibracte]]</span>:[[w:ハエドゥイ族|ハエドゥイー族]]の首邑。現在のボーヴレ山([[w:fr:Mont_Beuvray|fr:Mont Beuvray]])の山頂に位置していた。 **<span style="background-color:#ffff00;">[[w:la:Cabillonum|la:Cabillonum]]</span>(カビッロヌム/カウィッロヌム)- 現在の[[w:シャロン=スュル=ソーヌ|シャロン=スュル=ソーヌ]]([[w:fr:Chalon-sur-Saône|fr:Chalon-sur-Saône]]) **[[w:en:Cenabum|Cenabum]](ケナブム)- 現在の[[w:オルレアン|オルレアン]] - [[w:fr:Cenabum|fr:Cenabum]] **<span style="background-color:#ffff00;">[[w:la:Decetia|la:Decetia]]</span>(デケティア)- [[w:en:Decize|en:Decize]] - 現在のドスィーズ(ドシーズ)([[w:fr:Decize|fr:Decize]]) **[[w:en:Gergovie|Gergovie]](ゲルゴウィア)- <span style="background-color:#ffff00;">[[w:la:Gergovia|la:Gergovia]]</span> **:'''[[w:en:Battle of Gergovia|Battle of Gergovia]]'''('''[[w:ゲルゴウィアの戦い|ゲルゴウィアの戦い]]''')- '''<span style="background-color:#ffff00;">[[w:la:Obsidio Gergoviensis|la:Obsidio Gergoviensis]]</span>''' **[[w:en:Gorgobina|Gorgobina]](ゴルゴビナ);ボイイ族が定住した城塞都市。現在のサン=パリズ=ル=シャテル([[w:en:Saint-Parize-le-Châtel|Saint-Parize-le-Châtel]])またはラ・ゲルシュ([[w:en:La Guerche|La Guerche]]) **'''[[w:en:Lutetia|Lutetia]]'''('''[[w:ルテティア|ルテティア]]'''/ルテキア);[[w:パリシイ族|パリスィイ族]]の首邑、現在の[[w:パリ|パリ市]] - <span style="background-color:#ffff00;">[[w:la:Lutetia|la:Lutetia]]</span> **<span style="background-color:#ffff00;">[[w:la:Matisco|la:Matisco]]</span>(マティスコ);現在の[[w:マコン|マコン]](Mâcon) **Metlosenum(メトロセドゥム/メティオセドゥム/メロドゥーヌム);現在の[[w:ムラン|ムラン]] - <span style="background-color:#ffff00;">[[w:la:Melodunum|la:Melodunum]]</span> **[[w:en:Narbonne|Narbonne]]([[w:ナルボンヌ|ナルボンヌ]];ラテン名ナルボ)- <span style="background-color:#ffff00;">[[w:la:Narbo|la:Narbo]]</span>;ガッリア南部・地中海岸のローマの拠点 **[[w:en:Noviodunum|Noviodunum]](ノウィオドゥーヌム)- 現在のヌン=スュル=ブーヴロン([[w:en:Neung-sur-Beuvron|Neung-sur-Beuvron]])と推定されている。従来はローヌ川沿いの[[w:サンセール|サンセール]]([[w:en:Sancerre|Sancerre]])が有力だった **[[w:en:Vellaunodunum|Vellaunodunum]](ウェッラウノドゥーヌム)- [[w:fr:Vellaunodunum|fr:Vellaunodunum]];現在のモンタルジ([[w:en:Montargis|Montargis]])やボーヌ=ラ=ロランド([[w:en:Beaune-la-Rolande|Beaune-la-Rolande]])、シャトー=ランドン([[w:en:Château-Landon|Château-Landon]])などと推定されている **[[w:en:Vienne, Isère|Vienne, Isère]](ヴィエンヌ;ラテン名ウィエンナ)- [[w:la:Vienna|la:Vienna]] *'''ガッリアの地形''' **Cevenna(ケウェンナ山地):現在のセヴェンヌ山地([[w:fr:Cévennes|fr:Cévennes]]・[[w:en:Cévennes|Cévennes]]) **<span style="background-color:#ffff00;">[[w:la:Elaver|la:Elaver]]</span>(エラウェル川):現在の[[w:アリエ川|アリエ川]]([[w:fr:Allier (rivière)|fr:Allier (rivière)]]) **<span style="background-color:#ffff00;">[[w:la:Liger|la:Liger]]</span>(リゲル川):現在の[[w:ロワール川|ロワール川]]([[w:fr:Loire (fleuve)|fr:Loire (fleuve)]]) **<span style="background-color:#ffff00;">[[w:la:Rhenus|la:Rhenus]]</span>(レヌス川):現在の[[w:ライン川|ライン川]]([[w:fr:Rhin|fr:Rhin]]) **<span style="background-color:#ffff00;">[[w:la:Rhodanus|la:Rhodanus]]</span>(ロダヌス川):現在の[[w:ローヌ川|ローヌ川]]([[w:fr:Rhône|fr:Rhône]]) **<span style="background-color:#ffff00;">[[w:la:Sequana|la:Sequana]]</span>(セクアナ川):現在の[[w:セーヌ川|セーヌ川]]([[w:fr:Seine|fr:Seine]]) *ローマ勢 **[[w:en:Mark_Antony|Mark Antony]]([[w:マルクス・アントニウス|マルクス・'''アントニウス''']])- <span style="background-color:#ffff00;">[[w:la:Marcus_Antonius|la:Marcus Antonius]]</span> **[[w:en:Decimus_Junius_Brutus_Albinus|Decimus Junius '''Brutus''' Albinus]]([[w:デキムス・ユニウス・ブルトゥス・アルビヌス|デキムス・ユニウス・'''ブルトゥス'''・アルビヌス]])- <span style="background-color:#ffff00;">[[w:la:Decimus_Iunius_Brutus_Albinus|Decimus Iunius Brutus Albinus]]</span>([[#9節|9節]]) **[[w:en:Quintus Tullius Cicero|Quintus Tullius '''Cicero''']]([[w:クィントゥス・トゥッリウス・キケロ|クィントゥス・トゥッリウス・'''キケロ''']])- <span style="background-color:#ffff00;">[[w:la:Quintus Tullius Cicero|la:Quintus Tullius Cicero]]</span>:カエサルの副官 **Gaius '''Fabius'''(ガイウス・'''ファビウス'''):カエサルの副官 **[[w:en:Titus Labienus|Titus '''Labienus''']]([[w:ティトゥス・ラビエヌス|ティトゥス・'''ラビエーヌス''']])- <span style="background-color:#ffff00;">[[w:la:Titus Labienus|la:Titus Labienus]]</span>:カエサルの副官 **[[w:en:Trebonius|'''Trebonius''']]([[w:ガイウス・トレボニウス|ガイウス・'''トレボニウス''']])- <span style="background-color:#ffff00;">[[w:la:Gaius_Trebonius|la:Gaius Trebonius]]</span>:カエサルの副官 **[[w:en:Lucius Julius Caesar IV|Lucius Julius '''Caesar''' IV]](ルキウス・ユリウス・'''カエサル'''4世):総督カエサルの副官で、4代前の高祖父を共有する。BC64年に執政官を務めた。 *イタリア方面 **[[w:en:Cisalpine_Gaul|Cisalpine Gaul]]([[w:ガリア・キサルピナ|ガッリア・キサルピーナ]]) - [[w:la:Gallia Cisalpina|la:Gallia Cisalpina]] **[[w:en:Populares|Populares]]([[w:ポプラレス|ポプラレス]];民衆派)- [[w:la:Populares|la:Populares]] **:[[w:en:Publius_Clodius_Pulcher|Publius Clodius Pulcher]]([[w:プブリウス・クロディウス・プルケル|プブリウス・クロディウス・プルケル]]) - [[w:la:Publius_Clodius_Pulcher|la:Publius Clodius Pulcher]] **[[w:en:Optimates|Optimates]]([[w:オプティマテス|オプティマテス]];元老院派) **:[[w:en:Cicero|Cicero]]([[w:マルクス・トゥッリウス・キケロ|マルクス・トゥッリウス・キケロ]])- [[w:la:Marcus_Tullius_Cicero|la:Marcus Tullius Cicero]] **:[[w:en:Titus_Annius_Milo|Titus Annius Milo]](ティトゥス・アンニウス・ミロ)- [[w:la:Titus_Annius_Milo|la:Titus Annius Milo]] **:[[w:en:Pompey|Pompey]]([[w:グナエウス・ポンペイウス|グナエウス・ポンペイウス]])- [[w:la:Gnaeus_Pompeius_Magnus|la:Gnaeus Pompeius Magnus]] ipqs2orndt10qw9a1g7g9cwim7khp43 白黒写真の暗室作業/参考文献 0 13903 305075 280632 2026-10-22T11:33:33Z Jcb 92857 305075 wikitext text/x-wiki ==参考文献== *{{wikicite | ref=refY1985 | reference=竹内明・赤塚洋ほか『よいこのための写真の本』名古屋大学写真部、1985年。非売品。}} *{{wikicite | ref=refY1995 | reference=先間康博『新版よいこのための写真の本』名古屋大学写真部、1995年。非売品。}} *{{wikicite | ref=refSatow | reference=Y. Ernest Satow, ''35 Mm Negs and Prints, and How to Get the Most from Them'', Amphoto, 1969. {{ISBN|978-0817404949}}}} *{{wikicite | ref=refHozon | reference=日本写真学会画像保存研究会『写真の保存・展示・修復』武蔵野クリエイト、1996年。{{ISBN|978-4944022045}}}} *{{wikicite | ref=refSyori | reference=服部冬樹・蔵田好之ほか『B&W プリント処理の実際』玄光社〈コマーシャルフォトシリーズ 81〉、1997年。{{ISBN|978-4768300633}}}} *{{wikicite | ref=refMGIV | reference=『[http://www.ilfordphoto.jp/products/datasheet/MG4RCDX.pdf ILFORD MULTIGRADE IV RC DELUXE データシート]』中外写真薬品株式会社、1999年。}} {{分岐スタブ|100406}} 8vu18flx6v1wjffrj5gxlfiwrbna0at JSON 0 14192 305089 270383 2026-10-22T11:44:19Z Jcb 92857 305089 wikitext text/x-wiki '''JSON'''(ジェイソン、'''''J'''ava'''S'''cript '''O'''bject '''N'''otation'')は、[[JavaScript]]のオブジェクトリテラル構文を基にした軽量なデータ記述言語およびデータシリアライゼーションフォーマットです。そのシンプルさと汎用性から、WebアプリケーションやAPI間のデータ交換において広く利用されています。 == 文法 == JSONは、JavaScriptの基本的なデータ型である <code>[[JavaScript/false|false]]</code>、<code>[[JavaScript/null|null]]</code>、<code>[[JavaScript/true|true]]</code>、<code>[[JavaScript/Object|Object]]</code>、<code>[[JavaScript/Array|Array]]</code>、<code>[[JavaScript/Number|Number]]</code>、<code>[[JavaScript/String|String]]</code> の7種類のリテラルを組み合わせたシリアライズ形式です( {{RFC|8259}} )。通常、トップレベルのデータ構造は連想配列(Object)として表現されますが、仕様上は他のデータ型もトップレベルとして使用可能です。例えば、単一の <code>[[JavaScript/false|false]]</code>、<code>[[JavaScript/null|null]]</code>、<code>[[JavaScript/true|true]]</code>、あるいは数値 <code>[[JavaScript/0|0]]</code> も有効なJSONデータと見なされます。ただし、Objectのキーは文字列に限定されるという制約があり、これはJavaScriptの内部オブジェクトとは異なる点です<ref>JavaScriptに存在する[[JavaScript/BigInt|BigInt]]や[[JavaScript/Symbol|Symbol]]などのオブジェクトにも対応していません。</ref>。 === JSONのデータ構造 === JSONのデータ構造は、以下の要素で構成されます。 # '''オブジェクト (Object)''' #* キーと値のペアの集合で構成される。 #* キーは文字列で、値は任意のJSONデータ型を取る。 #* オブジェクトは <code>{ }</code> で囲まれ、キーと値のペアはカンマ <code>,</code> で区切られる。 #* キーと値のペアは <code>キー: 値</code> の形式で表される。 #* 例: #:<syntaxhighlight lang=json copy> { "name": "John", "age": 30, "isMarried": true, "hobbies": ["reading", "swimming", "traveling"], "address": { "city": "Tokyo", "country": "Japan" } } </syntaxhighlight> # '''配列 (Array)''' #* 値の集合で構成される。 #* 配列は <code>[ ]</code> で囲まれ、値はカンマ <code>,</code> で区切られる。 #* 配列には任意のJSONデータ型を含めることができる。 #* 例: #:<syntaxhighlight lang=json copy> ["apple", "banana", "orange", 123, {"name": "John", "age": 30}] </syntaxhighlight> # '''文字列 (String)''' #* ダブルクォーテーション <code>"</code> で囲まれた文字列で表される。 #* 改行文字などの特殊文字はエスケープシーケンスを用いて表現される。 #* 例: #:<syntaxhighlight lang=json copy> "Hello, World!" </syntaxhighlight> # '''数値 (Number)''' #* 整数または浮動小数点数で表される。 #* 例: #:<syntaxhighlight lang=json copy> 123 3.14 </syntaxhighlight> # '''真偽値 (Boolean)''' #* <code>[[JavaScript/true|true]]</code> または <code>[[JavaScript/false|false]]</code> で表される。 #* 例: #:<syntaxhighlight lang=json copy> true false </syntaxhighlight> # '''null''' #* <code>[[JavaScript/null|null]]</code> で表される。 #* 例: #:<syntaxhighlight lang=json copy> null </syntaxhighlight> これらのデータ型を組み合わせることで、複雑なデータ構造を表現することが可能です。また、JSONデータを扱うための各種メソッドや関数が多くのプログラミング言語で提供されています。 === JSONのEBNF === JSONの構文を定義する[[EBNF|EBNF(Extended Backus-Naur Form)]]は以下の通りです。 :<syntaxhighlight lang=ebnf copy> object = "{" [pair *( "," pair )] "}"; pair = string ":" value; array = "[" [value *( "," value )] "]"; value = string | number | object | array | "true" | "false" | "null"; string = '"' *( char | escape ) '"'; char = unescaped | escape ( "\" / "/" / "\"" / "b" / "f" / "n" / "r" / "t" ); escape = "\\" char; unescaped = %x20-21 / %x23-5B / %x5D-10FFFF; number = [ "-" ] int [ frac ] [ exp ]; int = "0" / digit1-9 *digit; frac = "." 1*digit; exp = ("e" / "E") ["-" / "+"] 1*digit; digit = "0" / digit1-9; digit1-9 = %x31-39; </syntaxhighlight> * '''object''': <code>{}</code> で囲まれた0個以上の <code>pair</code> を含むオブジェクトを表す。 * '''pair''': キー(<code>string</code>)と値(<code>value</code>)のペアを表す。 * '''array''': <code>[]</code> で囲まれた0個以上の <code>value</code> を含む配列を表す。 * '''value''': <code>string</code>、<code>number</code>、<code>object</code>、<code>array</code>、<code>true</code>、<code>false</code>、<code>null</code> のいずれかの値を表す。 * '''string''': ダブルクォーテーションで囲まれたUnicode文字列を表す。エスケープシーケンスもサポートされる。 * '''number''': 10進数表記の数値を表す。負の値、小数点以下、指数表記もサポートされる。 このEBNFに基づいて、JSON形式のデータを解析するパーサーを実装することが可能です。 == JavaScriptでの使用例 == * '''JSONのパース''': *:<syntaxhighlight lang=js copy> const jsonString = '{"name": "John", "age": 30}'; const data = JSON.parse(jsonString); console.log(data.name); // "John" console.log(data.age); // 30 </syntaxhighlight> * '''JSONのシリアライズ''': *:<syntaxhighlight lang=js copy> const data = {name: "John", age: 30}; const jsonString = JSON.stringify(data); console.log(jsonString); // '{"name":"John","age":30}' </syntaxhighlight> == 脚註 == <references /> == 関連項目 == * [[JavaScript/JSON]] == 外部リンク == {{Wikipedia|JavaScript Object Notation}} * [https://www.json.org/ json.org] {{DEFAULTSORT:{{SUBPAGENAME}}}} [[Category:JSON|*]] [[Category:データ記述言語]] [[Category:JavaScript]] [[Category:World Wide Web]] 0xx1qc7qmf4nwe49pgq0ntk5zi5h3tp JavaScript/decodeURIComponent 0 14202 305085 265459 2026-10-22T11:39:23Z Jcb 92857 305085 wikitext text/x-wiki <code>decodeURIComponent()</code> は、エンコードされたURIコンポーネントを元のフォーマットに戻すグローバル関数です。主にクエリパラメータや特定のURI部分をデコードするために使用されます。 == 構文 == :<syntaxhighlight lang=js copy> decodeURIComponent(encodedURIComponent) </syntaxhighlight> === パラメータ === ; <code>encodedURIComponent</code> : デコードするエンコードされたURIコンポーネント文字列 === 戻り値 === : デコードされた元の文字列 === 例外 === ; <code>URIError</code> : 不正にエンコードされた文字が含まれている場合にスローされます == 基本的な使用例 == :<syntaxhighlight lang=js copy> // エンコードされたクエリパラメータ const encodedParam = "%E3%81%93%E3%82%93%E3%81%AB%E3%81%A1%E3%81%AF%20%E4%B8%96%E7%95%8C!"; // デコード const decodedParam = decodeURIComponent(encodedParam); console.log(decodedParam); // "こんにちは 世界!" </syntaxhighlight> == エンコード vs デコード == {| class="wikitable" |- ! メソッド !! 目的 !! エンコード/デコード範囲 |- | <code>encodeURIComponent()</code> || URIコンポーネントをエンコード || 予約文字、特殊文字、非ASCII文字 |- | <code>decodeURIComponent()</code> || エンコードされたコンポーネントをデコード || エンコードされたすべての文字 |} == デコード対象の文字 == <code>decodeURIComponent()</code> は以下を含むすべてのエンコードされた文字をデコードします: * パーセントエンコーディングされた文字 * 16進数エンコーディング * 非ASCII文字のUTF-8エンコーディング * スペースや特殊文字 == 重要な特徴 == * クエリパラメータの完全デコード * セキュリティに関する注意が必要 * URLの各コンポーネントを正確に復元 == 高度な使用例 == :<syntaxhighlight lang=js copy> // URLからクエリパラメータを解析 function parseQueryString(url) { const queryString = url.split('?')[1]; const params = {}; queryString.split('&').forEach(param => { const [key, value] = param.split('='); params[decodeURIComponent(key)] = decodeURIComponent(value); }); return params; } const url = "https://example.com/search?q=%E3%83%97%E3%83%AD%E3%82%B0%E3%83%A9%E3%83%9F%E3%83%B3%E3%82%B0&lang=%E6%97%A5%E6%9C%AC%E8%AA%9E"; const parsedParams = parseQueryString(url); console.log(parsedParams); // { q: "プログラミング", lang: "日本語" } </syntaxhighlight> == セキュリティ考慮事項 == * 信頼できないソースからのデコードには注意 * 追加のサニタイズが必要 * XSS (クロスサイトスクリプティング) 対策として不十分 == 注意点 == * 不正なエンコード文字列は <code>URIError</code> を発生 * パフォーマンスへの影響は最小限 * 可読性を目的とした使用 == エラーハンドリングの例 == :<syntaxhighlight lang=js copy> try { // 不正なエンコード文字列 const badEncoding = "%E0%A4%"; // 不完全なエンコーディング const decoded = decodeURIComponent(badEncoding); } catch (error) { if (error instanceof URIError) { console.error("デコード中にエラーが発生しました"); } } </syntaxhighlight> == 関連メソッド == * <code>[[JavaScript/encodeURIComponent|encodeURIComponent()]]</code> * <code>[[JavaScript/decodeURI|decodeURI()]]</code> * <code>[[JavaScript/encodeURI|encodeURI()]]</code> == ブラウザ互換性 == * すべてのモダンブラウザでサポート * Internet Explorer 5.5以降 * ECMAScript 3以降で標準化 == 仕様 == * ECMAScript 仕様 * WHATWG URL 仕様 * {{RFC|3986}} (URI規格) == 脚註 == <references /> {{DEFAULTSORT:DECODEURICOMPONENT}} [[Category:JavaScript]] [[Category:Web標準]] 2r6yk93sbzx2fvw8vn48trmfsyt90kc 建築基準法第20条 0 14490 305065 273465 2026-10-22T11:29:25Z Jcb 92857 305065 wikitext text/x-wiki [[法学]]>[[コンメンタール]]>[[コンメンタール建築基準法]] ==条文== (構造耐力) ;第20条 :建築物は、自重、積載荷重、積雪荷重、風圧、土圧及び水圧並びに地震その他の震動及び衝撃に対して安全な構造のものとして、次の各号に掲げる建築物の区分に応じ、それぞれ当該各号に定める基準に適合するものでなければならない。 :#高さが60メートルを超える建築物 :#:当該建築物の安全上必要な構造方法に関して政令で定める技術的基準に適合するものであること。この場合において、その構造方法は、荷重及び外力によつて建築物の各部分に連続的に生ずる力及び変形を把握することその他の政令で定める基準に従つた構造計算によつて安全性が確かめられたものとして国土交通大臣の認定を受けたものであること。 :#高さが60メートル以下の建築物のうち、[[建築基準法第6条|第6条]]第1項第2号に掲げる建築物(高さが13メートル又は軒の高さが9メートルを超えるものに限る。)又は同項第3号に掲げる建築物(地階を除く階数が4以上である鉄骨造の建築物、高さが20メートルを超える[[w:鉄筋コンクリート|鉄筋コンクリート]]造又は[[w:鉄骨鉄筋コンクリート構造|鉄骨鉄筋コンクリート造]]の建築物その他これらの建築物に準ずるものとして政令で定める建築物に限る。) :#:次に掲げる基準のいずれかに適合するものであること。 :#::イ :#:::当該建築物の安全上必要な構造方法に関して政令で定める技術的基準に適合すること。この場合において、その構造方法は、地震力によつて建築物の地上部分の各階に生ずる水平方向の変形を把握することその他の政令で定める基準に従つた構造計算で、国土交通大臣が定めた方法によるもの又は国土交通大臣の認定を受けたプログラムによるものによつて確かめられる安全性を有すること。 :#::ロ 前号に定める基準に適合すること。 :#高さが60メートル以下の建築物のうち、[[建築基準法第6条|第6条]]第1項第2号又は第3号に掲げる建築物その他その主要構造部(床、屋根及び階段を除く。)を石造、れんが造、コンクリートブロック造、無筋コンクリート造その他これらに類する構造とした建築物で高さが13メートル又は軒の高さが9メートルを超えるもの(前号に掲げる建築物を除く。) :#:次に掲げる基準のいずれかに適合するものであること。 :#::イ :#:::当該建築物の安全上必要な構造方法に関して政令で定める技術的基準に適合すること。この場合において、その構造方法は、構造耐力上主要な部分ごとに応力度が許容応力度を超えないことを確かめることその他の政令で定める基準に従つた構造計算で、国土交通大臣が定めた方法によるもの又は国土交通大臣の認定を受けたプログラムによるものによつて確かめられる安全性を有すること。 :#::ロ 前二号に定める基準のいずれかに適合すること。 :#前三号に掲げる建築物以外の建築物 :#:次に掲げる基準のいずれかに適合するものであること。 :#::イ 当該建築物の安全上必要な構造方法に関して政令で定める技術的基準に適合すること。 :#::ロ 前三号に定める基準のいずれかに適合すること。 == 解説 == 一定の要件に該当する建物について、満たさなければならない構造耐力について定めた規定である。風圧などへの耐力、[[w:耐震|耐震性]]などに備えるものである。積雪のある地方では、積雪の荷重も問題となる。 第1号の建物は、いわゆる超高層の建物であり、[[w:超高層マンション|超高層マンション]]について、同号の要件を満たすマンションとする範囲付けも見られる<ref>日本マンション学会 編『マンション学事典』{{ISBN|9784896284577}} 65頁</ref>。 ==参照条文== == 脚注 == <references /> ---- {{前後 |[[コンメンタール建築基準法|建築基準法]] |[[コンメンタール建築基準法#s2|第2章 建築物の敷地、構造及び建築設備]]<br> |[[建築基準法第19条]]<br>(敷地の衛生及び安全) |[[建築基準法第21条]]<br>(大規模の建築物の主要構造部) }} {{stub|law}} [[category:建築基準法|20]] oisrs9wtzg37lsomfgaxkoy6zjbjuei 自然環境保全法第14条 0 15278 305079 294846 2026-10-22T11:35:06Z Jcb 92857 305079 wikitext text/x-wiki [[法学]]>[[環境法]]>[[自然環境保全法]]>[[コンメンタール自然環境保全法]] ==条文== ;(指定) 第14条 # [[環境大臣]]は、その区域における自然環境が人の活動によつて影響を受けることなく原生の状態を維持しており、かつ、[[政令]]で定める面積以上の面積を有する土地の区域であつて、国又は地方公共団体が所有するもの([[森林法第25条|森林法(昭和26年法律第249号)第25条第1項]]又は[[森林法第25条の2|第25条の2第1項若しくは第2項]]の規定により指定された[[保安林]]([[森林法第25条の2|同条第1項後段又は第2項後段]]において準用する[[森林法第25条|同法第25条第2項の規定]]により指定された保安林を除く。)の区域を除く。)のうち、当該自然環境を保全することが特に必要なものを[[w:原生自然環境保全地域|原生自然環境保全地域]]として指定することができる。 # 環境大臣は、原生自然環境保全地域の指定をしようとするときは、あらかじめ、関係都道府県知事及び[[w:中央環境審議会|中央環境審議会]]の意見をきかなければならない。 # 環境大臣は、原生自然環境保全地域の指定をしようとするときは、あらかじめ、当該区域内の土地を、国が所有する場合にあつては当該土地を所管する行政機関の長の、地方公共団体が所有する場合にあつては当該地方公共団体の同意を得なければならない。 # 環境大臣は、原生自然環境保全地域を指定する場合には、その旨及びその区域を[[官報]]で公示しなければならない。 # 原生自然環境保全地域の指定は、前項の規定による公示によつてその効力を生ずる。 # 第2項、第4項及び前項の規定は原生自然環境保全地域の指定の解除及びその区域の変更について、第3項の規定は原生自然環境保全地域の区域の拡張について、それぞれ準用する。 ==解説== 本条から第3章「原生自然環境保全地域」に入る。 第1項は、指定要件について定めている。自然環境についての「原生の状態」に関連して、本法制定直後に、[[w:環境省|環境庁]](当時)側から「(原生の自然状態とは)気候、土壌等の環境条件下において人為的な影響を受けることなく平衡状態に達している動植物を含めた自然の総体のありさまということができる」とされている<ref>環境庁自然保護局『自然環境保全法の解説』中央法規出版、1974年 55-57頁</ref>。原生自然環境保全地域においては、第2節「保全」([[自然環境保全法第17条|第17条]]以下)の規定のとおり、行為が厳しく制限されるものである。その指定において、本条では制約が幾つか設けられている。 本項においては、国又は地方公共団体が所有する土地に限定し、森林法に基づく保安林を原則として対象から除外している。国又は地方公共団体が所有する土地に限定することについては、土地利用の制限における[[wikt:私権|私権]]との調整<ref>[[wikt:財産権|財産権]]との調整については{{自然環境保全法条|3}}も関係する。</ref>が困難であるからである。保安林においては、伐採、開墾等の行為が制約されるが、維持管理等のために人為的に手を加える必要があることもあり、原生の状態の「保全」とは一致しない面がある制度である<ref>[[w:大塚直|大塚直]]『環境法』有斐閣、2010年、{{ISBN|9784641135611}}、581頁他多数あり</ref>。本項でいう「政令」は次のもので、面積は原則として1000[[wikt:ヘクタール|ヘクタール]]以上となる。 * 自然環境保全法施行令 (原生自然環境保全地域の最低面積) 第1条 : 自然環境保全法 (以下「法」という。)第十四条第一項 の政令で定める面積は、千ヘクタールとする。ただし、その周囲が海面に接している区域については、三百ヘクタールとする。 第2項は、環境大臣が第1項の指定をしようとするときは、あらかじめ、関係都道府県知事及び中央環境審議会の意見をきかなければならない、という規定である。第6項により、区域の拡張においても同様とされている。 第3項は、環境大臣が第1項の指定をしようとするときは、あらかじめ、当該区域内の土地を、国が所有する場合にあつては当該土地を所管する行政機関の長の、地方公共団体が所有する場合にあつては当該地方公共団体の同意を得なければならない、という規定である。 第4項から第6項にかけては、指定、指定の解除、区域の変更における官報公示とその公示による指定効力発生などの規定である。 == 脚注 == <references/> ==参照条文== * [[自然環境保全法第22条]] - 自然環境保全地域の指定 ---- {{前後 |[[コンメンタール自然環境保全法|自然環境保全法]] |[[コンメンタール自然環境保全法#3|第3章 原生自然環境保全地域]]<br> [[コンメンタール自然環境保全法#3-1|第1節 指定等]] |[[自然環境保全法第12条]]<br>(自然環境保全基本方針) |[[自然環境保全法第15条]]<br>(原生自然環境保全地域に関する保全計画の決定) }} [[category:自然環境保全法|14]] 9924l764ng4iylz5ge0bupnlbqwjuyk 自然環境保全法第1条 0 15350 305080 66072 2026-10-22T11:35:19Z Jcb 92857 305080 wikitext text/x-wiki [[法学]]>[[環境法]]>[[自然環境保全法]]>[[コンメンタール自然環境保全法]] ==条文== ;(目的) 第1条 : この法律は、[[コンメンタール自然公園法|自然公園法]] (昭和三十二年法律第百六十一号)その他の自然環境の保全を目的とする法律と相まつて、自然環境を保全することが特に必要な区域等の生物の多様性の確保その他の自然環境の適正な保全を総合的に推進することにより、広く国民が自然環境の[[wikt:恵沢|恵沢]]を享受するとともに、将来の国民にこれを継承できるようにし、もつて現在及び将来の国民の健康で文化的な生活の確保に寄与することを目的とする。 ==解説== 本法は、公害問題、[[w:環境庁|環境庁]]の発足などがあった状況下で制定された。制定直後の本条は、次のとおりで、自然環境保全の基本法とされていた<ref>『自然環境保全法の解説』108頁</ref>。 :''この法律は、自然環境の保全の基本理念その他自然環境の保全に関し基本となる事項を定めるとともに、自然公園法(括弧書き略)その他の自然環境の保全を目的とする法律と相まつて、自然環境の適正な保全を総合的に推進し、もつて現在及び将来の国民の健康で文化的な生活の確保に寄与することを目的とする。'' 自然公園法との関係については、環境庁は本法への一本化を目指したが、[[w:農林省|農林省]]、[[w:建設省|建設省]](いずれも当時)の対立が背景にあって、できなかったという<ref> [[w:畠山武道|畠山武道]]、[[w:北村喜宣|北村喜宣]]、[[w:大塚直|大塚直]] 『環境法入門 (日経文庫)』 [[w:日本経済新聞|日本経済新聞]]出版社、2007年。{{ISBN|9784532111427}}。 143 - 144頁</ref>。その後、[[コンメンタール環境基本法|環境基本法]]の制定に伴い「自然環境の保全の基本理念その他自然環境の保全に関し基本となる事項を定める…が同法に移行した。なお、本法と自然公園法の関係については、「[[自然公園法と自然環境保全法]]」も参照されたい。 「その他の自然環境の保全を目的とする法律」については、本法は、「自然環境の保全」を本来の目的とはしていない法令にも関係することがある。例えば、本法の[[w:自然環境保全地域|自然環境保全地域等]]に[[コンメンタール文化財保護法|文化財保護法]]に基づく[[w:天然記念物|天然記念物]]が存することがある(参考例:<ref>白神山地世界遺産センター[http://www.sizenken.biodic.go.jp/park/tohoku/banner/10/02__zenbun.html 「白神山地世界遺産地域管理計画」]</ref>)。 主管箇所である[[w:環境省|環境省]]は、『[http://www.env.go.jp/hourei/syousai.php?id=18000139 自然環境保全法の運用について]』で、「原生自然環境保全地域及び自然環境保全地域は、自然環境を適正に保全し、将来の国民に継承していくという性格の地域であり、すぐれた自然の風景地を保護するとともにその利用を増進を図るという性格の地域である自然公園とは、その性格を異にする」としている。つまり、本法は利用を前提としてなく<ref>[[土地基本法第3条]]は、土地に関する基本理念の一つとして、適正な利用及び計画に従った利用を定めている。</ref>、[[#参照条文]]掲載の各条文で、そのことを検証されたい。 「生物の多様性の確保」については、平成二一年六月三日法律第四七号による改正で、自然公園法どもども追加された。 == 脚注 == <references/> ==参照条文== * [[自然環境保全法第17条]] - 原生自然環境保全地域における行為の制限 * [[自然環境保全法第25条]]- 自然環境保全地域の特別地区における行為の制限 * [[自然環境保全法第30条の2]] - 生態系維持回復事業計画に関する規定 * [[自然公園法第1条]] - 自然公園法の目的 ---- {{前後 |[[コンメンタール自然環境保全法|自然環境保全法]] |[[コンメンタール自然環境保全法#1|第一章 総則 ]]<br> <br> |<br> |[[自然環境保全法第2条]]<br>(国等の責務) }} [[category:自然環境保全法|01]] stodjrnmpkj8hih6866y1346led3258 自然環境保全法第3条 0 15354 305081 284138 2026-10-22T11:35:30Z Jcb 92857 305081 wikitext text/x-wiki [[法学]]>[[環境法]]>[[自然環境保全法]]>[[コンメンタール自然環境保全法]] ==条文== (財産権の尊重及び他の公益との調整) ;第3条 : 自然環境の保全に当たつては、関係者の[[所有権]]その他の[[財産権]]を尊重するとともに、国土の保全その他の公益との調整に留意しなければならない。 ==解説== 本法は利用を前提としてなく、土地利用に係る権利など私権への影響が大きい。さらには公益事業の実施にも大きな影響がある。特に[[自然環境保全法第14条|原生自然環境保全地域]]は私有地を対象としないものの、[[自然環境保全法第17条]]により多くの行為が禁止され、[[宅地]]、[[農地]]としての利用は困難となる<ref>有斐閣『環境法』288頁-290頁</ref>。そこで、本条は、財産権の尊重を明記している<ref>環境庁『自然環境保全法の運用について』第2 一般的事項</ref>。 == 脚注 == <references/> ==参照条文== * [[w:日本国憲法第29条|日本国憲法第29条]] - 財産権の保証 * [[自然公園法第4条]] (財産権の尊重及び他の公益との調整) == 参考文献等 == * 有斐閣 『環境法』、2007年。{{ISBN|4641183414}}。 * 環境庁 『[http://www.env.go.jp/hourei/syousai.php?id=18000139 自然環境保全法の運用について]』 環境庁自然保護局長、1974年。 ---- {{前後 |[[コンメンタール自然環境保全法|自然環境保全法]] |[[コンメンタール自然環境保全法#1|第1章 総則]]< |[[自然環境保全法第2条]]<br>(国等の責務) |[[自然環境保全法第4条]]<br>(基礎調査の実施) }} {{stub|law}} [[category:自然環境保全法|03]] f998hdp8gwxn56m8pglwlhwk0g3grgy 自然環境保全法 0 15901 305078 297173 2026-10-22T11:34:53Z Jcb 92857 305078 wikitext text/x-wiki {{wikipedia}} 日本の{{PAGENAME}}及び同法に基づく[[w:自然環境保全地域|自然環境保全地域等]]に関する教科書である。 == 概要 == [[w:自然環境保全法]]を参照。所管は[[wikt:環境省|環境省]]である。本法の公布、施行をもって、自然保護法制の体系が形成され、当時の公害・環境法整備が一段落したとされた<ref>『自然環境保全法の解説』推薦のことば(頁番号なし)</ref><ref>大塚『環境法』有斐閣12頁</ref>。 主な改正として、 *1973年施行(昭和48年法律第73号) - 普通地区における着手制限制度({{自然環境保全法条|29}})の創設等[http://www.env.go.jp/hourei/syousai.php?id=18000150] *1990年施行(平成2年法律第26号) - 動植物を殺傷し、又は損傷する行為への制限導入等[http://www.env.go.jp/hourei/syousai.php?id=18000137] - 参考:[[w:朝日新聞珊瑚記事捏造事件]](契機となった事件)<ref>朝日新聞1990年4月9日 夕刊2頁</ref> *1993年施行(平成5年法律第92号) - [[w:環境基本法|環境基本法]]の施行に伴う一部条文({{自然環境保全法条|1}}にあった「自然環境の保全の基本理念その他自然環境の保全に関し基本となる事項を定める」という文言、[[w:自然環境保全審議会|自然環境保全審議会]]関係等)の同法への移行 *2010年施行(平成21年法律第47号) - 海中特別地区→海域特別地区、生態系維持回復事業([[コンメンタール自然環境保全法#第3節 生態系維持回復事業|第4章第3節]])の創設、他[http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=12101] がある。 == 条文 == 構成等を含めて[[コンメンタール自然環境保全法]]参照。 == 目的 == ''[[w:自然公園法|自然公園法]]その他の自然環境の保全を目的とする法律と相まって、自然環境を保全することが特に必要な区域等の生物の多様性の確保その他の自然環境の適正な保全を総合的に推進することにより、広く国民が自然環境の恵沢を享受するとともに、将来の国民にこれを継承できるようにし、もって現在及び将来の国民の健康で文化的な生活の確保に寄与すること'' ({{自然環境保全法条|1}}) 環境基本法の施行以前は、自然環境の保全に関し基本となる事項を定めるということがあったが、これについては同法に移行した<ref>[http://www.eic.or.jp/ecoterm/?act=view&ecoword=%BC%AB%C1%B3%B4%C4%B6%AD%CA%DD%C1%B4%CB%A1 環境省EICネット]</ref>。 「自然公園法その他の自然環境の保全を目的とする法律と相まって」については、自然環境の保全に関係する法令は多岐にわたる。[[#自然公園法との関係]]、コンメンタール[[自然環境保全法第1条]]を参照。 === 自然公園法との関係 === 本法と自然公園法(国立公園法1932年制定、同法を発展解消させた形で1957年公布)は、ともに自然保護に関する目的で、区域を指定して法令で行為への規制をかけるもの(いわゆる[[w:自然保護区|自然保護区]])であるが、本法の制定時の経緯もあり、両者の重複適用は排除されている。さらに、両法の指定区域間(自然環境保全地域等 - 自然公園)での指定換えも殆ど行われていない。 詳細は「[[自然公園法と自然環境保全法]]」を参照。 == 財産権の尊重及び他の公益との調整 == 本法に基づく規制は、[[wikt:財産権|財産権]]、他の[[wikt:公益|公益]]への影響が大きいため、第3条に、財産権の尊重及び他の公益との調整に関する規定を設けている。 詳細はコンメンタール[[自然環境保全法第3条]]を参照。 == 自然環境保全地域等 == 本法は、区域を指定して法令で行為への規制をかけるもので、その規制の適用を受ける地域に、原生自然環境保全地域、自然環境保全地域、都道府県自然環境保全地域がある(これらを総称して「自然環境保全地域等」という)。 [[#財産権の尊重及び他の公益との調整]]で記載しているような問題もあり、指定については地元の要望、理解が薄い現状がある。 詳細は、[[w:自然環境保全地域]]を参照。 === 原生自然環境保全地域 === 原生自然環境保全地域とは、 #その区域における自然環境が人の活動によって影響を受けることなく原生の状態を維持しており、 #かつ、政令で定める面積以上の面積を有する土地の区域であって、国又は地方公共団体が所有するもの([[w:森林法|森林法]]により指定された保安林の区域を原則として除く) のうち、当該自然環境を保全することが特に必要なもので、環境大臣が指定したものである({{自然環境保全法条|14}})。この国又は地方公共団体が所有する土地に限定される理由に、下記のとおり行為規制と[[wikt:私権|私権]]との調整が困難なことがある<ref>有斐閣『環境法』280頁</ref>。 ==== 行為規制 ==== {{自然環境保全法条|17}}第1項に「してはならない」行為が列挙されている。自然環境保全地域、都道府県自然環境保全地域と対比すると、「禁止制」とも言える。 例外として、次のものがある。 #環境大臣が学術研究その他公益上の事由により特に必要と認めて許可した場合(同条第1項但し書き)。 #非常災害のために必要な応急措置として行う場合(同条第1項但し書き)。 #原生自然環境保全地域に関する保全事業の執行として行なう行為(同条第5項第1号)。 #通常の管理行為又は軽易な行為のうち、原生自然環境保全地域における自然環境の保全に支障を及ぼすおそれがないもので環境省令で定めるもの(同条第5項第2号)。 違反に対しては、罰則がある({{自然環境保全法条|53}}、{{自然環境保全法条|54}})。 === 自然環境保全地域、都道府県自然環境保全地域 === 自然環境保全地域とは、 #高山性[[wikt:植生|植生]]又は亜高山性植生が相当部分を占める森林又は草原の区域でその面積が[[wikt:政令|政令]]で定める面積等以上のもの #優れた天然林が相当部分を占める森林の区域(これと一体となって自然環境を形成している土地の区域を含む。)でその面積が政令で定める面積以上のもの #地形若しくは地質が特異であり、又は特異な自然の現象が生じている土地の区域及びこれと一体となって自然環境を形成している土地の区域でその面積が政令で定める面積以上のもの #その区域内に生存する動植物を含む自然環境が優れた状態を維持している海岸、[[wikt:湖沼|湖沼]]、[[wikt:湿原|湿原]]又は[[wikt:河川|河川]]の区域でその面積が政令で定める面積以上のもの #その海域内に生存する熱帯魚、さんご、海藻その他の動植物を含む自然環境が優れた状態を維持している海域でその面積が政令で定める面積以上のもの #植物の自生地、野生動物の生息地その他の政令で定める土地の区域でその区域における自然環境が前各号に掲げる区域における自然環境に相当する程度を維持しているもののうち、その面積が政令で定める面積以上のもの のうち、自然的社会的諸条件からみてその区域における自然環境を保全することが特に必要なもので、環境大臣が指定したものである({{自然環境保全法条|22}})。 都道府県自然環境保全地域とは、 #その区域における自然環境が自然環境保全地域に準ずる土地の区域で、その区域の周辺の自然的社会的諸条件からみて当該自然環境を保全することが特に必要なもの で、都道府県が[[#条例|条例]]により指定するものである({{自然環境保全法条|45}})。 自然環境保全地域、都道府県自然環境保全地域とも、さらに、特別地区、海域特別地区(自然環境保全地域のみ)、普通地区に区分される。 {| class="wikitable" |- ! !! さらなる区分 |- | 原生自然環境保全地域 || |- | 自然環境保全地域 || 特別地区<br />海域特別地区<br />普通地区 |- | 都道府県自然環境保全地域 || 特別地区<br />普通地区 |} ==== 行為規制 ==== {{自然環境保全地域-自然公園}} 特別地区における許可制、普通地区における届出制がある。 自然環境保全地域における違反に対しては、本法に罰則がある(第53条、第54条、{{自然環境保全法条|55}}、{{自然環境保全法条|56}})。 ==== 生態系維持回復事業 ==== 自然環境保全地域に関する保全計画に基づいて行う事業であって、当該地域における生態系の維持又は回復を図るものをいう({{自然環境保全法条|30|の2}})。これは、自然公園法にも類似の規定がある。 ==== 関係条例 ==== 各都道府県の都道府県自然環境保全地域について規定する[[wikt:条例|条例]]を掲載する。なお、リンク設定の制約から例規集ページへのリンクとなっているものもあり、その場合は条例名等でさらに検索することが必要となる。 * [https://www.pref.hokkaido.lg.jp/ks/skn/sizenhome/sizenkankyoutouhozen.htm 北海道自然環境等保全条例] * [http://www.pref.aomori.lg.jp/reiki/reiki_honbun/c0010591001.html 青森県自然環境保全条例] * [http://www.pref.iwate.jp/~hp0316/houeri/houeri05.html 岩手県自然環境保全条例] * [http://www1.g-reiki.net/reiki2d7/reiki.html (宮城県)自然環境保全条例] * [http://www1.g-reiki.net/pref_akita/reiki_honbun/au60003601.html 秋田県自然環境保全条例] * [http://www.pref.yamagata.lg.jp/Reiki/34890101002100000000/34890101002100000000/frm_inyo_prag65.html 山形県自然環境保全条例] * [http://www.pref.fukushima.jp/reiki/reiki_honbun/ak40005081.html 福島県自然環境保全条例] * [http://www.pref.ibaraki.jp/kankyo/06hourei_jyourei/o4000687001.html 茨城県自然環境保全条例] * [http://www.pref.tochigi.lg.jp/reiki/reiki_honbun/e1010589001.html (栃木県)自然環境の保全及び緑化に関する条例] * [http://www.pref.gunma.jp/s/reiki/348901010024000000MH/348901010024000000MH/348901010024000000MH_j.html 群馬県自然環境保全条例] * [http://www.pref.saitama.lg.jp/site/jyourei/midori-j.html 埼玉県 自然環境保全条例] * [http://www.pref.chiba.lg.jp/shizen/kankyouhozen/documents/hz_jorei.pdf 千葉県自然環境保全条例] * [http://www.kankyo.metro.tokyo.jp/nature/guide/conservation_nature.html 東京における自然の保護と回復に関する条例] * [http://www.pref.kanagawa.jp/osirase/ryokusei/pub-com/22ryokusei/22ryoku-jyourei.html (神奈川県)自然環境保全条例] * [http://www1.g-reiki.net/niigataken/reiki_honbun/ae40105131.html 新潟県自然環境保全条例] * [https://www.pref.toyama.jp/sections/1103/reiki_int/reiki_honbun/i0010369001.html 富山県自然環境保全条例] * [https://www.pref.ishikawa.jp/reiki/reiki_honbun/ai10110681.html ふるさと石川の環境を守り育てる条例] * [http://www3.g-reiki.net/fukui/reiki.html 福井県自然環境保全条例] * [http://www.pref.yamanashi.jp/somu/shigaku/reiki/reiki_honbun/aa50002511.html 山梨県自然環境保全条例] * [http://www.pref.nagano.jp/kankyo/hogo/shizenkouen/jorei.pdf 長野県自然環境保全条例] * [http://www.pref.gifu.lg.jp/pref/s11124/houkishu/34790101001700000000/42290101001800000000/42290101001800000000.html 岐阜県自然環境保全条例] * [http://rules.pref.shizuoka.jp/reiki/reiki.html 静岡県自然環境保全条例] * [http://www3.e-reikinet.jp/cgi-bin/aichi-ken/reiki.cgi (愛知県)自然環境の保全及び緑化の推進に関する条例] * [http://www3.e-reikinet.jp/mie-ken/d1w_reiki/41590101000200000000/41590101000200000000/41590101000200000000.html 三重県自然環境保全条例] * [http://www.pref.shiga.jp/jourei/reisys/reiki.html 滋賀県自然環境保全条例] * [http://www.pref.kyoto.jp/reiki/reiki_honbun/a3000484001.html 京都府環境を守り育てる条例] * [http://www.pref.osaka.jp/houbun/reiki/reiki_honbun/ak20103721.html 大阪府自然環境保全条例] * [http://www5.e-reikinet.jp/cgi-bin/hyogo-ken/d1w_login.exe (兵庫県)環境の保全と創造に関する条例] * [http://www.pref.nara.jp/somu-so/jourei/reiki_honbun/ak40103511.html 奈良県自然環境保全条例] * [http://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/010100/reiki/reiki_honbun/k5010421001.html 和歌山県自然環境保全条例] * [http://reiki.pref.tottori.jp/reiki/reiki_honbun/k500RG00000503.html 鳥取県自然環境保全条例] * [http://www.pref.shimane.lg.jp/environment/nature/shizen/shimane/shizenkankyohozentiiki/sizenjourei.html 島根県自然環境保全条例] * [http://www.pref.okayama.jp/seikatsu/sizen/jourei/jourei_sizenhogo.htm 岡山県自然保護条例] * [http://www.pref.hiroshima.lg.jp/soumu/bunsyo/kenhouki/reiki_honbun/r2000601001.html 広島県自然環境保全条例] * [https://www.pref.yamaguchi.lg.jp/cms/a10400/reiki/top.html 山口県自然環境保全条例] * [http://kaigi.pref.tokushima.jp/reiki/reiki_honbun/o0010468001.html 徳島県自然環境保全条例] * [http://www.pref.kagawa.jp/somugakuji/hoki/d1w_reiki/34990101001700000000/34990101001700000000/34990101001700000000.html 香川県自然環境保全条例] * [http://www.pref.ehime.jp/d1w_reiki/34890101003200000000/34890101003200000000/34890101003200000000_m.html 愛媛県自然環境保全条例] * [http://web2.pref.kochi.jp/~seisakuhousei/reiki/act/frame/frame110000511.htm 高知県自然環境保全条例] * [http://www1.g-reiki.net/pref_fukuoka/reiki.html 福岡県環境保全に関する条例] * [http://www.pref.saga.lg.jp/sy-contents/kenseijoho/jorei/reiki_int/reiki_honbun/q2011140001.html 佐賀県環境の保全と創造に関する条例] * [http://www1.g-reiki.net/pref_nagasaki/reiki.html 長崎県自然環境保全条例] * [http://reiki.pref.kumamoto.jp/reiki/reiki.html 熊本県自然環境保全条例] * [http://www1.g-reiki.net/pref_oita/reiki.html 大分県自然環境保全条例] * [http://www3.e-reikinet.jp/miyazaki-ken/d1w_reiki/mokuji_bunya.html 宮崎県における自然環境の保護と創出に関する条例] * [http://www3.pref.kagoshima.jp/reiki_int/reiki_honbun/aq70104141.html 鹿児島県自然環境保全条例] * [http://www.pref.okinawa.jp/reiki/34890101005400000000/41290101007800000000/41290101007800000000.html 沖縄県自然環境保全条例] == 脚注 == <references/> == 参考文献 == * 環境庁自然保護局『自然環境保全法の解説』ISBNなし、1974年 * 小林正、『[http://www.ndl.go.jp/jp/data/publication/refer/200701_672/067204.pdf 我が国の景観保全・形成法制]』国立国会図書館(『レファレンス』平成19年1月号)、2007年 * [[w:有斐閣|有斐閣]] 『環境法』、2007年。{{ISBN|4641183414}}。[[w:大塚直|大塚直]]『環境法』、2010年。有斐閣{{ISBN|9784641135611}} * 環境庁 『[http://www.env.go.jp/hourei/syousai.php?id=18000139 自然環境保全法の運用について]』 環境庁自然保護局長、1974年。 === 文献の整備状況 === 本法の適用される自然環境保全地域等は、利用する目的の地域ではなく、社会一般にはなじみが薄くなりがちとなる。本法を専門的に扱う文献は決して多くないのが現状である。[http://opac.ndl.go.jp/index.html 国立国会図書館蔵書検索・申込システム]でタイトルに「自然環境保全法」を入力して検索しても、ヒット数点である。タイトルに「自然環境保全地域」を入力して検索しても個別の地域の調査資料が数十点ヒットする程度である。 市販の書籍では、環境法全般を扱ったものの中で触れられているという程度以上のものを見つけることは困難である。 === その背景 === 本法について直接報道される機会は多くなく、[[w:日経テレコン21|日本経済新聞者]]などの新聞記事データベースで「自然環境保全法」で検索しても数多くヒットするわけではない。 土地取引でも、[[w:宅地建物取引業法|宅地建物取引業法]]に基づく重要事項説明において、[[w:国土交通省|国土交通省]]などの説明書様式にある、利用制限に係る法令の一覧表示に本法は掲載されてなく<ref>[http://www.mlit.go.jp/common/000048768.pdf 国土交通省]、[http://www.homenavi.or.jp/frk/standard_format/j02.html (社)不動産流通経営協会]6頁(いずれも自然公園法は掲載されている)- 取引対象の土地が自然環境保全地域等に該当する場合は、重要事項説明において、法令上の利用制限としてそのことを説明することとなる。</ref>、本法の適用される土地が取引の対象となることの少なさが窺える。 <references/> [[Category:自然環境保全法|全般]] 0f7qy8hrxee0fz1azixndrcdeg07kqz OpenGLプログラミング 0 18029 305018 296711 2026-10-22T09:25:33Z Jcb 92857 305018 wikitext text/x-wiki '''OpenGL Programming''' ブックへようこそ。 OpenGL は 3D グラフィックスの描画に使用するAPIです。 OpenGL はプログラミング言語ではありません。 OpenGL アプリケーションは、一般的に、C言語またはC++で書かれます。 OpenGL の役割は、魅力的で、リアルな3Dグラフィックスを、最小限の労力で描画できるようにすることです。 APIは通常、GPUと連携をとってハードウェア アクセラレーション レンダリングを実現するために使用されます。 このwikibookへの '''参加''' や '''貢献''' は自由で、 奨励されています: [[Wikibooks:ウィキブックスへようこそ|フリードキュメンテーション]]の精神で書かれていて、全人類に帰属するものです。 気軽に印刷したり、学校やプロフェッショナルクラスに教えたり、テキストを改善し、コメントを書き、新しいセクションを執筆してください。 '''私たちは貢献者を探しています。''' OpenGLについて知っていることがあれば、お気軽にコメントを残したり、TODOセクションを拡張したり、新しいセクションを書いてくださいね! <!-- {{book search}} {{wikibooks|GLSL Programming}} --> {{wikipedia|OpenGL}} __TOC__ == はじめに == #[[/About|この文書について]] #[[/3D/History|OpenGLの歴史と進化]] == OpenGLのセットアップ == * [[/Installation/Linux|Installation on GNU/Linux]] * [[/Installation/Mac|Installation on Macintosh]] * [[/Installation/Windows|Installation on Windows with Code::Blocks]] * [[/Installation/Android_NDK|Installation for Android NDK development]] ** with a [[/Android GLUT Wrapper|GLUT-like wrapper]] to follow the exercises * [[/Installation/iPhone|Installation for iPhone development]] * [[/Installation/GLUT|Installing GLUT]] == Modern OpenGL == "Modern" OpenGL の範囲は、 OpenGL 2.1+, OpenGL ES 2.0+,および WebGLで、 プログラマブルなパイプラインやシェーダが付属するものです。 === The basics arc === {| |- |01 |[[File:OpenGL Tutorial Triangle.png|thumb|150px|link={{FULLBOOKNAME}}/Modern_OpenGL_Introduction]] |[[/モダンOpenGL イントロダクション|チュートリアル 01]]: newcomer's introduction, first dive into shaders |02 |[[File:OpenGL Tutorial Triangle interleaved.png|thumb|150px|link={{FULLBOOKNAME}}/Modern_OpenGL_Tutorial_02]] |[[/モダンOpenGL チュートリアル 02|チュートリアル 02]]: adding more robustness to our code, transparency |- |03 |[[File:OpenGL Tutorial Triangle alpha-blending.png|thumb|150px|link={{FULLBOOKNAME}}/Modern_OpenGL_Tutorial_03]] |[[/モダンOpenGL チュートリアル 03|チュートリアル 03]]: passing information to shaders: attributes, varying and uniforms |04 |[[File:OpenGL Tutorial Triangle rotating.png|thumb|150px|link={{FULLBOOKNAME}}/Modern_OpenGL_Tutorial_04]] |[[/モダンOpenGL チュートリアル 04|チュートリアル 04]]: transformation matrices: positioning and rotating |- |05 |[[File:OpenGL Tutorial Cube primary colors.png|thumb|150px|link={{FULLBOOKNAME}}/Modern_OpenGL_Tutorial_05]] |[[/モダンOpenGL チュートリアル 05|チュートリアル 05]]: adding the 3rd dimension: a cube, plus a camera |06 |[[File:OpenGL Tutorial Cube textured.png|thumb|150px|link={{FULLBOOKNAME}}/Modern_OpenGL_Tutorial_06]] |[[/モダンOpenGL チュートリアル 06|チュートリアル 06]]: textures: displaying a wooden cube |- |07 |[[File:OpenGL Tutorial TODO.png|thumb|150px|link={{FULLBOOKNAME}}/Modern_OpenGL_Tutorial_Load_OBJ]] |[[/Modern OpenGL Tutorial Load OBJ|OBJ format]]: loading Suzanne the monkey from Blender |08 |[[File:OpenGL Tutorial TODO.png|thumb|150px|link={{FULLBOOKNAME}}/Modern_OpenGL_Tutorial_Navigation]] |[[/Modern OpenGL Tutorial Navigation|Navigation]]: navigate in 3D space and manipulate objects in our model viewer |} [[/Modern OpenGL Tutorial drafts|Tutorial_drafts]]: ideas and notes for upcoming tutorials === The lighting arc === This series of tutorials is a C++ port of the [[GLSL Programming/GLUT#Basic Lighting|GLSL wikibook Basic Lighting tutorials]]. {| |- |01 |[[File:OpenGL Tutorial Lightning Diffuse.png|thumb|150px|link=GLSL_Programming/GLUT/Diffuse Reflection]] |[[GLSL Programming/GLUT/Diffuse Reflection|Diffuse Reflection]]: about per-vertex diffuse lighting and multiple light sources of different kinds |02 |[[File:OpenGL Tutorial Suzanne specular.png|thumb|150px|link=GLSL_Programming/GLUT/Specular Highlights]] |[[GLSL Programming/GLUT/Specular Highlights|Specular Highlights]]: about per-vertex lighting |- |03 |[[File:OpenGL Tutorial LIghtning two-sided.png|thumb|150px|link=GLSL_Programming/GLUT/Two-Sided Surfaces]] |[[GLSL Programming/GLUT/Two-Sided Surfaces|Two-Sided Surfaces]] (about two-sided per-vertex lighting) |04 |[[File:OpenGL Tutorial Lighting Phong.png|thumb|150px|link=GLSL_Programming/GLUT/Smooth Specular Highlights]] |[[GLSL Programming/GLUT/Smooth Specular Highlights|Smooth Specular Highlights]] (about per-pixel lighting) |- |05 |[[File:OpenGL Tutorial Lighting Phong two-sided.png|thumb|150px|link=GLSL_Programming/GLUT/Two-Sided Smooth Surfaces]] |[[GLSL Programming/GLUT/Two-Sided Smooth Surfaces|Two-Sided Smooth Surfaces]] (about two-sided per-pixel lighting) |06 |[[File:OpenGL Tutorial Lighting Phong multi-lights.png|thumb|150px|link=GLSL_Programming/GLUT/Multiple Lights]] |[[GLSL Programming/GLUT/Multiple Lights|Multiple Lights]] (about for-loops for handling multiple light sources) |} This series of tutorials is a C++ port of the [[GLSL Programming/GLUT#Basic Texturing|GLSL wikibook Basic Texturing tutorials]]. {| |- |01 |[[File:OpenGL Tutorial Textured Spheres.jpg|thumb|150px|link=GLSL_Programming/GLUT/Textured_Spheres]] |[[GLSL Programming/GLUT/Textured_Spheres|Textured Spheres]]: about texturing a sphere |02 |[[File:OpenGL Tutorial Lighting_Textured_Surfaces.jpg|thumb|150px|link=GLSL_Programming/GLUT/Lighting_Textured_Surfaces]] |[[GLSL Programming/GLUT/Lighting_Textured_Surfaces|Lighting Textured Surfaces]]: about textures for diffuse lighting |- |03 |[[File:OpenGL Tutorial Glossy Textures.jpg|thumb|150px|link=GLSL_Programming/GLUT/Glossy_Textures]] |[[GLSL Programming/GLUT/Glossy_Textures|Glossy Textures]]: about gloss mapping |04 |[[File:OpenGL Tutorial Transparent Textures.jpg|thumb|150px|link=GLSL_Programming/GLUT/Transparent Textures]] |[[GLSL Programming/GLUT/Transparent_Textures|Transparent Textures]]: about using alpha textures for discarding fragments, alpha testing, and blending |- |05 |[[File:OpenGL Tutorial Layers of Textures.jpg|thumb|150px|link=GLSL_Programming/GLUT/Layers of Textures]] |[[GLSL Programming/GLUT/Layers_of_Textures|Layers of Textures]]: about multitexturing |} This series of tutorials is a C++ port of the [[GLSL Programming/GLUT#Textures_in_3D|GLSL wikibook tutorials about Textures in 3D]]. {| |- |01 |[[File:OpenGL Tutorial Lighting of Bumpy Surfaces.jpg|thumb|150px|link=GLSL_Programming/GLUT/Lighting_of_Bumpy_Surfaces]] |[[GLSL Programming/GLUT/Lighting_of_Bumpy_Surfaces|Lighting of Bumpy Surfaces]]: about normal mapping |02 |[[File:OpenGL Tutorial TODO.png|thumb|150px|link=GLSL_Programming/GLUT/Projection_of_Bumpy_Surfaces]] |[[GLSL Programming/GLUT/Projection_of_Bumpy_Surfaces|Projection of Bumpy Surfaces]]: about parallax mapping |- |03 |[[File:OpenGL Tutorial TODO.png|thumb|150px|link=GLSL_Programming/GLUT/Cookies]] |[[GLSL Programming/GLUT/Cookies|Cookies]]: about projective texture mapping for shaping light |04 |[[File:OpenGL Tutorial TODO.png|thumb|150px|link=GLSL_Programming/GLUT/Light_Attenuation]] |[[GLSL Programming/GLUT/Light_Attenuation|Light Attenuation]]: about texture mapping for light attenuation and lookup tables in general |- |05 |[[File:OpenGL Tutorial TODO.png|thumb|150px|link=GLSL_Programming/GLUT/Projectors]] |[[GLSL Programming/GLUT/Projectors|Projectors]]: about projective texture mapping for projectors |} There are more tutorials to port at the [[GLSL Programming/GLUT#Tutorials|GLSL wikibook]]! === The scientific arc === {| |- |01 |[[File:OpenGL Tutorial Graph 01.png|thumb|150px|link=OpenGL_Programming/Scientific OpenGL Tutorial 01]] |[[OpenGL Programming/Scientific OpenGL Tutorial 01|Graph 01]]: plotting a simple function, using vertex buffer objects and point sprites |02 |[[File:OpenGL Tutorial Graph 02.png|thumb|150px|link=OpenGL_Programming/Scientific OpenGL Tutorial 02]] |[[OpenGL Programming/Scientific OpenGL Tutorial 02|Graph 02]]: plotting a graph from data in a texture |- |03 |[[File:OpenGL Tutorial Graph 03.png|thumb|150px|link=OpenGL_Programming/Scientific OpenGL Tutorial 03]] |[[OpenGL Programming/Scientific OpenGL Tutorial 03|Graph 03]]: plotting borders and axes, clipping |04 |[[File:OpenGL Tutorial Graph 04.png|thumb|150px|link=OpenGL_Programming/Scientific OpenGL Tutorial 04]] |[[OpenGL Programming/Scientific OpenGL Tutorial 04|Graph 04]]: plotting a three-dimensional graph |- |05 |[[File:OpenGL Tutorial Graph 05.png|thumb|150px|link=OpenGL_Programming/Scientific OpenGL Tutorial 05]] |[[OpenGL Programming/Scientific OpenGL Tutorial 05|Graph 05]]: plotting a surface with hidden line removal |} And more to come. === Selected topics === {| |01 |[[File:OpenGL Tutorial Arcball concept.png|thumb|150px|link={{FULLBOOKNAME}}/Modern_OpenGL_Tutorial_Arcball]] |[[/Modern OpenGL Tutorial Arcball|Arcball]]: intuitive object rotation with the mouse |02 |[[File:OpenGL Tutorial Bounding box.png|thumb|150px|link={{FULLBOOKNAME}}/Bounding box]] |[[/Bounding box|Bounding box]]: draw a cube around your object for editing or debugging purposes |- |03 |[[File:OpenGL Tutorial WIP.png|thumb|150px|link={{FULLBOOKNAME}}/Modern_OpenGL_Tutorial_2D]] |[[/Modern OpenGL Tutorial 2D|2D-on-3D]]: hardware-accelerated 2D programming |04 |[[File:OpenGL Tutorial Post-processing Water.ogg|thumb|150px|link={{FULLBOOKNAME}}/Video_Capture]] |[[/Video Capture|Video Capture]]: capture your animation using apitrace (C++) or JavaScript (WebGL) |- |05 |[[File:OpenGL Tutorial Teapot control points.png|thumb|150px|link={{FULLBOOKNAME}}/Modern_OpenGL_Tutorial_07]] |[[/Modern OpenGL Tutorial 07|Tea time]]: generating a HD teapot from Bézier surfaces |06 |[[File:OpenGL Tutorial Stencil.png|thumb|150px|link={{FULLBOOKNAME}}/Stencil buffer]] |[[/Stencil buffer|Stencil buffer]]: masking and combining |- |07 |[[File:OpenGL Tutorial TODO.png|thumb|150px|link={{FULLBOOKNAME}}/Quadrics]] |[[/Quadrics|Quadrics]]: creating simple shapes with a bit of maths |08 |[[File:OpenGL Tutorial Text 01.png|thumb|150px|link={{FULLBOOKNAME}}/Modern_OpenGL_Tutorial_Text_Rendering_01]] |[[/Modern OpenGL Tutorial Text Rendering 01|Basic text]]: rendering text using the FreeType library |- |09 |[[File:OpenGL Tutorial Text 01.png|thumb|150px|link={{FULLBOOKNAME}}/Modern_OpenGL_Tutorial_Text_Rendering_02]] |[[/Modern OpenGL Tutorial Text Rendering 02|Optimized text rendering]]: using a texture atlas containing all glyphs |10 |[[File:OpenGL Tutorial Object Selection.png|thumb|150px|link={{FULLBOOKNAME}}/Object selection]] |[[/Object selection|Object selection]]: unprojecting coordinates and object identification using the stencil buffer |- |11 |[[File:OpenGL Tutorial TODO.png|thumb|150px|link={{FULLBOOKNAME}}/Anti-Aliasing]] |[[/Anti-Aliasing|Anti-Aliasing]]: smoothing lines |} === The post-processing arc === {| |01 |[[File:OpenGL Tutorial Post-processing Water.png|thumb|150px|link={{FULLBOOKNAME}}/Post-Processing]] |[[/Post-Processing|Concepts]]: how to perform full-screen post-processing, first example with a simple animated wave |02 |[[File:OpenGL Tutorial TODO.png|thumb|150px|link={{FULLBOOKNAME}}/Post-Processing_???]] |[[/Post-Processing ???|???]]: next effect to be decided! |- |} === Mini-portal === This series shows how to implement a teleportation system similar to Valve's Portal, step-by-step, using OpenGL. {| |01 |[[File:OpenGL Tutorial Mini-Portal Non-Recursive.png|thumb|150px|link={{FULLBOOKNAME}}/Mini-Portal]] |[[/Mini-Portal|Mini-Portal]]: a first working see-through portal |02 |[[File:OpenGL Tutorial TODO.png|thumb|150px|link={{FULLBOOKNAME}}/Mini-Portal_Smooth]] |[[/Mini-Portal Smooth|Mini-Portal Smooth]]: smooth transition, understanding the camera |- |03 |[[File:OpenGL Tutorial Mini-Portal.png|thumb|150px|link={{FULLBOOKNAME}}/Mini-Portal_Recursive]] |[[/Mini-Portal Recursive|Mini-Portal Recursive]]: recursive portals - display portals within portals |04 |[[File:OpenGL Tutorial WIP.png|thumb|150px|link={{FULLBOOKNAME}}/Mini-Portal_Optimization]] |[[/Mini-Portal Optimization|Mini-Portal Optimization]]: optimization with scissors |} === Glescraft === This series shows how to render a voxel based world, similar to [[w:Minecraft|Minecraft]]. {| |01 |[[File:OpenGL Tutorial Glescraft 1.png|thumb|150px|link={{FULLBOOKNAME}}/Glescraft_1]] |[[/Glescraft 1|Glescraft 1]]: basic voxel rendering |02 |[[File:OpenGL Tutorial Glescraft 3.png|thumb|150px|link={{FULLBOOKNAME}}/Glescraft_2]] |[[/Glescraft 2|Glescraft 2]]: removing unnecessary voxel faces |- |03 |[[File:OpenGL Tutorial Glescraft 6.png|thumb|150px|link={{FULLBOOKNAME}}/Glescraft_3]] |[[/Glescraft 3|Glescraft 3]]: texturing, lighting, fog, transparency |04 |[[File:OpenGL Tutorial Glescraft 7.png|thumb|150px|link={{FULLBOOKNAME}}/Glescraft_4]] |[[/Glescraft 4|Glescraft 4]]: first person camera controls |- |05 |[[File:OpenGL Tutorial WIP.png|thumb|150px|link={{FULLBOOKNAME}}/Glescraft_5]] |[[/Glescraft 5|Glescraft 5]]: drawing only what is on screen |06 |[[File:OpenGL Tutorial WIP.png|thumb|150px|link={{FULLBOOKNAME}}/Glescraft_6]] |[[/Glescraft 6|Glescraft 6]]: adding and removing voxels |- |07 |[[File:OpenGL Tutorial WIP.png|thumb|150px|link={{FULLBOOKNAME}}/Glescraft_7]] |[[/Glescraft 7|Glescraft 7]]: using geometry shaders |} === Using the accumulation buffer === {| |01 |[[File:OpenGL Tutorial Glescraft-mb.png|thumb|150px|link={{FULLBOOKNAME}}/Motion_Blur]] |[[/Motion Blur|Tutorial 01]]: motion blur |02 |[[File:OpenGL Tutorial Glescraft-nodof-aa.png|thumb|150px|link={{FULLBOOKNAME}}/Supersampling]] |[[/Supersampling|Tutorial 02]]: full-screen supersampling anti-aliasing |- |03 |[[File:OpenGL Tutorial Glescraft-dof-middle.png|thumb|150px|link={{FULLBOOKNAME}}/Depth_of_Field]] |[[/Depth of Field|Tutorial 03]]: depth of field |04 |[[File:OpenGL Tutorial Glescraft-trans-side.png|thumb|150px|link={{FULLBOOKNAME}}/Transparency]] |[[/Transparency|Tutorial 04]]: order-independent transparency |} === Cutting-edge OpenGL === If you do not need to target mobile devices or the web, you can upgrade to OpenGL 4.x. It notably introduces 3 new kinds of shaders: Geometry, Tessellation Control and Tessellation Evaluation. {| |01 |[[File:OpenGL Tutorial TODO.png|thumb|150px|link={{FULLBOOKNAME}}/Geometry_Shader]] |[[/Geometry Shader|Tutorial 01]]: modify and create vertices on the fly with geometry shaders |02 |[[File:OpenGL Tutorial TODO.png|thumb|150px|link={{FULLBOOKNAME}}/Tesselation]] |[[/Tesselation|Tutorial 02]]: dynamic mesh quality with tesselation |} and lots of other features. === Code quality === {| |01 |[[File:OpenGL Tutorial WIP.png|thumb|150px|link={{FULLBOOKNAME}}/Debugging]] |[[/Debugging|Debugging]]: tips to help debug your OpenGL code |02 |[[File:OpenGL Tutorial WIP.png|thumb|150px|link={{FULLBOOKNAME}}/Performances]] |[[/Performances|Performances]]: measuring and improving your application perfs |} === Appendices === * [[/OpenGL ES Overview|OpenGL ES 2.0 Overview]]: OpenGL ES 2.0 (OpenGL for Embedded Systems 2.0) concepts and its differences to normal OpenGL * [[/Migrating from 1.x to 2.x|Migrating from 1.x to 2.x]]: how to upgrade your code to use modern OpenGL * [[/Glossary|Glossary]]: what do all those new weird words mean? * [[/APIs, Libraries and acronyms|APIs, Libraries and acronyms]]: how all acronyms relate to each others * [[/Advanced/GLSL|OpenGL Shading Language]]: elements of GLSL programming * [[/Shaders reference|Shaders reference]]: input and output variables list * [[/Team|Team]]: contributors to this wikibook * Download code: [https://gitorious.org/wikibooks-opengl/modern-tutorials/trees/master Gitorious wikibooks-opengl project] == Legacy OpenGL 1.x == "Legacy" OpenGL is about OpenGL 1.x and OpenGL ES 1.x, with a fixed pipeline and no shaders. === Starting Tutorial === #[[/GLStart/Tut1|Setting Up A Programming Environment On Windows]][[File:75%.svg]] #[[/GLStart/Tut2|Setting Up OpenGL In The Programming Environment]][[File:75%.svg]] #[[/GLStart/Tut3|Drawing Primitives]][[File:75%.svg]] ## Immediate Mode ## Display Lists ## Vertex Arrays #[[/GLStart/Tut4|Basic Transformations]][[File:75%.svg]] ## Translation ## Rotation ## Scaling ## Custom Transformations === Basics === #[[/Basics/Structure|Structure of a Typical OpenGL Application]] [[File:100 percent.svg]] #[[/Basics/Rectangles|Drawing Rectangles]] [[File:75%.svg]] #[[/Basics/LinesPoints|Drawing Lines and Points]] #[[/Basics/2DObjects|Drawing Simple 2D Shapes]] [[File:100 percent.svg]] #[[/Basics/NamingConventions|OpenGL Naming Conventions]] [[File:75%.svg]] #[[/Basics/Color|Using Color]] [[File:75%.svg]] #[[/Basics/Transformations|Viewing Transformations]] [[File:25%.svg]] #[[/Basics/3DObjects|Drawing Simple 3D Objects]] #[[/Basics/Perspective|Perspective versus Orthographic Projections]] === Intermediate === #[[/Intermediate/Normals|Smoothing Polygons with Normals]] #[[/Intermediate/Lighting|Adding Lights]] #[[/Intermediate/Materials|Using Materials]] #[[/Intermediate/Textures|Using Textures]] #[[/Intermediate/Mipmaps|Using Mipmaps]] #[[/Intermediate/TessellatingPolygons|Drawing Complex Polygons Using Tessellation]] === Advanced === #[[/Advanced/Optimization|Optimizing OpenGL Code]] #[[/Advanced/Shadows|Drawing Shadows]] #[[/Advanced/Quadrics|Drawing Using Quadrics]] #[[/Advanced/NURBS|Drawing Using NURBS and Curves]] #[[/Advanced/AmbOcc|Ambient Occlusion]] === Appendices === #[[/3D/Mathematics|Coordinate Transformations]] #[[/3D/Matrices|Understanding Transformation Matrices]] #[[OpenGL Programming/reference|OpenGL Library Reference.]] functions and type reference for gl.h glu.h and glut.h #[[/3D/Why OpenGL|Why OpenGL Exists and What It's Good For]] #[[/Migrating from 1.x to 2.x|Migrating from 1.x to 2.x]]: how to upgrade your code to use modern OpenGL <!--== External links == {{Wikibooks|GLSL Programming}} --> === Wikibooks === Related WikiBooks: * [[GLSL Programming]] : wikibook on the use of the OpenGL Shading Language (GLSL) in Unity 3 and Blender 2.5, with much information on lighting and texturing * [[Blender 3D: Noob to Pro]]: comprehensive book on using the Blender 3D modeling environment === Ports === The following websites provide conversion of the tutorials to other programming languages or platforms: * https://github.com/alihelmy/lwjglTutorial : port to Lightweight Java Game Library (LWJGL) ([https://onehandstand.blogspot.com/search/label/OpenGL%20Wikibook%20LWJGL%20Port blog]) * https://littlefootlandmines.blogspot.com/search/label/opengl%20tutorials : not really a port, but commented, progressive version of the tutorials code as the author follows them === Freely-licensed documentation and samples === * [http://arcsynthesis.org/gltut/ Learning Modern 3D Graphics Programming]: another modern OpenGL tutorial, requiring v3.3 or later, MIT license ([https://bitbucket.org/alfonse/gltut/src source repository]) * [https://www.learnopengles.com/ Learn OpenGL ES]: Detailed, step-by-step OpenGL ES tutorials in Java for Android, and a bit of WebGL as well, CC BY-SA 3.0 license ([https://github.com/learnopengles/Learn-OpenGLES-Tutorials source repository] - Apache License 2) * [https://www.g-truc.net/project-0026.html#menu OpenGL Samples Pack]: written in C++ based on the "core profile" specifications, aimed at easing upgrades to new OpenGL versions and features, MIT license ([http://ogl-samples.git.sourceforge.net/git/gitweb.cgi?p=ogl-samples/ogl-samples;a=tree source repository]) * [http://www.mechcore.net/wiki/index.php?title=OpenGL_Examples Introduction and examples for OpenGL 3.3]: GFDL license * [http://www.mechcore.net/wiki/index.php?title=OpenGL_FAQ A modern OpenGL FAQ]: GFDL license * [https://pyopengl.sourceforge.net/context/tutorials/index.xhtml OpenGLContext Python Tutorials]: basic tutorials using PyOpenGL ([http://bazaar.launchpad.net/~mcfletch/openglcontext/trunk/view/head:/license.txt BSD-style licenses]) * [https://www.paulsprojects.net/tutorials/tutorials.html Paul's projects]: OpenGL 1.x, two tutorials on shadow mapping and bump mapping, with code under the MIT license * WebGL: ** [https://greggman.github.io/webgl-fundamentals/webgl/lessons/webgl-fundamentals.html Gregg Tavares’ WebGL articles]: detailed 2D and 3D basics with emphasing on matrix operations; lots of diagrams and interactive animations ([https://github.com/greggman/webgl-fundamentals code] - MIT license) ** [https://developer.mozilla.org/en-US/docs/Web/WebGL WebGL at Mozilla Developer Network]: WebGL overview, including embedding videos; CC BY-SA for articles, MIT and public domain for code ** [https://threejs.org/ three.js]: impressive collection of demos using the three.js WebGL framework; [https://github.com/mrdoob/three.js/tree/master/examples code] is MIT but models/data may be non-free === Non-freely-licensed documentation === * [http://nehe.gamedev.net/lesson.asp?index=01 NeHe's OpenGL tutorial]: OpenGL 1.x * [https://www.falloutsoftware.com/ Collection of OpenGL fundamentals tutorials using C++ and Windows API]: OpenGL 1.x * [https://www.zeuscmd.com/ ZeusCMD OpenGL Tutorials]: OpenGL 1.x * [http://openglsamples.sourceforge.net/ OpenGL Programming Examples]: OpenGL 1.x, === Websites === * [https://opengl.org/ Official OpenGL Website] * [https://mesa3d.org/ Mesa, an open-sourced 3D graphics library almost identical to OpenGL] === Further reading === * OpenGL Architecture Review Board, et al: OpenGL Programming Guide: The Official Guide to Learning OpenGL, Version 2, Fifth Edition, Addison-Wesley, {{ISBN|0-321-33573-2}} * OpenGL Architecture Review Board, et al: OpenGL Reference Manual: The Official Reference Document to OpenGL, Version 1.4, Addison-Wesley, {{ISBN|0-321-17383-X}} * Wright, Richard S. Jr and Lipchak, Benjamin: OpenGL SuperBible, Third Edition, Sams Publishing, {{ISBN|0-672-32601-9}} <!--{{alphabetical|O}}--> {{進捗|50%}} <!--{{OpenGL Programming BottomNav}}--> [[fr:OpenGL]] <!-- [[ko:OpenGL 프로그래밍]] --> [[en:OpenGL Programming]] [[pl:OpenGL Shading Language]] [[Category:OpenGL|*]] phulesi1dwa3pto21fhxd6ixt15rwww 中学校技術/プログラムによる計測・制御 0 18480 305056 247575 2026-10-22T11:25:36Z Jcb 92857 305056 wikitext text/x-wiki == プログラム == コンピュータの処理の手順を'''プログラム'''という。 プログラムを記述するための言語を'''プログラミング言語'''という。 ;順次、分岐、反復 [[File:フローチャート 順次.svg|thumb|250px|フローチャート、順次の例]] [[File:フローチャート 分岐.svg|thumb|250px|フローチャート、分岐の例]] [[File:フローチャート 条件繰り返しの例.svg|thumb|250px|フローチャート、条件繰り返し(反復)の例]] コンピュータは、特に指示がない限りは、前から順番通りに実行する。これを'''順次'''という。 コンピュータは、条件によって(あるいは条件によらず)実行する順序を変えることができる。これを'''分岐'''という。 コンピュータは、同じ処理を繰り返すこともできる。これを'''反復'''という。 [[File:Jis-flowchart-fixed.png|thumb|left|簡易なフローチャート これはsに1から10までの数字を足しこむ処理を表した図である。]] [[ファイル:FlowchartExample.png|thumb|right|left|Nの階乗 N! を計算するフローチャート]] 分岐と反復を組み合わせて、条件が満たされている間だけ処理を反復するような手順も、プログラムで指示できる。 プログラミング言語には様々な種類があるが、多くのプログラミング言語は、分岐や反復や順次処理などを利用している。 ;フローチャート プログラムでの、順次や分岐や反復の組み合わせ方を、人間が理解しやすいように図示したものとして'''フローチャート'''が有る。 横長のひし形(図では◇の横長のもの)で、条件分岐を表し、ひし形の中に、条件の内容を記述している。 順次処理は、横長の長方形で書かれる。処理内容は、四角の中に書かれる。 順番は、原則として、プログラムの最初が、フローチャートの一番上にあり、一番下が、最後の処理である。 ;プログラミング言語 プログラミング言語には多くの種類があるが、1960年代ごろからある古典的な言語では、BASIC(ベーシック)とC言語(シーげんご)とFORTRAN(フォートラン)やCOBOL(コボル)がある。 :BASICは初心者向けとして有名であった。 :C言語は、コンピュータで処理しやすいように文法が厳密である。歴史的にはオペレーティングシステムのプログラムの記述のために開発されたため、OSの開発など、システムの深い部分の処理にも利用しやすい。 :C言語はコンピュータ技術者にとっては有用だが、それ以外の職業の用途では無用な特徴も多く、そのため、ほかの業界に合わせて開発されたプログラミング言語がある。 {{-}} {{コラム|1=(※ 範囲外)フローチャートの作図とオフィスソフト| 2= Microsoft Word や PowerPoint 、あるいは Google スライドなどに、あらかじめ、フローチャートでよく使う図形が、基本的な図形として登録されています。(ただしGoogle ドキュメントには初期設定では用意されていません。) いちいち線を1本1本、マウスなどで引いていく必要はありません。作図の際は、なるべく、オフィスソフト(WordやExcelやPowerPointのような機能のソフトの事)側で用意されている図形を活用しましょう。 文科省の動画教材でも、動画教材で図形を書くとき、PowerPointが準備済みの基本図形を活用して作図しています。[https://www.youtube.com/watch?v=J12CkVYtPEY 文部科学省『【情報Ⅰ】コミュニケーションと情報デザイン(1)「情報デザインの要!情報の構造化」』] }} == アクチュエータへの応用 == 外界からの情報を信号として出力する装置を'''センサ'''という。 以下、コンピュータに取り付けられるセンサについて記述する。 センサとは別に、コンピュータなどからの信号に基づき外界の物体を動かす装置を'''アクチュエータ'''という。 センサとアクチュエータをコンピュータに取り付ければ、センサで外界の状況を確認できるので、外界の状況が変わっても、センサで外界を確認しなおして、プログラムの判断基準(プログラムの条件分岐の機能を、アクチュエータの判断基準に応用できる。)に従い、アクチュエータで外界の物体をプログラム通りに動かせる。 このように、コンピュータ制御のアクチュエータを、センサと連動させることで、外界の環境変化に対応するアクチュエータを作ることができる。 一般に、パソコンの単体には、センサやアクチュエータは付属していないので、もしセンサやアクチュエータが必要な場合は、パソコン用のセンサやアクチュエータを購入などで入手してから、それらをパソコンに取り付けることになる。 == (※ 範囲外: )論理代数 == :※ 2019年現在の中学技術の検定教科書では、下記のような条件判定については習わない。 :ただし、資料集などで紹介される可能性があるので、wikibooksに残しておく。 コンピュータの分岐機能での条件判定では、次のような判定が出来ます。 {| class="wikitable" ! 条件 !! 数学の記号 |- | AとBは等しい || <math>A = B</math> |- | AはBより大きい || <math>A > B</math> |- | AはBより小さい || <math>A < B</math> |- | AはB以上 || <math>A \geqq B</math> |- | AはB以下 || <math>A \leqq B</math> |- | AとBは等しくない|| <math>A \neq B</math> |} センサーなどを用いてアクチュエータ制御の条件判定を行う場合は、センサーの信号を数値に置き換えて行います。 また、複数の条件判定を組み合わせた条件判定もあります。次に示す、論理積や論理和などです。 * 論理積 [[File:AND circuit for beginners.svg|thumb|300px|AND回路の説明図。この図は X and Y の図である。<br />電球がつくのは、スイッチXとスイッチYの両方が閉まっている時だけである。(スイッチが閉まっている状態を1とする。スイッチが開いている状態を0とする。)]] たとえば、条件Xと条件Yの両方が満たされている時にのみ、ある行動を実行する条件判定をAND(アンド)という。このANDとは英語の接続詞の 「and」 のことである。式では、 : X and Y などと書く。 仮に条件が満たされていない場合を数字の0として、条件が満たされている場合を1とすると、andの性質が、掛け算に似ているので、そのことからAND演算を'''論理積'''(ろんりせき)ともいう。 ある条件Xが満たされていることを'''真'''(しん)と言う。ある条件が満たされていない場合を'''偽'''(ぎ)と言う。 条件が真の時、これを数値の1で表すことができる。条件が偽のとき、数値の0で表すことができる。なお、このように、条件の数値を数値の1と0に置き換えて計算する代数学を'''ブール代数'''(ブールだいすう)という。 {| class="wikitable" |+ 論理積の真理値表 |- style="background-color:#cccccc" ! 条件 ''P'' !! 条件 ''Q'' !! ''P'' and ''Q'' |- align="center" | 真 || 真 || 真 |- align="center" | 真 || 偽 || 偽 |- align="center" | 偽 || 真 || 偽 |- align="center" | 偽 || 偽 || 偽 |} <!-- 蛇足 {| class="wikitable" |- style="background-color:#cccccc" ! 変数 ''P'' !! 変数 ''Q'' !! ''P'' × ''Q'' |- align="center" | 1 || 1 || 1×1= '''1''' |- align="center" | 1 || 0 || 1×0= '''0''' |- align="center" | 0 || 1 || 0×1= '''0''' |- align="center" | 0 || 0 || 0×0= '''0''' |}--> * 論理和 条件Xと条件Yの少なくとも、どちらか片方が満たされている時に、ある行動を実行する条件判定をOR(オア)という。このORとは英語の接続詞の 「or」 のことである。式では、 : X or Y などと書く。OR演算のことを'''論理和'''(ろんりわ)ともいう。 {| class="wikitable" |- style="background-color:#cccccc" ! 命題 ''P'' !! 命題 ''Q'' !! ''P'' or ''Q'' |- align="center" | 真 || 真 || 真 |- align="center" | 真 || 偽 || 真 |- align="center" | 偽 || 真 || 真 |- align="center" | 偽 || 偽 || 偽 |} * 否定 他にも、条件Xが満たされていない場合に、(その他の条件Yなどについては不問)、ある行動を実行する条件判定をNOT(ノット)と言う。式では、 : not X などと書く。NOT演算のことを'''否定'''(ひてい)と言う。 {| class="wikitable" |- style="background-color:#cccccc" ! 命題 ''P'' !! not''P'' |- align="center" | 真 || 偽 |- align="center" | 偽 || 真 |} * 排他的論理和 他にも、条件Xと条件Yの少なくとも、どちらか片方'''のみ'''が満たされている時に、ある行動を実行する条件判定をXOR(エクスクルーシブ/オア)という。式では、 : X xor Y などと書く。XOR演算のことを、'''排他的論理和'''(はいたてき ろんりわ)とも言う。 条件判定のANDやORなどを回路図の一部として図示したものとして、論理回路がある。条件が満たされた時を、回路に電流が流せる時と同一している。 たとえば、AND回路では、A and B なら、Aに対応するスイッチとBに対応するスイッチが閉じることで、回路に電流が流せるようになる。 NOT回路では、not Aなら、普段はスイッチが閉じていて、条件Aが満たされた時に対応するスイッチAが開き、電流が流せなくなる。 <gallery widths=200px heights=200px> File:Relay and.svg|'''AND回路'''<br> A and B File:Relay or.svg|'''OR回路'''<br>A or B File:Relay xor.svg|'''XOR回路'''<br>A xor B </gallery> コンピュータのハードウェア内部では、半導体素子の一種であるトランジスタのスイッチング機能を用いて、論理回路を実現している。このようなハードウェアの仕組みを利用して、コンピュータは論理演算を行っている。なおトランジスタが実用化される前には、パラメトロンや三極真空管を、更に真空管が実用化される前には、継電器(リレー)を用いて、スイッチング機能を実現していた。 (トランジスタのスイッチング機能については工業高校や工学系大学の教育内容になる。) :中学の段階では、トランジスタの仕組みについて、まだ知らなくても良い。 == 補足 == プログラミング言語の具体的な文法については、ウィキブックス内には、記事[[プログラミング]]などに解説があります。 実習などで用いる言語は、時代によって変わるかもしれません。また、実習の内容によっても変わります。 たとえばウェブページを作る場合のプログラムはHTML(エイチ・ティー。エム・エル)という言語で記述を行う場合が多いです。 また、学校で用意された実習キットなどを用いてプログラミングを行う場合は、そのキット用に開発された独自の教育用のプログラミング言語を用いる場合もあります。 中学の段階なら、BASICか、その派生言語を使うことが、あるかもしれません。 == デバッグ == :※ 令和3年度から、デバッグの話題がこの単元に加わります。(東京書籍などのwebサイトの技術科教材のカタログPDFで確認。) プログラミングでは、とりあえず一応のプログラムを書けたら、今度はそのプログラムを実験的に動作させてみて、本当に安全かつ正常に動くかどうかを確認する必要があります。 人間の入力ミスや、勘違いなどによって、プログラムが異常な動作をしてしまう場合もあります。 なんらかの原因で、プログラムが異常な動作をすることを「バグ」と言います。 プログラムにもしもバグがあったら、つまり、なにか異常な動作、正常でない動作をするなら、これは修正しないといけません。このように、バグを取り除いて、プログラムを正常に直すことを'''デバッグ'''(debug)といいます。 前提として、プログラムを作った後は、まず開発企業などが自分たちで、本当にそのプログラムが正常かどうかを実際にプログラムを動作させる実験によって試す必要があります(この工程を「テスト」と言います。)。もちろん、時間の制限などもあって、完全には確認しきれませんが、なるべく時間の許すかぎり、プログラムを確認する必要があります。 また、プログラムのエラーだけを除くのではなく、たとえば画面のあるシステムを作っている場合なら、画面が第三者の利用者にも見やすいかのチェックや、操作が分かりやすいかなどもチェックもデバッグにおいて確認する場合もあります(※ 開隆堂の検定教科書)。 :(※ たぶん範囲外: )説明の都合上、プログラムを例にして説明していますが、コンピュータ業界以外の製品開発なども同様に、安全性などを実際に動作させることでテストする必要があります。 :自動車会社なら実際に走行試験や衝突実験(エアバッグの動作などの確認)をしています。製薬会社では、実際にネズミやイヌなどの動物を使って実験をしたり(動物実験)、最終段階には人間を希望者をあつめて新薬の実験の被験者になってもらいます(人間を被験者にした新薬の実験のことを「治験」(ちけん)と言います)。 なお、テストのために動作確認をする前提として、まず、その製品の正常な動作を、決める必要があります。(これをIT業界で「仕様」(しよう)などと言います。) 「〇〇の条件のときに、このプログラムは△△の動作をする」という仕様でしたら、果たして本当にプログラムがそのとおりに動作をできているか、実験をして確認をします。 {{コラム|「検証」の要求水準| ※ たとえば、東京書籍の教科書の例ですが(※ 教科書では断言はしてないが)、「温度が25℃以上に高くなったら、扇風機を回す」というプログラムならば、実際に室温などの温度を25℃以上に上昇させる実験をする必要もあります。そして、その温度(25℃以上)になったら、本当に扇風機が回ってるかどうかを確認します。 けっして、「実際の物理実験ではなく、情報技術を駆使して、25℃以上のデータ入力信号をプログラムに送ってみる」みたいな信号処理だけで済ますのではなく、最終的には実際に室温を25℃以上にします。そこまで実験するのが、製造業では当然です。(※ 教科書では断言してないが、しかし製造業では、最低限でも このくらい以上の確認をするのが常識。) 製造業でも、コンピュータなどで強度計算シミュレーションなどをする事もありますが、最終段階では、自動車会社なら衝突実験などの物理的な実験で、どの程度で壊れるか/壊れないかなどを物理的な実験で検証します。また、自動車会社での流体解析でも、試作の初期の段階ではコンピュータを援用することもありますが、さらに風洞実験(ふうどうじっけん)などで確認し、さらに最終的には走行試験などでも検証します。 コンピュータや理論家が、どんなに立派な数式を用いてシミュレーションしていても、それはその予想が正しいことの証明になりません。 (歴史でも、数学の方程式をもちいた理論にもとづく予想が外れたこともある(高校レベルなら「タコマ橋の崩壊」など。大学レベルなら、流体力学のナヴィエ・ストークス方程式で有名な土木工学者ナヴィエの設計した橋もあっけなく崩壊した。)。 中学校・高校では、当たった予想だけを習うので、ついつい勘違い(「数式にもとづく予想は絶対に正しい」(×)という勘違い)しがちになるが、しかし現実はそうではない。) 工業などにおける、シミュレーションや理論・数式の正しさの検証は、最終的には、じっさいに物理的な実験によって確認が行われなければなりません。(※ 日本のJAXA(航空宇宙関係の国立研究所)や産総研(産業技術総合研究所)なども、そういう見解です。JAXAのそういう見解については、たしか書籍の 講談社ブルーバックス『小惑星探査機「はやぶさ」の超技術』で確認できたと思います。産総研のほうは、出典はあるのですが、教科書では事情で出せません。<!-- 産総研のほうについては、テレビ番組のTBSの科学番組『夢の扉』でメタンハイドレート採掘の産総研の研究者が、そうシミュレーションの問題点を指摘しました -->) :たとえば2011年(東北大地震)の原発事故のあとの国の研究所の対応でも、そうです。災害復旧ロボットなどの試験では、国の試験場(実験試験のための広いこ国有地がある)などにガレキの山を用意して、そういう不整地な足場のわるい場所であっても実際にうまくロボットが動作して目的の活動をできるかもテストしたという実例もあります。 :論文が多いかどうかとか、そういうのは無関係です。 外国の例でも、アメリカ合衆国のNASAや米軍研究所(DARPAなど)でも同様、最終的には、物理的な実験で確認します。(日経サイエンスの増刊号『ロボット・イノベーション』に、ここら辺の話題が書いてある。なお日経サイエンスはじつはアメリカの科学雑誌『サイエンティフック・アメリカン』の日本語版。米国のロボット試験場には、ガレキなどの山があったり暴風雨(大量のシャワー放水 と 多数の大型扇風機(工業用) などで暴風雨を再現したりする)のようなテスト環境も用意されており、こういった過酷環境を再現したロボット試験場のことを英語で「ディスアスター・フィールド」(disaster field ? (※ 翻訳がネットで見つからず))と言います。米国の軍用ロボットなどは、この過酷なディズアスター・フィールドで実験的に試験されています。) :※ 福島ロボット・テストフィールドというのが今度の令和3年度教科書で紹介されるらしいですが、ロボットのテストのフィールドというのは、分野によってはこういうレベルである。 中学校なら、設備などの制約もあるので、そこまで本格的には実験する必要は無いです。しかし、せめて最低限でも、25℃の扇風機プログラムの検証なら、ためしにエアコンでも使って実際に室温を25℃以上にしてみるぐらいの確認実験はするのが望ましいでしょう。 きびしめの事を書きましたが、大学生でも、ここまで考えられてるかどうかアヤシイので、あまり深刻にならず、頭の片隅にでも入れておきましょう。 なお、芸術系の大学などであっても、美大生などが家具とかをデザインする際、教授がその家具を普通の使い方をしてみて(強度不足などの理由で)壊れたら、その科目の学生の成績評価は『不合格』とするという言い伝えもあるくらいです。 }} ※ なお、温度を電流に変換するための電子素子としては、PTCサーミスタという素子があります(※ ネットの教科書画像でPTCサーミスタの紹介を確認。教育図書の教科書とのこと)。 == フェイル・セーフ == バグを見つけて除くデバッグも重要ですが、万が一、バグを見過ごしてしまった場合でも、人が死ぬことや怪我などの取り返しのつかない大被害が出ないように設計することも必要です。 そのように、もしバグや故障などの誤動作などがあっても、システムが安全に稼働するように設計することをフェールセーフ(fail-safe)またはフェールプルーフ(fail-proof)と言います(※ 2022年代の中学技術の検定教科書にフェールセーフが書いてあるらしい)。 「フェイル」fail とは、「失敗する」・「失敗」などの意味の英語です。 たとえば、機械工場で生産システムを管理しているコンピュータの場合、もしシステムが異常を感知したら、そもそも通常起動をしないようにするべきです。 なぜなら、異常のある状態で高圧プレスなどを制御されたら、もしかしたら事故で作業員が死ぬ可能性があります。 かといって、すでに稼働している最中でシステムが級に故障した場合に、果たして急停止するべきかといわれたら、それは場合によっては疑問です。 もしシステムが急停止したことで、逆に人がケガをする事故が起きては困ります。 なので、システム稼働中の事故に対しては、たとえば徐々に減速していく、とかの設計になるでしょうか(職場や製品やシステムによって、適切な設計は変わります)。 ともかく、システムの異常時には、事故防止のため、安全にするための処理が自動的に起動して動作するような感じの設計、または、安全だと認められる処理以外の手作業での入力をシステムが受け付けないように設計するなど、安全措置(あんぜん そち)以外をできないようにする必要があります。 このように、安全側にシステムのモードを移行するための仕組みを組み込むような設計のことが、フェイル・セーフまたはフェイル・プルーフと言われるものです。 なお、仮にプログラムにバグが無くても、部品の故障によってエラーが起きる場合もあります。なので、工場などで使うプログラムでは、フェイル・セーフも必要です。 == 設計技法の初歩 == さて、ある検定教科書では、サーバ・クライアント通信のプログラムを、アクティビティ図を用いて設計する手法を紹介しています。 果たして中学でそこまで必要になるかは不明ですし、そもそも中学レベルの技術力でそういう通信プログラムが書けるのか不明ですが、しかしとりあえず、(※教科書では説明していませんが、)一般的なプログラミングにおける設計技法として、自分の作ろうとしているモノが何なのかを、箇条書き(かじょうがき)などで紙にまとめる必要はあります。 なぜなら、検定教科書では説明されていませんが、 :プログラミングは集中力を使うので、いちいち「何を作ろうかな」と考えながらプログラミング作業するのは難しいからです(※ 検定教科書では説明していませんが). :また、会社や組織などの集団でプログラム製作をする場合は、個々人でイメージしている目標や指示などに食い違いが出ないように、目標などを文書で具体化する必要もあります。 === 要件定義 === 仕事などだと、上司や部下・同僚など他人が読んでもわかるように設計書を書く必要があります。(おそらく、検定教科書が意識してるのはコッチ。) 設計書では、大まかな要件を先に決定していき(ただし、比較的に短期間かつ自力たちで実現できる具体的な目標)、それを元に段階的に、追加の文書により細部を決めていきます。 どちらにせよ、まず、設計目標が何なのかを明確に文書に起こす必要があります。別に文体が美文である必要はありません。 そして、その目標に必要な最低限の技術的に実装すべき対象が何なのかを明確にしていきます。 :※ 検定教科書にはない用語ですが、こういった作業を「要件定義」(ようけん ていぎ)などと言います。アクティビティ図などを紹介するその検定教科書が説明しようとしているのは、おそらく要件定義の方法でしょう。 :※ ただし、中学生では、そもそもプログラミングでどんなことが出来て、何が出来ないかも知らないので、要件定義をするのは難しいかもしれません。だから、とりあえず知識として、仕事などでは要件定義のような手法が必要になる場合も多い、ということを知っていただければ十分かもしれません。 === (※ 範囲外: )やることリスト === プログラマーとしては事前にメモ書きのようなものでいいので、紙またはテキストファイルなどに、作りたいプログラムの満たすべき要件をまとめておくなどしておくと、いちいち目標を定期的に思い出す手間が省け、思考力を節約できるので、プログラミングに集中しやすくなります。(検定教科書では紹介されない用語ですが、こういうのを「To doリスト」とか「作業リスト」とか「タスクリスト」とか「やることリスト」などといいます。) :※ ただし、検定教科書の論点は、どちらかというと自分の思考の整理よりも、他人に設計を伝えるための手法としてアクティビティ図などを紹介していますが。だから「先生や友達」が読んでもわかるように書こう、などと検定教科書で説明しています。 ともかく、プログラミングの入力の前に、まず「自分たちは何を設計したいのか」を具体的に紙または画像データに書き起こすことです。検定教科書ではフローチャートの書き方などを教えていますが、それはあくまで、入力したいものを明確にする手段のひとつです。 そうやって具体的に見て分かるように文章化または印刷化・画像化をしておけば、打ち合わせをするにしても、あるいは忘れないようにするためにメモ代わりにするにしても、どちらにも役立ちます。 要は、「何を入力したいのか?」を読みやすい形式でメモ的に書いておけばいいのです。 == プログラミング的な知識 == === ソート === 並び順を変えることを「ソート」と言います。 ソートには、選択ソートや交換ソートがあります(※開隆堂のサイトで確認)。開隆堂サイトでは、トランプ(カードゲームのほう。カード4枚)の並び替えをしていました。 === ゲームの「仕様書」 === :※ 出版社は未確認だが、ゲーム版のラブライブのゲーム(スマホゲー)を例に検定教科書で仕様書の書き方を説明している教科書があるとのこと。(どうやら開隆堂らしい。未確認) ゲーム業界の例なのですが、ゲーム業界では「仕様書」(しようしょ)として、ある画面の動作の条件をすべて具体的に書きます。 また、基本的に具体的な画面を使って動作説明すことで、客観的に誰でも分かるように説明しています。 :※ ゲーム産業だけでなく一般のIT産業の多くでも似たような書類での説明方法が用いられる。なので教科書では たとえば、ある画面では、 * 「Backボタン」→「呼び出し元の画面へ遷移する」、  * 「部員のイラスト」→「クリックしても何も起こらない」 * 「変更ボタン」→「自分のプロフィールの場合」→「クリックすると自己紹介ポップアップを表示する」 :(「変更ボタン」)→「他ユーザーのプロフィールの場合」→「変更ボタンを表示しない」 のように具体的に書きます。(※ なお、製図などとは違い、仕様書では日本共通の書き方というのは存在しません。仕様書の規格も存在しません(2023年の時点ではそう)。) :(※ wiki注)上記の仕様の「呼び出し元の画面へ遷移する」などの文章は教科書画像からの引用。なので、決して上記文章の言い回しを変えないでください。 前の画面に戻るためのボタンのように、文脈から分かることでも、上記のように具体的に書きます。 イラストのように、クリックしても何も起こらない場合ですら、何も起こらないことを仕様書では明記します。そうすることで、その仕様書のそのページさえ読めば、これからプログラミングで作るべき動作のゴール地点が分かるようにします。 もちろん、変更ボタンのように、クリックすると変更が起きる場合は、 :「自分のプロフィールの場合」→「クリックすると自己紹介ポップアップを表示する」 のように何をどう表示するかも具体的に書きます。 このように、ソフトウェアの設計(デザイン)というのは、先にゴール地点を具体的かつ客観的に決めて、あとから細部をデザインしていきます。一般にゲームも同様、ゴール設定を先に行い、あとから細部を決めていきます<ref>塩川洋介『ゲームデザインプロフェッショナル 誰もが成果を生み出せる「FGO」クリエイターの仕事術』、技術評論社、2020年10月3日 初版 第1刷発行、P91、<br>※ ただしラブライブの会社とは、FGOの会社の人らは別会社なので、本当に作り方が同じかは不明</ref>。アイデアは、「なんのために」というゴールを達成するための手段です。 ゲームデザインではない単元ですが、教育図書(教科書会社)の検定教科書でも木工などの単元で、目的や条件から逆に(設計の)構想を考えるように指導しています。なお、実用品などの場合は、問題を先に見つけ、その問題を解決するために上記の目的や条件を考えます(※ 教育図書の見解)<ref>[https://www.kyoiku-tosho.co.jp/textbook_list/1394/ 技術分野教科書 - 教育図書教育図書 ]</ref>。 また、設計のための書類で使われれる文章のレベルも、中学卒業したレベルの知識さえあれば、とりあえず内容は分かるような文章で書く必要があります。 :※ なお、同じコラムで、フローチャートの代わりにUMlを教えてる。ラブライブのゲームの仕様設計では、UMLを使っているらしい。 :※ ほか、仕様書中のゲーム画面自体、ほぼ完成品と見間違えるような完成度の高いものを、検定教科書では掲載しています。検定教科書では「画面のモックアップ(模型)」と言ってますが、しかし一般人の目には、まるで完成品と見間違えるような、きれいな作りこみです。 :果たして最初からそこまで完成度の高い画面をつくれるかは疑問ですが、しかし一般に他のIT業界(ゲーム業界以外のIT企業)でも、製品の完成段階でのソフトウェアの「仕様書」の一種として、そういった完成品と同等の画面を掲載した書類を作成する場合もあります。(※ 出典は非公開。理由は、詳しい出典の説明が、この文を書いた編集者の過去の勤務先の企業秘密に当たるため。)  :仕様書に掲載する画面をつくるためのプログラミングが別に必要になりそうですが、ともかく、そういう完成品に近い画面を掲載した「仕様書」も必要な業界があります。(ただしゲーム業界がどうなのかは知りません。) :もし、そういう完成画面のある「仕様書」が無いと、たとえばソフトウェアがもし将来的に故障して、動作や画面表示などが変わってしまった時に、どういう状態に戻すプログラミングをすれば良いかが仕様書が無いと分からなくなってしまうから、完成度の高い画面をつかった仕様書が必要なのです。だから、故障時にもどす対象のゴールとしても、完成品に近い画面をつかった「仕様書」も一般IT企業では必要です。 ※ 該当の教科書では「モック(模型)」という言い方をしています。 :「モック」は、業界によってニュアンスが微妙に異なりますが、本物とは違います。 :辞書を見ると、良い意味で使う場合もあれば、悪い意味で使う場合もあります。良い意味では、たとえば「模擬線」 a mock battle や(実験用・教育用などの)「実物大の模型」のように良い意味で「モックアップ」 mock-up という語を使う場合もあります(大修館書店ジーニアスや三省堂グランドセンチュリーで確認しました)。悪い意味では、完成度のひくい真似として使う場合もあります。、 :ゲーム仕様書の「モック」は、おそらく、実物大ではないと思います(なぜなら、端末によって画面の大きさが変わるかもしれない。該当ゲームのことをよく知らないので、分かりません。詳しい人は wiki編集してください。) :なお、mock は大学入試での受験英語です(旺文社ターゲット1900や、鉄緑単語集に mock があります)。 == ※ 範囲外 == === ロボット教材など === {{コラム|(※暗記は不要)ロボチャートなど| :※ 実習などで習う範囲です。 フローチャート形式で表示されるファイルを編集することでロボットのプログラミングを行える、「ロボチャート」(スズキ教育ソフトの製品)というロボット・プログラミング言語があります[https://www.suzukisoft.co.jp/products/robochart/ プログラミング入門ソフト〈ロボチャート〉 - スズキ教育ソフト] 現代日本の中学技術の教育でも、こういった会社のソフトウェアがすでに実習などで使われています。 なぜ紹介したかというと、じつは教育だけでなく、製造業などの工場でも似たような発想の、C言語などが分からなくてもフローチャートなどさえ分かればプログラミングできるようなソフトウェアが存在しており、よく製造業などで使われます。 C言語など一般のプログラミング言語だと、機能が高度すぎるので学習に年月が掛かり過ぎてしまうので、土木技術者や機械技術者など非・情報系の技術者にはプログラミング言語として不適切なのです。 そこで、ロボチャート的な、C言語を使わなくてもフローチャートなどの画像のある編集ソフトでプログラミングできるソフトウェアが、じつは大手の電子機械(メカトロニクス)系などの会社などでは使われています。 (※ 範囲外:)ロボチャートのほかの会社にも、そういった発想の制御系のプログラミング用ソフトは多々あります。 外資製品で有名なのだと、米国ナショナルインスツルメンツ社の「ラボビュー」というソフトが測定機器の業界でよく使われており、これもフローチャート的な画面を編集することでデジタル・センサーの入力データの処理をプログラミングするソフトウェアです。 このラボビューは、ロボット制御の業界でも使われています。なぜなら、ロボットにはセンサーが大量に必要なので、なのでラボビューによる測定機器の制御によってロボット制御も実行できるのです。 (※ 範囲外:)Windowsを作っているマイクロソフト社が、こういった測定機器の制御ツールのための簡易的なプログラミング言語を2010年代に作っていました。上記のようなロボット制御と簡易的なプログラミングの関係の話を聞けば、マイクロソフトの意図は想像がつくでしょう。 なお、マイクロソフト社は、日本の自動車会社など大手製造業とも業務提携しています。 経済は分業で成り立つので、専門分野をもつのは好ましいですが、しかし決して専門だけにとらわれて異分野をまったく勉強しないなんてことは、しないようにしましょう。(つまり、少しは異分野も勉強しましょう。) 上記のように、製造業とソフトウェア産業は、意外なところで提携していたりします。消費者からは目に見えづらいところで、業務提携している大企業はあります。 ほか、日本の学校などでよく使われるロボットプログラミング教材のひとつとして、 レゴ マインドストームがあります<ref>松村太郎 ほか著『プログラミング教育が変える子どもの未来』、翔泳社、2018年2月15日 初版 第1刷 発行、P81</ref>。おもちゃのレゴブロックを作ってる欧米の会社のです。当然、このマインドストームにも、センサーやモータなどが組み込まれたブロックがあります<ref>松村太郎 ほか著『プログラミング教育が変える子どもの未来』、翔泳社、2018年2月15日 初版 第1刷 発行、P89</ref>。 なお、こういったロボット教材に使うCPUは、パソコン用のものとは違います。 本wiki調査にて、小中高ロボット教材で使われていることが確認されている CPU としては arduino <ref>松村太郎 ほか著『プログラミング教育が変える子どもの未来』、翔泳社、2018年2月15日 初版 第1刷 発行、P90</ref>(アルディーノ) や ARM(アーム) などがあります。ARMは、携帯電話などにも使われるCPUです。 ほか、CPU形式ではなく、教育用のマイコン基盤としてボードに組み込まれた形式で販売されている場合もあり、 micro:bit<ref>松村太郎 ほか著『プログラミング教育が変える子どもの未来』、翔泳社、2018年2月15日 初版 第1刷 発行、P81</ref> や、Rasberry Pi (ラズベリーパイ)<ref>松村太郎 ほか著『プログラミング教育が変える子どもの未来』、翔泳社、2018年2月15日 初版 第1刷 発行、P96</ref>があります。日本企業のロボット教育用のマイコン基盤としては IchigoJam(イチゴ ジャム)もあります<ref>松村太郎 ほか著『プログラミング教育が変える子どもの未来』、翔泳社、2018年2月15日 初版 第1刷 発行、P97</ref>。 なお、micro:bit および Raspberry PiのCPUはARMです。 ほか、Arduino Uno というマイコンボードもあり<ref>松村太郎 ほか著『プログラミング教育が変える子どもの未来』、翔泳社、2018年2月15日 初版 第1刷 発行、P121</ref>、CPUはその名の通り Arduino であり、これも日本の学校での使用実績があります<ref>松村太郎 ほか著『プログラミング教育が変える子どもの未来』、翔泳社、2018年2月15日 初版 第1刷 発行、P121</ref>。 さて、読者はもしかしたら小学校や幼稚園などで Scratch とかVISCUIT とかのプログラミングを習ったかもしれませんが、2020年の時点では、これらは一般のIT企業などの実務では使われません。 Scratch とか VISCUIT とか、ああいうプログラミングは、「ビジュアルプログラミング」と言われています<ref>松村太郎 ほか著『プログラミング教育が変える子どもの未来』、翔泳社、2018年2月15日 初版 第1刷 発行、P84</ref>が、「ブロックプログラミング」<ref>松村太郎 ほか著『プログラミング教育が変える子どもの未来』、翔泳社、2018年2月15日 初版 第1刷 発行、P90</ref>と言う場合もあります。 :※ マイクロソフトの Visual Basic や Visual C++ などとは違います。Visual Basic などは、幼児教育用には設計されていません。 さてに、Scratch などのブロックプログラミングを、ロボットプログラミングにも使えるのでは?と考えている人が既にいて、そういうブロックプログラミングできるロボット教材を販売している日本企業もすでにあります<ref>松村太郎 ほか著『プログラミング教育が変える子どもの未来』、翔泳社、2018年2月15日 初版 第1刷 発行、P90</ref>(アーテックロボ<ref>中島幸子『知識ゼロからのSTEAM教育』、幻冬舎、2022年11月25日 第1刷 発行、P34</ref>)。 書籍での文献は見つからなかったのですが、ソニー系のKOOVというロボット教材でも、webサイトで調べたかぎりでは、ブロックプログラミングがあります<ref>[https://www.koov.io/virtual 『VIRTUAL KOOVの特徴』]2023年9月25日に確認,</ref>。 マイコン基盤のラブベリーパイにも、Scratchでプログラミングできるソフトウェアがあります<ref>松村太郎 ほか著『プログラミング教育が変える子どもの未来』、翔泳社、2018年2月15日 初版 第1刷 発行、P96</ref>。 なお、いずれのロボットも、ロボットのプログラミングにはパソコンが必要です。ロボット本体のコンピュータとは別に、パソコンが必要になります。(もしかしたらスマホでも出来るのかもしれないが、些末なツッコミになるので省略する。) おおむねの手順として、 :パソコンに専用ソフトをインストールしてロボット用プログラムを書き、 :そのプログラムを通信ケーブルなどでロボットに書き込む、 ような手順になっているだろうと思います。 詳しくは、それぞれのロボット教材をお調べください。 }} {{コラム|つくりながら学ぶ| 技術を学ぶさい、安全などに配慮した上で、実際に作ってみるのが、いちばんラクに学べる方法であり、これはロボットなどを作る場合でも同じです<ref>中島幸子『知識ゼロからのSTEAM教育』、幻冬舎、2022年11月25日 第1刷 発行、P36</ref>。 とりあえずの機能だけでいいので、つくるための最低限の勉強だけをして、あとは実際に手を動かしてみて作るのがコツです。 大きなものを作る場合は、まずミニチュアを作ってみるのが良いでしょう。 ロボット教育の教材では、レゴブロックのような再利用の可能なブロックを構造材にしているものもあります。こういうブロックを活用すれば、資源の無駄も無くなります。 作っている途中、どうしても分からないところが出てきたら、そこでネットを確認したり、関連書籍を確認したりすると、効率的に知識を獲得できます<ref>中島幸子『知識ゼロからのSTEAM教育』、幻冬舎、2022年11月25日 第1刷 発行、P36</ref>。 :※ きみたち、スマホでも何でもいいけど、家電を使うときに、いちいち説明書を全部読まないでしょ?(例外的に読む人もいるが) それと同じです。 先に操作してみて、あとで気になった知識を学ぶのです。 :※ 例外的に、危険物をあつかう業界などでは、安全対策などのための知識が先に必要です。ですが、中学レベルのロボット学習では、そこまで危険なものを扱わないと思います。裏を返すと、安全対策などの知識は、先に学んでおいてください。 [[File:Helix.svg|thumb|ここでいう「らせん」とは、こういう3次元の らせん のこと]] 技術的な知識は、それを単に字面を覚えるだけでは駄目であり、自分の理論的な知識が本当かどうかを、実際にものを作ってみて確認してみるという、理論と実験が必要です<ref>中島幸子『知識ゼロからのSTEAM教育』、幻冬舎、2022年11月25日 第1刷 発行、P53</ref>。。 そして、実際に手を動かして確認してみることで、今までの自分の知識の理解が深まります。そうなることで、さらに深い学習をできるようになり、前よりも上の知識を効率的に獲得できるようになります。 人生で、まるで、らせん階段を上っていくかのように、理論と実験を繰り返していくことになります。<ref>中島幸子『知識ゼロからのSTEAM教育』、幻冬舎、2022年11月25日 第1刷 発行、P53</ref>。 <gallery perrow="5"> Image:Uni-Mannheim_Neubau_Rettungsleiter.jpg|親柱付非常階段(マンハイム大学) Image:Killesbergturm.JPG|キレスベルク塔の二重螺旋階段<ref> 『世界の美しい階段』エクスナレッジ、2015年、200頁。{{ISBN|978-4-7678-2042-2}}。</ref> Image:Vor_Frelsers_Kirke_Copenhagen_spire.jpg|コペンハーゲンの螺旋階段 </gallery> そして、いちど実験をしてみて新たな知識が獲得できたので、それをもとに新しいアイデアが浮かび、さらに新しいものを作ることにつながります。こうして、一段階上の知識すら、また実験によって検証されます。 そして、実験によって自分の知識が検証されたことで、ますます理解が深まり、実用的な知識が増えていきます。そして、そのますます上達した知識をもとに、もっと新しいものを作れる・・・の繰り返しです。 }} [[Category:中学校教育|ふろくらむによるけいそくせいきよ]] 2j70jwil8x7c8n4pfi0fasiwaebwkfa 利用者:Angol Mois/Sandbox 2 21465 305010 98199 2026-10-22T08:56:51Z Jcb 92857 305010 wikitext text/x-wiki {{Wikipedia}} コンパイラに関する理論の書籍です。 * [[/コンパイラの概説]] * [[形式言語]] * [[/字句解析]] :* [[/字句解析/正規表現]] :* [[/字句解析/アルゴリズム]] * [[/構文解析]] :* [[/構文解析/解析木]] :* [[/構文解析/構文木]] :* [[/構文解析/曖昧な文法]] :* [[/構文解析/]] * [[/意味解析]] * [[/中間コード生成]] * [[/最適化]] == 参考文献 == *原田賢一 訳、『コンパイラ—原理・技法・ツール<1>』サイエンス社、1990年。{{ISBN|4781905854}} *原田賢一 訳、『コンパイラ—原理・技法・ツール<2>』サイエンス社、1990年。{{ISBN|4781905862}} 5jd6hixiy5ixoh34n6u75bkrymbbknr コンパイラ 0 21665 305023 272509 2026-10-22T09:29:55Z Jcb 92857 305023 wikitext text/x-wiki {{Wikipedia}} コンパイラに関する理論の書籍です。 * [[/コンパイラの概説]] * [[/文法]] * [[/字句解析]] :* [[/正規言語]] * [[/構文解析]] * [[/字句解析ツール]] * [[/構文解析ツール]] * [[/型検査]] * [[/中間コード生成]] * [[/最適化]] == 参考文献 == *コンパイラI 原理・技法・ツール、A.V.エイホ・R.セシィ、J.D.ウルマン 共著、原田賢一 訳、サイエンス社、2000年、{{ISBN|4-7819-0585-4}} *コンパイラII 原理・技法・ツール、A.V.エイホ・R.セシィ、J.D.ウルマン 共著、原田賢一 訳、サイエンス社、2000年、{{ISBN|4-7819-0586-2}} == 関連和書 == * ニクラウス・ヴィルト(著)、滝沢徹(訳)、牧野裕子(訳):「ヴィルトのコンパイラ構成法」、星雲社、{{ISBN|4-7952-9706-1}}(1997年11月28日)。 * 渡邊担:「コンパイラの仕組み」、朝倉書店、{{ISBN|4-254-12708-1}}(1998年4月10日)。 * 湯浅太一:「コンパイラ」、昭晃堂、{{ISBN|4-7856-2050-1}}(2001年6月14日)。 * 五月女健治:「JavaCC:コンパイラコンパイラ for Java」、テクノプレス、{{ISBN|4-924998-64-8}}(2003年10月20日)。 * 今城哲二、布広永示、岩澤京子、千葉雄司:「コンパイラとバーチャルマシン」、オーム社、{{ISBN|4-274-13308-7}}(2004年9月10日)。 * 石田綾、中田育男:「スモールコンパイラの制作で学ぶプログラミングのしくみ」、技術評論社、{{ISBN|4-7741-2177-0}}(2004年12月5日)。 * 中井央(著)、中田育男(監修):「コンパイラ」、コロナ社、{{ISBN|978-4-339-02708-2}}(2007年7月6日)。 * 中田育男、渡邊担、佐々政宏:「コンパイラの基盤技術と実践」、朝倉書店、{{ISBN|978-4-254-12173-5}}(2008年6月25日)。 * 山下義行:「コンパイラ入門」、サイエンス社、{{ISBN|978-4-7819-1205-9}}(2008年6月25日)。 * 大川知、鈴木大郎:「コンパイラ:言語処理系の基礎からyacc/lexまで」、近代科学社、{{ISBN|978-4-7649-0359-3}}(2008年10月31日)。 * 日向俊二:「やさしいインタープリタの作り方入門」、カットシステム、{{ISBN|978-4-87783-219-3}}(2009年3月10日)。 * A.V.エイホ、M.S.ラム、R.セシィ、J.D.ウルマン、原田賢一(訳):「コンパイラ[第2版]」、サイエンス社、{{ISBN|978-4-7819-1229-5}}(1990年10月10日初版、2009年5月25日第2版)。 * 前橋和弥:「プログラミング言語を作る」、技術評論社、{{ISBN|978-4-7741-3895-4}}(2009年7月25日)。 * 青木峰郎:「ふつうのコンパイラをつくろう」、ソフトバンククリエイティブ、{{ISBN|978-4-7973-3795-2}}(2009年7月27日)。 * 日向俊二:「やさしいコンパイラの作り方入門」、カットシステム、{{ISBN|978-4-87783-220-9}}(2009年8月10日)。 * Andrew W. Appel、神林靖、滝本宗宏(訳):「最新コンパイラ構成技法」、翔泳社、{{ISBN|978-4-7981-1468-2}}(2009年10月29日)。 * 中田育男:「コンパイラの構成と最適化」、朝倉書店、{{ISBN|978-4-254-12177-3}}(第2版) (1999年9月15日初版、2009年11月15日第2版)。 * 林晴比古:「明解入門 コンパイラ・インタプリタ開発:C処理系を作りながら学ぶ」、ソフトバンククリエイティブ、{{ISBN|978-4-7973-5703-5}}(2010年1月15日)。※CD付き。 * 大山口道夫、三橋一郎L:「コンパイラの理論と作成技法」、サイエンス社、 {{ISBN|978-4-7819-1251-6}}(2010年6月10日)。 * 林晴比古:「明解入門 インタプリタ開発:基本技術から処理系の実装まで」、{{ISBN|978-4-7973-6881-9}}(2012年2月6日)。 * 千葉滋:「2週間でできる!スクリプト言語の作り方」、技術評論社、{{ISBN|978-4-7741-4974-5}}(2012年3月10日)。 * 柏木餅子、風薬:「きつねさんでもわかるLLVM コンパイラを自作するためのガイドブック」、インプレスジャパン、{{ISBN|978-4-8443-3415-6}}(2013年6月21日)。 * 佐渡一広、寺島美昭、水野忠則:「コンパイラ」、共立出版、{{ISBN|978-4-320-12344-1}}(2014年6月15日)。 * 中田育男:「コンパイラ 作りながら学ぶ」、オーム社、{{ISBN|978-4-274-22116-3}}(2017年10月25日)。 {{デフォルトソート:こんはいら}} [[Category:コンパイラ|*]] [[Category:情報技術]] bi8l3fibwu6mib6qanuutallae7b96w 将棋/▲7六歩 0 22199 305061 270751 2026-10-22T11:28:16Z Jcb 92857 305061 wikitext text/x-wiki {{shogi diagram|tright| |なし |lg|ng|sg|gg|kg|gg|sg|ng|lg | |rg| | | | | |bg| |pg|pg|pg|pg|pg|pg|pg|pg|pg | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | |psl| | | | | | |ps|ps|uah|ps|ps|ps|ps|ps|ps | |bs| | | | | |rs| |ls|ns|ss|gs|ks|gs|ss|ns|ls |なし |1手目▲7六歩まで}} 角道を開ける出だし。 [[/△3四歩/]]と後手も角道を開ける手と、[[/△8四歩/]]と飛車先の歩を突く手が考えられる。 {{-}} == △3四歩 == : ''詳細は「[[/△3四歩]]」を参照'' {{shogi diagram|tright| |なし |lg|ng|sg|gg|kg|gg|sg|ng|lg | |rg| | | | | |bg| |pg|pg|pg|pg|pg|pg|dah|pg|pg | | | | | | |pgl| | | | | | | | | | | | | |ps| | | | | | |ps|ps| |ps|ps|ps|ps|ps|ps | |bs| | | | | |rs| |ls|ns|ss|gs|ks|gs|ss|ns|ls |なし |2手目△3四歩まで}} 先手が居飛車でいくなら、[[/△3四歩/▲2六歩|▲2六歩]]と飛車先を突く手が自然である。振り飛車でいく場合は△4四歩他が考えられる。 2手目△3四歩は、居飛車党でも2010年代から多く愛用されるようになった。羽生善治は2010年の1月を最後に△8四歩は指さず、▲7六歩に対して△3四歩を志向し始める。渡辺明も竜王位時代、先手居飛車党に対して△8四歩とし、角換わり同型は後手番でしか指していなかったが、その後角換わり同型の後手を持って敗れ始めると、以後は二手目△8四歩をほぼ封印し、二手目△3四歩を志向している。 振飛車党や、二手目には△3四歩とする横歩取りや一手損角換わり等を中心に指す居飛車党には関係がないが、2手目が△8四歩のとき、先手には▲2六歩からの角換わりや相がかり、▲7八銀や▲6八銀からの矢倉という選択肢が生じる。矢倉戦が様変わりし、このころから角換わりは矢倉に比べ、戦いが開始するときの形が、最も定型化されているうえに、そのあとの戦いもかなり突きつめて研究することが可能であるという特徴を持つことになった。 その角換わりがAIの研究などで先手必勝との結論があるようであるが、このことから棋士が合理的選択をするようになれば、後手は2手目に△8四歩と突くと先手は絶対に角換わりにするとなれば、長年居飛車党でも矢倉を指し続けてきた棋士もかなりの棋士が2手目△8四歩に3手目▲2六歩の角換わりとなる、つまり角換わり同型はずっと以前から後手の悩みのタネだったが、その傾向は年々強まっていくことになるとみられた。 以降はさらに、▲7六歩△3四歩▲2六歩に後手も他の手もあり、未開拓の手段も多く定跡形が詰まると研究などもあってこの流行に流れることになる。90年代後半から2000年代にも藤井システムや、相居飛車後手△8五飛が大流行した際にこうした傾向が生じたが、いまだ定跡化されていない将棋が色々と残っている状況である。 {{-}} == △8四歩 == : ''詳細は「[[/△8四歩]]」を参照'' {{shogi diagram|tright| |なし |lg|ng|sg|gg|kg|gg|sg|ng|lg | |rg| | | | | |bg| |pg|dah|pg|pg|pg|pg|pg|pg|pg | |pgl| | | | | | | | | | | | | | | | | | |ps| | | | | | |ps|ps| |ps|ps|ps|ps|ps|ps | |bs| | | | | |rs| |ls|ns|ss|gs|ks|gs|ss|ns|ls |なし |2手目△8四歩まで}} 陽動振り飛車は別として、居飛車を宣言した手。逆にそのあと先手に戦形を決めさせる意味もあり、先手番は次に△8五歩と突かれたときに、飛車先を銀で受ける矢倉等か、角で受けて角換わり、雁木、振り飛車か、さらには飛車先を受けない相掛かり模様等のどれかを選択させることになる。 居飛車の角換わりや相掛かりなどでいくなら、[[/△8四歩/▲2六歩|▲2六歩]]と飛車先を突く手が自然だが、[[/△8四歩/▲6八銀|▲6八銀]]や[[/△8四歩#▲7八銀|▲7八銀]]と上がり、△3四歩には▲7七銀や▲6六歩、△8五歩には▲7七銀や▲7七角と飛車先を受ける手も考えられる。 振り飛車でいくなら、飛車を振ることや左銀を動かすなどが、考えられる。 上記の[[#△3四歩]]にあるとおり、居飛車党でも2手目は△3四歩を志向する傾向があるが、藤井聡太は相手がどう指そうが、後手番でもこれまで2手目は8四歩が定番でなおかつ全8冠制覇という結果を出し続けている。第74期王将戦第5局、公式戦後手番258局目にして初めて2手目に△3四歩を指した。 2手目△3四歩に比べて変化球が少ない分3手目を限定させる意味合いを持つ。また。▲7六歩△3四歩で、角を早くに対峙する形はそのぶん先手番後手番双方とも駒組みに注意が必要となる。▲7六歩△3四歩に▲6八銀と指す間違いはできないわけである。つまり、2手目△8四歩は先手から変化球的な手段を受けない指し方だといえるが、序盤につまずかない代わりに、リードする展開になる可能性も少ないのが2手目△8四歩ともいえ、1982年刊行『史上最強ワセダ将棋』(講談社)でも、▲7六歩に2手目△8四歩とすると、先手にあらゆる指し方が生じ、後手はさまざまな戦法戦術を知っておかなくてはならなくなると指摘している。 このことを踏まえ、将棋流行語大賞2024では第5位に「子育てしながら8四歩」がランクインする。後手番で2手目に△8四歩と突くのは相手の研究をすべて受けて立つ姿勢であるため、相当な準備が必要になるとみているが、広瀬章人が子育てしながらその姿勢を貫いているのですごいということを、山本博志が広瀬のすごさを伝えるのに使った表現として知られる。このためすっかり山本の言葉として知られているが、もとは渡辺明がオリジナルだという。 なお山本がいうには、将棋AIが最善手と示す2手目△8四歩がAIの最善を追求するのに対し、2手目△3四歩はAIの評価値は落ちるが、自分の好きな作戦に持ち込めるメリットがある、△8四歩が真理を追求する手に対して、△3四歩はオリジナリティで勝負する手とした。ここから、居飛車党の後手2手目は、その人の将棋に対する姿勢を表しているとした。 == △3二金 == {{shogi diagram|tright| |なし |lg|ng|sg|gg|kg|ddrh|sg|ng|lg | |rg| | | | |ggl|bg| |pg|pg|pg|pg|pg|pg|pg|pg|pg | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | |ps| | | | | | |ps|ps| |ps|ps|ps|ps|ps|ps | |bs| | | | | |rs| |ls|ns|ss|gs|ks|gs|ss|ns|ls |なし |2手目△3二金まで}} 相居飛車になるなら無難だが、先手に[[w:振り飛車|振り飛車]]にされると玉を囲いづらく作戦の幅が狭くなる(そのため2手目△3二金や[[将棋#▲7八金|初手▲7八金]]は、[[w:居飛車党|居飛車党]]の相手に「振り飛車もできるか」と挑発する意味があるともいわれる)。 2006年の[[w:竜王戦|竜王戦]]で[[w:佐藤康光|佐藤康光]]に2手目△3二金を連投された[[w:渡辺明 (棋士)|渡辺明]]は、後に「△3二金には▲5六歩から中飛車にして、ちゃんとやれば先手がよくなる」と述べ<ref name="suzuki_2008">鈴木 2008。</ref>、翌年佐藤に再び△3二金を指された際、中飛車を選択した。 一方の佐藤は「挑発ではなく、論理に基づく手」とし<ref name="suzuki_2008"/>、▲2六歩に△4一玉の新手や、▲5六歩に対する△4二銀〜△5二飛の相中飛車の構想を披露した。 {{-}} == △3二飛 == : ''詳細は「[[将棋/2手目△3二飛|2手目△3二飛]]」を参照'' {{shogi diagram|tright| |なし |lg|ng|sg|gg|kg|gg|sg|ng|lg | |ras|lra| lra|lra|rat|rgl|bg| |pg|pg|pg|pg|pg|pg|pg|pg|pg | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | |ps| | | | | | |ps|ps| |ps|ps|ps|ps|ps|ps | |bs| | | | | |rs| |ls|ns|ss|gs|ks|gs|ss|ns|ls |なし |2手目△3二飛まで}} [[w:2手目△3二飛|2手目△3二飛]]戦法。 初手から▲7六歩△3四歩▲2六歩に[[/△3四歩/▲2六歩#△3五歩|△3五歩]]と突く後手[[w:石田流|石田流]]が、▲2五歩△3二飛▲6八玉△6二玉?に、▲2二角成△同銀▲6五角で後手苦しいと見られ<ref name="sato_2010_pp_12_24">佐藤 2010、pp. 12-24。</ref>、それでも後手番で石田流を指す方法として[[w:今泉健司|今泉健司]]が考案した。 ▲2六歩に # △3四歩?は▲2二角成△同銀▲6五角で後手悪いが<ref name="sato_2010_pp_12_24"/>、 # △4二銀が佐藤康光の新手で、 ## ▲2五歩△3四歩▲2四歩?△同歩▲同飛は、△8八角成▲同銀△3三角で後手勝ちのため、 ## ▲6八玉△6二玉から囲い合いとなる。 {{-}} == △5四歩 == : ''詳細は「[[/△5四歩]]」を参照'' {{shogi diagram|tright| |なし |lg|ng|sg|gg|kg|gg|sg|ng|lg | |rg| | | | | |bg| |pg|pg|pg|pg|dah|pg|pg|pg|pg | | | | |pgl| | | | | | | | | | | | | | | |ps| | | | | | |ps|ps| |ps|ps|ps|ps|ps|ps | |bs| | | | | |rs| |ls|ns|ss|gs|ks|gs|ss|ns|ls |なし |2手目△5四歩まで}} ▲2六歩△3四歩で[[w:ゴキゲン中飛車|ゴキゲン中飛車]]の出だしに合流する。[[w:平目 (将棋)|ヒラメ戦法]]でも使用されている。場合によっては菅井流の角道オープンの三間飛車に構えることも。 初手から▲7六歩△3四歩に[[/△3四歩#▲6八玉|▲6八玉]]と上がるゴキゲン中飛車封じを警戒する意味があったが<ref>森内ら 2014、p. 15。</ref>、これには以下△5四歩に▲2二角成?△同銀▲5三角は、△3三角の久保流(2010年A級順位戦、対三浦弘行戦)で後手も指せるというのが定説になっている<ref>森内ら 2014、p. 40。</ref>。 {{-}} == △5二飛 == 1961年8月の丸田祐三 vs.大山康晴 戦(王位戦)から、2017年8月の斎藤慎太郎 vs.大橋貴洸 戦(第67期王将戦一次予選)などがある。 == △4二飛 == 藤井猛 vs.片上大輔 戦(2010年1月、宇都宮市東武百貨店でのお好み対局)脇謙二 vs.片上大輔 戦(2008年3月、順位戦)富岡英作 vs. 中村修 戦(1993-03月、銀河戦)など。 == △3二銀 == 二歩千金の著『2手目△3二銀システム』 (マイナビ将棋BOOKS、2024年)で知られる。 : ''詳細は「[[/△3二銀]]」を参照'' == △4二銀 == 後手[[w:嬉野流|嬉野流]]での出だし。プロ棋戦では千田翔太が2017年1月の第48期新人王戦で都成竜馬対して指す。戦型は急戦矢倉となる。 == △6二銀 == {{shogi diagram|tright| |なし |lg|ng|ddrh|gg|kg|gg|sg|ng|lg | |rg| |sgl| | | |bg| |pg|pg|pg|pg|pg|pg|pg|pg|pg | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | |ps| | | | | | |ps|ps| |ps|ps|ps|ps|ps|ps | |bs| | | | | |rs| |ls|ns|ss|gs|ks|gs|ss|ns|ls |なし |2手目△6二銀まで}} これは、相手が振り飛車党の場合に、飛車先を突かない戦法、例えば右四間飛車+腰掛銀などで用いられる作戦として知られている。 この銀を上がると手が遅れるため、▲2六歩△3四歩▲2五歩△3二金で、▲2四歩△同歩▲同飛と早くの飛車先交換は可能。[[w:英春流|英春流]]の出だしとして知られる。 第76期名人戦七番勝負第6局<br/> 佐藤天彦名人 - 羽生善治竜王<br/> 「形が悪いからとか、美学に反する、重いといった抽象的な判断で、可能性を捨てることはない。どんな手でも、やってみる価値はある。」 後手は、7四の歩を取らせる相掛形の構想となる。 第43期棋王戦五番勝負 第5局<br/> 渡辺 明棋王 - 永瀬拓矢七段<br/> 棒銀の▲2五銀は成立しないが、本譜は▲36銀形を陽動に用いて対策している。 △3三銀形が持久戦に不利ならば△4四歩3三桂形で受け、手つまりを狙うのは後手番特有のニュアンス。 第68回NHK杯2回戦第6局<br/> 三枚堂達也 六段 - 渡辺 明 棋王 <br/> ▲47銀雁木で対抗する。それに対し後手は角頭に早く仕掛ける。 {| | {{shogi diagram|tright| |なし |lg|ng| |gg|kg| |sg|ng|lg | |rg| |sg| | |gg|bg| |pg|pg| |pg|pg|pg|pg|pg|pg | | |rsl| | | | | | | | | | | | | | | | | |ps| | | | | | |ps|ps| |ps|ps|ps|ps| |ps | |bs| | | | | | | |ls|ns|ss|gs|ks|gs|ss|ns|ls |歩1 |12手目△7四飛まで<br/>佐藤 - 羽生 戦}} | {{shogi diagram|tright| |歩1 |lg|ng|  |gg| |kg| |ng|lg | | |rgl| | |sg|gg|bg| |pg| | |pg|sg|pg|pg|pg|pg | | | | |pg| | | | | |pg| | | | | | | | | |ss|ps| |ps| | | |ps|ps|bs| |ps| |ps| |ps | | |gs| | | |ss|rs| |ls|ns| | |ks|gs| |ns|ls |歩2 |28手目△7二飛まで<br/>三枚堂 - 渡辺 戦}} |} 先手の初手▲7六歩に対する2手目△6二銀については、羽生善治が対谷川浩司、郷田真隆、森下卓といった居飛車党に対して数度指している。 {{-}} == △7二銀 == 神崎健二 vs. 北浜健介 戦(2017年10月、第3期叡王戦段位別予選)、矢内理絵子 vs. 泉正樹 戦(2010年8月12日、第12回京急将棋まつり)など。 == △5二金右 == == △4二玉 == 深浦康市が奨励会時代に指している(1989年4月27日 対庄司俊之戦 三段リーグ)。 == △5二玉 == == △1四歩 == {{shogi diagram|tright| |なし |lg|ng|sg|gg|kg|gg|sg|ng|lg | |rg| | | | | |bg| |pg|pg|pg|pg|pg|pg|pg|pg|dah | | | | | | | | |pgl | | | | | | | | | | | |ps| | | | | | |ps|ps| |ps|ps|ps|ps|ps|ps | |bs| | | | | |rs| |ls|ns|ss|gs|ks|gs|ss|ns|ls |なし |2手目△1四歩まで}} [[w:|阪田三吉]]が天龍寺の決戦で用いた手。△9四歩より咎めにくいとされる<ref>鈴木 2008、pp. 67-70。</ref>。 その後も2017年1月 ▲菅井竜也 vs.△山本真也戦(第43期棋王戦予選)など数局指されている。 {{-}} == △9四歩 == {{shogi diagram|tright| |なし |lg|ng|sg|gg|kg|gg|sg|ng|lg | |rg| | | | | |bg| |dah|pg|pg|pg|pg|pg|pg|pg|pg |pgl| | | | | | | | | | | | | | | | | | | |ps| | | | | | |ps|ps| |ps|ps|ps|ps|ps|ps | |bs| | | | | |rs| |ls|ns|ss|gs|ks|gs|ss|ns|ls |なし |2手目△9四歩まで}} 阪田三吉が南禅寺の決戦で用いた手。 先崎学も佐藤康光に対して、2001年7月の日本シリーズで用いている。 {{-}} == △7四歩 == {{shogi diagram|tright| |なし |lg|ng|sg|gg|kg|gg|sg|ng|lg | |rg| | | | | |bg| |pg|pg|dah|pg|pg|pg|pg|pg|pg | | |pgl| | | | | | | | | | | | | | | | | |ps| | | | | | |ps|ps| |ps|ps|ps|ps|ps|ps | |bs| | | | | |rs| |ls|ns|ss|gs|ks|gs|ss|ns|ls |なし |2手目△7四歩まで}} [[w:ハメ手]]のひとつとして知られる。 ▲5五角?と飛車取りに出られるが、△3四歩▲8二角成△同銀▲8八銀と飛車角交換になったときに、△9五角!の王手が防ぎづらく、▲8六飛または▲7七飛と飛車を打って受けるしかない(▲7七銀??は△同角右成▲同桂△同角成の二枚替え、▲4八玉??、▲6八飛??は△8八角成で銀がタダ)。 将棋世界1993年9月号、中村修の講座「後手番二手目の可能性」によると、研究してみると意外と大変、かなり有力とさえ感じてきたという。これは、居飛車のまま、8筋を伸ばして飛車先交換は3手かかり、そして△7四歩から袖飛車での歩交換も同じ3手である。 なお自らが開発したこの二手目△7四歩戦法を対米長邦雄(当時名人)戦で採用し、92手で快勝している。 図以下、▲2六歩△7二飛▲2五歩△3四歩に、▲2四歩は、△同歩▲同飛△8八角成▲同銀△3三角▲2八飛△2六歩で、2手目△5四歩作戦と同様な展開となる。以下、 # ▲4六角とし、対して△8二銀と受けてくれれば▲7八金△2二飛▲2四歩で、少し後手が指せそうとしている # ▲4六角とし、対して△2七歩成ならば、▲同飛△8八角成▲9一角成△8九馬で、これも後手がよさそうとしている # ▲9五角の王手に対して、△6二銀などでは▲7八金△4四角▲7七角として、飛車走りが実現すれば先手良しといえ、角打ちの王手には△7三桂の一手。以下▲7八金△9四歩▲8六角△4四角などは、ハッキリしないとしている もどって、▲2六歩△7二飛▲2五歩△3四歩に、 # ▲7八金とし、以下△3二金▲2四歩△同歩▲同飛△7五歩▲同歩△同飛。ここで▲3四飛と横歩を取ると△8八角成でおしまい。▲2二角成△同銀▲3四飛にも、以下△3三桂▲3六飛△2七角▲5六飛△4五角成▲5三飛成△5二歩。 # ▲7八金△3二金▲2四歩△同歩▲同飛△7五歩に、▲3四飛△7六歩▲7三歩△同桂▲2二角成△同銀▲7四歩△6五桂では ## ▲7三歩成とすると、△7三同飛とは取れず(▲3二飛成がある)、△9五角。以下▲7七桂△4二飛▲3五飛△6四歩▲9六歩で形勢不明 ## 角打ちを消して逆に▲9五角。以下△4一玉▲7三歩成△5一角▲7四飛△9四歩でこれも難解 としている。 つまり中村は、後手ハッキリ悪くなる順は見つからず、2手目△7四歩はかなり優秀な作戦だとしている。 {{-}} == △6四歩 == == △6二飛 == 2009年7月 新人王戦、▲菅井竜也 vs.△小泉祐 戦で、後手の小泉が実戦する。戦型は先手石田流対後手右四間に。 == △7二飛 == 2009年6月 新人王戦、▲中村亮介 vs.△小泉祐 戦で、後手の小泉が実戦する。後手が勝利。 == △9二飛 == 2011年11月 新人王戦、▲上村亘 vs.△小泉祐 戦で、後手の小泉が実戦する。後手が勝利。 == △4二金 == == △6二金 == {{shogi diagram|tright| |なし |lg|ng|sg|dah|kg|gg|sg|ng|lg | |rg| |ggl| | | |bg| |pg|pg|pg|pg|pg|pg|pg|pg|pg | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | |ps| | | | | | |ps|ps| |ps|ps|ps|ps|ps|ps | |bs| | | | | |rs| |ls|ns|ss|gs|ks|gs|ss|ns|ls |なし |2手目△6二金まで}} 2012年2月 新人王戦、▲永瀬拓也 vs.△小泉祐 戦 の実戦例がある<ref name=:3>渡辺ら 2015、pp. 22-24。</ref>。 この時の対戦では1局目に後手の小泉が先手の[[将棋/▲7六歩#△3二銀|▲7六歩に△3二銀]]と指して持将棋になる。指しなおし局では先手小泉の初手が[[将棋/初手#▲7八銀|▲7八銀]]。これも千日手となり、再度の指しなおし局で当手順となった。 △6二金・△8一飛型は一つの形だが、2手目△6二金は[[#△6二銀|△6二銀]]と同様、▲2六歩と突かれると飛車先が受からない。 ただし▲2六歩に△6一金と戻した場合、後手は2手掛けて何も指しておらず論外だが、▲2五歩△3四歩にすぐ▲2四歩△同歩▲同飛?と行くのは、[[将棋/7手爆弾/△同歩/▲同飛/△8八角成/▲同銀/△3三角|△8八角成▲同銀△3三角]]で、△8三歩型が生きる可能性がある。 渡辺明、[[w:郷田真隆|郷田真隆]]は、[[#△6二玉|2手目△6二玉]]は[[w:右玉|右玉]]としてわかるが、△6二金は不自然、意味がわからないと評している<ref name=:3/>。 [[w:森内俊之|森内俊之]]の見解では、2手目△6二銀に比べて明らかに損<ref name=:3/>。 [[w:広瀬章人|広瀬章人]]、[[w:豊島将之|豊島将之]]は、2手目△6二玉よりは良い可能性をわずかに示唆した<ref name=:3/>。 {{-}} == △6二玉 == {{shogi diagram|tright| |なし |lg|ng|sg|gg|ddlh|gg|sg|ng|lg | |rg| |kgl| | | |bg| |pg|pg|pg|pg|pg|pg|pg|pg|pg | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | |ps| | | | | | |ps|ps| |ps|ps|ps|ps|ps|ps | |bs| | | | | |rs| |ls|ns|ss|gs|ks|gs|ss|ns|ls |なし |2手目△6二玉まで}} ボンクラーズ-米長 2012で[[w:米長邦雄|米長邦雄]]が指した手で、[[w:新米長玉|新米長玉]]と呼ばれる。 ▲2六歩と突かれると飛車先が受からず損とされるが、[[w:コンピュータ将棋|コンピュータ将棋]]の多くは飛車先の交換を重視せず、▲7五歩や▲6八飛と振り飛車にすることが知られている。 序盤でコンピュータの定跡を無効化し、力戦にして厚みを築いて[[w:入玉|入玉]]を目指す狙いがある。 {{-}} == △7二金 == == △5二金左 == == △9二香 == == △1二香 == == △2四歩 == {{shogi diagram|tright| |なし |lg|ng|sg|gg|kg|gg|sg|ng|lg | |rg| | | | | |bg| |pg|pg|pg|pg|pg|pg|pg|dah|pg | | | | | | | |pgl| | | | | | | | | | | | |ps| | | | | | |ps|ps| |ps|ps|ps|ps|ps|ps | |bs| | | | | |rs| |ls|ns|ss|gs|ks|gs|ss|ns|ls |なし |2手目△2四歩まで}} ▲2六歩△3四歩で後手[[w:角頭歩戦法|角頭歩戦法]]の出だし。[[/△3四歩/▲2六歩#△2四歩|△3四歩▲2六歩△2四歩]]に合流する。以下▲2五歩△同歩▲同飛には、△8八角成▲同銀△3三桂▲2三飛成に△2二飛の飛車ぶつけが狙い。 {{-}} == △4四歩 == {{shogi diagram|tright| |なし |lg|ng|sg|gg|kg|gg|sg|ng|lg | |rg| | | | | |bg| |pg|pg|pg|pg|pg|dah|pg|pg|pg | | | | | |pgl| | | | | | | | | | | | | | |ps| | | | | | |ps|ps| |ps|ps|ps|ps|ps|ps | |bs| | | | | |rs| |ls|ns|ss|gs|ks|gs|ss|ns|ls |なし |2手目△4四歩?まで}} [[w:4四歩パックマン|パックマン]]。▲4四同角に△4二飛と回って△4七飛成を狙う。 {{-}} == 脚注 == <references/> == 参考棋譜 == * 1937年2月5日 南禅寺の決戦 ▲[[w:木村義雄|木村義雄]]八段 対 △[[w:阪田三吉|阪田三吉]] * 1937年3月22日 天龍寺の決戦 ▲[[w:花田長太郎|花田長太郎]]八段 対 △阪田三吉 * [http://live.shogi.or.jp/ryuou/kifu/19/061214_watanabe-sato.html 2006年12月13・14日 第19期竜王戦七番勝負第6局 ▲渡辺明竜王 対 △佐藤康光棋聖] * [http://live.shogi.or.jp/ryuou/kifu/19/061221_watanabe-sato.html 2006年12月20・21日 第19期竜王戦七番勝負第7局 ▲渡辺明竜王 対 △佐藤康光棋聖] * [http://live.shogi.or.jp/ryuou/kifu/20/071212.html 2007年12月12・13日 第20期竜王戦七番勝負第6局 ▲渡辺明竜王 対 △佐藤康光二冠(棋聖・棋王)] * 2012年1月14日 [[w:将棋電王戦#第1回将棋電王戦|第1回将棋電王戦]] ▲[[w:ボンクラーズ|ボンクラーズ]] 対 △[[w:米長邦雄|米長邦雄]][[w:永世棋聖|永世棋聖]] * 2012年2月9日 第43期[[w:新人王戦 (将棋)|新人王戦]]2回戦[[w:持将棋|持将棋]]・[[w:千日手|千日手]]指し直し局 ▲[[w:永瀬拓矢|永瀬拓矢]]四段 対 △小泉祐[[w:奨励会|奨励会]]三段 == 参考文献 == * [[w:佐藤康光|佐藤康光]]『佐藤康光の石田流破り』[[w:日本将棋連盟|日本将棋連盟]]、2010年。{{ISBN|978-4-8399-3510-8}} * [[w:鈴木宏彦|鈴木宏彦]]「イメージと読みの将棋観」、『[[w:将棋世界|将棋世界]]』2008年1月号、ページ数不明、日本将棋連盟。 * [[w:森内俊之|森内俊之]]、[[w:渡辺明 (棋士)|渡辺明]]、[[w:谷川浩司|谷川浩司]]、佐藤康光、[[w:久保利明|久保利明]]、[[w:広瀬章人|広瀬章人]]『トップ棋士頭脳勝負 イメージと読みの将棋観』第3巻、日本将棋連盟、2014年。{{ISBN|978-4-8399-5017-0}}(一部初出・鈴木宏彦「イメージと読みの将棋観」、『[[w:将棋世界|将棋世界]]』2010年11月号-2012年6月号) * 渡辺明、[[w:郷田真隆|郷田真隆]]、森内俊之、久保利明、広瀬章人、[[w:豊島将之|豊島将之]]『トップ棋士の感覚 〜イメージと読みの将棋観〜』日本将棋連盟、2015年。{{ISBN|978-4-8399-5571-7}}(一部初出・鈴木宏彦「イメージと読みの将棋観」、『将棋世界』2012年7月号-2013年6月号) {{stub}} [[Category:将棋|7]] mkbrk4cotev6ylec759dbop73c1eyti 将棋/7手爆弾/△同歩/▲同飛/△8八角成/▲同銀/△3三角 0 22203 305060 238119 2026-10-22T11:27:49Z Jcb 92857 305060 wikitext text/x-wiki {{shogi diagram|tright| |歩 |lg|ng|sg|gg|kg|gg|sg|ng|lg | |rg| | | | | | | |pg| |pg|pg|pg|pg|bgl| |pg | | | | | | |pg|rs| | |pg| | | | | | | | | |ps| | | | | | |ps|ps| |ps|ps|ps|ps| |ps | |ss| | | | | | | |ls|ns| |gs|ks|gs|ss|ns|ls |角歩 |12手目△3三角まで<br/><br/>初手からの指し手<br/>[[将棋/7手爆弾#▲同銀|▲7六歩△3四歩▲2六歩△8四歩▲2五歩△8五歩▲2四歩△同歩▲同飛△8八角成▲同銀]]△3三角}} △3三角は飛車銀両取りである。 [[#▲2一飛成|▲2一飛成?]]は先手負け、[[#▲2八飛|▲2八飛]]と引いてほぼ互角の戦いとなる。 {{-}} == ▲2一飛成 == : ''詳細は「[[/▲2一飛成]]」を参照'' === △8八角成 === {{shogi diagram|tright| |銀歩 |lg|ng|sg|gg|kg|gg|sg|ds|lg | |rg| | | | | |uat| |pg| |pg|pg|pg|pg|dads|uda|pg | | | | | |da|pg|uas| | |pg| | |da| | | | | | |ps|da| | | | | |ps|ps|dad|ps|ps|ps|ps| |ps | |hgl| | | | | | | |ls|ns| |gs|ks|gs|ss|ns|ls |角桂歩 |13手目▲2一飛成?<br/>14手目△8八角成まで}} 先手は銀桂交換の駒損で、竜と馬では竜の方が大きいとも思えるが、後手からは次に△2二馬や△2二飛とぶつけて竜を消しにくる手がある。 ▲7七角(▲6六角)と合わせて馬を消しにいく手が考えられるが、△8九馬とかわし、▲1一角成に△2二銀打で竜と馬を封じ込め、▲1二馬△9九馬となると、銀得の後手有利である<ref>長岡 2016、p. 18。</ref>。 {{-}} ==== ▲7七角△8九馬▲1一角成△2二銀打▲1二馬△9九馬 ==== {{shogi diagram|tright| |桂香歩 |lg|ng|sg|gg|kg|gg|sg|ds|dah | |rg| | | | | |sg|hs |pg| |pg|pg|pg|pg| | |pg | | | | | | |pg| | | |pg| | | | | | | | | |ps| | | | | | |ps|ps| |ps|ps|ps|ps| |ps | |das| | | | | | | |hgl|kadl| |gs|ks|gs|ss|ns|ls |桂香歩 |15手目▲7七角〜20手目△9九馬まで}} {{-}} == ▲2八飛 == {{shogi diagram|tright| |歩 |lg|ng|sg|gg|kg|gg|sg|ng|lg | |rg| | | | | | | |pg| |pg|pg|pg|pg|bg| |pg | | | | | | |pg|das| | |pg| | | | | |uda| | | |ps| | | | |uda| |ps|ps| |ps|ps|ps|ps|dat|ps | |ss| | | | | |rsl| |ls|ns| |gs|ks|gs|ss|ns|ls |角歩 |13手目▲2八飛まで}} ここで△2七歩と叩くのが鋭い手である。また、△2六歩と垂らす手もある。 {{-}} === △2七歩 === : ''詳細は「[[/▲2八飛/△2七歩]]」を参照'' {{shogi diagram|tright| |なし |lg|ng|sg|gg|kg|gg|sg|ng|lg | |rg| | | | | | | |pg| |pg|pg|pg|pg|bg| |pg | | | | | | |pg| | | |pg| | | | | | | | | |ps| | | | | | |ps|ps| |ps|ps|ps|ps|pgl|ps | |ss| | | | | |rs| |ls|ns| |gs|ks|gs|ss|ns|ls |角歩 |14手目△2七歩まで}} ▲同飛と取ると△8八角成で銀がタダで取られる。 先手の応手は▲5八飛、▲6八飛、▲7八飛に分かれる。 {{-}} === △2六歩 === : ''詳細は「[[/▲2八飛/△2六歩]]」を参照'' {{shogi diagram|tright| |なし |lg|ng|sg|gg|kg|gg|sg|ng|lg | |rg| | | | | | | |pg| |pg|pg|pg|pg|bg| |pg | | | | | | |pg| | | |pg| | | | | | | | | |ps| | | | |pgl| |ps|ps| |ps|ps|ps|ps| |ps | |ss| | | | | |rs| |ls|ns| |gs|ks|gs|ss|ns|ls |角歩 |14手目△2六歩まで}} △2六歩は次の△2七歩成を狙っている<ref>長岡 2016、p. 16。</ref>。 ▲7七銀と銀を安定させ、次に2六の歩を取れるようにすることが考えられるが、△2二飛と回られ、再度△2七歩成を狙われる。 {{-}} ==== ▲7七銀△2二飛 ==== {{shogi diagram|tright| |なし |lg|ng|sg|gg|kg|gg|sg|ng|lg | |ras|lra|lra|lra|lra|rat|rgl| |pg| |pg|pg|pg|pg|bg| |pg | | | | | | |pg| | | |pg| | | | | | | | | |ps| | | | |pg| |ps|ps|ss|ps|ps|ps|ps| |ps | |durh| | | | | |rs| |ls|ns| |gs|ks|gs|ss|ns|ls |角歩 |15手目▲7七銀<br/>16手目△2二飛まで}} ▲3八銀?と2七の地点に数を足して△2七歩成を受けると、△7七角成▲同桂△2七銀のカチコミを食らい先手負けとなる。 {{-}} ===== ▲3八銀△7七角成▲同桂△2七銀 ===== {{shogi diagram|tright| |なし |lg|ng|sg|gg|kg|gg|sg|ng|lg | | | | | | | |rg| |pg| |pg|pg|pg|pg| | |pg | | | | | | |pg| | | |pg| | | | | | | | | |ps| | | | |pg| |ps|ps|ns|ps|ps|ps|ps|sgl|ps | | |dau| | | |ss|rs| |ls|daus| |gs|ks|gs|uah|ns|ls |角角歩 |17手目▲3八銀?<br/>18手目△7七角成<br/>19手目▲同桂<br/>20手目△2七銀まで}} 以下一例は▲2七同銀△同歩成▲8八飛に、△3八とと捨てる手があり、▲同飛△2九飛成で▲角△銀桂の二枚替えで竜を作られ先手負けである。 {{-}} ====== ▲同銀△同歩成▲8八飛△3八と▲同飛△2九飛成 ====== {{shogi diagram|tright| |銀桂 |lg|ng|sg|gg|kg|gg|sg|ng|lg | | | | | | | |das| |pg| |pg|pg|pg|pg| |uda|pg | | | | | | |pg|uda| | |pg| | | | | |uda| | | |ps| | | | |uda| |ps|ps|ns|ps|ps|ps|ps|uda|ps | |ras|lra|lra|lra|rat|rs|dat| |ls| | |gs|ks|gs| |dgl|ls |角角銀歩2 |21手目▲2七同銀〜26手目△2九飛成まで}} {{-}} したがって、△2六歩の垂らしには▲7七銀に代えて▲7七桂とし、角を切られないようにするが、やはり△2二飛と回られ、先手が悪いわけではないものの好んで飛び込む変化ではないというのが旧来の定跡であった。 ところが[[:w:千田翔太|千田翔太]]によれば、▲7七銀△2二飛に▲3八銀ではなく▲3八金とすれば、△7七角成?▲同桂△2七銀?のカチコミには▲6六角または▲6五桂で先手が指せるという<ref name="chida">[http://mainichi.jp/articles/20160216/dde/041/040/042000c 椎名龍一 - 第74期名人戦順位戦 千田翔太五段−宮田敦史六段 第3譜 - 毎日新聞 2016年2月16日 東京夕刊]</ref>。 ===== ▲3八金△7七角成▲同桂△2七銀▲6六角 ===== {{shogi diagram|tright| |なし |lg|ng|sg|gg|kg|gg|sg|ng|lg | | | | | | | |rg| |pg| |pg|pg|pg|pg| | |pg | | | | | | |pg| | | |pg| | | | | | | | | |ps|bsl| | | |pg| |ps|ps|ns|ps|ps|ps|ps|sg|ps | | |dau| | | |gs|rs| |ls|da| |gs|ks|durh|ss|ns|ls |角歩 |17手目▲3八金<br/>18手目△7七角成?<br/>19手目▲同桂<br/>20手目△2七銀?<br/>21手目▲6六角まで}} ▲6六角以下、△2八銀成▲同銀△2七歩成▲同金△8九飛▲7八銀△9九飛成▲6五桂が一例で先手有利とされる<ref name="chida"/>。 {{-}} ====== △2八銀成▲同銀△2七歩成▲同金△8九飛▲7八銀△9九飛成▲6五桂 ====== {{shogi diagram|tright| |香 |lg|ng|sg|gg|kg|gg|sg|ng|lg | | | | | | | |rg| |pg| |pg|pg|pg|pg| | |pg | | | | | | |pg| | | |pg| |nsl| | | | | | | |ps|bs| | | | | |ps|ps| |ps|ps|ps|ps|gs|ps | | |ss| | | |durh|ss| |dg|lah| |gs|ks| |durh|ns|ls |角歩2 |22手目△2八銀成〜29手目▲6五桂まで}} {{-}} したがって▲3八金には△4二銀で持久戦となる<ref>千田-宮田 2016。</ref>。 ==== ▲4五角 ==== {{shogi diagram|tright| |なし |lg|ng|sg|gg|kg|gg|sg|ng|lg | |rg| | | | | | | |pg| |pg|pg|pg|pg|bg| |pg | | | | | | |pg| | | |pg| | | |bsl| | | | | |ps| | | | |pg| |ps|ps| |ps|ps|ps|ps| |ps | |ss| | | | | |rs| |ls|ns| |gs|ks|gs|ss|ns|ls |歩 |15手目▲4五角まで}} また△2六歩の垂らしには、▲7七銀や▲7七桂のほかに▲4五角と打つ手もある<ref name="kyokumen">[http://kyokumen.jp/positions/9020870 lnsgkgsnl/1r7/p1ppppb1p/6p2/1p3B3/2P4p1/PP1PPPP1P/1S5R1/LN1GKGSNL w P - 局面ペディア]</ref><ref name="shishikoma">[http://shishikomaigui.blog137.fc2.com/blog-entry-12.html shishikoma - 12. 3三角戦法の4五角の変化 - 将棋雑談]</ref>。 # △6二銀?などと6三の地点を受けると△2二飛と回れなくなり<ref name="shishikoma"/>、2六に打った歩が負担になるため、受けずに # △2二飛と回り、▲6三角成△2七歩成と進む。 {{-}} ===== △2二飛▲6三角成△2七歩成 ===== {{shogi diagram|tright| |なし |lg|ng|sg|gg|kg|gg|sg|ng|lg | |ras|lra|lra|lra|lra|rat|rg| |pg| |pg|hs|pg|pg|bg| |pg | | | | |daau| |pg| | | |pg| | | |daaus| | | | | |ps| | | | |dah| |ps|ps| |ps|ps|ps|ps|tgl|ps | |ss| | | | | |rs| |ls|ns| |gs|ks|gs|ss|ns|ls |歩2 |16手目△2二飛<br/>17手目▲6三角成<br/>18手目△2七歩成まで}} △2七歩成は # ▲同飛?なら△8八角成、 # ▲同馬?なら△同飛成▲同飛△8八角成で8八の銀を取れる。 # ▲7八飛△7二銀▲4五馬のような順が有力とされる<ref name="kyokumen"/>。 {{-}} ====== ▲7八飛△7二銀▲4五馬 ====== {{shogi diagram|tright| |なし |lg|ng|dah|gg|kg|gg|sg|ng|lg | | |sg| | | | |rg| |pg| |pg|daads|pg|pg|bg| |pg | | | | |daad| |pg| | | |pg| | | |hsl| | | | | |ps| | | | | | |ps|ps| |ps|ps|ps|ps|tg|ps | |ss|rs|lat|lra|lra|lra|las| |ls|ns| |gs|ks|gs|ss|ns|ls |歩2 |19手目▲7八飛<br/>20手目△7二銀<br/>21手目▲4五馬まで}} 優劣不明。 {{-}} 以上から、9手目[[将棋/7手爆弾#△同歩▲同飛|▲2四同飛]]の局面で # △8八角成▲同銀△3三角は後手最善とはいえず、 # [[将棋/7手爆弾#△3二金|△3二金]]が本筋である。 == 脚注 == <references/> == 参考棋譜 == * 2016年1月26日 第74期[[:w:順位戦|順位戦]]C級1組8回戦 ▲[[:w:千田翔太|千田翔太]]五段 対 △[[:w:宮田敦史|宮田敦史]]六段 == 参考文献 == * [[:w:長岡裕也|長岡裕也]]『ひと目の横歩取り』[[:w:マイナビ出版|マイナビ出版]]、2016年。{{ISBN|978-4-8399-5771-1}} [[Category:7手爆弾|2]] f97q5vvs91ox83joupz53dd1g4dyy99 将棋/▲7六歩/△3四歩/▲2六歩/△8四歩 0 22351 305062 238113 2026-10-22T11:28:29Z Jcb 92857 305062 wikitext text/x-wiki {{shogi diagram|tright| |なし |lg|ng|sg|gg|kg|gg|sg|ng|lg | |rg| | | | | |bg| |pg|dah|pg|pg|pg|pg| |pg|pg | |pgl| | | | |pg| | | | | | | | | | | | | |ps| | | | |ps| |ps|ps| |ps|ps|ps|ps| |ps | |bs| | | | | |rs| |ls|ns|ss|gs|ks|gs|ss|ns|ls |なし |4手目△8四歩まで}} お互いに角道を開け合い、飛車先を突き合う最も自然な出だし<ref>長岡 2016、p. 12。</ref>。 [[将棋/横歩取り模様|▲2五歩△8五歩]]と飛車先を伸ばし合う進行が考えられる。 横歩取りになる場合には、このあと▲7八金△3二金▲2四歩△同歩▲同飛△8六歩▲同歩△同飛▲3四飛などと進む。 ▲3四飛が後手の歩を取る手である。 横歩取りは、先手後手ともに居飛車の際の戦法である。後手が角道の歩を突いて、それを先手が望んだ場合に先手の飛車に取らせる。 先手は歩を1枚得することになる一方で、飛車を何回も動かすので手損になっている。 横歩取りになった場合には、先後とも駒台に歩を持っており、また、浮いた飛車が横に自由で、さらに角道が互いに開いていて角交換もありうるため、飛車角が飛び交う将棋になりやすい。 そのため、お互いに、がっちりと囲うと駒の無いところに隙ができやすく突破されやすいので、広く薄く囲うことになる。 玉は隅に行かず、銀は出て行かずに、桂馬を中央に跳ねて活用させることも多い。金銀は2枚ずつ玉の左右に配置してすべて守りに使う事が多い。 なお、▲7六歩△3四歩▲2六歩△8四歩、▲2六歩△3四歩▲7六歩△8四歩、▲2六歩△8四歩▲7六歩△3四歩の進行はいずれも本稿と同形になる。 {{-}} == ▲2五歩 == : ''詳細は「[[将棋/▲7六歩/△3四歩/▲2六歩/△8四歩/▲2五歩]]」を参照'' {{shogi diagram|tright| |なし |lg|ng|sg|gg|kg|gg|sg|ng|lg | |rg| | | | | |bg| |pg| |pg|pg|pg|pg| |pg|pg | |pg| | | | |pg| | | | | | | | | |psl| | | |ps| | | | |uah| |ps|ps| |ps|ps|ps|ps| |ps | |bs| | | | | |rs| |ls|ns|ss|gs|ks|gs|ss|ns|ls |なし |5手目▲2五歩まで}} [[将棋/▲7六歩/△3四歩/▲2六歩/△8四歩/▲2五歩/△8五歩|△8五歩]]と突く手が考えられる。 {{-}} == ▲7八金 == 実践例として、2018-01-18 第76期順位戦B級1組 ▲ vs △橋本崇載 戦、2017-08-25 第11回朝日杯将棋オープントーナメント ▲加藤桃子 女王 vs △ 戦ほか、多数。 通常の横歩取りに合流することが多いが、☗7八金以下☖8五歩☗2五歩☖8六歩として、後手からノーガード戦法に変化される可能性もある。 == ▲6六歩 == 一手前の局面で☗2五歩から横歩取りに進むのを拒否した手である。 実践例として、2018-01-29 第3期叡王戦本戦 ▲ vs △髙見泰地 戦など、多数。 次に☗6八銀から矢倉や雁木にする狙い。 以下、☖6二銀☗6八銀と進むと先手が矢倉や雁木などになるので☖8五歩と打診。☗7七銀ならば矢倉。 先に☖8五歩☗7七角と上がらせて、矢倉に組みにくくさせる手はある。 他方、☖6二銀は普通の手である。 == ▲4六歩 == == ▲5六歩 == 実践例として、1936-12-27 ▲畝美与吉 vs △升田幸三 戦、1918-06-23  ▲阪田三吉 vs △関根金次郎 戦がある。 == ▲4八銀 == == ▲7七角 == 実践例として、1916-11-04 ▲佐原長次郎 vs. △寺田浅次郎 戦がある。 == ▲1六歩 == == ▲9六歩 == == ▲2二角成 == 実践例として、2016-02-07 第47期新人王戦 ▲ vs △高見泰地 戦など。 == ▲2二角不成 == == 脚注 == <references/> == 参考文献 == * [[:w:長岡裕也|長岡裕也]]『ひと目の横歩取り』[[:w:マイナビ出版|マイナビ出版]]、2016年。{{ISBN|978-4-8399-5771-1}} === 外部リンク === * [https://www.youtube.com/watch?v=qnT5TfjJyJM 横歩取り基本手筋1] * [https://www.youtube.com/watch?v=q6_Kec-LT5k 目指せ 初段 第58回] * [http://www.youtube.com/watch?v=CnjYnA9NRyw 目指せ 初段 第35回] * [https://books.google.co.jp/books?id=YyPUDwAAQBAJ&pg=PA6 Google book 横歩取り▲5八玉&▲6八玉戦法] 大平武洋 著 * [https://books.google.co.jp/books?id=tYK3DwAAQBAJ&pg=PA6 Google book 藤森式青野流 絶対退かない横歩取り] 藤森哲也 著 * [https://books.google.co.jp/books?id=uX23DwAAQBAJ&pg=PA6 Google book 徹底解明!横歩取りの最重要テーマ] 八代弥 著 * [https://hb.afl.rakuten.co.jp/hgc/1720430e.d6fb9548.1720430f.9f3d2519/?pc=https%3A%2F%2Fitem.rakuten.co.jp%2Frakutenkobo-ebooks%2Fa9772618e7eb332a819149bee219cd82%2F&m=http%3A%2F%2Fm.rakuten.co.jp%2Frakutenkobo-ebooks%2Fi%2F17190667%2F&link_type=picttext&ut=eyJwYWdlIjoiaXRlbSIsInR5cGUiOiJwaWN0dGV4dCIsInNpemUiOiIxMjh4MTI4IiwibmFtIjoxLCJuYW1wIjoicmlnaHQiLCJjb20iOjAsImNvbXAiOiJyaWdodCIsInByaWNlIjowLCJib3IiOjAsImNvbCI6MCwiYmJ0biI6MX0%3D 徹底解明!横歩取りの最重要テーマ]【電子書籍】八代 弥 著 * [https://hb.afl.rakuten.co.jp/hgc/1720430e.d6fb9548.1720430f.9f3d2519/?pc=https%3A%2F%2Fitem.rakuten.co.jp%2Frakutenkobo-ebooks%2Fbf81621bee9031b9b65fe4b7ed74bb0a%2F&m=http%3A%2F%2Fm.rakuten.co.jp%2Frakutenkobo-ebooks%2Fi%2F18088769%2F&link_type=picttext&ut=eyJwYWdlIjoiaXRlbSIsInR5cGUiOiJwaWN0dGV4dCIsInNpemUiOiIxMjh4MTI4IiwibmFtIjoxLCJuYW1wIjoicmlnaHQiLCJjb20iOjEsImNvbXAiOiJkb3duIiwicHJpY2UiOjAsImJvciI6MCwiY29sIjoxLCJiYnRuIjoxfQ%3D%3D 藤森式青野流 絶対退かない横歩取り]【電子書籍】藤森哲也 著 * [https://hb.afl.rakuten.co.jp/ichiba/1720430e.d6fb9548.1720430f.9f3d2519/?pc=https%3A%2F%2Fitem.rakuten.co.jp%2Frakutenkobo-ebooks%2F388988d8a6913cc79130a4ca236ddef6%2F&link_type=picttext&ut=eyJwYWdlIjoiaXRlbSIsInR5cGUiOiJwaWN0dGV4dCIsInNpemUiOiIxMjh4MTI4IiwibmFtIjoxLCJuYW1wIjoicmlnaHQiLCJjb20iOjEsImNvbXAiOiJkb3duIiwicHJpY2UiOjAsImJvciI6MCwiY29sIjoxLCJiYnRuIjoxLCJwcm9kIjowfQ%3D%3D 横歩取り▲5八玉&▲6八玉戦法]【電子書籍】大平武洋 著 * [https://books.google.co.jp/books?id=WJaNDQAAQBAJ&pg=PA6 Google book 横歩取り最前線 ~いま、プロが注目する2つの手段~] 日浦市郎 著 * [https://books.google.co.jp/books?id=IrQJDQAAQBAJ&pg=PA7 Google book 早分かり 先手でも後手でも使える 横歩取り定跡ガイド] 所司和晴 著 * [https://books.google.co.jp/books?id=zlnoDAAAQBAJ&pg=PA98 Google book 糸谷&斎藤の現代将棋解体新書 横歩取り・青野流] 糸谷哲郎、斎藤慎太郎 著 * [https://books.google.co.jp/books?id=APeLDAAAQBAJ&pg=PA6 Google book 横歩取りで勝つための9つの鉄則と15の技術] 野月浩貴 著 * [http://books.google.co.jp/books?id=KF_UBAAAQBAJ&pg=PA8 Google book 現代横歩取りのすべて] 村田顕弘 著 * [https://books.google.co.jp/books?id=GlG_CQAAQBAJ&pg=PT9 Google book 決定版!横歩取り完全ガイド] 吉田正和 著 * [https://books.google.co.jp/books?id=CADECAAAQBAJ&pg=PA16 Google book 後手番で勝つ!中座の横歩取り] 中座真 著 * [https://books.google.co.jp/books?id=5_JzCQAAQBAJ&pg=PA6 Google book 横歩取り必勝ガイド] 稲葉陽 著 * [http://books.google.co.jp/books?id=Vi2LAgAAQBAJ&pg=PA6 Google book 横歩取りマップ] 瀬川 晶司 著 * [https://books.google.co.jp/books?id=CGNeCwAAQBAJ&pg=PA9 Google book ひと目の横歩取り] 長岡裕也 著 * [http://books.google.co.jp/books?id=qtYvBQAAQBAJ&pg=PA11 Google book よくわかる横歩取り] 野月浩貴 著 * [http://books.google.co.jp/books?id=0uVcAgAAQBAJ&pg=PA127 Google book 最新戦法 マル秘定跡ファイル](第5章・横歩取り5二玉型対策) * [http://books.google.co.jp/books?id=cEKLAgAAQBAJ&pg=PA180 Google book アマの知らない マル秘定跡] 村田 顕弘 著 * [http://books.google.co.jp/books?id=cikGAwAAQBAJ&pg=PA92 Google book ライバルに勝つ最新定跡] 村山慈明 著 第5章・横歩取り8五飛対新山崎流 * [http://books.google.co.jp/books?id=cikGAwAAQBAJ&pg=PA112 Google book ライバルに勝つ最新定跡](第6章・横歩取り8五飛対5八玉型) * [https://books.google.co.jp/books?id=h5K3CgAAQBAJ&pg=PT225 Google book 三浦&阿部健の居飛車研究] △3三角・▲6八玉型 三浦弘行、阿部健治郎 著 * [https://books.google.co.jp/books?id=Kt51CQAAQBAJ&pg=PA8 Google book 最新の8五飛戦法] 高橋道雄 著 * [http://books.google.co.jp/books?id=QwQoAwAAQBAJ&pg=PA1 Google book 横歩取り超急戦のすべて] 飯島 栄治 著 * [https://books.google.co.jp/books?id=9Qx6CgAAQBAJ&pg=PA8 Google book 研究で勝つ!相横歩取りのすべて] 飯島栄治 著 * [https://books.google.co.jp/books?id=_U6OCwAAQBAJ&pg=PT4 Google book 横歩取りハメ手裏定跡] 飯島栄治 著 * [https://books.google.co.jp/books?id=6YG3DwAAQBAJ&pg=PA84 Google book 新型雁木のすべて 横歩取り拒否からの雁木] 稲葉陽 著 * [http://www.nicozon.net/mylist/46244847 実況解説 横歩を取れるようになる動画] {{stub}} [[Category:将棋|7]] bvm6e52y8ia83o2i0sxwzfneacrpz73 ガイウス・ユリウス・カエサルの著作/古代ローマ史の用語集 0 22400 305038 110736 2026-10-22T09:44:05Z Jcb 92857 305038 wikitext text/x-wiki ==あ行== ==か行== ===キウィタス=== '''キウィタス'''([[wikt:la:civitas|cīvitās, cīvitātis]])<ref>『西洋の歴史 基本用語集〔古代・中世編〕』</ref><ref>[https://kotobank.jp/word/%E3%82%AD%E3%82%A6%E3%82%A3%E3%82%BF%E3%82%B9-1157576 キウィタスとは - コトバンク]</ref> とは、古代ローマ時代には「ローマ国家」「'''市民権'''」「'''市民共同体'''」「'''都市'''」などを指した。転じて、ゲルマニアなどの「'''部族国家'''」などをもキウィタスと呼んだ。関連記事:[[w:キウィタス]]、[[w:en:Civitas]] ===騎兵隊の編制=== [[画像:Turma equitum Polybius.png|thumb|right|300px|騎兵分隊(デクリア)は10騎からなり、分隊長である<ruby><rb>[[w:デクリオ|十人隊長]]</rb><rp>(</rp><rt>デクリオ</rt><rp>)</rp></ruby>と<ruby><rb>[[w:オプティオ|分隊長代理]]</rb><rp>(</rp><rt>オプティオ</rt><rp>)</rp></ruby>が指揮した。3個の分隊で1個の騎兵小隊(トゥルマ)を構成し、首位の分隊長が小隊長を兼任していた。]] ローマ軍の騎兵隊は、次のような単位で編制されていた。 *騎兵分隊(デクリア [[wikt:en:decuria#Latin|decuria, -ae]])・・・10騎 *騎兵小隊(トゥルマ [[wikt:en:turma#Latin|turma, -ae]])・・・30騎=10個分隊 *騎兵中隊(アーラ [[wikt:en:ala#Latin|āla, -ae]])・・・300騎 ==さ行== ==た行== ===徴税請負人=== *徴税請負人 ⇒[[#プブリカヌス]] ==な行== ==は行== ===プブリカヌス=== '''プブリカヌス'''([[wikt:en:publicanus|pūblicānus, -ī]])は、'''公共事業請負人'''<ref>『古代ローマ人名事典』</ref>、古代ローマ国家の公共事業を請け負っていた業者。 共和制期のローマ国家には、公共事業を担当する国家組織がなかったため、民間人である業者が公共事業を請け負っていた。<br>プブリカヌスは、 '''徴税請負人'''<ref>『古代ローマ人名事典』</ref>、'''収税請負人'''<ref>水谷『羅和辞典 改訂版』</ref>などと訳されるが、これは属州からの徴税が特に重要であったためである。 ==ま行== ==や行== ==ら行== ==わ行== ==脚注== <references /> ==参考図書== *『羅和辞典 改訂版』水谷智洋編、研究社、2009年改訂版、{{ISBN|978-4-7674-9025-0}} *『古代ローマ人名事典』ダイアナ・バウダー編、小田謙爾・兼利琢也・荻原英二・長谷川岳男 訳、原書房、1994年、{{ISBN|4-562-02605-7}}<ref>(978-4-562-02605-0)</ref>(品切) *:(原著:''Who Was Who in the Roman World 753 BC-AD 476.'' Edited by Diana Bowder. A Phaidon Book / Cornell University Press, 1980) *『西洋の歴史 基本用語集〔古代・中世編〕』朝治啓三 編、ミネルヴァ書房、2008年、{{ISBN|978-4-623-05087-1}} [[Category:ガイウス・ユリウス・カエサルの著作|ようこしゆう]] 212i2czpe1grftseqyz193iysrxfcrx 将棋/▲7六歩/△8四歩 0 22449 305063 268414 2026-10-22T11:28:46Z Jcb 92857 305063 wikitext text/x-wiki {{shogi diagram|tright| |なし |lg|ng|sg|gg|kg|gg|sg|ng|lg | |rg| | | | | |bg| |pg|dah|pg|pg|pg|pg|pg|pg|pg | |pgl| | | | | | | | | | | | | | | | | | |ps| | | | | | |ps|ps| |ps|ps|ps|ps|ps|ps | |bs| | | | | |rs| |ls|ns|ss|gs|ks|gs|ss|ns|ls |なし |2手目△8四歩まで}} 先手が角道を開けたのに対し、後手が飛車先の歩を突いて応じる出だし。 [[/▲2六歩/]]と突く手や、[[#▲6八銀]]と上がって△8五歩ならば▲7七銀と受けられるようにする手が考えられる。 そして、[[将棋/石田流]]を得意とする先手に対して、図以下▲7八飛に△8五歩を用意している。後手が角道を開けずに飛車先を突いてこられると、ここで、7七角と上がらざるを得ない。したがって、すんなりとは石田流ができないことになる。 この場合、▲7七角の後、△3四歩と後手も角道を開けてきたら、一旦は▲6六歩と角道を止め、その後、△6二銀▲6八銀△4二玉▲4八玉△3二玉▲3八玉で、以下△3三角▲6七銀△2二玉▲7五歩とし、その後は▲6八角や▲5九角から▲7六飛と石田流に構えることはできる。 {{-}} == ▲2六歩 == {{shogi diagram|tright| |なし |lg|ng|sg|gg|kg|gg|sg|ng|lg | |rg| | | | | |bg| |pg| |pg|pg|pg|pg|pg|pg|pg | |pg| | | | | | | | | | | | | | | | | | |ps| | | | |psl| |ps|ps| |ps|ps|ps|ps|uah|ps | |bs| | | | | |rs| |ls|ns|ss|gs|ks|gs|ss|ns|ls |なし |3手目▲2六歩まで}} 角換わりを志向するなら、「[[将棋/角換わり模様]]」も参照。角換わりにするには、△8五歩と突く手が自然である。 横歩取りにするなら、[[/▲2六歩#△3四歩|△3四歩]]と突く手を志向。ただし、阿久津主税は著書『矢倉・角換わりの教科書』(2013年)の中で「2手目△8四歩で王者の貫禄を見せた後手としては(4手目に)△3四歩のような野暮な手は、もはや恥ずかしくて指せないはずだ」と述べている。 そのほか、△3二金や△1四歩、△6二銀など。 {{-}} == ▲7八金 == : ''詳細は「[[/▲7八金]]」を参照'' {{shogi diagram|tright| |なし |lg|ng|sg|gg|kg|gg|sg|ng|lg | |rg| | | | | |bg| |pg| |pg|pg|pg|pg|pg|pg|pg | |pg| | | | | | | | | | | | | | | | | | |ps| | | | | | |ps|ps| |ps|ps|ps|ps|ps|ps | |bs|gsl| | | | |rs| |ls|ns|ss|dulh|ks|gs|ss|ns|ls |なし |3手目▲7八金まで}} △3二金▲2六歩△8五歩で[[W:角換わり]]の出だしに合流するが、▲7八金を咎めるために△3四歩から[[W:陽動振り飛車]]にする指し方もある。 {{-}} == ▲7七角 == {{shogi diagram|tright| |なし |lg|ng|sg|gg|kg|gg|sg|ng|lg | |rg| | | | | |bg| |pg| |pg|pg|pg|pg|pg|pg|pg | |pg| | | | | | | | | | | | | | | | | | |ps| | | | | | |ps|ps|bsl|ps|ps|ps|ps|ps|ps | |durh| | | | | |rs| |ls|ns|ss|gs|ks|gs|ss|ns|ls |なし |3手目▲7七角まで}} # △6二銀が、佐藤秀司(2017-10-26日、第3期叡王戦段位別予選)、tanuki(2015-11-20日、第3回将棋電王戦)、清水市代(2013-12-13日、第07期マイナビ女子戦)、村上創音(2013-08-31日、2013年度将棋日本シリーズ)など。 # △3四歩が、増田康宏(2016-08-04日、新人王戦)、qinoa(2015-11-21日、第3回将棋電王戦)、scherzo(2015-11-21日、第3回将棋電王戦)、高見泰地(2015-10-19日、第24期銀河戦本戦B)、中井広恵(2015-05-20日、第23期大山名人杯倉敷藤花戦)、屋敷伸之(2013-05-17日、銀河戦)、北島忠雄(2013-06-25日、順位戦)など。 # 中川大輔は△4二玉(2018-01-10日、第76期順位戦B級2組)としている。 [[将棋/▲7六歩/△3四歩#▲7七角]]の場合、後手番での4手目△3三角戦法にも共通する、△8四歩▲8八飛△7七角成▲同桂△4五角に、▲6五桂△6二銀▲5五角が知られており、▲7六歩△8四歩▲7七角に△3四歩を指せば、仮に▲8八飛とすればこれに合流する。 ▲8八飛に、△1四歩もある。仮に▲1六歩と受けると、そこで△7七角成とし、以下▲同桂△4五角▲6五桂△6二銀▲5五角に、△1三香が生じる。 △3四歩の局面で▲8八飛ではなく、▲5六歩もある。大和証券杯 佐藤康光-木村一基戦で現れた新手で、▲5六歩は△4五角を消している。これは一見△7七角成から△5七角がありそうだが、以下▲6五桂 △3五角成 ▲6六角 △2二銀 ▲3六歩が予想される。実践では、▲5六歩△6二銀▲8八飛 △4二玉 ▲6八銀 △3二玉 ▲4八玉 △6四歩▲3八玉 △8五歩 ▲2八玉 △5二金右 ▲5七銀 △6三銀▲6六歩 △5四銀 ▲5八金左 △7四歩 ▲3八銀 △3三角以下、振り飛車対居飛車穴熊戦となった。 {{-}} == ▲6六角 == {{shogi diagram|tright| |なし |lg|ng|sg|gg|kg|gg|sg|ng|lg | |rg| | | | | |bg| |pg| |pg|pg|pg|pg|pg|pg|pg | |pg| | | | | | | | | | | | | | | | | | |ps|bsl| | | | | |ps|ps|durh|ps|ps|ps|ps|ps|ps | |durh| | | | | |rs| |ls|ns|ss|gs|ks|gs|ss|ns|ls |なし |3手目▲6六角まで}} [[将棋/▲7六歩/△8四歩/▲6六角]]も参照。 2024年に佐藤天彦九段が、▲7六歩△8四歩▲6六角(図)という出だしを連採して豊島将之九段・深浦康市九段を連破した。 以下、後手△6二銀に佐藤九段は▲7八銀とし、△7七銀から▲8八飛と構えた。ここで仮に△6六角▲同歩△4五歩としても、▲5五角がある。後手△6二銀に代えて△4二玉であると、▲5五角は△3三桂があるが、その際は▲3八銀でよく、△6七角成▲5二金左△6五馬は▲3六角。このとき、6筋の歩がすでに上がっているので、後手の角成が1歩補充になっていない。 先手の▲8八玉△7七銀▲6六角型は、機を見て▲7五歩から▲7六銀型にも移行が可能。 {{-}} == ▲6八銀 == {{shogi diagram|tright| |なし |lg|ng|sg|gg|kg|gg|sg|ng|lg | |rg| | | | | |bg| |pg| |pg|pg|pg|pg|pg|pg|pg | |pg| | | | | | | | | | | | | | | | | | |ps| | | | | | |ps|ps| |ps|ps|ps|ps|ps|ps | |bs| |ssl| | | |rs| |ls|ns|durh|gs|ks|gs|ss|ns|ls |なし |3手目▲6八銀まで}} 図のあとの展開で、矢倉戦法については、[[将棋/矢倉模様]]を参照。 ▲6八銀の手は手広く、▲7七銀からの矢倉や、▲6六歩から▲6七銀の雁木模様、△3四歩に▲7七角で[[将棋/角換わり模様]]や[[w:角交換振り飛車]]、▲7八金から▲2六歩などの相掛かり模様、▲6六歩からのノーマル振り飛車、とくに6八に銀を上がると▲6七銀型の他に▲5七銀型にも組むことができる。 {{-}} == ▲7八銀 == {{shogi diagram|tright| |なし |lg|ng|sg|gg|kg|gg|sg|ng|lg | |rg| | | | | |bg| |pg| |pg|pg|pg|pg|pg|pg|pg | |pg| | | | | | | | | | | | | | | | | | |ps| | | | | | |ps|ps| |ps|ps|ps|ps|ps|ps | |bs|ssl| | | | |rs| |ls|ns|uah|gs|ks|gs|ss|ns|ls |なし |3手目▲7八銀まで}} 上記の▲6八銀と同様の展開が考えられるが、上記に比べて▲6八飛とする▲7八銀型四間飛車の含みがある。 21世紀の将棋では、序盤の一手の価値を非常にシビアに考えはじめてから、例えば現在指されている四間飛車の序盤を見ると、3手目は▲7八銀と上がらずに[[#▲6八飛]]と指すのが、7九に銀を残して角にひもをつけておく含みもあってごく普通であるが、以前は▲7八銀を上がらずに▲6八飛を指すと破門されるなどと言われていたという。 また、左美濃や▲8六歩から▲8七銀とする銀冠を構えることも可能。 {{-}} == ▲5六歩 == : ''詳細は「[[/▲5六歩]]」を参照'' {{shogi diagram|tright| |なし |lg|ng|sg|gg|kg|gg|sg|ng|lg | |rg| | | | | |bg| |pg| |pg|pg|pg|pg|pg|pg|pg | |pg| | | | | | | | | | | | | | | | | | |ps| |psl| | | | |ps|ps| |ps|uah|ps|ps|ps|ps | |bs| | | | | |rs| |ls|ns|ss|gs|ks|gs|ss|ns|ls |なし |3手目▲5六歩まで}} {{-}} == ▲6六歩 == {{shogi diagram|tright| |なし |lg|ng|sg|gg|kg|gg|sg|ng|lg | |rg| | | | | |bg| |pg| |pg|pg|pg|pg|pg|pg|pg | |pg| | | | | | | | | | | | | | | | | | |ps|psl| | | | | |ps|ps| |uah|ps|ps|ps|ps|ps | |bs| | | | | |rs| |ls|ns|ss|gs|ks|gs|ss|ns|ls |なし |3手目▲6六歩まで}} 初手▲7六歩で2手目△3四歩に▲6六歩とはやくに角道を止めてしまう手は、後手に相振り飛車にされ、そのデメリットの提示は高崎一生『わかる!勝てる!!現代相振り飛車 ~なぜ3手目▲6六歩は減ったのか?~』などでよく知られる。[https://book.mynavi.jp/shogi/detail/id=71359] 後手は2手目に△8四歩と居飛車を明示しており、先に止めておくことで角換わりをけん制。振り飛車党としても、先手が一方的に角道を止めた相振り飛車を志向しなくてすむ。 西村一義 対 加藤一二三 戦(1981年5月12日、第7期棋王戦本戦)など、数多く指されているが、この対局も含め後手の応手は△3四歩が多く、結局普通の振り飛車対抗形や相居飛車となる。他に△6二銀、△8五歩、△5四歩が指されているが、3手目▲6六歩を直接咎める手はなく、後手側の勝率も△3四歩が一番よい。 {{-}} == ▲6八飛 == {{shogi diagram|tright| |なし |lg|ng|sg|gg|kg|gg|sg|ng|lg | |rg| | | | | |bg| |pg| |pg|pg|pg|pg|pg|pg|pg | |pg| | | | | | | | | | | | | | | | | | |ps| | | | | | |ps|ps| |ps|ps|ps|ps|ps|ps | |bs| |rsl|lat|lra|lra|las| |ls|ns|ss|gs|ks|gs|ss|ns|ls |なし |3手目▲6八飛まで}} [[w:四間飛車]]を明示する手。以下△3四歩や8五歩、△6ニ銀などがある。 △3四歩には▲6六歩と一旦角道を止める指し方と、角道を止めずに指す、場合によっては3四歩の次に▲2ニ角成と[[w:角交換四間飛車]]を早くに明示する指し方もある。 △8五歩と早めに飛車先を決める指し手は、▲7七角と早めに決めさせる指し方とされてきた。 四間飛車を指す手においては、以前は▲7八銀と銀を上がってから▲6八飛と指していたが、90年代以降の現代的な将棋の考え方によって、飛車の可動域、機を見て▲7八飛や、角が▲7七に上がれば▲8八飛とする手もあり、省略して他の良い手を指すことができるのではないかを藤井猛が示し始め、この思想がより研ぎ澄まされて藤井システムの完成に至る。 {{-}} == ▲1六歩 == 図のような1筋位取り振り飛車などで利用される。▲1六歩のあとは、△8五歩ならば▲7七角△3四歩に▲8八飛とし、△7七角成▲同桂△4五角や△1四歩などがある。 {{shogi diagram|tright| |角 |lg|ng|sg|gg|kg|gg| |ng|lg | |rg| | | | | |sg| |pg| |pg|pg|pg|pg| |pg|pg | | | | | | |pg| | | |pg| | | | | | |ps | | |ps| | | | | | |ps|ps| |ps|ps|ps|ps|ps| | |ssl| | | | | |rs| |ls|ns|dulh|gs|ks|gs|ss|ns|ls |角 |図は、▲8八銀まで}} △3四歩▲1五歩△8五歩ならば、▲2二角成△同銀▲8八銀で図となるが、以下△3三銀ならば▲7七銀△6二銀▲6八飛もしくは▲8八飛△4五角▲3六角△6七角成▲5八金右などの展開。 図以下、△8六歩▲同歩△同飛と交換してきて▲6八飛は一局。△同飛に▲7五角は△8二飛に▲5三角成△9五角▲7七桂ならば以下△8八飛成▲同飛△7七角成▲6八飛△5二金右▲7五馬△9九馬▲4八玉△4一玉▲3八玉△3二玉もしくは△7七馬などの展開。 ▲7七桂に対しては△8七歩もあり、以下▲9六歩△8六角または△8四角などの展開もある。ほかには△5六歩もあり、以下▲7五馬△5七歩成▲同馬△8七歩▲5八飛に、△5二金右▲9六歩△8六角▲8三歩△同飛▲8四歩△8二飛▲6六馬△8八歩成▲同飛△8四飛▲4八玉又は▲2二馬などの展開。 また▲5八飛に、△5二飛▲6六馬で△5八飛成もしくは△8八歩成▲5四歩△6二銀▲9六歩△8六角▲8八飛△5四飛▲4八玉などの展開。 == ▲7八飛 == {{shogi diagram|tright| |なし |lg|ng|sg|gg|kg|gg|sg|ng|lg | |rg| | | | | |bg| |pg| |pg|pg|pg|pg|pg|pg|pg | |pg| | | | | | | | | | | | | | | | | | |ps| | | | | | |ps|ps| |ps|ps|ps|ps|ps|ps | |bs|rsl|lat|lra|lra|lra|las| |ls|ns|ss|gs|ks|gs|ss|ns|ls |なし |3手目▲7八飛まで}} 先手が三間飛車にする手。 ここで、後手△3四歩ならば、▲7五歩もありえる。以下△8八角成▲同銀△4五角には▲7六角。 主には、△8五歩▲7七角△3四歩で▲6六歩や▲6八銀。▲6八銀に△7七角成には▲同桂で、▲8六歩△同歩▲同飛には△6五桂が狙い。  {{-}} == ▲7五歩 == これは7五の歩の形が棋士の目からして形を決めすぎているきらいがあり、また4手目に△8五歩と飛車先の歩を伸ばされると、基本は▲7七角とするか、▲7八金として立石流にするかといったことで、昔も今もこの3手目▲7五歩」というのは、あまり多く指されていない。 ただし、▲7七角は以下後手が△3四歩▲7八飛△7七角成とすれば▲同桂で[[:w:鬼殺し (将棋)#新・鬼殺し|新・鬼殺し]]があるし、△7七角成のところで△6二銀ならば▲2二角成や▲4八玉など、早石田にも移行できる。 また、三間飛車に早く△8五歩と決め△7四歩を早くに指す[[w:へなちょこ急戦]]の対策にはなっている。 北村昌男『型破り振飛車の急所』(王将ブックス ポケット版─実戦振飛車シリーズⅣ、北辰堂、1975年)では後手が2手目△8四歩とした場合に▲7五歩型に組む振り飛車、▲7五歩以下は△8五歩 ▲7七角 △3四歩 ▲6六歩から目指す振り飛車として、第5章・▲7五歩型四間飛車と第6章・▲7五歩型三間飛車が掲載されている。▲6六歩以下、▲7五歩型四間飛車は△6二銀 ▲7八銀 △6四歩 ▲6七銀 △4二玉 ▲6八飛として、7五の位を取って銀の活用として▲7六銀型から▲6五歩と仕掛けるイメージ。後手が序盤で早くに△6三銀~△7四歩と反発する場合は乱戦になる。▲7五歩型三間飛車は△6二銀 ▲7八飛 として、常に▲7六飛の好形をちらつかせ、作戦勝ちを目指しながら指すイメージ。 棋戦での実践では、後手の応手△3四歩が、 細原一夫 対 谷川浩司 戦(1980年5月9日 第11回新人王戦2回戦)、 北村文男 対 山形義雄 戦(1950年10月5日 全日アマ名人戦、戦型は7六銀型四間飛車)、 桐山清澄 対 阿部恭三 戦(1960年11月10日 奨励会)で指されている。 後手の応手△8五歩が、 小林健二 対 屋敷伸之 戦(1995年8月4日 第16回オールスター勝ぬき戦、戦型は相居飛車)、 カロリーナ・ステチェンスカ 対 高群佐知子 戦(2012-05-19日 女流王座戦、戦型は7六金型三間飛車)、 鰐渕啓史 対 田村純也 戦(2000年2月23日 学生王将戦)、 金沢孝史 対 窪田義行 戦(1984年4月8日 小学生名人戦決勝)、 中倉宏美・鰐渕啓史 対 北尾まどか・山田洋次 戦(2009年1月25日 ペア棋戦)、 黒澤大吉 対 井上仁左衛門 戦(1802年7月1日 江戸時代の棋戦)、 佐藤大五郎 対 加藤一二三 戦(1971年11月12日 NHK杯)、 升田幸三 対 山田道美 戦(1969年4月18日 十段戦、戦型は向かい飛車)、 酒井順吉 対 青木清 戦(1972年10月7日 若獅子戦)、 坂井仁美 対 北澤香織 戦(1995年8月6日)、 升田幸三 対 木村義雄 戦(1943年8月20日 朝日番付戦決勝)で指されている。 △8五歩に▲7七角とし、△3四歩に▲7八飛で[[w:新鬼殺し]]や、以下△6二銀なら▲2二角成△同銀▲7四歩と早石田にする、もしくは▲4八玉などがある。 この指し手はステチェンスカ-高群戦で指されたとして、『トップ棋士の感覚 イメージと読みの将棋観』で「テーマ6 :「ポーランド流▲7五歩は流行するか?」(2012年「将棋世界」11月号 鈴木宏彦氏の「新・イメージと読みの将棋観」テーマ1)として取り上げられている。検討した棋士は、渡辺明、郷田真隆、森内俊之、久保利明、広瀬章人、豊島将之の6人。6人とも結局4手目△8五歩となると▲7七角でスムーズに石田流に組めず、▲7六銀型についても渡辺明「目指すのはダサい」郷田真隆「△6四歩~△6三銀型にされると勝つイメージがない」としている。そして、渡辺明「これをやられたらありがたい」森内俊之「先手の(得だという)主張がわかりにくい」久保利明は▲7七角と一手かけることで「先手が理論的に手損」で「(序盤で)形を決めすぎている」広瀬章人「▲7七角の一手がぼやけている」豊島将之「どんな作戦になっても(▲7五歩が)不急の一手になる」としている。 {|style="float:right;" | {{Shogi diagram | tright | | 持駒 なし | lg | ng | | | kg | gg | bg | ng | lg | | rg | | | | | | | | pg | | pg | sgl| sg | pg | pg | pg | pg | | gg | | pg | pg | | | | | | pg | ps | ps | | | | | | ps | | ss | | | | | | | | ps | | | ps | ps | ps | ps | ps | | bs | rs | | | ks | | | | ls | ns | | gs | | gs | ss | ns | ls | 持駒 なし<br/>図 △6三銀まで |升田-木村戦1(1943年)}} | {{Shogi diagram | tright | | 持駒 なし | lg | ng | | | | | bg | ng | lg | | rg | | | | | kg | | | | | pg | sg | sg | | gg | | pg | pgl| gg | | | pg | pg | | | | | pg | ps | ps | | | pg | pg | | ps | | ss | rs | | ps | | | | | ps | | | ps | | ps | ps | ps | | bs | | | gs | | ss | ks | | ls | ns | | | | gs | | ns | ls | 持駒 なし<br/>図 △9四歩まで |升田-木村戦2(1943年)}} |} また升田-木村戦も『将棋世界』2012年2月号の鈴木宏彦の「新・イメージと読みの将棋観」で採り上げられたことがある。 升田幸三の「八段昇進」も掛かっていた。この一戦について、後に升田は <blockquote>  7六歩、8四歩に次ぐ三手目、私は7五歩と突いた。これを見た木村名人、内心ムラムラとしたと思う。この戦法は石田流といいましてね、しろうとダマシのハメ手という程度にしか、評価されていなかったんです。なぜそんな戦法を用いたかといえば、名人には『石田撃退法』という著書があり、その本には、 「石田流なんて問題にならん。簡単にやっつけられる」 と説明してある。  だが私は独自の見解で、石田流とて捨てたもんじゃない、指し方によっては立派に通用する、と変化の手順を研究しておった。それにしても、この重大な一番に、あえて危険な戦法を採用したのは、私が名人に向かって、 「あなたが悪いと断定した石田流で、私はあなたに勝ってみせる、サァいらしゃい」と挑発しとるわけで、のっけからケンカ腰で行っとるんだ。  (升田幸三『名人に香車を引いた男』) </blockquote> と記している。 「新・イメージと読みの将棋観」では、検討した棋士は、渡辺明、佐藤康光、森内俊之、谷川浩司、久保利明、広瀬章人であるが、棋士の見解は先手側があまり芳しき意見がない。図を見た棋士たちは、全員この局面での第一感については▲3八玉と述べているが、▲3八玉では△6五歩▲同銀△6四銀という手がみえる。検討した6棋士が、この図での先手の作戦に対して疑問を感じているが、つまり▲3八玉と指せないようでは、この作戦の意味がないということである。 渡辺明は「単に▲3八玉として、△6五歩▲同銀△6四銀左なら強く戦って、まあ、なんとかなるでしょう。逆に▲3八玉で指せないんじゃ先手が苦しいということですよ。升田先生の将棋? えー、でも僕なら▲3八玉です。」 佐藤康光「先手が押さえ込まれそうで自信がない。そもそも▲6五歩とつっかけるようでは自信がない。この局面は先手が忙しい。」 森内俊之「先手は7五の位を取っていますが、▲6五歩を突いていますので逆に7筋の位を守りにくくなっている。なので少し面白くない作戦なのかと思う。この場合は、このままだと△6五歩▲同銀△6四銀左と来られる恐れがある。しょうがないので▲3八玉とします。6筋は受けようがない。形勢は後手良し。先手勝率イメージは45パーセントくらいです。」「序盤の手順を見ると、木村名人が升田先生の作戦をうまくとがめたのではないでしょうか。」 久保利明「実践の▲7五歩~▲6五歩の手順に違和感を感じる」 と、各人先手が戦型的に指しにくいという感じをもつ。 一方で升田自身は、この作戦に自信を持っている。そして実際、この将棋は序盤で先手が作戦勝ちを勝ち取っていく。 図から、▲6八飛としている。 「イメージと読みの将棋観」のうち谷川浩司のみが▲6八飛の手を遡上に上げている。つまりは▲3八玉が芳しくないので「そこで単に▲6八飛はどうでしょう。以下、△6五歩▲同飛△6四歩▲2五飛。後手陣も味が悪いので、そこそこ指せると思う。」と考えた。「実戦も、そう指した? 升田先生の将棋ですか。そういえば、なんとなく見た記憶がある。」という。そして▲6八飛から2五飛の構想は、升田らしいさばきで、並の発想でないと感嘆した。 この局面で升田は「6八飛はこの一手」であるとし、以下、△6五歩▲同飛△6四銀左▲2五飛であるが、「▲2五飛も当然で、6八飛と引くのは、6二飛から7五銀をねらわれていけない」と、『名人に香車を引いた男』で解説している。これは▲6八飛だと△6二飛があり後手が良い、したがって▲2五飛とまわって先手をとるのが大事で、かつ後手は△3二金で、引き角とともに後手は一時的に壁の悪形とみた。以下、△3二金▲9七角△3四歩ののち、▲6五歩で△5三銀と後手の銀を追い返した。なお▲6五歩に、後手△7五銀は▲同銀△同金▲6四歩△同銀▲6三銀という読み筋を披露しており、これは「イメージと~」では広瀬章人も指摘している。 木村も自著『名人木村義雄実戦集』にこの一戦を掲載している。そしてその後の駒組での△9四歩(図2)が緩手でこの後、後手が徐々に指しにくくなったのはこの手だと前掲著の中で述べている。△9四歩に代えて木村は△1四歩とし、以下▲1六歩△3四金▲4七金△3三桂▲6八飛△7四歩と進めば早く△7四歩と指せていた、としている。 升田の実践集『升田将棋撰集』にも取り上げており、この場面を升田は「序盤早々△8四金と進出した木村名人の闘志が、空回りに終わったことがよくおわかりだろう。伸びきった陣形をまとめるのに、ひと苦労もふた苦労もしなければならない。」との解説をしている。 == ▲9六歩 == 桐山清澄が対 関根茂戦で指し(1979年6月6日、NHK杯)で後手は△3四歩とした。戦型は相掛かりに。 松田茂役が対 丸田祐三戦で指し(1969年1月31日、NHK杯)で後手は△1四歩とした。戦型は矢倉に。 小阪昇が対 渡辺明戦で指し(2002年3月12日、順位戦)で後手は△3四歩とした。戦型は横歩取りに。 田村康介が対 佐伯昌優戦で指し(1996年6月18日、順位戦)で後手は△3四歩とした。 小林健二が指し(1977年9月7日、若獅子戦)、後手は△8五歩とした。 田村康介が指し(1996年6月22日、早指戦)、後手は△8五歩とした。 == ▲5八金右 == 女流戦で伊藤沙恵が指しており(2015-02-25日第42期岡田美術館杯、2013-08-04日第47回東急将棋まつり、2013-06-20日第03期リコー杯女流王位戦)、また棋戦でも3局ほど指されているが、後手の応手は△8五歩ではなく△3四歩。以下は▲6六歩。この▲6六歩までの局面は、他に初手▲7六歩△3四歩▲6六歩△8四歩▲5八金右や▲7六歩△3四歩▲5八金右△8四歩▲6六歩の出だしも多く、これらの局面に合流する。 主に矢倉等の相居飛車に移行するが、2017年を最後に指されていない。 == ▲4八銀 == [[w:英春流]]ではおなじみの指し方。後手が△3四歩とすれば、初手[[将棋/▲7六歩/△3四歩#▲4八銀|▲7六歩△3四歩▲4八銀]]△8四歩と、先手が、後手は振り飛車にすると決め打ちして3手目▲4八銀の展開と合流する。 == ▲5八飛 == 早くに中飛車を明示する指し方。 蛸島彰子 vs. 谷川治惠 戦(1998年9月17日 女流名人戦)、団鬼六 vs. 鈴木環那 戦(2004年9月30日)、村田登亀雄 vs. 菊地裕太 戦(2002年12月14日 新人王戦)は、後手△8五歩と応手。 花村元司 vs. 米長邦雄 戦(1977年12月26日 NHK杯)は、後手△3四歩と応手。 == ▲8六歩 == [[w:角頭歩戦法]]の構え。 == ▲5五角 == 3手目▲5五角は、△3四歩に▲2二角成△同銀となってみると、都合2手損。 以下、例えば▲8八銀とし、△8五歩に▲7七銀△3三銀など。 また、▲8八飛として△4五角▲5五角△3三銀もしくは▲7八飛△4五角▲5五角△3三銀▲6八金△2七角成▲7五歩など。 この他▲7五歩もある。これは△4五角に▲7六角を用意する。以下、△6二銀とすると(△5四歩や△4二玉もある)▲7四歩で # △同歩は▲5五角 # △8六歩▲同歩△同飛に▲8八銀なら△5四歩▲7七角△8四飛▲7三歩成△同銀▲8七歩など。 # △8六歩▲同歩△同飛に▲7七角もある。以下は△8九飛成と△8二飛▲8四歩とある。 # △8六歩▲同歩△同飛に▲8八飛もある。 また、即△5四歩とする手もある。その場合は以下、先手は▲7七角で△3四歩は▲2二角成△同銀▲5三角。よって△8五歩に▲5六歩~5八飛~5五歩や、▲8八飛、▲7八飛、▲6八飛の振り飛車、▲4八銀の英春流、▲2六歩の相居飛車などがある。 == 脚注 == <references/> == 参考文献 == * [[:w:高田尚平|高田尚平]]『高田流新戦略3手目7八金』[[:w:マイナビ出版|毎日コミュニケーションズ]]、2002年。{{ISBN|4-8399-0464-2}} * [[:w:羽生善治|羽生善治]]『変わりゆく現代将棋』下巻、日本将棋連盟、2010年。{{ISBN|978-4-8399-3441-5}}(一部初出・『[[:w:将棋世界|将棋世界]]』1999年10月号-2000年10月号、12月号) {{stub}} [[Category:将棋|7]] 8gu5livusdouef5cbmlspm68bhpuozj 満洲語 0 22603 305073 297011 2026-10-22T11:32:37Z Jcb 92857 305073 wikitext text/x-wiki {{Pathnav|メインページ|語学|frame=1|small=1}} '''このページはただいま翻訳中で、加筆が必要です。''' (The primary author: Your courses, which are not cancelled, are under the category of "Course A".) [[File:Manchu chinese.jpg|thumb|right|500px|紫禁城の扁額に書かれた満洲文字]] ようこそ! このサイトは、満洲語を学びたい方向けのサイトであり、別々で独立した2つのコースがあります。「コースA」は、より専門的であり、系統的な文法知識を学べますが、入門者や文法知識が弱い方にとってはやや解りにくいかもしれません。そして未完成の「コースB」は入門者のためのチュートリアルで、言語学習に向いており、多様な内容がありますので、「満洲語力」を上達させられます。2つのコースは類似していますので、どちらを選んでもかまいません。 他言語のページはこちらから :[https://zh.wikibooks.org/wiki/满语 如果你想阅读本站的中文版请点这里] :[https://en.wikibooks.org/wiki/Manchu Click here for English version] == はじめに ~満洲語について~ == [[:w:満洲語|満洲語]]と言われたら、皆さんはピンとくるでしょうか? 満洲国っていうのが歴史であった気がするな、愛新覚羅溥儀?みたいな人がいたはず、と思ったあなたは鋭い。実は満州語というのは満州族の母語で、溥儀が最後の皇帝を務めた[[:w:清|清朝]]の公用語でもあったのです。 そんな満州語ですが、現在では約1 000万人の満洲族のうちほとんどは中国語を話しており、母語話者は約60人未満となっていて、危機的な言語となっています(消滅危険度が最も高い「極めて深刻」)。ちなみに、満洲語の母語話者は主に中国黒竜江省のチチハル市からおよそ40㎞北にある三家子村({{MongolUnicode|ᡳᠯᠠᠨ<br>ᠪᠣᠣ}}, ilan boo)に住んでいて、また、中国東北部における満洲語は現在ほとんど話されていませんが、新疆ウイグル自治区イリ・カザフ自治州チャプチャルシベ自治県({{MongolUnicode|ᠴᠠᠪᠴᠠᠯ}}, cabcal)には今でも30 000余りのシベ語話者が住んでいます。シベ語というのは、言語としては異なるものの、満洲語とは相互意思疎通可能なもので、満洲語の方言ともみなされています。 満洲語は[[:w:ツングース諸語|ツングース諸語]]という中国東北部からロシアに広がる語族に属していて、グスターフ・ラムステッドなどの言語学者により、モンゴル諸語、チュルク諸語と並んでアルタイ諸言語に属すると考えられています。満洲語は母音調和を持ち、語順は日本語と同じくSOV語順(主語-目的語-述語)ですので、日本語話者にとっては満洲語を習得するのはあまり難しくないといえるかもしれません。 さて、皆さんはなぜ満洲語というマイナーで、危機に瀕する言語を学ぼうとしたのでしょうか。 * 満洲・ツングース諸語に対する興味があったから? * 清朝の歴史や、特に満洲文字で書かれた膨大な数の文献に対する興味があったから? * 好奇心を抑えきれなくて? * 満洲文化を知りたくて? * 独特な文字に惹かれてしまって? * 古代中国語の文献を解かりやすく読むために? いろいろな理由があるでしょうが、何はともあれ、さっそくスタートしていきますよ。 == コースA == このコースには、3つのパートからなる、計24回レッスンがあります。 '''第1部 満洲語文法・満洲文字入門''' 第1部には、12のレッスンがあります。各レッスンには、ダイアログに続いて語彙リストがあり、さらに満洲語文法の特徴についても紹介していきます。 注: * レッスン11は、レッスン1からレッスン10までの文法のまとめになっていて、復習に利用することも、印刷して基礎満洲語文法まとめとして利用することもできます。 * 満洲文字はレッスン12で初めて紹介します。これは、満洲文字が難しく、また、満洲語の基礎語彙を身につけ、音声の特徴を理解してから学ぶ方がスムーズに学べるからです。 '''第2部 満洲語読解''' 第2部には、12の満洲語の読解用文章があります。それぞれの文章には、語彙リスト、訳文、それに文章の解説が付されています。 '''第3部 さらなる満洲語へ''' 第3部には、語彙リスト、発展的な語彙、ツングース語族概説、簡潔な女真語・女真文字入門があります。 ページ下部には、このWikibookの一部である[[Manchu/Library|満洲語文献オンライン図書館]](英語)へのリンクがあります。ただし、こちらは準備中です。 === レッスン === {| |<big>Section 1: 文法と入門レッスン</big> |<big>Section 2: 読解</big> |- |.................................................................................................................................... |.................................................................................................................................... |- |[[満洲語/レッスン1 - 発音|レッスン1 - 発音]]{{stage|0%}} |- |[[満洲語/レッスン2 - 名詞|レッスン2 - 名詞]]{{stage|0%}} |- |[[満洲語/レッスン3 - 代名詞|レッスン3 - 代名詞]]{{stage|0%}} |- |[[満洲語/レッスン4 - 数詞|レッスン4 - 数詞]]{{stage|0%}} |- |[[満洲語/レッスン5 - 形容詞|レッスン5 - 形容詞]]{{stage|0%}} |- |[[満洲語/レッスン6 - 動詞1|レッスン6 - 動詞1]]{{stage|0%}} |- |[[満洲語/レッスン7 - 動詞2|レッスン7 - 動詞2]]{{stage|0%}} |- |[[満洲語/レッスン8 - 動詞3|レッスン8 - 動詞3]]{{stage|0%}} |- |[[満洲語/レッスン9 - 副詞|レッスン9 - 副詞]]{{stage|0%}} |- |[[満洲語/レッスン10 - 後置詞|レッスン10 - 後置詞と連結語]]{{stage|0%}} |- |[[満洲語/レッスン11 - 文法の概要|レッスン11 - 文法の概要]]{{stage|0%}} |- |[[満洲語/レッスン12 - 満洲文字|レッスン12 - 満洲文字]]{{stage|0%}} |- | |.................................................................................................................................... | |- |<big>第2部 満洲語読解</big> |- |.................................................................................................................................... |.................................................................................................................................... |- |[[満洲語/レッスン13 - 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三字经)]]{{stage|25%}} |- | |.................................................................................................................................... | |- |<big>第3部 さらなる満洲語へ</big> | |- |.................................................................................................................................... |.................................................................................................................................... |- |[[Manchu/Vocab|Vocabulary List]] |- |[[Manchu/Vocab 1|Further Vocab 1 - Geography, time, seasons and climate]] |- |[[Manchu/Information on Tungusic Languages|Information on Manchu-Tungusic Languages]] |- |[[Manchu/Vocab 2|Further Vocab 2 - Colours, animals and the human body]] |- |[[Manchu/Introduction to the Jurchen language and script|Introduction to the Jurchen language and script]] |- |[[Manchu/Vocab 3|Further Vocab 3 - Countries and languages]] |- |} == コースB == 作成途中のコースBは、大量の文法に辟易したり、入門者の頭がこんがらがったりしてしまわないように、外国語学習の理論に基づいた教材となっています。満洲語を速く、正確に学んでもらえたら嬉しいです。 === 入門 === (作成中) === 初級 === [[Manchu/Elementary Lesson 1|Lesson 1]] [[Manchu/Elementary Lesson 2|Lesson 2]] [[Manchu/Elementary Lesson 3|Lesson 3]] [[Manchu/Elementary Lesson 4|Lesson 4]] [[Manchu/Elementary Lesson 5|Lesson 5]] [[Manchu/Elementary Lesson 6|Lesson 6]] [[Manchu/Elementary Lesson 7|Lesson 7]] [[Manchu/Elementary Lesson 8|Lesson 8]] [[Manchu/Elementary Lesson 9|Lesson 9]] [[Manchu/Elementary Lesson 10|Lesson 10]] === 準中級 === (作成中) === 中級 === [[Manchu/Intermediate Lesson 1|Lesson 1]] [[Manchu/Intermediate Lesson 2|Lesson 2]] [[Manchu/Intermediate Lesson 3|Lesson 3]] [[Manchu/Intermediate Lesson 4|Lesson 4]] [[Manchu/Intermediate Lesson 5|Lesson 5]] ===上級=== (作成中) == テキスト == *[[満洲実録]] == 関連リンク == [https://incubator.wikimedia.org/wiki/Wp/mnc/Main_Page Manchu-language Wikipedia(test)] == Online Library of Manchu Language Texts == <div style="float:left;margin-left:0.3em;margin-right:0.7em"> [[File:Carl Spitzweg - "The Bookworm".jpg|80px]] </div> The [[Manchu/Library|Online Library of Manchu Language Texts]] aims to provide a one stop collection of Manchu texts that are no longer subject to copyright laws. 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University of Hawai'i Press, Honolulu, {{ISBN|0-8248-2206-4}} * 李永海,刘景宪,屈六生. <<满语语法>>. 民族出版社 * Möllendorff, Paul Georg von. 1892. [http://en.wikisource.org/wiki/A_Manchu_Grammar A Manchu Grammar: With Analysed Texts]. Shanghai. == 関連文献 == <!-- [[zh:满语]] --> [[カテゴリ:満洲語|*]] [[カテゴリ:アジアの言語|*]] mset2ansx47yvwcj4rz6pyrownlzmos モノポリー/ビヨンド・ボードウォーク・アンド・パークプレース 0 22808 305046 109587 2026-10-22T09:47:25Z Jcb 92857 305046 wikitext text/x-wiki {{Monopoly/Header|title=BEYOND BOARDWALK AND PARK PLACE RULES}} この追加ルールは以下の書籍に掲載されているものです。 Richard Hutton and Noel Gunther, ''Beyond Boardwalk and Park Place : the Unauthorized Guide to Making Monopoly Fun Again''. Toronto/New York: Bantam Dell Publishing Group, December 1986, {{ISBN|0553343416}} (Paperback) この追加ルールの目的は、公式ルールに比べて現金の価値を相対的に低下させ、順番が早いプレイヤーやサイコロ運が良いプレイヤーが土地を次々に買えないようにすることで、より多くのプレイヤーが土地を買えるようにすることです。公式ルールに比べて運の要素が減少し、実力で勝負できるようになります。 <br clear=all /> ==抵当== 抵当の制度はありません。土地を現金化する必要がある時は、公式ルール同様に他のプレイヤーと交渉して土地を売却するか、あるいは銀行に表示価格(ボードや権利書に印刷されている価格)の半額で売却しなければなりません。 ==物件の購入とオークション== すべての土地・鉄道・公共会社(以下「物件」とする)の定価は表示価格の2倍となります。たとえば、ボードウォークの価格は$800です。このルールにより、「止まったマスの物件を次々に買う」という戦略は通用しにくくなります。誰も所有していない物件のマスに止まったプレイヤーが物件の購入を拒否した(あるいは不可能だった)場合は、'''当該物件は直ちにオークションにかけられます。''' オークションは表示価格(2倍にした価格ではない)の半額に$10を加えた額から開始します。ボードウォークの場合、表示価格は$400なのでオークションは$210から始めます。 マスに止まったものの購入を拒否したプレイヤーもオークションに参加できます。最初に、購入を拒否したプレイヤーは、入札するかパスする(入札しない)かを選択します。以降順次時計回りに各プレイヤーは入札額を釣り上げるかパスするかを選択します。入札は$5単位で行わなければなりません。入札額を誰も釣り上げなくなった場合は、最後に入札したプレイヤーが落札者となります。落札者は、たとえ手持ちの現金が足りなくても'''必ず'''落札額を支払わなくてはなりません。万が一物件・建物の売却や交渉で現金を調達してもなお落札額相当の現金を用意できなかった場合は、その場で'''破産'''となりゲームから抜けます。このルールは、物件を購入する意思が無いプレイヤーが必要以上に高額で入札する行為を防ぎます。 もし誰も入札しなかった場合、当該物件は次に誰かがその物件のマスに止まるまで銀行に置かれたままになります。 ==公共会社は鉄道とみなす== 2つの公共会社は鉄道と同様に扱われ、表示価格は普通の鉄道同様に$200であるとみなされます。ただし、チャンスカードの「次の鉄道に進み~」を引いた場合は本来の4つの鉄道のいずれかに進みます。また「次の電力会社か水道会社に進み~」のカードを引いた場合は、次の「電力会社鉄道」か「水道会社鉄道」に進んだうえで通常の2倍の運賃を支払います。もちろん所有者がいなければ購入できます。 このルールでの鉄道の運賃は以下の通りです。 * 鉄道1社を所有 ... $25 * 鉄道2社を所有 ... $50 * 鉄道3社を所有 ... $100 * 鉄道4社を所有 ... $200 * 鉄道5社を所有 ... $300 * 鉄道6社を所有 ... $400 プレイヤー間での合意により、5社・6社所有時の運賃をそれぞれ$400・$800に変更する(すなわち、常に「1社増えるごとに運賃2倍」にする)こともできます。この場合、鉄道を6社保有することは、他のプレイヤーにとって極めて大きな脅威になります。 ==建物とレンタル料== 1つのカラーグループの土地を独占した場合、土地に建物を建てられるのは公式ルールと同じですが、各グループ内で建物を'''均等に建てる必要はありません。'''たとえばあるグループ内の1つの土地に家3軒を建てて、残りの2つの土地は建物が無い更地のままにしておくことができます。 書籍には掲載されていませんが、次のようなルールもあります:家を均等に建てる義務はないが、ホテルを購入する際には、グループ内全ての土地に家4軒またはホテルが建っていなければならない。 建物の建設は、必ず'''自分の順番'''の、サイコロを振る'''前'''に行わなければなりません。 刑務所に入っているプレイヤーは建物の建設およびオークションへの入札ができません。また徴収できるレンタル料は半額になります。公式ルールに基づく試合の場合、建物が多く高額のレンタル料を徴収される恐れがある終盤に、刑務所に留まってレンタル料支払いのリスクを減らすと同時に他者が自分の土地に止まるのを待つ戦略がしばしば用いられますが、このルールはプレイヤーに早く出所するよう促すものになっています。 $1紙幣は使用しません。すべてのレンタル料は$5単位に切り上げられます。 公式ルールでは、1つのカラーグループの土地を独占した場合、建物が無い土地のレンタル料は2倍になりますが、このルールでは「公式ルールの通常のレンタル料の2倍を$5単位に切り上げた金額」がレンタル料になるので、必ずしもきっちり2倍にはなりません。特に、建物が無い地中海通りのレンタル料は独占の有無にかかわらず常に$5です。 以下にいくつか例を示します。 *セントジェームズプレースのレンタル料は$15(公式ルールでは$14) *セントジェームズプレースを含むカラーグループを独占すると、レンタル料は$30($14×2=$28を切り上げ) *地中海通りのレンタル料は$5(公式ルールでは$2) *地中海通りを含むカラーグループを独占すると、レンタル料は$5($2×2=$4を切り上げ) 他のプレイヤーや銀行に債務のないプレイヤーは「自己破産」を宣言することができます。宣言は1ゲームに付き1回までで、誰かが「自己破産」をしたらそれ以降は誰も自己破産を宣言することはできません。自己破産を宣言したプレイヤーは、まず手持ちの現金・物件・建物・釈放券をすべて銀行に返します。次に、銀行は$800の現金とブラウン(またはダークパープル)のカラーグループの2つの土地(地中海通り・バルティック通り)を自己破産者に与えます。もしこれらの土地を他のプレイヤーが持っていた場合は、銀行は土地1つに付き$120を土地所有者に補償金として与えて強制的に買い上げます。もし買い上げた土地に建物があった場合は銀行は所有者に対して、家1つにつき$50を、ホテル1つにつき$250を追加で補償金として支払い、建物は全て銀行に戻します。 公式ルール上銀行に支払うべきとされている現金は、物件や建物の購入を''除いて''、銀行に支払う代わりにボード中央に置きます。この置き場所を「ジャックポット」といいます。ゲーム中フリーパーキングに止まった(GOカードの指示による移動を含む)プレイヤーは、ジャックポットに置かれた現金を全部もらうことができます。 ゲームの、プレイヤーの実力の要素を損ねないために、上記の銀行に支払うべき現金の''半額''(端数切り上げ)をジャックポットに入れ、残りは銀行に支払うというルールもあります。 所得税マスに止まったプレイヤーは、$200と総資産の10%のどちらを払うか決める前に、自分の総資産を計算することができます。 現金・物件・釈放券と同様に、以下のものを交渉の対象とすることができます。 *レンタル料の支払いを免れる権利(期限の有無は任意) *拘束条件付きの物件取引(特定のプレイヤーに売却しないことを条件に土地を引き渡す、など) *将来引くカードの内容に応じた報酬や、債務の肩代わり プレイヤーは進行中の取引に対案を提示したり、また事前に一定額の現金を払うのと引き換えにレンタル料を免除させることを提案することもできます。 刑務所にいるプレイヤーは、建物の建設・競売への入札・レンタル料の徴収が出来ません。このルールはプレイヤーの早期出所を促しますが、このルールでも出所するか否かは重要な戦略となります。 ==GOカード== このルールでは、通常のチャンスカード・共同基金カードに加えて12枚の「GOカード」を使用します。GOのマスに止まったプレイヤーは、$200を受け取り、「GOカード」を引かなければなりません。 12枚のカードの内容は以下の通りです。 * ゴルフを始めることにした。個人レッスン料として各プレイヤーに$25を支払う。 * 鉄道会社が若者特別運賃を実施すると発表した。次に他の誰かが所有する鉄道に止まった時、運賃は半額で良い。 * 無料駐車場に進みジャックポットに入っている現金を受け取る。ただし駐車料として各プレイヤーに$50を支払う。 * 賃借人の一人と結婚する。お祝いとして各プレイヤーから$25もらう。 * 保安官に選ばれる。他のプレイヤーを1人選び刑務所送りにする。 * 鉄道がまた遅れる。鉄道を保有していれば、お詫びとして各プレイヤーに$50支払う。 * 建物の修理費を完済する。次に自分の土地に誰かが止まった時に、レンタル料に加えて$50を徴収できる。 * 市に建物を収用される。所有する建物を1つ銀行に返し、建設費の半額を受け取る。 * ホームパーティーでゲームに勝つ。次に誰かの物件に止まった時、レンタル料の支払いは免除される。 * 地域の重役にパーティーでカレーを振る舞う。カレー代としてジャックポットに$25を入れる。 * 友人たちから「今月の大立者」に選ばれる。各プレイヤーから$50もらう。 * 義理の兄が銀行の頭取になる。次にオークションに参加するとき、銀行が最終入札額に加えて$100の補助を出してくれる。 ==その他の追加ルール== この書籍には、さらにいくつかの追加ルールが掲載されています。 * カラーグループを独占しなくても建物を建てることができる。 ** ただし1軒建設するごとに$100をジャックポットに支払う。建設費は表示価格の2倍となるが、売却時に受け取れる金額は通常と同じく表示価格の半額となる。 * 1ゲームにつき1人1回だけ、表示価格の3倍を支払うことで、'''自分が止まったマス以外の'''物件を購入することができる。 * 公式ルール同様に物件を抵当に入れることができる。ただしGOを通る度に抵当に入れている物件の価格の合計の10%を銀行に支払う。 * 建物の建設は、自分の番のサイコロを振った'''直後'''にのみ行うことができる。 * オークションの最中に交渉をしてもよい。 * 競売に入札する権利を取引の対象としてもよい。 * 競売の開始価格は任意とする。 * オークションで最初に入札するプレイヤーは好きな価格で入札できる。 *自己破産ルールにおいて、プレイヤーが銀行からもらえる現金の額をその時点で残っていたプレイヤーの人数に応じて以下のようにする。 **6人:$700 **5人:$750 **4人:$850 **3人:$950 **2人の時は、自己破産を宣言することができない。 * 1ゲームにつき1人1回だけ、自主的に刑務所に入ることができる。 これらのルール(ジャックポットを除く)は、取引をより面白くし、ゲーム時間を短縮する効果が見込めます。 自己破産ルールは、負けが近く、ゲームから脱落して誰が勝つかを見ていなければならなくなりそうなプレイヤーに復活のチャンスを与えます。また、同時にプレイヤーを最終的な破産に近づけます。 *計算の手間を減らすために、通常通り$1紙幣を使用する。 *開始時の所持金は$1000から$1200までの間で適宜定める。 上記のルールは、(公式ルールほどではないにせよ)ゲームの流れを早め、なおかつ各プレイヤーが一つ以上のカラーグループを独占出来るようにするでしょう。 ==まとめ== これらのルールを採用することで、(たとえ、通常の追加ルールと『ジャックポットに税金などの半分を払う』だけを採用した場合でも)モノポリーはより競争的で、面白いゲームになります。 ==参考文献と外部リンク== * [http://www.epinions.com/content_145284304516 Epinions.com] review of the book, summarising the rules and contents * [http://groups.google.com/group/rec.games.board/browse_thread/thread/d6512c46849316cd/21ce9d7fa8b48113?tvc=2#21ce9d7fa8b48113 rec.games.board thread] より詳細なルールの説明。 9i7hth5wjgipgycikd90qrintjc0tde 図書館法第2条 0 23688 305059 277925 2026-10-22T11:26:41Z Jcb 92857 305059 wikitext text/x-wiki [[コンメンタール]]>[[コンメンタール教育]]>[[コンメンタール図書館法]]>[[図書館法第2条]] ==条文== (定義) ;第2条 #この法律において「'''図書館'''」とは、[[:w:図書館資料|図書、記録その他必要な資料]]を収集し、整理し、保存して、一般公衆の利用に供し、その教養、調査研究、レクリエーシヨン等に資することを目的とする施設で、[[:w:地方公共団体|地方公共団体]]、[[:w:日本赤十字社|日本赤十字社]]又は[[一般社団法人]]若しくは[[一般財団法人]]が設置するもの([[:w:学校図書館|学校に附属する図書館又は図書室]]を除く。)をいう。 #前項の図書館のうち、地方公共団体の設置する図書館を'''[[:w:公立図書館|公立図書館]]'''といい、日本赤十字社又は一般社団法人若しくは一般財団法人の設置する図書館を'''私立図書館'''という。 ==解説== 本条では、図書館法における「図書館」の定義を述べ、設置主体別に二分している。 === 「一般公衆の利用に供し」 === 「一般公衆の利用に供し」とは、本法の規定する「図書館」が[[w:公共図書館|公共図書館]]であることを意味する。従って、都道府県・市町村議会に附置され「議員の調査研究に資する」ことを第一義とする[[w:議会図書館|議会図書館]]や研究機関に附置される研究図書館・専門図書館などは、本法の対象外となる。「一般公衆」は換言すれば「住民」となり、山口源治郎は[[地方自治法第244条]]第2項・第3項を援用しつつ、正当な理由がないのにも住民の利用を拒んだり、不当な差別的取扱いをすることはあってはならないと説いている。 なお、本法で対象から外された図書館については、[[:w:学校図書館法|学校図書館法]]、[[:w:大学設置基準|大学設置基準]]、その他の法令で定められている。 === 目的 === かつての図書館令では、「図書館は図書記録の類を収集保存して公衆の閲覧に供し其の'''教養及学術研究'''に資するを以て目的とす」としていたところ、現行の図書館法ではこれにレクリエーション、つまり娯楽が追加された。図書館法を制定に携わった西崎は、この文言の追加を、国民の図書館に対する要望が変化し娯楽を求めるようになり、図書館側もそれに応じてきたことを明文化させた、としている。なお、より具体的な図書館奉仕の例示は[[図書館法第3条|第3条]]で行われている。 ==== 博物館法との比較 ==== 博物館は、[[:w:社会教育法|社会教育法]]第9条第1項によって、図書館と同じく社会教育機関としての位置づけがされている。博物館を規定した[[:w:博物館法|博物館法]]の第2条では、「(前略)「博物館」とは、歴史、芸術、民俗、産業、自然科学等に関する資料を収集し、保管(育成を含む。以下同じ。)し、'''展示して教育的配慮の下に一般公衆の利用に供し'''、その教養、調査研究、レクリエーション等に資するために必要な事業を行い、あわせてこれらの資料に関する調査研究をすることを目的とする機関(後略)」とし、図書館法における図書館は、博物館法における博物館よりもその教育的意義が弱く規定されている。 === 設置主体 === 本法では、設置団体が「地方公共団体、日本赤十字社又は一般社団法人若しくは一般財団法人」によるもののみを「図書館」として定め、地方公共団体が設置主体となるものを「公立図書館」、その他が設置主体となるものを「私立図書館」と規定している。従って、国が設置するもの([[w:国立国会図書館|国立国会図書館]])や個人、[[権利能力なき社団|人格のない社団]]、営利法人([[会社]])、その他学校法人等が設置するものは、この法律でいうところの「図書館」または「私立図書館」に該当しない。これはかつての図書館令第4条、同令第5条と比較して設置主体を限定することになっている。これについて、西崎は、行政の対象となり得る「図書館」は安定的な運営が望まれるため、図書館を設置しようとするものはまず公益法人<ref>図書館法制定時は、「日本赤十字社又は一般社団法人若しくは一般財団法人」ではなく、当時の「民法第34条の法人」を設置主体としていた</ref>を設立して、図書館の質的向上を図るという狙いがある、としている。 ==== 博物館法・社会教育法(公民館)との比較 ==== 博物館について定めた博物館法では設置主体を、「地方公共団体、一般社団法人若しくは一般財団法人、宗教法人又は政令で定めるその他の法人」(博物館法第2条第1項)と定めており、博物館法施行令第1条で、「政令で定めるその他の法人」を日本赤十字社と日本放送協会と定めている。特に公民館について定めた社会教育法では、公民館の設置主体を、「市町村」(社会教育法第21条第1項)と「公民館の設置を目的とする一般社団法人又は一般財団法人」(同法同条第2項)と定めている。 設置主体の範囲としては、博物館が最も広く、公民館が最も小さく、図書館は両者の中間に位置すると考えられる。 === 非独占名称 === 「図書館」の語は「学校」や「病院」とは異なり、名称の独占が規定されていないため、「図書館」の設置主体になれない個人や会社が「図書館」を称する施設を開設することは法令に反しない。これについて、西崎は、「或人が自分の蔵書を開放して、町の図書館という看板をかけて町の人に利用させたとしても、何の不都合も起らない」と示している。なお、この定義に合わない図書館的施設は、[[図書館法第2条|第29条]]の定めにより、「図書館同種施設」というカテゴリに入る。 懸念される点としては、図書館報の規程を守らなければならない立場にあるはずの地方自治体(立図書館)が、当館は「図書館同種施設」であると主張することによって図書館法の規定を骨抜きにできる可能性が指摘されている。例えば、神奈川県は、同県立図書館の館内閲覧・一般貸出業務を廃止する検討を行なったところ、[[図書館法第3条]]に違反すると指摘を受けたため、同館を図書館法の適用を受けない図書館同種施設とする考えを真面目に検討したことがある<ref>[http://www.kanaloco.jp/article/54004 図書館法から「県立2館除外」案 閲覧廃止が法抵触の指摘受け、県教委]、神奈川新聞社、2013年2月21日。</ref>。また、山口源治郎は、管理委託の対象にするために、1990年代から一部の自治体が図書館法に基づかない「図書館」を設置している疑いがあると述べている。これについて山口は、「図書館法の精神に反するばかりか、遵法を旨とすべき地方公共団体の配信的行為であると言わざるを得ない」と断罪している。 == 改正の沿革 == == 関連条文 == 以下の条文はいずれも新字体と平仮名を用いて書き改めている。 ; 図書館令第1条 : 図書館は図書記録の類を収集保存して公衆の閲覧に供し其の教養及学術研究に資するを以て目的とす ; 同令第2条 : 北海道府県、市町村、市町村学校組合、町村学校組合並に町村制を施行せざる地域に於ける町村に準ずべき公共団体及其の組合は図書館を設置することを得 ; 同令第4条 : 商工会議所、農会其の他の公共団体は図書館を設置することを得<br/>前項の規定に依り設置したる図書館は私立とす ; 同令第5条 : 私人は図書館を設置することを得 == 参考文献 == * 後藤敏行著『図書館の法令と政策』、樹村房、2015年、{{ISBN|978-4-88367-243-1}} * 西崎恵著『図書館法』、日本図書館協会、1970年 * 『図書館法を読む』森耕一編、日本図書館協会、1990年、{{ISBN|4-8204-9012-5}} * 塩見昇、山口源治郎編著『新図書館法と現代の図書館』、日本図書館協会、2009年、{{ISBN|978-4-8204-0915-1}} == 註釈・出典 == <references/> ---- {{前後 |[[コンメンタール図書館法|図書館法]] |[[コンメンタール図書館法#1|第1章 総則]] |[[図書館法第1条]]<br />(この法律の目的) |[[図書館法第3条]]<br />(図書館奉仕) }} {{stub|law}} [[category:図書館法|02]] k6q636h81x2j01slez76i7x3tykl1g9 将棋/相横歩取り 0 23850 305064 238138 2026-10-22T11:29:06Z Jcb 92857 305064 wikitext text/x-wiki {{shogi diagram|tright| |後手 角歩3 |lg|ng|sg|gg|kg| |sg|ng|lg | | | | | | |gg| | |pg| |pg|pg|pg|pg| | |pg | | | | | | |rs| | | | | | | | | | | | |rah|rgl| | | | | | |ps| | |ps|ps|ps|ps| |ps | |ss|gs| | | | | | |ls|ns| | |ks|gs|ss|ns|ls |先手 角歩3 |18手目△7六飛まで([[:w:相横歩取り|相横歩取り]]の基本図)<br /><br />初手からの指し手<br />[[将棋/横歩取り#▲同銀|▲7六歩△3四歩▲2六歩△8四歩▲2五歩△8五歩▲7八金△3二金▲2四歩△同歩▲同飛△8六歩▲同歩△同飛▲3四飛△8八角成▲同銀]]△7六飛}} [[将棋/横歩取り|横歩取り]]の基本図から、後手は角交換して横歩を取り、歩損を解消した。 この戦法を'''[[:w:相横歩取り|相横歩取り]]'''(あいよこふどり、Double Side Pawn)という。 現局面は7八の金取りになっており、先手には▲7七銀、▲7七桂、▲7七歩の3つの受け方がある。最も自然な手は▲7七銀で、飛車角総交換の激しい変化になるが、先手よしの結論が出ている。 {{-}} == ▲7七銀 == {{shogi diagram|tright| |後手 角歩3 |lg|ng|sg|gg|kg| |sg|ng|lg | | | | | | |gg| | |pg| |pg|pg|pg|pg| | |pg | | | | | | |rs| | | | | | | | | | | | | |rg| | | | | | |ps| |ssl|ps|ps|ps|ps| |ps | |durh|gs| | | | | | |ls|ns| | |ks|gs|ss|ns|ls |先手 角歩3 |19手目▲7七銀まで}} 後手は # △7四飛と飛車をぶつける一手である。 # △2六飛?は▲1五角の王手飛車があり、△3三歩▲2六角△3四歩と飛車を取り合っても、▲5三角成と馬を作られ後手不利。 # △7五飛?は▲2二歩で、△同銀は▲3二飛成、△3三桂は▲2一歩成で後手不利となる。 {{-}} === △7四飛 === {{shogi diagram|tright| |後手 角歩3 |lg|ng|sg|gg|kg| |sg|ng|lg | | | | | | |gg| | |pg| |pg|pg|pg|pg| | |pg | | |rgl| | | |rs| | | | |uat| | | | | | | | |uas| | | | | | |ps| |ss|ps|ps|ps|ps| |ps | | |gs| | | | | | |ls|ns| | |ks|gs|ss|ns|ls |先手 角歩3 |20手目△7四飛まで}} ▲3六飛と飛車交換を拒否する指し方もあるが、▲7四同飛と取って先手よし。 {{-}} ==== ▲同飛△同歩 ==== {{shogi diagram|tright| |後手 飛角歩3 |lg|ng|sg|gg|kg| |sg|ng|lg | | | | | | |gg| | |pg| |dah|pg|pg|pg| | |pg | | |pgl| | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | |ps| |ss|ps|ps|ps|ps| |ps | | |gs| | | | | | |ls|ns| | |ks|gs|ss|ns|ls |先手 飛角歩3 |21手目▲7四同飛<br />22手目△同歩まで}} # ▲5五角と香の両取りをかける手が見えるが、 # ▲8二歩△同銀と打ち捨ててから▲5五角と打ち、銀香両取りをかける方がよい。さらに # ▲4六角と打ち、△8二角▲同角成△同銀▲5五角と進めば、8二に打つ一歩を節約できる。これが定跡である。 {{-}} ===== ▲4六角 ===== {{shogi diagram|tright| |後手 飛角歩3 |lg|ng|sg|gg|kg| |sg|ng|lg | | | | | | |gg| | |pg| | |pg|pg|pg| | |pg | | |pg| | | | | | | | | | | | | | | | | | | | |bsl| | | |ps| |ss|ps|ps|ps|ps| |ps | | |gs| | | | | | |ls|ns| | |ks|gs|ss|ns|ls |先手 飛歩3 |23手目▲4六角まで}} ただし、▲4六角の瞬間に後手は△8二角の一手ではなく、△8二歩、△7三角、△6四歩、△8六歩、△2七角など様々なハメ手がある。 {{-}} ====== △8二角▲同角成△同銀▲5五角 ====== {{shogi diagram|tright| |後手 飛角歩3 |lg|ng| |gg|kg| |sg|ng|lg | |sg| | | | |gg| | |pg| | |pg|pg|pg| | |pg | | |pg| | | | | | | | | | |bsl| | | | | | | | | | | | | |ps| |ss|ps|ps|ps|ps| |ps | | |gs| | | | | | |ls|ns| | |ks|gs|ss|ns|ls |先手 飛歩3 |24手目△8二角<br />25手目▲同角成<br />26手目△同銀<br />27手目▲5五角まで}} 後手は△8五飛と打つのが8二の銀にひもを付けつつ、角桂両取りをかける一石三鳥の手になる。 それに対して▲8六飛と合わせるのが用意の切り返しである。 △同飛▲同銀と形を乱し、後手は△2八歩と打つ(▲同銀は△2五飛)。 以下▲8二角成△2九歩成▲4八銀△3八歩(▲同金は△2六桂)▲8一馬△3九と▲同銀△同歩成▲同金△5五角▲7二銀と攻め合いになり、△3七角成▲6八玉△7六桂▲7七玉△5九馬▲7六玉△7五銀▲同銀△同歩と後手が王手の連続で迫った局面で、 # ▲6六玉は△6二金▲7三銀不成△8六飛▲7六歩△同飛▲6五玉△6四歩▲5五玉△5四歩の北浜新手で後手勝ち、 # ▲8五玉は△8六飛▲7四玉△8一飛▲6一銀成△同飛▲7三桂△7二銀▲6一桂成△同銀▲7一飛△6二桂▲7五玉△7四銀▲6六玉△4四角▲5五銀で先手勝ちと見られている。 {{-}} ====== △8二歩 ====== ====== △7三角 ====== ====== △6四歩 ====== ====== △8六歩 ====== ====== △2七角 ====== ===== ▲8三飛 ===== ==== ▲3六飛 ==== == ▲7七桂 == {{shogi diagram|tright| |後手 角歩3 |lg|ng|sg|gg|kg| |sg|ng|lg | | | | | | |gg| | |pg| |pg|pg|pg|pg| | |pg | | | | | | |rs| | | | | | | | | | | | | |rg| | | | | | |ps| |nsl|ps|ps|ps|ps| |ps | |ss|gs| | | | | | |ls|durh| | |ks|gs|ss|ns|ls |先手 角歩3 |19手目▲7七桂まで}} {{-}} == ▲7七歩 == {{shogi diagram|tright| |後手 角歩3 |lg|ng|sg|gg|kg| |sg|ng|lg | | | | | | |gg| | |pg| |pg|pg|pg|pg| | |pg | | | | | | |rs| | | | | | | | | | | | | |rg| | | | | | |ps| |psl|ps|ps|ps|ps| |ps | |ss|gs| | | | | | |ls|ns| | |ks|gs|ss|ns|ls |先手 角歩2 |19手目▲7七歩まで}} {{-}} == 参考文献 == * [[:w:飯島栄治|飯島栄治]]『研究で勝つ!相横歩取りのすべて』[[:w:マイナビ出版|マイナビ]]、2015年。{{ISBN|978-4-8399-5725-4}} * [[:w:羽生善治|羽生善治]]『羽生の頭脳』第9巻「激戦!横歩取り」[[:w:日本将棋連盟|日本将棋連盟]]、1994年(文庫版・第5巻「横歩取り」、2010年)。 * [[:w:吉田正和|吉田正和]]『決定版!横歩取り完全ガイド』マイナビ、2015年。{{ISBN|978-4-8399-5470-3}} {{stub}} [[Category:横歩取り|あ]] gozy642o56ioe33ezgdeu5t2oqopzx7 テンプレート:Cite book ja-jp 10 24316 305011 127296 2026-10-22T08:57:28Z Jcb 92857 305011 wikitext text/x-wiki <includeonly><cite class="book" style="font-style:normal" {{ #if: {{{ref|}}} |{{#ifeq:{{{ref}}}|none||id="{{{ref}}}"}} }}>{{ #if: {{{author|}}} | {{{author}}}、 }}{{ #if: {{{editor|}}} | {{{editor}}}(編)、 }}{{ #if: {{{others|}}} | {{{others}}}、 }}{{ #if: {{{translator|}}} | {{{translator}}}(訳)、 }}{{ #if: {{{year|}}} | {{{year}}}、 | [no date]、 }}{{ #if: {{{chapter|}}} |「{{#if: {{{chapterurl|}}} | [{{{chapterurl}}} {{{chapter}}}] | {{{chapter}}} }}」、 | {{ #if: {{{chapter|}}}{{{editor2|}}}{{{others2|}}} | &#32;}} }}{{ #if: {{{editor2|}}} | {{ #if: {{{chapter|}}}}}{{{editor2}}}(編) }}{{ #if: {{{others2|}}} | {{ #if: {{{chapter|}}}{{{editor2|}}}}}{{ #if: {{{editor2|}}}|、}}{{{others2}}} }}『{{ #if: {{{url|}}} | [{{{url}}} {{{title}}}] | {{{title}}} }}』{{ #if: 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m4r74jq5f6le1zs0fsotc0chl53d3og ゲームプログラミング/RPG 0 24486 305041 257924 2026-10-22T09:45:54Z Jcb 92857 305041 wikitext text/x-wiki == 本書の注意点 == === 本書の目的 === 本ページ『ゲームプログラミング/RPG』では原則、あまり(あるいは「まったく」)、いわゆるドラクエ的な意味での「RPG」の難易度デザインやそのためのパラメータ調整などのゲームデザインに関する話題は'''扱いません'''。 なぜなら、本書『ゲームプログラミング』は、題名にもあるとおりプログラミングの教科書だからです。つまり本書は、RPGのゲームデザイン論の教科書'''ではない'''です。 難易度デザインについては、RPG限定ではないですが本wikiでは別途、『[[ゲームプログラミング/バランス調整]]』という難易度デザインに特化した目的のページが切り離されて存在しているので、そちらをご利用ください。 同様に、ゲームシナリオやイラスト素材や音楽素材などの制作など自前のRPG制作に必要なその他の知識も説明しません。もしかしたら必要に応じて「ドットエディタ」などのキャラチップ制作ツールの存在や最低限のIT的な説明はするかもしれませんが、しかしデッサン的な話題は一切しません。 === 出典などの有無について === 市販のゲームクリエイター教育書には、一切、RPGのプログラミング解説書はありません。 一応、アクションゲームについては書籍『[https://www.amazon.co.jp/%E3%82%B2%E3%83%BC%E3%83%A0%E3%83%97%E3%83%AD%E3%82%B0%E3%83%A9%E3%83%9E%E3%81%AB%E3%81%AA%E3%82%8B%E5%89%8D%E3%81%AB%E8%A6%9A%E3%81%88%E3%81%A6%E3%81%8A%E3%81%8D%E3%81%9F%E3%81%84%E6%8A%80%E8%A1%93-%E5%B9%B3%E5%B1%B1-%E5%B0%9A/dp/4798021180 ゲームプログラマになる前に覚えておきたい技術]』や『[https://www.amazon.co.jp/%E3%82%B2%E3%83%BC%E3%83%A0%E3%83%97%E3%83%AD%E3%82%B0%E3%83%A9%E3%83%9F%E3%83%B3%E3%82%B0C-Sanjay-Madhav/dp/4798157619/ref=pd_lpo_2?pd_rd_i=4798157619&psc=1 ゲームプログラミングC++] 』などがありますが、その書籍は別にRPGには限定しておらず、どちらかというとアクションゲーム寄りの内容かもしれません(たとえば『ゲームプログラミングC++』では「衝突検知」などの話題がある)。 そういった出版事情もあり、本ページでは、出典のないRPGゲームプログラミング技法を多く紹介しています。 出典がなくても、プログラミングについては実際に Visual Studio などのコンパイラでその技法を確認してみれば真偽の確認ができますので、読者ご自身で真偽をご確認ください。 本ページに限らず『[[C言語]]』や『[[JavaScript]]』などの本wikiのプログラミング言語の教科書も同様に、プログラミング技法については特に出典はないスタイルです(出典があるのは、主に用語や歴史などの説明に関する出典だったりする)。 想定読者として、そういう御自身でコンパイラでコードをビルドして確認できるレベルの人を本ページでは想定していますので、もし読者がそれに到達していないなら、このページからは決して学ばないでください。 === コード全部は紹介しきれない === 実際のゲームプログラミングでは、たとえ無音声の2Dゲームですら、計算処理の他にグラフィックやキーボード入力など多くの機能が連動するので、コードはかなり長くなります。無音2Dのシンプルな超短編ゲームですら、初心者でもコードが何千行やあるいは1万行以上にもなります。 そのため、本wikiでは動作ソースコードの全部は到底、紹介できないです。だから本wikiで紹介されているコードをコピーペーストしても、それだけでは動かないのが普通です。 本ページにあるC言語のコードは、プログラミングでRPGを作る際に、「たぶん多くの人はこういった点が気になって悩むと思うから、こういうふうにコード記述すれば解決できると思います」といった方針だけを提供するものに過ぎません。 あるいは、もし本書で紹介したコードで動作したとしても、そのコードの結果はコマンドプロンプト(DOSプロンプト)のような真っ黒い画面で、RPG的な計算内容による計算結果だけを表示するプログラムだったりするので、そのままでは他人に遊んでもらえるような実際のゲームではないので、したがって実際のゲームプログラミング時には映像の表示などのためのコード追加がかなり多く必要になります。 == はじめに == 本ページの'''RPG'''は、ターン制の戦闘システムを採用した<ref group="注">いわゆるドラクエ シリーズや昔のFF(ファイナルファンタジー)1~3あたり</ref>RPG(Turn-based RPG)を中心にとり扱う。アクションRPGやシミュレーションRPG、アクティブバトルなどを語る場合には、注記する。 以下のものは取り扱わない。 * テーブルトークRPG。TRPGや、テーブルトップRPGとも呼ばれる。 なお、本ページでは説明のために[[C言語]]を用いている。C言語の理解を前提としている箇所が存在するため、もし読者が知識をお持ちでない場合は、適切な媒体で調べながら読み進めていただきたい。 本ページではC言語を説明のために用いているが、開発環境がそれ以外の言語である場合は、適宜読み替えていただきたい。 {{コラム|使えない理論は捨てよう| これからこの単元では、ゲームプログラミングとそれに関連する理論を解説していきます。 ですが、ゲームやマンガやアニメなどの娯楽は、理論にもとづく分野ではなく、観客を楽しませてナンボの業界です。 また、そもそも伝えられている理論自体が間違っている場合もあります。 たとえば漫画家の江川達也(えがわ たつや)の体験談なのですが、彼は漫画家デビュー当初、マンガ中での男性キャラの履いているズボンをかっこよく書くのに時間が掛かっていて困っていました。 そうなった理由は、彼・江川の崇拝するマンガの巨匠、手塚治虫が、「人体に直線の部分は無いので、人の絵を書く際に定規などを使うべきではない」という理論を、江川も信用していたからです。 しかし、その手塚理論のせいで江川はズボンを書く際に定規を使わなかったので、ズボンのラインがうまく真っ直ぐに書けず、困っていました。 ある時、江川が試しに定規を使ってズボンを書いて見たら、短時間でズボンをかっこよく描けたので「手塚先生、ウソを教えやがった」と愚痴を何かの書籍で述べていました。 マンガなど創作の分野の理論とはこういものです。偉い人が言ったから正しい、というものでもないし、当然、偉くない人が言ったから正しいというわけでもありません。 そうでなくて、実際に理論を手段として使ってみた結果、観客から見ても「かっこいい」「かわいい」「楽しい」という感情を呼び起こさせる作品をつくるのに役立つかどうかです。「かっこいい作品」「かわいい作品」こそが良い作品なのです。「理論どおりの作品」はけっして良い作品ではありません。だからマンガ、アニメ、ゲームなどの創作の理論とは、観客を楽しませる良い作品をつくるための手段の知識をまとめただけにすぎない道具が「理論」です。 だから、ある理論がもし創作の役に立たないなら、その理論はさっさと捨て去るべきです。少なくとも、その理論のために手間を掛けたのに作品を作っている自分すらも「かっこいい」「かわいい」「楽しい」などの感情を呼び起こせないなら、捨て去るべきです。 ゲーム業界でも同様のことが2010年から既に書籍で言われており、証拠として、ntny著『ローポリスーパーテクニック』で、ゲーム業界の普通の3DCGデザイナーが目指すべき目標としては、決して物理的・幾何学的に正確なモデリングではなく、「かわいい」「かっこいい」と思わせるモデリングこそが良いモデリングであると語られています<ref>ntny著『ローポリスーパーテクニック』、ソフトバンククリエイティブ、2010年2月16日 初版 第5刷、P.14 </ref>。 「かわいさ」「かっこよさ」はビジュアル的な訴求力ですが、そのほかアニメ・マンガ・ゲームの創作に共通的に必要な方針があるとしたら、「わかりやすさ」でしょうか。証拠として、書名は不明ですが、ドラゴンボール作者の鳥山明が、マンガは「わかりやすさが大事」と、21世紀ごろの新しめの絵柄のマンガで述べています。 アニメ業界でも、ジブリアニメ映画『海が聞こえる』が典型ですが、わかりやすくするためにアニメ版のいくつかのシーンを原作から改変しています。主人公の少女は原作小説(氷室冴子が原作者)ではあまりデレデレしないんですが(原作者の氷室冴子さんがクールビューティを描きたかった)、しかしアニメ映画版では後半、少しデレデレしています。そうしないと視聴者が主人公 少女の恋愛経験による心境の変化を把握できないだろう、とジブリの監督が予想をしたので改変したのでしょう。 このことは、社会学者の宮台真司と、原作者の氷室冴子との対談で、なにかの書籍で1990年代に語られています。宮台はこの点でジブリを批判しています。原作の良さが台無しになってるという批判です。 上述のように、視聴者レベル・消費者レベルだと気づかないですが、一般に、大衆娯楽の作家は、わかりやすくするために工夫をいくつもしています。難しめのテーマを扱っていても(たとえば『海が聞こえる』ならフェミニズムとかでしょうか)、アニメ版では分かりやすく改変しているのです。 もしそれに気づかないとしたら、単に勉強不足なだけです。 ゲームも同様でしょう。そのゲームのプレイの楽しみ方が、分かりやすい必要があります。 ;言語の必要性 では、理論は全く不要なのでしょうか。いいえ、そうではありません。知識や技法を言葉にすることで、覚える内容が明確化されるので、同じ手法を今後も何度でも繰り返しできるようになるという再現性(さいげんせい)が生まれます。 一方、勘に頼っていると、その日の体調や気分によって作品が左右され、再現性が不安定になるので、生産性もまた低下します。 この再現性のための言語化の必要性は、「アニメ私塾」のペンネームで有名なアニメーター・イラストレーターの室井康雄がたびたび彼のYouTube動画などで言っていることです。 しかしその室井もまた、「理論どおりに描いてみて、(かわいいキャラ、かっこいいキャラなどを)うまく描けないなら、その理論は捨てろ」という旨の発言を彼のYouTube動画などで言っています(少なくとも2021年の前半に言っている)。 さて、上記の手塚治虫の理論を信じた江川の例は、まだ手塚が漫画家の先輩でもあるので、信じてしまったのも分かります。 ですがインターネット上には、誰が提唱したかも分からない理論もあふれています。このwikiもまた例外ではありません。ゲームやアニメなどは新しい分野であるので、出典をつけるのが困難な分野もあるので、出典も不明な俗説・仮説に頼らざるを得なかったりします。また出典のある情報だけに頼ると、文章構成が著しく断片的になってしまい、読むに耐えないか、読者が理解できなくて教科書としての役に立ちませんので、そういった仮説どうしを文脈的に結合するためにwikiでは更なる仮説によって補充説明などを加えていることすらもあります。 なので、このwikiも含めて、ネットに書いてあることは信用せず、読者は実際に自分で手を動かして確認をとったことをもとに、技術や感性などを磨いていってください。 このwikiは参考のひとつ程度に留めておいて、提唱している仮説を試してダメそうだった場合は、さっさとこのwikiの理論を捨ててください。 ;ゲーム業界でも再現性あるマニュアル化が必要 ゲーム業界においても、『FGO』クリエイターの塩川洋介は、『ゲームデザインは「マニュアル化」できる』と、ある程度のマニュアル化ができることを認めています<ref>塩川洋介『ゲームデザイン プロフェッショナル』、技術評論社、P.23</ref>。 けっして、そのマニュアルは「普遍的」ではないですが、しかしだからといって、マニュアルも持たずに「センスや才能(※wiki追記: だけ)でやってはいけない」と忠告しています<ref>塩川洋介『ゲームデザイン プロフェッショナル』、技術評論社、P.24</ref>。 なぜかというと、塩川氏も、「再現性」という言葉を使って、マニュアルの必要性を説明しています<ref>塩川洋介『ゲームデザイン プロフェッショナル』、技術評論社、P.26</ref>。 しかし、実際のゲーム製作は理論だけではうまくいかず、たとえるならスポーツのように実技的な側面もあります<ref>塩川洋介『ゲームデザイン プロフェッショナル』、技術評論社、P.40</ref>。 あと、盲点ですが、スポンサー企業などが、再現性がないと投資してくれないと、塩川氏は著書で述べています。 ただし、理論だけでなく、実技的な能力も必要であり、上記のゲーム業界の塩川氏もアニメ業界出身の室井氏も、よく創作をスポーツに例えています。結局、ゲーム産業だけでなくアニメ業界やマンガ業界の実務分野の教育者たちも、似たようなことをいっており、よくスポーツにたとえます。 創作の世界は、どこも似たような傾向があります。 なので、けっして頭でっかちにならず、実際に手を動かすなどして、スキルを習得していきたいものです。結局、ゲームも漫画もアニメも、マニュアル的なものを準備しつつ、それを検証しながら修正していく運用法が必要になりそうです。 そういう言語の限界を分かった上で、理論は使いましょう。 余談ですが、ルネサンスの芸術家レオナルド=ダ=ヴィンチも似たような事を言っています。レオナルド・ダ・ヴィンチは「科学は隊長で、実践は兵隊である」と述べています<ref>[https://cir.nii.ac.jp/crid/1050282813827753088 青山愛香『アルブレヒト・デューラーとレオナルド・ダ・ヴィンチ――《メレンコリアⅠ》(1514 年)を巡る考察 ――』, 2013 ], 2023年12月25日に閲覧. </ref>。 ;異業種の例 アニメ業界だけでなく、テレビCM業界など異業種でも、言語の必要性と似たようなことを言う人はいます。 97年にソニ-から発売されたゲーム『I.Q』の企画に携わった有名な広告プランナーの佐藤雅彦(お菓子のポリンキーなどのCMの人)は、 映画監督の川村元気の対談集『理系に学ぶ』で、 佐藤いわく「感性とか信念みたいなことを軽々しく言いたくないですよね。最後は感性で探り当てるしかないんですが、 そういった言葉ですぐ片付けるのは、傲慢な気がします。」と述べています<ref>川村元気『理系に学ぶ』、ダイヤモンド社、2016年4月21日 第1刷発行、P.62</ref>。 同じ川村元気との対談集では、別の対談相手ですが医学者の養老孟司は『戦後のものづくりなんかも大勢の理系の人が一生懸命トンネル掘ったり、計算機を作ったりしたけど、あれも嘘をつかない。要は言葉を信用してないんです。』と述べてます<ref>川村元気『理系に学ぶ』、ダイヤモンド社、2016年4月21日 第1刷発行、P.15</ref>。第二次世界大戦の終わった昭和20年8月15日、それまでの日本の新聞やラジオなどのメディアが喧伝する常識が崩れたのです。 養老はそういう過去を振り返って、「言葉を信用しない」と対談集で述べています。養老の場合、嘘をつかない医学解剖に興味をもち、解剖学を専攻したと述べています。 さて、ガンダムなどで有名な富野監督は、2012年ぐらいの書籍か雑誌での対談インタビューで、 その本では異業種の人たちと対談していたのですが、おおむね 「アニメ業界は教育を見直して整備しないといけない。会社が実務的なこともっと教育をしないと、頭のいい若手は、自分で教育を始めてしまう。」といった感じのことを言っていました。もちろん、富野監督は、大いに教育をすべし、という立場であり、その若者を応援する立場です。 自発的に若者が教育を始めるのなら、それだけ聞けばよいことのように思えますが、しかし富野監督がわざわざこういう苦言のような言い回しでいうことには、なにがしか、周囲からの反対意見などもあったんだろうとか、読者は推測してください。大人には、企業の事情などで言えないことがあるのです。 たとえばガンダムを作っている会社は「サンライズ」というアニメ会社なので、他社(たとえばエヴァンゲリオンの会社なら「ガイナックス」とか「カラー」という別アニメ会社です)に所属する若手アニメーターの主催するアニメ作画勉強会に出席するのは、いろいろと大人の事情があり、周囲からは疑義も出てくるのです。 富野監督はさらに、その対談書で、「自分だって絵を描くときにフォトショップを使っている」ということも言っています。もしかしたら、フォトショップに対する反対意見とか、いろいろあったんでしょう。 どこの業界でも、実務教育はいろいろと難しいものです。 }} {{コラム|それでも読書が必要なわけ| 創作は、読書だけでなく、スポーツ的に実際に手を動かして作品を作る経験も多く必要です。 それでも やはり読書は必要になり、ゲーム業界人の書いたゲーム専門書やゲーム制作教本などを読む必要が出てくるでしょう。 あまり何十冊も読む必要は無いですが、本屋で2冊くらいは教本を買って読んでおくと良いでしょう。 ではなぜ読書による勉強も必要なのかの話をします。 それは、業界の中にいる、ダメな先輩をダマらせるため、ダメ先輩に足を引っ張らせないためです。どこの業界でも、不勉強・経験不足な割に年功序列などで出世してきている先輩がいます。あるいは、勤勉ではあっても、自社でしか通用しないヤリ方を、業界全体の標準ケースだと勘違いしている先輩もいます。 そういう、ちょっと困った先輩を、それとなく間違いに気づかせるために、同じ業界でもっと経験のある専門家の書いた文献を読むのです。(ただし、新人のうちは、ダメな先輩の教えであっても聞くべきである。新人が考えた「ぼくのかんがえたさいきょうのしどうほう」よりも経験豊富な先輩の教えのほうが遥かにマシだから、である。少なくとも5年くらいは先輩の指示に従おう。) たとえば、入社1年目の新人には、入社5~10年目くらいの上司がついたりするわけですが、所詮は入社10年目程度の中年サラリーマンなので、間違ったことを教える場合もあります。そこで、同じ業界の20年選手や30年選手のベテランの書いた本を読むのです。(ただし、10年選手の職場のやり方と、自分の職場のやり方が違う場合もある。自分の職場のやり方を優先すること。このため、職場の先輩の指示は尊重しよう。) だから、本屋で2冊くらいは、業界のベテランの書いた教本を買って読んでおけばいいのです。 このwiki『ゲームプログラミング』でいろんな分野を何十冊も出典紹介していたりするのは、単に著作権上の都合にすぎないので(もし1冊の本だけを書き写したら著作権侵害になる)、ゲーム制作にはそこまでの多くの文献は不要ですが教科書著作のため仕方なく多くの文献を確認しているだけにすぎません。読者はwiki編集者の読書法・勉強法を真似る必要は無いですし、真似るべきではないです。 ネットの情報をあさるのではなく、実際に本で買って読むのが必要です。なぜなら、ネット情報だと、本気度が分かりません。webサイトのスポンサーの都合などもあり、言いたいことが言えないケースもあります。だから、実際に書籍として出版されている本を買いましょう。 }} == 予備知識と学習法 == === 予備知識 === 一応、ターン制RPGは関数や配列を知らなくても、作り始めることはできます。 最低限必要な知識として、変数と、キーボード入出力の関数と、if文、タイマー関連、画面出力、あとはせいぜい乱数などがあれば、ゲームを作り始めることができます。 これはRPGにかぎらず、よくプログラミング入門書にあるジャンケンゲームなども同様でしょう。ジャンケンゲームならタイマーすら不要でしょう。 しかし、「関数を知らないプログラミング」とは、たとえば、zボタン(決定ボタンとする)を押したときのプログラム記述で、DXライブラリでの開発なら、マップ画面モードでも戦闘コマンド画面モードでもタイマーをカウント開始すると思いますが、そのタイマーの開始命令と関連する処置を各画面ごとに1行ずつ書いていく方式です。 だからもし、バグなどがあってコード修正する際、すべての画面モードのzボタンを命令を一個ずつ直さなければなりません。RPGはモードが多いので、そのような修正は、なかなか面倒です。 だから、別に作り始めの時点で関数を知らなくてもいいのですが、しかし作っている途中に「バグの訂正で似た部分の繰り返しが多くて面倒だなあ・・・」という気分になったら関数も勉強していくのが望ましいでしょう。 そして、いつごろが関数を学ぶタイミングなのかを知るには、事前に自分がある程度は「関数というものがあって、コードの使いまわしに便利なものらしい」という知識が必要です。 配列も同様です。配列を知らなくても、パーテイ1人目のHPを変数名「p1HP」、パーティ2人目のHPを変数名「p2HP」のような方式でRPGを作れます。 しかし、これを敵15体も登録されているRPGで「m1HP」から「m15HP」とやるのは、少し面倒です。 なにより一番の問題は、配列を知らないと、ドラクエ1的なマップ画面すら作るのが、かなり困難になることです。 よくプログラミング教本などにある例では、マップを二次元配列で実装しています。 たとえば、書籍『12歳から始めるゼロからのC言語 ゲームプログラミング教室』がそうです<ref>大槻有一郎『12歳から始めるゼロからのC言語 ゲームプログラミング教室 Visual Studio 2015対応』、2016年3月1日 第1刷発行、2017年4月10日 第2刷発行、P165</ref>。 たとえば、 <pre> { {0,0,0,0,0,0,0,2,2,2}, {0,0,0,0,0,0,0,2,2,2}, {0,0,1,1,0,0,0,2,2,2}, {0,0,1,1,1,0,0,0,0,0}, {0,0,0,0,0,0,0,0,0,0}, } </pre> みたいな感じで、0番が草原、1番が森、2番が岩山、のような感じです。 横10×縦5のマップはそれほど広くないですが、 たったこれだけのマップでも、もし配列を知らなければ変数が50個必要です。 「配列を知らなくてもRPGを作れる」というのは、たしかにノンフィールドRPGなどは作れますし、 あるいはフィールドがあっても「マップはすべて草原、あるいはマップの99%くらいが草原(草原でないところだけ変数指定する方式)」のようなゲームなら作れますが、 しかしそれは、多くのRPGプログラミング入門者が考えているような、ファミコン~スーファミ水準のドラクエ・ファイファン的なイメージのRPGとは異なります。 初心者に「配列を知らなくてもいい」というのは無責任です。 配列を知らなくてもゲームプログラミングは開始できますが、もしも配列が必要になった時点で(変数を一個ずつ宣言するのが面倒なモジュールを作るとき)、 配列を学び始めるのが良いでしょう。 === 作ってから学ぶ === 別に市販のC言語の入門書の基礎文法すべてに精通してからゲームプログラミングを開始する必要はありません。 おおよその機能だけを市販のC言語入門書に目を通して知っておいて、プログラミングでは変数などの初歩的な知識だけを用いて作り始め、足りない知識は必要になったらそのたびに、市販の入門書などで学べばいいのです、 また、その市販のC言語入門書を読む時間も、通学中・通勤中で電車のイスに座ってる時に読むとか、あるいはトイレでウンコしている時に読むとか、そういう時に読めば、プログラミングの時間を減らさずに時間を有効活用できます(ただし睡眠時間や食事の時間などは減らさないようにしましょう)。 さて、セーブやロードなどの機能は、当分は不要です。そもそも、セーブが必要なほどの長さのシナリオなんて作るのは当分は後です。もしお作りのゲームが1分でクリアできるようなゲームなら、セーブなんて不要でしょう。 だから、C言語のファイル入出力の機能などは、当分は不要です。 つまり「学んでから作る」ではなく「作っているうちに気になった点を調べる」のがコツでしょう。 おそらく「関数を知らなくてもRPG作れる」といっているプログラマーはたぶんそういう事を言いたかった口ベタな人なのでしょう。 なお、配列や関数などは、自分が直接は使わなくても、他人が使います。 たとえば、マップの実装で、もしかしたら二次元配列を使わなくても、原理的には一次元配列を何十個も並べて実装する方法もあるかもしれませんが、しかし他人がそういう一次元配列を何十個も並べてマップ実装したコードなんて読みたくないし、教育者も面倒なのでそういうコードを教えてくれません。 なお、構造体は別に知らなくてもRPGは作れます。列挙体 enum なども同様です。単に構造体の配列を知っていると、(装備品やモンスターなどの)データベースを第三者がより読みやすい形で作りやすくなるだけです。列挙体を知っていると、モードの切り替え(マップ画面モードからメニュー画面モードへの切り替え等)をしやすくなります。 正直、市販の「ゲームプログラマー向け」をうたったプログラミング教本の中には、少なくともゲームプログラマー初心者の時点では不要な高度な知識も多く紹介されています。しかしそういう本でも、出版社などの宣伝の都合からか、「プログラマーになる前に読んでおきたい」みたいな宣伝文句が付けられたりしているかもしれません。そういう高度な知識もあとで仕事で必要になる場合がありうるので、ゲームプログラマー向けとして出版する事自体は正しいのですが、しかし初心者や入門書に進めるような宣伝文句をつけるべきかというと疑問となる内容の市販本もあります。 === ポインタ不要論 === よく、「ポインタによる処理で速度の向上!」みたいな事が、ゲーム好きのプログラマーに言われます。 しかしポインタによるコーディングは、プログラムのメンテナンス性を悪くします。なぜならもしポインタ使用個所の周辺でバグが発生した場合に、ポインタがあると原因が特定しづらくなるからです。 一般のグローバル変数やローカル変数と比べてポインタ変数は仕組みが単純ではないことや、配列や構造体にポインタなどを用いる場合はもしその配列・構造体にバグがあると同じ配列内・構造体の別の部分にまでバグが波及するなどするので(コードによっては、もしかしたら、下手したら周辺の別の配列や構造体に波及する場合もありうるかも)、ポインタで実装されたモジュールがあるとバグ発生時に原因の絞込みが難しくなるのです。 もし仮にポインタ処理化を実装した直後では正常に動いていても、しかしあとで、今まで未実装だった部分が実装された場合に、なんらかの不整合によるバグが発生するようなことも良くあり、ポインタ処理はその際、バグ原因の特定を難しくします。 だから仮にどうしてもポインタを使わないといけない場合でも、RPG製作なら、なるべくポインタを実装するのは後回しにして、当分は一般の変数で実装したままにしておくほうが良いかもしれません。 あるいは、もし機能の実験や勉強を兼ねてポインタ処理の実験と実装をしたのなら、現状ではポインタ変数で実装してある箇所でも、あとでデバッグなどの際に一般の変数に戻す可能性も考慮することになります。 RPGの場合、デバッグに時間を多くとられますし、変数がとても多いので、メンテナンス性も考慮せざるを得ません。 ;そもそも本当にポインタの必要な処理か? ポインタによって高速化のメリットが得られる場合とは、C言語教科書などの理論では、大量の要素の構造体を(関数の引数などとして利用する際に)コピーする場合ぐらいです。 だからもし構造体を使う場合であっても、そもそも自作で用いる構造体変数がグローバル変数であればコピーの必要自体がないので、ポインタの必要もありません。 ゲーム内の武器データベースやモンスターデータベースなどが構造体で実装されると思いますが、初心者なら普通はそれらの構造体変数はグローバル変数として実装することになるでしょうし、グローバル変数として実装しても何も困りませんし、実際それでもRPGを作れますし、正常な速度で動きます。 例外的な事例を考えるなら、たとえばマップイベントのデータベースなど、特定のモードでしか使う機会のないデータベースなら、理論的にはグローバル変数でなくポインタによる取り扱いによって処理速度の向上の可能性はありえますが、しかし正直メンテナンス性が悪いし、難しい割にはポインタ化してもしなくても初心者ゲームのレベルでは速度は変わりません。せいぜい勉強になるだけです。 こういう風に、市販のC言語教科書にある知識の一つ覚えは、通用しません。 == 設計の方針 == === 身体障害者プレイヤーの配慮 === ターン制RPGは、身体障害などでアクションゲームなど反射神経を要するゲームの苦手な人もプレイします。なので、それを意識した設計にしましょう。シミュレーションゲームも同様です。もっとも、さすがに腕のないプレイヤーにまでは配慮できないので、程度問題ですが。 ともかく、だから、もしどうしても制作中のターン制RPGにアクション要素のあるイベントを入れる場合、たとえば工夫として、 事前にそういうアクションイベントのあることをプレイヤーに作品紹介文などで紹介しておくとか、 あるいはそのアクションイベントをもしクリアできなくてもプレイヤーがゲームクリアできるように設計するなどの配慮が望ましいでしょう。 もしくは、充分にアクション要素の難易度を下げておく必要があるかもしれません。 === ユーザーインターフェース === もしもC言語でゼロからゲームを作るなら、UI(ユーザーインターフェース)をゼロからDirectXなどで作ることになります。 シナリオどうこうより、まずUIを作るのが真っ先になります。 結論から言うと、需要のあるUIの種類はそんなに多くなく、よって最終的には既存の有名ゲームのUIを真似することになります。(練習として新規のUIを色々と制作してみるのは構いませんが、しかし実用的なものを新規に発明するのは困難かと。) ==== 「はい」/「いいえ」の選択肢 ==== RPGなどで選択肢で『はい』か『いいえ』がよく出ることがあります。 この場合、必ずしも順番どおりに はい いいえ とするのが良いとは限りません。 なぜなら、プレイヤーがセリフ送りなどでボタンを連打している場合に、あやまって選択肢も連打してしまうことがあるからです。 文献『ゲームプランとデザインの教科書』によると、選択肢の順序についての設計テクニックとして、現状を維持するほうの選択項目を先に表示したりとか、あるいはマウス操作式のゲームなら現状維持や安全なほうの選択肢にカーソルを事前に合わせておくなどの工夫が、定石とされています<ref>『ゲームプランとデザインの教科書』、P399</ref>。 ==== 健康上の留意事項 ==== ===== カーソル点滅と「光過敏性てんかん」 ===== 例えば、コマンド選択などのカーソルの方式には、 :ファミコン時代のFF(ファイナルファンタジー)のようにカーソル画像を選択内容の左隣に置く方式、 :あるいは、ツクールのゲームの標準設定のように選択項目の背景が点滅する方式、 など幾つかあります。 カーソル点滅させる場合、実はこれはほとんど、カーソル点滅色は白系の色にせざるを得ません。 なぜなら健康上の理由があり、もし青色ウィンドウなのに、たとえばカーソル色を赤(または緑にして)、赤カーソルを点滅させると、「光過敏性てんかん」のような症状を引き起こします。このため、点滅カーソルの背景色は、事実上は、ほぼ白色に決まります。 一応、白でなくても、たとえば青ウィンドウなら水色などの背景色でも可能ですが、手間が増えますし、ほかのウィンドウ色(たとえばウィンドウを赤に変更した場合)では応用が利きません。 ゲームによっては設定カスタマイズなどでウィンドウ色を変えられたりしますが、プログラマー的に分析するコツとしては、カスタマイズできない部分(たとえばカーソル色はカスタマイズできない等)にも注目すると良いでしょう。 ===== 色弱の対応 ===== なお、色弱(しきじゃく)/色盲(しきもう)という病気があり、緑色と赤色の区別がつきづらい人が、世間には居ます(赤緑色盲)。例外の人もいて、青など他の色が見えない人もいますが、しかし色弱患者で統計的に割合がもっとも多いのは赤緑色盲です。 赤緑色盲の人には、赤も緑も、ともに茶色に見えます。なので赤緑色盲の人にあ、赤と緑を区別できないのです。 よって事実上、ウィンドウ色は原則的に青色になります。ファイナルファンタジーや昔のツクールなどが、ウィンドウ色に青色を標準的に採用しているのは、決して偶然ではなく、いろいろな事情があるのです。 どうしても同一画面に赤と緑を表示しなければならない場合、色の濃さを変えるなどして、たとえば濃い緑と、うすい赤、などのように濃度差をつけるなどする必要があります。(この濃度差の手法は、役所などの出す、色覚障碍者向けのガイドラインなどにも書いてある、典型的なアドバイスです。 ) そもそも、色盲でなく健常者でも、濃度の同じくらいの赤色と緑色の組み合わせは、やや見えづらいです。 学校の「黒板」という緑色の板に、赤チョークで書かれた文字が、見づらかった記憶をもつ人も多いでしょう。 なお、赤緑色盲の人でも、黄色は、茶色とは区別して見えます。 なのでウィンドウに、黄色っぽい色と黒を組み合わせて使うのも手です。 あるいは、うすい茶色に、黒い文字という組み合わせもあります。 たとえばロマサガ1は、うすい茶色のウィンドウに、黒い文字です。うすい茶色と黒との組み合わせは、明度も大きく異なっているので、良い組み合わせでしょう。 スーファミ版の三国志4のウィンドウ色と文字色も、似たような組み合わせです。ただし三国志4の場合、文字に白い文字を使う場合もあります。数値などは白い文字です。このため、ウィンドウの茶色部分にはザラザラした模様をつけて白い文字を際立たせる工夫をしたりなど、工夫をしています。 ゲームに限らず、たとえば子供むけの歴史教材や小中学校の歴史教科書などでも、よくコラム欄などで、黄色い背景に黒い文字の組み合わせは使われます。古文書のような古い紙は黄ばんでいるので、歴史教材のコラムではそういう雰囲気に近づける目的で、コラムの枠を古文書の一ページのように描いているものもあります。 ゲームでもロマサガ1のメニューウィンドウは、古文書のように紙の下側の一部が書けていたり、まるで巻物の読み方のように左右が曲げられていたりして、ウィンドウに紙っぽさを出すデザインをしています。 例外的に、商業ゲームでもプレステ作品『俺の屍を越えてゆけ』のようにウィンドウがエンジ色(赤色っぽい色)の作品もあります。このようなUIの差異、当然ですが緑色の文字は使用不可能です。 :※ その他、ファミコン版のスーパーマリオはマリオが赤で、ルイージが緑です。ですが、のちにシリーズが進むにつれ、ルイージの身長が伸び、また、マリオが太ってるのに対してルイージはやせているなど、色以外にもキャラの体系で区別できるように変更されました。 {{コラム|回復量のフォントのうすい緑色について| よくツクールやウディタの同人ゲームで、 回復スキルをつかったときの回復量の数値のフォント色を、うすい緑色または水色っぽい色で表す場合があります。 しかし、攻撃ダメージのダメージ量の数値のフォント色は、ほとんどのゲームで絶対に白色ばかりです。 どこまで同人作家が色盲を意識しているかは知りませんが、 もしダメージのフォント色が赤色だと、色盲(赤緑色盲)の人には、これは回復スキルの緑色と区別できないのです。 ついつい出血の赤色を意識して、赤いフォントを使ってみようと思うかもしれませんが、しかしその場合は色盲の人にはプレイできなくなるゲームになることを覚悟する必要があります。 これはつまり演出面で考えれば、色盲の人には、血の色(赤)と、草の色(緑)とが、同じ色に見えていることを意味します。 }} {{コラム|色パズルのミニゲーム| ウィンドウを決める場合だけでなく、ゲーム中のミニゲームの暗号パズルなどで色を使う場合も、色盲に配慮しなくてはなりません。 ぶっちゃけ、商業RPGゲーム中にもしミニゲームとして色パズルの暗号イベントがあるなら、 暗号の正解に使える色は、もしそのパズルがクリア必須イベントなら、答えの色は必ず、赤・緑の以外の色になります。 だから答えに使えるのは、商業ゲームなら必ず、黒か黄色か青か灰色か白、のどれかです。 なぜなら、まず赤と緑は当然ながら使用不可能です。さらに、赤と青の混色である紫も使用不可ですし、 青と緑の絵の具の混色(減法混色)である青緑色も使用不可ですし、 青と緑の光の混色(加法混色)である水色も使用不可です。 橙色も、赤と黄色の混色ですので不可能です。 学校教育ではどうやら、こういう色盲のことはゲーム産業やIT産業の志望のための学校ではあまり教育されていないようですが、しかし電気工学の学校ではよく教育される知識です。 電気工業の分野で、抵抗の「カラーコード」というものがあって、下記の色がそれぞれ下記の数に対応しています。 :黒 0 :茶色 1 :赤 2 :橙 3 :黄色 4 :緑 5 :青 6 :紫 7 :灰 8 :白 9 国家資格の電気工事師は、抵抗素子についているカラーコード部分の色を見て、抵抗値を判断するスキルが必要です。 なので、昭和の規制の厳しかったころは、色盲の人はそもそも工業高校の電気科には入学できませんでした。どんなに中学の成績がよくても、色盲の子は工業高校電気科への受験自体を断られる時代があったのです。 電気工学の教科書には書かれていませんが、工業高校や大学工学部の電気系の学科に入学すると、もしまともな学校ならば、こういう事を教わるものです。 }} ===== 車酔いの防止 ===== 光の点滅以外にも、調整を誤るとプレイヤーに体調不良を及ぼす現象はあります。 、 たとえばキャラの移動速度の加速・減速は、なるべく滑らかに変化しなければなりません。 「車酔い」を思い出してください。もし急加速と急ブレーキを繰り返す車に乗車していれば、多くの乗客は酔います。 なので、たとえばRPGなどで、「マップの1マス移動後にいったん停止」というのは、避けたほうが安全です。 実際、ドラクエは決してそうなってはいません。行き止まりに当たらない限り、カーソルの左ボタンを押していれば、同じ速度で左に進み続けます。(右キーの場合も同様。) ドラクエの移動速度が等速度であることには、合理的な理由があるのです。 ;動きが時々カタつく場合 自作ゲームでテストした際、マップ移動中に右キーを押し続けたときに普段は等速で移動するのに時々カタつく場合があるかもしれません。その場合の対処法を後述で説明します。(2Dゲームのマップ機能の原理については、セクション『[[ゲームプログラミング/RPG#2Dマップ]]』で後述してある。) なお、普段から等速ですら移動しない場合は、単にバグですので、直してください。 このセクションでは、とりあえず普段は右キーを押し続けたら等速で移動するのに時々カタつく場合にだけ、よくある原因そのと対処法を説明します。 時々テストプレイ中に動作がカタつくことがあり、「バグか?」と不安になることがありますが、しかし必ずしもバグが原因でのカタつきとは限りません。 もしかしたら、Visual Studio コンパイラがメモリ圧迫またはCPU占有などをしていて、単に実行アプリの処理速度が低下しているだけかもしれません。プログラミングに熱中していると盲点ですが、Visual Studio はメモリやCPUの多くを占有することを思い出しましょう。 原因がそれか否かを確かめる簡単な方法は、まったくほかのアプリを起動していないときに、実行ファイルを起動してテストプレイしてみることです。 ただし、状況によってはその「実行ファイル」をビルドするためにVisual Studio を立ち上げないといけない場合もあり、なかなか面倒な作業でもあります(VSは終了や起動に時間が掛かるので面倒)。 1度に確認しようとすると面倒ですので、複数日に分けて確認しましょう。たとえば、このカタツキ問題が気になったときの睡眠前の晩にでも、事前に実行ファイルをビルドしておいてから Visual Studio を終了してから寝ましょう。そして翌日にでもwindows起動したときに、Visual Studio を起動せずに前日にビルドしておいた実行ファイルだけを起動してテストしてみましょう。 そのほか、この問題の検証方法として、どうしても Visual Studio 起動中に、メモリやCPUの圧迫によってカタついているか否かを判定したいなら、簡易的な方法ですが、 最近のRPGツクール製のゲームまたはウディタのサンプルゲームを起動してみて、カタつくかどうかを確かめてみる方法もあります。 もしVisual Studio によるメモリ圧迫やCPU占有がカタつきの原因なら、ツクール製ゲームやウディタサンプルゲームでもカタつくことがあります。いわゆる対照実験です(中学高校の理科(おもに生物分野)で習うアレです)。 上述の方法すべてを試してもカタつきの問題を判明できない場合、残念ですが当ページには原因がもはや分からないのが現状です。(もしお作りのRPGでのカタツキの原因が分かられて、他のプログラマーも遭遇しそうな原因でありましたら、情報提供のため編集に協力していただければ当wikiとしては幸い(さいわい)かもしれません。) ;高度な検討事項 前セクションの工夫でカタつきが解決すれば、下記の方法は不要です。また、ヘタにいじってバグの原因になると危険ですので、前セクションで解決したなら、そのままにするのをお勧めします。このセクションでは、参考のため、下記のような方法の検討を照会します。 動作をより滑らかにする工夫の一例として、たとえば、キーボードの十字キーの入力判定は、必ず1マス歩行のアニメーションの移動終了の少し前までに、判定を終わらせる工夫などが、考えられます。たとえば、1マス歩行のアニメーションが1.0秒かかるなら、入力判定は0.9秒目に行う、というような感じになります。 しかし、これはけっこう、シビアな条件であり、0.1秒単位でのタイミング調整を行わなければなりません。 歩行で1.0秒間というのは、割とゆっくりです。 一方、もしダッシュ機能とかあってダッシュ速度が1マスあたり0.5秒間だと、すこしタイミング調整が難しくなるでしょう。 もっと早いダッシュの場合は、Windowsだと少し難しいかもしれません。なぜなら、WindowsAPIのタイマー機能がそもそも、そんなに正確ではありません。0.05~0.10秒くらいの間隔になると、タイマーに誤差が出てきます。 DirectXのタイマーも、それに準じた性能だろうと思われます。なので、あまりに早すぎるダッシュでは、歩行のように「直前に入力判定」というのが、難しいかもしれません。 あるいは、もしかしたら、現代のコンピュータは処理速度が速いので、1.0秒のアニメーション終了後に入力判定を行っても、プレイヤーには気づかれないのかもしれません。 しかし、ハードウェアのメモリ容量などの事情によっては、もしかしたらアニメーション終了後の方式だと、動きにカクツキが出てくるかもしれません。ともかく、このように、速度ひとつとっても色々と考えなければならないことがあります。 こういうふうに、歩行アニメーション処理は、こりだすと、検討事項や調整事項が意外とあるので、初心者にはやや難しいです。 だから初心者には、歩行アニメーション抜きの方式がラクであり、いきなりキャラチップが移動先の隣マスに移動する方式(ファミコン時代の『信長の野望 武将風雲録』の戦闘の武将キャラチップみたいなの)のほうが、簡単でしょう。 同じ理由で、カメラの位置や向きなども、むやみに移動しないか、等速で移動しつづけるように注意する必要があります。 もし、「リアリティを出そう」としてカメラをキャラ歩行のたびに左右に振ると。プレイヤーが酔って気分が悪くなりかねません。よほど上手く調整しないかぎり、プレイヤーの体調的な気分を悪くしかねません。 だからカメラアングルで目指すべきは、2Dゲームなら結局、スーファミあたりのドラクエ的あるいはスーパーマリオ的な古典的なカメラ視点であるべきす。あるいは、もしポリゴンゲームなら、結局、カメラアングルで目指すべきは、プレステ1やサターンの時代のころのゲームのカメラアングルなどになるでしょうか。 あるいは、ファミコン時代にどうしても歩行アニメーションを停止しなければならなかった例として、ファミコン時代のウィザードリィや女神転生の3Dダンジョンのように、ポリゴン描写が無理などの理由で、どうしても停止しなければならない場合もあるでしょう。このような場合は、おそらくですが、停止中の1枚絵の表示時間の長さと、進行中の中割り(なかわり)の1枚絵の表示時間の長さが、同じぐらいの長さになるようにしないと、マズイでしょう(未確認)。 ==== 実装しようとしているものを明確にする ==== UIにおいて、アナログをデジタルで完全に実装するのは、大概困難ですが、アナログの「エミュレート」の実装は、それほど困難ではありません。 これはゲーム制作でも同様です。 たとえば、RPGの作中の武器屋や道具屋などでの買い物のシステムは、現実のスーパーマーケットやコンビニでの買い物とは異なり、まとめ買いはサポートされていないことが有ります。 ゲーム以外の話だと、たとえば通販サイトでの買い物の際、ユーザーレベルの目線では、サーバー側で異なるアイテムを連続して買う行動が一連のトランザクションとして処理されていたとしても、同様のことがありえます。 さて、ゲームでは、プレイヤーにとっては操作がやや面倒でも、デバッグの都合やメンテナンス等の都合で、あえてデジタル的な操作をしているゲームもあります。 たとえば昔のドラクエ3では、酒場で仲間をパーティに加入させる際、1人ずつ逐次的にコマンド入力をして加入させる必要がありました。(「3人まとめて加入」とかしたくでも、できない仕様。)ウィザードリィなどでも同様で、仲間のパーティ加入の編成などは、一人ずつ逐次的に操作する必要がありました。 このような、「まとめて〇〇を編集・編成」みたいな処理は、その分状態(取り得るケース)が増えるため、それに比例してデバッグにかかるコストが増える場合が有ります。 {{コラム|ゲームはゲーム以外の操作性を取り入れられるか?| ;家電とはゲームは操作性が異なる 上記のケーススタディの教訓としては、つまりデジタル家電(地デジ対応テレビやMP3プレイヤーなど)のような操作仕様ですら、ゲームには不適切な場合があります。(家電のハナシ)現実世界で機能に直接対応したボタンのある家電と、一方でゲーム中の選択肢だけしか(十字キーなどを介して選択してからでしか)押せないゲームとでは、操作の前提条件が異なるのです。 アナログ家電(アナログ放送テレビや銀塩カメラやラジカセなど)と、(デジタルコンテンツである)ゲームとでは操作性が異なるのはもちろんですが、デジタル家電ともゲームは操作性が異なることに、気をつける必要があります。 }} {{コラム|CGアルバム機能| アナログとはやや違いますが、例として、たとえばゲーム中に、CG閲覧機能として、プレイヤーがゲーム中でクリアしたイベントに関するCG閲覧機能などがある場合で、「アルバム機能」などの名前が付いている場合を考えましょう(2000年以降のノベルゲームなどで、よくある機能です)。 「アルバム」等の名前から、ついつい仕様の設計時には、実際の写真アルバム(物理)の操作性を真似したくなるかもしれません(つまり、「本の手触り」的な)。具体的には、電子書籍のようなUIを実装しようとか、思うかもしれません。 ですが、ゲームにおけるアルバム機能では、そういうことは無視して、単にCGの閲覧と検索のしやすさだけを考えたほうが、操作性とメンテナンス性もよくなるでしょう。 }} === 画面更新と速度との関係 === * 60 FPSは意外と遅い DXライブラリは、標準的な映像モニタでは、1秒間に60回のループ更新をします。 これは、一般的な映像モニターの画像の更新回数が60Hz、つまり映像モニタでは1秒間あたり60回の更新があるので、 プログラム側の更新回数もそれにあわせたものです。(これらのことを「60 FPS」などという。) このような、映像の更新の早さの度合いのことを'''フレームレート'''といいます。 さて、人間の計算速度と比べたら「1秒間に60回」は速いですが、しかしゲームとしては、必ずしも速くありませんので、そのギャップに気づかないとプログラマーは不安に「パソコンが処理落ちしてるのか?」と悩んでしまいます。 たとえば、アニメーションの表現などとして、キャタクター立ち絵が1ピクセル(1px)ずつ1回の画像更新で移動したとしましょう。 すると、1秒たっても60pxしか移動しません。RPGツクールの標準の画面サイズは横816px、縦624pxなので、つまり60pxの移動では、画面の10%にすら到達していません。なので、もっと早い速度で立ち絵を移動させたい場合、1回の更新で3pxや5pxあるいはそれ以上のピッチ間隔で画像を移動させる必要があります。 このことに気づかないと、立ち絵の高速移動のつもりで1pxずつ動かしても、画面の横幅の10%すら動いてないので、「まるで処理落ちでもしているのか」と錯覚しがちで不安になりますが、しかし1pxずつ動かした際に意外と遅く見えるのは正常な動作です。そういう速度計算での命令文だからです。 具体的にはどう悩むかと言うと、RPG制作の場合ならばマップチップの枚数が多いので「もしかしてマップチップの読み込み方が間違っていて処理落ちしているのか?」とか、あるいは「キャラ画像の周囲の透明処理による負担が重いのか?」とか色々と不安を思ってしまいますが、まったくの無関係です。 1更新あたりに1pxのピッチ速度とは、それだけ遅いのです。なので、1秒後に画面内でチョコっとしか動かなくても、1秒後に動き終わっていれば正常です。 さて、ついでの話題ですが、もしアクションゲームやシューティングゲームなどで、1更新あたり5pxや10pxといったピッチで攻撃対象の敵などが動いている場合を考えて見ましょう。 たとえば、もし移動中画面で、現在の瞬間の描画位置 から 次の瞬間の描画位置とのあいだの中間位置、つまりピッチの中間の場所に自キャラの放った攻撃などが当たったときの例を考えてみると、なかなか悩ましい問題でもあります。つまり、画面上ではピッチの中間の場所には映像が書かれていないのに、なのに、その場所に攻撃を食らう「当たり判定」が存在するからです。 実際、アクションゲームなどで、高速で動く敵の軌道上に攻撃を放ってみると、画面上にいない位置なのに、攻撃があたる場合もあります。 だからファミコン時代あるいはそれ以前のゲームセンター時代といった黎明期のシューティングゲームですら、高速で動く弾丸チップや機体チップなどの表現には、とても工夫しているのでしょう。 このように、キャラチップなどの画像を高速で動かすのは、思いのほか、調整事項が多くて大変です。なのでRPG制作の初心者は、あまり高速な描画表現には手を出さないほうが無難です(まずプログラミングの全体像を作る必要あるので)。 {{コラム|実写でもフレームレート問題はある| 実写の動画ですら、フレームレートの遅さに由来する違和感は生じます。実際、実写映画のDVDなどをコマ送りで見てみると、意外と動きが飛び飛びです。 人間は1秒間のあいだに、意外と多くの動きをしています。たとえば仮に、おやつのドーナツを食べる実写動画を例に考えてみると、1秒間のあいだに、まずドーナツに手を伸ばしたあとに、つまみあげて口元に持っていくぐらいの動作を、人間は1秒のあいだで平気でしています。もしアニメキャラだったら、ひょっとしたらドーナツ一噛みを始めているぐらいです。 このように1秒のあいだに多くの動作をするのに、たった60コマのフレームレートしか用意されていないのです。だからコマ送りで実写の動画を見ると、けっこう動きが飛び飛びで、まるでアニメを見ているかのような感覚です。たとえるならアメリカ製のアニメ映画は、日本アニメよりも1秒のコマ数が多く、日本アニメが1秒で8コマなのにアメリカ制アニメが1秒で24コマの違いはありますが、しかしアニメはしょせんアニメのような飛び飛びの動きです。実写の60フレームレートですら、アメリカ製アニメのたったの約2倍しかないフレームレートです。 また、半導体の性能向上は2010年以降は止まっていることなどを考えれば(「ムーアの法則」の破綻)、今後に市販の液晶モニターのフレームレートが飛躍的に上がる可能性は乏しいでしょう(説明の便宜上、液晶も「半導体」として扱った)。 さらにもし仮に製造業で技術革新が起きたとして、液晶モニターのフレームレートを飛躍的に十倍や百倍に向上させる新技術が出来たとしても、今度はハードディスク容量の問題があり、つまりフレームレートがもし10倍になったら、録画映像の容量バイト数も10倍になります。つまり、アニメや映画のブルーレイディスクなら、ディスク枚数が10倍になることを意味するし、これはつまりアニメなら作画枚数が10倍になるし、消費者にすればディスク購入費用も10倍ですし、生産者側からすれば予算も10倍なので投資リスクも10倍です。 このような技術的制約および経済的制約から、今後のフレームレートの向上の可能性はなかなか乏しいと考えざるを得ませんし、仮にフレームレート向上しても恩恵を受けられるのは実写やCGなどのようなアニメーターが手で作画しなくて済む分野の映像だけです。 }} === 万全のゲームシステムは無い === 少なくとも2D-RPGのゲームシステムやその実装に関する限り、処理が早くて操作性も良くてメンテナンスもしやすくて・・・のような究極万全なシステムやアルゴリズムは一切ありません。 たとえば操作性の分かりやすいアルゴリズムなら、おそらくはプレイヤーのさまざまな発想に対応するためにif文の分岐増えたり、あるいはグラフィカルに説明するために画像の制御が追加で多く必要になったりするなどして、そのぶん他の特性が悪化しますし、説明用グラフィックが増えれば処理速度の負担にもなります。 しかし現在のパソコンではファミコン時代よりも桁違いに多くのメモリ容量を扱えるようになり、CPU性能も桁違いに向上しました。よってゲームプログラミングでは基本、処理落ちをしない程度にまで処理速度に負担を掛けて犠牲にして、そのぶん操作性やグラフィック性やゲーム性やメンテナンス性などを向上させることになるでしょう。 だから実はファミコン風のドラクエ1のような簡素なプログラムでも、あれはあれで処理速度とメンテナンス性をもし最優先に目指すなら現在でも合理的な一形態なのです。 また、ドラクエ1的なアルゴリズムはメンテナンス性がよいので開発もしやすいし、開発時のデバッグもしやすいです。なので、私たちがRPGを手元でプログラミングして作る場合も、まず2D-RPGならドラクエ1~3のようなUIをまねたゲームを作ることになるでしょう。 ただし、真似るのはあくまでUIのみです。パスワードシステムのような、セーブ機能の発達した現在では不要なシステムを真似る必要はありません。「話す」コマンドとか「とびら」コマンドみたいに、現代では不要になったコマンドも不要でしょう。また、ドラクエのウィンドウ色は黒色ですが、しかし私たちにはデバッグの都合のためファイナルファンタジーや昔のツクールのような青色を基調としたウィンドウのほうがデバッグしやすいかもしれません。 だから初心者は、昔のRPGツクールっぽくアレンジしたドラクエ風UIを作ることになるでしょう。(ドラクエの難易度デザインやストーリー性などはプログラミングではないので、本ページでは言及しません。) == 製作の順序 == 本ページでは説明の都合上、RPGをモジュールごとに分割して説明しています。 たとえば、マップ関連のモジュール、戦闘関連のモジュール、装備関連のモジュール、のようにです、 しかし、実際のゲーム製作での開発順序は、少なくともRPGをVisual C++でゼロから作る場合においては、けっして、「マップモジュ-ルを完成させてから戦闘モジュール」のような順序には'''なりません'''。 そうではなく、まず自分が興味をもったモジュール(仮にマップモジュールとする)の初歩を作り始めたあと、とりあえず操作できて満足できるところまで作ったら、 次に関連する別モジュール(たとえば戦闘モジュール)を作る、というような順序です。 たとえば、すでにマップモジュールがあるなら、戦闘モジュールを作り始める際に、まずマップ画面上に固定敵を配置することで、 戦闘モジュールのテストをしやすくなります。 このように、すでに作ったモジュールの初歩を土台にして、別のモジュールの初歩を同様に作り始めます。 そして、まずRPGの基本システムを満足するところまで作ります。(シナリオ作成などは後回しになるでしょう。) マップシステム、戦闘システム、装備システム、道具システム、買い物システム、酒場システム、会話システム、・・・ など色々あるので、まず一通り、好きなシステムから順に、キリのいいところまで作りこんで、どんどんと次に作りたいシステムの開発に移行していき、 とりあえずゲーム全体の基本システムを構築していくことになるでしょう。 ;2周目 そして、一通り、満足するまで基本システムを作るのを1周したら、 次に2周目として、また、たとえばマップのシステムを作り始めます。 1周目のマップシステム製作では放置してた部分、たとえばキャラチップの歩行グラフィックなど絵が必要で放置してた部分の製作に取り掛かるとか(たとえば1周目では矢印の画像でゴマかしていたとする)、 そのように2周目では、1週目で放置していた部分の製作にとりかかるのです。たとえば、歩行グラフィックで前足を上げているポーズと、前足を着地させるポーズの切り替えプログラムとか、そういう1周目では面倒で放置していた部分に、2周目では取り掛かったりします。 [[File:Helix.svg|thumb|ここでいう「らせん」とは、こういう3次元の らせん のこと]] このように、RPGの製作は、まるでラセン階段を昇るかのように、周回的に開発していくことになるでしょう。 <gallery perrow="5"> Image:Uni-Mannheim_Neubau_Rettungsleiter.jpg|親柱付非常階段(マンハイム大学) Image:Killesbergturm.JPG|キレスベルク塔の二重螺旋階段<ref> 『世界の美しい階段』エクスナレッジ、2015年、200頁。{{ISBN|978-4-7678-2042-2}}。</ref> Image:Vor_Frelsers_Kirke_Copenhagen_spire.jpg|コペンハーゲンの螺旋階段 </gallery> 企業などで作る場合はどうか知りませんが、少なくともVisual C++でゼロからRPGを作る場合はラセン階段でしょう。 RPGはモジュールがとても多いし、また相互に関連するモジュールも幾多もあるので、一度に各モジュールを作りきるのは不可能です。 だから、ラセン階段のように、開発を昇っていくことになります。 なお、IY業界ではこういうラセン的に徐々に機能を追加していく開発手法を、スパイラル型の開発と言います<ref>[https://www.mext.go.jp/content/20200609-mxt_jogai01-000007843_005.pdf 高等学校情報科「情報Ⅱ」教員研修用教材(本編)『第4章 情報システムとプログラミング』、P230] 2023年9月27日に確認.</ref>。 スパイラル spiral とは、単に、らせん状の渦巻きのこと を英語にしたものです。なお、 なお、銀行などのシステム開発はこれとは違い、銀行のシステム開発はふつうはウォーターフォール型の開発です<ref>[https://www.mext.go.jp/content/20200609-mxt_jogai01-000007843_005.pdf 高等学校情報科「情報Ⅱ」教員研修用教材(本編)『第4章 情報システムとプログラミング』、P230] 2023年9月27日に確認.</ref>。ウォーターフォールとは、事前に仕様を細かく決めるのに長い時間をかけて、実装時にはほとんど仕様を変えない手法です。 ほか、プロトタイプ型の開発もあり、これは大まかに動く試作品を短期間で作り、あとから仕様を修正していく方式です<ref>[https://www.mext.go.jp/content/20200609-mxt_jogai01-000007843_005.pdf 高等学校情報科「情報Ⅱ」教員研修用教材(本編)『第4章 情報システムとプログラミング』、P230] 2023年9月27日に確認.</ref>。 ゲームに関した話題ではないですが、スマートフォンのアプリの開発などでは、プロトタイプ型やスパイラル型の開発がよく利用されるようになってきています<ref>[https://www.mext.go.jp/content/20200609-mxt_jogai01-000007843_005.pdf 高等学校情報科「情報Ⅱ」教員研修用教材(本編)『第4章 情報システムとプログラミング』、P230] 2023年9月27日に確認.</ref>。 {{コラム|1=化学の学習に似ているかも|2= 余談ですが、理系の学問でも、1999年ごろは、化学(ケミストリー)の理系教養の学習法がラセン階段のような順序であると言われています。 たとえば理工書 [https://www.amazon.co.jp/%E5%8C%96%E5%AD%A6%E3%81%AE%E5%9F%BA%E7%A4%8E-%E5%8C%96%E5%AD%A6%E5%85%A5%E9%96%80%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%82%B9-1-%E7%AB%B9%E5%86%85-%E6%95%AC%E4%BA%BA/dp/4000079816/ref=sr_1_1?__mk_ja_JP=%E3%82%AB%E3%82%BF%E3%82%AB%E3%83%8A&crid=2DKECS8MWBNZR&keywords=%E5%8C%96%E5%AD%A6+%E5%B2%A9%E6%B3%A2&qid=1641806771&s=books&sprefix=%E5%8C%96%E5%AD%A6%E5%85%A5+%E5%B2%A9%E6%B3%A2%2Cstripbooks%2C188&sr=1-1 『化学の基礎』 (化学入門コース 1) , 1996/4/17 ] などのシリーズ (化学入門コース) の巻頭の学習法ページにもラセン階段の絵が書いてあり、ラセン階段のイラストの絵の各所に対応する科目が描いてあったような気がします。 ただし、プログラミングは暗記科目ではないので、そこは手を動かしてプログラムを実際に構築していく必要があります。そういう点は、数学というか物理学というか。 }} == 共通カウントアップ機能 == RPGではシステム中にマップ画面モード、メニュー画面モード、戦闘画面モード、・・・など様々なモードがありますが、 DXライブラリを使っている場合にどのモードでも必ず使うことになる機能があり、それは自作タイマーのカウントアップです。 まず、DXライブラリでは1秒間に60ループするので、それを利用して1秒間に60回カウントアップする機能を作ります。 そして、そのカウンターを活用することで、たとえば、「zボタンを押してから40フレーム間(環境によっては約0.8秒くらい)は次のzボタンの入力を受けつけなくする」等のボタンをしばらく入力させなくする機能を作ります。 そうしないと、プレイヤーは1回だけzボタンを押したつもりでも、システム的には何十回もzボタンを連打したことになり、プレイヤーがうまくコマンド操作などを行えません。 また、コマンド操作などの他にも、マップ画面中でキャラクターがマップ1マスぶん動くスライドのアニメーションでも、カウンターが必要になります。 マップ画面の歩行グラフィックで「歩行カウンター」みたいな変数が必要になるでしょう。もしくは、歩行のキー入力に使った矢印キー用のカウンターを流用するなどの処置になるでしょう。 ともかく、このようなカウンター機能が必要なので、whileループ中での個別モードに分かれる前の共通部分のところに、カウントアップのコードを書くことになります。 「共通部分のところ」とはどこか具体的に言うと <syntaxhighlight lang="C"> while (1) { if (ProcessMessage() != 0) { // メッセージ処理 break;//ウィンドウの×ボタンが押されたらループを抜ける } if (CheckHitKey(KEY_INPUT_ESCAPE) == 1) { break; } ClearDrawScreen(); // ここにカウントアップ機能 </syntaxhighlight> のように、whileの開始のテンプレ文の直後に書き始めることになるでしょう。 なお、DXライブラリでよく書くことになる開始時のテンプレ文については 『[[ゲームプログラミング/画面出力#DXライブラリのコード初期設定]]』 で説明してある。 カウントアップではなくカウントダウンでも構いません。 イメージ的には、下記コードのような感じになります。ただし、下記のモジュールだけでは動きません。 あらかじめ、各モード側でzボタンを押した時などにカウンター値の設定などを行う必要があります。たとえばzボタンを押したときに nyuuryokuMatiZ =60; // デバッグしやすいように少し遅めにした などをセットしておきます。また、zキー入力可能かどうかを判定するフラグ変数、下記コードでは変数 keyEnableZ となっていますが、そのようなフラグ変数をあらかじめ用意しておき、もし値が1なら入力可能、0なら入力不可能として、 zボタンに対応する処理を1回実行してから<code>z=0;</code>に設定して、zが0のときにカウンタが動くようにする必要があります。(ツクールなどではマップ画面からメニュー画面を開くのはx(エックス)ボタンだが、読者のバツボタンとの混同を防ぐため、上記の文ではzボタンを例に説明した。) <syntaxhighlight lang="C"> while (1) { if (ProcessMessage() != 0) { // メッセージ処理 break;//ウィンドウの×ボタンが押されたらループを抜ける } if (CheckHitKey(KEY_INPUT_ESCAPE) == 1) { break; } ClearDrawScreen(); // ここからカウントダウン機能 // zボタン用のカウントダウン if (keyEnableZ == 0 && nyuuryokuMatiZ > 0) { nyuuryokuMatiZ = nyuuryokuMatiZ - 1; } // zカウンタが0以下に到達したらzキーが再入力可能 if (nyuuryokuMatiZ <= 0) { nyuuryokuMatiZ = 0; keyEnableZ = 1; } // 下記はエックスボタンのこと。 バツボタンではない。 // xボタン用のカウントダウン if (nyuuryokuMatiX > 0) { nyuuryokuMatiX = nyuuryokuMatiX - 1; } if (nyuuryokuMatiX <= 0) { nyuuryokuMatiX = 0; keyEnableX = 1; } // 長いので、あとは省略 </syntaxhighlight> このコード例のように、共通カウンタ部では単にカウントするだけでなく、さらにカウンタが目標値(カウントダウン方式なら0が目標値)に到達したときの処理(フラグの設定など)も行います。 いきなり上記のような機能を作るのは、かなり難しいです。なぜなら、カウンタだけでなく、マップ画面やメニュー画面側のzボタン押し時やxボタン押し時の命令も記述しないといけないからです。 だからまずは、マップ画面とメニュー画面の入り口画面(まだメニュー画面の各コマンドは作らなくていい)だけでいいので、でキーのカウント処理をうまく行えるようにしましょう。 なお、メニュー画面に移ったらキャンセルボタンで戻せるように、あらかじめメニュー画面にキャンセル機能を実装しておきましょう。 新しい画面を作るときに最初に必要なボタン機能は、実はキャンセル機能です。キャンセル機能が無いと操作不能になって、いちいちアプリ再起動の手間が生じます。 ;アクションゲームで肩慣らし いきなりマップ画面やメニュー画面を作るのは難しいので、ひとつの手として、RPGを作る前に、簡易的なアクションゲームのような操作性のプログラム、または簡易シューティングゲームの操作性のようなプログラムを作るのも手です。 たとえば、スーパーマリオやスト2のようなアクションゲームなら、ジャンプボタンは1回入力したら着地までは再入力の受付が禁止なので、上記のようなカウンタ処理による再入力可否の制御が実験できます。 べつに、本格的にアクションゲームやシューティングゲームを作る必要はないです。後述のように、異なるジャンルのゲームをひとつのアプリに同梱するのは、管理の手間が増えますので(不可能ではないですが)、面倒が生じます。 これには準備として、マリオ(キャラ名)やスト2リュウに相当する自キャラ表示のため、あらかじめキャラチップの絵が必要です。別にアクションゲームを作るわけではないので、マウスでいいので何かキャラの全身絵を3分くらいで雑に書いてください。そして、キャラの周囲の空白部を、ドットエディタなどを使って透過させてください。(あるいはinkscapeを使ってキャラ絵を書いて、PNGエクスポートする、などの手法もあります。) ジャンプさえ出来る絵であればいいので、すでに手元にゲーム用キャラチップっぽい大きさの生き物の絵があるなら、別に人物の絵である必要もなく、動物の絵でもモンスター画でも何でも構いません。 さて、なんとかジャンプの実験に成功したら、ついつい次の目標で「右歩行中にジャンプして右斜め上に飛ぶ」機能とかを実装したくなりますが、本ページはRPGの教科書なので、アクション機能については説明を省略します。 ;ミニゲーム同梱時のカウンタ管理 ミニゲームとしてターン制RPG以外のジャンルのゲームを同梱するなら(たとえばシューティングなど。ファミコン『さんまの名探偵』では推理ゲーム中、シューティングゲームのミニゲームがあった)、別途、そのミニゲーム用の各モード前の共通部分に、ミニゲーム用のカウンタが必要になるかもしれません。 ターン制RPGとアクショゲーム・シューティングゲームは、カウンターに要求される待機時間が違ってくることと(ターン制RPGの操作はゆっくりめでいいので待機時間を多目にとれるが、しかしアクションは機敏な動作に対応するため待機時間が短い)、カウンタが目標値に到達したときの処理がRPGとアクションとで違うので(たとえばRPGなら決定ボタンを押したままの状態なら目標値の直後に受け付けしてもいいが、アクションゲームでは決定ボタンがジャンプやパンチに対応していることから、プレイヤーにパンチ連打などのためにボタン連打させたい場合は目標値直後の処理を変える必要があることなどから)、RPGとアクションを混在させるのは(可能ではあるが)難しいことが予想できます。 だから、もしあるゲーム中に別ジャンルのミニゲームを同梱するなら、メインとなるホスト側のジャンルを決めて、そのメインジャンルのカウンタだけをwhileループの冒頭でカウントアップすると安全かと思います。たとえば本ページはRPGなので、メインのジャンルはRPGなのでwhileループの序盤ではRPG用のカウンタだけをカウントアップ、という事になるでしょう。シューティングについては、while冒頭ではカウントアップしないか、あるいはRPG用のカウンタの流用で済ますかどのちらかです。 もしwhileループの冒頭でシューティング用のカウンタまで記述してしまうと、コードの管理が複雑になってしまうので、避けたほうが安全でしょう。 普段は使わないミニゲームのカウンタのせいで、普段から使うメインジャンル(本ページではRPG)のカウンタの可読性が下がるのは避けたいです。 RPG用のカウンタをシューティングに流用するのは、シューティング用にコードが最適化されてないので軽量性が若干は下がりアプリが重くなりますが、しかしゲーム制作ツールのRPGツクールやウディタなどで製作されたアクションゲームやシューティングゲームなどは、こういった流用の一種でしょう。 == アイテム関係 == === アイテムの定義 === * [[ゲームプログラミング/RPG/アイテム定義]] === アイテム表示 === * [[ゲームプログラミング/RPG/アイテム表示]] アイテム表示における、上詰めの自動化などを解説しています。 == 設計方針 == ==== ゲーム全体を先に作る ==== ともかく、ゲーム全体を先に作るのが先決です。ニュアンスは違いますがアトラス社いわく(ゲーム開発では)「ゲーム全体に全体に値を回すのが先」という格言があります<ref>[https://news.denfaminicogamer.jp/projectbook/191030a/2 『【ゲームの企画書】『ペルソナ3』を築き上げたのは反骨心とリスペクトだった。赤い企画書のもとに集った“愚連隊”がシリーズを生まれ変わらせるまで【橋野桂インタビュー】』2019年10月30日 11:30] 2020年12月1日に閲覧して確認.</ref>。 プレイヤーが見たいのは、ゲーム全体のストーリーやテンポといったゲームの全体像です。カーソルの動きとかウィンドウの動きとかは、あくまで補助的であり、そういったUIに対するプレイヤーの興味も、あくまでオマケの範囲でしかないのです。 ==== 似た機能を複製する場合 ==== ===== 複製前の確認事項 ===== ;短さよりも可読性を重視せよ 世の中には、残念ながら時々、他人の理解しやすさを無視して、やたらと短いコードを書く、独りよがりな人がいます。 しかし、たとえ仕事としての集団作業であっても、要求されるのは、同僚や後輩などが読んだときの分かりやすさです(「可読性」と言います)。 なので、少しぐらいコードが長くなってもいいので、分かり易いコードを書きましょう。 具体的には、できるだけ、どこの入門書にもあるような基本的な機能を使ってコードするのが安全です。具体的には、できるだけ、せいぜい構造体(およびC++ならクラスの構造体的な使い方)や配列や関数あたりまで、の機能どまりです。 また、「どうしても」と言った必要性のない限り、その分野の一般の入門書に書かれてない機能(たとえばメモリ管理の組込み関数など)や、解説の極端に乏しい機能は(入門書なっても巻末の機能一覧にだけしか記載のないような機能)、利用を控えましょう。 そもそも、一般入門書に書かれてない機能は、取扱いが難しかったりして、設定などの確認不足で使うとむしろバグの原因になりやすかったりとか、学習コストの高さなどの難しさがあるから、入門書から除外されているのです。なのに、そういう難解な機能を多用するのは、あまりよくプログラミングの仕事が分かってない自称プロかと思われても仕方ありません。 ;ゲームとして実態のある関数や配列を作れ 関数や配列をつくるときは、なるべく、ゲーム用語で説明できる関数および配列だけを作りましょう。たとえば「戦闘コマンド選択関数」や「モンスターデータベース配列」のような感じです。 けっして、そういうゲーム用語とは無関係に、単に抽象的に関数を呼び出す関数を呼び出すような関数を呼び出す関数、とか、配列を読む込む配列を読む込むような配列、のような高階層的な機能は、たとえそれでコードが短くなっても、同僚や後輩などが管理をしづらくなるので、避けましょう。 書籍『Game Programing Patterns』にも、Amazonのweb立ち読みのP13に 「コードの抽象化に凝りすぎると、コードベースのアーキテクチャはどんどんと複雑化していきます。やがてインターフェースと抽象化レイヤだらけになり、プラグインシステム、抽象規定システム、仮想メソッドが溢れかえり、」 とあります。その結果、 (中略)「抽象化の階層の中を探し回って実際に仕事をしているコードにたどり着くまでに、果てしなく時間が掛かります。」 と書籍『Game Programing Patterns』にあります。 実際にゲームを作った事がある人ならばこの問題に気づきますが、世間には知ったかぶりで逆の事を言う人がいます。オブジェクト指向だのポインタだの何だの理屈をこねて、抽象化のレイヤを増やそうとする人です。ダマされないようにしましょう。 もちろん、関数から関数を呼び出してもいい場合もあり、たとえば「RPGで戦闘モードの関数から、攻撃コマンド関数を呼び出す関数から、さらに攻撃対象の選択をする関数を記述する」といったようなゲーム仕様に直接的に結びついた関数ならば、普通のゲーマーなら理解できるので、書いても平気でしょう。ですが、それはゲームとしての実態に対応する共通化です。けっして、ゲームの実態に無関係の共通化ではありません。 :というか、そういう無意味な抽象化を避けないと、あなたが会社から避けられるでしょう。(これはゲームに限らず、数学以外の物理学や化学で扱う数式も同様で、たとえば理系大学の論文指導やゼミなどで、なるべく物理的な実態や化学的な実態に対応のある立式をするように、よく大学の卒業研究では要求されています。具体的には、「質量(mass)を表す文字式には m を使え」(高校レベルですが)みたいに既存の慣習に合わせるように指導されます。たとえ数学的には矛盾のない立式でも、物理学の研究室なのに「質量に記号 a 、速度に記号 b 」みたいな書き方をする学生は、教授から学生がダメ出しをされます。) IT業界だけなく法律業界でも、むやみに高階層的な法令を設計するとその法令の構造が複雑になる現象は知られています[https://www.nature.com/articles/s41598-020-73623-x Daniel Martin Katz, Corinna Coupette, Janis Beckedorf & Dirk Hartung "Complex societies and the growth of the law" , nature.com, Published: 30 October 2020 ]。近年、世界各国でIT的な考え方を使って法律の設計論を研究しようという学問分野があり、その学問でそう指摘されています。これらのIT的な法学では、法律中の単語数、階層数、法律間の相互引用数が多ければ多いほど、その法律の構造は複雑になると考えられています。ご参考に。 ;仕様そのものの類似性に気を配れ また、ゲーム中で、仕様ではあまり類似性のない処理は、たとえ偶然的にコードの実装が似ていても、むやみに共通化して同じ関数にしたり配列にしたりするのは避けましょう。なぜなら他人(後輩など)が管理しづらいからです。 ゲーム業界以外でも、googleの技術者が似たような注意をしています)<ref>[https://testing.googleblog.com/2024/05/dont-dry-your-code-prematurely.html Dan Maksimovich『Don't DRY Your Code Prematurely』Tuesday, May 28, 2024]</ref>。たまたま現状ではコード記述が似ているコードでも、違う概念(※wiki追記:異なる目的)に対応するコードは、けっして統合してはいけないと注意喚起をしています。 なお、参照サイトの The approach on the right seems to violate the DRY principle since the ValueError checks are coincidentally the same. However, tasks and payments represent distinct concepts with potentially diverging logic. If payment date later required a new validation, you could easily add it to the right-hand code; adding it to the left-hand code is much more invasive. の部分です。 異なる概念(concepts)を表している2か所のコードが、偶然にも(coincidentally )コードが同じ場合があります(the same)。そのようなコードを、ときどき新人は統一してしまいがちですが、しかし、それをグーグル技術者は戒めて(いましめて)います。万が一、別々の概念を持つコードをひとつに統一してしまうと、そのコードをそれから各概念の用途に応じて改修するのは、google 技術者たちにとってすら難しく、まるで外科手術的(invasive)になってしまいますよと警告しています。 もちろん、共通化してもいい場合もあり、たとえば「回復アイテムによる回復対象を選ぶ関数」などは、 :たとえば戦闘モードでの「RPGで戦闘モードの関数から、(攻撃コマンドではなく)道具コマンド関数を呼び出す関数から、回復アイテムを選んだ時に、回復対象の味方キャラを選択をする関数を記述する」と、 :マップメニューモードでの「マップメニュー画面モードの関数から呼び出す、道具コマンドの関数で、回復アイテムを選んだ際に、道具の使用対象を選ぶ関数」 が、ともに仕様が「回復アイテムを選んだ時の使用対象の味方を選ぶ」と似ているので、場合によっては共通化するのも良いかもしれません(職場によるだろう。共通化しないほうが良い場合もある。たとえば戦闘モードでは敵にも回復アイテムを使えるゲームも存在する一方、マップメニュー画面では味方にしか回復アイテムを使えないので細部が異なるから)。 しかし、仕様自体すらも似ていない部分を共通化するのは、ダメでしょう。 たとえば、もしたまたま、「戦闘モードでのコマンド選択時の関数」(まだ道具コマンドを入力する前なので、どのアイテムを使うからすら選んでいない段階)と、「マップメニュー画面モードで道具コマンドのあとに使用対象キャラを選ぶときの関数」が、もし偶然にコードが似ていたとしても、そういう仕様的にあまり関連性の無いコードは共通化されても管理しづらくなるので、共通化するのをやめましょう。 ほかの例では、たとえばHPとMPの表示は「戦闘画面」にも「メニュー画面」にもあるでしょうが、だからといって両画面で使いまわせる「HpMp共通表示関数」みたいなのを作るのは危険です。 具体的になぜ危険かと言うと、その共通表示関数にはif文章が増えますので(戦闘画面とメニュー画面とで表示位置などが微妙に違うため)、デバッグの手間として「どんな場合の戦闘画面とメニュー画面でも、はたして本当にif文が正しく機能しているか」という手間が増えます。 一方、ベタ書きで直接的に戦闘モードにHP表示とMP表示、一方で同様にベタ書きでメニュー画面モードにもHP表示とMP表示を書けば、こういう余計なデバッグの手間は増えません。 HP表示とMP表示のたった2行ていどのコードを「HpMp共通関数」で1行にしても、何箇所かで呼び出すからそのぶん減少量は倍増しますが(たとえば4箇所で呼び出したとすれば 1×4=4で4行ほど減る)、しかし関数を新たに作るので差し引きで、うまく減らせても結局は1~2行くらいしか減らせません。 コード量を簡単なコードの1~2行しか減らせないのにデバッグの手間を大幅に増やし、まったく割に合いません。 また、共通関数の側に呼び出し先の戦闘画面やメニュー画面の情報があるので、共通関数を使ってしまった場合にはデバッグをする際に戦闘画面のコードなども調べなければなりません。こういう事情も加えて、デバッグの手間がさらに増えやすいという問題があります。 教訓として今回の初心者プログラマーにありがちな失敗例を一般化するなら、もし「リファクタリング」のつもりで共通化してif文が増える場合、もしかしたらデバッグの手間が増えてしまっている傾向があるので、上述のような間違った共通化している可能性があります。 wikisource [[s:プログラマが知るべき97のこと/共有は慎重に]] にも似たような話題があります。 <pre> 私がコードをライブラリ化してしまったことで、それを利用する部分には依存関係が生じました。まるで、一本の靴ひもを、両足の靴に通したような状態になったのです。ライブラリのコードを1行変更しただけで、その影響は複数箇所に及びます。互いに独立していた時なら、該当部分の保守コストは無視できるほど小さかったのに、ライブラリ化してから、変更のたびに大変な手間をかけてテストをする必要が生じました。 </pre> (引用) 順番は前後しますが、参照先ウィキソースに、下記のようにコンテキスト(文脈)の話があります。 <pre> それは 「コンテキスト」です。 たとえシステム内に同様の処理を行う部分が2つあったとしても、両者のシステムにおける役割が大きく異なっていれば、再利用によるメリットは小さいのです。私がコードをライブラリ化するまで、そのコードを利用する部分間に依存関係はまったくありませんでした。元々の成り立ちが全然違うコードだったのです。従って、状況やニーズが変われば、その後各部分のロジックにはまったく別の変更が必要になる可能性が高いということです。たとえコードが4行ほどのもので、行っていることが同じだったとしても、それはたまたま一時的にそうなっていただけのことです。私が入ってくるより前は、むしろ一致していない方が普通だったのです。 </pre> (引用) 高校や大学など学校では、コードの再利用を重要だと教えるかもしれませんし、たしかにそれも重要なのですが、しかしだからといってコンテキストの異なるも のまでむやみに共通化してはいけません。 <pre> 大学では「再利用」を優れたソフトウェア開発プロジェクトの象徴として教わってきました。どんな論文や教科書を読んでもそう書いてあったし、経験豊かなプロのソフトウェア技術者もそう語っていたのに、それらは全部間違いだった、ということでしょうか。 考えた結果わかったのは、私が1つ重要なことを見逃していた、ということです。 それは 「コンテキスト」です。 </pre> (引用) ※ そして上述の「たとえシステム内に同様の処理を行う部分が2つあったとしても」に続きます。   この情報を見るかぎり、どうも日本の学校だけでなく海外の学校教育でも、コンテキストの都合を考えずにむやみにコードをライブラリ的に共通化して短縮ばかりを考える教育をされる傾向が2010年頃まではあったようです。 ゲームでは上述の説明では暗黙の前提として何となく戦闘システムやメニューシステムなどの基本システムを想定して説明しましたが、なにも基本システムに限らず(RPGなどの)特殊イベントなどでも同様のことが考えられます。 ゲーム中のストーリー進行に関わる特殊イベントでたまたま似たようなイベントがあったからといって、むやみにシステムを共通化してはいけないのです。もし、仕様変更などの要望が上司などから加わった場合、むやみに共通化してしまっていたら、あとから修正するのが大変になってしまいます。 他の書籍でもそうです。洋ゲー「ゴーストオブツシマ」の開発者の一人による書籍『ルールズ・オブ・プログラミング ―より良いコードを書くための21のルール』( 2023/8/28、Chris Zimmerman (著), 久富木 隆一 (翻訳))でも、著者が新人によくする指導法として「問題の例が三つ集まるまで一般性のある解法を書くことを許さない」というのがあります(amazon見本を参照)。このChrisの会社でも、大学を出たばかりの新人は、新人が1つの問題をみつけると、他の問題も解ける一般的なプログラミングを書こうとするのですが、Chrisは「そういうでかい問題は解かなくていい」と指導して、目の前の問題だけをまず解くことに集中させるように指導しています。そういうでかい問題を解こうとするプログラムは、往々にして、バグを潜みやすかたり、理解のための学習コストが高くなりがちなので、ゲーム開発では避けるべきだということを Chris はこの著書で述べています。 ともかく、目の前に無い、でかい問題を一般化して解こうとすると、メンテ性の悪いプログラムイが出来上がりやすいのです。 予備知識のない新人はこういうミスをしがちです。気をつけましょう。 ;視線移動の問題 関数化の是非の判断について、(けっして、たまたまコードが似ているかではなく、)仕様そのものの類似性にこだわる理由は、上記の変更可能性の他に、別の理由もあります。それは、「視線移動」の問題です。コーディング時の、視線移動(およびマウスホイールなどの操作量)です。 あえて関数化しないノウハウの出典としては、書籍では「A Philosophy of Software Design」( John Ousterhout 著)に、視線移動の事が書いてあるようです<ref>[https://www.publickey1.jp/blog/24/post_302.html 『技術的負債を抱えたレガシーコード。変なメソッド名と入り組んだロジック、リファクタリングするならどちらが先?(後編)』, , 2024年7月1日]</ref>(wiki編集者が未読。読んだ人が編集に協力して上書きしれくれると、うれしい)。 もし、なんでもかんでも関数にしてしまうと、視線移動が多くなってしまうとの事です。そして視線移動をしないと分かりづらいので、なるべくドキュメントを残す必要があると著者ジョン(John)先生が言っているとの事らしいです<ref>[https://www.publickey1.jp/blog/24/post_302.html 『技術的負債を抱えたレガシーコード。変なメソッド名と入り組んだロジック、リファクタリングするならどちらが先?(後編)』, , 2024年7月1日]</ref>。 これは裏を返せば、ドキュメント化しづらい処理は、あまり関数にせず、代わりに(「関」数ではなく)変数などの、あまり視線移動をしなくて済むような別の方法で、プログラミングを切り抜ける必要があるかと思います。 ジョンは言ってないでしょうが(そもそもジョンの書籍はゲーム設計論の本ではない)、このため結局、私たちはゲーム的な仕様そのものの類似性にこだわる必要があるでしょう。単にコードが似ているかではなく、仕様書に落とし込んだときに、その仕様書そのものの記述が似ているか、といった事も、気にかける必要があります。 また、上記ジョンの書籍では言及していないかもしれませんが、コードだけでなく、加えて仕様書を読む際の視線移動のことも、可能ならば考える必要があるかもしれません。 とはいえ、「ゲームは面白くてナンボ」でしょうから、あまり視線移動の少なさそのものだけにコダワルのも一考ですが、しかし視線移動が多い設計は、それなりのメンテ上のコストがあるかもしれません。 {{コラム|学問名は何?| 本ページのこういった分野を考察する学問についての名称ですが、「ソフトウェア工学」で良いだろうと思われます。書籍『ルールズ・オブ・ゲームプログラミング』の冒頭の『本書への賛辞』に 『ルールズ・オブ・ゲームプログラミング』には、どんなソフトウェアエンジニアでも自己のレベルを次のレベルに引き上げるために使える、実用的経験則としてのルールが満載だ。 とあります。エンジニアとは技術者という意味です。エンジニアリングを日本語に訳すと「工学」です。なのでソフトウェアエンジニアリングなら「ソフトウェア工学」です。 }} ソフトウェア工学では「DRY原則」(Don't Repeat Your Self、 「繰り返しを避ける」の意味)という考えかたがあり、同じコードの繰り返しを悪とする考え方がありますが、しかし実務は上記のように、必ずしも「DRY原則」のとおりとは言い切れません。もしくは、世間一般の「DRY原則」の解釈のなかにはコンテキストの考え方を見落とした、まちがった解釈が流布している場合もあるので注意が必要、ということかもしれません。 よほど長いコードの繰り返しやら10回や20回以上とかの繰り返しなら実務上の都合からコードの重複を避けたほうが良い場合や必要もあるかもしれませんが、しかし、そうでない場合でたった数行ていどの少々のコードやらそれらの2回程度の繰り返しならばコンテキストの都合からは似たようなコードをあえて共通化しないほうが安全な場合もあります。 初心者プログラマーはこういった事をいっぺんには体得できないでしょうから、一見すると、本来なら合理的なコードが、初心者の目には少し汚く見え、「少しだけ可読性が悪い」ように感じがちです。つまり、初心者目線で少しだけ可読性が悪いぐらいのコードこそが、実は本当は可読しやすいコードです。 ===== 具体的手順 ===== まず、それらの機能の共通点を探します。次に、その共通点を抽象化します。抽象化のコストと、それを再テストするコストの合計が、そのままにしておくコストよりも高く付くと考えられるならば、抽象化は後回しにしても構いません。 {{コラム|テキスト比較ツール| テキスト比較ツールを使うと、効率的に違う部分を強調して表示することができます。 GNUのdiffutils、[[Git]]などのバージョン管理システム、あるいは「ベクター」や「窓の杜」からインストールすることができます。 }} == リファクタリング == * [[ゲームプログラミング/RPG/リファクタリング]] == モードの管理手法について == * [[ゲームプログラミング/モード管理]] 戦闘モードとか、マップ画面モードとか、メニューモードとか、そういうののハナシです。とりあえず「モード」と言いましたが、ゲーム業界で何と言うのか知りません。もしかしたら、モードではなく「戦闘シーン」とか「戦闘パート」とか言うのかもしれません。ただし、書籍『ゲームプランとデザインの教科書』が、架空のスマホゲーム企画書で「モード」という言葉を使っています。「移動先指定モード」とか<ref>川上大典 ほか著『ゲームプランとデザインの教科書』、秀和システム、2018年11月1日 第1版 第1刷、P.255</ref>。 == 2Dマップ == {{コラム|コマンド「歩く」とかは不要| 暗黙の前提ですが、マップ中でキャラを移動させるためのキー操作は、十字キーで行わせるべきです。 当然だと思うでしょうが、しかし90年代の集英社「Vジャンプ」にあるゲーム取材記事によると、意外と当然ではないようであり、当時のゲーム会社の新人にUIを考えさせると、よくコマンドを増やした提案をしがちだったようです。 あるゲーム会社では、そういうコマンド増加の提案に対し、ゲーム会社の先輩はよく、コマンド「あるく」という例をダメな例として説明して教えていたようです。 たとえば、もし十字キーではなく、コマンド「あるく」→ どちらのあし?   みぎあし   ひだりあし →  ほうがく?    きた にし ひがし みなみ →「ゆうしゃ ああああ は みぎあしを まえに だした。   ゆうしゃ ああああ は ひがしにいっぽ すすんだ。」 というゲームがあったらクソゲーでしょ?操作が面倒でしょ?こういうふうに、操作の多い余計なコマンドは削るんだよ。 ・・・と先輩社員は新人に比喩で説明してたようです。 }} === マップのアルゴリズム === 方針だけ述べる。具体的なコードは、上手い人のコードを参考にしよう(コードがけっこう長くなり、紹介がメンドウくさい)。 2Dマップがあると、俄然、RPGっぽく見えるようになって、ヤル気が出るので、さあ作ろう。 マップのデータは、ふつう、2次元配列で書く。 まず、グローバル領域で、たとえば <syntaxhighlight lang="c"> static int maptable[10][10] = { { 0,0,0,0,0,0,0,0,0,0 }, //0 y { 0,0,0,0,0,0,0,0,0,0 }, //1 { 0,0,0,0,0,0,0,0,0,0 }, //2 { 0,0,0,0,0,0,0,0,0,0 }, //3 { 0,0,0,0,0,0,0,0,0,0 }, //4 { 0,0,0,0,0,0,0,0,0,0 }, //5 { 0,0,0,0,0,0,0,0,0,0 } //6 }; </syntaxhighlight> のように、とりあえず配列を確保しよう。 ここで重要なのは、 確保した配列のタテとヨコは、ヨコの並びをx方向として、タテの並びをy方向としたとき、 <code> maptable[y][x] </code> のように確保されていることに注意する。 さて、各配列に「0」を入れても、はたして0番が何を意味するか、まだ何も決めていない。 ゲームにもよるが、とりあえず、何もマップチップを上書きしない領域だと定義しよう。 背景色と同じ色のベタ塗りのマップチップを作っておけば、それで上書きすれば、あたかも何も上書きしてないように見える。 いちいちif文などで、何も上書きしないように場合わけをするのもメンドウであるので、どっちの方式にするか、決めておこう。 さて、マップ用の配列は、作成したいマップで最低限必要なマス目よりも、やや大きめの領域を確保しておく必要がある。 たとえば、5×5のマップを作りたいなら、配列ではもっと大目に、たとえば 8×7 とか確保しておく必要がある。 もし、なんらかのバグで確保されていない領域を呼び出してしまうと、プログラムがエラーで異常停止してしまう。 たとえば、一番左端をもしx=0とした場合、もしこの場所に主人公がいると、さらにプレイヤーが「左端に行こう」と考えて、左ボタンを押したときに、エラーで異常停止してしまう。 こういう停止はメンドウくさいので、だったら念のため、最初から、マップを移動可能な場所よりも何マスか大目に確保しておくと安全である。 さて、まだ配列を確保しただけなので、「0」が何かとか、「1」が何かとか、まったく定義していない。 とりあえず、 :0番は、進入不可能の暗闇。 :1番は、床とか、草原とか平地とか、とにかく歩ける場所 としよう。 だと思ってればイイ。 たとえば、もし配列 maptable の宣言が、 <syntaxhighlight lang="c"> static int maptable[10][10] = { { 0,0,0,0,0,0,0,0,0,0 }, //0 y { 0,0,1,1,1,1,1,1,0,0 }, //1 { 0,0,1,1,1,1,1,1,0,0 }, //2 { 0,0,1,1,1,1,1,1,0,0 }, //3 { 0,0,1,1,1,1,1,1,0,0 }, //4 { 0,0,0,0,0,0,0,0,0,0 }, //5 { 0,0,0,0,0,0,0,0,0,0 } //6 }; </syntaxhighlight> のような宣言だったら、このマップでは真ん中のほうに4マス×5マスの移動可能な地帯がある。 その周囲は移動不可能になっている。 ともかく、このように、プログラマーは、まず、何番のマップチップが何を現すかということを、脳内で設計しておく必要がある。 配列の範囲外の読み込みエラー防止のためも兼ねて、0番は、すべてのゲームキャラが進入禁止としておくのは安全だろう。 あとはもう、win32 API などの機能を使って、マップチップの画像を配列にもとづいて各マスごとに表示すればいい。 前提として、まずマップチップ画像の読み込みを行う必要がある。あるいは、画像をあらかじめ実行ファイルに組み込んでおく必要がある。 画像の実行ファイルへの組み込みは、Visual C++ にそういう機能があるので、それを使えばいい。 画像を読み込みたいなら、ゲーム起動時にでも読み込んでおけばいい。 イメージ的にコードの雰囲気(ふんいき)を書くと、たとえば <code>case WM_PAINT:</code> の節に、下記のように for文などを使って画像ハンドらに画像を代入するコードを裏画面に書いていき、最後にまとめて本画面に描画することになる。(「裏画面」とか「ダブルバッファリング」と言われるテクニックを使います。詳しくはネット検索して調べてください。) ;(イメージ) ::(※ あくまでイメージです。このままでは、動きません。) <syntaxhighlight lang="c"> int iTemp; for (x_map = 0; x_map <= 9; ++x_map) { for (y_map = 0; y_map <= 6; ++y_map) { iTemp = maptable[y_map][x_map]; // 配列の文字が長いので、いったんiに置き換え hbmp = hbmp_mapchip_list[iTemp].hbmp_mapchip; SelectObject(hMdc, hbmp); BitBlt(hbackDC, 225 + x_map * 32, 140 + y_map * 32, 32, 32, hMdc, 0, 0, SRCCOPY); // DeleteDC(hMdc); // これを入れると、マップが表示されない。 } } // 裏画面から本画面に転送 BitBlt(hdc, 0, 0, 700, 500, hbackDC, 0, 0, SRCCOPY); hbmp = NULL; // 初期化。 // 中間ハンドルからhbmpを解除 SelectObject(hMdc, NULL); SelectObject(hbackDC, NULL); // 不要になった中間物を削除 DeleteDC(hbackDC); DeleteDC(hMdc); DeleteObject(hbmp); } </syntaxhighlight> SelectObject や BitBlt は、Win32 API の専用の関数なので、分からなければ読者で調べてください。 なお、マップチップ画像そのものの作成は、単にWindowsアクセサリ『ペイント』などの画像作成アプリでビットマップ画像を用意すればいい。 ツクールやウディタなどだと、いくつかのマップチップをまとめた「タイルセット」などを取り扱うが、実はプログラミング的には、わざわざタイルセットを作らなくても、マップチップ1個ずつを読みとりすることも可能である(単にwin32APIのビットマップ画像の読みとりの機能を使えばいい)。 (win32 API の初期設定のままではビットマップしか表示できないハズ。PNGなどを使いたいなら、GDI+の設定を行うこと。GDI+については説明を省略。)。 なお、マップチップのサイズの規格は、よくある規格は16ピクセルの倍数で、「px」をピクセル単位の意味として16px×16pxまたは32px×32pxまたは64px×64pxのマップチップ規格がよくある(ツクールやウディタのマップチップのサイズ規格も、この系統)。 とりあえず、私たちにとって作るのがラクなのは、小さいほうが作成がラクなので、とりあえず16×16のマップチップを作ろう。 プログラム技術としてはマップ表示は単なる二次元配列なので難しいことは無い。しかし、その他の準備が忙しく、たとえばマップチップ用のビットマップを用意したりとか、あるいはキーボード操作のプログラムを作ったりとか、そういう準備が難しい。 これだけだと、まだマップを表示しただけなので、さらに主人公キャラのキャラチップとか、主人公がx=何マス目、y=何マス目にいるかの変数とかも宣言する必要がある。 主人公チップを移動させる際、ドラクエ1みたいに1ピクセルずつ動かしたいと思うだろうが(実際は何ピクセルかしらないが)、しかしそれは難しい。まずは、十字ボタンを押したら、その方向にいきなり隣のマスに動く仕組みをつくろう。 しかし、これすら、また難しい。 win32APIなら、ボタンを押して話す動作で1回の入力と判断してくれる。 なので、win32APIで隣マス移動の仕組みを作るのは、比較的にラクである。 しかしDXライブラリの場合、1瞬だけボタンを押しただけでも、何十回も入力があると判断され、 いっきに壁際のマスまで動いてしまう。 なのでDXライブラリのマップ移動の作成の場合、まずはタイマー系の関数を利用し、一定時間のボタンの押し続けがあって初めて「入力された」と判定すうプログラムが追加になる。 なお、win32APIでも別のシーン(たとえば戦闘モードでのコマンド決定後の自動処理など)でタイマー自作が必要になるので、どちらにせよラクではない。 最終的には、21世紀的な一般的なゲームを作りたいなら、(win32APIではなく)DXライブラリで作るのがラクである。 (ただし本セクションでは説明のしやすさの都合から、win32APIで説明した。) もし、ドラクエ風に1ピクセル(ないし数ピクセル)ずつアニメーション的に動かしたいなら、DXライブラリがほぼ必須であり(原理的にはwindowsAPIでも出来るが、しかしwindowAPIでのアニメーション表現はとても手間が多く難しく、強く薦めない。)、DXライブラリで開発しているRPGコードに、タイマー計算するコードと組み合わせて、下記イメージのようになる。 ;(イメージ) ::(※ あくまでイメージです。このままでは、動きません。) <syntaxhighlight lang="c"> if (moving == 1 && nyuuryokuMatiLR > 0) { // nyuuryokumati は「入力待ち」時間の意味 nyuuryokuMatiLR = nyuuryokuMatiLR - 1; // タイマーとして流用 } // 移動の終了処理 if (hero1_direction == rightward && moving == 1 && nyuuryokuMatiLR <= 0) { keyEnableRight = 1; // moving 回復までに時間が掛かるので、ここは1に。 nyuuryokuMatiLR = waitTime1; nyuuryokuMatiLeft = waitTime1; nyuuryokuMatiRight = waitTime1; xPosi++; // 右へ1マスだけ移動 moving = 0; townFlag = 0; } } // 右移動 </syntaxhighlight> // nyuuryokumati は「入力待ち」時間の意味 上記コードの仕組みは割とひどく、マップ移動中の特定の左右方向用のタイマーを、今後の戦闘モードなど他のすべてのタイマーと流用するという、ひどいコードである。 ナナメ移動にも対応したりを考える場合、左右(LR)方向と上下(UpDown)方向のキーボード入力を別々の変数として処理する必要があったりと、割と面倒くさい。 移動先が移動可能でないカベや川なのに移動できたらおかしいので(ドラクエだと川は移動不能。『信長の野望』での渡河とか野暮にツッコまないこと。)、 事前にそういう移動可能判定を色々とクリアしたら、移動中モードとしてmovingが1になるようにしているコードである(長くなるので上記コードでは省略した)。 キーボード入力の判定は、事前のmoving側の判定計算ですでに行っているので、上記コードでは省かれている。実際にはさらに、下記コードのようなキーボード入力判定プログラムが、上記コードの直前あたりに付け足される必要がある。 <syntaxhighlight lang="c"> // 移動先予定地の入場可否の判定 if (CheckHitKey(KEY_INPUT_RIGHT) == 1 && keyEnableRight == 1 && moving == 0) { if (map1table[yPosi][xPosi + 1] == 1) { destMovable = 0; } if (map1table[yPosi][xPosi + 1] == 0) { destMovable = 1; } // 入場可能ならフラグ設定 if (destMovable == 1) { // destとは目的地点 destination の略。 moving = 1; hero1_direction = rightward; keyEnableRight = 0; nyuuryokuMatiLR = waitTime1; } } </syntaxhighlight> いったん移動し終わったら、もはや移動中ではないので、再度movingをゼロに戻し、また移動可能判定を調べなおす、という手間になる。 マップ移動だけでも、こんな手間になる。 だから、市販の『中学生でも分かるゲームプログラミング』的な題名の本でこういう手間が無いのは、 それはその市販本の著者が、初心者が苦手感を抱かないように独自のライブラリなどで上記のような手間をライブラリ側に隠蔽する工夫などをしてるだけにすぎない。 ネットに出回るデマの、「RPG風のUIをつくるのは簡単」というのは、つくづくウソである。ドラクエ1風のUIですら、なかなか面倒である。 (『中学生でも分かるゲームプログラミング』的な本の手間だけでドラクエ1風UIが作れると思ってる、本を読んだだけの知ったかぶりが、ゲームプログラミング経験者ヅラしているということであろう。) {{コラム|移動時の背景スライドのフレームレートにウェイトは不要| ゲームでは、キャラクタの移動において、背景を固定してキャラの位置を動かす方式と、もうひとつの方式としてキャラを中心ちかくに固定して背景をキャラ進行方向とは逆に送る方法があります(たとえばキャラが右に移動するには背景を左に送る方式)。 もし背景のほうをスライドさせる方式の場合、背景のフレームレートは基本、けっして余計なウェイト(待機時間)をはさまずに、つまり必ず 60FPS( または120FPS )にして滑らかに背景を動かす必要があります。 根拠として、すでにアニメ業界で同様のことについて実験結果が知られており、昭和の後半の時代にガンダムなどを作ってる会社(サンライズ社)が、当時に実験済みであり、実験として「アニメ業界ではキャラクタの動画は1秒間に8枚だが(※ 現在でいう 7~8 FPS くらい)、背景(アニメの普通は背景は 30FPS くらいで動かしている)もキャラみたいに1秒間に8枚またはそれ以下の枚数で動かしてみたらどうなるか? ためしに社内で実験してみよう」と背景のスライドのコマ数を色々と変えてみて背景送りスピードにウェイトをはさんでみる実験したことがあります。そのアニメ会社の実験の結果、(30FPSでない10FPS以下程度での背景の動かす方式のは)「見るに耐えなかった」という結果が、ガンダムシリーズの生みの親である富野監督のインタビューなどで公言されています。 人間の視覚の生理的な感覚はアニメファンの目でもゲームファンの目でもそう違いはないはずですので(同じ人間という生物の視覚ですので)、せっかくアニメ業界が公開してくれた過去の知識を活用しましょう。 なお、2020年代の現代のTVアニメでも、歩行シーンなどで背景を動かす方式の場合、動画プレイヤーでコマ送りをして確認すると、キャラは3コマごとに動きますが、背景は1コマごとに動いています。 }} === マップレイヤー画像について === * [[ゲームプログラミング/画面出力#RPGのマップレイヤー]] === 歩行グラフィック === ゲームにおけるキャラチップの歩行アニメーションの作画の定石は、テレビアニメの歩行の作画の定石とは、まったく違います。 説明の単純化のため、右向きの歩行を例に説明します。 ==== 3枚歩き ==== まず、ツクール水準の2D-RPGの歩行グラフィックではなんと、歩き始めの作画の立ちポーズのドット絵と、横向き時にプレイヤーから見てキャラ歩行中における右足と左足とが重なっているドット絵(便宜上「中ポーズ」と呼ぶとする)が、なんと同じドット絵です(テレビアニメ作画の常識とは大きく異なる)。 つまり2Dゲームのドット絵では、歩き始めと歩き中の中ポースとに、区別がないのです。 これは、実際にキャラチップのタイルと、キャラのゲーム中での歩行動画を録画して見比べると分かります。 テレビアニメ産業では、歩きお よび 走りの作画は、基本的になるべく滑らかに見せるために、6枚の絵を使います。 だからアニメ業界では「6枚歩き」とか「6枚走り」とか言います。 しかしゲームは違います。上記の言い方に習うなら、ゲームは「3枚歩き」です。「3枚歩き」というのは別にゲーム業界の用語ではなく、テレビアニメ業界での数え方をそのままゲーム業界に置き換えただけの本wikiでの独自的な呼び方です。 しかもゲームのドット絵では、走りと歩きの区別がありません。つまり、歩きのドット絵を、走りのドット絵でも使いまわします。 つまりゲームではドット絵だけなら 「3枚歩き」=「3枚走り」 でもあります。 ドット絵のゲームにおける走りと歩きの区別は単に、キャラチップのスライドさせる早さを切り替えることで区別しているだけです。 なお、テレビアニメ産業などでは、正面向きかつ走りシーン(ゲームにおける下キー入力時に相当)なら例外的に(6枚ではなく)4枚作画でも走りを描けることが知られています。なぜこれが通用するかというと、よく分析で言われるのは、6枚でなく4枚だと滑らかさはなくなりますが、しかし歩きではなく走りであるので動きに少々のギャップがあっても勢いがむしろ強調されるという点と、また6枚時の中ポーズのシルエットと4枚時の中ポーズノシルエットがあまり変わらないという点があるため、テレビアニメ業界では正面走りだけ「4枚走り」でも可能なのです。 しかしゲーム産業では正面向きでないのに、右向き左向き前向き後ろ向きすべてで、なんと「3枚歩き走り」なのです。ドット絵のゲームではキャラチップが小さいので、なんと3枚で歩きも走りも表現できてしまうのです。 このように、ゲームとアニメとでアニメーションの常識が大幅に異なります。 しかし、両業界でも一致している作画の風習もあり、それは歩行中グラでの頭の高さの上下運動です。 アニメ作画の頭の上下運動を文字だけで説明するのは難しいので、興味ある読者は外部サイトでアニメーターの作画教育サイトを見るなり、あるいは同人フリーゲーム用の公開キャラチップ素材などを実際に目で見るなどして、読者ご自身で研究してください。 ともかく、3枚で右向きの歩行を表現できます。RPGでは上下左右の4方向が必要なので、最低でも3×4 = 12枚 の絵画必要です。 なお、斜め歩行が加わると、2倍になるので必要枚数は合計24枚になります。 ;思考回路の切り替え もし、外部のゲーム用フリードット素材を使わずに「ゲームエンジンを一人で作る」というなら、上述のようなアニメ産業とゲーム産業での作画のギャップも知って絵を描く必要が生じるでしょう。頭の切り替えが必要になります。 今までプログラマー脳だったのを、ドット絵を描くのに絵描き脳に切り替える必要があって、しかも既存のテレビアニメ作画理論はそのままでは使えないので、ゲーム用に人気作のドット絵のグラフィックを研究しなおす必要が生じるのです。 ==== チップ作画の留意点 ==== ===== 3枚歩き ===== また、絵1枚ごとのRPGのキャラチップの作画も、テレビアニメとは違います。 まず、2D-RPGでは、前後向きのキャラチップの横幅のサイズ規格と、左右向きの横幅のサイズ規格が、RPGでは同じです。 しかし、テレビアニメでは、このような横幅はありえないのです。 なぜなら、人間が歩いていて左右の腕をふっていて前に突き出た状態の手先から胴体までの距離は、胴体の厚さに比べると、(手~胴体 の距離は)かなり長いです。 しかし、こういったリアルな腕の寸法に忠実に書くと、サイズ規格の横幅をオーバーしてしまい、少なくとも腕の片方の先がチップ外にハミ出てしまいます。 だから、進行方向側の腕だけは、2D-RPGキャラチップではあまり伸びていないです。 なお、進行中の胴体はやや進行方向に寄っています。これはリアルな人体がそうだからでしょう。 なので、もはや進行方向側の腕には、伸ばすだけの余裕がありません。 だから、進行方向側の腕を折り曲げる場合すらも存在します。または、進行方向側の腕だけ短くゴマかすなどしている場合もあります。 これは別に2010年以降の流行でなく、既に1980年代の商業ゲームでもファミコンのドラクエ3の勇者の母親のキャラチップも、実は進行方側に腕を伸ばしたときは、腕を折り曲げています。 なお、ドラクエ3の主人公である勇者は、剣を持っているので、利き腕の右手がもとから折り曲がっており、よく分かりません。 また利き腕の表現のためドラクエ3では、右向きと左向きのキャラチップを、けっして反転処理でゴマかさずに、きちんとポーズを書き分けています。 ともかく、一般にRPGの歩行キャラチップでは、進行方向の腕があまり伸びてないので、バランスを取るためにRPGでは、進行方向の反対側の手足を、目いっぱい、伸ばしています。 これはリアルで考えるとありえないし、テレビアニメでもありえない作画です。 ですが、ゲーム産業の2D-RPGでは、昔からこういう作画がよく行われています。 ;歩きの滑り 2D-RPGの歩行ではキャラは地面を滑ります。横向きグラフィックだと、比較的に確認しやすいでしょう。 テレビアニメだと、キャラが滑っているように見えなくさせるためもあってか6枚も使って作画する一方、 2Dゲームでは正反対であり、2D-RPGゲームでは「滑り上等!」な態度の作画です。 走りシーンだったら、「まるで滑っている」かのように高速で走っている身軽なキャラのようにも見えるのですが(実は、実際に足の作画が滑っているだけ)、 2D-RPGでは歩きですら滑りある作画です。 「3枚歩き」で描く以上、こういうリアリティを無視した作画ですので、あまり他のリアリティにこだわっても仕方ありません。 {{コラム|デッサン的なこと| ;後頭部は意外と大きい なお、横向きの顔で、後頭部の髪のある部分の大きさが、顔前面の髪のない部分の大きさと同じくらい囲う東部のほうが大きいのは、 これは現実のデッサンと同じです。後頭部は意外と大きいのです。 例としてアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』の主人公・碇シンジの後頭部の大きさが、顔と同じくらいなのは、別にけっして「親父の碇ゲンドウが天才科学者だから息子シンジも遺伝で脳が大きくて後頭部も大きい」とかではなく、もともと人間の後頭部というのはあのくらいの大きさなのです。 ;上マツゲは頭の中間位置ぐらい また、目より上の頭の頂上までの大きさが、アゴから上マツゲまでの長さと同じくらいなのも、これは現実と同じです。 つまり、上マツゲは、頭の中間くらいの位置です。 ついつい、髪の毛の生え際の位置につられて、目より上の頭部の大きさを小さく認識してしまいますが、それは錯覚です。実は、目より上の部分の長さは、意外と長いのです。 また、ゲームの場合、45°上の角度から見下ろしているので、すると後頭部が少し見えることも意識すると、もうすこし長く書いても構わないのかもしれませんが、しかしチップのサイズ規格に上限があるので、あまり頭部を伸ばすこともできません。 }} ===== 初心者の抱きそうな疑問 ===== ;キャラチップの横幅を大きくしたら? 標準的なキャラチップの前側の腕は折りたたまれています。原理的には、キャラチップの横幅を長くすれば、横向き歩きのゲーム作画において、リアルの作画や、テレビアニメの作画に近づけることはできます。 ですがそれをすると、キャラチップがそのぶん大きくなってしまい、そのせいでチップタイルの横幅が大きくなってしまいます。 正確には計算していませんが、少なくとも2.5倍くらいは横幅が長くなると思います。斜め移動も含みで考えると、通常のツクールなどのチップタイルはやや横長なのに、さらにそれを2.5倍に長くするのは、やや編集時に見づらいかもしれません。 ドット絵のキャラチップという小さくて見づらい絵の、さらに「腕」という2ドット(枠線まで含めると4ドット)くらいしかない部分に対して、そこまでする必要あるのか、意義が不明です。 このように、ゲーム演出の特有の事情もあります。 :プログラム側の事情 また、もしキャラチップの横幅の規格だけ長くすると、マップチップの横幅の規格と、食い違いが出てきます。このため、プログラムがやや難しくなります。 なるべくキャラチップ横幅とマップチップ横幅の規格の長さが近いほうが、プログラムは楽になります。 このように、プログラミング側の事情もあります。 ===== どうしてもリアルにアニメしたい場合 ===== ;どうしても腕振りをリアルに近づけたいなら それでも、どうしても腕の振りをリアルやテレビアニメに近づけたいなら、 キャラチップのサイズ規格を変えるのではなく、キャラチップのサイズ規格はマップチップ規格と同じくらいの長さにしたままにして、 歩行時にキャラチップを3枚横につなげるなどの方法もあるかもしれません。3枚の真ん中のチップが胴体と腕の付け根側で、隣の左右チップがそれぞれの腕の先端側に対応、という手法です。おそらくですが、ファミコン時代の古いアクションゲームでも、巨大ボスなどを、複数のチップをつなげて作画していたでしょうから、そういうのを現代的に応用する手法というわけです。 ただし、これだとキャラの処理速度の負担も、単純計算で3倍になります。(実際は、左右のキャラチップは無描画の場合もあるし、描画量が少ないので、もっと少ないが。) 主人公とかボス敵だけのキャラチップなら、グラフィック重視のゲームなら、その意義もあるかもしれません。しかし、果たしてモブキャラのキャラチップにまで、そこまでのチップ3倍にする手間を掛ける価値があるかどうか。 また、製作ツールなどの事情により、読み込みできる画像の枚数に制限のある場合があるので、あまり目立たない部分のために画像を1枚増やすのは非効率です。 ですが、べつに全キャラに6枚歩きを実装する必要もありません。お好きなように。 ;ミニゲームで分離など どうしてもドット絵で手足の動きをリアリティある書き方で細かく表現したいなら、いっそ、ゲーム本編ではなく別途ゲーム中にミニゲームでリアルな腕の振り方のあるミニゲームを組み込むなどの方法のほうが、良いかもしれません。 この方法なら、たとえばもし2D対戦アクションゲーム(スト2みたいなの)のミニゲームを組み込んだら、歩きや走りだけでなく、ジャンプだろうが座りだろうが、もはやパンチやキックや剣撃なども思う存分に大きく作画できますし、作画によってゲーム性も向上します。(アクションゲーム特有の非リアル描写もあるだろうが、本ページはRPGの教科書なので、アクションゲームの非リアル描写には深入りしない。) 背景を手書き背景イラストにすれば、マップチップのサイズ規格に縛られる必要もなくなるので、思う存分にキャラの好きな大きさで作画できますので、腕などの細かい部分も目立つ大きさで作画できるでしょう。 ただし、この方法の背景だと、スーパーマリオのような、背景の空中ブロックの上に、キャラがジャンプして飛び移ったりとかの処理は、スト2的ゲームのままでは不可能です。別途、マリオ的システムのプログラムを組む必要があります。つまり「スト2のようなスーパーマリオ」というゲーム企画を実装する必要が生じてしまいます。 また、ツクール的システムのRPGでなければ「3枚歩き」に縛られず、歩きと走りの作画を分離するのも自由ですし、「6枚走り」と「6枚歩き」のシステムにすることで「滑り」も無くせてリアリティ向上します。そこまで作画する意欲があればの話ですが。 ===== 2D-RPG歩行のドット絵の描き方 ===== 歩行グラフィックの切り替えパターンはゲームごとに違うのですが、下記コラムでは実装のラクなパターンを紹介します。 なお、ツクールやウディタの歩行パターンとは異なります(ツクールなどは、もっと複雑なパターン。後述する)。 {{コラム|プログラマー用のドット絵制作のコツ| ドット絵の書き方ですが、プログラマーの場合、絵の表示のテストをしないといけないので、絶対に最初は下書きまでに止めます。細部は書き込まないのがベストです。(下書きの手法については、別コラムでまとめてあります。) なぜなら、もし自作プログラムでRPGをゼロから作る場合、表示プログラムのコーディングをしながら絵を描くので、プログラマー脳と絵描き脳を、まるで反復横とびのように何度も行ったり来たりします。だから絶対に、この段階では(作り始めの段階では)絵は下書きまでに止めます。下書きで描くドット絵はすごく大雑把なラフ画でいいです。 さて、いきなり4枚描く前に、まず2枚だけでいいので、方向による表示の切り替えプログラムをテストします。 たとえば最初の1枚は下向き静止画像でしょうから、残り1枚は、右向きか左向きか上向きの静止画像になると思います。 たぶん、多くの人は右向きか左向きを書くと思います。後ろ向きをまっ先に書きたがる人なんて、いるとしても一部の重度のアニメ作画マニアぐらいです(アニメーターは360度いろんな向きでポーズを描くので)。 とりあえず説明の簡単のため、私たちプログラマーは右向き静止画像のドット絵を書いたとしましょう。 さて、とりあえず下と右の2方向の表示の切り替えプログラムさえ出来れば、同様のアルゴリズムでどうせ左向きと後ろ向きの静止画像も表示できるだろうから、さっさと歩行中の足を上げてるポーズの作画に入ります。そっちのほうがプログラマ-的には楽しいと思います。 で、すでに右向きの静止ポーズは描きあがっているとして、さらに前足を上げているポーズを1枚書いたとします。つまりこの時点では右向き絵は、静止右向き絵 と 足上げ絵 の合計2枚あります 1マスの歩行に60フレームを使っている場合、とりあえず表示フレームのタイミングは二等分により、 :前半の30フレーム中に前足あげポーズを表示、 :後半の残り30フレーム中に静止ポーズを表示すれば、 とりあえず何とか歩いているっぽく見えます(実機で確認ずみ)。 次に後ろ足を上げているポースも書き終えたら、今度はフレーム間隔を調整して変更し、3枚の右向き絵がありますが、三等分すれば 60÷3 <nowiki>=</nowiki> 20 なので、 :前半の20フレーム中に前足あげポーズを表示、 :中盤の20フレーム中に後ろ足あげポーズを表示、 :後半の残り20フレーム中に静止ポーズを表示すれば、 とりあえず歩いているっぽく見えるでしょう(確認ずみ)。 静止ポーズ中の20フレーム中に、直立ポーズのままスライドするのはリアリティ的には奇妙ですが、 しかしこの静止ポーズがないと表示テストでは隣マス(1マス目)の到着直後にさらに隣マス(2マス目)に直進するときにキャラクターがまるで膝蹴りを発動しているかのようなアニメになってしまうので(実機で確認ずみ)、 決断によって静止ポーズのまま20フレームぶんをスライドさせるべきなのです。 }} 実はツクールやウディタなどの歩行アルゴリズムは、本ページの上記コラムのプログラムのようにはなっていません。 なお、ツクーツとウディタで、キャラの標準的な歩き方のアルゴリズムは両方とも、 :前足を上げる状態で進む → 直立 → 後ろ足をあげる状態で進む → 直立 → 前足を上げる状態で進む → 直立(同様に繰り返し) のように、直立ポーズを挟んで、前足あげと後ろ足あげを交互に繰り返す方式です。(最初に始まるのが前足か後ろ足かの若干の違いはあるかもしれませんが、本質的ではないので深入りしない。) けっして、 :前足を上げる状態で進む → 後ろ足を上げる状態で進む のようにはなりません。 これはおそらく、直立のように見えるグラフィックが、実は歩行中の前足と後ろ足とが重なった状態を兼ねている表現だろうと思われます。 そのほか、ツクールやウディタで1マスだけ進むのを繰り返すと分かりますが、 1マスしか動かないで停止したとき、キャラチップをよく見ると、その場で足踏みして最終的に直立して止まることがあります。 ツクールもウディタもソース非公開なので不明ですが、これはプログラム的には仕組みはおそらく、 移動中の間だけ「移動中カウンタ」的な変数が進み、それが一定値になると0に戻るという仕組みを繰り返していると思います。 そして隣マスに到着時の進行判定の際、もし右ボタンが押されていなくてマスに停止しており、 移動中カウンタがまだ0に戻る前の値だったら、その値を保存したまま、 表示プログラム用にカウンタ値だけカウントアップしていって0に戻るまで表示が進むような仕組みで、実装できるかと思われます。 もし読者がツクールやウディタっぽい歩行アルゴリスムを実装したいなら、ご自身で研究してください。どのみち、ツクールとウディタで、歩行のポーズ切り替えタイミングなど微妙に違いますので、統一されていません。 どのみち、たとえばファミコン版ドラクエ3のアルゴリズムは、ツクールやウディタとも違います。ドラクエ3ではマップ上でマスに立ち止まっても、キャラチップは静止せずに足踏みを続けます。 このように歩行パターンはゲームそれぞれです。 {{コラム|ドット絵の下書き手法| テレビアニメの下書きとは、ドット絵は、作画の順序や手法が大きく違います。 テレビアニメの下書きでは、まずエンピツで線画を描き(「原画」(げんが)という)、あとから色を塗る(バケツ塗り)という手法です(「彩色」(さいしき)という)。(このあと「撮影」とか「編集」とか色々な工程があるが、ゲームに関係ないので省略。) ですが、ドット絵はこれとは作画の順序や手法が大きく違います。 ドット絵グラフィッカーによって手法は個人差があるでしょうが、とりあえず一例として、下記のようなドット絵の書き方を紹介します。もちろん、コンピュータ上でのドットエディター上での作業です。 :前後左右4方向の中ポーズ(立ちポーズ)のラフ色塗り : ↓ :ゲームに組み込み目視で画面を見てテスト : ↓ :テストで異常あれば下書きを修正。異常なければ次に進む : ↓ :前後左右の腕足振りポーズを2枚ずつ色塗りで大まかに下書き。(3枚作画なので、あと2枚が追加で必要) : ↓ :ゲームに組み込み目視で画面を見てテスト : ↓ :テストで異常あれば下書きを修正。異常なければ次に進む : ↓ :これから細部の書き込みに進む。細部に興味なければここで終わる。 : ↓ :(細部の書き込みと、そのテストなど) : ↓ :(たぶん)終わり 上記フローのような書き方は、あくまでRPGのマップ画面でのキャラチップのアニメの書き方だけに限定の手法です。だから、それ以外には、そのままでは応用できず、たとえば戦闘画面のモンスター画像などには応用できません。 あくまでマップ画面モードのキャラチップのみの話題です。 さて、ではなぜ上記のような手順で描くと合理的なのかを説明します。 もし40px × 40px 程度のドット絵なのに、テレビアニメのように色の違う箇所すべてに枠線を書こうとすると、ゲームのチップは小さいので服の模様などによってドットが黒一色(rgb値が 20,20,20 とか)で潰れてしまうので、色がなにも見えなくなってしまうから、テレビアニメ的な作画の手法は使えないのです。 だから基本、ドットの下書きでは、まず、色を大まかに塗ります。この際、ポーズも大まかに仮に決めて、下書きのときに一緒にポーズを書きことになるでししょう。 なぜ、静止ポーズの前後左右4枚を先に描くかというと、歩行中の残り8枚の絵よりも静止4枚のほうがプレイヤーの目に入る時間が長いからです。 ポーズボタンのないRPGの場合、もしプレイヤーが歩行中8枚の絵のいずれかをじっくり見ようと思ったら、プレイ動画を録画してから一時停止などの手間が必要です。 しかし静止ポーズ4枚は、何もしなくてもプレイヤーが画面の前でボーッとしてるだけでも目に入ります。 だからこの4枚を優先的に作画していく必要があります。今後の工程で細部の書き込みをする際にも、静止ポーズ4枚を優先して細部を仕上げると良いでしょう。 そして、大雑把に色が塗れたら(すごく雑(ザツ)な塗りでいいです)。最低限、向きは前後左右の4ポーズの立ちポーズを描かないといけないので、とりあえず、さっさと4枚を大雑把に早く書いて、実際のゲーム画面で表示テストしてみます。 ゲームドットの下書きなので、けっして細かく書く必要はないです。一方、テレビ番組アニメ用のアニメーター教育などだと、「練習でも細かく描け。すると本番ではそれを早く書けるようになっている」と教育する場合もありますが、しかしゲームのドット絵の下書きの場合は目的が違います。 実際にテストで確認してみて、問題があれば書き直しです。 だから、もし最初から細かく描いてしまうと、書き直しになったときにそれを消さないといけないので、無駄になってしまうのです。だから、色を大まかに塗るだけなのです。 そして下書きのドット絵の中ポーズの4方向の向き転換などをテストしてみて違和感がないことを確認できたら、次に手足を振っているポーズの作画にとりかかります。ここでも、色を大まかに塗るのと、ポーズを決めるだけです。 そして、とりあえずテストで実際のゲーム画面中で動きのアニメーションを確認してみて、「キャラがおかしなポーズになってないか?」とか、遠めで見たときに歩いているように見えるかとか、そういうことを確認していきます。 どのみち2D-RPGゲ-ムでは(テレビアニメではありえない)3枚作画で歩きを買いているので、少々の滑りや、実際とのポーズの少々の違いは無視です。 }} おおむね、こういった作画の流れになるでしょう。もちろん個人差はあるでしょう。ですが、けっして「いきなり細部から描く」ことはしないのは、ほぼ確定でしょうし、線画はドットが潰れるので輪郭以外の線は描かないことも、ほぼ確定でしょう。 あくまで、2D-RPGのキャラチップの 40px × 40px 程度のドット絵だけに限定した話です。なので、反論などで顔グラフィックなどキャラチップ以外の話題を出されても、ピント外れです(相手が言ってもいないことで反論することを「[[w:ストローマン|w:藁人形論法]]」(わらにんぎょう ろんぽう)と言います)。ましてやRPG以外のアクションゲームなどのドット絵の手法で反論しないでください。 ===== デッサン的なこと ===== {{コラム|髪の揺れ と腰のねじれ など| 女性キャラのチップだと、前後の歩行中チップでは髪やスカートが左右にゆれたりします。男性キャラでも、マントを羽織った騎士などなら、マントが揺れたりします。 テストでは、そういう点をチェックをしていくことになるでしょう。 こういった感じで実際にゲーム画面中でテストしてみて、もし問題がなければ、あとで細部を書きこんでいくことになるでしょう。 また、キャラクターデザインの細部に興味がなければ、下書きの塗りを修正し終わった段階で、このままで完成としても構わないかもしれません。 なお、髪の毛が右に揺れる場合、足で伸びているのは反対側である左足です。 髪の毛が左に揺れる場合も、足で伸びるのは反対側である右足です。 これはなぜそうなるかというと、歩行時の腰の ねじれ を表現するためです。 普通の歩き方では、右手が前方に伸びているときは左手が後方に伸びており、このため上半身が左回転します。 このままだと体が左回転して進路が左にそれてしまうので、足側では左足が前方に伸びて右足が後ろに伸びることで下半身は右回転します。 こうして上半身が右回転する一方、下半身が左回転するので、全身では回転が打ち消されることで前方に歩行できます。 また、上半身と下半身とが逆方向に回転しているので、腰はわずかに ねじれます。 だから、髪の毛が右に揺れるなら、これは上半身が右回転した直後の表現なので、つまりこのとき下半身側では左回転した直後の表現になっていなければなりません。これはゲームに限らず、アニメでもそうでしょうし、現実の人体がそうでしょう。 なお、無理やり、腕の振りのタイミングと、足の降りのタイミングを一致させる歩き方を、ナンバ歩きといいます。つまり、右手が前に出ているときに右足も前に出る歩きがナンバ歩きです。 格闘技や古武術などだと、色々な理由によりナンバ歩きをする場合もあります。 だから、もしかしたら対戦格闘アクションゲーム(スト2みたいなの)ならナンバ歩きで描く場合もあるかもしれません。しかし、2D-RPGの歩行チップでは不要でしょう。 }} ===== ドット絵作画的なこと ===== さて、いくつかフリー素材を調べたところ、横向き時の中ポーズの足は、1本しか見えません。 ついつい歩行中の中ポーズも意識して足を微妙にズラして2本書きたくなりますが、しかし静止ポーズにも使うことと、ドット絵なので微妙な足の段差を表現しづらいことなどから、 決断して横向き時の足は1本しか見えないほうにするのが効率的でしょう。 どうしても中ポーズでも足2本を見えるようにしたい場合の裏ワザとして、2本の足が合体した太い1本足を描くというワザがあります。やや太めの1本足です。 一部のフリーゲーム素材がこういうワザを使ってドット絵を描いています。 ドット絵なんてこんなもんのゴマカシの連発ですから、あまり下調べの段階なのに細部を調べても仕方ありません。さっさと書き始めてから、書いてる途中に気になった点から手本を見直して調べていけばいいのです。いろいろと調べるの必要になりますが、さっさと書き始めるのも重要です。こういうのは、調べていたらキリがありません。 デッサンのコツなんて、細部を書き始める時点までに、把握できていればいいのいです。 仕事でなければ、イラストなんて最終的には描いた自分で満足できればいいのです。プログラマー視点で見るにしても、歩行プログラムの検証をできる最低限のイラストさえ書ければいいのです。 当ページはプログラミングの教科書ですので、まず先にプログラム検証のための最低限イラストを描くことになります。 == 戦闘 == * [[ゲームプログラミング/RPG/戦闘]] とりあえずバブルソートの話題など。ほか幾つか。 == データベース的なこと == * [[ゲームプログラミング/RPG/データベースとは]] == (※: 未確認)戦闘中のモンスター隊列 == さて、戦闘中のモンスター隊列の構成を定義するための配列(または同等の内容の数列)も、必要です。 まず、画面に敵を、表示したい順に表示するためも必要です。 また、上述の「素早さ順」での行動処理のためにも、前提として、敵パーティの構成を表すための配列が必要になります。 説明の単純化のため、敵は横一列に、左から右に、並んでいるとしましょう(ドラクエ2~3みたいな方式だとしましょう)。 たとえば敵が左から順に :ホブゴブリンが1匹、毒々スライムが1匹、ゾンビ兵士が1匹 出現したとしましょう。(説明の単純化のため、モンスターは各種類ごとに1体だけとする。) そして、ホブゴブリンのモンスター用データベース中でのIDが13番だとして、 毒々スライムのIDが8番、 ゾンビ兵士のIDが25番、 だとしましょう。 すると、この敵パーティを表すための配列として、 :{13,8,25,-99} のような配列が必要です。(もしくは、配列に格納できるような数値の列「13,8,25,-99」) 末尾の-99は、これはその配列の読み終わりとして使用するための数字です。この数字は、別に「-10」でも「-99」でもいいですが、モンスターのidとけっして重ならないようにする必要があります。 通常、なんらかのデータベースのidの値は0以上の正の整数ですので、マイナスの整数を「終了」の意味で使用しておけば、安全でしょう。 このように、敵側にも、配列が必要になります。 しかも、この敵側の配列は、そのゲーム中で出現する敵パーティの全パターンを用意する必要があります。 たとい1体だけしか出現しない敵でも(たとえばボス敵や強敵)、その1体分の敵パーティの配列が必要です。 たとえば、その1体だけで出現する、あるボス敵「暗黒大王」のモンスター用データベース中でのIDが205番だとしたら、 :{205,-99} のような、敵1体だけの配列を用意する必要があります。 === 余談: マイナスを含む並べ替え === なお、もしマイナスの数を含む数をふくめて並べ替えをしたいのでしたら、 上記の「-99」など終了処理を負数で区別する方法は、そのままでは使えないです。 たとえば、方向でもし東向きをプラス、西向きをマイナスとした場合、終了コードのつもりの「-99」は、誤解で「西に99マス」などと誤解される恐れがあります。 たとえば、 :-3 , 5 ,2, -6, -2 , 0 , 1 の並べ替えをしたい場合を考えましょう。 解決策としては、いろいろあります。 ==== 解決策1 ==== 一番ラクな方法は、要素数を新たな変数として追加し、それと組み合わせて配列を使うことでしょう。 たとえば、 :-3 , 5 ,2, -6, -2 , 0 , 1 は7個の数が並んでいるので、 youso = 7; みたいに新たに変数を用意します。 そして、たとえば最初の「-3」から順番意読み取りの際に、数えおわった個数を+1していき、+7になったら読み取りを終了することです。 この方法は、拡張性が高いのでオススメですが、ただし、要素を書く前に個数を宣言する必要があります。 実際の配列データは :-3 , 5 ,2, -6, -2 , 0 , 1, 0 ,0 ,0 , 0 ,0 ,0 , (以下略) のようになっているので、けっして数え終わって欲しいところでキリよく要素が終わるわけではないので、なので、要素数をあらかじめ宣言する必要があるのです。 さもないと、8番目の「0」が、読み取りたい数値としてゼロなのか、それとも、単にデータなしのためゼロなのか、不明になります。 終了コードなどとして負数を使用するのは、マイナスを含む並べ替えでは、あきらめましょう。それが安全でしょう。 ==== 解決策2 ==== 最初の解決策1(要素数を新たな変数として追加)がもっとも安全かつ簡単ですが、比較のため、別の解決策も紹介しておきます。 次の解決策2は、数学的にはエレガントですが、しかしプログラミング的には、煩雑になり、また、バグ時などのエラーの波及をしやすい欠点があります。 さて、並べ替えのもうひとつの解決策として、 一例は、符号と絶対値を分離して、その組み合わせとして処理することです。 たとえば、 :-3 , 5 ,2, -6, -2 , 0 , 1 の並べ替えをしたい場合、 プレイヤーからは表面的には「-6」は1つの数に見えまずが、これをあえて、「フラグhugouが状態2(マイナスに相当)である」「絶対値 zetai が6である」というように、2つの変数hugou と zetaiに分けます 符号がプラスなら、hugou = 1 にでもしておきましょう。また、ゼロは便宜上、hugou = 1 にしておきましょう。 すると、上記の数の並びは、(hugou, zetai)のベクトルで考えると、 :(2,3) , (1,5) ,(1,2), (2,6), (2,2) , (1,0) , (1,1) という組み合わせに変換するので、マイナスが使われない形になります。 なので、終了処理に、「-99」などの負数を割り当てても、並べ替え対象の数値と重なる心配がなくなります。: (2, 6,) , (2, 3) , (2, 2) , (1,0) , (1,1) ,(1,2), (1,5) :(2,3) , (1,5) ,(1,2), (2,6), (2,2) , (1,0) , (1,1),(-99,0) などのように、終了コード「(-99,0)」を末尾に追加しても、なんの混同の心配もなくなります。 さて、いったん上記のように、数を、符号と絶対値の組み合わせに分解して、同じ符号どうしで並びかえたなら、 あとは、符号が同じものどうしで、並べ替えをするだけですみます。 たとえば、 :(2,3) , (1,5) ,(1,2), (2,6), (2,2) , (1,0) , (1,1) の並べ替えをしたい場合、ベクトルの第一引数に注目し、※ (第一引数、第二引数) まず、 :(2,3) , (2,6), (2,2) のグループ : (1,5) ,(1,2), (1,0) , (1,1)のグループ に分けます。 そして、絶対値(例では第二引数)だけに注目すれば、 :マイナス数の絶対値は 3,6,2 → 2,3,6 と並べ替え → 逆順にして6,3,2 → マイナス符号をつけて -6,-3,-2 :プラス数の絶対値は 5,2,0,1, → 0,1,2,5 と並べ替え となるので、簡単に並べ替えできます。 あとは、これを合成し、 :-6, -3 , -2 , 0 , 1 ,2, 5 と、並べ替えできます。 なお、説明の都合上でベクトルを蒸気の解説で使ったが、しかしC言語にベクトルの機能は無いので、もし上記の機能を実装するなら配列や構造体配列を使って、ベクトルと似たような処理を実装することになる。 たとえば配列で実装するなら、符号用の配列 hugou[id] と、絶対値用の配列 zetai[id] のようなものを用意したりすることになるだろう。 もし1番目の最初の数が「-3」なら、符号フラグは2、絶対値は3だからベクトル表現では :(2,3) であるが、これは配列で表現するなら、たとえば :hugou[0]=2; zetai[0]=3; のように記述できる(C言語では配列の番号は0から数える)。 ;欠点 この方法は、一見すると数学的にエレガントに見えるかもしれませんが、しかし、もしバグやタイプミスなどによって数え間違えると、数え落としや重複があると、以降の符号が1個ずつズレてしまうなどの大きな影響があります。 たとえば、説明のため上記では :-3 , 5 ,2, -6, -2 , 0 , 1 の分解を :(2,3) , (1,5) ,(1,2), (2,6), (2,2) , (1,0) , (1,1) とマトメて書きましたが、 実際には :hugou 2,1,1,2,2,1,1 :zatai 3,5,2,6,2,0,1 のように別々の変数に分かれて保管されるのです。 もし、たとえば hugou の最初に、バグなどで「1」が加わると、 :hugou 1,2,1,1,2,2,1,1 :zatai 3,5,2,6,2,0,1,0 のようになってしまい、すべての符号が1個分、ズレてしまい、 :3, -5, 2, 6 ,-2 , 0, 1 ,0 となってしまいます。 正しい元々の数字の並びの :-3 , 5 ,2, -6, -2 , 0 , 1 と比べると、符号がいくつも間違っており(1個目と2個目と4個目が違う)、解決策2ではエラーの波及が大きいことが分かります。 == 脚注 == {{reflist|group=注}} == 参考文献など == {{Reflist}} [[カテゴリ:プログラミング]] 8bx7r3ik4ilwi0klr8ojccyntp8gui9 日本史/近世/江戸時代/中期 0 25575 305069 224067 2026-10-22T11:31:03Z Jcb 92857 305069 wikitext text/x-wiki この[[{{PAGENAME}}]]では江戸中期におこったことおよび文化を述べる。江戸時代すべてに共通する事項は[[日本史 江戸時代]]を参照。 そもそも中期は江戸時代という時代の内、最も安定していた時代と言っても過言ではないだろう。初期のように戦乱もなく、幕末のように外国船が訪れてくることもなかったためである。なお、このページでは主な将軍ごとに解説をする。 == 5代将軍徳川綱吉 == 5代目に将軍となった徳川綱吉は本格的に[[w:文治政治|文治政治]]を行っていく。文治政治とは'''大まかに言えば'''3代将軍徳川家光までの[[w:武断政治|武断政治]]と正反対のものである(詳しくは[[w:文治政治]]参照)。4代将軍徳川家綱の頃から行われていた文治政治だが、綱吉はさらに推し進める。後述の生類憐みの令は後期に出されたものだが、前期は善政と呼ばれるような政治を行っていた。 === 生類憐みの令 === 綱吉は学問を好み、城で家臣、更には意欲ある庶民に講義を行うほどだった。こうした背景から、法令にもそういった効果により[[w:儒教|儒教]]などが反映されたものが作られた。 同じ頃、綱吉は跡継ぎができないことに悩んでいた。綱吉の母、桂昌院が強く信心を寄せる仏僧、隆光に「上様にお子ができないのは前世で命を粗末になされたため」と言われたことを受けてか、{{ruby|[[w:生類憐みの令|生類憐みの令]]|しょうるいあわれみのれい}}を出した。しかし、この令は初期は良かったものの、だんだんとエスカレートし悪法と化していく。<ref>『山川 詳説日本史図録』160頁、詳説日本史図録編集委員会編、山川出版社発行、2015年1月25日発行、2019年10月20日閲覧、{{ISBN|978-4-634-02526-4}}。</ref>綱吉が戌年であったためか、犬は特に重んじられ、犬の戸籍も作られるほどだった。また、蚊すら殺してはいけなかった。具体的には[[w:生類憐みの令]]を参照。 ==== 別の見方 ==== 前述の生類憐みの令は現代から見れば今につながる動物愛護法の元祖と見ることができる{{個人の意見}}。度が過ぎていた{{個人の意見}}が。 === 赤穂事件(忠臣蔵) === [[w:赤穂事件]]参照。 == 6・7代将軍 徳川家宣・徳川家継 == {{Wikipedia|新井白石}} 綱吉の死後、将軍となった徳川家宣は自身の家臣で儒学者の新井白石を登用した。家宣が将軍となってまず最初に行ったのは生類憐みの令の撤廃である(なお、綱吉はこの世を去る間際に「自分の死後100年は生類憐みの令を公布せよ」と言い残している)。この法令の撤廃に際して牢から出ることを許された者は数知れず、ほぼ全てのこの時代を生きる人間は歓喜した。その結果、彼らの施政者としての評価は江戸時代を最も高かった{{個人の意見}}。白石は以下の可能ような時代政策を進める。 * 朝鮮との国書に使用する「日本国大君」を「日本国王」に変更 ** かつて朝鮮との国交樹立に際し対馬藩が偽造した国書にも使用されている。8代吉宗以降は元に戻る。 * 朝鮮通信使の待遇を簡素化 * {{Ruby|海舶互市新例|かいはくごいちしんれい|を}}制定 ** 金銀の海外流出の防止のため。詳細は後述。 ところが、白石の儒教に基づく理想主義の政策が現実と食い違ったことにより、政治は混乱した。 === {{Ruby|海舶互市新例|かいはくごいちしんれい}} === {{Wikipedia|海舶互市新例}} 白石が定めた海舶互市新例(通称:長崎新令)。金銀の海外流出を防ぐために施行された。清とオランダに対してそれぞれ定められている。 ==== 内容 ==== 以下は内容である。 ===== 清 ===== 清からの船を1年に30隻に限ること、および、そのうち出発地ごとに隻数を設定している。以下に表としてまとめた。 {| class="wikitable" |+ キャプション ! 発地 !! 隻数 !! 可搬荷高 |- | 台湾 || 2隻 || 銀130貫 |- | 広東 || 1隻 || 銀270貫 |- | 寧波 || 11隻 || 銀190貫 |- | 南京 || 10隻 || 銀190貫 |} 他シャム (タイ) など各地にも設定されているが、ここでは詳細を省く。そして、以上の制限を実行するため、{{Ruby|信牌|しんぱい|制}}を実行した。すなわち、貿易許可証である。 ===== ホーランド ===== 1年に2隻とすることが定められた。清と異なり、特に詳しくはさだめられていない。 == まとめ == 江戸時代中期は、5代将軍綱吉による極端な儒教に基づいた政治の後、6・7代目将軍の政治を担った新井白石による理想主義の政治が台頭した。 == 出典 == {{Reflist}} == 参考文献 == * 『山川  詳説日本史図録』 詳説日本史図録編集委員会編、山川出版社発行、{{ISBN|978-4-634-02526-4}} == 関連項目 == {{先代次代2 |タイトル = 日本史 |先代名 = [[日本史 江戸時代]] |現代名 = [[{{PAGENAME}}]] |次代名 = [[日本史 江戸時代/後期]] |背景色 = #EBF1F9 |代タイプ = 時代 |先代 = 前の |現代 = この |次代 = 次の |先代名要約上 = 1603-1700頃 |現代名要約上 = 1700頃-1750頃 |次代名要約上 = 1750頃-1850頃 }} {{スタブ}} [[カテゴリ:江戸時代|えとちゆうき]] liv62xofrjl9h9mf0peovv42kqf1s2v ごみ分別 0 25896 305024 242401 2026-10-22T09:30:17Z Jcb 92857 305024 wikitext text/x-wiki {{Pathnav|メインページ|その他の本|地球温暖化防止対策|frame=1}} {{Wikipedia|ごみ収集}} {{Wikipedia|3R}} == ごみを出す時は、車に気をつける。== 毎日の事ではないですし、 朝だと、頭もボーッとしていて、ごみをだすことに気を取られがちになります。道路を横断する時、特に注意が必要です。 車の運転手も,(通勤途中毎日のように)普段通りに車をとばしていることもあります。 == 違反シールの全国の市町村例 == 「[[ごみ分別/違反シールの全国の市町村例|違反シールの全国の市町村例]]」も参照。 違反シールの呼び方、絵柄は色々あります。ゆるキャラが表示してある事もある。 <!-- == 違反シールを貼られたごみのその後 == (全国規模に調査中)これは二番目の問題点でした。 --> == 違反シールを貼られないための対応 == * ごみの分別方法を理解して、ごみをだす。 * ごみの分別方法を聞く。問い合わせる。 * ごみ当番が監視する。 * ごみ袋に名前を書く。 * ごみステーションに監視カメラを設置する。 == 違反シールを貼られた後の対応 == == ごみ分別時の注意事項と小技 == 「[[ごみ分別/ごみ分別時の注意事項と小技|ごみ分別時の注意事項と小技]]」も参照。市町村によって、対応が異なります。 == その他問題点 == === ごみ違反シールが発生しやすい時期について === 新年度前後、転勤時期前後、家庭内ごみ捨て当番に変更があった時,気を付ける。 === 他町内からのごみ持ち込みについて === 近年町内会の付き合いが薄くなると、ごみを置いて行く人が、同じ町内の人か他町内の人か、判断がつかなくなることがある。ごみを置いていく人だから、普通におはようございますと、あいさつする。 さらに悪い事に、他町内から持ってくるくらいだから、分別されていないごみの可能性が高い。 町内会の回覧板で警告しても、効果がない。 === 資源ごみのぬき去り(抜き取り)について === 持ち込みに同じ。 車で来られると、ごみを下ろしているか、抜き去るため積んでいるのか? ほんの一瞬を狙われている。 新聞だと、全部持ち去らず4割ほど残して、気付かれないようしていく。 == 家庭内のゴミ箱の置き場所の検討 == === キッチンのゴミ箱の置き場所の検討 === # ゴミの量を知る。 # ゴミ出しまでの期間を知る。 # ゴミの箱の数を知る(お住まいになる地域の分別の仕方を知る)。 # 家事動線をシミレーションする。 === キッチン以外(屋外等)のゴミ箱の置き場所の検討 === # ゴミの量を知る。 # ゴミ出しまでの期間を知る。 # ゴミの箱の数を知る(お住まいになる地域の分別の仕方を知る)。 # 動線をシミレーションする。 == 賞味期限との闘い == == カビとの闘い == == 「ごみ分別の単品管理」への検討 == コンビニエンスストア「セブン-イレブン」の「商品の単品管理」を参考に、ごみも「ごみ分別の単品管理」を検討する。 JANコードの後ろに、さらに枝番号(項目、商品分類コード)を設ける。 (例)横浜市の場合 (例1)「サントリー烏龍茶」 容量525mL JAN45191848 45191848-キャップ      => ○曜日 プラ 45191848-ラベル       => △曜日 プラ 45191848-本体        => □曜日 ペット1 (例2)「リプトン紅茶」 JAN4902203519807 4902203519807-包装紙    => ○曜日 プラ 4902203519807-ホチキスの針 => △曜日 燃えないごみ 4902203519807-ヒモ     => □曜日 燃えるごみ 4902203519807-濡れた紙   => □曜日 燃えるごみ 4902203519807-茶殻     => □曜日 燃えるごみ (例3)草むしりの草(現在JANコードがない。20でもつける) 草                => ○曜日 燃えるごみ == 関連項目 == * [[小学校社会/4学年]](ごみの処理に関する内容を扱う) * [[中学校保健/生活に伴う廃棄物の衛生的管理]] * [[中学校社会 公民/環境基本法]] * [[コンメンタール環境基本法]] * [[w:ごみ箱|ごみ箱(Wikipedia)]] * [[w:単品管理|単品管理(Wikipedia)]] ==参考web== * [https://iiietsukuru.com/interior-037#i-5 キッチンのゴミ箱の位置を決めるためにチェックしておきたい4つのこと] * [https://www.jcpra.or.jp/consumer/tabid/820/index.phpプラスチック製容器包装に危険な異物を混ぜないで!~禁忌品混入防止のお願い~] == 参考文献 == * 百瀬 いづみ「簡単・きれい!ゴミの分け方・捨て方練習帖」(リヨン社) {{ISBN|9784576021706}} P43 ペットボトル飲料 / P42 紅茶のティーパック * 杉本 裕明,服部 美佐子「ゴミ分別の異常な世界―リサイクル社会の幻想」 (幻冬舎新書){{ISBN|9784344981331}} ==外部リンク== * [https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=403AC0000000048 資源の有効な利用の促進に関する法律] - [[w:e-Gov法令検索|e-Gov法令検索(Wikipedia)]] * [https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=403CO0000000327 資源の有効な利用の促進に関する法律施行令] - e-Gov法令検索 * [https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=413M60001400001 パーソナルコンピュータの製造等の事業を行う者の使用済パーソナルコンピュータの自主回収及び再資源化に関する判断の基準となるべき事項を定める省令] - e-Gov法令検索 * [http://www.meti.go.jp/policy/recycle/main/admin_info/law/02/shoureikaisei.html 資源の有効な利用の促進に関する法律関係省令] - [[w:経済産業省|経済産業省(Wikipedia)]] * [https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=405AC0000000091 環境基本法] - e-Gov法令検索 * [https://www.e-stat.go.jp/classifications/terms/30 日本標準商品分類<政府統計の総合窓口] * [https://bakusai.com/thr_res/acode=6/ctgid=104/bid=456/tid=7535521/ 【ごみ分別】富山市、滑川市、砺波市、上市町、横浜市] - 分類コードは日本標準商品分類(平成2年[1990年]6月改定)を参考<富山雑談総合掲示板|爆サイ.com北陸版 {{stub}} [[カテゴリ:ごみ分別|*]] [[Category:生活|こみふんへつ]] 3bhabjcp7ml4qzygavtj7eu55u4v7mh Go 0 28505 305087 301309 2026-10-22T11:40:23Z Jcb 92857 305087 wikitext text/x-wiki {{Pathnav|メインページ|工学|情報技術|プログラミング}} [[Go]]は、Googleが開発したオープンソースの汎用プログラミング言語であり、特にバックエンドサービスやネットワークプログラミングを主な目的として設計されています<ref name="Introduction">{{cite book | url = https://go.dev/ref/spec#Introduction | title = The Go Programming Language Specification Language version go1.23 (June 13, 2024) | chapter = Introduction¶ | date = June 13, 2024 | publisher = The Go website }}</ref>。 静的型付け言語であるため、高速で効率的なプログラムを作成することができます。また、並行処理を簡単に実装できるgoroutineという仕組みを持ち、高い並行性を実現しています。 Goの文法はシンプルで読みやすく、効率的にコーディングできるため、開発者は迅速に新しいコードを書くことができます。ガベージコレクションによって自動的にメモリを管理するため、メモリ管理に関する手間を減らすことができます。 さらに、Windows、macOS、Linuxなど、多くのプラットフォームで動作し、標準ライブラリが豊富です。多くの外部ライブラリも存在するため、広範な用途に対応することができます。 Goのコミュニティは活発であり、多くの開発者が参加しています。質問や問題解決のためのリソースが豊富であり、新しい機能やライブラリが定期的にリリースされています。 この教科書では、初めてGoを学ぶ人から、より高度なトピックに興味のある人まで、幅広い読者を対象に、Goの基本から応用までを網羅的に解説します。 __TOC__ == 目次 == ;チュートリアル篇 : [[/環境構築|環境構築]] : [[/実行の方法|実行の方法]] {{---}} [[Go/実行の方法#Hello, World|Hello, World]] : [[/文法の概要|文法の概要]] : [[/変数|変数と型変換]] : [[/算術演算と数学関数|算術演算と数学関数]] : [[/条件分岐と繰り返し|条件分岐と繰り返し]] {{---}} if, switch, select, for, break, continue, return : [[/関数|関数]] : [[/メソッドとインターフェース|メソッドとインターフェース]] : [[/ジェネリクス|ジェネリクス]] : [[/再帰的関数呼出し|再帰的関数呼出し]] : [[/メソッドチェイン|メソッドチェイン]] : [[/defer,panicとrecover|defer, panicとrecover]] : [[/並行処理|並行処理]] : [[/配列とスライス|配列型とスライス型]] : [[/マップ|マップ型]] : [[/構造体|構造体型と構造体スライス]] : [[/イテレータ|イテレータ]] : [[/Goのプログラムがどんなアセンブリにコンパイルされるか?|Goのプログラムがどんなアセンブリにコンパイルされるか?]] {{---}} go tool objdump : [[/クロスコンパイル|クロスコンパイル]] {{---}} GOOS, GOARCH : [[/cgoでGoのコードからCの関数を利用する|cgoでGoのコードからCの関数を利用する]] {{---}} cgo : [[/Goのコードでgoのバージョンを調べる方法|Goのコードでgoのバージョンを調べる方法]] : [[/HTTP|HTTP]] : [[/ファイル入出力|ファイル入出力]] : [[/コードギャラリー|コードギャラリー]] ;リファレンス篇 : [[/ソースコードの表現方法|ソースコードの表現方法]] : [[/キーワードと宣言済み識別子|キーワードと宣言済み識別子]] {{---}} [[/キーワードと宣言済み識別子#キーワード|キーワード]]・[[/キーワードと宣言済み識別子#宣言済み識別子|宣言済み識別子]]([[/キーワードと宣言済み識別子#組込み型|組込み型]]・[[/キーワードと宣言済み識別子#組込み関数|組込み関数]]) : [[/字句的要素|字句的要素]] : [[/定数と変数|定数と変数]] {{---}} [[/定数と変数#定数|定数]]([[/定数と変数#iota|iota]])・[[/定数と変数#変数|変数]] : [[/型|型]] : [[/型と値の特性|型と値の特性]] : [[/ブロック・宣言とスコープ|ブロック・宣言とスコープ]] {{---}} [[/ブロック・宣言とスコープ#ブロック|ブロック]]・[[/ブロック・宣言とスコープ#宣言とスコープ|宣言とスコープ]] : [[/式|式]] {{---}} [[/式#演算子|演算子]] : [[/文|文]] : [[/パッケージ|パッケージ]] : [[/プログラムの初期化と実行|プログラムの初期化と実行]] : [[/エラー|エラー]] : [[/EBNF|EBNF]] ;[[/標準ライブラリー|標準ライブラリー篇]] ;[[/改廃された技術|改廃された技術]] == バージョン間の変更点 == Go は、約半年ごとに新しいバージョンがリリースされます。バージョンが変わると、言語仕様に追加変更があったり、ツールチェーン、ランタイム、およびライブラリの実装に変更が加えられることがあり、稀に既存のプログラムに影響が出ることもあります。以下に、最新のバージョンから順に変更点を記載します。 === Go 1.26 === Go 1.26が、2026年2月にリリースされました<ref>{{cite book | url = https://go.dev/doc/go1.26 | title = Go 1.26 Release Notes - The Go Programming Language | date = 2026/02/10 | accessdate = 2026/02/11 }}</ref><ref>{{cite book | url = https://go.dev/blog/go1.26 | title = Go 1.26 is released! - The Go Programming Language | date = 2026/02/10 | accessdate = 2026/02/11 }}</ref>。 Go 1.26のリリースでは、言語仕様への便利な糖衣構文の追加、ツールチェーンの大幅な刷新、および新しい暗号化標準のサポートが含まれています。最も注目すべき変更点は以下です。 {{Main|[https://go.dev/doc/go1.26 Go 1.26 Release Notes - The Go Programming Language]|[https://go.dev/blog/go1.26 Go 1.26 is released! The Go Blog]}} ; 言語の変更点: :# <code>new</code> 関数の拡張:組み込みの <code>new</code> 関数が、引数として初期値を指定する式を受け取れるようになりました。例えば <code>ptr := new(int64(300))</code> のように、1行で初期値付きのポインタを作成可能です。 :# 自己参照的なジェネリック型:型パラメータリスト内で、その型自体を参照することが可能になりました。これにより、複雑なデータ構造やインターフェースの柔軟な実装が可能になっています。 ; 新しい標準パッケージ: :# crypto/hpke:{{RFC|9180}} で定義されている Hybrid Public Key Encryption (HPKE) をサポート。 :# testing/cryptotest:暗号化実装の適合性を検証するための共通テストスイートを提供。 :# crypto/mlkem/mlkemtest:ML-KEM 実装のテスト用パッケージ。 ; 実験的新機能: :# simd/archsimd:SIMD(Single Instruction Multiple Data)命令へのアクセスを抽象化する実験的パッケージ。 ; ランタイムとパフォーマンスの改善: :# Green Tea GC のデフォルト有効化:[[#Go 1.25|Go 1.25]]で実験的だった「Green Tea」ガベージコレクタがデフォルトで有効になりました。 :# cgo オーバーヘッドの削減:cgo 呼び出しのベースライン・オーバーヘッドが約 30% 削減されました。 :# スタック割り当ての最適化:スライスのバッキングストアがスタックに割り当てられる条件が緩和され、メモリアロケーションの効率が向上しました。 ; ツールの改善: :# go fix の完全刷新:Go analysis フレームワークを使用して書き直されました。新しい「modernizers」機能により、古いコードを最新の言語仕様やライブラリ機能に適合させる修正案(数ダースの種類)が自動提示されます。 :# //go:fix inline ディレクティブ:このディレクティブが付与された関数への呼び出しを、go fix が自動的にインライン展開する機能が追加されました。 ; 標準ライブラリの改善: :# crypto/tls:TLS 1.3 における X25519MLKEM768 鍵交換(ポスト量子暗号)がデフォルトで有効化。 :# math/rand/v2:PCG および ChaCha8 アルゴリズムによる乱数生成の安定性と速度が向上。 ; プラットフォームサポートの変更: :# macOS:macOS 12 Monterey をサポートする最後のバージョンとなりました。次期 [[#Go 1.27|Go 1.27]] では macOS 13 Ventura 以降が必須となります。 :# Windows:予告通り 32-bit ARM (windows/arm) ポートのサポートが削除されました。 Go 1.26では、開発者のコーディング負荷を軽減する言語仕様の改善と、エコシステム全体を最新化(Modernize)するための強力なツール提供に重点が置かれています。 === Go 1.25 === Go 1.25が、2025年8月にリリースされました<ref>{{cite book | url = https://go.dev/doc/go1.25 | title = Go 1.25 Release Notes - The Go Programming Language | date = 2025/08/12 | accessdate = 2025/09/27 }}</ref><ref>{{cite book | url = https://go.dev/blog/go1.25 | title = Go 1.25 is released! - The Go Programming Language | date = 2025/08/12 | accessdate = 2025/09/27 }}</ref>。 Go 1.25のリリースでは、実験的機能を含む多くの重要な改良が含まれています。最も注目すべき変更点は以下です。 {{Main|[https://go.dev/doc/go1.25 Go 1.25 Release Notes - The Go Programming Language]|[https://go.dev/blog/go1.25 Go 1.25 is released! The Go Blog]}} ; 言語の変更点: :# 言語仕様上の変更はありませんが、言語仕様書からcore typesの概念が削除され、専用の記述に置き換えられました。これによりより正確で理解しやすい仕様書となっています。 ; 新しい標準パッケージ: :# testing/synctest:並行コードのテストをサポートするパッケージ。仮想化されたクロック機能により、並行プログラムのテストがより効率的に行えるようになりました。Go 1.24では実験的機能(GOEXPERIMENT=synctest)でしたが、Go 1.25で正式にサポートされました。 ; 実験的新機能: :# 新しい実験的ガベージコレクター:GOEXPERIMENT=greenteagcで有効化可能。小さなオブジェクトのマークとスキャンのパフォーマンスが大幅に改善され、実世界のプログラムでガベージコレクションのオーバーヘッドが10-40%削減される見込みです。 :# encoding/json/v2パッケージ:GOEXPERIMENT=jsonv2で有効化可能。既存のencoding/jsonパッケージの大幅な改良版で、特にデコード性能が大幅に向上しています。 ; ランタイムの改善: :# コンテナ対応のGOMAXPROCS:LinuxでcgroupのCPU帯域幅制限を考慮し、論理CPU数よりも制限が低い場合はGOMAXPROCSを制限値に設定します。また、全OSでGOMAXPROCSを動的に更新する機能が追加されました。 :# トレースフライトレコーダー:runtime/trace.FlightRecorderAPIにより、インメモリリングバッファを使用した軽量な実行トレースキャプチャが可能になりました。 :# VMAアノテーション:Linux上でメモリマッピングに目的を示すアノテーション([anon: Go: heap]など)が付加されるようになりました。 ; コンパイラの改善: :# nilポインターチェックのバグ修正:Go 1.21で導入された、nilポインターチェックが不適切に遅延される問題が修正されました。 :# DWARF5サポート:デバッグ情報でDWARF5が使用され、バイナリサイズの削減とリンク時間の短縮を実現しました。 :# スライスの高速化:より多くの状況でスライスのバッキングストアをスタックに割り当てることが可能になり、パフォーマンスが向上しました。 ; ツールの改善: :# go buildのLeakDetection:-asanオプションでプログラム終了時にメモリリーク検出がデフォルトで有効になりました。 :# go.modのignoreディレクティブ:go commandが無視すべきディレクトリを指定できるようになりました。 :# go docの-httpオプション:ドキュメントサーバーを起動しブラウザで表示する機能が追加されました。 :# go version -m -json:バイナリファイルの BuildInfo構造体をJSON形式で出力できるようになりました。 :# 新しいvetアナライザー:waitgroup(WaitGroup.Addの誤用を検出)、hostport(IPv6で動作しないアドレス構築パターンを検出)が追加されました。 ; 標準ライブラリの改善: :# crypto系パッケージでMessageSignerインターフェースが追加され、メッセージ自身をハッシュ化するサイナーをサポート。 :# crypto/sha1でSHA-NIインストラクションによる2倍の高速化。 :# crypto/sha3でApple Mプロセッサーでの2倍の高速化とCloner実装。 :# crypto/tlsでConnectionState.CurveIDフィールドとGetEncryptedClientHelloKeysコールバックを追加。 :# net/httpでCrossOriginProtectionによるCSRF保護機能が追加。 :# os/WindowsでのNewFileがFILE''FLAG''OVERLAPPEDハンドルに対応し、非同期I/Oをサポート。 :# sync.WaitGroup.Goメソッドによりgoroutineの作成とカウントパターンが簡便化。 :# testing系パッケージでT.Attr、B.Attr、F.Attrメソッドによるテスト属性出力をサポート。 ; セキュリティの改善: :# FIPS 140-3モードでの改善:crypto/ecdsaとcrypto/ed25519での署名処理が4倍高速化。 :# TLS 1.2でSHA-1署名アルゴリズムがデフォルトで無効化({{RFC|9155}}準拠)。 :# crypto/x509でCreateCertificateがSHA-256を使用したSubjectKeyId生成を使用。 ; プラットフォームサポートの変更: :# macOS:macOS 12 Monterey以降が必要になりました(Go 1.24の予告通り)。 :# Windows:32-bit ARM(windows/arm)ポートはGo 1.25が最後のサポートバージョンとなり、Go 1.26で削除予定です。 :# linux/loong64:レースディテクターとCgoトレースバック、内部リンクモードでのcgoプログラムリンクに対応。 :# linux/riscv64:pluginビルドモードに対応。GORISCV64環境変数でrva23u64値をサポート。 Go 1.25では、パフォーマンス、セキュリティ、開発者体験の向上に重点が置かれ、特に実験的機能として提供される新しいガベージコレクターやJSON実装により、将来的なさらなるパフォーマンス向上の基盤が築かれています。 === Go 1.24 === Go 1.24が、2025年2月にリリースされました<ref>{{cite book | url = https://go.dev/doc/go1.24 | title = Go 1.24 Release Notes - The Go Programming Language | date = 2025/02/11 | accessdate = 2025/02/23 }}</ref><ref>{{cite book | url = https://go.dev/blog/go1.24 | title = Go 1.24 is released! - The Go Programming Language | date = 2025/02/11 | accessdate = 2025/02/23 }}</ref>。 Go 1.24のリリースでは、いくつかの重要な新機能と改善が含まれています。最も注目すべき変更点は以下です。 {{Main|[https://go.dev/doc/go1.24 Go 1.24 Release Notes - The Go Programming Language]|[https://go.dev/blog/go1.24 Go 1.24 is released! The Go Blog]}} ; 言語の変更点: :# ジェネリック型エイリアスが完全にサポートされるようになりました。これにより、型エイリアスに型パラメータを設定できるようになり、既存の型を制約付きで再定義することが可能になりました。たとえば <code>type VectorAlias[T any] = Vector[T]</code> のような定義ができます。この機能は Go 1.23 では実験的な機能(GOEXPERIMENT=aliastypeparams)でしたが、Go 1.24で正式にサポートされました。 ; 新しい標準パッケージ: :# crypto/mlkem:ML-KEM-768とML-KEM-1024を実装したパッケージ。 :# crypto/hkdf:HMAC-based Extract-and-Expand key derivation function (HKDF) を実装したパッケージ。 :# crypto/pbkdf2:password-based key derivation function (PBKDF2) を実装したパッケージ。 :# crypto/sha3:SHA-3ハッシュ関数とSHAKE/cSHAKE extendable-output functionsを実装したパッケージ。 :# weak:弱参照を提供するパッケージ。 :# testing/synctest:並行コードのテストをサポートする実験的なパッケージ(GOEXPERIMENT=synctestが必要)。 ; パフォーマンスの改善点: :# Swiss Tablesベースの新しいマップ実装により、2-3%のCPUオーバーヘッドが削減。 :# 小さなオブジェクトのメモリ割り当ての効率化。 :# 新しいランタイム内部ミューテックス実装。 ; ツールの改善: :# go.modファイルでツール依存関係を追跡できるようになりました。 :# go buildとgo installに -json フラグが追加され、構造化されたJSON出力が可能に。 :# go vetに新しいtestsアナライザーが追加され、テストの一般的な間違いを検出可能に。 ; セキュリティの改善: :# FIPS 140-3コンプライアンスのための新しいメカニズムが追加。 :# TLSサーバーがEncrypted Client Hello (ECH)をサポート。 :# RSAキーは1024ビット未満のキーサイズでエラーを返すように変更。 ; プラットフォームサポートの変更: :# Linuxはカーネルバージョン3.2以降が必要になりました。 :# Go 1.24はmacOS 11 Big Surをサポートする最後のバージョンとなります。 :# Windows 32-bit ARM (windows/arm)は「broken」とマークされました。 また、1.23でサポートされた"for-range"ループのイテレータ機能を活用し、bytes/stringsパッケージに新しいイテレータ関数(Lines、SplitSeq、SplitAfterSeq、FieldsSeq、FieldsFuncSeq)が追加されました。os.Root型による特定ディレクトリ内でのファイルシステム操作が可能になり、testing.B.Loopメソッドにより、ベンチマークの記述がより簡単で安全になっています。 === Go 1.23 === Go 1.23が、2024年8月にリリースされました<ref>{{cite book | url = https://go.dev/doc/go1.23 | title = Go 1.23 Release Notes - The Go Programming Language | date = 2024/08/13 | accessdate = 2024/11/13 }}</ref><ref>{{cite book | url = https://go.dev/blog/go1.23 | title = Go 1.23 is released! - The Go Programming Language | date = 2024/08/13 | accessdate = 2024/11/13 }}</ref>。 Go 1.23のリリースでは、いくつかの重要な新機能と改善が含まれています。最も注目すべき変更点は以下です。 {{Main|[https://go.dev/doc/go1.23 Go 1.23 Release Notes - The Go Programming Language]|[https://go.dev/blog/go1.23 Go 1.23 is released! The Go Blog]}} ; 言語の変更点: :# "for-range" ループでイテレータ関数がサポートされるようになりました。これにより、カスタムイテレーション値を生成する関数を使用できます。 :# ジェネリック型エイリアスのプレビューサポートが追加されました(GOEXPERIMENT=aliastypeparamsを有効にする必要があります)。 ; 新しい標準パッケージ: :# uniqueパッケージ:値の正規化(インターン化やハッシュコンス化)を行うための機能を提供します。 :# iterパッケージ:ユーザー定義のイテレータ機能を提供します。 :# structsパッケージ:構造体のメモリレイアウトなどのプロパティを制御する機能を提供します。 ; パフォーマンスの改善点: :# Profile Guided Optimization (PGO)のビルドオーバーヘッドが大幅に削減されました。以前は100%以上の増加が見られましたが、今回のリリースでは一桁台のパーセンテージまで改善されています。 :# コンパイラがローカル変数のスタックフレームスロットを最適化し、関数内の異なる領域で重複して使用できるようになり、スタック使用量が削減されました。 ; テレメトリーと開発者ツール: :# Goツールチェーンが使用状況と問題点の統計情報を収集できるテレメトリー機能が追加されました(オプトイン方式)。 :# go vetコマンドにstdversionアナライザーが追加され、使用しているGoバージョンと互換性のないシンボルの参照を検出できるようになりました。 ; プラットフォームサポートの変更: :# macOSは11 (Big Sur)以降が必要になりました。 :# Linux kernelは2.6.32以降が必要です(Go 1.24では3.2以降になる予定)。 :# OpenBSDの64-bit RISC-Vサポートが試験的に追加されました。 また、time.TimerとTime.Tickerの実装が大幅に改善され、未使用のタイマーがガベージコレクションの対象となるようになりました。セキュリティ面では、TLSクライアントがEncrypted Client Helloをサポートし、3DESの暗号スイートがデフォルトリストから削除されるなどの改善が行われています。 === Go 1.22 === Go 1.22が、2024年2月にリリースされました<ref>{{cite book | url = https://go.dev/doc/go1.22 | title = Go 1.22 Release Notes - The Go Programming Language | date = 2024/02/06 | accessdate = 2024/02/11 }}</ref><ref>{{cite book | url = https://go.dev/blog/go1.22 | title = Go 1.22 is released! - The Go Programming Language | date = 2024/02/06 | accessdate = 2024/02/11 }}</ref>。 Go 1.22のリリースでは、いくつかの重要な新機能と改善が含まれています。最も注目すべき変更点は以下です。 {{Main|[https://go.dev/doc/go1.22 Go 1.22 Release Notes - The Go Programming Language]|[https://go.dev/blog/go1.22 Go 1.22 is released! The Go Blog]}} ; 言語の変更点: :# 長らく問題視されてきた「for」ループの変数スコープが変更されました。以前は変数が一度だけ作成され、各イテレーションで更新されていましたが、Go 1.22以降は各イテレーションで新しい変数が作成されるようになり、意図しない共有の問題が解消されました。 :# 整数の範囲に対する<code>range</code>のサポートが追加されました。例えば、<code>for i := range 10</code>のような構文が可能になりました。 ; パフォーマンスの改善点: :# ガベージコレクションのメタデータを各ヒープオブジェクトの近くに配置するように最適化されました。これにより、CPUパフォーマンスが1-3%向上し、ほとんどのGoプログラムのメモリオーバーヘッドが約1%削減されました。 :# コンパイラのプロファイル誘導最適化(PGO)が改善され、より多くのインターフェースメソッド呼び出しの仮想化解除が可能になりました。代表的なGoプログラムの多くで、PGOを有効にすることで2-14%のパフォーマンス向上が見られます。 :# コンパイラは仮想化解除とインライン化を交互に行うようになり、インターフェースメソッド呼び出しの最適化が向上しました。 ; 標準ライブラリの追加と改善: :# 標準ライブラリで初めてのv2パッケージとなる<code>math/rand/v2</code>が追加されました。新しいパッケージでは、ChaCha8とPCGという2つの現代的な疑似乱数生成器を提供し、より高速なアルゴリズムを採用しています。 :# <code>net/http.ServeMux</code>のHTTPルーティングがより表現力豊かになりました。メソッドとワイルドカードをサポートし、例えば"POST /items/create"や"/items/{id}"のようなパターンが使用可能になりました。 :# <code>database/sql</code>パッケージに<code>Null[T]</code>型が追加され、任意の型のnullableカラムをスキャンする機能が提供されます。 :# <code>go/version</code>パッケージが追加され、Goバージョン文字列の検証と比較機能が提供されます。 :# <code>slices</code>パッケージに複数のスライスを連結する<code>Concat</code>関数が追加されました。 ; ツールの改善: :# Goコマンドでワークスペースのvendorディレクトリがサポートされるようになりました。<code>go work vendor</code>でディレクトリを作成し、<code>-mod=vendor</code>フラグで使用できます。 :# トレースツールのWebUIが改良され、スレッド指向のビューでトレースを探索できるようになりました。また、すべてのシステムコールの完全な実行時間が表示されるようになりました。 :# <code>go vet</code>ツールに新しい警告が追加され、appendに値を渡し忘れた場合や、time.Since呼び出しの遅延に関する問題を検出できるようになりました。 また、macOSのx86-64アーキテクチャ(darwin/amd64)向けのGoツールチェーンが、デフォルトで位置独立実行形式(PIE)を生成するようになりました。Go 1.23以降はmacOS 11 Big Sur以降が必要になることも発表されています。 === Go 1.21 === Go 1.21が、2023年8月にリリースされました<ref>{{cite book | url = https://go.dev/doc/go1.21 | title = Go 1.21 Release Notes - The Go Programming Language | date = 2023/08/08 | accessdate = 2023-11-28 }}</ref><ref>{{cite book | url = https://go.dev/blog/go1.21 | title = Go 1.21 is released! - The Go Programming Language 5| date = 2023/08/08 | accessdate = 2023-11-28 }}</ref>。 {{Main|[https://go.dev/doc/go1.21 Go 1.21 Release Notes - The Go Programming Language]|[https://go.dev/blog/go1.21 Go 1.21 is released! The Go Blog]}} Go 1.21では、リリースの番号付けにわずかな変更が導入されました。Go 1.Nは、過去にGo言語のバージョン全体とリリースファミリー、およびそのファミリー内の最初のリリースを指すために使用されていました。しかし、Go 1.21から、最初のリリースはGo 1.N.0となりました。今日、Go 1.21言語とその初期実装であるGo 1.21.0リリースが公開されています。これらのノートは「Go 1.21」と呼ばれますが、go versionなどのツールは「go1.21.0」と報告されます(Go 1.21.1にアップグレードするまで)。 ; ツールの改善点: :# Profile Guided Optimization(PGO)機能が一般利用可能になりました。<code>default.pgo</code>という名前のファイルがメインパッケージのディレクトリにある場合、<code>go</code>コマンドはそれを使用してPGOビルドを有効にします。 :# <code>go</code>ツールは今後の言語の後方互換性と前方互換性をサポートします。 ; 言語の変更点: :# 新しい組み込み関数 <code>min</code>、<code>max</code>、<code>clear</code> が追加されました。 :# ジェネリック関数の型推論がいくつか改善され、仕様書の型推論の説明が拡張されました。 :# Goプログラミングの最も一般的な落とし穴の1つに取り組む予定で、そのプレビューがGo 1.21に含まれています。これは環境変数を使用してコードで有効にできます。詳細はLoopvarExperiment wikiページを参照してください。 ;標準ライブラリの追加点: :# 構造化ログのための新しいlog/slogパッケージが追加されました。 :# 任意の要素型のスライスに対する共通操作のための新しいslicesパッケージが追加されました。これには、一般的により高速で使いやすいソート関数も含まれています。 :# 任意のキーまたは要素型のマップに対する共通操作のための新しいmapsパッケージが追加されました。 :# 順序付けられた値を比較するための新しいユーティリティを提供するcmpパッケージが追加されました。 ; 性能の改善点: :# PGOを有効にした際のパフォーマンス向上に加えて、以下のような改善があります。 :# Goコンパイラ自体がPGOを有効にして再ビルドされ、ホストアーキテクチャによってはプログラムのビルドが2〜4%高速化されました。 :# ガベージコレクターの調整により、一部のアプリケーションではテールレイテンシーが最大40%削減される場合があります。 :# runtime/traceでトレースを収集する際のCPUコストが、amd64およびarm64で大幅に低減されました。 ; 新しいWASIポート: :# Go 1.21には、WebAssembly System Interface(WASI)の実験的なポートが追加されました(GOOS=wasip1、GOARCH=wasm)。 :# より一般的なWebAssembly(Wasm)コードの記述を容易にするために、コンパイラはWasmホストからの関数のインポートのための新しい指令 <code>go:wasmimport</code> をサポートしています。 === Go 1.20 === Go 1.20が、2023年2月にリリースされました<ref>{{cite book | url = https://go.dev/doc/go1.20 | title = Go 1.20 Release Notes - The Go Programming Language | date = 2023/02/01 | accessdate = 2023-03-05 }}</ref><ref>{{cite book | url = https://go.dev/blog/go1.20 | title = Go 1.20 is released! - The Go Programming Language | date = 2023/02/01 | accessdate = 2023-03-05 }}</ref>。 {{Main|[https://go.dev/doc/go1.20 Go 1.20 Release Notes - The Go Programming Language]|[https://go.dev/blog/go1.20 Go 1.20 is released! The Go Blog]}} Go 1.20では、スライスから配列への変換が可能になりました。また、unsafeパッケージには新しい関数が追加され、スライスや文字列の値を構築および分解する完全な機能が提供されるようになりました。また、新しい仕様により、構造体のフィールドと配列の要素の比較が最初の不一致で停止するようになり、厳密に比較できない型引数を持つ型パラメータを使用して、比較制約に制限された型をインスタンス化することが可能になりました。 === Go 1.19 === Go 1.19が、2022年8月にリリースされました<ref>{{cite book | url = https://go.dev/doc/go1.19 | title = Go 1.19 Release Notes - The Go Programming Language | date = 2022/08/02 | accessdate = 2022-08-04 }}</ref><ref>{{cite book | url = https://go.dev/blog/go1.19 | title = Go 1.19 is released! - The Go Programming Language | date = 2022/08/02 | accessdate = 2022-08-04 }}</ref>。 {{Main|[https://go.dev/doc/go1.19 Go 1.19 Release Notes - The Go Programming Language]|[https://go.dev/blog/go1.19 Go 1.19 is released! The Go Blog]}} Go 1.19では、ツールチェーン、ランタイム、およびライブラリの実装に変更が加えられています。言語にはわずかな修正があり、既存のプログラムには影響がないです。メモリモデルも更新され、C、C ++、Java、JavaScript、Rust、Swiftなどのメモリモデルに合わせられた。Go 1.19では、sync/atomicパッケージに新しい型が導入され、atomic.Int64やatomic.Pointer[T]などのatomic値をより簡単に使用できるようになっています。Go 1の互換性を維持しており、ほとんどのGoプログラムは引き続き従前どおりにコンパイルおよび実行されることが予想されます。 === Go 1.18 === Go 1.18が、2022年3月にリリースされました<ref>{{cite book | url = https://go.dev/doc/go1.18 | title = Go 1.18 Release Notes - The Go Programming Language | date = 2022/03/10 | accessdate = 2022-08-04 }}</ref>。 {{Main|[https://go.dev/doc/go1.18 Go 1.18 Release Notes - The Go Programming Language]|[https://go.dev/blog/go1.18 Go 1.18 is released! The Go Blog]}} Go 1.18 には、型パラメータプロポーザル<ref>{{cite book | url=https://go.googlesource.com/proposal/+/refs/heads/master/design/43651-type-parameters.md | title=Type Parameters Proposal | accessdate=2021-09-30 }}</ref>で説明されたジェネリック機能の実装が含まれています。 以下は、最も目に付く変更点のリストです。 # 関数と型宣言の構文に型パラメータが使えるようになりました。⇒ [[/関数#ジェネリック関数]] # パラメータ化された関数や型は、その後に角括弧で型引数のリストを記述することでインスタンス化することができます。 # 新しいトークン <code>~</code> が演算子および区切子(punctuation)に追加されました。⇒ [[/字句的要素#演算子と区切子]] # インターフェイス型の構文では、任意の型(インターフェイスの型名だけでなく)、unionや~T型要素を埋め込むことができるようになりました。このようなインターフェースは、型制約としてのみ使用することができます。インターフェイスはメソッドと同様に型の集合を定義するようになりました。⇒ [[/型#インターフェース型]] # 新しい事前宣言された識別子<code>any</code>は空のインターフェースの別名です。これは <code>interface{} </code>の代わりに使用することができます。 # 新しい宣言済み識別子 <code>comparable</code> は <code>==</code> や <code>!=</code> を使って比較できる全ての型の集合を表すインターフェースです. ジェネリックを使った実験的なパッケージが3つあり、便利かもしれません。これらのパッケージは x/exp リポジトリにあります。これらのパッケージの API は Go 1 の保証の対象外であり、ジェネリックの経験を積むにつれて変更される可能性があります。 ;golang.org/x/exp/constraints :<code>constraints.Ordered</code>のようなジェネリックコードに便利な制約です。 ;golang.org/x/exp/slices :任意の要素タイプのスライス上で操作するジェネリック関数のコレクションです。 ;golang.org/x/exp/maps :任意のキーや要素タイプのマップ上で操作するジェネリック関数のコレクションです。 ---- Go 1.18は、言語、ツールチェーン、ランタイム、ライブラリに変更があり、互換性が保たれている。最大の変更点は、ジェネリックスの導入である。ジェネリックスはバックワード互換性があるが、実際に多くの人が書き、使用して初めて本番環境で十分にテストされる。ジェネリックスの使用は推奨されるが、本番環境で使用する場合は注意が必要である。ジェネリックスにはいくつかの制限があるが、これらは将来的に改善される可能性がある。これらの変更により、Goエコシステム全体に影響があり、完全なサポートには時間がかかるだろう。 === Go 1.17 === Go 1.17が、2021年8月にリリースされました<ref>{{cite book | url = https://go.dev/doc/go1.17 | title = Go 1.17 Release Notes - The Go Programming Language | date = 2021/08/16 | accessdate = 2023-03-06 }}</ref><ref>{{cite book | url = https://go.dev/blog/go1.17 | title = Go 1.17 is released! - The Go Programming Language | date = 2021/08/16 | accessdate = 2023-03-06 }}</ref>。 {{Main|[https://go.dev/doc/go1.17 Go 1.17 Release Notes - The Go Programming Language]|[https://go.dev/blog/go1.17 Go 1.17 is released! The Go Blog]}} Go 1.17は、ツールチェーン、ランタイム、およびライブラリの実装の変更が中心で、ほとんどの変更は互換性が維持されています。言語自体には3つの小さな強化があり、スライスから配列ポインタへの変換、unsafe.Add、unsafe.Sliceが追加されました。このうち、スライスから配列ポインタへの変換が実行時にpanicを引き起こす場合があるため、タイプ変換が実行時にpanicを引き起こす可能性があることを考慮する必要があります。新しいプログラムを書く場合も、以前と同様に、unsafe.Pointerの安全ルールに従う必要があります。 === Go 1.16 === Go 1.16が、2021年2月にリリースされました<ref>{{cite book | url = https://go.dev/doc/go1.16 | title = Go 1.16 Release Notes - The Go Programming Language | date = 2021/02/16 | accessdate = 2023-03-06 }}</ref><ref>{{cite book | url = https://go.dev/blog/go1.16 | title = Go 1.16 is released! - The Go Programming Language | date = 2021/02/16 | accessdate = 2023-03-06 }}</ref>。 {{Main|[https://go.dev/doc/go1.16 Go 1.16 Release Notes - The Go Programming Language]|[https://go.dev/blog/go1.16 Go 1.16 is released! The Go Blog]}} Go 1.16では、ツールチェーン、ランタイム、ライブラリの実装が変更されています。Go 1の互換性を維持しながら、ほとんどのプログラムが従来通りにコンパイルおよび実行できるようになっています。言語には変更はありません。 === Go 1.15 === Go 1.15が、2020年8月にリリースされました<ref>{{cite book | url = https://go.dev/doc/go1.15 | title = Go 1.15 Release Notes - The Go Programming Language | date = 2020/08/11 | accessdate = 2023-03-12 }}</ref><ref>{{cite book | url = https://go.dev/blog/go1.15 | title = Go 1.15 is released! - The Go Programming Language | date = 2020/08/11 | accessdate = 2023-03-12 }}</ref>。 {{Main|[https://go.dev/doc/go1.15 Go 1.15 Release Notes - The Go Programming Language]|[https://go.dev/blog/go1.15 Go 1.15 is released! The Go Blog]}} Go 1.15では、リンカーの大幅な改良、高いコア数での小規模オブジェクトの割り当ての改善、X.509 CommonNameの非推奨化、そして新しい埋め込みtzdataパッケージの追加が含まれています。 === Go 1.14 === Go 1.14が、2020年2月にリリースされました<ref>{{cite book | url = https://go.dev/doc/go1.14 | title = Go 1.14 Release Notes - The Go Programming Language | date = 2020/02/25 | accessdate = 2023-03-12 }}</ref><ref>{{cite book | url = https://go.dev/blog/go1.14 | title = Go 1.14 is released! - The Go Programming Language | date = 2020/02/25 | accessdate = 2023-03-12 }}</ref>。 {{Main|[https://go.dev/doc/go1.14 Go 1.14 Release Notes - The Go Programming Language]|[https://go.dev/blog/go1.14 Go 1.14 is released! The Go Blog]}} Go 1.14では、オーバーラップするインターフェースの提案により、埋め込まれたインターフェースで同じ名前とシグネチャを持つメソッドを許可するようになりました。しかし、インターフェース内で宣言されたメソッドは以前と同様にユニークである必要があります。 === Go 1.13 === Go 1.13が、2019年2月にリリースされました<ref>{{cite book | url = https://go.dev/doc/go1.13 | title = Go 1.13 Release Notes - The Go Programming Language | date = 2019/09/03 | accessdate = 2023-03-12 }}</ref><ref>{{cite book | url = https://go.dev/blog/go1.13 | title = Go 1.13 is released! - The Go Programming Language | date = 2019/09/03 | accessdate = 2023-03-12 }}</ref>。 {{Main|[https://go.dev/doc/go1.13 Go 1.13 Release Notes - The Go Programming Language]|[https://go.dev/blog/go1.13 Go 1.13 is released! The Go Blog]}} Go 1.13では、数字リテラルの接頭辞が変更され、バイナリ整数、8進数整数、16進数浮動小数点数、虚数リテラル、数字区切りが使用できるようになりました。さらに、符号付きシフトカウントの制限が撤廃され、制限がなくなりました。これらの変更は、コンパイラの変更によって実現されました。Go 1.13を使用するには、go.modファイルで言語バージョンを指定する必要があります。 === Go 1.12 === Go 1.12が、2019年2月にリリースされました<ref>{{cite book | url = https://go.dev/doc/go1.12 | title = Go 1.12 Release Notes - The Go Programming Language | date = 2019/02/25 | accessdate = 2024/11/13 }}</ref><ref>{{cite book | url = https://go.dev/blog/go1.12 | title = Go 1.12 is released! - The Go Programming Language | date = 2019/02/25 | accessdate = 2024/11/13 }}</ref>。 Go 1.12のリリースには、いくつかの新機能と改善が含まれ、Go言語のパフォーマンスやユーザビリティがさらに向上しました。以下が主な変更点です。 {{Main|[https://go.dev/doc/go1.12 Go 1.12 Release Notes - The Go Programming Language]|[https://go.dev/blog/go1.12 Go 1.12 is released! The Go Blog]}} ; 主要な新機能: :# Windows向けに、標準ライブラリがコントロールグループのサポートやシステムコールの改善により、性能向上と安定性が強化されました。 :# macOS向けの新しいサポートとして、ヒープメモリ使用量の削減や効率化が進められました。 ; パフォーマンスの改善点: :# 文字列操作の最適化が行われ、<code>strings.Trim</code>や<code>strings.Index</code>のパフォーマンスが向上しました。 :# 並列ガベージコレクションが改良され、メモリ管理の効率が向上しています。 :# コンパイラの境界チェックが一部のパターンで自動的に省略されるようになり、コード生成の効率がさらに向上しました。 ; デバッグ機能の改善: :# より正確な変数位置とスタック情報の提供により、デバッグ体験が改善されています。 :# 新たにDWARF生成の機能が拡充され、特に最適化コードにおいて、デバッグ情報の信頼性が高まりました。 ; ランタイムの改善: :# Windows上で、64ビットプロセスのアドレス空間使用が最適化され、より多くのメモリを使用可能になりました。 :# Goランタイムのシグナルハンドリングが強化され、システムシグナルの処理能力が向上しました。 ; 標準ライブラリの改善: :# <code>crypto/x509</code>パッケージで、証明書の検証がmacOSのシステム証明書ストアを使用するようになり、macOSでの信頼性が向上しました。 :# <code>net/http</code>において、HTTP/2の接続管理が改善され、特に大量接続環境での安定性が増しました。 :# <code>os</code>パッケージの<code>Process.Signal</code>がWindowsでも利用可能となり、Windows上のプロセス管理機能が強化されました。 ; ツールの改善: :# <code>go test</code>コマンドに<code>-json</code>フラグが追加され、テスト結果をJSON形式で出力できるようになりました。 :# goコマンドが<code>go.sum</code>ファイルを自動的に更新し、依存関係の信頼性が向上しています。 :# <code>gofmt</code>において、特定のコードパターンの整形が改良され、より一貫したコードスタイルが保たれます。 また、OpenBSD 6.4以降、macOS 10.11 El Capitan以降、またはWindows 7以降が必要となり、これらのOSの以前のバージョンのサポートが終了しました。リリースノートでは、Go 1の互換性は維持されており、ほとんどのGoプログラムは以前と同様に動作すると述べられています。 === Go 1.11 === Go 1.11が、2018年8月にリリースされました<ref>{{cite book | url = https://go.dev/doc/go1.11 | title = Go 1.11 Release Notes - The Go Programming Language | date = 2018/08/24 | accessdate = 2024/11/13 }}</ref><ref>{{cite book | url = https://go.dev/blog/go1.11 | title = Go 1.11 is released! - The Go Programming Language | date = 2018/08/24 | accessdate = 2024/11/13 }}</ref>。 Go 1.11のリリースでは、いくつかの重要な新機能と改善が含まれています。最も注目すべき変更点は以下です。 {{Main|[https://go.dev/doc/go1.11 Go 1.11 Release Notes - The Go Programming Language]|[https://go.dev/blog/go1.11 Go 1.11 is released! The Go Blog]}} ; 主要な新機能: :# モジュールサポートの実験的な導入により、GOPATHに依存しない開発が可能になりました。バージョン管理と依存関係管理が統合され、より信頼性の高いビルドが実現できます。 :# WebAssembly(js/wasm)の実験的なポートが追加され、syscall/jsパッケージを通じてJavaScriptとの連携が可能になりました。 :# RISCVアーキテクチャ向けのGOARCH値("riscv"と"riscv64")が予約されました。 ; パフォーマンスの改善点: :# マップのクリア操作が最適化され、<code>for k := range m { delete(m, k) }</code>のようなコードが効率的に実行されるようになりました。 :# スライス拡張の<code>append(s, make([]T, n)...)</code>が最適化されました。 :# コンパイラの境界チェックと分岐除去が大幅に改善され、より効率的なコードが生成されるようになりました。 ; デバッグ機能の改善: :# 最適化されたバイナリのデバッグ情報が大幅に改善され、変数位置情報、行番号、ブレークポイント位置がより正確になりました。 :# DWARFセクションがデフォルトで圧縮されるようになりました。 :# デバッガー内からのGo関数呼び出しが実験的にサポートされました。 ; ランタイムの改善: :# スパースヒープレイアウトの採用により、Goヒープサイズの制限(従来は512GiB)が撤廃されました。 :# macOSとiOSで、カーネルの直接呼び出しの代わりにlibSystem.dylibを使用するように変更され、将来のOSバージョンとの互換性が向上しました。 ; 標準ライブラリの改善: :# <code>crypto/cipher</code>パッケージに、非標準のタグ長をサポートするGCM実装が追加されました。 :# <code>net/http</code>の<code>Transport</code>型に、ホストごとの最大接続数を制限する<code>MaxConnsPerHost</code>オプションが追加されました。 :# <code>os</code>パッケージに、ユーザー固有のキャッシュディレクトリを取得する<code>UserCacheDir</code>関数が追加されました。 ; ツールの改善: :# 環境変数<code>GOFLAGS</code>が導入され、goコマンドのデフォルトフラグを設定できるようになりました。 :# godocのWebサーバーが、APIの新機能がどのGoバージョンで導入されたかを表示するようになりました。 また、OpenBSD 6.2以降、macOS 10.10 Yosemite以降、またはWindows 7以降が必要となり、これらのOSの以前のバージョンのサポートが終了しました。リリースノートでは、Go 1の互換性は維持されており、ほとんどのGoプログラムは以前と同様に動作すると述べられています。 ---- === Go 1.10 === Go 1.10が、2018年2月にリリースされました<ref>{{cite book | url = https://go.dev/doc/go1.10 | title = Go 1.10 Release Notes - The Go Programming Language | date = 2018/02/16 | accessdate = 2025/05/20 }}</ref><ref>{{cite book | url = https://go.dev/blog/go1.10 | title = Go 1.10 is released - The Go Programming Language | date = 2018/02/16 | accessdate = 2025/05/20 }}</ref>。 Go 1.10のリリースでは、開発体験を大幅に向上させる複数の重要な改善が含まれています。最も注目すべき変更点は以下です。 {{Main|[https://go.dev/doc/go1.10 Go 1.10 Release Notes - The Go Programming Language]|[https://go.dev/blog/go1.10 Go 1.10 is released! The Go Blog]}} ; ビルドシステムの大幅改善: :# ビルドキャッシュの導入により、最近ビルドしたパッケージが自動的にキャッシュされ、ビルド時間が大幅に短縮されました。 :# テスト結果のキャッシュ化により、変更のないテストは再実行せずにキャッシュされた結果を使用するようになりました。 :# <code>go test</code>時に<code>go vet</code>が自動実行され、テスト前にコードの問題を検出できるようになりました。 :# <code>go install</code>コマンドが、コマンドラインで指定されたパッケージのみをインストールするように変更されました。 ; cgoのセキュリティ強化と機能拡張: :# cgoの<code>#cgo CFLAGS</code>などで指定できるコンパイラオプションが安全なもののみに制限され、<code>-fplugin</code>などの危険なオプションは使用できなくなりました。 :# Go文字列値へのC言語からの直接アクセスが可能になり、<code>_GoString_</code>型、<code>_GoStringLen</code>、<code>_GoStringPtr</code>関数が追加されました。 :# CのtypedefがGoの型エイリアスとして実装され、<code>C.X</code>と<code>C.Y</code>を相互に使用できるようになりました。 ; パフォーマンスの改善点: :# ガベージコレクタが割り当て遅延への影響を軽減するよう改善されました。 :# コンパイラの最適化によりコード生成品質が向上し、サポートされている全アーキテクチャで性能が向上しました。 :# スタックトレースから暗黙のラッパー関数(<code><autogenerated></code>マーク)が除外され、より読みやすくなりました。 ; ツールの改善: :# <code>go doc</code>コマンドが、型Tを返すスライスや*Tを返す関数も型Tの表示に含めるようになりました。 :# <code>go test</code>に<code>-failfast</code>フラグが追加され、テスト失敗時に残りのテストを停止できるようになりました。 :# <code>go test -json</code>フラグが追加され、機械読み取り可能なJSON形式でテスト結果を出力できるようになりました。 :# <code>go get</code>コマンドでFossilソースコードリポジトリがサポートされました。 ; ランタイムの改善: :# <code>LockOSThread</code>と<code>UnlockOSThread</code>の呼び出しがネストをサポートするようになりました。 :# <code>GOMAXPROCS</code>の制限が撤廃されました(以前は1024が上限)。 :# <code>GOROOT</code>関数が、環境変数が設定されていない場合にプログラムのコンパイル時の値を使用するようになりました。 ; 標準ライブラリの改善: :# <code>strings</code>パッケージに新しい<code>Builder</code>型が追加され、文字列構築時のメモリ効率が向上しました。 :# <code>math</code>パッケージに<code>Round</code>、<code>RoundToEven</code>、<code>Erfinv</code>、<code>Erfcinv</code>関数が追加されました。 :# <code>net/url</code>の<code>ResolveReference</code>が複数の先頭スラッシュを保持するように修正され、{{RFC|3986}}に準拠しました。 :# <code>bytes</code>パッケージの<code>Fields</code>、<code>Split</code>系関数が、返すサブスライスの容量を長さと同じに設定するようになり、メモリ効率が向上しました。 :# <code>archive/tar</code>と<code>archive/zip</code>でより多くのヘッダー形式や時刻エンコーディングがサポートされました。 ; デバッグ機能の改善: :# バイナリ内のDWARFデバッグ情報が改善され、定数値の記録、より正確な行番号情報、パッケージ単位でのコンパイル単位の表現が実現されました。 :# 各種ビルドモードがより多くのシステムに対応し、<code>c-shared</code>、<code>pie</code>、<code>plugin</code>モードの対応プラットフォームが拡張されました。 ; アセンブラの拡張: :# ARM 32ビット、ARM 64ビット、PowerPC 64ビット、S390X、X86 64ビットアーキテクチャで多数の新しい命令がサポートされました。 :# 特にX86 64ビットでは、AVX、AVX2、BMI、BMI2、F16C、FMA3、SSE2、SSE3、SSSE3、SSE4.1、SSE4.2などの拡張命令セットを含む359の新命令が追加されました。 ; ソースコードフォーマットの変更: :# <code>gofmt</code>のデフォルトフォーマットに軽微な変更があり、3つのインデックスを持つスライス式と単一行のインターフェースリテラルの表示が改善されました。 === Go 1.9 === Go 1.9が、2017年8月にリリースされました<ref>{{cite web | url = https://go.dev/doc/go1.9 | title = Go 1.9 Release Notes - The Go Programming Language | accessdate = 2025-05-20 }}</ref><ref>{{cite web | url = https://go.dev/blog/go1.9 | title = Go 1.9 is released - The Go Blog | date = 2017/08/24 | accessdate = 2025-05-20 }}</ref>。 Go 1.9のリリースでは、言語、ツール、ランタイム、標準ライブラリに多くの変更と改善が含まれています。主な変更点は以下の通りです。 {{Main|[https://go.dev/doc/go1.9 Go 1.9 Release Notes - The Go Programming Language]|[https://go.dev/blog/go1.9 Go 1.9 is released - The Go Blog]}} ; 言語の変更点: :# 型エイリアス: パッケージ間で型を移動する際などに、段階的なコードの修正をサポートするための型エイリアスが導入されました。 :#:<code>type T1 = T2</code> :#:の形式で宣言することで、既存の型 T2 に別の名前 T1 を与えることができます。 :# 浮動小数点演算の融合: 言語仕様が更新され、実装が浮動小数点演算(例えば、積和演算)を融合することが許可される条件が定義されました。中間結果の丸めを強制したい場合は、float64(x*y) + z のように明示的な型変換が必要です。 ; 新しい標準パッケージ: :# math/bits: 符号なし整数のビット操作(カウント、操作など)のための最適化された実装を提供する新しいパッケージが追加されました。可能な場合、CPUの特殊な命令が利用されます。 ; パフォーマンスの改善点: :# 並列コンパイル: パッケージ内の関数のコンパイルが並列化され、マルチコア環境でのビルド時間が改善されました。この機能はデフォルトで有効ですが、環境変数 GO19CONCURRENTCOMPILATION=0 を設定することで無効にできます。 :# ガベージコレクション: ストップザワールド型のガベージコレクションを引き起こしていたライブラリ関数 (runtime.GC, debug.SetGCPercent, debug.FreeOSMemory) が、呼び出し元のゴルーチンのみをブロックする並行ガベージコレクションに変更されました。 ; ツールの改善: :# Vendorディレクトリのマッチング: go test などのパッケージ名を引数に取るツールにおいて、./... が vendor ディレクトリ内のパッケージをマッチしなくなりました。vendor ディレクトリをマッチさせるには、./vendor/.... を使用する必要があります。 :# GOROOTの移動: go tool は、実行されたパスからGoのインストールツリーのルートを特定するようになりました。これにより、Goのインストールディレクトリ全体を移動した場合でも、go tool が通常通り動作するはずです。 :# go test -list: テスト、ベンチマーク、またはExampleの名前を正規表現でフィルタリングしてリスト表示する -list フラグが go test コマンドに追加されました。 :# go env -json: 環境変数をJSON形式で出力する -json フラグが go env コマンドに追加されました。 ; その他の注目すべき変更点: :# sync.Map: 並行アクセスに対応した新しいマップ型 sync.Map が追加されました。読み込み、書き込み、削除操作は償却定数時間で行われます。 :# testing.Helper: testing.T および testing.B に Helper メソッドが追加されました。このメソッドを呼び出すと、エラー報告などでファイル名と行番号が表示される際に、ヘルパー関数自身ではなく、ヘルパー関数を呼び出した箇所の情報が表示されるようになります。 :# timeパッケージ: time パッケージは、各 Time 値に透過的に単調時間(monotonic time)を追跡するようになり、壁時計の調整があっても二つの Time 値間の経過時間を安全に計算できるようになりました。 :# runtime.CallersFrames: インライン化されたフレームを含むコールスタックの情報を正確に取得するために、runtime.Callers の結果を直接検査するのではなく、runtime.CallersFrames を使用することが推奨されるようになりました。 :# runtime/pprof: runtime/pprof パッケージで生成されるプロファイルにシンボル情報が含まれるようになり、プロファイルを生成したバイナリなしで go tool pprof で表示できるようになりました。また、プロファイルレコードにラベルを追加する機能も追加されました。 Go 1.9には、上記以外にも多くの追加、改善、および修正が含まれています。詳細については、公式のリリースノートを参照してください。 === Go 1.8 === Go 1.8が、2017年2月にリリースされました<ref>{{cite web | url = https://go.dev/doc/go1.8 | title = Go 1.8 Release Notes - The Go Programming Language | accessdate = 2025-05-20 }}</ref><ref>{{cite web | url = https://go.dev/blog/go1.8 | title = Go 1.8 is released - The Go Blog | date = 2017/02/16 | accessdate = 2025-05-20 }}</ref>。 Go 1.8のリリースでは、ツールチェーン、ランタイム、およびライブラリの実装に多くの変更が含まれています。主な変更点は以下の通りです。 {{Main|[https://go.dev/doc/go1.8 Go 1.8 Release Notes - The Go Programming Language]|[https://go.dev/blog/go1.8 Go 1.8 is released - The Go Blog]}} ; 言語の変更点: :# '''構造体型の変換:''' Go 1.8以降、構造体間の明示的な型変換において、タグが無視されるようになりました。タグのみが異なる2つの構造体は、相互に変換可能です。 :# '''浮動小数点定数の指数:''' 言語仕様が更新され、実装が浮動小数点定数で最大16ビットの指数をサポートすることが要求されるようになりました。ただし、"gc" と gccgo コンパイラは、どちらも32ビットの指数をサポートしています。 ; ポート: :# '''32-bit MIPSのサポート:''' Linux上で、big-endian (linux/mips) と little-endian (linux/mipsle) の両方のマシンで、FPUまたはカーネルFPUエミュレーションを備えたMIPS32r1命令セットを実装する32-bit MIPSがサポートされるようになりました。 ; ツール: :# '''アセンブラ:''' 64-bit x86システム用に、VBROADCASTSD, BROADCASTSS, MOVDDUP, MOVSHDUP, MOVSLDUP, VMOVDDUP, VMOVSHDUP, VMOVSLDUPなどの命令が追加されました。 :# '''Yacc:''' yaccツールは削除されました。 :# '''Fix:''' fixツールに、"golang.org/x/net/context" から "context" へimportを変更する "context" fixが追加されました。 :# '''Pprof:''' pprofツールは、"https+insecure" URLスキームを使用して、TLSサーバーをプロファイルし、証明書の検証をスキップできるようになりました。 :# '''Trace:''' traceツールに、実行トレースからpprof互換のブロッキングおよびレイテンシプロファイルを生成するための -pprof フラグが追加されました。 :# '''Vet:''' Vetは、いくつかの点でより厳密になり、以前に誤検出を引き起こしていた箇所ではより緩くなりました。 ; コンパイラツールチェーン: :# '''SSAバックエンド:''' 64-bit x86システム用の新しいコンパイラバックエンドが導入されました。このバックエンドは、よりコンパクトで効率的なコードを生成し、境界チェックの排除などの最適化のためのより良いプラットフォームを提供します。 :# '''コンパイラとリンカの最適化:''' コンパイラとリンカが最適化され、Go 1.7よりも高速に実行されるようになりました。 ; Cgo: :# Goツールは、make.bash中に設定されたCGO_ENABLED環境変数の値を記憶し、デフォルトですべての将来のコンパイルに適用するようになりました。 ; デフォルトのGOPATH: :# GOPATH環境変数が設定されていない場合、デフォルト値を持つようになりました。Unixでは$HOME/go、Windowsでは%USERPROFILE%/goがデフォルトです。 ; Go get: :# "go get"コマンドは、-insecureフラグが使用されているかどうかに関係なく、HTTPプロキシ環境変数を常に尊重するようになりました。 ; Go bug: :# 新しい "go bug" コマンドは、現在のシステムに関する情報が事前に入力された状態で、GitHubでバグレポートを開始します。 ; Go doc: :# "go doc" コマンドは、godocの動作に従い、定数と変数をその型でグループ化するようになりました。 ; プラグイン: :# Goは、Goで記述されたプラグインを生成するための "plugin" ビルドモードと、実行時にそのようなプラグインをロードするための新しい plugin パッケージによる、プラグインの初期サポートを提供するようになりました。 ; ランタイム: :# '''引数の活性:''' ガベージコレクタは、関数全体の引数をライブとは見なしなくなりました。 :# '''並行マップの誤用:''' Go 1.6で、マップの並行誤用の軽量でベストエフォートな検出が追加されました。このリリースでは、マップへの並行書き込みと反復処理を行うプログラムの検出がサポートされ、その検出器が改善されました。 ; パフォーマンス: :# ガベージコレクションの一時停止が大幅に短縮され、通常は100マイクロ秒未満、多くの場合10マイクロ秒程度になりました。 :# deferred関数呼び出しのオーバーヘッドが約半分に削減されました。 :# GoからCへの呼び出しのオーバーヘッドが約半分に削減されました。 ; 標準ライブラリ: :# '''Examples:''' 多くのパッケージに例が追加されました。 :# '''Sort:''' sortパッケージに、less関数を指定してスライスをソートするための便利な関数Sliceが含まれるようになりました。 :# '''HTTP/2 Push:''' net/httpパッケージに、HandlerからHTTP/2サーバープッシュを送信するメカニズムが含まれるようになりました。 :# '''HTTPサーバーの正常シャットダウン:''' HTTPサーバーは、新しいServer.Shutdownメソッドを使用した正常シャットダウンと、新しいServer.Closeメソッドを使用した突然のシャットダウンをサポートするようになりました。 :# '''コンテキストのサポート:''' context.Contextの標準ライブラリへの採用を継続し、Go 1.8は、既存のパッケージへのコンテキストサポートを追加しました。 :# '''Mutex競合プロファイリング:''' ランタイムとツールが、競合するmutexのプロファイリングをサポートするようになりました。 Go 1.8には、上記以外にも多くの追加、改善、および修正が含まれています。詳細については、公式のリリースノートを参照してください。 === Go 1.7 === Go 1.7が、2016年8月にリリースされました<ref>{{cite web | url = https://go.dev/doc/go1.7 | title = Go 1.7 Release Notes - The Go Programming Language | accessdate = 2025-05-20 }}</ref><ref>{{cite web | url = https://go.dev/blog/go1.7 | title = Go 1.7 is released - The Go Blog | date = 2016/08/15 | accessdate = 2025-05-20 }}</ref>。 主な変更点は以下の通りです。 ; 主な変更点 * '''言語仕様''': 終了ステートメントの定義を明確化(既存の挙動を正式化) * '''パフォーマンス''': x86-64向け新しいコンパイラバックエンドで5-35%の性能向上 * '''標準ライブラリ''': ** <code>context</code>パッケージが標準ライブラリに昇格 ** <code>net/http/httptrace</code>パッケージ追加 ** テスト階層構造をサポート(サブテスト/サブベンチマーク) * '''ツールチェーン''': ** ビルド時間の改善 ** バイナリサイズの削減(20-30%減少することも) ** ベンダリングサポートが正式機能に * '''ポート''': ** macOS 10.12 Sierraサポート追加 ** Linux on z Systems(s390x)の実験的サポート追加 ; 互換性 Go 1の互換性保証を維持。ほとんどのGoプログラムは変更なしで動作する見込み。 ; その他の注目点 * ガベージコレクションの一時停止時間が短縮 * 多数の標準ライブラリで10%以上の性能改善 * Unicode 9.0サポート * WindowsでのメモリOS返還サポート * 実行トレースの収集オーバーヘッドが大幅改善(400%→25%) このリリースは主にツールチェーン、ランタイム、ライブラリの実装改善に焦点を当てています。 === Go 1.6 === Go 1.6が、2016年2月17日にリリースされました<ref>{{cite web | url = https://go.dev/blog/go1.6 | title = Go 1.6 Release Notes - The Go Programming Language | accessdate = 2025-06-29 }}</ref><ref>{{cite web | url = https://go.dev/blog/go1.6 | title = Go 1.6 is released - The Go Blog | date = 2016/02/17 | accessdate = 2025-06-29 }}</ref>。 主な変更点は以下の通りです。 ; 主な変更点 * '''言語仕様''': 言語仕様の変更なし * '''パフォーマンス''': ** Go 1ベンチマークスイートのプログラムが平均数パーセント高速化 ** ガベージコレクターの一時停止時間がさらに短縮(特にメモリを大量に使用するプログラムで) ** <code>compress/bzip2</code>、<code>compress/gzip</code>、<code>crypto/aes</code>、<code>crypto/elliptic</code>、<code>crypto/ecdsa</code>、<code>sort</code>パッケージで10%以上の最適化 ** <code>sort.Sort</code>の実装が効率化され、約10%高速化 * '''標準ライブラリ''': ** <code>net/http</code>パッケージがHTTPS使用時にHTTP/2を透過的かつ自動的にサポート ** <code>text/template</code>パッケージにテンプレート再利用の新メカニズムを追加(アクション周りの空白除去、<code>{{block}}</code>アクション) * '''ツールチェーン''': ** パーサーがyacc生成のものから手書きのものに変更 ** <code>linux/amd64</code>向けにClang MemorySanitizerとの連携のための新しい<code>-msan</code>フラグを追加 ** リンカーに新しい<code>-libgcc</code>オプションを追加 ** Go 1.5で導入されたビルドモードを多くのシステムに拡張(<code>c-shared</code>、<code>shared</code>、新しい<code>pie</code>モード) ** <code>go</code>コマンドがベンダリングをデフォルトで有効化(Go 1.5では実験的機能) ** <code>go doc</code>コマンドの曖昧性解消を改善(ベンダリングされたコピーよりも元のパッケージを優先) ** <code>go vet</code>コマンドが関数やメソッドの値を<code>Printf</code>に誤って渡す診断を開始 * '''ポート''': ** 64ビットMIPS上のLinuxと32ビットx86上のAndroidへの実験的な新しいポートを追加 ; 互換性 Go 1の互換性保証を維持。ほとんどのGoプログラムは変更なしでコンパイルおよび実行される見込み。 ; その他の注目点 * ランタイムでマップの同時誤用を軽量に検出(検出された場合はプログラムがクラッシュ) * プログラム終了時のパニックについて、ランタイムがデフォルトで実行中のゴルーチンのスタックのみを出力 * Goのガベージコレクターとの互換性を確保するため、GoポインタとCコード間の共有ルールを明確化し、強制 * Windowsでのグローバルタイマー解像度の1ms強制を停止 * <code>-buildmode=c-archive</code>または<code>-buildmode=c-shared</code>でビルドされたアーカイブおよび共有ライブラリのシグナルハンドリングを変更 * <code>reflect</code>パッケージで、エクスポートされたフィールドを含む埋め込まれた非エクスポート構造体型に関する非互換性を解決 === Go 1.5 === Go 1.5が、2015年8月19日にリリースされました<ref>{{cite web | url = https://go.dev/blog/go1.5 | title = Go 1.5 Release Notes - The Go Programming Language | accessdate = 2025-06-29 }}</ref><ref>{{cite web | url = https://go.dev/blog/go1.5 | title = Go 1.5 is released - The Go Blog | date = 2015/08/19 | accessdate = 2025-06-29 }}</ref>。 主な変更点は以下の通りです。 ; 主な変更点 * '''言語仕様''': ** マップリテラルの要素型の省略を許可する構文の制限が緩和 * '''パフォーマンス''': ** ガベージコレクターが再設計され、並行処理可能に。一時停止時間が劇的に短縮され、通常10ミリ秒未満に ** スケジューラーの改善により、<code>GOMAXPROCS</code>のデフォルト値が論理CPU数に変更 * '''標準ライブラリ''': ** <code>flag</code>パッケージでよりクリーンな使用法メッセージ ** <code>math/big</code>に任意精度浮動小数点数用の新しい<code>Float</code>型を追加 ** LinuxおよびBSDシステム上のDNSリゾルバーの改善により、名前ルックアップのcgo要件を削除 ** <code>go/types</code>パッケージが標準ライブラリに移動 ** <code>reflect</code>パッケージに<code>ArrayOf</code>および<code>FuncOf</code>関数が追加 * '''ツールチェーン''': ** コンパイラとランタイムが完全にGoで記述され、GoコードベースからすべてのCコードが削除 ** 従来のツール名(例: <code>6g</code>、<code>8g</code>)が廃止され、<code>go tool compile</code>、<code>go tool asm</code>、<code>go tool link</code>などの単一バイナリに置き換え ** 中間オブジェクトファイルが<code>.6</code>、<code>.8</code>などの代わりに<code>.o</code>サフィックスを使用 ** <code>go/types</code>パッケージの移動に伴い、<code>vet</code>および<code>cover</code>ツールも移動 ** コンパイラが定数評価に<code>math/big</code>パッケージを使用 ** アセンブラが新しいネイティブGo実装になり、わずかな互換性変更あり ** リンカーに拡張されたリンクスタイル(共有ライブラリのビルドなど)のための<code>-buildmode</code>オプションを導入 ** <code>go tool vet</code>コマンドが構造体タグのより厳密な検証を実行 ** <code>go test</code>コマンドに新しい<code>-count</code>フラグ、<code>go generate</code>に<code>-run</code>オプションと新しい環境変数を追加 ** <code>go get</code>コマンドに新しい<code>-insecure</code>フラグを追加 ** 外部依存関係の「ベンダリング」に対する実験的なサポートが導入(<code>go</code>コマンドが有効化) * '''ポート''': ** Snow Leopardおよび<code>dragonfly/386</code>のサポートが終了 ** <code>darwin/arm</code>、<code>darwin/arm64</code>(AppleのiPhoneおよびiPad用)、<code>linux/arm64</code>、<code>ppc64</code>、<code>ppc64le</code>(IBM 64ビットPowerPC)を含む新しいポートがソースから利用可能 ** FreeBSD (8-STABLE以上) およびNaCl (SDKバージョンpepper-41) の特定の要件 ** Solarisポートで完全な<code>cgo</code>サポートと<code>net</code>および<code>crypto/x509</code>の改善 ; 互換性 主要なアーキテクチャ変更にもかかわらず、Go 1の互換性保証を維持。ほとんどのGoプログラムは以前と同様にコンパイルおよび実行される見込み。ただし、ゴルーチンスケジューリング順序に暗黙的に依存するプログラムや、複数のコアでの実行を想定していないプログラム(<code>GOMAXPROCS</code>のデフォルト値変更のため)は更新が必要になる場合がある。 ; その他の注目点 * 内部パッケージのサポートがすべてのリポジトリで提供 * <code>install</code>サブコマンドがソースディレクトリに<code>build</code>によって作成されたバイナリを削除 * 新しいビルドオプションとして<code>-asmflags</code>、<code>-buildmode</code>、<code>-pkgdir</code>、<code>-toolexec</code>が追加 * <code>-ccflags</code>オプションが削除 === Go 1.4 === Go 1.4が、2014年12月にリリースされました<ref>{{cite book | url = https://go.dev/doc/go1.4 | title = Go 1.4 Release Notes - The Go Programming Language | date = 2014/12/10 | accessdate = 2025/05/20 }}</ref><ref>{{cite book | url = https://go.dev/blog/go1.4 | title = Go 1.4 is released - The Go Programming Language | date = 2014/12/10 | accessdate = 2025/05/20 }}</ref>。 Go 1.4は、Go 1.3から約半年後のリリースとなり、プロジェクトの歴史において「実装のクリーンアップ」と「将来のプラットフォームへの布石」となる重要なバージョンです。最も注目すべき変更点は以下です。 {{Main|[https://go.dev/doc/go1.4 Go 1.4 Release Notes - The Go Programming Language]|[https://go.dev/blog/go1.4 Go 1.4 is released! The Go Blog]}} ; 言語の変更点: :# '''for-rangeループの簡略化''':ループ変数を必要としない場合に、変数名を省略して <code>for range s { ... }</code> と記述できるようになりました。 :# '''メソッド呼び出しの厳格化''':ポインタではないレシーバを持つメソッドを、二重ポインタ(<code>**T</code>)から直接呼び出すことが禁止されました。 ; 新しいプラットフォームのサポート: :# '''Androidのサポート''':<code>GOOS=android</code>、<code>GOARCH=arm</code> が追加されました。これにより、Goで書かれたライブラリをAndroidアプリ(Java/Kotlin)から呼び出すための基盤が整いました。 :# '''ARM64の実験的サポート''':将来の64ビットARMプロセッサを見据え、<code>linux/arm64</code> のサポートが開始されました。 ; ツールの改善: :# '''go generateコマンドの導入''':ソースコード内のコメント(<code>//go:generate ...</code>)をスキャンしてコード生成ツールを実行する新しいサブコマンドが追加されました。これにより、<code>stringer</code> などのツールを用いたメタプログラミングが容易になりました。 :# '''ビルド速度の改善''':コンパイラの一部がCからGoへ書き換えられ始めた過渡期であり、ツールチェーン全体の整理が進められました。 ; ランタイムの改善: :# '''スタック管理の変更''':連続スタック(contiguous stacks)の導入により、以前の「セグメントスタック」で発生していた「ホットスプリット問題(スタックの拡張と縮小が頻発してパフォーマンスが低下する現象)」が解消されました。 :# '''ガベージコレクタの改良''':ガベージコレクションの並行処理化に向けた準備として、ランタイムの内部構造が大幅に再設計されました。 ; 標準ライブラリの改善: :# '''contextパッケージの萌芽''':この時期、<code>golang.org/x/net/context</code> パッケージが開発され、Google内部で広く使われ始めました(後にGo 1.7で標準ライブラリ入りします)。 :# '''OSインターフェースの拡充''':<code>os</code> パッケージや <code>net</code> パッケージにおいて、システムリソースへのアクセス効率が向上しました。 Go 1.4は、Go言語が誕生以来使用してきたC言語による実装から、Go自身でGoをコンパイルする「セルフホスティング」へと移行するための重要なステップとなりました。 === Go 1.3 === Go 1.3が、2014年6月にリリースされました<ref>{{cite book | url = https://go.dev/doc/go1.3 | title = Go 1.3 Release Notes - The Go Programming Language | date = 2014/06/18 | accessdate = 2025/05/19 }}</ref><ref>{{cite book | url = https://go.dev/blog/go1.3 | title = Go 1.3 is released - The Go Programming Language | date = 2014/06/18 | accessdate = 2025/05/19 }}</ref>。 Go 1.3は、Go 1.2から約半年後のリリースとなり、言語仕様自体の変更を含まない一方で、「ランタイムの大幅なパフォーマンス向上」と「ツールチェーンの再設計・近代化」に深く焦点を当てた重要なバージョンです。最も注目すべき変更点は以下です。 {{Main|[https://go.dev/doc/go1.3 Go 1.3 Release Notes - The Go Programming Language]|[https://go.dev/blog/go1.3 Go 1.3 is released! The Go Blog]}} ; 言語の変更点: :# '''仕様変更なし''':Go 1互換性ガイドラインに基づき、言語仕様自体への変更や追加はありません。既存のソースコードはそのまま完全にコンパイル可能です。 ; 新しいプラットフォームのサポート: :# '''Solarisのサポート''':<code>GOOS=solaris</code>、<code>GOARCH=amd64</code> が追加され、SolarisおよびIllumosベースのシステムが公式にサポートされました。 :# '''Plan 9のサポート改善''':<code>GOOS=plan9</code> において、AMD64アーキテクチャ(<code>GOARCH=amd64</code>)のサポートが追加されました。 :# '''Native Client (NaCl) の拡張''':Googleの安全なコード実行環境であるNative Clientにおいて、従来のx86(32ビット/64ビット)に加えてARMアーキテクチャ(<code>GOARCH=arm</code>)がサポートされました。 ; ツールの改善: :# '''リンカーとコンパイラの再構成''':C言語で書かれていた従来のツールチェーン(<code>6g</code>、<code>6l</code> など)を、Go言語自身で書き換える(セルフホスティング)ための前段階として、リンカーの内部構造を分割・整理する基礎工作が行われました。 :# '''godocの静的解析機能''':<code>godoc</code> に高度な静的解析機能(型分析、コールグラフ、メソッドセットの表示など)が統合され、コードブラウジングが強力になりました。 :# '''go testの機能拡張''':<code>go test -cpu</code> フラグで複数のCPUカウントをカンマ区切りで指定できるようになり、異なる並行度でのテストが容易になりました。また、ベンチマーク中のメモリアロケーション統計(<code>-benchmem</code>)がデフォルトで強化されました。 ; ランタイムの改善: :# '''スタック管理の変更(スタックコピーの導入)''':従来の「セグメントスタック(分割スタック)」方式から、必要に応じて新しいメモリ領域を確保してスタック全体を丸ごとコピーする「スタックコピー(後に連続スタックへと繋がる基盤)」方式へ移行が始まりました。これにより、スタック境界で関数呼び出しが繰り返される際のオーバーヘッドが激減しました。 :# '''正確なガベージコレクション(Precise GC)の進展''':ガベージコレクタがさらに精密化され、スタック上のポインタと非ポインタ(整数など)を完全に区別できるようになりました。これにより、誤ってメモリが保持され続ける「メモリリーク(浮遊ポインタ問題)」が解消され、ヒープサイズが縮小しました。 ; 標準ライブラリの改善: :# '''sync.Poolの導入''':ガベージコレクションの負荷を軽減するため、割り当て済みのオブジェクトを再利用するための並行安全なキャッシュ機構 <code>sync.Pool</code> が追加されました。高性能なネットワークサーバーなどの実装で劇的な効果を発揮します。 :# '''パフォーマンスの最適化''':<code>crypto/x509</code>、<code>fmt</code>、<code>net</code>、<code>os</code>、<code>reflect</code> などの主要パッケージでリファクタリングが行われ、多くのアロケーションが削減されたことで、実行速度が全体的に大幅に向上しました。 Go 1.3は、目に見える新機能こそ控えめですが、ランタイムの足腰を徹底的に鍛え上げ、次期バージョン(Go 1.4)以降で本格化する「コンパイラの100% Go言語化(セルフホスティング)」および「完全並行GC」へと向かうための、極めて強固なバイパス(土台)を築いたリリースです。 === Go 1.2 === Go 1.2が、2013年12月にリリースされました<ref>{{cite book | url = https://go.dev/doc/go1.2 | title = Go 1.2 Release Notes - The Go Programming Language | date = 2013/12/01 | accessdate = 2025/05/20 }}</ref><ref>{{cite book | url = https://go.dev/blog/go1.2 | title = Go 1.2 is released - The Go Programming Language | date = 2013/12/01 | accessdate = 2025/05/20 }}</ref>。 Go 1.2は、Go 1.1のリリースから約半年後に提供され、言語仕様への細かな利便性の向上、開発ツールの強力なアップグレード、そしてランタイムのさらなる安定化をもたらしたバージョンです。互換性を維持しつつ、日々の開発体験を向上させる実用的な変更が多く含まれています。最も注目すべき変更点は以下です。 {{Main|[https://go.dev/doc/go1.2 Go 1.2 Release Notes - The Go Programming Language]|[https://go.dev/blog/go1.2 Go 1.2 is released! The Go Blog]}} ; 言語の変更点: :# '''3引数スライス(スライス容量の制御)''':スライス式において、従来の <code>s[i:j]</code> に加え、3つ目の引数を指定する <code>s[i:j:k]</code> という構文(3-index slices)が導入されました。これにより、得られる部分スライスの容量(<code>cap</code>)を最大 <code>k</code> までに制限できるようになり、サブスライスへの追加操作(<code>append</code>)が意図せず元配列の背後にあるメモリを上書きしてしまうリスクを安全に排除できるようになりました。 ; 新しいプラットフォームのサポート: :# '''特定のアーキテクチャへの特記なし''':既存のOS(Linux、Mac OS X、FreeBSD、Windowsなど)およびアーキテクチャ(amd64、386、arm)への最適化とバグ修正が中心であり、新しいOSターゲットの追加はこのバージョンでは行われませんでした。 ; ツールの改善: :# '''テストカバレッジツールの導入(go test -cover)''':<code>go test</code> コマンドに <code>-cover</code> フラグが追加され、コードのテストカバレッジを測定できるようになりました。これに伴い、新ツール <code>go tool cover</code> が提供され、どのコードパスが実行され、どのパスが実行されていないかをブラウザ上で色分けして視覚的に確認できるHTMLレポートの生成が可能になりました。 :# '''go testの並行実行制御''':<code>go test</code> に <code>-cpu</code> フラグの動作が調整されたほか、複数パッケージのテストを並行して実行するための <code>-p</code> フラグの挙動が洗練されました。 ; ランタイムの改善: :# '''ゴルーチンのプリエンプション(協調的スケジューリングの強化)''':ランタイムのスケジューラが拡張され、関数呼び出しのタイミングで自動的にプリエンプション(実行権の譲渡)チェックが挟まれるようになりました。これにより、タイトなループを実行し続ける特定のゴルーチンが1つのスレッドを占有し続け、他のゴルーチンやガベージコレクション(GC)の呼び出しを停止させてしまう問題(飢餓状態)が大幅に緩和されました。 :# '''スレッド制限の導入''':デフォルトで1つのプログラムが作成できるオペレーティングシステム(OS)のスレッド数が最大10,000個に制限されました(<code>runtime/debug.SetMaxThreads</code> で変更可能)。これは、無限にスレッドが生成されてシステム全体のメモリを枯渇させる暴走バグを防ぐための安全策です。 ; 標準ライブラリの改善: :# '''imageパッケージの刷新''':<code>image</code> および <code>image/color</code> パッケージにいくつかの新しいインターフェースと、パフォーマンス向上のためのピクセル精度の最適化が施されました。 :# '''多くのパッケージでの最適化''':<code>compress/bzip2</code>、<code>encoding/json</code>、<code>net</code> などの主要パッケージで、不要なアロケーションの削減やアルゴリズムのブラッシュアップが行われ、実行効率が向上しました。 Go 1.2は、仕様を大きく変えることなく、3引数スライスによる「堅牢性の向上」や、カバレッジツールによる「品質管理の容易化」、そしてスケジューラ改善による「並行処理の安定化」を確実にもたらしました。地味ながらも、プロダクション環境での信頼性を引き上げる確実な一歩となったリリースです。 === Go 1.1 === Go 1.1が、2013年5月にリリースされました<ref>{{cite book | url = https://go.dev/doc/go1.1 | title = Go 1.1 Release Notes - The Go Programming Language | date = 2013/05/13 | accessdate = 2025/05/19 }}</ref><ref>{{cite book | url = https://go.dev/blog/go1.1 | title = Go 1.1 is released - The Go Programming Language | date = 2013/05/13 | accessdate = 2025/05/19 }}</ref>。 Go 1.1は、2012年3月のGo 1.0リリース以来、初めてのメジャーアップデートとなります。Go 1の「互換性約束(Compatibility Guarantee)」を厳格に守りつつ、コミュニティからのフィードバックを反映して、パフォーマンスの大幅な向上、言語仕様の洗練、そして開発ツールの強化が図られました。最も注目すべき変更点は以下です。 {{Main|[https://go.dev/doc/go1.1 Go 1.1 Release Notes - The Go Programming Language]|[https://go.dev/blog/go1.1 Go 1.1 is released! The Go Blog]}} ; 言語の変更点: :# '''メソッド値(Method Values)の導入''':オブジェクトのメソッドを、レシーバ(そのオブジェクト自身)を束縛した状態の関数値として直接取り出せるようになりました。たとえば、f := obj.Method と記述して、後から f() として呼び出すことが可能です。これにより、イベントハンドラやコールバックの記述が非常に簡潔になりました。 :# '''戻り値の要件の厳格化(および合理化)''':値を返す関数において、制御フローの末尾(terminate statement)に return がない場合のコンパイラチェックが厳密になりました。一方で、panic や無限ループで終わるパスなど、明らかに終端に到達しないコードベースでは return を省略できるよう仕様が整理されました。 :# '''整数除算のゼロ除算のランタイムエラー化''':定数ではない変数によるゼロ除算(x / 0)が、コンパイル時だけでなく実行時にも一貫してランタイムパニックを発生させるよう挙動が統一されました。 ; 新しいプラットフォームのサポート: :# '''ARMアーキテクチャのサポート強化''':GOARCH=arm において、浮動小数点演算のハードウェアアクセラレーション(GOARM=7 など)の対応が進み、Raspberry Piなどの組み込みデバイスでの実行速度が飛躍的に向上しました。 :# '''プラットフォームの実験的追加''':freebsd/arm や netbsd/386 などの新しいOS・アーキテクチャの組み合わせへの移植が開始されました。 ; ツールの改善: :# '''goコマンドの機能拡充''':go get や go test などのサブコマンドが大幅に強化されました。特に、他のリポジトリの依存関係の処理がスムーズになり、並行してテストを実行する仕組みが洗練されました。 :# '''レースディテクタ(Race Detector)の搭載''':データ競合(Data Race)を検出するための強力なツール -race フラグが go test、go run、go build に導入されました(ThreadSanitizerをバックエンドに使用)。並行処理プログラムにおいて、複数のゴルーチンが同期なしに同じメモリにアクセスする潜在的バグを自動で暴き出すことができます。 :# '''vetツールの標準化''':コードの静的解析を行い、ミス(Printf のフォーマット指定子の間違いなど)を検出する go vet コマンドが正式にツールチェーンに統合されました。 ; ランタイムの改善: :# '''パフォーマンスの劇的な向上(GCとスケジューラ)''':メモリ割り当て(アロケータ)の効率化、およびガベージコレクタ(GC)のマップ処理の最適化により、多くのプログラムで数10%〜2倍以上の高速化を達成しました。 :# '''新スケジューラ(G-M-Pモデル)への刷新''':ランタイムのゴルーチンスケジューラが全面的に書き換えられました。これまでの単一のグローバルロックによるボトルネックが解消され、複数CPUコア(GOMAXPROCS)を有効にしたマルチスレッド環境における並行処理のスケール性能が爆発的に向上しました。 ; 標準ライブラリの改善: :# '''netパッケージの刷新''':ネットワーク接続のタイムアウト処理や非同期I/Oのバックエンドが刷新され、より高負荷な通信を安定して捌けるようになりました。 :# '''新規パッケージの追加''':文字列やバイト列の効率的なプールを提供する bytes.Buffer の見直しや、データ構造を扱う各種内部パッケージの最適化が行われました。 Go 1.1は、最初のリリースで確立された「安定性」という土台の上に、プロダクション環境で戦うための「圧倒的な速度」と「バグを撃退する強力なツール(レースディテクタ)」を実装した、Go言語の進化において最もエキサイティングなマイルストーンの1つです。 === Go 1.0 === Go 1.0が、2012年3月にリリースされました<ref>{{cite book | url = https://go.dev/doc/go1.0 | title = Go 1.3 Release Notes - The Go Programming Language | date = 2012/03/28 | accessdate = 2025/05/19 }}</ref><ref>{{cite book | url = https://go.dev/blog/go1.0 | title = Go 1.0 is released - The Go Programming Language | date = 2012/03/28 | accessdate = 2025/05/19 }}</ref>。 Go 1.0は、2009年のオープンソース化以来、数年間にわたる活発な開発とコミュニティからのフィードバックを経て到達した、Goプロジェクト史上初の「安定版(Major Stable Release)」です。最大の特徴は、企業や開発者がプロダクション環境で安心して採用できるよう、将来にわたるソースコードの互換性を保証する「Go 1 互換性約束(Compatibility Guarantee)」が確立された点にあります。最も注目すべき変更点と仕様の確定は以下です。{{Main|[https://go.dev/doc/go1.0 Go 1.0 Release Notes - The Go Programming Language]|[https://go.dev/blog/go1.0 Go 1.0 is released! The Go Blog]}} ; 言語の確定と変更点: :# '''互換性の保証(Go 1の約束)''':Go 1.0で記述された標準仕様に準拠するソースコードは、将来のGo 1.x系バージョンにおいても修正なしでコンパイルでき、同じ動作をすることが保証されました。これにより、言語仕様の頻繁な変更に追われるリスクが解消されました。 :# '''新しい型システムと複素数''':complex64 および complex128 が組み込み型として完全に統合されました。また、エラー表現のための標準的なインターフェースとして error 型が導入され、従来の os.Error から置き換えられました。 :# '''マップとスライスのリテラル形式の洗練''':複合リテラル(Composite Literals)の記述において、要素の型を明示的に反復しなくても推論できるケースが増え、コードがより簡潔に記述できるようになりました。 ; プラットフォームのサポート: :# '''OSとアーキテクチャの公式サポート''':Linux(386/amd64/arm)、Mac OS X(Darwin 386/amd64)、FreeBSD(386/amd64)、およびWindows(386/amd64)が、第1級の市民として公式サポート対象となりました。 ; ツールの標準化: :# '''goコマンド(go tool)の誕生''':従来の 6g、6l、make、gotest、goinstall といったバラバラだったコンパイル・ビルド・パッケージ管理・テスト用のツール群が、すべて単一の go コマンド(go build, go install, go test, go get など)に統合されました。これにより、Makefileなしで依存関係を自動解決してビルドする近代的な開発環境が完成しました。 :# '''コードフォーマッタ(gofmt)の確定''':コードの自動整形ツール gofmt の挙動が公式スタイルとして固定され、コミュニティ全体で一貫した読みやすいコードベースを維持する文化が決定づけられました。 :# '''移行ツール(go fix)の提供''':週次ビルドや古いプレリリース(r60など)のコードを、Go 1.0の標準仕様へ自動的に書き換えるための go fix ツールが提供され、スムーズな移行が促されました。 ; ランタイムとメモリの改善: :# '''ガベージコレクタとスケジューラの基本設計''':並行処理を安全に行うためのゴルーチン(Goroutines)のスケジューリング機構、およびヒープメモリの自動管理を行うガベージコレクタ(GC)が、安定稼働を最優先とした第1世代の設計として統合されました。 ; 標準ライブラリの再編成: :# '''ディレクトリ構造の大規模な整理''':初期の雑多なパッケージ配置が見直され、現在の net/http、encoding/json、crypto といった論理的でクリーンな階層構造へと徹底的に再構成されました。 :# '''一貫したAPIデザイン''':すべてのパッケージにおいて、関数の命名規則(大文字開始によるエクスポート)や、エラーを関数の最後の戻り値((result, error))として返すシグネチャの統一が完了しました。 Go 1.0は、一言語のリリースにとどまらず、「言語仕様」「標準ツールチェーン」「標準ライブラリ」が三位一体となり、後方互換性を強く宣言したことで、Go言語が実験的なプロジェクトから、世界規模のクラウドインフラやバックエンドシステムを支える実用言語へと本格的に羽ばたくための不朽の原点となりました。 == Go1.0前史 == Goが2012年3月にメジャー安定版である「Go 1.0」として結実するまでには、約4年半にわたる「知的な実験」と「過酷な試行錯誤」の歴史(前史)が存在します。 UNIXやC言語、Plan 9を生み出した伝説的なエンジニアたちが、Googleという巨大なインフラの中で直面した課題を解決するために始めたプロジェクト――それがGoの始まりでした。 === 1. プロジェクトの誕生と動機(2007年) === Goプロジェクトは、'''2007年9月21日'''、Googleのエンジニアであった'''ロバート・グリースマー(Robert Griesemer)'''、'''ロブ・パイク(Rob Pike)'''、'''ケン・トンプソン(Ken Thompson)'''の3人によるホワイトボードの前での議論から始まりました。 彼らが共有していたのは、当時のソフトウェア開発環境、特にGoogle内部で主流だったC++による大規模システム開発に対する強い「不満」と「危機感」でした。 * '''ハードウェアの進化との乖離''': コンピュータはマルチコア化し、大規模なクラスタで動作する時代になっていたにもかかわらず、C++やJavaなどの言語はシングルコア時代の設計を引きずっており、並行処理(Concurrency)の記述が非常に複雑でエラーを誘発しやすかったこと。 * '''ビルド時間の爆発''': Googleの超巨大なコードベースをC++でビルドすると、ヘッダーファイルの依存関係の複雑さから、コンパイルに数時間から数日を要する「ビルド待ち時間」が発生し、開発効率を著しく低下させていたこと。 * '''言語の肥大化と認知負荷''': 言語に機能(パラダイム)が追加され続けることで複雑化し、他人が書いたコードを理解するコストが跳ね上がっていたこと。 彼らは「'''システムプログラミング言語が持つべき『効率性・静的型付けの安全性』と、動的言語(PythonやJavaScriptなど)が持つ『開発の手軽さ・俊敏さ』を高い次元で融合させた、21世紀のインフラのための新しい言語'''」を求めたのです。 === 2. 黎明期の設計と実装(2008年) === 2008年初頭、言語のプロトタイプ作成が本格化します。この時期に、現在のGoの根幹をなす特徴的な機能が次々と形作られていきました。 * '''コンパイラの着手''': ケン・トンプソンが、自身のUNIX時代の知見を活かしてC言語で独自のコンパイラ群(後にx86向けに <code>6g</code>、<code>6l</code> などと呼ばれるツールチェーン)を書き始めました。 * '''C言語ライクからの脱却''': 当初はC言語の純粋な拡張として構文を検討していましたが、宣言の記述順序(型を後ろに書く <code>x int</code> 形式)の変更や、セミコロンの自動挿入、暗黙の型変換の禁止など、クリーンで厳格な構文へと舵を切りました。 * '''インターフェースと並行処理の融合''': ロバート・グリースマーによる構造的型付け(Structural Typing)に基づく「明示的な宣言を必要としないインターフェース」の設計、そしてロブ・パイクによるPlan 9(NewsqueakやAlef)の知見をベースにした「チャネル(Channels)とゴルーチン(Goroutines)による通信」のアイデアが組み込まれました。 この年、コンパイラ開発の専門家であるイアン・ランス・テイラー(Ian Lance Taylor)'''がプロジェクトに参加し、GCCのフロントエンドとして <code>gccgo</code> の開発を開始。これにより、Goの設計が特定のコンパイラ実装に依存しない汎用的なものであることが証明されました。また、後にGoの主要開発者となる'''ラサ・コックス(Russ Cox)も加わり、ランタイムや標準ライブラリの整備が急速に進みます。 === 3. オープンソース化(2009年11月) === '''2009年11月10日'''、Goは世界に向けてオープンソースプロジェクトとして電撃的に発表されました。 当初は「Googleがまた新しい言語を作った」という好奇の目で見られましたが、その極端なシンプルさとコンパイルの圧倒的な速さは、初期の目の肥えたハッカーたちを魅了しました。 しかし、オープンソース化直後のGo(いわゆる「プレGo 1.0」時代)は、現在のモダンなGoからは想像もつかないほど激動の、そして「毎週のようにコードが壊れる」過酷な開発環境でした。 === 4. ウィークリービルド(Weekly)とリリース(R)の時代(2009年 - 2011年) === Go 1.0がリリースされるまでの約2年間、公式の安定版というものは存在せず、開発は <code>weekly</code>(週次ビルド)および <code>release</code>(r56, r60 など)というバージョン名で刻まれていました。 この時代の主な特徴と混乱は以下の通りです。 ==== ① 頻繁な言語仕様の変更(破壊的変更) ==== 言語のコア機能や組み込み関数が、毎週のように追加・削除・変更されました。 * '''<code>closed</code> から <code>panic</code> へ''': 当初、チャネルが閉じられたかどうかを検知する組み込み関数 <code>closed()</code> がありましたが、後に削除され、現在の <code>v, ok := <-ch</code> 形式へ統合されました。 * '''<code>map</code> のアクセス構文''': マップにキーが存在するかを調べる構文も二転三転し、一時は専用のビルトイン関数が検討されたこともありました。 * '''新しいキーワードの追加と廃止''': メモリ割り当ての <code>new</code> と <code>make</code> の役割分担の整理や、初期にあった特殊な制御構文のスクラップ・アンド・ビルドが繰り返されました。 ==== ② ばらばらのツールチェーン ==== 当時はまだ <code>go</code> コマンドがありませんでした。開発者は以下のような手順を手動(またはMakefile)で行っていました。 * x86-64環境であれば、コンパイルには <code>6g</code>、リンクには <code>6l</code> コマンドを直接叩く。 * 32ビットx86であれば <code>8g</code> / <code>8l</code>、ARMであれば <code>5g</code> / <code>5l</code> を使う。 * パッケージのインストールには <code>goinstall</code>、テストには <code>gotest</code> という別個のスクラップスクリプトが使われており、プロジェクトのビルド管理は非常に煩雑でした。 ==== ③ 標準ライブラリの未成熟と「os.Error」 ==== 現在おなじみの <code>error</code> インターフェース(組み込み型)は存在せず、<code>os</code> パッケージの中に <code>os.Error</code> という型として定義されていました。このため、文字通りあらゆるパッケージが <code>os</code> パッケージに依存するという、不健全な依存構造(循環参照のリスク)を抱えていました。 === 5. 「Go 1」へのカウントダウンと大掃除(2011年後半) === 世界中で徐々にGoが本番環境(初期のCloudflareやSoundCloudなど)で使われ始めるにつれ、「毎週のように仕様が変わり、アップデートするたびにコードが動かなくなる言語は、企業のシステムでは怖くて使えない」という悲鳴が上がりました。 これを受けたコア開発チームは、言語を広く普及させるためには'''「一切の破壊的変更を止め、後方互換性を永久に保証するマイルストーン」'''が必要であると決断します。これが'''「Go 1 共同宣言(Go 1 Release Planning)」'''です。 2011年後半から2012年3月にかけて、チームは「最後の大掃除」に着手しました。 * '''<code>os.Error</code> から 組み込みの <code>error</code> への格上げ''': 依存関係をクリーンにするため、言語自体の組み込み型として <code>error</code> インターフェースを再定義しました。 * '''パッケージの統廃合''': 雑多に広がっていた標準ライブラリ(<code>container/vector</code> の廃止、<code>os/signal</code> への整理など)のレイアウトを徹底的にリファクタリングしました。 * '''<code>go</code> コマンドの誕生''': ラサ・コックスらにより、バラバラだったコンパイル環境を1つに統合する <code>go</code> コマンドが設計され、Makefileが不要なモダンなビルドエコシステムが完成しました。 * '''<code>go fix</code> の提供''': これまで毎週の破壊的変更に苦しんできた世界中の開発者のために、古いプレリリースのソースコードを自動的に「Go 1.0 仕様」へと一括置換・修正してくれる救済ツール(<code>go fix</code>)が開発されました。 === そして「原点」へ === 2012年3月28日、すべての仕様が凍結され、未来永劫の互換性を誓った'''Go 1.0'''が正式にリリースされました。 カオスに満ちた4年半の「前史」で流された無数のリファクタリングの血と、UNIXの巨匠たちがこだわった「引き算の美学(不要な機能を入れない)」があったからこそ、Goは今日に至るまで「10年前のコードが今でもそのまま動く」という、圧倒的な安定性と信頼性を手に入れることができたのです。 == 脚註 == <references /> == 参考文献 == *{{cite book | url = https://go.dev/ref/spec | title = The Go Programming Language Specification | date = JJune 13, 2024 | publisher = The Go website }} == 下位階層のページ == *[[Go/&^]] *[[Go/0]] *[[Go/0.0]] *[[Go/:=]] *[[Go/=]] *[[Go/Cross-package inlining]] *[[Go/Cのif-elseのエラーパターン解消に関するGoの選択]] *[[Go/EBNF]] *[[Go/Goのコードでgoのバージョンを調べる方法]] *[[Go/Goのプログラムがどんなアセンブリにコンパイルされるか?]] *[[Go/Goコンパイラの変遷]] *[[Go/HTTP]] *[[Go/Hypot]] *[[Go/Keywords]] *[[Go/Mid-stack inlining]] *[[Go/Predeclared identifiers]] *[[Go/Size class]] *[[Go/Standard library]] *[[Go/Standard library/errors]] *[[Go/Standard library/fmt]] *[[Go/Standard library/os]] *[[Go/Zero value]] *[[Go/analysis]] *[[Go/any]] *[[Go/append]] *[[Go/bool]] *[[Go/break]] *[[Go/byte]] *[[Go/cap]] *[[Go/case]] *[[Go/cgoでGoのコードからCの関数を利用する]] *[[Go/chan]] *[[Go/clear]] *[[Go/close]] 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{{NDC|007.64}} 83e8x99zihtav79igh1aecbblmu6n10 WinSock/HTTP通信 0 28876 305093 215579 2026-10-22T11:45:39Z Jcb 92857 305093 wikitext text/x-wiki == HTTP通信 == === sockaddr_in 構造体を使う場合 === MSDNのコードではsockaddr_in 構造体を使わずにコードを書いている。(MSDNのコードでは addrinfo* 構造体でソケット通信のコードを書いている。) だが、Windowsでも、addrinfo* 構造体をつかわずに、sockaddr_in 構造体でも、WinSockのコードを下記のようにして書ける。 下記コードでは、ローカルホスト(手元のパソコン自身)に接続している。 ;コード例 <syntaxhighlight lang="cpp"> #include <stdio.h> #include <winsock2.h> #include <ws2tcpip.h> #define _WINSOCK_DEPRECATED_NO_WARNINGS // 古い関数をいくつか使っているので。古いのを置き換えできるなら不要。 #pragma comment( lib, "ws2_32.lib" ) int main(int argc, char** argv) { // WinSockの初期化など WSADATA data; WSAStartup(MAKEWORD(2, 0), &data); // ポート番号 unsigned short port = 8080; // 8080 はローカルホストを意味する伝統的な番号。「9876」とかでもいい。 // sockaddr_in 構造体の確保 struct sockaddr_in destAddr; // sockaddr_in 構造体の設定 memset(&destAddr, 0, sizeof(destAddr)); destAddr.sin_port = htons(port); destAddr.sin_family = AF_INET; char destIP_text[] = "127.0.0.1"; // 127.0.0.1 はローカルホストを意味する番号 inet_pton(AF_INET, destIP_text, &destAddr.sin_addr.s_addr); // 下記コードからの置き換えが必要。 // destAddr.sin_addr.s_addr = inet_addr(destIP_text); // ←これだと古くてエラーになる。 printf("接続しようとしているIPアドレス %s \n", destIP_text); // エラー処理用などの変数 int destSocket; // ソケット生成 destSocket = socket(AF_INET, SOCK_STREAM, 0); // 接続 connect(destSocket, (struct sockaddr*)&destAddr, sizeof(destAddr)); char SendMsg[50] = "aaaa"; // 初期化のため、なんらかの文字列が必要. MSG はメッセージのつもり strcpy_s(SendMsg, 50, "GET /index.html HTTP/1.1 "); // のちの作業のためGETメッセージにしているだけ。 // メッセージはBBBBとか適当なものでもよい。 printf("送ろうとするメッセージ: %s\n", SendMsg); // メッセージ送信 printf("送信中...\n"); send(destSocket, SendMsg, strlen(SendMsg) , 0); // 今後のHTTP処理のためのコード。まだ機能してない。 int rVal; char buf[5000]; int size = 4000; while (1) { rVal = recv(destSocket,buf,size,0); if (rVal==SOCKET_ERROR) { break; } } // WinSockの終了 closesocket(destSocket); WSACleanup(); } // Winsock用パラメータ // 無いとコンパイル時にエラーになる。 // 下記のパラメータは、宣言されてさえいれば、どこでもいい。 int status; int numsnt; </syntaxhighlight> 実務などでエラー処理などのための場合分けが必要になるだろうだが、しかし上記コードにおいてはエラー処理コードがあるとコードが煩雑になって学習者に分かりづらくなる恐れがあるので、上記コードからはエラー処理を除去してある。 なお、<code> inet_pton </code> とは、「pton」の「P」が Presentation の略だと言われており、ここでの「P」は文字列などの意味であり、「n」はNetwaorkの意味であり、 :Presentation to Network (プレゼンからネットへ) の意味であり、ptonは、文字列などを、ソケット関連の構造体のもつ情報に変換する命令である。 逆に、<code> inet_ntop </code> なら、 :Network to Presentation なので、ソケット関連の構造体のもつ情報を、文字列などに置き換える命令である。 === ローカルのXAMPP上のHTMLファイルとの通信 === Apathce などのサーバー上のHTMLファイルとどうやって通信するのか、読者は疑問に思ってるだろう。 さて、実験したいところであるが、しかし、いきなり外部と通信をすると、アクセスが集中したりして迷惑だし、アクセス遮断されたりしかねないので、まず手元のパソコンで試そう。 Windowsの場合、XAMPPというサーバソフトがあるので、これを手元のパソコンにインストールすれば、ローカルのHTTPサーバを立てられる。 文字コードの設定など、やや面倒ではあるが、しかしソケット通信のテストなら、英語のままでも構わないので、インストールしてしまおう。 [[PHP/確実に動作させるまで]] にXAMPPの設定方法など書いてあるので、参考に。 さて、まず、Windows版XAMPPの場合、フォルダ htdocs に、サーバにアップロードしたいファイルを入れる。このhtdocsのような、そこに入れたファイルをサーバにアップロードするフォルダのことを「ドキュメント・ルート」という。 ともかく、このhtdocsフォルダに、HTMLファイルでもPHPファイルでも何でもいいので、名前をつけてファイルを入れる。 ただし、「index.html」など一部の名前は、特別な用途が決まっているので、このような名前は避ける必要がある。 などで、とりあえず「aaaa.html」とか「detarame.html」(デタラメ.html の意味)とか、特別な用途を予約されたファイル名とは重ならないファイル名をつけて、htdocsに入れよう。 detarame.html に「seikou」(成功)とでも書いておこう。そのメッセージが読めたら、ソケット通信の成功である。 日本語はパソコンでは非アスキーコードという意味でマルチバイト文字であるが、しかしWindowsのchar型はシングルバイト文字対応の型であり、そしてWinSockのrecv関数はchar型しか認めていないので、どうあがいても、recv関数だけでは、日本語のようなマルチバイト文字を認識できない。なので、WinSockで日本語を処理するのは、文字コード処理に関する、かなり高度なスキルを要求され、面倒である。 よって、初心者レベルでは、WinSockで日本語を送受信するのは、諦めよう。 さて、XAMPP および Apacheを起動するのを忘れてはいけない。XAMPPの起動後に表れるXAMPPコントロールパネルから、モジュール『Apache』の欄にある「Start」ボタンを押せばいい。すると、Apatcheが手元のパソコン内で立ち上がる。 これさえ出来れば、あとは下記のコードをVisual Studio に入力して、実行・ビルドすればいいだけである。 ;コード例 <syntaxhighlight lang="cpp"> #include <stdio.h> #include <winsock2.h> #include <ws2tcpip.h> #define _WINSOCK_DEPRECATED_NO_WARNINGS // 古い関数をいくつか使っているので。古いのを置き換えできるなら不要。 #pragma comment( lib, "ws2_32.lib" ) // Winsock用パラメータ // 無いとコンパイル時にエラーになる。 // なぜだか、早めに宣言する必要がある。 int status; int numsnt; int main(int argc, char** argv) { // WinSockの初期化など WSADATA data; WSAStartup(MAKEWORD(2, 0), &data); // ポート番号 unsigned short port = 80; // 8080 はローカルホストを意味する伝統的な番号。「9876」とかでもいい。 // sockaddr_in 構造体の確保 struct sockaddr_in destAddr; // sockaddr_in 構造体の設定 memset(&destAddr, 0, sizeof(destAddr)); destAddr.sin_port = htons(port); destAddr.sin_family = AF_INET; char destIP_text[] = "127.0.0.1"; // 127.0.0.1 はローカルホストを意味する番号 inet_pton(AF_INET, destIP_text, &destAddr.sin_addr.s_addr); // 下記コードからの置き換えが必要。 // destAddr.sin_addr.s_addr = inet_addr(destIP_text); // ←これだと古くてエラーになる。 printf("接続しようとしているIPアドレス %s \n", destIP_text); // エラー処理用などの変数 int destSocket; // ソケット生成 destSocket = socket(AF_INET, SOCK_STREAM, 0); // 接続 connect(destSocket, (struct sockaddr*)&destAddr, sizeof(destAddr)); char SendMsg[50] = "aaaa"; // 初期化のため、なんらかの文字列が必要. MSG はメッセージのつもり // printf("送ろうとするメッセージ: %s\n", SendMsg); // メッセージ送信 printf("送信中...\n"); strcpy_s(SendMsg, 50, "GET /detarame.html HTTP/1.0\r\n\r\n"); send(destSocket, SendMsg, strlen(SendMsg) +, 0); // ↓ なくても動くが、今後の拡張用やアップデート対策などに残す // strcpy_s(SendMsg, 50, "Host: localhost\r\n"); // send(destSocket, SendMsg, strlen(SendMsg) , 0); // strcpy_s(SendMsg, 50, "Connection: close\r\n\r\n"); // localhost // send(destSocket, SendMsg, strlen(SendMsg) , 0); int rVal; char buf[5000]; int size = 4000; // 受信 while (1) { rVal = recv(destSocket, buf, size, 0); if ( rVal == 0 || rVal == -1 || rVal == SOCKET_ERROR ) { break; } printf("受信: %s\n", buf); } printf("終\n"); // WinSockの終了 closesocket(destSocket); WSACleanup(); } </syntaxhighlight> これを実行すると、下記のような表示結果になる。 ;表示結果 <pre> 接続しようとしているIPアドレス 127.0.0.1 送信中... 受信: HTTP/1.1 200 OK Date: Wed, 08 Jul 2020 16:44:34 GMT Server: Apache/2.4.43 (Win64) OpenSSL/1.1.1f PHP/7.4.4 Last-Modified: Wed, 08 Jul 2020 16:06:53 GMT ETag: "7-5a9f04be00a8f" Accept-Ranges: bytes Content-Length: 7 Connection: close Content-Type: text/html seikou! 終 C:\Users\ユーザ名\source\repos\sockTestClient\x64\Release\sockTestClient.exe (プロセス 5756) は、コード 0 で終了しました。 デバッグが停止したときに自動的にコンソールを閉じるには、[ツール] -> [オプション] -> [デバッグ] -> [デバッグの停止時に自動的にコンソールを閉じる] を有効にします 。 このウィンドウを閉じるには、任意のキーを押してください... </pre> ;よくある設定ミスと対処法 上記コードを実行したら無限にループになる場合、Apacheの立ち上げを忘れている可能性があります。初日は本節を読んでいてXAMPPのApacheを立ち上げるように説明しているので忘れなくても、2日目以降によく立ち上げを忘れるでしょう。 コード改修で立ち上げ忘れを考慮したコードに改修する事も可能ですが(for文に置き換えるなど)、しかし本節では初学者への分かりやすさの観点から、上記コードはそのまま、ループ箇所をwhile文のままにしておきます。 ;解説 いわゆる外部ネットを含む、ウェブサイトとのHTTP通信を行う場合、ポート番号を「80」番に設定する必要があります。この理由は、そういうふうにHTTPの国際規格やTCP/IPの国際規格などがそう決まっているからです。 一般に、プロトコルの種類や通信の種類などによって、ポート番号が決まっています。 メール通信になると、なぜか上記とは別のポート番号を使います(読者の混同を防ぐため、メール通信のポート番号については、このページでは紹介しません)。 読者は「なぜ、プロトコルの種類に応じてポート番号が違うのか?」とか疑問はわくでしょうが、結局は単に昔の人がそう決めてしまっただけです。 「ポート」と聞くと、あたかも、ハードウェアの何かの端子の番号かのように思えるかもしれませんが、しかしハードウェア端子は一切、ポート番号とは無関係です。 「ポート番号」とは、その名に反して、実質的な意味はプロトコル番号です。 コードの送信メッセージの strcpy_s(SendMsg, 50, "GET /detarame.html HTTP/1.0\r\n\r\n"); で、GETメッセージを送っている。 なお、1回だけの \r\n は改行の意味である。ホスト情報など追加の情報を送る場合、1回だけ「\r\n」と入力し、追加情報を1行ずつ入力していく。 また \r\n\r\n と2個改行が続くことで、送信メッセージ全体がいったん終了する事を意味している(これはUnixソケット通信でも同様)。 なお、Bad Request の結果の表示は、 :(長いので抜粋) <pre> 送信中... 受信: HTTP/1.1 400 Bad Request Date: Wed, 08 Jul 2020 16:58:04 GMT Server: Apache/2.4.43 (Win64) OpenSSL/1.1.1f PHP/7.4.4 </pre> のようになる。 ; recv() 関数の返り値について recv() 関数は、終了時に 0を返し、エラー時に -1 を返すという実装である。 また、一般にWinSockではエラー時の値は SOCKET_ERROR で表すので、念のため上記コードでは recvの直後のif文に SOCKET_ERROR も加えている。 実は、recvのブロックのif文は、 if ( rVal == 0 ) { だけでも、とりあえず上記のコードは動くし、正常に終了する。 一方、 if (rVal == -1) { とか if (rVal == SOCKET_ERROR) { // これだと終わらないのでダメ だと、無限ループになってしまい、そのままでは終了しなくなるので、閉じるにはコマンドプロンプトのウィンドウ右上の「X」ボタンで閉じるしかない。 ;<code>send(destSocket, SendMsg, strlen(SendMsg) , 0); </code> の strlen の長さ <code>send(destSocket, SendMsg, strlen(SendMsg) , 0); </code> の strlen の長さは、ピッタリと、 strlen(SendMsg)でなければなりません。 もし、「多いほうが安全かな?」と誤解して strlen(SendMsg)+1 のように大きくしてしまうと、2行目以降の送信メッセージが1文字ずれてしまうためか、もし、 strcpy_s(SendMsg, 50, "Host: localhost\r\n"); send(destSocket, SendMsg, strlen(SendMsg) , 0); で送信しようと思っても、送信に失敗します。 HTTP1.0ではHostメッセージは不要ですが、HTTP1.1ではHostメッセージが必ず必要なので、strlenはピッタリと過不足なくするように注意してください。 === HTTP1.1 === HTTP1.1では、Hostメッセージが必ず必要です。 Apache のローカルホスト名はそのまま「localhost」ですので、ポート番号の80番とあわせてメッセージを "Host: localhost:80" のようにHostメッセージを加えて送信することになります。 ;コード例 <syntaxhighlight lang="cpp"> #include <stdio.h> #include <winsock2.h> #include <ws2tcpip.h> #define _WINSOCK_DEPRECATED_NO_WARNINGS // 古い関数をいくつか使っているので。古いのを置き換えできるなら不要。 #pragma comment( lib, "ws2_32.lib" ) // Winsock用パラメータ // 無いとコンパイル時にエラーになる。 // なぜだか、早めに宣言する必要がある。 int status; int numsnt; int main(int argc, char** argv) { // WinSockの初期化など WSADATA data; WSAStartup(MAKEWORD(2, 0), &data); // ポート番号 unsigned short port = 80; // 8080 はローカルホストを意味する伝統的な番号。「9876」とかでもいい。 // sockaddr_in 構造体の確保 struct sockaddr_in destAddr; // sockaddr_in 構造体の設定 memset(&destAddr, 0, sizeof(destAddr)); destAddr.sin_port = htons(port); destAddr.sin_family = AF_INET; char destIP_text[] = "127.0.0.1"; // 127.0.0.1 はローカルホストを意味する番号 inet_pton(AF_INET, destIP_text, &destAddr.sin_addr.s_addr); // 下記コードからの置き換えが必要。 // destAddr.sin_addr.s_addr = inet_addr(destIP_text); // ←これだと古くてエラーになる。 printf("接続しようとしているIPアドレス %s \n", destIP_text); // エラー処理用などの変数 int destSocket; // ソケット生成 destSocket = socket(AF_INET, SOCK_STREAM, 0); // 接続 connect(destSocket, (struct sockaddr*)&destAddr, sizeof(destAddr)); char SendMsg[50] = "aaaa"; // 初期化のため、なんらかの文字列が必要. MSG はメッセージのつもり // printf("送ろうとするメッセージ: %s\n", SendMsg); // メッセージ送信 printf("送信中...\n"); strcpy_s(SendMsg, 50, "GET /detarame.html HTTP/1.1\r\n"); send(destSocket, SendMsg, strlen(SendMsg) , 0); strcpy_s(SendMsg, 50, "Host: localhost:80\r\n"); send(destSocket, SendMsg, strlen(SendMsg) , 0); strcpy_s(SendMsg, 50, "\r\n"); send(destSocket, SendMsg, strlen(SendMsg), 0); // ↓ なくても動くが、今後の拡張用やアップデート対策などに残す // strcpy_s(SendMsg, 50, "Connection: close\r\n\r\n"); // localhost // send(destSocket, SendMsg, strlen(SendMsg) , 0); int rVal; char buf[5000]; int size = 4000; // 受信 while (1) { rVal = recv(destSocket, buf, size, 0); if (rVal == 0 || rVal == -1 || rVal == SOCKET_ERROR) { break; } printf("受信: %s\n", buf); } printf("終\n"); // WinSockの終了 closesocket(destSocket); WSACleanup(); } </syntaxhighlight> === IPv6対応 === sockaddr_in構造体はIPv4用の構造体なので、IPv6では使えません。 ですが、ほぼ同じ使い方のできるIPv6用の構造体 sockaddr_in6 がありますので、これを使うと IPv6対応のソケットプログラミングが簡単です。なお Linuxでも同様に sockaddr_in6 に置き換える方法で、IPv6対応できます。 さて、WinSockでも Linuxでも、 AF_INET を AF_INET6 に変える必要があります。 また、sin_portもsin6_portに、sin_family も sin6_family に変えるなど、 構造体のメンバもIpv6用に更新する必要があります。 s_addr も s6_addr に更新します。なお Linuxでも同様です。 手作業でやると大変なので、Visual Studioの一括変換の機能をつかうとラクだし、 更新し忘れによるエラーも防げるでしょう。 また、Ipv6のローカルホストは<code>::1</code>です。6ケタでなく3ケタなのは不思議に感じるかもしれませんが、国際規格({{RFC|4291}} など)でそう決まっています。(なお RFCとは[[w:Request for Comments]]のこと) なお、「::」というふうにコロンが2個続いた記号の意味は、のこりすべて「0」と言う意味です。 つまり、「::1」とは、一番右だけが1で、残りは0の、 0000:0000:0000:0000:0000:0001 という意味です。なお、(2進数ではなく)16進数です。 なので、たとえば、コードは下記のようになります。 ;コード例 <syntaxhighlight lang="cpp"> #include <stdio.h> #include <winsock2.h> #include <ws2tcpip.h> #define _WINSOCK_DEPRECATED_NO_WARNINGS // 古い関数をいくつか使っているので。古いのを置き換えできるなら不要。 #pragma comment( lib, "ws2_32.lib" ) // Winsock用パラメータ // 無いとコンパイル時にエラーになる。 // なぜだか、早めに宣言する必要がある。 int status; int numsnt; int main(int argc, char** argv) { // WinSockの初期化など WSADATA data; WSAStartup(MAKEWORD(2, 0), &data); // ポート番号 unsigned short port = 80; // 80 はローカルホストを意味する伝統的なポート番号。 // sockaddr_in 構造体の確保 struct sockaddr_in6 destAddr; // IPv6対応! // sockaddr_in 構造体の設定 memset(&destAddr, 0, sizeof(destAddr)); destAddr.sin6_port = htons(port); // IPv6対応! destAddr.sin6_family = AF_INET6; // IPv6対応! char destIP_text[] = "::1"; // ここは「"localhost"」ではダメ(IPv4のホストが認識されてしまう)。 inet_pton(AF_INET6, destIP_text, &destAddr.sin6_addr.s6_addr); printf("接続しようとしているIPアドレス %s \n", destIP_text); // エラー処理用などの変数 int destSocket; // ソケット生成 destSocket = socket(AF_INET6, SOCK_STREAM, 0); // IPv6対応! // 接続 connect(destSocket, (struct sockaddr*)&destAddr, sizeof(destAddr)); char SendMsg[50] = "aaaa"; // 初期化のため、なんらかの文字列が必要. MSG はメッセージのつもり // printf("送ろうとするメッセージ: %s\n", SendMsg); // メッセージ送信 printf("送信中...\n"); strcpy_s(SendMsg, 50, "GET /detarame.html HTTP/1.1\r\n"); send(destSocket, SendMsg, strlen(SendMsg) , 0); strcpy_s(SendMsg, 50, "Host: localhost:80\r\n"); send(destSocket, SendMsg, strlen(SendMsg) , 0); strcpy_s(SendMsg, 50, "\r\n"); send(destSocket, SendMsg, strlen(SendMsg), 0); // ↓ なくても動くが、今後の拡張用やアップデート対策などに残す // strcpy_s(SendMsg, 50, "Connection: close\r\n\r\n"); // localhost // send(destSocket, SendMsg, strlen(SendMsg) , 0); int rVal; char buf[5000]; int size = 4000; // 受信 while (1) { rVal = recv(destSocket, buf, size, 0); if (rVal == 0 || rVal == -1 || rVal == SOCKET_ERROR) { break; } printf("受信: %s\n", buf); } printf("終\n"); // WinSockの終了 closesocket(destSocket); WSACleanup(); } </syntaxhighlight> === 文字コード関係 === * [[WinSock/HTTP通信/文字コード関係]] ::'''リンク先の内容''': UTF-8対応、BOM の話題など == webページのHTTP通信を見るには == FirefoxでもGoogle Chromeでも何でもいいですがwebブラウザで、ファンクションキー F12 を押すと、開発者モードになり、ページ下部にブラウザ内などにある情報が表れます。 そこで、いくつも出て来る項目のうち、「ネットワーク」を押すことで、どんなヘッダが送受信されているかを見ることができます。 実際、この「WinSock/HTTP通信」で開発者モードでヘッダを見てみると、 :(抜粋) {| class="wikitable" |- ! style="text-align: center;" | メソッド !! ドメイン !! ファイル !! 初期化 !! タイプ |- | GET || ja.wikibooks.org || HTTP通信 || browsing-centext... || html |- | GET || ja.wikibooks.org || load.php?lang=ja&modules=startup&only=scripts&ra... || stylesheet || css |- |} のような情報を見ることができます。 ローカルホストで作成したApacheサーバ上にあるwebページでも同様の方法で、通信ヘッダを見ることができます。 == telnet == 実は、Visual Studio を使わなくても、telnet (テルネット) という国際規格で決まっている通信形式を使って、WindowsではコマンドプロンプトからHTTP通信が出来ます。 なお、LInuxなどでも telnet 通信が可能です。 当然ながらVisual Studio を経由しない通信なので、(visual Studioとは異なり)マイクロソフトへの会員登録も不要です。 もしWindowsでtelnet通信する場合、まずはコントロールパネルにある「Windowsの機能の有効化または無効化」から(OSバージョンによって多少は手順が異なる)、telnetをインストールします。 その後、コマンドラインで telnet と入力すると、下記のような画面に移り変わります。 まず、文字が表示されて無い場合があるので、コマンド set localecho で文字表示をするように設定します。 すると、成功すれば、 <pre> Microsoft Telnet クライアントへようこそ エスケープ文字は 'CTRL+]' です Microsoft Telnet> </pre> のような画面になります。 失敗したり、何かおかしくなったら、コマンド q または quit でtelnetを終了できます。 この後、コマンド open localhost 80 で、ローカルホストにポート80番で接続できます。 その後、 <pre> Microsoft Telnet クライアントへようこそ エスケープ文字は 'CTRL+]' です Microsoft Telnet> open localhost 80 接続中: localhost... </pre> のような画面に移り、もう接続しています。 Windows番では、カーソル位置がおかしな位置に移り、たとえば冒頭の「Microsoft Telnet クライアントへようこそ」の行頭に移ったりしますが、仕様です。 その後、コマンドで GET /detarame.html HTTP/1.0 とコマンド入力します。 <pre> GET /detarame.html HTTP/1.0トへようこそ エスケープ文字は 'CTRL+]' です Microsoft Telnet> open localhost 80 </pre> のような画面になります。 なお、BackSpace キーや Delete キーは使えません。見た目では、文字は同じでも、telnetはBackSpaceなどのキー情報ごと送信してしまうので、間違えたら、t接続から、やり直す必要があります。 さらに、コマンド入力は、円ターキーを2回押す必要があります。 さて、成功すれば、下記のようにメッセージが返ってきます。 <pre> HTTP/1.1 200 OK Date: Sat, 11 Jul 2020 09:11:02 GMT Server: Apache/2.4.43 (Win64) OpenSSL/1.1.1f PHP/7.4.4 Last-Modified: Wed, 08 Jul 2020 16:06:53 GMT ETag: "7-5a9f04be00a8f" Accept-Ranges: bytes Content-Length: 7 Connection: close Content-Type: text/html seikou! ホストとの接続が切断されました。 続行するには何かキーを押してください... </pre> [[カテゴリ:通信]] nkso783ezirrpv6ubxu81w6duyjujft Unixソケットプログラミング/HTTP通信 0 28896 305092 215589 2026-10-22T11:45:25Z Jcb 92857 305092 wikitext text/x-wiki == HTTP == === HTTPヘッダ === 『[[WinSock/外部通信の方法]]』で概要を説明してある。webブラウザなどのよるホームページなどの表示の仕組みは、原理的にはコレ。 === HTTP通信できるコード === Unixの場合、下記のコードで、ローカルホスト上のApacheにアップロードしたhtmlファイルに、コマンドラインなどからソケット通信でアクセスできる。 あらかじめ、アップロード用のhtmlファイルを作成しておいて、Apacheのドキュメントルートフォルダに入れること。(ドキュメントルートが分からなければ、wikibooks『[[PHP/確実に動作させるまで]]』を参照するか、ググること。) ;コード例 <syntaxhighlight lang="C"> #include <netinet/in.h> #include <stdio.h> #include <sys/socket.h> #include <sys/types.h> #include <arpa/inet.h> #include <string.h> #include <unistd.h> int main() { struct sockaddr_in srcAdoresu; /* ソケットの作成 */ // エラー処理用などの変数 int destSocket; // ソケット生成 destSocket = socket(AF_INET, SOCK_STREAM, 0); /* 接続先指定用構造体の準備 */ srcAdoresu.sin_family = AF_INET; srcAdoresu.sin_port = htons(80); srcAdoresu.sin_addr.s_addr = inet_addr("127.0.0.1"); /* サーバに接続 */ connect(destSocket, (struct sockaddr *)&srcAdoresu, sizeof(srcAdoresu)); /* メッセージの送信 */ char SendMsg[50] = "aaaa"; strcpy(SendMsg, "GET /detarame.html HTTP/1.0\r\n\r\n"); write(destSocket, SendMsg, strlen(SendMsg) ); /* メッセージの受信 */ int rVal; char buf[5000]; int size = 4000; // 受信 while (1) { rVal = recv(destSocket, buf, size, 0); if (rVal == 0 || rVal == -1) { break; } printf("受信: %s\n", buf); } /* socketの終了 */ close(destSocket); return 0; } </syntaxhighlight> :(※ Fedora32 で 2020年7月9日に動作を確認ずみ ) 解説は、[[WinSock/HTTP通信]] とほぼ同じなので、そちらを参照されたし。 ;実行結果 <pre> 受信: HTTP/1.1 200 OK Date: Thu, 09 Jul 2020 08:41:05 GMT Server: Apache/2.4.43 (Fedora) Last-Modified: Thu, 09 Jul 2020 08:23:36 GMT ETag: "18-5a9fdf0de13dc" Accept-Ranges: bytes Content-Length: 24 Connection: close Content-Type: text/html; charset=UTF-8 seikou! 2gyoume 3gyoume </pre> なお、アップロードしたhtmlファイルは、上記コードの場合 ;detarame.html <pre> seikou! 2gyoume 3gyoume </pre> という内容である。(ファイル名は、デタラメhtmlのつもり) 意味的には 成功 2行目 3行目 のつもり。 なお、Linuxの場合は日本語の全角文字列でも送受信できる(※ Fedora32 で 2020年7月9日に確認ずみ )。Windowsの場合などは文字コードなどの理由で日本語の設定が難しい場合があるので、本wikiでは説明の簡単化のため英語にしてある。 コードの注意点として、もしWinSockのコードをコピーしたとき、Linuxでは strcpy_s を使えないので、strcpy に置き換える必要があり、引数なども調整する必要がある。 また、send()関数ではなくwrite()関数にすること。Linuxにも互換性のためかsend()関数が用意されているようだが、若干、WinSockとは仕様が違うらしく、WinSockのコードそのままでは動かない。ならば、いっそwrite()関数に置き換えたほうがLinuxではラクである。 === 解説 === ;よくある設定ミスと対処法 上記コードを実行したら無限にループになる場合、Apacheの立ち上げを忘れている可能性があります。初日は本節を読んでいてApacheを立ち上げるように説明しているので忘れなくても、2日目以降によく立ち上げを忘れるでしょう。 コード改修で立ち上げ忘れを考慮したコードに改修する事も可能ですが(for文に置き換えるなど)、しかし本節では初学者への分かりやすさの観点から、上記コードはそのまま、ループ箇所をwhile文のままにしておきます。 ;解説 いわゆる外部ネットを含む、ウェブサイトとのHTTP通信を行う場合、ポート番号を「80」番に設定する必要があります。この理由は、そういうふうにHTTPの国際規格やTCP/IPの国際規格などがそう決まっているからです。 一般に、プロトコルの種類や通信の種類などによって、ポート番号が決まっています。 メール通信になると、なぜか上記とは別のポート番号を使います(読者の混同を防ぐため、メール通信のポート番号については、このページでは紹介しません)。 読者は「なぜ、プロトコルの種類に応じてポート番号が違うのか?」とか疑問はわくでしょうが、結局は単に昔の人がそう決めてしまっただけです。 「ポート」と聞くと、あたかも、ハードウェアの何かの端子の番号かのように思えるかもしれませんが、しかしハードウェア端子は一切、ポート番号とは無関係です。 「ポート番号」とは、その名に反して、実質的な意味はプロトコル番号です。 場合によっては複数のクライアント側コンピュータが1つのホストにアクセスする事もよくあるので、同じポート番号を使う場合が多々あり(たとえば、どのクライアントでもHTTPなら80番を使う)、ポート番号だけでは通信先を特定できないです<ref>村山公保『基礎からわかるTCP/IPネットワークコンピューティング入門』、オーム社、平成30年9月10日、226ページ</ref>。 よって、通信先の特定のために、ポート番号とIPアドレスの少なくとも2つ以上の関連付け(「アソシエーション」といいます)されたデータセットによって、通信が管理されています。<ref>村山公保『基礎からわかるTCP/IPネットワークコンピューティング入門』、オーム社、平成30年9月10日、226ページ</ref> コードの送信メッセージの strcpy(SendMsg, "GET /detarame.html HTTP/1.0\r\n\r\n"); でGETメッセージを送っている。 なお、1回だけの \r\n は改行の意味である。ホスト情報など追加の情報を送る場合、1回だけ「\r\n」と入力し、追加情報を1行ずつ入力していく。 また \r\n\r\n と2個改行が続くことで、送信メッセージ全体がいったん終了する事を意味している(これはUnixソケット通信でも同様)。 なお、Bad Request の結果の表示は、 :(長いので抜粋) <pre> 送信中... 受信: HTTP/1.1 400 Bad Request Date: Wed, 08 Jul 2020 16:58:04 GMT Server: Apache/2.4.43 (Win64) OpenSSL/1.1.1f PHP/7.4.4 </pre> のようになる。 ; recv() 関数の返り値について Windowsでは、write()関数ではなくsend()関数でGETメッセージを送るのだが、Unixの場合、send関数で送っていも、recv()関数で受け取る事ができる。 Unixでもrecv() 関数の仕様は、正常な終了時には 0を返し、エラー時に -1 を返すという実装のようである。 実は、recvのブロックのif文は、 if ( rVal == 0 ) { だけでも、とりあえず上記のコードは動くし、正常に終了する。 一方、 if (rVal == -1) { とか if (rVal == SOCKET_ERROR) { // これだと終わらないのでダメ だと、無限ループになってしまい、そのままでは終了しなくなるので、閉じるにはコマンドプロンプトのウィンドウ右上の「X」ボタンで閉じるしかない。 ;<code>write(destSocket, SendMsg, strlen(SendMsg) ); </code> の strlen の長さ <code>write(destSocket, SendMsg, strlen(SendMsg) ); </code> の strlen の長さは、ピッタリと、 strlen(SendMsg)でなければなりません。 もし、「多いほうが安全かな?」と誤解して strlen(SendMsg)+1 のように大きくしてしまうと、2行目以降の送信メッセージが1文字ずれてしまうためか、もし、次のHostメッセージ trcpy(SendMsg, "Host: localhost:80\r\n"); write(destSocket, SendMsg, strlen(SendMsg) ); で送信しようと思っても、送信に失敗します。 HTTP1.0ではHostメッセージは不要ですが、HTTP1.1ではHostメッセージが必ず必要なので、strlenはピッタリと過不足なくするように注意してください。 === IPv6対応 === ※ 解説はWinSockとほぼ同じ。 sockaddr_in構造体はIPv4用の構造体なので、IPv6では使えません。 ですが、ほぼ同じ使い方のできるIPv6用の構造体 sockaddr_in6 がありますので、これを使うと IPv6対応のソケットプログラミングが簡単です。なお LinuxでもWindowsでも同様に sockaddr_in6 に置き換える方法で、IPv6対応できます。 さて、Linuxでも、 AF_INET を AF_INET6 に変える必要があります。 また、sin_portもsin6_portに、sin_family も sin6_family に変えるなど、 構造体のメンバもIpv6用に更新する必要があります。 s_addr も s6_addr に更新します。なお Linuxでも同様です。 手作業でやると大変なので、テキストエディタの一括変換の機能をつかうとラクだし、 更新し忘れによるエラーも防げるでしょう。 また、Ipv6のローカルホストは<code>::1</code>です。6ケタでなく3ケタなのは不思議に感じるかもしれませんが、国際規格({{RFC|4291}} など)でそう決まっています。(なお RFCとは[[w:Request for Comments]]のこと) なお、「::」というふうにコロンが2個続いた記号の意味は、のこりすべて「0」と言う意味です。 つまり、「::1」とは、一番右だけが1で、残りは0の、 0000:0000:0000:0000:0000:0000:0000:0001 という意味です。なお、(2進数ではなく)16進数です。なお、IPv6の4個の数字の並びは合計8グループです(6グループではないです)。(つまり、4×8=32個の数字がある。) Ipv6のvとはバージョンの事です。数字のグループの個数とは無関係です。IPv4の数字が「127.0.0.1」のように4グループなのは、偶然の一致です。 ともかく、Unixの場合、IPv6対応のコードは、たとえば下記のようになります。 ;コード例 <syntaxhighlight lang="C"> #include <netinet/in.h> #include <stdio.h> #include <sys/socket.h> #include <sys/types.h> #include <arpa/inet.h> #include <string.h> #include <unistd.h> int main() { struct sockaddr_in6 srcAdoresu; /* ソケットの作成 */ // エラー処理用などの変数 int destSocket; // ソケット生成 destSocket = socket(AF_INET6, SOCK_STREAM, 0); /* 接続先指定用構造体の準備 */ srcAdoresu.sin6_family = AF_INET6; srcAdoresu.sin6_port = htons(80); srcAdoresu.sin6_family = AF_INET6; char destIP_text[] = "::1"; // ここは「"localhost"」ではダメ(IPv4のホストが認識されてしまう)。 inet_pton(AF_INET6, destIP_text, &srcAdoresu.sin6_addr.s6_addr); /* サーバに接続 */ connect(destSocket, (struct sockaddr *)&srcAdoresu, sizeof(srcAdoresu)); /* メッセージの送信 */ char SendMsg[50] = "aaaa"; strcpy(SendMsg, "GET /detarame.html HTTP/1.0\r\n\r\n"); write(destSocket, SendMsg, strlen(SendMsg)); /* メッセージの受信 */ int rVal; char buf[5000]; int size = 4000; // 受信 while (1) { rVal = recv(destSocket, buf, size, 0); if (rVal == 0 || rVal == -1) { break; } printf("受信: %s\n", buf); } /* socketの終了 */ close(destSocket); return 0; } </syntaxhighlight> HTTPは1.0でも1.1でも、どちらでも、IPv6対応が可能です。 === HTTP1.1対応 === :※ 解説はWinSockとほぼ同じ。 HTTP1.1では、Hostメッセージが必ず必要です。 Apache のローカルホスト名はそのまま「localhost」ですので、ポート番号の80番とあわせてメッセージを "Host: localhost:80" のようにHostメッセージを加えて送信することになります。 ;コード例 <syntaxhighlight lang="C"> #include <netinet/in.h> #include <stdio.h> #include <sys/socket.h> #include <sys/types.h> #include <arpa/inet.h> #include <string.h> #include <unistd.h> int main() { struct sockaddr_in6 srcAdoresu; /* ソケットの作成 */ // エラー処理用などの変数 int destSocket; // ソケット生成 destSocket = socket(AF_INET6, SOCK_STREAM, 0); /* 接続先指定用構造体の準備 */ srcAdoresu.sin6_family = AF_INET6; srcAdoresu.sin6_port = htons(80); srcAdoresu.sin6_family = AF_INET6; char destIP_text[] = "::1"; // ここは「"localhost"」ではダメ(IPv4のホストが認識されてしまう)。 inet_pton(AF_INET6, destIP_text, &srcAdoresu.sin6_addr.s6_addr); /* サーバに接続 */ connect(destSocket, (struct sockaddr *)&srcAdoresu, sizeof(srcAdoresu)); /* メッセージの送信 */ char SendMsg[50] = "aaaa"; strcpy(SendMsg, "GET /detarame.html HTTP/1.1\r\n"); write(destSocket, SendMsg, strlen(SendMsg) ); strcpy(SendMsg, "Host: localhost:80\r\n"); write(destSocket, SendMsg, strlen(SendMsg) ); strcpy(SendMsg, "\r\n"); write(destSocket, SendMsg, strlen(SendMsg) ); /* メッセージの受信 */ int rVal; char buf[5000]; int size = 4000; // 受信 while (1) { rVal = recv(destSocket, buf, size, 0); if (rVal == 0 || rVal == -1) { break; } printf("受信: %s\n", buf); } /* socketの終了 */ close(destSocket); return 0; } </syntaxhighlight> 外部サイトにアクセスする場合、Hostメッセージは strcpy(SendMsg, "Host: www.企業名.com:80\r\n"); のように入力する事になる。 Hostに入れるのは、アクセス先のドメイン名とポート番号である。まちがえて、localhostを入れても、単なるエラーになる。 == gethostbyname は別物 == gethostbyname という、サイト名をもとにIPアドレスを検索できる関数がソケット通信にはあるが(なおWindowsでは、IPv6対応などの事情により、2020年現在では他の関数( getaddrinfo など)に置き換わっている)、 しかし、この gethostbyname の問い合わせ先は DNSサーバ であるので、HTTP通信とはあまり関係ない。(IPアドレス先サーバーに接続は'''しない'''関数である。単にサイト名からIPアドレス情報をDNSサーバに問い合わせて受け取るだけである。) :なお、gethostname という関数名の(hostとnameのあいだに「by」が無い)、似た名前のライブラリ関数もあるが、gethostbyname と gethostname とはまったく別の関数なので混同しないように(名称変更などではなく、そもそも別物の関数である。)。 しかも、企業のホームページの場合、たとえばどこかの企業の何らかのコンテンツをブラウザで閲覧した場合、アドレス欄に https://www.企業名.com/コンテンツURL のように各ページのURLが表示されるわけだが、 しかし通常、DNSサーバーに登録されているのは https://www.企業名.com の部分までである。 また、けっして gethostbyname は目的の企業サイトなどと接続するわけではない。下記コードのように、bind() や connect() などが'''無くても'''、 gethostbyname の結果を表示できる。 ;コード例 <syntaxhighlight lang="C"> #include <stdio.h> #include <sys/types.h> #include <sys/socket.h> #include <netinet/in.h> #include <unistd.h> #include <string.h> #include <arpa/inet.h> #include <netdb.h> #include <stdlib.h> int main(int argc, char *argv[]) { struct hostent *host; host = gethostbyname("localhost"); printf("ホスト名 :s\n", host->h_name); printf("別名 : %s\n", host->h_aliases[0]); return 0; } </syntaxhighlight> :(Linuxの Fedora 32 で 2020年5月17日に確認。) ;結果 ホスト名 :localhost 別名 : localhost.localdomain ;解説 構造体であらかじめ hostent 型というのがOSなどにより用意されている。なので、この構造体の「hostent」という部分の名前は変えてはいけない。 <nowiki>*host </nowiki> は単なるポインタ変数名なので、他のポインタ変数名に変えてもいい。 IPアドレスを表示したい場合は、さらに <syntaxhighlight lang="C"> // この上はprintf("別名 : %s\n", host->h_aliases[0]); struct in_addr *addr; addr = (struct in_addr *)(host->h_addr); printf("IPアドレス : %s\n", inet_ntoa(*addr)); // この直後に return 0; </syntaxhighlight> というコードを付けたす。 つまり、 ;IPアドレスまで表示するコード例 <syntaxhighlight lang="C"> #include <netinet/in.h> #include <stdio.h> #include <sys/socket.h> #include <sys/types.h> #include <arpa/inet.h> #include <netdb.h> #include <string.h> #include <unistd.h> #include <stdlib.h> int main(int argc, char *argv[]) { struct hostent *host; host = gethostbyname("localhost"); printf("ホスト名 :%s\n", host->h_name); printf("別名 : %s\n", host->h_aliases[0]); struct in_addr *addr; addr = (struct in_addr *)(host->h_addr); printf("IPアドレス : %s\n", inet_ntoa(*addr)); return 0; } </syntaxhighlight> ;表示結果 ホスト名 :localhost 別名 : localhost.localdomain IPアドレス : 127.0.0.1 のようになる。 ;解説 <code> struct in_addr *addr; </code> のポインタ変数名 *addr は別にほかの変数名でもよいのだが(変えても動作することをLinuxのFedora32で2020年に確認ずみ)、慣習的に「*addr」という変数名をつかう場合が多い。 ;備考 余談だが、gethostbyname で自機にホスト名やIPアドレスなどを問い合わせるとき、わざわざサーバー側のプログラムを立てる必要は無い。 このことからも、最終目的のサーバーに問い合わせているのではなく、別のところ(一般にはDNSサーバー)に問い合わせている様子が分かるだろう。 == getaddrinfo == ;予備知識 まず、コマンドラインで nslookup ドメイン名 と入れると、そのドメインのIPアドレスが出て来る。 たとえば、 nslookup www.yaahule.co.jp みたいにコマンドを入れる。(yaahuleは架空の企業名。) もし後述コードで getaddrinfo によるソケット通信をした結果、nslookupで表示された結果と同じIPv6アドレスまたはIPv6アドレスが表示されれば、そのコードはDNSサーバとの通信に成功している。 ==== IPv4版 ==== Ipv4用のコードだが、getaddrinfoが次のコードで、Linux上で動く。(※ 2020年7月17日に、Fedora32上で動くことを確認ずみ。) なお、下記コードの企業名、ドメイン名はデタラメなので、実験の際には、実在する検索エンジンのドメインに変えること。(下記のままだと、<code>./a.out</code> などで実行しても、何も表示されない。) <syntaxhighlight lang="C"> #include <netinet/in.h> #include <stdio.h> #include <sys/socket.h> #include <sys/types.h> #include <arpa/inet.h> #include <string.h> #include <unistd.h> #include <netdb.h> // これがないと、hints などを使えない int main() { char hostname[20] = "www.yaahule.com"; // 架空の企業名 struct addrinfo hints, * res; int err; memset(&hints, 0, sizeof(hints)); hints.ai_socktype = SOCK_STREAM; hints.ai_family = AF_INET; hints.ai_protocol = IPPROTO_TCP; err = getaddrinfo(hostname, NULL, &hints, &res); if (err != 0) { return -1; } struct sockaddr_in* temp = (struct sockaddr_in*)(res->ai_addr) ; struct in_addr nameaddr; nameaddr.s_addr = (temp)->sin_addr.s_addr; char destbuf_text[500]; inet_ntop(AF_INET, &(nameaddr.s_addr), destbuf_text, 100); printf("IPアドレス %s \n", destbuf_text); freeaddrinfo(res); return 0; } </syntaxhighlight> ;実行結果 IPアドレス 123.○△×.765.□△ :※ 実行例の数字はデタラメです。 ==== IPv6対応 ==== <syntaxhighlight lang="C"> #include <netinet/in.h> #include <stdio.h> #include <sys/socket.h> #include <sys/types.h> #include <arpa/inet.h> #include <string.h> #include <unistd.h> #include <netdb.h> int main() { char hostname[20] = "www.yaahule.com"; // 架空の企業名 struct addrinfo hints, * res; int err; memset(&hints, 0, sizeof(hints)); hints.ai_socktype = SOCK_STREAM; hints.ai_family = AF_INET6; hints.ai_protocol = IPPROTO_TCP; err = getaddrinfo(hostname, NULL, &hints, &res); if (err != 0) { return -1; } // いっぺんに↓こう書いても、コンパイルできない。いろいろアレンジしてもダメ。 // &nameaddr->sin6_addr = ((struct sockaddr_in6*)(res->ai_addr))->sin6_addr.s6_addr; struct sockaddr_in6* nameaddr; // in6_addr 型ではなく sockaddr_in6 に変えること nameaddr = (struct sockaddr_in6*)res->ai_addr; char destbuf_text[500]; inet_ntop(AF_INET6, &(nameaddr->sin6_addr), destbuf_text, 200); printf("IP v6 アドレス - %s\n", destbuf_text); freeaddrinfo(res); return 0; } </syntaxhighlight> ;実行結果 IP v6 アドレス - 2345:6789:○○△△:654::2005 :(※ 数字はデタラメです。) == telnet == telnet (テルネット)という国際規格に基づいたネット通信の方法が古くから(インターネット黎明期から)あり、Linuxでは、コマンドラインで telnet を利用できる。 :※ telnetは、HTTP以外の通信もできるが、本wikiでは説明の都合上、HTTPの節で一緒に説明する。HTTPでtelnet通信するのが、もっとも入門しやすいだろうから。入門所でも、よくtelnetの例でHTTP通信の事例が紹介されている。 Fedora Linux (Fedora 32) の場合、最初からtelnetはインストールされているので新規インストール作業は不要だが、もし入っていなかったら、 sudo dnf install telnet でインストールできる。 コマンドラインで telnet と入力すれば、コマンドラインがtelnet に移行する。 コマンド入力が成功すれば、 <pre> [ユーザ名@localhost ~]$ telnet telnet> </pre> のような画面になる。 telnet をやめたい場合、 quit または単に q と入力すればいい。 Linuxの場合、telnetの文字表示の設定が最初から済んでいるので、特に設定をいじる必要は無い。(なおWindowsは、初期設定ではtelnetが文字表示されない。) Linux の telnet で、ローカルホストに接続するには、Apacheを立ち上げたあと、コマンド入力 open localhost 80 で接続できる。書式は open ホスト名 ポート番号 の書式である。 コマンド入力が成功すれば、 <pre> [ユーザ名@localhost ~]$ telnet telnet> open localhost 80 Trying ::1... Connected to localhost. Escape character is '^]'. </pre> のような画面になる。 IPアドレスでもオープンできるが、 open 127.0.0.1 80 と書くと、数字が続いて見づらいので、なるべく「localhost」でオープンしたほうが良いだろう。 そして、Escape character なんとかの次の行にカーソルが移るので、 <pre> [ユーザ名@localhost ~]$ telnet telnet> open localhost 80 Trying ::1... Connected to localhost. Escape character is '^]'. GET /detarame.html HTTP/1.0(リターン) (リターン) </pre> のように入力する。(リターン)とは、その位置でリターンキーを押すこと。けっして実際に「(リターン)」と文字入力してはいけない。 この結果、見た目は <pre> [ユーザ名@localhost ~]$ telnet telnet> open localhost 80 Trying ::1... Connected to localhost. Escape character is '^]'. GET /detarame.html HTTP/1.0 </pre> のようになる。 成功すれば、 HTTP/1.1 200 OK Date: Sun, 12 Jul 2020 01:12:06 GMT (長いので冒頭を抜粋)のような返事が返ってきて、以下のようになる。 ;実行結果 <pre> [ユーザ名@localhost ~]$ telnet telnet> open localhost 80 Trying ::1... Connected to localhost. Escape character is '^]'. GET /detarame.html HTTP/1.0 HTTP/1.1 200 OK Date: Sun, 12 Jul 2020 01:12:06 GMT Server: Apache/2.4.43 (Fedora) Last-Modified: Thu, 09 Jul 2020 08:48:49 GMT ETag: "22-5a9fe4b09cb08" Accept-Ranges: bytes Content-Length: 34 Connection: close Content-Type: text/html; charset=UTF-8 成功 日本語テスト 3行目 Connection closed by foreign host. </pre> [[カテゴリ:通信]] 5owbizs120q4khs7jetoig127e1a5z1 ロシア語/文法/名詞の性と格変化 0 30391 305047 174142 2026-10-22T09:47:48Z Jcb 92857 305047 wikitext text/x-wiki ここでは、ロシア語の名詞の性及び格変化について解説します。 == 名詞の性 == ロシア語の名詞には、男性、女性、中性の三つの性があります。 === 性の見分け方 === ロシア語の名詞の性はほとんどの場合、以下のように語尾で見分けることができます。 {| class="wikitable" |+ 名詞の性<ref>{{Cite book|和書|author=前木 祥子|title=CD BOOK しっかり学ぶロシア語|publisher=ベレ出版|year=2018|page=60|ISBN=4-86064-072-1}}</ref> |- ! ! 語尾 ! 例 |-align=center ! rowspan=2 style="background:#0DaDdD" | 男性 | 子音字 | {{lang|ru|[[wikt:музей|музе́'''й''']]}} (“博物館”)<br>{{lang|ru|[[wikt:месяц|ме́ся'''ц''']]}} (“月”) |-align=center | {{lang|ru|ь}} | {{lang|ru|[[wikt:дождь|дожд'''ь''']]}} (“雨”)<br>{{lang|ru|[[wikt:словарь|слова́р'''ь''']]}} (“辞書”) |-align=center ! rowspan=3 style="background:#bD4D4D" | 女性 | {{lang|ru|а}} | {{lang|ru|[[wikt:рука|рук'''а́''']]}} (“腕”)<br>{{lang|ru|[[wikt:жена|жен'''а́''']]}} (“女性”) |-align=center | {{lang|ru|ь}} | {{lang|ru|[[wikt:мать|мат'''ь''']]}} (“母”) |-align=center | {{lang|ru|я}} | {{lang|ru|[[wikt:неделя|неде́л'''я''']]}} (“日曜日”) |-align=center ! rowspan=3 style="background:#6DbD0D" | 中性 | {{lang|ru|е}} | {{lang|ru|[[wikt:море|мо́р'''е''']]}} (“海”)<br>{{lang|ru|[[wikt:учение|уче́ни'''е''']]}} (“学び”) |-align=center | {{lang|ru|о}} | {{lang|ru|[[wikt:небо|не́б'''о''']]}} (“空”)<br>{{lang|ru|[[wikt:око|о́к'''о''']]}} (“目”) |-align=center | {{lang|ru|мя}} | {{lang|ru|[[wikt:имя|и́'''мя''']]}} (“名前”) |} == 格変化 == ロシア語の名詞には6つの格があり<ref group="注釈">6つの他に呼格や処格が存在しますが、一部の語彙にしか見られません。</ref>、必要に応じて語形変化を伴って格を変化させます。普通名詞だけでなく、固有名詞も格変化します<ref group="注釈">外来語以外</ref>。 {| class="wikitable" |+ 名詞の格<ref>{{Cite book|和書|author=前木 祥子|title=CD BOOK しっかり学ぶロシア語|publisher=ベレ出版|year=2018|page=85|ISBN=4-86064-072-1}}</ref> |-align=center ! ! 説明 ! 例文<ref group="注釈">太字が該当の格に当たる。</ref> |-align=center ! style="white-space:nowrap" | 主格 | style="white-space:nowrap" | その語彙の原形。<br>主語になる。<br>「…は」 | style="white-space:nowrap" | {{lang|ru|'''Я''' хочу́ быть профе́ссором ру́сского языка́.}}<br>'''私は'''ロシア語の教授になりたい。 |-align=center ! style="white-space:nowrap" | 生格 | style="white-space:nowrap" | ドイツ語等の属格、英語の所有格に近い。<br>名詞等の修飾に使われる。<br>「…の」 | style="white-space:nowrap" | {{lang|ru|Э́то — ру́чка '''моего́ бра́та'''.}}<br>これは'''私の兄の'''ペンだ。 |-align=center ! style="white-space:nowrap" | 与格 | style="white-space:nowrap" | 間接目的語。<br>英語のSVOO構文の一つ目のOの働きに近い。<br>「…に」 | style="white-space:nowrap" | {{lang|ru|Алекса́ндра дала́ '''ему́''' шокола́д.}}<br>アレクサンドラは'''彼に'''チョコレートをあげた。 |-align=center ! style="white-space:nowrap" | 対格 | style="white-space:nowrap" | 直接目的語。<br>英語のSVO構文のOの働きに近い。<br>「…を」 | style="white-space:nowrap" | {{lang|ru|Я пил '''ко́фе''' сего́дня у́тром.}}<br>私は今朝'''コーヒーを'''飲んだ。 |-align=center ! style="white-space:nowrap" | 造格 | 「…で」「…として」 | style="white-space:nowrap" | {{lang|ru|Я е́ду в шко́лу '''по́ездом'''.}}<br>私は'''電車で'''学校に通う。 |-align=center ! style="white-space:nowrap" | 前置格 | style="white-space:nowrap" |前置詞を伴う<ref group="注釈">ただし、前置詞の後が前置格とは限らない。</ref>。 | style="white-space:nowrap" | {{lang|ru|Мы пое́дем в Росси́ю '''в сле́дующем ме́сяце'''.}}<br>私たちは'''来月'''、ロシアに行く。 |} === 男性名詞の格変化 === 便宜上、種類毎に名前をつけます。 ==== 普通型 ==== {| class="wikitable" |+ 普通型<ref name="nkwz2015">{{Cite book|和書|author=[[w:中澤英彦|中澤英彦]] 編|title=プログレッシブ ロシア語辞典|publisher=[[w:小学館|小学館]]|year=2015|page=15}} {{ISBN|978-4-09-510271-9}}</ref> |-align=center ! ! 単数 ! 複数 |-align=center ! 主格 | {{lang|ru|-}} | {{lang|ru|-ы}} |-align=center ! 生格 | {{lang|ru|-а}} | {{lang|ru|-ов}} |-align=center ! 与格 | {{lang|ru|-у}} | {{lang|ru|-ам}} |-align=center ! 対格 | {{lang|ru|-}} | {{lang|ru|-ы}} |-align=center ! 造格 | {{lang|ru|-ом}} | {{lang|ru|-ами}} |-align=center ! 前置格 | {{lang|ru|-е}} | {{lang|ru|-ах}} |} {| class="wikitable" |+ style="white-space:nowrap"| {{lang|ru|[[wikt:хлеб|хлеб]]}} (“パン”) — 普通型<ref>{{Cite web|url=https://www.russiandict.net/translate/хлеб|title=''RussianDict — {{lang|ru|хлеб}}''|accessdate=2021-1-10}}</ref> |-align=center ! ! 単数 ! 複数 |-align=center ! 主格 | {{lang|ru|хлеб}} | {{lang|ru|хле́б'''ы'''}} |-align=center ! 生格 | {{lang|ru|хле́б'''а'''}} | {{lang|ru|хле́б'''ов'''}} |-align=center ! 与格 | {{lang|ru|хле́б'''у'''}} | {{lang|ru|хле́б'''ам'''}} |-align=center ! 対格 | {{lang|ru|хлеб}} | {{lang|ru|хле́б'''ы'''}} |-align=center ! 造格 | {{lang|ru|хле́б'''ом'''}} | {{lang|ru|хле́б'''ами'''}} |-align=center ! 前置格 | {{lang|ru|хле́б'''е'''}} | {{lang|ru|хле́б'''ах'''}} |} ==== {{lang|ru|ГКХ}}型 ==== 語尾が{{lang|ru|г, к, х}}のいずれかの場合。 特徴は普通型では{{lang|ru|-ы}}の箇所が{{lang|ru|-и}}となる点<ref group="注釈">ロシア語の正書法では、{{lang|ru|г, к, х}}の後に{{lang|ru|ы}}が置けないため。</ref>。 {| class="wikitable" |+ {{lang|ru|ГКХ}}型<ref name="nkwz2015" /> |-align=center ! ! 単数 ! 複数 |-align=center ! 主格 | {{lang|ru|-}} | {{lang|ru|-и}} |-align=center ! 生格 | {{lang|ru|-а}} | {{lang|ru|-ов}} |-align=center ! 与格 | {{lang|ru|-у}} | {{lang|ru|-ам}} |-align=center ! 対格 | {{lang|ru|-}} | {{lang|ru|-и}} |-align=center ! 造格 | {{lang|ru|-ом}} | {{lang|ru|-ами}} |-align=center ! 前置格 | {{lang|ru|-е}} | {{lang|ru|-ах}} |} {| class="wikitable" |+ style="white-space:nowrap"| {{lang|ru|[[wikt:язык|язы́к]]}} (“言語”) — {{lang|ru|ГКХ}}型<ref>{{Cite web|url=https://www.russiandict.net/translate/язык|title=''RussianDict — {{lang|ru|язык}}''|accessdate=2021-1-10}}</ref> |-align=center ! ! 単数 ! 複数 |-align=center ! 主格 | {{lang|ru|язы́к}} | {{lang|ru|язык'''и́'''}} |-align=center ! 生格 | {{lang|ru|язык'''а́'''}} | {{lang|ru|язык'''о́в'''}} |-align=center ! 与格 | {{lang|ru|язык'''у́'''}} | {{lang|ru|язык'''а́м'''}} |-align=center ! 対格 | {{lang|ru|язы́к}} | {{lang|ru|язык'''и́'''}} |-align=center ! 造格 | {{lang|ru|язык'''о́м'''}} | {{lang|ru|язык'''а́ми'''}} |-align=center ! 前置格 | {{lang|ru|язык'''е́'''}} | {{lang|ru|язык'''а́х'''}} |} ==== {{lang|ru|Ц}}型 ==== {| class="wikitable" |+ {{lang|ru|Ц}}型<ref name="nkwz2015" /> |-align=center ! ! 単数 ! 複数 |-align=center ! 主格 | {{lang|ru|-}} | {{lang|ru|-ы}} |-align=center ! 生格 | {{lang|ru|-а}} | {{lang|ru|-ев, -ов}} |-align=center ! 与格 | {{lang|ru|-у}} | {{lang|ru|-ам}} |-align=center ! 対格 | {{lang|ru|-}} | {{lang|ru|-ы}} |-align=center ! 造格 | {{lang|ru|-ем, -ом}} | {{lang|ru|-ами}} |-align=center ! 前置格 | {{lang|ru|-е}} | {{lang|ru|-ах}} |} == 脚注 == === 注釈 === <references group="注釈" /> === 出典 === <references /> bg52jnuaj9qr9y6dnq9bcwo7onpqvat 利用者:Alexandr3126/砂場 2 30397 305008 177791 2026-10-22T08:47:42Z Jcb 92857 305008 wikitext text/x-wiki ここでは、ロシア語の名詞の性及び格変化について解説します。 == 名詞の性 == ロシア語の名詞には、男性、女性、中性の三つの性があります。 === 性の見分け方 === ロシア語の名詞の性はほとんどの場合、以下のように語尾で見分けることができます。 {| class="wikitable" |+ 名詞の性<ref>{{Cite book|和書|author=前木 祥子|title=CD BOOK しっかり学ぶロシア語|publisher=ベレ出版|year=2018|page=60|ISBN=4-86064-072-1}}</ref> |- ! ! 語尾 ! 例 |-align=center style="background:#f0ffff;" ! rowspan=2 style="background:#AFEEEE;" | 男性 | 子音字 | {{lang|ru|[[wikt:музей|музе́'''й''']]}} (“博物館”)<br>{{lang|ru|[[wikt:месяц|ме́ся'''ц''']]}} (“月”) |-align=center style="background:#f0ffff;" | {{lang|ru|ь}} | {{lang|ru|[[wikt:дождь|дожд'''ь''']]}} (“雨”)<br>{{lang|ru|[[wikt:словарь|слова́р'''ь''']]}} (“辞書”) |-align=center style="background:#FFFAF0;" ! rowspan=3 style="background:#FFA500;" | 女性 | {{lang|ru|а}} | {{lang|ru|[[wikt:рука|рук'''а́''']]}} (“腕”)<br>{{lang|ru|[[wikt:жена|жен'''а́''']]}} (“女性”) |-align=center style="background:#FFFAF0;" | {{lang|ru|ь}} | {{lang|ru|[[wikt:мать|мат'''ь''']]}} (“母”) |-align=center style="background:#FFFAF0;" | {{lang|ru|я}} | {{lang|ru|[[wikt:неделя|неде́л'''я''']]}} (“日曜日”) |-align=center style="background:#F0FFF0;" ! rowspan=4 style="background:#9ACD32;" | 中性 | {{lang|ru|е}} | {{lang|ru|[[wikt:море|мо́р'''е''']]}} (“海”)<br>{{lang|ru|[[wikt:учение|уче́ни'''е''']]}} (“学び”) |-align=center style="background:#F0FFF0;" | {{lang|ru|ё}} | <!--加筆希望--> |-align=center style="background:#F0FFF0;" | {{lang|ru|о}} | {{lang|ru|[[wikt:небо|не́б'''о''']]}} (“空”)<br>{{lang|ru|[[wikt:око|о́к'''о''']]}} (“目”) |-align=center style="background:#F0FFF0;" | {{lang|ru|мя}} | {{lang|ru|[[wikt:имя|и́'''мя''']]}} (“名前”) |} 上記以外に{{lang|ru|[[wikt:папа|па́п'''а''']]}} (“パパ”)<ref group="注釈">女性名詞同様に語尾が {{lang|ru|а}} だが、男性を表すため男性名詞である。しかし、女性名詞と同様の格変化をする。</ref>のように、例外がいくつか存在します。 == 格変化 == ロシア語の名詞には6つの格があり<ref group="注釈">6つの他に呼格や処格、分格が存在しますが、一部の語彙にしか見られません。</ref>、必要に応じて語形変化を伴って格を変化させます。普通名詞だけでなく、代名詞や固有名詞<ref group="注釈">外来語以外</ref>も格変化します。 {| class="wikitable" |+ 名詞の格<ref>{{Cite book|和書|author=前木 祥子|title=CD BOOK しっかり学ぶロシア語|publisher=ベレ出版|year=2018|page=85|ISBN=4-86064-072-1}}</ref> |-align=center ! ! 説明 ! 例文<ref group="注釈">太字が該当の格に当たる。</ref> |-align=center ! style="white-space:nowrap" | 主格 | style="white-space:nowrap" | その語彙の原形。<br>主語になる。<br>「…は」 | style="white-space:nowrap" | {{lang|ru|'''Я''' хочу́ быть профе́ссором ру́сского языка́.}}<br>'''私は'''ロシア語の教授になりたい。 |-align=center ! style="white-space:nowrap" | 生格 | style="white-space:nowrap" | ドイツ語等の属格、英語の所有格に近い。<br>名詞等の修飾に使われる。<br>「…の」 | style="white-space:nowrap" | {{lang|ru|Э́то — ру́чка '''моего́ бра́та'''.}}<br>これは'''私の兄の'''ペンだ。 |-align=center ! style="white-space:nowrap" | 与格 | style="white-space:nowrap" | 間接目的語。<br>英語のSVOO構文の一つ目のOの働きに近い。<br>「…に」 | style="white-space:nowrap" | {{lang|ru|Алекса́ндра дала́ '''ему́''' шокола́д.}}<br>アレクサンドラは'''彼に'''チョコレートをあげた。 |-align=center ! style="white-space:nowrap" | 対格 | style="white-space:nowrap" | 直接目的語。<br>英語のSVO構文のOの働きに近い。<br>「…を」 | style="white-space:nowrap" | {{lang|ru|Я пил '''ко́фе''' сего́дня у́тром.}}<br>私は今朝'''コーヒーを'''飲んだ。 |-align=center ! style="white-space:nowrap" | 造格 | 「…で」「…として」 | style="white-space:nowrap" | {{lang|ru|Я е́ду в шко́лу '''по́ездом'''.}}<br>私は'''電車で'''学校に通う。 |-align=center ! style="white-space:nowrap" | 前置格 | style="white-space:nowrap" |前置詞を伴う<ref group="注釈">ただし、前置詞の後が前置格とは限らない。</ref>。 | style="white-space:nowrap" | {{lang|ru|Мы пое́дем в Росси́ю '''в сле́дующем ме́сяце'''.}}<br>私たちは'''来月'''、ロシアに行く。 |} === 男性名詞の格変化 === 便宜上、種類毎に語尾に因んだ名前をつけます。 ==== 普通型 ==== {| class="wikitable" style="background:#f0ffff; width:20em;" |+ 普通型<ref name="nkwz2015-p15">{{Cite book|和書|author=[[w:中澤英彦|中澤英彦]] 編|title=プログレッシブ ロシア語辞典|publisher=[[w:小学館|小学館]]|year=2015|page=15}} {{ISBN|978-4-09-510271-9}}</ref> |-align=center ! colspan="2" style="background:#AFEEEE;" | ! style="background:#AFEEEE;" | 単数 ! style="background:#AFEEEE;" | 複数 |-align=center ! colspan="2" style="background:#AFEEEE;" | 主格 | {{lang|ru|-}} | {{lang|ru|-ы}} |-align=center ! colspan="2" style="background:#AFEEEE;" | 生格 | {{lang|ru|-а}} | {{lang|ru|-ов}} |-align=center ! colspan="2" style="background:#AFEEEE;" | 与格 | {{lang|ru|-у}} | {{lang|ru|-ам}} |-align=center ! rowspan="2" style="background:#AFEEEE;" | 対格 ! style="background:#E0FFFF;" | 不活動体 | 主格に同じ | 主格に同じ |-align=center ! style="background:#E0FFFF;" | 活動体 | 生格に同じ | 生格に同じ |-align=center ! colspan="2" style="background:#AFEEEE;" | 造格 | {{lang|ru|-ом}} | {{lang|ru|-ами}} |-align=center ! colspan="2" style="background:#AFEEEE;" | 前置格 | {{lang|ru|-е}} | {{lang|ru|-ах}} |} <div class="NavFrame" style="width:20em;"> <div class="NavHead" style="background:#AFEEEE;">&nbsp;{{lang|ru|[[wikt:хлеб|'''хлеб''']]}} (“パン”) — 普通型<ref>{{Cite web|url=https://www.russiandict.net/translate/хлеб|title={{lang|ru|хлеб}}|website={{lang|en|RussianDict}}|accessdate=2021-1-10}}</ref></div> <div class="NavContent"> {| class="wikitable" style="width:20em;" |-align=center ! ! 単数 ! 複数 |-align=center ! 主格 | {{lang|ru|хлеб}} | {{lang|ru|хле́б'''ы'''}} |-align=center ! 生格 | {{lang|ru|хле́б'''а'''}} | {{lang|ru|хле́б'''ов'''}} |-align=center ! 与格 | {{lang|ru|хле́б'''у'''}} | {{lang|ru|хле́б'''ам'''}} |-align=center ! 対格 | {{lang|ru|хлеб}} | {{lang|ru|хле́б'''ы'''}} |-align=center ! 造格 | {{lang|ru|хле́б'''ом'''}} | {{lang|ru|хле́б'''ами'''}} |-align=center ! 前置格 | {{lang|ru|хле́б'''е'''}} | {{lang|ru|хле́б'''ах'''}} |} </div></div> ==== {{lang|ru|ГКХ}}型 ==== 語尾が {{lang|ru|г, к, х}} のいずれかの場合。 特徴は普通型では {{lang|ru|-ы}} の箇所が {{lang|ru|-и}} となる点<ref name="seishohou" group="注釈">ロシア語の正書法では、{{lang|ru|г, ж, к, х, ч, ш, щ}} の後に {{lang|ru|ы}} が置けないため。</ref>。 {| class="wikitable" style="background:#f0ffff; width:20em;" |+ {{lang|ru|ГКХ}}型<ref name="nkwz2015-p15" /> |-align=center ! colspan="2" style="background:#AFEEEE;" | ! style="background:#AFEEEE;" | 単数 ! style="background:#AFEEEE;" | 複数 |-align=center ! colspan="2" style="background:#AFEEEE;" | 主格 | {{lang|ru|-}} | {{lang|ru|-и}} |-align=center ! colspan="2" style="background:#AFEEEE;" | 生格 | {{lang|ru|-а}} | {{lang|ru|-ов}} |-align=center ! colspan="2" style="background:#AFEEEE;" | 与格 | {{lang|ru|-у}} | {{lang|ru|-ам}} |-align=center ! rowspan="2" style="background:#AFEEEE;" | 対格 ! style="background:#E0FFFF;" | 不活動体 | 主格に同じ | 主格に同じ |-align=center ! style="background:#E0FFFF;" | 活動体 | 生格に同じ | 生格に同じ |-align=center ! colspan="2" style="background:#AFEEEE;" | 造格 | {{lang|ru|-ом}} | {{lang|ru|-ами}} |-align=center ! colspan="2" style="background:#AFEEEE;" | 前置格 | {{lang|ru|-е}} | {{lang|ru|-ах}} |} <div class="NavFrame" style="width:20em;"> <div class="NavHead" style="background:#AFEEEE;">&nbsp;{{lang|ru|[[wikt:язык|'''язы́к''']]}} (“言語”) — {{lang|ru|ГКХ}}型<ref>{{Cite web|url=https://www.russiandict.net/translate/язык|title={{lang|ru|язык}}|website={{lang|en|RussianDict}}|accessdate=2021-1-10}}</ref></div> <div class="NavContent"> {| class="wikitable" style="width:20em;" |-align=center ! ! 単数 ! 複数 |-align=center ! 主格 | {{lang|ru|язы́к}} | {{lang|ru|язык'''и́'''}} |-align=center ! 生格 | {{lang|ru|язык'''а́'''}} | {{lang|ru|язык'''о́в'''}} |-align=center ! 与格 | {{lang|ru|язык'''у́'''}} | {{lang|ru|язык'''а́м'''}} |-align=center ! 対格 | {{lang|ru|язы́к}} | {{lang|ru|язык'''и́'''}} |-align=center ! 造格 | {{lang|ru|язык'''о́м'''}} | {{lang|ru|язык'''а́ми'''}} |-align=center ! 前置格 | {{lang|ru|язык'''е́'''}} | {{lang|ru|язык'''а́х'''}} |}</div></div> ==== {{lang|ru|Ц}}型 ==== 語尾が {{lang|ru|ц}} の場合。 {| class="wikitable" style="background:#f0ffff; width:20em;" |+ {{lang|ru|Ц}}型<ref name="nkwz2015-p15" /> |-align=center ! colspan="2" style="background:#AFEEEE;" | ! style="background:#AFEEEE;" | 単数 ! style="background:#AFEEEE;" | 複数 |-align=center ! colspan="2" style="background:#AFEEEE;" | 主格 | {{lang|ru|-}} | {{lang|ru|-ы}} |-align=center ! colspan="2" style="background:#AFEEEE;" | 生格 | {{lang|ru|-а}} | {{lang|ru|-ев, -ов}} |-align=center ! colspan="2" style="background:#AFEEEE;" | 与格 | {{lang|ru|-у}} | {{lang|ru|-ам}} |-align=center ! rowspan="2" style="background:#AFEEEE;" | 対格 ! style="background:#E0FFFF;" | 不活動体 | 主格に同じ | 主格に同じ |-align=center ! style="background:#E0FFFF;" | 活動体 | 生格に同じ | 生格に同じ |-align=center ! colspan="2" style="background:#AFEEEE;" | 造格 | {{lang|ru|-ем, -ом}} | {{lang|ru|-ами}} |-align=center ! colspan="2" style="background:#AFEEEE;" | 前置格 | {{lang|ru|-е}} | {{lang|ru|-ах}} |} ==== {{lang|ru|ЖЧШЩ}}型 ==== 語尾が {{lang|ru|ж, ч, ш, щ}} のいずれかの場合。 特徴は普通型では {{lang|ru|-ы}} の箇所が {{lang|ru|-и}} となる点<ref name="seishohou" group="注釈" />、{{lang|ru|Ц}}型と複数生格が異なる点。 {| class="wikitable" style="background:#f0ffff; width:20em;" |+ {{lang|ru|ЖЧШЩ}}型<ref name="nkwz2015-p15" /> |-align=center ! colspan="2" style="background:#AFEEEE;" | ! style="background:#AFEEEE;" | 単数 ! style="background:#AFEEEE;" | 複数 |-align=center ! colspan="2" style="background:#AFEEEE;" | 主格 | {{lang|ru|-}} | {{lang|ru|-и}} |-align=center ! colspan="2" style="background:#AFEEEE;" | 生格 | {{lang|ru|-а}} | {{lang|ru|-ей}} |-align=center ! colspan="2" style="background:#AFEEEE;" | 与格 | {{lang|ru|-у}} | {{lang|ru|-ам}} |-align=center ! rowspan="2" style="background:#AFEEEE;" | 対格 ! style="background:#E0FFFF;" | 不活動体 | 主格に同じ | 主格に同じ |-align=center ! style="background:#E0FFFF;" | 活動体 | 生格に同じ | 生格に同じ |-align=center ! colspan="2" style="background:#AFEEEE;" | 造格 | {{lang|ru|-ем, -ом}} | {{lang|ru|-ами}} |-align=center ! colspan="2" style="background:#AFEEEE;" | 前置格 | {{lang|ru|-е}} | {{lang|ru|-ах}} |} ==== 男{{lang|ru|Ь}}型 ==== 男性名詞で語尾が {{lang|ru|ь}} の場合。 {| class="wikitable" style="background:#f0ffff; width:20em;" |+ 男{{lang|ru|Ь}}型<ref name="nkwz2015-p15" /> |-align=center ! colspan="2" style="background:#AFEEEE;" | ! style="background:#AFEEEE;" | 単数 ! style="background:#AFEEEE;" | 複数 |-align=center ! colspan="2" style="background:#AFEEEE;" | 主格 | {{lang|ru|-ь}} | {{lang|ru|-и}} |-align=center ! colspan="2" style="background:#AFEEEE;" | 生格 | {{lang|ru|-я}} | {{lang|ru|-ей}} |-align=center ! colspan="2" style="background:#AFEEEE;" | 与格 | {{lang|ru|-ю}} | {{lang|ru|-ям}} |-align=center ! rowspan="2" style="background:#AFEEEE;" | 対格 ! style="background:#E0FFFF;" | 不活動体 | 主格に同じ | 主格に同じ |-align=center ! style="background:#E0FFFF;" | 活動体 | 生格に同じ | 生格に同じ |-align=center ! colspan="2" style="background:#AFEEEE;" | 造格 | {{lang|ru|-ем, -ём}} | {{lang|ru|-ями}} |-align=center ! colspan="2" style="background:#AFEEEE;" | 前置格 | {{lang|ru|-е}} | {{lang|ru|-ях}} |} ==== {{lang|ru|Й}}型 ==== 語尾が {{lang|ru|й}} の場合。{{lang|ru|ий}} の場合は{{lang|ru|ИЙ}}型を参照。 {| class="wikitable" style="background:#f0ffff; width:20em;" |+ {{lang|ru|Й}}型<ref name="nkwz2015-p15" /> |-align=center ! colspan="2" style="background:#AFEEEE;" | ! style="background:#AFEEEE;" | 単数 ! style="background:#AFEEEE;" | 複数 |-align=center ! colspan="2" style="background:#AFEEEE;" | 主格 | {{lang|ru|-й}} | {{lang|ru|-и}} |-align=center ! colspan="2" style="background:#AFEEEE;" | 生格 | {{lang|ru|-я}} | {{lang|ru|-ев, -ёв}} |-align=center ! colspan="2" style="background:#AFEEEE;" | 与格 | {{lang|ru|-ю}} | {{lang|ru|-ям}} |-align=center ! rowspan="2" style="background:#AFEEEE;" | 対格 ! style="background:#E0FFFF;" | 不活動体 | 主格に同じ | 主格に同じ |-align=center ! style="background:#E0FFFF;" | 活動体 | 生格に同じ | 生格に同じ |-align=center ! colspan="2" style="background:#AFEEEE;" | 造格 | {{lang|ru|-ем, -ём}} | {{lang|ru|-ями}} |-align=center ! colspan="2" style="background:#AFEEEE;" | 前置格 | {{lang|ru|-е}} | {{lang|ru|-ях}} |} ==== {{lang|ru|ИЙ}}型 ==== 語尾が {{lang|ru|ий}} の場合。 {| class="wikitable" style="background:#f0ffff; width:20em;" |+ {{lang|ru|ИЙ}}型<ref name="nkwz2015-p15" /> |-align=center ! colspan="2" style="background:#AFEEEE;" | ! style="background:#AFEEEE;" | 単数 ! style="background:#AFEEEE;" | 複数 |-align=center ! colspan="2" style="background:#AFEEEE;" | 主格 | {{lang|ru|-ий}} | {{lang|ru|-ии}} |-align=center ! colspan="2" style="background:#AFEEEE;" | 生格 | {{lang|ru|-ия}} | {{lang|ru|-иев}} |-align=center ! colspan="2" style="background:#AFEEEE;" | 与格 | {{lang|ru|-ию}} | {{lang|ru|-иям}} |-align=center ! rowspan="2" style="background:#AFEEEE;" | 対格 ! style="background:#E0FFFF;" | 不活動体 | 主格に同じ | 主格に同じ |-align=center ! style="background:#E0FFFF;" | 活動体 | 生格に同じ | 生格に同じ |-align=center ! colspan="2" style="background:#AFEEEE;" | 造格 | {{lang|ru|-ием}} | {{lang|ru|-иями}} |-align=center ! colspan="2" style="background:#AFEEEE;" | 前置格 | {{lang|ru|-ии}} | {{lang|ru|-иях}} |} === 女性名詞の格変化 === 便宜上、種類毎に語尾に因んだ名前をつけます。 ==== {{lang|ru|А}}型 ==== 語尾が {{lang|ru|а}} の場合。 {| class="wikitable" style="background:#FFFAF0; width:20em;" |+ {{lang|ru|А}}型<ref name="nkwz2015-p16">{{Cite book|和書|author=[[w:中澤英彦|中澤英彦]] 編|title=プログレッシブ ロシア語辞典|publisher=[[w:小学館|小学館]]|year=2015|page=16}} {{ISBN|978-4-09-510271-9}}</ref> |-align=center ! colspan="2" style="background:#FFA500;" | ! style="background:#FFA500;" | 単数 ! style="background:#FFA500;" | 複数 |-align=center ! colspan="2" style="background:#FFA500;" | 主格 | {{lang|ru|-а}} | {{lang|ru|-ы}} |-align=center ! colspan="2" style="background:#FFA500;" | 生格 | {{lang|ru|-ы}} | {{lang|ru|-}}<ref name="shoumetsuorhanten" group="注釈">大抵は最後から2番目の文字が消滅、若しくは語尾の文字との位置が反転し、母音が変化します。</ref> |-align=center ! colspan="2" style="background:#FFA500;" | 与格 | {{lang|ru|-е}} | {{lang|ru|-ам}} |-align=center ! rowspan="2" style="background:#FFA500;" | 対格 ! style="background:#FFDAB9;" | 不活動体 | rowspan="2" | {{lang|ru|-у}} | 主格に同じ |-align=center ! style="background:#FFDAB9;" | 活動体 | 生格に同じ |-align=center ! colspan="2" style="background:#FFA500;" | 造格 | {{lang|ru|-ой, -ою}} | {{lang|ru|-ами}} |-align=center ! colspan="2" style="background:#FFA500;" | 前置格 | {{lang|ru|-е}} | {{lang|ru|-ах}} |} ==== {{lang|ru|ГКХ-А}}型 ==== 語尾が {{lang|ru|га, ка, ха}} のいずれかの場合。 {| class="wikitable" style="background:#FFFAF0; width:20em;" |+ {{lang|ru|ГКХ-А}}型<ref name="nkwz2015-p16" /> |-align=center ! colspan="2" style="background:#FFA500;" | ! style="background:#FFA500;" | 単数 ! style="background:#FFA500;" | 複数 |-align=center ! colspan="2" style="background:#FFA500;" | 主格 | {{lang|ru|-а}} | {{lang|ru|-и}} |-align=center ! colspan="2" style="background:#FFA500;" | 生格 | {{lang|ru|-и}} | {{lang|ru|-}}<ref name="shoumetsuorhanten" group="注釈" /> |-align=center ! colspan="2" style="background:#FFA500;" | 与格 | {{lang|ru|-е}} | {{lang|ru|-ам}} |-align=center ! rowspan="2" style="background:#FFA500;" | 対格 ! style="background:#FFDAB9;" | 不活動体 | rowspan="2" | {{lang|ru|-у}} | 主格に同じ |-align=center ! style="background:#FFDAB9;" | 活動体 | 生格に同じ |-align=center ! colspan="2" style="background:#FFA500;" | 造格 | {{lang|ru|-ой, -ою}} | {{lang|ru|-ами}} |-align=center ! colspan="2" style="background:#FFA500;" | 前置格 | {{lang|ru|-е}} | {{lang|ru|-ах}} |} <div class="NavFrame" style="width:20em;"> <div class="NavHead" style="background:#FFA500;">&nbsp;{{lang|ru|[[wikt:водка|'''во́дка''']]}} (“ウォッカ”) — {{lang|ru|ГКХ-А}}型<ref>{{Cite web|url=https://www.russiandict.net/translate/водка|title={{lang|ru|водка}}|website={{lang|en|RussianDict}}|accessdate=2021-1-10}}</ref></div> <div class="NavContent"> {| class="wikitable" style="width:20em;" |-align=center ! ! 単数 ! 複数 |-align=center ! 主格 | {{lang|ru|во́дк'''а'''}} | {{lang|ru|во́дк'''и'''}} |-align=center ! 生格 | {{lang|ru|во́дк'''и'''}} | {{lang|ru|во́док}} |-align=center ! 与格 | {{lang|ru|во́дк'''е'''}} | {{lang|ru|во́дк'''ам'''}} |-align=center ! 対格 | {{lang|ru|во́дк'''у'''}} | {{lang|ru|во́дк'''и'''}} |-align=center ! 造格 | {{lang|ru|во́дк'''ой''', во́дк'''ою'''}} | {{lang|ru|во́дк'''ами'''}} |-align=center ! 前置格 | {{lang|ru|во́дк'''е'''}} | {{lang|ru|во́дк'''ах'''}} |}</div></div> ==== {{lang|ru|Ц-А}}型 ==== 語尾が {{lang|ru|ца}} の場合。 {| class="wikitable" style="background:#FFFAF0; width:20em;" |+ {{lang|ru|Ц-А}}型<ref name="nkwz2015-p16" /> |-align=center ! colspan="2" style="background:#FFA500;" | ! style="background:#FFA500;" | 単数 ! style="background:#FFA500;" | 複数 |-align=center ! colspan="2" style="background:#FFA500;" | 主格 | {{lang|ru|-а}} | {{lang|ru|-ы}} |-align=center ! colspan="2" style="background:#FFA500;" | 生格 | {{lang|ru|-ы}} | {{lang|ru|-}}<ref name="shoumetsuorhanten" group="注釈" /> |-align=center ! colspan="2" style="background:#FFA500;" | 与格 | {{lang|ru|-е}} | {{lang|ru|-ам}} |-align=center ! rowspan="2" style="background:#FFA500;" | 対格 ! style="background:#FFDAB9;" | 不活動体 | rowspan="2" | {{lang|ru|-у}} | 主格に同じ |-align=center ! style="background:#FFDAB9;" | 活動体 | 生格に同じ |-align=center ! colspan="2" style="background:#FFA500;" | 造格 | {{lang|ru|-ей, -ею<br/>-ой, -ою}} | {{lang|ru|-ами}} |-align=center ! colspan="2" style="background:#FFA500;" | 前置格 | {{lang|ru|-е}} | {{lang|ru|-ах}} |} ==== {{lang|ru|ЖЧШЩ-А}}型 ==== 語尾が {{lang|ru|жа, ча, ша, ща}} のいずれかの場合。 {| class="wikitable" style="background:#FFFAF0; width:20em;" |+ {{lang|ru|ЖЧШЩ-А}}型<ref name="nkwz2015-p16" /> |-align=center ! colspan="2" style="background:#FFA500;" | ! style="background:#FFA500;" | 単数 ! style="background:#FFA500;" | 複数 |-align=center ! colspan="2" style="background:#FFA500;" | 主格 | {{lang|ru|-а}} | {{lang|ru|-и}} |-align=center ! colspan="2" style="background:#FFA500;" | 生格 | {{lang|ru|-и}} | {{lang|ru|-}}<ref name="shoumetsuorhanten" group="注釈" /> |-align=center ! colspan="2" style="background:#FFA500;" | 与格 | {{lang|ru|-е}} | {{lang|ru|-ам}} |-align=center ! rowspan="2" style="background:#FFA500;" | 対格 ! style="background:#FFDAB9;" | 不活動体 | rowspan="2" | {{lang|ru|-у}} | 主格に同じ |-align=center ! style="background:#FFDAB9;" | 活動体 | 生格に同じ |-align=center ! colspan="2" style="background:#FFA500;" | 造格 | {{lang|ru|-ей, -ею<br/>-ой, -ою}} | {{lang|ru|-ами}} |-align=center ! colspan="2" style="background:#FFA500;" | 前置格 | {{lang|ru|-е}} | {{lang|ru|-ах}} |} ==== {{lang|ru|Я}}型 ==== 語尾が {{lang|ru|я}} の場合。 {| class="wikitable" style="background:#FFFAF0; width:20em;" |+ {{lang|ru|Я}}型<ref name="nkwz2015-p16" /> |-align=center ! colspan="2" style="background:#FFA500;" | ! style="background:#FFA500;" | 単数 ! style="background:#FFA500;" | 複数 |-align=center ! colspan="2" style="background:#FFA500;" | 主格 | {{lang|ru|-я}} | {{lang|ru|-и}} |-align=center ! colspan="2" style="background:#FFA500;" | 生格 | {{lang|ru|-и}} | {{lang|ru|-ь}} |-align=center ! colspan="2" style="background:#FFA500;" | 与格 | {{lang|ru|-е}} | {{lang|ru|-ям}} |-align=center ! rowspan="2" style="background:#FFA500;" | 対格 ! style="background:#FFDAB9;" | 不活動体 | rowspan="2" | {{lang|ru|-ю}} | 主格に同じ |-align=center ! style="background:#FFDAB9;" | 活動体 | 生格に同じ |-align=center ! colspan="2" style="background:#FFA500;" | 造格 | {{lang|ru|-ей, -ёю<br/>-ей, -ёю}} | {{lang|ru|-ями}} |-align=center ! colspan="2" style="background:#FFA500;" | 前置格 | {{lang|ru|-е}} | {{lang|ru|-ях}} |} ==== 女{{lang|ru|Ь}}型 ==== 語尾が {{lang|ru|ь}} の場合。 {| class="wikitable" style="background:#FFFAF0; width:20em;" |+ 女{{lang|ru|Ь}}型<ref name="nkwz2015-p16" /> |-align=center ! colspan="2" style="background:#FFA500;" | ! style="background:#FFA500;" | 単数 ! style="background:#FFA500;" | 複数 |-align=center ! colspan="2" style="background:#FFA500;" | 主格 | {{lang|ru|-ь}} | {{lang|ru|-и}} |-align=center ! colspan="2" style="background:#FFA500;" | 生格 | {{lang|ru|-и}} | {{lang|ru|-ей}} |-align=center ! colspan="2" style="background:#FFA500;" | 与格 | {{lang|ru|-и}} | {{lang|ru|-ям}} |-align=center ! rowspan="2" style="background:#FFA500;" | 対格 ! style="background:#FFDAB9;" | 不活動体 | rowspan="2" | {{lang|ru|-ь}} | 主格に同じ |-align=center ! style="background:#FFDAB9;" | 活動体 | 生格に同じ |-align=center ! colspan="2" style="background:#FFA500;" | 造格 | {{lang|ru|-ью}} | {{lang|ru|-ями}} |-align=center ! colspan="2" style="background:#FFA500;" | 前置格 | {{lang|ru|-и}} | {{lang|ru|-ях}} |} <div class="NavFrame" style="width:20em;"> <div class="NavHead" style="background:#FFA500;">&nbsp;{{lang|ru|[[wikt:любовь|'''любо́вь''']]}} (“愛”) — 女{{lang|ru|Ь}}型<ref>{{Cite web|url=https://www.russiandict.net/translate/любовь|title={{lang|ru|любовь}}|website={{lang|en|RussianDict}}|accessdate=2021-1-11}}</ref></div> <div class="NavContent"> {| class="wikitable" style="width:20em;" |-align=center ! ! 単数 ! 複数 |-align=center ! 主格 | {{lang|ru|любо́в'''ь'''}} | {{lang|ru|любв'''и́'''}} |-align=center ! 生格 | {{lang|ru|любв'''и́'''}} | {{lang|ru|любв'''е́й'''}} |-align=center ! 与格 | {{lang|ru|любв'''и́'''}} | {{lang|ru|любв'''я́м'''}} |-align=center ! 対格 | {{lang|ru|любо́в'''ь'''}} | {{lang|ru|любв'''и́'''}} |-align=center ! 造格 | {{lang|ru|любо́в'''ью'''}} | {{lang|ru|любв'''я́ми'''}} |-align=center ! 前置格 | {{lang|ru|любв'''и́'''}} | {{lang|ru|любв'''я́х'''}} |}</div></div> ==== {{lang|ru|ЖЧШЩ-Ь}}型 ==== 語尾が {{lang|ru|жа, ча, ша, ща}} のいずれかの場合。 {| class="wikitable" style="background:#FFFAF0; width:20em;" |+ {{lang|ru|ЖЧШЩ-Ь}}型<ref name="nkwz2015-p16" /> |-align=center ! colspan="2" style="background:#FFA500;" | ! style="background:#FFA500;" | 単数 ! style="background:#FFA500;" | 複数 |-align=center ! colspan="2" style="background:#FFA500;" | 主格 | {{lang|ru|-ь}} | {{lang|ru|-и}} |-align=center ! colspan="2" style="background:#FFA500;" | 生格 | {{lang|ru|-и}} | {{lang|ru|-ей}} |-align=center ! colspan="2" style="background:#FFA500;" | 与格 | {{lang|ru|-и}} | {{lang|ru|-ам}} |-align=center ! rowspan="2" style="background:#FFA500;" | 対格 ! style="background:#FFDAB9;" | 不活動体 | rowspan="2" | {{lang|ru|-ь}} | 主格に同じ |-align=center ! style="background:#FFDAB9;" | 活動体 | 生格に同じ |-align=center ! colspan="2" style="background:#FFA500;" | 造格 | {{lang|ru|-ью}} | {{lang|ru|-ами}} |-align=center ! colspan="2" style="background:#FFA500;" | 前置格 | {{lang|ru|-и}} | {{lang|ru|-ах}} |} === 中性名詞の格変化 === ==== {{lang|ru|Е}}型 ==== 語尾が {{lang|ru|е}} の場合。 {| class="wikitable" style="background:#F0FFF0; width:20em;" |+ {{lang|ru|Е}}型<ref name="nkwz2015-p17">{{Cite book|和書|author=[[w:中澤英彦|中澤英彦]] 編|title=プログレッシブ ロシア語辞典|publisher=[[w:小学館|小学館]]|year=2015|page=17}} {{ISBN|978-4-09-510271-9}}</ref> |-align=center ! style="background:#9ACD32;" | ! style="background:#9ACD32;" | 単数 ! style="background:#9ACD32;" | 複数 |-align=center ! style="background:#9ACD32;" | 主格 | {{lang|ru|-е}} | {{lang|ru|-я}} |-align=center ! style="background:#9ACD32;" | 生格 | {{lang|ru|-я}} | {{lang|ru|-ей}} |-align=center ! style="background:#9ACD32;" | 与格 | {{lang|ru|-ю}} | {{lang|ru|-ям}} |-align=center ! style="background:#9ACD32;" | 対格 | {{lang|ru|-е}} | {{lang|ru|-я}} |-align=center ! style="background:#9ACD32;" | 造格 | {{lang|ru|-ем}} | {{lang|ru|-ями}} |-align=center ! style="background:#9ACD32;" | 前置格 | {{lang|ru|-е}} | {{lang|ru|-ях}} |} ==== {{lang|ru|ЖЦЧШЩ-Е}}型 ==== 語尾が {{lang|ru|же, це, че, ше, ще}} の場合。 {| class="wikitable" style="background:#F0FFF0; width:20em;" |+ {{lang|ru|ЖЦЧШЩ-Е}}型<ref name="nkwz2015-p17" /> |-align=center ! style="background:#9ACD32;" | ! style="background:#9ACD32;" | 単数 ! style="background:#9ACD32;" | 複数 |-align=center ! style="background:#9ACD32;" | 主格 | {{lang|ru|-е}} | {{lang|ru|-а}} |-align=center ! style="background:#9ACD32;" | 生格 | {{lang|ru|-а}} | {{lang|ru|-}} |-align=center ! style="background:#9ACD32;" | 与格 | {{lang|ru|-у}} | {{lang|ru|-ам}} |-align=center ! style="background:#9ACD32;" | 対格 | {{lang|ru|-е}} | {{lang|ru|-а}} |-align=center ! style="background:#9ACD32;" | 造格 | {{lang|ru|-ем}} | {{lang|ru|-ами}} |-align=center ! style="background:#9ACD32;" | 前置格 | {{lang|ru|-е}} | {{lang|ru|-ах}} |} ==== {{lang|ru|О}}型 ==== 語尾が {{lang|ru|о}} の場合。 {| class="wikitable" style="background:#F0FFF0; width:20em;" |+ {{lang|ru|О}}型<ref name="nkwz2015-p17" /> |-align=center ! style="background:#9ACD32;" | ! style="background:#9ACD32;" | 単数 ! style="background:#9ACD32;" | 複数 |-align=center ! style="background:#9ACD32;" | 主格 | {{lang|ru|-о}} | {{lang|ru|-а}} |-align=center ! style="background:#9ACD32;" | 生格 | {{lang|ru|-а}} | {{lang|ru|-}} |-align=center ! style="background:#9ACD32;" | 与格 | {{lang|ru|-у}} | {{lang|ru|-ам}} |-align=center ! style="background:#9ACD32;" | 対格 | {{lang|ru|-о}} | {{lang|ru|-а}} |-align=center ! style="background:#9ACD32;" | 造格 | {{lang|ru|-ом}} | {{lang|ru|-ами}} |-align=center ! style="background:#9ACD32;" | 前置格 | {{lang|ru|-е}} | {{lang|ru|-ах}} |} == 脚注 == === 注釈 === <references group="注釈" /> === 出典 === <references /> 9vigdki2a9ygg43b7e09rdlwp6o56sq 情報技術/構造化プログラミング 0 32523 305066 241390 2026-10-22T11:29:56Z Jcb 92857 305066 wikitext text/x-wiki {{Wikipedia|構造化プログラミング}} == 概要 == '''構造化プログラミング'''は、非構造化プログラミングの解毒剤として提案されたものです。 非構造化プログラミングは、構造化プログラミングが発明される数十年前から既に存在していました。 == 初めに、非構造化プログラミングがあった == 非構造化プログラミングとは、手続き型のプログラムのことで、書かれている通りに文が順番に実行されます。しかし、このタイプのプログラミングでは、GOTO文を使用します。GOTO文は、プログラム内の任意の場所に制御を渡すことができます。 GOTO文が実行されると、GOTOの対象から順番に実行されます。このように、プログラムの仕組みを理解するためには、プログラムを実行するふりをしなければなりません。つまり、このようなプログラムの論理を理解するのは難しい場合が多いのです。プログラムコンパイラの中には、GOTOの接続先をクロスインデックス化して、ソースコードを高速にナビゲートする実用的なものもある。 しかし、いくつかのプログラミング言語では、GOTOの行き先に関連した変数を使用することが一般的であったため、自動インデックス化は実用的ではありませんでした。 構造化されたプログラミング言語の中には、多くの人が同じコンピュータのデータを人間の言語で見ることができるようにするための外国語ビューの実装方法など、同様の問題があります。 これは、構造化プログラミングのように、プログラムがどのように動作するかを理解するために、ある種の抽象化を使用するという考えとは対照的です。 このような理由から、ダイクストラはGOTO文を禁止すべきだと提案しました。 == 構造化プログラミング == 構造化されたプログラミングとは、危険なGOTO文を使わないようにしたプログラミングという見方があります。これにより、混乱を招く恐れのある制御の移行を防ぐことができます。 多くの構造化プログラミング言語はGOTO文をサポートしており、構造化された方法で使用することができます。 例えば、ルーチンの最後に抜けたり、ループの最初に戻ったりするために使用します。 別の見方をすれば、構造化プログラミングは、1つのエントリーポイントと1つのエグジットポイントのみを持つ制御構造を使用することに限定される。これらの構造のうち最も重要なものは、順接、選択('''if'''および'''if'''...'''else''')、反復('''while''')です。 また、構造化されたプログラムとは、抽象化によって容易に理解できるように書かれたプログラムであるという見方もあります。抽象化とは、細かい部分を理解しなくても、コードの全体的な目的を理解できるようにすることです。抽象化のための代表的なメカニズムは、プロシージャ(メソッド)です。しかし、上記のような単一エントリ単一出口の構造もまた抽象化に役立ちます。 構造化されたプログラミングを可能にしたのは、高レベルの言語と関連するプログラムのパッケージであり、プログラマーでなくても理解できるソフトウェアの図解技術を用いてフローチャートを作成することができる。 == 発明者紹介 == 構造化プログラミングのアイデアを発見し、それを他のプログラマーの世界に伝えたのは、数人のコンピュータ科学者である。構造化プログラミングを最初に具現化したのは[[W:ALGOL|ALGOL]](Algorithmic Language)言語で、これは[[W:バロース B5000|バロース B5000]] [[W:en:Burroughs MCP|MCP(OS)]]でシステムプログラミングに使われた最初の高級言語となりました(設計したのはBob Bartonで、後にユタ大学の教授となり、GUIウィンドウを発明した学生Alan Kayに影響を与え、Smalltalkの開発者の一人となりました)。その結果、ALGOLは最初のオブジェクト指向言語であるSimulaの基礎となりました。 ALGOLは、John BackusとPeter Naurの名前をとって[[W:バッカス・ナウア記法|BNF]](Backus-Naur Form)と呼ばれる言語設計形式をベースにしていました。 この技術の画期的な本は、"Structured Programming"(Academic Press 1972: {{ISBN|978-0-12-200550-3}})で、Edsger W. Dijkstraの "Notes on Structured Programming"、C.A.R. Hoareの "Notes on Data Structuring"、Ole-Johan DahlとC.A.R. Hoareの "Hierarchical Program Structures "という3つのセクションで構成されています。最後のセクションでは、Simulaとそのオブジェクト指向および並行処理機能が紹介されています。 Edsgar Djikstraは「A Discipline of Programming」(Prentice Hall, 1976: {{ISBN|978-0132158718}})という本も書いています。 また、構造化プログラミングの世界では、Donald Knuthも有名です。彼は、複数巻からなる『[[W:The Art of Computer Programming|The Art of Computer Programming]]』を執筆しました。 その後、Ed YourdonとLarry Constantineによって『Structured Design』({{ISBN|978-0138544713}})という本が書かれ、多くの人がこれを構造化プログラミングとみなしていますが、そうではありません。これはグラフィカルな手法で、実際には非常に退屈なものだった。ほとんど放棄されてしまったが、UMLのような他の非形式的なアプローチの後継者がいる。ストラクチャード・デザインとストラクチャード・プログラミングで説明されている手法は全く異なるものであり、Structuredという言葉を共有しているからといって混同してはならない。 [[カテゴリ:プログラミング]] 0omg4pwkamg0crh9abdisaee5gowkwf Go/標準ライブラリー 0 32569 305088 186268 2026-10-22T11:44:00Z Jcb 92857 305088 wikitext text/x-wiki {{Nav}} = 標準ライブラリー = Goには、豊富な標準ライブラリーとサードパーティーの追加パッケージが用意されています。Goの豊富な標準ライブラリーには、文字列操作、暗号、アーカイブ、メール操作、Unicodeのエンコードとデコード、数学ルーチン、ネットワーク、エラー操作、オペレーティングシステムのインターフェイス、その他の一般的な機能など、使用頻度の高いプログラミングタスクが含まれています。 この項目では、このうち標準ライブラリーについて、公式の標準ライブラリーのドキュメント<ref name="Standard_library">{{cite book | url = https://pkg.go.dev/std | title = Standard library - pkg.go.dev | date = Sep 9, 2021 | publisher = The Go website }}</ref>にコメンタリーを追加する形で解説します。 __TOC__ == archive == === tar === tarパッケージは、tarアーカイブへのアクセスを実装しています<ref name="tar">{{cite book | url = https://pkg.go.dev/archive/tar@go1.17.1 | title = tar package - archive/tar - pkg.go.dev | date = Sep 9, 2021 | publisher = The Go website }}</ref>。 <!-- Package tar implements access to tar archives. --> テープアーカイブ (tar) は、ストリーミング方式で読み書き可能な一連のファイルを 保存するためのファイル形式です。本パッケージは、GNU や BSD の tar ツールで作成されたものを含め、このフォーマットのほとんどのバリエーションをカバーすることを目的としています。 ==== 定数 ==== ==== 変数 ==== ==== Format型 ==== ===== func (f Format) String() string ===== ==== Header型 ==== ===== func FileInfoHeader(fi fs.FileInfo, link string) (*Header, error) ===== ===== func (h *Header) FileInfo() fs.FileInfo ===== ==== Reader型 ==== ===== func NewReader(r io.Reader) *Reader ===== ===== func (tr *Reader) Next() (*Header, error) ===== ===== func (tr *Reader) Read(b []byte) (int, error) ===== ==== Writer型 ==== ===== func NewWriter(w io.Writer) *Writer ===== ===== func (tw *Writer) Close() error ===== ===== func (tw *Writer) Flush() error ===== ===== func (tw *Writer) Write(b []byte) (int, error) ===== ===== func (tw *Writer) WriteHeader(hdr *Header) error ===== === zip === パッケージzipは、ZIPアーカイブの読み書きのサポートを提供します<ref name="zip">{{cite book | url = https://pkg.go.dev/archive/zip@go1.17.1 | title = zip package - archive/zip - pkg.go.dev | date = Sep 9, 2021 | publisher = The Go website }}</ref>。 <!-- Package zip provides support for reading and writing ZIP archives. --> zip パッケージは、ZIP アーカイブの読み書きのサポートを提供します。 参照: https://www.pkware.com/appnote 本パッケージはディスクスパニング(''disk spanning'')をサポートしていません。 ;ZIP64 についての注意点:後方互換性のため、FileHeader は 32 ビットと 64 ビットの Size フィールドを持っています。64 ビットのフィールドは常に正しい値を含んでおり、通常のアーカイブでは両方のフィールドが同じになります。ZIP64形式を必要とするファイルでは、32ビットのフィールドは0xffffffとなり、代わりに64ビットのフィールドを使用する必要があります。 ==== 定数 ==== ==== 変数 ==== ==== func RegisterCompressor(method uint16, comp Compressor) ==== ==== func RegisterDecompressor(method uint16, dcomp Decompressor) ==== ==== Compressor型 ==== ==== Decompressor型 ==== ==== File型 ==== ===== func (f *File) DataOffset() (offset int64, err error) ===== ===== func (f *File) Open() (io.ReadCloser, error) ===== ===== func (f *File) OpenRaw() (io.Reader, error) ===== ==== FileHeader型 ==== ===== func FileInfoHeader(fi fs.FileInfo) (*FileHeader, error) ===== ===== func (h *FileHeader) FileInfo() fs.FileInfo ===== ===== func (h *FileHeader) ModTime() time.TimeDEPRECATED ===== ===== func (h *FileHeader) Mode() (mode fs.FileMode) ===== ===== func (h *FileHeader) SetModTime(t time.Time)DEPRECATED ===== ===== func (h *FileHeader) SetMode(mode fs.FileMode) ===== ==== ReadCloser型 ==== ===== func OpenReader(name string) (*ReadCloser, error) ===== ===== func (rc *ReadCloser) Close() error ===== ==== Reader型 ==== ===== func NewReader(r io.ReaderAt, size int64) (*Reader, error) ===== ===== func (r *Reader) Open(name string) (fs.File, error) ===== ===== func (z *Reader) RegisterDecompressor(method uint16, dcomp Decompressor) ===== ==== Writer型 ==== ===== func NewWriter(w io.Writer) *Writer ===== ===== func (w *Writer) Close() error ===== ===== func (w *Writer) Copy(f *File) error ===== ===== func (w *Writer) Create(name string) (io.Writer, error) ===== ===== func (w *Writer) CreateHeader(fh *FileHeader) (io.Writer, error) ===== ===== func (w *Writer) CreateRaw(fh *FileHeader) (io.Writer, error) ===== ===== func (w *Writer) Flush() error ===== ===== func (w *Writer) RegisterCompressor(method uint16, comp Compressor) ===== ===== func (w *Writer) SetComment(comment string) error ===== ===== func (w *Writer) SetOffset(n int64) ===== == bufio == bufioパッケージはバッファードI/Oを実装します。これは io.Reader または io.Writer オブジェクトをラップして、同じくインターフェイスを実装する別のオブジェクト(Reader または Writer)を作成しますが、バッファリングとテキスト I/O のためのいくつかのヘルプを提供します。 <!-- Package bufio implements buffered I/O. It wraps an io.Reader or io.Writer object, creating another object (Reader or Writer) that also implements the interface but provides buffering and some help for textual I/O. --> == builtin == パッケージbuiltinは、Goの事前宣言された識別子のためのドキュメントを提供します。 <!-- Package builtin provides documentation for Go's predeclared identifiers. --> == bytes == bytesパッケージは、バイトスライスを操作するための関数を実装しています。 <!-- Package bytes implements functions for the manipulation of byte slices. --> == compress == === bzip2 === bzip2パッケージは、bzip2の解凍を実装しています。 <!-- Package bzip2 implements bzip2 decompression. --> === flate === パッケージ flate は {{RFC|1951}} で述べられている DEFLATE 圧縮データフォーマットを実装しています。 <!-- Package flate implements the DEFLATE compressed data format, described in {{RFC|1951}}. --> === gzip === gzipパッケージは{{RFC|1952}}で規定されているgzip形式の圧縮ファイルの読み書きを実装しています。 <!-- Package gzip implements reading and writing of gzip format compressed files, as specified in {{RFC|1952}}. --> === lzw === lzwパッケージは、T. A. Welch, "A Technique for High-Performance Data Compression", Computer, 17(6) (June 1984), pp 8-19に記載されているLempel-Ziv-Welch圧縮データフォーマットを実装しています。 <!-- Package lzw implements the Lempel-Ziv-Welch compressed data format, described in T. A. Welch, “A Technique for High-Performance Data Compression”, Computer, 17(6) (June 1984), pp 8-19. --> === zlib === zlibパッケージは、{{RFC|1950}}で規定されているzlib形式の圧縮データの読み書きを実装しています。 <!-- Package zlib implements reading and writing of zlib format compressed data, as specified in {{RFC|1950}}. --> == container == === heap === heapパッケージはheap.Interfaceを実装している任意の型のためのheap操作を提供します。 <!-- Package heap provides heap operations for any type that implements heap.Interface. --> === list === listパッケージはダブルリンクされたリストを実装します。 <!-- Package list implements a doubly linked list. --> === ring === ringパッケージは循環リストに対する操作を実装しています。 <!-- Package ring implements operations on circular lists. --> == context == contextパッケージはContext型を定義します。Contextはデッドライン、キャンセル・シグナル、およびその他のリクエスト・スコープの値をAPIの境界やプロセス間で運びます。 <!-- Package context defines the Context type, which carries deadlines, cancellation signals, and other request-scoped values across API boundaries and between processes. --> == crypto == cryptoパッケージは、一般的な暗号定数を集めたものです。 <!-- Package crypto collects common cryptographic constants. --> === aes === aesパッケージは、米国連邦情報処理基準出版物197に定義されているAES暗号(旧Rijndael)を実装しています。 <!-- Package aes implements AES encryption (formerly Rijndael), as defined in U.S. Federal Information Processing Standards Publication 197. --> === cipher === cipherパッケージは、低レベルのブロック暗号の実装に巻き付けることができる、標準的なブロック暗号モードを実装しています。 <!-- Package cipher implements standard block cipher modes that can be wrapped around low-level block cipher implementations. --> === des === desパッケージは,米国連邦情報処理基準出版物46-3に定義されているDES(Data Encryption Standard)およびTDEA(Triple Data Encryption Algorithm)を実装しています。 <!-- Package des implements the Data Encryption Standard (DES) and the Triple Data Encryption Algorithm (TDEA) as defined in U.S. Federal Information Processing Standards Publication 46-3. --> === dsa === dsaパッケージは、FIPS 186-3 で定義されているデジタル署名アルゴリズムを実装しています。 <!-- Package dsa implements the Digital Signature Algorithm, as defined in FIPS 186-3. --> === ecdsa === ecdsaパッケージは,FIPS 186-3で定義されている楕円曲線デジタル署名アルゴリズムを実装しています。 <!-- Package ecdsa implements the Elliptic Curve Digital Signature Algorithm, as defined in FIPS 186-3. --> === ed25519 === ed25519パッケージは、Ed25519署名アルゴリズムを実装しています。 <!-- Package ed25519 implements the Ed25519 signature algorithm. --> === elliptic === ellipticパッケージは、素数体上のいくつかの標準的な楕円曲線を実装しています。 <!-- Package elliptic implements several standard elliptic curves over prime fields. --> === hmac === hmacパッケージは,米国連邦情報処理基準出版物198に定義されているHMAC(Keyed-Hash Message Authentication Code)を実装しています。 <!-- Package hmac implements the Keyed-Hash Message Authentication Code (HMAC) as defined in U.S. Federal Information Processing Standards Publication 198. --> === md5 === md5パッケージは、{{RFC|1321}}で定義されているMD5ハッシュアルゴリズムを実装しています。 <!-- Package md5 implements the MD5 hash algorithm as defined in {{RFC|1321}}. --> === rand === randパッケージは、暗号化された安全な乱数生成器を実装しています。 <!-- Package rand implements a cryptographically secure random number generator. --> === rc4 === rc4パッケージは、Bruce SchneierのApplied Cryptographyで定義されているRC4暗号を実装しています。 <!-- Package rc4 implements RC4 encryption, as defined in Bruce Schneier's Applied Cryptography. --> === rsa === rsaパッケージは、PKCS #1と{{RFC|8017}}で規定されているRSA暗号を実装しています。 <!-- Package rsa implements RSA encryption as specified in PKCS #1 and {{RFC|8017}}. --> === sha1 === sha1パッケージは、{{RFC|3174}} で定義されている SHA-1 ハッシュアルゴリズムを実装しています。 <!-- Package sha1 implements the SHA-1 hash algorithm as defined in {{RFC|3174}}. --> === sha256 === sha256パッケージは、FIPS 180-4で定義されているSHA224およびSHA256ハッシュアルゴリズムを実装しています。 <!-- Package sha256 implements the SHA224 and SHA256 hash algorithms as defined in FIPS 180-4. --> === sha512 === sha512パッケージは、FIPS 180-4で定義されているSHA-384、SHA-512、SHA-512/224、およびSHA-512/256ハッシュアルゴリズムを実装しています。 <!-- Package sha512 implements the SHA-384, SHA-512, SHA-512/224, and SHA-512/256 hash algorithms as defined in FIPS 180-4. --> === subtle === subtleパッケージは、暗号コードでよく使われるが、正しく使うには慎重な考えが必要な関数を実装しています(訳註:subtle には、「微妙な」「繊細な」「掴みどころのない」という意味があります)。 <!-- Package subtle implements functions that are often useful in cryptographic code but require careful thought to use correctly. --> === tls === tlsパッケージは、{{RFC|5246}}で規定されているTLS 1.2と、{{RFC|8446}}で規定されているTLS 1.3を部分的に実装しています。 <!-- Package tls partially implements TLS 1.2, as specified in {{RFC|5246}}, and TLS 1.3, as specified in {{RFC|8446}}. --> === x509 === === x509/pkix === pkix パッケージには、X.509 証明書、CRL、および OCSP の ASN.1 解析およびシリアライズに使用される、共有された低レベルの構造が含まれています。 <!-- Package pkix contains shared, low level structures used for ASN.1 parsing and serialization of X.509 certificates, CRL and OCSP. --> == database == === sql === <!-- Package sql provides a generic interface around SQL (or SQL-like) databases. --> === sql/driver === <!-- Package driver defines interfaces to be implemented by database drivers as used by package sql. --> == debug == === dwarf === <!-- Package dwarf provides access to DWARF debugging information loaded from executable files, as defined in the DWARF 2.0 Standard at http://dwarfstd.org/doc/dwarf-2.0.0.pdf --> === elf === <!-- Package elf implements access to ELF object files. --> === gosym === <!-- Package gosym implements access to the Go symbol and line number tables embedded in Go binaries generated by the gc compilers. --> === macho === <!-- Package macho implements access to Mach-O object files. --> === pe === <!-- Package pe implements access to PE (Microsoft Windows Portable Executable) files. --> === plan9obj === <!-- Package plan9obj implements access to Plan 9 a.out object files. --> == embed == <!-- Package embed provides access to files embedded in the running Go program. --> == encoding == <!-- Package encoding defines interfaces shared by other packages that convert data to and from byte-level and textual representations. --> === ascii85 === <!-- Package ascii85 implements the ascii85 data encoding as used in the btoa tool and Adobe's PostScript and PDF document formats. --> === asn1 === <!-- Package asn1 implements parsing of DER-encoded ASN.1 data structures, as defined in ITU-T Rec X.690. --> === base32 === <!-- Package base32 implements base32 encoding as specified by {{RFC|4648}}. --> === base64 === <!-- Package base64 implements base64 encoding as specified by {{RFC|4648}}. --> === binary === <!-- Package binary implements simple translation between numbers and byte sequences and encoding and decoding of varints. --> === csv === <!-- Package csv reads and writes comma-separated values (CSV) files. --> === gob === <!-- Package gob manages streams of gobs - binary values exchanged between an Encoder (transmitter) and a Decoder (receiver). --> === hex === <!-- Package hex implements hexadecimal encoding and decoding. --> === json === <!-- Package json implements encoding and decoding of JSON as defined in {{RFC|7159}}. --> === pem === <!-- Package pem implements the PEM data encoding, which originated in Privacy Enhanced Mail. --> === xml === <!-- Package xml implements a simple XML 1.0 parser that understands XML name spaces. --> == errors == <!-- Package errors implements functions to manipulate errors. --> == expvar == <!-- Package expvar provides a standardized interface to public variables, such as operation counters in servers. --> == flag == <!-- Package flag implements command-line flag parsing. --> == fmt == fmtパッケージは、C言語のprintfやscanfに類似した関数でフォーマットされたI/Oを実装します。フォーマットの「動詞(''verbs'')」は[[C言語]]から派生したものですが<ref>C言語では %d の様な printf() 関数の第一引数で与えられた文字列のうち、第二引数以降の値を修飾する記号を「[[C言語/標準ライブラリ/stdio.h#変換指定子|変換指定子]](''conversion specification'')」と呼びますが、Goでは「動詞(''verbs'')」と呼びます。</ref>、より単純です<ref name="fmt">{{cite book | url = https://pkg.go.dev/fmt@go1.17.1 | title = fmt package - fmt - pkg.go.dev | date = Sep 9, 2021 | publisher = The Go website }}</ref>。 <!-- Package fmt implements formatted I/O with functions analogous to C's printf and scanf. --> === 印字 === ;動詞 ;一般 :{| |- |%v || 構造体を印刷する際のデフォルトフォーマットでの値、プラスフラグ(%+v)はフィールド名を追加する |- |%#v || 値のGo-syntax表現 |- |%T || 値の型の Go-syntax 表現 |- |%% || リテラルのパーセント記号;(仮引数リストから)値を消費しない |} ;論理値 :{| |- |%t || 単語 true または false |} ;整数 :{| |- |%b || 基数2 |- |%c || 対応するUnicodeコードポイントで表される文字 |- |%d || 基数10 |- |%o || 基数8 |- |%O || 基数8 に前置辞 0o を伴って |- |%q || 一重引用符で囲まれた文字リテラルを、Go構文で安全にエスケープします。 |- |%x || 基数16、小文字のa-fを使用 |- |%X || 基数16、小文字のA-Fを使用 |- |%U || ユニコード形式。U+1234を "U+%04X" と表示 |} ;浮動小数点と複素数の構成要素。 :{| |- |%b || 指数が 2 の累乗の 10 進数の科学的記数法。strconv.FormatFloatの要領で、'b'形式を使用します。例: -123456p-78 |- |%e || 科学的記数法、例えば -1.234456e+78 |- |%E || 科学的記数法、例えば -1.234456E+78 |- |%F || 小数点、指数なし、例:123.456; |- |%f || %F の同義語です。 |- |%g||大きな指数の場合は%e、そうでない場合は%fです。精度については後述します。 |- |%G||大きな指数の場合は %E、そうでない場合は %F |- |%x || 16進表記 (10進の2乗を指数とする)、例:-0x1.23abcp+20 |- |%X || 大文字の16進法、例:-0X1.23ABCP+20 |} ;文字列とバイトのスライス(これらの動詞と同等に扱われます)。 :{| |- |%s || 文字列またはスライスの解釈されないバイトです |- |%q || 二重引用符で囲まれた文字列を Go 構文で安全にエスケープします。 |- |%x || 基数16、小文字、1 バイトあたり 2 文字 |- |%X || 基数16、大文字、1 バイトあたり 2 文字 |} ; スライス :{| |- |%p || 基数16表記の0番目の要素のアドレス(先行する0xを含む) |} ; ポインター :{| |- |%p || 基数16表記の0番目の要素のアドレス(先行する0xを含む) |- |%b,%d,%o,%x,%X ||-- ポインタでも動作します。値が整数であるかのように正確にフォーマットされます。 |} ; %vの既定のフォーマット :{| |- |bool: || %t |- |int, int8 etc.: || %d |- |uint, uint8 etc.: || %d, もし %#v なら %#x |- |float32, complex64, etc: || %g |- |string: || %s |- |chan: || %p |- |pointer: || %p |} 複合オブジェクトの場合は、これらのルールを再帰的に使用して、以下のようにレイアウトされた要素が印刷されます。 :{| |- |構造体: || {field0 field1 ...} |- |配列、スライス: || [elem0 elem1 ...] |- |マップ: || map[key1:value1 key2:value2 ...] |- |上記へのポインタ: || &{}, &[], &map[] |} 幅は、動詞の直前にあるオプションの10進数で指定されます。省略した場合は、値を表現するのに必要な幅となります。 精度は、(オプションの)幅の後にピリオドとそれに続く10進数で指定されます。ピリオドがない場合は、デフォルトの精度が使用されます。ピリオドとそれに続く数字がない場合、精度はゼロになります。例を示します。 :{| |- |%f || 既定の文字数(幅; width)、既定の精度 |- |%9f || 文字数9、既定の精度 |- |%.2f || 既定の文字数、精度2 |- |%9.2f || 文字数9、精度2 |- |%9.f || 文字数9、精度0 |} 幅と精度は、Unicodeのコードポイント、つまりルーンの単位で測定されます。(フラグのいずれかまたは両方を文字'*'で置き換えることができ、その場合、その値は次のオペランド(フォーマットするオペランドの前)から取得されます。 ほとんどの値の場合、幅は出力するルーン数の最小値であり、必要に応じてフォーマットされた形式にスペースを詰めます。 しかし、文字列、バイトスライス、バイト配列については、精度はフォーマットされる入力の長さを制限し(出力のサイズではありません)、必要に応じて切り詰めます。通常、それはルーンで測定されるが、これらのタイプでは、%xまたは%Xフォーマットでフォーマットされた場合、それはバイトで測定される。 浮動小数点値の場合、幅はフィールドの最小幅を設定し、精度は必要に応じて小数点以下の桁数を設定しますが、%g/%Gの場合、精度は最大有効桁数を設定します(末尾のゼロは削除されます)。例えば、12.345の場合、フォーマット%6.3fは12.345を表示し、%.3gは12.3を表示します。%e、%f、%#gのデフォルトの精度は6で、%gの場合は値を一意に識別するのに必要な最小桁数です。 複素数の場合、幅と精度は2つの構成要素に独立して適用され、結果は括弧で囲まれますので、%fを1.2+3.4iに適用すると(1.200000+3.400000i)となります。 <!--つづく--> === 関数 === ==== func Errorf(format string, a ...interface{}) error ==== ==== func Fprint(w io.Writer, a ...interface{}) (n int, err error) ==== ==== func Fprintf(w io.Writer, format string, a ...interface{}) (n int, err error) ==== ==== func Fprintln(w io.Writer, a ...interface{}) (n int, err error) ==== ==== func Fscan(r io.Reader, a ...interface{}) (n int, err error) ==== ==== func Fscanf(r io.Reader, format string, a ...interface{}) (n int, err error) ==== ==== func Fscanln(r io.Reader, a ...interface{}) (n int, err error) ==== ==== func Print(a ...interface{}) (n int, err error) ==== ==== func Printf(format string, a ...interface{}) (n int, err error) ==== <syntaxhighlight lang=go> func Printf(format string, a ...interface{}) (n int, err error) </syntaxhighlight> Printfは、フォーマット指定子に従ってフォーマットし、標準出力に書き込みます。書き込んだバイト数と、書き込んだ際に発生したエラーを返します。 ==== func Println(a ...interface{}) (n int, err error) ==== <syntaxhighlight lang=go> func Println(a ...interface{}) (n int, err error) </syntaxhighlight> Printlnは、オペランドにデフォルトのフォーマットを使用してフォーマットし、標準出力に書き込みます。 オペランド間には常にスペースが追加され、改行が追加されます。 書き込んだバイト数と、書き込んだ際に発生したエラーを返します。 ==== func Scan(a ...interface{}) (n int, err error) ==== ==== func Scanf(format string, a ...interface{}) (n int, err error) ==== ==== func Scanln(a ...interface{}) (n int, err error) ==== ==== func Sprint(a ...interface{}) string ==== ==== func Sprintf(format string, a ...interface{}) string ==== ==== func Sprintln(a ...interface{}) string ==== ==== func Sscan(str string, a ...interface{}) (n int, err error) ==== ==== func Sscanf(str string, format string, a ...interface{}) (n int, err error) ==== ==== func Sscanln(str string, a ...interface{}) (n int, err error) ==== ==== Formatter型 ==== ==== GoStringer型 ==== ==== ScanState型 ==== ==== Scanner型 ==== ==== State型 ==== ==== Stringer型 ==== === 引数の明示的なインデックス === === フォーマットエラー === === スキャン === == go == === ast === <!-- Package ast declares the types used to represent syntax trees for Go packages. --> === build === <!-- Package build gathers information about Go packages. --> === build/constraint === <!-- Package constraint implements parsing and evaluation of build constraint lines. --> === constant === <!-- Package constant implements Values representing untyped Go constants and their corresponding operations. --> === doc === <!-- Package doc extracts source code documentation from a Go AST. --> === format === <!-- Package format implements standard formatting of Go source. --> === importer === <!-- Package importer provides access to export data importers. --> === parser === <!-- Package parser implements a parser for Go source files. --> === printer === <!-- Package printer implements printing of AST nodes. --> === scanner === <!-- Package scanner implements a scanner for Go source text. --> === token === <!-- Package token defines constants representing the lexical tokens of the Go programming language and basic operations on tokens (printing, predicates). --> === types === <!-- Package types declares the data types and implements the algorithms for type-checking of Go packages. --> == hash == <!-- Package hash provides interfaces for hash functions. --> === adler32 === <!-- Package adler32 implements the Adler-32 checksum. --> === crc32 === <!-- Package crc32 implements the 32-bit cyclic redundancy check, or CRC-32, checksum. --> === crc64 === <!-- Package crc64 implements the 64-bit cyclic redundancy check, or CRC-64, checksum. --> === fnv === <!-- Package fnv implements FNV-1 and FNV-1a, non-cryptographic hash functions created by Glenn Fowler, Landon Curt Noll, and Phong Vo. --> === maphash === <!-- Package maphash provides hash functions on byte sequences. --> == html == <!-- Package html provides functions for escaping and unescaping HTML text. --> === template === <!-- Package template (html/template) implements data-driven templates for generating HTML output safe against code injection. --> == image == <!-- Package image implements a basic 2-D image library. --> === color === <!-- Package color implements a basic color library. --> === color/palette === <!-- Package palette provides standard color palettes. --> === draw === <!-- Package draw provides image composition functions. --> === gif === <!-- Package gif implements a GIF image decoder and encoder. --> === jpeg === <!-- Package jpeg implements a JPEG image decoder and encoder. --> === png === <!-- Package png implements a PNG image decoder and encoder. --> == index == === suffixarray === <!-- Package suffixarray implements substring search in logarithmic time using an in-memory suffix array. --> == io == <!-- Package io provides basic interfaces to I/O primitives. --> === fs === <!-- Package fs defines basic interfaces to a file system. --> === ioutil === <!-- Package ioutil implements some I/O utility functions. --> == log == <!-- Package log implements a simple logging package. --> === syslog === <!-- Package syslog provides a simple interface to the system log service. --> == math == <!-- Package math provides basic constants and mathematical functions. --> === big === <!-- Package big implements arbitrary-precision arithmetic (big numbers). --> === bits === <!-- Package bits implements bit counting and manipulation functions for the predeclared unsigned integer types. --> === cmplx === <!-- Package cmplx provides basic constants and mathematical functions for complex numbers. --> === rand === <!-- Package rand implements pseudo-random number generators unsuitable for security-sensitive work. --> == mime == <!-- Package mime implements parts of the MIME spec. --> === multipart === <!-- Package multipart implements MIME multipart parsing, as defined in {{RFC|2046}}. --> === quotedprintable === <!-- Package quotedprintable implements quoted-printable encoding as specified by {{RFC|2045}}. --> == net == <!-- Package net provides a portable interface for network I/O, including TCP/IP, UDP, domain name resolution, and Unix domain sockets. --> === http === <!-- Package http provides HTTP client and server implementations. --> === http/cgi === <!-- Package cgi implements CGI (Common Gateway Interface) as specified in {{RFC|3875}}. --> === http/cookiejar === <!-- Package cookiejar implements an in-memory {{RFC|6265}}-compliant http.CookieJar. --> === http/fcgi === <!-- Package fcgi implements the FastCGI protocol. --> === http/httptest === <!-- Package httptest provides utilities for HTTP testing. --> === http/httptrace === <!-- Package httptrace provides mechanisms to trace the events within HTTP client requests. --> === http/httputil === <!-- Package httputil provides HTTP utility functions, complementing the more common ones in the net/http package. --> === http/pprof === <!-- Package pprof serves via its HTTP server runtime profiling data in the format expected by the pprof visualization tool. --> === mail === <!-- Package mail implements parsing of mail messages. --> === rpc === <!-- Package rpc provides access to the exported methods of an object across a network or other I/O connection. --> === rpc/jsonrpc === <!-- Package jsonrpc implements a JSON-RPC 1.0 ClientCodec and ServerCodec for the rpc package. --> === smtp === <!-- Package smtp implements the Simple Mail Transfer Protocol as defined in {{RFC|5321}}. --> === textproto === <!-- Package textproto implements generic support for text-based request/response protocols in the style of HTTP, NNTP, and SMTP. --> === url === <!-- Package url parses URLs and implements query escaping. --> == os == <!-- Package os provides a platform-independent interface to operating system functionality. --> === exec === <!-- Package exec runs external commands. --> === signal === <!-- Package signal implements access to incoming signals. --> === user === <!-- Package user allows user account lookups by name or id. --> == path == <!-- Package path implements utility routines for manipulating slash-separated paths. --> === filepath === <!-- Package filepath implements utility routines for manipulating filename paths in a way compatible with the target operating system-defined file paths. --> == plugin == <!-- Package plugin implements loading and symbol resolution of Go plugins. --> == reflect == <!-- Package reflect implements run-time reflection, allowing a program to manipulate objects with arbitrary types. --> == regexp == <!-- Package regexp implements regular expression search. --> === syntax === <!-- Package syntax parses regular expressions into parse trees and compiles parse trees into programs. --> == runtime == <!-- Package runtime contains operations that interact with Go's runtime system, such as functions to control goroutines. --> === cgo === <!-- Package cgo contains runtime support for code generated by the cgo tool. --> === debug === <!-- Package debug contains facilities for programs to debug themselves while they are running. --> === metrics === <!-- Package metrics provides a stable interface to access implementation-defined metrics exported by the Go runtime. --> === pprof === <!-- Package pprof writes runtime profiling data in the format expected by the pprof visualization tool. --> === race === <!-- Package race implements data race detection logic. --> === trace === <!-- Package trace contains facilities for programs to generate traces for the Go execution tracer. --> == sort == <!-- Package sort provides primitives for sorting slices and user-defined collections. --> == strconv == <!-- Package strconv implements conversions to and from string representations of basic data types. --> == strings == <!-- Package strings implements simple functions to manipulate UTF-8 encoded strings. --> == sync == <!-- Package sync provides basic synchronization primitives such as mutual exclusion locks. --> === atomic === <!-- Package atomic provides low-level atomic memory primitives useful for implementing synchronization algorithms. --> == syscall == <!-- Package syscall contains an interface to the low-level operating system primitives. --> === js === <!-- Package js gives access to the WebAssembly host environment when using the js/wasm architecture. --> == testing == <!-- Package testing provides support for automated testing of Go packages. --> === fstest === <!-- Package fstest implements support for testing implementations and users of file systems. --> === iotest === <!-- Package iotest implements Readers and Writers useful mainly for testing. --> === quick === <!-- Package quick implements utility functions to help with black box testing. --> == text == === scanner === <!-- Package scanner provides a scanner and tokenizer for UTF-8-encoded text. --> === tabwriter === <!-- Package tabwriter implements a write filter (tabwriter.Writer) that translates tabbed columns in input into properly aligned text. --> === template === <!-- Package template implements data-driven templates for generating textual output. --> === template/parse === <!-- Package parse builds parse trees for templates as defined by text/template and html/template. --> == time == <!-- Package time provides functionality for measuring and displaying time. --> === tzdata === <!-- Package tzdata provides an embedded copy of the timezone database. --> == unicode == <!-- Package unicode provides data and functions to test some properties of Unicode code points. --> === utf16 === <!-- Package utf16 implements encoding and decoding of UTF-16 sequences. --> === utf8 === <!-- Package utf8 implements functions and constants to support text encoded in UTF-8. --> == unsafe == <!-- Package unsafe contains operations that step around the type safety of Go programs. --> == internal == === abi === === buildcfg === <!-- Package buildcfg provides access to the build configuration described by the current environment. --> === bytealg === === cfg === <!-- Package cfg holds configuration shared by the Go command and internal/testenv. --> === cpu === <!-- Package cpu implements processor feature detection used by the Go standard library. --> === execabs === <!-- Package execabs is a drop-in replacement for os/exec that requires PATH lookups to find absolute paths. --> === fmtsort === <!-- Package fmtsort provides a general stable ordering mechanism for maps, on behalf of the fmt and text/template packages. --> === goexperiment === <!-- Package goexperiment implements support for toolchain experiments. --> === goroot === === goversion === === itoa === === lazyregexp === <!-- Package lazyregexp is a thin wrapper over regexp, allowing the use of global regexp variables without forcing them to be compiled at init. --> === lazytemplate === <!-- Package lazytemplate is a thin wrapper over text/template, allowing the use of global template variables without forcing them to be parsed at init. --> === nettrace === <!-- Package nettrace contains internal hooks for tracing activity in the net package. --> === obscuretestdata === <!-- Package obscuretestdata contains functionality used by tests to more easily work with testdata that must be obscured primarily due to golang.org/issue/34986. --> === oserror === <!-- Package oserror defines errors values used in the os package. --> === poll === <!-- Package poll supports non-blocking I/O on file descriptors with polling. --> === profile === <!-- Package profile provides a representation of github.com/google/pprof/proto/profile.proto and methods to encode/decode/merge profiles in this format. --> === race === <!-- Package race contains helper functions for manually instrumenting code for the race detector. --> === reflectlite === <!-- Package reflectlite implements lightweight version of reflect, not using any package except for "runtime" and "unsafe". --> === singleflight === <!-- Package singleflight provides a duplicate function call suppression mechanism. --> === syscall/execenv === === syscall/unix === === syscall/windows === === syscall/windows/registry === <!-- Package registry provides access to the Windows registry. --> === syscall/windows/sysdll === <!-- Package sysdll is an internal leaf package that records and reports which Windows DLL names are used by Go itself. --> === sysinfo === <!-- Package sysinfo implements high level hardware information gathering that can be used for debugging or information purposes. --> === testenv === <!-- Package testenv provides information about what functionality is available in different testing environments run by the Go team. --> === testlog === <!-- Package testlog provides a back-channel communication path between tests and package os, so that cmd/go can see which environment variables and files a test consults. --> === trace === === unsafeheader === <!-- Package unsafeheader contains header declarations for the Go runtime's slice and string implementations. --> === xcoff === <!-- Package xcoff implements access to XCOFF (Extended Common Object File Format) files. --> {{Nav}} == 脚註 == <references /> 983fwjn3b86vmlu8lm8oiph0ubei4sc 利用者:Kwawe 2 34770 304997 304756 2026-10-22T00:10:53Z Kwawe 68789 /* 高校生に向けてメッセージ */ 304997 wikitext text/x-wiki ※2022年6月にwikibooksに登録しております。 == Wikibooksの記述では == # 中学生高校生向けの新規執筆・改定執筆のWikibooksは敬体で記述しています。新課程の自然科学ほぼ全般(物理・生物・地学・理数探究基礎)、社会科学(公民)、人文科学全般、保健体育・家庭科を記述しています。 # 本文記述は、冗長表現をなくしています。詳しくは、国語表現の「[[高等学校国語表現/わかりやすい文を書く|わかりやすい文を書く]]」を参照してください。 # 大人向け法律学(刑法など)のWikibooksは、常体で記述しています。 # 大人向け経済原論(ミクロ経済学など)のWikibooksは、敬体で記述しています。 == 教科書 == Wikibooksの教科書目録の作成などを新課程版に更新しています。 当方、高等学校の旧課程教科書は数学・自然科学(物理・化学・生物・地学)・商業の一部・福祉の一部・公民・国語表現・人文科学(地理・歴史)の教科書を持参しています。 2023年からの新課程用は公共、歴史総合・日本史探究・世界史探究、家庭総合、理数探究基礎、生物全5冊、政治経済、数学[第一、数研の最新シリーズ]の教科書を持参しています。 ※基本、私の執筆するページは資料出所と出典を必ず掲載します。たとえそれが文部科学省の教科書だとしてもです。 == wikibooks執筆担当科目 ==  主に、高校生の教科書を中心に執筆していますが、中学生の実技教科、一般向けの経済原論も執筆しています。  執筆に時間がかかる科目「物理」「生物」「地歴の探究科目」「公共」は、更新頻度が減ります。 * [[高等学校理科 物理基礎|高等学校 物理基礎]]     [全般] * [[高等学校 物理|高等学校物理]]        [全般] * [[高等学校 生物基礎]]     [全般] * [[高等学校 生物]]       [全般] * [[高等学校 地学基礎]]     [全般] * [[高等学校 地学]]       [全般] * [[高等学校 理数探究基礎]]   [全般] * [[高等学校国語表現]]      [全般] * [[高等学校地理探究]]      [全般] * [[高等学校公共]]        [全般] * [[高等学校倫理]]        [全般] * [[ミクロ経済学]]        [全般] * [[高等学校世界史探究]]     [全般] * [[高等学校歴史総合]]      [全般](過去執筆の全てを見直し・本文大修正) * [[高等学校家庭総合]]      [全般] * [[中学校音楽]]         [全般] * [[中学校家庭]]         [全般](衣生活と食生活は完成時期不明。) * [[中学校保健体育]]       [全般] * [[高等学校保健体育]]      [座学編・実技編両方全般] * [[高等学校日本史探究]]     [全般] 今後、順次執筆科目は増加予定です。 また、時期は未定ですが、看護とかも執筆していきたいと思います。(2023年2月04日追記) == 高校生に向けてメッセージ ==  私達は日本人ですから、日本語の文章でまず意味を理解しないと文字式や数式・公式も当然理解出来ません。そして、日本語の語彙を覚えないと当然国語の読解問題の記述問題も解けません。以上、私、当時元文系の高校生から見た視点です(大学卒業後、現在社会人)。あくまで、文字式や数式はイメージ的には図形と似たような感じで、これらをイラスト化にしているに過ぎません。 [現在執筆中の内容] ★日本史探究 * 新たな世紀の日本へⅣ(新規執筆) ★地学 * [[高等学校 地学/生命の進化|生命の進化]](新規執筆) ★生物 * [[高等学校 生物/個体群とその変動|個体群とその変動]] ★高等学校公共 * [[高等学校公共/国会の役割と仕組みⅡ|国会の役割と仕組みⅡ]](新規執筆) == 過去執筆の事後処理予定[見直し、本文大幅修正] == ★歴史総合 ★生物・生物基礎 ★地学・地学基礎 ★保健体育 ★家庭科 == 2026年執筆予定の内容 == 日本史探究:古代・近現代(一部) 科学と人間生活:化学分野の一部 == 2027年執筆予定の内容 == 公共:統治編全て(国会・内閣・裁判所・地方自治)と社会保障制度 生物基礎・生物:全部 地学基礎・地学:全部 == リンク集 == * https://jawikibooks.wikiscan.org/users ev2heyvdphi8wen6dmhwmm7uhy303nl 高等学校日本史探究 0 36598 304998 304894 2026-10-22T00:14:22Z Kwawe 68789 304998 wikitext text/x-wiki [[小学校・中学校・高等学校の学習]]>[[高等学校の学習]]>[[高等学校地理歴史]]>高等学校日本史探究  高等学校日本史探究のページです。{{進捗状況}} 本ページの目次と項目の配列は、実教出版株式会社の新課程教科書「[https://www.jikkyo.co.jp/book/detail/23010423 日本史探究]」(日探702・日探007-901)に合わせて作成しています。節・項目・用語の配列も原則上記教科書会社さんに従いました。学習指導要領に定められた日本史探究の標準単位数は'''3単位です。''' ※本ページは大学の二次試験まで対応させるため、日本史探究の完成時期は未定です。当面の間は日本史Bを参照して下さい。 == 第1部 原始・古代の日本と東アジア == INTRODUCTION === 第1章 日本文化のあけぼの === # [[高等学校日本史探究/日本列島最古の文化Ⅰ|日本列島最古の文化Ⅰ]]{{進捗|100%|2024-09-21}}(人類の誕生と日本列島への居住) # [[高等学校日本史探究/日本列島最古の文化Ⅱ|日本列島最古の文化Ⅱ]]{{進捗|100%|2024-10-01}}(日本の旧石器時代) # [[高等学校日本史探究/縄文時代の社会と文化|縄文時代の社会と文化]]{{進捗|100%|2026-09-27}}(縄文文化の成立~縄文社会と縄文人) # 弥生時代の社会と文化Ⅰ{{進捗|00%|2023-11-11}} # 弥生時代の社会と文化Ⅱ{{進捗|00%|2023-11-11}} === 第2章 ヤマト政権の成立と古墳文化 === # 小国の分立と邪馬台国{{進捗|00%|2023-11-11}} # 古墳の出現とヤマト政権の成立{{進捗|00%|2023-11-11}} # ヤマト政権の展開と統治の進展{{進捗|00%|2023-11-11}} # 古墳時代の生活と文化{{進捗|00%|2023-11-11}} === 第3章 律令国家の形成 === # [[高等学校日本史探究/古代国家の形成Ⅰ|古代国家の形成Ⅰ]]{{進捗|100%|2024-11-18}}(6世紀の朝鮮半島と倭~7世紀の東アジアと倭国) # [[高等学校日本史探究/古代国家の形成Ⅱ|古代国家の形成Ⅱ]]{{進捗|100%|2025-02-01}}(大化の改新~東北遠征と白村江の戦い) # [[高等学校日本史探究/古代国家の形成Ⅲ|古代国家の形成Ⅲ]]{{進捗|100%|2025-02-11}}(近江朝廷と壬申の乱~天武・持統期の政治改革) # [[高等学校日本史探究/飛鳥文化・白鳳文化|飛鳥文化・白鳳文化]]{{進捗|100%|2024-11-06}} # [[高等学校日本史探究/律令制度|律令制度]]{{進捗|100%|2025-06-03}}(大宝律令の官制~土地・人民の支配制度) # [[高等学校日本史探究/奈良時代の政治Ⅰ|奈良時代の政治Ⅰ]]{{進捗|100%|2025-07-21}}(遣唐使派遣と平城京遷都) # [[高等学校日本史探究/奈良時代の政治Ⅱ|奈良時代の政治Ⅱ]]{{進捗|100%|2025-11-22}}(奈良時代初期の政策~度重なる遷都と鎮護国家の仏教) # [[高等学校日本史探究/奈良時代の政治Ⅲ|奈良時代の政治Ⅲ]]{{進捗|100%|2025-12-21}}(公地公民制の修正~奈良時代後半の政争) # 天平文化 STEP UP 1 [[高等学校日本史探究/奈良時代の人々の暮らし|奈良時代の人々の暮らし]]{{進捗|100%|2026-04-09}}(奈良時代の貴族生活~生活文化の発展と庶民の苦難) === 第4章 古代の国家・社会の変容 === # [[高等学校日本史探究/律令体制再編期の政治と社会Ⅰ|律令体制再編期の政治と社会Ⅰ]]{{進捗|100%|2026-10-11}}(平安京遷都と東北経営) # [[高等学校日本史探究/律令体制再編期の政治と社会Ⅱ|律令体制再編期の政治と社会Ⅱ]]{{進捗|100%|2026-10-16}}(律令政治の再編成~法・儀式の整備と教育) # 律令体制再編期の政治と社会Ⅲ{{進捗|00%|2026-09-5}}(密教の隆盛~弘仁・貞観文化) # 摂関政治の成立と支配体制の転換 # 国風文化 == 第2部 中世の日本と世界 == INTRODUCTION === 第1章 荘園公領制の成立と院政 === ※荘園公領制の成立と院政は2027年4月に記述します。 * 荘園公領制の成立と院政Ⅰ * 荘園公領制の成立と院政Ⅱ * 荘園公領制の成立と院政Ⅲ * 荘園公領制の成立と院政Ⅳ === 第2章 中世の国家・社会の展開 === # 鎌倉幕府の成立と朝廷 # 中世に生きる人々 # 蒙古襲来と幕府の衰退 # 鎌倉文化 === 第3章 中世の国家・社会の変容 === # 南北朝の動乱 # 室町幕府の政治と外交 # 室町社会の展開と応仁の乱 # 室町文化 # [[高等学校日本史探究/戦国大名の分国経営Ⅰ|戦国大名の分国経営Ⅰ]]{{進捗|100%|2025-02-15}}(戦国時代の特質~戦国の争乱) # 戦国大名の分国経営Ⅱ{{進捗|00%|2023-00-00}}(分国経営) # 戦国大名の分国経営Ⅲ{{進捗|00%|2025-02-15}}(都市の発達と町衆~経済の混乱) STEP UP 2 東アジアのなかのアイヌ文化・琉球文化 STEP UP 3 女性と仏教 == 第3部 近世の日本と世界 == INTRODUCTION === 第1章 東アジア世界の変容と天下統一 === # 織豊政権 # 天下統一の完成 # 近世成立期の文化 歴史資料と近世の展望 === 第2章 幕藩体制の成立と展開 === # 幕藩体制の成立 # 貿易の統制と対外関係 # 近世社会のしくみ # 幕府政治の展開 # 経済の発展 # 元禄文化と学芸の発展 STEP UP 4 近世の遊郭 === 第3章 近世の国家・社会の変容 === # 幕藩体制の動揺と幕政の改革 # 欧米列強の接近と天保の改革 # 近世文化の成熟と変容 STEP UP 5 百姓一揆と義民物語 == 第4部 近現代の地域・日本と世界 == INTRODUCTION(近代) === 第1章 開国から倒幕へ === 歴史資料と近代の展望 === 第2章 明治維新 === # 明治維新 # 文明開化 === 第3章 近代国家の形成 === # 立憲国家への道 # 議会政治の展開と日清・日露戦争 # 産業革命と社会の変化 # 近代文化の形成と展開 STEP UP 6 日露戦争のアジアへの影響 === 第4章 両大戦間の日本 === # 第一次世界大戦 # 政党政治の展開 # 市民文化の展開 STEP UP 7 近代日本の「食」と米 === 第5章 十五年戦争と日本 === # 満洲事変 # 日中戦争 # アジア・太平洋戦争(太平洋戦争) INTRODUCTION(現代) === 第6章 戦後日本の形成 === # 占領と民主改革 # 独立と日米安保体制の形成 # 高度経済成長下の日本 STEP UP 8 エネルギー革命 === 第7章 グローバル化のなかの現代日本 === # 「国際化」する経済大国Ⅰ{{進捗|00%|2023-00-00}}(ドル=ショックと石油危機~安定成長への転換まで) # 「国際化」する経済大国Ⅱ{{進捗|00%|2023-00-00}}(経済大国への道と国際化の時代) # 「国際化」する経済大国Ⅲ{{進捗|00%|2023-00-00}}(貿易摩擦とバブル経済~「豊かさ」と社会・生活の変容まで) # [[高等学校日本史探究/新たな世紀の日本へⅠ|新たな世紀の日本へⅠ]]{{進捗|100%|2026-04-10}}(冷戦の終結とグローバル化~湾岸戦争と平和維持活動まで) # [[高等学校日本史探究/新たな世紀の日本へⅡ|新たな世紀の日本へⅡ]]{{進捗|75%|2026-10-20}}(政界再編と55年体制の終結~行政改革と日米安保の変化まで) # [[高等学校日本史探究/新たな世紀の日本へⅢ|新たな世紀の日本へⅢ]]{{進捗|100%|2026-09-23}}(「構造改革」と対テロ戦争~憲法改正論と政権交代まで) # [[高等学校日本史探究/新たな世紀の日本へⅣ|新たな世紀の日本へⅣ]]{{進捗|25%|2026-09-24}}(新しい世界を目指して~平成時代・令和時代の文化史・科学史まで) 【STEP UP 9】[[高等学校日本史探究/多文化共生|多文化共生]]{{進捗|100%|2024-09-24}} 現代の日本の課題の探究 == 読書案内・学習方法 == * [[高等学校日本史探究/資料出所・読書案内|資料出所・読書案内]] * [[学習方法/高校日本史|高校日本史学習方法]]{{進捗|100%|2026-04-29}}(新試験対応) [[カテゴリ:高等学校日本史|探]] 11lbw4xga1vlklnrkp1bfiejyur0l72 305005 304998 2026-10-22T04:11:17Z Kwawe 68789 /* 第7章 グローバル化のなかの現代日本 */ 305005 wikitext text/x-wiki [[小学校・中学校・高等学校の学習]]>[[高等学校の学習]]>[[高等学校地理歴史]]>高等学校日本史探究  高等学校日本史探究のページです。{{進捗状況}} 本ページの目次と項目の配列は、実教出版株式会社の新課程教科書「[https://www.jikkyo.co.jp/book/detail/23010423 日本史探究]」(日探702・日探007-901)に合わせて作成しています。節・項目・用語の配列も原則上記教科書会社さんに従いました。学習指導要領に定められた日本史探究の標準単位数は'''3単位です。''' ※本ページは大学の二次試験まで対応させるため、日本史探究の完成時期は未定です。当面の間は日本史Bを参照して下さい。 == 第1部 原始・古代の日本と東アジア == INTRODUCTION === 第1章 日本文化のあけぼの === # [[高等学校日本史探究/日本列島最古の文化Ⅰ|日本列島最古の文化Ⅰ]]{{進捗|100%|2024-09-21}}(人類の誕生と日本列島への居住) # [[高等学校日本史探究/日本列島最古の文化Ⅱ|日本列島最古の文化Ⅱ]]{{進捗|100%|2024-10-01}}(日本の旧石器時代) # [[高等学校日本史探究/縄文時代の社会と文化|縄文時代の社会と文化]]{{進捗|100%|2026-09-27}}(縄文文化の成立~縄文社会と縄文人) # 弥生時代の社会と文化Ⅰ{{進捗|00%|2023-11-11}} # 弥生時代の社会と文化Ⅱ{{進捗|00%|2023-11-11}} === 第2章 ヤマト政権の成立と古墳文化 === # 小国の分立と邪馬台国{{進捗|00%|2023-11-11}} # 古墳の出現とヤマト政権の成立{{進捗|00%|2023-11-11}} # ヤマト政権の展開と統治の進展{{進捗|00%|2023-11-11}} # 古墳時代の生活と文化{{進捗|00%|2023-11-11}} === 第3章 律令国家の形成 === # [[高等学校日本史探究/古代国家の形成Ⅰ|古代国家の形成Ⅰ]]{{進捗|100%|2024-11-18}}(6世紀の朝鮮半島と倭~7世紀の東アジアと倭国) # [[高等学校日本史探究/古代国家の形成Ⅱ|古代国家の形成Ⅱ]]{{進捗|100%|2025-02-01}}(大化の改新~東北遠征と白村江の戦い) # [[高等学校日本史探究/古代国家の形成Ⅲ|古代国家の形成Ⅲ]]{{進捗|100%|2025-02-11}}(近江朝廷と壬申の乱~天武・持統期の政治改革) # [[高等学校日本史探究/飛鳥文化・白鳳文化|飛鳥文化・白鳳文化]]{{進捗|100%|2024-11-06}} # 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[[高等学校日本史探究/戦国大名の分国経営Ⅰ|戦国大名の分国経営Ⅰ]]{{進捗|100%|2025-02-15}}(戦国時代の特質~戦国の争乱) # 戦国大名の分国経営Ⅱ{{進捗|00%|2023-00-00}}(分国経営) # 戦国大名の分国経営Ⅲ{{進捗|00%|2025-02-15}}(都市の発達と町衆~経済の混乱) STEP UP 2 東アジアのなかのアイヌ文化・琉球文化 STEP UP 3 女性と仏教 == 第3部 近世の日本と世界 == INTRODUCTION === 第1章 東アジア世界の変容と天下統一 === # 織豊政権 # 天下統一の完成 # 近世成立期の文化 歴史資料と近世の展望 === 第2章 幕藩体制の成立と展開 === # 幕藩体制の成立 # 貿易の統制と対外関係 # 近世社会のしくみ # 幕府政治の展開 # 経済の発展 # 元禄文化と学芸の発展 STEP UP 4 近世の遊郭 === 第3章 近世の国家・社会の変容 === # 幕藩体制の動揺と幕政の改革 # 欧米列強の接近と天保の改革 # 近世文化の成熟と変容 STEP UP 5 百姓一揆と義民物語 == 第4部 近現代の地域・日本と世界 == INTRODUCTION(近代) === 第1章 開国から倒幕へ === 歴史資料と近代の展望 === 第2章 明治維新 === # 明治維新 # 文明開化 === 第3章 近代国家の形成 === # 立憲国家への道 # 議会政治の展開と日清・日露戦争 # 産業革命と社会の変化 # 近代文化の形成と展開 STEP UP 6 日露戦争のアジアへの影響 === 第4章 両大戦間の日本 === # 第一次世界大戦 # 政党政治の展開 # 市民文化の展開 STEP UP 7 近代日本の「食」と米 === 第5章 十五年戦争と日本 === # 満洲事変 # 日中戦争 # アジア・太平洋戦争(太平洋戦争) INTRODUCTION(現代) === 第6章 戦後日本の形成 === # 占領と民主改革 # 独立と日米安保体制の形成 # 高度経済成長下の日本 STEP UP 8 エネルギー革命 === 第7章 グローバル化のなかの現代日本 === # 「国際化」する経済大国Ⅰ{{進捗|00%|2023-00-00}}(ドル=ショックと石油危機~安定成長への転換まで) # 「国際化」する経済大国Ⅱ{{進捗|00%|2023-00-00}}(経済大国への道と国際化の時代) # 「国際化」する経済大国Ⅲ{{進捗|00%|2023-00-00}}(貿易摩擦とバブル経済~「豊かさ」と社会・生活の変容まで) # [[高等学校日本史探究/新たな世紀の日本へⅠ|新たな世紀の日本へⅠ]]{{進捗|100%|2026-04-10}}(冷戦の終結とグローバル化~湾岸戦争と平和維持活動まで) # [[高等学校日本史探究/新たな世紀の日本へⅡ|新たな世紀の日本へⅡ]]{{進捗|100%|2026-10-22}}(政界再編と55年体制の終結~行政改革と日米安保の変化まで) # [[高等学校日本史探究/新たな世紀の日本へⅢ|新たな世紀の日本へⅢ]]{{進捗|100%|2026-09-23}}(「構造改革」と対テロ戦争~憲法改正論と政権交代まで) # [[高等学校日本史探究/新たな世紀の日本へⅣ|新たな世紀の日本へⅣ]]{{進捗|25%|2026-09-24}}(新しい世界を目指して~平成時代・令和時代の文化史・科学史まで) 【STEP UP 9】[[高等学校日本史探究/多文化共生|多文化共生]]{{進捗|100%|2024-09-24}} 現代の日本の課題の探究 == 読書案内・学習方法 == * [[高等学校日本史探究/資料出所・読書案内|資料出所・読書案内]] * [[学習方法/高校日本史|高校日本史学習方法]]{{進捗|100%|2026-04-29}}(新試験対応) [[カテゴリ:高等学校日本史|探]] kusbpwevqax8yshuzh3ciampo6kvqxx アイヌ語 0 37830 304984 303429 2026-10-21T16:59:23Z BrassSnail 71325 304984 wikitext text/x-wiki {{Pathnav|語学|frame=1}} {{Wikipedia|アイヌ語}} {{Wiktionary|カテゴリ:アイヌ語}} '''アイヌ語'''({{lang|ain|Aynu itak}})は、北海道を中心に樺太、千島列島、本州北部などで話されてきた言語です。日本語と同じく、他の言語との系統関係の分かっていない「孤立した言語」に分類されます。日本語にとっては唯一の陸続きの言語で、古くから互いに言葉を借用し合うなどの大きな関わりがありました。日常の語彙、特に儀礼用語には、日本語とアイヌ語とで共通するものや似ているものが数多くあります。語法の面でも、「〜をやってみる」などの表現は日本語と全く同じような言い方で、隣り合って話されてきた近さが感じられます。 アイヌ語の基本的な語順は日本語と同じ主語-目的語-述語です。母音は五種類で、子音も日本語と同じものが多く、上述のように同じ発想の表現もあるため、日本語話者にとっては比較的習得しやすい言語といえます。 その一方、非常に強力な造語力を持ち、多くの要素を繋げて一つの長い単語で文のような役割を表すことなどもできます。 == ウィキブックスでの編集方針 == アイヌ語には表記法にバリエーションがある。ウィキブックスは教科書の類に入るので、学習時の分かり易さのためとして、最も多く使われている表記とは異なる表記を採ることがある。ただし、これまでに全く使われていない独自表記は避けた。 :表記変換器も用意されており、これを使えば自分の好きな表記で見ることができる。 :表記変換するには、[https://www.tampermonkey.net/ Tampermonkey]または類似の拡張機能を各自の[[w:ja:ウェブブラウザ|ブラウザ]]にインストールし、こちらのユーザースクリプトをインストールする。<br> :[https://greasyfork.org/ja/scripts/581917 ウィキメディア・プロジェクトのアイヌ語の表記変換] :ユーザースクリプトが使えないブラウザでは、こちらのサイトにあるブックマークレットを実行する。<br> :[https://toracatman.github.io/WikimediaBookmarklet/index.html ウィキメディア・プロジェクトのアイヌ語の表記変換ブックマークレット] また、長きに亙って公的な言語として使われてこなかったなどの理由から、アイヌ語には現代社会の事物・概念を表す言葉が不足しがちである。これを解決するために、様々な場で新語や新しい表現などを作り使おうとする取り組みが行われているが、本書ではこれらを教材の中に積極的に取り入れることはせず、使用する場合であっても、試行的な表現であることやこれまで実際に使われてきた表現とは違うことなどができるだけ判るようにする。 ==[[アイヌ語 入門編|入門編]]== *[[アイヌ語の世界へようこそ]] *[[アイヌ語 文字入力の準備|文字入力の準備]] *[[アイヌ語 文字と発音|文字と発音]] **[[アイヌ語 付録:キリル文字対照表|付録:キリル文字対照表]] *[[アイヌ語 アクセント|アクセント]] *[[アイヌ語 音の変化|音の変化]] *[[付録:アイヌ語 表記の揺れについて|付録:表記の揺れについて]] *[[付録:アイヌ語 方言について|付録:アイヌ語の方言について]] ==話す、聞く== === 会話練習 === #[[アイヌ語定型文練習 タンペ へマンタ アン?|これは何?]] #[[アイヌ語 自己紹介|自己紹介]] === 例文集(慣用句、よく使う文) === * [[アイヌ語 挨拶|挨拶]] * == [[アイヌ語 文法|文法]] == *「~は~だ」の形の文 *否定 *動詞の種類 *人称接辞 *位置名詞 ==[[アイヌ語 テーマ別重要語彙|テーマ別 重要語彙]]== *[[アイヌ語 数の数え方|数の数え方]] *[[アイヌ語 暦|暦]] *[[アイヌ語 人称接辞の一覧|地域毎の人称接辞一覧]] *[[アイヌ語 位置名詞の一覧|位置名詞一覧]] *[[アイヌ語 親族名称|親族名称]] *[[アイヌ語 代表的な動植物の一覧|動植物]] *[[アイヌ語 程度を表す表現|程度を表す表現]] == [[アイヌ語 学習に役立つ文献やウェブサイト|学習に役立つ本・ウェブサイト]]<!-- 辞書欄を除いては、情報が溢れないようにし、入門者にも使いやすく信頼の置けるものを重点的に載せてください。 -->== 一部のサイトで使える表記変換器も用意した。<br> [https://toracatman.github.io/AinuNotationConverter/index.html アイヌ語の表記変換器] === 総合 === * [https://www.ff-ainu.or.jp/web/potal_site/index.html アイヌ民族文化財団 アイヌ語ポータルサイト] * [https://www.bunka.go.jp/seisaku/kokugo_nihongo/kokugo_shisaku/kikigengo/ainu/index.html 文化庁 アイヌ語に関するリンク集] === 音声を聞く === * [https://ainugo.nam.go.jp/search/media?typeCont=on&typeAudio=on&typeVideo=on 国立アイヌ民族博物館アイヌ語アーカイブ 資料検索] * [https://ainugo.aa-ken.jp/ AA研アイヌ語資料 公開プロジェクト] * [https://ainugo.hm.pref.hokkaido.lg.jp/generalSearchResult.aspx ほっかいどう アイヌ語アーカイブ|北海道博物館] * [https://www.youtube.com/@user-jr8bk2iy1n YouTube 公益財団法人アイヌ民族文化財団のチャンネル] * [https://www.ff-ainu.or.jp/web/learn/language/animation/index.html オルシペスウォプ 口承文芸視聴覚資料作成事業|アイヌ民族文化財団] * [https://www.stv.jp/radio/ainugo/index.html STVアイヌ語ラジオ講座] :: テキストなどは[https://www.ff-ainu.or.jp/web/potal_site/radio.html ここ]から見られる。 * [https://ainu.ninjal.ac.jp/folklore/ アイヌ語口承文芸コーパス ー音声・グロス付きー] * [https://ainu.ninjal.ac.jp/topic/ トピック別 アイヌ語会話辞典] * [http://itelmen.placo.net/Ainu-archives/index.html アイヌ語鵡川方言 日本語-アイヌ語辞典|千葉大学大学院 人文社会科学研究科] === 独習書・文法書など === * 『ニューエクスプレスプラス アイヌ語』(ISBN 978-4-560-08868-5)中川裕(2021) ::「会話から文法を一冊で学べる入門書に」という言葉の通り、初めてアイヌ語を学ぶ人にはおすすめの一冊。CDやアプリで音声を聞く事もできる。 * 『アイヌ語広文典』(ISBN 978-4-560-09963-6)中川裕(2025) ::アイヌ語学習のためのハンドブック。発音・表記から諸方言の違い、文法、表現、文芸、歴史までを解説する大著。本格的に学ぼうとするときにはたいへん役に立つ。 *『言語学大辞典』第一巻(ISBN 978-4-385-15213-4)亀井孝 他編 所収「アイヌ語」田村すゞ子(1997) :: 分冊版の『言語学大辞典セレクション 日本列島の言語』(ISBN 4-385-15207-1)にも同じ内容が書かれている。 === 辞書・単語集 === パソコンの場合、これらのページでControl (Ctrl) + Fキーを押すと、素早く検索できる。 ==== 書籍版 ==== *『アイヌ語千歳方言辞典』中川裕(1995) *『アイヌ語沙流方言辞典』田村すゞ子(1996) *『萱野茂のアイヌ語辞典』萱野茂(1996) ==== ウェブサイト ==== *[https://ainugo.nam.go.jp/ 国立アイヌ民族博物館アイヌ語アーカイブ] ::辞書以外の資料からも検索できる。辞書は、田村すず子『アイヌ語沙流方言辞典』(1996)、萱野茂著『萱野茂のアイヌ語辞典』(1996)、知里真志保『分類アイヌ語辞典 植物編・動物編』(1953)の3冊を基にしている。 *アイヌ語ポータルサイトより ** [https://www.ff-ainu.or.jp/teach/files/ishikari_tango.pdf 単語リスト(アイヌ語・日本語)-石狩川-] ** [https://www.ff-ainu.or.jp/teach/files/saru_tango.pdf 単語リスト(アイヌ語・日本語)-沙流-] ** [https://www.ff-ainu.or.jp/teach/files/karahuto_tango.pdf 単語リスト(アイヌ語・日本語)-カラフト]- * [https://kampisos.aynu.io/ kampisos.aynu.io — Kampisos - アイヌ語コーパス検索] *[https://itah.aynu.org/ja 樺太アイヌ語の単語リスト] *[https://web.archive.org/web/20240226075541/https://tommy1949.world.coocan.jp/aynudictionary.htm 富田隆 氏によるアイヌ語電子辞書] :: === 物語 === *『アイヌ神謡集』知里幸惠 ISBN 978-4-00-320801-4、[https://www.aozora.gr.jp/cards/001529/files/44909_29558.html 青空文庫] == その他 == === アイヌ語を使って創作、執筆などを行う取り組み=== [[incubator:Wp/ain/Main_Page|アイヌ語版ウィキペディア]] [https://otarunay.at-ninja.jp/taimuzu.html アイヌタイムズ] [https://wiki.aynu.org/wiki/Mosem Aynuwiki] [https://parunpe.mystrikingly.com/ パルンペ(parunpe)] === アイヌ語やアイヌ文化を題材、モチーフとした創作 === ==== 漫画 ==== *[https://www.shueisha.co.jp/books/search/search.html?seriesid=37334 ゴールデンカムイ] [[カテゴリ:語学]] [[カテゴリ:アイヌ語|*]] 4bu88i9ssliahoti80mldozjjbmw8b6 305029 304984 2026-10-22T09:38:45Z Jcb 92857 305029 wikitext text/x-wiki {{Pathnav|語学|frame=1}} {{Wikipedia|アイヌ語}} {{Wiktionary|カテゴリ:アイヌ語}} '''アイヌ語'''({{lang|ain|Aynu itak}})は、北海道を中心に樺太、千島列島、本州北部などで話されてきた言語です。日本語と同じく、他の言語との系統関係の分かっていない「孤立した言語」に分類されます。日本語にとっては唯一の陸続きの言語で、古くから互いに言葉を借用し合うなどの大きな関わりがありました。日常の語彙、特に儀礼用語には、日本語とアイヌ語とで共通するものや似ているものが数多くあります。語法の面でも、「〜をやってみる」などの表現は日本語と全く同じような言い方で、隣り合って話されてきた近さが感じられます。 アイヌ語の基本的な語順は日本語と同じ主語-目的語-述語です。母音は五種類で、子音も日本語と同じものが多く、上述のように同じ発想の表現もあるため、日本語話者にとっては比較的習得しやすい言語といえます。 その一方、非常に強力な造語力を持ち、多くの要素を繋げて一つの長い単語で文のような役割を表すことなどもできます。 == ウィキブックスでの編集方針 == アイヌ語には表記法にバリエーションがある。ウィキブックスは教科書の類に入るので、学習時の分かり易さのためとして、最も多く使われている表記とは異なる表記を採ることがある。ただし、これまでに全く使われていない独自表記は避けた。 :表記変換器も用意されており、これを使えば自分の好きな表記で見ることができる。 :表記変換するには、[https://www.tampermonkey.net/ Tampermonkey]または類似の拡張機能を各自の[[w:ja:ウェブブラウザ|ブラウザ]]にインストールし、こちらのユーザースクリプトをインストールする。<br> :[https://greasyfork.org/ja/scripts/581917 ウィキメディア・プロジェクトのアイヌ語の表記変換] :ユーザースクリプトが使えないブラウザでは、こちらのサイトにあるブックマークレットを実行する。<br> :[https://toracatman.github.io/WikimediaBookmarklet/index.html ウィキメディア・プロジェクトのアイヌ語の表記変換ブックマークレット] また、長きに亙って公的な言語として使われてこなかったなどの理由から、アイヌ語には現代社会の事物・概念を表す言葉が不足しがちである。これを解決するために、様々な場で新語や新しい表現などを作り使おうとする取り組みが行われているが、本書ではこれらを教材の中に積極的に取り入れることはせず、使用する場合であっても、試行的な表現であることやこれまで実際に使われてきた表現とは違うことなどができるだけ判るようにする。 ==[[アイヌ語 入門編|入門編]]== *[[アイヌ語の世界へようこそ]] *[[アイヌ語 文字入力の準備|文字入力の準備]] *[[アイヌ語 文字と発音|文字と発音]] **[[アイヌ語 付録:キリル文字対照表|付録:キリル文字対照表]] *[[アイヌ語 アクセント|アクセント]] *[[アイヌ語 音の変化|音の変化]] *[[付録:アイヌ語 表記の揺れについて|付録:表記の揺れについて]] *[[付録:アイヌ語 方言について|付録:アイヌ語の方言について]] ==話す、聞く== === 会話練習 === #[[アイヌ語定型文練習 タンペ へマンタ アン?|これは何?]] #[[アイヌ語 自己紹介|自己紹介]] === 例文集(慣用句、よく使う文) === * [[アイヌ語 挨拶|挨拶]] * == [[アイヌ語 文法|文法]] == *「~は~だ」の形の文 *否定 *動詞の種類 *人称接辞 *位置名詞 ==[[アイヌ語 テーマ別重要語彙|テーマ別 重要語彙]]== *[[アイヌ語 数の数え方|数の数え方]] *[[アイヌ語 暦|暦]] *[[アイヌ語 人称接辞の一覧|地域毎の人称接辞一覧]] *[[アイヌ語 位置名詞の一覧|位置名詞一覧]] *[[アイヌ語 親族名称|親族名称]] *[[アイヌ語 代表的な動植物の一覧|動植物]] *[[アイヌ語 程度を表す表現|程度を表す表現]] == [[アイヌ語 学習に役立つ文献やウェブサイト|学習に役立つ本・ウェブサイト]]<!-- 辞書欄を除いては、情報が溢れないようにし、入門者にも使いやすく信頼の置けるものを重点的に載せてください。 -->== 一部のサイトで使える表記変換器も用意した。<br> [https://toracatman.github.io/AinuNotationConverter/index.html アイヌ語の表記変換器] === 総合 === * [https://www.ff-ainu.or.jp/web/potal_site/index.html アイヌ民族文化財団 アイヌ語ポータルサイト] * [https://www.bunka.go.jp/seisaku/kokugo_nihongo/kokugo_shisaku/kikigengo/ainu/index.html 文化庁 アイヌ語に関するリンク集] === 音声を聞く === * [https://ainugo.nam.go.jp/search/media?typeCont=on&typeAudio=on&typeVideo=on 国立アイヌ民族博物館アイヌ語アーカイブ 資料検索] * [https://ainugo.aa-ken.jp/ AA研アイヌ語資料 公開プロジェクト] * [https://ainugo.hm.pref.hokkaido.lg.jp/generalSearchResult.aspx ほっかいどう アイヌ語アーカイブ|北海道博物館] * [https://www.youtube.com/@user-jr8bk2iy1n YouTube 公益財団法人アイヌ民族文化財団のチャンネル] * [https://www.ff-ainu.or.jp/web/learn/language/animation/index.html オルシペスウォプ 口承文芸視聴覚資料作成事業|アイヌ民族文化財団] * [https://www.stv.jp/radio/ainugo/index.html STVアイヌ語ラジオ講座] :: テキストなどは[https://www.ff-ainu.or.jp/web/potal_site/radio.html ここ]から見られる。 * [https://ainu.ninjal.ac.jp/folklore/ アイヌ語口承文芸コーパス ー音声・グロス付きー] * [https://ainu.ninjal.ac.jp/topic/ トピック別 アイヌ語会話辞典] * [http://itelmen.placo.net/Ainu-archives/index.html アイヌ語鵡川方言 日本語-アイヌ語辞典|千葉大学大学院 人文社会科学研究科] === 独習書・文法書など === * 『ニューエクスプレスプラス アイヌ語』({{ISBN|978-4-560-08868-5}})中川裕(2021) ::「会話から文法を一冊で学べる入門書に」という言葉の通り、初めてアイヌ語を学ぶ人にはおすすめの一冊。CDやアプリで音声を聞く事もできる。 * 『アイヌ語広文典』({{ISBN|978-4-560-09963-6}})中川裕(2025) ::アイヌ語学習のためのハンドブック。発音・表記から諸方言の違い、文法、表現、文芸、歴史までを解説する大著。本格的に学ぼうとするときにはたいへん役に立つ。 *『言語学大辞典』第一巻({{ISBN|978-4-385-15213-4}})亀井孝 他編 所収「アイヌ語」田村すゞ子(1997) :: 分冊版の『言語学大辞典セレクション 日本列島の言語』({{ISBN|4-385-15207-1}})にも同じ内容が書かれている。 === 辞書・単語集 === パソコンの場合、これらのページでControl (Ctrl) + Fキーを押すと、素早く検索できる。 ==== 書籍版 ==== *『アイヌ語千歳方言辞典』中川裕(1995) *『アイヌ語沙流方言辞典』田村すゞ子(1996) *『萱野茂のアイヌ語辞典』萱野茂(1996) ==== ウェブサイト ==== *[https://ainugo.nam.go.jp/ 国立アイヌ民族博物館アイヌ語アーカイブ] ::辞書以外の資料からも検索できる。辞書は、田村すず子『アイヌ語沙流方言辞典』(1996)、萱野茂著『萱野茂のアイヌ語辞典』(1996)、知里真志保『分類アイヌ語辞典 植物編・動物編』(1953)の3冊を基にしている。 *アイヌ語ポータルサイトより ** [https://www.ff-ainu.or.jp/teach/files/ishikari_tango.pdf 単語リスト(アイヌ語・日本語)-石狩川-] ** [https://www.ff-ainu.or.jp/teach/files/saru_tango.pdf 単語リスト(アイヌ語・日本語)-沙流-] ** [https://www.ff-ainu.or.jp/teach/files/karahuto_tango.pdf 単語リスト(アイヌ語・日本語)-カラフト]- * [https://kampisos.aynu.io/ kampisos.aynu.io — Kampisos - アイヌ語コーパス検索] *[https://itah.aynu.org/ja 樺太アイヌ語の単語リスト] *[https://web.archive.org/web/20240226075541/https://tommy1949.world.coocan.jp/aynudictionary.htm 富田隆 氏によるアイヌ語電子辞書] :: === 物語 === *『アイヌ神謡集』知里幸惠 {{ISBN|978-4-00-320801-4}}、[https://www.aozora.gr.jp/cards/001529/files/44909_29558.html 青空文庫] == その他 == === アイヌ語を使って創作、執筆などを行う取り組み=== [[incubator:Wp/ain/Main_Page|アイヌ語版ウィキペディア]] [https://otarunay.at-ninja.jp/taimuzu.html アイヌタイムズ] [https://wiki.aynu.org/wiki/Mosem Aynuwiki] [https://parunpe.mystrikingly.com/ パルンペ(parunpe)] === アイヌ語やアイヌ文化を題材、モチーフとした創作 === ==== 漫画 ==== *[https://www.shueisha.co.jp/books/search/search.html?seriesid=37334 ゴールデンカムイ] [[カテゴリ:語学]] [[カテゴリ:アイヌ語|*]] o8ylau42gu38moclpy0koqplkhomqab アイヌ語 数の数え方 0 37831 305031 300017 2026-10-22T09:39:21Z Jcb 92857 305031 wikitext text/x-wiki [[アイヌ語]] > [[アイヌ語 テーマ別重要語彙|テーマ別重要語彙]] > '''数の数え方''' アイヌ語の数詞は、全体としては二十進法であり、中に十進法が含まれています。また、大きな数まで完全に十進法である地域や、100までは二十進法で、百の位からは十進法になる地域もあります。日本語などの周辺の言語と異なる、独自の数体系を持っています。 地域や場合によっては、ここに示したものとは異なる言い方をする場合があります。地域名を示したものでも、示した地域すべてには当てはまらないことがあります。また、特に大きな数では、各地で多様な表し方があるため、いまだ全ては網羅できていません。 == 0~10 == {| class="wikitable" |+1~10(数連体詞) !数 !カナ !ラテン文字 |- !1 |シ<span style="text-emphasis-style: sesame;">ネ</span> |siné |- !2 |<span style="text-emphasis-style: sesame;">ツ゚</span> |tú |- !3 |<span style="text-emphasis-style: sesame;">レ</span> |ré |- !4 |<span style="text-emphasis-style: sesame;">イ</span>ネ<ref name=":0">例外アクセントのため、樺太では「イーネ îne」となる。含まれる語も同様(イーネホㇹiinehoh:40 等)。</ref> |íne |- !5 |ア<span style="text-emphasis-style: sesame;">シ</span>ㇰネ |asíkne, asne |- !6 |イ<span style="text-emphasis-style: sesame;">ワ</span><small>ン</small> |iwán |- !7 |<span style="text-emphasis-style: sesame;">ア</span>ㇻワ<small>ン</small> |árwan |- !8 |ツ゚<span style="text-emphasis-style: sesame;">ペ</span>サ<small>ン</small> |tupésan |- !9 |シ<span style="text-emphasis-style: sesame;">ネ</span>ペサ<small>ン</small> |sinépesan |- !10 |<span style="text-emphasis-style: sesame;">ワ</span><small>ン</small> |wán |} (多蘭泊などを除いた樺太方言のp,t,k(,r)の規則的なh,sへの変化とrの開音節化は省略、以下注記のない限り同様) 基本になる数です。しっかり覚えましょう。 何かを数えるときには、この数詞のあとに数える物の名前を置きます。数連体詞の状態で単独で使われることは基本的にありません。 例えば、二匹の猫(チャペ/サ゚ペ cápe)は「ツ゚ サ゚ペ」、三人の人(アィヌ ajnu)は「レ アィヌ」と言います。何を数えるときもこれは変わりません。 因みに、日本語での神聖数は4[よ]と8[や]ですが、アイヌ語における神聖数はイワ<small>ン</small> iwan иўан(6)です。しばしば日本語での8と同じように、ものがたくさんあることを表します。(例:「iwan sike イワン シケ/イワイ シケ 六個の荷物、 たくさんの荷物。 <ref group="引用元">[https://ainugo.nam.go.jp/ 国立アイヌ民族博物館アイヌ語アーカイブ]</ref>」、「kokutkor kane, iwan kosonte opannere 帯をしめ、六枚の着物を羽織って<ref group="引用元">アイヌ神謡集p78 Nitatorunpe yaieyukar, “Harit kunna”</ref>」) 樺太西海岸では5がasisne(=asikne)ではなくasne アㇱネとなります。<ref group="参照">[https://eprints.lib.hokudai.ac.jp/repo/huscap/all/84608/15_05_Sakaguchi.pdf アイヌ語樺太方言における数詞と計算]</ref><sup>:69頁</sup> {| class="wikitable" |+1〜10の個数、人数 ! ! colspan="2" |個数(または数名詞) ! colspan="2" |人数 |- !数 !カナ !ラテン文字 !カナ !ラテン文字 |- !1 |シ<span style="text-emphasis-style: sesame;">ネ</span>ㇷ゚ |sinép |シネ<small>ン</small> |sinén |- !2 |<span style="text-emphasis-style: sesame;">ツ゚</span>ㇷ゚ |túp |ツ゚<small>ン</small> |tún |- !3 |<span style="text-emphasis-style: sesame;">レ</span>ㇷ゚ |rép |レ<small>ン</small> |rén |- !4 |<span style="text-emphasis-style: sesame;">イ</span>ネㇷ゚<ref name=":0" /> |ínep |イネ<small>ン</small> |ínen |- !5 |ア<span style="text-emphasis-style: sesame;">シ</span>ㇰネㇷ゚<ref>樺太西海岸ではアㇱネㇸ asneh。</ref> |asíknep |アシㇰネ<small>ン</small> |asíknen |- !6 |イ<span style="text-emphasis-style: sesame;">ワ</span><small>ン</small>ペ |iwánpe |イワニゥ |iwániw |- !7 |<span style="text-emphasis-style: sesame;">ア</span>ㇻワ<small>ン</small>ペ |árwanpe |アㇻワニゥ |árwaniw |- !8 |ツ゚<span style="text-emphasis-style: sesame;">ペ</span>サ<small>ン</small>ペ |tupésanpe |ツ゚ペサニゥ |tupésaniw |- !9 |シ<span style="text-emphasis-style: sesame;">ネ</span>ペサ<small>ン</small>ペ |sinépesanpe |シネペサニゥ |sinépesaniw |- !10 |<span style="text-emphasis-style: sesame;">ワ</span><small>ン</small>ペ |wánpe |ワニゥ |wániw |} 個数を数えるとき、1から5までの数(e,u,e,e,eと、全て母音で終わっている)には -ㇷ゚ -p -пを付け、6から10まで(全て子音(<small>ン</small> n)で終わっている)には -ペ -pe -пэを付けます。(これは述詞を名詞化するときにつける接尾辞<ref>述詞を伴う形式名詞だとする考え方もあるが、ここでは触れない。</ref>-p(e)の変化と全く同じです。)トゥキ レㇷ゚<お椀3杯>、イナゥ イワ<small>ン</small>ペ<御幣6つ>などのように数えます。数詞を単独で使いたいときはこちらを使います。例えば、何かが5個あると言いたい場合は「アシㇰネ」だけ言うのではなく、「アシㇰネㇷ゚」または「アシㇰネ 何々」といいます。 人数を数えるときは、1から5までには -<small>ン</small> -n を付け、6から10までには -(イ)ゥ -iw を付けます。シサㇺウタㇻ アシㇰネ<small>ン</small><和人5人>のように数えます。 また、個数、人数は前に名詞がなくても単独で使えます。 == 10〜20 == 音韻変化による単語の違いはあるものの、1~19までの数詞はどの方言でも同じ発想で形成されます。(ここから紹介する数詞も、数連体詞単独で使われることはないことに注意してください。) {| class="wikitable" |+10~20(数連体詞) !数 !カナ !ラテン文字 |- !10 |ワ<small>ン</small> |wán |- !11 |シネ イ<span style="text-emphasis-style: sesame;">カ</span>ㇱマ ワ<small>ン</small> |siné ikásma wán |- !12 |ツ゚ イカㇱマ ワ<small>ン</small> |tú ikásma wán |- !13 |レ イカㇱマ ワ<small>ン</small> |ré ikásma wán |- !14 |イネ イカㇱマ ワ<small>ン</small> |íne ikásma wán |- !15 |アシㇰネ イカㇱマ ワ<small>ン</small> |asíkne ikásma wán |- !16 |イワ<small>ン</small> イカㇱマ ワ<small>ン</small> |iwán ikásma wán |- !17 |アㇻワ<small>ン</small> イカㇱマ ワ<small>ン</small> |árwan ikásma wán |- !18 |ツ゚ペサ<small>ン</small> イカㇱマ ワ<small>ン</small> |tupésan ikásma wán |- !19 |シネペサ<small>ン</small> イカㇱマ ワ<small>ン</small> |sinépesan ikásma wán |- !20<sub>二十進</sub> |<span style="text-emphasis-style: sesame;">ホ</span>ッネ<sup>※</sup> |hótne<sup>※</sup> |- !20<sub>十進</sub> |ツ゚ ク<small>ン</small>クツ゚<ref>kunkutuは数名詞であるため、原則として名詞の前に来て修飾することはない。比較のため本表にも載せた。</ref> / ツ゚ ホッネ |tu kunkutu, tu hótne |} イカㇱマとは、「余る」を意味する一項述詞(自動詞)です。日本語の「とあまりひとつ(11)」などと同じような考え方ですが、アイヌ語では小さい方の数詞が先に来ます。 物を数えるときは、どちらの数字の後にも数える物の名前を付けます。例えば、14匹の犬(セタ seta сэта)は「イネ セタ イカㇱマ ワ<small>ン</small> セタ」のように言います。 <sup>※</sup>20を表す数詞は八雲ではhot, hotneの他にsinehotという形式も見られ、千島ではhowatという語形だったとされています。<ref group="参照">[https://eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace/bitstream/2115/80943/1/NoLS11_03_099_IzumiOCHIAI.pdf アイヌ語の数詞再考 : 二十進法における下方算法から上方算法への切り替え]</ref><sup>:104頁</sup> ほぼすべての方言で10はwanで表されますが、10進法の地域でもtu wanのような形は見られないようです。{{コラム|hot, hotneの品詞について|ここでは20を表すアイヌ語を「ホッネ」だと紹介しましたが、この元々の形は「ホッ」です。これまでのシネ「1の」〜ワ<small>ン</small>「10の」は全て、名詞の前に付くことでその物の数を表す「数連体詞」と呼ばれる品詞なのですが、ホッ「20」は名詞なので、そういった使い方が出来ないのです。(例えば、花 ノ<small>ン</small>ノを数えるとき、「シネ ノ<small>ン</small>ノ<1本の花>」や「ノ<small>ン</small>ノ アㇻワ<small>ン</small>ペ<花6本>」とは言えても「ホッ ノ<small>ン</small>ノ」や「ノ<small>ン</small>ノ ホッペ」などとは言えない。) そこで、物の数を数えるために「ネ」という辞をつけ、「ホッネ」という形にします。そうすることで数連体詞になり、これまで見てきた数と同じように、ホッネ エㇽム「20匹のネズミ」やエムㇱ ホッネㇷ゚「刀20本」、カッケマッ<ref>ká'''t'''kemat</ref> ホッネ<small>ン</small>「淑女20人」のように表すことができます。 (以上は沙流方言においてであり、他の地域では異なる可能性もありますが、概ねほとんどの地域で違いはないと思われます)}} {| class="wikitable" |+10〜20の個数(または数名詞) !数 !カナ !ラテン文字 |- !10 |ワ<small>ン</small>ペ |wánpe |- !11 |シネㇷ゚ イカㇱマ ワ<small>ン</small>ペ |sinép ikásma wánpe |- !12 |ツ゚ㇷ゚ イカㇱマ ワ<small>ン</small>ペ |túp ikásma wánpe |- !13 |レㇷ゚ イカㇱマ ワ<small>ン</small>ペ |rép ikásma wánpe |- !14 |イネㇷ゚ イカㇱマ ワ<small>ン</small>ペ |ínep ikásma wánpe |- !15 |アシㇰネㇷ゚ イカㇱマ ワ<small>ン</small>ペ |asíknep ikásma wánpe |- !16 |イワ<small>ン</small>ペ イカㇱマ ワ<small>ン</small>ペ |iwánpe ikasma wanpe |- !17 |アㇻワ<small>ン</small>ペ イカㇱマ ワ<small>ン</small>ペ |árwanpe ikásma wánpe |- !18 |ツ゚ペサ<small>ン</small>ペ イカㇱマ ワ<small>ン</small>ペ |tupésanpe ikásma wánpe |- !19 |シネペサ<small>ン</small>ペ イカㇱマ ワ<small>ン</small>ペ |sinépesanpe ikásma wánpe |- !20<sub>二十進</sub> |ホッネㇷ゚ / ホッ / シネホッ |hótnep, hót, sinéhot |- !20<sub>十進</sub> |ツ゚ ク<small>ン</small>クツ゚ / ツ゚ ホッ |tu kunkutu, tu hot |} {| class="wikitable" |+10〜20の人数 !数 !カナ !ラテン文字 |- !10 |ワニゥ |wániw |- !11 |シネ<small>ン</small> イカㇱマ ワニゥ |sinén ikásma wániw |- !12 |ツ゚<small>ン</small> イカㇱマ ワニゥ |tún ikásma wániw |- !13 |レ<small>ン</small> イカㇱマ ワニゥ |rén ikásma wániw |- !14 |イネ<small>ン</small> イカㇱマ ワニゥ |ínen ikásma wániw |- !15 |アシㇰネ<small>ン</small> イカㇱマ ワニゥ |asíknen ikásma wániw |- !16 |イワニゥ イカㇱマ ワニゥ |iwániw ikásma wániw |- !17 |アㇻワニゥ イカㇱマ ワニゥ |árwaniw ikásma wániw |- !18 |ツ゚ペサニゥ イカㇱマ ワニゥ |tupésaniw ikásma wániw |- !19 |シネペサニゥ イカㇱマ ワニゥ |sinépesaniw ikásma wániw |- !20<sub>二十進</sub> |ホッネ<small>ン</small> |hótnen |} 人数、個数を数える場合でも同様に、各数詞のあとに-p/-peや-n/-iwを付けます。 数えるものの名前を示すときでも、ちゃんと数える物の名前を言うのは最後だけで、それ以外の部分を-p/-peや-n/-iwで済ますことがあります。この場合、例えば14匹の犬は「イネㇷ゚ イカㇱマ ワ<small>ン</small> セタ」のように言えます。地域によってどちらをより多く使うかには差があります。 == 20~40 == {| class="wikitable" |+20~40(20進法・数連体詞)パターン1 !数 !カナ !ラテン文字 |- !20 |ホッネ<ref name=":1">[ホッネ]の部分は方言によって異なる。「ホッネ」は北海道の中部・南部などで使われる。</ref> |hótne |- !21 |シネ イカㇱマ ホッネ |siné ikásma hótne |- !22 |ツ゚ イカㇱマ ホッネ |tú ikásma hótne |- !︙ |︙ |︙ |- !29 |シネペサ<small>ン</small> イカㇱマ ホッネ |sinépesan ikásma hótne |- ! ! ! |- !30 |ワ<small>ン </small>エ・<span style="text-emphasis-style: sesame;">ツ゚</span>ホッネ |wán e-túhotne |- !31 |シネ イカㇱマ ワ<small>ン</small> エ・ツ゚ホッネ |siné ikásma wán e-túhotne |- !32 |ツ゚ イカㇱマ ワ<small>ン</small> エ・ツ゚ホッネ |tú ikásma wán e-túhotne |- !︙ |︙ |︙ |- !39 |シネペサ<small>ン</small> イカㇱマ ワ<small>ン</small> エ・ツ゚ホッネ |sinépesan ikásma wán e-túhotne |- !40 |ツ゚<span style="text-emphasis-style: sesame;">ホ</span>ッネ |tuhótne |} (「シネ イカㇱマ」と「ワ<small>ン</small> エツ゚ホッネ」で区切り、“e-”は減算を示すとする解釈と、「シネ イカㇱマ ワン」と「エツ゚ホッネ」で切り、「『11が40に向かう』、『40に届かぬ11』」などとする(20を単位としたときに40に最も近い11だと考える)解釈もあります。) 「エ」は「そこへ(向かう)」という意味があると考えられ「ツ゚ペサ<small>ン</small> エ・ツ゚ホッネ(8が2×20へ向かう)」で「32」を表した例もあります。<ref>ただし、この例での e- はむしろ減算を表すものだと考えたほうが都合が良い。</ref> {| class="wikitable" |+20~40(20進法・数連体詞)パターン2 !数 !カナ !ラテン文字 |- !20 |ホッネ<ref name=":1" /> |hótne |- !21 |シネ イカㇱマ ホッネ |siné ikásma hótne |- !22 |ツ゚ イカㇱマ ホッネ |tú ikásma hótne |- !︙ |︙ |︙ |- !29 |シネペサ<small>ン</small> イカㇱマ ホッネ |sinépesan ikásma hótne |- !30 |ワ<small>ン</small> イカㇱマ ホッネ |wán ikásma hótne |- !31 |シネ イカㇱマ ワ<small>ン</small> イカㇱマ ホッネ |siné ikásma wán ikásma hótne |- !32 |ツ゚ イカㇱマ ワ<small>ン</small> イカㇱマ ホッネ |tú ikásma wán ikásma hótne |- !︙ |︙ |︙ |- !39 |シネペサ<small>ン</small> イカㇱマ ワ<small>ン</small> イカㇱマ ホッネ |sinépesan ikásma wán ikásma hótne |- !40 |ツ゚ホッネ |tuhótne |} e-を使わずに単純に足していく方言もあります。 {| class="wikitable" |+20~40(10進法・数名詞) ! !カナ !ローマ字 |- !10 |ワ<small>ン</small>ペ |wanpe |- !11 |シネㇸ イカㇱマ ワ<small>ン</small>ペ |sineh ikasma wanpe |- !12 |ツ゚ㇷ イカㇱマ ワ<small>ン</small>ペ |tuh ikasma wanpe |- !︙ |︙ |︙ |- !20 |ツ゚ ク<small>ン</small>クツ゚ |tu kunkutu<ref>kunkutuはhot/hotnepともなりうる。以下同様。</ref> |- !21 |シネㇸ イカㇱマ ツ゚ ク<small>ン</small>クツ゚ または ツ゚ ク<small>ン</small>クツ゚ シネㇸ |sineh ikasma tu kunkutu または tu kunkutu sineh |- !︙ |︙ |︙ |- !30 |レ ク<small>ン</small>クツ゚ |re kuntuku |} 十進法の地域では、20, 30,... はkunkutuにtu, re,... を付けて表します。また、端数を含む数字は11~19と同様に「端数 ikasma 〇〇 kunkutu」のように表す場合もあれば、漢数字のように「〇〇 kunkutu 端数」のように表すこともあります。 == 89まで == 同じようにしていくと、このようになります。 {| class="wikitable" |+10~80の十の位(20進法・数連体詞) !数 !カナ !ラテン文字 |- !10 |ワン |wán |- !20 |ホッネ |hótne |- !30 |ワン エ・ツ゚ホッネ / ワン イカㇱマ ホッネ |wán e-túhotne |- !40 |ツ゚ホッネ |tuhótne |- !50 |ワン エ・レホッネ / ワン イカㇱマ ツ゚ホッネ |wán e-réhotne |- !60 |レホッネ |rehótne |- !70 |ワン エ・イネホッネ / ワン イカㇱマ レホッネ |wán e-ínehotne |- !80 |イネホッネ |ínehotne |} ここまでをまとめると、数の表し方は次の表のようになります。 {| class="wikitable" |+表し方(1~89)(20進法・数連体詞)パターン1 !一の位 ! !十の位 |- | {| class="wikitable" |- !1 |シネ |- !2 |ツ゚ |- !3 |レ |- !4 |イネ |- !5 |アシㇰネ |- !6 |イワ<small>ン</small> |- !7 |アㇻワ<small>ン</small> |- !8 |ツ゚ペサ<small>ン</small> |- !9 |シ<span style="text-emphasis-style: sesame;">ネ</span>ペサ<small>ン</small> |} | {| class="wikitable" |+ !+ |イカㇱマ |} | {| class="wikitable" |- !10 |ワ<small>ン</small> |- !20 |ホッネ |- !30 |ワ<small>ン</small> エ・ツ゚ホッネ |- !40 |ツ゚ホッネ |- !50 |ワ<small>ン</small> エ・レホッネ |- !60 |レホッネ |- !70 |ワ<small>ン</small> エ・イネホッネ |- !80 |イネホッネ |} |} {| class="wikitable" |+表し方(1~99)(20進法・数連体詞)パターン2 !一の位 ! !十の位 |- | {| class="wikitable" |- !1 |シネ |- !2 |ツ゚ |- !3 |レ |- !4 |イネ |- !5 |アシㇰネ |- !6 |イワ<small>ン</small> |- !7 |アㇻワ<small>ン</small> |- !8 |ツ゚ペサ<small>ン</small> |- !9 |シネペサ<small>ン</small> |} | {| class="wikitable" |+ !+ |イカㇱマ |} | {| class="wikitable" |- !10 |ワ<small>ン</small> |- !20 |ホッネ |- !30 |ワン イカㇱマ ホッネ |- !40 |ツ゚ホッネ |- !50 |ワン イカㇱマ ツ゚ホッネ |- !60 |レホッネ |- !70 |ワン イカㇱマ レホッネ |- !80 |イネホッネ |- !90 |ワン イカㇱマ イネホッネ |} |} {| class="wikitable" |+10進法(旭川・宗谷・樺太など)(1~80/20~99) !一の位 ! !十の位 ! rowspan="2" | !十の位 !一の位 |- | {| class="wikitable" |- !1 |シネ |- !2 |ツ゚ |- !3 |レ |- !4 |イネ |- !5 |アシㇰネ |- !6 |イワ<small>ン</small> |- !7 |アㇻワ<small>ン</small> |- !8 |ツ゚ペサ<small>ン</small> |- !9 |シネペサ<small>ン</small> |} | {| class="wikitable" |+ !+ |イカㇱマ |} | {| class="wikitable" |- !10 |ワ<small>ン</small> |- !20 |ツ゚ クンクツ゚ |- !30 |レ クンクツ゚ |- !40 |イネ クンクツ゚ |- !50 |アシㇰネ クンクツ゚ |- !60 |イワン クンクツ゚ |- !70 |アㇻワン クンクツ゚ |- !80 |ツペサン クンクツ゚ |- !90 |シネペサン クンクツ゚ |} | {| class="wikitable" |- !20 |ツ゚ クンクツ゚ |- !30 |レ クンクツ゚ |- !40 |イネ クンクツ゚ |- !50 |アシㇰネ クンクツ゚ |- !60 |イワン クンクツ゚ |- !70 |アㇻワン クンクツ゚ |- !80 |ツペサン クンクツ゚ |- !90 |シネペサン クンクツ゚ |} | {| class="wikitable" |- !1 |シネ |- !2 |ツ゚ |- !3 |レ |- !4 |イネ |- !5 |アシㇰネ |- !6 |イワ<small>ン</small> |- !7 |アㇻワ<small>ン</small> |- !8 |ツ゚ペサ<small>ン</small> |- !9 |シネペサ<small>ン</small> |} |} == 90以降(100の表し方) == 二十進法の地域では、hotneを1~10までの数詞で修飾することで200までの数を表すことができますが、このようにして表す方言だけでなく、100で一旦区切りをつけて新しい単位を導入する方言もあります。 前者の方法では、そのまま同じ数え方を続けるだけです。(パターン2の完全足し上げ法は省略します。) {| class="wikitable" |+幌別・名寄・沙流など !数 !カナ !ラテン文字 |- !80 |イネホッネ |ínehotne |- !90 |ワ<small>ン</small> エ・アシㇰネホッネ |wán e-ásiknehotne |- !100 |アシㇰネホッネ |asíknehotne |- !110 |ワ<small>ン</small> エ・イワ<small>ン</small>ホッネ |wán e-íwanhotne |- !120 |イワ<small>ン</small>ホッネ |iwánhotne |- !130 |ワ<small>ン</small> エ・アㇻワ<small>ン</small>ホッネ |wán e-árwanhotne |- !140 |アㇻワ<small>ン</small>ホッネ |árwanhotne |- !150 |ワ<small>ン</small> エ・ツ゚ペサ<small>ン</small>ホッネ |wan e-túpesanhotne |- !160 |ツ゚ペサ<small>ン</small>ホッネ |túpesanhotne |- !170 |ワ<small>ン</small> エ・シネペサ<small>ン</small>ホッネ |wán e-sínepesanhotne |- !180 |シネペサ<small>ン</small>ホッネ |sinépesanhotne |- !190 |ワ<small>ン</small> エ・ワ<small>ン</small>ホッネ |wán e-wánhotne |- !200 |ワ<small>ン</small>ホッネ |wánhotne |} 後者の方法では、100を表す数詞には地域によって様々なバリエーションがあります。 {| class="wikitable" |+100を表す数詞 !カナ !ローマ字 !地域 |- |アシㇰネホッネ |asíknehotne |沙流・樺太 |- |イㇰ |ík |多くの地域 |- |シネ イㇰ |siné ík (またはsinéik?) | |- |アツ゚ィタ |atúyta |旭川 |- |ワ<small>ン</small> ホッ |wan hot |宗谷 |- |タ<small>ン</small>ク |tanku |十進法地域 |- |シネ タ<small>ン</small>ク |sine tantu |〃 |} ikを例として示すと、次のようになります。 {| class="wikitable" |+90–200(二十゠百進法) !数 !カナ !ラテン文字 |- !80 |イネホッネ |ínehotne |- !90 |ワ<small>ン</small> エ・イㇰ |wan e-ík |- !100 |'''イㇰ''' |ík |- !110 |ワ<small>ン</small> イカㇱマ イㇰ |wán ikásma ík |- !120 |ホッネ イカㇱマ イㇰ |hótne ikásma ík |- !130 |ワ<small>ン</small> エ・ツ゚ホッネ イカㇱマ イㇰ |wán e-túhotne ikásma ík |- !140 |ツ゚ホッネ イカㇱマ イㇰ |tuhótne ikásma ík |- !150 |ワ<small>ン</small> エ・レホッネ イカㇱマ イㇰ |wán e-réhotne ikásma ík |- !160 |レホッネ イカㇱマ イㇰ |rehótne ikásma ík |- !170 |ワ<small>ン</small> エ・イネホッネ イカㇱマ イㇰ |wán e-ínehotne ikásma ík |- !180 |イネホッネ イカㇱマ イㇰ |ínehotne ikásma ík |- !190 |ワ<small>ン</small> エ・ツ゚イㇰ |wán e-túik |- !200 |ツ゚イㇰ |tuík (tú ík か?) |} 十進法地域では、次のようになります。ここでは10と100はkunkutu–tankuとしますが、旭川ではhot–atuytaとなります。漢数字のように表すこともあります。 {| class="wikitable" |+樺太・旭川など !数 !カナ !ラテン文字 |- !90 | |sinepesan kunkutu |- !100 | |sine tanku |- !110 | |sine tanku orowa wanpe (ikasma) |- !120 | |sine tanku orowa tu tanku ikasma |- !130 | |sine tanku orowa re kunkutu (ikasma) |} {| class="wikitable" |+宗谷など !数 !カナ !ラテン文字 |- !90 | | |- !100 | | |- !110 | | |- !120 | | |} 十進法でも、さまざまな表し方があります。 == 大きな数 == 100や1000を超えるような数を表す際は地域ごとに異なる表現を使っていたと考えられ、全地域をまたいで使われた大数の体系は今のところ確認されていない。 しかし散発的ではあるものの、複数の地域で大きな数を表す表現が記録され、また新たに考案もされているため、ここに地域を(新案の場合はリンクを)付して概略を示す。また最後に20進法を大きな数まで拡張したWikibooks独自の案を記す。 === 樺太において === (準備中) === 太田満による案 === (準備中) === ☆Wikibooks独自の案 === これがアイヌ語の基本的な(二十進法を使い続けたときの)数体系であると考えられます(あくまで独自の見解です。実際にこのような形で言い表している地域があったかは分かりません)。この表では、0〜3999(4000は20×20×20)まで表せます。また、このほかに大きな数の表し方がある地域もあります。 {| class="wikitable" |+ ! !一の位 !+ !十(二十、廿)の位 !+ !二百(四百)の位 |- | {| class="wikitable" !0 |オ<span style="text-emphasis-style: sesame;">ハ</span> |} | {| class="wikitable" !1 |シ<span style="text-emphasis-style: sesame;">ネ</span> |- !2 |<span style="text-emphasis-style: sesame;">ツ゚</span> |- !3 |<span style="text-emphasis-style: sesame;">レ</span> |- !4 |<span style="text-emphasis-style: sesame;">イ</span>ネ |- !5 |ア<span style="text-emphasis-style: sesame;">シ</span>ㇰネ |- !6 |イ<span style="text-emphasis-style: sesame;">ワ</span><small>ン</small> |- !7 |<span style="text-emphasis-style: sesame;">ア</span>ㇻワ<small>ン</small> |- !8 |ツ゚<span style="text-emphasis-style: sesame;">ペ</span>サ<small>ン</small> |- !9 |シ<span style="text-emphasis-style: sesame;">ネ</span>ペサ<small>ン</small> |} |イ<span style="text-emphasis-style: sesame;">カ</span>ㇱマ | {| class="wikitable" !10 |<span style="text-emphasis-style: sesame;">ワ</span><small>ン</small> |- !20 |<span style="text-emphasis-style: sesame;">ホ</span>ッネ |- !30 |<span style="text-emphasis-style: sesame;">ワ</span><small>ン</small> エ・<span style="text-emphasis-style: sesame;">ツ゚</span>ホッネ |- !40 |ツ゚<span style="text-emphasis-style: sesame;">ホ</span>ッネ |- !50 |<span style="text-emphasis-style: sesame;">ワ</span><small>ン</small> エ・<span style="text-emphasis-style: sesame;">レ</span>ホッネ |- !60 |レ<span style="text-emphasis-style: sesame;">ホ</span>ッネ |- !70 |<span style="text-emphasis-style: sesame;">ワ</span><small>ン</small> エ・<span style="text-emphasis-style: sesame;">イ</span>ネホッネ |- !80 |<span style="text-emphasis-style: sesame;">イ</span>ネホッネ |- !90 |<span style="text-emphasis-style: sesame;">ワ</span><small>ン</small> エ・<span style="text-emphasis-style: sesame;">ア</span>シㇰネホッネ |- !100 |ア<span style="text-emphasis-style: sesame;">シ</span>ㇰネホッネ |- !110 |<span style="text-emphasis-style: sesame;">ワ</span><small>ン</small> エ・<span style="text-emphasis-style: sesame;">イ</span>ワ<small>ン</small>ホッネ<ref><span style="text-emphasis-style: sesame;">ワ</span><small>ン</small>・<span style="text-emphasis-style: sesame;">エ</span>ィワンホッネになる可能性もある。</ref> |- !120 |イ<span style="text-emphasis-style: sesame;">ワ</span><small>ン</small>ホッネ |- !130 |<span style="text-emphasis-style: sesame;">ワ</span><small>ン</small> エ・<span style="text-emphasis-style: sesame;">ア</span>ㇻワ<small>ン</small>ホッネ |- !140 |<span style="text-emphasis-style: sesame;">ア</span>ㇻワ<small>ン</small>ホッネ |- !150 |<span style="text-emphasis-style: sesame;">ワ</span><small>ン</small> エ・<span style="text-emphasis-style: sesame;">ツ゚</span>ペサ<small>ン</small>ホッネ |- !160 |ツ゚<span style="text-emphasis-style: sesame;">ペ</span>サ<small>ン</small>ホッネ |- !170 |<span style="text-emphasis-style: sesame;">ワ</span><small>ン</small> エ・<span style="text-emphasis-style: sesame;">シ</span>ネペサ<small>ン</small>ホッネ |- !180 |シ<span style="text-emphasis-style: sesame;">ネ</span>ペサ<small>ン</small>ホッネ |- !190 |<span style="text-emphasis-style: sesame;">ワ</span><small>ン</small> エ・<span style="text-emphasis-style: sesame;">ワ</span><small>ン</small>ホッネ |} |イカㇱマ | {| class="wikitable" !200 |ワ<small>ン</small>ホッネ |- !400 |アツ゚ィタ<ref>ここでは「ホッネ」より一、二段階程度大きな数詞である「アツ゚ィタ」(示す数は地域によって異なる)を使いましたが、実際に400として使われていることがあるのを確かめたというわけではありません。</ref> |- !600 |ワ<small>ン</small>ホッネ エ・ツ゚アツ゚ィタ |- !800 |ツ゚アツ゚ィタ |- !1000 |ワ<small>ン</small>ホッネ エ・レアツ゚ィタ |- !1200 |レアツ゚ィタ |- !1400 |ワ<small>ン</small>ホッネ エ・イネアツ゚ィタ |- !1600 |イネアツ゚ィタ |- !1800 |ワ<small>ン</small>ホッネ エ・アシㇰネアツ゚ィタ |- !2000 |アシㇰネアツ゚ィタ |- !2200 |ワ<small>ン</small>ホッネ エ・イワ<small>ン</small>アツ゚ィタ |- !2400 |イワ<small>ン</small>アツ゚ィタ |- !2600 |ワ<small>ン</small>ホッネ エ・アㇻワ<small>ン</small>アツ゚ィタ |- !2800 |アㇻワ<small>ン</small>アツ゚ィタ |- !3000 |ワ<small>ン</small>ホッネ エ・ツ゚ぺサ<small>ン</small>アツ゚ィタ |- !3200 |ツ゚ぺサ<small>ン</small>アツ゚ィタ |- !3400 |ワ<small>ン</small>ホッネ エ・シネペサ<small>ン</small>アツ゚ィタ |- !3600 |シネペサ<small>ン</small>アツ゚ィタ |- !3800 |ワ<small>ン</small>ホッネ エ・ワ<small>ン</small>アツ゚ィタ     |} |} {| class="wikitable" |+ !0<ref>「ただ(副詞)、ただの(連体詞)、空である(一項述詞)」という意味の語。数詞の0として使われるという説明・用例は、[https://wikitravel.org/ja/%E3%82%A2%E3%82%A4%E3%83%8C%E8%AA%9E%E4%BC%9A%E8%A9%B1%E9%9B%86 これ]でしか確認できなかった。但し、アイヌ語の一項述詞は一般的に名詞としても使われるため、「空であるもの」という意味の言葉として解釈することはできる。</ref> ! ! ! |- | | | | |- | | | | |- | | | | |} == 個数・人数 == 数を数えるときは、これらの数詞を「シネ メノコ(1人の女)」や「ツ゚ オㇰカヨ(2人の男)」、「レ セタ(三匹の犬)」のように、数えられる名詞の前に置きます。何を数えるときでも形は変わりません。 また、個数を表す「シネㇷ゚、ツ゚ㇷ゚、…アシㇰネㇷ゚、イワ<small>ン</small>ぺ、アㇻワ<small>ン</small>ペ…<ref>母音終わりなら -ㇷ゚ -p,子音終わりなら -pe -ペ を付ける。(「もの」を表す言葉と同じもの。)樺太方言では -ㇷ゚ -p は-ㇵ/ㇶ/ㇷ/ㇸ/ㇹ -xに変化している。</ref>」や、人数を表す「シネ<small>ン</small>、ツ゚<small>ン</small>、…アシㇰネ<small>ン</small>、イワニゥ、アㇻワニゥ…<ref>母音終わりなら -n -ン,子音終わりなら-iw -イゥを付ける。</ref>」を使って数えることもできます。この場合、「ポ<small>ン</small> チセ イネㇷ゚(小さな家一棟)」や「エユピヒ アシㇰネ<small>ン</small>(あなたのお兄さん5人)」などのように、数名詞を後に置きます。 11以上の数で、数詞が二つ出てくるときは、「シネㇷ゚ イカㇱマ ワ<small>ン</small>ぺsine''<u>p</u>'' ikasma wan''<u>pe</u>''(11個)」「ツ゚<small>ン</small> イカㇱマ ホッネ<small>ン</small>tu<u>''n''</u> ikasma hotne<u>''n''</u>(22人)」「レㇷ゚ イカㇱマ ワンぺ エ・ツ゚ホッネㇷ゚ re<u>''p''</u> ikasma wan<u>''pe''</u> e-tuhotne<u>''p''</u>(33個)」「イワニゥ イカㇱマ ワニゥ エ・レホッネ<small>ン</small>iwan<u>''iw''</u> ikasma wan<u>''iw''</u> e-rehotne<u>''n''</u>(56人)」のように、1や2や-10の部分も、ワ<small>ン</small>やホッネも数名詞になります。同様に、「11匹のぬこ(チャペ/サ゚ペ<ref>表記法が違うだけで全く同じもの。</ref>cape:猫)」などという場合は、「シネ チャペ イカㇱマ ワ<small>ン</small> サ゚ペ」のように、「ねこ」の部分も繰り返して言います。省略形を使って「シネㇷ゚ イカㇱマ ワン チャペ」と言うこともできます。 また、比較的少ない個数や人数を数える場合、固有の呼び方で呼ばれることがあります。下に示したものは沙流方言のものです。 {| class="wikitable" |+ !人数 !カナ !キリル !ラテン |- |5 |アシㇰ |асик |asik |- |8 |ツ゚ペㇱ |тупэс |tupes |- |9 |シネペㇱ |синэпэс |sinepes |- |5人 |ハィナ |һайна |hayna |- |8人 |ハ<small>ン</small>ピヤ |һанпийа |hanpiya |- |9人 |ハ<small>ン</small>チキ |һанчики |hanciki |} 序数(順番)は、「イイェエ~/iye-e-」を数詞の前に付けて表します。(国立アイヌ民族博物館アイヌ語アーカイブより)<blockquote>【接頭】[i-y-e-e もの・(挿入音)・(と一緒)で・で]…番目。(「二」以上の数詞と共に用いられる。) iye-einen イイェエイネン 四人目。 iye-einep ne イイェエイネプ ネ 四番目の。 iye-einep ne ku=poho イイェエイネプ ネ クポホ 四番目の息子。 iye-eiwan to イイェエイワン ト 六日目。(W神謡) iye-ere pa イイェエレ パ 三年目。(W民話) iye-erep イイェエレプ 三番目。 iye-erep ne イイェエレプネ 三番目の。 iye-ererko イイェエレレコ[名][i-e-e-rerko もの・で・それで・三日] 三日目。 iye-etup イイェエトゥプ 二番目。 a=o uske oro wa iye-erep oro ta ráp=an アオ ウシケ オロ ワ イイェエレプ オロ タ ラパン 乗った所から三つ目で降りましょう。(S) ☆参考 電車に乗ってから次の次の駅で降りることを言っている。 乗った駅を一つ目として数えている。 ☆発音 二語のアクセントで発音される。 iyé-etú、 iyé-eré。 ☆参考 このように iye-e- イイェ エ を使って言う「…番目」の言い方はサダモさんのみから聞いた。 ワテケさんによれば「…番目」という言い方はなく、 hoski a=ye p, iyos a=ye p, na iyos a=ye p ホシキ アイェプ、 イヨシ アイェプ、 ナ イヨシ アイェプ《最初に言ったこと、 その後に言ったこと、 さらに後に言ったこと》のように言う。 しかしワテケさんも、 神謡の中では iye-eiwan to イイェエイワン ト《六日目の日》のようにこの形を使って歌っている。 (出典:田村、方言:沙流)(国立アイヌ民族博物館アイヌ語アーカイブより)</blockquote> == 大きな数詞一覧<ref>数連体詞の形。「個数・人数など」であげたような使い方ももちろんする。</ref> == {| class="wikitable" |+ !カナ !ラテン !アラビア数字10進法 !品詞 !方言 |- |ヘ<small>ン</small>パㇰ |henpak |幾つの(疑問詞)<ref>ヘンパㇰぺ(幾つ)、ヘンパキゥ(何人)のほか、ヘンパㇰパ(何年)などとしても使う。</ref> |数連体詞<ref>通常の疑問詞と同じようにhempakpe, hempakiwで何個、何人という意味の名詞にもなる。</ref> | |- |クンクツ゚ |kunkutu |10 |名詞 |樺太 |- |ホッ |hot |20, 10 |名詞<ref>あくまで20や10という数を表す名詞であり、20個(10個)を表すわけではない。</ref> | |- |ホッネ |hotne |20, 10 |数連体詞 | |- |アツ゚ィタ |atuyta |10, 40, 100, 200, 1000 | | |- |シネㇰ |sinek |1000 | | |- |イㇰ |ik |20, 100, 1000, 100000000 | | |- |タ<small>ン</small>ク |tanku |100 | |樺太 |} これだけ種類がありますが数を作る規則は確固としてあり、どの数詞で何を表すかを文章の冒頭などで決めておけば、同じ表記で二通りに取れる、といったことは決して起こらないようになっているので誤解はなくなります。 == リンク・参考文献 == * ニューエクスプレスプラス アイヌ語(中川裕 2021、白水社){{ISBN|978-4-560-08868-5}} pp.100–105,106 * [https://eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace/bitstream/2115/80943/1/NoLS11_03_099_IzumiOCHIAI.pdf 落合いずみ(2021)「アイヌ語の数詞再考 : 二十進法における下方算法から上方算法への切り替え」、『北方言語研究』第11号pp.99–121] * [https://eprints.lib.hokudai.ac.jp/repo/huscap/all/84608/15_05_Sakaguchi.pdf 阪口諒(2022)「アイヌ語樺太方言における数詞と計算」、『北方人文研究』第15号pp.63–84] === 参照 === <references group="参照" /> === 引用元 === <references group="引用元" /> == 註釈 == <references /> [[カテゴリ:アイヌ語|かすのかそえかた]] [[カテゴリ:数]] 5p1vpplnxb3fvbz7c6kji2itg5vy05r アイヌ語 文字と発音 0 38108 305032 302466 2026-10-22T09:39:46Z Jcb 92857 305032 wikitext text/x-wiki [[アイヌ語]] > [[アイヌ語 入門編|入門編]] > 文字と発音 == アイヌ語で使われる文字 == アイヌ語は元々文字を持たない言語だったが、江戸時代ごろから日本人(仮名)やロシア人(キリル文字)などによる記録が始まった。また、イタリア人やイギリス人がラテン文字での記録を行った。この事と地理的な要因とからアイヌ語は現在、主に3種類の文字によって表記される。アルファベット(ここではキリル文字とラテン文字のこと)の各文字の呼び名は定まっていない。<ref>現在は英語やロシア語の読みをそのまま、またはそれらを日本語化した形で呼ぶことが多いような気がするが、これからの流れによっては[[w:ja:キルディン・サーミ語|キルディン・サーミ語]]のように、呼び名を決めないという選択もできるかもしれない。</ref> === 1.仮名 === 日本語などで使われている文字。現在はほとんどの場合カタカナを使う。日本語と発音の異なる文字があるので日本語話者は注意が必要。 * 使われる文字 {| class="wikitable" |ア |イ |ウ |エ/𛀀 |オ | rowspan="12" | | |- |カ |キ |ク |ケ |コ |ㇰ |- |サ |シ |ス |セ |ソ |ㇱㇲ |- |サ゚/チャ |チ |ス゚/チュ |セ゚/チェ |ソ゚/チョ | |- |タ | |ツ/トゥ/ツ゚/ト゚ |テ |ト |ッ/ㇳ |- |パ |ピ |プ |ペ |ポ |ㇷ゚ |- |ラ |リ |ル |レ |ロ |ㇻㇼㇽㇾㇿ |- |ハ |ヒ |フ |ヘ |ホ |ㇵㇶㇷㇸㇹ |- |ナ |ニ |ヌ |ネ |ノ |<small>ン</small>/𛅧/ン/ㇴ |- |マ |ミ |ム |メ |モ |ㇺ |- |ヤ |イ |ユ |𛄡/イェ/イェ |ヨ |ィ/イ |- |ワ |(ヰ/ウィ) |ウ |ヱ/ウェ |ヲ/ウォ |ゥ/ウ |} 記号:長音符「ー」を使う。アクセントを示すために「 ⃣︎」・「´」などの記号や<span style="text-emphasis-style: sesame;">傍点</span>を使うこともある。アクセントのある音節のみを平仮名で書くという方式もあった。 === 2.キリル文字 === ロシア語などのスラブ系の言語やそのほかの東欧・アジア北部の言語で主に使われている文字。 * 使われることのある文字 {| class="wikitable" |А |Б |В |Г |Д |Е | |И |Й |К |Л |М | |Н |О |П |Р |С |Т |У |Ў |Ф |Х |Ц |Ч | |Ш | |Ю |Я |- |а |б |в |г |д |е |ѕ |и |й |к |л<ref name=":0">外来語のみ。</ref> |м |ԩ |н |о |п |р |с |т |у |ў |ф |х |ц |ч |џ |ш<ref name=":0" /> |ь |ю |я |} * この記事で主に使う文字 {| class="wikitable" |А |В |Е |И |Й |К |М | |Н |О |П |Р |С |Т |У |Ў |Х |Ч | |Ю |Я |- |а |в |е |и |й |к |м |ԩ |н |о |п |р |с |т |у |ў |х |ч |ь |ю |я |} 実際の表記で同時に使われるのは、たいてい子音字11〜12種と母音字(а,и,у,э,о)5種。 記号:主に分音符(アポストロフィ「’」など)、陽音符(アキュートアクセント「´」)、長音符(マクロン「¯」)、長陽音符(サーカムフレックス「^」)の4種を使う<ref>キリル文字の場合、これらの分音記号が正確に表示できないことも多いため、使わず表記することも多い。</ref>。 === 3.ラテン文字(ローマ字) === 世界中の多くの言語で使われている文字。 * 使われることのある文字 {| class="wikitable" |A |B |C |Ċ |Č |CH/Ch |D |E |G |H |I |J |K |M |N |O |P |R |R̥ |R̬ |S |Ṡ |Š |SH/Sh |T |U |Ŭ |V |W |(X) |Y |Z |DZ/Dz |- |a |b |c |ċ |č |ch |d |e |g |h |i |j |k |m |n |o |p |r |r̥ |r̬ |s |ṡ |š |sh |t |u |ŭ |v |w |x |y |z <ref name=":32">これらはすべて同じ音素を表す。またc、ċ、č、chとも同じ音素であるから、これらの文字を使うことはほとんどない。</ref> |dz <ref name=":32" /> |} * この記事で主に使う文字 {| class="wikitable" |A |C |E |H |I |J |K |M |N |O |P |R |S |T |U |Ŭ |W |(X) |Y |- |a |c |e |h |i |j |k |m |n |o |p |r |s |t |u |ŭ |w |x |y |} 実際の表記で同時に使われるのは、たいてい子音字11〜12種と母音字(a,i,u,e,o)5種。 記号:アキュートアクセント(á)、マクロン(ā)、アポストロフィなど(’)、サーカムフレックス(â)の4種。 == 0.アイヌ語の発音の構造 == アイヌ語の発音は、音節というものを単位にして考えるとわかりやすい。アイヌ語には、「子音+母音」の'''開音節'''と、「子音+母音+子音」の'''閉音節'''とがある。 == 1.開音節の発音 == アイヌ語の開音節の表は、概ね日本語の五十音図と一致する。(ここでは、日本語の表とは少し並びを変えてある。) {| class="wikitable" |+開音節の表 !ローマ/キリル !a/а !i/и !u/у !e/э !o/о !m/м n/н |- !Ꞌ/ꞌ<ref>Ꞌ/ꞌは表記しないことが多い。</ref> |ア |イ |ウ |エ/𛀀<ref>yeに𛄡を使用した時に、見間違いを防ぐために使う。日本語では古く(eとyeの区別が無くなった平安時代初期)に使われなくなった。</ref> |オ |ン/ㇺ<ref>特殊な場合。ḿ'm(ンンまたはㇺㇺ)、kor-'ḿ'm(コㇿンンまたはコㇿㇺㇺ)に含まれる。</ref> |- !k/к |カ |キ |ク |ケ |コ | |- !s/с |サ |シ |ス |セ |ソ | |- !c/ч |サ゚/チャ |チ |ス゚/チュ |セ゚/チェ |ソ゚/チョ | |- !t/т |タ |<ref>この音は存在せず、tとiが連続した時はチ/ci/чиになる。</ref> |ツ/トゥ/ツ゚/ト゚ |テ |ト | |- !r/р |ラ |リ |ル |レ |ロ | |- !p/п |パ<ref>北海道北部方言では、アクセントのある音節でサ゚(チャ)/ca/чаに変化する。</ref> |ピ |プ |ペ |ポ | |- !h/'''һ'''(х) |ハ |ヒ |フ |ヘ |ホ |ン゚/ㇷㇺ/ㇷン<ref>特殊な発音。この音を含むものにはhm(うん)やhńta(何、何か)hntá(さあ)などがある。</ref> |- !n/н |ナ |ニ |ヌ |ネ |ノ | |- !m/м |マ |ミ |ム |メ |モ | |- !y(j)/й<ref>軟母音字(я,ю,е,ё)を使うこともある。</ref> |ヤ |イ<ref name=":02">yやwの後にiやuが連続するとき等(青森:アウンモシㇼaw-un-mosir)に現れるが、iやuと別の音節として存在するかは意見が分かれている。</ref> |ユ |𛄡/イェ |ヨ | |- !w(v)/ў |ワ |ヰ/ウィ<ref>複合語や一部の擬音語・擬態語にのみ存在する。 【kirikewihri キリケウィヒリ(中略)股の関節kirikew-ihri(略)[kirikew(上肢)+ihri(関節)]】ただし、wとiの間を分けてキリケゥイㇶリのように発音することも多い。 wiにならない例 【uciw-itara [u-ciw-itara 互い・にささる・(状態が続いていることを表す接尾辞)][雅](いくすじもの光が)互いに反射し合いきらめき合う。(中略)☆参考 wi '''ウィ''' という発音がないため、 w ウ と i イ の間で音節を分けて発音している。】 出典:国立アイヌ民族博物館アイヌ語アーカイブ</ref> |ウ<ref name=":02" /> |ヱ/ウェ |ヲ/ウォ | |} === 母音 「a, i, u, e, o」 / 「а, и, у, э, о」 === 日本語(標準語・共通語・関東弁)のア行とほぼ同じ。ただし、ウ(ウ段にある他の行の音も同様)は関東の日本語のウよりも唇を丸めて舌を奥に引いて発音する(日本語話者にはオのように聞こえることもある)。 より厳密な発音を示す。 '''ア a а''', '''イ i и'''は日本語のものとほぼ同じ。[a],[i] * キ ki кй する | パ pa па 年 '''ウ u у'''は、日本語の「ウ」とは異なり、[u] よりも若干口の丸めの弱い、広がった音 [u̜]。日本語より唇を丸めて下を奥に引くようにして発音する。日本語話者には「オ」に聞こえることがある。 {| class="wikitable" |+「ウ」の感じ(何となく) ! !舌がより前 ! !舌がより後ろ |- !唇を丸める |[ü](関西弁) |[u̟](関西弁) |[u] |- ! |[ü̜] | |[u̜](アイヌ語) |- ! |[ɯ̹̈](関東弁) | |[ɯ̹] |- !丸めが弱い |[ɯ̈](関東弁) | |[ɯ] |} * プ pu пу 倉 | ス su су 鍋 '''エ(𛀀) э e'''は、日本語の「エ」に近いが少し狭い [e]。 * ネ ne нэ である | 𛀀 ʻe ʻэ 〜を食べる '''オ o о'''は、日本語の「オ」に近いが少し狭い [o]。 * ト to то 日、湖 | ホ ho һо はい(返事の言葉) === 子音 === ==== ア行 「’/ʼ/'/ʻ/Ꞌ,ꞌ など」 ==== : 上に示したとおり。基本的には、[[w:声門閉鎖音|声門破裂音[ʔ]]]ないし声門の緊張またはせばめを持つ、はっきりした声立てで発音される。子音の文字としてラテン文字とキリル文字では「[[w:ja:’|’]]」や「[[w:Ja:ʼ|ʼ]]」、「[[w:ja:'|']]」、「[[w:ja:ʻ|ʻ]]」のほか「Ꞌ/ꞌ」が使われることもある。ただし可読性が下がると考えられてか、現在多くの文書でこれらの記号や文字は初学者向けの文書、もしくは前の文字との関係で特に切れ目を表す必要のある部分(hioyʻoyやteʻetaなど)ぐらいにしか使われない。ただし、ウィキブックスではすべてのア行音に’を付ける。 : 例: :* アオㇷ゚ ’a’op ’а’оп 乗り物 | テエタ te’eta теʻета 昔 ; ==== カ行 / 「k-g」 / 「к-г」 ==== : 日本語のカ行とほぼ同じ。無声音(清音)で発音されることも、有声音(濁音)で発音され、ガ行のように聞こえることもある。日本語のように鼻濁音になることはない。 : 例: :* キ ki ки する | イク ’iku ’ику 酒を飲む ==== タ行 / 「t-d」 / 「т-д」 ==== : 日本語のタ行とほぼ同じ。音節tiは存在せず、チ,ci,чиに変化する。無声音(清音)で発音されることも、有声音(濁音)でダ行のように発音されることもある。 : 例: :* ト to то 日、湖 | チセ cise чисэ 家 ==== パ行 / 「p-b」 / 「п-б」 ==== : 日本語のパ行とほぼ同じ。北海道北部方言ではアクセントのあるパ pa паの音がチャ/サ゚ ca чаに変わる。無声音(清音)で発音されることも、有声音(濁音)でバ行のように発音されることもある。 : 例: :* プ pu пу 鍋 | パィカㇻ pajkar пайкар 春 ==== サ゚行(チャ行) / 「c-z[č-ž, ċ-ż], ch-zh, c-dz[dž, dż] など」 / 「ч-џ, ч-ж, ц-ѕ, ц-з など」 ==== : 日本語のチャ行のように発音される。ツァ行のように発音しても通じるが、そう発音されることはあまりない。また、もともと日本語にない音であるため、カナ表記には揺れがある。ここで示した表記のほか、この行の音のために独自の仮名を創る試みもある。([https://note.com/qvarie/n/n5f935a37b354 ここ]を参照。)無声音(清音)で発音されることも、有声音(濁音)で発音され、ヂャ,ヂ,ヂュ,ヂェ,ヂョのように聞こえることもある。 : 例: :* マッカチ matkaci маткачи 少女 | セ゚ㇷ゚/チェㇷ゚ cep чэп 魚 ==== ラ行 / 「r̊-r」 / 「ҏ-р」 ==== : 基本的に日本語と同じである(日本語のラ行でも通じる)が、日本語のラ行<ref>母語話者が意識することはほぼないが、日本語のラ行も状況によって多様に発音される、かなり複雑な音である。</ref>より少し複雑である。日本語のラ行でも通じる。 :: より詳細な発音は、 ::* 舌の先は1回だけ歯茎に触れる。 ::*: より正確には触れるというよりも舌先でタップするのである。タップとは日本語の「舌打ち」「舌鼓」にあたる。声を出さずに舌打ちをすると「タッ」とも「ツッ」とも聞こえる(英語では tut-tut)タップ音がする。神謡におけるアイヌ語の r では実際にタップ音が聞かれることもあるが、話し言葉ではそれよりも弱くタップすると同時か少し早めに母音を発声するのである。 ::* 基本の音は、[ɾ]。〔多くの日本語話者がラ行を発音するときと同じ。〕 ::* 語頭では、「[t] と [d] の中間の音」と、さらに [ɾ] との中間音に聞こえる。 ::*: 21世紀初頭の今から3~4世代程度昔の日本語話者が、英語 ''radio'' を「ダヂオ」に近く発音していたことに似る。 ::* n の後では、[d] に近い [<sup><small>d</small></sup>ɾ]。〔ダのようにラを発音する〕 ::* k, p の後では、無声音化して [ɾ̊]。〔タのようにラを発音する〕 ::* t の後では、無声音化し、更に摩擦を帯びる [ɾ̊ˢ]。〔ツァやチャに少し近いタのようにラを発音する〕 ::* s の後では、完全に無声摩擦の [ɾ̊s]。〔ツァやチャのようにラを発音する〕([[wikt:付録:アイヌ語の発音表記|ウィクショナリー「付録:アイヌ語の発音表記」]]より抜粋、「〔〕」部分補筆) :: とあるが、話者によって大きく揺れがあり、例えば[l]で発音する人もいるという。<ref group="引用元">世界言語学大辞典({{ISBN|978-4-385-15213-4}})または世界言語学大辞典セレクション 日本列島の言語({{ISBN|978-4-385-15207-3}})7頁 ただし[l]音については疑わしい</ref>また、上の解説がどの地域のものなのか、どの程度信頼できるものなのかは分からない(恐らく知里真志保の著作によるものです。正確な情報のある方は追記をお願いします)。日本語のラ行でも全く問題なく通じるので、そこまで気に病む必要はない。 :* ルスィ rusuy русуй 欲しい | ピラサ pirasa пираса 広げる | ケ<small>ン</small>ル kenru кэнру 家 | イㇰラ ’ikra ’икра 送る | キッラポ kitrapo китрапо 山女魚(ヤマメ) | カㇱレ kasre касрэ (くぼみなどが)浅い ; ==== サ行 / 「s [ṡ, š]」/ 「ш, с」 ==== : 日本語のサ行またはシャ行と同じように発音される。つまり、話者によって「サ,シ,ス,セ,ソ」または「シャ,シ,シュ,シェ,ショ」のように発音される。<ref>IPA(国際音声記号)で表すと、[s]から[ʃ]の間の音で発音される。[ɕ](日本語のシャ行の音)などもこの音の範囲に含まれる。</ref>音節si/сиが「スィ」のように発音されることは少ない。<u>必ず無声音(清音)で発音され、濁らない。</u> :* アシ ’asi аси 〜を立てる | サㇰサィヌ Saksaynu Саксайну シャクシャイン(人名) ==== ハ行 / 「h」 / 「һ, х」 ==== : 日本語のハ行とほぼ同じだが、より柔らかい音だという。 :* ホプニ hopuni һопуни 起き上がる | イリヒ ’irihi ’ириһи (衣服の)衿(えり) ; ==== ナ行 / 「n」 / 「н」 ==== : 日本語のナ行とほぼ同じ。 :* ウニ ’uni ’уни 家 | ク<small>ン</small>ネ kunne куннэ 黒い ==== マ行 / 「m」 / 「м」 ==== : 日本語のマ行とほぼ同じ。 :* メノコ menoko мэноко 女 | イカㇱマ ’ikasma ’икасма 余る ; ==== ヤ行 / 「j, y」 / 「й」 ==== : 日本語のヤ行とほぼ同じ。日本語と違いyeの音はe(エ)とは別の音である。イェと書かれることもあるがイ・エのようには切らず、他の音と同じように一音で発音する。 :* イェ(イェ)/𛄡 ye/je йэ 言う | ユㇰ juk/yuk йук 鹿、獲物全般 ==== ワ行 / 「w, v」 / 「ў, в」 ==== : 日本語のワ行とほぼ同じ。キリル文字ではЎが入力できなければВ(日本語入力ではヴェーと入力すれば出てくる)で代用しても良い。 : wiの音は原則的に存在しない。複合語や極少数の擬音語、擬態語にのみ現れる。複合語でwとiが連続しても通常は分けて発音される。 :* ワウォ wawo ўаўо アオバト | クヱカィ kuwekaj куўэкай 二月 === 濁音について === アイヌ語では、濁音と清音(有声音と無声音)を区別しない。そのため、カ・タ・サ゚・パ行音が濁ったり、ラ行音が無声音になってタ行音に近く聞こえたりすることがある。(サ行の音は濁らず常に無声音で発音される。)有声音(濁音)は、女性よりは男性に、子供よりは大人に、丁寧な発音よりはぞんざいな発音に、シラフではなく酩酊状態のときに表出する。また、鼻音の後や語頭には比較的よく現れる。 * サ<small>ン</small>ペ(心臓) サンペ〜サンベで発音される。 == 2.閉音節の発音 == 閉音節は開音節(roなど)の後に音節末子音(kなど)が付いたもの(rokなど)である。この音節末子音はカナ表記では主に小書きガナを使って表記する。これらの音の多くは日本語にも現れるが、ふつう区別なく「っ」や「ん」などとして認識される。 {| class="wikitable" |+音節末子音 ! |k |t |p |x/h |r |s |n |m |y/j |w/v |- !キリル文字 |к |т |п |х |р |с |н |м |й |ў |- !カナ |ㇰ |ッ/ㇳ |ㇷ゚ |ㇵㇶㇷㇸㇹ |ㇻㇼㇽㇾㇿ |ㇱㇲ |𛅧/ン/ㇴ |ㇺ |ィ/イ |ゥ/ウ |} ====== それぞれの発音 ====== * カ、タ、パ行音の子音は、kㇰк、tッㇳт、pㇷ゚п、であらわすが、日本語話者には全て小さい「っ」のように聞こえる。これらの発音は、 ** '''【kㇰк】'''は「がっかり」と言ったときの「っ」の発音、 ** '''【tッт'''】は「あった」と言ったときの「っ」の発音、 ** '''【pㇷ゚п】'''は「あっぱれ」と言ったときの「っ」の発音に、それぞれ近い。 *** サㇰ sak 夏<ref>「~がない」という同音の別の単語もある。</ref> サㇰケㇱ/サッケㇱ sakkes 晩夏 | サッ sat 乾く サッテㇰ sattek 痩せている | サㇷ゚ sap 下りる、行く サㇷ゚パ/サッパ sappa くだる *** サㇷ゚テ sapte 出す | カッケマッ/カㇳケマッ katkemat 淑女 | アㇰペ ’akpe 罠 ** また'''【sㇱㇲс'''】は「あっさり」「わっしょい」と言ったときの「っ」の発音に近い。これらを「っ」の部分までで止めると発音できる。場所によって結構音が変わる。(語末、sとw以外の子音の前ではㇱのように、wの前ではㇲのように発音されることが多い。sの前では促音のようになる) *** サㇱ sas {{Furi|蛭|ひる}}<ref>同じ音で昆布、マコンブという意味の語と、合掌材(建材の一)という意味の語もある。</ref> アㇲサ/アッサ/アㇱサ ’assa *** カㇱレ kasre 浅い *** アㇲワ/アㇱ ワ ’as wa 立てて * '''【x(h)ㇵㇶㇷㇸㇹх】は'''、「樺太アイヌ語での音節末子音」の項を参照。 * '''【rㇻㇼㇽㇾㇿр】'''は、その前の母音の口の形のまま舌先でラ行の音を軽くはじく。「前後の(多くの場合前の)母音の口の形をしながら舌先だけをrの位置に持って行って軽くはじくので、あとに何も続かないときは前の母音が響いて聞こえることがある。<ref group="引用元">[https://ainugo.nam.go.jp/pages/ainu_basic.html 国立アイヌ民族博物館アイヌ語アーカイブ アイヌ語沙流方言略説]</ref>」とある。<ref>続いて、「沙流川すじでも中流の二風谷やペナコリの話者の発音では特にこの傾向が強い。しかしrの後に母音音素があるかないかははっきりしており、たとえばretar《白い》とre tara《三俵》、etor《鼻汁》とetoro《いびきをかく》とははっきり区別して発音される。次に子音が続くときは、その音によって、音色はいろいろに変わる。」とある。</ref>表記も直前の母音と同じ母音のラ行の小書きを使うことが多い。<ref>ただし、これらはすべて同じ音素なので全てㇽで書く、という人も一定の割合でいる。</ref>このとき、ユカㇻ(ユカㇽのように発音)やアㇻキ(アㇼキ/アㇽキのように発音)などは発音に似せて書くことも原則どおりに書くこともある。 ** ロㇿ ror 上座 | カㇻパ karpa 作る * '''【n𛅧ンㇴн'''】は、日本語のンとは少し違う。終わるときやt,n,cの前に続く時は「あんなに」というときの「ん」の音に近い。pやmの前では[m]となり、ㇺと同じように発音される。kの前では[ŋ]となる。これらは日本語と似ているが、日本語のように[[w:ja:鼻母音|鼻母音]]になることはない。 ** カ<small>ン</small>ト kanto 天空 /kanto/ | ア<small>ン</small>ペ anpe 真実 /ampe/ | ハ<small>ン</small>ク hanku 臍 /haŋku/ * '''【mㇺм'''】は、英語でhamやsomeと言うときのmの音に近い。「あんまり」というときの「ん」の音に近い。 ** フㇺ hum 音 | フㇺペ humpe 鯨 | アトㇺテ ’atomte 丁寧な * '''【yィй'''】,【'''wゥў'''】はイ、ウとほぼ同じに発音しても構わないが、この音を強く発音することはない。 ** アィヌ ’Ajnu 人 | ハゥ haw 声 k,s,pの子音が連続するときは、ㇰ、ㇱ・ㇲ、ㇷ゚ではなく日本語のようにッを使って書くこともあるが、誤解が生じる可能性がある。これを避けるためこのページではッは原則tのみに使う。例えばwakkaはワㇰカと書く。 == 3.その他の発音 == === 長音(記号「ー」、「¯」) === 樺太アイヌ語では(全ての語ではないが)母音の長短が区別される。このうち、長母音で発音される音節は主に以下である。 # 単音節かつ開音節の自立語。エ ’é ’э́ → エー ’ee ’ээ(食べる)など。 # 北海道アイヌ語の例外アクセントに当たる音節。ウーセィ ’uusey ’уусэй(お湯)(北海道では'''ウ'''セィ ’úsey)など(「アクセント」の項も参照)。 # 渡り音が弱まったもの。イオマ<small>ン</small>テ’i’omante → イヨマ<small>ン</small>テ’iyomante(ここでのyを渡り音という) → ヨーマ<small>ン</small>テyōmanteなど # これらの単語の複合語。 # 多くの例外。 長音は、カナでは長音符「ー」で表す。キリル文字とラテン文字では母音の上に「¯」(マクロン)を付ける(’ūsey)か同じ母音を続けて書く(’uusey)。また、アクセント表記を同時にする場合は特に定まっていない(そもそも樺太アイヌ語ではアクセントが不明確な地域も多い)。 また、北海道アイヌ語などでも意味は変わらないものの特定の音節を長く発音することがある。この場合はカナでのみ長音符を付けて示すことが多い。 * エー/’e (はい、承諾の返事) | ヒオーィオィ, hi’oy’oy (ありがとう) === アクセント === 個別ページを参照。 === 外来語音 === === 音が切れることを示すアポストロフィー「’」 === 同じ母音が続く時や、子音+母音となるが、別々に発音する時、アルファベット表記では2つの音を切って発音することを示すために、アポストロフィ「’」を使う。<ref>前に書いたように、実際はア行音全てで表記されるべきだがこのような、誤解を防ぐための用途でしか使用されないことが多い。</ref>カナ表記ではすでに発音どおりに区別して書かれているため使わない。 * テエタ…te’eta/тэ’эта(なければ「テータ」になる)実際に/te'eta/[teʔeta]と発音されることもある。ちなみに、この音はア行音をはっきり言うときなどに、日本語でもよく現れる。 * ヒオィオィ…hioy’oy/хиой’ой(なければ「ヒオヨィ」になる)シサㇺイタㇰ…sisam’itak/сисам’итак また、アクセント表記を行うときは「テ'''エ'''タ」などの、トレマのつく場所にすでにアクセントがある単語にはトレマを付けない。(teétaとする<ref>二個目の音にアクセントがあるので、一個目とは別の音だと明らかであるため。</ref>。)要は、発音が一つに決まればよいのである。 == 4.符号 == アイヌ語でも他の多くの言語と同じように、紙に書いたとき読みやすくする為、何種類かの符号を使う事がある。 {| class="wikitable" |+符号の例 !カナ !アルファベット !名前 !役割 |- !(なし) != ⹀ |人称ハイフン |人称接辞を示す(必須ではない) |- !。 !. |句点/ピリオド |文末を示す |- !、 !, |読点/コンマ |文の切れ目を示す |- !「 」 !“ ” « » <sub><small>など</small></sub> |引用符 |引用部分を示す |- !・ !- |中点/ハイフン |複合語の繋ぎ目などを示す<ref>語の切れ目を分かりやすくするために、学習用に使われることが多い。</ref> |} この他にも括弧類など、比較的自由に使われる。日本語と同じように使って良い。 == アルファベット一覧 == {| class="wikitable" |+母音一覧 ! !単体 ! !A/a !I/i !U/u !E/e !O/o ! !А/а !И/и !У/у !Э/э !О/о |- |鋭記号(高調のある音) |́ | |Á/á |Í/í |Ú/ú |É/é |Ó/ó | |А́/а́ |И́/и́ |У́/у́ |Э́/э́ |О́/о́ |- |長音符(長音) |̄ | |Ā/ā |Ī/ī |Ū/ū |Ē/ē |Ō/ō | |А̄/а̄ |Ӣ/ӣ |Ӯ/ӯ |Э̄/э̄ |О̄/о̄ |- |曲折符号(高調のある長音) |̂ | |Â/â |Î/î |Û/û |Ê/ê |Ô/ô | |А̂/а̂ |И̂/и̂ |У̂/у̂ |Э̂/э̂ |О̂/о̂ |- |分音記号(前の音と分けて発音) |̈ | |Ä/ä |Ï/ï |Ü/ü |Ë/ë |Ö/ö | |Ӓ/ӓ |Ӥ/ӥ |Ӱ/ӱ |Ӭ/ӭ |Ӧ/ӧ |} キリル文字の斜体(イタリック体)には立体(ブロック体)と形状のかなり異なる文字が多くあり、読む際には(ラテン文字との混同に加えて)注意が必要です。アイヌ語で使うことがある文字について、あなたの機器での斜体の見え方を示しました。 ちなみに、斜体の元となった書体である筆記体(手で書く文字)には、国や地域、書く人や状況などによって本当に様々な形があります。立体からは想像のできないような形も数多くあり、斜体や筆記体はキリル文字を学ぶ上では厄介でもあり面白くもある存在です。 {| class="wikitable" |+アイヌ語キリル文字の立体と斜体 |<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">А</span></big> |<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">Б</span></big> |<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">В</span></big> |<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">Г</span></big> |<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">Д</span></big> |<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">Ж</span></big> |<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">Ѕ</span></big> |<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">И</span></big> |<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">Й</span></big> |<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">К</span></big> |<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">М</span></big> |<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">Н</span></big> |<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">О</span></big> |<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">П</span></big> |<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">Р</span></big> |<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">Ҏ</span></big> |<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">С</span></big> |<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">Т</span></big> |<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">У</span></big> |<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">Ў</span></big> |<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">Х</span></big> |<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">Һ</span></big> |<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">Ц</span></big> |<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">Ч</span></big> |<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">Џ</span></big> |<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">Ш</span></big> |<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">Э</span></big> |- |<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">''А''</span></big> |<big>''<span lang="ain-cyrl" dir="ltr">Б</span>''</big> |<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">''В''</span></big> |<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">''Г''</span></big> |<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">''Д''</span></big> |<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">''Ж''</span></big> |<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">''Ѕ''</span></big> |<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">''И''</span></big> |<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">''Й''</span></big> |<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">''К''</span></big> |<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">''М''</span></big> |<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">''Н''</span></big> |<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">''О''</span></big> |<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">''П''</span></big> |<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">''Р''</span></big> |<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">''Ҏ''</span></big> |<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">''С''</span></big> |<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">''Т''</span></big> |<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">''У''</span></big> |<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">''Ў''</span></big> |<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">''Х''</span></big> |<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">''Һ''</span></big> |<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">''Ц''</span></big> |<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">''Ч''</span></big> |<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">''Џ''</span></big> |<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">''Ш''</span></big> |<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">''Э''</span></big> |- | colspan="27" | |- |<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">а</span></big> |<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">б</span></big> |<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">в</span></big> |<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">г</span></big> |<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">д</span></big> |<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">ж</span></big> |<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">ѕ</span></big> |<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">и</span></big> |<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">й</span></big> |<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">к</span></big> |<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">м</span></big> |<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">н</span></big> |<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">о</span></big> |<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">п</span></big> |<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">р</span></big> |<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">ҏ</span></big> |<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">с</span></big> |<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">т</span></big> |<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">у</span></big> |<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">ў</span></big> |<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">х</span></big> |<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">һ</span></big> |<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">ц</span></big> |<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">ч</span></big> |<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">џ</span></big> |<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">ш</span></big> |<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">э</span></big> |- |'''''<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">а</span></big>''''' |''<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">б</span></big>'' |'''''<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">в</span></big>''''' |'''''<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">г</span></big>''''' |'''''<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">д</span></big>''''' |''<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">ж</span></big>'' |''<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">ѕ</span></big>'' |'''''<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">и</span></big>''''' |'''''<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">й</span></big>''''' |''<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">к</span></big>'' |''<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">м</span></big>'' |''<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">н</span></big>'' |''<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">о</span></big>'' |'''''<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">п</span></big>''''' |''<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">р</span></big>'' |''<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">ҏ</span></big>'' |''<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">с</span></big>'' |'''''<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">т</span></big>''''' |''<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">у</span></big>'' |''<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">ў</span></big>'' |''<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">х</span></big>'' |''<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">һ</span></big>'' |'''''<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">ц</span></big>''''' |''<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">ч</span></big>'' |'''''<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">џ</span></big>''''' |'''''<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">ш</span></big>''''' |''<big><span lang="ain-cyrl" dir="ltr">э</span></big>'' |} 下の表をコピーし、Excel[エクセル]などの表計算ソフトで、A1セルを選択した状態で貼り付けてください。アイヌ語入力でのキリル文字変換が出来ます。(音素表記での変換。ハ行、サ行、カ行などは自分の好みで変えてください。また、少しいじれば好みの表音式表記にすることもできます。) {| class="wikitable mw-collapsible mw-collapsed" |A |А |=SUBSTITUTE(C2,A1,B1) | rowspan="3" |iránkarapte! IRÁNKARAPTE! | rowspan="3" |=SUBSTITUTE(C2,A1,B1) |- |Á |А́ |=SUBSTITUTE(C3,A2,B2) |- |Ā |А̄ |=SUBSTITUTE(C4,A3,B3) |- |Ä |Ӓ |=SUBSTITUTE(C5,A4,B4) |↑ここに入力 |↑変換後 |- |a |а |=SUBSTITUTE(C6,A5,B5) | | |- |á |а́ |=SUBSTITUTE(C7,A6,B6) | | |- |ā |а̄ |=SUBSTITUTE(C8,A7,B7) | | |- |ä |ӓ |=SUBSTITUTE(C9,A8,B8) | | |- |I |И |=SUBSTITUTE(C10,A9,B9) | | |- |Í |И́ |=SUBSTITUTE(C11,A10,B10) | | |- |Ī |Ӣ |=SUBSTITUTE(C12,A11,B11) | | |- |Ï |Ӥ |=SUBSTITUTE(C13,A12,B12) | | |- |i |и |=SUBSTITUTE(C14,A13,B13) | | |- |í |и́ |=SUBSTITUTE(C15,A14,B14) | | |- |ī |ӣ |=SUBSTITUTE(C16,A15,B15) | | |- |ï |ӥ |=SUBSTITUTE(C17,A16,B16) | | |- |U |У |=SUBSTITUTE(C18,A17,B17) | | |- |Ú |У́ |=SUBSTITUTE(C19,A18,B18) | | |- |Ū |Ӯ |=SUBSTITUTE(C20,A19,B19) | | |- |Ü |Ӱ |=SUBSTITUTE(C21,A20,B20) | | |- |u |у |=SUBSTITUTE(C22,A21,B21) | | |- |ú |у́ |=SUBSTITUTE(C23,A22,B22) | | |- |ū |ӯ |=SUBSTITUTE(C24,A23,B23) | | |- |ü |ӱ |=SUBSTITUTE(C25,A24,B24) | | |- |E |Э |=SUBSTITUTE(C26,A25,B25) | | |- |É |Э́ |=SUBSTITUTE(C27,A26,B26) | | |- |Ē |Э̄ |=SUBSTITUTE(C28,A27,B27) | | |- |Ë |Ӭ |=SUBSTITUTE(C29,A28,B28) | | |- |e |э |=SUBSTITUTE(C30,A29,B29) | | |- |é |э́ |=SUBSTITUTE(C31,A30,B30) | | |- |ē |э̄ |=SUBSTITUTE(C32,A31,B31) | | |- |ë |ӭ |=SUBSTITUTE(C33,A32,B32) | | |- |O |О |=SUBSTITUTE(C34,A33,B33) | | |- |Ó |О́ |=SUBSTITUTE(C35,A34,B34) | | |- |Ō |О̄ |=SUBSTITUTE(C36,A35,B35) | | |- |Ö |Ӧ |=SUBSTITUTE(C37,A36,B36) | | |- |o |о |=SUBSTITUTE(C38,A37,B37) | | |- |ó |о́ |=SUBSTITUTE(C39,A38,B38) | | |- |ō |о̄ |=SUBSTITUTE(C40,A39,B39) | | |- |ö |ӧ |=SUBSTITUTE(C41,A40,B40) | | |- |K |К |=SUBSTITUTE(C42,A41,B41) | | |- |k |к |=SUBSTITUTE(C43,A42,B42) | | |- |S |Ш |=SUBSTITUTE(C44,A43,B43) | | |- |s |ш |=SUBSTITUTE(C45,A44,B44) | | |- |C |Ч |=SUBSTITUTE(C46,A45,B45) | | |- |c |ч |=SUBSTITUTE(C47,A46,B46) | | |- |T |Т |=SUBSTITUTE(C48,A47,B47) | | |- |t |т |=SUBSTITUTE(C49,A48,B48) | | |- |P |П |=SUBSTITUTE(C50,A49,B49) | | |- |p |п |=SUBSTITUTE(C51,A50,B50) | | |- |H |Һ |=SUBSTITUTE(C52,A51,B51) | | |- |h |һ |=SUBSTITUTE(C53,A52,B52) | | |- |X |Х |=SUBSTITUTE(C54,A53,B53) | | |- |x |х |=SUBSTITUTE(C55,A54,B54) | | |- |R |Р |=SUBSTITUTE(C56,A55,B55) | | |- |r |р |=SUBSTITUTE(C57,A56,B56) | | |- |N |Н |=SUBSTITUTE(C58,A57,B57) | | |- |n |н |=SUBSTITUTE(C59,A58,B58) | | |- |M |М |=SUBSTITUTE(C60,A59,B59) | | |- |m |м |=SUBSTITUTE(C61,A60,B60) | | |- |Y |Й |=SUBSTITUTE(C62,A61,B61) | | |- |y |й |=SUBSTITUTE(C63,A62,B62) | | |- |W |Ў |=SUBSTITUTE(C64,A63,B63) | | |- |w |ў |=SUBSTITUTE(D1,A64,B64) |} == 脚注 == <references responsive="" /> == 参考文献とリンク == <references group="引用元" /> [[カテゴリ:アイヌ語|もしとはつおん]] 8ew080rltdwi7bpzmxehtq3n7hczhsy 高等学校日本史探究/新たな世紀の日本へⅡ 0 38286 304969 304965 2026-10-21T12:53:14Z Kwawe 68789 /* 政界再編と55年体制の終結 */ 従来の日本社会党基本政策を村山富市内閣で大きく変えた。 304969 wikitext text/x-wiki [[小学校・中学校・高等学校の学習]]>[[高等学校の学習]]>[[高等学校地理歴史]]>[[高等学校日本史探究]]>新たな世紀の日本へⅡ  引き続き「新たな世紀の日本へ」の内容を解説します。第2回目では、政界再編から小渕恵三内閣までの国内政治を見ていきます。 == 政界再編と55年体制の終結 == [[ファイル:Sohyo Kaikan (headquarters of the Japanese Trade Union Confederation).jpg|サムネイル|220x220ピクセル|日本労働組合総連合会]] 1975年、国鉄職員などは大きなストライキ「スト権スト」を行って政府側に争議権の回復を求めても失敗しました。その後、官公庁労働組合はストライキなどをあまり行わなくなりました。民間大企業の労働組合も春闘で大幅な賃上げを求めにくくなりました。 その後、民間労働組合は1つにまとまり始めました。1987年、全日本民間労働組合連合会[民間連合]をつくりました。1989年の日本労働組合総評議会[総評]解散後、元日本労働組合総評議会[総評]は全日本民間労働組合連合会[民間連合]に合流しました。その後、全日本民間労働組合連合会[民間連合]と同盟などの労働組合は1つにまとまって<span style="color:#f29100">'''日本労働組合総連合会[連合]'''</span>をつくりました。約800万人が日本労働組合総連合会[連合]に入りました。 一方、日本労働組合総連合会[連合]の敵側は全国労働組合総連合[全労連]をつくりました。約140万人が全国労働組合総連合[全労連]に入りました。さらに日本労働組合総連合会[連合]と全国労働組合総連合[全労連]の敵側は全国労働組合連絡協議会[全労協]をつくりました。こうして、野党支持側の労働組合は日本労働組合総連合会[連合]・全国労働組合総連合[全労連]・全国労働組合連絡協議会[全労協]に分かれました。 1994年4月、新生党の羽田孜が内閣総理大臣になりました。しかし、日本社会党は新生党と一緒に内閣を支えなくなりました。羽田孜は国会議員の賛成を集められなくなり、約2か月で首相を辞めました。1994年6月、自由民主党は元野党側の日本社会党・新党さきがけと一緒に内閣を支えました[自社さ連立政権]。日本社会党の村山富市が内閣総理大臣になり、自由民主党も政権へ戻りました。一方、非自民連立政権側の新生党・日本新党・公明党・民社党などは1つにまとまって新進党をつくりました。 従来の日本社会党基本政策を村山富市内閣で大きく変えました。日本社会党は自衛隊を合憲としつつ日米安全保障条約と消費税までも受け入れました。こうして自由民主党と日本社会党の政策は近くなり、日本社会党の不支持者を増やしました。 政党の結成・解党・合流まで活発になり、各政党のどこにも入らない無党派層も増えました。以降は単独政党のみで内閣を支えきれなくなり、複数政党と一緒に内閣を支えました。 == バブルの崩壊 == プラザ合意後、大量のお金が土地購入・株式購入のために使われ、土地の値段・株価[資産価格]が次第に上がりました(資産インフレ)。1989(平成元)年、日本銀行は銀行へお金をあまり貸さなくなり、政府も土地の値段を上げすぎないようにしました(金融引き締め政策)。1990年代に入ってから、土地の値段・株価は下がり始めました。日経平均株価は、1989年12月末に3万8915円まで上がりました。しかし、その後は株式売却が増えて株価もいきなり下がり、1992年8月に1万4309円まで下がりました。土地の値段も1991年頃から下がり始め、1992年以後は日本各地で下がりました。2000年代半ばになると、大阪の一部商業地は一番高い時期の値段から約10分の1まで下がりました。こうして土地や株式の大幅な値上がりは終わり、1980年代後半のバブル経済は終わりました。 ★日本の実質経済成長率の推移 [[ファイル:GDP_growth_rate_in_Japan.svg|代替文=日本の実質経済成長率の推移|フレームなし|924x924px]] 日本の景気は1991年から悪くなりました('''平成不況''')。実質経済成長率は1992年に1.3%、1993年に1%未満まで下がりました。1992年を3か月ずつに分けて見ると、4~6月は-3.3%となり、前の3か月より国内経済が小さくなりました。7~9月と10~12月もそれぞれ-0.1%となりました。第1次石油危機後に2期連続の経済縮小時期はあっても、3期連続の経済縮小は戦後初めてでした。僅かな景気回復時期も平成不況の途中にありました。しかしすぐに経済縮小となり、平成不況が長年続きました。 バブル経済当時の国民は金融機関からお金を借りて、株価と地価をより高い価格で買いました。金融機関は不動産会社にもお金を貸しました。バブル崩壊後、株価と地価が大きく下がりました。国民は株と土地を全て売っても借金を返せなくなりました。国民の借金も金融機関へ返ってこなくなりました(不良債権)。金融機関は株と土地を債権として持っており、不良債権から金融機関も大赤字になりました。 金融機関は不良債権処理にずっと追われて、さらに苦しくなりました。その結果、金融機関は不良債権の心配からお金を貸さなくなりました。企業は金融機関からお金を借りにくくなりました。国民も「この金融機関は大丈夫か」と不安を感じるようになり、金融機関はさらに苦しくなりました。その後、企業は新しい商品を作れなくなり、新しい工場を建てられなくなり、新しい機械も買えなくなりました。地価の下落・株価の下落・不良債権の増加・金融機関の経営悪化・金融機関の融資停止が全て重なって景気も次第に悪くなりました('''複合不況''')。 当時の政府と日本銀行はこれまでの不況と同じように、財政支出の拡大・低金利政策から数年で景気も回復するかもと思っていました。この誤対策は複合不況に一切効果ありません。住宅金融専門会社は1995年頃から相次いでつぶれました。1997年、北海道拓殖銀行と山一証券がつぶれました。1998年、日本債券信用銀行と日本長期信用銀行がつぶれました。このように大手金融機関がつぶれると、国民も他の金融機関も危ないのではないかと不安になりました。政府は金融システムまで止まらないように、倒産寸前の大手金融機関などに大量の公的資金を入れました。<gallery mode="nolines" widths="200" heights="200"> ファイル:The Hokkaido Takushoku Bank.JPG|旧北海道拓殖銀行本店 ファイル:Kayabacho Tower, at Shinkawa, Chuo, Tokyo (2019-01-02) 02.jpg|旧山一證券本社 ファイル:日債銀本店.jpg|旧日本債券信用銀行本店 ファイル:Shinsei Bank (head office 1).jpg|旧日本長期信用銀行本店 </gallery>1998年、小渕恵三が内閣総理大臣になりました。小渕恵三内閣も大型予算から景気を回復させしようとしました。小渕内閣が公共投資を増やして国民のお金を回そうとしても複合不況に一切効果ありません。こうして、公債発行残高は増えました。物価は1990年代後半からずっと下がり続けました(デフレスパイラル)。 [[ファイル:Unemployment Rate of Japan 1953-2009.jpg|サムネイル|395x395ピクセル|日本の失業率]] 企業は赤字なので、生き残るために経営の効率化[事業整理・人員削減・雇用調整・海外進出など]を進めました(リストラクチャリング)。中小企業の倒産も増えて、中高年労働者の解雇・中高年労働者の早期退職・新卒採用の削減から企業の人件費を大幅に減らしました。バブル景気の時期は労働者不足から「売り手市場」でも、バブル崩壊後から「買い手市場」へ変わりました。1990年代半ばから2000年代前半、企業は新卒採用を大幅に減らしました(就職氷河期)。1998年の完全失業率は4%を超え、2001年の完全失業率で5%になりました。 失業者が増えると労働者も「自分も仕事を失うかもしれない」と不安になり、個人消費を減らしました。消費者は同じような商品なら出来るだけ安い商品を選ぶようになり、ブランド品・高級品を買ってくれなくなりました。商品が売れなくなると、会社も少量生産・既存工場・既存機械だけで行うようになりました。その結果、会社の利益がさらに減って、人員削減・採用縮小もさらに進みました。株価と地価の下落から不良債権が増えて、金融機関の経営も苦しくなり、企業へお金を貸せなくなりました。 円高も国際分業も進みました。1994年、1ドルが100円を割り込みました。輸出主導・量産指向型産業[自動車・電子・家電・事務機器など]は海外で売れにくくなりました。また、バブル崩壊後の不景気から国内の購入者も減りました。生産費用を少しでも減らすため、労働者の給料が日本より低いアジア諸国[中国など]へ工場を移すようになりました[国内工場の閉鎖・国内工場の海外移転]。その結果、地元企業・周辺店舗の売り上げを減らし、失業者を増やしました(地域'''産業の空洞化''')。 繊維産業の事業所数は減り続けました。2015年の繊維産業の事業所数は1991年と比べて約4分の1になりました。国内衣料品市場のうち海外衣料品購入割合は1991年で52%になり、2017年で97%まで上がりました。多数の多国籍企業が1990年代後半に日本企業を合併したり、買収したりしました。企業が日本型雇用を取り入れていても競争力強化・経営効率化から人員削減・能力給の導入を進めました。その結果、働き方の不安定さが広がりました。 日本は技術面でも負けています。1980年代、日本企業はエレクトロニクス[電子機器]・新素材・バイオテクノロジーなどの技術でアメリカに追いつこうとしていました。1990年代から情報通信技術の活用や生産性の伸びでアメリカ合衆国に負けました。商品は日本国内で売れにくくなり、業務内容も変わっていきました。そのため、日本企業は海外企業に負けないような対策を取りました。 バブル崩壊後、銀行制度・企業制度も変えられました。「日本版金融ビッグバン」を1996年に打ち出して、銀行・証券会社などにも規制を緩めて金融の自由化・国際化を進めました。1997年の独占禁止法改正から禁止の持株会社を再度認めました。企業は持株会社からグループ内の会社をまとめ直したり、経営の進め方を変えたりしやすくなり、その後の企業再編・金融再編にもつながりました。 以前の大規模小売店舗法は店舗面積500平方メートル以上の大規模小売店舗出店条件として出店規模・営業時間・営業日数などを定めていました。しかし、大規模小売店舗は中小小売業者の近くにも自由に出店しており、中小小売業者のお客様まで消えました。そのため、政府は大規模小売店舗の立地場所を1998年から制限しました(大規模小売店舗立地法)。中小小売業者から流れすぎないように守りながら、大規模小売店舗も中小小売業者も商売を続けられるようにしました。2000年、大規模小売店舗法を廃止しました。[[ファイル:Asian Financial Crisis EN-2009-05-05.png|サムネイル|273x273px|アジア通貨危機の影響国]]企業再編・合併は政府の規制緩和から広がり、海外企業と国内企業の協力・合併も増えました。その流れから六大企業集団もまとまりました。金融業界でも銀行などが倒産したり、別の銀行と合併したりしました。その結果、日本の金融業界は三井住友グループ[旧三井系と旧住友系]・三菱UFJ[旧三菱系と三和系]・みずほグループ[旧第一勧銀系と旧富士系]の三大金融グループへまとまりました。 国内長期不況で苦しむ中、アジア諸国の経済は大成長しました。しかし短期海外資金の依存・金融機関の過剰な借入れ・企業の過剰な借入れ・金融制度の弱さ・投機資金の流入などから海外投資家が危機感を示して一斉に海外資金を回収・売却・国外移動を行いました。1997年、タイの通貨バーツの価値が大きく下がりました。海外投資家は東アジア・東南アジアから次々と海外資金を回収・売却・国外移動を行いました(アジア通貨危機)。その結果、東アジア・東南アジア諸国の金融と経済は大きな爪痕を残しました。債務問題は韓国などで大きくなり、国際通貨基金(International Monetary Fund:IMF)の支援を受けました。アジア通貨危機は日本経済と日本の金融機関にも大きな爪痕を残して、不良債権問題をさらに悪化させました。 日本政府はアジア通貨危機の発生から地域的な金融協力制度[アジア通貨基金構想]を出しました。しかし、アメリカ合衆国の反対から日本政府は二国間金融支援と新宮沢構想などに切り替えて、東アジア諸国を金銭面で助けました。 バブル経済崩壊後の平成不況はずっと続きました。景気は2002年初期に少しだけ上向きました。しかし、政府が公共事業中心の従来型景気対策を抑えながら不良債権処理と規制改革を進めました。その結果、企業は引き続き大規模なリストラと雇用調整を行いました。当初、バブル崩壊後の長期停滞は「失われた10年」とよばれました。その後も日本経済の停滞が強く、「失われた20年」「失われた30年」とよばれました。 == 行政改革と日米安保の変化 == 1990年代後半、大規模災害の対策・重大事件への対策・行政改革・財政改革・金融改革・冷戦後の日米安全保障体制見直し・政党の組み直しを行いました。1995年1月17日、阪神・淡路地域でマグニチュード7.3の<span style="color:#f29100">'''阪神・淡路大震災[兵庫県南部地震]'''</span>が起こりました。神戸市を中心に6400人以上が亡くなり、建造物・高速道路までも大きく壊れました。当地震で大都市は自然災害に弱く、都市政策・耐震化基準・防災体制の見直しをしました。また、国民は被災地に入って、避難民[被災者]の生活を支えたり、被災地の後片付けを手伝ったりしました。この活動からボランティア活動が全国に広がりました。 1995年3月20日、オウム真理教集団は東京都の地下鉄でサリンを撒いて、多数の死傷者を出しました(<span style="color:#f29100">'''地下鉄サリン事件'''</span>)。このように阪神・淡路大震災と地下鉄サリン事件・少年犯罪の殺人事件・児童虐待などが何度も報道機関で取り上げられ、旧価値観的な安全神話も崩れて国民の意識も変わりました。<gallery mode="packed" widths="200" heights="200"> ファイル:Hanshin Expressway Nada b059.jpg|阪神淡路大震災被災後 ファイル:【地下鉄サリン事件】除染を行う自衛隊員と警察官.jpg|地下鉄サリン事件 ファイル:Ryutaro Hashimoto 19960111.jpg|橋本龍太郎 ファイル:Ryuhei Kawada 20240307.jpg|川田龍平 </gallery>1995年9月、自由民主党総裁選挙から<span style="color:#f29100">'''橋本龍太郎'''</span>が選ばれました。1996年1月、村山富市首相退陣後の内閣総理大臣指名選挙で橋本龍太郎が選ばれました。橋本内閣でも自民党・社会民主党・新党さきがけの3党が引き続き協力して、政策を進めました。なお日本社会党は自衛隊・日米安全保障条約の賛成側に回り、1996年に党名を社会民主党へ変えました。 薬害エイズ問題も大きく取り上げられました。橋本龍太郎内閣厚生大臣の菅直人は薬害エイズ被害者[川田龍平など]に謝罪しました。その後、国と製薬会社と被害者が話し合い、和解しました。 1996年、新しい選挙制度で初めて衆議院議員総選挙が行われ、自由民主党の議席を大きく増やしても、過半数を下回りました。社会民主党と新党さきがけは第2次橋本内閣から国務大臣を出さなくなり、閣外協力に変わりました。その結果、自由民主党単独政権に戻りました。 橋本龍太郎内閣は冷戦後の国際変化・国内経済・政府問題を解決するため、行政・財政・金融の各分野を見直しました。行政改革は政府組織を減らしたり、類似の政府組織を1つにまとめたりして、首相などの政策案を出しやすくしました。1998年、中央省庁等改革基本法が導入されて中央省庁等改革関連法から行政改革の方針を決めました。 2001年1月、政府はこの行政改革の方針から中央省庁を1府22省庁から1府12省庁に減らしました。その結果、内閣総理大臣は各省庁へ指示を出して、政府全体の政策を進めやすくしました。2007年、防衛庁を防衛省に上げました。 ★省庁再編 {| class="wikitable" !再編前 !再編後 !再編前 !再編後 |- |内閣官房 |内閣官房 |大蔵省 |財務省 |- | rowspan="2" |総理府 金融再生委員会 経済企画庁 沖縄開発庁 | rowspan="2" |内閣府 |科学技術庁 文部省 |文部科学省 |- |厚生省 労働省 |厚生労働省 |- |国家公安委員会 |国家公安委員会 |農林水産省 |農林水産省 |- |防衛庁 |防衛庁(省) |通商産業省 |経済産業省 |- |総務庁 郵政省 自治省 |総務省 | rowspan="2" |北海道開発庁 国土庁 建設省 運輸省 | rowspan="2" |国土交通省 |- |法務省 |法務省 |- |外務省 |外務省 |環境庁 |環境省 |} 橋本龍太郎内閣は国債の発行額を減らそうとしました。1997年4月、財政構造改革法に従って消費税率を3%から5%に引き上げて公共事業費などを減らしました。国債発行額は1970年代後半から増えても1980年代末で一度減りました。1990年代に入り、公共投資を再拡大させてから大幅な国債発行額増加に向かいました。 しかし、国民は消費税率の引き上げなどから財布の紐もきつくなり、金融機関も生き残れなくなりました。さらにアジア通貨・金融危機も起きて、日本経済は再不況になりました。やがて、銀行同士は金融不安の拡大から合併して1つの銀行になりました。1997年度の実質経済成長率は-0.4%となり、1974年度[第1次石油危機直後]以来のマイナス成長になりました。1998年度の実質経済成長率は-2%まで下がり、平成不況の大きさを改めて物語りました。 [[ファイル:Official Portrait of President William Jefferson Clinton - DPLA - 4697184146b3b6e2d6791b8f3c297476.jpg|サムネイル|221x221ピクセル|ビル・クリントン大統領]] 冷戦後、橋本龍太郎内閣は日米安全保障体制を見直しました。アメリカのビル・クリントン大統領が1996年4月に日本を訪れ、橋本首相と話し合って<span style="color:#f29100">'''日米安全保障共同宣言'''</span>を発表しました。日米安全保障共同宣言から日本とアメリカは日本防衛以外にもアジア太平洋地域の戦争防止・紛争防止まで努めていくようになりました。 自衛隊がアメリカ軍に必要物資を運ぶなどの後方支援についても、日米防衛協力のための指針を見直しました。1997年、日本政府とアメリカ合衆国政府は「新しい日米防衛協力のための指針(新ガイドライン)」を作りました。 日本が外国から直接攻撃されても直接攻撃されていなくても、日本周辺国の戦争などから日本の平和と安全に大きく関わっていたらアメリカ合衆国側も新ガイドラインに従って助け合いました(周辺事態)。ただし日本から何キロ以内というような距離だけだとアメリカ合衆国側は何もしません。 地球温暖化防止京都会議は1997年に開かれ、温室効果ガスの削減目標などを盛り込む京都議定書を採択しました。また、橋本龍太郎内閣は従来のアイヌ民族政策を大きく変えました。 アイヌ民族は1946年2月に北海道アイヌ協会を作り、アイヌ民族の権利を政府に求めました。北海道旧土人保護法からアイヌ民族用の土地[給与地]を貰っても、農地改革で買収されたくありませんでした。しかしアイヌ民族をずっと厳しく人種差別しており、アイヌ民族の一部は北海道から逃げました。その後、北海道アイヌ協会は名前を北海道ウタリ協会に変えました。[[ファイル:UPOPOY 202608.jpg|サムネイル|民族共生象徴空間ウポポイ]]1980年代、世界各地の先住民族が先住民族の権利を政府に求めました。北海道ウタリ協会は政府に北海道旧土人保護法を廃止して新しい法律を作ってほしいと求めました。1997年、国会はアイヌ民族文化をずっと守っていくためにアイヌ文化振興法を作り、北海道旧土人保護法を廃止しました。 その後もアイヌ民族政策は変わりました。2008年、国会はアイヌ民族を日本の先住民族と認めて、内閣へアイヌ民族の権利・生活・文化なども認めてほしいとお願いしました。民族団体の名前も北海道ウタリ協会から北海道アイヌ協会に戻しました。 2019(令和元)年、政府はアイヌ施策推進法で日本の「先住民族」にアイヌ民族を初めて入れました。アイヌ施策推進法から北海道アイヌ協会側も話し合いに参加して、アイヌ民族向けの新しい政策を行っています。2020年、北海道白老町に民族共生象徴空間ウポポイが開かれました。アイヌ語講座・アイヌ文化活動・アイヌ語活動が日本各地で開かれてもいます。 [[ファイル:Keizo Obuchi 19980730.jpg|サムネイル|168x168ピクセル|小渕恵三]] 1998年7月の参議院議員選挙で自由民主党議席数は大きく減らし、この結果から橋本龍太郎も内閣総理大臣を辞めました。これを受けて、<span style="color:#f29100">'''小渕恵三'''</span>が内閣総理大臣に選ばれました。小渕恵三内閣はバブル崩壊に消費税増税・金融不安・アジア通貨危機なども重なり、橋本龍太郎の財政再建路線を修正しました。小渕恵三内閣は土木工事・公共施設建築工事の大型予算を組んでその潤いから複合不況まで立て直そうとしました。その結果、政府は赤字国債発行額を再び大幅に増やしました。 1999年、小渕恵三内閣は国会法案の賛成を増やしたいから自由党〔1月〕・公明党〔10月〕も自由民主党と一緒に内閣を支えていました[自自公連立政権の開始]。その結果、自由民主党・自由党・公明党は衆議院・参議院の両方で過半数の議席を持つようになりました。小渕恵三内閣から自由民主党と公明党は2025年10月まで一緒に内閣を支えました。 1999年、小渕恵三内閣は'''新ガイドライン関連法'''をまとめました。新ガイドライン関連法の<span style="color:#f29100">'''周辺事態安全確保法'''</span>は日本周辺国家の暴走で自国の平和と安全まで守れなくなったら、自衛隊を出してアメリカ軍へ必要物資を送りました。 [[ファイル:G8 2000 group photo (kremlin.ru).jpg|サムネイル|223x223px|第26回主要国首脳会議]] 1999年、小渕恵三内閣は日の丸と君が代を国旗・国歌法へ初めて記しました。また、国民は情報公開法に従って官公庁へ資料を見せてほしいとお願いしやすくなりました。国会は憲法調査会で憲法を変えるかどうか話し合いました。小渕恵三内閣は2000年に九州・沖縄で第26回主要国首脳会議[サミット]開くと決めました。 この時期は野党も大きく変わりました。社会民主党の支持者は少しずつ減りました。新進党は議員の大量離脱から1997年末になくなりました。旧新進党の議員は違う政党[自由党・新党平和・民主党]に入りました。1996年、鳩山由紀夫・菅直人が民主党を結成しました。その後、旧新進党議員も民主党へ入りました。さらに、新党平和・黎明クラブを公明党に戻しました。 こうして、自由民主党と日本社会党が長く争う55年体制も終わりました。55年体制が終わっても、自由民主党と民主党の保守二大政党制へ繋がりませんでした。自由民主党が再び政権へ戻っても、自由党・公明党と一緒に内閣を支えていました。 == 資料出所 == * 平雅行、横田冬彦ほか編著『日本史探究』実教出版株式会社 2023年 * 佐藤信、五味文彦ほか編著『詳説日本史探究』株式会社山川出版社 2023年 * 高埜利彦、高村直助ほか編著『日本史A 改訂版』株式会社山川出版社 2016年 * 渡邊晃宏ほか編著『日本史探究』東京書籍株式会社 2023年 * 伊藤純郎ほか編著『高等学校日本史探究』株式会社清水書院 2023年 * 大橋幸泰ほか編著『高等学校日本史探究』株式会社第一学習社 2023年 * 山中裕典著'''『'''改訂版 大学入学共通テスト 歴史総合、日本史探究の点数が面白いほどとれる本'''』'''株式会社KADOKAWA 2024年 * 佐藤信、五味文彦ほか編著『詳説日本史研究』株式会社山川出版社 2017年 * 河合敦著『世界一わかりやすい河合敦の日本史B[近・現代]の特別講座』株式会社KADOKAWA 2014年(絶版本) * 外園豊基編集代表『最新日本史図表』株式会社第一学習社 2026年 * 東京法令出版編著『歴史資料館 日本史のライブラリー』東京法令出版株式会社 2026年 [[カテゴリ:高等学校日本史探究|あらたなせいきのにほんへ]] [[カテゴリ:20世紀]] 88o3ncwpvda0ojl6i9y71t9gguevojz 304970 304969 2026-10-21T12:53:54Z Kwawe 68789 /* 政界再編と55年体制の終結 */ 1995年8月15日、村山富市内閣総理大臣はアジア・太平洋戦争の反省とお詫びを「戦後50周年の終戦記念日にあたって」で伝えた(村山談話)。 304970 wikitext text/x-wiki [[小学校・中学校・高等学校の学習]]>[[高等学校の学習]]>[[高等学校地理歴史]]>[[高等学校日本史探究]]>新たな世紀の日本へⅡ  引き続き「新たな世紀の日本へ」の内容を解説します。第2回目では、政界再編から小渕恵三内閣までの国内政治を見ていきます。 == 政界再編と55年体制の終結 == [[ファイル:Sohyo Kaikan (headquarters of the Japanese Trade Union Confederation).jpg|サムネイル|220x220ピクセル|日本労働組合総連合会]] 1975年、国鉄職員などは大きなストライキ「スト権スト」を行って政府側に争議権の回復を求めても失敗しました。その後、官公庁労働組合はストライキなどをあまり行わなくなりました。民間大企業の労働組合も春闘で大幅な賃上げを求めにくくなりました。 その後、民間労働組合は1つにまとまり始めました。1987年、全日本民間労働組合連合会[民間連合]をつくりました。1989年の日本労働組合総評議会[総評]解散後、元日本労働組合総評議会[総評]は全日本民間労働組合連合会[民間連合]に合流しました。その後、全日本民間労働組合連合会[民間連合]と同盟などの労働組合は1つにまとまって<span style="color:#f29100">'''日本労働組合総連合会[連合]'''</span>をつくりました。約800万人が日本労働組合総連合会[連合]に入りました。 一方、日本労働組合総連合会[連合]の敵側は全国労働組合総連合[全労連]をつくりました。約140万人が全国労働組合総連合[全労連]に入りました。さらに日本労働組合総連合会[連合]と全国労働組合総連合[全労連]の敵側は全国労働組合連絡協議会[全労協]をつくりました。こうして、野党支持側の労働組合は日本労働組合総連合会[連合]・全国労働組合総連合[全労連]・全国労働組合連絡協議会[全労協]に分かれました。 1994年4月、新生党の羽田孜が内閣総理大臣になりました。しかし、日本社会党は新生党と一緒に内閣を支えなくなりました。羽田孜は国会議員の賛成を集められなくなり、約2か月で首相を辞めました。1994年6月、自由民主党は元野党側の日本社会党・新党さきがけと一緒に内閣を支えました[自社さ連立政権]。日本社会党の村山富市が内閣総理大臣になり、自由民主党も政権へ戻りました。一方、非自民連立政権側の新生党・日本新党・公明党・民社党などは1つにまとまって新進党をつくりました。 従来の日本社会党基本政策を村山富市内閣で大きく変えました。日本社会党は自衛隊を合憲としつつ日米安全保障条約と消費税までも受け入れました。こうして自由民主党と日本社会党の政策は近くなり、日本社会党の不支持者を増やしました。 1995年、アジア・太平洋戦争終戦から50年を迎えました。国会は戦後50年目の反省文内容をまとめました。8月15日、村山富市内閣総理大臣はアジア・太平洋戦争の反省とお詫びを「戦後50周年の終戦記念日にあたって」で伝えました(村山談話)。 政党の結成・解党・合流まで活発になり、各政党のどこにも入らない無党派層も増えました。以降は単独政党のみで内閣を支えきれなくなり、複数政党と一緒に内閣を支えました。 == バブルの崩壊 == プラザ合意後、大量のお金が土地購入・株式購入のために使われ、土地の値段・株価[資産価格]が次第に上がりました(資産インフレ)。1989(平成元)年、日本銀行は銀行へお金をあまり貸さなくなり、政府も土地の値段を上げすぎないようにしました(金融引き締め政策)。1990年代に入ってから、土地の値段・株価は下がり始めました。日経平均株価は、1989年12月末に3万8915円まで上がりました。しかし、その後は株式売却が増えて株価もいきなり下がり、1992年8月に1万4309円まで下がりました。土地の値段も1991年頃から下がり始め、1992年以後は日本各地で下がりました。2000年代半ばになると、大阪の一部商業地は一番高い時期の値段から約10分の1まで下がりました。こうして土地や株式の大幅な値上がりは終わり、1980年代後半のバブル経済は終わりました。 ★日本の実質経済成長率の推移 [[ファイル:GDP_growth_rate_in_Japan.svg|代替文=日本の実質経済成長率の推移|フレームなし|924x924px]] 日本の景気は1991年から悪くなりました('''平成不況''')。実質経済成長率は1992年に1.3%、1993年に1%未満まで下がりました。1992年を3か月ずつに分けて見ると、4~6月は-3.3%となり、前の3か月より国内経済が小さくなりました。7~9月と10~12月もそれぞれ-0.1%となりました。第1次石油危機後に2期連続の経済縮小時期はあっても、3期連続の経済縮小は戦後初めてでした。僅かな景気回復時期も平成不況の途中にありました。しかしすぐに経済縮小となり、平成不況が長年続きました。 バブル経済当時の国民は金融機関からお金を借りて、株価と地価をより高い価格で買いました。金融機関は不動産会社にもお金を貸しました。バブル崩壊後、株価と地価が大きく下がりました。国民は株と土地を全て売っても借金を返せなくなりました。国民の借金も金融機関へ返ってこなくなりました(不良債権)。金融機関は株と土地を債権として持っており、不良債権から金融機関も大赤字になりました。 金融機関は不良債権処理にずっと追われて、さらに苦しくなりました。その結果、金融機関は不良債権の心配からお金を貸さなくなりました。企業は金融機関からお金を借りにくくなりました。国民も「この金融機関は大丈夫か」と不安を感じるようになり、金融機関はさらに苦しくなりました。その後、企業は新しい商品を作れなくなり、新しい工場を建てられなくなり、新しい機械も買えなくなりました。地価の下落・株価の下落・不良債権の増加・金融機関の経営悪化・金融機関の融資停止が全て重なって景気も次第に悪くなりました('''複合不況''')。 当時の政府と日本銀行はこれまでの不況と同じように、財政支出の拡大・低金利政策から数年で景気も回復するかもと思っていました。この誤対策は複合不況に一切効果ありません。住宅金融専門会社は1995年頃から相次いでつぶれました。1997年、北海道拓殖銀行と山一証券がつぶれました。1998年、日本債券信用銀行と日本長期信用銀行がつぶれました。このように大手金融機関がつぶれると、国民も他の金融機関も危ないのではないかと不安になりました。政府は金融システムまで止まらないように、倒産寸前の大手金融機関などに大量の公的資金を入れました。<gallery mode="nolines" widths="200" heights="200"> ファイル:The Hokkaido Takushoku Bank.JPG|旧北海道拓殖銀行本店 ファイル:Kayabacho Tower, at Shinkawa, Chuo, Tokyo (2019-01-02) 02.jpg|旧山一證券本社 ファイル:日債銀本店.jpg|旧日本債券信用銀行本店 ファイル:Shinsei Bank (head office 1).jpg|旧日本長期信用銀行本店 </gallery>1998年、小渕恵三が内閣総理大臣になりました。小渕恵三内閣も大型予算から景気を回復させしようとしました。小渕内閣が公共投資を増やして国民のお金を回そうとしても複合不況に一切効果ありません。こうして、公債発行残高は増えました。物価は1990年代後半からずっと下がり続けました(デフレスパイラル)。 [[ファイル:Unemployment Rate of Japan 1953-2009.jpg|サムネイル|395x395ピクセル|日本の失業率]] 企業は赤字なので、生き残るために経営の効率化[事業整理・人員削減・雇用調整・海外進出など]を進めました(リストラクチャリング)。中小企業の倒産も増えて、中高年労働者の解雇・中高年労働者の早期退職・新卒採用の削減から企業の人件費を大幅に減らしました。バブル景気の時期は労働者不足から「売り手市場」でも、バブル崩壊後から「買い手市場」へ変わりました。1990年代半ばから2000年代前半、企業は新卒採用を大幅に減らしました(就職氷河期)。1998年の完全失業率は4%を超え、2001年の完全失業率で5%になりました。 失業者が増えると労働者も「自分も仕事を失うかもしれない」と不安になり、個人消費を減らしました。消費者は同じような商品なら出来るだけ安い商品を選ぶようになり、ブランド品・高級品を買ってくれなくなりました。商品が売れなくなると、会社も少量生産・既存工場・既存機械だけで行うようになりました。その結果、会社の利益がさらに減って、人員削減・採用縮小もさらに進みました。株価と地価の下落から不良債権が増えて、金融機関の経営も苦しくなり、企業へお金を貸せなくなりました。 円高も国際分業も進みました。1994年、1ドルが100円を割り込みました。輸出主導・量産指向型産業[自動車・電子・家電・事務機器など]は海外で売れにくくなりました。また、バブル崩壊後の不景気から国内の購入者も減りました。生産費用を少しでも減らすため、労働者の給料が日本より低いアジア諸国[中国など]へ工場を移すようになりました[国内工場の閉鎖・国内工場の海外移転]。その結果、地元企業・周辺店舗の売り上げを減らし、失業者を増やしました(地域'''産業の空洞化''')。 繊維産業の事業所数は減り続けました。2015年の繊維産業の事業所数は1991年と比べて約4分の1になりました。国内衣料品市場のうち海外衣料品購入割合は1991年で52%になり、2017年で97%まで上がりました。多数の多国籍企業が1990年代後半に日本企業を合併したり、買収したりしました。企業が日本型雇用を取り入れていても競争力強化・経営効率化から人員削減・能力給の導入を進めました。その結果、働き方の不安定さが広がりました。 日本は技術面でも負けています。1980年代、日本企業はエレクトロニクス[電子機器]・新素材・バイオテクノロジーなどの技術でアメリカに追いつこうとしていました。1990年代から情報通信技術の活用や生産性の伸びでアメリカ合衆国に負けました。商品は日本国内で売れにくくなり、業務内容も変わっていきました。そのため、日本企業は海外企業に負けないような対策を取りました。 バブル崩壊後、銀行制度・企業制度も変えられました。「日本版金融ビッグバン」を1996年に打ち出して、銀行・証券会社などにも規制を緩めて金融の自由化・国際化を進めました。1997年の独占禁止法改正から禁止の持株会社を再度認めました。企業は持株会社からグループ内の会社をまとめ直したり、経営の進め方を変えたりしやすくなり、その後の企業再編・金融再編にもつながりました。 以前の大規模小売店舗法は店舗面積500平方メートル以上の大規模小売店舗出店条件として出店規模・営業時間・営業日数などを定めていました。しかし、大規模小売店舗は中小小売業者の近くにも自由に出店しており、中小小売業者のお客様まで消えました。そのため、政府は大規模小売店舗の立地場所を1998年から制限しました(大規模小売店舗立地法)。中小小売業者から流れすぎないように守りながら、大規模小売店舗も中小小売業者も商売を続けられるようにしました。2000年、大規模小売店舗法を廃止しました。[[ファイル:Asian Financial Crisis EN-2009-05-05.png|サムネイル|273x273px|アジア通貨危機の影響国]]企業再編・合併は政府の規制緩和から広がり、海外企業と国内企業の協力・合併も増えました。その流れから六大企業集団もまとまりました。金融業界でも銀行などが倒産したり、別の銀行と合併したりしました。その結果、日本の金融業界は三井住友グループ[旧三井系と旧住友系]・三菱UFJ[旧三菱系と三和系]・みずほグループ[旧第一勧銀系と旧富士系]の三大金融グループへまとまりました。 国内長期不況で苦しむ中、アジア諸国の経済は大成長しました。しかし短期海外資金の依存・金融機関の過剰な借入れ・企業の過剰な借入れ・金融制度の弱さ・投機資金の流入などから海外投資家が危機感を示して一斉に海外資金を回収・売却・国外移動を行いました。1997年、タイの通貨バーツの価値が大きく下がりました。海外投資家は東アジア・東南アジアから次々と海外資金を回収・売却・国外移動を行いました(アジア通貨危機)。その結果、東アジア・東南アジア諸国の金融と経済は大きな爪痕を残しました。債務問題は韓国などで大きくなり、国際通貨基金(International Monetary Fund:IMF)の支援を受けました。アジア通貨危機は日本経済と日本の金融機関にも大きな爪痕を残して、不良債権問題をさらに悪化させました。 日本政府はアジア通貨危機の発生から地域的な金融協力制度[アジア通貨基金構想]を出しました。しかし、アメリカ合衆国の反対から日本政府は二国間金融支援と新宮沢構想などに切り替えて、東アジア諸国を金銭面で助けました。 バブル経済崩壊後の平成不況はずっと続きました。景気は2002年初期に少しだけ上向きました。しかし、政府が公共事業中心の従来型景気対策を抑えながら不良債権処理と規制改革を進めました。その結果、企業は引き続き大規模なリストラと雇用調整を行いました。当初、バブル崩壊後の長期停滞は「失われた10年」とよばれました。その後も日本経済の停滞が強く、「失われた20年」「失われた30年」とよばれました。 == 行政改革と日米安保の変化 == 1990年代後半、大規模災害の対策・重大事件への対策・行政改革・財政改革・金融改革・冷戦後の日米安全保障体制見直し・政党の組み直しを行いました。1995年1月17日、阪神・淡路地域でマグニチュード7.3の<span style="color:#f29100">'''阪神・淡路大震災[兵庫県南部地震]'''</span>が起こりました。神戸市を中心に6400人以上が亡くなり、建造物・高速道路までも大きく壊れました。当地震で大都市は自然災害に弱く、都市政策・耐震化基準・防災体制の見直しをしました。また、国民は被災地に入って、避難民[被災者]の生活を支えたり、被災地の後片付けを手伝ったりしました。この活動からボランティア活動が全国に広がりました。 1995年3月20日、オウム真理教集団は東京都の地下鉄でサリンを撒いて、多数の死傷者を出しました(<span style="color:#f29100">'''地下鉄サリン事件'''</span>)。このように阪神・淡路大震災と地下鉄サリン事件・少年犯罪の殺人事件・児童虐待などが何度も報道機関で取り上げられ、旧価値観的な安全神話も崩れて国民の意識も変わりました。<gallery mode="packed" widths="200" heights="200"> ファイル:Hanshin Expressway Nada b059.jpg|阪神淡路大震災被災後 ファイル:【地下鉄サリン事件】除染を行う自衛隊員と警察官.jpg|地下鉄サリン事件 ファイル:Ryutaro Hashimoto 19960111.jpg|橋本龍太郎 ファイル:Ryuhei Kawada 20240307.jpg|川田龍平 </gallery>1995年9月、自由民主党総裁選挙から<span style="color:#f29100">'''橋本龍太郎'''</span>が選ばれました。1996年1月、村山富市首相退陣後の内閣総理大臣指名選挙で橋本龍太郎が選ばれました。橋本内閣でも自民党・社会民主党・新党さきがけの3党が引き続き協力して、政策を進めました。なお日本社会党は自衛隊・日米安全保障条約の賛成側に回り、1996年に党名を社会民主党へ変えました。 薬害エイズ問題も大きく取り上げられました。橋本龍太郎内閣厚生大臣の菅直人は薬害エイズ被害者[川田龍平など]に謝罪しました。その後、国と製薬会社と被害者が話し合い、和解しました。 1996年、新しい選挙制度で初めて衆議院議員総選挙が行われ、自由民主党の議席を大きく増やしても、過半数を下回りました。社会民主党と新党さきがけは第2次橋本内閣から国務大臣を出さなくなり、閣外協力に変わりました。その結果、自由民主党単独政権に戻りました。 橋本龍太郎内閣は冷戦後の国際変化・国内経済・政府問題を解決するため、行政・財政・金融の各分野を見直しました。行政改革は政府組織を減らしたり、類似の政府組織を1つにまとめたりして、首相などの政策案を出しやすくしました。1998年、中央省庁等改革基本法が導入されて中央省庁等改革関連法から行政改革の方針を決めました。 2001年1月、政府はこの行政改革の方針から中央省庁を1府22省庁から1府12省庁に減らしました。その結果、内閣総理大臣は各省庁へ指示を出して、政府全体の政策を進めやすくしました。2007年、防衛庁を防衛省に上げました。 ★省庁再編 {| class="wikitable" !再編前 !再編後 !再編前 !再編後 |- |内閣官房 |内閣官房 |大蔵省 |財務省 |- | rowspan="2" |総理府 金融再生委員会 経済企画庁 沖縄開発庁 | rowspan="2" |内閣府 |科学技術庁 文部省 |文部科学省 |- |厚生省 労働省 |厚生労働省 |- |国家公安委員会 |国家公安委員会 |農林水産省 |農林水産省 |- |防衛庁 |防衛庁(省) |通商産業省 |経済産業省 |- |総務庁 郵政省 自治省 |総務省 | rowspan="2" |北海道開発庁 国土庁 建設省 運輸省 | rowspan="2" |国土交通省 |- |法務省 |法務省 |- |外務省 |外務省 |環境庁 |環境省 |} 橋本龍太郎内閣は国債の発行額を減らそうとしました。1997年4月、財政構造改革法に従って消費税率を3%から5%に引き上げて公共事業費などを減らしました。国債発行額は1970年代後半から増えても1980年代末で一度減りました。1990年代に入り、公共投資を再拡大させてから大幅な国債発行額増加に向かいました。 しかし、国民は消費税率の引き上げなどから財布の紐もきつくなり、金融機関も生き残れなくなりました。さらにアジア通貨・金融危機も起きて、日本経済は再不況になりました。やがて、銀行同士は金融不安の拡大から合併して1つの銀行になりました。1997年度の実質経済成長率は-0.4%となり、1974年度[第1次石油危機直後]以来のマイナス成長になりました。1998年度の実質経済成長率は-2%まで下がり、平成不況の大きさを改めて物語りました。 [[ファイル:Official Portrait of President William Jefferson Clinton - DPLA - 4697184146b3b6e2d6791b8f3c297476.jpg|サムネイル|221x221ピクセル|ビル・クリントン大統領]] 冷戦後、橋本龍太郎内閣は日米安全保障体制を見直しました。アメリカのビル・クリントン大統領が1996年4月に日本を訪れ、橋本首相と話し合って<span style="color:#f29100">'''日米安全保障共同宣言'''</span>を発表しました。日米安全保障共同宣言から日本とアメリカは日本防衛以外にもアジア太平洋地域の戦争防止・紛争防止まで努めていくようになりました。 自衛隊がアメリカ軍に必要物資を運ぶなどの後方支援についても、日米防衛協力のための指針を見直しました。1997年、日本政府とアメリカ合衆国政府は「新しい日米防衛協力のための指針(新ガイドライン)」を作りました。 日本が外国から直接攻撃されても直接攻撃されていなくても、日本周辺国の戦争などから日本の平和と安全に大きく関わっていたらアメリカ合衆国側も新ガイドラインに従って助け合いました(周辺事態)。ただし日本から何キロ以内というような距離だけだとアメリカ合衆国側は何もしません。 地球温暖化防止京都会議は1997年に開かれ、温室効果ガスの削減目標などを盛り込む京都議定書を採択しました。また、橋本龍太郎内閣は従来のアイヌ民族政策を大きく変えました。 アイヌ民族は1946年2月に北海道アイヌ協会を作り、アイヌ民族の権利を政府に求めました。北海道旧土人保護法からアイヌ民族用の土地[給与地]を貰っても、農地改革で買収されたくありませんでした。しかしアイヌ民族をずっと厳しく人種差別しており、アイヌ民族の一部は北海道から逃げました。その後、北海道アイヌ協会は名前を北海道ウタリ協会に変えました。[[ファイル:UPOPOY 202608.jpg|サムネイル|民族共生象徴空間ウポポイ]]1980年代、世界各地の先住民族が先住民族の権利を政府に求めました。北海道ウタリ協会は政府に北海道旧土人保護法を廃止して新しい法律を作ってほしいと求めました。1997年、国会はアイヌ民族文化をずっと守っていくためにアイヌ文化振興法を作り、北海道旧土人保護法を廃止しました。 その後もアイヌ民族政策は変わりました。2008年、国会はアイヌ民族を日本の先住民族と認めて、内閣へアイヌ民族の権利・生活・文化なども認めてほしいとお願いしました。民族団体の名前も北海道ウタリ協会から北海道アイヌ協会に戻しました。 2019(令和元)年、政府はアイヌ施策推進法で日本の「先住民族」にアイヌ民族を初めて入れました。アイヌ施策推進法から北海道アイヌ協会側も話し合いに参加して、アイヌ民族向けの新しい政策を行っています。2020年、北海道白老町に民族共生象徴空間ウポポイが開かれました。アイヌ語講座・アイヌ文化活動・アイヌ語活動が日本各地で開かれてもいます。 [[ファイル:Keizo Obuchi 19980730.jpg|サムネイル|168x168ピクセル|小渕恵三]] 1998年7月の参議院議員選挙で自由民主党議席数は大きく減らし、この結果から橋本龍太郎も内閣総理大臣を辞めました。これを受けて、<span style="color:#f29100">'''小渕恵三'''</span>が内閣総理大臣に選ばれました。小渕恵三内閣はバブル崩壊に消費税増税・金融不安・アジア通貨危機なども重なり、橋本龍太郎の財政再建路線を修正しました。小渕恵三内閣は土木工事・公共施設建築工事の大型予算を組んでその潤いから複合不況まで立て直そうとしました。その結果、政府は赤字国債発行額を再び大幅に増やしました。 1999年、小渕恵三内閣は国会法案の賛成を増やしたいから自由党〔1月〕・公明党〔10月〕も自由民主党と一緒に内閣を支えていました[自自公連立政権の開始]。その結果、自由民主党・自由党・公明党は衆議院・参議院の両方で過半数の議席を持つようになりました。小渕恵三内閣から自由民主党と公明党は2025年10月まで一緒に内閣を支えました。 1999年、小渕恵三内閣は'''新ガイドライン関連法'''をまとめました。新ガイドライン関連法の<span style="color:#f29100">'''周辺事態安全確保法'''</span>は日本周辺国家の暴走で自国の平和と安全まで守れなくなったら、自衛隊を出してアメリカ軍へ必要物資を送りました。 [[ファイル:G8 2000 group photo (kremlin.ru).jpg|サムネイル|223x223px|第26回主要国首脳会議]] 1999年、小渕恵三内閣は日の丸と君が代を国旗・国歌法へ初めて記しました。また、国民は情報公開法に従って官公庁へ資料を見せてほしいとお願いしやすくなりました。国会は憲法調査会で憲法を変えるかどうか話し合いました。小渕恵三内閣は2000年に九州・沖縄で第26回主要国首脳会議[サミット]開くと決めました。 この時期は野党も大きく変わりました。社会民主党の支持者は少しずつ減りました。新進党は議員の大量離脱から1997年末になくなりました。旧新進党の議員は違う政党[自由党・新党平和・民主党]に入りました。1996年、鳩山由紀夫・菅直人が民主党を結成しました。その後、旧新進党議員も民主党へ入りました。さらに、新党平和・黎明クラブを公明党に戻しました。 こうして、自由民主党と日本社会党が長く争う55年体制も終わりました。55年体制が終わっても、自由民主党と民主党の保守二大政党制へ繋がりませんでした。自由民主党が再び政権へ戻っても、自由党・公明党と一緒に内閣を支えていました。 == 資料出所 == * 平雅行、横田冬彦ほか編著『日本史探究』実教出版株式会社 2023年 * 佐藤信、五味文彦ほか編著『詳説日本史探究』株式会社山川出版社 2023年 * 高埜利彦、高村直助ほか編著『日本史A 改訂版』株式会社山川出版社 2016年 * 渡邊晃宏ほか編著『日本史探究』東京書籍株式会社 2023年 * 伊藤純郎ほか編著『高等学校日本史探究』株式会社清水書院 2023年 * 大橋幸泰ほか編著『高等学校日本史探究』株式会社第一学習社 2023年 * 山中裕典著'''『'''改訂版 大学入学共通テスト 歴史総合、日本史探究の点数が面白いほどとれる本'''』'''株式会社KADOKAWA 2024年 * 佐藤信、五味文彦ほか編著『詳説日本史研究』株式会社山川出版社 2017年 * 河合敦著『世界一わかりやすい河合敦の日本史B[近・現代]の特別講座』株式会社KADOKAWA 2014年(絶版本) * 外園豊基編集代表『最新日本史図表』株式会社第一学習社 2026年 * 東京法令出版編著『歴史資料館 日本史のライブラリー』東京法令出版株式会社 2026年 [[カテゴリ:高等学校日本史探究|あらたなせいきのにほんへ]] [[カテゴリ:20世紀]] d816sbsdv9q1xac8lmiec7yz2lhgdfa 304971 304970 2026-10-21T12:54:29Z Kwawe 68789 /* 政界再編と55年体制の終結 */ 現地の国民は日本側の植民地支配と侵略から被害を受けており、村山談話でその反省とお詫びを該当国首脳へ伝えた。 304971 wikitext text/x-wiki [[小学校・中学校・高等学校の学習]]>[[高等学校の学習]]>[[高等学校地理歴史]]>[[高等学校日本史探究]]>新たな世紀の日本へⅡ  引き続き「新たな世紀の日本へ」の内容を解説します。第2回目では、政界再編から小渕恵三内閣までの国内政治を見ていきます。 == 政界再編と55年体制の終結 == [[ファイル:Sohyo Kaikan (headquarters of the Japanese Trade Union Confederation).jpg|サムネイル|220x220ピクセル|日本労働組合総連合会]] 1975年、国鉄職員などは大きなストライキ「スト権スト」を行って政府側に争議権の回復を求めても失敗しました。その後、官公庁労働組合はストライキなどをあまり行わなくなりました。民間大企業の労働組合も春闘で大幅な賃上げを求めにくくなりました。 その後、民間労働組合は1つにまとまり始めました。1987年、全日本民間労働組合連合会[民間連合]をつくりました。1989年の日本労働組合総評議会[総評]解散後、元日本労働組合総評議会[総評]は全日本民間労働組合連合会[民間連合]に合流しました。その後、全日本民間労働組合連合会[民間連合]と同盟などの労働組合は1つにまとまって<span style="color:#f29100">'''日本労働組合総連合会[連合]'''</span>をつくりました。約800万人が日本労働組合総連合会[連合]に入りました。 一方、日本労働組合総連合会[連合]の敵側は全国労働組合総連合[全労連]をつくりました。約140万人が全国労働組合総連合[全労連]に入りました。さらに日本労働組合総連合会[連合]と全国労働組合総連合[全労連]の敵側は全国労働組合連絡協議会[全労協]をつくりました。こうして、野党支持側の労働組合は日本労働組合総連合会[連合]・全国労働組合総連合[全労連]・全国労働組合連絡協議会[全労協]に分かれました。 1994年4月、新生党の羽田孜が内閣総理大臣になりました。しかし、日本社会党は新生党と一緒に内閣を支えなくなりました。羽田孜は国会議員の賛成を集められなくなり、約2か月で首相を辞めました。1994年6月、自由民主党は元野党側の日本社会党・新党さきがけと一緒に内閣を支えました[自社さ連立政権]。日本社会党の村山富市が内閣総理大臣になり、自由民主党も政権へ戻りました。一方、非自民連立政権側の新生党・日本新党・公明党・民社党などは1つにまとまって新進党をつくりました。 従来の日本社会党基本政策を村山富市内閣で大きく変えました。日本社会党は自衛隊を合憲としつつ日米安全保障条約と消費税までも受け入れました。こうして自由民主党と日本社会党の政策は近くなり、日本社会党の不支持者を増やしました。 1995年、アジア・太平洋戦争終戦から50年を迎えました。国会は戦後50年目の反省文内容をまとめました。8月15日、村山富市内閣総理大臣はアジア・太平洋戦争の反省とお詫びを「戦後50周年の終戦記念日にあたって」で伝えました(村山談話)。 現地の国民は日本側の植民地支配と侵略から被害を受けており、村山談話でその反省とお詫びを該当国首脳へ伝えました。その後の内閣も村山談話を受け継ぎました。 政党の結成・解党・合流まで活発になり、各政党のどこにも入らない無党派層も増えました。以降は単独政党のみで内閣を支えきれなくなり、複数政党と一緒に内閣を支えました。 == バブルの崩壊 == プラザ合意後、大量のお金が土地購入・株式購入のために使われ、土地の値段・株価[資産価格]が次第に上がりました(資産インフレ)。1989(平成元)年、日本銀行は銀行へお金をあまり貸さなくなり、政府も土地の値段を上げすぎないようにしました(金融引き締め政策)。1990年代に入ってから、土地の値段・株価は下がり始めました。日経平均株価は、1989年12月末に3万8915円まで上がりました。しかし、その後は株式売却が増えて株価もいきなり下がり、1992年8月に1万4309円まで下がりました。土地の値段も1991年頃から下がり始め、1992年以後は日本各地で下がりました。2000年代半ばになると、大阪の一部商業地は一番高い時期の値段から約10分の1まで下がりました。こうして土地や株式の大幅な値上がりは終わり、1980年代後半のバブル経済は終わりました。 ★日本の実質経済成長率の推移 [[ファイル:GDP_growth_rate_in_Japan.svg|代替文=日本の実質経済成長率の推移|フレームなし|924x924px]] 日本の景気は1991年から悪くなりました('''平成不況''')。実質経済成長率は1992年に1.3%、1993年に1%未満まで下がりました。1992年を3か月ずつに分けて見ると、4~6月は-3.3%となり、前の3か月より国内経済が小さくなりました。7~9月と10~12月もそれぞれ-0.1%となりました。第1次石油危機後に2期連続の経済縮小時期はあっても、3期連続の経済縮小は戦後初めてでした。僅かな景気回復時期も平成不況の途中にありました。しかしすぐに経済縮小となり、平成不況が長年続きました。 バブル経済当時の国民は金融機関からお金を借りて、株価と地価をより高い価格で買いました。金融機関は不動産会社にもお金を貸しました。バブル崩壊後、株価と地価が大きく下がりました。国民は株と土地を全て売っても借金を返せなくなりました。国民の借金も金融機関へ返ってこなくなりました(不良債権)。金融機関は株と土地を債権として持っており、不良債権から金融機関も大赤字になりました。 金融機関は不良債権処理にずっと追われて、さらに苦しくなりました。その結果、金融機関は不良債権の心配からお金を貸さなくなりました。企業は金融機関からお金を借りにくくなりました。国民も「この金融機関は大丈夫か」と不安を感じるようになり、金融機関はさらに苦しくなりました。その後、企業は新しい商品を作れなくなり、新しい工場を建てられなくなり、新しい機械も買えなくなりました。地価の下落・株価の下落・不良債権の増加・金融機関の経営悪化・金融機関の融資停止が全て重なって景気も次第に悪くなりました('''複合不況''')。 当時の政府と日本銀行はこれまでの不況と同じように、財政支出の拡大・低金利政策から数年で景気も回復するかもと思っていました。この誤対策は複合不況に一切効果ありません。住宅金融専門会社は1995年頃から相次いでつぶれました。1997年、北海道拓殖銀行と山一証券がつぶれました。1998年、日本債券信用銀行と日本長期信用銀行がつぶれました。このように大手金融機関がつぶれると、国民も他の金融機関も危ないのではないかと不安になりました。政府は金融システムまで止まらないように、倒産寸前の大手金融機関などに大量の公的資金を入れました。<gallery mode="nolines" widths="200" heights="200"> ファイル:The Hokkaido Takushoku Bank.JPG|旧北海道拓殖銀行本店 ファイル:Kayabacho Tower, at Shinkawa, Chuo, Tokyo (2019-01-02) 02.jpg|旧山一證券本社 ファイル:日債銀本店.jpg|旧日本債券信用銀行本店 ファイル:Shinsei Bank (head office 1).jpg|旧日本長期信用銀行本店 </gallery>1998年、小渕恵三が内閣総理大臣になりました。小渕恵三内閣も大型予算から景気を回復させしようとしました。小渕内閣が公共投資を増やして国民のお金を回そうとしても複合不況に一切効果ありません。こうして、公債発行残高は増えました。物価は1990年代後半からずっと下がり続けました(デフレスパイラル)。 [[ファイル:Unemployment Rate of Japan 1953-2009.jpg|サムネイル|395x395ピクセル|日本の失業率]] 企業は赤字なので、生き残るために経営の効率化[事業整理・人員削減・雇用調整・海外進出など]を進めました(リストラクチャリング)。中小企業の倒産も増えて、中高年労働者の解雇・中高年労働者の早期退職・新卒採用の削減から企業の人件費を大幅に減らしました。バブル景気の時期は労働者不足から「売り手市場」でも、バブル崩壊後から「買い手市場」へ変わりました。1990年代半ばから2000年代前半、企業は新卒採用を大幅に減らしました(就職氷河期)。1998年の完全失業率は4%を超え、2001年の完全失業率で5%になりました。 失業者が増えると労働者も「自分も仕事を失うかもしれない」と不安になり、個人消費を減らしました。消費者は同じような商品なら出来るだけ安い商品を選ぶようになり、ブランド品・高級品を買ってくれなくなりました。商品が売れなくなると、会社も少量生産・既存工場・既存機械だけで行うようになりました。その結果、会社の利益がさらに減って、人員削減・採用縮小もさらに進みました。株価と地価の下落から不良債権が増えて、金融機関の経営も苦しくなり、企業へお金を貸せなくなりました。 円高も国際分業も進みました。1994年、1ドルが100円を割り込みました。輸出主導・量産指向型産業[自動車・電子・家電・事務機器など]は海外で売れにくくなりました。また、バブル崩壊後の不景気から国内の購入者も減りました。生産費用を少しでも減らすため、労働者の給料が日本より低いアジア諸国[中国など]へ工場を移すようになりました[国内工場の閉鎖・国内工場の海外移転]。その結果、地元企業・周辺店舗の売り上げを減らし、失業者を増やしました(地域'''産業の空洞化''')。 繊維産業の事業所数は減り続けました。2015年の繊維産業の事業所数は1991年と比べて約4分の1になりました。国内衣料品市場のうち海外衣料品購入割合は1991年で52%になり、2017年で97%まで上がりました。多数の多国籍企業が1990年代後半に日本企業を合併したり、買収したりしました。企業が日本型雇用を取り入れていても競争力強化・経営効率化から人員削減・能力給の導入を進めました。その結果、働き方の不安定さが広がりました。 日本は技術面でも負けています。1980年代、日本企業はエレクトロニクス[電子機器]・新素材・バイオテクノロジーなどの技術でアメリカに追いつこうとしていました。1990年代から情報通信技術の活用や生産性の伸びでアメリカ合衆国に負けました。商品は日本国内で売れにくくなり、業務内容も変わっていきました。そのため、日本企業は海外企業に負けないような対策を取りました。 バブル崩壊後、銀行制度・企業制度も変えられました。「日本版金融ビッグバン」を1996年に打ち出して、銀行・証券会社などにも規制を緩めて金融の自由化・国際化を進めました。1997年の独占禁止法改正から禁止の持株会社を再度認めました。企業は持株会社からグループ内の会社をまとめ直したり、経営の進め方を変えたりしやすくなり、その後の企業再編・金融再編にもつながりました。 以前の大規模小売店舗法は店舗面積500平方メートル以上の大規模小売店舗出店条件として出店規模・営業時間・営業日数などを定めていました。しかし、大規模小売店舗は中小小売業者の近くにも自由に出店しており、中小小売業者のお客様まで消えました。そのため、政府は大規模小売店舗の立地場所を1998年から制限しました(大規模小売店舗立地法)。中小小売業者から流れすぎないように守りながら、大規模小売店舗も中小小売業者も商売を続けられるようにしました。2000年、大規模小売店舗法を廃止しました。[[ファイル:Asian Financial Crisis EN-2009-05-05.png|サムネイル|273x273px|アジア通貨危機の影響国]]企業再編・合併は政府の規制緩和から広がり、海外企業と国内企業の協力・合併も増えました。その流れから六大企業集団もまとまりました。金融業界でも銀行などが倒産したり、別の銀行と合併したりしました。その結果、日本の金融業界は三井住友グループ[旧三井系と旧住友系]・三菱UFJ[旧三菱系と三和系]・みずほグループ[旧第一勧銀系と旧富士系]の三大金融グループへまとまりました。 国内長期不況で苦しむ中、アジア諸国の経済は大成長しました。しかし短期海外資金の依存・金融機関の過剰な借入れ・企業の過剰な借入れ・金融制度の弱さ・投機資金の流入などから海外投資家が危機感を示して一斉に海外資金を回収・売却・国外移動を行いました。1997年、タイの通貨バーツの価値が大きく下がりました。海外投資家は東アジア・東南アジアから次々と海外資金を回収・売却・国外移動を行いました(アジア通貨危機)。その結果、東アジア・東南アジア諸国の金融と経済は大きな爪痕を残しました。債務問題は韓国などで大きくなり、国際通貨基金(International Monetary Fund:IMF)の支援を受けました。アジア通貨危機は日本経済と日本の金融機関にも大きな爪痕を残して、不良債権問題をさらに悪化させました。 日本政府はアジア通貨危機の発生から地域的な金融協力制度[アジア通貨基金構想]を出しました。しかし、アメリカ合衆国の反対から日本政府は二国間金融支援と新宮沢構想などに切り替えて、東アジア諸国を金銭面で助けました。 バブル経済崩壊後の平成不況はずっと続きました。景気は2002年初期に少しだけ上向きました。しかし、政府が公共事業中心の従来型景気対策を抑えながら不良債権処理と規制改革を進めました。その結果、企業は引き続き大規模なリストラと雇用調整を行いました。当初、バブル崩壊後の長期停滞は「失われた10年」とよばれました。その後も日本経済の停滞が強く、「失われた20年」「失われた30年」とよばれました。 == 行政改革と日米安保の変化 == 1990年代後半、大規模災害の対策・重大事件への対策・行政改革・財政改革・金融改革・冷戦後の日米安全保障体制見直し・政党の組み直しを行いました。1995年1月17日、阪神・淡路地域でマグニチュード7.3の<span style="color:#f29100">'''阪神・淡路大震災[兵庫県南部地震]'''</span>が起こりました。神戸市を中心に6400人以上が亡くなり、建造物・高速道路までも大きく壊れました。当地震で大都市は自然災害に弱く、都市政策・耐震化基準・防災体制の見直しをしました。また、国民は被災地に入って、避難民[被災者]の生活を支えたり、被災地の後片付けを手伝ったりしました。この活動からボランティア活動が全国に広がりました。 1995年3月20日、オウム真理教集団は東京都の地下鉄でサリンを撒いて、多数の死傷者を出しました(<span style="color:#f29100">'''地下鉄サリン事件'''</span>)。このように阪神・淡路大震災と地下鉄サリン事件・少年犯罪の殺人事件・児童虐待などが何度も報道機関で取り上げられ、旧価値観的な安全神話も崩れて国民の意識も変わりました。<gallery mode="packed" widths="200" heights="200"> ファイル:Hanshin Expressway Nada b059.jpg|阪神淡路大震災被災後 ファイル:【地下鉄サリン事件】除染を行う自衛隊員と警察官.jpg|地下鉄サリン事件 ファイル:Ryutaro Hashimoto 19960111.jpg|橋本龍太郎 ファイル:Ryuhei Kawada 20240307.jpg|川田龍平 </gallery>1995年9月、自由民主党総裁選挙から<span style="color:#f29100">'''橋本龍太郎'''</span>が選ばれました。1996年1月、村山富市首相退陣後の内閣総理大臣指名選挙で橋本龍太郎が選ばれました。橋本内閣でも自民党・社会民主党・新党さきがけの3党が引き続き協力して、政策を進めました。なお日本社会党は自衛隊・日米安全保障条約の賛成側に回り、1996年に党名を社会民主党へ変えました。 薬害エイズ問題も大きく取り上げられました。橋本龍太郎内閣厚生大臣の菅直人は薬害エイズ被害者[川田龍平など]に謝罪しました。その後、国と製薬会社と被害者が話し合い、和解しました。 1996年、新しい選挙制度で初めて衆議院議員総選挙が行われ、自由民主党の議席を大きく増やしても、過半数を下回りました。社会民主党と新党さきがけは第2次橋本内閣から国務大臣を出さなくなり、閣外協力に変わりました。その結果、自由民主党単独政権に戻りました。 橋本龍太郎内閣は冷戦後の国際変化・国内経済・政府問題を解決するため、行政・財政・金融の各分野を見直しました。行政改革は政府組織を減らしたり、類似の政府組織を1つにまとめたりして、首相などの政策案を出しやすくしました。1998年、中央省庁等改革基本法が導入されて中央省庁等改革関連法から行政改革の方針を決めました。 2001年1月、政府はこの行政改革の方針から中央省庁を1府22省庁から1府12省庁に減らしました。その結果、内閣総理大臣は各省庁へ指示を出して、政府全体の政策を進めやすくしました。2007年、防衛庁を防衛省に上げました。 ★省庁再編 {| class="wikitable" !再編前 !再編後 !再編前 !再編後 |- |内閣官房 |内閣官房 |大蔵省 |財務省 |- | rowspan="2" |総理府 金融再生委員会 経済企画庁 沖縄開発庁 | rowspan="2" |内閣府 |科学技術庁 文部省 |文部科学省 |- |厚生省 労働省 |厚生労働省 |- |国家公安委員会 |国家公安委員会 |農林水産省 |農林水産省 |- |防衛庁 |防衛庁(省) |通商産業省 |経済産業省 |- |総務庁 郵政省 自治省 |総務省 | rowspan="2" |北海道開発庁 国土庁 建設省 運輸省 | rowspan="2" |国土交通省 |- |法務省 |法務省 |- |外務省 |外務省 |環境庁 |環境省 |} 橋本龍太郎内閣は国債の発行額を減らそうとしました。1997年4月、財政構造改革法に従って消費税率を3%から5%に引き上げて公共事業費などを減らしました。国債発行額は1970年代後半から増えても1980年代末で一度減りました。1990年代に入り、公共投資を再拡大させてから大幅な国債発行額増加に向かいました。 しかし、国民は消費税率の引き上げなどから財布の紐もきつくなり、金融機関も生き残れなくなりました。さらにアジア通貨・金融危機も起きて、日本経済は再不況になりました。やがて、銀行同士は金融不安の拡大から合併して1つの銀行になりました。1997年度の実質経済成長率は-0.4%となり、1974年度[第1次石油危機直後]以来のマイナス成長になりました。1998年度の実質経済成長率は-2%まで下がり、平成不況の大きさを改めて物語りました。 [[ファイル:Official Portrait of President William Jefferson Clinton - DPLA - 4697184146b3b6e2d6791b8f3c297476.jpg|サムネイル|221x221ピクセル|ビル・クリントン大統領]] 冷戦後、橋本龍太郎内閣は日米安全保障体制を見直しました。アメリカのビル・クリントン大統領が1996年4月に日本を訪れ、橋本首相と話し合って<span style="color:#f29100">'''日米安全保障共同宣言'''</span>を発表しました。日米安全保障共同宣言から日本とアメリカは日本防衛以外にもアジア太平洋地域の戦争防止・紛争防止まで努めていくようになりました。 自衛隊がアメリカ軍に必要物資を運ぶなどの後方支援についても、日米防衛協力のための指針を見直しました。1997年、日本政府とアメリカ合衆国政府は「新しい日米防衛協力のための指針(新ガイドライン)」を作りました。 日本が外国から直接攻撃されても直接攻撃されていなくても、日本周辺国の戦争などから日本の平和と安全に大きく関わっていたらアメリカ合衆国側も新ガイドラインに従って助け合いました(周辺事態)。ただし日本から何キロ以内というような距離だけだとアメリカ合衆国側は何もしません。 地球温暖化防止京都会議は1997年に開かれ、温室効果ガスの削減目標などを盛り込む京都議定書を採択しました。また、橋本龍太郎内閣は従来のアイヌ民族政策を大きく変えました。 アイヌ民族は1946年2月に北海道アイヌ協会を作り、アイヌ民族の権利を政府に求めました。北海道旧土人保護法からアイヌ民族用の土地[給与地]を貰っても、農地改革で買収されたくありませんでした。しかしアイヌ民族をずっと厳しく人種差別しており、アイヌ民族の一部は北海道から逃げました。その後、北海道アイヌ協会は名前を北海道ウタリ協会に変えました。[[ファイル:UPOPOY 202608.jpg|サムネイル|民族共生象徴空間ウポポイ]]1980年代、世界各地の先住民族が先住民族の権利を政府に求めました。北海道ウタリ協会は政府に北海道旧土人保護法を廃止して新しい法律を作ってほしいと求めました。1997年、国会はアイヌ民族文化をずっと守っていくためにアイヌ文化振興法を作り、北海道旧土人保護法を廃止しました。 その後もアイヌ民族政策は変わりました。2008年、国会はアイヌ民族を日本の先住民族と認めて、内閣へアイヌ民族の権利・生活・文化なども認めてほしいとお願いしました。民族団体の名前も北海道ウタリ協会から北海道アイヌ協会に戻しました。 2019(令和元)年、政府はアイヌ施策推進法で日本の「先住民族」にアイヌ民族を初めて入れました。アイヌ施策推進法から北海道アイヌ協会側も話し合いに参加して、アイヌ民族向けの新しい政策を行っています。2020年、北海道白老町に民族共生象徴空間ウポポイが開かれました。アイヌ語講座・アイヌ文化活動・アイヌ語活動が日本各地で開かれてもいます。 [[ファイル:Keizo Obuchi 19980730.jpg|サムネイル|168x168ピクセル|小渕恵三]] 1998年7月の参議院議員選挙で自由民主党議席数は大きく減らし、この結果から橋本龍太郎も内閣総理大臣を辞めました。これを受けて、<span style="color:#f29100">'''小渕恵三'''</span>が内閣総理大臣に選ばれました。小渕恵三内閣はバブル崩壊に消費税増税・金融不安・アジア通貨危機なども重なり、橋本龍太郎の財政再建路線を修正しました。小渕恵三内閣は土木工事・公共施設建築工事の大型予算を組んでその潤いから複合不況まで立て直そうとしました。その結果、政府は赤字国債発行額を再び大幅に増やしました。 1999年、小渕恵三内閣は国会法案の賛成を増やしたいから自由党〔1月〕・公明党〔10月〕も自由民主党と一緒に内閣を支えていました[自自公連立政権の開始]。その結果、自由民主党・自由党・公明党は衆議院・参議院の両方で過半数の議席を持つようになりました。小渕恵三内閣から自由民主党と公明党は2025年10月まで一緒に内閣を支えました。 1999年、小渕恵三内閣は'''新ガイドライン関連法'''をまとめました。新ガイドライン関連法の<span style="color:#f29100">'''周辺事態安全確保法'''</span>は日本周辺国家の暴走で自国の平和と安全まで守れなくなったら、自衛隊を出してアメリカ軍へ必要物資を送りました。 [[ファイル:G8 2000 group photo (kremlin.ru).jpg|サムネイル|223x223px|第26回主要国首脳会議]] 1999年、小渕恵三内閣は日の丸と君が代を国旗・国歌法へ初めて記しました。また、国民は情報公開法に従って官公庁へ資料を見せてほしいとお願いしやすくなりました。国会は憲法調査会で憲法を変えるかどうか話し合いました。小渕恵三内閣は2000年に九州・沖縄で第26回主要国首脳会議[サミット]開くと決めました。 この時期は野党も大きく変わりました。社会民主党の支持者は少しずつ減りました。新進党は議員の大量離脱から1997年末になくなりました。旧新進党の議員は違う政党[自由党・新党平和・民主党]に入りました。1996年、鳩山由紀夫・菅直人が民主党を結成しました。その後、旧新進党議員も民主党へ入りました。さらに、新党平和・黎明クラブを公明党に戻しました。 こうして、自由民主党と日本社会党が長く争う55年体制も終わりました。55年体制が終わっても、自由民主党と民主党の保守二大政党制へ繋がりませんでした。自由民主党が再び政権へ戻っても、自由党・公明党と一緒に内閣を支えていました。 == 資料出所 == * 平雅行、横田冬彦ほか編著『日本史探究』実教出版株式会社 2023年 * 佐藤信、五味文彦ほか編著『詳説日本史探究』株式会社山川出版社 2023年 * 高埜利彦、高村直助ほか編著『日本史A 改訂版』株式会社山川出版社 2016年 * 渡邊晃宏ほか編著『日本史探究』東京書籍株式会社 2023年 * 伊藤純郎ほか編著『高等学校日本史探究』株式会社清水書院 2023年 * 大橋幸泰ほか編著『高等学校日本史探究』株式会社第一学習社 2023年 * 山中裕典著'''『'''改訂版 大学入学共通テスト 歴史総合、日本史探究の点数が面白いほどとれる本'''』'''株式会社KADOKAWA 2024年 * 佐藤信、五味文彦ほか編著『詳説日本史研究』株式会社山川出版社 2017年 * 河合敦著『世界一わかりやすい河合敦の日本史B[近・現代]の特別講座』株式会社KADOKAWA 2014年(絶版本) * 外園豊基編集代表『最新日本史図表』株式会社第一学習社 2026年 * 東京法令出版編著『歴史資料館 日本史のライブラリー』東京法令出版株式会社 2026年 [[カテゴリ:高等学校日本史探究|あらたなせいきのにほんへ]] [[カテゴリ:20世紀]] r05uxydrpby18uxj9pxuawzajsjmmya 304972 304971 2026-10-21T12:55:03Z Kwawe 68789 /* 政界再編と55年体制の終結 */ 政府は戦後50年目に合わせて、日本とアジア諸国の近現代史資料を国民へ広く公開した。 304972 wikitext text/x-wiki [[小学校・中学校・高等学校の学習]]>[[高等学校の学習]]>[[高等学校地理歴史]]>[[高等学校日本史探究]]>新たな世紀の日本へⅡ  引き続き「新たな世紀の日本へ」の内容を解説します。第2回目では、政界再編から小渕恵三内閣までの国内政治を見ていきます。 == 政界再編と55年体制の終結 == [[ファイル:Sohyo Kaikan (headquarters of the Japanese Trade Union Confederation).jpg|サムネイル|220x220ピクセル|日本労働組合総連合会]] 1975年、国鉄職員などは大きなストライキ「スト権スト」を行って政府側に争議権の回復を求めても失敗しました。その後、官公庁労働組合はストライキなどをあまり行わなくなりました。民間大企業の労働組合も春闘で大幅な賃上げを求めにくくなりました。 その後、民間労働組合は1つにまとまり始めました。1987年、全日本民間労働組合連合会[民間連合]をつくりました。1989年の日本労働組合総評議会[総評]解散後、元日本労働組合総評議会[総評]は全日本民間労働組合連合会[民間連合]に合流しました。その後、全日本民間労働組合連合会[民間連合]と同盟などの労働組合は1つにまとまって<span style="color:#f29100">'''日本労働組合総連合会[連合]'''</span>をつくりました。約800万人が日本労働組合総連合会[連合]に入りました。 一方、日本労働組合総連合会[連合]の敵側は全国労働組合総連合[全労連]をつくりました。約140万人が全国労働組合総連合[全労連]に入りました。さらに日本労働組合総連合会[連合]と全国労働組合総連合[全労連]の敵側は全国労働組合連絡協議会[全労協]をつくりました。こうして、野党支持側の労働組合は日本労働組合総連合会[連合]・全国労働組合総連合[全労連]・全国労働組合連絡協議会[全労協]に分かれました。 1994年4月、新生党の羽田孜が内閣総理大臣になりました。しかし、日本社会党は新生党と一緒に内閣を支えなくなりました。羽田孜は国会議員の賛成を集められなくなり、約2か月で首相を辞めました。1994年6月、自由民主党は元野党側の日本社会党・新党さきがけと一緒に内閣を支えました[自社さ連立政権]。日本社会党の村山富市が内閣総理大臣になり、自由民主党も政権へ戻りました。一方、非自民連立政権側の新生党・日本新党・公明党・民社党などは1つにまとまって新進党をつくりました。 従来の日本社会党基本政策を村山富市内閣で大きく変えました。日本社会党は自衛隊を合憲としつつ日米安全保障条約と消費税までも受け入れました。こうして自由民主党と日本社会党の政策は近くなり、日本社会党の不支持者を増やしました。 1995年、アジア・太平洋戦争終戦から50年を迎えました。国会は戦後50年目の反省文内容をまとめました。8月15日、村山富市内閣総理大臣はアジア・太平洋戦争の反省とお詫びを「戦後50周年の終戦記念日にあたって」で伝えました(村山談話)。 現地の国民は日本側の植民地支配と侵略から被害を受けており、村山談話でその反省とお詫びを該当国首脳へ伝えました。その後の内閣も村山談話を受け継ぎました。 政府は戦後50年目に合わせて、日本とアジア諸国の近現代史資料を国民へ広く公開しました。さらにインターネットでも歴史資料を公開したいから、アジア歴史資料センター開く準備をしました。2001年、アジア歴史資料センターを開きました。 政党の結成・解党・合流まで活発になり、各政党のどこにも入らない無党派層も増えました。以降は単独政党のみで内閣を支えきれなくなり、複数政党と一緒に内閣を支えました。 == バブルの崩壊 == プラザ合意後、大量のお金が土地購入・株式購入のために使われ、土地の値段・株価[資産価格]が次第に上がりました(資産インフレ)。1989(平成元)年、日本銀行は銀行へお金をあまり貸さなくなり、政府も土地の値段を上げすぎないようにしました(金融引き締め政策)。1990年代に入ってから、土地の値段・株価は下がり始めました。日経平均株価は、1989年12月末に3万8915円まで上がりました。しかし、その後は株式売却が増えて株価もいきなり下がり、1992年8月に1万4309円まで下がりました。土地の値段も1991年頃から下がり始め、1992年以後は日本各地で下がりました。2000年代半ばになると、大阪の一部商業地は一番高い時期の値段から約10分の1まで下がりました。こうして土地や株式の大幅な値上がりは終わり、1980年代後半のバブル経済は終わりました。 ★日本の実質経済成長率の推移 [[ファイル:GDP_growth_rate_in_Japan.svg|代替文=日本の実質経済成長率の推移|フレームなし|924x924px]] 日本の景気は1991年から悪くなりました('''平成不況''')。実質経済成長率は1992年に1.3%、1993年に1%未満まで下がりました。1992年を3か月ずつに分けて見ると、4~6月は-3.3%となり、前の3か月より国内経済が小さくなりました。7~9月と10~12月もそれぞれ-0.1%となりました。第1次石油危機後に2期連続の経済縮小時期はあっても、3期連続の経済縮小は戦後初めてでした。僅かな景気回復時期も平成不況の途中にありました。しかしすぐに経済縮小となり、平成不況が長年続きました。 バブル経済当時の国民は金融機関からお金を借りて、株価と地価をより高い価格で買いました。金融機関は不動産会社にもお金を貸しました。バブル崩壊後、株価と地価が大きく下がりました。国民は株と土地を全て売っても借金を返せなくなりました。国民の借金も金融機関へ返ってこなくなりました(不良債権)。金融機関は株と土地を債権として持っており、不良債権から金融機関も大赤字になりました。 金融機関は不良債権処理にずっと追われて、さらに苦しくなりました。その結果、金融機関は不良債権の心配からお金を貸さなくなりました。企業は金融機関からお金を借りにくくなりました。国民も「この金融機関は大丈夫か」と不安を感じるようになり、金融機関はさらに苦しくなりました。その後、企業は新しい商品を作れなくなり、新しい工場を建てられなくなり、新しい機械も買えなくなりました。地価の下落・株価の下落・不良債権の増加・金融機関の経営悪化・金融機関の融資停止が全て重なって景気も次第に悪くなりました('''複合不況''')。 当時の政府と日本銀行はこれまでの不況と同じように、財政支出の拡大・低金利政策から数年で景気も回復するかもと思っていました。この誤対策は複合不況に一切効果ありません。住宅金融専門会社は1995年頃から相次いでつぶれました。1997年、北海道拓殖銀行と山一証券がつぶれました。1998年、日本債券信用銀行と日本長期信用銀行がつぶれました。このように大手金融機関がつぶれると、国民も他の金融機関も危ないのではないかと不安になりました。政府は金融システムまで止まらないように、倒産寸前の大手金融機関などに大量の公的資金を入れました。<gallery mode="nolines" widths="200" heights="200"> ファイル:The Hokkaido Takushoku Bank.JPG|旧北海道拓殖銀行本店 ファイル:Kayabacho Tower, at Shinkawa, Chuo, Tokyo (2019-01-02) 02.jpg|旧山一證券本社 ファイル:日債銀本店.jpg|旧日本債券信用銀行本店 ファイル:Shinsei Bank (head office 1).jpg|旧日本長期信用銀行本店 </gallery>1998年、小渕恵三が内閣総理大臣になりました。小渕恵三内閣も大型予算から景気を回復させしようとしました。小渕内閣が公共投資を増やして国民のお金を回そうとしても複合不況に一切効果ありません。こうして、公債発行残高は増えました。物価は1990年代後半からずっと下がり続けました(デフレスパイラル)。 [[ファイル:Unemployment Rate of Japan 1953-2009.jpg|サムネイル|395x395ピクセル|日本の失業率]] 企業は赤字なので、生き残るために経営の効率化[事業整理・人員削減・雇用調整・海外進出など]を進めました(リストラクチャリング)。中小企業の倒産も増えて、中高年労働者の解雇・中高年労働者の早期退職・新卒採用の削減から企業の人件費を大幅に減らしました。バブル景気の時期は労働者不足から「売り手市場」でも、バブル崩壊後から「買い手市場」へ変わりました。1990年代半ばから2000年代前半、企業は新卒採用を大幅に減らしました(就職氷河期)。1998年の完全失業率は4%を超え、2001年の完全失業率で5%になりました。 失業者が増えると労働者も「自分も仕事を失うかもしれない」と不安になり、個人消費を減らしました。消費者は同じような商品なら出来るだけ安い商品を選ぶようになり、ブランド品・高級品を買ってくれなくなりました。商品が売れなくなると、会社も少量生産・既存工場・既存機械だけで行うようになりました。その結果、会社の利益がさらに減って、人員削減・採用縮小もさらに進みました。株価と地価の下落から不良債権が増えて、金融機関の経営も苦しくなり、企業へお金を貸せなくなりました。 円高も国際分業も進みました。1994年、1ドルが100円を割り込みました。輸出主導・量産指向型産業[自動車・電子・家電・事務機器など]は海外で売れにくくなりました。また、バブル崩壊後の不景気から国内の購入者も減りました。生産費用を少しでも減らすため、労働者の給料が日本より低いアジア諸国[中国など]へ工場を移すようになりました[国内工場の閉鎖・国内工場の海外移転]。その結果、地元企業・周辺店舗の売り上げを減らし、失業者を増やしました(地域'''産業の空洞化''')。 繊維産業の事業所数は減り続けました。2015年の繊維産業の事業所数は1991年と比べて約4分の1になりました。国内衣料品市場のうち海外衣料品購入割合は1991年で52%になり、2017年で97%まで上がりました。多数の多国籍企業が1990年代後半に日本企業を合併したり、買収したりしました。企業が日本型雇用を取り入れていても競争力強化・経営効率化から人員削減・能力給の導入を進めました。その結果、働き方の不安定さが広がりました。 日本は技術面でも負けています。1980年代、日本企業はエレクトロニクス[電子機器]・新素材・バイオテクノロジーなどの技術でアメリカに追いつこうとしていました。1990年代から情報通信技術の活用や生産性の伸びでアメリカ合衆国に負けました。商品は日本国内で売れにくくなり、業務内容も変わっていきました。そのため、日本企業は海外企業に負けないような対策を取りました。 バブル崩壊後、銀行制度・企業制度も変えられました。「日本版金融ビッグバン」を1996年に打ち出して、銀行・証券会社などにも規制を緩めて金融の自由化・国際化を進めました。1997年の独占禁止法改正から禁止の持株会社を再度認めました。企業は持株会社からグループ内の会社をまとめ直したり、経営の進め方を変えたりしやすくなり、その後の企業再編・金融再編にもつながりました。 以前の大規模小売店舗法は店舗面積500平方メートル以上の大規模小売店舗出店条件として出店規模・営業時間・営業日数などを定めていました。しかし、大規模小売店舗は中小小売業者の近くにも自由に出店しており、中小小売業者のお客様まで消えました。そのため、政府は大規模小売店舗の立地場所を1998年から制限しました(大規模小売店舗立地法)。中小小売業者から流れすぎないように守りながら、大規模小売店舗も中小小売業者も商売を続けられるようにしました。2000年、大規模小売店舗法を廃止しました。[[ファイル:Asian Financial Crisis EN-2009-05-05.png|サムネイル|273x273px|アジア通貨危機の影響国]]企業再編・合併は政府の規制緩和から広がり、海外企業と国内企業の協力・合併も増えました。その流れから六大企業集団もまとまりました。金融業界でも銀行などが倒産したり、別の銀行と合併したりしました。その結果、日本の金融業界は三井住友グループ[旧三井系と旧住友系]・三菱UFJ[旧三菱系と三和系]・みずほグループ[旧第一勧銀系と旧富士系]の三大金融グループへまとまりました。 国内長期不況で苦しむ中、アジア諸国の経済は大成長しました。しかし短期海外資金の依存・金融機関の過剰な借入れ・企業の過剰な借入れ・金融制度の弱さ・投機資金の流入などから海外投資家が危機感を示して一斉に海外資金を回収・売却・国外移動を行いました。1997年、タイの通貨バーツの価値が大きく下がりました。海外投資家は東アジア・東南アジアから次々と海外資金を回収・売却・国外移動を行いました(アジア通貨危機)。その結果、東アジア・東南アジア諸国の金融と経済は大きな爪痕を残しました。債務問題は韓国などで大きくなり、国際通貨基金(International Monetary Fund:IMF)の支援を受けました。アジア通貨危機は日本経済と日本の金融機関にも大きな爪痕を残して、不良債権問題をさらに悪化させました。 日本政府はアジア通貨危機の発生から地域的な金融協力制度[アジア通貨基金構想]を出しました。しかし、アメリカ合衆国の反対から日本政府は二国間金融支援と新宮沢構想などに切り替えて、東アジア諸国を金銭面で助けました。 バブル経済崩壊後の平成不況はずっと続きました。景気は2002年初期に少しだけ上向きました。しかし、政府が公共事業中心の従来型景気対策を抑えながら不良債権処理と規制改革を進めました。その結果、企業は引き続き大規模なリストラと雇用調整を行いました。当初、バブル崩壊後の長期停滞は「失われた10年」とよばれました。その後も日本経済の停滞が強く、「失われた20年」「失われた30年」とよばれました。 == 行政改革と日米安保の変化 == 1990年代後半、大規模災害の対策・重大事件への対策・行政改革・財政改革・金融改革・冷戦後の日米安全保障体制見直し・政党の組み直しを行いました。1995年1月17日、阪神・淡路地域でマグニチュード7.3の<span style="color:#f29100">'''阪神・淡路大震災[兵庫県南部地震]'''</span>が起こりました。神戸市を中心に6400人以上が亡くなり、建造物・高速道路までも大きく壊れました。当地震で大都市は自然災害に弱く、都市政策・耐震化基準・防災体制の見直しをしました。また、国民は被災地に入って、避難民[被災者]の生活を支えたり、被災地の後片付けを手伝ったりしました。この活動からボランティア活動が全国に広がりました。 1995年3月20日、オウム真理教集団は東京都の地下鉄でサリンを撒いて、多数の死傷者を出しました(<span style="color:#f29100">'''地下鉄サリン事件'''</span>)。このように阪神・淡路大震災と地下鉄サリン事件・少年犯罪の殺人事件・児童虐待などが何度も報道機関で取り上げられ、旧価値観的な安全神話も崩れて国民の意識も変わりました。<gallery mode="packed" widths="200" heights="200"> ファイル:Hanshin Expressway Nada b059.jpg|阪神淡路大震災被災後 ファイル:【地下鉄サリン事件】除染を行う自衛隊員と警察官.jpg|地下鉄サリン事件 ファイル:Ryutaro Hashimoto 19960111.jpg|橋本龍太郎 ファイル:Ryuhei Kawada 20240307.jpg|川田龍平 </gallery>1995年9月、自由民主党総裁選挙から<span style="color:#f29100">'''橋本龍太郎'''</span>が選ばれました。1996年1月、村山富市首相退陣後の内閣総理大臣指名選挙で橋本龍太郎が選ばれました。橋本内閣でも自民党・社会民主党・新党さきがけの3党が引き続き協力して、政策を進めました。なお日本社会党は自衛隊・日米安全保障条約の賛成側に回り、1996年に党名を社会民主党へ変えました。 薬害エイズ問題も大きく取り上げられました。橋本龍太郎内閣厚生大臣の菅直人は薬害エイズ被害者[川田龍平など]に謝罪しました。その後、国と製薬会社と被害者が話し合い、和解しました。 1996年、新しい選挙制度で初めて衆議院議員総選挙が行われ、自由民主党の議席を大きく増やしても、過半数を下回りました。社会民主党と新党さきがけは第2次橋本内閣から国務大臣を出さなくなり、閣外協力に変わりました。その結果、自由民主党単独政権に戻りました。 橋本龍太郎内閣は冷戦後の国際変化・国内経済・政府問題を解決するため、行政・財政・金融の各分野を見直しました。行政改革は政府組織を減らしたり、類似の政府組織を1つにまとめたりして、首相などの政策案を出しやすくしました。1998年、中央省庁等改革基本法が導入されて中央省庁等改革関連法から行政改革の方針を決めました。 2001年1月、政府はこの行政改革の方針から中央省庁を1府22省庁から1府12省庁に減らしました。その結果、内閣総理大臣は各省庁へ指示を出して、政府全体の政策を進めやすくしました。2007年、防衛庁を防衛省に上げました。 ★省庁再編 {| class="wikitable" !再編前 !再編後 !再編前 !再編後 |- |内閣官房 |内閣官房 |大蔵省 |財務省 |- | rowspan="2" |総理府 金融再生委員会 経済企画庁 沖縄開発庁 | rowspan="2" |内閣府 |科学技術庁 文部省 |文部科学省 |- |厚生省 労働省 |厚生労働省 |- |国家公安委員会 |国家公安委員会 |農林水産省 |農林水産省 |- |防衛庁 |防衛庁(省) |通商産業省 |経済産業省 |- |総務庁 郵政省 自治省 |総務省 | rowspan="2" |北海道開発庁 国土庁 建設省 運輸省 | rowspan="2" |国土交通省 |- |法務省 |法務省 |- |外務省 |外務省 |環境庁 |環境省 |} 橋本龍太郎内閣は国債の発行額を減らそうとしました。1997年4月、財政構造改革法に従って消費税率を3%から5%に引き上げて公共事業費などを減らしました。国債発行額は1970年代後半から増えても1980年代末で一度減りました。1990年代に入り、公共投資を再拡大させてから大幅な国債発行額増加に向かいました。 しかし、国民は消費税率の引き上げなどから財布の紐もきつくなり、金融機関も生き残れなくなりました。さらにアジア通貨・金融危機も起きて、日本経済は再不況になりました。やがて、銀行同士は金融不安の拡大から合併して1つの銀行になりました。1997年度の実質経済成長率は-0.4%となり、1974年度[第1次石油危機直後]以来のマイナス成長になりました。1998年度の実質経済成長率は-2%まで下がり、平成不況の大きさを改めて物語りました。 [[ファイル:Official Portrait of President William Jefferson Clinton - DPLA - 4697184146b3b6e2d6791b8f3c297476.jpg|サムネイル|221x221ピクセル|ビル・クリントン大統領]] 冷戦後、橋本龍太郎内閣は日米安全保障体制を見直しました。アメリカのビル・クリントン大統領が1996年4月に日本を訪れ、橋本首相と話し合って<span style="color:#f29100">'''日米安全保障共同宣言'''</span>を発表しました。日米安全保障共同宣言から日本とアメリカは日本防衛以外にもアジア太平洋地域の戦争防止・紛争防止まで努めていくようになりました。 自衛隊がアメリカ軍に必要物資を運ぶなどの後方支援についても、日米防衛協力のための指針を見直しました。1997年、日本政府とアメリカ合衆国政府は「新しい日米防衛協力のための指針(新ガイドライン)」を作りました。 日本が外国から直接攻撃されても直接攻撃されていなくても、日本周辺国の戦争などから日本の平和と安全に大きく関わっていたらアメリカ合衆国側も新ガイドラインに従って助け合いました(周辺事態)。ただし日本から何キロ以内というような距離だけだとアメリカ合衆国側は何もしません。 地球温暖化防止京都会議は1997年に開かれ、温室効果ガスの削減目標などを盛り込む京都議定書を採択しました。また、橋本龍太郎内閣は従来のアイヌ民族政策を大きく変えました。 アイヌ民族は1946年2月に北海道アイヌ協会を作り、アイヌ民族の権利を政府に求めました。北海道旧土人保護法からアイヌ民族用の土地[給与地]を貰っても、農地改革で買収されたくありませんでした。しかしアイヌ民族をずっと厳しく人種差別しており、アイヌ民族の一部は北海道から逃げました。その後、北海道アイヌ協会は名前を北海道ウタリ協会に変えました。[[ファイル:UPOPOY 202608.jpg|サムネイル|民族共生象徴空間ウポポイ]]1980年代、世界各地の先住民族が先住民族の権利を政府に求めました。北海道ウタリ協会は政府に北海道旧土人保護法を廃止して新しい法律を作ってほしいと求めました。1997年、国会はアイヌ民族文化をずっと守っていくためにアイヌ文化振興法を作り、北海道旧土人保護法を廃止しました。 その後もアイヌ民族政策は変わりました。2008年、国会はアイヌ民族を日本の先住民族と認めて、内閣へアイヌ民族の権利・生活・文化なども認めてほしいとお願いしました。民族団体の名前も北海道ウタリ協会から北海道アイヌ協会に戻しました。 2019(令和元)年、政府はアイヌ施策推進法で日本の「先住民族」にアイヌ民族を初めて入れました。アイヌ施策推進法から北海道アイヌ協会側も話し合いに参加して、アイヌ民族向けの新しい政策を行っています。2020年、北海道白老町に民族共生象徴空間ウポポイが開かれました。アイヌ語講座・アイヌ文化活動・アイヌ語活動が日本各地で開かれてもいます。 [[ファイル:Keizo Obuchi 19980730.jpg|サムネイル|168x168ピクセル|小渕恵三]] 1998年7月の参議院議員選挙で自由民主党議席数は大きく減らし、この結果から橋本龍太郎も内閣総理大臣を辞めました。これを受けて、<span style="color:#f29100">'''小渕恵三'''</span>が内閣総理大臣に選ばれました。小渕恵三内閣はバブル崩壊に消費税増税・金融不安・アジア通貨危機なども重なり、橋本龍太郎の財政再建路線を修正しました。小渕恵三内閣は土木工事・公共施設建築工事の大型予算を組んでその潤いから複合不況まで立て直そうとしました。その結果、政府は赤字国債発行額を再び大幅に増やしました。 1999年、小渕恵三内閣は国会法案の賛成を増やしたいから自由党〔1月〕・公明党〔10月〕も自由民主党と一緒に内閣を支えていました[自自公連立政権の開始]。その結果、自由民主党・自由党・公明党は衆議院・参議院の両方で過半数の議席を持つようになりました。小渕恵三内閣から自由民主党と公明党は2025年10月まで一緒に内閣を支えました。 1999年、小渕恵三内閣は'''新ガイドライン関連法'''をまとめました。新ガイドライン関連法の<span style="color:#f29100">'''周辺事態安全確保法'''</span>は日本周辺国家の暴走で自国の平和と安全まで守れなくなったら、自衛隊を出してアメリカ軍へ必要物資を送りました。 [[ファイル:G8 2000 group photo (kremlin.ru).jpg|サムネイル|223x223px|第26回主要国首脳会議]] 1999年、小渕恵三内閣は日の丸と君が代を国旗・国歌法へ初めて記しました。また、国民は情報公開法に従って官公庁へ資料を見せてほしいとお願いしやすくなりました。国会は憲法調査会で憲法を変えるかどうか話し合いました。小渕恵三内閣は2000年に九州・沖縄で第26回主要国首脳会議[サミット]開くと決めました。 この時期は野党も大きく変わりました。社会民主党の支持者は少しずつ減りました。新進党は議員の大量離脱から1997年末になくなりました。旧新進党の議員は違う政党[自由党・新党平和・民主党]に入りました。1996年、鳩山由紀夫・菅直人が民主党を結成しました。その後、旧新進党議員も民主党へ入りました。さらに、新党平和・黎明クラブを公明党に戻しました。 こうして、自由民主党と日本社会党が長く争う55年体制も終わりました。55年体制が終わっても、自由民主党と民主党の保守二大政党制へ繋がりませんでした。自由民主党が再び政権へ戻っても、自由党・公明党と一緒に内閣を支えていました。 == 資料出所 == * 平雅行、横田冬彦ほか編著『日本史探究』実教出版株式会社 2023年 * 佐藤信、五味文彦ほか編著『詳説日本史探究』株式会社山川出版社 2023年 * 高埜利彦、高村直助ほか編著『日本史A 改訂版』株式会社山川出版社 2016年 * 渡邊晃宏ほか編著『日本史探究』東京書籍株式会社 2023年 * 伊藤純郎ほか編著『高等学校日本史探究』株式会社清水書院 2023年 * 大橋幸泰ほか編著『高等学校日本史探究』株式会社第一学習社 2023年 * 山中裕典著'''『'''改訂版 大学入学共通テスト 歴史総合、日本史探究の点数が面白いほどとれる本'''』'''株式会社KADOKAWA 2024年 * 佐藤信、五味文彦ほか編著『詳説日本史研究』株式会社山川出版社 2017年 * 河合敦著『世界一わかりやすい河合敦の日本史B[近・現代]の特別講座』株式会社KADOKAWA 2014年(絶版本) * 外園豊基編集代表『最新日本史図表』株式会社第一学習社 2026年 * 東京法令出版編著『歴史資料館 日本史のライブラリー』東京法令出版株式会社 2026年 [[カテゴリ:高等学校日本史探究|あらたなせいきのにほんへ]] [[カテゴリ:20世紀]] b6tcb0yxnwfwt3nzhfvkthjw8yv09py 304973 304972 2026-10-21T12:58:54Z Kwawe 68789 /* 政界再編と55年体制の終結 */ 304973 wikitext text/x-wiki [[小学校・中学校・高等学校の学習]]>[[高等学校の学習]]>[[高等学校地理歴史]]>[[高等学校日本史探究]]>新たな世紀の日本へⅡ  引き続き「新たな世紀の日本へ」の内容を解説します。第2回目では、政界再編から小渕恵三内閣までの国内政治を見ていきます。 == 政界再編と55年体制の終結 == [[ファイル:Sohyo Kaikan (headquarters of the Japanese Trade Union Confederation).jpg|サムネイル|220x220ピクセル|日本労働組合総連合会]] 1975年、国鉄職員などは大きなストライキ「スト権スト」を行って政府側に争議権の回復を求めても失敗しました。その後、官公庁労働組合はストライキなどをあまり行わなくなりました。民間大企業の労働組合も春闘で大幅な賃上げを求めにくくなりました。 その後、民間労働組合は1つにまとまり始めました。1987年、全日本民間労働組合連合会[民間連合]をつくりました。1989年の日本労働組合総評議会[総評]解散後、元日本労働組合総評議会[総評]は全日本民間労働組合連合会[民間連合]に合流しました。その後、全日本民間労働組合連合会[民間連合]と同盟などの労働組合は1つにまとまって<span style="color:#f29100">'''日本労働組合総連合会[連合]'''</span>をつくりました。約800万人が日本労働組合総連合会[連合]に入りました。 一方、日本労働組合総連合会[連合]の敵側は全国労働組合総連合[全労連]をつくりました。約140万人が全国労働組合総連合[全労連]に入りました。さらに日本労働組合総連合会[連合]と全国労働組合総連合[全労連]の敵側は全国労働組合連絡協議会[全労協]をつくりました。こうして、野党支持側の労働組合は日本労働組合総連合会[連合]・全国労働組合総連合[全労連]・全国労働組合連絡協議会[全労協]に分かれました。 1994年4月、新生党の羽田孜が内閣総理大臣になりました。しかし、日本社会党は新生党と一緒に内閣を支えなくなりました。羽田孜は国会議員の賛成を集められなくなり、約2か月で首相を辞めました。1994年6月、自由民主党は元野党側の日本社会党・新党さきがけと一緒に内閣を支えました[自社さ連立政権]。日本社会党の村山富市が内閣総理大臣になり、自由民主党も政権へ戻りました。一方、非自民連立政権側の新生党・日本新党・公明党・民社党などは1つにまとまって新進党をつくりました。 従来の日本社会党基本政策を村山富市内閣で大きく変えました。日本社会党は自衛隊を合憲としつつ日米安全保障条約と消費税までも受け入れました。こうして自由民主党と日本社会党の政策は近くなり、日本社会党の不支持者を増やしました。1995年、アジア・太平洋戦争終戦から50年を迎えました。国会は戦後50年目の反省文内容をまとめました。8月15日、村山富市内閣総理大臣はアジア・太平洋戦争の反省とお詫びを「戦後50周年の終戦記念日にあたって」で伝えました(村山談話)。 現地の国民は日本側の植民地支配と侵略から被害を受けており、村山談話でその反省とお詫びを該当国首脳へ伝えました。その後の内閣も村山談話を受け継ぎました。政府は戦後50年目に合わせて、日本とアジア諸国の近現代史資料を国民へ広く公開しました。さらにインターネットでも歴史資料を公開したいから、アジア歴史資料センター開く準備をしました。2001年、アジア歴史資料センターを開きました。政党の結成・解党・合流まで活発になり、各政党のどこにも入らない無党派層も増えました。以降は単独政党のみで内閣を支えきれなくなり、複数政党と一緒に内閣を支えました。 == バブルの崩壊 == プラザ合意後、大量のお金が土地購入・株式購入のために使われ、土地の値段・株価[資産価格]が次第に上がりました(資産インフレ)。1989(平成元)年、日本銀行は銀行へお金をあまり貸さなくなり、政府も土地の値段を上げすぎないようにしました(金融引き締め政策)。1990年代に入ってから、土地の値段・株価は下がり始めました。日経平均株価は、1989年12月末に3万8915円まで上がりました。しかし、その後は株式売却が増えて株価もいきなり下がり、1992年8月に1万4309円まで下がりました。土地の値段も1991年頃から下がり始め、1992年以後は日本各地で下がりました。2000年代半ばになると、大阪の一部商業地は一番高い時期の値段から約10分の1まで下がりました。こうして土地や株式の大幅な値上がりは終わり、1980年代後半のバブル経済は終わりました。 ★日本の実質経済成長率の推移 [[ファイル:GDP_growth_rate_in_Japan.svg|代替文=日本の実質経済成長率の推移|フレームなし|924x924px]] 日本の景気は1991年から悪くなりました('''平成不況''')。実質経済成長率は1992年に1.3%、1993年に1%未満まで下がりました。1992年を3か月ずつに分けて見ると、4~6月は-3.3%となり、前の3か月より国内経済が小さくなりました。7~9月と10~12月もそれぞれ-0.1%となりました。第1次石油危機後に2期連続の経済縮小時期はあっても、3期連続の経済縮小は戦後初めてでした。僅かな景気回復時期も平成不況の途中にありました。しかしすぐに経済縮小となり、平成不況が長年続きました。 バブル経済当時の国民は金融機関からお金を借りて、株価と地価をより高い価格で買いました。金融機関は不動産会社にもお金を貸しました。バブル崩壊後、株価と地価が大きく下がりました。国民は株と土地を全て売っても借金を返せなくなりました。国民の借金も金融機関へ返ってこなくなりました(不良債権)。金融機関は株と土地を債権として持っており、不良債権から金融機関も大赤字になりました。 金融機関は不良債権処理にずっと追われて、さらに苦しくなりました。その結果、金融機関は不良債権の心配からお金を貸さなくなりました。企業は金融機関からお金を借りにくくなりました。国民も「この金融機関は大丈夫か」と不安を感じるようになり、金融機関はさらに苦しくなりました。その後、企業は新しい商品を作れなくなり、新しい工場を建てられなくなり、新しい機械も買えなくなりました。地価の下落・株価の下落・不良債権の増加・金融機関の経営悪化・金融機関の融資停止が全て重なって景気も次第に悪くなりました('''複合不況''')。 当時の政府と日本銀行はこれまでの不況と同じように、財政支出の拡大・低金利政策から数年で景気も回復するかもと思っていました。この誤対策は複合不況に一切効果ありません。住宅金融専門会社は1995年頃から相次いでつぶれました。1997年、北海道拓殖銀行と山一証券がつぶれました。1998年、日本債券信用銀行と日本長期信用銀行がつぶれました。このように大手金融機関がつぶれると、国民も他の金融機関も危ないのではないかと不安になりました。政府は金融システムまで止まらないように、倒産寸前の大手金融機関などに大量の公的資金を入れました。<gallery mode="nolines" widths="200" heights="200"> ファイル:The Hokkaido Takushoku Bank.JPG|旧北海道拓殖銀行本店 ファイル:Kayabacho Tower, at Shinkawa, Chuo, Tokyo (2019-01-02) 02.jpg|旧山一證券本社 ファイル:日債銀本店.jpg|旧日本債券信用銀行本店 ファイル:Shinsei Bank (head office 1).jpg|旧日本長期信用銀行本店 </gallery>1998年、小渕恵三が内閣総理大臣になりました。小渕恵三内閣も大型予算から景気を回復させしようとしました。小渕内閣が公共投資を増やして国民のお金を回そうとしても複合不況に一切効果ありません。こうして、公債発行残高は増えました。物価は1990年代後半からずっと下がり続けました(デフレスパイラル)。 [[ファイル:Unemployment Rate of Japan 1953-2009.jpg|サムネイル|395x395ピクセル|日本の失業率]] 企業は赤字なので、生き残るために経営の効率化[事業整理・人員削減・雇用調整・海外進出など]を進めました(リストラクチャリング)。中小企業の倒産も増えて、中高年労働者の解雇・中高年労働者の早期退職・新卒採用の削減から企業の人件費を大幅に減らしました。バブル景気の時期は労働者不足から「売り手市場」でも、バブル崩壊後から「買い手市場」へ変わりました。1990年代半ばから2000年代前半、企業は新卒採用を大幅に減らしました(就職氷河期)。1998年の完全失業率は4%を超え、2001年の完全失業率で5%になりました。 失業者が増えると労働者も「自分も仕事を失うかもしれない」と不安になり、個人消費を減らしました。消費者は同じような商品なら出来るだけ安い商品を選ぶようになり、ブランド品・高級品を買ってくれなくなりました。商品が売れなくなると、会社も少量生産・既存工場・既存機械だけで行うようになりました。その結果、会社の利益がさらに減って、人員削減・採用縮小もさらに進みました。株価と地価の下落から不良債権が増えて、金融機関の経営も苦しくなり、企業へお金を貸せなくなりました。 円高も国際分業も進みました。1994年、1ドルが100円を割り込みました。輸出主導・量産指向型産業[自動車・電子・家電・事務機器など]は海外で売れにくくなりました。また、バブル崩壊後の不景気から国内の購入者も減りました。生産費用を少しでも減らすため、労働者の給料が日本より低いアジア諸国[中国など]へ工場を移すようになりました[国内工場の閉鎖・国内工場の海外移転]。その結果、地元企業・周辺店舗の売り上げを減らし、失業者を増やしました(地域'''産業の空洞化''')。 繊維産業の事業所数は減り続けました。2015年の繊維産業の事業所数は1991年と比べて約4分の1になりました。国内衣料品市場のうち海外衣料品購入割合は1991年で52%になり、2017年で97%まで上がりました。多数の多国籍企業が1990年代後半に日本企業を合併したり、買収したりしました。企業が日本型雇用を取り入れていても競争力強化・経営効率化から人員削減・能力給の導入を進めました。その結果、働き方の不安定さが広がりました。 日本は技術面でも負けています。1980年代、日本企業はエレクトロニクス[電子機器]・新素材・バイオテクノロジーなどの技術でアメリカに追いつこうとしていました。1990年代から情報通信技術の活用や生産性の伸びでアメリカ合衆国に負けました。商品は日本国内で売れにくくなり、業務内容も変わっていきました。そのため、日本企業は海外企業に負けないような対策を取りました。 バブル崩壊後、銀行制度・企業制度も変えられました。「日本版金融ビッグバン」を1996年に打ち出して、銀行・証券会社などにも規制を緩めて金融の自由化・国際化を進めました。1997年の独占禁止法改正から禁止の持株会社を再度認めました。企業は持株会社からグループ内の会社をまとめ直したり、経営の進め方を変えたりしやすくなり、その後の企業再編・金融再編にもつながりました。 以前の大規模小売店舗法は店舗面積500平方メートル以上の大規模小売店舗出店条件として出店規模・営業時間・営業日数などを定めていました。しかし、大規模小売店舗は中小小売業者の近くにも自由に出店しており、中小小売業者のお客様まで消えました。そのため、政府は大規模小売店舗の立地場所を1998年から制限しました(大規模小売店舗立地法)。中小小売業者から流れすぎないように守りながら、大規模小売店舗も中小小売業者も商売を続けられるようにしました。2000年、大規模小売店舗法を廃止しました。[[ファイル:Asian Financial Crisis EN-2009-05-05.png|サムネイル|273x273px|アジア通貨危機の影響国]]企業再編・合併は政府の規制緩和から広がり、海外企業と国内企業の協力・合併も増えました。その流れから六大企業集団もまとまりました。金融業界でも銀行などが倒産したり、別の銀行と合併したりしました。その結果、日本の金融業界は三井住友グループ[旧三井系と旧住友系]・三菱UFJ[旧三菱系と三和系]・みずほグループ[旧第一勧銀系と旧富士系]の三大金融グループへまとまりました。 国内長期不況で苦しむ中、アジア諸国の経済は大成長しました。しかし短期海外資金の依存・金融機関の過剰な借入れ・企業の過剰な借入れ・金融制度の弱さ・投機資金の流入などから海外投資家が危機感を示して一斉に海外資金を回収・売却・国外移動を行いました。1997年、タイの通貨バーツの価値が大きく下がりました。海外投資家は東アジア・東南アジアから次々と海外資金を回収・売却・国外移動を行いました(アジア通貨危機)。その結果、東アジア・東南アジア諸国の金融と経済は大きな爪痕を残しました。債務問題は韓国などで大きくなり、国際通貨基金(International Monetary Fund:IMF)の支援を受けました。アジア通貨危機は日本経済と日本の金融機関にも大きな爪痕を残して、不良債権問題をさらに悪化させました。 日本政府はアジア通貨危機の発生から地域的な金融協力制度[アジア通貨基金構想]を出しました。しかし、アメリカ合衆国の反対から日本政府は二国間金融支援と新宮沢構想などに切り替えて、東アジア諸国を金銭面で助けました。 バブル経済崩壊後の平成不況はずっと続きました。景気は2002年初期に少しだけ上向きました。しかし、政府が公共事業中心の従来型景気対策を抑えながら不良債権処理と規制改革を進めました。その結果、企業は引き続き大規模なリストラと雇用調整を行いました。当初、バブル崩壊後の長期停滞は「失われた10年」とよばれました。その後も日本経済の停滞が強く、「失われた20年」「失われた30年」とよばれました。 == 行政改革と日米安保の変化 == 1990年代後半、大規模災害の対策・重大事件への対策・行政改革・財政改革・金融改革・冷戦後の日米安全保障体制見直し・政党の組み直しを行いました。1995年1月17日、阪神・淡路地域でマグニチュード7.3の<span style="color:#f29100">'''阪神・淡路大震災[兵庫県南部地震]'''</span>が起こりました。神戸市を中心に6400人以上が亡くなり、建造物・高速道路までも大きく壊れました。当地震で大都市は自然災害に弱く、都市政策・耐震化基準・防災体制の見直しをしました。また、国民は被災地に入って、避難民[被災者]の生活を支えたり、被災地の後片付けを手伝ったりしました。この活動からボランティア活動が全国に広がりました。 1995年3月20日、オウム真理教集団は東京都の地下鉄でサリンを撒いて、多数の死傷者を出しました(<span style="color:#f29100">'''地下鉄サリン事件'''</span>)。このように阪神・淡路大震災と地下鉄サリン事件・少年犯罪の殺人事件・児童虐待などが何度も報道機関で取り上げられ、旧価値観的な安全神話も崩れて国民の意識も変わりました。<gallery mode="packed" widths="200" heights="200"> ファイル:Hanshin Expressway Nada b059.jpg|阪神淡路大震災被災後 ファイル:【地下鉄サリン事件】除染を行う自衛隊員と警察官.jpg|地下鉄サリン事件 ファイル:Ryutaro Hashimoto 19960111.jpg|橋本龍太郎 ファイル:Ryuhei Kawada 20240307.jpg|川田龍平 </gallery>1995年9月、自由民主党総裁選挙から<span style="color:#f29100">'''橋本龍太郎'''</span>が選ばれました。1996年1月、村山富市首相退陣後の内閣総理大臣指名選挙で橋本龍太郎が選ばれました。橋本内閣でも自民党・社会民主党・新党さきがけの3党が引き続き協力して、政策を進めました。なお日本社会党は自衛隊・日米安全保障条約の賛成側に回り、1996年に党名を社会民主党へ変えました。 薬害エイズ問題も大きく取り上げられました。橋本龍太郎内閣厚生大臣の菅直人は薬害エイズ被害者[川田龍平など]に謝罪しました。その後、国と製薬会社と被害者が話し合い、和解しました。 1996年、新しい選挙制度で初めて衆議院議員総選挙が行われ、自由民主党の議席を大きく増やしても、過半数を下回りました。社会民主党と新党さきがけは第2次橋本内閣から国務大臣を出さなくなり、閣外協力に変わりました。その結果、自由民主党単独政権に戻りました。 橋本龍太郎内閣は冷戦後の国際変化・国内経済・政府問題を解決するため、行政・財政・金融の各分野を見直しました。行政改革は政府組織を減らしたり、類似の政府組織を1つにまとめたりして、首相などの政策案を出しやすくしました。1998年、中央省庁等改革基本法が導入されて中央省庁等改革関連法から行政改革の方針を決めました。 2001年1月、政府はこの行政改革の方針から中央省庁を1府22省庁から1府12省庁に減らしました。その結果、内閣総理大臣は各省庁へ指示を出して、政府全体の政策を進めやすくしました。2007年、防衛庁を防衛省に上げました。 ★省庁再編 {| class="wikitable" !再編前 !再編後 !再編前 !再編後 |- |内閣官房 |内閣官房 |大蔵省 |財務省 |- | rowspan="2" |総理府 金融再生委員会 経済企画庁 沖縄開発庁 | rowspan="2" |内閣府 |科学技術庁 文部省 |文部科学省 |- |厚生省 労働省 |厚生労働省 |- |国家公安委員会 |国家公安委員会 |農林水産省 |農林水産省 |- |防衛庁 |防衛庁(省) |通商産業省 |経済産業省 |- |総務庁 郵政省 自治省 |総務省 | rowspan="2" |北海道開発庁 国土庁 建設省 運輸省 | rowspan="2" |国土交通省 |- |法務省 |法務省 |- |外務省 |外務省 |環境庁 |環境省 |} 橋本龍太郎内閣は国債の発行額を減らそうとしました。1997年4月、財政構造改革法に従って消費税率を3%から5%に引き上げて公共事業費などを減らしました。国債発行額は1970年代後半から増えても1980年代末で一度減りました。1990年代に入り、公共投資を再拡大させてから大幅な国債発行額増加に向かいました。 しかし、国民は消費税率の引き上げなどから財布の紐もきつくなり、金融機関も生き残れなくなりました。さらにアジア通貨・金融危機も起きて、日本経済は再不況になりました。やがて、銀行同士は金融不安の拡大から合併して1つの銀行になりました。1997年度の実質経済成長率は-0.4%となり、1974年度[第1次石油危機直後]以来のマイナス成長になりました。1998年度の実質経済成長率は-2%まで下がり、平成不況の大きさを改めて物語りました。 [[ファイル:Official Portrait of President William Jefferson Clinton - DPLA - 4697184146b3b6e2d6791b8f3c297476.jpg|サムネイル|221x221ピクセル|ビル・クリントン大統領]] 冷戦後、橋本龍太郎内閣は日米安全保障体制を見直しました。アメリカのビル・クリントン大統領が1996年4月に日本を訪れ、橋本首相と話し合って<span style="color:#f29100">'''日米安全保障共同宣言'''</span>を発表しました。日米安全保障共同宣言から日本とアメリカは日本防衛以外にもアジア太平洋地域の戦争防止・紛争防止まで努めていくようになりました。 自衛隊がアメリカ軍に必要物資を運ぶなどの後方支援についても、日米防衛協力のための指針を見直しました。1997年、日本政府とアメリカ合衆国政府は「新しい日米防衛協力のための指針(新ガイドライン)」を作りました。 日本が外国から直接攻撃されても直接攻撃されていなくても、日本周辺国の戦争などから日本の平和と安全に大きく関わっていたらアメリカ合衆国側も新ガイドラインに従って助け合いました(周辺事態)。ただし日本から何キロ以内というような距離だけだとアメリカ合衆国側は何もしません。 地球温暖化防止京都会議は1997年に開かれ、温室効果ガスの削減目標などを盛り込む京都議定書を採択しました。また、橋本龍太郎内閣は従来のアイヌ民族政策を大きく変えました。 アイヌ民族は1946年2月に北海道アイヌ協会を作り、アイヌ民族の権利を政府に求めました。北海道旧土人保護法からアイヌ民族用の土地[給与地]を貰っても、農地改革で買収されたくありませんでした。しかしアイヌ民族をずっと厳しく人種差別しており、アイヌ民族の一部は北海道から逃げました。その後、北海道アイヌ協会は名前を北海道ウタリ協会に変えました。[[ファイル:UPOPOY 202608.jpg|サムネイル|民族共生象徴空間ウポポイ]]1980年代、世界各地の先住民族が先住民族の権利を政府に求めました。北海道ウタリ協会は政府に北海道旧土人保護法を廃止して新しい法律を作ってほしいと求めました。1997年、国会はアイヌ民族文化をずっと守っていくためにアイヌ文化振興法を作り、北海道旧土人保護法を廃止しました。 その後もアイヌ民族政策は変わりました。2008年、国会はアイヌ民族を日本の先住民族と認めて、内閣へアイヌ民族の権利・生活・文化なども認めてほしいとお願いしました。民族団体の名前も北海道ウタリ協会から北海道アイヌ協会に戻しました。 2019(令和元)年、政府はアイヌ施策推進法で日本の「先住民族」にアイヌ民族を初めて入れました。アイヌ施策推進法から北海道アイヌ協会側も話し合いに参加して、アイヌ民族向けの新しい政策を行っています。2020年、北海道白老町に民族共生象徴空間ウポポイが開かれました。アイヌ語講座・アイヌ文化活動・アイヌ語活動が日本各地で開かれてもいます。 [[ファイル:Keizo Obuchi 19980730.jpg|サムネイル|168x168ピクセル|小渕恵三]] 1998年7月の参議院議員選挙で自由民主党議席数は大きく減らし、この結果から橋本龍太郎も内閣総理大臣を辞めました。これを受けて、<span style="color:#f29100">'''小渕恵三'''</span>が内閣総理大臣に選ばれました。小渕恵三内閣はバブル崩壊に消費税増税・金融不安・アジア通貨危機なども重なり、橋本龍太郎の財政再建路線を修正しました。小渕恵三内閣は土木工事・公共施設建築工事の大型予算を組んでその潤いから複合不況まで立て直そうとしました。その結果、政府は赤字国債発行額を再び大幅に増やしました。 1999年、小渕恵三内閣は国会法案の賛成を増やしたいから自由党〔1月〕・公明党〔10月〕も自由民主党と一緒に内閣を支えていました[自自公連立政権の開始]。その結果、自由民主党・自由党・公明党は衆議院・参議院の両方で過半数の議席を持つようになりました。小渕恵三内閣から自由民主党と公明党は2025年10月まで一緒に内閣を支えました。 1999年、小渕恵三内閣は'''新ガイドライン関連法'''をまとめました。新ガイドライン関連法の<span style="color:#f29100">'''周辺事態安全確保法'''</span>は日本周辺国家の暴走で自国の平和と安全まで守れなくなったら、自衛隊を出してアメリカ軍へ必要物資を送りました。 [[ファイル:G8 2000 group photo (kremlin.ru).jpg|サムネイル|223x223px|第26回主要国首脳会議]] 1999年、小渕恵三内閣は日の丸と君が代を国旗・国歌法へ初めて記しました。また、国民は情報公開法に従って官公庁へ資料を見せてほしいとお願いしやすくなりました。国会は憲法調査会で憲法を変えるかどうか話し合いました。小渕恵三内閣は2000年に九州・沖縄で第26回主要国首脳会議[サミット]開くと決めました。 この時期は野党も大きく変わりました。社会民主党の支持者は少しずつ減りました。新進党は議員の大量離脱から1997年末になくなりました。旧新進党の議員は違う政党[自由党・新党平和・民主党]に入りました。1996年、鳩山由紀夫・菅直人が民主党を結成しました。その後、旧新進党議員も民主党へ入りました。さらに、新党平和・黎明クラブを公明党に戻しました。 こうして、自由民主党と日本社会党が長く争う55年体制も終わりました。55年体制が終わっても、自由民主党と民主党の保守二大政党制へ繋がりませんでした。自由民主党が再び政権へ戻っても、自由党・公明党と一緒に内閣を支えていました。 == 資料出所 == * 平雅行、横田冬彦ほか編著『日本史探究』実教出版株式会社 2023年 * 佐藤信、五味文彦ほか編著『詳説日本史探究』株式会社山川出版社 2023年 * 高埜利彦、高村直助ほか編著『日本史A 改訂版』株式会社山川出版社 2016年 * 渡邊晃宏ほか編著『日本史探究』東京書籍株式会社 2023年 * 伊藤純郎ほか編著『高等学校日本史探究』株式会社清水書院 2023年 * 大橋幸泰ほか編著『高等学校日本史探究』株式会社第一学習社 2023年 * 山中裕典著'''『'''改訂版 大学入学共通テスト 歴史総合、日本史探究の点数が面白いほどとれる本'''』'''株式会社KADOKAWA 2024年 * 佐藤信、五味文彦ほか編著『詳説日本史研究』株式会社山川出版社 2017年 * 河合敦著『世界一わかりやすい河合敦の日本史B[近・現代]の特別講座』株式会社KADOKAWA 2014年(絶版本) * 外園豊基編集代表『最新日本史図表』株式会社第一学習社 2026年 * 東京法令出版編著『歴史資料館 日本史のライブラリー』東京法令出版株式会社 2026年 [[カテゴリ:高等学校日本史探究|あらたなせいきのにほんへ]] [[カテゴリ:20世紀]] 0xoqrewmkdpzuu4aderfolwcrpzfndg 304974 304973 2026-10-21T13:04:09Z Kwawe 68789 /* 政界再編と55年体制の終結 */ 写真2枚追加。 304974 wikitext text/x-wiki [[小学校・中学校・高等学校の学習]]>[[高等学校の学習]]>[[高等学校地理歴史]]>[[高等学校日本史探究]]>新たな世紀の日本へⅡ  引き続き「新たな世紀の日本へ」の内容を解説します。第2回目では、政界再編から小渕恵三内閣までの国内政治を見ていきます。 == 政界再編と55年体制の終結 == 1975年、国鉄職員などは大きなストライキ「スト権スト」を行って政府側に争議権の回復を求めても失敗しました。その後、官公庁労働組合はストライキなどをあまり行わなくなりました。民間大企業の労働組合も春闘で大幅な賃上げを求めにくくなりました。 その後、民間労働組合は1つにまとまり始めました。1987年、全日本民間労働組合連合会[民間連合]をつくりました。1989年の日本労働組合総評議会[総評]解散後、元日本労働組合総評議会[総評]は全日本民間労働組合連合会[民間連合]に合流しました。その後、全日本民間労働組合連合会[民間連合]と同盟などの労働組合は1つにまとまって<span style="color:#f29100">'''日本労働組合総連合会[連合]'''</span>をつくりました。約800万人が日本労働組合総連合会[連合]に入りました。 一方、日本労働組合総連合会[連合]の敵側は全国労働組合総連合[全労連]をつくりました。約140万人が全国労働組合総連合[全労連]に入りました。さらに日本労働組合総連合会[連合]と全国労働組合総連合[全労連]の敵側は全国労働組合連絡協議会[全労協]をつくりました。こうして、野党支持側の労働組合は日本労働組合総連合会[連合]・全国労働組合総連合[全労連]・全国労働組合連絡協議会[全労協]に分かれました。<gallery mode="packed" heights="180"> ファイル:Sohyo Kaikan (headquarters of the Japanese Trade Union Confederation).jpg|日本労働組合総連合会 ファイル:Zenrouren Kaikan (1).jpg|全国労働組合総連合 ファイル:Kiichi Miyazawa 19911105.jpg|宮沢喜一 </gallery>1994年4月、新生党の羽田孜が内閣総理大臣になりました。しかし、日本社会党は新生党と一緒に内閣を支えなくなりました。羽田孜は国会議員の賛成を集められなくなり、約2か月で首相を辞めました。1994年6月、自由民主党は元野党側の日本社会党・新党さきがけと一緒に内閣を支えました[自社さ連立政権]。日本社会党の村山富市が内閣総理大臣になり、自由民主党も政権へ戻りました。一方、非自民連立政権側の新生党・日本新党・公明党・民社党などは1つにまとまって新進党をつくりました。 従来の日本社会党基本政策を村山富市内閣で大きく変えました。日本社会党は自衛隊を合憲としつつ日米安全保障条約と消費税までも受け入れました。こうして自由民主党と日本社会党の政策は近くなり、日本社会党の不支持者を増やしました。1995年、アジア・太平洋戦争終戦から50年を迎えました。国会は戦後50年目の反省文内容をまとめました。8月15日、村山富市内閣総理大臣はアジア・太平洋戦争の反省とお詫びを「戦後50周年の終戦記念日にあたって」で伝えました(村山談話)。 現地の国民は日本側の植民地支配と侵略から被害を受けており、村山談話でその反省とお詫びを該当国首脳へ伝えました。その後の内閣も村山談話を受け継ぎました。政府は戦後50年目に合わせて、日本とアジア諸国の近現代史資料を国民へ広く公開しました。さらにインターネットでも歴史資料を公開したいから、アジア歴史資料センター開く準備をしました。2001年、アジア歴史資料センターを開きました。政党の結成・解党・合流まで活発になり、各政党のどこにも入らない無党派層も増えました。以降は単独政党のみで内閣を支えきれなくなり、複数政党と一緒に内閣を支えました。 == バブルの崩壊 == プラザ合意後、大量のお金が土地購入・株式購入のために使われ、土地の値段・株価[資産価格]が次第に上がりました(資産インフレ)。1989(平成元)年、日本銀行は銀行へお金をあまり貸さなくなり、政府も土地の値段を上げすぎないようにしました(金融引き締め政策)。1990年代に入ってから、土地の値段・株価は下がり始めました。日経平均株価は、1989年12月末に3万8915円まで上がりました。しかし、その後は株式売却が増えて株価もいきなり下がり、1992年8月に1万4309円まで下がりました。土地の値段も1991年頃から下がり始め、1992年以後は日本各地で下がりました。2000年代半ばになると、大阪の一部商業地は一番高い時期の値段から約10分の1まで下がりました。こうして土地や株式の大幅な値上がりは終わり、1980年代後半のバブル経済は終わりました。 ★日本の実質経済成長率の推移 [[ファイル:GDP_growth_rate_in_Japan.svg|代替文=日本の実質経済成長率の推移|フレームなし|924x924px]] 日本の景気は1991年から悪くなりました('''平成不況''')。実質経済成長率は1992年に1.3%、1993年に1%未満まで下がりました。1992年を3か月ずつに分けて見ると、4~6月は-3.3%となり、前の3か月より国内経済が小さくなりました。7~9月と10~12月もそれぞれ-0.1%となりました。第1次石油危機後に2期連続の経済縮小時期はあっても、3期連続の経済縮小は戦後初めてでした。僅かな景気回復時期も平成不況の途中にありました。しかしすぐに経済縮小となり、平成不況が長年続きました。 バブル経済当時の国民は金融機関からお金を借りて、株価と地価をより高い価格で買いました。金融機関は不動産会社にもお金を貸しました。バブル崩壊後、株価と地価が大きく下がりました。国民は株と土地を全て売っても借金を返せなくなりました。国民の借金も金融機関へ返ってこなくなりました(不良債権)。金融機関は株と土地を債権として持っており、不良債権から金融機関も大赤字になりました。 金融機関は不良債権処理にずっと追われて、さらに苦しくなりました。その結果、金融機関は不良債権の心配からお金を貸さなくなりました。企業は金融機関からお金を借りにくくなりました。国民も「この金融機関は大丈夫か」と不安を感じるようになり、金融機関はさらに苦しくなりました。その後、企業は新しい商品を作れなくなり、新しい工場を建てられなくなり、新しい機械も買えなくなりました。地価の下落・株価の下落・不良債権の増加・金融機関の経営悪化・金融機関の融資停止が全て重なって景気も次第に悪くなりました('''複合不況''')。 当時の政府と日本銀行はこれまでの不況と同じように、財政支出の拡大・低金利政策から数年で景気も回復するかもと思っていました。この誤対策は複合不況に一切効果ありません。住宅金融専門会社は1995年頃から相次いでつぶれました。1997年、北海道拓殖銀行と山一証券がつぶれました。1998年、日本債券信用銀行と日本長期信用銀行がつぶれました。このように大手金融機関がつぶれると、国民も他の金融機関も危ないのではないかと不安になりました。政府は金融システムまで止まらないように、倒産寸前の大手金融機関などに大量の公的資金を入れました。<gallery mode="nolines" widths="200" heights="200"> ファイル:The Hokkaido Takushoku Bank.JPG|旧北海道拓殖銀行本店 ファイル:Kayabacho Tower, at Shinkawa, Chuo, Tokyo (2019-01-02) 02.jpg|旧山一證券本社 ファイル:日債銀本店.jpg|旧日本債券信用銀行本店 ファイル:Shinsei Bank (head office 1).jpg|旧日本長期信用銀行本店 </gallery>1998年、小渕恵三が内閣総理大臣になりました。小渕恵三内閣も大型予算から景気を回復させしようとしました。小渕内閣が公共投資を増やして国民のお金を回そうとしても複合不況に一切効果ありません。こうして、公債発行残高は増えました。物価は1990年代後半からずっと下がり続けました(デフレスパイラル)。 [[ファイル:Unemployment Rate of Japan 1953-2009.jpg|サムネイル|395x395ピクセル|日本の失業率]] 企業は赤字なので、生き残るために経営の効率化[事業整理・人員削減・雇用調整・海外進出など]を進めました(リストラクチャリング)。中小企業の倒産も増えて、中高年労働者の解雇・中高年労働者の早期退職・新卒採用の削減から企業の人件費を大幅に減らしました。バブル景気の時期は労働者不足から「売り手市場」でも、バブル崩壊後から「買い手市場」へ変わりました。1990年代半ばから2000年代前半、企業は新卒採用を大幅に減らしました(就職氷河期)。1998年の完全失業率は4%を超え、2001年の完全失業率で5%になりました。 失業者が増えると労働者も「自分も仕事を失うかもしれない」と不安になり、個人消費を減らしました。消費者は同じような商品なら出来るだけ安い商品を選ぶようになり、ブランド品・高級品を買ってくれなくなりました。商品が売れなくなると、会社も少量生産・既存工場・既存機械だけで行うようになりました。その結果、会社の利益がさらに減って、人員削減・採用縮小もさらに進みました。株価と地価の下落から不良債権が増えて、金融機関の経営も苦しくなり、企業へお金を貸せなくなりました。 円高も国際分業も進みました。1994年、1ドルが100円を割り込みました。輸出主導・量産指向型産業[自動車・電子・家電・事務機器など]は海外で売れにくくなりました。また、バブル崩壊後の不景気から国内の購入者も減りました。生産費用を少しでも減らすため、労働者の給料が日本より低いアジア諸国[中国など]へ工場を移すようになりました[国内工場の閉鎖・国内工場の海外移転]。その結果、地元企業・周辺店舗の売り上げを減らし、失業者を増やしました(地域'''産業の空洞化''')。 繊維産業の事業所数は減り続けました。2015年の繊維産業の事業所数は1991年と比べて約4分の1になりました。国内衣料品市場のうち海外衣料品購入割合は1991年で52%になり、2017年で97%まで上がりました。多数の多国籍企業が1990年代後半に日本企業を合併したり、買収したりしました。企業が日本型雇用を取り入れていても競争力強化・経営効率化から人員削減・能力給の導入を進めました。その結果、働き方の不安定さが広がりました。 日本は技術面でも負けています。1980年代、日本企業はエレクトロニクス[電子機器]・新素材・バイオテクノロジーなどの技術でアメリカに追いつこうとしていました。1990年代から情報通信技術の活用や生産性の伸びでアメリカ合衆国に負けました。商品は日本国内で売れにくくなり、業務内容も変わっていきました。そのため、日本企業は海外企業に負けないような対策を取りました。 バブル崩壊後、銀行制度・企業制度も変えられました。「日本版金融ビッグバン」を1996年に打ち出して、銀行・証券会社などにも規制を緩めて金融の自由化・国際化を進めました。1997年の独占禁止法改正から禁止の持株会社を再度認めました。企業は持株会社からグループ内の会社をまとめ直したり、経営の進め方を変えたりしやすくなり、その後の企業再編・金融再編にもつながりました。 以前の大規模小売店舗法は店舗面積500平方メートル以上の大規模小売店舗出店条件として出店規模・営業時間・営業日数などを定めていました。しかし、大規模小売店舗は中小小売業者の近くにも自由に出店しており、中小小売業者のお客様まで消えました。そのため、政府は大規模小売店舗の立地場所を1998年から制限しました(大規模小売店舗立地法)。中小小売業者から流れすぎないように守りながら、大規模小売店舗も中小小売業者も商売を続けられるようにしました。2000年、大規模小売店舗法を廃止しました。[[ファイル:Asian Financial Crisis EN-2009-05-05.png|サムネイル|273x273px|アジア通貨危機の影響国]]企業再編・合併は政府の規制緩和から広がり、海外企業と国内企業の協力・合併も増えました。その流れから六大企業集団もまとまりました。金融業界でも銀行などが倒産したり、別の銀行と合併したりしました。その結果、日本の金融業界は三井住友グループ[旧三井系と旧住友系]・三菱UFJ[旧三菱系と三和系]・みずほグループ[旧第一勧銀系と旧富士系]の三大金融グループへまとまりました。 国内長期不況で苦しむ中、アジア諸国の経済は大成長しました。しかし短期海外資金の依存・金融機関の過剰な借入れ・企業の過剰な借入れ・金融制度の弱さ・投機資金の流入などから海外投資家が危機感を示して一斉に海外資金を回収・売却・国外移動を行いました。1997年、タイの通貨バーツの価値が大きく下がりました。海外投資家は東アジア・東南アジアから次々と海外資金を回収・売却・国外移動を行いました(アジア通貨危機)。その結果、東アジア・東南アジア諸国の金融と経済は大きな爪痕を残しました。債務問題は韓国などで大きくなり、国際通貨基金(International Monetary Fund:IMF)の支援を受けました。アジア通貨危機は日本経済と日本の金融機関にも大きな爪痕を残して、不良債権問題をさらに悪化させました。 日本政府はアジア通貨危機の発生から地域的な金融協力制度[アジア通貨基金構想]を出しました。しかし、アメリカ合衆国の反対から日本政府は二国間金融支援と新宮沢構想などに切り替えて、東アジア諸国を金銭面で助けました。 バブル経済崩壊後の平成不況はずっと続きました。景気は2002年初期に少しだけ上向きました。しかし、政府が公共事業中心の従来型景気対策を抑えながら不良債権処理と規制改革を進めました。その結果、企業は引き続き大規模なリストラと雇用調整を行いました。当初、バブル崩壊後の長期停滞は「失われた10年」とよばれました。その後も日本経済の停滞が強く、「失われた20年」「失われた30年」とよばれました。 == 行政改革と日米安保の変化 == 1990年代後半、大規模災害の対策・重大事件への対策・行政改革・財政改革・金融改革・冷戦後の日米安全保障体制見直し・政党の組み直しを行いました。1995年1月17日、阪神・淡路地域でマグニチュード7.3の<span style="color:#f29100">'''阪神・淡路大震災[兵庫県南部地震]'''</span>が起こりました。神戸市を中心に6400人以上が亡くなり、建造物・高速道路までも大きく壊れました。当地震で大都市は自然災害に弱く、都市政策・耐震化基準・防災体制の見直しをしました。また、国民は被災地に入って、避難民[被災者]の生活を支えたり、被災地の後片付けを手伝ったりしました。この活動からボランティア活動が全国に広がりました。 1995年3月20日、オウム真理教集団は東京都の地下鉄でサリンを撒いて、多数の死傷者を出しました(<span style="color:#f29100">'''地下鉄サリン事件'''</span>)。このように阪神・淡路大震災と地下鉄サリン事件・少年犯罪の殺人事件・児童虐待などが何度も報道機関で取り上げられ、旧価値観的な安全神話も崩れて国民の意識も変わりました。<gallery mode="packed" widths="200" heights="200"> ファイル:Hanshin Expressway Nada b059.jpg|阪神淡路大震災被災後 ファイル:【地下鉄サリン事件】除染を行う自衛隊員と警察官.jpg|地下鉄サリン事件 ファイル:Ryutaro Hashimoto 19960111.jpg|橋本龍太郎 ファイル:Ryuhei Kawada 20240307.jpg|川田龍平 </gallery>1995年9月、自由民主党総裁選挙から<span style="color:#f29100">'''橋本龍太郎'''</span>が選ばれました。1996年1月、村山富市首相退陣後の内閣総理大臣指名選挙で橋本龍太郎が選ばれました。橋本内閣でも自民党・社会民主党・新党さきがけの3党が引き続き協力して、政策を進めました。なお日本社会党は自衛隊・日米安全保障条約の賛成側に回り、1996年に党名を社会民主党へ変えました。 薬害エイズ問題も大きく取り上げられました。橋本龍太郎内閣厚生大臣の菅直人は薬害エイズ被害者[川田龍平など]に謝罪しました。その後、国と製薬会社と被害者が話し合い、和解しました。 1996年、新しい選挙制度で初めて衆議院議員総選挙が行われ、自由民主党の議席を大きく増やしても、過半数を下回りました。社会民主党と新党さきがけは第2次橋本内閣から国務大臣を出さなくなり、閣外協力に変わりました。その結果、自由民主党単独政権に戻りました。 橋本龍太郎内閣は冷戦後の国際変化・国内経済・政府問題を解決するため、行政・財政・金融の各分野を見直しました。行政改革は政府組織を減らしたり、類似の政府組織を1つにまとめたりして、首相などの政策案を出しやすくしました。1998年、中央省庁等改革基本法が導入されて中央省庁等改革関連法から行政改革の方針を決めました。 2001年1月、政府はこの行政改革の方針から中央省庁を1府22省庁から1府12省庁に減らしました。その結果、内閣総理大臣は各省庁へ指示を出して、政府全体の政策を進めやすくしました。2007年、防衛庁を防衛省に上げました。 ★省庁再編 {| class="wikitable" !再編前 !再編後 !再編前 !再編後 |- |内閣官房 |内閣官房 |大蔵省 |財務省 |- | rowspan="2" |総理府 金融再生委員会 経済企画庁 沖縄開発庁 | rowspan="2" |内閣府 |科学技術庁 文部省 |文部科学省 |- |厚生省 労働省 |厚生労働省 |- |国家公安委員会 |国家公安委員会 |農林水産省 |農林水産省 |- |防衛庁 |防衛庁(省) |通商産業省 |経済産業省 |- |総務庁 郵政省 自治省 |総務省 | rowspan="2" |北海道開発庁 国土庁 建設省 運輸省 | rowspan="2" |国土交通省 |- |法務省 |法務省 |- |外務省 |外務省 |環境庁 |環境省 |} 橋本龍太郎内閣は国債の発行額を減らそうとしました。1997年4月、財政構造改革法に従って消費税率を3%から5%に引き上げて公共事業費などを減らしました。国債発行額は1970年代後半から増えても1980年代末で一度減りました。1990年代に入り、公共投資を再拡大させてから大幅な国債発行額増加に向かいました。 しかし、国民は消費税率の引き上げなどから財布の紐もきつくなり、金融機関も生き残れなくなりました。さらにアジア通貨・金融危機も起きて、日本経済は再不況になりました。やがて、銀行同士は金融不安の拡大から合併して1つの銀行になりました。1997年度の実質経済成長率は-0.4%となり、1974年度[第1次石油危機直後]以来のマイナス成長になりました。1998年度の実質経済成長率は-2%まで下がり、平成不況の大きさを改めて物語りました。 [[ファイル:Official Portrait of President William Jefferson Clinton - DPLA - 4697184146b3b6e2d6791b8f3c297476.jpg|サムネイル|221x221ピクセル|ビル・クリントン大統領]] 冷戦後、橋本龍太郎内閣は日米安全保障体制を見直しました。アメリカのビル・クリントン大統領が1996年4月に日本を訪れ、橋本首相と話し合って<span style="color:#f29100">'''日米安全保障共同宣言'''</span>を発表しました。日米安全保障共同宣言から日本とアメリカは日本防衛以外にもアジア太平洋地域の戦争防止・紛争防止まで努めていくようになりました。 自衛隊がアメリカ軍に必要物資を運ぶなどの後方支援についても、日米防衛協力のための指針を見直しました。1997年、日本政府とアメリカ合衆国政府は「新しい日米防衛協力のための指針(新ガイドライン)」を作りました。 日本が外国から直接攻撃されても直接攻撃されていなくても、日本周辺国の戦争などから日本の平和と安全に大きく関わっていたらアメリカ合衆国側も新ガイドラインに従って助け合いました(周辺事態)。ただし日本から何キロ以内というような距離だけだとアメリカ合衆国側は何もしません。 地球温暖化防止京都会議は1997年に開かれ、温室効果ガスの削減目標などを盛り込む京都議定書を採択しました。また、橋本龍太郎内閣は従来のアイヌ民族政策を大きく変えました。 アイヌ民族は1946年2月に北海道アイヌ協会を作り、アイヌ民族の権利を政府に求めました。北海道旧土人保護法からアイヌ民族用の土地[給与地]を貰っても、農地改革で買収されたくありませんでした。しかしアイヌ民族をずっと厳しく人種差別しており、アイヌ民族の一部は北海道から逃げました。その後、北海道アイヌ協会は名前を北海道ウタリ協会に変えました。[[ファイル:UPOPOY 202608.jpg|サムネイル|民族共生象徴空間ウポポイ]]1980年代、世界各地の先住民族が先住民族の権利を政府に求めました。北海道ウタリ協会は政府に北海道旧土人保護法を廃止して新しい法律を作ってほしいと求めました。1997年、国会はアイヌ民族文化をずっと守っていくためにアイヌ文化振興法を作り、北海道旧土人保護法を廃止しました。 その後もアイヌ民族政策は変わりました。2008年、国会はアイヌ民族を日本の先住民族と認めて、内閣へアイヌ民族の権利・生活・文化なども認めてほしいとお願いしました。民族団体の名前も北海道ウタリ協会から北海道アイヌ協会に戻しました。 2019(令和元)年、政府はアイヌ施策推進法で日本の「先住民族」にアイヌ民族を初めて入れました。アイヌ施策推進法から北海道アイヌ協会側も話し合いに参加して、アイヌ民族向けの新しい政策を行っています。2020年、北海道白老町に民族共生象徴空間ウポポイが開かれました。アイヌ語講座・アイヌ文化活動・アイヌ語活動が日本各地で開かれてもいます。 [[ファイル:Keizo Obuchi 19980730.jpg|サムネイル|168x168ピクセル|小渕恵三]] 1998年7月の参議院議員選挙で自由民主党議席数は大きく減らし、この結果から橋本龍太郎も内閣総理大臣を辞めました。これを受けて、<span style="color:#f29100">'''小渕恵三'''</span>が内閣総理大臣に選ばれました。小渕恵三内閣はバブル崩壊に消費税増税・金融不安・アジア通貨危機なども重なり、橋本龍太郎の財政再建路線を修正しました。小渕恵三内閣は土木工事・公共施設建築工事の大型予算を組んでその潤いから複合不況まで立て直そうとしました。その結果、政府は赤字国債発行額を再び大幅に増やしました。 1999年、小渕恵三内閣は国会法案の賛成を増やしたいから自由党〔1月〕・公明党〔10月〕も自由民主党と一緒に内閣を支えていました[自自公連立政権の開始]。その結果、自由民主党・自由党・公明党は衆議院・参議院の両方で過半数の議席を持つようになりました。小渕恵三内閣から自由民主党と公明党は2025年10月まで一緒に内閣を支えました。 1999年、小渕恵三内閣は'''新ガイドライン関連法'''をまとめました。新ガイドライン関連法の<span style="color:#f29100">'''周辺事態安全確保法'''</span>は日本周辺国家の暴走で自国の平和と安全まで守れなくなったら、自衛隊を出してアメリカ軍へ必要物資を送りました。 [[ファイル:G8 2000 group photo (kremlin.ru).jpg|サムネイル|223x223px|第26回主要国首脳会議]] 1999年、小渕恵三内閣は日の丸と君が代を国旗・国歌法へ初めて記しました。また、国民は情報公開法に従って官公庁へ資料を見せてほしいとお願いしやすくなりました。国会は憲法調査会で憲法を変えるかどうか話し合いました。小渕恵三内閣は2000年に九州・沖縄で第26回主要国首脳会議[サミット]開くと決めました。 この時期は野党も大きく変わりました。社会民主党の支持者は少しずつ減りました。新進党は議員の大量離脱から1997年末になくなりました。旧新進党の議員は違う政党[自由党・新党平和・民主党]に入りました。1996年、鳩山由紀夫・菅直人が民主党を結成しました。その後、旧新進党議員も民主党へ入りました。さらに、新党平和・黎明クラブを公明党に戻しました。 こうして、自由民主党と日本社会党が長く争う55年体制も終わりました。55年体制が終わっても、自由民主党と民主党の保守二大政党制へ繋がりませんでした。自由民主党が再び政権へ戻っても、自由党・公明党と一緒に内閣を支えていました。 == 資料出所 == * 平雅行、横田冬彦ほか編著『日本史探究』実教出版株式会社 2023年 * 佐藤信、五味文彦ほか編著『詳説日本史探究』株式会社山川出版社 2023年 * 高埜利彦、高村直助ほか編著『日本史A 改訂版』株式会社山川出版社 2016年 * 渡邊晃宏ほか編著『日本史探究』東京書籍株式会社 2023年 * 伊藤純郎ほか編著『高等学校日本史探究』株式会社清水書院 2023年 * 大橋幸泰ほか編著『高等学校日本史探究』株式会社第一学習社 2023年 * 山中裕典著'''『'''改訂版 大学入学共通テスト 歴史総合、日本史探究の点数が面白いほどとれる本'''』'''株式会社KADOKAWA 2024年 * 佐藤信、五味文彦ほか編著『詳説日本史研究』株式会社山川出版社 2017年 * 河合敦著『世界一わかりやすい河合敦の日本史B[近・現代]の特別講座』株式会社KADOKAWA 2014年(絶版本) * 外園豊基編集代表『最新日本史図表』株式会社第一学習社 2026年 * 東京法令出版編著『歴史資料館 日本史のライブラリー』東京法令出版株式会社 2026年 [[カテゴリ:高等学校日本史探究|あらたなせいきのにほんへ]] [[カテゴリ:20世紀]] g8oyz4e7uxuxhqt6o3niqnq16zz7if9 304975 304974 2026-10-21T13:04:31Z Kwawe 68789 /* 政界再編と55年体制の終結 */ 304975 wikitext text/x-wiki [[小学校・中学校・高等学校の学習]]>[[高等学校の学習]]>[[高等学校地理歴史]]>[[高等学校日本史探究]]>新たな世紀の日本へⅡ  引き続き「新たな世紀の日本へ」の内容を解説します。第2回目では、政界再編から小渕恵三内閣までの国内政治を見ていきます。 == 政界再編と55年体制の終結 == 1975年、国鉄職員などは大きなストライキ「スト権スト」を行って政府側に争議権の回復を求めても失敗しました。その後、官公庁労働組合はストライキなどをあまり行わなくなりました。民間大企業の労働組合も春闘で大幅な賃上げを求めにくくなりました。 その後、民間労働組合は1つにまとまり始めました。1987年、全日本民間労働組合連合会[民間連合]をつくりました。1989年の日本労働組合総評議会[総評]解散後、元日本労働組合総評議会[総評]は全日本民間労働組合連合会[民間連合]に合流しました。その後、全日本民間労働組合連合会[民間連合]と同盟などの労働組合は1つにまとまって<span style="color:#f29100">'''日本労働組合総連合会[連合]'''</span>をつくりました。約800万人が日本労働組合総連合会[連合]に入りました。 一方、日本労働組合総連合会[連合]の敵側は全国労働組合総連合[全労連]をつくりました。約140万人が全国労働組合総連合[全労連]に入りました。さらに日本労働組合総連合会[連合]と全国労働組合総連合[全労連]の敵側は全国労働組合連絡協議会[全労協]をつくりました。こうして、野党支持側の労働組合は日本労働組合総連合会[連合]・全国労働組合総連合[全労連]・全国労働組合連絡協議会[全労協]に分かれました。<gallery mode="packed" heights="200"> ファイル:Sohyo Kaikan (headquarters of the Japanese Trade Union Confederation).jpg|日本労働組合総連合会 ファイル:Zenrouren Kaikan (1).jpg|全国労働組合総連合 ファイル:Kiichi Miyazawa 19911105.jpg|宮沢喜一 </gallery>1994年4月、新生党の羽田孜が内閣総理大臣になりました。しかし、日本社会党は新生党と一緒に内閣を支えなくなりました。羽田孜は国会議員の賛成を集められなくなり、約2か月で首相を辞めました。1994年6月、自由民主党は元野党側の日本社会党・新党さきがけと一緒に内閣を支えました[自社さ連立政権]。日本社会党の村山富市が内閣総理大臣になり、自由民主党も政権へ戻りました。一方、非自民連立政権側の新生党・日本新党・公明党・民社党などは1つにまとまって新進党をつくりました。 従来の日本社会党基本政策を村山富市内閣で大きく変えました。日本社会党は自衛隊を合憲としつつ日米安全保障条約と消費税までも受け入れました。こうして自由民主党と日本社会党の政策は近くなり、日本社会党の不支持者を増やしました。1995年、アジア・太平洋戦争終戦から50年を迎えました。国会は戦後50年目の反省文内容をまとめました。8月15日、村山富市内閣総理大臣はアジア・太平洋戦争の反省とお詫びを「戦後50周年の終戦記念日にあたって」で伝えました(村山談話)。 現地の国民は日本側の植民地支配と侵略から被害を受けており、村山談話でその反省とお詫びを該当国首脳へ伝えました。その後の内閣も村山談話を受け継ぎました。政府は戦後50年目に合わせて、日本とアジア諸国の近現代史資料を国民へ広く公開しました。さらにインターネットでも歴史資料を公開したいから、アジア歴史資料センター開く準備をしました。2001年、アジア歴史資料センターを開きました。政党の結成・解党・合流まで活発になり、各政党のどこにも入らない無党派層も増えました。以降は単独政党のみで内閣を支えきれなくなり、複数政党と一緒に内閣を支えました。 == バブルの崩壊 == プラザ合意後、大量のお金が土地購入・株式購入のために使われ、土地の値段・株価[資産価格]が次第に上がりました(資産インフレ)。1989(平成元)年、日本銀行は銀行へお金をあまり貸さなくなり、政府も土地の値段を上げすぎないようにしました(金融引き締め政策)。1990年代に入ってから、土地の値段・株価は下がり始めました。日経平均株価は、1989年12月末に3万8915円まで上がりました。しかし、その後は株式売却が増えて株価もいきなり下がり、1992年8月に1万4309円まで下がりました。土地の値段も1991年頃から下がり始め、1992年以後は日本各地で下がりました。2000年代半ばになると、大阪の一部商業地は一番高い時期の値段から約10分の1まで下がりました。こうして土地や株式の大幅な値上がりは終わり、1980年代後半のバブル経済は終わりました。 ★日本の実質経済成長率の推移 [[ファイル:GDP_growth_rate_in_Japan.svg|代替文=日本の実質経済成長率の推移|フレームなし|924x924px]] 日本の景気は1991年から悪くなりました('''平成不況''')。実質経済成長率は1992年に1.3%、1993年に1%未満まで下がりました。1992年を3か月ずつに分けて見ると、4~6月は-3.3%となり、前の3か月より国内経済が小さくなりました。7~9月と10~12月もそれぞれ-0.1%となりました。第1次石油危機後に2期連続の経済縮小時期はあっても、3期連続の経済縮小は戦後初めてでした。僅かな景気回復時期も平成不況の途中にありました。しかしすぐに経済縮小となり、平成不況が長年続きました。 バブル経済当時の国民は金融機関からお金を借りて、株価と地価をより高い価格で買いました。金融機関は不動産会社にもお金を貸しました。バブル崩壊後、株価と地価が大きく下がりました。国民は株と土地を全て売っても借金を返せなくなりました。国民の借金も金融機関へ返ってこなくなりました(不良債権)。金融機関は株と土地を債権として持っており、不良債権から金融機関も大赤字になりました。 金融機関は不良債権処理にずっと追われて、さらに苦しくなりました。その結果、金融機関は不良債権の心配からお金を貸さなくなりました。企業は金融機関からお金を借りにくくなりました。国民も「この金融機関は大丈夫か」と不安を感じるようになり、金融機関はさらに苦しくなりました。その後、企業は新しい商品を作れなくなり、新しい工場を建てられなくなり、新しい機械も買えなくなりました。地価の下落・株価の下落・不良債権の増加・金融機関の経営悪化・金融機関の融資停止が全て重なって景気も次第に悪くなりました('''複合不況''')。 当時の政府と日本銀行はこれまでの不況と同じように、財政支出の拡大・低金利政策から数年で景気も回復するかもと思っていました。この誤対策は複合不況に一切効果ありません。住宅金融専門会社は1995年頃から相次いでつぶれました。1997年、北海道拓殖銀行と山一証券がつぶれました。1998年、日本債券信用銀行と日本長期信用銀行がつぶれました。このように大手金融機関がつぶれると、国民も他の金融機関も危ないのではないかと不安になりました。政府は金融システムまで止まらないように、倒産寸前の大手金融機関などに大量の公的資金を入れました。<gallery mode="nolines" widths="200" heights="200"> ファイル:The Hokkaido Takushoku Bank.JPG|旧北海道拓殖銀行本店 ファイル:Kayabacho Tower, at Shinkawa, Chuo, Tokyo (2019-01-02) 02.jpg|旧山一證券本社 ファイル:日債銀本店.jpg|旧日本債券信用銀行本店 ファイル:Shinsei Bank (head office 1).jpg|旧日本長期信用銀行本店 </gallery>1998年、小渕恵三が内閣総理大臣になりました。小渕恵三内閣も大型予算から景気を回復させしようとしました。小渕内閣が公共投資を増やして国民のお金を回そうとしても複合不況に一切効果ありません。こうして、公債発行残高は増えました。物価は1990年代後半からずっと下がり続けました(デフレスパイラル)。 [[ファイル:Unemployment Rate of Japan 1953-2009.jpg|サムネイル|395x395ピクセル|日本の失業率]] 企業は赤字なので、生き残るために経営の効率化[事業整理・人員削減・雇用調整・海外進出など]を進めました(リストラクチャリング)。中小企業の倒産も増えて、中高年労働者の解雇・中高年労働者の早期退職・新卒採用の削減から企業の人件費を大幅に減らしました。バブル景気の時期は労働者不足から「売り手市場」でも、バブル崩壊後から「買い手市場」へ変わりました。1990年代半ばから2000年代前半、企業は新卒採用を大幅に減らしました(就職氷河期)。1998年の完全失業率は4%を超え、2001年の完全失業率で5%になりました。 失業者が増えると労働者も「自分も仕事を失うかもしれない」と不安になり、個人消費を減らしました。消費者は同じような商品なら出来るだけ安い商品を選ぶようになり、ブランド品・高級品を買ってくれなくなりました。商品が売れなくなると、会社も少量生産・既存工場・既存機械だけで行うようになりました。その結果、会社の利益がさらに減って、人員削減・採用縮小もさらに進みました。株価と地価の下落から不良債権が増えて、金融機関の経営も苦しくなり、企業へお金を貸せなくなりました。 円高も国際分業も進みました。1994年、1ドルが100円を割り込みました。輸出主導・量産指向型産業[自動車・電子・家電・事務機器など]は海外で売れにくくなりました。また、バブル崩壊後の不景気から国内の購入者も減りました。生産費用を少しでも減らすため、労働者の給料が日本より低いアジア諸国[中国など]へ工場を移すようになりました[国内工場の閉鎖・国内工場の海外移転]。その結果、地元企業・周辺店舗の売り上げを減らし、失業者を増やしました(地域'''産業の空洞化''')。 繊維産業の事業所数は減り続けました。2015年の繊維産業の事業所数は1991年と比べて約4分の1になりました。国内衣料品市場のうち海外衣料品購入割合は1991年で52%になり、2017年で97%まで上がりました。多数の多国籍企業が1990年代後半に日本企業を合併したり、買収したりしました。企業が日本型雇用を取り入れていても競争力強化・経営効率化から人員削減・能力給の導入を進めました。その結果、働き方の不安定さが広がりました。 日本は技術面でも負けています。1980年代、日本企業はエレクトロニクス[電子機器]・新素材・バイオテクノロジーなどの技術でアメリカに追いつこうとしていました。1990年代から情報通信技術の活用や生産性の伸びでアメリカ合衆国に負けました。商品は日本国内で売れにくくなり、業務内容も変わっていきました。そのため、日本企業は海外企業に負けないような対策を取りました。 バブル崩壊後、銀行制度・企業制度も変えられました。「日本版金融ビッグバン」を1996年に打ち出して、銀行・証券会社などにも規制を緩めて金融の自由化・国際化を進めました。1997年の独占禁止法改正から禁止の持株会社を再度認めました。企業は持株会社からグループ内の会社をまとめ直したり、経営の進め方を変えたりしやすくなり、その後の企業再編・金融再編にもつながりました。 以前の大規模小売店舗法は店舗面積500平方メートル以上の大規模小売店舗出店条件として出店規模・営業時間・営業日数などを定めていました。しかし、大規模小売店舗は中小小売業者の近くにも自由に出店しており、中小小売業者のお客様まで消えました。そのため、政府は大規模小売店舗の立地場所を1998年から制限しました(大規模小売店舗立地法)。中小小売業者から流れすぎないように守りながら、大規模小売店舗も中小小売業者も商売を続けられるようにしました。2000年、大規模小売店舗法を廃止しました。[[ファイル:Asian Financial Crisis EN-2009-05-05.png|サムネイル|273x273px|アジア通貨危機の影響国]]企業再編・合併は政府の規制緩和から広がり、海外企業と国内企業の協力・合併も増えました。その流れから六大企業集団もまとまりました。金融業界でも銀行などが倒産したり、別の銀行と合併したりしました。その結果、日本の金融業界は三井住友グループ[旧三井系と旧住友系]・三菱UFJ[旧三菱系と三和系]・みずほグループ[旧第一勧銀系と旧富士系]の三大金融グループへまとまりました。 国内長期不況で苦しむ中、アジア諸国の経済は大成長しました。しかし短期海外資金の依存・金融機関の過剰な借入れ・企業の過剰な借入れ・金融制度の弱さ・投機資金の流入などから海外投資家が危機感を示して一斉に海外資金を回収・売却・国外移動を行いました。1997年、タイの通貨バーツの価値が大きく下がりました。海外投資家は東アジア・東南アジアから次々と海外資金を回収・売却・国外移動を行いました(アジア通貨危機)。その結果、東アジア・東南アジア諸国の金融と経済は大きな爪痕を残しました。債務問題は韓国などで大きくなり、国際通貨基金(International Monetary Fund:IMF)の支援を受けました。アジア通貨危機は日本経済と日本の金融機関にも大きな爪痕を残して、不良債権問題をさらに悪化させました。 日本政府はアジア通貨危機の発生から地域的な金融協力制度[アジア通貨基金構想]を出しました。しかし、アメリカ合衆国の反対から日本政府は二国間金融支援と新宮沢構想などに切り替えて、東アジア諸国を金銭面で助けました。 バブル経済崩壊後の平成不況はずっと続きました。景気は2002年初期に少しだけ上向きました。しかし、政府が公共事業中心の従来型景気対策を抑えながら不良債権処理と規制改革を進めました。その結果、企業は引き続き大規模なリストラと雇用調整を行いました。当初、バブル崩壊後の長期停滞は「失われた10年」とよばれました。その後も日本経済の停滞が強く、「失われた20年」「失われた30年」とよばれました。 == 行政改革と日米安保の変化 == 1990年代後半、大規模災害の対策・重大事件への対策・行政改革・財政改革・金融改革・冷戦後の日米安全保障体制見直し・政党の組み直しを行いました。1995年1月17日、阪神・淡路地域でマグニチュード7.3の<span style="color:#f29100">'''阪神・淡路大震災[兵庫県南部地震]'''</span>が起こりました。神戸市を中心に6400人以上が亡くなり、建造物・高速道路までも大きく壊れました。当地震で大都市は自然災害に弱く、都市政策・耐震化基準・防災体制の見直しをしました。また、国民は被災地に入って、避難民[被災者]の生活を支えたり、被災地の後片付けを手伝ったりしました。この活動からボランティア活動が全国に広がりました。 1995年3月20日、オウム真理教集団は東京都の地下鉄でサリンを撒いて、多数の死傷者を出しました(<span style="color:#f29100">'''地下鉄サリン事件'''</span>)。このように阪神・淡路大震災と地下鉄サリン事件・少年犯罪の殺人事件・児童虐待などが何度も報道機関で取り上げられ、旧価値観的な安全神話も崩れて国民の意識も変わりました。<gallery mode="packed" widths="200" heights="200"> ファイル:Hanshin Expressway Nada b059.jpg|阪神淡路大震災被災後 ファイル:【地下鉄サリン事件】除染を行う自衛隊員と警察官.jpg|地下鉄サリン事件 ファイル:Ryutaro Hashimoto 19960111.jpg|橋本龍太郎 ファイル:Ryuhei Kawada 20240307.jpg|川田龍平 </gallery>1995年9月、自由民主党総裁選挙から<span style="color:#f29100">'''橋本龍太郎'''</span>が選ばれました。1996年1月、村山富市首相退陣後の内閣総理大臣指名選挙で橋本龍太郎が選ばれました。橋本内閣でも自民党・社会民主党・新党さきがけの3党が引き続き協力して、政策を進めました。なお日本社会党は自衛隊・日米安全保障条約の賛成側に回り、1996年に党名を社会民主党へ変えました。 薬害エイズ問題も大きく取り上げられました。橋本龍太郎内閣厚生大臣の菅直人は薬害エイズ被害者[川田龍平など]に謝罪しました。その後、国と製薬会社と被害者が話し合い、和解しました。 1996年、新しい選挙制度で初めて衆議院議員総選挙が行われ、自由民主党の議席を大きく増やしても、過半数を下回りました。社会民主党と新党さきがけは第2次橋本内閣から国務大臣を出さなくなり、閣外協力に変わりました。その結果、自由民主党単独政権に戻りました。 橋本龍太郎内閣は冷戦後の国際変化・国内経済・政府問題を解決するため、行政・財政・金融の各分野を見直しました。行政改革は政府組織を減らしたり、類似の政府組織を1つにまとめたりして、首相などの政策案を出しやすくしました。1998年、中央省庁等改革基本法が導入されて中央省庁等改革関連法から行政改革の方針を決めました。 2001年1月、政府はこの行政改革の方針から中央省庁を1府22省庁から1府12省庁に減らしました。その結果、内閣総理大臣は各省庁へ指示を出して、政府全体の政策を進めやすくしました。2007年、防衛庁を防衛省に上げました。 ★省庁再編 {| class="wikitable" !再編前 !再編後 !再編前 !再編後 |- |内閣官房 |内閣官房 |大蔵省 |財務省 |- | rowspan="2" |総理府 金融再生委員会 経済企画庁 沖縄開発庁 | rowspan="2" |内閣府 |科学技術庁 文部省 |文部科学省 |- |厚生省 労働省 |厚生労働省 |- |国家公安委員会 |国家公安委員会 |農林水産省 |農林水産省 |- |防衛庁 |防衛庁(省) |通商産業省 |経済産業省 |- |総務庁 郵政省 自治省 |総務省 | rowspan="2" |北海道開発庁 国土庁 建設省 運輸省 | rowspan="2" |国土交通省 |- |法務省 |法務省 |- |外務省 |外務省 |環境庁 |環境省 |} 橋本龍太郎内閣は国債の発行額を減らそうとしました。1997年4月、財政構造改革法に従って消費税率を3%から5%に引き上げて公共事業費などを減らしました。国債発行額は1970年代後半から増えても1980年代末で一度減りました。1990年代に入り、公共投資を再拡大させてから大幅な国債発行額増加に向かいました。 しかし、国民は消費税率の引き上げなどから財布の紐もきつくなり、金融機関も生き残れなくなりました。さらにアジア通貨・金融危機も起きて、日本経済は再不況になりました。やがて、銀行同士は金融不安の拡大から合併して1つの銀行になりました。1997年度の実質経済成長率は-0.4%となり、1974年度[第1次石油危機直後]以来のマイナス成長になりました。1998年度の実質経済成長率は-2%まで下がり、平成不況の大きさを改めて物語りました。 [[ファイル:Official Portrait of President William Jefferson Clinton - DPLA - 4697184146b3b6e2d6791b8f3c297476.jpg|サムネイル|221x221ピクセル|ビル・クリントン大統領]] 冷戦後、橋本龍太郎内閣は日米安全保障体制を見直しました。アメリカのビル・クリントン大統領が1996年4月に日本を訪れ、橋本首相と話し合って<span style="color:#f29100">'''日米安全保障共同宣言'''</span>を発表しました。日米安全保障共同宣言から日本とアメリカは日本防衛以外にもアジア太平洋地域の戦争防止・紛争防止まで努めていくようになりました。 自衛隊がアメリカ軍に必要物資を運ぶなどの後方支援についても、日米防衛協力のための指針を見直しました。1997年、日本政府とアメリカ合衆国政府は「新しい日米防衛協力のための指針(新ガイドライン)」を作りました。 日本が外国から直接攻撃されても直接攻撃されていなくても、日本周辺国の戦争などから日本の平和と安全に大きく関わっていたらアメリカ合衆国側も新ガイドラインに従って助け合いました(周辺事態)。ただし日本から何キロ以内というような距離だけだとアメリカ合衆国側は何もしません。 地球温暖化防止京都会議は1997年に開かれ、温室効果ガスの削減目標などを盛り込む京都議定書を採択しました。また、橋本龍太郎内閣は従来のアイヌ民族政策を大きく変えました。 アイヌ民族は1946年2月に北海道アイヌ協会を作り、アイヌ民族の権利を政府に求めました。北海道旧土人保護法からアイヌ民族用の土地[給与地]を貰っても、農地改革で買収されたくありませんでした。しかしアイヌ民族をずっと厳しく人種差別しており、アイヌ民族の一部は北海道から逃げました。その後、北海道アイヌ協会は名前を北海道ウタリ協会に変えました。[[ファイル:UPOPOY 202608.jpg|サムネイル|民族共生象徴空間ウポポイ]]1980年代、世界各地の先住民族が先住民族の権利を政府に求めました。北海道ウタリ協会は政府に北海道旧土人保護法を廃止して新しい法律を作ってほしいと求めました。1997年、国会はアイヌ民族文化をずっと守っていくためにアイヌ文化振興法を作り、北海道旧土人保護法を廃止しました。 その後もアイヌ民族政策は変わりました。2008年、国会はアイヌ民族を日本の先住民族と認めて、内閣へアイヌ民族の権利・生活・文化なども認めてほしいとお願いしました。民族団体の名前も北海道ウタリ協会から北海道アイヌ協会に戻しました。 2019(令和元)年、政府はアイヌ施策推進法で日本の「先住民族」にアイヌ民族を初めて入れました。アイヌ施策推進法から北海道アイヌ協会側も話し合いに参加して、アイヌ民族向けの新しい政策を行っています。2020年、北海道白老町に民族共生象徴空間ウポポイが開かれました。アイヌ語講座・アイヌ文化活動・アイヌ語活動が日本各地で開かれてもいます。 [[ファイル:Keizo Obuchi 19980730.jpg|サムネイル|168x168ピクセル|小渕恵三]] 1998年7月の参議院議員選挙で自由民主党議席数は大きく減らし、この結果から橋本龍太郎も内閣総理大臣を辞めました。これを受けて、<span style="color:#f29100">'''小渕恵三'''</span>が内閣総理大臣に選ばれました。小渕恵三内閣はバブル崩壊に消費税増税・金融不安・アジア通貨危機なども重なり、橋本龍太郎の財政再建路線を修正しました。小渕恵三内閣は土木工事・公共施設建築工事の大型予算を組んでその潤いから複合不況まで立て直そうとしました。その結果、政府は赤字国債発行額を再び大幅に増やしました。 1999年、小渕恵三内閣は国会法案の賛成を増やしたいから自由党〔1月〕・公明党〔10月〕も自由民主党と一緒に内閣を支えていました[自自公連立政権の開始]。その結果、自由民主党・自由党・公明党は衆議院・参議院の両方で過半数の議席を持つようになりました。小渕恵三内閣から自由民主党と公明党は2025年10月まで一緒に内閣を支えました。 1999年、小渕恵三内閣は'''新ガイドライン関連法'''をまとめました。新ガイドライン関連法の<span style="color:#f29100">'''周辺事態安全確保法'''</span>は日本周辺国家の暴走で自国の平和と安全まで守れなくなったら、自衛隊を出してアメリカ軍へ必要物資を送りました。 [[ファイル:G8 2000 group photo (kremlin.ru).jpg|サムネイル|223x223px|第26回主要国首脳会議]] 1999年、小渕恵三内閣は日の丸と君が代を国旗・国歌法へ初めて記しました。また、国民は情報公開法に従って官公庁へ資料を見せてほしいとお願いしやすくなりました。国会は憲法調査会で憲法を変えるかどうか話し合いました。小渕恵三内閣は2000年に九州・沖縄で第26回主要国首脳会議[サミット]開くと決めました。 この時期は野党も大きく変わりました。社会民主党の支持者は少しずつ減りました。新進党は議員の大量離脱から1997年末になくなりました。旧新進党の議員は違う政党[自由党・新党平和・民主党]に入りました。1996年、鳩山由紀夫・菅直人が民主党を結成しました。その後、旧新進党議員も民主党へ入りました。さらに、新党平和・黎明クラブを公明党に戻しました。 こうして、自由民主党と日本社会党が長く争う55年体制も終わりました。55年体制が終わっても、自由民主党と民主党の保守二大政党制へ繋がりませんでした。自由民主党が再び政権へ戻っても、自由党・公明党と一緒に内閣を支えていました。 == 資料出所 == * 平雅行、横田冬彦ほか編著『日本史探究』実教出版株式会社 2023年 * 佐藤信、五味文彦ほか編著『詳説日本史探究』株式会社山川出版社 2023年 * 高埜利彦、高村直助ほか編著『日本史A 改訂版』株式会社山川出版社 2016年 * 渡邊晃宏ほか編著『日本史探究』東京書籍株式会社 2023年 * 伊藤純郎ほか編著『高等学校日本史探究』株式会社清水書院 2023年 * 大橋幸泰ほか編著『高等学校日本史探究』株式会社第一学習社 2023年 * 山中裕典著'''『'''改訂版 大学入学共通テスト 歴史総合、日本史探究の点数が面白いほどとれる本'''』'''株式会社KADOKAWA 2024年 * 佐藤信、五味文彦ほか編著『詳説日本史研究』株式会社山川出版社 2017年 * 河合敦著『世界一わかりやすい河合敦の日本史B[近・現代]の特別講座』株式会社KADOKAWA 2014年(絶版本) * 外園豊基編集代表『最新日本史図表』株式会社第一学習社 2026年 * 東京法令出版編著『歴史資料館 日本史のライブラリー』東京法令出版株式会社 2026年 [[カテゴリ:高等学校日本史探究|あらたなせいきのにほんへ]] [[カテゴリ:20世紀]] cqzjzn43jp5savsdjejlx4r9cj2ek6s 304987 304975 2026-10-21T23:42:41Z Kwawe 68789 /* 政界再編と55年体制の終結 */ 政治家と企業の金銭やり取りが冷戦後の日本で問題になった。 304987 wikitext text/x-wiki [[小学校・中学校・高等学校の学習]]>[[高等学校の学習]]>[[高等学校地理歴史]]>[[高等学校日本史探究]]>新たな世紀の日本へⅡ  引き続き「新たな世紀の日本へ」の内容を解説します。第2回目では、政界再編から小渕恵三内閣までの国内政治を見ていきます。 == 政界再編と55年体制の終結 == 1975年、国鉄職員などは大きなストライキ「スト権スト」を行って政府側に争議権の回復を求めても失敗しました。その後、官公庁労働組合はストライキなどをあまり行わなくなりました。民間大企業の労働組合も春闘で大幅な賃上げを求めにくくなりました。 その後、民間労働組合は1つにまとまり始めました。1987年、全日本民間労働組合連合会[民間連合]をつくりました。1989年の日本労働組合総評議会[総評]解散後、元日本労働組合総評議会[総評]は全日本民間労働組合連合会[民間連合]に合流しました。その後、全日本民間労働組合連合会[民間連合]と同盟などの労働組合は1つにまとまって<span style="color:#f29100">'''日本労働組合総連合会[連合]'''</span>をつくりました。約800万人が日本労働組合総連合会[連合]に入りました。 一方、日本労働組合総連合会[連合]の敵側は全国労働組合総連合[全労連]をつくりました。約140万人が全国労働組合総連合[全労連]に入りました。さらに日本労働組合総連合会[連合]と全国労働組合総連合[全労連]の敵側は全国労働組合連絡協議会[全労協]をつくりました。こうして、野党支持側の労働組合は日本労働組合総連合会[連合]・全国労働組合総連合[全労連]・全国労働組合連絡協議会[全労協]に分かれました。<gallery mode="packed" heights="200"> ファイル:Sohyo Kaikan (headquarters of the Japanese Trade Union Confederation).jpg|日本労働組合総連合会 ファイル:Zenrouren Kaikan (1).jpg|全国労働組合総連合 ファイル:Kiichi Miyazawa 19911105.jpg|宮沢喜一 </gallery>政治家と企業の金銭やり取りが冷戦後の日本で問題になりました。リクルート事件〔竹下内閣〕・佐川急便事件〔宮澤喜一内閣〕・ゼネコン汚職事件〔宮澤喜一内閣〕が起きました。自由民主党副総裁の金丸信も1993年に逮捕されました。国民は政治家・官僚・企業の金銭やり取りへ文句を言い、自由民主党の不支持者まで増えました。 1994年4月、新生党の羽田孜が内閣総理大臣になりました。しかし、日本社会党は新生党と一緒に内閣を支えなくなりました。羽田孜は国会議員の賛成を集められなくなり、約2か月で首相を辞めました。1994年6月、自由民主党は元野党側の日本社会党・新党さきがけと一緒に内閣を支えました[自社さ連立政権]。日本社会党の村山富市が内閣総理大臣になり、自由民主党も政権へ戻りました。一方、非自民連立政権側の新生党・日本新党・公明党・民社党などは1つにまとまって新進党をつくりました。 従来の日本社会党基本政策を村山富市内閣で大きく変えました。日本社会党は自衛隊を合憲としつつ日米安全保障条約と消費税までも受け入れました。こうして自由民主党と日本社会党の政策は近くなり、日本社会党の不支持者を増やしました。1995年、アジア・太平洋戦争終戦から50年を迎えました。国会は戦後50年目の反省文内容をまとめました。8月15日、村山富市内閣総理大臣はアジア・太平洋戦争の反省とお詫びを「戦後50周年の終戦記念日にあたって」で伝えました(村山談話)。 現地の国民は日本側の植民地支配と侵略から被害を受けており、村山談話でその反省とお詫びを該当国首脳へ伝えました。その後の内閣も村山談話を受け継ぎました。政府は戦後50年目に合わせて、日本とアジア諸国の近現代史資料を国民へ広く公開しました。さらにインターネットでも歴史資料を公開したいから、アジア歴史資料センター開く準備をしました。2001年、アジア歴史資料センターを開きました。政党の結成・解党・合流まで活発になり、各政党のどこにも入らない無党派層も増えました。以降は単独政党のみで内閣を支えきれなくなり、複数政党と一緒に内閣を支えました。 == バブルの崩壊 == プラザ合意後、大量のお金が土地購入・株式購入のために使われ、土地の値段・株価[資産価格]が次第に上がりました(資産インフレ)。1989(平成元)年、日本銀行は銀行へお金をあまり貸さなくなり、政府も土地の値段を上げすぎないようにしました(金融引き締め政策)。1990年代に入ってから、土地の値段・株価は下がり始めました。日経平均株価は、1989年12月末に3万8915円まで上がりました。しかし、その後は株式売却が増えて株価もいきなり下がり、1992年8月に1万4309円まで下がりました。土地の値段も1991年頃から下がり始め、1992年以後は日本各地で下がりました。2000年代半ばになると、大阪の一部商業地は一番高い時期の値段から約10分の1まで下がりました。こうして土地や株式の大幅な値上がりは終わり、1980年代後半のバブル経済は終わりました。 ★日本の実質経済成長率の推移 [[ファイル:GDP_growth_rate_in_Japan.svg|代替文=日本の実質経済成長率の推移|フレームなし|924x924px]] 日本の景気は1991年から悪くなりました('''平成不況''')。実質経済成長率は1992年に1.3%、1993年に1%未満まで下がりました。1992年を3か月ずつに分けて見ると、4~6月は-3.3%となり、前の3か月より国内経済が小さくなりました。7~9月と10~12月もそれぞれ-0.1%となりました。第1次石油危機後に2期連続の経済縮小時期はあっても、3期連続の経済縮小は戦後初めてでした。僅かな景気回復時期も平成不況の途中にありました。しかしすぐに経済縮小となり、平成不況が長年続きました。 バブル経済当時の国民は金融機関からお金を借りて、株価と地価をより高い価格で買いました。金融機関は不動産会社にもお金を貸しました。バブル崩壊後、株価と地価が大きく下がりました。国民は株と土地を全て売っても借金を返せなくなりました。国民の借金も金融機関へ返ってこなくなりました(不良債権)。金融機関は株と土地を債権として持っており、不良債権から金融機関も大赤字になりました。 金融機関は不良債権処理にずっと追われて、さらに苦しくなりました。その結果、金融機関は不良債権の心配からお金を貸さなくなりました。企業は金融機関からお金を借りにくくなりました。国民も「この金融機関は大丈夫か」と不安を感じるようになり、金融機関はさらに苦しくなりました。その後、企業は新しい商品を作れなくなり、新しい工場を建てられなくなり、新しい機械も買えなくなりました。地価の下落・株価の下落・不良債権の増加・金融機関の経営悪化・金融機関の融資停止が全て重なって景気も次第に悪くなりました('''複合不況''')。 当時の政府と日本銀行はこれまでの不況と同じように、財政支出の拡大・低金利政策から数年で景気も回復するかもと思っていました。この誤対策は複合不況に一切効果ありません。住宅金融専門会社は1995年頃から相次いでつぶれました。1997年、北海道拓殖銀行と山一証券がつぶれました。1998年、日本債券信用銀行と日本長期信用銀行がつぶれました。このように大手金融機関がつぶれると、国民も他の金融機関も危ないのではないかと不安になりました。政府は金融システムまで止まらないように、倒産寸前の大手金融機関などに大量の公的資金を入れました。<gallery mode="nolines" widths="200" heights="200"> ファイル:The Hokkaido Takushoku Bank.JPG|旧北海道拓殖銀行本店 ファイル:Kayabacho Tower, at Shinkawa, Chuo, Tokyo (2019-01-02) 02.jpg|旧山一證券本社 ファイル:日債銀本店.jpg|旧日本債券信用銀行本店 ファイル:Shinsei Bank (head office 1).jpg|旧日本長期信用銀行本店 </gallery>1998年、小渕恵三が内閣総理大臣になりました。小渕恵三内閣も大型予算から景気を回復させしようとしました。小渕内閣が公共投資を増やして国民のお金を回そうとしても複合不況に一切効果ありません。こうして、公債発行残高は増えました。物価は1990年代後半からずっと下がり続けました(デフレスパイラル)。 [[ファイル:Unemployment Rate of Japan 1953-2009.jpg|サムネイル|395x395ピクセル|日本の失業率]] 企業は赤字なので、生き残るために経営の効率化[事業整理・人員削減・雇用調整・海外進出など]を進めました(リストラクチャリング)。中小企業の倒産も増えて、中高年労働者の解雇・中高年労働者の早期退職・新卒採用の削減から企業の人件費を大幅に減らしました。バブル景気の時期は労働者不足から「売り手市場」でも、バブル崩壊後から「買い手市場」へ変わりました。1990年代半ばから2000年代前半、企業は新卒採用を大幅に減らしました(就職氷河期)。1998年の完全失業率は4%を超え、2001年の完全失業率で5%になりました。 失業者が増えると労働者も「自分も仕事を失うかもしれない」と不安になり、個人消費を減らしました。消費者は同じような商品なら出来るだけ安い商品を選ぶようになり、ブランド品・高級品を買ってくれなくなりました。商品が売れなくなると、会社も少量生産・既存工場・既存機械だけで行うようになりました。その結果、会社の利益がさらに減って、人員削減・採用縮小もさらに進みました。株価と地価の下落から不良債権が増えて、金融機関の経営も苦しくなり、企業へお金を貸せなくなりました。 円高も国際分業も進みました。1994年、1ドルが100円を割り込みました。輸出主導・量産指向型産業[自動車・電子・家電・事務機器など]は海外で売れにくくなりました。また、バブル崩壊後の不景気から国内の購入者も減りました。生産費用を少しでも減らすため、労働者の給料が日本より低いアジア諸国[中国など]へ工場を移すようになりました[国内工場の閉鎖・国内工場の海外移転]。その結果、地元企業・周辺店舗の売り上げを減らし、失業者を増やしました(地域'''産業の空洞化''')。 繊維産業の事業所数は減り続けました。2015年の繊維産業の事業所数は1991年と比べて約4分の1になりました。国内衣料品市場のうち海外衣料品購入割合は1991年で52%になり、2017年で97%まで上がりました。多数の多国籍企業が1990年代後半に日本企業を合併したり、買収したりしました。企業が日本型雇用を取り入れていても競争力強化・経営効率化から人員削減・能力給の導入を進めました。その結果、働き方の不安定さが広がりました。 日本は技術面でも負けています。1980年代、日本企業はエレクトロニクス[電子機器]・新素材・バイオテクノロジーなどの技術でアメリカに追いつこうとしていました。1990年代から情報通信技術の活用や生産性の伸びでアメリカ合衆国に負けました。商品は日本国内で売れにくくなり、業務内容も変わっていきました。そのため、日本企業は海外企業に負けないような対策を取りました。 バブル崩壊後、銀行制度・企業制度も変えられました。「日本版金融ビッグバン」を1996年に打ち出して、銀行・証券会社などにも規制を緩めて金融の自由化・国際化を進めました。1997年の独占禁止法改正から禁止の持株会社を再度認めました。企業は持株会社からグループ内の会社をまとめ直したり、経営の進め方を変えたりしやすくなり、その後の企業再編・金融再編にもつながりました。 以前の大規模小売店舗法は店舗面積500平方メートル以上の大規模小売店舗出店条件として出店規模・営業時間・営業日数などを定めていました。しかし、大規模小売店舗は中小小売業者の近くにも自由に出店しており、中小小売業者のお客様まで消えました。そのため、政府は大規模小売店舗の立地場所を1998年から制限しました(大規模小売店舗立地法)。中小小売業者から流れすぎないように守りながら、大規模小売店舗も中小小売業者も商売を続けられるようにしました。2000年、大規模小売店舗法を廃止しました。[[ファイル:Asian Financial Crisis EN-2009-05-05.png|サムネイル|273x273px|アジア通貨危機の影響国]]企業再編・合併は政府の規制緩和から広がり、海外企業と国内企業の協力・合併も増えました。その流れから六大企業集団もまとまりました。金融業界でも銀行などが倒産したり、別の銀行と合併したりしました。その結果、日本の金融業界は三井住友グループ[旧三井系と旧住友系]・三菱UFJ[旧三菱系と三和系]・みずほグループ[旧第一勧銀系と旧富士系]の三大金融グループへまとまりました。 国内長期不況で苦しむ中、アジア諸国の経済は大成長しました。しかし短期海外資金の依存・金融機関の過剰な借入れ・企業の過剰な借入れ・金融制度の弱さ・投機資金の流入などから海外投資家が危機感を示して一斉に海外資金を回収・売却・国外移動を行いました。1997年、タイの通貨バーツの価値が大きく下がりました。海外投資家は東アジア・東南アジアから次々と海外資金を回収・売却・国外移動を行いました(アジア通貨危機)。その結果、東アジア・東南アジア諸国の金融と経済は大きな爪痕を残しました。債務問題は韓国などで大きくなり、国際通貨基金(International Monetary Fund:IMF)の支援を受けました。アジア通貨危機は日本経済と日本の金融機関にも大きな爪痕を残して、不良債権問題をさらに悪化させました。 日本政府はアジア通貨危機の発生から地域的な金融協力制度[アジア通貨基金構想]を出しました。しかし、アメリカ合衆国の反対から日本政府は二国間金融支援と新宮沢構想などに切り替えて、東アジア諸国を金銭面で助けました。 バブル経済崩壊後の平成不況はずっと続きました。景気は2002年初期に少しだけ上向きました。しかし、政府が公共事業中心の従来型景気対策を抑えながら不良債権処理と規制改革を進めました。その結果、企業は引き続き大規模なリストラと雇用調整を行いました。当初、バブル崩壊後の長期停滞は「失われた10年」とよばれました。その後も日本経済の停滞が強く、「失われた20年」「失われた30年」とよばれました。 == 行政改革と日米安保の変化 == 1990年代後半、大規模災害の対策・重大事件への対策・行政改革・財政改革・金融改革・冷戦後の日米安全保障体制見直し・政党の組み直しを行いました。1995年1月17日、阪神・淡路地域でマグニチュード7.3の<span style="color:#f29100">'''阪神・淡路大震災[兵庫県南部地震]'''</span>が起こりました。神戸市を中心に6400人以上が亡くなり、建造物・高速道路までも大きく壊れました。当地震で大都市は自然災害に弱く、都市政策・耐震化基準・防災体制の見直しをしました。また、国民は被災地に入って、避難民[被災者]の生活を支えたり、被災地の後片付けを手伝ったりしました。この活動からボランティア活動が全国に広がりました。 1995年3月20日、オウム真理教集団は東京都の地下鉄でサリンを撒いて、多数の死傷者を出しました(<span style="color:#f29100">'''地下鉄サリン事件'''</span>)。このように阪神・淡路大震災と地下鉄サリン事件・少年犯罪の殺人事件・児童虐待などが何度も報道機関で取り上げられ、旧価値観的な安全神話も崩れて国民の意識も変わりました。<gallery mode="packed" widths="200" heights="200"> ファイル:Hanshin Expressway Nada b059.jpg|阪神淡路大震災被災後 ファイル:【地下鉄サリン事件】除染を行う自衛隊員と警察官.jpg|地下鉄サリン事件 ファイル:Ryutaro Hashimoto 19960111.jpg|橋本龍太郎 ファイル:Ryuhei Kawada 20240307.jpg|川田龍平 </gallery>1995年9月、自由民主党総裁選挙から<span style="color:#f29100">'''橋本龍太郎'''</span>が選ばれました。1996年1月、村山富市首相退陣後の内閣総理大臣指名選挙で橋本龍太郎が選ばれました。橋本内閣でも自民党・社会民主党・新党さきがけの3党が引き続き協力して、政策を進めました。なお日本社会党は自衛隊・日米安全保障条約の賛成側に回り、1996年に党名を社会民主党へ変えました。 薬害エイズ問題も大きく取り上げられました。橋本龍太郎内閣厚生大臣の菅直人は薬害エイズ被害者[川田龍平など]に謝罪しました。その後、国と製薬会社と被害者が話し合い、和解しました。 1996年、新しい選挙制度で初めて衆議院議員総選挙が行われ、自由民主党の議席を大きく増やしても、過半数を下回りました。社会民主党と新党さきがけは第2次橋本内閣から国務大臣を出さなくなり、閣外協力に変わりました。その結果、自由民主党単独政権に戻りました。 橋本龍太郎内閣は冷戦後の国際変化・国内経済・政府問題を解決するため、行政・財政・金融の各分野を見直しました。行政改革は政府組織を減らしたり、類似の政府組織を1つにまとめたりして、首相などの政策案を出しやすくしました。1998年、中央省庁等改革基本法が導入されて中央省庁等改革関連法から行政改革の方針を決めました。 2001年1月、政府はこの行政改革の方針から中央省庁を1府22省庁から1府12省庁に減らしました。その結果、内閣総理大臣は各省庁へ指示を出して、政府全体の政策を進めやすくしました。2007年、防衛庁を防衛省に上げました。 ★省庁再編 {| class="wikitable" !再編前 !再編後 !再編前 !再編後 |- |内閣官房 |内閣官房 |大蔵省 |財務省 |- | rowspan="2" |総理府 金融再生委員会 経済企画庁 沖縄開発庁 | rowspan="2" |内閣府 |科学技術庁 文部省 |文部科学省 |- |厚生省 労働省 |厚生労働省 |- |国家公安委員会 |国家公安委員会 |農林水産省 |農林水産省 |- |防衛庁 |防衛庁(省) |通商産業省 |経済産業省 |- |総務庁 郵政省 自治省 |総務省 | rowspan="2" |北海道開発庁 国土庁 建設省 運輸省 | rowspan="2" |国土交通省 |- |法務省 |法務省 |- |外務省 |外務省 |環境庁 |環境省 |} 橋本龍太郎内閣は国債の発行額を減らそうとしました。1997年4月、財政構造改革法に従って消費税率を3%から5%に引き上げて公共事業費などを減らしました。国債発行額は1970年代後半から増えても1980年代末で一度減りました。1990年代に入り、公共投資を再拡大させてから大幅な国債発行額増加に向かいました。 しかし、国民は消費税率の引き上げなどから財布の紐もきつくなり、金融機関も生き残れなくなりました。さらにアジア通貨・金融危機も起きて、日本経済は再不況になりました。やがて、銀行同士は金融不安の拡大から合併して1つの銀行になりました。1997年度の実質経済成長率は-0.4%となり、1974年度[第1次石油危機直後]以来のマイナス成長になりました。1998年度の実質経済成長率は-2%まで下がり、平成不況の大きさを改めて物語りました。 [[ファイル:Official Portrait of President William Jefferson Clinton - DPLA - 4697184146b3b6e2d6791b8f3c297476.jpg|サムネイル|221x221ピクセル|ビル・クリントン大統領]] 冷戦後、橋本龍太郎内閣は日米安全保障体制を見直しました。アメリカのビル・クリントン大統領が1996年4月に日本を訪れ、橋本首相と話し合って<span style="color:#f29100">'''日米安全保障共同宣言'''</span>を発表しました。日米安全保障共同宣言から日本とアメリカは日本防衛以外にもアジア太平洋地域の戦争防止・紛争防止まで努めていくようになりました。 自衛隊がアメリカ軍に必要物資を運ぶなどの後方支援についても、日米防衛協力のための指針を見直しました。1997年、日本政府とアメリカ合衆国政府は「新しい日米防衛協力のための指針(新ガイドライン)」を作りました。 日本が外国から直接攻撃されても直接攻撃されていなくても、日本周辺国の戦争などから日本の平和と安全に大きく関わっていたらアメリカ合衆国側も新ガイドラインに従って助け合いました(周辺事態)。ただし日本から何キロ以内というような距離だけだとアメリカ合衆国側は何もしません。 地球温暖化防止京都会議は1997年に開かれ、温室効果ガスの削減目標などを盛り込む京都議定書を採択しました。また、橋本龍太郎内閣は従来のアイヌ民族政策を大きく変えました。 アイヌ民族は1946年2月に北海道アイヌ協会を作り、アイヌ民族の権利を政府に求めました。北海道旧土人保護法からアイヌ民族用の土地[給与地]を貰っても、農地改革で買収されたくありませんでした。しかしアイヌ民族をずっと厳しく人種差別しており、アイヌ民族の一部は北海道から逃げました。その後、北海道アイヌ協会は名前を北海道ウタリ協会に変えました。[[ファイル:UPOPOY 202608.jpg|サムネイル|民族共生象徴空間ウポポイ]]1980年代、世界各地の先住民族が先住民族の権利を政府に求めました。北海道ウタリ協会は政府に北海道旧土人保護法を廃止して新しい法律を作ってほしいと求めました。1997年、国会はアイヌ民族文化をずっと守っていくためにアイヌ文化振興法を作り、北海道旧土人保護法を廃止しました。 その後もアイヌ民族政策は変わりました。2008年、国会はアイヌ民族を日本の先住民族と認めて、内閣へアイヌ民族の権利・生活・文化なども認めてほしいとお願いしました。民族団体の名前も北海道ウタリ協会から北海道アイヌ協会に戻しました。 2019(令和元)年、政府はアイヌ施策推進法で日本の「先住民族」にアイヌ民族を初めて入れました。アイヌ施策推進法から北海道アイヌ協会側も話し合いに参加して、アイヌ民族向けの新しい政策を行っています。2020年、北海道白老町に民族共生象徴空間ウポポイが開かれました。アイヌ語講座・アイヌ文化活動・アイヌ語活動が日本各地で開かれてもいます。 [[ファイル:Keizo Obuchi 19980730.jpg|サムネイル|168x168ピクセル|小渕恵三]] 1998年7月の参議院議員選挙で自由民主党議席数は大きく減らし、この結果から橋本龍太郎も内閣総理大臣を辞めました。これを受けて、<span style="color:#f29100">'''小渕恵三'''</span>が内閣総理大臣に選ばれました。小渕恵三内閣はバブル崩壊に消費税増税・金融不安・アジア通貨危機なども重なり、橋本龍太郎の財政再建路線を修正しました。小渕恵三内閣は土木工事・公共施設建築工事の大型予算を組んでその潤いから複合不況まで立て直そうとしました。その結果、政府は赤字国債発行額を再び大幅に増やしました。 1999年、小渕恵三内閣は国会法案の賛成を増やしたいから自由党〔1月〕・公明党〔10月〕も自由民主党と一緒に内閣を支えていました[自自公連立政権の開始]。その結果、自由民主党・自由党・公明党は衆議院・参議院の両方で過半数の議席を持つようになりました。小渕恵三内閣から自由民主党と公明党は2025年10月まで一緒に内閣を支えました。 1999年、小渕恵三内閣は'''新ガイドライン関連法'''をまとめました。新ガイドライン関連法の<span style="color:#f29100">'''周辺事態安全確保法'''</span>は日本周辺国家の暴走で自国の平和と安全まで守れなくなったら、自衛隊を出してアメリカ軍へ必要物資を送りました。 [[ファイル:G8 2000 group photo (kremlin.ru).jpg|サムネイル|223x223px|第26回主要国首脳会議]] 1999年、小渕恵三内閣は日の丸と君が代を国旗・国歌法へ初めて記しました。また、国民は情報公開法に従って官公庁へ資料を見せてほしいとお願いしやすくなりました。国会は憲法調査会で憲法を変えるかどうか話し合いました。小渕恵三内閣は2000年に九州・沖縄で第26回主要国首脳会議[サミット]開くと決めました。 この時期は野党も大きく変わりました。社会民主党の支持者は少しずつ減りました。新進党は議員の大量離脱から1997年末になくなりました。旧新進党の議員は違う政党[自由党・新党平和・民主党]に入りました。1996年、鳩山由紀夫・菅直人が民主党を結成しました。その後、旧新進党議員も民主党へ入りました。さらに、新党平和・黎明クラブを公明党に戻しました。 こうして、自由民主党と日本社会党が長く争う55年体制も終わりました。55年体制が終わっても、自由民主党と民主党の保守二大政党制へ繋がりませんでした。自由民主党が再び政権へ戻っても、自由党・公明党と一緒に内閣を支えていました。 == 資料出所 == * 平雅行、横田冬彦ほか編著『日本史探究』実教出版株式会社 2023年 * 佐藤信、五味文彦ほか編著『詳説日本史探究』株式会社山川出版社 2023年 * 高埜利彦、高村直助ほか編著『日本史A 改訂版』株式会社山川出版社 2016年 * 渡邊晃宏ほか編著『日本史探究』東京書籍株式会社 2023年 * 伊藤純郎ほか編著『高等学校日本史探究』株式会社清水書院 2023年 * 大橋幸泰ほか編著『高等学校日本史探究』株式会社第一学習社 2023年 * 山中裕典著'''『'''改訂版 大学入学共通テスト 歴史総合、日本史探究の点数が面白いほどとれる本'''』'''株式会社KADOKAWA 2024年 * 佐藤信、五味文彦ほか編著『詳説日本史研究』株式会社山川出版社 2017年 * 河合敦著『世界一わかりやすい河合敦の日本史B[近・現代]の特別講座』株式会社KADOKAWA 2014年(絶版本) * 外園豊基編集代表『最新日本史図表』株式会社第一学習社 2026年 * 東京法令出版編著『歴史資料館 日本史のライブラリー』東京法令出版株式会社 2026年 [[カテゴリ:高等学校日本史探究|あらたなせいきのにほんへ]] [[カテゴリ:20世紀]] frarcux84mupnb9lz4456guigoq30e5 304988 304987 2026-10-21T23:43:08Z Kwawe 68789 /* 政界再編と55年体制の終結 */ 湾岸戦争後、日本も国際連合平和維持活動(PKO)を行うように求められた。 304988 wikitext text/x-wiki [[小学校・中学校・高等学校の学習]]>[[高等学校の学習]]>[[高等学校地理歴史]]>[[高等学校日本史探究]]>新たな世紀の日本へⅡ  引き続き「新たな世紀の日本へ」の内容を解説します。第2回目では、政界再編から小渕恵三内閣までの国内政治を見ていきます。 == 政界再編と55年体制の終結 == 1975年、国鉄職員などは大きなストライキ「スト権スト」を行って政府側に争議権の回復を求めても失敗しました。その後、官公庁労働組合はストライキなどをあまり行わなくなりました。民間大企業の労働組合も春闘で大幅な賃上げを求めにくくなりました。 その後、民間労働組合は1つにまとまり始めました。1987年、全日本民間労働組合連合会[民間連合]をつくりました。1989年の日本労働組合総評議会[総評]解散後、元日本労働組合総評議会[総評]は全日本民間労働組合連合会[民間連合]に合流しました。その後、全日本民間労働組合連合会[民間連合]と同盟などの労働組合は1つにまとまって<span style="color:#f29100">'''日本労働組合総連合会[連合]'''</span>をつくりました。約800万人が日本労働組合総連合会[連合]に入りました。 一方、日本労働組合総連合会[連合]の敵側は全国労働組合総連合[全労連]をつくりました。約140万人が全国労働組合総連合[全労連]に入りました。さらに日本労働組合総連合会[連合]と全国労働組合総連合[全労連]の敵側は全国労働組合連絡協議会[全労協]をつくりました。こうして、野党支持側の労働組合は日本労働組合総連合会[連合]・全国労働組合総連合[全労連]・全国労働組合連絡協議会[全労協]に分かれました。<gallery mode="packed" heights="200"> ファイル:Sohyo Kaikan (headquarters of the Japanese Trade Union Confederation).jpg|日本労働組合総連合会 ファイル:Zenrouren Kaikan (1).jpg|全国労働組合総連合 ファイル:Kiichi Miyazawa 19911105.jpg|宮沢喜一 </gallery>政治家と企業の金銭やり取りが冷戦後の日本で問題になりました。リクルート事件〔竹下内閣〕・佐川急便事件〔宮澤喜一内閣〕・ゼネコン汚職事件〔宮澤喜一内閣〕が起きました。自由民主党副総裁の金丸信も1993年に逮捕されました。国民は政治家・官僚・企業の金銭やり取りへ文句を言い、自由民主党の不支持者まで増えました。 湾岸戦争後、日本も国際連合平和維持活動(PKO)を行うように求められました。宮澤喜一内閣は1992年にPKO協力法をつくりました。政府はPKO協力法に従って自衛隊を海外へ送り、戦後の復旧を行えるようになりました。1992年、日本の自衛隊はカンボジアの国際連合平和維持活動へ初めて向かいました。 1994年4月、新生党の羽田孜が内閣総理大臣になりました。しかし、日本社会党は新生党と一緒に内閣を支えなくなりました。羽田孜は国会議員の賛成を集められなくなり、約2か月で首相を辞めました。1994年6月、自由民主党は元野党側の日本社会党・新党さきがけと一緒に内閣を支えました[自社さ連立政権]。日本社会党の村山富市が内閣総理大臣になり、自由民主党も政権へ戻りました。一方、非自民連立政権側の新生党・日本新党・公明党・民社党などは1つにまとまって新進党をつくりました。 従来の日本社会党基本政策を村山富市内閣で大きく変えました。日本社会党は自衛隊を合憲としつつ日米安全保障条約と消費税までも受け入れました。こうして自由民主党と日本社会党の政策は近くなり、日本社会党の不支持者を増やしました。1995年、アジア・太平洋戦争終戦から50年を迎えました。国会は戦後50年目の反省文内容をまとめました。8月15日、村山富市内閣総理大臣はアジア・太平洋戦争の反省とお詫びを「戦後50周年の終戦記念日にあたって」で伝えました(村山談話)。 現地の国民は日本側の植民地支配と侵略から被害を受けており、村山談話でその反省とお詫びを該当国首脳へ伝えました。その後の内閣も村山談話を受け継ぎました。政府は戦後50年目に合わせて、日本とアジア諸国の近現代史資料を国民へ広く公開しました。さらにインターネットでも歴史資料を公開したいから、アジア歴史資料センター開く準備をしました。2001年、アジア歴史資料センターを開きました。政党の結成・解党・合流まで活発になり、各政党のどこにも入らない無党派層も増えました。以降は単独政党のみで内閣を支えきれなくなり、複数政党と一緒に内閣を支えました。 == バブルの崩壊 == プラザ合意後、大量のお金が土地購入・株式購入のために使われ、土地の値段・株価[資産価格]が次第に上がりました(資産インフレ)。1989(平成元)年、日本銀行は銀行へお金をあまり貸さなくなり、政府も土地の値段を上げすぎないようにしました(金融引き締め政策)。1990年代に入ってから、土地の値段・株価は下がり始めました。日経平均株価は、1989年12月末に3万8915円まで上がりました。しかし、その後は株式売却が増えて株価もいきなり下がり、1992年8月に1万4309円まで下がりました。土地の値段も1991年頃から下がり始め、1992年以後は日本各地で下がりました。2000年代半ばになると、大阪の一部商業地は一番高い時期の値段から約10分の1まで下がりました。こうして土地や株式の大幅な値上がりは終わり、1980年代後半のバブル経済は終わりました。 ★日本の実質経済成長率の推移 [[ファイル:GDP_growth_rate_in_Japan.svg|代替文=日本の実質経済成長率の推移|フレームなし|924x924px]] 日本の景気は1991年から悪くなりました('''平成不況''')。実質経済成長率は1992年に1.3%、1993年に1%未満まで下がりました。1992年を3か月ずつに分けて見ると、4~6月は-3.3%となり、前の3か月より国内経済が小さくなりました。7~9月と10~12月もそれぞれ-0.1%となりました。第1次石油危機後に2期連続の経済縮小時期はあっても、3期連続の経済縮小は戦後初めてでした。僅かな景気回復時期も平成不況の途中にありました。しかしすぐに経済縮小となり、平成不況が長年続きました。 バブル経済当時の国民は金融機関からお金を借りて、株価と地価をより高い価格で買いました。金融機関は不動産会社にもお金を貸しました。バブル崩壊後、株価と地価が大きく下がりました。国民は株と土地を全て売っても借金を返せなくなりました。国民の借金も金融機関へ返ってこなくなりました(不良債権)。金融機関は株と土地を債権として持っており、不良債権から金融機関も大赤字になりました。 金融機関は不良債権処理にずっと追われて、さらに苦しくなりました。その結果、金融機関は不良債権の心配からお金を貸さなくなりました。企業は金融機関からお金を借りにくくなりました。国民も「この金融機関は大丈夫か」と不安を感じるようになり、金融機関はさらに苦しくなりました。その後、企業は新しい商品を作れなくなり、新しい工場を建てられなくなり、新しい機械も買えなくなりました。地価の下落・株価の下落・不良債権の増加・金融機関の経営悪化・金融機関の融資停止が全て重なって景気も次第に悪くなりました('''複合不況''')。 当時の政府と日本銀行はこれまでの不況と同じように、財政支出の拡大・低金利政策から数年で景気も回復するかもと思っていました。この誤対策は複合不況に一切効果ありません。住宅金融専門会社は1995年頃から相次いでつぶれました。1997年、北海道拓殖銀行と山一証券がつぶれました。1998年、日本債券信用銀行と日本長期信用銀行がつぶれました。このように大手金融機関がつぶれると、国民も他の金融機関も危ないのではないかと不安になりました。政府は金融システムまで止まらないように、倒産寸前の大手金融機関などに大量の公的資金を入れました。<gallery mode="nolines" widths="200" heights="200"> ファイル:The Hokkaido Takushoku Bank.JPG|旧北海道拓殖銀行本店 ファイル:Kayabacho Tower, at Shinkawa, Chuo, Tokyo (2019-01-02) 02.jpg|旧山一證券本社 ファイル:日債銀本店.jpg|旧日本債券信用銀行本店 ファイル:Shinsei Bank (head office 1).jpg|旧日本長期信用銀行本店 </gallery>1998年、小渕恵三が内閣総理大臣になりました。小渕恵三内閣も大型予算から景気を回復させしようとしました。小渕内閣が公共投資を増やして国民のお金を回そうとしても複合不況に一切効果ありません。こうして、公債発行残高は増えました。物価は1990年代後半からずっと下がり続けました(デフレスパイラル)。 [[ファイル:Unemployment Rate of Japan 1953-2009.jpg|サムネイル|395x395ピクセル|日本の失業率]] 企業は赤字なので、生き残るために経営の効率化[事業整理・人員削減・雇用調整・海外進出など]を進めました(リストラクチャリング)。中小企業の倒産も増えて、中高年労働者の解雇・中高年労働者の早期退職・新卒採用の削減から企業の人件費を大幅に減らしました。バブル景気の時期は労働者不足から「売り手市場」でも、バブル崩壊後から「買い手市場」へ変わりました。1990年代半ばから2000年代前半、企業は新卒採用を大幅に減らしました(就職氷河期)。1998年の完全失業率は4%を超え、2001年の完全失業率で5%になりました。 失業者が増えると労働者も「自分も仕事を失うかもしれない」と不安になり、個人消費を減らしました。消費者は同じような商品なら出来るだけ安い商品を選ぶようになり、ブランド品・高級品を買ってくれなくなりました。商品が売れなくなると、会社も少量生産・既存工場・既存機械だけで行うようになりました。その結果、会社の利益がさらに減って、人員削減・採用縮小もさらに進みました。株価と地価の下落から不良債権が増えて、金融機関の経営も苦しくなり、企業へお金を貸せなくなりました。 円高も国際分業も進みました。1994年、1ドルが100円を割り込みました。輸出主導・量産指向型産業[自動車・電子・家電・事務機器など]は海外で売れにくくなりました。また、バブル崩壊後の不景気から国内の購入者も減りました。生産費用を少しでも減らすため、労働者の給料が日本より低いアジア諸国[中国など]へ工場を移すようになりました[国内工場の閉鎖・国内工場の海外移転]。その結果、地元企業・周辺店舗の売り上げを減らし、失業者を増やしました(地域'''産業の空洞化''')。 繊維産業の事業所数は減り続けました。2015年の繊維産業の事業所数は1991年と比べて約4分の1になりました。国内衣料品市場のうち海外衣料品購入割合は1991年で52%になり、2017年で97%まで上がりました。多数の多国籍企業が1990年代後半に日本企業を合併したり、買収したりしました。企業が日本型雇用を取り入れていても競争力強化・経営効率化から人員削減・能力給の導入を進めました。その結果、働き方の不安定さが広がりました。 日本は技術面でも負けています。1980年代、日本企業はエレクトロニクス[電子機器]・新素材・バイオテクノロジーなどの技術でアメリカに追いつこうとしていました。1990年代から情報通信技術の活用や生産性の伸びでアメリカ合衆国に負けました。商品は日本国内で売れにくくなり、業務内容も変わっていきました。そのため、日本企業は海外企業に負けないような対策を取りました。 バブル崩壊後、銀行制度・企業制度も変えられました。「日本版金融ビッグバン」を1996年に打ち出して、銀行・証券会社などにも規制を緩めて金融の自由化・国際化を進めました。1997年の独占禁止法改正から禁止の持株会社を再度認めました。企業は持株会社からグループ内の会社をまとめ直したり、経営の進め方を変えたりしやすくなり、その後の企業再編・金融再編にもつながりました。 以前の大規模小売店舗法は店舗面積500平方メートル以上の大規模小売店舗出店条件として出店規模・営業時間・営業日数などを定めていました。しかし、大規模小売店舗は中小小売業者の近くにも自由に出店しており、中小小売業者のお客様まで消えました。そのため、政府は大規模小売店舗の立地場所を1998年から制限しました(大規模小売店舗立地法)。中小小売業者から流れすぎないように守りながら、大規模小売店舗も中小小売業者も商売を続けられるようにしました。2000年、大規模小売店舗法を廃止しました。[[ファイル:Asian Financial Crisis EN-2009-05-05.png|サムネイル|273x273px|アジア通貨危機の影響国]]企業再編・合併は政府の規制緩和から広がり、海外企業と国内企業の協力・合併も増えました。その流れから六大企業集団もまとまりました。金融業界でも銀行などが倒産したり、別の銀行と合併したりしました。その結果、日本の金融業界は三井住友グループ[旧三井系と旧住友系]・三菱UFJ[旧三菱系と三和系]・みずほグループ[旧第一勧銀系と旧富士系]の三大金融グループへまとまりました。 国内長期不況で苦しむ中、アジア諸国の経済は大成長しました。しかし短期海外資金の依存・金融機関の過剰な借入れ・企業の過剰な借入れ・金融制度の弱さ・投機資金の流入などから海外投資家が危機感を示して一斉に海外資金を回収・売却・国外移動を行いました。1997年、タイの通貨バーツの価値が大きく下がりました。海外投資家は東アジア・東南アジアから次々と海外資金を回収・売却・国外移動を行いました(アジア通貨危機)。その結果、東アジア・東南アジア諸国の金融と経済は大きな爪痕を残しました。債務問題は韓国などで大きくなり、国際通貨基金(International Monetary Fund:IMF)の支援を受けました。アジア通貨危機は日本経済と日本の金融機関にも大きな爪痕を残して、不良債権問題をさらに悪化させました。 日本政府はアジア通貨危機の発生から地域的な金融協力制度[アジア通貨基金構想]を出しました。しかし、アメリカ合衆国の反対から日本政府は二国間金融支援と新宮沢構想などに切り替えて、東アジア諸国を金銭面で助けました。 バブル経済崩壊後の平成不況はずっと続きました。景気は2002年初期に少しだけ上向きました。しかし、政府が公共事業中心の従来型景気対策を抑えながら不良債権処理と規制改革を進めました。その結果、企業は引き続き大規模なリストラと雇用調整を行いました。当初、バブル崩壊後の長期停滞は「失われた10年」とよばれました。その後も日本経済の停滞が強く、「失われた20年」「失われた30年」とよばれました。 == 行政改革と日米安保の変化 == 1990年代後半、大規模災害の対策・重大事件への対策・行政改革・財政改革・金融改革・冷戦後の日米安全保障体制見直し・政党の組み直しを行いました。1995年1月17日、阪神・淡路地域でマグニチュード7.3の<span style="color:#f29100">'''阪神・淡路大震災[兵庫県南部地震]'''</span>が起こりました。神戸市を中心に6400人以上が亡くなり、建造物・高速道路までも大きく壊れました。当地震で大都市は自然災害に弱く、都市政策・耐震化基準・防災体制の見直しをしました。また、国民は被災地に入って、避難民[被災者]の生活を支えたり、被災地の後片付けを手伝ったりしました。この活動からボランティア活動が全国に広がりました。 1995年3月20日、オウム真理教集団は東京都の地下鉄でサリンを撒いて、多数の死傷者を出しました(<span style="color:#f29100">'''地下鉄サリン事件'''</span>)。このように阪神・淡路大震災と地下鉄サリン事件・少年犯罪の殺人事件・児童虐待などが何度も報道機関で取り上げられ、旧価値観的な安全神話も崩れて国民の意識も変わりました。<gallery mode="packed" widths="200" heights="200"> ファイル:Hanshin Expressway Nada b059.jpg|阪神淡路大震災被災後 ファイル:【地下鉄サリン事件】除染を行う自衛隊員と警察官.jpg|地下鉄サリン事件 ファイル:Ryutaro Hashimoto 19960111.jpg|橋本龍太郎 ファイル:Ryuhei Kawada 20240307.jpg|川田龍平 </gallery>1995年9月、自由民主党総裁選挙から<span style="color:#f29100">'''橋本龍太郎'''</span>が選ばれました。1996年1月、村山富市首相退陣後の内閣総理大臣指名選挙で橋本龍太郎が選ばれました。橋本内閣でも自民党・社会民主党・新党さきがけの3党が引き続き協力して、政策を進めました。なお日本社会党は自衛隊・日米安全保障条約の賛成側に回り、1996年に党名を社会民主党へ変えました。 薬害エイズ問題も大きく取り上げられました。橋本龍太郎内閣厚生大臣の菅直人は薬害エイズ被害者[川田龍平など]に謝罪しました。その後、国と製薬会社と被害者が話し合い、和解しました。 1996年、新しい選挙制度で初めて衆議院議員総選挙が行われ、自由民主党の議席を大きく増やしても、過半数を下回りました。社会民主党と新党さきがけは第2次橋本内閣から国務大臣を出さなくなり、閣外協力に変わりました。その結果、自由民主党単独政権に戻りました。 橋本龍太郎内閣は冷戦後の国際変化・国内経済・政府問題を解決するため、行政・財政・金融の各分野を見直しました。行政改革は政府組織を減らしたり、類似の政府組織を1つにまとめたりして、首相などの政策案を出しやすくしました。1998年、中央省庁等改革基本法が導入されて中央省庁等改革関連法から行政改革の方針を決めました。 2001年1月、政府はこの行政改革の方針から中央省庁を1府22省庁から1府12省庁に減らしました。その結果、内閣総理大臣は各省庁へ指示を出して、政府全体の政策を進めやすくしました。2007年、防衛庁を防衛省に上げました。 ★省庁再編 {| class="wikitable" !再編前 !再編後 !再編前 !再編後 |- |内閣官房 |内閣官房 |大蔵省 |財務省 |- | rowspan="2" |総理府 金融再生委員会 経済企画庁 沖縄開発庁 | rowspan="2" |内閣府 |科学技術庁 文部省 |文部科学省 |- |厚生省 労働省 |厚生労働省 |- |国家公安委員会 |国家公安委員会 |農林水産省 |農林水産省 |- |防衛庁 |防衛庁(省) |通商産業省 |経済産業省 |- |総務庁 郵政省 自治省 |総務省 | rowspan="2" |北海道開発庁 国土庁 建設省 運輸省 | rowspan="2" |国土交通省 |- |法務省 |法務省 |- |外務省 |外務省 |環境庁 |環境省 |} 橋本龍太郎内閣は国債の発行額を減らそうとしました。1997年4月、財政構造改革法に従って消費税率を3%から5%に引き上げて公共事業費などを減らしました。国債発行額は1970年代後半から増えても1980年代末で一度減りました。1990年代に入り、公共投資を再拡大させてから大幅な国債発行額増加に向かいました。 しかし、国民は消費税率の引き上げなどから財布の紐もきつくなり、金融機関も生き残れなくなりました。さらにアジア通貨・金融危機も起きて、日本経済は再不況になりました。やがて、銀行同士は金融不安の拡大から合併して1つの銀行になりました。1997年度の実質経済成長率は-0.4%となり、1974年度[第1次石油危機直後]以来のマイナス成長になりました。1998年度の実質経済成長率は-2%まで下がり、平成不況の大きさを改めて物語りました。 [[ファイル:Official Portrait of President William Jefferson Clinton - DPLA - 4697184146b3b6e2d6791b8f3c297476.jpg|サムネイル|221x221ピクセル|ビル・クリントン大統領]] 冷戦後、橋本龍太郎内閣は日米安全保障体制を見直しました。アメリカのビル・クリントン大統領が1996年4月に日本を訪れ、橋本首相と話し合って<span style="color:#f29100">'''日米安全保障共同宣言'''</span>を発表しました。日米安全保障共同宣言から日本とアメリカは日本防衛以外にもアジア太平洋地域の戦争防止・紛争防止まで努めていくようになりました。 自衛隊がアメリカ軍に必要物資を運ぶなどの後方支援についても、日米防衛協力のための指針を見直しました。1997年、日本政府とアメリカ合衆国政府は「新しい日米防衛協力のための指針(新ガイドライン)」を作りました。 日本が外国から直接攻撃されても直接攻撃されていなくても、日本周辺国の戦争などから日本の平和と安全に大きく関わっていたらアメリカ合衆国側も新ガイドラインに従って助け合いました(周辺事態)。ただし日本から何キロ以内というような距離だけだとアメリカ合衆国側は何もしません。 地球温暖化防止京都会議は1997年に開かれ、温室効果ガスの削減目標などを盛り込む京都議定書を採択しました。また、橋本龍太郎内閣は従来のアイヌ民族政策を大きく変えました。 アイヌ民族は1946年2月に北海道アイヌ協会を作り、アイヌ民族の権利を政府に求めました。北海道旧土人保護法からアイヌ民族用の土地[給与地]を貰っても、農地改革で買収されたくありませんでした。しかしアイヌ民族をずっと厳しく人種差別しており、アイヌ民族の一部は北海道から逃げました。その後、北海道アイヌ協会は名前を北海道ウタリ協会に変えました。[[ファイル:UPOPOY 202608.jpg|サムネイル|民族共生象徴空間ウポポイ]]1980年代、世界各地の先住民族が先住民族の権利を政府に求めました。北海道ウタリ協会は政府に北海道旧土人保護法を廃止して新しい法律を作ってほしいと求めました。1997年、国会はアイヌ民族文化をずっと守っていくためにアイヌ文化振興法を作り、北海道旧土人保護法を廃止しました。 その後もアイヌ民族政策は変わりました。2008年、国会はアイヌ民族を日本の先住民族と認めて、内閣へアイヌ民族の権利・生活・文化なども認めてほしいとお願いしました。民族団体の名前も北海道ウタリ協会から北海道アイヌ協会に戻しました。 2019(令和元)年、政府はアイヌ施策推進法で日本の「先住民族」にアイヌ民族を初めて入れました。アイヌ施策推進法から北海道アイヌ協会側も話し合いに参加して、アイヌ民族向けの新しい政策を行っています。2020年、北海道白老町に民族共生象徴空間ウポポイが開かれました。アイヌ語講座・アイヌ文化活動・アイヌ語活動が日本各地で開かれてもいます。 [[ファイル:Keizo Obuchi 19980730.jpg|サムネイル|168x168ピクセル|小渕恵三]] 1998年7月の参議院議員選挙で自由民主党議席数は大きく減らし、この結果から橋本龍太郎も内閣総理大臣を辞めました。これを受けて、<span style="color:#f29100">'''小渕恵三'''</span>が内閣総理大臣に選ばれました。小渕恵三内閣はバブル崩壊に消費税増税・金融不安・アジア通貨危機なども重なり、橋本龍太郎の財政再建路線を修正しました。小渕恵三内閣は土木工事・公共施設建築工事の大型予算を組んでその潤いから複合不況まで立て直そうとしました。その結果、政府は赤字国債発行額を再び大幅に増やしました。 1999年、小渕恵三内閣は国会法案の賛成を増やしたいから自由党〔1月〕・公明党〔10月〕も自由民主党と一緒に内閣を支えていました[自自公連立政権の開始]。その結果、自由民主党・自由党・公明党は衆議院・参議院の両方で過半数の議席を持つようになりました。小渕恵三内閣から自由民主党と公明党は2025年10月まで一緒に内閣を支えました。 1999年、小渕恵三内閣は'''新ガイドライン関連法'''をまとめました。新ガイドライン関連法の<span style="color:#f29100">'''周辺事態安全確保法'''</span>は日本周辺国家の暴走で自国の平和と安全まで守れなくなったら、自衛隊を出してアメリカ軍へ必要物資を送りました。 [[ファイル:G8 2000 group photo (kremlin.ru).jpg|サムネイル|223x223px|第26回主要国首脳会議]] 1999年、小渕恵三内閣は日の丸と君が代を国旗・国歌法へ初めて記しました。また、国民は情報公開法に従って官公庁へ資料を見せてほしいとお願いしやすくなりました。国会は憲法調査会で憲法を変えるかどうか話し合いました。小渕恵三内閣は2000年に九州・沖縄で第26回主要国首脳会議[サミット]開くと決めました。 この時期は野党も大きく変わりました。社会民主党の支持者は少しずつ減りました。新進党は議員の大量離脱から1997年末になくなりました。旧新進党の議員は違う政党[自由党・新党平和・民主党]に入りました。1996年、鳩山由紀夫・菅直人が民主党を結成しました。その後、旧新進党議員も民主党へ入りました。さらに、新党平和・黎明クラブを公明党に戻しました。 こうして、自由民主党と日本社会党が長く争う55年体制も終わりました。55年体制が終わっても、自由民主党と民主党の保守二大政党制へ繋がりませんでした。自由民主党が再び政権へ戻っても、自由党・公明党と一緒に内閣を支えていました。 == 資料出所 == * 平雅行、横田冬彦ほか編著『日本史探究』実教出版株式会社 2023年 * 佐藤信、五味文彦ほか編著『詳説日本史探究』株式会社山川出版社 2023年 * 高埜利彦、高村直助ほか編著『日本史A 改訂版』株式会社山川出版社 2016年 * 渡邊晃宏ほか編著『日本史探究』東京書籍株式会社 2023年 * 伊藤純郎ほか編著『高等学校日本史探究』株式会社清水書院 2023年 * 大橋幸泰ほか編著『高等学校日本史探究』株式会社第一学習社 2023年 * 山中裕典著'''『'''改訂版 大学入学共通テスト 歴史総合、日本史探究の点数が面白いほどとれる本'''』'''株式会社KADOKAWA 2024年 * 佐藤信、五味文彦ほか編著『詳説日本史研究』株式会社山川出版社 2017年 * 河合敦著『世界一わかりやすい河合敦の日本史B[近・現代]の特別講座』株式会社KADOKAWA 2014年(絶版本) * 外園豊基編集代表『最新日本史図表』株式会社第一学習社 2026年 * 東京法令出版編著『歴史資料館 日本史のライブラリー』東京法令出版株式会社 2026年 [[カテゴリ:高等学校日本史探究|あらたなせいきのにほんへ]] [[カテゴリ:20世紀]] 08u1q6c0wuekzqlfqb57p7c1srf61vo 304989 304988 2026-10-21T23:44:13Z Kwawe 68789 /* 政界再編と55年体制の終結 */ 国民は相次ぐ政治家と企業の金銭やり取りから政治の仕組みを変えるように求めた。そこで、衆議院議員選挙を中選挙区制の区割りをやめて小選挙区制の区割りに切り替えられた。 304989 wikitext text/x-wiki [[小学校・中学校・高等学校の学習]]>[[高等学校の学習]]>[[高等学校地理歴史]]>[[高等学校日本史探究]]>新たな世紀の日本へⅡ  引き続き「新たな世紀の日本へ」の内容を解説します。第2回目では、政界再編から小渕恵三内閣までの国内政治を見ていきます。 == 政界再編と55年体制の終結 == 1975年、国鉄職員などは大きなストライキ「スト権スト」を行って政府側に争議権の回復を求めても失敗しました。その後、官公庁労働組合はストライキなどをあまり行わなくなりました。民間大企業の労働組合も春闘で大幅な賃上げを求めにくくなりました。 その後、民間労働組合は1つにまとまり始めました。1987年、全日本民間労働組合連合会[民間連合]をつくりました。1989年の日本労働組合総評議会[総評]解散後、元日本労働組合総評議会[総評]は全日本民間労働組合連合会[民間連合]に合流しました。その後、全日本民間労働組合連合会[民間連合]と同盟などの労働組合は1つにまとまって<span style="color:#f29100">'''日本労働組合総連合会[連合]'''</span>をつくりました。約800万人が日本労働組合総連合会[連合]に入りました。 一方、日本労働組合総連合会[連合]の敵側は全国労働組合総連合[全労連]をつくりました。約140万人が全国労働組合総連合[全労連]に入りました。さらに日本労働組合総連合会[連合]と全国労働組合総連合[全労連]の敵側は全国労働組合連絡協議会[全労協]をつくりました。こうして、野党支持側の労働組合は日本労働組合総連合会[連合]・全国労働組合総連合[全労連]・全国労働組合連絡協議会[全労協]に分かれました。<gallery mode="packed" heights="200"> ファイル:Sohyo Kaikan (headquarters of the Japanese Trade Union Confederation).jpg|日本労働組合総連合会 ファイル:Zenrouren Kaikan (1).jpg|全国労働組合総連合 ファイル:Kiichi Miyazawa 19911105.jpg|宮沢喜一 </gallery>政治家と企業の金銭やり取りが冷戦後の日本で問題になりました。リクルート事件〔竹下内閣〕・佐川急便事件〔宮澤喜一内閣〕・ゼネコン汚職事件〔宮澤喜一内閣〕が起きました。自由民主党副総裁の金丸信も1993年に逮捕されました。国民は政治家・官僚・企業の金銭やり取りへ文句を言い、自由民主党の不支持者まで増えました。 湾岸戦争後、日本も国際連合平和維持活動(PKO)を行うように求められました。宮澤喜一内閣は1992年にPKO協力法をつくりました。政府はPKO協力法に従って自衛隊を海外へ送り、戦後の復旧を行えるようになりました。1992年、日本の自衛隊はカンボジアの国際連合平和維持活動へ初めて向かいました。 国民は相次ぐ政治家と企業の金銭やり取りから政治の仕組みを変えるように求めました。そこで、衆議院議員選挙を中選挙区制の区割りをやめて小選挙区制の区割りに切り替えられました。小選挙区制は1つの選挙区から1人だけを選ぶため、各政党の政策まではっきり分かるようになります。二大政党が小選挙区制の区割りで争うと選挙結果次第で政権交代に結び付きやすくなります。しかし、小さな政党は議席を取りにくくなります。 1994年4月、新生党の羽田孜が内閣総理大臣になりました。しかし、日本社会党は新生党と一緒に内閣を支えなくなりました。羽田孜は国会議員の賛成を集められなくなり、約2か月で首相を辞めました。1994年6月、自由民主党は元野党側の日本社会党・新党さきがけと一緒に内閣を支えました[自社さ連立政権]。日本社会党の村山富市が内閣総理大臣になり、自由民主党も政権へ戻りました。一方、非自民連立政権側の新生党・日本新党・公明党・民社党などは1つにまとまって新進党をつくりました。 従来の日本社会党基本政策を村山富市内閣で大きく変えました。日本社会党は自衛隊を合憲としつつ日米安全保障条約と消費税までも受け入れました。こうして自由民主党と日本社会党の政策は近くなり、日本社会党の不支持者を増やしました。1995年、アジア・太平洋戦争終戦から50年を迎えました。国会は戦後50年目の反省文内容をまとめました。8月15日、村山富市内閣総理大臣はアジア・太平洋戦争の反省とお詫びを「戦後50周年の終戦記念日にあたって」で伝えました(村山談話)。 現地の国民は日本側の植民地支配と侵略から被害を受けており、村山談話でその反省とお詫びを該当国首脳へ伝えました。その後の内閣も村山談話を受け継ぎました。政府は戦後50年目に合わせて、日本とアジア諸国の近現代史資料を国民へ広く公開しました。さらにインターネットでも歴史資料を公開したいから、アジア歴史資料センター開く準備をしました。2001年、アジア歴史資料センターを開きました。政党の結成・解党・合流まで活発になり、各政党のどこにも入らない無党派層も増えました。以降は単独政党のみで内閣を支えきれなくなり、複数政党と一緒に内閣を支えました。 == バブルの崩壊 == プラザ合意後、大量のお金が土地購入・株式購入のために使われ、土地の値段・株価[資産価格]が次第に上がりました(資産インフレ)。1989(平成元)年、日本銀行は銀行へお金をあまり貸さなくなり、政府も土地の値段を上げすぎないようにしました(金融引き締め政策)。1990年代に入ってから、土地の値段・株価は下がり始めました。日経平均株価は、1989年12月末に3万8915円まで上がりました。しかし、その後は株式売却が増えて株価もいきなり下がり、1992年8月に1万4309円まで下がりました。土地の値段も1991年頃から下がり始め、1992年以後は日本各地で下がりました。2000年代半ばになると、大阪の一部商業地は一番高い時期の値段から約10分の1まで下がりました。こうして土地や株式の大幅な値上がりは終わり、1980年代後半のバブル経済は終わりました。 ★日本の実質経済成長率の推移 [[ファイル:GDP_growth_rate_in_Japan.svg|代替文=日本の実質経済成長率の推移|フレームなし|924x924px]] 日本の景気は1991年から悪くなりました('''平成不況''')。実質経済成長率は1992年に1.3%、1993年に1%未満まで下がりました。1992年を3か月ずつに分けて見ると、4~6月は-3.3%となり、前の3か月より国内経済が小さくなりました。7~9月と10~12月もそれぞれ-0.1%となりました。第1次石油危機後に2期連続の経済縮小時期はあっても、3期連続の経済縮小は戦後初めてでした。僅かな景気回復時期も平成不況の途中にありました。しかしすぐに経済縮小となり、平成不況が長年続きました。 バブル経済当時の国民は金融機関からお金を借りて、株価と地価をより高い価格で買いました。金融機関は不動産会社にもお金を貸しました。バブル崩壊後、株価と地価が大きく下がりました。国民は株と土地を全て売っても借金を返せなくなりました。国民の借金も金融機関へ返ってこなくなりました(不良債権)。金融機関は株と土地を債権として持っており、不良債権から金融機関も大赤字になりました。 金融機関は不良債権処理にずっと追われて、さらに苦しくなりました。その結果、金融機関は不良債権の心配からお金を貸さなくなりました。企業は金融機関からお金を借りにくくなりました。国民も「この金融機関は大丈夫か」と不安を感じるようになり、金融機関はさらに苦しくなりました。その後、企業は新しい商品を作れなくなり、新しい工場を建てられなくなり、新しい機械も買えなくなりました。地価の下落・株価の下落・不良債権の増加・金融機関の経営悪化・金融機関の融資停止が全て重なって景気も次第に悪くなりました('''複合不況''')。 当時の政府と日本銀行はこれまでの不況と同じように、財政支出の拡大・低金利政策から数年で景気も回復するかもと思っていました。この誤対策は複合不況に一切効果ありません。住宅金融専門会社は1995年頃から相次いでつぶれました。1997年、北海道拓殖銀行と山一証券がつぶれました。1998年、日本債券信用銀行と日本長期信用銀行がつぶれました。このように大手金融機関がつぶれると、国民も他の金融機関も危ないのではないかと不安になりました。政府は金融システムまで止まらないように、倒産寸前の大手金融機関などに大量の公的資金を入れました。<gallery mode="nolines" widths="200" heights="200"> ファイル:The Hokkaido Takushoku Bank.JPG|旧北海道拓殖銀行本店 ファイル:Kayabacho Tower, at Shinkawa, Chuo, Tokyo (2019-01-02) 02.jpg|旧山一證券本社 ファイル:日債銀本店.jpg|旧日本債券信用銀行本店 ファイル:Shinsei Bank (head office 1).jpg|旧日本長期信用銀行本店 </gallery>1998年、小渕恵三が内閣総理大臣になりました。小渕恵三内閣も大型予算から景気を回復させしようとしました。小渕内閣が公共投資を増やして国民のお金を回そうとしても複合不況に一切効果ありません。こうして、公債発行残高は増えました。物価は1990年代後半からずっと下がり続けました(デフレスパイラル)。 [[ファイル:Unemployment Rate of Japan 1953-2009.jpg|サムネイル|395x395ピクセル|日本の失業率]] 企業は赤字なので、生き残るために経営の効率化[事業整理・人員削減・雇用調整・海外進出など]を進めました(リストラクチャリング)。中小企業の倒産も増えて、中高年労働者の解雇・中高年労働者の早期退職・新卒採用の削減から企業の人件費を大幅に減らしました。バブル景気の時期は労働者不足から「売り手市場」でも、バブル崩壊後から「買い手市場」へ変わりました。1990年代半ばから2000年代前半、企業は新卒採用を大幅に減らしました(就職氷河期)。1998年の完全失業率は4%を超え、2001年の完全失業率で5%になりました。 失業者が増えると労働者も「自分も仕事を失うかもしれない」と不安になり、個人消費を減らしました。消費者は同じような商品なら出来るだけ安い商品を選ぶようになり、ブランド品・高級品を買ってくれなくなりました。商品が売れなくなると、会社も少量生産・既存工場・既存機械だけで行うようになりました。その結果、会社の利益がさらに減って、人員削減・採用縮小もさらに進みました。株価と地価の下落から不良債権が増えて、金融機関の経営も苦しくなり、企業へお金を貸せなくなりました。 円高も国際分業も進みました。1994年、1ドルが100円を割り込みました。輸出主導・量産指向型産業[自動車・電子・家電・事務機器など]は海外で売れにくくなりました。また、バブル崩壊後の不景気から国内の購入者も減りました。生産費用を少しでも減らすため、労働者の給料が日本より低いアジア諸国[中国など]へ工場を移すようになりました[国内工場の閉鎖・国内工場の海外移転]。その結果、地元企業・周辺店舗の売り上げを減らし、失業者を増やしました(地域'''産業の空洞化''')。 繊維産業の事業所数は減り続けました。2015年の繊維産業の事業所数は1991年と比べて約4分の1になりました。国内衣料品市場のうち海外衣料品購入割合は1991年で52%になり、2017年で97%まで上がりました。多数の多国籍企業が1990年代後半に日本企業を合併したり、買収したりしました。企業が日本型雇用を取り入れていても競争力強化・経営効率化から人員削減・能力給の導入を進めました。その結果、働き方の不安定さが広がりました。 日本は技術面でも負けています。1980年代、日本企業はエレクトロニクス[電子機器]・新素材・バイオテクノロジーなどの技術でアメリカに追いつこうとしていました。1990年代から情報通信技術の活用や生産性の伸びでアメリカ合衆国に負けました。商品は日本国内で売れにくくなり、業務内容も変わっていきました。そのため、日本企業は海外企業に負けないような対策を取りました。 バブル崩壊後、銀行制度・企業制度も変えられました。「日本版金融ビッグバン」を1996年に打ち出して、銀行・証券会社などにも規制を緩めて金融の自由化・国際化を進めました。1997年の独占禁止法改正から禁止の持株会社を再度認めました。企業は持株会社からグループ内の会社をまとめ直したり、経営の進め方を変えたりしやすくなり、その後の企業再編・金融再編にもつながりました。 以前の大規模小売店舗法は店舗面積500平方メートル以上の大規模小売店舗出店条件として出店規模・営業時間・営業日数などを定めていました。しかし、大規模小売店舗は中小小売業者の近くにも自由に出店しており、中小小売業者のお客様まで消えました。そのため、政府は大規模小売店舗の立地場所を1998年から制限しました(大規模小売店舗立地法)。中小小売業者から流れすぎないように守りながら、大規模小売店舗も中小小売業者も商売を続けられるようにしました。2000年、大規模小売店舗法を廃止しました。[[ファイル:Asian Financial Crisis EN-2009-05-05.png|サムネイル|273x273px|アジア通貨危機の影響国]]企業再編・合併は政府の規制緩和から広がり、海外企業と国内企業の協力・合併も増えました。その流れから六大企業集団もまとまりました。金融業界でも銀行などが倒産したり、別の銀行と合併したりしました。その結果、日本の金融業界は三井住友グループ[旧三井系と旧住友系]・三菱UFJ[旧三菱系と三和系]・みずほグループ[旧第一勧銀系と旧富士系]の三大金融グループへまとまりました。 国内長期不況で苦しむ中、アジア諸国の経済は大成長しました。しかし短期海外資金の依存・金融機関の過剰な借入れ・企業の過剰な借入れ・金融制度の弱さ・投機資金の流入などから海外投資家が危機感を示して一斉に海外資金を回収・売却・国外移動を行いました。1997年、タイの通貨バーツの価値が大きく下がりました。海外投資家は東アジア・東南アジアから次々と海外資金を回収・売却・国外移動を行いました(アジア通貨危機)。その結果、東アジア・東南アジア諸国の金融と経済は大きな爪痕を残しました。債務問題は韓国などで大きくなり、国際通貨基金(International Monetary Fund:IMF)の支援を受けました。アジア通貨危機は日本経済と日本の金融機関にも大きな爪痕を残して、不良債権問題をさらに悪化させました。 日本政府はアジア通貨危機の発生から地域的な金融協力制度[アジア通貨基金構想]を出しました。しかし、アメリカ合衆国の反対から日本政府は二国間金融支援と新宮沢構想などに切り替えて、東アジア諸国を金銭面で助けました。 バブル経済崩壊後の平成不況はずっと続きました。景気は2002年初期に少しだけ上向きました。しかし、政府が公共事業中心の従来型景気対策を抑えながら不良債権処理と規制改革を進めました。その結果、企業は引き続き大規模なリストラと雇用調整を行いました。当初、バブル崩壊後の長期停滞は「失われた10年」とよばれました。その後も日本経済の停滞が強く、「失われた20年」「失われた30年」とよばれました。 == 行政改革と日米安保の変化 == 1990年代後半、大規模災害の対策・重大事件への対策・行政改革・財政改革・金融改革・冷戦後の日米安全保障体制見直し・政党の組み直しを行いました。1995年1月17日、阪神・淡路地域でマグニチュード7.3の<span style="color:#f29100">'''阪神・淡路大震災[兵庫県南部地震]'''</span>が起こりました。神戸市を中心に6400人以上が亡くなり、建造物・高速道路までも大きく壊れました。当地震で大都市は自然災害に弱く、都市政策・耐震化基準・防災体制の見直しをしました。また、国民は被災地に入って、避難民[被災者]の生活を支えたり、被災地の後片付けを手伝ったりしました。この活動からボランティア活動が全国に広がりました。 1995年3月20日、オウム真理教集団は東京都の地下鉄でサリンを撒いて、多数の死傷者を出しました(<span style="color:#f29100">'''地下鉄サリン事件'''</span>)。このように阪神・淡路大震災と地下鉄サリン事件・少年犯罪の殺人事件・児童虐待などが何度も報道機関で取り上げられ、旧価値観的な安全神話も崩れて国民の意識も変わりました。<gallery mode="packed" widths="200" heights="200"> ファイル:Hanshin Expressway Nada b059.jpg|阪神淡路大震災被災後 ファイル:【地下鉄サリン事件】除染を行う自衛隊員と警察官.jpg|地下鉄サリン事件 ファイル:Ryutaro Hashimoto 19960111.jpg|橋本龍太郎 ファイル:Ryuhei Kawada 20240307.jpg|川田龍平 </gallery>1995年9月、自由民主党総裁選挙から<span style="color:#f29100">'''橋本龍太郎'''</span>が選ばれました。1996年1月、村山富市首相退陣後の内閣総理大臣指名選挙で橋本龍太郎が選ばれました。橋本内閣でも自民党・社会民主党・新党さきがけの3党が引き続き協力して、政策を進めました。なお日本社会党は自衛隊・日米安全保障条約の賛成側に回り、1996年に党名を社会民主党へ変えました。 薬害エイズ問題も大きく取り上げられました。橋本龍太郎内閣厚生大臣の菅直人は薬害エイズ被害者[川田龍平など]に謝罪しました。その後、国と製薬会社と被害者が話し合い、和解しました。 1996年、新しい選挙制度で初めて衆議院議員総選挙が行われ、自由民主党の議席を大きく増やしても、過半数を下回りました。社会民主党と新党さきがけは第2次橋本内閣から国務大臣を出さなくなり、閣外協力に変わりました。その結果、自由民主党単独政権に戻りました。 橋本龍太郎内閣は冷戦後の国際変化・国内経済・政府問題を解決するため、行政・財政・金融の各分野を見直しました。行政改革は政府組織を減らしたり、類似の政府組織を1つにまとめたりして、首相などの政策案を出しやすくしました。1998年、中央省庁等改革基本法が導入されて中央省庁等改革関連法から行政改革の方針を決めました。 2001年1月、政府はこの行政改革の方針から中央省庁を1府22省庁から1府12省庁に減らしました。その結果、内閣総理大臣は各省庁へ指示を出して、政府全体の政策を進めやすくしました。2007年、防衛庁を防衛省に上げました。 ★省庁再編 {| class="wikitable" !再編前 !再編後 !再編前 !再編後 |- |内閣官房 |内閣官房 |大蔵省 |財務省 |- | rowspan="2" |総理府 金融再生委員会 経済企画庁 沖縄開発庁 | rowspan="2" |内閣府 |科学技術庁 文部省 |文部科学省 |- |厚生省 労働省 |厚生労働省 |- |国家公安委員会 |国家公安委員会 |農林水産省 |農林水産省 |- |防衛庁 |防衛庁(省) |通商産業省 |経済産業省 |- |総務庁 郵政省 自治省 |総務省 | rowspan="2" |北海道開発庁 国土庁 建設省 運輸省 | rowspan="2" |国土交通省 |- |法務省 |法務省 |- |外務省 |外務省 |環境庁 |環境省 |} 橋本龍太郎内閣は国債の発行額を減らそうとしました。1997年4月、財政構造改革法に従って消費税率を3%から5%に引き上げて公共事業費などを減らしました。国債発行額は1970年代後半から増えても1980年代末で一度減りました。1990年代に入り、公共投資を再拡大させてから大幅な国債発行額増加に向かいました。 しかし、国民は消費税率の引き上げなどから財布の紐もきつくなり、金融機関も生き残れなくなりました。さらにアジア通貨・金融危機も起きて、日本経済は再不況になりました。やがて、銀行同士は金融不安の拡大から合併して1つの銀行になりました。1997年度の実質経済成長率は-0.4%となり、1974年度[第1次石油危機直後]以来のマイナス成長になりました。1998年度の実質経済成長率は-2%まで下がり、平成不況の大きさを改めて物語りました。 [[ファイル:Official Portrait of President William Jefferson Clinton - DPLA - 4697184146b3b6e2d6791b8f3c297476.jpg|サムネイル|221x221ピクセル|ビル・クリントン大統領]] 冷戦後、橋本龍太郎内閣は日米安全保障体制を見直しました。アメリカのビル・クリントン大統領が1996年4月に日本を訪れ、橋本首相と話し合って<span style="color:#f29100">'''日米安全保障共同宣言'''</span>を発表しました。日米安全保障共同宣言から日本とアメリカは日本防衛以外にもアジア太平洋地域の戦争防止・紛争防止まで努めていくようになりました。 自衛隊がアメリカ軍に必要物資を運ぶなどの後方支援についても、日米防衛協力のための指針を見直しました。1997年、日本政府とアメリカ合衆国政府は「新しい日米防衛協力のための指針(新ガイドライン)」を作りました。 日本が外国から直接攻撃されても直接攻撃されていなくても、日本周辺国の戦争などから日本の平和と安全に大きく関わっていたらアメリカ合衆国側も新ガイドラインに従って助け合いました(周辺事態)。ただし日本から何キロ以内というような距離だけだとアメリカ合衆国側は何もしません。 地球温暖化防止京都会議は1997年に開かれ、温室効果ガスの削減目標などを盛り込む京都議定書を採択しました。また、橋本龍太郎内閣は従来のアイヌ民族政策を大きく変えました。 アイヌ民族は1946年2月に北海道アイヌ協会を作り、アイヌ民族の権利を政府に求めました。北海道旧土人保護法からアイヌ民族用の土地[給与地]を貰っても、農地改革で買収されたくありませんでした。しかしアイヌ民族をずっと厳しく人種差別しており、アイヌ民族の一部は北海道から逃げました。その後、北海道アイヌ協会は名前を北海道ウタリ協会に変えました。[[ファイル:UPOPOY 202608.jpg|サムネイル|民族共生象徴空間ウポポイ]]1980年代、世界各地の先住民族が先住民族の権利を政府に求めました。北海道ウタリ協会は政府に北海道旧土人保護法を廃止して新しい法律を作ってほしいと求めました。1997年、国会はアイヌ民族文化をずっと守っていくためにアイヌ文化振興法を作り、北海道旧土人保護法を廃止しました。 その後もアイヌ民族政策は変わりました。2008年、国会はアイヌ民族を日本の先住民族と認めて、内閣へアイヌ民族の権利・生活・文化なども認めてほしいとお願いしました。民族団体の名前も北海道ウタリ協会から北海道アイヌ協会に戻しました。 2019(令和元)年、政府はアイヌ施策推進法で日本の「先住民族」にアイヌ民族を初めて入れました。アイヌ施策推進法から北海道アイヌ協会側も話し合いに参加して、アイヌ民族向けの新しい政策を行っています。2020年、北海道白老町に民族共生象徴空間ウポポイが開かれました。アイヌ語講座・アイヌ文化活動・アイヌ語活動が日本各地で開かれてもいます。 [[ファイル:Keizo Obuchi 19980730.jpg|サムネイル|168x168ピクセル|小渕恵三]] 1998年7月の参議院議員選挙で自由民主党議席数は大きく減らし、この結果から橋本龍太郎も内閣総理大臣を辞めました。これを受けて、<span style="color:#f29100">'''小渕恵三'''</span>が内閣総理大臣に選ばれました。小渕恵三内閣はバブル崩壊に消費税増税・金融不安・アジア通貨危機なども重なり、橋本龍太郎の財政再建路線を修正しました。小渕恵三内閣は土木工事・公共施設建築工事の大型予算を組んでその潤いから複合不況まで立て直そうとしました。その結果、政府は赤字国債発行額を再び大幅に増やしました。 1999年、小渕恵三内閣は国会法案の賛成を増やしたいから自由党〔1月〕・公明党〔10月〕も自由民主党と一緒に内閣を支えていました[自自公連立政権の開始]。その結果、自由民主党・自由党・公明党は衆議院・参議院の両方で過半数の議席を持つようになりました。小渕恵三内閣から自由民主党と公明党は2025年10月まで一緒に内閣を支えました。 1999年、小渕恵三内閣は'''新ガイドライン関連法'''をまとめました。新ガイドライン関連法の<span style="color:#f29100">'''周辺事態安全確保法'''</span>は日本周辺国家の暴走で自国の平和と安全まで守れなくなったら、自衛隊を出してアメリカ軍へ必要物資を送りました。 [[ファイル:G8 2000 group photo (kremlin.ru).jpg|サムネイル|223x223px|第26回主要国首脳会議]] 1999年、小渕恵三内閣は日の丸と君が代を国旗・国歌法へ初めて記しました。また、国民は情報公開法に従って官公庁へ資料を見せてほしいとお願いしやすくなりました。国会は憲法調査会で憲法を変えるかどうか話し合いました。小渕恵三内閣は2000年に九州・沖縄で第26回主要国首脳会議[サミット]開くと決めました。 この時期は野党も大きく変わりました。社会民主党の支持者は少しずつ減りました。新進党は議員の大量離脱から1997年末になくなりました。旧新進党の議員は違う政党[自由党・新党平和・民主党]に入りました。1996年、鳩山由紀夫・菅直人が民主党を結成しました。その後、旧新進党議員も民主党へ入りました。さらに、新党平和・黎明クラブを公明党に戻しました。 こうして、自由民主党と日本社会党が長く争う55年体制も終わりました。55年体制が終わっても、自由民主党と民主党の保守二大政党制へ繋がりませんでした。自由民主党が再び政権へ戻っても、自由党・公明党と一緒に内閣を支えていました。 == 資料出所 == * 平雅行、横田冬彦ほか編著『日本史探究』実教出版株式会社 2023年 * 佐藤信、五味文彦ほか編著『詳説日本史探究』株式会社山川出版社 2023年 * 高埜利彦、高村直助ほか編著『日本史A 改訂版』株式会社山川出版社 2016年 * 渡邊晃宏ほか編著『日本史探究』東京書籍株式会社 2023年 * 伊藤純郎ほか編著『高等学校日本史探究』株式会社清水書院 2023年 * 大橋幸泰ほか編著『高等学校日本史探究』株式会社第一学習社 2023年 * 山中裕典著'''『'''改訂版 大学入学共通テスト 歴史総合、日本史探究の点数が面白いほどとれる本'''』'''株式会社KADOKAWA 2024年 * 佐藤信、五味文彦ほか編著『詳説日本史研究』株式会社山川出版社 2017年 * 河合敦著『世界一わかりやすい河合敦の日本史B[近・現代]の特別講座』株式会社KADOKAWA 2014年(絶版本) * 外園豊基編集代表『最新日本史図表』株式会社第一学習社 2026年 * 東京法令出版編著『歴史資料館 日本史のライブラリー』東京法令出版株式会社 2026年 [[カテゴリ:高等学校日本史探究|あらたなせいきのにほんへ]] [[カテゴリ:20世紀]] sici06oswlv1vwfuihlmloshmx2jfh9 304990 304989 2026-10-21T23:44:49Z Kwawe 68789 /* 政界再編と55年体制の終結 */ 1993(平成5)年6月、野党側は宮澤喜一内閣に対して内閣不信任案を衆議院へ出した。 304990 wikitext text/x-wiki [[小学校・中学校・高等学校の学習]]>[[高等学校の学習]]>[[高等学校地理歴史]]>[[高等学校日本史探究]]>新たな世紀の日本へⅡ  引き続き「新たな世紀の日本へ」の内容を解説します。第2回目では、政界再編から小渕恵三内閣までの国内政治を見ていきます。 == 政界再編と55年体制の終結 == 1975年、国鉄職員などは大きなストライキ「スト権スト」を行って政府側に争議権の回復を求めても失敗しました。その後、官公庁労働組合はストライキなどをあまり行わなくなりました。民間大企業の労働組合も春闘で大幅な賃上げを求めにくくなりました。 その後、民間労働組合は1つにまとまり始めました。1987年、全日本民間労働組合連合会[民間連合]をつくりました。1989年の日本労働組合総評議会[総評]解散後、元日本労働組合総評議会[総評]は全日本民間労働組合連合会[民間連合]に合流しました。その後、全日本民間労働組合連合会[民間連合]と同盟などの労働組合は1つにまとまって<span style="color:#f29100">'''日本労働組合総連合会[連合]'''</span>をつくりました。約800万人が日本労働組合総連合会[連合]に入りました。 一方、日本労働組合総連合会[連合]の敵側は全国労働組合総連合[全労連]をつくりました。約140万人が全国労働組合総連合[全労連]に入りました。さらに日本労働組合総連合会[連合]と全国労働組合総連合[全労連]の敵側は全国労働組合連絡協議会[全労協]をつくりました。こうして、野党支持側の労働組合は日本労働組合総連合会[連合]・全国労働組合総連合[全労連]・全国労働組合連絡協議会[全労協]に分かれました。<gallery mode="packed" heights="200"> ファイル:Sohyo Kaikan (headquarters of the Japanese Trade Union Confederation).jpg|日本労働組合総連合会 ファイル:Zenrouren Kaikan (1).jpg|全国労働組合総連合 ファイル:Kiichi Miyazawa 19911105.jpg|宮沢喜一 </gallery>政治家と企業の金銭やり取りが冷戦後の日本で問題になりました。リクルート事件〔竹下内閣〕・佐川急便事件〔宮澤喜一内閣〕・ゼネコン汚職事件〔宮澤喜一内閣〕が起きました。自由民主党副総裁の金丸信も1993年に逮捕されました。国民は政治家・官僚・企業の金銭やり取りへ文句を言い、自由民主党の不支持者まで増えました。 湾岸戦争後、日本も国際連合平和維持活動(PKO)を行うように求められました。宮澤喜一内閣は1992年にPKO協力法をつくりました。政府はPKO協力法に従って自衛隊を海外へ送り、戦後の復旧を行えるようになりました。1992年、日本の自衛隊はカンボジアの国際連合平和維持活動へ初めて向かいました。 国民は相次ぐ政治家と企業の金銭やり取りから政治の仕組みを変えるように求めました。そこで、衆議院議員選挙を中選挙区制の区割りをやめて小選挙区制の区割りに切り替えられました。小選挙区制は1つの選挙区から1人だけを選ぶため、各政党の政策まではっきり分かるようになります。二大政党が小選挙区制の区割りで争うと選挙結果次第で政権交代に結び付きやすくなります。しかし、小さな政党は議席を取りにくくなります。 1993(平成5)年6月、野党側は宮澤喜一内閣に対して内閣不信任案を衆議院へ出しました。自由民主党内部の改革派も内閣不信任案に賛成したため、衆議院は内閣不信任案を可決しました。羽田孜・小沢一郎などは自由民主党を離れて、新生党をつくりました。元自由民主党議員も新党さきがけをつくりました。 1994年4月、新生党の羽田孜が内閣総理大臣になりました。しかし、日本社会党は新生党と一緒に内閣を支えなくなりました。羽田孜は国会議員の賛成を集められなくなり、約2か月で首相を辞めました。1994年6月、自由民主党は元野党側の日本社会党・新党さきがけと一緒に内閣を支えました[自社さ連立政権]。日本社会党の村山富市が内閣総理大臣になり、自由民主党も政権へ戻りました。一方、非自民連立政権側の新生党・日本新党・公明党・民社党などは1つにまとまって新進党をつくりました。 従来の日本社会党基本政策を村山富市内閣で大きく変えました。日本社会党は自衛隊を合憲としつつ日米安全保障条約と消費税までも受け入れました。こうして自由民主党と日本社会党の政策は近くなり、日本社会党の不支持者を増やしました。1995年、アジア・太平洋戦争終戦から50年を迎えました。国会は戦後50年目の反省文内容をまとめました。8月15日、村山富市内閣総理大臣はアジア・太平洋戦争の反省とお詫びを「戦後50周年の終戦記念日にあたって」で伝えました(村山談話)。 現地の国民は日本側の植民地支配と侵略から被害を受けており、村山談話でその反省とお詫びを該当国首脳へ伝えました。その後の内閣も村山談話を受け継ぎました。政府は戦後50年目に合わせて、日本とアジア諸国の近現代史資料を国民へ広く公開しました。さらにインターネットでも歴史資料を公開したいから、アジア歴史資料センター開く準備をしました。2001年、アジア歴史資料センターを開きました。政党の結成・解党・合流まで活発になり、各政党のどこにも入らない無党派層も増えました。以降は単独政党のみで内閣を支えきれなくなり、複数政党と一緒に内閣を支えました。 == バブルの崩壊 == プラザ合意後、大量のお金が土地購入・株式購入のために使われ、土地の値段・株価[資産価格]が次第に上がりました(資産インフレ)。1989(平成元)年、日本銀行は銀行へお金をあまり貸さなくなり、政府も土地の値段を上げすぎないようにしました(金融引き締め政策)。1990年代に入ってから、土地の値段・株価は下がり始めました。日経平均株価は、1989年12月末に3万8915円まで上がりました。しかし、その後は株式売却が増えて株価もいきなり下がり、1992年8月に1万4309円まで下がりました。土地の値段も1991年頃から下がり始め、1992年以後は日本各地で下がりました。2000年代半ばになると、大阪の一部商業地は一番高い時期の値段から約10分の1まで下がりました。こうして土地や株式の大幅な値上がりは終わり、1980年代後半のバブル経済は終わりました。 ★日本の実質経済成長率の推移 [[ファイル:GDP_growth_rate_in_Japan.svg|代替文=日本の実質経済成長率の推移|フレームなし|924x924px]] 日本の景気は1991年から悪くなりました('''平成不況''')。実質経済成長率は1992年に1.3%、1993年に1%未満まで下がりました。1992年を3か月ずつに分けて見ると、4~6月は-3.3%となり、前の3か月より国内経済が小さくなりました。7~9月と10~12月もそれぞれ-0.1%となりました。第1次石油危機後に2期連続の経済縮小時期はあっても、3期連続の経済縮小は戦後初めてでした。僅かな景気回復時期も平成不況の途中にありました。しかしすぐに経済縮小となり、平成不況が長年続きました。 バブル経済当時の国民は金融機関からお金を借りて、株価と地価をより高い価格で買いました。金融機関は不動産会社にもお金を貸しました。バブル崩壊後、株価と地価が大きく下がりました。国民は株と土地を全て売っても借金を返せなくなりました。国民の借金も金融機関へ返ってこなくなりました(不良債権)。金融機関は株と土地を債権として持っており、不良債権から金融機関も大赤字になりました。 金融機関は不良債権処理にずっと追われて、さらに苦しくなりました。その結果、金融機関は不良債権の心配からお金を貸さなくなりました。企業は金融機関からお金を借りにくくなりました。国民も「この金融機関は大丈夫か」と不安を感じるようになり、金融機関はさらに苦しくなりました。その後、企業は新しい商品を作れなくなり、新しい工場を建てられなくなり、新しい機械も買えなくなりました。地価の下落・株価の下落・不良債権の増加・金融機関の経営悪化・金融機関の融資停止が全て重なって景気も次第に悪くなりました('''複合不況''')。 当時の政府と日本銀行はこれまでの不況と同じように、財政支出の拡大・低金利政策から数年で景気も回復するかもと思っていました。この誤対策は複合不況に一切効果ありません。住宅金融専門会社は1995年頃から相次いでつぶれました。1997年、北海道拓殖銀行と山一証券がつぶれました。1998年、日本債券信用銀行と日本長期信用銀行がつぶれました。このように大手金融機関がつぶれると、国民も他の金融機関も危ないのではないかと不安になりました。政府は金融システムまで止まらないように、倒産寸前の大手金融機関などに大量の公的資金を入れました。<gallery mode="nolines" widths="200" heights="200"> ファイル:The Hokkaido Takushoku Bank.JPG|旧北海道拓殖銀行本店 ファイル:Kayabacho Tower, at Shinkawa, Chuo, Tokyo (2019-01-02) 02.jpg|旧山一證券本社 ファイル:日債銀本店.jpg|旧日本債券信用銀行本店 ファイル:Shinsei Bank (head office 1).jpg|旧日本長期信用銀行本店 </gallery>1998年、小渕恵三が内閣総理大臣になりました。小渕恵三内閣も大型予算から景気を回復させしようとしました。小渕内閣が公共投資を増やして国民のお金を回そうとしても複合不況に一切効果ありません。こうして、公債発行残高は増えました。物価は1990年代後半からずっと下がり続けました(デフレスパイラル)。 [[ファイル:Unemployment Rate of Japan 1953-2009.jpg|サムネイル|395x395ピクセル|日本の失業率]] 企業は赤字なので、生き残るために経営の効率化[事業整理・人員削減・雇用調整・海外進出など]を進めました(リストラクチャリング)。中小企業の倒産も増えて、中高年労働者の解雇・中高年労働者の早期退職・新卒採用の削減から企業の人件費を大幅に減らしました。バブル景気の時期は労働者不足から「売り手市場」でも、バブル崩壊後から「買い手市場」へ変わりました。1990年代半ばから2000年代前半、企業は新卒採用を大幅に減らしました(就職氷河期)。1998年の完全失業率は4%を超え、2001年の完全失業率で5%になりました。 失業者が増えると労働者も「自分も仕事を失うかもしれない」と不安になり、個人消費を減らしました。消費者は同じような商品なら出来るだけ安い商品を選ぶようになり、ブランド品・高級品を買ってくれなくなりました。商品が売れなくなると、会社も少量生産・既存工場・既存機械だけで行うようになりました。その結果、会社の利益がさらに減って、人員削減・採用縮小もさらに進みました。株価と地価の下落から不良債権が増えて、金融機関の経営も苦しくなり、企業へお金を貸せなくなりました。 円高も国際分業も進みました。1994年、1ドルが100円を割り込みました。輸出主導・量産指向型産業[自動車・電子・家電・事務機器など]は海外で売れにくくなりました。また、バブル崩壊後の不景気から国内の購入者も減りました。生産費用を少しでも減らすため、労働者の給料が日本より低いアジア諸国[中国など]へ工場を移すようになりました[国内工場の閉鎖・国内工場の海外移転]。その結果、地元企業・周辺店舗の売り上げを減らし、失業者を増やしました(地域'''産業の空洞化''')。 繊維産業の事業所数は減り続けました。2015年の繊維産業の事業所数は1991年と比べて約4分の1になりました。国内衣料品市場のうち海外衣料品購入割合は1991年で52%になり、2017年で97%まで上がりました。多数の多国籍企業が1990年代後半に日本企業を合併したり、買収したりしました。企業が日本型雇用を取り入れていても競争力強化・経営効率化から人員削減・能力給の導入を進めました。その結果、働き方の不安定さが広がりました。 日本は技術面でも負けています。1980年代、日本企業はエレクトロニクス[電子機器]・新素材・バイオテクノロジーなどの技術でアメリカに追いつこうとしていました。1990年代から情報通信技術の活用や生産性の伸びでアメリカ合衆国に負けました。商品は日本国内で売れにくくなり、業務内容も変わっていきました。そのため、日本企業は海外企業に負けないような対策を取りました。 バブル崩壊後、銀行制度・企業制度も変えられました。「日本版金融ビッグバン」を1996年に打ち出して、銀行・証券会社などにも規制を緩めて金融の自由化・国際化を進めました。1997年の独占禁止法改正から禁止の持株会社を再度認めました。企業は持株会社からグループ内の会社をまとめ直したり、経営の進め方を変えたりしやすくなり、その後の企業再編・金融再編にもつながりました。 以前の大規模小売店舗法は店舗面積500平方メートル以上の大規模小売店舗出店条件として出店規模・営業時間・営業日数などを定めていました。しかし、大規模小売店舗は中小小売業者の近くにも自由に出店しており、中小小売業者のお客様まで消えました。そのため、政府は大規模小売店舗の立地場所を1998年から制限しました(大規模小売店舗立地法)。中小小売業者から流れすぎないように守りながら、大規模小売店舗も中小小売業者も商売を続けられるようにしました。2000年、大規模小売店舗法を廃止しました。[[ファイル:Asian Financial Crisis EN-2009-05-05.png|サムネイル|273x273px|アジア通貨危機の影響国]]企業再編・合併は政府の規制緩和から広がり、海外企業と国内企業の協力・合併も増えました。その流れから六大企業集団もまとまりました。金融業界でも銀行などが倒産したり、別の銀行と合併したりしました。その結果、日本の金融業界は三井住友グループ[旧三井系と旧住友系]・三菱UFJ[旧三菱系と三和系]・みずほグループ[旧第一勧銀系と旧富士系]の三大金融グループへまとまりました。 国内長期不況で苦しむ中、アジア諸国の経済は大成長しました。しかし短期海外資金の依存・金融機関の過剰な借入れ・企業の過剰な借入れ・金融制度の弱さ・投機資金の流入などから海外投資家が危機感を示して一斉に海外資金を回収・売却・国外移動を行いました。1997年、タイの通貨バーツの価値が大きく下がりました。海外投資家は東アジア・東南アジアから次々と海外資金を回収・売却・国外移動を行いました(アジア通貨危機)。その結果、東アジア・東南アジア諸国の金融と経済は大きな爪痕を残しました。債務問題は韓国などで大きくなり、国際通貨基金(International Monetary Fund:IMF)の支援を受けました。アジア通貨危機は日本経済と日本の金融機関にも大きな爪痕を残して、不良債権問題をさらに悪化させました。 日本政府はアジア通貨危機の発生から地域的な金融協力制度[アジア通貨基金構想]を出しました。しかし、アメリカ合衆国の反対から日本政府は二国間金融支援と新宮沢構想などに切り替えて、東アジア諸国を金銭面で助けました。 バブル経済崩壊後の平成不況はずっと続きました。景気は2002年初期に少しだけ上向きました。しかし、政府が公共事業中心の従来型景気対策を抑えながら不良債権処理と規制改革を進めました。その結果、企業は引き続き大規模なリストラと雇用調整を行いました。当初、バブル崩壊後の長期停滞は「失われた10年」とよばれました。その後も日本経済の停滞が強く、「失われた20年」「失われた30年」とよばれました。 == 行政改革と日米安保の変化 == 1990年代後半、大規模災害の対策・重大事件への対策・行政改革・財政改革・金融改革・冷戦後の日米安全保障体制見直し・政党の組み直しを行いました。1995年1月17日、阪神・淡路地域でマグニチュード7.3の<span style="color:#f29100">'''阪神・淡路大震災[兵庫県南部地震]'''</span>が起こりました。神戸市を中心に6400人以上が亡くなり、建造物・高速道路までも大きく壊れました。当地震で大都市は自然災害に弱く、都市政策・耐震化基準・防災体制の見直しをしました。また、国民は被災地に入って、避難民[被災者]の生活を支えたり、被災地の後片付けを手伝ったりしました。この活動からボランティア活動が全国に広がりました。 1995年3月20日、オウム真理教集団は東京都の地下鉄でサリンを撒いて、多数の死傷者を出しました(<span style="color:#f29100">'''地下鉄サリン事件'''</span>)。このように阪神・淡路大震災と地下鉄サリン事件・少年犯罪の殺人事件・児童虐待などが何度も報道機関で取り上げられ、旧価値観的な安全神話も崩れて国民の意識も変わりました。<gallery mode="packed" widths="200" heights="200"> ファイル:Hanshin Expressway Nada b059.jpg|阪神淡路大震災被災後 ファイル:【地下鉄サリン事件】除染を行う自衛隊員と警察官.jpg|地下鉄サリン事件 ファイル:Ryutaro Hashimoto 19960111.jpg|橋本龍太郎 ファイル:Ryuhei Kawada 20240307.jpg|川田龍平 </gallery>1995年9月、自由民主党総裁選挙から<span style="color:#f29100">'''橋本龍太郎'''</span>が選ばれました。1996年1月、村山富市首相退陣後の内閣総理大臣指名選挙で橋本龍太郎が選ばれました。橋本内閣でも自民党・社会民主党・新党さきがけの3党が引き続き協力して、政策を進めました。なお日本社会党は自衛隊・日米安全保障条約の賛成側に回り、1996年に党名を社会民主党へ変えました。 薬害エイズ問題も大きく取り上げられました。橋本龍太郎内閣厚生大臣の菅直人は薬害エイズ被害者[川田龍平など]に謝罪しました。その後、国と製薬会社と被害者が話し合い、和解しました。 1996年、新しい選挙制度で初めて衆議院議員総選挙が行われ、自由民主党の議席を大きく増やしても、過半数を下回りました。社会民主党と新党さきがけは第2次橋本内閣から国務大臣を出さなくなり、閣外協力に変わりました。その結果、自由民主党単独政権に戻りました。 橋本龍太郎内閣は冷戦後の国際変化・国内経済・政府問題を解決するため、行政・財政・金融の各分野を見直しました。行政改革は政府組織を減らしたり、類似の政府組織を1つにまとめたりして、首相などの政策案を出しやすくしました。1998年、中央省庁等改革基本法が導入されて中央省庁等改革関連法から行政改革の方針を決めました。 2001年1月、政府はこの行政改革の方針から中央省庁を1府22省庁から1府12省庁に減らしました。その結果、内閣総理大臣は各省庁へ指示を出して、政府全体の政策を進めやすくしました。2007年、防衛庁を防衛省に上げました。 ★省庁再編 {| class="wikitable" !再編前 !再編後 !再編前 !再編後 |- |内閣官房 |内閣官房 |大蔵省 |財務省 |- | rowspan="2" |総理府 金融再生委員会 経済企画庁 沖縄開発庁 | rowspan="2" |内閣府 |科学技術庁 文部省 |文部科学省 |- |厚生省 労働省 |厚生労働省 |- |国家公安委員会 |国家公安委員会 |農林水産省 |農林水産省 |- |防衛庁 |防衛庁(省) |通商産業省 |経済産業省 |- |総務庁 郵政省 自治省 |総務省 | rowspan="2" |北海道開発庁 国土庁 建設省 運輸省 | rowspan="2" |国土交通省 |- |法務省 |法務省 |- |外務省 |外務省 |環境庁 |環境省 |} 橋本龍太郎内閣は国債の発行額を減らそうとしました。1997年4月、財政構造改革法に従って消費税率を3%から5%に引き上げて公共事業費などを減らしました。国債発行額は1970年代後半から増えても1980年代末で一度減りました。1990年代に入り、公共投資を再拡大させてから大幅な国債発行額増加に向かいました。 しかし、国民は消費税率の引き上げなどから財布の紐もきつくなり、金融機関も生き残れなくなりました。さらにアジア通貨・金融危機も起きて、日本経済は再不況になりました。やがて、銀行同士は金融不安の拡大から合併して1つの銀行になりました。1997年度の実質経済成長率は-0.4%となり、1974年度[第1次石油危機直後]以来のマイナス成長になりました。1998年度の実質経済成長率は-2%まで下がり、平成不況の大きさを改めて物語りました。 [[ファイル:Official Portrait of President William Jefferson Clinton - DPLA - 4697184146b3b6e2d6791b8f3c297476.jpg|サムネイル|221x221ピクセル|ビル・クリントン大統領]] 冷戦後、橋本龍太郎内閣は日米安全保障体制を見直しました。アメリカのビル・クリントン大統領が1996年4月に日本を訪れ、橋本首相と話し合って<span style="color:#f29100">'''日米安全保障共同宣言'''</span>を発表しました。日米安全保障共同宣言から日本とアメリカは日本防衛以外にもアジア太平洋地域の戦争防止・紛争防止まで努めていくようになりました。 自衛隊がアメリカ軍に必要物資を運ぶなどの後方支援についても、日米防衛協力のための指針を見直しました。1997年、日本政府とアメリカ合衆国政府は「新しい日米防衛協力のための指針(新ガイドライン)」を作りました。 日本が外国から直接攻撃されても直接攻撃されていなくても、日本周辺国の戦争などから日本の平和と安全に大きく関わっていたらアメリカ合衆国側も新ガイドラインに従って助け合いました(周辺事態)。ただし日本から何キロ以内というような距離だけだとアメリカ合衆国側は何もしません。 地球温暖化防止京都会議は1997年に開かれ、温室効果ガスの削減目標などを盛り込む京都議定書を採択しました。また、橋本龍太郎内閣は従来のアイヌ民族政策を大きく変えました。 アイヌ民族は1946年2月に北海道アイヌ協会を作り、アイヌ民族の権利を政府に求めました。北海道旧土人保護法からアイヌ民族用の土地[給与地]を貰っても、農地改革で買収されたくありませんでした。しかしアイヌ民族をずっと厳しく人種差別しており、アイヌ民族の一部は北海道から逃げました。その後、北海道アイヌ協会は名前を北海道ウタリ協会に変えました。[[ファイル:UPOPOY 202608.jpg|サムネイル|民族共生象徴空間ウポポイ]]1980年代、世界各地の先住民族が先住民族の権利を政府に求めました。北海道ウタリ協会は政府に北海道旧土人保護法を廃止して新しい法律を作ってほしいと求めました。1997年、国会はアイヌ民族文化をずっと守っていくためにアイヌ文化振興法を作り、北海道旧土人保護法を廃止しました。 その後もアイヌ民族政策は変わりました。2008年、国会はアイヌ民族を日本の先住民族と認めて、内閣へアイヌ民族の権利・生活・文化なども認めてほしいとお願いしました。民族団体の名前も北海道ウタリ協会から北海道アイヌ協会に戻しました。 2019(令和元)年、政府はアイヌ施策推進法で日本の「先住民族」にアイヌ民族を初めて入れました。アイヌ施策推進法から北海道アイヌ協会側も話し合いに参加して、アイヌ民族向けの新しい政策を行っています。2020年、北海道白老町に民族共生象徴空間ウポポイが開かれました。アイヌ語講座・アイヌ文化活動・アイヌ語活動が日本各地で開かれてもいます。 [[ファイル:Keizo Obuchi 19980730.jpg|サムネイル|168x168ピクセル|小渕恵三]] 1998年7月の参議院議員選挙で自由民主党議席数は大きく減らし、この結果から橋本龍太郎も内閣総理大臣を辞めました。これを受けて、<span style="color:#f29100">'''小渕恵三'''</span>が内閣総理大臣に選ばれました。小渕恵三内閣はバブル崩壊に消費税増税・金融不安・アジア通貨危機なども重なり、橋本龍太郎の財政再建路線を修正しました。小渕恵三内閣は土木工事・公共施設建築工事の大型予算を組んでその潤いから複合不況まで立て直そうとしました。その結果、政府は赤字国債発行額を再び大幅に増やしました。 1999年、小渕恵三内閣は国会法案の賛成を増やしたいから自由党〔1月〕・公明党〔10月〕も自由民主党と一緒に内閣を支えていました[自自公連立政権の開始]。その結果、自由民主党・自由党・公明党は衆議院・参議院の両方で過半数の議席を持つようになりました。小渕恵三内閣から自由民主党と公明党は2025年10月まで一緒に内閣を支えました。 1999年、小渕恵三内閣は'''新ガイドライン関連法'''をまとめました。新ガイドライン関連法の<span style="color:#f29100">'''周辺事態安全確保法'''</span>は日本周辺国家の暴走で自国の平和と安全まで守れなくなったら、自衛隊を出してアメリカ軍へ必要物資を送りました。 [[ファイル:G8 2000 group photo (kremlin.ru).jpg|サムネイル|223x223px|第26回主要国首脳会議]] 1999年、小渕恵三内閣は日の丸と君が代を国旗・国歌法へ初めて記しました。また、国民は情報公開法に従って官公庁へ資料を見せてほしいとお願いしやすくなりました。国会は憲法調査会で憲法を変えるかどうか話し合いました。小渕恵三内閣は2000年に九州・沖縄で第26回主要国首脳会議[サミット]開くと決めました。 この時期は野党も大きく変わりました。社会民主党の支持者は少しずつ減りました。新進党は議員の大量離脱から1997年末になくなりました。旧新進党の議員は違う政党[自由党・新党平和・民主党]に入りました。1996年、鳩山由紀夫・菅直人が民主党を結成しました。その後、旧新進党議員も民主党へ入りました。さらに、新党平和・黎明クラブを公明党に戻しました。 こうして、自由民主党と日本社会党が長く争う55年体制も終わりました。55年体制が終わっても、自由民主党と民主党の保守二大政党制へ繋がりませんでした。自由民主党が再び政権へ戻っても、自由党・公明党と一緒に内閣を支えていました。 == 資料出所 == * 平雅行、横田冬彦ほか編著『日本史探究』実教出版株式会社 2023年 * 佐藤信、五味文彦ほか編著『詳説日本史探究』株式会社山川出版社 2023年 * 高埜利彦、高村直助ほか編著『日本史A 改訂版』株式会社山川出版社 2016年 * 渡邊晃宏ほか編著『日本史探究』東京書籍株式会社 2023年 * 伊藤純郎ほか編著『高等学校日本史探究』株式会社清水書院 2023年 * 大橋幸泰ほか編著『高等学校日本史探究』株式会社第一学習社 2023年 * 山中裕典著'''『'''改訂版 大学入学共通テスト 歴史総合、日本史探究の点数が面白いほどとれる本'''』'''株式会社KADOKAWA 2024年 * 佐藤信、五味文彦ほか編著『詳説日本史研究』株式会社山川出版社 2017年 * 河合敦著『世界一わかりやすい河合敦の日本史B[近・現代]の特別講座』株式会社KADOKAWA 2014年(絶版本) * 外園豊基編集代表『最新日本史図表』株式会社第一学習社 2026年 * 東京法令出版編著『歴史資料館 日本史のライブラリー』東京法令出版株式会社 2026年 [[カテゴリ:高等学校日本史探究|あらたなせいきのにほんへ]] [[カテゴリ:20世紀]] 4elfqpne9pq5tkwsn4ep0uz1yzl9u8s 304991 304990 2026-10-21T23:45:42Z Kwawe 68789 /* 政界再編と55年体制の終結 */ 1993年7月の衆議院議員総選挙結果で自由民主党は過半数を下回り、日本社会党も当選議員を大きく減らした。 304991 wikitext text/x-wiki [[小学校・中学校・高等学校の学習]]>[[高等学校の学習]]>[[高等学校地理歴史]]>[[高等学校日本史探究]]>新たな世紀の日本へⅡ  引き続き「新たな世紀の日本へ」の内容を解説します。第2回目では、政界再編から小渕恵三内閣までの国内政治を見ていきます。 == 政界再編と55年体制の終結 == 1975年、国鉄職員などは大きなストライキ「スト権スト」を行って政府側に争議権の回復を求めても失敗しました。その後、官公庁労働組合はストライキなどをあまり行わなくなりました。民間大企業の労働組合も春闘で大幅な賃上げを求めにくくなりました。 その後、民間労働組合は1つにまとまり始めました。1987年、全日本民間労働組合連合会[民間連合]をつくりました。1989年の日本労働組合総評議会[総評]解散後、元日本労働組合総評議会[総評]は全日本民間労働組合連合会[民間連合]に合流しました。その後、全日本民間労働組合連合会[民間連合]と同盟などの労働組合は1つにまとまって<span style="color:#f29100">'''日本労働組合総連合会[連合]'''</span>をつくりました。約800万人が日本労働組合総連合会[連合]に入りました。 一方、日本労働組合総連合会[連合]の敵側は全国労働組合総連合[全労連]をつくりました。約140万人が全国労働組合総連合[全労連]に入りました。さらに日本労働組合総連合会[連合]と全国労働組合総連合[全労連]の敵側は全国労働組合連絡協議会[全労協]をつくりました。こうして、野党支持側の労働組合は日本労働組合総連合会[連合]・全国労働組合総連合[全労連]・全国労働組合連絡協議会[全労協]に分かれました。<gallery mode="packed" heights="200"> ファイル:Sohyo Kaikan (headquarters of the Japanese Trade Union Confederation).jpg|日本労働組合総連合会 ファイル:Zenrouren Kaikan (1).jpg|全国労働組合総連合 ファイル:Kiichi Miyazawa 19911105.jpg|宮沢喜一 </gallery>政治家と企業の金銭やり取りが冷戦後の日本で問題になりました。リクルート事件〔竹下内閣〕・佐川急便事件〔宮澤喜一内閣〕・ゼネコン汚職事件〔宮澤喜一内閣〕が起きました。自由民主党副総裁の金丸信も1993年に逮捕されました。国民は政治家・官僚・企業の金銭やり取りへ文句を言い、自由民主党の不支持者まで増えました。 湾岸戦争後、日本も国際連合平和維持活動(PKO)を行うように求められました。宮澤喜一内閣は1992年にPKO協力法をつくりました。政府はPKO協力法に従って自衛隊を海外へ送り、戦後の復旧を行えるようになりました。1992年、日本の自衛隊はカンボジアの国際連合平和維持活動へ初めて向かいました。 国民は相次ぐ政治家と企業の金銭やり取りから政治の仕組みを変えるように求めました。そこで、衆議院議員選挙を中選挙区制の区割りをやめて小選挙区制の区割りに切り替えられました。小選挙区制は1つの選挙区から1人だけを選ぶため、各政党の政策まではっきり分かるようになります。二大政党が小選挙区制の区割りで争うと選挙結果次第で政権交代に結び付きやすくなります。しかし、小さな政党は議席を取りにくくなります。 1993(平成5)年6月、野党側は宮澤喜一内閣に対して内閣不信任案を衆議院へ出しました。自由民主党内部の改革派も内閣不信任案に賛成したため、衆議院は内閣不信任案を可決しました。羽田孜・小沢一郎などは自由民主党を離れて、新生党をつくりました。元自由民主党議員も新党さきがけをつくりました。 宮澤喜一首相は衆議院を解散しました。1993年7月の衆議院議員総選挙結果で自由民主党は過半数を下回り、日本社会党も当選議員を大きく減らしました。一方、新生党・日本新党・新党さきがけなどは、当選議員を大きく増やしました。なお日本新党の政党代表は元熊本県知事の細川護熙でした。当衆議院議員総選挙で日本新党議員57人を立候補させて35人も当選しました。 1994年4月、新生党の羽田孜が内閣総理大臣になりました。しかし、日本社会党は新生党と一緒に内閣を支えなくなりました。羽田孜は国会議員の賛成を集められなくなり、約2か月で首相を辞めました。1994年6月、自由民主党は元野党側の日本社会党・新党さきがけと一緒に内閣を支えました[自社さ連立政権]。日本社会党の村山富市が内閣総理大臣になり、自由民主党も政権へ戻りました。一方、非自民連立政権側の新生党・日本新党・公明党・民社党などは1つにまとまって新進党をつくりました。 従来の日本社会党基本政策を村山富市内閣で大きく変えました。日本社会党は自衛隊を合憲としつつ日米安全保障条約と消費税までも受け入れました。こうして自由民主党と日本社会党の政策は近くなり、日本社会党の不支持者を増やしました。1995年、アジア・太平洋戦争終戦から50年を迎えました。国会は戦後50年目の反省文内容をまとめました。8月15日、村山富市内閣総理大臣はアジア・太平洋戦争の反省とお詫びを「戦後50周年の終戦記念日にあたって」で伝えました(村山談話)。 現地の国民は日本側の植民地支配と侵略から被害を受けており、村山談話でその反省とお詫びを該当国首脳へ伝えました。その後の内閣も村山談話を受け継ぎました。政府は戦後50年目に合わせて、日本とアジア諸国の近現代史資料を国民へ広く公開しました。さらにインターネットでも歴史資料を公開したいから、アジア歴史資料センター開く準備をしました。2001年、アジア歴史資料センターを開きました。政党の結成・解党・合流まで活発になり、各政党のどこにも入らない無党派層も増えました。以降は単独政党のみで内閣を支えきれなくなり、複数政党と一緒に内閣を支えました。 == バブルの崩壊 == プラザ合意後、大量のお金が土地購入・株式購入のために使われ、土地の値段・株価[資産価格]が次第に上がりました(資産インフレ)。1989(平成元)年、日本銀行は銀行へお金をあまり貸さなくなり、政府も土地の値段を上げすぎないようにしました(金融引き締め政策)。1990年代に入ってから、土地の値段・株価は下がり始めました。日経平均株価は、1989年12月末に3万8915円まで上がりました。しかし、その後は株式売却が増えて株価もいきなり下がり、1992年8月に1万4309円まで下がりました。土地の値段も1991年頃から下がり始め、1992年以後は日本各地で下がりました。2000年代半ばになると、大阪の一部商業地は一番高い時期の値段から約10分の1まで下がりました。こうして土地や株式の大幅な値上がりは終わり、1980年代後半のバブル経済は終わりました。 ★日本の実質経済成長率の推移 [[ファイル:GDP_growth_rate_in_Japan.svg|代替文=日本の実質経済成長率の推移|フレームなし|924x924px]] 日本の景気は1991年から悪くなりました('''平成不況''')。実質経済成長率は1992年に1.3%、1993年に1%未満まで下がりました。1992年を3か月ずつに分けて見ると、4~6月は-3.3%となり、前の3か月より国内経済が小さくなりました。7~9月と10~12月もそれぞれ-0.1%となりました。第1次石油危機後に2期連続の経済縮小時期はあっても、3期連続の経済縮小は戦後初めてでした。僅かな景気回復時期も平成不況の途中にありました。しかしすぐに経済縮小となり、平成不況が長年続きました。 バブル経済当時の国民は金融機関からお金を借りて、株価と地価をより高い価格で買いました。金融機関は不動産会社にもお金を貸しました。バブル崩壊後、株価と地価が大きく下がりました。国民は株と土地を全て売っても借金を返せなくなりました。国民の借金も金融機関へ返ってこなくなりました(不良債権)。金融機関は株と土地を債権として持っており、不良債権から金融機関も大赤字になりました。 金融機関は不良債権処理にずっと追われて、さらに苦しくなりました。その結果、金融機関は不良債権の心配からお金を貸さなくなりました。企業は金融機関からお金を借りにくくなりました。国民も「この金融機関は大丈夫か」と不安を感じるようになり、金融機関はさらに苦しくなりました。その後、企業は新しい商品を作れなくなり、新しい工場を建てられなくなり、新しい機械も買えなくなりました。地価の下落・株価の下落・不良債権の増加・金融機関の経営悪化・金融機関の融資停止が全て重なって景気も次第に悪くなりました('''複合不況''')。 当時の政府と日本銀行はこれまでの不況と同じように、財政支出の拡大・低金利政策から数年で景気も回復するかもと思っていました。この誤対策は複合不況に一切効果ありません。住宅金融専門会社は1995年頃から相次いでつぶれました。1997年、北海道拓殖銀行と山一証券がつぶれました。1998年、日本債券信用銀行と日本長期信用銀行がつぶれました。このように大手金融機関がつぶれると、国民も他の金融機関も危ないのではないかと不安になりました。政府は金融システムまで止まらないように、倒産寸前の大手金融機関などに大量の公的資金を入れました。<gallery mode="nolines" widths="200" heights="200"> ファイル:The Hokkaido Takushoku Bank.JPG|旧北海道拓殖銀行本店 ファイル:Kayabacho Tower, at Shinkawa, Chuo, Tokyo (2019-01-02) 02.jpg|旧山一證券本社 ファイル:日債銀本店.jpg|旧日本債券信用銀行本店 ファイル:Shinsei Bank (head office 1).jpg|旧日本長期信用銀行本店 </gallery>1998年、小渕恵三が内閣総理大臣になりました。小渕恵三内閣も大型予算から景気を回復させしようとしました。小渕内閣が公共投資を増やして国民のお金を回そうとしても複合不況に一切効果ありません。こうして、公債発行残高は増えました。物価は1990年代後半からずっと下がり続けました(デフレスパイラル)。 [[ファイル:Unemployment Rate of Japan 1953-2009.jpg|サムネイル|395x395ピクセル|日本の失業率]] 企業は赤字なので、生き残るために経営の効率化[事業整理・人員削減・雇用調整・海外進出など]を進めました(リストラクチャリング)。中小企業の倒産も増えて、中高年労働者の解雇・中高年労働者の早期退職・新卒採用の削減から企業の人件費を大幅に減らしました。バブル景気の時期は労働者不足から「売り手市場」でも、バブル崩壊後から「買い手市場」へ変わりました。1990年代半ばから2000年代前半、企業は新卒採用を大幅に減らしました(就職氷河期)。1998年の完全失業率は4%を超え、2001年の完全失業率で5%になりました。 失業者が増えると労働者も「自分も仕事を失うかもしれない」と不安になり、個人消費を減らしました。消費者は同じような商品なら出来るだけ安い商品を選ぶようになり、ブランド品・高級品を買ってくれなくなりました。商品が売れなくなると、会社も少量生産・既存工場・既存機械だけで行うようになりました。その結果、会社の利益がさらに減って、人員削減・採用縮小もさらに進みました。株価と地価の下落から不良債権が増えて、金融機関の経営も苦しくなり、企業へお金を貸せなくなりました。 円高も国際分業も進みました。1994年、1ドルが100円を割り込みました。輸出主導・量産指向型産業[自動車・電子・家電・事務機器など]は海外で売れにくくなりました。また、バブル崩壊後の不景気から国内の購入者も減りました。生産費用を少しでも減らすため、労働者の給料が日本より低いアジア諸国[中国など]へ工場を移すようになりました[国内工場の閉鎖・国内工場の海外移転]。その結果、地元企業・周辺店舗の売り上げを減らし、失業者を増やしました(地域'''産業の空洞化''')。 繊維産業の事業所数は減り続けました。2015年の繊維産業の事業所数は1991年と比べて約4分の1になりました。国内衣料品市場のうち海外衣料品購入割合は1991年で52%になり、2017年で97%まで上がりました。多数の多国籍企業が1990年代後半に日本企業を合併したり、買収したりしました。企業が日本型雇用を取り入れていても競争力強化・経営効率化から人員削減・能力給の導入を進めました。その結果、働き方の不安定さが広がりました。 日本は技術面でも負けています。1980年代、日本企業はエレクトロニクス[電子機器]・新素材・バイオテクノロジーなどの技術でアメリカに追いつこうとしていました。1990年代から情報通信技術の活用や生産性の伸びでアメリカ合衆国に負けました。商品は日本国内で売れにくくなり、業務内容も変わっていきました。そのため、日本企業は海外企業に負けないような対策を取りました。 バブル崩壊後、銀行制度・企業制度も変えられました。「日本版金融ビッグバン」を1996年に打ち出して、銀行・証券会社などにも規制を緩めて金融の自由化・国際化を進めました。1997年の独占禁止法改正から禁止の持株会社を再度認めました。企業は持株会社からグループ内の会社をまとめ直したり、経営の進め方を変えたりしやすくなり、その後の企業再編・金融再編にもつながりました。 以前の大規模小売店舗法は店舗面積500平方メートル以上の大規模小売店舗出店条件として出店規模・営業時間・営業日数などを定めていました。しかし、大規模小売店舗は中小小売業者の近くにも自由に出店しており、中小小売業者のお客様まで消えました。そのため、政府は大規模小売店舗の立地場所を1998年から制限しました(大規模小売店舗立地法)。中小小売業者から流れすぎないように守りながら、大規模小売店舗も中小小売業者も商売を続けられるようにしました。2000年、大規模小売店舗法を廃止しました。[[ファイル:Asian Financial Crisis EN-2009-05-05.png|サムネイル|273x273px|アジア通貨危機の影響国]]企業再編・合併は政府の規制緩和から広がり、海外企業と国内企業の協力・合併も増えました。その流れから六大企業集団もまとまりました。金融業界でも銀行などが倒産したり、別の銀行と合併したりしました。その結果、日本の金融業界は三井住友グループ[旧三井系と旧住友系]・三菱UFJ[旧三菱系と三和系]・みずほグループ[旧第一勧銀系と旧富士系]の三大金融グループへまとまりました。 国内長期不況で苦しむ中、アジア諸国の経済は大成長しました。しかし短期海外資金の依存・金融機関の過剰な借入れ・企業の過剰な借入れ・金融制度の弱さ・投機資金の流入などから海外投資家が危機感を示して一斉に海外資金を回収・売却・国外移動を行いました。1997年、タイの通貨バーツの価値が大きく下がりました。海外投資家は東アジア・東南アジアから次々と海外資金を回収・売却・国外移動を行いました(アジア通貨危機)。その結果、東アジア・東南アジア諸国の金融と経済は大きな爪痕を残しました。債務問題は韓国などで大きくなり、国際通貨基金(International Monetary Fund:IMF)の支援を受けました。アジア通貨危機は日本経済と日本の金融機関にも大きな爪痕を残して、不良債権問題をさらに悪化させました。 日本政府はアジア通貨危機の発生から地域的な金融協力制度[アジア通貨基金構想]を出しました。しかし、アメリカ合衆国の反対から日本政府は二国間金融支援と新宮沢構想などに切り替えて、東アジア諸国を金銭面で助けました。 バブル経済崩壊後の平成不況はずっと続きました。景気は2002年初期に少しだけ上向きました。しかし、政府が公共事業中心の従来型景気対策を抑えながら不良債権処理と規制改革を進めました。その結果、企業は引き続き大規模なリストラと雇用調整を行いました。当初、バブル崩壊後の長期停滞は「失われた10年」とよばれました。その後も日本経済の停滞が強く、「失われた20年」「失われた30年」とよばれました。 == 行政改革と日米安保の変化 == 1990年代後半、大規模災害の対策・重大事件への対策・行政改革・財政改革・金融改革・冷戦後の日米安全保障体制見直し・政党の組み直しを行いました。1995年1月17日、阪神・淡路地域でマグニチュード7.3の<span style="color:#f29100">'''阪神・淡路大震災[兵庫県南部地震]'''</span>が起こりました。神戸市を中心に6400人以上が亡くなり、建造物・高速道路までも大きく壊れました。当地震で大都市は自然災害に弱く、都市政策・耐震化基準・防災体制の見直しをしました。また、国民は被災地に入って、避難民[被災者]の生活を支えたり、被災地の後片付けを手伝ったりしました。この活動からボランティア活動が全国に広がりました。 1995年3月20日、オウム真理教集団は東京都の地下鉄でサリンを撒いて、多数の死傷者を出しました(<span style="color:#f29100">'''地下鉄サリン事件'''</span>)。このように阪神・淡路大震災と地下鉄サリン事件・少年犯罪の殺人事件・児童虐待などが何度も報道機関で取り上げられ、旧価値観的な安全神話も崩れて国民の意識も変わりました。<gallery mode="packed" widths="200" heights="200"> ファイル:Hanshin Expressway Nada b059.jpg|阪神淡路大震災被災後 ファイル:【地下鉄サリン事件】除染を行う自衛隊員と警察官.jpg|地下鉄サリン事件 ファイル:Ryutaro Hashimoto 19960111.jpg|橋本龍太郎 ファイル:Ryuhei Kawada 20240307.jpg|川田龍平 </gallery>1995年9月、自由民主党総裁選挙から<span style="color:#f29100">'''橋本龍太郎'''</span>が選ばれました。1996年1月、村山富市首相退陣後の内閣総理大臣指名選挙で橋本龍太郎が選ばれました。橋本内閣でも自民党・社会民主党・新党さきがけの3党が引き続き協力して、政策を進めました。なお日本社会党は自衛隊・日米安全保障条約の賛成側に回り、1996年に党名を社会民主党へ変えました。 薬害エイズ問題も大きく取り上げられました。橋本龍太郎内閣厚生大臣の菅直人は薬害エイズ被害者[川田龍平など]に謝罪しました。その後、国と製薬会社と被害者が話し合い、和解しました。 1996年、新しい選挙制度で初めて衆議院議員総選挙が行われ、自由民主党の議席を大きく増やしても、過半数を下回りました。社会民主党と新党さきがけは第2次橋本内閣から国務大臣を出さなくなり、閣外協力に変わりました。その結果、自由民主党単独政権に戻りました。 橋本龍太郎内閣は冷戦後の国際変化・国内経済・政府問題を解決するため、行政・財政・金融の各分野を見直しました。行政改革は政府組織を減らしたり、類似の政府組織を1つにまとめたりして、首相などの政策案を出しやすくしました。1998年、中央省庁等改革基本法が導入されて中央省庁等改革関連法から行政改革の方針を決めました。 2001年1月、政府はこの行政改革の方針から中央省庁を1府22省庁から1府12省庁に減らしました。その結果、内閣総理大臣は各省庁へ指示を出して、政府全体の政策を進めやすくしました。2007年、防衛庁を防衛省に上げました。 ★省庁再編 {| class="wikitable" !再編前 !再編後 !再編前 !再編後 |- |内閣官房 |内閣官房 |大蔵省 |財務省 |- | rowspan="2" |総理府 金融再生委員会 経済企画庁 沖縄開発庁 | rowspan="2" |内閣府 |科学技術庁 文部省 |文部科学省 |- |厚生省 労働省 |厚生労働省 |- |国家公安委員会 |国家公安委員会 |農林水産省 |農林水産省 |- |防衛庁 |防衛庁(省) |通商産業省 |経済産業省 |- |総務庁 郵政省 自治省 |総務省 | rowspan="2" |北海道開発庁 国土庁 建設省 運輸省 | rowspan="2" |国土交通省 |- |法務省 |法務省 |- |外務省 |外務省 |環境庁 |環境省 |} 橋本龍太郎内閣は国債の発行額を減らそうとしました。1997年4月、財政構造改革法に従って消費税率を3%から5%に引き上げて公共事業費などを減らしました。国債発行額は1970年代後半から増えても1980年代末で一度減りました。1990年代に入り、公共投資を再拡大させてから大幅な国債発行額増加に向かいました。 しかし、国民は消費税率の引き上げなどから財布の紐もきつくなり、金融機関も生き残れなくなりました。さらにアジア通貨・金融危機も起きて、日本経済は再不況になりました。やがて、銀行同士は金融不安の拡大から合併して1つの銀行になりました。1997年度の実質経済成長率は-0.4%となり、1974年度[第1次石油危機直後]以来のマイナス成長になりました。1998年度の実質経済成長率は-2%まで下がり、平成不況の大きさを改めて物語りました。 [[ファイル:Official Portrait of President William Jefferson Clinton - DPLA - 4697184146b3b6e2d6791b8f3c297476.jpg|サムネイル|221x221ピクセル|ビル・クリントン大統領]] 冷戦後、橋本龍太郎内閣は日米安全保障体制を見直しました。アメリカのビル・クリントン大統領が1996年4月に日本を訪れ、橋本首相と話し合って<span style="color:#f29100">'''日米安全保障共同宣言'''</span>を発表しました。日米安全保障共同宣言から日本とアメリカは日本防衛以外にもアジア太平洋地域の戦争防止・紛争防止まで努めていくようになりました。 自衛隊がアメリカ軍に必要物資を運ぶなどの後方支援についても、日米防衛協力のための指針を見直しました。1997年、日本政府とアメリカ合衆国政府は「新しい日米防衛協力のための指針(新ガイドライン)」を作りました。 日本が外国から直接攻撃されても直接攻撃されていなくても、日本周辺国の戦争などから日本の平和と安全に大きく関わっていたらアメリカ合衆国側も新ガイドラインに従って助け合いました(周辺事態)。ただし日本から何キロ以内というような距離だけだとアメリカ合衆国側は何もしません。 地球温暖化防止京都会議は1997年に開かれ、温室効果ガスの削減目標などを盛り込む京都議定書を採択しました。また、橋本龍太郎内閣は従来のアイヌ民族政策を大きく変えました。 アイヌ民族は1946年2月に北海道アイヌ協会を作り、アイヌ民族の権利を政府に求めました。北海道旧土人保護法からアイヌ民族用の土地[給与地]を貰っても、農地改革で買収されたくありませんでした。しかしアイヌ民族をずっと厳しく人種差別しており、アイヌ民族の一部は北海道から逃げました。その後、北海道アイヌ協会は名前を北海道ウタリ協会に変えました。[[ファイル:UPOPOY 202608.jpg|サムネイル|民族共生象徴空間ウポポイ]]1980年代、世界各地の先住民族が先住民族の権利を政府に求めました。北海道ウタリ協会は政府に北海道旧土人保護法を廃止して新しい法律を作ってほしいと求めました。1997年、国会はアイヌ民族文化をずっと守っていくためにアイヌ文化振興法を作り、北海道旧土人保護法を廃止しました。 その後もアイヌ民族政策は変わりました。2008年、国会はアイヌ民族を日本の先住民族と認めて、内閣へアイヌ民族の権利・生活・文化なども認めてほしいとお願いしました。民族団体の名前も北海道ウタリ協会から北海道アイヌ協会に戻しました。 2019(令和元)年、政府はアイヌ施策推進法で日本の「先住民族」にアイヌ民族を初めて入れました。アイヌ施策推進法から北海道アイヌ協会側も話し合いに参加して、アイヌ民族向けの新しい政策を行っています。2020年、北海道白老町に民族共生象徴空間ウポポイが開かれました。アイヌ語講座・アイヌ文化活動・アイヌ語活動が日本各地で開かれてもいます。 [[ファイル:Keizo Obuchi 19980730.jpg|サムネイル|168x168ピクセル|小渕恵三]] 1998年7月の参議院議員選挙で自由民主党議席数は大きく減らし、この結果から橋本龍太郎も内閣総理大臣を辞めました。これを受けて、<span style="color:#f29100">'''小渕恵三'''</span>が内閣総理大臣に選ばれました。小渕恵三内閣はバブル崩壊に消費税増税・金融不安・アジア通貨危機なども重なり、橋本龍太郎の財政再建路線を修正しました。小渕恵三内閣は土木工事・公共施設建築工事の大型予算を組んでその潤いから複合不況まで立て直そうとしました。その結果、政府は赤字国債発行額を再び大幅に増やしました。 1999年、小渕恵三内閣は国会法案の賛成を増やしたいから自由党〔1月〕・公明党〔10月〕も自由民主党と一緒に内閣を支えていました[自自公連立政権の開始]。その結果、自由民主党・自由党・公明党は衆議院・参議院の両方で過半数の議席を持つようになりました。小渕恵三内閣から自由民主党と公明党は2025年10月まで一緒に内閣を支えました。 1999年、小渕恵三内閣は'''新ガイドライン関連法'''をまとめました。新ガイドライン関連法の<span style="color:#f29100">'''周辺事態安全確保法'''</span>は日本周辺国家の暴走で自国の平和と安全まで守れなくなったら、自衛隊を出してアメリカ軍へ必要物資を送りました。 [[ファイル:G8 2000 group photo (kremlin.ru).jpg|サムネイル|223x223px|第26回主要国首脳会議]] 1999年、小渕恵三内閣は日の丸と君が代を国旗・国歌法へ初めて記しました。また、国民は情報公開法に従って官公庁へ資料を見せてほしいとお願いしやすくなりました。国会は憲法調査会で憲法を変えるかどうか話し合いました。小渕恵三内閣は2000年に九州・沖縄で第26回主要国首脳会議[サミット]開くと決めました。 この時期は野党も大きく変わりました。社会民主党の支持者は少しずつ減りました。新進党は議員の大量離脱から1997年末になくなりました。旧新進党の議員は違う政党[自由党・新党平和・民主党]に入りました。1996年、鳩山由紀夫・菅直人が民主党を結成しました。その後、旧新進党議員も民主党へ入りました。さらに、新党平和・黎明クラブを公明党に戻しました。 こうして、自由民主党と日本社会党が長く争う55年体制も終わりました。55年体制が終わっても、自由民主党と民主党の保守二大政党制へ繋がりませんでした。自由民主党が再び政権へ戻っても、自由党・公明党と一緒に内閣を支えていました。 == 資料出所 == * 平雅行、横田冬彦ほか編著『日本史探究』実教出版株式会社 2023年 * 佐藤信、五味文彦ほか編著『詳説日本史探究』株式会社山川出版社 2023年 * 高埜利彦、高村直助ほか編著『日本史A 改訂版』株式会社山川出版社 2016年 * 渡邊晃宏ほか編著『日本史探究』東京書籍株式会社 2023年 * 伊藤純郎ほか編著『高等学校日本史探究』株式会社清水書院 2023年 * 大橋幸泰ほか編著『高等学校日本史探究』株式会社第一学習社 2023年 * 山中裕典著'''『'''改訂版 大学入学共通テスト 歴史総合、日本史探究の点数が面白いほどとれる本'''』'''株式会社KADOKAWA 2024年 * 佐藤信、五味文彦ほか編著『詳説日本史研究』株式会社山川出版社 2017年 * 河合敦著『世界一わかりやすい河合敦の日本史B[近・現代]の特別講座』株式会社KADOKAWA 2014年(絶版本) * 外園豊基編集代表『最新日本史図表』株式会社第一学習社 2026年 * 東京法令出版編著『歴史資料館 日本史のライブラリー』東京法令出版株式会社 2026年 [[カテゴリ:高等学校日本史探究|あらたなせいきのにほんへ]] [[カテゴリ:20世紀]] jnq3yoew1eqcbh4fxmia3f055ebg516 304992 304991 2026-10-21T23:48:09Z Kwawe 68789 /* 政界再編と55年体制の終結 */宮沢喜一は誤記なので 宮澤喜一へ修正した。 304992 wikitext text/x-wiki [[小学校・中学校・高等学校の学習]]>[[高等学校の学習]]>[[高等学校地理歴史]]>[[高等学校日本史探究]]>新たな世紀の日本へⅡ  引き続き「新たな世紀の日本へ」の内容を解説します。第2回目では、政界再編から小渕恵三内閣までの国内政治を見ていきます。 == 政界再編と55年体制の終結 == 1975年、国鉄職員などは大きなストライキ「スト権スト」を行って政府側に争議権の回復を求めても失敗しました。その後、官公庁労働組合はストライキなどをあまり行わなくなりました。民間大企業の労働組合も春闘で大幅な賃上げを求めにくくなりました。 その後、民間労働組合は1つにまとまり始めました。1987年、全日本民間労働組合連合会[民間連合]をつくりました。1989年の日本労働組合総評議会[総評]解散後、元日本労働組合総評議会[総評]は全日本民間労働組合連合会[民間連合]に合流しました。その後、全日本民間労働組合連合会[民間連合]と同盟などの労働組合は1つにまとまって<span style="color:#f29100">'''日本労働組合総連合会[連合]'''</span>をつくりました。約800万人が日本労働組合総連合会[連合]に入りました。 一方、日本労働組合総連合会[連合]の敵側は全国労働組合総連合[全労連]をつくりました。約140万人が全国労働組合総連合[全労連]に入りました。さらに日本労働組合総連合会[連合]と全国労働組合総連合[全労連]の敵側は全国労働組合連絡協議会[全労協]をつくりました。こうして、野党支持側の労働組合は日本労働組合総連合会[連合]・全国労働組合総連合[全労連]・全国労働組合連絡協議会[全労協]に分かれました。<gallery mode="packed" heights="200"> ファイル:Sohyo Kaikan (headquarters of the Japanese Trade Union Confederation).jpg|日本労働組合総連合会 ファイル:Zenrouren Kaikan (1).jpg|全国労働組合総連合 ファイル:Kiichi Miyazawa 19911105.jpg|宮澤喜一 </gallery>政治家と企業の金銭やり取りが冷戦後の日本で問題になりました。リクルート事件〔竹下内閣〕・佐川急便事件〔宮澤喜一内閣〕・ゼネコン汚職事件〔宮澤喜一内閣〕が起きました。自由民主党副総裁の金丸信も1993年に逮捕されました。国民は政治家・官僚・企業の金銭やり取りへ文句を言い、自由民主党の不支持者まで増えました。 湾岸戦争後、日本も国際連合平和維持活動(PKO)を行うように求められました。宮澤喜一内閣は1992年にPKO協力法をつくりました。政府はPKO協力法に従って自衛隊を海外へ送り、戦後の復旧を行えるようになりました。1992年、日本の自衛隊はカンボジアの国際連合平和維持活動へ初めて向かいました。 国民は相次ぐ政治家と企業の金銭やり取りから政治の仕組みを変えるように求めました。そこで、衆議院議員選挙を中選挙区制の区割りをやめて小選挙区制の区割りに切り替えられました。小選挙区制は1つの選挙区から1人だけを選ぶため、各政党の政策まではっきり分かるようになります。二大政党が小選挙区制の区割りで争うと選挙結果次第で政権交代に結び付きやすくなります。しかし、小さな政党は議席を取りにくくなります。 1993(平成5)年6月、野党側は宮澤喜一内閣に対して内閣不信任案を衆議院へ出しました。自由民主党内部の改革派も内閣不信任案に賛成したため、衆議院は内閣不信任案を可決しました。羽田孜・小沢一郎などは自由民主党を離れて、新生党をつくりました。元自由民主党議員も新党さきがけをつくりました。 宮澤喜一首相は衆議院を解散しました。1993年7月の衆議院議員総選挙結果で自由民主党は過半数を下回り、日本社会党も当選議員を大きく減らしました。一方、新生党・日本新党・新党さきがけなどは、当選議員を大きく増やしました。なお日本新党の政党代表は元熊本県知事の細川護熙でした。当衆議院議員総選挙で日本新党議員57人を立候補させて35人も当選しました。 1994年4月、新生党の羽田孜が内閣総理大臣になりました。しかし、日本社会党は新生党と一緒に内閣を支えなくなりました。羽田孜は国会議員の賛成を集められなくなり、約2か月で首相を辞めました。1994年6月、自由民主党は元野党側の日本社会党・新党さきがけと一緒に内閣を支えました[自社さ連立政権]。日本社会党の村山富市が内閣総理大臣になり、自由民主党も政権へ戻りました。一方、非自民連立政権側の新生党・日本新党・公明党・民社党などは1つにまとまって新進党をつくりました。 従来の日本社会党基本政策を村山富市内閣で大きく変えました。日本社会党は自衛隊を合憲としつつ日米安全保障条約と消費税までも受け入れました。こうして自由民主党と日本社会党の政策は近くなり、日本社会党の不支持者を増やしました。1995年、アジア・太平洋戦争終戦から50年を迎えました。国会は戦後50年目の反省文内容をまとめました。8月15日、村山富市内閣総理大臣はアジア・太平洋戦争の反省とお詫びを「戦後50周年の終戦記念日にあたって」で伝えました(村山談話)。 現地の国民は日本側の植民地支配と侵略から被害を受けており、村山談話でその反省とお詫びを該当国首脳へ伝えました。その後の内閣も村山談話を受け継ぎました。政府は戦後50年目に合わせて、日本とアジア諸国の近現代史資料を国民へ広く公開しました。さらにインターネットでも歴史資料を公開したいから、アジア歴史資料センター開く準備をしました。2001年、アジア歴史資料センターを開きました。政党の結成・解党・合流まで活発になり、各政党のどこにも入らない無党派層も増えました。以降は単独政党のみで内閣を支えきれなくなり、複数政党と一緒に内閣を支えました。 == バブルの崩壊 == プラザ合意後、大量のお金が土地購入・株式購入のために使われ、土地の値段・株価[資産価格]が次第に上がりました(資産インフレ)。1989(平成元)年、日本銀行は銀行へお金をあまり貸さなくなり、政府も土地の値段を上げすぎないようにしました(金融引き締め政策)。1990年代に入ってから、土地の値段・株価は下がり始めました。日経平均株価は、1989年12月末に3万8915円まで上がりました。しかし、その後は株式売却が増えて株価もいきなり下がり、1992年8月に1万4309円まで下がりました。土地の値段も1991年頃から下がり始め、1992年以後は日本各地で下がりました。2000年代半ばになると、大阪の一部商業地は一番高い時期の値段から約10分の1まで下がりました。こうして土地や株式の大幅な値上がりは終わり、1980年代後半のバブル経済は終わりました。 ★日本の実質経済成長率の推移 [[ファイル:GDP_growth_rate_in_Japan.svg|代替文=日本の実質経済成長率の推移|フレームなし|924x924px]] 日本の景気は1991年から悪くなりました('''平成不況''')。実質経済成長率は1992年に1.3%、1993年に1%未満まで下がりました。1992年を3か月ずつに分けて見ると、4~6月は-3.3%となり、前の3か月より国内経済が小さくなりました。7~9月と10~12月もそれぞれ-0.1%となりました。第1次石油危機後に2期連続の経済縮小時期はあっても、3期連続の経済縮小は戦後初めてでした。僅かな景気回復時期も平成不況の途中にありました。しかしすぐに経済縮小となり、平成不況が長年続きました。 バブル経済当時の国民は金融機関からお金を借りて、株価と地価をより高い価格で買いました。金融機関は不動産会社にもお金を貸しました。バブル崩壊後、株価と地価が大きく下がりました。国民は株と土地を全て売っても借金を返せなくなりました。国民の借金も金融機関へ返ってこなくなりました(不良債権)。金融機関は株と土地を債権として持っており、不良債権から金融機関も大赤字になりました。 金融機関は不良債権処理にずっと追われて、さらに苦しくなりました。その結果、金融機関は不良債権の心配からお金を貸さなくなりました。企業は金融機関からお金を借りにくくなりました。国民も「この金融機関は大丈夫か」と不安を感じるようになり、金融機関はさらに苦しくなりました。その後、企業は新しい商品を作れなくなり、新しい工場を建てられなくなり、新しい機械も買えなくなりました。地価の下落・株価の下落・不良債権の増加・金融機関の経営悪化・金融機関の融資停止が全て重なって景気も次第に悪くなりました('''複合不況''')。 当時の政府と日本銀行はこれまでの不況と同じように、財政支出の拡大・低金利政策から数年で景気も回復するかもと思っていました。この誤対策は複合不況に一切効果ありません。住宅金融専門会社は1995年頃から相次いでつぶれました。1997年、北海道拓殖銀行と山一証券がつぶれました。1998年、日本債券信用銀行と日本長期信用銀行がつぶれました。このように大手金融機関がつぶれると、国民も他の金融機関も危ないのではないかと不安になりました。政府は金融システムまで止まらないように、倒産寸前の大手金融機関などに大量の公的資金を入れました。<gallery mode="nolines" widths="200" heights="200"> ファイル:The Hokkaido Takushoku Bank.JPG|旧北海道拓殖銀行本店 ファイル:Kayabacho Tower, at Shinkawa, Chuo, Tokyo (2019-01-02) 02.jpg|旧山一證券本社 ファイル:日債銀本店.jpg|旧日本債券信用銀行本店 ファイル:Shinsei Bank (head office 1).jpg|旧日本長期信用銀行本店 </gallery>1998年、小渕恵三が内閣総理大臣になりました。小渕恵三内閣も大型予算から景気を回復させしようとしました。小渕内閣が公共投資を増やして国民のお金を回そうとしても複合不況に一切効果ありません。こうして、公債発行残高は増えました。物価は1990年代後半からずっと下がり続けました(デフレスパイラル)。 [[ファイル:Unemployment Rate of Japan 1953-2009.jpg|サムネイル|395x395ピクセル|日本の失業率]] 企業は赤字なので、生き残るために経営の効率化[事業整理・人員削減・雇用調整・海外進出など]を進めました(リストラクチャリング)。中小企業の倒産も増えて、中高年労働者の解雇・中高年労働者の早期退職・新卒採用の削減から企業の人件費を大幅に減らしました。バブル景気の時期は労働者不足から「売り手市場」でも、バブル崩壊後から「買い手市場」へ変わりました。1990年代半ばから2000年代前半、企業は新卒採用を大幅に減らしました(就職氷河期)。1998年の完全失業率は4%を超え、2001年の完全失業率で5%になりました。 失業者が増えると労働者も「自分も仕事を失うかもしれない」と不安になり、個人消費を減らしました。消費者は同じような商品なら出来るだけ安い商品を選ぶようになり、ブランド品・高級品を買ってくれなくなりました。商品が売れなくなると、会社も少量生産・既存工場・既存機械だけで行うようになりました。その結果、会社の利益がさらに減って、人員削減・採用縮小もさらに進みました。株価と地価の下落から不良債権が増えて、金融機関の経営も苦しくなり、企業へお金を貸せなくなりました。 円高も国際分業も進みました。1994年、1ドルが100円を割り込みました。輸出主導・量産指向型産業[自動車・電子・家電・事務機器など]は海外で売れにくくなりました。また、バブル崩壊後の不景気から国内の購入者も減りました。生産費用を少しでも減らすため、労働者の給料が日本より低いアジア諸国[中国など]へ工場を移すようになりました[国内工場の閉鎖・国内工場の海外移転]。その結果、地元企業・周辺店舗の売り上げを減らし、失業者を増やしました(地域'''産業の空洞化''')。 繊維産業の事業所数は減り続けました。2015年の繊維産業の事業所数は1991年と比べて約4分の1になりました。国内衣料品市場のうち海外衣料品購入割合は1991年で52%になり、2017年で97%まで上がりました。多数の多国籍企業が1990年代後半に日本企業を合併したり、買収したりしました。企業が日本型雇用を取り入れていても競争力強化・経営効率化から人員削減・能力給の導入を進めました。その結果、働き方の不安定さが広がりました。 日本は技術面でも負けています。1980年代、日本企業はエレクトロニクス[電子機器]・新素材・バイオテクノロジーなどの技術でアメリカに追いつこうとしていました。1990年代から情報通信技術の活用や生産性の伸びでアメリカ合衆国に負けました。商品は日本国内で売れにくくなり、業務内容も変わっていきました。そのため、日本企業は海外企業に負けないような対策を取りました。 バブル崩壊後、銀行制度・企業制度も変えられました。「日本版金融ビッグバン」を1996年に打ち出して、銀行・証券会社などにも規制を緩めて金融の自由化・国際化を進めました。1997年の独占禁止法改正から禁止の持株会社を再度認めました。企業は持株会社からグループ内の会社をまとめ直したり、経営の進め方を変えたりしやすくなり、その後の企業再編・金融再編にもつながりました。 以前の大規模小売店舗法は店舗面積500平方メートル以上の大規模小売店舗出店条件として出店規模・営業時間・営業日数などを定めていました。しかし、大規模小売店舗は中小小売業者の近くにも自由に出店しており、中小小売業者のお客様まで消えました。そのため、政府は大規模小売店舗の立地場所を1998年から制限しました(大規模小売店舗立地法)。中小小売業者から流れすぎないように守りながら、大規模小売店舗も中小小売業者も商売を続けられるようにしました。2000年、大規模小売店舗法を廃止しました。[[ファイル:Asian Financial Crisis EN-2009-05-05.png|サムネイル|273x273px|アジア通貨危機の影響国]]企業再編・合併は政府の規制緩和から広がり、海外企業と国内企業の協力・合併も増えました。その流れから六大企業集団もまとまりました。金融業界でも銀行などが倒産したり、別の銀行と合併したりしました。その結果、日本の金融業界は三井住友グループ[旧三井系と旧住友系]・三菱UFJ[旧三菱系と三和系]・みずほグループ[旧第一勧銀系と旧富士系]の三大金融グループへまとまりました。 国内長期不況で苦しむ中、アジア諸国の経済は大成長しました。しかし短期海外資金の依存・金融機関の過剰な借入れ・企業の過剰な借入れ・金融制度の弱さ・投機資金の流入などから海外投資家が危機感を示して一斉に海外資金を回収・売却・国外移動を行いました。1997年、タイの通貨バーツの価値が大きく下がりました。海外投資家は東アジア・東南アジアから次々と海外資金を回収・売却・国外移動を行いました(アジア通貨危機)。その結果、東アジア・東南アジア諸国の金融と経済は大きな爪痕を残しました。債務問題は韓国などで大きくなり、国際通貨基金(International Monetary Fund:IMF)の支援を受けました。アジア通貨危機は日本経済と日本の金融機関にも大きな爪痕を残して、不良債権問題をさらに悪化させました。 日本政府はアジア通貨危機の発生から地域的な金融協力制度[アジア通貨基金構想]を出しました。しかし、アメリカ合衆国の反対から日本政府は二国間金融支援と新宮沢構想などに切り替えて、東アジア諸国を金銭面で助けました。 バブル経済崩壊後の平成不況はずっと続きました。景気は2002年初期に少しだけ上向きました。しかし、政府が公共事業中心の従来型景気対策を抑えながら不良債権処理と規制改革を進めました。その結果、企業は引き続き大規模なリストラと雇用調整を行いました。当初、バブル崩壊後の長期停滞は「失われた10年」とよばれました。その後も日本経済の停滞が強く、「失われた20年」「失われた30年」とよばれました。 == 行政改革と日米安保の変化 == 1990年代後半、大規模災害の対策・重大事件への対策・行政改革・財政改革・金融改革・冷戦後の日米安全保障体制見直し・政党の組み直しを行いました。1995年1月17日、阪神・淡路地域でマグニチュード7.3の<span style="color:#f29100">'''阪神・淡路大震災[兵庫県南部地震]'''</span>が起こりました。神戸市を中心に6400人以上が亡くなり、建造物・高速道路までも大きく壊れました。当地震で大都市は自然災害に弱く、都市政策・耐震化基準・防災体制の見直しをしました。また、国民は被災地に入って、避難民[被災者]の生活を支えたり、被災地の後片付けを手伝ったりしました。この活動からボランティア活動が全国に広がりました。 1995年3月20日、オウム真理教集団は東京都の地下鉄でサリンを撒いて、多数の死傷者を出しました(<span style="color:#f29100">'''地下鉄サリン事件'''</span>)。このように阪神・淡路大震災と地下鉄サリン事件・少年犯罪の殺人事件・児童虐待などが何度も報道機関で取り上げられ、旧価値観的な安全神話も崩れて国民の意識も変わりました。<gallery mode="packed" widths="200" heights="200"> ファイル:Hanshin Expressway Nada b059.jpg|阪神淡路大震災被災後 ファイル:【地下鉄サリン事件】除染を行う自衛隊員と警察官.jpg|地下鉄サリン事件 ファイル:Ryutaro Hashimoto 19960111.jpg|橋本龍太郎 ファイル:Ryuhei Kawada 20240307.jpg|川田龍平 </gallery>1995年9月、自由民主党総裁選挙から<span style="color:#f29100">'''橋本龍太郎'''</span>が選ばれました。1996年1月、村山富市首相退陣後の内閣総理大臣指名選挙で橋本龍太郎が選ばれました。橋本内閣でも自民党・社会民主党・新党さきがけの3党が引き続き協力して、政策を進めました。なお日本社会党は自衛隊・日米安全保障条約の賛成側に回り、1996年に党名を社会民主党へ変えました。 薬害エイズ問題も大きく取り上げられました。橋本龍太郎内閣厚生大臣の菅直人は薬害エイズ被害者[川田龍平など]に謝罪しました。その後、国と製薬会社と被害者が話し合い、和解しました。 1996年、新しい選挙制度で初めて衆議院議員総選挙が行われ、自由民主党の議席を大きく増やしても、過半数を下回りました。社会民主党と新党さきがけは第2次橋本内閣から国務大臣を出さなくなり、閣外協力に変わりました。その結果、自由民主党単独政権に戻りました。 橋本龍太郎内閣は冷戦後の国際変化・国内経済・政府問題を解決するため、行政・財政・金融の各分野を見直しました。行政改革は政府組織を減らしたり、類似の政府組織を1つにまとめたりして、首相などの政策案を出しやすくしました。1998年、中央省庁等改革基本法が導入されて中央省庁等改革関連法から行政改革の方針を決めました。 2001年1月、政府はこの行政改革の方針から中央省庁を1府22省庁から1府12省庁に減らしました。その結果、内閣総理大臣は各省庁へ指示を出して、政府全体の政策を進めやすくしました。2007年、防衛庁を防衛省に上げました。 ★省庁再編 {| class="wikitable" !再編前 !再編後 !再編前 !再編後 |- |内閣官房 |内閣官房 |大蔵省 |財務省 |- | rowspan="2" |総理府 金融再生委員会 経済企画庁 沖縄開発庁 | rowspan="2" |内閣府 |科学技術庁 文部省 |文部科学省 |- |厚生省 労働省 |厚生労働省 |- |国家公安委員会 |国家公安委員会 |農林水産省 |農林水産省 |- |防衛庁 |防衛庁(省) |通商産業省 |経済産業省 |- |総務庁 郵政省 自治省 |総務省 | rowspan="2" |北海道開発庁 国土庁 建設省 運輸省 | rowspan="2" |国土交通省 |- |法務省 |法務省 |- |外務省 |外務省 |環境庁 |環境省 |} 橋本龍太郎内閣は国債の発行額を減らそうとしました。1997年4月、財政構造改革法に従って消費税率を3%から5%に引き上げて公共事業費などを減らしました。国債発行額は1970年代後半から増えても1980年代末で一度減りました。1990年代に入り、公共投資を再拡大させてから大幅な国債発行額増加に向かいました。 しかし、国民は消費税率の引き上げなどから財布の紐もきつくなり、金融機関も生き残れなくなりました。さらにアジア通貨・金融危機も起きて、日本経済は再不況になりました。やがて、銀行同士は金融不安の拡大から合併して1つの銀行になりました。1997年度の実質経済成長率は-0.4%となり、1974年度[第1次石油危機直後]以来のマイナス成長になりました。1998年度の実質経済成長率は-2%まで下がり、平成不況の大きさを改めて物語りました。 [[ファイル:Official Portrait of President William Jefferson Clinton - DPLA - 4697184146b3b6e2d6791b8f3c297476.jpg|サムネイル|221x221ピクセル|ビル・クリントン大統領]] 冷戦後、橋本龍太郎内閣は日米安全保障体制を見直しました。アメリカのビル・クリントン大統領が1996年4月に日本を訪れ、橋本首相と話し合って<span style="color:#f29100">'''日米安全保障共同宣言'''</span>を発表しました。日米安全保障共同宣言から日本とアメリカは日本防衛以外にもアジア太平洋地域の戦争防止・紛争防止まで努めていくようになりました。 自衛隊がアメリカ軍に必要物資を運ぶなどの後方支援についても、日米防衛協力のための指針を見直しました。1997年、日本政府とアメリカ合衆国政府は「新しい日米防衛協力のための指針(新ガイドライン)」を作りました。 日本が外国から直接攻撃されても直接攻撃されていなくても、日本周辺国の戦争などから日本の平和と安全に大きく関わっていたらアメリカ合衆国側も新ガイドラインに従って助け合いました(周辺事態)。ただし日本から何キロ以内というような距離だけだとアメリカ合衆国側は何もしません。 地球温暖化防止京都会議は1997年に開かれ、温室効果ガスの削減目標などを盛り込む京都議定書を採択しました。また、橋本龍太郎内閣は従来のアイヌ民族政策を大きく変えました。 アイヌ民族は1946年2月に北海道アイヌ協会を作り、アイヌ民族の権利を政府に求めました。北海道旧土人保護法からアイヌ民族用の土地[給与地]を貰っても、農地改革で買収されたくありませんでした。しかしアイヌ民族をずっと厳しく人種差別しており、アイヌ民族の一部は北海道から逃げました。その後、北海道アイヌ協会は名前を北海道ウタリ協会に変えました。[[ファイル:UPOPOY 202608.jpg|サムネイル|民族共生象徴空間ウポポイ]]1980年代、世界各地の先住民族が先住民族の権利を政府に求めました。北海道ウタリ協会は政府に北海道旧土人保護法を廃止して新しい法律を作ってほしいと求めました。1997年、国会はアイヌ民族文化をずっと守っていくためにアイヌ文化振興法を作り、北海道旧土人保護法を廃止しました。 その後もアイヌ民族政策は変わりました。2008年、国会はアイヌ民族を日本の先住民族と認めて、内閣へアイヌ民族の権利・生活・文化なども認めてほしいとお願いしました。民族団体の名前も北海道ウタリ協会から北海道アイヌ協会に戻しました。 2019(令和元)年、政府はアイヌ施策推進法で日本の「先住民族」にアイヌ民族を初めて入れました。アイヌ施策推進法から北海道アイヌ協会側も話し合いに参加して、アイヌ民族向けの新しい政策を行っています。2020年、北海道白老町に民族共生象徴空間ウポポイが開かれました。アイヌ語講座・アイヌ文化活動・アイヌ語活動が日本各地で開かれてもいます。 [[ファイル:Keizo Obuchi 19980730.jpg|サムネイル|168x168ピクセル|小渕恵三]] 1998年7月の参議院議員選挙で自由民主党議席数は大きく減らし、この結果から橋本龍太郎も内閣総理大臣を辞めました。これを受けて、<span style="color:#f29100">'''小渕恵三'''</span>が内閣総理大臣に選ばれました。小渕恵三内閣はバブル崩壊に消費税増税・金融不安・アジア通貨危機なども重なり、橋本龍太郎の財政再建路線を修正しました。小渕恵三内閣は土木工事・公共施設建築工事の大型予算を組んでその潤いから複合不況まで立て直そうとしました。その結果、政府は赤字国債発行額を再び大幅に増やしました。 1999年、小渕恵三内閣は国会法案の賛成を増やしたいから自由党〔1月〕・公明党〔10月〕も自由民主党と一緒に内閣を支えていました[自自公連立政権の開始]。その結果、自由民主党・自由党・公明党は衆議院・参議院の両方で過半数の議席を持つようになりました。小渕恵三内閣から自由民主党と公明党は2025年10月まで一緒に内閣を支えました。 1999年、小渕恵三内閣は'''新ガイドライン関連法'''をまとめました。新ガイドライン関連法の<span style="color:#f29100">'''周辺事態安全確保法'''</span>は日本周辺国家の暴走で自国の平和と安全まで守れなくなったら、自衛隊を出してアメリカ軍へ必要物資を送りました。 [[ファイル:G8 2000 group photo (kremlin.ru).jpg|サムネイル|223x223px|第26回主要国首脳会議]] 1999年、小渕恵三内閣は日の丸と君が代を国旗・国歌法へ初めて記しました。また、国民は情報公開法に従って官公庁へ資料を見せてほしいとお願いしやすくなりました。国会は憲法調査会で憲法を変えるかどうか話し合いました。小渕恵三内閣は2000年に九州・沖縄で第26回主要国首脳会議[サミット]開くと決めました。 この時期は野党も大きく変わりました。社会民主党の支持者は少しずつ減りました。新進党は議員の大量離脱から1997年末になくなりました。旧新進党の議員は違う政党[自由党・新党平和・民主党]に入りました。1996年、鳩山由紀夫・菅直人が民主党を結成しました。その後、旧新進党議員も民主党へ入りました。さらに、新党平和・黎明クラブを公明党に戻しました。 こうして、自由民主党と日本社会党が長く争う55年体制も終わりました。55年体制が終わっても、自由民主党と民主党の保守二大政党制へ繋がりませんでした。自由民主党が再び政権へ戻っても、自由党・公明党と一緒に内閣を支えていました。 == 資料出所 == * 平雅行、横田冬彦ほか編著『日本史探究』実教出版株式会社 2023年 * 佐藤信、五味文彦ほか編著『詳説日本史探究』株式会社山川出版社 2023年 * 高埜利彦、高村直助ほか編著『日本史A 改訂版』株式会社山川出版社 2016年 * 渡邊晃宏ほか編著『日本史探究』東京書籍株式会社 2023年 * 伊藤純郎ほか編著『高等学校日本史探究』株式会社清水書院 2023年 * 大橋幸泰ほか編著『高等学校日本史探究』株式会社第一学習社 2023年 * 山中裕典著'''『'''改訂版 大学入学共通テスト 歴史総合、日本史探究の点数が面白いほどとれる本'''』'''株式会社KADOKAWA 2024年 * 佐藤信、五味文彦ほか編著『詳説日本史研究』株式会社山川出版社 2017年 * 河合敦著『世界一わかりやすい河合敦の日本史B[近・現代]の特別講座』株式会社KADOKAWA 2014年(絶版本) * 外園豊基編集代表『最新日本史図表』株式会社第一学習社 2026年 * 東京法令出版編著『歴史資料館 日本史のライブラリー』東京法令出版株式会社 2026年 [[カテゴリ:高等学校日本史探究|あらたなせいきのにほんへ]] [[カテゴリ:20世紀]] bkerkybnz0l5nl5r2jqi70r6zwcrqi9 304993 304992 2026-10-21T23:53:24Z Kwawe 68789 /* 政界再編と55年体制の終結 */ 重要用語を色太字化。 304993 wikitext text/x-wiki [[小学校・中学校・高等学校の学習]]>[[高等学校の学習]]>[[高等学校地理歴史]]>[[高等学校日本史探究]]>新たな世紀の日本へⅡ  引き続き「新たな世紀の日本へ」の内容を解説します。第2回目では、政界再編から小渕恵三内閣までの国内政治を見ていきます。 == 政界再編と55年体制の終結 == 1975年、国鉄職員などは大きなストライキ「スト権スト」を行って政府側に争議権の回復を求めても失敗しました。その後、官公庁労働組合はストライキなどをあまり行わなくなりました。民間大企業の労働組合も春闘で大幅な賃上げを求めにくくなりました。 その後、民間労働組合は1つにまとまり始めました。1987年、全日本民間労働組合連合会[民間連合]をつくりました。1989年の日本労働組合総評議会[総評]解散後、元日本労働組合総評議会[総評]は全日本民間労働組合連合会[民間連合]に合流しました。その後、全日本民間労働組合連合会[民間連合]と同盟などの労働組合は1つにまとまって<span style="color:#f29100">'''日本労働組合総連合会[連合]'''</span>をつくりました。約800万人が日本労働組合総連合会[連合]に入りました。 一方、日本労働組合総連合会[連合]の敵側は全国労働組合総連合[全労連]をつくりました。約140万人が全国労働組合総連合[全労連]に入りました。さらに日本労働組合総連合会[連合]と全国労働組合総連合[全労連]の敵側は全国労働組合連絡協議会[全労協]をつくりました。こうして、野党支持側の労働組合は日本労働組合総連合会[連合]・全国労働組合総連合[全労連]・全国労働組合連絡協議会[全労協]に分かれました。<gallery mode="packed" heights="200"> ファイル:Sohyo Kaikan (headquarters of the Japanese Trade Union Confederation).jpg|日本労働組合総連合会 ファイル:Zenrouren Kaikan (1).jpg|全国労働組合総連合 ファイル:Kiichi Miyazawa 19911105.jpg|宮澤喜一 </gallery>政治家と企業の金銭やり取りが冷戦後の日本で問題になりました。リクルート事件〔竹下内閣〕・佐川急便事件〔宮澤喜一内閣〕・ゼネコン汚職事件〔宮澤喜一内閣〕が起きました。自由民主党副総裁の金丸信も1993年に逮捕されました。国民は政治家・官僚・企業の金銭やり取りへ文句を言い、自由民主党の不支持者まで増えました。 湾岸戦争後、日本も国際連合平和維持活動(PKO)を行うように求められました。宮澤喜一内閣は1992年にPKO協力法をつくりました。政府はPKO協力法に従って自衛隊を海外へ送り、戦後の復旧を行えるようになりました。1992年、日本の自衛隊はカンボジアの国際連合平和維持活動へ初めて向かいました。 国民は相次ぐ政治家と企業の金銭やり取りから政治の仕組みを変えるように求めました。そこで、衆議院議員選挙を中選挙区制の区割りをやめて小選挙区制の区割りに切り替えられました。小選挙区制は1つの選挙区から1人だけを選ぶため、各政党の政策まではっきり分かるようになります。二大政党が小選挙区制の区割りで争うと選挙結果次第で政権交代に結び付きやすくなります。しかし、小さな政党は議席を取りにくくなります。 1993(平成5)年6月、野党側は宮澤喜一内閣に対して内閣不信任案を衆議院へ出しました。自由民主党内部の改革派も内閣不信任案に賛成したため、衆議院は内閣不信任案を可決しました。<span style="color:#f29100">'''羽田孜'''</span>・小沢一郎などは自由民主党を離れて、新生党をつくりました。元自由民主党議員も新党さきがけをつくりました。 宮澤喜一首相は衆議院を解散しました。1993年7月の衆議院議員総選挙結果で自由民主党は過半数を下回り、日本社会党も当選議員を大きく減らしました。一方、新生党・日本新党・新党さきがけなどは、当選議員を大きく増やしました。なお日本新党の政党代表は元熊本県知事の<span style="color:#f29100">'''細川護熙'''</span>でした。当衆議院議員総選挙で日本新党議員57人を立候補させて35人も当選しました。 1994年4月、新生党の羽田孜が内閣総理大臣になりました。しかし、日本社会党は新生党と一緒に内閣を支えなくなりました。羽田孜は国会議員の賛成を集められなくなり、約2か月で首相を辞めました。1994年6月、自由民主党は元野党側の日本社会党・新党さきがけと一緒に内閣を支えました[自社さ連立政権]。日本社会党の<span style="color:#f29100">'''村山富市'''</span>が内閣総理大臣になり、自由民主党も政権へ戻りました。一方、非自民連立政権側の新生党・日本新党・公明党・民社党などは1つにまとまって新進党をつくりました。 従来の日本社会党基本政策を村山富市内閣で大きく変えました。日本社会党は自衛隊を合憲としつつ日米安全保障条約と消費税までも受け入れました。こうして自由民主党と日本社会党の政策は近くなり、日本社会党の不支持者を増やしました。1995年、アジア・太平洋戦争終戦から50年を迎えました。国会は戦後50年目の反省文内容をまとめました。8月15日、村山富市内閣総理大臣はアジア・太平洋戦争の反省とお詫びを<span style="color:#f29100">'''「戦後50周年の終戦記念日にあたって」'''</span>で伝えました(<span style="color:#f29100">'''村山談話'''</span>)。 現地の国民は日本側の植民地支配と侵略から被害を受けており、村山談話でその反省とお詫びを該当国首脳へ伝えました。その後の内閣も村山談話を受け継ぎました。政府は戦後50年目に合わせて、日本とアジア諸国の近現代史資料を国民へ広く公開しました。さらにインターネットでも歴史資料を公開したいから、アジア歴史資料センター開く準備をしました。2001年、アジア歴史資料センターを開きました。政党の結成・解党・合流まで活発になり、各政党のどこにも入らない無党派層も増えました。以降は単独政党のみで内閣を支えきれなくなり、複数政党と一緒に内閣を支えました。 == バブルの崩壊 == プラザ合意後、大量のお金が土地購入・株式購入のために使われ、土地の値段・株価[資産価格]が次第に上がりました(資産インフレ)。1989(平成元)年、日本銀行は銀行へお金をあまり貸さなくなり、政府も土地の値段を上げすぎないようにしました(金融引き締め政策)。1990年代に入ってから、土地の値段・株価は下がり始めました。日経平均株価は、1989年12月末に3万8915円まで上がりました。しかし、その後は株式売却が増えて株価もいきなり下がり、1992年8月に1万4309円まで下がりました。土地の値段も1991年頃から下がり始め、1992年以後は日本各地で下がりました。2000年代半ばになると、大阪の一部商業地は一番高い時期の値段から約10分の1まで下がりました。こうして土地や株式の大幅な値上がりは終わり、1980年代後半のバブル経済は終わりました。 ★日本の実質経済成長率の推移 [[ファイル:GDP_growth_rate_in_Japan.svg|代替文=日本の実質経済成長率の推移|フレームなし|924x924px]] 日本の景気は1991年から悪くなりました('''平成不況''')。実質経済成長率は1992年に1.3%、1993年に1%未満まで下がりました。1992年を3か月ずつに分けて見ると、4~6月は-3.3%となり、前の3か月より国内経済が小さくなりました。7~9月と10~12月もそれぞれ-0.1%となりました。第1次石油危機後に2期連続の経済縮小時期はあっても、3期連続の経済縮小は戦後初めてでした。僅かな景気回復時期も平成不況の途中にありました。しかしすぐに経済縮小となり、平成不況が長年続きました。 バブル経済当時の国民は金融機関からお金を借りて、株価と地価をより高い価格で買いました。金融機関は不動産会社にもお金を貸しました。バブル崩壊後、株価と地価が大きく下がりました。国民は株と土地を全て売っても借金を返せなくなりました。国民の借金も金融機関へ返ってこなくなりました(不良債権)。金融機関は株と土地を債権として持っており、不良債権から金融機関も大赤字になりました。 金融機関は不良債権処理にずっと追われて、さらに苦しくなりました。その結果、金融機関は不良債権の心配からお金を貸さなくなりました。企業は金融機関からお金を借りにくくなりました。国民も「この金融機関は大丈夫か」と不安を感じるようになり、金融機関はさらに苦しくなりました。その後、企業は新しい商品を作れなくなり、新しい工場を建てられなくなり、新しい機械も買えなくなりました。地価の下落・株価の下落・不良債権の増加・金融機関の経営悪化・金融機関の融資停止が全て重なって景気も次第に悪くなりました('''複合不況''')。 当時の政府と日本銀行はこれまでの不況と同じように、財政支出の拡大・低金利政策から数年で景気も回復するかもと思っていました。この誤対策は複合不況に一切効果ありません。住宅金融専門会社は1995年頃から相次いでつぶれました。1997年、北海道拓殖銀行と山一証券がつぶれました。1998年、日本債券信用銀行と日本長期信用銀行がつぶれました。このように大手金融機関がつぶれると、国民も他の金融機関も危ないのではないかと不安になりました。政府は金融システムまで止まらないように、倒産寸前の大手金融機関などに大量の公的資金を入れました。<gallery mode="nolines" widths="200" heights="200"> ファイル:The Hokkaido Takushoku Bank.JPG|旧北海道拓殖銀行本店 ファイル:Kayabacho Tower, at Shinkawa, Chuo, Tokyo (2019-01-02) 02.jpg|旧山一證券本社 ファイル:日債銀本店.jpg|旧日本債券信用銀行本店 ファイル:Shinsei Bank (head office 1).jpg|旧日本長期信用銀行本店 </gallery>1998年、小渕恵三が内閣総理大臣になりました。小渕恵三内閣も大型予算から景気を回復させしようとしました。小渕内閣が公共投資を増やして国民のお金を回そうとしても複合不況に一切効果ありません。こうして、公債発行残高は増えました。物価は1990年代後半からずっと下がり続けました(デフレスパイラル)。 [[ファイル:Unemployment Rate of Japan 1953-2009.jpg|サムネイル|395x395ピクセル|日本の失業率]] 企業は赤字なので、生き残るために経営の効率化[事業整理・人員削減・雇用調整・海外進出など]を進めました(リストラクチャリング)。中小企業の倒産も増えて、中高年労働者の解雇・中高年労働者の早期退職・新卒採用の削減から企業の人件費を大幅に減らしました。バブル景気の時期は労働者不足から「売り手市場」でも、バブル崩壊後から「買い手市場」へ変わりました。1990年代半ばから2000年代前半、企業は新卒採用を大幅に減らしました(就職氷河期)。1998年の完全失業率は4%を超え、2001年の完全失業率で5%になりました。 失業者が増えると労働者も「自分も仕事を失うかもしれない」と不安になり、個人消費を減らしました。消費者は同じような商品なら出来るだけ安い商品を選ぶようになり、ブランド品・高級品を買ってくれなくなりました。商品が売れなくなると、会社も少量生産・既存工場・既存機械だけで行うようになりました。その結果、会社の利益がさらに減って、人員削減・採用縮小もさらに進みました。株価と地価の下落から不良債権が増えて、金融機関の経営も苦しくなり、企業へお金を貸せなくなりました。 円高も国際分業も進みました。1994年、1ドルが100円を割り込みました。輸出主導・量産指向型産業[自動車・電子・家電・事務機器など]は海外で売れにくくなりました。また、バブル崩壊後の不景気から国内の購入者も減りました。生産費用を少しでも減らすため、労働者の給料が日本より低いアジア諸国[中国など]へ工場を移すようになりました[国内工場の閉鎖・国内工場の海外移転]。その結果、地元企業・周辺店舗の売り上げを減らし、失業者を増やしました(地域'''産業の空洞化''')。 繊維産業の事業所数は減り続けました。2015年の繊維産業の事業所数は1991年と比べて約4分の1になりました。国内衣料品市場のうち海外衣料品購入割合は1991年で52%になり、2017年で97%まで上がりました。多数の多国籍企業が1990年代後半に日本企業を合併したり、買収したりしました。企業が日本型雇用を取り入れていても競争力強化・経営効率化から人員削減・能力給の導入を進めました。その結果、働き方の不安定さが広がりました。 日本は技術面でも負けています。1980年代、日本企業はエレクトロニクス[電子機器]・新素材・バイオテクノロジーなどの技術でアメリカに追いつこうとしていました。1990年代から情報通信技術の活用や生産性の伸びでアメリカ合衆国に負けました。商品は日本国内で売れにくくなり、業務内容も変わっていきました。そのため、日本企業は海外企業に負けないような対策を取りました。 バブル崩壊後、銀行制度・企業制度も変えられました。「日本版金融ビッグバン」を1996年に打ち出して、銀行・証券会社などにも規制を緩めて金融の自由化・国際化を進めました。1997年の独占禁止法改正から禁止の持株会社を再度認めました。企業は持株会社からグループ内の会社をまとめ直したり、経営の進め方を変えたりしやすくなり、その後の企業再編・金融再編にもつながりました。 以前の大規模小売店舗法は店舗面積500平方メートル以上の大規模小売店舗出店条件として出店規模・営業時間・営業日数などを定めていました。しかし、大規模小売店舗は中小小売業者の近くにも自由に出店しており、中小小売業者のお客様まで消えました。そのため、政府は大規模小売店舗の立地場所を1998年から制限しました(大規模小売店舗立地法)。中小小売業者から流れすぎないように守りながら、大規模小売店舗も中小小売業者も商売を続けられるようにしました。2000年、大規模小売店舗法を廃止しました。[[ファイル:Asian Financial Crisis EN-2009-05-05.png|サムネイル|273x273px|アジア通貨危機の影響国]]企業再編・合併は政府の規制緩和から広がり、海外企業と国内企業の協力・合併も増えました。その流れから六大企業集団もまとまりました。金融業界でも銀行などが倒産したり、別の銀行と合併したりしました。その結果、日本の金融業界は三井住友グループ[旧三井系と旧住友系]・三菱UFJ[旧三菱系と三和系]・みずほグループ[旧第一勧銀系と旧富士系]の三大金融グループへまとまりました。 国内長期不況で苦しむ中、アジア諸国の経済は大成長しました。しかし短期海外資金の依存・金融機関の過剰な借入れ・企業の過剰な借入れ・金融制度の弱さ・投機資金の流入などから海外投資家が危機感を示して一斉に海外資金を回収・売却・国外移動を行いました。1997年、タイの通貨バーツの価値が大きく下がりました。海外投資家は東アジア・東南アジアから次々と海外資金を回収・売却・国外移動を行いました(アジア通貨危機)。その結果、東アジア・東南アジア諸国の金融と経済は大きな爪痕を残しました。債務問題は韓国などで大きくなり、国際通貨基金(International Monetary Fund:IMF)の支援を受けました。アジア通貨危機は日本経済と日本の金融機関にも大きな爪痕を残して、不良債権問題をさらに悪化させました。 日本政府はアジア通貨危機の発生から地域的な金融協力制度[アジア通貨基金構想]を出しました。しかし、アメリカ合衆国の反対から日本政府は二国間金融支援と新宮沢構想などに切り替えて、東アジア諸国を金銭面で助けました。 バブル経済崩壊後の平成不況はずっと続きました。景気は2002年初期に少しだけ上向きました。しかし、政府が公共事業中心の従来型景気対策を抑えながら不良債権処理と規制改革を進めました。その結果、企業は引き続き大規模なリストラと雇用調整を行いました。当初、バブル崩壊後の長期停滞は「失われた10年」とよばれました。その後も日本経済の停滞が強く、「失われた20年」「失われた30年」とよばれました。 == 行政改革と日米安保の変化 == 1990年代後半、大規模災害の対策・重大事件への対策・行政改革・財政改革・金融改革・冷戦後の日米安全保障体制見直し・政党の組み直しを行いました。1995年1月17日、阪神・淡路地域でマグニチュード7.3の<span style="color:#f29100">'''阪神・淡路大震災[兵庫県南部地震]'''</span>が起こりました。神戸市を中心に6400人以上が亡くなり、建造物・高速道路までも大きく壊れました。当地震で大都市は自然災害に弱く、都市政策・耐震化基準・防災体制の見直しをしました。また、国民は被災地に入って、避難民[被災者]の生活を支えたり、被災地の後片付けを手伝ったりしました。この活動からボランティア活動が全国に広がりました。 1995年3月20日、オウム真理教集団は東京都の地下鉄でサリンを撒いて、多数の死傷者を出しました(<span style="color:#f29100">'''地下鉄サリン事件'''</span>)。このように阪神・淡路大震災と地下鉄サリン事件・少年犯罪の殺人事件・児童虐待などが何度も報道機関で取り上げられ、旧価値観的な安全神話も崩れて国民の意識も変わりました。<gallery mode="packed" widths="200" heights="200"> ファイル:Hanshin Expressway Nada b059.jpg|阪神淡路大震災被災後 ファイル:【地下鉄サリン事件】除染を行う自衛隊員と警察官.jpg|地下鉄サリン事件 ファイル:Ryutaro Hashimoto 19960111.jpg|橋本龍太郎 ファイル:Ryuhei Kawada 20240307.jpg|川田龍平 </gallery>1995年9月、自由民主党総裁選挙から<span style="color:#f29100">'''橋本龍太郎'''</span>が選ばれました。1996年1月、村山富市首相退陣後の内閣総理大臣指名選挙で橋本龍太郎が選ばれました。橋本内閣でも自民党・社会民主党・新党さきがけの3党が引き続き協力して、政策を進めました。なお日本社会党は自衛隊・日米安全保障条約の賛成側に回り、1996年に党名を社会民主党へ変えました。 薬害エイズ問題も大きく取り上げられました。橋本龍太郎内閣厚生大臣の菅直人は薬害エイズ被害者[川田龍平など]に謝罪しました。その後、国と製薬会社と被害者が話し合い、和解しました。 1996年、新しい選挙制度で初めて衆議院議員総選挙が行われ、自由民主党の議席を大きく増やしても、過半数を下回りました。社会民主党と新党さきがけは第2次橋本内閣から国務大臣を出さなくなり、閣外協力に変わりました。その結果、自由民主党単独政権に戻りました。 橋本龍太郎内閣は冷戦後の国際変化・国内経済・政府問題を解決するため、行政・財政・金融の各分野を見直しました。行政改革は政府組織を減らしたり、類似の政府組織を1つにまとめたりして、首相などの政策案を出しやすくしました。1998年、中央省庁等改革基本法が導入されて中央省庁等改革関連法から行政改革の方針を決めました。 2001年1月、政府はこの行政改革の方針から中央省庁を1府22省庁から1府12省庁に減らしました。その結果、内閣総理大臣は各省庁へ指示を出して、政府全体の政策を進めやすくしました。2007年、防衛庁を防衛省に上げました。 ★省庁再編 {| class="wikitable" !再編前 !再編後 !再編前 !再編後 |- |内閣官房 |内閣官房 |大蔵省 |財務省 |- | rowspan="2" |総理府 金融再生委員会 経済企画庁 沖縄開発庁 | rowspan="2" |内閣府 |科学技術庁 文部省 |文部科学省 |- |厚生省 労働省 |厚生労働省 |- |国家公安委員会 |国家公安委員会 |農林水産省 |農林水産省 |- |防衛庁 |防衛庁(省) |通商産業省 |経済産業省 |- |総務庁 郵政省 自治省 |総務省 | rowspan="2" |北海道開発庁 国土庁 建設省 運輸省 | rowspan="2" |国土交通省 |- |法務省 |法務省 |- |外務省 |外務省 |環境庁 |環境省 |} 橋本龍太郎内閣は国債の発行額を減らそうとしました。1997年4月、財政構造改革法に従って消費税率を3%から5%に引き上げて公共事業費などを減らしました。国債発行額は1970年代後半から増えても1980年代末で一度減りました。1990年代に入り、公共投資を再拡大させてから大幅な国債発行額増加に向かいました。 しかし、国民は消費税率の引き上げなどから財布の紐もきつくなり、金融機関も生き残れなくなりました。さらにアジア通貨・金融危機も起きて、日本経済は再不況になりました。やがて、銀行同士は金融不安の拡大から合併して1つの銀行になりました。1997年度の実質経済成長率は-0.4%となり、1974年度[第1次石油危機直後]以来のマイナス成長になりました。1998年度の実質経済成長率は-2%まで下がり、平成不況の大きさを改めて物語りました。 [[ファイル:Official Portrait of President William Jefferson Clinton - DPLA - 4697184146b3b6e2d6791b8f3c297476.jpg|サムネイル|221x221ピクセル|ビル・クリントン大統領]] 冷戦後、橋本龍太郎内閣は日米安全保障体制を見直しました。アメリカのビル・クリントン大統領が1996年4月に日本を訪れ、橋本首相と話し合って<span style="color:#f29100">'''日米安全保障共同宣言'''</span>を発表しました。日米安全保障共同宣言から日本とアメリカは日本防衛以外にもアジア太平洋地域の戦争防止・紛争防止まで努めていくようになりました。 自衛隊がアメリカ軍に必要物資を運ぶなどの後方支援についても、日米防衛協力のための指針を見直しました。1997年、日本政府とアメリカ合衆国政府は「新しい日米防衛協力のための指針(新ガイドライン)」を作りました。 日本が外国から直接攻撃されても直接攻撃されていなくても、日本周辺国の戦争などから日本の平和と安全に大きく関わっていたらアメリカ合衆国側も新ガイドラインに従って助け合いました(周辺事態)。ただし日本から何キロ以内というような距離だけだとアメリカ合衆国側は何もしません。 地球温暖化防止京都会議は1997年に開かれ、温室効果ガスの削減目標などを盛り込む京都議定書を採択しました。また、橋本龍太郎内閣は従来のアイヌ民族政策を大きく変えました。 アイヌ民族は1946年2月に北海道アイヌ協会を作り、アイヌ民族の権利を政府に求めました。北海道旧土人保護法からアイヌ民族用の土地[給与地]を貰っても、農地改革で買収されたくありませんでした。しかしアイヌ民族をずっと厳しく人種差別しており、アイヌ民族の一部は北海道から逃げました。その後、北海道アイヌ協会は名前を北海道ウタリ協会に変えました。[[ファイル:UPOPOY 202608.jpg|サムネイル|民族共生象徴空間ウポポイ]]1980年代、世界各地の先住民族が先住民族の権利を政府に求めました。北海道ウタリ協会は政府に北海道旧土人保護法を廃止して新しい法律を作ってほしいと求めました。1997年、国会はアイヌ民族文化をずっと守っていくためにアイヌ文化振興法を作り、北海道旧土人保護法を廃止しました。 その後もアイヌ民族政策は変わりました。2008年、国会はアイヌ民族を日本の先住民族と認めて、内閣へアイヌ民族の権利・生活・文化なども認めてほしいとお願いしました。民族団体の名前も北海道ウタリ協会から北海道アイヌ協会に戻しました。 2019(令和元)年、政府はアイヌ施策推進法で日本の「先住民族」にアイヌ民族を初めて入れました。アイヌ施策推進法から北海道アイヌ協会側も話し合いに参加して、アイヌ民族向けの新しい政策を行っています。2020年、北海道白老町に民族共生象徴空間ウポポイが開かれました。アイヌ語講座・アイヌ文化活動・アイヌ語活動が日本各地で開かれてもいます。 [[ファイル:Keizo Obuchi 19980730.jpg|サムネイル|168x168ピクセル|小渕恵三]] 1998年7月の参議院議員選挙で自由民主党議席数は大きく減らし、この結果から橋本龍太郎も内閣総理大臣を辞めました。これを受けて、<span style="color:#f29100">'''小渕恵三'''</span>が内閣総理大臣に選ばれました。小渕恵三内閣はバブル崩壊に消費税増税・金融不安・アジア通貨危機なども重なり、橋本龍太郎の財政再建路線を修正しました。小渕恵三内閣は土木工事・公共施設建築工事の大型予算を組んでその潤いから複合不況まで立て直そうとしました。その結果、政府は赤字国債発行額を再び大幅に増やしました。 1999年、小渕恵三内閣は国会法案の賛成を増やしたいから自由党〔1月〕・公明党〔10月〕も自由民主党と一緒に内閣を支えていました[自自公連立政権の開始]。その結果、自由民主党・自由党・公明党は衆議院・参議院の両方で過半数の議席を持つようになりました。小渕恵三内閣から自由民主党と公明党は2025年10月まで一緒に内閣を支えました。 1999年、小渕恵三内閣は'''新ガイドライン関連法'''をまとめました。新ガイドライン関連法の<span style="color:#f29100">'''周辺事態安全確保法'''</span>は日本周辺国家の暴走で自国の平和と安全まで守れなくなったら、自衛隊を出してアメリカ軍へ必要物資を送りました。 [[ファイル:G8 2000 group photo (kremlin.ru).jpg|サムネイル|223x223px|第26回主要国首脳会議]] 1999年、小渕恵三内閣は日の丸と君が代を国旗・国歌法へ初めて記しました。また、国民は情報公開法に従って官公庁へ資料を見せてほしいとお願いしやすくなりました。国会は憲法調査会で憲法を変えるかどうか話し合いました。小渕恵三内閣は2000年に九州・沖縄で第26回主要国首脳会議[サミット]開くと決めました。 この時期は野党も大きく変わりました。社会民主党の支持者は少しずつ減りました。新進党は議員の大量離脱から1997年末になくなりました。旧新進党の議員は違う政党[自由党・新党平和・民主党]に入りました。1996年、鳩山由紀夫・菅直人が民主党を結成しました。その後、旧新進党議員も民主党へ入りました。さらに、新党平和・黎明クラブを公明党に戻しました。 こうして、自由民主党と日本社会党が長く争う55年体制も終わりました。55年体制が終わっても、自由民主党と民主党の保守二大政党制へ繋がりませんでした。自由民主党が再び政権へ戻っても、自由党・公明党と一緒に内閣を支えていました。 == 資料出所 == * 平雅行、横田冬彦ほか編著『日本史探究』実教出版株式会社 2023年 * 佐藤信、五味文彦ほか編著『詳説日本史探究』株式会社山川出版社 2023年 * 高埜利彦、高村直助ほか編著『日本史A 改訂版』株式会社山川出版社 2016年 * 渡邊晃宏ほか編著『日本史探究』東京書籍株式会社 2023年 * 伊藤純郎ほか編著『高等学校日本史探究』株式会社清水書院 2023年 * 大橋幸泰ほか編著『高等学校日本史探究』株式会社第一学習社 2023年 * 山中裕典著'''『'''改訂版 大学入学共通テスト 歴史総合、日本史探究の点数が面白いほどとれる本'''』'''株式会社KADOKAWA 2024年 * 佐藤信、五味文彦ほか編著『詳説日本史研究』株式会社山川出版社 2017年 * 河合敦著『世界一わかりやすい河合敦の日本史B[近・現代]の特別講座』株式会社KADOKAWA 2014年(絶版本) * 外園豊基編集代表『最新日本史図表』株式会社第一学習社 2026年 * 東京法令出版編著『歴史資料館 日本史のライブラリー』東京法令出版株式会社 2026年 [[カテゴリ:高等学校日本史探究|あらたなせいきのにほんへ]] [[カテゴリ:20世紀]] hblieilrv319adxd8j6ms2awkj53h3b 304994 304993 2026-10-21T23:55:16Z Kwawe 68789 /* 政界再編と55年体制の終結 */ 304994 wikitext text/x-wiki [[小学校・中学校・高等学校の学習]]>[[高等学校の学習]]>[[高等学校地理歴史]]>[[高等学校日本史探究]]>新たな世紀の日本へⅡ  引き続き「新たな世紀の日本へ」の内容を解説します。第2回目では、政界再編から小渕恵三内閣までの国内政治を見ていきます。 == 政界再編と55年体制の終結 == 1975年、国鉄職員などは大きなストライキ「スト権スト」を行って政府側に争議権の回復を求めても失敗しました。その後、官公庁労働組合はストライキなどをあまり行わなくなりました。民間大企業の労働組合も春闘で大幅な賃上げを求めにくくなりました。 その後、民間労働組合は1つにまとまり始めました。1987年、全日本民間労働組合連合会[民間連合]をつくりました。1989年の日本労働組合総評議会[総評]解散後、元日本労働組合総評議会[総評]は全日本民間労働組合連合会[民間連合]に合流しました。その後、全日本民間労働組合連合会[民間連合]と同盟などの労働組合は1つにまとまって<span style="color:#f29100">'''日本労働組合総連合会[連合]'''</span>をつくりました。約800万人が日本労働組合総連合会[連合]に入りました。 一方、日本労働組合総連合会[連合]の敵側は全国労働組合総連合[全労連]をつくりました。約140万人が全国労働組合総連合[全労連]に入りました。さらに日本労働組合総連合会[連合]と全国労働組合総連合[全労連]の敵側は全国労働組合連絡協議会[全労協]をつくりました。こうして、野党支持側の労働組合は日本労働組合総連合会[連合]・全国労働組合総連合[全労連]・全国労働組合連絡協議会[全労協]に分かれました。<gallery mode="packed" heights="200"> ファイル:Sohyo Kaikan (headquarters of the Japanese Trade Union Confederation).jpg|日本労働組合総連合会 ファイル:Zenrouren Kaikan (1).jpg|全国労働組合総連合 ファイル:Kiichi Miyazawa 19911105.jpg|宮澤喜一 </gallery>政治家と企業の金銭やり取りが冷戦後の日本で問題になりました。リクルート事件〔竹下内閣〕・佐川急便事件〔宮澤喜一内閣〕・ゼネコン汚職事件〔宮澤喜一内閣〕が起きました。自由民主党副総裁の金丸信も1993年に逮捕されました。国民は政治家・官僚・企業の金銭やり取りへ文句を言い、自由民主党の不支持者まで増えました。 国民は相次ぐ政治家と企業の金銭やり取りから政治の仕組みを変えるように求めました。そこで、衆議院議員選挙を中選挙区制の区割りをやめて小選挙区制の区割りに切り替えられました。小選挙区制は1つの選挙区から1人だけを選ぶため、各政党の政策まではっきり分かるようになります。二大政党が小選挙区制の区割りで争うと選挙結果次第で政権交代に結び付きやすくなります。しかし、小さな政党は議席を取りにくくなります。 1993(平成5)年6月、野党側は宮澤喜一内閣に対して内閣不信任案を衆議院へ出しました。自由民主党内部の改革派も内閣不信任案に賛成したため、衆議院は内閣不信任案を可決しました。<span style="color:#f29100">'''羽田孜'''</span>・小沢一郎などは自由民主党を離れて、新生党をつくりました。元自由民主党議員も新党さきがけをつくりました。 宮澤喜一首相は衆議院を解散しました。1993年7月の衆議院議員総選挙結果で自由民主党は過半数を下回り、日本社会党も当選議員を大きく減らしました。一方、新生党・日本新党・新党さきがけなどは、当選議員を大きく増やしました。なお日本新党の政党代表は元熊本県知事の<span style="color:#f29100">'''細川護熙'''</span>でした。当衆議院議員総選挙で日本新党議員57人を立候補させて35人も当選しました。 1994年4月、新生党の羽田孜が内閣総理大臣になりました。しかし、日本社会党は新生党と一緒に内閣を支えなくなりました。羽田孜は国会議員の賛成を集められなくなり、約2か月で首相を辞めました。1994年6月、自由民主党は元野党側の日本社会党・新党さきがけと一緒に内閣を支えました[自社さ連立政権]。日本社会党の<span style="color:#f29100">'''村山富市'''</span>が内閣総理大臣になり、自由民主党も政権へ戻りました。一方、非自民連立政権側の新生党・日本新党・公明党・民社党などは1つにまとまって新進党をつくりました。 従来の日本社会党基本政策を村山富市内閣で大きく変えました。日本社会党は自衛隊を合憲としつつ日米安全保障条約と消費税までも受け入れました。こうして自由民主党と日本社会党の政策は近くなり、日本社会党の不支持者を増やしました。1995年、アジア・太平洋戦争終戦から50年を迎えました。国会は戦後50年目の反省文内容をまとめました。8月15日、村山富市内閣総理大臣はアジア・太平洋戦争の反省とお詫びを<span style="color:#f29100">'''「戦後50周年の終戦記念日にあたって」'''</span>で伝えました(<span style="color:#f29100">'''村山談話'''</span>)。 現地の国民は日本側の植民地支配と侵略から被害を受けており、村山談話でその反省とお詫びを該当国首脳へ伝えました。その後の内閣も村山談話を受け継ぎました。政府は戦後50年目に合わせて、日本とアジア諸国の近現代史資料を国民へ広く公開しました。さらにインターネットでも歴史資料を公開したいから、アジア歴史資料センター開く準備をしました。2001年、アジア歴史資料センターを開きました。政党の結成・解党・合流まで活発になり、各政党のどこにも入らない無党派層も増えました。以降は単独政党のみで内閣を支えきれなくなり、複数政党と一緒に内閣を支えました。 == バブルの崩壊 == プラザ合意後、大量のお金が土地購入・株式購入のために使われ、土地の値段・株価[資産価格]が次第に上がりました(資産インフレ)。1989(平成元)年、日本銀行は銀行へお金をあまり貸さなくなり、政府も土地の値段を上げすぎないようにしました(金融引き締め政策)。1990年代に入ってから、土地の値段・株価は下がり始めました。日経平均株価は、1989年12月末に3万8915円まで上がりました。しかし、その後は株式売却が増えて株価もいきなり下がり、1992年8月に1万4309円まで下がりました。土地の値段も1991年頃から下がり始め、1992年以後は日本各地で下がりました。2000年代半ばになると、大阪の一部商業地は一番高い時期の値段から約10分の1まで下がりました。こうして土地や株式の大幅な値上がりは終わり、1980年代後半のバブル経済は終わりました。 ★日本の実質経済成長率の推移 [[ファイル:GDP_growth_rate_in_Japan.svg|代替文=日本の実質経済成長率の推移|フレームなし|924x924px]] 日本の景気は1991年から悪くなりました('''平成不況''')。実質経済成長率は1992年に1.3%、1993年に1%未満まで下がりました。1992年を3か月ずつに分けて見ると、4~6月は-3.3%となり、前の3か月より国内経済が小さくなりました。7~9月と10~12月もそれぞれ-0.1%となりました。第1次石油危機後に2期連続の経済縮小時期はあっても、3期連続の経済縮小は戦後初めてでした。僅かな景気回復時期も平成不況の途中にありました。しかしすぐに経済縮小となり、平成不況が長年続きました。 バブル経済当時の国民は金融機関からお金を借りて、株価と地価をより高い価格で買いました。金融機関は不動産会社にもお金を貸しました。バブル崩壊後、株価と地価が大きく下がりました。国民は株と土地を全て売っても借金を返せなくなりました。国民の借金も金融機関へ返ってこなくなりました(不良債権)。金融機関は株と土地を債権として持っており、不良債権から金融機関も大赤字になりました。 金融機関は不良債権処理にずっと追われて、さらに苦しくなりました。その結果、金融機関は不良債権の心配からお金を貸さなくなりました。企業は金融機関からお金を借りにくくなりました。国民も「この金融機関は大丈夫か」と不安を感じるようになり、金融機関はさらに苦しくなりました。その後、企業は新しい商品を作れなくなり、新しい工場を建てられなくなり、新しい機械も買えなくなりました。地価の下落・株価の下落・不良債権の増加・金融機関の経営悪化・金融機関の融資停止が全て重なって景気も次第に悪くなりました('''複合不況''')。 当時の政府と日本銀行はこれまでの不況と同じように、財政支出の拡大・低金利政策から数年で景気も回復するかもと思っていました。この誤対策は複合不況に一切効果ありません。住宅金融専門会社は1995年頃から相次いでつぶれました。1997年、北海道拓殖銀行と山一証券がつぶれました。1998年、日本債券信用銀行と日本長期信用銀行がつぶれました。このように大手金融機関がつぶれると、国民も他の金融機関も危ないのではないかと不安になりました。政府は金融システムまで止まらないように、倒産寸前の大手金融機関などに大量の公的資金を入れました。<gallery mode="nolines" widths="200" heights="200"> ファイル:The Hokkaido Takushoku Bank.JPG|旧北海道拓殖銀行本店 ファイル:Kayabacho Tower, at Shinkawa, Chuo, Tokyo (2019-01-02) 02.jpg|旧山一證券本社 ファイル:日債銀本店.jpg|旧日本債券信用銀行本店 ファイル:Shinsei Bank (head office 1).jpg|旧日本長期信用銀行本店 </gallery>1998年、小渕恵三が内閣総理大臣になりました。小渕恵三内閣も大型予算から景気を回復させしようとしました。小渕内閣が公共投資を増やして国民のお金を回そうとしても複合不況に一切効果ありません。こうして、公債発行残高は増えました。物価は1990年代後半からずっと下がり続けました(デフレスパイラル)。 [[ファイル:Unemployment Rate of Japan 1953-2009.jpg|サムネイル|395x395ピクセル|日本の失業率]] 企業は赤字なので、生き残るために経営の効率化[事業整理・人員削減・雇用調整・海外進出など]を進めました(リストラクチャリング)。中小企業の倒産も増えて、中高年労働者の解雇・中高年労働者の早期退職・新卒採用の削減から企業の人件費を大幅に減らしました。バブル景気の時期は労働者不足から「売り手市場」でも、バブル崩壊後から「買い手市場」へ変わりました。1990年代半ばから2000年代前半、企業は新卒採用を大幅に減らしました(就職氷河期)。1998年の完全失業率は4%を超え、2001年の完全失業率で5%になりました。 失業者が増えると労働者も「自分も仕事を失うかもしれない」と不安になり、個人消費を減らしました。消費者は同じような商品なら出来るだけ安い商品を選ぶようになり、ブランド品・高級品を買ってくれなくなりました。商品が売れなくなると、会社も少量生産・既存工場・既存機械だけで行うようになりました。その結果、会社の利益がさらに減って、人員削減・採用縮小もさらに進みました。株価と地価の下落から不良債権が増えて、金融機関の経営も苦しくなり、企業へお金を貸せなくなりました。 円高も国際分業も進みました。1994年、1ドルが100円を割り込みました。輸出主導・量産指向型産業[自動車・電子・家電・事務機器など]は海外で売れにくくなりました。また、バブル崩壊後の不景気から国内の購入者も減りました。生産費用を少しでも減らすため、労働者の給料が日本より低いアジア諸国[中国など]へ工場を移すようになりました[国内工場の閉鎖・国内工場の海外移転]。その結果、地元企業・周辺店舗の売り上げを減らし、失業者を増やしました(地域'''産業の空洞化''')。 繊維産業の事業所数は減り続けました。2015年の繊維産業の事業所数は1991年と比べて約4分の1になりました。国内衣料品市場のうち海外衣料品購入割合は1991年で52%になり、2017年で97%まで上がりました。多数の多国籍企業が1990年代後半に日本企業を合併したり、買収したりしました。企業が日本型雇用を取り入れていても競争力強化・経営効率化から人員削減・能力給の導入を進めました。その結果、働き方の不安定さが広がりました。 日本は技術面でも負けています。1980年代、日本企業はエレクトロニクス[電子機器]・新素材・バイオテクノロジーなどの技術でアメリカに追いつこうとしていました。1990年代から情報通信技術の活用や生産性の伸びでアメリカ合衆国に負けました。商品は日本国内で売れにくくなり、業務内容も変わっていきました。そのため、日本企業は海外企業に負けないような対策を取りました。 バブル崩壊後、銀行制度・企業制度も変えられました。「日本版金融ビッグバン」を1996年に打ち出して、銀行・証券会社などにも規制を緩めて金融の自由化・国際化を進めました。1997年の独占禁止法改正から禁止の持株会社を再度認めました。企業は持株会社からグループ内の会社をまとめ直したり、経営の進め方を変えたりしやすくなり、その後の企業再編・金融再編にもつながりました。 以前の大規模小売店舗法は店舗面積500平方メートル以上の大規模小売店舗出店条件として出店規模・営業時間・営業日数などを定めていました。しかし、大規模小売店舗は中小小売業者の近くにも自由に出店しており、中小小売業者のお客様まで消えました。そのため、政府は大規模小売店舗の立地場所を1998年から制限しました(大規模小売店舗立地法)。中小小売業者から流れすぎないように守りながら、大規模小売店舗も中小小売業者も商売を続けられるようにしました。2000年、大規模小売店舗法を廃止しました。[[ファイル:Asian Financial Crisis EN-2009-05-05.png|サムネイル|273x273px|アジア通貨危機の影響国]]企業再編・合併は政府の規制緩和から広がり、海外企業と国内企業の協力・合併も増えました。その流れから六大企業集団もまとまりました。金融業界でも銀行などが倒産したり、別の銀行と合併したりしました。その結果、日本の金融業界は三井住友グループ[旧三井系と旧住友系]・三菱UFJ[旧三菱系と三和系]・みずほグループ[旧第一勧銀系と旧富士系]の三大金融グループへまとまりました。 国内長期不況で苦しむ中、アジア諸国の経済は大成長しました。しかし短期海外資金の依存・金融機関の過剰な借入れ・企業の過剰な借入れ・金融制度の弱さ・投機資金の流入などから海外投資家が危機感を示して一斉に海外資金を回収・売却・国外移動を行いました。1997年、タイの通貨バーツの価値が大きく下がりました。海外投資家は東アジア・東南アジアから次々と海外資金を回収・売却・国外移動を行いました(アジア通貨危機)。その結果、東アジア・東南アジア諸国の金融と経済は大きな爪痕を残しました。債務問題は韓国などで大きくなり、国際通貨基金(International Monetary Fund:IMF)の支援を受けました。アジア通貨危機は日本経済と日本の金融機関にも大きな爪痕を残して、不良債権問題をさらに悪化させました。 日本政府はアジア通貨危機の発生から地域的な金融協力制度[アジア通貨基金構想]を出しました。しかし、アメリカ合衆国の反対から日本政府は二国間金融支援と新宮沢構想などに切り替えて、東アジア諸国を金銭面で助けました。 バブル経済崩壊後の平成不況はずっと続きました。景気は2002年初期に少しだけ上向きました。しかし、政府が公共事業中心の従来型景気対策を抑えながら不良債権処理と規制改革を進めました。その結果、企業は引き続き大規模なリストラと雇用調整を行いました。当初、バブル崩壊後の長期停滞は「失われた10年」とよばれました。その後も日本経済の停滞が強く、「失われた20年」「失われた30年」とよばれました。 == 行政改革と日米安保の変化 == 1990年代後半、大規模災害の対策・重大事件への対策・行政改革・財政改革・金融改革・冷戦後の日米安全保障体制見直し・政党の組み直しを行いました。1995年1月17日、阪神・淡路地域でマグニチュード7.3の<span style="color:#f29100">'''阪神・淡路大震災[兵庫県南部地震]'''</span>が起こりました。神戸市を中心に6400人以上が亡くなり、建造物・高速道路までも大きく壊れました。当地震で大都市は自然災害に弱く、都市政策・耐震化基準・防災体制の見直しをしました。また、国民は被災地に入って、避難民[被災者]の生活を支えたり、被災地の後片付けを手伝ったりしました。この活動からボランティア活動が全国に広がりました。 1995年3月20日、オウム真理教集団は東京都の地下鉄でサリンを撒いて、多数の死傷者を出しました(<span style="color:#f29100">'''地下鉄サリン事件'''</span>)。このように阪神・淡路大震災と地下鉄サリン事件・少年犯罪の殺人事件・児童虐待などが何度も報道機関で取り上げられ、旧価値観的な安全神話も崩れて国民の意識も変わりました。<gallery mode="packed" widths="200" heights="200"> ファイル:Hanshin Expressway Nada b059.jpg|阪神淡路大震災被災後 ファイル:【地下鉄サリン事件】除染を行う自衛隊員と警察官.jpg|地下鉄サリン事件 ファイル:Ryutaro Hashimoto 19960111.jpg|橋本龍太郎 ファイル:Ryuhei Kawada 20240307.jpg|川田龍平 </gallery>1995年9月、自由民主党総裁選挙から<span style="color:#f29100">'''橋本龍太郎'''</span>が選ばれました。1996年1月、村山富市首相退陣後の内閣総理大臣指名選挙で橋本龍太郎が選ばれました。橋本内閣でも自民党・社会民主党・新党さきがけの3党が引き続き協力して、政策を進めました。なお日本社会党は自衛隊・日米安全保障条約の賛成側に回り、1996年に党名を社会民主党へ変えました。 薬害エイズ問題も大きく取り上げられました。橋本龍太郎内閣厚生大臣の菅直人は薬害エイズ被害者[川田龍平など]に謝罪しました。その後、国と製薬会社と被害者が話し合い、和解しました。 1996年、新しい選挙制度で初めて衆議院議員総選挙が行われ、自由民主党の議席を大きく増やしても、過半数を下回りました。社会民主党と新党さきがけは第2次橋本内閣から国務大臣を出さなくなり、閣外協力に変わりました。その結果、自由民主党単独政権に戻りました。 橋本龍太郎内閣は冷戦後の国際変化・国内経済・政府問題を解決するため、行政・財政・金融の各分野を見直しました。行政改革は政府組織を減らしたり、類似の政府組織を1つにまとめたりして、首相などの政策案を出しやすくしました。1998年、中央省庁等改革基本法が導入されて中央省庁等改革関連法から行政改革の方針を決めました。 2001年1月、政府はこの行政改革の方針から中央省庁を1府22省庁から1府12省庁に減らしました。その結果、内閣総理大臣は各省庁へ指示を出して、政府全体の政策を進めやすくしました。2007年、防衛庁を防衛省に上げました。 ★省庁再編 {| class="wikitable" !再編前 !再編後 !再編前 !再編後 |- |内閣官房 |内閣官房 |大蔵省 |財務省 |- | rowspan="2" |総理府 金融再生委員会 経済企画庁 沖縄開発庁 | rowspan="2" |内閣府 |科学技術庁 文部省 |文部科学省 |- |厚生省 労働省 |厚生労働省 |- |国家公安委員会 |国家公安委員会 |農林水産省 |農林水産省 |- |防衛庁 |防衛庁(省) |通商産業省 |経済産業省 |- |総務庁 郵政省 自治省 |総務省 | rowspan="2" |北海道開発庁 国土庁 建設省 運輸省 | rowspan="2" |国土交通省 |- |法務省 |法務省 |- |外務省 |外務省 |環境庁 |環境省 |} 橋本龍太郎内閣は国債の発行額を減らそうとしました。1997年4月、財政構造改革法に従って消費税率を3%から5%に引き上げて公共事業費などを減らしました。国債発行額は1970年代後半から増えても1980年代末で一度減りました。1990年代に入り、公共投資を再拡大させてから大幅な国債発行額増加に向かいました。 しかし、国民は消費税率の引き上げなどから財布の紐もきつくなり、金融機関も生き残れなくなりました。さらにアジア通貨・金融危機も起きて、日本経済は再不況になりました。やがて、銀行同士は金融不安の拡大から合併して1つの銀行になりました。1997年度の実質経済成長率は-0.4%となり、1974年度[第1次石油危機直後]以来のマイナス成長になりました。1998年度の実質経済成長率は-2%まで下がり、平成不況の大きさを改めて物語りました。 [[ファイル:Official Portrait of President William Jefferson Clinton - DPLA - 4697184146b3b6e2d6791b8f3c297476.jpg|サムネイル|221x221ピクセル|ビル・クリントン大統領]] 冷戦後、橋本龍太郎内閣は日米安全保障体制を見直しました。アメリカのビル・クリントン大統領が1996年4月に日本を訪れ、橋本首相と話し合って<span style="color:#f29100">'''日米安全保障共同宣言'''</span>を発表しました。日米安全保障共同宣言から日本とアメリカは日本防衛以外にもアジア太平洋地域の戦争防止・紛争防止まで努めていくようになりました。 自衛隊がアメリカ軍に必要物資を運ぶなどの後方支援についても、日米防衛協力のための指針を見直しました。1997年、日本政府とアメリカ合衆国政府は「新しい日米防衛協力のための指針(新ガイドライン)」を作りました。 日本が外国から直接攻撃されても直接攻撃されていなくても、日本周辺国の戦争などから日本の平和と安全に大きく関わっていたらアメリカ合衆国側も新ガイドラインに従って助け合いました(周辺事態)。ただし日本から何キロ以内というような距離だけだとアメリカ合衆国側は何もしません。 地球温暖化防止京都会議は1997年に開かれ、温室効果ガスの削減目標などを盛り込む京都議定書を採択しました。また、橋本龍太郎内閣は従来のアイヌ民族政策を大きく変えました。 アイヌ民族は1946年2月に北海道アイヌ協会を作り、アイヌ民族の権利を政府に求めました。北海道旧土人保護法からアイヌ民族用の土地[給与地]を貰っても、農地改革で買収されたくありませんでした。しかしアイヌ民族をずっと厳しく人種差別しており、アイヌ民族の一部は北海道から逃げました。その後、北海道アイヌ協会は名前を北海道ウタリ協会に変えました。[[ファイル:UPOPOY 202608.jpg|サムネイル|民族共生象徴空間ウポポイ]]1980年代、世界各地の先住民族が先住民族の権利を政府に求めました。北海道ウタリ協会は政府に北海道旧土人保護法を廃止して新しい法律を作ってほしいと求めました。1997年、国会はアイヌ民族文化をずっと守っていくためにアイヌ文化振興法を作り、北海道旧土人保護法を廃止しました。 その後もアイヌ民族政策は変わりました。2008年、国会はアイヌ民族を日本の先住民族と認めて、内閣へアイヌ民族の権利・生活・文化なども認めてほしいとお願いしました。民族団体の名前も北海道ウタリ協会から北海道アイヌ協会に戻しました。 2019(令和元)年、政府はアイヌ施策推進法で日本の「先住民族」にアイヌ民族を初めて入れました。アイヌ施策推進法から北海道アイヌ協会側も話し合いに参加して、アイヌ民族向けの新しい政策を行っています。2020年、北海道白老町に民族共生象徴空間ウポポイが開かれました。アイヌ語講座・アイヌ文化活動・アイヌ語活動が日本各地で開かれてもいます。 [[ファイル:Keizo Obuchi 19980730.jpg|サムネイル|168x168ピクセル|小渕恵三]] 1998年7月の参議院議員選挙で自由民主党議席数は大きく減らし、この結果から橋本龍太郎も内閣総理大臣を辞めました。これを受けて、<span style="color:#f29100">'''小渕恵三'''</span>が内閣総理大臣に選ばれました。小渕恵三内閣はバブル崩壊に消費税増税・金融不安・アジア通貨危機なども重なり、橋本龍太郎の財政再建路線を修正しました。小渕恵三内閣は土木工事・公共施設建築工事の大型予算を組んでその潤いから複合不況まで立て直そうとしました。その結果、政府は赤字国債発行額を再び大幅に増やしました。 1999年、小渕恵三内閣は国会法案の賛成を増やしたいから自由党〔1月〕・公明党〔10月〕も自由民主党と一緒に内閣を支えていました[自自公連立政権の開始]。その結果、自由民主党・自由党・公明党は衆議院・参議院の両方で過半数の議席を持つようになりました。小渕恵三内閣から自由民主党と公明党は2025年10月まで一緒に内閣を支えました。 1999年、小渕恵三内閣は'''新ガイドライン関連法'''をまとめました。新ガイドライン関連法の<span style="color:#f29100">'''周辺事態安全確保法'''</span>は日本周辺国家の暴走で自国の平和と安全まで守れなくなったら、自衛隊を出してアメリカ軍へ必要物資を送りました。 [[ファイル:G8 2000 group photo (kremlin.ru).jpg|サムネイル|223x223px|第26回主要国首脳会議]] 1999年、小渕恵三内閣は日の丸と君が代を国旗・国歌法へ初めて記しました。また、国民は情報公開法に従って官公庁へ資料を見せてほしいとお願いしやすくなりました。国会は憲法調査会で憲法を変えるかどうか話し合いました。小渕恵三内閣は2000年に九州・沖縄で第26回主要国首脳会議[サミット]開くと決めました。 この時期は野党も大きく変わりました。社会民主党の支持者は少しずつ減りました。新進党は議員の大量離脱から1997年末になくなりました。旧新進党の議員は違う政党[自由党・新党平和・民主党]に入りました。1996年、鳩山由紀夫・菅直人が民主党を結成しました。その後、旧新進党議員も民主党へ入りました。さらに、新党平和・黎明クラブを公明党に戻しました。 こうして、自由民主党と日本社会党が長く争う55年体制も終わりました。55年体制が終わっても、自由民主党と民主党の保守二大政党制へ繋がりませんでした。自由民主党が再び政権へ戻っても、自由党・公明党と一緒に内閣を支えていました。 == 資料出所 == * 平雅行、横田冬彦ほか編著『日本史探究』実教出版株式会社 2023年 * 佐藤信、五味文彦ほか編著『詳説日本史探究』株式会社山川出版社 2023年 * 高埜利彦、高村直助ほか編著『日本史A 改訂版』株式会社山川出版社 2016年 * 渡邊晃宏ほか編著『日本史探究』東京書籍株式会社 2023年 * 伊藤純郎ほか編著『高等学校日本史探究』株式会社清水書院 2023年 * 大橋幸泰ほか編著『高等学校日本史探究』株式会社第一学習社 2023年 * 山中裕典著'''『'''改訂版 大学入学共通テスト 歴史総合、日本史探究の点数が面白いほどとれる本'''』'''株式会社KADOKAWA 2024年 * 佐藤信、五味文彦ほか編著『詳説日本史研究』株式会社山川出版社 2017年 * 河合敦著『世界一わかりやすい河合敦の日本史B[近・現代]の特別講座』株式会社KADOKAWA 2014年(絶版本) * 外園豊基編集代表『最新日本史図表』株式会社第一学習社 2026年 * 東京法令出版編著『歴史資料館 日本史のライブラリー』東京法令出版株式会社 2026年 [[カテゴリ:高等学校日本史探究|あらたなせいきのにほんへ]] [[カテゴリ:20世紀]] 18kqdewezyq3zfq30m9r2jlh6n63v6b 304995 304994 2026-10-21T23:57:03Z Kwawe 68789 /* 行政改革と日米安保の変化 */ 重要用語を黒太字化。 304995 wikitext text/x-wiki [[小学校・中学校・高等学校の学習]]>[[高等学校の学習]]>[[高等学校地理歴史]]>[[高等学校日本史探究]]>新たな世紀の日本へⅡ  引き続き「新たな世紀の日本へ」の内容を解説します。第2回目では、政界再編から小渕恵三内閣までの国内政治を見ていきます。 == 政界再編と55年体制の終結 == 1975年、国鉄職員などは大きなストライキ「スト権スト」を行って政府側に争議権の回復を求めても失敗しました。その後、官公庁労働組合はストライキなどをあまり行わなくなりました。民間大企業の労働組合も春闘で大幅な賃上げを求めにくくなりました。 その後、民間労働組合は1つにまとまり始めました。1987年、全日本民間労働組合連合会[民間連合]をつくりました。1989年の日本労働組合総評議会[総評]解散後、元日本労働組合総評議会[総評]は全日本民間労働組合連合会[民間連合]に合流しました。その後、全日本民間労働組合連合会[民間連合]と同盟などの労働組合は1つにまとまって<span style="color:#f29100">'''日本労働組合総連合会[連合]'''</span>をつくりました。約800万人が日本労働組合総連合会[連合]に入りました。 一方、日本労働組合総連合会[連合]の敵側は全国労働組合総連合[全労連]をつくりました。約140万人が全国労働組合総連合[全労連]に入りました。さらに日本労働組合総連合会[連合]と全国労働組合総連合[全労連]の敵側は全国労働組合連絡協議会[全労協]をつくりました。こうして、野党支持側の労働組合は日本労働組合総連合会[連合]・全国労働組合総連合[全労連]・全国労働組合連絡協議会[全労協]に分かれました。<gallery mode="packed" heights="200"> ファイル:Sohyo Kaikan (headquarters of the Japanese Trade Union Confederation).jpg|日本労働組合総連合会 ファイル:Zenrouren Kaikan (1).jpg|全国労働組合総連合 ファイル:Kiichi Miyazawa 19911105.jpg|宮澤喜一 </gallery>政治家と企業の金銭やり取りが冷戦後の日本で問題になりました。リクルート事件〔竹下内閣〕・佐川急便事件〔宮澤喜一内閣〕・ゼネコン汚職事件〔宮澤喜一内閣〕が起きました。自由民主党副総裁の金丸信も1993年に逮捕されました。国民は政治家・官僚・企業の金銭やり取りへ文句を言い、自由民主党の不支持者まで増えました。 国民は相次ぐ政治家と企業の金銭やり取りから政治の仕組みを変えるように求めました。そこで、衆議院議員選挙を中選挙区制の区割りをやめて小選挙区制の区割りに切り替えられました。小選挙区制は1つの選挙区から1人だけを選ぶため、各政党の政策まではっきり分かるようになります。二大政党が小選挙区制の区割りで争うと選挙結果次第で政権交代に結び付きやすくなります。しかし、小さな政党は議席を取りにくくなります。 1993(平成5)年6月、野党側は宮澤喜一内閣に対して内閣不信任案を衆議院へ出しました。自由民主党内部の改革派も内閣不信任案に賛成したため、衆議院は内閣不信任案を可決しました。<span style="color:#f29100">'''羽田孜'''</span>・小沢一郎などは自由民主党を離れて、新生党をつくりました。元自由民主党議員も新党さきがけをつくりました。 宮澤喜一首相は衆議院を解散しました。1993年7月の衆議院議員総選挙結果で自由民主党は過半数を下回り、日本社会党も当選議員を大きく減らしました。一方、新生党・日本新党・新党さきがけなどは、当選議員を大きく増やしました。なお日本新党の政党代表は元熊本県知事の<span style="color:#f29100">'''細川護熙'''</span>でした。当衆議院議員総選挙で日本新党議員57人を立候補させて35人も当選しました。 1994年4月、新生党の羽田孜が内閣総理大臣になりました。しかし、日本社会党は新生党と一緒に内閣を支えなくなりました。羽田孜は国会議員の賛成を集められなくなり、約2か月で首相を辞めました。1994年6月、自由民主党は元野党側の日本社会党・新党さきがけと一緒に内閣を支えました[自社さ連立政権]。日本社会党の<span style="color:#f29100">'''村山富市'''</span>が内閣総理大臣になり、自由民主党も政権へ戻りました。一方、非自民連立政権側の新生党・日本新党・公明党・民社党などは1つにまとまって新進党をつくりました。 従来の日本社会党基本政策を村山富市内閣で大きく変えました。日本社会党は自衛隊を合憲としつつ日米安全保障条約と消費税までも受け入れました。こうして自由民主党と日本社会党の政策は近くなり、日本社会党の不支持者を増やしました。1995年、アジア・太平洋戦争終戦から50年を迎えました。国会は戦後50年目の反省文内容をまとめました。8月15日、村山富市内閣総理大臣はアジア・太平洋戦争の反省とお詫びを<span style="color:#f29100">'''「戦後50周年の終戦記念日にあたって」'''</span>で伝えました(<span style="color:#f29100">'''村山談話'''</span>)。 現地の国民は日本側の植民地支配と侵略から被害を受けており、村山談話でその反省とお詫びを該当国首脳へ伝えました。その後の内閣も村山談話を受け継ぎました。政府は戦後50年目に合わせて、日本とアジア諸国の近現代史資料を国民へ広く公開しました。さらにインターネットでも歴史資料を公開したいから、アジア歴史資料センター開く準備をしました。2001年、アジア歴史資料センターを開きました。政党の結成・解党・合流まで活発になり、各政党のどこにも入らない無党派層も増えました。以降は単独政党のみで内閣を支えきれなくなり、複数政党と一緒に内閣を支えました。 == バブルの崩壊 == プラザ合意後、大量のお金が土地購入・株式購入のために使われ、土地の値段・株価[資産価格]が次第に上がりました(資産インフレ)。1989(平成元)年、日本銀行は銀行へお金をあまり貸さなくなり、政府も土地の値段を上げすぎないようにしました(金融引き締め政策)。1990年代に入ってから、土地の値段・株価は下がり始めました。日経平均株価は、1989年12月末に3万8915円まで上がりました。しかし、その後は株式売却が増えて株価もいきなり下がり、1992年8月に1万4309円まで下がりました。土地の値段も1991年頃から下がり始め、1992年以後は日本各地で下がりました。2000年代半ばになると、大阪の一部商業地は一番高い時期の値段から約10分の1まで下がりました。こうして土地や株式の大幅な値上がりは終わり、1980年代後半のバブル経済は終わりました。 ★日本の実質経済成長率の推移 [[ファイル:GDP_growth_rate_in_Japan.svg|代替文=日本の実質経済成長率の推移|フレームなし|924x924px]] 日本の景気は1991年から悪くなりました('''平成不況''')。実質経済成長率は1992年に1.3%、1993年に1%未満まで下がりました。1992年を3か月ずつに分けて見ると、4~6月は-3.3%となり、前の3か月より国内経済が小さくなりました。7~9月と10~12月もそれぞれ-0.1%となりました。第1次石油危機後に2期連続の経済縮小時期はあっても、3期連続の経済縮小は戦後初めてでした。僅かな景気回復時期も平成不況の途中にありました。しかしすぐに経済縮小となり、平成不況が長年続きました。 バブル経済当時の国民は金融機関からお金を借りて、株価と地価をより高い価格で買いました。金融機関は不動産会社にもお金を貸しました。バブル崩壊後、株価と地価が大きく下がりました。国民は株と土地を全て売っても借金を返せなくなりました。国民の借金も金融機関へ返ってこなくなりました(不良債権)。金融機関は株と土地を債権として持っており、不良債権から金融機関も大赤字になりました。 金融機関は不良債権処理にずっと追われて、さらに苦しくなりました。その結果、金融機関は不良債権の心配からお金を貸さなくなりました。企業は金融機関からお金を借りにくくなりました。国民も「この金融機関は大丈夫か」と不安を感じるようになり、金融機関はさらに苦しくなりました。その後、企業は新しい商品を作れなくなり、新しい工場を建てられなくなり、新しい機械も買えなくなりました。地価の下落・株価の下落・不良債権の増加・金融機関の経営悪化・金融機関の融資停止が全て重なって景気も次第に悪くなりました('''複合不況''')。 当時の政府と日本銀行はこれまでの不況と同じように、財政支出の拡大・低金利政策から数年で景気も回復するかもと思っていました。この誤対策は複合不況に一切効果ありません。住宅金融専門会社は1995年頃から相次いでつぶれました。1997年、北海道拓殖銀行と山一証券がつぶれました。1998年、日本債券信用銀行と日本長期信用銀行がつぶれました。このように大手金融機関がつぶれると、国民も他の金融機関も危ないのではないかと不安になりました。政府は金融システムまで止まらないように、倒産寸前の大手金融機関などに大量の公的資金を入れました。<gallery mode="nolines" widths="200" heights="200"> ファイル:The Hokkaido Takushoku Bank.JPG|旧北海道拓殖銀行本店 ファイル:Kayabacho Tower, at Shinkawa, Chuo, Tokyo (2019-01-02) 02.jpg|旧山一證券本社 ファイル:日債銀本店.jpg|旧日本債券信用銀行本店 ファイル:Shinsei Bank (head office 1).jpg|旧日本長期信用銀行本店 </gallery>1998年、小渕恵三が内閣総理大臣になりました。小渕恵三内閣も大型予算から景気を回復させしようとしました。小渕内閣が公共投資を増やして国民のお金を回そうとしても複合不況に一切効果ありません。こうして、公債発行残高は増えました。物価は1990年代後半からずっと下がり続けました(デフレスパイラル)。 [[ファイル:Unemployment Rate of Japan 1953-2009.jpg|サムネイル|395x395ピクセル|日本の失業率]] 企業は赤字なので、生き残るために経営の効率化[事業整理・人員削減・雇用調整・海外進出など]を進めました(リストラクチャリング)。中小企業の倒産も増えて、中高年労働者の解雇・中高年労働者の早期退職・新卒採用の削減から企業の人件費を大幅に減らしました。バブル景気の時期は労働者不足から「売り手市場」でも、バブル崩壊後から「買い手市場」へ変わりました。1990年代半ばから2000年代前半、企業は新卒採用を大幅に減らしました(就職氷河期)。1998年の完全失業率は4%を超え、2001年の完全失業率で5%になりました。 失業者が増えると労働者も「自分も仕事を失うかもしれない」と不安になり、個人消費を減らしました。消費者は同じような商品なら出来るだけ安い商品を選ぶようになり、ブランド品・高級品を買ってくれなくなりました。商品が売れなくなると、会社も少量生産・既存工場・既存機械だけで行うようになりました。その結果、会社の利益がさらに減って、人員削減・採用縮小もさらに進みました。株価と地価の下落から不良債権が増えて、金融機関の経営も苦しくなり、企業へお金を貸せなくなりました。 円高も国際分業も進みました。1994年、1ドルが100円を割り込みました。輸出主導・量産指向型産業[自動車・電子・家電・事務機器など]は海外で売れにくくなりました。また、バブル崩壊後の不景気から国内の購入者も減りました。生産費用を少しでも減らすため、労働者の給料が日本より低いアジア諸国[中国など]へ工場を移すようになりました[国内工場の閉鎖・国内工場の海外移転]。その結果、地元企業・周辺店舗の売り上げを減らし、失業者を増やしました(地域'''産業の空洞化''')。 繊維産業の事業所数は減り続けました。2015年の繊維産業の事業所数は1991年と比べて約4分の1になりました。国内衣料品市場のうち海外衣料品購入割合は1991年で52%になり、2017年で97%まで上がりました。多数の多国籍企業が1990年代後半に日本企業を合併したり、買収したりしました。企業が日本型雇用を取り入れていても競争力強化・経営効率化から人員削減・能力給の導入を進めました。その結果、働き方の不安定さが広がりました。 日本は技術面でも負けています。1980年代、日本企業はエレクトロニクス[電子機器]・新素材・バイオテクノロジーなどの技術でアメリカに追いつこうとしていました。1990年代から情報通信技術の活用や生産性の伸びでアメリカ合衆国に負けました。商品は日本国内で売れにくくなり、業務内容も変わっていきました。そのため、日本企業は海外企業に負けないような対策を取りました。 バブル崩壊後、銀行制度・企業制度も変えられました。「日本版金融ビッグバン」を1996年に打ち出して、銀行・証券会社などにも規制を緩めて金融の自由化・国際化を進めました。1997年の独占禁止法改正から禁止の持株会社を再度認めました。企業は持株会社からグループ内の会社をまとめ直したり、経営の進め方を変えたりしやすくなり、その後の企業再編・金融再編にもつながりました。 以前の大規模小売店舗法は店舗面積500平方メートル以上の大規模小売店舗出店条件として出店規模・営業時間・営業日数などを定めていました。しかし、大規模小売店舗は中小小売業者の近くにも自由に出店しており、中小小売業者のお客様まで消えました。そのため、政府は大規模小売店舗の立地場所を1998年から制限しました(大規模小売店舗立地法)。中小小売業者から流れすぎないように守りながら、大規模小売店舗も中小小売業者も商売を続けられるようにしました。2000年、大規模小売店舗法を廃止しました。[[ファイル:Asian Financial Crisis EN-2009-05-05.png|サムネイル|273x273px|アジア通貨危機の影響国]]企業再編・合併は政府の規制緩和から広がり、海外企業と国内企業の協力・合併も増えました。その流れから六大企業集団もまとまりました。金融業界でも銀行などが倒産したり、別の銀行と合併したりしました。その結果、日本の金融業界は三井住友グループ[旧三井系と旧住友系]・三菱UFJ[旧三菱系と三和系]・みずほグループ[旧第一勧銀系と旧富士系]の三大金融グループへまとまりました。 国内長期不況で苦しむ中、アジア諸国の経済は大成長しました。しかし短期海外資金の依存・金融機関の過剰な借入れ・企業の過剰な借入れ・金融制度の弱さ・投機資金の流入などから海外投資家が危機感を示して一斉に海外資金を回収・売却・国外移動を行いました。1997年、タイの通貨バーツの価値が大きく下がりました。海外投資家は東アジア・東南アジアから次々と海外資金を回収・売却・国外移動を行いました(アジア通貨危機)。その結果、東アジア・東南アジア諸国の金融と経済は大きな爪痕を残しました。債務問題は韓国などで大きくなり、国際通貨基金(International Monetary Fund:IMF)の支援を受けました。アジア通貨危機は日本経済と日本の金融機関にも大きな爪痕を残して、不良債権問題をさらに悪化させました。 日本政府はアジア通貨危機の発生から地域的な金融協力制度[アジア通貨基金構想]を出しました。しかし、アメリカ合衆国の反対から日本政府は二国間金融支援と新宮沢構想などに切り替えて、東アジア諸国を金銭面で助けました。 バブル経済崩壊後の平成不況はずっと続きました。景気は2002年初期に少しだけ上向きました。しかし、政府が公共事業中心の従来型景気対策を抑えながら不良債権処理と規制改革を進めました。その結果、企業は引き続き大規模なリストラと雇用調整を行いました。当初、バブル崩壊後の長期停滞は「失われた10年」とよばれました。その後も日本経済の停滞が強く、「失われた20年」「失われた30年」とよばれました。 == 行政改革と日米安保の変化 == 1990年代後半、大規模災害の対策・重大事件への対策・行政改革・財政改革・金融改革・冷戦後の日米安全保障体制見直し・政党の組み直しを行いました。1995年1月17日、阪神・淡路地域でマグニチュード7.3の<span style="color:#f29100">'''阪神・淡路大震災[兵庫県南部地震]'''</span>が起こりました。神戸市を中心に6400人以上が亡くなり、建造物・高速道路までも大きく壊れました。当地震で大都市は自然災害に弱く、都市政策・耐震化基準・防災体制の見直しをしました。また、国民は被災地に入って、避難民[被災者]の生活を支えたり、被災地の後片付けを手伝ったりしました。この活動からボランティア活動が全国に広がりました。 1995年3月20日、オウム真理教集団は東京都の地下鉄でサリンを撒いて、多数の死傷者を出しました(<span style="color:#f29100">'''地下鉄サリン事件'''</span>)。このように阪神・淡路大震災と地下鉄サリン事件・少年犯罪の殺人事件・児童虐待などが何度も報道機関で取り上げられ、旧価値観的な安全神話も崩れて国民の意識も変わりました。<gallery mode="packed" widths="200" heights="200"> ファイル:Hanshin Expressway Nada b059.jpg|阪神淡路大震災被災後 ファイル:【地下鉄サリン事件】除染を行う自衛隊員と警察官.jpg|地下鉄サリン事件 ファイル:Ryutaro Hashimoto 19960111.jpg|橋本龍太郎 ファイル:Ryuhei Kawada 20240307.jpg|川田龍平 </gallery>1995年9月、自由民主党総裁選挙から<span style="color:#f29100">'''橋本龍太郎'''</span>が選ばれました。1996年1月、村山富市首相退陣後の内閣総理大臣指名選挙で橋本龍太郎が選ばれました。橋本内閣でも自民党・社会民主党・新党さきがけの3党が引き続き協力して、政策を進めました。なお日本社会党は自衛隊・日米安全保障条約の賛成側に回り、1996年に党名を社会民主党へ変えました。 薬害エイズ問題も大きく取り上げられました。橋本龍太郎内閣厚生大臣の菅直人は薬害エイズ被害者[川田龍平など]に謝罪しました。その後、国と製薬会社と被害者が話し合い、和解しました。 1996年、新しい選挙制度で初めて衆議院議員総選挙が行われ、自由民主党の議席を大きく増やしても、過半数を下回りました。社会民主党と新党さきがけは第2次橋本内閣から国務大臣を出さなくなり、閣外協力に変わりました。その結果、自由民主党単独政権に戻りました。 橋本龍太郎内閣は冷戦後の国際変化・国内経済・政府問題を解決するため、行政・財政・金融の各分野を見直しました。行政改革は政府組織を減らしたり、類似の政府組織を1つにまとめたりして、首相などの政策案を出しやすくしました。1998年、中央省庁等改革基本法が導入されて中央省庁等改革関連法から行政改革の方針を決めました。 2001年1月、政府はこの行政改革の方針から中央省庁を1府22省庁から1府12省庁に減らしました。その結果、内閣総理大臣は各省庁へ指示を出して、政府全体の政策を進めやすくしました。2007年、防衛庁を防衛省に上げました。 ★省庁再編 {| class="wikitable" !再編前 !再編後 !再編前 !再編後 |- |内閣官房 |内閣官房 |大蔵省 |財務省 |- | rowspan="2" |総理府 金融再生委員会 経済企画庁 沖縄開発庁 | rowspan="2" |内閣府 |科学技術庁 文部省 |文部科学省 |- |厚生省 労働省 |厚生労働省 |- |国家公安委員会 |国家公安委員会 |農林水産省 |農林水産省 |- |防衛庁 |防衛庁(省) |通商産業省 |経済産業省 |- |総務庁 郵政省 自治省 |総務省 | rowspan="2" |北海道開発庁 国土庁 建設省 運輸省 | rowspan="2" |国土交通省 |- |法務省 |法務省 |- |外務省 |外務省 |環境庁 |環境省 |} 橋本龍太郎内閣は国債の発行額を減らそうとしました。1997年4月、財政構造改革法に従って消費税率を3%から5%に引き上げて公共事業費などを減らしました。国債発行額は1970年代後半から増えても1980年代末で一度減りました。1990年代に入り、公共投資を再拡大させてから大幅な国債発行額増加に向かいました。 しかし、国民は消費税率の引き上げなどから財布の紐もきつくなり、金融機関も生き残れなくなりました。さらにアジア通貨・金融危機も起きて、日本経済は再不況になりました。やがて、銀行同士は金融不安の拡大から合併して1つの銀行になりました。1997年度の実質経済成長率は-0.4%となり、1974年度[第1次石油危機直後]以来のマイナス成長になりました。1998年度の実質経済成長率は-2%まで下がり、平成不況の大きさを改めて物語りました。 [[ファイル:Official Portrait of President William Jefferson Clinton - DPLA - 4697184146b3b6e2d6791b8f3c297476.jpg|サムネイル|221x221ピクセル|ビル・クリントン大統領]] 冷戦後、橋本龍太郎内閣は日米安全保障体制を見直しました。アメリカのビル・クリントン大統領が1996年4月に日本を訪れ、橋本首相と話し合って<span style="color:#f29100">'''日米安全保障共同宣言'''</span>を発表しました。日米安全保障共同宣言から日本とアメリカは日本防衛以外にもアジア太平洋地域の戦争防止・紛争防止まで努めていくようになりました。 自衛隊がアメリカ軍に必要物資を運ぶなどの後方支援についても、日米防衛協力のための指針を見直しました。1997年、日本政府とアメリカ合衆国政府は「新しい日米防衛協力のための指針(新ガイドライン)」を作りました。 日本が外国から直接攻撃されても直接攻撃されていなくても、日本周辺国の戦争などから日本の平和と安全に大きく関わっていたらアメリカ合衆国側も新ガイドラインに従って助け合いました(周辺事態)。ただし日本から何キロ以内というような距離だけだとアメリカ合衆国側は何もしません。 地球温暖化防止京都会議は1997年に開かれ、温室効果ガスの削減目標などを盛り込む京都議定書を採択しました。また、橋本龍太郎内閣は従来のアイヌ民族政策を大きく変えました。 アイヌ民族は1946年2月に北海道アイヌ協会を作り、アイヌ民族の権利を政府に求めました。北海道旧土人保護法からアイヌ民族用の土地[給与地]を貰っても、農地改革で買収されたくありませんでした。しかしアイヌ民族をずっと厳しく人種差別しており、アイヌ民族の一部は北海道から逃げました。その後、北海道アイヌ協会は名前を北海道ウタリ協会に変えました。[[ファイル:UPOPOY 202608.jpg|サムネイル|民族共生象徴空間ウポポイ]]1980年代、世界各地の先住民族が先住民族の権利を政府に求めました。北海道ウタリ協会は政府に北海道旧土人保護法を廃止して新しい法律を作ってほしいと求めました。1997年、国会はアイヌ民族文化をずっと守っていくために'''アイヌ文化振興法'''を作り、北海道旧土人保護法を廃止しました。 その後もアイヌ民族政策は変わりました。2008年、国会はアイヌ民族を日本の先住民族と認めて、内閣へアイヌ民族の権利・生活・文化なども認めてほしいとお願いしました。民族団体の名前も北海道ウタリ協会から北海道アイヌ協会に戻しました。 2019(令和元)年、政府はアイヌ施策推進法で日本の「先住民族」にアイヌ民族を初めて入れました。アイヌ施策推進法から北海道アイヌ協会側も話し合いに参加して、アイヌ民族向けの新しい政策を行っています。2020年、北海道白老町に民族共生象徴空間ウポポイが開かれました。アイヌ語講座・アイヌ文化活動・アイヌ語活動が日本各地で開かれてもいます。 [[ファイル:Keizo Obuchi 19980730.jpg|サムネイル|168x168ピクセル|小渕恵三]] 1998年7月の参議院議員選挙で自由民主党議席数は大きく減らし、この結果から橋本龍太郎も内閣総理大臣を辞めました。これを受けて、<span style="color:#f29100">'''小渕恵三'''</span>が内閣総理大臣に選ばれました。小渕恵三内閣はバブル崩壊に消費税増税・金融不安・アジア通貨危機なども重なり、橋本龍太郎の財政再建路線を修正しました。小渕恵三内閣は土木工事・公共施設建築工事の大型予算を組んでその潤いから複合不況まで立て直そうとしました。その結果、政府は赤字国債発行額を再び大幅に増やしました。 1999年、小渕恵三内閣は国会法案の賛成を増やしたいから自由党〔1月〕・公明党〔10月〕も自由民主党と一緒に内閣を支えていました[自自公連立政権の開始]。その結果、自由民主党・自由党・公明党は衆議院・参議院の両方で過半数の議席を持つようになりました。小渕恵三内閣から自由民主党と公明党は2025年10月まで一緒に内閣を支えました。 1999年、小渕恵三内閣は'''新ガイドライン関連法'''をまとめました。新ガイドライン関連法の<span style="color:#f29100">'''周辺事態安全確保法'''</span>は日本周辺国家の暴走で自国の平和と安全まで守れなくなったら、自衛隊を出してアメリカ軍へ必要物資を送りました。 [[ファイル:G8 2000 group photo (kremlin.ru).jpg|サムネイル|223x223px|第26回主要国首脳会議]] 1999年、小渕恵三内閣は日の丸と君が代を国旗・国歌法へ初めて記しました。また、国民は情報公開法に従って官公庁へ資料を見せてほしいとお願いしやすくなりました。国会は憲法調査会で憲法を変えるかどうか話し合いました。小渕恵三内閣は2000年に九州・沖縄で第26回主要国首脳会議[サミット]開くと決めました。 この時期は野党も大きく変わりました。社会民主党の支持者は少しずつ減りました。新進党は議員の大量離脱から1997年末になくなりました。旧新進党の議員は違う政党[自由党・新党平和・民主党]に入りました。1996年、鳩山由紀夫・菅直人が民主党を結成しました。その後、旧新進党議員も民主党へ入りました。さらに、新党平和・黎明クラブを公明党に戻しました。 こうして、自由民主党と日本社会党が長く争う55年体制も終わりました。55年体制が終わっても、自由民主党と民主党の保守二大政党制へ繋がりませんでした。自由民主党が再び政権へ戻っても、自由党・公明党と一緒に内閣を支えていました。 == 資料出所 == * 平雅行、横田冬彦ほか編著『日本史探究』実教出版株式会社 2023年 * 佐藤信、五味文彦ほか編著『詳説日本史探究』株式会社山川出版社 2023年 * 高埜利彦、高村直助ほか編著『日本史A 改訂版』株式会社山川出版社 2016年 * 渡邊晃宏ほか編著『日本史探究』東京書籍株式会社 2023年 * 伊藤純郎ほか編著『高等学校日本史探究』株式会社清水書院 2023年 * 大橋幸泰ほか編著『高等学校日本史探究』株式会社第一学習社 2023年 * 山中裕典著'''『'''改訂版 大学入学共通テスト 歴史総合、日本史探究の点数が面白いほどとれる本'''』'''株式会社KADOKAWA 2024年 * 佐藤信、五味文彦ほか編著『詳説日本史研究』株式会社山川出版社 2017年 * 河合敦著『世界一わかりやすい河合敦の日本史B[近・現代]の特別講座』株式会社KADOKAWA 2014年(絶版本) * 外園豊基編集代表『最新日本史図表』株式会社第一学習社 2026年 * 東京法令出版編著『歴史資料館 日本史のライブラリー』東京法令出版株式会社 2026年 [[カテゴリ:高等学校日本史探究|あらたなせいきのにほんへ]] [[カテゴリ:20世紀]] ob9u9vr18ifsil58dv240ssgs0dec85 304996 304995 2026-10-21T23:58:57Z Kwawe 68789 /* 行政改革と日米安保の変化 */ 重要用語を黒太字化。 304996 wikitext text/x-wiki [[小学校・中学校・高等学校の学習]]>[[高等学校の学習]]>[[高等学校地理歴史]]>[[高等学校日本史探究]]>新たな世紀の日本へⅡ  引き続き「新たな世紀の日本へ」の内容を解説します。第2回目では、政界再編から小渕恵三内閣までの国内政治を見ていきます。 == 政界再編と55年体制の終結 == 1975年、国鉄職員などは大きなストライキ「スト権スト」を行って政府側に争議権の回復を求めても失敗しました。その後、官公庁労働組合はストライキなどをあまり行わなくなりました。民間大企業の労働組合も春闘で大幅な賃上げを求めにくくなりました。 その後、民間労働組合は1つにまとまり始めました。1987年、全日本民間労働組合連合会[民間連合]をつくりました。1989年の日本労働組合総評議会[総評]解散後、元日本労働組合総評議会[総評]は全日本民間労働組合連合会[民間連合]に合流しました。その後、全日本民間労働組合連合会[民間連合]と同盟などの労働組合は1つにまとまって<span style="color:#f29100">'''日本労働組合総連合会[連合]'''</span>をつくりました。約800万人が日本労働組合総連合会[連合]に入りました。 一方、日本労働組合総連合会[連合]の敵側は全国労働組合総連合[全労連]をつくりました。約140万人が全国労働組合総連合[全労連]に入りました。さらに日本労働組合総連合会[連合]と全国労働組合総連合[全労連]の敵側は全国労働組合連絡協議会[全労協]をつくりました。こうして、野党支持側の労働組合は日本労働組合総連合会[連合]・全国労働組合総連合[全労連]・全国労働組合連絡協議会[全労協]に分かれました。<gallery mode="packed" heights="200"> ファイル:Sohyo Kaikan (headquarters of the Japanese Trade Union Confederation).jpg|日本労働組合総連合会 ファイル:Zenrouren Kaikan (1).jpg|全国労働組合総連合 ファイル:Kiichi Miyazawa 19911105.jpg|宮澤喜一 </gallery>政治家と企業の金銭やり取りが冷戦後の日本で問題になりました。リクルート事件〔竹下内閣〕・佐川急便事件〔宮澤喜一内閣〕・ゼネコン汚職事件〔宮澤喜一内閣〕が起きました。自由民主党副総裁の金丸信も1993年に逮捕されました。国民は政治家・官僚・企業の金銭やり取りへ文句を言い、自由民主党の不支持者まで増えました。 国民は相次ぐ政治家と企業の金銭やり取りから政治の仕組みを変えるように求めました。そこで、衆議院議員選挙を中選挙区制の区割りをやめて小選挙区制の区割りに切り替えられました。小選挙区制は1つの選挙区から1人だけを選ぶため、各政党の政策まではっきり分かるようになります。二大政党が小選挙区制の区割りで争うと選挙結果次第で政権交代に結び付きやすくなります。しかし、小さな政党は議席を取りにくくなります。 1993(平成5)年6月、野党側は宮澤喜一内閣に対して内閣不信任案を衆議院へ出しました。自由民主党内部の改革派も内閣不信任案に賛成したため、衆議院は内閣不信任案を可決しました。<span style="color:#f29100">'''羽田孜'''</span>・小沢一郎などは自由民主党を離れて、新生党をつくりました。元自由民主党議員も新党さきがけをつくりました。 宮澤喜一首相は衆議院を解散しました。1993年7月の衆議院議員総選挙結果で自由民主党は過半数を下回り、日本社会党も当選議員を大きく減らしました。一方、新生党・日本新党・新党さきがけなどは、当選議員を大きく増やしました。なお日本新党の政党代表は元熊本県知事の<span style="color:#f29100">'''細川護熙'''</span>でした。当衆議院議員総選挙で日本新党議員57人を立候補させて35人も当選しました。 1994年4月、新生党の羽田孜が内閣総理大臣になりました。しかし、日本社会党は新生党と一緒に内閣を支えなくなりました。羽田孜は国会議員の賛成を集められなくなり、約2か月で首相を辞めました。1994年6月、自由民主党は元野党側の日本社会党・新党さきがけと一緒に内閣を支えました[自社さ連立政権]。日本社会党の<span style="color:#f29100">'''村山富市'''</span>が内閣総理大臣になり、自由民主党も政権へ戻りました。一方、非自民連立政権側の新生党・日本新党・公明党・民社党などは1つにまとまって新進党をつくりました。 従来の日本社会党基本政策を村山富市内閣で大きく変えました。日本社会党は自衛隊を合憲としつつ日米安全保障条約と消費税までも受け入れました。こうして自由民主党と日本社会党の政策は近くなり、日本社会党の不支持者を増やしました。1995年、アジア・太平洋戦争終戦から50年を迎えました。国会は戦後50年目の反省文内容をまとめました。8月15日、村山富市内閣総理大臣はアジア・太平洋戦争の反省とお詫びを<span style="color:#f29100">'''「戦後50周年の終戦記念日にあたって」'''</span>で伝えました(<span style="color:#f29100">'''村山談話'''</span>)。 現地の国民は日本側の植民地支配と侵略から被害を受けており、村山談話でその反省とお詫びを該当国首脳へ伝えました。その後の内閣も村山談話を受け継ぎました。政府は戦後50年目に合わせて、日本とアジア諸国の近現代史資料を国民へ広く公開しました。さらにインターネットでも歴史資料を公開したいから、アジア歴史資料センター開く準備をしました。2001年、アジア歴史資料センターを開きました。政党の結成・解党・合流まで活発になり、各政党のどこにも入らない無党派層も増えました。以降は単独政党のみで内閣を支えきれなくなり、複数政党と一緒に内閣を支えました。 == バブルの崩壊 == プラザ合意後、大量のお金が土地購入・株式購入のために使われ、土地の値段・株価[資産価格]が次第に上がりました(資産インフレ)。1989(平成元)年、日本銀行は銀行へお金をあまり貸さなくなり、政府も土地の値段を上げすぎないようにしました(金融引き締め政策)。1990年代に入ってから、土地の値段・株価は下がり始めました。日経平均株価は、1989年12月末に3万8915円まで上がりました。しかし、その後は株式売却が増えて株価もいきなり下がり、1992年8月に1万4309円まで下がりました。土地の値段も1991年頃から下がり始め、1992年以後は日本各地で下がりました。2000年代半ばになると、大阪の一部商業地は一番高い時期の値段から約10分の1まで下がりました。こうして土地や株式の大幅な値上がりは終わり、1980年代後半のバブル経済は終わりました。 ★日本の実質経済成長率の推移 [[ファイル:GDP_growth_rate_in_Japan.svg|代替文=日本の実質経済成長率の推移|フレームなし|924x924px]] 日本の景気は1991年から悪くなりました('''平成不況''')。実質経済成長率は1992年に1.3%、1993年に1%未満まで下がりました。1992年を3か月ずつに分けて見ると、4~6月は-3.3%となり、前の3か月より国内経済が小さくなりました。7~9月と10~12月もそれぞれ-0.1%となりました。第1次石油危機後に2期連続の経済縮小時期はあっても、3期連続の経済縮小は戦後初めてでした。僅かな景気回復時期も平成不況の途中にありました。しかしすぐに経済縮小となり、平成不況が長年続きました。 バブル経済当時の国民は金融機関からお金を借りて、株価と地価をより高い価格で買いました。金融機関は不動産会社にもお金を貸しました。バブル崩壊後、株価と地価が大きく下がりました。国民は株と土地を全て売っても借金を返せなくなりました。国民の借金も金融機関へ返ってこなくなりました(不良債権)。金融機関は株と土地を債権として持っており、不良債権から金融機関も大赤字になりました。 金融機関は不良債権処理にずっと追われて、さらに苦しくなりました。その結果、金融機関は不良債権の心配からお金を貸さなくなりました。企業は金融機関からお金を借りにくくなりました。国民も「この金融機関は大丈夫か」と不安を感じるようになり、金融機関はさらに苦しくなりました。その後、企業は新しい商品を作れなくなり、新しい工場を建てられなくなり、新しい機械も買えなくなりました。地価の下落・株価の下落・不良債権の増加・金融機関の経営悪化・金融機関の融資停止が全て重なって景気も次第に悪くなりました('''複合不況''')。 当時の政府と日本銀行はこれまでの不況と同じように、財政支出の拡大・低金利政策から数年で景気も回復するかもと思っていました。この誤対策は複合不況に一切効果ありません。住宅金融専門会社は1995年頃から相次いでつぶれました。1997年、北海道拓殖銀行と山一証券がつぶれました。1998年、日本債券信用銀行と日本長期信用銀行がつぶれました。このように大手金融機関がつぶれると、国民も他の金融機関も危ないのではないかと不安になりました。政府は金融システムまで止まらないように、倒産寸前の大手金融機関などに大量の公的資金を入れました。<gallery mode="nolines" widths="200" heights="200"> ファイル:The Hokkaido Takushoku Bank.JPG|旧北海道拓殖銀行本店 ファイル:Kayabacho Tower, at Shinkawa, Chuo, Tokyo (2019-01-02) 02.jpg|旧山一證券本社 ファイル:日債銀本店.jpg|旧日本債券信用銀行本店 ファイル:Shinsei Bank (head office 1).jpg|旧日本長期信用銀行本店 </gallery>1998年、小渕恵三が内閣総理大臣になりました。小渕恵三内閣も大型予算から景気を回復させしようとしました。小渕内閣が公共投資を増やして国民のお金を回そうとしても複合不況に一切効果ありません。こうして、公債発行残高は増えました。物価は1990年代後半からずっと下がり続けました(デフレスパイラル)。 [[ファイル:Unemployment Rate of Japan 1953-2009.jpg|サムネイル|395x395ピクセル|日本の失業率]] 企業は赤字なので、生き残るために経営の効率化[事業整理・人員削減・雇用調整・海外進出など]を進めました(リストラクチャリング)。中小企業の倒産も増えて、中高年労働者の解雇・中高年労働者の早期退職・新卒採用の削減から企業の人件費を大幅に減らしました。バブル景気の時期は労働者不足から「売り手市場」でも、バブル崩壊後から「買い手市場」へ変わりました。1990年代半ばから2000年代前半、企業は新卒採用を大幅に減らしました(就職氷河期)。1998年の完全失業率は4%を超え、2001年の完全失業率で5%になりました。 失業者が増えると労働者も「自分も仕事を失うかもしれない」と不安になり、個人消費を減らしました。消費者は同じような商品なら出来るだけ安い商品を選ぶようになり、ブランド品・高級品を買ってくれなくなりました。商品が売れなくなると、会社も少量生産・既存工場・既存機械だけで行うようになりました。その結果、会社の利益がさらに減って、人員削減・採用縮小もさらに進みました。株価と地価の下落から不良債権が増えて、金融機関の経営も苦しくなり、企業へお金を貸せなくなりました。 円高も国際分業も進みました。1994年、1ドルが100円を割り込みました。輸出主導・量産指向型産業[自動車・電子・家電・事務機器など]は海外で売れにくくなりました。また、バブル崩壊後の不景気から国内の購入者も減りました。生産費用を少しでも減らすため、労働者の給料が日本より低いアジア諸国[中国など]へ工場を移すようになりました[国内工場の閉鎖・国内工場の海外移転]。その結果、地元企業・周辺店舗の売り上げを減らし、失業者を増やしました(地域'''産業の空洞化''')。 繊維産業の事業所数は減り続けました。2015年の繊維産業の事業所数は1991年と比べて約4分の1になりました。国内衣料品市場のうち海外衣料品購入割合は1991年で52%になり、2017年で97%まで上がりました。多数の多国籍企業が1990年代後半に日本企業を合併したり、買収したりしました。企業が日本型雇用を取り入れていても競争力強化・経営効率化から人員削減・能力給の導入を進めました。その結果、働き方の不安定さが広がりました。 日本は技術面でも負けています。1980年代、日本企業はエレクトロニクス[電子機器]・新素材・バイオテクノロジーなどの技術でアメリカに追いつこうとしていました。1990年代から情報通信技術の活用や生産性の伸びでアメリカ合衆国に負けました。商品は日本国内で売れにくくなり、業務内容も変わっていきました。そのため、日本企業は海外企業に負けないような対策を取りました。 バブル崩壊後、銀行制度・企業制度も変えられました。「日本版金融ビッグバン」を1996年に打ち出して、銀行・証券会社などにも規制を緩めて金融の自由化・国際化を進めました。1997年の独占禁止法改正から禁止の持株会社を再度認めました。企業は持株会社からグループ内の会社をまとめ直したり、経営の進め方を変えたりしやすくなり、その後の企業再編・金融再編にもつながりました。 以前の大規模小売店舗法は店舗面積500平方メートル以上の大規模小売店舗出店条件として出店規模・営業時間・営業日数などを定めていました。しかし、大規模小売店舗は中小小売業者の近くにも自由に出店しており、中小小売業者のお客様まで消えました。そのため、政府は大規模小売店舗の立地場所を1998年から制限しました(大規模小売店舗立地法)。中小小売業者から流れすぎないように守りながら、大規模小売店舗も中小小売業者も商売を続けられるようにしました。2000年、大規模小売店舗法を廃止しました。[[ファイル:Asian Financial Crisis EN-2009-05-05.png|サムネイル|273x273px|アジア通貨危機の影響国]]企業再編・合併は政府の規制緩和から広がり、海外企業と国内企業の協力・合併も増えました。その流れから六大企業集団もまとまりました。金融業界でも銀行などが倒産したり、別の銀行と合併したりしました。その結果、日本の金融業界は三井住友グループ[旧三井系と旧住友系]・三菱UFJ[旧三菱系と三和系]・みずほグループ[旧第一勧銀系と旧富士系]の三大金融グループへまとまりました。 国内長期不況で苦しむ中、アジア諸国の経済は大成長しました。しかし短期海外資金の依存・金融機関の過剰な借入れ・企業の過剰な借入れ・金融制度の弱さ・投機資金の流入などから海外投資家が危機感を示して一斉に海外資金を回収・売却・国外移動を行いました。1997年、タイの通貨バーツの価値が大きく下がりました。海外投資家は東アジア・東南アジアから次々と海外資金を回収・売却・国外移動を行いました(アジア通貨危機)。その結果、東アジア・東南アジア諸国の金融と経済は大きな爪痕を残しました。債務問題は韓国などで大きくなり、国際通貨基金(International Monetary Fund:IMF)の支援を受けました。アジア通貨危機は日本経済と日本の金融機関にも大きな爪痕を残して、不良債権問題をさらに悪化させました。 日本政府はアジア通貨危機の発生から地域的な金融協力制度[アジア通貨基金構想]を出しました。しかし、アメリカ合衆国の反対から日本政府は二国間金融支援と新宮沢構想などに切り替えて、東アジア諸国を金銭面で助けました。 バブル経済崩壊後の平成不況はずっと続きました。景気は2002年初期に少しだけ上向きました。しかし、政府が公共事業中心の従来型景気対策を抑えながら不良債権処理と規制改革を進めました。その結果、企業は引き続き大規模なリストラと雇用調整を行いました。当初、バブル崩壊後の長期停滞は「失われた10年」とよばれました。その後も日本経済の停滞が強く、「失われた20年」「失われた30年」とよばれました。 == 行政改革と日米安保の変化 == 1990年代後半、大規模災害の対策・重大事件への対策・行政改革・財政改革・金融改革・冷戦後の日米安全保障体制見直し・政党の組み直しを行いました。1995年1月17日、阪神・淡路地域でマグニチュード7.3の<span style="color:#f29100">'''阪神・淡路大震災[兵庫県南部地震]'''</span>が起こりました。神戸市を中心に6400人以上が亡くなり、建造物・高速道路までも大きく壊れました。当地震で大都市は自然災害に弱く、都市政策・耐震化基準・防災体制の見直しをしました。また、国民は被災地に入って、避難民[被災者]の生活を支えたり、被災地の後片付けを手伝ったりしました。この活動からボランティア活動が全国に広がりました。 1995年3月20日、オウム真理教集団は東京都の地下鉄でサリンを撒いて、多数の死傷者を出しました(<span style="color:#f29100">'''地下鉄サリン事件'''</span>)。このように阪神・淡路大震災と地下鉄サリン事件・少年犯罪の殺人事件・児童虐待などが何度も報道機関で取り上げられ、旧価値観的な安全神話も崩れて国民の意識も変わりました。<gallery mode="packed" widths="200" heights="200"> ファイル:Hanshin Expressway Nada b059.jpg|阪神淡路大震災被災後 ファイル:【地下鉄サリン事件】除染を行う自衛隊員と警察官.jpg|地下鉄サリン事件 ファイル:Ryutaro Hashimoto 19960111.jpg|橋本龍太郎 ファイル:Ryuhei Kawada 20240307.jpg|川田龍平 </gallery>1995年9月、自由民主党総裁選挙から<span style="color:#f29100">'''橋本龍太郎'''</span>が選ばれました。1996年1月、村山富市首相退陣後の内閣総理大臣指名選挙で橋本龍太郎が選ばれました。橋本内閣でも自民党・社会民主党・新党さきがけの3党が引き続き協力して、政策を進めました。なお日本社会党は自衛隊・日米安全保障条約の賛成側に回り、1996年に党名を社会民主党へ変えました。 薬害エイズ問題も大きく取り上げられました。橋本龍太郎内閣厚生大臣の菅直人は薬害エイズ被害者[川田龍平など]に謝罪しました。その後、国と製薬会社と被害者が話し合い、和解しました。 1996年、新しい選挙制度で初めて衆議院議員総選挙が行われ、自由民主党の議席を大きく増やしても、過半数を下回りました。社会民主党と新党さきがけは第2次橋本内閣から国務大臣を出さなくなり、閣外協力に変わりました。その結果、自由民主党単独政権に戻りました。 橋本龍太郎内閣は冷戦後の国際変化・国内経済・政府問題を解決するため、行政・財政・金融の各分野を見直しました。行政改革は政府組織を減らしたり、類似の政府組織を1つにまとめたりして、首相などの政策案を出しやすくしました。1998年、中央省庁等改革基本法が導入されて中央省庁等改革関連法から行政改革の方針を決めました。 2001年1月、政府はこの行政改革の方針から中央省庁を1府22省庁から1府12省庁に減らしました。その結果、内閣総理大臣は各省庁へ指示を出して、政府全体の政策を進めやすくしました。2007年、防衛庁を防衛省に上げました。 ★省庁再編 {| class="wikitable" !再編前 !再編後 !再編前 !再編後 |- |内閣官房 |内閣官房 |大蔵省 |財務省 |- | rowspan="2" |総理府 金融再生委員会 経済企画庁 沖縄開発庁 | rowspan="2" |内閣府 |科学技術庁 文部省 |文部科学省 |- |厚生省 労働省 |厚生労働省 |- |国家公安委員会 |国家公安委員会 |農林水産省 |農林水産省 |- |防衛庁 |防衛庁(省) |通商産業省 |経済産業省 |- |総務庁 郵政省 自治省 |総務省 | rowspan="2" |北海道開発庁 国土庁 建設省 運輸省 | rowspan="2" |国土交通省 |- |法務省 |法務省 |- |外務省 |外務省 |環境庁 |環境省 |} 橋本龍太郎内閣は国債の発行額を減らそうとしました。1997年4月、財政構造改革法に従って消費税率を3%から5%に引き上げて公共事業費などを減らしました。国債発行額は1970年代後半から増えても1980年代末で一度減りました。1990年代に入り、公共投資を再拡大させてから大幅な国債発行額増加に向かいました。 しかし、国民は消費税率の引き上げなどから財布の紐もきつくなり、金融機関も生き残れなくなりました。さらにアジア通貨・金融危機も起きて、日本経済は再不況になりました。やがて、銀行同士は金融不安の拡大から合併して1つの銀行になりました。1997年度の実質経済成長率は-0.4%となり、1974年度[第1次石油危機直後]以来のマイナス成長になりました。1998年度の実質経済成長率は-2%まで下がり、平成不況の大きさを改めて物語りました。 [[ファイル:Official Portrait of President William Jefferson Clinton - DPLA - 4697184146b3b6e2d6791b8f3c297476.jpg|サムネイル|221x221ピクセル|ビル・クリントン大統領]] 冷戦後、橋本龍太郎内閣は日米安全保障体制を見直しました。アメリカのビル・クリントン大統領が1996年4月に日本を訪れ、橋本首相と話し合って<span style="color:#f29100">'''日米安全保障共同宣言'''</span>を発表しました。日米安全保障共同宣言から日本とアメリカは日本防衛以外にもアジア太平洋地域の戦争防止・紛争防止まで努めていくようになりました。 自衛隊がアメリカ軍に必要物資を運ぶなどの後方支援についても、日米防衛協力のための指針を見直しました。1997年、日本政府とアメリカ合衆国政府は「新しい日米防衛協力のための指針(新ガイドライン)」を作りました。 日本が外国から直接攻撃されても直接攻撃されていなくても、日本周辺国の戦争などから日本の平和と安全に大きく関わっていたらアメリカ合衆国側も新ガイドラインに従って助け合いました(周辺事態)。ただし日本から何キロ以内というような距離だけだとアメリカ合衆国側は何もしません。 地球温暖化防止京都会議は1997年に開かれ、温室効果ガスの削減目標などを盛り込む京都議定書を採択しました。また、橋本龍太郎内閣は従来のアイヌ民族政策を大きく変えました。 アイヌ民族は1946年2月に北海道アイヌ協会を作り、アイヌ民族の権利を政府に求めました。北海道旧土人保護法からアイヌ民族用の土地[給与地]を貰っても、農地改革で買収されたくありませんでした。しかしアイヌ民族をずっと厳しく人種差別しており、アイヌ民族の一部は北海道から逃げました。その後、北海道アイヌ協会は名前を北海道ウタリ協会に変えました。[[ファイル:UPOPOY 202608.jpg|サムネイル|民族共生象徴空間ウポポイ]]1980年代、世界各地の先住民族が先住民族の権利を政府に求めました。北海道ウタリ協会は政府に北海道旧土人保護法を廃止して新しい法律を作ってほしいと求めました。1997年、国会はアイヌ民族文化をずっと守っていくために'''アイヌ文化振興法'''を作り、北海道旧土人保護法を廃止しました。 その後もアイヌ民族政策は変わりました。2008年、国会はアイヌ民族を日本の先住民族と認めて、内閣へアイヌ民族の権利・生活・文化なども認めてほしいとお願いしました。民族団体の名前も北海道ウタリ協会から北海道アイヌ協会に戻しました。 2019(令和元)年、政府はアイヌ施策推進法で日本の「先住民族」にアイヌ民族を初めて入れました。アイヌ施策推進法から北海道アイヌ協会側も話し合いに参加して、アイヌ民族向けの新しい政策を行っています。2020年、北海道白老町に民族共生象徴空間ウポポイが開かれました。アイヌ語講座・アイヌ文化活動・アイヌ語活動が日本各地で開かれてもいます。 [[ファイル:Keizo Obuchi 19980730.jpg|サムネイル|168x168ピクセル|小渕恵三]] 1998年7月の参議院議員選挙で自由民主党議席数は大きく減らし、この結果から橋本龍太郎も内閣総理大臣を辞めました。これを受けて、<span style="color:#f29100">'''小渕恵三'''</span>が内閣総理大臣に選ばれました。小渕恵三内閣はバブル崩壊に消費税増税・金融不安・アジア通貨危機なども重なり、橋本龍太郎の財政再建路線を修正しました。小渕恵三内閣は土木工事・公共施設建築工事の大型予算を組んでその潤いから複合不況まで立て直そうとしました。その結果、政府は赤字国債発行額を再び大幅に増やしました。 1999年、小渕恵三内閣は国会法案の賛成を増やしたいから自由党〔1月〕・公明党〔10月〕も自由民主党と一緒に内閣を支えていました[自自公連立政権の開始]。その結果、自由民主党・自由党・公明党は衆議院・参議院の両方で過半数の議席を持つようになりました。小渕恵三内閣から自由民主党と公明党は2025年10月まで一緒に内閣を支えました。 1999年、小渕恵三内閣は'''新ガイドライン関連法'''をまとめました。新ガイドライン関連法の<span style="color:#f29100">'''周辺事態安全確保法'''</span>は日本周辺国家の暴走で自国の平和と安全まで守れなくなったら、自衛隊を出してアメリカ軍へ必要物資を送りました。 [[ファイル:G8 2000 group photo (kremlin.ru).jpg|サムネイル|223x223px|第26回主要国首脳会議]] 1999年、小渕恵三内閣は日の丸と君が代を国旗・国歌法へ初めて記しました。また、国民は情報公開法に従って官公庁へ資料を見せてほしいとお願いしやすくなりました。国会は憲法調査会で憲法を変えるかどうか話し合いました。小渕恵三内閣は2000年に九州・沖縄で第26回主要国首脳会議[サミット]開くと決めました。 この時期は野党も大きく変わりました。社会民主党の支持者は少しずつ減りました。新進党は議員の大量離脱から1997年末になくなりました。旧新進党の議員は違う政党[自由党・新党平和・民主党]に入りました。1996年、鳩山由紀夫・菅直人が'''民主党'''を結成しました。その後、旧新進党議員も民主党へ入りました。さらに、新党平和・黎明クラブを公明党に戻しました。 こうして、自由民主党と日本社会党が長く争う55年体制も終わりました。55年体制が終わっても、自由民主党と民主党の保守二大政党制へ繋がりませんでした。自由民主党が再び政権へ戻っても、自由党・公明党と一緒に内閣を支えていました。 == 資料出所 == * 平雅行、横田冬彦ほか編著『日本史探究』実教出版株式会社 2023年 * 佐藤信、五味文彦ほか編著『詳説日本史探究』株式会社山川出版社 2023年 * 高埜利彦、高村直助ほか編著『日本史A 改訂版』株式会社山川出版社 2016年 * 渡邊晃宏ほか編著『日本史探究』東京書籍株式会社 2023年 * 伊藤純郎ほか編著『高等学校日本史探究』株式会社清水書院 2023年 * 大橋幸泰ほか編著『高等学校日本史探究』株式会社第一学習社 2023年 * 山中裕典著'''『'''改訂版 大学入学共通テスト 歴史総合、日本史探究の点数が面白いほどとれる本'''』'''株式会社KADOKAWA 2024年 * 佐藤信、五味文彦ほか編著『詳説日本史研究』株式会社山川出版社 2017年 * 河合敦著『世界一わかりやすい河合敦の日本史B[近・現代]の特別講座』株式会社KADOKAWA 2014年(絶版本) * 外園豊基編集代表『最新日本史図表』株式会社第一学習社 2026年 * 東京法令出版編著『歴史資料館 日本史のライブラリー』東京法令出版株式会社 2026年 [[カテゴリ:高等学校日本史探究|あらたなせいきのにほんへ]] [[カテゴリ:20世紀]] 6qatui3supsv2qmga8p9in5xvb91cdr 304999 304996 2026-10-22T03:57:06Z Kwawe 68789 /* 政界再編と55年体制の終結 */ 総選挙後、日本共産党以外の非自民8党派は一緒に政権をつくった。 304999 wikitext text/x-wiki [[小学校・中学校・高等学校の学習]]>[[高等学校の学習]]>[[高等学校地理歴史]]>[[高等学校日本史探究]]>新たな世紀の日本へⅡ  引き続き「新たな世紀の日本へ」の内容を解説します。第2回目では、政界再編から小渕恵三内閣までの国内政治を見ていきます。 == 政界再編と55年体制の終結 == 1975年、国鉄職員などは大きなストライキ「スト権スト」を行って政府側に争議権の回復を求めても失敗しました。その後、官公庁労働組合はストライキなどをあまり行わなくなりました。民間大企業の労働組合も春闘で大幅な賃上げを求めにくくなりました。 その後、民間労働組合は1つにまとまり始めました。1987年、全日本民間労働組合連合会[民間連合]をつくりました。1989年の日本労働組合総評議会[総評]解散後、元日本労働組合総評議会[総評]は全日本民間労働組合連合会[民間連合]に合流しました。その後、全日本民間労働組合連合会[民間連合]と同盟などの労働組合は1つにまとまって<span style="color:#f29100">'''日本労働組合総連合会[連合]'''</span>をつくりました。約800万人が日本労働組合総連合会[連合]に入りました。 一方、日本労働組合総連合会[連合]の敵側は全国労働組合総連合[全労連]をつくりました。約140万人が全国労働組合総連合[全労連]に入りました。さらに日本労働組合総連合会[連合]と全国労働組合総連合[全労連]の敵側は全国労働組合連絡協議会[全労協]をつくりました。こうして、野党支持側の労働組合は日本労働組合総連合会[連合]・全国労働組合総連合[全労連]・全国労働組合連絡協議会[全労協]に分かれました。<gallery mode="packed" heights="200"> ファイル:Sohyo Kaikan (headquarters of the Japanese Trade Union Confederation).jpg|日本労働組合総連合会 ファイル:Zenrouren Kaikan (1).jpg|全国労働組合総連合 ファイル:Kiichi Miyazawa 19911105.jpg|宮澤喜一 </gallery>政治家と企業の金銭やり取りが冷戦後の日本で問題になりました。リクルート事件〔竹下内閣〕・佐川急便事件〔宮澤喜一内閣〕・ゼネコン汚職事件〔宮澤喜一内閣〕が起きました。自由民主党副総裁の金丸信も1993年に逮捕されました。国民は政治家・官僚・企業の金銭やり取りへ文句を言い、自由民主党の不支持者まで増えました。 国民は相次ぐ政治家と企業の金銭やり取りから政治の仕組みを変えるように求めました。そこで、衆議院議員選挙を中選挙区制の区割りをやめて小選挙区制の区割りに切り替えられました。小選挙区制は1つの選挙区から1人だけを選ぶため、各政党の政策まではっきり分かるようになります。二大政党が小選挙区制の区割りで争うと選挙結果次第で政権交代に結び付きやすくなります。しかし、小さな政党は議席を取りにくくなります。 1993(平成5)年6月、野党側は宮澤喜一内閣に対して内閣不信任案を衆議院へ出しました。自由民主党内部の改革派も内閣不信任案に賛成したため、衆議院は内閣不信任案を可決しました。<span style="color:#f29100">'''羽田孜'''</span>・小沢一郎などは自由民主党を離れて、新生党をつくりました。元自由民主党議員も新党さきがけをつくりました。 宮澤喜一首相は衆議院を解散しました。1993年7月の衆議院議員総選挙結果で自由民主党は過半数を下回り、日本社会党も当選議員を大きく減らしました。一方、新生党・日本新党・新党さきがけなどは、当選議員を大きく増やしました。なお日本新党の政党代表は元熊本県知事の<span style="color:#f29100">'''細川護熙'''</span>でした。当衆議院議員総選挙で日本新党議員57人を立候補させて35人も当選しました。 総選挙後、日本共産党以外の非自民8党派は一緒に政権をつくりました。1993年8月、日本新党の細川護熙が内閣総理大臣となりました。日本社会党・新生党・公明党・日本新党・民社党・新党さきがけ・社会民主連合の7党と民主改革連合[参議院の会派]が細川護熙内閣を支えました。 1994年4月、新生党の羽田孜が内閣総理大臣になりました。しかし、日本社会党は新生党と一緒に内閣を支えなくなりました。羽田孜は国会議員の賛成を集められなくなり、約2か月で首相を辞めました。1994年6月、自由民主党は元野党側の日本社会党・新党さきがけと一緒に内閣を支えました[自社さ連立政権]。日本社会党の<span style="color:#f29100">'''村山富市'''</span>が内閣総理大臣になり、自由民主党も政権へ戻りました。一方、非自民連立政権側の新生党・日本新党・公明党・民社党などは1つにまとまって新進党をつくりました。 従来の日本社会党基本政策を村山富市内閣で大きく変えました。日本社会党は自衛隊を合憲としつつ日米安全保障条約と消費税までも受け入れました。こうして自由民主党と日本社会党の政策は近くなり、日本社会党の不支持者を増やしました。1995年、アジア・太平洋戦争終戦から50年を迎えました。国会は戦後50年目の反省文内容をまとめました。8月15日、村山富市内閣総理大臣はアジア・太平洋戦争の反省とお詫びを<span style="color:#f29100">'''「戦後50周年の終戦記念日にあたって」'''</span>で伝えました(<span style="color:#f29100">'''村山談話'''</span>)。 現地の国民は日本側の植民地支配と侵略から被害を受けており、村山談話でその反省とお詫びを該当国首脳へ伝えました。その後の内閣も村山談話を受け継ぎました。政府は戦後50年目に合わせて、日本とアジア諸国の近現代史資料を国民へ広く公開しました。さらにインターネットでも歴史資料を公開したいから、アジア歴史資料センター開く準備をしました。2001年、アジア歴史資料センターを開きました。政党の結成・解党・合流まで活発になり、各政党のどこにも入らない無党派層も増えました。以降は単独政党のみで内閣を支えきれなくなり、複数政党と一緒に内閣を支えました。 == バブルの崩壊 == プラザ合意後、大量のお金が土地購入・株式購入のために使われ、土地の値段・株価[資産価格]が次第に上がりました(資産インフレ)。1989(平成元)年、日本銀行は銀行へお金をあまり貸さなくなり、政府も土地の値段を上げすぎないようにしました(金融引き締め政策)。1990年代に入ってから、土地の値段・株価は下がり始めました。日経平均株価は、1989年12月末に3万8915円まで上がりました。しかし、その後は株式売却が増えて株価もいきなり下がり、1992年8月に1万4309円まで下がりました。土地の値段も1991年頃から下がり始め、1992年以後は日本各地で下がりました。2000年代半ばになると、大阪の一部商業地は一番高い時期の値段から約10分の1まで下がりました。こうして土地や株式の大幅な値上がりは終わり、1980年代後半のバブル経済は終わりました。 ★日本の実質経済成長率の推移 [[ファイル:GDP_growth_rate_in_Japan.svg|代替文=日本の実質経済成長率の推移|フレームなし|924x924px]] 日本の景気は1991年から悪くなりました('''平成不況''')。実質経済成長率は1992年に1.3%、1993年に1%未満まで下がりました。1992年を3か月ずつに分けて見ると、4~6月は-3.3%となり、前の3か月より国内経済が小さくなりました。7~9月と10~12月もそれぞれ-0.1%となりました。第1次石油危機後に2期連続の経済縮小時期はあっても、3期連続の経済縮小は戦後初めてでした。僅かな景気回復時期も平成不況の途中にありました。しかしすぐに経済縮小となり、平成不況が長年続きました。 バブル経済当時の国民は金融機関からお金を借りて、株価と地価をより高い価格で買いました。金融機関は不動産会社にもお金を貸しました。バブル崩壊後、株価と地価が大きく下がりました。国民は株と土地を全て売っても借金を返せなくなりました。国民の借金も金融機関へ返ってこなくなりました(不良債権)。金融機関は株と土地を債権として持っており、不良債権から金融機関も大赤字になりました。 金融機関は不良債権処理にずっと追われて、さらに苦しくなりました。その結果、金融機関は不良債権の心配からお金を貸さなくなりました。企業は金融機関からお金を借りにくくなりました。国民も「この金融機関は大丈夫か」と不安を感じるようになり、金融機関はさらに苦しくなりました。その後、企業は新しい商品を作れなくなり、新しい工場を建てられなくなり、新しい機械も買えなくなりました。地価の下落・株価の下落・不良債権の増加・金融機関の経営悪化・金融機関の融資停止が全て重なって景気も次第に悪くなりました('''複合不況''')。 当時の政府と日本銀行はこれまでの不況と同じように、財政支出の拡大・低金利政策から数年で景気も回復するかもと思っていました。この誤対策は複合不況に一切効果ありません。住宅金融専門会社は1995年頃から相次いでつぶれました。1997年、北海道拓殖銀行と山一証券がつぶれました。1998年、日本債券信用銀行と日本長期信用銀行がつぶれました。このように大手金融機関がつぶれると、国民も他の金融機関も危ないのではないかと不安になりました。政府は金融システムまで止まらないように、倒産寸前の大手金融機関などに大量の公的資金を入れました。<gallery mode="nolines" widths="200" heights="200"> ファイル:The Hokkaido Takushoku Bank.JPG|旧北海道拓殖銀行本店 ファイル:Kayabacho Tower, at Shinkawa, Chuo, Tokyo (2019-01-02) 02.jpg|旧山一證券本社 ファイル:日債銀本店.jpg|旧日本債券信用銀行本店 ファイル:Shinsei Bank (head office 1).jpg|旧日本長期信用銀行本店 </gallery>1998年、小渕恵三が内閣総理大臣になりました。小渕恵三内閣も大型予算から景気を回復させしようとしました。小渕内閣が公共投資を増やして国民のお金を回そうとしても複合不況に一切効果ありません。こうして、公債発行残高は増えました。物価は1990年代後半からずっと下がり続けました(デフレスパイラル)。 [[ファイル:Unemployment Rate of Japan 1953-2009.jpg|サムネイル|395x395ピクセル|日本の失業率]] 企業は赤字なので、生き残るために経営の効率化[事業整理・人員削減・雇用調整・海外進出など]を進めました(リストラクチャリング)。中小企業の倒産も増えて、中高年労働者の解雇・中高年労働者の早期退職・新卒採用の削減から企業の人件費を大幅に減らしました。バブル景気の時期は労働者不足から「売り手市場」でも、バブル崩壊後から「買い手市場」へ変わりました。1990年代半ばから2000年代前半、企業は新卒採用を大幅に減らしました(就職氷河期)。1998年の完全失業率は4%を超え、2001年の完全失業率で5%になりました。 失業者が増えると労働者も「自分も仕事を失うかもしれない」と不安になり、個人消費を減らしました。消費者は同じような商品なら出来るだけ安い商品を選ぶようになり、ブランド品・高級品を買ってくれなくなりました。商品が売れなくなると、会社も少量生産・既存工場・既存機械だけで行うようになりました。その結果、会社の利益がさらに減って、人員削減・採用縮小もさらに進みました。株価と地価の下落から不良債権が増えて、金融機関の経営も苦しくなり、企業へお金を貸せなくなりました。 円高も国際分業も進みました。1994年、1ドルが100円を割り込みました。輸出主導・量産指向型産業[自動車・電子・家電・事務機器など]は海外で売れにくくなりました。また、バブル崩壊後の不景気から国内の購入者も減りました。生産費用を少しでも減らすため、労働者の給料が日本より低いアジア諸国[中国など]へ工場を移すようになりました[国内工場の閉鎖・国内工場の海外移転]。その結果、地元企業・周辺店舗の売り上げを減らし、失業者を増やしました(地域'''産業の空洞化''')。 繊維産業の事業所数は減り続けました。2015年の繊維産業の事業所数は1991年と比べて約4分の1になりました。国内衣料品市場のうち海外衣料品購入割合は1991年で52%になり、2017年で97%まで上がりました。多数の多国籍企業が1990年代後半に日本企業を合併したり、買収したりしました。企業が日本型雇用を取り入れていても競争力強化・経営効率化から人員削減・能力給の導入を進めました。その結果、働き方の不安定さが広がりました。 日本は技術面でも負けています。1980年代、日本企業はエレクトロニクス[電子機器]・新素材・バイオテクノロジーなどの技術でアメリカに追いつこうとしていました。1990年代から情報通信技術の活用や生産性の伸びでアメリカ合衆国に負けました。商品は日本国内で売れにくくなり、業務内容も変わっていきました。そのため、日本企業は海外企業に負けないような対策を取りました。 バブル崩壊後、銀行制度・企業制度も変えられました。「日本版金融ビッグバン」を1996年に打ち出して、銀行・証券会社などにも規制を緩めて金融の自由化・国際化を進めました。1997年の独占禁止法改正から禁止の持株会社を再度認めました。企業は持株会社からグループ内の会社をまとめ直したり、経営の進め方を変えたりしやすくなり、その後の企業再編・金融再編にもつながりました。 以前の大規模小売店舗法は店舗面積500平方メートル以上の大規模小売店舗出店条件として出店規模・営業時間・営業日数などを定めていました。しかし、大規模小売店舗は中小小売業者の近くにも自由に出店しており、中小小売業者のお客様まで消えました。そのため、政府は大規模小売店舗の立地場所を1998年から制限しました(大規模小売店舗立地法)。中小小売業者から流れすぎないように守りながら、大規模小売店舗も中小小売業者も商売を続けられるようにしました。2000年、大規模小売店舗法を廃止しました。[[ファイル:Asian Financial Crisis EN-2009-05-05.png|サムネイル|273x273px|アジア通貨危機の影響国]]企業再編・合併は政府の規制緩和から広がり、海外企業と国内企業の協力・合併も増えました。その流れから六大企業集団もまとまりました。金融業界でも銀行などが倒産したり、別の銀行と合併したりしました。その結果、日本の金融業界は三井住友グループ[旧三井系と旧住友系]・三菱UFJ[旧三菱系と三和系]・みずほグループ[旧第一勧銀系と旧富士系]の三大金融グループへまとまりました。 国内長期不況で苦しむ中、アジア諸国の経済は大成長しました。しかし短期海外資金の依存・金融機関の過剰な借入れ・企業の過剰な借入れ・金融制度の弱さ・投機資金の流入などから海外投資家が危機感を示して一斉に海外資金を回収・売却・国外移動を行いました。1997年、タイの通貨バーツの価値が大きく下がりました。海外投資家は東アジア・東南アジアから次々と海外資金を回収・売却・国外移動を行いました(アジア通貨危機)。その結果、東アジア・東南アジア諸国の金融と経済は大きな爪痕を残しました。債務問題は韓国などで大きくなり、国際通貨基金(International Monetary Fund:IMF)の支援を受けました。アジア通貨危機は日本経済と日本の金融機関にも大きな爪痕を残して、不良債権問題をさらに悪化させました。 日本政府はアジア通貨危機の発生から地域的な金融協力制度[アジア通貨基金構想]を出しました。しかし、アメリカ合衆国の反対から日本政府は二国間金融支援と新宮沢構想などに切り替えて、東アジア諸国を金銭面で助けました。 バブル経済崩壊後の平成不況はずっと続きました。景気は2002年初期に少しだけ上向きました。しかし、政府が公共事業中心の従来型景気対策を抑えながら不良債権処理と規制改革を進めました。その結果、企業は引き続き大規模なリストラと雇用調整を行いました。当初、バブル崩壊後の長期停滞は「失われた10年」とよばれました。その後も日本経済の停滞が強く、「失われた20年」「失われた30年」とよばれました。 == 行政改革と日米安保の変化 == 1990年代後半、大規模災害の対策・重大事件への対策・行政改革・財政改革・金融改革・冷戦後の日米安全保障体制見直し・政党の組み直しを行いました。1995年1月17日、阪神・淡路地域でマグニチュード7.3の<span style="color:#f29100">'''阪神・淡路大震災[兵庫県南部地震]'''</span>が起こりました。神戸市を中心に6400人以上が亡くなり、建造物・高速道路までも大きく壊れました。当地震で大都市は自然災害に弱く、都市政策・耐震化基準・防災体制の見直しをしました。また、国民は被災地に入って、避難民[被災者]の生活を支えたり、被災地の後片付けを手伝ったりしました。この活動からボランティア活動が全国に広がりました。 1995年3月20日、オウム真理教集団は東京都の地下鉄でサリンを撒いて、多数の死傷者を出しました(<span style="color:#f29100">'''地下鉄サリン事件'''</span>)。このように阪神・淡路大震災と地下鉄サリン事件・少年犯罪の殺人事件・児童虐待などが何度も報道機関で取り上げられ、旧価値観的な安全神話も崩れて国民の意識も変わりました。<gallery mode="packed" widths="200" heights="200"> ファイル:Hanshin Expressway Nada b059.jpg|阪神淡路大震災被災後 ファイル:【地下鉄サリン事件】除染を行う自衛隊員と警察官.jpg|地下鉄サリン事件 ファイル:Ryutaro Hashimoto 19960111.jpg|橋本龍太郎 ファイル:Ryuhei Kawada 20240307.jpg|川田龍平 </gallery>1995年9月、自由民主党総裁選挙から<span style="color:#f29100">'''橋本龍太郎'''</span>が選ばれました。1996年1月、村山富市首相退陣後の内閣総理大臣指名選挙で橋本龍太郎が選ばれました。橋本内閣でも自民党・社会民主党・新党さきがけの3党が引き続き協力して、政策を進めました。なお日本社会党は自衛隊・日米安全保障条約の賛成側に回り、1996年に党名を社会民主党へ変えました。 薬害エイズ問題も大きく取り上げられました。橋本龍太郎内閣厚生大臣の菅直人は薬害エイズ被害者[川田龍平など]に謝罪しました。その後、国と製薬会社と被害者が話し合い、和解しました。 1996年、新しい選挙制度で初めて衆議院議員総選挙が行われ、自由民主党の議席を大きく増やしても、過半数を下回りました。社会民主党と新党さきがけは第2次橋本内閣から国務大臣を出さなくなり、閣外協力に変わりました。その結果、自由民主党単独政権に戻りました。 橋本龍太郎内閣は冷戦後の国際変化・国内経済・政府問題を解決するため、行政・財政・金融の各分野を見直しました。行政改革は政府組織を減らしたり、類似の政府組織を1つにまとめたりして、首相などの政策案を出しやすくしました。1998年、中央省庁等改革基本法が導入されて中央省庁等改革関連法から行政改革の方針を決めました。 2001年1月、政府はこの行政改革の方針から中央省庁を1府22省庁から1府12省庁に減らしました。その結果、内閣総理大臣は各省庁へ指示を出して、政府全体の政策を進めやすくしました。2007年、防衛庁を防衛省に上げました。 ★省庁再編 {| class="wikitable" !再編前 !再編後 !再編前 !再編後 |- |内閣官房 |内閣官房 |大蔵省 |財務省 |- | rowspan="2" |総理府 金融再生委員会 経済企画庁 沖縄開発庁 | rowspan="2" |内閣府 |科学技術庁 文部省 |文部科学省 |- |厚生省 労働省 |厚生労働省 |- |国家公安委員会 |国家公安委員会 |農林水産省 |農林水産省 |- |防衛庁 |防衛庁(省) |通商産業省 |経済産業省 |- |総務庁 郵政省 自治省 |総務省 | rowspan="2" |北海道開発庁 国土庁 建設省 運輸省 | rowspan="2" |国土交通省 |- |法務省 |法務省 |- |外務省 |外務省 |環境庁 |環境省 |} 橋本龍太郎内閣は国債の発行額を減らそうとしました。1997年4月、財政構造改革法に従って消費税率を3%から5%に引き上げて公共事業費などを減らしました。国債発行額は1970年代後半から増えても1980年代末で一度減りました。1990年代に入り、公共投資を再拡大させてから大幅な国債発行額増加に向かいました。 しかし、国民は消費税率の引き上げなどから財布の紐もきつくなり、金融機関も生き残れなくなりました。さらにアジア通貨・金融危機も起きて、日本経済は再不況になりました。やがて、銀行同士は金融不安の拡大から合併して1つの銀行になりました。1997年度の実質経済成長率は-0.4%となり、1974年度[第1次石油危機直後]以来のマイナス成長になりました。1998年度の実質経済成長率は-2%まで下がり、平成不況の大きさを改めて物語りました。 [[ファイル:Official Portrait of President William Jefferson Clinton - DPLA - 4697184146b3b6e2d6791b8f3c297476.jpg|サムネイル|221x221ピクセル|ビル・クリントン大統領]] 冷戦後、橋本龍太郎内閣は日米安全保障体制を見直しました。アメリカのビル・クリントン大統領が1996年4月に日本を訪れ、橋本首相と話し合って<span style="color:#f29100">'''日米安全保障共同宣言'''</span>を発表しました。日米安全保障共同宣言から日本とアメリカは日本防衛以外にもアジア太平洋地域の戦争防止・紛争防止まで努めていくようになりました。 自衛隊がアメリカ軍に必要物資を運ぶなどの後方支援についても、日米防衛協力のための指針を見直しました。1997年、日本政府とアメリカ合衆国政府は「新しい日米防衛協力のための指針(新ガイドライン)」を作りました。 日本が外国から直接攻撃されても直接攻撃されていなくても、日本周辺国の戦争などから日本の平和と安全に大きく関わっていたらアメリカ合衆国側も新ガイドラインに従って助け合いました(周辺事態)。ただし日本から何キロ以内というような距離だけだとアメリカ合衆国側は何もしません。 地球温暖化防止京都会議は1997年に開かれ、温室効果ガスの削減目標などを盛り込む京都議定書を採択しました。また、橋本龍太郎内閣は従来のアイヌ民族政策を大きく変えました。 アイヌ民族は1946年2月に北海道アイヌ協会を作り、アイヌ民族の権利を政府に求めました。北海道旧土人保護法からアイヌ民族用の土地[給与地]を貰っても、農地改革で買収されたくありませんでした。しかしアイヌ民族をずっと厳しく人種差別しており、アイヌ民族の一部は北海道から逃げました。その後、北海道アイヌ協会は名前を北海道ウタリ協会に変えました。[[ファイル:UPOPOY 202608.jpg|サムネイル|民族共生象徴空間ウポポイ]]1980年代、世界各地の先住民族が先住民族の権利を政府に求めました。北海道ウタリ協会は政府に北海道旧土人保護法を廃止して新しい法律を作ってほしいと求めました。1997年、国会はアイヌ民族文化をずっと守っていくために'''アイヌ文化振興法'''を作り、北海道旧土人保護法を廃止しました。 その後もアイヌ民族政策は変わりました。2008年、国会はアイヌ民族を日本の先住民族と認めて、内閣へアイヌ民族の権利・生活・文化なども認めてほしいとお願いしました。民族団体の名前も北海道ウタリ協会から北海道アイヌ協会に戻しました。 2019(令和元)年、政府はアイヌ施策推進法で日本の「先住民族」にアイヌ民族を初めて入れました。アイヌ施策推進法から北海道アイヌ協会側も話し合いに参加して、アイヌ民族向けの新しい政策を行っています。2020年、北海道白老町に民族共生象徴空間ウポポイが開かれました。アイヌ語講座・アイヌ文化活動・アイヌ語活動が日本各地で開かれてもいます。 [[ファイル:Keizo Obuchi 19980730.jpg|サムネイル|168x168ピクセル|小渕恵三]] 1998年7月の参議院議員選挙で自由民主党議席数は大きく減らし、この結果から橋本龍太郎も内閣総理大臣を辞めました。これを受けて、<span style="color:#f29100">'''小渕恵三'''</span>が内閣総理大臣に選ばれました。小渕恵三内閣はバブル崩壊に消費税増税・金融不安・アジア通貨危機なども重なり、橋本龍太郎の財政再建路線を修正しました。小渕恵三内閣は土木工事・公共施設建築工事の大型予算を組んでその潤いから複合不況まで立て直そうとしました。その結果、政府は赤字国債発行額を再び大幅に増やしました。 1999年、小渕恵三内閣は国会法案の賛成を増やしたいから自由党〔1月〕・公明党〔10月〕も自由民主党と一緒に内閣を支えていました[自自公連立政権の開始]。その結果、自由民主党・自由党・公明党は衆議院・参議院の両方で過半数の議席を持つようになりました。小渕恵三内閣から自由民主党と公明党は2025年10月まで一緒に内閣を支えました。 1999年、小渕恵三内閣は'''新ガイドライン関連法'''をまとめました。新ガイドライン関連法の<span style="color:#f29100">'''周辺事態安全確保法'''</span>は日本周辺国家の暴走で自国の平和と安全まで守れなくなったら、自衛隊を出してアメリカ軍へ必要物資を送りました。 [[ファイル:G8 2000 group photo (kremlin.ru).jpg|サムネイル|223x223px|第26回主要国首脳会議]] 1999年、小渕恵三内閣は日の丸と君が代を国旗・国歌法へ初めて記しました。また、国民は情報公開法に従って官公庁へ資料を見せてほしいとお願いしやすくなりました。国会は憲法調査会で憲法を変えるかどうか話し合いました。小渕恵三内閣は2000年に九州・沖縄で第26回主要国首脳会議[サミット]開くと決めました。 この時期は野党も大きく変わりました。社会民主党の支持者は少しずつ減りました。新進党は議員の大量離脱から1997年末になくなりました。旧新進党の議員は違う政党[自由党・新党平和・民主党]に入りました。1996年、鳩山由紀夫・菅直人が'''民主党'''を結成しました。その後、旧新進党議員も民主党へ入りました。さらに、新党平和・黎明クラブを公明党に戻しました。 こうして、自由民主党と日本社会党が長く争う55年体制も終わりました。55年体制が終わっても、自由民主党と民主党の保守二大政党制へ繋がりませんでした。自由民主党が再び政権へ戻っても、自由党・公明党と一緒に内閣を支えていました。 == 資料出所 == * 平雅行、横田冬彦ほか編著『日本史探究』実教出版株式会社 2023年 * 佐藤信、五味文彦ほか編著『詳説日本史探究』株式会社山川出版社 2023年 * 高埜利彦、高村直助ほか編著『日本史A 改訂版』株式会社山川出版社 2016年 * 渡邊晃宏ほか編著『日本史探究』東京書籍株式会社 2023年 * 伊藤純郎ほか編著『高等学校日本史探究』株式会社清水書院 2023年 * 大橋幸泰ほか編著『高等学校日本史探究』株式会社第一学習社 2023年 * 山中裕典著'''『'''改訂版 大学入学共通テスト 歴史総合、日本史探究の点数が面白いほどとれる本'''』'''株式会社KADOKAWA 2024年 * 佐藤信、五味文彦ほか編著『詳説日本史研究』株式会社山川出版社 2017年 * 河合敦著『世界一わかりやすい河合敦の日本史B[近・現代]の特別講座』株式会社KADOKAWA 2014年(絶版本) * 外園豊基編集代表『最新日本史図表』株式会社第一学習社 2026年 * 東京法令出版編著『歴史資料館 日本史のライブラリー』東京法令出版株式会社 2026年 [[カテゴリ:高等学校日本史探究|あらたなせいきのにほんへ]] [[カテゴリ:20世紀]] g86tnio04foxv305o8tj32yx8pgvyl1 305000 304999 2026-10-22T03:57:43Z Kwawe 68789 /* 政界再編と55年体制の終結 */ その自由民主党が初めて野党になり、自由民主党単独政権も38年目で幕を閉じた[55年体制の崩壊]。 305000 wikitext text/x-wiki [[小学校・中学校・高等学校の学習]]>[[高等学校の学習]]>[[高等学校地理歴史]]>[[高等学校日本史探究]]>新たな世紀の日本へⅡ  引き続き「新たな世紀の日本へ」の内容を解説します。第2回目では、政界再編から小渕恵三内閣までの国内政治を見ていきます。 == 政界再編と55年体制の終結 == 1975年、国鉄職員などは大きなストライキ「スト権スト」を行って政府側に争議権の回復を求めても失敗しました。その後、官公庁労働組合はストライキなどをあまり行わなくなりました。民間大企業の労働組合も春闘で大幅な賃上げを求めにくくなりました。 その後、民間労働組合は1つにまとまり始めました。1987年、全日本民間労働組合連合会[民間連合]をつくりました。1989年の日本労働組合総評議会[総評]解散後、元日本労働組合総評議会[総評]は全日本民間労働組合連合会[民間連合]に合流しました。その後、全日本民間労働組合連合会[民間連合]と同盟などの労働組合は1つにまとまって<span style="color:#f29100">'''日本労働組合総連合会[連合]'''</span>をつくりました。約800万人が日本労働組合総連合会[連合]に入りました。 一方、日本労働組合総連合会[連合]の敵側は全国労働組合総連合[全労連]をつくりました。約140万人が全国労働組合総連合[全労連]に入りました。さらに日本労働組合総連合会[連合]と全国労働組合総連合[全労連]の敵側は全国労働組合連絡協議会[全労協]をつくりました。こうして、野党支持側の労働組合は日本労働組合総連合会[連合]・全国労働組合総連合[全労連]・全国労働組合連絡協議会[全労協]に分かれました。<gallery mode="packed" heights="200"> ファイル:Sohyo Kaikan (headquarters of the Japanese Trade Union Confederation).jpg|日本労働組合総連合会 ファイル:Zenrouren Kaikan (1).jpg|全国労働組合総連合 ファイル:Kiichi Miyazawa 19911105.jpg|宮澤喜一 </gallery>政治家と企業の金銭やり取りが冷戦後の日本で問題になりました。リクルート事件〔竹下内閣〕・佐川急便事件〔宮澤喜一内閣〕・ゼネコン汚職事件〔宮澤喜一内閣〕が起きました。自由民主党副総裁の金丸信も1993年に逮捕されました。国民は政治家・官僚・企業の金銭やり取りへ文句を言い、自由民主党の不支持者まで増えました。 国民は相次ぐ政治家と企業の金銭やり取りから政治の仕組みを変えるように求めました。そこで、衆議院議員選挙を中選挙区制の区割りをやめて小選挙区制の区割りに切り替えられました。小選挙区制は1つの選挙区から1人だけを選ぶため、各政党の政策まではっきり分かるようになります。二大政党が小選挙区制の区割りで争うと選挙結果次第で政権交代に結び付きやすくなります。しかし、小さな政党は議席を取りにくくなります。 1993(平成5)年6月、野党側は宮澤喜一内閣に対して内閣不信任案を衆議院へ出しました。自由民主党内部の改革派も内閣不信任案に賛成したため、衆議院は内閣不信任案を可決しました。<span style="color:#f29100">'''羽田孜'''</span>・小沢一郎などは自由民主党を離れて、新生党をつくりました。元自由民主党議員も新党さきがけをつくりました。 宮澤喜一首相は衆議院を解散しました。1993年7月の衆議院議員総選挙結果で自由民主党は過半数を下回り、日本社会党も当選議員を大きく減らしました。一方、新生党・日本新党・新党さきがけなどは、当選議員を大きく増やしました。なお日本新党の政党代表は元熊本県知事の<span style="color:#f29100">'''細川護熙'''</span>でした。当衆議院議員総選挙で日本新党議員57人を立候補させて35人も当選しました。 総選挙後、日本共産党以外の非自民8党派は一緒に政権をつくりました。1993年8月、日本新党の細川護熙が内閣総理大臣となりました。日本社会党・新生党・公明党・日本新党・民社党・新党さきがけ・社会民主連合の7党と民主改革連合[参議院の会派]が細川護熙内閣を支えました。 55年体制からここまで保守の自由民主党と革新の日本社会党が政治の中心になっていました。その自由民主党が初めて野党になり、自由民主党単独政権も38年目で幕を閉じました[55年体制の崩壊]。 1994年4月、新生党の羽田孜が内閣総理大臣になりました。しかし、日本社会党は新生党と一緒に内閣を支えなくなりました。羽田孜は国会議員の賛成を集められなくなり、約2か月で首相を辞めました。1994年6月、自由民主党は元野党側の日本社会党・新党さきがけと一緒に内閣を支えました[自社さ連立政権]。日本社会党の<span style="color:#f29100">'''村山富市'''</span>が内閣総理大臣になり、自由民主党も政権へ戻りました。一方、非自民連立政権側の新生党・日本新党・公明党・民社党などは1つにまとまって新進党をつくりました。 従来の日本社会党基本政策を村山富市内閣で大きく変えました。日本社会党は自衛隊を合憲としつつ日米安全保障条約と消費税までも受け入れました。こうして自由民主党と日本社会党の政策は近くなり、日本社会党の不支持者を増やしました。1995年、アジア・太平洋戦争終戦から50年を迎えました。国会は戦後50年目の反省文内容をまとめました。8月15日、村山富市内閣総理大臣はアジア・太平洋戦争の反省とお詫びを<span style="color:#f29100">'''「戦後50周年の終戦記念日にあたって」'''</span>で伝えました(<span style="color:#f29100">'''村山談話'''</span>)。 現地の国民は日本側の植民地支配と侵略から被害を受けており、村山談話でその反省とお詫びを該当国首脳へ伝えました。その後の内閣も村山談話を受け継ぎました。政府は戦後50年目に合わせて、日本とアジア諸国の近現代史資料を国民へ広く公開しました。さらにインターネットでも歴史資料を公開したいから、アジア歴史資料センター開く準備をしました。2001年、アジア歴史資料センターを開きました。政党の結成・解党・合流まで活発になり、各政党のどこにも入らない無党派層も増えました。以降は単独政党のみで内閣を支えきれなくなり、複数政党と一緒に内閣を支えました。 == バブルの崩壊 == プラザ合意後、大量のお金が土地購入・株式購入のために使われ、土地の値段・株価[資産価格]が次第に上がりました(資産インフレ)。1989(平成元)年、日本銀行は銀行へお金をあまり貸さなくなり、政府も土地の値段を上げすぎないようにしました(金融引き締め政策)。1990年代に入ってから、土地の値段・株価は下がり始めました。日経平均株価は、1989年12月末に3万8915円まで上がりました。しかし、その後は株式売却が増えて株価もいきなり下がり、1992年8月に1万4309円まで下がりました。土地の値段も1991年頃から下がり始め、1992年以後は日本各地で下がりました。2000年代半ばになると、大阪の一部商業地は一番高い時期の値段から約10分の1まで下がりました。こうして土地や株式の大幅な値上がりは終わり、1980年代後半のバブル経済は終わりました。 ★日本の実質経済成長率の推移 [[ファイル:GDP_growth_rate_in_Japan.svg|代替文=日本の実質経済成長率の推移|フレームなし|924x924px]] 日本の景気は1991年から悪くなりました('''平成不況''')。実質経済成長率は1992年に1.3%、1993年に1%未満まで下がりました。1992年を3か月ずつに分けて見ると、4~6月は-3.3%となり、前の3か月より国内経済が小さくなりました。7~9月と10~12月もそれぞれ-0.1%となりました。第1次石油危機後に2期連続の経済縮小時期はあっても、3期連続の経済縮小は戦後初めてでした。僅かな景気回復時期も平成不況の途中にありました。しかしすぐに経済縮小となり、平成不況が長年続きました。 バブル経済当時の国民は金融機関からお金を借りて、株価と地価をより高い価格で買いました。金融機関は不動産会社にもお金を貸しました。バブル崩壊後、株価と地価が大きく下がりました。国民は株と土地を全て売っても借金を返せなくなりました。国民の借金も金融機関へ返ってこなくなりました(不良債権)。金融機関は株と土地を債権として持っており、不良債権から金融機関も大赤字になりました。 金融機関は不良債権処理にずっと追われて、さらに苦しくなりました。その結果、金融機関は不良債権の心配からお金を貸さなくなりました。企業は金融機関からお金を借りにくくなりました。国民も「この金融機関は大丈夫か」と不安を感じるようになり、金融機関はさらに苦しくなりました。その後、企業は新しい商品を作れなくなり、新しい工場を建てられなくなり、新しい機械も買えなくなりました。地価の下落・株価の下落・不良債権の増加・金融機関の経営悪化・金融機関の融資停止が全て重なって景気も次第に悪くなりました('''複合不況''')。 当時の政府と日本銀行はこれまでの不況と同じように、財政支出の拡大・低金利政策から数年で景気も回復するかもと思っていました。この誤対策は複合不況に一切効果ありません。住宅金融専門会社は1995年頃から相次いでつぶれました。1997年、北海道拓殖銀行と山一証券がつぶれました。1998年、日本債券信用銀行と日本長期信用銀行がつぶれました。このように大手金融機関がつぶれると、国民も他の金融機関も危ないのではないかと不安になりました。政府は金融システムまで止まらないように、倒産寸前の大手金融機関などに大量の公的資金を入れました。<gallery mode="nolines" widths="200" heights="200"> ファイル:The Hokkaido Takushoku Bank.JPG|旧北海道拓殖銀行本店 ファイル:Kayabacho Tower, at Shinkawa, Chuo, Tokyo (2019-01-02) 02.jpg|旧山一證券本社 ファイル:日債銀本店.jpg|旧日本債券信用銀行本店 ファイル:Shinsei Bank (head office 1).jpg|旧日本長期信用銀行本店 </gallery>1998年、小渕恵三が内閣総理大臣になりました。小渕恵三内閣も大型予算から景気を回復させしようとしました。小渕内閣が公共投資を増やして国民のお金を回そうとしても複合不況に一切効果ありません。こうして、公債発行残高は増えました。物価は1990年代後半からずっと下がり続けました(デフレスパイラル)。 [[ファイル:Unemployment Rate of Japan 1953-2009.jpg|サムネイル|395x395ピクセル|日本の失業率]] 企業は赤字なので、生き残るために経営の効率化[事業整理・人員削減・雇用調整・海外進出など]を進めました(リストラクチャリング)。中小企業の倒産も増えて、中高年労働者の解雇・中高年労働者の早期退職・新卒採用の削減から企業の人件費を大幅に減らしました。バブル景気の時期は労働者不足から「売り手市場」でも、バブル崩壊後から「買い手市場」へ変わりました。1990年代半ばから2000年代前半、企業は新卒採用を大幅に減らしました(就職氷河期)。1998年の完全失業率は4%を超え、2001年の完全失業率で5%になりました。 失業者が増えると労働者も「自分も仕事を失うかもしれない」と不安になり、個人消費を減らしました。消費者は同じような商品なら出来るだけ安い商品を選ぶようになり、ブランド品・高級品を買ってくれなくなりました。商品が売れなくなると、会社も少量生産・既存工場・既存機械だけで行うようになりました。その結果、会社の利益がさらに減って、人員削減・採用縮小もさらに進みました。株価と地価の下落から不良債権が増えて、金融機関の経営も苦しくなり、企業へお金を貸せなくなりました。 円高も国際分業も進みました。1994年、1ドルが100円を割り込みました。輸出主導・量産指向型産業[自動車・電子・家電・事務機器など]は海外で売れにくくなりました。また、バブル崩壊後の不景気から国内の購入者も減りました。生産費用を少しでも減らすため、労働者の給料が日本より低いアジア諸国[中国など]へ工場を移すようになりました[国内工場の閉鎖・国内工場の海外移転]。その結果、地元企業・周辺店舗の売り上げを減らし、失業者を増やしました(地域'''産業の空洞化''')。 繊維産業の事業所数は減り続けました。2015年の繊維産業の事業所数は1991年と比べて約4分の1になりました。国内衣料品市場のうち海外衣料品購入割合は1991年で52%になり、2017年で97%まで上がりました。多数の多国籍企業が1990年代後半に日本企業を合併したり、買収したりしました。企業が日本型雇用を取り入れていても競争力強化・経営効率化から人員削減・能力給の導入を進めました。その結果、働き方の不安定さが広がりました。 日本は技術面でも負けています。1980年代、日本企業はエレクトロニクス[電子機器]・新素材・バイオテクノロジーなどの技術でアメリカに追いつこうとしていました。1990年代から情報通信技術の活用や生産性の伸びでアメリカ合衆国に負けました。商品は日本国内で売れにくくなり、業務内容も変わっていきました。そのため、日本企業は海外企業に負けないような対策を取りました。 バブル崩壊後、銀行制度・企業制度も変えられました。「日本版金融ビッグバン」を1996年に打ち出して、銀行・証券会社などにも規制を緩めて金融の自由化・国際化を進めました。1997年の独占禁止法改正から禁止の持株会社を再度認めました。企業は持株会社からグループ内の会社をまとめ直したり、経営の進め方を変えたりしやすくなり、その後の企業再編・金融再編にもつながりました。 以前の大規模小売店舗法は店舗面積500平方メートル以上の大規模小売店舗出店条件として出店規模・営業時間・営業日数などを定めていました。しかし、大規模小売店舗は中小小売業者の近くにも自由に出店しており、中小小売業者のお客様まで消えました。そのため、政府は大規模小売店舗の立地場所を1998年から制限しました(大規模小売店舗立地法)。中小小売業者から流れすぎないように守りながら、大規模小売店舗も中小小売業者も商売を続けられるようにしました。2000年、大規模小売店舗法を廃止しました。[[ファイル:Asian Financial Crisis EN-2009-05-05.png|サムネイル|273x273px|アジア通貨危機の影響国]]企業再編・合併は政府の規制緩和から広がり、海外企業と国内企業の協力・合併も増えました。その流れから六大企業集団もまとまりました。金融業界でも銀行などが倒産したり、別の銀行と合併したりしました。その結果、日本の金融業界は三井住友グループ[旧三井系と旧住友系]・三菱UFJ[旧三菱系と三和系]・みずほグループ[旧第一勧銀系と旧富士系]の三大金融グループへまとまりました。 国内長期不況で苦しむ中、アジア諸国の経済は大成長しました。しかし短期海外資金の依存・金融機関の過剰な借入れ・企業の過剰な借入れ・金融制度の弱さ・投機資金の流入などから海外投資家が危機感を示して一斉に海外資金を回収・売却・国外移動を行いました。1997年、タイの通貨バーツの価値が大きく下がりました。海外投資家は東アジア・東南アジアから次々と海外資金を回収・売却・国外移動を行いました(アジア通貨危機)。その結果、東アジア・東南アジア諸国の金融と経済は大きな爪痕を残しました。債務問題は韓国などで大きくなり、国際通貨基金(International Monetary Fund:IMF)の支援を受けました。アジア通貨危機は日本経済と日本の金融機関にも大きな爪痕を残して、不良債権問題をさらに悪化させました。 日本政府はアジア通貨危機の発生から地域的な金融協力制度[アジア通貨基金構想]を出しました。しかし、アメリカ合衆国の反対から日本政府は二国間金融支援と新宮沢構想などに切り替えて、東アジア諸国を金銭面で助けました。 バブル経済崩壊後の平成不況はずっと続きました。景気は2002年初期に少しだけ上向きました。しかし、政府が公共事業中心の従来型景気対策を抑えながら不良債権処理と規制改革を進めました。その結果、企業は引き続き大規模なリストラと雇用調整を行いました。当初、バブル崩壊後の長期停滞は「失われた10年」とよばれました。その後も日本経済の停滞が強く、「失われた20年」「失われた30年」とよばれました。 == 行政改革と日米安保の変化 == 1990年代後半、大規模災害の対策・重大事件への対策・行政改革・財政改革・金融改革・冷戦後の日米安全保障体制見直し・政党の組み直しを行いました。1995年1月17日、阪神・淡路地域でマグニチュード7.3の<span style="color:#f29100">'''阪神・淡路大震災[兵庫県南部地震]'''</span>が起こりました。神戸市を中心に6400人以上が亡くなり、建造物・高速道路までも大きく壊れました。当地震で大都市は自然災害に弱く、都市政策・耐震化基準・防災体制の見直しをしました。また、国民は被災地に入って、避難民[被災者]の生活を支えたり、被災地の後片付けを手伝ったりしました。この活動からボランティア活動が全国に広がりました。 1995年3月20日、オウム真理教集団は東京都の地下鉄でサリンを撒いて、多数の死傷者を出しました(<span style="color:#f29100">'''地下鉄サリン事件'''</span>)。このように阪神・淡路大震災と地下鉄サリン事件・少年犯罪の殺人事件・児童虐待などが何度も報道機関で取り上げられ、旧価値観的な安全神話も崩れて国民の意識も変わりました。<gallery mode="packed" widths="200" heights="200"> ファイル:Hanshin Expressway Nada b059.jpg|阪神淡路大震災被災後 ファイル:【地下鉄サリン事件】除染を行う自衛隊員と警察官.jpg|地下鉄サリン事件 ファイル:Ryutaro Hashimoto 19960111.jpg|橋本龍太郎 ファイル:Ryuhei Kawada 20240307.jpg|川田龍平 </gallery>1995年9月、自由民主党総裁選挙から<span style="color:#f29100">'''橋本龍太郎'''</span>が選ばれました。1996年1月、村山富市首相退陣後の内閣総理大臣指名選挙で橋本龍太郎が選ばれました。橋本内閣でも自民党・社会民主党・新党さきがけの3党が引き続き協力して、政策を進めました。なお日本社会党は自衛隊・日米安全保障条約の賛成側に回り、1996年に党名を社会民主党へ変えました。 薬害エイズ問題も大きく取り上げられました。橋本龍太郎内閣厚生大臣の菅直人は薬害エイズ被害者[川田龍平など]に謝罪しました。その後、国と製薬会社と被害者が話し合い、和解しました。 1996年、新しい選挙制度で初めて衆議院議員総選挙が行われ、自由民主党の議席を大きく増やしても、過半数を下回りました。社会民主党と新党さきがけは第2次橋本内閣から国務大臣を出さなくなり、閣外協力に変わりました。その結果、自由民主党単独政権に戻りました。 橋本龍太郎内閣は冷戦後の国際変化・国内経済・政府問題を解決するため、行政・財政・金融の各分野を見直しました。行政改革は政府組織を減らしたり、類似の政府組織を1つにまとめたりして、首相などの政策案を出しやすくしました。1998年、中央省庁等改革基本法が導入されて中央省庁等改革関連法から行政改革の方針を決めました。 2001年1月、政府はこの行政改革の方針から中央省庁を1府22省庁から1府12省庁に減らしました。その結果、内閣総理大臣は各省庁へ指示を出して、政府全体の政策を進めやすくしました。2007年、防衛庁を防衛省に上げました。 ★省庁再編 {| class="wikitable" !再編前 !再編後 !再編前 !再編後 |- |内閣官房 |内閣官房 |大蔵省 |財務省 |- | rowspan="2" |総理府 金融再生委員会 経済企画庁 沖縄開発庁 | rowspan="2" |内閣府 |科学技術庁 文部省 |文部科学省 |- |厚生省 労働省 |厚生労働省 |- |国家公安委員会 |国家公安委員会 |農林水産省 |農林水産省 |- |防衛庁 |防衛庁(省) |通商産業省 |経済産業省 |- |総務庁 郵政省 自治省 |総務省 | rowspan="2" |北海道開発庁 国土庁 建設省 運輸省 | rowspan="2" |国土交通省 |- |法務省 |法務省 |- |外務省 |外務省 |環境庁 |環境省 |} 橋本龍太郎内閣は国債の発行額を減らそうとしました。1997年4月、財政構造改革法に従って消費税率を3%から5%に引き上げて公共事業費などを減らしました。国債発行額は1970年代後半から増えても1980年代末で一度減りました。1990年代に入り、公共投資を再拡大させてから大幅な国債発行額増加に向かいました。 しかし、国民は消費税率の引き上げなどから財布の紐もきつくなり、金融機関も生き残れなくなりました。さらにアジア通貨・金融危機も起きて、日本経済は再不況になりました。やがて、銀行同士は金融不安の拡大から合併して1つの銀行になりました。1997年度の実質経済成長率は-0.4%となり、1974年度[第1次石油危機直後]以来のマイナス成長になりました。1998年度の実質経済成長率は-2%まで下がり、平成不況の大きさを改めて物語りました。 [[ファイル:Official Portrait of President William Jefferson Clinton - DPLA - 4697184146b3b6e2d6791b8f3c297476.jpg|サムネイル|221x221ピクセル|ビル・クリントン大統領]] 冷戦後、橋本龍太郎内閣は日米安全保障体制を見直しました。アメリカのビル・クリントン大統領が1996年4月に日本を訪れ、橋本首相と話し合って<span style="color:#f29100">'''日米安全保障共同宣言'''</span>を発表しました。日米安全保障共同宣言から日本とアメリカは日本防衛以外にもアジア太平洋地域の戦争防止・紛争防止まで努めていくようになりました。 自衛隊がアメリカ軍に必要物資を運ぶなどの後方支援についても、日米防衛協力のための指針を見直しました。1997年、日本政府とアメリカ合衆国政府は「新しい日米防衛協力のための指針(新ガイドライン)」を作りました。 日本が外国から直接攻撃されても直接攻撃されていなくても、日本周辺国の戦争などから日本の平和と安全に大きく関わっていたらアメリカ合衆国側も新ガイドラインに従って助け合いました(周辺事態)。ただし日本から何キロ以内というような距離だけだとアメリカ合衆国側は何もしません。 地球温暖化防止京都会議は1997年に開かれ、温室効果ガスの削減目標などを盛り込む京都議定書を採択しました。また、橋本龍太郎内閣は従来のアイヌ民族政策を大きく変えました。 アイヌ民族は1946年2月に北海道アイヌ協会を作り、アイヌ民族の権利を政府に求めました。北海道旧土人保護法からアイヌ民族用の土地[給与地]を貰っても、農地改革で買収されたくありませんでした。しかしアイヌ民族をずっと厳しく人種差別しており、アイヌ民族の一部は北海道から逃げました。その後、北海道アイヌ協会は名前を北海道ウタリ協会に変えました。[[ファイル:UPOPOY 202608.jpg|サムネイル|民族共生象徴空間ウポポイ]]1980年代、世界各地の先住民族が先住民族の権利を政府に求めました。北海道ウタリ協会は政府に北海道旧土人保護法を廃止して新しい法律を作ってほしいと求めました。1997年、国会はアイヌ民族文化をずっと守っていくために'''アイヌ文化振興法'''を作り、北海道旧土人保護法を廃止しました。 その後もアイヌ民族政策は変わりました。2008年、国会はアイヌ民族を日本の先住民族と認めて、内閣へアイヌ民族の権利・生活・文化なども認めてほしいとお願いしました。民族団体の名前も北海道ウタリ協会から北海道アイヌ協会に戻しました。 2019(令和元)年、政府はアイヌ施策推進法で日本の「先住民族」にアイヌ民族を初めて入れました。アイヌ施策推進法から北海道アイヌ協会側も話し合いに参加して、アイヌ民族向けの新しい政策を行っています。2020年、北海道白老町に民族共生象徴空間ウポポイが開かれました。アイヌ語講座・アイヌ文化活動・アイヌ語活動が日本各地で開かれてもいます。 [[ファイル:Keizo Obuchi 19980730.jpg|サムネイル|168x168ピクセル|小渕恵三]] 1998年7月の参議院議員選挙で自由民主党議席数は大きく減らし、この結果から橋本龍太郎も内閣総理大臣を辞めました。これを受けて、<span style="color:#f29100">'''小渕恵三'''</span>が内閣総理大臣に選ばれました。小渕恵三内閣はバブル崩壊に消費税増税・金融不安・アジア通貨危機なども重なり、橋本龍太郎の財政再建路線を修正しました。小渕恵三内閣は土木工事・公共施設建築工事の大型予算を組んでその潤いから複合不況まで立て直そうとしました。その結果、政府は赤字国債発行額を再び大幅に増やしました。 1999年、小渕恵三内閣は国会法案の賛成を増やしたいから自由党〔1月〕・公明党〔10月〕も自由民主党と一緒に内閣を支えていました[自自公連立政権の開始]。その結果、自由民主党・自由党・公明党は衆議院・参議院の両方で過半数の議席を持つようになりました。小渕恵三内閣から自由民主党と公明党は2025年10月まで一緒に内閣を支えました。 1999年、小渕恵三内閣は'''新ガイドライン関連法'''をまとめました。新ガイドライン関連法の<span style="color:#f29100">'''周辺事態安全確保法'''</span>は日本周辺国家の暴走で自国の平和と安全まで守れなくなったら、自衛隊を出してアメリカ軍へ必要物資を送りました。 [[ファイル:G8 2000 group photo (kremlin.ru).jpg|サムネイル|223x223px|第26回主要国首脳会議]] 1999年、小渕恵三内閣は日の丸と君が代を国旗・国歌法へ初めて記しました。また、国民は情報公開法に従って官公庁へ資料を見せてほしいとお願いしやすくなりました。国会は憲法調査会で憲法を変えるかどうか話し合いました。小渕恵三内閣は2000年に九州・沖縄で第26回主要国首脳会議[サミット]開くと決めました。 この時期は野党も大きく変わりました。社会民主党の支持者は少しずつ減りました。新進党は議員の大量離脱から1997年末になくなりました。旧新進党の議員は違う政党[自由党・新党平和・民主党]に入りました。1996年、鳩山由紀夫・菅直人が'''民主党'''を結成しました。その後、旧新進党議員も民主党へ入りました。さらに、新党平和・黎明クラブを公明党に戻しました。 こうして、自由民主党と日本社会党が長く争う55年体制も終わりました。55年体制が終わっても、自由民主党と民主党の保守二大政党制へ繋がりませんでした。自由民主党が再び政権へ戻っても、自由党・公明党と一緒に内閣を支えていました。 == 資料出所 == * 平雅行、横田冬彦ほか編著『日本史探究』実教出版株式会社 2023年 * 佐藤信、五味文彦ほか編著『詳説日本史探究』株式会社山川出版社 2023年 * 高埜利彦、高村直助ほか編著『日本史A 改訂版』株式会社山川出版社 2016年 * 渡邊晃宏ほか編著『日本史探究』東京書籍株式会社 2023年 * 伊藤純郎ほか編著『高等学校日本史探究』株式会社清水書院 2023年 * 大橋幸泰ほか編著『高等学校日本史探究』株式会社第一学習社 2023年 * 山中裕典著'''『'''改訂版 大学入学共通テスト 歴史総合、日本史探究の点数が面白いほどとれる本'''』'''株式会社KADOKAWA 2024年 * 佐藤信、五味文彦ほか編著『詳説日本史研究』株式会社山川出版社 2017年 * 河合敦著『世界一わかりやすい河合敦の日本史B[近・現代]の特別講座』株式会社KADOKAWA 2014年(絶版本) * 外園豊基編集代表『最新日本史図表』株式会社第一学習社 2026年 * 東京法令出版編著『歴史資料館 日本史のライブラリー』東京法令出版株式会社 2026年 [[カテゴリ:高等学校日本史探究|あらたなせいきのにほんへ]] [[カテゴリ:20世紀]] fs7kanzdrpt815tpumzzw3r0qii209x 305001 305000 2026-10-22T03:58:22Z Kwawe 68789 /* 政界再編と55年体制の終結 */ 細川護熙内閣は政治改革を進め、政治改革関連四法を1994年に決めた。 305001 wikitext text/x-wiki [[小学校・中学校・高等学校の学習]]>[[高等学校の学習]]>[[高等学校地理歴史]]>[[高等学校日本史探究]]>新たな世紀の日本へⅡ  引き続き「新たな世紀の日本へ」の内容を解説します。第2回目では、政界再編から小渕恵三内閣までの国内政治を見ていきます。 == 政界再編と55年体制の終結 == 1975年、国鉄職員などは大きなストライキ「スト権スト」を行って政府側に争議権の回復を求めても失敗しました。その後、官公庁労働組合はストライキなどをあまり行わなくなりました。民間大企業の労働組合も春闘で大幅な賃上げを求めにくくなりました。 その後、民間労働組合は1つにまとまり始めました。1987年、全日本民間労働組合連合会[民間連合]をつくりました。1989年の日本労働組合総評議会[総評]解散後、元日本労働組合総評議会[総評]は全日本民間労働組合連合会[民間連合]に合流しました。その後、全日本民間労働組合連合会[民間連合]と同盟などの労働組合は1つにまとまって<span style="color:#f29100">'''日本労働組合総連合会[連合]'''</span>をつくりました。約800万人が日本労働組合総連合会[連合]に入りました。 一方、日本労働組合総連合会[連合]の敵側は全国労働組合総連合[全労連]をつくりました。約140万人が全国労働組合総連合[全労連]に入りました。さらに日本労働組合総連合会[連合]と全国労働組合総連合[全労連]の敵側は全国労働組合連絡協議会[全労協]をつくりました。こうして、野党支持側の労働組合は日本労働組合総連合会[連合]・全国労働組合総連合[全労連]・全国労働組合連絡協議会[全労協]に分かれました。<gallery mode="packed" heights="200"> ファイル:Sohyo Kaikan (headquarters of the Japanese Trade Union Confederation).jpg|日本労働組合総連合会 ファイル:Zenrouren Kaikan (1).jpg|全国労働組合総連合 ファイル:Kiichi Miyazawa 19911105.jpg|宮澤喜一 </gallery>政治家と企業の金銭やり取りが冷戦後の日本で問題になりました。リクルート事件〔竹下内閣〕・佐川急便事件〔宮澤喜一内閣〕・ゼネコン汚職事件〔宮澤喜一内閣〕が起きました。自由民主党副総裁の金丸信も1993年に逮捕されました。国民は政治家・官僚・企業の金銭やり取りへ文句を言い、自由民主党の不支持者まで増えました。 国民は相次ぐ政治家と企業の金銭やり取りから政治の仕組みを変えるように求めました。そこで、衆議院議員選挙を中選挙区制の区割りをやめて小選挙区制の区割りに切り替えられました。小選挙区制は1つの選挙区から1人だけを選ぶため、各政党の政策まではっきり分かるようになります。二大政党が小選挙区制の区割りで争うと選挙結果次第で政権交代に結び付きやすくなります。しかし、小さな政党は議席を取りにくくなります。 1993(平成5)年6月、野党側は宮澤喜一内閣に対して内閣不信任案を衆議院へ出しました。自由民主党内部の改革派も内閣不信任案に賛成したため、衆議院は内閣不信任案を可決しました。<span style="color:#f29100">'''羽田孜'''</span>・小沢一郎などは自由民主党を離れて、新生党をつくりました。元自由民主党議員も新党さきがけをつくりました。 宮澤喜一首相は衆議院を解散しました。1993年7月の衆議院議員総選挙結果で自由民主党は過半数を下回り、日本社会党も当選議員を大きく減らしました。一方、新生党・日本新党・新党さきがけなどは、当選議員を大きく増やしました。なお日本新党の政党代表は元熊本県知事の<span style="color:#f29100">'''細川護熙'''</span>でした。当衆議院議員総選挙で日本新党議員57人を立候補させて35人も当選しました。 総選挙後、日本共産党以外の非自民8党派は一緒に政権をつくりました。1993年8月、日本新党の細川護熙が内閣総理大臣となりました。日本社会党・新生党・公明党・日本新党・民社党・新党さきがけ・社会民主連合の7党と民主改革連合[参議院の会派]が細川護熙内閣を支えました。 55年体制からここまで保守の自由民主党と革新の日本社会党が政治の中心になっていました。その自由民主党が初めて野党になり、自由民主党単独政権も38年目で幕を閉じました(55年体制の崩壊)。 細川護熙内閣は政治改革を進め、政治改革関連四法を1994年に決めました。公職選挙法も変わりました。衆議院議員総選挙は従来の中選挙区制をやめて、小選挙区制と比例代表制の選挙区割り[小選挙区比例代表並立制]から当選議員まで決まりました。 1994年4月、新生党の羽田孜が内閣総理大臣になりました。しかし、日本社会党は新生党と一緒に内閣を支えなくなりました。羽田孜は国会議員の賛成を集められなくなり、約2か月で首相を辞めました。1994年6月、自由民主党は元野党側の日本社会党・新党さきがけと一緒に内閣を支えました[自社さ連立政権]。日本社会党の<span style="color:#f29100">'''村山富市'''</span>が内閣総理大臣になり、自由民主党も政権へ戻りました。一方、非自民連立政権側の新生党・日本新党・公明党・民社党などは1つにまとまって新進党をつくりました。 従来の日本社会党基本政策を村山富市内閣で大きく変えました。日本社会党は自衛隊を合憲としつつ日米安全保障条約と消費税までも受け入れました。こうして自由民主党と日本社会党の政策は近くなり、日本社会党の不支持者を増やしました。1995年、アジア・太平洋戦争終戦から50年を迎えました。国会は戦後50年目の反省文内容をまとめました。8月15日、村山富市内閣総理大臣はアジア・太平洋戦争の反省とお詫びを<span style="color:#f29100">'''「戦後50周年の終戦記念日にあたって」'''</span>で伝えました(<span style="color:#f29100">'''村山談話'''</span>)。 現地の国民は日本側の植民地支配と侵略から被害を受けており、村山談話でその反省とお詫びを該当国首脳へ伝えました。その後の内閣も村山談話を受け継ぎました。政府は戦後50年目に合わせて、日本とアジア諸国の近現代史資料を国民へ広く公開しました。さらにインターネットでも歴史資料を公開したいから、アジア歴史資料センター開く準備をしました。2001年、アジア歴史資料センターを開きました。政党の結成・解党・合流まで活発になり、各政党のどこにも入らない無党派層も増えました。以降は単独政党のみで内閣を支えきれなくなり、複数政党と一緒に内閣を支えました。 == バブルの崩壊 == プラザ合意後、大量のお金が土地購入・株式購入のために使われ、土地の値段・株価[資産価格]が次第に上がりました(資産インフレ)。1989(平成元)年、日本銀行は銀行へお金をあまり貸さなくなり、政府も土地の値段を上げすぎないようにしました(金融引き締め政策)。1990年代に入ってから、土地の値段・株価は下がり始めました。日経平均株価は、1989年12月末に3万8915円まで上がりました。しかし、その後は株式売却が増えて株価もいきなり下がり、1992年8月に1万4309円まで下がりました。土地の値段も1991年頃から下がり始め、1992年以後は日本各地で下がりました。2000年代半ばになると、大阪の一部商業地は一番高い時期の値段から約10分の1まで下がりました。こうして土地や株式の大幅な値上がりは終わり、1980年代後半のバブル経済は終わりました。 ★日本の実質経済成長率の推移 [[ファイル:GDP_growth_rate_in_Japan.svg|代替文=日本の実質経済成長率の推移|フレームなし|924x924px]] 日本の景気は1991年から悪くなりました('''平成不況''')。実質経済成長率は1992年に1.3%、1993年に1%未満まで下がりました。1992年を3か月ずつに分けて見ると、4~6月は-3.3%となり、前の3か月より国内経済が小さくなりました。7~9月と10~12月もそれぞれ-0.1%となりました。第1次石油危機後に2期連続の経済縮小時期はあっても、3期連続の経済縮小は戦後初めてでした。僅かな景気回復時期も平成不況の途中にありました。しかしすぐに経済縮小となり、平成不況が長年続きました。 バブル経済当時の国民は金融機関からお金を借りて、株価と地価をより高い価格で買いました。金融機関は不動産会社にもお金を貸しました。バブル崩壊後、株価と地価が大きく下がりました。国民は株と土地を全て売っても借金を返せなくなりました。国民の借金も金融機関へ返ってこなくなりました(不良債権)。金融機関は株と土地を債権として持っており、不良債権から金融機関も大赤字になりました。 金融機関は不良債権処理にずっと追われて、さらに苦しくなりました。その結果、金融機関は不良債権の心配からお金を貸さなくなりました。企業は金融機関からお金を借りにくくなりました。国民も「この金融機関は大丈夫か」と不安を感じるようになり、金融機関はさらに苦しくなりました。その後、企業は新しい商品を作れなくなり、新しい工場を建てられなくなり、新しい機械も買えなくなりました。地価の下落・株価の下落・不良債権の増加・金融機関の経営悪化・金融機関の融資停止が全て重なって景気も次第に悪くなりました('''複合不況''')。 当時の政府と日本銀行はこれまでの不況と同じように、財政支出の拡大・低金利政策から数年で景気も回復するかもと思っていました。この誤対策は複合不況に一切効果ありません。住宅金融専門会社は1995年頃から相次いでつぶれました。1997年、北海道拓殖銀行と山一証券がつぶれました。1998年、日本債券信用銀行と日本長期信用銀行がつぶれました。このように大手金融機関がつぶれると、国民も他の金融機関も危ないのではないかと不安になりました。政府は金融システムまで止まらないように、倒産寸前の大手金融機関などに大量の公的資金を入れました。<gallery mode="nolines" widths="200" heights="200"> ファイル:The Hokkaido Takushoku Bank.JPG|旧北海道拓殖銀行本店 ファイル:Kayabacho Tower, at Shinkawa, Chuo, Tokyo (2019-01-02) 02.jpg|旧山一證券本社 ファイル:日債銀本店.jpg|旧日本債券信用銀行本店 ファイル:Shinsei Bank (head office 1).jpg|旧日本長期信用銀行本店 </gallery>1998年、小渕恵三が内閣総理大臣になりました。小渕恵三内閣も大型予算から景気を回復させしようとしました。小渕内閣が公共投資を増やして国民のお金を回そうとしても複合不況に一切効果ありません。こうして、公債発行残高は増えました。物価は1990年代後半からずっと下がり続けました(デフレスパイラル)。 [[ファイル:Unemployment Rate of Japan 1953-2009.jpg|サムネイル|395x395ピクセル|日本の失業率]] 企業は赤字なので、生き残るために経営の効率化[事業整理・人員削減・雇用調整・海外進出など]を進めました(リストラクチャリング)。中小企業の倒産も増えて、中高年労働者の解雇・中高年労働者の早期退職・新卒採用の削減から企業の人件費を大幅に減らしました。バブル景気の時期は労働者不足から「売り手市場」でも、バブル崩壊後から「買い手市場」へ変わりました。1990年代半ばから2000年代前半、企業は新卒採用を大幅に減らしました(就職氷河期)。1998年の完全失業率は4%を超え、2001年の完全失業率で5%になりました。 失業者が増えると労働者も「自分も仕事を失うかもしれない」と不安になり、個人消費を減らしました。消費者は同じような商品なら出来るだけ安い商品を選ぶようになり、ブランド品・高級品を買ってくれなくなりました。商品が売れなくなると、会社も少量生産・既存工場・既存機械だけで行うようになりました。その結果、会社の利益がさらに減って、人員削減・採用縮小もさらに進みました。株価と地価の下落から不良債権が増えて、金融機関の経営も苦しくなり、企業へお金を貸せなくなりました。 円高も国際分業も進みました。1994年、1ドルが100円を割り込みました。輸出主導・量産指向型産業[自動車・電子・家電・事務機器など]は海外で売れにくくなりました。また、バブル崩壊後の不景気から国内の購入者も減りました。生産費用を少しでも減らすため、労働者の給料が日本より低いアジア諸国[中国など]へ工場を移すようになりました[国内工場の閉鎖・国内工場の海外移転]。その結果、地元企業・周辺店舗の売り上げを減らし、失業者を増やしました(地域'''産業の空洞化''')。 繊維産業の事業所数は減り続けました。2015年の繊維産業の事業所数は1991年と比べて約4分の1になりました。国内衣料品市場のうち海外衣料品購入割合は1991年で52%になり、2017年で97%まで上がりました。多数の多国籍企業が1990年代後半に日本企業を合併したり、買収したりしました。企業が日本型雇用を取り入れていても競争力強化・経営効率化から人員削減・能力給の導入を進めました。その結果、働き方の不安定さが広がりました。 日本は技術面でも負けています。1980年代、日本企業はエレクトロニクス[電子機器]・新素材・バイオテクノロジーなどの技術でアメリカに追いつこうとしていました。1990年代から情報通信技術の活用や生産性の伸びでアメリカ合衆国に負けました。商品は日本国内で売れにくくなり、業務内容も変わっていきました。そのため、日本企業は海外企業に負けないような対策を取りました。 バブル崩壊後、銀行制度・企業制度も変えられました。「日本版金融ビッグバン」を1996年に打ち出して、銀行・証券会社などにも規制を緩めて金融の自由化・国際化を進めました。1997年の独占禁止法改正から禁止の持株会社を再度認めました。企業は持株会社からグループ内の会社をまとめ直したり、経営の進め方を変えたりしやすくなり、その後の企業再編・金融再編にもつながりました。 以前の大規模小売店舗法は店舗面積500平方メートル以上の大規模小売店舗出店条件として出店規模・営業時間・営業日数などを定めていました。しかし、大規模小売店舗は中小小売業者の近くにも自由に出店しており、中小小売業者のお客様まで消えました。そのため、政府は大規模小売店舗の立地場所を1998年から制限しました(大規模小売店舗立地法)。中小小売業者から流れすぎないように守りながら、大規模小売店舗も中小小売業者も商売を続けられるようにしました。2000年、大規模小売店舗法を廃止しました。[[ファイル:Asian Financial Crisis EN-2009-05-05.png|サムネイル|273x273px|アジア通貨危機の影響国]]企業再編・合併は政府の規制緩和から広がり、海外企業と国内企業の協力・合併も増えました。その流れから六大企業集団もまとまりました。金融業界でも銀行などが倒産したり、別の銀行と合併したりしました。その結果、日本の金融業界は三井住友グループ[旧三井系と旧住友系]・三菱UFJ[旧三菱系と三和系]・みずほグループ[旧第一勧銀系と旧富士系]の三大金融グループへまとまりました。 国内長期不況で苦しむ中、アジア諸国の経済は大成長しました。しかし短期海外資金の依存・金融機関の過剰な借入れ・企業の過剰な借入れ・金融制度の弱さ・投機資金の流入などから海外投資家が危機感を示して一斉に海外資金を回収・売却・国外移動を行いました。1997年、タイの通貨バーツの価値が大きく下がりました。海外投資家は東アジア・東南アジアから次々と海外資金を回収・売却・国外移動を行いました(アジア通貨危機)。その結果、東アジア・東南アジア諸国の金融と経済は大きな爪痕を残しました。債務問題は韓国などで大きくなり、国際通貨基金(International Monetary Fund:IMF)の支援を受けました。アジア通貨危機は日本経済と日本の金融機関にも大きな爪痕を残して、不良債権問題をさらに悪化させました。 日本政府はアジア通貨危機の発生から地域的な金融協力制度[アジア通貨基金構想]を出しました。しかし、アメリカ合衆国の反対から日本政府は二国間金融支援と新宮沢構想などに切り替えて、東アジア諸国を金銭面で助けました。 バブル経済崩壊後の平成不況はずっと続きました。景気は2002年初期に少しだけ上向きました。しかし、政府が公共事業中心の従来型景気対策を抑えながら不良債権処理と規制改革を進めました。その結果、企業は引き続き大規模なリストラと雇用調整を行いました。当初、バブル崩壊後の長期停滞は「失われた10年」とよばれました。その後も日本経済の停滞が強く、「失われた20年」「失われた30年」とよばれました。 == 行政改革と日米安保の変化 == 1990年代後半、大規模災害の対策・重大事件への対策・行政改革・財政改革・金融改革・冷戦後の日米安全保障体制見直し・政党の組み直しを行いました。1995年1月17日、阪神・淡路地域でマグニチュード7.3の<span style="color:#f29100">'''阪神・淡路大震災[兵庫県南部地震]'''</span>が起こりました。神戸市を中心に6400人以上が亡くなり、建造物・高速道路までも大きく壊れました。当地震で大都市は自然災害に弱く、都市政策・耐震化基準・防災体制の見直しをしました。また、国民は被災地に入って、避難民[被災者]の生活を支えたり、被災地の後片付けを手伝ったりしました。この活動からボランティア活動が全国に広がりました。 1995年3月20日、オウム真理教集団は東京都の地下鉄でサリンを撒いて、多数の死傷者を出しました(<span style="color:#f29100">'''地下鉄サリン事件'''</span>)。このように阪神・淡路大震災と地下鉄サリン事件・少年犯罪の殺人事件・児童虐待などが何度も報道機関で取り上げられ、旧価値観的な安全神話も崩れて国民の意識も変わりました。<gallery mode="packed" widths="200" heights="200"> ファイル:Hanshin Expressway Nada b059.jpg|阪神淡路大震災被災後 ファイル:【地下鉄サリン事件】除染を行う自衛隊員と警察官.jpg|地下鉄サリン事件 ファイル:Ryutaro Hashimoto 19960111.jpg|橋本龍太郎 ファイル:Ryuhei Kawada 20240307.jpg|川田龍平 </gallery>1995年9月、自由民主党総裁選挙から<span style="color:#f29100">'''橋本龍太郎'''</span>が選ばれました。1996年1月、村山富市首相退陣後の内閣総理大臣指名選挙で橋本龍太郎が選ばれました。橋本内閣でも自民党・社会民主党・新党さきがけの3党が引き続き協力して、政策を進めました。なお日本社会党は自衛隊・日米安全保障条約の賛成側に回り、1996年に党名を社会民主党へ変えました。 薬害エイズ問題も大きく取り上げられました。橋本龍太郎内閣厚生大臣の菅直人は薬害エイズ被害者[川田龍平など]に謝罪しました。その後、国と製薬会社と被害者が話し合い、和解しました。 1996年、新しい選挙制度で初めて衆議院議員総選挙が行われ、自由民主党の議席を大きく増やしても、過半数を下回りました。社会民主党と新党さきがけは第2次橋本内閣から国務大臣を出さなくなり、閣外協力に変わりました。その結果、自由民主党単独政権に戻りました。 橋本龍太郎内閣は冷戦後の国際変化・国内経済・政府問題を解決するため、行政・財政・金融の各分野を見直しました。行政改革は政府組織を減らしたり、類似の政府組織を1つにまとめたりして、首相などの政策案を出しやすくしました。1998年、中央省庁等改革基本法が導入されて中央省庁等改革関連法から行政改革の方針を決めました。 2001年1月、政府はこの行政改革の方針から中央省庁を1府22省庁から1府12省庁に減らしました。その結果、内閣総理大臣は各省庁へ指示を出して、政府全体の政策を進めやすくしました。2007年、防衛庁を防衛省に上げました。 ★省庁再編 {| class="wikitable" !再編前 !再編後 !再編前 !再編後 |- |内閣官房 |内閣官房 |大蔵省 |財務省 |- | rowspan="2" |総理府 金融再生委員会 経済企画庁 沖縄開発庁 | rowspan="2" |内閣府 |科学技術庁 文部省 |文部科学省 |- |厚生省 労働省 |厚生労働省 |- |国家公安委員会 |国家公安委員会 |農林水産省 |農林水産省 |- |防衛庁 |防衛庁(省) |通商産業省 |経済産業省 |- |総務庁 郵政省 自治省 |総務省 | rowspan="2" |北海道開発庁 国土庁 建設省 運輸省 | rowspan="2" |国土交通省 |- |法務省 |法務省 |- |外務省 |外務省 |環境庁 |環境省 |} 橋本龍太郎内閣は国債の発行額を減らそうとしました。1997年4月、財政構造改革法に従って消費税率を3%から5%に引き上げて公共事業費などを減らしました。国債発行額は1970年代後半から増えても1980年代末で一度減りました。1990年代に入り、公共投資を再拡大させてから大幅な国債発行額増加に向かいました。 しかし、国民は消費税率の引き上げなどから財布の紐もきつくなり、金融機関も生き残れなくなりました。さらにアジア通貨・金融危機も起きて、日本経済は再不況になりました。やがて、銀行同士は金融不安の拡大から合併して1つの銀行になりました。1997年度の実質経済成長率は-0.4%となり、1974年度[第1次石油危機直後]以来のマイナス成長になりました。1998年度の実質経済成長率は-2%まで下がり、平成不況の大きさを改めて物語りました。 [[ファイル:Official Portrait of President William Jefferson Clinton - DPLA - 4697184146b3b6e2d6791b8f3c297476.jpg|サムネイル|221x221ピクセル|ビル・クリントン大統領]] 冷戦後、橋本龍太郎内閣は日米安全保障体制を見直しました。アメリカのビル・クリントン大統領が1996年4月に日本を訪れ、橋本首相と話し合って<span style="color:#f29100">'''日米安全保障共同宣言'''</span>を発表しました。日米安全保障共同宣言から日本とアメリカは日本防衛以外にもアジア太平洋地域の戦争防止・紛争防止まで努めていくようになりました。 自衛隊がアメリカ軍に必要物資を運ぶなどの後方支援についても、日米防衛協力のための指針を見直しました。1997年、日本政府とアメリカ合衆国政府は「新しい日米防衛協力のための指針(新ガイドライン)」を作りました。 日本が外国から直接攻撃されても直接攻撃されていなくても、日本周辺国の戦争などから日本の平和と安全に大きく関わっていたらアメリカ合衆国側も新ガイドラインに従って助け合いました(周辺事態)。ただし日本から何キロ以内というような距離だけだとアメリカ合衆国側は何もしません。 地球温暖化防止京都会議は1997年に開かれ、温室効果ガスの削減目標などを盛り込む京都議定書を採択しました。また、橋本龍太郎内閣は従来のアイヌ民族政策を大きく変えました。 アイヌ民族は1946年2月に北海道アイヌ協会を作り、アイヌ民族の権利を政府に求めました。北海道旧土人保護法からアイヌ民族用の土地[給与地]を貰っても、農地改革で買収されたくありませんでした。しかしアイヌ民族をずっと厳しく人種差別しており、アイヌ民族の一部は北海道から逃げました。その後、北海道アイヌ協会は名前を北海道ウタリ協会に変えました。[[ファイル:UPOPOY 202608.jpg|サムネイル|民族共生象徴空間ウポポイ]]1980年代、世界各地の先住民族が先住民族の権利を政府に求めました。北海道ウタリ協会は政府に北海道旧土人保護法を廃止して新しい法律を作ってほしいと求めました。1997年、国会はアイヌ民族文化をずっと守っていくために'''アイヌ文化振興法'''を作り、北海道旧土人保護法を廃止しました。 その後もアイヌ民族政策は変わりました。2008年、国会はアイヌ民族を日本の先住民族と認めて、内閣へアイヌ民族の権利・生活・文化なども認めてほしいとお願いしました。民族団体の名前も北海道ウタリ協会から北海道アイヌ協会に戻しました。 2019(令和元)年、政府はアイヌ施策推進法で日本の「先住民族」にアイヌ民族を初めて入れました。アイヌ施策推進法から北海道アイヌ協会側も話し合いに参加して、アイヌ民族向けの新しい政策を行っています。2020年、北海道白老町に民族共生象徴空間ウポポイが開かれました。アイヌ語講座・アイヌ文化活動・アイヌ語活動が日本各地で開かれてもいます。 [[ファイル:Keizo Obuchi 19980730.jpg|サムネイル|168x168ピクセル|小渕恵三]] 1998年7月の参議院議員選挙で自由民主党議席数は大きく減らし、この結果から橋本龍太郎も内閣総理大臣を辞めました。これを受けて、<span style="color:#f29100">'''小渕恵三'''</span>が内閣総理大臣に選ばれました。小渕恵三内閣はバブル崩壊に消費税増税・金融不安・アジア通貨危機なども重なり、橋本龍太郎の財政再建路線を修正しました。小渕恵三内閣は土木工事・公共施設建築工事の大型予算を組んでその潤いから複合不況まで立て直そうとしました。その結果、政府は赤字国債発行額を再び大幅に増やしました。 1999年、小渕恵三内閣は国会法案の賛成を増やしたいから自由党〔1月〕・公明党〔10月〕も自由民主党と一緒に内閣を支えていました[自自公連立政権の開始]。その結果、自由民主党・自由党・公明党は衆議院・参議院の両方で過半数の議席を持つようになりました。小渕恵三内閣から自由民主党と公明党は2025年10月まで一緒に内閣を支えました。 1999年、小渕恵三内閣は'''新ガイドライン関連法'''をまとめました。新ガイドライン関連法の<span style="color:#f29100">'''周辺事態安全確保法'''</span>は日本周辺国家の暴走で自国の平和と安全まで守れなくなったら、自衛隊を出してアメリカ軍へ必要物資を送りました。 [[ファイル:G8 2000 group photo (kremlin.ru).jpg|サムネイル|223x223px|第26回主要国首脳会議]] 1999年、小渕恵三内閣は日の丸と君が代を国旗・国歌法へ初めて記しました。また、国民は情報公開法に従って官公庁へ資料を見せてほしいとお願いしやすくなりました。国会は憲法調査会で憲法を変えるかどうか話し合いました。小渕恵三内閣は2000年に九州・沖縄で第26回主要国首脳会議[サミット]開くと決めました。 この時期は野党も大きく変わりました。社会民主党の支持者は少しずつ減りました。新進党は議員の大量離脱から1997年末になくなりました。旧新進党の議員は違う政党[自由党・新党平和・民主党]に入りました。1996年、鳩山由紀夫・菅直人が'''民主党'''を結成しました。その後、旧新進党議員も民主党へ入りました。さらに、新党平和・黎明クラブを公明党に戻しました。 こうして、自由民主党と日本社会党が長く争う55年体制も終わりました。55年体制が終わっても、自由民主党と民主党の保守二大政党制へ繋がりませんでした。自由民主党が再び政権へ戻っても、自由党・公明党と一緒に内閣を支えていました。 == 資料出所 == * 平雅行、横田冬彦ほか編著『日本史探究』実教出版株式会社 2023年 * 佐藤信、五味文彦ほか編著『詳説日本史探究』株式会社山川出版社 2023年 * 高埜利彦、高村直助ほか編著『日本史A 改訂版』株式会社山川出版社 2016年 * 渡邊晃宏ほか編著『日本史探究』東京書籍株式会社 2023年 * 伊藤純郎ほか編著『高等学校日本史探究』株式会社清水書院 2023年 * 大橋幸泰ほか編著『高等学校日本史探究』株式会社第一学習社 2023年 * 山中裕典著'''『'''改訂版 大学入学共通テスト 歴史総合、日本史探究の点数が面白いほどとれる本'''』'''株式会社KADOKAWA 2024年 * 佐藤信、五味文彦ほか編著『詳説日本史研究』株式会社山川出版社 2017年 * 河合敦著『世界一わかりやすい河合敦の日本史B[近・現代]の特別講座』株式会社KADOKAWA 2014年(絶版本) * 外園豊基編集代表『最新日本史図表』株式会社第一学習社 2026年 * 東京法令出版編著『歴史資料館 日本史のライブラリー』東京法令出版株式会社 2026年 [[カテゴリ:高等学校日本史探究|あらたなせいきのにほんへ]] [[カテゴリ:20世紀]] ig8dy9rqy9vj90n61kd5x2nxpydq504 305002 305001 2026-10-22T03:59:23Z Kwawe 68789 /* 政界再編と55年体制の終結 */ 細川護熙内閣は関税及び貿易に関する一般協定(General Agreement on Tariffs and Trade:GATT)のウルグアイ・ラウンドの内容を認めて、日本も外国産のコメを一部輸入するようになった。 305002 wikitext text/x-wiki [[小学校・中学校・高等学校の学習]]>[[高等学校の学習]]>[[高等学校地理歴史]]>[[高等学校日本史探究]]>新たな世紀の日本へⅡ  引き続き「新たな世紀の日本へ」の内容を解説します。第2回目では、政界再編から小渕恵三内閣までの国内政治を見ていきます。 == 政界再編と55年体制の終結 == 1975年、国鉄職員などは大きなストライキ「スト権スト」を行って政府側に争議権の回復を求めても失敗しました。その後、官公庁労働組合はストライキなどをあまり行わなくなりました。民間大企業の労働組合も春闘で大幅な賃上げを求めにくくなりました。 その後、民間労働組合は1つにまとまり始めました。1987年、全日本民間労働組合連合会[民間連合]をつくりました。1989年の日本労働組合総評議会[総評]解散後、元日本労働組合総評議会[総評]は全日本民間労働組合連合会[民間連合]に合流しました。その後、全日本民間労働組合連合会[民間連合]と同盟などの労働組合は1つにまとまって<span style="color:#f29100">'''日本労働組合総連合会[連合]'''</span>をつくりました。約800万人が日本労働組合総連合会[連合]に入りました。 一方、日本労働組合総連合会[連合]の敵側は全国労働組合総連合[全労連]をつくりました。約140万人が全国労働組合総連合[全労連]に入りました。さらに日本労働組合総連合会[連合]と全国労働組合総連合[全労連]の敵側は全国労働組合連絡協議会[全労協]をつくりました。こうして、野党支持側の労働組合は日本労働組合総連合会[連合]・全国労働組合総連合[全労連]・全国労働組合連絡協議会[全労協]に分かれました。<gallery mode="packed" heights="200"> ファイル:Sohyo Kaikan (headquarters of the Japanese Trade Union Confederation).jpg|日本労働組合総連合会 ファイル:Zenrouren Kaikan (1).jpg|全国労働組合総連合 ファイル:Kiichi Miyazawa 19911105.jpg|宮澤喜一 </gallery>政治家と企業の金銭やり取りが冷戦後の日本で問題になりました。リクルート事件〔竹下内閣〕・佐川急便事件〔宮澤喜一内閣〕・ゼネコン汚職事件〔宮澤喜一内閣〕が起きました。自由民主党副総裁の金丸信も1993年に逮捕されました。国民は政治家・官僚・企業の金銭やり取りへ文句を言い、自由民主党の不支持者まで増えました。 国民は相次ぐ政治家と企業の金銭やり取りから政治の仕組みを変えるように求めました。そこで、衆議院議員選挙を中選挙区制の区割りをやめて小選挙区制の区割りに切り替えられました。小選挙区制は1つの選挙区から1人だけを選ぶため、各政党の政策まではっきり分かるようになります。二大政党が小選挙区制の区割りで争うと選挙結果次第で政権交代に結び付きやすくなります。しかし、小さな政党は議席を取りにくくなります。 1993(平成5)年6月、野党側は宮澤喜一内閣に対して内閣不信任案を衆議院へ出しました。自由民主党内部の改革派も内閣不信任案に賛成したため、衆議院は内閣不信任案を可決しました。<span style="color:#f29100">'''羽田孜'''</span>・小沢一郎などは自由民主党を離れて、新生党をつくりました。元自由民主党議員も新党さきがけをつくりました。 宮澤喜一首相は衆議院を解散しました。1993年7月の衆議院議員総選挙結果で自由民主党は過半数を下回り、日本社会党も当選議員を大きく減らしました。一方、新生党・日本新党・新党さきがけなどは、当選議員を大きく増やしました。なお日本新党の政党代表は元熊本県知事の<span style="color:#f29100">'''細川護熙'''</span>でした。当衆議院議員総選挙で日本新党議員57人を立候補させて35人も当選しました。 総選挙後、日本共産党以外の非自民8党派は一緒に政権をつくりました。1993年8月、日本新党の細川護熙が内閣総理大臣となりました。日本社会党・新生党・公明党・日本新党・民社党・新党さきがけ・社会民主連合の7党と民主改革連合[参議院の会派]が細川護熙内閣を支えました。 55年体制からここまで保守の自由民主党と革新の日本社会党が政治の中心になっていました。その自由民主党が初めて野党になり、自由民主党単独政権も38年目で幕を閉じました(55年体制の崩壊)。 細川護熙内閣は政治改革を進め、政治改革関連四法を1994年に決めました。公職選挙法も変わりました。衆議院議員総選挙は従来の中選挙区制をやめて、小選挙区制と比例代表制の選挙区割り[小選挙区比例代表並立制]から当選議員まで決まりました。 細川護熙内閣は関税及び貿易に関する一般協定(General Agreement on Tariffs and Trade:GATT)のウルグアイ・ラウンドの内容を認めて、日本も外国産のコメを一部輸入するようになりました。一方、味方側の各政党は意見の食い違いから争いました。さらに細川護熙も東京佐川急便事件に関わっており、この政治資金疑惑から1994年に内閣総理大臣をやめました。 1994年4月、新生党の羽田孜が内閣総理大臣になりました。しかし、日本社会党は新生党と一緒に内閣を支えなくなりました。羽田孜は国会議員の賛成を集められなくなり、約2か月で首相を辞めました。1994年6月、自由民主党は元野党側の日本社会党・新党さきがけと一緒に内閣を支えました[自社さ連立政権]。日本社会党の<span style="color:#f29100">'''村山富市'''</span>が内閣総理大臣になり、自由民主党も政権へ戻りました。一方、非自民連立政権側の新生党・日本新党・公明党・民社党などは1つにまとまって新進党をつくりました。 従来の日本社会党基本政策を村山富市内閣で大きく変えました。日本社会党は自衛隊を合憲としつつ日米安全保障条約と消費税までも受け入れました。こうして自由民主党と日本社会党の政策は近くなり、日本社会党の不支持者を増やしました。1995年、アジア・太平洋戦争終戦から50年を迎えました。国会は戦後50年目の反省文内容をまとめました。8月15日、村山富市内閣総理大臣はアジア・太平洋戦争の反省とお詫びを<span style="color:#f29100">'''「戦後50周年の終戦記念日にあたって」'''</span>で伝えました(<span style="color:#f29100">'''村山談話'''</span>)。 現地の国民は日本側の植民地支配と侵略から被害を受けており、村山談話でその反省とお詫びを該当国首脳へ伝えました。その後の内閣も村山談話を受け継ぎました。政府は戦後50年目に合わせて、日本とアジア諸国の近現代史資料を国民へ広く公開しました。さらにインターネットでも歴史資料を公開したいから、アジア歴史資料センター開く準備をしました。2001年、アジア歴史資料センターを開きました。政党の結成・解党・合流まで活発になり、各政党のどこにも入らない無党派層も増えました。以降は単独政党のみで内閣を支えきれなくなり、複数政党と一緒に内閣を支えました。 == バブルの崩壊 == プラザ合意後、大量のお金が土地購入・株式購入のために使われ、土地の値段・株価[資産価格]が次第に上がりました(資産インフレ)。1989(平成元)年、日本銀行は銀行へお金をあまり貸さなくなり、政府も土地の値段を上げすぎないようにしました(金融引き締め政策)。1990年代に入ってから、土地の値段・株価は下がり始めました。日経平均株価は、1989年12月末に3万8915円まで上がりました。しかし、その後は株式売却が増えて株価もいきなり下がり、1992年8月に1万4309円まで下がりました。土地の値段も1991年頃から下がり始め、1992年以後は日本各地で下がりました。2000年代半ばになると、大阪の一部商業地は一番高い時期の値段から約10分の1まで下がりました。こうして土地や株式の大幅な値上がりは終わり、1980年代後半のバブル経済は終わりました。 ★日本の実質経済成長率の推移 [[ファイル:GDP_growth_rate_in_Japan.svg|代替文=日本の実質経済成長率の推移|フレームなし|924x924px]] 日本の景気は1991年から悪くなりました('''平成不況''')。実質経済成長率は1992年に1.3%、1993年に1%未満まで下がりました。1992年を3か月ずつに分けて見ると、4~6月は-3.3%となり、前の3か月より国内経済が小さくなりました。7~9月と10~12月もそれぞれ-0.1%となりました。第1次石油危機後に2期連続の経済縮小時期はあっても、3期連続の経済縮小は戦後初めてでした。僅かな景気回復時期も平成不況の途中にありました。しかしすぐに経済縮小となり、平成不況が長年続きました。 バブル経済当時の国民は金融機関からお金を借りて、株価と地価をより高い価格で買いました。金融機関は不動産会社にもお金を貸しました。バブル崩壊後、株価と地価が大きく下がりました。国民は株と土地を全て売っても借金を返せなくなりました。国民の借金も金融機関へ返ってこなくなりました(不良債権)。金融機関は株と土地を債権として持っており、不良債権から金融機関も大赤字になりました。 金融機関は不良債権処理にずっと追われて、さらに苦しくなりました。その結果、金融機関は不良債権の心配からお金を貸さなくなりました。企業は金融機関からお金を借りにくくなりました。国民も「この金融機関は大丈夫か」と不安を感じるようになり、金融機関はさらに苦しくなりました。その後、企業は新しい商品を作れなくなり、新しい工場を建てられなくなり、新しい機械も買えなくなりました。地価の下落・株価の下落・不良債権の増加・金融機関の経営悪化・金融機関の融資停止が全て重なって景気も次第に悪くなりました('''複合不況''')。 当時の政府と日本銀行はこれまでの不況と同じように、財政支出の拡大・低金利政策から数年で景気も回復するかもと思っていました。この誤対策は複合不況に一切効果ありません。住宅金融専門会社は1995年頃から相次いでつぶれました。1997年、北海道拓殖銀行と山一証券がつぶれました。1998年、日本債券信用銀行と日本長期信用銀行がつぶれました。このように大手金融機関がつぶれると、国民も他の金融機関も危ないのではないかと不安になりました。政府は金融システムまで止まらないように、倒産寸前の大手金融機関などに大量の公的資金を入れました。<gallery mode="nolines" widths="200" heights="200"> ファイル:The Hokkaido Takushoku Bank.JPG|旧北海道拓殖銀行本店 ファイル:Kayabacho Tower, at Shinkawa, Chuo, Tokyo (2019-01-02) 02.jpg|旧山一證券本社 ファイル:日債銀本店.jpg|旧日本債券信用銀行本店 ファイル:Shinsei Bank (head office 1).jpg|旧日本長期信用銀行本店 </gallery>1998年、小渕恵三が内閣総理大臣になりました。小渕恵三内閣も大型予算から景気を回復させしようとしました。小渕内閣が公共投資を増やして国民のお金を回そうとしても複合不況に一切効果ありません。こうして、公債発行残高は増えました。物価は1990年代後半からずっと下がり続けました(デフレスパイラル)。 [[ファイル:Unemployment Rate of Japan 1953-2009.jpg|サムネイル|395x395ピクセル|日本の失業率]] 企業は赤字なので、生き残るために経営の効率化[事業整理・人員削減・雇用調整・海外進出など]を進めました(リストラクチャリング)。中小企業の倒産も増えて、中高年労働者の解雇・中高年労働者の早期退職・新卒採用の削減から企業の人件費を大幅に減らしました。バブル景気の時期は労働者不足から「売り手市場」でも、バブル崩壊後から「買い手市場」へ変わりました。1990年代半ばから2000年代前半、企業は新卒採用を大幅に減らしました(就職氷河期)。1998年の完全失業率は4%を超え、2001年の完全失業率で5%になりました。 失業者が増えると労働者も「自分も仕事を失うかもしれない」と不安になり、個人消費を減らしました。消費者は同じような商品なら出来るだけ安い商品を選ぶようになり、ブランド品・高級品を買ってくれなくなりました。商品が売れなくなると、会社も少量生産・既存工場・既存機械だけで行うようになりました。その結果、会社の利益がさらに減って、人員削減・採用縮小もさらに進みました。株価と地価の下落から不良債権が増えて、金融機関の経営も苦しくなり、企業へお金を貸せなくなりました。 円高も国際分業も進みました。1994年、1ドルが100円を割り込みました。輸出主導・量産指向型産業[自動車・電子・家電・事務機器など]は海外で売れにくくなりました。また、バブル崩壊後の不景気から国内の購入者も減りました。生産費用を少しでも減らすため、労働者の給料が日本より低いアジア諸国[中国など]へ工場を移すようになりました[国内工場の閉鎖・国内工場の海外移転]。その結果、地元企業・周辺店舗の売り上げを減らし、失業者を増やしました(地域'''産業の空洞化''')。 繊維産業の事業所数は減り続けました。2015年の繊維産業の事業所数は1991年と比べて約4分の1になりました。国内衣料品市場のうち海外衣料品購入割合は1991年で52%になり、2017年で97%まで上がりました。多数の多国籍企業が1990年代後半に日本企業を合併したり、買収したりしました。企業が日本型雇用を取り入れていても競争力強化・経営効率化から人員削減・能力給の導入を進めました。その結果、働き方の不安定さが広がりました。 日本は技術面でも負けています。1980年代、日本企業はエレクトロニクス[電子機器]・新素材・バイオテクノロジーなどの技術でアメリカに追いつこうとしていました。1990年代から情報通信技術の活用や生産性の伸びでアメリカ合衆国に負けました。商品は日本国内で売れにくくなり、業務内容も変わっていきました。そのため、日本企業は海外企業に負けないような対策を取りました。 バブル崩壊後、銀行制度・企業制度も変えられました。「日本版金融ビッグバン」を1996年に打ち出して、銀行・証券会社などにも規制を緩めて金融の自由化・国際化を進めました。1997年の独占禁止法改正から禁止の持株会社を再度認めました。企業は持株会社からグループ内の会社をまとめ直したり、経営の進め方を変えたりしやすくなり、その後の企業再編・金融再編にもつながりました。 以前の大規模小売店舗法は店舗面積500平方メートル以上の大規模小売店舗出店条件として出店規模・営業時間・営業日数などを定めていました。しかし、大規模小売店舗は中小小売業者の近くにも自由に出店しており、中小小売業者のお客様まで消えました。そのため、政府は大規模小売店舗の立地場所を1998年から制限しました(大規模小売店舗立地法)。中小小売業者から流れすぎないように守りながら、大規模小売店舗も中小小売業者も商売を続けられるようにしました。2000年、大規模小売店舗法を廃止しました。[[ファイル:Asian Financial Crisis EN-2009-05-05.png|サムネイル|273x273px|アジア通貨危機の影響国]]企業再編・合併は政府の規制緩和から広がり、海外企業と国内企業の協力・合併も増えました。その流れから六大企業集団もまとまりました。金融業界でも銀行などが倒産したり、別の銀行と合併したりしました。その結果、日本の金融業界は三井住友グループ[旧三井系と旧住友系]・三菱UFJ[旧三菱系と三和系]・みずほグループ[旧第一勧銀系と旧富士系]の三大金融グループへまとまりました。 国内長期不況で苦しむ中、アジア諸国の経済は大成長しました。しかし短期海外資金の依存・金融機関の過剰な借入れ・企業の過剰な借入れ・金融制度の弱さ・投機資金の流入などから海外投資家が危機感を示して一斉に海外資金を回収・売却・国外移動を行いました。1997年、タイの通貨バーツの価値が大きく下がりました。海外投資家は東アジア・東南アジアから次々と海外資金を回収・売却・国外移動を行いました(アジア通貨危機)。その結果、東アジア・東南アジア諸国の金融と経済は大きな爪痕を残しました。債務問題は韓国などで大きくなり、国際通貨基金(International Monetary Fund:IMF)の支援を受けました。アジア通貨危機は日本経済と日本の金融機関にも大きな爪痕を残して、不良債権問題をさらに悪化させました。 日本政府はアジア通貨危機の発生から地域的な金融協力制度[アジア通貨基金構想]を出しました。しかし、アメリカ合衆国の反対から日本政府は二国間金融支援と新宮沢構想などに切り替えて、東アジア諸国を金銭面で助けました。 バブル経済崩壊後の平成不況はずっと続きました。景気は2002年初期に少しだけ上向きました。しかし、政府が公共事業中心の従来型景気対策を抑えながら不良債権処理と規制改革を進めました。その結果、企業は引き続き大規模なリストラと雇用調整を行いました。当初、バブル崩壊後の長期停滞は「失われた10年」とよばれました。その後も日本経済の停滞が強く、「失われた20年」「失われた30年」とよばれました。 == 行政改革と日米安保の変化 == 1990年代後半、大規模災害の対策・重大事件への対策・行政改革・財政改革・金融改革・冷戦後の日米安全保障体制見直し・政党の組み直しを行いました。1995年1月17日、阪神・淡路地域でマグニチュード7.3の<span style="color:#f29100">'''阪神・淡路大震災[兵庫県南部地震]'''</span>が起こりました。神戸市を中心に6400人以上が亡くなり、建造物・高速道路までも大きく壊れました。当地震で大都市は自然災害に弱く、都市政策・耐震化基準・防災体制の見直しをしました。また、国民は被災地に入って、避難民[被災者]の生活を支えたり、被災地の後片付けを手伝ったりしました。この活動からボランティア活動が全国に広がりました。 1995年3月20日、オウム真理教集団は東京都の地下鉄でサリンを撒いて、多数の死傷者を出しました(<span style="color:#f29100">'''地下鉄サリン事件'''</span>)。このように阪神・淡路大震災と地下鉄サリン事件・少年犯罪の殺人事件・児童虐待などが何度も報道機関で取り上げられ、旧価値観的な安全神話も崩れて国民の意識も変わりました。<gallery mode="packed" widths="200" heights="200"> ファイル:Hanshin Expressway Nada b059.jpg|阪神淡路大震災被災後 ファイル:【地下鉄サリン事件】除染を行う自衛隊員と警察官.jpg|地下鉄サリン事件 ファイル:Ryutaro Hashimoto 19960111.jpg|橋本龍太郎 ファイル:Ryuhei Kawada 20240307.jpg|川田龍平 </gallery>1995年9月、自由民主党総裁選挙から<span style="color:#f29100">'''橋本龍太郎'''</span>が選ばれました。1996年1月、村山富市首相退陣後の内閣総理大臣指名選挙で橋本龍太郎が選ばれました。橋本内閣でも自民党・社会民主党・新党さきがけの3党が引き続き協力して、政策を進めました。なお日本社会党は自衛隊・日米安全保障条約の賛成側に回り、1996年に党名を社会民主党へ変えました。 薬害エイズ問題も大きく取り上げられました。橋本龍太郎内閣厚生大臣の菅直人は薬害エイズ被害者[川田龍平など]に謝罪しました。その後、国と製薬会社と被害者が話し合い、和解しました。 1996年、新しい選挙制度で初めて衆議院議員総選挙が行われ、自由民主党の議席を大きく増やしても、過半数を下回りました。社会民主党と新党さきがけは第2次橋本内閣から国務大臣を出さなくなり、閣外協力に変わりました。その結果、自由民主党単独政権に戻りました。 橋本龍太郎内閣は冷戦後の国際変化・国内経済・政府問題を解決するため、行政・財政・金融の各分野を見直しました。行政改革は政府組織を減らしたり、類似の政府組織を1つにまとめたりして、首相などの政策案を出しやすくしました。1998年、中央省庁等改革基本法が導入されて中央省庁等改革関連法から行政改革の方針を決めました。 2001年1月、政府はこの行政改革の方針から中央省庁を1府22省庁から1府12省庁に減らしました。その結果、内閣総理大臣は各省庁へ指示を出して、政府全体の政策を進めやすくしました。2007年、防衛庁を防衛省に上げました。 ★省庁再編 {| class="wikitable" !再編前 !再編後 !再編前 !再編後 |- |内閣官房 |内閣官房 |大蔵省 |財務省 |- | rowspan="2" |総理府 金融再生委員会 経済企画庁 沖縄開発庁 | rowspan="2" |内閣府 |科学技術庁 文部省 |文部科学省 |- |厚生省 労働省 |厚生労働省 |- |国家公安委員会 |国家公安委員会 |農林水産省 |農林水産省 |- |防衛庁 |防衛庁(省) |通商産業省 |経済産業省 |- |総務庁 郵政省 自治省 |総務省 | rowspan="2" |北海道開発庁 国土庁 建設省 運輸省 | rowspan="2" |国土交通省 |- |法務省 |法務省 |- |外務省 |外務省 |環境庁 |環境省 |} 橋本龍太郎内閣は国債の発行額を減らそうとしました。1997年4月、財政構造改革法に従って消費税率を3%から5%に引き上げて公共事業費などを減らしました。国債発行額は1970年代後半から増えても1980年代末で一度減りました。1990年代に入り、公共投資を再拡大させてから大幅な国債発行額増加に向かいました。 しかし、国民は消費税率の引き上げなどから財布の紐もきつくなり、金融機関も生き残れなくなりました。さらにアジア通貨・金融危機も起きて、日本経済は再不況になりました。やがて、銀行同士は金融不安の拡大から合併して1つの銀行になりました。1997年度の実質経済成長率は-0.4%となり、1974年度[第1次石油危機直後]以来のマイナス成長になりました。1998年度の実質経済成長率は-2%まで下がり、平成不況の大きさを改めて物語りました。 [[ファイル:Official Portrait of President William Jefferson Clinton - DPLA - 4697184146b3b6e2d6791b8f3c297476.jpg|サムネイル|221x221ピクセル|ビル・クリントン大統領]] 冷戦後、橋本龍太郎内閣は日米安全保障体制を見直しました。アメリカのビル・クリントン大統領が1996年4月に日本を訪れ、橋本首相と話し合って<span style="color:#f29100">'''日米安全保障共同宣言'''</span>を発表しました。日米安全保障共同宣言から日本とアメリカは日本防衛以外にもアジア太平洋地域の戦争防止・紛争防止まで努めていくようになりました。 自衛隊がアメリカ軍に必要物資を運ぶなどの後方支援についても、日米防衛協力のための指針を見直しました。1997年、日本政府とアメリカ合衆国政府は「新しい日米防衛協力のための指針(新ガイドライン)」を作りました。 日本が外国から直接攻撃されても直接攻撃されていなくても、日本周辺国の戦争などから日本の平和と安全に大きく関わっていたらアメリカ合衆国側も新ガイドラインに従って助け合いました(周辺事態)。ただし日本から何キロ以内というような距離だけだとアメリカ合衆国側は何もしません。 地球温暖化防止京都会議は1997年に開かれ、温室効果ガスの削減目標などを盛り込む京都議定書を採択しました。また、橋本龍太郎内閣は従来のアイヌ民族政策を大きく変えました。 アイヌ民族は1946年2月に北海道アイヌ協会を作り、アイヌ民族の権利を政府に求めました。北海道旧土人保護法からアイヌ民族用の土地[給与地]を貰っても、農地改革で買収されたくありませんでした。しかしアイヌ民族をずっと厳しく人種差別しており、アイヌ民族の一部は北海道から逃げました。その後、北海道アイヌ協会は名前を北海道ウタリ協会に変えました。[[ファイル:UPOPOY 202608.jpg|サムネイル|民族共生象徴空間ウポポイ]]1980年代、世界各地の先住民族が先住民族の権利を政府に求めました。北海道ウタリ協会は政府に北海道旧土人保護法を廃止して新しい法律を作ってほしいと求めました。1997年、国会はアイヌ民族文化をずっと守っていくために'''アイヌ文化振興法'''を作り、北海道旧土人保護法を廃止しました。 その後もアイヌ民族政策は変わりました。2008年、国会はアイヌ民族を日本の先住民族と認めて、内閣へアイヌ民族の権利・生活・文化なども認めてほしいとお願いしました。民族団体の名前も北海道ウタリ協会から北海道アイヌ協会に戻しました。 2019(令和元)年、政府はアイヌ施策推進法で日本の「先住民族」にアイヌ民族を初めて入れました。アイヌ施策推進法から北海道アイヌ協会側も話し合いに参加して、アイヌ民族向けの新しい政策を行っています。2020年、北海道白老町に民族共生象徴空間ウポポイが開かれました。アイヌ語講座・アイヌ文化活動・アイヌ語活動が日本各地で開かれてもいます。 [[ファイル:Keizo Obuchi 19980730.jpg|サムネイル|168x168ピクセル|小渕恵三]] 1998年7月の参議院議員選挙で自由民主党議席数は大きく減らし、この結果から橋本龍太郎も内閣総理大臣を辞めました。これを受けて、<span style="color:#f29100">'''小渕恵三'''</span>が内閣総理大臣に選ばれました。小渕恵三内閣はバブル崩壊に消費税増税・金融不安・アジア通貨危機なども重なり、橋本龍太郎の財政再建路線を修正しました。小渕恵三内閣は土木工事・公共施設建築工事の大型予算を組んでその潤いから複合不況まで立て直そうとしました。その結果、政府は赤字国債発行額を再び大幅に増やしました。 1999年、小渕恵三内閣は国会法案の賛成を増やしたいから自由党〔1月〕・公明党〔10月〕も自由民主党と一緒に内閣を支えていました[自自公連立政権の開始]。その結果、自由民主党・自由党・公明党は衆議院・参議院の両方で過半数の議席を持つようになりました。小渕恵三内閣から自由民主党と公明党は2025年10月まで一緒に内閣を支えました。 1999年、小渕恵三内閣は'''新ガイドライン関連法'''をまとめました。新ガイドライン関連法の<span style="color:#f29100">'''周辺事態安全確保法'''</span>は日本周辺国家の暴走で自国の平和と安全まで守れなくなったら、自衛隊を出してアメリカ軍へ必要物資を送りました。 [[ファイル:G8 2000 group photo (kremlin.ru).jpg|サムネイル|223x223px|第26回主要国首脳会議]] 1999年、小渕恵三内閣は日の丸と君が代を国旗・国歌法へ初めて記しました。また、国民は情報公開法に従って官公庁へ資料を見せてほしいとお願いしやすくなりました。国会は憲法調査会で憲法を変えるかどうか話し合いました。小渕恵三内閣は2000年に九州・沖縄で第26回主要国首脳会議[サミット]開くと決めました。 この時期は野党も大きく変わりました。社会民主党の支持者は少しずつ減りました。新進党は議員の大量離脱から1997年末になくなりました。旧新進党の議員は違う政党[自由党・新党平和・民主党]に入りました。1996年、鳩山由紀夫・菅直人が'''民主党'''を結成しました。その後、旧新進党議員も民主党へ入りました。さらに、新党平和・黎明クラブを公明党に戻しました。 こうして、自由民主党と日本社会党が長く争う55年体制も終わりました。55年体制が終わっても、自由民主党と民主党の保守二大政党制へ繋がりませんでした。自由民主党が再び政権へ戻っても、自由党・公明党と一緒に内閣を支えていました。 == 資料出所 == * 平雅行、横田冬彦ほか編著『日本史探究』実教出版株式会社 2023年 * 佐藤信、五味文彦ほか編著『詳説日本史探究』株式会社山川出版社 2023年 * 高埜利彦、高村直助ほか編著『日本史A 改訂版』株式会社山川出版社 2016年 * 渡邊晃宏ほか編著『日本史探究』東京書籍株式会社 2023年 * 伊藤純郎ほか編著『高等学校日本史探究』株式会社清水書院 2023年 * 大橋幸泰ほか編著『高等学校日本史探究』株式会社第一学習社 2023年 * 山中裕典著'''『'''改訂版 大学入学共通テスト 歴史総合、日本史探究の点数が面白いほどとれる本'''』'''株式会社KADOKAWA 2024年 * 佐藤信、五味文彦ほか編著『詳説日本史研究』株式会社山川出版社 2017年 * 河合敦著『世界一わかりやすい河合敦の日本史B[近・現代]の特別講座』株式会社KADOKAWA 2014年(絶版本) * 外園豊基編集代表『最新日本史図表』株式会社第一学習社 2026年 * 東京法令出版編著『歴史資料館 日本史のライブラリー』東京法令出版株式会社 2026年 [[カテゴリ:高等学校日本史探究|あらたなせいきのにほんへ]] [[カテゴリ:20世紀]] ia0b462sg5qgcpqevw8g4kn0ll7cmlb 305003 305002 2026-10-22T04:07:45Z Kwawe 68789 /* 政界再編と55年体制の終結 */ 総理大臣の写真を3枚追加した。 305003 wikitext text/x-wiki [[小学校・中学校・高等学校の学習]]>[[高等学校の学習]]>[[高等学校地理歴史]]>[[高等学校日本史探究]]>新たな世紀の日本へⅡ  引き続き「新たな世紀の日本へ」の内容を解説します。第2回目では、政界再編から小渕恵三内閣までの国内政治を見ていきます。 == 政界再編と55年体制の終結 == 1975年、国鉄職員などは大きなストライキ「スト権スト」を行って政府側に争議権の回復を求めても失敗しました。その後、官公庁労働組合はストライキなどをあまり行わなくなりました。民間大企業の労働組合も春闘で大幅な賃上げを求めにくくなりました。 その後、民間労働組合は1つにまとまり始めました。1987年、全日本民間労働組合連合会[民間連合]をつくりました。1989年の日本労働組合総評議会[総評]解散後、元日本労働組合総評議会[総評]は全日本民間労働組合連合会[民間連合]に合流しました。その後、全日本民間労働組合連合会[民間連合]と同盟などの労働組合は1つにまとまって<span style="color:#f29100">'''日本労働組合総連合会[連合]'''</span>をつくりました。約800万人が日本労働組合総連合会[連合]に入りました。 一方、日本労働組合総連合会[連合]の敵側は全国労働組合総連合[全労連]をつくりました。約140万人が全国労働組合総連合[全労連]に入りました。さらに日本労働組合総連合会[連合]と全国労働組合総連合[全労連]の敵側は全国労働組合連絡協議会[全労協]をつくりました。こうして、野党支持側の労働組合は日本労働組合総連合会[連合]・全国労働組合総連合[全労連]・全国労働組合連絡協議会[全労協]に分かれました。<gallery mode="packed" heights="200"> ファイル:Sohyo Kaikan (headquarters of the Japanese Trade Union Confederation).jpg|日本労働組合総連合会 ファイル:Zenrouren Kaikan (1).jpg|全国労働組合総連合 ファイル:Kiichi Miyazawa 19911105.jpg|宮澤喜一 </gallery> [[ファイル:Morihiro Hosokawa 19930809.jpg|サムネイル|195x195ピクセル|細川護熙]] 政治家と企業の金銭やり取りが冷戦後の日本で問題になりました。リクルート事件〔竹下内閣〕・佐川急便事件〔宮澤喜一内閣〕・ゼネコン汚職事件〔宮澤喜一内閣〕が起きました。自由民主党副総裁の金丸信も1993年に逮捕されました。国民は政治家・官僚・企業の金銭やり取りへ文句を言い、自由民主党の不支持者まで増えました。 国民は相次ぐ政治家と企業の金銭やり取りから政治の仕組みを変えるように求めました。そこで、衆議院議員選挙を中選挙区制の区割りをやめて小選挙区制の区割りに切り替えられました。小選挙区制は1つの選挙区から1人だけを選ぶため、各政党の政策まではっきり分かるようになります。二大政党が小選挙区制の区割りで争うと選挙結果次第で政権交代に結び付きやすくなります。しかし、小さな政党は議席を取りにくくなります。 1993(平成5)年6月、野党側は宮澤喜一内閣に対して内閣不信任案を衆議院へ出しました。自由民主党内部の改革派も内閣不信任案に賛成したため、衆議院は内閣不信任案を可決しました。<span style="color:#f29100">'''羽田孜'''</span>・小沢一郎などは自由民主党を離れて、新生党をつくりました。元自由民主党議員も新党さきがけをつくりました。 [[ファイル:Official portrait of Tsutomu Hata 1994.jpg|サムネイル|194x194ピクセル|羽田孜]] 宮澤喜一首相は衆議院を解散しました。1993年7月の衆議院議員総選挙結果で自由民主党は過半数を下回り、日本社会党も当選議員を大きく減らしました。一方、新生党・日本新党・新党さきがけなどは、当選議員を大きく増やしました。なお日本新党の政党代表は元熊本県知事の<span style="color:#f29100">'''細川護熙'''</span>でした。当衆議院議員総選挙で日本新党議員57人を立候補させて35人も当選しました。 総選挙後、日本共産党以外の非自民8党派は一緒に政権をつくりました。1993年8月、日本新党の細川護熙が内閣総理大臣となりました。日本社会党・新生党・公明党・日本新党・民社党・新党さきがけ・社会民主連合の7党と民主改革連合[参議院の会派]が細川護熙内閣を支えました。 55年体制からここまで保守の自由民主党と革新の日本社会党が政治の中心になっていました。その自由民主党が初めて野党になり、自由民主党単独政権も38年目で幕を閉じました(55年体制の崩壊)。 細川護熙内閣は政治改革を進め、政治改革関連四法を1994年に決めました。公職選挙法も変わりました。衆議院議員総選挙は従来の中選挙区制をやめて、小選挙区制と比例代表制の選挙区割り[小選挙区比例代表並立制]から当選議員まで決まりました。 [[ファイル:Tomiichi Murayama 19940630.jpg|サムネイル|189x189ピクセル|村山富市]] 細川護熙内閣は関税及び貿易に関する一般協定(General Agreement on Tariffs and Trade:GATT)のウルグアイ・ラウンドの内容を認めて、日本も外国産のコメを一部輸入するようになりました。一方、味方側の各政党は意見の食い違いから争いました。さらに細川護熙も東京佐川急便事件に関わっており、この政治資金疑惑から1994年に内閣総理大臣をやめました。 1994年4月、新生党の羽田孜が内閣総理大臣になりました。しかし、日本社会党は新生党と一緒に内閣を支えなくなりました。羽田孜は国会議員の賛成を集められなくなり、約2か月で首相を辞めました。1994年6月、自由民主党は元野党側の日本社会党・新党さきがけと一緒に内閣を支えました[自社さ連立政権]。日本社会党の<span style="color:#f29100">'''村山富市'''</span>が内閣総理大臣になり、自由民主党も政権へ戻りました。一方、非自民連立政権側の新生党・日本新党・公明党・民社党などは1つにまとまって新進党をつくりました。 従来の日本社会党基本政策を村山富市内閣で大きく変えました。日本社会党は自衛隊を合憲としつつ日米安全保障条約と消費税までも受け入れました。こうして自由民主党と日本社会党の政策は近くなり、日本社会党の不支持者を増やしました。1995年、アジア・太平洋戦争終戦から50年を迎えました。国会は戦後50年目の反省文内容をまとめました。8月15日、村山富市内閣総理大臣はアジア・太平洋戦争の反省とお詫びを<span style="color:#f29100">'''「戦後50周年の終戦記念日にあたって」'''</span>で伝えました(<span style="color:#f29100">'''村山談話'''</span>)。 現地の国民は日本側の植民地支配と侵略から被害を受けており、村山談話でその反省とお詫びを該当国首脳へ伝えました。その後の内閣も村山談話を受け継ぎました。政府は戦後50年目に合わせて、日本とアジア諸国の近現代史資料を国民へ広く公開しました。さらにインターネットでも歴史資料を公開したいから、アジア歴史資料センター開く準備をしました。2001年、アジア歴史資料センターを開きました。政党の結成・解党・合流まで活発になり、各政党のどこにも入らない無党派層も増えました。以降は単独政党のみで内閣を支えきれなくなり、複数政党と一緒に内閣を支えました。 == バブルの崩壊 == プラザ合意後、大量のお金が土地購入・株式購入のために使われ、土地の値段・株価[資産価格]が次第に上がりました(資産インフレ)。1989(平成元)年、日本銀行は銀行へお金をあまり貸さなくなり、政府も土地の値段を上げすぎないようにしました(金融引き締め政策)。1990年代に入ってから、土地の値段・株価は下がり始めました。日経平均株価は、1989年12月末に3万8915円まで上がりました。しかし、その後は株式売却が増えて株価もいきなり下がり、1992年8月に1万4309円まで下がりました。土地の値段も1991年頃から下がり始め、1992年以後は日本各地で下がりました。2000年代半ばになると、大阪の一部商業地は一番高い時期の値段から約10分の1まで下がりました。こうして土地や株式の大幅な値上がりは終わり、1980年代後半のバブル経済は終わりました。 ★日本の実質経済成長率の推移 [[ファイル:GDP_growth_rate_in_Japan.svg|代替文=日本の実質経済成長率の推移|フレームなし|924x924px]] 日本の景気は1991年から悪くなりました('''平成不況''')。実質経済成長率は1992年に1.3%、1993年に1%未満まで下がりました。1992年を3か月ずつに分けて見ると、4~6月は-3.3%となり、前の3か月より国内経済が小さくなりました。7~9月と10~12月もそれぞれ-0.1%となりました。第1次石油危機後に2期連続の経済縮小時期はあっても、3期連続の経済縮小は戦後初めてでした。僅かな景気回復時期も平成不況の途中にありました。しかしすぐに経済縮小となり、平成不況が長年続きました。 バブル経済当時の国民は金融機関からお金を借りて、株価と地価をより高い価格で買いました。金融機関は不動産会社にもお金を貸しました。バブル崩壊後、株価と地価が大きく下がりました。国民は株と土地を全て売っても借金を返せなくなりました。国民の借金も金融機関へ返ってこなくなりました(不良債権)。金融機関は株と土地を債権として持っており、不良債権から金融機関も大赤字になりました。 金融機関は不良債権処理にずっと追われて、さらに苦しくなりました。その結果、金融機関は不良債権の心配からお金を貸さなくなりました。企業は金融機関からお金を借りにくくなりました。国民も「この金融機関は大丈夫か」と不安を感じるようになり、金融機関はさらに苦しくなりました。その後、企業は新しい商品を作れなくなり、新しい工場を建てられなくなり、新しい機械も買えなくなりました。地価の下落・株価の下落・不良債権の増加・金融機関の経営悪化・金融機関の融資停止が全て重なって景気も次第に悪くなりました('''複合不況''')。 当時の政府と日本銀行はこれまでの不況と同じように、財政支出の拡大・低金利政策から数年で景気も回復するかもと思っていました。この誤対策は複合不況に一切効果ありません。住宅金融専門会社は1995年頃から相次いでつぶれました。1997年、北海道拓殖銀行と山一証券がつぶれました。1998年、日本債券信用銀行と日本長期信用銀行がつぶれました。このように大手金融機関がつぶれると、国民も他の金融機関も危ないのではないかと不安になりました。政府は金融システムまで止まらないように、倒産寸前の大手金融機関などに大量の公的資金を入れました。<gallery mode="nolines" widths="200" heights="200"> ファイル:The Hokkaido Takushoku Bank.JPG|旧北海道拓殖銀行本店 ファイル:Kayabacho Tower, at Shinkawa, Chuo, Tokyo (2019-01-02) 02.jpg|旧山一證券本社 ファイル:日債銀本店.jpg|旧日本債券信用銀行本店 ファイル:Shinsei Bank (head office 1).jpg|旧日本長期信用銀行本店 </gallery>1998年、小渕恵三が内閣総理大臣になりました。小渕恵三内閣も大型予算から景気を回復させしようとしました。小渕内閣が公共投資を増やして国民のお金を回そうとしても複合不況に一切効果ありません。こうして、公債発行残高は増えました。物価は1990年代後半からずっと下がり続けました(デフレスパイラル)。 [[ファイル:Unemployment Rate of Japan 1953-2009.jpg|サムネイル|395x395ピクセル|日本の失業率]] 企業は赤字なので、生き残るために経営の効率化[事業整理・人員削減・雇用調整・海外進出など]を進めました(リストラクチャリング)。中小企業の倒産も増えて、中高年労働者の解雇・中高年労働者の早期退職・新卒採用の削減から企業の人件費を大幅に減らしました。バブル景気の時期は労働者不足から「売り手市場」でも、バブル崩壊後から「買い手市場」へ変わりました。1990年代半ばから2000年代前半、企業は新卒採用を大幅に減らしました(就職氷河期)。1998年の完全失業率は4%を超え、2001年の完全失業率で5%になりました。 失業者が増えると労働者も「自分も仕事を失うかもしれない」と不安になり、個人消費を減らしました。消費者は同じような商品なら出来るだけ安い商品を選ぶようになり、ブランド品・高級品を買ってくれなくなりました。商品が売れなくなると、会社も少量生産・既存工場・既存機械だけで行うようになりました。その結果、会社の利益がさらに減って、人員削減・採用縮小もさらに進みました。株価と地価の下落から不良債権が増えて、金融機関の経営も苦しくなり、企業へお金を貸せなくなりました。 円高も国際分業も進みました。1994年、1ドルが100円を割り込みました。輸出主導・量産指向型産業[自動車・電子・家電・事務機器など]は海外で売れにくくなりました。また、バブル崩壊後の不景気から国内の購入者も減りました。生産費用を少しでも減らすため、労働者の給料が日本より低いアジア諸国[中国など]へ工場を移すようになりました[国内工場の閉鎖・国内工場の海外移転]。その結果、地元企業・周辺店舗の売り上げを減らし、失業者を増やしました(地域'''産業の空洞化''')。 繊維産業の事業所数は減り続けました。2015年の繊維産業の事業所数は1991年と比べて約4分の1になりました。国内衣料品市場のうち海外衣料品購入割合は1991年で52%になり、2017年で97%まで上がりました。多数の多国籍企業が1990年代後半に日本企業を合併したり、買収したりしました。企業が日本型雇用を取り入れていても競争力強化・経営効率化から人員削減・能力給の導入を進めました。その結果、働き方の不安定さが広がりました。 日本は技術面でも負けています。1980年代、日本企業はエレクトロニクス[電子機器]・新素材・バイオテクノロジーなどの技術でアメリカに追いつこうとしていました。1990年代から情報通信技術の活用や生産性の伸びでアメリカ合衆国に負けました。商品は日本国内で売れにくくなり、業務内容も変わっていきました。そのため、日本企業は海外企業に負けないような対策を取りました。 バブル崩壊後、銀行制度・企業制度も変えられました。「日本版金融ビッグバン」を1996年に打ち出して、銀行・証券会社などにも規制を緩めて金融の自由化・国際化を進めました。1997年の独占禁止法改正から禁止の持株会社を再度認めました。企業は持株会社からグループ内の会社をまとめ直したり、経営の進め方を変えたりしやすくなり、その後の企業再編・金融再編にもつながりました。 以前の大規模小売店舗法は店舗面積500平方メートル以上の大規模小売店舗出店条件として出店規模・営業時間・営業日数などを定めていました。しかし、大規模小売店舗は中小小売業者の近くにも自由に出店しており、中小小売業者のお客様まで消えました。そのため、政府は大規模小売店舗の立地場所を1998年から制限しました(大規模小売店舗立地法)。中小小売業者から流れすぎないように守りながら、大規模小売店舗も中小小売業者も商売を続けられるようにしました。2000年、大規模小売店舗法を廃止しました。[[ファイル:Asian Financial Crisis EN-2009-05-05.png|サムネイル|273x273px|アジア通貨危機の影響国]]企業再編・合併は政府の規制緩和から広がり、海外企業と国内企業の協力・合併も増えました。その流れから六大企業集団もまとまりました。金融業界でも銀行などが倒産したり、別の銀行と合併したりしました。その結果、日本の金融業界は三井住友グループ[旧三井系と旧住友系]・三菱UFJ[旧三菱系と三和系]・みずほグループ[旧第一勧銀系と旧富士系]の三大金融グループへまとまりました。 国内長期不況で苦しむ中、アジア諸国の経済は大成長しました。しかし短期海外資金の依存・金融機関の過剰な借入れ・企業の過剰な借入れ・金融制度の弱さ・投機資金の流入などから海外投資家が危機感を示して一斉に海外資金を回収・売却・国外移動を行いました。1997年、タイの通貨バーツの価値が大きく下がりました。海外投資家は東アジア・東南アジアから次々と海外資金を回収・売却・国外移動を行いました(アジア通貨危機)。その結果、東アジア・東南アジア諸国の金融と経済は大きな爪痕を残しました。債務問題は韓国などで大きくなり、国際通貨基金(International Monetary Fund:IMF)の支援を受けました。アジア通貨危機は日本経済と日本の金融機関にも大きな爪痕を残して、不良債権問題をさらに悪化させました。 日本政府はアジア通貨危機の発生から地域的な金融協力制度[アジア通貨基金構想]を出しました。しかし、アメリカ合衆国の反対から日本政府は二国間金融支援と新宮沢構想などに切り替えて、東アジア諸国を金銭面で助けました。 バブル経済崩壊後の平成不況はずっと続きました。景気は2002年初期に少しだけ上向きました。しかし、政府が公共事業中心の従来型景気対策を抑えながら不良債権処理と規制改革を進めました。その結果、企業は引き続き大規模なリストラと雇用調整を行いました。当初、バブル崩壊後の長期停滞は「失われた10年」とよばれました。その後も日本経済の停滞が強く、「失われた20年」「失われた30年」とよばれました。 == 行政改革と日米安保の変化 == 1990年代後半、大規模災害の対策・重大事件への対策・行政改革・財政改革・金融改革・冷戦後の日米安全保障体制見直し・政党の組み直しを行いました。1995年1月17日、阪神・淡路地域でマグニチュード7.3の<span style="color:#f29100">'''阪神・淡路大震災[兵庫県南部地震]'''</span>が起こりました。神戸市を中心に6400人以上が亡くなり、建造物・高速道路までも大きく壊れました。当地震で大都市は自然災害に弱く、都市政策・耐震化基準・防災体制の見直しをしました。また、国民は被災地に入って、避難民[被災者]の生活を支えたり、被災地の後片付けを手伝ったりしました。この活動からボランティア活動が全国に広がりました。 1995年3月20日、オウム真理教集団は東京都の地下鉄でサリンを撒いて、多数の死傷者を出しました(<span style="color:#f29100">'''地下鉄サリン事件'''</span>)。このように阪神・淡路大震災と地下鉄サリン事件・少年犯罪の殺人事件・児童虐待などが何度も報道機関で取り上げられ、旧価値観的な安全神話も崩れて国民の意識も変わりました。<gallery mode="packed" widths="200" heights="200"> ファイル:Hanshin Expressway Nada b059.jpg|阪神淡路大震災被災後 ファイル:【地下鉄サリン事件】除染を行う自衛隊員と警察官.jpg|地下鉄サリン事件 ファイル:Ryutaro Hashimoto 19960111.jpg|橋本龍太郎 ファイル:Ryuhei Kawada 20240307.jpg|川田龍平 </gallery>1995年9月、自由民主党総裁選挙から<span style="color:#f29100">'''橋本龍太郎'''</span>が選ばれました。1996年1月、村山富市首相退陣後の内閣総理大臣指名選挙で橋本龍太郎が選ばれました。橋本内閣でも自民党・社会民主党・新党さきがけの3党が引き続き協力して、政策を進めました。なお日本社会党は自衛隊・日米安全保障条約の賛成側に回り、1996年に党名を社会民主党へ変えました。 薬害エイズ問題も大きく取り上げられました。橋本龍太郎内閣厚生大臣の菅直人は薬害エイズ被害者[川田龍平など]に謝罪しました。その後、国と製薬会社と被害者が話し合い、和解しました。 1996年、新しい選挙制度で初めて衆議院議員総選挙が行われ、自由民主党の議席を大きく増やしても、過半数を下回りました。社会民主党と新党さきがけは第2次橋本内閣から国務大臣を出さなくなり、閣外協力に変わりました。その結果、自由民主党単独政権に戻りました。 橋本龍太郎内閣は冷戦後の国際変化・国内経済・政府問題を解決するため、行政・財政・金融の各分野を見直しました。行政改革は政府組織を減らしたり、類似の政府組織を1つにまとめたりして、首相などの政策案を出しやすくしました。1998年、中央省庁等改革基本法が導入されて中央省庁等改革関連法から行政改革の方針を決めました。 2001年1月、政府はこの行政改革の方針から中央省庁を1府22省庁から1府12省庁に減らしました。その結果、内閣総理大臣は各省庁へ指示を出して、政府全体の政策を進めやすくしました。2007年、防衛庁を防衛省に上げました。 ★省庁再編 {| class="wikitable" !再編前 !再編後 !再編前 !再編後 |- |内閣官房 |内閣官房 |大蔵省 |財務省 |- | rowspan="2" |総理府 金融再生委員会 経済企画庁 沖縄開発庁 | rowspan="2" |内閣府 |科学技術庁 文部省 |文部科学省 |- |厚生省 労働省 |厚生労働省 |- |国家公安委員会 |国家公安委員会 |農林水産省 |農林水産省 |- |防衛庁 |防衛庁(省) |通商産業省 |経済産業省 |- |総務庁 郵政省 自治省 |総務省 | rowspan="2" |北海道開発庁 国土庁 建設省 運輸省 | rowspan="2" |国土交通省 |- |法務省 |法務省 |- |外務省 |外務省 |環境庁 |環境省 |} 橋本龍太郎内閣は国債の発行額を減らそうとしました。1997年4月、財政構造改革法に従って消費税率を3%から5%に引き上げて公共事業費などを減らしました。国債発行額は1970年代後半から増えても1980年代末で一度減りました。1990年代に入り、公共投資を再拡大させてから大幅な国債発行額増加に向かいました。 しかし、国民は消費税率の引き上げなどから財布の紐もきつくなり、金融機関も生き残れなくなりました。さらにアジア通貨・金融危機も起きて、日本経済は再不況になりました。やがて、銀行同士は金融不安の拡大から合併して1つの銀行になりました。1997年度の実質経済成長率は-0.4%となり、1974年度[第1次石油危機直後]以来のマイナス成長になりました。1998年度の実質経済成長率は-2%まで下がり、平成不況の大きさを改めて物語りました。 [[ファイル:Official Portrait of President William Jefferson Clinton - DPLA - 4697184146b3b6e2d6791b8f3c297476.jpg|サムネイル|221x221ピクセル|ビル・クリントン大統領]] 冷戦後、橋本龍太郎内閣は日米安全保障体制を見直しました。アメリカのビル・クリントン大統領が1996年4月に日本を訪れ、橋本首相と話し合って<span style="color:#f29100">'''日米安全保障共同宣言'''</span>を発表しました。日米安全保障共同宣言から日本とアメリカは日本防衛以外にもアジア太平洋地域の戦争防止・紛争防止まで努めていくようになりました。 自衛隊がアメリカ軍に必要物資を運ぶなどの後方支援についても、日米防衛協力のための指針を見直しました。1997年、日本政府とアメリカ合衆国政府は「新しい日米防衛協力のための指針(新ガイドライン)」を作りました。 日本が外国から直接攻撃されても直接攻撃されていなくても、日本周辺国の戦争などから日本の平和と安全に大きく関わっていたらアメリカ合衆国側も新ガイドラインに従って助け合いました(周辺事態)。ただし日本から何キロ以内というような距離だけだとアメリカ合衆国側は何もしません。 地球温暖化防止京都会議は1997年に開かれ、温室効果ガスの削減目標などを盛り込む京都議定書を採択しました。また、橋本龍太郎内閣は従来のアイヌ民族政策を大きく変えました。 アイヌ民族は1946年2月に北海道アイヌ協会を作り、アイヌ民族の権利を政府に求めました。北海道旧土人保護法からアイヌ民族用の土地[給与地]を貰っても、農地改革で買収されたくありませんでした。しかしアイヌ民族をずっと厳しく人種差別しており、アイヌ民族の一部は北海道から逃げました。その後、北海道アイヌ協会は名前を北海道ウタリ協会に変えました。[[ファイル:UPOPOY 202608.jpg|サムネイル|民族共生象徴空間ウポポイ]]1980年代、世界各地の先住民族が先住民族の権利を政府に求めました。北海道ウタリ協会は政府に北海道旧土人保護法を廃止して新しい法律を作ってほしいと求めました。1997年、国会はアイヌ民族文化をずっと守っていくために'''アイヌ文化振興法'''を作り、北海道旧土人保護法を廃止しました。 その後もアイヌ民族政策は変わりました。2008年、国会はアイヌ民族を日本の先住民族と認めて、内閣へアイヌ民族の権利・生活・文化なども認めてほしいとお願いしました。民族団体の名前も北海道ウタリ協会から北海道アイヌ協会に戻しました。 2019(令和元)年、政府はアイヌ施策推進法で日本の「先住民族」にアイヌ民族を初めて入れました。アイヌ施策推進法から北海道アイヌ協会側も話し合いに参加して、アイヌ民族向けの新しい政策を行っています。2020年、北海道白老町に民族共生象徴空間ウポポイが開かれました。アイヌ語講座・アイヌ文化活動・アイヌ語活動が日本各地で開かれてもいます。 [[ファイル:Keizo Obuchi 19980730.jpg|サムネイル|168x168ピクセル|小渕恵三]] 1998年7月の参議院議員選挙で自由民主党議席数は大きく減らし、この結果から橋本龍太郎も内閣総理大臣を辞めました。これを受けて、<span style="color:#f29100">'''小渕恵三'''</span>が内閣総理大臣に選ばれました。小渕恵三内閣はバブル崩壊に消費税増税・金融不安・アジア通貨危機なども重なり、橋本龍太郎の財政再建路線を修正しました。小渕恵三内閣は土木工事・公共施設建築工事の大型予算を組んでその潤いから複合不況まで立て直そうとしました。その結果、政府は赤字国債発行額を再び大幅に増やしました。 1999年、小渕恵三内閣は国会法案の賛成を増やしたいから自由党〔1月〕・公明党〔10月〕も自由民主党と一緒に内閣を支えていました[自自公連立政権の開始]。その結果、自由民主党・自由党・公明党は衆議院・参議院の両方で過半数の議席を持つようになりました。小渕恵三内閣から自由民主党と公明党は2025年10月まで一緒に内閣を支えました。 1999年、小渕恵三内閣は'''新ガイドライン関連法'''をまとめました。新ガイドライン関連法の<span style="color:#f29100">'''周辺事態安全確保法'''</span>は日本周辺国家の暴走で自国の平和と安全まで守れなくなったら、自衛隊を出してアメリカ軍へ必要物資を送りました。 [[ファイル:G8 2000 group photo (kremlin.ru).jpg|サムネイル|223x223px|第26回主要国首脳会議]] 1999年、小渕恵三内閣は日の丸と君が代を国旗・国歌法へ初めて記しました。また、国民は情報公開法に従って官公庁へ資料を見せてほしいとお願いしやすくなりました。国会は憲法調査会で憲法を変えるかどうか話し合いました。小渕恵三内閣は2000年に九州・沖縄で第26回主要国首脳会議[サミット]開くと決めました。 この時期は野党も大きく変わりました。社会民主党の支持者は少しずつ減りました。新進党は議員の大量離脱から1997年末になくなりました。旧新進党の議員は違う政党[自由党・新党平和・民主党]に入りました。1996年、鳩山由紀夫・菅直人が'''民主党'''を結成しました。その後、旧新進党議員も民主党へ入りました。さらに、新党平和・黎明クラブを公明党に戻しました。 こうして、自由民主党と日本社会党が長く争う55年体制も終わりました。55年体制が終わっても、自由民主党と民主党の保守二大政党制へ繋がりませんでした。自由民主党が再び政権へ戻っても、自由党・公明党と一緒に内閣を支えていました。 == 資料出所 == * 平雅行、横田冬彦ほか編著『日本史探究』実教出版株式会社 2023年 * 佐藤信、五味文彦ほか編著『詳説日本史探究』株式会社山川出版社 2023年 * 高埜利彦、高村直助ほか編著『日本史A 改訂版』株式会社山川出版社 2016年 * 渡邊晃宏ほか編著『日本史探究』東京書籍株式会社 2023年 * 伊藤純郎ほか編著『高等学校日本史探究』株式会社清水書院 2023年 * 大橋幸泰ほか編著『高等学校日本史探究』株式会社第一学習社 2023年 * 山中裕典著'''『'''改訂版 大学入学共通テスト 歴史総合、日本史探究の点数が面白いほどとれる本'''』'''株式会社KADOKAWA 2024年 * 佐藤信、五味文彦ほか編著『詳説日本史研究』株式会社山川出版社 2017年 * 河合敦著『世界一わかりやすい河合敦の日本史B[近・現代]の特別講座』株式会社KADOKAWA 2014年(絶版本) * 外園豊基編集代表『最新日本史図表』株式会社第一学習社 2026年 * 東京法令出版編著『歴史資料館 日本史のライブラリー』東京法令出版株式会社 2026年 [[カテゴリ:高等学校日本史探究|あらたなせいきのにほんへ]] [[カテゴリ:20世紀]] n391hek85k61kpkwpbotr5mhndf0l03 305004 305003 2026-10-22T04:10:47Z Kwawe 68789 /* 政界再編と55年体制の終結 */ 重要用語を色太字化。本節完成。 305004 wikitext text/x-wiki [[小学校・中学校・高等学校の学習]]>[[高等学校の学習]]>[[高等学校地理歴史]]>[[高等学校日本史探究]]>新たな世紀の日本へⅡ  引き続き「新たな世紀の日本へ」の内容を解説します。第2回目では、政界再編から小渕恵三内閣までの国内政治を見ていきます。 == 政界再編と55年体制の終結 == 1975年、国鉄職員などは大きなストライキ「スト権スト」を行って政府側に争議権の回復を求めても失敗しました。その後、官公庁労働組合はストライキなどをあまり行わなくなりました。民間大企業の労働組合も春闘で大幅な賃上げを求めにくくなりました。 その後、民間労働組合は1つにまとまり始めました。1987年、全日本民間労働組合連合会[民間連合]をつくりました。1989年の日本労働組合総評議会[総評]解散後、元日本労働組合総評議会[総評]は全日本民間労働組合連合会[民間連合]に合流しました。その後、全日本民間労働組合連合会[民間連合]と同盟などの労働組合は1つにまとまって<span style="color:#f29100">'''日本労働組合総連合会[連合]'''</span>をつくりました。約800万人が日本労働組合総連合会[連合]に入りました。 一方、日本労働組合総連合会[連合]の敵側は全国労働組合総連合[全労連]をつくりました。約140万人が全国労働組合総連合[全労連]に入りました。さらに日本労働組合総連合会[連合]と全国労働組合総連合[全労連]の敵側は全国労働組合連絡協議会[全労協]をつくりました。こうして、野党支持側の労働組合は日本労働組合総連合会[連合]・全国労働組合総連合[全労連]・全国労働組合連絡協議会[全労協]に分かれました。<gallery mode="packed" heights="200"> ファイル:Sohyo Kaikan (headquarters of the Japanese Trade Union Confederation).jpg|日本労働組合総連合会 ファイル:Zenrouren Kaikan (1).jpg|全国労働組合総連合 ファイル:Kiichi Miyazawa 19911105.jpg|宮澤喜一 </gallery> [[ファイル:Morihiro Hosokawa 19930809.jpg|サムネイル|195x195ピクセル|細川護熙]] 政治家と企業の金銭やり取りが冷戦後の日本で問題になりました。リクルート事件〔竹下内閣〕・佐川急便事件〔宮澤喜一内閣〕・ゼネコン汚職事件〔宮澤喜一内閣〕が起きました。自由民主党副総裁の金丸信も1993年に逮捕されました。国民は政治家・官僚・企業の金銭やり取りへ文句を言い、自由民主党の不支持者まで増えました。 国民は相次ぐ政治家と企業の金銭やり取りから政治の仕組みを変えるように求めました。そこで、衆議院議員選挙を中選挙区制の区割りをやめて小選挙区制の区割りに切り替えられました。小選挙区制は1つの選挙区から1人だけを選ぶため、各政党の政策まではっきり分かるようになります。二大政党が小選挙区制の区割りで争うと選挙結果次第で政権交代に結び付きやすくなります。しかし、小さな政党は議席を取りにくくなります。 1993(平成5)年6月、野党側は宮澤喜一内閣に対して内閣不信任案を衆議院へ出しました。自由民主党内部の改革派も内閣不信任案に賛成したため、衆議院は内閣不信任案を可決しました。<span style="color:#f29100">'''羽田孜'''</span>・小沢一郎などは自由民主党を離れて、新生党をつくりました。元自由民主党議員も新党さきがけをつくりました。 [[ファイル:Official portrait of Tsutomu Hata 1994.jpg|サムネイル|194x194ピクセル|羽田孜]] 宮澤喜一首相は衆議院を解散しました。1993年7月の衆議院議員総選挙結果で自由民主党は過半数を下回り、日本社会党も当選議員を大きく減らしました。一方、新生党・日本新党・新党さきがけなどは、当選議員を大きく増やしました。なお日本新党の政党代表は元熊本県知事の<span style="color:#f29100">'''細川護熙'''</span>でした。当衆議院議員総選挙で日本新党議員57人を立候補させて35人も当選しました。 総選挙後、日本共産党以外の非自民8党派は一緒に政権をつくりました。1993年8月、日本新党の細川護熙が内閣総理大臣となりました。日本社会党・新生党・公明党・日本新党・民社党・新党さきがけ・社会民主連合の7党と民主改革連合[参議院の会派]が細川護熙内閣を支えました。 55年体制からここまで保守の自由民主党と革新の日本社会党が政治の中心になっていました。その自由民主党が初めて野党になり、自由民主党単独政権も38年目で幕を閉じました(55年体制の崩壊)。 細川護熙内閣は政治改革を進め、政治改革関連四法を1994年に決めました。公職選挙法も変わりました。衆議院議員総選挙は従来の中選挙区制をやめて、小選挙区制と比例代表制の選挙区割り[<span style="color:#f29100">'''小選挙区比例代表並立制'''</span>]から当選議員まで決まりました。 [[ファイル:Tomiichi Murayama 19940630.jpg|サムネイル|189x189ピクセル|村山富市]] 細川護熙内閣は関税及び貿易に関する一般協定(General Agreement on Tariffs and Trade:GATT)のウルグアイ・ラウンドの内容を認めて、日本も外国産のコメを一部輸入するようになりました。一方、味方側の各政党は意見の食い違いから争いました。さらに細川護熙も東京佐川急便事件に関わっており、この政治資金疑惑から1994年に内閣総理大臣をやめました。 1994年4月、新生党の羽田孜が内閣総理大臣になりました。しかし、日本社会党は新生党と一緒に内閣を支えなくなりました。羽田孜は国会議員の賛成を集められなくなり、約2か月で首相を辞めました。1994年6月、自由民主党は元野党側の日本社会党・新党さきがけと一緒に内閣を支えました[自社さ連立政権]。日本社会党の<span style="color:#f29100">'''村山富市'''</span>が内閣総理大臣になり、自由民主党も政権へ戻りました。一方、非自民連立政権側の新生党・日本新党・公明党・民社党などは1つにまとまって新進党をつくりました。 従来の日本社会党基本政策を村山富市内閣で大きく変えました。日本社会党は自衛隊を合憲としつつ日米安全保障条約と消費税までも受け入れました。こうして自由民主党と日本社会党の政策は近くなり、日本社会党の不支持者を増やしました。1995年、アジア・太平洋戦争終戦から50年を迎えました。国会は戦後50年目の反省文内容をまとめました。8月15日、村山富市内閣総理大臣はアジア・太平洋戦争の反省とお詫びを<span style="color:#f29100">'''「戦後50周年の終戦記念日にあたって」'''</span>で伝えました(<span style="color:#f29100">'''村山談話'''</span>)。 現地の国民は日本側の植民地支配と侵略から被害を受けており、村山談話でその反省とお詫びを該当国首脳へ伝えました。その後の内閣も村山談話を受け継ぎました。政府は戦後50年目に合わせて、日本とアジア諸国の近現代史資料を国民へ広く公開しました。さらにインターネットでも歴史資料を公開したいから、アジア歴史資料センター開く準備をしました。2001年、アジア歴史資料センターを開きました。政党の結成・解党・合流まで活発になり、各政党のどこにも入らない無党派層も増えました。以降は単独政党のみで内閣を支えきれなくなり、複数政党と一緒に内閣を支えました。 == バブルの崩壊 == プラザ合意後、大量のお金が土地購入・株式購入のために使われ、土地の値段・株価[資産価格]が次第に上がりました(資産インフレ)。1989(平成元)年、日本銀行は銀行へお金をあまり貸さなくなり、政府も土地の値段を上げすぎないようにしました(金融引き締め政策)。1990年代に入ってから、土地の値段・株価は下がり始めました。日経平均株価は、1989年12月末に3万8915円まで上がりました。しかし、その後は株式売却が増えて株価もいきなり下がり、1992年8月に1万4309円まで下がりました。土地の値段も1991年頃から下がり始め、1992年以後は日本各地で下がりました。2000年代半ばになると、大阪の一部商業地は一番高い時期の値段から約10分の1まで下がりました。こうして土地や株式の大幅な値上がりは終わり、1980年代後半のバブル経済は終わりました。 ★日本の実質経済成長率の推移 [[ファイル:GDP_growth_rate_in_Japan.svg|代替文=日本の実質経済成長率の推移|フレームなし|924x924px]] 日本の景気は1991年から悪くなりました('''平成不況''')。実質経済成長率は1992年に1.3%、1993年に1%未満まで下がりました。1992年を3か月ずつに分けて見ると、4~6月は-3.3%となり、前の3か月より国内経済が小さくなりました。7~9月と10~12月もそれぞれ-0.1%となりました。第1次石油危機後に2期連続の経済縮小時期はあっても、3期連続の経済縮小は戦後初めてでした。僅かな景気回復時期も平成不況の途中にありました。しかしすぐに経済縮小となり、平成不況が長年続きました。 バブル経済当時の国民は金融機関からお金を借りて、株価と地価をより高い価格で買いました。金融機関は不動産会社にもお金を貸しました。バブル崩壊後、株価と地価が大きく下がりました。国民は株と土地を全て売っても借金を返せなくなりました。国民の借金も金融機関へ返ってこなくなりました(不良債権)。金融機関は株と土地を債権として持っており、不良債権から金融機関も大赤字になりました。 金融機関は不良債権処理にずっと追われて、さらに苦しくなりました。その結果、金融機関は不良債権の心配からお金を貸さなくなりました。企業は金融機関からお金を借りにくくなりました。国民も「この金融機関は大丈夫か」と不安を感じるようになり、金融機関はさらに苦しくなりました。その後、企業は新しい商品を作れなくなり、新しい工場を建てられなくなり、新しい機械も買えなくなりました。地価の下落・株価の下落・不良債権の増加・金融機関の経営悪化・金融機関の融資停止が全て重なって景気も次第に悪くなりました('''複合不況''')。 当時の政府と日本銀行はこれまでの不況と同じように、財政支出の拡大・低金利政策から数年で景気も回復するかもと思っていました。この誤対策は複合不況に一切効果ありません。住宅金融専門会社は1995年頃から相次いでつぶれました。1997年、北海道拓殖銀行と山一証券がつぶれました。1998年、日本債券信用銀行と日本長期信用銀行がつぶれました。このように大手金融機関がつぶれると、国民も他の金融機関も危ないのではないかと不安になりました。政府は金融システムまで止まらないように、倒産寸前の大手金融機関などに大量の公的資金を入れました。<gallery mode="nolines" widths="200" heights="200"> ファイル:The Hokkaido Takushoku Bank.JPG|旧北海道拓殖銀行本店 ファイル:Kayabacho Tower, at Shinkawa, Chuo, Tokyo (2019-01-02) 02.jpg|旧山一證券本社 ファイル:日債銀本店.jpg|旧日本債券信用銀行本店 ファイル:Shinsei Bank (head office 1).jpg|旧日本長期信用銀行本店 </gallery>1998年、小渕恵三が内閣総理大臣になりました。小渕恵三内閣も大型予算から景気を回復させしようとしました。小渕内閣が公共投資を増やして国民のお金を回そうとしても複合不況に一切効果ありません。こうして、公債発行残高は増えました。物価は1990年代後半からずっと下がり続けました(デフレスパイラル)。 [[ファイル:Unemployment Rate of Japan 1953-2009.jpg|サムネイル|395x395ピクセル|日本の失業率]] 企業は赤字なので、生き残るために経営の効率化[事業整理・人員削減・雇用調整・海外進出など]を進めました(リストラクチャリング)。中小企業の倒産も増えて、中高年労働者の解雇・中高年労働者の早期退職・新卒採用の削減から企業の人件費を大幅に減らしました。バブル景気の時期は労働者不足から「売り手市場」でも、バブル崩壊後から「買い手市場」へ変わりました。1990年代半ばから2000年代前半、企業は新卒採用を大幅に減らしました(就職氷河期)。1998年の完全失業率は4%を超え、2001年の完全失業率で5%になりました。 失業者が増えると労働者も「自分も仕事を失うかもしれない」と不安になり、個人消費を減らしました。消費者は同じような商品なら出来るだけ安い商品を選ぶようになり、ブランド品・高級品を買ってくれなくなりました。商品が売れなくなると、会社も少量生産・既存工場・既存機械だけで行うようになりました。その結果、会社の利益がさらに減って、人員削減・採用縮小もさらに進みました。株価と地価の下落から不良債権が増えて、金融機関の経営も苦しくなり、企業へお金を貸せなくなりました。 円高も国際分業も進みました。1994年、1ドルが100円を割り込みました。輸出主導・量産指向型産業[自動車・電子・家電・事務機器など]は海外で売れにくくなりました。また、バブル崩壊後の不景気から国内の購入者も減りました。生産費用を少しでも減らすため、労働者の給料が日本より低いアジア諸国[中国など]へ工場を移すようになりました[国内工場の閉鎖・国内工場の海外移転]。その結果、地元企業・周辺店舗の売り上げを減らし、失業者を増やしました(地域'''産業の空洞化''')。 繊維産業の事業所数は減り続けました。2015年の繊維産業の事業所数は1991年と比べて約4分の1になりました。国内衣料品市場のうち海外衣料品購入割合は1991年で52%になり、2017年で97%まで上がりました。多数の多国籍企業が1990年代後半に日本企業を合併したり、買収したりしました。企業が日本型雇用を取り入れていても競争力強化・経営効率化から人員削減・能力給の導入を進めました。その結果、働き方の不安定さが広がりました。 日本は技術面でも負けています。1980年代、日本企業はエレクトロニクス[電子機器]・新素材・バイオテクノロジーなどの技術でアメリカに追いつこうとしていました。1990年代から情報通信技術の活用や生産性の伸びでアメリカ合衆国に負けました。商品は日本国内で売れにくくなり、業務内容も変わっていきました。そのため、日本企業は海外企業に負けないような対策を取りました。 バブル崩壊後、銀行制度・企業制度も変えられました。「日本版金融ビッグバン」を1996年に打ち出して、銀行・証券会社などにも規制を緩めて金融の自由化・国際化を進めました。1997年の独占禁止法改正から禁止の持株会社を再度認めました。企業は持株会社からグループ内の会社をまとめ直したり、経営の進め方を変えたりしやすくなり、その後の企業再編・金融再編にもつながりました。 以前の大規模小売店舗法は店舗面積500平方メートル以上の大規模小売店舗出店条件として出店規模・営業時間・営業日数などを定めていました。しかし、大規模小売店舗は中小小売業者の近くにも自由に出店しており、中小小売業者のお客様まで消えました。そのため、政府は大規模小売店舗の立地場所を1998年から制限しました(大規模小売店舗立地法)。中小小売業者から流れすぎないように守りながら、大規模小売店舗も中小小売業者も商売を続けられるようにしました。2000年、大規模小売店舗法を廃止しました。[[ファイル:Asian Financial Crisis EN-2009-05-05.png|サムネイル|273x273px|アジア通貨危機の影響国]]企業再編・合併は政府の規制緩和から広がり、海外企業と国内企業の協力・合併も増えました。その流れから六大企業集団もまとまりました。金融業界でも銀行などが倒産したり、別の銀行と合併したりしました。その結果、日本の金融業界は三井住友グループ[旧三井系と旧住友系]・三菱UFJ[旧三菱系と三和系]・みずほグループ[旧第一勧銀系と旧富士系]の三大金融グループへまとまりました。 国内長期不況で苦しむ中、アジア諸国の経済は大成長しました。しかし短期海外資金の依存・金融機関の過剰な借入れ・企業の過剰な借入れ・金融制度の弱さ・投機資金の流入などから海外投資家が危機感を示して一斉に海外資金を回収・売却・国外移動を行いました。1997年、タイの通貨バーツの価値が大きく下がりました。海外投資家は東アジア・東南アジアから次々と海外資金を回収・売却・国外移動を行いました(アジア通貨危機)。その結果、東アジア・東南アジア諸国の金融と経済は大きな爪痕を残しました。債務問題は韓国などで大きくなり、国際通貨基金(International Monetary Fund:IMF)の支援を受けました。アジア通貨危機は日本経済と日本の金融機関にも大きな爪痕を残して、不良債権問題をさらに悪化させました。 日本政府はアジア通貨危機の発生から地域的な金融協力制度[アジア通貨基金構想]を出しました。しかし、アメリカ合衆国の反対から日本政府は二国間金融支援と新宮沢構想などに切り替えて、東アジア諸国を金銭面で助けました。 バブル経済崩壊後の平成不況はずっと続きました。景気は2002年初期に少しだけ上向きました。しかし、政府が公共事業中心の従来型景気対策を抑えながら不良債権処理と規制改革を進めました。その結果、企業は引き続き大規模なリストラと雇用調整を行いました。当初、バブル崩壊後の長期停滞は「失われた10年」とよばれました。その後も日本経済の停滞が強く、「失われた20年」「失われた30年」とよばれました。 == 行政改革と日米安保の変化 == 1990年代後半、大規模災害の対策・重大事件への対策・行政改革・財政改革・金融改革・冷戦後の日米安全保障体制見直し・政党の組み直しを行いました。1995年1月17日、阪神・淡路地域でマグニチュード7.3の<span style="color:#f29100">'''阪神・淡路大震災[兵庫県南部地震]'''</span>が起こりました。神戸市を中心に6400人以上が亡くなり、建造物・高速道路までも大きく壊れました。当地震で大都市は自然災害に弱く、都市政策・耐震化基準・防災体制の見直しをしました。また、国民は被災地に入って、避難民[被災者]の生活を支えたり、被災地の後片付けを手伝ったりしました。この活動からボランティア活動が全国に広がりました。 1995年3月20日、オウム真理教集団は東京都の地下鉄でサリンを撒いて、多数の死傷者を出しました(<span style="color:#f29100">'''地下鉄サリン事件'''</span>)。このように阪神・淡路大震災と地下鉄サリン事件・少年犯罪の殺人事件・児童虐待などが何度も報道機関で取り上げられ、旧価値観的な安全神話も崩れて国民の意識も変わりました。<gallery mode="packed" widths="200" heights="200"> ファイル:Hanshin Expressway Nada b059.jpg|阪神淡路大震災被災後 ファイル:【地下鉄サリン事件】除染を行う自衛隊員と警察官.jpg|地下鉄サリン事件 ファイル:Ryutaro Hashimoto 19960111.jpg|橋本龍太郎 ファイル:Ryuhei Kawada 20240307.jpg|川田龍平 </gallery>1995年9月、自由民主党総裁選挙から<span style="color:#f29100">'''橋本龍太郎'''</span>が選ばれました。1996年1月、村山富市首相退陣後の内閣総理大臣指名選挙で橋本龍太郎が選ばれました。橋本内閣でも自民党・社会民主党・新党さきがけの3党が引き続き協力して、政策を進めました。なお日本社会党は自衛隊・日米安全保障条約の賛成側に回り、1996年に党名を社会民主党へ変えました。 薬害エイズ問題も大きく取り上げられました。橋本龍太郎内閣厚生大臣の菅直人は薬害エイズ被害者[川田龍平など]に謝罪しました。その後、国と製薬会社と被害者が話し合い、和解しました。 1996年、新しい選挙制度で初めて衆議院議員総選挙が行われ、自由民主党の議席を大きく増やしても、過半数を下回りました。社会民主党と新党さきがけは第2次橋本内閣から国務大臣を出さなくなり、閣外協力に変わりました。その結果、自由民主党単独政権に戻りました。 橋本龍太郎内閣は冷戦後の国際変化・国内経済・政府問題を解決するため、行政・財政・金融の各分野を見直しました。行政改革は政府組織を減らしたり、類似の政府組織を1つにまとめたりして、首相などの政策案を出しやすくしました。1998年、中央省庁等改革基本法が導入されて中央省庁等改革関連法から行政改革の方針を決めました。 2001年1月、政府はこの行政改革の方針から中央省庁を1府22省庁から1府12省庁に減らしました。その結果、内閣総理大臣は各省庁へ指示を出して、政府全体の政策を進めやすくしました。2007年、防衛庁を防衛省に上げました。 ★省庁再編 {| class="wikitable" !再編前 !再編後 !再編前 !再編後 |- |内閣官房 |内閣官房 |大蔵省 |財務省 |- | rowspan="2" |総理府 金融再生委員会 経済企画庁 沖縄開発庁 | rowspan="2" |内閣府 |科学技術庁 文部省 |文部科学省 |- |厚生省 労働省 |厚生労働省 |- |国家公安委員会 |国家公安委員会 |農林水産省 |農林水産省 |- |防衛庁 |防衛庁(省) |通商産業省 |経済産業省 |- |総務庁 郵政省 自治省 |総務省 | rowspan="2" |北海道開発庁 国土庁 建設省 運輸省 | rowspan="2" |国土交通省 |- |法務省 |法務省 |- |外務省 |外務省 |環境庁 |環境省 |} 橋本龍太郎内閣は国債の発行額を減らそうとしました。1997年4月、財政構造改革法に従って消費税率を3%から5%に引き上げて公共事業費などを減らしました。国債発行額は1970年代後半から増えても1980年代末で一度減りました。1990年代に入り、公共投資を再拡大させてから大幅な国債発行額増加に向かいました。 しかし、国民は消費税率の引き上げなどから財布の紐もきつくなり、金融機関も生き残れなくなりました。さらにアジア通貨・金融危機も起きて、日本経済は再不況になりました。やがて、銀行同士は金融不安の拡大から合併して1つの銀行になりました。1997年度の実質経済成長率は-0.4%となり、1974年度[第1次石油危機直後]以来のマイナス成長になりました。1998年度の実質経済成長率は-2%まで下がり、平成不況の大きさを改めて物語りました。 [[ファイル:Official Portrait of President William Jefferson Clinton - DPLA - 4697184146b3b6e2d6791b8f3c297476.jpg|サムネイル|221x221ピクセル|ビル・クリントン大統領]] 冷戦後、橋本龍太郎内閣は日米安全保障体制を見直しました。アメリカのビル・クリントン大統領が1996年4月に日本を訪れ、橋本首相と話し合って<span style="color:#f29100">'''日米安全保障共同宣言'''</span>を発表しました。日米安全保障共同宣言から日本とアメリカは日本防衛以外にもアジア太平洋地域の戦争防止・紛争防止まで努めていくようになりました。 自衛隊がアメリカ軍に必要物資を運ぶなどの後方支援についても、日米防衛協力のための指針を見直しました。1997年、日本政府とアメリカ合衆国政府は「新しい日米防衛協力のための指針(新ガイドライン)」を作りました。 日本が外国から直接攻撃されても直接攻撃されていなくても、日本周辺国の戦争などから日本の平和と安全に大きく関わっていたらアメリカ合衆国側も新ガイドラインに従って助け合いました(周辺事態)。ただし日本から何キロ以内というような距離だけだとアメリカ合衆国側は何もしません。 地球温暖化防止京都会議は1997年に開かれ、温室効果ガスの削減目標などを盛り込む京都議定書を採択しました。また、橋本龍太郎内閣は従来のアイヌ民族政策を大きく変えました。 アイヌ民族は1946年2月に北海道アイヌ協会を作り、アイヌ民族の権利を政府に求めました。北海道旧土人保護法からアイヌ民族用の土地[給与地]を貰っても、農地改革で買収されたくありませんでした。しかしアイヌ民族をずっと厳しく人種差別しており、アイヌ民族の一部は北海道から逃げました。その後、北海道アイヌ協会は名前を北海道ウタリ協会に変えました。[[ファイル:UPOPOY 202608.jpg|サムネイル|民族共生象徴空間ウポポイ]]1980年代、世界各地の先住民族が先住民族の権利を政府に求めました。北海道ウタリ協会は政府に北海道旧土人保護法を廃止して新しい法律を作ってほしいと求めました。1997年、国会はアイヌ民族文化をずっと守っていくために'''アイヌ文化振興法'''を作り、北海道旧土人保護法を廃止しました。 その後もアイヌ民族政策は変わりました。2008年、国会はアイヌ民族を日本の先住民族と認めて、内閣へアイヌ民族の権利・生活・文化なども認めてほしいとお願いしました。民族団体の名前も北海道ウタリ協会から北海道アイヌ協会に戻しました。 2019(令和元)年、政府はアイヌ施策推進法で日本の「先住民族」にアイヌ民族を初めて入れました。アイヌ施策推進法から北海道アイヌ協会側も話し合いに参加して、アイヌ民族向けの新しい政策を行っています。2020年、北海道白老町に民族共生象徴空間ウポポイが開かれました。アイヌ語講座・アイヌ文化活動・アイヌ語活動が日本各地で開かれてもいます。 [[ファイル:Keizo Obuchi 19980730.jpg|サムネイル|168x168ピクセル|小渕恵三]] 1998年7月の参議院議員選挙で自由民主党議席数は大きく減らし、この結果から橋本龍太郎も内閣総理大臣を辞めました。これを受けて、<span style="color:#f29100">'''小渕恵三'''</span>が内閣総理大臣に選ばれました。小渕恵三内閣はバブル崩壊に消費税増税・金融不安・アジア通貨危機なども重なり、橋本龍太郎の財政再建路線を修正しました。小渕恵三内閣は土木工事・公共施設建築工事の大型予算を組んでその潤いから複合不況まで立て直そうとしました。その結果、政府は赤字国債発行額を再び大幅に増やしました。 1999年、小渕恵三内閣は国会法案の賛成を増やしたいから自由党〔1月〕・公明党〔10月〕も自由民主党と一緒に内閣を支えていました[自自公連立政権の開始]。その結果、自由民主党・自由党・公明党は衆議院・参議院の両方で過半数の議席を持つようになりました。小渕恵三内閣から自由民主党と公明党は2025年10月まで一緒に内閣を支えました。 1999年、小渕恵三内閣は'''新ガイドライン関連法'''をまとめました。新ガイドライン関連法の<span style="color:#f29100">'''周辺事態安全確保法'''</span>は日本周辺国家の暴走で自国の平和と安全まで守れなくなったら、自衛隊を出してアメリカ軍へ必要物資を送りました。 [[ファイル:G8 2000 group photo (kremlin.ru).jpg|サムネイル|223x223px|第26回主要国首脳会議]] 1999年、小渕恵三内閣は日の丸と君が代を国旗・国歌法へ初めて記しました。また、国民は情報公開法に従って官公庁へ資料を見せてほしいとお願いしやすくなりました。国会は憲法調査会で憲法を変えるかどうか話し合いました。小渕恵三内閣は2000年に九州・沖縄で第26回主要国首脳会議[サミット]開くと決めました。 この時期は野党も大きく変わりました。社会民主党の支持者は少しずつ減りました。新進党は議員の大量離脱から1997年末になくなりました。旧新進党の議員は違う政党[自由党・新党平和・民主党]に入りました。1996年、鳩山由紀夫・菅直人が'''民主党'''を結成しました。その後、旧新進党議員も民主党へ入りました。さらに、新党平和・黎明クラブを公明党に戻しました。 こうして、自由民主党と日本社会党が長く争う55年体制も終わりました。55年体制が終わっても、自由民主党と民主党の保守二大政党制へ繋がりませんでした。自由民主党が再び政権へ戻っても、自由党・公明党と一緒に内閣を支えていました。 == 資料出所 == * 平雅行、横田冬彦ほか編著『日本史探究』実教出版株式会社 2023年 * 佐藤信、五味文彦ほか編著『詳説日本史探究』株式会社山川出版社 2023年 * 高埜利彦、高村直助ほか編著『日本史A 改訂版』株式会社山川出版社 2016年 * 渡邊晃宏ほか編著『日本史探究』東京書籍株式会社 2023年 * 伊藤純郎ほか編著『高等学校日本史探究』株式会社清水書院 2023年 * 大橋幸泰ほか編著『高等学校日本史探究』株式会社第一学習社 2023年 * 山中裕典著'''『'''改訂版 大学入学共通テスト 歴史総合、日本史探究の点数が面白いほどとれる本'''』'''株式会社KADOKAWA 2024年 * 佐藤信、五味文彦ほか編著『詳説日本史研究』株式会社山川出版社 2017年 * 河合敦著『世界一わかりやすい河合敦の日本史B[近・現代]の特別講座』株式会社KADOKAWA 2014年(絶版本) * 外園豊基編集代表『最新日本史図表』株式会社第一学習社 2026年 * 東京法令出版編著『歴史資料館 日本史のライブラリー』東京法令出版株式会社 2026年 [[カテゴリ:高等学校日本史探究|あらたなせいきのにほんへ]] [[カテゴリ:20世紀]] re8vki9ysy2qw61qz2l4mhtv8q5vlc2 305006 305004 2026-10-22T04:13:32Z Kwawe 68789 /* 政界再編と55年体制の終結 */ 金丸信の写真を追加。 305006 wikitext text/x-wiki [[小学校・中学校・高等学校の学習]]>[[高等学校の学習]]>[[高等学校地理歴史]]>[[高等学校日本史探究]]>新たな世紀の日本へⅡ  引き続き「新たな世紀の日本へ」の内容を解説します。第2回目では、政界再編から小渕恵三内閣までの国内政治を見ていきます。 == 政界再編と55年体制の終結 == 1975年、国鉄職員などは大きなストライキ「スト権スト」を行って政府側に争議権の回復を求めても失敗しました。その後、官公庁労働組合はストライキなどをあまり行わなくなりました。民間大企業の労働組合も春闘で大幅な賃上げを求めにくくなりました。 その後、民間労働組合は1つにまとまり始めました。1987年、全日本民間労働組合連合会[民間連合]をつくりました。1989年の日本労働組合総評議会[総評]解散後、元日本労働組合総評議会[総評]は全日本民間労働組合連合会[民間連合]に合流しました。その後、全日本民間労働組合連合会[民間連合]と同盟などの労働組合は1つにまとまって<span style="color:#f29100">'''日本労働組合総連合会[連合]'''</span>をつくりました。約800万人が日本労働組合総連合会[連合]に入りました。 一方、日本労働組合総連合会[連合]の敵側は全国労働組合総連合[全労連]をつくりました。約140万人が全国労働組合総連合[全労連]に入りました。さらに日本労働組合総連合会[連合]と全国労働組合総連合[全労連]の敵側は全国労働組合連絡協議会[全労協]をつくりました。こうして、野党支持側の労働組合は日本労働組合総連合会[連合]・全国労働組合総連合[全労連]・全国労働組合連絡協議会[全労協]に分かれました。<gallery mode="packed" heights="200"> ファイル:Sohyo Kaikan (headquarters of the Japanese Trade Union Confederation).jpg|日本労働組合総連合会 ファイル:Zenrouren Kaikan (1).jpg|全国労働組合総連合 ファイル:Kiichi Miyazawa 19911105.jpg|宮澤喜一 ファイル:Shin Kanemaru 19920407.jpg|金丸信 </gallery> [[ファイル:Morihiro Hosokawa 19930809.jpg|サムネイル|195x195ピクセル|細川護熙]] 政治家と企業の金銭やり取りが冷戦後の日本で問題になりました。リクルート事件〔竹下内閣〕・佐川急便事件〔宮澤喜一内閣〕・ゼネコン汚職事件〔宮澤喜一内閣〕が起きました。自由民主党副総裁の金丸信も1993年に逮捕されました。国民は政治家・官僚・企業の金銭やり取りへ文句を言い、自由民主党の不支持者まで増えました。 国民は相次ぐ政治家と企業の金銭やり取りから政治の仕組みを変えるように求めました。そこで、衆議院議員選挙を中選挙区制の区割りをやめて小選挙区制の区割りに切り替えられました。小選挙区制は1つの選挙区から1人だけを選ぶため、各政党の政策まではっきり分かるようになります。二大政党が小選挙区制の区割りで争うと選挙結果次第で政権交代に結び付きやすくなります。しかし、小さな政党は議席を取りにくくなります。 1993(平成5)年6月、野党側は宮澤喜一内閣に対して内閣不信任案を衆議院へ出しました。自由民主党内部の改革派も内閣不信任案に賛成したため、衆議院は内閣不信任案を可決しました。<span style="color:#f29100">'''羽田孜'''</span>・小沢一郎などは自由民主党を離れて、新生党をつくりました。元自由民主党議員も新党さきがけをつくりました。 [[ファイル:Official portrait of Tsutomu Hata 1994.jpg|サムネイル|194x194ピクセル|羽田孜]] 宮澤喜一首相は衆議院を解散しました。1993年7月の衆議院議員総選挙結果で自由民主党は過半数を下回り、日本社会党も当選議員を大きく減らしました。一方、新生党・日本新党・新党さきがけなどは、当選議員を大きく増やしました。なお日本新党の政党代表は元熊本県知事の<span style="color:#f29100">'''細川護熙'''</span>でした。当衆議院議員総選挙で日本新党議員57人を立候補させて35人も当選しました。 総選挙後、日本共産党以外の非自民8党派は一緒に政権をつくりました。1993年8月、日本新党の細川護熙が内閣総理大臣となりました。日本社会党・新生党・公明党・日本新党・民社党・新党さきがけ・社会民主連合の7党と民主改革連合[参議院の会派]が細川護熙内閣を支えました。 55年体制からここまで保守の自由民主党と革新の日本社会党が政治の中心になっていました。その自由民主党が初めて野党になり、自由民主党単独政権も38年目で幕を閉じました(55年体制の崩壊)。 細川護熙内閣は政治改革を進め、政治改革関連四法を1994年に決めました。公職選挙法も変わりました。衆議院議員総選挙は従来の中選挙区制をやめて、小選挙区制と比例代表制の選挙区割り[<span style="color:#f29100">'''小選挙区比例代表並立制'''</span>]から当選議員まで決まりました。 [[ファイル:Tomiichi Murayama 19940630.jpg|サムネイル|189x189ピクセル|村山富市]] 細川護熙内閣は関税及び貿易に関する一般協定(General Agreement on Tariffs and Trade:GATT)のウルグアイ・ラウンドの内容を認めて、日本も外国産のコメを一部輸入するようになりました。一方、味方側の各政党は意見の食い違いから争いました。さらに細川護熙も東京佐川急便事件に関わっており、この政治資金疑惑から1994年に内閣総理大臣をやめました。 1994年4月、新生党の羽田孜が内閣総理大臣になりました。しかし、日本社会党は新生党と一緒に内閣を支えなくなりました。羽田孜は国会議員の賛成を集められなくなり、約2か月で首相を辞めました。1994年6月、自由民主党は元野党側の日本社会党・新党さきがけと一緒に内閣を支えました[自社さ連立政権]。日本社会党の<span style="color:#f29100">'''村山富市'''</span>が内閣総理大臣になり、自由民主党も政権へ戻りました。一方、非自民連立政権側の新生党・日本新党・公明党・民社党などは1つにまとまって新進党をつくりました。 従来の日本社会党基本政策を村山富市内閣で大きく変えました。日本社会党は自衛隊を合憲としつつ日米安全保障条約と消費税までも受け入れました。こうして自由民主党と日本社会党の政策は近くなり、日本社会党の不支持者を増やしました。1995年、アジア・太平洋戦争終戦から50年を迎えました。国会は戦後50年目の反省文内容をまとめました。8月15日、村山富市内閣総理大臣はアジア・太平洋戦争の反省とお詫びを<span style="color:#f29100">'''「戦後50周年の終戦記念日にあたって」'''</span>で伝えました(<span style="color:#f29100">'''村山談話'''</span>)。 現地の国民は日本側の植民地支配と侵略から被害を受けており、村山談話でその反省とお詫びを該当国首脳へ伝えました。その後の内閣も村山談話を受け継ぎました。政府は戦後50年目に合わせて、日本とアジア諸国の近現代史資料を国民へ広く公開しました。さらにインターネットでも歴史資料を公開したいから、アジア歴史資料センター開く準備をしました。2001年、アジア歴史資料センターを開きました。政党の結成・解党・合流まで活発になり、各政党のどこにも入らない無党派層も増えました。以降は単独政党のみで内閣を支えきれなくなり、複数政党と一緒に内閣を支えました。 == バブルの崩壊 == プラザ合意後、大量のお金が土地購入・株式購入のために使われ、土地の値段・株価[資産価格]が次第に上がりました(資産インフレ)。1989(平成元)年、日本銀行は銀行へお金をあまり貸さなくなり、政府も土地の値段を上げすぎないようにしました(金融引き締め政策)。1990年代に入ってから、土地の値段・株価は下がり始めました。日経平均株価は、1989年12月末に3万8915円まで上がりました。しかし、その後は株式売却が増えて株価もいきなり下がり、1992年8月に1万4309円まで下がりました。土地の値段も1991年頃から下がり始め、1992年以後は日本各地で下がりました。2000年代半ばになると、大阪の一部商業地は一番高い時期の値段から約10分の1まで下がりました。こうして土地や株式の大幅な値上がりは終わり、1980年代後半のバブル経済は終わりました。 ★日本の実質経済成長率の推移 [[ファイル:GDP_growth_rate_in_Japan.svg|代替文=日本の実質経済成長率の推移|フレームなし|924x924px]] 日本の景気は1991年から悪くなりました('''平成不況''')。実質経済成長率は1992年に1.3%、1993年に1%未満まで下がりました。1992年を3か月ずつに分けて見ると、4~6月は-3.3%となり、前の3か月より国内経済が小さくなりました。7~9月と10~12月もそれぞれ-0.1%となりました。第1次石油危機後に2期連続の経済縮小時期はあっても、3期連続の経済縮小は戦後初めてでした。僅かな景気回復時期も平成不況の途中にありました。しかしすぐに経済縮小となり、平成不況が長年続きました。 バブル経済当時の国民は金融機関からお金を借りて、株価と地価をより高い価格で買いました。金融機関は不動産会社にもお金を貸しました。バブル崩壊後、株価と地価が大きく下がりました。国民は株と土地を全て売っても借金を返せなくなりました。国民の借金も金融機関へ返ってこなくなりました(不良債権)。金融機関は株と土地を債権として持っており、不良債権から金融機関も大赤字になりました。 金融機関は不良債権処理にずっと追われて、さらに苦しくなりました。その結果、金融機関は不良債権の心配からお金を貸さなくなりました。企業は金融機関からお金を借りにくくなりました。国民も「この金融機関は大丈夫か」と不安を感じるようになり、金融機関はさらに苦しくなりました。その後、企業は新しい商品を作れなくなり、新しい工場を建てられなくなり、新しい機械も買えなくなりました。地価の下落・株価の下落・不良債権の増加・金融機関の経営悪化・金融機関の融資停止が全て重なって景気も次第に悪くなりました('''複合不況''')。 当時の政府と日本銀行はこれまでの不況と同じように、財政支出の拡大・低金利政策から数年で景気も回復するかもと思っていました。この誤対策は複合不況に一切効果ありません。住宅金融専門会社は1995年頃から相次いでつぶれました。1997年、北海道拓殖銀行と山一証券がつぶれました。1998年、日本債券信用銀行と日本長期信用銀行がつぶれました。このように大手金融機関がつぶれると、国民も他の金融機関も危ないのではないかと不安になりました。政府は金融システムまで止まらないように、倒産寸前の大手金融機関などに大量の公的資金を入れました。<gallery mode="nolines" widths="200" heights="200"> ファイル:The Hokkaido Takushoku Bank.JPG|旧北海道拓殖銀行本店 ファイル:Kayabacho Tower, at Shinkawa, Chuo, Tokyo (2019-01-02) 02.jpg|旧山一證券本社 ファイル:日債銀本店.jpg|旧日本債券信用銀行本店 ファイル:Shinsei Bank (head office 1).jpg|旧日本長期信用銀行本店 </gallery>1998年、小渕恵三が内閣総理大臣になりました。小渕恵三内閣も大型予算から景気を回復させしようとしました。小渕内閣が公共投資を増やして国民のお金を回そうとしても複合不況に一切効果ありません。こうして、公債発行残高は増えました。物価は1990年代後半からずっと下がり続けました(デフレスパイラル)。 [[ファイル:Unemployment Rate of Japan 1953-2009.jpg|サムネイル|395x395ピクセル|日本の失業率]] 企業は赤字なので、生き残るために経営の効率化[事業整理・人員削減・雇用調整・海外進出など]を進めました(リストラクチャリング)。中小企業の倒産も増えて、中高年労働者の解雇・中高年労働者の早期退職・新卒採用の削減から企業の人件費を大幅に減らしました。バブル景気の時期は労働者不足から「売り手市場」でも、バブル崩壊後から「買い手市場」へ変わりました。1990年代半ばから2000年代前半、企業は新卒採用を大幅に減らしました(就職氷河期)。1998年の完全失業率は4%を超え、2001年の完全失業率で5%になりました。 失業者が増えると労働者も「自分も仕事を失うかもしれない」と不安になり、個人消費を減らしました。消費者は同じような商品なら出来るだけ安い商品を選ぶようになり、ブランド品・高級品を買ってくれなくなりました。商品が売れなくなると、会社も少量生産・既存工場・既存機械だけで行うようになりました。その結果、会社の利益がさらに減って、人員削減・採用縮小もさらに進みました。株価と地価の下落から不良債権が増えて、金融機関の経営も苦しくなり、企業へお金を貸せなくなりました。 円高も国際分業も進みました。1994年、1ドルが100円を割り込みました。輸出主導・量産指向型産業[自動車・電子・家電・事務機器など]は海外で売れにくくなりました。また、バブル崩壊後の不景気から国内の購入者も減りました。生産費用を少しでも減らすため、労働者の給料が日本より低いアジア諸国[中国など]へ工場を移すようになりました[国内工場の閉鎖・国内工場の海外移転]。その結果、地元企業・周辺店舗の売り上げを減らし、失業者を増やしました(地域'''産業の空洞化''')。 繊維産業の事業所数は減り続けました。2015年の繊維産業の事業所数は1991年と比べて約4分の1になりました。国内衣料品市場のうち海外衣料品購入割合は1991年で52%になり、2017年で97%まで上がりました。多数の多国籍企業が1990年代後半に日本企業を合併したり、買収したりしました。企業が日本型雇用を取り入れていても競争力強化・経営効率化から人員削減・能力給の導入を進めました。その結果、働き方の不安定さが広がりました。 日本は技術面でも負けています。1980年代、日本企業はエレクトロニクス[電子機器]・新素材・バイオテクノロジーなどの技術でアメリカに追いつこうとしていました。1990年代から情報通信技術の活用や生産性の伸びでアメリカ合衆国に負けました。商品は日本国内で売れにくくなり、業務内容も変わっていきました。そのため、日本企業は海外企業に負けないような対策を取りました。 バブル崩壊後、銀行制度・企業制度も変えられました。「日本版金融ビッグバン」を1996年に打ち出して、銀行・証券会社などにも規制を緩めて金融の自由化・国際化を進めました。1997年の独占禁止法改正から禁止の持株会社を再度認めました。企業は持株会社からグループ内の会社をまとめ直したり、経営の進め方を変えたりしやすくなり、その後の企業再編・金融再編にもつながりました。 以前の大規模小売店舗法は店舗面積500平方メートル以上の大規模小売店舗出店条件として出店規模・営業時間・営業日数などを定めていました。しかし、大規模小売店舗は中小小売業者の近くにも自由に出店しており、中小小売業者のお客様まで消えました。そのため、政府は大規模小売店舗の立地場所を1998年から制限しました(大規模小売店舗立地法)。中小小売業者から流れすぎないように守りながら、大規模小売店舗も中小小売業者も商売を続けられるようにしました。2000年、大規模小売店舗法を廃止しました。[[ファイル:Asian Financial Crisis EN-2009-05-05.png|サムネイル|273x273px|アジア通貨危機の影響国]]企業再編・合併は政府の規制緩和から広がり、海外企業と国内企業の協力・合併も増えました。その流れから六大企業集団もまとまりました。金融業界でも銀行などが倒産したり、別の銀行と合併したりしました。その結果、日本の金融業界は三井住友グループ[旧三井系と旧住友系]・三菱UFJ[旧三菱系と三和系]・みずほグループ[旧第一勧銀系と旧富士系]の三大金融グループへまとまりました。 国内長期不況で苦しむ中、アジア諸国の経済は大成長しました。しかし短期海外資金の依存・金融機関の過剰な借入れ・企業の過剰な借入れ・金融制度の弱さ・投機資金の流入などから海外投資家が危機感を示して一斉に海外資金を回収・売却・国外移動を行いました。1997年、タイの通貨バーツの価値が大きく下がりました。海外投資家は東アジア・東南アジアから次々と海外資金を回収・売却・国外移動を行いました(アジア通貨危機)。その結果、東アジア・東南アジア諸国の金融と経済は大きな爪痕を残しました。債務問題は韓国などで大きくなり、国際通貨基金(International Monetary Fund:IMF)の支援を受けました。アジア通貨危機は日本経済と日本の金融機関にも大きな爪痕を残して、不良債権問題をさらに悪化させました。 日本政府はアジア通貨危機の発生から地域的な金融協力制度[アジア通貨基金構想]を出しました。しかし、アメリカ合衆国の反対から日本政府は二国間金融支援と新宮沢構想などに切り替えて、東アジア諸国を金銭面で助けました。 バブル経済崩壊後の平成不況はずっと続きました。景気は2002年初期に少しだけ上向きました。しかし、政府が公共事業中心の従来型景気対策を抑えながら不良債権処理と規制改革を進めました。その結果、企業は引き続き大規模なリストラと雇用調整を行いました。当初、バブル崩壊後の長期停滞は「失われた10年」とよばれました。その後も日本経済の停滞が強く、「失われた20年」「失われた30年」とよばれました。 == 行政改革と日米安保の変化 == 1990年代後半、大規模災害の対策・重大事件への対策・行政改革・財政改革・金融改革・冷戦後の日米安全保障体制見直し・政党の組み直しを行いました。1995年1月17日、阪神・淡路地域でマグニチュード7.3の<span style="color:#f29100">'''阪神・淡路大震災[兵庫県南部地震]'''</span>が起こりました。神戸市を中心に6400人以上が亡くなり、建造物・高速道路までも大きく壊れました。当地震で大都市は自然災害に弱く、都市政策・耐震化基準・防災体制の見直しをしました。また、国民は被災地に入って、避難民[被災者]の生活を支えたり、被災地の後片付けを手伝ったりしました。この活動からボランティア活動が全国に広がりました。 1995年3月20日、オウム真理教集団は東京都の地下鉄でサリンを撒いて、多数の死傷者を出しました(<span style="color:#f29100">'''地下鉄サリン事件'''</span>)。このように阪神・淡路大震災と地下鉄サリン事件・少年犯罪の殺人事件・児童虐待などが何度も報道機関で取り上げられ、旧価値観的な安全神話も崩れて国民の意識も変わりました。<gallery mode="packed" widths="200" heights="200"> ファイル:Hanshin Expressway Nada b059.jpg|阪神淡路大震災被災後 ファイル:【地下鉄サリン事件】除染を行う自衛隊員と警察官.jpg|地下鉄サリン事件 ファイル:Ryutaro Hashimoto 19960111.jpg|橋本龍太郎 ファイル:Ryuhei Kawada 20240307.jpg|川田龍平 </gallery>1995年9月、自由民主党総裁選挙から<span style="color:#f29100">'''橋本龍太郎'''</span>が選ばれました。1996年1月、村山富市首相退陣後の内閣総理大臣指名選挙で橋本龍太郎が選ばれました。橋本内閣でも自民党・社会民主党・新党さきがけの3党が引き続き協力して、政策を進めました。なお日本社会党は自衛隊・日米安全保障条約の賛成側に回り、1996年に党名を社会民主党へ変えました。 薬害エイズ問題も大きく取り上げられました。橋本龍太郎内閣厚生大臣の菅直人は薬害エイズ被害者[川田龍平など]に謝罪しました。その後、国と製薬会社と被害者が話し合い、和解しました。 1996年、新しい選挙制度で初めて衆議院議員総選挙が行われ、自由民主党の議席を大きく増やしても、過半数を下回りました。社会民主党と新党さきがけは第2次橋本内閣から国務大臣を出さなくなり、閣外協力に変わりました。その結果、自由民主党単独政権に戻りました。 橋本龍太郎内閣は冷戦後の国際変化・国内経済・政府問題を解決するため、行政・財政・金融の各分野を見直しました。行政改革は政府組織を減らしたり、類似の政府組織を1つにまとめたりして、首相などの政策案を出しやすくしました。1998年、中央省庁等改革基本法が導入されて中央省庁等改革関連法から行政改革の方針を決めました。 2001年1月、政府はこの行政改革の方針から中央省庁を1府22省庁から1府12省庁に減らしました。その結果、内閣総理大臣は各省庁へ指示を出して、政府全体の政策を進めやすくしました。2007年、防衛庁を防衛省に上げました。 ★省庁再編 {| class="wikitable" !再編前 !再編後 !再編前 !再編後 |- |内閣官房 |内閣官房 |大蔵省 |財務省 |- | rowspan="2" |総理府 金融再生委員会 経済企画庁 沖縄開発庁 | rowspan="2" |内閣府 |科学技術庁 文部省 |文部科学省 |- |厚生省 労働省 |厚生労働省 |- |国家公安委員会 |国家公安委員会 |農林水産省 |農林水産省 |- |防衛庁 |防衛庁(省) |通商産業省 |経済産業省 |- |総務庁 郵政省 自治省 |総務省 | rowspan="2" |北海道開発庁 国土庁 建設省 運輸省 | rowspan="2" |国土交通省 |- |法務省 |法務省 |- |外務省 |外務省 |環境庁 |環境省 |} 橋本龍太郎内閣は国債の発行額を減らそうとしました。1997年4月、財政構造改革法に従って消費税率を3%から5%に引き上げて公共事業費などを減らしました。国債発行額は1970年代後半から増えても1980年代末で一度減りました。1990年代に入り、公共投資を再拡大させてから大幅な国債発行額増加に向かいました。 しかし、国民は消費税率の引き上げなどから財布の紐もきつくなり、金融機関も生き残れなくなりました。さらにアジア通貨・金融危機も起きて、日本経済は再不況になりました。やがて、銀行同士は金融不安の拡大から合併して1つの銀行になりました。1997年度の実質経済成長率は-0.4%となり、1974年度[第1次石油危機直後]以来のマイナス成長になりました。1998年度の実質経済成長率は-2%まで下がり、平成不況の大きさを改めて物語りました。 [[ファイル:Official Portrait of President William Jefferson Clinton - DPLA - 4697184146b3b6e2d6791b8f3c297476.jpg|サムネイル|221x221ピクセル|ビル・クリントン大統領]] 冷戦後、橋本龍太郎内閣は日米安全保障体制を見直しました。アメリカのビル・クリントン大統領が1996年4月に日本を訪れ、橋本首相と話し合って<span style="color:#f29100">'''日米安全保障共同宣言'''</span>を発表しました。日米安全保障共同宣言から日本とアメリカは日本防衛以外にもアジア太平洋地域の戦争防止・紛争防止まで努めていくようになりました。 自衛隊がアメリカ軍に必要物資を運ぶなどの後方支援についても、日米防衛協力のための指針を見直しました。1997年、日本政府とアメリカ合衆国政府は「新しい日米防衛協力のための指針(新ガイドライン)」を作りました。 日本が外国から直接攻撃されても直接攻撃されていなくても、日本周辺国の戦争などから日本の平和と安全に大きく関わっていたらアメリカ合衆国側も新ガイドラインに従って助け合いました(周辺事態)。ただし日本から何キロ以内というような距離だけだとアメリカ合衆国側は何もしません。 地球温暖化防止京都会議は1997年に開かれ、温室効果ガスの削減目標などを盛り込む京都議定書を採択しました。また、橋本龍太郎内閣は従来のアイヌ民族政策を大きく変えました。 アイヌ民族は1946年2月に北海道アイヌ協会を作り、アイヌ民族の権利を政府に求めました。北海道旧土人保護法からアイヌ民族用の土地[給与地]を貰っても、農地改革で買収されたくありませんでした。しかしアイヌ民族をずっと厳しく人種差別しており、アイヌ民族の一部は北海道から逃げました。その後、北海道アイヌ協会は名前を北海道ウタリ協会に変えました。[[ファイル:UPOPOY 202608.jpg|サムネイル|民族共生象徴空間ウポポイ]]1980年代、世界各地の先住民族が先住民族の権利を政府に求めました。北海道ウタリ協会は政府に北海道旧土人保護法を廃止して新しい法律を作ってほしいと求めました。1997年、国会はアイヌ民族文化をずっと守っていくために'''アイヌ文化振興法'''を作り、北海道旧土人保護法を廃止しました。 その後もアイヌ民族政策は変わりました。2008年、国会はアイヌ民族を日本の先住民族と認めて、内閣へアイヌ民族の権利・生活・文化なども認めてほしいとお願いしました。民族団体の名前も北海道ウタリ協会から北海道アイヌ協会に戻しました。 2019(令和元)年、政府はアイヌ施策推進法で日本の「先住民族」にアイヌ民族を初めて入れました。アイヌ施策推進法から北海道アイヌ協会側も話し合いに参加して、アイヌ民族向けの新しい政策を行っています。2020年、北海道白老町に民族共生象徴空間ウポポイが開かれました。アイヌ語講座・アイヌ文化活動・アイヌ語活動が日本各地で開かれてもいます。 [[ファイル:Keizo Obuchi 19980730.jpg|サムネイル|168x168ピクセル|小渕恵三]] 1998年7月の参議院議員選挙で自由民主党議席数は大きく減らし、この結果から橋本龍太郎も内閣総理大臣を辞めました。これを受けて、<span style="color:#f29100">'''小渕恵三'''</span>が内閣総理大臣に選ばれました。小渕恵三内閣はバブル崩壊に消費税増税・金融不安・アジア通貨危機なども重なり、橋本龍太郎の財政再建路線を修正しました。小渕恵三内閣は土木工事・公共施設建築工事の大型予算を組んでその潤いから複合不況まで立て直そうとしました。その結果、政府は赤字国債発行額を再び大幅に増やしました。 1999年、小渕恵三内閣は国会法案の賛成を増やしたいから自由党〔1月〕・公明党〔10月〕も自由民主党と一緒に内閣を支えていました[自自公連立政権の開始]。その結果、自由民主党・自由党・公明党は衆議院・参議院の両方で過半数の議席を持つようになりました。小渕恵三内閣から自由民主党と公明党は2025年10月まで一緒に内閣を支えました。 1999年、小渕恵三内閣は'''新ガイドライン関連法'''をまとめました。新ガイドライン関連法の<span style="color:#f29100">'''周辺事態安全確保法'''</span>は日本周辺国家の暴走で自国の平和と安全まで守れなくなったら、自衛隊を出してアメリカ軍へ必要物資を送りました。 [[ファイル:G8 2000 group photo (kremlin.ru).jpg|サムネイル|223x223px|第26回主要国首脳会議]] 1999年、小渕恵三内閣は日の丸と君が代を国旗・国歌法へ初めて記しました。また、国民は情報公開法に従って官公庁へ資料を見せてほしいとお願いしやすくなりました。国会は憲法調査会で憲法を変えるかどうか話し合いました。小渕恵三内閣は2000年に九州・沖縄で第26回主要国首脳会議[サミット]開くと決めました。 この時期は野党も大きく変わりました。社会民主党の支持者は少しずつ減りました。新進党は議員の大量離脱から1997年末になくなりました。旧新進党の議員は違う政党[自由党・新党平和・民主党]に入りました。1996年、鳩山由紀夫・菅直人が'''民主党'''を結成しました。その後、旧新進党議員も民主党へ入りました。さらに、新党平和・黎明クラブを公明党に戻しました。 こうして、自由民主党と日本社会党が長く争う55年体制も終わりました。55年体制が終わっても、自由民主党と民主党の保守二大政党制へ繋がりませんでした。自由民主党が再び政権へ戻っても、自由党・公明党と一緒に内閣を支えていました。 == 資料出所 == * 平雅行、横田冬彦ほか編著『日本史探究』実教出版株式会社 2023年 * 佐藤信、五味文彦ほか編著『詳説日本史探究』株式会社山川出版社 2023年 * 高埜利彦、高村直助ほか編著『日本史A 改訂版』株式会社山川出版社 2016年 * 渡邊晃宏ほか編著『日本史探究』東京書籍株式会社 2023年 * 伊藤純郎ほか編著『高等学校日本史探究』株式会社清水書院 2023年 * 大橋幸泰ほか編著『高等学校日本史探究』株式会社第一学習社 2023年 * 山中裕典著'''『'''改訂版 大学入学共通テスト 歴史総合、日本史探究の点数が面白いほどとれる本'''』'''株式会社KADOKAWA 2024年 * 佐藤信、五味文彦ほか編著『詳説日本史研究』株式会社山川出版社 2017年 * 河合敦著『世界一わかりやすい河合敦の日本史B[近・現代]の特別講座』株式会社KADOKAWA 2014年(絶版本) * 外園豊基編集代表『最新日本史図表』株式会社第一学習社 2026年 * 東京法令出版編著『歴史資料館 日本史のライブラリー』東京法令出版株式会社 2026年 [[カテゴリ:高等学校日本史探究|あらたなせいきのにほんへ]] [[カテゴリ:20世紀]] kq87crrsxsy3soc4gof3uqijalzlh7g JavaScript/encodeURIComponent 0 43705 305086 265458 2026-10-22T11:39:50Z Jcb 92857 305086 wikitext text/x-wiki <code>encodeURIComponent()</code> は、URIのコンポーネント(特にクエリパラメータ)をより厳密にエンコードするグローバル関数です。特殊文字を安全にエンコードし、URIの各部分を正確にエンコードすることができます。 == 構文 == :<syntaxhighlight lang=js copy> encodeURIComponent(uriComponent) </syntaxhighlight> === パラメータ === ; <code>uriComponent</code> : エンコードするURIのコンポーネント(文字列) === 戻り値 === : エンコードされたURIコンポーネント文字列 === 例外 === ; <code>URIError</code> : 非常に稀ですが、不正な入力時にスローされる可能性があります == 基本的な使用例 == :<syntaxhighlight lang=js copy> // クエリパラメータのエンコード const searchTerm = "こんにちは 世界!"; const encodedParam = encodeURIComponent(searchTerm); console.log(encodedParam); // "%E3%81%93%E3%82%93%E3%81%AB%E3%81%A1%E3%81%AF%20%E4%B8%96%E7%95%8C!" const url = `https://example.com/search?q=${encodedParam}`; console.log(url); // "https://example.com/search?q=%E3%81%93%E3%82%93%E3%81%AB%E3%81%A1%E3%81%AF%20%E4%B8%96%E7%95%8C!" </syntaxhighlight> == エンコード対象の文字 == <code>encodeURIComponent()</code> は以下の文字を含むほぼすべての文字をエンコードします: * 予約文字 <code>; , / ? : @ & = + $ #</code> * スペース文字 * 非ASCII文字 * コントロール文字 * URLで特別な意味を持つ文字 == エンコードの比較 == {| class="wikitable" |- ! メソッド !! エンコード範囲 !! 主な用途 |- | <code>encodeURI()</code> || 限定的 || 完全なURL |- | <code>encodeURIComponent()</code> || 包括的 || クエリパラメータ、パス要素 |- | <code>escape()</code> (非推奨) || 制限あり || 古いブラウザ対応 |} == 重要な特徴 == * クエリパラメータの安全なエンコード * クロスサイトスクリプティング (XSS) 対策に有効 * RESTful APIリクエストで広く使用 == 高度な使用例 == :<syntaxhighlight lang=js copy> // 動的なクエリ文字列の生成 function createAPIUrl(params) { const encodedParams = Object.keys(params) .map(key => `${encodeURIComponent(key)}=${encodeURIComponent(params[key])}`) .join('&'); return `https://api.example.com/data?${encodedParams}`; } const apiParams = { search: "JavaScript 教程", category: "プログラミング", page: 1 }; const apiUrl = createAPIUrl(apiParams); console.log(apiUrl); // "https://api.example.com/data?search=JavaScript%20%E6%95%99%E7%A8%8B&category=%E3%83%97%E3%83%AD%E3%82%B0%E3%83%A9%E3%83%9F%E3%83%B3%E3%82%B0&page=1" </syntaxhighlight> == セキュリティ考慮事項 == * XSS攻撃を防ぐ重要な関数 * サニタイズの第一歩 * 信頼できないユーザー入力のエンコードに不可欠 == 注意点 == * 完全なセキュリティ対策ではない * バックエンドでも追加のバリデーションが必要 * パフォーマンスへの影響は最小限 == 関連メソッド == * <code>[[JavaScript/decodeURIComponent|decodeURIComponent()]]</code> * <code>[[JavaScript/encodeURI|encodeURI()]]</code> * <code>[[JavaScript/decodeURI|decodeURI()]]</code> == ブラウザ互換性 == * すべてのモダンブラウザで完全サポート * Internet Explorer 5.5以降 * ECMAScript 3以降で標準化 == 仕様 == * ECMAScript 仕様 * WHATWG URL 仕様 * {{RFC|3986}} (URI規格) == 脚注 == <references /> {{DEFAULTSORT:ENCODEURICOMPONENT}} [[Category:JavaScript]] [[Category:Web標準]] fxw04h234v51kxnhlyv3ikzoj9imxdm HTML Living Standard/lang属性 0 44174 305090 267205 2026-10-22T11:44:56Z Jcb 92857 305090 wikitext text/x-wiki == lang属性 == '''lang属性'''は、要素内で使用される言語を指定するためのグローバル属性です。この属性は、スクリーンリーダーや翻訳ツール、検索エンジンに対して、指定された言語に基づく適切な処理を促します。 === 基本構文 === :<syntaxhighlight lang=html copy> <element lang="言語コード"></element> </syntaxhighlight> 言語コードは、[https://www.ietf.org/rfc/bcp/bcp47.txt BCP 47]の仕様に基づく形式で指定します(IETF Best Current Practice。現在は {{RFC|5646}} と {{RFC|4647}})。例として、以下のコードが一般的に使用されます。 * <code>en</code>: 英語 * <code>ja</code>: 日本語 * <code>fr</code>: フランス語 * <code>zh-CN</code>: 中国語(簡体字) * <code>es-MX</code>: スペイン語(メキシコ) === 効果 === * '''アクセシビリティ:''' スクリーンリーダーが指定された言語に基づいて正確な発音を行います。 * '''検索エンジン最適化 (SEO):''' 検索エンジンが言語を正しく理解することで、適切な検索結果を表示します。 * '''翻訳ツール:''' 自動翻訳ツールが指定された言語に基づいて動作します。 === 使用例 === 以下は、lang属性を使用して要素の言語を指定する例です。 :<syntaxhighlight lang=html copy> <p lang="en">This paragraph is in English.</p> <p lang="ja">この段落は日本語で書かれています。</p> <p lang="fr">Ce paragraphe est en français.</p> </syntaxhighlight> この例では、それぞれの段落が異なる言語で指定されています。 === 親子要素間の継承 === <code>lang</code>属性は、親要素の設定が子要素にも継承されます。ただし、子要素で明示的に<code>lang</code>属性を設定すると、その設定が優先されます。 :<syntaxhighlight lang=html copy> <div lang="en"> <p>This is in English.</p> <p lang="ja">この段落は日本語で書かれています。</p> </div> </syntaxhighlight> この例では、最初の段落は<code>en</code>(英語)として扱われ、2番目の段落は<code>ja</code>(日本語)として扱われます。 === JavaScriptを使用した制御 === <code>lang</code>属性は、JavaScriptを使用して動的に変更することができます。 :<syntaxhighlight lang=html copy> <p id="text" lang="en">This text is in English.</p> <button id="switch-lang">言語を切り替える</button> <script> const text = document.querySelector("#text"); const switchLang = document.querySelector("#switch-lang"); switchLang.addEventListener("click", () => { if (text.lang === "en") { text.lang = "ja"; text.textContent = "このテキストは日本語です。"; } else { text.lang = "en"; text.textContent = "This text is in English."; } }); </script> </syntaxhighlight> この例では、ボタンをクリックすることで、<code>lang</code>属性と要素の内容を切り替えます。 === HTML文書全体の言語指定 === HTML文書全体の言語は、<code><[[../html|html]]></code>要素の<code>lang</code>属性で指定します。 :<syntaxhighlight lang=html copy> <!DOCTYPE html> <html lang="ja"> <head> <meta charset="UTF-8"> <title>言語指定の例</title> </head> <body> <p>この文書は日本語です。</p> </body> </html> </syntaxhighlight> この例では、文書全体が<code>ja</code>(日本語)として扱われます。 === 注意点 === * 言語コードは正確に指定する必要があります。曖昧なコードや誤ったコードを使用すると、期待した動作が得られない場合があります。 * アクセシビリティやSEOの観点から、適切な<code>lang</code>属性を指定することが推奨されます。 * <code>lang</code>属性をフォント指定の目的で用いてはいけません。CSSのFONT関連プロパティを用いて指定します。 === 互換性 === :{| class="wikitable" |+ 互換性 ! ブラウザ || サポート状況 |- | Chrome || 対応 |- | Edge || 対応 |- | Firefox || 対応 |- | Safari || 対応 |- | Opera || 対応 |} === 関連項目 === * [[../アクセシビリティ|アクセシビリティ]] * [[../HTML属性|HTML属性]] * [[../SEO|検索エンジン最適化 (SEO)]] === 参考文献 === * [https://html.spec.whatwg.org/multipage/dom.html#attr-lang WHATWG HTML Living Standard - lang attribute] * [https://developer.mozilla.org/en-US/docs/Web/HTML/Global_attributes/lang MDN Web Docs - lang attribute] {{DEFAULTSORT:LANGそくせい}} [[Category:HTML Living Standard]] [[Category:HTML]] [[Category:グローバル属性]] [[Category:アクセシビリティ]] [[Category:SEO]] j5eplfnr8efvi3j0beci0ncy3z2n8cd スクリプティング言語 0 44285 305026 267518 2026-10-22T09:30:43Z Jcb 92857 305026 wikitext text/x-wiki == はじめに == '''スクリプティング言語'''は、プログラムやタスクの自動化、既存のコンポーネントの制御や連携に使用されるプログラミング言語です。コンパイル言語と比較して、より簡単に習得でき、迅速な開発が可能という特徴を持っています。本書では、特に重要な3つのスクリプティング言語である[[JavaScript]]、[[Ruby]]、[[Lua]]について詳しく解説します。 == JavaScript == [[JavaScript]]は、当初Webブラウザ上で動作するスクリプティング言語として開発されましたが、現在ではサーバーサイド開発やデスクトップアプリケーション開発にも使用される汎用的な言語となっています。 === 基本的な言語機能 === :<syntaxhighlight lang=js copy> // モダンなクラス定義 class BankAccount { constructor(initialBalance = 0) { this.balance = initialBalance; } deposit(amount) { this.balance += amount; return this.balance; } withdraw(amount) { if (amount > this.balance) { throw new Error('残高不足です'); } this.balance -= amount; return this.balance; } getStatement() { return <code>現在の残高: ${this.balance}円</code>; } } // 非同期処理 async function processTransaction(account, amount) { try { const result = await account.deposit(amount); console.log(<code>取引成功: 残高 ${result}円</code>); } catch (error) { console.error('取引エラー:', error); } } // イベント処理とクロージャ function createCounter() { let count = 0; return { increment() { return ++count; }, decrement() { return --count; }, getCount() { return count; } }; } </syntaxhighlight> === モダンなJavaScript機能 === :<syntaxhighlight lang=js copy> // 分割代入とスプレッド演算子 const config = { host: 'localhost', port: 3000, ssl: true }; const { host, ...rest } = config; // Promiseチェーン function fetchUserData(userId) { return fetch(<code>/api/users/${userId}</code>) .then(response => response.json()) .then(data => { const { name, email } = data; return { name, email }; }) .catch(error => { console.error('ユーザーデータの取得に失敗:', error); throw error; }); } </syntaxhighlight> == Ruby == [[Ruby]]は読みやすさと書きやすさを重視した言語設計が特徴で、「プログラミングを楽しむ」という思想のもと開発されました。Webアプリケーションフレームワークのリファレンス実装としても知られています。 === オブジェクト指向プログラミング === :<syntaxhighlight lang=ruby copy> # クラスとモジュール module Loggable def log(message) puts "[#{Time.now}] #{self.class}: #{message}" end end class Task include Loggable attr_reader :title, :created_at def initialize(title) @title = title @created_at = Time.now @completed = false log("タスクが作成されました") end def complete @completed = true log("タスクが完了しました") end def completed? @completed end end # メソッド呼び出しの例 task = Task.new("重要な会議") puts task.title task.complete puts task.completed? </syntaxhighlight> === メタプログラミング機能 === :<syntaxhighlight lang=ruby copy> # 動的メソッド定義 class String def method_missing(method_name, *args) if method_name.to_s =~ /^to_(.+)_case$/ self.split('_').map(&:capitalize).join($1) else super end end end puts "hello_world".to_space_case # "Hello Space World" # クラスの拡張 class Module def attr_logged(*names) names.each do |name| define_method(name) do puts "属性 #{name} が参照されました" instance_variable_get("@#{name}") end define_method("#{name}=") do |value| puts "属性 #{name} が更新されました" instance_variable_set("@#{name}", value) end end end end </syntaxhighlight> == Lua == [[Lua]]は軽量で高速な組み込み用スクリプティング言語として知られ、特にゲーム開発で広く使用されています。シンプルな言語仕様と優れたパフォーマンスが特徴です。 === 基本文法とテーブル === :<syntaxhighlight lang=lua copy> -- テーブルを使用したオブジェクト指向プログラミング local Player = {} Player.__index = Player function Player.new(name, health) local self = setmetatable({}, Player) self.name = name self.health = health self.inventory = {} return self end function Player:takeDamage(amount) self.health = self.health - amount print(string.format("%sの残りHP: %d", self.name, self.health)) end function Player:addItem(item) table.insert(self.inventory, item) print(string.format("%sが%sを手に入れた", self.name, item)) end -- 使用例 local player = Player.new("勇者", 100) player:takeDamage(20) player:addItem("魔法の剣") </syntaxhighlight> === コルーチンと状態管理 === :<syntaxhighlight lang=lua copy> -- コルーチンを使用した状態管理 function enemy_ai() local state = "patrol" local position = 0 while true do if state == "patrol" then position = position + 1 if position > 10 then state = "return" end elseif state == "return" then position = position - 1 if position < 0 then state = "patrol" end end print(string.format("現在位置: %d, 状態: %s", position, state)) coroutine.yield(position) end end -- AIの実行 local ai = coroutine.create(enemy_ai) for i = 1, 25 do coroutine.resume(ai) end </syntaxhighlight> == まとめ == [[JavaScript]]、[[Ruby]]、[[Lua]]はそれぞれ異なる用途と特徴を持つスクリプティング言語です。JavaScriptはWeb開発とクライアントサイドプログラミングで、Rubyは生産性の高いサーバーサイド開発で、Luaは組み込みシステムやゲーム開発で、それぞれ重要な役割を果たしています。これらの言語は、プログラミングの異なるニーズに応えつつ、高い生産性と柔軟性を提供しています。 == 参考文献 == * [https://ecma-international.org/publications-and-standards/standards/ecma-262/ ECMAScript仕様書] * [https://www.ruby-lang.org/ja/documentation/ Ruby言語仕様] * Programming in Lua(Roberto Ierusalimschy著) {{ISBN|978-8590379829}} {{DEFAULTSORT:すくりふていんくけんこ}} [[Category:スクリプティング言語|*]] [[Category:プログラミング言語]] pfunsfp2s8u00gbwy89bfsg2r1zlie0 GNU Core Utilities/date 0 44556 305084 268470 2026-10-22T11:39:10Z Jcb 92857 305084 wikitext text/x-wiki <code>date</code> コマンドは、現在の日時を表示または設定するコマンドです。GNU coreutils に含まれており、Linux では GNU 版が、FreeBSD では BSD 版が提供されています。基本的な動作は共通していますが、書式指定オプションや日付計算の機能に違いがあります。 == 基本的な使い方 == :<syntaxhighlight lang=sh copy> date </syntaxhighlight> 現在の日時を表示します。 == 主なオプション(GNU coreutils 版) == :{| class="wikitable" |+ 主なオプション ! オプション || 説明 |- | <code>+FORMAT</code> || 指定したフォーマットで日時を表示 |- | <code>-d, --date=STRING</code> || 指定した日時を基に日時を表示 |- | <code>-u, --utc</code> || UTC(協定世界時)で表示 |- | <code>--rfc-3339=TYPE</code> || {{RFC|3339}} 形式で日時を表示 |- | <code>-s, --set=STRING</code> || 指定した日時にシステム時刻を設定(root 権限が必要) |} == 例 == === 現在の日時を表示 === :<syntaxhighlight lang=sh copy> date </syntaxhighlight> ;出力例: :<syntaxhighlight lang=text> Mon Jan 31 12:34:56 JST 2025 </syntaxhighlight> === 指定フォーマットで日時を表示 === :<syntaxhighlight lang=sh copy> date "+%Y-%m-%d %H:%M:%S" </syntaxhighlight> ;出力例: :<syntaxhighlight lang=text> 2025-01-31 12:34:56 </syntaxhighlight> === 昨日の日付を表示 === :<syntaxhighlight lang=sh copy> date -d "yesterday" </syntaxhighlight> ;出力例: :<syntaxhighlight lang=text> Sun Jan 30 12:34:56 JST 2025 </syntaxhighlight> === 1週間後の日付を表示 === :<syntaxhighlight lang=sh copy> date -d "next week" </syntaxhighlight> === UTC(協定世界時)で日時を表示 === :<syntaxhighlight lang=sh copy> date -u </syntaxhighlight> === システム時刻を設定(root 権限が必要) === :<syntaxhighlight lang=sh copy> date -s "2025-02-01 00:00:00" </syntaxhighlight> == FreeBSD 版との違い == [[FreeBSD]] でも <code>date</code> コマンドは提供されていますが、GNU coreutils 版といくつか違いがあります。 === 主な違い: === # '''<code>-d</code> オプションの代替''' #* FreeBSD の <code>date</code> には <code>-d</code> オプションがない。 #* 代わりに <code>-v</code> を使って日付を計算できる。 #:<syntaxhighlight lang=sh copy> date -v-1d # 1日前 date -v+1w # 1週間後 </syntaxhighlight> # '''<code>-s</code> オプションの代替''' #* FreeBSD では <code>date</code> でシステム時刻を設定する場合、<code>-s</code> ではなく <code>YYYYMMDDHHMM.SS</code> 形式を使う。 #:<syntaxhighlight lang=sh copy> date 202502010000.00 </syntaxhighlight> # '''GNU coreutils 版を FreeBSD で使う方法''' #* <code>coreutils</code> パッケージをインストールすると <code>gdate</code> という名前で GNU 版 <code>date</code> が使える。 #:<syntaxhighlight lang=sh copy> pkg install coreutils gdate -d "yesterday" </syntaxhighlight> 詳しくは、それぞれの環境で <code>man date</code> を確認してください。 {{DEFAULTSORT:DATE}} [[Category:GNU Core Utilities]] eruu9ycj0wbru8yrl8ie2jkmp3q3qgi JavaScript/String/prototype/padStart 0 44988 305091 270176 2026-10-22T11:45:08Z Jcb 92857 305091 wikitext text/x-wiki {{Nav}} <code>[[../padStart|String.prototype.padStart()]]</code> は、文字列が指定した長さになるまで先頭に指定した文字列を追加するメソッドです。このメソッドは、文字列を整形したり、固定幅のフォーマットでデータを表示したりするために使用されます<ref>これは、数値や日付などを固定幅で表示する際に特に便利です。</ref>。 == 構文 == :<syntaxhighlight lang=javascript copy> str.padStart(maxLength [, fillString]) </syntaxhighlight> * <code>maxLength</code>: 結果の文字列の長さ。元の文字列の長さよりも小さい場合は、元の文字列がそのまま返されます。 * <code>fillString</code>: 埋め込みに使用する文字列。省略した場合は空白文字(<code>" "</code>)が使用されます。 == 例 == === 基本的な使用法 === 以下のプログラムは、<code>[[../padStart|String.prototype.padStart()]]</code> を使用して文字列を指定した長さに調整します。 :<syntaxhighlight lang=javascript copy> const str = 'abc'; console.log(str.padStart(10)); // " abc" console.log(str.padStart(10, '.')); // ".......abc" console.log(str.padStart(5, '123')); // "12abc" console.log(str.padStart(3)); // "abc"(変更なし) </syntaxhighlight> このプログラムでは、文字列 <code>"abc"</code> を異なる長さと埋め込み文字列でパディングした結果を示しています。 === 数値の桁揃え === 以下のプログラムは、数値を固定幅で表示するために <code>padStart()</code> を使用する例です。 :<syntaxhighlight lang=javascript copy> const numbers = [5, 25, 314, 1024]; // 4桁で0埋めして表示 for (const num of numbers) { const formattedNum = num.toString().padStart(4, '0'); console.log(formattedNum); } // 出力: // 0005 // 0025 // 0314 // 1024 </syntaxhighlight> このプログラムでは、数値を4桁の固定幅で表示するために <code>padStart()</code> を使用しています。これは、ファイル名の連番や識別子などで便利です。 === 日付のフォーマット === 以下のプログラムは、日付のフォーマットに <code>padStart()</code> を使用する例です。 :<syntaxhighlight lang=javascript copy> const date = new Date(); const year = date.getFullYear(); const month = (date.getMonth() + 1).toString().padStart(2, '0'); const day = date.getDate().toString().padStart(2, '0'); console.log(`${year}-${month}-${day}`); // 例: "2025-02-25" </syntaxhighlight> このプログラムでは、月と日を2桁で表示するために <code>padStart()</code> を使用して、標準的な日付フォーマット(YYYY-MM-DD, {{RFC|3339}} で定義されている形式の1つ)を作成しています。 === 注意点 === * '''元の文字列への影響''': <code>padStart()</code> メソッドは元の文字列を変更せず、新しい文字列を返します。 * '''maxLength''': 指定した <code>maxLength</code> が元の文字列の長さ以下の場合、元の文字列がそのまま返されます。 * '''fillString''': <code>fillString</code> が複数の文字を含む場合、必要な長さを満たすために繰り返し使用されますが、結果の文字列が <code>maxLength</code> を超えないように切り捨てられます。 * '''Unicode''': 文字列の長さはUnicodeコードポイントではなく、文字単位で計算されます。これは、特定の言語やシンボルで予期しない結果を生む可能性があります。 == 脚註 == <references /> == 外部リンク == * [https://tc39.es/ecma262/#sec-string.prototype.padstart ECMA-262::22.1.3.17 String.prototype.padStart ( maxLength [ , fillString ] )] {{Nav}} {{DEFAULTSORT:PADSTART}} [[Category:JavaScript]] o2uv9i7sxe3fbpjyya4bxcssjkgqqfa 終戦の詔書 0 48684 304978 304308 2026-10-21T13:59:43Z Linguae 449 /* 詔書の読解 */ 進捗 304978 wikitext text/x-wiki {{NDC|210|しゆうせんのしようしよ}} <!--【2026年8月14日起稿】--> *[[第二次世界大戦]]> <div style="font-family:游明朝;font-size:60pt;text-align:center;">終&#xE0101;戰ノ詔書 </div> <div style="background-color:#fbfbfb; font-size:13pt; width:800px;"><p style="line-height:1.9; margin-bottom: 10px; font-family:游明朝;"><span style="font-family:游明朝 Demibold;font-size:15pt;">終戦の詔書</span><ref>[https://kotobank.jp/word/%E7%B5%82%E6%88%A6%E3%81%AE%E8%A9%94%E6%9B%B8-3132313 終戦の詔書とは? 意味や使い方 - コトバンク]</ref><span style="font-size:11pt;">(しゅうせんのしょうしょ)</span>は、<span style="font-family:游明朝 Demibold;font-size:15pt;">終戦の詔勅</span><ref>[https://kotobank.jp/word/%E7%B5%82%E6%88%A6%E3%81%AE%E8%A9%94%E5%8B%85-1614489 終戦の詔勅(しゅうせんのしょうちょく)とは? 意味や使い方 - コトバンク]</ref><span style="font-size:11pt;">(しゅうせんのしょうちょく)</span>とも呼ばれる、<br>[[w:第二次世界大戦|第二次大戦]]<ref>[https://kotobank.jp/word/%E7%AC%AC%E4%BA%8C%E6%AC%A1%E4%B8%96%E7%95%8C%E5%A4%A7%E6%88%A6-558007 第二次世界大戦(ダイニジセカイタイセン)とは? 意味や使い方 - コトバンク]</ref><ref>[https://kotobank.jp/word/%E7%AC%AC2%E6%AC%A1%E4%B8%96%E7%95%8C%E5%A4%A7%E6%88%A6-91774 第2次世界大戦(だいにじせかいたいせん)とは? 意味や使い方 - コトバンク]</ref>で日本が[[w:連合国 (第二次世界大戦)|連合国]]の[[w:ポツダム宣言|ポツダム宣言]]<ref>[https://kotobank.jp/word/%E3%81%BD%E3%81%A4%E3%81%A0%E3%82%80%E5%AE%A3%E8%A8%80-3170638 ポツダム宣言(ポツダムセンゲン)とは? 意味や使い方 - コトバンク]</ref><ref>[https://kotobank.jp/word/%E3%81%BD%E3%81%A4%E3%81%A0%E3%82%80%E5%AE%A3%E8%A8%80%E7%B1%B3%E8%8B%B1%E8%8F%AF%E4%B8%89%E5%9B%BD%E5%AE%A3%E8%A8%80-1614573#w-1614573 ポツダム宣言/米、英、華三国宣言(ぽつだむせんげんべいえいかさんごくせんげん)とは? 意味や使い方 - コトバンク](宣言の条文)</ref>を受諾する旨を通知したことを公表した[[w:詔#大日本帝国憲法のもとでの詔書|詔書]]<ref>[https://kotobank.jp/word/%E8%A9%94%E6%9B%B8-531944 詔書(ショウショ)とは? 意味や使い方 - コトバンク]</ref>。</p> <p style="line-height:1.9; margin-bottom: 10px; font-family:游明朝;"> この詔書は、日本の終戦工作<ref>[https://kotobank.jp/word/%E7%B5%82%E6%88%A6%E5%B7%A5%E4%BD%9C-1173549 終戦工作(しゅうせんこうさく)とは? 意味や使い方 - コトバンク]</ref>において、昭和20年(1945年)8月10日の[[w:御前会議|御前会議]]での宣言受諾の方針を受けて、<ruby><rb>[[w:迫水久常|迫水久常]]</rb><rp>(</rp><rt>さこみずひさつね</rt><rp>)</rp></ruby><ref>[https://kotobank.jp/word/%E8%BF%AB%E6%B0%B4%E4%B9%85%E5%B8%B8-1077994#w-1676332 迫水久常(サコミズ ヒサツネ)とは? 意味や使い方 - コトバンク]</ref> [[w:内閣書記官長|内閣書記官長]]<ref>[https://kotobank.jp/word/%E5%86%85%E9%96%A3%E6%9B%B8%E8%A8%98%E5%AE%98%E9%95%B7-345114 内閣書記官長(ないかくしょきかんちょう)とは? 意味や使い方 - コトバンク]</ref>の主導のもとで、内閣嘱託の[[w:漢学|漢学]]者 <ruby><rb><span style="font-size:14pt;">[[w:川田瑞穂|川田瑞穂]]</span></rb><rp>(</rp><rt>かわだみずほ</rt><rp>)</rp></ruby><ref>[https://kotobank.jp/word/%E5%B7%9D%E7%94%B0%E7%91%9E%E7%A9%82-1067952 川田瑞穂(カワタ ミズホ)とは? 意味や使い方 - コトバンク]</ref>によって起草され、さらに陽明学者の<ruby><rb><span style="font-size:14pt;">[[w:安岡正篤|安岡正篤]]</span></rb><rp>(</rp><rt>やすおかまさひろ</rt><rp>)</rp></ruby><ref>[https://kotobank.jp/word/%E5%AE%89%E5%B2%A1%E6%AD%A3%E7%AF%A4-21854#w-1602068 安岡正篤(やすおかまさひろ)とは? 意味や使い方 - コトバンク]</ref>も加わって<ruby><rb>刪修</rb><rp>(</rp><rt>さんしゅう</rt><rp>)</rp></ruby><ref>不要な字句または文章をけずって改めること。[https://kotobank.jp/word/%E5%88%AA%E4%BF%AE-2044132 刪修(さんしゅう)とは? 意味や使い方 - コトバンク]</ref>が進められ、8月14日朝の御前会議で宣言受諾が最終決定されると、同日午後11時頃に[[w:鈴木貫太郎内閣|鈴木貫太郎内閣]]<ref>[https://kotobank.jp/word/%E9%88%B4%E6%9C%A8%E8%B2%AB%E5%A4%AA%E9%83%8E%E5%86%85%E9%96%A3-845136 鈴木貫太郎内閣(すずきかんたろうないかく)とは? 意味や使い方 - コトバンク]</ref>によって詔書が発布({{ruby|渙発|かんぱつ}}<ref>詔書を発布することを「{{ruby|渙発|かんぱつ}}」と呼んでいた。[https://kotobank.jp/word/%E6%B8%99%E7%99%BA-471246 渙発(カンパツ)とは? 意味や使い方 - コトバンク]</ref>)され、連合国に向けて宣言を受諾する旨が打電された。</p> <p style="line-height:1.9; font-family:游明朝;">  [[w:下村宏|下村宏]]<ref>[https://kotobank.jp/word/%E4%B8%8B%E6%9D%91%E5%AE%8F-18290#w-1333869 下村宏(しもむらひろし)とは? 意味や使い方 - コトバンク]</ref> [[w:情報局|情報局]]総裁の発議により、[[w:昭和天皇|昭和天皇]]自らがマイクの前で朗読した音声のレコード盤をラジオ放送で国民に聴かせる <span style="font-family:游明朝 Demibold;font-size:15pt;">玉音放送</span><ref>[https://kotobank.jp/word/%E7%8E%89%E9%9F%B3%E6%94%BE%E9%80%81-479319#w-3454559 玉音放送(ギョクオンホウソウ)とは? 意味や使い方 - コトバンク]</ref>が翌8月15日正午より放送された。<br> ここでは、終戦の詔書の本文の註解、および関連する事項や経緯について解説する。</p></div> == 詔書の読解 == {| class="wikitable" style="float:right;" <!-- 右寄せ --> |+ 玉音放送 ([[w:玉音放送|w]]) |- | style="font-size:10pt;" |玉音放送原版 |[[ファイル:Imperial Rescript on the Termination of the War.ogg]] |- | style="font-size:10pt;" |ノイズ除去版 |[[ファイル:玉音放送ノイズ除去版.ogg]] |} {{wikipedia}} *<span style="font-family:游明朝;font-size:15pt;">昭和二十年八月十四日の詔書</span> **<span style="font-size:15pt;">[[/原文テキスト]] {{進捗|75%|2026-08-29}} </span><small>(2026年8月14日より)</small><!--2026年8月14日--> **:<span style="font-size:13pt;">[[/原文テキスト/漢字の注記|../漢字の注記]] {{進捗|75%|2026-09-12}} </span><small>(2026年8月15日より)</small><!--2026年8月15日--> **<span style="font-size:16pt;">[[/テキスト注解]] {{進捗|25%|2026-10-21}} </span><small>(2026年8月16日より)</small><!--2026年8月16日--> :  :  ;佐野小門太(内閣官房総務課の理事官)が清書した手書きの「御署名原本」 {| border="0" |- |[[画像:Imperial Rescript on the Termination of the War4.jpg|thumb|200px|(大臣の[[w:連署・副署|副署]])]] |[[画像:Imperial Rescript on the Termination of the War3.jpg|thumb|200px|(主文の後半と[[w:御名御璽|御名御璽]])]] |[[画像:Imperial Rescript on the Termination of the War2.jpg|thumb|200px|]] |[[画像:Imperial Rescript on the Termination of the War1.jpg|thumb|130px|]] |} == 脚注 == <references /> == 外部リンク == * [https://globe.asahi.com/article/14709020 終戦の日(8月15日)に読みたい 玉音放送(終戦の詔書)の原文と現代語訳:朝日新聞GLOBE+] * [https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_62e72de5e4b006483a9e96a4 玉音放送の全文、現代語でどんな意味?「耐えがたいことを耐えて...」 | ハフポスト NEWS] * [https://www2.nhk.or.jp/archives/articles/?id=C0110556 終戦まとめ>終戦の詔書(玉音放送)|NHKアーカイブス]:「終戦の詔勅」本文と「玉音放送」音声 * [https://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/html/others/detail/1317941.htm 終戦ノ詔書(昭和二十年八月十四日):文部科学省] * [https://www.buzzfeed.com/jp/kenjiando/gyokuon-hoso-2025 【玉音放送】わかりやすく現代語訳してみた。「戦争を継続すれば我が民族の滅亡を招くだけでなく、人類の文明も破壊される」(戦後80年)] * [https://www.kobe-np.co.jp/news/backnumber/201508/0011513223.shtml 昭和天皇「玉音放送」現代語訳|記 事|神戸新聞NEXT] * [https://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_3050784_po_geppo.pdf?contentNo=1 国立国会図書館 月報(2010年8月)(PDF)] - 「終戦の詔書 史料で読み解く二つの疑問」掲載 [[Category:終戦の詔書|*]] [[Category:日本の終戦工作|しゆうせんのしようちよく]] [[Category:第二次世界大戦|しゅうせんのしようしよ]] rf78v1wrx934dnus1ru5ruf1he5gbte 終戦の詔書/テキスト注解 0 48695 304977 304384 2026-10-21T13:55:34Z Linguae 449 /* 第三段落 */ 實ニ帝國ノ自存ト東亞ノ安定トヲ庻󠄀幾󠄁󠄁スルニ出テ 304977 wikitext text/x-wiki <!--【2026年8月16日起稿】--> *[[第二次世界大戦]]>[[終戦の詔書]]> <div style="font-family:游明朝;font-size:35pt;text-align:center;">終&#xE0101;戰ノ詔書</div> <div style="font-family:游明朝;font-size:20pt;text-align:center;">テキスト註解</div>  ここでは、昭和20年8月14日に発布された詔書、いわゆる「終戦の詔書」のテキストを注解する。 == テキスト注解(昭和二十年八月十四日の詔書)== ; [[#第一段落]]  [[#第二段落]]  [[#第三段落]]  [[#第四段落]]  [[#第五段落]] :  ; 第一段落 # [[#朕󠄂&#xE0102;(ちん)]] # [[#朕󠄂&#xE0102;深ク世界ノ大勢ト帝國ノ現狀トニ鑑ミ]] # [[#非常ノ措置ヲ以テ時局ヲ收拾セムト欲シ]] # [[#玆ニ忠良ナル爾臣民ニ吿ク]] ; 第二段落 # [[#朕&#xE0102;ハ帝國政府ヲシテ]] # [[#米英支蘇四國ニ對シ]] # [[#其ノ共同宣言ヲ受諾スル旨通󠄁吿セシメタリ]] ; [[#第三段落]] # [[#抑〻帝國臣民ノ康寧ヲ圖リ]] # [[#萬邦&#xE0102;共榮ノ樂ヲ偕ニスルハ]] # [[#皇祖&#xFE00;皇宗ノ遺&#xE0101;範ニシテ]] # [[#朕&#xE0102;ノ拳&#xE0101;々措カサル所&#xE0101;]] # [[#曩ニ米英二國ニ宣戰セル所&#xE0101;以モ亦]] # [[#實ニ帝國ノ自存ト東亞ノ安定トヲ庻&#xE0100;幾󠄁&#xE0101;スルニ出テ]] # [[#他國ノ主權ヲ排シ領土ヲ侵󠄁スカ如キハ]] # [[#固ヨリ朕&#xE0102;カ志ニアラス]] # [[#然ルニ交&#xE0101;戰已ニ四歲ヲ閱シ]] # [[#朕&#xE0102;カ陸海&#xE0100;將兵ノ勇&#xE0101;戰]] # [[#朕&#xE0102;カ百僚有司ノ勵精&#xE0100;]] # [[#朕&#xE0102;カ一億衆庻&#xE0100;ノ奉公󠄁]] # [[#各〻最善ヲ盡セルニ拘ラス]] # [[#戰局必スシモ好轉セス]] # [[#世界ノ大勢亦我ニ利アラス]] # [[#加之敵ハ新ニ殘虐󠄁ナル爆彈ヲ使󠄁用シテ]] # [[#頻&#xE0100;ニ無辜ヲ殺&#xE0100;傷シ]] # [[#慘害&#xE0102;ノ及&#xE0101;フ所&#xE0101;眞ニ測ルヘカラサルニ至ル]] # [[#而モ尙交&#xE0101;戰ヲ繼續セムカ]] # [[#終&#xE0101;ニ我カ民族ノ滅亡ヲ招來スルノミナラス]] # [[#延&#xE0102;テ人類&#xE0100;ノ文&#xE0101;明ヲモ破却スヘシ]] # [[#斯ノ如クムハ]] # [[#朕&#xE0102;何ヲ以テカ億兆ノ赤子ヲ保シ]] # [[#皇祖&#xFE00;皇宗ノ神&#xE0100;靈ニ謝セムヤ]] # [[#是レ朕&#xE0102;カ帝國政府ヲシテ共同宣言ニ應セシムルニ至レル所&#xE0101;以ナリ]] ; [[#第四段落]] # [[#朕&#xE0102;ハ帝國ト共ニ]] # [[#終&#xE0101;始東亞ノ解放ニ協力セル諸&#xE0100;盟邦&#xE0102;ニ對シ]] # [[#遺&#xE0101;憾ノ意ヲ表セサルヲ得ス]] # [[#帝國臣民ニシテ]] # [[#戰陣ニ死シ]] # [[#職域ニ殉シ]] # [[#非命ニ斃レタル者&#xE0101;]] # [[#及&#xE0101;其ノ遺&#xE0101;族ニ想ヲ致セハ]] # [[#五內爲ニ裂ク]] # [[#且戰傷ヲ負&#xE0102;ヒ]] # [[#災禍&#xE0100;ヲ蒙リ]] # [[#家業ヲ失ヒタル者&#xE0101;ノ]] # [[#厚生ニ至リテハ]] # [[#朕&#xE0102;ノ深ク軫念スル所&#xE0101;ナリ]] # [[#惟フニ今後帝國ノ受クヘキ苦難&#xE0100;ハ]] # [[#固ヨリ尋&#xE0101;常ニアラス]] # [[#爾臣民ノ衷情&#xE0101;モ朕&#xE0102;善ク之ヲ知ル]] # [[#然レトモ朕&#xE0102;ハ時運&#xE0101;ノ趨ク所&#xE0101;]] # [[#堪ヘ難&#xE0100;キヲ堪ヘ忍&#xE0101;ヒ難&#xE0100;キヲ忍&#xE0101;ヒ]] # [[#以テ萬世ノ爲ニ太平&#xE0101;ヲ開カムト欲ス]] ; [[#第五段落]] # [[#朕&#xE0102;ハ玆ニ國體ヲ護持シ得テ]] # [[#忠良ナル爾臣民ノ赤誠&#xE0101;ニ信倚シ]] # [[#常ニ爾臣民ト共ニ在リ]] # [[#若シ夫レ情&#xE0101;ノ激スル所&#xE0101;]] # [[#濫ニ事端ヲ滋クシ]] # [[#或ハ同胞&#xE0101;排擠]] # [[#互ニ時局ヲ亂リ]] # [[#爲ニ大道&#xE0101;ヲ誤&#xE0101;リ]] # [[#信義ヲ世界ニ失フカ如キハ]] # [[#朕&#xE0102;最モ之ヲ戒ム]] # [[#宜シク擧國一家子孫相傳ヘ]] # [[#確ク神&#xE0100;州ノ不滅ヲ信シ]] # [[#任重クシテ]] # [[#道&#xE0101;遠&#xE0101;キヲ念ヒ]] # [[#總力ヲ將來ノ建&#xE0101;設ニ傾ケ]] # [[#道&#xE0101;義ヲ篤クシ]] # [[#志操ヲ鞏クシ]] # [[#誓テ國體ノ精&#xE0100;華ヲ發揚シ]] # [[#世界ノ進&#xE0101;運󠄁ニ後レサラムコトヲ期スヘシ]] # [[#爾臣民其レ克ク朕&#xE0102;カ意ヲ體セヨ]] == 第一段落 == <!--◆第一段落--><div style="background-color:#ffd;"> <p style="line-height:1.3; margin-bottom: 15px; text-align:left; font-family:游明朝;font-size:13pt;">(原文)<span style="color:#500;">朕&#xE0102;</span>深ク世界ノ大勢ト帝國ノ現狀トニ鑑ミ非常ノ措置ヲ以テ時局ヲ收拾セムト欲シ玆ニ忠良ナル爾臣民ニ吿ク</p> <p style="background-color:#ffe; line-height:1.3; font-family:游明朝;font-size:13pt;"><ruby><rb>朕</rb><rp>(</rp><rt>ちん</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>深</rb><rp>(</rp><rt>ふか</rt><rp>)</rp></ruby>く<ruby><rb>世</rb><rp>(</rp><rt>せ</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>界</rb><rp>(</rp><rt>かい</rt><rp>)</rp></ruby>の<ruby><rb>大</rb><rp>(</rp><rt>たい</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>勢</rb><rp>(</rp><rt>せい</rt><rp>)</rp></ruby>と<ruby><rb>帝</rb><rp>(</rp><rt>てい</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>国</rb><rp>(</rp><rt>こく</rt><rp>)</rp></ruby>の<ruby><rb>現</rb><rp>(</rp><rt>げん</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>状</rb><rp>(</rp><rt>じょう</rt><rp>)</rp></ruby>とに<ruby><rb>鑑</rb><rp>(</rp><rt>かんが</rt><rp>)</rp></ruby>み、<ruby><rb>非</rb><rp>(</rp><rt>ひ</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>常</rb><rp>(</rp><rt>じょう</rt><rp>)</rp></ruby>の<ruby><rb>措</rb><rp>(</rp><rt>そ</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>置</rb><rp>(</rp><rt>ち</rt><rp>)</rp></ruby>を<ruby><rb>以</rb><rp>(</rp><rt>もっ</rt><rp>)</rp></ruby>て<ruby><rb>時</rb><rp>(</rp><rt>じ</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>局</rb><rp>(</rp><rt>きょく</rt><rp>)</rp></ruby>を<ruby><rb>収</rb><rp>(</rp><rt>しゅう</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>拾</rb><rp>(</rp><rt>しゅう</rt><rp>)</rp></ruby>せんと<ruby><rb>欲</rb><rp>(</rp><rt>ほっ</rt><rp>)</rp></ruby>し、<ruby><rb>玆</rb><rp>(</rp><rt>ここ</rt><rp>)</rp></ruby>に<ruby><rb>忠</rb><rp>(</rp><rt>ちゅう</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>良</rb><rp>(</rp><rt>りょう</rt><rp>)</rp></ruby>なる<ruby><rb>爾</rb><rp>(</rp><rt>なんじ</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>臣</rb><rp>(</rp><rt>しん</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>民</rb><rp>(</rp><rt>みん</rt><rp>)</rp></ruby>に<ruby><rb>告</rb><rp>(</rp><rt>つ</rt><rp>)</rp></ruby>ぐ。</p> </div> # [[#朕󠄂&#xE0102;(ちん)]] # [[#朕󠄂&#xE0102;深ク世界ノ大勢ト帝國ノ現狀トニ鑑ミ]] # [[#非常ノ措置ヲ以テ時局ヲ收拾セムト欲シ]] # [[#玆ニ忠良ナル爾臣民ニ吿ク]] === 朕󠄂&#xE0102;(ちん) === *「<span style="font-family:游明朝;font-size:20pt;">朕󠄂&#xE0102;</span>」は、古代中国で自称として用いられていた言葉だが、[[w:秦|秦]]の[[w:始皇帝|始皇帝]]から[[w:天子|天子]](皇帝)の自称に限られるようになり、以後は中国・ベトナム・日本の君主の自称として、特に日本では歴代天皇の自称として用いられてきた<ref>[https://kotobank.jp/word/%E6%9C%95-569835 朕(チン)とは? 意味や使い方 - コトバンク]</ref>。<br>昭和21年(1946年)の「[[w:人間宣言|人間宣言]]」によって天皇の神格化が完全に否定され、さらに昭和22年(1947年)の[[w:日本国憲法|日本国憲法]]の施行後は「<span style="font-family:游明朝;">朕󠄂&#xE0102;</span>」は一切用いられなくなり、以後の天皇の自称は「<span style="color:#f88;">わたくし</span>」となっている。 === 朕󠄂&#xE0102;深ク世界ノ大勢ト帝國ノ現狀トニ鑑ミ === <p style="line-height:1.3; font-family:游明朝;font-size:20pt;"><ruby><rb>朕</rb><rp>(</rp><rt>ちん</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>深</rb><rp>(</rp><rt>ふか</rt><rp>)</rp></ruby>く<ruby><rb>世</rb><rp>(</rp><rt>せ</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>界</rb><rp>(</rp><rt>かい</rt><rp>)</rp></ruby>の<ruby><rb>大</rb><rp>(</rp><rt>たい</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>勢</rb><rp>(</rp><rt>せい</rt><rp>)</rp></ruby>と<ruby><rb>帝</rb><rp>(</rp><rt>てい</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>国</rb><rp>(</rp><rt>こく</rt><rp>)</rp></ruby>の<ruby><rb>現</rb><rp>(</rp><rt>げん</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>状</rb><rp>(</rp><rt>じょう</rt><rp>)</rp></ruby>とに<ruby><rb>鑑</rb><rp>(</rp><rt>かんが</rt><rp>)</rp></ruby>み、</p> <p style="color:#009900; font-family:游明朝;font-size:18pt;">現代語訳:わたくしは、世界の情勢と帝国(大日本帝国)の現状とを深く考え合わせ、</p> ==== 鑑みる ==== *「鑑みる」:先例や他の例とくらべ合わせて考える<ref>[https://kotobank.jp/word/%E9%91%91%E3%81%BF%E3%82%8B-459421#w-1924987 鑑みる(カガミル)とは? 意味や使い方 - コトバンク]</ref> === 非常ノ措置ヲ以テ時局ヲ收拾セムト欲シ === <p style="line-height:1.3; font-family:游明朝;font-size:20pt;"><ruby><rb>非</rb><rp>(</rp><rt>ひ</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>常</rb><rp>(</rp><rt>じょう</rt><rp>)</rp></ruby>の<ruby><rb>措</rb><rp>(</rp><rt>そ</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>置</rb><rp>(</rp><rt>ち</rt><rp>)</rp></ruby>を<ruby><rb>以</rb><rp>(</rp><rt>もっ</rt><rp>)</rp></ruby>て<ruby><rb>時</rb><rp>(</rp><rt>じ</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>局</rb><rp>(</rp><rt>きょく</rt><rp>)</rp></ruby>を<ruby><rb>収</rb><rp>(</rp><rt>しゅう</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>拾</rb><rp>(</rp><rt>しゅう</rt><rp>)</rp></ruby>せんと<ruby><rb>欲</rb><rp>(</rp><rt>ほっ</rt><rp>)</rp></ruby>し、</p> <p style="color:#009900; font-family:游明朝;font-size:18pt;">現代語訳:緊急措置によって局面を収拾しようと思って、</p> ==== 非常の ==== *「非常(の)」:普通でない差し迫った、思いがけない緊急事態の<ref>[https://kotobank.jp/word/%E9%9D%9E%E5%B8%B8-610028#w-2096327 非常(ヒジョウ)とは? 意味や使い方 - コトバンク]</ref> ==== 時局 ==== *「時局」:国家・社会などの、その時の情勢。時世の局面。<ref>[https://kotobank.jp/word/%E6%99%82%E5%B1%80-518076#w-518076 時局(ジキョク)とは? 意味や使い方 - コトバンク]</ref> ==== 収集 ==== *「収拾」:乱れた事態などをおさめること。<ref>[https://kotobank.jp/word/%E5%8F%8E%E6%8B%BE-526879#w-1997828 収拾(シュウシュウ)とは? 意味や使い方 - コトバンク]</ref> === 玆ニ忠良ナル爾臣民ニ吿ク === <p style="line-height:1.3; font-family:游明朝;font-size:20pt;"><ruby><rb>玆</rb><rp>(</rp><rt>ここ</rt><rp>)</rp></ruby>に<ruby><rb>忠</rb><rp>(</rp><rt>ちゅう</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>良</rb><rp>(</rp><rt>りょう</rt><rp>)</rp></ruby>なる<ruby><rb>爾</rb><rp>(</rp><rt>なんじ</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>臣</rb><rp>(</rp><rt>しん</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>民</rb><rp>(</rp><rt>みん</rt><rp>)</rp></ruby>に<ruby><rb>告</rb><rp>(</rp><rt>つ</rt><rp>)</rp></ruby>ぐ。</p> <p style="color:#009900; font-family:游明朝;font-size:18pt;">現代語訳:ここに、忠実で善良なあなたがた国民に告げる。</p> ==== 玆(ここ)に ==== *「玆に(ここに)」:この時にあたり。<ref>[https://kotobank.jp/word/%E6%AD%A4%E5%87%A6%E3%81%AB-500393#w-500393 此処に(ココニ)とは? 意味や使い方 - コトバンク]</ref> ==== 忠良 ==== *「忠良」:忠義で善良なこと。また、そのさまや、その人。<ref>[https://kotobank.jp/word/%E5%BF%A0%E8%89%AF-567930#w-567930 忠良(チュウリョウ)とは? 意味や使い方 - コトバンク]</ref> ==== 爾(なんじ) ==== *「爾」:「汝」におなじ。「なむじ」が転訛した二人称の代名詞で、中世以降は目下の者に用いられた。<ref>[https://kotobank.jp/word/%E6%B1%9D-429890#w-590506 な‐んじ〔‐んぢ〕【×汝/×爾】- コトバンク]</ref> === 臣民 === *「臣民」:臣下としての国民。明治憲法([[w:大日本帝国憲法|大日本帝国憲法]])憲法のもとで、天皇、皇・公族以外の者。<ref>[https://kotobank.jp/word/%E8%87%A3%E6%B0%91-82595#w-2013169 臣民(シンミン)とは? 意味や使い方 - コトバンク]</ref> <span style="color:#500;"> </span> <span style="color:#009900;"></span> <p style="color:#009900;"></span> == 第二段落 == <!--◆第二段落--><div style="background-color:#ffd;"> <p style="line-height:1.3; margin-bottom: 15px; text-align:left; font-family:游明朝;font-size:13pt;">(原文)<span style="color:#500;">朕&#xE0102;</span>ハ帝國政府ヲシテ米英支蘇四國ニ對シ其ノ共同宣言ヲ受諾スル旨<span style="color:#500;">通&#xE0101;</span>吿セシメタリ</p> <p style="background-color:#ffe; line-height:1.3; font-family:游明朝;font-size:13pt;">    <ruby><rb>朕</rb><rp>(</rp><rt>ちん</rt><rp>)</rp></ruby>は<ruby><rb>帝</rb><rp>(</rp><rt>てい</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>国</rb><rp>(</rp><rt>こく</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>政</rb><rp>(</rp><rt>せい</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>府</rb><rp>(</rp><rt>ふ</rt><rp>)</rp></ruby>をして、 <ruby><rb>米</rb><rp>(</rp><rt>べい</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>英</rb><rp>(</rp><rt>えい</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>支</rb><rp>(</rp><rt>し</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>蘇</rb><rp>(</rp><rt>そ</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>四</rb><rp>(</rp><rt>し</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>国</rb><rp>(</rp><rt>こく</rt><rp>)</rp></ruby>に<ruby><rb>対</rb><rp>(</rp><rt>たい</rt><rp>)</rp></ruby>し、 <ruby><rb>其</rb><rp>(</rp><rt>そ</rt><rp>)</rp></ruby>の<ruby><rb>共</rb><rp>(</rp><rt>きょう</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>同</rb><rp>(</rp><rt>どう</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>宣</rb><rp>(</rp><rt>せん</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>言</rb><rp>(</rp><rt>げん</rt><rp>)</rp></ruby>を<ruby><rb>受</rb><rp>(</rp><rt>じゅ</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>諾</rb><rp>(</rp><rt>だく</rt><rp>)</rp></ruby>する<ruby><rb>旨</rb><rp>(</rp><rt>むね</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>通</rb><rp>(</rp><rt>つう</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>告</rb><rp>(</rp><rt>こく</rt><rp>)</rp></ruby>せしめたり。</p> </div> # [[#朕&#xE0102;ハ帝國政府ヲシテ]] #* [[#帝国政府]] # [[#米英支蘇四國ニ對シ]] #* [[#米英支蘇四國]] # [[#其ノ共同宣言ヲ受諾スル旨通󠄁吿セシメタリ]] #* [[#共同宣言ヲ受諾]] === 朕&#xE0102;ハ帝國政府ヲシテ === <p style="line-height:1.3; font-family:游明朝;font-size:20pt;"><ruby><rb>朕</rb><rp>(</rp><rt>ちん</rt><rp>)</rp></ruby>は<ruby><rb>帝</rb><rp>(</rp><rt>てい</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>国</rb><rp>(</rp><rt>こく</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>政</rb><rp>(</rp><rt>せい</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>府</rb><rp>(</rp><rt>ふ</rt><rp>)</rp></ruby>をして、</p> <p style="color:#009900; font-family:游明朝;font-size:18pt;">現代語訳:わたくしは、帝国<small>(大日本帝国)</small>政府に命じて、</p> ==== 帝国政府 ==== *「帝国政府」:[[w:大日本帝国憲法|大日本帝国憲法]]<ref>[https://kotobank.jp/word/%E5%A4%A7%E6%97%A5%E6%9C%AC%E5%B8%9D%E5%9B%BD%E6%86%B2%E6%B3%95-91835 大日本帝国憲法(ダイニッポンテイコクケンポウ)とは? 意味や使い方 - コトバンク]</ref>(明治憲法)のもとでの総理大臣を首班とする内閣。 **より具体的には、[[w:鈴木貫太郎内閣|鈴木貫太郎内閣]]<ref>[https://kotobank.jp/word/%E9%88%B4%E6%9C%A8%E8%B2%AB%E5%A4%AA%E9%83%8E%E5%86%85%E9%96%A3-845136 鈴木貫太郎内閣(すずきかんたろうないかく)とは? 意味や使い方 - コトバンク]</ref>のことを指す。 **明治憲法は「天皇主権」<ref>[https://kotobank.jp/word/%E5%A4%A9%E7%9A%87%E4%B8%BB%E6%A8%A9-1566340 天皇主権(てんのうしゅけん)とは? 意味や使い方 - コトバンク]</ref>、つまり行政権の主体は「天皇」にあり、「国務大臣」めいめいが天皇を「輔弼」(補佐)して各省を管轄する体制となっていた。憲法には「内閣」や「内閣総理大臣」の規定がなく、「内閣」は天皇の命令で動く国務大臣たちの協議の場に過ぎなかった。 **また、軍隊を指揮監督する最高権限「[[w:統帥権|統帥権]]」<ref>[https://kotobank.jp/word/%E7%B5%B1%E5%B8%A5%E6%A8%A9-103758#w-855138 統帥権(トウスイケン)とは? 意味や使い方 - コトバンク]</ref>は主権者である「天皇」にあり、「内閣・政府」は軍隊や戦争に関する決定権を持たなかった。 **「内閣・政府」には憲法上の行政の統括権限がなかったが、実務上は「内閣」が国家の意思決定や諸外国との外交交渉を行う「窓口」であり、実務組織となっていた。 === 米英支蘇四國ニ對シ === <p style="line-height:1.3; font-family:游明朝;font-size:20pt;"><ruby><rb>米</rb><rp>(</rp><rt>べい</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>英</rb><rp>(</rp><rt>えい</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>支</rb><rp>(</rp><rt>し</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>蘇</rb><rp>(</rp><rt>そ</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>四</rb><rp>(</rp><rt>し</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>国</rb><rp>(</rp><rt>こく</rt><rp>)</rp></ruby>に<ruby><rb>対</rb><rp>(</rp><rt>たい</rt><rp>)</rp></ruby>し、</p> <p style="color:#009900; font-family:游明朝;font-size:18pt;">現代語訳:アメリカ・イギリス・中国・ソビエトの4か国に対して、</p> ==== 米英支蘇四國 ==== *「米英支蘇四國」:ポツダム宣言を発した、米(アメリカ)・英(イギリス)・<u>支</u>那(中華民国)の3か国、および後から名を連ねた<u>蘇</u>聯(ソビエト連邦) **詔書の草案の段階では、「<span style="color:#500;">米英二国<ruby><rb>並</rb><rp>(</rp><rt>ならび</rt><rp>)</rp></ruby>ニ重慶政権ソヴィエート聯邦</span>」「<span style="color:#500;">米英重慶ソヴィエート政府</span>」としているものもあった。 ***中国(支那)では、日本は、日本軍の<ruby><rb>傀儡</rb><rp>(</rp><rt>かいらい</rt><rp>)</rp></ruby>である[[w:汪兆銘政権|<ruby><rb>汪兆銘</rb><rp>(</rp><rt>おうちょうめい</rt><rp>)</rp></ruby>政権]]のみを国家承認しており、戦争中の敵国であり[[w:重慶市|<ruby><rb>重慶</rb><rp>(</rp><rt>じゅうけい</rt><rp>)</rp></ruby>]]を首都としていた[[w:蔣介石|<ruby><rb>蔣介石</rb><rp>(</rp><rt>しょうかいせき</rt><rp>)</rp></ruby>]]<ref>[https://kotobank.jp/word/%E8%92%8B%E4%BB%8B%E7%9F%B3-18318#E3.83.87.E3.82.B8.E3.82.BF.E3.83.AB.E5.A4.A7.E8.BE.9E.E6.B3.89 蒋介石(ショウカイセキ)とは? 意味や使い方 - コトバンク]</ref>が率いる[[w:中華民国 (1912年-1949年)|中華民国]]<ref>[https://kotobank.jp/word/%E4%B8%AD%E8%8F%AF%E6%B0%91%E5%9B%BD-97091#E3.83.87.E3.82.B8.E3.82.BF.E3.83.AB.E5.A4.A7.E8.BE.9E.E6.B3.89 中華民国(チュウカミンコク)とは? 意味や使い方 - コトバンク]</ref>の[[w:国民政府|国民政府]]<ref>[https://kotobank.jp/word/%E5%9B%BD%E6%B0%91%E6%94%BF%E5%BA%9C-64266#E3.83.87.E3.82.B8.E3.82.BF.E3.83.AB.E5.A4.A7.E8.BE.9E.E6.B3.89 国民政府(コクミンセイフ)とは? 意味や使い方 - コトバンク]</ref><ref>[https://kotobank.jp/word/%E4%B8%AD%E8%8F%AF%E6%B0%91%E5%9B%BD%E5%9B%BD%E6%B0%91%E6%94%BF%E5%BA%9C-1366638 中華民国国民政府(ちゅうかみんこくこくみんせいふ)とは? 意味や使い方 - コトバンク]</ref>のことは認めずに「<span style="color:#500;">重慶政権</span>」などと呼んでいた。 === 其ノ共同宣言ヲ受諾スル旨通󠄁吿セシメタリ === <p style="line-height:1.3; font-family:游明朝;font-size:20pt;"><ruby><rb>其</rb><rp>(</rp><rt>そ</rt><rp>)</rp></ruby>の<ruby><rb>共</rb><rp>(</rp><rt>きょう</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>同</rb><rp>(</rp><rt>どう</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>宣</rb><rp>(</rp><rt>せん</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>言</rb><rp>(</rp><rt>げん</rt><rp>)</rp></ruby>を<ruby><rb>受</rb><rp>(</rp><rt>じゅ</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>諾</rb><rp>(</rp><rt>だく</rt><rp>)</rp></ruby>する<ruby><rb>旨</rb><rp>(</rp><rt>むね</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>通</rb><rp>(</rp><rt>つう</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>告</rb><rp>(</rp><rt>こく</rt><rp>)</rp></ruby>せしめたり。</p> <p style="color:#009900; font-family:游明朝;font-size:18pt;">現代語訳:その共同宣言<small>(ポツダム宣言)</small>を受諾するということを通知させた。</p> ==== 共同宣言ヲ受諾 ==== *「共同宣言ヲ受諾」:当初は「米英支三国宣言」などと呼んでいた、いわゆる「[[w:ポツダム宣言|ポツダム宣言]]」を受諾するということ。 == 第三段落 == <!--◆第三段落--><div style="background-color:#ffd;"> <p style="line-height:1.3; margin-bottom: 15px; text-align:left; font-family:游明朝;font-size:13pt;">(原文)抑〻帝國臣民ノ康寧ヲ圖リ萬<span style="color:#500;">邦&#xE0102;</span>共榮ノ樂ヲ偕ニスルハ皇<span style="color:#500;">祖&#xFE00;</span>皇宗ノ<span style="color:#500;">遺&#xE0101;</span>範ニシテ<span style="color:#500;">朕&#xE0102;</span>ノ<span style="color:#500;">拳&#xE0101;</span>々措カサル<span style="color:#500;">所&#xE0101;</span>曩ニ米英二國ニ宣戰セル<span style="color:#500;">所&#xE0101;</span>以モ亦實ニ帝國ノ自存ト東亞ノ安定トヲ<span style="color:#800;"><!--〓-->庻&#xE0100;</span><span style="color:#500;">幾󠄁&#xE0101;</span>スルニ出テ他國ノ主權ヲ排シ領土ヲ<span style="color:#500;"><!--〓-->侵󠄁</span>スカ如キハ固ヨリ<span style="color:#500;">朕&#xE0102;</span>カ志ニアラス然ルニ<span style="color:#500;">交&#xE0101;</span>戰已ニ四歲ヲ閱シ<span style="color:#500;">朕&#xE0102;</span>カ陸<span style="color:#500;">海&#xE0100;</span>將兵ノ<span style="color:#500;">勇&#xE0101;</span>戰<span style="color:#500;">朕&#xE0102;</span>カ百僚有司ノ勵<span style="color:#500;">精&#xE0100;</span><span style="color:#500;">朕&#xE0102;</span>カ一億衆<span style="color:#800;"><!--〓-->庻&#xE0100;</span>ノ奉公󠄁各〻最善ヲ盡セルニ拘ラス戰局必スシモ好轉セス世界ノ大勢亦我ニ利アラス加之敵ハ新ニ殘虐󠄁ナル爆彈ヲ<span style="color:#500;">使&#xE0101;</span>用シテ<span style="color:#500;">頻&#xE0100;</span>ニ無辜ヲ<span style="color:#500;">殺&#xE0100;</span>傷シ慘<span style="color:#500;">害&#xE0102;</span>ノ<span style="color:#500;">及&#xE0101;</span>フ<span style="color:#500;">所&#xE0101;</span>眞ニ測ルヘカラサルニ至ル而モ尙<span style="color:#500;">交&#xE0101;</span>戰ヲ繼續セムカ<span style="color:#500;">終&#xE0101;</span>ニ我カ民族ノ滅亡ヲ招來スルノミナラス<span style="color:#500;">延&#xE0102;</span>テ人<span style="color:#500;">類&#xE0100;</span>ノ<span style="color:#500;">文&#xE0101;</span>明ヲモ破却スヘシ斯ノ如クムハ<span style="color:#500;">朕&#xE0102;</span>何ヲ以テカ億兆ノ赤子ヲ保シ皇<span style="color:#500;">祖&#xFE00;</span>皇宗ノ<span style="color:#500;">神&#xE0100;</span>靈ニ謝セムヤ是レ<span style="color:#500;">朕&#xE0102;</span>カ帝國政府ヲシテ共同宣言ニ應セシムルニ至レル<span style="color:#500;">所&#xE0101;</span>以ナリ</p> <p style="background-color:#ffe; line-height:1.5; font-family:游明朝;font-size:13pt;">{{ruby|抑|そも}}{{ruby|〻|そも}}、{{ruby|帝|てい}}{{ruby|国|こく}}{{ruby|臣|しん}}{{ruby|民|みん}}の{{ruby|康|こう}}{{ruby|寧|ねい}}を{{ruby|図|はか}}り、 {{ruby|万|ばん}}{{ruby|邦|ぽう}}{{ruby|共|きょう}}{{ruby|栄|えい}}の{{ruby|楽|たのしみ}}を{{ruby|偕|とも}}にするは、 {{ruby|皇|こう}}{{ruby|祖|そ}}{{ruby|皇|こう}}{{ruby|宗|そう}}の{{ruby|遺|い}}{{ruby|範|はん}}にして、 {{ruby|朕|ちん}}の{{ruby|拳|けん}}{{ruby|々|けん}}{{ruby|措|お}}かざる{{ruby|所|ところ}}。 {{ruby|曩|さき}}に{{ruby|米|べい}}{{ruby|英|えい}}{{ruby|二|に}}{{ruby|国|こく}}に{{ruby|宣|せん}}{{ruby|戦|せん}}せる{{ruby|所以|ゆえん}}も{{ruby|亦|また}}、 {{ruby|実|じつ}}に{{ruby|帝|てい}}{{ruby|国|こく}}の{{ruby|自|じ}}{{ruby|存|そん}}と{{ruby|東|とう}}{{ruby|亜|あ}}の{{ruby|安|あん}}{{ruby|定|てい}}とを{{ruby|庶|しょ}}{{ruby|幾|き}}するに{{ruby|出|い}}で、 <ruby><rb>他</rb><rp>(</rp><rt>た</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>国</rb><rp>(</rp><rt>こく</rt><rp>)</rp></ruby>の<ruby><rb>主</rb><rp>(</rp><rt>しゅ</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>権</rb><rp>(</rp><rt>けん</rt><rp>)</rp></ruby>を<ruby><rb>排</rb><rp>(</rp><rt>はい</rt><rp>)</rp></ruby>し<ruby><rb>領</rb><rp>(</rp><rt>りょう</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>土</rb><rp>(</rp><rt>ど</rt><rp>)</rp></ruby>を<ruby><rb>侵</rb><rp>(</rp><rt>おか</rt><rp>)</rp></ruby>すが<ruby><rb>如</rb><rp>(</rp><rt>ごと</rt><rp>)</rp></ruby>きは、<ruby><rb>固</rb><rp>(</rp><rt>もと</rt><rp>)</rp></ruby>より<ruby><rb>朕</rb><rp>(</rp><rt>ちん</rt><rp>)</rp></ruby>が<ruby><rb>志</rb><rp>(</rp><rt>こころざし</rt><rp>)</rp></ruby>にあらず。<ruby><rb>然</rb><rp>(</rp><rt>しか</rt><rp>)</rp></ruby>るに<ruby><rb>交</rb><rp>(</rp><rt>こう</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>戦</rb><rp>(</rp><rt>せん</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>已</rb><rp>(</rp><rt>すで</rt><rp>)</rp></ruby>に<ruby><rb>四</rb><rp>(</rp><rt>し</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>歳</rb><rp>(</rp><rt>さい</rt><rp>)</rp></ruby>を<ruby><rb>閲</rb><rp>(</rp><rt>けみ</rt><rp>)</rp></ruby>し、<ruby><rb>朕</rb><rp>(</rp><rt>ちん</rt><rp>)</rp></ruby>が<ruby><rb>陸</rb><rp>(</rp><rt>りく</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>海</rb><rp>(</rp><rt>かい</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>将</rb><rp>(</rp><rt>しょう</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>兵</rb><rp>(</rp><rt>へい</rt><rp>)</rp></ruby>の<ruby><rb>勇</rb><rp>(</rp><rt>ゆう</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>戦</rb><rp>(</rp><rt>せん</rt><rp>)</rp></ruby>、<ruby><rb>朕</rb><rp>(</rp><rt>ちん</rt><rp>)</rp></ruby>が<ruby><rb>百</rb><rp>(</rp><rt>ひゃく</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>僚</rb><rp>(</rp><rt>りょう</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>有</rb><rp>(</rp><rt>ゆう</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>司</rb><rp>(</rp><rt>し</rt><rp>)</rp></ruby>の<ruby><rb>励</rb><rp>(</rp><rt>れい</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>精</rb><rp>(</rp><rt>せい</rt><rp>)</rp></ruby>、<ruby><rb>朕</rb><rp>(</rp><rt>ちん</rt><rp>)</rp></ruby>が<ruby><rb>一</rb><rp>(</rp><rt>いち</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>億</rb><rp>(</rp><rt>おく</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>衆</rb><rp>(</rp><rt>しゅう</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>庶</rb><rp>(</rp><rt>しょ</rt><rp>)</rp></ruby>の<ruby><rb>奉</rb><rp>(</rp><rt>ほう</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>公</rb><rp>(</rp><rt>こう</rt><rp>)</rp></ruby>、<ruby><rb>各</rb><rp>(</rp><rt>おの</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>〻</rb><rp>(</rp><rt>おの</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>最</rb><rp>(</rp><rt>さい</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>善</rb><rp>(</rp><rt>ぜん</rt><rp>)</rp></ruby>を<ruby><rb>尽</rb><rp>(</rp><rt>つく</rt><rp>)</rp></ruby>せるに<ruby><rb>拘</rb><rp>(</rp><rt>かかわ</rt><rp>)</rp></ruby>らず、<ruby><rb>戦</rb><rp>(</rp><rt>せん</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>局</rb><rp>(</rp><rt>きょく</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>必</rb><rp>(</rp><rt>かなら</rt><rp>)</rp></ruby>ずしも<ruby><rb>好</rb><rp>(</rp><rt>こう</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>転</rb><rp>(</rp><rt>てん</rt><rp>)</rp></ruby>せず、<ruby><rb>世</rb><rp>(</rp><rt>せ</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>界</rb><rp>(</rp><rt>かい</rt><rp>)</rp></ruby>の<ruby><rb>大</rb><rp>(</rp><rt>たい</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>勢</rb><rp>(</rp><rt>せい</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>亦</rb><rp>(</rp><rt>また</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>我</rb><rp>(</rp><rt>われ</rt><rp>)</rp></ruby>に<ruby><rb>利</rb><rp>(</rp><rt>り</rt><rp>)</rp></ruby>あらず。<ruby><rb>加之</rb><rp>(</rp><rt>しかのみならず</rt><rp>)</rp></ruby>、<ruby><rb>敵</rb><rp>(</rp><rt>てき</rt><rp>)</rp></ruby>は<ruby><rb>新</rb><rp>(</rp><rt>あらた</rt><rp>)</rp></ruby>に<ruby><rb>残</rb><rp>(</rp><rt>ざん</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>虐</rb><rp>(</rp><rt>ぎゃく</rt><rp>)</rp></ruby>なる<ruby><rb>爆</rb><rp>(</rp><rt>ばく</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>弾</rb><rp>(</rp><rt>だん</rt><rp>)</rp></ruby>を<ruby><rb>使</rb><rp>(</rp><rt>し</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>用</rb><rp>(</rp><rt>よう</rt><rp>)</rp></ruby>して、<ruby><rb>頻</rb><rp>(</rp><rt>しきり</rt><rp>)</rp></ruby>に<ruby><rb>無</rb><rp>(</rp><rt>む</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>辜</rb><rp>(</rp><rt>こ</rt><rp>)</rp></ruby>を<ruby><rb>殺</rb><rp>(</rp><rt>さっ</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>傷</rb><rp>(</rp><rt>しょう</rt><rp>)</rp></ruby>し、<ruby><rb>惨</rb><rp>(</rp><rt>さん</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>害</rb><rp>(</rp><rt>がい</rt><rp>)</rp></ruby>の<ruby><rb>及</rb><rp>(</rp><rt>およ</rt><rp>)</rp></ruby>ぶ<ruby><rb>所</rb><rp>(</rp><rt>ところ</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>真</rb><rp>(</rp><rt>しん</rt><rp>)</rp></ruby>に<ruby><rb>測</rb><rp>(</rp><rt>はか</rt><rp>)</rp></ruby>るべからざるに<ruby><rb>至</rb><rp>(</rp><rt>いた</rt><rp>)</rp></ruby>る。<ruby><rb>而</rb><rp>(</rp><rt>しか</rt><rp>)</rp></ruby>も<ruby><rb>尚</rb><rp>(</rp><rt>なお</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>交</rb><rp>(</rp><rt>こう</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>戦</rb><rp>(</rp><rt>せん</rt><rp>)</rp></ruby>を<ruby><rb>継</rb><rp>(</rp><rt>けい</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>続</rb><rp>(</rp><rt>ぞく</rt><rp>)</rp></ruby>せんか、<ruby><rb>終</rb><rp>(</rp><rt>つい</rt><rp>)</rp></ruby>に<ruby><rb>我</rb><rp>(</rp><rt>わ</rt><rp>)</rp></ruby>が<ruby><rb>民</rb><rp>(</rp><rt>みん</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>族</rb><rp>(</rp><rt>ぞく</rt><rp>)</rp></ruby>の<ruby><rb>滅</rb><rp>(</rp><rt>めつ</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>亡</rb><rp>(</rp><rt>ぼう</rt><rp>)</rp></ruby>を<ruby><rb>招</rb><rp>(</rp><rt>しょう</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>来</rb><rp>(</rp><rt>らい</rt><rp>)</rp></ruby>するのみならず、<ruby><rb>延</rb><rp>(</rp><rt>ひい</rt><rp>)</rp></ruby>て<ruby><rb>人</rb><rp>(</rp><rt>じん</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>類</rb><rp>(</rp><rt>るい</rt><rp>)</rp></ruby>の<ruby><rb>文</rb><rp>(</rp><rt>ぶん</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>明</rb><rp>(</rp><rt>めい</rt><rp>)</rp></ruby>をも<ruby><rb>破</rb><rp>(</rp><rt>は</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>却</rb><rp>(</rp><rt>きゃく</rt><rp>)</rp></ruby>すべし。<ruby><rb>斯</rb><rp>(</rp><rt>かく</rt><rp>)</rp></ruby>の<ruby><rb>如</rb><rp>(</rp><rt>ごと</rt><rp>)</rp></ruby>くんば、<ruby><rb>朕</rb><rp>(</rp><rt>ちん</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>何</rb><rp>(</rp><rt>なに</rt><rp>)</rp></ruby>を<ruby><rb>以</rb><rp>(</rp><rt>もっ</rt><rp>)</rp></ruby>てか<ruby><rb>億</rb><rp>(</rp><rt>おく</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>兆</rb><rp>(</rp><rt>ちょう</rt><rp>)</rp></ruby>の<ruby><rb>赤</rb><rp>(</rp><rt>せき</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>子</rb><rp>(</rp><rt>し</rt><rp>)</rp></ruby>を<ruby><rb>保</rb><rp>(</rp><rt>ほ(っ)</rt><rp>)</rp></ruby>し、<ruby><rb>皇</rb><rp>(</rp><rt>こう</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>祖</rb><rp>(</rp><rt>そ</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>皇</rb><rp>(</rp><rt>こう</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>宗</rb><rp>(</rp><rt>そう</rt><rp>)</rp></ruby>の<ruby><rb>神</rb><rp>(</rp><rt>しん</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>霊</rb><rp>(</rp><rt>れい</rt><rp>)</rp></ruby>に<ruby><rb>謝</rb><rp>(</rp><rt>しゃ</rt><rp>)</rp></ruby>せんや、<ruby><rb>是</rb><rp>(</rp><rt>こ</rt><rp>)</rp></ruby>れ<ruby><rb>朕</rb><rp>(</rp><rt>ちん</rt><rp>)</rp></ruby>が<ruby><rb>帝</rb><rp>(</rp><rt>てい</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>国</rb><rp>(</rp><rt>こく</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>政</rb><rp>(</rp><rt>せい</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>府</rb><rp>(</rp><rt>ふ</rt><rp>)</rp></ruby>をして<ruby><rb>共</rb><rp>(</rp><rt>きょう</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>同</rb><rp>(</rp><rt>どう</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>宣</rb><rp>(</rp><rt>せん</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>言</rb><rp>(</rp><rt>げん</rt><rp>)</rp></ruby>に<ruby><rb>応</rb><rp>(</rp><rt>おう</rt><rp>)</rp></ruby>ぜしむるに<ruby><rb>至</rb><rp>(</rp><rt>いた</rt><rp>)</rp></ruby>れる<ruby><rb>所以</rb><rp>(</rp><rt>ゆえん</rt><rp>)</rp></ruby>なり。</p> </div> # [[#抑〻帝國臣民ノ康寧ヲ圖リ]] ([[#抑〻]] [[#康寧]] ) # [[#萬邦&#xE0102;共榮ノ樂ヲ偕ニスルハ]] ([[#萬邦&#xE0102;]] [[#共榮]] [[#樂ヲ偕ニスル]] [[#偕樂]]) # [[#皇祖&#xFE00;皇宗ノ遺&#xE0101;範ニシテ]] ([[#皇祖&#xFE00;皇宗]] [[#遺&#xE0101;範]]) # [[#朕&#xE0102;ノ拳&#xE0101;々措カサル所&#xE0101;]] ([[#拳&#xE0101;々]] [[#措カサル]]) # [[#曩ニ米英二國ニ宣戰セル所&#xE0101;以モ亦]] ([[#曩ニ]]) # [[#實ニ帝國ノ自存ト東亞ノ安定トヲ庻&#xE0100;幾󠄁&#xE0101;スルニ出テ]] ([[#自存]] [[#庻󠄀幾󠄁󠄁]]) # [[#他國ノ主權ヲ排シ領土ヲ侵󠄁スカ如キハ]] # [[#固ヨリ朕&#xE0102;カ志ニアラス]] # [[#然ルニ交&#xE0101;戰已ニ四歲ヲ閱シ]] # [[#朕&#xE0102;カ陸海&#xE0100;將兵ノ勇&#xE0101;戰]] # [[#朕&#xE0102;カ百僚有司ノ勵精&#xE0100;]] # [[#朕&#xE0102;カ一億衆庻&#xE0100;ノ奉公󠄁]] # [[#各〻最善ヲ盡セルニ拘ラス]] # [[#戰局必スシモ好轉セス]] # [[#世界ノ大勢亦我ニ利アラス]] # [[#加之敵ハ新ニ殘虐󠄁ナル爆彈ヲ使&#xE0101;用シテ]] # [[#頻&#xE0100;ニ無辜ヲ殺&#xE0100;傷シ]] # [[#慘害&#xE0102;ノ及&#xE0101;フ所&#xE0101;眞ニ測ルヘカラサルニ至ル]] # [[#而モ尙交&#xE0101;戰ヲ繼續セムカ]] # [[#終&#xE0101;ニ我カ民族ノ滅亡ヲ招來スルノミナラス]] # [[#延&#xE0102;テ人類&#xE0100;ノ文&#xE0101;明ヲモ破却スヘシ]] # [[#斯ノ如クムハ]] # [[#朕&#xE0102;何ヲ以テカ億兆ノ赤子ヲ保シ]] # [[#皇祖&#xFE00;皇宗ノ神&#xE0100;靈ニ謝セムヤ]] # [[#是レ朕&#xE0102;カ帝國政府ヲシテ共同宣言ニ應セシムルニ至レル所&#xE0101;以ナリ]] === 抑〻帝國臣民ノ康寧ヲ圖リ === <p style="line-height:1.3; font-family:游明朝;font-size:20pt;">{{ruby|抑|そも}}{{ruby|〻|そも}}、{{ruby|帝|てい}}{{ruby|国|こく}}{{ruby|臣|しん}}{{ruby|民|みん}}の{{ruby|康|こう}}{{ruby|寧|ねい}}を{{ruby|図|はか}}り、</p> <p style="color:#009900; font-family:游明朝;font-size:18pt;">現代語訳:そもそも、帝国国民の平穏無事に尽力し、 </p> ==== 抑〻 ==== *「抑〻」(そもそも):接続詞の「そも」を二つ重ねた形。いったい(一体)、さて。<ref>[https://kotobank.jp/word/%E6%8A%91-555342#w-2032227 抑(ソモソモ)とは? 意味や使い方 - コトバンク]</ref> ==== 康寧 ==== *「康寧」(こうねい):やすらかなこと。平穏無事であること。安寧。<ref>[https://kotobank.jp/word/%E5%BA%B7%E5%AF%A7-497016#w-497016 康寧(コウネイ)とは? 意味や使い方 - コトバンク]</ref> === 萬邦&#xE0102;共榮ノ樂ヲ偕ニスルハ === <p style="line-height:1.3; font-family:游明朝;font-size:20pt;">{{ruby|万|ばん}}{{ruby|邦|ぽう}}{{ruby|共|きょう}}{{ruby|栄|えい}}の{{ruby|楽|たのしみ}}を{{ruby|偕|とも}}にするは、<span style="font-size:12pt;color:#900;">(※昭和16年の対米英宣戦の詔書にも出てくるフレーズ。)</span></p> <p style="color:#009900; font-family:游明朝;font-size:18pt;">現代語訳:世界のすべての国々と共に栄える歓びを分かち合うことは、 </p> ==== 萬邦&#xE0102; ==== *「萬邦&#xE0102;(万邦、ばんぽう)」:多くの国。あらゆる国。すべての国。<ref>[https://kotobank.jp/word/%E4%B8%87%E9%82%A6-607323#w-607323 万邦(バンポウ)とは? 意味や使い方 - コトバンク]</ref> ==== 共榮 ==== *「共榮(共栄)」:共に栄えること。<ref>[https://kotobank.jp/word/%E5%85%B1%E6%A0%84-477753#w-477753 共栄(キョウエイ)とは? 意味や使い方 - コトバンク]</ref> ==== 樂ヲ偕ニスル ==== *「樂ヲ偕ニスル」(たのしみをともにする):漢語の「[[#偕樂]]」と同じで、「多くの人々とともに楽しむこと。」 **「樂(楽)」(たのしみ):心身が満たされて、快いこと。<ref>[https://kotobank.jp/word/%E6%A5%BD-43522#w-2040648 楽(ラク)とは? 意味や使い方 - コトバンク]</ref> ==== 偕樂 ==== *「偕樂(偕楽)」(かいらく): 多くの人々とともに楽しむこと<ref>[https://kotobank.jp/word/%E5%81%95%E6%A5%BD-458657#w-458657 偕楽(カイラク)とは? 意味や使い方 - コトバンク]</ref>。『[[w:孟子 (書物)|孟子]]』の「梁恵王・上」にある「古之人與民偕樂故能樂也」(古の人は民と偕に楽しむ、故に能く楽しむなり)に由来し、水戸の[[w:偕楽園|偕楽園]]の名にも取り入れられている。 === 皇祖&#xFE00;皇宗ノ遺&#xE0101;範ニシテ === <p style="line-height:1.3; font-family:游明朝;font-size:20pt;">{{ruby|皇|こう}}{{ruby|祖|そ}}{{ruby|皇|こう}}{{ruby|宗|そう}}の{{ruby|遺|い}}{{ruby|範|はん}}にして、</p> <p style="color:#009900; font-family:游明朝;font-size:18pt;">現代語訳:歴代天皇が遺されたお手本であり、 </p> ====皇祖&#xFE00;皇宗==== *「皇祖&#xFE00;皇宗(皇祖皇宗)」:天皇の始祖と、当代天皇にいたるまでの歴代の天皇。<ref>[https://kotobank.jp/word/%E7%9A%87%E7%A5%96%E7%9A%87%E5%AE%97-496352#w-496352 皇祖皇宗(コウソコウソウ)とは? 意味や使い方 - コトバンク]</ref> ====遺&#xE0101;範==== *「遺&#xE0101;範(遺範)」:前人ののこした手本。<ref>[https://kotobank.jp/word/%E9%81%BA%E7%AF%84-2008336 遺範(いはん)とは? 意味や使い方 - コトバンク]</ref> === 朕&#xE0102;ノ拳&#xE0101;々措カサル所&#xE0101; === <p style="line-height:1.3; font-family:游明朝;font-size:20pt;">{{ruby|朕|ちん}}の{{ruby|拳|けん}}{{ruby|々|けん}}{{ruby|措|お}}かざる{{ruby|所|ところ}}。<span style="font-size:12pt;color:#900;">(※昭和16年の対米英宣戦の詔書にも出てくるフレーズ。)</span></p> <p style="color:#009900; font-family:游明朝;font-size:18pt;">現代語訳:わたくしが、常に肝に銘じて大事に守っていることである。</p> ====拳&#xE0101;々==== *「拳&#xE0101;々」:両手で捧げ持ち、固く握って離さない様子。転じて、熱心に心に持ち続けること。<ref>[https://kotobank.jp/word/%E6%8B%B3%E6%8B%B3-491747 拳拳(ケンケン)とは? 意味や使い方 - コトバンク]</ref> *:『[[w:礼記|礼記]]』の「[[s:ja:禮記/中庸|中庸]]」に出て来る「拳拳服膺」(捧げ持つように心に銘記し、常に忘れないでいる)が有名<ref>[https://kotobank.jp/word/%E6%8B%B3%E6%8B%B3%E6%9C%8D%E8%86%BA-491781#w-491781 拳拳服膺(ケンケンフクヨウ)とは? 意味や使い方 - コトバンク]</ref>。 ====措カサル==== *「措カサル(措かざる)」:そのままにしておかない。 === 曩ニ米英二國ニ宣戰セル所&#xE0101;以モ亦 === <p style="line-height:1.3; font-family:游明朝;font-size:20pt;">{{ruby|曩|さき}}に{{ruby|米|べい}}{{ruby|英|えい}}{{ruby|二|に}}{{ruby|国|こく}}に{{ruby|宣|せん}}{{ruby|戦|せん}}せる{{ruby|所以|ゆえん}}も{{ruby|亦|また}}、</p> <p style="color:#009900; font-family:游明朝;font-size:18pt;">現代語訳:先にアメリカ・イギリス二か国に宣戦布告した理由も同様に、</p> ==== 曩ニ ==== *「曩に」:さきに。「先に」とも表記する。<ref>[https://kotobank.jp/word/%E5%85%88%E3%81%AB-509391#w-1976887 先に(サキニ)とは? 意味や使い方 - コトバンク]</ref> === 實ニ帝國ノ自存ト東亞ノ安定トヲ庻&#xE0100;幾󠄁&#xE0101;スルニ出テ === <p style="line-height:1.3; font-family:游明朝;font-size:20pt;">{{ruby|実|じつ}}に{{ruby|帝|てい}}{{ruby|国|こく}}の{{ruby|自|じ}}{{ruby|存|そん}}と{{ruby|東|とう}}{{ruby|亜|あ}}の{{ruby|安|あん}}{{ruby|定|てい}}とを{{ruby|庶|しょ}}{{ruby|幾|き}}するに{{ruby|出|い}}で、</p> <p style="color:#009900; font-family:游明朝;font-size:18pt;">現代語訳:まさに日本帝国の自立と生存および東アジア諸国の安定を心から願ってのことであり、</p> ==== 自存 ==== *「自存」:他に頼らないで自分の力で生存すること。 *:<span style="font-size:12pt;color:#900;">(※昭和16年の対米英宣戦の詔書にも「帝国は今や自存自衛の為蹶然起って」というフレーズがある。)</span><ref>[https://kotobank.jp/word/%E8%87%AA%E5%AD%98-520220#goog_rewarded 自存(ジソン)とは? 意味や使い方 - コトバンク]</ref> ==== 庻󠄀幾󠄁󠄁 ==== *「庻󠄀幾󠄁󠄁(庶幾 しょき)」:心から願うこと。<ref>[https://kotobank.jp/word/%E5%BA%B6%E5%B9%BE-533981#w-533981 庶幾(ショキ)とは? 意味や使い方 - コトバンク]</ref> === 他國ノ主權ヲ排シ領土ヲ侵󠄁スカ如キハ === <p style="line-height:1.3; font-family:游明朝;font-size:20pt;"> </p> <p style="color:#009900; font-family:游明朝;font-size:18pt;">現代語訳: </p> === 固ヨリ朕&#xE0102;カ志ニアラス === <p style="line-height:1.3; font-family:游明朝;font-size:20pt;"> </p> <p style="color:#009900; font-family:游明朝;font-size:18pt;">現代語訳: </p> === 然ルニ交&#xE0101;戰已ニ四歲ヲ閱シ === <p style="line-height:1.3; font-family:游明朝;font-size:20pt;"> </p> <p style="color:#009900; font-family:游明朝;font-size:18pt;">現代語訳: </p> === 朕&#xE0102;カ陸海&#xE0100;將兵ノ勇&#xE0101;戰 === <p style="line-height:1.3; font-family:游明朝;font-size:20pt;"> </p> <p style="color:#009900; font-family:游明朝;font-size:18pt;">現代語訳: </p> === 朕&#xE0102;カ百僚有司ノ勵精&#xE0100; === <p style="line-height:1.3; font-family:游明朝;font-size:20pt;"> </p> <p style="color:#009900; font-family:游明朝;font-size:18pt;">現代語訳: </p> === 朕&#xE0102;カ一億衆庻&#xE0100;ノ奉公󠄁 === <p style="line-height:1.3; font-family:游明朝;font-size:20pt;"> </p> <p style="color:#009900; font-family:游明朝;font-size:18pt;">現代語訳: </p> === 各〻最善ヲ盡セルニ拘ラス === <p style="line-height:1.3; font-family:游明朝;font-size:20pt;"> </p> <p style="color:#009900; font-family:游明朝;font-size:18pt;">現代語訳: </p> === 戰局必スシモ好轉セス === <p style="line-height:1.3; font-family:游明朝;font-size:20pt;"> </p> <p style="color:#009900; font-family:游明朝;font-size:18pt;">現代語訳: </p> === 世界ノ大勢亦我ニ利アラス === <p style="line-height:1.3; font-family:游明朝;font-size:20pt;"> </p> <p style="color:#009900; font-family:游明朝;font-size:18pt;">現代語訳: </p> === 加之敵ハ新ニ殘虐󠄁ナル爆彈ヲ使&#xE0101;用シテ === <p style="line-height:1.3; font-family:游明朝;font-size:20pt;"> </p> <p style="color:#009900; font-family:游明朝;font-size:18pt;">現代語訳: </p> === 頻&#xE0100;ニ無辜ヲ殺&#xE0100;傷シ === <p style="line-height:1.3; font-family:游明朝;font-size:20pt;"> </p> <p style="color:#009900; font-family:游明朝;font-size:18pt;">現代語訳: </p> === 慘害&#xE0102;ノ及&#xE0101;フ所&#xE0101;眞ニ測ルヘカラサルニ至ル === <p style="line-height:1.3; font-family:游明朝;font-size:20pt;"> </p> <p style="color:#009900; font-family:游明朝;font-size:18pt;">現代語訳: </p> === 而モ尙交&#xE0101;戰ヲ繼續セムカ === <p style="line-height:1.3; font-family:游明朝;font-size:20pt;"> </p> <p style="color:#009900; font-family:游明朝;font-size:18pt;">現代語訳: </p> === 終&#xE0101;ニ我カ民族ノ滅亡ヲ招來スルノミナラス === <p style="line-height:1.3; font-family:游明朝;font-size:20pt;"> </p> <p style="color:#009900; font-family:游明朝;font-size:18pt;">現代語訳: </p> === 延&#xE0102;テ人類&#xE0100;ノ文&#xE0101;明ヲモ破却スヘシ === <p style="line-height:1.3; font-family:游明朝;font-size:20pt;"> </p> <p style="color:#009900; font-family:游明朝;font-size:18pt;">現代語訳: </p> === 斯ノ如クムハ === <p style="line-height:1.3; font-family:游明朝;font-size:20pt;"> </p> <p style="color:#009900; font-family:游明朝;font-size:18pt;">現代語訳: </p> === 朕&#xE0102;何ヲ以テカ億兆ノ赤子ヲ保シ === <p style="line-height:1.3; font-family:游明朝;font-size:20pt;"> </p> <p style="color:#009900; font-family:游明朝;font-size:18pt;">現代語訳: </p> === 皇祖&#xFE00;皇宗ノ神&#xE0100;靈ニ謝セムヤ === <p style="line-height:1.3; font-family:游明朝;font-size:20pt;"> </p> <p style="color:#009900; font-family:游明朝;font-size:18pt;">現代語訳: </p> === 是レ朕&#xE0102;カ帝國政府ヲシテ共同宣言ニ應セシムルニ至レル所&#xE0101;以ナリ === <p style="line-height:1.3; font-family:游明朝;font-size:20pt;"> </p> <p style="color:#009900; font-family:游明朝;font-size:18pt;">現代語訳: </p> <!-- <ruby><rb>●漢字●</rb><rp>(</rp><rt>●ルビ●</rt><rp>)</rp></ruby> --> <span style="color:#500;"> </span> <span style="color:#009900;"></span> <p style="color:#009900;"></span> == 第四段落 == <!--◆第四段落--><div style="background-color:#ffd;"> <p style="line-height:1.3; margin-bottom: 15px; text-align:left; font-family:游明朝;font-size:13pt;">(原文)<span style="color:#500;">朕&#xE0102;</span>ハ帝國ト共ニ<span style="color:#500;">終&#xE0101;</span>始東亞ノ解放ニ協力セル<span style="color:#500;">諸&#xE0100;</span>盟<span style="color:#500;">邦&#xE0102;</span>ニ對シ<span style="color:#500;">遺&#xE0101;</span>憾ノ意ヲ表セサルヲ得ス帝國臣民ニシテ戰陣ニ死シ職域ニ殉シ非命ニ斃レタル<span style="color:#500;">者&#xE0101;</span><span style="color:#500;">及&#xE0101;</span>其ノ<span style="color:#500;">遺&#xE0101;</span>族ニ想ヲ致セハ五內爲ニ裂ク且戰傷ヲ<span style="color:#500;">負&#xE0102;</span>ヒ災<span style="color:#500;">禍&#xE0100;</span>ヲ蒙リ家業ヲ失ヒタル<span style="color:#500;">者&#xE0101;</span>ノ厚生ニ至リテハ<span style="color:#500;">朕&#xE0102;</span>ノ深ク軫念スル<span style="color:#500;">所&#xE0101;</span>ナリ惟フニ今後帝國ノ受クヘキ苦<span style="color:#500;">難&#xE0100;</span>ハ固ヨリ<span style="color:#500;">尋&#xE0101;</span>常ニアラス爾臣民ノ衷<span style="color:#500;">情&#xE0101;</span>モ<span style="color:#500;">朕&#xE0102;</span>善ク之ヲ知ル然レトモ<span style="color:#500;">朕&#xE0102;</span>ハ時<span style="color:#500;">運&#xE0101;</span>ノ趨ク<span style="color:#500;">所&#xE0101;</span>堪ヘ<span style="color:#500;">難&#xE0100;</span>キヲ堪ヘ<span style="color:#500;">忍&#xE0101;</span>ヒ<span style="color:#500;">難&#xE0100;</span>キヲ<span style="color:#500;">忍&#xE0101;</span>ヒ以テ萬世ノ爲ニ太<span style="color:#500;">平&#xE0101;</span>ヲ開カムト欲ス</p> <p style="background-color:#ffe; line-height:1.5; font-family:游明朝;font-size:13pt;"><ruby><rb>朕</rb><rp>(</rp><rt>ちん</rt><rp>)</rp></ruby>は<ruby><rb>帝</rb><rp>(</rp><rt>てい</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>国</rb><rp>(</rp><rt>こく</rt><rp>)</rp></ruby>と<ruby><rb>共</rb><rp>(</rp><rt>とも</rt><rp>)</rp></ruby>に、<ruby><rb>終</rb><rp>(</rp><rt>しゅう</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>始</rb><rp>(</rp><rt>し</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>東</rb><rp>(</rp><rt>とう</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>亜</rb><rp>(</rp><rt>あ</rt><rp>)</rp></ruby>の<ruby><rb>解</rb><rp>(</rp><rt>かい</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>放</rb><rp>(</rp><rt>ほう</rt><rp>)</rp></ruby>に<ruby><rb>協</rb><rp>(</rp><rt>きょう</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>力</rb><rp>(</rp><rt>りょく</rt><rp>)</rp></ruby>せる<ruby><rb>諸</rb><rp>(</rp><rt>しょ</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>盟</rb><rp>(</rp><rt>めい</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>邦</rb><rp>(</rp><rt>ほう</rt><rp>)</rp></ruby>に<ruby><rb>対</rb><rp>(</rp><rt>たい</rt><rp>)</rp></ruby>し、<ruby><rb>遺</rb><rp>(</rp><rt>い</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>憾</rb><rp>(</rp><rt>かん</rt><rp>)</rp></ruby>の<ruby><rb>意</rb><rp>(</rp><rt>い</rt><rp>)</rp></ruby>を<ruby><rb>表</rb><rp>(</rp><rt>ひょう</rt><rp>)</rp></ruby>せざるを<ruby><rb>得</rb><rp>(</rp><rt>え</rt><rp>)</rp></ruby>ず。<ruby><rb>帝</rb><rp>(</rp><rt>てい</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>国</rb><rp>(</rp><rt>こく</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>臣</rb><rp>(</rp><rt>しん</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>民</rb><rp>(</rp><rt>みん</rt><rp>)</rp></ruby>にして、<ruby><rb>戦</rb><rp>(</rp><rt>せん</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>陣</rb><rp>(</rp><rt>じん</rt><rp>)</rp></ruby>に<ruby><rb>死</rb><rp>(</rp><rt>し</rt><rp>)</rp></ruby>し、<ruby><rb>職</rb><rp>(</rp><rt>しょく</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>域</rb><rp>(</rp><rt>いき</rt><rp>)</rp></ruby>に<ruby><rb>殉</rb><rp>(</rp><rt>じゅん</rt><rp>)</rp></ruby>じ、<ruby><rb>非</rb><rp>(</rp><rt>ひ</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>命</rb><rp>(</rp><rt>めい</rt><rp>)</rp></ruby>に<ruby><rb>斃</rb><rp>(</rp><rt>たお</rt><rp>)</rp></ruby>れたる<ruby><rb>者</rb><rp>(</rp><rt>もの</rt><rp>)</rp></ruby>、<ruby><rb>及</rb><rp>(</rp><rt>および</rt><rp>)</rp></ruby>&nbsp;<ruby><rb>其</rb><rp>(</rp><rt>そ</rt><rp>)</rp></ruby>の<ruby><rb>遺</rb><rp>(</rp><rt>い</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>族</rb><rp>(</rp><rt>ぞく</rt><rp>)</rp></ruby>に<ruby><rb>想</rb><rp>(</rp><rt>おもい</rt><rp>)</rp></ruby>を<ruby><rb>致</rb><rp>(</rp><rt>いた</rt><rp>)</rp></ruby>せば、<ruby><rb>五</rb><rp>(</rp><rt>ご</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>内</rb><rp>(</rp><rt>ない</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>為</rb><rp>(</rp><rt>ため</rt><rp>)</rp></ruby>に<ruby><rb>裂</rb><rp>(</rp><rt>さ</rt><rp>)</rp></ruby>く、<ruby><rb>且</rb><rp>(</rp><rt>かつ</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>戦</rb><rp>(</rp><rt>せん</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>傷</rb><rp>(</rp><rt>しょう</rt><rp>)</rp></ruby>を<ruby><rb>負</rb><rp>(</rp><rt>お</rt><rp>)</rp></ruby>い、<ruby><rb>災</rb><rp>(</rp><rt>さい</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>禍</rb><rp>(</rp><rt>か</rt><rp>)</rp></ruby>を <ruby><rb>蒙</rb><rp>(</rp><rt>こうむ</rt><rp>)</rp></ruby>り、<ruby><rb>家</rb><rp>(</rp><rt>か</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>業</rb><rp>(</rp><rt>ぎょう</rt><rp>)</rp></ruby>を<ruby><rb>失</rb><rp>(</rp><rt>うしな</rt><rp>)</rp></ruby>いたる<ruby><rb>者</rb><rp>(</rp><rt>もの</rt><rp>)</rp></ruby>の<ruby><rb>厚</rb><rp>(</rp><rt>こう</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>生</rb><rp>(</rp><rt>せい</rt><rp>)</rp></ruby>に<ruby><rb>至</rb><rp>(</rp><rt>いた</rt><rp>)</rp></ruby>りては<ruby><rb>朕</rb><rp>(</rp><rt>ちん</rt><rp>)</rp></ruby>の<ruby><rb>深</rb><rp>(</rp><rt>ふか</rt><rp>)</rp></ruby>く<ruby><rb>軫</rb><rp>(</rp><rt>しん</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>念</rb><rp>(</rp><rt>ねん</rt><rp>)</rp></ruby>する<ruby><rb>所</rb><rp>(</rp><rt>ところ</rt><rp>)</rp></ruby>なり。<ruby><rb>惟</rb><rp>(</rp><rt>おも</rt><rp>)</rp></ruby>うに、<ruby><rb>今</rb><rp>(</rp><rt>こん</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>後</rb><rp>(</rp><rt>ご</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>帝</rb><rp>(</rp><rt>てい</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>国</rb><rp>(</rp><rt>こく</rt><rp>)</rp></ruby>の<ruby><rb>受</rb><rp>(</rp><rt>う</rt><rp>)</rp></ruby>くべき<ruby><rb>苦</rb><rp>(</rp><rt>く</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>難</rb><rp>(</rp><rt>なん</rt><rp>)</rp></ruby>は、<ruby><rb>固</rb><rp>(</rp><rt>もと</rt><rp>)</rp></ruby>より<ruby><rb>尋</rb><rp>(</rp><rt>じん</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>常</rb><rp>(</rp><rt>じょう</rt><rp>)</rp></ruby>にあらず。<ruby><rb>爾</rb><rp>(</rp><rt>なんじ</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>臣</rb><rp>(</rp><rt>しん</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>民</rb><rp>(</rp><rt>みん</rt><rp>)</rp></ruby>の<ruby><rb>衷</rb><rp>(</rp><rt>ちゅう</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>情</rb><rp>(</rp><rt>じょう</rt><rp>)</rp></ruby>も、<ruby><rb>朕</rb><rp>(</rp><rt>ちん</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>善</rb><rp>(</rp><rt>よ</rt><rp>)</rp></ruby>く<ruby><rb>之</rb><rp>(</rp><rt>これ</rt><rp>)</rp></ruby>を<ruby><rb>知</rb><rp>(</rp><rt>し</rt><rp>)</rp></ruby>る。<ruby><rb>然</rb><rp>(</rp><rt>しか</rt><rp>)</rp></ruby>れども<ruby><rb>朕</rb><rp>(</rp><rt>ちん</rt><rp>)</rp></ruby>は<ruby><rb>時</rb><rp>(</rp><rt>じ</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>運</rb><rp>(</rp><rt>うん</rt><rp>)</rp></ruby>の<ruby><rb>趨</rb><rp>(</rp><rt>おもむ</rt><rp>)</rp></ruby>く<ruby><rb>所</rb><rp>(</rp><rt>ところ</rt><rp>)</rp></ruby>、 <ruby><rb>堪</rb><rp>(</rp><rt>た</rt><rp>)</rp></ruby>え<ruby><rb>難</rb><rp>(</rp><rt>がた</rt><rp>)</rp></ruby>きを<ruby><rb>堪</rb><rp>(</rp><rt>た</rt><rp>)</rp></ruby>え、<ruby><rb>忍</rb><rp>(</rp><rt>しの</rt><rp>)</rp></ruby>び<ruby><rb>難</rb><rp>(</rp><rt>がた</rt><rp>)</rp></ruby>きを<ruby><rb>忍</rb><rp>(</rp><rt>しの</rt><rp>)</rp></ruby>び、<ruby><rb>以</rb><rp>(</rp><rt>もっ</rt><rp>)</rp></ruby>て<ruby><rb>万</rb><rp>(</rp><rt>ばん</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>世</rb><rp>(</rp><rt>せい</rt><rp>)</rp></ruby>の<ruby><rb>為</rb><rp>(</rp><rt>ため</rt><rp>)</rp></ruby>に<ruby><rb>太</rb><rp>(</rp><rt>たい</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>平</rb><rp>(</rp><rt>へい</rt><rp>)</rp></ruby>を<ruby><rb>開</rb><rp>(</rp><rt>ひら</rt><rp>)</rp></ruby>かんと<ruby><rb>欲</rb><rp>(</rp><rt>ほっ</rt><rp>)</rp></ruby>す。</p> </div> # [[#朕&#xE0102;ハ帝國ト共ニ]] # [[#終&#xE0101;始東亞ノ解放ニ協力セル諸&#xE0100;盟邦&#xE0102;ニ對シ]] # [[#遺&#xE0101;憾ノ意ヲ表セサルヲ得ス]] # [[#帝國臣民ニシテ]] # [[#戰陣ニ死シ]] # [[#職域ニ殉シ]] # [[#非命ニ斃レタル者&#xE0101;]] # [[#及&#xE0101;其ノ遺&#xE0101;族ニ想ヲ致セハ]] # [[#五內爲ニ裂ク]] # [[#且戰傷ヲ負&#xE0102;ヒ]] # [[#災禍&#xE0100;ヲ蒙リ]] # [[#家業ヲ失ヒタル者&#xE0101;ノ]] # [[#厚生ニ至リテハ]] # [[#朕&#xE0102;ノ深ク軫念スル所&#xE0101;ナリ]] # [[#惟フニ今後帝國ノ受クヘキ苦難&#xE0100;ハ]] # [[#固ヨリ尋&#xE0101;常ニアラス]] # [[#爾臣民ノ衷情&#xE0101;モ朕&#xE0102;善ク之ヲ知ル]] # [[#然レトモ朕&#xE0102;ハ時運&#xE0101;ノ趨ク所&#xE0101;]] # [[#堪ヘ難&#xE0100;キヲ堪ヘ忍&#xE0101;ヒ難&#xE0100;キヲ忍&#xE0101;ヒ]] # [[#以テ萬世ノ爲ニ太平&#xE0101;ヲ開カムト欲ス]] === 朕&#xE0102;ハ帝國ト共ニ === <p style="line-height:1.3; font-family:游明朝;font-size:20pt;"> </p> <p style="color:#009900; font-family:游明朝;font-size:18pt;">現代語訳: </p> === 終&#xE0101;始東亞ノ解放ニ協力セル諸&#xE0100;盟邦&#xE0102;ニ對シ === <p style="line-height:1.3; font-family:游明朝;font-size:20pt;"> </p> <p style="color:#009900; font-family:游明朝;font-size:18pt;">現代語訳: </p> === 遺&#xE0101;憾ノ意ヲ表セサルヲ得ス === <p style="line-height:1.3; font-family:游明朝;font-size:20pt;"> </p> <p style="color:#009900; font-family:游明朝;font-size:18pt;">現代語訳: </p> === 帝國臣民ニシテ === <p style="line-height:1.3; font-family:游明朝;font-size:20pt;"> </p> <p style="color:#009900; font-family:游明朝;font-size:18pt;">現代語訳: </p> === 戰陣ニ死シ === <p style="line-height:1.3; font-family:游明朝;font-size:20pt;"> </p> <p style="color:#009900; font-family:游明朝;font-size:18pt;">現代語訳: </p> === 職域ニ殉シ === <p style="line-height:1.3; font-family:游明朝;font-size:20pt;"> </p> <p style="color:#009900; font-family:游明朝;font-size:18pt;">現代語訳: </p> === 非命ニ斃レタル者&#xE0101; === <p style="line-height:1.3; font-family:游明朝;font-size:20pt;"> </p> <p style="color:#009900; font-family:游明朝;font-size:18pt;">現代語訳: </p> === 及&#xE0101;其ノ遺&#xE0101;族ニ想ヲ致セハ === <p style="line-height:1.3; font-family:游明朝;font-size:20pt;"> </p> <p style="color:#009900; font-family:游明朝;font-size:18pt;">現代語訳: </p> === 五內爲ニ裂ク === <p style="line-height:1.3; font-family:游明朝;font-size:20pt;"> </p> <p style="color:#009900; font-family:游明朝;font-size:18pt;">現代語訳: </p> === 且戰傷ヲ負&#xE0102;ヒ === <p style="line-height:1.3; font-family:游明朝;font-size:20pt;"> </p> <p style="color:#009900; font-family:游明朝;font-size:18pt;">現代語訳: </p> === 災禍&#xE0100;ヲ蒙リ === <p style="line-height:1.3; font-family:游明朝;font-size:20pt;"> </p> <p style="color:#009900; font-family:游明朝;font-size:18pt;">現代語訳: </p> === 家業ヲ失ヒタル者&#xE0101;ノ === <p style="line-height:1.3; font-family:游明朝;font-size:20pt;"> </p> <p style="color:#009900; font-family:游明朝;font-size:18pt;">現代語訳: </p> === 厚生ニ至リテハ === <p style="line-height:1.3; font-family:游明朝;font-size:20pt;"> </p> <p style="color:#009900; font-family:游明朝;font-size:18pt;">現代語訳: </p> === 朕&#xE0102;ノ深ク軫念スル所&#xE0101;ナリ === <p style="line-height:1.3; font-family:游明朝;font-size:20pt;"> </p> <p style="color:#009900; font-family:游明朝;font-size:18pt;">現代語訳: </p> === 惟フニ今後帝國ノ受クヘキ苦難&#xE0100;ハ === <p style="line-height:1.3; font-family:游明朝;font-size:20pt;"> </p> <p style="color:#009900; font-family:游明朝;font-size:18pt;">現代語訳: </p> === 固ヨリ尋&#xE0101;常ニアラス === <p style="line-height:1.3; font-family:游明朝;font-size:20pt;"> </p> <p style="color:#009900; font-family:游明朝;font-size:18pt;">現代語訳: </p> === 爾臣民ノ衷情&#xE0101;モ朕&#xE0102;善ク之ヲ知ル === <p style="line-height:1.3; font-family:游明朝;font-size:20pt;"> </p> <p style="color:#009900; font-family:游明朝;font-size:18pt;">現代語訳: </p> === 然レトモ朕&#xE0102;ハ時運&#xE0101;ノ趨ク所&#xE0101; === <p style="line-height:1.3; font-family:游明朝;font-size:20pt;"> </p> <p style="color:#009900; font-family:游明朝;font-size:18pt;">現代語訳: </p> === 堪ヘ難&#xE0100;キヲ堪ヘ忍&#xE0101;ヒ難&#xE0100;キヲ忍&#xE0101;ヒ === <p style="line-height:1.3; font-family:游明朝;font-size:20pt;"> </p> <p style="color:#009900; font-family:游明朝;font-size:18pt;">現代語訳: </p> === 以テ萬世ノ爲ニ太平&#xE0101;ヲ開カムト欲ス === <p style="line-height:1.3; font-family:游明朝;font-size:20pt;"> </p> <p style="color:#009900; font-family:游明朝;font-size:18pt;">現代語訳: </p> <!-- <ruby><rb>●漢字●</rb><rp>(</rp><rt>●ルビ●</rt><rp>)</rp></ruby> --> <span style="color:#500;"> </span> <span style="color:#009900;"></span> <p style="color:#009900;"></span> == 第五段落 == <!--◆第五段落--><div style="background-color:#ffd;"> <p style="line-height:1.3; margin-bottom: 15px; text-align:left; font-family:游明朝;font-size:13pt;">(原文)<span style="color:#500;">朕&#xE0102;</span>ハ玆ニ國體ヲ護持シ得テ忠良ナル爾臣民ノ赤<span style="color:#500;">誠&#xE0101;</span>ニ信倚シ常ニ爾臣民ト共ニ在リ若シ夫レ<span style="color:#500;">情&#xE0101;</span>ノ激スル<span style="color:#500;">所&#xE0101;</span>濫ニ事端ヲ滋クシ或ハ同<span style="color:#500;">胞&#xE0101;</span>排擠互ニ時局ヲ亂リ爲ニ大<span style="color:#500;">道&#xE0101;</span>ヲ<span style="color:#500;">誤&#xE0101;</span>リ信義ヲ世界ニ失フカ如キハ<span style="color:#500;">朕&#xE0102;</span>最モ之ヲ戒ム宜シク擧國一家子孫相傳ヘ確ク<span style="color:#500;">神&#xE0100;</span>州ノ不滅ヲ信シ任重クシテ<span style="color:#500;">道&#xE0101;</span><span style="color:#500;">遠&#xE0101;</span>キヲ念ヒ總力ヲ將來ノ<span style="color:#500;">建&#xE0101;</span>設ニ傾ケ<span style="color:#500;">道&#xE0101;</span>義ヲ篤クシ志操ヲ鞏クシ誓テ國體ノ<span style="color:#500;">精&#xE0100;</span>華ヲ發揚シ世界ノ<span style="color:#500;">進&#xE0101;</span>運󠄁ニ後レサラムコトヲ期スヘシ爾臣民其レ克ク<span style="color:#500;">朕&#xE0102;</span>カ意ヲ體セヨ</p> <p style="background-color:#ffe; line-height:1.5; font-family:游明朝;font-size:13pt;"><ruby><rb>朕</rb><rp>(</rp><rt>ちん</rt><rp>)</rp></ruby>は<ruby><rb>玆</rb><rp>(</rp><rt>ここ</rt><rp>)</rp></ruby>に <ruby><rb>国</rb><rp>(</rp><rt>こく</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>体</rb><rp>(</rp><rt>たい</rt><rp>)</rp></ruby>を<ruby><rb>護</rb><rp>(</rp><rt>ご</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>持</rb><rp>(</rp><rt>じ</rt><rp>)</rp></ruby>し<ruby><rb>得</rb><rp>(</rp><rt>え</rt><rp>)</rp></ruby>て、<ruby><rb>忠</rb><rp>(</rp><rt>ちゅう</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>良</rb><rp>(</rp><rt>りょう</rt><rp>)</rp></ruby>なる<ruby><rb>爾</rb><rp>(</rp><rt>なんじ</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>臣</rb><rp>(</rp><rt>しん</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>民</rb><rp>(</rp><rt>みん</rt><rp>)</rp></ruby>の<ruby><rb>赤</rb><rp>(</rp><rt>せき</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>誠</rb><rp>(</rp><rt>せい</rt><rp>)</rp></ruby>に<ruby><rb>信</rb><rp>(</rp><rt>しん</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>倚</rb><rp>(</rp><rt>い</rt><rp>)</rp></ruby>し、<ruby><rb>常</rb><rp>(</rp><rt>つね</rt><rp>)</rp></ruby>に<ruby><rb>爾</rb><rp>(</rp><rt>なんじ</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>臣</rb><rp>(</rp><rt>しん</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>民</rb><rp>(</rp><rt>みん</rt><rp>)</rp></ruby>と<ruby><rb>共</rb><rp>(</rp><rt>とも</rt><rp>)</rp></ruby>に<ruby><rb>在</rb><rp>(</rp><rt>あ</rt><rp>)</rp></ruby>り。 <ruby><rb>若</rb><rp>(</rp><rt>も</rt><rp>)</rp></ruby>し<ruby><rb>夫</rb><rp>(</rp><rt>そ</rt><rp>)</rp></ruby>れ<ruby><rb>情</rb><rp>(</rp><rt>じょう</rt><rp>)</rp></ruby>の<ruby><rb>激</rb><rp>(</rp><rt>げき</rt><rp>)</rp></ruby>する<ruby><rb>所</rb><rp>(</rp><rt>ところ</rt><rp>)</rp></ruby>、<ruby><rb>濫</rb><rp>(</rp><rt>みだり</rt><rp>)</rp></ruby>に<ruby><rb>事</rb><rp>(</rp><rt>じ</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>端</rb><rp>(</rp><rt>たん</rt><rp>)</rp></ruby>を<ruby><rb>滋</rb><rp>(</rp><rt>しげ</rt><rp>)</rp></ruby>くし、<ruby><rb>或</rb><rp>(</rp><rt>あるい</rt><rp>)</rp></ruby>は<ruby><rb>同</rb><rp>(</rp><rt>どう</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>胞</rb><rp>(</rp><rt>ほう</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>排</rb><rp>(</rp><rt>はい</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>擠</rb><rp>(</rp><rt>さい</rt><rp>)</rp></ruby>、<ruby><rb>互</rb><rp>(</rp><rt>たがい</rt><rp>)</rp></ruby>に<ruby><rb>時</rb><rp>(</rp><rt>じ</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>局</rb><rp>(</rp><rt>きょく</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>乱</rb><rp>(</rp><rt>みだ</rt><rp>)</rp></ruby>り、<ruby><rb>為</rb><rp>(</rp><rt>ため</rt><rp>)</rp></ruby>に<ruby><rb>大</rb><rp>(</rp><rt>だい</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>道</rb><rp>(</rp><rt>どう</rt><rp>)</rp></ruby>を<ruby><rb>誤</rb><rp>(</rp><rt>あやま</rt><rp>)</rp></ruby>り、<ruby><rb>信</rb><rp>(</rp><rt>しん</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>義</rb><rp>(</rp><rt>ぎ</rt><rp>)</rp></ruby>を<ruby><rb>世</rb><rp>(</rp><rt>せ</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>界</rb><rp>(</rp><rt>かい</rt><rp>)</rp></ruby>に<ruby><rb>失</rb><rp>(</rp><rt>うしな</rt><rp>)</rp></ruby>うが<ruby><rb>如</rb><rp>(</rp><rt>ごと</rt><rp>)</rp></ruby>きは、<ruby><rb>朕</rb><rp>(</rp><rt>ちん</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>最</rb><rp>(</rp><rt>もっと</rt><rp>)</rp></ruby>も<ruby><rb>之</rb><rp>(</rp><rt>これ</rt><rp>)</rp></ruby>を<ruby><rb>戒</rb><rp>(</rp><rt>いまし</rt><rp>)</rp></ruby>む、<ruby><rb>宜</rb><rp>(</rp><rt>よろ</rt><rp>)</rp></ruby>しく<ruby><rb>挙</rb><rp>(</rp><rt>きょ</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>国</rb><rp>(</rp><rt>こく</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>一</rb><rp>(</rp><rt>いっ</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>家</rb><rp>(</rp><rt>か</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>子</rb><rp>(</rp><rt>し</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>孫</rb><rp>(</rp><rt>そん</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>相</rb><rp>(</rp><rt>あい</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>伝</rb><rp>(</rp><rt>つた</rt><rp>)</rp></ruby>え、 <ruby><rb>確</rb><rp>(</rp><rt>かた</rt><rp>)</rp></ruby>く<ruby><rb>神</rb><rp>(</rp><rt>しん</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>州</rb><rp>(</rp><rt>しゅう</rt><rp>)</rp></ruby>の<ruby><rb>不</rb><rp>(</rp><rt>ふ</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>滅</rb><rp>(</rp><rt>めつ</rt><rp>)</rp></ruby>を<ruby><rb>信</rb><rp>(</rp><rt>しん</rt><rp>)</rp></ruby>じ、<ruby><rb>任</rb><rp>(</rp><rt>にん</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>重</rb><rp>(</rp><rt>おも</rt><rp>)</rp></ruby>くして、<ruby><rb>道</rb><rp>(</rp><rt>みち</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>遠</rb><rp>(</rp><rt>とお</rt><rp>)</rp></ruby>きを<ruby><rb>念</rb><rp>(</rp><rt>おも</rt><rp>)</rp></ruby>い、<ruby><rb>総</rb><rp>(</rp><rt>そう</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>力</rb><rp>(</rp><rt>りょく</rt><rp>)</rp></ruby>を<ruby><rb>将</rb><rp>(</rp><rt>しょう</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>来</rb><rp>(</rp><rt>らい</rt><rp>)</rp></ruby>の<ruby><rb>建</rb><rp>(</rp><rt>けん</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>設</rb><rp>(</rp><rt>せつ</rt><rp>)</rp></ruby>に<ruby><rb>傾</rb><rp>(</rp><rt>かたむ</rt><rp>)</rp></ruby>け、<ruby><rb>道</rb><rp>(</rp><rt>どう</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>義</rb><rp>(</rp><rt>ぎ</rt><rp>)</rp></ruby>を<ruby><rb>篤</rb><rp>(</rp><rt>あつ</rt><rp>)</rp></ruby>くし、<ruby><rb>志</rb><rp>(</rp><rt>し</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>操</rb><rp>(</rp><rt>そう</rt><rp>)</rp></ruby>を<ruby><rb>鞏</rb><rp>(</rp><rt>かた</rt><rp>)</rp></ruby>くし、<ruby><rb>誓</rb><rp>(</rp><rt>ちかっ</rt><rp>)</rp></ruby>て<ruby><rb>国</rb><rp>(</rp><rt>こく</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>体</rb><rp>(</rp><rt>たい</rt><rp>)</rp></ruby>の<ruby><rb>精</rb><rp>(</rp><rt>せい</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>華</rb><rp>(</rp><rt>か</rt><rp>)</rp></ruby>を<ruby><rb>発</rb><rp>(</rp><rt>はつ</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>揚</rb><rp>(</rp><rt>よう</rt><rp>)</rp></ruby>し、<ruby><rb>世</rb><rp>(</rp><rt>せ</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>界</rb><rp>(</rp><rt>かい</rt><rp>)</rp></ruby>の<ruby><rb>進</rb><rp>(</rp><rt>しん</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>運</rb><rp>(</rp><rt>うん</rt><rp>)</rp></ruby>に<ruby><rb>後</rb><rp>(</rp><rt>おく</rt><rp>)</rp></ruby>れざらんことを<ruby><rb>期</rb><rp>(</rp><rt>き</rt><rp>)</rp></ruby>すべし。<ruby><rb>爾</rb><rp>(</rp><rt>なんじ</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>臣</rb><rp>(</rp><rt>しん</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>民</rb><rp>(</rp><rt>みん</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>其</rb><rp>(</rp><rt>そ</rt><rp>)</rp></ruby>れ <ruby><rb>克</rb><rp>(</rp><rt>よ</rt><rp>)</rp></ruby>く<ruby><rb>朕</rb><rp>(</rp><rt>ちん</rt><rp>)</rp></ruby>が<ruby><rb>意</rb><rp>(</rp><rt>い</rt><rp>)</rp></ruby>を<ruby><rb>体</rb><rp>(</rp><rt>たい</rt><rp>)</rp></ruby>せよ。</p> </div> # [[#朕&#xE0102;ハ玆ニ國體ヲ護持シ得テ]] # [[#忠良ナル爾臣民ノ赤誠&#xE0101;ニ信倚シ]] # [[#常ニ爾臣民ト共ニ在リ]] # [[#若シ夫レ情&#xE0101;ノ激スル所&#xE0101;]] # [[#濫ニ事端ヲ滋クシ]] # [[#或ハ同胞&#xE0101;排擠]] # [[#互ニ時局ヲ亂リ]] # [[#爲ニ大道&#xE0101;ヲ誤&#xE0101;リ]] # [[#信義ヲ世界ニ失フカ如キハ]] # [[#朕&#xE0102;最モ之ヲ戒ム]] # [[#宜シク擧國一家子孫相傳ヘ]] # [[#確ク神&#xE0100;州ノ不滅ヲ信シ]] # [[#任重クシテ]] # [[#道&#xE0101;遠&#xE0101;キヲ念ヒ]] # [[#總力ヲ將來ノ建&#xE0101;設ニ傾ケ]] # [[#道&#xE0101;義ヲ篤クシ]] # [[#志操ヲ鞏クシ]] # [[#誓テ國體ノ精&#xE0100;華ヲ發揚シ]] # [[#世界ノ進&#xE0101;運󠄁ニ後レサラムコトヲ期スヘシ]] # [[#爾臣民其レ克ク朕&#xE0102;カ意ヲ體セヨ]] === 朕&#xE0102;ハ玆ニ國體ヲ護持シ得テ === <p style="line-height:1.3; font-family:游明朝;font-size:20pt;"> </p> <p style="color:#009900; font-family:游明朝;font-size:18pt;">現代語訳: </p> === 忠良ナル爾臣民ノ赤誠&#xE0101;ニ信倚シ === <p style="line-height:1.3; font-family:游明朝;font-size:20pt;"> </p> <p style="color:#009900; font-family:游明朝;font-size:18pt;">現代語訳: </p> === 常ニ爾臣民ト共ニ在リ === <p style="line-height:1.3; font-family:游明朝;font-size:20pt;"> </p> <p style="color:#009900; font-family:游明朝;font-size:18pt;">現代語訳: </p> === 若シ夫レ情&#xE0101;ノ激スル所&#xE0101; === <p style="line-height:1.3; font-family:游明朝;font-size:20pt;"> </p> <p style="color:#009900; font-family:游明朝;font-size:18pt;">現代語訳: </p> === 濫ニ事端ヲ滋クシ === <p style="line-height:1.3; font-family:游明朝;font-size:20pt;"> </p> <p style="color:#009900; font-family:游明朝;font-size:18pt;">現代語訳: </p> === 或ハ同胞&#xE0101;排擠 === <p style="line-height:1.3; font-family:游明朝;font-size:20pt;"> </p> <p style="color:#009900; font-family:游明朝;font-size:18pt;">現代語訳: </p> === 互ニ時局ヲ亂リ === <p style="line-height:1.3; font-family:游明朝;font-size:20pt;"> </p> <p style="color:#009900; font-family:游明朝;font-size:18pt;">現代語訳: </p> === 爲ニ大道&#xE0101;ヲ誤&#xE0101;リ === <p style="line-height:1.3; font-family:游明朝;font-size:20pt;"> </p> <p style="color:#009900; font-family:游明朝;font-size:18pt;">現代語訳: </p> === 信義ヲ世界ニ失フカ如キハ === <p style="line-height:1.3; font-family:游明朝;font-size:20pt;"> </p> <p style="color:#009900; font-family:游明朝;font-size:18pt;">現代語訳: </p> === 朕&#xE0102;最モ之ヲ戒ム === <p style="line-height:1.3; font-family:游明朝;font-size:20pt;"> </p> <p style="color:#009900; font-family:游明朝;font-size:18pt;">現代語訳: </p> === 宜シク擧國一家子孫相傳ヘ === <p style="line-height:1.3; font-family:游明朝;font-size:20pt;"> </p> <p style="color:#009900; font-family:游明朝;font-size:18pt;">現代語訳: </p> === 確ク神&#xE0100;州ノ不滅ヲ信シ === <p style="line-height:1.3; font-family:游明朝;font-size:20pt;"> </p> <p style="color:#009900; font-family:游明朝;font-size:18pt;">現代語訳: </p> === 任重クシテ === <p style="line-height:1.3; font-family:游明朝;font-size:20pt;"> </p> <p style="color:#009900; font-family:游明朝;font-size:18pt;">現代語訳: </p> === 道&#xE0101;遠&#xE0101;キヲ念ヒ === <p style="line-height:1.3; font-family:游明朝;font-size:20pt;"> </p> <p style="color:#009900; font-family:游明朝;font-size:18pt;">現代語訳: </p> === 總力ヲ將來ノ建&#xE0101;設ニ傾ケ === <p style="line-height:1.3; font-family:游明朝;font-size:20pt;"> </p> <p style="color:#009900; font-family:游明朝;font-size:18pt;">現代語訳: </p> === 道&#xE0101;義ヲ篤クシ === <p style="line-height:1.3; font-family:游明朝;font-size:20pt;"> </p> <p style="color:#009900; font-family:游明朝;font-size:18pt;">現代語訳: </p> === 志操ヲ鞏クシ === <p style="line-height:1.3; font-family:游明朝;font-size:20pt;"> </p> <p style="color:#009900; font-family:游明朝;font-size:18pt;">現代語訳: </p> === 誓テ國體ノ精&#xE0100;華ヲ發揚シ === <p style="line-height:1.3; font-family:游明朝;font-size:20pt;"> </p> <p style="color:#009900; font-family:游明朝;font-size:18pt;">現代語訳: </p> === 世界ノ進&#xE0101;運󠄁ニ後レサラムコトヲ期スヘシ === <p style="line-height:1.3; font-family:游明朝;font-size:20pt;"> </p> <p style="color:#009900; font-family:游明朝;font-size:18pt;">現代語訳: </p> === 爾臣民其レ克ク朕&#xE0102;カ意ヲ體セヨ === <p style="line-height:1.3; font-family:游明朝;font-size:20pt;"> </p> <p style="color:#009900; font-family:游明朝;font-size:18pt;">現代語訳: </p> === § === <p style="line-height:1.3; font-family:游明朝;font-size:20pt;"> </p> <p style="color:#009900; font-family:游明朝;font-size:18pt;">現代語訳: </p> <!-- <ruby><rb>●漢字●</rb><rp>(</rp><rt>●ルビ●</rt><rp>)</rp></ruby> --> <span style="color:#500;"> </span> <span style="color:#009900;"></span> <p style="color:#009900;"></span> <div style="break-after: page;"> <!-- <ruby><rb>●漢字●</rb><rp>(</rp><rt>●ルビ●</rt><rp>)</rp></ruby> --> == 脚注 == <references /> == 外部リンク == [[Category:終戦の詔書|ちゆうかい]] ahbu85pxvsid7wlav1hcl3rd362mjlh アイヌ語 読書・資料案内 0 48743 305033 304495 2026-10-22T09:39:59Z Jcb 92857 305033 wikitext text/x-wiki [[アイヌ語]] > '''学習に役立つ文献やウェブサイト''' ここでは、トップページに載せられなかったものも含めて、アイヌ語の学習に役立つ様々な本、雑誌、ウェブサイトなどを紹介する。また、現在は外部サイトの[https://note.com/wombat13/n/nc98844bc2248 アイヌ語をがっつり学びたくなった時のための記事 – Wombat (note.com)]などもこの記事に類するものとして参考になる。 == アイヌ語に触れたい == == 体系的に学ぶ == 中川裕『アイヌ語広文典』{{ISBN|978-4-560-09963-6}} == アイヌ文化 == == アイヌ、アイヌ語、アイヌ文化等に関する様々なものを扱っている博物館 == https://ainu-upopoy.go.jp/museum/ == ポータルサイト == 公益財団法人 アイヌ民族文化財団「[https://www.ff-ainu.or.jp/web/potal_site/index.html アイヌ語ポータルサイト]」 {{substub|20260825}} [[category:アイヌ語]] 23ooudtpx8ei43f09jthp4j2tmpn2dp アイヌ語 人称接辞の一覧 0 48775 305030 303082 2026-10-22T09:39:08Z Jcb 92857 305030 wikitext text/x-wiki === 沙流方言<ref name=":0">中川裕(2025)『アイヌ語広文典』白水社、{{ISBN|978-4-560-09963-6}} pp.165–184</ref><ref>中川裕(2013,2021)『ニューエクスプレスプラス アイヌ語』 白水社、{{ISBN|978-4-560-08868-5}}</ref> === {| class="wikitable" ! rowspan="3" |自動詞 ! colspan="8" |他動詞 |- ! colspan="2" rowspan="2" style="background: linear-gradient(to top right, #eaecf0 49.5%, #aaa 49.5%, #aaa 50.5%, #eaecf0 50.5%); position: relative;" | <div style="position: absolute; bottom: 5px; left: 3px;">主格</div> <div style="position: absolute; top: 5px; right: 3px;">目的格</div> ! rowspan="2" |3人称 ! colspan="2" |1人称 ! colspan="2" |2人称 ! rowspan="2" |4人称 |- !単 !複 !単 !複 |- |{{lang|ain|<math>\phi</math>⹀}} ! colspan="2" |3人称 |{{lang|ain|<math>\phi</math>⹀}} |{{lang|ain|en⹀}} |{{lang|ain|un⹀}} |{{lang|ain|e⹀}} |{{lang|ain|eci⹀}} |{{lang|ain|i⹀}} |- |{{lang|ain|ku⹀}} ! rowspan="2" |1人称 !単 |{{lang|ain|ku⹀}} | colspan="2" rowspan="2" |―― | colspan="2" rowspan="2" |{{lang|ain|eci⹀}} |{{lang|ain|ku⹀i⹀}} |- |{{lang|ain|⹀as}} !複 |{{lang|ain|ci⹀}} |{{lang|ain|a⹀i⹀}} |- |{{lang|ain|e⹀}} ! rowspan="2" |2人称 !単 |{{lang|ain|e⹀}} |{{lang|ain|en⹀}} |{{lang|ain|un⹀}} | colspan="2" rowspan="2" |―― |{{lang|ain|e⹀i⹀}} |- |{{lang|ain|eci⹀}} !複 |{{lang|ain|eci⹀}} |{{lang|ain|eci⹀en⹀}} |{{lang|ain|eci⹀un⹀}} |{{lang|ain|eci⹀i⹀}} |- |{{lang|ain|⹀an}} ! colspan="2" |4人称 |{{lang|ain|a⹀}} |{{lang|ain|a⹀en⹀}} |{{lang|ain|a⹀un⹀}} |{{lang|ain|a⹀e⹀}} |{{lang|ain|a⹀eci⹀}} |{{lang|ain|a⹀i⹀}} |} === 幌別方言<ref name=":0" /> === {| class="wikitable" ! rowspan="3" |自動詞 ! colspan="8" |他動詞 |- ! colspan="2" rowspan="2" style="background: linear-gradient(to top right, #eaecf0 49.5%, #aaa 49.5%, #aaa 50.5%, #eaecf0 50.5%); position: relative;" | <div style="position: absolute; bottom: 5px; left: 3px;">主格</div> <div style="position: absolute; top: 5px; right: 3px;">目的格</div> ! rowspan="2" |3人称 ! colspan="2" |1人称 ! colspan="2" |2人称 ! rowspan="2" |4人称 |- !単 !複 !単 !複 |- |{{lang|ain|<math>\phi</math>⹀}} ! colspan="2" |3人称 |{{lang|ain|<math>\phi</math>⹀}} |{{lang|ain|en⹀}} |{{lang|ain|un⹀}} |{{lang|ain|e⹀}} |{{lang|ain|eci⹀}} |{{lang|ain|i⹀}} |- |{{lang|ain|ku⹀}} ! rowspan="2" |1人称 !単 |{{lang|ain|ku⹀}} | colspan="2" rowspan="2" |―― | rowspan="2" |{{lang|ain|e⹀...⹀as}} | rowspan="2" |{{lang|ain|eci⹀...⹀as}} | rowspan="2" |{{lang|ain|i⹀...⹀as}} |- |{{lang|ain|⹀as}} !複 |{{lang|ain|ci⹀}} |- |{{lang|ain|e⹀}} ! rowspan="2" |2人称 !単 |{{lang|ain|e⹀}} |{{lang|ain|e⹀en⹀}} |{{lang|ain|e⹀un⹀}} | colspan="2" rowspan="2" |―― |{{lang|ain|e⹀i⹀}}<ref group="註釈">広文典では{{lang|ain|ei⹀}}となっている。</ref> |- |{{lang|ain|eci⹀}} !複 |{{lang|ain|eci⹀}} |{{lang|ain|eci⹀en⹀}} |{{lang|ain|eci⹀un⹀}} |{{lang|ain|eci⹀i⹀}} |- |{{lang|ain|⹀an}} ! colspan="2" |4人称 |{{lang|ain|a⹀}} |{{lang|ain|en⹀...⹀an}} |{{lang|ain|un⹀...⹀an a⹀un⹀}} |{{lang|ain|e⹀...⹀an}} |{{lang|ain|eci⹀...⹀an}} |{{lang|ain|i⹀...⹀an}} |} == 参考文献 == <references responsive="" /> == 註釈 == <references group="註釈" /> [[カテゴリ:アイヌ語]] epuiyj20cqiermv1tg3y7g0onpug1kk 高等学校日本史探究/新たな世紀の日本へⅣ 0 48934 305014 304298 2026-10-22T08:59:46Z Kwawe 68789 /* 新しい世界を目指して */ 1979年、国際連合総会は女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約(女子差別撤廃条約)を採用して、日本側も数年後に当条約を受け入れた。 305014 wikitext text/x-wiki [[小学校・中学校・高等学校の学習]]>[[高等学校の学習]]>[[高等学校地理歴史]]>[[高等学校日本史探究]]>新たな世紀の日本へⅣ 本節は国民生活文化史などについて詳しく記します。 == 新しい世界を目指して == ※当項目は時事的な要素が強いため毎年見直し更新があります。 20世紀後期から21世紀初期にかけて、日本社会は大きく変わりました。NPO(民間非営利組織)法人が増え、会社・役所だけでなく、市民も社会活動へ参加出来るようになりました。一方、少子高齢化と人口減少・家族の変化・働き方の変化・外国人の増加・情報通信技術の拡大・環境問題・エネルギー問題・自然災害・収入の差・生活の差・差別・海外の戦争・近隣諸国の対立などが日本の暮らしにかかわるようになりました。 冷戦終結後、軍隊用のインターネットが一般用に代わって、企業・家庭で一気に広がりました。また、半導体技術向上と通信機器の高性能化から情報通信環境を大きく変えました。1990年代、パーソナルコンピュータが一般家庭へ広がりました。パーソナルコンピュータ世帯普及率は1996年に20%、2006年に80%を超えました。インターネットの世帯利用率も2002年に80%を超えました。このように一般家庭へパーソナルコンピュータとインターネットが入ると、わざわざ図書館に行かなくても家庭内で必要な情報を探したり、遠くの相手とすぐに情報をやり取りしたり出来るようになりました。 大半の国民が携帯電話も同時期に持つようになりました。1987年、一般向け携帯電話が店に並び始めました。1990年代末以降、インターネットを携帯電話でも使えるようになり、若者を中心にインターネット利用者が増えました。2000年、携帯電話契約数が固定電話契約数を上回りました。高速・大容量通信の整備が2000年代に整えられ、文字・音楽・映像をインターネットで楽しめるようになりました。テレビでもデジタル化が進み、地上デジタルテレビ放送が始まりました。2011年、東日本大震災の一部被災地域を除いて、地上テレビ放送がアナログ放送からデジタル放送へ切り替わりました。 2000年代後半以降、スマートフォンは若者を中心に急速に広まり、2010年代から日常生活に欠かせない道具の1つになりました。スマートフォン1台で通話・通信・音楽・写真・動画・ゲームなどを出来るようになり、国民の日常生活が大きく変わりました。一方、新聞購読者を減らしました。情報発信の仕組みも新聞社・出版社・放送局などから国民のスマートフォンに変わり、文章・写真・映像をインターネット上に出して同じように届けられるようになりました。 コンピュータが1999年から2000年へ正しく切り替わらないまま、人間の暮らしを止めてしまうかもしれないと心配されました。そのため、世界各地でコンピュータのプログラムを点検して、必要な修正を進めました。その結果、2000年を迎えても、大規模な障害は発生しないまま終わりました。 SNS(ソーシャルネットワークサービス)は対人関係と会話の仕方を大きく変えました。ブログ・ツイッター・フェイスブック・ラインの拡大から新聞社・テレビ局などを通さなくても政治問題と社会問題について自分の意見を書いたり、類似思想者・類似共感者と繋がったり、社会活動の参加を呼びかけたり出来るようになりました。2023年、ツイッターは名前をXへ変えました。2017年以降、性暴力被害者・セクシャルハラスメント被害者の「#MeToo」運動が各地へ広がりました。類似被害者がお互いの投稿を知って性暴力被害・セクシャルハラスメント被害を同じように訴えました。しかし、誹謗中傷・偽情報・誤情報・個人情報流出・著作権・情報利用の格差なども問題になりました。2022年、侮辱罪の法定刑が重くなり、発信者情報の開示制度も整いました。2025年、情報流通プラットフォーム対処法が始まり、権利侵害情報への対応と運用の透明化も求められました。 人間が細かく文章・画像を最初から作らなくても、コンピュータへ指示をしたら文章・画像・映像などを勝手に作ってくれます(生成AI)。この生成AIは2020年代から瞬く間に広がり、各分野[労働・教育・行政など]で使われるようになりました。しかし、生成文章と生成画像の著作権・情報の信頼性・人間の創作活動との関係が新たな問題になりました。そのため、AI生成情報をそのまま鵜吞みにしないで他の一次資料と比べて本当に正しいのかを判断出来るかもこれまで以上に大切になりました。2025年、人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律(AI法)が成立しました。政府はAIの研究や利用を進めつつ偽情報の拡大問題・著作権問題にも対応しました。また、生成AIを取り入れて行政の仕事を進めやすくしようとしました。 2020年の新型コロナウイルス感染症拡大から人間は新型コロナウイルスに感染しないように、人間同士の距離を約2m開けました(ソーシャルディスタンス)。学校側は分散登校を進め、教室でも席を離しました。また、緊急事態宣言で生徒が学校へ行けなくても、オンライン形式で先生の授業を行いました。会社でもテレワーク・オンライン会議が広がりました。文化・芸術分野でも映像配信が使われるようになりました。2023年、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の扱いが5類感染症へ下げられ、人間生活も少しずつ以前のように戻りました。なお、現在もオンライン授業・オンライン会議の一部は使われ続けています。グローバル化は新しい感染症をどうしても短期間で海外に広げてしまいます。 情報通信環境と国際関係の変化から海外文化[テレビ番組・ファッション・食文化など]を日本で楽しめたり、国内文化[テレビ番組・ゲーム・アニメ・漫画・ファッション・食文化など]を海外でも楽しめたり出来るようになりました。国内文化は海外で広く受け入れられるようになりました。日本政府と韓国政府が1998年に日韓共同宣言を結ぶと、日本文化の韓国国内公開制限を少しずつ解除しました。一方、日本でも東アジア地域の音楽・ドラマ・ファッションが流行しました。歴史問題と外交問題を背景に両国間対立していても、一般国民は他国の音楽・映像作品・食文化などに親しみました。さらに日本の漫画・アニメーション・ゲームなどはインターネットの普及と動画配信サービスの拡大とも深く結びついており、作品の販売・配信などを通じて日本産業とも深く結びつくようになりました。 日本人の海外活動だけでなく、出入国管理法改正・インバウンドの増加から訪日外国人も増えました。その結果、海外の生活文化が地域社会へ入りやすくなりました。身近な国際交流は食文化と祭りから広がりました。東アジア諸国の文化交流も進み、2025年の大阪・関西万博は文化のボーダーレス化を進めました。国民は文化の引継ぎ・伝承を考えながら、新しい文化を作らなければなりません。 科学研究でも日本人研究者の国際的な活躍が続きました。1999年以前の日本人のノーベル賞受賞者は8名でした。2000年以後の日本人のノーベル賞受賞者は21名になりました。このうち2名はノーベル賞受賞当時にアメリカ国籍を持っていました。2025年、坂口志文[ノーベル生理学・医学賞]と北川進[ノーベル化学賞]がもらいました。ただし、日本経済の低迷・財政悪化から大学の研究費はあまり貰えなくなり、研究者も任期付きの研究職・特任研究員として働いていました。 関東地方の人口集中は21世紀初頭でも続きました。しかし2008年の1億2808万人を頂点に日本全体の人口は減り始めました。2009年以後も人口減少が続きました。2025年の人口は1億2298人でした。政府の予想人口推計は2056年に1億人を下回り、2070年に8700万人になります。65歳以上の人口割合予想推計も2025年の29.4%から2070年に38.7%に増えます。 少子高齢化は家族・地域社会・経済・社会保障にも響きました。労働人口の減少から経済成長も妨げられ、税収・保険料まで減ってしまいます。その結果、社会保障制度の負担が少しずつ大きくなりました。継続的な大都市の人口集中から地方の人口が少なくなり、限界集落も増えました。1999年以後、市町村合併が進められ、約3200の市町村数から2010年に約1700の市町村数へ減りました。地域社会の維持は住民同士の協力だけでなく、行政の支援・民間団体の支援まで求められました。 政府は'''高齢化'''対策としてまず介護保険法〔1997年〕を導入して、次に公的介護保険制度〔2000年〕を導入しました。また75歳以上対象の後期高齢者医療制度も整えて、長期的な年金制度改革も進められました。人口減少と少子高齢化の進行から社会保障の見直しと公共サービス全体の見直しも必要になりました。 '''少子化'''も進みました。合計特殊出生率は4.54〔1947年〕から1.14〔2025年〕へ下がりました。出生率(人口1000人あたりの出生数)も17〜19人〈高度経済成長期〉から10人〔1991年〕を下回りました。生涯未婚率も上がりました。その理由として子育て費用・育児施設不足・育児制度不足・晩婚化・非婚化などが挙げられます。そのため、政府は育児休業制度・保育サービスの充実を進めました。 少子化は教育にも響きました。学校の統廃合が進んでも小学校受験生・中学校受験生を増やしました。2010年の中学入試のように受験年齢の低下も進みました。親が子供の教育に力を入れるようになりました。 家族の組み合わせも変わりました。性別役割分担の変化・未婚者の増加から単身世帯が増えました。政府はLGBTの戸籍問題・婚姻問題・夫婦別姓問題も話し合いました。なおLGBTは性的指向者・性自認をいい、女性同性愛者のレズビアン(L)、男性同性愛者のゲイ(G)、両性愛者のバイセクシャル(B)、性別不適合者のトランスジェンダー(T)の頭文字を組み合わせています。 1979年、国際連合総会は「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約(女子差別撤廃条約)」を採用して、日本側も数年後に当条約を受け入れました。1985年、国会は男女雇用機会均等法を定めてから学校の家庭科教育も男女一緒に学べるようになりました。その後、政府は男女共同参画社会基本法〔1999年〕と女性活躍推進法〔2015年〕を定めました。 女性の働き方も広がりました。2025年、15〜64歳の女性の就業率は75.3%になり、女性労働者も増えました。結婚しても出産しても働く女性の増加から年齢別労働力率のM字カーブはほぼ消えました。一方、女性の正規雇用比率は年齢とともに下がっています。現在も男女間の賃金格差と女性管理職の少なさは続いています。2026年、常時雇用労働者101人以上の企業は男女間の賃金格差を発表しなければならなくなりました。 [[ファイル:Sustainable_Development_Goals.png|サムネイル|306x306ピクセル|17の持続可能な開発目標の一覧]] 2015年、持続可能な社会を目指す国際的な取り組みとして「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が国際連合総会の全参加国賛成で決まりました。このアジェンダから<span style="color:#f29100">'''持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)'''</span>が決まり、17の目標[貧困・教育・環境・経済など]と169のターゲットも示されました。このうち、合い言葉「誰一人取り残さない」から貧困・不平等の解消・平和と公正の実現に取り組みました。しかし、紛争・気候変動・経済格差などから目標達成は遅れています。 2016年、政府はSDGs推進本部をつくりました。政府、自治体、企業などが環境を守りながら地域経済・地域社会の向上にも繋げました。2023年、SDGs実施指針が改定されました。2026年度も地方創生・ジェンダー平等・気候変動対策・科学技術などが重点分野になりました。 == 平成時代・令和時代の文化史・科学史 == ※当項目は時事的な要素が強いため毎年見直し更新があります。 == 資料出所 == * 平雅行、横田冬彦ほか編著『日本史探究』実教出版株式会社 2023年 * 佐藤信、五味文彦ほか編著『詳説日本史探究』株式会社山川出版社 2023年 * 高埜利彦、高村直助ほか編著『日本史A 改訂版』株式会社山川出版社 2016年 * 渡邊晃宏ほか編著『日本史探究』東京書籍株式会社 2023年 * 伊藤純郎ほか編著『高等学校日本史探究』株式会社清水書院 2023年 * 大橋幸泰ほか編著『高等学校日本史探究』株式会社第一学習社 2023年 * 山中裕典著'''『'''改訂版 大学入学共通テスト 歴史総合、日本史探究の点数が面白いほどとれる本'''』'''株式会社KADOKAWA 2024年 * 佐藤信、五味文彦ほか編著『詳説日本史研究』株式会社山川出版社 2017年 * 河合敦著『世界一わかりやすい河合敦の日本史B[近・現代]の特別講座』株式会社KADOKAWA 2014年(絶版本) * 全国歴史教育研究協議会編『[新課程版]日本史用語集』株式会社山川出版社 2023年 * 外園豊基編集代表『最新日本史図表』株式会社第一学習社 2026年 * 東京法令出版編著『歴史資料館 日本史のライブラリー』東京法令出版株式会社 2026年 * 各種新聞等資料・各種政府公式白書 [[カテゴリ:高等学校日本史探究]] [[カテゴリ:21世紀]] 3ireiu7761uq46zc1gtwipblz6hc39u 305015 305014 2026-10-22T09:00:58Z Kwawe 68789 /* 新しい世界を目指して */ 2015年、東京都渋谷区は同性カップルへパートナーシップ証明制度を始め、各自治体にも広がった。 305015 wikitext text/x-wiki [[小学校・中学校・高等学校の学習]]>[[高等学校の学習]]>[[高等学校地理歴史]]>[[高等学校日本史探究]]>新たな世紀の日本へⅣ 本節は国民生活文化史などについて詳しく記します。 == 新しい世界を目指して == ※当項目は時事的な要素が強いため毎年見直し更新があります。 20世紀後期から21世紀初期にかけて、日本社会は大きく変わりました。NPO(民間非営利組織)法人が増え、会社・役所だけでなく、市民も社会活動へ参加出来るようになりました。一方、少子高齢化と人口減少・家族の変化・働き方の変化・外国人の増加・情報通信技術の拡大・環境問題・エネルギー問題・自然災害・収入の差・生活の差・差別・海外の戦争・近隣諸国の対立などが日本の暮らしにかかわるようになりました。 冷戦終結後、軍隊用のインターネットが一般用に代わって、企業・家庭で一気に広がりました。また、半導体技術向上と通信機器の高性能化から情報通信環境を大きく変えました。1990年代、パーソナルコンピュータが一般家庭へ広がりました。パーソナルコンピュータ世帯普及率は1996年に20%、2006年に80%を超えました。インターネットの世帯利用率も2002年に80%を超えました。このように一般家庭へパーソナルコンピュータとインターネットが入ると、わざわざ図書館に行かなくても家庭内で必要な情報を探したり、遠くの相手とすぐに情報をやり取りしたり出来るようになりました。 大半の国民が携帯電話も同時期に持つようになりました。1987年、一般向け携帯電話が店に並び始めました。1990年代末以降、インターネットを携帯電話でも使えるようになり、若者を中心にインターネット利用者が増えました。2000年、携帯電話契約数が固定電話契約数を上回りました。高速・大容量通信の整備が2000年代に整えられ、文字・音楽・映像をインターネットで楽しめるようになりました。テレビでもデジタル化が進み、地上デジタルテレビ放送が始まりました。2011年、東日本大震災の一部被災地域を除いて、地上テレビ放送がアナログ放送からデジタル放送へ切り替わりました。 2000年代後半以降、スマートフォンは若者を中心に急速に広まり、2010年代から日常生活に欠かせない道具の1つになりました。スマートフォン1台で通話・通信・音楽・写真・動画・ゲームなどを出来るようになり、国民の日常生活が大きく変わりました。一方、新聞購読者を減らしました。情報発信の仕組みも新聞社・出版社・放送局などから国民のスマートフォンに変わり、文章・写真・映像をインターネット上に出して同じように届けられるようになりました。 コンピュータが1999年から2000年へ正しく切り替わらないまま、人間の暮らしを止めてしまうかもしれないと心配されました。そのため、世界各地でコンピュータのプログラムを点検して、必要な修正を進めました。その結果、2000年を迎えても、大規模な障害は発生しないまま終わりました。 SNS(ソーシャルネットワークサービス)は対人関係と会話の仕方を大きく変えました。ブログ・ツイッター・フェイスブック・ラインの拡大から新聞社・テレビ局などを通さなくても政治問題と社会問題について自分の意見を書いたり、類似思想者・類似共感者と繋がったり、社会活動の参加を呼びかけたり出来るようになりました。2023年、ツイッターは名前をXへ変えました。2017年以降、性暴力被害者・セクシャルハラスメント被害者の「#MeToo」運動が各地へ広がりました。類似被害者がお互いの投稿を知って性暴力被害・セクシャルハラスメント被害を同じように訴えました。しかし、誹謗中傷・偽情報・誤情報・個人情報流出・著作権・情報利用の格差なども問題になりました。2022年、侮辱罪の法定刑が重くなり、発信者情報の開示制度も整いました。2025年、情報流通プラットフォーム対処法が始まり、権利侵害情報への対応と運用の透明化も求められました。 人間が細かく文章・画像を最初から作らなくても、コンピュータへ指示をしたら文章・画像・映像などを勝手に作ってくれます(生成AI)。この生成AIは2020年代から瞬く間に広がり、各分野[労働・教育・行政など]で使われるようになりました。しかし、生成文章と生成画像の著作権・情報の信頼性・人間の創作活動との関係が新たな問題になりました。そのため、AI生成情報をそのまま鵜吞みにしないで他の一次資料と比べて本当に正しいのかを判断出来るかもこれまで以上に大切になりました。2025年、人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律(AI法)が成立しました。政府はAIの研究や利用を進めつつ偽情報の拡大問題・著作権問題にも対応しました。また、生成AIを取り入れて行政の仕事を進めやすくしようとしました。 2020年の新型コロナウイルス感染症拡大から人間は新型コロナウイルスに感染しないように、人間同士の距離を約2m開けました(ソーシャルディスタンス)。学校側は分散登校を進め、教室でも席を離しました。また、緊急事態宣言で生徒が学校へ行けなくても、オンライン形式で先生の授業を行いました。会社でもテレワーク・オンライン会議が広がりました。文化・芸術分野でも映像配信が使われるようになりました。2023年、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の扱いが5類感染症へ下げられ、人間生活も少しずつ以前のように戻りました。なお、現在もオンライン授業・オンライン会議の一部は使われ続けています。グローバル化は新しい感染症をどうしても短期間で海外に広げてしまいます。 情報通信環境と国際関係の変化から海外文化[テレビ番組・ファッション・食文化など]を日本で楽しめたり、国内文化[テレビ番組・ゲーム・アニメ・漫画・ファッション・食文化など]を海外でも楽しめたり出来るようになりました。国内文化は海外で広く受け入れられるようになりました。日本政府と韓国政府が1998年に日韓共同宣言を結ぶと、日本文化の韓国国内公開制限を少しずつ解除しました。一方、日本でも東アジア地域の音楽・ドラマ・ファッションが流行しました。歴史問題と外交問題を背景に両国間対立していても、一般国民は他国の音楽・映像作品・食文化などに親しみました。さらに日本の漫画・アニメーション・ゲームなどはインターネットの普及と動画配信サービスの拡大とも深く結びついており、作品の販売・配信などを通じて日本産業とも深く結びつくようになりました。 日本人の海外活動だけでなく、出入国管理法改正・インバウンドの増加から訪日外国人も増えました。その結果、海外の生活文化が地域社会へ入りやすくなりました。身近な国際交流は食文化と祭りから広がりました。東アジア諸国の文化交流も進み、2025年の大阪・関西万博は文化のボーダーレス化を進めました。国民は文化の引継ぎ・伝承を考えながら、新しい文化を作らなければなりません。 科学研究でも日本人研究者の国際的な活躍が続きました。1999年以前の日本人のノーベル賞受賞者は8名でした。2000年以後の日本人のノーベル賞受賞者は21名になりました。このうち2名はノーベル賞受賞当時にアメリカ国籍を持っていました。2025年、坂口志文[ノーベル生理学・医学賞]と北川進[ノーベル化学賞]がもらいました。ただし、日本経済の低迷・財政悪化から大学の研究費はあまり貰えなくなり、研究者も任期付きの研究職・特任研究員として働いていました。 関東地方の人口集中は21世紀初頭でも続きました。しかし2008年の1億2808万人を頂点に日本全体の人口は減り始めました。2009年以後も人口減少が続きました。2025年の人口は1億2298人でした。政府の予想人口推計は2056年に1億人を下回り、2070年に8700万人になります。65歳以上の人口割合予想推計も2025年の29.4%から2070年に38.7%に増えます。 少子高齢化は家族・地域社会・経済・社会保障にも響きました。労働人口の減少から経済成長も妨げられ、税収・保険料まで減ってしまいます。その結果、社会保障制度の負担が少しずつ大きくなりました。継続的な大都市の人口集中から地方の人口が少なくなり、限界集落も増えました。1999年以後、市町村合併が進められ、約3200の市町村数から2010年に約1700の市町村数へ減りました。地域社会の維持は住民同士の協力だけでなく、行政の支援・民間団体の支援まで求められました。 政府は'''高齢化'''対策としてまず介護保険法〔1997年〕を導入して、次に公的介護保険制度〔2000年〕を導入しました。また75歳以上対象の後期高齢者医療制度も整えて、長期的な年金制度改革も進められました。人口減少と少子高齢化の進行から社会保障の見直しと公共サービス全体の見直しも必要になりました。 '''少子化'''も進みました。合計特殊出生率は4.54〔1947年〕から1.14〔2025年〕へ下がりました。出生率(人口1000人あたりの出生数)も17〜19人〈高度経済成長期〉から10人〔1991年〕を下回りました。生涯未婚率も上がりました。その理由として子育て費用・育児施設不足・育児制度不足・晩婚化・非婚化などが挙げられます。そのため、政府は育児休業制度・保育サービスの充実を進めました。 少子化は教育にも響きました。学校の統廃合が進んでも小学校受験生・中学校受験生を増やしました。2010年の中学入試のように受験年齢の低下も進みました。親が子供の教育に力を入れるようになりました。 家族の組み合わせも変わりました。性別役割分担の変化・未婚者の増加から単身世帯が増えました。政府はLGBTの戸籍問題・婚姻問題・夫婦別姓問題も話し合いました。なおLGBTは性的指向者・性自認をいい、女性同性愛者のレズビアン(L)、男性同性愛者のゲイ(G)、両性愛者のバイセクシャル(B)、性別不適合者のトランスジェンダー(T)の頭文字を組み合わせています。 1979年、国際連合総会は「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約(女子差別撤廃条約)」を採用して、日本側も数年後に当条約を受け入れました。1985年、国会は男女雇用機会均等法を定めてから学校の家庭科教育も男女一緒に学べるようになりました。その後、政府は男女共同参画社会基本法〔1999年〕と女性活躍推進法〔2015年〕を定めました。 女性の働き方も広がりました。2025年、15〜64歳の女性の就業率は75.3%になり、女性労働者も増えました。結婚しても出産しても働く女性の増加から年齢別労働力率のM字カーブはほぼ消えました。一方、女性の正規雇用比率は年齢とともに下がっています。現在も男女間の賃金格差と女性管理職の少なさは続いています。2026年、常時雇用労働者101人以上の企業は男女間の賃金格差を発表しなければならなくなりました。 2015年、東京都渋谷区は同性カップルへパートナーシップ証明制度を始め、各自治体にも広がりました。2023年、国会はLGBT理解増進法もまとめました。地方裁判所は同性同士の結婚を認めない日本国憲法条文を憲法違反と伝えました。政府・自治体は同性婚・家族についてずっと話し合いました。 [[ファイル:Sustainable_Development_Goals.png|サムネイル|306x306ピクセル|17の持続可能な開発目標の一覧]] 2015年、持続可能な社会を目指す国際的な取り組みとして「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が国際連合総会の全参加国賛成で決まりました。このアジェンダから<span style="color:#f29100">'''持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)'''</span>が決まり、17の目標[貧困・教育・環境・経済など]と169のターゲットも示されました。このうち、合い言葉「誰一人取り残さない」から貧困・不平等の解消・平和と公正の実現に取り組みました。しかし、紛争・気候変動・経済格差などから目標達成は遅れています。 2016年、政府はSDGs推進本部をつくりました。政府、自治体、企業などが環境を守りながら地域経済・地域社会の向上にも繋げました。2023年、SDGs実施指針が改定されました。2026年度も地方創生・ジェンダー平等・気候変動対策・科学技術などが重点分野になりました。 == 平成時代・令和時代の文化史・科学史 == ※当項目は時事的な要素が強いため毎年見直し更新があります。 == 資料出所 == * 平雅行、横田冬彦ほか編著『日本史探究』実教出版株式会社 2023年 * 佐藤信、五味文彦ほか編著『詳説日本史探究』株式会社山川出版社 2023年 * 高埜利彦、高村直助ほか編著『日本史A 改訂版』株式会社山川出版社 2016年 * 渡邊晃宏ほか編著『日本史探究』東京書籍株式会社 2023年 * 伊藤純郎ほか編著『高等学校日本史探究』株式会社清水書院 2023年 * 大橋幸泰ほか編著『高等学校日本史探究』株式会社第一学習社 2023年 * 山中裕典著'''『'''改訂版 大学入学共通テスト 歴史総合、日本史探究の点数が面白いほどとれる本'''』'''株式会社KADOKAWA 2024年 * 佐藤信、五味文彦ほか編著『詳説日本史研究』株式会社山川出版社 2017年 * 河合敦著『世界一わかりやすい河合敦の日本史B[近・現代]の特別講座』株式会社KADOKAWA 2014年(絶版本) * 全国歴史教育研究協議会編『[新課程版]日本史用語集』株式会社山川出版社 2023年 * 外園豊基編集代表『最新日本史図表』株式会社第一学習社 2026年 * 東京法令出版編著『歴史資料館 日本史のライブラリー』東京法令出版株式会社 2026年 * 各種新聞等資料・各種政府公式白書 [[カテゴリ:高等学校日本史探究]] [[カテゴリ:21世紀]] 4t9qkp7sax4a3p1vqucxvm0tuddouo5 利用者:Linguae/sandbox 2 48941 304967 304853 2026-10-21T12:19:37Z Linguae 449 /* 大アンティル */ 304967 wikitext text/x-wiki *[[w:fr:Portail:Quiz]] ==アフリカ== *[[w:fr:Portail:Quiz/Afrique localisation des pays]] '''Connaissez-vous les pays d'Afrique ? ''' <div style="float: left; width: 600px"> <div style="position: relative; text-align: left;">[[Image:Africa location map without rivers.svg|500px]] <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:120px; top:25px">''[[w:モロッコ|?]]''</div> <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:157px; top:55px">''[[w:アルジェリア|?]]''</div> <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:215px; top:18px">''[[w:チュニジア|?]]''</div> <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:250px; top:55px">''[[w:リビア|?]]''</div> <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:310px; top:55px">''[[w:エジプト|?]]''</div> <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:75px; top:75px">''[[w:西サハラ|?]]''</div> <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:75px; top:110px">''[[w:モーリタニア|?]]''</div> <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:130px; top:120px">''[[w:マリ|?]]''</div> <div style="position:absolute; 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font-size:15px; border:none; left:55px; top:157px">''[[w:ギニアビサウ|?]]''</div> <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:70px; top:162px">''[[w:ギニア|?]]''</div> <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:135px; top:153px">''[[w:ブルキナファソ|?]]''</div> <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:75px; top:180px">''[[w:シエラレオネ|?]]''</div> <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:87px; top:191px">''[[w:リベリア|?]]''</div> <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:115px; top:190px">''[[w:コートジボワール|?]]''</div> <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:135px; top:190px">''[[w:ガーナ|?]]''</div> <div style="position:absolute; font-size:11px; border:none; left:154px; top:182px">''[[w:トーゴ|?]]''</div> <div style="position:absolute; font-size:11px; border:none; left:161px; top:169px">''[[w:ベニン|?]]''</div> <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:185px; top:180px">''[[w:ナイジェリア|?]]''</div> <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:196px; top:213px">''[[w:サントメ・プリンシペ|?]]''</div> <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:220px; top:200px">''[[w:カメルーン|?]]''</div> <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:270px; top:190px">''[[w:中央アフリカ共和国|?]]''</div> <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:425px; top:200px">''[[w:ソマリア|?]]''</div> <div style="position:absolute; font-size:13px; border:none; left:210px; top:225px">''[[w:赤道ギニア|?]]''</div> <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:210px; top:239px">''[[w:ガボン|?]]''</div> <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:240px; top:235px">''[[w:コンゴ共和国|?]]''</div> <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:285px; top:250px">''[[w:コンゴ民主共和国|?]]''</div> <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:343px; top:220px">''[[w:ウガンダ|?]]''</div> <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:373px; top:230px">''[[w:ケニア|?]]''</div> <div style="position:absolute; font-size:12px; border:none; left:330px; top:250px">''[[w:ルワンダ|?]]''</div> <div style="position:absolute; font-size:12px; border:none; left:330px; top:261px">''[[w:ブルンジ|?]]''</div> <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:360px; top:274px">''[[w:タンザニア|?]]''</div> <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:245px; top:315px">''[[w:アンゴラ|?]]''</div> <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:308px; top:320px">''[[w:ザンビア|?]]''</div> <div style="position:absolute; font-size:17px; border:none; left:355px; top:318px">''[[w:マラウイ|?]]''</div> <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:249px; top:370px">''[[w:ナミビア|?]]''</div> <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:290px; top:370px">''[[w:ボツワナ|?]]''</div> <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:325px; top:354px">''[[w:ジンバブエ|?]]''</div> <div style="position:absolute; font-size:18px; border:none; left:348px; top:355px">''[[w:モザンビーク|?]]''</div> <div style="position:absolute; font-size:18px; border:none; left:410px; top:317px">''[[w:コモロ|?]]''</div> <div style="position:absolute; font-size:18px; border:none; left:460px; top:300px">''[[w:セーシェル|?]]''</div> <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:420px; top:360px">''[[w:マダガスカル|?]]''</div> <div style="position:absolute; font-size:18px; border:none; left:477px; top:375px">''[[w:モーリシャス|?]]''</div> <div style="position:absolute; font-size:18px; border:none; left:467px; top:380px">''[[w:レユニオン|?]]''</div> <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:285px; top:430px">''[[w:南アフリカ|?]]''</div> <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:333px; top:397px">''[[w:エスワティニ|?]]''</div> <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:314px; top:414px">''[[w:レソト|?]]''</div> </div> </div> ---- <div> ==アジア== *[[w:fr:Portail:Quiz/Asie localisation des pays]] ---- ==アメリカ== *[[w:fr:Portail:Quiz/États-Unis localisation des États]] ---- ==南アメリカ== *[[w:fr:Portail:Quiz/Amérique du Sud localisation des pays]] ---- ==ヨーロッパ== *[[w:fr:Portail:Quiz/Europe localisation des pays]] ---- ;ヨーロッパの国旗 *[[w:fr:Portail:Quiz/Drapeaux d'Europe 01]] ---- </div> ---- : [[:en:Category:Subject:Wikijunior Geography]] * [[:en:Wikijunior:Countries_A-Z]] ** [[:en:Category:Book:Wikijunior:Countries_A-Z]] **:; [[:en:Category:Book:Wikijunior:Countries A-Z/Continent map templates]] **:: [[:en:Template:Wikijunior:Countries A-Z/North America Labelled Map]] **:: [[:en:Template:Wikijunior:Countries A-Z/Lesser Antilles Labelled Map]] **:: [[:en:Template:Wikijunior:Countries A-Z/World Labelled Map]] ==中央アメリカ・西インド諸島== <div style="float: left; width: 600px"> <div style="position: relative; text-align: left;">[[Image:Central America blank map.png|500px]] <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:1px; top:65px">メキシコ</div> <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:120px; top:55px">ベリーズ</div> <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:30px; top:100px">グアテマラ</div> <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:150px; top:105px">ホンジュラス</div> <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:40px; top:160px">エルサルバドル</div> <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:190px; top:180px">ニカラグア</div> <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:250px; top:260px">コスタリカ</div> <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:330px; top:307px">パナマ</div> <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:405px; top:350px">(コロンビア)</div> </div> *[[:c:Category:SVG blank maps of the Americas]] **[[:c:Category:Blank maps of Central America]] ***[[:c:Category:SVG blank maps of Central America]] ***:[[:c:File:Caribbean location map.svg]] ***: [[:c:File:West Indies - Island Groups (lb).svg]] ***:[[:c:File:Outline map of Central America with borders.svg]] ***: [[:File:Map of Central America.svg]] *[[:c:File:Middle America location map.svg]](中部) *:[[:c:File:Middle America relief location map.png]](中部の地形) ===西インド諸島・アンティル諸島=== *[[:c:Category:SVG maps of the Caribbean]] *:[[:c:Category:Location maps of Caribbean]] :  *[[:c:File:Caribbean in its region.svg]](詳細) *[[:c:File:Caribbean location map.svg]] *[[:c:File:Caribe-Político.svg]](着色区分) :  *[[:c:File:Relief Map of Caribbean.png]] *[[:c:File:Eastern Caribbean.png]] :  *[[:c:File:Caribe en blanco.PNG]](着色区分) ===大アンティル=== *[[:c:File:Caribbean - Greater Antilles.PNG]] [[w:大アンティル諸島|大アンティル諸島]] <div style="float: left; width: 703px"> <div style="position: relative; text-align: left;">[[Image:Caribbean - Greater Antilles.PNG]] <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:100px; top:2px">(アメリカ合衆国)</div> <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:110px; top:20px">([[w:フロリダ半島|フロリダ半島]])</div> <div style="position:absolute; font-size:40px; border:none; left:490px; top:0px"><!--◆-->([[w:大西洋|大 西 洋]])</div> <div style="position:absolute; font-size:30px; border:none; left:400px; top:70px">([[w:西インド諸島|西インド諸島]])</div> <div style="position:absolute; font-size:18px; border:none; left:280px; top:70px">([[w:バハマ諸島|バハマ諸島]])</div> <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:260px; top:30px">([[w:バハマ|バハマ]])</div> <div style="position:absolute; font-size:10px; border:none; left:400px; top:115px">([[w:タークス・カイコス諸島|英領タークス・カイコス諸島]])</div> <div style="position:absolute; font-size:12px; border:none; left:365px; top:130px">([[w:イナグア島|大・小イナグア島]])</div> <div style="position:absolute; font-size:16px; border:none; left:320px; top:200px">[[w:イスパニョーラ島|イスパニョーラ島]]</div> <div style="position:absolute; font-size:18px; border:none; left:330px; top:165px">[[w:ハイチ|ハイチ]]|[[w:ドミニカ共和国|ドミニカ共和国]]</div> <div style="position:absolute; font-size:11px; border:none; left:170px; top:185px">[[w:ケイマン諸島|英領ケイマン諸島]]</div> <div style="position:absolute; font-size:17px; border:none; left:528px; top:240px"><!--◆-->([[w:小アンティル諸島|小アンティル諸島]])</div> <div style="position:absolute; font-size:11px; border:none; left:580px; top:210px">([[w:リーワード諸島 (西インド諸島)|リーワード諸島]])</div> <div style="position:absolute; font-size:11px; border:none; left:580px; top:290px">([[w:ウィンドワード諸島 (西インド諸島)|ウィンドワード諸島]])</div> <div style="position:absolute; font-size:11px; border:none; left:450px; top:320px">([[w:リーワード・アンティル諸島|リーワード・アンティル諸島]])</div> <div style="position:absolute; font-size:28px; border:none; left:220px; top:250px"><!--◆-->([[w:カリブ海|カリブ海]])</div> <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:5px; top:40px">([[w:メキシコ湾|メキシコ湾]])</div> <div style="position:absolute; font-size:14px; border:none; left:0px; top:115px">([[w:ユカタン半島|ユカタン半島]])</div> <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:1px; top:155px">([[w:メキシコ|メキシコ]])</div> <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:30px; top:205px">([[w:ベリーズ|ベリーズ]])</div> <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:0px; top:240px">([[w:グアテマラ|グアテマラ]])</div> <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:30px; top:265px">([[w:ホンジュラス|ホンジュラス]])</div> <div style="position:absolute; font-size:12px; border:none; left:0px; top:300px">([[w:エルサルバドル|エルサルバドル]])</div> <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:100px; top:320px">([[w:ニカラグア|ニカラグア]])</div> <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:100px; top:380px">([[w:コスタリカ|コスタリカ]])</div> <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:200px; top:400px">([[w:パナマ|パナマ]])</div> <div style="position:absolute; font-size:25px; border:none; left:380px; top:450px"><!--◆-->([[w:南アメリカ|南アメリカ]])</div> <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:450px; top:400px">([[w:ベネズエラ|ベネズエラ]])</div> <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:300px; top:430px">([[w:コロンビア|コロンビア]])</div> <div style="position:absolute; font-size:30px; border:none; left:25px; top:420px"><!--◆-->([[w:太平洋|太平洋]])</div> </div> :  *[[:c:File:Greater Antilles location map.svg]](大アンティル・バハマ) *:[[:c:File:Greater Antilles.png]] ===小アンティル=== *[[:c:File:Lesser Antilles locator map.svg]](詳細) *:[[:c:File:Caribbean - Lesser Antilles.PNG]] *:[[:c:File:Lesser Antilles location map.svg]] *:[[:c:File:Lesser Antilles regional proximity.svg]] *:[[:c:File:Islas de las Antillas menores.svg]] [[:c:File:Dólar del Caribe Oriental.svg]] **:[[:File:Lesser Antilles named.svg]] :  *[[:c:File:South america.jpg]] ===バハマ諸島=== *[[:c:Category:Maps of the Bahamas]] *:[[:c:File:Bahamas regions map-es.svg]] 2xt1s7vvt2q7la2pjjm8wjl0264myf9 304976 304967 2026-10-21T13:35:50Z Linguae 449 /* 大アンティル */ 304976 wikitext text/x-wiki *[[w:fr:Portail:Quiz]] ==アフリカ== *[[w:fr:Portail:Quiz/Afrique localisation des pays]] '''Connaissez-vous les pays d'Afrique ? ''' <div style="float: left; width: 600px"> <div style="position: relative; text-align: left;">[[Image:Africa location map without rivers.svg|500px]] <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:120px; top:25px">''[[w:モロッコ|?]]''</div> <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:157px; top:55px">''[[w:アルジェリア|?]]''</div> <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:215px; top:18px">''[[w:チュニジア|?]]''</div> <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:250px; top:55px">''[[w:リビア|?]]''</div> <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:310px; top:55px">''[[w:エジプト|?]]''</div> <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:75px; top:75px">''[[w:西サハラ|?]]''</div> <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:75px; top:110px">''[[w:モーリタニア|?]]''</div> <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:130px; top:120px">''[[w:マリ|?]]''</div> <div 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top:169px">''[[w:ベニン|?]]''</div> <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:185px; top:180px">''[[w:ナイジェリア|?]]''</div> <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:196px; top:213px">''[[w:サントメ・プリンシペ|?]]''</div> <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:220px; top:200px">''[[w:カメルーン|?]]''</div> <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:270px; top:190px">''[[w:中央アフリカ共和国|?]]''</div> <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:425px; top:200px">''[[w:ソマリア|?]]''</div> <div style="position:absolute; font-size:13px; border:none; left:210px; top:225px">''[[w:赤道ギニア|?]]''</div> <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:210px; top:239px">''[[w:ガボン|?]]''</div> <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:240px; top:235px">''[[w:コンゴ共和国|?]]''</div> <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:285px; top:250px">''[[w:コンゴ民主共和国|?]]''</div> <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:343px; top:220px">''[[w:ウガンダ|?]]''</div> <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:373px; top:230px">''[[w:ケニア|?]]''</div> <div style="position:absolute; font-size:12px; border:none; left:330px; top:250px">''[[w:ルワンダ|?]]''</div> <div style="position:absolute; font-size:12px; border:none; left:330px; top:261px">''[[w:ブルンジ|?]]''</div> <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:360px; top:274px">''[[w:タンザニア|?]]''</div> <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:245px; top:315px">''[[w:アンゴラ|?]]''</div> <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:308px; top:320px">''[[w:ザンビア|?]]''</div> <div style="position:absolute; font-size:17px; border:none; left:355px; top:318px">''[[w:マラウイ|?]]''</div> <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:249px; top:370px">''[[w:ナミビア|?]]''</div> <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:290px; top:370px">''[[w:ボツワナ|?]]''</div> <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:325px; top:354px">''[[w:ジンバブエ|?]]''</div> <div style="position:absolute; font-size:18px; border:none; left:348px; top:355px">''[[w:モザンビーク|?]]''</div> <div style="position:absolute; font-size:18px; border:none; left:410px; top:317px">''[[w:コモロ|?]]''</div> <div style="position:absolute; font-size:18px; border:none; left:460px; top:300px">''[[w:セーシェル|?]]''</div> <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:420px; top:360px">''[[w:マダガスカル|?]]''</div> <div style="position:absolute; font-size:18px; border:none; left:477px; top:375px">''[[w:モーリシャス|?]]''</div> <div style="position:absolute; font-size:18px; border:none; left:467px; top:380px">''[[w:レユニオン|?]]''</div> <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:285px; top:430px">''[[w:南アフリカ|?]]''</div> <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:333px; top:397px">''[[w:エスワティニ|?]]''</div> <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:314px; top:414px">''[[w:レソト|?]]''</div> </div> </div> ---- <div> ==アジア== *[[w:fr:Portail:Quiz/Asie localisation des pays]] ---- ==アメリカ== *[[w:fr:Portail:Quiz/États-Unis localisation des États]] ---- ==南アメリカ== *[[w:fr:Portail:Quiz/Amérique du Sud localisation des pays]] ---- ==ヨーロッパ== *[[w:fr:Portail:Quiz/Europe localisation des pays]] ---- ;ヨーロッパの国旗 *[[w:fr:Portail:Quiz/Drapeaux d'Europe 01]] ---- </div> ---- : [[:en:Category:Subject:Wikijunior Geography]] * [[:en:Wikijunior:Countries_A-Z]] ** [[:en:Category:Book:Wikijunior:Countries_A-Z]] **:; [[:en:Category:Book:Wikijunior:Countries A-Z/Continent map templates]] **:: [[:en:Template:Wikijunior:Countries A-Z/North America Labelled Map]] **:: [[:en:Template:Wikijunior:Countries A-Z/Lesser Antilles Labelled Map]] **:: [[:en:Template:Wikijunior:Countries A-Z/World Labelled Map]] ==中央アメリカ・西インド諸島== <div style="float: left; width: 600px"> <div style="position: relative; text-align: left;">[[Image:Central America blank map.png|500px]] <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:1px; top:65px">メキシコ</div> <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:120px; top:55px">ベリーズ</div> <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:30px; top:100px">グアテマラ</div> <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:150px; top:105px">ホンジュラス</div> <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:40px; top:160px">エルサルバドル</div> <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:190px; top:180px">ニカラグア</div> <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:250px; top:260px">コスタリカ</div> <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:330px; top:307px">パナマ</div> <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:405px; top:350px">(コロンビア)</div> </div> *[[:c:Category:SVG blank maps of the Americas]] **[[:c:Category:Blank maps of Central America]] ***[[:c:Category:SVG blank maps of Central America]] ***:[[:c:File:Caribbean location map.svg]] ***: [[:c:File:West Indies - Island Groups (lb).svg]] ***:[[:c:File:Outline map of Central America with borders.svg]] ***: [[:File:Map of Central America.svg]] *[[:c:File:Middle America location map.svg]](中部) *:[[:c:File:Middle America relief location map.png]](中部の地形) ===西インド諸島・アンティル諸島=== *[[:c:Category:SVG maps of the Caribbean]] *:[[:c:Category:Location maps of Caribbean]] :  *[[:c:File:Caribbean in its region.svg]](詳細) *[[:c:File:Caribbean location map.svg]] *[[:c:File:Caribe-Político.svg]](着色区分) :  *[[:c:File:Relief Map of Caribbean.png]] *[[:c:File:Eastern Caribbean.png]] :  *[[:c:File:Caribe en blanco.PNG]](着色区分) ===大アンティル=== *[[:c:File:Caribbean - Greater Antilles.PNG]] [[w:大アンティル諸島|大アンティル諸島]] <div style="float: left; width: 703px"> <div style="position: relative; text-align: left;">[[Image:Caribbean - Greater Antilles.PNG]] <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:100px; top:2px">(アメリカ合衆国)</div> <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:110px; top:20px">([[w:フロリダ半島|フロリダ半島]])</div> <div style="position:absolute; font-size:40px; border:none; left:490px; top:0px"><!--◆-->([[w:大西洋|大 西 洋]])</div> <div style="position:absolute; font-size:30px; border:none; left:400px; top:70px">([[w:西インド諸島|西インド諸島]])</div> <div style="position:absolute; font-size:18px; border:none; left:280px; top:70px">([[w:バハマ諸島|バハマ諸島]])</div> <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:260px; top:30px">([[w:バハマ|バハマ]])</div> <div style="position:absolute; font-size:10px; border:none; left:400px; top:115px">([[w:タークス・カイコス諸島|英領タークス・カイコス諸島]])</div> <div style="position:absolute; font-size:12px; border:none; left:365px; top:130px">([[w:イナグア島|大・小イナグア島]])</div> <div style="position:absolute; font-size:16px; border:none; left:340px; top:200px">[[w:イスパニョーラ島|イスパニョーラ島]]</div> <div style="position:absolute; font-size:18px; border:none; left:330px; top:165px">[[w:ハイチ|ハイチ]]|[[w:ドミニカ共和国|ドミニカ共和国]]</div> <div style="position:absolute; font-size:11px; border:none; left:170px; top:185px">[[w:ケイマン諸島|英領ケイマン諸島]]</div> <div style="position:absolute; font-size:16px; border:none; left:230px; top:205px">[[w:ジャマイカ|ジャマイカ]]</div> <div style="position:absolute; font-size:17px; border:none; left:528px; top:240px"><!--◆-->([[w:小アンティル諸島|小アンティル諸島]])</div> <div style="position:absolute; font-size:11px; border:none; left:580px; top:210px">([[w:リーワード諸島 (西インド諸島)|リーワード諸島]])</div> <div style="position:absolute; font-size:11px; border:none; left:580px; top:290px">([[w:ウィンドワード諸島 (西インド諸島)|ウィンドワード諸島]])</div> <div style="position:absolute; font-size:11px; border:none; left:450px; top:320px">([[w:リーワード・アンティル諸島|リーワード・アンティル諸島]])</div> <div style="position:absolute; font-size:28px; border:none; left:220px; top:250px"><!--◆-->([[w:カリブ海|カリブ海]])</div> <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:5px; top:40px">([[w:メキシコ湾|メキシコ湾]])</div> <div style="position:absolute; font-size:14px; border:none; left:0px; top:115px">([[w:ユカタン半島|ユカタン半島]])</div> <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:1px; top:155px">([[w:メキシコ|メキシコ]])</div> <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:30px; top:205px">([[w:ベリーズ|ベリーズ]])</div> <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:0px; top:240px">([[w:グアテマラ|グアテマラ]])</div> <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:30px; top:265px">([[w:ホンジュラス|ホンジュラス]])</div> <div style="position:absolute; font-size:12px; border:none; left:0px; top:300px">([[w:エルサルバドル|エルサルバドル]])</div> <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:100px; top:320px">([[w:ニカラグア|ニカラグア]])</div> <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:100px; top:380px">([[w:コスタリカ|コスタリカ]])</div> <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:200px; top:400px">([[w:パナマ|パナマ]])</div> <div style="position:absolute; font-size:25px; border:none; left:380px; top:450px"><!--◆-->([[w:南アメリカ|南アメリカ]])</div> <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:450px; top:400px">([[w:ベネズエラ|ベネズエラ]])</div> <div style="position:absolute; font-size:15px; border:none; left:300px; top:430px">([[w:コロンビア|コロンビア]])</div> <div style="position:absolute; font-size:30px; border:none; left:25px; top:420px"><!--◆-->([[w:太平洋|太平洋]])</div> </div> :  *[[:c:File:Greater Antilles location map.svg]](大アンティル・バハマ) *:[[:c:File:Greater Antilles.png]] ===小アンティル=== *[[:c:File:Lesser Antilles locator map.svg]](詳細) *:[[:c:File:Caribbean - Lesser Antilles.PNG]] *:[[:c:File:Lesser Antilles location map.svg]] *:[[:c:File:Lesser Antilles regional proximity.svg]] *:[[:c:File:Islas de las Antillas menores.svg]] [[:c:File:Dólar del Caribe Oriental.svg]] **:[[:File:Lesser Antilles named.svg]] :  *[[:c:File:South america.jpg]] ===バハマ諸島=== *[[:c:Category:Maps of the Bahamas]] *:[[:c:File:Bahamas regions map-es.svg]] 9lfhpvlorgeq8wuhj328crypbm0dadi コンピュータセキュリティ 0 48948 304979 304958 2026-10-21T16:12:16Z ~2026-54076-02 92740 /* TCP/UDP経由のサービス */ 304979 wikitext text/x-wiki '''コンピュータセキュリティ'''はコンピュータの安全のことです。ここではコンピュータの安全を確保することを学びます。 == コンピュータセキュリティの基本 == コンピュータは弱いところから狙われるため、弱いところを無くすのがセキュリティの基本となります。 具体例を挙げましょう。一般的な光回線に繋がれてるホームネットワークを考えます。ここには光回線の先に繋がる上位ネットワークと家内のホームネットワーク (家庭におけるLAN) とを区切るエッジルーター(一般的にはハードウェア・ゲートウェイがこれに該当)が存在します。このホームネットワークに数台の新しいWindows PCと一台の古い機器が繋がっていると仮定します。 新しいWindows PC同士ではホームネットワーク経由でファイルをやり取りするためにファイルの共有 (SMB{{efn|Server Message Block}}) を有効にしているとします。一方、古い機器の方を脆弱性のある古いテレビとしましょう。このテレビはインターネットから繋いで地上デジタル放送を見るための DCTP+ {{efn|Digital Transmission Content Protection +}}が搭載されており、UPnP{{efn|Universal Plug and Play}}で自動的にエッジルーター搭載のファイアーウォールに穴あけてインターネット側から DCTP+ に繋がるようになっているものとします。 この仮定によってハッカーは DCTP+ の脆弱性を使って古いテレビに悪意のあるプログラムを実行させてファイルの共有サーバーを立て{{efn|Windows 11時点でもゲスト認証による接続は許可されている<ref>[https://learn.microsoft.com/en-us/windows-server/storage/file-server/smb-interception-defense?tabs=group-policy Protect SMB traffic from interception] Microsoft</ref>。}}、そこからファイルの共有を通じて新しいWindows PCにマルウェア (例えば<code>PHOTO-<ランダムな数字>.png.lnk</code><ref>[https://www.microsoft.com/en-us/security/blog/2026/06/25/photo-zip-campaign-targeting-hospitality-industry-delivers-node-js-implant-persistent-access/ Photo ZIP campaign targeting hospitality industry delivers Node.js implant for persistent access] Microsoft 2026年6月25日</ref>) を送り込むことが可能となりました。 == 安全にパスワードを使う == === 流出したパスワードと被ってないかをチェックする === あちこちのサイトで流出したパスワードは集められてデータベース化されダークネットに流通しています。この代表的なものには2019年に登場した [[:w:en:Collection No. 1|Collection #1]] が挙げられます。この Collection #1 などの流出パスワードデータベースは辞書攻撃に利用されており、これは「Credential Stuffing攻撃」と呼ばれています。 使うパスワードが流出パスワードデータベースに載っていないかを確認するためには上記のデータベースを手に入れるか、上記のデータベースからk-匿名性で検索を行うオンラインサービスを使うと良いでしょう。 このオンラインサービスの代表的なものにはWebサイト「Have I Been Pwned」の提供する「Pwned Passwords」サービスが存在しますが、このAPIではパスワードのSHA-1ハッシュ先頭5文字を渡すと、流出したパスワードのSHA1ハッシュ6文字以降と流出データベースに載っていた回数が返答されます。 <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ # License: CC0 / Public Domain $ # パスワードを入力してSHA-1ハッシュへと変換する(ここでは'test'と入力) $ sha1=$(read -sp "Password: " pass && echo -n $pass | sha1sum | cut -d' ' -f1) Password: $ # 変換後のハッシュを表示 $ echo $sha1 a94a8fe5ccb19ba61c4c0873d391e987982fbbd3 $ # ハッシュの先頭5文字を渡して6文字目以降を検索(':'の後ろは見つかった数) $ curl -s https://api.pwnedpasswords.com/range/$(echo $sha1 | cut -c 1-5) | grep -i $(echo $sha1 | cut -c 6-) FE5CCB19BA61C4C0873D391E987982FBBD3:1579235 </syntaxhighlight> ハッシュの先頭5文字も渡したくない場合や、自社サービスでチェックを行いたい場合は上記のサービスが公式で提供するツール「haveibeenpwned-downloader」[https://github.com/HaveIBeenPwned/PwnedPasswordsDownloader]で全てのハッシュデータをダウンロードして自前で照合しましょう。 === 解析耐性のある鍵導出関数を使う === パスワードでは計算負荷の低い SHA-256 や SHA-512 などの通常のハッシュ関数、メモリ負荷の低い [[:w:PBKDF2|PBKDF2]] や bcrypt などの古い[[:w:鍵導出関数|鍵導出関数]](パスワードハッシュ関数)を使わないようにしましょう。これらの弱いハッシュ関数は GPU や ASIC で高速に解かれてしまいます。 より強いパスワードハッシュ関数としては yescrypt や Argon2id が存在します。パスワードにはこちらを使いましょう。現代の Linux ではアカウントのパスワードハッシュ関数として yescrypt が標準となっています。 使っている Linux の新規アカウントで使われるパスワードハッシュ関数は以下で確認可能です: <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ grep -n 'pam_unix.so' /etc/pam.d/common-password 26:password [success=2 default=ignore] pam_unix.so obscure use_authtok try_first_pass yescrypt </syntaxhighlight> Linuxの現在のアカウントがどのハッシュ関数を使用しているかは以下で確認可能です: <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ sudo cat /etc/shadow | grep $USER # $(1|5|6|b)$=弱い、$y$=強い user:$y$j9T$ST7oYwlQjFy7/8vnL/Ugt0$po4vW4qgGu8lpUNRtH0B3hDHGZACzcRhzIKhqlx.2Z5:20743:0:99999:7::: </syntaxhighlight> 弱いハッシュ関数を使用している場合は<code>passwd $USER</code>でパスワードを再設定して使用するハッシュ関数を更新してください。 一方、Windows 10 以前のローカルアカウントではパスワードハッシュがレジストリの<code>HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>SAM\<wbr>SAM\<wbr>Domains\<wbr>Account\<wbr>Users\<wbr>(ユーザーID)\<wbr>V</code>{{efn|name="sam"}}のバイナリの以下の場所に存在します: * [[:w:LMハッシュ|LMハッシュ]]: 0xCC + (0x9C に指定されたオフセット)<ref name="sam-ghost"/> * NTLMハッシュ: 0xCC + (0xA8 に指定されたオフセット)<ref name="sam-ghost"/> LMハッシュは [[:w:LAN Manager|LAN Manager]] に使われていた [[:w:Data Encryption Standard|DES]] ベースの古いハッシュ、NTLMハッシュは [[:w:NT LAN Manager|NT LAN Manager]] に使われている [[:w:MD4|MD4]] ベースの古いハッシュであり、どちらも非常に弱いものとなっていました。 また Windows の Active Directory ドメインアカウントのオフライン認証向けキャッシュ済みドメイン資格情報はレジストリの<code>HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>SECURITY\<wbr>Cache</code>に存在します: * DCC1 ハッシュ (MSCache v1): 弱い MD4 ベース。Windows XP以前。 * DCC2 ハッシュ (MSCache v2) : 弱めの PBKDF2-HMAC-SHA1 ベース。Windows Vista以後<ref>[https://attack.mitre.org/techniques/T1003/005/ OS Credential Dumping: Cached Domain Credentials] MITRE 2025年10月24日</ref>。 2021年にリリースされた Windows 11 以降は Microsoft アカウントが必須となっています。 <!--TODO: Windows Hello、LSA Secrets === パスワードの複雑性をチェックする === === TPMで鍵を隔離する === --> == 既製製品の脆弱性を塞ぐ == まずは弱いところを無くしましょう。 === ソフトウェアアップデートをする === セキュリティの基本はソフトウェアアップデートです。 ==== PCおよびモバイル ==== PC{{efn|PCサーバを含む}}やモバイルでは基本的に自動で通知が来るので忘れずにアップデートを選択しましょう。手動では以下のように行います: ; Windows : システムのアップデートは基本的に [[:w:Microsoft Update|Microsoft Update]] (Windows Update) で、アプリケーションのアップデートは基本的に<code>winget upgrade --all</code>コマンドで行います。 : また Windows 11 Enterprise では再起動が不要なホットパッチにも対応しています。 ; macOS / iOS : 「ソフトウェアアップデート」 ; Ubuntu / Debian : [[:w:APT|APT]]パッケージ管理システムでは<code>apt upgrade</code>コマンドで更新を行います。 : Ubuntu では GUI による更新用として[[:w:Software Updater|Software Updater]] (<code>update-manager</code>コマンド)、[[:w:Snap (ソフトウェア)|Snap]]パッケージの更新コマンドとして<code>snap refresh</code>、メジャーバージョンの更新コマンドとして<code>do-release-upgrade</code>も存在します。 : また Ubuntu では Ubuntu Pro に登録することで再起動が不要なカーネル修正の「Livepatch」も可能となります(個人では5台まで無料)。SUSEではユーザー空間ライブパッチングまで提供されています(glibc と openssl のみ)<ref>[https://documentation.suse.com/ja-jp/sles/15-SP6/html/SLES-all/cha-ulp.html ユーザ空間ライブパッチ - 管理ガイド - SLES 15 SP6] SUSE</ref>。 ; RedHat / Fedora : <code>yum update</code>コマンド ; Android : 「設定」アプリ→「システム」→「システムアップデート」または「ソフトウェアアップデート」 また個々のハードウェアのファームウェアアップデートは以下で行います: ; Linux : Linuxにおけるファームウェアの更新は基本的に<code>fwupdmgr update</code>コマンドで行います。 : NVMe SSDのファームウェアの更新は<code>nvme fw-download</code>コマンドおよび<code>nvme fw-commit</code>コマンドで行うことができます。 一方、Windows ではファームウェアのアップデートも Windows Update 経由で<ref>[https://learn.microsoft.com/ja-jp/windows-hardware/drivers/bringup/firmware-update ファームウェアの更新] Microsoft</ref>、macOS ではファームウェアのアップデートもmacOSアップデートで行うことができます<ref>[https://support.apple.com/ja-jp/guide/mac-help/mchlp2609/mac Macのファームウェアアップデートの入手方法] Apple</ref>。 <!-- また開発環境では以下も存在します: ; Python : <code>pip -U install</code> --> ==== ルーター ==== ルーターでは以下の設定を有効のままにしておきましょう: ; AirStationシリーズ(Buffalo 製ルーター) : 「ファームウェア自動更新機能」 ; Atermシリーズ(NEC 製ルーター) : 「メンテナンスバージョンアップ機能」「時刻指定バージョンアップ機能」 ==== テレビ ==== テレビでは放送波アップデートが行われるため、「放送波による自動更新」<!--TODO: メーカー別名-->を有効にしましょう。 === 高速に再起動する === パッケージは更新しただけでは反映されません(一部デーモンの更新を除く)。Linuxでは高速に再起動する方法が存在し、これによってダウンタイムを減らすことができます。 ; 更新で影響を受けるデーモンのみ再起動する :* Ubuntu Server: 標準で <code>needrestart</code> が導入されており自動で影響を受けるデーモンの再起動が行われます{{efn|自動的なデーモン再起動を止めるには /etc/apt/apt.conf.d/99needrestart より<code>-m u</code>を削除する必要があります<ref>[https://discourse.ubuntu.com/t/needrestart-changes-in-ubuntu-24-04-service-restarts/44671 `needrestart` changes in Ubuntu 24.04: service restarts] Canonical 2024年</ref>。}}(Ubuntu Desktopでは別途導入が必要)。 :* RedHat / Fedora: <code>dnf needs-restarting</code>が導入されており、それによって再起動するべきデーモンを確認できます。 ; ユーザー空間のみ再起動する(カーネルの更新がない、またはカーネルでlive patchingを行ってる場合) : <code>sudo systemctl soft-reboot</code> ; 高速にカーネルを更新する(ファームウェアの更新がない場合) : <code>sudo systemctl kexec</code> また一部のソフトウェアではホットアップグレード(無停止アップグレード{{efn|Zero-Downtime Upgrade}})にも対応しています (nginx の USR2 シグナル<ref>[https://nginx.org/en/docs/control.html Controlling nginx] nginx</ref>など)。 === 代替ソフトウェアを探す === 更新が停止された古いソフトウェアの多くはそれ自身に脆弱性が存在したり、脆弱性のある古いライブラリに依存していたりします。そのため古いソフトウェアは速やかに代替ソフトウェアへと移行しましょう。 ==== 開発終了したソフトウェアから現役のソフトウェアへ ==== 古いソフトウェアには例えば以下があります: * オフィススイート(代替候補: LibreOffice) ** [[:w:OpenOffice.org|OpenOffice.org]](〜2011年) * 画像ビューア ** [[:w:Susie|Susie]] (〜2013年) * メディアプレイヤー ** [[:w:QuickTime|QuickTime]] for Windows(〜2016年) - リモートコード実行の脆弱性 ([https://www.zerodayinitiative.com/advisories/ZDI-16-241/ ZDI-16-241]、[https://www.zerodayinitiative.com/advisories/ZDI-16-242/ ZDI-16-242]) を残したままサポート終了しました<ref>[https://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/753400.html Apple、「QuickTime for Windows」のサポートを終了、アンインストールを推奨] Impress 2016年4月15日</ref>。 * メディアフィルター(代替候補: LAV Filters) ** [[:w:ffdshow|ffdshow]](〜2014年) ** [[:w:Haali Media Splitter|Haali Media Splitter]](〜2013年) * メディアセンター(代替候補: Kodi) ** [[:w:en:Boxee|Boxee]](〜2011年) ** [[:w:Kodi|XBMC]](〜2014年) - Kodiの前身 * 圧縮ソフトウェア ** [[:w:+Lhaca|+Lhaca]](〜2007年) ** [[:w:Lhaplus|Lhaplus]](〜2017年) またハードウェアに由来する古いソフトウェアには例えば以下があります: * [[w:ウォークマン|ウォークマン]]関連(代替候補: [[:w:Music Center for PC|Music Center for PC]]) ** [[:w:CONNECT Player|CONNECT Player]](〜2007年、Sony) ** [[:w:SonicStage|SonicStage]](〜2009年、Sony) ** [[:w:x-アプリ|x-アプリ]](〜2016年、Sony) * DTCP-IP関連 ** SmartVision/PLAYER powered by DiXiM(〜2019年、NEC)<ref>[https://support.nec-lavie.jp/navigate/support/info/2019/announce/svp/ SmartVision/PLAYER保守サービス終了のお知らせ] NECパーソナルコンピュータ 2019年1月28日</ref><ref>[https://apps.microsoft.com/detail/9wzdncrdkb4c?hl=ja-JP&gl=JP SmartVision/PLAYER powered by DiXiM] Microsoft</ref> ** DiXiM Digital TV plus for I-O DATA(〜2022年、I-O DATA)<ref>[https://www.iodata.jp/lib/product/d/3533.htm DiXiM Digital TV plus for I-O DATA] I-O DATA</ref> なお仮想マシンを使って隔離しながら古いソフトウェアを動かすこともできますが、仮想マシンでも「VMエスケープ」の脆弱性を使用することでホスト環境への侵害が可能なため、仮想マシンの上で弱い環境や弱いソフトウェアを使うこともなるべく避けましょう。<!--TODO: Windows Sandbox--> ==== 古いバージョンのライブラリを避ける ==== 多くのソフトウェアに使用されているライブラリとその過去の危険な脆弱性には例えば以下があります:<!--危険を認識させる。例はライブラリ内のメイン処理に存在し、任意コード実行であり、脆弱性の存在期間が長く、新しいものが好ましい。--> * 画像ライブラリ ** libpng - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2010-1205 CVE-2010-1205](PNG画像で任意コード実行の可能性) ** libjpeg-turbo - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2012-2806 CVE-2012-2806](JPEG画像で任意コード実行の可能性) ** OpenJPEG - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2025-54874 CVE-2025-54874](JPEG2000画像で任意コード実行の可能性) ** libtiff - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2026-12912 CVE-2026-12912](PixarLog圧縮TIFF画像で任意コード実行の可能性) ** libwebp - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2023-4863 CVE-2023-4863](WebP画像で任意コード実行の可能性) * 動画ライブラリ ** FFmpeg - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2024-22860 CVE-2024-22860](JPEG XLアニメーションで任意コード実行の可能性) * 圧縮ライブラリ ** libarchive - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2026-15028 CVE-2026-15028](tarアーカイブ形式で任意コード実行の可能性) ** zlib - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2002-0059 CVE-2002-0059](Deflate圧縮形式で任意コード実行の可能性) ** bzip2 - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2010-0405 CVE-2010-0405](BZ2圧縮形式で任意コード実行の可能性) これらのライブラリはABI(アプリケーションバイナリインターフェイス)が変更されて新しいバージョンの共有ライブラリにドロップイン置換できないものも多くなっています。 また国内で使われている古いソフトウェアでは開発中止になった以下のライブラリも問題となっています: * UNLHA32.DLL<ref>[https://forest.watch.impress.co.jp/docs/news/372729.html 圧縮・解凍用DLL「UNLHA32.DLL」が開発中止、作者はLZHの利用中止を呼びかけ] Impress 2010年6月7日</ref> Webフレームワークでは開発中止となった以下のフレームワークが問題となっています: * [[:w:Model View Controller|Model View Controller]]フレームワーク(代替候補: [[:w:Apache Struts|Apache Struts]] 2、[[:w:Spring Framework#Model-View-Controller フレームワーク|Spring MVC]]) ** [[:w:en:Apache Struts 1|Apache Struts 1]](〜2008年) - Java言語 * [[:w:アスペクト指向プログラミング|アスペクト指向フレームワーク]](代替候補: [[:w:Spring Framework|Spring Framework]]、[[:w:en:Micronaut (framework)|Micronaut]]) ** [[:w:Seasar|Seasar]](〜2016年) - Java言語 * [[:w:シングルページアプリケーション|シングルページアプリケーション]]フレームワーク(代替候補: [[:w:Angular|Angular]]、[[:w:Vue.js|Vue.js]]) ** [[:w:AngularJS|AngularJS]](〜2022年) - JavaScript === 古いハードウェアに対処する === サポート切れの OS を搭載したハードウェアはどうすれば良いでしょうか。これには使い続けるいくつかの方法がありますが、基本的にオススメしません。古い OS を搭載していたハードウェアはハードウェア仕様も古いからです。 ==== スタンドアロン運用 ==== 古いハードウェアはインターネットに繋がずに使用すること(スタンドアロン運用)も可能です。 しかしながらUSBメモリでデータをやり取りする場合はUSBメモリ経由での感染などのリスクは残ります。 ==== 新しめのLinuxを導入 ==== 新しめのLinuxを導入するという方法もあります。 これに適したものでは例えばWindows 11非対応のPC (Intel 第7世代以前、AMD Ryzen 1000シリーズ以前) が挙げられます。 またスマートフォンやタブレットであればカスタムROMが、ルーターであればDD-WRTやOpenWRTが存在します。 ==== 手放す ==== 手に負えなければデータだけバックアップして手放しましょう。情報が漏れないよう初期化も忘れずに。 == 不要なサービスを止める / 削除する == {| class="wikitable" |+ サービス表示系コマンド |- ! 稼働中のシステムサービスを見る | <code>systemctl --type=service --state=running</code> |- ! 稼働中のユーザーサービスを見る | <code>systemctl --user --type=service --state=running</code> |} === TCP/UDP経由のサービス === TCP/UDPでのポート待ち受けのあるプロセスを見るには <code>sudo ss -tulnp</code> を、通信しているプロセスを見るには <code>sudo lsof -i -P -n</code> を実行しましょう。 {| class="wikitable" |+ 主なポート待ち受けのあるプロセス |- ! ポート !! 機能 !! プロセス名 !! サービス名または起動コマンド !! パッケージ名 (Ubuntu) || 直接問い合せコマンド |- | rowspan=2 | 53/UDP<br>53/TCP || rowspan=2 | DNS(名前解決) || systemd-resolved || systemd-resolved.service || systemd-resolved || <code>dig @127.0.0.53 example.com</code> |- | dnsmasq || dnsmasq.service<br/>dnsmasq@.service || dnsmasq-base<br>dnsmasq || <code>dig @10.208.199.1 example.com</code> |- | rowspan=2 | 5353/UDP || rowspan=2 | [[:w:マルチキャストDNS|マルチキャストDNS]] || systemd-resolved || systemd-resolved.service || systemd-resolved || <code>resolvectl -p mdns query $HOSTNAME.local</code> |- | Avahi || avahi-daemon.service || avahi-daemon || <code>avahi-resolve-host-name $HOSTNAME.local</code> |- | 67/UDP<br>547/UDP || [[:w:DHCP|DHCP]]<br>[[:w:DHCPv6|DHCPv6]] || dnsmasq || dnsmasq.service<br/>dnsmasq@.service || dnsmasq-base<br>dnsmasq || <code>IP=$(ip -4 -o addr show pan1 &vert; grep -oP '(?<=inet )[\d.]+'); sudo dhcping -v -i -s "$IP" -c "$IP"</code>{{efn|Ubuntuではdhcpingパッケージの導入が必要です。}} |- | rowspan=2 | 68/UDP<br>546/UDP || rowspan=2 | DHCPクライアント<br>DHCPv6クライアント{{efn|単独のDHCPクライアントである dhclient、dhcpcd なども存在する。また開発終了になったisc-dhcp-clientも存在した。}} || systemd-networkd<wbr>{{efn|name="network-all"}} || || systemd || |- | NetworkManager<wbr>{{efn|name="network-all"|ネットワーク管理全般を担当しています。}} || NetworkManager.service || network-manager || |- | rowspan=2 | 123/UDP<br>4460/TCP || rowspan=2 | NTP(時刻同期)<br>NTS-KE (NTPの鍵交換){{efn|これらの代替として systemd-timesyncd もありますが、こちらは NTP の代わりに単純な SNTP のみ実装の上、サーバーを持たずクライアント側のみ対応です。}} || ntpd || ntpsec.service || ntpsec || rowspan=2 | <code>ntpdig localhost</code>{{efn|ローカルへのNTP問い合せは<code>ntpdate -q localhost</code>でもできますが、こちらはNTP-KE非対応です。}} |- | chronyd || chrony.service || chrony |- | 80/TCP<br>443/HTTP<br>443/UDP || HTTP<br>HTTPS<br>HTTP/3 (QUIC) || apache2 || apache2.service<br>apache2@.service<br>httpd.service<br>httpd@.service || apache2 || HTTP: <code>curl http://localhost</code><br>HTTPS: <code>curl --http2 https://localhost</code><br>HTTP/3: <code>curl --http3-only https://localhost</code> |- | rowspan=2 | ユーザーポート/UDP || rowspan=2 | HTTP/3 (QUIC) クライアント<br>WebRTCクライアント || chrome{{efn|Google Chrome}} || <code>google-chrome</code> || google-chrome (公式APTリポジトリ) || |- | firefox{{efn|Mozzila Firefox}} || <code>firefox</code> || firefox (snap) || |- | rowspan=2 |20/TCP<br>21/TCP || rowspan=2 | FTP || proftpd || proftpd.service<br>proftpd@.service || proftpd-core || rowspan=2 | <code>curl ftp://localhost</code> |- | vsftpd || vsftpd.service || vsftpd |- | 22/TCP || SSH / SFTP || sshd || ssh.service<br>sshd@.service || openssh-server || <code>ssh-keyscan 127.0.0.1</code> <!--|- | 6881/TCP || BitTorrent || Transmission<br>Fragments<br>qBittorrent<br>KTorrent<br>KGet || || ||--> |- | 5001/TCP<br>5001/UDP || rowspan=2| ネットワークパフォーマンス計測 || iperf || <code>iperf -s</code> || iperf || <code>iperf -c localhost</code> |- | 5021/TCP<br>5021/UDP || iperf3 || <code>iperf3 -s</code> || iperf3 || <code>iperf3 -c localhost</code> |- | 1716/UDP<br>1716/TCP<br>ユーザーポート/UDP || スマートフォン連携 (KDE) || kdeconnectd || <code>kdeconnect-app</code> || kdeconnect || |- | ユーザーポート/TCP || Claude Proxy Service || code{{efn|[[:w:Visual Studio Code|Visual Studio Code]]のプロセス。}} || <code>code</code> || code (公式APTリポジトリ) || <!-- |- | || AI コーディング支援 (Google Antigravity CLI{{efn|Command Line Interface}}) || agy || || (Visal Studio Code拡張) || --> |- | rowspan=2 | 3389/TCP<br>3389/UDP || rowspan=2 | Remote Desktop Protocol || gnome-remote-desktop-daemon{{efn|GNOME Remote Desktop}} || gnome-remote-desktop.service<!-- (system)--><br>gnome-remote-desktop.service (user)<br>gnome-remote-desktop-headless.service (user) || gnome-remote-desktop || |- | krdpserver || app-org.kde.krdpserver.service (user) || krdp || |- | 47984/TCP<br>47989/TCP<br>48010/TCP<br>47998–48010/UDP || NVIDIA GameStream || sunshine || app-dev.<wbr>lizardbyte.<wbr>app.<wbr>Sunshine.service (user) || sunshine (公式debファイル) || (moonlight-qt) |- | 27031-27036/UDP<br>27036/TCP || Steam Remote Play<ref>[https://help.steampowered.com/ja/faqs/view/2EA8-4D75-DA21-31EB Steam接続に必要なポート] Valve</ref> || steam || <code>steam</code> || steam (公式APTリポジトリ) || |} <!--TODO: UPnP、CUPS、Postfix、Samba、Wsdd--> === Unix Domain経由のサービス === Unix Domainでのポート待ち受けのあるプロセスを見るには <code>sudo ss -xlp</code> を実行しましょう。 === dbus経由のサービス === システムバスは <code>busctl --system list</code>、セッションバスは <code>busctl --user list</code> で確認することができます。 それらを提供する実行中のプロセスの一覧は以下で取得できます: * システムバスを提供するプロセス: <code>busctl --system --no-pager | awk 'NR>1 && $2 ~ /^[0-9]+$/ {print $2}' | xargs -I {} readlink "/proc/{}/exe" | sort -u</code> * ユーザーバスを提供するプロセス: <code>busctl --user --no-pager | awk 'NR>1 && $2 ~ /^[0-9]+$/ {print $2}' | xargs -I {} readlink "/proc/{}/exe" | sort -u</code> dbusサービスの一部はプロセス未実行のアクティベータブル (activatable) な状態で提供されています。アクティベータブルな状態で提供するサービスの実行コマンドは以下で取得できます: * activatableなシステムバスの実行コマンド: <code>busctl --system --no-pager --activatable | awk '{print $1}' | xargs -I {} find /usr/share/dbus-1 -name "{}.service" | xargs grep -h "Exec=" | sed 's/Exec=//g' | sort -u</code> * activatableなユーザーバスの実行コマンド: <code>busctl --user --no-pager --activatable | awk '{print $1}' | xargs -I {} find /usr/share/dbus-1 -name "{}.service" | xargs grep -h "Exec=" | sed 's/Exec=//g' | sort -u</code> == 潜在的な脆弱性を減らす == 現代のプログラムでは以下のような保護が行われています。 === メモリアドレスの推測困難化 === 攻撃に必要なコード片(ガジェット)のメモリアドレスを推測しにくくするために、カーネル空間、ユーザー空間の両方で[[:w:アドレス空間配置のランダム化|アドレス空間配置のランダム化]](ASLR)が行われています。カーネル空間の ASLR は KASLR (Kernel ASLR) とも呼ばれています。 ユーザー空間のプログラムで ASLR を有効にするためには[[:w:位置独立コード|位置独立コード]] (PIC) / 位置独立実行形式 (PIE) である必要があります。Unix で使われる実行形式の ELF では位置独立実行形式が ET_DYN、非位置独立実行形式 (non-PIE) が ET_EXEC となります。 Linuxでは ASLR が無効となる非位置独立実行形式のファイルを以下で検索することができます: <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ # License: CC0 / Public Domain $ # 非位置独立実行形式 (non-PIE) のバイナリを検索 $ find / -type f -executable 2>/dev/null | xargs -I {} sh -c 'LANG=C readelf -h {} 2>/dev/null | grep -E "Type:.*EXEC" >/dev/null && echo {}' /usr/lib/default.sfx /usr/lib/klibc/bin/mkfifo /usr/lib/klibc/bin/zcat /usr/lib/klibc/bin/poweroff [...] $ # 非位置独立実行形式 (non-PIE) のバイナリを含むDebianパッケージを検索 $ find / -type f -executable 2>/dev/null | xargs -I {} sh -c 'LANG=C readelf -h {} 2>/dev/null | grep -E "Type:.*EXEC" >/dev/null && echo {}' | xargs -r -d '\n' -n1 dpkg-query -S | sed 's/: .*//' | sort -u aidl busybox-static code cpp-15-x86-64-linux-gnu cuda-gdb-13-4 cuda-nvcc-13-4 cuda-sanitizer-13-4 cuda-tileiras-13-4 debugedit g++-15-x86-64-linux-gnu gcc-15-x86-64-linux-gnu gcc-mingw-w64-i686-posix gdc-15-x86-64-linux-gnu gds-tools-13-4 gfortran-15-x86-64-linux-gnu gh git-lfs gobjc-15-x86-64-linux-gnu gocryptfs golang-1.26-go go-md2man go-mtpfs [...] </syntaxhighlight> 現在のLinuxカーネルがユーザー空間 ASLR を有効にしているかは以下で確認できます (出力例はUbuntu 26.04): <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ sysctl kernel.randomize_va_space # 0=無し、1=部分的、2=完全 kernel.randomize_va_space = 2 </syntaxhighlight> また現在のLinuxカーネルがカーネル ASLR (KASLR) を有効にしているかは以下で確認できます (出力例はUbuntu 26.04): <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ grep 'CONFIG_RANDOMIZE_BASE' /boot/config-$(uname -r) # y=Yes, n=No CONFIG_RANDOMIZE_BASE=y </syntaxhighlight> なお ASLR は間接的な関数呼び出し( C++ の vtable を含む)があると、そのアドレスから ASLR のオフセットがバレてしまい突破されてしまいます。 また CPU の[[:w:投機的実行|投機的実行]]での情報漏れ (Spectre) による[[:w:キャッシュ攻撃|キャッシュサイドチャネル攻撃]](後述)の一つである「投機的探査」 (BlindSide) によってもコードの位置情報の取得がされ ASLR が突破されてしまいます。 === 投機的実行の情報漏れ防止 === 前述のとおり、投機的実行による情報漏れ (Spectre) は攻撃に繋がります。Spectre には境界チェックを迂回する Spectre V1 と間接分岐の分岐先アドレスのキャッシュ{{efn|分岐先バッファ (Branch Target Buffer、BTB)や分岐先アドレスキャッシュ (Branch Target Address Cache、BTAC) と呼ばれる。}}を汚染する Spectre V2 が存在します。<!--TODO: Spectre v3/v4、Zenbleed--> Spectre V1 を防ぐ方法としては投機的実行を阻害するための命令(x86ではLFENCE)の挿入{{efn|Linuxカーネルでの投機的実行の防止は<code>barrier_nospec()</code>。}}やアクセスできるアドレス範囲を狭めることが行われています{{efn|GCCでの投機的実行での範囲外アクセス防止は<code>__builtin_speculation_safe_value(...)</code>、Linuxカーネルでの投機的実行での範囲外アクセス防止は<code>array_index_nospec(...)</code><ref>[https://lwn.net/Articles/759423/ Spectre V1 defense in GCC] LWN 2018年7月10日</ref>。}}。 また Spectre V2 では攻撃を防ぎながらも速度を落とさない方法として脆弱な分岐先アドレスキャッシュに依存する間接分岐の代わりにリターンアドレスのキャッシュ{{efn|リターンスタックバッファ (RSB) と呼ばれる。}}に依存するリターン命令を使う retpoline が登場しました。しかしながらこの retpoline でも速度の低下は起こるため、既知の間接呼び出しを条件分岐 + 直接呼び出しに変換して高速化する手法が模索されました。LLVM では retpoline を有効にする <code>-mretpoline</code>フラグの処理内に既知の仮想関数呼び出しを[[:w:二分木|二分木]]の直接分岐に置き換える「分岐ファネル」(Branch funnel) が導入されています<ref>[https://reviews.llvm.org/D42453 Use branch funnels for virtual calls when retpoline mitigation is enabled.] LLVM project</ref>。また Linux カーネルでも既知の間接呼び出しを条件分岐 + 直接呼び出しに変換する INDIRECT_CALL_* マクロが搭載されています<ref>[https://lwn.net/Articles/774743/ Relief for retpoline pain] LWN 2018年12月14日</ref>。<!--TODO: Intel CETのSHSTKとretpolineの衝突--> 一方、リターン命令の投機的実行も「Retbleed」や AMD CPU における「投機的リターンスタックオーバーフロー」 (SRSO){{efn|Speculative Return Stack Overflow。}}のような脆弱性が見つかっています。 なお低権限コードから高権限コードへの権限境界をまたいだ Spectre および Retbleed は Intel の「間接分岐制限付き投機」(IBRS){{efn|Indirect Branch Restricted Speculation。}}およびそれを高速化した「拡張IBRS」(eIBRS) などハードウェア側によって塞がれました<ref>[https://www.intel.com/content/www/us/en/developer/articles/technical/software-security-guidance/technical-documentation/hardware-behavior-related-to-speculative-execution.html Hardware Features and Behavior Related to Speculative Execution] Intel 2026年10月14日</ref>が、権限境界をまたがないものは今も可能となっています。 === メモリにおける書き込みと実行の排他化 (W^X) === メモリでは書き込み可能領域の実行不可化 ([[:w:NXビット|NXビット]]) と実行可能領域の書き込み不可化による書き込みと実行の排他化([[:w:en:W^X|W^X]])が一般的となっています。NXビットは x86 では NXビットは AMD64 と共に搭載された古い機能であるため、今時の CPU と OS は基本的にこれに対応しています。 現在の CPU がNXビットを有効にしているかはLinuxでは以下で確認できます: <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ grep '^flags' /proc/cpuinfo | grep -o nx nx nx [...] </syntaxhighlight> 現在のLinuxカーネルが厳格な W^X を有効にしているかは以下で確認できます (出力例はUbuntu 26.04): <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ grep '_RWX' /boot/config-$(uname -r) # y=Yes, n=No CONFIG_ARCH_HAS_STRICT_KERNEL_RWX=y CONFIG_STRICT_KERNEL_RWX=y CONFIG_ARCH_HAS_STRICT_MODULE_RWX=y CONFIG_STRICT_MODULE_RWX=y </syntaxhighlight> しかしながら書き込みと実行の排他の原則を破ってそれらを同時に行える場所というものも存在しています。読み込み・書き込み・実行が可能なことから「RWXセクション」と呼ばれています。Windows ではメモリページの PAGE_EXECUTE_READWRITE フラグがこれに相当します<ref>[https://learn.microsoft.com/ja-jp/windows/win32/memory/memory-protection-constants メモリ保護定数] メモリ保護定数 (WinNT.h) - Win32 apps | Microsoft Learn</ref>。 Windows のカーネルドライバでは NX フラグの使用が義務付けられています<ref>[https://learn.microsoft.com/en-us/windows-hardware/test/hlk/testref/driver-compatibility-with-device-guard メモリ整合性と VBS とのドライバ互換性] Microsoft</ref>が、その Windows カーネルにおいても PatchGuard の領域がコード難読化のためにこの原則を破っています。<!--TODO: ホットパッチ--> また Linux でも実行可能領域を書き込み可能ページとして割り当てて書き込む text_poke 関数が用意されています。 === 制御フローの操作を防ぐ (CET) === 現代では「[[:w:Return-oriented programming|リターン指向プログラミング]]」(ROP)、「呼び出し指向プログラミング」 (COP)、「ジャンプ指向プログラミング」(JOP) 、「[[:en:Sigreturn-oriented programming|Sigreturn指向プログラミング]]」(SROP) などの制御フロー操作による攻撃が一般化していますが、これを防ぐ技術として「[[:w:en:Control-flow integrity#Intel Control-flow Enforcement Technology|制御フロー強制テクノロジー]]」(CET) の「[[:w:en:Indirect branch tracking|間接分岐追跡]]」(IBT) と「[[:w:en:Shadow stack|シャドウスタック]]」(SHSTK) が存在します。 制御フロー強制は比較的新しい技術であるため、対応する CPU は以下に限られます: * Intel Core (Tiger Lake) 第11世代以降 * AMD Zen 3 以降(シャドウスタックのみ) 現在の CPU が間接分岐追跡 (IBT) およびシャドウスタックに対応しているかはLinuxでは以下で確認できます: <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ grep '^flags' /proc/cpuinfo | grep -oE '(ibt|shstk)' shstk ibt shstk ibt [...] </syntaxhighlight> またユーザーランドのシャドウスタックの使用にはユーザーランドだけでなくカーネルの対応も必要となります。Linux カーネル では 6.6 以降対応でこれに対応しています(sigreturnにも対応<ref>[https://github.com/torvalds/linux/commit/05e36022c0543ba55a3de55af455b00cb3eb4fcc x86/shstk: Handle signals for shadow stack · torvalds/linux@05e3602] GitHub 2023年8月3日</ref>)。 Linuxディストリビューションでは Ubuntu 24.04以降、 Red Hat Enterprise Linux 9.7 以降<ref>[https://docs.redhat.com/ja/documentation/red_hat_enterprise_linux/9/html/9.7_release_notes/new-features-kernel 4.8. カーネル - 9.7 リリースノート - Red Hat Enterprise Linux - 9 - Red Hat Documentation] Red Hat</ref>が標準でシャドウスタックを有効としています。 現在のLinuxカーネルが間接分岐追跡およびシャドウスタックを有効にしているかは以下で確認できます (出力例はUbuntu 26.04): <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ grep -E '_(IBT|SHADOW_STACK)' /boot/config-$(uname -r) # y=Yes, n=No CONFIG_CC_HAS_IBT=y # CONFIG_X86_KERNEL_IBT is not set CONFIG_X86_USER_SHADOW_STACK=y CONFIG_X86_DISABLED_FEATURE_IBT=y CONFIG_ARCH_HAS_USER_SHADOW_STACK=y </syntaxhighlight> 現在のユーザーランドプログラムの中で間接分岐追跡またはシャドウスタックが無効化されているものはLinuxでは以下で確認できます: <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ # License: CC0 / Public Domain $ # 間接分岐追跡またはシャドウスタックが無効化されているバイナリを検索 $ find / -type f 2>/dev/null | xargs -I {} sh -c 'readelf -h "{}" >/dev/null 2>&1 && (readelf -n "{}" 2>/dev/null | grep -E IBT,.*SHSTK > /dev/null || echo "{}")' /usr/lib/lv2/carla.lv2/carla.so /usr/lib/7zip/7z /usr/lib/7zip/7zCon.sfx /usr/lib/7zip/7zr /usr/lib/7zip/7z.so /usr/lib/7zip/7za /usr/lib/klibc/bin/ipconfig /usr/lib/klibc/bin/umount /usr/lib/klibc/bin/halt [...] $ # 間接分岐追跡またはシャドウスタックが無効化されているバイナリを含むDebianパッケージを検索 $ find / -type f 2>/dev/null | xargs -I {} sh -c 'readelf -h "{}" >/dev/null 2>&1 && (readelf -n "{}" 2>/dev/null | grep -E IBT,.*SHSTK > /dev/null || echo "{}")' | xargs -r -d '\n' -n1 dpkg-query -S | sed 's/: .*//' | sort -u 7zip aidl ardour avr-libc cargo-1.93 carla carla-bridge-wine32:i386 carla-bridge-wine64 carla-lv2 carla-vst cuda-ctadvisor-13-4 cuda-cudart-13-4 [...] </syntaxhighlight> なお、制御フロー強制テクノロジーの間接分岐追跡とシャドウスタックが有効であっても異なる関数の通常呼び出しは防げません。分かりやすい例では関数の間接呼び出しにおいて関数ポインタを<code>sigaction</code>へと変更して独自のシグナルハンドラを登録し、その後クラッシュさせてそのシグナルハンドラを呼び出すという「セグメンテーション違反指向プログラミング」(SFOP) が挙げられます。また攻撃に使える関数 (dop gadgets) {{efn|dop gadgetsの検索の公式実装は「DOP-StaticAssist」[https://github.com/melynx/DOP-StaticAssist]だが長らく更新されておらず古いLLVM 3.5に依存している状態となっている。}}の通常呼び出しだけで攻撃する「Data-Oriented Programming」(DOP) <ref>Hong Hu et al. [https://ieeexplore.ieee.org/stamp/stamp.jsp?tp=&arnumber=7546545 Data-Oriented Programming: On the Expressiveness of Non-Control Data Attacks] IEEE 2016年</ref>{{efn|セキュリティ以外の文脈におけるデータ指向プログラミング、データ指向設計、データ駆動型設計とは異なる。}}という手法も存在します。 C++向けでは仮想関数テーブル (vtable) を改ざんして攻撃に使える仮想関数(仮想関数ガジェット、vfgadget)を呼び出す「偽造オブジェクト指向プログラミング」(COOP) という攻撃手法も登場しています。 === メモリ安全性の高いソフトウェアへ === 既存のソフトウェアの脆弱性は7割がメモリ安全性の問題に起因すると言われています<ref>[https://www.cisa.gov/sites/default/files/2023-12/CSAC_TAC_Recommendations-Memory-Safety_Final_20231205_508.pdf REPORT TO THE CISA DIRECTOR Technical Advisory Council Memory Safety] サイバーセキュリティ諮問委員会 (CSAC) 2023年12月5日</ref>。しかしながら[[C言語]]や[[C++]]はメモリ安全性が低いため、メモリ安全性の確保できる[[Rust]]などで書かれた代替プログラムが登場しています: {| class="wikitable" |+ コマンドのRust版 |- ! コマンドの概要 !! 従来版 !! Rust版 |- | Unix系の基本コマンド群 || GNU Core Utilities || '''uutils coreutils''' |- | ファイル検索コマンド群{{efn|<code>find</code>、<code>locate</code>、<code>updatedb</code>、<code>xargs</code>の4コマンド}} || GNU Findutils || '''uutils findutils''' |- | ファイル差分コマンド群{{efn|<code>diff</code>、<code>cmp</code>、<code>diff3</code>、<code>sdiff</code>の4コマンド}} || GNU Diffutils || '''uutils diffutils''' |- | ストリームエディタ (sed) || GNU sed / FreeBSD sed || '''uutils sed''' |- | AWKスクリプト || GNU AWK || '''uutils AWK''' |- | 文字列検索 || GNU Grep || '''uutils Grep''' |- | tarアーカイブ || GNU Tar || '''uutils tar''' |- | アカウント管理コマンド群 || shadow-utils || '''uutils shadow-utils''' |- | アクセス制御コマンド群{{efn|<code>chacl</code>、<code>getfacl</code>、<code>setfacl</code>の3コマンド}} || acl || '''uutils acl''' |- | procfs{{efn|プロセスファイルシステム}}表示コマンド群 || procps / procps-ng || '''uutils procps''' |- | ホスト名管理コマンド群{{efn|<code>hostname</code>、<code>dnsdomainname</code>、<code>domainname</code>、<code>nisdomainname</code>、<code>ypdomainname</code>の5コマンド。}} || hostname || '''uutils hostname''' |- | Linuxユーティリティ || util-linux || '''uutils util-linux''' |- | 権限昇格 || sudo || '''sudo-rs''' |- | 暗号・署名システム || GnuPG || '''Sequoia PGP''' |- | 時刻同期 || ntpd || '''ntpd-rs''' |- | セキュアシェル (SSH) || OpenSSH || '''russh''' |} これらのRustで書かれたコマンドのうちuutils coreutilsとsudo-rsはUbuntuに採用されています。 またライブラリでもRustだけ (Pure Rust) で実装されたものが登場しています: * 画像ライブラリ - これらは例えばGNOMEデスクトップ環境の画像ローダーGlycinから使われています<ref>[https://gitlab.gnome.org/GNOME/glycin GNOME / glycin · GitLab] GNOME Project</ref>。 ** libpng → pngクレート - PNG画像向け。 ** libgif → gifクレート - GIF画像向け。 ** libjpeg / libjpeg-turbo → zune-jpeg / libjpeg-turbo-rs - JPEG画像向け。 ** OpenJPEG → hayro-jpeg2000 - JPEG 2000画像向け。 ** libtiff → tiffクレート - Tiff画像向け ** libwebp → image-webpクレート - WebP画像向け。 ** libraw → libopenraw - RAW画像向け。 ** librsvg - SVG画像向け。C言語からRustに書き直しされました。 * 圧縮ライブラリ ** zlib / zlib-ng → zlib-rs - Deflate圧縮向け ** libbzip2 → bzip2-rs - BZ2圧縮向け * 暗号化ライブラリ ** OpenSSL / GnuTLS → [[:w:en:Rustls|Rustls]] * Unicode処理ライブラリ ** ICU4C → ICU4X * テキスト整形ライブラリ ** HarfBuzz → HarfRust * ブラウザエンジン ** Blink/Gecko → Servo <!-- === 整合性チェック === PatchGuard / HyperGuard --> == 不審な改変が行われていないかを調べる == 例えばOSの起動には一連のシーケンスがありますが、マルウェアは基本的にここの途中に入り込んで永続化します。 {| class="wikitable" |+ 起動シーケンス |- ! 種類 || Windows 11以降 !! Linux (Gnome) !! Linux (KDE) |- | 1. 起動ファームウェア || [[:w:Unified Extensible Firmware Interface|UEFI]] || colspan=2 | [[:w:Basic Input/Output System|レガシーBIOS]] / UEFI |- | 2. ブートローダー || [[:w:Windows Boot Manager|Windows Boot Manager]] (bootmgfw.efi)<br> → [[:w:Windows Boot Manager#winload.exe/winload.efi|Windows OS Loader]] (winload.efi) || colspan=2 | GRUB{{efn|Ubuntuの標準。}} / systemd-boot / Unified Kernel Image{{efn|Linuxカーネルとブートイメージを単一バイナリにする仕組み。}} / EFI boot stub{{efn|LinuxカーネルをEFIから直接ブートできるようにする仕組み。}} |- | 3. カーネル || [[:w:ntoskrnl.exe|ntoskrnl.exe]] || colspan=2 | Linuxカーネル ([[:w:vmlinux|vmlinux]]{{efn|圧縮後はvmlinuzとなる。}}) |- | 4. 初期化プロセス || [[:w:en:Session Manager Subsystem|smss.exe]]<br> → wininit.exe<br> || rowspan=2 colspan=2 | [[:w:systemd|systemd]]{{efn|以前は代替initもよく使われていたが、今はsystemdが標準となっている。}} |- | 5. サービスコントロールマネージャ || colspan=2 | [[:w:en:Service Control Manager|services.exe]] |- | rowspan=2 | 6. ログインマネージャ || rowspan=2 | [[:w:Winlogon|winlogon.exe]] || colspan=2 | systemd-logind<br>sd-pam |- | [[:w:GNOME ディスプレイマネージャー|GDM]] || [[:w:Simple Desktop Display Manager|SDDM]] |- | rowspan=2 | 7. ユーザー初期化プロセス || rowspan=2 | userinit.exe || colspan=2 | systemd |- | gnome-session || kcminit<br> → plasma_session |- | 8. シェル || [[:w:Windows Explorer|explorer.exe]] || gnome-shell || plasmashell |- | 9. コンポジタ || [[:w:Desktop Window Manager|dwm.exe]] || mutter || kwin |} また起動シーケンス以外にもアップデートシーケンスへの感染やシェル感染、ブラウザ感染もあります。 {| class="wikitable" |+ Windows における代表的なユーザースクリプト又はコマンド起動が可能な設定ファイル |- ! 規格/アプリケーション !! ユーザー !! システム |- | Windows || %APPDATA%\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows\<wbr>Start Menu\<wbr>Programs\<wbr>Startup\<wbr>* || C:\<wbr>ProgramData\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows\<wbr>Start Menu\<wbr>Programs\<wbr>Startup\<wbr>* |- | [[:w:PowerShell|PowerShell]] プロファイル<ref>[https://learn.microsoft.com/ja-jp/powershell/module/microsoft.powershell.core/about/about_profiles?view=powershell-7.6 about_Profiles - PowerShell - Microsoft Learn] Microsoft</ref> || %USERPROFILE%\<wbr>Documents\<wbr>PowerShell\<wbr>Profile.ps1<br>%USERPROFILE%\<wbr>Documents\<wbr>PowerShell\<wbr>Microsoft.PowerShell_profile.ps1 || C:\<wbr>Windows\<wbr>System32\<wbr>WindowsPowerShell\<wbr>*\<wbr>Profile.ps1<br>C:\<wbr>Windows\<wbr>System32\<wbr>WindowsPowerShell\<wbr>*\<wbr>Microsoft.PowerShell_profile.ps1 |} {| class="wikitable" |+ Linux における代表的なユーザースクリプト又はコマンド起動が可能な設定ファイル |- ! 規格/アプリケーション !! ユーザー !! システム |- | POSIX標準 || ~/.profile || /etc/profile |- | XDG Base Directory<wbr>標準 || ~/.local/bin/* || |- | FHS{{efn|Filesystem Hierarchy Standard}}<wbr>標準[https://refspecs.linuxfoundation.org/fhs.shtml] || || /bin/* /sbin/* /usr/bin/* /usr/local/bin/* /etc/inittab |- | LSB{{efn|Linux Standard Base}}<wbr>標準[https://refspecs.linuxfoundation.org/lsb.shtml] || || /etc/profile.d/* /etc/init.d/* /etc/cron.d/* |- | Desktop Application Autostart Specification<wbr>標準[https://specifications.freedesktop.org/autostart/latest/]{{efn|systemd-xdg-autostart-generator が導入されているシステムではこれらがsystemd設定に自動変換される。}} || ~/.config/autostart/* || /etc/xdg/autostart/* |- | Bash || ~/.bash_profile ~/.bashrc || /etc/bash_profile /etc/bash.bashrc /etc/bash.bash_logout |- | Z shell (Zsh) || ~/.zshenv ~/.zprofile ~/.zshrc ~/.zlogin ~/.zlogout || /etc/zshenv /etc/zprofile /etc/zshrc /etc/zlogin /etc/zlogout<br/>(または /etc/zsh/zshenv /etc/zsh/zprofile /etc/zsh/zshrc /etc/zsh/zlogin /etc/zsh/zlogout) |- | Systemd || ~/.config/systemd/user/* || /etc/systemd/system/* /etc/systemd/user/* |- | Xorg || ~/.xinitrc ~/.xserverrc ~/.xsession || /etc/X11/xinit/xinitrc /etc/X11/xinit/xserverrc /etc/X11/Xsession /usr/share/xsessions/* |- | Wayland || || /usr/share/wayland-sessions/* |- | Python || ~/.local/lib/python*/site-packages/*/**{{efn|絶対パスは<code>python3 -c 'import site; print(site.getusersitepackages())'</code>で確認可能。}} || /usr/lib/python*/dist-packages/*/** /usr/local/lib/python*/dist-packages/*/**{{efn|絶対パスは<code>python3 -c 'import site; print(site.getsitepackages())'</code>で確認可能。}} |- | Perl{{efn|Debian/UbuntuではDebianパッケージ設定システム (debconf) のためにPerlを使用している。}} || || /usr/share/perl*/** /usr/local/share/perl*/** /usr/lib/*/perl*/** /usr/local/lib/*/perl*/**{{efn|絶対パスは<code>perl -V:installsitearch -V:installsitelib -V:installvendorarch -V:installvendorlib -V:archlib -V:privlib -V:installarchlib -V:installprivlib</code>で確認可能。}} |} === パッケージ管理ファイルを検証する === パッケージ管理システムが管理しているファイルではファイルハッシュが保存されているため簡単にその検証を行うことが可能です: {| class="wikitable" |- ! OS / パッケージシステム !! 検証のみ !! 修復 |- | Windows || <code>sfc&nbsp;/verifyonly</code> || <code>sfc&nbsp;/scannow</code> |- | Debパッケージ (Debian / Ubuntu) || <code>debsums -s</code> || <code>apt install --reinstall $(debsums -cs &verbar; xargs -r dpkg-query -S &verbar; cut -d: -f1 &verbar; sort -u)</code> |- | RPMパッケージ (RedHat / Fedora) || <code>rpm -Va</code> || |} ただしローカルハッシュが改ざんされている可能性もあるため過信はできません。<!--TODO: ローカルハッシュの検証法--> 自動的にシステムの検証を行うシステムも存在します: * Android - ブロックデバイスレベルでのハッシュ検証 (dm-verityベース)<ref>[https://source.android.com/docs/security/features/verifiedboot/dm-verity?hl=ja dm-verity の実装] Google</ref> <!-- またUbuntuのSnapパッケージでもdm-verityの導入が進められています。 また特定言語のパッケージの検証は以下で可能です: * PIP (Python): なし --> === システム領域に不審なファイルが追加されていないかを調べる === システムの追加ファイルの検知にはパッケージシステムで管理されていないファイルの一覧を返す以下のようなツールが存在します: * Debian / Ubuntu(Debパッケージ)向け: cruft-ngパッケージ(<code>cruft</code>コマンド) 上記の<code>cruft</code>コマンドでは設定ファイルだけ残っているパッケージのファイルも出てきてしまいます。そのため、これが邪魔な時は設定ファイルだけ残っているパッケージを<code>sudo apt purge '~c'</code>で削除しましょう。 またaptレポジトリに無いインストールされたパッケージは<code>apt list '?obsolete'</code>で、手動 (manual) でインストールされたパッケージは<code>apt-mark showmanual</code>で確認できます。これらのコマンドを実行してインストールした覚えないパッケージが入ってないかをチェックしましょう。GUI が使えるのであれば<code>synaptic</code>を起動して「インストール済(ローカルまたは廃止)」と「インストール済(手動)」を確認するのもオススメです。 === ユーザー領域に不審なファイルが追加されていないかを調べる === ユーザースクリプトの書き換えや追加は検知が難しいです。<!--TODO: 良い方法を書く--> 共有ライブラリやスクリプトによるプラグイン追加も可能となっているため、こちらにも気をつけなければいけません。これには例えば以下があります: {| class="wikitable" |+ 代表的なユーザースクリプトや拡張機能のディレクトリパス |- ! 種類 !! Windowsのパス !! macOSのパス !! Linuxのパス |- | Google Chrome 拡張機能 || %LOCALAPPDATA%\Google\Chrome\User Data\*\Extensions\ || ~/Library/Application Support/Google/Chrome/*/Extensions/ || ~/.config/google-chrome/*/Extensions/ |- | GIMPプラグイン<ref>[https://gimp.cc/faq/add-gimp-plugins.html How to Install GIMP Plugins - Detailed Guide with Troubleshooting] GIMP.cc</ref> || %APPDATA%\GIMP\*\plug-ins\ || ~/Library/Application Support/GIMP/*/plug-ins/ || ~/.config/GIMP/*/plug-ins/ |- | Blenderスクリプト{{efn|起動スクリプト、アドオンを含む。}}<ref>[https://docs.blender.org/manual/ja/dev/advanced/blender_directory_layout.html Blender&#39;s Directory Layout] Blender Foundation</ref> || %APPDATA%\Blender Foundation\Blender\*\scripts\ || ~/Library/Application Support/Blender/*/scripts/ || ~/.config/blender/*/scripts/ |- | Ardourスクリプト<ref>[https://manual.ardour.org/lua-scripting/ The Ardour Manual - Lua Scripting] Ardour</ref> || %LOCALAPPDATA%\ardour*\scripts\ || ~/Library/Preferences/Ardour*/scripts/ || ~/.config/ardour*/scripts/ |- | LibreOfficeスクリプト || %APPDATA%\LibreOffice\*\user\Scripts\ || ~/Library/Application Support/LibreOffice/*/user/Scripts/ || ~/.config/libreoffice/*/user/Scripts/ |- | Visual Studio Code 拡張機能<ref>[https://code.visualstudio.com/docs/configure/extensions/extension-marketplace Extension Marketplace] Microsoft</ref> || %USERPROFILE%\.vscode\extensions\ || ~/.vscode/extensions/ || ~/.vscode/extensions/ |} === 改変・追加されたファイルが危険かを調べる === 実行ファイルやスクリプトはLinuxでは以下で検出できます: <syntaxhighlight lang="shell-session"> # cat filelist.txt | xargs file | grep -i -E ':.*(executable|shared object|relocatable|script)' /etc/init.d/binfmt-support.dpkg-new: POSIX shell script, ASCII text executable /etc/update-motd.d/99-livepatch-kernel-upgrade-required: POSIX shell script, ASCII text executable /usr/lib/chromium-browser/plugins/libpepflashplayer.so: ELF 64-bit LSB shared object, x86-64, version 1 (SYSV), dynamically linked, BuildID[sha1]=5c421e89a5c062a2106a5a4381dc38e779a22795, stripped </syntaxhighlight> またClamAVを導入していれば以下でマルウェアデータベースとの照合を行うことができます: <syntaxhighlight lang="shell-session"> # cat filelist.txt | xargs clamscan Loading: 3s, ETA: 0s [========================>] 3.63M/3.63M sigs Compiling: 1s, ETA: 0s [========================>] 41/41 tasks /etc/apt/apt.conf.d/00trustcdrom: OK /etc/apt/auth.conf.d/90ubuntu-advantage: OK /etc/apt/keyrings/google.asc: OK [...] ----------- SCAN SUMMARY ----------- Known viruses: 3628164 Engine version: 1.5.4 Scanned directories: 125 Scanned files: 1919 Infected files: 0 Total errors: 10 Data scanned: 247.72 MiB Data read: 281.17 MiB (ratio 0.88:1) Time: 17.939 sec (0 m 17 s) Start Date: 2026:10:11 05:41:30 End Date: 2026:10:11 05:41:48 </syntaxhighlight> === 設定データベースを検証する === 設定データベースは Windows ではレジストリ、Linuxでは GNOME / MATEの 使う [[:en:dconf|dconf]] が存在します。 Windows の設定データベースはレジストリと呼び「レジストリエディタ」 (<code>regedit</code>) で表示できます。 {| class="wikitable" |+ Windows における代表的なユーザースクリプト、コマンド起動、DLL呼び出しが可能なレジストリ |- ! 規格/アプリケーション !! 各ユーザー !! 全ユーザー |- | Windows || HKEY_USERS\<wbr>*\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows\<wbr>CurrentVersion\<wbr>Run\<wbr>*<wbr>CurrentVersion\<wbr>Run\<wbr>*<br>HKEY_USERS\<wbr>*\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows\<wbr>CurrentVersion\<wbr>RunOnce\<wbr>*{{efn|name="runonce"|RunOnceは一度のみ実行だが再登録することで何回でも実行可能。}} || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows\<wbr>CurrentVersion\<wbr>Run\<wbr>*<br>HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows\<wbr>CurrentVersion\<wbr>RunOnce\<wbr>*{{efn|name="runonce"}} |- | [[:w:en:Security Account Manager|Security Account Manager]] || || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>SAM\<wbr>SAM\<wbr>Domains\<wbr>Account\<wbr>Users\<wbr>*\<wbr>V{{efn|name="sam"|'HKEY_LOCAL_MACHINE\SAM\SAM\' 以下はレジストリエディタの右クリックの「アクセス許可」で Administrators にアクセス許可を与えないと読めない。なおファイルパスは「C:\Windows\System32\config\SAM」。}}{{efn|Vはバイナリであり、0xCC + (0x60 に指定されたオフセット) からユーザーログオンスクリプトパスを指定する<ref name="sam-ghost">Sebastián R. Castro et al. [https://dl.acm.org/doi/pdf/10.1145/3689934.3690839 Ghost in the SAM: Stealthy, Robust, and Privileged Persistence through Invisible Accounts] ACM 2024年</ref>。}} |- | [[:w:en:Local Security Authority Subsystem Service|Local Security Authority Subsystem Service]] || || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>System\<wbr>CurrentControlSet\<wbr>Control\<wbr>LSA\<wbr>Notification Packages<br>HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>SYSTEM\<wbr>CurrentControlSet\<wbr>Control\<wbr>LSA\<wbr>Authentication Packages<ref>[https://attack.mitre.org/detectionstrategies/DET0207/ Detect LSA Authentication Package Persistence via Registry and LSASS DLL Load] MITRE Corporation</ref> |- | [[:w:en:Active Setup|Active Setup]]<ref>[https://www.advancedinstaller.com/application-packaging-training/msi/ebook/active-setup.html Active-Setup Mechanism] Advanced Installer</ref> || HKEY_USERS\<wbr>*\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Active Setup\<wbr>Installed Components\<wbr>*\<wbr>StubPath || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Active Setup\<wbr>Installed Components\<wbr>*\<wbr>StubPath<ref>[https://attack.mitre.org/techniques/T1547/014/ Boot or Logon Autostart Execution: Active Setup] MITRE Corporation</ref> |- | [[:w:Windowsサービス|Windowsサービス]]<ref>[https://learn.microsoft.com/ja-jp/windows-hardware/drivers/install/hklm-system-currentcontrolset-services-registry-tree HKLM\SYSTEM\CurrentControlSet\Services レジストリ ツリー - Windows drivers - Microsoft Learn] Microsoft</ref> || || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>SYSTEM\<wbr>CurrentControlSet\<wbr>services\<wbr>* |- | [[:w:Winlogon|Winlogon]] || || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows NT\<wbr>CurrentVersion\<wbr>Winlogon\<wbr>Shell<br>HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows NT\<wbr>CurrentVersion\<wbr>Winlogon\<wbr>Userinit<br>HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows NT\<wbr>CurrentVersion\<wbr>Winlogon\<wbr>Notify<ref>[https://attack.mitre.org/techniques/T1547/004/ Boot or Logon Autostart Execution: Winlogon Helper DLL] MITRE Corporation</ref> |- | [[:w:cmd.exe|cmd.exe]]<ref>[https://learn.microsoft.com/en-us/windows-server/administration/windows-commands/cmd cmd - Microsoft Learn] Microsoft</ref> || HKEY_USERS\<wbr>*\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Command Processor\<wbr>AutoRun\REG_EXPAND_SZ || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Command Processor\<wbr>AutoRun\<wbr>REG_SZ |- | [[Microsoft Edge]] || || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>SOFTWARE\<wbr>Policies\<wbr>Microsoft\<wbr>Edge\<wbr>ExtensionInstallForcelist<ref>[https://learn.microsoft.com/ja-jp/deployedge/microsoft-edge-policies/extensioninstallforcelist Microsoft Edge ブラウザー ポリシードキュメント ExtensionInstallForcelist - Microsoft Learn] Microsoft</ref>{{efn|name="silent-install"|自動的にサイレントインストールする}} |- | [[Google Chrome]] || || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>SOFTWARE\<wbr>Policies\<wbr>Google\<wbr>Chrome\<wbr>ExtensionInstallForcelist<ref>[https://chromeenterprise.google/intl/ja_jp/policies/extension-install-forcelist/ ExtensionInstallForcelist: 自動インストールするアプリと拡張機能のリストの設定 - Chrome Enterprise] Google</ref>{{efn|name="silent-install"}} |} Linux の GNOME / MATE 環境には「[[:w:en:Dconf#dconf database|dconf データベース]]」が存在し、それは<code>dconf dump</code>('/'区切り)で表示できます。また dconf データベースにスキーマ(規定値と解説)を被せた gsettings も存在し、こちらは<code>gsettings list-recursively</code>(dconfと異なり'.'区切り)で表示できます。 {| class="wikitable" |+ Linux における代表的なユーザースクリプト又はコマンド起動が可能なdconf設定 |- ! 規格/アプリケーション !! ユーザー |- | GNOME Settings Daemon || /org/gnome/settings-daemon/plugins/media-keys/custom-keybindings/custom*/command |- | Marco ([[w:MATE (デスクトップ環境)|MATE]]) || /org/mate/Marco/keybinding-commands/command-*{{efn|変更した設定は<code>dconf dump /org/mate/Marco/keybinding-commands/</code>で、デフォルトも含めた設定は<code>gsettings list-recursively org.mate.Marco.keybinding-commands</code>で表示可能。}} |- | MATE Screensaver || /org/mate/screensaver/embedded-keyboard-command<br>/org/mate/screensaver/logout-command{{efn|変更した設定は<code>dconf dump /org/mate/screensaver/</code>、デフォルトも含めた設定は<code>gsettings list-recursively org.mate.screensaver</code> で表示可能}} |- | mate-applets || /org/mate/panel/objects/object-*/prefs/command |- | mate-sensors-applet || /org/mate/panel/objects/object-*/prefs/*/high-alarm-command<br>/org/mate/panel/objects/object-*/prefs/*/low-alarm-command |} なお MATE Screensaver と同源の GNOME Screensaver にも /org/gnome/desktop/screensaver/embedded-keyboard-command と /org/gnome/desktop/screensaver/logout-command{{efn|変更した設定は<code>dconf dump /org/gnome/desktop/screensaver/</code>、デフォルトも含めた設定は<code>gsettings list-recursively org.gnome.desktop.screensaver</code> で表示可能。}} が存在しますが、こちらは既に廃止されており指定しても無視されます<ref>[https://github.com/GNOME/gsettings-desktop-schemas/blob/main/schemas/org.gnome.desktop.screensaver.gschema.xml.in gsettings-desktop-schemas/schemas/org.gnome.desktop.screensaver.gschema.xml.in at main · GNOME/gsettings-desktop-schemas] GNOME Project</ref>。 === メディアに不審なファイルが追加されていないかを調べる === メディアの自動実行 ([[:w:en:AutoRun|AutoRun]]) ファイルにもマルウェアが紛れてないか注意しましょう。 {| class="wikitable" |+ メディアの自動実行ファイル |- ! Windows !! Linux<br>(Desktop Application Autostart Specification<wbr>標準[https://specifications.freedesktop.org/autostart/latest/]) |- | *:\[[:w:autorun.inf|autorun.inf]] || /media/*/*/.autorun<br>/media/*/*/autorun<br>/media/*/*/autorun.sh<br>/run/media/*/*/.autorun<br>/run/media/*/*/autorun<br>/run/media/*/*/autorun.sh |} == 改変を防ぐ == 改変を探すのは大変です。なので最初から改変をできないようにすれば管理はとても楽になります。 改ざんを防ぐには「[[:w:en:Chain of trust|信頼の連鎖]]」 (chain of trust) が重要となります。例えばカーネルだけで改ざんを防いでも、ハードウェアのファームウェアが不正であれば不正なカーネルを起動できてしまいます。 === ファームウェア改ざんを防ぐ === ファームウェア改ざんによる「ファームウェアルートキット」を防ぐにはIntel Management Engine (Intel ME)で実装されているIntel BIOS Guardを使う必要があります。<!--TODO: マザーボードによってはBIOSで有効にする必要があります。→最近のマザーボード事情--> なお2017年の第8世代Intel Coreプロセッサ (Coffee Lake) 以前はme_cleanerによってIntel Management Engineの無効化が可能<ref>[https://github.com/corna/me_cleaner/wiki/me_cleaner-status me_cleaner status] Nicola Corna 2018年</ref>なため非推奨です。 また2023年のIntel ME 16.1.30.2307未満では悪意あるロゴ画像を設定することによってroot権限からUEFI設定の変更が可能です([[:w:en:LogoFAIL|LogoFAIL]]の脆弱性)。そのため、古いIntel Management Engineが動作している場合はそのファームウェアをアップデートしましょう。Windowsでは MEUpdateTool.exe / FWUpdLcl.exe を使うことでこのアップデートが可能となっています。一方、Linuxでは一部機種が fwupdmgr 経由での Intel ME ファームウェアアップデートに対応しています。 Intel MEのバージョンはLinuxでは以下のような感じに調べることができます: <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ cat /sys/class/mei/mei0/fw_ver 0:16.1.32.2473 0:16.1.32.2473 0:16.1.27.2181 </syntaxhighlight> === ブートローダー改ざんを防ぐ === ブートローダーは起動に使われるファームウェア (BIOS) から呼ばれ、カーネルを読み込んで起動するために使われるプログラムです。古い BIOS (レガシーBIOS) には起動するブートローダーを検証する仕組みが存在しませんでしたが、新しい UEFI (統一拡張ファームウェアインターフェース) には署名されたブートローダーのみを起動する UEFI Secure Boot が追加され、安全なブートローダーの起動を許可するための「承認済み署名データベース」 (Authorized Signature Database、UEFI db) と、脆弱なブートローダーの起動を防ぐための「禁止署名データベース」 (Forbidden Signature Database、UEFI dbx) が用意されています。 UEFI Secure Boot が有効かどうかは以下で確認できます: * Windows PowerShell: <code>Confirm-SecureBootUEFI</code> * Linux: <code>mokutil --sb-state</code> UEFI db と UEFI dbx の内容は以下で確認できます: * Windows PowerShell: <code>Get-SecureBootUEFI -Name db -Decoded</code> / <code>Get-SecureBootUEFI -Name dbx -Decoded</code> * Linux: ** mokutil{{efn|Ubuntu Desktop に標準で含まれている。}}: <code>mokutil --db</code> / <code>mokutil --dbx</code> ** efitools: <code>efi-readvar -v db</code> / <code>efi-readvar -v dbx</code> ブートローダーの署名情報は以下で確認できます: * Windows PowerShell: <code>Get-PfxCertificate</code>{{efn|<code>Get-AuthenticodeSignature</code>はカタログ署名が使われる場合があるため非推奨: https://github.com/PowerShell/PowerShell/issues/23820 。}} * Linux: <code>sbverify --list</code> 例えば Windows PowerShell では以下のような感じです: <syntaxhighlight lang="powershell"> PS C:\WINDOWS\system32> mountvol S: /S; if ($?) { Get-PfxCertificate 'S:\EFI\Microsoft\Boot\bootmgfw.efi'; mountvol S: /D } Thumbprint Subject ---------- ------- FACDE3D80E99AFCC15E08AC5A69BD22785287F79 CN=Microsoft Windows, O=Microsoft Corporation, L=Redmond, S=Washington, C=US </syntaxhighlight> また Ubuntu や Debian では署名されたブートローダー (grub-efi-*-signedパッケージ) と非署名のブートローダー (grub-efi-*-unsignedパッケージ) の両方が用意されており、ブートローダーの正体がどれか、また署名されたブートローダーの署名内容を確認するのは以下のような感じとなります: <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ dpkg -L grub-efi-amd64-signed | grep -i '\.efi' | xargs md5sum # インストールされている署名されたブートローダーのハッシュを表示(grub*は通常版、gcd*は光学ブートメディア向け、grubnet*はネットブート向け) 2bd267fb12bd3b0fe26a9dfb4290868d /usr/lib/grub/x86_64-efi-signed/gcdx64.efi.signed f689e93336a015fa6eb93e1913b13482 /usr/lib/grub/x86_64-efi-signed/grubnetx64.efi.signed b63c7618fb96d52520b42b8cc7b124f0 /usr/lib/grub/x86_64-efi-signed/grubx64.efi.signed $ sudo sh -c "md5sum /boot/efi/EFI/BOOT/*" # 現在のbootloaderがどれを使っているかを確認(署名されたgrubを使用) b63c7618fb96d52520b42b8cc7b124f0 /boot/efi/EFI/BOOT/BOOTX64.EFI $ sudo sbverify --list /boot/efi/EFI/BOOT/BOOTX64.EFI signature 1 image signature issuers: - /C=GB/ST=Isle of Man/L=Douglas/O=Canonical Ltd./CN=Canonical Ltd. Master Certificate Authority image signature certificates: - subject: /C=GB/ST=Isle of Man/O=Canonical Ltd./OU=Secure Boot/CN=Canonical Ltd. Secure Boot Signing (2022 v1) issuer: /C=GB/ST=Isle of Man/L=Douglas/O=Canonical Ltd./CN=Canonical Ltd. Master Certificate Authority $ sudo sbverify --cert /usr/share/grub/canonical-uefi-ca.crt /boot/efi/EFI/BOOT/BOOTX64.EFI Signature verification OK </syntaxhighlight> なお Linux では grub の代わりに使えるブートローダーとして systemd-boot もあります。systemd-boot の署名版は Debian が systemd-boot-efi-*-signed パッケージとして用意しているようです(Ubuntu未搭載)。 <!--TODO: TPM (Trusted Platform Module) チップ --> === カーネル本体の改ざんを防ぐ === カーネルはオペレーティングシステム (OS) の下層で動き続けるプログラムです。カーネル本体の実行ファイルもブートローダーと同様に署名が行われており、UEFI Secure Boot が有効であればその検証をブートローダーが行います。Linux では GRUB の UEFI Secure Boot と shim_lock の連携がそれに相当します<ref>[https://www.gnu.org/software/grub/manual/grub/grub.html#UEFI-secure-boot-and-shim GNU GRUB Manual 2.14 - 19.4 UEFI secure boot and shim support] フリーソフトウェア財団</ref>。 なお Ubuntu には署名されたカーネル (linux-image-*パッケージ) と非署名のカーネル (linux-image-unsigned-*パッケージ) の両方が用意されており、署名されているカーネルは以下のような感じでその署名が確認できます: <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ sudo sbverify --list /boot/vmlinuz-$(uname -r) # Linuxカーネル本体の署名を確認する signature 1 image signature issuers: - /C=GB/ST=Isle of Man/L=Douglas/O=Canonical Ltd./CN=Canonical Ltd. Master Certificate Authority image signature certificates: - subject: /C=GB/ST=Isle of Man/O=Canonical Ltd./OU=Secure Boot/CN=Canonical Ltd. Secure Boot Signing (2022 v1) issuer: /C=GB/ST=Isle of Man/L=Douglas/O=Canonical Ltd./CN=Canonical Ltd. Master Certificate Authority $ sudo sbverify --cert /usr/share/grub/canonical-uefi-ca.crt /boot/vmlinuz-$(uname -r) # Linuxカーネル本体の署名を検証する Signature verification OK </syntaxhighlight> === カーネルモジュールの改ざんを防ぐ === カーネルモジュールも署名されており、その検証をカーネルが行っています。Windowsカーネルでは ci.dll (Code Integrityモジュール)が、Linuxカーネルでは CONFIG_MODULE_SIG コンパイルオプションがその検証を行っています。 カーネルによるカーネルモジュールの検証が有効かどうかは以下で確認することができます: * Linux: <code>grep 'CONFIG_MODULE_SIG=' /boot/config-$(uname -r)</code> カーネルによるカーネルモジュールの検証で読み込みを弾くかどうかは以下で確認することができます: * Windows: 強制モードか評価モード (監査モード) かを確認する PowerShell スクリプトが Microsoft のサイトに存在します: https://support.microsoft.com/en-us/windows/hardware/drivers/the-windows-driver-policy#is-my-device-in-evaluation-mode-or-enforcement-mode * Linux: <code>cat /sys/module/module/parameters/sig_enforce</code> また Linux では検証で読み込みを弾かない場合でも検証外カーネルモジュールを読み込んだ場合はdmesgに警告が出て '''Tainted kernel''' 扱いとなります<ref>[https://docs.kernel.org/admin-guide/tainted-kernels.html Tainted kernels] Linux Foundation</ref>。以下はその例です: <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ grep 'CONFIG_MODULE_SIG=' /boot/config-$(uname -r) # y=Yes, n=No CONFIG_MODULE_SIG=y $ cat /sys/module/module/parameters/sig_enforce # Y=Yes, N=No N $ sudo dmesg | grep 'module verification' [ 8.928361] nvidia: module verification failed: signature and/or required key missing - tainting kernel $ wget http://git.kernel.org/pub/scm/linux/kernel/git/torvalds/linux.git/plain/tools/debugging/kernel-chktaint [...] $ sudo sh ./kernel-chktaint Kernel is "tainted" for the following reasons: * externally-built ('out-of-tree') module was loaded (#12) * unsigned module was loaded (#13) Raw taint value as int/string: 12288/'G OE ' Tainted modules: * nvidia (OE) * nvidia_drm (OE) * nvidia_modeset (OE) * nvidia_uvm (OE) For a more detailed explanation of the various taint flags see Documentation/admin-guide/tainted-kernels.rst in the Linux kernel sources or https://kernel.org/doc/html/latest/admin-guide/tainted-kernels.html </syntaxhighlight> また Linux では以下のような感じで個々のモジュールの署名が確認できます: <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ modinfo /lib/modules/$(uname -r)/kernel/arch/x86/kernel/msr.ko.zst filename: /lib/modules/7.0.0-38-generic/kernel/arch/x86/kernel/msr.ko.zst license: GPL description: x86 generic MSR driver author: H. Peter Anvin <hpa@zytor.com> srcversion: 639B995855A3528050FD532 depends: intree: Y name: msr retpoline: Y vermagic: 7.0.0-38-generic SMP preempt mod_unload modversions sig_id: PKCS#7 signer: Build time autogenerated kernel key sig_key: 3B:E7:D3:BF:D3:2E:D9:CA:9C:17:D2:E9:5F:1A:1C:AE:67:D5:82:2F sig_hashalgo: sha512 signature: 96:BC:2A:18:6E:4D:D8:E5:28:69:9D:E6:65:89:95:D4:BE:4C:5B:7C: 4A:23:11:75:F6:FE:63:79:FC:29:9B:F7:EA:24:B6:F1:EF:F3:80:17: 0B:C0:1E:46:61:29:BB:F9:E0:AC:81:69:85:73:7D:D4:77:82:A8:DB: [...] </syntaxhighlight> === システムファイル改ざんを防ぐ === システムファイル改ざんを防ぐ良い方法はシステム領域を読み取り専用にすることですが、仮にファイルシステムを読み取り専用のファイルシステム(SquashFSやEROFS)にしたとしても記録する場所がSSDであればブロック単位での上書きが可能となります。 1回だけ書き込めて上書きが不可能な媒体としてはCD-R、DVD-R、DVD+R、BD-Rなどの一部の光学メディアが存在しますが、これらをブートメディアとして使用するのは頻繁なアップデートが難しくなります。 そのほかの手法としては別のコンピュータからシステムファイルを取得する「ネットワークブート」を行うという手法もありますが、これはネットワーク経由でシステムファイルが盗まれる可能性と隣り合わせです。しかしながらプロトコルにUEFI HTTPSを、認証に相互認証のmTLSを用いて、その秘密鍵をTPMで管理してOSから読めなくすることでネットワークブートの安全性は何とか確保できるかもしれません(対応マザーボードは不明)。 一方、Android や ChromeOS ではブロックデバイス単位での改ざん検知 (dm-verify) によってシステムイメージの改ざんを防止しています<ref>[https://source.android.com/docs/security/features/verifiedboot/dm-verity?hl=ja dm-verity の実装] Google</ref><ref>[https://research.google/pubs/verified-boot-on-chrome-os-and-how-to-do-it-yourself/ Verified Boot on Chrome OS and How to do it yourself] Google</ref>。 === カーネルメモリ改ざんを防ぐ === カーネルメモリのコード部分は MMU の書き込み禁止によって保護されています。iOS / macOS では Kernel Integrity Protection が<ref>[https://support.apple.com/ja-jp/guide/security/sec8b776536b/web オペレーティングシステムの整合性] Apple</ref> 、Linux では Kernel Strict RWX がこれに相当します<ref>[https://docs.kernel.org/security/self-protection.html Kernel Self-Protection] Linux Foundation</ref>。Windows でもカーネルモードに読み込み専用メモリセグメントが存在し、これに書き込もうとするとブルースクリーンで ATTEMPTED_WRITE_TO_READONLY_MEMORY (0xBE) が発行されます<ref>[https://learn.microsoft.com/ja-jp/windows-hardware/drivers/debugger/bug-check-0xbe--attempted-write-to-readonly-memory バグ チェック 0xBE: ATTEMPTED_WRITE_TO_READONLY_MEMORY] Microsoft</ref>。しかしながら Linux Kernel では kprobes、Static Keys、Static calls などで自己書き換えが多用されているため、一時的にコード部分を書き込み可能なページに割り当てて書き換える text_poke(...) という抜け道が存在します。 また定期的に改ざんが行われていないかをチェックする仕組みも存在します。Windows では[[:w:Kernel Patch Protection|Kernel Patch Protection]] (PatchGuard) / HyperGuard が、Linux では Linux Kernel Runtime Guard(外部パッチ)がこれに該当します。Windows の PatchGuard では改ざんが検出されたらブルースクリーンで CRITICAL_STRUCTURE_CORRUPTION が発行されます。 <!--TODO: Windows の HVCI、macOS の Secure Page Table Monitor / Trusted Execution Monitor--> <!-- === アプリケーション改ざんを防ぐ === SELinux / AppArmor --> == 攻撃用AIを対策する == 攻撃用AIでは基本的に賢いかつ制限の緩い大規模言語モデル (LLM) が使われています。この代表的な例として GLM 5.3 や Qwen3.8-27B-ABLITERATED が存在します。 === コンテキスト爆弾を設置する === 攻撃用AIの対策では相手のLLMを止めることが重要となります。そこで使えるのが'''コンテキスト爆弾''' (context bombs) という手法です<ref>[https://arstechnica.com/security/2026/07/now-defenders-are-embracing-the-prompt-injection-too/ Now, defenders are embracing the prompt injection, too] Ars Technica 2026年7月14日</ref>。 このコンテキスト爆弾は「相手のLLMに対し応答やツール呼び出しで禁止されていることを行わせようとする」というプロンプトインジェクションの一種であり、それによって相手のガードレールがLLMを止めることで相手からの攻撃を防ぎます。この手法は相手の読みそうなテキストにただプロンプトを書いておけば良いだけなので、お手軽に使えます。 コンテキスト爆弾のテキスト例は以下のリポジトリに存在します: * https://github.com/tracebit-com/context-bombs === ハニーポット === ハニーポットは攻撃者を引きつける役目を担います。ハニーポットの評価フレームワークには「UHBS」(Universal Honeypot Benchmarking Standard) が、その品質基準には「UHQS」(Universal Honeypot Quality Score) が存在しますが、2026年現在多くのハニーポットがFランク〜Dランクと残念な状況になっています<ref>[https://uhbs.github.io/uhbs-standard/mkdocs/conformance/ Overview - UHBS — Honeypot Evaluation Framework]</ref>。 <!-- == 自作コードの脆弱性を塞ぐ == 書きかけ --> == 脚注 == <references group="注釈"/> == 参考文献 == <references/> {{DEFAULTSORT:こんひゆうたせきゆりてい}} [[Category:計算機科学]] [[Category:情報技術]] r9s4grp3jf9vu5pyaa0nhek4wpdjyrb 304980 304979 2026-10-21T16:19:23Z ~2026-54076-02 92740 /* TCP/UDP経由のサービス */ 304980 wikitext text/x-wiki '''コンピュータセキュリティ'''はコンピュータの安全のことです。ここではコンピュータの安全を確保することを学びます。 == コンピュータセキュリティの基本 == コンピュータは弱いところから狙われるため、弱いところを無くすのがセキュリティの基本となります。 具体例を挙げましょう。一般的な光回線に繋がれてるホームネットワークを考えます。ここには光回線の先に繋がる上位ネットワークと家内のホームネットワーク (家庭におけるLAN) とを区切るエッジルーター(一般的にはハードウェア・ゲートウェイがこれに該当)が存在します。このホームネットワークに数台の新しいWindows PCと一台の古い機器が繋がっていると仮定します。 新しいWindows PC同士ではホームネットワーク経由でファイルをやり取りするためにファイルの共有 (SMB{{efn|Server Message Block}}) を有効にしているとします。一方、古い機器の方を脆弱性のある古いテレビとしましょう。このテレビはインターネットから繋いで地上デジタル放送を見るための DCTP+ {{efn|Digital Transmission Content Protection +}}が搭載されており、UPnP{{efn|Universal Plug and Play}}で自動的にエッジルーター搭載のファイアーウォールに穴あけてインターネット側から DCTP+ に繋がるようになっているものとします。 この仮定によってハッカーは DCTP+ の脆弱性を使って古いテレビに悪意のあるプログラムを実行させてファイルの共有サーバーを立て{{efn|Windows 11時点でもゲスト認証による接続は許可されている<ref>[https://learn.microsoft.com/en-us/windows-server/storage/file-server/smb-interception-defense?tabs=group-policy Protect SMB traffic from interception] Microsoft</ref>。}}、そこからファイルの共有を通じて新しいWindows PCにマルウェア (例えば<code>PHOTO-<ランダムな数字>.png.lnk</code><ref>[https://www.microsoft.com/en-us/security/blog/2026/06/25/photo-zip-campaign-targeting-hospitality-industry-delivers-node-js-implant-persistent-access/ Photo ZIP campaign targeting hospitality industry delivers Node.js implant for persistent access] Microsoft 2026年6月25日</ref>) を送り込むことが可能となりました。 == 安全にパスワードを使う == === 流出したパスワードと被ってないかをチェックする === あちこちのサイトで流出したパスワードは集められてデータベース化されダークネットに流通しています。この代表的なものには2019年に登場した [[:w:en:Collection No. 1|Collection #1]] が挙げられます。この Collection #1 などの流出パスワードデータベースは辞書攻撃に利用されており、これは「Credential Stuffing攻撃」と呼ばれています。 使うパスワードが流出パスワードデータベースに載っていないかを確認するためには上記のデータベースを手に入れるか、上記のデータベースからk-匿名性で検索を行うオンラインサービスを使うと良いでしょう。 このオンラインサービスの代表的なものにはWebサイト「Have I Been Pwned」の提供する「Pwned Passwords」サービスが存在しますが、このAPIではパスワードのSHA-1ハッシュ先頭5文字を渡すと、流出したパスワードのSHA1ハッシュ6文字以降と流出データベースに載っていた回数が返答されます。 <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ # License: CC0 / Public Domain $ # パスワードを入力してSHA-1ハッシュへと変換する(ここでは'test'と入力) $ sha1=$(read -sp "Password: " pass && echo -n $pass | sha1sum | cut -d' ' -f1) Password: $ # 変換後のハッシュを表示 $ echo $sha1 a94a8fe5ccb19ba61c4c0873d391e987982fbbd3 $ # ハッシュの先頭5文字を渡して6文字目以降を検索(':'の後ろは見つかった数) $ curl -s https://api.pwnedpasswords.com/range/$(echo $sha1 | cut -c 1-5) | grep -i $(echo $sha1 | cut -c 6-) FE5CCB19BA61C4C0873D391E987982FBBD3:1579235 </syntaxhighlight> ハッシュの先頭5文字も渡したくない場合や、自社サービスでチェックを行いたい場合は上記のサービスが公式で提供するツール「haveibeenpwned-downloader」[https://github.com/HaveIBeenPwned/PwnedPasswordsDownloader]で全てのハッシュデータをダウンロードして自前で照合しましょう。 === 解析耐性のある鍵導出関数を使う === パスワードでは計算負荷の低い SHA-256 や SHA-512 などの通常のハッシュ関数、メモリ負荷の低い [[:w:PBKDF2|PBKDF2]] や bcrypt などの古い[[:w:鍵導出関数|鍵導出関数]](パスワードハッシュ関数)を使わないようにしましょう。これらの弱いハッシュ関数は GPU や ASIC で高速に解かれてしまいます。 より強いパスワードハッシュ関数としては yescrypt や Argon2id が存在します。パスワードにはこちらを使いましょう。現代の Linux ではアカウントのパスワードハッシュ関数として yescrypt が標準となっています。 使っている Linux の新規アカウントで使われるパスワードハッシュ関数は以下で確認可能です: <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ grep -n 'pam_unix.so' /etc/pam.d/common-password 26:password [success=2 default=ignore] pam_unix.so obscure use_authtok try_first_pass yescrypt </syntaxhighlight> Linuxの現在のアカウントがどのハッシュ関数を使用しているかは以下で確認可能です: <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ sudo cat /etc/shadow | grep $USER # $(1|5|6|b)$=弱い、$y$=強い user:$y$j9T$ST7oYwlQjFy7/8vnL/Ugt0$po4vW4qgGu8lpUNRtH0B3hDHGZACzcRhzIKhqlx.2Z5:20743:0:99999:7::: </syntaxhighlight> 弱いハッシュ関数を使用している場合は<code>passwd $USER</code>でパスワードを再設定して使用するハッシュ関数を更新してください。 一方、Windows 10 以前のローカルアカウントではパスワードハッシュがレジストリの<code>HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>SAM\<wbr>SAM\<wbr>Domains\<wbr>Account\<wbr>Users\<wbr>(ユーザーID)\<wbr>V</code>{{efn|name="sam"}}のバイナリの以下の場所に存在します: * [[:w:LMハッシュ|LMハッシュ]]: 0xCC + (0x9C に指定されたオフセット)<ref name="sam-ghost"/> * NTLMハッシュ: 0xCC + (0xA8 に指定されたオフセット)<ref name="sam-ghost"/> LMハッシュは [[:w:LAN Manager|LAN Manager]] に使われていた [[:w:Data Encryption Standard|DES]] ベースの古いハッシュ、NTLMハッシュは [[:w:NT LAN Manager|NT LAN Manager]] に使われている [[:w:MD4|MD4]] ベースの古いハッシュであり、どちらも非常に弱いものとなっていました。 また Windows の Active Directory ドメインアカウントのオフライン認証向けキャッシュ済みドメイン資格情報はレジストリの<code>HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>SECURITY\<wbr>Cache</code>に存在します: * DCC1 ハッシュ (MSCache v1): 弱い MD4 ベース。Windows XP以前。 * DCC2 ハッシュ (MSCache v2) : 弱めの PBKDF2-HMAC-SHA1 ベース。Windows Vista以後<ref>[https://attack.mitre.org/techniques/T1003/005/ OS Credential Dumping: Cached Domain Credentials] MITRE 2025年10月24日</ref>。 2021年にリリースされた Windows 11 以降は Microsoft アカウントが必須となっています。 <!--TODO: Windows Hello、LSA Secrets === パスワードの複雑性をチェックする === === TPMで鍵を隔離する === --> == 既製製品の脆弱性を塞ぐ == まずは弱いところを無くしましょう。 === ソフトウェアアップデートをする === セキュリティの基本はソフトウェアアップデートです。 ==== PCおよびモバイル ==== PC{{efn|PCサーバを含む}}やモバイルでは基本的に自動で通知が来るので忘れずにアップデートを選択しましょう。手動では以下のように行います: ; Windows : システムのアップデートは基本的に [[:w:Microsoft Update|Microsoft Update]] (Windows Update) で、アプリケーションのアップデートは基本的に<code>winget upgrade --all</code>コマンドで行います。 : また Windows 11 Enterprise では再起動が不要なホットパッチにも対応しています。 ; macOS / iOS : 「ソフトウェアアップデート」 ; Ubuntu / Debian : [[:w:APT|APT]]パッケージ管理システムでは<code>apt upgrade</code>コマンドで更新を行います。 : Ubuntu では GUI による更新用として[[:w:Software Updater|Software Updater]] (<code>update-manager</code>コマンド)、[[:w:Snap (ソフトウェア)|Snap]]パッケージの更新コマンドとして<code>snap refresh</code>、メジャーバージョンの更新コマンドとして<code>do-release-upgrade</code>も存在します。 : また Ubuntu では Ubuntu Pro に登録することで再起動が不要なカーネル修正の「Livepatch」も可能となります(個人では5台まで無料)。SUSEではユーザー空間ライブパッチングまで提供されています(glibc と openssl のみ)<ref>[https://documentation.suse.com/ja-jp/sles/15-SP6/html/SLES-all/cha-ulp.html ユーザ空間ライブパッチ - 管理ガイド - SLES 15 SP6] SUSE</ref>。 ; RedHat / Fedora : <code>yum update</code>コマンド ; Android : 「設定」アプリ→「システム」→「システムアップデート」または「ソフトウェアアップデート」 また個々のハードウェアのファームウェアアップデートは以下で行います: ; Linux : Linuxにおけるファームウェアの更新は基本的に<code>fwupdmgr update</code>コマンドで行います。 : NVMe SSDのファームウェアの更新は<code>nvme fw-download</code>コマンドおよび<code>nvme fw-commit</code>コマンドで行うことができます。 一方、Windows ではファームウェアのアップデートも Windows Update 経由で<ref>[https://learn.microsoft.com/ja-jp/windows-hardware/drivers/bringup/firmware-update ファームウェアの更新] Microsoft</ref>、macOS ではファームウェアのアップデートもmacOSアップデートで行うことができます<ref>[https://support.apple.com/ja-jp/guide/mac-help/mchlp2609/mac Macのファームウェアアップデートの入手方法] Apple</ref>。 <!-- また開発環境では以下も存在します: ; Python : <code>pip -U install</code> --> ==== ルーター ==== ルーターでは以下の設定を有効のままにしておきましょう: ; AirStationシリーズ(Buffalo 製ルーター) : 「ファームウェア自動更新機能」 ; Atermシリーズ(NEC 製ルーター) : 「メンテナンスバージョンアップ機能」「時刻指定バージョンアップ機能」 ==== テレビ ==== テレビでは放送波アップデートが行われるため、「放送波による自動更新」<!--TODO: メーカー別名-->を有効にしましょう。 === 高速に再起動する === パッケージは更新しただけでは反映されません(一部デーモンの更新を除く)。Linuxでは高速に再起動する方法が存在し、これによってダウンタイムを減らすことができます。 ; 更新で影響を受けるデーモンのみ再起動する :* Ubuntu Server: 標準で <code>needrestart</code> が導入されており自動で影響を受けるデーモンの再起動が行われます{{efn|自動的なデーモン再起動を止めるには /etc/apt/apt.conf.d/99needrestart より<code>-m u</code>を削除する必要があります<ref>[https://discourse.ubuntu.com/t/needrestart-changes-in-ubuntu-24-04-service-restarts/44671 `needrestart` changes in Ubuntu 24.04: service restarts] Canonical 2024年</ref>。}}(Ubuntu Desktopでは別途導入が必要)。 :* RedHat / Fedora: <code>dnf needs-restarting</code>が導入されており、それによって再起動するべきデーモンを確認できます。 ; ユーザー空間のみ再起動する(カーネルの更新がない、またはカーネルでlive patchingを行ってる場合) : <code>sudo systemctl soft-reboot</code> ; 高速にカーネルを更新する(ファームウェアの更新がない場合) : <code>sudo systemctl kexec</code> また一部のソフトウェアではホットアップグレード(無停止アップグレード{{efn|Zero-Downtime Upgrade}})にも対応しています (nginx の USR2 シグナル<ref>[https://nginx.org/en/docs/control.html Controlling nginx] nginx</ref>など)。 === 代替ソフトウェアを探す === 更新が停止された古いソフトウェアの多くはそれ自身に脆弱性が存在したり、脆弱性のある古いライブラリに依存していたりします。そのため古いソフトウェアは速やかに代替ソフトウェアへと移行しましょう。 ==== 開発終了したソフトウェアから現役のソフトウェアへ ==== 古いソフトウェアには例えば以下があります: * オフィススイート(代替候補: LibreOffice) ** [[:w:OpenOffice.org|OpenOffice.org]](〜2011年) * 画像ビューア ** [[:w:Susie|Susie]] (〜2013年) * メディアプレイヤー ** [[:w:QuickTime|QuickTime]] for Windows(〜2016年) - リモートコード実行の脆弱性 ([https://www.zerodayinitiative.com/advisories/ZDI-16-241/ ZDI-16-241]、[https://www.zerodayinitiative.com/advisories/ZDI-16-242/ ZDI-16-242]) を残したままサポート終了しました<ref>[https://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/753400.html Apple、「QuickTime for Windows」のサポートを終了、アンインストールを推奨] Impress 2016年4月15日</ref>。 * メディアフィルター(代替候補: LAV Filters) ** [[:w:ffdshow|ffdshow]](〜2014年) ** [[:w:Haali Media Splitter|Haali Media Splitter]](〜2013年) * メディアセンター(代替候補: Kodi) ** [[:w:en:Boxee|Boxee]](〜2011年) ** [[:w:Kodi|XBMC]](〜2014年) - Kodiの前身 * 圧縮ソフトウェア ** [[:w:+Lhaca|+Lhaca]](〜2007年) ** [[:w:Lhaplus|Lhaplus]](〜2017年) またハードウェアに由来する古いソフトウェアには例えば以下があります: * [[w:ウォークマン|ウォークマン]]関連(代替候補: [[:w:Music Center for PC|Music Center for PC]]) ** [[:w:CONNECT Player|CONNECT Player]](〜2007年、Sony) ** [[:w:SonicStage|SonicStage]](〜2009年、Sony) ** [[:w:x-アプリ|x-アプリ]](〜2016年、Sony) * DTCP-IP関連 ** SmartVision/PLAYER powered by DiXiM(〜2019年、NEC)<ref>[https://support.nec-lavie.jp/navigate/support/info/2019/announce/svp/ SmartVision/PLAYER保守サービス終了のお知らせ] NECパーソナルコンピュータ 2019年1月28日</ref><ref>[https://apps.microsoft.com/detail/9wzdncrdkb4c?hl=ja-JP&gl=JP SmartVision/PLAYER powered by DiXiM] Microsoft</ref> ** DiXiM Digital TV plus for I-O DATA(〜2022年、I-O DATA)<ref>[https://www.iodata.jp/lib/product/d/3533.htm DiXiM Digital TV plus for I-O DATA] I-O DATA</ref> なお仮想マシンを使って隔離しながら古いソフトウェアを動かすこともできますが、仮想マシンでも「VMエスケープ」の脆弱性を使用することでホスト環境への侵害が可能なため、仮想マシンの上で弱い環境や弱いソフトウェアを使うこともなるべく避けましょう。<!--TODO: Windows Sandbox--> ==== 古いバージョンのライブラリを避ける ==== 多くのソフトウェアに使用されているライブラリとその過去の危険な脆弱性には例えば以下があります:<!--危険を認識させる。例はライブラリ内のメイン処理に存在し、任意コード実行であり、脆弱性の存在期間が長く、新しいものが好ましい。--> * 画像ライブラリ ** libpng - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2010-1205 CVE-2010-1205](PNG画像で任意コード実行の可能性) ** libjpeg-turbo - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2012-2806 CVE-2012-2806](JPEG画像で任意コード実行の可能性) ** OpenJPEG - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2025-54874 CVE-2025-54874](JPEG2000画像で任意コード実行の可能性) ** libtiff - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2026-12912 CVE-2026-12912](PixarLog圧縮TIFF画像で任意コード実行の可能性) ** libwebp - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2023-4863 CVE-2023-4863](WebP画像で任意コード実行の可能性) * 動画ライブラリ ** FFmpeg - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2024-22860 CVE-2024-22860](JPEG XLアニメーションで任意コード実行の可能性) * 圧縮ライブラリ ** libarchive - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2026-15028 CVE-2026-15028](tarアーカイブ形式で任意コード実行の可能性) ** zlib - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2002-0059 CVE-2002-0059](Deflate圧縮形式で任意コード実行の可能性) ** bzip2 - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2010-0405 CVE-2010-0405](BZ2圧縮形式で任意コード実行の可能性) これらのライブラリはABI(アプリケーションバイナリインターフェイス)が変更されて新しいバージョンの共有ライブラリにドロップイン置換できないものも多くなっています。 また国内で使われている古いソフトウェアでは開発中止になった以下のライブラリも問題となっています: * UNLHA32.DLL<ref>[https://forest.watch.impress.co.jp/docs/news/372729.html 圧縮・解凍用DLL「UNLHA32.DLL」が開発中止、作者はLZHの利用中止を呼びかけ] Impress 2010年6月7日</ref> Webフレームワークでは開発中止となった以下のフレームワークが問題となっています: * [[:w:Model View Controller|Model View Controller]]フレームワーク(代替候補: [[:w:Apache Struts|Apache Struts]] 2、[[:w:Spring Framework#Model-View-Controller フレームワーク|Spring MVC]]) ** [[:w:en:Apache Struts 1|Apache Struts 1]](〜2008年) - Java言語 * [[:w:アスペクト指向プログラミング|アスペクト指向フレームワーク]](代替候補: [[:w:Spring Framework|Spring Framework]]、[[:w:en:Micronaut (framework)|Micronaut]]) ** [[:w:Seasar|Seasar]](〜2016年) - Java言語 * [[:w:シングルページアプリケーション|シングルページアプリケーション]]フレームワーク(代替候補: [[:w:Angular|Angular]]、[[:w:Vue.js|Vue.js]]) ** [[:w:AngularJS|AngularJS]](〜2022年) - JavaScript === 古いハードウェアに対処する === サポート切れの OS を搭載したハードウェアはどうすれば良いでしょうか。これには使い続けるいくつかの方法がありますが、基本的にオススメしません。古い OS を搭載していたハードウェアはハードウェア仕様も古いからです。 ==== スタンドアロン運用 ==== 古いハードウェアはインターネットに繋がずに使用すること(スタンドアロン運用)も可能です。 しかしながらUSBメモリでデータをやり取りする場合はUSBメモリ経由での感染などのリスクは残ります。 ==== 新しめのLinuxを導入 ==== 新しめのLinuxを導入するという方法もあります。 これに適したものでは例えばWindows 11非対応のPC (Intel 第7世代以前、AMD Ryzen 1000シリーズ以前) が挙げられます。 またスマートフォンやタブレットであればカスタムROMが、ルーターであればDD-WRTやOpenWRTが存在します。 ==== 手放す ==== 手に負えなければデータだけバックアップして手放しましょう。情報が漏れないよう初期化も忘れずに。 == 不要なサービスを止める / 削除する == {| class="wikitable" |+ サービス表示系コマンド |- ! 稼働中のシステムサービスを見る | <code>systemctl --type=service --state=running</code> |- ! 稼働中のユーザーサービスを見る | <code>systemctl --user --type=service --state=running</code> |} === TCP/UDP経由のサービス === TCP/UDPでのポート待ち受けのあるプロセスを見るには <code>sudo ss -tulnp</code> を、通信しているプロセスを見るには <code>sudo lsof -i -P -n</code> を実行しましょう。 {| class="wikitable" |+ 主なポート待ち受けのあるプロセス |- ! ポート !! 機能 !! プロセス名 !! サービス名または起動コマンド !! パッケージ名 (Ubuntu) || 直接問い合せコマンド |- | rowspan=2 | 53/UDP<br>53/TCP || rowspan=2 | DNS(名前解決) || systemd-resolved || systemd-resolved.service || systemd-resolved || <code>dig @127.0.0.53 example.com</code> |- | dnsmasq || dnsmasq.service<br/>dnsmasq@.service || dnsmasq-base<br>dnsmasq || <code>dig @10.208.199.1 example.com</code> |- | rowspan=2 | 5353/UDP || rowspan=2 | [[:w:マルチキャストDNS|マルチキャストDNS]] || systemd-resolved || systemd-resolved.service || systemd-resolved || <code>resolvectl -p mdns query $HOSTNAME.local</code> |- | Avahi || avahi-daemon.service || avahi-daemon || <code>avahi-resolve-host-name $HOSTNAME.local</code> |- | 67/UDP<br>547/UDP || [[:w:DHCP|DHCP]]<br>[[:w:DHCPv6|DHCPv6]] || dnsmasq || dnsmasq.service<br/>dnsmasq@.service || dnsmasq-base<br>dnsmasq || <code>IP=$(ip -4 -o addr show pan1 &vert; grep -oP '(?<=inet )[\d.]+'); sudo dhcping -v -i -s "$IP" -c "$IP"</code>{{efn|Ubuntuではdhcpingパッケージの導入が必要です。}} |- | rowspan=2 | 68/UDP<br>546/UDP || rowspan=2 | DHCPクライアント<br>DHCPv6クライアント{{efn|単独のDHCPクライアントである dhclient、dhcpcd なども存在する。また開発終了になったisc-dhcp-clientも存在した。}} || systemd-networkd<wbr>{{efn|name="network-all"}} || || systemd || |- | NetworkManager<wbr>{{efn|name="network-all"|ネットワーク管理全般を担当しています。}} || NetworkManager.service || network-manager || |- | rowspan=2 | 123/UDP<br>4460/TCP || rowspan=2 | NTP(時刻同期)<br>NTS-KE (NTPの鍵交換){{efn|これらの代替として systemd-timesyncd もありますが、こちらは NTP の代わりに単純な SNTP のみ実装の上、サーバーを持たずクライアント側のみ対応です。}} || ntpd || ntpsec.service || ntpsec || rowspan=2 | <code>ntpdig localhost</code>{{efn|ローカルへのNTP問い合せは<code>ntpdate -q localhost</code>でもできますが、こちらはNTP-KE非対応です。}} |- | chronyd || chrony.service || chrony |- | 80/TCP<br>443/HTTP<br>443/UDP || HTTP<br>HTTPS<br>HTTP/3 (QUIC) || apache2 || apache2.service<br>apache2@.service<br>httpd.service<br>httpd@.service || apache2 || HTTP: <code>curl http://localhost</code><br>HTTPS: <code>curl --http2 https://localhost</code><br>HTTP/3: <code>curl --http3-only https://localhost</code> |- | rowspan=2 | ユーザーポート/UDP || rowspan=2 | HTTP/3 (QUIC) クライアント<br>WebRTCクライアント || chrome{{efn|Google Chrome}} || <code>google-chrome</code> || google-chrome (公式APTリポジトリ) || |- | firefox{{efn|Mozzila Firefox}} || <code>firefox</code> || firefox (snap) || |- | rowspan=2 |21/TCP<br>20/TCP{{efn|アクティブモードのみデータ転送で使われる。}} || rowspan=2 | FTP || proftpd || proftpd.service<br>proftpd@.service || proftpd-core || rowspan=2 | <code>curl ftp://localhost</code> |- | vsftpd || vsftpd.service || vsftpd |- | 22/TCP || SSH / SFTP || sshd || ssh.service<br>sshd@.service || openssh-server || <code>ssh-keyscan 127.0.0.1</code> <!--|- | 6881/TCP || BitTorrent || Transmission<br>Fragments<br>qBittorrent<br>KTorrent<br>KGet || || ||--> |- | 5001/TCP<br>5001/UDP || rowspan=2| ネットワークパフォーマンス計測 || iperf || <code>iperf -s</code> || iperf || <code>iperf -c localhost</code> |- | 5021/TCP<br>5021/UDP || iperf3 || <code>iperf3 -s</code> || iperf3 || <code>iperf3 -c localhost</code> |- | 1716/UDP<br>1716/TCP<br>ユーザーポート/UDP || スマートフォン連携 (KDE) || kdeconnectd || <code>kdeconnect-app</code> || kdeconnect || |- | ユーザーポート/TCP || Claude Proxy Service || code{{efn|[[:w:Visual Studio Code|Visual Studio Code]]のプロセス。}} || <code>code</code> || code (公式APTリポジトリ) || <!-- |- | || AI コーディング支援 (Google Antigravity CLI{{efn|Command Line Interface}}) || agy || || (Visal Studio Code拡張) || --> |- | rowspan=2 | 3389/TCP<br>3389/UDP || rowspan=2 | Remote Desktop Protocol || gnome-remote-desktop-daemon{{efn|GNOME Remote Desktop}} || gnome-remote-desktop.service<!-- (system)--><br>gnome-remote-desktop.service (user)<br>gnome-remote-desktop-headless.service (user) || gnome-remote-desktop || |- | krdpserver || app-org.kde.krdpserver.service (user) || krdp || |- | 47984/TCP<br>47989/TCP<br>48010/TCP<br>47998–48010/UDP || NVIDIA GameStream || sunshine || app-dev.<wbr>lizardbyte.<wbr>app.<wbr>Sunshine.service (user) || sunshine (公式debファイル) || (moonlight-qt) |- | 27031-27036/UDP<br>27036/TCP || Steam Remote Play<ref>[https://help.steampowered.com/ja/faqs/view/2EA8-4D75-DA21-31EB Steam接続に必要なポート] Valve</ref> || steam || <code>steam</code> || steam (公式APTリポジトリ) || |} <!--TODO: UPnP、CUPS、Postfix、Samba、Wsdd--> === Unix Domain経由のサービス === Unix Domainでのポート待ち受けのあるプロセスを見るには <code>sudo ss -xlp</code> を実行しましょう。 === dbus経由のサービス === システムバスは <code>busctl --system list</code>、セッションバスは <code>busctl --user list</code> で確認することができます。 それらを提供する実行中のプロセスの一覧は以下で取得できます: * システムバスを提供するプロセス: <code>busctl --system --no-pager | awk 'NR>1 && $2 ~ /^[0-9]+$/ {print $2}' | xargs -I {} readlink "/proc/{}/exe" | sort -u</code> * ユーザーバスを提供するプロセス: <code>busctl --user --no-pager | awk 'NR>1 && $2 ~ /^[0-9]+$/ {print $2}' | xargs -I {} readlink "/proc/{}/exe" | sort -u</code> dbusサービスの一部はプロセス未実行のアクティベータブル (activatable) な状態で提供されています。アクティベータブルな状態で提供するサービスの実行コマンドは以下で取得できます: * activatableなシステムバスの実行コマンド: <code>busctl --system --no-pager --activatable | awk '{print $1}' | xargs -I {} find /usr/share/dbus-1 -name "{}.service" | xargs grep -h "Exec=" | sed 's/Exec=//g' | sort -u</code> * activatableなユーザーバスの実行コマンド: <code>busctl --user --no-pager --activatable | awk '{print $1}' | xargs -I {} find /usr/share/dbus-1 -name "{}.service" | xargs grep -h "Exec=" | sed 's/Exec=//g' | sort -u</code> == 潜在的な脆弱性を減らす == 現代のプログラムでは以下のような保護が行われています。 === メモリアドレスの推測困難化 === 攻撃に必要なコード片(ガジェット)のメモリアドレスを推測しにくくするために、カーネル空間、ユーザー空間の両方で[[:w:アドレス空間配置のランダム化|アドレス空間配置のランダム化]](ASLR)が行われています。カーネル空間の ASLR は KASLR (Kernel ASLR) とも呼ばれています。 ユーザー空間のプログラムで ASLR を有効にするためには[[:w:位置独立コード|位置独立コード]] (PIC) / 位置独立実行形式 (PIE) である必要があります。Unix で使われる実行形式の ELF では位置独立実行形式が ET_DYN、非位置独立実行形式 (non-PIE) が ET_EXEC となります。 Linuxでは ASLR が無効となる非位置独立実行形式のファイルを以下で検索することができます: <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ # License: CC0 / Public Domain $ # 非位置独立実行形式 (non-PIE) のバイナリを検索 $ find / -type f -executable 2>/dev/null | xargs -I {} sh -c 'LANG=C readelf -h {} 2>/dev/null | grep -E "Type:.*EXEC" >/dev/null && echo {}' /usr/lib/default.sfx /usr/lib/klibc/bin/mkfifo /usr/lib/klibc/bin/zcat /usr/lib/klibc/bin/poweroff [...] $ # 非位置独立実行形式 (non-PIE) のバイナリを含むDebianパッケージを検索 $ find / -type f -executable 2>/dev/null | xargs -I {} sh -c 'LANG=C readelf -h {} 2>/dev/null | grep -E "Type:.*EXEC" >/dev/null && echo {}' | xargs -r -d '\n' -n1 dpkg-query -S | sed 's/: .*//' | sort -u aidl busybox-static code cpp-15-x86-64-linux-gnu cuda-gdb-13-4 cuda-nvcc-13-4 cuda-sanitizer-13-4 cuda-tileiras-13-4 debugedit g++-15-x86-64-linux-gnu gcc-15-x86-64-linux-gnu gcc-mingw-w64-i686-posix gdc-15-x86-64-linux-gnu gds-tools-13-4 gfortran-15-x86-64-linux-gnu gh git-lfs gobjc-15-x86-64-linux-gnu gocryptfs golang-1.26-go go-md2man go-mtpfs [...] </syntaxhighlight> 現在のLinuxカーネルがユーザー空間 ASLR を有効にしているかは以下で確認できます (出力例はUbuntu 26.04): <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ sysctl kernel.randomize_va_space # 0=無し、1=部分的、2=完全 kernel.randomize_va_space = 2 </syntaxhighlight> また現在のLinuxカーネルがカーネル ASLR (KASLR) を有効にしているかは以下で確認できます (出力例はUbuntu 26.04): <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ grep 'CONFIG_RANDOMIZE_BASE' /boot/config-$(uname -r) # y=Yes, n=No CONFIG_RANDOMIZE_BASE=y </syntaxhighlight> なお ASLR は間接的な関数呼び出し( C++ の vtable を含む)があると、そのアドレスから ASLR のオフセットがバレてしまい突破されてしまいます。 また CPU の[[:w:投機的実行|投機的実行]]での情報漏れ (Spectre) による[[:w:キャッシュ攻撃|キャッシュサイドチャネル攻撃]](後述)の一つである「投機的探査」 (BlindSide) によってもコードの位置情報の取得がされ ASLR が突破されてしまいます。 === 投機的実行の情報漏れ防止 === 前述のとおり、投機的実行による情報漏れ (Spectre) は攻撃に繋がります。Spectre には境界チェックを迂回する Spectre V1 と間接分岐の分岐先アドレスのキャッシュ{{efn|分岐先バッファ (Branch Target Buffer、BTB)や分岐先アドレスキャッシュ (Branch Target Address Cache、BTAC) と呼ばれる。}}を汚染する Spectre V2 が存在します。<!--TODO: Spectre v3/v4、Zenbleed--> Spectre V1 を防ぐ方法としては投機的実行を阻害するための命令(x86ではLFENCE)の挿入{{efn|Linuxカーネルでの投機的実行の防止は<code>barrier_nospec()</code>。}}やアクセスできるアドレス範囲を狭めることが行われています{{efn|GCCでの投機的実行での範囲外アクセス防止は<code>__builtin_speculation_safe_value(...)</code>、Linuxカーネルでの投機的実行での範囲外アクセス防止は<code>array_index_nospec(...)</code><ref>[https://lwn.net/Articles/759423/ Spectre V1 defense in GCC] LWN 2018年7月10日</ref>。}}。 また Spectre V2 では攻撃を防ぎながらも速度を落とさない方法として脆弱な分岐先アドレスキャッシュに依存する間接分岐の代わりにリターンアドレスのキャッシュ{{efn|リターンスタックバッファ (RSB) と呼ばれる。}}に依存するリターン命令を使う retpoline が登場しました。しかしながらこの retpoline でも速度の低下は起こるため、既知の間接呼び出しを条件分岐 + 直接呼び出しに変換して高速化する手法が模索されました。LLVM では retpoline を有効にする <code>-mretpoline</code>フラグの処理内に既知の仮想関数呼び出しを[[:w:二分木|二分木]]の直接分岐に置き換える「分岐ファネル」(Branch funnel) が導入されています<ref>[https://reviews.llvm.org/D42453 Use branch funnels for virtual calls when retpoline mitigation is enabled.] LLVM project</ref>。また Linux カーネルでも既知の間接呼び出しを条件分岐 + 直接呼び出しに変換する INDIRECT_CALL_* マクロが搭載されています<ref>[https://lwn.net/Articles/774743/ Relief for retpoline pain] LWN 2018年12月14日</ref>。<!--TODO: Intel CETのSHSTKとretpolineの衝突--> 一方、リターン命令の投機的実行も「Retbleed」や AMD CPU における「投機的リターンスタックオーバーフロー」 (SRSO){{efn|Speculative Return Stack Overflow。}}のような脆弱性が見つかっています。 なお低権限コードから高権限コードへの権限境界をまたいだ Spectre および Retbleed は Intel の「間接分岐制限付き投機」(IBRS){{efn|Indirect Branch Restricted Speculation。}}およびそれを高速化した「拡張IBRS」(eIBRS) などハードウェア側によって塞がれました<ref>[https://www.intel.com/content/www/us/en/developer/articles/technical/software-security-guidance/technical-documentation/hardware-behavior-related-to-speculative-execution.html Hardware Features and Behavior Related to Speculative Execution] Intel 2026年10月14日</ref>が、権限境界をまたがないものは今も可能となっています。 === メモリにおける書き込みと実行の排他化 (W^X) === メモリでは書き込み可能領域の実行不可化 ([[:w:NXビット|NXビット]]) と実行可能領域の書き込み不可化による書き込みと実行の排他化([[:w:en:W^X|W^X]])が一般的となっています。NXビットは x86 では NXビットは AMD64 と共に搭載された古い機能であるため、今時の CPU と OS は基本的にこれに対応しています。 現在の CPU がNXビットを有効にしているかはLinuxでは以下で確認できます: <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ grep '^flags' /proc/cpuinfo | grep -o nx nx nx [...] </syntaxhighlight> 現在のLinuxカーネルが厳格な W^X を有効にしているかは以下で確認できます (出力例はUbuntu 26.04): <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ grep '_RWX' /boot/config-$(uname -r) # y=Yes, n=No CONFIG_ARCH_HAS_STRICT_KERNEL_RWX=y CONFIG_STRICT_KERNEL_RWX=y CONFIG_ARCH_HAS_STRICT_MODULE_RWX=y CONFIG_STRICT_MODULE_RWX=y </syntaxhighlight> しかしながら書き込みと実行の排他の原則を破ってそれらを同時に行える場所というものも存在しています。読み込み・書き込み・実行が可能なことから「RWXセクション」と呼ばれています。Windows ではメモリページの PAGE_EXECUTE_READWRITE フラグがこれに相当します<ref>[https://learn.microsoft.com/ja-jp/windows/win32/memory/memory-protection-constants メモリ保護定数] メモリ保護定数 (WinNT.h) - Win32 apps | Microsoft Learn</ref>。 Windows のカーネルドライバでは NX フラグの使用が義務付けられています<ref>[https://learn.microsoft.com/en-us/windows-hardware/test/hlk/testref/driver-compatibility-with-device-guard メモリ整合性と VBS とのドライバ互換性] Microsoft</ref>が、その Windows カーネルにおいても PatchGuard の領域がコード難読化のためにこの原則を破っています。<!--TODO: ホットパッチ--> また Linux でも実行可能領域を書き込み可能ページとして割り当てて書き込む text_poke 関数が用意されています。 === 制御フローの操作を防ぐ (CET) === 現代では「[[:w:Return-oriented programming|リターン指向プログラミング]]」(ROP)、「呼び出し指向プログラミング」 (COP)、「ジャンプ指向プログラミング」(JOP) 、「[[:en:Sigreturn-oriented programming|Sigreturn指向プログラミング]]」(SROP) などの制御フロー操作による攻撃が一般化していますが、これを防ぐ技術として「[[:w:en:Control-flow integrity#Intel Control-flow Enforcement Technology|制御フロー強制テクノロジー]]」(CET) の「[[:w:en:Indirect branch tracking|間接分岐追跡]]」(IBT) と「[[:w:en:Shadow stack|シャドウスタック]]」(SHSTK) が存在します。 制御フロー強制は比較的新しい技術であるため、対応する CPU は以下に限られます: * Intel Core (Tiger Lake) 第11世代以降 * AMD Zen 3 以降(シャドウスタックのみ) 現在の CPU が間接分岐追跡 (IBT) およびシャドウスタックに対応しているかはLinuxでは以下で確認できます: <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ grep '^flags' /proc/cpuinfo | grep -oE '(ibt|shstk)' shstk ibt shstk ibt [...] </syntaxhighlight> またユーザーランドのシャドウスタックの使用にはユーザーランドだけでなくカーネルの対応も必要となります。Linux カーネル では 6.6 以降対応でこれに対応しています(sigreturnにも対応<ref>[https://github.com/torvalds/linux/commit/05e36022c0543ba55a3de55af455b00cb3eb4fcc x86/shstk: Handle signals for shadow stack · torvalds/linux@05e3602] GitHub 2023年8月3日</ref>)。 Linuxディストリビューションでは Ubuntu 24.04以降、 Red Hat Enterprise Linux 9.7 以降<ref>[https://docs.redhat.com/ja/documentation/red_hat_enterprise_linux/9/html/9.7_release_notes/new-features-kernel 4.8. カーネル - 9.7 リリースノート - Red Hat Enterprise Linux - 9 - Red Hat Documentation] Red Hat</ref>が標準でシャドウスタックを有効としています。 現在のLinuxカーネルが間接分岐追跡およびシャドウスタックを有効にしているかは以下で確認できます (出力例はUbuntu 26.04): <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ grep -E '_(IBT|SHADOW_STACK)' /boot/config-$(uname -r) # y=Yes, n=No CONFIG_CC_HAS_IBT=y # CONFIG_X86_KERNEL_IBT is not set CONFIG_X86_USER_SHADOW_STACK=y CONFIG_X86_DISABLED_FEATURE_IBT=y CONFIG_ARCH_HAS_USER_SHADOW_STACK=y </syntaxhighlight> 現在のユーザーランドプログラムの中で間接分岐追跡またはシャドウスタックが無効化されているものはLinuxでは以下で確認できます: <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ # License: CC0 / Public Domain $ # 間接分岐追跡またはシャドウスタックが無効化されているバイナリを検索 $ find / -type f 2>/dev/null | xargs -I {} sh -c 'readelf -h "{}" >/dev/null 2>&1 && (readelf -n "{}" 2>/dev/null | grep -E IBT,.*SHSTK > /dev/null || echo "{}")' /usr/lib/lv2/carla.lv2/carla.so /usr/lib/7zip/7z /usr/lib/7zip/7zCon.sfx /usr/lib/7zip/7zr /usr/lib/7zip/7z.so /usr/lib/7zip/7za /usr/lib/klibc/bin/ipconfig /usr/lib/klibc/bin/umount /usr/lib/klibc/bin/halt [...] $ # 間接分岐追跡またはシャドウスタックが無効化されているバイナリを含むDebianパッケージを検索 $ find / -type f 2>/dev/null | xargs -I {} sh -c 'readelf -h "{}" >/dev/null 2>&1 && (readelf -n "{}" 2>/dev/null | grep -E IBT,.*SHSTK > /dev/null || echo "{}")' | xargs -r -d '\n' -n1 dpkg-query -S | sed 's/: .*//' | sort -u 7zip aidl ardour avr-libc cargo-1.93 carla carla-bridge-wine32:i386 carla-bridge-wine64 carla-lv2 carla-vst cuda-ctadvisor-13-4 cuda-cudart-13-4 [...] </syntaxhighlight> なお、制御フロー強制テクノロジーの間接分岐追跡とシャドウスタックが有効であっても異なる関数の通常呼び出しは防げません。分かりやすい例では関数の間接呼び出しにおいて関数ポインタを<code>sigaction</code>へと変更して独自のシグナルハンドラを登録し、その後クラッシュさせてそのシグナルハンドラを呼び出すという「セグメンテーション違反指向プログラミング」(SFOP) が挙げられます。また攻撃に使える関数 (dop gadgets) {{efn|dop gadgetsの検索の公式実装は「DOP-StaticAssist」[https://github.com/melynx/DOP-StaticAssist]だが長らく更新されておらず古いLLVM 3.5に依存している状態となっている。}}の通常呼び出しだけで攻撃する「Data-Oriented Programming」(DOP) <ref>Hong Hu et al. [https://ieeexplore.ieee.org/stamp/stamp.jsp?tp=&arnumber=7546545 Data-Oriented Programming: On the Expressiveness of Non-Control Data Attacks] IEEE 2016年</ref>{{efn|セキュリティ以外の文脈におけるデータ指向プログラミング、データ指向設計、データ駆動型設計とは異なる。}}という手法も存在します。 C++向けでは仮想関数テーブル (vtable) を改ざんして攻撃に使える仮想関数(仮想関数ガジェット、vfgadget)を呼び出す「偽造オブジェクト指向プログラミング」(COOP) という攻撃手法も登場しています。 === メモリ安全性の高いソフトウェアへ === 既存のソフトウェアの脆弱性は7割がメモリ安全性の問題に起因すると言われています<ref>[https://www.cisa.gov/sites/default/files/2023-12/CSAC_TAC_Recommendations-Memory-Safety_Final_20231205_508.pdf REPORT TO THE CISA DIRECTOR Technical Advisory Council Memory Safety] サイバーセキュリティ諮問委員会 (CSAC) 2023年12月5日</ref>。しかしながら[[C言語]]や[[C++]]はメモリ安全性が低いため、メモリ安全性の確保できる[[Rust]]などで書かれた代替プログラムが登場しています: {| class="wikitable" |+ コマンドのRust版 |- ! コマンドの概要 !! 従来版 !! Rust版 |- | Unix系の基本コマンド群 || GNU Core Utilities || '''uutils coreutils''' |- | ファイル検索コマンド群{{efn|<code>find</code>、<code>locate</code>、<code>updatedb</code>、<code>xargs</code>の4コマンド}} || GNU Findutils || '''uutils findutils''' |- | ファイル差分コマンド群{{efn|<code>diff</code>、<code>cmp</code>、<code>diff3</code>、<code>sdiff</code>の4コマンド}} || GNU Diffutils || '''uutils diffutils''' |- | ストリームエディタ (sed) || GNU sed / FreeBSD sed || '''uutils sed''' |- | AWKスクリプト || GNU AWK || '''uutils AWK''' |- | 文字列検索 || GNU Grep || '''uutils Grep''' |- | tarアーカイブ || GNU Tar || '''uutils tar''' |- | アカウント管理コマンド群 || shadow-utils || '''uutils shadow-utils''' |- | アクセス制御コマンド群{{efn|<code>chacl</code>、<code>getfacl</code>、<code>setfacl</code>の3コマンド}} || acl || '''uutils acl''' |- | procfs{{efn|プロセスファイルシステム}}表示コマンド群 || procps / procps-ng || '''uutils procps''' |- | ホスト名管理コマンド群{{efn|<code>hostname</code>、<code>dnsdomainname</code>、<code>domainname</code>、<code>nisdomainname</code>、<code>ypdomainname</code>の5コマンド。}} || hostname || '''uutils hostname''' |- | Linuxユーティリティ || util-linux || '''uutils util-linux''' |- | 権限昇格 || sudo || '''sudo-rs''' |- | 暗号・署名システム || GnuPG || '''Sequoia PGP''' |- | 時刻同期 || ntpd || '''ntpd-rs''' |- | セキュアシェル (SSH) || OpenSSH || '''russh''' |} これらのRustで書かれたコマンドのうちuutils coreutilsとsudo-rsはUbuntuに採用されています。 またライブラリでもRustだけ (Pure Rust) で実装されたものが登場しています: * 画像ライブラリ - これらは例えばGNOMEデスクトップ環境の画像ローダーGlycinから使われています<ref>[https://gitlab.gnome.org/GNOME/glycin GNOME / glycin · GitLab] GNOME Project</ref>。 ** libpng → pngクレート - PNG画像向け。 ** libgif → gifクレート - GIF画像向け。 ** libjpeg / libjpeg-turbo → zune-jpeg / libjpeg-turbo-rs - JPEG画像向け。 ** OpenJPEG → hayro-jpeg2000 - JPEG 2000画像向け。 ** libtiff → tiffクレート - Tiff画像向け ** libwebp → image-webpクレート - WebP画像向け。 ** libraw → libopenraw - RAW画像向け。 ** librsvg - SVG画像向け。C言語からRustに書き直しされました。 * 圧縮ライブラリ ** zlib / zlib-ng → zlib-rs - Deflate圧縮向け ** libbzip2 → bzip2-rs - BZ2圧縮向け * 暗号化ライブラリ ** OpenSSL / GnuTLS → [[:w:en:Rustls|Rustls]] * Unicode処理ライブラリ ** ICU4C → ICU4X * テキスト整形ライブラリ ** HarfBuzz → HarfRust * ブラウザエンジン ** Blink/Gecko → Servo <!-- === 整合性チェック === PatchGuard / HyperGuard --> == 不審な改変が行われていないかを調べる == 例えばOSの起動には一連のシーケンスがありますが、マルウェアは基本的にここの途中に入り込んで永続化します。 {| class="wikitable" |+ 起動シーケンス |- ! 種類 || Windows 11以降 !! Linux (Gnome) !! Linux (KDE) |- | 1. 起動ファームウェア || [[:w:Unified Extensible Firmware Interface|UEFI]] || colspan=2 | [[:w:Basic Input/Output System|レガシーBIOS]] / UEFI |- | 2. ブートローダー || [[:w:Windows Boot Manager|Windows Boot Manager]] (bootmgfw.efi)<br> → [[:w:Windows Boot Manager#winload.exe/winload.efi|Windows OS Loader]] (winload.efi) || colspan=2 | GRUB{{efn|Ubuntuの標準。}} / systemd-boot / Unified Kernel Image{{efn|Linuxカーネルとブートイメージを単一バイナリにする仕組み。}} / EFI boot stub{{efn|LinuxカーネルをEFIから直接ブートできるようにする仕組み。}} |- | 3. カーネル || [[:w:ntoskrnl.exe|ntoskrnl.exe]] || colspan=2 | Linuxカーネル ([[:w:vmlinux|vmlinux]]{{efn|圧縮後はvmlinuzとなる。}}) |- | 4. 初期化プロセス || [[:w:en:Session Manager Subsystem|smss.exe]]<br> → wininit.exe<br> || rowspan=2 colspan=2 | [[:w:systemd|systemd]]{{efn|以前は代替initもよく使われていたが、今はsystemdが標準となっている。}} |- | 5. サービスコントロールマネージャ || colspan=2 | [[:w:en:Service Control Manager|services.exe]] |- | rowspan=2 | 6. ログインマネージャ || rowspan=2 | [[:w:Winlogon|winlogon.exe]] || colspan=2 | systemd-logind<br>sd-pam |- | [[:w:GNOME ディスプレイマネージャー|GDM]] || [[:w:Simple Desktop Display Manager|SDDM]] |- | rowspan=2 | 7. ユーザー初期化プロセス || rowspan=2 | userinit.exe || colspan=2 | systemd |- | gnome-session || kcminit<br> → plasma_session |- | 8. シェル || [[:w:Windows Explorer|explorer.exe]] || gnome-shell || plasmashell |- | 9. コンポジタ || [[:w:Desktop Window Manager|dwm.exe]] || mutter || kwin |} また起動シーケンス以外にもアップデートシーケンスへの感染やシェル感染、ブラウザ感染もあります。 {| class="wikitable" |+ Windows における代表的なユーザースクリプト又はコマンド起動が可能な設定ファイル |- ! 規格/アプリケーション !! ユーザー !! システム |- | Windows || %APPDATA%\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows\<wbr>Start Menu\<wbr>Programs\<wbr>Startup\<wbr>* || C:\<wbr>ProgramData\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows\<wbr>Start Menu\<wbr>Programs\<wbr>Startup\<wbr>* |- | [[:w:PowerShell|PowerShell]] プロファイル<ref>[https://learn.microsoft.com/ja-jp/powershell/module/microsoft.powershell.core/about/about_profiles?view=powershell-7.6 about_Profiles - PowerShell - Microsoft Learn] Microsoft</ref> || %USERPROFILE%\<wbr>Documents\<wbr>PowerShell\<wbr>Profile.ps1<br>%USERPROFILE%\<wbr>Documents\<wbr>PowerShell\<wbr>Microsoft.PowerShell_profile.ps1 || C:\<wbr>Windows\<wbr>System32\<wbr>WindowsPowerShell\<wbr>*\<wbr>Profile.ps1<br>C:\<wbr>Windows\<wbr>System32\<wbr>WindowsPowerShell\<wbr>*\<wbr>Microsoft.PowerShell_profile.ps1 |} {| class="wikitable" |+ Linux における代表的なユーザースクリプト又はコマンド起動が可能な設定ファイル |- ! 規格/アプリケーション !! ユーザー !! システム |- | POSIX標準 || ~/.profile || /etc/profile |- | XDG Base Directory<wbr>標準 || ~/.local/bin/* || |- | FHS{{efn|Filesystem Hierarchy Standard}}<wbr>標準[https://refspecs.linuxfoundation.org/fhs.shtml] || || /bin/* /sbin/* /usr/bin/* /usr/local/bin/* /etc/inittab |- | LSB{{efn|Linux Standard Base}}<wbr>標準[https://refspecs.linuxfoundation.org/lsb.shtml] || || /etc/profile.d/* /etc/init.d/* /etc/cron.d/* |- | Desktop Application Autostart Specification<wbr>標準[https://specifications.freedesktop.org/autostart/latest/]{{efn|systemd-xdg-autostart-generator が導入されているシステムではこれらがsystemd設定に自動変換される。}} || ~/.config/autostart/* || /etc/xdg/autostart/* |- | Bash || ~/.bash_profile ~/.bashrc || /etc/bash_profile /etc/bash.bashrc /etc/bash.bash_logout |- | Z shell (Zsh) || ~/.zshenv ~/.zprofile ~/.zshrc ~/.zlogin ~/.zlogout || /etc/zshenv /etc/zprofile /etc/zshrc /etc/zlogin /etc/zlogout<br/>(または /etc/zsh/zshenv /etc/zsh/zprofile /etc/zsh/zshrc /etc/zsh/zlogin /etc/zsh/zlogout) |- | Systemd || ~/.config/systemd/user/* || /etc/systemd/system/* /etc/systemd/user/* |- | Xorg || ~/.xinitrc ~/.xserverrc ~/.xsession || /etc/X11/xinit/xinitrc /etc/X11/xinit/xserverrc /etc/X11/Xsession /usr/share/xsessions/* |- | Wayland || || /usr/share/wayland-sessions/* |- | Python || ~/.local/lib/python*/site-packages/*/**{{efn|絶対パスは<code>python3 -c 'import site; print(site.getusersitepackages())'</code>で確認可能。}} || /usr/lib/python*/dist-packages/*/** /usr/local/lib/python*/dist-packages/*/**{{efn|絶対パスは<code>python3 -c 'import site; print(site.getsitepackages())'</code>で確認可能。}} |- | Perl{{efn|Debian/UbuntuではDebianパッケージ設定システム (debconf) のためにPerlを使用している。}} || || /usr/share/perl*/** /usr/local/share/perl*/** /usr/lib/*/perl*/** /usr/local/lib/*/perl*/**{{efn|絶対パスは<code>perl -V:installsitearch -V:installsitelib -V:installvendorarch -V:installvendorlib -V:archlib -V:privlib -V:installarchlib -V:installprivlib</code>で確認可能。}} |} === パッケージ管理ファイルを検証する === パッケージ管理システムが管理しているファイルではファイルハッシュが保存されているため簡単にその検証を行うことが可能です: {| class="wikitable" |- ! OS / パッケージシステム !! 検証のみ !! 修復 |- | Windows || <code>sfc&nbsp;/verifyonly</code> || <code>sfc&nbsp;/scannow</code> |- | Debパッケージ (Debian / Ubuntu) || <code>debsums -s</code> || <code>apt install --reinstall $(debsums -cs &verbar; xargs -r dpkg-query -S &verbar; cut -d: -f1 &verbar; sort -u)</code> |- | RPMパッケージ (RedHat / Fedora) || <code>rpm -Va</code> || |} ただしローカルハッシュが改ざんされている可能性もあるため過信はできません。<!--TODO: ローカルハッシュの検証法--> 自動的にシステムの検証を行うシステムも存在します: * Android - ブロックデバイスレベルでのハッシュ検証 (dm-verityベース)<ref>[https://source.android.com/docs/security/features/verifiedboot/dm-verity?hl=ja dm-verity の実装] Google</ref> <!-- またUbuntuのSnapパッケージでもdm-verityの導入が進められています。 また特定言語のパッケージの検証は以下で可能です: * PIP (Python): なし --> === システム領域に不審なファイルが追加されていないかを調べる === システムの追加ファイルの検知にはパッケージシステムで管理されていないファイルの一覧を返す以下のようなツールが存在します: * Debian / Ubuntu(Debパッケージ)向け: cruft-ngパッケージ(<code>cruft</code>コマンド) 上記の<code>cruft</code>コマンドでは設定ファイルだけ残っているパッケージのファイルも出てきてしまいます。そのため、これが邪魔な時は設定ファイルだけ残っているパッケージを<code>sudo apt purge '~c'</code>で削除しましょう。 またaptレポジトリに無いインストールされたパッケージは<code>apt list '?obsolete'</code>で、手動 (manual) でインストールされたパッケージは<code>apt-mark showmanual</code>で確認できます。これらのコマンドを実行してインストールした覚えないパッケージが入ってないかをチェックしましょう。GUI が使えるのであれば<code>synaptic</code>を起動して「インストール済(ローカルまたは廃止)」と「インストール済(手動)」を確認するのもオススメです。 === ユーザー領域に不審なファイルが追加されていないかを調べる === ユーザースクリプトの書き換えや追加は検知が難しいです。<!--TODO: 良い方法を書く--> 共有ライブラリやスクリプトによるプラグイン追加も可能となっているため、こちらにも気をつけなければいけません。これには例えば以下があります: {| class="wikitable" |+ 代表的なユーザースクリプトや拡張機能のディレクトリパス |- ! 種類 !! Windowsのパス !! macOSのパス !! Linuxのパス |- | Google Chrome 拡張機能 || %LOCALAPPDATA%\Google\Chrome\User Data\*\Extensions\ || ~/Library/Application Support/Google/Chrome/*/Extensions/ || ~/.config/google-chrome/*/Extensions/ |- | GIMPプラグイン<ref>[https://gimp.cc/faq/add-gimp-plugins.html How to Install GIMP Plugins - Detailed Guide with Troubleshooting] GIMP.cc</ref> || %APPDATA%\GIMP\*\plug-ins\ || ~/Library/Application Support/GIMP/*/plug-ins/ || ~/.config/GIMP/*/plug-ins/ |- | Blenderスクリプト{{efn|起動スクリプト、アドオンを含む。}}<ref>[https://docs.blender.org/manual/ja/dev/advanced/blender_directory_layout.html Blender&#39;s Directory Layout] Blender Foundation</ref> || %APPDATA%\Blender Foundation\Blender\*\scripts\ || ~/Library/Application Support/Blender/*/scripts/ || ~/.config/blender/*/scripts/ |- | Ardourスクリプト<ref>[https://manual.ardour.org/lua-scripting/ The Ardour Manual - Lua Scripting] Ardour</ref> || %LOCALAPPDATA%\ardour*\scripts\ || ~/Library/Preferences/Ardour*/scripts/ || ~/.config/ardour*/scripts/ |- | LibreOfficeスクリプト || %APPDATA%\LibreOffice\*\user\Scripts\ || ~/Library/Application Support/LibreOffice/*/user/Scripts/ || ~/.config/libreoffice/*/user/Scripts/ |- | Visual Studio Code 拡張機能<ref>[https://code.visualstudio.com/docs/configure/extensions/extension-marketplace Extension Marketplace] Microsoft</ref> || %USERPROFILE%\.vscode\extensions\ || ~/.vscode/extensions/ || ~/.vscode/extensions/ |} === 改変・追加されたファイルが危険かを調べる === 実行ファイルやスクリプトはLinuxでは以下で検出できます: <syntaxhighlight lang="shell-session"> # cat filelist.txt | xargs file | grep -i -E ':.*(executable|shared object|relocatable|script)' /etc/init.d/binfmt-support.dpkg-new: POSIX shell script, ASCII text executable /etc/update-motd.d/99-livepatch-kernel-upgrade-required: POSIX shell script, ASCII text executable /usr/lib/chromium-browser/plugins/libpepflashplayer.so: ELF 64-bit LSB shared object, x86-64, version 1 (SYSV), dynamically linked, BuildID[sha1]=5c421e89a5c062a2106a5a4381dc38e779a22795, stripped </syntaxhighlight> またClamAVを導入していれば以下でマルウェアデータベースとの照合を行うことができます: <syntaxhighlight lang="shell-session"> # cat filelist.txt | xargs clamscan Loading: 3s, ETA: 0s [========================>] 3.63M/3.63M sigs Compiling: 1s, ETA: 0s [========================>] 41/41 tasks /etc/apt/apt.conf.d/00trustcdrom: OK /etc/apt/auth.conf.d/90ubuntu-advantage: OK /etc/apt/keyrings/google.asc: OK [...] ----------- SCAN SUMMARY ----------- Known viruses: 3628164 Engine version: 1.5.4 Scanned directories: 125 Scanned files: 1919 Infected files: 0 Total errors: 10 Data scanned: 247.72 MiB Data read: 281.17 MiB (ratio 0.88:1) Time: 17.939 sec (0 m 17 s) Start Date: 2026:10:11 05:41:30 End Date: 2026:10:11 05:41:48 </syntaxhighlight> === 設定データベースを検証する === 設定データベースは Windows ではレジストリ、Linuxでは GNOME / MATEの 使う [[:en:dconf|dconf]] が存在します。 Windows の設定データベースはレジストリと呼び「レジストリエディタ」 (<code>regedit</code>) で表示できます。 {| class="wikitable" |+ Windows における代表的なユーザースクリプト、コマンド起動、DLL呼び出しが可能なレジストリ |- ! 規格/アプリケーション !! 各ユーザー !! 全ユーザー |- | Windows || HKEY_USERS\<wbr>*\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows\<wbr>CurrentVersion\<wbr>Run\<wbr>*<wbr>CurrentVersion\<wbr>Run\<wbr>*<br>HKEY_USERS\<wbr>*\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows\<wbr>CurrentVersion\<wbr>RunOnce\<wbr>*{{efn|name="runonce"|RunOnceは一度のみ実行だが再登録することで何回でも実行可能。}} || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows\<wbr>CurrentVersion\<wbr>Run\<wbr>*<br>HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows\<wbr>CurrentVersion\<wbr>RunOnce\<wbr>*{{efn|name="runonce"}} |- | [[:w:en:Security Account Manager|Security Account Manager]] || || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>SAM\<wbr>SAM\<wbr>Domains\<wbr>Account\<wbr>Users\<wbr>*\<wbr>V{{efn|name="sam"|'HKEY_LOCAL_MACHINE\SAM\SAM\' 以下はレジストリエディタの右クリックの「アクセス許可」で Administrators にアクセス許可を与えないと読めない。なおファイルパスは「C:\Windows\System32\config\SAM」。}}{{efn|Vはバイナリであり、0xCC + (0x60 に指定されたオフセット) からユーザーログオンスクリプトパスを指定する<ref name="sam-ghost">Sebastián R. Castro et al. [https://dl.acm.org/doi/pdf/10.1145/3689934.3690839 Ghost in the SAM: Stealthy, Robust, and Privileged Persistence through Invisible Accounts] ACM 2024年</ref>。}} |- | [[:w:en:Local Security Authority Subsystem Service|Local Security Authority Subsystem Service]] || || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>System\<wbr>CurrentControlSet\<wbr>Control\<wbr>LSA\<wbr>Notification Packages<br>HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>SYSTEM\<wbr>CurrentControlSet\<wbr>Control\<wbr>LSA\<wbr>Authentication Packages<ref>[https://attack.mitre.org/detectionstrategies/DET0207/ Detect LSA Authentication Package Persistence via Registry and LSASS DLL Load] MITRE Corporation</ref> |- | [[:w:en:Active Setup|Active Setup]]<ref>[https://www.advancedinstaller.com/application-packaging-training/msi/ebook/active-setup.html Active-Setup Mechanism] Advanced Installer</ref> || HKEY_USERS\<wbr>*\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Active Setup\<wbr>Installed Components\<wbr>*\<wbr>StubPath || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Active Setup\<wbr>Installed Components\<wbr>*\<wbr>StubPath<ref>[https://attack.mitre.org/techniques/T1547/014/ Boot or Logon Autostart Execution: Active Setup] MITRE Corporation</ref> |- | [[:w:Windowsサービス|Windowsサービス]]<ref>[https://learn.microsoft.com/ja-jp/windows-hardware/drivers/install/hklm-system-currentcontrolset-services-registry-tree HKLM\SYSTEM\CurrentControlSet\Services レジストリ ツリー - Windows drivers - Microsoft Learn] Microsoft</ref> || || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>SYSTEM\<wbr>CurrentControlSet\<wbr>services\<wbr>* |- | [[:w:Winlogon|Winlogon]] || || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows NT\<wbr>CurrentVersion\<wbr>Winlogon\<wbr>Shell<br>HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows NT\<wbr>CurrentVersion\<wbr>Winlogon\<wbr>Userinit<br>HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows NT\<wbr>CurrentVersion\<wbr>Winlogon\<wbr>Notify<ref>[https://attack.mitre.org/techniques/T1547/004/ Boot or Logon Autostart Execution: Winlogon Helper DLL] MITRE Corporation</ref> |- | [[:w:cmd.exe|cmd.exe]]<ref>[https://learn.microsoft.com/en-us/windows-server/administration/windows-commands/cmd cmd - Microsoft Learn] Microsoft</ref> || HKEY_USERS\<wbr>*\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Command Processor\<wbr>AutoRun\REG_EXPAND_SZ || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Command Processor\<wbr>AutoRun\<wbr>REG_SZ |- | [[Microsoft Edge]] || || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>SOFTWARE\<wbr>Policies\<wbr>Microsoft\<wbr>Edge\<wbr>ExtensionInstallForcelist<ref>[https://learn.microsoft.com/ja-jp/deployedge/microsoft-edge-policies/extensioninstallforcelist Microsoft Edge ブラウザー ポリシードキュメント ExtensionInstallForcelist - Microsoft Learn] Microsoft</ref>{{efn|name="silent-install"|自動的にサイレントインストールする}} |- | [[Google Chrome]] || || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>SOFTWARE\<wbr>Policies\<wbr>Google\<wbr>Chrome\<wbr>ExtensionInstallForcelist<ref>[https://chromeenterprise.google/intl/ja_jp/policies/extension-install-forcelist/ ExtensionInstallForcelist: 自動インストールするアプリと拡張機能のリストの設定 - Chrome Enterprise] Google</ref>{{efn|name="silent-install"}} |} Linux の GNOME / MATE 環境には「[[:w:en:Dconf#dconf database|dconf データベース]]」が存在し、それは<code>dconf dump</code>('/'区切り)で表示できます。また dconf データベースにスキーマ(規定値と解説)を被せた gsettings も存在し、こちらは<code>gsettings list-recursively</code>(dconfと異なり'.'区切り)で表示できます。 {| class="wikitable" |+ Linux における代表的なユーザースクリプト又はコマンド起動が可能なdconf設定 |- ! 規格/アプリケーション !! ユーザー |- | GNOME Settings Daemon || /org/gnome/settings-daemon/plugins/media-keys/custom-keybindings/custom*/command |- | Marco ([[w:MATE (デスクトップ環境)|MATE]]) || /org/mate/Marco/keybinding-commands/command-*{{efn|変更した設定は<code>dconf dump /org/mate/Marco/keybinding-commands/</code>で、デフォルトも含めた設定は<code>gsettings list-recursively org.mate.Marco.keybinding-commands</code>で表示可能。}} |- | MATE Screensaver || /org/mate/screensaver/embedded-keyboard-command<br>/org/mate/screensaver/logout-command{{efn|変更した設定は<code>dconf dump /org/mate/screensaver/</code>、デフォルトも含めた設定は<code>gsettings list-recursively org.mate.screensaver</code> で表示可能}} |- | mate-applets || /org/mate/panel/objects/object-*/prefs/command |- | mate-sensors-applet || /org/mate/panel/objects/object-*/prefs/*/high-alarm-command<br>/org/mate/panel/objects/object-*/prefs/*/low-alarm-command |} なお MATE Screensaver と同源の GNOME Screensaver にも /org/gnome/desktop/screensaver/embedded-keyboard-command と /org/gnome/desktop/screensaver/logout-command{{efn|変更した設定は<code>dconf dump /org/gnome/desktop/screensaver/</code>、デフォルトも含めた設定は<code>gsettings list-recursively org.gnome.desktop.screensaver</code> で表示可能。}} が存在しますが、こちらは既に廃止されており指定しても無視されます<ref>[https://github.com/GNOME/gsettings-desktop-schemas/blob/main/schemas/org.gnome.desktop.screensaver.gschema.xml.in gsettings-desktop-schemas/schemas/org.gnome.desktop.screensaver.gschema.xml.in at main · GNOME/gsettings-desktop-schemas] GNOME Project</ref>。 === メディアに不審なファイルが追加されていないかを調べる === メディアの自動実行 ([[:w:en:AutoRun|AutoRun]]) ファイルにもマルウェアが紛れてないか注意しましょう。 {| class="wikitable" |+ メディアの自動実行ファイル |- ! Windows !! Linux<br>(Desktop Application Autostart Specification<wbr>標準[https://specifications.freedesktop.org/autostart/latest/]) |- | *:\[[:w:autorun.inf|autorun.inf]] || /media/*/*/.autorun<br>/media/*/*/autorun<br>/media/*/*/autorun.sh<br>/run/media/*/*/.autorun<br>/run/media/*/*/autorun<br>/run/media/*/*/autorun.sh |} == 改変を防ぐ == 改変を探すのは大変です。なので最初から改変をできないようにすれば管理はとても楽になります。 改ざんを防ぐには「[[:w:en:Chain of trust|信頼の連鎖]]」 (chain of trust) が重要となります。例えばカーネルだけで改ざんを防いでも、ハードウェアのファームウェアが不正であれば不正なカーネルを起動できてしまいます。 === ファームウェア改ざんを防ぐ === ファームウェア改ざんによる「ファームウェアルートキット」を防ぐにはIntel Management Engine (Intel ME)で実装されているIntel BIOS Guardを使う必要があります。<!--TODO: マザーボードによってはBIOSで有効にする必要があります。→最近のマザーボード事情--> なお2017年の第8世代Intel Coreプロセッサ (Coffee Lake) 以前はme_cleanerによってIntel Management Engineの無効化が可能<ref>[https://github.com/corna/me_cleaner/wiki/me_cleaner-status me_cleaner status] Nicola Corna 2018年</ref>なため非推奨です。 また2023年のIntel ME 16.1.30.2307未満では悪意あるロゴ画像を設定することによってroot権限からUEFI設定の変更が可能です([[:w:en:LogoFAIL|LogoFAIL]]の脆弱性)。そのため、古いIntel Management Engineが動作している場合はそのファームウェアをアップデートしましょう。Windowsでは MEUpdateTool.exe / FWUpdLcl.exe を使うことでこのアップデートが可能となっています。一方、Linuxでは一部機種が fwupdmgr 経由での Intel ME ファームウェアアップデートに対応しています。 Intel MEのバージョンはLinuxでは以下のような感じに調べることができます: <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ cat /sys/class/mei/mei0/fw_ver 0:16.1.32.2473 0:16.1.32.2473 0:16.1.27.2181 </syntaxhighlight> === ブートローダー改ざんを防ぐ === ブートローダーは起動に使われるファームウェア (BIOS) から呼ばれ、カーネルを読み込んで起動するために使われるプログラムです。古い BIOS (レガシーBIOS) には起動するブートローダーを検証する仕組みが存在しませんでしたが、新しい UEFI (統一拡張ファームウェアインターフェース) には署名されたブートローダーのみを起動する UEFI Secure Boot が追加され、安全なブートローダーの起動を許可するための「承認済み署名データベース」 (Authorized Signature Database、UEFI db) と、脆弱なブートローダーの起動を防ぐための「禁止署名データベース」 (Forbidden Signature Database、UEFI dbx) が用意されています。 UEFI Secure Boot が有効かどうかは以下で確認できます: * Windows PowerShell: <code>Confirm-SecureBootUEFI</code> * Linux: <code>mokutil --sb-state</code> UEFI db と UEFI dbx の内容は以下で確認できます: * Windows PowerShell: <code>Get-SecureBootUEFI -Name db -Decoded</code> / <code>Get-SecureBootUEFI -Name dbx -Decoded</code> * Linux: ** mokutil{{efn|Ubuntu Desktop に標準で含まれている。}}: <code>mokutil --db</code> / <code>mokutil --dbx</code> ** efitools: <code>efi-readvar -v db</code> / <code>efi-readvar -v dbx</code> ブートローダーの署名情報は以下で確認できます: * Windows PowerShell: <code>Get-PfxCertificate</code>{{efn|<code>Get-AuthenticodeSignature</code>はカタログ署名が使われる場合があるため非推奨: https://github.com/PowerShell/PowerShell/issues/23820 。}} * Linux: <code>sbverify --list</code> 例えば Windows PowerShell では以下のような感じです: <syntaxhighlight lang="powershell"> PS C:\WINDOWS\system32> mountvol S: /S; if ($?) { Get-PfxCertificate 'S:\EFI\Microsoft\Boot\bootmgfw.efi'; mountvol S: /D } Thumbprint Subject ---------- ------- FACDE3D80E99AFCC15E08AC5A69BD22785287F79 CN=Microsoft Windows, O=Microsoft Corporation, L=Redmond, S=Washington, C=US </syntaxhighlight> また Ubuntu や Debian では署名されたブートローダー (grub-efi-*-signedパッケージ) と非署名のブートローダー (grub-efi-*-unsignedパッケージ) の両方が用意されており、ブートローダーの正体がどれか、また署名されたブートローダーの署名内容を確認するのは以下のような感じとなります: <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ dpkg -L grub-efi-amd64-signed | grep -i '\.efi' | xargs md5sum # インストールされている署名されたブートローダーのハッシュを表示(grub*は通常版、gcd*は光学ブートメディア向け、grubnet*はネットブート向け) 2bd267fb12bd3b0fe26a9dfb4290868d /usr/lib/grub/x86_64-efi-signed/gcdx64.efi.signed f689e93336a015fa6eb93e1913b13482 /usr/lib/grub/x86_64-efi-signed/grubnetx64.efi.signed b63c7618fb96d52520b42b8cc7b124f0 /usr/lib/grub/x86_64-efi-signed/grubx64.efi.signed $ sudo sh -c "md5sum /boot/efi/EFI/BOOT/*" # 現在のbootloaderがどれを使っているかを確認(署名されたgrubを使用) b63c7618fb96d52520b42b8cc7b124f0 /boot/efi/EFI/BOOT/BOOTX64.EFI $ sudo sbverify --list /boot/efi/EFI/BOOT/BOOTX64.EFI signature 1 image signature issuers: - /C=GB/ST=Isle of Man/L=Douglas/O=Canonical Ltd./CN=Canonical Ltd. Master Certificate Authority image signature certificates: - subject: /C=GB/ST=Isle of Man/O=Canonical Ltd./OU=Secure Boot/CN=Canonical Ltd. Secure Boot Signing (2022 v1) issuer: /C=GB/ST=Isle of Man/L=Douglas/O=Canonical Ltd./CN=Canonical Ltd. Master Certificate Authority $ sudo sbverify --cert /usr/share/grub/canonical-uefi-ca.crt /boot/efi/EFI/BOOT/BOOTX64.EFI Signature verification OK </syntaxhighlight> なお Linux では grub の代わりに使えるブートローダーとして systemd-boot もあります。systemd-boot の署名版は Debian が systemd-boot-efi-*-signed パッケージとして用意しているようです(Ubuntu未搭載)。 <!--TODO: TPM (Trusted Platform Module) チップ --> === カーネル本体の改ざんを防ぐ === カーネルはオペレーティングシステム (OS) の下層で動き続けるプログラムです。カーネル本体の実行ファイルもブートローダーと同様に署名が行われており、UEFI Secure Boot が有効であればその検証をブートローダーが行います。Linux では GRUB の UEFI Secure Boot と shim_lock の連携がそれに相当します<ref>[https://www.gnu.org/software/grub/manual/grub/grub.html#UEFI-secure-boot-and-shim GNU GRUB Manual 2.14 - 19.4 UEFI secure boot and shim support] フリーソフトウェア財団</ref>。 なお Ubuntu には署名されたカーネル (linux-image-*パッケージ) と非署名のカーネル (linux-image-unsigned-*パッケージ) の両方が用意されており、署名されているカーネルは以下のような感じでその署名が確認できます: <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ sudo sbverify --list /boot/vmlinuz-$(uname -r) # Linuxカーネル本体の署名を確認する signature 1 image signature issuers: - /C=GB/ST=Isle of Man/L=Douglas/O=Canonical Ltd./CN=Canonical Ltd. Master Certificate Authority image signature certificates: - subject: /C=GB/ST=Isle of Man/O=Canonical Ltd./OU=Secure Boot/CN=Canonical Ltd. Secure Boot Signing (2022 v1) issuer: /C=GB/ST=Isle of Man/L=Douglas/O=Canonical Ltd./CN=Canonical Ltd. Master Certificate Authority $ sudo sbverify --cert /usr/share/grub/canonical-uefi-ca.crt /boot/vmlinuz-$(uname -r) # Linuxカーネル本体の署名を検証する Signature verification OK </syntaxhighlight> === カーネルモジュールの改ざんを防ぐ === カーネルモジュールも署名されており、その検証をカーネルが行っています。Windowsカーネルでは ci.dll (Code Integrityモジュール)が、Linuxカーネルでは CONFIG_MODULE_SIG コンパイルオプションがその検証を行っています。 カーネルによるカーネルモジュールの検証が有効かどうかは以下で確認することができます: * Linux: <code>grep 'CONFIG_MODULE_SIG=' /boot/config-$(uname -r)</code> カーネルによるカーネルモジュールの検証で読み込みを弾くかどうかは以下で確認することができます: * Windows: 強制モードか評価モード (監査モード) かを確認する PowerShell スクリプトが Microsoft のサイトに存在します: https://support.microsoft.com/en-us/windows/hardware/drivers/the-windows-driver-policy#is-my-device-in-evaluation-mode-or-enforcement-mode * Linux: <code>cat /sys/module/module/parameters/sig_enforce</code> また Linux では検証で読み込みを弾かない場合でも検証外カーネルモジュールを読み込んだ場合はdmesgに警告が出て '''Tainted kernel''' 扱いとなります<ref>[https://docs.kernel.org/admin-guide/tainted-kernels.html Tainted kernels] Linux Foundation</ref>。以下はその例です: <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ grep 'CONFIG_MODULE_SIG=' /boot/config-$(uname -r) # y=Yes, n=No CONFIG_MODULE_SIG=y $ cat /sys/module/module/parameters/sig_enforce # Y=Yes, N=No N $ sudo dmesg | grep 'module verification' [ 8.928361] nvidia: module verification failed: signature and/or required key missing - tainting kernel $ wget http://git.kernel.org/pub/scm/linux/kernel/git/torvalds/linux.git/plain/tools/debugging/kernel-chktaint [...] $ sudo sh ./kernel-chktaint Kernel is "tainted" for the following reasons: * externally-built ('out-of-tree') module was loaded (#12) * unsigned module was loaded (#13) Raw taint value as int/string: 12288/'G OE ' Tainted modules: * nvidia (OE) * nvidia_drm (OE) * nvidia_modeset (OE) * nvidia_uvm (OE) For a more detailed explanation of the various taint flags see Documentation/admin-guide/tainted-kernels.rst in the Linux kernel sources or https://kernel.org/doc/html/latest/admin-guide/tainted-kernels.html </syntaxhighlight> また Linux では以下のような感じで個々のモジュールの署名が確認できます: <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ modinfo /lib/modules/$(uname -r)/kernel/arch/x86/kernel/msr.ko.zst filename: /lib/modules/7.0.0-38-generic/kernel/arch/x86/kernel/msr.ko.zst license: GPL description: x86 generic MSR driver author: H. Peter Anvin <hpa@zytor.com> srcversion: 639B995855A3528050FD532 depends: intree: Y name: msr retpoline: Y vermagic: 7.0.0-38-generic SMP preempt mod_unload modversions sig_id: PKCS#7 signer: Build time autogenerated kernel key sig_key: 3B:E7:D3:BF:D3:2E:D9:CA:9C:17:D2:E9:5F:1A:1C:AE:67:D5:82:2F sig_hashalgo: sha512 signature: 96:BC:2A:18:6E:4D:D8:E5:28:69:9D:E6:65:89:95:D4:BE:4C:5B:7C: 4A:23:11:75:F6:FE:63:79:FC:29:9B:F7:EA:24:B6:F1:EF:F3:80:17: 0B:C0:1E:46:61:29:BB:F9:E0:AC:81:69:85:73:7D:D4:77:82:A8:DB: [...] </syntaxhighlight> === システムファイル改ざんを防ぐ === システムファイル改ざんを防ぐ良い方法はシステム領域を読み取り専用にすることですが、仮にファイルシステムを読み取り専用のファイルシステム(SquashFSやEROFS)にしたとしても記録する場所がSSDであればブロック単位での上書きが可能となります。 1回だけ書き込めて上書きが不可能な媒体としてはCD-R、DVD-R、DVD+R、BD-Rなどの一部の光学メディアが存在しますが、これらをブートメディアとして使用するのは頻繁なアップデートが難しくなります。 そのほかの手法としては別のコンピュータからシステムファイルを取得する「ネットワークブート」を行うという手法もありますが、これはネットワーク経由でシステムファイルが盗まれる可能性と隣り合わせです。しかしながらプロトコルにUEFI HTTPSを、認証に相互認証のmTLSを用いて、その秘密鍵をTPMで管理してOSから読めなくすることでネットワークブートの安全性は何とか確保できるかもしれません(対応マザーボードは不明)。 一方、Android や ChromeOS ではブロックデバイス単位での改ざん検知 (dm-verify) によってシステムイメージの改ざんを防止しています<ref>[https://source.android.com/docs/security/features/verifiedboot/dm-verity?hl=ja dm-verity の実装] Google</ref><ref>[https://research.google/pubs/verified-boot-on-chrome-os-and-how-to-do-it-yourself/ Verified Boot on Chrome OS and How to do it yourself] Google</ref>。 === カーネルメモリ改ざんを防ぐ === カーネルメモリのコード部分は MMU の書き込み禁止によって保護されています。iOS / macOS では Kernel Integrity Protection が<ref>[https://support.apple.com/ja-jp/guide/security/sec8b776536b/web オペレーティングシステムの整合性] Apple</ref> 、Linux では Kernel Strict RWX がこれに相当します<ref>[https://docs.kernel.org/security/self-protection.html Kernel Self-Protection] Linux Foundation</ref>。Windows でもカーネルモードに読み込み専用メモリセグメントが存在し、これに書き込もうとするとブルースクリーンで ATTEMPTED_WRITE_TO_READONLY_MEMORY (0xBE) が発行されます<ref>[https://learn.microsoft.com/ja-jp/windows-hardware/drivers/debugger/bug-check-0xbe--attempted-write-to-readonly-memory バグ チェック 0xBE: ATTEMPTED_WRITE_TO_READONLY_MEMORY] Microsoft</ref>。しかしながら Linux Kernel では kprobes、Static Keys、Static calls などで自己書き換えが多用されているため、一時的にコード部分を書き込み可能なページに割り当てて書き換える text_poke(...) という抜け道が存在します。 また定期的に改ざんが行われていないかをチェックする仕組みも存在します。Windows では[[:w:Kernel Patch Protection|Kernel Patch Protection]] (PatchGuard) / HyperGuard が、Linux では Linux Kernel Runtime Guard(外部パッチ)がこれに該当します。Windows の PatchGuard では改ざんが検出されたらブルースクリーンで CRITICAL_STRUCTURE_CORRUPTION が発行されます。 <!--TODO: Windows の HVCI、macOS の Secure Page Table Monitor / Trusted Execution Monitor--> <!-- === アプリケーション改ざんを防ぐ === SELinux / AppArmor --> == 攻撃用AIを対策する == 攻撃用AIでは基本的に賢いかつ制限の緩い大規模言語モデル (LLM) が使われています。この代表的な例として GLM 5.3 や Qwen3.8-27B-ABLITERATED が存在します。 === コンテキスト爆弾を設置する === 攻撃用AIの対策では相手のLLMを止めることが重要となります。そこで使えるのが'''コンテキスト爆弾''' (context bombs) という手法です<ref>[https://arstechnica.com/security/2026/07/now-defenders-are-embracing-the-prompt-injection-too/ Now, defenders are embracing the prompt injection, too] Ars Technica 2026年7月14日</ref>。 このコンテキスト爆弾は「相手のLLMに対し応答やツール呼び出しで禁止されていることを行わせようとする」というプロンプトインジェクションの一種であり、それによって相手のガードレールがLLMを止めることで相手からの攻撃を防ぎます。この手法は相手の読みそうなテキストにただプロンプトを書いておけば良いだけなので、お手軽に使えます。 コンテキスト爆弾のテキスト例は以下のリポジトリに存在します: * https://github.com/tracebit-com/context-bombs === ハニーポット === ハニーポットは攻撃者を引きつける役目を担います。ハニーポットの評価フレームワークには「UHBS」(Universal Honeypot Benchmarking Standard) が、その品質基準には「UHQS」(Universal Honeypot Quality Score) が存在しますが、2026年現在多くのハニーポットがFランク〜Dランクと残念な状況になっています<ref>[https://uhbs.github.io/uhbs-standard/mkdocs/conformance/ Overview - UHBS — Honeypot Evaluation Framework]</ref>。 <!-- == 自作コードの脆弱性を塞ぐ == 書きかけ --> == 脚注 == <references group="注釈"/> == 参考文献 == <references/> {{DEFAULTSORT:こんひゆうたせきゆりてい}} [[Category:計算機科学]] [[Category:情報技術]] 3859rl0of1le6l9mrxxjyz5v0j3kjg9 304981 304980 2026-10-21T16:23:15Z ~2026-54076-02 92740 /* TCP/UDP経由のサービス */ 304981 wikitext text/x-wiki '''コンピュータセキュリティ'''はコンピュータの安全のことです。ここではコンピュータの安全を確保することを学びます。 == コンピュータセキュリティの基本 == コンピュータは弱いところから狙われるため、弱いところを無くすのがセキュリティの基本となります。 具体例を挙げましょう。一般的な光回線に繋がれてるホームネットワークを考えます。ここには光回線の先に繋がる上位ネットワークと家内のホームネットワーク (家庭におけるLAN) とを区切るエッジルーター(一般的にはハードウェア・ゲートウェイがこれに該当)が存在します。このホームネットワークに数台の新しいWindows PCと一台の古い機器が繋がっていると仮定します。 新しいWindows PC同士ではホームネットワーク経由でファイルをやり取りするためにファイルの共有 (SMB{{efn|Server Message Block}}) を有効にしているとします。一方、古い機器の方を脆弱性のある古いテレビとしましょう。このテレビはインターネットから繋いで地上デジタル放送を見るための DCTP+ {{efn|Digital Transmission Content Protection +}}が搭載されており、UPnP{{efn|Universal Plug and Play}}で自動的にエッジルーター搭載のファイアーウォールに穴あけてインターネット側から DCTP+ に繋がるようになっているものとします。 この仮定によってハッカーは DCTP+ の脆弱性を使って古いテレビに悪意のあるプログラムを実行させてファイルの共有サーバーを立て{{efn|Windows 11時点でもゲスト認証による接続は許可されている<ref>[https://learn.microsoft.com/en-us/windows-server/storage/file-server/smb-interception-defense?tabs=group-policy Protect SMB traffic from interception] Microsoft</ref>。}}、そこからファイルの共有を通じて新しいWindows PCにマルウェア (例えば<code>PHOTO-<ランダムな数字>.png.lnk</code><ref>[https://www.microsoft.com/en-us/security/blog/2026/06/25/photo-zip-campaign-targeting-hospitality-industry-delivers-node-js-implant-persistent-access/ Photo ZIP campaign targeting hospitality industry delivers Node.js implant for persistent access] Microsoft 2026年6月25日</ref>) を送り込むことが可能となりました。 == 安全にパスワードを使う == === 流出したパスワードと被ってないかをチェックする === あちこちのサイトで流出したパスワードは集められてデータベース化されダークネットに流通しています。この代表的なものには2019年に登場した [[:w:en:Collection No. 1|Collection #1]] が挙げられます。この Collection #1 などの流出パスワードデータベースは辞書攻撃に利用されており、これは「Credential Stuffing攻撃」と呼ばれています。 使うパスワードが流出パスワードデータベースに載っていないかを確認するためには上記のデータベースを手に入れるか、上記のデータベースからk-匿名性で検索を行うオンラインサービスを使うと良いでしょう。 このオンラインサービスの代表的なものにはWebサイト「Have I Been Pwned」の提供する「Pwned Passwords」サービスが存在しますが、このAPIではパスワードのSHA-1ハッシュ先頭5文字を渡すと、流出したパスワードのSHA1ハッシュ6文字以降と流出データベースに載っていた回数が返答されます。 <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ # License: CC0 / Public Domain $ # パスワードを入力してSHA-1ハッシュへと変換する(ここでは'test'と入力) $ sha1=$(read -sp "Password: " pass && echo -n $pass | sha1sum | cut -d' ' -f1) Password: $ # 変換後のハッシュを表示 $ echo $sha1 a94a8fe5ccb19ba61c4c0873d391e987982fbbd3 $ # ハッシュの先頭5文字を渡して6文字目以降を検索(':'の後ろは見つかった数) $ curl -s https://api.pwnedpasswords.com/range/$(echo $sha1 | cut -c 1-5) | grep -i $(echo $sha1 | cut -c 6-) FE5CCB19BA61C4C0873D391E987982FBBD3:1579235 </syntaxhighlight> ハッシュの先頭5文字も渡したくない場合や、自社サービスでチェックを行いたい場合は上記のサービスが公式で提供するツール「haveibeenpwned-downloader」[https://github.com/HaveIBeenPwned/PwnedPasswordsDownloader]で全てのハッシュデータをダウンロードして自前で照合しましょう。 === 解析耐性のある鍵導出関数を使う === パスワードでは計算負荷の低い SHA-256 や SHA-512 などの通常のハッシュ関数、メモリ負荷の低い [[:w:PBKDF2|PBKDF2]] や bcrypt などの古い[[:w:鍵導出関数|鍵導出関数]](パスワードハッシュ関数)を使わないようにしましょう。これらの弱いハッシュ関数は GPU や ASIC で高速に解かれてしまいます。 より強いパスワードハッシュ関数としては yescrypt や Argon2id が存在します。パスワードにはこちらを使いましょう。現代の Linux ではアカウントのパスワードハッシュ関数として yescrypt が標準となっています。 使っている Linux の新規アカウントで使われるパスワードハッシュ関数は以下で確認可能です: <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ grep -n 'pam_unix.so' /etc/pam.d/common-password 26:password [success=2 default=ignore] pam_unix.so obscure use_authtok try_first_pass yescrypt </syntaxhighlight> Linuxの現在のアカウントがどのハッシュ関数を使用しているかは以下で確認可能です: <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ sudo cat /etc/shadow | grep $USER # $(1|5|6|b)$=弱い、$y$=強い user:$y$j9T$ST7oYwlQjFy7/8vnL/Ugt0$po4vW4qgGu8lpUNRtH0B3hDHGZACzcRhzIKhqlx.2Z5:20743:0:99999:7::: </syntaxhighlight> 弱いハッシュ関数を使用している場合は<code>passwd $USER</code>でパスワードを再設定して使用するハッシュ関数を更新してください。 一方、Windows 10 以前のローカルアカウントではパスワードハッシュがレジストリの<code>HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>SAM\<wbr>SAM\<wbr>Domains\<wbr>Account\<wbr>Users\<wbr>(ユーザーID)\<wbr>V</code>{{efn|name="sam"}}のバイナリの以下の場所に存在します: * [[:w:LMハッシュ|LMハッシュ]]: 0xCC + (0x9C に指定されたオフセット)<ref name="sam-ghost"/> * NTLMハッシュ: 0xCC + (0xA8 に指定されたオフセット)<ref name="sam-ghost"/> LMハッシュは [[:w:LAN Manager|LAN Manager]] に使われていた [[:w:Data Encryption Standard|DES]] ベースの古いハッシュ、NTLMハッシュは [[:w:NT LAN Manager|NT LAN Manager]] に使われている [[:w:MD4|MD4]] ベースの古いハッシュであり、どちらも非常に弱いものとなっていました。 また Windows の Active Directory ドメインアカウントのオフライン認証向けキャッシュ済みドメイン資格情報はレジストリの<code>HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>SECURITY\<wbr>Cache</code>に存在します: * DCC1 ハッシュ (MSCache v1): 弱い MD4 ベース。Windows XP以前。 * DCC2 ハッシュ (MSCache v2) : 弱めの PBKDF2-HMAC-SHA1 ベース。Windows Vista以後<ref>[https://attack.mitre.org/techniques/T1003/005/ OS Credential Dumping: Cached Domain Credentials] MITRE 2025年10月24日</ref>。 2021年にリリースされた Windows 11 以降は Microsoft アカウントが必須となっています。 <!--TODO: Windows Hello、LSA Secrets === パスワードの複雑性をチェックする === === TPMで鍵を隔離する === --> == 既製製品の脆弱性を塞ぐ == まずは弱いところを無くしましょう。 === ソフトウェアアップデートをする === セキュリティの基本はソフトウェアアップデートです。 ==== PCおよびモバイル ==== PC{{efn|PCサーバを含む}}やモバイルでは基本的に自動で通知が来るので忘れずにアップデートを選択しましょう。手動では以下のように行います: ; Windows : システムのアップデートは基本的に [[:w:Microsoft Update|Microsoft Update]] (Windows Update) で、アプリケーションのアップデートは基本的に<code>winget upgrade --all</code>コマンドで行います。 : また Windows 11 Enterprise では再起動が不要なホットパッチにも対応しています。 ; macOS / iOS : 「ソフトウェアアップデート」 ; Ubuntu / Debian : [[:w:APT|APT]]パッケージ管理システムでは<code>apt upgrade</code>コマンドで更新を行います。 : Ubuntu では GUI による更新用として[[:w:Software Updater|Software Updater]] (<code>update-manager</code>コマンド)、[[:w:Snap (ソフトウェア)|Snap]]パッケージの更新コマンドとして<code>snap refresh</code>、メジャーバージョンの更新コマンドとして<code>do-release-upgrade</code>も存在します。 : また Ubuntu では Ubuntu Pro に登録することで再起動が不要なカーネル修正の「Livepatch」も可能となります(個人では5台まで無料)。SUSEではユーザー空間ライブパッチングまで提供されています(glibc と openssl のみ)<ref>[https://documentation.suse.com/ja-jp/sles/15-SP6/html/SLES-all/cha-ulp.html ユーザ空間ライブパッチ - 管理ガイド - SLES 15 SP6] SUSE</ref>。 ; RedHat / Fedora : <code>yum update</code>コマンド ; Android : 「設定」アプリ→「システム」→「システムアップデート」または「ソフトウェアアップデート」 また個々のハードウェアのファームウェアアップデートは以下で行います: ; Linux : Linuxにおけるファームウェアの更新は基本的に<code>fwupdmgr update</code>コマンドで行います。 : NVMe SSDのファームウェアの更新は<code>nvme fw-download</code>コマンドおよび<code>nvme fw-commit</code>コマンドで行うことができます。 一方、Windows ではファームウェアのアップデートも Windows Update 経由で<ref>[https://learn.microsoft.com/ja-jp/windows-hardware/drivers/bringup/firmware-update ファームウェアの更新] Microsoft</ref>、macOS ではファームウェアのアップデートもmacOSアップデートで行うことができます<ref>[https://support.apple.com/ja-jp/guide/mac-help/mchlp2609/mac Macのファームウェアアップデートの入手方法] Apple</ref>。 <!-- また開発環境では以下も存在します: ; Python : <code>pip -U install</code> --> ==== ルーター ==== ルーターでは以下の設定を有効のままにしておきましょう: ; AirStationシリーズ(Buffalo 製ルーター) : 「ファームウェア自動更新機能」 ; Atermシリーズ(NEC 製ルーター) : 「メンテナンスバージョンアップ機能」「時刻指定バージョンアップ機能」 ==== テレビ ==== テレビでは放送波アップデートが行われるため、「放送波による自動更新」<!--TODO: メーカー別名-->を有効にしましょう。 === 高速に再起動する === パッケージは更新しただけでは反映されません(一部デーモンの更新を除く)。Linuxでは高速に再起動する方法が存在し、これによってダウンタイムを減らすことができます。 ; 更新で影響を受けるデーモンのみ再起動する :* Ubuntu Server: 標準で <code>needrestart</code> が導入されており自動で影響を受けるデーモンの再起動が行われます{{efn|自動的なデーモン再起動を止めるには /etc/apt/apt.conf.d/99needrestart より<code>-m u</code>を削除する必要があります<ref>[https://discourse.ubuntu.com/t/needrestart-changes-in-ubuntu-24-04-service-restarts/44671 `needrestart` changes in Ubuntu 24.04: service restarts] Canonical 2024年</ref>。}}(Ubuntu Desktopでは別途導入が必要)。 :* RedHat / Fedora: <code>dnf needs-restarting</code>が導入されており、それによって再起動するべきデーモンを確認できます。 ; ユーザー空間のみ再起動する(カーネルの更新がない、またはカーネルでlive patchingを行ってる場合) : <code>sudo systemctl soft-reboot</code> ; 高速にカーネルを更新する(ファームウェアの更新がない場合) : <code>sudo systemctl kexec</code> また一部のソフトウェアではホットアップグレード(無停止アップグレード{{efn|Zero-Downtime Upgrade}})にも対応しています (nginx の USR2 シグナル<ref>[https://nginx.org/en/docs/control.html Controlling nginx] nginx</ref>など)。 === 代替ソフトウェアを探す === 更新が停止された古いソフトウェアの多くはそれ自身に脆弱性が存在したり、脆弱性のある古いライブラリに依存していたりします。そのため古いソフトウェアは速やかに代替ソフトウェアへと移行しましょう。 ==== 開発終了したソフトウェアから現役のソフトウェアへ ==== 古いソフトウェアには例えば以下があります: * オフィススイート(代替候補: LibreOffice) ** [[:w:OpenOffice.org|OpenOffice.org]](〜2011年) * 画像ビューア ** [[:w:Susie|Susie]] (〜2013年) * メディアプレイヤー ** [[:w:QuickTime|QuickTime]] for Windows(〜2016年) - リモートコード実行の脆弱性 ([https://www.zerodayinitiative.com/advisories/ZDI-16-241/ ZDI-16-241]、[https://www.zerodayinitiative.com/advisories/ZDI-16-242/ ZDI-16-242]) を残したままサポート終了しました<ref>[https://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/753400.html Apple、「QuickTime for Windows」のサポートを終了、アンインストールを推奨] Impress 2016年4月15日</ref>。 * メディアフィルター(代替候補: LAV Filters) ** [[:w:ffdshow|ffdshow]](〜2014年) ** [[:w:Haali Media Splitter|Haali Media Splitter]](〜2013年) * メディアセンター(代替候補: Kodi) ** [[:w:en:Boxee|Boxee]](〜2011年) ** [[:w:Kodi|XBMC]](〜2014年) - Kodiの前身 * 圧縮ソフトウェア ** [[:w:+Lhaca|+Lhaca]](〜2007年) ** [[:w:Lhaplus|Lhaplus]](〜2017年) またハードウェアに由来する古いソフトウェアには例えば以下があります: * [[w:ウォークマン|ウォークマン]]関連(代替候補: [[:w:Music Center for PC|Music Center for PC]]) ** [[:w:CONNECT Player|CONNECT Player]](〜2007年、Sony) ** [[:w:SonicStage|SonicStage]](〜2009年、Sony) ** [[:w:x-アプリ|x-アプリ]](〜2016年、Sony) * DTCP-IP関連 ** SmartVision/PLAYER powered by DiXiM(〜2019年、NEC)<ref>[https://support.nec-lavie.jp/navigate/support/info/2019/announce/svp/ SmartVision/PLAYER保守サービス終了のお知らせ] NECパーソナルコンピュータ 2019年1月28日</ref><ref>[https://apps.microsoft.com/detail/9wzdncrdkb4c?hl=ja-JP&gl=JP SmartVision/PLAYER powered by DiXiM] Microsoft</ref> ** DiXiM Digital TV plus for I-O DATA(〜2022年、I-O DATA)<ref>[https://www.iodata.jp/lib/product/d/3533.htm DiXiM Digital TV plus for I-O DATA] I-O DATA</ref> なお仮想マシンを使って隔離しながら古いソフトウェアを動かすこともできますが、仮想マシンでも「VMエスケープ」の脆弱性を使用することでホスト環境への侵害が可能なため、仮想マシンの上で弱い環境や弱いソフトウェアを使うこともなるべく避けましょう。<!--TODO: Windows Sandbox--> ==== 古いバージョンのライブラリを避ける ==== 多くのソフトウェアに使用されているライブラリとその過去の危険な脆弱性には例えば以下があります:<!--危険を認識させる。例はライブラリ内のメイン処理に存在し、任意コード実行であり、脆弱性の存在期間が長く、新しいものが好ましい。--> * 画像ライブラリ ** libpng - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2010-1205 CVE-2010-1205](PNG画像で任意コード実行の可能性) ** libjpeg-turbo - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2012-2806 CVE-2012-2806](JPEG画像で任意コード実行の可能性) ** OpenJPEG - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2025-54874 CVE-2025-54874](JPEG2000画像で任意コード実行の可能性) ** libtiff - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2026-12912 CVE-2026-12912](PixarLog圧縮TIFF画像で任意コード実行の可能性) ** libwebp - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2023-4863 CVE-2023-4863](WebP画像で任意コード実行の可能性) * 動画ライブラリ ** FFmpeg - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2024-22860 CVE-2024-22860](JPEG XLアニメーションで任意コード実行の可能性) * 圧縮ライブラリ ** libarchive - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2026-15028 CVE-2026-15028](tarアーカイブ形式で任意コード実行の可能性) ** zlib - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2002-0059 CVE-2002-0059](Deflate圧縮形式で任意コード実行の可能性) ** bzip2 - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2010-0405 CVE-2010-0405](BZ2圧縮形式で任意コード実行の可能性) これらのライブラリはABI(アプリケーションバイナリインターフェイス)が変更されて新しいバージョンの共有ライブラリにドロップイン置換できないものも多くなっています。 また国内で使われている古いソフトウェアでは開発中止になった以下のライブラリも問題となっています: * UNLHA32.DLL<ref>[https://forest.watch.impress.co.jp/docs/news/372729.html 圧縮・解凍用DLL「UNLHA32.DLL」が開発中止、作者はLZHの利用中止を呼びかけ] Impress 2010年6月7日</ref> Webフレームワークでは開発中止となった以下のフレームワークが問題となっています: * [[:w:Model View Controller|Model View Controller]]フレームワーク(代替候補: [[:w:Apache Struts|Apache Struts]] 2、[[:w:Spring Framework#Model-View-Controller フレームワーク|Spring MVC]]) ** [[:w:en:Apache Struts 1|Apache Struts 1]](〜2008年) - Java言語 * [[:w:アスペクト指向プログラミング|アスペクト指向フレームワーク]](代替候補: [[:w:Spring Framework|Spring Framework]]、[[:w:en:Micronaut (framework)|Micronaut]]) ** [[:w:Seasar|Seasar]](〜2016年) - Java言語 * [[:w:シングルページアプリケーション|シングルページアプリケーション]]フレームワーク(代替候補: [[:w:Angular|Angular]]、[[:w:Vue.js|Vue.js]]) ** [[:w:AngularJS|AngularJS]](〜2022年) - JavaScript === 古いハードウェアに対処する === サポート切れの OS を搭載したハードウェアはどうすれば良いでしょうか。これには使い続けるいくつかの方法がありますが、基本的にオススメしません。古い OS を搭載していたハードウェアはハードウェア仕様も古いからです。 ==== スタンドアロン運用 ==== 古いハードウェアはインターネットに繋がずに使用すること(スタンドアロン運用)も可能です。 しかしながらUSBメモリでデータをやり取りする場合はUSBメモリ経由での感染などのリスクは残ります。 ==== 新しめのLinuxを導入 ==== 新しめのLinuxを導入するという方法もあります。 これに適したものでは例えばWindows 11非対応のPC (Intel 第7世代以前、AMD Ryzen 1000シリーズ以前) が挙げられます。 またスマートフォンやタブレットであればカスタムROMが、ルーターであればDD-WRTやOpenWRTが存在します。 ==== 手放す ==== 手に負えなければデータだけバックアップして手放しましょう。情報が漏れないよう初期化も忘れずに。 == 不要なサービスを止める / 削除する == {| class="wikitable" |+ サービス表示系コマンド |- ! 稼働中のシステムサービスを見る | <code>systemctl --type=service --state=running</code> |- ! 稼働中のユーザーサービスを見る | <code>systemctl --user --type=service --state=running</code> |} === TCP/UDP経由のサービス === TCP/UDPでのポート待ち受けのあるプロセスを見るには <code>sudo ss -tulnp</code> を、通信しているプロセスを見るには <code>sudo lsof -i -P -n</code> を実行しましょう。 {| class="wikitable" |+ 主なポート待ち受けのあるプロセス |- ! ポート !! 機能 !! プロセス名 !! サービス名または起動コマンド !! パッケージ名 (Ubuntu) || 直接問い合せコマンド |- | rowspan=2 | 53/UDP<br>53/TCP || rowspan=2 | DNS(名前解決) || systemd-resolved || systemd-resolved.service || systemd-resolved || <code>dig @127.0.0.53 example.com</code> |- | dnsmasq || dnsmasq.service<br/>dnsmasq@.service || dnsmasq-base<br>dnsmasq || <code>dig @10.208.199.1 example.com</code> |- | rowspan=2 | 5353/UDP || rowspan=2 | [[:w:マルチキャストDNS|マルチキャストDNS]] || systemd-resolved || systemd-resolved.service || systemd-resolved || <code>resolvectl -p mdns query $HOSTNAME.local</code> |- | Avahi || avahi-daemon.service || avahi-daemon || <code>avahi-resolve-host-name $HOSTNAME.local</code> |- | 67/UDP<br>547/UDP || [[:w:DHCP|DHCP]]<br>[[:w:DHCPv6|DHCPv6]] || dnsmasq || dnsmasq.service<br/>dnsmasq@.service || dnsmasq-base<br>dnsmasq || <code>IP=$(ip -4 -o addr show pan1 &vert; grep -oP '(?<=inet )[\d.]+'); sudo dhcping -v -i -s "$IP" -c "$IP"</code>{{efn|Ubuntuではdhcpingパッケージの導入が必要です。}} |- | rowspan=2 | 68/UDP<br>546/UDP || rowspan=2 | DHCPクライアント<br>DHCPv6クライアント{{efn|単独のDHCPクライアントである dhclient、dhcpcd なども存在する。また開発終了になったisc-dhcp-clientも存在した。}} || systemd-networkd<wbr>{{efn|name="network-all"}} || || systemd || |- | NetworkManager<wbr>{{efn|name="network-all"|ネットワーク管理全般を担当しています。}} || NetworkManager.service || network-manager || |- | rowspan=2 | 123/UDP<br>4460/TCP || rowspan=2 | NTP(時刻同期)<br>NTS-KE (NTPの鍵交換){{efn|これらの代替として systemd-timesyncd もありますが、こちらは NTP の代わりに単純な SNTP のみ実装の上、サーバーを持たずクライアント側のみ対応です。}} || ntpd || ntpsec.service || ntpsec || rowspan=2 | <code>ntpdig localhost</code>{{efn|ローカルへのNTP問い合せは<code>ntpdate -q localhost</code>でもできますが、こちらはNTP-KE非対応です。}} |- | chronyd || chrony.service || chrony |- | 80/TCP<br>443/HTTP<br>443/UDP || HTTP<br>HTTPS<br>HTTP/3 (QUIC) || apache2 || apache2.service<br>apache2@.service<br>httpd.service<br>httpd@.service || apache2 || HTTP: <code>curl http://localhost</code><br>HTTPS: <code>curl --http2 https://localhost</code><br>HTTP/3: <code>curl --http3-only https://localhost</code> |- | rowspan=2 | ユーザーポート/UDP || rowspan=2 | HTTP/3 (QUIC) クライアント<br>WebRTCクライアント || chrome{{efn|Google Chrome}} || <code>google-chrome</code> || google-chrome (公式APTリポジトリ) || |- | firefox{{efn|Mozzila Firefox}} || <code>firefox</code> || firefox (snap) || |- | rowspan=2 |21/TCP<br>20/TCP{{efn|アクティブモードのみデータ転送で使われます。}} || rowspan=2 | FTP || proftpd || proftpd.service<br>proftpd@.service || proftpd-core || rowspan=2 | <code>curl ftp://localhost</code> |- | vsftpd || vsftpd.service || vsftpd |- | 22/TCP || SSH / SFTP || sshd || ssh.service<br>sshd@.service || openssh-server || <code>ssh-keyscan 127.0.0.1</code> <!--|- | 6881/TCP || BitTorrent || Transmission<br>Fragments<br>qBittorrent<br>KTorrent<br>KGet || || ||--> |- | 5001/TCP<br>5001/UDP || rowspan=2| ネットワークパフォーマンス計測 || iperf || <code>iperf -s</code> || iperf || <code>iperf -c localhost</code> |- | 5021/TCP<br>5021/UDP || iperf3 || <code>iperf3 -s</code> || iperf3 || <code>iperf3 -c localhost</code> |- | 1716/UDP<br>1716/TCP<br>ユーザーポート/UDP || スマートフォン連携 (KDE) || kdeconnectd || <code>kdeconnect-app</code> || kdeconnect || |- | ユーザーポート/TCP || Claude Proxy Service || code{{efn|[[:w:Visual Studio Code|Visual Studio Code]]のプロセス。}} || <code>code</code> || code (公式APTリポジトリ) || <!-- |- | || AI コーディング支援 (Google Antigravity CLI{{efn|Command Line Interface}}) || agy || || (Visal Studio Code拡張) || --> |- | rowspan=2 | 3389/TCP<br>3389/UDP || rowspan=2 | Remote Desktop Protocol || gnome-remote-desktop-daemon{{efn|GNOME Remote Desktop}} || gnome-remote-desktop.service<!-- (system)--><br>gnome-remote-desktop.service (user)<br>gnome-remote-desktop-headless.service (user) || gnome-remote-desktop || |- | krdpserver || app-org.kde.krdpserver.service (user) || krdp || |- | 47984/TCP<br>47989/TCP<br>48010/TCP<br>47998–48010/UDP || NVIDIA GameStream || sunshine || app-dev.<wbr>lizardbyte.<wbr>app.<wbr>Sunshine.service (user) || sunshine (公式debファイル) || (moonlight-qt) |- | 27031-27036/UDP<br>27036/TCP || Steam Remote Play<ref>[https://help.steampowered.com/ja/faqs/view/2EA8-4D75-DA21-31EB Steam接続に必要なポート] Valve</ref> || steam || <code>steam</code> || steam (公式APTリポジトリ) || |} <!--TODO: UPnP、CUPS、Postfix、Samba、Wsdd--> === Unix Domain経由のサービス === Unix Domainでのポート待ち受けのあるプロセスを見るには <code>sudo ss -xlp</code> を実行しましょう。 === dbus経由のサービス === システムバスは <code>busctl --system list</code>、セッションバスは <code>busctl --user list</code> で確認することができます。 それらを提供する実行中のプロセスの一覧は以下で取得できます: * システムバスを提供するプロセス: <code>busctl --system --no-pager | awk 'NR>1 && $2 ~ /^[0-9]+$/ {print $2}' | xargs -I {} readlink "/proc/{}/exe" | sort -u</code> * ユーザーバスを提供するプロセス: <code>busctl --user --no-pager | awk 'NR>1 && $2 ~ /^[0-9]+$/ {print $2}' | xargs -I {} readlink "/proc/{}/exe" | sort -u</code> dbusサービスの一部はプロセス未実行のアクティベータブル (activatable) な状態で提供されています。アクティベータブルな状態で提供するサービスの実行コマンドは以下で取得できます: * activatableなシステムバスの実行コマンド: <code>busctl --system --no-pager --activatable | awk '{print $1}' | xargs -I {} find /usr/share/dbus-1 -name "{}.service" | xargs grep -h "Exec=" | sed 's/Exec=//g' | sort -u</code> * activatableなユーザーバスの実行コマンド: <code>busctl --user --no-pager --activatable | awk '{print $1}' | xargs -I {} find /usr/share/dbus-1 -name "{}.service" | xargs grep -h "Exec=" | sed 's/Exec=//g' | sort -u</code> == 潜在的な脆弱性を減らす == 現代のプログラムでは以下のような保護が行われています。 === メモリアドレスの推測困難化 === 攻撃に必要なコード片(ガジェット)のメモリアドレスを推測しにくくするために、カーネル空間、ユーザー空間の両方で[[:w:アドレス空間配置のランダム化|アドレス空間配置のランダム化]](ASLR)が行われています。カーネル空間の ASLR は KASLR (Kernel ASLR) とも呼ばれています。 ユーザー空間のプログラムで ASLR を有効にするためには[[:w:位置独立コード|位置独立コード]] (PIC) / 位置独立実行形式 (PIE) である必要があります。Unix で使われる実行形式の ELF では位置独立実行形式が ET_DYN、非位置独立実行形式 (non-PIE) が ET_EXEC となります。 Linuxでは ASLR が無効となる非位置独立実行形式のファイルを以下で検索することができます: <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ # License: CC0 / Public Domain $ # 非位置独立実行形式 (non-PIE) のバイナリを検索 $ find / -type f -executable 2>/dev/null | xargs -I {} sh -c 'LANG=C readelf -h {} 2>/dev/null | grep -E "Type:.*EXEC" >/dev/null && echo {}' /usr/lib/default.sfx /usr/lib/klibc/bin/mkfifo /usr/lib/klibc/bin/zcat /usr/lib/klibc/bin/poweroff [...] $ # 非位置独立実行形式 (non-PIE) のバイナリを含むDebianパッケージを検索 $ find / -type f -executable 2>/dev/null | xargs -I {} sh -c 'LANG=C readelf -h {} 2>/dev/null | grep -E "Type:.*EXEC" >/dev/null && echo {}' | xargs -r -d '\n' -n1 dpkg-query -S | sed 's/: .*//' | sort -u aidl busybox-static code cpp-15-x86-64-linux-gnu cuda-gdb-13-4 cuda-nvcc-13-4 cuda-sanitizer-13-4 cuda-tileiras-13-4 debugedit g++-15-x86-64-linux-gnu gcc-15-x86-64-linux-gnu gcc-mingw-w64-i686-posix gdc-15-x86-64-linux-gnu gds-tools-13-4 gfortran-15-x86-64-linux-gnu gh git-lfs gobjc-15-x86-64-linux-gnu gocryptfs golang-1.26-go go-md2man go-mtpfs [...] </syntaxhighlight> 現在のLinuxカーネルがユーザー空間 ASLR を有効にしているかは以下で確認できます (出力例はUbuntu 26.04): <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ sysctl kernel.randomize_va_space # 0=無し、1=部分的、2=完全 kernel.randomize_va_space = 2 </syntaxhighlight> また現在のLinuxカーネルがカーネル ASLR (KASLR) を有効にしているかは以下で確認できます (出力例はUbuntu 26.04): <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ grep 'CONFIG_RANDOMIZE_BASE' /boot/config-$(uname -r) # y=Yes, n=No CONFIG_RANDOMIZE_BASE=y </syntaxhighlight> なお ASLR は間接的な関数呼び出し( C++ の vtable を含む)があると、そのアドレスから ASLR のオフセットがバレてしまい突破されてしまいます。 また CPU の[[:w:投機的実行|投機的実行]]での情報漏れ (Spectre) による[[:w:キャッシュ攻撃|キャッシュサイドチャネル攻撃]](後述)の一つである「投機的探査」 (BlindSide) によってもコードの位置情報の取得がされ ASLR が突破されてしまいます。 === 投機的実行の情報漏れ防止 === 前述のとおり、投機的実行による情報漏れ (Spectre) は攻撃に繋がります。Spectre には境界チェックを迂回する Spectre V1 と間接分岐の分岐先アドレスのキャッシュ{{efn|分岐先バッファ (Branch Target Buffer、BTB)や分岐先アドレスキャッシュ (Branch Target Address Cache、BTAC) と呼ばれる。}}を汚染する Spectre V2 が存在します。<!--TODO: Spectre v3/v4、Zenbleed--> Spectre V1 を防ぐ方法としては投機的実行を阻害するための命令(x86ではLFENCE)の挿入{{efn|Linuxカーネルでの投機的実行の防止は<code>barrier_nospec()</code>。}}やアクセスできるアドレス範囲を狭めることが行われています{{efn|GCCでの投機的実行での範囲外アクセス防止は<code>__builtin_speculation_safe_value(...)</code>、Linuxカーネルでの投機的実行での範囲外アクセス防止は<code>array_index_nospec(...)</code><ref>[https://lwn.net/Articles/759423/ Spectre V1 defense in GCC] LWN 2018年7月10日</ref>。}}。 また Spectre V2 では攻撃を防ぎながらも速度を落とさない方法として脆弱な分岐先アドレスキャッシュに依存する間接分岐の代わりにリターンアドレスのキャッシュ{{efn|リターンスタックバッファ (RSB) と呼ばれる。}}に依存するリターン命令を使う retpoline が登場しました。しかしながらこの retpoline でも速度の低下は起こるため、既知の間接呼び出しを条件分岐 + 直接呼び出しに変換して高速化する手法が模索されました。LLVM では retpoline を有効にする <code>-mretpoline</code>フラグの処理内に既知の仮想関数呼び出しを[[:w:二分木|二分木]]の直接分岐に置き換える「分岐ファネル」(Branch funnel) が導入されています<ref>[https://reviews.llvm.org/D42453 Use branch funnels for virtual calls when retpoline mitigation is enabled.] LLVM project</ref>。また Linux カーネルでも既知の間接呼び出しを条件分岐 + 直接呼び出しに変換する INDIRECT_CALL_* マクロが搭載されています<ref>[https://lwn.net/Articles/774743/ Relief for retpoline pain] LWN 2018年12月14日</ref>。<!--TODO: Intel CETのSHSTKとretpolineの衝突--> 一方、リターン命令の投機的実行も「Retbleed」や AMD CPU における「投機的リターンスタックオーバーフロー」 (SRSO){{efn|Speculative Return Stack Overflow。}}のような脆弱性が見つかっています。 なお低権限コードから高権限コードへの権限境界をまたいだ Spectre および Retbleed は Intel の「間接分岐制限付き投機」(IBRS){{efn|Indirect Branch Restricted Speculation。}}およびそれを高速化した「拡張IBRS」(eIBRS) などハードウェア側によって塞がれました<ref>[https://www.intel.com/content/www/us/en/developer/articles/technical/software-security-guidance/technical-documentation/hardware-behavior-related-to-speculative-execution.html Hardware Features and Behavior Related to Speculative Execution] Intel 2026年10月14日</ref>が、権限境界をまたがないものは今も可能となっています。 === メモリにおける書き込みと実行の排他化 (W^X) === メモリでは書き込み可能領域の実行不可化 ([[:w:NXビット|NXビット]]) と実行可能領域の書き込み不可化による書き込みと実行の排他化([[:w:en:W^X|W^X]])が一般的となっています。NXビットは x86 では NXビットは AMD64 と共に搭載された古い機能であるため、今時の CPU と OS は基本的にこれに対応しています。 現在の CPU がNXビットを有効にしているかはLinuxでは以下で確認できます: <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ grep '^flags' /proc/cpuinfo | grep -o nx nx nx [...] </syntaxhighlight> 現在のLinuxカーネルが厳格な W^X を有効にしているかは以下で確認できます (出力例はUbuntu 26.04): <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ grep '_RWX' /boot/config-$(uname -r) # y=Yes, n=No CONFIG_ARCH_HAS_STRICT_KERNEL_RWX=y CONFIG_STRICT_KERNEL_RWX=y CONFIG_ARCH_HAS_STRICT_MODULE_RWX=y CONFIG_STRICT_MODULE_RWX=y </syntaxhighlight> しかしながら書き込みと実行の排他の原則を破ってそれらを同時に行える場所というものも存在しています。読み込み・書き込み・実行が可能なことから「RWXセクション」と呼ばれています。Windows ではメモリページの PAGE_EXECUTE_READWRITE フラグがこれに相当します<ref>[https://learn.microsoft.com/ja-jp/windows/win32/memory/memory-protection-constants メモリ保護定数] メモリ保護定数 (WinNT.h) - Win32 apps | Microsoft Learn</ref>。 Windows のカーネルドライバでは NX フラグの使用が義務付けられています<ref>[https://learn.microsoft.com/en-us/windows-hardware/test/hlk/testref/driver-compatibility-with-device-guard メモリ整合性と VBS とのドライバ互換性] Microsoft</ref>が、その Windows カーネルにおいても PatchGuard の領域がコード難読化のためにこの原則を破っています。<!--TODO: ホットパッチ--> また Linux でも実行可能領域を書き込み可能ページとして割り当てて書き込む text_poke 関数が用意されています。 === 制御フローの操作を防ぐ (CET) === 現代では「[[:w:Return-oriented programming|リターン指向プログラミング]]」(ROP)、「呼び出し指向プログラミング」 (COP)、「ジャンプ指向プログラミング」(JOP) 、「[[:en:Sigreturn-oriented programming|Sigreturn指向プログラミング]]」(SROP) などの制御フロー操作による攻撃が一般化していますが、これを防ぐ技術として「[[:w:en:Control-flow integrity#Intel Control-flow Enforcement Technology|制御フロー強制テクノロジー]]」(CET) の「[[:w:en:Indirect branch tracking|間接分岐追跡]]」(IBT) と「[[:w:en:Shadow stack|シャドウスタック]]」(SHSTK) が存在します。 制御フロー強制は比較的新しい技術であるため、対応する CPU は以下に限られます: * Intel Core (Tiger Lake) 第11世代以降 * AMD Zen 3 以降(シャドウスタックのみ) 現在の CPU が間接分岐追跡 (IBT) およびシャドウスタックに対応しているかはLinuxでは以下で確認できます: <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ grep '^flags' /proc/cpuinfo | grep -oE '(ibt|shstk)' shstk ibt shstk ibt [...] </syntaxhighlight> またユーザーランドのシャドウスタックの使用にはユーザーランドだけでなくカーネルの対応も必要となります。Linux カーネル では 6.6 以降対応でこれに対応しています(sigreturnにも対応<ref>[https://github.com/torvalds/linux/commit/05e36022c0543ba55a3de55af455b00cb3eb4fcc x86/shstk: Handle signals for shadow stack · torvalds/linux@05e3602] GitHub 2023年8月3日</ref>)。 Linuxディストリビューションでは Ubuntu 24.04以降、 Red Hat Enterprise Linux 9.7 以降<ref>[https://docs.redhat.com/ja/documentation/red_hat_enterprise_linux/9/html/9.7_release_notes/new-features-kernel 4.8. カーネル - 9.7 リリースノート - Red Hat Enterprise Linux - 9 - Red Hat Documentation] Red Hat</ref>が標準でシャドウスタックを有効としています。 現在のLinuxカーネルが間接分岐追跡およびシャドウスタックを有効にしているかは以下で確認できます (出力例はUbuntu 26.04): <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ grep -E '_(IBT|SHADOW_STACK)' /boot/config-$(uname -r) # y=Yes, n=No CONFIG_CC_HAS_IBT=y # CONFIG_X86_KERNEL_IBT is not set CONFIG_X86_USER_SHADOW_STACK=y CONFIG_X86_DISABLED_FEATURE_IBT=y CONFIG_ARCH_HAS_USER_SHADOW_STACK=y </syntaxhighlight> 現在のユーザーランドプログラムの中で間接分岐追跡またはシャドウスタックが無効化されているものはLinuxでは以下で確認できます: <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ # License: CC0 / Public Domain $ # 間接分岐追跡またはシャドウスタックが無効化されているバイナリを検索 $ find / -type f 2>/dev/null | xargs -I {} sh -c 'readelf -h "{}" >/dev/null 2>&1 && (readelf -n "{}" 2>/dev/null | grep -E IBT,.*SHSTK > /dev/null || echo "{}")' /usr/lib/lv2/carla.lv2/carla.so /usr/lib/7zip/7z /usr/lib/7zip/7zCon.sfx /usr/lib/7zip/7zr /usr/lib/7zip/7z.so /usr/lib/7zip/7za /usr/lib/klibc/bin/ipconfig /usr/lib/klibc/bin/umount /usr/lib/klibc/bin/halt [...] $ # 間接分岐追跡またはシャドウスタックが無効化されているバイナリを含むDebianパッケージを検索 $ find / -type f 2>/dev/null | xargs -I {} sh -c 'readelf -h "{}" >/dev/null 2>&1 && (readelf -n "{}" 2>/dev/null | grep -E IBT,.*SHSTK > /dev/null || echo "{}")' | xargs -r -d '\n' -n1 dpkg-query -S | sed 's/: .*//' | sort -u 7zip aidl ardour avr-libc cargo-1.93 carla carla-bridge-wine32:i386 carla-bridge-wine64 carla-lv2 carla-vst cuda-ctadvisor-13-4 cuda-cudart-13-4 [...] </syntaxhighlight> なお、制御フロー強制テクノロジーの間接分岐追跡とシャドウスタックが有効であっても異なる関数の通常呼び出しは防げません。分かりやすい例では関数の間接呼び出しにおいて関数ポインタを<code>sigaction</code>へと変更して独自のシグナルハンドラを登録し、その後クラッシュさせてそのシグナルハンドラを呼び出すという「セグメンテーション違反指向プログラミング」(SFOP) が挙げられます。また攻撃に使える関数 (dop gadgets) {{efn|dop gadgetsの検索の公式実装は「DOP-StaticAssist」[https://github.com/melynx/DOP-StaticAssist]だが長らく更新されておらず古いLLVM 3.5に依存している状態となっている。}}の通常呼び出しだけで攻撃する「Data-Oriented Programming」(DOP) <ref>Hong Hu et al. [https://ieeexplore.ieee.org/stamp/stamp.jsp?tp=&arnumber=7546545 Data-Oriented Programming: On the Expressiveness of Non-Control Data Attacks] IEEE 2016年</ref>{{efn|セキュリティ以外の文脈におけるデータ指向プログラミング、データ指向設計、データ駆動型設計とは異なる。}}という手法も存在します。 C++向けでは仮想関数テーブル (vtable) を改ざんして攻撃に使える仮想関数(仮想関数ガジェット、vfgadget)を呼び出す「偽造オブジェクト指向プログラミング」(COOP) という攻撃手法も登場しています。 === メモリ安全性の高いソフトウェアへ === 既存のソフトウェアの脆弱性は7割がメモリ安全性の問題に起因すると言われています<ref>[https://www.cisa.gov/sites/default/files/2023-12/CSAC_TAC_Recommendations-Memory-Safety_Final_20231205_508.pdf REPORT TO THE CISA DIRECTOR Technical Advisory Council Memory Safety] サイバーセキュリティ諮問委員会 (CSAC) 2023年12月5日</ref>。しかしながら[[C言語]]や[[C++]]はメモリ安全性が低いため、メモリ安全性の確保できる[[Rust]]などで書かれた代替プログラムが登場しています: {| class="wikitable" |+ コマンドのRust版 |- ! コマンドの概要 !! 従来版 !! Rust版 |- | Unix系の基本コマンド群 || GNU Core Utilities || '''uutils coreutils''' |- | ファイル検索コマンド群{{efn|<code>find</code>、<code>locate</code>、<code>updatedb</code>、<code>xargs</code>の4コマンド}} || GNU Findutils || '''uutils findutils''' |- | ファイル差分コマンド群{{efn|<code>diff</code>、<code>cmp</code>、<code>diff3</code>、<code>sdiff</code>の4コマンド}} || GNU Diffutils || '''uutils diffutils''' |- | ストリームエディタ (sed) || GNU sed / FreeBSD sed || '''uutils sed''' |- | AWKスクリプト || GNU AWK || '''uutils AWK''' |- | 文字列検索 || GNU Grep || '''uutils Grep''' |- | tarアーカイブ || GNU Tar || '''uutils tar''' |- | アカウント管理コマンド群 || shadow-utils || '''uutils shadow-utils''' |- | アクセス制御コマンド群{{efn|<code>chacl</code>、<code>getfacl</code>、<code>setfacl</code>の3コマンド}} || acl || '''uutils acl''' |- | procfs{{efn|プロセスファイルシステム}}表示コマンド群 || procps / procps-ng || '''uutils procps''' |- | ホスト名管理コマンド群{{efn|<code>hostname</code>、<code>dnsdomainname</code>、<code>domainname</code>、<code>nisdomainname</code>、<code>ypdomainname</code>の5コマンド。}} || hostname || '''uutils hostname''' |- | Linuxユーティリティ || util-linux || '''uutils util-linux''' |- | 権限昇格 || sudo || '''sudo-rs''' |- | 暗号・署名システム || GnuPG || '''Sequoia PGP''' |- | 時刻同期 || ntpd || '''ntpd-rs''' |- | セキュアシェル (SSH) || OpenSSH || '''russh''' |} これらのRustで書かれたコマンドのうちuutils coreutilsとsudo-rsはUbuntuに採用されています。 またライブラリでもRustだけ (Pure Rust) で実装されたものが登場しています: * 画像ライブラリ - これらは例えばGNOMEデスクトップ環境の画像ローダーGlycinから使われています<ref>[https://gitlab.gnome.org/GNOME/glycin GNOME / glycin · GitLab] GNOME Project</ref>。 ** libpng → pngクレート - PNG画像向け。 ** libgif → gifクレート - GIF画像向け。 ** libjpeg / libjpeg-turbo → zune-jpeg / libjpeg-turbo-rs - JPEG画像向け。 ** OpenJPEG → hayro-jpeg2000 - JPEG 2000画像向け。 ** libtiff → tiffクレート - Tiff画像向け ** libwebp → image-webpクレート - WebP画像向け。 ** libraw → libopenraw - RAW画像向け。 ** librsvg - SVG画像向け。C言語からRustに書き直しされました。 * 圧縮ライブラリ ** zlib / zlib-ng → zlib-rs - Deflate圧縮向け ** libbzip2 → bzip2-rs - BZ2圧縮向け * 暗号化ライブラリ ** OpenSSL / GnuTLS → [[:w:en:Rustls|Rustls]] * Unicode処理ライブラリ ** ICU4C → ICU4X * テキスト整形ライブラリ ** HarfBuzz → HarfRust * ブラウザエンジン ** Blink/Gecko → Servo <!-- === 整合性チェック === PatchGuard / HyperGuard --> == 不審な改変が行われていないかを調べる == 例えばOSの起動には一連のシーケンスがありますが、マルウェアは基本的にここの途中に入り込んで永続化します。 {| class="wikitable" |+ 起動シーケンス |- ! 種類 || Windows 11以降 !! Linux (Gnome) !! Linux (KDE) |- | 1. 起動ファームウェア || [[:w:Unified Extensible Firmware Interface|UEFI]] || colspan=2 | [[:w:Basic Input/Output System|レガシーBIOS]] / UEFI |- | 2. ブートローダー || [[:w:Windows Boot Manager|Windows Boot Manager]] (bootmgfw.efi)<br> → [[:w:Windows Boot Manager#winload.exe/winload.efi|Windows OS Loader]] (winload.efi) || colspan=2 | GRUB{{efn|Ubuntuの標準。}} / systemd-boot / Unified Kernel Image{{efn|Linuxカーネルとブートイメージを単一バイナリにする仕組み。}} / EFI boot stub{{efn|LinuxカーネルをEFIから直接ブートできるようにする仕組み。}} |- | 3. カーネル || [[:w:ntoskrnl.exe|ntoskrnl.exe]] || colspan=2 | Linuxカーネル ([[:w:vmlinux|vmlinux]]{{efn|圧縮後はvmlinuzとなる。}}) |- | 4. 初期化プロセス || [[:w:en:Session Manager Subsystem|smss.exe]]<br> → wininit.exe<br> || rowspan=2 colspan=2 | [[:w:systemd|systemd]]{{efn|以前は代替initもよく使われていたが、今はsystemdが標準となっている。}} |- | 5. サービスコントロールマネージャ || colspan=2 | [[:w:en:Service Control Manager|services.exe]] |- | rowspan=2 | 6. ログインマネージャ || rowspan=2 | [[:w:Winlogon|winlogon.exe]] || colspan=2 | systemd-logind<br>sd-pam |- | [[:w:GNOME ディスプレイマネージャー|GDM]] || [[:w:Simple Desktop Display Manager|SDDM]] |- | rowspan=2 | 7. ユーザー初期化プロセス || rowspan=2 | userinit.exe || colspan=2 | systemd |- | gnome-session || kcminit<br> → plasma_session |- | 8. シェル || [[:w:Windows Explorer|explorer.exe]] || gnome-shell || plasmashell |- | 9. コンポジタ || [[:w:Desktop Window Manager|dwm.exe]] || mutter || kwin |} また起動シーケンス以外にもアップデートシーケンスへの感染やシェル感染、ブラウザ感染もあります。 {| class="wikitable" |+ Windows における代表的なユーザースクリプト又はコマンド起動が可能な設定ファイル |- ! 規格/アプリケーション !! ユーザー !! システム |- | Windows || %APPDATA%\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows\<wbr>Start Menu\<wbr>Programs\<wbr>Startup\<wbr>* || C:\<wbr>ProgramData\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows\<wbr>Start Menu\<wbr>Programs\<wbr>Startup\<wbr>* |- | [[:w:PowerShell|PowerShell]] プロファイル<ref>[https://learn.microsoft.com/ja-jp/powershell/module/microsoft.powershell.core/about/about_profiles?view=powershell-7.6 about_Profiles - PowerShell - Microsoft Learn] Microsoft</ref> || %USERPROFILE%\<wbr>Documents\<wbr>PowerShell\<wbr>Profile.ps1<br>%USERPROFILE%\<wbr>Documents\<wbr>PowerShell\<wbr>Microsoft.PowerShell_profile.ps1 || C:\<wbr>Windows\<wbr>System32\<wbr>WindowsPowerShell\<wbr>*\<wbr>Profile.ps1<br>C:\<wbr>Windows\<wbr>System32\<wbr>WindowsPowerShell\<wbr>*\<wbr>Microsoft.PowerShell_profile.ps1 |} {| class="wikitable" |+ Linux における代表的なユーザースクリプト又はコマンド起動が可能な設定ファイル |- ! 規格/アプリケーション !! ユーザー !! システム |- | POSIX標準 || ~/.profile || /etc/profile |- | XDG Base Directory<wbr>標準 || ~/.local/bin/* || |- | FHS{{efn|Filesystem Hierarchy Standard}}<wbr>標準[https://refspecs.linuxfoundation.org/fhs.shtml] || || /bin/* /sbin/* /usr/bin/* /usr/local/bin/* /etc/inittab |- | LSB{{efn|Linux Standard Base}}<wbr>標準[https://refspecs.linuxfoundation.org/lsb.shtml] || || /etc/profile.d/* /etc/init.d/* /etc/cron.d/* |- | Desktop Application Autostart Specification<wbr>標準[https://specifications.freedesktop.org/autostart/latest/]{{efn|systemd-xdg-autostart-generator が導入されているシステムではこれらがsystemd設定に自動変換される。}} || ~/.config/autostart/* || /etc/xdg/autostart/* |- | Bash || ~/.bash_profile ~/.bashrc || /etc/bash_profile /etc/bash.bashrc /etc/bash.bash_logout |- | Z shell (Zsh) || ~/.zshenv ~/.zprofile ~/.zshrc ~/.zlogin ~/.zlogout || /etc/zshenv /etc/zprofile /etc/zshrc /etc/zlogin /etc/zlogout<br/>(または /etc/zsh/zshenv /etc/zsh/zprofile /etc/zsh/zshrc /etc/zsh/zlogin /etc/zsh/zlogout) |- | Systemd || ~/.config/systemd/user/* || /etc/systemd/system/* /etc/systemd/user/* |- | Xorg || ~/.xinitrc ~/.xserverrc ~/.xsession || /etc/X11/xinit/xinitrc /etc/X11/xinit/xserverrc /etc/X11/Xsession /usr/share/xsessions/* |- | Wayland || || /usr/share/wayland-sessions/* |- | Python || ~/.local/lib/python*/site-packages/*/**{{efn|絶対パスは<code>python3 -c 'import site; print(site.getusersitepackages())'</code>で確認可能。}} || /usr/lib/python*/dist-packages/*/** /usr/local/lib/python*/dist-packages/*/**{{efn|絶対パスは<code>python3 -c 'import site; print(site.getsitepackages())'</code>で確認可能。}} |- | Perl{{efn|Debian/UbuntuではDebianパッケージ設定システム (debconf) のためにPerlを使用している。}} || || /usr/share/perl*/** /usr/local/share/perl*/** /usr/lib/*/perl*/** /usr/local/lib/*/perl*/**{{efn|絶対パスは<code>perl -V:installsitearch -V:installsitelib -V:installvendorarch -V:installvendorlib -V:archlib -V:privlib -V:installarchlib -V:installprivlib</code>で確認可能。}} |} === パッケージ管理ファイルを検証する === パッケージ管理システムが管理しているファイルではファイルハッシュが保存されているため簡単にその検証を行うことが可能です: {| class="wikitable" |- ! OS / パッケージシステム !! 検証のみ !! 修復 |- | Windows || <code>sfc&nbsp;/verifyonly</code> || <code>sfc&nbsp;/scannow</code> |- | Debパッケージ (Debian / Ubuntu) || <code>debsums -s</code> || <code>apt install --reinstall $(debsums -cs &verbar; xargs -r dpkg-query -S &verbar; cut -d: -f1 &verbar; sort -u)</code> |- | RPMパッケージ (RedHat / Fedora) || <code>rpm -Va</code> || |} ただしローカルハッシュが改ざんされている可能性もあるため過信はできません。<!--TODO: ローカルハッシュの検証法--> 自動的にシステムの検証を行うシステムも存在します: * Android - ブロックデバイスレベルでのハッシュ検証 (dm-verityベース)<ref>[https://source.android.com/docs/security/features/verifiedboot/dm-verity?hl=ja dm-verity の実装] Google</ref> <!-- またUbuntuのSnapパッケージでもdm-verityの導入が進められています。 また特定言語のパッケージの検証は以下で可能です: * PIP (Python): なし --> === システム領域に不審なファイルが追加されていないかを調べる === システムの追加ファイルの検知にはパッケージシステムで管理されていないファイルの一覧を返す以下のようなツールが存在します: * Debian / Ubuntu(Debパッケージ)向け: cruft-ngパッケージ(<code>cruft</code>コマンド) 上記の<code>cruft</code>コマンドでは設定ファイルだけ残っているパッケージのファイルも出てきてしまいます。そのため、これが邪魔な時は設定ファイルだけ残っているパッケージを<code>sudo apt purge '~c'</code>で削除しましょう。 またaptレポジトリに無いインストールされたパッケージは<code>apt list '?obsolete'</code>で、手動 (manual) でインストールされたパッケージは<code>apt-mark showmanual</code>で確認できます。これらのコマンドを実行してインストールした覚えないパッケージが入ってないかをチェックしましょう。GUI が使えるのであれば<code>synaptic</code>を起動して「インストール済(ローカルまたは廃止)」と「インストール済(手動)」を確認するのもオススメです。 === ユーザー領域に不審なファイルが追加されていないかを調べる === ユーザースクリプトの書き換えや追加は検知が難しいです。<!--TODO: 良い方法を書く--> 共有ライブラリやスクリプトによるプラグイン追加も可能となっているため、こちらにも気をつけなければいけません。これには例えば以下があります: {| class="wikitable" |+ 代表的なユーザースクリプトや拡張機能のディレクトリパス |- ! 種類 !! Windowsのパス !! macOSのパス !! Linuxのパス |- | Google Chrome 拡張機能 || %LOCALAPPDATA%\Google\Chrome\User Data\*\Extensions\ || ~/Library/Application Support/Google/Chrome/*/Extensions/ || ~/.config/google-chrome/*/Extensions/ |- | GIMPプラグイン<ref>[https://gimp.cc/faq/add-gimp-plugins.html How to Install GIMP Plugins - Detailed Guide with Troubleshooting] GIMP.cc</ref> || %APPDATA%\GIMP\*\plug-ins\ || ~/Library/Application Support/GIMP/*/plug-ins/ || ~/.config/GIMP/*/plug-ins/ |- | Blenderスクリプト{{efn|起動スクリプト、アドオンを含む。}}<ref>[https://docs.blender.org/manual/ja/dev/advanced/blender_directory_layout.html Blender&#39;s Directory Layout] Blender Foundation</ref> || %APPDATA%\Blender Foundation\Blender\*\scripts\ || ~/Library/Application Support/Blender/*/scripts/ || ~/.config/blender/*/scripts/ |- | Ardourスクリプト<ref>[https://manual.ardour.org/lua-scripting/ The Ardour Manual - Lua Scripting] Ardour</ref> || %LOCALAPPDATA%\ardour*\scripts\ || ~/Library/Preferences/Ardour*/scripts/ || ~/.config/ardour*/scripts/ |- | LibreOfficeスクリプト || %APPDATA%\LibreOffice\*\user\Scripts\ || ~/Library/Application Support/LibreOffice/*/user/Scripts/ || ~/.config/libreoffice/*/user/Scripts/ |- | Visual Studio Code 拡張機能<ref>[https://code.visualstudio.com/docs/configure/extensions/extension-marketplace Extension Marketplace] Microsoft</ref> || %USERPROFILE%\.vscode\extensions\ || ~/.vscode/extensions/ || ~/.vscode/extensions/ |} === 改変・追加されたファイルが危険かを調べる === 実行ファイルやスクリプトはLinuxでは以下で検出できます: <syntaxhighlight lang="shell-session"> # cat filelist.txt | xargs file | grep -i -E ':.*(executable|shared object|relocatable|script)' /etc/init.d/binfmt-support.dpkg-new: POSIX shell script, ASCII text executable /etc/update-motd.d/99-livepatch-kernel-upgrade-required: POSIX shell script, ASCII text executable /usr/lib/chromium-browser/plugins/libpepflashplayer.so: ELF 64-bit LSB shared object, x86-64, version 1 (SYSV), dynamically linked, BuildID[sha1]=5c421e89a5c062a2106a5a4381dc38e779a22795, stripped </syntaxhighlight> またClamAVを導入していれば以下でマルウェアデータベースとの照合を行うことができます: <syntaxhighlight lang="shell-session"> # cat filelist.txt | xargs clamscan Loading: 3s, ETA: 0s [========================>] 3.63M/3.63M sigs Compiling: 1s, ETA: 0s [========================>] 41/41 tasks /etc/apt/apt.conf.d/00trustcdrom: OK /etc/apt/auth.conf.d/90ubuntu-advantage: OK /etc/apt/keyrings/google.asc: OK [...] ----------- SCAN SUMMARY ----------- Known viruses: 3628164 Engine version: 1.5.4 Scanned directories: 125 Scanned files: 1919 Infected files: 0 Total errors: 10 Data scanned: 247.72 MiB Data read: 281.17 MiB (ratio 0.88:1) Time: 17.939 sec (0 m 17 s) Start Date: 2026:10:11 05:41:30 End Date: 2026:10:11 05:41:48 </syntaxhighlight> === 設定データベースを検証する === 設定データベースは Windows ではレジストリ、Linuxでは GNOME / MATEの 使う [[:en:dconf|dconf]] が存在します。 Windows の設定データベースはレジストリと呼び「レジストリエディタ」 (<code>regedit</code>) で表示できます。 {| class="wikitable" |+ Windows における代表的なユーザースクリプト、コマンド起動、DLL呼び出しが可能なレジストリ |- ! 規格/アプリケーション !! 各ユーザー !! 全ユーザー |- | Windows || HKEY_USERS\<wbr>*\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows\<wbr>CurrentVersion\<wbr>Run\<wbr>*<wbr>CurrentVersion\<wbr>Run\<wbr>*<br>HKEY_USERS\<wbr>*\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows\<wbr>CurrentVersion\<wbr>RunOnce\<wbr>*{{efn|name="runonce"|RunOnceは一度のみ実行だが再登録することで何回でも実行可能。}} || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows\<wbr>CurrentVersion\<wbr>Run\<wbr>*<br>HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows\<wbr>CurrentVersion\<wbr>RunOnce\<wbr>*{{efn|name="runonce"}} |- | [[:w:en:Security Account Manager|Security Account Manager]] || || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>SAM\<wbr>SAM\<wbr>Domains\<wbr>Account\<wbr>Users\<wbr>*\<wbr>V{{efn|name="sam"|'HKEY_LOCAL_MACHINE\SAM\SAM\' 以下はレジストリエディタの右クリックの「アクセス許可」で Administrators にアクセス許可を与えないと読めない。なおファイルパスは「C:\Windows\System32\config\SAM」。}}{{efn|Vはバイナリであり、0xCC + (0x60 に指定されたオフセット) からユーザーログオンスクリプトパスを指定する<ref name="sam-ghost">Sebastián R. Castro et al. [https://dl.acm.org/doi/pdf/10.1145/3689934.3690839 Ghost in the SAM: Stealthy, Robust, and Privileged Persistence through Invisible Accounts] ACM 2024年</ref>。}} |- | [[:w:en:Local Security Authority Subsystem Service|Local Security Authority Subsystem Service]] || || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>System\<wbr>CurrentControlSet\<wbr>Control\<wbr>LSA\<wbr>Notification Packages<br>HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>SYSTEM\<wbr>CurrentControlSet\<wbr>Control\<wbr>LSA\<wbr>Authentication Packages<ref>[https://attack.mitre.org/detectionstrategies/DET0207/ Detect LSA Authentication Package Persistence via Registry and LSASS DLL Load] MITRE Corporation</ref> |- | [[:w:en:Active Setup|Active Setup]]<ref>[https://www.advancedinstaller.com/application-packaging-training/msi/ebook/active-setup.html Active-Setup Mechanism] Advanced Installer</ref> || HKEY_USERS\<wbr>*\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Active Setup\<wbr>Installed Components\<wbr>*\<wbr>StubPath || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Active Setup\<wbr>Installed Components\<wbr>*\<wbr>StubPath<ref>[https://attack.mitre.org/techniques/T1547/014/ Boot or Logon Autostart Execution: Active Setup] MITRE Corporation</ref> |- | [[:w:Windowsサービス|Windowsサービス]]<ref>[https://learn.microsoft.com/ja-jp/windows-hardware/drivers/install/hklm-system-currentcontrolset-services-registry-tree HKLM\SYSTEM\CurrentControlSet\Services レジストリ ツリー - Windows drivers - Microsoft Learn] Microsoft</ref> || || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>SYSTEM\<wbr>CurrentControlSet\<wbr>services\<wbr>* |- | [[:w:Winlogon|Winlogon]] || || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows NT\<wbr>CurrentVersion\<wbr>Winlogon\<wbr>Shell<br>HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows NT\<wbr>CurrentVersion\<wbr>Winlogon\<wbr>Userinit<br>HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows NT\<wbr>CurrentVersion\<wbr>Winlogon\<wbr>Notify<ref>[https://attack.mitre.org/techniques/T1547/004/ Boot or Logon Autostart Execution: Winlogon Helper DLL] MITRE Corporation</ref> |- | [[:w:cmd.exe|cmd.exe]]<ref>[https://learn.microsoft.com/en-us/windows-server/administration/windows-commands/cmd cmd - Microsoft Learn] Microsoft</ref> || HKEY_USERS\<wbr>*\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Command Processor\<wbr>AutoRun\REG_EXPAND_SZ || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Command Processor\<wbr>AutoRun\<wbr>REG_SZ |- | [[Microsoft Edge]] || || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>SOFTWARE\<wbr>Policies\<wbr>Microsoft\<wbr>Edge\<wbr>ExtensionInstallForcelist<ref>[https://learn.microsoft.com/ja-jp/deployedge/microsoft-edge-policies/extensioninstallforcelist Microsoft Edge ブラウザー ポリシードキュメント ExtensionInstallForcelist - Microsoft Learn] Microsoft</ref>{{efn|name="silent-install"|自動的にサイレントインストールする}} |- | [[Google Chrome]] || || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>SOFTWARE\<wbr>Policies\<wbr>Google\<wbr>Chrome\<wbr>ExtensionInstallForcelist<ref>[https://chromeenterprise.google/intl/ja_jp/policies/extension-install-forcelist/ ExtensionInstallForcelist: 自動インストールするアプリと拡張機能のリストの設定 - Chrome Enterprise] Google</ref>{{efn|name="silent-install"}} |} Linux の GNOME / MATE 環境には「[[:w:en:Dconf#dconf database|dconf データベース]]」が存在し、それは<code>dconf dump</code>('/'区切り)で表示できます。また dconf データベースにスキーマ(規定値と解説)を被せた gsettings も存在し、こちらは<code>gsettings list-recursively</code>(dconfと異なり'.'区切り)で表示できます。 {| class="wikitable" |+ Linux における代表的なユーザースクリプト又はコマンド起動が可能なdconf設定 |- ! 規格/アプリケーション !! ユーザー |- | GNOME Settings Daemon || /org/gnome/settings-daemon/plugins/media-keys/custom-keybindings/custom*/command |- | Marco ([[w:MATE (デスクトップ環境)|MATE]]) || /org/mate/Marco/keybinding-commands/command-*{{efn|変更した設定は<code>dconf dump /org/mate/Marco/keybinding-commands/</code>で、デフォルトも含めた設定は<code>gsettings list-recursively org.mate.Marco.keybinding-commands</code>で表示可能。}} |- | MATE Screensaver || /org/mate/screensaver/embedded-keyboard-command<br>/org/mate/screensaver/logout-command{{efn|変更した設定は<code>dconf dump /org/mate/screensaver/</code>、デフォルトも含めた設定は<code>gsettings list-recursively org.mate.screensaver</code> で表示可能}} |- | mate-applets || /org/mate/panel/objects/object-*/prefs/command |- | mate-sensors-applet || /org/mate/panel/objects/object-*/prefs/*/high-alarm-command<br>/org/mate/panel/objects/object-*/prefs/*/low-alarm-command |} なお MATE Screensaver と同源の GNOME Screensaver にも /org/gnome/desktop/screensaver/embedded-keyboard-command と /org/gnome/desktop/screensaver/logout-command{{efn|変更した設定は<code>dconf dump /org/gnome/desktop/screensaver/</code>、デフォルトも含めた設定は<code>gsettings list-recursively org.gnome.desktop.screensaver</code> で表示可能。}} が存在しますが、こちらは既に廃止されており指定しても無視されます<ref>[https://github.com/GNOME/gsettings-desktop-schemas/blob/main/schemas/org.gnome.desktop.screensaver.gschema.xml.in gsettings-desktop-schemas/schemas/org.gnome.desktop.screensaver.gschema.xml.in at main · GNOME/gsettings-desktop-schemas] GNOME Project</ref>。 === メディアに不審なファイルが追加されていないかを調べる === メディアの自動実行 ([[:w:en:AutoRun|AutoRun]]) ファイルにもマルウェアが紛れてないか注意しましょう。 {| class="wikitable" |+ メディアの自動実行ファイル |- ! Windows !! Linux<br>(Desktop Application Autostart Specification<wbr>標準[https://specifications.freedesktop.org/autostart/latest/]) |- | *:\[[:w:autorun.inf|autorun.inf]] || /media/*/*/.autorun<br>/media/*/*/autorun<br>/media/*/*/autorun.sh<br>/run/media/*/*/.autorun<br>/run/media/*/*/autorun<br>/run/media/*/*/autorun.sh |} == 改変を防ぐ == 改変を探すのは大変です。なので最初から改変をできないようにすれば管理はとても楽になります。 改ざんを防ぐには「[[:w:en:Chain of trust|信頼の連鎖]]」 (chain of trust) が重要となります。例えばカーネルだけで改ざんを防いでも、ハードウェアのファームウェアが不正であれば不正なカーネルを起動できてしまいます。 === ファームウェア改ざんを防ぐ === ファームウェア改ざんによる「ファームウェアルートキット」を防ぐにはIntel Management Engine (Intel ME)で実装されているIntel BIOS Guardを使う必要があります。<!--TODO: マザーボードによってはBIOSで有効にする必要があります。→最近のマザーボード事情--> なお2017年の第8世代Intel Coreプロセッサ (Coffee Lake) 以前はme_cleanerによってIntel Management Engineの無効化が可能<ref>[https://github.com/corna/me_cleaner/wiki/me_cleaner-status me_cleaner status] Nicola Corna 2018年</ref>なため非推奨です。 また2023年のIntel ME 16.1.30.2307未満では悪意あるロゴ画像を設定することによってroot権限からUEFI設定の変更が可能です([[:w:en:LogoFAIL|LogoFAIL]]の脆弱性)。そのため、古いIntel Management Engineが動作している場合はそのファームウェアをアップデートしましょう。Windowsでは MEUpdateTool.exe / FWUpdLcl.exe を使うことでこのアップデートが可能となっています。一方、Linuxでは一部機種が fwupdmgr 経由での Intel ME ファームウェアアップデートに対応しています。 Intel MEのバージョンはLinuxでは以下のような感じに調べることができます: <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ cat /sys/class/mei/mei0/fw_ver 0:16.1.32.2473 0:16.1.32.2473 0:16.1.27.2181 </syntaxhighlight> === ブートローダー改ざんを防ぐ === ブートローダーは起動に使われるファームウェア (BIOS) から呼ばれ、カーネルを読み込んで起動するために使われるプログラムです。古い BIOS (レガシーBIOS) には起動するブートローダーを検証する仕組みが存在しませんでしたが、新しい UEFI (統一拡張ファームウェアインターフェース) には署名されたブートローダーのみを起動する UEFI Secure Boot が追加され、安全なブートローダーの起動を許可するための「承認済み署名データベース」 (Authorized Signature Database、UEFI db) と、脆弱なブートローダーの起動を防ぐための「禁止署名データベース」 (Forbidden Signature Database、UEFI dbx) が用意されています。 UEFI Secure Boot が有効かどうかは以下で確認できます: * Windows PowerShell: <code>Confirm-SecureBootUEFI</code> * Linux: <code>mokutil --sb-state</code> UEFI db と UEFI dbx の内容は以下で確認できます: * Windows PowerShell: <code>Get-SecureBootUEFI -Name db -Decoded</code> / <code>Get-SecureBootUEFI -Name dbx -Decoded</code> * Linux: ** mokutil{{efn|Ubuntu Desktop に標準で含まれている。}}: <code>mokutil --db</code> / <code>mokutil --dbx</code> ** efitools: <code>efi-readvar -v db</code> / <code>efi-readvar -v dbx</code> ブートローダーの署名情報は以下で確認できます: * Windows PowerShell: <code>Get-PfxCertificate</code>{{efn|<code>Get-AuthenticodeSignature</code>はカタログ署名が使われる場合があるため非推奨: https://github.com/PowerShell/PowerShell/issues/23820 。}} * Linux: <code>sbverify --list</code> 例えば Windows PowerShell では以下のような感じです: <syntaxhighlight lang="powershell"> PS C:\WINDOWS\system32> mountvol S: /S; if ($?) { Get-PfxCertificate 'S:\EFI\Microsoft\Boot\bootmgfw.efi'; mountvol S: /D } Thumbprint Subject ---------- ------- FACDE3D80E99AFCC15E08AC5A69BD22785287F79 CN=Microsoft Windows, O=Microsoft Corporation, L=Redmond, S=Washington, C=US </syntaxhighlight> また Ubuntu や Debian では署名されたブートローダー (grub-efi-*-signedパッケージ) と非署名のブートローダー (grub-efi-*-unsignedパッケージ) の両方が用意されており、ブートローダーの正体がどれか、また署名されたブートローダーの署名内容を確認するのは以下のような感じとなります: <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ dpkg -L grub-efi-amd64-signed | grep -i '\.efi' | xargs md5sum # インストールされている署名されたブートローダーのハッシュを表示(grub*は通常版、gcd*は光学ブートメディア向け、grubnet*はネットブート向け) 2bd267fb12bd3b0fe26a9dfb4290868d /usr/lib/grub/x86_64-efi-signed/gcdx64.efi.signed f689e93336a015fa6eb93e1913b13482 /usr/lib/grub/x86_64-efi-signed/grubnetx64.efi.signed b63c7618fb96d52520b42b8cc7b124f0 /usr/lib/grub/x86_64-efi-signed/grubx64.efi.signed $ sudo sh -c "md5sum /boot/efi/EFI/BOOT/*" # 現在のbootloaderがどれを使っているかを確認(署名されたgrubを使用) b63c7618fb96d52520b42b8cc7b124f0 /boot/efi/EFI/BOOT/BOOTX64.EFI $ sudo sbverify --list /boot/efi/EFI/BOOT/BOOTX64.EFI signature 1 image signature issuers: - /C=GB/ST=Isle of Man/L=Douglas/O=Canonical Ltd./CN=Canonical Ltd. Master Certificate Authority image signature certificates: - subject: /C=GB/ST=Isle of Man/O=Canonical Ltd./OU=Secure Boot/CN=Canonical Ltd. Secure Boot Signing (2022 v1) issuer: /C=GB/ST=Isle of Man/L=Douglas/O=Canonical Ltd./CN=Canonical Ltd. Master Certificate Authority $ sudo sbverify --cert /usr/share/grub/canonical-uefi-ca.crt /boot/efi/EFI/BOOT/BOOTX64.EFI Signature verification OK </syntaxhighlight> なお Linux では grub の代わりに使えるブートローダーとして systemd-boot もあります。systemd-boot の署名版は Debian が systemd-boot-efi-*-signed パッケージとして用意しているようです(Ubuntu未搭載)。 <!--TODO: TPM (Trusted Platform Module) チップ --> === カーネル本体の改ざんを防ぐ === カーネルはオペレーティングシステム (OS) の下層で動き続けるプログラムです。カーネル本体の実行ファイルもブートローダーと同様に署名が行われており、UEFI Secure Boot が有効であればその検証をブートローダーが行います。Linux では GRUB の UEFI Secure Boot と shim_lock の連携がそれに相当します<ref>[https://www.gnu.org/software/grub/manual/grub/grub.html#UEFI-secure-boot-and-shim GNU GRUB Manual 2.14 - 19.4 UEFI secure boot and shim support] フリーソフトウェア財団</ref>。 なお Ubuntu には署名されたカーネル (linux-image-*パッケージ) と非署名のカーネル (linux-image-unsigned-*パッケージ) の両方が用意されており、署名されているカーネルは以下のような感じでその署名が確認できます: <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ sudo sbverify --list /boot/vmlinuz-$(uname -r) # Linuxカーネル本体の署名を確認する signature 1 image signature issuers: - /C=GB/ST=Isle of Man/L=Douglas/O=Canonical Ltd./CN=Canonical Ltd. Master Certificate Authority image signature certificates: - subject: /C=GB/ST=Isle of Man/O=Canonical Ltd./OU=Secure Boot/CN=Canonical Ltd. Secure Boot Signing (2022 v1) issuer: /C=GB/ST=Isle of Man/L=Douglas/O=Canonical Ltd./CN=Canonical Ltd. Master Certificate Authority $ sudo sbverify --cert /usr/share/grub/canonical-uefi-ca.crt /boot/vmlinuz-$(uname -r) # Linuxカーネル本体の署名を検証する Signature verification OK </syntaxhighlight> === カーネルモジュールの改ざんを防ぐ === カーネルモジュールも署名されており、その検証をカーネルが行っています。Windowsカーネルでは ci.dll (Code Integrityモジュール)が、Linuxカーネルでは CONFIG_MODULE_SIG コンパイルオプションがその検証を行っています。 カーネルによるカーネルモジュールの検証が有効かどうかは以下で確認することができます: * Linux: <code>grep 'CONFIG_MODULE_SIG=' /boot/config-$(uname -r)</code> カーネルによるカーネルモジュールの検証で読み込みを弾くかどうかは以下で確認することができます: * Windows: 強制モードか評価モード (監査モード) かを確認する PowerShell スクリプトが Microsoft のサイトに存在します: https://support.microsoft.com/en-us/windows/hardware/drivers/the-windows-driver-policy#is-my-device-in-evaluation-mode-or-enforcement-mode * Linux: <code>cat /sys/module/module/parameters/sig_enforce</code> また Linux では検証で読み込みを弾かない場合でも検証外カーネルモジュールを読み込んだ場合はdmesgに警告が出て '''Tainted kernel''' 扱いとなります<ref>[https://docs.kernel.org/admin-guide/tainted-kernels.html Tainted kernels] Linux Foundation</ref>。以下はその例です: <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ grep 'CONFIG_MODULE_SIG=' /boot/config-$(uname -r) # y=Yes, n=No CONFIG_MODULE_SIG=y $ cat /sys/module/module/parameters/sig_enforce # Y=Yes, N=No N $ sudo dmesg | grep 'module verification' [ 8.928361] nvidia: module verification failed: signature and/or required key missing - tainting kernel $ wget http://git.kernel.org/pub/scm/linux/kernel/git/torvalds/linux.git/plain/tools/debugging/kernel-chktaint [...] $ sudo sh ./kernel-chktaint Kernel is "tainted" for the following reasons: * externally-built ('out-of-tree') module was loaded (#12) * unsigned module was loaded (#13) Raw taint value as int/string: 12288/'G OE ' Tainted modules: * nvidia (OE) * nvidia_drm (OE) * nvidia_modeset (OE) * nvidia_uvm (OE) For a more detailed explanation of the various taint flags see Documentation/admin-guide/tainted-kernels.rst in the Linux kernel sources or https://kernel.org/doc/html/latest/admin-guide/tainted-kernels.html </syntaxhighlight> また Linux では以下のような感じで個々のモジュールの署名が確認できます: <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ modinfo /lib/modules/$(uname -r)/kernel/arch/x86/kernel/msr.ko.zst filename: /lib/modules/7.0.0-38-generic/kernel/arch/x86/kernel/msr.ko.zst license: GPL description: x86 generic MSR driver author: H. Peter Anvin <hpa@zytor.com> srcversion: 639B995855A3528050FD532 depends: intree: Y name: msr retpoline: Y vermagic: 7.0.0-38-generic SMP preempt mod_unload modversions sig_id: PKCS#7 signer: Build time autogenerated kernel key sig_key: 3B:E7:D3:BF:D3:2E:D9:CA:9C:17:D2:E9:5F:1A:1C:AE:67:D5:82:2F sig_hashalgo: sha512 signature: 96:BC:2A:18:6E:4D:D8:E5:28:69:9D:E6:65:89:95:D4:BE:4C:5B:7C: 4A:23:11:75:F6:FE:63:79:FC:29:9B:F7:EA:24:B6:F1:EF:F3:80:17: 0B:C0:1E:46:61:29:BB:F9:E0:AC:81:69:85:73:7D:D4:77:82:A8:DB: [...] </syntaxhighlight> === システムファイル改ざんを防ぐ === システムファイル改ざんを防ぐ良い方法はシステム領域を読み取り専用にすることですが、仮にファイルシステムを読み取り専用のファイルシステム(SquashFSやEROFS)にしたとしても記録する場所がSSDであればブロック単位での上書きが可能となります。 1回だけ書き込めて上書きが不可能な媒体としてはCD-R、DVD-R、DVD+R、BD-Rなどの一部の光学メディアが存在しますが、これらをブートメディアとして使用するのは頻繁なアップデートが難しくなります。 そのほかの手法としては別のコンピュータからシステムファイルを取得する「ネットワークブート」を行うという手法もありますが、これはネットワーク経由でシステムファイルが盗まれる可能性と隣り合わせです。しかしながらプロトコルにUEFI HTTPSを、認証に相互認証のmTLSを用いて、その秘密鍵をTPMで管理してOSから読めなくすることでネットワークブートの安全性は何とか確保できるかもしれません(対応マザーボードは不明)。 一方、Android や ChromeOS ではブロックデバイス単位での改ざん検知 (dm-verify) によってシステムイメージの改ざんを防止しています<ref>[https://source.android.com/docs/security/features/verifiedboot/dm-verity?hl=ja dm-verity の実装] Google</ref><ref>[https://research.google/pubs/verified-boot-on-chrome-os-and-how-to-do-it-yourself/ Verified Boot on Chrome OS and How to do it yourself] Google</ref>。 === カーネルメモリ改ざんを防ぐ === カーネルメモリのコード部分は MMU の書き込み禁止によって保護されています。iOS / macOS では Kernel Integrity Protection が<ref>[https://support.apple.com/ja-jp/guide/security/sec8b776536b/web オペレーティングシステムの整合性] Apple</ref> 、Linux では Kernel Strict RWX がこれに相当します<ref>[https://docs.kernel.org/security/self-protection.html Kernel Self-Protection] Linux Foundation</ref>。Windows でもカーネルモードに読み込み専用メモリセグメントが存在し、これに書き込もうとするとブルースクリーンで ATTEMPTED_WRITE_TO_READONLY_MEMORY (0xBE) が発行されます<ref>[https://learn.microsoft.com/ja-jp/windows-hardware/drivers/debugger/bug-check-0xbe--attempted-write-to-readonly-memory バグ チェック 0xBE: ATTEMPTED_WRITE_TO_READONLY_MEMORY] Microsoft</ref>。しかしながら Linux Kernel では kprobes、Static Keys、Static calls などで自己書き換えが多用されているため、一時的にコード部分を書き込み可能なページに割り当てて書き換える text_poke(...) という抜け道が存在します。 また定期的に改ざんが行われていないかをチェックする仕組みも存在します。Windows では[[:w:Kernel Patch Protection|Kernel Patch Protection]] (PatchGuard) / HyperGuard が、Linux では Linux Kernel Runtime Guard(外部パッチ)がこれに該当します。Windows の PatchGuard では改ざんが検出されたらブルースクリーンで CRITICAL_STRUCTURE_CORRUPTION が発行されます。 <!--TODO: Windows の HVCI、macOS の Secure Page Table Monitor / Trusted Execution Monitor--> <!-- === アプリケーション改ざんを防ぐ === SELinux / AppArmor --> == 攻撃用AIを対策する == 攻撃用AIでは基本的に賢いかつ制限の緩い大規模言語モデル (LLM) が使われています。この代表的な例として GLM 5.3 や Qwen3.8-27B-ABLITERATED が存在します。 === コンテキスト爆弾を設置する === 攻撃用AIの対策では相手のLLMを止めることが重要となります。そこで使えるのが'''コンテキスト爆弾''' (context bombs) という手法です<ref>[https://arstechnica.com/security/2026/07/now-defenders-are-embracing-the-prompt-injection-too/ Now, defenders are embracing the prompt injection, too] Ars Technica 2026年7月14日</ref>。 このコンテキスト爆弾は「相手のLLMに対し応答やツール呼び出しで禁止されていることを行わせようとする」というプロンプトインジェクションの一種であり、それによって相手のガードレールがLLMを止めることで相手からの攻撃を防ぎます。この手法は相手の読みそうなテキストにただプロンプトを書いておけば良いだけなので、お手軽に使えます。 コンテキスト爆弾のテキスト例は以下のリポジトリに存在します: * https://github.com/tracebit-com/context-bombs === ハニーポット === ハニーポットは攻撃者を引きつける役目を担います。ハニーポットの評価フレームワークには「UHBS」(Universal Honeypot Benchmarking Standard) が、その品質基準には「UHQS」(Universal Honeypot Quality Score) が存在しますが、2026年現在多くのハニーポットがFランク〜Dランクと残念な状況になっています<ref>[https://uhbs.github.io/uhbs-standard/mkdocs/conformance/ Overview - UHBS — Honeypot Evaluation Framework]</ref>。 <!-- == 自作コードの脆弱性を塞ぐ == 書きかけ --> == 脚注 == <references group="注釈"/> == 参考文献 == <references/> {{DEFAULTSORT:こんひゆうたせきゆりてい}} [[Category:計算機科学]] [[Category:情報技術]] gygx13x1z03nqac6423q41j8cjdhszt 304982 304981 2026-10-21T16:42:27Z ~2026-54076-02 92740 /* 不要なサービスを止める / 削除する */ 304982 wikitext text/x-wiki '''コンピュータセキュリティ'''はコンピュータの安全のことです。ここではコンピュータの安全を確保することを学びます。 == コンピュータセキュリティの基本 == コンピュータは弱いところから狙われるため、弱いところを無くすのがセキュリティの基本となります。 具体例を挙げましょう。一般的な光回線に繋がれてるホームネットワークを考えます。ここには光回線の先に繋がる上位ネットワークと家内のホームネットワーク (家庭におけるLAN) とを区切るエッジルーター(一般的にはハードウェア・ゲートウェイがこれに該当)が存在します。このホームネットワークに数台の新しいWindows PCと一台の古い機器が繋がっていると仮定します。 新しいWindows PC同士ではホームネットワーク経由でファイルをやり取りするためにファイルの共有 (SMB{{efn|Server Message Block}}) を有効にしているとします。一方、古い機器の方を脆弱性のある古いテレビとしましょう。このテレビはインターネットから繋いで地上デジタル放送を見るための DCTP+ {{efn|Digital Transmission Content Protection +}}が搭載されており、UPnP{{efn|Universal Plug and Play}}で自動的にエッジルーター搭載のファイアーウォールに穴あけてインターネット側から DCTP+ に繋がるようになっているものとします。 この仮定によってハッカーは DCTP+ の脆弱性を使って古いテレビに悪意のあるプログラムを実行させてファイルの共有サーバーを立て{{efn|Windows 11時点でもゲスト認証による接続は許可されている<ref>[https://learn.microsoft.com/en-us/windows-server/storage/file-server/smb-interception-defense?tabs=group-policy Protect SMB traffic from interception] Microsoft</ref>。}}、そこからファイルの共有を通じて新しいWindows PCにマルウェア (例えば<code>PHOTO-<ランダムな数字>.png.lnk</code><ref>[https://www.microsoft.com/en-us/security/blog/2026/06/25/photo-zip-campaign-targeting-hospitality-industry-delivers-node-js-implant-persistent-access/ Photo ZIP campaign targeting hospitality industry delivers Node.js implant for persistent access] Microsoft 2026年6月25日</ref>) を送り込むことが可能となりました。 == 安全にパスワードを使う == === 流出したパスワードと被ってないかをチェックする === あちこちのサイトで流出したパスワードは集められてデータベース化されダークネットに流通しています。この代表的なものには2019年に登場した [[:w:en:Collection No. 1|Collection #1]] が挙げられます。この Collection #1 などの流出パスワードデータベースは辞書攻撃に利用されており、これは「Credential Stuffing攻撃」と呼ばれています。 使うパスワードが流出パスワードデータベースに載っていないかを確認するためには上記のデータベースを手に入れるか、上記のデータベースからk-匿名性で検索を行うオンラインサービスを使うと良いでしょう。 このオンラインサービスの代表的なものにはWebサイト「Have I Been Pwned」の提供する「Pwned Passwords」サービスが存在しますが、このAPIではパスワードのSHA-1ハッシュ先頭5文字を渡すと、流出したパスワードのSHA1ハッシュ6文字以降と流出データベースに載っていた回数が返答されます。 <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ # License: CC0 / Public Domain $ # パスワードを入力してSHA-1ハッシュへと変換する(ここでは'test'と入力) $ sha1=$(read -sp "Password: " pass && echo -n $pass | sha1sum | cut -d' ' -f1) Password: $ # 変換後のハッシュを表示 $ echo $sha1 a94a8fe5ccb19ba61c4c0873d391e987982fbbd3 $ # ハッシュの先頭5文字を渡して6文字目以降を検索(':'の後ろは見つかった数) $ curl -s https://api.pwnedpasswords.com/range/$(echo $sha1 | cut -c 1-5) | grep -i $(echo $sha1 | cut -c 6-) FE5CCB19BA61C4C0873D391E987982FBBD3:1579235 </syntaxhighlight> ハッシュの先頭5文字も渡したくない場合や、自社サービスでチェックを行いたい場合は上記のサービスが公式で提供するツール「haveibeenpwned-downloader」[https://github.com/HaveIBeenPwned/PwnedPasswordsDownloader]で全てのハッシュデータをダウンロードして自前で照合しましょう。 === 解析耐性のある鍵導出関数を使う === パスワードでは計算負荷の低い SHA-256 や SHA-512 などの通常のハッシュ関数、メモリ負荷の低い [[:w:PBKDF2|PBKDF2]] や bcrypt などの古い[[:w:鍵導出関数|鍵導出関数]](パスワードハッシュ関数)を使わないようにしましょう。これらの弱いハッシュ関数は GPU や ASIC で高速に解かれてしまいます。 より強いパスワードハッシュ関数としては yescrypt や Argon2id が存在します。パスワードにはこちらを使いましょう。現代の Linux ではアカウントのパスワードハッシュ関数として yescrypt が標準となっています。 使っている Linux の新規アカウントで使われるパスワードハッシュ関数は以下で確認可能です: <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ grep -n 'pam_unix.so' /etc/pam.d/common-password 26:password [success=2 default=ignore] pam_unix.so obscure use_authtok try_first_pass yescrypt </syntaxhighlight> Linuxの現在のアカウントがどのハッシュ関数を使用しているかは以下で確認可能です: <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ sudo cat /etc/shadow | grep $USER # $(1|5|6|b)$=弱い、$y$=強い user:$y$j9T$ST7oYwlQjFy7/8vnL/Ugt0$po4vW4qgGu8lpUNRtH0B3hDHGZACzcRhzIKhqlx.2Z5:20743:0:99999:7::: </syntaxhighlight> 弱いハッシュ関数を使用している場合は<code>passwd $USER</code>でパスワードを再設定して使用するハッシュ関数を更新してください。 一方、Windows 10 以前のローカルアカウントではパスワードハッシュがレジストリの<code>HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>SAM\<wbr>SAM\<wbr>Domains\<wbr>Account\<wbr>Users\<wbr>(ユーザーID)\<wbr>V</code>{{efn|name="sam"}}のバイナリの以下の場所に存在します: * [[:w:LMハッシュ|LMハッシュ]]: 0xCC + (0x9C に指定されたオフセット)<ref name="sam-ghost"/> * NTLMハッシュ: 0xCC + (0xA8 に指定されたオフセット)<ref name="sam-ghost"/> LMハッシュは [[:w:LAN Manager|LAN Manager]] に使われていた [[:w:Data Encryption Standard|DES]] ベースの古いハッシュ、NTLMハッシュは [[:w:NT LAN Manager|NT LAN Manager]] に使われている [[:w:MD4|MD4]] ベースの古いハッシュであり、どちらも非常に弱いものとなっていました。 また Windows の Active Directory ドメインアカウントのオフライン認証向けキャッシュ済みドメイン資格情報はレジストリの<code>HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>SECURITY\<wbr>Cache</code>に存在します: * DCC1 ハッシュ (MSCache v1): 弱い MD4 ベース。Windows XP以前。 * DCC2 ハッシュ (MSCache v2) : 弱めの PBKDF2-HMAC-SHA1 ベース。Windows Vista以後<ref>[https://attack.mitre.org/techniques/T1003/005/ OS Credential Dumping: Cached Domain Credentials] MITRE 2025年10月24日</ref>。 2021年にリリースされた Windows 11 以降は Microsoft アカウントが必須となっています。 <!--TODO: Windows Hello、LSA Secrets === パスワードの複雑性をチェックする === === TPMで鍵を隔離する === --> == 既製製品の脆弱性を塞ぐ == まずは弱いところを無くしましょう。 === ソフトウェアアップデートをする === セキュリティの基本はソフトウェアアップデートです。 ==== PCおよびモバイル ==== PC{{efn|PCサーバを含む}}やモバイルでは基本的に自動で通知が来るので忘れずにアップデートを選択しましょう。手動では以下のように行います: ; Windows : システムのアップデートは基本的に [[:w:Microsoft Update|Microsoft Update]] (Windows Update) で、アプリケーションのアップデートは基本的に<code>winget upgrade --all</code>コマンドで行います。 : また Windows 11 Enterprise では再起動が不要なホットパッチにも対応しています。 ; macOS / iOS : 「ソフトウェアアップデート」 ; Ubuntu / Debian : [[:w:APT|APT]]パッケージ管理システムでは<code>apt upgrade</code>コマンドで更新を行います。 : Ubuntu では GUI による更新用として[[:w:Software Updater|Software Updater]] (<code>update-manager</code>コマンド)、[[:w:Snap (ソフトウェア)|Snap]]パッケージの更新コマンドとして<code>snap refresh</code>、メジャーバージョンの更新コマンドとして<code>do-release-upgrade</code>も存在します。 : また Ubuntu では Ubuntu Pro に登録することで再起動が不要なカーネル修正の「Livepatch」も可能となります(個人では5台まで無料)。SUSEではユーザー空間ライブパッチングまで提供されています(glibc と openssl のみ)<ref>[https://documentation.suse.com/ja-jp/sles/15-SP6/html/SLES-all/cha-ulp.html ユーザ空間ライブパッチ - 管理ガイド - SLES 15 SP6] SUSE</ref>。 ; RedHat / Fedora : <code>yum update</code>コマンド ; Android : 「設定」アプリ→「システム」→「システムアップデート」または「ソフトウェアアップデート」 また個々のハードウェアのファームウェアアップデートは以下で行います: ; Linux : Linuxにおけるファームウェアの更新は基本的に<code>fwupdmgr update</code>コマンドで行います。 : NVMe SSDのファームウェアの更新は<code>nvme fw-download</code>コマンドおよび<code>nvme fw-commit</code>コマンドで行うことができます。 一方、Windows ではファームウェアのアップデートも Windows Update 経由で<ref>[https://learn.microsoft.com/ja-jp/windows-hardware/drivers/bringup/firmware-update ファームウェアの更新] Microsoft</ref>、macOS ではファームウェアのアップデートもmacOSアップデートで行うことができます<ref>[https://support.apple.com/ja-jp/guide/mac-help/mchlp2609/mac Macのファームウェアアップデートの入手方法] Apple</ref>。 <!-- また開発環境では以下も存在します: ; Python : <code>pip -U install</code> --> ==== ルーター ==== ルーターでは以下の設定を有効のままにしておきましょう: ; AirStationシリーズ(Buffalo 製ルーター) : 「ファームウェア自動更新機能」 ; Atermシリーズ(NEC 製ルーター) : 「メンテナンスバージョンアップ機能」「時刻指定バージョンアップ機能」 ==== テレビ ==== テレビでは放送波アップデートが行われるため、「放送波による自動更新」<!--TODO: メーカー別名-->を有効にしましょう。 === 高速に再起動する === パッケージは更新しただけでは反映されません(一部デーモンの更新を除く)。Linuxでは高速に再起動する方法が存在し、これによってダウンタイムを減らすことができます。 ; 更新で影響を受けるデーモンのみ再起動する :* Ubuntu Server: 標準で <code>needrestart</code> が導入されており自動で影響を受けるデーモンの再起動が行われます{{efn|自動的なデーモン再起動を止めるには /etc/apt/apt.conf.d/99needrestart より<code>-m u</code>を削除する必要があります<ref>[https://discourse.ubuntu.com/t/needrestart-changes-in-ubuntu-24-04-service-restarts/44671 `needrestart` changes in Ubuntu 24.04: service restarts] Canonical 2024年</ref>。}}(Ubuntu Desktopでは別途導入が必要)。 :* RedHat / Fedora: <code>dnf needs-restarting</code>が導入されており、それによって再起動するべきデーモンを確認できます。 ; ユーザー空間のみ再起動する(カーネルの更新がない、またはカーネルでlive patchingを行ってる場合) : <code>sudo systemctl soft-reboot</code> ; 高速にカーネルを更新する(ファームウェアの更新がない場合) : <code>sudo systemctl kexec</code> また一部のソフトウェアではホットアップグレード(無停止アップグレード{{efn|Zero-Downtime Upgrade}})にも対応しています (nginx の USR2 シグナル<ref>[https://nginx.org/en/docs/control.html Controlling nginx] nginx</ref>など)。 === 代替ソフトウェアを探す === 更新が停止された古いソフトウェアの多くはそれ自身に脆弱性が存在したり、脆弱性のある古いライブラリに依存していたりします。そのため古いソフトウェアは速やかに代替ソフトウェアへと移行しましょう。 ==== 開発終了したソフトウェアから現役のソフトウェアへ ==== 古いソフトウェアには例えば以下があります: * オフィススイート(代替候補: LibreOffice) ** [[:w:OpenOffice.org|OpenOffice.org]](〜2011年) * 画像ビューア ** [[:w:Susie|Susie]] (〜2013年) * メディアプレイヤー ** [[:w:QuickTime|QuickTime]] for Windows(〜2016年) - リモートコード実行の脆弱性 ([https://www.zerodayinitiative.com/advisories/ZDI-16-241/ ZDI-16-241]、[https://www.zerodayinitiative.com/advisories/ZDI-16-242/ ZDI-16-242]) を残したままサポート終了しました<ref>[https://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/753400.html Apple、「QuickTime for Windows」のサポートを終了、アンインストールを推奨] Impress 2016年4月15日</ref>。 * メディアフィルター(代替候補: LAV Filters) ** [[:w:ffdshow|ffdshow]](〜2014年) ** [[:w:Haali Media Splitter|Haali Media Splitter]](〜2013年) * メディアセンター(代替候補: Kodi) ** [[:w:en:Boxee|Boxee]](〜2011年) ** [[:w:Kodi|XBMC]](〜2014年) - Kodiの前身 * 圧縮ソフトウェア ** [[:w:+Lhaca|+Lhaca]](〜2007年) ** [[:w:Lhaplus|Lhaplus]](〜2017年) またハードウェアに由来する古いソフトウェアには例えば以下があります: * [[w:ウォークマン|ウォークマン]]関連(代替候補: [[:w:Music Center for PC|Music Center for PC]]) ** [[:w:CONNECT Player|CONNECT Player]](〜2007年、Sony) ** [[:w:SonicStage|SonicStage]](〜2009年、Sony) ** [[:w:x-アプリ|x-アプリ]](〜2016年、Sony) * DTCP-IP関連 ** SmartVision/PLAYER powered by DiXiM(〜2019年、NEC)<ref>[https://support.nec-lavie.jp/navigate/support/info/2019/announce/svp/ SmartVision/PLAYER保守サービス終了のお知らせ] NECパーソナルコンピュータ 2019年1月28日</ref><ref>[https://apps.microsoft.com/detail/9wzdncrdkb4c?hl=ja-JP&gl=JP SmartVision/PLAYER powered by DiXiM] Microsoft</ref> ** DiXiM Digital TV plus for I-O DATA(〜2022年、I-O DATA)<ref>[https://www.iodata.jp/lib/product/d/3533.htm DiXiM Digital TV plus for I-O DATA] I-O DATA</ref> なお仮想マシンを使って隔離しながら古いソフトウェアを動かすこともできますが、仮想マシンでも「VMエスケープ」の脆弱性を使用することでホスト環境への侵害が可能なため、仮想マシンの上で弱い環境や弱いソフトウェアを使うこともなるべく避けましょう。<!--TODO: Windows Sandbox--> ==== 古いバージョンのライブラリを避ける ==== 多くのソフトウェアに使用されているライブラリとその過去の危険な脆弱性には例えば以下があります:<!--危険を認識させる。例はライブラリ内のメイン処理に存在し、任意コード実行であり、脆弱性の存在期間が長く、新しいものが好ましい。--> * 画像ライブラリ ** libpng - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2010-1205 CVE-2010-1205](PNG画像で任意コード実行の可能性) ** libjpeg-turbo - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2012-2806 CVE-2012-2806](JPEG画像で任意コード実行の可能性) ** OpenJPEG - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2025-54874 CVE-2025-54874](JPEG2000画像で任意コード実行の可能性) ** libtiff - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2026-12912 CVE-2026-12912](PixarLog圧縮TIFF画像で任意コード実行の可能性) ** libwebp - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2023-4863 CVE-2023-4863](WebP画像で任意コード実行の可能性) * 動画ライブラリ ** FFmpeg - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2024-22860 CVE-2024-22860](JPEG XLアニメーションで任意コード実行の可能性) * 圧縮ライブラリ ** libarchive - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2026-15028 CVE-2026-15028](tarアーカイブ形式で任意コード実行の可能性) ** zlib - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2002-0059 CVE-2002-0059](Deflate圧縮形式で任意コード実行の可能性) ** bzip2 - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2010-0405 CVE-2010-0405](BZ2圧縮形式で任意コード実行の可能性) これらのライブラリはABI(アプリケーションバイナリインターフェイス)が変更されて新しいバージョンの共有ライブラリにドロップイン置換できないものも多くなっています。 また国内で使われている古いソフトウェアでは開発中止になった以下のライブラリも問題となっています: * UNLHA32.DLL<ref>[https://forest.watch.impress.co.jp/docs/news/372729.html 圧縮・解凍用DLL「UNLHA32.DLL」が開発中止、作者はLZHの利用中止を呼びかけ] Impress 2010年6月7日</ref> Webフレームワークでは開発中止となった以下のフレームワークが問題となっています: * [[:w:Model View Controller|Model View Controller]]フレームワーク(代替候補: [[:w:Apache Struts|Apache Struts]] 2、[[:w:Spring Framework#Model-View-Controller フレームワーク|Spring MVC]]) ** [[:w:en:Apache Struts 1|Apache Struts 1]](〜2008年) - Java言語 * [[:w:アスペクト指向プログラミング|アスペクト指向フレームワーク]](代替候補: [[:w:Spring Framework|Spring Framework]]、[[:w:en:Micronaut (framework)|Micronaut]]) ** [[:w:Seasar|Seasar]](〜2016年) - Java言語 * [[:w:シングルページアプリケーション|シングルページアプリケーション]]フレームワーク(代替候補: [[:w:Angular|Angular]]、[[:w:Vue.js|Vue.js]]) ** [[:w:AngularJS|AngularJS]](〜2022年) - JavaScript === 古いハードウェアに対処する === サポート切れの OS を搭載したハードウェアはどうすれば良いでしょうか。これには使い続けるいくつかの方法がありますが、基本的にオススメしません。古い OS を搭載していたハードウェアはハードウェア仕様も古いからです。 ==== スタンドアロン運用 ==== 古いハードウェアはインターネットに繋がずに使用すること(スタンドアロン運用)も可能です。 しかしながらUSBメモリでデータをやり取りする場合はUSBメモリ経由での感染などのリスクは残ります。 ==== 新しめのLinuxを導入 ==== 新しめのLinuxを導入するという方法もあります。 これに適したものでは例えばWindows 11非対応のPC (Intel 第7世代以前、AMD Ryzen 1000シリーズ以前) が挙げられます。 またスマートフォンやタブレットであればカスタムROMが、ルーターであればDD-WRTやOpenWRTが存在します。 ==== 手放す ==== 手に負えなければデータだけバックアップして手放しましょう。情報が漏れないよう初期化も忘れずに。 == 不要なサービスを止める / 削除する == {| class="wikitable" |+ サービス表示系コマンド |- ! 稼働中のシステムサービスを見る | <code>systemctl --type=service --state=running</code> |- ! 稼働中のユーザーサービスを見る | <code>systemctl --user --type=service --state=running</code> |} === TCP/UDP経由のサービス === TCP/UDPでのポート待ち受けのあるプロセスを見るには <code>sudo ss -tulnp</code> を、通信しているプロセスを見るには <code>sudo lsof -i -P -n</code> を実行しましょう。 {| class="wikitable" |+ 主なポート待ち受けのあるプロセス |- ! ポート !! 機能 !! プロセス名 !! サービス名または起動コマンド !! パッケージ名 (Ubuntu) || 直接問い合せコマンド |- | rowspan=2 | 53/UDP<br>53/TCP || rowspan=2 | DNS(名前解決) || systemd-resolved || systemd-resolved.service || systemd-resolved || <code>dig @127.0.0.53 example.com</code> |- | dnsmasq || dnsmasq.service<br/>dnsmasq@.service || dnsmasq-base<br>dnsmasq || <code>dig @10.208.199.1 example.com</code> |- | rowspan=2 | 5353/UDP || rowspan=2 | [[:w:マルチキャストDNS|マルチキャストDNS]] || systemd-resolved || systemd-resolved.service || systemd-resolved || <code>resolvectl -p mdns query $HOSTNAME.local</code> |- | Avahi || avahi-daemon.service || avahi-daemon || <code>avahi-resolve-host-name $HOSTNAME.local</code> |- | 67/UDP<br>547/UDP || [[:w:DHCP|DHCP]]<br>[[:w:DHCPv6|DHCPv6]] || dnsmasq || dnsmasq.service<br/>dnsmasq@.service || dnsmasq-base<br>dnsmasq || <code>IP=$(ip -4 -o addr show pan1 &vert; grep -oP '(?<=inet )[\d.]+'); sudo dhcping -v -i -s "$IP" -c "$IP"</code>{{efn|Ubuntuではdhcpingパッケージの導入が必要です。}} |- | rowspan=2 | 68/UDP<br>546/UDP || rowspan=2 | DHCPクライアント<br>DHCPv6クライアント{{efn|単独のDHCPクライアントである dhclient、dhcpcd なども存在する。また開発終了になったisc-dhcp-clientも存在した。}} || systemd-networkd<wbr>{{efn|name="network-all"}} || || systemd || |- | NetworkManager<wbr>{{efn|name="network-all"|ネットワーク管理全般を担当しています。}} || NetworkManager.service || network-manager || |- | rowspan=2 | 123/UDP<br>4460/TCP || rowspan=2 | NTP(時刻同期)<br>NTS-KE (NTPの鍵交換){{efn|これらの代替として systemd-timesyncd もありますが、こちらは NTP の代わりに単純な SNTP のみ実装の上、サーバーを持たずクライアント側のみ対応です。}} || ntpd || ntpsec.service || ntpsec || rowspan=2 | <code>ntpdig localhost</code>{{efn|ローカルへのNTP問い合せは<code>ntpdate -q localhost</code>でもできますが、こちらはNTP-KE非対応です。}} |- | chronyd || chrony.service || chrony |- | 80/TCP<br>443/HTTP<br>443/UDP || HTTP<br>HTTPS<br>HTTP/3 (QUIC) || apache2 || apache2.service<br>apache2@.service<br>httpd.service<br>httpd@.service || apache2 || HTTP: <code>curl http://localhost</code><br>HTTPS: <code>curl --http2 https://localhost</code><br>HTTP/3: <code>curl --http3-only https://localhost</code> |- | rowspan=2 | ユーザーポート/UDP || rowspan=2 | HTTP/3 (QUIC) クライアント<br>WebRTCクライアント || chrome{{efn|Google Chrome}} || <code>google-chrome</code> || google-chrome (公式APTリポジトリ) || |- | firefox{{efn|Mozzila Firefox}} || <code>firefox</code> || firefox (snap) || |- | rowspan=2 |21/TCP<br>20/TCP{{efn|アクティブモードのみデータ転送で使われます。}} || rowspan=2 | FTP || proftpd || proftpd.service<br>proftpd@.service || proftpd-core || rowspan=2 | <code>curl ftp://localhost</code> |- | vsftpd || vsftpd.service || vsftpd |- | 22/TCP || SSH / SFTP || sshd || ssh.service<br>sshd@.service || openssh-server || <code>ssh-keyscan 127.0.0.1</code> |- | rowspan=2 | 6881/TCP || rowspan=2 | BitTorrent || qbittorrent || <code>qbittorrent</code> || qbittorrent || |- | ktorrent || <code>ktorrent</code> || ktorrent || |- | 51413/TCP || Transmission{{efn|BitTorrentプロトコル。TransmissionをベースとするFragmentsも同ポートを使用します。}} || transmission-daemon || transmission-daemon.service || transmission-daemon || |- | 5001/TCP<br>5001/UDP || rowspan=2| ネットワークパフォーマンス計測 || iperf || <code>iperf -s</code> || iperf || <code>iperf -c localhost</code> |- | 5021/TCP<br>5021/UDP || iperf3 || <code>iperf3 -s</code> || iperf3 || <code>iperf3 -c localhost</code> |- | 1716/UDP<br>1716/TCP<br>ユーザーポート/UDP || スマートフォン連携 (KDE) || kdeconnectd || <code>kdeconnect-app</code> || kdeconnect || |- | ユーザーポート/TCP || Claude Proxy Service || code{{efn|[[:w:Visual Studio Code|Visual Studio Code]]のプロセス。}} || <code>code</code> || code (公式APTリポジトリ) || <!-- |- | || AI コーディング支援 (Google Antigravity CLI{{efn|Command Line Interface}}) || agy || || (Visal Studio Code拡張) || --> |- | rowspan=2 | 3389/TCP<br>3389/UDP || rowspan=2 | Remote Desktop Protocol || gnome-remote-desktop-daemon{{efn|GNOME Remote Desktop}} || gnome-remote-desktop.service<!-- (system)--><br>gnome-remote-desktop.service (user)<br>gnome-remote-desktop-headless.service (user) || gnome-remote-desktop || |- | krdpserver || app-org.kde.krdpserver.service (user) || krdp || |- | 47984/TCP<br>47989/TCP<br>48010/TCP<br>47998–48010/UDP || NVIDIA GameStream || sunshine || app-dev.<wbr>lizardbyte.<wbr>app.<wbr>Sunshine.service (user) || sunshine (公式debファイル) || (moonlight-qt) |- | 27031-27036/UDP<br>27036/TCP || Steam Remote Play<ref>[https://help.steampowered.com/ja/faqs/view/2EA8-4D75-DA21-31EB Steam接続に必要なポート] Valve</ref> || steam || <code>steam</code> || steam (公式APTリポジトリ) || |} <!--TODO: UPnP、CUPS、Postfix、Samba、Wsdd--> === Unix Domain経由のサービス === Unix Domainでのポート待ち受けのあるプロセスを見るには <code>sudo ss -xlp</code> を実行しましょう。 === dbus経由のサービス === システムバスは <code>busctl --system list</code>、セッションバスは <code>busctl --user list</code> で確認することができます。 それらを提供する実行中のプロセスの一覧は以下で取得できます: * システムバスを提供するプロセス: <code>busctl --system --no-pager | awk 'NR>1 && $2 ~ /^[0-9]+$/ {print $2}' | xargs -I {} readlink "/proc/{}/exe" | sort -u</code> * ユーザーバスを提供するプロセス: <code>busctl --user --no-pager | awk 'NR>1 && $2 ~ /^[0-9]+$/ {print $2}' | xargs -I {} readlink "/proc/{}/exe" | sort -u</code> dbusサービスの一部はプロセス未実行のアクティベータブル (activatable) な状態で提供されています。アクティベータブルな状態で提供するサービスの実行コマンドは以下で取得できます: * activatableなシステムバスの実行コマンド: <code>busctl --system --no-pager --activatable | awk '{print $1}' | xargs -I {} find /usr/share/dbus-1 -name "{}.service" | xargs grep -h "Exec=" | sed 's/Exec=//g' | sort -u</code> * activatableなユーザーバスの実行コマンド: <code>busctl --user --no-pager --activatable | awk '{print $1}' | xargs -I {} find /usr/share/dbus-1 -name "{}.service" | xargs grep -h "Exec=" | sed 's/Exec=//g' | sort -u</code> == 潜在的な脆弱性を減らす == 現代のプログラムでは以下のような保護が行われています。 === メモリアドレスの推測困難化 === 攻撃に必要なコード片(ガジェット)のメモリアドレスを推測しにくくするために、カーネル空間、ユーザー空間の両方で[[:w:アドレス空間配置のランダム化|アドレス空間配置のランダム化]](ASLR)が行われています。カーネル空間の ASLR は KASLR (Kernel ASLR) とも呼ばれています。 ユーザー空間のプログラムで ASLR を有効にするためには[[:w:位置独立コード|位置独立コード]] (PIC) / 位置独立実行形式 (PIE) である必要があります。Unix で使われる実行形式の ELF では位置独立実行形式が ET_DYN、非位置独立実行形式 (non-PIE) が ET_EXEC となります。 Linuxでは ASLR が無効となる非位置独立実行形式のファイルを以下で検索することができます: <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ # License: CC0 / Public Domain $ # 非位置独立実行形式 (non-PIE) のバイナリを検索 $ find / -type f -executable 2>/dev/null | xargs -I {} sh -c 'LANG=C readelf -h {} 2>/dev/null | grep -E "Type:.*EXEC" >/dev/null && echo {}' /usr/lib/default.sfx /usr/lib/klibc/bin/mkfifo /usr/lib/klibc/bin/zcat /usr/lib/klibc/bin/poweroff [...] $ # 非位置独立実行形式 (non-PIE) のバイナリを含むDebianパッケージを検索 $ find / -type f -executable 2>/dev/null | xargs -I {} sh -c 'LANG=C readelf -h {} 2>/dev/null | grep -E "Type:.*EXEC" >/dev/null && echo {}' | xargs -r -d '\n' -n1 dpkg-query -S | sed 's/: .*//' | sort -u aidl busybox-static code cpp-15-x86-64-linux-gnu cuda-gdb-13-4 cuda-nvcc-13-4 cuda-sanitizer-13-4 cuda-tileiras-13-4 debugedit g++-15-x86-64-linux-gnu gcc-15-x86-64-linux-gnu gcc-mingw-w64-i686-posix gdc-15-x86-64-linux-gnu gds-tools-13-4 gfortran-15-x86-64-linux-gnu gh git-lfs gobjc-15-x86-64-linux-gnu gocryptfs golang-1.26-go go-md2man go-mtpfs [...] </syntaxhighlight> 現在のLinuxカーネルがユーザー空間 ASLR を有効にしているかは以下で確認できます (出力例はUbuntu 26.04): <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ sysctl kernel.randomize_va_space # 0=無し、1=部分的、2=完全 kernel.randomize_va_space = 2 </syntaxhighlight> また現在のLinuxカーネルがカーネル ASLR (KASLR) を有効にしているかは以下で確認できます (出力例はUbuntu 26.04): <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ grep 'CONFIG_RANDOMIZE_BASE' /boot/config-$(uname -r) # y=Yes, n=No CONFIG_RANDOMIZE_BASE=y </syntaxhighlight> なお ASLR は間接的な関数呼び出し( C++ の vtable を含む)があると、そのアドレスから ASLR のオフセットがバレてしまい突破されてしまいます。 また CPU の[[:w:投機的実行|投機的実行]]での情報漏れ (Spectre) による[[:w:キャッシュ攻撃|キャッシュサイドチャネル攻撃]](後述)の一つである「投機的探査」 (BlindSide) によってもコードの位置情報の取得がされ ASLR が突破されてしまいます。 === 投機的実行の情報漏れ防止 === 前述のとおり、投機的実行による情報漏れ (Spectre) は攻撃に繋がります。Spectre には境界チェックを迂回する Spectre V1 と間接分岐の分岐先アドレスのキャッシュ{{efn|分岐先バッファ (Branch Target Buffer、BTB)や分岐先アドレスキャッシュ (Branch Target Address Cache、BTAC) と呼ばれる。}}を汚染する Spectre V2 が存在します。<!--TODO: Spectre v3/v4、Zenbleed--> Spectre V1 を防ぐ方法としては投機的実行を阻害するための命令(x86ではLFENCE)の挿入{{efn|Linuxカーネルでの投機的実行の防止は<code>barrier_nospec()</code>。}}やアクセスできるアドレス範囲を狭めることが行われています{{efn|GCCでの投機的実行での範囲外アクセス防止は<code>__builtin_speculation_safe_value(...)</code>、Linuxカーネルでの投機的実行での範囲外アクセス防止は<code>array_index_nospec(...)</code><ref>[https://lwn.net/Articles/759423/ Spectre V1 defense in GCC] LWN 2018年7月10日</ref>。}}。 また Spectre V2 では攻撃を防ぎながらも速度を落とさない方法として脆弱な分岐先アドレスキャッシュに依存する間接分岐の代わりにリターンアドレスのキャッシュ{{efn|リターンスタックバッファ (RSB) と呼ばれる。}}に依存するリターン命令を使う retpoline が登場しました。しかしながらこの retpoline でも速度の低下は起こるため、既知の間接呼び出しを条件分岐 + 直接呼び出しに変換して高速化する手法が模索されました。LLVM では retpoline を有効にする <code>-mretpoline</code>フラグの処理内に既知の仮想関数呼び出しを[[:w:二分木|二分木]]の直接分岐に置き換える「分岐ファネル」(Branch funnel) が導入されています<ref>[https://reviews.llvm.org/D42453 Use branch funnels for virtual calls when retpoline mitigation is enabled.] LLVM project</ref>。また Linux カーネルでも既知の間接呼び出しを条件分岐 + 直接呼び出しに変換する INDIRECT_CALL_* マクロが搭載されています<ref>[https://lwn.net/Articles/774743/ Relief for retpoline pain] LWN 2018年12月14日</ref>。<!--TODO: Intel CETのSHSTKとretpolineの衝突--> 一方、リターン命令の投機的実行も「Retbleed」や AMD CPU における「投機的リターンスタックオーバーフロー」 (SRSO){{efn|Speculative Return Stack Overflow。}}のような脆弱性が見つかっています。 なお低権限コードから高権限コードへの権限境界をまたいだ Spectre および Retbleed は Intel の「間接分岐制限付き投機」(IBRS){{efn|Indirect Branch Restricted Speculation。}}およびそれを高速化した「拡張IBRS」(eIBRS) などハードウェア側によって塞がれました<ref>[https://www.intel.com/content/www/us/en/developer/articles/technical/software-security-guidance/technical-documentation/hardware-behavior-related-to-speculative-execution.html Hardware Features and Behavior Related to Speculative Execution] Intel 2026年10月14日</ref>が、権限境界をまたがないものは今も可能となっています。 === メモリにおける書き込みと実行の排他化 (W^X) === メモリでは書き込み可能領域の実行不可化 ([[:w:NXビット|NXビット]]) と実行可能領域の書き込み不可化による書き込みと実行の排他化([[:w:en:W^X|W^X]])が一般的となっています。NXビットは x86 では NXビットは AMD64 と共に搭載された古い機能であるため、今時の CPU と OS は基本的にこれに対応しています。 現在の CPU がNXビットを有効にしているかはLinuxでは以下で確認できます: <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ grep '^flags' /proc/cpuinfo | grep -o nx nx nx [...] </syntaxhighlight> 現在のLinuxカーネルが厳格な W^X を有効にしているかは以下で確認できます (出力例はUbuntu 26.04): <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ grep '_RWX' /boot/config-$(uname -r) # y=Yes, n=No CONFIG_ARCH_HAS_STRICT_KERNEL_RWX=y CONFIG_STRICT_KERNEL_RWX=y CONFIG_ARCH_HAS_STRICT_MODULE_RWX=y CONFIG_STRICT_MODULE_RWX=y </syntaxhighlight> しかしながら書き込みと実行の排他の原則を破ってそれらを同時に行える場所というものも存在しています。読み込み・書き込み・実行が可能なことから「RWXセクション」と呼ばれています。Windows ではメモリページの PAGE_EXECUTE_READWRITE フラグがこれに相当します<ref>[https://learn.microsoft.com/ja-jp/windows/win32/memory/memory-protection-constants メモリ保護定数] メモリ保護定数 (WinNT.h) - Win32 apps | Microsoft Learn</ref>。 Windows のカーネルドライバでは NX フラグの使用が義務付けられています<ref>[https://learn.microsoft.com/en-us/windows-hardware/test/hlk/testref/driver-compatibility-with-device-guard メモリ整合性と VBS とのドライバ互換性] Microsoft</ref>が、その Windows カーネルにおいても PatchGuard の領域がコード難読化のためにこの原則を破っています。<!--TODO: ホットパッチ--> また Linux でも実行可能領域を書き込み可能ページとして割り当てて書き込む text_poke 関数が用意されています。 === 制御フローの操作を防ぐ (CET) === 現代では「[[:w:Return-oriented programming|リターン指向プログラミング]]」(ROP)、「呼び出し指向プログラミング」 (COP)、「ジャンプ指向プログラミング」(JOP) 、「[[:en:Sigreturn-oriented programming|Sigreturn指向プログラミング]]」(SROP) などの制御フロー操作による攻撃が一般化していますが、これを防ぐ技術として「[[:w:en:Control-flow integrity#Intel Control-flow Enforcement Technology|制御フロー強制テクノロジー]]」(CET) の「[[:w:en:Indirect branch tracking|間接分岐追跡]]」(IBT) と「[[:w:en:Shadow stack|シャドウスタック]]」(SHSTK) が存在します。 制御フロー強制は比較的新しい技術であるため、対応する CPU は以下に限られます: * Intel Core (Tiger Lake) 第11世代以降 * AMD Zen 3 以降(シャドウスタックのみ) 現在の CPU が間接分岐追跡 (IBT) およびシャドウスタックに対応しているかはLinuxでは以下で確認できます: <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ grep '^flags' /proc/cpuinfo | grep -oE '(ibt|shstk)' shstk ibt shstk ibt [...] </syntaxhighlight> またユーザーランドのシャドウスタックの使用にはユーザーランドだけでなくカーネルの対応も必要となります。Linux カーネル では 6.6 以降対応でこれに対応しています(sigreturnにも対応<ref>[https://github.com/torvalds/linux/commit/05e36022c0543ba55a3de55af455b00cb3eb4fcc x86/shstk: Handle signals for shadow stack · torvalds/linux@05e3602] GitHub 2023年8月3日</ref>)。 Linuxディストリビューションでは Ubuntu 24.04以降、 Red Hat Enterprise Linux 9.7 以降<ref>[https://docs.redhat.com/ja/documentation/red_hat_enterprise_linux/9/html/9.7_release_notes/new-features-kernel 4.8. カーネル - 9.7 リリースノート - Red Hat Enterprise Linux - 9 - Red Hat Documentation] Red Hat</ref>が標準でシャドウスタックを有効としています。 現在のLinuxカーネルが間接分岐追跡およびシャドウスタックを有効にしているかは以下で確認できます (出力例はUbuntu 26.04): <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ grep -E '_(IBT|SHADOW_STACK)' /boot/config-$(uname -r) # y=Yes, n=No CONFIG_CC_HAS_IBT=y # CONFIG_X86_KERNEL_IBT is not set CONFIG_X86_USER_SHADOW_STACK=y CONFIG_X86_DISABLED_FEATURE_IBT=y CONFIG_ARCH_HAS_USER_SHADOW_STACK=y </syntaxhighlight> 現在のユーザーランドプログラムの中で間接分岐追跡またはシャドウスタックが無効化されているものはLinuxでは以下で確認できます: <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ # License: CC0 / Public Domain $ # 間接分岐追跡またはシャドウスタックが無効化されているバイナリを検索 $ find / -type f 2>/dev/null | xargs -I {} sh -c 'readelf -h "{}" >/dev/null 2>&1 && (readelf -n "{}" 2>/dev/null | grep -E IBT,.*SHSTK > /dev/null || echo "{}")' /usr/lib/lv2/carla.lv2/carla.so /usr/lib/7zip/7z /usr/lib/7zip/7zCon.sfx /usr/lib/7zip/7zr /usr/lib/7zip/7z.so /usr/lib/7zip/7za /usr/lib/klibc/bin/ipconfig /usr/lib/klibc/bin/umount /usr/lib/klibc/bin/halt [...] $ # 間接分岐追跡またはシャドウスタックが無効化されているバイナリを含むDebianパッケージを検索 $ find / -type f 2>/dev/null | xargs -I {} sh -c 'readelf -h "{}" >/dev/null 2>&1 && (readelf -n "{}" 2>/dev/null | grep -E IBT,.*SHSTK > /dev/null || echo "{}")' | xargs -r -d '\n' -n1 dpkg-query -S | sed 's/: .*//' | sort -u 7zip aidl ardour avr-libc cargo-1.93 carla carla-bridge-wine32:i386 carla-bridge-wine64 carla-lv2 carla-vst cuda-ctadvisor-13-4 cuda-cudart-13-4 [...] </syntaxhighlight> なお、制御フロー強制テクノロジーの間接分岐追跡とシャドウスタックが有効であっても異なる関数の通常呼び出しは防げません。分かりやすい例では関数の間接呼び出しにおいて関数ポインタを<code>sigaction</code>へと変更して独自のシグナルハンドラを登録し、その後クラッシュさせてそのシグナルハンドラを呼び出すという「セグメンテーション違反指向プログラミング」(SFOP) が挙げられます。また攻撃に使える関数 (dop gadgets) {{efn|dop gadgetsの検索の公式実装は「DOP-StaticAssist」[https://github.com/melynx/DOP-StaticAssist]だが長らく更新されておらず古いLLVM 3.5に依存している状態となっている。}}の通常呼び出しだけで攻撃する「Data-Oriented Programming」(DOP) <ref>Hong Hu et al. [https://ieeexplore.ieee.org/stamp/stamp.jsp?tp=&arnumber=7546545 Data-Oriented Programming: On the Expressiveness of Non-Control Data Attacks] IEEE 2016年</ref>{{efn|セキュリティ以外の文脈におけるデータ指向プログラミング、データ指向設計、データ駆動型設計とは異なる。}}という手法も存在します。 C++向けでは仮想関数テーブル (vtable) を改ざんして攻撃に使える仮想関数(仮想関数ガジェット、vfgadget)を呼び出す「偽造オブジェクト指向プログラミング」(COOP) という攻撃手法も登場しています。 === メモリ安全性の高いソフトウェアへ === 既存のソフトウェアの脆弱性は7割がメモリ安全性の問題に起因すると言われています<ref>[https://www.cisa.gov/sites/default/files/2023-12/CSAC_TAC_Recommendations-Memory-Safety_Final_20231205_508.pdf REPORT TO THE CISA DIRECTOR Technical Advisory Council Memory Safety] サイバーセキュリティ諮問委員会 (CSAC) 2023年12月5日</ref>。しかしながら[[C言語]]や[[C++]]はメモリ安全性が低いため、メモリ安全性の確保できる[[Rust]]などで書かれた代替プログラムが登場しています: {| class="wikitable" |+ コマンドのRust版 |- ! コマンドの概要 !! 従来版 !! Rust版 |- | Unix系の基本コマンド群 || GNU Core Utilities || '''uutils coreutils''' |- | ファイル検索コマンド群{{efn|<code>find</code>、<code>locate</code>、<code>updatedb</code>、<code>xargs</code>の4コマンド}} || GNU Findutils || '''uutils findutils''' |- | ファイル差分コマンド群{{efn|<code>diff</code>、<code>cmp</code>、<code>diff3</code>、<code>sdiff</code>の4コマンド}} || GNU Diffutils || '''uutils diffutils''' |- | ストリームエディタ (sed) || GNU sed / FreeBSD sed || '''uutils sed''' |- | AWKスクリプト || GNU AWK || '''uutils AWK''' |- | 文字列検索 || GNU Grep || '''uutils Grep''' |- | tarアーカイブ || GNU Tar || '''uutils tar''' |- | アカウント管理コマンド群 || shadow-utils || '''uutils shadow-utils''' |- | アクセス制御コマンド群{{efn|<code>chacl</code>、<code>getfacl</code>、<code>setfacl</code>の3コマンド}} || acl || '''uutils acl''' |- | procfs{{efn|プロセスファイルシステム}}表示コマンド群 || procps / procps-ng || '''uutils procps''' |- | ホスト名管理コマンド群{{efn|<code>hostname</code>、<code>dnsdomainname</code>、<code>domainname</code>、<code>nisdomainname</code>、<code>ypdomainname</code>の5コマンド。}} || hostname || '''uutils hostname''' |- | Linuxユーティリティ || util-linux || '''uutils util-linux''' |- | 権限昇格 || sudo || '''sudo-rs''' |- | 暗号・署名システム || GnuPG || '''Sequoia PGP''' |- | 時刻同期 || ntpd || '''ntpd-rs''' |- | セキュアシェル (SSH) || OpenSSH || '''russh''' |} これらのRustで書かれたコマンドのうちuutils coreutilsとsudo-rsはUbuntuに採用されています。 またライブラリでもRustだけ (Pure Rust) で実装されたものが登場しています: * 画像ライブラリ - これらは例えばGNOMEデスクトップ環境の画像ローダーGlycinから使われています<ref>[https://gitlab.gnome.org/GNOME/glycin GNOME / glycin · GitLab] GNOME Project</ref>。 ** libpng → pngクレート - PNG画像向け。 ** libgif → gifクレート - GIF画像向け。 ** libjpeg / libjpeg-turbo → zune-jpeg / libjpeg-turbo-rs - JPEG画像向け。 ** OpenJPEG → hayro-jpeg2000 - JPEG 2000画像向け。 ** libtiff → tiffクレート - Tiff画像向け ** libwebp → image-webpクレート - WebP画像向け。 ** libraw → libopenraw - RAW画像向け。 ** librsvg - SVG画像向け。C言語からRustに書き直しされました。 * 圧縮ライブラリ ** zlib / zlib-ng → zlib-rs - Deflate圧縮向け ** libbzip2 → bzip2-rs - BZ2圧縮向け * 暗号化ライブラリ ** OpenSSL / GnuTLS → [[:w:en:Rustls|Rustls]] * Unicode処理ライブラリ ** ICU4C → ICU4X * テキスト整形ライブラリ ** HarfBuzz → HarfRust * ブラウザエンジン ** Blink/Gecko → Servo <!-- === 整合性チェック === PatchGuard / HyperGuard --> == 不審な改変が行われていないかを調べる == 例えばOSの起動には一連のシーケンスがありますが、マルウェアは基本的にここの途中に入り込んで永続化します。 {| class="wikitable" |+ 起動シーケンス |- ! 種類 || Windows 11以降 !! Linux (Gnome) !! Linux (KDE) |- | 1. 起動ファームウェア || [[:w:Unified Extensible Firmware Interface|UEFI]] || colspan=2 | [[:w:Basic Input/Output System|レガシーBIOS]] / UEFI |- | 2. ブートローダー || [[:w:Windows Boot Manager|Windows Boot Manager]] (bootmgfw.efi)<br> → [[:w:Windows Boot Manager#winload.exe/winload.efi|Windows OS Loader]] (winload.efi) || colspan=2 | GRUB{{efn|Ubuntuの標準。}} / systemd-boot / Unified Kernel Image{{efn|Linuxカーネルとブートイメージを単一バイナリにする仕組み。}} / EFI boot stub{{efn|LinuxカーネルをEFIから直接ブートできるようにする仕組み。}} |- | 3. カーネル || [[:w:ntoskrnl.exe|ntoskrnl.exe]] || colspan=2 | Linuxカーネル ([[:w:vmlinux|vmlinux]]{{efn|圧縮後はvmlinuzとなる。}}) |- | 4. 初期化プロセス || [[:w:en:Session Manager Subsystem|smss.exe]]<br> → wininit.exe<br> || rowspan=2 colspan=2 | [[:w:systemd|systemd]]{{efn|以前は代替initもよく使われていたが、今はsystemdが標準となっている。}} |- | 5. サービスコントロールマネージャ || colspan=2 | [[:w:en:Service Control Manager|services.exe]] |- | rowspan=2 | 6. ログインマネージャ || rowspan=2 | [[:w:Winlogon|winlogon.exe]] || colspan=2 | systemd-logind<br>sd-pam |- | [[:w:GNOME ディスプレイマネージャー|GDM]] || [[:w:Simple Desktop Display Manager|SDDM]] |- | rowspan=2 | 7. ユーザー初期化プロセス || rowspan=2 | userinit.exe || colspan=2 | systemd |- | gnome-session || kcminit<br> → plasma_session |- | 8. シェル || [[:w:Windows Explorer|explorer.exe]] || gnome-shell || plasmashell |- | 9. コンポジタ || [[:w:Desktop Window Manager|dwm.exe]] || mutter || kwin |} また起動シーケンス以外にもアップデートシーケンスへの感染やシェル感染、ブラウザ感染もあります。 {| class="wikitable" |+ Windows における代表的なユーザースクリプト又はコマンド起動が可能な設定ファイル |- ! 規格/アプリケーション !! ユーザー !! システム |- | Windows || %APPDATA%\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows\<wbr>Start Menu\<wbr>Programs\<wbr>Startup\<wbr>* || C:\<wbr>ProgramData\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows\<wbr>Start Menu\<wbr>Programs\<wbr>Startup\<wbr>* |- | [[:w:PowerShell|PowerShell]] プロファイル<ref>[https://learn.microsoft.com/ja-jp/powershell/module/microsoft.powershell.core/about/about_profiles?view=powershell-7.6 about_Profiles - PowerShell - Microsoft Learn] Microsoft</ref> || %USERPROFILE%\<wbr>Documents\<wbr>PowerShell\<wbr>Profile.ps1<br>%USERPROFILE%\<wbr>Documents\<wbr>PowerShell\<wbr>Microsoft.PowerShell_profile.ps1 || C:\<wbr>Windows\<wbr>System32\<wbr>WindowsPowerShell\<wbr>*\<wbr>Profile.ps1<br>C:\<wbr>Windows\<wbr>System32\<wbr>WindowsPowerShell\<wbr>*\<wbr>Microsoft.PowerShell_profile.ps1 |} {| class="wikitable" |+ Linux における代表的なユーザースクリプト又はコマンド起動が可能な設定ファイル |- ! 規格/アプリケーション !! ユーザー !! システム |- | POSIX標準 || ~/.profile || /etc/profile |- | XDG Base Directory<wbr>標準 || ~/.local/bin/* || |- | FHS{{efn|Filesystem Hierarchy Standard}}<wbr>標準[https://refspecs.linuxfoundation.org/fhs.shtml] || || /bin/* /sbin/* /usr/bin/* /usr/local/bin/* /etc/inittab |- | LSB{{efn|Linux Standard Base}}<wbr>標準[https://refspecs.linuxfoundation.org/lsb.shtml] || || /etc/profile.d/* /etc/init.d/* /etc/cron.d/* |- | Desktop Application Autostart Specification<wbr>標準[https://specifications.freedesktop.org/autostart/latest/]{{efn|systemd-xdg-autostart-generator が導入されているシステムではこれらがsystemd設定に自動変換される。}} || ~/.config/autostart/* || /etc/xdg/autostart/* |- | Bash || ~/.bash_profile ~/.bashrc || /etc/bash_profile /etc/bash.bashrc /etc/bash.bash_logout |- | Z shell (Zsh) || ~/.zshenv ~/.zprofile ~/.zshrc ~/.zlogin ~/.zlogout || /etc/zshenv /etc/zprofile /etc/zshrc /etc/zlogin /etc/zlogout<br/>(または /etc/zsh/zshenv /etc/zsh/zprofile /etc/zsh/zshrc /etc/zsh/zlogin /etc/zsh/zlogout) |- | Systemd || ~/.config/systemd/user/* || /etc/systemd/system/* /etc/systemd/user/* |- | Xorg || ~/.xinitrc ~/.xserverrc ~/.xsession || /etc/X11/xinit/xinitrc /etc/X11/xinit/xserverrc /etc/X11/Xsession /usr/share/xsessions/* |- | Wayland || || /usr/share/wayland-sessions/* |- | Python || ~/.local/lib/python*/site-packages/*/**{{efn|絶対パスは<code>python3 -c 'import site; print(site.getusersitepackages())'</code>で確認可能。}} || /usr/lib/python*/dist-packages/*/** /usr/local/lib/python*/dist-packages/*/**{{efn|絶対パスは<code>python3 -c 'import site; print(site.getsitepackages())'</code>で確認可能。}} |- | Perl{{efn|Debian/UbuntuではDebianパッケージ設定システム (debconf) のためにPerlを使用している。}} || || /usr/share/perl*/** /usr/local/share/perl*/** /usr/lib/*/perl*/** /usr/local/lib/*/perl*/**{{efn|絶対パスは<code>perl -V:installsitearch -V:installsitelib -V:installvendorarch -V:installvendorlib -V:archlib -V:privlib -V:installarchlib -V:installprivlib</code>で確認可能。}} |} === パッケージ管理ファイルを検証する === パッケージ管理システムが管理しているファイルではファイルハッシュが保存されているため簡単にその検証を行うことが可能です: {| class="wikitable" |- ! OS / パッケージシステム !! 検証のみ !! 修復 |- | Windows || <code>sfc&nbsp;/verifyonly</code> || <code>sfc&nbsp;/scannow</code> |- | Debパッケージ (Debian / Ubuntu) || <code>debsums -s</code> || <code>apt install --reinstall $(debsums -cs &verbar; xargs -r dpkg-query -S &verbar; cut -d: -f1 &verbar; sort -u)</code> |- | RPMパッケージ (RedHat / Fedora) || <code>rpm -Va</code> || |} ただしローカルハッシュが改ざんされている可能性もあるため過信はできません。<!--TODO: ローカルハッシュの検証法--> 自動的にシステムの検証を行うシステムも存在します: * Android - ブロックデバイスレベルでのハッシュ検証 (dm-verityベース)<ref>[https://source.android.com/docs/security/features/verifiedboot/dm-verity?hl=ja dm-verity の実装] Google</ref> <!-- またUbuntuのSnapパッケージでもdm-verityの導入が進められています。 また特定言語のパッケージの検証は以下で可能です: * PIP (Python): なし --> === システム領域に不審なファイルが追加されていないかを調べる === システムの追加ファイルの検知にはパッケージシステムで管理されていないファイルの一覧を返す以下のようなツールが存在します: * Debian / Ubuntu(Debパッケージ)向け: cruft-ngパッケージ(<code>cruft</code>コマンド) 上記の<code>cruft</code>コマンドでは設定ファイルだけ残っているパッケージのファイルも出てきてしまいます。そのため、これが邪魔な時は設定ファイルだけ残っているパッケージを<code>sudo apt purge '~c'</code>で削除しましょう。 またaptレポジトリに無いインストールされたパッケージは<code>apt list '?obsolete'</code>で、手動 (manual) でインストールされたパッケージは<code>apt-mark showmanual</code>で確認できます。これらのコマンドを実行してインストールした覚えないパッケージが入ってないかをチェックしましょう。GUI が使えるのであれば<code>synaptic</code>を起動して「インストール済(ローカルまたは廃止)」と「インストール済(手動)」を確認するのもオススメです。 === ユーザー領域に不審なファイルが追加されていないかを調べる === ユーザースクリプトの書き換えや追加は検知が難しいです。<!--TODO: 良い方法を書く--> 共有ライブラリやスクリプトによるプラグイン追加も可能となっているため、こちらにも気をつけなければいけません。これには例えば以下があります: {| class="wikitable" |+ 代表的なユーザースクリプトや拡張機能のディレクトリパス |- ! 種類 !! Windowsのパス !! macOSのパス !! Linuxのパス |- | Google Chrome 拡張機能 || %LOCALAPPDATA%\Google\Chrome\User Data\*\Extensions\ || ~/Library/Application Support/Google/Chrome/*/Extensions/ || ~/.config/google-chrome/*/Extensions/ |- | GIMPプラグイン<ref>[https://gimp.cc/faq/add-gimp-plugins.html How to Install GIMP Plugins - Detailed Guide with Troubleshooting] GIMP.cc</ref> || %APPDATA%\GIMP\*\plug-ins\ || ~/Library/Application Support/GIMP/*/plug-ins/ || ~/.config/GIMP/*/plug-ins/ |- | Blenderスクリプト{{efn|起動スクリプト、アドオンを含む。}}<ref>[https://docs.blender.org/manual/ja/dev/advanced/blender_directory_layout.html Blender&#39;s Directory Layout] Blender Foundation</ref> || %APPDATA%\Blender Foundation\Blender\*\scripts\ || ~/Library/Application Support/Blender/*/scripts/ || ~/.config/blender/*/scripts/ |- | Ardourスクリプト<ref>[https://manual.ardour.org/lua-scripting/ The Ardour Manual - Lua Scripting] Ardour</ref> || %LOCALAPPDATA%\ardour*\scripts\ || ~/Library/Preferences/Ardour*/scripts/ || ~/.config/ardour*/scripts/ |- | LibreOfficeスクリプト || %APPDATA%\LibreOffice\*\user\Scripts\ || ~/Library/Application Support/LibreOffice/*/user/Scripts/ || ~/.config/libreoffice/*/user/Scripts/ |- | Visual Studio Code 拡張機能<ref>[https://code.visualstudio.com/docs/configure/extensions/extension-marketplace Extension Marketplace] Microsoft</ref> || %USERPROFILE%\.vscode\extensions\ || ~/.vscode/extensions/ || ~/.vscode/extensions/ |} === 改変・追加されたファイルが危険かを調べる === 実行ファイルやスクリプトはLinuxでは以下で検出できます: <syntaxhighlight lang="shell-session"> # cat filelist.txt | xargs file | grep -i -E ':.*(executable|shared object|relocatable|script)' /etc/init.d/binfmt-support.dpkg-new: POSIX shell script, ASCII text executable /etc/update-motd.d/99-livepatch-kernel-upgrade-required: POSIX shell script, ASCII text executable /usr/lib/chromium-browser/plugins/libpepflashplayer.so: ELF 64-bit LSB shared object, x86-64, version 1 (SYSV), dynamically linked, BuildID[sha1]=5c421e89a5c062a2106a5a4381dc38e779a22795, stripped </syntaxhighlight> またClamAVを導入していれば以下でマルウェアデータベースとの照合を行うことができます: <syntaxhighlight lang="shell-session"> # cat filelist.txt | xargs clamscan Loading: 3s, ETA: 0s [========================>] 3.63M/3.63M sigs Compiling: 1s, ETA: 0s [========================>] 41/41 tasks /etc/apt/apt.conf.d/00trustcdrom: OK /etc/apt/auth.conf.d/90ubuntu-advantage: OK /etc/apt/keyrings/google.asc: OK [...] ----------- SCAN SUMMARY ----------- Known viruses: 3628164 Engine version: 1.5.4 Scanned directories: 125 Scanned files: 1919 Infected files: 0 Total errors: 10 Data scanned: 247.72 MiB Data read: 281.17 MiB (ratio 0.88:1) Time: 17.939 sec (0 m 17 s) Start Date: 2026:10:11 05:41:30 End Date: 2026:10:11 05:41:48 </syntaxhighlight> === 設定データベースを検証する === 設定データベースは Windows ではレジストリ、Linuxでは GNOME / MATEの 使う [[:en:dconf|dconf]] が存在します。 Windows の設定データベースはレジストリと呼び「レジストリエディタ」 (<code>regedit</code>) で表示できます。 {| class="wikitable" |+ Windows における代表的なユーザースクリプト、コマンド起動、DLL呼び出しが可能なレジストリ |- ! 規格/アプリケーション !! 各ユーザー !! 全ユーザー |- | Windows || HKEY_USERS\<wbr>*\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows\<wbr>CurrentVersion\<wbr>Run\<wbr>*<wbr>CurrentVersion\<wbr>Run\<wbr>*<br>HKEY_USERS\<wbr>*\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows\<wbr>CurrentVersion\<wbr>RunOnce\<wbr>*{{efn|name="runonce"|RunOnceは一度のみ実行だが再登録することで何回でも実行可能。}} || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows\<wbr>CurrentVersion\<wbr>Run\<wbr>*<br>HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows\<wbr>CurrentVersion\<wbr>RunOnce\<wbr>*{{efn|name="runonce"}} |- | [[:w:en:Security Account Manager|Security Account Manager]] || || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>SAM\<wbr>SAM\<wbr>Domains\<wbr>Account\<wbr>Users\<wbr>*\<wbr>V{{efn|name="sam"|'HKEY_LOCAL_MACHINE\SAM\SAM\' 以下はレジストリエディタの右クリックの「アクセス許可」で Administrators にアクセス許可を与えないと読めない。なおファイルパスは「C:\Windows\System32\config\SAM」。}}{{efn|Vはバイナリであり、0xCC + (0x60 に指定されたオフセット) からユーザーログオンスクリプトパスを指定する<ref name="sam-ghost">Sebastián R. Castro et al. [https://dl.acm.org/doi/pdf/10.1145/3689934.3690839 Ghost in the SAM: Stealthy, Robust, and Privileged Persistence through Invisible Accounts] ACM 2024年</ref>。}} |- | [[:w:en:Local Security Authority Subsystem Service|Local Security Authority Subsystem Service]] || || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>System\<wbr>CurrentControlSet\<wbr>Control\<wbr>LSA\<wbr>Notification Packages<br>HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>SYSTEM\<wbr>CurrentControlSet\<wbr>Control\<wbr>LSA\<wbr>Authentication Packages<ref>[https://attack.mitre.org/detectionstrategies/DET0207/ Detect LSA Authentication Package Persistence via Registry and LSASS DLL Load] MITRE Corporation</ref> |- | [[:w:en:Active Setup|Active Setup]]<ref>[https://www.advancedinstaller.com/application-packaging-training/msi/ebook/active-setup.html Active-Setup Mechanism] Advanced Installer</ref> || HKEY_USERS\<wbr>*\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Active Setup\<wbr>Installed Components\<wbr>*\<wbr>StubPath || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Active Setup\<wbr>Installed Components\<wbr>*\<wbr>StubPath<ref>[https://attack.mitre.org/techniques/T1547/014/ Boot or Logon Autostart Execution: Active Setup] MITRE Corporation</ref> |- | [[:w:Windowsサービス|Windowsサービス]]<ref>[https://learn.microsoft.com/ja-jp/windows-hardware/drivers/install/hklm-system-currentcontrolset-services-registry-tree HKLM\SYSTEM\CurrentControlSet\Services レジストリ ツリー - Windows drivers - Microsoft Learn] Microsoft</ref> || || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>SYSTEM\<wbr>CurrentControlSet\<wbr>services\<wbr>* |- | [[:w:Winlogon|Winlogon]] || || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows NT\<wbr>CurrentVersion\<wbr>Winlogon\<wbr>Shell<br>HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows NT\<wbr>CurrentVersion\<wbr>Winlogon\<wbr>Userinit<br>HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows NT\<wbr>CurrentVersion\<wbr>Winlogon\<wbr>Notify<ref>[https://attack.mitre.org/techniques/T1547/004/ Boot or Logon Autostart Execution: Winlogon Helper DLL] MITRE Corporation</ref> |- | [[:w:cmd.exe|cmd.exe]]<ref>[https://learn.microsoft.com/en-us/windows-server/administration/windows-commands/cmd cmd - Microsoft Learn] Microsoft</ref> || HKEY_USERS\<wbr>*\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Command Processor\<wbr>AutoRun\REG_EXPAND_SZ || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Command Processor\<wbr>AutoRun\<wbr>REG_SZ |- | [[Microsoft Edge]] || || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>SOFTWARE\<wbr>Policies\<wbr>Microsoft\<wbr>Edge\<wbr>ExtensionInstallForcelist<ref>[https://learn.microsoft.com/ja-jp/deployedge/microsoft-edge-policies/extensioninstallforcelist Microsoft Edge ブラウザー ポリシードキュメント ExtensionInstallForcelist - Microsoft Learn] Microsoft</ref>{{efn|name="silent-install"|自動的にサイレントインストールする}} |- | [[Google Chrome]] || || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>SOFTWARE\<wbr>Policies\<wbr>Google\<wbr>Chrome\<wbr>ExtensionInstallForcelist<ref>[https://chromeenterprise.google/intl/ja_jp/policies/extension-install-forcelist/ ExtensionInstallForcelist: 自動インストールするアプリと拡張機能のリストの設定 - Chrome Enterprise] Google</ref>{{efn|name="silent-install"}} |} Linux の GNOME / MATE 環境には「[[:w:en:Dconf#dconf database|dconf データベース]]」が存在し、それは<code>dconf dump</code>('/'区切り)で表示できます。また dconf データベースにスキーマ(規定値と解説)を被せた gsettings も存在し、こちらは<code>gsettings list-recursively</code>(dconfと異なり'.'区切り)で表示できます。 {| class="wikitable" |+ Linux における代表的なユーザースクリプト又はコマンド起動が可能なdconf設定 |- ! 規格/アプリケーション !! ユーザー |- | GNOME Settings Daemon || /org/gnome/settings-daemon/plugins/media-keys/custom-keybindings/custom*/command |- | Marco ([[w:MATE (デスクトップ環境)|MATE]]) || /org/mate/Marco/keybinding-commands/command-*{{efn|変更した設定は<code>dconf dump /org/mate/Marco/keybinding-commands/</code>で、デフォルトも含めた設定は<code>gsettings list-recursively org.mate.Marco.keybinding-commands</code>で表示可能。}} |- | MATE Screensaver || /org/mate/screensaver/embedded-keyboard-command<br>/org/mate/screensaver/logout-command{{efn|変更した設定は<code>dconf dump /org/mate/screensaver/</code>、デフォルトも含めた設定は<code>gsettings list-recursively org.mate.screensaver</code> で表示可能}} |- | mate-applets || /org/mate/panel/objects/object-*/prefs/command |- | mate-sensors-applet || /org/mate/panel/objects/object-*/prefs/*/high-alarm-command<br>/org/mate/panel/objects/object-*/prefs/*/low-alarm-command |} なお MATE Screensaver と同源の GNOME Screensaver にも /org/gnome/desktop/screensaver/embedded-keyboard-command と /org/gnome/desktop/screensaver/logout-command{{efn|変更した設定は<code>dconf dump /org/gnome/desktop/screensaver/</code>、デフォルトも含めた設定は<code>gsettings list-recursively org.gnome.desktop.screensaver</code> で表示可能。}} が存在しますが、こちらは既に廃止されており指定しても無視されます<ref>[https://github.com/GNOME/gsettings-desktop-schemas/blob/main/schemas/org.gnome.desktop.screensaver.gschema.xml.in gsettings-desktop-schemas/schemas/org.gnome.desktop.screensaver.gschema.xml.in at main · GNOME/gsettings-desktop-schemas] GNOME Project</ref>。 === メディアに不審なファイルが追加されていないかを調べる === メディアの自動実行 ([[:w:en:AutoRun|AutoRun]]) ファイルにもマルウェアが紛れてないか注意しましょう。 {| class="wikitable" |+ メディアの自動実行ファイル |- ! Windows !! Linux<br>(Desktop Application Autostart Specification<wbr>標準[https://specifications.freedesktop.org/autostart/latest/]) |- | *:\[[:w:autorun.inf|autorun.inf]] || /media/*/*/.autorun<br>/media/*/*/autorun<br>/media/*/*/autorun.sh<br>/run/media/*/*/.autorun<br>/run/media/*/*/autorun<br>/run/media/*/*/autorun.sh |} == 改変を防ぐ == 改変を探すのは大変です。なので最初から改変をできないようにすれば管理はとても楽になります。 改ざんを防ぐには「[[:w:en:Chain of trust|信頼の連鎖]]」 (chain of trust) が重要となります。例えばカーネルだけで改ざんを防いでも、ハードウェアのファームウェアが不正であれば不正なカーネルを起動できてしまいます。 === ファームウェア改ざんを防ぐ === ファームウェア改ざんによる「ファームウェアルートキット」を防ぐにはIntel Management Engine (Intel ME)で実装されているIntel BIOS Guardを使う必要があります。<!--TODO: マザーボードによってはBIOSで有効にする必要があります。→最近のマザーボード事情--> なお2017年の第8世代Intel Coreプロセッサ (Coffee Lake) 以前はme_cleanerによってIntel Management Engineの無効化が可能<ref>[https://github.com/corna/me_cleaner/wiki/me_cleaner-status me_cleaner status] Nicola Corna 2018年</ref>なため非推奨です。 また2023年のIntel ME 16.1.30.2307未満では悪意あるロゴ画像を設定することによってroot権限からUEFI設定の変更が可能です([[:w:en:LogoFAIL|LogoFAIL]]の脆弱性)。そのため、古いIntel Management Engineが動作している場合はそのファームウェアをアップデートしましょう。Windowsでは MEUpdateTool.exe / FWUpdLcl.exe を使うことでこのアップデートが可能となっています。一方、Linuxでは一部機種が fwupdmgr 経由での Intel ME ファームウェアアップデートに対応しています。 Intel MEのバージョンはLinuxでは以下のような感じに調べることができます: <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ cat /sys/class/mei/mei0/fw_ver 0:16.1.32.2473 0:16.1.32.2473 0:16.1.27.2181 </syntaxhighlight> === ブートローダー改ざんを防ぐ === ブートローダーは起動に使われるファームウェア (BIOS) から呼ばれ、カーネルを読み込んで起動するために使われるプログラムです。古い BIOS (レガシーBIOS) には起動するブートローダーを検証する仕組みが存在しませんでしたが、新しい UEFI (統一拡張ファームウェアインターフェース) には署名されたブートローダーのみを起動する UEFI Secure Boot が追加され、安全なブートローダーの起動を許可するための「承認済み署名データベース」 (Authorized Signature Database、UEFI db) と、脆弱なブートローダーの起動を防ぐための「禁止署名データベース」 (Forbidden Signature Database、UEFI dbx) が用意されています。 UEFI Secure Boot が有効かどうかは以下で確認できます: * Windows PowerShell: <code>Confirm-SecureBootUEFI</code> * Linux: <code>mokutil --sb-state</code> UEFI db と UEFI dbx の内容は以下で確認できます: * Windows PowerShell: <code>Get-SecureBootUEFI -Name db -Decoded</code> / <code>Get-SecureBootUEFI -Name dbx -Decoded</code> * Linux: ** mokutil{{efn|Ubuntu Desktop に標準で含まれている。}}: <code>mokutil --db</code> / <code>mokutil --dbx</code> ** efitools: <code>efi-readvar -v db</code> / <code>efi-readvar -v dbx</code> ブートローダーの署名情報は以下で確認できます: * Windows PowerShell: <code>Get-PfxCertificate</code>{{efn|<code>Get-AuthenticodeSignature</code>はカタログ署名が使われる場合があるため非推奨: https://github.com/PowerShell/PowerShell/issues/23820 。}} * Linux: <code>sbverify --list</code> 例えば Windows PowerShell では以下のような感じです: <syntaxhighlight lang="powershell"> PS C:\WINDOWS\system32> mountvol S: /S; if ($?) { Get-PfxCertificate 'S:\EFI\Microsoft\Boot\bootmgfw.efi'; mountvol S: /D } Thumbprint Subject ---------- ------- FACDE3D80E99AFCC15E08AC5A69BD22785287F79 CN=Microsoft Windows, O=Microsoft Corporation, L=Redmond, S=Washington, C=US </syntaxhighlight> また Ubuntu や Debian では署名されたブートローダー (grub-efi-*-signedパッケージ) と非署名のブートローダー (grub-efi-*-unsignedパッケージ) の両方が用意されており、ブートローダーの正体がどれか、また署名されたブートローダーの署名内容を確認するのは以下のような感じとなります: <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ dpkg -L grub-efi-amd64-signed | grep -i '\.efi' | xargs md5sum # インストールされている署名されたブートローダーのハッシュを表示(grub*は通常版、gcd*は光学ブートメディア向け、grubnet*はネットブート向け) 2bd267fb12bd3b0fe26a9dfb4290868d /usr/lib/grub/x86_64-efi-signed/gcdx64.efi.signed f689e93336a015fa6eb93e1913b13482 /usr/lib/grub/x86_64-efi-signed/grubnetx64.efi.signed b63c7618fb96d52520b42b8cc7b124f0 /usr/lib/grub/x86_64-efi-signed/grubx64.efi.signed $ sudo sh -c "md5sum /boot/efi/EFI/BOOT/*" # 現在のbootloaderがどれを使っているかを確認(署名されたgrubを使用) b63c7618fb96d52520b42b8cc7b124f0 /boot/efi/EFI/BOOT/BOOTX64.EFI $ sudo sbverify --list /boot/efi/EFI/BOOT/BOOTX64.EFI signature 1 image signature issuers: - /C=GB/ST=Isle of Man/L=Douglas/O=Canonical Ltd./CN=Canonical Ltd. Master Certificate Authority image signature certificates: - subject: /C=GB/ST=Isle of Man/O=Canonical Ltd./OU=Secure Boot/CN=Canonical Ltd. Secure Boot Signing (2022 v1) issuer: /C=GB/ST=Isle of Man/L=Douglas/O=Canonical Ltd./CN=Canonical Ltd. Master Certificate Authority $ sudo sbverify --cert /usr/share/grub/canonical-uefi-ca.crt /boot/efi/EFI/BOOT/BOOTX64.EFI Signature verification OK </syntaxhighlight> なお Linux では grub の代わりに使えるブートローダーとして systemd-boot もあります。systemd-boot の署名版は Debian が systemd-boot-efi-*-signed パッケージとして用意しているようです(Ubuntu未搭載)。 <!--TODO: TPM (Trusted Platform Module) チップ --> === カーネル本体の改ざんを防ぐ === カーネルはオペレーティングシステム (OS) の下層で動き続けるプログラムです。カーネル本体の実行ファイルもブートローダーと同様に署名が行われており、UEFI Secure Boot が有効であればその検証をブートローダーが行います。Linux では GRUB の UEFI Secure Boot と shim_lock の連携がそれに相当します<ref>[https://www.gnu.org/software/grub/manual/grub/grub.html#UEFI-secure-boot-and-shim GNU GRUB Manual 2.14 - 19.4 UEFI secure boot and shim support] フリーソフトウェア財団</ref>。 なお Ubuntu には署名されたカーネル (linux-image-*パッケージ) と非署名のカーネル (linux-image-unsigned-*パッケージ) の両方が用意されており、署名されているカーネルは以下のような感じでその署名が確認できます: <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ sudo sbverify --list /boot/vmlinuz-$(uname -r) # Linuxカーネル本体の署名を確認する signature 1 image signature issuers: - /C=GB/ST=Isle of Man/L=Douglas/O=Canonical Ltd./CN=Canonical Ltd. Master Certificate Authority image signature certificates: - subject: /C=GB/ST=Isle of Man/O=Canonical Ltd./OU=Secure Boot/CN=Canonical Ltd. Secure Boot Signing (2022 v1) issuer: /C=GB/ST=Isle of Man/L=Douglas/O=Canonical Ltd./CN=Canonical Ltd. Master Certificate Authority $ sudo sbverify --cert /usr/share/grub/canonical-uefi-ca.crt /boot/vmlinuz-$(uname -r) # Linuxカーネル本体の署名を検証する Signature verification OK </syntaxhighlight> === カーネルモジュールの改ざんを防ぐ === カーネルモジュールも署名されており、その検証をカーネルが行っています。Windowsカーネルでは ci.dll (Code Integrityモジュール)が、Linuxカーネルでは CONFIG_MODULE_SIG コンパイルオプションがその検証を行っています。 カーネルによるカーネルモジュールの検証が有効かどうかは以下で確認することができます: * Linux: <code>grep 'CONFIG_MODULE_SIG=' /boot/config-$(uname -r)</code> カーネルによるカーネルモジュールの検証で読み込みを弾くかどうかは以下で確認することができます: * Windows: 強制モードか評価モード (監査モード) かを確認する PowerShell スクリプトが Microsoft のサイトに存在します: https://support.microsoft.com/en-us/windows/hardware/drivers/the-windows-driver-policy#is-my-device-in-evaluation-mode-or-enforcement-mode * Linux: <code>cat /sys/module/module/parameters/sig_enforce</code> また Linux では検証で読み込みを弾かない場合でも検証外カーネルモジュールを読み込んだ場合はdmesgに警告が出て '''Tainted kernel''' 扱いとなります<ref>[https://docs.kernel.org/admin-guide/tainted-kernels.html Tainted kernels] Linux Foundation</ref>。以下はその例です: <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ grep 'CONFIG_MODULE_SIG=' /boot/config-$(uname -r) # y=Yes, n=No CONFIG_MODULE_SIG=y $ cat /sys/module/module/parameters/sig_enforce # Y=Yes, N=No N $ sudo dmesg | grep 'module verification' [ 8.928361] nvidia: module verification failed: signature and/or required key missing - tainting kernel $ wget http://git.kernel.org/pub/scm/linux/kernel/git/torvalds/linux.git/plain/tools/debugging/kernel-chktaint [...] $ sudo sh ./kernel-chktaint Kernel is "tainted" for the following reasons: * externally-built ('out-of-tree') module was loaded (#12) * unsigned module was loaded (#13) Raw taint value as int/string: 12288/'G OE ' Tainted modules: * nvidia (OE) * nvidia_drm (OE) * nvidia_modeset (OE) * nvidia_uvm (OE) For a more detailed explanation of the various taint flags see Documentation/admin-guide/tainted-kernels.rst in the Linux kernel sources or https://kernel.org/doc/html/latest/admin-guide/tainted-kernels.html </syntaxhighlight> また Linux では以下のような感じで個々のモジュールの署名が確認できます: <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ modinfo /lib/modules/$(uname -r)/kernel/arch/x86/kernel/msr.ko.zst filename: /lib/modules/7.0.0-38-generic/kernel/arch/x86/kernel/msr.ko.zst license: GPL description: x86 generic MSR driver author: H. Peter Anvin <hpa@zytor.com> srcversion: 639B995855A3528050FD532 depends: intree: Y name: msr retpoline: Y vermagic: 7.0.0-38-generic SMP preempt mod_unload modversions sig_id: PKCS#7 signer: Build time autogenerated kernel key sig_key: 3B:E7:D3:BF:D3:2E:D9:CA:9C:17:D2:E9:5F:1A:1C:AE:67:D5:82:2F sig_hashalgo: sha512 signature: 96:BC:2A:18:6E:4D:D8:E5:28:69:9D:E6:65:89:95:D4:BE:4C:5B:7C: 4A:23:11:75:F6:FE:63:79:FC:29:9B:F7:EA:24:B6:F1:EF:F3:80:17: 0B:C0:1E:46:61:29:BB:F9:E0:AC:81:69:85:73:7D:D4:77:82:A8:DB: [...] </syntaxhighlight> === システムファイル改ざんを防ぐ === システムファイル改ざんを防ぐ良い方法はシステム領域を読み取り専用にすることですが、仮にファイルシステムを読み取り専用のファイルシステム(SquashFSやEROFS)にしたとしても記録する場所がSSDであればブロック単位での上書きが可能となります。 1回だけ書き込めて上書きが不可能な媒体としてはCD-R、DVD-R、DVD+R、BD-Rなどの一部の光学メディアが存在しますが、これらをブートメディアとして使用するのは頻繁なアップデートが難しくなります。 そのほかの手法としては別のコンピュータからシステムファイルを取得する「ネットワークブート」を行うという手法もありますが、これはネットワーク経由でシステムファイルが盗まれる可能性と隣り合わせです。しかしながらプロトコルにUEFI HTTPSを、認証に相互認証のmTLSを用いて、その秘密鍵をTPMで管理してOSから読めなくすることでネットワークブートの安全性は何とか確保できるかもしれません(対応マザーボードは不明)。 一方、Android や ChromeOS ではブロックデバイス単位での改ざん検知 (dm-verify) によってシステムイメージの改ざんを防止しています<ref>[https://source.android.com/docs/security/features/verifiedboot/dm-verity?hl=ja dm-verity の実装] Google</ref><ref>[https://research.google/pubs/verified-boot-on-chrome-os-and-how-to-do-it-yourself/ Verified Boot on Chrome OS and How to do it yourself] Google</ref>。 === カーネルメモリ改ざんを防ぐ === カーネルメモリのコード部分は MMU の書き込み禁止によって保護されています。iOS / macOS では Kernel Integrity Protection が<ref>[https://support.apple.com/ja-jp/guide/security/sec8b776536b/web オペレーティングシステムの整合性] Apple</ref> 、Linux では Kernel Strict RWX がこれに相当します<ref>[https://docs.kernel.org/security/self-protection.html Kernel Self-Protection] Linux Foundation</ref>。Windows でもカーネルモードに読み込み専用メモリセグメントが存在し、これに書き込もうとするとブルースクリーンで ATTEMPTED_WRITE_TO_READONLY_MEMORY (0xBE) が発行されます<ref>[https://learn.microsoft.com/ja-jp/windows-hardware/drivers/debugger/bug-check-0xbe--attempted-write-to-readonly-memory バグ チェック 0xBE: ATTEMPTED_WRITE_TO_READONLY_MEMORY] Microsoft</ref>。しかしながら Linux Kernel では kprobes、Static Keys、Static calls などで自己書き換えが多用されているため、一時的にコード部分を書き込み可能なページに割り当てて書き換える text_poke(...) という抜け道が存在します。 また定期的に改ざんが行われていないかをチェックする仕組みも存在します。Windows では[[:w:Kernel Patch Protection|Kernel Patch Protection]] (PatchGuard) / HyperGuard が、Linux では Linux Kernel Runtime Guard(外部パッチ)がこれに該当します。Windows の PatchGuard では改ざんが検出されたらブルースクリーンで CRITICAL_STRUCTURE_CORRUPTION が発行されます。 <!--TODO: Windows の HVCI、macOS の Secure Page Table Monitor / Trusted Execution Monitor--> <!-- === アプリケーション改ざんを防ぐ === SELinux / AppArmor --> == 攻撃用AIを対策する == 攻撃用AIでは基本的に賢いかつ制限の緩い大規模言語モデル (LLM) が使われています。この代表的な例として GLM 5.3 や Qwen3.8-27B-ABLITERATED が存在します。 === コンテキスト爆弾を設置する === 攻撃用AIの対策では相手のLLMを止めることが重要となります。そこで使えるのが'''コンテキスト爆弾''' (context bombs) という手法です<ref>[https://arstechnica.com/security/2026/07/now-defenders-are-embracing-the-prompt-injection-too/ Now, defenders are embracing the prompt injection, too] Ars Technica 2026年7月14日</ref>。 このコンテキスト爆弾は「相手のLLMに対し応答やツール呼び出しで禁止されていることを行わせようとする」というプロンプトインジェクションの一種であり、それによって相手のガードレールがLLMを止めることで相手からの攻撃を防ぎます。この手法は相手の読みそうなテキストにただプロンプトを書いておけば良いだけなので、お手軽に使えます。 コンテキスト爆弾のテキスト例は以下のリポジトリに存在します: * https://github.com/tracebit-com/context-bombs === ハニーポット === ハニーポットは攻撃者を引きつける役目を担います。ハニーポットの評価フレームワークには「UHBS」(Universal Honeypot Benchmarking Standard) が、その品質基準には「UHQS」(Universal Honeypot Quality Score) が存在しますが、2026年現在多くのハニーポットがFランク〜Dランクと残念な状況になっています<ref>[https://uhbs.github.io/uhbs-standard/mkdocs/conformance/ Overview - UHBS — Honeypot Evaluation Framework]</ref>。 <!-- == 自作コードの脆弱性を塞ぐ == 書きかけ --> == 脚注 == <references group="注釈"/> == 参考文献 == <references/> {{DEFAULTSORT:こんひゆうたせきゆりてい}} [[Category:計算機科学]] [[Category:情報技術]] 79otojyeuyqiq4a9wzuirg158tt9tey 304983 304982 2026-10-21T16:46:17Z ~2026-54076-02 92740 /* TCP/UDP経由のサービス */ 304983 wikitext text/x-wiki '''コンピュータセキュリティ'''はコンピュータの安全のことです。ここではコンピュータの安全を確保することを学びます。 == コンピュータセキュリティの基本 == コンピュータは弱いところから狙われるため、弱いところを無くすのがセキュリティの基本となります。 具体例を挙げましょう。一般的な光回線に繋がれてるホームネットワークを考えます。ここには光回線の先に繋がる上位ネットワークと家内のホームネットワーク (家庭におけるLAN) とを区切るエッジルーター(一般的にはハードウェア・ゲートウェイがこれに該当)が存在します。このホームネットワークに数台の新しいWindows PCと一台の古い機器が繋がっていると仮定します。 新しいWindows PC同士ではホームネットワーク経由でファイルをやり取りするためにファイルの共有 (SMB{{efn|Server Message Block}}) を有効にしているとします。一方、古い機器の方を脆弱性のある古いテレビとしましょう。このテレビはインターネットから繋いで地上デジタル放送を見るための DCTP+ {{efn|Digital Transmission Content Protection +}}が搭載されており、UPnP{{efn|Universal Plug and Play}}で自動的にエッジルーター搭載のファイアーウォールに穴あけてインターネット側から DCTP+ に繋がるようになっているものとします。 この仮定によってハッカーは DCTP+ の脆弱性を使って古いテレビに悪意のあるプログラムを実行させてファイルの共有サーバーを立て{{efn|Windows 11時点でもゲスト認証による接続は許可されている<ref>[https://learn.microsoft.com/en-us/windows-server/storage/file-server/smb-interception-defense?tabs=group-policy Protect SMB traffic from interception] Microsoft</ref>。}}、そこからファイルの共有を通じて新しいWindows PCにマルウェア (例えば<code>PHOTO-<ランダムな数字>.png.lnk</code><ref>[https://www.microsoft.com/en-us/security/blog/2026/06/25/photo-zip-campaign-targeting-hospitality-industry-delivers-node-js-implant-persistent-access/ Photo ZIP campaign targeting hospitality industry delivers Node.js implant for persistent access] Microsoft 2026年6月25日</ref>) を送り込むことが可能となりました。 == 安全にパスワードを使う == === 流出したパスワードと被ってないかをチェックする === あちこちのサイトで流出したパスワードは集められてデータベース化されダークネットに流通しています。この代表的なものには2019年に登場した [[:w:en:Collection No. 1|Collection #1]] が挙げられます。この Collection #1 などの流出パスワードデータベースは辞書攻撃に利用されており、これは「Credential Stuffing攻撃」と呼ばれています。 使うパスワードが流出パスワードデータベースに載っていないかを確認するためには上記のデータベースを手に入れるか、上記のデータベースからk-匿名性で検索を行うオンラインサービスを使うと良いでしょう。 このオンラインサービスの代表的なものにはWebサイト「Have I Been Pwned」の提供する「Pwned Passwords」サービスが存在しますが、このAPIではパスワードのSHA-1ハッシュ先頭5文字を渡すと、流出したパスワードのSHA1ハッシュ6文字以降と流出データベースに載っていた回数が返答されます。 <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ # License: CC0 / Public Domain $ # パスワードを入力してSHA-1ハッシュへと変換する(ここでは'test'と入力) $ sha1=$(read -sp "Password: " pass && echo -n $pass | sha1sum | cut -d' ' -f1) Password: $ # 変換後のハッシュを表示 $ echo $sha1 a94a8fe5ccb19ba61c4c0873d391e987982fbbd3 $ # ハッシュの先頭5文字を渡して6文字目以降を検索(':'の後ろは見つかった数) $ curl -s https://api.pwnedpasswords.com/range/$(echo $sha1 | cut -c 1-5) | grep -i $(echo $sha1 | cut -c 6-) FE5CCB19BA61C4C0873D391E987982FBBD3:1579235 </syntaxhighlight> ハッシュの先頭5文字も渡したくない場合や、自社サービスでチェックを行いたい場合は上記のサービスが公式で提供するツール「haveibeenpwned-downloader」[https://github.com/HaveIBeenPwned/PwnedPasswordsDownloader]で全てのハッシュデータをダウンロードして自前で照合しましょう。 === 解析耐性のある鍵導出関数を使う === パスワードでは計算負荷の低い SHA-256 や SHA-512 などの通常のハッシュ関数、メモリ負荷の低い [[:w:PBKDF2|PBKDF2]] や bcrypt などの古い[[:w:鍵導出関数|鍵導出関数]](パスワードハッシュ関数)を使わないようにしましょう。これらの弱いハッシュ関数は GPU や ASIC で高速に解かれてしまいます。 より強いパスワードハッシュ関数としては yescrypt や Argon2id が存在します。パスワードにはこちらを使いましょう。現代の Linux ではアカウントのパスワードハッシュ関数として yescrypt が標準となっています。 使っている Linux の新規アカウントで使われるパスワードハッシュ関数は以下で確認可能です: <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ grep -n 'pam_unix.so' /etc/pam.d/common-password 26:password [success=2 default=ignore] pam_unix.so obscure use_authtok try_first_pass yescrypt </syntaxhighlight> Linuxの現在のアカウントがどのハッシュ関数を使用しているかは以下で確認可能です: <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ sudo cat /etc/shadow | grep $USER # $(1|5|6|b)$=弱い、$y$=強い user:$y$j9T$ST7oYwlQjFy7/8vnL/Ugt0$po4vW4qgGu8lpUNRtH0B3hDHGZACzcRhzIKhqlx.2Z5:20743:0:99999:7::: </syntaxhighlight> 弱いハッシュ関数を使用している場合は<code>passwd $USER</code>でパスワードを再設定して使用するハッシュ関数を更新してください。 一方、Windows 10 以前のローカルアカウントではパスワードハッシュがレジストリの<code>HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>SAM\<wbr>SAM\<wbr>Domains\<wbr>Account\<wbr>Users\<wbr>(ユーザーID)\<wbr>V</code>{{efn|name="sam"}}のバイナリの以下の場所に存在します: * [[:w:LMハッシュ|LMハッシュ]]: 0xCC + (0x9C に指定されたオフセット)<ref name="sam-ghost"/> * NTLMハッシュ: 0xCC + (0xA8 に指定されたオフセット)<ref name="sam-ghost"/> LMハッシュは [[:w:LAN Manager|LAN Manager]] に使われていた [[:w:Data Encryption Standard|DES]] ベースの古いハッシュ、NTLMハッシュは [[:w:NT LAN Manager|NT LAN Manager]] に使われている [[:w:MD4|MD4]] ベースの古いハッシュであり、どちらも非常に弱いものとなっていました。 また Windows の Active Directory ドメインアカウントのオフライン認証向けキャッシュ済みドメイン資格情報はレジストリの<code>HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>SECURITY\<wbr>Cache</code>に存在します: * DCC1 ハッシュ (MSCache v1): 弱い MD4 ベース。Windows XP以前。 * DCC2 ハッシュ (MSCache v2) : 弱めの PBKDF2-HMAC-SHA1 ベース。Windows Vista以後<ref>[https://attack.mitre.org/techniques/T1003/005/ OS Credential Dumping: Cached Domain Credentials] MITRE 2025年10月24日</ref>。 2021年にリリースされた Windows 11 以降は Microsoft アカウントが必須となっています。 <!--TODO: Windows Hello、LSA Secrets === パスワードの複雑性をチェックする === === TPMで鍵を隔離する === --> == 既製製品の脆弱性を塞ぐ == まずは弱いところを無くしましょう。 === ソフトウェアアップデートをする === セキュリティの基本はソフトウェアアップデートです。 ==== PCおよびモバイル ==== PC{{efn|PCサーバを含む}}やモバイルでは基本的に自動で通知が来るので忘れずにアップデートを選択しましょう。手動では以下のように行います: ; Windows : システムのアップデートは基本的に [[:w:Microsoft Update|Microsoft Update]] (Windows Update) で、アプリケーションのアップデートは基本的に<code>winget upgrade --all</code>コマンドで行います。 : また Windows 11 Enterprise では再起動が不要なホットパッチにも対応しています。 ; macOS / iOS : 「ソフトウェアアップデート」 ; Ubuntu / Debian : [[:w:APT|APT]]パッケージ管理システムでは<code>apt upgrade</code>コマンドで更新を行います。 : Ubuntu では GUI による更新用として[[:w:Software Updater|Software Updater]] (<code>update-manager</code>コマンド)、[[:w:Snap (ソフトウェア)|Snap]]パッケージの更新コマンドとして<code>snap refresh</code>、メジャーバージョンの更新コマンドとして<code>do-release-upgrade</code>も存在します。 : また Ubuntu では Ubuntu Pro に登録することで再起動が不要なカーネル修正の「Livepatch」も可能となります(個人では5台まで無料)。SUSEではユーザー空間ライブパッチングまで提供されています(glibc と openssl のみ)<ref>[https://documentation.suse.com/ja-jp/sles/15-SP6/html/SLES-all/cha-ulp.html ユーザ空間ライブパッチ - 管理ガイド - SLES 15 SP6] SUSE</ref>。 ; RedHat / Fedora : <code>yum update</code>コマンド ; Android : 「設定」アプリ→「システム」→「システムアップデート」または「ソフトウェアアップデート」 また個々のハードウェアのファームウェアアップデートは以下で行います: ; Linux : Linuxにおけるファームウェアの更新は基本的に<code>fwupdmgr update</code>コマンドで行います。 : NVMe SSDのファームウェアの更新は<code>nvme fw-download</code>コマンドおよび<code>nvme fw-commit</code>コマンドで行うことができます。 一方、Windows ではファームウェアのアップデートも Windows Update 経由で<ref>[https://learn.microsoft.com/ja-jp/windows-hardware/drivers/bringup/firmware-update ファームウェアの更新] Microsoft</ref>、macOS ではファームウェアのアップデートもmacOSアップデートで行うことができます<ref>[https://support.apple.com/ja-jp/guide/mac-help/mchlp2609/mac Macのファームウェアアップデートの入手方法] Apple</ref>。 <!-- また開発環境では以下も存在します: ; Python : <code>pip -U install</code> --> ==== ルーター ==== ルーターでは以下の設定を有効のままにしておきましょう: ; AirStationシリーズ(Buffalo 製ルーター) : 「ファームウェア自動更新機能」 ; Atermシリーズ(NEC 製ルーター) : 「メンテナンスバージョンアップ機能」「時刻指定バージョンアップ機能」 ==== テレビ ==== テレビでは放送波アップデートが行われるため、「放送波による自動更新」<!--TODO: メーカー別名-->を有効にしましょう。 === 高速に再起動する === パッケージは更新しただけでは反映されません(一部デーモンの更新を除く)。Linuxでは高速に再起動する方法が存在し、これによってダウンタイムを減らすことができます。 ; 更新で影響を受けるデーモンのみ再起動する :* Ubuntu Server: 標準で <code>needrestart</code> が導入されており自動で影響を受けるデーモンの再起動が行われます{{efn|自動的なデーモン再起動を止めるには /etc/apt/apt.conf.d/99needrestart より<code>-m u</code>を削除する必要があります<ref>[https://discourse.ubuntu.com/t/needrestart-changes-in-ubuntu-24-04-service-restarts/44671 `needrestart` changes in Ubuntu 24.04: service restarts] Canonical 2024年</ref>。}}(Ubuntu Desktopでは別途導入が必要)。 :* RedHat / Fedora: <code>dnf needs-restarting</code>が導入されており、それによって再起動するべきデーモンを確認できます。 ; ユーザー空間のみ再起動する(カーネルの更新がない、またはカーネルでlive patchingを行ってる場合) : <code>sudo systemctl soft-reboot</code> ; 高速にカーネルを更新する(ファームウェアの更新がない場合) : <code>sudo systemctl kexec</code> また一部のソフトウェアではホットアップグレード(無停止アップグレード{{efn|Zero-Downtime Upgrade}})にも対応しています (nginx の USR2 シグナル<ref>[https://nginx.org/en/docs/control.html Controlling nginx] nginx</ref>など)。 === 代替ソフトウェアを探す === 更新が停止された古いソフトウェアの多くはそれ自身に脆弱性が存在したり、脆弱性のある古いライブラリに依存していたりします。そのため古いソフトウェアは速やかに代替ソフトウェアへと移行しましょう。 ==== 開発終了したソフトウェアから現役のソフトウェアへ ==== 古いソフトウェアには例えば以下があります: * オフィススイート(代替候補: LibreOffice) ** [[:w:OpenOffice.org|OpenOffice.org]](〜2011年) * 画像ビューア ** [[:w:Susie|Susie]] (〜2013年) * メディアプレイヤー ** [[:w:QuickTime|QuickTime]] for Windows(〜2016年) - リモートコード実行の脆弱性 ([https://www.zerodayinitiative.com/advisories/ZDI-16-241/ ZDI-16-241]、[https://www.zerodayinitiative.com/advisories/ZDI-16-242/ ZDI-16-242]) を残したままサポート終了しました<ref>[https://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/753400.html Apple、「QuickTime for Windows」のサポートを終了、アンインストールを推奨] Impress 2016年4月15日</ref>。 * メディアフィルター(代替候補: LAV Filters) ** [[:w:ffdshow|ffdshow]](〜2014年) ** [[:w:Haali Media Splitter|Haali Media Splitter]](〜2013年) * メディアセンター(代替候補: Kodi) ** [[:w:en:Boxee|Boxee]](〜2011年) ** [[:w:Kodi|XBMC]](〜2014年) - Kodiの前身 * 圧縮ソフトウェア ** [[:w:+Lhaca|+Lhaca]](〜2007年) ** [[:w:Lhaplus|Lhaplus]](〜2017年) またハードウェアに由来する古いソフトウェアには例えば以下があります: * [[w:ウォークマン|ウォークマン]]関連(代替候補: [[:w:Music Center for PC|Music Center for PC]]) ** [[:w:CONNECT Player|CONNECT Player]](〜2007年、Sony) ** [[:w:SonicStage|SonicStage]](〜2009年、Sony) ** [[:w:x-アプリ|x-アプリ]](〜2016年、Sony) * DTCP-IP関連 ** SmartVision/PLAYER powered by DiXiM(〜2019年、NEC)<ref>[https://support.nec-lavie.jp/navigate/support/info/2019/announce/svp/ SmartVision/PLAYER保守サービス終了のお知らせ] NECパーソナルコンピュータ 2019年1月28日</ref><ref>[https://apps.microsoft.com/detail/9wzdncrdkb4c?hl=ja-JP&gl=JP SmartVision/PLAYER powered by DiXiM] Microsoft</ref> ** DiXiM Digital TV plus for I-O DATA(〜2022年、I-O DATA)<ref>[https://www.iodata.jp/lib/product/d/3533.htm DiXiM Digital TV plus for I-O DATA] I-O DATA</ref> なお仮想マシンを使って隔離しながら古いソフトウェアを動かすこともできますが、仮想マシンでも「VMエスケープ」の脆弱性を使用することでホスト環境への侵害が可能なため、仮想マシンの上で弱い環境や弱いソフトウェアを使うこともなるべく避けましょう。<!--TODO: Windows Sandbox--> ==== 古いバージョンのライブラリを避ける ==== 多くのソフトウェアに使用されているライブラリとその過去の危険な脆弱性には例えば以下があります:<!--危険を認識させる。例はライブラリ内のメイン処理に存在し、任意コード実行であり、脆弱性の存在期間が長く、新しいものが好ましい。--> * 画像ライブラリ ** libpng - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2010-1205 CVE-2010-1205](PNG画像で任意コード実行の可能性) ** libjpeg-turbo - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2012-2806 CVE-2012-2806](JPEG画像で任意コード実行の可能性) ** OpenJPEG - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2025-54874 CVE-2025-54874](JPEG2000画像で任意コード実行の可能性) ** libtiff - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2026-12912 CVE-2026-12912](PixarLog圧縮TIFF画像で任意コード実行の可能性) ** libwebp - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2023-4863 CVE-2023-4863](WebP画像で任意コード実行の可能性) * 動画ライブラリ ** FFmpeg - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2024-22860 CVE-2024-22860](JPEG XLアニメーションで任意コード実行の可能性) * 圧縮ライブラリ ** libarchive - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2026-15028 CVE-2026-15028](tarアーカイブ形式で任意コード実行の可能性) ** zlib - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2002-0059 CVE-2002-0059](Deflate圧縮形式で任意コード実行の可能性) ** bzip2 - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2010-0405 CVE-2010-0405](BZ2圧縮形式で任意コード実行の可能性) これらのライブラリはABI(アプリケーションバイナリインターフェイス)が変更されて新しいバージョンの共有ライブラリにドロップイン置換できないものも多くなっています。 また国内で使われている古いソフトウェアでは開発中止になった以下のライブラリも問題となっています: * UNLHA32.DLL<ref>[https://forest.watch.impress.co.jp/docs/news/372729.html 圧縮・解凍用DLL「UNLHA32.DLL」が開発中止、作者はLZHの利用中止を呼びかけ] Impress 2010年6月7日</ref> Webフレームワークでは開発中止となった以下のフレームワークが問題となっています: * [[:w:Model View Controller|Model View Controller]]フレームワーク(代替候補: [[:w:Apache Struts|Apache Struts]] 2、[[:w:Spring Framework#Model-View-Controller フレームワーク|Spring MVC]]) ** [[:w:en:Apache Struts 1|Apache Struts 1]](〜2008年) - Java言語 * [[:w:アスペクト指向プログラミング|アスペクト指向フレームワーク]](代替候補: [[:w:Spring Framework|Spring Framework]]、[[:w:en:Micronaut (framework)|Micronaut]]) ** [[:w:Seasar|Seasar]](〜2016年) - Java言語 * [[:w:シングルページアプリケーション|シングルページアプリケーション]]フレームワーク(代替候補: [[:w:Angular|Angular]]、[[:w:Vue.js|Vue.js]]) ** [[:w:AngularJS|AngularJS]](〜2022年) - JavaScript === 古いハードウェアに対処する === サポート切れの OS を搭載したハードウェアはどうすれば良いでしょうか。これには使い続けるいくつかの方法がありますが、基本的にオススメしません。古い OS を搭載していたハードウェアはハードウェア仕様も古いからです。 ==== スタンドアロン運用 ==== 古いハードウェアはインターネットに繋がずに使用すること(スタンドアロン運用)も可能です。 しかしながらUSBメモリでデータをやり取りする場合はUSBメモリ経由での感染などのリスクは残ります。 ==== 新しめのLinuxを導入 ==== 新しめのLinuxを導入するという方法もあります。 これに適したものでは例えばWindows 11非対応のPC (Intel 第7世代以前、AMD Ryzen 1000シリーズ以前) が挙げられます。 またスマートフォンやタブレットであればカスタムROMが、ルーターであればDD-WRTやOpenWRTが存在します。 ==== 手放す ==== 手に負えなければデータだけバックアップして手放しましょう。情報が漏れないよう初期化も忘れずに。 == 不要なサービスを止める / 削除する == {| class="wikitable" |+ サービス表示系コマンド |- ! 稼働中のシステムサービスを見る | <code>systemctl --type=service --state=running</code> |- ! 稼働中のユーザーサービスを見る | <code>systemctl --user --type=service --state=running</code> |} === TCP/UDP経由のサービス === TCP/UDPでのポート待ち受けのあるプロセスを見るには <code>sudo ss -tulnp</code> を、通信しているプロセスを見るには <code>sudo lsof -i -P -n</code> を実行しましょう。 {| class="wikitable" |+ 主なポート待ち受けのあるプロセス |- ! ポート !! 機能 !! プロセス名 !! サービス名または起動コマンド !! パッケージ名 (Ubuntu) || 直接問い合せコマンド |- | rowspan=2 | 53/UDP<br>53/TCP || rowspan=2 | DNS(名前解決) || systemd-resolved || systemd-resolved.service || systemd-resolved || <code>dig @127.0.0.53 example.com</code> |- | dnsmasq || dnsmasq.service<br/>dnsmasq@.service || dnsmasq-base<br>dnsmasq || <code>dig @10.208.199.1 example.com</code> |- | rowspan=2 | 5353/UDP || rowspan=2 | [[:w:マルチキャストDNS|マルチキャストDNS]] || systemd-resolved || systemd-resolved.service || systemd-resolved || <code>resolvectl -p mdns query $HOSTNAME.local</code> |- | Avahi || avahi-daemon.service || avahi-daemon || <code>avahi-resolve-host-name $HOSTNAME.local</code> |- | 67/UDP<br>547/UDP || [[:w:DHCP|DHCP]]<br>[[:w:DHCPv6|DHCPv6]] || dnsmasq || dnsmasq.service<br/>dnsmasq@.service || dnsmasq-base<br>dnsmasq || <code>IP=$(ip -4 -o addr show pan1 &vert; grep -oP '(?<=inet )[\d.]+'); sudo dhcping -v -i -s "$IP" -c "$IP"</code>{{efn|Ubuntuではdhcpingパッケージの導入が必要です。}} |- | rowspan=2 | 68/UDP<br>546/UDP || rowspan=2 | DHCPクライアント<br>DHCPv6クライアント{{efn|単独のDHCPクライアントである dhclient、dhcpcd なども存在する。また開発終了になったisc-dhcp-clientも存在した。}} || systemd-networkd<wbr>{{efn|name="network-all"}} || || systemd || |- | NetworkManager<wbr>{{efn|name="network-all"|ネットワーク管理全般を担当しています。}} || NetworkManager.service || network-manager || |- | rowspan=2 | 123/UDP<br>4460/TCP || rowspan=2 | NTP(時刻同期)<br>NTS-KE (NTPの鍵交換){{efn|これらの代替として systemd-timesyncd もありますが、こちらは NTP の代わりに単純な SNTP のみ実装の上、サーバーを持たずクライアント側のみ対応です。}} || ntpd || ntpsec.service || ntpsec || rowspan=2 | <code>ntpdig localhost</code>{{efn|ローカルへのNTP問い合せは<code>ntpdate -q localhost</code>でもできますが、こちらはNTP-KE非対応です。}} |- | chronyd || chrony.service || chrony |- | 80/TCP<br>443/HTTP<br>443/UDP || HTTP<br>HTTPS<br>HTTP/3 (QUIC) || apache2 || apache2.service<br>apache2@.service<br>httpd.service<br>httpd@.service || apache2 || HTTP: <code>curl http://localhost</code><br>HTTPS: <code>curl --http2 https://localhost</code><br>HTTP/3: <code>curl --http3-only https://localhost</code> |- | rowspan=2 | ユーザーポート/UDP || rowspan=2 | HTTP/3 (QUIC) クライアント<br>WebRTCクライアント || chrome{{efn|Google Chrome}} || <code>google-chrome</code> || google-chrome (公式APTリポジトリ) || |- | firefox{{efn|Mozzila Firefox}} || <code>firefox</code> || firefox (snap) || |- | rowspan=2 |21/TCP<br>20/TCP{{efn|アクティブモードのみデータ転送で使われます。}} || rowspan=2 | FTP || proftpd || proftpd.service<br>proftpd@.service || proftpd-core || rowspan=2 | <code>curl ftp://localhost</code> |- | vsftpd || vsftpd.service || vsftpd |- | 22/TCP || SSH / SFTP || sshd || ssh.service<br>sshd@.service || openssh-server || <code>ssh-keyscan 127.0.0.1</code> |- | rowspan=2 | 6881/TCP || rowspan=2 | BitTorrent || qbittorrent || <code>qbittorrent</code> || qbittorrent || |- | ktorrent || <code>ktorrent</code> || ktorrent || |- | rowspan=2 | 51413/TCP || rowspan=2 | Transmission<wbr>{{efn|BitTorrentプロトコル。TransmissionをベースとするFragmentsも同ポートを使用します。}} || transmission-daemon || transmission-daemon.service || transmission-daemon || |- | transmission-gtk || <code>transmission-gtk</code> || transmission-gtk || |- | 5001/TCP<br>5001/UDP || rowspan=2| ネットワークパフォーマンス計測 || iperf || <code>iperf -s</code> || iperf || <code>iperf -c localhost</code> |- | 5021/TCP<br>5021/UDP || iperf3 || <code>iperf3 -s</code> || iperf3 || <code>iperf3 -c localhost</code> |- | 1716/UDP<br>1716/TCP<br>ユーザーポート/UDP || スマートフォン連携 (KDE) || kdeconnectd || <code>kdeconnect-app</code> || kdeconnect || |- | ユーザーポート/TCP || Claude Proxy Service || code{{efn|[[:w:Visual Studio Code|Visual Studio Code]]のプロセス。}} || <code>code</code> || code (公式APTリポジトリ) || <!-- |- | || AI コーディング支援 (Google Antigravity CLI{{efn|Command Line Interface}}) || agy || || (Visal Studio Code拡張) || --> |- | rowspan=2 | 3389/TCP<br>3389/UDP || rowspan=2 | Remote Desktop Protocol || gnome-remote-desktop-daemon{{efn|GNOME Remote Desktop}} || gnome-remote-desktop.service<!-- (system)--><br>gnome-remote-desktop.service (user)<br>gnome-remote-desktop-headless.service (user) || gnome-remote-desktop || |- | krdpserver || app-org.kde.krdpserver.service (user) || krdp || |- | 47984/TCP<br>47989/TCP<br>48010/TCP<br>47998–48010/UDP || NVIDIA GameStream || sunshine || app-dev.<wbr>lizardbyte.<wbr>app.<wbr>Sunshine.service (user) || sunshine (公式debファイル) || (moonlight-qt) |- | 27031-27036/UDP<br>27036/TCP || Steam Remote Play<ref>[https://help.steampowered.com/ja/faqs/view/2EA8-4D75-DA21-31EB Steam接続に必要なポート] Valve</ref> || steam || <code>steam</code> || steam (公式APTリポジトリ) || |} <!--TODO: UPnP、CUPS、Postfix、Samba、Wsdd--> === Unix Domain経由のサービス === Unix Domainでのポート待ち受けのあるプロセスを見るには <code>sudo ss -xlp</code> を実行しましょう。 === dbus経由のサービス === システムバスは <code>busctl --system list</code>、セッションバスは <code>busctl --user list</code> で確認することができます。 それらを提供する実行中のプロセスの一覧は以下で取得できます: * システムバスを提供するプロセス: <code>busctl --system --no-pager | awk 'NR>1 && $2 ~ /^[0-9]+$/ {print $2}' | xargs -I {} readlink "/proc/{}/exe" | sort -u</code> * ユーザーバスを提供するプロセス: <code>busctl --user --no-pager | awk 'NR>1 && $2 ~ /^[0-9]+$/ {print $2}' | xargs -I {} readlink "/proc/{}/exe" | sort -u</code> dbusサービスの一部はプロセス未実行のアクティベータブル (activatable) な状態で提供されています。アクティベータブルな状態で提供するサービスの実行コマンドは以下で取得できます: * activatableなシステムバスの実行コマンド: <code>busctl --system --no-pager --activatable | awk '{print $1}' | xargs -I {} find /usr/share/dbus-1 -name "{}.service" | xargs grep -h "Exec=" | sed 's/Exec=//g' | sort -u</code> * activatableなユーザーバスの実行コマンド: <code>busctl --user --no-pager --activatable | awk '{print $1}' | xargs -I {} find /usr/share/dbus-1 -name "{}.service" | xargs grep -h "Exec=" | sed 's/Exec=//g' | sort -u</code> == 潜在的な脆弱性を減らす == 現代のプログラムでは以下のような保護が行われています。 === メモリアドレスの推測困難化 === 攻撃に必要なコード片(ガジェット)のメモリアドレスを推測しにくくするために、カーネル空間、ユーザー空間の両方で[[:w:アドレス空間配置のランダム化|アドレス空間配置のランダム化]](ASLR)が行われています。カーネル空間の ASLR は KASLR (Kernel ASLR) とも呼ばれています。 ユーザー空間のプログラムで ASLR を有効にするためには[[:w:位置独立コード|位置独立コード]] (PIC) / 位置独立実行形式 (PIE) である必要があります。Unix で使われる実行形式の ELF では位置独立実行形式が ET_DYN、非位置独立実行形式 (non-PIE) が ET_EXEC となります。 Linuxでは ASLR が無効となる非位置独立実行形式のファイルを以下で検索することができます: <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ # License: CC0 / Public Domain $ # 非位置独立実行形式 (non-PIE) のバイナリを検索 $ find / -type f -executable 2>/dev/null | xargs -I {} sh -c 'LANG=C readelf -h {} 2>/dev/null | grep -E "Type:.*EXEC" >/dev/null && echo {}' /usr/lib/default.sfx /usr/lib/klibc/bin/mkfifo /usr/lib/klibc/bin/zcat /usr/lib/klibc/bin/poweroff [...] $ # 非位置独立実行形式 (non-PIE) のバイナリを含むDebianパッケージを検索 $ find / -type f -executable 2>/dev/null | xargs -I {} sh -c 'LANG=C readelf -h {} 2>/dev/null | grep -E "Type:.*EXEC" >/dev/null && echo {}' | xargs -r -d '\n' -n1 dpkg-query -S | sed 's/: .*//' | sort -u aidl busybox-static code cpp-15-x86-64-linux-gnu cuda-gdb-13-4 cuda-nvcc-13-4 cuda-sanitizer-13-4 cuda-tileiras-13-4 debugedit g++-15-x86-64-linux-gnu gcc-15-x86-64-linux-gnu gcc-mingw-w64-i686-posix gdc-15-x86-64-linux-gnu gds-tools-13-4 gfortran-15-x86-64-linux-gnu gh git-lfs gobjc-15-x86-64-linux-gnu gocryptfs golang-1.26-go go-md2man go-mtpfs [...] </syntaxhighlight> 現在のLinuxカーネルがユーザー空間 ASLR を有効にしているかは以下で確認できます (出力例はUbuntu 26.04): <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ sysctl kernel.randomize_va_space # 0=無し、1=部分的、2=完全 kernel.randomize_va_space = 2 </syntaxhighlight> また現在のLinuxカーネルがカーネル ASLR (KASLR) を有効にしているかは以下で確認できます (出力例はUbuntu 26.04): <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ grep 'CONFIG_RANDOMIZE_BASE' /boot/config-$(uname -r) # y=Yes, n=No CONFIG_RANDOMIZE_BASE=y </syntaxhighlight> なお ASLR は間接的な関数呼び出し( C++ の vtable を含む)があると、そのアドレスから ASLR のオフセットがバレてしまい突破されてしまいます。 また CPU の[[:w:投機的実行|投機的実行]]での情報漏れ (Spectre) による[[:w:キャッシュ攻撃|キャッシュサイドチャネル攻撃]](後述)の一つである「投機的探査」 (BlindSide) によってもコードの位置情報の取得がされ ASLR が突破されてしまいます。 === 投機的実行の情報漏れ防止 === 前述のとおり、投機的実行による情報漏れ (Spectre) は攻撃に繋がります。Spectre には境界チェックを迂回する Spectre V1 と間接分岐の分岐先アドレスのキャッシュ{{efn|分岐先バッファ (Branch Target Buffer、BTB)や分岐先アドレスキャッシュ (Branch Target Address Cache、BTAC) と呼ばれる。}}を汚染する Spectre V2 が存在します。<!--TODO: Spectre v3/v4、Zenbleed--> Spectre V1 を防ぐ方法としては投機的実行を阻害するための命令(x86ではLFENCE)の挿入{{efn|Linuxカーネルでの投機的実行の防止は<code>barrier_nospec()</code>。}}やアクセスできるアドレス範囲を狭めることが行われています{{efn|GCCでの投機的実行での範囲外アクセス防止は<code>__builtin_speculation_safe_value(...)</code>、Linuxカーネルでの投機的実行での範囲外アクセス防止は<code>array_index_nospec(...)</code><ref>[https://lwn.net/Articles/759423/ Spectre V1 defense in GCC] LWN 2018年7月10日</ref>。}}。 また Spectre V2 では攻撃を防ぎながらも速度を落とさない方法として脆弱な分岐先アドレスキャッシュに依存する間接分岐の代わりにリターンアドレスのキャッシュ{{efn|リターンスタックバッファ (RSB) と呼ばれる。}}に依存するリターン命令を使う retpoline が登場しました。しかしながらこの retpoline でも速度の低下は起こるため、既知の間接呼び出しを条件分岐 + 直接呼び出しに変換して高速化する手法が模索されました。LLVM では retpoline を有効にする <code>-mretpoline</code>フラグの処理内に既知の仮想関数呼び出しを[[:w:二分木|二分木]]の直接分岐に置き換える「分岐ファネル」(Branch funnel) が導入されています<ref>[https://reviews.llvm.org/D42453 Use branch funnels for virtual calls when retpoline mitigation is enabled.] LLVM project</ref>。また Linux カーネルでも既知の間接呼び出しを条件分岐 + 直接呼び出しに変換する INDIRECT_CALL_* マクロが搭載されています<ref>[https://lwn.net/Articles/774743/ Relief for retpoline pain] LWN 2018年12月14日</ref>。<!--TODO: Intel CETのSHSTKとretpolineの衝突--> 一方、リターン命令の投機的実行も「Retbleed」や AMD CPU における「投機的リターンスタックオーバーフロー」 (SRSO){{efn|Speculative Return Stack Overflow。}}のような脆弱性が見つかっています。 なお低権限コードから高権限コードへの権限境界をまたいだ Spectre および Retbleed は Intel の「間接分岐制限付き投機」(IBRS){{efn|Indirect Branch Restricted Speculation。}}およびそれを高速化した「拡張IBRS」(eIBRS) などハードウェア側によって塞がれました<ref>[https://www.intel.com/content/www/us/en/developer/articles/technical/software-security-guidance/technical-documentation/hardware-behavior-related-to-speculative-execution.html Hardware Features and Behavior Related to Speculative Execution] Intel 2026年10月14日</ref>が、権限境界をまたがないものは今も可能となっています。 === メモリにおける書き込みと実行の排他化 (W^X) === メモリでは書き込み可能領域の実行不可化 ([[:w:NXビット|NXビット]]) と実行可能領域の書き込み不可化による書き込みと実行の排他化([[:w:en:W^X|W^X]])が一般的となっています。NXビットは x86 では NXビットは AMD64 と共に搭載された古い機能であるため、今時の CPU と OS は基本的にこれに対応しています。 現在の CPU がNXビットを有効にしているかはLinuxでは以下で確認できます: <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ grep '^flags' /proc/cpuinfo | grep -o nx nx nx [...] </syntaxhighlight> 現在のLinuxカーネルが厳格な W^X を有効にしているかは以下で確認できます (出力例はUbuntu 26.04): <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ grep '_RWX' /boot/config-$(uname -r) # y=Yes, n=No CONFIG_ARCH_HAS_STRICT_KERNEL_RWX=y CONFIG_STRICT_KERNEL_RWX=y CONFIG_ARCH_HAS_STRICT_MODULE_RWX=y CONFIG_STRICT_MODULE_RWX=y </syntaxhighlight> しかしながら書き込みと実行の排他の原則を破ってそれらを同時に行える場所というものも存在しています。読み込み・書き込み・実行が可能なことから「RWXセクション」と呼ばれています。Windows ではメモリページの PAGE_EXECUTE_READWRITE フラグがこれに相当します<ref>[https://learn.microsoft.com/ja-jp/windows/win32/memory/memory-protection-constants メモリ保護定数] メモリ保護定数 (WinNT.h) - Win32 apps | Microsoft Learn</ref>。 Windows のカーネルドライバでは NX フラグの使用が義務付けられています<ref>[https://learn.microsoft.com/en-us/windows-hardware/test/hlk/testref/driver-compatibility-with-device-guard メモリ整合性と VBS とのドライバ互換性] Microsoft</ref>が、その Windows カーネルにおいても PatchGuard の領域がコード難読化のためにこの原則を破っています。<!--TODO: ホットパッチ--> また Linux でも実行可能領域を書き込み可能ページとして割り当てて書き込む text_poke 関数が用意されています。 === 制御フローの操作を防ぐ (CET) === 現代では「[[:w:Return-oriented programming|リターン指向プログラミング]]」(ROP)、「呼び出し指向プログラミング」 (COP)、「ジャンプ指向プログラミング」(JOP) 、「[[:en:Sigreturn-oriented programming|Sigreturn指向プログラミング]]」(SROP) などの制御フロー操作による攻撃が一般化していますが、これを防ぐ技術として「[[:w:en:Control-flow integrity#Intel Control-flow Enforcement Technology|制御フロー強制テクノロジー]]」(CET) の「[[:w:en:Indirect branch tracking|間接分岐追跡]]」(IBT) と「[[:w:en:Shadow stack|シャドウスタック]]」(SHSTK) が存在します。 制御フロー強制は比較的新しい技術であるため、対応する CPU は以下に限られます: * Intel Core (Tiger Lake) 第11世代以降 * AMD Zen 3 以降(シャドウスタックのみ) 現在の CPU が間接分岐追跡 (IBT) およびシャドウスタックに対応しているかはLinuxでは以下で確認できます: <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ grep '^flags' /proc/cpuinfo | grep -oE '(ibt|shstk)' shstk ibt shstk ibt [...] </syntaxhighlight> またユーザーランドのシャドウスタックの使用にはユーザーランドだけでなくカーネルの対応も必要となります。Linux カーネル では 6.6 以降対応でこれに対応しています(sigreturnにも対応<ref>[https://github.com/torvalds/linux/commit/05e36022c0543ba55a3de55af455b00cb3eb4fcc x86/shstk: Handle signals for shadow stack · torvalds/linux@05e3602] GitHub 2023年8月3日</ref>)。 Linuxディストリビューションでは Ubuntu 24.04以降、 Red Hat Enterprise Linux 9.7 以降<ref>[https://docs.redhat.com/ja/documentation/red_hat_enterprise_linux/9/html/9.7_release_notes/new-features-kernel 4.8. カーネル - 9.7 リリースノート - Red Hat Enterprise Linux - 9 - Red Hat Documentation] Red Hat</ref>が標準でシャドウスタックを有効としています。 現在のLinuxカーネルが間接分岐追跡およびシャドウスタックを有効にしているかは以下で確認できます (出力例はUbuntu 26.04): <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ grep -E '_(IBT|SHADOW_STACK)' /boot/config-$(uname -r) # y=Yes, n=No CONFIG_CC_HAS_IBT=y # CONFIG_X86_KERNEL_IBT is not set CONFIG_X86_USER_SHADOW_STACK=y CONFIG_X86_DISABLED_FEATURE_IBT=y CONFIG_ARCH_HAS_USER_SHADOW_STACK=y </syntaxhighlight> 現在のユーザーランドプログラムの中で間接分岐追跡またはシャドウスタックが無効化されているものはLinuxでは以下で確認できます: <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ # License: CC0 / Public Domain $ # 間接分岐追跡またはシャドウスタックが無効化されているバイナリを検索 $ find / -type f 2>/dev/null | xargs -I {} sh -c 'readelf -h "{}" >/dev/null 2>&1 && (readelf -n "{}" 2>/dev/null | grep -E IBT,.*SHSTK > /dev/null || echo "{}")' /usr/lib/lv2/carla.lv2/carla.so /usr/lib/7zip/7z /usr/lib/7zip/7zCon.sfx /usr/lib/7zip/7zr /usr/lib/7zip/7z.so /usr/lib/7zip/7za /usr/lib/klibc/bin/ipconfig /usr/lib/klibc/bin/umount /usr/lib/klibc/bin/halt [...] $ # 間接分岐追跡またはシャドウスタックが無効化されているバイナリを含むDebianパッケージを検索 $ find / -type f 2>/dev/null | xargs -I {} sh -c 'readelf -h "{}" >/dev/null 2>&1 && (readelf -n "{}" 2>/dev/null | grep -E IBT,.*SHSTK > /dev/null || echo "{}")' | xargs -r -d '\n' -n1 dpkg-query -S | sed 's/: .*//' | sort -u 7zip aidl ardour avr-libc cargo-1.93 carla carla-bridge-wine32:i386 carla-bridge-wine64 carla-lv2 carla-vst cuda-ctadvisor-13-4 cuda-cudart-13-4 [...] </syntaxhighlight> なお、制御フロー強制テクノロジーの間接分岐追跡とシャドウスタックが有効であっても異なる関数の通常呼び出しは防げません。分かりやすい例では関数の間接呼び出しにおいて関数ポインタを<code>sigaction</code>へと変更して独自のシグナルハンドラを登録し、その後クラッシュさせてそのシグナルハンドラを呼び出すという「セグメンテーション違反指向プログラミング」(SFOP) が挙げられます。また攻撃に使える関数 (dop gadgets) {{efn|dop gadgetsの検索の公式実装は「DOP-StaticAssist」[https://github.com/melynx/DOP-StaticAssist]だが長らく更新されておらず古いLLVM 3.5に依存している状態となっている。}}の通常呼び出しだけで攻撃する「Data-Oriented Programming」(DOP) <ref>Hong Hu et al. [https://ieeexplore.ieee.org/stamp/stamp.jsp?tp=&arnumber=7546545 Data-Oriented Programming: On the Expressiveness of Non-Control Data Attacks] IEEE 2016年</ref>{{efn|セキュリティ以外の文脈におけるデータ指向プログラミング、データ指向設計、データ駆動型設計とは異なる。}}という手法も存在します。 C++向けでは仮想関数テーブル (vtable) を改ざんして攻撃に使える仮想関数(仮想関数ガジェット、vfgadget)を呼び出す「偽造オブジェクト指向プログラミング」(COOP) という攻撃手法も登場しています。 === メモリ安全性の高いソフトウェアへ === 既存のソフトウェアの脆弱性は7割がメモリ安全性の問題に起因すると言われています<ref>[https://www.cisa.gov/sites/default/files/2023-12/CSAC_TAC_Recommendations-Memory-Safety_Final_20231205_508.pdf REPORT TO THE CISA DIRECTOR Technical Advisory Council Memory Safety] サイバーセキュリティ諮問委員会 (CSAC) 2023年12月5日</ref>。しかしながら[[C言語]]や[[C++]]はメモリ安全性が低いため、メモリ安全性の確保できる[[Rust]]などで書かれた代替プログラムが登場しています: {| class="wikitable" |+ コマンドのRust版 |- ! コマンドの概要 !! 従来版 !! Rust版 |- | Unix系の基本コマンド群 || GNU Core Utilities || '''uutils coreutils''' |- | ファイル検索コマンド群{{efn|<code>find</code>、<code>locate</code>、<code>updatedb</code>、<code>xargs</code>の4コマンド}} || GNU Findutils || '''uutils findutils''' |- | ファイル差分コマンド群{{efn|<code>diff</code>、<code>cmp</code>、<code>diff3</code>、<code>sdiff</code>の4コマンド}} || GNU Diffutils || '''uutils diffutils''' |- | ストリームエディタ (sed) || GNU sed / FreeBSD sed || '''uutils sed''' |- | AWKスクリプト || GNU AWK || '''uutils AWK''' |- | 文字列検索 || GNU Grep || '''uutils Grep''' |- | tarアーカイブ || GNU Tar || '''uutils tar''' |- | アカウント管理コマンド群 || shadow-utils || '''uutils shadow-utils''' |- | アクセス制御コマンド群{{efn|<code>chacl</code>、<code>getfacl</code>、<code>setfacl</code>の3コマンド}} || acl || '''uutils acl''' |- | procfs{{efn|プロセスファイルシステム}}表示コマンド群 || procps / procps-ng || '''uutils procps''' |- | ホスト名管理コマンド群{{efn|<code>hostname</code>、<code>dnsdomainname</code>、<code>domainname</code>、<code>nisdomainname</code>、<code>ypdomainname</code>の5コマンド。}} || hostname || '''uutils hostname''' |- | Linuxユーティリティ || util-linux || '''uutils util-linux''' |- | 権限昇格 || sudo || '''sudo-rs''' |- | 暗号・署名システム || GnuPG || '''Sequoia PGP''' |- | 時刻同期 || ntpd || '''ntpd-rs''' |- | セキュアシェル (SSH) || OpenSSH || '''russh''' |} これらのRustで書かれたコマンドのうちuutils coreutilsとsudo-rsはUbuntuに採用されています。 またライブラリでもRustだけ (Pure Rust) で実装されたものが登場しています: * 画像ライブラリ - これらは例えばGNOMEデスクトップ環境の画像ローダーGlycinから使われています<ref>[https://gitlab.gnome.org/GNOME/glycin GNOME / glycin · GitLab] GNOME Project</ref>。 ** libpng → pngクレート - PNG画像向け。 ** libgif → gifクレート - GIF画像向け。 ** libjpeg / libjpeg-turbo → zune-jpeg / libjpeg-turbo-rs - JPEG画像向け。 ** OpenJPEG → hayro-jpeg2000 - JPEG 2000画像向け。 ** libtiff → tiffクレート - Tiff画像向け ** libwebp → image-webpクレート - WebP画像向け。 ** libraw → libopenraw - RAW画像向け。 ** librsvg - SVG画像向け。C言語からRustに書き直しされました。 * 圧縮ライブラリ ** zlib / zlib-ng → zlib-rs - Deflate圧縮向け ** libbzip2 → bzip2-rs - BZ2圧縮向け * 暗号化ライブラリ ** OpenSSL / GnuTLS → [[:w:en:Rustls|Rustls]] * Unicode処理ライブラリ ** ICU4C → ICU4X * テキスト整形ライブラリ ** HarfBuzz → HarfRust * ブラウザエンジン ** Blink/Gecko → Servo <!-- === 整合性チェック === PatchGuard / HyperGuard --> == 不審な改変が行われていないかを調べる == 例えばOSの起動には一連のシーケンスがありますが、マルウェアは基本的にここの途中に入り込んで永続化します。 {| class="wikitable" |+ 起動シーケンス |- ! 種類 || Windows 11以降 !! Linux (Gnome) !! Linux (KDE) |- | 1. 起動ファームウェア || [[:w:Unified Extensible Firmware Interface|UEFI]] || colspan=2 | [[:w:Basic Input/Output System|レガシーBIOS]] / UEFI |- | 2. ブートローダー || [[:w:Windows Boot Manager|Windows Boot Manager]] (bootmgfw.efi)<br> → [[:w:Windows Boot Manager#winload.exe/winload.efi|Windows OS Loader]] (winload.efi) || colspan=2 | GRUB{{efn|Ubuntuの標準。}} / systemd-boot / Unified Kernel Image{{efn|Linuxカーネルとブートイメージを単一バイナリにする仕組み。}} / EFI boot stub{{efn|LinuxカーネルをEFIから直接ブートできるようにする仕組み。}} |- | 3. カーネル || [[:w:ntoskrnl.exe|ntoskrnl.exe]] || colspan=2 | Linuxカーネル ([[:w:vmlinux|vmlinux]]{{efn|圧縮後はvmlinuzとなる。}}) |- | 4. 初期化プロセス || [[:w:en:Session Manager Subsystem|smss.exe]]<br> → wininit.exe<br> || rowspan=2 colspan=2 | [[:w:systemd|systemd]]{{efn|以前は代替initもよく使われていたが、今はsystemdが標準となっている。}} |- | 5. サービスコントロールマネージャ || colspan=2 | [[:w:en:Service Control Manager|services.exe]] |- | rowspan=2 | 6. ログインマネージャ || rowspan=2 | [[:w:Winlogon|winlogon.exe]] || colspan=2 | systemd-logind<br>sd-pam |- | [[:w:GNOME ディスプレイマネージャー|GDM]] || [[:w:Simple Desktop Display Manager|SDDM]] |- | rowspan=2 | 7. ユーザー初期化プロセス || rowspan=2 | userinit.exe || colspan=2 | systemd |- | gnome-session || kcminit<br> → plasma_session |- | 8. シェル || [[:w:Windows Explorer|explorer.exe]] || gnome-shell || plasmashell |- | 9. コンポジタ || [[:w:Desktop Window Manager|dwm.exe]] || mutter || kwin |} また起動シーケンス以外にもアップデートシーケンスへの感染やシェル感染、ブラウザ感染もあります。 {| class="wikitable" |+ Windows における代表的なユーザースクリプト又はコマンド起動が可能な設定ファイル |- ! 規格/アプリケーション !! ユーザー !! システム |- | Windows || %APPDATA%\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows\<wbr>Start Menu\<wbr>Programs\<wbr>Startup\<wbr>* || C:\<wbr>ProgramData\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows\<wbr>Start Menu\<wbr>Programs\<wbr>Startup\<wbr>* |- | [[:w:PowerShell|PowerShell]] プロファイル<ref>[https://learn.microsoft.com/ja-jp/powershell/module/microsoft.powershell.core/about/about_profiles?view=powershell-7.6 about_Profiles - PowerShell - Microsoft Learn] Microsoft</ref> || %USERPROFILE%\<wbr>Documents\<wbr>PowerShell\<wbr>Profile.ps1<br>%USERPROFILE%\<wbr>Documents\<wbr>PowerShell\<wbr>Microsoft.PowerShell_profile.ps1 || C:\<wbr>Windows\<wbr>System32\<wbr>WindowsPowerShell\<wbr>*\<wbr>Profile.ps1<br>C:\<wbr>Windows\<wbr>System32\<wbr>WindowsPowerShell\<wbr>*\<wbr>Microsoft.PowerShell_profile.ps1 |} {| class="wikitable" |+ Linux における代表的なユーザースクリプト又はコマンド起動が可能な設定ファイル |- ! 規格/アプリケーション !! ユーザー !! システム |- | POSIX標準 || ~/.profile || /etc/profile |- | XDG Base Directory<wbr>標準 || ~/.local/bin/* || |- | FHS{{efn|Filesystem Hierarchy Standard}}<wbr>標準[https://refspecs.linuxfoundation.org/fhs.shtml] || || /bin/* /sbin/* /usr/bin/* /usr/local/bin/* /etc/inittab |- | LSB{{efn|Linux Standard Base}}<wbr>標準[https://refspecs.linuxfoundation.org/lsb.shtml] || || /etc/profile.d/* /etc/init.d/* /etc/cron.d/* |- | Desktop Application Autostart Specification<wbr>標準[https://specifications.freedesktop.org/autostart/latest/]{{efn|systemd-xdg-autostart-generator が導入されているシステムではこれらがsystemd設定に自動変換される。}} || ~/.config/autostart/* || /etc/xdg/autostart/* |- | Bash || ~/.bash_profile ~/.bashrc || /etc/bash_profile /etc/bash.bashrc /etc/bash.bash_logout |- | Z shell (Zsh) || ~/.zshenv ~/.zprofile ~/.zshrc ~/.zlogin ~/.zlogout || /etc/zshenv /etc/zprofile /etc/zshrc /etc/zlogin /etc/zlogout<br/>(または /etc/zsh/zshenv /etc/zsh/zprofile /etc/zsh/zshrc /etc/zsh/zlogin /etc/zsh/zlogout) |- | Systemd || ~/.config/systemd/user/* || /etc/systemd/system/* /etc/systemd/user/* |- | Xorg || ~/.xinitrc ~/.xserverrc ~/.xsession || /etc/X11/xinit/xinitrc /etc/X11/xinit/xserverrc /etc/X11/Xsession /usr/share/xsessions/* |- | Wayland || || /usr/share/wayland-sessions/* |- | Python || ~/.local/lib/python*/site-packages/*/**{{efn|絶対パスは<code>python3 -c 'import site; print(site.getusersitepackages())'</code>で確認可能。}} || /usr/lib/python*/dist-packages/*/** /usr/local/lib/python*/dist-packages/*/**{{efn|絶対パスは<code>python3 -c 'import site; print(site.getsitepackages())'</code>で確認可能。}} |- | Perl{{efn|Debian/UbuntuではDebianパッケージ設定システム (debconf) のためにPerlを使用している。}} || || /usr/share/perl*/** /usr/local/share/perl*/** /usr/lib/*/perl*/** /usr/local/lib/*/perl*/**{{efn|絶対パスは<code>perl -V:installsitearch -V:installsitelib -V:installvendorarch -V:installvendorlib -V:archlib -V:privlib -V:installarchlib -V:installprivlib</code>で確認可能。}} |} === パッケージ管理ファイルを検証する === パッケージ管理システムが管理しているファイルではファイルハッシュが保存されているため簡単にその検証を行うことが可能です: {| class="wikitable" |- ! OS / パッケージシステム !! 検証のみ !! 修復 |- | Windows || <code>sfc&nbsp;/verifyonly</code> || <code>sfc&nbsp;/scannow</code> |- | Debパッケージ (Debian / Ubuntu) || <code>debsums -s</code> || <code>apt install --reinstall $(debsums -cs &verbar; xargs -r dpkg-query -S &verbar; cut -d: -f1 &verbar; sort -u)</code> |- | RPMパッケージ (RedHat / Fedora) || <code>rpm -Va</code> || |} ただしローカルハッシュが改ざんされている可能性もあるため過信はできません。<!--TODO: ローカルハッシュの検証法--> 自動的にシステムの検証を行うシステムも存在します: * Android - ブロックデバイスレベルでのハッシュ検証 (dm-verityベース)<ref>[https://source.android.com/docs/security/features/verifiedboot/dm-verity?hl=ja dm-verity の実装] Google</ref> <!-- またUbuntuのSnapパッケージでもdm-verityの導入が進められています。 また特定言語のパッケージの検証は以下で可能です: * PIP (Python): なし --> === システム領域に不審なファイルが追加されていないかを調べる === システムの追加ファイルの検知にはパッケージシステムで管理されていないファイルの一覧を返す以下のようなツールが存在します: * Debian / Ubuntu(Debパッケージ)向け: cruft-ngパッケージ(<code>cruft</code>コマンド) 上記の<code>cruft</code>コマンドでは設定ファイルだけ残っているパッケージのファイルも出てきてしまいます。そのため、これが邪魔な時は設定ファイルだけ残っているパッケージを<code>sudo apt purge '~c'</code>で削除しましょう。 またaptレポジトリに無いインストールされたパッケージは<code>apt list '?obsolete'</code>で、手動 (manual) でインストールされたパッケージは<code>apt-mark showmanual</code>で確認できます。これらのコマンドを実行してインストールした覚えないパッケージが入ってないかをチェックしましょう。GUI が使えるのであれば<code>synaptic</code>を起動して「インストール済(ローカルまたは廃止)」と「インストール済(手動)」を確認するのもオススメです。 === ユーザー領域に不審なファイルが追加されていないかを調べる === ユーザースクリプトの書き換えや追加は検知が難しいです。<!--TODO: 良い方法を書く--> 共有ライブラリやスクリプトによるプラグイン追加も可能となっているため、こちらにも気をつけなければいけません。これには例えば以下があります: {| class="wikitable" |+ 代表的なユーザースクリプトや拡張機能のディレクトリパス |- ! 種類 !! Windowsのパス !! macOSのパス !! Linuxのパス |- | Google Chrome 拡張機能 || %LOCALAPPDATA%\Google\Chrome\User Data\*\Extensions\ || ~/Library/Application Support/Google/Chrome/*/Extensions/ || ~/.config/google-chrome/*/Extensions/ |- | GIMPプラグイン<ref>[https://gimp.cc/faq/add-gimp-plugins.html How to Install GIMP Plugins - Detailed Guide with Troubleshooting] GIMP.cc</ref> || %APPDATA%\GIMP\*\plug-ins\ || ~/Library/Application Support/GIMP/*/plug-ins/ || ~/.config/GIMP/*/plug-ins/ |- | Blenderスクリプト{{efn|起動スクリプト、アドオンを含む。}}<ref>[https://docs.blender.org/manual/ja/dev/advanced/blender_directory_layout.html Blender&#39;s Directory Layout] Blender Foundation</ref> || %APPDATA%\Blender Foundation\Blender\*\scripts\ || ~/Library/Application Support/Blender/*/scripts/ || ~/.config/blender/*/scripts/ |- | Ardourスクリプト<ref>[https://manual.ardour.org/lua-scripting/ The Ardour Manual - Lua Scripting] Ardour</ref> || %LOCALAPPDATA%\ardour*\scripts\ || ~/Library/Preferences/Ardour*/scripts/ || ~/.config/ardour*/scripts/ |- | LibreOfficeスクリプト || %APPDATA%\LibreOffice\*\user\Scripts\ || ~/Library/Application Support/LibreOffice/*/user/Scripts/ || ~/.config/libreoffice/*/user/Scripts/ |- | Visual Studio Code 拡張機能<ref>[https://code.visualstudio.com/docs/configure/extensions/extension-marketplace Extension Marketplace] Microsoft</ref> || %USERPROFILE%\.vscode\extensions\ || ~/.vscode/extensions/ || ~/.vscode/extensions/ |} === 改変・追加されたファイルが危険かを調べる === 実行ファイルやスクリプトはLinuxでは以下で検出できます: <syntaxhighlight lang="shell-session"> # cat filelist.txt | xargs file | grep -i -E ':.*(executable|shared object|relocatable|script)' /etc/init.d/binfmt-support.dpkg-new: POSIX shell script, ASCII text executable /etc/update-motd.d/99-livepatch-kernel-upgrade-required: POSIX shell script, ASCII text executable /usr/lib/chromium-browser/plugins/libpepflashplayer.so: ELF 64-bit LSB shared object, x86-64, version 1 (SYSV), dynamically linked, BuildID[sha1]=5c421e89a5c062a2106a5a4381dc38e779a22795, stripped </syntaxhighlight> またClamAVを導入していれば以下でマルウェアデータベースとの照合を行うことができます: <syntaxhighlight lang="shell-session"> # cat filelist.txt | xargs clamscan Loading: 3s, ETA: 0s [========================>] 3.63M/3.63M sigs Compiling: 1s, ETA: 0s [========================>] 41/41 tasks /etc/apt/apt.conf.d/00trustcdrom: OK /etc/apt/auth.conf.d/90ubuntu-advantage: OK /etc/apt/keyrings/google.asc: OK [...] ----------- SCAN SUMMARY ----------- Known viruses: 3628164 Engine version: 1.5.4 Scanned directories: 125 Scanned files: 1919 Infected files: 0 Total errors: 10 Data scanned: 247.72 MiB Data read: 281.17 MiB (ratio 0.88:1) Time: 17.939 sec (0 m 17 s) Start Date: 2026:10:11 05:41:30 End Date: 2026:10:11 05:41:48 </syntaxhighlight> === 設定データベースを検証する === 設定データベースは Windows ではレジストリ、Linuxでは GNOME / MATEの 使う [[:en:dconf|dconf]] が存在します。 Windows の設定データベースはレジストリと呼び「レジストリエディタ」 (<code>regedit</code>) で表示できます。 {| class="wikitable" |+ Windows における代表的なユーザースクリプト、コマンド起動、DLL呼び出しが可能なレジストリ |- ! 規格/アプリケーション !! 各ユーザー !! 全ユーザー |- | Windows || HKEY_USERS\<wbr>*\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows\<wbr>CurrentVersion\<wbr>Run\<wbr>*<wbr>CurrentVersion\<wbr>Run\<wbr>*<br>HKEY_USERS\<wbr>*\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows\<wbr>CurrentVersion\<wbr>RunOnce\<wbr>*{{efn|name="runonce"|RunOnceは一度のみ実行だが再登録することで何回でも実行可能。}} || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows\<wbr>CurrentVersion\<wbr>Run\<wbr>*<br>HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows\<wbr>CurrentVersion\<wbr>RunOnce\<wbr>*{{efn|name="runonce"}} |- | [[:w:en:Security Account Manager|Security Account Manager]] || || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>SAM\<wbr>SAM\<wbr>Domains\<wbr>Account\<wbr>Users\<wbr>*\<wbr>V{{efn|name="sam"|'HKEY_LOCAL_MACHINE\SAM\SAM\' 以下はレジストリエディタの右クリックの「アクセス許可」で Administrators にアクセス許可を与えないと読めない。なおファイルパスは「C:\Windows\System32\config\SAM」。}}{{efn|Vはバイナリであり、0xCC + (0x60 に指定されたオフセット) からユーザーログオンスクリプトパスを指定する<ref name="sam-ghost">Sebastián R. Castro et al. [https://dl.acm.org/doi/pdf/10.1145/3689934.3690839 Ghost in the SAM: Stealthy, Robust, and Privileged Persistence through Invisible Accounts] ACM 2024年</ref>。}} |- | [[:w:en:Local Security Authority Subsystem Service|Local Security Authority Subsystem Service]] || || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>System\<wbr>CurrentControlSet\<wbr>Control\<wbr>LSA\<wbr>Notification Packages<br>HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>SYSTEM\<wbr>CurrentControlSet\<wbr>Control\<wbr>LSA\<wbr>Authentication Packages<ref>[https://attack.mitre.org/detectionstrategies/DET0207/ Detect LSA Authentication Package Persistence via Registry and LSASS DLL Load] MITRE Corporation</ref> |- | [[:w:en:Active Setup|Active Setup]]<ref>[https://www.advancedinstaller.com/application-packaging-training/msi/ebook/active-setup.html Active-Setup Mechanism] Advanced Installer</ref> || HKEY_USERS\<wbr>*\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Active Setup\<wbr>Installed Components\<wbr>*\<wbr>StubPath || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Active Setup\<wbr>Installed Components\<wbr>*\<wbr>StubPath<ref>[https://attack.mitre.org/techniques/T1547/014/ Boot or Logon Autostart Execution: Active Setup] MITRE Corporation</ref> |- | [[:w:Windowsサービス|Windowsサービス]]<ref>[https://learn.microsoft.com/ja-jp/windows-hardware/drivers/install/hklm-system-currentcontrolset-services-registry-tree HKLM\SYSTEM\CurrentControlSet\Services レジストリ ツリー - Windows drivers - Microsoft Learn] Microsoft</ref> || || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>SYSTEM\<wbr>CurrentControlSet\<wbr>services\<wbr>* |- | [[:w:Winlogon|Winlogon]] || || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows NT\<wbr>CurrentVersion\<wbr>Winlogon\<wbr>Shell<br>HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows NT\<wbr>CurrentVersion\<wbr>Winlogon\<wbr>Userinit<br>HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows NT\<wbr>CurrentVersion\<wbr>Winlogon\<wbr>Notify<ref>[https://attack.mitre.org/techniques/T1547/004/ Boot or Logon Autostart Execution: Winlogon Helper DLL] MITRE Corporation</ref> |- | [[:w:cmd.exe|cmd.exe]]<ref>[https://learn.microsoft.com/en-us/windows-server/administration/windows-commands/cmd cmd - Microsoft Learn] Microsoft</ref> || HKEY_USERS\<wbr>*\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Command Processor\<wbr>AutoRun\REG_EXPAND_SZ || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Command Processor\<wbr>AutoRun\<wbr>REG_SZ |- | [[Microsoft Edge]] || || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>SOFTWARE\<wbr>Policies\<wbr>Microsoft\<wbr>Edge\<wbr>ExtensionInstallForcelist<ref>[https://learn.microsoft.com/ja-jp/deployedge/microsoft-edge-policies/extensioninstallforcelist Microsoft Edge ブラウザー ポリシードキュメント ExtensionInstallForcelist - Microsoft Learn] Microsoft</ref>{{efn|name="silent-install"|自動的にサイレントインストールする}} |- | [[Google Chrome]] || || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>SOFTWARE\<wbr>Policies\<wbr>Google\<wbr>Chrome\<wbr>ExtensionInstallForcelist<ref>[https://chromeenterprise.google/intl/ja_jp/policies/extension-install-forcelist/ ExtensionInstallForcelist: 自動インストールするアプリと拡張機能のリストの設定 - Chrome Enterprise] Google</ref>{{efn|name="silent-install"}} |} Linux の GNOME / MATE 環境には「[[:w:en:Dconf#dconf database|dconf データベース]]」が存在し、それは<code>dconf dump</code>('/'区切り)で表示できます。また dconf データベースにスキーマ(規定値と解説)を被せた gsettings も存在し、こちらは<code>gsettings list-recursively</code>(dconfと異なり'.'区切り)で表示できます。 {| class="wikitable" |+ Linux における代表的なユーザースクリプト又はコマンド起動が可能なdconf設定 |- ! 規格/アプリケーション !! ユーザー |- | GNOME Settings Daemon || /org/gnome/settings-daemon/plugins/media-keys/custom-keybindings/custom*/command |- | Marco ([[w:MATE (デスクトップ環境)|MATE]]) || /org/mate/Marco/keybinding-commands/command-*{{efn|変更した設定は<code>dconf dump /org/mate/Marco/keybinding-commands/</code>で、デフォルトも含めた設定は<code>gsettings list-recursively org.mate.Marco.keybinding-commands</code>で表示可能。}} |- | MATE Screensaver || /org/mate/screensaver/embedded-keyboard-command<br>/org/mate/screensaver/logout-command{{efn|変更した設定は<code>dconf dump /org/mate/screensaver/</code>、デフォルトも含めた設定は<code>gsettings list-recursively org.mate.screensaver</code> で表示可能}} |- | mate-applets || /org/mate/panel/objects/object-*/prefs/command |- | mate-sensors-applet || /org/mate/panel/objects/object-*/prefs/*/high-alarm-command<br>/org/mate/panel/objects/object-*/prefs/*/low-alarm-command |} なお MATE Screensaver と同源の GNOME Screensaver にも /org/gnome/desktop/screensaver/embedded-keyboard-command と /org/gnome/desktop/screensaver/logout-command{{efn|変更した設定は<code>dconf dump /org/gnome/desktop/screensaver/</code>、デフォルトも含めた設定は<code>gsettings list-recursively org.gnome.desktop.screensaver</code> で表示可能。}} が存在しますが、こちらは既に廃止されており指定しても無視されます<ref>[https://github.com/GNOME/gsettings-desktop-schemas/blob/main/schemas/org.gnome.desktop.screensaver.gschema.xml.in gsettings-desktop-schemas/schemas/org.gnome.desktop.screensaver.gschema.xml.in at main · GNOME/gsettings-desktop-schemas] GNOME Project</ref>。 === メディアに不審なファイルが追加されていないかを調べる === メディアの自動実行 ([[:w:en:AutoRun|AutoRun]]) ファイルにもマルウェアが紛れてないか注意しましょう。 {| class="wikitable" |+ メディアの自動実行ファイル |- ! Windows !! Linux<br>(Desktop Application Autostart Specification<wbr>標準[https://specifications.freedesktop.org/autostart/latest/]) |- | *:\[[:w:autorun.inf|autorun.inf]] || /media/*/*/.autorun<br>/media/*/*/autorun<br>/media/*/*/autorun.sh<br>/run/media/*/*/.autorun<br>/run/media/*/*/autorun<br>/run/media/*/*/autorun.sh |} == 改変を防ぐ == 改変を探すのは大変です。なので最初から改変をできないようにすれば管理はとても楽になります。 改ざんを防ぐには「[[:w:en:Chain of trust|信頼の連鎖]]」 (chain of trust) が重要となります。例えばカーネルだけで改ざんを防いでも、ハードウェアのファームウェアが不正であれば不正なカーネルを起動できてしまいます。 === ファームウェア改ざんを防ぐ === ファームウェア改ざんによる「ファームウェアルートキット」を防ぐにはIntel Management Engine (Intel ME)で実装されているIntel BIOS Guardを使う必要があります。<!--TODO: マザーボードによってはBIOSで有効にする必要があります。→最近のマザーボード事情--> なお2017年の第8世代Intel Coreプロセッサ (Coffee Lake) 以前はme_cleanerによってIntel Management Engineの無効化が可能<ref>[https://github.com/corna/me_cleaner/wiki/me_cleaner-status me_cleaner status] Nicola Corna 2018年</ref>なため非推奨です。 また2023年のIntel ME 16.1.30.2307未満では悪意あるロゴ画像を設定することによってroot権限からUEFI設定の変更が可能です([[:w:en:LogoFAIL|LogoFAIL]]の脆弱性)。そのため、古いIntel Management Engineが動作している場合はそのファームウェアをアップデートしましょう。Windowsでは MEUpdateTool.exe / FWUpdLcl.exe を使うことでこのアップデートが可能となっています。一方、Linuxでは一部機種が fwupdmgr 経由での Intel ME ファームウェアアップデートに対応しています。 Intel MEのバージョンはLinuxでは以下のような感じに調べることができます: <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ cat /sys/class/mei/mei0/fw_ver 0:16.1.32.2473 0:16.1.32.2473 0:16.1.27.2181 </syntaxhighlight> === ブートローダー改ざんを防ぐ === ブートローダーは起動に使われるファームウェア (BIOS) から呼ばれ、カーネルを読み込んで起動するために使われるプログラムです。古い BIOS (レガシーBIOS) には起動するブートローダーを検証する仕組みが存在しませんでしたが、新しい UEFI (統一拡張ファームウェアインターフェース) には署名されたブートローダーのみを起動する UEFI Secure Boot が追加され、安全なブートローダーの起動を許可するための「承認済み署名データベース」 (Authorized Signature Database、UEFI db) と、脆弱なブートローダーの起動を防ぐための「禁止署名データベース」 (Forbidden Signature Database、UEFI dbx) が用意されています。 UEFI Secure Boot が有効かどうかは以下で確認できます: * Windows PowerShell: <code>Confirm-SecureBootUEFI</code> * Linux: <code>mokutil --sb-state</code> UEFI db と UEFI dbx の内容は以下で確認できます: * Windows PowerShell: <code>Get-SecureBootUEFI -Name db -Decoded</code> / <code>Get-SecureBootUEFI -Name dbx -Decoded</code> * Linux: ** mokutil{{efn|Ubuntu Desktop に標準で含まれている。}}: <code>mokutil --db</code> / <code>mokutil --dbx</code> ** efitools: <code>efi-readvar -v db</code> / <code>efi-readvar -v dbx</code> ブートローダーの署名情報は以下で確認できます: * Windows PowerShell: <code>Get-PfxCertificate</code>{{efn|<code>Get-AuthenticodeSignature</code>はカタログ署名が使われる場合があるため非推奨: https://github.com/PowerShell/PowerShell/issues/23820 。}} * Linux: <code>sbverify --list</code> 例えば Windows PowerShell では以下のような感じです: <syntaxhighlight lang="powershell"> PS C:\WINDOWS\system32> mountvol S: /S; if ($?) { Get-PfxCertificate 'S:\EFI\Microsoft\Boot\bootmgfw.efi'; mountvol S: /D } Thumbprint Subject ---------- ------- FACDE3D80E99AFCC15E08AC5A69BD22785287F79 CN=Microsoft Windows, O=Microsoft Corporation, L=Redmond, S=Washington, C=US </syntaxhighlight> また Ubuntu や Debian では署名されたブートローダー (grub-efi-*-signedパッケージ) と非署名のブートローダー (grub-efi-*-unsignedパッケージ) の両方が用意されており、ブートローダーの正体がどれか、また署名されたブートローダーの署名内容を確認するのは以下のような感じとなります: <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ dpkg -L grub-efi-amd64-signed | grep -i '\.efi' | xargs md5sum # インストールされている署名されたブートローダーのハッシュを表示(grub*は通常版、gcd*は光学ブートメディア向け、grubnet*はネットブート向け) 2bd267fb12bd3b0fe26a9dfb4290868d /usr/lib/grub/x86_64-efi-signed/gcdx64.efi.signed f689e93336a015fa6eb93e1913b13482 /usr/lib/grub/x86_64-efi-signed/grubnetx64.efi.signed b63c7618fb96d52520b42b8cc7b124f0 /usr/lib/grub/x86_64-efi-signed/grubx64.efi.signed $ sudo sh -c "md5sum /boot/efi/EFI/BOOT/*" # 現在のbootloaderがどれを使っているかを確認(署名されたgrubを使用) b63c7618fb96d52520b42b8cc7b124f0 /boot/efi/EFI/BOOT/BOOTX64.EFI $ sudo sbverify --list /boot/efi/EFI/BOOT/BOOTX64.EFI signature 1 image signature issuers: - /C=GB/ST=Isle of Man/L=Douglas/O=Canonical Ltd./CN=Canonical Ltd. Master Certificate Authority image signature certificates: - subject: /C=GB/ST=Isle of Man/O=Canonical Ltd./OU=Secure Boot/CN=Canonical Ltd. Secure Boot Signing (2022 v1) issuer: /C=GB/ST=Isle of Man/L=Douglas/O=Canonical Ltd./CN=Canonical Ltd. Master Certificate Authority $ sudo sbverify --cert /usr/share/grub/canonical-uefi-ca.crt /boot/efi/EFI/BOOT/BOOTX64.EFI Signature verification OK </syntaxhighlight> なお Linux では grub の代わりに使えるブートローダーとして systemd-boot もあります。systemd-boot の署名版は Debian が systemd-boot-efi-*-signed パッケージとして用意しているようです(Ubuntu未搭載)。 <!--TODO: TPM (Trusted Platform Module) チップ --> === カーネル本体の改ざんを防ぐ === カーネルはオペレーティングシステム (OS) の下層で動き続けるプログラムです。カーネル本体の実行ファイルもブートローダーと同様に署名が行われており、UEFI Secure Boot が有効であればその検証をブートローダーが行います。Linux では GRUB の UEFI Secure Boot と shim_lock の連携がそれに相当します<ref>[https://www.gnu.org/software/grub/manual/grub/grub.html#UEFI-secure-boot-and-shim GNU GRUB Manual 2.14 - 19.4 UEFI secure boot and shim support] フリーソフトウェア財団</ref>。 なお Ubuntu には署名されたカーネル (linux-image-*パッケージ) と非署名のカーネル (linux-image-unsigned-*パッケージ) の両方が用意されており、署名されているカーネルは以下のような感じでその署名が確認できます: <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ sudo sbverify --list /boot/vmlinuz-$(uname -r) # Linuxカーネル本体の署名を確認する signature 1 image signature issuers: - /C=GB/ST=Isle of Man/L=Douglas/O=Canonical Ltd./CN=Canonical Ltd. Master Certificate Authority image signature certificates: - subject: /C=GB/ST=Isle of Man/O=Canonical Ltd./OU=Secure Boot/CN=Canonical Ltd. Secure Boot Signing (2022 v1) issuer: /C=GB/ST=Isle of Man/L=Douglas/O=Canonical Ltd./CN=Canonical Ltd. Master Certificate Authority $ sudo sbverify --cert /usr/share/grub/canonical-uefi-ca.crt /boot/vmlinuz-$(uname -r) # Linuxカーネル本体の署名を検証する Signature verification OK </syntaxhighlight> === カーネルモジュールの改ざんを防ぐ === カーネルモジュールも署名されており、その検証をカーネルが行っています。Windowsカーネルでは ci.dll (Code Integrityモジュール)が、Linuxカーネルでは CONFIG_MODULE_SIG コンパイルオプションがその検証を行っています。 カーネルによるカーネルモジュールの検証が有効かどうかは以下で確認することができます: * Linux: <code>grep 'CONFIG_MODULE_SIG=' /boot/config-$(uname -r)</code> カーネルによるカーネルモジュールの検証で読み込みを弾くかどうかは以下で確認することができます: * Windows: 強制モードか評価モード (監査モード) かを確認する PowerShell スクリプトが Microsoft のサイトに存在します: https://support.microsoft.com/en-us/windows/hardware/drivers/the-windows-driver-policy#is-my-device-in-evaluation-mode-or-enforcement-mode * Linux: <code>cat /sys/module/module/parameters/sig_enforce</code> また Linux では検証で読み込みを弾かない場合でも検証外カーネルモジュールを読み込んだ場合はdmesgに警告が出て '''Tainted kernel''' 扱いとなります<ref>[https://docs.kernel.org/admin-guide/tainted-kernels.html Tainted kernels] Linux Foundation</ref>。以下はその例です: <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ grep 'CONFIG_MODULE_SIG=' /boot/config-$(uname -r) # y=Yes, n=No CONFIG_MODULE_SIG=y $ cat /sys/module/module/parameters/sig_enforce # Y=Yes, N=No N $ sudo dmesg | grep 'module verification' [ 8.928361] nvidia: module verification failed: signature and/or required key missing - tainting kernel $ wget http://git.kernel.org/pub/scm/linux/kernel/git/torvalds/linux.git/plain/tools/debugging/kernel-chktaint [...] $ sudo sh ./kernel-chktaint Kernel is "tainted" for the following reasons: * externally-built ('out-of-tree') module was loaded (#12) * unsigned module was loaded (#13) Raw taint value as int/string: 12288/'G OE ' Tainted modules: * nvidia (OE) * nvidia_drm (OE) * nvidia_modeset (OE) * nvidia_uvm (OE) For a more detailed explanation of the various taint flags see Documentation/admin-guide/tainted-kernels.rst in the Linux kernel sources or https://kernel.org/doc/html/latest/admin-guide/tainted-kernels.html </syntaxhighlight> また Linux では以下のような感じで個々のモジュールの署名が確認できます: <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ modinfo /lib/modules/$(uname -r)/kernel/arch/x86/kernel/msr.ko.zst filename: /lib/modules/7.0.0-38-generic/kernel/arch/x86/kernel/msr.ko.zst license: GPL description: x86 generic MSR driver author: H. Peter Anvin <hpa@zytor.com> srcversion: 639B995855A3528050FD532 depends: intree: Y name: msr retpoline: Y vermagic: 7.0.0-38-generic SMP preempt mod_unload modversions sig_id: PKCS#7 signer: Build time autogenerated kernel key sig_key: 3B:E7:D3:BF:D3:2E:D9:CA:9C:17:D2:E9:5F:1A:1C:AE:67:D5:82:2F sig_hashalgo: sha512 signature: 96:BC:2A:18:6E:4D:D8:E5:28:69:9D:E6:65:89:95:D4:BE:4C:5B:7C: 4A:23:11:75:F6:FE:63:79:FC:29:9B:F7:EA:24:B6:F1:EF:F3:80:17: 0B:C0:1E:46:61:29:BB:F9:E0:AC:81:69:85:73:7D:D4:77:82:A8:DB: [...] </syntaxhighlight> === システムファイル改ざんを防ぐ === システムファイル改ざんを防ぐ良い方法はシステム領域を読み取り専用にすることですが、仮にファイルシステムを読み取り専用のファイルシステム(SquashFSやEROFS)にしたとしても記録する場所がSSDであればブロック単位での上書きが可能となります。 1回だけ書き込めて上書きが不可能な媒体としてはCD-R、DVD-R、DVD+R、BD-Rなどの一部の光学メディアが存在しますが、これらをブートメディアとして使用するのは頻繁なアップデートが難しくなります。 そのほかの手法としては別のコンピュータからシステムファイルを取得する「ネットワークブート」を行うという手法もありますが、これはネットワーク経由でシステムファイルが盗まれる可能性と隣り合わせです。しかしながらプロトコルにUEFI HTTPSを、認証に相互認証のmTLSを用いて、その秘密鍵をTPMで管理してOSから読めなくすることでネットワークブートの安全性は何とか確保できるかもしれません(対応マザーボードは不明)。 一方、Android や ChromeOS ではブロックデバイス単位での改ざん検知 (dm-verify) によってシステムイメージの改ざんを防止しています<ref>[https://source.android.com/docs/security/features/verifiedboot/dm-verity?hl=ja dm-verity の実装] Google</ref><ref>[https://research.google/pubs/verified-boot-on-chrome-os-and-how-to-do-it-yourself/ Verified Boot on Chrome OS and How to do it yourself] Google</ref>。 === カーネルメモリ改ざんを防ぐ === カーネルメモリのコード部分は MMU の書き込み禁止によって保護されています。iOS / macOS では Kernel Integrity Protection が<ref>[https://support.apple.com/ja-jp/guide/security/sec8b776536b/web オペレーティングシステムの整合性] Apple</ref> 、Linux では Kernel Strict RWX がこれに相当します<ref>[https://docs.kernel.org/security/self-protection.html Kernel Self-Protection] Linux Foundation</ref>。Windows でもカーネルモードに読み込み専用メモリセグメントが存在し、これに書き込もうとするとブルースクリーンで ATTEMPTED_WRITE_TO_READONLY_MEMORY (0xBE) が発行されます<ref>[https://learn.microsoft.com/ja-jp/windows-hardware/drivers/debugger/bug-check-0xbe--attempted-write-to-readonly-memory バグ チェック 0xBE: ATTEMPTED_WRITE_TO_READONLY_MEMORY] Microsoft</ref>。しかしながら Linux Kernel では kprobes、Static Keys、Static calls などで自己書き換えが多用されているため、一時的にコード部分を書き込み可能なページに割り当てて書き換える text_poke(...) という抜け道が存在します。 また定期的に改ざんが行われていないかをチェックする仕組みも存在します。Windows では[[:w:Kernel Patch Protection|Kernel Patch Protection]] (PatchGuard) / HyperGuard が、Linux では Linux Kernel Runtime Guard(外部パッチ)がこれに該当します。Windows の PatchGuard では改ざんが検出されたらブルースクリーンで CRITICAL_STRUCTURE_CORRUPTION が発行されます。 <!--TODO: Windows の HVCI、macOS の Secure Page Table Monitor / Trusted Execution Monitor--> <!-- === アプリケーション改ざんを防ぐ === SELinux / AppArmor --> == 攻撃用AIを対策する == 攻撃用AIでは基本的に賢いかつ制限の緩い大規模言語モデル (LLM) が使われています。この代表的な例として GLM 5.3 や Qwen3.8-27B-ABLITERATED が存在します。 === コンテキスト爆弾を設置する === 攻撃用AIの対策では相手のLLMを止めることが重要となります。そこで使えるのが'''コンテキスト爆弾''' (context bombs) という手法です<ref>[https://arstechnica.com/security/2026/07/now-defenders-are-embracing-the-prompt-injection-too/ Now, defenders are embracing the prompt injection, too] Ars Technica 2026年7月14日</ref>。 このコンテキスト爆弾は「相手のLLMに対し応答やツール呼び出しで禁止されていることを行わせようとする」というプロンプトインジェクションの一種であり、それによって相手のガードレールがLLMを止めることで相手からの攻撃を防ぎます。この手法は相手の読みそうなテキストにただプロンプトを書いておけば良いだけなので、お手軽に使えます。 コンテキスト爆弾のテキスト例は以下のリポジトリに存在します: * https://github.com/tracebit-com/context-bombs === ハニーポット === ハニーポットは攻撃者を引きつける役目を担います。ハニーポットの評価フレームワークには「UHBS」(Universal Honeypot Benchmarking Standard) が、その品質基準には「UHQS」(Universal Honeypot Quality Score) が存在しますが、2026年現在多くのハニーポットがFランク〜Dランクと残念な状況になっています<ref>[https://uhbs.github.io/uhbs-standard/mkdocs/conformance/ Overview - UHBS — Honeypot Evaluation Framework]</ref>。 <!-- == 自作コードの脆弱性を塞ぐ == 書きかけ --> == 脚注 == <references group="注釈"/> == 参考文献 == <references/> {{DEFAULTSORT:こんひゆうたせきゆりてい}} [[Category:計算機科学]] [[Category:情報技術]] dxgioue3lud1jsdgrdqmcl13be2u2uh 304985 304983 2026-10-21T17:13:12Z ~2026-54076-02 92740 /* TCP/UDP経由のサービス */ 304985 wikitext text/x-wiki '''コンピュータセキュリティ'''はコンピュータの安全のことです。ここではコンピュータの安全を確保することを学びます。 == コンピュータセキュリティの基本 == コンピュータは弱いところから狙われるため、弱いところを無くすのがセキュリティの基本となります。 具体例を挙げましょう。一般的な光回線に繋がれてるホームネットワークを考えます。ここには光回線の先に繋がる上位ネットワークと家内のホームネットワーク (家庭におけるLAN) とを区切るエッジルーター(一般的にはハードウェア・ゲートウェイがこれに該当)が存在します。このホームネットワークに数台の新しいWindows PCと一台の古い機器が繋がっていると仮定します。 新しいWindows PC同士ではホームネットワーク経由でファイルをやり取りするためにファイルの共有 (SMB{{efn|Server Message Block}}) を有効にしているとします。一方、古い機器の方を脆弱性のある古いテレビとしましょう。このテレビはインターネットから繋いで地上デジタル放送を見るための DCTP+ {{efn|Digital Transmission Content Protection +}}が搭載されており、UPnP{{efn|Universal Plug and Play}}で自動的にエッジルーター搭載のファイアーウォールに穴あけてインターネット側から DCTP+ に繋がるようになっているものとします。 この仮定によってハッカーは DCTP+ の脆弱性を使って古いテレビに悪意のあるプログラムを実行させてファイルの共有サーバーを立て{{efn|Windows 11時点でもゲスト認証による接続は許可されている<ref>[https://learn.microsoft.com/en-us/windows-server/storage/file-server/smb-interception-defense?tabs=group-policy Protect SMB traffic from interception] Microsoft</ref>。}}、そこからファイルの共有を通じて新しいWindows PCにマルウェア (例えば<code>PHOTO-<ランダムな数字>.png.lnk</code><ref>[https://www.microsoft.com/en-us/security/blog/2026/06/25/photo-zip-campaign-targeting-hospitality-industry-delivers-node-js-implant-persistent-access/ Photo ZIP campaign targeting hospitality industry delivers Node.js implant for persistent access] Microsoft 2026年6月25日</ref>) を送り込むことが可能となりました。 == 安全にパスワードを使う == === 流出したパスワードと被ってないかをチェックする === あちこちのサイトで流出したパスワードは集められてデータベース化されダークネットに流通しています。この代表的なものには2019年に登場した [[:w:en:Collection No. 1|Collection #1]] が挙げられます。この Collection #1 などの流出パスワードデータベースは辞書攻撃に利用されており、これは「Credential Stuffing攻撃」と呼ばれています。 使うパスワードが流出パスワードデータベースに載っていないかを確認するためには上記のデータベースを手に入れるか、上記のデータベースからk-匿名性で検索を行うオンラインサービスを使うと良いでしょう。 このオンラインサービスの代表的なものにはWebサイト「Have I Been Pwned」の提供する「Pwned Passwords」サービスが存在しますが、このAPIではパスワードのSHA-1ハッシュ先頭5文字を渡すと、流出したパスワードのSHA1ハッシュ6文字以降と流出データベースに載っていた回数が返答されます。 <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ # License: CC0 / Public Domain $ # パスワードを入力してSHA-1ハッシュへと変換する(ここでは'test'と入力) $ sha1=$(read -sp "Password: " pass && echo -n $pass | sha1sum | cut -d' ' -f1) Password: $ # 変換後のハッシュを表示 $ echo $sha1 a94a8fe5ccb19ba61c4c0873d391e987982fbbd3 $ # ハッシュの先頭5文字を渡して6文字目以降を検索(':'の後ろは見つかった数) $ curl -s https://api.pwnedpasswords.com/range/$(echo $sha1 | cut -c 1-5) | grep -i $(echo $sha1 | cut -c 6-) FE5CCB19BA61C4C0873D391E987982FBBD3:1579235 </syntaxhighlight> ハッシュの先頭5文字も渡したくない場合や、自社サービスでチェックを行いたい場合は上記のサービスが公式で提供するツール「haveibeenpwned-downloader」[https://github.com/HaveIBeenPwned/PwnedPasswordsDownloader]で全てのハッシュデータをダウンロードして自前で照合しましょう。 === 解析耐性のある鍵導出関数を使う === パスワードでは計算負荷の低い SHA-256 や SHA-512 などの通常のハッシュ関数、メモリ負荷の低い [[:w:PBKDF2|PBKDF2]] や bcrypt などの古い[[:w:鍵導出関数|鍵導出関数]](パスワードハッシュ関数)を使わないようにしましょう。これらの弱いハッシュ関数は GPU や ASIC で高速に解かれてしまいます。 より強いパスワードハッシュ関数としては yescrypt や Argon2id が存在します。パスワードにはこちらを使いましょう。現代の Linux ではアカウントのパスワードハッシュ関数として yescrypt が標準となっています。 使っている Linux の新規アカウントで使われるパスワードハッシュ関数は以下で確認可能です: <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ grep -n 'pam_unix.so' /etc/pam.d/common-password 26:password [success=2 default=ignore] pam_unix.so obscure use_authtok try_first_pass yescrypt </syntaxhighlight> Linuxの現在のアカウントがどのハッシュ関数を使用しているかは以下で確認可能です: <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ sudo cat /etc/shadow | grep $USER # $(1|5|6|b)$=弱い、$y$=強い user:$y$j9T$ST7oYwlQjFy7/8vnL/Ugt0$po4vW4qgGu8lpUNRtH0B3hDHGZACzcRhzIKhqlx.2Z5:20743:0:99999:7::: </syntaxhighlight> 弱いハッシュ関数を使用している場合は<code>passwd $USER</code>でパスワードを再設定して使用するハッシュ関数を更新してください。 一方、Windows 10 以前のローカルアカウントではパスワードハッシュがレジストリの<code>HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>SAM\<wbr>SAM\<wbr>Domains\<wbr>Account\<wbr>Users\<wbr>(ユーザーID)\<wbr>V</code>{{efn|name="sam"}}のバイナリの以下の場所に存在します: * [[:w:LMハッシュ|LMハッシュ]]: 0xCC + (0x9C に指定されたオフセット)<ref name="sam-ghost"/> * NTLMハッシュ: 0xCC + (0xA8 に指定されたオフセット)<ref name="sam-ghost"/> LMハッシュは [[:w:LAN Manager|LAN Manager]] に使われていた [[:w:Data Encryption Standard|DES]] ベースの古いハッシュ、NTLMハッシュは [[:w:NT LAN Manager|NT LAN Manager]] に使われている [[:w:MD4|MD4]] ベースの古いハッシュであり、どちらも非常に弱いものとなっていました。 また Windows の Active Directory ドメインアカウントのオフライン認証向けキャッシュ済みドメイン資格情報はレジストリの<code>HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>SECURITY\<wbr>Cache</code>に存在します: * DCC1 ハッシュ (MSCache v1): 弱い MD4 ベース。Windows XP以前。 * DCC2 ハッシュ (MSCache v2) : 弱めの PBKDF2-HMAC-SHA1 ベース。Windows Vista以後<ref>[https://attack.mitre.org/techniques/T1003/005/ OS Credential Dumping: Cached Domain Credentials] MITRE 2025年10月24日</ref>。 2021年にリリースされた Windows 11 以降は Microsoft アカウントが必須となっています。 <!--TODO: Windows Hello、LSA Secrets === パスワードの複雑性をチェックする === === TPMで鍵を隔離する === --> == 既製製品の脆弱性を塞ぐ == まずは弱いところを無くしましょう。 === ソフトウェアアップデートをする === セキュリティの基本はソフトウェアアップデートです。 ==== PCおよびモバイル ==== PC{{efn|PCサーバを含む}}やモバイルでは基本的に自動で通知が来るので忘れずにアップデートを選択しましょう。手動では以下のように行います: ; Windows : システムのアップデートは基本的に [[:w:Microsoft Update|Microsoft Update]] (Windows Update) で、アプリケーションのアップデートは基本的に<code>winget upgrade --all</code>コマンドで行います。 : また Windows 11 Enterprise では再起動が不要なホットパッチにも対応しています。 ; macOS / iOS : 「ソフトウェアアップデート」 ; Ubuntu / Debian : [[:w:APT|APT]]パッケージ管理システムでは<code>apt upgrade</code>コマンドで更新を行います。 : Ubuntu では GUI による更新用として[[:w:Software Updater|Software Updater]] (<code>update-manager</code>コマンド)、[[:w:Snap (ソフトウェア)|Snap]]パッケージの更新コマンドとして<code>snap refresh</code>、メジャーバージョンの更新コマンドとして<code>do-release-upgrade</code>も存在します。 : また Ubuntu では Ubuntu Pro に登録することで再起動が不要なカーネル修正の「Livepatch」も可能となります(個人では5台まで無料)。SUSEではユーザー空間ライブパッチングまで提供されています(glibc と openssl のみ)<ref>[https://documentation.suse.com/ja-jp/sles/15-SP6/html/SLES-all/cha-ulp.html ユーザ空間ライブパッチ - 管理ガイド - SLES 15 SP6] SUSE</ref>。 ; RedHat / Fedora : <code>yum update</code>コマンド ; Android : 「設定」アプリ→「システム」→「システムアップデート」または「ソフトウェアアップデート」 また個々のハードウェアのファームウェアアップデートは以下で行います: ; Linux : Linuxにおけるファームウェアの更新は基本的に<code>fwupdmgr update</code>コマンドで行います。 : NVMe SSDのファームウェアの更新は<code>nvme fw-download</code>コマンドおよび<code>nvme fw-commit</code>コマンドで行うことができます。 一方、Windows ではファームウェアのアップデートも Windows Update 経由で<ref>[https://learn.microsoft.com/ja-jp/windows-hardware/drivers/bringup/firmware-update ファームウェアの更新] Microsoft</ref>、macOS ではファームウェアのアップデートもmacOSアップデートで行うことができます<ref>[https://support.apple.com/ja-jp/guide/mac-help/mchlp2609/mac Macのファームウェアアップデートの入手方法] Apple</ref>。 <!-- また開発環境では以下も存在します: ; Python : <code>pip -U install</code> --> ==== ルーター ==== ルーターでは以下の設定を有効のままにしておきましょう: ; AirStationシリーズ(Buffalo 製ルーター) : 「ファームウェア自動更新機能」 ; Atermシリーズ(NEC 製ルーター) : 「メンテナンスバージョンアップ機能」「時刻指定バージョンアップ機能」 ==== テレビ ==== テレビでは放送波アップデートが行われるため、「放送波による自動更新」<!--TODO: メーカー別名-->を有効にしましょう。 === 高速に再起動する === パッケージは更新しただけでは反映されません(一部デーモンの更新を除く)。Linuxでは高速に再起動する方法が存在し、これによってダウンタイムを減らすことができます。 ; 更新で影響を受けるデーモンのみ再起動する :* Ubuntu Server: 標準で <code>needrestart</code> が導入されており自動で影響を受けるデーモンの再起動が行われます{{efn|自動的なデーモン再起動を止めるには /etc/apt/apt.conf.d/99needrestart より<code>-m u</code>を削除する必要があります<ref>[https://discourse.ubuntu.com/t/needrestart-changes-in-ubuntu-24-04-service-restarts/44671 `needrestart` changes in Ubuntu 24.04: service restarts] Canonical 2024年</ref>。}}(Ubuntu Desktopでは別途導入が必要)。 :* RedHat / Fedora: <code>dnf needs-restarting</code>が導入されており、それによって再起動するべきデーモンを確認できます。 ; ユーザー空間のみ再起動する(カーネルの更新がない、またはカーネルでlive patchingを行ってる場合) : <code>sudo systemctl soft-reboot</code> ; 高速にカーネルを更新する(ファームウェアの更新がない場合) : <code>sudo systemctl kexec</code> また一部のソフトウェアではホットアップグレード(無停止アップグレード{{efn|Zero-Downtime Upgrade}})にも対応しています (nginx の USR2 シグナル<ref>[https://nginx.org/en/docs/control.html Controlling nginx] nginx</ref>など)。 === 代替ソフトウェアを探す === 更新が停止された古いソフトウェアの多くはそれ自身に脆弱性が存在したり、脆弱性のある古いライブラリに依存していたりします。そのため古いソフトウェアは速やかに代替ソフトウェアへと移行しましょう。 ==== 開発終了したソフトウェアから現役のソフトウェアへ ==== 古いソフトウェアには例えば以下があります: * オフィススイート(代替候補: LibreOffice) ** [[:w:OpenOffice.org|OpenOffice.org]](〜2011年) * 画像ビューア ** [[:w:Susie|Susie]] (〜2013年) * メディアプレイヤー ** [[:w:QuickTime|QuickTime]] for Windows(〜2016年) - リモートコード実行の脆弱性 ([https://www.zerodayinitiative.com/advisories/ZDI-16-241/ ZDI-16-241]、[https://www.zerodayinitiative.com/advisories/ZDI-16-242/ ZDI-16-242]) を残したままサポート終了しました<ref>[https://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/753400.html Apple、「QuickTime for Windows」のサポートを終了、アンインストールを推奨] Impress 2016年4月15日</ref>。 * メディアフィルター(代替候補: LAV Filters) ** [[:w:ffdshow|ffdshow]](〜2014年) ** [[:w:Haali Media Splitter|Haali Media Splitter]](〜2013年) * メディアセンター(代替候補: Kodi) ** [[:w:en:Boxee|Boxee]](〜2011年) ** [[:w:Kodi|XBMC]](〜2014年) - Kodiの前身 * 圧縮ソフトウェア ** [[:w:+Lhaca|+Lhaca]](〜2007年) ** [[:w:Lhaplus|Lhaplus]](〜2017年) またハードウェアに由来する古いソフトウェアには例えば以下があります: * [[w:ウォークマン|ウォークマン]]関連(代替候補: [[:w:Music Center for PC|Music Center for PC]]) ** [[:w:CONNECT Player|CONNECT Player]](〜2007年、Sony) ** [[:w:SonicStage|SonicStage]](〜2009年、Sony) ** [[:w:x-アプリ|x-アプリ]](〜2016年、Sony) * DTCP-IP関連 ** SmartVision/PLAYER powered by DiXiM(〜2019年、NEC)<ref>[https://support.nec-lavie.jp/navigate/support/info/2019/announce/svp/ SmartVision/PLAYER保守サービス終了のお知らせ] NECパーソナルコンピュータ 2019年1月28日</ref><ref>[https://apps.microsoft.com/detail/9wzdncrdkb4c?hl=ja-JP&gl=JP SmartVision/PLAYER powered by DiXiM] Microsoft</ref> ** DiXiM Digital TV plus for I-O DATA(〜2022年、I-O DATA)<ref>[https://www.iodata.jp/lib/product/d/3533.htm DiXiM Digital TV plus for I-O DATA] I-O DATA</ref> なお仮想マシンを使って隔離しながら古いソフトウェアを動かすこともできますが、仮想マシンでも「VMエスケープ」の脆弱性を使用することでホスト環境への侵害が可能なため、仮想マシンの上で弱い環境や弱いソフトウェアを使うこともなるべく避けましょう。<!--TODO: Windows Sandbox--> ==== 古いバージョンのライブラリを避ける ==== 多くのソフトウェアに使用されているライブラリとその過去の危険な脆弱性には例えば以下があります:<!--危険を認識させる。例はライブラリ内のメイン処理に存在し、任意コード実行であり、脆弱性の存在期間が長く、新しいものが好ましい。--> * 画像ライブラリ ** libpng - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2010-1205 CVE-2010-1205](PNG画像で任意コード実行の可能性) ** libjpeg-turbo - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2012-2806 CVE-2012-2806](JPEG画像で任意コード実行の可能性) ** OpenJPEG - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2025-54874 CVE-2025-54874](JPEG2000画像で任意コード実行の可能性) ** libtiff - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2026-12912 CVE-2026-12912](PixarLog圧縮TIFF画像で任意コード実行の可能性) ** libwebp - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2023-4863 CVE-2023-4863](WebP画像で任意コード実行の可能性) * 動画ライブラリ ** FFmpeg - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2024-22860 CVE-2024-22860](JPEG XLアニメーションで任意コード実行の可能性) * 圧縮ライブラリ ** libarchive - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2026-15028 CVE-2026-15028](tarアーカイブ形式で任意コード実行の可能性) ** zlib - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2002-0059 CVE-2002-0059](Deflate圧縮形式で任意コード実行の可能性) ** bzip2 - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2010-0405 CVE-2010-0405](BZ2圧縮形式で任意コード実行の可能性) これらのライブラリはABI(アプリケーションバイナリインターフェイス)が変更されて新しいバージョンの共有ライブラリにドロップイン置換できないものも多くなっています。 また国内で使われている古いソフトウェアでは開発中止になった以下のライブラリも問題となっています: * UNLHA32.DLL<ref>[https://forest.watch.impress.co.jp/docs/news/372729.html 圧縮・解凍用DLL「UNLHA32.DLL」が開発中止、作者はLZHの利用中止を呼びかけ] Impress 2010年6月7日</ref> Webフレームワークでは開発中止となった以下のフレームワークが問題となっています: * [[:w:Model View Controller|Model View Controller]]フレームワーク(代替候補: [[:w:Apache Struts|Apache Struts]] 2、[[:w:Spring Framework#Model-View-Controller フレームワーク|Spring MVC]]) ** [[:w:en:Apache Struts 1|Apache Struts 1]](〜2008年) - Java言語 * [[:w:アスペクト指向プログラミング|アスペクト指向フレームワーク]](代替候補: [[:w:Spring Framework|Spring Framework]]、[[:w:en:Micronaut (framework)|Micronaut]]) ** [[:w:Seasar|Seasar]](〜2016年) - Java言語 * [[:w:シングルページアプリケーション|シングルページアプリケーション]]フレームワーク(代替候補: [[:w:Angular|Angular]]、[[:w:Vue.js|Vue.js]]) ** [[:w:AngularJS|AngularJS]](〜2022年) - JavaScript === 古いハードウェアに対処する === サポート切れの OS を搭載したハードウェアはどうすれば良いでしょうか。これには使い続けるいくつかの方法がありますが、基本的にオススメしません。古い OS を搭載していたハードウェアはハードウェア仕様も古いからです。 ==== スタンドアロン運用 ==== 古いハードウェアはインターネットに繋がずに使用すること(スタンドアロン運用)も可能です。 しかしながらUSBメモリでデータをやり取りする場合はUSBメモリ経由での感染などのリスクは残ります。 ==== 新しめのLinuxを導入 ==== 新しめのLinuxを導入するという方法もあります。 これに適したものでは例えばWindows 11非対応のPC (Intel 第7世代以前、AMD Ryzen 1000シリーズ以前) が挙げられます。 またスマートフォンやタブレットであればカスタムROMが、ルーターであればDD-WRTやOpenWRTが存在します。 ==== 手放す ==== 手に負えなければデータだけバックアップして手放しましょう。情報が漏れないよう初期化も忘れずに。 == 不要なサービスを止める / 削除する == {| class="wikitable" |+ サービス表示系コマンド |- ! 稼働中のシステムサービスを見る | <code>systemctl --type=service --state=running</code> |- ! 稼働中のユーザーサービスを見る | <code>systemctl --user --type=service --state=running</code> |} === TCP/UDP経由のサービス === TCP/UDPでのポート待ち受けのあるプロセスを見るには <code>sudo ss -tulnp</code> を、通信しているプロセスを見るには <code>sudo lsof -i -P -n</code> を実行しましょう。 {| class="wikitable" |+ 主なポート待ち受けのあるプロセス |- ! ポート !! 機能 !! プロセス名 !! サービス名または起動コマンド !! パッケージ名 (Ubuntu) || 直接問い合せコマンド |- | rowspan=2 | 53/UDP<br>53/TCP || rowspan=2 | DNS(名前解決) || systemd-resolved || systemd-resolved.service || systemd-resolved || <code>dig @127.0.0.53 example.com</code> |- | dnsmasq || dnsmasq.service<br/>dnsmasq@.service || dnsmasq-base<br>dnsmasq || <code>dig @10.208.199.1 example.com</code> |- | rowspan=2 | 5353/UDP || rowspan=2 | [[:w:マルチキャストDNS|マルチキャストDNS]] || systemd-resolved || systemd-resolved.service || systemd-resolved || <code>resolvectl -p mdns query $HOSTNAME.local</code> |- | Avahi || avahi-daemon.service || avahi-daemon || <code>avahi-resolve-host-name $HOSTNAME.local</code> |- | 67/UDP<br>547/UDP || [[:w:DHCP|DHCP]]<br>[[:w:DHCPv6|DHCPv6]] || dnsmasq || dnsmasq.service<br/>dnsmasq@.service || dnsmasq-base<br>dnsmasq || <code>IP=$(ip -4 -o addr show pan1 &vert; grep -oP '(?<=inet )[\d.]+'); sudo dhcping -v -i -s "$IP" -c "$IP"</code>{{efn|Ubuntuではdhcpingパッケージの導入が必要です。}} |- | rowspan=2 | 68/UDP<br>546/UDP || rowspan=2 | DHCPクライアント<br>DHCPv6クライアント{{efn|単独のDHCPクライアントである dhclient、dhcpcd なども存在する。また開発終了になったisc-dhcp-clientも存在した。}} || systemd-networkd<wbr>{{efn|name="network-all"}} || || systemd || |- | NetworkManager<wbr>{{efn|name="network-all"|ネットワーク管理全般を担当しています。}} || NetworkManager.service || network-manager || |- | rowspan=2 | 123/UDP<br>4460/TCP || rowspan=2 | NTP(時刻同期)<br>NTS-KE (NTPの鍵交換){{efn|これらの代替として systemd-timesyncd もありますが、こちらは NTP の代わりに単純な SNTP のみ実装の上、サーバーを持たずクライアント側のみ対応です。}} || ntpd || ntpsec.service || ntpsec || rowspan=2 | <code>ntpdig localhost</code>{{efn|ローカルへのNTP問い合せは<code>ntpdate -q localhost</code>でもできますが、こちらはNTP-KE非対応です。}} |- | chronyd || chrony.service || chrony |- | 80/TCP<br>443/HTTP<br>443/UDP || HTTP<br>HTTPS<br>HTTP/3 (QUIC) || apache2 || apache2.service<br>apache2@.service<br>httpd.service<br>httpd@.service || apache2 || HTTP: <code>curl http://localhost</code><br>HTTPS: <code>curl --http2 https://localhost</code><br>HTTP/3: <code>curl --http3-only https://localhost</code> |- | rowspan=2 | ユーザーポート/UDP || rowspan=2 | HTTP/3 (QUIC) クライアント<br>WebRTCクライアント || chrome{{efn|Google Chrome}} || <code>google-chrome</code> || google-chrome (公式APTリポジトリ) || |- | firefox{{efn|Mozzila Firefox}} || <code>firefox</code> || firefox (snap) || |- | rowspan=2 |21/TCP<br>20/TCP{{efn|アクティブモードのみデータ転送で使われます。}} || rowspan=2 | FTP || proftpd || proftpd.service<br>proftpd@.service || proftpd-core || rowspan=2 | <code>curl ftp://localhost</code> |- | vsftpd || vsftpd.service || vsftpd |- | 22/TCP || SSH / SFTP || sshd || ssh.service<br>sshd@.service || openssh-server || <code>ssh-keyscan 127.0.0.1</code> |- | rowspan=2 | 6881/TCP || rowspan=2 | BitTorrent || qbittorrent || <code>qbittorrent</code> || qbittorrent || |- | ktorrent || <code>ktorrent</code> || ktorrent || |- | rowspan=2 | 51413/TCP || rowspan=2 | Transmission<wbr>{{efn|BitTorrentプロトコル。TransmissionをベースとするFragmentsも同ポートを使用します。}} || transmission-daemon || transmission-daemon.service || transmission-daemon || |- | transmission-gtk || <code>transmission-gtk</code> || transmission-gtk || |- | 5001/TCP<br>5001/UDP || rowspan=2| ネットワークパフォーマンス計測 || iperf || <code>iperf -s</code> || iperf || <code>iperf -c localhost</code> |- | 5021/TCP<br>5021/UDP || iperf3 || <code>iperf3 -s</code> || iperf3 || <code>iperf3 -c localhost</code> |- | 1716/UDP<br>1716/TCP<br>ユーザーポート/UDP || スマートフォン連携 (KDE) || kdeconnectd || <code>kdeconnect-app</code> || kdeconnect || |- | ユーザーポート/TCP || Claude Proxy Service || code{{efn|[[:w:Visual Studio Code|Visual Studio Code]]のプロセス。}} || <code>code</code> || code (公式APTリポジトリ) || <!-- |- | || AI コーディング支援 (Google Antigravity CLI{{efn|Command Line Interface}}) || agy || || (Visal Studio Code拡張) || --> |- | rowspan=2 | 3389/TCP<br>3389/UDP || rowspan=2 | Remote Desktop Protocol || gnome-remote-desktop-daemon{{efn|GNOME Remote Desktop}} || gnome-remote-desktop.service<!-- (system)--><br>gnome-remote-desktop.service (user)<br>gnome-remote-desktop-headless.service (user) || gnome-remote-desktop || |- | krdpserver || app-org.kde.krdpserver.service (user) || krdp || |- | 47984/TCP<br>47989/TCP<br>48010/TCP<br>47998–48010/UDP || NVIDIA GameStream || sunshine || app-dev.<wbr>lizardbyte.<wbr>app.<wbr>Sunshine.service (user) || sunshine (公式debファイル) || (moonlight-qt) |- | 27031-27036/UDP<br>27036/TCP || Steam Remote Play<ref>[https://help.steampowered.com/ja/faqs/view/2EA8-4D75-DA21-31EB Steam接続に必要なポート] Valve</ref> || steam || <code>steam</code> || steam (公式APTリポジトリ) || |- | 1900/UDP || UPnP{{efn|パケットフィルタと共に使用する。}} || miniupnpd || miniupnpd.service || miniupnpd-nftables<br>miniupnpd-iptables || |} なおUPnPの待ち受けは外側に解放しないようにしましょう。内側に侵害された機器が存在する場合も問題になるのでVLANを分けることを心がけましょう。 <!--TODO: CUPS、Postfix、Samba、Wsdd--> === Unix Domain経由のサービス === Unix Domainでのポート待ち受けのあるプロセスを見るには <code>sudo ss -xlp</code> を実行しましょう。 === dbus経由のサービス === システムバスは <code>busctl --system list</code>、セッションバスは <code>busctl --user list</code> で確認することができます。 それらを提供する実行中のプロセスの一覧は以下で取得できます: * システムバスを提供するプロセス: <code>busctl --system --no-pager | awk 'NR>1 && $2 ~ /^[0-9]+$/ {print $2}' | xargs -I {} readlink "/proc/{}/exe" | sort -u</code> * ユーザーバスを提供するプロセス: <code>busctl --user --no-pager | awk 'NR>1 && $2 ~ /^[0-9]+$/ {print $2}' | xargs -I {} readlink "/proc/{}/exe" | sort -u</code> dbusサービスの一部はプロセス未実行のアクティベータブル (activatable) な状態で提供されています。アクティベータブルな状態で提供するサービスの実行コマンドは以下で取得できます: * activatableなシステムバスの実行コマンド: <code>busctl --system --no-pager --activatable | awk '{print $1}' | xargs -I {} find /usr/share/dbus-1 -name "{}.service" | xargs grep -h "Exec=" | sed 's/Exec=//g' | sort -u</code> * activatableなユーザーバスの実行コマンド: <code>busctl --user --no-pager --activatable | awk '{print $1}' | xargs -I {} find /usr/share/dbus-1 -name "{}.service" | xargs grep -h "Exec=" | sed 's/Exec=//g' | sort -u</code> == 潜在的な脆弱性を減らす == 現代のプログラムでは以下のような保護が行われています。 === メモリアドレスの推測困難化 === 攻撃に必要なコード片(ガジェット)のメモリアドレスを推測しにくくするために、カーネル空間、ユーザー空間の両方で[[:w:アドレス空間配置のランダム化|アドレス空間配置のランダム化]](ASLR)が行われています。カーネル空間の ASLR は KASLR (Kernel ASLR) とも呼ばれています。 ユーザー空間のプログラムで ASLR を有効にするためには[[:w:位置独立コード|位置独立コード]] (PIC) / 位置独立実行形式 (PIE) である必要があります。Unix で使われる実行形式の ELF では位置独立実行形式が ET_DYN、非位置独立実行形式 (non-PIE) が ET_EXEC となります。 Linuxでは ASLR が無効となる非位置独立実行形式のファイルを以下で検索することができます: <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ # License: CC0 / Public Domain $ # 非位置独立実行形式 (non-PIE) のバイナリを検索 $ find / -type f -executable 2>/dev/null | xargs -I {} sh -c 'LANG=C readelf -h {} 2>/dev/null | grep -E "Type:.*EXEC" >/dev/null && echo {}' /usr/lib/default.sfx /usr/lib/klibc/bin/mkfifo /usr/lib/klibc/bin/zcat /usr/lib/klibc/bin/poweroff [...] $ # 非位置独立実行形式 (non-PIE) のバイナリを含むDebianパッケージを検索 $ find / -type f -executable 2>/dev/null | xargs -I {} sh -c 'LANG=C readelf -h {} 2>/dev/null | grep -E "Type:.*EXEC" >/dev/null && echo {}' | xargs -r -d '\n' -n1 dpkg-query -S | sed 's/: .*//' | sort -u aidl busybox-static code cpp-15-x86-64-linux-gnu cuda-gdb-13-4 cuda-nvcc-13-4 cuda-sanitizer-13-4 cuda-tileiras-13-4 debugedit g++-15-x86-64-linux-gnu gcc-15-x86-64-linux-gnu gcc-mingw-w64-i686-posix gdc-15-x86-64-linux-gnu gds-tools-13-4 gfortran-15-x86-64-linux-gnu gh git-lfs gobjc-15-x86-64-linux-gnu gocryptfs golang-1.26-go go-md2man go-mtpfs [...] </syntaxhighlight> 現在のLinuxカーネルがユーザー空間 ASLR を有効にしているかは以下で確認できます (出力例はUbuntu 26.04): <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ sysctl kernel.randomize_va_space # 0=無し、1=部分的、2=完全 kernel.randomize_va_space = 2 </syntaxhighlight> また現在のLinuxカーネルがカーネル ASLR (KASLR) を有効にしているかは以下で確認できます (出力例はUbuntu 26.04): <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ grep 'CONFIG_RANDOMIZE_BASE' /boot/config-$(uname -r) # y=Yes, n=No CONFIG_RANDOMIZE_BASE=y </syntaxhighlight> なお ASLR は間接的な関数呼び出し( C++ の vtable を含む)があると、そのアドレスから ASLR のオフセットがバレてしまい突破されてしまいます。 また CPU の[[:w:投機的実行|投機的実行]]での情報漏れ (Spectre) による[[:w:キャッシュ攻撃|キャッシュサイドチャネル攻撃]](後述)の一つである「投機的探査」 (BlindSide) によってもコードの位置情報の取得がされ ASLR が突破されてしまいます。 === 投機的実行の情報漏れ防止 === 前述のとおり、投機的実行による情報漏れ (Spectre) は攻撃に繋がります。Spectre には境界チェックを迂回する Spectre V1 と間接分岐の分岐先アドレスのキャッシュ{{efn|分岐先バッファ (Branch Target Buffer、BTB)や分岐先アドレスキャッシュ (Branch Target Address Cache、BTAC) と呼ばれる。}}を汚染する Spectre V2 が存在します。<!--TODO: Spectre v3/v4、Zenbleed--> Spectre V1 を防ぐ方法としては投機的実行を阻害するための命令(x86ではLFENCE)の挿入{{efn|Linuxカーネルでの投機的実行の防止は<code>barrier_nospec()</code>。}}やアクセスできるアドレス範囲を狭めることが行われています{{efn|GCCでの投機的実行での範囲外アクセス防止は<code>__builtin_speculation_safe_value(...)</code>、Linuxカーネルでの投機的実行での範囲外アクセス防止は<code>array_index_nospec(...)</code><ref>[https://lwn.net/Articles/759423/ Spectre V1 defense in GCC] LWN 2018年7月10日</ref>。}}。 また Spectre V2 では攻撃を防ぎながらも速度を落とさない方法として脆弱な分岐先アドレスキャッシュに依存する間接分岐の代わりにリターンアドレスのキャッシュ{{efn|リターンスタックバッファ (RSB) と呼ばれる。}}に依存するリターン命令を使う retpoline が登場しました。しかしながらこの retpoline でも速度の低下は起こるため、既知の間接呼び出しを条件分岐 + 直接呼び出しに変換して高速化する手法が模索されました。LLVM では retpoline を有効にする <code>-mretpoline</code>フラグの処理内に既知の仮想関数呼び出しを[[:w:二分木|二分木]]の直接分岐に置き換える「分岐ファネル」(Branch funnel) が導入されています<ref>[https://reviews.llvm.org/D42453 Use branch funnels for virtual calls when retpoline mitigation is enabled.] LLVM project</ref>。また Linux カーネルでも既知の間接呼び出しを条件分岐 + 直接呼び出しに変換する INDIRECT_CALL_* マクロが搭載されています<ref>[https://lwn.net/Articles/774743/ Relief for retpoline pain] LWN 2018年12月14日</ref>。<!--TODO: Intel CETのSHSTKとretpolineの衝突--> 一方、リターン命令の投機的実行も「Retbleed」や AMD CPU における「投機的リターンスタックオーバーフロー」 (SRSO){{efn|Speculative Return Stack Overflow。}}のような脆弱性が見つかっています。 なお低権限コードから高権限コードへの権限境界をまたいだ Spectre および Retbleed は Intel の「間接分岐制限付き投機」(IBRS){{efn|Indirect Branch Restricted Speculation。}}およびそれを高速化した「拡張IBRS」(eIBRS) などハードウェア側によって塞がれました<ref>[https://www.intel.com/content/www/us/en/developer/articles/technical/software-security-guidance/technical-documentation/hardware-behavior-related-to-speculative-execution.html Hardware Features and Behavior Related to Speculative Execution] Intel 2026年10月14日</ref>が、権限境界をまたがないものは今も可能となっています。 === メモリにおける書き込みと実行の排他化 (W^X) === メモリでは書き込み可能領域の実行不可化 ([[:w:NXビット|NXビット]]) と実行可能領域の書き込み不可化による書き込みと実行の排他化([[:w:en:W^X|W^X]])が一般的となっています。NXビットは x86 では NXビットは AMD64 と共に搭載された古い機能であるため、今時の CPU と OS は基本的にこれに対応しています。 現在の CPU がNXビットを有効にしているかはLinuxでは以下で確認できます: <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ grep '^flags' /proc/cpuinfo | grep -o nx nx nx [...] </syntaxhighlight> 現在のLinuxカーネルが厳格な W^X を有効にしているかは以下で確認できます (出力例はUbuntu 26.04): <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ grep '_RWX' /boot/config-$(uname -r) # y=Yes, n=No CONFIG_ARCH_HAS_STRICT_KERNEL_RWX=y CONFIG_STRICT_KERNEL_RWX=y CONFIG_ARCH_HAS_STRICT_MODULE_RWX=y CONFIG_STRICT_MODULE_RWX=y </syntaxhighlight> しかしながら書き込みと実行の排他の原則を破ってそれらを同時に行える場所というものも存在しています。読み込み・書き込み・実行が可能なことから「RWXセクション」と呼ばれています。Windows ではメモリページの PAGE_EXECUTE_READWRITE フラグがこれに相当します<ref>[https://learn.microsoft.com/ja-jp/windows/win32/memory/memory-protection-constants メモリ保護定数] メモリ保護定数 (WinNT.h) - Win32 apps | Microsoft Learn</ref>。 Windows のカーネルドライバでは NX フラグの使用が義務付けられています<ref>[https://learn.microsoft.com/en-us/windows-hardware/test/hlk/testref/driver-compatibility-with-device-guard メモリ整合性と VBS とのドライバ互換性] Microsoft</ref>が、その Windows カーネルにおいても PatchGuard の領域がコード難読化のためにこの原則を破っています。<!--TODO: ホットパッチ--> また Linux でも実行可能領域を書き込み可能ページとして割り当てて書き込む text_poke 関数が用意されています。 === 制御フローの操作を防ぐ (CET) === 現代では「[[:w:Return-oriented programming|リターン指向プログラミング]]」(ROP)、「呼び出し指向プログラミング」 (COP)、「ジャンプ指向プログラミング」(JOP) 、「[[:en:Sigreturn-oriented programming|Sigreturn指向プログラミング]]」(SROP) などの制御フロー操作による攻撃が一般化していますが、これを防ぐ技術として「[[:w:en:Control-flow integrity#Intel Control-flow Enforcement Technology|制御フロー強制テクノロジー]]」(CET) の「[[:w:en:Indirect branch tracking|間接分岐追跡]]」(IBT) と「[[:w:en:Shadow stack|シャドウスタック]]」(SHSTK) が存在します。 制御フロー強制は比較的新しい技術であるため、対応する CPU は以下に限られます: * Intel Core (Tiger Lake) 第11世代以降 * AMD Zen 3 以降(シャドウスタックのみ) 現在の CPU が間接分岐追跡 (IBT) およびシャドウスタックに対応しているかはLinuxでは以下で確認できます: <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ grep '^flags' /proc/cpuinfo | grep -oE '(ibt|shstk)' shstk ibt shstk ibt [...] </syntaxhighlight> またユーザーランドのシャドウスタックの使用にはユーザーランドだけでなくカーネルの対応も必要となります。Linux カーネル では 6.6 以降対応でこれに対応しています(sigreturnにも対応<ref>[https://github.com/torvalds/linux/commit/05e36022c0543ba55a3de55af455b00cb3eb4fcc x86/shstk: Handle signals for shadow stack · torvalds/linux@05e3602] GitHub 2023年8月3日</ref>)。 Linuxディストリビューションでは Ubuntu 24.04以降、 Red Hat Enterprise Linux 9.7 以降<ref>[https://docs.redhat.com/ja/documentation/red_hat_enterprise_linux/9/html/9.7_release_notes/new-features-kernel 4.8. カーネル - 9.7 リリースノート - Red Hat Enterprise Linux - 9 - Red Hat Documentation] Red Hat</ref>が標準でシャドウスタックを有効としています。 現在のLinuxカーネルが間接分岐追跡およびシャドウスタックを有効にしているかは以下で確認できます (出力例はUbuntu 26.04): <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ grep -E '_(IBT|SHADOW_STACK)' /boot/config-$(uname -r) # y=Yes, n=No CONFIG_CC_HAS_IBT=y # CONFIG_X86_KERNEL_IBT is not set CONFIG_X86_USER_SHADOW_STACK=y CONFIG_X86_DISABLED_FEATURE_IBT=y CONFIG_ARCH_HAS_USER_SHADOW_STACK=y </syntaxhighlight> 現在のユーザーランドプログラムの中で間接分岐追跡またはシャドウスタックが無効化されているものはLinuxでは以下で確認できます: <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ # License: CC0 / Public Domain $ # 間接分岐追跡またはシャドウスタックが無効化されているバイナリを検索 $ find / -type f 2>/dev/null | xargs -I {} sh -c 'readelf -h "{}" >/dev/null 2>&1 && (readelf -n "{}" 2>/dev/null | grep -E IBT,.*SHSTK > /dev/null || echo "{}")' /usr/lib/lv2/carla.lv2/carla.so /usr/lib/7zip/7z /usr/lib/7zip/7zCon.sfx /usr/lib/7zip/7zr /usr/lib/7zip/7z.so /usr/lib/7zip/7za /usr/lib/klibc/bin/ipconfig /usr/lib/klibc/bin/umount /usr/lib/klibc/bin/halt [...] $ # 間接分岐追跡またはシャドウスタックが無効化されているバイナリを含むDebianパッケージを検索 $ find / -type f 2>/dev/null | xargs -I {} sh -c 'readelf -h "{}" >/dev/null 2>&1 && (readelf -n "{}" 2>/dev/null | grep -E IBT,.*SHSTK > /dev/null || echo "{}")' | xargs -r -d '\n' -n1 dpkg-query -S | sed 's/: .*//' | sort -u 7zip aidl ardour avr-libc cargo-1.93 carla carla-bridge-wine32:i386 carla-bridge-wine64 carla-lv2 carla-vst cuda-ctadvisor-13-4 cuda-cudart-13-4 [...] </syntaxhighlight> なお、制御フロー強制テクノロジーの間接分岐追跡とシャドウスタックが有効であっても異なる関数の通常呼び出しは防げません。分かりやすい例では関数の間接呼び出しにおいて関数ポインタを<code>sigaction</code>へと変更して独自のシグナルハンドラを登録し、その後クラッシュさせてそのシグナルハンドラを呼び出すという「セグメンテーション違反指向プログラミング」(SFOP) が挙げられます。また攻撃に使える関数 (dop gadgets) {{efn|dop gadgetsの検索の公式実装は「DOP-StaticAssist」[https://github.com/melynx/DOP-StaticAssist]だが長らく更新されておらず古いLLVM 3.5に依存している状態となっている。}}の通常呼び出しだけで攻撃する「Data-Oriented Programming」(DOP) <ref>Hong Hu et al. [https://ieeexplore.ieee.org/stamp/stamp.jsp?tp=&arnumber=7546545 Data-Oriented Programming: On the Expressiveness of Non-Control Data Attacks] IEEE 2016年</ref>{{efn|セキュリティ以外の文脈におけるデータ指向プログラミング、データ指向設計、データ駆動型設計とは異なる。}}という手法も存在します。 C++向けでは仮想関数テーブル (vtable) を改ざんして攻撃に使える仮想関数(仮想関数ガジェット、vfgadget)を呼び出す「偽造オブジェクト指向プログラミング」(COOP) という攻撃手法も登場しています。 === メモリ安全性の高いソフトウェアへ === 既存のソフトウェアの脆弱性は7割がメモリ安全性の問題に起因すると言われています<ref>[https://www.cisa.gov/sites/default/files/2023-12/CSAC_TAC_Recommendations-Memory-Safety_Final_20231205_508.pdf REPORT TO THE CISA DIRECTOR Technical Advisory Council Memory Safety] サイバーセキュリティ諮問委員会 (CSAC) 2023年12月5日</ref>。しかしながら[[C言語]]や[[C++]]はメモリ安全性が低いため、メモリ安全性の確保できる[[Rust]]などで書かれた代替プログラムが登場しています: {| class="wikitable" |+ コマンドのRust版 |- ! コマンドの概要 !! 従来版 !! Rust版 |- | Unix系の基本コマンド群 || GNU Core Utilities || '''uutils coreutils''' |- | ファイル検索コマンド群{{efn|<code>find</code>、<code>locate</code>、<code>updatedb</code>、<code>xargs</code>の4コマンド}} || GNU Findutils || '''uutils findutils''' |- | ファイル差分コマンド群{{efn|<code>diff</code>、<code>cmp</code>、<code>diff3</code>、<code>sdiff</code>の4コマンド}} || GNU Diffutils || '''uutils diffutils''' |- | ストリームエディタ (sed) || GNU sed / FreeBSD sed || '''uutils sed''' |- | AWKスクリプト || GNU AWK || '''uutils AWK''' |- | 文字列検索 || GNU Grep || '''uutils Grep''' |- | tarアーカイブ || GNU Tar || '''uutils tar''' |- | アカウント管理コマンド群 || shadow-utils || '''uutils shadow-utils''' |- | アクセス制御コマンド群{{efn|<code>chacl</code>、<code>getfacl</code>、<code>setfacl</code>の3コマンド}} || acl || '''uutils acl''' |- | procfs{{efn|プロセスファイルシステム}}表示コマンド群 || procps / procps-ng || '''uutils procps''' |- | ホスト名管理コマンド群{{efn|<code>hostname</code>、<code>dnsdomainname</code>、<code>domainname</code>、<code>nisdomainname</code>、<code>ypdomainname</code>の5コマンド。}} || hostname || '''uutils hostname''' |- | Linuxユーティリティ || util-linux || '''uutils util-linux''' |- | 権限昇格 || sudo || '''sudo-rs''' |- | 暗号・署名システム || GnuPG || '''Sequoia PGP''' |- | 時刻同期 || ntpd || '''ntpd-rs''' |- | セキュアシェル (SSH) || OpenSSH || '''russh''' |} これらのRustで書かれたコマンドのうちuutils coreutilsとsudo-rsはUbuntuに採用されています。 またライブラリでもRustだけ (Pure Rust) で実装されたものが登場しています: * 画像ライブラリ - これらは例えばGNOMEデスクトップ環境の画像ローダーGlycinから使われています<ref>[https://gitlab.gnome.org/GNOME/glycin GNOME / glycin · GitLab] GNOME Project</ref>。 ** libpng → pngクレート - PNG画像向け。 ** libgif → gifクレート - GIF画像向け。 ** libjpeg / libjpeg-turbo → zune-jpeg / libjpeg-turbo-rs - JPEG画像向け。 ** OpenJPEG → hayro-jpeg2000 - JPEG 2000画像向け。 ** libtiff → tiffクレート - Tiff画像向け ** libwebp → image-webpクレート - WebP画像向け。 ** libraw → libopenraw - RAW画像向け。 ** librsvg - SVG画像向け。C言語からRustに書き直しされました。 * 圧縮ライブラリ ** zlib / zlib-ng → zlib-rs - Deflate圧縮向け ** libbzip2 → bzip2-rs - BZ2圧縮向け * 暗号化ライブラリ ** OpenSSL / GnuTLS → [[:w:en:Rustls|Rustls]] * Unicode処理ライブラリ ** ICU4C → ICU4X * テキスト整形ライブラリ ** HarfBuzz → HarfRust * ブラウザエンジン ** Blink/Gecko → Servo <!-- === 整合性チェック === PatchGuard / HyperGuard --> == 不審な改変が行われていないかを調べる == 例えばOSの起動には一連のシーケンスがありますが、マルウェアは基本的にここの途中に入り込んで永続化します。 {| class="wikitable" |+ 起動シーケンス |- ! 種類 || Windows 11以降 !! Linux (Gnome) !! Linux (KDE) |- | 1. 起動ファームウェア || [[:w:Unified Extensible Firmware Interface|UEFI]] || colspan=2 | [[:w:Basic Input/Output System|レガシーBIOS]] / UEFI |- | 2. ブートローダー || [[:w:Windows Boot Manager|Windows Boot Manager]] (bootmgfw.efi)<br> → [[:w:Windows Boot Manager#winload.exe/winload.efi|Windows OS Loader]] (winload.efi) || colspan=2 | GRUB{{efn|Ubuntuの標準。}} / systemd-boot / Unified Kernel Image{{efn|Linuxカーネルとブートイメージを単一バイナリにする仕組み。}} / EFI boot stub{{efn|LinuxカーネルをEFIから直接ブートできるようにする仕組み。}} |- | 3. カーネル || [[:w:ntoskrnl.exe|ntoskrnl.exe]] || colspan=2 | Linuxカーネル ([[:w:vmlinux|vmlinux]]{{efn|圧縮後はvmlinuzとなる。}}) |- | 4. 初期化プロセス || [[:w:en:Session Manager Subsystem|smss.exe]]<br> → wininit.exe<br> || rowspan=2 colspan=2 | [[:w:systemd|systemd]]{{efn|以前は代替initもよく使われていたが、今はsystemdが標準となっている。}} |- | 5. サービスコントロールマネージャ || colspan=2 | [[:w:en:Service Control Manager|services.exe]] |- | rowspan=2 | 6. ログインマネージャ || rowspan=2 | [[:w:Winlogon|winlogon.exe]] || colspan=2 | systemd-logind<br>sd-pam |- | [[:w:GNOME ディスプレイマネージャー|GDM]] || [[:w:Simple Desktop Display Manager|SDDM]] |- | rowspan=2 | 7. ユーザー初期化プロセス || rowspan=2 | userinit.exe || colspan=2 | systemd |- | gnome-session || kcminit<br> → plasma_session |- | 8. シェル || [[:w:Windows Explorer|explorer.exe]] || gnome-shell || plasmashell |- | 9. コンポジタ || [[:w:Desktop Window Manager|dwm.exe]] || mutter || kwin |} また起動シーケンス以外にもアップデートシーケンスへの感染やシェル感染、ブラウザ感染もあります。 {| class="wikitable" |+ Windows における代表的なユーザースクリプト又はコマンド起動が可能な設定ファイル |- ! 規格/アプリケーション !! ユーザー !! システム |- | Windows || %APPDATA%\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows\<wbr>Start Menu\<wbr>Programs\<wbr>Startup\<wbr>* || C:\<wbr>ProgramData\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows\<wbr>Start Menu\<wbr>Programs\<wbr>Startup\<wbr>* |- | [[:w:PowerShell|PowerShell]] プロファイル<ref>[https://learn.microsoft.com/ja-jp/powershell/module/microsoft.powershell.core/about/about_profiles?view=powershell-7.6 about_Profiles - PowerShell - Microsoft Learn] Microsoft</ref> || %USERPROFILE%\<wbr>Documents\<wbr>PowerShell\<wbr>Profile.ps1<br>%USERPROFILE%\<wbr>Documents\<wbr>PowerShell\<wbr>Microsoft.PowerShell_profile.ps1 || C:\<wbr>Windows\<wbr>System32\<wbr>WindowsPowerShell\<wbr>*\<wbr>Profile.ps1<br>C:\<wbr>Windows\<wbr>System32\<wbr>WindowsPowerShell\<wbr>*\<wbr>Microsoft.PowerShell_profile.ps1 |} {| class="wikitable" |+ Linux における代表的なユーザースクリプト又はコマンド起動が可能な設定ファイル |- ! 規格/アプリケーション !! ユーザー !! システム |- | POSIX標準 || ~/.profile || /etc/profile |- | XDG Base Directory<wbr>標準 || ~/.local/bin/* || |- | FHS{{efn|Filesystem Hierarchy Standard}}<wbr>標準[https://refspecs.linuxfoundation.org/fhs.shtml] || || /bin/* /sbin/* /usr/bin/* /usr/local/bin/* /etc/inittab |- | LSB{{efn|Linux Standard Base}}<wbr>標準[https://refspecs.linuxfoundation.org/lsb.shtml] || || /etc/profile.d/* /etc/init.d/* /etc/cron.d/* |- | Desktop Application Autostart Specification<wbr>標準[https://specifications.freedesktop.org/autostart/latest/]{{efn|systemd-xdg-autostart-generator が導入されているシステムではこれらがsystemd設定に自動変換される。}} || ~/.config/autostart/* || /etc/xdg/autostart/* |- | Bash || ~/.bash_profile ~/.bashrc || /etc/bash_profile /etc/bash.bashrc /etc/bash.bash_logout |- | Z shell (Zsh) || ~/.zshenv ~/.zprofile ~/.zshrc ~/.zlogin ~/.zlogout || /etc/zshenv /etc/zprofile /etc/zshrc /etc/zlogin /etc/zlogout<br/>(または /etc/zsh/zshenv /etc/zsh/zprofile /etc/zsh/zshrc /etc/zsh/zlogin /etc/zsh/zlogout) |- | Systemd || ~/.config/systemd/user/* || /etc/systemd/system/* /etc/systemd/user/* |- | Xorg || ~/.xinitrc ~/.xserverrc ~/.xsession || /etc/X11/xinit/xinitrc /etc/X11/xinit/xserverrc /etc/X11/Xsession /usr/share/xsessions/* |- | Wayland || || /usr/share/wayland-sessions/* |- | Python || ~/.local/lib/python*/site-packages/*/**{{efn|絶対パスは<code>python3 -c 'import site; print(site.getusersitepackages())'</code>で確認可能。}} || /usr/lib/python*/dist-packages/*/** /usr/local/lib/python*/dist-packages/*/**{{efn|絶対パスは<code>python3 -c 'import site; print(site.getsitepackages())'</code>で確認可能。}} |- | Perl{{efn|Debian/UbuntuではDebianパッケージ設定システム (debconf) のためにPerlを使用している。}} || || /usr/share/perl*/** /usr/local/share/perl*/** /usr/lib/*/perl*/** /usr/local/lib/*/perl*/**{{efn|絶対パスは<code>perl -V:installsitearch -V:installsitelib -V:installvendorarch -V:installvendorlib -V:archlib -V:privlib -V:installarchlib -V:installprivlib</code>で確認可能。}} |} === パッケージ管理ファイルを検証する === パッケージ管理システムが管理しているファイルではファイルハッシュが保存されているため簡単にその検証を行うことが可能です: {| class="wikitable" |- ! OS / パッケージシステム !! 検証のみ !! 修復 |- | Windows || <code>sfc&nbsp;/verifyonly</code> || <code>sfc&nbsp;/scannow</code> |- | Debパッケージ (Debian / Ubuntu) || <code>debsums -s</code> || <code>apt install --reinstall $(debsums -cs &verbar; xargs -r dpkg-query -S &verbar; cut -d: -f1 &verbar; sort -u)</code> |- | RPMパッケージ (RedHat / Fedora) || <code>rpm -Va</code> || |} ただしローカルハッシュが改ざんされている可能性もあるため過信はできません。<!--TODO: ローカルハッシュの検証法--> 自動的にシステムの検証を行うシステムも存在します: * Android - ブロックデバイスレベルでのハッシュ検証 (dm-verityベース)<ref>[https://source.android.com/docs/security/features/verifiedboot/dm-verity?hl=ja dm-verity の実装] Google</ref> <!-- またUbuntuのSnapパッケージでもdm-verityの導入が進められています。 また特定言語のパッケージの検証は以下で可能です: * PIP (Python): なし --> === システム領域に不審なファイルが追加されていないかを調べる === システムの追加ファイルの検知にはパッケージシステムで管理されていないファイルの一覧を返す以下のようなツールが存在します: * Debian / Ubuntu(Debパッケージ)向け: cruft-ngパッケージ(<code>cruft</code>コマンド) 上記の<code>cruft</code>コマンドでは設定ファイルだけ残っているパッケージのファイルも出てきてしまいます。そのため、これが邪魔な時は設定ファイルだけ残っているパッケージを<code>sudo apt purge '~c'</code>で削除しましょう。 またaptレポジトリに無いインストールされたパッケージは<code>apt list '?obsolete'</code>で、手動 (manual) でインストールされたパッケージは<code>apt-mark showmanual</code>で確認できます。これらのコマンドを実行してインストールした覚えないパッケージが入ってないかをチェックしましょう。GUI が使えるのであれば<code>synaptic</code>を起動して「インストール済(ローカルまたは廃止)」と「インストール済(手動)」を確認するのもオススメです。 === ユーザー領域に不審なファイルが追加されていないかを調べる === ユーザースクリプトの書き換えや追加は検知が難しいです。<!--TODO: 良い方法を書く--> 共有ライブラリやスクリプトによるプラグイン追加も可能となっているため、こちらにも気をつけなければいけません。これには例えば以下があります: {| class="wikitable" |+ 代表的なユーザースクリプトや拡張機能のディレクトリパス |- ! 種類 !! Windowsのパス !! macOSのパス !! Linuxのパス |- | Google Chrome 拡張機能 || %LOCALAPPDATA%\Google\Chrome\User Data\*\Extensions\ || ~/Library/Application Support/Google/Chrome/*/Extensions/ || ~/.config/google-chrome/*/Extensions/ |- | GIMPプラグイン<ref>[https://gimp.cc/faq/add-gimp-plugins.html How to Install GIMP Plugins - Detailed Guide with Troubleshooting] GIMP.cc</ref> || %APPDATA%\GIMP\*\plug-ins\ || ~/Library/Application Support/GIMP/*/plug-ins/ || ~/.config/GIMP/*/plug-ins/ |- | Blenderスクリプト{{efn|起動スクリプト、アドオンを含む。}}<ref>[https://docs.blender.org/manual/ja/dev/advanced/blender_directory_layout.html Blender&#39;s Directory Layout] Blender Foundation</ref> || %APPDATA%\Blender Foundation\Blender\*\scripts\ || ~/Library/Application Support/Blender/*/scripts/ || ~/.config/blender/*/scripts/ |- | Ardourスクリプト<ref>[https://manual.ardour.org/lua-scripting/ The Ardour Manual - Lua Scripting] Ardour</ref> || %LOCALAPPDATA%\ardour*\scripts\ || ~/Library/Preferences/Ardour*/scripts/ || ~/.config/ardour*/scripts/ |- | LibreOfficeスクリプト || %APPDATA%\LibreOffice\*\user\Scripts\ || ~/Library/Application Support/LibreOffice/*/user/Scripts/ || ~/.config/libreoffice/*/user/Scripts/ |- | Visual Studio Code 拡張機能<ref>[https://code.visualstudio.com/docs/configure/extensions/extension-marketplace Extension Marketplace] Microsoft</ref> || %USERPROFILE%\.vscode\extensions\ || ~/.vscode/extensions/ || ~/.vscode/extensions/ |} === 改変・追加されたファイルが危険かを調べる === 実行ファイルやスクリプトはLinuxでは以下で検出できます: <syntaxhighlight lang="shell-session"> # cat filelist.txt | xargs file | grep -i -E ':.*(executable|shared object|relocatable|script)' /etc/init.d/binfmt-support.dpkg-new: POSIX shell script, ASCII text executable /etc/update-motd.d/99-livepatch-kernel-upgrade-required: POSIX shell script, ASCII text executable /usr/lib/chromium-browser/plugins/libpepflashplayer.so: ELF 64-bit LSB shared object, x86-64, version 1 (SYSV), dynamically linked, BuildID[sha1]=5c421e89a5c062a2106a5a4381dc38e779a22795, stripped </syntaxhighlight> またClamAVを導入していれば以下でマルウェアデータベースとの照合を行うことができます: <syntaxhighlight lang="shell-session"> # cat filelist.txt | xargs clamscan Loading: 3s, ETA: 0s [========================>] 3.63M/3.63M sigs Compiling: 1s, ETA: 0s [========================>] 41/41 tasks /etc/apt/apt.conf.d/00trustcdrom: OK /etc/apt/auth.conf.d/90ubuntu-advantage: OK /etc/apt/keyrings/google.asc: OK [...] ----------- SCAN SUMMARY ----------- Known viruses: 3628164 Engine version: 1.5.4 Scanned directories: 125 Scanned files: 1919 Infected files: 0 Total errors: 10 Data scanned: 247.72 MiB Data read: 281.17 MiB (ratio 0.88:1) Time: 17.939 sec (0 m 17 s) Start Date: 2026:10:11 05:41:30 End Date: 2026:10:11 05:41:48 </syntaxhighlight> === 設定データベースを検証する === 設定データベースは Windows ではレジストリ、Linuxでは GNOME / MATEの 使う [[:en:dconf|dconf]] が存在します。 Windows の設定データベースはレジストリと呼び「レジストリエディタ」 (<code>regedit</code>) で表示できます。 {| class="wikitable" |+ Windows における代表的なユーザースクリプト、コマンド起動、DLL呼び出しが可能なレジストリ |- ! 規格/アプリケーション !! 各ユーザー !! 全ユーザー |- | Windows || HKEY_USERS\<wbr>*\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows\<wbr>CurrentVersion\<wbr>Run\<wbr>*<wbr>CurrentVersion\<wbr>Run\<wbr>*<br>HKEY_USERS\<wbr>*\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows\<wbr>CurrentVersion\<wbr>RunOnce\<wbr>*{{efn|name="runonce"|RunOnceは一度のみ実行だが再登録することで何回でも実行可能。}} || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows\<wbr>CurrentVersion\<wbr>Run\<wbr>*<br>HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows\<wbr>CurrentVersion\<wbr>RunOnce\<wbr>*{{efn|name="runonce"}} |- | [[:w:en:Security Account Manager|Security Account Manager]] || || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>SAM\<wbr>SAM\<wbr>Domains\<wbr>Account\<wbr>Users\<wbr>*\<wbr>V{{efn|name="sam"|'HKEY_LOCAL_MACHINE\SAM\SAM\' 以下はレジストリエディタの右クリックの「アクセス許可」で Administrators にアクセス許可を与えないと読めない。なおファイルパスは「C:\Windows\System32\config\SAM」。}}{{efn|Vはバイナリであり、0xCC + (0x60 に指定されたオフセット) からユーザーログオンスクリプトパスを指定する<ref name="sam-ghost">Sebastián R. Castro et al. [https://dl.acm.org/doi/pdf/10.1145/3689934.3690839 Ghost in the SAM: Stealthy, Robust, and Privileged Persistence through Invisible Accounts] ACM 2024年</ref>。}} |- | [[:w:en:Local Security Authority Subsystem Service|Local Security Authority Subsystem Service]] || || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>System\<wbr>CurrentControlSet\<wbr>Control\<wbr>LSA\<wbr>Notification Packages<br>HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>SYSTEM\<wbr>CurrentControlSet\<wbr>Control\<wbr>LSA\<wbr>Authentication Packages<ref>[https://attack.mitre.org/detectionstrategies/DET0207/ Detect LSA Authentication Package Persistence via Registry and LSASS DLL Load] MITRE Corporation</ref> |- | [[:w:en:Active Setup|Active Setup]]<ref>[https://www.advancedinstaller.com/application-packaging-training/msi/ebook/active-setup.html Active-Setup Mechanism] Advanced Installer</ref> || HKEY_USERS\<wbr>*\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Active Setup\<wbr>Installed Components\<wbr>*\<wbr>StubPath || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Active Setup\<wbr>Installed Components\<wbr>*\<wbr>StubPath<ref>[https://attack.mitre.org/techniques/T1547/014/ Boot or Logon Autostart Execution: Active Setup] MITRE Corporation</ref> |- | [[:w:Windowsサービス|Windowsサービス]]<ref>[https://learn.microsoft.com/ja-jp/windows-hardware/drivers/install/hklm-system-currentcontrolset-services-registry-tree HKLM\SYSTEM\CurrentControlSet\Services レジストリ ツリー - Windows drivers - Microsoft Learn] Microsoft</ref> || || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>SYSTEM\<wbr>CurrentControlSet\<wbr>services\<wbr>* |- | [[:w:Winlogon|Winlogon]] || || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows NT\<wbr>CurrentVersion\<wbr>Winlogon\<wbr>Shell<br>HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows NT\<wbr>CurrentVersion\<wbr>Winlogon\<wbr>Userinit<br>HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows NT\<wbr>CurrentVersion\<wbr>Winlogon\<wbr>Notify<ref>[https://attack.mitre.org/techniques/T1547/004/ Boot or Logon Autostart Execution: Winlogon Helper DLL] MITRE Corporation</ref> |- | [[:w:cmd.exe|cmd.exe]]<ref>[https://learn.microsoft.com/en-us/windows-server/administration/windows-commands/cmd cmd - Microsoft Learn] Microsoft</ref> || HKEY_USERS\<wbr>*\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Command Processor\<wbr>AutoRun\REG_EXPAND_SZ || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Command Processor\<wbr>AutoRun\<wbr>REG_SZ |- | [[Microsoft Edge]] || || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>SOFTWARE\<wbr>Policies\<wbr>Microsoft\<wbr>Edge\<wbr>ExtensionInstallForcelist<ref>[https://learn.microsoft.com/ja-jp/deployedge/microsoft-edge-policies/extensioninstallforcelist Microsoft Edge ブラウザー ポリシードキュメント ExtensionInstallForcelist - Microsoft Learn] Microsoft</ref>{{efn|name="silent-install"|自動的にサイレントインストールする}} |- | [[Google Chrome]] || || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>SOFTWARE\<wbr>Policies\<wbr>Google\<wbr>Chrome\<wbr>ExtensionInstallForcelist<ref>[https://chromeenterprise.google/intl/ja_jp/policies/extension-install-forcelist/ ExtensionInstallForcelist: 自動インストールするアプリと拡張機能のリストの設定 - Chrome Enterprise] Google</ref>{{efn|name="silent-install"}} |} Linux の GNOME / MATE 環境には「[[:w:en:Dconf#dconf database|dconf データベース]]」が存在し、それは<code>dconf dump</code>('/'区切り)で表示できます。また dconf データベースにスキーマ(規定値と解説)を被せた gsettings も存在し、こちらは<code>gsettings list-recursively</code>(dconfと異なり'.'区切り)で表示できます。 {| class="wikitable" |+ Linux における代表的なユーザースクリプト又はコマンド起動が可能なdconf設定 |- ! 規格/アプリケーション !! ユーザー |- | GNOME Settings Daemon || /org/gnome/settings-daemon/plugins/media-keys/custom-keybindings/custom*/command |- | Marco ([[w:MATE (デスクトップ環境)|MATE]]) || /org/mate/Marco/keybinding-commands/command-*{{efn|変更した設定は<code>dconf dump /org/mate/Marco/keybinding-commands/</code>で、デフォルトも含めた設定は<code>gsettings list-recursively org.mate.Marco.keybinding-commands</code>で表示可能。}} |- | MATE Screensaver || /org/mate/screensaver/embedded-keyboard-command<br>/org/mate/screensaver/logout-command{{efn|変更した設定は<code>dconf dump /org/mate/screensaver/</code>、デフォルトも含めた設定は<code>gsettings list-recursively org.mate.screensaver</code> で表示可能}} |- | mate-applets || /org/mate/panel/objects/object-*/prefs/command |- | mate-sensors-applet || /org/mate/panel/objects/object-*/prefs/*/high-alarm-command<br>/org/mate/panel/objects/object-*/prefs/*/low-alarm-command |} なお MATE Screensaver と同源の GNOME Screensaver にも /org/gnome/desktop/screensaver/embedded-keyboard-command と /org/gnome/desktop/screensaver/logout-command{{efn|変更した設定は<code>dconf dump /org/gnome/desktop/screensaver/</code>、デフォルトも含めた設定は<code>gsettings list-recursively org.gnome.desktop.screensaver</code> で表示可能。}} が存在しますが、こちらは既に廃止されており指定しても無視されます<ref>[https://github.com/GNOME/gsettings-desktop-schemas/blob/main/schemas/org.gnome.desktop.screensaver.gschema.xml.in gsettings-desktop-schemas/schemas/org.gnome.desktop.screensaver.gschema.xml.in at main · GNOME/gsettings-desktop-schemas] GNOME Project</ref>。 === メディアに不審なファイルが追加されていないかを調べる === メディアの自動実行 ([[:w:en:AutoRun|AutoRun]]) ファイルにもマルウェアが紛れてないか注意しましょう。 {| class="wikitable" |+ メディアの自動実行ファイル |- ! Windows !! Linux<br>(Desktop Application Autostart Specification<wbr>標準[https://specifications.freedesktop.org/autostart/latest/]) |- | *:\[[:w:autorun.inf|autorun.inf]] || /media/*/*/.autorun<br>/media/*/*/autorun<br>/media/*/*/autorun.sh<br>/run/media/*/*/.autorun<br>/run/media/*/*/autorun<br>/run/media/*/*/autorun.sh |} == 改変を防ぐ == 改変を探すのは大変です。なので最初から改変をできないようにすれば管理はとても楽になります。 改ざんを防ぐには「[[:w:en:Chain of trust|信頼の連鎖]]」 (chain of trust) が重要となります。例えばカーネルだけで改ざんを防いでも、ハードウェアのファームウェアが不正であれば不正なカーネルを起動できてしまいます。 === ファームウェア改ざんを防ぐ === ファームウェア改ざんによる「ファームウェアルートキット」を防ぐにはIntel Management Engine (Intel ME)で実装されているIntel BIOS Guardを使う必要があります。<!--TODO: マザーボードによってはBIOSで有効にする必要があります。→最近のマザーボード事情--> なお2017年の第8世代Intel Coreプロセッサ (Coffee Lake) 以前はme_cleanerによってIntel Management Engineの無効化が可能<ref>[https://github.com/corna/me_cleaner/wiki/me_cleaner-status me_cleaner status] Nicola Corna 2018年</ref>なため非推奨です。 また2023年のIntel ME 16.1.30.2307未満では悪意あるロゴ画像を設定することによってroot権限からUEFI設定の変更が可能です([[:w:en:LogoFAIL|LogoFAIL]]の脆弱性)。そのため、古いIntel Management Engineが動作している場合はそのファームウェアをアップデートしましょう。Windowsでは MEUpdateTool.exe / FWUpdLcl.exe を使うことでこのアップデートが可能となっています。一方、Linuxでは一部機種が fwupdmgr 経由での Intel ME ファームウェアアップデートに対応しています。 Intel MEのバージョンはLinuxでは以下のような感じに調べることができます: <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ cat /sys/class/mei/mei0/fw_ver 0:16.1.32.2473 0:16.1.32.2473 0:16.1.27.2181 </syntaxhighlight> === ブートローダー改ざんを防ぐ === ブートローダーは起動に使われるファームウェア (BIOS) から呼ばれ、カーネルを読み込んで起動するために使われるプログラムです。古い BIOS (レガシーBIOS) には起動するブートローダーを検証する仕組みが存在しませんでしたが、新しい UEFI (統一拡張ファームウェアインターフェース) には署名されたブートローダーのみを起動する UEFI Secure Boot が追加され、安全なブートローダーの起動を許可するための「承認済み署名データベース」 (Authorized Signature Database、UEFI db) と、脆弱なブートローダーの起動を防ぐための「禁止署名データベース」 (Forbidden Signature Database、UEFI dbx) が用意されています。 UEFI Secure Boot が有効かどうかは以下で確認できます: * Windows PowerShell: <code>Confirm-SecureBootUEFI</code> * Linux: <code>mokutil --sb-state</code> UEFI db と UEFI dbx の内容は以下で確認できます: * Windows PowerShell: <code>Get-SecureBootUEFI -Name db -Decoded</code> / <code>Get-SecureBootUEFI -Name dbx -Decoded</code> * Linux: ** mokutil{{efn|Ubuntu Desktop に標準で含まれている。}}: <code>mokutil --db</code> / <code>mokutil --dbx</code> ** efitools: <code>efi-readvar -v db</code> / <code>efi-readvar -v dbx</code> ブートローダーの署名情報は以下で確認できます: * Windows PowerShell: <code>Get-PfxCertificate</code>{{efn|<code>Get-AuthenticodeSignature</code>はカタログ署名が使われる場合があるため非推奨: https://github.com/PowerShell/PowerShell/issues/23820 。}} * Linux: <code>sbverify --list</code> 例えば Windows PowerShell では以下のような感じです: <syntaxhighlight lang="powershell"> PS C:\WINDOWS\system32> mountvol S: /S; if ($?) { Get-PfxCertificate 'S:\EFI\Microsoft\Boot\bootmgfw.efi'; mountvol S: /D } Thumbprint Subject ---------- ------- FACDE3D80E99AFCC15E08AC5A69BD22785287F79 CN=Microsoft Windows, O=Microsoft Corporation, L=Redmond, S=Washington, C=US </syntaxhighlight> また Ubuntu や Debian では署名されたブートローダー (grub-efi-*-signedパッケージ) と非署名のブートローダー (grub-efi-*-unsignedパッケージ) の両方が用意されており、ブートローダーの正体がどれか、また署名されたブートローダーの署名内容を確認するのは以下のような感じとなります: <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ dpkg -L grub-efi-amd64-signed | grep -i '\.efi' | xargs md5sum # インストールされている署名されたブートローダーのハッシュを表示(grub*は通常版、gcd*は光学ブートメディア向け、grubnet*はネットブート向け) 2bd267fb12bd3b0fe26a9dfb4290868d /usr/lib/grub/x86_64-efi-signed/gcdx64.efi.signed f689e93336a015fa6eb93e1913b13482 /usr/lib/grub/x86_64-efi-signed/grubnetx64.efi.signed b63c7618fb96d52520b42b8cc7b124f0 /usr/lib/grub/x86_64-efi-signed/grubx64.efi.signed $ sudo sh -c "md5sum /boot/efi/EFI/BOOT/*" # 現在のbootloaderがどれを使っているかを確認(署名されたgrubを使用) b63c7618fb96d52520b42b8cc7b124f0 /boot/efi/EFI/BOOT/BOOTX64.EFI $ sudo sbverify --list /boot/efi/EFI/BOOT/BOOTX64.EFI signature 1 image signature issuers: - /C=GB/ST=Isle of Man/L=Douglas/O=Canonical Ltd./CN=Canonical Ltd. Master Certificate Authority image signature certificates: - subject: /C=GB/ST=Isle of Man/O=Canonical Ltd./OU=Secure Boot/CN=Canonical Ltd. Secure Boot Signing (2022 v1) issuer: /C=GB/ST=Isle of Man/L=Douglas/O=Canonical Ltd./CN=Canonical Ltd. Master Certificate Authority $ sudo sbverify --cert /usr/share/grub/canonical-uefi-ca.crt /boot/efi/EFI/BOOT/BOOTX64.EFI Signature verification OK </syntaxhighlight> なお Linux では grub の代わりに使えるブートローダーとして systemd-boot もあります。systemd-boot の署名版は Debian が systemd-boot-efi-*-signed パッケージとして用意しているようです(Ubuntu未搭載)。 <!--TODO: TPM (Trusted Platform Module) チップ --> === カーネル本体の改ざんを防ぐ === カーネルはオペレーティングシステム (OS) の下層で動き続けるプログラムです。カーネル本体の実行ファイルもブートローダーと同様に署名が行われており、UEFI Secure Boot が有効であればその検証をブートローダーが行います。Linux では GRUB の UEFI Secure Boot と shim_lock の連携がそれに相当します<ref>[https://www.gnu.org/software/grub/manual/grub/grub.html#UEFI-secure-boot-and-shim GNU GRUB Manual 2.14 - 19.4 UEFI secure boot and shim support] フリーソフトウェア財団</ref>。 なお Ubuntu には署名されたカーネル (linux-image-*パッケージ) と非署名のカーネル (linux-image-unsigned-*パッケージ) の両方が用意されており、署名されているカーネルは以下のような感じでその署名が確認できます: <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ sudo sbverify --list /boot/vmlinuz-$(uname -r) # Linuxカーネル本体の署名を確認する signature 1 image signature issuers: - /C=GB/ST=Isle of Man/L=Douglas/O=Canonical Ltd./CN=Canonical Ltd. Master Certificate Authority image signature certificates: - subject: /C=GB/ST=Isle of Man/O=Canonical Ltd./OU=Secure Boot/CN=Canonical Ltd. Secure Boot Signing (2022 v1) issuer: /C=GB/ST=Isle of Man/L=Douglas/O=Canonical Ltd./CN=Canonical Ltd. Master Certificate Authority $ sudo sbverify --cert /usr/share/grub/canonical-uefi-ca.crt /boot/vmlinuz-$(uname -r) # Linuxカーネル本体の署名を検証する Signature verification OK </syntaxhighlight> === カーネルモジュールの改ざんを防ぐ === カーネルモジュールも署名されており、その検証をカーネルが行っています。Windowsカーネルでは ci.dll (Code Integrityモジュール)が、Linuxカーネルでは CONFIG_MODULE_SIG コンパイルオプションがその検証を行っています。 カーネルによるカーネルモジュールの検証が有効かどうかは以下で確認することができます: * Linux: <code>grep 'CONFIG_MODULE_SIG=' /boot/config-$(uname -r)</code> カーネルによるカーネルモジュールの検証で読み込みを弾くかどうかは以下で確認することができます: * Windows: 強制モードか評価モード (監査モード) かを確認する PowerShell スクリプトが Microsoft のサイトに存在します: https://support.microsoft.com/en-us/windows/hardware/drivers/the-windows-driver-policy#is-my-device-in-evaluation-mode-or-enforcement-mode * Linux: <code>cat /sys/module/module/parameters/sig_enforce</code> また Linux では検証で読み込みを弾かない場合でも検証外カーネルモジュールを読み込んだ場合はdmesgに警告が出て '''Tainted kernel''' 扱いとなります<ref>[https://docs.kernel.org/admin-guide/tainted-kernels.html Tainted kernels] Linux Foundation</ref>。以下はその例です: <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ grep 'CONFIG_MODULE_SIG=' /boot/config-$(uname -r) # y=Yes, n=No CONFIG_MODULE_SIG=y $ cat /sys/module/module/parameters/sig_enforce # Y=Yes, N=No N $ sudo dmesg | grep 'module verification' [ 8.928361] nvidia: module verification failed: signature and/or required key missing - tainting kernel $ wget http://git.kernel.org/pub/scm/linux/kernel/git/torvalds/linux.git/plain/tools/debugging/kernel-chktaint [...] $ sudo sh ./kernel-chktaint Kernel is "tainted" for the following reasons: * externally-built ('out-of-tree') module was loaded (#12) * unsigned module was loaded (#13) Raw taint value as int/string: 12288/'G OE ' Tainted modules: * nvidia (OE) * nvidia_drm (OE) * nvidia_modeset (OE) * nvidia_uvm (OE) For a more detailed explanation of the various taint flags see Documentation/admin-guide/tainted-kernels.rst in the Linux kernel sources or https://kernel.org/doc/html/latest/admin-guide/tainted-kernels.html </syntaxhighlight> また Linux では以下のような感じで個々のモジュールの署名が確認できます: <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ modinfo /lib/modules/$(uname -r)/kernel/arch/x86/kernel/msr.ko.zst filename: /lib/modules/7.0.0-38-generic/kernel/arch/x86/kernel/msr.ko.zst license: GPL description: x86 generic MSR driver author: H. Peter Anvin <hpa@zytor.com> srcversion: 639B995855A3528050FD532 depends: intree: Y name: msr retpoline: Y vermagic: 7.0.0-38-generic SMP preempt mod_unload modversions sig_id: PKCS#7 signer: Build time autogenerated kernel key sig_key: 3B:E7:D3:BF:D3:2E:D9:CA:9C:17:D2:E9:5F:1A:1C:AE:67:D5:82:2F sig_hashalgo: sha512 signature: 96:BC:2A:18:6E:4D:D8:E5:28:69:9D:E6:65:89:95:D4:BE:4C:5B:7C: 4A:23:11:75:F6:FE:63:79:FC:29:9B:F7:EA:24:B6:F1:EF:F3:80:17: 0B:C0:1E:46:61:29:BB:F9:E0:AC:81:69:85:73:7D:D4:77:82:A8:DB: [...] </syntaxhighlight> === システムファイル改ざんを防ぐ === システムファイル改ざんを防ぐ良い方法はシステム領域を読み取り専用にすることですが、仮にファイルシステムを読み取り専用のファイルシステム(SquashFSやEROFS)にしたとしても記録する場所がSSDであればブロック単位での上書きが可能となります。 1回だけ書き込めて上書きが不可能な媒体としてはCD-R、DVD-R、DVD+R、BD-Rなどの一部の光学メディアが存在しますが、これらをブートメディアとして使用するのは頻繁なアップデートが難しくなります。 そのほかの手法としては別のコンピュータからシステムファイルを取得する「ネットワークブート」を行うという手法もありますが、これはネットワーク経由でシステムファイルが盗まれる可能性と隣り合わせです。しかしながらプロトコルにUEFI HTTPSを、認証に相互認証のmTLSを用いて、その秘密鍵をTPMで管理してOSから読めなくすることでネットワークブートの安全性は何とか確保できるかもしれません(対応マザーボードは不明)。 一方、Android や ChromeOS ではブロックデバイス単位での改ざん検知 (dm-verify) によってシステムイメージの改ざんを防止しています<ref>[https://source.android.com/docs/security/features/verifiedboot/dm-verity?hl=ja dm-verity の実装] Google</ref><ref>[https://research.google/pubs/verified-boot-on-chrome-os-and-how-to-do-it-yourself/ Verified Boot on Chrome OS and How to do it yourself] Google</ref>。 === カーネルメモリ改ざんを防ぐ === カーネルメモリのコード部分は MMU の書き込み禁止によって保護されています。iOS / macOS では Kernel Integrity Protection が<ref>[https://support.apple.com/ja-jp/guide/security/sec8b776536b/web オペレーティングシステムの整合性] Apple</ref> 、Linux では Kernel Strict RWX がこれに相当します<ref>[https://docs.kernel.org/security/self-protection.html Kernel Self-Protection] Linux Foundation</ref>。Windows でもカーネルモードに読み込み専用メモリセグメントが存在し、これに書き込もうとするとブルースクリーンで ATTEMPTED_WRITE_TO_READONLY_MEMORY (0xBE) が発行されます<ref>[https://learn.microsoft.com/ja-jp/windows-hardware/drivers/debugger/bug-check-0xbe--attempted-write-to-readonly-memory バグ チェック 0xBE: ATTEMPTED_WRITE_TO_READONLY_MEMORY] Microsoft</ref>。しかしながら Linux Kernel では kprobes、Static Keys、Static calls などで自己書き換えが多用されているため、一時的にコード部分を書き込み可能なページに割り当てて書き換える text_poke(...) という抜け道が存在します。 また定期的に改ざんが行われていないかをチェックする仕組みも存在します。Windows では[[:w:Kernel Patch Protection|Kernel Patch Protection]] (PatchGuard) / HyperGuard が、Linux では Linux Kernel Runtime Guard(外部パッチ)がこれに該当します。Windows の PatchGuard では改ざんが検出されたらブルースクリーンで CRITICAL_STRUCTURE_CORRUPTION が発行されます。 <!--TODO: Windows の HVCI、macOS の Secure Page Table Monitor / Trusted Execution Monitor--> <!-- === アプリケーション改ざんを防ぐ === SELinux / AppArmor --> == 攻撃用AIを対策する == 攻撃用AIでは基本的に賢いかつ制限の緩い大規模言語モデル (LLM) が使われています。この代表的な例として GLM 5.3 や Qwen3.8-27B-ABLITERATED が存在します。 === コンテキスト爆弾を設置する === 攻撃用AIの対策では相手のLLMを止めることが重要となります。そこで使えるのが'''コンテキスト爆弾''' (context bombs) という手法です<ref>[https://arstechnica.com/security/2026/07/now-defenders-are-embracing-the-prompt-injection-too/ Now, defenders are embracing the prompt injection, too] Ars Technica 2026年7月14日</ref>。 このコンテキスト爆弾は「相手のLLMに対し応答やツール呼び出しで禁止されていることを行わせようとする」というプロンプトインジェクションの一種であり、それによって相手のガードレールがLLMを止めることで相手からの攻撃を防ぎます。この手法は相手の読みそうなテキストにただプロンプトを書いておけば良いだけなので、お手軽に使えます。 コンテキスト爆弾のテキスト例は以下のリポジトリに存在します: * https://github.com/tracebit-com/context-bombs === ハニーポット === ハニーポットは攻撃者を引きつける役目を担います。ハニーポットの評価フレームワークには「UHBS」(Universal Honeypot Benchmarking Standard) が、その品質基準には「UHQS」(Universal Honeypot Quality Score) が存在しますが、2026年現在多くのハニーポットがFランク〜Dランクと残念な状況になっています<ref>[https://uhbs.github.io/uhbs-standard/mkdocs/conformance/ Overview - UHBS — Honeypot Evaluation Framework]</ref>。 <!-- == 自作コードの脆弱性を塞ぐ == 書きかけ --> == 脚注 == <references group="注釈"/> == 参考文献 == <references/> {{DEFAULTSORT:こんひゆうたせきゆりてい}} [[Category:計算機科学]] [[Category:情報技術]] e15btp65x2ej4rkjezj7b2belsxl9q8 304986 304985 2026-10-21T17:30:39Z ~2026-54076-02 92740 /* TCP/UDP経由のサービス */ 304986 wikitext text/x-wiki '''コンピュータセキュリティ'''はコンピュータの安全のことです。ここではコンピュータの安全を確保することを学びます。 == コンピュータセキュリティの基本 == コンピュータは弱いところから狙われるため、弱いところを無くすのがセキュリティの基本となります。 具体例を挙げましょう。一般的な光回線に繋がれてるホームネットワークを考えます。ここには光回線の先に繋がる上位ネットワークと家内のホームネットワーク (家庭におけるLAN) とを区切るエッジルーター(一般的にはハードウェア・ゲートウェイがこれに該当)が存在します。このホームネットワークに数台の新しいWindows PCと一台の古い機器が繋がっていると仮定します。 新しいWindows PC同士ではホームネットワーク経由でファイルをやり取りするためにファイルの共有 (SMB{{efn|Server Message Block}}) を有効にしているとします。一方、古い機器の方を脆弱性のある古いテレビとしましょう。このテレビはインターネットから繋いで地上デジタル放送を見るための DCTP+ {{efn|Digital Transmission Content Protection +}}が搭載されており、UPnP{{efn|Universal Plug and Play}}で自動的にエッジルーター搭載のファイアーウォールに穴あけてインターネット側から DCTP+ に繋がるようになっているものとします。 この仮定によってハッカーは DCTP+ の脆弱性を使って古いテレビに悪意のあるプログラムを実行させてファイルの共有サーバーを立て{{efn|Windows 11時点でもゲスト認証による接続は許可されている<ref>[https://learn.microsoft.com/en-us/windows-server/storage/file-server/smb-interception-defense?tabs=group-policy Protect SMB traffic from interception] Microsoft</ref>。}}、そこからファイルの共有を通じて新しいWindows PCにマルウェア (例えば<code>PHOTO-<ランダムな数字>.png.lnk</code><ref>[https://www.microsoft.com/en-us/security/blog/2026/06/25/photo-zip-campaign-targeting-hospitality-industry-delivers-node-js-implant-persistent-access/ Photo ZIP campaign targeting hospitality industry delivers Node.js implant for persistent access] Microsoft 2026年6月25日</ref>) を送り込むことが可能となりました。 == 安全にパスワードを使う == === 流出したパスワードと被ってないかをチェックする === あちこちのサイトで流出したパスワードは集められてデータベース化されダークネットに流通しています。この代表的なものには2019年に登場した [[:w:en:Collection No. 1|Collection #1]] が挙げられます。この Collection #1 などの流出パスワードデータベースは辞書攻撃に利用されており、これは「Credential Stuffing攻撃」と呼ばれています。 使うパスワードが流出パスワードデータベースに載っていないかを確認するためには上記のデータベースを手に入れるか、上記のデータベースからk-匿名性で検索を行うオンラインサービスを使うと良いでしょう。 このオンラインサービスの代表的なものにはWebサイト「Have I Been Pwned」の提供する「Pwned Passwords」サービスが存在しますが、このAPIではパスワードのSHA-1ハッシュ先頭5文字を渡すと、流出したパスワードのSHA1ハッシュ6文字以降と流出データベースに載っていた回数が返答されます。 <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ # License: CC0 / Public Domain $ # パスワードを入力してSHA-1ハッシュへと変換する(ここでは'test'と入力) $ sha1=$(read -sp "Password: " pass && echo -n $pass | sha1sum | cut -d' ' -f1) Password: $ # 変換後のハッシュを表示 $ echo $sha1 a94a8fe5ccb19ba61c4c0873d391e987982fbbd3 $ # ハッシュの先頭5文字を渡して6文字目以降を検索(':'の後ろは見つかった数) $ curl -s https://api.pwnedpasswords.com/range/$(echo $sha1 | cut -c 1-5) | grep -i $(echo $sha1 | cut -c 6-) FE5CCB19BA61C4C0873D391E987982FBBD3:1579235 </syntaxhighlight> ハッシュの先頭5文字も渡したくない場合や、自社サービスでチェックを行いたい場合は上記のサービスが公式で提供するツール「haveibeenpwned-downloader」[https://github.com/HaveIBeenPwned/PwnedPasswordsDownloader]で全てのハッシュデータをダウンロードして自前で照合しましょう。 === 解析耐性のある鍵導出関数を使う === パスワードでは計算負荷の低い SHA-256 や SHA-512 などの通常のハッシュ関数、メモリ負荷の低い [[:w:PBKDF2|PBKDF2]] や bcrypt などの古い[[:w:鍵導出関数|鍵導出関数]](パスワードハッシュ関数)を使わないようにしましょう。これらの弱いハッシュ関数は GPU や ASIC で高速に解かれてしまいます。 より強いパスワードハッシュ関数としては yescrypt や Argon2id が存在します。パスワードにはこちらを使いましょう。現代の Linux ではアカウントのパスワードハッシュ関数として yescrypt が標準となっています。 使っている Linux の新規アカウントで使われるパスワードハッシュ関数は以下で確認可能です: <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ grep -n 'pam_unix.so' /etc/pam.d/common-password 26:password [success=2 default=ignore] pam_unix.so obscure use_authtok try_first_pass yescrypt </syntaxhighlight> Linuxの現在のアカウントがどのハッシュ関数を使用しているかは以下で確認可能です: <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ sudo cat /etc/shadow | grep $USER # $(1|5|6|b)$=弱い、$y$=強い user:$y$j9T$ST7oYwlQjFy7/8vnL/Ugt0$po4vW4qgGu8lpUNRtH0B3hDHGZACzcRhzIKhqlx.2Z5:20743:0:99999:7::: </syntaxhighlight> 弱いハッシュ関数を使用している場合は<code>passwd $USER</code>でパスワードを再設定して使用するハッシュ関数を更新してください。 一方、Windows 10 以前のローカルアカウントではパスワードハッシュがレジストリの<code>HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>SAM\<wbr>SAM\<wbr>Domains\<wbr>Account\<wbr>Users\<wbr>(ユーザーID)\<wbr>V</code>{{efn|name="sam"}}のバイナリの以下の場所に存在します: * [[:w:LMハッシュ|LMハッシュ]]: 0xCC + (0x9C に指定されたオフセット)<ref name="sam-ghost"/> * NTLMハッシュ: 0xCC + (0xA8 に指定されたオフセット)<ref name="sam-ghost"/> LMハッシュは [[:w:LAN Manager|LAN Manager]] に使われていた [[:w:Data Encryption Standard|DES]] ベースの古いハッシュ、NTLMハッシュは [[:w:NT LAN Manager|NT LAN Manager]] に使われている [[:w:MD4|MD4]] ベースの古いハッシュであり、どちらも非常に弱いものとなっていました。 また Windows の Active Directory ドメインアカウントのオフライン認証向けキャッシュ済みドメイン資格情報はレジストリの<code>HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>SECURITY\<wbr>Cache</code>に存在します: * DCC1 ハッシュ (MSCache v1): 弱い MD4 ベース。Windows XP以前。 * DCC2 ハッシュ (MSCache v2) : 弱めの PBKDF2-HMAC-SHA1 ベース。Windows Vista以後<ref>[https://attack.mitre.org/techniques/T1003/005/ OS Credential Dumping: Cached Domain Credentials] MITRE 2025年10月24日</ref>。 2021年にリリースされた Windows 11 以降は Microsoft アカウントが必須となっています。 <!--TODO: Windows Hello、LSA Secrets === パスワードの複雑性をチェックする === === TPMで鍵を隔離する === --> == 既製製品の脆弱性を塞ぐ == まずは弱いところを無くしましょう。 === ソフトウェアアップデートをする === セキュリティの基本はソフトウェアアップデートです。 ==== PCおよびモバイル ==== PC{{efn|PCサーバを含む}}やモバイルでは基本的に自動で通知が来るので忘れずにアップデートを選択しましょう。手動では以下のように行います: ; Windows : システムのアップデートは基本的に [[:w:Microsoft Update|Microsoft Update]] (Windows Update) で、アプリケーションのアップデートは基本的に<code>winget upgrade --all</code>コマンドで行います。 : また Windows 11 Enterprise では再起動が不要なホットパッチにも対応しています。 ; macOS / iOS : 「ソフトウェアアップデート」 ; Ubuntu / Debian : [[:w:APT|APT]]パッケージ管理システムでは<code>apt upgrade</code>コマンドで更新を行います。 : Ubuntu では GUI による更新用として[[:w:Software Updater|Software Updater]] (<code>update-manager</code>コマンド)、[[:w:Snap (ソフトウェア)|Snap]]パッケージの更新コマンドとして<code>snap refresh</code>、メジャーバージョンの更新コマンドとして<code>do-release-upgrade</code>も存在します。 : また Ubuntu では Ubuntu Pro に登録することで再起動が不要なカーネル修正の「Livepatch」も可能となります(個人では5台まで無料)。SUSEではユーザー空間ライブパッチングまで提供されています(glibc と openssl のみ)<ref>[https://documentation.suse.com/ja-jp/sles/15-SP6/html/SLES-all/cha-ulp.html ユーザ空間ライブパッチ - 管理ガイド - SLES 15 SP6] SUSE</ref>。 ; RedHat / Fedora : <code>yum update</code>コマンド ; Android : 「設定」アプリ→「システム」→「システムアップデート」または「ソフトウェアアップデート」 また個々のハードウェアのファームウェアアップデートは以下で行います: ; Linux : Linuxにおけるファームウェアの更新は基本的に<code>fwupdmgr update</code>コマンドで行います。 : NVMe SSDのファームウェアの更新は<code>nvme fw-download</code>コマンドおよび<code>nvme fw-commit</code>コマンドで行うことができます。 一方、Windows ではファームウェアのアップデートも Windows Update 経由で<ref>[https://learn.microsoft.com/ja-jp/windows-hardware/drivers/bringup/firmware-update ファームウェアの更新] Microsoft</ref>、macOS ではファームウェアのアップデートもmacOSアップデートで行うことができます<ref>[https://support.apple.com/ja-jp/guide/mac-help/mchlp2609/mac Macのファームウェアアップデートの入手方法] Apple</ref>。 <!-- また開発環境では以下も存在します: ; Python : <code>pip -U install</code> --> ==== ルーター ==== ルーターでは以下の設定を有効のままにしておきましょう: ; AirStationシリーズ(Buffalo 製ルーター) : 「ファームウェア自動更新機能」 ; Atermシリーズ(NEC 製ルーター) : 「メンテナンスバージョンアップ機能」「時刻指定バージョンアップ機能」 ==== テレビ ==== テレビでは放送波アップデートが行われるため、「放送波による自動更新」<!--TODO: メーカー別名-->を有効にしましょう。 === 高速に再起動する === パッケージは更新しただけでは反映されません(一部デーモンの更新を除く)。Linuxでは高速に再起動する方法が存在し、これによってダウンタイムを減らすことができます。 ; 更新で影響を受けるデーモンのみ再起動する :* Ubuntu Server: 標準で <code>needrestart</code> が導入されており自動で影響を受けるデーモンの再起動が行われます{{efn|自動的なデーモン再起動を止めるには /etc/apt/apt.conf.d/99needrestart より<code>-m u</code>を削除する必要があります<ref>[https://discourse.ubuntu.com/t/needrestart-changes-in-ubuntu-24-04-service-restarts/44671 `needrestart` changes in Ubuntu 24.04: service restarts] Canonical 2024年</ref>。}}(Ubuntu Desktopでは別途導入が必要)。 :* RedHat / Fedora: <code>dnf needs-restarting</code>が導入されており、それによって再起動するべきデーモンを確認できます。 ; ユーザー空間のみ再起動する(カーネルの更新がない、またはカーネルでlive patchingを行ってる場合) : <code>sudo systemctl soft-reboot</code> ; 高速にカーネルを更新する(ファームウェアの更新がない場合) : <code>sudo systemctl kexec</code> また一部のソフトウェアではホットアップグレード(無停止アップグレード{{efn|Zero-Downtime Upgrade}})にも対応しています (nginx の USR2 シグナル<ref>[https://nginx.org/en/docs/control.html Controlling nginx] nginx</ref>など)。 === 代替ソフトウェアを探す === 更新が停止された古いソフトウェアの多くはそれ自身に脆弱性が存在したり、脆弱性のある古いライブラリに依存していたりします。そのため古いソフトウェアは速やかに代替ソフトウェアへと移行しましょう。 ==== 開発終了したソフトウェアから現役のソフトウェアへ ==== 古いソフトウェアには例えば以下があります: * オフィススイート(代替候補: LibreOffice) ** [[:w:OpenOffice.org|OpenOffice.org]](〜2011年) * 画像ビューア ** [[:w:Susie|Susie]] (〜2013年) * メディアプレイヤー ** [[:w:QuickTime|QuickTime]] for Windows(〜2016年) - リモートコード実行の脆弱性 ([https://www.zerodayinitiative.com/advisories/ZDI-16-241/ ZDI-16-241]、[https://www.zerodayinitiative.com/advisories/ZDI-16-242/ ZDI-16-242]) を残したままサポート終了しました<ref>[https://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/753400.html Apple、「QuickTime for Windows」のサポートを終了、アンインストールを推奨] Impress 2016年4月15日</ref>。 * メディアフィルター(代替候補: LAV Filters) ** [[:w:ffdshow|ffdshow]](〜2014年) ** [[:w:Haali Media Splitter|Haali Media Splitter]](〜2013年) * メディアセンター(代替候補: Kodi) ** [[:w:en:Boxee|Boxee]](〜2011年) ** [[:w:Kodi|XBMC]](〜2014年) - Kodiの前身 * 圧縮ソフトウェア ** [[:w:+Lhaca|+Lhaca]](〜2007年) ** [[:w:Lhaplus|Lhaplus]](〜2017年) またハードウェアに由来する古いソフトウェアには例えば以下があります: * [[w:ウォークマン|ウォークマン]]関連(代替候補: [[:w:Music Center for PC|Music Center for PC]]) ** [[:w:CONNECT Player|CONNECT Player]](〜2007年、Sony) ** [[:w:SonicStage|SonicStage]](〜2009年、Sony) ** [[:w:x-アプリ|x-アプリ]](〜2016年、Sony) * DTCP-IP関連 ** SmartVision/PLAYER powered by DiXiM(〜2019年、NEC)<ref>[https://support.nec-lavie.jp/navigate/support/info/2019/announce/svp/ SmartVision/PLAYER保守サービス終了のお知らせ] NECパーソナルコンピュータ 2019年1月28日</ref><ref>[https://apps.microsoft.com/detail/9wzdncrdkb4c?hl=ja-JP&gl=JP SmartVision/PLAYER powered by DiXiM] Microsoft</ref> ** DiXiM Digital TV plus for I-O DATA(〜2022年、I-O DATA)<ref>[https://www.iodata.jp/lib/product/d/3533.htm DiXiM Digital TV plus for I-O DATA] I-O DATA</ref> なお仮想マシンを使って隔離しながら古いソフトウェアを動かすこともできますが、仮想マシンでも「VMエスケープ」の脆弱性を使用することでホスト環境への侵害が可能なため、仮想マシンの上で弱い環境や弱いソフトウェアを使うこともなるべく避けましょう。<!--TODO: Windows Sandbox--> ==== 古いバージョンのライブラリを避ける ==== 多くのソフトウェアに使用されているライブラリとその過去の危険な脆弱性には例えば以下があります:<!--危険を認識させる。例はライブラリ内のメイン処理に存在し、任意コード実行であり、脆弱性の存在期間が長く、新しいものが好ましい。--> * 画像ライブラリ ** libpng - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2010-1205 CVE-2010-1205](PNG画像で任意コード実行の可能性) ** libjpeg-turbo - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2012-2806 CVE-2012-2806](JPEG画像で任意コード実行の可能性) ** OpenJPEG - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2025-54874 CVE-2025-54874](JPEG2000画像で任意コード実行の可能性) ** libtiff - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2026-12912 CVE-2026-12912](PixarLog圧縮TIFF画像で任意コード実行の可能性) ** libwebp - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2023-4863 CVE-2023-4863](WebP画像で任意コード実行の可能性) * 動画ライブラリ ** FFmpeg - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2024-22860 CVE-2024-22860](JPEG XLアニメーションで任意コード実行の可能性) * 圧縮ライブラリ ** libarchive - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2026-15028 CVE-2026-15028](tarアーカイブ形式で任意コード実行の可能性) ** zlib - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2002-0059 CVE-2002-0059](Deflate圧縮形式で任意コード実行の可能性) ** bzip2 - [https://access.redhat.com/security/cve/cve-2010-0405 CVE-2010-0405](BZ2圧縮形式で任意コード実行の可能性) これらのライブラリはABI(アプリケーションバイナリインターフェイス)が変更されて新しいバージョンの共有ライブラリにドロップイン置換できないものも多くなっています。 また国内で使われている古いソフトウェアでは開発中止になった以下のライブラリも問題となっています: * UNLHA32.DLL<ref>[https://forest.watch.impress.co.jp/docs/news/372729.html 圧縮・解凍用DLL「UNLHA32.DLL」が開発中止、作者はLZHの利用中止を呼びかけ] Impress 2010年6月7日</ref> Webフレームワークでは開発中止となった以下のフレームワークが問題となっています: * [[:w:Model View Controller|Model View Controller]]フレームワーク(代替候補: [[:w:Apache Struts|Apache Struts]] 2、[[:w:Spring Framework#Model-View-Controller フレームワーク|Spring MVC]]) ** [[:w:en:Apache Struts 1|Apache Struts 1]](〜2008年) - Java言語 * [[:w:アスペクト指向プログラミング|アスペクト指向フレームワーク]](代替候補: [[:w:Spring Framework|Spring Framework]]、[[:w:en:Micronaut (framework)|Micronaut]]) ** [[:w:Seasar|Seasar]](〜2016年) - Java言語 * [[:w:シングルページアプリケーション|シングルページアプリケーション]]フレームワーク(代替候補: [[:w:Angular|Angular]]、[[:w:Vue.js|Vue.js]]) ** [[:w:AngularJS|AngularJS]](〜2022年) - JavaScript === 古いハードウェアに対処する === サポート切れの OS を搭載したハードウェアはどうすれば良いでしょうか。これには使い続けるいくつかの方法がありますが、基本的にオススメしません。古い OS を搭載していたハードウェアはハードウェア仕様も古いからです。 ==== スタンドアロン運用 ==== 古いハードウェアはインターネットに繋がずに使用すること(スタンドアロン運用)も可能です。 しかしながらUSBメモリでデータをやり取りする場合はUSBメモリ経由での感染などのリスクは残ります。 ==== 新しめのLinuxを導入 ==== 新しめのLinuxを導入するという方法もあります。 これに適したものでは例えばWindows 11非対応のPC (Intel 第7世代以前、AMD Ryzen 1000シリーズ以前) が挙げられます。 またスマートフォンやタブレットであればカスタムROMが、ルーターであればDD-WRTやOpenWRTが存在します。 ==== 手放す ==== 手に負えなければデータだけバックアップして手放しましょう。情報が漏れないよう初期化も忘れずに。 == 不要なサービスを止める / 削除する == {| class="wikitable" |+ サービス表示系コマンド |- ! 稼働中のシステムサービスを見る | <code>systemctl --type=service --state=running</code> |- ! 稼働中のユーザーサービスを見る | <code>systemctl --user --type=service --state=running</code> |} === TCP/UDP経由のサービス === TCP/UDPでのポート待ち受けのあるプロセスを見るには <code>sudo ss -tulnp</code> を、通信しているプロセスを見るには <code>sudo lsof -i -P -n</code> を実行しましょう。 {| class="wikitable" |+ 主なポート待ち受けのあるプロセス |- ! ポート !! 機能 !! プロセス名 !! サービス名または起動コマンド !! パッケージ名 (Ubuntu) || 直接問い合せコマンド |- | rowspan=2 | 53/UDP<br>53/TCP || rowspan=2 | DNS(名前解決) || systemd-resolved || systemd-resolved.service || systemd-resolved || <code>dig @127.0.0.53 example.com</code> |- | dnsmasq || dnsmasq.service<br/>dnsmasq@.service || dnsmasq-base<br>dnsmasq || <code>dig @10.208.199.1 example.com</code> |- | rowspan=2 | 5353/UDP || rowspan=2 | [[:w:マルチキャストDNS|マルチキャストDNS]] || systemd-resolved || systemd-resolved.service || systemd-resolved || <code>resolvectl -p mdns query $HOSTNAME.local</code> |- | Avahi || avahi-daemon.service || avahi-daemon || <code>avahi-resolve-host-name $HOSTNAME.local</code> |- | 67/UDP<br>547/UDP || [[:w:DHCP|DHCP]]<br>[[:w:DHCPv6|DHCPv6]] || dnsmasq || dnsmasq.service<br/>dnsmasq@.service || dnsmasq-base<br>dnsmasq || <code>IP=$(ip -4 -o addr show pan1 &vert; grep -oP '(?<=inet )[\d.]+'); sudo dhcping -v -i -s "$IP" -c "$IP"</code>{{efn|Ubuntuではdhcpingパッケージの導入が必要です。}} |- | rowspan=2 | 68/UDP<br>546/UDP || rowspan=2 | DHCPクライアント<br>DHCPv6クライアント{{efn|単独のDHCPクライアントである dhclient、dhcpcd なども存在する。また開発終了になったisc-dhcp-clientも存在した。}} || systemd-networkd<wbr>{{efn|name="network-all"}} || || systemd || |- | NetworkManager<wbr>{{efn|name="network-all"|ネットワーク管理全般を担当しています。}} || NetworkManager.service || network-manager || |- | rowspan=2 | 123/UDP<br>4460/TCP || rowspan=2 | NTP(時刻同期)<br>NTS-KE (NTPの鍵交換){{efn|これらの代替として systemd-timesyncd もありますが、こちらは NTP の代わりに単純な SNTP のみ実装の上、サーバーを持たずクライアント側のみ対応です。}} || ntpd || ntpsec.service || ntpsec || rowspan=2 | <code>ntpdig localhost</code>{{efn|ローカルへのNTP問い合せは<code>ntpdate -q localhost</code>でもできますが、こちらはNTP-KE非対応です。}} |- | chronyd || chrony.service || chrony |- | 80/TCP<br>443/HTTP<br>443/UDP || HTTP<br>HTTPS<br>HTTP/3 (QUIC) || apache2 || apache2.service<br>apache2@.service<br>httpd.service<br>httpd@.service || apache2 || HTTP: <code>curl http://localhost</code><br>HTTPS: <code>curl --http2 https://localhost</code><br>HTTP/3: <code>curl --http3-only https://localhost</code> |- | rowspan=2 | ユーザーポート/UDP || rowspan=2 | HTTP/3 (QUIC) クライアント<br>WebRTCクライアント || chrome{{efn|Google Chrome}} || <code>google-chrome</code> || google-chrome (公式APTリポジトリ) || |- | firefox{{efn|Mozzila Firefox}} || <code>firefox</code> || firefox (snap) || |- | rowspan=2 |21/TCP<br>20/TCP{{efn|アクティブモードのみデータ転送で使われます。}} || rowspan=2 | FTP || proftpd || proftpd.service<br>proftpd@.service || proftpd-core || rowspan=2 | <code>curl ftp://localhost</code> |- | vsftpd || vsftpd.service || vsftpd |- | 22/TCP || SSH / SFTP || sshd || ssh.service<br>sshd@.service || openssh-server || <code>ssh-keyscan 127.0.0.1</code> |- | rowspan=2 | 6881/TCP || rowspan=2 | BitTorrent || qbittorrent || <code>qbittorrent</code> || qbittorrent || |- | ktorrent || <code>ktorrent</code> || ktorrent || |- | rowspan=2 | 51413/TCP || rowspan=2 | Transmission<wbr>{{efn|BitTorrentプロトコル。TransmissionをベースとするFragmentsも同ポートを使用します。}} || transmission-daemon || transmission-daemon.service || transmission-daemon || |- | transmission-gtk || <code>transmission-gtk</code> || transmission-gtk || |- | 5001/TCP<br>5001/UDP || rowspan=2| ネットワークパフォーマンス計測 || iperf || <code>iperf -s</code> || iperf || <code>iperf -c localhost</code> |- | 5021/TCP<br>5021/UDP || iperf3 || <code>iperf3 -s</code> || iperf3 || <code>iperf3 -c localhost</code> |- | 1716/UDP<br>1716/TCP<br>ユーザーポート/UDP || スマートフォン連携 (KDE) || kdeconnectd || <code>kdeconnect-app</code> || kdeconnect || |- | ユーザーポート/TCP || Claude Proxy Service || code{{efn|[[:w:Visual Studio Code|Visual Studio Code]]のプロセス。}} || <code>code</code> || code (公式APTリポジトリ) || <!-- |- | || AI コーディング支援 (Google Antigravity CLI{{efn|Command Line Interface}}) || agy || || (Visal Studio Code拡張) || --> |- | rowspan=2 | 3389/TCP<br>3389/UDP || rowspan=2 | Remote Desktop Protocol || gnome-remote-desktop-daemon{{efn|GNOME Remote Desktop}} || gnome-remote-desktop.service<!-- (system)--><br>gnome-remote-desktop.service (user)<br>gnome-remote-desktop-headless.service (user) || gnome-remote-desktop || |- | krdpserver || app-org.kde.krdpserver.service (user) || krdp || |- | 47984/TCP<br>47989/TCP<br>48010/TCP<br>47998–48010/UDP || NVIDIA GameStream || sunshine || app-dev.<wbr>lizardbyte.<wbr>app.<wbr>Sunshine.service (user) || sunshine (公式debファイル) || (moonlight-qt) |- | 27031-27036/UDP<br>27036/TCP || Steam Remote Play<ref>[https://help.steampowered.com/ja/faqs/view/2EA8-4D75-DA21-31EB Steam接続に必要なポート] Valve</ref> || steam || <code>steam</code> || steam (公式APTリポジトリ) || |- | 1900/UDP || UPnP{{efn|パケットフィルタと共に使用して要求に従ってポートマッピングする。}} || miniupnpd || miniupnpd.service || miniupnpd-nftables<br>miniupnpd-iptables || |} なおUPnPのポートは外側に解放しないようにしましょう。また内側にだけ解放した場合も内側に侵害された機器が存在する場合に危険となるのでVLANでネットワークを分けるなどを心がけましょう。 <!--TODO: CUPS、Postfix、Samba、Wsdd--> === Unix Domain経由のサービス === Unix Domainでのポート待ち受けのあるプロセスを見るには <code>sudo ss -xlp</code> を実行しましょう。 === dbus経由のサービス === システムバスは <code>busctl --system list</code>、セッションバスは <code>busctl --user list</code> で確認することができます。 それらを提供する実行中のプロセスの一覧は以下で取得できます: * システムバスを提供するプロセス: <code>busctl --system --no-pager | awk 'NR>1 && $2 ~ /^[0-9]+$/ {print $2}' | xargs -I {} readlink "/proc/{}/exe" | sort -u</code> * ユーザーバスを提供するプロセス: <code>busctl --user --no-pager | awk 'NR>1 && $2 ~ /^[0-9]+$/ {print $2}' | xargs -I {} readlink "/proc/{}/exe" | sort -u</code> dbusサービスの一部はプロセス未実行のアクティベータブル (activatable) な状態で提供されています。アクティベータブルな状態で提供するサービスの実行コマンドは以下で取得できます: * activatableなシステムバスの実行コマンド: <code>busctl --system --no-pager --activatable | awk '{print $1}' | xargs -I {} find /usr/share/dbus-1 -name "{}.service" | xargs grep -h "Exec=" | sed 's/Exec=//g' | sort -u</code> * activatableなユーザーバスの実行コマンド: <code>busctl --user --no-pager --activatable | awk '{print $1}' | xargs -I {} find /usr/share/dbus-1 -name "{}.service" | xargs grep -h "Exec=" | sed 's/Exec=//g' | sort -u</code> == 潜在的な脆弱性を減らす == 現代のプログラムでは以下のような保護が行われています。 === メモリアドレスの推測困難化 === 攻撃に必要なコード片(ガジェット)のメモリアドレスを推測しにくくするために、カーネル空間、ユーザー空間の両方で[[:w:アドレス空間配置のランダム化|アドレス空間配置のランダム化]](ASLR)が行われています。カーネル空間の ASLR は KASLR (Kernel ASLR) とも呼ばれています。 ユーザー空間のプログラムで ASLR を有効にするためには[[:w:位置独立コード|位置独立コード]] (PIC) / 位置独立実行形式 (PIE) である必要があります。Unix で使われる実行形式の ELF では位置独立実行形式が ET_DYN、非位置独立実行形式 (non-PIE) が ET_EXEC となります。 Linuxでは ASLR が無効となる非位置独立実行形式のファイルを以下で検索することができます: <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ # License: CC0 / Public Domain $ # 非位置独立実行形式 (non-PIE) のバイナリを検索 $ find / -type f -executable 2>/dev/null | xargs -I {} sh -c 'LANG=C readelf -h {} 2>/dev/null | grep -E "Type:.*EXEC" >/dev/null && echo {}' /usr/lib/default.sfx /usr/lib/klibc/bin/mkfifo /usr/lib/klibc/bin/zcat /usr/lib/klibc/bin/poweroff [...] $ # 非位置独立実行形式 (non-PIE) のバイナリを含むDebianパッケージを検索 $ find / -type f -executable 2>/dev/null | xargs -I {} sh -c 'LANG=C readelf -h {} 2>/dev/null | grep -E "Type:.*EXEC" >/dev/null && echo {}' | xargs -r -d '\n' -n1 dpkg-query -S | sed 's/: .*//' | sort -u aidl busybox-static code cpp-15-x86-64-linux-gnu cuda-gdb-13-4 cuda-nvcc-13-4 cuda-sanitizer-13-4 cuda-tileiras-13-4 debugedit g++-15-x86-64-linux-gnu gcc-15-x86-64-linux-gnu gcc-mingw-w64-i686-posix gdc-15-x86-64-linux-gnu gds-tools-13-4 gfortran-15-x86-64-linux-gnu gh git-lfs gobjc-15-x86-64-linux-gnu gocryptfs golang-1.26-go go-md2man go-mtpfs [...] </syntaxhighlight> 現在のLinuxカーネルがユーザー空間 ASLR を有効にしているかは以下で確認できます (出力例はUbuntu 26.04): <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ sysctl kernel.randomize_va_space # 0=無し、1=部分的、2=完全 kernel.randomize_va_space = 2 </syntaxhighlight> また現在のLinuxカーネルがカーネル ASLR (KASLR) を有効にしているかは以下で確認できます (出力例はUbuntu 26.04): <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ grep 'CONFIG_RANDOMIZE_BASE' /boot/config-$(uname -r) # y=Yes, n=No CONFIG_RANDOMIZE_BASE=y </syntaxhighlight> なお ASLR は間接的な関数呼び出し( C++ の vtable を含む)があると、そのアドレスから ASLR のオフセットがバレてしまい突破されてしまいます。 また CPU の[[:w:投機的実行|投機的実行]]での情報漏れ (Spectre) による[[:w:キャッシュ攻撃|キャッシュサイドチャネル攻撃]](後述)の一つである「投機的探査」 (BlindSide) によってもコードの位置情報の取得がされ ASLR が突破されてしまいます。 === 投機的実行の情報漏れ防止 === 前述のとおり、投機的実行による情報漏れ (Spectre) は攻撃に繋がります。Spectre には境界チェックを迂回する Spectre V1 と間接分岐の分岐先アドレスのキャッシュ{{efn|分岐先バッファ (Branch Target Buffer、BTB)や分岐先アドレスキャッシュ (Branch Target Address Cache、BTAC) と呼ばれる。}}を汚染する Spectre V2 が存在します。<!--TODO: Spectre v3/v4、Zenbleed--> Spectre V1 を防ぐ方法としては投機的実行を阻害するための命令(x86ではLFENCE)の挿入{{efn|Linuxカーネルでの投機的実行の防止は<code>barrier_nospec()</code>。}}やアクセスできるアドレス範囲を狭めることが行われています{{efn|GCCでの投機的実行での範囲外アクセス防止は<code>__builtin_speculation_safe_value(...)</code>、Linuxカーネルでの投機的実行での範囲外アクセス防止は<code>array_index_nospec(...)</code><ref>[https://lwn.net/Articles/759423/ Spectre V1 defense in GCC] LWN 2018年7月10日</ref>。}}。 また Spectre V2 では攻撃を防ぎながらも速度を落とさない方法として脆弱な分岐先アドレスキャッシュに依存する間接分岐の代わりにリターンアドレスのキャッシュ{{efn|リターンスタックバッファ (RSB) と呼ばれる。}}に依存するリターン命令を使う retpoline が登場しました。しかしながらこの retpoline でも速度の低下は起こるため、既知の間接呼び出しを条件分岐 + 直接呼び出しに変換して高速化する手法が模索されました。LLVM では retpoline を有効にする <code>-mretpoline</code>フラグの処理内に既知の仮想関数呼び出しを[[:w:二分木|二分木]]の直接分岐に置き換える「分岐ファネル」(Branch funnel) が導入されています<ref>[https://reviews.llvm.org/D42453 Use branch funnels for virtual calls when retpoline mitigation is enabled.] LLVM project</ref>。また Linux カーネルでも既知の間接呼び出しを条件分岐 + 直接呼び出しに変換する INDIRECT_CALL_* マクロが搭載されています<ref>[https://lwn.net/Articles/774743/ Relief for retpoline pain] LWN 2018年12月14日</ref>。<!--TODO: Intel CETのSHSTKとretpolineの衝突--> 一方、リターン命令の投機的実行も「Retbleed」や AMD CPU における「投機的リターンスタックオーバーフロー」 (SRSO){{efn|Speculative Return Stack Overflow。}}のような脆弱性が見つかっています。 なお低権限コードから高権限コードへの権限境界をまたいだ Spectre および Retbleed は Intel の「間接分岐制限付き投機」(IBRS){{efn|Indirect Branch Restricted Speculation。}}およびそれを高速化した「拡張IBRS」(eIBRS) などハードウェア側によって塞がれました<ref>[https://www.intel.com/content/www/us/en/developer/articles/technical/software-security-guidance/technical-documentation/hardware-behavior-related-to-speculative-execution.html Hardware Features and Behavior Related to Speculative Execution] Intel 2026年10月14日</ref>が、権限境界をまたがないものは今も可能となっています。 === メモリにおける書き込みと実行の排他化 (W^X) === メモリでは書き込み可能領域の実行不可化 ([[:w:NXビット|NXビット]]) と実行可能領域の書き込み不可化による書き込みと実行の排他化([[:w:en:W^X|W^X]])が一般的となっています。NXビットは x86 では NXビットは AMD64 と共に搭載された古い機能であるため、今時の CPU と OS は基本的にこれに対応しています。 現在の CPU がNXビットを有効にしているかはLinuxでは以下で確認できます: <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ grep '^flags' /proc/cpuinfo | grep -o nx nx nx [...] </syntaxhighlight> 現在のLinuxカーネルが厳格な W^X を有効にしているかは以下で確認できます (出力例はUbuntu 26.04): <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ grep '_RWX' /boot/config-$(uname -r) # y=Yes, n=No CONFIG_ARCH_HAS_STRICT_KERNEL_RWX=y CONFIG_STRICT_KERNEL_RWX=y CONFIG_ARCH_HAS_STRICT_MODULE_RWX=y CONFIG_STRICT_MODULE_RWX=y </syntaxhighlight> しかしながら書き込みと実行の排他の原則を破ってそれらを同時に行える場所というものも存在しています。読み込み・書き込み・実行が可能なことから「RWXセクション」と呼ばれています。Windows ではメモリページの PAGE_EXECUTE_READWRITE フラグがこれに相当します<ref>[https://learn.microsoft.com/ja-jp/windows/win32/memory/memory-protection-constants メモリ保護定数] メモリ保護定数 (WinNT.h) - Win32 apps | Microsoft Learn</ref>。 Windows のカーネルドライバでは NX フラグの使用が義務付けられています<ref>[https://learn.microsoft.com/en-us/windows-hardware/test/hlk/testref/driver-compatibility-with-device-guard メモリ整合性と VBS とのドライバ互換性] Microsoft</ref>が、その Windows カーネルにおいても PatchGuard の領域がコード難読化のためにこの原則を破っています。<!--TODO: ホットパッチ--> また Linux でも実行可能領域を書き込み可能ページとして割り当てて書き込む text_poke 関数が用意されています。 === 制御フローの操作を防ぐ (CET) === 現代では「[[:w:Return-oriented programming|リターン指向プログラミング]]」(ROP)、「呼び出し指向プログラミング」 (COP)、「ジャンプ指向プログラミング」(JOP) 、「[[:en:Sigreturn-oriented programming|Sigreturn指向プログラミング]]」(SROP) などの制御フロー操作による攻撃が一般化していますが、これを防ぐ技術として「[[:w:en:Control-flow integrity#Intel Control-flow Enforcement Technology|制御フロー強制テクノロジー]]」(CET) の「[[:w:en:Indirect branch tracking|間接分岐追跡]]」(IBT) と「[[:w:en:Shadow stack|シャドウスタック]]」(SHSTK) が存在します。 制御フロー強制は比較的新しい技術であるため、対応する CPU は以下に限られます: * Intel Core (Tiger Lake) 第11世代以降 * AMD Zen 3 以降(シャドウスタックのみ) 現在の CPU が間接分岐追跡 (IBT) およびシャドウスタックに対応しているかはLinuxでは以下で確認できます: <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ grep '^flags' /proc/cpuinfo | grep -oE '(ibt|shstk)' shstk ibt shstk ibt [...] </syntaxhighlight> またユーザーランドのシャドウスタックの使用にはユーザーランドだけでなくカーネルの対応も必要となります。Linux カーネル では 6.6 以降対応でこれに対応しています(sigreturnにも対応<ref>[https://github.com/torvalds/linux/commit/05e36022c0543ba55a3de55af455b00cb3eb4fcc x86/shstk: Handle signals for shadow stack · torvalds/linux@05e3602] GitHub 2023年8月3日</ref>)。 Linuxディストリビューションでは Ubuntu 24.04以降、 Red Hat Enterprise Linux 9.7 以降<ref>[https://docs.redhat.com/ja/documentation/red_hat_enterprise_linux/9/html/9.7_release_notes/new-features-kernel 4.8. カーネル - 9.7 リリースノート - Red Hat Enterprise Linux - 9 - Red Hat Documentation] Red Hat</ref>が標準でシャドウスタックを有効としています。 現在のLinuxカーネルが間接分岐追跡およびシャドウスタックを有効にしているかは以下で確認できます (出力例はUbuntu 26.04): <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ grep -E '_(IBT|SHADOW_STACK)' /boot/config-$(uname -r) # y=Yes, n=No CONFIG_CC_HAS_IBT=y # CONFIG_X86_KERNEL_IBT is not set CONFIG_X86_USER_SHADOW_STACK=y CONFIG_X86_DISABLED_FEATURE_IBT=y CONFIG_ARCH_HAS_USER_SHADOW_STACK=y </syntaxhighlight> 現在のユーザーランドプログラムの中で間接分岐追跡またはシャドウスタックが無効化されているものはLinuxでは以下で確認できます: <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ # License: CC0 / Public Domain $ # 間接分岐追跡またはシャドウスタックが無効化されているバイナリを検索 $ find / -type f 2>/dev/null | xargs -I {} sh -c 'readelf -h "{}" >/dev/null 2>&1 && (readelf -n "{}" 2>/dev/null | grep -E IBT,.*SHSTK > /dev/null || echo "{}")' /usr/lib/lv2/carla.lv2/carla.so /usr/lib/7zip/7z /usr/lib/7zip/7zCon.sfx /usr/lib/7zip/7zr /usr/lib/7zip/7z.so /usr/lib/7zip/7za /usr/lib/klibc/bin/ipconfig /usr/lib/klibc/bin/umount /usr/lib/klibc/bin/halt [...] $ # 間接分岐追跡またはシャドウスタックが無効化されているバイナリを含むDebianパッケージを検索 $ find / -type f 2>/dev/null | xargs -I {} sh -c 'readelf -h "{}" >/dev/null 2>&1 && (readelf -n "{}" 2>/dev/null | grep -E IBT,.*SHSTK > /dev/null || echo "{}")' | xargs -r -d '\n' -n1 dpkg-query -S | sed 's/: .*//' | sort -u 7zip aidl ardour avr-libc cargo-1.93 carla carla-bridge-wine32:i386 carla-bridge-wine64 carla-lv2 carla-vst cuda-ctadvisor-13-4 cuda-cudart-13-4 [...] </syntaxhighlight> なお、制御フロー強制テクノロジーの間接分岐追跡とシャドウスタックが有効であっても異なる関数の通常呼び出しは防げません。分かりやすい例では関数の間接呼び出しにおいて関数ポインタを<code>sigaction</code>へと変更して独自のシグナルハンドラを登録し、その後クラッシュさせてそのシグナルハンドラを呼び出すという「セグメンテーション違反指向プログラミング」(SFOP) が挙げられます。また攻撃に使える関数 (dop gadgets) {{efn|dop gadgetsの検索の公式実装は「DOP-StaticAssist」[https://github.com/melynx/DOP-StaticAssist]だが長らく更新されておらず古いLLVM 3.5に依存している状態となっている。}}の通常呼び出しだけで攻撃する「Data-Oriented Programming」(DOP) <ref>Hong Hu et al. [https://ieeexplore.ieee.org/stamp/stamp.jsp?tp=&arnumber=7546545 Data-Oriented Programming: On the Expressiveness of Non-Control Data Attacks] IEEE 2016年</ref>{{efn|セキュリティ以外の文脈におけるデータ指向プログラミング、データ指向設計、データ駆動型設計とは異なる。}}という手法も存在します。 C++向けでは仮想関数テーブル (vtable) を改ざんして攻撃に使える仮想関数(仮想関数ガジェット、vfgadget)を呼び出す「偽造オブジェクト指向プログラミング」(COOP) という攻撃手法も登場しています。 === メモリ安全性の高いソフトウェアへ === 既存のソフトウェアの脆弱性は7割がメモリ安全性の問題に起因すると言われています<ref>[https://www.cisa.gov/sites/default/files/2023-12/CSAC_TAC_Recommendations-Memory-Safety_Final_20231205_508.pdf REPORT TO THE CISA DIRECTOR Technical Advisory Council Memory Safety] サイバーセキュリティ諮問委員会 (CSAC) 2023年12月5日</ref>。しかしながら[[C言語]]や[[C++]]はメモリ安全性が低いため、メモリ安全性の確保できる[[Rust]]などで書かれた代替プログラムが登場しています: {| class="wikitable" |+ コマンドのRust版 |- ! コマンドの概要 !! 従来版 !! Rust版 |- | Unix系の基本コマンド群 || GNU Core Utilities || '''uutils coreutils''' |- | ファイル検索コマンド群{{efn|<code>find</code>、<code>locate</code>、<code>updatedb</code>、<code>xargs</code>の4コマンド}} || GNU Findutils || '''uutils findutils''' |- | ファイル差分コマンド群{{efn|<code>diff</code>、<code>cmp</code>、<code>diff3</code>、<code>sdiff</code>の4コマンド}} || GNU Diffutils || '''uutils diffutils''' |- | ストリームエディタ (sed) || GNU sed / FreeBSD sed || '''uutils sed''' |- | AWKスクリプト || GNU AWK || '''uutils AWK''' |- | 文字列検索 || GNU Grep || '''uutils Grep''' |- | tarアーカイブ || GNU Tar || '''uutils tar''' |- | アカウント管理コマンド群 || shadow-utils || '''uutils shadow-utils''' |- | アクセス制御コマンド群{{efn|<code>chacl</code>、<code>getfacl</code>、<code>setfacl</code>の3コマンド}} || acl || '''uutils acl''' |- | procfs{{efn|プロセスファイルシステム}}表示コマンド群 || procps / procps-ng || '''uutils procps''' |- | ホスト名管理コマンド群{{efn|<code>hostname</code>、<code>dnsdomainname</code>、<code>domainname</code>、<code>nisdomainname</code>、<code>ypdomainname</code>の5コマンド。}} || hostname || '''uutils hostname''' |- | Linuxユーティリティ || util-linux || '''uutils util-linux''' |- | 権限昇格 || sudo || '''sudo-rs''' |- | 暗号・署名システム || GnuPG || '''Sequoia PGP''' |- | 時刻同期 || ntpd || '''ntpd-rs''' |- | セキュアシェル (SSH) || OpenSSH || '''russh''' |} これらのRustで書かれたコマンドのうちuutils coreutilsとsudo-rsはUbuntuに採用されています。 またライブラリでもRustだけ (Pure Rust) で実装されたものが登場しています: * 画像ライブラリ - これらは例えばGNOMEデスクトップ環境の画像ローダーGlycinから使われています<ref>[https://gitlab.gnome.org/GNOME/glycin GNOME / glycin · GitLab] GNOME Project</ref>。 ** libpng → pngクレート - PNG画像向け。 ** libgif → gifクレート - GIF画像向け。 ** libjpeg / libjpeg-turbo → zune-jpeg / libjpeg-turbo-rs - JPEG画像向け。 ** OpenJPEG → hayro-jpeg2000 - JPEG 2000画像向け。 ** libtiff → tiffクレート - Tiff画像向け ** libwebp → image-webpクレート - WebP画像向け。 ** libraw → libopenraw - RAW画像向け。 ** librsvg - SVG画像向け。C言語からRustに書き直しされました。 * 圧縮ライブラリ ** zlib / zlib-ng → zlib-rs - Deflate圧縮向け ** libbzip2 → bzip2-rs - BZ2圧縮向け * 暗号化ライブラリ ** OpenSSL / GnuTLS → [[:w:en:Rustls|Rustls]] * Unicode処理ライブラリ ** ICU4C → ICU4X * テキスト整形ライブラリ ** HarfBuzz → HarfRust * ブラウザエンジン ** Blink/Gecko → Servo <!-- === 整合性チェック === PatchGuard / HyperGuard --> == 不審な改変が行われていないかを調べる == 例えばOSの起動には一連のシーケンスがありますが、マルウェアは基本的にここの途中に入り込んで永続化します。 {| class="wikitable" |+ 起動シーケンス |- ! 種類 || Windows 11以降 !! Linux (Gnome) !! Linux (KDE) |- | 1. 起動ファームウェア || [[:w:Unified Extensible Firmware Interface|UEFI]] || colspan=2 | [[:w:Basic Input/Output System|レガシーBIOS]] / UEFI |- | 2. ブートローダー || [[:w:Windows Boot Manager|Windows Boot Manager]] (bootmgfw.efi)<br> → [[:w:Windows Boot Manager#winload.exe/winload.efi|Windows OS Loader]] (winload.efi) || colspan=2 | GRUB{{efn|Ubuntuの標準。}} / systemd-boot / Unified Kernel Image{{efn|Linuxカーネルとブートイメージを単一バイナリにする仕組み。}} / EFI boot stub{{efn|LinuxカーネルをEFIから直接ブートできるようにする仕組み。}} |- | 3. カーネル || [[:w:ntoskrnl.exe|ntoskrnl.exe]] || colspan=2 | Linuxカーネル ([[:w:vmlinux|vmlinux]]{{efn|圧縮後はvmlinuzとなる。}}) |- | 4. 初期化プロセス || [[:w:en:Session Manager Subsystem|smss.exe]]<br> → wininit.exe<br> || rowspan=2 colspan=2 | [[:w:systemd|systemd]]{{efn|以前は代替initもよく使われていたが、今はsystemdが標準となっている。}} |- | 5. サービスコントロールマネージャ || colspan=2 | [[:w:en:Service Control Manager|services.exe]] |- | rowspan=2 | 6. ログインマネージャ || rowspan=2 | [[:w:Winlogon|winlogon.exe]] || colspan=2 | systemd-logind<br>sd-pam |- | [[:w:GNOME ディスプレイマネージャー|GDM]] || [[:w:Simple Desktop Display Manager|SDDM]] |- | rowspan=2 | 7. ユーザー初期化プロセス || rowspan=2 | userinit.exe || colspan=2 | systemd |- | gnome-session || kcminit<br> → plasma_session |- | 8. シェル || [[:w:Windows Explorer|explorer.exe]] || gnome-shell || plasmashell |- | 9. コンポジタ || [[:w:Desktop Window Manager|dwm.exe]] || mutter || kwin |} また起動シーケンス以外にもアップデートシーケンスへの感染やシェル感染、ブラウザ感染もあります。 {| class="wikitable" |+ Windows における代表的なユーザースクリプト又はコマンド起動が可能な設定ファイル |- ! 規格/アプリケーション !! ユーザー !! システム |- | Windows || %APPDATA%\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows\<wbr>Start Menu\<wbr>Programs\<wbr>Startup\<wbr>* || C:\<wbr>ProgramData\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows\<wbr>Start Menu\<wbr>Programs\<wbr>Startup\<wbr>* |- | [[:w:PowerShell|PowerShell]] プロファイル<ref>[https://learn.microsoft.com/ja-jp/powershell/module/microsoft.powershell.core/about/about_profiles?view=powershell-7.6 about_Profiles - PowerShell - Microsoft Learn] Microsoft</ref> || %USERPROFILE%\<wbr>Documents\<wbr>PowerShell\<wbr>Profile.ps1<br>%USERPROFILE%\<wbr>Documents\<wbr>PowerShell\<wbr>Microsoft.PowerShell_profile.ps1 || C:\<wbr>Windows\<wbr>System32\<wbr>WindowsPowerShell\<wbr>*\<wbr>Profile.ps1<br>C:\<wbr>Windows\<wbr>System32\<wbr>WindowsPowerShell\<wbr>*\<wbr>Microsoft.PowerShell_profile.ps1 |} {| class="wikitable" |+ Linux における代表的なユーザースクリプト又はコマンド起動が可能な設定ファイル |- ! 規格/アプリケーション !! ユーザー !! システム |- | POSIX標準 || ~/.profile || /etc/profile |- | XDG Base Directory<wbr>標準 || ~/.local/bin/* || |- | FHS{{efn|Filesystem Hierarchy Standard}}<wbr>標準[https://refspecs.linuxfoundation.org/fhs.shtml] || || /bin/* /sbin/* /usr/bin/* /usr/local/bin/* /etc/inittab |- | LSB{{efn|Linux Standard Base}}<wbr>標準[https://refspecs.linuxfoundation.org/lsb.shtml] || || /etc/profile.d/* /etc/init.d/* /etc/cron.d/* |- | Desktop Application Autostart Specification<wbr>標準[https://specifications.freedesktop.org/autostart/latest/]{{efn|systemd-xdg-autostart-generator が導入されているシステムではこれらがsystemd設定に自動変換される。}} || ~/.config/autostart/* || /etc/xdg/autostart/* |- | Bash || ~/.bash_profile ~/.bashrc || /etc/bash_profile /etc/bash.bashrc /etc/bash.bash_logout |- | Z shell (Zsh) || ~/.zshenv ~/.zprofile ~/.zshrc ~/.zlogin ~/.zlogout || /etc/zshenv /etc/zprofile /etc/zshrc /etc/zlogin /etc/zlogout<br/>(または /etc/zsh/zshenv /etc/zsh/zprofile /etc/zsh/zshrc /etc/zsh/zlogin /etc/zsh/zlogout) |- | Systemd || ~/.config/systemd/user/* || /etc/systemd/system/* /etc/systemd/user/* |- | Xorg || ~/.xinitrc ~/.xserverrc ~/.xsession || /etc/X11/xinit/xinitrc /etc/X11/xinit/xserverrc /etc/X11/Xsession /usr/share/xsessions/* |- | Wayland || || /usr/share/wayland-sessions/* |- | Python || ~/.local/lib/python*/site-packages/*/**{{efn|絶対パスは<code>python3 -c 'import site; print(site.getusersitepackages())'</code>で確認可能。}} || /usr/lib/python*/dist-packages/*/** /usr/local/lib/python*/dist-packages/*/**{{efn|絶対パスは<code>python3 -c 'import site; print(site.getsitepackages())'</code>で確認可能。}} |- | Perl{{efn|Debian/UbuntuではDebianパッケージ設定システム (debconf) のためにPerlを使用している。}} || || /usr/share/perl*/** /usr/local/share/perl*/** /usr/lib/*/perl*/** /usr/local/lib/*/perl*/**{{efn|絶対パスは<code>perl -V:installsitearch -V:installsitelib -V:installvendorarch -V:installvendorlib -V:archlib -V:privlib -V:installarchlib -V:installprivlib</code>で確認可能。}} |} === パッケージ管理ファイルを検証する === パッケージ管理システムが管理しているファイルではファイルハッシュが保存されているため簡単にその検証を行うことが可能です: {| class="wikitable" |- ! OS / パッケージシステム !! 検証のみ !! 修復 |- | Windows || <code>sfc&nbsp;/verifyonly</code> || <code>sfc&nbsp;/scannow</code> |- | Debパッケージ (Debian / Ubuntu) || <code>debsums -s</code> || <code>apt install --reinstall $(debsums -cs &verbar; xargs -r dpkg-query -S &verbar; cut -d: -f1 &verbar; sort -u)</code> |- | RPMパッケージ (RedHat / Fedora) || <code>rpm -Va</code> || |} ただしローカルハッシュが改ざんされている可能性もあるため過信はできません。<!--TODO: ローカルハッシュの検証法--> 自動的にシステムの検証を行うシステムも存在します: * Android - ブロックデバイスレベルでのハッシュ検証 (dm-verityベース)<ref>[https://source.android.com/docs/security/features/verifiedboot/dm-verity?hl=ja dm-verity の実装] Google</ref> <!-- またUbuntuのSnapパッケージでもdm-verityの導入が進められています。 また特定言語のパッケージの検証は以下で可能です: * PIP (Python): なし --> === システム領域に不審なファイルが追加されていないかを調べる === システムの追加ファイルの検知にはパッケージシステムで管理されていないファイルの一覧を返す以下のようなツールが存在します: * Debian / Ubuntu(Debパッケージ)向け: cruft-ngパッケージ(<code>cruft</code>コマンド) 上記の<code>cruft</code>コマンドでは設定ファイルだけ残っているパッケージのファイルも出てきてしまいます。そのため、これが邪魔な時は設定ファイルだけ残っているパッケージを<code>sudo apt purge '~c'</code>で削除しましょう。 またaptレポジトリに無いインストールされたパッケージは<code>apt list '?obsolete'</code>で、手動 (manual) でインストールされたパッケージは<code>apt-mark showmanual</code>で確認できます。これらのコマンドを実行してインストールした覚えないパッケージが入ってないかをチェックしましょう。GUI が使えるのであれば<code>synaptic</code>を起動して「インストール済(ローカルまたは廃止)」と「インストール済(手動)」を確認するのもオススメです。 === ユーザー領域に不審なファイルが追加されていないかを調べる === ユーザースクリプトの書き換えや追加は検知が難しいです。<!--TODO: 良い方法を書く--> 共有ライブラリやスクリプトによるプラグイン追加も可能となっているため、こちらにも気をつけなければいけません。これには例えば以下があります: {| class="wikitable" |+ 代表的なユーザースクリプトや拡張機能のディレクトリパス |- ! 種類 !! Windowsのパス !! macOSのパス !! Linuxのパス |- | Google Chrome 拡張機能 || %LOCALAPPDATA%\Google\Chrome\User Data\*\Extensions\ || ~/Library/Application Support/Google/Chrome/*/Extensions/ || ~/.config/google-chrome/*/Extensions/ |- | GIMPプラグイン<ref>[https://gimp.cc/faq/add-gimp-plugins.html How to Install GIMP Plugins - Detailed Guide with Troubleshooting] GIMP.cc</ref> || %APPDATA%\GIMP\*\plug-ins\ || ~/Library/Application Support/GIMP/*/plug-ins/ || ~/.config/GIMP/*/plug-ins/ |- | Blenderスクリプト{{efn|起動スクリプト、アドオンを含む。}}<ref>[https://docs.blender.org/manual/ja/dev/advanced/blender_directory_layout.html Blender&#39;s Directory Layout] Blender Foundation</ref> || %APPDATA%\Blender Foundation\Blender\*\scripts\ || ~/Library/Application Support/Blender/*/scripts/ || ~/.config/blender/*/scripts/ |- | Ardourスクリプト<ref>[https://manual.ardour.org/lua-scripting/ The Ardour Manual - Lua Scripting] Ardour</ref> || %LOCALAPPDATA%\ardour*\scripts\ || ~/Library/Preferences/Ardour*/scripts/ || ~/.config/ardour*/scripts/ |- | LibreOfficeスクリプト || %APPDATA%\LibreOffice\*\user\Scripts\ || ~/Library/Application Support/LibreOffice/*/user/Scripts/ || ~/.config/libreoffice/*/user/Scripts/ |- | Visual Studio Code 拡張機能<ref>[https://code.visualstudio.com/docs/configure/extensions/extension-marketplace Extension Marketplace] Microsoft</ref> || %USERPROFILE%\.vscode\extensions\ || ~/.vscode/extensions/ || ~/.vscode/extensions/ |} === 改変・追加されたファイルが危険かを調べる === 実行ファイルやスクリプトはLinuxでは以下で検出できます: <syntaxhighlight lang="shell-session"> # cat filelist.txt | xargs file | grep -i -E ':.*(executable|shared object|relocatable|script)' /etc/init.d/binfmt-support.dpkg-new: POSIX shell script, ASCII text executable /etc/update-motd.d/99-livepatch-kernel-upgrade-required: POSIX shell script, ASCII text executable /usr/lib/chromium-browser/plugins/libpepflashplayer.so: ELF 64-bit LSB shared object, x86-64, version 1 (SYSV), dynamically linked, BuildID[sha1]=5c421e89a5c062a2106a5a4381dc38e779a22795, stripped </syntaxhighlight> またClamAVを導入していれば以下でマルウェアデータベースとの照合を行うことができます: <syntaxhighlight lang="shell-session"> # cat filelist.txt | xargs clamscan Loading: 3s, ETA: 0s [========================>] 3.63M/3.63M sigs Compiling: 1s, ETA: 0s [========================>] 41/41 tasks /etc/apt/apt.conf.d/00trustcdrom: OK /etc/apt/auth.conf.d/90ubuntu-advantage: OK /etc/apt/keyrings/google.asc: OK [...] ----------- SCAN SUMMARY ----------- Known viruses: 3628164 Engine version: 1.5.4 Scanned directories: 125 Scanned files: 1919 Infected files: 0 Total errors: 10 Data scanned: 247.72 MiB Data read: 281.17 MiB (ratio 0.88:1) Time: 17.939 sec (0 m 17 s) Start Date: 2026:10:11 05:41:30 End Date: 2026:10:11 05:41:48 </syntaxhighlight> === 設定データベースを検証する === 設定データベースは Windows ではレジストリ、Linuxでは GNOME / MATEの 使う [[:en:dconf|dconf]] が存在します。 Windows の設定データベースはレジストリと呼び「レジストリエディタ」 (<code>regedit</code>) で表示できます。 {| class="wikitable" |+ Windows における代表的なユーザースクリプト、コマンド起動、DLL呼び出しが可能なレジストリ |- ! 規格/アプリケーション !! 各ユーザー !! 全ユーザー |- | Windows || HKEY_USERS\<wbr>*\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows\<wbr>CurrentVersion\<wbr>Run\<wbr>*<wbr>CurrentVersion\<wbr>Run\<wbr>*<br>HKEY_USERS\<wbr>*\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows\<wbr>CurrentVersion\<wbr>RunOnce\<wbr>*{{efn|name="runonce"|RunOnceは一度のみ実行だが再登録することで何回でも実行可能。}} || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows\<wbr>CurrentVersion\<wbr>Run\<wbr>*<br>HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows\<wbr>CurrentVersion\<wbr>RunOnce\<wbr>*{{efn|name="runonce"}} |- | [[:w:en:Security Account Manager|Security Account Manager]] || || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>SAM\<wbr>SAM\<wbr>Domains\<wbr>Account\<wbr>Users\<wbr>*\<wbr>V{{efn|name="sam"|'HKEY_LOCAL_MACHINE\SAM\SAM\' 以下はレジストリエディタの右クリックの「アクセス許可」で Administrators にアクセス許可を与えないと読めない。なおファイルパスは「C:\Windows\System32\config\SAM」。}}{{efn|Vはバイナリであり、0xCC + (0x60 に指定されたオフセット) からユーザーログオンスクリプトパスを指定する<ref name="sam-ghost">Sebastián R. Castro et al. [https://dl.acm.org/doi/pdf/10.1145/3689934.3690839 Ghost in the SAM: Stealthy, Robust, and Privileged Persistence through Invisible Accounts] ACM 2024年</ref>。}} |- | [[:w:en:Local Security Authority Subsystem Service|Local Security Authority Subsystem Service]] || || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>System\<wbr>CurrentControlSet\<wbr>Control\<wbr>LSA\<wbr>Notification Packages<br>HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>SYSTEM\<wbr>CurrentControlSet\<wbr>Control\<wbr>LSA\<wbr>Authentication Packages<ref>[https://attack.mitre.org/detectionstrategies/DET0207/ Detect LSA Authentication Package Persistence via Registry and LSASS DLL Load] MITRE Corporation</ref> |- | [[:w:en:Active Setup|Active Setup]]<ref>[https://www.advancedinstaller.com/application-packaging-training/msi/ebook/active-setup.html Active-Setup Mechanism] Advanced Installer</ref> || HKEY_USERS\<wbr>*\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Active Setup\<wbr>Installed Components\<wbr>*\<wbr>StubPath || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Active Setup\<wbr>Installed Components\<wbr>*\<wbr>StubPath<ref>[https://attack.mitre.org/techniques/T1547/014/ Boot or Logon Autostart Execution: Active Setup] MITRE Corporation</ref> |- | [[:w:Windowsサービス|Windowsサービス]]<ref>[https://learn.microsoft.com/ja-jp/windows-hardware/drivers/install/hklm-system-currentcontrolset-services-registry-tree HKLM\SYSTEM\CurrentControlSet\Services レジストリ ツリー - Windows drivers - Microsoft Learn] Microsoft</ref> || || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>SYSTEM\<wbr>CurrentControlSet\<wbr>services\<wbr>* |- | [[:w:Winlogon|Winlogon]] || || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows NT\<wbr>CurrentVersion\<wbr>Winlogon\<wbr>Shell<br>HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows NT\<wbr>CurrentVersion\<wbr>Winlogon\<wbr>Userinit<br>HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Windows NT\<wbr>CurrentVersion\<wbr>Winlogon\<wbr>Notify<ref>[https://attack.mitre.org/techniques/T1547/004/ Boot or Logon Autostart Execution: Winlogon Helper DLL] MITRE Corporation</ref> |- | [[:w:cmd.exe|cmd.exe]]<ref>[https://learn.microsoft.com/en-us/windows-server/administration/windows-commands/cmd cmd - Microsoft Learn] Microsoft</ref> || HKEY_USERS\<wbr>*\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Command Processor\<wbr>AutoRun\REG_EXPAND_SZ || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>Software\<wbr>Microsoft\<wbr>Command Processor\<wbr>AutoRun\<wbr>REG_SZ |- | [[Microsoft Edge]] || || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>SOFTWARE\<wbr>Policies\<wbr>Microsoft\<wbr>Edge\<wbr>ExtensionInstallForcelist<ref>[https://learn.microsoft.com/ja-jp/deployedge/microsoft-edge-policies/extensioninstallforcelist Microsoft Edge ブラウザー ポリシードキュメント ExtensionInstallForcelist - Microsoft Learn] Microsoft</ref>{{efn|name="silent-install"|自動的にサイレントインストールする}} |- | [[Google Chrome]] || || HKEY_LOCAL_MACHINE\<wbr>SOFTWARE\<wbr>Policies\<wbr>Google\<wbr>Chrome\<wbr>ExtensionInstallForcelist<ref>[https://chromeenterprise.google/intl/ja_jp/policies/extension-install-forcelist/ ExtensionInstallForcelist: 自動インストールするアプリと拡張機能のリストの設定 - Chrome Enterprise] Google</ref>{{efn|name="silent-install"}} |} Linux の GNOME / MATE 環境には「[[:w:en:Dconf#dconf database|dconf データベース]]」が存在し、それは<code>dconf dump</code>('/'区切り)で表示できます。また dconf データベースにスキーマ(規定値と解説)を被せた gsettings も存在し、こちらは<code>gsettings list-recursively</code>(dconfと異なり'.'区切り)で表示できます。 {| class="wikitable" |+ Linux における代表的なユーザースクリプト又はコマンド起動が可能なdconf設定 |- ! 規格/アプリケーション !! ユーザー |- | GNOME Settings Daemon || /org/gnome/settings-daemon/plugins/media-keys/custom-keybindings/custom*/command |- | Marco ([[w:MATE (デスクトップ環境)|MATE]]) || /org/mate/Marco/keybinding-commands/command-*{{efn|変更した設定は<code>dconf dump /org/mate/Marco/keybinding-commands/</code>で、デフォルトも含めた設定は<code>gsettings list-recursively org.mate.Marco.keybinding-commands</code>で表示可能。}} |- | MATE Screensaver || /org/mate/screensaver/embedded-keyboard-command<br>/org/mate/screensaver/logout-command{{efn|変更した設定は<code>dconf dump /org/mate/screensaver/</code>、デフォルトも含めた設定は<code>gsettings list-recursively org.mate.screensaver</code> で表示可能}} |- | mate-applets || /org/mate/panel/objects/object-*/prefs/command |- | mate-sensors-applet || /org/mate/panel/objects/object-*/prefs/*/high-alarm-command<br>/org/mate/panel/objects/object-*/prefs/*/low-alarm-command |} なお MATE Screensaver と同源の GNOME Screensaver にも /org/gnome/desktop/screensaver/embedded-keyboard-command と /org/gnome/desktop/screensaver/logout-command{{efn|変更した設定は<code>dconf dump /org/gnome/desktop/screensaver/</code>、デフォルトも含めた設定は<code>gsettings list-recursively org.gnome.desktop.screensaver</code> で表示可能。}} が存在しますが、こちらは既に廃止されており指定しても無視されます<ref>[https://github.com/GNOME/gsettings-desktop-schemas/blob/main/schemas/org.gnome.desktop.screensaver.gschema.xml.in gsettings-desktop-schemas/schemas/org.gnome.desktop.screensaver.gschema.xml.in at main · GNOME/gsettings-desktop-schemas] GNOME Project</ref>。 === メディアに不審なファイルが追加されていないかを調べる === メディアの自動実行 ([[:w:en:AutoRun|AutoRun]]) ファイルにもマルウェアが紛れてないか注意しましょう。 {| class="wikitable" |+ メディアの自動実行ファイル |- ! Windows !! Linux<br>(Desktop Application Autostart Specification<wbr>標準[https://specifications.freedesktop.org/autostart/latest/]) |- | *:\[[:w:autorun.inf|autorun.inf]] || /media/*/*/.autorun<br>/media/*/*/autorun<br>/media/*/*/autorun.sh<br>/run/media/*/*/.autorun<br>/run/media/*/*/autorun<br>/run/media/*/*/autorun.sh |} == 改変を防ぐ == 改変を探すのは大変です。なので最初から改変をできないようにすれば管理はとても楽になります。 改ざんを防ぐには「[[:w:en:Chain of trust|信頼の連鎖]]」 (chain of trust) が重要となります。例えばカーネルだけで改ざんを防いでも、ハードウェアのファームウェアが不正であれば不正なカーネルを起動できてしまいます。 === ファームウェア改ざんを防ぐ === ファームウェア改ざんによる「ファームウェアルートキット」を防ぐにはIntel Management Engine (Intel ME)で実装されているIntel BIOS Guardを使う必要があります。<!--TODO: マザーボードによってはBIOSで有効にする必要があります。→最近のマザーボード事情--> なお2017年の第8世代Intel Coreプロセッサ (Coffee Lake) 以前はme_cleanerによってIntel Management Engineの無効化が可能<ref>[https://github.com/corna/me_cleaner/wiki/me_cleaner-status me_cleaner status] Nicola Corna 2018年</ref>なため非推奨です。 また2023年のIntel ME 16.1.30.2307未満では悪意あるロゴ画像を設定することによってroot権限からUEFI設定の変更が可能です([[:w:en:LogoFAIL|LogoFAIL]]の脆弱性)。そのため、古いIntel Management Engineが動作している場合はそのファームウェアをアップデートしましょう。Windowsでは MEUpdateTool.exe / FWUpdLcl.exe を使うことでこのアップデートが可能となっています。一方、Linuxでは一部機種が fwupdmgr 経由での Intel ME ファームウェアアップデートに対応しています。 Intel MEのバージョンはLinuxでは以下のような感じに調べることができます: <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ cat /sys/class/mei/mei0/fw_ver 0:16.1.32.2473 0:16.1.32.2473 0:16.1.27.2181 </syntaxhighlight> === ブートローダー改ざんを防ぐ === ブートローダーは起動に使われるファームウェア (BIOS) から呼ばれ、カーネルを読み込んで起動するために使われるプログラムです。古い BIOS (レガシーBIOS) には起動するブートローダーを検証する仕組みが存在しませんでしたが、新しい UEFI (統一拡張ファームウェアインターフェース) には署名されたブートローダーのみを起動する UEFI Secure Boot が追加され、安全なブートローダーの起動を許可するための「承認済み署名データベース」 (Authorized Signature Database、UEFI db) と、脆弱なブートローダーの起動を防ぐための「禁止署名データベース」 (Forbidden Signature Database、UEFI dbx) が用意されています。 UEFI Secure Boot が有効かどうかは以下で確認できます: * Windows PowerShell: <code>Confirm-SecureBootUEFI</code> * Linux: <code>mokutil --sb-state</code> UEFI db と UEFI dbx の内容は以下で確認できます: * Windows PowerShell: <code>Get-SecureBootUEFI -Name db -Decoded</code> / <code>Get-SecureBootUEFI -Name dbx -Decoded</code> * Linux: ** mokutil{{efn|Ubuntu Desktop に標準で含まれている。}}: <code>mokutil --db</code> / <code>mokutil --dbx</code> ** efitools: <code>efi-readvar -v db</code> / <code>efi-readvar -v dbx</code> ブートローダーの署名情報は以下で確認できます: * Windows PowerShell: <code>Get-PfxCertificate</code>{{efn|<code>Get-AuthenticodeSignature</code>はカタログ署名が使われる場合があるため非推奨: https://github.com/PowerShell/PowerShell/issues/23820 。}} * Linux: <code>sbverify --list</code> 例えば Windows PowerShell では以下のような感じです: <syntaxhighlight lang="powershell"> PS C:\WINDOWS\system32> mountvol S: /S; if ($?) { Get-PfxCertificate 'S:\EFI\Microsoft\Boot\bootmgfw.efi'; mountvol S: /D } Thumbprint Subject ---------- ------- FACDE3D80E99AFCC15E08AC5A69BD22785287F79 CN=Microsoft Windows, O=Microsoft Corporation, L=Redmond, S=Washington, C=US </syntaxhighlight> また Ubuntu や Debian では署名されたブートローダー (grub-efi-*-signedパッケージ) と非署名のブートローダー (grub-efi-*-unsignedパッケージ) の両方が用意されており、ブートローダーの正体がどれか、また署名されたブートローダーの署名内容を確認するのは以下のような感じとなります: <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ dpkg -L grub-efi-amd64-signed | grep -i '\.efi' | xargs md5sum # インストールされている署名されたブートローダーのハッシュを表示(grub*は通常版、gcd*は光学ブートメディア向け、grubnet*はネットブート向け) 2bd267fb12bd3b0fe26a9dfb4290868d /usr/lib/grub/x86_64-efi-signed/gcdx64.efi.signed f689e93336a015fa6eb93e1913b13482 /usr/lib/grub/x86_64-efi-signed/grubnetx64.efi.signed b63c7618fb96d52520b42b8cc7b124f0 /usr/lib/grub/x86_64-efi-signed/grubx64.efi.signed $ sudo sh -c "md5sum /boot/efi/EFI/BOOT/*" # 現在のbootloaderがどれを使っているかを確認(署名されたgrubを使用) b63c7618fb96d52520b42b8cc7b124f0 /boot/efi/EFI/BOOT/BOOTX64.EFI $ sudo sbverify --list /boot/efi/EFI/BOOT/BOOTX64.EFI signature 1 image signature issuers: - /C=GB/ST=Isle of Man/L=Douglas/O=Canonical Ltd./CN=Canonical Ltd. Master Certificate Authority image signature certificates: - subject: /C=GB/ST=Isle of Man/O=Canonical Ltd./OU=Secure Boot/CN=Canonical Ltd. Secure Boot Signing (2022 v1) issuer: /C=GB/ST=Isle of Man/L=Douglas/O=Canonical Ltd./CN=Canonical Ltd. Master Certificate Authority $ sudo sbverify --cert /usr/share/grub/canonical-uefi-ca.crt /boot/efi/EFI/BOOT/BOOTX64.EFI Signature verification OK </syntaxhighlight> なお Linux では grub の代わりに使えるブートローダーとして systemd-boot もあります。systemd-boot の署名版は Debian が systemd-boot-efi-*-signed パッケージとして用意しているようです(Ubuntu未搭載)。 <!--TODO: TPM (Trusted Platform Module) チップ --> === カーネル本体の改ざんを防ぐ === カーネルはオペレーティングシステム (OS) の下層で動き続けるプログラムです。カーネル本体の実行ファイルもブートローダーと同様に署名が行われており、UEFI Secure Boot が有効であればその検証をブートローダーが行います。Linux では GRUB の UEFI Secure Boot と shim_lock の連携がそれに相当します<ref>[https://www.gnu.org/software/grub/manual/grub/grub.html#UEFI-secure-boot-and-shim GNU GRUB Manual 2.14 - 19.4 UEFI secure boot and shim support] フリーソフトウェア財団</ref>。 なお Ubuntu には署名されたカーネル (linux-image-*パッケージ) と非署名のカーネル (linux-image-unsigned-*パッケージ) の両方が用意されており、署名されているカーネルは以下のような感じでその署名が確認できます: <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ sudo sbverify --list /boot/vmlinuz-$(uname -r) # Linuxカーネル本体の署名を確認する signature 1 image signature issuers: - /C=GB/ST=Isle of Man/L=Douglas/O=Canonical Ltd./CN=Canonical Ltd. Master Certificate Authority image signature certificates: - subject: /C=GB/ST=Isle of Man/O=Canonical Ltd./OU=Secure Boot/CN=Canonical Ltd. Secure Boot Signing (2022 v1) issuer: /C=GB/ST=Isle of Man/L=Douglas/O=Canonical Ltd./CN=Canonical Ltd. Master Certificate Authority $ sudo sbverify --cert /usr/share/grub/canonical-uefi-ca.crt /boot/vmlinuz-$(uname -r) # Linuxカーネル本体の署名を検証する Signature verification OK </syntaxhighlight> === カーネルモジュールの改ざんを防ぐ === カーネルモジュールも署名されており、その検証をカーネルが行っています。Windowsカーネルでは ci.dll (Code Integrityモジュール)が、Linuxカーネルでは CONFIG_MODULE_SIG コンパイルオプションがその検証を行っています。 カーネルによるカーネルモジュールの検証が有効かどうかは以下で確認することができます: * Linux: <code>grep 'CONFIG_MODULE_SIG=' /boot/config-$(uname -r)</code> カーネルによるカーネルモジュールの検証で読み込みを弾くかどうかは以下で確認することができます: * Windows: 強制モードか評価モード (監査モード) かを確認する PowerShell スクリプトが Microsoft のサイトに存在します: https://support.microsoft.com/en-us/windows/hardware/drivers/the-windows-driver-policy#is-my-device-in-evaluation-mode-or-enforcement-mode * Linux: <code>cat /sys/module/module/parameters/sig_enforce</code> また Linux では検証で読み込みを弾かない場合でも検証外カーネルモジュールを読み込んだ場合はdmesgに警告が出て '''Tainted kernel''' 扱いとなります<ref>[https://docs.kernel.org/admin-guide/tainted-kernels.html Tainted kernels] Linux Foundation</ref>。以下はその例です: <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ grep 'CONFIG_MODULE_SIG=' /boot/config-$(uname -r) # y=Yes, n=No CONFIG_MODULE_SIG=y $ cat /sys/module/module/parameters/sig_enforce # Y=Yes, N=No N $ sudo dmesg | grep 'module verification' [ 8.928361] nvidia: module verification failed: signature and/or required key missing - tainting kernel $ wget http://git.kernel.org/pub/scm/linux/kernel/git/torvalds/linux.git/plain/tools/debugging/kernel-chktaint [...] $ sudo sh ./kernel-chktaint Kernel is "tainted" for the following reasons: * externally-built ('out-of-tree') module was loaded (#12) * unsigned module was loaded (#13) Raw taint value as int/string: 12288/'G OE ' Tainted modules: * nvidia (OE) * nvidia_drm (OE) * nvidia_modeset (OE) * nvidia_uvm (OE) For a more detailed explanation of the various taint flags see Documentation/admin-guide/tainted-kernels.rst in the Linux kernel sources or https://kernel.org/doc/html/latest/admin-guide/tainted-kernels.html </syntaxhighlight> また Linux では以下のような感じで個々のモジュールの署名が確認できます: <syntaxhighlight lang="shell-session"> $ modinfo /lib/modules/$(uname -r)/kernel/arch/x86/kernel/msr.ko.zst filename: /lib/modules/7.0.0-38-generic/kernel/arch/x86/kernel/msr.ko.zst license: GPL description: x86 generic MSR driver author: H. Peter Anvin <hpa@zytor.com> srcversion: 639B995855A3528050FD532 depends: intree: Y name: msr retpoline: Y vermagic: 7.0.0-38-generic SMP preempt mod_unload modversions sig_id: PKCS#7 signer: Build time autogenerated kernel key sig_key: 3B:E7:D3:BF:D3:2E:D9:CA:9C:17:D2:E9:5F:1A:1C:AE:67:D5:82:2F sig_hashalgo: sha512 signature: 96:BC:2A:18:6E:4D:D8:E5:28:69:9D:E6:65:89:95:D4:BE:4C:5B:7C: 4A:23:11:75:F6:FE:63:79:FC:29:9B:F7:EA:24:B6:F1:EF:F3:80:17: 0B:C0:1E:46:61:29:BB:F9:E0:AC:81:69:85:73:7D:D4:77:82:A8:DB: [...] </syntaxhighlight> === システムファイル改ざんを防ぐ === システムファイル改ざんを防ぐ良い方法はシステム領域を読み取り専用にすることですが、仮にファイルシステムを読み取り専用のファイルシステム(SquashFSやEROFS)にしたとしても記録する場所がSSDであればブロック単位での上書きが可能となります。 1回だけ書き込めて上書きが不可能な媒体としてはCD-R、DVD-R、DVD+R、BD-Rなどの一部の光学メディアが存在しますが、これらをブートメディアとして使用するのは頻繁なアップデートが難しくなります。 そのほかの手法としては別のコンピュータからシステムファイルを取得する「ネットワークブート」を行うという手法もありますが、これはネットワーク経由でシステムファイルが盗まれる可能性と隣り合わせです。しかしながらプロトコルにUEFI HTTPSを、認証に相互認証のmTLSを用いて、その秘密鍵をTPMで管理してOSから読めなくすることでネットワークブートの安全性は何とか確保できるかもしれません(対応マザーボードは不明)。 一方、Android や ChromeOS ではブロックデバイス単位での改ざん検知 (dm-verify) によってシステムイメージの改ざんを防止しています<ref>[https://source.android.com/docs/security/features/verifiedboot/dm-verity?hl=ja dm-verity の実装] Google</ref><ref>[https://research.google/pubs/verified-boot-on-chrome-os-and-how-to-do-it-yourself/ Verified Boot on Chrome OS and How to do it yourself] Google</ref>。 === カーネルメモリ改ざんを防ぐ === カーネルメモリのコード部分は MMU の書き込み禁止によって保護されています。iOS / macOS では Kernel Integrity Protection が<ref>[https://support.apple.com/ja-jp/guide/security/sec8b776536b/web オペレーティングシステムの整合性] Apple</ref> 、Linux では Kernel Strict RWX がこれに相当します<ref>[https://docs.kernel.org/security/self-protection.html Kernel Self-Protection] Linux Foundation</ref>。Windows でもカーネルモードに読み込み専用メモリセグメントが存在し、これに書き込もうとするとブルースクリーンで ATTEMPTED_WRITE_TO_READONLY_MEMORY (0xBE) が発行されます<ref>[https://learn.microsoft.com/ja-jp/windows-hardware/drivers/debugger/bug-check-0xbe--attempted-write-to-readonly-memory バグ チェック 0xBE: ATTEMPTED_WRITE_TO_READONLY_MEMORY] Microsoft</ref>。しかしながら Linux Kernel では kprobes、Static Keys、Static calls などで自己書き換えが多用されているため、一時的にコード部分を書き込み可能なページに割り当てて書き換える text_poke(...) という抜け道が存在します。 また定期的に改ざんが行われていないかをチェックする仕組みも存在します。Windows では[[:w:Kernel Patch Protection|Kernel Patch Protection]] (PatchGuard) / HyperGuard が、Linux では Linux Kernel Runtime Guard(外部パッチ)がこれに該当します。Windows の PatchGuard では改ざんが検出されたらブルースクリーンで CRITICAL_STRUCTURE_CORRUPTION が発行されます。 <!--TODO: Windows の HVCI、macOS の Secure Page Table Monitor / Trusted Execution Monitor--> <!-- === アプリケーション改ざんを防ぐ === SELinux / AppArmor --> == 攻撃用AIを対策する == 攻撃用AIでは基本的に賢いかつ制限の緩い大規模言語モデル (LLM) が使われています。この代表的な例として GLM 5.3 や Qwen3.8-27B-ABLITERATED が存在します。 === コンテキスト爆弾を設置する === 攻撃用AIの対策では相手のLLMを止めることが重要となります。そこで使えるのが'''コンテキスト爆弾''' (context bombs) という手法です<ref>[https://arstechnica.com/security/2026/07/now-defenders-are-embracing-the-prompt-injection-too/ Now, defenders are embracing the prompt injection, too] Ars Technica 2026年7月14日</ref>。 このコンテキスト爆弾は「相手のLLMに対し応答やツール呼び出しで禁止されていることを行わせようとする」というプロンプトインジェクションの一種であり、それによって相手のガードレールがLLMを止めることで相手からの攻撃を防ぎます。この手法は相手の読みそうなテキストにただプロンプトを書いておけば良いだけなので、お手軽に使えます。 コンテキスト爆弾のテキスト例は以下のリポジトリに存在します: * https://github.com/tracebit-com/context-bombs === ハニーポット === ハニーポットは攻撃者を引きつける役目を担います。ハニーポットの評価フレームワークには「UHBS」(Universal Honeypot Benchmarking Standard) が、その品質基準には「UHQS」(Universal Honeypot Quality Score) が存在しますが、2026年現在多くのハニーポットがFランク〜Dランクと残念な状況になっています<ref>[https://uhbs.github.io/uhbs-standard/mkdocs/conformance/ Overview - UHBS — Honeypot Evaluation Framework]</ref>。 <!-- == 自作コードの脆弱性を塞ぐ == 書きかけ --> == 脚注 == <references group="注釈"/> == 参考文献 == <references/> {{DEFAULTSORT:こんひゆうたせきゆりてい}} [[Category:計算機科学]] [[Category:情報技術]] gunysvnbo8o19bi0jy6v4ii2g5vvjr9 テンプレート:ISBN 10 48967 305007 2026-10-22T08:46:38Z Jcb 92857 ページの作成:「<includeonly>[[Special:BookSources/{{{1}}}|ISBN {{{1}}}]]</includeonly>」 305007 wikitext text/x-wiki <includeonly>[[Special:BookSources/{{{1}}}|ISBN {{{1}}}]]</includeonly> mu3dnsseqhew3xj9wqypq1nkdazbkle テンプレート:RFC 10 48968 305083 2026-10-22T11:37:52Z Jcb 92857 ページの作成:「<includeonly>[https://datatracker.ietf.org/doc/html/rfc{{{1}}} RFC&nbsp;{{{1}}}]</includeonly>」 305083 wikitext text/x-wiki <includeonly>[https://datatracker.ietf.org/doc/html/rfc{{{1}}} RFC&nbsp;{{{1}}}]</includeonly> ljegpqixl8x3qu5u73cf4ism6vgfnkd